衆議院

メインへスキップ



第5号 平成19年4月12日(木曜日)

会議録本文へ
平成十九年四月十二日(木曜日)

    午前十一時一分開議

 出席委員

   委員長 中山 太郎君

   理事 愛知 和男君 理事 近藤 基彦君

   理事 福田 康夫君 理事 船田  元君

   理事 保岡 興治君 理事 枝野 幸男君

   理事 岡本 充功君 理事 園田 康博君

   理事 平岡 秀夫君 理事 赤松 正雄君

      新井 悦二君    伊藤 公介君

      飯島 夕雁君    石破  茂君

      江渡 聡徳君    小里 泰弘君

      越智 隆雄君    岡部 英明君

      加藤 勝信君    北村 茂男君

      清水清一朗君    柴山 昌彦君

      平  将明君    棚橋 泰文君

      谷  公一君    渡海紀三朗君

      中谷  元君    中野 正志君

      丹羽 秀樹君    西本 勝子君

      野田  毅君    葉梨 康弘君

      早川 忠孝君    林   潤君

      原田 憲治君    平田 耕一君

      広津 素子君    深谷 隆司君

      藤井 勇治君    藤田 幹雄君

      二田 孝治君    保利 耕輔君

      堀内 光雄君    牧原 秀樹君

      武藤 容治君    森山 眞弓君

      矢野 隆司君    安井潤一郎君

      山崎  拓君    逢坂 誠二君

      玄葉光一郎君    鈴木 克昌君

      田中眞紀子君    高山 智司君

      筒井 信隆君    中川 正春君

      長妻  昭君    古川 元久君

      石井 啓一君    大口 善徳君

      笠井  亮君    辻元 清美君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           加藤 勝信君

   議員           葉梨 康弘君

   議員           船田  元君

   議員           保岡 興治君

   議員           枝野 幸男君

   議員           小川 淳也君

   議員           鈴木 克昌君

   議員           園田 康博君

   議員           赤松 正雄君

   総務大臣         菅  義偉君

   衆議院法制局第二部長   橘  幸信君

   衆議院憲法調査特別委員会及び憲法調査会事務局長  窪田 勝弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十二日

 辞任         補欠選任

  石破  茂君     原田 憲治君

  越智 隆雄君     平  将明君

  坂本 剛二君     岡部 英明君

  柴山 昌彦君     藤田 幹雄君

  棚橋 泰文君     武藤 容治君

  谷  公一君     北村 茂男君

  中谷  元君     小里 泰弘君

  野田  毅君     丹羽 秀樹君

  安井潤一郎君     飯島 夕雁君

  山崎  拓君     広津 素子君

  玄葉光一郎君     高山 智司君

同日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     安井潤一郎君

  小里 泰弘君     中谷  元君

  岡部 英明君     西本 勝子君

  北村 茂男君     谷  公一君

  平  将明君     清水清一朗君

  丹羽 秀樹君     野田  毅君

  原田 憲治君     石破  茂君

  広津 素子君     江渡 聡徳君

  藤田 幹雄君     柴山 昌彦君

  武藤 容治君     棚橋 泰文君

  高山 智司君     玄葉光一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  江渡 聡徳君     山崎  拓君

  清水清一朗君     越智 隆雄君

  西本 勝子君     牧原 秀樹君

同日

 辞任         補欠選任

  牧原 秀樹君     坂本 剛二君

同日

 理事枝野幸男君及び園田康博君同日理事辞任につき、その補欠として平岡秀夫君及び岡本充功君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

四月三日

 国民投票法案の廃案を求めることに関する請願(穀田恵二君紹介)(第六一一号)

 同(辻元清美君紹介)(第六七五号)

 同(志位和夫君紹介)(第七四七号)

 改憲のための国民投票法案の廃案を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六一二号)

 同(石井郁子君紹介)(第六一三号)

 同(笠井亮君紹介)(第六一四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六一五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第六一六号)

 同(志位和夫君紹介)(第六一七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六一八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六一九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第六二〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第七四八号)

 改憲手続法案廃案に関する請願(吉井英勝君紹介)(第七四五号)

 改憲手続法案反対に関する請願(志位和夫君紹介)(第七四六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 日本国憲法の改正手続に関する法律案(保岡興治君外五名提出、第百六十四回国会衆法第三〇号)

 日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案(枝野幸男君外三名提出、第百六十四回国会衆法第三一号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

中山委員長 これより会議を開きます。

 第百六十四回国会、保岡興治君外五名提出、日本国憲法の改正手続に関する法律案及び第百六十四回国会、枝野幸男君外三名提出、日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案に対し、枝野幸男君外二名から、民主党・無所属クラブ提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。園田康博君。

    ―――――――――――――

 日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

園田(康)委員 ただいま議題となりました民主党提出の日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 この特別委員会が設けられてから一年半ほどの議論を通じ、国民投票法制について、民主党は、改憲をするあるいはしないとは全く関係なく、客観的、中立的な手続法として幅広いコンセンサスのもとで制定しなければならないということを一貫して主張し、その認識がやっと広まりつつありました。しかし、ことしの一月に安倍総理が任期中に憲法改正をしたいと発言したことから、議論の質が一変してしまいました。国民投票法制をめぐる議論のみならず、日本の憲法の議論も、この安倍総理の発言によって、政治論的には十五年、政治思想的には百五十年後退したという印象がございます。

 さらに、与党は、みずから定めた採決日程どおりに何が何でも運ぼうと、最初の中央公聴会設定のときと同じように、乱暴な委員会運営も辞さない覚悟のようであります。

 保岡与党筆頭理事は与党修正案の趣旨説明で与党案民主党案の違いはもうほとんどなくなったと発言しておられますが、国政における重要な問題に係る案件の国民投票法制について、与党修正案ではその意義及び必要性の有無について検討を加えと消極的な修正となっているだけであります。投票権者を十八歳とする点についても、与党修正案では実施を幾らでも先送りできる余地を残しております。また、与党修正案では、国家公務員法、地方公務員法などに定められた公務員の政治的行為の制限規定を国民投票運動に適用除外とはせず附則で検討を加えるにとどまっており、一体何を検討しようとしているのかさえ意図不明であります。

 このように、与党修正案は、当特別委員会でのこれまでの議論の積み重ねを踏まえているとは到底言いがたいものであり、民主党の考えと与党修正案の間には厳然たる相違点が存在していると言わざるを得ません。民主党は、これまでの当特別委員会における質疑、参考人や公聴会における公述人からの御指摘を踏まえ、党内で真摯に議論を重ね、民主党独自の修正案を提出することといたしました。民主党修正案は、現段階において最も合理的な案であると考えておりますので、必ず過半数の賛同を得て成立させていただけるものと確信をいたしております。

 以下、本修正案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、国民投票の対象についてですが、憲法改正のほか、国政における重要な問題のうち憲法改正の対象となり得る問題、統治機構に関する問題、生命倫理に関する問題その他の国民投票の対象とするにふさわしい問題として別に法律で定める問題に係る案件とすることとしており、附則において、この法律が施行されるまでの間に国政問題国民投票に関し日本国憲法の採用する間接民主制との整合性の確保その他の観点から検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとするとの規定を置くことにしております。

 第二に、投票権者についてであります。

 諸外国では、成人年齢に合わせて十八歳以上の国民に投票権を与える例が非常に多いことから、投票権者の年齢を十八歳以上とすることとし、附則において、この法律が施行されるまでの間に公職選挙法、民法等の関連法令について検討を加え必要な法制上の措置を講ずるものとするとの規定を置くこととしております。

 第三に、投票用紙への賛否の記載方法及び過半数の意義についてであります。

 この点については、投票人の意思を酌み取ることを重視する観点から、さらに検討を加え、あらかじめ投票用紙に印刷された賛成、反対の文字をマルで囲むこととし、無効票をできるだけ少なくする方式に変更した上で、賛成の投票数が賛成の投票数と反対の投票数の合計数の二分の一を超えた場合に国民の承認があったものとしております。

 第四に、国民投票運動が禁止される特定公務員の範囲については、民主党原案どおり選管職員等に限ることとしております。これは、本委員会での議論を通じて、憲法改正国民投票における意見表明は主権者国民が直接に国政に対して発言できる重要かつ貴重な機会であり、それは裁判官や検察官等の職種についている者でも同じように保障されるべきであると考えたからであります。

 第五に、公務員等及び教育者の地位利用による国民投票運動の制限については、要件を明確にした上で設けますが、罰則は設けないこととしております。

 なお、公務員が憲法改正の発議から投票期日までの間に行う国民投票運動及び憲法改正に関する意見の表明並びにこれらに必要な行為については、国家公務員法、地方公務員法等の公務員の政治的行為の制限規定は適用しないことといたしました。

 第六に、組織的多数人買収罪については、適用対象を最も悪質な部分に限定するため、勧誘行為を明示的なものに限定するとともに、投票に影響を与えるに足りる物品その他の利益という要件についても、多数の者に対する意見の表明の手段として通常用いられないものに限ると限定した上で新設することといたしました。

 第七に、国民投票における周知広報については、まず、国民投票公報には、憲法改正案及びその要旨並びに憲法改正案に係る新旧対照表その他、参考となるべき事項に関するわかりやすい説明を記載することとしております。

 また、説明会の開催及び新聞における無料広告枠の規定は削除することといたしました。テレビ等における無料広告枠においても、賛成意見、反対意見を公正かつ平等に扱うこととしております。また、賛否の意見の放送は政党が指名する団体も行うことができることといたしました。

 第八に、テレビ、ラジオにおける有料広告については、禁止期間を憲法改正の発議から投票期日までの間は禁止するとともに、放送事業者は国民投票に関する放送については放送法の規定の趣旨に留意するものとする旨の規定を設けることとしております。

 最後に、この法律の施行期日及び憲法審査会の審査権限については、施行を公布の日から起算して三年を経過した日とするとともに、それまでの間は憲法審査会は調査に専念することを明記することとしております。

 先週までに二回の中央公聴会と二カ所で地方公聴会が開かれましたが、公聴会が終わったから採決の環境が整ったというような身勝手な解釈はやめ、公聴会で示された多くの意見に謙虚に耳を傾け、また、与党修正案と民主党修正案の相違点等について十分な議論を積み重ねながら、できるだけ幅広いコンセンサスの形成に向けて、各党、委員各位が引き続き努力することを訴え、提案理由の説明といたします。

中山委員長 以上で修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

中山委員長 これより両法律案並びに保岡興治君外三名提出の修正案及び枝野幸男君外二名提出の修正案を一括して質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴山昌彦君。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦でございます。

 本委員会で大変長時間にわたって与野党間で活発で真摯な調査及び審議がなされた結果、ことし三月十七日、与党から、与党案、民主党案の併合修正案が提出されたのに引き続きまして、今般、民主党からも修正案を提出していただくこととなりました。まず冒頭、民主党の真摯な議論には敬意を表したいと思います。

 しかし、その上で、今、園田先生からは、民主党の考えと与党修正案との間には厳然たる相違点が存在していると言わざるを得ないといった御発言がございました。以下、私の質問で、本当にそれが厳然たる差異なのか、乗り越えられないものであるのかということについて、個別にお伺いしていきたいと思っております。

 まず第一に、投票権者の範囲でございます。

 民主党案におきましては、国民投票の投票年齢について本則で十八歳以上として附則で関連法令の見直しをするとしておりますけれども、その内容及び趣旨は一体どのようなものなのでしょうか。そして、与党案において幾らでも先送りできるというような御説明も今あったわけですけれども、この点についてどのように考えておられるのでしょうか。民主党修正案提出者及び与党修正案提出者それぞれにお伺いいたします。

枝野委員 私どもは、成人年齢あるいは他の選挙権年齢が二十であったとしても、憲法改正の国民投票については、より長期にわたって国民を拘束するという性質にもかんがみ、より若い世代に可能な限り投票権を認めるべきであるということで十八歳の投票権ということを従来から主張してきております。と同時に、私どもは、もともと十八歳成人、十八歳選挙権も主張しておりますし、国民投票について十八歳にするということであるならば、成人年齢を初めとして、それを出発点として十八歳に引き下げることをきちっと検討して結論を出すということは当然あっていいことだろうということで、こういった附則を設けております。

 与党修正案にも似たような附則がございますが、法改正がなされるまでは二十とするという規定が与党案にはくっついております。ところが、国会は、どちらの案によっても、施行までの三年の間に関連法令を見直すという法的義務が課せられている。この法的義務をちゃんと実行するのであれば、それまでの間は二十とするという与党にだけある附則は必要ないはずなんですね。

 にもかかわらず、そういった必要ない附則をつけているというのは、附則には書いたけれども、この義務を履行しない、あるいは履行できない可能性があるということを少なくとも危惧しておられるのは間違いないわけでありまして、ちゃんと三年以内に関連法令を整備するならばそんな規定は必要ないことでありますので、それは先送りの意図があるのではないかと勘ぐられても仕方がない。

 三年以内にちゃんと整備をするということで与党のお気持ちがかたいのであれば、民主党案で何の問題もないということであると思います。

船田委員 私ども与党の併合修正案におきましても、本則において十八歳以上ということを決定させていただいております。これは言うまでもなく、諸外国の例を見ても十八歳以上というのが世界標準である、こう思っております。これを取り入れることといたしました。

 ただ、本法施行までの間に関連法令、私どもが明示をしているものは公選法それから民法その他ということになっておりますが、少なくとも公選法、民法については十八歳、二十から十八になるようにこの期間において法整備をしなければいけないということを附則で載せております。

 なお、経過措置ということで、その関連法令が施行されるまでは二十以上のまま、こういうことにいたしておりますのは、例えば、何らかの理由によりまして公選法の規定が十分整備されないという事態が起こったときに、国民投票法案が十八以上、そして公選法による選挙が二十以上という事態が万が一生じた場合には大変な混乱を招くことが予想されることから、私どもは、万が一を考えての措置ということで書いたわけであります。

 しかし、これを書いたからといって、先延ばしにしようという意図は一切持っておりません。ここまで本則においても十八歳以上ということを明示している以上、我々与党としては十八歳に整備をするということについては政府に対して非常に大きな責任を負ったわけであります。したがって、これを履行することは与党の責任として確実にやらせていただきたいと思っておりますので、そのような心配は無用であると考えております。

 以上です。

柴山委員 よくわかりました。

 続きまして、公務員の政治的行為の制限についてお伺いしたいと思います。

 民主党案においては、公務員の行う国民投票運動については国家公務員法、地方公務員法等の公務員法制における公務員の政治的行為の制限規定を適用除外とするという修正を行ったわけですけれども、その内容及び趣旨がどういうものであるのか、民主党修正案提出者にお伺いしたいと思います。

 一方、与党修正案提出者に対しては、今、園田先生の方から、附則において検討を加えるということがどういうことを検討しようとしているのか意図不明であるというような御指摘があったわけですけれども、この論点についてどのように考えておられるのか、それぞれお伺いしたいと思います。

枝野委員 現行の国家公務員法や地方公務員法におきましては、憲法改正国民投票に際しての意見表明などを念頭に置くことなく、それ以外の政治的行為を専ら念頭に置いて服務上の問題として規制をしてきています。この現行公務員法制に何ら手当てをしないまま放置をいたしますと、原則自由であるはずの国民投票運動も、公務員法制の観点から規制がかかってしまうことになります。しかも、その規制のかかり方は、現行法制を前提としますと、国家公務員法による人事院規則と地方公務員法、さらにはその他の特別職公務員の特別規定などによって、それぞればらばらになってしまいます。

 さらに、そもそも公務員法制の政治的中立性は与えられた憲法秩序の枠内における公務員の義務であるのに対して、国民投票運動は憲法秩序それ自体を形成する作用に直接関与するものでありますから、主権者国民として最も重要な権利であり、もちろん公務員である以上は一定の制約に服するということは認めますけれども、しかし、やはり原則自由である、より一般的な政治活動以上に制限は制約的でなければいけない、少なくなければいけない、こういうふうに考えます。

 したがいまして、我々は、公務員法制上の政治行為の制限規定によって制約されることのないよう、国民投票運動には公務員法制上の政治的行為の制限規定を適用しない条項を置くという修正を行ったものであります。

 なお、このことによって、では公務員は何でもしていいのかということになるとそうではありません。これを原則自由にするかわりにと言ってはなんですけれども、我が党が当初は予定していなかった地位利用の禁止の規定を置くことにいたしました。地位を利用してということは許されない。

 さらに言えば、例えば国民投票運動に名をかりて、国民投票運動としての実体ではなくて、例えば特定の政党や特定の公職の候補者を支援するような活動をすれば、これはまさに名をかりてということでありますから、この原則自由というところの自由の枠からは外れるだろうというふうに考えます。

 それから、他の公務員法制上の信用失墜行為等の規定は、当然いきますので、それに該当するということで、悪質といいますか、公務員として、いかに憲法秩序を形成する作用に直接関与するものだといっても許されないような行為については、この規定があっても何ら問題なく規制を受ける、許されないことになるというふうに考えております。

