衆議院

メインへスキップ



第1号 平成19年3月22日(木曜日)

会議録本文へ
平成十九年三月二十二日(木曜日)

    午後一時一分開議

 出席委員

  内閣委員会

   委員長 河本 三郎君

   理事 木村  勉君 理事 後藤田正純君

   理事 戸井田とおる君 理事 西村 康稔君

   理事 平井たくや君 理事 泉  健太君

   理事 松原  仁君 理事 田端 正広君

      岡下 信子君    木原 誠二君

      寺田  稔君    土井  亨君

      中森ふくよ君    長島 忠美君

      林田  彪君    松浪 健太君

      御法川信英君    村上誠一郎君

      市村浩一郎君    小川 淳也君

      小宮山洋子君    佐々木隆博君

      横光 克彦君    渡辺  周君

      石井 啓一君    吉井 英勝君

  法務委員会

   委員長 七条  明君

   理事 上川 陽子君 理事 倉田 雅年君

   理事 棚橋 泰文君 理事 早川 忠孝君

   理事 高山 智司君 理事 平岡 秀夫君

   理事 大口 善徳君

      赤池 誠章君    稲田 朋美君

      今村 雅弘君    近江屋信広君

      奥野 信亮君    後藤田正純君

      笹川  堯君    清水鴻一郎君

      柴山 昌彦君    杉浦 正健君

      三ッ林隆志君    武藤 容治君

      森山 眞弓君    矢野 隆司君

      保岡 興治君    柳本 卓治君

      石関 貴史君    大串 博志君

      太田 和美君    中井  洽君

      神崎 武法君    保坂 展人君

      滝   実君

    …………………………………

   法務大臣         長勢 甚遠君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 溝手 顕正君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   内閣府副大臣       大村 秀章君

   内閣府副大臣       林  芳正君

   総務副大臣        大野 松茂君

   法務副大臣        水野 賢一君

   農林水産副大臣      山本  拓君

   経済産業副大臣      渡辺 博道君

   国土交通副大臣      渡辺 具能君

   内閣府大臣政務官     岡下 信子君

   法務大臣政務官      奥野 信亮君

   財務大臣政務官      江崎洋一郎君

   政府参考人

   (警察庁長官官房長)   安藤 隆春君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         米田  壯君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            畑中龍太郎君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          菊池 洋一君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    小津 博司君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  稲見 敏夫君

   内閣委員会専門員     堤  貞雄君

   法務委員会専門員     小菅 修一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 犯罪による収益の移転防止に関する法律案(内閣提出第二九号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

河本委員長 これより内閣委員会法務委員会連合審査会を開会いたします。

 先例により、私が委員長の職務を行います。

 内閣提出、犯罪による収益の移転防止に関する法律案を議題といたします。

 本案の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付の資料をもって説明にかえさせていただきます。

 これより質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神崎武法君。

神崎委員 私は、犯罪による収益の移転防止に関する法律案、いわゆるゲートキーパー法につきまして、お尋ねをいたします。

 この法案は、マネーロンダリング及びテロ資金対策としてのFATF、金融活動作業部会勧告を我が国として履行するものでありまして、本法の施行によって、我が国におけるテロの脅威を防止し、犯罪による収益を剥奪し、被害者に回復する手続が一層促進されますことを期待するところであります。

 まずお伺いしたいのは、第一点は、本法案は当初案と異なり、弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士及び税理士が行う措置は、疑わしい取引の届け出から除外いたしました。この間の経緯として、各方面との調整、協議等で、私は結果的にはやむを得なかったと思いますけれども、二〇〇三年六月に改定されましたこのFATFの四十の勧告は、弁護士等に対しましても疑わしい取引の届け出義務を課していると解されるわけであります。

 今回の修正はFATFの勧告を満たさないのではないか、これは満たしているというふうにお考えになっているのか、その点についてお伺いをいたしたいと思います。

溝手国務大臣 お答え申し上げます。

 FATF勧告は、独立法律専門家等のほか、指定非金融機関として不動産業者、宝石商、貴金属商、トラスト・アンド・カンパニー・サービスプロバイダー等に疑わしい取引の届け出義務を課すことを求めているところでございます。

 本法案は、独立法律専門家等を除き、その要請にこたえたものとなっており、本法案の成立、施行により、我が国のマネーロンダリングの対策あるいはテロ資金対策は大きく前進するものと認識しております。

 FATFの相互審査においては、弁護士その他の士業者が届け出義務の対象外となったことについては何らかの指摘を受けると思われますが、日本弁護士連合会の自主的な取り組みも含め、我が国のマネーロンダリング及びテロ資金対策が前進した面につきまして、よく説明をいたし、理解を求めてまいりたいと考えております。

神崎委員 ことしの秋にFATF勧告の履行状況をメンバー間の相互措置によって確認することになるというふうに承知いたしておりますけれども、勧告の重要な部分について不履行との判断が示されることはないのかどうか。そのような判断がなされた場合に、弁護士ら五士業者につきましても疑わしい取引の届け出義務を課す改正をやらざるを得なくなるのかどうか。その点についてお尋ねをいたします。

溝手国務大臣 弁護士その他の士業者が届け出義務の対象外となったことについて何らかの指摘を受けると思われると申し上げたところでございますが、日本弁護士連合会の自主的な取り組みも含めて、とにかく前進したということにつきまして理解を求めてまいりたいと思います。

 士業者に係る疑わしい取引の届け出の扱いについては、依頼者との関係においてその与える影響、及び内外におけるマネーロンダリング及びテロ資金対策をめぐる状況のほか、これらについての日本弁護士連合会との検討状況を総合的に勘案して判断をしてまいりたいと思います。

 指摘を受けて直ちに改正作業に着手するという、結論ありきというスタンスはとらないところでございます。

神崎委員 主要国におきまして、弁護士ら士業と同種の業種では、特に疑わしい取引の届け出につきましてどういう取り扱いに各国ではなっているのか、その点についてお尋ねをいたします。

米田政府参考人 弁護士の疑わしい取引の届け出の措置につきましては、FATFのメンバー三十一カ国・地域、このうち二十四カ国でこの届け出義務を法制化しております。これは平成十九年一月現在の数字でございます。また、今後この義務の法制化を検討している国が四カ国あるというように聞いております。

 なお、弁護士に対する疑わしい取引の届け出義務の法制化を現在しておらず、また当面そういう予定もない国として、主要国ではアメリカとカナダがございます。ただ、アメリカにおきましては、弁護士を含むすべての者に一定額以上の現金受領の場合の届け出を義務づけていると承知をしております。

神崎委員 我が国の場合、五士業以外の特定事業者は三十八業種となっておりますけれども、主要国でもほぼ同業種が本人確認及び疑わしい取引の届け出の対象となっているのかどうか、お尋ねをいたします。

米田政府参考人 FATF参加国のうち、EU諸国につきましては、おおむね、FATF勧告の要請にこたえまして義務対象事業者を不動産業者、宝石商、貴金属商等に拡大しております。また、アメリカとカナダにおきましては、先ほど申し上げましたように、弁護士を疑わしい取引の届け出からは除外をしておりますが、その余の部分については、マネロン、テロ資金対策の措置を積極的に講じるなど、いずれにせよ、各国それぞれの法制度及び実情に応じた適切な対応をとっているものと承知をしております。

神崎委員 ここで、疑わしい取引の問題なんですけれども、疑わしい取引とそうではない取引との判断基準、これをどう考えるのかということと、それから、現在、金融機関ではどういう基準でこの問題について対応をしているのか、それから、今後、主な主務官庁にガイドラインを作成してもらうということを聞いておりますけれども、ガイドラインの準備状況はいかがでしょうか。

米田政府参考人 個別の取引が疑わしい取引に該当するかどうかというのは、顧客の属性、取引の状況、その他事業者が保有している当該取引に関する具体的な情報を総合的に勘案して、その事業者において判断がされるというものでございます。

 現在、組織的犯罪処罰法で疑わしい取引の届け出が金融機関等にかかっておるわけでございますけれども、金融機関等につきましては、これは金融庁の方でガイドラインが示されておりまして、かなり詳細な事例が紹介をされております。それを手がかりに、各事業者の経験と情報に基づいて判断がされているというものでございます。

 本法案におきましていろいろな事業者がこれから特定事業者ということになるわけでございますけれども、これにつきましても、ガイドラインをお示しするということになろうと考えております。

 その作成に当たりましては、各事業所管官庁が中心となりますけれども、私どもも協力して、業界と十分に調整を行った上で、またパブリックコメント等の手続も通じまして、周知を図ってまいりたいと考えております。

神崎委員 これまでは、組織的犯罪処罰法に基づきまして届け出義務があるのは金融機関などでしたけれども、届け出は年間どのくらいの件数なのか。それから、事件として捜査したのはそのうちどのくらいなのか。現在、既に届け出件数が十万件を超えておりますけれども、今回、特定事業者の範囲が大幅に拡大をいたしました。当然、この届け出件数が大幅にふえるだろうというふうに予測されるわけでありますけれども、果たして届け出情報の処理が適切に行われるのかどうか。この点についてお尋ねをしたい。

米田政府参考人 平成十八年中に金融庁に届け出がなされました疑わしい取引の届け出の件数は約十一万四千件でございまして、警察はこのうち約七万一千件の提供を受けております。

 この届け出が事件に結びついた件数というのは、実は全体の件数はわかりません。いろいろな使い方をされますのでわかりませんが、ちなみに参考までに、この届け出情報が直接の端緒となって事件検挙に結びついた数というのは、昨年は五十件でございました。

 今後、他の特定事業者がふえるということで、情報がさらにふえるということも考えられるわけでございますけれども、これにつきまして国家公安委員会、警察庁といたしましては、現在、金融庁の特定金融情報室、十七人でやっておるわけでございますけれども、今度は課長級を長とする四十人の体制を今予算でお願いしておりまして、そのような体制で、かつシステムも更新をいたしまして、その情報の処理、管理に万全を期してまいりたいと考えております。

    〔河本委員長退席、七条委員長着席〕

神崎委員 今回、情報の通知先でありますFIU、資金情報機関ですね、これを金融庁から国家公安委員会、警察庁に移管をいたしております。

 なぜ金融庁から国家公安委員会、警察庁に移管したのか。この点について、弁護士会などはこれが引き金になって非常に反発をしたというような経緯もたしかあったと思います。一部には、捜査機関が通知先ですと、届け出の情報が他の事件に捜査上乱用されるのではないか、こういう危惧も指摘されているようですけれども、そういう点も含めまして、なぜ新たに国家公安委員会、警察庁に移管したのか、この点についてお尋ねをしたいと思います。

