衆議院

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第2号 平成18年11月7日(火曜日)

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平成十八年十一月七日(火曜日)

    午前九時開議

 出席小委員

   小委員長 近藤 基彦君

      愛知 和男君    加藤 勝信君

      福田 康夫君    船田  元君

      保岡 興治君    枝野 幸男君

      鈴木 克昌君    園田 康博君

      赤松 正雄君    笠井  亮君

      辻元 清美君

    …………………………………

   日本国憲法に関する調査特別委員長         中山 太郎君

   議員           加藤 勝信君

   議員           船田  元君

   議員           保岡 興治君

   議員           枝野 幸男君

   議員           鈴木 克昌君

   議員           園田 康博君

   議員           赤松 正雄君

   参考人

   (社団法人日本民間放送連盟報道委員会委員・報道小委員長)         渡辺興二郎君

   参考人

   (社団法人日本民間放送連盟放送基準審議会委員・放送倫理小委員長)     山田 良明君

   参考人

   (ジャーナリスト)

   (真っ当な国民投票のルールを作る会事務局長)   今井  一君

   参考人

   (日本弁護士連合会副会長)            吉岡 桂輔君

   参考人

   (日本弁護士連合会憲法委員会事務局長)      菅沼 一王君

   参考人

   (専修大学文学部助教授) 山田 健太君

   衆議院法制局第二部長   橘  幸信君

   衆議院憲法調査特別委員会及び憲法調査会事務局長  内田 正文君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法の改正手続に関する法律案(保岡興治君外五名提出、第百六十四回国会衆法第三〇号)

 日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案(枝野幸男君外三名提出、第百六十四回国会衆法第三一号)


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     ――――◇―――――

近藤小委員長 これより会議を開きます。

 第百六十四回国会、保岡興治君外五名提出、日本国憲法の改正手続に関する法律案及び第百六十四回国会、枝野幸男君外三名提出、日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案の両案を一括して議題とし、本日は、特にメディア規制・国民に対する周知広報に係る事項について審査を行います。

 本日は、両案審査のため、参考人として社団法人日本民間放送連盟報道委員会委員・報道小委員長渡辺興二郎君、社団法人日本民間放送連盟放送基準審議会委員・放送倫理小委員長山田良明君、ジャーナリスト・真っ当な国民投票のルールを作る会事務局長今井一君、日本弁護士連合会副会長吉岡桂輔君、日本弁護士連合会憲法委員会事務局長菅沼一王君及び専修大学文学部助教授山田健太君に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。

 本日の議事の順序について申し上げます。

 まず、渡辺参考人、山田良明参考人、今井参考人、吉岡参考人、山田健太参考人の順に、それぞれ御意見をお述べいただき、その後に懇談を行いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度小委員長の許可を得ることになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 御発言は着席のままでお願いいたします。

 それでは、まず渡辺参考人、よろしくお願いいたします。

渡辺参考人 本日は、発言の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 私は、民放連、日本民間放送連盟で報道小委員長を務めている渡辺興二郎でございます。よろしくお願いいたします。

 私ども民放連に与えられた時間は十五分でございますので、最初に私から、法案全般と、それから政党等による意見の放送に関して意見を申し述べまして、その後、隣に座っていらっしゃる山田良明民放連の放送倫理小委員長から、広告にかかわる部分について意見を述べさせていただきたいと存じます。

 まず最初に、きょうは、私個人としては憲法改正自体の是非について意見を申し上げる立場にはございませんので、憲法改正の手続を定める国民投票法案と放送の関係について、主に表現の自由、報道の自由の観点から意見を申し上げたいと存じます。

 民放連からは、既に、この四月でございますが、堀報道委員長が憲法調査特別委員会に出席いたしまして、一度意見を開陳させていただいております。その当時は、報道に対する規制を法案に盛り込むか否かということが主な論点となっておりまして、そのことに対して民放連としての反対の意見を申し上げたところでございます。

 堀委員長もその際に申し上げたことでございますが、憲法改正のための国民投票が行われる場合には、国民が何の束縛も受けずに自由闊達に議論して、全員がその内容を十分に理解して投票するということが不可欠だと考えているところでございます。

 例えばで言いますと、テレビ、新聞で、憲法を変えるということについて連日のように報道が行われて、いわゆる井戸端会議だとか家庭の中の会話、それから居酒屋さんや喫茶店、職場や学校で数多くの議論が交わされる状況が、ある意味では理想の形ではないかというふうに思っておるところでございます。その上で、国民が自主的に判断を下すときに、初めて国民主権が実体化されるということになるだろうと思っております。こうしたことを考えますと、報道規制があるべきではないということは言うまでもないと思います。

 我々のこうした意見を入れていただきまして、本年六月に与党並びに民主党が御提出された法案から報道規制の条項が基本的に削除されたということについては、私どもはまず率直に評価させていただきたいと思っております。

 次に、憲法改正の手続が始まったときに、放送に求められる役割は一体何かということでございます。

 一つは、正確な報道だと思います。発議された内容、その理由、賛成、反対にかかわるさまざまな動きを細かく伝えることだというのが第一だと思います。

 そしてもう一つは、国民の間で議論を触発するためにそういった場を提供することだというふうに考えております。政治家の皆さんはもちろん、有識者の皆さん、また一般視聴者の参加も広く募りながら、積極的に討論番組等を企画していくことになるのだろうと考えております。

 その際、留意しなければならないのが、賛成と反対のバランスをいかにとっていくかということになると思います。民放連の堀報道委員長は、本年四月に辻元清美議員の質問に答えまして、賛否対等の扱いであるべきだという趣旨の答弁をさせていただいております。放送局には、御案内のように、放送法によりまして、政治的に公平であること、意見が対立している問題についてはできるだけ多くの角度から論点を明らかにすること、これは私どもは政治的公平と多角的論点の提示というふうに言っておりますけれども、それが強く求められております。国民が改正の是非を自由に議論する雰囲気をつくり上げるためにも、一方に偏らない放送を心がけたいと思う次第でございます。

 そうした意味でも、我々放送局は、国や国会に利用されるべき言うなれば広報機関ではなく、自主的、自律的に判断する報道機関であるということを先生方にはぜひ御認識いただきたいと改めて思う次第でございます。

 次に、提出されております憲法改正の手続法案についてです。

 与党案と民主党案がございますけれども、メディアに直接かかわる部分については違いがないというふうに受けとめております。したがいまして、与党案をベースにこれからお話をさせていただきたいと思います。

 まず、政党等による意見の無料放送について御指摘をさせていただきたいと思います。

 与党案では、第十四条並びに第百七条に規定されております。第百七条によりますと、政党等は憲法改正案に対する意見を無料で放送することができる、放送局は政党等が録音、録画した意見をそのまま放送しなければならないとなっております。そして、各政党に、衆議院及び参議院の議員数を踏まえて広報協議会が定める時間数を提供しなければならないと同時に定めております。

 国会で三分の二以上の賛成で憲法改正は発議されるわけでございますから、この政党等による意見の無料放送というのは、当然、改正賛成の意見が圧倒的に多くなることが予想されます。時間の割り当てなどを決める広報協議会も、所属議員数の比率によりまして各会派に割り当てるということになっております。先ほど、放送局としては賛否のバランスをとって報道していきたいと述べましたが、この法案に記されました政党等による意見の無料放送ではバランスが崩れることになるのではないかという危惧の念を持たざるを得ません。

 日本国憲法が憲法改正について国民投票を定めているのは、国会が国民の意思を離れて憲法を変えられないように判断を仰ぐための規定であろうというふうに思います。そうであるならば、国会の仕事は改正を発議するということでありまして、その後は国民の自主的な判断と幅広い議論にゆだねるべきではないかと思う次第でございます。国会が三分の二以上の賛成で発議されたからといって、国会に議席を有する政党のみが放送を無料で使用する特権を持つことには疑問を禁じざるを得ません。

 以上、簡単ではございますが、有料広告にかかわる部分については山田小委員長から意見を開陳させていただきたいと存じます。

 ありがとうございました。

近藤小委員長 次に、山田良明参考人、お願いいたします。

山田(良)参考人 それでは、憲法改正国民投票法案と広告に関する部分について、私から意見を述べさせていただきます。

 まず、法案にある、国民投票運動のための広告放送を投票日前七日間禁止するとの規定については、前回の委員会でも申し上げましたように、民放連として、放送メディアの自主、自律という立場から、再度反対いたしたいと思います。

 これは、日弁連の意見書でも述べられているように、投票直前は憲法改正に関する議論が最も活発になされる時期であり主権者たる国民の関心も最も高まる時期でもある、テレビやラジオが国民の情報取得の大きな手段であることを考えたとき、これを利用した広報活動を禁止することは、主権者たる国民の正しい判断の道を著しく損ねることにもなりかねず、到底許されないとの考え方に、民放連としても全面的に賛同をいたします。

 放送の影響力について熱心に御議論いただいた結果このような規定が設けられたことにつきましは十分に敬意を表しつつも、やはり放送メディアの広告だけに何らかの法的規制がかけられることについては、メディアの自主、自律を標榜する私どもの立場からは看過し得ないと考えております。現在、民放各局で国政選挙等における政党CMについて投票日当日は政党スポットの放送をしないこととしているのは、公職選挙法に規定があるのではなく、あくまで民放が自主的に放送をお断りしているという、自主的な判断であることに深い御理解をお願いしたいと存じます。そうした配慮については、放送局側の自主、自律の理念、精神に任せていただきたいと考えております。

 その前提にある考えについて、改めて説明させていただきます。

 民間放送各社は、放送法に基づき、各社それぞれ放送番組の編集の基準、いわゆる番組基準を定めることが義務づけられております。各社がこの番組基準を定める際の一種のひな形として、民放連で日本民間放送連盟放送基準があり、その中で、広告は真実を伝え視聴者に利益を伝えるものでなければならないとの基本姿勢を明らかにしております。こうした基本姿勢を踏まえて、視聴者の利益の保護を第一義として、六十四カ条にわたって、さまざまな角度から広告に関する基準を定めているわけでございます。民間放送は、CMについてかなり厳しい品質管理を行っております。

 憲法改正に関する意見広告についても、ほかのCMと同様に、放送法の趣旨にのっとり、放送業界が自主的に判断すべきものであると考えております。もちろん、これを実現していくためには、六月の特別委員会でも申し上げましたように、クリアしなければならない課題は少なくありません。特に、CMの内容によって意見の強弱や賛否の強弱など著しくアンバランスを生じた場合に、放送法の規定にもある政治的公平の観点からどのように考えるべきかなど難しい問題もはらんでおります。日弁連の意見書でも、テレビの影響力を無視できないとした上で、テレビなどの利用については広く国民が意見広告を平等、公平に利用できるようにするためのルールづくりを慎重に行う必要があるとの御指摘もございます。

 憲法改正案に対する賛否に関する広告というのはいわゆる意見広告に当たり、通常の商品やサービスとは異なる種類のCMだけに、想定される検討課題が幾つかございます。

 国民投票運動にかかわるCMは、憲法改正案に賛成か反対かを視聴者にストレートに問う形の、日本のCMでもこれまで余り例を見ない内容になることも想定されます。こうしたCMがまず放送媒体になじむかどうかという検討が必要です。それから、これら意見広告の広告主の範囲というものをどのように考えるのか。政党だけなのか、市民団体や有識者なども想定するのかという検討も必要です。広告の出演者、特に有名タレントの出演などについてどのように考えるべきなのかということも検討しなければいけません。意見広告の放送時期をどのように線引きするのか。憲法改正法案が発議される以前の意見広告なども含めた、あらゆるケースを想定した検討が必要です。それから、量的、内容的な公正、公平性をどのように確保するのか、また、それが果たして可能なのかどうかということも検討しなければいけません。したがって、通常のCM考査とはやや違う考え方をしなければいけません。

 ただ、いずれにいたしましても、これらの諸課題を抱えながらも、放送法で保障されている放送の自律にのっとり、民間放送が自主的に判断することで解決をしていきたいと思っております。

 以上でございます。

近藤小委員長 次に、今井参考人、お願いいたします。

今井参考人 おはようございます。

 私は、賛否両派がテレビまたはラジオを通じて賛成あるいは反対への投票を訴える広告を出すことを規制すべきか否かについてから、まずお話ししたいと思っています。

 この問題については、正直な話、この三日間ほとんど眠れないぐらい悩みました。といいますのも、具体的な名前は出しませんけれども、放送局にお勤めの方あるいはリタイアされた方で、報道局長を務められた方、報道部長をやられた方、編成局長でおられた方、監査役をやられた方、十人以上の方にこの間話を聞きました。きょうの朝八時にも、放送局の編成局長、報道局長を歴任された方にも意見を伺いましたけれども、総じて、お隣におられる山田さんと同じで、規制は断じて認められない、許さないということをおっしゃっていました。

 ところが、そうおっしゃっている方々が、そうおっしゃると同時に、非常に広告については野放しにされかねない、今いろいろなことを言っても、結局は、全部受けて、お金さえ出せば幾らでも意見広告を出せるような状況になるんじゃないかということは危惧していると皆さんおっしゃっていました。しかし、それでも法規制はやめていただきたいという意見を相当数の方が言われたので、随分悩みました。

 その上で、私自身も法規制はできたら避けたいとは思っています。できればやめるべきだと思っています。しかし、憲法調査特別委員会の皆さん方がフランスやスイスに行って調査研究をされた事例とかさまざまなことを、私自身もフランスやスイスに行って取材をしてきました、そこで聞いた話なんかをいろいろ考えると、何らかの形で制限を加えるという道をとるしかないのじゃないかというふうに思っています。

 その理由としては、テレビ、ラジオとか放送メディアを通じた広告は、一回十五秒から三十秒、四十五秒、一分とあるらしいんですが、そういう短い時間で完結せざるを得ないということで、とても理性に訴えるような主張ができるとは思えません。イメージとか感性に頼らざるを得ないんじゃないかという気がします。そういうふうなことになると、扇情的な誇大広告となるおそれがあるんじゃないかと思います。

 もう一つの理由は、後で言いますが、新聞の意見広告だったら、例えば一千万円、二千万円単位だったら、いわゆる市民グループの方々が、よくある話ですけれども、一口千円とか一口三千円とかカンパを募って集めて、それで意見広告を出すことが可能です。しかし、テレビのスポットの場合はけたが違いますから、通常の個人とか市民グループではとてもこういった広告を出せるとは思えません。ということは、この自由を認めた場合、この自由を享受できるのは、行使できるのは、もう非常に限られた範囲の団体あるいは個人でしかないんじゃないか。これは不公平だと言わざるを得ないと思います。

 私は、これに加えて、明らかな意見広告だけじゃなくて、意見広告のまがいものというか、意見広告もどきというようなものもあわせて規制するべきじゃないかというふうに思っています。

 例えば、例えばですけれども、憲法九条の改正が発議された場合に、ストレートに九条の改正反対あるいは賛成という意見広告が流れるだけじゃなくて、もっと違った、平和イエスとか、自主防衛イエスとかいうふうな、発議に関して賛成、反対についてはストレートに触れないで、遠回しな言い方で、これは意見広告じゃありませんよ、今回のこととは関係ありませんよといって逃げるというか規制を逃れるという策を弄する人が出てくるんじゃないかと思っています。

 公開討論会でちょっとお見せしたことがあるんですが、実は、これはフィガロという新聞です。これは、フランスがEU憲法批准をなすための法律の是非を問うための国民投票をやったときに、フィガロがその国民投票の特集号を刷ったんですが、これはフィガロだけじゃなくてどこの新聞も特集号を刷っているんですが、この裏にウイと書いてありますね、一つのヨーロッパに賛成というふうに書いてあります。これは、EU憲法批准を賛成しろとかそういうことを言っていない、こう言い逃れているわけですね。一つのヨーロッパにウイと言っているだけだ、そういう意見広告なんだと。

 おまけに、手が込んでいまして、出したのがフランスからじゃなくて、お隣のドイツのマンハイム・ユニバーシティーの一つのグループが出したと言っているんですよね。フランス人が出したんじゃないんだ、フランス国境の中から出したんじゃないんだと。二重に手が込んでいまして、投票の直前にこんな大きな意見広告を出しているわけです。

 このことについてフランス外務省の選挙担当の人に聞いたら、非常に苦々しい、こういうことはできたらやめてほしいと思っているんだけれども、やはりやる人がいるということですね。

 だから、放送についても、ストレートな意見広告じゃなくてもそういうことをする人は当然出てくるんじゃないか。制限規制をするんだったら、それも許さないような制限規制をしていただけたらというふうに思っています。

 ただし、私が今言ったのは、不公平であるからやめた方がいいという大きな理由があるからであって、これが不公平じゃなくて、お金を持つ者も持たない者も、つまり資金力のある方もない方もひとしく同じ量そういった広告を出せるんだったら話は違ってきます。

