衆議院

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第1号 平成19年4月10日(火曜日)

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平成十九年四月十日(火曜日)

    午後二時二十分開議

 出席委員

  内閣委員会

   委員長 河本 三郎君

   理事 木村  勉君 理事 後藤田正純君

   理事 戸井田とおる君 理事 西村 康稔君

   理事 平井たくや君 理事 泉  健太君

   理事 松原  仁君 理事 田端 正広君

      赤澤 亮正君    遠藤 武彦君

      遠藤 宣彦君    岡下 信子君

      金子 恭之君    鈴木 淳司君

      関  芳弘君    寺田  稔君

      土井  亨君    並木 正芳君

      林田  彪君    松浪 健太君

      松本 洋平君    村上誠一郎君

      小川 淳也君    河村たかし君

      小宮山洋子君    佐々木隆博君

      横光 克彦君    渡辺  周君

      石井 啓一君    吉井 英勝君

  経済産業委員会

   委員長 上田  勇君

   理事 金子善次郎君 理事 河井 克行君

   理事 新藤 義孝君 理事 中山 泰秀君

   理事 宮腰 光寛君 理事 後藤  斎君

   理事 近藤 洋介君 理事 赤羽 一嘉君

      飯島 夕雁君    小此木八郎君

      岡部 英明君    川条 志嘉君

      近藤三津枝君    佐藤ゆかり君

      清水清一朗君    平  将明君

      冨岡  勉君    丹羽 秀樹君

      橋本  岳君    原田 憲治君

      藤井 勇治君    馬渡 龍治君

      牧原 秀樹君    増原 義剛君

      武藤 容治君    森  英介君

      山本 明彦君    吉川 貴盛君

      大畠 章宏君    太田 和美君

      川端 達夫君    北神 圭朗君

      細野 豪志君    三谷 光男君

      柚木 道義君    鷲尾英一郎君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   経済産業大臣       甘利  明君

   国務大臣         渡辺 喜美君

   内閣府副大臣       林  芳正君

   経済産業副大臣      渡辺 博道君

   内閣府大臣政務官     岡下 信子君

   財務大臣政務官      江崎洋一郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大藤 俊行君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  鈴木 正徳君

   政府参考人

   (財務省大臣官房参事官) 香川 俊介君

   政府参考人

   (財務省国際局次長)   玉木林太郎君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            上田 隆之君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    石毛 博行君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            近藤 賢二君

   政府参考人

   (国民生活金融公庫総裁) 薄井 信明君

   内閣委員会専門員     堤  貞雄君

   経済産業委員会専門員   熊谷 得志君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 株式会社日本政策金融公庫法案(内閣提出第四六号)

 株式会社日本政策金融公庫法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第四七号)


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     ――――◇―――――

河本委員長 これより内閣委員会経済産業委員会連合審査会を開会いたします。

 先例によりまして、私が委員長の職務を行います。

 内閣提出、株式会社日本政策金融公庫法案及び株式会社日本政策金融公庫法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 両案の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付の資料をもって説明にかえさせていただきますので、御了承願います。

 これより質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤羽一嘉君。

赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 本日は、株式会社日本政策金融公庫法案ほかに関する質問を、三十分でございますが、行わせていただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

 まず、今回の政策金融改革の目的は、改めて言うまでもないことでありますが、民間の金融活動の補完を行うことを原則として、政策金融の機能を政策の必要性が明確なものに限定し、肥大化した公的金融の規模を縮減することである。この政策金融の機能とは、一定の政策目的を達成するために、民間金融のみでは適切な対応が困難な分野に対して資金供給を行うものである。

 ただ、これまでの国会審議を見ておりましても、政策金融機関のスリム化は重要である、しかしながら、政策金融が本来果たすべき機能の維持、体制の整備も大事である、こういった旨の指摘が多く見られているというふうに了解しておりますし、私も、昨年六月に決定された政策金融改革に係る制度設計における基本視点として掲げられている「国が担う機能としての政策金融の的確な実施」から「国際金融部門の国際的信用及び主体性の確保」までの五項目が忠実に実行されることは、大変大事な、重要な点であるというふうに考えておるわけでございます。

 きょうは、この点について後で具体的なテーマとして確認をしたいんですが、要するに、政府系の金融機関をスリム化するというのは大事だ、しかし、これは、徹底的に、原理主義的にどこまでやるの、政策金融の機能として大事だということを言われているけれども本当に守られるのかどうかということが、やはり相当懸念があるのではないか。

 先週の委員会でも同じような質問が何回も出ているかもしれませんが、渡辺大臣から、この点についての大臣の腹づもりをお聞かせいただきたいと思います。

渡辺国務大臣 赤羽先生御指摘のように、民業補完という観点は譲れない線だと思うんですね。

 今回は、民間金融機関と政策金融との機能、役割分担、これは相当の検討を重ねて考えてまいりました。新公庫に残すとされた業務については引き続き国が責任を持って実施していきますということ、これは自明でございます。したがって、新公庫において政策金融が適切に実施されるということとともに、効率的で透明度の高い運営がなされるという観点を行革大臣としては見てまいりたいと考えております。

赤羽委員 わかりました。ぜひ効率的、透明度の高いということで、しっかりとフォローしていただきたいとまず申し上げておきたいと思います。

 ちょっと順番が逆なんですが、一問だけ次に質問させていただきたいことがございます。

 実は、政府系金融機関の改革の議論が与党内から始まったときに、一つにするのか二つにするのかというような、そういう組織設計の話をしているときに、私、常に党内では申し上げていたんですが、政府系金融機関で働く人たちの立場の議論というのは余りないんですね。機能論とか何かということなんですけれども、中で働いている人たちのモラールが非常に不健全になったり士気が上がらないとなると、どんな組織にしてもうまくいかないだろう。

 今回、いわゆる国際金融業務を行うフィールドと、今の国民金融公庫なんというのはまさに一件十万円とかそういったところの細かい話と、何十億とか何千億というプロジェクトファイナンスみたいな業務と、自転車で商店街のところに行って一件十万円の月の繰り越しの融資みたいなことをやるという、それを一つの機関でやって、一つの機関で多様な人材を養成するということは、言うほど簡単じゃないと思うんです。

 信用金庫と総合商社とが一つの機関になって、学生の立場に立ってみると、どういう人がこの新公庫に入ってくるのかと。入ってきた中では、語学を熟達させなければいけないというカリキュラムもあるでしょうし、語学なんというのは全く関係ない、必要ないということもあるだろうし、留学もさせるグループもなければいけないし、留学なんか必要ない、それが一つの同期入社の中でそういう色分けをするということは、モラールダウンに簡単につながりかねない。

 今、現状の公庫とJBICとかいうところの人たちが一緒になるというのもそうたやすくないと思いますが、新しく採用したものをどう人材育成していくか、この辺は非常に難しい問題であり、私は、本当はここが組織論を論じるよりもすごく大事な視点だというふうに思っておりまして、いろいろな、新しい組織に向けてのテーブルというのはできているんだと思うんですけれども、ぜひこの点について、現場の声をまずよく聞くというところから始めて、やはり現場の人たちが幸せに仕事をしていける環境を整えることが非常に重要であるんだけれども、案外、国会の審議では余り語られていないのではないか、こういうふうに感じるんですが、この点について渡辺大臣の御所見をいただきたいと思います。

渡辺国務大臣 大変大事な御指摘をいただいたと思います。

 今から十何年か前に旧輸銀と旧OECFを統合して今のJBICができたわけですね。今回はこれを離婚するわけであります。どうも、この二つの組織が同じ建物の上と下にありながら内部の融合がうまくいかなかった。その教訓はよく学ぶ必要があると思うんですね。業務の中身も違いますし、哲学も違ったのかもしれません。

 しかし、こうしたものについては、無理やりへ理屈をつければつけられないこともないんだと思うんです。大事なことは、やはりマネジメント、一種の人心収らん、これができているのかできていないのかというところは非常に大きなポイントだと思います。したがって、今、赤羽委員の方から、現場の声を聞くようにという御指摘は、まさにそのとおりだと私も思います。

 今後の制度設計に当たりましては、それぞれの分野の専門性が損なわれることのないよう、職員の配置や育成の面で工夫を行ってまいりたいと考えます。また、新公庫の役職員が高いモラールを持って業務を遂行していけるよう、明確な事業計画の策定や適切な評価も重要なことと思います。

 いずれにいたしましても、現場の職員の声はよく聞くということは基本であろうかと思います。

赤羽委員 こういった部分は、有識者会議を設置するみたいな議論は、予定はあるんですか、この点については。

渡辺国務大臣 この問題についてということではございませんけれども、行政減量・効率化会議のもとでワーキングチームをつくりますので、その中でこうしたことも議論にはなろうかと考えております。

赤羽委員 ちょっと言わずもがなで、余計なことかもしれませんが、今、JBICの輸銀と基金の問題というのは、真実はどうだったかよくわかりませんけれども、随分いろいろなことが報道されておりまして、そこにかかわってくるような人が、結構、有識者と言われている人もそこに介在されていたりとかしていた事例があったと思うんです。こういった人がまたその有識者会議なるものに入っていて、余りフェアな、中立的な意見じゃないものが反映されないように、繰り返しになりますけれども、現場の職員がスポイルされないような形でぜひお願いしたい。

 リーダーというのは、非常に有能な人が求められる。まあ、渡辺さんみたいな人ばかりがそういうところのトップになるとは思えないので、繰り返しでありますけれども、ぜひその点をよろしくお願いしたいと改めて申し上げておきたいと思います。

 次に、中小企業向けの資金供給機能の維持と、あわせて、中小公庫、今回廃止になります一般貸し付けの廃止の影響ということを質問させていただきたいと思います。

 繰り返しになりますけれども、今回の政策金融改革は、まさに資金の入り口である郵政民営化に続く出口の改革であり、大変重要な改革であるということは、先ほどの認識にも示したとおりでございますが、新公庫においてこれまで中小公庫、国民公庫が担ってきた、いわゆる中小企業向け、零細企業向けの資金供給機能、これはやはり質、量ともにしっかり維持されるべきだというふうに認識をしております。

 イザナギ景気を超える景気回復といいながらも、その内訳を見ますと、まだまだやはり中小企業の状況は厳しいというのは、渡辺大臣また甘利大臣、御両名ともに認識は一致していると思いますし、よくこれは経済産業委員会の議論でも出ますが、銀行の主要行の不良債権の処理というのは格段に改善されているとはいいながらも、地方の実情というのはまだまだであって、地銀また信金、信組、こういった不良債権の処理というのはまだこれからだ、こうも言われているわけであって、中小企業に対する資金供給機能の維持というのは、恐らくその必要性というのはまだまだ当分続くと見るのが妥当なのではないかというふうに考えるわけであります。

