衆議院

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第12号 平成18年11月15日(水曜日)

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平成十八年十一月十五日(水曜日)

    午後一時一分開議

 出席委員

   委員長 森山 眞弓君

   理事 稲葉 大和君 理事 河村 建夫君

   理事 斉藤斗志二君 理事 鈴木 恒夫君

   理事 町村 信孝君 理事 西  博義君

      井脇ノブ子君    伊藤 忠彦君

      稲田 朋美君    猪口 邦子君

      岩永 峯一君    上野賢一郎君

      臼井日出男君    大島 理森君

      大塚 高司君    海部 俊樹君

      北村 茂男君    北村 誠吾君

      小坂 憲次君    佐藤 剛男君

      清水鴻一郎君    島村 宜伸君

      とかしきなおみ君   戸井田とおる君

      中山 成彬君    長島 忠美君

      西川 京子君    馳   浩君

      鳩山 邦夫君    福田 良彦君

      馬渡 龍治君    松浪 健太君

      渡部  篤君    斉藤 鉄夫君

      坂口  力君    東  順治君

      保利 耕輔君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   文部科学大臣       伊吹 文明君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     塩崎 恭久君

   国務大臣

   (少子化・男女共同参画担当)           高市 早苗君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   文部科学副大臣      池坊 保子君

   文部科学副大臣      遠藤 利明君

   文部科学大臣政務官    小渕 優子君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          田中壮一郎君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   衆議院調査局教育基本法に関する特別調査室長    清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十五日

 辞任         補欠選任

  佐藤 剛男君     加藤 勝信君

  戸井田とおる君    とかしきなおみ君

  西川 京子君     清水鴻一郎君

  松浪健四郎君     愛知 和男君

  森  喜朗君     北村 茂男君

  やまぎわ大志郎君   篠田 陽介君

  土肥 隆一君     小宮山泰子君

  古本伸一郎君     三谷 光男君

  坂口  力君     東  順治君

  石井 郁子君     穀田 恵二君

  保坂 展人君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  愛知 和男君     伊藤 忠彦君

  加藤 勝信君     長島 忠美君

  北村 茂男君     馬渡 龍治君

  清水鴻一郎君     西川 京子君

  篠田 陽介君     松浪 健太君

  とかしきなおみ君   戸井田とおる君

  小宮山泰子君     土肥 隆一君

  三谷 光男君     古本伸一郎君

  東  順治君     坂口  力君

  穀田 恵二君     石井 郁子君

  阿部 知子君     保坂 展人君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤 忠彦君     福田 良彦君

  長島 忠美君     佐藤 剛男君

  馬渡 龍治君     森  喜朗君

  松浪 健太君     やまぎわ大志郎君

同日

 辞任         補欠選任

  福田 良彦君     大塚 高司君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚 高司君     松浪健四郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 教育基本法案(内閣提出、第百六十四回国会閣法第八九号)

 日本国教育基本法案(鳩山由紀夫君外六名提出、第百六十四回国会衆法第二八号)


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     ――――◇―――――

森山委員長 これより会議を開きます。

 開会に先立ちまして、民主党・無所属クラブ、日本共産党、社会民主党・市民連合、国民新党・無所属の会所属委員及び日本国教育基本法案の提出者に対し御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。

 再度理事をして御出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

森山委員長 では、速記を起こしてください。

 理事をして再度御出席を要請いたさせましたが、民主党・無所属クラブ、日本共産党、社会民主党・市民連合、国民新党・無所属の会所属委員及び日本国教育基本法案の提出者の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 第百六十四回国会、内閣提出、教育基本法案及び第百六十四回国会、鳩山由紀夫君外六名提出、日本国教育基本法案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省生涯学習政策局長田中壮一郎君、初等中等教育局長銭谷眞美君の出席を求め、説明を聴取いたしたく存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

森山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河村建夫君。

河村(建)委員 本日は、安倍総理大臣御出席のもとに、この特別委員会の締めくくり総括質疑をと、こういうときを迎えたわけでございます。まことに感慨深いものがございます。

 ただ、極めて残念なことは、ごらんのとおり、野党席は空席になっております。まさに国会議員としての責務を放棄した、野党の側が審議拒否をしたと、こういうことになるわけでございまして、極めて遺憾な思いでございます。

 これまでの経緯についてはまた御説明したいと思いますが、そもそも、この教育基本法の改正問題、この現教育基本法が昭和二十二年に成立した当時、その直後の国会、先輩議員の皆さん方の議論を聞いていても、いろいろな問題点が既に指摘をされておった。個人の尊厳は大変結構なことだけれども、このままいくと個人主義の子供ができてしまうのではないかとか、いろいろな御指摘があった。そのことが今、いろいろな問題として現実にあらわれてきているということを我々も痛感してきたところでございます。

 実は、私自身がこの問題に直接かかわるようになりましたのは、平成八年橋本内閣、橋本総理のもとで六つの改革、六番目に教育改革というのが上がってまいりました。当時私は文教部会長でございまして、当時の文教制度調査会長がここにお座りの森山眞弓先生でございまして、早速、党としても教育改革を本格的に取り組まなきゃいかぬということで、教育改革本部というものを立ち上げたものでございます。そこに教育基本法に関する特別委員会が生まれた。そこからスタートしたところでございます。

 自来、あれからちょうど十年になるわけでございます。この間さまざまな議論を尽くし、今日に至っておるわけでございますが、特に平成十二年の小渕内閣におきまして、教育改革国民会議を総理の私的諮問機関として設置をされた。そこで十七の提言というものが提示をされた。皆さん御存じのとおりでございますが、特に、その中でも、やはりこれから教育の抜本的な改革をやろうとすれば、まずこの教育基本法の見直しが必要であるという提言がされた。これが一つの大きなエポックになった、こう思っております。

 自来、森内閣におきまして町村文部大臣のもとで周到な準備をされ、次の小泉内閣におけるときは遠山敦子大臣のもとで、中央教育審議会にこの問題に対する諮問がされ、そしてその答申を受けて、さらに与党間の協議を経て、本年初頭に、通常国会に入りまして法案が提出されて、今日に至っておるわけでございます。

 安倍総理は、さきの国会では官房長官でいらっしゃいましたから、当時は常時出席していただいて、議論にも参加をいただき、状況については御存じだと思いますし、また、その後の経過についても逐次御報告を受けておられると思います。