 例えば、一定期間内に一定量の広告放送を賛否両派が行えるんだったら、具体的に言えば十日間で各派二十分、十五秒のスポットを一日八回掛ける十日間で、一つの放送局だけでちょうど二十分になるんですけれども、何らかの形でそういう枠を確保できるんだったら、これはもう各テレビ局が、放送局が無料提供するとは思えませんけれども、何らかの形でそういうことができるんだったら、時間的に完全に平等にできるんだったら、やってもいいんじゃないかというふうに思っています。しかし、その場合でも、与党案にあるように、投票日の一週間前あるいは期日前投票から、そういったスポット広告、感性的認識に訴えるようなスポット広告は控えた方がいいというふうに考えております。

 それから、新聞、活字媒体ですね。新聞や雑誌などの活字媒体の意見広告については、一切規制する必要はないと考えています。

 その理由は、もちろん活字媒体でも、最近ソフトバンクがゼロ円広告を大きく出しました。これはテレビでもやりましたし、新聞でもやりました。これが問題になって、孫社長も反省をしたというふうにおっしゃっていましたけれども、こんなことがあることはあるんですが、今回よくわかったんですが、新聞の場合はきちっと手元に全面広告があるわけですから、じっと見ることができるわけですね。下を見たら、小さい字でこれはだめ、あれはだめといろいろ書いてあるわけですね。最初見たときはおっと思ったんですが、よくよく冷静に考えてみたら、何だこれ、ほとんど、というようなことになるわけですね。

 しかし、テレビの場合は十五秒たったらもう終わって次のCMになっていたり、あるいは番組になっていたりするわけですね。これはやはり大きな違いだと思います。

 だから、活字媒体の方は、そういうことがあってもこちら側から自分の錯覚にブレーキをかけることができるし、理性的な判断に戻ることができるので、活字媒体については規制しない方がいいんじゃないかというふうに考えています。

 それから、もう一つの理由は、さっき言ったみたいに、活字媒体の意見広告は少し力のある市民グループだったらカンパを集めて出すこともできる、つまり対抗することもできる。例えば大きな企業だとか団体に対抗することもできるということで、これはこれで努力をすれば何とかなるんじゃないかと思っています。

 最後に、テレビ番組やラジオ番組のキャスター、パーソナリティーが、改正の発議後に、番組内で改憲の是非について意見を表明したり、賛成に投票してくださいとか反対に投票してくださいといった発言をすることについてどのように考えるか。

 これもこの間、実際にキャスターをやっていらっしゃる方、パーソナリティーをやっていらっしゃる方にお話を伺いましたけれども、もう全員答えは一緒でした。意見表明はしたいと。しないと番組が成り立たないし、非常に不自然になると。

 例えば、発議をされたら、日本社会において一番語るべき話題になるわけですよね。今、子供のいじめと自殺の問題がテレビとかラジオで話題になっていて、キャスターやパーソナリティーはそれについての自分の意見をやはり披露しています。そうしないと番組が成り立たないからです。

 例えば、憲法九条の改正が発議されたということになったら、日本の社会にとって最も重要な話題なのに、それに触れない。何か事務的に、こんな意見もありますし、あんな意見もありますと言って、自分は一切言わないなんということはあり得ないと。番組が成り立たないし、リスナーあるいは視聴者はパーソナリティーやキャスターの意見を聞きたがっているから、やはりそれにはこたえたいと。だから、それは言いたい。ただし、自分と異なる意見を持っている人たちの主張も当然紹介はします、そういう形でバランスはとりたいというふうに言っていました。

 もう一つは、では、私は九条改正に賛成だから、あるいは反対だから、反対に投票しに行ってくれとか賛成に投票しに行ってくれとか、そういうことは決して言ってはいけないと考えるし、私もそんなことはあってはならないと思います。そういうことを言うということについては、これは法規制じゃなくて、放送局の中であるいは業界団体の中で、決してやってはいけないということで独自のルールとか規制を考えていただけたらなというふうに思っています。

 きょうは、メディアの広告の問題だけじゃなくて、ここへ来て知ったんですけれども、国民への周知広報についても議論をするということでありますので、後の懇談の場で幾つか意見を述べさせていただけたらと思っています。

 以上です。ありがとうございました。

近藤小委員長 次に、吉岡参考人、お願いいたします。

吉岡参考人 日本弁護士連合会の副会長の吉岡桂輔です。

 本日も当小委員会で日弁連の意見を述べる機会を得られましたことにつきましては、まず心から感謝申し上げたいと思います。

 前回配付させていただきました、日弁連の二〇〇五年二月十八日付及び二〇〇六年八月二十二日付の二つの意見書を本日も御参考にしていただければ幸いでございます。

 さて、本日のテーマは、憲法改正国民投票に関するメディアにおける意見広告などのあり方、国民に対する周知広報のあり方です。この問題についての日弁連の基本的な考え方は、主権者である国民が的確な情報に基づき自主的な判断がなされるよう、賛成意見、反対意見が公平、平等に広告でき、また周知広報されなければならないということであります。

 また、改正案の長所、短所などの問題点が、国民の目線に立って、わかりやすく丁寧なものであることが重要であります。

 さらに、全国規模で改正案の広報活動を行うには莫大な資金がかかりますので、このような広報活動を国民の自主的な活動に任せるだけでは公正かつ的確な情報提供ができません。できるだけ資金力の有無による格差が生じないように、その弊害を除去する方法も求められます。

 これらの基本的立場に立ちまして、個別の問題点について、配付いたしましたレジュメの順番に沿いまして意見を述べていきたいと思います。

 なお、メディア規制といいますと、これまでメディアそのものに対する規制、すなわち報道規制が問題となっていたわけでありますが、日弁連は従前から報道機関に対する規制はするべきではないとの意見を表明しておりました。今回、国会に提出されている与党案、民主党案のいずれにもこのような意味でのメディア規制の規定はなく、報道機関の報道の自由、ひいては国民の知る権利を尊重したものであるということについては評価しております。

 それでは、まず、メディアにおける意見広告を無制限に認めることの是非について述べます。

 メディアにおける意見広告を無制限に認めるべきか否かということについては、原則としてはできるだけ国民投票に関する広報活動は制限をしないで自由に認めるという原則に立ちつつ、一方、全く無制限にこれを認めますと、いわゆる資金力のある方が多く意見広告をすることができてしまい、これでは公平性を欠くこととなってしまいます。したがって、憲法改正案に対する賛成意見と反対意見とをできるだけ対等に扱う。例えばテレビ、ラジオといった放送であれば賛成意見も反対意見も極力同じ時間が使える、新聞であれば賛成意見も反対意見も同じような回数、字数が使えるといった工夫が必要だと思います。

 次に、投票日の七日前からの広告放送を制限することの是非について述べたいと思います。

 与党案、民主党案では、投票の七日前からは、後に述べます政党等によるものを除いてはテレビやラジオを利用した広告活動が一切禁止されております。

 なお、もとより報道と広告の概念は分けて考えるべきであり、報道は投票日前七日間も許されるものと解釈しております。

 そこで、広告について以下述べますが、投票直前は憲法改正に関する議論が最も活発になされる時期であります。主権者たる国民の関心も最も高まる時期であります。テレビやラジオが国民の情報取得の大きな手段であることを考えるとき、これを利用した広告活動の一切を禁止することは、主権者たる国民の正しい判断の道を著しく損ねることにもなりかねず、到底許されないものと考えます。

 確かに、テレビの影響力の大きさは事実上無視し得ないものがあります。また、テレビ等の電波は限られた媒体であり、テレビ広告等を行うためには多大の費用がかかることからすれば、資金力のある者のみがテレビ等を利用できるという不公平なことにもなりかねないとも言えます。その点から、テレビ等の利用については広く国民が意見広告を平等、公平に利用できるようにするためのルールづくりを慎重に行う必要はありますが、投票の七日前からは一律に利用を禁止するというのは合理的な理由を見出しがたいものがありまして、表現の自由を侵害するものと言わざるを得ません。

 特に、現在の与党案、民主党案では、この七日間は政党のみがテレビ、ラジオを利用でき、しかも、後に述べますとおり、その時間や回数は当該政党等に属する議員の数によることとなるのですから、不平等性はより顕著となります。

 次に、政党にのみ無料広告を認めることの是非について述べます。

 与党案も民主党案も、政党等が、広報協議会の定めるところにより無償でラジオ、テレビの放送による広報活動、新聞広告を行うことができる旨定めております。しかし、政党等とは、一人以上の衆議院議員または参議院議員が所属する政党その他の団体であって、広報協議会に届け出たものとされているのであり、学識者や各界各層等の幅広い国民、市民が利用できるものとはされていません。これでは国会における審議の内容がそのまま反映されることとなってしまいます。

 憲法改正について、国会における議決で決定されるのではなく、最終的には国民投票による国民の判断にゆだねることとされているのは、憲法改正の是非について改めて広く国民の中における自由闊達な議論をし、その結果、主権者たる国民一人一人の判断にゆだねようとするものであります。したがって、政党等以外の団体や市民も無料で放送や新聞広告による広報活動ができるようにするための工夫も検討されるべきと考えます。

 次に、無料広告の割り当て基準について述べます。

 与党案も民主党案も、無料広告の放送回数や広告回数、新聞広告の寸法や回数は、いずれも当該政党等に属する議員の数を踏まえて広報協議会が定めるものとしております。しかし、これでは結局憲法改正案を提案した側の多数意見の政党が無料で多くの時間の放送や多くの回数の広告ができることとなってしまいます。国会における多数意見、少数意見がそのまま反映されることなく、賛成意見も反対意見も同等の時間、同等の回数の放送や広告ができるようにするべきであります。

 続いて、広報協議会の設置と構成について述べます。

 国民に対する周知方法として、政府など行政機関ではなく国会に広報協議会を設置することは、国会が発議する国民投票法案であることからも評価し得るものであります。与党案も民主党案も、広報協議会の構成を各会派の所属議員数を踏まえて各会派に割り当てるとしております。しかし、各議院の議員の三分の二以上の賛成で国会の発議はなされるのでありますから、憲法改正に賛成している国会議員は三分の二以上いることになり、各会派の人数割りをした場合には、必然的に賛成派の議員が三分の二以上の多数を占めることとなります。そのような構成の広報協議会が国民に対して周知広報するとなれば、憲法改正賛成の論拠に偏ったものが広報され、反対派の意見は十分に広報されないのではないかとの疑念が生じるものであります。

 この点については、両案とも、反対の表決を行った議員の所属する会派にも委員を割り当て選任するようできるだけ配慮するとの規定をしておりますが、あくまで配慮するという努力規定であり、この規定だけでは広報の公正性を担保し得るとは評価できません。また、広報協議会の決定方式が三分の二の多数決原理で行われることに照らしても、公平性や平等性を担保するためには、賛成の意見の議員と反対の意見の議員からそれぞれ同数の委員を選任するなど、賛否の意見が平等に反映されるような委員の選出規定を定める必要があると考えます。

 また、公正な情報を国民に的確に提供するという広報協議会の役割からすると、その構成員は、憲法改正案を発議した側である国会議員のみに限定するのではなく、有識者など十分な数の外部委員の選任も検討されるべきであります。

 最後に、国民投票公報の内容について述べます。

 国民投票公報の内容は、発議された憲法改正案の内容を広報するだけでは十分ではなく、改正案に対する賛否の内容を明らかにし、改正案の長所、短所、是非にかかわる問題点を、国民の目線に立って正確かつわかりやすく、丁寧に、しかも公正な立場から周知させるものであることが重要であります。

 与党案も民主党案も、広報協議会が国民投票公報の原稿の作成その他の事務を行うに当たっては、「憲法改正案並びにその要旨及び解説等に関する記載、憲法改正案に関する説明会における説明等については客観的かつ中立的に行うとともに、憲法改正案に対する賛成意見及び反対意見の記載、発言等については公正かつ平等に扱うものとする。」と規定はしております。

 ここに記載されているような客観的かつ中立的な、また公平かつ平等な記載等が望まれるのですが、このことを担保するためにも、既に述べましたように、この公報原稿を作成する広報協議会の委員の構成も、賛成の意見の議員と反対の意見の議員からそれぞれ同数の委員を選任されるとともに、国会議員のみに限定するのではなく、有識者等十分な数の外部委員の選任も検討されるべきであると考える次第であります。

 以上のとおり、本日のテーマについて意見を述べさせていただきました。御清聴ありがとうございます。

近藤小委員長 次に、山田健太参考人、お願いいたします。

山田(健)参考人 専修大学の山田健太です。

 本日は、発言の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。

 憲法改正手続法におきますメディア規制にかかわる問題について、メディア法及び憲法の立場から、メディアの現場の状況も踏まえつつお話をすることで今後の議論のための素材を提供させていただければと存じます。

 本日、お話をさせていただく中心は、憲法改正の国民投票を行うに際しまして、だれがどのような広告によって意思表示をするのか、国は何をいかなる形で広報すべきなのか、その際に政党はどうかかわるべきか、マスメディアとの関係はどうあるべきなのかということになります。そして、これらはすべからく表現の自由の問題にほかならないわけであります。ですから、その規制に当たっては最大限慎重を期することが肝要であることを最初に確認させていただきたいと存じます。

 この表現の自由という観点から見た場合、憲法改正国民投票と表現行為との間にはどのような関係があるか、最初に確認をしておきたいと存じます。

 それは、行為主体別に、市民もしくは国民、二つ目にはマスメディア、そして三つ目には政党、政治家、あるいは国会の表現の自由もしくは表現行為に整理ができます。さらに具体的な項目につきましては、お手元のレジュメの一をごらんいただきたいと存じます。

 例えば市民におきましては、知る権利を行使し、十分な情報摂取ができる環境、そのための制度が必要になるわけであります。次には、自由な意見交換としての国民投票運動の確保でありますし、最終的には、意思の行使としての投票行動、参政権の行使ということがあるわけであります。同様にマスメディアの場合には、ここにありますように報道とともに広告の問題が出てきます。報道に関する規制条項を外したことで、表現の自由の問題、メディア規制の問題が解決したかの印象を持たれがちでありますが、媒体に露出する広告もまた新聞やテレビ、ラジオというプラットホーム、ビューアーをかりた重要な表現行動であることを重ねて御認識いただければと存じます。

 改めて繰り返すまでもなく、憲法二十一条は言論、表現の自由を絶対的に保障しており、その表現の自由の中でも最も重要な表現行為の一つが政治的な表現でございます。したがって、憲法改正にかかわる言動は最大限手厚く保護されるべきであって、万が一、何らかの規制をする場合であっても、その制限は限定的かつ厳格な規制でなくてはならないことは、判例においても既に繰り返し述べられているところであります。この原則は、ここに挙げますすべての項目に対し満遍なく適用されることが期待されていると考えます。

 こうした憲法改正手続に伴う表現の自由の法構造を理解するには、公職選挙法の法枠組みを参考にすることができます。もちろん、憲法改正のための国民投票と候補者選挙は根本的な性格を異にし、その平行移動的な法構成には基本的な疑問を持つものでありますが、現行法案をとりわけ表現の自由との関係で整理するには格好の材料であると言えます。レジュメの二枚目にその構造を挙げておきます。

 さて、ここからが本題であります。時間の関係もありますので、現行法案の規定と問題の所在を確認していきたいと存じます。

 考える柱は、メディア報道・一般広告、二つ目には政党への媒体広告枠の提供、三つ目に広報広聴活動、そして四つ目に投票運動規制。レジュメの三枚目以降でございます。

 最初のメディア報道・一般広告につきましては、予測投票の公表や虚偽報道禁止規定については当初の与党案から削除され、メディア報道の自由化が実現されました。一方で、直前一週間の国民投票運動についてのテレビ及びラジオ広告の全面禁止を定め、その一方で法定広告については自由という例外規定を設けております。

 これらのいわゆる工夫は、これまでの議論を通じて、おおよそ、資金量の多寡によらない投票運動を実現すること、あるいは整然とした環境で投票日を迎えるということにあろうかと思います。しかし、果たしてその目的が達成できるのか、この規定ぶりにはなぜが残るかと思います。そこに挙げたのが四つのなぜであります。

 まず一つ目は、なぜ広告のみを規制するのかであります。

 報道活動には一切の制限を設けず、一方で広告表現について禁止という最も強力な表現規制を課することは、表現の自由に対する行き過ぎた規制に当たると考えられます。議論の中には、メディアにおける意見広告を無制限に求めること自体を問題視し、より厳しい広告規制を実施すべきとの意見もあるやにお聞きしております。しかし、ここでは改めて広告表現の自由について理解をいただければと存じます。