米田政府参考人 今回、いわゆるFIUを金融庁から国家公安委員会、警察庁に移管するという内容も法案に含めてお願いをしておるわけでございます。

 これは、疑わしい取引に関する情報を集約する機関を、今まで金融庁でございましたものを、対象事業者がそれに限られているということもございまして金融監督という側面が強かったわけでございますが、今回、金融機関以外の事業者も対象となるということを契機といたしまして、暴力団その他の組織犯罪対策あるいはテロ対策等の一応政府の中では中核的な役割を担っております国家公安委員会、警察庁にその機能を移管することが適当であるという内閣官房の調整により、このようになったものでございます。

 この制度は、現在も金融庁に集められた情報が警察に提供をされておるわけで、それが捜査に使われておるわけでございます。今度、FIUとして国家公安委員会が他の捜査機関あるいは他の犯則調査機関に対しまして提供するわけでございますが、当然それは、その情報がマネーロンダリング罪あるいはその前提犯罪の捜査に資すると認めるときということでございまして、そこに変更があるわけではございません。当然、届けられた情報が適切に管理されるように努めてまいりたいと考えております。

神崎委員 今までのように金融庁を通知先として捜査機関が必要な情報を入手する、報告を受ける、こういうやり方でどういう不都合があったんですか。

米田政府参考人 この制度発足以来、金融庁がFIUとしてこの制度の中心的な役割を担ってこられまして、その間、届け出件数がふえたり、またマネーロンダリング罪の検挙、あるいはその収益の没収といった実績も上がってきたわけでございます。私どもは、金融庁が担ってこられたことに対しましては大変高く評価をしておるところでございます。

 ただ、金融庁がFIU機能を持っておったのは、対象事業者が金融機関である、金融監督行政のいわば延長であるという側面でございまして、それを、今度は対象事業者が拡大をするということになると、なかなか金融庁だけというわけにもまいらないというようなことを契機といたしまして、また一方、この情報というのはやはり分析を加えなければならない。それについては、組織犯罪、テロといったものをずっと追いかけておりまして、そういう情報、知見を持っている国家公安委員会において行う方がやはり適当であろう、こういう判断が内閣官房の方でなされまして、私どもの方にこれを担当するようにというような調整が行われたものと承知をしております。

神崎委員 新たな届け出先となります国家公安委員会、警察庁の事務局体制がどうなるのか。先ほど申し上げましたように、特定事業者の範囲が飛躍的に拡大をいたしますので、取扱件数も大変多くなると思います。どういう体制で臨むお考えでしょうか。

米田政府参考人 先ほどもお答えいたしましたように、約四十人の課長級をトップとする体制で発足としては臨みたいと思っております。その後の業務の推移を見て、またその体制については検討してまいりたい。ちなみに、諸外国、主要国では大体、イギリス二百、アメリカ二百九十といった百を超えるところが多いわけでございまして、この辺は、本格的に分析体制を整えていく際にどのような体制がよいのか、また今後とも研究、検討してまいりたいと思っております。

神崎委員 国家公安委員会、警察庁が届け出情報の通知を受けた際、どのような場合に捜査機関に情報を提供するのか、その判断基準についてお伺いをいたしたいと思います。

米田政府参考人 捜査機関への情報提供につきましては、先ほども申しましたように、マネーロンダリング犯罪及びそれの前提犯罪の捜査に資するような情報と分析結果を提供したいということでございますけれども、具体的にどのようなというのは、これは若干、捜査に密接に関連する事項でありまして、詳細に申し上げることはちょっと控えさせていただきたいと思います。

神崎委員 最後にお伺いしたいのは、北朝鮮が関与しましたマネーロンダリング対策にこの法律はどういうふうに役立つのか、そういうふうにお考えなのか、この点についてお尋ねをいたします。

米田政府参考人 北朝鮮が関与するマネーロンダリング事案、もしこういうものがあれば、法と証拠に基づいて厳正に対処することとなります。

 この法案が定める本人確認、取引記録保存、疑わしい取引の届け出等の措置は、もちろんこういうような事案にも、その防止あるいは収益の追跡といったことにもそれは役立つものであろうというように考えているところでございます。

 金融庁から国家公安委員会にFIU機能が移るということに伴いまして、そういう専門的知見を活用して、この種事案についても、その防止と、もしあれば早期検挙ということを図ってまいりたいと思っております。

神崎委員 終わります。

七条委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 法務委員会の立場から幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 組織的犯罪処罰及び犯罪収益規制法に基づいて没収・追徴保全命令というのが出されるわけでありますけれども、この問題については、新聞報道等でも、知らない間に口座が凍結されてしまって困っちゃったというようなことが事例的に紹介もされているわけであります。まず最初に、組織的犯罪処罰法の第二十三条の規定による起訴前の没収保全命令については、どれだけ請求があり、そしてそのものについてどれだけ公訴が提起されたのか、それぞれ検察官と司法警察員別にお答えいただきたいと思います。過去三年ぐらいで結構ですから、よろしくお願いします。

溝手国務大臣 お答え申し上げます。

 二十三条の規定に基づく警察官である司法警察員による起訴前の没収保全命令の請求件数は、平成十二年の法施行以来、平成十八年までに合計四十件請求していると承知いたしております。十二年三件、十三年一件、五件、七件、七件、八件、九件という数字で、十八年が九件でございます。また、これらのすべての請求については、裁判官が没収保全命令を発しており、かつ公訴が提起されているところでございます。

長勢国務大臣 検察庁においては請求の統計を従来とっておりませんでしたので、先生の御要請もありましたので至急に今調べさせております。概略はどうにか、きのう一日やらせましたんですが、その中で、起訴前と起訴後の区分けがまだするには少し時間がかかりますので、まことに申しわけございませんが、御答弁できない状況でございます。恐れ入ります。

平岡委員 今、司法警察員の話についてはすべて請求をしたものについては保全命令が出され、そして公訴が提起されているということである、検察官についてはちょっと調査中でよくわからないということのようでありますけれども、新聞報道にも、知らない間に口座が凍結されていたということで、罪のない人たちが口座を凍結されることによって商売が行き詰まってしまったというようなことも指摘されているわけであります。これについて、今の検察官の方の状況がわからないと、そういう事例があるのかないのかということも私たちとしては判断できないので、検察官について私が要求したものについて調査結果が出たところで、改めてこの問題については質問をさせていただきたいということで、後日質問をぜひさせていただくということにさせていただきたいというふうに思います。

 そこで、次に、疑わしい取引の届け出についての弁護士などの専門士業についての話ですけれども、先ほど神崎委員の方からるる質問がありまして、皆さんの方からも答弁がありましたので、そこは省略して、どうも新聞報道なんかによりますと、自民党の方が、小さく産んで大きく育てればいい、警察庁幹部は、対日審査で今回の法案では不十分と指摘されるだろうから、いずれ士業も対象にすることは宿題として残されているんだというような言い方をしていますけれども、当局としてそういうことを考えているのか。ちょっと、国家公安委員長と弁護士法に関して関連のある法務大臣、それぞれお聞かせいただきたいと思います。

溝手国務大臣 お答え申し上げます。

 弁護士その他の士業者に係る疑わしい取引の届け出につきましては、日本弁護士連合会から、いわゆる依頼者との関係におけることからの懸念が示され、出ていることを踏まえまして、引き続きこの点について検討をする必要があると判断したところから、本法案においてはこれを除外することとしたものでございます。しかしながら、この部分を除いても、本法案の成立、施行により、我が国のマネーロンダリング及びテロ資金対策は大きく前進するものと考えております。

 士業者に係る疑わしい取引の届け出の取り扱いについては、依頼者との関係に与える影響、内外におけるマネーロンダリング及びテロ資金対策をめぐる状況のほか、これらについての日本弁護士連合会の御意向等、検討状況を総合的に勘案して判断すべきだと思いますので、今後の課題としておりまして、結果ありきと、小さく産んで大きくとか、そんなことは全く考えておりません。

長勢国務大臣 経過につきましては、今、公安委員長から御答弁のあったとおりでございますが、今後とも、この扱いにつきましては、必要に応じ弁護士会とは十分な協議をしていきたいと思っております。

平岡委員 今の発言は、両方とも、いや、これで日本の国内の法制度としては完結したんだというんじゃなくて、引き続き、弁護士等の専門士業の分については、疑わしい取引の届け出について検討していくんだというような、あるいは協議していくんだ、そういう答弁であったということで、これはちょっと心外なんですね。先ほど来から言っているように、小さく産んで大きく育てるという下心が見え見えだと私は思います。

 そこで、ちょっとお聞きいたしますけれども、FATF勧告なんですけれども、これ、国会で何か国際的な約束として承認をしたとかなんとかという話は全く聞かないわけでありますけれども、このFATFについて言えば、一体だれが交渉して、だれがそれは拘束力があるというふうに国内的には認めているのか、この点について、国家公安委員長、答えてください。

溝手国務大臣 FATFの全体会合への参加は、勧告等の基準の策定への対応等については、所管としましては、財務省国際局国際機構課のほか、外務省、金融庁、法務省、警察庁等の関係省庁が連携して当たってきたところでございます。

 なお、FATF勧告自体は拘束力を持つものではございません。ただし、FATFの勧告は、メンバー間の相互審査によりその履行状況を確認しており、不履行の評価を受けた項目については、その後二年ごとにフォローアップ審査を受け、改善状況について説明を求められております。また、勧告の重要な部分について不履行と判断された場合には、勧告を履行していない旨の声明の発表、あるいは非協力国の金融機関等に対する各国による対抗措置、勧告が履行されるまでのメンバーシップの停止、FATFからの除名処分などといった制裁を受けることがあり得ると承知しております。

 また、このような制裁手続によらずとも、我が国の金融機関や企業に対する国際的な信用に影響を及ぼすこともあり得ると考えております。また、国際連携が不可欠なマネーロンダリング及びテロ資金対策の阻害要因との批判も懸念されております。

 今後とも、FATFの勧告の改定等の協議の場においても、我が国の実情、法制について、必要な説明はしてまいりたい、このように考えております。

    〔七条委員長退席、河本委員長着席〕

平岡委員 今の答弁であったように、FATFの勧告については、閣僚レベルでの交渉もしていない、ただ単に関係省庁の人が集まって交渉に行って決めましたというものであって、国内的にも、これが拘束力があるという問題について国会が承認するといったようなことも行われていないという実態があるわけですよね。