 ですから、新公庫、いろいろな、制度改正とか、一般貸し付けが廃止になる、こういった部分はありますけれども、まさに中小企業のニーズに合わせて、しっかりとその資金需要にこたえる体制をつくらなければいけないのではないか。そのためにも十分な財政措置が必要であるというふうに私は考えるのですが、この点についての御見解をいただきたいと思います。

渡辺(博)副大臣 日本の産業の競争力の源泉というものは、もう御案内のとおり、全国四百三十万社の中小企業であることは間違いございません。中小企業は日本を支える生命線であり、その資金調達の円滑化は極めて重要でございます。

 これを踏まえて、行政改革推進法の附帯決議において、中小企業者等の資金需要に質、量ともに的確にこたえる旨が定められております。

 新公庫における財政措置については、その業務の適切な実施が図られるよう、政府からの出資、貸し付け及び社債に係る債務に対する政府保証に関する規定が定められているところであります。

 具体的な財政措置のあり方につきましては、今後、財政当局等とも協議しながら検討していくこととなりますが、中小企業者の資金調達に支障が生じないよう、十分な財政措置を確保してまいる所存でございます。

赤羽委員 次に、危機対応に対する質問に移らせていただきたいと思います。

 景気の変化とか、また自然災害等々が起こったときに、その影響を受けやすいのは中小零細企業でありまして、災害とか貸し渋りなどの危機に陥ったときにセーフティーネット機能が発揮されてきたというのが実態であって、現場の中小企業、零細企業の皆さんにとっては、大変助かったという声が強く寄せられているわけでございます。こういったセーフティーネット機能こそ、まさに政策金融として最も重要な機能である、こう言っても過言ではない、私はそう考えております。

 この危機対応業務を行う危機の範囲については、取引企業の倒産、貸し渋りなどを含めて、危機の範囲を狭めることなく、柔軟に、かつ迅速に危機対応の発動をすべきだというふうに考えておるわけでございます。

 今回、危機対応業務ということで、新公庫にも含まれているんでしょうし、新しく今回民営化される商工中金ですとか政策投資銀行についてもその旨が記されているわけでございますけれども、この危機対応業務についての整理の仕方ということも含め、あと私は、いずれにしても、政策金融の縮小の影響が出ないように、これまた十分な財政措置というのが必要である、このセーフティーネット機能こそ十分な財政措置が必要であるというふうに考えておるんですが、この点についての御答弁をいただければと思います。

石毛政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘ありましたように、中小企業にとりましては、金融秩序の混乱などで信用不安とか、あるいは大規模災害とか、そういう危機によりまして被害を受けた際に、きめ細やかな支援、そういうものがまさに命綱といいますか、そういう形になると思っております。こういういざというときの金融は非常に重要でありますから、御指摘のとおり、これまで政策金融機関が柔軟かつ迅速に対応してきたところでございます。

 それで、お尋ねの危機対応の発動についてでございますけれども、新公庫法の中で、主務大臣が、二つの要件、すなわち、一般の金融機関が通常の条件によって貸し付け等を行うことが困難であること、それから、指定金融機関が危機対応業務を行うことが必要であること、そういう二つの要件を認定する場合に発動をするというふうにされております。

 この具体的な運用でございますけれども、これまで政策金融機関が柔軟かつ迅速に対応してきたセーフティーネットの融資なんかに典型的にあらわれているわけですけれども、そういうことを十分踏まえまして、今後検討していきたいというふうに思っております。

 ただ、こういうことをする上で、具体的な財政措置ということが必要になってくるわけですけれども、私どもとしては、今後、財政当局とも協議をしていくわけですけれども、その危機時において中小企業の資金調達に支障が生じることがないよう、そういう必要な財政措置を確保していきたいというふうに思っております。

赤羽委員 繰り返しになりますが、セーフティーネット機能というのは本当に重要な機能でございますので、ぜひしっかりと措置をとっていただきたいということを重ねて申し上げておきたいと思います。

 次に、貸出残高の数値目標について質問をさせていただきたいと思います。

 この貸出残高の目標につきましては、対GDP比半減を平成二十年度中に実現するということが決定されているわけでありますけれども、これは、政投銀、商工中金の民営化、また公営企業金融公庫の廃止で達成が確実であって、新たに目標を設定するかどうかが課題になっているというふうに伺っておりますが、私は、金融は政策金融も含めて経済の血液であって、数値目標を置くことが目的になるというのは必ずしも適当ではないんじゃないか、何となくそこは本末転倒なところもあるのではないかというふうに感じるわけでございます。

 中小企業への影響とか、今申し上げたような、機動的に資金需要に対応する必要があることなんかを踏まえますと、もちろん、民間金融での対応状況にも配慮して十分に慎重に対応する必要があるというふうに考えておりますが、この点についての御見解をいただきたいと思います。

甘利国務大臣 行革推進法で定められている対GDP比半減というのは、これは確実に達成するということが求められるわけであります。

 あわせて、なぜ政府系金融機関の改革をやるかというその原点、原理原則でいいますと、基本的に、政府の金融機関というのは民業補完ということがその使命である。つまり、民間金融機関がちゃんとやってくれるところに出張っていって、それをうちがやるからと政府が乗り出していくことはない。

 ということは、逆に言いますと、民間がやってくれないところで政策運営上必要なところは、カバーしなきゃならないわけであります。でありますから、行革推進法上進められる政府系金融機関の改革がなされたその後について、御指摘のとおり、融資残高は減らすこと自身が政策目的ではないのでありまして、民業がやってくれない、なおかつ政策上必要だというところをちゃんとカバーできるようにするというのが政策目標なのでありますから、だから、そこのところは、新政策公庫というのができたときに、中小企業者の資金需要に質、量ともに的確にこたえられるように、これは附帯決議でも書いてあるわけですね。

 それから、中小企業の資金ニーズというのは経済情勢によって変化するわけであります。その変化にちゃんと民間金融がついていってくれればいいんですけれども、ついていけない部分で必要なところはちゃんとカバーしなきゃならないわけでありますね。そういう経済動向の変化、中小企業の資金ニーズ、そして民間金融機関がどこまで対応してもらえるのか、そういうのをきちんと見きわめながら対応していく。

 あらかじめ削減する目標を設定してそれに向かってひたすら邁進するということではないということは、委員の御指摘のとおりだと思っております。

赤羽委員 どうもありがとうございます。

 それでは次に、行政改革の重要方針の基本原則に書かれてあります新公庫の業務に関して、「国策上重要な海外資源確保、国際競争力確保に不可欠な金融」機能について、つまりエネルギー・環境問題の取り組みについて質問を移らせていただきたいと思います。

 現在、世界的に見ますと、資源エネルギー争奪競争は大変激しくなっておりまして、それぞれ各国は官民挙げて取り組んでいる状況であります。我が国もこの資源エネルギー争奪競争にしっかり乗りおくれてはいけないというふうに私は思うわけでございますが、一方、こういった動きの中で、BRICsと言われているブラジル、インド、中国、ロシア、まさに急速な経済成長をしている国のエネルギー消費が急速に今拡大をしている。我が国の常識からかなり外れたこれらの国での非効率的なエネルギー消費、これは我が国の資源エネルギー確保の問題とは無関係ではないというふうに私は考えるわけでございます。

 日本は、国際的にも競争力のある省エネや新エネ、環境改善技術を有しているわけでございまして、この分野において、先進各国が今、プロジェクトを受注しようと激しく国際競争が展開されているわけでございます。日本のこの分野に関して、省エネ、新エネ、環境改善技術を売り込んでいくということは、一つは日本のビジネス機会、技術の発展ということにつながると同時に、地球全体の環境問題への国際貢献という意味で大いに意味がある、やっていかなければいけない問題だというふうに私は思っているわけでございます。

 こういった観点から、新公庫においてもこのような機能が遺憾なく発揮されることは当然であるというふうに私は考えておりますが、まず、この統合される四機関、きょうは農水省は呼んでいませんので、三機関の業務の環境・エネルギー問題、排出権取引への対応といった分野に関する実績について、事務方で結構ですけれども、簡潔に御報告をお願いしたいと思います。

石毛政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業金融公庫の部分についてお答え申し上げます。

 中小企業金融公庫は、これまで、環境・エネルギー問題に取り組んでいる中小企業を積極的に支援してきておりますけれども、まずエネルギー対策でございますが、省エネルギーに資する設備を設置する中小企業者の支援等ということで、その貸付残高は、平成十九年二月末現在で一千四百件、三百六十二億円になっております。

 それから、環境対策の関係についてですけれども、窒素酸化物の排出量を低減させるためのトラックあるいは建設機械の買いかえの促進、そういうものに取り組んできておりまして、環境対策に係る貸付残高は、平成十九年二月末現在で二千六百件、七百八十四億円となっております。

玉木政府参考人 国際協力銀行、JBICの国際金融等業務に関する実績についてお答えいたします。

 環境・エネルギー問題に資する案件としましては、例えばハンガリーでの太陽電池事業への融資などがございますが、主な案件を合計しますと七百億円程度の実績がございます。このうち、排出権取得に資する主な案件として、例えばブルガリアの風力発電案件事業への融資などがございますし、さらに、排出権取得に資する出資案件もございます。

香川政府参考人 国民生活金融公庫について申し上げます。

 中小企業者向けの環境・エネルギー対策貸し付け及び生活衛生関係営業者向けの環境対策関連貸し付けなどの融資を通じまして、公害防止設備、リサイクル関連設備、省エネルギー設備等の環境保全、改善に資する設備の導入を支援しております。平成十八年度におきましては、二千二百三十件、約百四十億円の貸付実績がございます。

赤羽委員 ありがとうございます。

 今、政府としても、京都議定書に基づく取り組みが関係機関で進められる中、このエネルギー問題と気候変動問題を初めとする環境問題の一体的な解決というのは我が国にとっても重要な課題である、先ほど申し上げたとおりでございます。

 この中で、今財務省からの御答弁にもありましたように、ブルガリアの風力発電プロジェクトでは、日本企業のすぐれた風車技術が採用されるヨーロッパでは初めてのプロジェクトで、これはさらに排出権も獲得できる案件で、JBICがプロジェクトファイナンスで支援しているといった事例もありますし、排出権でも、アジアなどでの排出権獲得プロジェクトへの支援も進められているところであるわけでございます。