葉梨委員 前回、この委員会でも御答弁をさせていただいたわけなんですけれども、与党案においては、附則の十一条で「公務員の政治的行為の制限に関する検討」というような状況になっておりますが、検討を加えるというのは、検討して何もしないということではございません。これは、ここにもございますとおり、「この法律が施行されるまでの間に、公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないよう、」「検討を加え、必要な法制上の措置を講ずる」ということですから、これは義務でございます。

 なぜこのような形に置いたかというのは、実は私自身は、民主党の修正案と我々与党案とそれほど違いがあるというふうには感じておりません。前回も申し上げましたように、公務員法の世界においては、公務の中立性という観点から諸規制が加えられている。公務の中立性があるからといって、十二月十四日に与党提案者が答弁いたしましたように、国民投票に関しての勧誘だとかあるいは意見の表明が制限されることになってはならない。

 どちらの世界、国民投票法の世界でそれを規律するのか、あるいは公務員法の世界で規律するのか、これはもう技術的な問題だろうと思うんです。公務員だからといって意見の表明は全部いいんだといって、では職務専念義務違反の行為もできるのか、あるいは信用失墜行為に当たる行為もできるのか、そこのところはいろいろと議論があるところだろうと思うんです。

 ですから、そこのところをしっかりと整理しながら、公務員法の世界において、国民投票に関する意見の表明だとかあるいは勧誘だとか、これはしっかりできるんですよ、しかしながら、ほかの公務の中立性に関する規制については公務員としてちゃんと守ってもらわなきゃいけないんですよということをその世界においてしっかりと整理していただく方が、国民投票法において単に適用除外とするというよりも丁寧な議論ができるだろう。その意味での検討でございまして、これは、この法律が施行されるまでの間に必要な措置を講ずるという、あくまで義務でございますから、何について検討を加えるというのは、今申し上げたとおりでございます。

柴山委員 続きまして、新聞の無料枠についてでございます。(発言する者あり)

中山委員長 静粛に願います。

柴山委員 民主党案についてでございますが、新聞の無料枠の規定、これを削除する修正を行ったということでございますけれども、これは一体どういう趣旨に基づくものであるのか、お伺いしたいと思います。

 それとともに、与党案においては、この民主党の削除修正を受けて、新聞の無料枠についてはどのように考えておられるのか、それぞれお伺いしたいと思います。

枝野委員 私どもは、発議をした国会として、国民の皆さんにその内容等について周知をする責任があると一方で思います。

 ただ、この間のこの委員会における議論の中で、なぜ国会つまり政党だけが公費を使って賛成だとか反対だとかアピールできるのか、発議をした側なんだから、むしろ発議を受けた側で賛成だとか反対だとかというところにこそ金を回すべきじゃないか、こういう指摘がたくさんありました。この両方の要請を満たさなければいけないだろうというふうに思います。

 そうした中で、いわゆる電波媒体については、ほかに手段がありませんので、放送局の電波を使って、無料CMと誤解をされていますが、正確に言うと政見放送類似の、それぞれの政党が主体となって賛成反対どういう理由でなのかということを国民の皆さんにお伝えする枠を、これはほかに代替手段がないのでやらざるを得ないだろう。

 ただ、紙媒体については、別途、広報協議会で選挙公報のような公報をつくることになっていて、これは賛否両方対等の枠で国民の皆さんに周知をするという仕事を公費を使って行うということがあります。それがあるにもかかわらず、それに加えて新聞の無料枠まで公費を使ってやるということになると、なぜ国会だけ、なぜ政党だけそんなにやれるんだ、むしろ発議を受けた国民の側こそが自由闊達に意見表明して運動すべきではないかという声になかなかこたえられないなというふうに思っています。

 実際に公報を配布する手段は一般的には新聞に折り込むということになるだろうと思いますので、折り込まれる方に公報があるんだから、新聞本体の方に何も広告を、わざわざ税金を使って買い取って、同じように政党に広告させる必要はないということであります。もちろん、政党を含めて、新聞広告等を自費で行うということについては全く自由でございます。

 以上です。

船田委員 今、民主党から御指摘をいただいた点でありますが、確かに活字メディアを使っての広報という点では広報協議会がつくる予定のパンフレットもございます。またその他さまざまな雑誌等がありまして、確かに活字の部分では一定の広報活動といいましょうかPRはできることとなっておりますが、それら私費で行うものについては、やはり賛否の平等という観点からすると、確かにばらつきがあると思います。したがって、活字メディアにおきましても、新聞の存在の大きさを考えた場合には、新聞をあえてなくすということまで踏み切ることはできないんじゃないか、私はこう考えております。

 また、テレビの無料枠もございます。テレビは確かに有効な媒体ではございますけれども、国民の感情に訴えるとか、あるいは刺激的な内容で報じてしまう危険性もなきにしもあらずということでございます。また、テレビやラジオなどは、一度見たものや聞いたものはその場で過ぎ去ってしまうわけでありまして、やはり活字という固定した媒体を見て、何回も読み直して確かめる、こういう国民の間での奥の深い議論に資することは新聞の役割としてはとても大きいものがあると考えておりますので、私どもとしては、新聞無料枠につきましてはやはり存置をして税金の範囲内でしっかりとこれを措置するべきである、こう考えております。

柴山委員 続きまして、今度はテレビ等の有料広告についてお伺いしたいと思います。

 民主党案はこの点で大変重要な修正がされております。投票日前のテレビ、ラジオにおける有料広告の禁止期間を発議後の全期間という修正をされた理由についてお伺いしたいと思います。一方、与党修正案提出者には、投票日前のテレビ、ラジオにおける有料広告禁止期間を一週間から二週間に延長する案を提出しているわけですけれども、この点について、民主党の修正案を受けて、どのように考えておられるでしょうか。それぞれお伺いしたいと思います。

枝野委員 表現行動についてですから、できるだけその規制は少ない方がいいというふうに我々も思っております。ただ、この委員会でるる議論されてきておりますとおり、テレビCMというのは非常に多額なお金がかかりまして、普通の人がかかわることはできない種類のものである、そして、かける金額の大きさによって圧倒的にその影響力に差が出るということになります。

 私は、賛成側、反対側どちらがお金をお持ちでどうこうというのはその発議の内容によって違いますから、それをあらかじめ予見を持ってする必要はないと思いますが、いずれにしろ、経済力によって差がつく。しかも、電波というのは一種の公共物でありまして、限られた電波は限られた人たちしか持っていない。紙媒体であれば、新聞、一般紙に広告を載せれば多額のお金がかかるかもしれませんが、テレビに比べれば大幅に金額は少ないですし、さらに言えば、同じような紙媒体でほかに安い手段でということがあります。ただ、電波は代替性がない、しかも大変大きな金がかかるということになります。

 たくさん金をかけて、たくさんCMをしたから、ではそれでその意見が多数になるという影響をどれぐらい与えるかというのは、これは検証のしようがないのでわかりません。しかしながら、結果的にたくさんCMが流れた方が多数であったなんていう結果が出たときに、それは金で買われた憲法じゃないかだなんてことになれば、でき上がった憲法に対する国民的信頼は非常に低いことになる、悪い影響を与えることになるというふうに思います。したがって、経済力の多寡によってCMの量に大きく差がつくということがないことが、でき上がった結果との関係で望ましいだろうと思います。

 では、賛否平等になるようにというようなことを何らかの規制ができるのかといえば、それは現実のテレビコマーシャルの売り方、買い方から考えると現実的に難しいだろうと思いますし、表現の自由に対する介入のあり方として、形式的にだめだというのと、実質に踏み込んでいいとか悪いとかというのでは、実質に踏み込んでいい悪いという方が介入としては大変強力な介入になって、できるだけ避けた方がいい。賛否平等にできるだけ近づけるようになんていう決め方をすると、それが賛成のCMなのか反対のCMなのかの内容に踏み込むことになりますから、そういう規制の仕方はできない。

 そうすると、全面的にテレビCM自体を禁止して、賛否どちらのサイドもテレビCMは使わない。ただ、賛否どちらも、少なくともテレビ媒体からは、国の政見放送類似のところではメッセージが発信される、あとは放送媒体以外の、どなたでも自由に参加できる媒体を通じて運動しましょう、これがやはりフェアなあり方じゃないか、こういうふうに考えて全面禁止ということに踏み切りました。

船田委員 私ども与党の原案では、七日間の禁止ということを決めました。

 これは、やはりテレビCMが、先ほど申し上げましたように場合によっては国民の感情に訴えるとか影響力が非常に大きいということが挙げられました。また、一度テレビCMにおきまして誹謗中傷などがもしあった場合に、それを打ち消すような、つまり言論に対しては言論で対処していく言論の自由市場というものがきちんと機能すればそれはそれでいいのかもしれませんが、やはり投票日数日前にこれをやられた場合に、反論するだけの時間も与えられなければこれは大変なことになる、こういったことを考えましてまず七日間の禁止を考えたわけであります。

 しかしながら、さらにこの委員会でのさまざまな議論の中で、非常にその影響力が大きいということも明らかになってまいりました。また一方で、これは今枝野委員が話をされましたように、財政力の差によってテレビCMをいっぱい流せる政党とそうでない政党あるいは団体、こういった金銭的な差による賛否のアンバランスも当然出てきてしまうということで、これを十四日間禁止ということとしたわけでございます。

 しかし、民主党がおっしゃるように全期間禁止ということになりますと、少し行き過ぎではないのかなということを考えました。確かに、一方では広告主という立場もございます。その表現の自由も考えますと、全期間禁止はちょっと行き過ぎているな、こういうことも考えまして、両方のバランスをとりまして十四日間というのが妥当ではないか、このように考えて修正をさせていただいたということでございます。

柴山委員 民主党案提出者に今の点でちょっとお伺いしたいんですけれども、今、国民投票法案に対する国民の周知が必ずしも十分ではないというように言われておりますけれども、民主党修正案提出者は、有料CMでなくて評論番組あるいは報道番組等で周知行為は十分行われるというような御認識でしょうか。

枝野委員 国民投票が行われますよということ自体は、その広報は別途あり得るんだというふうに思いますし、それをテレビコマーシャルに使ったりして行うことについてはこの法律で別に禁止をされていない。つまり、それは選挙管理委員会的な形で、投票がありますよ、こういう周知はもし必要があればきちっとやった方がいいんだろうと思います。でも、憲法改正の発議がされて投票がありますよということ自体は、それなりにきちっと周知をされるんだろうというふうに思います。

 その上で、賛否それぞれの内容についてはということであれば、そもそもが十五秒とか三十秒のテレビCMで内容について国民の皆さんに理解を求めようという発想自体がやはりちょっと現実的ではないんだろうなと。印象、イメージを伝えて、賛成を募る、反対を募るということにやはりならざるを得ない。

 そういう意味では、政見放送類似のかなりまとまった時間を賛否それぞれからきちっと流すとか、あるいは紙媒体でじっくり読んでいただくとか、それこそ御指摘のあったような、いわゆる番組の中で、放送局が中立な立場で賛否両論についての意見を国民に伝えることを通じて、内容についてはきちっと伝わるというふうに思っています。

柴山委員 最後に、両案について、最も隔たりが大きいと思われる国民投票の対象について質問をさせていただきたいと思います。

 今回、民主党案においては国政における重要な問題に係る案件について国民の賛否を問う一般的国民投票制度の対象を限定する修正を行われたわけですけれども、その趣旨はどのようなものなのでしょうか。そして、この点を与党修正案提出者はどのように評価をされているのか。それぞれについてお伺いしたいと思います。

枝野委員 当初の案でも、具体的な法律案を国民の皆さんに賛成ですか反対ですかというようなことは、少なくとも憲法四十一条の趣旨に照らして望ましいことではないというふうに考えております。もちろん、法的には拘束力がないということでありますから憲法四十一条に反しないと思いますが。

 我々も想定をしている国政問題、重要問題というのは、具体的な法律案について賛成か反対か国民に問うということではなくて、例えば、脳死のときには中山先生と私と違う案のそれぞれ提出者でありましたが、それについて国民の意見を問うとかということではなくて、脳死を人の死と認めることについてどう思いますかというような、つまり憲法四十一条に反しない、その前提となる重要な問題についての国民の意見を問う、そういうことをもともと当初から意図している法律のつもりでおりましたが、この委員会での議論を踏まえて、どうも誤解をされる、あるいは少なくともそこのところがあいまいであるという認識を深めましたので、今のような、つまり具体的な法律案について聞くわけじゃありませんよと。

 あるいは、憲法四十一条との兼ね合いで国民投票に付することが普通は望ましくない、間接民主制の趣旨からして望ましくない案件もたくさんある。というか、これは最終的にはポジティブリストで書いた方がいいんだろう、これをやっちゃだめということではなくて、これについてやりなさいと。ネガティブリストなのかポジティブリストなのかはこれから決めてもいいと思うんですが。

 いずれにしても、何らかの形で、今のように、具体的な法律案を聞くわけではないですよ、あるいは事柄の性質上、国民投票に付すのは適切ではないものがありますよねというようなことを、きちっと基本的なルールを決めた上で国会として整理をしなきゃならないということは当初から考えておりました。

 ただ、そのことについてきちっと明示的に書いた方が、何でもかんでもかかるのかみたいな不安を与えないということになると思いましたので、今のような趣旨のことを法文上明確にしたということであります。

葉梨委員 先に与党案について簡単に説明してからコメントをさせていただきたいと思います。

 与党で法律を出すわけですけれども、もちろん、国民の中には今自衛隊が違憲であるというような意見もあることは承知しておりますけれども、我々としては、憲法に反する疑いが非常に強いようなものを法律として書くことはなかなかできないだろうと思うんです。

 現行憲法においては、間接民主制というのをベースにして、そして直接民主制については限定列挙という形をとっております。諮問的な国民投票といったところで、やはり相当な拘束力を持ってくるとなれば、それはどうしても直接民主制の導入ということで、公述人からもさきにお話がございましたけれども、憲法改正も必要になるんじゃないかという議論もあろうかと思います。

 しかし、憲法調査会あるいは憲法調査特別委員会を通じて、やはり一般的な国民投票あるいは予備的な憲法改正に関する国民投票についての必要性もるる各委員あるいは各参考人、各公述人からもお話があったわけです。

 そこで、そこのぎりぎりのところということで、与党案においては、憲法改正を要する問題及び憲法改正の対象となり得る問題について、これはまあ九十六条の外延という形で位置づけられようと思いますけれども、国民投票制度に関し、その意義及び必要性の有無について、日本国憲法の採用する間接民主制との整合性の確保その他の観点から検討を加え、必要な措置を講ずるものとすると。

 先ほどの公務員の政治的行為と違いまして、意義及び必要性の有無というような形で憲法との整合性を持っているわけですけれども、ただ、こう書いておけば、憲法審査会の中で憲法上一般的な国民投票の位置づけが一体どうなるんだというような議論は当然なされるというふうに、私は事実上の話としては思っております。

 民主党案について申し上げますと、非常に限定した形で条項を絞っていただいたということと、非常に大きな点というのは、間接民主制との整合性について民主党が明記していただいたということはやはり前進だと思いますし、議論のベースというのは相当近づいてきているというふうに私自身は感じております。そんなに大きな違いということはないと思います。

柴山委員 今の葉梨先生のおっしゃったことと私も全く同感でして、両案の実質的な差異というものは、少なくとも認識のレベルではなくなってきていると思います。(発言する者あり)

中山委員長 静粛に願います。

柴山委員 きょう、これをもって質疑を終わりますけれども、与党案、民主党案、今お伺いしたところ、広告規制については若干の差異はありますけれども、それ以外の部分については、少なくとも基本的な認識、ポリシーに関しては内容がほとんど一致しているというように思われます。

 この点について、最後、民主党修正案提出者に認識を再度お伺いするとともに、国民主権原理を実効化させるための大変重要な法案、また七割の国民が整備に賛成しているこの法案をくれぐれも政局に絡めることがないようにすべての会派に要望いたしまして、私の最後の発言とさせていただきます。

枝野委員 私、この間の報道も皆さんの御議論もちょっとよくわからないところがあるんですが、与党の皆さんはほとんど違いがないとおっしゃっているのであるならば、民主党案に御賛成いただければ円満にすべてが解決するんです。ここがよくわからなくて、早く採決をしろと言っているのは与党の皆さんで、我々は、もっともっと議論をすればもっともっと詰まるかもしれない、なおかつ違いがあると申し上げている。そちらは、違いがないとおっしゃっているんだったら、なぜ民主党案に賛成できないのか、それがさっぱりわからない。

 しかも、先ほどの話のとおり、違いの大きな点は、三年以内にちゃんとやるかどうかという違いです。しかも、今の国会の状況を考えれば、これから三年間は皆さんの方が多数で、法律をつくるということについての圧倒的な決定権を持っていらっしゃるわけです。私ども三年間につくるという決定権を持っていない側が、その三年間でちゃんとやってもらわなきゃいけないことについてちゃんと法律上担保をとらざるを得ないということは当然のことだと思うんですね。ですから、この違いについては、三年以内にちゃんとやるということであるならば、我々の側に乗っていただくのが、今現に、それから今後三年間、国会で多数を持っている可能性の高い皆さんの当然の責任であろうというふうに申し上げたいと思います。