 また、先ほどの神崎委員の質問に対する答弁の中でも、OECD諸国の中でも、米国、カナダについては、疑わしい取引の届け出義務というものについては法制化されていないといったこと、あるいは、新聞なんかを見ますと、ベルギーとかポーランドでは、そういう制度については憲法違反ではないかというような形で訴訟が起こされている。

 こういう状況にあるということで、私は、対日審査でただ単に、先ほど溝手委員長が説明されたように、お許しを請いたいというような趣旨の説明をするにとどまらず、FATFの勧告の見直しそのものをやはり当局の責任でやっていくべきだ。今回こういう法案にとどめたという節度を政府として示されたんですから、その姿勢を国際交渉の中でしっかりと示していくべきだというふうに思いますけれども、溝手委員長、その気持ちはありますか。

溝手国務大臣 我々は法案の直接の責任部署でございまして、FATFの勧告につきましては、今先生おっしゃったのと若干ニュアンスの違う受けとめ方をしておりますが、近年では、サミットの財務大臣会合や七カ国の財務大臣・中央銀行総裁会議におきまして、FATFとの協力関係とかFATFの勧告の履行確保についても連続して言及をされ、これらの遵守ということがなされているわけでございます。

 この問題については、何らかの指摘を受けると思いますがということを先ほど申し上げました。しかし、日本が今回とった措置については、その正当性を訴えてまいるということは、神崎議員にもお答えしたとおり、理解を求めてまいりたい、このように考えているところでございます。

平岡委員 正当性を訴えるといったって、何に基づいて正当性を訴えるんですか。対日審査のときに正当性を訴えると言われましたけれども、何に基づいて正当性を訴えるんですか。

溝手国務大臣 日本の今回とった措置がFATFの会合において許容できる範囲であるということを訴えていきたいという意味でございます。

平岡委員 だから、何に基づいてそれを主張するのかということを聞いているんですよ。ただ単に、許容できるんじゃないですか、許容してくださいということを言うのじゃなくて、FATFの勧告のここに基づけばこういう取り扱いになる、これで我々としては義務を果たしているんだというような説明ができるんですかということを聞いているんですよ。

溝手国務大臣 FATFに参ってどういう説明をするかというのはここでつまびらかにすることも必要ないと思いますが、我々は、現在までのところ協議した内容で日本国としての態度を取りまとめたということでございますから、そういう意味で申し上げたことでございます。

平岡委員 だから、現行の勧告で正当性が主張できるのならぜひそれをしてほしいというふうに思うんですけれども、先ほど来の答弁でいけば、現行の勧告に基づいて正当性が主張できる根拠が必ずしも明確に示されていないんですよね。だから、私が言っているのは、もし勧告に基づいて正当性が主張できないのなら、勧告そのものを見直すという努力を政府として行っていくということをしなければいけないじゃないかということを指摘しているんですよ。どうしてそれができないんですか。

溝手国務大臣 勧告を改正すべきだ、改定すべきだという立場はとらないわけですが、我々としましては、日本の弁護士会との協議の経緯、日弁連の自主的な取り組みという結果をいただいたわけでございまして、その上に立てば、あなたのおっしゃるように黒か白かと言わなくても、これは国家の外交上の問題ですから、受け入れていただけるそれだけの理由はあるのではないか、このように考えておるところでございます。

平岡委員 先ほどの小さく産んで大きく育てるという話は、これは自民党の中の話として報道されていますけれども、警察庁の幹部について言えば、士業も対象にすることは宿題として残されているんだということを明確に言っておるわけですよね。だから、そういう認識であるならば、幾ら正当性を主張したって、相手が受けてくれるとは限らない。

 だから、もし受けてくれないというような事態があるなら、さらに勧告の中身についても、我々が、こうあるべきだ、日本の国内の制度からしたらこうならざるを得ないんだということを主張して、勧告そのものについて我が国の状況が受け入れられるようにしていくという努力をするのが政府の使命じゃないですか、役割じゃないですか。それをするということを約束してください。

溝手国務大臣 我々は、先ほど申し上げたとおりですが、今回の日本国においていろいろ協議した中身でFATFの理解を得たいという立場に立つところでございます。

平岡委員 理解を得たいという立場に立つのなら、理解を得られるということをここで確約してください。理解が得られるという確約ができないのだったら、理解が得られない場合には勧告の見直しも含めて努力していくというふうに答弁してください。

溝手国務大臣 相手もいることですから、理解を得られる確約というのは、それはどの問題においてもなかなか難しいと思いますが、不退転の決意でこれに対応したい、このように思っております。

平岡委員 FATFの勧告を見直すということで我が国がイニシアチブをとれないというのは、政府の姿勢として極めて不十分だと私は思いますね。この点は、今ここで議論しても、多分今までの流れからいえば押し問答になるような気がしますから、これ以上は言いませんけれども、私は、もし対日審査の中で理解が得られないということがあるならば、FATFの勧告そのものを見直すという、その姿勢で政府は臨んでいくべきだということを指摘させていただいて、次の質問に移りたいというふうに思います。

 現行法で、疑わしい取引の届け出については金融庁が所管をしているという仕組みにはなっているわけでありますけれども、ちょっと疑問に思うのは、金融庁では大体、例えば昨年だと十一万件ぐらいの届け出があって、そのうち七万数千件が提供されているというような状況で、四万件ぐらいが何もされない状態になっているわけですけれども、この状況というのは、どういうものについては提供されていないということなんでしょうか。そして、提供されていないものについてはどういう情報の管理がされているのか、この点について答弁願います。

大村副大臣 お答えを申し上げます。

 金融庁では、金融機関等から届け出を受けた疑わしい取引に関する情報のうち、組織的犯罪処罰法第五十六条第一項の規定に基づきまして、検察、警察等の捜査機関における犯罪捜査等に資すると判断される情報を各捜査機関等に提供してきているわけでございます。

 それが、委員御指摘のように、昨年の実績で、金融機関等からの届け出が十一万三千八百六十件、そのうち捜査機関等に提供を行ったものが七万一千二百四十一件、約六三%ということでございます。提供を行わなかったものが四万二千六百十九件、約三七%というのは、御指摘のとおりでございます。

 この点につきましては、要は、犯罪捜査に資すると判断される情報を提供しているということでございまして、残りのものは、多くの場合、もう既に捜査関係のところに照会しているといったようなものがこういったデータといいますか、提供される情報の中についております。そういったものが、写しがついていたり、例えば備考に書いてあったりというようなことでございます。そういうことで、捜査機関等がもう既に情報を把握しているということで、改めて提供を行っても捜査機関等における捜査に資することがないということが明らかな場合のものは、あえて提供しないということで振り分けているということで御理解をいただければと思います。

 なお、そうしたものにつきましても、この提供をいただきました十一万三千八百六十件、これはすべて金融庁の中でそういったデータベースとして管理をしているところでございます。

平岡委員 提供する必要のない情報を金融庁でデータベースとして保管している、その必要性というのは一体何ですか。そんなものは必要ないんでしょう。本来の目的に基づいて届け出をしてもらったもので必要のないものが来たら、その必要のないものは消去する、削除する、そういう処理をすべきではないんですか。金融庁としては、なぜそういう必要性のないものについてデータベース化して、聞くところによると、十五年間も保存することになっているというふうに聞いているんですけれども、必要性のないものをいつまでも保存しておくということは私は不適切だと思いますけれども、どうですか。

大村副大臣 この点につきましては、ただいま申し上げましたように、金融機関等から届け出をいただいた十一万数千件のもの、一応これは今、金融庁におきまして、特定金融情報室というところで一元的に受け付けて管理をしているということでございまして、その点につきましては、情報として受け付けたものについては金融庁の情報の管理ということの中で一括してデータベースとして保存をするということでございます。そのことは、今委員御指摘のように、保存期間は金融庁の内部規則といいますか、金融庁行政文書管理規則によりまして、十五年ということにしているところでございます。

 何で十五年かということでございますけれども、この点につきましても、捜査機関等へ提供する可能性があるということでございまして、犯罪捜査の公訴時効期間等を考慮いたしまして、保存期間を十五年にしているということでございます。

平岡委員 今の答弁に満足しているわけじゃないんですけれども、話の都合上、次へ移りますと、では、検察官等に提供された疑わしい取引に関する情報についてでありますけれども、これらの情報については、どのようにしてどれくらいの期間保存されているのか。この点について、国家公安委員長あるいは法務大臣、これは検察官の関係ですけれども、御答弁願います。

長勢国務大臣 金融庁長官から検察官等へ提供される疑わしい取引に関する情報につきましては、最高検を窓口として提供を受けております。

 検察庁においては、現在、全国の検察庁をネットワークでつなぐシステムを構築して、提供を受けた情報は最高検に蔵置されたサーバーで保存管理し、これに対しては、アクセス権限を付与された検察官等がアクセスをして、必要な情報を入手して捜査に活用する、こういう仕組みになっております。

 この情報は、捜査の端緒等、捜査に関する情報として役立てるものでありますので、現在のところ、特別に保存期間を定めているというわけではございませんで、捜査に必要な限りにおいて保存しておるという状況でございます。

溝手国務大臣 疑わしい取引に関する情報につきましては、犯罪収益隠匿罪やその前提犯罪の捜査への活用の必要性を勘案しながら利用したり保管したりしております。

 保存期間については、情報の内容及び用途により一律に定めることは困難なところであり、現在は一律の基準は設けていないところでございます。

平岡委員 今までの取り扱いについて言うと、これは入国管理なんかのときにも指摘をさせていただいておるんですけれども、当局が法律に基づいて取得した情報について、これをデータベース化してさらに活用する、いろいろな情報と突き合わせることができるということでありますから、私は、こういう情報についてはもっと基本的原則というものを法令レベルでしっかりと決めていかなければいけないというふうに思うんですね。ただ単に内部の運用だけでやっていたのでは、一体どういうことが政府の中で、特に捜査機関の中で行われているのかということが全くわからないというような状況では、これは余りにも我々として無責任だというふうに思います。そういう意味で、入国管理のときにも申し上げたように、こういう問題についての基本的原則をしっかりと法律で定めていくということが必要だというふうに私は思うんです。