 このような分野というのは途上国の場合が多くて、カントリーリスクがあったり、市場の未成熟による将来リスクなんという点からも、JBICの公的機関が民間を補完するという役割が今後ともやはり期待されることが大きいんじゃないかというふうに考えるわけでございまして、新公庫の国際金融業務としても引き続きしっかりやっていくことが、国益にもかないますし、国際貢献にもかなうというふうに考えておりますけれども、政府として、この点について確認をさせていただきたいと思います。

玉木政府参考人 我が国が比較優位を有しております省エネ、新エネ、環境関連の技術を活用して途上国のエネルギー利用効率化や環境改善に資する事業に取り組むことは、御指摘のとおり、地球環境問題に対する取り組みの観点からも、そして我が国企業のビジネスの機会を創出する観点からも大変意義のあることであり、JBICの国際金融等業務は、これらの分野に対する金融面からの支援において重要な役割を果たしてきたところでございます。

 新公庫におきましても、我が国のすぐれた技術によって途上国のエネルギー・環境問題の改善を図るプロジェクトに対する支援に引き続き注力してまいるよう、政府としても努めてまいりたいと考えております。

赤羽委員 それでは最後に、新公庫が、金融機関としてのリスク管理について、これも改めて確認するまでもないかもしれませんが、質問をさせていただきたいと思います。

 言うまでもなく、一般に、金融機関というものの業務の前提は信用の確保であると考えております。民間金融機関を補完する位置づけにある新公庫ももちろん一つの金融機関でありますから、財務基盤の充実、資金管理や金融機関としての顧客守秘義務の徹底などが図られる必要が当然あるというふうに考えておりますけれども、これをどのようにして確保していくつもりなのか、最後に行革担当大臣の御見解を伺って、質問を終わらせていただきたいと思います。副大臣で結構です。

林副大臣 お答え申し上げます。

 財務基盤でございますが、まず申し上げますと、新公庫の担う業務は、政策金融として国が責任を持って実施していく業務ということで、この円滑な遂行に支障が生じないように、財政融資資金の借り入れ、また政府保証債等による円滑な資金調達に加え、どんぶり勘定で収支差補給をするのはやめるということですが、政策目的に応じた補給金等の国による支援を行う仕組みになっております。

 また、簡潔に申し上げますが、職員の秘密保持義務については新公庫法案の第九条に法定をしておりまして、さらに、整備法で独法等の保有する個人情報の保護に関する法律の対象としている等、厳正な服務規律の確保や情報管理の徹底を図る。これに加えまして、会社法が適用になりますので、会計監査人による会計監査、また金融庁による金融検査等を受けることにより、しっかりとしたガバナンスを確保するということで、金融機関としての十分な支援を確保してまいりたいと思っているところでございます。

赤羽委員 どうもありがとうございました。終わります。

河本委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 民主党の北神圭朗でございます。

 きょうは、引き続き、株式会社日本政策金融公庫法案について質問をしたいと思います。

 今回の法案は、行政改革的な面、効率を求めたり透明性を求めたり、そういった面もあって、これももちろん大事な論点ですが、所属は経済産業委員会ですので、きょうは基本的に中小企業金融公庫、以下中小公庫と言いますが、その業務の見直しの我が国の中小企業に対する、あるいは零細企業に対する影響について議論をしていきたいというふうに思います。

 まず、私の現状認識としては、中小零細企業の中には民間の金融機関からは必ずしも十分な融資を受けることができないところがたくさんある。そういう企業にとっては、もちろんモラルハザードの部分もあるかもしれませんが、やはり過半数のそういう中小零細企業はこれまで中小公庫とか国民生活金融公庫、これは以下国民公庫と言います、などの政府系金融機関に非常に助けられてきたというふうに思っております。

 ところが、今回の法案は、日本政策金融公庫、以下新公庫と言いますけれども、その統合に伴って、こうした公庫の業務の縮減が行われるということになっております。地元の中小企業、零細企業の経営者に聞いても、今後、この影響で中小企業向けの業務、融資が非常に厳しくなるんじゃないかという心配の声が上がっているところだというふうに思います。

 まず、総論としてお聞きしたいのは、新公庫ができてからも引き続き中小零細企業向けの政策金融というものはきちんと堅持されるのかどうかということをお聞きしたいと思います。

    〔河本委員長退席、上田委員長着席〕

渡辺(博)副大臣 日本の経済を支えているのはまさに中小企業であるということは間違いございません。日本の経済の発展を支えている原動力をしっかりと維持していくことは大変重要でございます。その中核は、まさに資金調達の円滑化であるというふうに思っております。

 このため、政策金融機関の再編に当たりまして中小企業金融の取り扱いについては、行政改革推進法等において、中小公庫や国民公庫が担ってきた機能が新たに設置される政策金融機関にしっかりと承継される旨規定されているわけでございます。

 株式会社日本政策金融公庫法案においては、こうした決定事項に忠実に従いまして、中小公庫や国民公庫が担ってきた機能の承継が規定されているところであります。今回の政策金融機関の再編後においても、新たに設立される政策金融機関を活用しながら、中小企業の方々の資金繰りに支障を来すことのないように万全を期してまいりたいと思っております。

北神委員 機能が承継をされる、それで融資の方もきちっとやっていくという渡辺副大臣のその決意はよくわかるんですが、具体的に法案を見ていくと、中小公庫の二つの融資形態がある、いわゆる一般貸し付けと特別貸し付け。今回の法案によって一般貸し付けの方、これは一般的に中小企業の皆さんに融資をする、特別貸し付けの方は国の政策に従っていろいろな制度融資をやるという分け方だと思いますが、そのうち一般貸し付けというものがなくなる。それをもって今回、業務を縮減するということになっております。これが一つ、心配の一番大きな理由だというふうに思っているんですね。

 というのは、実際に不動産なんかのかなり小規模な企業にとっては、運転資金の確保とかそういったことで一般貸し付けというものは非常によく利用されている制度だと思います。ところが、今回の法案は、今申し上げているようにこの一般貸し付けを廃止すると。考え方としては、官から民ということで、恐らく民間金融機関にその分は任せようじゃないかということであると思うんですが、官から民という造語をひねり出すほど簡単に、本当に民間金融機関が一般貸し付けがなくなった分について対応してくれるのか、私は非常に疑問に思います。

 まず、本論に入る前に極めて現実的な問題として、現在、中小公庫から一般貸し付けを受けている中小零細企業があると思います。こういったところが、今後、新公庫ができて、それで一般貸し付けを廃止するというふうになったら、路頭に迷う経営者もたくさんいると思うんですよ。要するに、新公庫ができて継続的な融資ができるように、救済策みたいなものを考えているかどうかお聞きしたいんです。

近藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、御質問の前提となります事実関係でございますけれども、中小公庫の貸し付けにつきましては、十七年度の貸付実績を見ますと、総貸し付けが一兆三千億円、二万六千件でございます。このうちの一般貸し付けが千八百億円、約二千七百件、こういう形になっております。金額ベースで約一四%、件数ベースで約一〇%を占めているところでございます。

 それから、一般貸し付けの利用実績を業種別に少し見てみますと、まず金額ベースで見ますと、不動産業というのが一番多うございまして、全体の三四%に当たります約六百億円、続いて製造業が三一%に当たります五百四十億円というところを占めているところでございます。今のものを件数ベースで申し上げますと、製造業が一般貸し付けの中の三四%に当たる九百二十件、不動産業が二六%に当たる六百九十件に当たっているところでございます。

 今先生御指摘の、一般貸し付けがなくなった場合にどうなるのか、こういう点についても少しお話をさせていただきますと、新公庫法案におきましては、現在の政策金融機関の利用者の利益が害されないように、まず、新公庫設立前に受けた申し込みにつきましては、一般貸し付けを含め引き続き資金の貸し付けを行うことができるという旨が書いてございます。

 それから、中小企業金融公庫の貸し付けにつきましては、政策的に重要な課題に対応する特別貸し付けというものに重点を置いて対応してきた結果、今御説明を申し上げました一般貸し付けの割合は、平成七年度、四六%でございましたけれども、平成十七年度では一四%にまで低下をしておるところでございます。現場ベースでは既に、平成二十年十月をもって、新機関の統合の際に一般貸し付けが廃止されるということは皆周知をしておるところでございますし、さらに、政策的に新公庫が対応すべき分野について、その時々の経済金融情勢に応じて適切に貸付制度の創設を図っていくということを考えておるところでございます。

 こういったことを通じまして、一般貸し付けの廃止があったとしても、いやしくも中小企業の資金調達に混乱や支障が生じることがないように、万全を期してまいりたいと考えておるところでございます。

北神委員 それは非常に安心をします。要するに、継続的に受けられるかどうかわからない企業の経営者もいると思いますので、そこはぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。

 次に、もう少し本質論に入りたいというふうに思いまして、経済産業大臣と、あと行政改革大臣、渡辺大臣にもちょっと伺いたいというふうに思います。基本的な考え方のところです。

 これは先ほどの中小公庫の一般貸し付け、特別貸し付けにもかかわってくるんですが、政策金融の考え方として、民業補完的な部分というものは、これはだれも否定をされないというふうに思うんですよ。民業補完的なものであればこれは有効なものであって、今後、新組織、新公庫に移行しても引き続きやるべきだと。でも一方で、今回の法案の一つの趣旨である民業圧迫、民間と競合するような部分というものは縮小していこうじゃないかという考え方だというふうに思うんですが、これは、言葉で言うと非常にわかりやすいけれども、実際どうやってそこを分けていくのか、区別するのかというのは非常に難しいというふうに思っております。

 今度、一般貸し付けについて、そもそもなくす方針だったという答弁だったんですが、それはそれでいいんですけれども、基本的な考え方として、一般貸し付けを今回なくすということは、一般貸し付けというのは民間と競合する部分だ、いわゆる民業を圧迫する部分だ、特別貸し付けのところは民業補完的なところだから、これは今後も続けるんだというふうな考え方だと思うんです。

 これについて、この認識が正しいかどうか、経済産業大臣にお聞きしたいと思います。

甘利国務大臣 そもそも、行革推進法の考え方は、官は民の補完に徹せよということでありますし、民業ができるところに官業が出張っていってはいけないということでありますし、平成十七年の十二月二十四日に閣議決定をされた行政改革の重要方針におきましては、一般貸し付けは量的補完であって、国全体として資金不足であった高度成長期とは異なって資金余剰になってきているので撤退するというふうに、閣議決定された重要方針で決められているわけであります。

 そこで、御指摘は、本当に民業はちゃんとやってくれるのか、一般貸し付けについても、官業、政府の政策金融機関が少し出張っていかないと空白地帯ができてしまうのではないかという御指摘だと思います。