 この今回の教育基本法におきまして、広範な議論がされた、私はこう思っております。その結果、現時点で、午前中に御案内のように中央公聴会を有意義に終えたところでございますが、すべて野党の要望に応じてこの委員会は時間をとってきたわけでございますが、既に現時点で百五時間十六分、もう私が三分か四分いただきましたから、もう十九分、二十分と来ておるわけでございます。さきの国会で四十九時間三十八分、そして今国会で五十五時間三十八分ということになるわけでございます。

 森山委員長におかれましても、公平無私の運営をされました。また、町村筆頭理事も極めて忍耐強く、中井筆頭理事の要望に沿って、そしてすべて野党の主張に沿って、地方公聴会も二回やりましたし、中央公聴会は、既に前回の前国会から引き継ぎますと四回やっているわけでありますから、必要ないのではないかということも強く言ったのでありますが、ぜひということもございまして、中央公聴会をいたしました。また、中央公聴会においては一般公募者が二人加わるという、これまでになかった審議も先ほどされたわけでございまして、そういう意味では非常に円満な公聴会でございました。

 また、野党の筆頭理事もこのことについては高い評価をされておりまして、一昨日におきましても、理事会において、野党側が強く求めた中央公聴会が開かれる予定になって、その後いわゆる締めくくり総括をやられて、討論、採決が自然の流れだな、こういう話も出たわけでございますし、きょう早朝の理事会におきましても、円満に公聴会が開かれた、このことについてはお互いの努力が実ったものであって感謝する、こういう言葉があったわけでありますが、いわゆる採決には応じられないと。言われたことは、いじめ、自殺、タウンミーティング等々、未履修の問題もありますが、この議論がまだ十分でない、こういうことであったわけでございます。

 実は、きょうは伊吹大臣には引き続いて御苦労さまでございますけれども、午前中は文部科学委員会もこの問題の集中審議をされたと聞いておるわけでございますから、当然そこでできるわけでございまして、これは審議拒否の説明になっていないわけでございます。仄聞いたしますに、これはどうも党利党略、まさに政局にせんがための民主党の戦略そのものであるのではないか、こう断ぜざるを得ないわけでございまして、政権交代を標榜されております野党第一党としてその資格は真にありや、問わざるをなりません。まさに、正体見えたり枯れ尾花とでも申しますか、そういう状況下にあるということを非常に残念に思っておるわけでございます。

 ここで野党を攻撃いたしましても教育がよくなるわけではございませんので。

 本格的な機会をいただきました。時間の許す限り質疑に入りたいと思いますけれども、きょうは十一月十五日でございまして、日本の文化、伝統、風俗によりますと七五三の日でございまして、一昨日ですか、秋篠宮家におきましても悠仁親王がお参りをされたと伺っております。新聞には愛称ゆうちゃんなんて出ておりましたけれども、我々はそういう伝統、文化を持っております。

 実は、私ごとでございますが、私も、二人目の孫のために、今週中に土日にかけてお宮参りをと要請されておるようなわけでございます。この未来を担う子供たちが、日本人として、これから自信と誇りを持って、そしてまさに自立をし、みずから生きる力をしっかり蓄えていく、この教育が問われております。みんながよき教育のためにという思いでこの教育基本法に取り組んでおるところでございます。

 安倍総理が総裁選挙のときから教育再生を第一課題に挙げて、そして総裁になられ、直ちに組閣をされて、安倍内閣の最重要課題に教育再生を挙げられたということ、私は、満腔の敬意とそして賛同を送り、ぜひこの実現に全身全霊を打ち込んでもらいたい、そういう思いでおるところでございます。

 先ほど申し上げましたように、官房長官としてもこの席にずっとおられました。この際、改めて、これまでの委員会の質疑等々もお聞きのとおりでございますし、御承知のとおりでございますが、教育再生に臨む決意というものをお聞きいたしたい、こう思います。

 特に、再生会議をお立てになったということ、私は非常に意義のあることだと思っております。私も小泉内閣で文部科学大臣を拝命いたしましたときに、経済財政諮問会議に呼び出されて、そこで教育論議をしたわけでございますが、経済財政諮問会議、経済効率を重んじるその場で教育を語るというのは、どうしても違和感があった。私は、これこそまさに、教育は国家の百年の大計でありますから、やはり教育を主体とするそうした会議があって、そこで議論を述べるのが本来ではないか、こう思い続けておっただけに、再生会議にかける期待も大きいものがあるわけでございます。

 ぜひ、今まさに教育基本法をこれから衆議院を通し、参議院で議論し、今国会で成立を目指しておるわけでございますが、その成立も一つの視野に入れながら、再生会議の立ち上げに向かってのこれからの御決意を改めてお聞かせいただきたいと思うわけであります。

安倍内閣総理大臣 教育の目的は、志ある国民を育て、そして、もって品格のある国家、社会をつくっていくことであります。

 近年既に、河村先生も御指摘になっているように、子供の道徳心あるいは学ぶ意欲、そしてまた学校や地域、家庭が子供たちを育てていく力そのものが低下をしているのではないか、このように言われております。また、いじめの問題、未履修の問題におきましても、本来規律を子供たちに教えるべき学校が、先生が、あるいは教育委員会が規範意識そのものに欠けている、こういう指摘もなされているわけでございます。そういう観点からも、現在私どもが提出をしているこの教育基本法の改正、これをぜひとも成立させていただきたい、このように思うわけでありますが、その上で、教育再生会議において、具体的に今の状況にこたえ得る中身について議論し、そしてまとめてもらいたい、このように思っております。教育の再生を図るために、各界の有識者に御協力をいただきまして、スピード感を持って検討を進めているところでございます。

 具体的には、会議において、教育再生の大きな基盤となる教育基本法に示された理念を踏まえまして、質の高い教育を提供し、学力の向上を図る方策、規範意識や情操を身につけた美しい人づくりのための方策、そして家庭や地域の教育力を高め、地域ぐるみの教育を再生するための方策、さらには、学校で生じるさまざまな問題に対する現場の教員による対応のあり方、あるいはきちんとしたチェック機能が働く教育委員会のあり方などについて、幅広い視野から教育再生のための抜本的な施策を検討していただいているところでございまして、この中で案を取りまとめ、そして政府全体として取り組んでまいる決意でございます。