 それに関連して、今回、法律改正によって、国家公安委員会がすべての届け出情報あるいは通知された情報について入手をするという仕組みになるわけですね。これまでは金融庁が一応スクリーニングをしているということでありましたけれども、これからはスクリーニングがないという状況になってきます。他方、国家公安委員会、警察庁の方では、警察総合捜査情報システムというものをこれからつくっていくということが言われているわけでありまして、そうなると、警察が保有する情報と、こういう形で届けられたあるいは通知された情報、これは必ずしも犯罪の情報ではないわけでありまして、疑わしいというだけの話で、この前から議論されている中では、警察は七万件の通知を受けたものでたった五十件しか摘発がされていないという、残りの七万件はほとんど犯罪とは関係のないものとして取り扱われているものが、今回、警察の中でいろいろなデータベースと突き合わされて連動されて検索される、こういう大がかりなシステムができちゃうわけですね。

 この点について、私は、非常に問題が大きい。この問題はここで議論するのでは十分でなくて、本当はもっともっと大がかりな議論をしなければいけないと思うんですけれども、国家公安委員会の方では、今回、疑わしい取引としての届け出あるいは通知される事項について、警察総合捜査情報システムの中で連動させていくという方針を持っているのかどうか、そのことをまず確認させていただきたいと思います。

溝手国務大臣 お答え申し上げます。

 本法案の第九条第四項の規定により届け出または通知された事項の整理分析においては、当該事項相互の関連性や組織犯罪に関連する情報を総合的に活用してまいりたいと考えておりますが、捜査に活用する場合の分析手法の詳細につきましては、これは犯罪捜査に密接に関連する事項でございますのでお答えは差し控えたいと思いますが、いずれにしましても、疑わしい取引に関する情報については本法の規定に基づき適切に処理してまいりたい、このように考えております。

平岡委員 本法には、これをどういうふうにして利用するのかということは何も書いてないんですよ。ただ単に収集をするということ、それを捜査に生かすというだけ、それだけしかないんです。先ほど言った部内的にどういう管理をするかというようなことについても、一切この法律の中では何の規制もない。そんな状態の中で、法律に基づいて、本法に基づいて適切に対処していきたいという答弁では、全く白紙委任をしているのと同じだと思いますね。そういう意味では、この法案というのは極めてずさんな法案だと思います。

 いずれにしても、個人情報の保護の問題についてはもっともっと大がかりな検討をしなければいけない時期に来ているというふうに私は思いますので、その検討はまた別の機会にやっていただくとして、今回のこういう仕組みについて言えば、あるいは先ほど来国家公安委員長が答弁されているような情報の管理の仕方、利用の仕方からいえば、個人情報の保護、自己情報コントロール権とも言われますけれども、この考え方に全く反しているんじゃないかというふうに私は思います。

 そういう意味では、とりあえず、国家公安委員会としては、行政機関が保有する個人情報について、行政機関保有個人情報保護法との関係でどのように理解をされているのか、私はこの法律に違反しているのではないかというふうに思いますけれども、その点についての見解をまず伺っておきたいと思います。

溝手国務大臣 お答え申し上げます。

 犯罪捜査や犯則調査の分野においては、さまざまな情報が、被疑者が望まない方向、すなわち、公訴が提起されて罰則が適用される方向で使用されるというケースがありますが、これはやむを得ないところであり、行政機関個人情報保護法においても一定の特別の扱いがされているものと承知いたしております。

 今回の疑わしい取引に関する情報は、まさに犯罪捜査や犯則調査のために用いられる情報であり、その意味では、当該個人情報によって識別されるいわゆる本人の権利につきましても、他の分野とは異なり、一定の制約もやむを得ないものではないかと考えております。

 しかし、昨今の情勢にかんがみ、警察としても、個人情報の保護は極めて重要な課題と認識しており、法令の規定を遵守することはもちろんでございますが、行政機関個人情報保護法の本来の趣旨を念頭に置きつつ、慎重にこれを取り扱ってまいりたい、このように考えております。

平岡委員 そういう答弁をしていただいたんなら、あえて資料等を求めたいと思います。

 今回、この新しい法案によっていろいろな届け出がされたり通知がされたりする、その情報について、どのように保有し、どのように管理し、どのように運用していくのか、これについての全体像を示す資料を要求したいと思います。国家公安委員長、どうですか。

溝手国務大臣 これは、今から法律の施行にかけていろいろ検討してまいるネタになっていると思いますので、各方面と協議して、また委員会にもお諮りをしてまいりたいと思います。

平岡委員 本来であれば、こういう問題については法律できっちりと原則を定めて、その原則の中でどういうふうにしていくのかということを、我々として、立法者として考えていかなければいけないというふうに思います。その立法がまだ出されていない状況の中では、とりあえずは行政府内で、政府の中でどういうふうにされていくのかということについて、私はしっかりと確認させていただきたいということで要求しておきたいと思います。

 委員長、これは理事会で資料として提出していただくことを協議していただけますか。

河本委員長 理事会で協議します。

平岡委員 委員長、そんなに憮然としないでください。しっかりと審議をしたいと思いますので。

 次に、この疑わしい取引について言えば、私が聞いているところによれば、疑わしい取引の届け出の、どんなものを届け出るのか、どういうものが疑わしい取引なのかというようなことについてのガイドラインをつくっていくんだということで聞いております。

 これは、金融庁がこれまでつくってきたガイドラインというようなものを参考にしているんだと思いますけれども、今回の法案でいくと、対象業種が非常に広くなっており、しかも、これまでであれば、銀行協会であるとかいろいろな協会等を通じてやればそれなりのガイドラインがつくれたんだろうと思いますけれども、今回対象となっている業種について言えば、必ずしもそうしたしっかりとした協会があるとは言えないようなものも私は含まれているんだろうと思うんですね。そういう意味でいくと、これまでのようなやり方でこの疑わしい取引の届け出の対象となるものを決めていくということは、私は不適切だと思うんですね。

 この届け出義務に違反をすれば、これは行政処分の対象になり、あるいはひいては罰則の適用にもなるということでありますから、私はしっかりと、この疑わしい取引の届け出の対象となるものについては、責任を明確にするという意味で、例えば主務省令のような法令で明確に定めていくべきだというふうに思いますけれども、この点について、国家公安委員長、見解を述べていただきたいと思います。

溝手国務大臣 行政処分の罰則適用ということでございますが、繰り返しとなりますが、個別的な取引が疑わしい取引に該当するか否かというのは業界によって随分違いますし、業界における一般的な知識であるとか経験というのを前提にして、顧客の属性、取引時の状況その他、事業者が保有している具体的な状況を総合勘案して判断をする必要があると考えます。したがいまして、主務省令を含む法令によりこれを網羅的に定めるような性格のものではないと我々は考えております。

 むしろ、業界関係者の知見を十分に活用しつつ、取引実態や業務への影響を踏まえたガイドラインを届け出の目安として作成して、その後も情勢の変化に応じて適宜弾力的に見直していくことができる必要があると考えております。

 以上でございます。

平岡委員 いや、何も、主務省令で定めるとか、一方的に定めて、役所が考えていることをそのまま書けと言っているんじゃなくて、それぞれの業界の知見も活用する、業界への業務の影響もそれは当然勘案する、しかし、最後につくるのは、責任を持ってつくるのはそれぞれの主務官庁である。そうでなければ、これは、先ほど言いましたように、疑わしい取引の届け出義務に違反すれば、是正命令が出されたり、行政処分がされたり、そして最後は罰則までかけられるというような事態になるわけですよね。我々、何をしたら自分が行政処分の対象とされてしまうのか、あるいは罰則の適用を受けてしまうのか、このことがわからないような状態の法律をつくって弾力的に適用していきますというのは、これは罪刑法定主義にも反する話ですよ。

 やはりこれは、それぞれの行政官庁が責任を持って、主務省令で疑わしい取引の届け出の対象となるものは一体何なのかということをしっかりと定めるべきだというふうに思いますよ。どうですか、国家公安委員長。

溝手国務大臣 疑わしい取引を法定しろという御主張でございますが、我々といたしましてはガイドライン方式を今回提案させていただいておるわけですが、各省庁で、業界の意見を踏まえ、しっかりとこれを定めていくということでよろしいのではないか。また、当然、パブリックコメント等も利用しまして国民の意見も広く求めてまいりたい、このように考えております。どうぞ御理解をいただきたいと思います。

平岡委員 溝手委員長は、法定という言葉を使われたから、法律で一々定めなければいけないというふうに受けとめられているのかもしれませんけれども、私は決してそんなことは言っていないんですよ。法律は法律でちゃんとした委任規定を置いて、それを主務省令、省令で定めればいいと、そこまでおりているんですよ、私は。

 しかし、それをガイドラインみたいな形でやってしまうのは、今までとはちょっと違うんじゃないでしょうか。今まで金融庁がやっていたときは、それぞれそれなりにしっかりした協会のようなものがあって、うまく話をすればそれなりにいいものができたのかもしれません。しかし、今回は、対象業種も膨大に広がってきてしまった。その広がってしまった業種の中には、必ずしもしっかりと自分たちの意見が述べられるかどうかわからないような状態の業界もあるんだろうと思うんですね、組織的に。そういう意味でいったら、やはり最後は、この疑わしい取引の届け出の対象となるものは何なのかということを責任を持って決めていくのはそれぞれの主務官庁じゃないかということで、それは主務省令で定めてくれと言っているんですね。

 何も私は無理なことを言っているつもりはないですけれども、どうしてできないんですか、それが。

溝手国務大臣 繰り返しの答弁になりますが、具体的に個別の取引が疑わしい取引に該当するか否かについては、具体的な状況を総合的に勘案して、当該事業者において判断する必要があると考えております。したがいまして、主務省令を含む法令により網羅的に定める性質のものではないというように判断をしておりまして、先ほど申し述べたとおりでございます。

 むしろ、業界関係者の知見を十分活用して、取引実態や業務への影響を踏まえ、弾力的にこれを見直していくことが重要ではないかと考えているところでございます。

平岡委員 業界の知見を活用することも、弾力的に運用することも、私は否定はしていないんです。ただ、先ほど言いましたように、行政処分につながったり罰則適用につながっていく話だから、しっかりとした基準は主務官庁が責任を持ってその対象を定めるべきだということを言っているんですね。