中山委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 公明党の石井啓一です。

 両案の修正案について質問させていただきますが、差が大分少なくなってきておりますので、質問の論点が相当重なりますことを御承知おきいただきたいと思います。

 まず、国民投票の対象でございますけれども、民主党の修正案ではまだ広範囲な一般的な国民投票を対象とし得るということでありますけれども、諮問的国民投票とはいえ、実質的に立法作業を拘束するような影響を及ぼし得るということから、現行憲法を改正した上でないと実施できないのではないかという指摘がございますが、それぞれ、与党、民主党に御見解を伺いたいと思います。

枝野委員 もし拘束力を持った国民投票制度を導入するとしたら、これは当然憲法を改正しなければいけないだろうというふうに思います。憲法に違反しないとしても、憲法四十一条の趣旨を踏まえた立法を我々はしなければいけないだろうというふうには思っております。

 したがいまして、何でもかんでも国民投票に付していいわけではないということは当初から考えておりましたが、そのことをきちっと明記して、ポジティブリストであれネガティブリストであれ、こういうことについてやるんですよと。しかも、それは、具体的な法律案の賛否を問うという、まさに四十一条と直接一体不可分のことについてはやらないという趣旨でございまして、我々が立法作業を進めるに当たって前提として認識をしたい国民の皆さんの意思、先ほどの臓器移植法の前提となる脳死の有無をどう考えるか、脳死は人の死と考えるかどうかとか、そういうことについて問うということでありますので、そういうことであるならば憲法四十一条の趣旨には全く触れないというふうに思っておりますし、むしろ憲法の国民主権原理にかなったものであるというふうに思っております。

葉梨委員 先ほど御答弁したこととも多少ダブりますけれども、石井委員も参加されました憲法調査特別委員会の小委員会において、慶応大学の小林先生のお話というのは大変参考になるだろうというふうに思います。今の憲法というのは、直接民主制については限定的に列挙して書いている、間接民主制を、まあ、諮問的国民投票とはいえ、やはり間接民主制に影響を及ぼすことになるだろう。そうすると、憲法で許される範囲で書けるというか法律でも書けるとすれば、まず憲法改正に関することだろうし、あるいは、それ以外のことというのは憲法改正自体が必要になるんじゃなかろうかというような意見を小林先生が言われたということを石井先生もその場で御記憶になっているかと思います。

 したがいまして、ただし、我々は国会ですから、先ほど申し上げましたように、議論というのは、どんどん、いいものであったらしっかりしていかなきゃいけない。それが本当に憲法改正を要するものなのか要しないものなのかということについても、やはりこれから議論を進めていかなければならないものだと思います。ですから、我々の与党案の法律において、憲法改正にかかわる事項、憲法問題にかかわる事項ということで法律に書いた。そして、その外延について議論を進めていくというのは、九十六条を施行するための法律であるこの国民投票法の範囲においては、マンデートの中では、私はぎりぎりのところじゃないかなというような感じを持っております。

石井(啓)委員 それでは、民主党修正案の国民投票の対象でございますけれども、統治機構に関する問題と生命倫理に関する問題、この二つを特出しして規定をしている理由を確認させていただきたいと思います。

 もう一つは、「その他の国民投票の対象とするにふさわしい問題として別に法律で定める問題」というのは、これはどういう問題を想定されているのか、この点についても確認をさせていただきたいと思います。

枝野委員 この条文の読み方といたしましては、「その他の国民投票の対象とするにふさわしい問題として別に法律で定める問題」ですので、例示列挙でございまして、意味があるのは、「国民投票の対象とするにふさわしい問題として別に法律で定める問題」というのが法的意味を持つ文言であって、それ以外は例示列挙であります。したがって、それぞれについて検討した結果、それぞれ例示したものの中に国民投票の対象とするにふさわしい問題がないというケースもあり得るという例示列挙であるということをまず御認識ください。

 その上で、当然のことながら、憲法改正を要する問題等については、多分ふさわしい問題が含まれるだろうと思いますし、少なくとも現時点での我々の議論としては、例えば統治機構に関する問題としては、もし将来、皇位継承順位について変更するような必要性が国民の多数の意見になった場合において、これは、日本はたまたま皇室典範が法律形式になっていますが、多くの君主制の国では皇位継承順位、王位継承順位というのは実は憲法典の事項であります。これを憲法改正を要する事項と読んで読めないことはないかもしれませんが、統治機構に関する問題に含まれるだろうな。もしこれが将来こういうことであるとすれば、たまたま憲法典にないだけであるんだから、実質的意味の憲法なんだから、これはやはり憲法に準じて国民投票をした方がいいんではないか。それから、全国民統合の象徴であるということを考えると、みんなで決めたということでないと、どういう決め方をするにしても将来の統合力が弱くなるおそれがあるというふうに考えますので、そこでまず皇位継承順位についてが一つあります。

 それから、生命倫理に関する件ということで申し上げましたのは、先ほど言った臓器移植法の前提となる脳死の問題というのは、これは政党、党派の違いとかいう問題とはちょっと違った問題意識とかの中で脳死を人の死と考えるかどうかということが出てくる問題だと思いますので、この手の問題というのはやはり国民投票に付して、それに基づいて、では臓器移植はどうやって進めたらいいのかということを検討するというのは、せんないことですが、こういう制度があればそれができたのになと思っておりまして、今後もこの手のものはそういったことの対象になり得るというふうに考えております。

 「その他の」の中にどういうものが入るのかというのは、まさにそれを三年間議論しましょうよと。皆さんからも御意見を、お互いに議論しながらそこで決めていけばいいということだと思います。

石井(啓)委員 それでは、今度は与党修正案の方を伺います。

 与党修正案では、憲法改正問題についての一般的国民投票については、その必要性の有無についても検討するというふうにされていますけれども、提案者はこの必要性の有無についてはどういうふうに御認識されているのか、伺いたいと思います。

赤松(正)委員 一般的国民投票といった場合、先ほど来枝野委員からも御指摘がありましたが、例えば生命倫理に関するようなこと、こういう問題について限定的に挙げれば、私個人としましては、一般的な国民投票の対象にしてもいいのではないかというふうな感じは持っておりますが、今回の、今議論になっております憲法改正の手続に関する法律案という観点からいけば、やはり、より憲法改正の手続そのものに関するものに限定した方がいいだろう、そんなふうに思っております。

 そういう観点で、過去においても、細かいことは今後憲法審査会における議論の対象になるわけですけれども、憲法改正のための、何をその対象とすべきかという、周辺にあるテーマ、国民の意図を探る、そういう予備的な国民投票というふうなものは必要ではないのか、そんなふうに考えているところでございます。

石井(啓)委員 それでは、続いて、投票権者の年齢について伺いたいと思います。

 まず、与党修正案の方でございます。与党修正案の附則の第三条第一項では、この法律が施行するまでの間に公選法あるいは民法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとするというふうにされていますけれども、この法施行までの三年間で法制上の措置を講ずることが十分に可能なのかどうかということが一点。また、この「法制上の措置を講ずる」というのは、法律を公布することなのか、あるいは施行までを指すのか、この点について確認をしておきたいと思います。

船田委員 先ほども御答弁申し上げたところでございますが、我々は、関連法令の整備、とりわけ公選法、民法、これをきちんと整備することがどうしても必要であるということで例示をさせていただいたわけでございます。

 特に、公選法につきましては、現在二十でございますので、国民投票法案で定められた投票年齢十八というものにできるだけ早くそろえなければいけない。その措置についても、この附則の中できちんと書かせていただきました。

 もちろん、このことについて、そうでないのではないかという御意見もあろうかと思いますが、私たちは、我が党の中でも、また公明党さんの中でも議論していただいたと思いますけれども、与党の立場として、ここまで明記をさせていただいている限りは、当然、この三年の間に必要な法的措置を講じるということについては、これは義務を負ったというふうに我々は認識をしております。したがって、このことについては、提案者である私のみならず、公党としての約束としてこれは必ず実行させていただきたい、このように考えております。

 なお、御質問の中にございました法整備ということはどこまでを指すのかということでありますが、これは公選法あるいは民法の規定にしても、いずれも公布ということを考えております。

 しかし、例えば公選法の場合には、仮に本法施行までの三年間の間のぎりぎりのところで公選法が公布となったとしても、これまでの例からして、おおむね半年間の周知期間があれば、公選法の場合には対応が可能であるということでございます。

 したがって、三年後のぎりぎりのところで公選法が十八歳で公布をされたとしても、それが施行される半年の間に憲法改正の原案が決まりまして、そして、国民投票を行うまでの期間を考えますと、実際に国民投票を行う前に十八歳の公選法の規定が施行される可能性は極めて強いと思っておりますので、実効上の問題はないと思っております。

石井(啓)委員 続いて、与党の修正案を確認いたします。

 附則の第三条第二項では、第一項の法制上の措置が講ぜられ、年齢満十八年以上満二十年未満の者が国政選挙に参加すること等ができるまでの間、投票権者の年齢は満二十歳以上とするとしていますけれども、この「国政選挙に参加すること等ができるまで」の、この「等」というのが何を含めていらっしゃるのか。すなわち、公選法の年齢以外にどの法律の年齢を引き下げることが国民投票の十八歳投票権を可能にするという条件なのか、この点について確認をしておきたいと思います。

葉梨委員 お答えをいたします。

 ここは、第三条の一項にございますけれども、公選法の年齢だけではなくて、「成年年齢を定める民法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずる」、そこのところがこの「等」という形でなっておるわけです。

 ですから、国政選挙に参加できる、あるいは成年年齢、あるいは関係法令ができるまでの間はというような意味でございます。

石井(啓)委員 そうすると、第一項の方では「公職選挙法、成年年齢を定める民法その他の法令」というふうにされておりますけれども、その他の法令も含めてすべて法制上の措置を講じて初めて国民投票の十八歳投票権は可能になるということでございましょうか。

葉梨委員 実務上の話として申し上げますと、今、船田委員からも御説明がございましたように、この三年間の間で、どのような法令について検討を加えて、どれが必要だということを最初に整理することになると思います。

 ですから、あれも必要な可能性もある、これも必要な可能性もあるという状態が三年後まで行われるとは思いませんし、三年間の間に、そういうような法律をちゃんとフィックスして、確定して、民法、公選法、そしてこの法律、この法律、この法律、これについては与党として責任を持って必要な法制上の措置を講ずるということですから、実際上はそれほど問題にはならないと思います。

石井(啓)委員 それでは、民主党の修正案、年齢のところを確認しますけれども、民主党の修正案では法施行までの間に公選法の年齢や民法の成人年齢を十八歳までに引き下げるよう法制上の措置を講ずるものとしておりますけれども、仮にそうならなかったとしても、国民投票の投票権者の年齢は十八歳でできるということかと思いますが、公選法や民法の成人年齢と合致しなくても構わないというふうにされた理由を確認しておきたいと思います。

 また、構わないというふうにすると、何かかえって公選法の年齢引き下げが進まなくなる懸念があるのではないかというふうに思いますけれども、どうでしょうか。

枝野委員 我々は構わないとは思っておりません。法律上の義務として、「国は、」とされているわけですから、三年以内に法整備をすることになるというふうに思っております。

 ただ、それがそろうまでの間は二十とするという規定を置く意味が全くわからない。三年以内に整備をすれば済むだけの話であって、三年以内に整備をしないという可能性を考慮しない限りはそんな規定は要らない、だから置いていない。

 それで、万々々が一の限界事例として、先ほど公職選挙法の公布と施行の話が与党側提案者からありましたが、法律改正と公布は三年以内にぎりぎりできたとしても、施行がそこから少しおくれる。したがって、半年とか一年とか、公職選挙法なら一年以上かかることはないかもしれませんが、今我々が見落としているかもしれない関連法令の中には、法改正から施行まで数年かかるものが万が一にもあるかもしれない。その可能性は否定をいたしません。

 もしどうしても、そういう場合で、なおかつ、投票権年齢十八歳とずれることが見過ごし得ないずれであるという場合には、それでも法改正は三年以内に行われるんです、その三年以内に行われる法改正の附則で、国民投票法附則三条にかかわらず本法施行までの間は二十とするという規定をその時点で置けばいい。

 なぜならば、その時点で法律改正が行われるんですから、立法行為が行われるんですから、もし法律の整備は間に合うけれども施行が間に合わないというときは、その法律の附則で経過措置二十というのを、私は必要ないと思いますが、どうしても必要な事態が生ずればそうすればいいので、今の時点で法整備はするけれども施行が間に合わないということを準備しておかなくても、ずれるという事態は生じない。これは法論理的に明確だと思っています。

石井(啓)委員 今、投票権者の年齢については、与党の方もこれは三年の間にやるというふうに義務として認識しているということでございますし、与党修正案と民主党修正案は、一枚の紙の表裏ぐらいの差しかないんじゃないかなというふうな感じが私はいたしました。

 それから、有料広告でございますけれども、通告はしておりませんでしたが、先ほど新聞の無料広告枠をなくしたということで、これに対する理由として、民主党の提案者の方からは、国民投票公報で十分カバーできるのではないかということで、新聞折り込みをやれば、それを読んでいただければ、新聞に無料広告を出さなくてもいいのではないか、十分代替できるのではないか、こういうお話でしたけれども、これは私だけかもしれませんけれども、折り込みと新聞に対する態度というのは相当違うんじゃないかと思うんですよね。折り込みは、たくさんの折り込みがあって、ほとんど見ないうちに捨ててしまうケースが間々ございますので、私は、折り込み、国民投票公報だけでなくて、やはり新聞における無料広報も実施をして国民の皆さんに丁寧に周知徹底をした方が、より国民に対してサービスになるのではないかというふうに思います。

 特に、与党修正案では、新聞における無料広告というのは、賛成、反対を公平かつ平等に扱うということになっておりますから、新聞による無料広報で資力による差が生じるというようなこともありませんし、賛否の議席数の差が出るということもありませんから、それは政党だけが何で無料広報ができるかという声はあるかもしれませんけれども、賛否を平等に扱うということで国民に対して丁寧に周知広報するという意味では意義があるんじゃないかと私は思うんですね。その点、民主党さんと与党さん、両方にちょっと伺いたいと思うんです。

枝野委員 折り込みだったら見ないで捨てちゃうというケースもたくさんあるでしょうが、逆に言うと、新聞の場合も、どこの面に掲載されるかとか、あるいは、我々は仕事柄政治面は隅々まで読んでいるかもしれないけれども、読んでいないページもたくさんあって、人によって全然違うわけです。我々も政党の広告とか選挙のときとか出しますけれども、あんな内側の面に一面広告をやってだれが読むんだろうなと時々思ったりしますが、ということは、余り変わらないんじゃないかなと思います。

 それから、さらに言うと、公報は新聞に折り込むことを含めて、例えば役所に置いておくとかいろいろなところに置いておくとか、いろいろな配り方を自由にできるわけですが、新聞広告というのは、要するに新聞をとっていない人たちも最近たくさんふえているわけで、その人たちのところには行かないということにもなるわけでして、見たいけれども折り込みで忘れて捨てちゃったという人は、これは役所を含めていろいろなところに置いておいて、欲しいときには自由にとれるようにしておけばいいということになるんだろうというふうに思っています。

 我々は、一般の国民の皆さんとの関係で、何で政党だけただなのという話に対して、それは、例えば国会において発議に対して賛成、反対の意見が分かれて、それぞれの理由で賛成したり反対したりすることになるんでしょうが、そこで、国会で出てきた反対意見とは違う理由で反対をする市民運動の皆さんとか、国会で出てきた賛成理由とは違う理由で賛成をする市民運動の皆さんとか、いろいろなケースがあり得るわけで、もちろん、発議をした国会としての周知広報の責任を果たす、だけれども、できるだけ国会みずからが公費を使ってということは少なくして、自由闊達にそれぞれ皆さんがやってくださいということで、新聞広告についてはそれぞれが自費で、政党も市民団体も個人も自由にやっていただくということでいいのではないか、そういうふうに思っています。

船田委員 先ほども御答弁いたしましたが、活字メディアを使っての広報という点では、確かに広報協議会がつくるであろうパンフレットもあるでしょう、また、折り込みのような広告もあると思いますけれども、やはり新聞の紙面の中に書いてあるものというものは一定の権威もありますし、また公平性ということもあります。さらに、無料枠は賛否同等に扱うもの、こういう規定もございますので、国民の皆さんが自分の意見を固めるためにも、あるいは確かめるためにも、やはり新聞という権威ある活字媒体を使って無料広告するというのは、国民運動を公正公平に行うためにも大変意義のあることであり、それに税金を使うということは十分許される議論であると私は思っております。

石井(啓)委員 それでは、テレビ、ラジオの有料広告規制でございますけれども、大変影響力が大きい一方で、費用がかかるということから資金量によって差が出る、金で憲法改正が買えるということで今回の法案に対する非常に強い反対意見の一つになっておりますけれども、一方で表現の自由の規制に当たるから規制はなくすべきだという全く正反対の意見もございますね。両案提出者はこれについてどうバランスをとって御判断をされたのか、伺いたいと思います。