河村(建)委員 ありがとうございました。

 公教育の充実ということもたしか指摘をされておると思いますが、私は、先ほど経済財政諮問会議の話を申し上げましたが、呼び出されたという言葉が適当かどうかわかりませんが、あそこの議論で、文部科学大臣としての取り組むべき教育課題についてあそこで述べた後に、当時の委員でいらした奥田経団連会長から一言、河村大臣の言ったとおりにすれば塾はなくなるんですねと、こう聞かれたのをよく覚えております。これは、私だけかと思っておりましたら、前大臣の遠山大臣の本にもそのことが書いてありましたから、歴代大臣はそのことを聞かれた。やはり今の公教育に対するまさに厳しい指摘もその中にあると受けとめておったわけでございます。

 もちろん、公私で成り立っている日本の教育でありますが、そういう指摘があったということもこれからの課題として、公教育の充実という問題についても取り組まなきゃいかぬ、私自身もそう思っておるところでございます。

 ただ、教育再生会議を立ち上げるのを待っていたかのように、今いろいろな問題が起きております。残念な、悲しい事件も起きております。いじめ自殺の問題、あるいは、学校現場では未履修というような事件も発覚いたしましたが、この現状について、総理は率直にどんな御感想をお持ちでしょうか。率直なお話をお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 未履修の問題、そしていじめの問題でございますが、未履修の問題につきましては、本来高校を卒業するに当たりまして必要な科目を子供たちに履修させていなかった、本来規範意識を教えるべき学校がそれを逸脱していたということでございます。なぜそれが起こったかといえば、大学受験のためにはその方が効率的である、こう考えた結果なんだろう、こう思います。

 やはり、教育の基本に立ち戻って、高校は高校の段階で子供たちの人格の形成を図らなければいけないわけでありますし、その段階で教えるべき中身、知識について、それを完成させるということについて責任感を持っていただかなければならないということではないか、このように思います。

 先生の、教職員の使命、これは政府の教育基本法の改正案の中にありますように、崇高な使命を負っているわけでございまして、これは単に大学の受験のためということではなくて、常に人格の完成ということを念頭に、今後、基本に立ち戻って教育に当たってもらわなければならない、このように思うわけでございます。

 未履修の問題につきましては、こうしたことが二度と起こらないように徹底をしていかなければならない。また、教育委員会、学校当局、学校長も含めて、責任感を持って取り組んでいくことが大切だろう、このように思います。

 また、いじめの問題につきましては、これはやはり、子供たちの自殺につながっているということから、大変深刻な、重大な問題であると考えています。

 いじめ、これはもう昔からいじめというのは存在をしていますが、それが直ちに自殺にこのように結びつくということはなかったのではないか、こう思いますが、やはりそれぐらい今のいじめの問題が深刻な問題になっているということの証左であろう、このように思います。学校の現場において、あるいは家庭と一体となって、地域と学校が一体となってこの問題に取り組んでいくことも大切である、このように思います。

 どのような取り組みができるのか教育再生会議におきましても現在検討をしているところでございまして、これはまさに現在起こっている問題でありますから、悠長な議論ということではなくて、直ちにできることはやっていかなければならない。そしてまた、教育再生会議の委員の方々も、各個人の資格として、子供たちにアピールを出しています。いじめている子供あるいはいじめられている子供たちに対してのアピールを出している。まず、それぞれができることに取り組んでいくことが重要だろう。政府としても、この問題、我々、できることを直ちにやっていく、そういう考え方で取り組んでいきたいと思います。

河村(建)委員 ありがとうございました。

 特に未履修の問題については、もう差し当たって、受験目前の生徒の問題であり、いち早い対応をしていただいた、こう思っておりまして、各学校は大わらわで今補習に入っておる、こういうふうに思います。明確な指示があったということで、子供たちもやはりやるべきことはやらなきゃいかぬ。テレビを見ておりますと、先生方のこと、校長先生のことを言うんでしょう、大人も間違うとしかられるんだななんて言っている子供がおりましたが、そういうことをきちっとやっていくことの重要性を感じて勉強にいそしんでいるのではないかと思います。

 総理にもう一点確認をしたいと思っていることですが、小泉総理は、就任に当たられたときに、米百俵の精神でと、こう言われました。これは大変人口に膾炙した話でありまして。ただ、我々の期待は、米百俵の精神というのは、確かに米百俵をいただいた長岡藩、それを食べずに、そのお金を人づくりに充てたというところに我々の思いがあったわけでありまして、さあ小泉改革には教育改革、そういうものがという思いが私はあったと思います。そのことは小泉総理にもじきじきに、さきの国会の冒頭にも申し上げたのでありますが。

 それがゆえに、今回、再生会議を立ち上げて、教育改革、あらゆる問題に取り組もうとすれば、それなりの財政措置というものはやはり必要になってくるわけでございます。これをどのようなふうに考えていくかということが私は非常に大事だと思います。

 一方では、二〇一一年においてプライマリーバランス、基礎収支黒字化という課題もあるわけでございます。この問題と両立をさせていかなきゃならぬ。私自身も、政調にあってこの問題に取り組んだ。しかし、教育費についてはやはり特別に考えなきゃいかぬという基本的な認識のもとにあるわけであります。もちろん、人確法の精神に基づいて、先生の給与について、これが優遇されておる、この格差がどの程度あったらいいかというような問題は当然我々も議論をしたところでございますが、全体として、やはり日本が教育立国、世界に冠たる経済大国の原点が教育にあることを考えれば、その視点も持っていかなきゃならぬ、こう思っておるわけでございます。

 この米百俵の精神、これを改革のあらゆる視点において小泉内閣から引き継いでいかれるわけでありますが、この点についてどういうふうにお考えであるか、お聞かせをいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 小泉前総理が述べられました米百俵の精神というのは、まさに目先の御飯よりも将来の地域の発展、国の発展を考えて子供たちに投資をしよう、それはやはり教育である、こういうことだと思います。明治の日本の発展も、やはりそれに至る日本における教育の、極めて教育に対して熱心であった結果であろう、このように思うわけでございまして、教育はまさに私は未来への投資であると思います。

 将来の日本のためにも、しっかりと教育に力を入れていくことは当然でございます。限られた財政でありますが、効率化を徹底しながら、めり張りをつけながら、教育の必要な財政措置はしっかりと講じていかなければならないと私は考えております。

河村(建)委員 ありがとうございました。

 ぜひそういう精神で教育改革にしっかり取り組んでいただきたい、我々も大いにバックアップ申し上げ、また期待もいたしておるところでございます。

 それでは、さらに、新教育基本法とでも申しますか、それの具体的な問題に若干入らせていただきます。

 伊吹大臣、ここまでまさに正面からこの教育基本法の問題に取り組んでいただきまして、我々大臣経験者から見ても及びつかないような立派な答弁をされておりまして、我々自身も、こちらにおりまして、大いに勉強をさせていただいたような気がいたします。