 今までの答弁は全く納得できませんので、この点については、私は、ぜひ主務省令で定める仕組みの改正をしていただくことを要望しておきたいというふうに思います。

 次に、警察の立入調査の話なんですけれども、今回の法案では、第十七条に国家公安委員会の意見の陳述ということが定められ、その意見の陳述をするに当たって、必要があれば警察にそれぞれの業者のところに立入調査、立入検査をさせることができる。警察が令状もなしにそれぞれの業者のところに行って、ちょっと調べさせてくれというようなことで、そういうことができるようになっちゃっているわけですよね。

 これについてちょっとお聞きしますと、こういう警察による立入検査の制度を設けることはFATFの勧告の中で義務づけられているんですか、どうですか。

溝手国務大臣 行政庁によるものも含め、どのような検査や監督制度を設けているかというのは、原則として各国にゆだねられているものと認識しておりますが、FATF勧告は、その制度が効果的で適切であり、抑止力のあるものであることを求めております。二〇〇四年七月の国際通貨基金によるFATFの勧告遵守状況の国別報告書によれば、我が国の実地検査及び報告徴収に関する評価は必ずしも高くないものと認識をいたしております。

平岡委員 必ずしも高くないと言われたって、我々はそんなもの、ちゃんと説明も受けていないので、それは一方的な御判断だろうと思いますけれども、少なくとも今の答弁で言えたのは、FATFの勧告の中では警察の立入検査については義務づけられているものではないんだということが明確になったと思います。

 そこで、さらにお聞きしますと、これまでの法制度の中では、例えば組織的犯罪処罰法とか金融機関本人確認法等の中では、警察の立入検査というのは認められていなかったというふうに思いますけれども、そういう理解でいいですよね。

溝手国務大臣 これらの法律につきましては、警察は捜査機関として以外にその施行事務を担当しておらないわけでございまして、金融関係の場合、当然に事業者に対して立入検査を行うなどの規定も設けられていない、このように思っております。

平岡委員 これまでは行政機関がそれなりにやっているということで警察にはなかったのかもしれませんけれども、その事情というのは、別に警察がFIUになったからといって変わるものじゃないんですよね。だから、これまでのように行政機関がしっかりとやるという仕組みを前提として私は十分じゃないかと。FATFの勧告の中でもそのことを求められているわけでもない。逆に言うと、警察の人が、突然、例えば宅建業者のところとかいろいろな金融機関とかにやってきて、おたくのことをちょっと調査したいというふうにやってくる方が、私は何か社会的に見て物すごく大きなインパクトがあり過ぎるんじゃないかというふうに思いますね。

 そういう意味でいくと、ちょっとこれはどんなイメージなんですか、皆さん方が描いている警察が立入調査、検査をこの法律に基づいてするというのは。捜査令状もなしにやってくるわけでしょう。警察手帳か何かを見せて、警察ですけれどもこれからちょっと調査させてもらいますということでどかどかと入ってきて、見せろ見せろというような形でやるんですか。どうも私はちょっと理解ができない、イメージができないですね。どんなイメージで皆さんはこの立入調査、立入検査というのを考えているんですか。

溝手国務大臣 対象となる業種や想定される違反の内容によってもちろんイメージは異なると思いますが、指示を受けた都道府県や警察の職員において所与の体制で検査をすることになると思っております。

 検査によって得られた情報の報告徴収、立入検査は、あくまで本人確認、取引記録の保存等の義務が果たされているか否かを確認する行政目的のものであって、犯罪捜査のために必要な情報を入手する目的で行くものではございません。調査で得た資料は、犯罪調査目的で都道府県警察に提供することはできないものとされております。本法施行の段階におきましては、情報管理を徹底し、目的外使用が行われることがないよう、国家公安委員会規則を制定するなどして対策を講じてまいりたいと思います。

 なお、立入検査については、法律上、所管行政庁とその協議手続が前置されているほか、その承認について国家公安委員会の議決を要するということになっているものでございます。

平岡委員 国家公安委員会、国家公安委員会というふうに言われますけれども、実態は、国家公安委員会というのは要は追認機関みたいなもので、警察庁がすべてのことを取り仕切っているんでしょう。溝手委員長も何かそんなふうな顔をされているじゃないですか、今。そういうような警察中心の立入調査というものが行われるというようなことは、私はちょっとおかしいなと。

 憲法第三十五条に定められた令状主義というものがあって、権力が強制的に情報を捜索していくというようなものについては、やはりこれは基本的には令状主義だと思いますね。行政庁がそれぞれの行政目的に基づいてやるという検査については、また別途の考え方があると思いますけれども、事は、これは行政目的といったって、警察が最終的には摘発をしていく、それを前提としてこういうことが行われているわけでありますから、これは捜査目的で行われているものじゃないと言われたって、そんなこと、だれが信じられますか。

 私は、この十七条、少なくとも二項から五項までは、令状主義の精神に反するものであるし、社会的に非常に、余りにもインパクトが大き過ぎる。今回、国家公安委員会をFIUにするにしても、そこまでの権限をここに今回与えるのは、私は時期尚早であるし、不適切だというふうに思います。ぜひ削除していただきたい。このことについて国家公安委員会委員長の御見解を承りたいと思います。

溝手国務大臣 お答え申し上げます。

 国家公安委員会は、警察のために一生懸命働いております。(平岡委員「警察のためじゃないです。警察のためにあるわけじゃない、それは」と呼ぶ)いや、警察庁をしっかり管理監督するために働くのが国家公安委員会の責任でございます。このとおりだと思います。国家公安委員会は、法と証拠に基づき、必要なことは警察が動いていただくよう管理監督をしてまいりたい、このように考えております。

 さて、先ほどの話でございますが、十七条に規定される行政調査は、国家公安委員会が意見陳述を行うために事実関係を確定するために行使する権限であり、このため、意見陳述以外の目的で行使されることはなく、得られた資料も犯罪捜査のためのものとは明確に区分して管理されると思っております。決して憲法三十五条に違反するものではない、このように考えております。

 また、削除すべきとの御見解でございますが、この制度は、複数の所管にわたる特定事業者が関連する場合など、事実を横断的にかつ確実に把握し、均衡のとれた的確な監督を行うためには、ぜひ必要な制度であると考えております。いろいろ御指摘いただきました問題点は認められず、我々としては削除する必要はないものと考えております。

平岡委員 これまでの法制の中では警察の立入調査というのはなかったんですよ。今回警察の方にFIUが移っていくということで、何か無理やりつくってきた、この際、ある意味では火事場泥棒的にこんなものをつくろうとしているというふうにしか私は思えないですね。しかも、令状主義に反する危険性、危惧が非常に大きい。こういうことからすれば、私は、この十七条の二項から五項までは絶対に削除していかなければいけないというふうに思います。

 そのことを申し上げて、私の質問を終わります。

河本委員長 次に、高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 溝手委員長に、今の平岡委員の質問を私も伺っていまして、警察の立入調査とか、その件についてもなんですけれども、溝手委員長自身は、疑わしい取引を確実に根絶していくためには、もちろん令状主義の原則は守った上だとは思うんですけれども、本当に、令状がなくてもどんどん警察がいろいろな業者のところに立ち入って調査をしていく、こういう書類を出してください、こういうことをやっていくべきなんだ、こういうふうに考えていらっしゃいますか。ちょっと、まずそこを教えてください。

溝手国務大臣 そういう立入検査はできるだけしない方がいいと思っておりますし、する必要がない世界がより結構じゃないかと思っております。

高山委員 それでは、どうして、この勧告にもないのに、わざわざ日本で立入検査をするようにつくったんですか。

溝手国務大臣 我々の状況判断により、現下の日本では必要であると判断しておるわけでございます。

高山委員 現実に令状主義が今形骸化していると言われている中、それをさらに形骸化しかねないこういうことをどんどん進めていって本当にいいのかなと思うんです。

 この点にちょっと関連して、今、安倍内閣の閣僚で農林水産大臣を務められている方が事務所費の問題で、随分マスコミにも言われていますし、先日の農水委員会でも随分追及をされていたんです。あの農水大臣の方は、法律で求められていることをやっているからこれでいいだろうというようなことなんですけれども、疑わしい取引とまでは言いませんけれども、疑いをかけられていて、だって、事務所費、家賃がゼロ、水道代もゼロのところで、水道代、光熱費、五百万も計上しているわけですよね。

 例えば、こういうような不自然な計上が見つかった場合には、これはFIUの方でも、例えばこういうのが一般の会社であれば、実際、事務所費もただのはずだし、水道代、光熱費なんかも無料のところであるはずなのに、随分、年間五百万とか六百万とか計上している、そういう何か個人の事務所があった場合、ひょっとして何か裏金とか脱税とか絡んでいるんじゃないかということで、検査に当然入っていただけるんでしょうか。

溝手国務大臣 この合同委員会において、そういう個別の問題にコメントをする立場にないと私は思っております。

高山委員 いや、国家公安委員長、個別の問題にはと、そういうふうにおっしゃりますけれども、一般のいろいろな業者の方や一般市民の個別の取引に、みんなこれは怪しいんじゃないか怪しいんじゃないかということでどんどんFIUに上げさせる、それで政治家の件に関しては、甘く、身内だから守っていこう、これではなかなかこういう新しい制度も国民の間に浸透しないんじゃないのかな、そういう危惧を持っているので私はちょっと質問したんです。

 まず、これは金融庁でしょうか。

 きょうは、金融担当大臣も呼んでくださいという話をしていたんですけれども、いらっしゃってない。しかも、配ったこの法律案を見るとずらっといろいろな省庁が出ているにもかかわらず、なかなかその担当の大臣もお越しいただけないで、担当の大臣も全然出てこないで、各業界にそれぞれガイドラインをつくれだとか、怪しいものがあったら全部報告しろと、これではなかなかうまくいかないんじゃないですか。実効性がないんじゃないのかなと私は思います。

 これを先行してやっていた金融庁の担当の方に伺いますけれども、これは最近急に十一万件とかふえていますけれども、始まった当初は全然これは報告が少なくて、急に昨年十一万件とかぎゅうっとふえているのはなぜですか。

大村副大臣 今委員御指摘のように、この疑わしい取引の届け出件数は年々増加傾向にございまして、特定金融情報室が設置された平成十二年には年間約七千件であったものが、昨年は十一万三千件に達しております。

 この要因といたしましては、平成十三年九月の米国同時多発テロに起因をいたしまして、平成十五年一月から本人確認法の施行等を受けました金融機関側のマネーロンダリング対策、またテロ資金対策等に対する意識の向上、そしてまた、金融機関向けに金融庁が実施をしております研修等の啓蒙活動の効果などなどによりまして、こういう届け出の件数がふえてきたのではないかというふうに認識をいたしております。

