衆議院

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第1号 平成18年11月1日(水曜日)

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平成十八年十一月一日(水曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

  法務委員会

   委員長 七条  明君

   理事 上川 陽子君 理事 倉田 雅年君

   理事 棚橋 泰文君 理事 早川 忠孝君

   理事 松浪 健太君 理事 高山 智司君

   理事 平岡 秀夫君 理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    奥野 信亮君

      鍵田忠兵衛君    後藤田正純君

      笹川  堯君    柴山 昌彦君

      杉浦 正健君    中川 泰宏君

      三ッ林隆志君    武藤 容治君

      盛山 正仁君    矢野 隆司君

      保岡 興治君    柳本 卓治君

      石関 貴史君    大串 博志君

      河村たかし君    細川 律夫君

      横山 北斗君    伊藤  渉君

      保坂 展人君    今村 雅弘君

      滝   実君    山口 俊一君

  財務金融委員会

   委員長 伊藤 達也君

   理事 井上 信治君 理事 竹本 直一君

   理事 林田  彪君 理事 増原 義剛君

   理事 宮下 一郎君 理事 池田 元久君

   理事 古本伸一郎君 理事 石井 啓一君

      伊藤信太郎君    石原 宏高君

      江崎洋一郎君    小川 友一君

      越智 隆雄君    大塚  拓君

      大野 功統君    佐藤ゆかり君

      とかしきなおみ君    土井 真樹君

      中根 一幸君    長崎幸太郎君

      萩山 教嚴君    萩原 誠司君

      原田 憲治君    広津 素子君

      松本 洋平君    小沢 鋭仁君

      田村 謙治君    寺田  学君

      仲野 博子君    馬淵 澄夫君

      松木 謙公君    谷口 隆義君

      佐々木憲昭君    中村喜四郎君

    …………………………………

   法務大臣         長勢 甚遠君

   国務大臣

   (金融担当)       山本 有二君

   内閣府副大臣       渡辺 喜美君

   法務副大臣        水野 賢一君

   財務副大臣        田中 和徳君

   法務大臣政務官      奥野 信亮君

   財務大臣政務官      江崎洋一郎君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  三國谷勝範君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    佐藤 隆文君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小津 博司君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    石井 道遠君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 信託法案(内閣提出、第百六十四回国会閣法第八三号)

 信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出、第百六十四回国会閣法第八四号)


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     ――――◇―――――

七条委員長 これより法務委員会財務金融委員会連合審査会を開会いたします。

 先例によりまして、私が委員長の職務を行います。

 第百六十四回国会、内閣提出、信託法案及び第百六十四回国会、内閣提出、信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 両案の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付してあります資料により御了承願います。

 これより質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴山昌彦君。

柴山委員 自由民主党の柴山昌彦でございます。

 本法案に関しましては、私は二回目の質問となりますが、この連合審査会の中で議論がより深まればと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 まず、お伺いいたします。

 改正法のもとで、信託銀行等の受託者にはどのような義務が発生することになるのでしょうか。端的にお答えいただきたいと思います。

長勢国務大臣 おはようございます。

 受託者が受益者に対して負う信託法上の義務について御質問でございますが、これについては信託法案の第三章第二節に規定をしてございます。

 具体的な受託者の義務の主なものは、一つは、信託事務の処理をするに当たっては、自己の財産に対する場合と同一の注意では足りず、より高度の注意をもってしなければならない、いわゆる善管注意義務でございます。二つ目は、自己の利益ではなく、受益者の利益のために行動すべきであるという忠実義務。三つ目は、一つの信託で受益者が複数ある場合には、受益者を公平に取り扱わなければならないという公平義務。四つ目に、受託した信託の信託財産と自己または他の信託の信託財産を分けて管理しなければならないという分別管理義務。五つ目に、信託事務処理を委託した場合には、委託先である第三者を選任、監督しなければならないという委託先の選任監督義務。六つ目に、信託事務処理の状況についての報告をしなければならないという報告義務、もう一つ、帳簿等の作成、報告、保存及び開示をしなければならないという義務などを規定いたしております。

柴山委員 大変多岐にわたる厳しい義務が課されているわけなんですけれども、こうした受託者の義務が、新しい改正法の信託法案及び信託業法においてどのような形で緩和をされているのか、それぞれお伺いしたいと思います。

寺田政府参考人 この新しい信託法案におきましては、今大臣からお示しいたしました義務のうち、基本的に二つの大きな義務について緩和というべき措置がされております。

 これは、第一に、受益者の利益相反行為に関する規定の見直しであります。利益相反行為に関しましては、今の規定を強化する、もう少し明確にするという部分もございますが、もう一つ、利用者の方から非常に御要望がありましたのは、今の規定でありますと、利益相反行為は基本的に禁止ということでございまして、非常に硬直的であるということでございます。

 そこで、今度の新しい法案におきましては、例えば、ほかに買い手がないような信託財産に属する財産を受託者が適切な価格で自分の固有財産にする、売買をするというようなものについて、実質的には受益者の利益にもなるという配慮から、信託行為に定めがある場合や重要な事実の開示を受けて受益者がこれを承認した場合、このような場合には、これを例外として扱いまして、利益相反行為を一定の要件のもとに許すという緩和策をとっております。

 第二は、受託者の自己執行義務、今大臣から申し上げたところでございまして、これは現行法では、信託行為に定めがある場合またはやむを得ない場合に限って信託を第三者に委託するということが認められているわけでございますけれども、今日の社会においては非常に分業化、専門化が進んでおりまして、この信託分野でも、必ずしも自分でみずからやるのではなくて、むしろ専門家である第三者に事務を委託した方が適切であるという場合も決して少なくない、こういう情勢にございます。

 そこで、新しい法案では、第三者に信託事務の処理を委託することを許容するという定めがない場合であっても、目的に照らして相当である、こういう要件のもとに、受託者はこれらを第三者に委託することができるということで合理化を図っているところでございます。

柴山委員 ただ、ここで問題なのは、信託というのは、そもそも他人を信じて託するというところから来た契約類型なわけですね。そこには、受託者は当然、受益者に対してしっかりと利益相反行為を排して忠実に物事を処理しなければいけないという義務が、要は中心的な義務として課せられているはずであります。

 そのような場合に、受益者が、いや、そういう義務は負わなくていいですよという形で解除してくれればともかく、それ以外の類型で、例えば、正当性あるいは相当性というような要件でこれを緩和するというのは、私は大変大きな問題を含みかねないと思います。そこら辺の類型はやはりきちんと説明をしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、この義務は非常に基本的なところでございますが、今言った合理化の観点から、おのずから、したがって、例えば、新しい法案の三十一条の二項の四号に言う「正当な理由がある」ということは解釈されるべきところであります。

 例えば、価格の相当性ということが非常に問題になるわけでございますけれども、信託財産に属する土地が競売に付されているというようなときに、受託者が競売手続において正当な手続で落札する、競落するというような場合は、これは問題ないのではないか。

 あるいは、管理型の信託で申し上げれば、例えば、銀行を経営している受託者が、全く普通の預け入れをする者と同一の利率で信託財産に属する金銭を受託者の固有財産に預金する場合というような、いわゆる自行預金と言われるわけでございますけれども、こういうようなものは、一般的な利率と全く同じでございますので、ほかに考えられる余地が余りないということでございますから、これはまた正当な理由に当たるというように思われるわけでございます。

 それから、運用型で申し上げれば、信託財産に属する金銭を、市場で有価証券を購入する、その有価証券を受託者が固有財産で売却したという、これもまた市場を通すということによって、価格メカニズムの点で全く不当なところはないはずでございますので、こういうものは許される、そういう理解に立っております。

柴山委員 また、信託契約に関しては、要するに、利益を受ける受益者がしっかりと受託者を監視することによってみずからの利益を図れるというところが恐らく肝になっているんだと思うんですが、例えば、今回の改正法では、受益者と受託者が一体であるというような契約類型が認められることになっております、期間は限定されるということになるんでしょうけれども。

 そういうような場合に、受託者と当初受益者が一緒であるような場合に果たして本当にこうした監視機能ということが十分発揮できるのかというところがきのうの参考人質問でも出てまいりましたので、その点についてちょっと御説明をいただきたいと思います。

寺田政府参考人 おっしゃるとおり、信託の委託者、受託者、受益者の三者の関係のうち委託者と受益者が一致するもの、これは今も自益信託としてあるわけでございますし、今回新たに、委託者と受託者が一致しているもの、これは自己信託、信託宣言として認めるわけでございますが、問題は、信託の本質は受益者のために受託者が義務を負うというところにございますので、この受託者と受益者の一致というのは基本的には認めないという方針に立っております。

 ただ、完全に認めないということになりますと、例えば受益権を売り出そうとしているときに、まだ売り出す前に一時的に受託者がこれを持っている状態というのは今の状態に相当するわけでございますけれども、それを完全に禁止してしまいますと、非常に実務的にも、買い手が見つかるまでの間もそれは許されないというようなことでございますので、そこで、期間制限といたしまして一年間という期間を限って、今回、そのようなことを容認するということを明らかにしたわけでございます。

 これはあくまで期間限定の措置で、いわば信託としては異例のことでございますので、信託関係全体としては眠っているも等しい状態でございます。この間は、確かにおっしゃるとおり、受益者の側から受託者を監視するという意味は、全く両者が一致しておるわけでございますので、ありません。

 ただ、これが、一たん受益権が他人の手に渡るということになりますと、たちまちそこに忠実義務というのは顕在化してまいります。したがいまして、この時点で第三者のためにする意味が出てくるわけでございますので、一年間の間に限るということで例外措置を認めたことによって、基本的に、だれかの権利が害されるということはないのではないかというように考えているわけでございます。

柴山委員 同様の質問でございます。

 金融庁で、受託者の義務の緩和について一体どのような措置がとられているか、教えてください。

山本国務大臣 信託業法改正案では、当事者間の合意による受託者義務の軽減を原則として認めておりません。これは、多数の受益者の取引の安全、公平、そういった観点からであろうと思いますが、信託法改正の趣旨を踏まえまして、受益者保護に問題がない場合に限って受託者義務の合理化を図ろうとしております。

柴山委員 ありがとうございました。

 続きまして、この改正法で大変大きな議論を呼んでおります自己信託の許容について、これまでもかなり議論が尽くされてまいりましたけれども、若干補足して説明をさせていただきたいと思います。

 要は、この自己信託に対する不安の本質は、信託財産は固有財産と独立の存在であるにもかかわらず、自己信託の場合には、簡単にそのままの名義でそうした独立財産をつくることができる。これは、要は、メリット及び需要とは裏腹の関係で、それが悪用されるのではないかというデメリットが指摘をされています。

 そしてもう一点は、そのようにして形成された独立財産が、範囲が不分明である、また中身もよくわからぬ、そういった外部開示の問題があるかと思います。特に、開示の問題に関しては昨日の参考人質問でも取り上げられたところであります。

 そこで、お伺いいたしますが、信託財産が固有財産から切り離されたこと、及び、信託受益権勘定といいますか、財務諸表においてどういう取り扱いになるか、それぞれぜひお聞かせいただきたいと思います。

三國谷政府参考人 お答え申し上げます。

 信託法と信託業法がございますけれども、信託法によりますれば、信託の受託者が貸借対照表、損益計算書等の帳簿を作成いたしまして、これを受益者が閲覧、謄写することが可能となっております。

 信託業法の方でございますが、こちらの方では受託者が信託財産状況報告書等を受益者に交付することとなっております。

柴山委員 ただ、信託受益権を構成する財産がどのようになるかというような個別の問題に関しては、これは公認会計士の先生方からも非常に懸念が表明されていることですから、ASBJで今検討が進められているというように聞きますけれども、しっかりとこれを、一年後の自己信託に関する施行のときまでには明確にしていただきたいというように思います。

 次に、この自己信託に関して、課税の適正ということが十分になされるのかということが非常に大きな疑問点となっております。利益隠しに使われるのではないかということが恐らく筆頭の懸念だと思いますけれども、これについて、ぜひ御説明をいただきたいと思います。

田中副大臣 ただいまの御指摘のように、自己信託などで会社同様の事業を行うような場合に法人税等の租税回避が起こるのではないか、こういう懸念が指摘されておりまして、今までも、各方面、関係者の御検討があったところでございまして、私自身も重要なポイントである、このように思っております。当然、私は、課税の公平及び中立性の確保の観点から法人課税を行うべきだ、このように考えております。

 いずれにしましても、信託法案への税制上の対応については、今後、十分な検討を行った上で、十九年度、来年の税制改正において措置してまいりたいと思っております。

 いずれにしても、財務省といたしましては、適切に、公平、中立性の観点からしっかりと扱ってまいりたいと思います。

 以上でございます。

柴山委員 これ以外にも、事業信託の問題あるいは倒産隔離の問題について、いろいろと聞きたいことがあるんですが、私の持ち時間は終了いたしましたので、残余の質問はほかの委員の先生方にお任せしたいと思います。

 きょうはどうもありがとうございました。

七条委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。

 私は財務金融委員会に所属しておりますので、これまで法務委員会で質問されたことと重ねて質問することがあろうかと思いますけれども、お許しをいただきたいと思います。

 まず、自己信託についてお伺いいたしますけれども、法案では、附則によりまして施行が一年間凍結されている。これは、財産隠匿での悪用とかあるいは課税逃れでの悪用等の懸念からこういう措置がされたというふうに承知をしておりますけれども、この一年間の凍結期間中にこういった懸念に対してどのように対処されるのか、まず法務大臣にお伺いいたしたいと思います。

長勢国務大臣 御指摘のとおり、自己信託につきましては、施行の日から起算して一年間適用しないということで、実質的に猶予ということになっております。

 その趣旨でございますが、自己信託は初めての制度でございますので、その制度の趣旨、内容、あるいは信託法上自己信託について講じられている債権者保護の措置等について周知徹底を図る必要があるということと、もう一つ、会計、税制等の関連する他の制度における取り扱いについても検討を十分する必要がある、周知する必要があるということからでございます。

 そういうことでございますので、現在までのところ、会計については、会計基準の設定主体である企業会計基準委員会において、本年十月二十四日、自己信託を含めた信託に関する会計基準の処理について検討を進めていくということを正式に決定したところでありますし、また、税制についても、財務省において平成十九年度の税制改正の中で十分な検討がされた上で適切に処理されるものと認識をしております。

 法務省といたしましては、関係当局によくこの信託法の内容を御説明いたしまして、この体制整備に努めてまいりたいと思っております。

石井(啓)委員 それでは次に、目的信託でございますけれども、受益者の定めのない目的信託につきましても同様に、附則によりまして、当分の間、受託者を政令で定める一定の法人に限定をされておりますけれども、この限定をした趣旨について、これは法務大臣にお伺いしたいと思います。

 また、税制の方でございますが、今回いわゆる公益信託以外の目的信託というのが認められることになりましたが、この税務上の扱いがどうなるのか。

 さらに、遺言によって目的信託を設定した場合は、これは目的信託でございますから受益者が特定されませんので、受益者に相続税は課せられない。一方で、遺言により信託を設定した場合は、委託者の相続人は相続により委託者の地位を継承しないというふうにされておりまして、これはどういうことになるのかなと。特に、最長二十年の目的信託の有効期間が終了した場合、どういう税務上の扱いになるのか。この点について、これは財務省の方に確認をいたしたいと思います。

 それぞれよろしくお願いいたします。

長勢国務大臣 今御指摘のとおり、目的信託については、当分の間、政令で定める法人以外の者を受託者とすることができないということになっております。これは、目的信託がこれまでにない新たな類型の信託でありますので、脱税など不法な目的に利用する者があらわれないとも限らないということが指摘されておりますので、当分の間、その受託者を政令で定める一定の法人に限定していこうということにしたものでございます。

 この法案ができた後、政令では、受託可能な法人として、財務的な健全性が確保されていること、また、その人的構成において公益に反するおそれがないと認められるものというようなものを定める予定にしております。

田中副大臣 御質問の二点についてお答えをいたしたいと思います。

 まず、受益者の定めのない目的信託についての税務上の扱いについてでありますけれども、現行法上では、先生も御存じのとおり、所得税法、法人税法では、信託財産から生ずる収益等が委託者に帰属するものとみなして、委託者に対して課税をいたしております。また、相続税法上は、信託の委託者についての相続が発生した場合には、その信託に関する権利は委託者の相続人が相続によって取得する財産として取り扱われておりまして、相続税が課税されております。

 目的信託については、こうした現行税制を踏まえた上で、租税回避に用いられることのないように、税制上、適切に対応してまいりたいと思います。

 こうした点を含めて、信託法案への税制上の対応については、今後十分な検討を行ってまいります。

 また、遺言による目的信託では、受益者に相続税を課せない上に、委託者の相続人は相続により委託者の地位を継承しない、そして、最長二十年の有効期間が終了した場合、課税上どのように対応するか、こういう御指摘があるわけでございまして、お答えを申し上げてまいりたいと思います。

 今般の信託法案における遺言信託においては、委託者の相続人は相続により、御指摘のとおり、委託者の地位を継承しない、こういうことでございまして、遺言により、受益者の定めのない信託が、いわゆる目的信託でありますが、設定された場合は、その信託に関する権利を相続によって取得する財産として課税することができなくなるおそれがあることから、相続税の租税回避に用いられる懸念もございまして、適切な課税を行えるように措置を講じていかなければなりません。

 そういうことで、いずれにしましても、しっかりと検討させていただき、十九年度の税制改正において適切に対応していく、こういうことで御答弁とさせていただきたいと思います。

 以上でございます。

石井(啓)委員 法律が制定されてから税を対処するということになるから、十九年度の税制改正ということになるのは当然のことでありますけれども、今申し上げたような課題がいろいろございますので、しっかりと、そういう課税逃れにならないように、私どもも与党の税制協議会で検討いたしますけれども、政府の方もよろしくお願いいたしたいと思います。

 続いて、信託業法の改正の方をお伺いいたしますけれども、今回、自己信託で信託業法が適用されるということになるわけですが、自己信託で信託業法の対象となる要件はどういう要件になるのか。政令で定めるというふうにお聞きしていますけれども、その中身を確認いたしたいと思います。

 あわせて、自己信託で信託業法を適用する場合、他業の健全性、他業といいますか本業といいますか、この健全性、例えば二年連続赤字でないこと等を確認するということになっておりますけれども、信託設定後にこの健全性要件に該当するような場合が出てきた場合、これはどういうふうに対応されるのか。

