衆議院

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第12号 平成21年4月8日(水曜日)

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平成二十一年四月八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 船田  元君

   理事 大野 松茂君 理事 岡下 信子君

   理事 岸田 文雄君 理事 七条  明君

   理事 やまぎわ大志郎君 理事 仙谷 由人君

   理事 園田 康博君 理事 大口 善徳君

      井澤 京子君    遠藤 宣彦君

      近江屋信広君    大塚 高司君

      鍵田忠兵衛君    亀井善太郎君

      北村 茂男君    小島 敏男君

      佐藤  錬君    平  将明君

      玉沢徳一郎君    土屋 正忠君

      とかしきなおみ君    土井 真樹君

      並木 正芳君    西本 勝子君

      萩原 誠司君    宮腰 光寛君

      矢野 隆司君    泉  健太君

      枝野 幸男君    小川 淳也君

      小宮山洋子君    階   猛君

      田島 一成君    田名部匡代君

      田端 正広君    桝屋 敬悟君

      吉井 英勝君    日森 文尋君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           枝野 幸男君

   議員           小宮山洋子君

   議員           階   猛君

   総務大臣         鳩山 邦夫君

   国務大臣

   (消費者行政推進担当)  野田 聖子君

   内閣府副大臣       増原 義剛君

   総務副大臣        石崎  岳君

   総務副大臣        倉田 雅年君

   文部科学副大臣      松野 博一君

   内閣府大臣政務官     並木 正芳君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  福富 光彦君

   政府参考人

   (内閣官房消費者行政一元化準備室長)       松山 健士君

   政府参考人

   (人事院事務総局給与局長)            吉田 耕三君

   政府参考人

   (内閣府国民生活局長)  田中 孝文君

   政府参考人

   (内閣府食品安全委員会事務局長)         栗本まさ子君

   政府参考人

   (警察庁長官官房総括審議官)           金高 雅仁君

   政府参考人

   (総務省行政管理局長)  橋口 典央君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  久元 喜造君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員部長)          松永 邦男君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  久保 信保君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局長)            山川 鉄郎君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長)            桜井  俊君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       石塚 正敏君

   政府参考人

   (農林水産省生産局畜産部長)           佐藤 一雄君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局研究総務官)       塚本 和男君

   衆議院調査局消費者問題に関する特別調査室長    島貫 孝敏君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月八日

 辞任         補欠選任

  永岡 桂子君     萩原 誠司君

同日

 辞任         補欠選任

  萩原 誠司君     永岡 桂子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 消費者庁設置法案(内閣提出、第百七十回国会閣法第一号)

 消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、第百七十回国会閣法第二号)

 消費者安全法案(内閣提出、第百七十回国会閣法第三号)

 消費者権利院法案(枝野幸男君外二名提出、衆法第八号)

 消費者団体訴訟法案(小宮山洋子君外二名提出、衆法第九号)

 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――

船田委員長 これより会議を開きます。

 第百七十回国会、内閣提出、消費者庁設置法案、消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案及び消費者安全法案並びに枝野幸男君外二名提出、消費者権利院法案及び小宮山洋子君外二名提出、消費者団体訴訟法案の各案を議題といたします。

 この際、各案審査のため、去る六日、第一班北海道、第二班兵庫県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からそれぞれ報告を聴取いたします。

 まず、第一班の北海道に派遣された委員を代表いたしまして、私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、団長として私、船田元と、理事やまぎわ大志郎君、仙谷由人君、委員並木正芳君、泉健太君、小川淳也君、田名部匡代君、桝屋敬悟君、糸川正晃君の九名であります。

 なお、現地参加議員として、町村信孝君が出席されました。

 去る六日、現地において、北海道立消費生活センターを視察した後、札幌市のロイトン札幌において会議を開催いたしました。

 現地視察におきましては、概況説明及び意見交換の後、相談員によるPIO―NETの活用方法、各種商品テスト及び機器等の設置状況などの視察を行いました。

 会議におきましては、まず、私から、派遣委員及び意見陳述者の紹介並びにあいさつ等を行った後、北海道大学大学院法学研究科教授池田清治君、札幌市市民まちづくり局市民生活部消費者センター所長渡邉三省君、社団法人北海道消費者協会会長橋本智子君及び帯広市長砂川敏文君の四名から意見を聴取いたしました。

 その内容について簡単に申し上げますと、

 池田君からは、消費者権利院構想における工夫を消費者庁法案に取り入れ、生かすべきであること、損害賠償団体訴訟については、意義あるものであるが、適格消費者団体の負担能力など慎重な検討を要すること、

 渡邉君からは、札幌市における消費者行政の現状、地方消費者行政活性化基金の使途として人件費も加えるべきであること、

 橋本君からは、地方の消費者行政においては人材の育成、確保が重要であること、そのための人件費を初めとした財政支援が必要であること、

 砂川君からは、消費者庁が二百人程度であることに対する危惧、地方の中小自治体において消費者行政を実施するには困難が伴うこと

などの意見が述べられました。

 次いで、各委員から陳述者に対し、北海道、札幌市及びその他の市町村の消費者行政における連携のあり方、消費生活相談推進員及び消費生活相談員の望ましい処遇のあり方、地方消費者行政活性化基金の人件費への活用の必要性、中小自治体における消費生活センター設置の見通し、違法収益剥奪制度の検討に際しての留意点、帯広市における食の問題に関する生産者、消費者及び事業者の連携などについて質疑が行われ、滞りなくすべての議事が終了した次第であります。

 以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。

 今回の会議の開催につきましては、多数の関係者の御協力により極めて円滑に行うことができ、深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

 次に、第二班岸田文雄君。

岸田委員 第二班の兵庫県に派遣された委員を代表いたしまして、その概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、私、岸田文雄を団長として、理事七条明君、園田康博君、大口善徳君、委員鍵田忠兵衛君、亀井善太郎君、とかしきなおみ君、枝野幸男君、小宮山洋子君、階猛君、田島一成君、吉井英勝君、日森文尋君の十三名であります。