 しかも、そもそも報道を全く自由にして広告を規制することで何を期待するのかという問題もあります。

 例えば報道については放送法上の政治的公正さを求めることで内容上で規制をし、広告はもし量的に規制をしようという目的であるならば、これは看過し得ない問題ということが言えると思います。

 さらには、一般の報道と広告の線引きも簡単ではないと思います。単純には、商業取引があるかどうか、金銭の取引があるかどうかという線引きがあり得ると考えますが、例えば、政府提供の番組あるいは経済団体等の提供番組の期間中の取り扱い、スポンサーの意向で番組内コメントが偏ることの問題性、あるいは、地方局、有線放送局の中には自治体の経営参画もあるわけであります、こうした問題をどう解決するのか、詰め切れぬ問題が多々あるかと存じます。

 さらに、二つ目には、なぜテレビ、ラジオのみを規制するのかであります。

 現在のメディア法制が、印刷媒体、放送媒体、通信媒体ごとのメディア法体系を組織しており、放送媒体については免許制度であることとの関係から内容規制が許されていることは事実であります。しかし、そのことと憲法改正論議において放送媒体にのみ表現規制が許されるということとは関係がないと考えます。また、資金力で露出量、ひいては広告効果の優劣がつくことを前提にするということにつきましても、さらなる吟味が必要であります。新聞やインターネットについては禁止せず、定義が容易でなおかつ運用のしやすい放送媒体のみ規制をするという形がとられているのではないかという懸念さえ起こるわけであります。

 さらには、三つ目には、なぜ期間限定なのか。一週間の根拠規定については十分な説明がなかろうかと思います。

 あるいは、なぜ例外を設けるのか自体も問題であります。

 ここでは、事実上政党広告のみが許容されるということになります。そうなりますと、政党政治活動と政党広告を明確に分ける必要も出てきますし、あるいは政党等による抽象的なキャンペーン広告は禁止されていないということもありまして、国民投票運動と一般的な政治活動をどのように峻別するのかも、非常に運用上は困難な状況に立ち向かうと考えられます。

 候補者選挙におきましては、私たちは二大政党制を志向して政党中心の選挙戦を認めてきているという側面は否定できません。しかし、同じ構図を憲法改正を議論する際にも持ち込むのがベストの選択なのか。政党が責任を持って議論の中心になることと、社会に流れる改憲情報が政党発信の情報中心になることは、似て非なるものであることに御注意いただければと存じます。

 このほか、一週間前規制とは別の問題ではありますが、例えば市民団体が割安な料金設定で意見広告を出稿した場合、これが通常の意見広告などの場合は割引掲載、割引出稿ということも珍しくない状況からすると利得提供に当たるという可能性も否定し切れません。あるいはまた、出稿量や放映時間帯との関係で広告料金の算出というものも非常に難しい現実であることも十分に認識をする必要があろうかと存じます。

 このようななぜを解消するには、最後に改めて繰り返し述べますが、広告規制をしないという選択肢が一番早い、最も的確な解決法ではないかと考える次第であります。

 さらに、二つ目の政党への媒体広告枠の提供について述べていきます。これにつきましても四つのなぜが考えられます。

 なぜ政党だけが特段に優遇されるのかということであります。

 政党だけということに関しましては、大統領や政府が議会の議を経ずに直接民意を問うような国の場合には、政党が意見を代表するということもあり得るかもしれません。あるいは、政党が憲法典に組み込まれている国の場合には違うかもしれません。ただし、一体、日本はどうなのでしょうか。あるいは、市民キャンペーン団体と政党、政治団体とは何がどう違うのでしょうか。このあたりの議論もまだ不十分ではないかと存じます。

 さらに、特段にの根拠につきましては、広報と、この広報というのは後で述べます広報広聴活動の広報でありますが、その広報とここに言う広告で実質的に政党が二重に優遇されるという結果を生むかと存じます。あるいは広告の面でも、政治活動、そして一般の商業広告、さらにはここで言う法定広告と、三重の保障がなされているという状況についてどう考えればいいのか、改めての議論が期待されます。

 さらには、なぜメディアを限定するのかという問題であります。

 上限を定めた広告は、いわゆる枠の限定でありますが、イメージ先行の広告を奨励することにならないか。そういうシステムをあえてつくることの意味合いであります。あるいはまた、メディアを特定の新聞、放送に限定することの合理的な理由についても議論が必要かと存じます。

 さらに、三つ目には、なぜ放送にのみそのまま放送する義務が課されるのかという問題であります。

 誹謗中傷表現による非難合戦になる可能性も十分に指摘されると思います。あるいは、内容の問題性を広報協議会が判断することの平等性、公平性に問題がないのかどうかということも疑問として残ります。

 最後もう一つ、なぜ無料なのかという問題がありますが、これにつきましては、全額公費負担が本当に当たり前なのか、あるいは広告枠の議員数比が当然なのかという問題について、後ほどの広報広聴活動の項で触れたいと存じます。

 ページをめくりまして、三つ目、広報広聴活動であります。ここでは二つのなぜを指摘したいと思います。

 一つ目には、政党あるいは議員に広報や広告の内容の判断を負うことの問題であります。

 国民投票に問われるのが政党の意思になるということを考えた場合、大変卑近な例でありますが、例えば全会一致で発議された場合の反対意見の取り扱いはどうなるのか。そのことを考えた場合に矛盾点が出てくるのではないかというふうに思います。あるいは、先ほども触れましたように、内容を客観的かつ正確な解説、説明をするという客観性の担保をどのようにするのか。候補者原稿をそのまま掲載する選挙公報との差異が明らかであろうかと思います。

 そしてまた、広告が自由であるという先ほどの私の結論からすると、この広報広聴活動自体が不要になるという結論が導かれるわけでありますが、万が一、この広報広聴活動を何らかの形で認める場合においても、議員数を配分基準にすることにつきましては、例えば小選挙区制に起因する得票率と議席数の乖離であるとか、賛成意見を優遇することによって民主主義の基本である少数意見の尊重をどういうふうに担保するのかという問題であるとか、あるいは公平性の確保の問題であるとか、さまざまな議論すべき論点が残っていると考えているわけであります。

 このような観点から考えますと、まず前提になるのは、日本のマスメディアの現状であります。世界でもまれに見る高普及率を維持し、先進諸国の中ではほぼ唯一大部数を維持し続ける新聞、公共放送と民間放送の並立体制の中で、内容の上で切磋琢磨し、一定水準の番組を維持し続ける放送。しかも、こうしたマスメディアに対し、日本のどこでもだれでもが容易にアクセスできる環境がほぼ完全に整っているのが日本であります。

 これは日本に住んでいる私たちにとっては余りにも当たり前に思いがちであり、えてして悪い面ばかりが目につくわけでありますが、世界に誇るべきユニークな言論の公共空間が成立しているということを忘れてはいけないと思います。だからこそ、こうした現在のメディアが維持している思想の自由市場を、憲法改正のための最終的な意見交換の場である国民投票運動期間においても最大限生かすことが大切であろうと考えます。

 その生かし方はさまざまあるかと思います。ただし、表現の自由を研究し、ジャーナリズムを観察する立場から考えれば、今確保されている自由な公共空間をできる限り維持すること、その中には意見広告も含めたすべての広告表現活動が自由に行われ、多種多様な情報の流通が実現することが最善であると考えるわけであります。

 規制とは、その表現者を信頼しないことの裏返しであります。では、だれが行き過ぎた表現を行う可能性があるのか。実は、この法案の最初のターゲットはまさに政党であります。可能性があるからこそ、一週間の禁止や無料という枠の中で量的規制を構想するわけであります。であれば、まず政党こそが率先して自主規制ルールを定めればよいのではないでしょうか。これは一種の発想の転換であります。同時に、マス媒体も、行き過ぎの可能性があるものについては、これまでの経験と公共的な責任から自主的なルールによって抑制することは十分に実現し得ると考えます。

 こうした発想のもと、より具体的な見直しの方向性は、レジュメの最後に示すとおりであります。中にはゼロベースの見直しも含まれますが、幸いにも国会での本格的な審議は始まったばかりだと認識をしております。このような場をより多く設け、多くの意見を参考にされ、表現の自由が確保され、最善の政治選択ができる環境が提供されることを期待するわけであります。

 具体的に見てみますと、まず基本はシンプルさであります。広告を含むメディア規制は、シンプルにノーということを確認すべきではないでしょうか。広告も報道と同様に原則は自由であるということであります。そうであるならば、先ほど申しましたように、国が行う広報につきましては必要最小限のものでいいわけでありまして、冊子や新聞、テレビ、ウエブ上で法案や提案理由を説明することで十分足りると考えます。

 さらには、国民の十分な情報摂取機会を確保するためには、本日の直接のテーマではありませんが、運動期間についてもさらに大きな延長が必要ではないかというふうに考えるわけであります。

 また、政党への優遇措置が必要であるという考え方もとり得るということは考えます。ただし、その場合には、全面的な法定無料広告を実施するというだけではなくて、例えば共同の記者会見、討論会を法定放送、法定広告の枠の中で行うなどの方法も十分にあり得る。原則は、皆さん政党が自由に精いっぱいに意見を主張することがよいのではないかと考えるわけであります。

 さらには、認定団体による広告の助成や、媒体による自主的な取り扱いルールとの組み合わせも考えられます。それは、ミニマムプライスレート、そのときに実際に運用されている最も安い広告レートをすべての団体に平等に与える、あるいはネガティブキャンペーンを禁止するというような自主的な取り組みは十分に考えられるわけであります。

 最後にもう一度申し上げます。

 広告も広報も、そして政党活動も、それらはすべからく表現の自由の問題であります。だからこそ、その規制に当たっては慎重の上にも慎重を期すことが肝要であります。自由闊達な改正議論が実現し、最善の政治選択がなされるための環境として、思想、情報の自由市場が確保されることを、そしてフォーラムの場がメディアを初めとする公共空間において確保されることを強く期待するものであります。

 以上でございます。

近藤小委員長 以上で各参考人の御意見の開陳は終わりました。

 これより懇談に入ります。

    〔午前九時五十九分懇談に入る〕

    〔午後零時五分懇談を終わる〕

近藤小委員長 これにて懇談を閉じます。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、ありがとうございました。小委員会を代表して心から御礼を申し上げます。

    ―――――――――――――

近藤小委員長 この際、お諮りをいたします。

 本日の本小委員会における懇談の記録につきましては、本日の小委員会議録の末尾に参照として掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

近藤小委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔懇談の記録は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

近藤小委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時六分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

懇談の記録



近藤小委員長 これから懇談形式にて順序を定めずに発言をしていただきます。

 一回の御発言は五分以内とし、その範囲内で発言並びに参考人及び法律案提出者に対し質疑を行っていただきます。

 なお、その際には、小委員長の指名に基づいて、氏名をあらかじめお述べいただいてからお願いいたします。

 時間の経過につきましては、終了一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 御発言を希望される方は、お手元のネームプレートをお立てください。御発言が終わりましたら、戻していただくようお願いいたします。

 それでは、ただいまから御発言を願いたいと存じます。御発言を希望される方は、お手元のネームプレートをお立ていただきたいと思います。

枝野小委員 民主党の枝野です。皆さん、ありがとうございました。

 まず一点、きょうも、いわゆるテレビ放送の枠の無料配分についてのところで、配分比率について御意見がありましたが、我々のサイドとしては、提案のときに若干うっかりしていたなということで、賛否フィフティー・フィフティーでいこうというふうに判断を変えておりますので、そういう前提で御議論をいただければというふうに思っております。

 それから、もう一点、山田健太先生からの御指摘で、もしかすると条文の書き方がよくなかったのかもしれないんですが、何か各政党に無料CMの枠を与えるという意味での制度をつくったつもりはありませんで、政見放送類似というとイメージが若干違うかもしれませんが、例えば十五分とか二十分とかという枠があって、最初の部分のところで中立的に、今回こういう提案がなされていて、何月何日が投票日です、いつから不在者投票ができますというのを客観的に伝えた後、賛成反対、反対賛成、どっちの順とかいろいろあるかもしれませんが、我々の今の修正で、両方が同じ例えば十分間なら十分間政見放送的にそれぞれの意見をやってもらう、それで一つのまとまった番組的になる、こういうイメージでございます。

 その上で、もしそういうイメージに読み取れないのであれば若干条文を考え直さなきゃいけないなと思いますが、イメージとしてはそういうイメージを持っていて、CMを各政党に政党の比率に応じてやらせるというイメージとは全然違います。

 その上で、確かに、それの枠だとしても、政党だけにやらせるというか、政党が軸になってやるというのはという意見はわかるんですが、そうでない場合にではだれに認めるのかという話があります。つまり、どういう団体が申し出たらそれを認めるのか、認めないのかということに裁量が必ず及ぶ。では、その裁量の判断のところで、いいだ悪いだという話になる可能性が間違いなく出てきて、それを中立、客観的にできる機関はないだろうというのが少なくとも我々の判断でございます。これはどなたでも結構ですが、もしこういうやり方をすれば政党以外のところでもできるという提案があれば率直に受けとめたいと思っておりますので、御意見をください。

 その上で、テレビCMについてはいろいろあるんですけれども、まず民放連にお伺いしたいんですが、先ほども出ていましたソフトバンクのゼロ円CM。確かに、最初のCMのときも下の方に細かい字で書いてあったんだろうなと思うんですが、あんなものが読めるわけがないのはだれでもわかっているわけで、あのCMが何で通ったんだ、テレビであのCMが通るのでいいのかという話なわけです。

 確かに、紙の方は、今井さんお話しのとおり、本当にソフトバンクと契約しようと思えば、普通は落ちついてあれを読んだでしょう。読まない人は、どういうCMをやっていたって、どういう広告を打ったって、何となくだまされていたのかもしれないという話だと思うんですが、明らかにあれは広告規制のところで、自主規制のところでスルーしちゃったところをどういうふうに考えているのかということをお尋ねしたい。

 それからもう一つ、最近、サラ金の高金利、多重債務問題というのは社会的に大きな問題になっていて、新聞では相当この報道がなされていますが、明らかにテレビのこの問題に対する報道が後ろ向きであったのはこの間否定できないと思います。

 あえてこの多重債務問題を一生懸命頑張られた日弁連に聞きますが、結局そういうことになりませんか、テレビCMというのは。つまり、広告主のところに、もちろん、報道の現場の個々にやられている方とかは中立公正にやっておられるかもしれないけれども、株式会社、営利法人としてのテレビ局としては、多量の広告を出す広告主のところにどうしても、まさに自主規制が働いてしまうというのを日弁連はこの多重債務問題で感じませんでしたか。

 以上の点についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

山田(良)参考人 ソフトバンクのCMについては、御指摘のとおりだというふうに思っております。

 日々、それも締め切り直前に持ち込まれるCMも相当ありまして、CMの考査を毎日一生懸命やっているんですけれども、そういうことが起こってしまうこともないとは言えません。それで、これに関しては、きちっと、もっと大きくするということで改善をされたということでございます。

吉岡参考人 今の枝野委員のサラ金の報道の問題でしょうか、なかなかちょっと、正直言って考えてもいない難しい御質問なんですが、恐らくは、サラ金の業者の側がテレビでどんどんスポット広告している。一方、借りる側の被害について、当然、それはもうほとんどない。これは、その内容にもよるんだろうと思うんですけれども、ただ、憲法の賛成反対、こういう問題に関しては多少違うのかなというふうに思っておりまして、そういうことだから、直ちにそういう広告についてはすべていかぬのだということにはならないのではないかなというふうに今考えているところでございます。

山田(健)参考人 あえて誤解を恐れずに言えば、そもそも表現とは行き過ぎる可能性が常に存在するというふうに考えます。絶対を志向しますと、どんどん規制を厳しくすればいいのではないかという話であります。極端な話、ではもう一切の広告表現はやめてしまおう、一週間に限らず全部やめてしまおう、あるいは政党の広報広聴もやめてしまおうという話になりかねないわけであります。

 それからすると、憲法改正論議については、私が最初に話をしましたように、より自由に、多少の行き過ぎがあったとしても、多くの情報が社会に出て、そこで情報の交換がされることがいいのではないかというふうに考えるわけであります。

 まさに、意見広告はその非常に重要な手段であります。ですので、広告のいわゆる基準をどうするかという議論で悩むよりは、そもそも広告の基準あるいは枠をすべて払って、通常の報道と同じように、あるいは皆さん方が政党としてお考えの部分を自由に闊達にすべて出して、その中で議論をしていこうではないかというのが最も自然ではないでしょうか。