 この二点、確認をいたしたいと思います。

山本国務大臣 まず最初の、信託業法改正案で、自己信託を行おうとする者について、信託受益権を多数の者が取得する場合に、一定の要件を定めた上で、業法上の登録を求めるということにしております。

 例えば、自己信託を行う者が他に営む業務につきまして、当該業務の状況が悪化して信託財産を毀損する事態を未然に防ぐために、登録時に他業について二年連続で経常収支が赤字でないこと等の要件を内閣府令において定めることを現在検討しております。

 この場合、自己信託の登録につきましては、三年ごとの更新制をとることとしておりまして、登録の更新時に他業が二年連続で赤字になっていることが判明した場合は、登録の更新を拒否するということになろうと思っております。

 以上です。

石井(啓)委員 今大臣がおっしゃった多数の者というのは、大体どれぐらいの数を想定されていらっしゃるんですか。

山本国務大臣 大体五十人というのをメルクマールにしておりますが、これは、証券取引法上、一定の有価証券に関しまして五十人を公募、私募を分ける基準としているということを参考にしております。

 信託業法の規制対象が適切な範囲となるように、今検討を重ねているところでございます。

石井(啓)委員 それでは、続きまして、受託者の忠実義務の例外でございますけれども、まず「信託行為に当該行為をすることを許容する旨の定めがあるとき。」というふうにありますが、これは、そういう定めがあれば、どういった場合であっても認められるのかどうか、また、受益者が予見できるだけの具体性をこの信託行為の中にどういうふうに確保していくのかということを確認いたしたいと思います。

 また次に、同じく忠実義務の例外として、「受託者が当該行為について重要な事実を開示して受益者の承認を得たとき。」というふうになっていますけれども、これは開示するだけでいいのか、いや、文書を示して読み上げて、サインをもらえばそういうことでいいのか。やはり私は、この前提として、当然のことながら、受益者が十分理解しているということがあると思うんですけれども、それがどういうふうに担保されるのか。

 この二点について確認をいたしたいと思います。

寺田政府参考人 これは、おっしゃるとおり忠実義務の例外でございますので、きっちりとした法律関係が必要だと思います。

 ただ、信託行為に定めがあるというのを非常に具体的に書くかどうかということについては、これは要するに相対的な問題でありまして、基本的には、受益者が理解できるような客観的、明確な基準が示されていれば、それはそれで十分だろうというように考えております。

 それからもう一つ、重要な事実を開示した上でというところでございますが、これもやはり例外要件ではございますが、単に承認するということでは相手がどれだけ理解しているかどうかわからないということでございますので、その点を十分に確かめなければならないわけでございます。

 結局のところ、これに違反いたしますと例外措置には当たらない、つまり承諾がないということに最終的には帰結するわけでございますので、そういたしますと、受託者は忠実義務違反で損失てん補の責任を負うということになるわけでございます。

 そういう危険があるわけでございますので、受託者の方でも、当然この点を明確にして、あるいは重要な事実について十分相手の理解を得た上でやらないと、そのような危険があるわけでございますので、そういう裏からこの点を担保するという仕組みになっているわけでございます。

石井(啓)委員 では、最後の質問になりますが、この忠実義務の例外につきましては、信託業法の改正案では法令で限定するというふうになっていますけれども、その趣旨及びその内容について金融担当大臣の方から伺いたいと思います。

三國谷政府参考人 お答え申し上げます。

 信託業法改正法案におきましては、受益者保護に支障を生じない場合として内閣府令で定める場合に限りまして、受託者の忠実義務の緩和を認めることとしております。これは、信託法案におきまして、受託者の忠実義務等の合理化、柔軟化が図られていることに伴いまして、信託業法案におきましては、受益者保護に支障のない範囲内でこれを認めることとしているものでございます。

 その限定の内容でございますが、内閣府令の内容といたしまして、例えば、一つには、上場有価証券の売買のように価格決定につきまして受託者に裁量性がない取引、それから、受託者が信託財産として保有している不動産に市場実勢を反映した賃料でみずからテナントとして入居する場合など、客観的に公正な条件で行われる取引などを定めることを検討しているところでございます。

石井(啓)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。

 ありがとうございました。

七条委員長 次に、馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵でございます。

 きょうは、法務委員会、財務金融委員会の連合審査ということで、信託法の改正並びに整備法改正、関係法令の改正ということで質疑の機会をいただきました。

 私は、本日は財務金融委員会から、財務金融の立場からこの法律の改正につきまして質疑をさせていただきたいというふうに思っております。

 まずは、この信託法の抜本改正ということでございますが、法務大臣の方にお尋ねをさせていただきたいと思っております。

 この信託法の改正、大正十一年につくられた信託法、これが実に八十四年、施行日を考えれば八十五年ぶりの改正ということになるのかもしれませんが、この法制は、過去を振り返りますと、大正十一年に信託法と信託業法が同日に成立をしたという歴史的経緯がございます。

 この信託の導入というものが一体どういうものであったかということを少し私の方からお話をさせていただきます。

 委員長のお許しをいただきましてお配りをいたしました資料、二枚目の資料でございますが、「信託に関する制度の変遷」ということで、これは金融庁の金融審ワーキンググループでの部会の資料でございます。出典記載漏れで申しわけございませんが、こちらに「信託に関する制度の変遷」というのがございます。

 大正十一年に信託法、信託業法が制定されたということでありますが、明治三十八年のいわゆる担保付社債信託法、これが信託制度のそもそものスタートであった。これは、当時、産業振興の中で外資の導入、呼び込みというものが中心になされる中で、信託制度がどんどんと発展をしていく、そうしましたところ、大正初期の段階で信託という名をつけた大変さまざまな業態が出てきたわけであります。

 大正十年、当時でありますと、信託業者が五百十四、信託会社は四百八十七社という大変な数の信託の名を冠した事業が行われていたわけでありますが、実態としては、不動産仲介やあるいは高利貸しのような、信託の名とは随分と違った業態のものが信託業と名乗っておられた。こうした中で、当然ながら社会的混乱が発生し、当時、法制当局が、皆さん方の大先輩方々がこれを正していこうということで取り組まれたのが、信託業法の成立並びに信託法の制定でありました。

 つまり、まさに我が国においては、この信託というものは、いわゆる私法の準則から見た、民法上の土台から考える信託というところからスタートするのではなく、業法、この業の規制というところからスタートをしたという歴史がございます。そして、大正十一年、この信託の濫用、信託概念の濫用ということを防ぐために、今申し上げた、まさにここで抜本的改正の議論がなされている信託法並びに信託業法が成立をしたわけであります。

 当時、大蔵省が信託業法、そして司法省が信託法を働きかけながらつくっていったわけでございますが、これら二法がワンセットでつくられる中、二年前に信託業法の改正がなされました。このときに、私自身は、信託業法の改正、当然ながら、さまざまな信託の形態が生まれる中、現状にそぐわない、そんな法律ではだめだということで、信託業法の改正というものについては十分に私自身も理解を持って臨んだわけでありますが、しかし、本来であるならば基本法となる信託法の改正を前にして業法の改正というのは順序が違うのではないか、こうした指摘を二年前の財務金融委員会の業法改正でも指摘をさせていただきました。

 さて、今申し上げたように、信託法が本来の基本法であり、そしてその下に信託業法が、いわゆる一般法としての民法、そして特別法として商法というたてつけと同様に、このような形で法律が整備されることが望ましいと私も思うわけでありますが、この現状における信託法、そして信託業法、これらの改正に対して今ようやくこの整備がなされていくという中で、法務大臣、今も私がるる申し上げた法制の体系についてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。これを法務大臣の方からお願いいたしたいと思います。

長勢国務大臣 信託法の制定の経過、事情等は、今先生御指摘のとおりだと理解をいたしております。

 すなわち、現行の信託法を立案する主たる目的というものが、信託に関する法律関係の明確化、信託の発展ということを図るということではなくて、社会問題化しておった高利貸し的な信託会社を取り締まることにあったという経過であると思っております。

 そういう意味で、現行の信託法は、民法を初めとする他の一般私法と異なり、私法法規でありながらも、当事者の私的自治が著しく制限された取り締まり法規としての色彩が強い法律であるというところに特色があったと思います。

 その後信託がいろいろ発展をしてきたわけでございますが、ここまで八十年以上にわたって信託法自体の改正というのは行われていない。資産の流動化に関する法律とか信託業法等のいわゆる特別法の改正等を通じて、限定的な範囲でそういう信託についての利便性の向上が図られてきたという経過であると思います。

 そのため、現行の信託法は、現在も、信託の利用を促進し、国民に使いやすい制度とするという観点に乏しい、こういうことでございますので、今回、信託法そのものを、今言ったように、使いやすい、またきちんとしたものにつくり直すという制度で改正案を提案しているところでございます。

馬淵委員 信託業法の改正は二年前に行われたわけでありますが、当然ながらに、信託の概念を整理していこうということだというお答えを今いただいたと思います。

 法務委員の皆様方、また財務金融委員の皆様方は当然ながら御承知のことと思いますが、この信託制度そのものは、先ほど申し上げたように、我が国においては、外資の呼び込みということが、産業振興が大きな最初のスタートでありましたが、英米におきましては、これはいわゆる家族制度の中で、配偶者あるいは子孫に対する、その家族の文脈の中でのいわゆる財産承継や財産管理、これが主体となっていた。そして、これらの財産管理がやがて、信託という制度の中で金融やあるいは不動産の流動化、証券化スキームの形に展開をされていくということで、ある意味、英米の形、その法律の発展の形というのが本来の流れではなかったかなと私も感じます。

 いわゆる個人の信託というもの、それをはるかに上回るような業としての信託に展開する中で、ギフトから等価交換のディールへと変換していくというこの流れの中での今回の法改正というのは極めて重要であると考えます。

 長勢大臣に再度お尋ねをさせていただきますが、我が国における信託法制が、当初においてはいわゆるいびつな形であった、このいびつな形であったものが、今回共通のプラットホームを構成することによって抜本的に是正されるんだということでよろしゅうございますでしょうか。改めて、大臣、御答弁をお願いいたします。

長勢国務大臣 先ほど来答弁申し上げましたように、信託について使いやすくする、また、これからきちんとしたものに整備をするという趣旨でありますので、おっしゃるとおりだと思っております。

馬淵委員 おっしゃるとおりと言っていただきましたので、いびつな法制であったと、これをお認めいただいた中で、今回、使いやすいという一番わかりやすいお言葉でいただいたと思いますが、今回の法改正があるという御指摘をいただきました。

 さて、信託法と信託業法の関係におきましては、今申し上げたように、ようやく基本法が定められ、そしてそれに基づく業法の改正も含めた整備がなされるわけでありますが、私は、そこで一つ、この信託制度に絡むもう一つの法律について指摘をさせていただきたいと思います。

 先ほど申し上げたように、大正十一年、大蔵当局並びに司法省当局で二つの法律が制定をされました。そして、いわゆる信託と銀行の峻別ということがなされていくわけであります。

 ところが、その後、戦争が始まります。不幸にして起きた第二次世界大戦下、戦時下の中で非常事態が起きていく。その非常事態の中で、国家の資源、資本の集約ということが図られるようになりました。そこで制定されましたのが、昭和十八年、まさに戦時下でございます、これも先ほどの二枚目の資料に載せておりますが、兼営法、これは戦時下に、普通銀行等ノ貯蓄銀行業務又ハ信託業務ノ兼営等ニ関スル法律という法律でございますが、この兼営法というのが制定をされたわけであります。

 つまり、一たんは信託業法によって、信託概念の濫用やあるいは信託という形でのさまざまな、その名前をかたった業種を規制するということで峻別、分離を図る中で、今度は、資本を集約するという発想から兼営法を制定した、これは戦時下でございます。戦時下の中での非常事態の中での法制である、まさに例外規定なわけであると私は思っております。これによって、貯蓄性資本をまとめていこう、この資料にもありますように、この兼営法によって、信託会社というのが銀行に吸収合併されたり銀行業への転換が行われていくということになります。

 そして、この中で、いわゆる専業七社と呼ばれる、今日においても、これは二年前に改正をされて枠が広がりました、担い手が広がりましたが、専業七社体制というのができ上がっていくわけであります。この専業七社体制ができ上がる、兼営法による信託兼営のいわゆる認可を受けた金融機関のみが信託業を行う、そして信託業法に基づく免許を受けた信託会社というのはゼロになった。これが戦後の信託業にかかわる、新たな兼営法という法律によって形成された業界の図式であります。

 さて、こうした中で、その後、昭和二十三年に専業の信託会社にも銀行業務を兼営せよという大蔵省からの指導があり、また昭和二十七年には長期信用銀行法等ができまして、長短の分離政策というものがとられる中で、いわゆる兼営の銀行に対しては信託業の放棄を求めるようになったということになります。ここは二年前の信託業法の改正の中で、銀行が信託業をまた新たに今度はできるようになったわけでありますが、さて、私がここでお尋ねをしていきたいのは、この兼営法でございます。

 今申し上げたように、信託業からスタートしたこの国の信託制度、しかし、信託業法、信託法がつくられる中で、兼営法が戦時下でつくられた法律。この戦時下でつくられた法律に対して、私は二年前にも、兼営法の見直しが必要なのではないか、銀行の中で信託業務はできるわけです、兼営法という形で例外規定を残すのはいかがなものか、ましてや、抜本的な改正を図るのであれば、今、信託法の改正の中で、兼営法の見直しというのが当然ながらに図られなければならないのではないか。これを私は金融庁の担当の方々にもお尋ねをいたしました。

 二年前でございますが、私がこのことに対して質疑をしたときに御答弁いただいております。これは当時の、政府参考人として増井局長がお答えいただいた言葉でありますが、「信託法の見直しが作業が進み、しかも、それに伴って信託業法が変わるということになれば、また兼営法のあり方についても検討していくということでございます。」このように御答弁をいただいています。

 これは参考人の方で結構ですが、兼営法の見直しにつきましては、今議論は進んでおられますでしょうか。

三國谷政府参考人 今回の信託業法案の改正につきましては、信託法の改正に伴いまして改正が必要となる部分につきまして信託法整備法により手当てをするものでございます。

 兼営法につきましても、信託法の整備に伴いまして改正が必要となる部分につきましては、例えば、今回、信託業法の準用などという形で改正を行ったところでございます。

 なお、兼営法のあり方につきましては、同法の独自の意義も念頭に置きながら、次期信託業法見直しにおきまして慎重に検討すべき事項の一つと考えており、前回改正法で予定しております施行後三年以内の検討の中において必要な検討を行ってまいりたいと考えております。

馬淵委員 同じことを二年前にもお答えされているんですね。今、独自法の性格を考えてということでありましたが、その専業七社を含め、兼営法はもはや今の法体系の中では不要なものになっているんじゃないんでしょうか。今、銀行法のもとで信託業務が可能であるという状況の中で、兼営法を残すという意味は一体どういう意味があるんでしょうか。まさに戦時下の例外規定である、その戦時体制下の中での非常事態の資本集約というためにつくられた法律、それを存続していくことの意味は何があるんでしょうか。

 私は、二年前の業法の改正のときにそれをお尋ねした。そして、今のお話の中では、信託法の改正がまさに今行われようとしているわけです。その中で、このあり方については、いや、三年の見直しの中で考えるというお話であるのならば、二年前の御答弁、これはまた同じことを繰り返しているのと一緒ですよ。

 私が申し上げたのは、兼営法のあり方というのは、信託法の改正の作業が進む中で、これはしっかりと検討しなければならない、こうお答えをいただいたわけですから、金融審の中でこの議論は十分になされていなければならないんじゃないですか、こうお尋ねしているわけです。

 これについて、大臣、いかがでしょうか。この戦時下の例外規定に対して、今のような状況というのはいかがお考えですか。

山本国務大臣 今回の改正を見ますと、信託法が変わった、信託業法はそれに影響されてその部分を変えた、そして、そのゆえに、また改正された部分について兼営法を改正したというような考え方で臨んでいるわけであります。

 ところで、馬淵委員の御指摘は、基本法を定めて、そしてこの国の信託の抜本的な物の考え方と思想を確立した、その上で業法を考えろ、業法の中には一般の会社もあれば銀行もあるんだ、そして、銀行の規定をするところの中に兼営法を入れ込めば、これは法美学というものがあれば恐らく一番きれいな、納得のいく体制になるだろうという御指摘だろうと思います。私もそれは、法体系からすれば、本当にそういうような物の考え方というのはきれいだなと思っているところでございます。

 けれども、他方、ほとんどの業務が信託銀行に任せられて、そして信託銀行が、この国の中でのいわゆる財産についての権利関係についてのウエートが大変重くなってきている。そして、その数字的な財産のシェアの問題及びここにかかわる、勤める人間の多さ、いわゆる社会的実態、経済活動の中身を見ますと、既に兼営法というものがこの世の中に完全にルールとして確立されてしまった、そこをどう考えるかの比較考量の問題に尽きてくるわけだろうと思います。

 したがって、馬淵委員のおっしゃることにつきましては、先ほど三國谷局長が申し上げましたように、前回改正法で予定している施行、十六年十二月後の三年以内の検討の中で必要な検討を行ってまいりたいということであろうと思います。

馬淵委員 今、大臣は法の美学というお言葉を発せられましたが、もちろん法律家から見ればそういった見方もあるのかもしれません。私は、ただこの整合性というものが極めて法には重要であると考えます。

 まして、法務省の中では、今、法律の現代化という形で一生懸命に見直しを進めておられる。私もかつて連合審査に参加いたしました会社法を初め、本当に熱心な取り組みをされている中で、財務金融の担当大臣が、これはやはり同様に踏み込まねばならない作業ではないかというふうに私は考えます。

 そこで、今大臣、私がお尋ねをした戦時下の例外規定については十分なお答えをいただけなかったんですが、安倍内閣がまさに戦後レジームの脱却、このようにお話をされている。この安倍政権の根幹に示す価値観、理念、戦後レジームの脱却を訴えられる安倍内閣の閣僚の一員として、大臣、この戦時規定というものを見直すというのは、そもそも安倍総理の御意思のもとに働かれる閣僚の一員としては大きな使命ではないんでしょうか。これは、ぜひ山本大臣には戦後レジームの脱却ということをしっかりと御認識いただいて、明確な御答弁をいただけないでしょうか。政治家としての明確な御答弁をこの連合審査の場でいただけないでしょうか。