高山委員 金融機関の、疑わしい取引というのはこういうのだというので啓蒙活動が進んできて、だんだんふえてきたということで、疑わしい取引を根絶するためには、なるべくそれは細かいものまで上げた方がいいというので、私もそれは一定の理解は示すんですけれども。

 では、総務省の所管の業界というのはどういう業界があるのかということと、その業界に関連しての疑わしい取引というのは一体どういうものなのか、きょうは総務大臣を呼んでいますけれども副大臣対応ということなので、副大臣、お願いします。私書箱とかそういうものでしょう。

大野副大臣 今、業界というお尋ねでございますけれども、電話の受付代行業、こういう仕事がこの関連をしている業界であろう、こう思っております。

高山委員 その電話の受付代行業における疑わしい取引というのは、どういうものがありますか。

大野副大臣 疑わしい取引ということでございますが、疑わしい取引の届け出が必要となる場合は、顧客が会社等の実態仮装をする意図でサービスを利用する意図があり、それがマネーロンダリングやテロ資金の供与に用いられていることを契約事務の過程で知った場合、これに限定されることだと思います。

高山委員 それをもし契約の過程で知った場合、これは疑わしいどころか完全に黒だと思うんです。

 今回のこの法案からしてみると、外形上はわからないんだけれども疑わしい取引だと。だから、金融庁の方はいろいろな基準がありますね、多額のだとか、何かいろいろあるんですけれども、私書箱ですとか郵便物の受け取り、電話サービスで、どういうのが一体疑わしい取引になるのかというのが、非常にこれは、実際、業者の方もわかりにくいですし、これを利用する一般国民もわかりにくいと思うので、担当の副大臣からもう一回丁寧に説明してください。今言ったのは完全に黒じゃないですか。

大野副大臣 犯罪による収益の移転防止に関する法律、この施行にあわせて規制対象となる業界の実態あるいは現在運用されている金融庁のガイドライン等、こういうものを踏まえまして、疑わしい取引の届け出について明確化するガイドラインをこれから策定してまいる考えでございます。

高山委員 いや、何かすごくわかりにくいなという感じがいたします。

 では、念のため、次も伺いますけれども、貴金属取引業者というんでしょうか、これの担当は経産大臣になるんでしょうか。これはどういうものが疑わしい取引に当たるのか、また、その対象となるのはどういう業種の方がいるのか、教えてください。

渡辺(博)副大臣 今般の法律の中で対象となります経済産業省所管の形態として、まず、今委員御指摘のとおり、貴金属取引業者、そしてファイナンスリース業者、クレジットカード業者、郵便物受取サービス業者という四業者が所管をするわけであります。

 その中で、貴金属の取引業者につきましてどのようなものが疑わしいかということだと思いますが、多額の現金によって取引を行う場合、また、少額であっても頻繁に現金により行う取引であって結果として多額である場合、顧客の収入、資産等に見合わない高額な取引等が現在考えられておりますが、いずれにしましても、こういったものにつきましては実態を把握していかなければならないということで、現在、各事業者と協議をしておりまして、類型化の作業中でございます。

高山委員 では農水副大臣に伺いたいんですけれども、農水副大臣に伺うのは事務所費の問題ではなくて、農協や漁協などから見た疑わしい取引というのはどういったものがあるのか、教えてください。

山本(拓)副大臣 疑わしいというものは、いわゆる銀行と同じでございまして、多額の振り込みとか、そして異常に頻繁に行われるものということになっておりまして、要するに、農協その他の農林水産省管轄としては、全国的にその対象となる事業数は二千百十一カ所の事業所を対象といたしておりまして、昨年の実績でいきますと、そういう、このぐらいの規模の人が極端にという、どう見ても常識的に疑わしいという高額の取引をしたようなものが約〇・〇八%、八十九件ほどございます。

高山委員 今の副大臣の、これぐらいの規模の人が極端にというのは、事務所費ゼロの議員会館に入っている人が五百万円も例えば計上しているとか、そういうようなときはやはり怪しいというふうに当然思ってもらえるものだと思うんです。

 国土交通大臣に伺いますけれども、宅建業者ですか、これはどういう取引が疑わしい取引というふうに見ればいいんでしょうか。

渡辺(具)副大臣 不動産の売買に関しまして、疑わしい取引につきましては、既に金融庁が金融機関等について公表しております疑わしい取引の参考事例など参考にしながら、また業界団体の意見も聞きまして、また、警察庁にも犯罪収益移転の実例等に関しましていろいろ協力をいただきながら、国土交通省として基準となるガイドラインをこれから作成したいというふうに考えております。

 今の時点で私ども考えております内容につきましては、短期間のうちに頻繁に取引を現金で行う場合であるとか、取引の秘密を不自然に強調する顧客の場合とかなどを考えておりますが、先ほど申し上げましたように、金融機関等の例を参考にしつつ、不動産取引の実態も踏まえまして、顧客の状況や取引の形態が不自然と考えられる事例を示すことになるというふうに考えておりますが、これから具体的な検討をしたいというふうに考えております。

高山委員 各担当の大臣に大体伺ったんですけれども、皆さんこれからやるんだというようなお話なんです。

 きょう官房副長官にもお越しいただいていると思うんですけれども、これは金融庁だけで去年十一万件ですね。この調子でやったらとてつもない分量の情報が集まってくると思うんですけれども、まず一点は、このFIUというところに全部情報がわあっと集まってきて、それでこれは本当に処理できるんですか。ただデータベースとして、わあっとファクスなりメールなりがたまっていくということになりはしませんかね。どうですか、官房副長官。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 御質問のとおり、FIU機能は金融機関を所管する金融庁が担っていたわけでありますけれども、今御指摘のような金融機関以外の業種もその対象にするということになり、国家公安委員会、警察庁に移管されることになったわけでございます。

 今までも二十人余りの組織で十万件を超える処理をされてきた、今回はその倍の、とりあえず四十人規模で始めるということでございますので、かなりの数はきちっと対応できるものと考えております。

高山委員 それでは、もう一つ官房副長官に伺います。

 ウィニーというソフトによる情報流出が随分昨年は顕著にあらわれまして、それで、安倍官房長官、当時ですけれども、随分、注意の徹底ですとか、そういう呼びかけがあったんですけれども、警察庁が一番何か情報管理に関してランクが低くて、たしかDランクで、実際、各県警で随分いろいろと捜査情報等の漏れがあったわけなんです。

 いろいろな情報を今まで金融庁に集めていたものを今度FIUでやられるということですけれども、事実上これは警察庁が担う部分は大きいと思うんですけれども、これだけ物すごい大量な情報を集めて、しかもその情報はどういう情報かというと、だれさんがいつ疑わしい取引をしたという、極めて、漏れた場合にプライバシーの侵害どころか名誉毀損にもなりかねないようなすごい情報ですよね。とある農水大臣が今こうしているとか、こういうことだけでも十分大きい問題になっているのに、今度一般の人が、あの人が何か不都合な取引をしているんじゃないかという情報が漏れちゃうわけですよね。まず、このFIUをつくるに当たり、そういう情報管理を今まで以上に何かプラスして徹底している部分があれば教えてください。

下村内閣官房副長官 先ほどもお答えいたしましたが、今度のFIUにおきましては、人員も倍ぐらいにふやすということでございますし、もともと捜査の専門組織でもございますから、今までのノウハウを生かしながら適切に対処できるものと考えております。

高山委員 副長官、だから、ウィニーの情報流出を踏まえて、当時の安倍官房長官も、今の総理ですけれども、これはもう徹底して各省庁でしっかりやらなきゃいけないと。そのとき、警察が一番ランクが低かったんですよ。そういうことを踏まえて、どういうふうに情報管理したらいいか。もっと言うと、人がふえるということは、余計情報漏えいのおそれもふえるんですよ、携わる人間がふえればふえるほど。だから、ウィニーに関して、まずどういう情報管理をするのか。

 多分、先ほども金融担当の副大臣からもありましたけれども、いろいろデータベースを今十五年間ですか、ためているということですよね。これは、この調子でいったら、膨大な量の、だれさんがいつ疑わしい取引をしたという、一番外に出ちゃいけないような情報がどんどん蓄積されていくわけですね。何かこれは特別な措置が当然必要だなと思うんですけれども、その点に関しては何もやっていない、こういうことですか。

下村内閣官房副長官 ウィニーの問題等、警察庁の中で、そのような、国民から見て信頼が置けないような対応にならないように、今鋭意努力をしているというふうに聞いております。そういう中で対処できるものと考えております。

高山委員 いや、副長官、今のお話ですと、では、今までの捜査情報とか、そういうものの管理と同じようなレベルでしかこれはとらえていないんですかね。今までの警察活動の中で収集した情報と同じようなレベル、所轄で扱っているような、そういう今の副長官の認識ですね。ちょっと今、びっくりというか残念だなと思ったんです。

 これは各省庁から、各業界から疑わしい取引だけ集中的に集めてくるわけですよね。しかも個人名も、いつ、どういう取引をしたかと全部出ている。こんなものが外に出たら、これはどえらいことだと思うんですよ。それを、普通の、今までの情報と同じような扱いでいいんだと言う。これは、安倍総理が当時官房長官のときに、あれだけ何か気を使ってやるようなことを言って、結局何か実行されていないのかなという印象を持ちますし、あと、先ほどの松岡農水大臣の話じゃないですけれども、ちょっと身内には甘くて、一般国民に対して何か疑いの目を向けて広く網をかけておく。本当にこういうことでいいのかなというような疑問がありますけれども、今、ちょっと質疑時間が終了したので、これで終わります。

河本委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 初めに、法務大臣に基本的なことを伺っておきたいと思うんですが、マネーロンダリング対策とかテロ資金対策を国際的に連携して行っていく場合に、国際的にやる場合であっても、それぞれの当該国の国民の人権を過剰に制約することがあってはならないというのは当たり前のことではないかと思うんです。当然、国際的な人権基準とか日本国憲法などに合致しているということがこういう対策をとる場合の前提になる、ならなきゃいけないと思うんですが、この点についての法務大臣の考え方というものを伺っておきます。

長勢国務大臣 いかなる法律においても人権を不当に制約するということがあってはならないということは、おっしゃるとおりだろうと思います。また一方、人権であっても、公共の福祉などの観点から必要最小限の制約を受けるということがあることもやむを得ない。この調整が重要だろうというふうに考えます。