 以上であります。

笠井小委員 今、CMの問題がありましたので、関連して幾つか伺いたいと思うんですが、政党等による無料のCM、それから新聞広告の利用の問題です。

 先ほど民放連の参考人の渡辺さんからも御意見があったように、私、伺っていて、賛否のバランス、そして特に政治的公平性という問題と多角的論点を提示する、これが非常に放送の責務として大事なんだということを言われたのが、私も非常に大事だと思って印象に残ったんです。

 御指摘がありましたように、無料のCMあるいは新聞広告の時間数やスペースということになると、所属議員数を踏まえて割り振られるということになって、公正中立どころではないというふうに私は思っております。例えば無料のテレビCMの場合に、一時間の枠をそういう形で単純に振り分けるとすると、私、これは委員会でも質疑でやらせてもらったんですが、現在の所属議員数で分けると、改憲に明確に反対と言っている共産、社民合わせますと七百二十二名の国会議員のうち三十一名ですので、一時間のCMの枠でいけばわずか二分五十七秒ということになってしまうというふうに思うので、与党の提案者はその修正もやぶさかではないということも言われたんだけれども、賛否、どうするとまでは言わなかったわけですね。

 先ほど渡辺参考人が、やはりそういうやり方になると、賛否のバランスという点で、それから放送の責務とのかかわりでそれが崩れるのではないかという危惧を表明されたと思うんですが、これは、実際にその仕事に携わっていらっしゃって、視聴者から見るとどういうイメージになるのかというか、どういう危惧を具体的に持たれるのかということについて、もう少し具体的に伺えればというふうに思っております。

 それから、関連して、これは日弁連それから専修大の山田参考人に伺いたいんですが、無料の広告、CMということとあわせて、有料でやれる部分がもちろんあるわけですね。そうしますと、この両案というか民主党の案は少し変えられたということでありますけれども、特に与党案でいきますと、公費によるCM、新聞広告が認められているのは政党等のみであって、その他の団体、個人というのはCM、新聞広告は自費ですべてやらなきゃいけないということになるわけです。

 これはまさに先ほどもあったんですが、資金力の多寡によって国民の改憲案に対する意見表明の機会が左右されるという仕組みになっていると考えるんですけれども、これで本当に公正中立と言えるだろうか。つまり、無料という部分だけじゃなくて有料という部分も含めて、それぞれお互いに意見表明しながら、こういう場面において国民投票ということで判断をしていくという点で、こういう制度になっていることについての御意見はどうかということです。

 それから、最後に今井参考人に伺いますが、投票日直前の放送の規制の問題ということで先ほども何人かから御意見がありました。七日前からはテレビ、ラジオを利用した広報活動は政党等によるもの以外を禁止するということでありますけれども、ここでも政党のみを主に優遇しているわけです。投票日前一週間が政党によるCM、しかも実際には賛成意見が圧倒的に占めるCMだけが流されている状態はやはり異常じゃないかと思うんですけれども、今井参考人はどう考えるかということで伺いたいと思います。

渡辺参考人 渡辺でございます。笠井先生の質問にお答えさせていただきます。

 具体的に危惧はどのようなものかという趣旨だと思うんですけれども、全体からもう一回お話しさせていただきまして、簡単に申し上げます。

 やはり我々放送局が報道する場合のよって立つ大原則というのは、幾つもありますけれども、その中で最も大事なものの一つは放送法の三条の二だというふうに我々は認識しております。そこには四項目ありますけれども、その中のやはり政治的公平ということ、まさに憲法改正にかかわる報道というのはそれの極めて典型的な例であろうというふうに我々は考えております。

 そういう前提の中で、先ほどもお話ししましたが、憲法改正の発議は三分の二である、例えばそれが四分の三になったと仮定しますと、それを放送するときにバランスというのはどういうことかというふうになると思うんです。賛成の議員の方が四分の三いらっしゃったから、我々が報道するときには賛成のパーセンテージが四分の三であり、反対は四分の一だよという立場には我々は立たないということでございます。

 その理由と申しますのは、先ほど申し上げましたように、発議で国会議員の皆様方がこのような憲法改正案を国民に提示する、それを受けて多くの有権者がどのように判断するかというときには、その判断というのは、せんじ詰めて言えば賛成か反対かどちらかということでございます。賛成か反対かを皆さんに問うときに我々がやるべき役目は、一方の意見はこうであり、もう一方の意見はこうであり、それに対する反論点はこんなものがありということを、それこそできるだけ公平にバランスをとってよくわかるように伝えるというのが我々の筋ではないかというふうに考えております。ですから、それが担保できないとすれば、それはある意味でバランスを欠いた、危惧する状態になるんだろうというふうに我々は考えております。

菅沼参考人 まず、先ほどの無料と有料という関係ですけれども、無料についてはやはり賛成意見、反対意見、厳格に時間配分をしていただきたいというふうに考えています。それから、有料の問題については、無料のように厳格に時間割りができるのか。先ほど来意見が出ていますように、では報道と広告がどこで分かれるのかという問題とか、現実的な適用場面ではなかなか難しい問題もあると思うんですね。

 ですから、その問題については先ほど民放連さんの方もおっしゃっていたように、もともと放送法があって、それからまたそれに基づく倫理基準で、公正に、なるべく平等な報道をしなきゃいけない。これは報道だけではなくて意見広告等をさせるときにもその趣旨というのは反映されるべきでしょうから、有料についてもその範囲で自主的な判断もしていただきたい。そういう意味で、有料と無料では若干温度差があるかなと思っています。

 それから、ここで、先ほど枝野先生の、ではほかの団体とかをどうするんだということについて、御質問に御質問でちょっと恐縮なんですけれども、衆議院で作成していただいた海外の資料で、外国ではいわゆる放送枠とか広告の問題だけではなくて、一定の団体を認定して公的な援助をするというような仕組みの御紹介もされているので、そういう点も参考に立法の工夫ができないかなと。だから、御質問としては、こちら側が説明するよりは、衆議院の事務局の方からその辺のところをちょっと詳しく教えていただければより幸いかと思います。

近藤小委員長 では、今の菅沼参考人からの御質問は、後でちょっと事務方から答えさせていただきます。

山田(健)参考人 山田です。

 ポイントは、資金量の多寡によって得する人、損する人が出るのではないかということに尽きるのではないかと思います。これに関して言うならば、もし広告はお金をかけた人が必ず成功するというのであれば、常に一般商業活動において金持ち企業の商品が売れるはずであります。あくまでも工夫のしどころであるというふうに思うわけであります。

 もし、テレビCMが、使えないという言い方はおかしいですが、出しづらいのであれば、インターネットもあるではないかという状況をもっと考えて、より自由な発想で枠組みをつくっていくということではないかと考えているわけであります。もちろん、手をこまねいているというわけではありません。例えば、先ほどお話ししたようなミニマムプライスレートを適用するなど、あるいは認定団体の制度を導入するなり、あるいは期間をもっと延長していくなり、いろいろな方法があろうかと思います。

 さらにもっと具体的な話をするならば、もし本当に一週間前の広告を全面禁止にすると、それがいわゆる資金量がない者にとってプラスになるのかどうかということさえも大きな疑問だと思います。通常で言うならば、直前に資金を投入して投票日前日に広告を打つのが最も効果的かもしれません。そうすると、資金量がない団体はむしろ直前の一週間の広告が解禁されていた方がいいのかもしれない。そういうことから考えれば、すべては工夫のしどころであって、それは自由な環境の中で各発言者、表現者が考えていけばいいのではないか。

 むしろ私が問題になると思っているのは、資金量の問題よりも、やはりネガティブキャンペーン等の、本来の政策論争ができなくなる環境が生まれることだと思います。ですから、規制をするのであれば、そのネガティブキャンペーンをどういうふうに抑えていくのかというあたりを放送界あるいは新聞報道界が自主的なルールの中で考えていくことがむしろ大事ではないかというふうに思っているわけであります。

 以上です。

今井参考人 笠井さんの御質問にお答えします。

 笠井さん御自身も赴かれたように、ヨーロッパでの調査でフランスのルールを調査してこられたと思うんですが、御存じのように、フランスだって国民投票ごとにルールが微妙に変わっていくわけですけれども、フランスでは前回の二〇〇五年の五月二十九日投票のEU憲法批准の問題では、投票日の前日の午前零時からテレビ、ラジオを用いて国民投票運動のためのメッセージを流布することが禁止されている。それから、テレビ、ラジオによる商業宣伝については、五月二十九日投票で、五月九日の、二十日前という意味ですかね、午前零時から商業宣伝を国民投票運動の目的のために利用することは禁止されるというルールになっています。

 私は、前回ここにお邪魔したときに、保岡さんの質問に答えて、どう思うかと言われて、私は期日前投票の開始日からはテレビ、ラジオを使った国民投票運動は禁止するべきだ、あるいは制限するべきだというふうにお答えしました。それは、スイスで私たち自身が取材をして調査をしたときに言われた、テレビという媒体は、あるいはラジオという媒体は、投票権者をマインドコントロール状態に陥れる可能性を高く持っている媒体だからというふうにおっしゃいました。だから、スイスの場合は全面禁止をしている、ほかにも理由はありますけれども、主な理由はそうだと。

 それから、フランスの場合もきっとそういうことがあって、投票前二十日間禁止したら、それまでかかった人が多少は解けるんじゃないか、軽減されるんじゃないかという判断だと思っています。だから、私は、ある意味これは合理的な考え方の一つじゃないか、一つは合理的ではないかというふうに思っています。

 日本の場合も、山田先生いろいろおっしゃっていますけれども、前回の選挙を見ても、テレビが果たした役割は、前回の選挙では郵政の問題で国民の中で議論が起きたり討議が起きたりして、理性的認識によって投票行動に結びついたというよりは、非常にテレビを使った感性的なもので投票行動が行われた、そういう傾向にあったんじゃないかと思います。国民投票でもこのままの状態だったらそういうことになっていきはしまいか。そういうことで、期日前投票の日からもうテレビ、ラジオを使った商業宣伝はやめた方がいいというのが私の考えです。

 笠井さんがさっきおっしゃったみたいに、政党の枠をもってやる分についても、私は、期日前投票の開始日前に終了すべきだ。例えば二週間前に期日前投票が始まるんだったら、もう二週間前からそれはやめていただきたい。テレビ、ラジオを使った宣伝については、民間の広告であれ、政党のものであれ、そういうことはもうやめていただきたい。例えば周知期間が九十日あるんだったら、長い期間がありますから、それまでにそれは終了させていただきたいというふうに思っています。

 それから、枝野さんが、先ほどの質問で、何か配分でうまい案があったら提示してみてくれというふうにおっしゃいました。私は、いわゆるイニシアチブという形で国民投票が実施される場合は可能だと思っています。

 なぜかというと、前にも言いましたけれども、スイスではスイス連邦軍廃止の是非を問う国民投票が二回行われていますが、二回とも政府提案ではなくて民間からの、軍隊のないスイスを目指すという市民グループの署名に基づいて、これはイニシアチブとして国民投票がなされました。こういう場合は、これを発議した主体が明らかですから、この人たちに時間を与えればいいわけですね。実際に、政府広報を見ましても、この人たちにページを明け渡しています、この人たちに主張させています。だから、イニシアチブの場合は、これは可能だと思います、政党以外に与えても。

 しかし、日本の憲法九十六条に基づく憲法改正の国民投票においては、これは例えばの話、九条の問題で行われたとしたら、改憲派の中には、発議する側が、主体はもう明らかなわけだから、これはその人たちが中心になってやればいいと思うんですけれども、一方、九条護憲派の中には、例えば行脚の会もあるし九条の会もあるし、九条を守らなければいけないと主張されているグループは幾つもあるわけですね。

 一つだけグループを認めたり、二つだけ認めて、じゃ、何でおれたちは排斥されるんだ、何でおれたちには時間やお金が来ないんだというふうになるとこれは大変難しいですから、もし九条でこの二年後、三年後あるいは数年後にやるんだったら、市民グループにそれを配分する方法というのは、ちょっと手だてはないと思います。それが今の私の考えです。

 以上です。

近藤小委員長 それでは、菅沼さんからちょっと御質問がありましたので、事務方に答えさせたいと思います。

橘法制局参事 衆議院法制局の橘でございます。

 御指摘の点について、御報告、御説明させていただきます。

 昨年及びことしの衆議院憲法調査特別委員会の先生方の海外調査、対象九カ国のうち、現在御議論中の国民投票運動に関する公費助成のあり方については、議席数比例とする国、スペイン。政党間、及び市民団体も含めたものでございますが、政党間等で平等とする国、スロバキア、ポーランド、デンマーク。そして、賛否平等とする国、イタリアなど、さまざまな例がございました。各国においてばらばらであるということかと存じます。

 さて、その上で、現在御議論になっておられます、国民投票運動について公的に市民団体を認めるという国として、ポーランドとイタリアについて若干の知見を有してまいったと思います。

 イタリアについてはその具体的な認定基準はよくわからないのですけれども、ポーランドについては一九九五年に制定され二〇〇三年に改正された国民投票法によって政党のほか一定の市民団体が公的な運動主体となり得る。これは、国民投票の投票日の一年以上前から正式に登録された機関であり、かつ全国的に活動している組織でなければならない、また、その活動は当該国民投票において問われる問題に対する活動でなければならないとされているようであります。これらの要件を満たした上で、国民投票運動を行おうとする市民組織は、その旨を国家選挙管理委員会に申請し、必要書類を添付した上で許可を得なければならない。

 ただ、これだけではよくわからなかったものですから、先生方の質疑応答の中で、例えば全国局でいえば、政党、市民団体に対してトータルで十五時間平等にされるんだ、十五時間のうち市民団体がいっぱい出てきたらどうするんだという御指摘がありました。

 日本でそれを許すと物すごい数の団体が対象となり、全体で十五時間という枠では到底おさまらないように思うのだが、どうなのだ。それに対して、先方の要人は、私たちも実は、それまで国民投票のキャンペーンに関する経験はなかったので、どれぐらいの組織が出てくるか、事前に調査をしてみたのだ。そうしたらば、この要件、一年以上前から登録されている、そのような条件を満たす市民組織はおおよそ五十程度にとどまるだろうという予測をした。実際、許可が与えられたのは二十七の組織だけであった。基準が結構厳しいから、既に説明したように、一年前から活動していた組織であるという要件が定められたことによって、国民投票のためだけに設立される組織を避けようとしたのだという、そのまま日本に当てはまるかどうかわかりませんが、そのような先方の説明を得たところであります。

 もう一つ、イタリアについては、イタリアにおいても、国民投票に関し賛成、反対の運動を行う個人、団体は、国民投票の実施に伴う大統領令の公布の日から一定期間内に、情報通信の監督に関する独立行政委員会、通称アウトリタに届け出ることが義務づけられており、運動することが可能だというところまでは情報を入手いたしましたが、その登録要件についてはよくわからなかったというところであります。

 以上です。

辻元小委員 社民党の辻元清美です。きょうはどうも皆さん、ありがとうございます。

 まず最初に、CMの問題について何人かの方にお伺いをしたいと思います。

 まず、民放連の参考人の方、どちらの方でも結構なんですけれども、この案件の場合または政治的な案件の場合、先ほどから内容に問題、問題というのは、著しく虚偽であったり、何か非常に偏ったネガティブキャンペーンであったりとかというようなことになれば、内容的な考査というのはあると思うんですね。ただ、CMの場合、内容だけで、量ですね、著しく反対または賛成、今回の案件の憲法であるならば、量的にCMの希望に著しく偏りがあった場合は、現状ですとどのように御判断されるのか。または、この著しく偏りというのは、憲法に限って申し上げるならば、別に何か配慮をしなければいけないというようにお考えなのかということをお聞きしたいと思います。CMの回数とかですね。

 というのは、なぜこう申し上げるかといいますと、きょうは山田参考人から、表現の自由との関係で非常に貴重な御発言もいただき、今井参考人からは、さまざまな市民団体の現場なども御存じというところからいろいろな御発言をいただいて、参考になりました。

 私らは、割と身につまされたことがあるんですよ。表現の自由というのはわかるんですけれども、例えば選挙のときでも、少数の団体やグループ、政党になりますと極度に戦う力が、工夫とおっしゃるんですけれども、特にこのテレビCMについてのみは、ちょっとほかと格段の資金力の差があります。

 大きな政党ですと、大会派は自民党ですけれども、ええなと思いますよ。小泉さんのこんなのをばんばんやっているわけですよね。うちなんかの場合だと、別にうちがそうやから言うているわけじゃないんですけれども、CMつくったんですけれども、流すのに物すごいお金がかかるわけですよ、例えば一億円とか。そうすると、もとから物すごく大きな組織と小さな組織では、事テレビCMについての資金量の差というのは、何か二乗、二乗、二乗ぐらいの大きさで影響力に違いが出るんじゃないかという懸念を非常にしています。一定の規模を確保できない組織や個人は圧倒的に無理だと思うんですよね、参画することについて。ですから、一つは量についてどうかということをお伺いしたいんです。