船田委員 私どもも、テレビ、ラジオの影響力の大きさというのは重々承知をいたしております。そういうことにおいて資金量とかいろいろなことによって広告の量に差が出るということがある場合には、これはなかなか厳しいなと思っております。

 また、先ほど言いましたように、どうしても、電波、特にテレビのCMということになると、内容のいかんを問わず、やはり国民の感情に訴えるとか、そういったものも出るおそれがある。こういうことを考えた場合には、原案では投票日前七日間の禁止をいたしましたが、やはり十四日間の禁止ということにするべきではないか、このように考えたわけであります。

 また一方で、民主党案の中では全面禁止ということになりますけれども、それは、私ども、一時考えなくはなかったのでありますけれども、そこまでいきますと、やはり表現の自由という問題に影響を与えることは避けられないことでありまして、まさに両方のバランスをしっかりととるのであれば、二週間、十四日間というのは最も妥当な禁止期間ではないか、このように考えた次第でございます。

枝野委員 御承知のとおり、表現の自由に対する規制で許されないのは、内容に立ち入っての規制、こういう内容だからやってはいけませんという、表現内容に立ち入った規制というのは許されるものではない。あったとしても、必要最小限度でなければならないということになります。

 ただ、例えばこういう場所ででもやっちゃいけませんとか、こういう時間帯に大きな声でスピーカーで演説をしちゃいけませんとか、表現内容に一切かかわることなく、場所というのはプレースということではなくて、時間なども含めてこの場においてはこういう形態の表現行動をしちゃいけませんという、内容に立ち入らない表現行動に対する規制というのは、緩やかに解される、広くと言うと言い過ぎですけれども、表現内容に対する規制に比べれば相対的に広く規制が許されるというふうに思っておりまして、これが最高裁の判例だとも思っております。

 そうした見地から考えた場合に、放送媒体というものを通じて、しかも、お金を払ってその広告媒体を買うという表現行動を内容いかんにかかわらず全部禁止するということは、内容に立ち入っていないということで許される範囲である。

 そして、それによって生じる弊害、つまり、もし許した場合に生じる弊害、つまり、資金量の多寡によって賛成または反対どちらか一方だけが圧倒的に影響力を持ってCMを行う、その結果、出た投票結果が国民的信頼を失う。つまり、あんなにコマーシャルを使ったんだから賛成が多くてもしようがないよねとか、あんなにコマーシャルを使ったんだから反対が多くて仕方がないよねということになれば、その憲法改正という、ある意味では国民生活のベースになる法規範の正統性に対する信頼が揺らぐ。これはやはり許されない。つまり、弊害は非常に大きいというふうに思いますので、こうした内容に立ち入らない規制であるならば、やむを得ない、規制として許されるというふうに思っております。

石井(啓)委員 それでは、時間的に最後の質問になるかと思いますが、最低投票率について確認をしておきたいと思います。

 これまでの質疑の中で、提出者の方は、最低投票率の設定については、ボイコット運動を招く可能性がある、国民の関心の低い分野での改正が発議されることがあり得ること、あるいは憲法九十六条の憲法改正の要件にさらにプラスアルファするのはいかがなものか、こういうことから否定をされておりますけれども、最低投票率を設定しないことが法案の最大の欠陥であるというような意見もあります。きのう、テレビのニュースを見ていたら、そこを取り上げているようなこともございましたので。

 そこで、最低投票率を設定しない理由をより丁寧に御説明していただきたいと思います。

葉梨委員 従来お答えしてきたことを多少丁寧に整理して御説明申し上げたいというふうに思います。

 まず、国民投票の結果が主権者たる国民の意思をできる限り正確に反映したものにすることは必要です。投票率が低いことはやはり望ましいことではないと考えています。

 ただ、御指摘のように、最低投票率制度を設けると、投票をボイコットさせる運動を誘発しかねないということがございます。これですと、国民投票の結果が国民の意思を正確に反映するものとならないおそれもないではないわけです。さらに、憲法九十六条が最低投票率について何ら定めていないということになりますと、九十六条が規定する以上の加重要件として最低投票率制度を設けることは憲法上も疑義があるということについては、せんだっての南部公述人からのお話でもそういう御意見が非常に強いということは御理解願えるだろうと思います。

 ですから、低い投票率に対する懸念は、むしろ投票率を上げるための国民に対する周知広報、国民投票運動のあり方でもって私どもは対処すべきだと考えています。これについて最低投票率制度のようなもので対処するのは、ちょっと適当ではないのかなというふうに思います。

 本委員会において、先ほど南部公述人のお話も申し上げましたけれども、参考人としてお呼びして、また、先般の大阪地方公聴会においても意見陳述者として御意見を伺ったジャーナリストの今井一氏も、具体的に徳島や岩国の住民投票におけるボイコット運動の事例を引き合いに出して、最低投票率制度を設けるべきではないと主張されていたところでございます。これは実体験に基づく意見でございますので、やはり我々は重く受けとめるべきだというふうに考えております。

枝野委員 私は、我が国の憲法の読み方と同時に、比較外国憲法の見地からも、最低投票率とか、あるいは総有権者の何%という最低得票率とかという規定は、我々の把握している限りでは、いずれも、あるところは全部憲法典に規定があるということでありますので、我が国の憲法が最低投票率とか最低得票率を想定しているとすれば、やはり憲法典に書いていたであろうと読むのが正しい。したがって、もしやるのであれば、憲法を改正して今のような規定を織り込むということでないと、私は憲法違反になるというふうに思っております。

 その上で、なおかつ実務的な理由として、今の点のほかに二つ。

 一つは、最低投票率でボイコット運動が生じた場合の投票結果の数字というのが、非常にわけのわからない数字になるわけですね。つまり、ぎりぎり成立をした場合には、一方が九九%ぐらいの票があるわけですよ、そうするとそれは九九%の人が賛成した憲法改正なのかという記録になるわけですよね。これはやはり民意と違いますよね。ボイコットした人の中に、まさにボイコットした人は、反対だからボイコットした人と、まさに棄権してボイコットした人とがいるわけだから。では、反対はどれぐらいいたんだろうなということが全く残らないというのは、これはどちらにとってもよくないことだろうというふうに思います。実際的に悪いことだと思うんです。

 そして最後に、これは実務的には最大だと思っていますが、私は一貫して繰り返し申し上げていますが、みんな、憲法というと九条ばかり頭に描いている。九条というのは憲法の中の百幾つ分の一にすぎないわけであって、ほかにもたくさんの規定があって、その中には国民的な関心を持ってくださいということ自体がそもそも原始的に困難な問題がたくさんある。こういう規定はもう変えないということなのか。どんなに実態とずれて変える必要が生じたとしても、最低投票率制度があるから変えないんだと。変えないで解釈改憲するのか、それとも実態とずれても仕方がないということにするのか。最低投票率とかという制度を設けるということは、関心を持ち得ることを期待すること自体が困難な例えば裁判官の給与の規定とか、こういう形式的、手続的な規定はどうするのかという問題に最低投票率を訴える論者の方は何も答えていない、私はそういうふうに思っています。

石井(啓)委員 きょうの審議でも確認させていただきましたけれども、両修正案の中身はこれまでの審議を踏まえてより練れたものになっていると思いますし、その差も大分縮まっていると思います。両案の提出者の御労苦に敬意を表しまして、私の質問を終わります。

中山委員長 午後三時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時八分開議

中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。

 理事枝野幸男君及び園田康博君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事補欠選任の件につきお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴い、現在理事が二名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長において指名することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に

      岡本 充功君 及び 平岡 秀夫君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

中山委員長 ただいま議題となっております両法律案及び両修正案の質疑を続行いたします。古川元久君。

古川(元)委員 質問に先立ちまして、憲法調査会の時代から現在のこの特別委員会まで、中山委員長のもと、与野党の理事、オブザーバーの皆さんが中心となって、憲法に対する立場の違いを超えて、憲法に関する議論及び国民投票法に関する議論がこれまで精力的かつ真摯に行われてきました。こうした議論を可能としました、これまで尽力されてきた中山委員長には心より敬意を表しておったわけでございますが、さきの中央公聴会の設定といい、また職権で委員会立てをするきょうの行為といい、こうした委員会運営のあり方はこれまでの与野党間の信頼関係をすべて台なしにするものでありまして、まずは強く抗議申し上げたいと思います。その上で質問に移りたいと思います。

 午前中の議論の中で、与党案の提出者やあるいは与党の質問者から、私ども民主党が提案をいたしました修正案に対して、ほとんど違いはないとか、あるいは一枚の紙の裏表の違いでしかないというような御発言がございました。私たち民主党の修正案は、この委員会での議論、参考人や公述人からの意見を踏まえ、それを最も忠実に反映したものとして提案をいたしました。

 そう言われるのであれば、私どもの民主党案を受け入れられないことはないはずであります。どうして私ども民主党案をそのまま受け入れることができないのか、与党の提案者に一つずつお伺いをしていきたいと思っております。

 まず、国民投票の対象につきまして、私ども民主党は、ここまでのこの委員会での議論も踏まえ、最初の民主党原案で提案をしておりました国政重要問題に関する一般的国民投票の範囲をより明確化する形で今回の修正案を提案いたしました。その中には、公明党の方からも提案がこの審議でもありました、憲法改正に当たって予備的国民投票を行うべきだ、そういう意見にも沿うものではないかというふうに考えているわけであります。

 そう考えますと、午前中の議論を聞いていても、この私どもの案が与党に受け入れられないはずがないと思うわけであります。この点について、与党の提案者、自民党そして公明党、お二人の提案者から、これが受け入れられない理由をお聞かせいただきたいと思います。

葉梨委員 お答えいたします。

 午前中の議論でも私答弁をさせていただきましたけれども、基本的にこの委員会におけるマンデートの中でどこまで法律に書けるかという問題は当然出てくるわけです。午前中も申し上げましたけれども、与党の方からもあるいは参考人の方からも憲法を改正しなければいけないことじゃないですかというような疑問が相当提起されている問題について、法律案として、与党案として法律に書いていくことはなかなか困難ではないかというような感じを実は持っております。

 そこで、午前中も答弁をさせていただきましたけれども、憲法改正の国民投票手続については九十六条で明確に書いてある。これについては本則です。そして、九十六条の外延部分については、憲法改正にかかわる問題については意義や必要性の有無を検討していきましょうということを附則に書いた。やはり法律に書けるぎりぎりのところを書いた。

 そこで、午前中も与党案と民主党案にそれほど違いはないということを私は申し上げたんですけれども、実態として、思いとして、やはり民主党においても一般的国民投票についてすぐに制度設計ができるわけではなくて、それぞれが憲法改正を要する事項であるのか否か、一般的国民投票が憲法改正を要するか否か、しっかり検討していかなきゃいけないわけですよね。

 附則の中に憲法改正にかかわる問題について検討するというふうに書けば、それはもちろん憲法審査会の中においても、外延の問題について憲法の改正が必要なのか否かという議論は当然行われるでしょうし、憲法改正が必要なくて、そういったものが必要だということになれば、またそれぞれ前向きに検討されるということになるわけですから、実態としてはそれほど変わるものではない。ただ、どこまで法律に書けるのかどうかという一点じゃないかというふうに思っております。

赤松(正)委員 基本的には今自民党の提出者から述べられたこととそう大きくは変わらないんですけれども、一般的国民投票の制度設計というものを今回の憲法改正手続に関する法律案の中の法律本体に入れるということについては、やはり相当に憲法改正そのものを必要とする事項ではないかということで検討を要するだろうな、こんなふうな判断をずっと持ち続けております。

 朝も申し上げましたけれども、憲法改正の対象とすべき国民投票のテーマとして何を選ぶのかといった場合に、あらかじめ予備的な国民投票というスタイルで国民の皆さんの意思がどこにあるのかということを検討する、要するに、すぐ周辺にあるものとしてのテーマを設定するという国民投票については十分検討されるべきではないかと思っておりまして、そのくだりは附則に入れるということでいいんじゃないか、そんなふうな考えを持っております。

 この問題に関しましては、やはり全体の中で民主党の皆さんの案と与党の案とで一番違いの多いところだろうな、そんな感じがいたしております。

古川(元)委員 提案者の赤松委員にお伺いしたいと思うんですが、なぜ民主党案がこれでは受け入れられないんですか。今のは、まあ検討してもいいという。ですから、これは赤松委員がこの委員会で発言をしておられた趣旨にも沿う私どもの提案だと思います。

 公明党のお立場は、国民投票については、公明党だけじゃなくて私どももそうですけれども、幅広いコンセンサスを得た上で成立させるべきものだ、そういう立場を一貫してとられてきたはずだと思いますから、だめだと言うのであれば、なぜこれが受け入れられないのか、その理由をお聞かせいただきたいと思います。

赤松(正)委員 幅広いコンセンサスを得てこの法案が通されるべきであるという思いは今も変わりません。

 私が非常に残念に思いますのは、民主党の皆さんの方からいわゆる丸のみをしなくちゃいけないと、自分たちが出された法案に対してすべて賛同するべきだと。今、古川委員の御発言の中にもそういう側面が少しにじみ出ているかなという感じがするんですけれども、私ども公明党ももちろん考えはありますけれども、与党として一緒に提出しておりますので、そこはいろいろ詰める必要がある。

 公明党としては、皆さんがおっしゃっているものについて、今のくだりについて、特に一般的国民投票のくだりを皆さんのおっしゃるとおりに入れるのは、やはり先ほど言ったようなことから難しい側面がある、そんなふうに今思っているわけでございます、非常に残念なんですけれども。

古川(元)委員 今の与党提案者の発言を聞いて、民主党提案者の方はどのように思われますか。

枝野委員 私どもは、この間の委員会における議論を踏まえて修正案を出しておりますので、我々の当初の案を全部そのまま審議の経緯も踏まえずに丸のみしろとは一言も言っておらないわけで、この間、公明党などもいわゆる予備的国民投票などという御発言、御提言もあり、そうしたことも第一条の条文の中に取り込んだりして、与党の御意見を踏まえて私どもはこの修正案を提出しているということでございます。

 その上で、今両与党提案者からの御答弁は、やはり民主党案に賛成できない理由になっていない。誤解をされているのかもしれませんが、「憲法改正の対象となり得る問題、統治機構に関する問題、生命倫理に関する問題」というのはいずれも例示列挙でありまして、「国民投票の対象とするにふさわしい問題として別に法律で定める問題」のみが対象となる。

 なおかつ、私どもの附則でも、「日本国憲法の採用する間接民主制との整合性の確保その他の観点から検討を加え、」と書いておりますので、憲法四十一条に反するような対象の国民投票は法整備されないということは法律上担保されているのでありまして、憲法四十一条との関連性で危惧があるということについては全くこの条文上から読み取れない。読み取れないことを危惧と称して賛成できないというのは理由になっていないと思います。

古川(元)委員 私も、まさに今枝野委員が言われたとおりだと思います。

 次に、投票権者の範囲についてお伺いをしたいと思います。

 午前中の審議の中でも、十八歳以上を投票権者にするのは世界標準と言いながら、しかも、とにかくこの法律の施行までに法令は整備するんだ、これは義務を負ったんだ、心配は無用だというふうに言いながら、でもあえて経過措置を設ける。私どもは、そういう心配は無用だといいますか、もう与党の皆さんがその気になってやるというふうに言われているんですから、なぜ、それをあえてここに経過措置を入れるのかと。

 午前中の議論を聞いていても、この経過措置を入れるということの合理的な理由、納得できるような理由では全くないというふうに思うわけでありますが、それでもどうしてもこれを規定しなければならないと。先ほど言われたような万が一のおそれがあるから置かなければいけないと。我が党の案のように経過規定を置かない、規定しないという形で十分ではないかと思うわけでありますが、それでもどうしてもこれを置かなきゃいけないという根拠を教えていただきたいと思います。

船田委員 お答えいたします。

 午前中にも申し上げて、今、古川先生からも御指摘をいただきましたが、我々は、十八歳以上というのが世界標準である、そしてできるだけ速やかに、もちろん国民投票法案もそうでありますが、関連する公選法の規定も、あるいは民法に至るまで、あるいは年齢要件をもとにしておりますその他の幾つかの法律案について精査をし、そして改正が必要なもの必要でないものを仕分けしながら対応していく必要があると思っております。

 御指摘のように、関連法令の中でも公選法の投票年齢二十歳というものを十八にするということは、投票という同様の行為を規定しているわけでございますので、少なくともこの二つの年齢がそろっているということは極めて合理的であるし、また、間違いを起こさない状況につながると思っております。

 そこで、私どもとしては本法施行までの三年間に公選法を初めとする関連法令を整備するということを書かせていただきましたが、もちろんそれは、与党としても義務を負う、これは国にやらせる義務を負うという意味でございますが、そういうことであります。

 しかしながら、やはり世の中には一〇〇%絶対ということはございません。したがって、万々が一、関連法令の整備が済まない状況で三年を超えることが仮にあった場合に、国民投票法案が十八で公選法がなお二十のままということですと、これは今申し上げたような、十八歳と二十歳との間でのそごが一定期間生じる。

 こういうことでございますので、我々責任ある立場としては、万々が一のことも考えて、そうでないようにするというのが立法者としての責任である、このように私は考えております。そのことをぜひ御理解いただきたいと思います。