 そこで、私も、総括質疑に当たりまして議事録を見ながら、これまでのこの百時間余りにおいて、ほとんどの問題、ほとんどといいますか、もう全部議論はされておると言っても過言でないと思います。野党においても、一人の人が四回も五回も、もちろん共産党とか国民新党なんかは十回、十六回とか、とても、予算委員会でも考えられないぐらいの議論を尽くされております。

 私は、今回のこの中で、いわゆる三点セットと言われますが、国を愛する心を養うといいますか、そういう問題、あるいは不当な支配の問題、それから宗教教育の問題等々、このあたりが非常に話題になったのでありますが、一つ、与党の法案は、国を愛する態度を養う、こうなっているわけでございます。私は、このことは、愛する心ではないかとかいろいろ言われておりますが、既に学習指導要領にこのことはきちっと書いてあるわけでございまして、これをまさに教育基本法という上位法が担保することになるんだと、こう思っております。

 したがいまして、これからの教育の実施に当たって、国を愛する心と態度の涵養が一体となって進む方向に持っていかなきゃならぬ、こう思っているんです。したがって、特に教え込むところは教え込むというのがまさに義務教育でもございますから、児童生徒の発達段階に十分配慮した教育をやっていかなきゃならぬ、こう思っております。

 きのうもNHKでこの問題を取り上げておりまして、学校現場の先生方はいろいろ苦労して、まさにその子供たちに合った教育を工夫して授業をされているさまを見ました。まさにそういう展開がこれから本格的に必要になってくる、こう思うわけであります。もちろん、愛国心を強制すべきではない、これはこれまでの大臣答弁でもはっきりいたしておるわけでございます。

 また、あわせて、やはり道徳教育をやろうとすれば、宗教教育ができなくて本当にできるのかという議論がございます。私も、新渡戸稲造先生の「武士道」にありますように、外国から見ると、日本は宗教教育をやらないで何で道徳教育をやっているんだ、日本は武士道でやっているんだ、こういう話になっておりますが、この際、宗教の一般的教養をこれから培うということになりますと、これはやはり、人間の力を超えるものに対する畏敬の念を持つ、こういうことも教育の中においては非常に必要になってくると思いますので、こういうことも考えながら教育内容あるいは教育方法を開発していかなきゃいかぬ、こう思うわけでございます。

 以上の、まさに今、これから国を愛する態度を養成し、心を養成していくについての大臣の御見解をいただきたいと思います。

伊吹国務大臣 二つの問題についてお尋ねがありましたが、河村先生は大変この分野で御造詣が深いわけですが、やはり国という領土があって、そこで日本民族が営々として歴史を刻んできて、その祖先の営みの中で、悪いものが捨てられ、いいものが集積してきたものが伝統であり、文化であり、現実だと私は思います。したがって、今回の教育基本法の政府提出の改正案では、我が国の伝統と文化、すなわち祖先の営みで我々が恩恵を受けているもの、それを尊重し、そしてそれをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養う、こう書いてあるのは、まさにそういう意味でございます。したがって、心にもないことを言うという言葉もありますが、すぐ態度に出るという言葉もあるわけでして、私は、今先生がおっしゃった、心と態度というのは、やはり一体となって涵養されてくると。

 したがって、過去の歴史で我が国が、例えば中国の元朝からどういう攻撃を受けたときに、我々はどういう対応をしたか、また秀吉の時代に朝鮮半島にどういう行為をしたか、そういうことをいろいろ反省をしたりあるいは検証をしたりしながら今日に至っているということを子供に教えていく。そして、そのことが結果的に、日本の国土と、そこで営まれてきた文化、伝統、そういうものに対する尊敬をつくり上げていく、そういう指導要領にぜひしたいと思っております。

 それから、宗教は、やはり人間というのは非常にちっぽけなものであって、特に今に生きている我々は、祖先の営みから見ると極めて短い期間しか生きておりませんので、積み上げられてきたものに対する謙虚さというのは、やはりこれは保守主義の原点なんですね。同時に、自然に対する畏敬の念、我々は決して宇宙には及ばない、大きな山には及ばない、そういう気持ちを常に持ち続けているということがあらゆる宗教のやはり原点にあると思います。

 そういう意味での宗教的態度の涵養というのはぜひ必要なことだと私は思いますが、その中で特定の宗教の布教に通ずるような教育をするということがあっては、やはりこれは憲法上非常に難しい。ただ、そういう布教をする心を持っているのか、それとも一般的な教義として説明をしているのかというのは、まさに教える人の心の中にある問題ですから、そこはやはりその任にある者が自制をし、自制をしながら先生のおっしゃった宗教的態度を涵養していくということになる。これがまた道徳その他につながっていく、こういう理解でやらせていただきたいと思います。

河村(建)委員 これから本格的な宗教教育に学習指導要領を通じて取り組んでいただくこともあろうと思いますが、宗教を題材とする教材なんかも必要になってくるだろうと私は思いますね。こういうことについては、まさに児童生徒の信教の自由といいますか、これを侵してはなりませんし、大臣おっしゃるように、特定の宗教に偏るということはあってはならぬわけでございますので、やはり政府が率先してガイドラインをつくるなり、何かこういう方策を考えていただく必要がある。また、地方公共団体が行う教育活動を指導する必要もあるのではないかと考えておりますので、この点については文部科学省としても十分御検討をいただきたい、こう思いますし、これから宗教に関する一般的な教養を行う場合においても、これは我が国の伝統と文化を次代に伝えるという視点でこれからの宗教教育、一般的な教養も取り組んでいただく必要があるのではないか、このように思っておりますので、そのことを求めておきたいというふうに思います。

 それから、地方教育行政推進に当たっては、国民の信託に基づいて法の命ずるところをそのまま実行するという教育行政をこれからやっていくわけであります。まさに教育行政が不当な支配の主体とならないようにということでありますから、この点について、今回のこの法律が成立後、地方公共団体にきちっと周知をして、その行政の円滑な、かつ適正な運用が図られるようにこれは周知徹底をしていただく必要があると思いますが、この点についていかがでしょうか。