 なお、現地参加議員として、谷公一君が出席されました。

 去る六日、現地において、神戸市生活情報センターを視察した後、神戸市のクラウンプラザ神戸において会議を開催いたしました。

 現地視察におきましては、神戸市及び兵庫県の消費者行政の状況の聴取、質疑応答の後、神戸市生活情報センター内の視察を行いました。

 会議におきましては、まず、私から、派遣委員及び意見陳述者の紹介並びにあいさつ等を行った後、神戸市消費者協会専務理事妹尾美智子君、九州大学大学院法学研究院教授清水巌君、和歌山県知事仁坂吉伸君及び野洲市市民生活相談室主査生水裕美君の四名から意見を聴取いたしました。

 その内容について簡単に申し上げますと、

 妹尾君からは、消費者政策委員会に強い権限を持たせてほしいこと、地方消費者行政機関の充実が必要なこと、

 清水君からは、消費者庁に二十九本の法律が移管されることは評価できること、相談員の配置基準を定めてほしいこと、

 仁坂君からは、消費者行政について資金面での援助を国にお願いしたいこと、

 生水君からは、相談員が正規職員になれるようにしてほしいこと、消費者生活センターの権限を法律に盛り込んでほしいこと

などの意見が述べられました。

 次いで、各委員から陳述者に対し、相談員の待遇改善策、消費者政策委員会の改善案、地方消費者行政活性化基金の問題点、違法収益剥奪制度導入の課題、消費者事故等の情報開示のあり方などについて質疑が行われ、滞りなくすべての議事を終了した次第であります。

 以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。議事録は、本委員会の会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。

 今回の会議の開催につきましては、多数の関係者の御協力により極めて円滑に行うことができ、深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

船田委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。

 お諮りいたします。

 ただいま報告のありました第一班及び第二班の現地における会議の記録は、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

船田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

船田委員長 引き続き、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官福富光彦君、内閣官房消費者行政一元化準備室長松山健士君、人事院事務総局給与局長吉田耕三君、内閣府国民生活局長田中孝文君、内閣府食品安全委員会事務局長栗本まさ子君、警察庁長官官房総括審議官金高雅仁君、総務省行政管理局長橋口典央君、総務省自治行政局長久元喜造君、総務省自治行政局公務員部長松永邦男君、総務省自治財政局長久保信保君、総務省情報流通行政局長山川鉄郎君、総務省総合通信基盤局長桜井俊君、厚生労働省医薬食品局食品安全部長石塚正敏君、農林水産省生産局畜産部長佐藤一雄君、農林水産技術会議事務局研究総務官塚本和男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

船田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

船田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土屋正忠君。

土屋(正)委員 おはようございます。早速質問させていただきたいと存じます。

 まず最初に、この十数回の審議を通じて、対案を出していただいた民主党の皆さんに御礼を申し上げたいと存じます。非常に対照的な対案でありますので、消費者問題を政府案と比較考量できて、まことに物事に対する理解が深まったことを御礼申し上げたいと存じます。

 私は、地方自治体の現場に、職員、議員、市長として四十年間おりました。そういうこともありますので、現場での感覚で物を申したいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたしたいと存じます。

 きょうは、短い時間でありますが、主として三つについて申し上げたいと存じます。

 第一点は、国の事務と地方の事務、地方自治と国の関係であります。二点目は、行政組織の問題であります。三番目に、消費者行政を行う際に、具体的にどのような権限を行使していくのか。こういう三つの観点から質問させていただきたいと存じます。

 まず、民主党の提案者にお伺いいたしますが、これは今までも議論されてきたことでありますが、改めてお尋ねしたいわけであります。

 今回、消費者行政を行う際に国の事務とした理由、国家公務員とした理由は国の事務だからそうなったわけでありますが、国の事務とした理由についてお尋ねいたしたいと存じます。

 次に、仮に民主党案のようなことが実現された暁には、事務総局から地方消費者権利局も含めて、支局も含めてどのぐらいの職員数が要るのか。相談員は一万人以内、こういうことが法案上明記されているわけでありますが、それ以外には明記されておりませんので、大体何人ぐらいになるのか。それで、年間の予算はどのぐらいになるのか。これは、相談員も含めて大体どのぐらいのことを想定しているのか、これについてお尋ねしたいと存じます。

 全体として行政需要が非常に増大しているんじゃないかなと私なりに計算をしているわけでありますが、行政改革に対する考え方についてはどうなのか、お尋ねいたしたいと思います。

階議員 おはようございます。よろしくお願いします。

 三点御質問があったかと思います。一つ目は、地方の消費者行政を国の業務とした理由について。二つ目は、民主党案による場合、消費者権利院並びにその傘下の組織の職員数、そしてそれに要する予算。そして三点目は、行政改革に反するのではないかという趣旨だったと思います。

 順に御説明申し上げます。

 まず一点目、地方の消費者行政を国の業務とした理由についてなんですが、我々が考えておりますのは、繰り返しになりますけれども、消費者の権利利益の擁護のための事務というものは地域地域で跛行性があってはならない、全国津々浦々、どの市町村に住んでいても一定の水準が確保されなければならない、こういう理念に基づいております。

 その中で、今、地方の消費者行政の実情はどうなっているかといいますと、まさに跛行性が顕著にあらわれておりまして、地域によっては予算がどんどん削減されて惨たんたるありさまを呈している、こういう状況でございます。このような現状を踏まえた場合に、我々は、地方における消費者行政は、国の責任において、国の財政負担で実現されるべきであろうというふうに考えたことによりまして、地方の消費者行政を国の業務としたわけでございます。

 さらに、きのう、参考人の圓山先生の意見などもお伺いしておりますと、今、消費者問題というのは、地域だけで解決される問題は少ないんだ、全国規模の問題がふえている。ということになりますと、やはり、そういう意味でも、地方がばらばらにやるよりは国が統括的にやった方が、問題の解決という意味でもいいのではないかというふうに考えます。