古川(元)委員 今、船田委員は、公選法との関係でそごがあると間違いが起きるかもしれない、間違いを起こさないためにというふうに言われましたが、これもここでの議論の中で、普通の選挙と国民投票が同時に行われるような場合は基本的にそこの部分は考えない、それは国政選挙などとは別個に行うということでここでの議論が行われてきたはずだと思うんです。

 公選法との関係で間違いが起きるというのは、具体的にどういう場合を想定しておられるのか教えていただけますでしょうか。

保岡委員 現行の公選法の二十歳の投票年齢というのは、戦後間もないころ二十五歳から二十歳に引き下げられて以来、二十歳が投票年齢になっているわけです、選挙権の。そのときの立法の趣旨を見ると、民法の成人年齢が二十歳であることを前提に、それに合わせる。要するに、民法上の判断能力と参政権の判断能力とは一であるべきだという前提で、そういう提案理由の中に書かれて引き下げられている経緯があるので、我々としては、成人年齢に合わせて選挙年齢。選挙年齢と国民投票年齢は同じ参政権だから、やはりこれを合わせることが国民に理解がしっかりと受けとめられる。しかも、我々としては、何もこれをおくらせるつもりはありませんので。

 我々としては、平たくいえば高校を卒業したら一人前、民法で一人で契約できる、それから少年法での扱いについてもしっかりと検討してみる。そういった意味で、高校までに国家とか憲法とか民主教育とか、あるいは社会規範とか、いろいろなことについて徹底してこの際、青少年の日本の教育を根幹からみんなで考えていこう、こういう積極的な意味を考えて、単に民主党に無原則に妥協したのではなくて、我々自身そういう積極的な位置づけをして、この十八歳投票年齢について定めた経緯があります。

 そういうことなどを理解していただければ、民主党と物の考え方はほぼ変わりないところに達している。したがって、法律のあり方についても、規定の仕方にいろいろ技術的な問題が残されているのみと我々は考えています。

古川(元)委員 いや、変わらないのであればなぜわざわざこの経過措置を置くのかというところを聞いているわけなんです。

 午前中の枝野委員からのここの場での発言の中でも、もし万が一与党の提出者が言われるような法の施行、法改正、公選法とか民法とかいろいろ関係法令を改正していく中で、これがおくれそうだということであれば、その法改正のときに、その附則に、国民投票法の実施について、それが施行されるまでは二十歳以上にするとか、そういう経過規定を置けばいいんじゃないか、そういう話があったはずであります。

 なぜわざわざ与党の提出者の皆さんが、ここまでやるんだ、それは義務だというふうに言っておられるにもかかわらず、あえてこれを残す、そして、我が党の案を受け入れられない、その合理的な理由を説明していただきたいと思います。

葉梨委員 お答えします。

 古川委員と一緒にヨーロッパに調査で行ったときに、たしかスイスでしたか、公選法の年齢を十八歳にするという国民投票をかけた、ところが否決されまして、それからその後に、先に成人年齢を十八にして、その後で公選法の選挙権年齢が十八になったというような例を古川委員もお聞きになられたかと思います。

 やはり歴史的な知恵の中で、成年の年齢ですとか、あるいは関係法令でも非常に密接にかかわるものについては、午前中御答弁しましたように、この法律ができた後、早急にピックアップをして早急な作業に入るということですけれども、やはりそこは、歴史的な知恵として、成年年齢それから投票権年齢、選挙権年齢というのが整理をされた形になっていくことが必要だろうと思うんです。

 先ほど船田委員から万々が一というような話がありましたけれども、例えばその施行が、民法の関係法令なんかの場合はもしかしたら一年ということがあるかもわからない、あるいは公選法なんかでは半年ということがあるかもわからない。そういったような期間がもしもあった場合に、投票権年齢だけ十八で施行してしまっていいんだ、この法律で国民投票をやりましょうといったときに、この法律は十八だけれどもこの法律では二十がまだ施行されないで残っているといったときに、国民投票の正当性の問題にもやはりかかわってくる。ですから、技術的な話として、その場合に国民投票の正当性が変な形で問われないようにするための技術的な規定として二十というのを置かせていただいているということは、決して我々が消極的だという意味ではないということを御理解願いたいと思います。

古川(元)委員 消極的じゃないということはわかったんです。であれば、先ほどから申し上げているように、三年以内にやる、しかし万が一の場合には、ほかの関連法令の改正のときに、附則に、国民投票法については、この法律の施行のときまでは二十歳以上にするとか、今回のこういう経過規定のようなものをそこのところで置けばいいんじゃないかと。

 あえてこの国民投票法の本体に、そのものに経過措置を規定する合理的な意味はないんじゃないか。少なくとも、我が党の置かないという規定を受け入れない理由にはならないのではないか。もし、我が党のような、経過規定を置かないという規定が受け入れられないというのであれば、なぜそれが受け入れられないのか、その合理的な理由を説明していただきたいんです。

葉梨委員 今、古川委員も質問の中でおっしゃられましたけれども、もしも万々が一の場合が起こったときに、それは関係するその法律の附則で書けばいいんだというんであれば、逆に、この国民投票法で書いておいても何ら問題はないというふうに思います。

 ですから、まさに技術的な問題として、どこで調整を図るかという問題ですから、やはり三年後に何とか十八となるようにしっかりと努力をしていく、これはもう義務であるということは船田委員も答弁されていますけれども、どこで調整を図るかという問題だと御理解願いたいと思います。

古川(元)委員 今の葉梨委員の御発言は、少しでもこの委員会の中で幅広いコンセンサスを得ていこう、そういう視点からはちょっと外れた意見じゃないのかなというふうに感じますが、この点について枝野提案者はどう思われますか。

枝野委員 まず、葉梨議員の今の発言は、我が党案に賛成できないことの理由にはなっていないということが一つであります。

 それからもう一つ、やはり意味が違うと思っています。三年以内に整備をするという意思を持って進める以上は、今の段階ではやはり三年以内にできることを前提にしておけばいい。もしできなかったときに困ることが生じたとしても、それは三年後に近いところで、このままではまずいことになるかもしれない、最初は三年でやるつもりだったのにできなかったなということで、初めてそこで法整備をすれば間に合うわけですから。初めから三年でできなかったときのことを考えてつくっておくのと、三年近くになってから、やはり間違った、三年じゃできなかったなというのでは、これは法的にも政治的にも全く意味が違う。

 やはり、現段階で、三年でできないことを想定しているんだなと受けとめざるを得ないので、我々としては与党案には賛成できない、こういうことになります。

古川(元)委員 どうですか、今の枝野提案者の発言を聞いてどう思いますか。

船田委員 三年後の法整備のときに経過措置を設ければいいというお考えだと思いますけれども、それは現時点において経過措置の考え方を明らかにすることの方が私は法的にはむしろ望ましいことだというふうに考えております。

 三年後云々というよりも、今そのことをはっきりと国民に示して、そして諸準備をするということの方が私は合理的であると思っています。

古川(元)委員 そういう話を聞くと、午前中は何か与党の方からはほとんど違いがないとか言っておられましたけれども、先ほどからのそういう発言を聞いていると、何かだんだんと溝が広がっていくような感じで、残念な気がいたします。

 最初に船田委員からもお話があったように、本当に三年以内にこれをやるんだ、そんな心配をするのは無用の心配だと言われるのであれば、先ほど枝野提案者から話があったように、やはり本則として、これはもう十八歳ということでやるんだ、そういう強い意思を最初のところで示すということこそがあり方ではないか。そういう意味では、考え方の根本のところで、小さな違いのようで大きなずれがあると残念ながら言わざるを得ないのじゃないか、そんなふうに思います。

 次に、公務員の国民投票運動の制限についてお伺いをしたいと思います。

 午前中の議論の中で、この点についても葉梨委員の方から私ども民主党の案とはそれほど違いがあるとは感じていないというふうな御発言があったかと思うんですけれども、しかし、今の時点で冷静に考えれば、私ども民主党が提案するように地位利用の場合だけに範囲を明確にして禁止してそれ以外については自由と。ですから、これは今の国公法、地公法等の政治的行為の制限規定を全面適用除外するということで整理ができるという話じゃないかと思うんですが、どうしてそれがまだ議論をしていかなきゃいけないと。

 議論をしていかなきゃいけない、丁寧な議論が必要だと言われながら、もう議論を打ち切るとか、採決を強行するなんという話も聞こえているわけなんですけれども、どうして私どものこの整理では受け入れられないということなのか、お聞かせください。

葉梨委員 午前中も、私、中身の問題についてはそれほどの違いはないんじゃないかということを申し上げました。今でもそういうように思っています。

 中身の問題においては違いがないんですけれども、法律にどう書くかという表現の問題においては確かに違いはあるんです。その違いを、殊さらに表現の問題を、大きく違いである、違いであるというような形で対立点を浮き彫りにするのはいかがなものかなというふうに私は思っております。

 そこで、この点について申し上げますと、古川委員も御案内のように、地位利用については今公選法で規定があります。しかしながら、政治活動について公選法では数々の規制はありますけれども、公務員の政治活動については、地方公務員法あるいは国家公務員法の世界において規制されているというような、法体系の世界があるわけです。

 ですから、公務の中立性という目的を持つ国家公務員法あるいは地方公務員法の世界で、やはり政治活動と非常に似たような形になる国民投票の勧誘あるいは国民投票についての意見の表明といったものを除外していくというのは、やはり法律の整理としては国公法、地公法の世界においてやっておくべき話なんだろう。そしてその中で、丁寧な議論というふうに午前中申し上げましたけれども、やはり職務専念義務あるいは信用失墜行為、その辺の関連においても丁寧な議論をして、公務員であっても自由な意見表明や自由な勧誘行為ができるような法制度を法体系としてしっかりと整備しておくということが必要だと私は思う。

 ですから、中身においては違いはございません。しかしながら、法律にどう書くかという、表現においては多少の違いはあるでしょう。しかしながら、そこのところを殊さらに大きく取り上げるのはいかがなものかというふうに私は考えています。

古川(元)委員 この点について民主党の提案者はどう思いますか。

枝野委員 私は殊さらに違いが大きいと申し上げているつもりはなくて、なぜ与党は賛成できないんですかと。民主党案に賛成されればいいんであって、賛成できない理由は少なくとも先ほど来全く出てきていない。円満にみんなでやろうと言うんだったら、民主党案に賛成すれば国会の衆参合わせて三分の二を超える勢力が円満に一つの法案に賛成してつくられるんですから、なぜ自分たちの案に野党が賛成しろとこだわるのか。まさにメンツの問題でしかない。実質的な問題点は何もないというふうに思います。

 ここの部分についても、我々は憲法改正に関する賛否の勧誘その他の意見表明を制限しないために、憲法改正に関する賛否の勧誘その他の意見表明について、政治活動の制限規定を適用除外することを明確にしているだけであって、その他の信用失墜行為とかについては、当然のことながら国民投票運動に名をかりた行為で、でもそれは政治活動的な行動としてではなく別の側面からの信用失墜であれば、当然公務員法の懲戒の対象になるわけですから。私どもの案で本法施行までの間に必要な法改正を行うということをしっかりと、少なくとも提起をしている、こういう提起の仕方をすれば必要な法改正になるんだということを提起しているわけです。

 もし、それでは違うんだとどうしてもおっしゃる、これでは抜けるところがあるんだとかとおっしゃるならば、しっかりとこの委員会で具体的中身を提起して、議論して、それについて具体的にこういう適用除外の仕方あるいはこういう適用の仕方をするという提案があれば、ここで議論をされればいい。それなのに、何で採決するのか。採決することについての論理的合理性がこれまた全くない。

 何でこれを先送りする必要があって、しかも、国民投票運動の自由という、ある意味では国民投票法制においては一番の根幹部分です。根元の、ど真ん中の部分ですから、そこを先送りしておいて採決だけ先にやるというのは全く論理的に成り立たない。

 我が党の案であれば、今採決するとしても、そこの部分は明確にしているわけですから。この根幹を先送りして採決することは全く成り立たないということを申し上げたいと思います。

古川(元)委員 時間が来たので終わりたいと思いますが、最後に、今の議論の中でも、せっかく両方から修正案が出てきて、ここでもう少し議論を深めていけば、今まで不透明な部分とか、あるいははっきりしていなかった部分の合意も出てくるかもわからないような状況の中で、今こそまさに議論を深めて、幅広いコンセンサスをつくる。そのことが今後の憲法論議のあり方にも大きないい影響を与えるにもかかわらず、それを無視して強引な委員会運営、そして採決をしようとしている。そういうことをやれば、せっかくのこれまでの努力を台なしにして、今後の憲法論議に大きな禍根を残すということを最後に強く申し上げまして、私の質問を終わります。

中山委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 初めに、この改憲手続法案に対して、拙速ではなく徹底審議を求める国民の声が日に日に強まっております。私も持ってきましたが、ここにあるだけでも、二千近くのファクスが私の部屋にも寄せられておりますし、直接の訪問をいただいた方、またメール、電話もたくさん来ております。

 にもかかわらず、本日、採決を前提とする審議日程を委員長職権で強行する、そしてまた先ほどの理事会で、質疑終局、それから採決を含む運営の日程の決定を強行するということでやったことは、まさに異常だと言わなければいけません。

 なぜ急ぐのか、国民から見たら理解不能であります。私は、こうした日程設定自体に断固反対をしましたが、改めて抗議をしたいと思います。

 そこで、四月五日の公聴会でも、公述人の方の多くが拙速をいさめて慎重審議を求めました。特に、一般公募が短期間でしたけれども、そのこと自体に批判がありましたが百二十四名もの方々の応募があって、たまたま選ばれたけれども意見を述べたいという方がたくさんいる、応募した人すべての方、また全国四十七都道府県での地方公聴会をという強い要望も出されました。

 まず、与党の法案提出者に伺いますが、本委員会が国民に求めて公募した公聴会にこれだけ多くの国民の方々が応募してくれたわけでありますが、与党提出者は、一回七人きりであとの方の声は無視する、もう聞かないでいいとお考えなんでしょうか、いかがでしょうか。与党提出者にお願いします。

船田委員 中央公聴会それから地方公聴会、この時点になっても地方公聴会を二回やらせていただきました。中央公聴会も二回やらせていただきました。前半におきましては各党推薦という形で公述人を選定していただくということであります。また、後段におきましては、先ほど笠井委員がおっしゃいましたように一般公募ということで、ある程度の人数の方に応募をしていただきました。

 ただ、それ以前に憲法調査会以来の公聴会も地方で大分やってまいりました。そういったことも含めますと、もちろんそれはこの法案あるいは修正案に対する公聴会ではありませんけれども、しかしながら、憲法全般に対し、そしてこの手続法に対しても意見を述べるという者は相当中に入っておりました。そういったものをトータルして考えますと、私どもとしては、そろそろ皆様からの御意見を伺うには大体の議論は尽くしたのではないか、このように感じた次第でございます。

 できる限り時間をとりながら公聴会をやってまいりましたけれども、やはり一定の時間が経過をいたしましたので、私どもとしては、その御意見を十分に参考にしながら、修正案づくりもやってまいりましたし、その後の委員会の審議にも十二分に反映をしていると思いますので、このような形でスケジュールを進めさせていただきたい、このように思っております。

笠井委員 いろいろな機会にいろいろな問題について、憲法も含めて聞いてきたと言われましたけれども、法案に対する意見を聞くというのは公聴会でやってきたわけで、それに対してある程度の人数と言いますが、相当な方が応募して、わずかしか聞いていないわけです。それで済ませちゃいけないというのが国民の多くの方の声なわけです。

 九日に発表されたNHKの世論調査でも、与党の修正案に賛成はわずか二九%、賛成のうちでも、今国会で成立させるべきだというのは二八%、今国会にこだわらずに時間をかけて議論すべきは七一%ということで、賛成の方以外も含めると、全体では今国会成立の声は一割に満たないんですよ、八%です。日弁連を初めとして多くの、弁護士会などが意見書を出していますし、地方議会からも意見書が出て、反対、慎重審議の要望が出ている。昨日には、法学者、憲法学者の方々百十四名ですか、緊急声明も出されております。

 私は、こうした声に真摯にこたえるなら、追加して公聴会を開いて、修正案に対する審議もさらに時間をとってやる。だって、公聴会をやってから、審議といってもまだ一回だけですからね。これは当然じゃないかと思うんですけれども、そういう態度でこの法案に臨むんですか。

船田委員 今、笠井先生お話しでございますが、確かに、多くの方々から御意見をいただくというのも大事なことだと思っております。

 しかしながら一方で、典型的な御意見、同じような御意見というのもあるわけでございますので、やはり典型的な御意見を満遍なく聞かせていただくことによって問題点をより明らかにしていくことはまた重要なことでございますので、私どものこれまでの運営の中では、もちろん、できるだけ多くの人に聞ければ一番いいわけでありますけれども、しかし、典型的な御意見をお持ちの方に代表してお聞きをする、またお話しをいただく、こういうことで私どもは国民の皆様の御意見を相当な幅で酌み取ることができたのではないかというふうに思っております。