山本国務大臣 大変お詳しい馬淵先生でありまして、反論するつもりは全くないんですが、安倍総理のおっしゃる戦後、戦前の日本の抱える課題の中にこの部分が入っているかどうか、これについては私はちょっと寡聞にして存じ上げませんが、しかし、兼営法関係について、金融審議会金融分科会第二部会、信託に関するワーキンググループの中で見直しをすべきであるという意見もございましたし、馬淵委員の御指摘の点は、今後、こういう機会、審議会等をとらえて真摯に検討してまいりたいというように思っております。

馬淵委員 大臣から非常に前向きな御答弁をいただけたというふうに思います。ぜひ、やはり法美学、それも一つの考え方なんでしょうが、私は、整合性ということを、国民にわかりやすい法体系を我々立法府にかかわる者としてつくっていく、そしてまさに理念に基づいた新たな制度構築、現行でそれはもう十分長い歴史の中ででき上がってしまったということではなく、わかりやすい体系をつくっていくということで、それを放置しておくと何かここにあるんじゃないかなどと疑われてしまうような、あるいは国民から疑念を持たれることのなきよう、しっかりと取り組みをしていただきたいと思います。

 さて、今、この兼営法のあり方についてお尋ねをさせていただいたわけでありますが、信託業法の部分では二年前に私も幾つかの指摘をさせていただきました。そこで、信託業法について少し、二年前の私の質疑のフォローアップにつきましてお尋ねをさせていただきたいと思うわけであります。

 二年前の業法の改正では、先ほど来各委員からの御指摘もありました、受益権の販売というところにこの信託業の適用範囲が拡大をしていく。その中で私が質問をさせていただきましたのは、信託業法の中での不動産流動化スキーム、この取り扱いについてでございます。不動産の流動化スキーム、さまざまなビジネスモデルがございますが、不動産の受益権販売を行う者については、二年前の法改正ではいわゆる登録制度というものが定められました。そして、この登録制度は、人的要件やあるいは供託金等々の資金、資本の要件などが定められたわけであります。

 そのときに私が御指摘させていただきましたのは、受益権の販売業、あるいはもしくは代理、媒介といったことが登録の要件になっていったわけでありますが、一つの流動化スキーム、いわゆる特別目的会社を用いるスキームの中で、この受益権販売というものの登録が必要とされる要件の場合は非常に問題が生じるのではないかという指摘をさせていただきました。

 少し具体の話をさせていただきますと、特別目的会社、これはSPCとこの業界では呼ばれます。このSPC、特別目的会社は有限会社でつくられる場合がほとんどでございます。例えば、あるビル一棟、これを受益権にして販売をしていく。そしてこれを一たんはSPC、これはペーパーカンパニーです、その特別目的会社に受益権を譲渡していく。特別目的会社、SPCはこの受益権を指図者の指図に基づいて売買をしていくわけです。つまり、反復継続の受益権の売買がそこで発生する。

 しかし、このSPCというのはペーパーカンパニーですから、一つの取引、例えばバルクでビル一棟、これを受益権化したときに、証券化したときに、SPCが一つつくられる。もしくは複数の物件というのもあり得ます。これは受益権の一号から二十号、あるいは五十号、こう番号がつけられるわけでありますが、これらが売り切るまでSPCというのは残ります。そして、それを売り切った瞬間にSPCは清算する。

 こう考えると、では、そのときに登録をしてもらえばいいんじゃないですかということが、あの当時の金融庁の皆さん方の御認識にあったかと思うんですが、私はそのときに御指摘をさせていただいた。実は、こうしたトランザクションというのが大変な回数起きるんです。実際の不動産の流動化のビジネスの中では、当たり前のように設立、清算ということが繰り返される。つまり、物件の売買と同様にこのSPCが用いられる。それを一々、先ほど二年前の業法改正のときにありました登録要件を満たすなどとやっていた場合には、実態を全く見ずして、これは大混乱を招くのではないかという指摘をさせていただきました。

 これに対しまして、その後、運用等々で御対応いただいているかと思うんですが、その後の対応ということにつきまして、端的に御答弁をいただけますでしょうか。

三國谷政府参考人 信託受益権販売業者につきまして、登録制を採用し、説明義務等の規制を課すことといたしました趣旨は、信託受益権の買い手である幅広い投資家等の保護を図ることにございます。

 他方、御指摘のとおり、不動産信託を使いました流動化スキームにおきましては、信託受益権を直接投資家に販売することなく、一たんSPCの財産とし、この社債借り入れという形で実質的な投資家を募る、いわゆるYK・TKスキーム、これが活用されると承知しております。

 このようなYK・TKスキームにおきましては、信託の委託者兼当初受益者、いわゆるオリジネーターでございますが、これが特別目的会社に信託受益権を有償で譲渡する場合でございましても、これはSPCへの譲渡それ自体が投資家への売却とは実質的に異なる場合がありますことから、具体的には、「当該信託受益権を引当てに実質的な受益者を募ることを目的とする特別目的会社に、当該目的を契約書等に明記した上で譲渡する場合には、当該保有者自体は販売を行わないものとして信託受益権販売業の登録を要しないことに留意する。」といった形で、監督指針におきましてその旨を明確にしているところでございます。

馬淵委員 ありがとうございます。これは、信託会社等に関する総合的な監督指針、そこに明示をいただいたということだと今理解をいたしました。このような受益権の販売、SPCについての登録については、これは登録を要しないんだ、こう監督指針で示していただいたということであります。実態に即した対応をしていただけたと理解をいたしますが、さて、これが締め切られたのが法制定後の十二月末でございました。そして、今日において、この登録というのは何件でしょうか。

三國谷政府参考人 一、二違いがあるかもしれませんが、おおむね五百四十件でございます。

馬淵委員 二年前の指摘に対応していただいた形で監督指針ができ上がり、そして、それを受けての登録がおおむね五百四十というお話でありました。受益権の販売の登録をされた会社が全国で五百四十ほどである。

 さて、この数が多いか少ないかというのは非常に難しい話でありますが、ただ、それまでのことを考えれば、いわゆる一般の不動産の売買仲介と同様に受益権の仲介などをやった場合には、これは宅建業法に基づく手数料三%を、ただでやるわけにはいかぬからということで、業界の中では三%の手数料を取っておられた。これが今回この登録業者という形になって、登録をしない業者は当然ながらやってはならないと業法で定められたわけです。それをしない業者は業法違反になるということになるわけであります。

 さて、こうした中で、実態としては、アセットボリュームがYK・TK方式含めてどれぐらいあるかというのはなかなか難しいんですが、私、二年前に指摘させていただいた段階でも、およそのボリュームでいうと三兆円、その中でのYK・TK方式のアセットボリュームは一兆円近くあるんじゃないか、その中での登録業者は相当数殺到するのではないか、そう想定したわけでありますが、五百四十社、これは非常に限られた数であると思います。そして、五百四十社の信託受益権の販売業者一覧を眺めますと、いわゆる大手企業、大手の不動産あるいは建設会社等々、上場会社が名を連ねておられる。しかし、現状ではどうなのかということを少しお尋ねさせていただきたいと思います。

 現状、それこそ不動産物件を動かすのと同じ感覚で受益権の仲介等を行っている企業、不動産業の方々、実は、私はそういったことを現場で見聞きしております。もちろんこれは業法違反になるということになりますが、そういった形の報告を受ける中で、意識されないでやられている場合もあろうかと思うんですね。そうしたところに対しては、金融庁さんの方ではホームページ等で、信託業に関する金融庁の考え方ということで、いわゆる無免許・無登録業者に対しては、当たり前ですが、これはできませんと厳しく書かれております。

 こうした形で投資家の皆さん方への注意喚起や、あるいは業界の方々に対しても、これはしっかりと登録してくださいということを訴えられておるわけでありますが、なかなか難しいと思うんですが、受益権販売が実態としてどの程度行われているか。つまり、登録業者外も含めて、私はこれを見聞きする、見てはいないですね、現場を見たらすぐに伝えなきゃいかぬわけですが、仄聞する中では、実際にコンサルタントフィーなどで処理をしているというのを聞きます。こうした状況は、金融庁さんとしては、やみ金も同じですよね、これは取り締まらねばならない、しかし、それは見えてこないんだというお話かと思いますが、私なんかが聞くところによりますと、コンサルタントフィーや手数料で処理をしていますというのを聞くんですね。金融庁さん、実態の把握というのはどのようにお考えでしょう。

三國谷政府参考人 いずれにいたしましても、私どもといたしましては、この制度が適切に運用されるようにしっかり監督してまいりたいと考えております。

馬淵委員 そういったお答えしかしようがないのかという気持ちもいたしますが、いずれにせよ、問題意識としてしっかり持っていただきたい。またこれから、法務委員会の方々とはまた別の話になりますが、財務金融委員会では、貸金業法の規制等の法律改正の議論もあります。やみ金等についても、これも今非常に大きな社会問題になっていますが、この受益権の販売に関しても同様のことが現状あるという認識をしっかり持っていただいた上で、しっかりした監督をお願いしたいというふうに思います。

 そして、あと、受益権の販売についてもう一点お聞きをしたいんですが、今も私、SPCの話を申し上げましたが、例えば、不動産の証券化される受益権の中で、利用権というものを付した不動産受益権の販売というのも理論的には考えられるであろう。例えば、これはビルのテナントでも構わないですし、マンション等でもいいんですが、利用権つきの不動産信託受益権という形でこれが受益権売買されたときにどう考えるかということであります。

 不動産物件の移動であれば、現行法制では当然ながら宅建業法や、あるいは、マンション等であれば、マンション管理適正化法などの関係法令が当然ながらそこに各種の法規制としてかかってきます。また、さらには、税制の場合は住宅関連税制、住宅ローンの控除等の税の規制等が、あるいは税の恩恵等がそこにかかってくる。ところが、受益権の売買そして譲渡でありますと、今利用権つきという形でこれが行われた場合には、一方で、不動産の譲渡であれば今申し上げたような関係法制や税制がかかる、受益権の場合は、これはどうなっていくのかということであります。

 この整合性というのをどのようにお考えになられるかということを、金融担当大臣、御答弁願えますでしょうか。

山本国務大臣 信託受益権は、信託財産から給付を受託者から受領するという権利でございます。その法的性質は、通常の所有権それ自体とは大きく異なります。したがって、信託業法の規制は、不動産取引における法規制とはおのずから異なるというように解釈しております。

 しかしながら、信託受益権販売者が不動産信託受益権を販売する場合には、信託業法に基づく通常の信託受益権の説明義務に加えまして、宅建業法と同様の事項の説明義務を課すというようにしておりまして、可能な限り、不動産所有権の購入者保護、これと整合性を合わせるように努力をしております。

馬淵委員 整合性をとるような努力というふうにお話をいただきましたが、これはぜひ、理論上は成立する信託受益権でございますので、ローン控除等税制、そして関係法制、この整合性というのをしっかりと保っていただきたいということは、今大臣の御答弁をいただきましたので、改めてこの場で私は確認をとっていきたいというふうに思います。

 それでは、最後の質問とさせていただきますが、福祉信託につきまして少しお尋ねをさせていただきます。

 福祉信託と業法の関係でございますが、昨日の参考人質疑の中で小野先生からも御指摘がありました。福祉信託、それこそ配偶者やあるいは子供たち、障害を持ったお子様たち等々に財産を残し、そしてそれを活用してもらうということを考えて、いわゆる業としてではなく、御家族の中での、先ほど、信託のそもそものスタート、財産の承継管理等々というその概念に基づいた形の中で、こうした福祉信託の重要性というのはこれからますます出てくる。

 そして、それがビジネスではない中で、一番多いのは弁護士さんがこうした御相談を受けられる。そして、弁護士さんが福祉信託を組成されるという形になったときに、そのフィーは弁護士報酬なりの形で取られるかどうか。それを反復、複数繰り返すと業としてみなされる。個人の場合は、当然ながらに、業法が適用されれば、これは業法違反になってしまう。これは大きな問題である、懸念だ、このように小野先生もおっしゃっていたかと思うんです。

 このように、福祉信託に対する業法の規制、これは単に弁護士さんだけではありません。NPO法人を初めとする、いわゆる業を目的としない団体、組織を含めて、福祉信託を行っていくというときに業法のかかわりはどうお考えでしょうか。山本大臣、お願いいたします。

山本国務大臣 そもそも、日本の歴史から信託に近いものをひもときますと、空海上人が綜芸種智院を信託しただとか秋田感恩講だとか、元来福祉型が基本にあるようでありまして、その意味においては、福祉信託、個人、NPO、いずれも個々に一回一回なされているということが原型にあることは当然でありまして、これはむしろ、社会的にはどんどん拡大の基調であり、高齢化社会では大事なことだろうというように思います。

 ただ、馬淵委員がおっしゃるように、業としてやった場合はちょっと様子が変わるよということは、それはしようがないことだろうと思います。特に、目的や当初の構成メンバーの方々の思いは善意や福祉目的でありましても、やはりそれが時代が変わったり組織が変わったりするのが常でございまして、その意味においては、財産を混同しないだとか、あるいはガバナンスをしっかりして継続していただけるかというようなことを考えますと、やはり担い手を株式会社だけに限定させていただくことは、当面これはやむを得ない措置ではないかというように考えています。

 しかし、こうした福祉型信託のことにつきましては、前回の信託業法改正に際しまして、衆参財務金融委員会の附帯決議、ここに次期信託業法改正時の検討事項の一つとしてきちっと掲げられておりまして、前回の改正法で予定している施行、平成十六年十二月後三年以内の検討の中で必要な検討を重ねていきたいというように思っております。

馬淵委員 そうなんですね。二年前の附帯決議の中に「福祉型の信託等を含め、幅広く検討」ということを挙げていただいております、採決していただいております。

 今のお話でありますと、株式会社で規定するのは仕方がないんだというお話でありましたが、先週大臣にも、私、質疑させていただきました保険業法の中で、いわゆる無認可共済、自主共済、相互扶助の精神に基づく自主共済、これを、少額短期保険業者あるいは保険会社という形の規定の中におさまらないものは適用除外規定も含めた十分な検討が必要ではないか、本当に必要な相互扶助精神、こうしたものを守るのが立法の趣旨じゃないんですかとお尋ねをさせていただいたときには、大臣からも、そのことに対する極めて真摯な受けとめ方の御表明をいただきました。

 この福祉型信託の問題も同様に、業となすということではなく、立場上業となってしまうような方々、弁護士さんもそうですね、そしてNPO法人にしたって、あくまでそれは利益追求ではなくて、お立場上、コストの部分等々の見合いの部分というのがどうしても発生する。これをしゃくし定規に限ってしまっては本来の目的を達成することができないのではないか、私はこう申し上げているわけであります。

 ぜひ大臣、今三年以内の改正の中でというお話がありましたが、端的に一言で結構ですが、今申し上げたような、本来の立法趣旨に基づいたこの取り組みというものについて、大臣の御決意をお聞かせいただけませんか。

山本国務大臣 慎重かつ多面的に検討してまいりますので、どうぞよろしくお願いします。

七条委員長 馬淵澄夫君、時間が来ておりますので。

馬淵委員 前向きな御答弁とあえて申し上げさせていただきまして、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

七条委員長 次に、田村謙治君。

田村(謙)委員 民主党の田村謙治でございます。

 馬淵議員に続きまして、質問をさせていただきます。私の時間は二十分と限られておりますので、争点の大きな一つとなっております自己信託に限定をして、いろいろとお伺いをさせていただきたいというふうに思っております。

 今回、合同審査で、私も財務金融委員会の委員でございますし、今までの法務委員会でも相当議論していらっしゃるということは重々承知ではありますけれども、基礎的な部分も含めてお聞きできればと思っております。

 自己信託の解禁と言えると思いますけれども、それは、ある意味、規制緩和の一つの流れの中なのかなという位置づけもされているというふうに聞いていますけれども、そもそも、規制緩和、自己信託の解禁というのも、いわゆる業界などから要望があってそれにこたえたという側面もあるんじゃないかなというふうに思います。

 今回、連合審査でありますので、信託業法やあるいは金融商品取引法に関連をする商事目的での利用分野についてどのような要望があったのか、自己信託というのはどのようなニーズがあるのかというのを、まず御説明をいただければと思います。

    〔七条委員長退席、伊藤委員長着席〕

三國谷政府参考人 自己信託の商事目的のニーズにつきましては、いろいろな見解がございますが、例えば、一つには、リース・クレジット会社が自社の貸付債権を流動化する場合にこれを利用するのではないか、あるいは、サービサー会社が債権回収業務におきまして回収した金銭、これを、送金までの間、サービサー会社の倒産から隔離するために自己信託するといった点、また、中小企業が保有する特許などを自己信託いたしまして、特許などから生じます利益をもとに資金調達する、こういったものがあると聞いております。

田村(謙)委員 そのようなニーズがある、いろいろな見解があるとおっしゃったのが若干気になりますけれども、そういった利用の仕方があるのではないかという考えのもとに、商事目的でも自己信託が利用されるのではないかということで今回の自己信託の解禁があるという側面があるんだと思います。

 結局、そういうニーズがあって、今回自己信託というものを解禁するというタイミング、そのタイミングというものが、規制緩和、あらゆる分野でそうですけれども、基本的には、どういうニーズがあって、今規制緩和をするというのがやはり適切だという判断があるんだと思いますが、この件に関しては、なぜ今なのかということについて御説明をお願いします。

寺田政府参考人 私どもの信託法改正見直しの作業と申しますのは、基本的には五年ぐらいの単位で、長いスパンで行ってきたものでございます。

 元来、この信託法は、先ほど来大臣から御説明申し上げておりますとおり、全く見直しが行われないまま今日まで来ておりますし、この間、民法学者あるいは商法学者からさまざまな改革の見直しの提案がございます。特に平成十二年には、商法の関係の学者が中心になって、信託法の学者とともに、商事の信託について今後どうあるべきかということについての改正試案のようなものを提言されておられたわけであります。

 そういった学界の動きの中にも既に自己信託というものが、信託宣言とも言われておりますけれども、含まれておりまして、もともと信託の本質論はいろいろございますが、この点については、立法論としては十分に考えられる、むしろ進めるべきだという意見が学界でも次第に強まってきていたわけでございます。

 先ほど金融庁の方からも御説明ございましたとおり、金融の面、債権の流動化の面、あるいは会社の事業的な分野を切り離した信託、それから、特に民事の分野におきましては、障害者をお持ちの方から、一定の資産を自分の債権者から切り離す形で、その子に財産としてキープしておきたいというようなさまざまなニーズが語られ始めまして、私どもといたしましては、今後の社会の進展から考えますと、やはりこういったものも今回の信託の見直しに取り込んでいくべきだろう、こう考えたわけでございます。