 二点目の質問でございます。職員数と予算でございます。まず職員数なんですが、民主党の案では、消費者の権利利益の擁護のための事務をとり行う職員として、まず中央の消費者権利院の職員としては約三百五十人。内訳は、常勤職員が三百人と、あと相談員の方々、これはパートタイム、フルタイム、いろいろいらっしゃると思いますが、五十人ぐらい。これで三百五十人です。それから、地方の方ですが、消費者権利局、そしてその支局の職員として約一万三千人。その内訳は、常勤職員が五千百四十人、そして相談員の方々、フルタイム、パートタイム合わせて七千六百四十一人。合計しまして約一万三千人ということでございます。

 さらに、その予算でございますけれども、職員一人当たりの事務経費、すなわち、施設費、事務費、さらにお給料の分を含めて考えますと、常勤職員が大体一千万。非常勤職員、非常勤職員というのは相談員のことです、相談員は、パートタイム、フルタイム合わせて、平均すると大体六百万円ぐらいというふうに試算しております。それを前提に計算して先ほどの人数を掛け合わせますと、約一千億円程度というふうになるわけでございます。

 この一千億円が多いかどうかということでございますけれども、三月十八日、この委員会で、やまぎわ大志郎先生の御質問で、消費者被害による年間の経済損失額は幾らかという御質問がございました。野田大臣は、大体三・四兆円ぐらいだろう、GDP比〇・七%ということでございます。三・四兆円の被害を少なくするために一千億を使うというのは、これは今の厳しい財政事情の中でも十分合理的な理由があるというふうに考えるわけでございます。

 三点目の、行政改革に反するのではないかということなんでございますが、まさに今の点に関係することでございまして、基本的な方針として、行政改革を推進していくべきという点については異論はないわけでございますけれども、何が何でも官のスリム化ということで、国民の享受する基礎的な行政サービスが著しく低下するようなことがあれば本末転倒であろう。さらに、お金を使っても、それに見合うだけの便益があるのであればこれは全く問題ないだろうということで、今回のような消費者行政については、国の責任において国の財政負担で一定の水準を確保すべきということについては、真の行革という意味において全く矛盾するものではないのだろうというふうに考えているところでございます。

 以上で答弁を終わります。

土屋(正)委員 ありがとうございました。

 意見として申し上げておきますが、先ほど、さきの参考人の方もお話をしていたわけでありますが、法定受託事務というやり方もあるわけですね。同じような効果があるわけであります。さらに、お手元に、きょう、地方自治体事務の類型と財政措置についての一覧表を出しておりますが、全国津々浦々でやる事業の中にも、法律で決め、負担金または補助金、こういう制度をつくって全国でいわゆるナショナルミニマム、またはナショナルスタンダードを確保している事務というのはいろいろあるわけでありまして、そういう意味では、なぜ消費者問題だけなのかという感は否めないということを意見として申し上げておきたいと存じます。

 それでは、鳩山大臣にお尋ねしたいわけであります。

 統一的事務を行うためには、まあ統一的事務といいますか、今の答弁で申し上げますと、地域格差をなくして全国津々浦々に、こういうことが国の事務にした理由だ、こういう民主党案がありました。

 地方自治を所管する大臣としてお尋ねしたいわけであります。今お手元に、大臣、ごらんになっていますでしょうか、この横長の紙なんでありますが。例えば、全国どこでも普遍的に行うべきものとして、国民健康保険、介護保険、あるいは小学校、中学校というような義務的な、つまり、憲法の第二十五条並びに第二十六条で定められた憲法上の権利、国が保障すべき権利といったようなものがあるわけでありますが、この仕組みを、今は主としていわゆる国の事務、国営でやっているわけではなくて、地方自治の仕組みでもってやっているわけであります。

 つまり、ナショナルミニマムとかナショナルスタンダードと言われる仕事をやるのに、今日の日本では鳩山大臣が所管する地方自治の仕組みでやっているわけでありますが、こういうことと、このたびの消費者庁との関連で、全国津々浦々でやるにしても、いろいろな仕組みをきっちりと整備し、例えば法律、まず今度、新しい法律ができると消費者庁が設置をされます。それに基づいて一定の義務または努力義務が各地方自治体にかけられます。つまり、法定されます。さらに、法定されたものに対して、きちっとある程度の補助金のようなものを保障する、あるいは地方交付税で保障する。こういうことでもって、義務教育や国民健康保険のように、いわゆる全国津々浦々でやらなきゃいけないんだけれども、しかし、地方自治の仕組みで十分できるのではないか、私はこのように現場にいて考えているんですが、地方自治を所管の大臣としての御見解をお聞かせいただきたいと思います。

鳩山国務大臣 基本的には土屋先生と私のお考えは変わらないと思っております。

 国と地方の役割の分担をどうするかというのは、今地方分権改革推進委員会で既に二次勧告まで出ておるわけで、これから本当に国の形を含めて考えなければいけないところでございます。

 実は、私、かつて文部大臣というのをやっておった関係から、三位一体改革のときに、義務教育国庫負担金の負担割合を二分の一から三分の一にするのに強く反対をして、教育こそは、一応検定教科書もあるし、しかも小中学校は義務教育で、これは一律の水準を保たなければならないから、むしろ全額国庫負担でいいんではないかと強く主張したんです。

 私の教育政策の先輩でありますのは民主党の西岡武夫参議院議員でございますが、西岡先生と私は、当時は、義務教育国庫負担制度というよりも、義務教育の小中学校の教職員はフランスのように全部国家公務員であってもいいんではないかというような考え方をまとめようとしたことすらあるわけでございます。ですから、非常に難しいんです。その義務教育ですら、今は国が三分の一で地方が三分の二で一般財源化されておって、それで何とか頑張ってくれている。