 政策的に重要な部分はちゃんとこれからも政府系がやっていくのでありますが、民間がやるべきところで手をちゃんと差し伸べないということがないような措置はしていかなきゃいけない。そういう意味で、民間金融機関による無担保、第三者保証人なしの貸し付け、これはこれからもやってもらうわけでありますし、民営化された後の商工中金等も積極的にそのノウハウを生かしてやっていってくれると思いますが、なお一般民間金融機関がこの種の貸し付けを促進してくれるように、証券化支援業務、こういうものを通じて、空白地帯、必要なのにだれも対応してくれないというところが出ないように対処をしていきたいというふうに思っております。

 基本的な考え方は、御指摘のとおり、民業がやるべきところは官は出張っていかないという考え方、政策的に大事なところで民がカバーできないところはちゃんとやっていこうという考え方であります。

北神委員 私も大体同じ考えで、今回一般貸し付けをなくしたら、そのまま本当に民間金融機関が引き受けてくれるのかというのはだれもわからないわけですよ。

 というのは、私も資料に、配らせていただきましたが、四ページだと思いますが、地銀、信金、信組の中小企業向けの貸出残高というのがありまして、ちょっとわかりにくいかもしれないですけれども、一番左上の二〇〇〇年の三月、これは単位が兆円ですが、それぞれ金融機関の貸出額が書いてありますが、それと最近、直近を見ると相当減っている。つまり、中小企業向けの貸し出しというのは減っている。

 これはもちろんいろいろな理由があると思いますし、ある意味では景気が回復している部分もあるのかもしれません。ただ、必ずしも、今中小企業が二分化している中で、格差の下の方に行っている中小企業に貸し出しがふえているとは到底思えない。そういった中で、どういう理由であれ、今までにもう方針が決まっていたのかもしれませんが、一般貸し付けをなくすということは、必ずしも民間金融機関が、今まで貸し出しを基本的に減らしている中で、なくなったから、ではそこを拾っていこうかということには自動的にはならないというふうに思っているんですね。だからこういう議論をさせていただいているわけです。

 それで、先ほど甘利大臣が、一般貸し付けと特別貸し付けの基本的な考え方として、一般貸し付けは基本的に民業圧迫というか、そこはもう民間にできる部分だということで廃止ということなんですが、これも私は、特別貸し付けは、一応予算措置がなされているとか、中小企業政策の法律に基づいてやっているからいかにもここは政策金融的だけれども、実は一般貸し付けも、とらえ方によっては民業補完的な役割を担ってきたというふうに思うんですよ。

 その一つの例は、さっき事務方の方から、いや、こんな一般貸し付けを減らしても大したことないよ、なぜならフローで見たら全体の貸出額の一四%しかないというふうに言われましたが、平成七年を見ると五割近くあるわけですよね。これは、皆さんが努力をして減らしてきたということがあるのかもしれないけれども、基本的に、あのときは金融危機で民間金融機関が不良債権でにっちもさっちもいかない、貸し渋り、貸しはがしがあった。そういう問題が生じているときに、実は中小公庫というのは非常に大きなセーフティーネット的な、今の言葉で言えば民業補完的な役割を担ってきたんだ、これは大方の人はそれを認めているというふうに思うんです。そういうことを考えると、本当にこの一般貸し付けをなくしていいのかどうかというふうに思うんですよ。

 つまり、考え方からいって、一般貸し付けというのは本当に民業圧迫的なもので民業補完的なものじゃないのかというところは、私は疑問に思うんですよ。そこについてどうお考えでしょうか。

甘利国務大臣 巡航速度の中にあって一般貸し付けについて政府系が出張っていくことは民業圧迫になる。ただし、金融危機とか大災害とか非常事態のとき、いわゆる危機対応については、政府系もやりますけれども、民業がそれをやっていけるような支援策を講じて、一丸となって取り組むということはやります。あくまでも、巡航速度の中にあって民業がやるべき部分に官業が出張っていかないという考え方が基本だと思っております。

北神委員 今大臣がおっしゃったように、自然災害とか金融危機のときにはそういう出番がある。であるならば、一般貸し付けを本当に廃止していいのかという質問なんですよ。それについてどうでしょうか。

渡辺国務大臣 先ほど甘利大臣が答弁されたとおりでございますが、今回も危機対応としての政策金融は残す設計になっているわけでございます。

 平成のデフレの中で民間金融機関が貸し渋りをせざるを得なかったのは、言うまでもなく資本が傷んでいたからなんですね。したがって、そういうときには民間がリスクをとれない、そのかわり政府系がリスクをとった、そういうことだろうと思います。したがって、その点は、これは御心配はありません。新公庫の設計の中にきちんと仕組んであるのは御案内のとおりでございます。

 私が常々思っているのは、日本の中小企業は、これまた資本が非常に小さいんですね。法人企業統計を見ますと、釈迦に説法でございますが、大体資本が三割ぐらいじゃないでしょうか。七割が負債なんですね。こういう構造的なバランスシート上の問題を抱えておりますので、インフレのときにはいいんですよ、しかしデフレのときには債務が自己増殖してしまうわけでありますから、これは中小企業にとってはもう本当に大変な状況だっただろうと思うんですね。

 したがって、やはり全体として、金融庁の方でも考えていただいていると思いますが、資本をどうやって強化するかというのは大いにこれから考えていかなければいけない問題なんだろうと思います。

 そういう中で、一般貸し付けを廃止するのはいかがなものか、こういうことでございます。

 一般貸し付けが御指摘のようにずっと半分ぐらいから一四%ぐらいまで減り続けてきましたのは、そのとおりでございます。これは、たしか日銀の統計にもございますが、二〇〇〇年のころは、中小企業向け貸し付けというのは、大手銀行なんかも含めて恐らく三百五十兆円ぐらいあったんじゃないでしょうかね。ちょっと数字が正確でないかもしれません。それが今、〇六年ぐらいでは二百五十五兆円ぐらいですか。そういう傾向は、先ほど申し上げているように、デフレの中で債務が自己増殖をして資金需要が全く起きていない、そういうことを意味しているわけだと思います。

 したがって、今後、資本を強化するという方策がうまくいき、かつ危機対応がきちんと制度設計の中に含まれているというのであれば、委員御指摘の一般貸し付けを廃止しても、これは何ら心配ないと言えるのではないでしょうか。

北神委員 制度に組み込まれているというのはよくわかるんですよ、危機対応という制度をつくっていると。

 これはもう質問しませんが、心配しているのは、それはすぐ同じように柔軟に対応できるのかどうか。要するに、新しい制度をつくって、また何かいろいろ申し込みをして、手続をして、金融危機のときに対応がおくれるということを懸念するんです。多分それは恐らく大丈夫だというふうに、皆さんもうなずいているから思いますが、渡辺大臣が言ったように、資本を強化する、したらという前提も置かれましたが、それもなかなか難しい問題なので一抹の不安を覚えるんですが、これはこれで一応危機の対応という枠組みができているということで、私も理解をさせていただきます。

 ただ、もう一つは、危機じゃないときも、私は、一般貸し付けというのは民業補完的な役割を担ってきたというふうに思うんですよ。

 これもいろいろな議論はあると思いますが、なぜかというと、日本の特に地方銀行は、どうしても担保とか保証に頼る、そういった融資しかしていない。これは私はわからないですよ、余り勉強していないんですが、よく言われるのは、ヨーロッパかアメリカは、投資から生まれる将来のキャッシュフロー、収益をベースにして貸し付けを行う。プロジェクトファイナンスみたいなことをしていると。保証ばかりやっていると、土地を持っている中小企業はいいかもしれない。でも、持っていないところでも、技術力とか経営者がすぐれているとか、そういったところはなかなか金融機関が見てくれない。こういった意味でも、中小公庫、国民公庫もそうですが、やはり危機的な状態じゃない平時においても民業補完的な役割を担ってきたと私は思うんですよ。

 それを、多分、民業補完的、民業圧迫というこの辺の概念が整理をされていないから、何か一般貸し付けというのをなくすという、多少わかりやすいような話にしているんですが、これは実際、経営者にとっては非常に厳しい問題になるというおそれがあるんですよね。それについて、お二方にお聞きしたいんですが、まず渡辺大臣にお聞きしたいと思います。

渡辺国務大臣 従来、日本の民間金融機関が御指摘のように土地の担保に依存をする融資を続けてきたというのは、ある意味でリスクプレミアムの感覚が非常に薄かったということなんだろうと思うんですね。

 日本の金利の状況をグラフにしてみますと、非常にいびつなことがよくわかります。縦軸にローン残高をとり、横軸に金利をとりますと、大体二%前後ぐらいのところに大きな山がございまして、これがするするとなくなっていって、次の小さなこぶが二三%ぐらいのところに出てくる、こういう状況なんですね。したがって、これは非常におかしいなと見ただけでわかるわけであります。もうちょっとリスクプレミアムの感覚が働いておれば、理論上は正規分布というような感じにいくのかもしれません。そこまできれいに出なくとも、もっとなだらかな金利のグラフになっていくんだろうと思うんですね。

 したがって、そういうリスクに見合ったプレミアムをとるという金融が平成のデフレの中でなおさらできなかった、こういう問題があるんだろうと思うんです。

 今、日本銀行が金利をちょこっと上げても、とにかくお金がじゃぶじゃぶ余っているわけですから、貸出平均約定金利は下がっちゃうなんということが現実に行われているんですね。したがって、日本経済が正常化に向かい、デフレから脱却できればまた話は別かと思いますけれども、今のような状況では、そういう金融が続いているという現実がございます。

 したがって、日本経済が正常化に向かえば、民間金融機関もリスクに見合ったプレミアムをとり、資金配分が市場メカニズムを通して極めてスムーズに行われるということが普通に行われていくわけでございまして、一般貸し付けのように民間ができるものをあえて政府がやり続けるという必要はないのではないかと思います。

北神委員 甘利大臣も、何かつけ加えることがありましたら。もしなければいいですけれども。

甘利国務大臣 基本的には、民間がやるべきところに出張ってはいけない。ただし、本当に民間がやってくれるかどうかというのは、現実の話としては、やってみなければわからないところも当然あるわけです。その際に、想定していた政策どおりに事態が進行していくように、リスクを引き取ってやるような作業も必要だと思うんですね。

 それは、現状でも中小公庫は貸付債権の証券化のその部分を買い取るという仕組みがありますが、それに加えて、例えば倒産のリスクが発生したときにそのリスク分は引き受けるとか、新しい措置があるわけですね。ですから、今までよりもそこのリスク引き受けを、民間がやるということを前提にバックアップ措置は充実をしておりますから、そこでしっかりやってくださいと。