伊吹国務大臣 それは、河村先生を含めて歴代の文部大臣、文部科学大臣が最も意を尽くされたところ、努力をされたところだと思います。

 各教育委員会は、やはり国権の最高機関である国会が議決した法律に基づいてこの国は動いているんだということは十分理解しておると私は思いますが、教育現場の教職員に、いわゆる教育権と言ってもいいんでしょうか、というものはどこにあるかということについていろいろな解釈がある。それによって、旭川の事件のようなものもありますし、この前の東京地裁が判決を下しました君が代・日の丸の学習要領に対応する現場のああいう事件もあるということですから、これは今回の法律改正案ではそのところは大変明確にしていただいたと私は思うんですね。

 ですから、法律に基づいて行われる教育行政というものは、これはもう不当な支配には属さないけれども、堂々と正当なものであるんだということをはっきりしていただいているわけですから、むしろ、各教育委員会が徹底しなければいけないのは、特定の組合に属している教職員の人たち、そういう人たちにこのことをはっきりとわかってもらわねばなりません。そう考えております。

河村(建)委員 ありがとうございました。明確な御答弁をいただいたと思います。

 これは教育行政の問題として考えていかなきゃなりませんのは、国と都道府県と市町村と学校というこの四層構造も指摘をされておりますので、これからは教育行政の進捗等において、これはやはり文部科学省としても確実に把握をしながら政策評価を適切に行う必要があろうと思います。そういう意味で、教育行政の改善に努めてもらいたい、このことは、時間の関係もございますので、強く要望させていただいておきます。

 それから、今回の議論を通じて、教育に対する国の役割はどこまでなのか、地方の役割はどこまでなのかという議論がかなりあったところでございます。本来、民主党の法案では、明確に、最終責任は国が負うと書いてありますが、政府案では、適切な役割を担う、こう書いてあります。

 これは、これから地教行法等々においてそういうことを明確にしていく必要がある、私はこう思っておるのでありますが、ただ、憲法二十六条の、教育権を認め、また保護者に教育の義務を課している精神からいいますと、やはりそこに国が負うべき責任の度合いがあるんだ、こういう視点に立ってこれからもこの問題をやるべきであろうと思っております。

 歴代の文部大臣が、小泉内閣、四名文部大臣が生まれたのでありますが、その中で、絶えず総理と意見が違ったといいますか、特に義務教育国庫負担制度の問題がございました。知事会は、義務教育は地方自治事務になっているんだから、予算も当然、義務教育については全額地方が持つべき筋のものだ、こういう議論を展開されて、この点についてはかなり激しい議論になり、私も小泉総理とじきじきにこの問題についてはやり合った覚えがございます。結果的に、三分の一ということで、一歩譲りながら、しかし根幹は残すという方法をとりました。

 我が党においても、この問題についてはかなり議論をしたのでありますが、サッチャー内閣以来のイギリスの改革の流れを見ても、あるいはフランスのように義務教育は国家公務員でおやりになっている状況を見て、世界の潮流はむしろ、国が持つべき筋のものだという話でありまして、自民党の義務教育に関する特別委員会、私も直接かかわってやってまいりましたが、皆さんの結論は、むしろ義務教育国庫負担金は全額国が持つべき筋のものである、こういう結論に達したところでございます。この点については、大臣はどういうふうにお考えか。

 また、さきの地方分権一括推進法によって、いわゆる教育事務というものが自治事務になった。これは、昔もそうだ。戦前はむしろ国家管理だという形。だから昔からそうだったんだという理屈ではありましたが、しかし、本来これは法定受託事務ではないかという議論、党内議論はそれが優勢であったわけであります。このことも含めて、大臣は、国の教育に対する役割についてどのようにお考えでしょうか。

伊吹国務大臣 安倍総理は、就任された後の所信表明で、すべての児童に基礎学力と規範意識を植えつける機会を提供したいということをはっきりとおっしゃっております。すべての児童に目配りができるのは、やはり国しかない。これは、私は当然のことだと思います。特に義務教育は、国民の負担において原則として行われているわけですから、特にその色彩が強くなければなりません。

 今回の未履修の問題等を体験してみても、やはり、行政の執行に責任を負うためには、予算と人事と法令の執行権という三つの権限の裏打ちがなければ、残念ながら最終的な結果責任は負えないんですね。今、そこが非常に不明確になっております。ただ、今度は、教育の国家管理という批判も当然出てくる。同時にまた、地方の首長に教育委員会が持っている権限を渡すと、これは、選挙で選ばれた知事が自分のイズムで何を始めるかわからない。いろいろなことがありますので。十一年の地方分権一括法の前は、これは団体委任事務だったんですね、義務教育の部分は。ですから、これは、私はやはり、地方自治事務じゃなくて法定受託事務として地方にお願いするというのが筋じゃないかと思いますが。

 そのあたりをいろいろ、予算の裏づけ、それから地方の教育委員会において動いている現実、そのところを考えながら、この法律を院でお認めいただければ、あと、この法律の下についていく教育委員会の組織に関する先生がおっしゃった法律やその他のもろもろの法律をつくっていく段階で安倍内閣としての考えをまとめて、ぜひ御協議をさせていただきたいと思います。

河村(建)委員 ありがとうございました。

 もう時間が参りましたからおきますが、総理にも、これは大きな一つの基本的な考え方でありますから、ぜひ再生会議においても、法の細かいことは別として、あとの法律に任せればいいことでありますけれども、基本方針というものはやはり議論をしていただく必要があるのではないか、こう思いますので、再生会議においてもぜひこの問題について取り上げていただきたいと思います。

 残念ながら野党の諸君は見えないのでありますが、これだけ重要な教育の問題、全国民にかかわる問題でございます。それで、十分議論もこれまでしてきた。たしか小沢代表は、議論を尽くして採決するというのは民主主義の当然のルールだ、こう言われておったと思います。ぜひ野党諸君も、これは後の時間があるわけでありますから、どうぞ質疑に参加をしていただいて、堂々と討論、採決に加わっていただくように強く求めまして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

森山委員長 次に、斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 きょうは、安倍総理をお迎えして締めくくり総括質疑を行うこと、私、大変感慨深いものがございます。しかしながら、野党の皆さんが審議に参加されないということ、本当に残念でございます。

 きょうの朝の中央公聴会での野党の皆さんの発言を聞いておりますと、まだ議論を続けるべきだという基本的な御主張なんだと思いますけれども、振り返ってまいりますと、平成十二年の三月に、教育改革国民会議がスタートをいたしました。そこからの議論でございまして、まさに六年以上の時間がたっております。