 私は、実は、消費者庁関係のこの問題に関していえば、これは住民に身近な問題、それは毒入りギョーザみたいな問題もあります、全国にいち早く周知徹底しなければならないこともあるでしょうが、一般的には、消費者関係の問題というのは、住民に身近な問題だ、身近な問題は地方自治で行うというのは、国と地方の役割分担における基本の考え方ではないかと思うのでございます。

 私、一番それを体験いたしましたのは、例の事故米のときでございます。たまたま私の地元福岡県が関係をしておりましたので、福岡農政事務所へ参りました。皆さん頑張っているんですが、国家公務員でありますから、国の問題という意識が強過ぎて、地元自治体の住民の危険という感じの認識がやはり遠いような気がいたしまして、私は、農政事務所のようなものは、これはずばり申し上げて都道府県の組織に移せばいいというのが地方分権についての私の考え方であって、消費者問題、野田大臣の所管の問題は大体基本的に住民に身近なものが多いと思いますので、それは身近な地方公共団体が処理をするということではないか、こう思っております。

土屋(正)委員 御答弁ありがとうございました。

 今お話の出ました教育についても、教育を地方自治体にやっていただく、つまり、地方自治の特徴を生かして、それぞれ特徴のある教育をやってもらう。しかし、一方では、標準的な学校教育をきちっとどこにいても受けなきゃならない。この二つの要請、つまり、ナショナルスタンダードと地方の特色ということを生かしながら、この地方自治の枠組みの中で全国統一の仕組みをつくってきたわけでありますけれども、その際に、それを保障するための、例えば義務教育の国庫負担制度とか、あるいは標準法による教員の定数とか、こういうことが一方で法律によって決められているわけであります、学校教育法とか。

 そういう意味では、消費者庁としても、この法律が通ったならば、財政的なものを担保する仕組みのようなものをつくるということが大事なんです。これは消費者担当大臣にお尋ねした方がいいのかあれですが。

 要は、私が申し上げたいのは、地方自治を最大限生かしながら、しかし、それが全国標準になるような仕組みということについて配慮する必要があるんじゃないか、財政的なものも含めて。こういうことについていかがお考えか、お尋ねいたしたいと存じます。

 それから、それに関連して、やはり身近な市役所である。消費者問題が極めて地域的で、地域の住民が頼りにするというのはやはり市役所ですから。社会保険事務所なんて、この間の問題が起こるまでどこにあるか全然わからなかったですよ。武蔵野市にも社会保険事務所がありました。知っていたのは市役所の職員ぐらいで、一般の住民はほとんど知らなかった。

 だから、何を言いたいのかというと、住民によって直接選挙された市長や議会がある市役所というのはエネルギーが集中するんです、住民の気持ちが。だから、そういう意味では大変いい仕組みじゃないかと思っておりますが、身近な市役所であることについて、そういうお考えでこの消費者庁を設置したのではなかろうかと思いますが、鳩山大臣、また担当の大臣にお伺いしたいと思います。

鳩山国務大臣 消費者庁ができ上がると、都道府県の消費生活センターは必置になるわけですね。市町村にどんどんつくっていかなければならないと思います、既に一部にはありますけれども。これらも法律上の存在になるわけでございますから、根拠法のある存在になって、そして、消費者庁と連携をとりながら頑張っていただこうというのがこの法案の考え方だろうと思っております。

 そして、先生いろいろおっしゃったように、地方独自にやる、より住民に身近な形で相談を請け負っていくという部分と、ナショナルミニマムというのかどうかわかりませんが、国としてのスタンダードを守る、この両方の要請は私は同時に果たすことができるだろうと。

 そこで、ことし、交付税措置というか一般財源として、相談員等の処遇とか人員等について、金額を九十億から百八十億に倍増した、そういういわゆる一般財源、交付税の措置というものがあります。また同時に、これは補正予算だったでしょうか、交付金で都道府県に基金を設けたわけでございます。この両建てでやっていけばうまくいく、こういうふうに考えております。

土屋(正)委員 現場にいた感覚で申し上げますと、権限だけおりてきてお金がついてこないというのは一番嫌らしいケースでありまして、何を言っているんだ、こういうことになるわけであります。

 ですから、民主党の皆さんはそこのところをある面では非常にストレートに国の事務とおっしゃったわけでありますけれども、私は地方自治の仕組みでトータルでやっていくのでいいのだろうと思うんです。

 ただ、そのときには、これは担当大臣にお尋ねしなきゃいけないんですが、財政的なある程度きちっとした保障を、今鳩山大臣は地方交付税措置を倍にした、こういうことでございますが、まさに過去の論議でありましたように、地方交付税措置というのは一般財源になるわけですから、やはり、この一覧表を見ていただければわかるように、負担金とか補助金とか、みんなそれぞれ、負担金というわけにはいかないかもわからないけれども、補助金程度をきちっとある程度位置づけていただかないと、現場としては、何、権限がおりてきて法律ができて省庁ができて、自治事務でやれよと言っておきながらお金はこれだけなの、そういう感じになりますね。現在のところ、十万人規模の地方交付税の算定基礎というのは一千百万程度だと思いますので。

 これについては、大臣いかがでしょうか。

野田国務大臣 そもそも、先ほど総務大臣から御答弁ありましたように、この三年間の基金というのを都道府県に造成するという意味は、まずは、全国でも余りに格差が生じている、都市部はやはり相談員の数も十分ありますし、窓口も設置されていて、ただ、一方、地方に行きますと、まずは窓口すらない、当然相談員もいないという状況にあるので、ここを、この三年はまず強化期間ということで、そのでこぼこの部分をしっかりと整えて、本当に地方消費者行政というのが津々浦々に、地方行政、地方自治体の当たり前の仕事として根づくために今基金を造成させていただいているわけです。まずはそこからスタートさせていただきたい。