笠井委員 わずかな方からしか聞いていないんですよ。それで、十人十色といいますが、やはり多くの方々から意見を聞いてやる、特に憲法にかかわる問題ですから。私は、先ほどもうそろそろ機を熟したという趣旨のことを言われましたけれども、到底言えない、それを判断するのは国民だと思うんです。

 安倍総理の発言で、いよいよ何のためなのかということを御自身も言われるということで、はっきりした今国会での審議というのは、きょうまででいえばわずか十八時間四十五分です。きょうだって何時間かやっただけです。質疑はまだ一回だけということでありますので、国民のための法律といいながら、国民の皆さんの声に真摯に耳をかそうとせずにひたすら急ぐ姿勢一つとっても、この法案自体がやはり、特に今年に入って安倍総理の改憲スケジュールに位置づけられたよこしまなねらいを持ったものであることは明らかだと私は言わなきゃいけないと思うんです。多くの方はこう思っていると思います。

 次に、修正案の内容について与党提出者にまず伺いたいと思いますが、きょう午前の質疑でも取り上げられました国民の承認にかかわる問題であります。

 前回の質疑でも、またきょうも、与党の提出者は公聴会、地方公聴会で最低投票率を設けるべきでないと述べた人のみを紹介されるようなことがありましたけれども、最低投票率あるいは絶対得票率を設定すべきだという意見が圧倒的に出されていたと思います。公聴会、地方公聴会では二十一人の公述人、意見陳述者のうち、最低投票率を設けるべき、あるいは全有権者の過半数にすべきと述べた人を合わせますと十二名おられました。それだけじゃなくて、法案に反対の立場で応募された百八人の方のほとんどが最低投票率が設定されていないことは問題であると感じているというふうに御意見を述べていました。

 しかも、公聴会の中で、小澤公述人は国民主権の原理に基づく制度としては根本的な不備であるという指摘もありましたし、馬場意見陳述者は基本的な設計において誤っているというふうに批判をされました。そして、与党の提出者が言うボイコット運動や高い投票率を期待できない、その他憲法違反になるといういろいろな理由はありますけれども、すべてそれについても反論されるという事態がありました。にもかかわらず、国民の声に耳をかさずに、あるいは専門家の方々のそういう意見に耳をかさずに、あくまでこれを拒否するのはなぜか。国民から見れば全く理解できないと思うんです。

 わずかの有権者の賛成で憲法を変えられるということでは理解ができないと思うんですけれども、与党提出者に改めてその問題をお答えいただきたいと思います。

葉梨委員 まず、今、公聴会のお話を笠井先生おっしゃられましたけれども、この委員会における議論というのは、この通常国会における中央公聴会あるいは地方公聴会だけではなくて、憲法調査特別委員会に設けられた小委員会において、この国民投票法案について賛成の立場からもあるいは反対の立場からも、非常に多くの参考人の方々から御意見を承りながら、そして開かれた形で、こういうような修正案をいろいろとお話ししながらつくってきた、その経緯については御理解を願いたいと思うんです。

 その修正案をつくってきて、では中央公聴会二回が多いか少ないかというような議論がございますけれども、今までの経緯に照らしていえば、昨年の五月に我々が法案を提出いたしました。そして、臨時国会においても、特別委員会において、あるいは特別委員会の小委員会において、丹念に丹念に、やはり国民に開かれた形で議論を積み重ねてきております。

 そして、その上で、ほとんどが最低投票率に反対する意見ばかりであったというふうにおっしゃいましたけれども、先般の中央公聴会において、例えば南部公述人の方から、やはり最低投票率を設けるのであれば憲法改正が必要じゃないか、そういうような専門家的な御意見も開陳されたわけです。また、地方公聴会においては、今井一公述人の方から、やはり最低投票率は設けないようにしていくのがよろしいんではないか、そういうような強い意見も開陳されたわけです。

 我々としては、そこら辺のところも踏まえて、ボイコット運動の問題、あるいはなかなか高い投票率が期待できないような案件もあるという問題、さらにはやはり憲法改正が必要じゃないかというような問題、これも踏まえて現在のところは最低投票率を設けないという制度設計にしているということ、そして、それは今までの審議の中でたくさんの反対する意見や賛成する意見がございましたけれども、意見を踏まえた上で我々として制度設計をさせていただいているということを御理解願いたいと思います。

笠井委員 法案に対する国民の意見を広く問うという点ではちゃんと公聴会という制度があって、それでやっていて、その数が少ないということは厳然たる事実なわけで、いろいろな場面でいろいろなことを聞いてきましたということでは理由にならないというふうに私は思うんです。

 それから、今葉梨委員が答弁されましたけれども、例えば南部公述人が述べたことについていえば、最低投票率に満たなかった場合に現行の憲法規範を守れというメッセージを公権力に与えることを意味する、だから最低投票率は憲法に規定すべきということでありますけれども、そのことは憲法原理に則した要件であれば創設しても一向に構わないということへの反論には全くなっていないというふうに言いたいと思います。

 それから、住民投票におけるボイコット運動の実態ということでいえば、そちらがそう言われるんであれば、実際にボイコット運動を起こしたのは提出者側の仲間の方々であって、この前高田公述人が述べられましたように、九条改憲に反対する国民の団体やそういう運動の人たちは堂々と反対を掲げて運動するんですよ。これはそういうことなんです。少数の国民の賛成で改憲案が承認されるという事態は何としても避けなきゃならない、だから制度上そうならない仕組みが必要だということを公述人や意見陳述者は強調されたわけです。

 結局、少数の国民の賛成で改憲が実現できることをねらったものだ、まさにそういう仕組みになっている、公正中立どころか国民主権原理に反する不公正、非民主的な制度だと言わなきゃいけないというふうに思います。

 次に、公務員法における政治活動の制限規定の適用の問題について、先ほど来ありましたけれども、与党提出者に伺いたいと思います。

 与党提出者は、昨年十二月十四日に、国家公務員法と地方公務員法における政治活動の制限規定について、国民投票では適用を除外するという修正を表明しておられたわけです。ところが、修正案では、いわば突如として、この前船田委員もそういう趣旨のことを言われましたが、適用除外にしないという内容になって盛り込まれたわけであります。前回の委員会で船田提出者はその理由として、ビラの配布や機関紙、その他のさまざまな政治活動が自由になってしまう、これでいいのか、公務員は公務員としての職務の公正さを考えた場合、一定の制限も必要である、こう言われました。

 しかし、考えてみますと、憲法上、公務員はその職務に対して公正中立性が求められるのであって、なぜ公務員が一国民として行う国民投票運動に対して制限が加えられなければならないのか、ここは大きな問題だと思うんですけれども、いかがですか。

船田委員 公の投票における勧誘運動について、国家公務員の制度、特にこれは国家公務員法からゆだねられた人事院規則において規定が実はないのであります。一方で、地方公務員法においては公の投票における勧誘行動に制限がある。これをそのままにしておきますと、国民投票運動が導入された場合に、そこにおける勧誘は国家公務員は何のおとがめもない、しかし地方公務員にはおとがめがあるというアンバランスが生ずる状況になりますので、私どもとしては、昨年のさまざまな検討、あるいは多くの識者の御意見を聞きながら、勧誘のアンバランスを是正するために、国家公務員法、地方公務員法における特定の政治活動の制限規定の適用除外ということを一時考えたことは事実であります。

 しかしながら、その後さらに検討を加えたところ、特定の政治活動の制限規定を適用しないということになりますと、例えば国民投票運動にかこつけて特定の候補者や特定の政党あるいは団体を支持するような政治的目的を持った諸活動、これは署名活動や、デモであるとか、機関紙の発行、配布であるとかさまざまなものがあるわけですが、そういったことが惹起されかねない。これはやはり公務員の職務の公正さを考えた場合にはよろしくないであろうということで、現行法の制限をそのまま残すべきである、このように感じたわけであります。ですから、現行法よりも重い制度の改正をしようということは何ら考えておりません。

 その上で、やはり今申し上げたような勧誘行動等におけるアンバランスは是正をしなければいけないということで、私どもとしては、附則におきまして、公務員の意見表明あるいは勧誘行為ということについては将来において適用除外となるように検討し、法整備を三年の間に行っていこう、こういうことでございます。

 我々は、公務員の法制度と国民投票制度におけるさまざまなそごの問題について、あるいは相違点についてできるだけ丁寧に切り分けていこうというのが私どもの修正案の趣旨でございます。ぜひ御理解いただきたいと思っております。

笠井委員 理解できません。

 かこつけていくということで、結局は規制しようということですよね。憲法改正というのは特定の政党や候補者を支持したり反対するということとは全く性格が違う問題であって、にもかかわらずこの規定を適用するというのは、公務員ひいては国民の投票運動を抑え込もうというところにねらいがあることは明らかになっているというふうに私は理解をいたしました。これは大問題だということを申し上げたいと思います。こんなことはやってはならない。

 次に、公務員、教育者の地位利用による国民投票運動の禁止についてであります。

 私はこの間の公聴会でも指摘をいたしましたが、修正案では「その地位を利用して」という文言を「その地位にあるために特に国民投票運動を効果的に行い得る影響力又は便益を利用して、」と修正するとのことでありますけれども、この修正によって一体何が変わるのかということであります。これは公選法の百三十六条の二の「その地位を利用して」の意味を説明したのと全く同じ文言であります。

 百三十六条の二は一九六二年の公選法改正で追加されたものでありますけれども、その際、当時の自治省の局議決定で、「その地位を利用して」の意味について、その地位にあるために特に選挙運動を効果的に行い得るような影響力または便益を利用する意味というふうに定義されて使われてきました。手続法の条文を修正案のように変えたって、同じことを別の言葉で言ったにすぎないんじゃないか。何かこれであたかも効果が違うかのように言われていますけれども。

 与党提出者に伺いたいんですが、特に悪質な行為に限定するんだというふうに言われてきましたけれども、これによって何がどう限定されるんでしょうか。

葉梨委員 公務員の地位利用についてちょっとお答え申し上げます。

 実は、私、公職選挙法の関係でいうと、平成元年に神戸市で市長選挙がございました。そのときに県警本部の捜査第二課長をやっておりまして、公務員の地位利用ということで当時の神戸市の消防局長を逮捕したことがございます。もともとは公務員、消防の署員は組合もつくれない、それでもう明確に、明らかにこういう形でだれに投票してくれということを上司の命令として言われてというような、切々とした情報提供がございまして、それで事件にしたわけなんです。

 そのような行為というのは、今回行政処分という形にしておりまして罰則は科しておりませんけれども、やはり公務の中立性であるとか、あるいは公務がそれを担保していく、あるいは教育の中立性、そこら辺を担保していくためには私は必要なことだというふうに思います。

 そこで問題なんですけれども、公務員の地位利用といったときに、公職選挙法では罰則というのが直接かかっております。罰則が直接かかりますと、その運用というのは、影響力を利用してというような形になるとしても、実際に警察が捜査という形でそれを明確にしていくことというのはある意味で可能なんですね。

 ところが、行政処分ということになりますと、警察は強制力は持つわけではありません。やはり外形的にこれに当たる行為ということをしっかり当てはめていく形になります。また、行政処分だけということになりますと、地位を利用してというような形での禁止というのはいかにも広過ぎるだろうというように思います。ですから、やはり明らかにわかる形でその影響力を利用しているんだという形を条文上も明確にするということは私は非常な限定になっているというふうに考えています。

笠井委員 ですから、私が言いましたように、もともと「地位を利用して」の解釈が、百三十六条の二の中の解釈と同じことを言っているにすぎないわけで、それを言いかえたところで何も効果は変わらないじゃないですかと言っているので、何の保証にもなっていないわけですよ。それで、同じ内容のことを別の言葉で言っているだけで、悪質な行為に限定されることにはならないということが修正によったって言えると思います。

 五日の公聴会では、百地公述人が高等学校の教職員組合連合会の取り組みを例にして、教師の地位利用が禁止されなかったら登校時の門前でのビラ配布などが公然と行われる、それを野放しにするような法律は非常に問題であるというふうに言われましたけれども、まさに私はそこにこそねらいがあるというふうに受けとめております。

 結局、この地位利用の問題も、公務員法における政治活動の制限規定とあわせて、公務員や教育者に国民投票運動をさせない、萎縮効果をもたらしてさせないという規定であって、全く不公正、反民主的な規定だと言わざるを得ないというふうに私は思うんです。

 次に伺いますが、無料広告の問題であります。放送と新聞の無料の広報、政党等の広告についてであります。これは与党の提出者に伺います。

 法案審議を通じて、この無料枠は、原案の所属議員数を踏まえて放送時間や新聞のスペースを配分するのは余りにもひどいということで、私も十月二十六日の質問でそれを取り上げました。そういう中で修正を意図する発言が提出者からなされたわけであります。

 ところが、出てきた修正案を見ますと、広報協議会が行う広報というのがそこにプラスをされている。主体は「広報協議会は」というふうになっている。しかも、その修正案の概要を見ますと、こう書いてあります。「テレビ等における無料広報枠においても、憲法改正案の内容に関する客観的かつ中立的な広報枠を設けるとともに、その残余の部分については、」「残余の部分」ということになっていて、そこを半分に分けるというふうになっているわけであります。つまり、それに続けて、「残余の部分については、賛成意見・反対意見を「公正かつ平等」に扱うものとする。」というふうになっております。

 最初の意向としては、賛成、反対は対等、平等だというふうに表明があったと思うんですが、実際は、修正案の中では賛成意見、反対意見が広報の部分の残余のところを半分にするということになりますと、広報協議会の広報が主役で、つまり賛成意見、反対意見というのはわき役ということになるのか。そして、その配分が残余というと、半分半分というよりも、その広報自体は改正案の中身ですから、そうすると、それに賛成意見というのが占めて、その残りの部分が反対意見ということになるわけですけれども、こういう仕組みになっているということなんですか。それで本当に対等、平等と言えるんでしょうか。

船田委員 無料の広告の枠の問題でございます。

 これにつきましては、今御指摘いただいた中立的部分と、賛成意見、反対意見ということでありますが、その「残余の部分」というのがちょっと誤解を与えているかもしれません。私どもの考えといたしましては、少なくとも中立部分を一とすれば、賛成部分も一、反対部分も一ということで、一対一対一、そういう比率を一つの基準にしたらどうか、こういうふうに考えております。

 また、この中立部分につきましては、賛否いずれかの言い分に有利な表現は一切しないということでございまして、これまでの憲法の改正原案が発議されるまでのさまざまな国会の中での経緯、そしてどういう議論があったかということを本当に客観的に述べる、あるいは記するということでございますので、委員御指摘のような懸念は全くないと思っております。

笠井委員 中立的な部分と言われますが、それは改正案の中身でありますから、改正をするということについて書いてある。そして、それ以外の残余というふうに言っていますが、その残余のところについては半分半分ということですから、一対一対一としても、今言われたようなこととしても、結局は国民の目の前には二対一の関係で、改憲と改憲の意見それから反対意見ということになっているわけです。

 私は、対等、平等というなら、こうしろとは言いません、私は提案するつもりはないし、我々は要らないと言っているわけですから。しかし、それぞれ半分ずつにして、それぞれがこういう改正ですよ、それはこういう問題がある、だから反対だとか、こういう問題があるから賛成と言えばいいわけで、それこそ一番対等、平等だというふうに思うので。これも結局は賛成政党に有利な仕組みになっているし、しかも、それが広報協議会が牛耳るということになるわけですから、これもおかしいということを言わなきゃいけないというふうに思います。

 もう一点、広報協議会の問題で伺いたいんですが、広報協議会の事務についてです。

 両修正案にこれは共通であるんですけれども、第十四条一項一号の「国民投票公報の原稿の作成」について、原案の「解説」を削除して、「その他参考となるべき事項に関する分かりやすい説明」というふうに加わっているわけです。

 この「分かりやすい説明」と「解説」というのはどう違うのか。与党案提出者はどういうふうに違いを説明されますか。

保岡委員 「解説」という文言については裁量の余地が入ってくるんじゃないかという御指摘も枝野筆頭からありましたので、私はそこまで考えるべきものかなという気もしましたけれども、それでは、「分かりやすい説明」と。発議の内容こそ国民にとって一番大事な、憲法国民投票において大事な根幹ですから、そこをわかりやすく説明する。正確に、客観的に、中立に説明するという部分はぜひ必要だろうということで、「解説」にかえてその文言を入れさせていただいた次第です。

笠井委員 この広報協議会の構成も改憲賛成政党がその上指導する形になります。したがって、その裁量が働く部分であって、結局、公報においても改憲賛成政党にとって有利な内容になることが可能な仕組みになっていると客観的に言わざるを得ないというふうに思うんです。

 最後になりますけれども、今幾つかの問題を聞いてみました。審議すればするほど、私は、問題点だらけだと言わざるを得ない。結局、改憲を通しやすくする仕組みであることは明らかだと私は思うんです。

 しかし、にもかかわらず審議を尽くさずに採決に持ち込もうというのは、結局、もとに戻りますが、安倍総理の改憲スケジュールに沿って一瀉千里に進めようということにほかならない。だから、安倍総理の発言を、一議員の発言というふうな形でとんちんかんな答弁をされましたけれども、まさにそのねらいを覆い隠そうとしているというふうに私は思うんです。