 この教育改革国民会議では、先ほども河村委員から話がありましたように、十七の提言が出ました。十六番目までは、法令改正、省政令改正、また予算措置等で、不十分なものもございますが、一つ一つ実現をしてきた、このように我々国会議員として自負をしているわけですけれども、十七番目が教育基本法の見直しという提言でございました。

 それを受けて、中央教育審議会で二年近い、それはまさに多くの方々、分科会に分かれての濃密な議論、この審議会で議論をして、平成十五年三月二十日、私、日にちもよく覚えております、平成十五年三月二十日に答申が出されました。

 その答申を受けて、与党では、与党教育基本法検討会、これは後に与党教育基本法改正検討会というふうに名前が変わりましたけれども、三年間議論をしました。また、民主党さんにおかれましても、この間、この中教審の答申を受けて、党内で真摯な議論をしてこられた、このように我々認識をしております。

 そして、それらの党内での議論の一つの結実として、与党案をベースにした政府案、そして民主党さんも党内での議論をベースにした法律案をこの四月に出された。そして、以来、先ほど話がありましたように、この衆議院特別委員会において百時間を超える議論をしてきたところでございます。

 私は、この間の六年以上の時の経過を考えますと、まだ議論が足りないというお話には説得力はないのではないか、ここまでさまざまな方に参加していただいて、国民各界の方に参加していただいて議論をしたことに対して、国会が一定の結論を得るということは、我々国会の責務なのではないか、これまで議論に参加された方々に対しても申しわけない、このように思うわけでございます。したがいまして、今回、野党の皆さんが参加をされないということを公明党としても非常に残念に、遺憾に思うところでございます。

 また、民主党さんは、先ほど申し上げましたように対案を出されました。対案といいましょうか、みずからこれが正しいと思う案を出されたわけでございまして、私も、この場に数回立たせていただいて、民主党の皆さんと議論をさせていただきました。その提出者の皆さん、本当に真摯なお気持ちで法案を提案されたんだろうと思います。

 であるならば、ここまで議論が進んだ段階で、その結論を得るべくお互いに努力をする。その努力は、採決ということでもありますでしょうし、私は、一つの修正、政府案と民主党さんが出された案、それぞれに、相入れないところもありましたけれども、非常に共通しているところもございました。そういうところを相合わせて、国会としてできるだけ多数の議員の賛成で、教育基本法というまさに憲法に準ずる重要な法律をつくり上げるわけですから、そういう姿勢でこの議論に、また修正に臨んでいただきたかったな、このように考えているわけですけれども、結果として、今回審議拒否をされるということは、出された対案については、成立を目指したものではなく、政府案に反対するための道具というふうに我々考えてもいたし方ないような、考えざるを得ないような、そういうことだったのではないか、このように思います。

 そういう意味で、まだ遅くありませんので、まだ私の質問の後は野党の質問時間でございます、ぜひ審議に参加をするべきだ、このようにまず最初に申し上げさせていただきます。

 それから、今回、私も先ほど申し上げました与党教育基本法検討会、また改正検討会、メンバーとして参加させていただきまして、保利先生、大島先生、座長のもと、濃密な議論をさせていただいた。本当にいいチャンスをいただいた、私は国会議員として恵まれていた、こういう勉強のチャンスをいただいたと心から感謝をしております。

 その議論の中で、自民党さんと公明党で意見の違うところもございました。しかしながら、お互い真摯に議論を尽くし合って、私は、バランスのとれたいい与党の考え方を形成できたのではないか、このように思っております。

 私たちは、現行教育基本法、これは普遍的な理念が書かれておりまして、これはこれとして、これからも残していかなくてはならない。しかし、新たにつけ加えるべき理念や考え方、価値観、これは当然あるわけでございまして、その議論をし、最終的に、これまでの教育基本法のいいところと加えるべき理念、バランスのとれたいい案になった、このように感じておりますが、総理、この与党案につきましての総理の率直なお考え、口悪い人たちは、自民党の中には、民主党案というのは、与党の中での議論で議論がされたところをついてくるような、ある意味で分断を図るような形で出されてきた。そういう意味では、自民党さんの中には民主党案の方がいいのではないかと思っている人もたくさんいるというふうなことを言う口さがない人たちもおりましたけれども、私は、決してそうではない。先ほど申し上げましたように、与党案というのは、これからの教育ということを考えた上で、バランスのとれたすばらしい案である、このように思っておりますが、総理の御感想をお聞かせ願えればと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま斉藤先生が御紹介になられましたように、この教育基本法の改正案、与党において成案を得て国会に提出するまでの間、相当の議論があったわけであります。与党で検討する前には、先ほど河村先生から御紹介になりましたような経緯がずっとございました。その中で、議論に議論を重ねながら、そしてまた、与党において本当に広く、深い議論を行ってきた、このように思います。

 私も幹事長時代に議論に参加をしたことがあるわけでありますが、自民党、公明党の間におきまして率直な意見の交換がございました。そうした意見の交換を行う中において、党が違うわけでありますから、当然考え方も理念も違うところがあるわけではありますが、お互いにこれは誤解をしている面もあり、そうした誤解はそうした回を重ねるごとにだんだんと解けていったのではないか、私はこのように思います。

 そうした議論の中においてでき上がったのがこの現在私どもが提出をさせていただいている案でございまして、この案は、まさに現行の教育基本法の残すべき理念、価値は残しながら、しかし、今現在の教育が抱えている問題点、そしてまた、二十一世紀における我が国の未来を担う子供たちを教えていく上において必要な新たな価値観、項目、目標等を見事にバランスよく加えたものができ上がったんだろう、私はこのように思いました。

 自由民主党が従来より主張しておりました、日本の教育基本法として、やはりこの日本の文化や伝統、これを書き込むべきだ。文化や伝統を尊重し、その中から培われてきた我が国と郷土を愛し、そして他国を尊重し、国際社会の中において発展や平和の構築に寄与しようとする態度を養うということも、これは書き込まれているわけでございまして、そういう意味におきまして、これから日本人として国際社会で活躍をしていく子供たちを教育していく上で必要な教育基本法ができたのではないか、私はこのように思っております。

斉藤(鉄)委員 どうもありがとうございました。私どもも同様の認識でございます。

 それで、この理念法たる教育基本法をつくり、ある意味で、理念から一つ一つの具体的な諸問題に対処する、また、新しい教育をつくり上げていくという具体論にこれから入っていかなくてはならない、そのための教育再生会議だろうと思うわけでございますが、そのことに関し、二、三質問をさせていただきます。