 ですから、表現の自由はあるんだけれども、工夫というのもあるんだけれども、では、果たして平等にいろいろな人たちに運動に参画してもらうというところであれば悩ましいなというところもあって、ここはこれから、きょうはこれだけの方に来ていただいてお話を伺っていますが、さらにいろいろな立場の人にも来てもらいたいと思いますので、量についてどういうふうにお考えかということが一点目です。

 もう一つが、今井参考人の方からキャスターの意見表明ということがございました。これについて民放連の現場の方はどのようにお考えか。

 それから三番目に、政党の議席配分によってと。先ほど枝野委員の方からはフィフティー・フィフティーというような発言も出たんですけれども、自公の与党からは余りそういう声は聞いたことがないので、枝野委員の声が両法案提出者の声とはちょっと違うと思います。

 例えば日曜討論という番組があるんですけれども、あれは各党行くわけですね。発言は一回一分なんです。確かに大会派の発言の回数の方が多いわけですが、著しく議席でとかじゃなくて、登録している政党というか認められている政党で一回につき一分間発言と。回数は違ったとしても、あそこに行きますと少数の意見もかなり反映されるという印象を持つわけですね。あれがもしも議席配分によって発言の時間が違ってくると、また全然違うことになると思います。ああいうイメージというのは、ひとつ何かできるんじゃないかと思っているんですけれども、例えば討論なんかの場合、民放連の方にお伺いしたいんですが、各政党の場合、それから賛否平等に扱うという場合、どういうことに注意すると考えていらっしゃるか。

 もう一つは、広報協議会というものについて、山田参考人からはもうなくしてしまえというような御趣旨の発言もあって、ああ、そういうのも白紙から考えることもできるのかなというふうに改めて思いました。

 以前は、これは国会図書館などの機関がやったらどうかという意見もちょっとありまして、これはどういうことかといいますと、こういう議員の中、国会の中だけではなく、公共空間でいろいろな専門家たちも賛否両論言いますので、これについてはこういう賛成意見があり、これについてはこういう反対意見がある。私たちもよく国会の中で、国会図書館などが作成する、調査室なども作成する資料というのをいただくんですけれども、かなりバランスよく、わかりやすく、専門家も含めていろいろな人たちの賛否の意見などが紹介されているということで、これはもう一度根本からいろいろ考え直せないかなというふうに思っているんです。

 山田参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほど、なくしてしまってもいいというふうな御発言もありまして、それについてもう少し詳しくお伺いしたい。

 最後に、山田参考人が運動期間が短いんじゃないかということもおっしゃいました。これについて、二年程度という御提案もいただいているんですけれども、運動期間についてどう思われるのか。

 それと、今井参考人に、先ほどの広報協議会の議席配分などについて、現行の法案についてどのようにお考えか。先ほどこの点については御発言がなかったのでお聞きしたい。

 もう時間ですか、委員長。まだあるんですけれども、ではもう一回チャレンジします。お願いします。

山田(良)参考人 辻元さんの、CMの量、バランス、回数のことについてお答えをいたします。

 憲法改正国民投票法案、広告に関することについて、自主的な判断でお願いしたい、七日間のことについても含めてと言えば言うほど、やはり我々の責任が非常に問われてくるわけでございまして、番組も広告もすべてを通して、放送というものが国民投票についてどんな役割を果たせるか。そしてそれが、国民の方々がどのような納得感が持てるかということ。それから、国民の方々がテレビの放送に関して、特にCMに関して不公平感を持たないかどうかということがとても大事なことだというふうに思います。

 そういう観点から、CMについてはその内容、賛成、反対だけのような内容もオーケーなのかどうかということも含めて、それから、広告主様はどういう方々までお受けするのか。それから、これは前回の委員会で天野参考人がおっしゃっていたんですけれども、スポットCM、十五秒、三十秒、六十秒、それ以上とございますけれども、今回の国民投票なんかの場合に十五秒のCMが果たして許されるのだろうかというようなことも御提起なさっていましたけれども、私、大変に参考になりました。天野さんは、少なくとも六十秒ないと、国民投票について意見広告はできないんではないかというようなこともおっしゃっていました。その時間の長さ。それから、どの時間帯に放送をするのか。その総量はどれぐらいお受けするのか。それから、今辻元さんがおっしゃっていたバランスをどうするのか、回数をどうするのか。それから、価格をどうするのかということです。

 これはやや私見になりますけれども、この国民投票のCMについて、我々放送局は、これをビジネスチャンスにしようというふうには私は思っておりません。全体の放送というものの役割の中で、番組も広告も一緒になってどうやって豊富な情報を国民に届けられるかという観点の中でCMも考えたいというふうに思っております。そして、基本的には放送局は一つ一つの独立した放送局ですので各社の判断なのですが、今回の場合には民放連の中で大きなくくりとして明確なルールづくりは必要なのではないかというふうに思っております。

 以上です。

渡辺参考人 渡辺でございます。辻元先生の御質問についてお答えいたします。

 キャスターの意見表明ということについてどうなのかと。今井参考人が先ほど御説明された中では、今井参考人が知り合いのキャスターと話した、そうすると自分の番組で賛成か反対か言わないと番組自体が成り立たない、賛成に投票してくれ、反対に投票してくれとはもちろん言わないけれども、そういう趣旨だったと思います。投票の誘引をしてはまずいというのは当たり前の話で、これは論外であります。

 もう一つ、キャスターが番組の中で自分の意見を言うというのは、これは民放連レベルで話したわけでもありませんけれども、私の個人的な考えも含めて言いますと、これは非常に私は疑問視します。番組の中でキャスターが、私は憲法改正案に賛成である、反対であるというふうに明言、明示するということは、余りにも影響が大き過ぎるのではないかと私は思っています。

 ともかく、テレビでニュースを報道して、番組で伝えるというのは、このような重大なことが今提起されていますよ、中身はこうですよ、皆さん考えてくださいという情報をいかにバランスをとってきちんとたくさん伝えるかというのがポイントだと思っています。個々のキャスターの個人的な見解を表明するというのは、私の考えでは、番組の趣旨には合わないだろうということで、それは今井参考人と話されたキャスターの意見とは我々は違います。ですから、恐らくそういうものが番組編成、制作の過程で出てきたときには、恐らく許容することはないというふうに考えております。これは民放連全体の意見ではありません。

 それからもう一つ、これはNHKだと思いますが、日曜討論の例を先生お出しになりながら、時間の配分の話をされました。詳細は存じておりませんが、一視聴者として拝見する限り、NHKの日曜討論は、時間的な、物理的な公平性は比較的担保しているのではないかなという印象を受けております。

 もちろんそれは大事なことだと思うんですけれども、あえて言えば、ストップウオッチではかって時間を合わせるという物理的な公平性は、一定程度はもちろん担保しなければいけないけれども、それが金科玉条のものだとは思っておりません。つまり、余りにもバランスを欠いていてはまずいですけれども、討論の場で、それももちろん生放送の場合でしたらば、同じような条件で自由闊達に議論ができるという場が保証されている以上、それは発言される、出席される方の熱意だとか意欲だとか、そういったものと直接影響があるわけでございますから、ストップウオッチ的な公平性というものはもちろん大事ではあるけれども、それが最重要の問題だとは考えてはおりません。

 以上です。

山田(健)参考人 辻元議員から三つ御質問をいただきましたが、最初に、身につまされると言われました量の問題からお話をしたいと思います。

 著しい偏りが本当にあるのかどうかということだと思います。前回の衆議院選挙を例にお話しになったというふうに推測いたしますけれども、もしそれを言うのであれば、広告の問題ではなく報道の問題に突き当たってしまうんではないでしょうか。それを言うならば、現在の与党案あるいは民主党案の中でも、報道には手をつけない、報道は自由にするという原則を既に打ち立てているわけでありまして、その原則自体がゆがんでしまう可能性すらあるんではないか。少なくとも、広告の分野で著しい偏りがあったのかどうかというと、私は、そうでもなかったんではないかというふうに思っているわけであります。

 すなわち、そこについては、いわゆる前回選挙で果たしたテレビの役割というのを危惧されているというふうに思いますが、余りにも危惧すると、それは結局は報道規制につながる話になってしまいませんかということであります。

 それから、もちろんテレビの影響力はあります。ありますが、同時に、テレビが出始めてからもうウン十年がたちまして、視聴者のリテラシーも明らかに上がっております。あるいは、インターネット等々の登場によって、相対的にはテレビの影響力も下がっているということが言えるのであります。

 その中で、あくまでもテレビの影響力だけがずば抜けて大きいということを前提にした議論が本当に現在として正しいのか。あるいは、今から三年後あるいは五年後かわかりませんが、実際に国民投票が行われるその時期において正しいメディア状況認識かどうかというところについてもさらなる御審議が必要ではないかというふうに考える次第であります。その点、立法事実についてもう少し吟味が必要ではないかという話であります。

 それから、二つ目に発議の関係でありますが、国民の知る権利を充足させるためには、より正確に、十分に国民の意見を吸い上げる必要があります。

 これは期間だけの問題では当然ありません。例えば、現在の発議の方法をもう少し工夫して、例えば最初の提案から一度衆議院選挙を挟んで、もう一度国会で審議をした上で発議をする、そういう方法によって、期間を延長して、より国民の意見を吸い上げるという方法もあるでしょうし、あるいは、現在行政機関が行っているパブリックコメントのような制度をこの憲法改正の問題について導入するという考え方もあるでしょうし、いろいろな考え方をもって、できる限り多くの意見を吸い上げて情報を流通させるということが必要であって、その一つの方策が期間の延長でもあるという考え方であります。

 最後に、広報広聴活動でありますが、これにつきまして私が一番問題だと思うのは、ひとえに、政治的イシューに関する表現行為の内容を、まさに事前にその政治的な活動の中心にいらっしゃる政治家、国会が審議をする、そのための事務執行に当たって、客観・中立性、公正・平等性を確保するというところであります。もちろんこれについては、一番最初に枝野議員から、むしろ現在の政見放送のような、無色透明と言えるかどうかわかりませんが、中立的なそういう放送を目指すという意味にすぎないんだというお話もあったというふうに推察いたしますけれども、しかし、やはり結果的には表現内容をチェックするという行為を国会が持つということについて、私は疑念を感じざるを得ないということであります。

 その上で、もしそういう疑念があるならばできる限りなくしていく、あるいはこの広報広聴活動の中で、政党の意見、あるいは憲法改正のさまざまな意見を出していくのではなくて、それはより自由な情報、言論活動の中で、あるいは意見表明活動の中で、社会として議論のフォーラムの空間をつくっていく方がいいのではないかという考え方であります。

 以上です。

今井参考人 辻元さんの質問に答える前に、渡辺さんの方からお話があったので。

 前回も言ったんですが、この衆議院憲法調査特別委員会の平成十八年十月に出された報告書にも書かれていますけれども、ニュースキャスターの政治的発言の問題で、七月二十五日にデンマークのペーデ選挙コンサルタントに面会されたときに、保岡興治議員の方から、「テレビのニュースキャスターは政治的発言をしてはならないのか。」という質問をされています。それに対して、ペーデさんという選挙コンサルタントが「デンマークのテレビ・ラジオにおいては、その内部ルールとして、」内部ルールですけれども、「内部ルールとして、ニュースキャスターをしている時は、自分の政治的意見を述べてはならないことになっている。」というふうにおっしゃっています。それで、メディアの規制に違反した場合の制裁の有無や、違反しているかどうかについても保岡さんは質問されていますが、ペーデさんは、法的な処罰ではなくて世間からの批判を浴びることになるだけだと言って、「(笑)」と書いてあります。

 私は、先ほど言ったパーソナリティーの方と、ラジオのパーソナリティーの方ももう三十年以上務められている人気番組のパーソナリティーですけれども、あとはテレビのニュースキャスターの方にお話を伺ったときに、憲法九条についても、その改正の発議がされたら、それに対する意見表明を行うというふうに言われたんですよね。それで、この意見表明をもし制限したり規制することがあるとすれば、渡辺さんにお伺いしたいんですが、それは何を根拠に、民放連がやるのか各放送局がやるのか、どういう機関でどういうことを根拠に意見表明を規制されるのか。

 もう一つは、ついでに言えば、活字媒体では、スイスでもフランスでもそうですが、逆に著名な論説委員や編集委員やジャーナリストが賛否を具体的に表明して言説することが求められています。新聞社として、そして個人として、改憲の賛否について、あるいは国民投票での賛否について、明確に意見をすることが逆に求められています。放送ではそれは違うということだったら、一体何で違うのかについても伺えたらありがたいです。

 その後、辻元さんにもお答えします。

近藤小委員長 ちょっと、今井さん、全部答えていただけますか。その後、渡辺参考人からお答えいただきます。

今井参考人 では、辻元さん、広報協議会の話でしたよね。

 広報協議会については、現在、自民・公明案は衆参で十人、それから民主案もそうですね。基本的にはそのときの勢力に、全く正比例じゃないですけれども、正比例だったら出せない党派も出てくるわけですから、そういうことも考慮された上で選ばれていると思います。

 私は、これは日本の国民投票に至る手続の規定からいったら、こういうルールでいたし方ないのではないかというふうに考えています。なぜかというと、残念ながらというか、国民からのイニシアチブは認められていません、イタリアのように、あるいはスイスのように。国会議員が各院三分の二の賛同を得て発議するということになっていますから、あくまで議会の中でしかそういうことができないんだったら、広報協議会についてもそういう割り振りになってもしようがないかなというふうに思います。

 ただし、完全比例は反対ですけれども、これを見たら完全比例じゃないですよね。社民も必ず一以上、共産も一以上あてがわれると。辻元さんや恐らく笠井さんもそうだと思いますけれども、しかしその中で常に改正の発議をした側に多数はあるじゃないかということを心配されていると思うんですが、そういうことを若干牽制するためにも、日弁連の方から提案があったみたいに、院外の諮問委員みたいなものを何か選出されたらいかがか、そういう機関も設けられてはいかがか。つまり、多数の横暴になっているじゃないかということにブレーキをかけるために、院外のそういった識者の機関を設定することも考えていただけたらなというふうに考えております。

 以上です。

    〔小委員長退席、愛知小委員長代理着席〕

渡辺参考人 渡辺でございます。今の今井参考人の質問に対してお答えしたいと思います。

 パーソナリティーの、キャスターの発言ということですけれども、皆様御案内のように、番組によっても違いますが、テレビの視聴者は数百万人から一千万人を超える場合もあります。憲法改正、イエスかノーかという議論が高まっているときに、ある番組のキャスターが、一千万ないしは一千五百万人に向かって、私は賛成です、反対ですと言うことが果たしてどれだけのテレビ番組としての意味があるかということがポイントだと思います。

 テレビ番組としてのポイントというのは、先ほども申し上げたことの繰り返しになりますけれども、一億人を超える有権者、十八歳、二十で違いますが、いずれにしろ一億人を超える有権者がきちんと判断をして自律的に投票ができるように、情報をできるだけきちんと細かく伝えるというのが我々メディアの基本的な役割なんだと思います。その中で、ある有名なキャスターが出てきて、私は反対だ、私は賛成だと言うことが本来の番組の目的にどの程度かなうかというのは、私は疑義を感じざるを得ません。

 今井さんのお話の中で、何を根拠にと。これは、法的根拠というのはないというふうに考えております。我々の自主的なルールなんだと思います。あえて規制とは言いたくないんですけれども。

 これは民放連でやるものなのかという御質問もありましたが、民放連レベルでやる話でも私はないと思っています。それぞれの局で、それぞれの番組が、今私が申し上げたようなことを判断の根拠としてやるのが恐らく筋なのではないかなというふうに私は個人的には考えております。

 以上です。

船田小委員 委員長、ありがとうございます。

 きょうは、それぞれの参考人から大変貴重なお話もいただき、また、参考人同士で白熱した議論が行われておりまして、これはまた大変興味深いものがありまして、感謝を申し上げたいと思います。

 先ほど枝野議員からもちょっと目くばせがございまして、私ども与党案におきましては、無料の放送、無料枠の配分について、現時点においては私どもとしては議席数を踏まえた配分ということで法案は出させていただきました。

 しかしながら、その後の当委員会での話し合いや、あるいはこれまでの参考人の皆様方からのお話し合い、そういったことを通じまして、まだ完全にフィフティー・フィフティー、賛否平等というところまではちょっと考えとしては及んでいないわけでありますが、例えばその中間で、議席数ではなくて政党間平等でいくかという話も間にはあると思いますけれども、現状におきましては、かなり賛否平等に近い形で話をおさめていかないと全体の話が動かないのではないかな、そういう認識に現在では至っております。したがって、そういう前提でまた私からも皆様に質問したいと思いますので、よろしくお願いしたいと思っております。