 しかし、国民の皆さんはこの手続法のうさん臭さに気づき始めている。だから、先ほども紹介しましたが、世論調査の中でも改憲に賛成が減少してきている。NHKも読売もそうでした。そして、九条改憲の反対が過半数を占めるという結果がやはり出てきているというふうに思うんです。

 この間の地方紙の社説でも、例えば、中国新聞の三月二十九日付、安倍晋三首相らの前のめりの姿勢に危うさを感じる。北海道新聞の三月二十五日付は、国民の意思を直接問うための重要法案の審議がこのように国民を置き去りで進められていいのだろうか。京都新聞三月二十八日付も、国民的な議論を深めるのはこれからではないかと拙速審議をいさめております。

 そこで、与党提出者は、この期に及んでまだ、安倍総理の改憲スケジュールとは関係ない公正中立な制度だと言われるのか。それから、民主党提出者は、拙速に進めるべきではないという声についてどうこたえていくのか、こたえないつもりなのか、こたえるつもりなのか。それについてそれぞれ伺いたいと思いますが、いかがでしょう。

保岡委員 まず、拙速に質疑を終局する状況には反対だという趣旨を先ほどからるる述べられておりますけれども、先ほど葉梨提案者からも御説明がありましたが、国民投票法制については、この特別委員会が立ち上がってから既に五十時間に及ぶ調査、論点整理をきちっと行っております。それに、五十時間の法案審査もやっており、この間、いろいろな人の意見を聞くという意味で、専門家を中心とする、あるいは各界を代表する三十八人の参考人、二回の公聴会で十三人の公述人、二カ所の地方公聴会で八人の意見陳述者の計五十九人の有識者の意見を聞いたところです。

 しかも、計二回、延べ二十七日間、九カ国に及ぶ海外調査をやっておりまして、笠井先生御案内のとおり、午前も午後もしっかりと多くの関係者にお会いして、議事録もきちっと残っている。すばらしいディスカッション、そして調査の結果もございます。

 こういったことを踏まえて、法律案の審議は質量ともかなり濃密に行われており、そういった意味で相当な審議を尽くしてきた。しかも、先ほどから私申し上げているように、むしろ反対というか、与党案あるいは民主党案に賛成しかねるという案に発言の機会をたくさん持っていただいて、むしろ違いを述べていただくことによって物事の本質を明確にしてよりよいしっかりした案をつくっていこうという謙虚な姿勢で我々は臨んできたつもりです。そういう意味では、中山委員長の議会運営には非常にすばらしいものがあって、そのことは野党の先生方の同意を得られると私は確信をいたしております。

 そういうことで、先ほど来、葉梨委員についてとんちんかんな発言ということもありましたけれども、実は、安倍総理が改憲についての姿勢を示されるのは政治家としての姿勢ですから、むしろそれに影響されない委員会の主体的な確固たる対応が我々に求められるのであって、我々はそういう点でいささかも影響を受けていない。

 ましてや、民主党との違いは、むしろ憲法改正手続においてではなくて、たった一つ我々がのめない、丸のみにできない大きなとげは、一般的国民投票法という別な性格の国民投票をそこに持ってきておられるということにありまして、安倍総理が憲法改正について発言されたからといって、改正、改憲でもない公正な論議と古川委員も言われましたが、それに沿って我々は誠心誠意議論を尽くしてきた、そういうふうに考えております。

枝野委員 審議の時間をどれぐらいとれば十分なのかというのは、これはいろいろな判断があるんだろうと思います。ただ、間違いなく言えることは、今笠井先生からの与党に対する御質疑を聞いておりまして、笠井先生のおっしゃるとおりだなと思うところもあるし、答弁者のおっしゃることはそうだなと思うところもありますが、少なくとも、答弁者の方がお答えになった話を、ちゃんときちっと説得をする、説明をするという場がこの国会の中で確保されなければならない、説明し切れているかというとまだ説明し切れていない。

 時間があれば多分、きょう私にも通告がありましたから、時間があれば私にも聞いていただけたんだろうと思いますし、そうであれば、与党との共通部分について、もうちょっと笠井先生を説得する時間と機会を与えていただけたと思っておりますが、そういう機会を与えていただけないというのは、やはり時間が足りない。十分に説明、説得した機会を与えた上で、なおかつ意見が違うということであるならば採決はやむを得ないと思いますが、現時点でそういう段階には達していないというふうに申し上げたいと思います。

 その上で、今、保岡提案者からお話がございましたが、だとすれば、何で一般的国民投票以外のところを民主党と同じ修正案を出してこないのか、さっぱりよくわからないし、先ほど来のお話で何を聞いておられたのかなと。一般的国民投票の規定についても、憲法四十一条に反するような部分は、今後の新たにつくられる立法の中で憲法四十一条に反するものは入れなければいいだけであって、我が党案でいけないという理由は何もない。結局は、この憲法問題を、我が党がやった、あるいは何のだれべえがやったという党のメンツの問題として考えている。したがって、我が党案に賛成するということはできない。こういう話であるのであって、こういう話の姿勢で果たして憲法の話はどうしてできるのか。

 私は繰り返し申し上げていますが、笠井先生の御危惧は当たらないと私は思っておりまして、実は私はこの委員会ができる前から一貫して、手続法について合意ができないのに中身について合意ができるということは論理的にあり得ないということでありまして、手続法について合意形成の努力を途中で放棄した人たちと中身について合意ができるということはあり得ないということを、安倍晋三さんは足し算ができないのか、それとも参議院は自民党単独で三分の二をとる自信があるのかよくわかりませんが、そういうことだということですから、むしろ笠井先生の危惧のようにならない方向になるのではないかなと思っております。

笠井委員 時間が来たので終わりますが、今、両者同士のお話もあったりしましたけれども、やはり国民自身は拙速だと思っているんですよ。そこの事実があるし、国民自身も、安倍総理が言ったからこうやって議事を一気呵成にやっていると思っているわけですよ。そこのところをやはりしっかり受けとめなきゃいけないし、そういう点では、やはり非常に危険なもので、一回制度をつくったら、それを使って、どっちの案でやろうと、時の政権がやるとなれば大きな問題点を残す。これだけ重大な法案を審議も不十分なままに国民の声を無視して採決するなど断じて許されない、もはや廃案しかないということを強く主張して質問を終わりたいと思います。

中山委員長 辻元清美君。

辻元委員 社会民主党・市民連合の辻元清美です。

 まず初めに、きょう採決をするという話が出ておりますが、私はきょうの採決はここで踏みとどまるべきだと思います。それが立法府の役割だと思うからです。

 先ほどから審議を尽くしたとかおっしゃっていますけれども、つい先週の木曜日、初めて一般公募の公述人の方々のお話を聞いたのは一週間前の木曜日で、そして、きょう初めての委員会なんです。さらには、民主党案もきょう趣旨説明を聞いたばかりです。それで、その三時間後に採決というあり方自身、私は、立法府の自殺行為だと思います。

 特に、憲法を取り扱うという本委員会において、委員長も権威があるとおっしゃってきました、私は最後までその権威を守り通していただきたいと思います。ですから、きょう職権で立てられたことも抗議いたしますし、私の質問の後に質疑を終局して採決と言われておりますけれども、私はここで踏みとどまるべきだと皆さんにまず呼びかけたいと思います。

 といいますのは、立憲主義とは何かということだと思います。公述人の方々が多々述べられました、立憲主義の原点というのは主権在民であり、主権者の熟慮と総意、コンセンサスづくりであると。そしてさらには、憲法というのは社会の安全装置であると。いろいろな思い、発言を聞いたわけです。ですから、私は、委員長にも申し上げたいと思いますが、踏みとどまっていただきたいとまず申し上げます。

 この委員会で、私は、立憲主義、要するに憲法の原点を見失った議論になっていないかということを多々質問してまいりました。私の感想は、きょうまで質疑をすればするほど、やはり、憲法とは何か、また、憲法の改正が規定されている九十六条とは一体どう解釈すべきかというところを深めないまま議論を進められてきたというところで、私は、法案の欠点、致命的な欠陥が、幾つかというかどんどん出てきたように思います。

 まず、九十六条の解釈に関する質問を幾つか与党提案者にしたいと思います。九十六条では、この憲法と一体をなすものとして公布するとなっています。このことについてまず質問をします。これは発議の方法とも関係してくることです。本委員会では一括か個別かというような議論がございましたけれども。

 そこで与党提案者にお聞きしたいのは、安倍総理が、この間、一貫して、新しい憲法を書き上げるんだ、そして、自民党の新憲法草案が今のところ自民党のベストの憲法改正案の提示である、今のところのベストの憲法改正の提案であるというようにおっしゃっていますが、自民党がお出しになった新憲法草案は、今のところのベストですか、いかがですか。

船田委員 一昨年の十一月に、私ども自由民主党の新憲法草案を世に出したわけでございます。もちろん、あの時点においても、また現在においても、私どもは、現行憲法の改善ということで自由民主党の新憲法草案が最も望ましいものというふうに今でも考えております。

 ただし、これは今後の国会内での議論、とりわけこの憲法改正発議の要件が、まさに衆議院、参議院両院の総議員の三分の二以上の賛成がなければ発議をすることができないわけであります。これが有名な三分の二条項でございますから、私どもは、自分たちの案を最善とは思っておりますけれども、他党の意見もよく聞いて、そして、三分の二の理解が得られれば、それが改正の原案になるわけでありまして、私どもの自民党の新憲法草案そのものが改正の原案になるとも思っておりません。そうするように努力はいたしますが、現実はそうではないだろう、こういうことでございます。

辻元委員 ということは、この新憲法草案というものを自民党の提出者の方々は最善とおっしゃったので、国民投票で一番通したいのはこの案であるという理解でいいですか。

船田委員 事の道理として、そういうことであります。

辻元委員 次に、与党案の国民投票法案について伺います。

 今お出しの与党案の国民投票法案がベストであると自民党の提案者はお考えですね。

保岡委員 もちろん、最終的に検討した結果としてベストだと思っております。

辻元委員 そうしましたら、今提出されている国民投票法案で、自民党の新憲法草案は皆さんがベストとお考えの国民投票法案の国民投票の対象になるとお考えですか。

船田委員 今のはちょっと誤解が多いと思いますが、あくまで三分の二以上の賛成を国会内で得なければ改正の原案になりません。ですから、我々、今考えて、自由民主党の憲法草案が最も望ましいとは思いますけれども、今後の与野党間の話し合いによりまして国会の中で改正の原案がつくられていくわけでありますので、その中ではいろいろなことがありますし、我々もまた考え直すこともいっぱいあるでしょう。だから、そういう点で、我々の案がそのまま通りやすいように手続法を決めるということは全くの誤解であり、言いがかりであると思います。

辻元委員 自民党の新憲法草案の改正点は何カ所あるんですか。

船田委員 今手元にありませんので、具体的な数字は申し上げられませんけれども、相当な部分に上っております。大体数十カ所と申し上げていいと思います。

辻元委員 今、自民党の提出者の方は、新憲法草案がベストで、これが成立すればいいというふうにおっしゃいました。改正点は数十カ所あるとおっしゃいました。

 しかし、今予定されている、お出しになっている国民投票法案では、発議の方法として一括か個別かという議論の中でもありましたが、これは今御答弁なさっている船田提出者がお答えですけれども、せいぜい二、三カ所を想定しているというようなお話だったんですよ。矛盾するんじゃないですか。御自身の、自民党がやっていることは矛盾するんじゃないでしょうか。

 一方で数カ所しかできないと想定している国民投票法案を出しておいて、そして新憲法草案を一方で出して、私はここに非常に大きな矛盾を感じるし、一体、憲法というものをどう考えているのか。

 今の矛盾点についての続きで質問しますけれども、ヨーロッパの調査でもそうでした、全面改正ということは難しいと。オーストリアに一緒に伺ったときも、全面改正、何のことと。新憲法草案が全面改正であるかの議論のお答えをいただくつもりはございません。憲法改正というのは慎重であるべきだし、私がこの場で御紹介してきたアメリカのシングルサブジェクトルールも、徹底した個別主義、個別投票にしていくのは、最小限の憲法改正に抑えて社会の不安定化を防ぐという考え抜かれた方法なんですよ、一括か個別かということ一つをとっても。全く考えていないから平気で新憲法草案みたいなものを出し、そして、自分たちがベストだと出しているものを、みずからが出していらっしゃる今の国民投票法案では投票の対象にできないですよ。矛盾していると思いませんか。いかがですか。

船田委員 まず、後段の方から申し上げますと、私ども、新憲法草案を出しましたけれども、実際に憲法改正の手続をやる中においては、やはり部分改正という前提で進まなければいけないというふうに思っております。

 それから、二、三カ所の改正ということを前に言ったようなお話でございましたが、それはちょっと誤解をされていると思います。三ないし五つの設問ということを私は申し上げました。設問ということは、例えば関連する項目ごとに区分してという条文がありますように、関連することはある程度束ねて国民に問う、こういう形をとりますので、二、三カ所というのではなくて、例えば三から五問という場合には、修正の箇所はそれ以上になるということは当然の帰結だと思っております。

 それから、私どもとしては、決して自分たちの案をそのまま通すというつもりはございません。望ましいけれども、ほかの党の議論、あるいは広く国民の皆さんの間にあるいろいろな御意見を受けまして、私どもは、できるだけ国会の中の三分の二以上の皆さんが賛成できる修正案を考え、そしてみんなで問いかけましょう、こういうことでありますので、殊さらに我々の、自由民主党の、述べていただいていることは大変ありがたいことでございますが、私どもの新憲法草案については、それがそのまま最後まで行くということは全く考えておりません。

辻元委員 私は、船田委員の今の御答弁は、憲法九十六条の改正規定をよく理解されていない御答弁じゃないかと思うんですね。私は、新憲法草案を通せとか通したらいいと言っているわけではなくて、矛盾した行為をしているんじゃないですかと。

 今、この国民投票法案の提出者が部分改正とおっしゃいました。二十カ所、三十カ所、できないということも認められていますよね。一方で、安倍総理は新しい憲法を書き上げると言っているわけですよ。同じ党の中で安倍総理は旗を振っておりますよ、憲法改正、自分たちが新しい憲法を書き上げて、改正するために早く国民投票法案をつくろうと。おっしゃっているじゃないですか、つくってほしいと。そうすると、一方の自民党がつくっている国民投票法案は部分改正だ、安倍総理が言っているのは新しい憲法を書き上げるんだ、矛盾しているんじゃないですか。

 では、安倍総理が言っていることと船田さんが言っていることは違うわけですね。

船田委員 違っておりません。

 それで、二十カ所ないし三十カ所あるかもしれません、私どもの憲法草案においては。しかし、これは当然、関連する項目ごとに区分して問いかけるということをいたしますし、あわせて、一遍にすべての部分について問いかけるということは、これは確かに難しいことでありますから、何回かに分けて憲法改正の原案を提案していく、こういうことも当然あり得ると思いますので、私は、安倍総理の発言と違っておるところはないと思います。

辻元委員 民主党提案者にお聞きしたいと思います。

 あの自民党新憲法草案というものは、今出されている国民投票法案の対象として考えられるでしょうか。

枝野委員 この委員会が結果的にうまくいかなかったことの原因は、それぞれの党が各党案を提出してしまったところに原因があるんだろうなと思っていまして、重要な問題ほど、一度自分のところの党の案を出すと、いろいろなことを言っても、結局最後は政治的には自分のところの案に相手を賛成させるという話にしかならなくなってしまう。したがって、憲法について本当に広範な合意形成をしようと思ったら、徹底して各党が自分の党の独自案を出さないということですよ。

 考え方は党でちゃんとまとめなきゃいけないけれども、どこかの党の案をベースに議論をするとか、どこかの党とどこかの党が案を出し合って、それで議論をするということでは、結局、今回の国民投票法と同じようにそれぞれのメンツの問題とかいろいろな問題で合意形成はできなくなるというのが今回の私の最大の反省だと思っておりまして、与党が提出するときに、お出しになるならしようがないんじゃないですかと言ってしまったことを私は大変後悔しております。

 したがって、もし将来、安倍総理のもとでは無理だと思いますが、将来、国会の状況、環境が変わって、広範な合意形成に向けて協議ができる環境が整う場合には、どこかの党の原案というのは全部棚上げをしてもらって、ゼロベースで協議をして、そして委員長提案みたいな形、あるいはそこで原案をつくるとか、そういう形でなければならないと思いますので、前置きが多くなりましたが、余り自民党の案についてはよく読んでおりません。つまり、これはベースになり得ないものであると思っております。

 ただ、あれを一括してかけるということについては、形式的に、本法ではかけられないというふうに思っています。

辻元委員 今お聞きしたかった答弁は、最後の部分なんです。民主党案も、それから与党案もかけられないと思います。ですから、私は、公明党の方も一緒に提出されていますけれども、非常に矛盾したことをしていると。それはやはり、憲法というものをどう考えるか。九十六条の議論を深めずに、一体となすということをどう考えるかということを深く考えてやっていなかった証拠だと思います。