 本法案においては、特定事業者に対し本人確認記録の作成を義務づけるなど、幾つかの義務規定を設けておるところでありますし、また、義務の履行を確保するために刑事罰を設けておりますが、これらはいずれも、第一条に定めておる公益目的を達成するために必要最小限の制約であるというふうに考えているところでございます。

吉井委員 FATFの勧告の、弁護士に対する疑わしい取引の届け出については、世界的に見て弁護士の人々の反発が非常に強いところであり、例えば、二〇〇六年十一月七日にアムステルダムで発表された世界の弁護士の方たちの共同声明、これは、FATFとの協議に招待されて行かれたんですから、御招待ありがとうございますから始まっております。

 この中で、「反マネーロンダリング及び反テロ資金法の複雑性を理解し順守するためのFATF加盟国政府の具体的な目的と同様に、」ということで、もう一つ大事な問題として、「社会の利益は、FATFの今日までの努力にも係らず疑わしい取引の報告を要求するということによって残念ながら侵略・侵害されることとなる依頼者情報守秘義務の原則及び弁護士と依頼者の関係を守ることによりもたらされるものである」、社会の利益というものをそういうふうに自分たちは考えているが、その点で、「世界の弁護士は、弁護士がその職務に反するようなことを行うことが、民主主義、法の支配、弁護士と依頼者の関係、及び司法アクセスを著しく害するものであることから、弁護士に報告義務を課すことに反対です。」というのがこのときの共同声明であったと思います。

 その共同声明というのは、これは欧州弁護士会評議会、それから欧州弁護士連合会、スイス弁護士会等々と、米国法曹協会、カナダ弁護士連合会、ニュージーランド弁護士会、オーストラリア弁護士連合会、日弁連、香港律師会、国際法曹協会など、こういう一連の世界各国の弁護士の方たちの団体がFATFとの協議で招待を受けて行ったときにまとめたものであったと思うんです。

 このFATF勧告の弁護士に対する問題で、そういうふうに世界の弁護士の皆さん方から懸念の声が寄せられている、共同声明が出されていると思うんですが、この点について法務省はどのように考えていらっしゃるか、伺っておきます。

菊池政府参考人 お答えを申し上げます。

 今委員御指摘の各国の弁護士団体の会議があったということはお聞きをしておりますが、他方で、私どもが承知しておりますのは、イギリス、フランス、ドイツ初め相当数の国におきましては、FATF勧告に従った国内的な手当てがされているというふうに承知をしているところでございます。

 ただ、今御審議をいただいております法案につきましては、日本の弁護士の方々のお考えなどもお聞きした上で、警察ともよく御相談をして国会に御提案をさせている、そういう関係になっております。

吉井委員 欧州弁護士会評議会とか欧州弁護士連合会からも参加して、この共同声明が出たわけですね。そういう話は知っているということで、まず、国際的に弁護士の関係の方たちが非常にこれに反対をしたり、懸念の声を上げているということは認識しておられるということはわかりました。その上で、しかし、欧州では多くのところでやっているという話ですが、同時に、既に内閣委員会でも議論がありましたように、それに対する訴訟が提起されたりとか、そういうこともあるわけですね。

 続いて伺っておきますが、米国、カナダではまだ実施されていないわけですね。日本の弁護士会の自治権も、世界的に見ても高い自治権が確立されておりますが、こうした自治権が侵害されるような勧告というのは、本来、留保する権利というものが当該国にあるのが当然じゃないかと私は思うんですが、これは、全く留保できないという何か国際条約なり、あるいは法律によって、国際法によって留保できないということになっているんですか。

菊池政府参考人 国際法については所管外でございますので必ずしも自信はございませんが、一般には、条約の場合には条約の中で、これこれの定めは留保することができるという規定があれば、条約上、条約を締結する際に留保を付すことはできるというふうに承知をしておりますが、今問題になっておりますFATFは、条約ではなくて勧告でございますので、そこは条約とは多少性格を異にするのかなと。ちょっと所管外でございますのでまことに申しわけありませんが、そのように理解をいたしております。

吉井委員 だから、まさに勧告なんですよ。ですから、これは勧告でありますから、条約でも国際法でもないわけですから、当然留保というものができるものなんですよね。

 大臣に伺っておきますが、アメリカ、カナダが弁護士について未実施であるのは、これはFATF勧告に違反しているという考え方ですか。

菊池政府参考人 大臣からお答え申し上げます前に、事務方の方から事務的なことを御説明申し上げます。

 私どもがお聞きしているところですと、今御指摘のとおり、アメリカ、カナダでは、FATF勧告で定められている弁護士の届け出義務というのは法制化されていない。ただ、弁護士も含めてどなたでも、一万ドルとお聞きしていますけれども、それ以上の現金取引の場合には届け出をしなさい、そういう制度になっているようでございます。

 もう一つ申し上げさせていただきますと、そのような制度につきまして、FATFの審査では必ずしも勧告に合致したものではないという指摘も受けているというふうにお聞きをしております。

吉井委員 ここのところ、私、大臣に聞いたんですけれども、また大臣になられたらお答えいただいたらいいんですが、大臣にもう一遍聞いておきますが、要するに、アメリカ、カナダは弁護士について未実施の国ですよね。これはFATF勧告に違反しているというお考えなのかどうかということを伺っているんです。

長勢国務大臣 FATFの勧告そのものには形式上は合致をしていないというふうに思います。

吉井委員 これはFATF勧告に違反するというようなものではないわけです。

 これは政府参考人に伺いますが、現行法には、本人確認等には罰則がついておりますが、疑わしい取引の届け出には罰則がありませんね。現行法で疑わしい取引の届け出に罰則をつけていないのにはいないなりの理由があると思うんですね。何ですか。

小津政府参考人 お答え申し上げます。

 疑わしい取引の届け出の制度につきましては、疑いがあると認められる場合に当たるかどうかの判断は金融機関等の業態や個別の取引状況ごとに判断されるということになるわけでございますが、これに当たるかどうかの判断につきましては、いろいろと主観的な要素も含まれるということから、届け出義務が履行されなかった場合に罰則を科すよりも、監督権者において、業法に基づく罰則で担保された業務是正命令等の監督措置を講ずることにより履行を担保することが当面は実効性確保の上で適当であると考えられたことなどから、現行法におきましては罰則は設けられなかったものと承知しております。

吉井委員 要するに、疑わしい取引についてはケース・バイ・ケースで判断もすれば、それぞれの監督庁が行政的な判断でもっていろいろ対処されるにしても、そもそも、疑わしい取引というのは基準があいまいなものですから、罰則をつけるということがないわけなんですよね。

 この疑わしい取引の定義は今度も変わらないわけですが、実質的には直罰を加えるわけですね。こうしたあいまいな要件に対して罰則をつけるということについて、法務省はどういう見解でいらっしゃるのか、伺います。

小津政府参考人 現行法につきましてはただいま御説明申し上げたところでございますけれども、この監督官庁の監督措置によって担保するという方法は本制度を直接担保するものではなかったわけでございますし、また、新たに加わる特定事業者の中には業法上の監督を受けないものも含まれております。

 そこで、疑わしい取引の届け出制度の実効性を高めるために、行政庁は届け出義務違反があると認めるときには是正命令を行うことができるといたしまして、その違反に対する罰則を設けるということにしたものであると承知しております。

吉井委員 疑わしい取引というのは、これは別に犯罪となっているものじゃないんですね、疑わしいという段階ですから。疑わしい取引は犯罪でもないわけですが、民民の契約取引というプライバシー情報でもあるわけです。これを罰則をもって届け出を強制するということになってきますと、これは法務大臣、プライバシー情報の強制収集という形になってくるんじゃないですか。

小津政府参考人 つけ加えて御説明させていただきますと、御指摘の点は、この法案については、金融機関等が疑わしい取引の届け出を怠った場合に、その不履行自体に直ちに刑罰を科すことにするということではないわけでございます。まず行政庁において特定事業者に対して違反是正のための必要な措置を命ずることができることとしておりまして、その命令に違反した場合に初めて罰則の対象とするものでございまして、刑事罰則の観点から特段の問題はないというふうに考えております。

吉井委員 十七条の一項で、公安委員会は、特定事業者が規定に違反していると認めるときは、行政庁に特定事業者への行政処分を行うべきだと意見を述べることができるという形ですね。同二項では、公安委員会は、意見を述べるための必要な限度において、報告、資料提出、警察に調査させることができると。そして、二十四条では罰則があって、それに違反すれば一年以下の懲役、三百万円以下の罰金、併科ということになってきますが、特定事業者が規定に違反していると認めるときに、一〇〇%違反と確信を持つときに規定違反と認めることになるのか、それとも、規定違反の疑いがあるということで規定違反と認めることになるのか、これはどういうことになってくるんですか。

小津政府参考人 御指摘の十七条でございますけれども、これは、国家公安委員会の方でこのように認定したときはということになるわけでございますので、第一義的には国家公安委員会の方の御判断になると思うわけでございますけれども、刑事罰則の観点からは、先ほど申し上げましたように、行政庁の方で一定の命令等したときにその違反について罰則をかけるということで、刑事罰則の観点からの問題はないと私どもは承知しております。

吉井委員 時間が終わりますからもうこれでおいておきますが、要するに、公安委員会が一〇〇%違反と確信を持つ場合でなくても、規定違反の疑いがあるというだけでここまで進んでいくというのは、こういう法律は余りにも異常だというふうに思います。

 以上で終わります。

河本委員長 次に、保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 金融庁にまず伺いたいんですが、もう既に一覧表にして出していただいていますが、金融庁が特定金融情報室をつくって、いわば日本版のFIUのデータベースを構築してきたということでございます。一体どのベンダーに企画開発をさせて、幾らかけてきたのか。これまでかかった企画開発の部分の経費と、そしてランニングコスト、これについて金融庁からお答えをいただきたい。

畑中政府参考人 お答えをいたします。

 金融庁の特定金融情報データベースシステムの開発費用とランニングコストについてのお尋ねでございました。

 これまでこの特定金融情報データベースシステムの開発に要しました費用は約三億七千万円、また、開発費を除く機器の借料及びシステムの維持に要した費用は約二億円でございまして、合計で約五億七千万円でございます。(保坂(展)委員「業者名」と呼ぶ)これは複数ございます。