 民放連のお二人、どちらでも結構でございますが、私どもの与党案、民主案にもありますけれども、有料の意見広告につきましては投票日前七日間は禁止をする、制限をする、こういうことを私どもは考えました。

 その理由の一つは、投票日が近づけば近づくほど、やはり有料広告の申し込みというんでしょうか、放送してくれという話が駆け込みで出てくる。そうすると、やはり持てる者が多く広告放送ができて、そうでない者はできない、こういう不平等や、あるいは、総量の規制ということから考えても非常にここは問題があるということで、七日間の禁止は、一つは駆け込み需要をなくすという意味で設定をしたことが一つであります。

 それともう一つは、これはやや内容にかかわることなんですけれども、政党間で大分白熱をして、ある政党を誹謗中傷するような内容の広告をされた、あるいは、反対の立場、賛成の立場それぞれがヒートアップしちゃって、ある意味で相手の立場を、いわれなき非難を行う、こういうことで、それが投票日のかなり直前になってから行われる。そして、時間がもうない、反論の時間的余裕がなくて、それで投票日を迎える、こういうことになりますと、非常に我々としては望ましい状況ではない。

 普通は、言論の自由市場によって淘汰をされる、これが望ましい形ではありますけれども、今申し上げたような、時間的な余裕をなくした場合にはどうなるのか。そのときは言論の自由市場は働かなくなる。そこをやはり担保する必要があるので七日間ということを設けました。

 もちろん、無料枠の場合にはその規定はないわけでございますけれども、そういうことが考えられておりますが、そのあたりをちょっと教えていただきたい、あるいは、どういうお考えであるかをお聞かせ願いたい、こういうことです。

 以上です。

山田(良)参考人 我々も、まだ国民投票のCMというものを想像しているだけなので、今まで経験したことがないので、どういう内容のものがどれぐらい毎日、何日間流れるかというようなことにもよるので、一概に、七日間がいけない、五日間ならいいとか、前日ならいいとかということよりも、そういうことも含めて、我々放送は自主的に判断をしたいということの中で、七日間という規制をしないでほしい、自主的、自律的に判断をしたいという意味でございます。

 ですので、七日前にやめなければいけないようなCMならば、それは本当はない方がいいというところまで議論をして、それで前向きに、放送がこの国民投票に対してどういう役に立てるかという議論をこれからもしていきたいというふうに思っております。

    〔愛知小委員長代理退席、小委員長着席〕

鈴木(克)小委員 日弁連のお二方に少し重ねてお伺いをしたいというふうに思うのですが、若干私の理解の不足もあったのかもしれませんが、配付いただきました資料の三番、四番、五番ですね、ここのところを補足も含めて再度お伺いをしてまいりたいというふうに思うんです。

 当然、的確な情報に基づいて、国民が賛成意見、反対意見を公平、平等に知って、そして判断をしていくというのは、これは当然というか大前提であるわけでありますが、三番のところに、政党以外の団体や市民も無料で放送や新聞広告による広報活動ができるようにするための工夫をというふうにおっしゃっておるわけですが、かなりこの辺のところも、先ほどの海外での事例なんかも含めて、いわゆる工夫の一端のようなものが出てきたんじゃないのかなというような気がしておるわけですが、あえてもう一度、いわゆるどんな工夫をしろというふうにおっしゃっているのかというところをお聞かせいただきたいというふうに思うのが一点であります。

 二点目は、四番でもやはり同じように工夫ということなんですが、反対意見、賛成意見、同等の時間、同等の回数の利用ができるようにすべきだということでありますが、これも現実的な可能性ということになっていくと非常にこれは難しい話ではないかなと。工夫をしなさいということはわからぬではないわけでありますけれども、その辺のところ、とりわけ政党以外の団体や市民も利用できるようにという御指摘もあるわけでありますので、その辺を踏まえて、もう一度お聞かせをいただきたい。

 三番目も同じようなあれになるわけですが、外部委員の選任ということについて、もう一度、どのようなことをお考えになっておるのか、お示しをいただきたい。

 以上でございます。

吉岡参考人 まず、三番のおっしゃったところでございますけれども、要するに、国民が憲法の改正法案に関して一番知りたいことは、その内容がどういうふうになるのか、それからどういう点が変わるのか、どこが違うのかというようなところをやはり客観的、公平に知りたいんだろうというふうに思いますね。殊に憲法改正問題は、やはり国民一人一人に直接関連する重要なことですから、もちろん一般の選挙も大事ですけれども、自分の選挙区の議員さんを選ぶということと、憲法改正案に対して、それをどういうふうに変えるのかどうかというような非常に重要な問題だと思います。

 ですから、まず、そこの部分についてきちんと、やはり先ほど言いましたとおり、国民の目線に立ってわかりやすくやるべきだろうということが根底にあります。もちろん、それは発議している各党の方、あるいは国会議員の方が良識を持ってやるのがまず大原則であるわけでありますけれども、それ以外の、市民であるとか団体であるとか、やはりあらゆる角度からその改正案について分析して、どういうようなことになるのかということをきちんと提示するということは非常に有意義だろうというふうに考えて、こういうようなことを言っております。

 無料広告枠の割り当てについても同じことでありまして、無料広告枠もできるだけ、それぞれ各議員の、各党の大きさはあろうと思いますけれども、要は賛成か反対か、どちらを選ぶか、もう二つに一つのことでございますので、その点については時間等についても平等にというのは、そういう中で国民にきちんと考えてもらう必要があるんだろう。また、その無料枠については、もちろん発議した国会議員の方が中心になることは重々わかりますが、その他の政党以外の市民や団体にも必要に応じてその枠を開くことが、国民の理解の助けになるし、非常に大きな判断の材料になるんだろうというふうに考えて、こういう提案をしたわけでございます。

 それから、最後の広報協議会のこと、先ほど今井参考人から、諮問の委員というふうな意見がちょっと出ましたけれども、私ども考えているのは、広報協議会の設置のメンバーの一人として、今言った国会議員以外の方も入るということも考えたらいかがでしょうかということでありまして、それも今述べましたとおり、改正案についてきちんと国民に説明するときに、それぞれの渦中にいる人だけじゃなくて、それ以外の方の方が場合によったら冷静にそれぞれの改正案の内容、違い、どうなるかということについて言えるかもしれないというようなこともあって、こういう提案をさせていただいているわけです。ただ、具体的にどうかということになりますと、まだまだ工夫が必要だろうというふうに考えております。

菅沼参考人 ちょっと補足をさせていただきます。

 まず、無料広告を政党以外に認める、それから無料広告枠の割り当ての問題ですけれども、今、吉岡副会長から述べたとおりですけれども、基本的には、数が多いかどうかは、国会でもう三分の二以上で発議されているわけですから、問題は、内容を、賛成意見はこうだ、反対意見はこうだということをかみ砕いて説明するという意味においては、どっちが多いじゃなくて、両方がちゃんと説明できるような構成にしていただきたいというのが前提にあるかと思います。

 それから、先ほどの外部委員の問題ですけれども、ではどうやって選任をするか。先ほどポーランドとかイタリアとか。ただし、もちろんこれはポーランドやイタリアはそれまでの歴史や実践があってでしょうから、これを日本にどうやって当てはめるのかということは、それこそ工夫をしなきゃいけませんし、現実に、これでアンケートをとるわけにはいかないでしょうが、では実際にはどういう団体が出てくる可能性があるだろうか。その辺をもうちょっと時間をかけて、日弁連も検討しなきゃいけませんし、国会でもいろいろな場面があり得るんではないかということを御検討いただきたいという趣旨です。

 それから、広報協議会については、きょうのペーパーでは広報協議会を国会に設置することは評価し得るという結論ではございますが、実は、こうなる前に日弁連の中でもいろいろな意見がございまして、そもそもこういうものを国会に設けるよりも、報道や意見の自由を確保すればいいんだという意見もありましたし、それから国会ではなくて第三者機関でやるべきだ、その方がいいんではないかと。それから、山田先生がおっしゃったような独立行政委員会とかいろいろな意見がございましたけれども、最終的に賛成的な意見になったのは、少なくとも、ほっておけば多分、総務省か政府が、当然、法案とその説明を出されるわけで、それだけになってしまうんではないか。そうであれば、発議した機関である国会の中で一つの機関を設けることは、それは少なくとも、いわゆる法律案の、官報で出すみたいな一方的なことよりははるかにいいんではないか。

 ただし、その中で、先ほど申し上げましたような、賛成意見も反対意見も、要するに、どういうふうに広報したらいいかということをお互いに知恵を出していただく協議会ですから、同数の選任が望ましいんではないか。

 それから、外部委員というのは、先ほど副会長が補足しましたように、これは諮問ではなくて、やはり同じ委員として入っていただきたい。それも、もちろん国会での議論を尊重しなきゃいけないことは言うまでもないことですが、そのままいっちゃうと、国会での議論がそのまま横に移動したような形になってしまうので、やはりそこにプラスアルファ、国民の目線で理解できるようなものをつくるためには、やはり外部の意見も入れていただければよりよいものになるんではないかという御提案でございます。

 ちょっと長くなりましたが、以上です。

今井参考人 鈴木さんがおっしゃった、周知広報における政党の比率を勘案したものはどういうやり方があるのかということについてちょっとお示ししたいことがあるんですが。

 それは、確かに政党の勢力によって、この前、この憲法調査特別委員会が再開されて、一回目のときに、NHKが九時から十二時まで生放送で中継したときに、私見ていたんですけれども、笠井さんがお示しになって、これだけだというふうにやっていましたよね。それは確かに見ていてもなるほどなと思ったんですが。

 一つのアイデアとして、例えば二〇〇二年の三月三十一日に滋賀県の米原というところで、四択でやったんですけれども、合併の住民投票がありました。米原の住民投票は何で有名かといったら、日本で最初に永住外国人の投票権を認めたことで有名なんですけれども。そこは選択肢が四つあって、坂田郡四町という形で合併する、彦根を中心とした湖東一市四町で合併する、長浜を中心とした湖北一市十二町で合併する、最後は合併しないとあったんですが。

 これを見ましたら、(広報紙を示す)こういうものが毎週町から出されたんですが、裏は議員が個別に自分はこういう意見だということを書いているんです。これを見たら、合併しないの議員は共産党の議員が一人だけです。だから、スペースはこれだけです。彦根を中心とした形で合併をすべきだというのは十三人のうち七人います。だから、これだけのスペースがあるんですね。それで個別に意見を書いています、なぜ自分が彦根を中心とした合併に賛成なのかと。表の面は、しかし投票用紙に四つの選択肢があるから四等分なんですね。裏は議員が個人の意見を書いて、表は、さっきの議員じゃなくて当の彦根市長が中心となった会が、私たちと合併してくれたらこういうことになりますよということを書いているんですね。こちら側は議員の勢力に関係なく四等分。こちら側は議員の数にある意味では相応の形で正比例していますよね。

 私は、今後、憲法改正発議が行われるときに、果たして、例えばですけれども、民主党が党議拘束をかけるのかどうか、自民党が党議拘束をかけるのかどうか。民主党の中にも九条改正賛成の人もいれば反対の人も今もいるわけですよね。自民党の中にも、多分わずかでもおられるんじゃないかと思います、意見が違う人は。そうなったときに、政党という形で配分をされるのか、議員個人としてこういう形で意見表明をするのかということも含めて、両方の意見はわかるんですけれども、正比例でいけと、いや関係ない、完全平等にしろと、それは悪平等だと、いろいろな意見もあると思うんですけれども、こういうこともひとつ参考にしていただいて、ちょっといろいろひねっていただけたらというふうに思います。

 以上です。

近藤小委員長 小委員並びに参考人にお願いをいたしておきたいと思いますが、時間がだんだん迫ってきておりますし、これだけ大勢の方がネームプレートをお立てですので、できるだけ御質問、お答えは簡潔に願いたいと思いますので、御協力をよろしくお願いいたします。

枝野小委員 まず、広報協議会について。若干これも法律の条文の書き方で誤解を招いているのかどうかなんですけれども、広報協議会で実質議論するつもりは、少なくとも我々提案者としては全くありません。

 それこそ中立、公正、客観的な部分は、国会につくる機関ですから、先ほど辻元さんの話のとおり、それこそ国会図書館にでもまさに客観的な部分をつくってもらう。あとは、例えばスペースを二分の一ずつにするとしたら、二分の一ずつのスペースをそれぞれに丸投げする。それをホッチキスでとめて印刷する。ただし、どこか決定権限を持つ機関がないといけないですから、それを行政に置いたりするよりは国会そのものに置いた方がいいだろう、要するに判こを押すだけの機関であると。

 そのときに、まさかそこで国会図書館がゆがんだものを持ってくるとも思えないし、実際に、フィフティー・フィフティーになっているはずなのに、ゲラを見てみたらちょっと配分が違うじゃないかということは九九・九%あり得ないと思いますが、どこかがオーソライズしなきゃいけない。そのための広報協議会にすぎなくて、そこで何か知恵を出し合うとか議論をするとかということは全く想定しておりません。多分、これは与党のイメージもそうではないかというふうに思います。ですから、外部の有識者を入れるとかという発想は、オーソライズするためだけの機関であります。

 だから、ルールとして、例えばフィフティー・フィフティーだったらフィフティー・フィフティーと初めから決めておかないと、そのときに裁量的に決めていくことは基本的には想定をしていないということですので、誤解をされていたら解いていただければありがたいというふうに思っております。だからこそちゃんと入っていただいて、それこそフィフティー・フィフティーのはずなのに、ゲラを見たらちょっと違うじゃないとかという、〇・〇一%もないようなケースのときにちゃんと声を上げられるようなことにしておいていただく。

 あるいは、辻元さんも評価をしていた国会図書館が、まさかこういうときに限ってゆがんだりしないだろうけれども、念のためみんなで原稿はちゃんと読んで、ちょっとというときがあったら、そういうときには実は国会のところが一番少数意見は考慮されている。つまり、第三者機関などを変につくってしまうと、メンバーを決めるところには政治的バランスをとられるかもしれませんが、結果的にその中で行われていることについては、実は一番国会の中の方が、そうはいっても少数会派をちゃんと考慮しないといけませんねと一般的でさえされているので、まして憲法のそういうルールのときに、一番少数会派がちゃんと声を上げられる場ではないかと。私もいっとき二十人ぐらいの少数会派にいたこともある経験から、そういうことを重視しているわけです。

 その上で、二点聞かせてください。

 パーソナリティーの意見表明の話のところで、多分これはどういう人を想定しているのかで考え方とか整理もしていただかないといけないのではないかと思いますが、いわゆるニュースキャスター、報道系の方が報道系の番組で自分の意見をどうおっしゃるのかという話と、今、実は報道番組以上に、むしろ芸能番組などにおいて、いわゆるタレントさん、芸能人が政治的なコメントをすることがあるわけですよね。

 固有名詞を挙げちゃいけないかもしれないんですが、例えば日曜日のお昼の六チャンネルなんていうのは、スポーツ新聞なんかを見ながら有名な歌手の方がかなりいろいろなコメントをされているわけですよ。私は、あっていいと思うんですけれども、逆に言うと、こういうところまで各テレビ局なりなんなりが縛れるのかどうかとか、縛るんだったら徹底してやってもらわないといけない。有識者は意見を言わないで、別に有識者でないとは言いませんけれども、本来、政治とか憲法とか法とかということに必ずしも、ふだんはかかわっていない方だけは意見が言えるということだとあべこべではないか。この辺は今井さんと民放連にお聞かせをいただきたい。

 それから、もう一点。

 今、実は山田参考人からかなり自主的な規制のところで私たちが想定しているようなことも検討対象になってくれるのかなというふうに思ったんですが、自主規制ですから、自主規制を見てこれなら安心だから自主規制に任せますというのでは自主規制じゃないのかもしれませんが、できればもう少し、つまり、民放連としてなり、あるいは民放連として整理をした、それぞれの各個社がどういう自主規制を憲法の国民投票についてしようとしているのかということがもうちょっと見えないと、我々としてもちょっと心配。心配というのは、特に日弁連なども言っていただいている、商業広告もフィフティー・フィフティーにすべきじゃないかと。商業広告をフィフティー・フィフティーにしようと思ったら、これは規制をかけざるを得ないわけなんですよ。そこを自主規制でどうできるのか。

 ただ、私の経験では、商業広告をフィフティー・フィフティーになんかしようと思ったときに、実際にコマーシャルをとるのは、私も前回の参議院選挙と二〇〇三年の総選挙のときは党のコマーシャルどりをしている隣にいましたので、広告代理店の力関係とかそういったことで物事が決まっていっているわけですよね、一般的には。そうすると、有力な広告代理店とコネがあるかどうかとか、普通はそういうことでそうなってしまっている話を、本当に賛否フィフティー・フィフティーにするだなんていうのは従来の枠を全部取っ払ってもらわなければいけない。