 あわせて、今総務大臣がおっしゃったように、地方交付税の措置をさせていただいているので、それこそ土屋先生に言うのはなにかと思いますけれども、本当にトップの判断、これがやはり地方自治に求められているわけですね。これまで意識の低かった消費者行政というのは極めて地方自治体にとっては重要な仕事であるというトップの意識というものを、消費者庁ができることによってどんどん啓発なり啓蒙していくことも重要だと思っております。

土屋(正)委員 トップの判断ということが出ましたので全国の首長にかわって申し上げておきますが、やはりある程度法律ができ、省庁ができ、国の体制がはっきりしたら、大体やるんですよ。これは、やらないと市議会で突き上げられちゃう、何でやらないんだと。だから、きょう大野先生のような大先輩もおられますが、大体方針が決まればやるんです。

 ただ、やる際に、お金をどうしてくれるのと。俗に言えばこういう話がありますので、ぜひ、今度は、担当大臣ができて、しかも消費者庁ができて、法律ができる、そういうことになれば全国大概やります。やらないと選挙に響きますから。だからやるんですけれども、しかし、その際に、ないそでは振れないということもありますので、ぜひ担当大臣として予算の確保について十分な、それは負担金というところまでは行かないんでしょうけれども、少なくとも補助金ぐらいはがっちりと取る、そういうことをおっしゃっていただけませんか。

野田国務大臣 今は予算をつけようにもその窓口すらないところがございますので、くどいようですけれども、この都道府県に造成した基金を使って、やはりそういう受け皿となるようなものをしっかりつくっていただいた上で、今後検討していきたいと思います。

土屋(正)委員 ありがとうございました。

 それでは、民主党の皆さんに御質問させていただきます。

 私、何回か法案を読ませていただいて、この法律をつくった人は随分人間に対する限りない信頼があるんだなと思ったのは、しかし、それがちょっと現実と違うんじゃないかなと思ったのは、民主党案による第三十四条についてであります。

 この民主党案の特徴というのは、所管する法律がなくて、なおかつ、第三十四条で事業者に対して包括的な立入調査の権限まで付与していることであります。

 普通、事業者に対する立ち入り権限というのは強大な権限でありますから、刑事法にわたるものであっても、例えば特定の事業者に対して立ち入り強制調査する場合には捜査令状が必要で、裁判所の発行、こういうことになるわけだろうと思います。

 その次に強い権限を持っているのが、憲法上の義務である納税義務であります。国税庁であります。国税庁の場合には、これまた包括的な権限を持っているわけでありますが、これは司法的な立ち入り権じゃなくて行政的な立ち入り権でありますけれども、しかし、それにしても、これまた強大な権限を持っているわけです。

 それ以下になりますと、公正取引委員会とか、あるいは金融庁とかというような、それぞれ分野別の特定の法律に基づいて特定の法益の実現を図るという、その社会的基準、社会正義の基準みたいなものをまず法律で明記して、それを国権の最高機関である国会が承認して法律という形になって、その上で、限定的な権限行使、事業者に対して権限行使する、こういう仕組みになっているんだろうと思います。

 ところが、この三十四条を読みますと、消費者権利官の判断によっていろいろ立入検査するよとなっているわけですけれども、例えば救済みたいなものは被害がはっきりしているからまだわかるんですけれども、「消費者問題による被害の発生若しくは拡大の防止」と、発生の防止を未然に、こういうことをやると被害が発生するに違いないというふうに見るのは、これはすごい能力とすごい権限ですよ。もしかしたら発生するかもしれない、では事業者に対して立ち入りだ、こういうことは私は今までの法の体系の中ではないような包括的な巨大な権限だと思いますが、どうぞひとつ教えてください。

枝野議員 似たような例は、というかもっと強い例が消費者安全法案というのに入っておりまして、消費者安全法では、実は、調査だけではなくて事業者に対する命令ができてしまうんですね。しかも罰則つきで命令ができます。その要件の重大事故の中にも「おそれ」というのが入っておりますから、そういう意味では、実は商品の回収とか販売停止とかという直接的な命令まで政府案ではできる、直接、消費者庁長官、内閣総理大臣の権限でできるということになっております。

 私ども、消費者の保護のため、消費者の権利擁護のためにはできるだけ強力な調査権限等が必要だというふうに考えましたが、迅速に、かつすき間なく調査ができるようにするためということで、私どもは、強制調査権限はついておりません。法律上の調査権限を持っておりますが、違反に対する罰則等はついておりません。

 ただ、それでも大きな意味を持っていると思いますのは、消費者権利官の権限を背景にして、例えば実際のあっせんなどを行う消費生活相談員の皆さんなどが、場合によっては我々は立入調査もできる権限があるんですよということを背景にしてヒアリングとかあっせんとかをするというような、こういった権限の背景がないと、実際の現場の相談員の皆さんが、一種、業者になめられるというような悲鳴も上がっているということを考えると、この程度の、罰則なしの調査権限であれば、弊害なく行うことができる。

 むしろ私どもは、私どもはすき間事案に対する強制権限行使に当たっては裁判所のチェックというのをかませていますが、政府案では内閣総理大臣の判断のみで回収命令などができてしまうということこそ、濫用の心配があるとすれば、そちらの方が心配があるのではないかというふうに考えています。

土屋(正)委員 なお、今の点について意見を申し上げておきますと、罰則がついているから強いとか強くないじゃなくて、例えば、よくこれと議論されるのは風評被害であります。ですから、判断して事業者に立ち入っただけで、その事業者は決定的なダメージを受けるだろうと思います。そういう意味では、法形式上罰則がついているとかついていないとかということよりも、むしろ風評被害を含めた問題があるのではなかろうかと思います。

 最後に一言だけ申し上げます。野田大臣にお尋ねしますが、今枝野議員から答弁がありました第二十二条について、これは基本的にはすき間事案に対する例外規定であって、この権限の行使に当たっては抑制的である、とりわけ財産権はこれに含まれていないわけですから、抑制的なものではないか、このように理解をしておりますが、そういう理解でいいのかどうか。