 総理は所信表明で、「すべての子供に高い学力と規範意識を身につける機会を保障するため、公教育を再生します。」このようにおっしゃっております。この公教育の再生、具体的にどのように今後取り組んでいかれるお考えか。そして、特にその中で、公教育というのは公立教育と私立教育と、あえて分けると二つに分けられると思いますが、特に、公教育の中でも大きな比重を占める公立学校における教育、ここの再生を具体的にどのように考えるか。

 今、いわゆる格差問題、教育格差というときに、よく私立学校と公立学校の差というものも話題になるところでございまして、この公教育の再生、特に公立学校の教育の再生についての今後の具体的な方向性についてお聞かせ願えればと思います。

安倍内閣総理大臣 公立学校、これはだれもが子供たちを通わせることができる、だれもが通うことができる学校でございます。ですから、この公立学校の教育の機能が低下をしているということになれば、所得の高い人は自分の子弟を私立に通わせることができます。しかし、そういう経済的な余裕がない人は、教育の機能が低下しているところに通わせざるを得なくなってくることによって、子供たちの間に新たな格差が再生産されていくということになってしまうわけであります。そういうことになってはならない。

 そのためには、やはり、教育の再生の中におきましても、公教育を再生することは、これは絶対に必要な改革である、教育の再生である、このように考えているわけであります。その中で、公教育の中におきまする教員の質の向上を図っていく、そのためには、教員の免許制度導入等々についての議論を今教育再生会議にお願いしているところでございます。

 そしてまた、学校がどうやって子供たちに規範意識を教えていくか、あるいは高い学力を身につけさせることができるかどうか、切磋琢磨をしていくように、どうそういう仕組みをつくっていくかという中におきましては、やはり外部評価ということも、それぞれの学校に緊張感を与え、そして何とか自分たちの学校もいい学校にしていきたい、私は、そういう意欲につながっていくのではないかと。

 これは、学校に格差をつけるということではなくて、うまくいっている学校があるんであれば、そのノウハウをみんなが共有していって、なかなかうまくいっていない学校があればそこにそのノウハウを提供したり強化することによって底上げをしていく。そのためには、私は、今大体どれぐらいのことになっているかということを認識するのは必要ではないか、そのための外部評価制度等の導入も図れないかと。

 こういうことを含めて、今、教育再生会議におきまして、公教育の再生のための必要な施策について御検討をいただいているところでございます。

斉藤(鉄)委員 今後、公立学校の再生、国民の大半が公立の小学校に行き、そこで社会人としての規範、また自己の人格の完成を目指す、その最も重要な場面でございますので、公立教育の再生ということについても、我々も研究をし提言をしていきたい、このように思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 公立学校の教育の再生ということとつながりますが、いわゆる先生の資質の向上、教師の資質の向上ということについて総理にお伺いしたいと思いますけれども、政府案の第九条に「自己の崇高な使命を深く自覚」、このように書いてございます。教師は使命職である、このように私どもは言っております。

 我々、教育フォーラムということで、全国十二の都市で、いろいろな方、保護者の方、また実際に学生さんや子供たちとも対話を重ねてきたんですけれども、各年代、皆さん共通しておっしゃることは、教師こそ最大の教育環境、これは本当に共通しているんですね。

 自分の今の立場に対して本当に感謝をし、今こうやって社会の中で頑張れるという人に話を聞いてみますと、やはり先生、あるところでこの先生に出会って今の自分があるとおっしゃるし、または教育に対して非常に不満を持っている方、ある意味では恨みまで持っている方も、それを突き詰めて話していくと、先生に対しての恨みであったり、非常に悲痛な経験であったりということで、教師こそ最大の教育環境ということを感ずるわけです。

 そういう意味で、使命職たる学校の先生方の自覚と、そして研修、レベルアップということがどうしても、今後、この公教育、公立教育の再生に必要になってくると思いますけれども、この点についてどのようにお考えか、お伺いをいたします。

安倍内閣総理大臣 教師、先生というのは、子供たちに極めて大きな影響を与える、人生を場合によっては大きく、いい方向にも悪い方向にも変えていく力がある、私はこのように思います。

 先般、私の通った小学校の同窓会が、四十年もたつんですが、ございました。なぜそうした同窓会が行われるかといえば、やはり先生をみんな慕っているわけでありまして、もう八十九歳になられる方でありますが、まさに、本当に人格でもって子供たちを教える、一緒に悩み、そして、徹底して自分は子供たちを信じるという信念の持ち主でありまして、私どももう卒業して四十年たつんですが、そのことをまたお話ししておられました。私は、そういう先生とめぐり会って本当によかったな、このように思うわけでありますが、そういうすばらしい先生方に子供たちを託したいとみんな思っているんだろうと思います。

 そのためには、教員の資質の向上に向けた教員免許更新制度の導入あるいはまた現職の研修の充実、そして優秀教員を表彰していくことを実施していきたい。そしてまた、能力、実績に見合っためり張りをつけた教員給与体系の検討、これにはいろいろ議論があるかもしれませんが、やはり一生懸命頑張って範となる先生という方に対してはそれなりに対応していくということも大切ではないか。

 さまざまな施策を一体的に進めて、すぐれた人材の確保に努めてまいりたいと考えております。

斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。

 ちょうど時間が終了いたしましたので、いろいろお聞きしたいことがありましたけれども、これで質問を終わりますが、教育基本法の議論、この委員会でも、通常国会を含めて百時間を超えました。一つの国民の皆さんに対する国会の責任として、新たな一つの法規をここでつくっていくということは非常に大切なことだと思います。

 野党の皆さんにもぜひ参加をしていただいて採決すべきだ、このように主張をし、質問を終わらせていただきます。

森山委員長 民主党・無所属クラブ、日本共産党、社会民主党・市民連合、国民新党・無所属の会所属委員及び日本国教育基本法案の提出者が御出席されておりませんので、理事をして再度御出席を要請いたさせます。しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

森山委員長 速記を起こしてください。

 理事をして再度御出席を要請いたさせましたが、民主党・無所属クラブ、日本共産党、社会民主党・市民連合、国民新党・無所属の会所属委員及び日本国教育基本法案の提出者の御出席が得られません。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後二時十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後五時開議

森山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 再開に先立ちまして、民主党・無所属クラブ、日本共産党、社会民主党・市民連合、国民新党・無所属の会所属委員及び日本国教育基本法案の提出者に対し御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。