 しかも、これからは、特にこれは中小企業の話ですから、中小企業に対する地域金融というのはリレーションシップバンキングでありますから、つまり、財務諸表だけでここは貸す貸さないじゃなくて、企業の将来性とか経営能力とか経営者の信頼性、そういうところ、大銀行が貸し出す審査の上に上がってこないその先の信頼性もしっかりと酌み取ってお金を貸すというのが生きる道でありますから、やはり地域金融機関も、自分たちはどう生きるべきかということをしっかり分析しながら、地域に存在する金融機関としての能力を最大限に発揮して、今まで以上に担当すべきことをしっかりやってもらいたいと思うし、そうできるようになるかと思っております。

北神委員 お話を聞いていると、やはりちょっと不安を感じざるを得ないというふうに思うんですよ。今経済産業大臣がおっしゃったのは、証券化業務とか保証を与えるとか、そういう間接的な手法で頑張りますと。それは、頑張るのはいいと思うんですよ、大事なことだと思います。リレーションシップバンキングも、民間金融機関にやってもらうと。でも、これもどのぐらいの期間でそれが本当に機能していくかというのもわからない。

 だから、平時の話をして、さっき日本の金融機関の担保融資の話をしましたが、もう一つ、甘利大臣も今言われましたが、ほとんどの日本の中小企業、特に零細企業は、信用度の高い財務資料というのがなかなかない。経営資源というのは、やはり経営者本人の信用力とか手腕とか、あるいは技術力とか、だから金融機関にしてみれば定量的な審査がなかなかできない。さらに、リレーションシップバンキングというのはいいと思うけれども、小口のニーズだから、一つずつ見ていろいろ審査をして、時間をかけてやる割には余り効果がない、融資審査コストが非常に高い。

 こういう問題も日本の金融機関にはあって、さっきの担保融資の話とは別に、私は二つ目の理由として申し上げるのは、今、中小企業公庫とか国民公庫のそういった一般貸し付けという部分が現実には民業補完的な役割を担っているんじゃないか。そういったときに、形式的に廃止をしちゃって、あとは証券化業務とかそういうので対応するとか、無担保、無保証でやるというのは、今たまたまその割合が一四%で少ないからいいけれども、今後、本当に金融危機というのはいつ、多分ないですよ、数年は。ないと思うけれども、これもわからない。

 それはやはり制度的に、危機管理の観点からいえば本当は、ただ、私もこれは既に行革推進法で決まっているからもう変えられないという無力感を覚えながら言っているんですが、それは法律で決まったからやらないといけないんですが、ぜひそこは、運用の面でできるだけ慎重に見ながらやってほしい。つまり、一般貸し付けがなくなったときに、そこで路頭に迷わないようにできるだけきめ細かく見ていく。一方で、証券化業務とかそういったこともやればいいというふうに思うのです。

 そこは私の提案として申し上げたいのと、もし可能だったら特別貸し付けの中で、要するに、ある程度の期間、まあ数年、三、四年ぐらいたったら大体情勢がわかると思うんですよ、一般貸し付けがなくなってどういう影響があるという。つまり、激変緩和措置というのを特別貸し付けの中に組み込むことができれば、毎年毎年そういう予算措置をして一定の割合を持つということができれば、私は落ちつくまである程度柔軟に対応できるというふうに思う。

 今議論しながら思いついただけで恐縮なんですが、これについて、事務方で結構ですよ、どういうふうにお考えでしょうか。

    〔上田委員長退席、河本委員長着席〕

石毛政府参考人 お答えを申し上げます。

 一般貸し付けの部分につきましては、今先生るるおっしゃいましたように、危機対応の点と、それから証券化による無担保、無保証の融資の制度と、それからもう一つ、特別貸し付けの点では、いわゆるセーフティーネット貸し付けというのがございます。

 これは、取引先の大企業あるいは大企業でないケースでもいいわけですけれども、そういうところが倒産をしている、あるいはしかかった、そういうようなケースに対応する。あるいは、金融機関の再編が起こって、金融機関の側に問題がある。要するに、中小企業者自身の問題ではなくて、周辺の環境によって困難に陥っている、そういうケースのものについては対応できる形の制度になっております。

 したがいまして、私ども、今先生もおっしゃるようなケースが具体的にどういうふうに出てくるかということでありますけれども、既存の制度をしっかり使ってそういうものに対応していくということが基本かなというふうに思っております。

北神委員 特別貸し付けの中のセーフティーネットとか、あるいは外部環境によって被害を受けた場合、そういうものをできるだけ柔軟に使って、予算も、今の貸し付けの金額まで行くかどうかわかりませんが、ある程度の金額を持っていけば運用である程度は対応できるというふうに思いますので、そこはよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 もう一つ、今、一般貸し付けというのが実は民業補完的な役割を平時においてもやってきているんじゃないか。そういう議論が去年、私も全然参加していなかったんですが、やはり本当はもっと詰めて行われるべきだったんじゃないかなというのが私の今の印象ですが、今度は逆の方向からいって、今回の法案というのは、行政改革的な視点、天下りをなくすとか業務を効率化するとか、統合することによって事務経費をなくすとか、そういった視点も一つ大きな部分がある。これは必ずしも異論はないんですが、もう一つは、今ずっと議論をしている民業圧迫というものをやはりなくしていかないといけない。官から民の流れというものを推し進めないといけない。

 でも、考えてみたら、中小公庫とか国民公庫が今、民業を圧迫しているというのは、私は、昔何か新聞とかに、十五年前とか二十年前はよく見たことがあるんですが、民業を圧迫しているという悲鳴の声は、実際民間金融機関から上がっているんでしょうか。

 つまり、この法案のこの部分は何に対応してやっているのかというのが正直私にはわからないんですよ。これはどなたでも結構ですが、民業を圧迫している、どこが民業を圧迫されているんでしょうか、今の中小公庫、国民公庫。中小公庫でいいですよ、限定していいんですが。

大藤政府参考人 先ほど大臣から話がございましたように、今回の政策金融改革におきましては、官は民の補完に徹するという観点から、民間金融と政策金融の担うべき機能や役割分担について相当の議論を重ねたわけでございます。

 その過程におきまして、経済財政諮問会議等の場で民間金融機関等からもヒアリング等を行っておりまして、一般に、不良債権処理の進展や金融技術の高度化等によりまして中小企業貸し付けの分野における取り組み姿勢が改善している、一方で、ただし、セーフティーネットなど、すべての分野において民間だけで対応できるわけではない等の意見が表明されたわけでございます。

 このような意見も含めまして、政府において検討した結果、中小公庫の一般貸し付けは金融の量的補完であって、民間金融と機能としては競合しているということで、今回のような見直しを行ったわけでございます。

北神委員 余りよくわからなかったんですけれども、要するに、そういうふうに決まったと。その理屈がよくわからないんですよね、何が民業圧迫なのか。もう一回、そこを詳しく説明してもらえますか、わかりやすく。

大藤政府参考人 一般貸し付けにつきましては、いわゆる民間企業が貸し付けている部分につきまして、いわゆる量的補完ということで対応しているものでございまして、民間金融機関から、不良債権処理の進展とか金融技術の高度化等によりまして取り組み姿勢が改善してきているわけでございますので、民間金融機関とのいわゆる競合が生じる可能性が増してきているというふうに考えているところでございます。

北神委員 だから、その量的補完と、多分だれも意味がわからないと思うんです。何となくわかるかもしれないけれども、量的補完とは何なのか。

 そしてさらに言えば、私の資料の三ページにありますが、これは中小公庫さんがつくっている資料で、一般貸し付けの推移が書いてあるんですよ。その数字は別にいいんですが、箱の中の(1)を見ると、公庫は民業補完の観点から、こういう一般貸し付けにより供給をしている、つまり、今までの中小公庫は既に、一般貸し付けというものは民業補完だというふうに言っているんですよね。これは、こんな資料ではあれですけれども、中小公庫の法律を見ても、民業補完というものを大前提として、たしか第一条に書いてある。

 つまり、今までは一般貸し付けは民業補完だったけれども、何か議論が去年あって、一般貸し付けというのは量的補完だということで、やはりこれは民間と競合する可能性があるというんですけれども、こんなことで本当に一般貸し付けを廃止するというのは、私は、極めておかしいと。今までそういうふうに一般貸し付けは民業補完的なものだと言っておきながら、大して説得力のない議論で、今回、民業圧迫、民間と競合するということでいきなり廃止をするということは、よくわからないなと。

 何回も言いますように、これは去年もう法律で決まっちゃっているから蒸し返すつもりはないんですが、もう一度、皆さんに、もし問題が生じたら運用の面でできるだけ対応してほしいのと、それはいろいろな民間金融機関の整備をしたり証券化市場というものをちゃんと整備してからしたら、もしかしたら民間金融機関も十分こういう中小零細企業に融資できるような環境が整うかもしれない。でも、本当はそれが整うまでやはり一般貸し付けは残しておくべきだというのが私の考えなんですよ。だから、そういった意味では、私も去年の議論に参加していなかったから余り言えないんですが、この法案で一番気になるのはこの部分ですので、ぜひそこをお願いしたいと思います。

 最後に、行革大臣にお願いしたいのは、結局、この民業補完とか民業圧迫というのがよくわかっていないから、恐らく、国民の皆さんにインパクトを持ってこれはすごい官から民の改革だということを示すために、貸し出しの数値目標みたいな、私に言わせれば安易で表面的なことをやろうとしている。さっきの質疑の中で経産大臣がもうそういうことは余り適当ではないと言われたのは、非常にいい、そういうふうに考えてもらっていてよかったなというふうに私は思うんですよ。というのは、貸出額を半分にするとか三分の一にするとか、こんなのはもうちゃんちゃらおかしな議論で、何の根拠でそんな縮小をするんだ。ただただこの法案のPRのために、これは官から民だということをみんなにある程度印象づけるために言うような話で、これはもう現実に商売をされている皆さんにとっては非常に迷惑な話になるというふうに思います。

 ただ、行革大臣は何かどこかでそれを検討しているというふうに伺ったんですよ、本当かどうかわかりませんが、貸出額を縮減する数値目標を。それについて、さっき経済産業大臣から明確に、そんなことはやらない、やるべきではないという答弁があったんですが、渡辺行革大臣はどういうふうにお考えでしょうか。

渡辺国務大臣 やはり民業補完という点は、これは譲れない一線なんですね。

 量的補完という言葉が出てまいりましたけれども、昔、高度成長時代に資金ニーズが山のようにあって、お金が足りない。例えば住宅をつくるという場合に、当時は、住宅金融公庫からお金を借りませんと住宅が事実上つくれないなんという時代がございました。ですから、住宅のサイズも住宅公庫の要請に合わせたサイズでつくるわけですね。だから、ちょこっとでもそれを超えちゃったり、大きな家をつくったりすると公庫融資が受けられないなんという時代があったんですね。ですから、極めて小さなウサギ小屋で住宅はつくらざるを得なかった。そういう時代の発想が、量的補完ということなんだろうと思うんですよ。