野田国務大臣 御指摘のとおり、すき間事案に対する内閣総理大臣の権限は、生命身体に関するものに限定しています。

 安全法に基づく事業者に対する措置については、その供給した商品等によって消費者の生命または身体に重大な危害を与えるおそれがある場合に、事後的に、当該商品等による被害の発生または拡大を防止するための必要最低限の安全性を確保しようとするものであります。

 これは、本当であれば、流通するに当たって事業者が当然行っておくべき最低限の責務を果たさなかった場合にのみ発動されるものであり、いわば消費者の生命身体の安全を確保するための最低限の規制と言えるもので、事業者の営業活動の自由を過度に制約するものではないと考えております。

土屋(正)委員 どうもありがとうございました。

船田委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 早速内容に入りたいんでありますが、きょうは総務大臣が御出席でございますから、総務大臣、参議院の方もあるようでありますので、最初に総務大臣に大きなお話を伺いたいと思います。

 地方消費者行政の体制強化に向けた取り組みということで御決意を伺いたいわけであります。先ほど大臣もお話をされました交付税措置の拡充、それから地方消費者行政活性化基金等しっかり活用して取り組んでいきたい、こういうお話も先ほどはございましたが、地方公聴会等に参りますと、大臣、端的に言うと、この三年間、集中期間ということで取り組むということはわかるんだけれども、地方から見ると、三年後はどうなるのということを、相談員の拡充にしても何にしても考えてしまうということで、三年後以降はどうなんだ。あるいは、この三年間もできるだけ自由にやらせてもらいたい。交付税はいいんですが、基金にしても、人件費はだめだとか経常経費はだめだとかいろいろ言われて、本当に、三年間、それぞれの地域の実情に応じてできるだけ自由に活用させてもらいたいし、しかも、その取り組みが三年後も引き続き取り組めることができるという財政的な対応について、ぜひとも、まあ今の段階で全部言うというのは大変でありましょうが、尊敬する鳩山大臣でありますから、一歩進んだ御答弁があるのではないかと思って、ぜひ大臣の御決意を伺いたいと思います。

鳩山国務大臣 基本的には人件費等は地方交付税措置でいいと思いますが、地方交付税というのは地方の完全な自主財源でございまして、私自身も先ほどもちょっと例を引きましたけれども、例えば、かつての文部省予算、まだ文科省でありません、旅費、教材費が一般財源化していった。本当に旅費や教材費に使われているという保証は全くないわけでございます。それは地方の自主財源だから仕方がないという面がございます。人件費であればそういうことは極めて少なくなるとは思いますが、交付金の方が三年間となっている。

 これは、少なくとも、消費者の問題というのは四年後からは全くなくなるということではない。ある意味でいえば未来永劫続くことでございますから、そういった意味では、交付金のような形のものが、ですから平成二十四年以降もきちんと保障された方がいい、そういう交付金を出せるような国の財政事情にしなければいけないな、今そう思います。

 四年後からは全部一般財源ということであれば、それは使い勝手はいいかもしれませんが、やはり基本のところで地方が元気が出なくなるおそれがありますから、やはり、目的税ではありませんが、こういう目的のために使ってくださいというお金がある程度存在し続けることが必要ではないでしょうか。

桝屋委員 今の大臣の御答弁は、私は、三年間のこの集中期間で交付金を活用する、基金化するということは一つの方法としてあるんだろうと思いますが、その以降、まあ一般的に考えれば、一般財源化、交付税措置がさらに拡充をされるということが大臣の御答弁かなと思いましたけれども、一般財源、交付税とは別途交付金のような形を考えた方がいい、こういうお考えをお示しになったわけで、本当に大臣、そうなるかどうか私は心配でありますけれども、そのお考えは是としたいと思います。

 先ほどから負担金、補助金の話も出ておりますが、今回は、少なくとも都道府県については義務化をしているわけでありますし、市町村についても努力義務規定を置いているわけでありますから、そこは、私は、三年目以降に向けて大きな課題だな、こう思っている次第でございます。ぜひよろしく。

 それで、大臣、どうぞ行かれても結構なんですが、具体的に今の大臣の話をなぞってみたいと思っております。

 何度も議論されておりますが、今回の交付税措置、二十一年度から大幅に拡充する、九十億が百八十億という話も伺っております。具体的に、参考人で結構でございますが、基準財政需要額の扱い等がどういうふうになっているのか、少し詳細に御説明をいただきたいと思います。

久保政府参考人 ただいま御指摘がございましたように、消費生活相談員の処遇改善や適切な配置が可能となりますように、二十一年度の地方財政措置につきましては、基準財政需要額を約九十億円から約百八十億円に倍増しております。

 具体的に申し上げますと、地方交付税の算定におきまして、従来、包括算定経費といたしておりましたが、これを地域振興費の個別算定経費に移しかえた上で、相談員の年間報酬を約百五十万円から倍の約三百万円に引き上げますとともに、全国の相談員の人数、これを約二千七百人程度から約三千三百人程度に拡充するといった措置を講ずることにいたしております。

 そこで、その結果、標準団体ベースで申し上げますと、人口百七十万の都道府県では約三千万円だったものが六千九百万円に、そして人口十万人の標準団体の市町村で約五百万円だったものが一千百万円程度になるということでございます。

桝屋委員 今、局長の御答弁の中で、実は、三位一体改革のときに、包括算定をする、包括算定経費というグループができた。地方消費者行政はその部分に入っておったと思うんですが、改めて今回、事の重要性にかんがみて、個別算定経費に組み替える、こういう御説明だったと思いますが、これは局長、意味があることでしょうか。地方はどういうふうに考えたらいいんでしょうか。

久保政府参考人 交付税の計算というのは極めて複雑であるという御指摘がございまして、従来から、これは経済財政諮問会議あるいは国会などでも、簡素、簡明化すべきであるという指摘が随分ございました。