 だから、そういうことに少なくとも踏み出す意思があるということがないと、フィフティー・フィフティーにするということを自主規制に任せることはできなくなる。ここは日弁連と民放連で珍しく意見が分かれるんだと思うんですが、この辺についてコメントがあったらいただきたい。

山田(良)参考人 今、もう少し具体的にとおっしゃられても、今我々も話し始めているところですので、時間の総数についてはこういうこととかというのは言えませんけれども、意思があるのかというような問いかけに対しては、意思は十分にあるし、何とかこれを放送として前向きにとらえて、いい形で新しいジャンルのCMが打てるような形にしたいと思っておりますし、国民の皆様がテレビを見て、あるいはラジオを聞いて、これじゃ納得いかないじゃないかというようなものには絶対にしたくないというふうに思っております。それで、それが絶対にならないのであれば、本当にこれはお引き受けできないということまで自分たちの中で考えながら前向きに引き受けられる方策を考えていきたいというふうに思っています。

 それから、これは渡辺さんがお答えになるかもしれませんけれども、芸能番組なんかのときにどういう意見が言えるかということですけれども、芸能番組でも報道番組でも、いわゆるキャスター、司会者というのは行司というのとはちょっと違いますけれども、我々、放送が中立公正であるということを、それをまたプロデューサー、ディレクターたちが具現化し、それを見える形で具現化しているのが司会者でありキャスターであると思います。ですから、その番組の中で、芸能人であろうがだれであろうが、いろいろな意見はぜひ言ってもらった方がいいけれども、それを行司として、フィフティー・フィフティーまでなるのかどうか、どういうふうに公平公正を保ってその番組の中でいろいろな方に意見を言ってもらうかというのがキャスターの役目だというふうに思いますので、そのキャスターが意見を言いたいのであれば、別の番組のゲストなりコメンテーターになればいいというふうに思っております。

今井参考人 枝野さんが御指摘されたことは非常に重要だと思います。今やバラエティー番組のしゃべり手の方が影響を及ぼしている可能性は強いと思います。

 具体的に言いますけれども、みのもんたさんなんかはそうですよね。それから、今山田さんおっしゃいましたけれども、最近賞をとられた太田光さんはどうなのか。「太田総理と秘書田中。」という番組がありますね、私もゲストで出ましたけれども、前々回は憲法九条についてやっていましたね。石破さんと太田さんを中心に十五人ぐらいのゲストと。どう考えたって、これは太田総理が中心の番組です、彼がメーンです。そのメーンの太田光さんが憲法九条は絶対守らなければいけないということを、彼は集英社新書から「憲法九条を世界遺産に」という本も出していますよね。その太田さんの主張がまず中心にあって、いろいろな意見が周りから出されて展開していくというパターンです。現にこういうことがもう起きているわけですよね。ということは、その逆もあり得るわけですね。

 だから、枝野さんの言われたことというのはこれから想定されることではなくて現実に今起きていることだと思いますから、そのことについても、渡辺さん、山田さんの方で、放送局の方で整理して基準を明確にしていただけたらなというふうに思っております。

渡辺参考人 枝野先生の御質問にお答えいたします。

 今、今井参考人からもお話あったんですけれども、基本的には今井参考人おっしゃったとおりで、枝野先生は報道番組と芸能番組という分け方を仮にされましたけれども、最近、その芸能バラエティー番組が扱うテーマという意味で、報道といいますかニュース番組に極めて近づいてきているという現実があります。これはいい悪いの価値判断ではなくて、テーマ設定がそうだということであります。

 それで、枝野先生のお話ですと、いわゆるニュースキャスター、タレントさんというふうな分け方を仮にされましたけれども、私どもが社内でよくスタッフに伝えているのは、扱うテーマがファクトを扱うものならばバラエティーでも報道でも同じことだ。同じというのは社会的責任という意味なんですけれども。それは、恐らくこれから議論していく過程の中で同じようなことが語られるんじゃないかなと思っています。

 太田光さんとか、みのさんという話、今具体的に出ましたけれども、影響力という点でいえば、これは明らかにおっしゃったような問題はあります。これは権威があるかないかとか、そういう旧態依然の話ではないんです。ですから、先ほどの私の話の続きで言えば、芸能番組といいますかバラエティー番組でも、近い将来そういう問題を扱ったときには、出演者といいますか、まとめ役ですね、キャスター、この発言には極めて慎重な対応をしなければいけなくなるだろうなというのは、私個人的には考えております。

 以上です。

保岡小委員 私も、先ほどから放送メディアの影響力は非常に重大だと。これは、我々、海外視察をしまして一番痛烈に考えたことは、規制をするよりか、できるだけ多様な意見、多様な材料を国民にいかに周知徹底するか、それと同時に憲法改正案というか案自体について正確に国民にわかりやすく簡明にいかに伝えるか、その工夫が非常に重要で、規制よりか、むしろ積極的な広報とかあるいはマスメディアを初め自由な国民投票運動のあり方の方が重要だと。

 これは、当然のことながら、そういった意味でマスメディアについては規制はしないという方向で法案は作成したんですが、今いろいろ出ているように、放送協会とか新聞協会とか、そういう団体がお考えになっていろいろ基準をおつくりになったり運用について考えたりされる、それと各放送局が経営者なども含めて御判断される、現場の番組制作者あるいは番組に出演する方々が、ニュース番組であったりバラエティー番組であったり、いろいろな番組で現場で対応される、こういったことが本当に適正に行われる。先ほど渡辺さんが言われたように、多様な意見が本当に国民に伝わって、国民が正しい的確な判断ができるように、資するようにということが目的なんだということを言われましたが、まさにそのためのルールとかあり方というものは、我々は別に国会とかあるいは法によって規制しようという考えは持たないようにしようというふうに、それが正しい方向だとは思っているんですが、なおそういうルールについて、例えばきょうここでこれだけお話しするだけでも物すごく論議が深まる。

 したがって、発議する国会の立場、あるいはこういった法案を審議する立場の国会とこういう協議を今後頻繁に行うことによって熟度を高めていく、適正さを高めていくという努力が非常に必要で、そういうことを何らかの訓示規定とかあるいは何かお互いの約束事できちっとしておく必要はないんだろうか。それすらも必要ない、信頼関係をお互いにここで築いて、あくまでも自主規制でお任せする形になるのか。その辺の工夫について積極的ないいお考えがあれば御意見を伺いたいと思います。

 それから、先ほど来、広報協議会の構成メンバーの公正さについて問題になっておりますが、外部の意見はヒアリングとかいろいろなことでもできるし、もちろん憲法改正というものを国会で取り扱っていく上では、これからまた憲法改正の必要な論点はどこにあるかとかそういう整理も必要でありますし、その整理をした上で三分の二の勢力で憲法改正案の提案もしなきゃいけない。それについてより多くの多様な意見を聞くという意味では、特に留意して反対の意見をよく時間をかけて聞くという配慮も従前続けてきている。それをきちっとルール化してやっていこうと、運用によってより確かなものにしていこうと考えております。

 そういうプロセスがあって発議されるという期間を考えれば、期間が短過ぎる、百八十日では短過ぎるという御意見もありましたが、さらにそれに加えて二年という御意見もありましたけれども、それでは少し焦点がぼけるんじゃないかというふうに思ったりしております。そういうことが一つ。

 それともう一つは、先ほど国会図書館のお話が出ましたけれども、我々としては広報協議会の事務局というものを、従前これを基本に、より客観的な事務局の整理というものを基準にいろいろ進めていくという意味では、事務局でさらに精査してくるプロセスがあるということを頭に置いておいていただければありがたいかと思います。

 以上でございます。

渡辺参考人 渡辺でございます。

 保岡先生の御質問にお答えいたします。

 いわゆるルールづくりというお話もあったんですけれども、例えば国民投票に関して言いますれば一人一票ということで、それでどのような形で投票するかというのはまだ我々十分には知悉していないわけなんですけれども、数カ月間にわたる選挙期間というんですか、いろいろ報道する期間、単純に賛成か反対かだけではないというふうに思っています。憲法全体ですから実に膨大な要素というのがありまして、それは、みんながよく知っている項目もあるかもしれないけれども、ほとんど知らない項目もあるわけですから、数カ月にわたってそれを告知し続けていくということを恐らく我々が問われるんだろうと思います。

 先ほどの話に少し戻りますけれども、司会者やキャスターが結論だけ乱暴に賛成、反対と言うのはもちろん避けるべきだと私は個人的には思いますけれども、一連の番組の中で、この部分について私はこう思うんだよなと言うゲストや出演者の発言まで規制するものでは全くないと思いますので、それについてはできるだけやってもらった方が多くの国民に認知度が高まるだろう、そういう流れで一つは考えております。

 それで、保岡先生おっしゃった、何らかの約束事とかきちんとする必要があるんだろうか、それともあくまで自主規制なんだろうかということの御質問ですけれども、我々一般放送事業者としましては、あくまでも報道ということを前提にみずからがみずからを律していくというスタンスは守っていきたいというふうに基本的には考えております。今回は憲法改正の問題に焦点を絞っておりますけれども、先ほど来申し上げております放送法、とりわけ三条の二というものが我々には大きく前提としてありますので、こういったものをさらに重視するといいますか、きちんと確認し直す中で我々の憲法改正に対する報道も考えていきたいというふうに思っております。

 それから、保岡先生おっしゃいました、やはり認識を高める意味でということでいえば、これからも我々民放連内部でもさらに細かい具体的な議論を続けていかなければまずいだろうなという認識はいたしております。

菅沼参考人 菅沼でございます。

 日弁連の中でも、いわゆる賛成、反対だけではなくて、例えばスポットCMはいいんだろうかとか、より討論会的な報道をしていただいた方がいいんじゃないかという議論は出たんですけれども、これを法律でこうでなきゃいけないという規制はなかなかしづらいだろうと。だから、そういう意味では、法的な規制をここにかけることは困難だというところではほぼ一致しています。

 その結果、先ほど民放連さんもおっしゃっているように、報道機関の、しかもそれは全く自由というわけではなくて、先ほど挙げた放送法の規定や現在の倫理規定もあるわけですから、それを守りながら自主規制の中でやっていただく。ただし、それはもちろん自主独立的な要素はありますが、今、保岡先生御指摘のように、我々も含めて、そこの形成過程にはいろいろな意見をお聞きいただいて自主規制をしていただきたいという点では余り意見の違いはないかと思っています。

 それから、先ほどの広報協議会のあり方とか無料広告のあり方とか、実は前回の買収の問題とか、現実の運用はこういうふうに常識的に行われるだろうというような意見が何回か出ているんですが、ただ、ちょっと、日弁連というか、これは個人的意見になっちゃうかもしれませんが、法律というのは、やはり心配なのは、できてしまえば今の議論とは違う運用とか解釈もされる可能性もあるわけですから、できる前に十分議論を詰めておきたいなというのが本意でございます。

 以上です。

山田(健)参考人 枝野、船田、保岡各議員の共通する問題として、自由は大切だがやはり何らかの規制が必要であろうという御指摘があったわけですが、この点につきまして一言だけ述べさせていただきたいと思います。

 ちょうど先週出た雑誌にも、私、民放、NHK各社のニュース番組についての分析の記事を書いております。確かに、現在、テレビでは多くの報道、あるいは報道系、さらには情報系の番組があり、そこでさまざまな意見が出ております。ただ、そこで話される意見について何らかの規制をするというのは、私のきょうのレジュメでいいますと、「マスメディアの表現の自由」の「報道」の中の「憲法報道」そのものを、法的でないにせよ何らかの自主規制をするという意味合いになってきます。

 こういうような規制をかけている国は、私は寡聞にして海外でもないかと思います。海外で報道規制をするといっても、それは投票報道に関する規定でありまして、憲法の内容に関する規定をするということはしていないわけでありまして、この部分については絶対的な自由が保障されてよいのではないか、それが現在の憲法の定める法体系の中ではないかというふうに考えるわけであります。

 実際、船田議員の御指摘が非常に意味があるかと思いますが、無料枠では、ない、規制はないと言われても、いわゆる有料広告についての規制を考えた場合には、どう考えても何らかのさまざまな意見は出てくる。とりわけ意見広告というのは通常の報道と非常に似通った性格を持つものでありますし、具体的に個人であってもどんな団体であっても出せるわけであります。そこまで多くのさまざまな意見をすべて規制するならまだしも、その中で何らかの枠の、枠といいますか何らかの領域の広告だけを無理やり閉じ込めようというのは、やはり方向性としては少し無理があるのではないかと思うわけでありまして、この点はさらに御議論いただければというふうに思う次第であります。

 以上です。

笠井小委員 きょうは、改めて参考人の皆さん、本当にありがとうございました。

 二点だけ端的に伺いたいんです。

 一つは、今も広報活動、CMのことがありましたけれども、先ほど山田健太参考人も資金量の多寡でという話に対しては工夫のしどころだというふうに言われたんですが、当然、政党以外の団体もいろいろ工夫するでしょうし、一生懸命金を集めるだろうと思うんですけれども、しかしまた、資金力があるところも工夫して、例えば最終盤になればさらにそれを上回る広告を買うということで広告を打つこともあるわけで、だから禁止するのかというと、そういう世界ではないと思うんですけれども、やはり公正さ、中立性という点で言うと、今出されている問題で言うと、多くの問題があるなということを感じております。

 それで質問は、先ほど今井参考人が、一週間前、これは政党も含めて禁止すべきだという話があって、マインドコントロールみたいな事態になるということがあったんですけれども、期日前も含めてというと、二週間、十四日ということになりますから、相当長期にわたる間、つまり禁止するという話もやるべきだというお話だったんですが、そこで、それについて民放連の山田参考人に、先ほど来のお話は、やはり最終盤になると最も活発に意見が交わされて関心が高まるときだということを言われて、七日前以降の規制というのはやるべきでないという御意見、日弁連に賛成だとおっしゃって、むしろそれは自主的にメディアの側の自律的な問題としてとらえていくんだというお話があったんですが、今井参考人がおっしゃった、マインドコントロールも起こるから、そういうことはもうとにかく一週間とは言わず二週間ということで一切規制すべきだということについてどういう御感想と御意見をお持ちか、それを伺いたいというのが一点。

 それから、もう一点、質問しちゃいますけれども、日弁連に伺いたいんです。

 先ほど来、広報機関について議論があります。そして、そうはいっても国会しかないんじゃないかという意見があったりするわけですけれども、国会というのは改憲案を発議して国民に提案するという立場になるわけで、先ほども日弁連の中にも、国会が発議した改憲案について国民が賛成か賛成でないかの意見を問う国民投票において、そもそも中立的な機関たり得るかという意見もあるんだというお話があったわけですが、例えば具体的に、この広報協議会が作成するとされている国民投票公報の原稿の作成の問題なんですけれどもね。

 これは日弁連としてもまだ具体的にまとまった御意見かどうかわかりませんが、法案で言いますと、この公報には改憲案とその要旨及び解説と、改憲案を発議するに当たって出された賛成意見、反対意見を掲載するというふうになっております。法案提出者は、この公報というのは、改憲案とその要旨、解説を一とすれば、賛成意見一、反対意見一ということで、賛否平等に近い形になるんだというふうなことで言われているわけなんです。法案にはそういうことは書いていないんですが、そういう説明をされているということだと思うんです。そういう意味では、賛成意見、反対意見はそれぞれ一対一ということで、ある程度客観的には記述されるようなことになるのかもしれないんですが、改憲案そのものの要旨とその解説となりますと、これはやはり改憲賛成派の意見に限りなく接近するものになってしまうんじゃないか。これは選挙公報とも違うと思うんですけれども、こういう枠組みで広報協議会がつくられて、そのもとで原稿がつくられて、それが国民に知らされるとなったときに、どういう御意見をお持ちか、個人でも結構ですが、いただければと思います。

山田(良)参考人 CMも放送にとっては国民のための有益な情報であるべきだというふうに思っておりますので、ですから、七日前にやめるということではなくて、一番議論が盛り上がっている時期にきちっとそういう有益な情報を流したいというふうに思っています。ただ、それは先ほども申し上げましたように、量、バランスなどをきちっと考えた上で流すべきだというふうに思っております。

 それから、一週間前に、例えばちょっとこっちが劣勢だからといって、どおっとお金を持っているところが何かCMを買いに来る、そういうことは多分できないと思います。それは、多分、少なくとも一カ月、二カ月前に、ここにこういうCMを打ってくださいということでやらないと、なかなか空き枠はないですから、そういうことは起こらないというふうに思っております。