 今は、もう先ほど来話が出ておりますように、企業の方も資金余剰になっちゃっているんですね。資金需要が極めて少ない、全体としてですよ。ですから、そういう中で、やはり民間がもうちょっと頑張ってリスクをとる、こういうことは民間金融機関にもっとやっていただく必要があろうかと思いますし、そういう状況を見ながら、GDP比で半減した後の数値目標については検討していきたいと考えております。

北神委員 私は、やはり数値目標は本当に、どういう根拠でその数字をするのか、いろいろ検討されると思うんですが、非常に不適当だと言わざるを得ない。

 そして、量的補完の話というのは、戦後の高度成長期のときに一般貸し付けがそういう役割を担っていたというのは、それはそのとおりだと思います。でも、だからといって、先ほどからるる申し上げているように、今、一般貸し付けが民業補完的な役割を担っていないという証明にはならないんですよね。やはりいまだに民業補完的な役割を担っている。さらに言えば、百歩譲って担っていないといっても、少なくとも民業圧迫というのは、なかなかこれは証明できないし、そんな声も全然上がっていないというふうに私は思います。

 ですからそういった意味で、繰り返しになりますが、もし問題が出てきたら、問題が出なかったらいいんですよ、生じた場合には運用面で対応していただきたいということをお願いするとともに、もう一つは、数値目標をもうやめてほしい。経済産業大臣も明確に言われたので、そこはぜひ、甘利大臣と調整して、やめていただきたいというふうに思います。

 最後に、国民公庫総裁の、私の仲人もやっていただいた薄井さん、わざわざ御足労いただきながら質問できなくて、おわびを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

河本委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾英一郎でございます。

 引き続きまして質問をさせていただきたいと思います。

 官から民へ、民間にできることは民間にということで日本政策金融公庫をつくりますよ、要するにそういうことだと思うんですが、その背景に、政府組織が行ってきた金融機能というのが、その使い方が偏っているということで、民間組織が行った方がより効率的であるというような考え方がその背景にあるとは思うんですが、この点を渡辺大臣にちょっと確認させていただきたいと思います。

渡辺国務大臣 官業が資金ニーズにこたえて経済成長を引っ張ってきたという時代はかつてあったんだろうと思います。しかし、市場が失敗するように、政府も失敗をすることがあるわけですね。巨大な国営銀行と化した財政投融資が後世代への大変なツケをつくってしまったことについては多言を要しないと思います。

 したがって、今我々がやるべきことは、こうした政府の失敗の教訓にかんがみて、やはり政府のサイズはできるだけ小さく、民間にできることは民間に、官業ビジネスは民業の補完に徹するということがお金の自然な流れぐあいをつくり、それが経済活性化に貢献するものと考えております。

鷲尾委員 大臣、ありがとうございます。

 政府の失敗ということで大臣からお言葉をいただきましたが、一方で、やはり市場の失敗という問題もありますと。民間に任せっきりですと、やはり大臣、先ほど図を使って説明していただいたように、日本の融資慣行というのは大変いびつであって、リスクをとるということについては非常に消極的であるということでありますし、これがいわゆる今までの政府系金融機関の量的な補完につながっていたということは今まで私も存じ上げているところなのでございますが、では、民間に任せておけばそれがいいのかというと、やはり市場の失敗があるだろうと。政府の失敗もあるけれども、民間の、いわゆる市場の失敗もあるというところが、これは今、日本政策金融公庫、これから先の未来を想像していく上では非常に難しい、ある意味、ちょっと矛盾をはらんだところではないかというふうに私自身感じているわけでございます。

 先ほど北神委員からも質問させていただきましたけれども、民間の競合が生じていますよと。民間と政府系金融機関との業務の競合が生じている。では、競合が生じているというのはどういう事態を指しているのかというところを、ちょっと先ほどの答弁を私も聞いていて不明朗な点がありましたので、改めてお聞きしたいと思います。

渡辺国務大臣 先ほど私が申し上げましたのは、わかりやすい例えの方がよかろうと思いまして、住宅融資の話をしたんですね。

 御案内のように、住宅金融公庫は直貸しはしていないはずでございます。年金の転貸融資も廃止されまして、今、住宅ローンなんというのは、民間金融機関が大きな収益の柱としていろいろな商品を出してやっているわけですね。

 一方、無担保無保証融資というのも、民間では相当いろいろな商品が開発をされてきているわけでございます。例えばスコアリングモデル融資なんというのは、簡単審査の、三日ぐらいで結論が出ちゃう、全く無担保、無保証ですよね。五千万円ぐらいまで貸してくれるところもあるんですね、金融機関によっては。こういう金融ビジネスは、地方銀行にも今少しずつですけれども普及し始めているわけでございます。したがって、そういう金融機関がリスクをとるという極めて当たり前のことが今行われるようになってきているわけであります。

 相変わらずデフレが続いているものですから、金利の方は非常に低いところにへばりついた状態が続いていると思いますけれども、そういう民間の芽は大いにこれは伸ばしていくことが必要であって、民間にできることを官が相変わらずやり続けるという必要はないのではないでしょうか。

鷲尾委員 ちょっと今のお話を聞いていてもよくわからない部分があったんです。民間にできることを官がやり続ける必要はない、それは確かにおっしゃるとおりだとは思うんですけれども、では、民間とどこが競合していて、先ほど答弁がありましたけれども、これから先どういうところが競合する可能性があって、それについて民業補完に徹するという方向性ですから、それについては、一般の金融機関が行うことについて補完はするけれども業としては行わない。それはどういうことなのかというところをお聞きしたいんです。

大藤政府参考人 民間との競合が生じている事態というのを厳密に御説明するというのはなかなか難しいと思いますけれども、民間金融でも対応が十分可能な分野にもかかわらず、政策金融機関が当該分野に資金供給を行っている場合ということだと思います。

 それにつきましては、ボリューム的に貸し付けができる、できないということだけではなくて、リスクに見合った金利で資金を提供できるかどうかということでございまして、例えば、民間金融機関がこの程度のリスクがあるのでこの程度の金利で貸したい、貸せるというような場合に、より低利で政策金融の方から資金が提供されるということがもしあるとすれば、これはやはり競合という事態に当たり得るのではないかと思っております。

 今回の政策金融改革におきましては、そのような観点も踏まえまして、相当の検討を重ねた上で、これまでも議論がございましたけれども、例えば中小公庫の一般貸し付けでありますとか大企業向け等の食品産業貸し付け等について、民間金融でも対応が十分可能な分野とされまして、いわゆる政策金融から撤退するというふうにされたところでございます。

鷲尾委員 おっしゃるとおり、今答弁していただいたような事態は、要するに、民間ができるところをより低利で貸し付けるようなところは、当然これは制限というかやってはならないという基本的な考え方で、それは皆さん認めるとおり、よいことであるというふうに思うんです。

 では、政策金融公庫としては消極的にそういう部分についてはあらかじめ融資はしないんだ、一般貸し付けについても消極的にこれはやっていくんだ、そういう基本的な方向性でよろしいんでしょうか。

大藤政府参考人 新公庫につきましては、民業の補完に徹するという基本的な考えで業務を行っていくわけでございますけれども、金融機関が行う金融を補完するということにつきましては、まず、政策金融機関が一定の政策目的を達成するために民間金融のみでは適切な対応が困難な分野に対しては、みずからやはり積極的に資金を供給していくということだ思います。

 それに加えまして、本来、民間金融機関が対応できる分野について民間金融機関の貸し付けを円滑化し推進するというような観点から、部分保証とか証券化の手法などによりまして、民間の金融を補完して民間が貸し付けやすいような環境を整備していくということも大きな意味で民業の補完であるというふうに考えております。

鷲尾委員 ありがとうございます。

 それで、民業補完ということですけれども、業務を不断に見直していく、必要性を含めて継続的に見直していくぞということで、行革推進法に定める業務について、行政減量・効率化有識者会議というんですか、これを今活用してやっておるという話を聞いているんですけれども、この有識者会議というのはどういう組織でどういう頻度で行うのか、そしてまた、これはどこまで日本政策金融公庫の内容を決定していく会議になるんでしょうか。

大藤政府参考人 行政減量・効率化有識者会議と申しますのは、行政改革推進法で設置されました政府の行政改革推進本部のもとに設置をされております会議でございまして、必要に応じて、本部長である内閣総理大臣等に意見等を具申する等々の機能を有しているところでございます。

 既に、行政減量・効率化有識者会議におきまして、今回の法案の具体化等につきましても適宜御説明をさせていただいて、御議論をいただいてきたところでございます。また、今後、行政減量・効率化有識者会議のもとに専門のワーキングチームを設けていただきまして、新公庫、完全民営化・廃止機関につきまして専門的立場から評価、検証を行っていただきまして、節目節目で有識者会議への報告を行っていくことなどを検討してまいることになってございます。

鷲尾委員 渡辺大臣、この会議は必要に応じて開催するという話ですけれども、必要に応じての必要というのは、これは不断に見直しということですから、随時というわけではなくて、どんな必要に応じてやっていくのかとかいう話も、これは常に見直していかなきゃいけないことですから、ある程度の目安というのも必要になろうかと思うんです。

 それと、これは政策金融公庫の話に限って言えば、どういうところを決定していくのかという話も、大臣、お聞かせ願いたいんです。この有識者会議がどんなことを議論して、日本政策金融公庫は自律的経営をしていくわけですから、これについてどういうことを決定する権限があるのか、どういうことを提言することになっているのかというところを、大臣、お答え願えたらと思います。

鈴木政府参考人 これまでの実績につきましてだけ御説明申し上げます。

 これまで、この行政減量有識者会議でございますけれども、案件によりまして、多いときには一週間に一遍開いていただいたこともございます。また、案件によりましては、事柄の節目節目で、何かを決定する前に開いていただいたというようなことがございまして、今後も私ども、この節目節目、また必要に応じて開催させていただきたいというふうに考えております。

渡辺国務大臣 国会の議論なども参考にしながら進めてまいりたいと考えます。

鷲尾委員 もうちょっと、どれぐらいの目安でとかいうところもお答えいただきたかったんですけれども。あと、具体的な内容で、どういうことを決定していくのかというところについても大臣にお答えいただきたかったんですけれども。