 そういった御指摘を受けまして、二年前でございましたか、包括算定経費という概念を用いまして、人口とか面積とか、そういったシンプルなものでやっていこうということで、基準財政需要額の大体一〇%程度をこれに移しかえたわけでございます。それで、義務づけがあるとか、そういった基準づけの色彩が強い経費、これはやはり個別に算定していくべきであろうということで、包括算定経費に移しましたものは義務づけがないといったようなものでございました。

 これをまた、今回、さらに個別算定経費に戻すということは、それなりに必要な需要を積み上げているといったニュアンスを相当程度地方には持っていただけると考えております。

桝屋委員 先ほどの土屋委員の議論を聞いておりましても、私ども公明党、三千名の地方議員がおります。今回のこの交付税措置の拡充に対して、包括算定から個別経費として積み上げられるということでありますから、地方議員から見てもこれはわかりやすい形でありまして、しっかりこれは取り組んでいきたい、これをしっかりやらないような首長は選挙で応援しないぐらいの姿勢で我が党も取り組みたいと思っているんですが。

 そうはいいながら、胸を張って、今回、交付税措置を拡充したよと。確かに、九十億から百八十億というのは、それは倍にはなっているわけでありますが、どうも人数を見ますと、算定ベースになっております人数、現行が三千七百名ぐらいが若干ふえたぐらいで、本当に現状の配置されている相談員の数をクリアできているのかというと、なかなかどうかなと。二十二年度は、この法律が上がりました上は、もっとパンチのある、地方自治体にメッセージが出せるような対応をお願いしておきたいというふうに思うのであります。

 そこで、あわせてちょっと確認をしたいのでありますが、さっき総務大臣がおっしゃった、地方消費者行政活性化基金です。百五十億円、この配分と使途について確認をしたいと思っております。

 この基金については、今後三年間、先ほどから出ておりますように、集中育成強化期間において、地方の消費者行政強化のため、地方自治体を集中的に支援する、こういう性格だろうと思っております。実際に地方公聴会で、さっきも大臣にお伝えしましたが、この基金、できるだけ自由に使わせてくれ、端的に言うと人件費に充当したいんだけれども、これはだめだと言われている、こういうことでありますが、若干そのあたり、事業の内容、基金の内容も含めて、本当にそうなのか、とりわけ消費生活相談員の養成事業等で人件費あたりどのように活用できるのか、お答えをいただきたいと思います。

田中政府参考人 お答えいたします。

 消費者行政活性化基金でございますけれども、御発言ありましたように、三年間の集中育成強化期間ということで、ここでの、地方のとりわけ窓口の強化ということをねらいにしております。できるだけ地方の実態に合わせて自由にやっていただきたいということで、事業をメニュー方式ということで、八つのメニューを用意してございます。それは主として、場所としての施設を拡充することとしてということと、人を養成していく、足りない相談員をいかにふやしていくかということに使っていただく、それから、地方の実情に合わせて、それぞれオリジナル事業ということで、地方が発案したものをやっていただくということで、できるだけ自由に使っていただきたいという仕組みを考えました。

 しかしながら、一方で、補助金のあり方に関しましては、これまで政府で累次の方針がございました。地方分権計画、平成十年の閣議決定や、平成十五年のいわゆる骨太二〇〇三等におきまして、地方公共団体の事務として定着しているものや人件費補助については一般財源化を進めるという基本方針があったということでございますので、これに沿いまして、今回の基金においても、地方公共団体が消費生活相談というサービスを継続的に実施するための経常的な経費として相談員の人件費そのものは対象としない。そのかわり、相談員の養成、レベルアップなどを対象とするというところで使っていただきたい。

 今お話のありました相談員の養成というところは、まさに本当に地方で人が足りないので、まずそういう資格を持った人をつくらなければいけない。そういう仕組みをつくる際に、要するに、普通であれば何か自分自身に投資するというためのその期間においていかに生活していくかということ自身も御自身の責任でということが普通なのでございますが、ここは政策的意図ということで、研修期間においての生活を支援できるような基金の使い方というのを許容する方向で考えているところでございます。

桝屋委員 要は、三年目以降のことを考えると、あるいは交付税措置されているということから考えると、経常経費というのはやはり自治体の経費でということなんでしょうが、現場の声を聞きますと、相当切実な声。私、地元の消費生活センターにも行ってまいりましたけれども、百五十億の基金、我が地元では三億五千万ちょうだいしたということで、これを有効に活用したいということでありますが、国において今こうした動きがある中で、消費生活センターも、土曜日も開庁、今まで土日は休んでおりましたが、土曜日も開く、できれば日曜日もというような話もありました。それから窓口業務も、通常八時半から五時、これを七時までに広げて、できるだけ窓口業務を拡充したいと。

 こんなことを考えますと、どうしても、拡充するとその分は既存の体制の中で、人の交代勤務で、ローテーションを組んで対応するということになりますと、現場での対応はレベルが下がるわけでありまして、そうした分については、今のお話で、養成するについては当面の、当座の手当ては何かあるようでありますが、実際に人を配置して作業するとなると地元負担、こういうことになるわけであります。

 三年後のことは、今総務大臣は改めて交付税措置以外に、今、人件費は一般財源化だ、こういうルールだというふうに言いましたけれども、大臣の答弁は大分違うような気がいたしまして、鳩山大臣らしいなと思いましたが、せっかくあそこまで発言があったのでありますから、野田大臣、この三年間は非常に大事な期間でありますので、できるだけ自由に、当面の方策はもう既に打ち出されておりますが、状況も見ながら、下手したら百五十億使えないところも出てくるんじゃないかと思いますよ。本当に地元のニーズに応じて自由にできるように、相当工夫の余地があるのではないか、私はこう思っているんですが、大臣、いかがでしょうか。