 もっとも、委員の御質問の趣旨の中には、非常に今規制緩和で、とりわけ規制緩和と関連してライブドアの問題等があったこともございますので、なぜこの時期に自己信託を解禁するのか、こういう趣旨だろうとは思いますが、この点は、特に会計、税務等の問題もございます。私どもも、自己信託そのものが、信託の利用しやすさ、これから使いたいという方々にそういう新たな手段を提供するという意味では非常に重要だと思いますけれども、他方、濫用はあってはならないということでございますので、こういった面の検討は必要だと十分認識をいたしております。

 連結を含めた自己信託の会計のあり方については、先ほど来申し上げておりますが、企業会計基準委員会、ASBJにおいて検討を進められるということになっておりますし、また税務についても先ほど来御答弁があったとおりでございますので、私どもとしては、この時期というのが特に自己信託の解禁にとってまずいという判断はしないところでございます。いろいろと今後も十分な措置をとってまいりたいと考えているところでございます。

田村(謙)委員 随分私の意図を酌んでいただいたというか、いろいろ御答弁いただきましたので、若干それについて突っ込んでみますと、今なぜこのタイミングなのか。もちろん、十年間のスパンで見れば、今の御説明は、十年単位ぐらいで見れば何となくわかったと思いますけれども、それこそ、学界でだんだん意見が強まってきたとか、そういうニーズがかなり認識をされてきたと。それが、例えば今御答弁の中で明確にいつというのは、平成十二年に改正試案が出たという話はありましたね。ある意味、学界では相当、そのころにはかなり学界の中ではそういう見解というのは出てきているわけで、それからもう随分年数がたっています。

 今おっしゃったように、今のタイミングが悪くないんじゃないかというのは非常に消極的で、例えば、あえてもっと早くやるべきだったんじゃないかという立場で御質問をした場合、それはまだまだ機が熟していなかったという、より明確な理由はあるんですか。

寺田政府参考人 先ほども申しましたとおり、この信託法制の見直しというのは、既存法制の見直しの一環といたしまして、経済構造にかかわるものといたしまして、会社法を初めといたしまして、集中的に行っているものの一つでございます。

 委員の御指摘が仮に、自己信託だけを今回導入するのにどうしてこの時期である必要があるのかという御質問であれば、それは御質問としてはよく理解できるところでございますけれども、私どもといたしましては、特に自己信託をこの時期に導入することを目指しているということではございませんで、信託全体のあり方を考えた場合に、こういったものも一つの手段としてあり得るかあり得ないかという判断をいたしまして、それはあり得るという判断で全体の見直しの中に組み込んでいるわけでございます。

 したがいまして、委員から見れば、悠長な作業だという御指摘があるかもしれませんが、私どもといたしましては、先ほどのような五年あるいは十年のスパンで基本法の見直しをした一環として今回御提案をしている、こういう位置づけになるわけでございます。

田村(謙)委員 確かに、信託法全体の中で、全体を改正するのであるから自己信託もこのタイミングで、当然、信託法制全体として考えるのはもちろんでありますので、この際一気にというのは一般論としてはわかりますけれども、もう私が御質問する前にいろいろお答えいただきましたので、結局、自己信託については悪用の懸念というのがさまざまにあって、それをどのように防いでいくのか、そういう中で、会計上や税務上の問題については今後適切な措置を検討していくという御答弁をさんざん法務委員会でもしていらっしゃると思いますし、平岡委員からもそれについて突っ込んだ質問があったと思います。

 これは、私は通告はしていませんので、財務省の人がいらっしゃらない中で、あえて金融庁側の人にお聞きをしたいんですが、例えば、税制について今検討しているわけですよね。平岡委員も質問なさったように、結局、十九年度改正ですから、ことしの末までに決めるわけですよね。当然、大体そういう税制改正というのは金融庁側から、今回の件についても、法務省はどれぐらいかかわっているか知りませんけれども、金融庁側から要望を出して、それを主税局が精査をする。主税局、そしてまさに与党自民党税制調査会の結論というのが十二月の年末になってしまうということだと思うんですけれども、例えば、では、金融庁としては、そういった租税回避とかというのを防ぐためにどのような要望をしていらっしゃるかというのはお答えできるんですか。

三國谷政府参考人 税制改正につきまして、これからまたさまざまな議論が行われると思いますけれども、一つには、租税回避ということにつきましては、これはまたそういった立場から真剣な議論が行われるべきだと考えております。

 また、私どもといたしましては、金融商品としての性格、これが実質的に伴うものでございますれば、受益者課税といった実質が維持されるような、そういった要望等をしていくことが基本かと考えております。

田村(謙)委員 結局、中身は何もお答えいただかなかったような気がしますけれども。

 自己信託、いろいろ悪用されるんじゃないか、会計上やあるいは税制上。それを今後検討していく、適切な措置をちゃんと講じますというだけで、結局、なかなか納得しない。それは、聞いた話では、まさに与党内、自民党内でも納得しない人がいるから、とりあえず一年間凍結をしたということのようでありますけれども、会計に関しては、まさに審議を始めたばかりで、その結論というのはなかなか出ない、ですから、今全くわからないというのは、私もわからなくはありません。ですけれども、税制に関しては、今全く白紙で、これから二カ月、まさに国会での議論を踏まえて真剣に議論するなんということはあり得ないわけですから、完全にそれを切り離して、とにかく適切な措置を講ずるんだという一点張りで、結局、納得しない人はたくさんいるわけですよね。

 今、金融庁さんの要望、私も通告していませんでしたので、余り強く突っ込むつもりはありません。ただ、では、要望事項、その概要というのはこういった場ではお話しいただけないんですか。(発言する者あり)いただけると理事も言っているんですけれども、それはどうなんですか。時間もないので、細かいことを聞いてそれを突っ込むつもりはないんですよ。もう金融庁としての要望事項というのは固まっていますよね。

三國谷政府参考人 私どもといたしましては、これまでの金融商品に係ります基本的な仕組み、これを維持しながら、租税回避等につきましてはしっかり議論していただきたい、これが基本的な考え方でございます。

田村(謙)委員 もちろん、それは我々が、まさに自己信託が大丈夫かと心配している人が思っていることで、何もお答えいただいていないんですけれども、私は、今回合同審査でいきなり紛糾をさせるつもりはありませんが。

 では、私は要望の概要を教えてくださいと今御質問したんですけれども、何も要望の中身、ごく数行の中身でもいいですよ、ポイントでも。どういう指針なのか、どういうことを主税局に要望しているのか。時期的に当然もう要望は終わっているはずで、主税局と議論するということ、あるいは主税局の中で議論するというのはまだ途中だと思いますから、それは一切お話しできないと言ってもわかりますけれども、金融庁の中でも要望事項は固まっていないということですか。

三國谷政府参考人 私どもは、受益者課税という基本的な考え方は堅持していただきたい、そういう要望をしているところでございます。

田村(謙)委員 細かい中身についてはこれ以上聞きませんけれども、大体、今回のこの件に限らず、結局税制は切り離して考えると。それは金融庁さんを責める話じゃないんですけれども、むしろ、今の政府あるいは与党側の体制自体も私は非常に問題意識を持っておりまして、結局、税制は後で議論するんだ、それはちゃんと適切にやりますから信用してくださいと言われても、不安に思っている人というのは、本当に適切なのかどうかというのは具体的なことを言わないとわからないですよね。税制の場合がその一つなんだろうというふうに思うんですよね。特に、あと二カ月後に迫っていて、それは年末に決めるんだから、この場では議論する話じゃないというふうに切り離すのは、私はそれは大変おかしいんじゃないかなと思っております。

 例えば、通常国会でも公益法人改革の話があって、税制はことしの年末にやるから、その話はこれから先だと。例えば自己信託に関しても、それは大した問題ではないんだということであれば、別に、大枠を決めるのは今決めて、まさに政省令レベルのそういう詳細なことは後で決めるというのは基本的にそうだと思いますよ。ですけれども、今回の、租税回避に限らず悪用の懸念というのはさまざまな、まさに専門家も指摘をしているところで、それを単に、適切な措置を講じる議論は後でしますから、それで何とか済ませてくださいよというのは、単なる言い逃れにすぎないんじゃないかなというのは強く思っているところでありまして、それは、金融庁を責めているわけではありませんけれども、申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 時間もあとわずかですけれども、若干具体的なことについてお伺いをしたいと思いますが、自己信託が悪用される懸念があるという中で、例えば不良債権処理にも利用できるという場合に、結局その受益者、投資家ですよね、投資家が買うわけですけれども、その投資家を保護するに当たっては、どのような情報が適切に開示されるのかというその方針をお答えいただければと思います。

三國谷政府参考人 自己信託におきましても、これは通常の信託と同様でございますが、信託を行う者が、信託法の方では、これに従いまして、貸借対照表、損益計算書等の帳簿を作成し、これを受益者の閲覧に供することとなっております。信託業法の世界では、信託財産状況報告書等を受益者に交付することとなっております。こういったことによって、受益者に情報が開示されることになっております。

 また、信託受益権を販売する場合につきましても、通常の信託と同様に、信託受益権の内容に関する説明義務、書面交付義務等、投資家保護の観点から必要な信託業法上の規制が適用されることになっておりまして、こういったことによりまして受益者保護を図ってまいりたいと考えております。

田村(謙)委員 今のお答えを受けて、もうちょっと突っ込んでお伺いしたいんですけれども、結局、受益権を販売するという場合に、不良資産は不良資産です、そして優良資産は優良資産です、そういう情報を適切に提供する枠組みがあるというお話でありますけれども、例えば、自己信託をした者がその信託財産を勝手に流用してしまうとか、あるいはその管理自体が非常にずさんだったという場合には、受益権を販売する場面での説明義務だけでは投資家の保護に欠けるというふうに思われますけれども、そのような場合に、投資家の保護というのをどういうふうに図っていくのかというのを、信託業法上の考え方を御説明ください。

三國谷政府参考人 まず、基本的な考え方でございますが、多数の受益者を顧客として自己信託が行われます場合に、やはり事業者との間で情報量や交渉力に差が生じ得ることから受益者の利益を守る必要があると考えております。このため、信託業法改正法案におきましては、多数の者が受益権を取得する場合には、これは業法上の登録を求めることといたしました上で、通常の信託会社と同様の行為規制、監督規制を課すこととしております。

 また、委託者と受託者が同一でございますことから、一つは信託設定が適切に行われない、あるいは信託財産の価格が過大に評価される、こういったおそれがありますので、信託業法の改正法案におきましては、自己信託設定時に、一定の項目につきまして、弁護士等の第三者がチェックすることを義務づけることとしているところでございます。

 次に、信託財産の販売あるいは管理の段階でございますけれども、相当程度の注意水準をもって遂行するという善管注意義務を課しますとともに、自己信託する者の固有財産と信託財産を分別して管理するための体制を整備する義務を課すこととしております。

 また、こういった規制にもかかわりませず、自己信託をする者が仮にそういった信託財産について不適正な管理をしたようなことが判明しました場合には、業務改善命令、業務停止命令等の適切な監督上の処分を行ってまいりたいと考えております。

田村(謙)委員 御丁寧な説明で時間が過ぎてしまいましたので、一言だけ申し上げますと、前からほかの委員の質疑でも話題になっていますように、五十人という線引きが、受益者が五十人未満であると信託業法の適用外になってしまう、信託業法の範囲内であれば、相当厳しい投資者保護のためのさまざまな規定が整備をされているわけですけれども、その規定が、信託業法が適用されないといきなり相当緩くなってしまうという懸念を今までも多くの委員が表明をしていると思いますので、何でもかんでも信託業法を適用すべきだとは思いませんけれども、単に五十人という線引きだけではやはりさまざまな懸念が払拭できないのではないかなというのは私も意見を共有するところでありますので、ぜひとも御検討いただきたいと思います。

 以上で終わります。

伊藤委員長 次に、古本伸一郎君。

古本委員 民主党の古本伸一郎でございます。

 私からも、引き続きまして、連合審査の議案となっております信託法並びに関係する業法を中心にお尋ねをしてまいりたいと思います。

 冒頭、両大臣におかれましては、大変お疲れさまでございます。そしてまた、法務の委員長が恐らく中心になってかとは思いますが、法務の筆頭、御配慮いただく中でこの連合審査が実現しましたことに、感謝を申し上げる次第でございます。もちろん、財金委員長にも感謝を申し上げております。

 さて、チームプレーの民主党でございますので、先ほどの同僚議員の質問を少し引き取りたいと思うんですが、税制についてまずお尋ねをしたいと思います。

 もう少し具体的なイメージを想定いたしますと、今回の法改正で、自己信託、一年の経過措置を見てからということの附則がついておるようでありますが、例えば、不動産をある企業が自己信託し、そして、受託会社たる、現実九九%は信託銀行が受託者でありますので、恐らく信託銀行を想定しますが、違うのであれば違うと言っていただきたいですが、受託し、ある方がこれを引き受ける、当然に受益証券としてこれを引き受けるという形になります。この一連の流れの中で、現行法でいけばどういう課税が発生するんでしょうか。

石井政府参考人 現行法における信託の扱いでございますが、現行法の信託につきましては、その信託の内容、性格に応じまして幾つかの課税の類型がございます。具体的に申し上げますと、特定目的信託あるいは一定の投資信託につきましては、法人課税がされる他の主体とのバランスを考慮いたしまして、信託財産から生じる収益につきましては、信託段階で受託者を納税義務者とする法人課税を行うという類型がございます。それから、一方、合同運用信託など金融商品的なもの、これにつきましては、受益者に現実に分配された段階で課税を行うという類型がございます。それから、その他の、それ以外の信託につきましては、信託財産から生じます収益等が、原則としては受益者に帰属するものとみなしまして、受益者に対して、いわゆるパススルー課税と呼ばれておりますけれども、そういう課税をするというのがおおよその類型でございます。

 受益証券あるいは受益権についての課税、これにつきましても、現在、受益証券が発行されております、先ほど申しました金融商品的なもの、これにつきましては有価証券として有価証券の譲渡益課税というものが行われております。他方、受益証券が発行されていない、単なる受益権の譲渡につきましては、受益権の譲渡が信託されている財産そのものの譲渡であるということで、その信託財産の譲渡益、土地であれば土地の譲渡益、その他の資産であればその資産の譲渡益の課税というものを行っておるところでございます。

古本委員 恐らく、今、所得税法の十三条並びに二十四条等々を中心にお答えをいただいたと思うんですが、現実的な話を少し想定したいんです。

 自己の、収益性のある不動産を持っておられる企業があったとして、本来であれば、これを売れば譲渡益が発生するわけですよ。あるいは、大家さんとして貸せば賃貸収入で不動産所得が立つわけです。

 これをせずに自己信託をすることによって、第三者である信託銀行がそれを引き受けて、それで証券化するということをとれば、それぞれの段階において、例えばキャピタルゲイン課税もかけられるし、それを取得した際の取得税がかかる、こういう話だったと思うんですが、実はこれは、大変豊かな、お金の余っておられる人がおったとして、その人が一手に引き受けてくれたとして、これをその後、そういう場合、分割というかどうかよくわかりませんが、相対で発行した受益証券を五十未満で分割してやれば、これは名寄せの義務があるんですか、受託会社に。名寄せをつくる義務はあるんですか。

石井政府参考人 それは税制上の問題以前に、この新しい自己信託の仕組みの中でどのような……(古本委員「金融庁に聞いているんです」と呼ぶ)

三國谷政府参考人 信託業法の適用かどうかということの基準でございますと、私どもは、五十人を中心に検討しておりますが、これにつきましては、実質的に分割が行われるかどうかも勘案して考えておるところでございます。

古本委員 つまりは、同僚議員に指摘いただいたとおり、四十九人以下であれば、これは業法の適用外ということで受益証券の分割は自由にできる、こういう理解でよろしいですか。業法の適用外で自由にできるということでいいですか。

三國谷政府参考人 これが分割して、実質的に五十人を超えるような多数の者に販売するようなことを前提としている場合には、これは実質的に多数の者という形で規制する方向……(古本委員「四十九人以下ですか」と呼ぶ)いや、分割して五十人以上に実質的になるような場合には、これはしっかりと規制する方向で検討してまいりたいと思っております。

古本委員 いや、四十九人以下だと業法の適用外なんですかと聞いているんです。イエスかノーか。

三國谷政府参考人 実質的に四十九人以下であれば適用外でございます。

古本委員 これは大事ですよ。その場合は、その人たちは、キャピタルゲイン課税も払わなければ、それを取得した際の取得税も払わなければ、売り抜けたときの譲渡益課税も、これはすべて逃れられる、こういう理解でいいですか。そういうことを言われているんですよ。

三國谷政府参考人 業法上のそういう規制の取り扱いと税法上の取り扱いは、またこれは異なる世界かと思います。

古本委員 そこで、大臣になるんですよ。

 今回、もちろん、いろいろな会社法等々、本法を改正した後に関係する税制をいじるというのは、これはもうよくよく承知しております。

 しかしながら、今回の事案は、くだんのライブドアの事件、さらに今パススルー課税というのがいみじくも出ました。これは例の日銀総裁の村上ファンド事案等々、いっぱいありますから、パススルー課税はある意味、そのとき出た手口じゃないですか。ですから、これはもちろん十九年度の政府・与党税制改正の中で盛り込んでいただくということになるわけでありますが、少し具体的に詰めたいと思います。

 これはどう考えましても、ある不動産を持っておられる方がそういうビジネスのスキームを組むことは想像にかたくありません。したがって、そういうことを想定して、事後的チェック機能を強化していくという金融庁の大方針に私も賛同です。

 したがって、業者を信じ、よりよくやってくれるだろうという前提に立った上で、詰めたい点は、不動産であれば当然取得税、それから登免税も発生しますね、等々の税がある中で、自己信託をすることによって、実はさまざまな節税といいますか、非常にグレーなゾーンに入る税のやりくりができるんじゃないかという疑念を強く抱いております。

 ついては、どうですか。この際、大臣、今後の税制改正を、十九年度、政府・与党で進めていただく中で、不動産の自己信託に関して言えば、持っておられる人が、オーナーですね、これを委託し、そして受託するのは恐らく信託銀行です。この信託銀行さんを通じて次のだれかに小分けしてやっていく、このスキームなら何の心配もありません。それぞれ、そんなひどいことをするところじゃないと信じていますので。