 大臣、この点はどうですか。お答えいただけないですか。

渡辺国務大臣 先ほど政府委員から答弁申し上げましたように、行革推進法で与えられたミッションというものがございますので、新公庫について、業務の不断の見直し、民業補完が徹底されているかどうか、効率的な事業運営が行われているかどうか、資金調達がうまくいっているかどうか、新公庫がスタートするに当たってスムーズにいっているかどうか、そういったことを議論していきたいと考えております。

 そして、先ほど来申し上げておりますように、GDP比での目標が決められているわけでございまして、これが達成された後の目標をつくるかどうかという点については、民間の金融機関の状況なども見ながら検討をしてまいりたいと考えております。

鷲尾委員 ありがとうございました。

 それでは、ちょっと話をかえまして、経営責任の明確化について、財政負担のあり方として、経営者の責任に帰すべき赤字を公庫は負担することはないんだというふうにあるわけですけれども、この経営者の責任に帰すべき赤字というのは具体的にどういうことなのかというところをお聞かせ願いたいんです。

大藤政府参考人 経営責任のことについてのお問い合わせでございますけれども、御指摘のとおり、行政改革推進法で、「新政策金融機関に生じた損失であって、これらの経営責任に帰すべきものを補てんするための補助金の交付その他の国の負担となる財政上の措置は、行わないものとする。」ということが規定されているところでございます。

 経営責任に帰すべき赤字といたしましては、その損失が政策金融の適正な実施に伴うものではなく、経営陣の業務運営上の理由等によるものを想定しているところでございます。

 具体的には、例えば経営者による法令や融資等の基準に違反した運営が行われていたでありますとか、経営者の裁量にゆだねられている事項について重大な判断の誤りがあった等々、経営責任に帰すべきことが明白な場合に当たるかどうかという観点から、個々の事例ごとに客観的かつ慎重に判断していくことになるものと考えております。

鷲尾委員 それでは、四公庫の統合がなされるわけですから、経営の効率化とか赤字の縮減とか、これについて当然、今、経営責任の明確化ということで勘定を残すという議論をされているわけですけれども、こうしておりますと、組織自体が縦割りになってしまう、要するに組織の合理化ということがなかなか進まないんじゃないかというふうに批判もされているわけです。

 この点についての御見解を、対策を含めてお伺いしたいんです。

大藤政府参考人 先生御指摘のとおり、経営効率化の推進に当たりましては、管理部門等の共通する業務の一元化等を通じて統合効果を最大限発揮するとともに、強固なガバナンスのもとで、一体的かつ効率的な組織運営を図ることが重要であると考えております。こういった観点から、いわゆる縦割りというようなことがあってはならないと考えております。

 このような観点から、新公庫の運営に当たりましては、まず新公庫自身が今回基本的には会社法が適用されるということでございまして、取締役会による意思決定や業務執行の監視等のガバナンス確保に資する会社法上の仕組みを活用することによって、各勘定別の縦割りの運営ではない、一体的な組織運営に努めていくということがまず重要であると考えております。

 また、各主務大臣におきましても、一体的な組織運営を妨げることのないよう緊密に連携をいたしまして、新公庫の一体的な組織運営が図られるよう指導監督を行っていくということが必要であると考えております。

 また、こういった点につきましては、政府の行政改革推進本部としても、運営のあり方についてしっかりフォローしていくということになるものと考えております。

鷲尾委員 それは鋭意フォローしていっていただきたいんですけれども、何もこれは会社法を適用したからうまくいくという話ではないと思うんですね。そもそも会社法を適用したからうまく経営がなっていますよという話であれば、今の会社組織みんなうまくいっているということになりますので、そんなことは絵にかいたもちだろうというふうに思うわけでございます。

 これは、渡辺大臣、主導的に、ちゃんとシナジー効果を発揮するように、よりリーダーシップをとってやっていかなきゃいけないと思うんですけれども、大臣の意気込みをちょっとお聞かせください。

渡辺国務大臣 官業ビジネスというのは、ともすると、昔よく親方日の丸という言葉がございましたが、そういう依存体質に流れやすいんですね。したがって、いかにガバナンスをきかせるか。会社法適用だというのは、そういう意味では非常にガバナンスをきかせる効果は高いんだと思うんです。

 ですから、そういった会社法の規定に加えて、予算は国会で議決をする、決算も国会で審議をする、金融庁の検査も入る、定款変更の認可は政府の監督のもとでやる、こういったガバナンスをきかせる規定がございまして、これは官業ビジネスといえど、きちんとやらせるということが大事ではないでしょうか。

鷲尾委員 大臣、今のそのお話の中で、例えば赤字を削減するような目標というのは立てたりするんでしょうか。公庫自体の赤字を削減するような目標というのは立てるおつもりとかあるんですか。

渡辺国務大臣 削減目標をつくるのかということでございますが、これは、国民負担につながるものは極力削減をしていくというのは当たり前だと思います。

 新公庫の経営状況をこれからずっと先まで見通していける才能も、私、持ち合わせておりませんけれども、新公庫の担う業務については、先ほど来申し上げていますように、民業補完をいかに徹底していくか、そういった観点から最大限の効率化を図り、国民負担を最小限にするという努力をしてまいりたいと考えます。

鷲尾委員 大臣、ありがとうございます。最大限の効率化で最小の負担ということで、おっしゃるとおりだと思うんですが、現実はなかなかそううまくはいかないと思うので、特に、先ほど来、冒頭申し上げました市場の失敗というのもあるだろう、それについての政府が補完する役割、いわゆる民業補完が必要になってくる。

 そういう中で、これは甘利大臣にお聞きしたいと思っておるんですけれども、例えば、ベンチャー支援とか事業再生支援など、これについては、当然手間暇がかかるであろうというふうに推測されるわけです。ですから、こういうコストのかかる、そしてまた時間もかかる融資をやはり政府としても若干財政的に支えていかないと、逆に、政策的に重要な活動がより縮小してしまうという可能性も当然あると思うんですけれども、この点についてはどのような対応を考えておられるんでしょうか。

甘利国務大臣 一般的に、民間金融機関がほっておいてもやってくれるところに手をというか、出張っていく必要はない。政策的に重要なことで、そこの部分を民間金融機関がなかなか手を出しづらいということは、新しい政策金融機関がやっていかなきゃならないわけであります。

 ベンチャー支援や事業再生支援、これは政策的にも重要な活動なんでありますけれども、財政当局等とも協議をしつつ、必要に応じて支援措置を適切な形で講じていくということになろうかと思います。

鷲尾委員 ありがとうございます。

 貸し渋りという状況を想定したときに、貸し渋りの中で、政府系金融機関は踏みとどまって資金供給ということをやったわけですけれども、過去、そういう苦しいときにいろいろ貸し出しをして、いろいろな救済をして、そのことによっていろいろ償却負担が今大分積み重なってきているんじゃないかなというふうに思います。

 そういう中で、この日本政策金融公庫が、災害とかO157とか、いろいろそういう危機があったと思うんですけれども、こういうときに思い切って対応してきた、その結果、今、大変財務状況が悪くなってきてしまっているという部分もあるんですけれども、この過去の政策の負担というのは、これから経営で自律性を高めてやっていこうとする中で、過去のものについては大分負担が重くなるのではないかというふうに思うんですが、このことについても、財政面での対応というのはされているんでしょうか。この点はどうですか。

大藤政府参考人 現行政策金融機関が政策的な要請に応じまして業務を実施していくために真に必要な財政支援につきましては、これまで毎年度の予算において国会の議決をいただいて、適切に措置されてきたものと承知しております。

 新公庫につきましても基本的に同様でございまして、業務を的確に実施していくために真に必要な財政支援につきましては、引き続ききちんと予算において国会の議決をいただいて、措置されることになると考えております。

鷲尾委員 済みません。ちょっと時間がないもので、話が散漫になって申しわけないですけれども、きょうは江崎政務官にも来ていただいていますので、最後にちょっと一つ質問をさせていただこうと思います。

 国民公庫は、まだ相当程度第三者保証をとっているという話がございます。こういう他人を巻き込むような第三者保証の問題というのは、これは四月五日にまとめられた地域密着型金融に関する金融審議会の報告書の中においても、民間金融機関がこういうことをやることは問題であるという話が出ておるわけですけれども、こういうことを政府系金融機関がやっていくということについては当然問題があるであろう、民間がやることについて問題があるんだから、政府がやることについても当然これは問題であろうということで、当然、民間がリスクをとって融資していくということにも反するわけですから、こういう問題があることについてどういった対応を考えておられるのかということをちょっとお聞かせ願えますでしょうか。

江崎大臣政務官 国民公庫に第三者保証を原則とらない方針を打ち出すべきであるという御意見だと思いますが、当然、政策金融機関が個人保証あるいは担保に過度に頼らずに、経営者の資質や事業見込みによって評価、融資判断とするということは大変重要であると考えております。

 その中で、国民公庫におきましても、無担保、無保証の経営改善貸し付け等に取り組んでおりまして、御存じだと思いますが、十三年七月には、創業者向けの無担保、無保証の新創業融資制度、また十五年一月には、第三者保証人等を不要とする融資を創設して取り組んでいるわけでございます。

 この十九年予算におきまして、さらにこれらを拡充するために、今までの、例えば新創業融資制度におきましては、融資限度額の引き上げということで七百五十万を一千万にする、あるいは融資要件を緩和する意味で、創業資金に占める自己資金割合の引き下げということで、今まで二分の一以上を三分の一以上にするとか、あるいは第三者保証人等を不要とする融資、これにつきましても融資限度額を千五百万から二千万、また、上乗せ金利につきましても〇・九から〇・六五に引き下げまして貸しやすくするということで、これらは融資実績が既に上がっておりまして、十七年度におきましては、二千九百六十二億円、これはフローベースでありますが、また十八年度におきましても、四千三百六十三億円ということで、フローベース全体で見る比率も二二%まで上がってきているという状況であります。

 最後に、御指摘の点について申し上げますと、この第三者保証を求めない場合は、そのことから生ずるリスクについて金利が上乗せられるという適用がございます。この国民公庫の貸出先というのは比較的小さい企業が多いわけでございますが、その財務状況等から、第三者保証の提供により、低利での融資を希望する方もいらっしゃるという現実で、これは借り手方がその実情に応じてミックスして使っていくということが大事じゃないかということで、今のところ自由に選択できる仕組みとしておくことが適当じゃないかと考えている次第であります。

 以上です。

鷲尾委員 ありがとうございます。

 政府系金融機関がこれから先、日本政策金融公庫となっていくわけですけれども、リスクをとって融資をするということについてもリードするような形でやっていかないと、逆に民間だけに任せておいても、結局、融資慣行を含めて何も変化がないということにもなりかねないのではないかなというふうに思っております。そういう意味で、民業補完という以上の役割をある程度担っていかなきゃいけないんじゃないかなという感想を私自身は持っておるところでございます。