 理事をしてさらに御出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

森山委員長 速記を起こしてください。

 理事をして再度御出席を要請いたさせましたが、民主党・無所属クラブ、日本共産党、社会民主党・市民連合、国民新党・無所属の会所属委員及び日本国教育基本法案の提出者の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 鈴木恒夫君。

鈴木(恒)委員 動議を提出いたします。

 ただいま議題となっております両案中、第百六十四回国会、内閣提出、教育基本法案に対する質疑は終局されることを望みます。

森山委員長 ただいまの鈴木恒夫君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

森山委員長 起立総員。よって、第百六十四回国会、内閣提出、教育基本法案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

森山委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉大和君。

稲葉委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となっております、政府提出、教育基本法案に対して、賛成の立場から討論をいたします。

 現行の教育基本法は、昭和二十二年に制定されました。自来、今日までの約六十年間、我が国における教育水準は向上し、生活は豊かになりました。しかし、都市化や科学技術の発展、さらに少子高齢化の進展などで、教育を取り巻く環境は大きく変わりました。

 そして、近年、子供のモラルや学ぶ意欲の低下、学校、家庭及び地域の教育力の低下など、教育全般にさまざまな問題が指摘されるようになり、ニート、フリーター問題など、若者の問題も深刻化しております。

 こうした社会的環境の変化により、今日、教育の根本にさかのぼった改革が求められているのは明らかであります。新しい時代の教育の基本理念を明確にし、我が国の未来を切り開く教育を実現していくため、今、教育基本法を改正する必要があります。

 賛成の第一の理由は、社会や教育現場における個性の尊重や個人の自由が強調され過ぎたことへの反省に立ち、改正案前文において、公共の精神の尊重、豊かな人間性と創造性を明記したことであります。

 また、本文において、国を愛する心情をはぐくむことの大切さにかんがみ、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛し、さらにその発展を願い、これに寄与する態度を養うことを規定しております。日本人としての自己の確立を、しっかりとした歴史観そして伝統に対する認識に基づいて、身につけなければなりません。

 賛成の第二の理由は、教育は、不当な支配に服することなく、法律の定めるところにより行われるべき旨を規定するとともに、教育行政に関する国及び地方公共団体の役割分担や、必要な財政措置を新たに規定したことであります。

 これにより、教育の機会均等や、全国的な教育水準の維持向上に向けた教育条件整備のための財政措置等、具体化が図られるのであります。

 賛成の第三の理由は、新たに教育振興基本計画の策定を規定したことであります。これによりまして、教育施策の総合的かつ計画的な推進が実効あるものとなり、例えば教育施策の具体的な目標を設定するなど、その充実のための取り組みを積極的に進めていくことが可能となるのであります。

 本法律案につきましては、さきの通常国会、今臨時国会合わせて百時間を超える慎重な審査を行ってまいりました。加えて、四回の参考人に対する質疑、六カ所の地方公聴会、さらに中央における公聴会を行うなど、野党の主張をすべて取り入れ、与野党間の円満な合意によって極めて慎重かつ充実した審査を行ってきたところであります。

 また、いじめや未履修の問題につきましても、本委員会の中で十分な審査を行い、政府への厳正な対応を求めてきたところであります。

 このように円滑に委員会審査を進めてきたにもかかわらず、対案を提出されている民主党を初め野党諸君がこの場に出席せず、野党による審議拒否の事態をみずから引き起こしたことを厳しく批判しつつ、政府案に対する賛成の討論とさせていただきます。(拍手)

森山委員長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 私は、公明党を代表して、ただいま議題となっております政府提出、教育基本法案に対して、賛成の立場から討論いたします。

 現行の教育基本法が制定された昭和二十二年当時からは時代は大きく変化しています。基本法制定当時は、子供に義務教育を受けさせることが大きな課題でありましたが、今日では、高等学校への進学率は九七%を超え、大学進学者も大変多くなりました。また、基本法制定当時では想定されていなかったような問題、例えば児童虐待、ニート、フリーター問題、不登校、学級崩壊などさまざまな問題が噴出し、さらに、科学技術の進歩や、情報化、少子化、国際化等、我が国の子供を取り巻く環境は大きく変化しています。

 このような社会的環境の変化に伴い、現行基本法の骨格である個人の尊厳、人格の完成といった普遍的な理念は堅持しつつ、新時代に即応した教育基本法を目指して改正する必要があります。

 賛成の第一の理由は、これからの教育を考える上で大変重要となる、勤労を重んずる態度や生命の尊重、自然や環境との共生といった概念を明記したことであります。これは人格の完成を目指す上で大変重要な概念であり、高く評価できます。

 賛成の第二の理由は、家庭、学校、地域社会の三者が連携協力に努めることが新たに規定されたことであります。これは、現在の教育問題を考えるに当たり、大変に重要です。なぜなら、現在の教育問題の根本の一つは、本来社会が持つべき教育力の低下によるところが大きい。この力を回復させるためには、家庭、学校、地域社会の連携が不可欠であります。その意味で、このような内容が教育の根本法規に明記されたことは高く評価できます。

 賛成の第三の理由は、超高齢化社会の到来も見据え、あらゆる機会、場所で学習ができ、その成果を生かすことのできる社会の構築を目指すため、生涯学習の理念を明記したことであります。これは安倍内閣が目指している再チャレンジできる社会の構築にも相通ずるものであるとともに、教育の機会均等を図る上でも大変重要な内容です。

 ちなみに、民主党が提出した日本国教育基本法案では、教育における政治的中立性が確保できず、個人の思想、信条の自由に抵触する内容となっており、到底容認することはできません。

 本法律案につきまして、拙速な判断があってはならないことから、さきの通常国会、今の臨時国会を合わせて百時間を超える慎重な審査を行ってきたところであり、さらに、四回の参考人に対する質疑、六カ所の地方公聴会、さらには中央での公聴会を行うなど、慎重かつ充実した審査を行ってきたところであります。

 また、いじめや未履修問題につきましても、本委員会や与党において十分な議論を行い、政府に対して迅速かつ厳正な対応を求めてきたところであります。

 このように、野党の主張を取り入れながら円滑な委員会審査を進めてきたにもかかわらず、民主党を初め野党による審議拒否という議会政治を全く無視した態度を厳しく批判しつつ、政府案に対する賛成の討論とさせていただきます。(拍手)

森山委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

森山委員長 これより採決に入ります。

 第百六十四回国会、内閣提出、教育基本法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

森山委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

森山委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

森山委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十八分散会


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