 マインドコントロールということで言うと、どこまでをマインドコントロールと言うかということですけれども、今、我々が考えるよりもという言い方はちょっと語弊がありますけれども、国民の方々、視聴者の方々というのは非常に賢いというふうに思っています。賢くテレビを見ていただいているというふうに思っております。

吉岡参考人 先ほどの広報協議会のことですけれども、枝野委員もそこの点について外部の委員まで要るのかというようなことが先ほどございましたけれども、今の御質問にありましたとおり、広報協議会でやることは、ただ機械的に憲法改正案の賛成、反対ではなくて、先ほども言いましたとおり、国民にとってわかりやすく、特に重要な部分については、その議論の分かれるところはどこで分かれてくるのかとか、そういうことについてもやはり……

枝野小委員 そんなこと条文上ないですよ。条文を読んでください。ないですよ。そんな仕事ないですよ。

吉岡参考人 そうですか。「要旨及び解説等」とありますよね。その解説等というのはそこまで含まれるのではないかというふうに私は理解して今発言をしているので、違うならばあれですけれども。

 それから、同じようなところのその役割の中で、「賛成意見及び反対意見の記載、発言等」となっていますよね。ですから、今言った、解説等とか発言等というとき、私どもはなるべく国民にわかりやすいものにしてもらいたいというものが前提にあるものですから、その場合には多少双方の意見がヒートアップするようなこともあるかもしれない。そうであれば、きちんと外部委員を入れて、その辺は公正に、わかりやすくしていただいたらいかがでしょうかという趣旨でこれは述べているということでございます。

 もし、違う、誤解がございましたら改めますけれども。

赤松(正)小委員 簡単にやりますが、一つは、先ほど来繰り返されておりますが、民放連の方に、広告について投票日前七日間禁止をするということに関しまして、先ほど日数のことでというよりもむしろ自主的な判断だということを渡辺さんがおっしゃいました。今、また山田さんがおっしゃいましたけれども、先ほど来あるように、例えばフランスの例とか、あるいはスペインの例、外国においてはそれなりの規制を入れているということで、先ほどのお話では、自主的に判断をして短目にやるということがあるのか、あるいは一切だめ、するべきではないと思っておられるのか、そのあたりについて、繰り返しになりますけれども、お答え願いたいというのが一点でございます。

 それから、今井参考人に、冒頭で眠れぬ三日間を過ごしたと、広告野放しは危惧というような話で、最終的に、いろいろな人に取材した結果、何らかの規制、先ほど来何らかの規制という言葉がよく出てきていますけれども、その何らかの規制の中でも、最もこだわりたい規制というのは何なのかということについてお答えいただきたい。

 あと、山田参考人に、先ほど一番最後の方のくだりでちょっと興味あることをおっしゃったんですが、発想の転換という話をされましたですね。政党の側の方の自主規制ということについて発想の転換が必要だと言われたことについて、もう少しフォローアップしていただければありがたいと思います。

 以上、三点。

山田(良)参考人 さらにこれから具体的にいろいろなことが見えてくると思いますので、その具体的なことをさらに想定しながら、その七日間というものはどういうものなのか、それともそれは本当に要らないものなのか、それとも我々がやろうと思っているCMが逆にマイナスに働くことがあったらどういうことだろうか、だったら、やはりそれはできないことだろうかということも含めて真摯に検討を進めていきたいと思っております。

今井参考人 山田さんがおっしゃったみたいに、テレビのスポットを流したから、CM放送を流したから、その派が必ず国民投票や住民投票で勝利するとは限りません。実際にそうじゃない事例をたくさん見てきました。私は、それが直接勝利に結びつくとか敗戦に結びつくとかというような視点じゃなくて、できるだけ豊かな、水準の高い、そういったキャンペーン期間でありたいというふうな視点から申し述べているということでございます。

 先ほど山田さんが、国民は非常に賢明で、賢くテレビを見てくださっているというふうにおっしゃいました。私も、基本的には投票権者国民を山田さんと同じように信用しております。それは、前回ここに出席したときも、基本的には、日本人の良識の力や日本の民主主義の力を信じて、できるだけ規制を行わないようにしようと発言したのは、その根拠は国民の見識とか良識を信用しているからです。

 ただ、私はテレビ局を信用していないということです。テレビ局を信用していないということをはっきり言わせていただきます。

 例えば、サラ金のCMについてはできるだけ控えようということであったのにもかかわらず、数年前、解禁というような状態になって、それからあふれるように流れてきました。昨今、いろいろな問題が出てきました、命までかけて生命保険を掛けて。そんな問題もありました。

 それから、この前、TBSでは、亀田さんの、三兄弟のうちの長男ですかね、タイトルマッチがパチンコ屋の一社提供でした。

 これはある放送局の監査役を務められた方に一昨日聞いたんですが、テレビ局にとっては、競輪とかサラ金とかパチンコとか、そういうCMを出したいという側についてはディスカウントしてこないし、非常にもうかると。しかし、市場経済の論理が働くよと言われたんですね。そういうものばかりでCMを埋めていたら局のイメージが落ちるから、今井君、心配しなくたって、そういうことにはならないよ、現に今そうでしょうというふうに言われました。だけれども、いつまでも景気がいいとは限りません。今、パソコンや車やさまざまな一般的な商品でスポットの枠は埋まっているかもしれませんけれども、いずれ景気が悪くなったときに、また四、五年前みたいにサラ金のコマーシャルばかりが、そういうことをテレビ局はまたやりかねないという思いが私はあるんですね。

 だから、スポットについても、かつてロシアで私が経験したみたいな、ダー・ダー・ニエット・ダー、ダー・ダー・ニエット・ダーと、そればかりがテレビやラジオで流れて、今回で言ったら、イエス・イエス・イエス・イエスとか、ノー・ノー・ノー・ノーとか、そういうことを法規制じゃなくて、そういったスポットについては自主的に制限してほしいというふうにここにも書いたんですが、どうやら、山田さんのきょうのお話を伺っていたら、自主的に制限する意思はないというふうに受け取れました。それはなぜかというと、今おっしゃったみたいに、広告の有用な、私たちが、放送局が、事業体が国民の皆さんに与える有用な情報だからということでどうやら制限をされる気が余りないように思います。それは国民を信用しているからということかもしれませんけれども。

 この問題は非常に重要な問題だから、引き続き憲法調査特別委員会でも放送局の側の方々と何度かまた協議を重ねていただいて、できたら法規制という形ではない形でこれを解決していただけないかなという思いを重ねて表明したいと思っています。

 以上です。

山田(健)参考人 最後の御質問の点でありますが、基本的に、表現の自由を規制する場合、自主規制をする場合というふうに限定した方がいいかもしれません。

 だれが一般的にするのかという話であります。それは紛れもなく媒体ではなくて表現者そのもの、表現者が自主規制をするというのがまさに一般的であるし、それが原則であると思います。それは中間の媒体であるとか情報の頒布者が途中で遮るということはできる限りしない方がいい、これが憲法二十一条の要請するところであろうというふうに考えているわけであります。

 であるならば、今回のさまざまな法規制がだれをターゲットにしているかというと、それは最初のスピーチでも申しましたように、政党をターゲットにした法案であります、であるならば、その政党自身が一番最初に範を示すということが最も自然である。その上で、必要であれば放送局あるいは新聞社が個々の企業として、あるいは業界として自主規制を考えていくということもあろうかと当然思います。実際、各企業あるいは業界の自主規制は現在でもさまざまな形で行われているわけでありまして、それは既に経験がある。その経験の延長線上で、この問題についても十分に考える素地があるのではないかというふうに思うわけであります。

 さらにもう一点だけ申しますと、非常にテクニカルになるかもしれませんが、政党に関しては、例えば国民投票運動期間と通常の選挙あるいは総選挙が重なった場合にはいわゆる政治活動はできるという規定があります、一つの除外規定でありますが。それだけ考えても、例えば一切の禁止がない中でも、実際上、政治活動という名のもとでの政党のいわゆる意見表明ができていく。確かに、それは直接的には国民投票運動でないかもしれない。けれども、実際上は相当それと密接な形で意見表明がされるわけでありまして、こういうことについてどう考えるのか。それはやはり政党自身がみずからどう範を示すのか、どういう形で自主規制をしていくのかということが求められているのではないかというふうに思うわけであります。

 その点、最初に媒体規制ありきということではなくて、まず、一体どういうルールづくりがあり得るのか、もう少し最初に戻ってお考えいただければという趣旨でございます。

 以上です。

近藤小委員長 枝野先生にちょっと御注意だけしておきますが、ここはオープンの場ですので、参考人との個人的なお話はぜひ終わってからにしていただきたい。

辻元小委員 社民党の辻元清美です。

 三点、簡潔にお伺いしたいと思うんです。

 一つは、日弁連のどちらかの方にお願いします、期間の問題なんですね。先ほど二年という案も出ました。日弁連はどのようにお考えかということです。

 といいますのは、六十日というのは二カ月で、百八十日は六カ月なんですけれども、例えば今教育基本法の、どうするかという議論がある。二カ月なんかすぐ過ぎるんですよね。一般的に、公共空間で今の教育基本法の問題がどれだけ認知されているかというと、ほとんどの人がよう内容知らぬなと。私は議員立法でNPO法というのをつくりましたけれども、これは法案を提出してから一年ぐらい国会でも継続、継続でやりました。一年ぐらいやると、やっといろいろな人たちが、そういうことが議論されているということが少しわかってくる。最低六十日なんということになってしまうと、二カ月というと、すぐ過ぎますので、これはとんでもないなと私は思っていますが、日弁連はどれぐらいとお考えでしょうか。

 二つ目は、基本的な原則として、現状の国会の議席がどうこうというのではなくて原則として、憲法を変えるための九十六条の解釈ということで、三分の二というのは発議に必要な要件であって、発議された後まで、これは三分の二の解釈というのは多数の専制を許さない、横暴を許さないという解釈で、二分の一でもできないことを三分の二と決めているのであって、三分の二で発議された後はすべて平等に扱うべきではないかという原則があるんじゃないか、私はそういうふうに解釈しているんですけれども、日弁連の方々は日ごろ専門家ですので、この解釈ですね。

 というのは、なぜかというと、この三分の二に引っ張られて、国会の議席だとか多数で発議したからということをあらゆるところで、何となくそれに引っ張られるということを私は危惧していますので。発議までと発議後の取り扱いというのは原則が違うんじゃないかということについて、日弁連の両先生のうち、お二人でも結構です、どのようにお考えか。

 これと関連して、山田参考人が似て非なるものという発言をされました、政党の発信と社会の中の認識は似て非なるものだという発言を途中でされているんですけれども、これと関連しているような気がしますので、そのことについてお答えいただきたいことと、もう一点、先ほどから広報協議会は何するところかと。印刷物をつくるだけではなくて、説明会の開催等も入っているわけですね。ですから、なぜここでの委員の数も含めて賛否平等の取り扱いにこだわるかといいますと、どこで、何カ所説明会をするかとかもそこで決めるとなると、単に印刷物を一回出して終わりじゃないわけですね。どういう形で説明会を持つか、どういう方に来ていただくようにするのかというようなこともありますので。私はまだ広報協議会、この議席配分には納得していないわけです。

 それと、今の中で、改正案の中身についての解説とか要旨ということが入っているわけですけれども、印刷物に私は現行憲法も載せるべきだと思っているわけです。現行憲法について一般の人たちがよく知っているかというと、そうでもないというところもありますので。対照表をつけて、現行憲法の経緯とか解説。もしも改憲案の解説をするならば、現行憲法についても同じものが必要ではないかと思っていますが、日弁連の方はここはどういう御意見でしょうか。

 以上です。

吉岡参考人 端的に期間のことだけ申し上げますと、私ども、本年八月二十二日付の意見書に書きましたが、最低でも一年という期間が必要だろうということで意見をまとめております。ただし、これについてはいろいろと会内では意見がありました。ただ、例えば、ここに書きましたように、公共施設を借りて何らかの勉強会なり集会を開くだけでも数カ月かかるであろうとか、いろいろなことを考えました上で、やはり国民が十分な判断をするためには十分な期間が必要だろうということで今の期間の御意見を述べております。

菅沼参考人 その後の問題で、一つは九十六条の解釈として発議前と発議後は違うのではないかと。

 発議前は確かに三分の二という拘束があるけれども、それは発議後は違うのではないかという御意見で、日弁連が九十六条の解釈を別に肯定的に言うわけではないですけれども、今辻元先生おっしゃっていることを前提としているから、いろいろな場面で賛成意見と反対意見を対等にとか同じ人数でということを申し上げているわけで、この意見の前提には、当然、三分の二に引きずられないという前提のもとで意見を申し上げているつもりです。

 それからもう一点、現行憲法については、ここでどういう、やり方まで議論するべきかどうかあれですけれども、法律案の場合も現行と改正案の対照表とか、それはもちろん、わかりやすくするためにもそういう必要性はあるのではないかと思います。

 以上です。

山田(健)参考人 前者の問題につきましては、既に日弁連の方からの回答と私の考え方は基本的に一緒であります。一つだけつけ加えて言うならば、国民投票で問われるのは政党の意思であってはいけないということであります。その点だけそう確認させていただければというふうに思います。

 それから、後者の方であえて一つだけ言いますと、例えば、憲法改正案の広報協議会は広告枠の割り当てを業務として考えております。すなわち、回数や日時や寸法をどうするかという問題でありますが、ここはどうしても恣意性が入ってしまう可能性が高い分野であります。

 例えば、放送時間をどうするのか。極端な話、現在の政見放送みたいに並べてずっとやればいいじゃないかという考え方もあるかもしれません。多分、それが枝野さんが考えていらっしゃる現在の広報の仕方であろうかというふうに思いますが。ただ、もしそうだとしても、その順番であるとか、あるいは放送時間枠を早朝にするのかゴールデンタイムにするのか、当然ながらそこにはさまざまな形で恣意性が入ってくる。その可能性が捨て切れない部分が広報協議会の考え方であります。

 逆に言うと、それが全くないんだというのであれば、そもそも私の最初の考え方がそうでありますけれども、この広報協議会については、より事務的な、あるいは簡単な、まさに公報に徹して、それは何も国会がみずからしなくてもいいのではないかという話になってくるのではないか。国会というのは国会議員がという意味ですが、しなくてもいいのではないかという考え方があるのではないかと思っています。

船田小委員 時間が来ておりますので簡潔に質問したいと思います。

 先ほど山田健太参考人から、有料広告の規制のあり方、果たしてどういうものがあるんだろうか、こういう御質問を逆にいただきましたけれども、これは、私どもは、まずはやはり総量規制。公平公正を考えるのであれば、有料広告の中身を見て扱いを変えるということは絶対できませんので、これはあくまで総量規制ということでやっていかざるを得ない。しかも、それは私どもが提案している七日間有料広告はやらない、こういうことで客観的にやる必要がある、こう思っております。

 それと関連いたしまして、さはさりながら、さらに細かく言えば、先ほども議論として出ておりましたけれども、有料広告の扱いの条件を平等にしていただくということが大事だと思っております。放送時間帯、これをゴールデンタイムにやるか、あるいは物によっては深夜にやるかとか、時間帯の設定もかなり恣意的なものが入る可能性がございます。料金にしてもそうでございます。料金も格安料金でいくのか、それとも通常料金でいくのか、こういうこともやはり中身によっては左右される可能性もございます。

 もう一つは、チェック。チェックはしないということで、できるだけ政党から持ち込んだものをそのまま報道する、こういうことになっておりますが、多分、放送倫理上どうかということで、これはやはり一定の外形的なチェックというのは当然事前にやらざるを得ないだろう、こう思っておりますけれども、そのチェックの中身を、チェックのやり方を、物によっては厳しく、物によっては緩やかに、こういうことも考えられなくはありません。

 これは非常に性悪説に立っているような議論でございますけれども、こういうことについて、民放連としては現状ではどうお思いであるか。私どもとしては、ここにおいても何らかの自主規制を新たな取り決めというものも含めてお考えをいただきたいと考えておりますが、そのことも含めてお聞きしたいと思います。

山田(良)参考人 総量規制、時間帯、料金、それから表現の自由を前提とした上での内容のチェック等を、今までは政治に関して言えば選挙の前のCMとかで実施してまいりましたけれども、今回の国民投票というのは全く別のジャンルのものだというふうに思っておりますので、これから具体的にあらゆることを想定しながら真摯に検討をしていきたいというふうに思っております。

 それから、今井参考人が私はテレビを信じないとおっしゃいましたけれども、放送に対する御批判も真摯に受けとめて、もちろんテレビ、放送にはマイナス面も出ることもよくありますけれども、プラスをふやす努力でさらに信頼を得ていきたいというふうに思っております。

近藤小委員長 これにて懇談を終了いたします。


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