 何にせよ、官から民へ、官でも民でも、やはりその組織が官僚化してしまいますと、その資金の使い方を含めて、ビジネスを含めて、やはり停滞してしまうんじゃないかなという現実がありますので、こういうことについてはしっかりと経営改善をやっていくということを念頭に置きまして、こういう施策を運用していただけたらというふうに思う次第でございます。

 質問を終わります。ありがとうございました。

河本委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 日本政策金融公庫法案について質問いたします。

 今回、中小企業の支援制度の見直しがこの中で行われるわけですけれども、そこでお尋ねしたいんですが、特に、中小企業金融公庫が行っていました一般貸し付けから撤退をする、廃止をするという話であります。

 これは、二〇〇一年のときの特殊法人等整理合理化計画の中でも、この一般貸し付けについて、民間にできることは民間にという原則のもとに規模を縮減するとあり、これに基づき、諮問会議などの議論を経て撤退が決められたわけであります。

 そこで伺いますけれども、民間にできることは民間にというのがスローガンになっております。民間にできることは民間にと言いますが、長期、固定、低利という特徴のある一般貸し付け、この一般貸し付けと同等の融資を民間金融機関が担えるという担保はどこにあるんですか。

渡辺国務大臣 民間金融機関の金融商品というのも最近かなり多様化をしてきております。長期、固定、低利は、かつて政府系の最大の売りだったと思うんですね、セールスポイントだったと思います。しかし、こういうたぐいの商品も、民間ではもう既に出てきているのは御案内のとおりであります。一番わかりやすいのは住宅ローンの世界でございますが、いずれにしても、金融業がリスクをとる、そのリスクをさまざまな形で管理していくという技術は、昔とは比べ物にならないぐらい発達をしてきておりますので、民間にできることを民間にやらせることは大変結構なことだと思います。

塩川委員 住宅ローンの話じゃなくて、中小企業金融の話を聞いているんですけれども。そういうところで実際あるのかどうかということなんですよ。特に、今地域の中小企業を支えている金融機関ということであれば、地銀ですとか信金、信組。こういうところについては、今金融庁の方が引き続き不良債権処理というのでしりをたたいていますから、そういうところで本当に、この一般貸し付け同等の金融商品というのを民間金融機関が提供できるという担保はどこにあるんですか。

鈴木政府参考人 ただいまの先生の御指摘でございますけれども、私ども、こういう金融情勢を判断いたしますときに、日銀短観のDI等を見させていただくわけでございますが、例えば日銀短観のDIの資金繰り判断、これは中小企業の方の資金繰り判断でございますけれども、一九九八年の九月には、これはボトムでマイナス二五でございました。これが、現段階ではマイナス二というところまで、まだマイナスではございますけれども上向いております。また、金融機関の貸出態度判断でございますけれども、ボトムでは九八年でマイナス二二でございましたけれども、この前、四月二日に出ました日銀短観のDIでいきますと、プラス九とよくなってきておりまして、金融機関の貸し出し態度も変わってきておるのかなと。

 あわせまして、平成十七年の経済財政諮問会議におきまして、私ども、全国銀行協会の方から、こういう分野については自分たちも一時期と違って対応が可能になってきたというような発言等もございまして、これらを踏まえまして、中小企業金融公庫の一般貸し付け、これにつきましては民間金融機関で代替できるというふうに判断したところでございます。

塩川委員 質問に答えていないんですよ。民間にできることは民間にと言うから、では、実際に何ができるのかと。具体的に、この一般貸し付け相当の、同等の金融商品というのは民間にできるのか。特に、地域中小企業に対して密接に支援してきている地銀とか信金、信組、全然話がないじゃないですか。ですから、民間にできることは民間にというので一般貸し付けをやめるというんだけれども、それを引き受ける民間は出ていないというのが実態でしょう。それなら、なぜ撤退するのか。これははっきり言って、政府としての中小企業金融の、政策金融の制度の後退だと言わざるを得ないと思います。

 今、一般貸し付けについて利用している方のお話なんかをお聞きしましても、特に地域の核となるような製造業の方が設備投資を行う、そういう際に、やはり特別貸し付けを使うんですよね。しかし、特別貸し付けだけではボリュームが足りないから、一般貸し付けも利用したいという形での活用というのがあるというお話を聞きました。そういう意味では、メニューとして当然残してしかるべきものじゃないのかというのが一般貸し付けだと思っております。そういう点でも、この一般貸し付けの撤退というのは中小企業融資制度の後退でしかないということをはっきり申し上げたいと思っております。

 その上で、もう一つお聞きしたいんですが、行革法の議論の際に、GDP比で半減目標というのを掲げておりました。これ自体は、商工中金とか民営化する金融機関、政策金融がありますから、実質的に達成するという話だと思いますけれども、新公庫になって貸付残高の削減目標の設定はどうするのか。新公庫においての数値目標の設定、それについてどういうふうにお考えなのかをお聞かせいただけますか。

渡辺国務大臣 まず、行革推進法に定められております貸付残高に係る対GDP比半減目標は、確実に達成をしていきたいと考えております。その後、数値目標を設定することについては、中小零細企業の資金需要がどんなぐあいになっているのか、民間金融機関の動向や部分保証、証券化などの新たな民業補完の手法の活用状況などを踏まえて検討をいたします。

塩川委員 新公庫の貸付残高の削減目標をということについては、数値目標は検討していくという答弁ですから、いろいろ条件はおっしゃいましたけれども、これはやはり絞っていくという方向だというふうに受けとめました。

 その点でお聞きしたいんですが、例えば、中小公庫の特別貸し付けあるいは国民公庫が行ってきたマル経、こういったものについてもいわば数値目標を設定していく、数値目標の設定を検討していくというお立場ということでよろしいですね。

渡辺国務大臣 行革大臣として私に与えられたミッションは、新公庫の貸し付けが、政策金融改革の趣旨を踏まえて民業の補完に徹するかどうか、こういった観点から、適切な貸し付けの規模となっているかどうかを不断にチェックすることでございます。そのために、行政減量・効率化有識者会議において、新公庫の業務や統合プロセスなどについて専門的な立場から評価、検証を行っていただくワーキングチームを設置することといたしております。

塩川委員 甘利大臣に伺いますけれども、先ほど申し上げました一般貸し付けの問題についても、結局、受け皿になる民間の金融商品は本当にあるのかということが問われていると思います。あわせて、特別貸し付けやマル経についても、数値目標の設定の検討ということは広い意味では当然入ってくるわけですから、これではやはり中小企業金融について政府としての役割を大きく後退させるものになるんじゃないのか。

 大臣は、この法案の本会議の趣旨説明、質疑の答弁の中でも、今回の再編においても、中小零細企業の資金繰りに支障を来すことがないように万全を期すと述べていますけれども、それにそぐわないことになると率直に思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

甘利国務大臣 新しい日本政策金融公庫が民業補完に徹していくということは、補完機能はちゃんとやっていくということであります。従来、例えばマル経に象徴されるような政策上必要なことについては、きちんと新政策金融機関が引き継いでいくということであります。行革法が規定しているような、新政策公庫に移るときにGDP比半減する、これはもう決まっていることですから、きちんとやっていく。

 その上で何をするかということにつきましては、私が先ほど申し上げたのは、目標を掲げて、目標それ自身が目的になるようなことでやみくもに進むということはあってはならぬということを言ったわけでありまして、不断に資金ニーズ、つまり、それまでは官が担っていたけれども民がちゃんとやってくれるということがきちんと確認できれば、その部分は民に渡すということで、フレキシブルな対応というのは確かにあっていいかと思っているのであります。

 かつて官が低利、長期、固定でやっていたものをちゃんと民が商品をしっかり出しているのか、そこのところの議論は、一般貸し付けの部分に関して、もうちょっと条件を民側につけてくれたら民がいきますよと。しかし、政府系ががっちりと低利、固定、長期でカバーしてしまっていて、どうしても比較優位という点で政府系の方に軍配が上がるというところについてなかなか民間が出ていけない、そういう部分は、民間が多少の条件を緩和してあげればそこまでいけるということは、民間が出ていく余地があるという理解をしてもいいんだというふうに思っております。

 そういった意味で、官でなければできない、民ではやれない、しかしそこの部分は、政策的に必要なところについてはきちんと不安のないように、今まで政府系金融機関が担ってきたものを新政策公庫もちゃんと担っていくというところはしっかりやらせていきたいというふうに思っております。

塩川委員 目標ありきでやみくもに進めるものではないという話でしたけれども、その際に、民間でできることを確認できればその分野については見直すこともあるだろうと。しかし、一般貸し付けの話でお聞きしましたように、では具体的に受け皿になるような金融商品が民間にあるのかというと、具体的な答弁はないわけですよね。

 大臣も、長期、固定、低利というところで、それについて若干民間に引き寄せた形で考えてもらえば新しい商品も出てくるんだろうという話ですけれども、それは金融機関サイドにしてみれば、長期、固定、低利のどこかを見直せば自分のところの収益につながりますから手を出すかもしれませんけれども、もともと中小企業の政策金融というのは中小企業のための政策なんですよ。銀行、金融機関のための制度ではないわけですよね。

 日本のものづくりを支えてきている、まさにその中核となっているのが日本の中小企業でもありますから、そういう中小企業分野が、製造業で新しい設備投資をしようという際に、やはりこの一般貸し付けというのが非常に使い勝手がいいということで今まで活用されてきたわけですから、そういう制度を中小企業の立場でしっかり残すことが必要なんじゃないのか、それを絞る必要はないんじゃないのかということを、経済産業大臣の立場でお答えいただけますか。

甘利国務大臣 これはもう法律で、官民の役割分担というのは線が引かれているわけですね。もちろん、特別貸し付けの柔軟性を通じていろいろな対応の幅はあると思います。きちんと民間が出てきてくれるための環境整備もしていくわけでありますから、先ほど来議論がありますように、政府系が引いちゃった、民間が出てきてくれない、空白のスポットができてしまった、そういうことがないようにきちんと注視をして対応していくことは考えていかなければならないというふうに思っております。

塩川委員 要するに、制度設計で最初から、先に削減ありきとなっているのが大問題であるわけで、中小企業の立場からの対策をしっかりとるべきだ、これでは中小企業振興に逆行するということを申し上げて、質問を終わります。

河本委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午後四時二十五分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 株式会社日本政策金融公庫法案

 株式会社日本政策金融公庫法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案

は内閣委員会議録第九号に掲載


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