 ところが、相対で、ある企業とあるすごい資産家の人が相対でそれをやっちゃうと、その先の分割は、今金融庁の事務局もいみじくもおっしゃいました、実質的に四十九人以下であれば業法の適用外、さらに分割もある意味で自由。となると……(発言する者あり)自由じゃない。ちょっと続けさせてください。

 となると、一体どこの段階で、もともと不動産であればあまたの諸税がかかる中で、これは逃れるという仕組みになってしまうおそれがあるわけであります。そういうことのないような税制にしてほしいということを具体的に段階段階で詰めなきゃいけないんです。今の段階では、今回の法律の一体第何条に書いてあるんですか、税制について。書いていない。そういう意味で、大臣の御決意をお尋ねいたします。

山本国務大臣 委員の御指摘はもっともでありまして、信託をすることによって税逃れになるということは断じて許されません。

 信託というのは、概念上、所有権が移転する形態になっておりますが、しかし、信託契約が終わりますと、所有権というのはまたもとに戻るわけであります。そうすると、信託をしている間に譲渡したと同じ課税がされて、信託を終了してまた他に売却するとまた譲渡税がかかるというようなことになりますので、概念上、信託契約の場合には、譲渡はまだ差し控えられているという概念構成で考えると公平感が出てくるのではないかというように思っております。

古本委員 細かいですが、登録免許税的概念はどうなりますか。

山本国務大臣 それも、信託が終了して他に譲渡すればまた登録免許税が発生するわけですから、その点においても同様だと思っております。

三國谷政府参考人 多数の者の概念でございますけれども、これは例えば同一の自己信託を繰り返しまして、複数の信託の受益者を合計すると多数の受益者が生じる場合でございますとか、あるいは、例えばペーパーカンパニーのようなものを介在させまして行うような潜脱スキームのような場合につきましても、これが実質的に多数の者が受益権を取得することができる場合につきましては登録を必要とするということを考えているところでございます。

 したがいまして、一回当たりの受益者の数が少ない場合でありましても、実質的に多数の者が受益権を取得できる場合には信託業法の規制がかかる、こういうふうに考えている次第でございます。

古本委員 一口で言えば、実質的に四十九人以下でも業法の適用をするとおっしゃったんですか。

三國谷政府参考人 先ほどからの御質問で、それから先の分割を予定している場合とかであった場合に、最初の段階では四十九人以下でありましても……(古本委員「だれも最初から予定しませんよ」と呼ぶ)そういったことができる場合には、それは多数の者という形で規制する方向で考えているところでございます。

古本委員 今のは、相対でやるときに、A社が持っている不動産をあるBという個人が引き受けるときに、このお互いの契約約款の中に、具体的に、いずれ実質的に四十九人に分割しますということを書き込んだ場合は業法、こういうことを言っているんでしょう。だれもそんなこと最初から書く人はいませんよ、そういうことをもくろむ人は。これは大事ですよ。議事録に残りますよ。

三國谷政府参考人 そういった分割が可能な形態、そういったことができる場合につきましては、業法上の対象とする方向で規制することを考えているところでございます。

古本委員 可能な場合というのはどういう場合ですか。

三國谷政府参考人 例えば、その相手方が集団投資スキームであることが最初から予定されている場合、それから実質的にそういった分割に制限がないような場合、そういったことにつきましては、できる場合に該当することになってこようかと思っております。

古本委員 ということは、今局長が答弁された、想定する人以外の人が受託者だった場合は、実質的に四十九人以下の分割をもくろんだケースは、これはすぐれて業法の適用外となる、こういう理解でいいですか。イエスかノーかですよ。

三國谷政府参考人 まず、信託行為の規制の中で判断を行いますし、仮にそれが、事後的にそういったことが実質的に潜脱されているような場合であれば、それはきっちりと監督をしていくということになると考えております。

古本委員 この点は引き続き、あいまいなままですので、機会をぜひまたつくっていただきたいと思います。

 大事なのは、その際に、今想定した、あるA社という企業の不動産をだれかが引き受けてくれる、こうなったときに、これは第三者機関のチェックを行う、こういうたてつけになっているというふうに理解しておりますが、この第三者機関というのは具体的にどういう人なんでしょうか。

三國谷政府参考人 例えば弁護士とか、あるいは公認会計士も検討中でございますが、そういったいわばしっかりした人たちにチェックをしてもらうことを考えているところでございます。

古本委員 ということは、その際の、相対の一対一ですよ、相対の一対一の受益証券を発行し、ある会社が引き受けてくれた場合、この場合の証券というのは登記をつけるんですか。抵当権の乙区か何かに書くんですか。

三國谷政府参考人 それぞれの資産が登記をされるかどうかによるわけでございまして、例えばその資産が不動産であれば登記が必要でございますが、それが受益証券であるということであれば、それだけで登記ということにはならないと思います。

古本委員 そういたしますと、第三者機関というのは、これまでのように、きちっと信託銀行が間に入って、受託者がいて、そして受益者たる、受益証券を引き受けてくれるというこの三者がいる場合はいいと思うんですが、恐らく、信託銀行の中の弁護士さんとかそういう人がチェックするということを言われているんですか。

 ところが、自己信託になれば直接できるようになるわけですよね、宣言するわけですから。その場合の第三者というのは一体だれなんですか。近所の弁護士に頼んで見てもらえば、それでよしになるんですか。自分の会社の顧問弁護士ですか。どういう第三者機関を想定されていますか。

三國谷政府参考人 それは内部の方の場合もございますでしょうし、外部の方である場合も、両方あろうかと思います。

古本委員 今の話は大事ですよ。ということは、自分のうちの何か収益型不動産を持っておられる会社がこれを委託したい、そして、これを受託してくれる人がいて、その受益証券を買ってくれる人がおった。この物件に瑕疵があるかどうかのチェックは、実は大家さんである、持っておられるオーナーの会社の顧問弁護士が第三者機関として査定を入れる、こういうことでいいんですか、そのケースも許されるということを今言われましたか。

三國谷政府参考人 こういった第三者チェックをする方々は、それぞれの職業倫理を必要とされている職種の方ということが基本かと思います。そういった世界できっちりそういったチェックが行われることを考えている次第でございます。

古本委員 今ここに、金融庁、平成十八年四月五日発行の行政処分の紙があります。JPモルガン信託株式会社に対する行政処分。これは非常に稚拙な手口ですね。いわゆる不動産投資信託を引き受けた際に、個別個社の名前を言ってなんですが、もうこれはホームページにも出ていますから申し上げますが、JPモルガンも、さらにありますよ、新生信託。まだまだありますよ。金融庁も頑張っておられる。

 ここは何をしたんですか。簡単ですよ。引き受けた不動産を、実は建築基準法違反の物件であるにもかかわらず投資信託しちゃったんじゃないですか。それでは、このJPモルガンの信託銀行の審査部のいわゆる顧問弁護士さん、一級建築士の資格を持っておったんですか。査定できたんですか。

 これは現実問題、不動産鑑定士業界からも大変な、不動産投資信託のJ―REITを初め、伸びに対し追いつかないという悲鳴の声が聞こえておるじゃないですか。それを当局は、今何とおっしゃいましたか。弁護士はそういう職責においてきちっと見てくれるだろうと。JPモルガンには弁護士がおらなかったんですか。御答弁を求めます。

三國谷政府参考人 私どもも業法を所管する立場といたしましてこのように監督している次第でございますし、また、公認会計士であれば、またそういった世界で私どもも監督しているわけでございますし、非違があれば、このような形で行政処分を打つという形で適正化を図っているところでございます。

古本委員 まだありますよ。その審査の基準というのは、今後、具体的に何かガイドラインみたいに引いていくんですか。少なくとも今回の整備法を見ても載っていませんね。

三國谷政府参考人 審査の項目につきましては、今後、内閣府令で定めていきたいと考えております。

古本委員 きょう通告いたしておりませんが、尊敬する渡辺喜美副大臣も今陪席をいただいております。

 内閣府令と今おっしゃいましたが、副大臣、これはやはりこういう可能性が、さきの常会でも、さまざまな金融商品が広がっていく中で、まじめに額に汗して働いている人が、所得税の増税で、一〇〇%所得が捕捉されて、全国四千万人のサラリーマンの皆さんは真っ当に納めているわけですね。片や、納めていないんじゃないかという疑惑のある人がのうのうと何とかヒルズに住んでおるわけですよね。

 これは、正義感あふれる副大臣にあられましては、ぜひそういう意味で、きょう僕が何を意図して質問しているかということは引き取っていただけているというふうに思いますので、何か御決意なり御所見を求めたいと思います。

渡辺(喜)副大臣 新しい制度がスタートする場合には、いろいろな摩擦もあり、問題が発生をしがちであります。したがって、そういう問題をきちんと予見しながら制度の組み立てをやっていくことが大事であると考えます。

 信託受益権につきましては、これは、信託受益権販売業者は金融商品取引業者になるわけでございまして、税制の側面から申し上げますと、信託受益権は有価証券ということになってまいりますので、こうした有価証券税制も含めた検討が必要かと存じます。

古本委員 ありがとうございました。

 そうしますと、局長、今渡辺副大臣から御答弁がありましたが、金融商品取引法の対象商品になるかどうか、これは恐らく一つの重大な、判断をする分水嶺になると思うんですね。

 先ほど来お尋ねいたしましたが、実質的に四十九人以下の場合はこれは金融商品に当たらない、こういう整理になるんでしょうか。

三國谷政府参考人 信託の受益権につきましては、受益証券であれば、これは一個有価証券と言っておりますけれども、いわゆる券面が発行される有価証券。それから、受益、権利の方でございますが、これはみなし有価証券ということでございまして、これも有価証券の対象になるということでございます。

古本委員 今回の改正で、これまでいわゆる受益証券については券面を書かなきゃいけませんでしたね。それから、名簿も無記名というわけにはいかなかったですね。これからは無記名が許されるようになりますね。これはそういう意味では、だれが今投資しているかということを、もちろんSPC、今でもできます。いわゆる匿名で秘匿性を持ちながら投資したい人もいらっしゃるでしょう。でも、結果として、そういうツール立てがふえるだけであっては、これはなかなか世論の支持は得られないと思うんですね。

 その意味で、券を発行した場合、券面の裏書きあるいはその名寄せ等々、今回の立てつけによりますと、残念ながら、五十人で引くという線引きやら、きょう御答弁いただいた中身等々を確認いたしますと、まだまだ精査が必要な点があるように感じました。

 そのことを申し上げた上で、もう一つ二つ、お許しがいただければ質問したいと思うんですが、善管注意義務の問題であります。

 これは、今回の改正によりまして、いわゆる当事者間で、委託者と受託者の間で合意があれば棄権をしていいという立てつけになっているかと思います。ところが、一方での信託業法はその限りにないという、ある意味、緩めてこっちで縛っている、こういうことになりますね。

 ところが、先ほど来御指摘を申し上げたケースを思い浮かべていただきますと、業法の適用外の人であっても、実はすぐれて結果としてそれに近いような類似の行為が、やろうと思ったらできるんです、この五十人という線引きのあやによって。その結果、こちらに対しては善管注意義務はなくて、結果として、券面を分割して引き受けた、有価証券とみなすとおっしゃった、何も知らない善意の第三者が買った、そのときは善管注意義務がなくなっている。これは一体どこに、だれに訴えていけばいいのか。これは法務省の御見解からいっても、今回この善管注意義務の扱いについては、信託法と業法によって差異を設けたことは禍根を残しますよ。

 法務大臣、この善管注意義務について何か御所見がありましたら、お尋ねしたいと思います。

寺田政府参考人 これは、今回の見直しをした際に、学界の間にも、善管注意義務ということをはっきり定め、しかも、それがどこまで信託行為によって緩められるかというようなことはいろいろ議論がございました。

 改正試案を提示して社会的にいろいろな方の御意見も伺ったわけでございますが、結局、私どもといたしましては、いろいろなタイプの信託があり、ごくファミリー的な信託もある。受託者と受益者の関係もさまざまある。一般的には善管注意義務というのは原則としてはあるけれども、しかしこれを緩められる。しかし、緩められても善管注意義務がゼロになることはできない。信託行為で定めた注意をもってしなきゃならないというところが最低限度でありますので、注意がおよそ義務にならないということは許さない、こういう立場でございます。

 ただしかし、これが多数の方を受益権者とする非常に事業的な信託においては、やはりそういう方の保護のためにそれを規格化する、そういう要請はございますので、こういったところで信託法と信託業法の違いが出ているもの、そういうように理解をいたしております。

古本委員 そのとおりなんです。しかしながら、当初、委託し、そして受託した、これが成立した段階では何らそれを不特定多数に販売する意思が外形的になくとも、その先に分割した場合はフォローできない立てつけになっているんですよ。したがって、そこは、先ほど来指摘申し上げているように、少し丁寧な議論、その段階を想定した議論をしなきゃならぬのじゃなかろうか。人の心の中まで読めません。でなければ、あんなライブドアみたいな大変な事案は発生しませんので。でも、それを事前に想定して、あらゆることを準備するのがまさに行政の役割ではなかろうかというふうに思っております。

 いずれにしましても、第三者機関の問題やら、どうやって査定をするのか、審査の基準、それから善管注意義務の話も申し上げました。何より税制が非常に大きな点も指摘しました。

 これは八十有余年ぶりの大改正だというふうに承っております。本来、受託者は、信託の債権者に対してあくまでも無限の責任を負っていたわけです。これを有限にするという自己信託や事業信託ができるようになるわけであります。

 さらに言えば、委託者と受託者というのはこれまで同一にはならぬということが、信託宣言でできるようになる等々、ある意味でがらりと変わった方向に打ち出していくからには、さまざまな慎重な議論あるいは具体的な税制の絵姿等々をお示しいただかなければ、なかなか、これはいい案だなと言うには至らないということを強く申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。

 今回の信託法の改正についてはさまざまな論点があると思いますが、私は、事業信託に焦点を当ててただしたいと思います。

 まず、法務大臣にお聞きしますけれども、わかりやすくするために例を挙げたいと思います。

 A社がBという事業部門を切り分けて、自己信託ではなく、子会社のC社に事業信託をする、こういう場合を想定いたしますと、A社の一部門であった事業体Bの所有はC社に移転するわけですね。問題は、設備などの積極財産あるいは債務などの消極財産は直ちに移転、委託できる、しかし労働者はどうなるのかという問題です。

 自動的にC社のもとに移転されるのか、A社の労使間で結ばれた労働協約、契約というのはどうなるのか、この点についてお答えいただきたいと思います。

長勢国務大臣 いわゆる事業信託の場合に労働者の関係がどういうことになるかということでございますが、これは、信託の設定によって労務提供先が変わる場合があるわけでありまして、その場合には、いわゆる、つまり受託者であるC社ですか、子会社でやるということなりますと、そこで勤務をするということになりますので、これは在籍出向の成否ということが問題になると思います。在籍出向命令が認められるためには、就業規則や労働契約の根拠規定、または労働者の個別の同意が必要であるというふうに考えられます。

 また、労働者がどこかへ移るということになれば、転籍の問題になるわけでございます。つまり、籍を移すということになるわけでございますので、その場合にも、委託者と労働者との間の労働契約の解約と、受託者である他の会社と労働者との間の新たな労働契約の締結が必要となりますから、労働者の個別の同意が必要ということになります。

 どちらでやるかは信託の設定によって変わるということになりますが、どちらもない場合は、労働者と委託者との間の同意がないということになれば、労働関係は変わらないということになるかと思います。

佐々木(憲)委員 労使間で合意された場合は、信託された事業部門Bの労働者は、同じところで働いているけれども、移転の合意があった場合は、団体交渉を行う相手はA社ではなくてC社になる、簡単に言うとそういうことですか。

寺田政府参考人 今大臣から御説明申し上げましたのは、信託のもとにおける労働者の関係でございますが、委員の先ほど御質問になられました子会社の関係も同様でございまして、基本的には、もちろん労働協約がどうなっているかによりますが、原則としては、個別の同意がない限り移籍はしない。移籍をすれば、もちろん子会社との間の労働契約になりますのでその間で交渉が行われる、こういうことになるわけでございます。

佐々木(憲)委員 それで、同意を予定して信託を行うという場合でも、今おっしゃったように、同意されない場合がある。

 そうすると、財産は委託されて受託者に移転するけれども、労働者は移転されない。そうすると、労働者はA社にとどまったままでありますね。そうなりますと、事業体の財産の所有はC社であるが、労働者は今までどおりBの事業部門で働いていて、A社に所属する。そうすると、その労働者はだれの指揮のもとで働くんですか。

寺田政府参考人 どなたの指揮になるかは、その労働契約自体で決められるものだというふうに思います。

佐々木(憲)委員 例えばA社に所属している、その場合、C社が事業の受託者でありますから、その労働者は請負労働者なんですか、派遣労働者なんですか。

寺田政府参考人 請負か派遣かということは、事業上の仕切りについては私どものつまびらかにしないところでございますが、契約法上の問題として考えれば、これはいろいろな類型があり得るわけでございますが、基本的には派遣になることが多い。事実上は多いようには思われますけれども、しかし、もちろん、それはどういう契約関係かは、もう全くの契約自体で決めることでございますので、私どもがどういうものが多いかということを推測することはちょっと難しいかと思います。

佐々木(憲)委員 労働者はA社のもとにいるわけですよ。ですから、これが、まさか偽装請負などのような形になることのないような対応が必要だと思いますけれども、その辺の対応というのはどのように考えているんですか。

寺田政府参考人 これは、請負の規制というものをどのようにお考えになるかということでございまして、契約法の立場から申し上げれば、それは特に、請負ということでも派遣ということでもあり得るわけでございます。ただ、それを行政上の規制としてどうお考えになるかは、これは労働行政の問題だというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 今、非正規雇用やさまざまな問題があって、派遣の形をとっているけれども、実態は請負契約なのに派遣という形態をとって偽装する。つまり、A社の指揮下にある、A社の労働者であるにもかかわらずC社の指揮のもとで労働するというのは、これは法律上極めて重大問題が発生するわけです。