保坂(展)委員 富士通を中心に、五億六千万円台の予算がかけられてきた、こういうふうに聞きました。

 そこで、今度、警察庁に。

 お配りしている資料の二枚目の小さい方の紙に、警察庁からいただいた、今般、組織移管に伴って、データベースを構築し、増強し、開発する、こういう部分がございます。これに係る今年度予算の要求分というのは幾らでしょうか。開発に幾らなのか、維持に幾らなのか、簡潔にお願いします。

米田政府参考人 今回、予算でお願いをしておりますのは約八億円でございまして、そのうちシステム関連予算は約七億三千万円、それから、このうち一時経費が約六億七千万円でございまして、経常費が約六千万円ということでございます。

保坂(展)委員 金融庁は九八年から九年かけて五億六千三百万のところを、警察庁は一年で八億円の予算要求ということなので、これは大規模なデータベースを構築する、こういうふうに考え得るわけですが、そこで、また金融庁に伺います。

 疑わしい取引とは一体何なのかということが非常に不明確でしたけれども、金融庁のホームページに載っている参考事例、こちらを見ますと、例えば、住所と異なる場所にキャッシュカードの送付を希望した場合であるとか、屋号つき名義等を利用して異なる名義で多数の口座を保有している場合、さらに、例えば我々政治家も銀行通帳などを持っているわけですが、多額の入金、出金が頻繁に行われる口座、多数の者から頻繁に送金を受ける口座、特に送金を受けた直後に出金あるいは送金が行われる場合、あるいは、ふだんは資金の動きはないけれども突如として多額の入金、出金がある場合などが疑わしい取引の参考事例として挙げられていますが、これは間違いないですか。これが一点。

 もう一点。最近、アンチマネーロンダリングシステム、いわゆるマネロンを通知するためのコンサルティング会社が、これらを自動的に解析して金融機関から金融庁に送付していくシステムも開発していると聞きます。つまり、金融庁への報告件数がふえたというのは、例えば、今挙げたような参考事例、金融庁がホームページに書いてあるようなものをとりあえず一回は通知するとなっているからふえた、こう考えていいですか。

畑中政府参考人 お答え申し上げます。

 第一点につきましては、御指摘のように、私ども、平成十三年に、疑わしい取引の参考事例ということで公表いたしまして、今御指摘の類型も含めて、全部で四十四類型について参考事例を公表しているところでございます。

 それから、第二点目でございますが、届け出がふえた原因は、先ほども御質疑がございましたが、一つは、やはり米国のテロを受けまして、本人確認法等、それからテロの防止の必要性、こういったもので金融機関の意識が高まってきたということ、それから、多少手前みそではございますが、私どもも全力を挙げてこの周知に努めておりますので、こういった普及活動があずかってこの件数がふえているのではないかと考えております。

保坂(展)委員 ですから、金融庁に続けて伺いますが、今の答弁になかったんですが、アンチマネーロンダリング対策ということでソフトが開発されていて、金融機関の膨大な取引の中から、突然取引がふえたとか、ある線引きでもってひっかかったものは全部通知しますよということでふえているんじゃないかと思いますよ。

 それで質問は、十一万件台だった、そのうち七万何千件を捜査機関に出したんですね。それで今回、捜査機関に出さなかった、つまり、疑わしい取引として金融機関から金融庁に通知はあったけれども捜査機関には出さなかった情報を含めて、もしこの法案が通ったら、昨年度末までは三十九万件ぐらいでしたけれども、累計何件ぐらいのデータを警察庁に移管するんですか。その際に、これまで捜査機関に通報しなかった、疑わしい取引で届けられたけれども捜査機関には通報しなくていいなと金融庁が判断したものも含まれていますか。

畑中政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、届け出が十一万件で、約四万件ぐらい捜査機関に提供しない情報がございます。これは、提供する情報につきましては、捜査機関等の捜査に資するというものについて提供しているわけでございます。

 ただ、情報提供していない情報につきましても、この届け出情報相互の関連づけに必要であるほか、一度提供を要しないと判断した情報でありましても、捜査機関等における犯罪捜査等の進展等によりまして犯罪捜査等に資するか否かの判断に変化が生じることもあり得ますので、いずれの情報であっても、消去することなく、データベースとして引き続き私ども所管をしているところでございます。

 これは、保存期間が十五年でございますので、移管のとき、これに該当するものはすべて移管をするということになろうと思います。

保坂(展)委員 金融庁は、この疑わしい取引の届け出に関する業務のシステム最適化計画の中で、これまでいろいろな形で来た紙やフロッピーディスクやさまざま、これを一元化して、なおかつ、これについてのいわば仕分けを自動的に本当はやりたいんだけれどもそれができていない、だからそれについて本来はお金をかけるんだというふうに書いているんですね。ただし、警察庁に移管が決まったので、警察庁でそれはやることになったんでしょう。

 そこで、質問の続きです。八億円かける。金融庁は九年間で五億六千万なんですよ。一年で八億円を要求して、その中身は、要するに、金融機関からこういう個人情報が来ます、ほかのところからも来ます、それを自動的に解析するソフトを立ち上げる、そういう開発費が主なんじゃないですか。

米田政府参考人 確かに、システムのそのソフトを開発するというところにかなりの金額をかけるということはございます。

保坂(展)委員 そしてまた、警察庁のホームページなどを見ると、警察総合捜査情報システムの最適化計画というのが出ております。これには、現在はそれぞれ別々にやっている情報、例えば指紋の情報であるとか、さまざまな捜査情報であるとか、運転者情報であるとか、そういうものを相互に連携を強化する、横断的に検索をする。そして、例えば被疑者写真照会業務、犯罪手口照会業務などと連携をして、警察庁が持っているところのデータベースをくっつけて、ここに統合していくという計画が今進行中ですね。

 ずばり言って、この八億円の予算要求で、このシステムの中に位置づけられるんですか。つまり、いわば疑わしいというふうに来たときに、警察庁の中で、本当に疑いがあるのかなといって自分のところのデータとくっつけ合わせるわけでしょう。ということは、そのシステムの中に位置づけられるのかなと。接続されるのは間違いないだろうと思いますが、確認しておきます。

米田政府参考人 もとより、国家公安委員会がFIU機能を持つということになりますと、国家公安委員会、警察庁が持ついろいろな情報との兼ね合いで分析を強化するということでございますので、その必要な情報との照合ということは行いますけれども、具体的にどういうものかということは、捜査に関することでございますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

保坂(展)委員 法務大臣に伺いますが、昨年の入管法の審議のときに、いわば外国人八百万人の指紋と顔写真をプールするということ、それから、日本人は希望する人が自動化ゲートというところで指紋と顔写真をやはりプールしていく、これに対して外国から捜査照会があったときには出すのかどうなのかという議論をしたんですが、最終的には出しますということだったんですね、政治活動とか日本の国内法で罪にならないとか、そういうものを除いてはということですが。間違いないですか。

長勢国務大臣 そのように答弁されたというふうに承知をしております。

保坂(展)委員 それでは、警察庁にさらに伺いますが、どうですか、今、金融庁から移動される多分五十万人近いデータの中には、疑わしい届け出と自動的に送られてきたけれども、特に問題がなかったデータも入っていることと思います。また、疑わしい取引と言われたって、七万五千件の中で立件されたのはわずか五十件、それ以外のものは犯罪ということで認定されていないものも多かろうと思います。そういうデータに関して外国の捜査当局から照会がかかったときに、今法務大臣が答えたように捜査当局に出しますか、どうですか。

米田政府参考人 FIU相互の情報交換の話と捜査機関相互の情報交換の話があろうかと思いますけれども、捜査機関同士でありますと、それはもう当然捜査に必要な情報でございますので、捜査に関係ないということは、もちろん関係ないわけでございます。

 FIU同士であるとどうなるかということなんでございますが、FIU同士とはいえ、今委員の御指摘は、捜査機関の方で何か使うということであろうか、そのために何か情報提供を求めてきている、多分そういう設問ではなかろうかと思うんですけれども、その場合は、この法律に書いておりますとおり、法務大臣の確認を受けて、出せるものは出すということになろうかと思います。

保坂(展)委員 これは、明らかに犯罪が行われた、あるいは強い容疑がかかって現在指名手配中であるというような情報をやりとりするのと全然わけが違うんです。

 つまりは、単に短期間の間にお金が動いた、屋号とか持っていて、幾つかの通帳を持っていた、それは幾つかわかりませんよ、基準は。そういう莫大な国民のいわば銀行取引にかかわるデータに関して捜査照会があったときに、出すというふうに言っているんですね。これは、国家公安委員長、いいんですか、こんなので。つまり、国民の財産の基本であるところの金融機関との取引を、これは要請があったときに、一定の政治活動に絡んでいるかとか、あるいは日本国内の法律で犯罪化されているかどうかを見るんですが、しかし、原則は出すと法務大臣も入管法のときに答えているんですね。

 国家公安委員長、そこはどうするのか、はっきり答えてください。

溝手国務大臣 必要な情報はやはり出していくことになると思っております。

保坂(展)委員 ということは、例えば、さあ、この口座に地球環境の保護のために、大変な地震、災害が起こったからカンパを集めようということで、集中的に大勢の人から義援金が寄せられてそれを出した、これだって疑わしい取引なんですよ、今の金融庁の基準では。今の国家公安委員長の話だと、そういうものも含めて捜査照会があったら出すと。とんでもないことじゃないですか、これ。そんなことでいいんですか。

溝手国務大臣 何でもかんでも出すということではなくて、法律に定めた要件に適合するものについては必要に応じて出していくということでございます。

保坂(展)委員 ちょっと時間が過ぎていますが、ここにあるんですよ、十二条に。十二条にあって、法務大臣が入管法のときに、原則出しますと答えているんですよ。だから、国家公安委員長も同じであれば、出すということになっちゃうんですよ。それを確認しているんです。その答弁を得て終わります。

溝手国務大臣 これは、今の第十二条の件だろうと思いますが、我々としては、ここに書いてある、「遂行に資すると認める疑わしい取引に関する情報を提供することができる。」、こういうように……(保坂(展)委員「提供するんですね」と呼ぶ)「提供することができる。」と書いております。

保坂(展)委員 これは重大なので、もう本当に徹底的に明らかにしなければならないと思います。疑わしい取引で、我々政治家もそれは自動的にひっかかっちゃいますよ、これ。そのデータも全部所管をされて長年消えない、こういうことでいいのかどうかというのは、私は反対です。徹底的な審議を求めて、終わります。

河本委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午後三時五分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 犯罪による収益の移転防止に関する法律案は内閣委員会議録第五号に掲載


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.