 もう一点、憲法原理と関係することをお聞きしたいと思いますが、主権者とはだれかということなんですね。やはり、すべての人であると。

 ヨーロッパに伺いましたときに、調査団で行きました、皆さんも一緒に行きましたけれども、そのときに、先ほどから出ております公務員や教育者の運動規制について日本側から質問が出た、特に自民党の方々が質問されたときに、どこの国でも不思議そうな顔をして、何で規制するんですかと。私たちが驚くぐらいの反応だったことは覚えていらっしゃると思います。

 私は、立憲主義とか、立憲主義のもとでの主権者の意味とか、それから憲法の原理というのは、私たちが調査に行った、少なくとも民主主義が成熟したヨーロッパの国々と変わらないと思います。しかし、日本はあえて規制を置きました。与党案では規制を強めました。あの調査団で行ったときに皆さんもお聞きになったと思います、なぜ規制するのかと、憲法でしょうと。どこが違うと思われますか、根本的に。どこが違うから規制をかけるんですか。同じ立憲主義です。

保岡委員 辻元先生の言われるその国の方々の発言というのは、やはりその国に公務員を規制するような立法事実がない、そういう法律の必要のない状況が定着して社会に存在する。

 例えば、いいですか、そうおっしゃいますが、例えば買収を規定する必要があるか、買収を防ぐ公選法の必要があるかというときに、え、買収とは何ですか、うちの国では買収などということで選挙がゆがめられることはありません、だから、買収罪などというのは我が国ではありませんという国がありましたよね、先生。そういうふうに立法事実のない国というものは、その立法が必要ないのは当たり前であって、我が国の場合は、既にある公務員の政治活動に関する規制を、国民投票法制においては、国民投票運動においてはそれを拡大しない、その範囲内におさめる、なおかつ、ばらばらであるところを整理する、そのために三年間の経過期間を置いて、その間にきちっと整理をして、とにかく憲法の国民運動における公務員の勧誘とか意思の表明の制限にならないようにきちっとしよう、こういうことを我々与党併合案は提案しているわけでございます。

辻元委員 これは、先ほど枝野提出者の話にもありましたが、なぜ三年置くかです。きょう採決せずに、これは主権者とはだれかという問題にかかわる根本です。三年間に整備するんだったら、きょう別に採決しなくて、これから主権者はだれかという、徹底的に議論すべきですよ、私はそう思います。

 そこもみずからが矛盾している行動をしているわけです、三年間議論しましょうというわけですよね。主権者はだれか、どんな行動をしていいか、公務員も主権者です、それを三年間かけて議論しましょうとおっしゃっているわけですから。であるならば、きょう採決せずに、権威のある本委員会でここまで積み重ねてきたわけですから、議論を続ければいいじゃないですか。なぜきょう採決してほしいと保岡委員はおっしゃるわけですか。

葉梨委員 今保岡提出者の方からもお話あったんですが、私も辻元委員と一緒に海外調査に行かせていただいたんですが、当時の状況を申し上げますと、公務員、教育者の地位利用について特化して聞いたというわけではなかったわけですよね。当時、憲法推進議連の中で、公職選挙法に非常に似たような形での国民投票法案という法律案をつくって、それについてどうだと。

 私もオーストリアとかに行って非常にびっくりいたしましたのは、実際に選挙違反の検挙事例なんかはほとんどないということがわかりました。これは憲法についての国民投票を聞いたということではなくて、比例代表の選挙、あるいは一般的な国民投票についても含めて聞いたわけです。その中でわかってきたことは、人を選ぶ選挙と政策を選ぶ投票、あるいは比例代表というのは大分仕組みが違うな。その中で、憲法改正の国民投票の法案については、できるだけ自由な形を担保する形をやっていこうということを与党においてもあるいは民主党においても検討をしてきた、そういう経緯があるわけです。

 その中で、先ほど笠井委員の質問にもお答えいたしましたけれども、公務員の地位利用の中で、罰則で担保するのではなくて、定型的に明らかで、しかもこの行為についてはいけないというようなことについては、最低限ぎりぎり書いていこうというのが我々の法案です。

 また、先ほど辻元委員からもお話ございましたが、実は、私は、こちらの憲法調査特別委員会で、党人としては自民党案を通すべきと言わなきゃいけないというような発言をかつていたしまして、前回の公述人に対する質疑の中で、個人としては今の憲法草案を必ずしも全部了としているわけではございませんということも申し上げました。

 そして、これから議論をしていくということは、今なぜ三年というお話がございましたが、公務員の関係については、この三年間の間に公務員法の世界で議論をしてしっかり整理をしていただきましょう。また、なぜ三年なのかというのは、この三年間というのは非常に大事でございまして、赤松委員からの提案もございましたけれども、この三年間の間は憲法審査会は発議をいたしません。今の現行の憲法について徹底的な検証を行って、何が実態に合っているのか、何が実態に合わないのかということをやっていくわけです。たとえ自民党が憲法の草案を持っていたにしても、それを、まあいろいろとお話し合いはするにしても、それをそのままこの憲法審査会で話をしていくなんてことはあり得ない。

 そして、自民党の中の議論においても、今回修正案を提出したときに、自民党の一部の方々でしたけれども、この案では自民党の憲法改正案を通すことができない、護憲のための投票法案だというような意見もあったわけです。でも、公正中立な、そういうような投票法案というのを我々はつくらなければならないということで、今回の修正案を提出させていただいています。

辻元委員 私、今の御答弁を聞けば聞くほど何か詭弁的に聞こえてきます。非常に表面的な、技術的なことをおっしゃっているわけですよ。

 私は、公務員、教育者も含めて主権者はだれで、規制はどうなのかということを、これを通してから三年間考えるじゃなくて、もっと深めようと言っているわけです。なぜきょう通さなきゃいけないのか。通してから深めるのか。おかしいです。(発言する者あり)深めますよって、そんな話じゃないですよ。委員会をばかにしていると思いますよ。

 こういう報道がなされているわけですね、与党は当初国民投票運動には政治的行為の制限の規定を適用しない方針だった、しかし、自治労や日教組の組織的な改憲反対運動を懸念する自民党内から、公務員のビラ配りなども可能になると不満が噴出したため提出直前に修正した。こういう事実はあったんですか。

船田委員 そういう事実はありません。

辻元委員 では、この報道は誤報ですね。

船田委員 誤報だと思います。

辻元委員 思いますじゃなくて、言い切ったらいかがですか。

船田委員 誤報です。

辻元委員 わかりました。それは後で検証していきたいと思います。

 そうしますと、先ほどから出ておりました署名活動やデモ行進やビラ配り、どんなときはできて、どんなときはできないんですか。説明してください。

船田委員 国家公務員法の規定は、その罰則等については、やってはいけない行為については、人事院規則にゆだねております。

 それから、地方公務員法においては、その法本体の中で規定をしておりますけれども、これは全部説明するわけにはいかないのでありますけれども、考え方としては、やはり公務員として特定の候補者や特定の政党や団体を支持するような政治的目的を持った諸活動、諸活動の中には、今先生もおっしゃったように署名活動とかビラの掲示であるとか、あるいはデモであるとか機関紙の配布であるとか、さまざま規定をされておりますけれども、そういうものについては現行法において制限をされている、これはもう周知の事実でございます。

 我々は、国民投票運動にはできるだけこういうものは適用しないようにしたい、このように考えましたけれども、かといって、国民投票運動にかこつけてこのような行為をされるようなことを大変懸念をしたということでございます。こういうことについてはやはり一定の歯どめが必要であって、それと国民投票運動における制限というものをなるべく切り離しをして、国民投票運動においては、本当に自由に運動ができるような体制をつくりたい、そういう状況をつくりたいということで、それを実際に国公法、地公法において切り分けをしていくというためにはなお相当な時間が必要である。

 したがって、現時点におきましては、その部分については三年以内にきちんと検討をし、法整備を行うということで提示をさせていただいておりますので、ぜひその点は御理解をいただきたいと思います。

辻元委員 何をおっしゃっているのか、さっぱりわかりません。これだけ審議してきても、私もずっと委員会に出ていますけれども、それでまた最後に三年以内に検討するとおっしゃっているわけですよ、一般の主権者である国民がわかりますか、この法案を見て。何をしていいのか悪いのかが。そして、三年後までにその内容を考えますと、では、この委員会は何ですか。

 では、具体的に伺いたいと思います。

 市民団体を例えばある教育者や公務員がつくってですね、地域の人たちと一緒に、自分の住んでいる近所の人と一緒に。それで、憲法改正の国民投票になったときに、いや、私は賛成だ、反対だ、みんなで近所でビラをつくりましょう、近所にまきましょう、学習会しましょう、近所の市役所までデモしましょう、これはできるんですか。

船田委員 特定の候補者や政党や団体を支持するような政治的目的を持ったものでない活動、今先生がおっしゃったように国民投票運動のためにつくるような団体やいろいろな集まり、そういうところで活動すること、あるいはそこで何かビラをつくるということについて、公務員が関与することは自由であると思っています。

辻元委員 では、これはだめで、これはいいとだれが判断するんですか。

船田委員 そういうことも含めて今後三年間にきちんと議論をしようということでありますので、そこは御理解いただきたいと思っています。

辻元委員 だれが判断するかもわからない法律を出すわけですか、世に。要するに、これは物すごく、主権者とはだれで、何が国民投票運動なのかという本質なんですよ。そこをだれが判断するのか、これはいい、これは悪いと。それも含めて今から三年以内に検討する、それで本当に提出者として答弁しているとお考えですか。

葉梨委員 だれが判断するかということですけれども、与党案においては、適用除外といいますか、国民投票についての勧誘あるいは意見の表明を自由にするということは、国家公務員法、さらには地方公務員法の世界にゆだねたわけです。ですから、国家公務員法、地方公務員法の世界で、懲戒処分の対象になりますから、それは組織の上司といいますか懲戒権者が判断することになります。

 しかし、懲戒権者が判断をするということになりますと、具体的にどの行為は大丈夫で、どの行為はだめだというようなことをしっかりと法律に書いていかなきゃいけない。そういうような技術的なことを検討するということであって、それは除外をすることを検討することじゃなくて、必ず必要な法制を、三年までに、三年間の間に整備するということが法律でうたわれているんです。具体的な、技術的な検討は行いますけれども、この勧誘行為あるいは意見の表明を自由にするというのは、三年以内に確実に行うということが法律に書いてあるはずです。

辻元委員 今、技術的に技術的にと二回おっしゃったところに問題があるんですよ。先ほどから申しているように、これは技術的に質問しているのではありません。主権者とはだれかです。国民運動とは何なのか。だれができるのか、できないのか。

 では、もう一問お聞きしましょう。

 知事や市長などは、これは行政の長ですけれども、国民投票運動をどういう形でできるんですか。要するに公務員法の適用を受けるわけですか、いかがですか。

葉梨委員 知事や市長は特別公務員ですから、一般職の公務員を規律する国公法、地公法の適用はありません。

辻元委員 そうすると、知事や市長はどんどん運動を自由にして、その県庁の職員とかそういう人たちは適用を受けて、これはいい、これはだめと、どういうことですか。

保岡委員 今の知事とか市長は、葉梨先生が言われたように、確かに特別職です。総理とか大臣とか、そういう方々は政治活動の自由が担保されています。

 ただ、首長、地方公共団体の長などは市民の洗礼を受ける、選挙がある、その他いろいろありますから、おのずから節度を持って臨むということで、その人の良識にゆだねられていると考えていただければ結構だと思います。

辻元委員 公職選挙法とは別である、考え方は別であるという上で本委員会は今まで議論を深めてきたので……(発言する者あり)今どなたかが公職選挙法でもあるじゃないかとおっしゃったこと自身、今までの議論の根幹がわかっていないということです。(発言する者あり)

 私は、申し上げます、今、三年以内にこの部分をどうするかを決めるというのを決めない限り、いいじゃないですか、徹夜でそこを議論しましょうよ。(発言する者あり)決めない限り、採決なんかできないですよ。これは根本にかかわる問題ですよ。

 立憲主義と申し上げました。主権者とは何なのか、国民運動とは何なのか、そして憲法九十六条をどう解釈するのか、そこのところをきちんと押さえていないから、最後、採決したいとおっしゃっているときまでも、いや、三年以内に考えるんだとか、あいまいな答えしかできないじゃないですか。

保岡委員 辻元先生は何か思い入れがあって主権者にこだわりますが、立憲国家にあって主権者が国民であることは当然であって、公務員も国民でございますから、我々は、特定の政治活動とリンクするようなものはいけません、そうでない純粋な意見の表明とか勧誘行為については、むしろ明確にそれを認める方向で切り分けをしっかりして、国民の一人である公務員の国民運動における自由を保障しようと努力しているということでございまして、辻元先生が前提とされることはまさに当然中の当然で、何も議論に値することではないと思います。

辻元委員 委員長。

中山委員長 時間が参りましたから。

辻元委員 今おっしゃいましたけれども、思い入れがあり過ぎると。思い入れがあって当たり前ですよ。(発言する者あり)私たちは何の審議をしているんですか。それは、立場は関係ありません。例えば、憲法に賛成、反対の立場は関係ないんです。立憲主義の国として何を大事にしなきゃいけないかということに思い入れがあってどこが悪いんですか。(発言する者あり)当たり前だと思いますよ。採決はやめていただきたいと思います。

中山委員長 辻元清美委員に申し上げますけれども、割り当てされた時間が既に超過をいたしております。

辻元委員 今のところの疑問が解決しない限り、質疑を終局すること自体に私は反対です。反対です。委員長、とめないでください。もう一回、私は委員会を開いて、三年後に、三年後でいいんですか、皆さん。どうですか。いいんですか、これで。(発言する者あり)

中山委員長 これは理事会で……(発言する者あり)

辻元委員 もっと委員会で審議すべきじゃないですか。

中山委員長 発言時間の割り当てが、各党で協議しておりますから、これはこれ以上の……(発言する者あり)

辻元委員 今非常に大事なところです。これは、今の答弁じゃ納得できないですよ。納得できないです。(発言する者あり)

中山委員長 持ち時間が超過していますから、これで辻元委員の発言は終了いたします。(発言する者、離席する者あり)

 これにて質疑は終局しました。(発言する者多く、聴取不能)菅総務大臣。(発言する者あり)

菅国務大臣 政府としては、国会における御判断を尊重し、適切に対処してまいります。(拍手、発言する者あり)

中山委員長 討論の申し出がありますので、これを許します。笠井亮君。(発言する者あり)

 理事会の話し合いどおりにこれはやっているんですから、どうぞひとつここは。理事会の申し合わせに従って運営していますから。それをひとつ基本にしてやっていますから。(発言する者あり)どうぞ自席へ帰ってください。自席に帰ってくださいよ。(発言する者あり)これは中川先生も枝野先生も自民党と一緒に相談しながらやっていこうという運営の方針のもとにきょうまでやってきたわけですから、そこのところはひとつよく……(発言する者あり)いや、きのうは深夜までいろいろ打ち合わせされていますよ。だから、私は枝野さんのことを心配しているんです。(発言する者あり)

 静粛に願います。席へ帰ってください。(発言する者あり)とにかく自席に戻ってください。自席へ戻ってください。自席へ戻っていただいたら、私は物を言いますから。自席へ戻ってください。まず戻ってください。(発言する者あり)いや、もう討論はありません。時間は終わっているんですから。時間は超過しているんです。だから、約束した時間を守ってもらいたい。(発言する者あり)自席へ戻ってください。自席へ戻ってください。自分たちの割り当て時間の演説が終わったら、やはりそれは討論をやったということですから。(発言する者あり)船田委員は答弁ちゃんとやっていますよ。そのようなことはありません。ルールを違反してもらうと運営できないですよ。(発言する者あり)答弁に納得しなかったら延々とやるわけですか。とにかく自席へ戻ってください。この異常な状態で運営はできません。(拍手、発言する者あり)休憩しない。

 もう自席へ戻ってくださいよ。こんな異常な状態で。(発言する者あり)それでは、一応討論は終わっていますから。(発言する者あり)いやいや、あなた方が混乱させているんじゃないか、これは。お互いに違いがあってもしようがないんだ。(発言する者あり)内閣の意見は、大臣からの説明がございました。とりあえず自席へ戻ってください。こういう異常な状態で物事を決めるわけにいかない。自席へ戻ってください。(発言する者あり)おさめるとはどういう方法でおさめるのですか。しかし、話し合いは終わっているんですよ。

 これから採決をいたします。(発言する者あり)

 枝野君外二名提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。(発言する者あり)

    〔賛成者起立〕

中山委員長 起立少数。(発言する者あり)これは委員長職権でやっているんです。よって、否決されました。

 保岡君外三名提出の修正案に賛成の諸君の起立を求めます。(発言する者あり)

    〔賛成者起立〕

中山委員長 起立多数。よって、両法律案は併合修正議決されました。(発言する者あり)

 委員会報告書の作成は、委員長に一任を願うことに賛成の諸君の起立を求めます。(発言する者あり)

    〔賛成者起立〕

中山委員長 起立多数。よって、本案は決しました。(発言する者あり)

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

中山委員長 これにて散会をいたします。

    午後六時四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.