 ですから、その点、どうも今の答弁は極めて不明確でありまして、しっかり労働者の権利を守るという立場に立った対応が必要だという点を指摘しておきたいと思います。

 長勢大臣、いかがですか。

長勢国務大臣 これは、この信託の問題というよりも、まさに偽装請負問題、根本的にいろいろな議論が今行われているわけでありますから、今おっしゃっていることは、C社が行う業務にA社が契約を持っておる労働者が働くということをA社が命じている場合のケースですよね。それが偽装請負になるのではないか、あるいは派遣になるのかと……(佐々木(憲)委員「Cの指揮のもとで働く」と呼ぶ)ええ、指揮のもとで働くという指示をした場合ですね。

 それは、まさに一般的な偽装請負かどうかという議論でありまして、きちんとした労働法上の取り扱いをしてもらわなきゃならぬと思います。

佐々木(憲)委員 この点が今回の法案では非常に不明確なんです。労働者の権利を阻害することのないように対応しなきゃならぬと我々は思っております。

 では次に、先ほどもありましたが、税の問題についてお聞きしたいと思います。

 A社が利益を上げて一定の法人税を払っているとする。そのBという事業部門をC社に事業信託をする場合、事業体Bの所有はAからCに移転する。その場合の課税はどうなるか。事業体Bに投資をして利益を手にした受益者の所得に対して課税される。これは当然、個人は所得税、法人の場合は法人税と。

 では、信託に出された事業体Bが利益を上げた、その場合の課税は現行法ではどうなるんですか。

石井政府参考人 まず、現行法の扱いといたしましては、一定の場合に、先ほど御答弁申し上げましたように、法人課税を信託段階でしている例もございますが、これは特定目的信託等の限られた場合でございます。

 それ以外の、金融商品等のものについては先ほど申しましたとおりでございますが、それ以外の信託につきましては、原則として、受益者がおられる場合には受益者に課税をする、パススルーで課税をするというのが現行法の仕組みでございまして、そういう意味では、法人課税というものはその場合には行われていないというのが現行法でございます。

佐々木(憲)委員 要するに、事業体Bが利益が上がった場合、課税がされないというのが現在の体系なんですよ。Aの中でBという事業部門があり、A社全体としての利益にカウントされて、現在では法人税がかけられている。しかし、信託という形式をとってBという事業部門が行われた場合は、現在課税がされないわけです。今の答弁はそういうことであります。

 そうしますと、これは極めて重大な問題が出てくるわけでありまして、これまでどおりの課税の仕組みが続けば、法人税をその部門では払わないという事態になる。多数の事業部門を抱える大手企業は次々に事業信託を行う。そうなりますと課税逃れが可能になる。税収は激減する。

 具体的な例を挙げると、事業信託として、例えば石油探鉱会社をつくって、投資家を募って、事業で膨大な利益を上げた。その場合も、その事業体が上げた利益に対して法人税は払わなくて済むと。極めて奇妙な事態になるわけです。これに対して、具体的にどういう対応をされるわけですか。

石井政府参考人 今般の信託法案、多様な信託の類型がございますが、その中の一つに、今先生が申されましたような形態が考えられるわけでございます。一方で、信託の利用機会が拡大されるという面もございますが、他方では、今御指摘のような租税回避あるいは税を払わないという懸念も指摘されているところでございます。

 今御指摘のような法人と同様の事業を、単に信託形態、形態だけを信託にして行うというようなケースが出てまいりました場合に、法人税の回避が起こるのではないかという議論は私どもも認識をいたしておりまして、こうした場合には、課税の公平あるいは中立性という観点からは、法人課税を行うべきものではないかという考え方は当然あるわけでございます。

 ただ、いずれにしましても、信託法案の税制上の対応について、先ほど来御答弁申し上げておりますが、今後、そういう点も含めて十分に検討いたしました上で、十九年度税制改正において適切に対応をしてまいりたいと考えております。

佐々木(憲)委員 これもこの法案に付随する非常に重大な問題点でありまして、本来、こういう法案を出す場合は、税制上はこういう措置をとるべきであるというのを、あわせて考え方を出さなければならないと思うんです。そうしなければ、これから検討する、十九年度税制改正で考えていきたい、まだ結論は出ておりません、そうなりますと、新たな法改正が行われてその後どういう課税になるのかわからないというままこの委員会で採決をするということになりますと、これは極めて問題だと思うんですね。

 その点は明確に、今は中立性とかバランスとかいうような意味をおっしゃいましたけれども、これまでと同様の法人税の課税になるという考えで対応するのかどうか、そこをはっきりさせてください。

田中副大臣 先ほども、他の委員からも同様の御質問等あったわけでございますけれども、私ども財務省といたしましても、今、担当局長からお話をしたように、十分なこれについての検討をいたしておるわけでございます。

 ただ、行政上の流れからいいましても、これから税制改正等の時期を迎えるわけでございまして、その中で中立性、効率性を担保できるような制度を確立していく、こういうことになるわけでございます。先生の今いろいろな御指摘があったことについては十分承知をいたしております。

佐々木(憲)委員 承知しているなら、そのことをはっきりとワンセットで出すべきだと思うんです。知ってはいるけれどもこれはこれからの検討だ、こういう話では、何のための法案審議をやっているんだということになるわけですよ。

 次に、附帯決議の問題について、二〇〇四年十一月十二日に衆議院財務金融委員会で信託業法に対する附帯決議が行われました。これは先ほども質疑者の質問がありました。そこに、こう書いてあるわけです。「来るべき超高齢社会をより暮らしやすい社会とするため、高齢者や障害者の生活を支援する福祉型の信託等を含め、幅広く検討を行うこと。」というふうになっております。議決から既に二年たっているわけですね。

 金融担当大臣に伺いますが、この決議では、福祉型の信託を含め幅広く検討を行うということが決められているわけですが、この検討はこれまでどのように行われてきたんですか。

山本国務大臣 附帯決議がありまして以降、私どもも、高齢者の将来の生計を維持するための一定の財産の信託、こういった社会的ニーズ、また、さらにこういった傾向が増加されること、こういったものを考えながら、担い手について検討を重ねましたけれども、株式会社というように限定をさせていただくということしか今のところ方途がないような状況でございまして、特にこの件におきましては、今後、業として行うためには、やはりそこに、取引の安全、受益者の保護、利用者の保護というような社会的な見地から見ましても、それと調和ができるということになると、個人やNPOさんに業としてやっていただくということは、財産の分別だとか継続性だとか、やや不安が残るのではないかというように思っておりますので、今後、引き続き検討を重ねていくということで御理解をちょうだいしたいと思います。

佐々木(憲)委員 検討を重ねてきたとおっしゃいましたけれども、具体的な検討をした形跡がないんですよ。法案には福祉型の信託については検討されていないわけですね。これはきのう参考人の御指摘もありました。

 ですから、福祉型以外については幅広く検討を行って法案化したけれども、肝心の附帯決議にありますこの点については、盛り込まれませんでしたし、また検討も行われた形跡がない。三年だからあと一年残っているといえばそうかもしれないけれども、二年間何をやってきたんだという話になるんですね。この点をよく踏まえて、きちっと対応していただきたいと思います。

 次に、企業の透明性という問題についてお聞きしたいと思います。

 昨日の参考人質疑で、参考人の一人がこうおっしゃいました。大企業、上場企業等影響のある企業の投資家とか債権者にとっては、見えにくいものができる、契約で簡単にそういうものが成立してしまう、ビークルができてしまうと、さらに、それが財務諸表としてあらわれなくて投資判断もできない、あるいは与信の判断もできない場合もあるといったようなことになると、証券市場に対する重大な影響がある、こういう指摘がありました。

 企業の実態が見えにくいものになるということについて根本的な疑問を呈しているわけですね。この指摘は重要だと思うんですけれども、どのように受けとめますか。

山本国務大臣 有価証券報告書における大株主の状況は、有価証券に関する投資情報の一つとして、佐々木委員御指摘のとおりでありまして、これはかなり、この面だけにおきましては、先生の御指摘は重要であろうというように思っております。

 特に、この有価証券報告書を提出すべき発行者が、逆に、有価証券報告書でこれを記載しろという義務を負わせてしまうと、第三者間で自由に行われる信託業の中身を調査しなければなりません。第三者が自由に行うわけでございますので。したがいまして、そういった点からすると、有価証券報告書作成者にそこまで義務を課せられるのか、また権限を与えられるのか。それぞれ民民の経営判断やあるいは信託の事情等がございます。

 そんな意味におきましては、有価証券報告書に、信託銀行が信託財産として所有する株式は実務上信託銀行の信託口等として記載され、注意書きにさらに詳しく書くということで調和を図っている、それがぎりぎりのところじゃないかなというように思っております。

佐々木(憲)委員 これは、実態をよく見ていただきたいと思うんですね。私は何も権限を強化しろと言っているのではなくて、仕組み上、透明にしなさいと言っているわけですよ。

 配付した資料を見ていただきたいんですが、これは一つの例として日本経団連の役員企業の大株主を出しました。一枚目は二〇〇六年三月期決算で、二枚目は二〇〇〇年三月期決算であります。太い線で囲ってあるのが信託銀行の信託口ですね。

 一見して明らかなように、信託銀行の信託口が軒並み進出しておりまして、例えば、具体的に言うと、日本トラスティ・サービス信託銀行、日本マスタートラスト信託銀行、これはもう専門の会社であります。

 二〇〇六年三月期の株式保有実態を見ますと、経団連の会長、副会長企業十五社の大株主十位の中に信託銀行、信託口が入っているのは十三社です。その平均保有率は一〇・六八%で、しかも、そのほとんどが一位から四位。十三社のすべての企業が四位以内に信託銀行、信託口が入っております。これは一体何なんだろうと非常に私などは違和感を覚えるわけです。

 二枚目の二〇〇〇年三月期と比べますと一目瞭然でありまして、経団連の会長、副会長企業十一社の、大株主十位の中に信託銀行、信託口が入っているのは九社であります。平均保有率四・〇八%にすぎなかったわけですが、四位以内に入っている企業は二社だけなんですね。わずかこの六年間で、これだけ大きな変化が生まれている。

 しかも、最近、資産管理業務に特化した信託銀行に株式を預託する事例というのが非常にふえております。預託された信託銀行がある会社の発行済み株式の五%以上を持っていると、確かに大量保有報告書を提出するということになります。しかし、名義人として信託銀行の名前しかそれは出てこないのですね。個別の企業が五%以上になった場合には、個別企業名は出てきますが、信託口として五%を超えた場合は、その信託銀行の名前しか出てこない。これは真の所有者がわからないということになるわけです。しかも、一位から四位までこんなにずらずら、いわばふたをしたような実態がある。これは余りにも異常な状況だと私は思う。バランスどころか、これはバランスを欠いていると思います。一体だれが所有しているのか、この会社は一体だれのものかということになるわけで、そういう状況を放置していいのかどうか。

 先ほど、透明性というものについては一定の理解を示されましたが、この実態を踏まえて、もうちょっと、投資家だけではない、国民も、この企業はどういう人が株を持っているのか、どういう会社が持っているのかということが見えないと、その裏で何が行われているかわからないという、ますます不信感は広がるわけで、全体として考えますと、私は、透明性を確保する方策を検討しないといけないのではないかというふうに思いますが、いかがですか。

山本国務大臣 株式市場においてマーケットが透明でなければならない、それに応じて有価証券報告書もできるだけ精緻に透明にという考え方は、本当にそのとおりであろうと思います。

 他方で、これの工夫といたしましては、株券につきまして信託を設定する場合でありましても、委託者が信託終了時で株式の現物を受領することになっている場合や、実質的に当該株券の処分等について決定権限を有している場合は、当該委託者は株式の実質的な保有者に該当するというような理解で、その所有割合が五%を超えるときには大量保有報告書を提出しなければならない、一方でこういう規制もかけておるわけでございます。

 そういうようなことから考えまして、大量な株主に対する透明性については担保をしようという努力をしているわけでございますが、しかし、先生のおっしゃるような、信託になれば実質的な保有者についての五%以下の部分については明らかにならないという点について、これについては有価証券取引所の本来的な性格上、いたし方ないと言ったら語弊がありますけれども、そこはマーケットの、株式について関心のある方々のリスクの通知が最低限できているという形で理解する以外にないだろうというように思っています。

佐々木(憲)委員 何か、前向きなようで後ろ向きの答弁ですね、それは。

 今、こういう形でベールに包まれて見えないので、一体だれが真の所有者なのかということを商売にする業者も出てきているわけですよ。それがまたはやってきている。こういう実態を考えますと、やはり企業というのは、一体だれが株を持っているのかというのは、当然これは以前にはわかっていたわけですから、最近わからなくなった、それが当たり前だということでは困るわけでありまして、その点を指摘しまして、質問を終わります。

伊藤委員長 午後一時から連合審査会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

七条委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。大串博志君。

大串委員 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 信託法の改正及び関連諸法の改正の審議ということで、きょうは連合審査でございます。信託法、大正十一年にできたものが実質改正のないまま今日まで至って、現代的な意義を踏まえながら改正の内容を考えていこうというものでございます。

 その中で、幾つか、法務委員会においても懸念のある点等々についての議論は進んできましたけれども、きょうは改めて、若干重なる部分もあるかもしれませんけれども、そこを掘り下げるような形で少し議論をさせていただければというふうに思います。

 さて、信託という制度ですけれども、これに関しましては、午前中の議論でもありましたけれども、信じたところに託すというところが基本でございます。

 日本の場合、信託というものは、特に商事信託を中心に行われております。民事の信託はどのぐらいのボリュームがあるかというところはまだ判然としないところはありますけれども、商事信託、商業における信託は、御案内のように、日本においては免許業種である信託銀行がそのほとんどを行っておりまして、そこの業務の適正性、そして、そこがしっかり投資家保護あるいは消費者保護をやっているかということが極めて重要なわけでございます。

 一般的に見ると、私の感想から述べさせていただくと、日本の信託という制度に対する一般の方々の信頼度は比較的高いんじゃないかというふうに思います。信託という言葉の響き、そして、これまでの実績も勘案すると、国民の皆さんは、信託をして、それをいろいろな活動につなげていくというときに、委託者、受託者、受益者の間でいろいろな大きな問題が起きていくというふうには余り思っていない、信頼の高い制度なんじゃないかというふうに思います。

 ところが、きょうの午前中の議論でも出ましたけれども、その信託の大きな部分を担っている信託銀行におきましては、特に最近いろいろな問題事例が見られるようになってきております。その問題事例の類型もかなり似通ったものが最近多くなってきているというふうに私は認識しておりますけれども、この点について、最近の信託銀行の処分例について、簡単に御指摘いただければというふうに思います。

佐藤政府参考人 最近の事例ということで、本年度に入りましてからの処分ということで、二つの事例を申し上げます。

 本年の四月に、JPモルガン信託銀行それから新生信託銀行に対しまして、銀行法二十六条等に基づく不動産管理処分信託業務の新規受託の停止という命令を出しました。また、同じ条文に基づきまして、業務改善命令をあわせて発出したということでございます。

 これは、不動産管理処分信託業務の受託審査体制あるいは経営管理体制が未整備であったということが原因であろうかと思いますけれども、例えば、適法状態への是正が困難な違法建築の受託、あるいは収益還元法等を利用した物件評価のかさ上げ、こういった事例が多数確認されておりまして、現物不動産の実際の価値とは乖離した信託元本または信託受益権の価額の設定、あるいは当該受益権の他者への譲渡の承認、こういった事例が認められたところでございます。

 こういったことは、受託者責任を果たさないということで、重大な善管注意義務、信託業法第二十八条第二項でございますが、これに違反するということで、これらが立入検査の結果として認められたということで処分を打ったものでございます。

大串委員 ありがとうございます。

 今御指摘いただきましたように、十八年に入って二つの銀行が処分されている、よくこれは言われておりますね。今お話がありましたように、法律的には違法であった不動産を受託して、それを信託受益権として商売に使っている。本来であれば、きょうの朝の審議でもありましたけれども、そこはしっかりと、信託を受託する者の義務として善管注意義務にのっとって物を見ていかなければならない、それができていなかったという、極めて基礎的な部分の業務が適正に行われていなかったということでございます。

 それだけはなくて、少しさかのぼってみますと、十六年、十七年あたりには、そのような、例えば受託した不動産が違法建築であったにもかかわらず受託してしまった等々ではなくて、もう少し、かなり基本的な部分で、信託財産に従っていろいろなお金の流れがある、例えば税金の還付があったり、利子の流れがあったりするものを、その信託資産に固有の管理をしないで、いろいろな信託資産とひっくるめてお金を出し入れし、あるいは、時には自分のポケットにも入れていた、そういうふうな問題事例も十六年、十七年あたりには行われて、発見されておって、それぞれ処分の対象となっているということでございます。

 こういう事例は最近非常に目につくようになってきておりまして、必ずしも信託というものが普通にほっておいて大丈夫というような性質でないというのが明らかになってきているんじゃないかというふうに思います。

 特に、信託銀行の場合は、免許業種で、金融庁という監督体がしっかり監督しているにもかかわらず、こういうふうな事例が頻発してきているということを考えると、信託というものの潜在的な違法に関する危険性みたいなものを我々はしっかり胸にとどめておかなければいけないんじゃないかなというふうに思います。

 さて、これを認識した上で、今般の信託法の改正でございますけれども、今般の信託法の改正において、いろいろな新しい信託が導入されようとしています。この点について、きょう議論を深めさせていただければと思うんですが、特に今回取り上げたいのは、午前中もそうでしたけれども、自己信託でございます。

 自己信託という、これまでの信託とは相当程度質を異にするものが今般導入されようとしています。これまでの信託は、基本的には要物契約、物が移転し所有権も移転することを一つの大きな柱としていたわけでございますけれども、この自己信託においては、自分が自分に委託し受託する、すなわち、諾成契約という形をとって、所有権も移転しない、そういう中での信託ということでございます。

 この自己信託に関していろいろなリスク等々も指摘されているわけでございますけれども、まず冒頭に法務大臣にお尋ねしたいんですが、今回自己信託をなぜ導入する、導入するに至った考え方の背景、そして、自己信託を行っていく場合に、いろいろなリスクが言われております。どういうふうなリスクがあると認識されて、かつ、どういうふうな法的な手当てをされているか、その点について御指摘いただければと思います。

長勢国務大臣 信託は、今おっしゃったような形で発展をしてきておるわけでございますが、自己信託、昨今の情勢の中でいろいろなそういうニーズがふえておるということで導入しようとするものでございます。

 一つは、商事的な分野におきましては、債権を初めとする資産の流動化により資金を調達するための利用とか、あるいは企業の特定の事業部門からの収益を引き当てにした資金調達をするための利用というニーズがふえておるわけであります。また、民事的な分野でも、障害者等のための利用というニーズがあるというふうに認識をいたしております。

 資産の流動化に関しては、現在は信託銀行等で行われているわけですが、自己信託を入れることによって、一つは、貸付債権を流動化しようとする場合には、どうしても債務者が債権者の変更に難色を示すということがあるために、この障害を取り除くためには、自己信託によって債権者の変更がないということになりますので、非常に流動化がやりやすくなる。また、信託銀行等を利用すればコストがかかることになりますので、そういう意味では、自己信託であればコストが節約できる。また、リース債権などの小口かつ多数の債権を流動化しようとする場合には、信託銀行等を受託者とする場合には権利を移転するための手間がかかるというようなことでありますので、こういう障害を取り除く上で自己信託は大変いいのではないかということが言われておるわけであります。

 また、企業の持つ特定の事業からの収益を引き当てにした資金調達のための信託ということに利用するという場合には、もちろん会社分割とか事業譲渡等の手段によって資金調達を行うことも可能なわけでございますが、その場合には、従業員の問題ですとかあるいは機密の問題ですとか、会社の設立、維持のための費用の発生といったようないろいろな問題も生じますので、こういう場合も、自己信託ではこういう問題は出ないというメリットがあるというふうに考えております。

 さらに、障害者等のための自己信託の利用がふえると言われておるわけでありますが、御存じのように、身体障害や知的障害を抱える人の生活を経済的にサポートしようとするために、みずからの有する財産の一部を自己信託するということが想定をされております。

 障害を抱える人のためには、贈与という形でもできるわけでありますが、その場合には、障害者御自身が財産を管理するということが困難である場合もありますので、委託者自身が管理を行いながら、障害を抱える人のために必要に応じて給付を行うということが可能になるというメリットがあるというふうに考えております。

 今御指摘のように、この自己信託には、いろいろ弊害といいますか、問題もあるのではないかということも一方で言われておるわけでございます。

 まず心配されておるのは、資産状態の悪化した債務者が債権者からの強制執行を逃れるために自己信託を利用するという懸念があるのではないかということでありますので、信託法案においては、自己信託は一定の様式に従った公正証書等の書面によってすることを要求し、これにより自己信託の内容等を客観的に明確にするとともに、債権者を害する目的で事後的に自己信託がされた時期をさかのぼらせることができないように手当てをいたしております。

 また、自己信託以外の信託では、裁判所によって詐害信託の取り消しがされて初めて委託者の債権者は信託財産に対して強制執行することができるのに対しまして、自己信託では、委託者の債権者は、詐害信託取り消し訴訟を提起することなく、直ちに信託財産に対して強制執行等ができることとしておるわけであります。

 さらに、不動産のような登記、登録制度のある財産については、その財産が信託財産である旨を登記、登録しなければ、自己信託の信託財産であることを第三者に対抗できないということにもいたしております。

 また、執行逃れの目的を含めて何らかの不法な目的によって信託を利用した場合には、公益を確保するという見地から、裁判所が、法務大臣または委託者の債権者等の利害関係人の申し立てにより、信託の終了を命ずることができることといたしておりますので、一般的に、不法な目的による信託の利用への対策は講じておるものと思っております。

 さらに、会社がその事業の全部または重要な一部を自己信託することもあり得るわけでありますが、会社の株主の意思決定を経ないままこのような自己信託を行うこととなりますと、会社の株主の利益を著しく害するということも懸念されます。そこで、会社の事業の全部または重要な一部の譲渡について株主総会の承認が必要であるとした会社法の規定が自己信託の場合にも適用されることを明確化しておりますので、このような態様での自己信託にも株主総会の承認を要するということになっておるわけでございます。

 以上のように、信託法案のもとでは、自己信託の濫用防止のための各種の措置を講じておるものと考えております。

大串委員 ありがとうございます。

 今、自己信託に関するリスクと、そしてそれに対する法的な手当てを御説明していただきましたけれども、これに関して、それで十分なのかという点について、後ほど議論をさらにさせていただければと思います。

 信託法に関してはそうでした。次に信託業法の方でございますけれども、信託法において新しい信託、自己信託というものが導入されることによって、これを受けて、信託業法においては、その業に対する適正性を確保するという観点、そして投資家保護あるいは利用者保護という観点もありましょう、そういう観点から、信託業法においてはどのようなリスクがあると考え、そしてどのような手当てがなされているのでしょうか、御説明ください。

山本国務大臣 多数の受益者を顧客として自己信託が行われることが想定されておりまして、このケースにおいて、事業者との間で情報量や交渉力に差が生じることから、受益者の利害が害されるおそれがあるというように考えられるところでございます。

 そのため、信託業法五十条の二、ここで、自己信託の受益権を多数の者が取得できる場合について、業法上の登録を求めることとした上で、通常の信託会社と同等の行為規制、監督規制を課すこととしております。また、委託者と受託者が同一であることから、信託設定が適正に行われたかどうか、また信託財産の価格が過大に評価されるおそれがあるというようなことからして、信託業法の改正案では、自己信託設定時に一定の項目につきまして弁護士等の第三者チェックをするということを義務づけているわけでございます。

 以上です。

大串委員 ありがとうございます。

 今、新信託業法におけるリスク、そしてそれに対する制度的な手当てをいただきました。きのうの参考人質疑でもありましたけれども、リスクに対して法的な手当てをする、それはそれで非常に必要なことです。それは必要であるし、適正にやっていただきたいと思いますけれども、きのうの参考人質疑の中でも非常に大きくクローズアップされたのが、自己信託を行った場合に、法的規制のほかに、この世の中にはいろいろな規制、あるいは安全、安心なり、あるいは投資家保護、消費者保護をやっていくというものとしては、いわゆる市場の規制、市場の力による規律というものがあると思います。この市場の力による規律というものを十全に働かせるポイントはどこにあるかというと、透明性であり情報の開示だというふうに、通常の考え方によるとなっているわけでございます。

 きのうも言われたように、自己信託の場合に、開示や会計がどうなっているかということがこの点において非常に重要になってくるというふうに言わざるを得ないと思います。まさに会計とか開示の面でどうなっていくかということに関して不安を述べる声が多い。

 ここで、自己信託に関して、先ほど自己信託に関するニーズをおっしゃいました。例えば、信販会社、クレジット会社があったとします。信販会社、クレジット会社のアセットは、資産の方は、御案内のように貸付債権の塊です。これは信託銀行とも同じだし、普通の銀行とも同じ。貸付債権が資産の方にがあっと載っている。これをできれば流動化したいというインセンティブは、クレジット会社、信販会社にはあるはずでございます。

 ここが例えば、よし、これを自己信託という仕組みを使って信託しようということで、自分が委託し、かつ自分で受託し自己信託した場合に、まず一つ基本的にお尋ねしますけれども、この場合の会計的な取り扱い、開示の取り扱いはどうなるのでしょうか。

三國谷政府参考人 会計上の取り扱いと開示上の取り扱いについてのお尋ねがございました。

 まず、会計上の取り扱いでございますが、まず一般的な考え方といたしまして、会社が財産を信託いたしました場合に、一つは、財産に係ります信託受益権、これを第三者へ売却するなどしないでみずから保有する場合につきましては、この信託財産につきまして貸借対照表からのオフバランスは認められませんが、これを第三者へ売却等した場合にはオフバランスが認められる、こういう取り扱いだと承知しております。

 自己信託につきましても、その会計上の取り扱いというのは通常の信託における取り扱いと基本的に同様であると考えておりますが、今回の法律案をお認めいただきまして自己信託等が新たな制度として導入される場合には、これらに関する会計上の取り扱い、これを明確化していくことが重要であると考えているわけでございます。

 このため、会計基準の設定主体であります企業会計基準委員会に対しまして、事業信託や自己信託を含みます信託に関する会計処理基準の明確化、これを要請したところでございまして、今後、企業会計基準委員会におきまして鋭意検討を進めていくことと承知をしております。

 次に、開示上の取り扱いでございますが、自己信託を行った場合の開示上の取り扱いにつきましては、信託財産のオフバランスが認められない場合には、信託財産は当該会社の財務諸表に反映されることとなり、会社法上の計算書類、金融商品取引法上の有価証券報告書等を通じて開示されることとなります。

 また、信託財産がオフバランスされるか否かにかかわりませず、自己信託を行った者は、受託者の立場といたしまして、一つは、信託法の規定に基づきまして、貸借対照表、損益計算書等の帳簿を作成し、これを受益者に閲覧する、信託業法では、信託財産状況報告書等を受益者に提示する、こういった開示義務を負うこととなっております。

 自己信託が行われました場合の開示の具体的な内容等につきましては、自己信託を行った者が委託者と受託者の立場をあわせ持つという特性を勘案しながら、今後、適切に、さらに検討してまいりたいと考えております。

大串委員 ありがとうございます。

 今、基本的な現在の信託制度との比較及びその類推において、信託受益権を保有している場合にはオフバラしないんだ、信託受益権が手放されてしまった場合にはオフバラするんだという一般的原則を言われましたけれども、恐らく実務の世界ではそんなに、ストレートフォワードといいますか、単純な世界じゃないんだと思うんですね。自己信託、あるいは普通の信託でもいいですけれども、自己信託して、信託受益権という形でアセットに載せるという場合に、信託受益権が例えばどれだけ売れれば、どれだけ手放されていけばオフバラされたと言えるのか等々のところの問題も実務上のところでは出てこようかと思うんです。

 実務上のいろいろな、これはどうなるだろう、あれはどうなるだろうというところの不安を反映して、現在の会計制度は一体どうなっていくのかというふうな不安が非常にあると思っている。その辺についてはいかがでしょうか。

三國谷政府参考人 これも現在の一般的な会計上の取り扱いということになりますけれども、この対象資産が、正確に申し上げますと、例えば不動産みたいに分割が難しい資産であるか、あるいは金融商品のように分割が比較的可能である、こういったものに分けられるかと思います。

 前者の場合でございますと、リスク経済価値アプローチと申しまして、相当程度危険が移転するまでは一応オンバランスという形になりますが、後者のように可分性のものにつきましては、その割合に応じましてオフバラ、オンバラが決まるというぐあいに一般的にはなっていると承知しております。

大串委員 それでは確認ですが、自己信託に関しても、今の一般的な信託の取り扱いのオフバラのルール、すなわち、先ほどの話を続けて言いますと、仮に原債権が貸付債権だったとしましょう、貸付債権に関して信託設定して、それを信託受益権化し、それを累次売り払っていった。それが、例えば四割売れた場合には、自己信託の場合、四割部分がオフバラされ、残りの六割部分はオンバラされるという理解でよろしいでしょうか。

三國谷政府参考人 まず、自己信託というものに係ります正確な会計基準につきましては、これは企業会計基準委員会の方において、その立場としてこれから検討されるということを前提といたしました上で、今の一般的な会計の取り扱いということにつきましては、今先生御指摘のとおりということかと存じます。

大串委員 ありがとうございます。

 今の例は比較的、最初に申しましたように、割とストレートフォワードな例、実務的にも比較的現在の信託の例と比較して類推の判断がしやすい例、もちろん、冒頭留保されましたように、基準委員会においてこれから議論されるということですから、そこで決まっていくことだろうと思いますけれども、比較的類推可能な例だろうと思います。

 ただ、実務の世界にはもっと極めて複雑な金融取引があります。そういうものも含めて考えると、会計的な取り扱いがどうなるかということに応じて、自己信託が本当に投資家なり消費者なりにとって害をもたらすものにならないかという点において、非常に不安を持つのもむべなるかなと私は思うわけでございます。

 ここでちょっと話を、会計及び開示から離れまして、今度は監査の件について触れたいと思いますけれども、一般的な自己信託をした場合の信託財産に関して商法上の監査が及ぶかどうか、この点について、法務省の方、いかがでしょうか。

寺田政府参考人 監査も会計と密接な関係に立つわけでございますけれども、基本的には、今金融庁の方で会計についておっしゃられたことと同様でございまして、信託受益権が第三者の手に渡った段階で、自己信託についても、委託者兼受託者である会社の会計からオフバランスになります。貸借対照表から外れる。このように、財産が会社の財産であるという意義を失うわけでございますので、会社についての会計監査の対象からも外れる、こういうことでございます。

 また、自己信託の対象財産が商法上の会計監査の対象から外れるということになりますと、これは、第三者が取得したことによって、自己信託の対象財産は実質的に会社の財産でなくなるわけでございまして、第三者に帰属するということをそのまま反映することになるわけでございます。したがいまして、このような会計監査の対象から外れても別に問題は、それ自体としてはないと考えております。

 また同時に、受益者にとっての会計監査の問題がございます。これは、信託財産が、受益者にとって、自分の有する受益債権の引き当て財産ということになるわけでございます。

 信託法の制度の中におきましては、受益証券が発行されて受益権が転々流通するような、受益証券の発行信託と呼んでおりますが、そういうタイプの信託であって、かつ、信託財産の給付に一定の制限がかかるというものにおいては、信託財産の多寡が受益者にとっては非常に重要なポイントになるわけでございます。これは限定責任信託の一つということになるわけでございますが、こういう信託については、会計の適正さを確保するために会計監査人を設置することといたしております。さらに、最終の貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上であるものについては、会計監査人を必置ということにいたしているわけでございます。

大串委員 今、監査に関して、自己信託をした、委託をして、受託をした会社の側の立場、そして信託受益権を買った者の立場、両方から議論をいただいたわけですけれども、本当にそれで十分なのかという点に関して疑問が残るわけでございます。

 すなわち、例えば信託受益権を買った立場から見ての監査のあるなしの適正性ですけれども、今お話があったように、限定責任信託の場合には、あと、負債が二百億円以上の場合には等々の限定のかかった上で、その場合には監査をやることとしますというような制度になっているということでございますけれども、本当に、例えば負債が二百億円以下なら監査がなくていいのか、あるいは限定責任信託という留保が外れているところでは監査がなくていいのかというところは、議論が残るところなんだろうというふうに思うんです。

 今、自己信託を使って事業を信託した形にしていくという事業信託、この形も今般の改正でできていくことになるというふうに言われておりまして、今説明があったのは、まさにその事業信託の場合でも、監査があるなし、大丈夫ですよというお話だったと思うんです。

 今私が指摘しましたように、本当に負債が二百億という区切りでいいのか、そして限定責任信託というところの区切りで、その二つの区切りをもってして、こっちは監査を入れる、こっちは監査を入れませんということでいいのか、そこについて、その合理性に関してもう一歩突っ込んだ御説明をお願いします。

寺田政府参考人 もちろんこれは、受益者にとって会計監査が行われるかどうかということは重要なポイントでございますが、他方、これを利用される方の全体の立場に立ちますと、果たしてどこまでそういうものを義務づけるか、これは一定の御負担になりますので、そういうバランスの問題だろうというように考えております。

 御承知のように、会社の場合には、最終の貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上である場合には会計監査人を置かなければならないということがございますし、これは一般社団法人についても同様と今回されているわけでございます。

 したがいまして、そういう他制度とのバランスからいいますと、信託においても、こういうような場合には会計監査人を必置とするということは合理的だと思いますが、それ以上どうされるかということは、これはまた別途、一般の信託、自己信託も含めまして、どこまでそういう負担を負わせるかということは、ここの、信託のみ課せられるべきところではございませんで、やはりほかの制度とのバランス上、一定の範囲に限られるというのが合理的ではないか、こう考えているわけでございます。

大串委員 基本的には、義務をどれだけ課すかということに関する不利益といいますかデメリットと、自己信託をよりやりやすくするときのメリットとのバランスだというふうにおっしゃっていました。

 先ほど、自己信託に関するリスクに対するセーフガードの話をしました。法的にはこうこうこういうふうな手当てをしておりますという説明が両大臣からありましたが、それだけで、現在の企業制度、会社制度というものが本当に法律の規制だけで成り立っていっているのかというと、現代社会においてはそうでないと思うんですね。

 むしろ、現代の会社制度なり非常に大きくなった経済の仕組みの適正性を支えているのは、そういうふうな法律の仕組みのみならず、あるいはそれ以上に、加えてと言っていいかもしれませんけれども、冒頭に申しました市場による規律、市場による透明性、あるいは情報の開示による集団による監視、これが実は現代社会において非常に重要になっているわけでございます。その根幹をなすのが会計の制度であり、開示の制度であり、そしてその会計及び開示を支える監査の制度だ、私はこういうふうに思わざるを得ない、こういうふうに主張せざるを得ないというふうに思います。

 日本の場合には、会計あるいは開示そして監査の制度に対する重要性に関する認識がやはりこれまで非常に乏しかったんじゃないかという気がするんです。そういう中でいろいろな規制緩和が、法的な面での規制緩和、会社法での規制緩和も今回行われましたけれども、いろいろな規制緩和が行われていく中で、そのような市場による監視、監督の仕組みが同時に整備されなかったことが、いろいろな問題を惹起していた一要因になっているんじゃないかと思うんですね。

 ことしの冬にライブドア問題というのが起こりました。今回自己信託が導入されたことをもってして第二のライブドア事件を引き起こすのではないかというような懸念を言われる方もいらっしゃいます。ライブドア問題の本質は何だったかという点について、いろいろな議論があろうかと思います。実は、このライブドア問題の本質はどこにあったかというと、法律の問題も多々るる議論されましたけれども、私自身は、やはり開示あるいは会計ルール、ここではなかったかというふうに思うんです。

 ライブドア問題は、御案内のように、匿名組合というものをつくって、そことの間で連結しない形で、あくまでもその匿名組合が第三者であったかのように形を見せて、そしてそことの間で株の売買を行い、その利益を不当に上げていたということになっておりますけれども、これが仮に、連結のルールがしっかりしていて、この匿名組合なりファンドに関する連結の制度がはっきりしていて、もともとこれが連結であったら、この問題は起こっていなかったんです。

 法律の問題で縛るというのも一つの方法だと思うんですけれども、このように、市場のルール、すなわち会計、開示、そして監査等々のルールの面で縛っておくというのが恐らく一番妥当な解決策だったと思うんです。

 ちなみに、ここで一つお尋ねしますけれども、このライブドア問題を受けて、開示のルールが変えられて、連結に関する会計のルール、手綱が締められました。これはどういうふうな内容になっていたでしょうか。

三國谷政府参考人 ライブドア事件におきましては、いわば組合を使いました連結の問題もございました。

 この連結の基準につきましては、これまでどちらかといえば会社を中心とした規定ぶりになっておりました関係から、組合につきましては基準がやや明瞭でない部分もあった。そういったことを踏まえまして、企業会計基準委員会におきまして、この辺を検討されまして、先般、この辺をより明確化した基準を策定したところでございます。

大串委員 では、もうちょっと補足して私の方から言わせていただきます。

 金取法において開示のルールがもう少し決められて、連結に関してもそれが及ぶようになって、そして、委員会の方で実務対応報告二十号というのを出されて、それによって、ファンドについても、いわゆる実勢力基準、実質的な勢力、影響力を持っているかということをより明確にして、ファンドの場合でも連結になるようにそこを強くしたということだと思いますけれども、この実務対応報告二十号を前提とすると、今回の事業信託の場合は連結開示の対象になるんでしょうか。これに関してお答えいただければと思います。

三國谷政府参考人 この場合、まず委託者の方でオフバラするかオンバラするかという点がございますけれども、その件につきましては、通常の、現在の会計上の取り扱いでございますと、これを第三者等に売却した場合にはオフバラになりますが、自分で保有している場合にはオフバランスはまだ行われないという形になろうかと思います。

 一方におきまして、連結の話は、子会社を含む全体の連結の問題でございまして、例えば自己信託いたしました企業の単体の貸借対照表から信託財産がオフバランスされる可能性はございますけれども、その相手方が証取法上の連結財務諸表の提出会社あるいはその子会社、そういったところで連結の対象となる場合でございますと、そういった連結貸借対照表からは信託財産がオフバランスされない、このような仕組みになっていると承知しております。

大串委員 そうすると、基本的には、自己信託の場合の会計のルールは、先ほどお話がありました委員会においてこれから検討するということが言われて、それによって実際オフバラになるのかオンバラになるのかというところが今後決まってくるということの御説明がありました。

 このオフバラになるのかオンバラになるのかというのが、実は、自己信託のその後の会計的取り扱い、それから開示上の取り扱いに極めて重要なところでございまして、オフバラするのかオンバラするのか、いつの段階でオフバラになるのかオンバラになるのかというところが、そういう意味ではかぎになってくるわけでございます。そのかぎになってくるところの基準の策定が、先ほどお話もありましたように、これからということになっているわけでございます。

 自己信託に関する会計基準の見直しをこれからするとおっしゃいました。この見通しはどのようになっていますでしょうか。

三國谷政府参考人 いずれにいたしましても、自己信託を含めましたこの信託法の見直し自体は、現在この法案の審議という形で検討していただいておる段階でございまして、したがいまして、こういったものでそういった制度が確立をしました場合には、それに基づいて、それに応じた企業会計基準を設定していくという形になろうかと思います。

 いずれにいたしましても、この自己信託の場合には、委託者と受託者が同じ立場に、同じ者が兼ね備えるという特性、こういったものも考えながら、また、一般の信託に関するルール、そういったものも勘案しながら適正な会計基準を設定いたしまして、先生御指摘のとおり、会計監査あるいは会計基準、監査基準は大変大事でございまして、近年、制度のみならず、企業会計基準委員会でもいろいろな制度の整備に努めておりますので、その会計基準の適正化にそれぞれ各位が努めていく必要があると考えております。

大串委員 そうすると、今のお答えでもありましたように、会計基準をいつまでに明確化するという確たる見通しを持って示すことはできないという理解でよろしいでしょうか。

三國谷政府参考人 この法案をお認めいただきました際には、国会におきますいろいろな御審議を踏まえながら、できるだけ速やかに適切な結論を出していただくように私どもも期待しておりますし、委員会の方でも検討していただけるものと考えております。

大串委員 今、先ほどからるる会計基準、開示のルール、これが非常に重要であるということを申し上げてきました。そして、その根幹になるところがいわゆる基準委員会で定めるルールであって、その審議の進展に関してどういう見通しかということに関していうと、一生懸命早くする、そういうお答えでございました。

 最後に法務大臣にお尋ねしたいと思いますけれども、今回、自己信託を認めるということ、第二のライブドア事件を惹起するのではないかというような意見があちこちで聞かれる。これに対するセーフガードとして、法的には先ほどおっしゃいました。しかし、私が今申し上げたように、会計ルール、開示ルールがどうなるかというのは極めて重要。極めて重要であるがゆえに、そうだと思いますけれども、恐らく、法施行からさらに一年間という附則を設けて時間をあけていらっしゃるんだと思います。

 しかし、非常に重要なこの会計ルールがいつ決まってくるかという問題、この問題をオープンにして、かつ、先ほどお話があったように、いつまでにできるかということはできるだけ一生懸命やりますというふうにしか言えないこの中で、どうしてこれから、附則に書かれているように、一年半後の施行で、かつ、それからさらに一年後に自己信託が入ってくるということで、大丈夫だというふうに法案担当大臣として言い切れるのかというところ、そこについて、本当にそれで大丈夫だと言える客観的なあるいは強い根拠があるのかどうか、その点についてお聞かせ願いたいと思います。

長勢国務大臣 会計や監査が極めて重要であるというお話はよく承りまして、そのとおりであると思っております。

 そういうこともあってといいますか、会計基準等については少し時間をかけてきちんとした議論をしていこうということで、自己信託については施行が実質的に一年延期をされておるわけでございますが、それにつきましても、企業会計基準委員会で今審議を始めるということを決定したところでありますし、この法案が成立した段階で、法務省としても、制度の趣旨、内容等々を十分関係機関と連絡をとり説明をいたしまして、先生が御心配のようなことのないように、きちんとした制度をつくっていきたいと思っております。

大串委員 明確な根拠はお示しいただけなくて残念ではありますけれども、大臣の先ほどの御表明のとおりしっかりそこはやっていただきたいというふうに申し上げて、私の質疑を終わります。

七条委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 法務省の刑事局に伺いたいんですが、現在、継続法案になっている強制執行妨害罪について、昨年、私は聞いているんですけれども、これまで強制執行妨害の「強制執行を免れる目的で、」という部分が「妨害する目的で、」というふうに変わって、これは、金銭、財産の無償の譲渡あるいは低額で不利益な譲渡というものも処罰対象、そして情を知ってそれを受け取った者もということで、かなり厳しくなっているということですね。

 この条文だけを見ると、例えば、もうこれはローン破綻をしてしまうというサラリーマンの方が、その時期に学資保険が満期になって、親としてはこれ以上できないから、では、この学資保険がすべてである、これでやりなさいというようなことが、一体、強制執行妨害ということで処罰されるのかどうか、こういう質問をしたんですが、答弁では、自然的な養育関係というようなことで大丈夫ではないかというようなお話がありました。

 今回、信託法の改正案で自己信託ということも認められるようになってきている。ここらの関係は、やはりローン破綻に瀕したときに、では、子供ではなくて例えば老いた両親であるとかあるいは知人であるとか、その場合、障害があって介護の必要があるというような人に信託をするというようなこととこの強制執行妨害との関係について、どういうふうな整理を現段階でされているのか、お願いします。

小津政府参考人 委員御指摘のとおり、以前、法務当局にお尋ねがございまして、その際に、もちろん、あくまで一般論としてということではございますけれども、例えば、子供に対する養育の必要があってその人にお金を渡すとか等々のことがあった場合には、それはやはり債務の本旨に従った履行であるので金銭執行の引き当て、財産を減少させる行為ではない、だから強制執行妨害罪は成立しないのだという御答弁を申し上げました。その点は、私ども、自己信託についても同様であると考えているわけでございます。

 少し御説明させていただきますと、現行の刑法第九十六条の二でございますけれども、こちらの方も、ただいま御指摘のとおり、「強制執行を免れる目的で、」ということが書いてあるわけでございます。これにつきまして、最高裁判所の判例におきまして、その点は、その目的というものが単に本人の主観的な認識や意図だけでは足りず、客観的にその目的実現の可能性の存することが必要であると言っているわけでございます。

 このたびの強制執行妨害罪の改正案におきましては、この「強制執行を免れる目的」を「強制執行を妨害する目的」というように変えようとしているわけでございますが、これは、例えば強制執行の対象になる家に物理的にいろいろなものを置いて妨害するようなことを想定しているということでそういうふうに変えようとしているわけでございますので、先ほどの最高裁の判例で言っております趣旨は、この「免れる目的」を「妨害する目的」と変えても同じように妥当すると考えているところでございます。

 そのような観点で考えますと、先ほど申し上げました扶養義務の履行等々の観点で、何らかの譲渡が、あるいは自己信託も同様でございますけれども、行われた場合には犯罪が成立しない、つまり、この目的があると言うことはできないというふうに考えているところでございます。

保坂(展)委員 その辺の境界領域について、民事局の方ではどう考えていらっしゃるのか。

 先ほど、子供の養育ということでは、例えば会社の方が亡くなって娘さんが残った、カンパを集めて、そしてそれを自己信託して受益者はその娘さん、こういうような形で使われるいい例として挙げられているようですけれども、今の強制執行妨害罪との関係で、例えば、兄弟であるとか知人で障害があって介護が必要な、そういう人に対して自己信託をする、そういうことと今の強制執行妨害罪との関係はどう考えていらっしゃるでしょうか。

寺田政府参考人 基本的には今刑事局長から御答弁申し上げたことでございまして、ポイントは結局、現行法ですと、この「強制執行を免れる目的」というものにどういう状況があれば入るのかということで、これは客観的に決まるということでございますけれども、今委員が御指摘のような状況は正当な行為でございまして、この「強制執行を免れる目的」には当たらないということが一般的には言えるのではないかなと。

 もちろん、具体的にはいろいろなケースがございますので、それを私どもとして今、これはこう、これはこうというふうに申し上げるのはちょっと難しいことだと思いますが、一般的には今刑事局長から申し上げたとおりだと思っております。

保坂(展)委員 次に、また民事局長に、自己信託によって財産移転が外形上認識ができないということで受託者監督が不確実になる、こういうおそれがあるのではないかという指摘がなされています。

 自己信託の信託目的には制限がありませんし、また、公正証書によらなくても確定日付の書面でオーケーだというのは、これはずさんではないか。受益者と委託者兼受託者がお互い通謀すれば、信託の設定を偽装、隠匿をするという者も出てくるのではないか。いわば、そういった犯罪のツールなどになる心配はないのか、こういう指摘もあるんですが、いかがでしょうか。

寺田政府参考人 今、財産の移転が外形上認識しにくいということをこの自己信託の問題点として挙げられたわけでございます。

 それは、外形上認識できないのは別に自己信託だけではございませんで、さまざまあると思います。しかし、この自己信託が新たな類型として登場するについては、その点についても確かに十分な手当てが必要だろうと思います。

 問題は二つありまして、一つは、それを、いざ債権者がこれはある人の財産だと思って行ったところ、その人がもう既にそれは自己信託しているからほかの方に行ってしまったと言って責任財産から逃れる行為をする。その場合に、もちろん日付がどっちが先かということが問題になるわけですけれども、自己信託でわからないから、いつでも日付をさかのぼらせることができるじゃないかという御懸念があるわけです。

 それに対しまして、先ほど委員も御指摘になられましたように、自己信託の設定方法について、基本的には公正証書のほか日付のある書面での設定ということになっているわけでございまして、これによって、今申し上げたような、日付をさかのぼらせて債権者からの追及を免れるということは基本的にできないような仕組みになるわけでございます。

 もう一つは、もともと、こういう債権者の追及から免れるということは、いよいよ危機的な状況になったときにどたばたと行われてしまう、それが、通常、第三者に譲渡されるのと同様に自己信託によってもされるということでございますが、これは、財産の処分が行われるという点においては、この自己信託もほかの財産処分も特に変わることはないわけでございまして、本質的には、詐害行為の取り消し行為、これは裁判所に求めるものとして民法に規定されておりますが、これによるべきところでございます。

 ただ、それが非常に自己信託の場合にはやりやすいように思えるので、債権者側からは非常に懸念があるという御意見がこの制度を検討した中でもございましたので、それで、私どもといたしましては、詐害行為の取り消し訴訟を提起することなく直接に債権者が、その自己信託された財産に、その債務者、つまり設定者の責任財産として係っていける、こういう仕組みにしたわけでございます。

 また、いよいよこれが相当害悪を社会的に流すようなことに利用されるというところまで評価されますと、これは裁判所による信託の終了命令が出るわけでございまして、三段構えになっているわけでございます。

 そういうことで、債権者から逃れるということについての手当てというのは十分にされていると私どもとしては考えているところでございます。

保坂(展)委員 次に、金融庁の方に伺いますが、今回の信託法改正に基づく、そして業法の方の改正で、施行時に多数の投資家に受益権を販売する者に対して登録制とするということでございます。その登録制にするという数に至らないところであれば登録はしなくていい、また、多数の投資家に受益権を分配するような例は実際に余り想定されないので、これでは野放し同然になってしまうんじゃないかという指摘もあります。

 もともと、信託業法の方が信託法より先にできて、これは悪徳業者が跳梁ばっこする時代の規制法としてできた歴史を考えると、これは一体どう考えているのかという点について。

山本国務大臣 改正業法の五十条の二で規定されておりますように、政令事項になっております。

 「当該信託の受益権を多数の者が取得することができる場合」というところでありますが、そこで多数の者であれば参入登録となるわけでありまして、では、その多数の者の概念を余り多くすると、保坂議員おっしゃるように、悪徳業者を跳梁ばっこさせる。

 そこで、その業の考え方というものを、もう少し実質を入れて考えるようにしておりまして、一回の自己信託を行い多数の者が受益者となる場合、また、同一の自己信託を繰り返して、これら複数の信託の受益者を合計すると多数の受益者が生じることとなる場合、こういった場合も、実質的な多数の者というようにいたしまして、受益者をできるだけ保護して、登録が必要になるというように考えております。一回あたりの受益者が数人の場合であっても、反復継続して自己信託を行う者に対しては信託業法上の登録が求められることになるというように考えているわけでございます。

保坂(展)委員 続けて金融庁に伺いますが、資産流動化法における特定目的信託の導入、これは、自己信託の代用機能を持っているところの特定目的信託がそんなに使われていないという話を聞きます。

 かなりたくさんの手続が必要で厳格であるというのもその理由の一つかと思うんですが、既に、特定目的信託、特に特定持ち分信託が自己信託の代用機能を持っているんだとしたら、新たに一般法の信託法の中に問題の多い自己信託を入れるのではなくて、この仕組みそのものをもう少し緩和するという選択肢の方が賢かったんじゃないかというふうに思うんですね。その点、いかがでしょうか。

三國谷政府参考人 特定目的信託制度でございますが、これは、受益権の有価証券化を前提に、多数の投資家への受益権の譲渡を可能にする資産流動化スキームといたしまして平成十二年に導入されたものでございます。

 一方、信託法におきます自己信託は、受益権の有価証券化を必ずしも前提とせず、少数の受益者を前提としたスキームとすることも可能な制度でございます。これにつきましては、資産流動化スキームに限りませず、幅広い活用方法が考えられることなどを踏まえまして、それぞれの特色に応じました規制とすることが必要だろうと考えております。

 信託業法におきましては、自己信託のうち多数の受益者を予定する場合につきましては、参入規制でございますとか、あるいは善管注意義務、あるいは弁護士等の第三者による信託財産のチェック等の規制を課すこととしておりまして、こういったさまざまな規制により、受益者等の保護を図ってまいりたいと考えております。

保坂(展)委員 事前チェック型社会から事後監視型社会へと言われたさまざまな規制緩和があり、その結果、この今の委員会でも、連合審査でも、例えばライブドア事件の例はたびたび出てまいりました。このライブドア事件のころ、自民党内でかなり活発な議論があったということも聞いています。

 こういった中で、今、多々問題点が審議の最中でも挙げられているわけですが、主税局としては、この自己信託の設定や公示要件の厳格化、さまざまなことを我々は指摘をしているわけですが、実際上、これは施行された後どのような措置、対応を、どこに着眼点を置いて用意しようとしているのか、答えていただきたいと思います。

石井政府参考人 今般の信託法案、信託の利用機会を増大させるという反面、租税回避に用いられるのではないかという懸念があることを指摘されておることは、私どもも承知しております。

 特に、今御指摘の自己信託あるいは事業信託というものにつきまして、法人税の潜脱が起こるのではないかというような懸念がございます。

 仮に、一般の法人と全く同様の事業を信託形態で行うような場合には、課税の公平あるいは中立という観点から、法人課税を行うべきではないかという検討をいたしております。

 信託法案への税制上の対応は、これからこのような点も含めまして十分検討を行った上で、十九年度税制改正において適切に対応していきたいというふうに考えております。

保坂(展)委員 法務大臣に伺います。

 法務委員会の方でも、この自己信託と事業信託を結びつけて、ここに入る場合に、これは、これまでのいわゆる会社法制上の規律から信託法上の規律に移行するという形になりますよね。となれば、その会社法で厳しく規定されていたさまざまな条件よりも緩いところでこの信託法上の手続があるというと、会社法制上の規制が嫌だから信託法上の自己信託による事業信託などに走ってしまうということをやはり法制上阻止をしておかなければならないんじゃないかというふうに思うんですが、その基本、骨格となる考え方を、大臣、どう考えていますか。

長勢国務大臣 少し技術的な問題もありますので、そういう問題のないようにしておると思いますので、局長から答弁させます。

寺田政府参考人 会社法の審議においても申し上げたことでございますけれども、利用者にとって利用しやすいということは、まず基本として非常に大事なことであります。しかし、この利用者の周りにいろいろな関係者がおいでになりまして、会社制度においても、この信託制度においても、トータルとしていろいろな考慮をしていかなきゃならないところであります。

 会社においては、基本的な方向として、会社という制度をできるだけ柔軟に、いろいろ多様な用い方ができるようにし、他方、しかし、債権者でありますとかその他の関係者においては、透明性を高めるという意味で、開示を強化していくという方向にあったわけでございます。

 この信託においても、同じように、できるだけ強行規定というものの無意味な部分というのは緩和していくということでありますけれども、同時に、そのことが非常に見えにくい法の関係というのをつくってしまっては、これはやはり問題でございますので、私どももなお、その会計上、あるいは場合によっては税務上残された問題もございますけれども、トータルとして合理的な制度になるように、ほかの制度も参照しながら努めてまいりたい、このように考えております。

保坂(展)委員 先ほど来の質問にもあったように、働く人の雇用関係や労使協約など、細かく考えていきますと、これは大きな問題を含んでいるということを申し上げたところで、終わります。

七条委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午後二時四分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 信託法案

 信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案

は法務委員会議録第四号に掲載


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