野田国務大臣 私は総務大臣ほどおおらかではないのでかたい話になってしまいますけれども、とにかく、この三年、基金によって、窓口がなかったところに窓口をつくっていただく、そして、トレーニングされておられなければしっかりとトレーニングをしていただく。

 また、消費者庁ができることによって、地方消費者行政というのが非常に全国民に、津々浦々にとどろくようになりますので、国民のリクエストもかなりハードルが高くなってくると思うんですね。ですから、今の相談員の皆さんのますますのスキルアップというのが恐らく国民から要求されることになるであろう、そういうふうに思っているところでございます。

 ですから、三年のこの基金は、しっかりと人材育成に使っていただくことと、ない場所がないように、やはりどこにでも手の届くようなところに窓口をつくるということにとにかく腐心していただくことが大事かと。

 先ほど土屋先生のお話にもありましたけれども、消費者庁という中央での行政組織ができる、さらには法律でちゃんと規定されるということで、地方議会においても、これまでは消費者行政の一元化された相談相手がないわけですね、そういうところもできますので、相談をし合いながら拡充していけば、国民の要求も高まる中で、今はこういうシャビーな感じになっているけれども、むしろ後退ぎみであったけれども、これからはやはり、地方行政のかなめと位置づけられるのであれば、多くの国民の要請のもと、そういう段取りというか、今後の人件費のあり方についても今とは違う考え方が当然生まれてこなければならないんだろうということは期待しております。

桝屋委員 大臣の御答弁であります。今は受けとめたいと思いますが、ぜひ、今後三年間ということでありますから、現状を見ながら工夫をしていただきたいというふうに思っております。

 何といったって、この基金は、私も説明を聞いても意味がなかなかわからなかったんですが、現状やっている消費者行政の上にさらに追加部分があれば十分の十で手当てしてもらえますよというようなことで、嫌らしい基金だな、だれが考えたんだと言いたくなるような内容でありまして、したがって、例の二十年度補正の地域活性化・生活対策臨時交付金、これを合わせわざでやっている自治体もあるのではないか。それをおやりになったらどうですかというふうに政府からもアナウンスして、既に二十年度補正はもう配分もされて、この臨時交付金についても計画が上がってきていると思いますが、地方消費者行政の充実強化というプラン、基金化ということで上がってきている状況を、把握できている部分だけで結構ですが、ちょっと御報告をいただきたいと思います。

田中政府参考人 今お話しの二十年度補正の地域活性化・生活対策臨時交付金でございますが、これを私どもの地方消費者行政活性化基金に積み増すという形で利用するということをお認めいただいてございます。

 それで、今、都道府県レベルでは十五団体、合計で約八億円程度を交付対象経費として実施計画に計上されております。

 市町村については、まことに恐縮でございますが、全体をつまびらかに把握してございませんが、ぼつぼつと存在しているというふうに承ってございます。

桝屋委員 今のお答えでは、都道府県レベルでは十五の都道府県で、国の基金にあわせて、地方においてこの臨時交付金を活用して、これは恐らく臨時交付金基金にして積んでいるんだろうと。したがって、まさに消費者行政活性化基金とこの臨時交付金、合わせわざで、現場で対応されているんだろうなと。

 市町村についても、ないことはない、幾つか上がっていると。恐らく、消費者行政を重要に考えている、あるいはとりわけ財源が厳しいところ、悩まれた上で計画をされているんだろう、こう思っているんですが、これは実際、現場でどういうふうに使われているのか。

 私も、これは検証しなきゃいかぬと。今後三年の作業でありますから、ぜひ検証もしたいし、必要であれば追加対策も、たまさか今新しい経済対策も検討されているわけでありますから、ぜひともそうしたところへ反映をさせたいと思っているわけでありますが、どうなんでしょうか、この臨時交付金による基金、これも基金なんですが、これは変な話、端的に伺いますが、人件費に充当するということも、これは自治体の判断、自由だろうと思っております。そうした実態はあるのではないかと思っておりますが、いかがでしょうか。

田中政府参考人 地域活性化・生活対策臨時交付金を新しい地方消費者行政活性化基金の財源として積み増した場合、それをどう使っているかということについては、これからのことでございますので、計画の中でということなのでございますが、ただ、制度として、おっしゃるように、その地域活性化・生活対策臨時交付金から積み増した部分を人件費で使えるかという御指摘だと思いますけれども、これは、その場合には自主財源という扱いになりますので、人件費として使っていただくことも、活用していただくことも可能ではないかというふうに認識してございます。

桝屋委員 野田大臣、これは非常に大事な話なんですが、先ほど総務大臣は、交付税措置の拡充と消費者行政活性化基金、この二つがツールですよと。ところが、二十年度補正で例の地域活性化・生活対策臨時交付金、これは特別の措置でありますが、これも三年間分の基金にして活用している自治体がある、そこは人件費にも場合によっては充てる。

 これは相当、さっき総務大臣がおっしゃった三年目以降のことを考えながら自治体が自主的に考えていると私は思うんですが、この臨時交付金は、突然じゃありません、二十年度の補正で仕込んだものですから、気がついていない市町村も、あるいは都道府県も、あるいは突っ込めばよかったんだけれども、交付要綱の中身がどうだろうなというのを気がつかないまま通り過ぎちゃった自治体もあるのではないかと。あるいは、地方消費者行政の強化拡充ということがこれほど大事なんだという認識が首長になかったところもあるかもしれない。

 したがって、これは我々与党としては、政府とよく相談をして次の対策も講じたいわけでありますが、ここはぜひ工夫をしたいなと。四年目以降、三年目以降のことも考えながら我々は制度を仕込まなきゃいかぬ、こう思っているのであります。

 時間がなくなってまいりましたが、せっかく民主党の皆さんに、民主党案に通告をしておりますので。いつも決して無視をしているんじゃないので、政府の方が気になるものですから、申しわけないのでありますが。

 民主党案、この前参考人質疑とか地方公聴会の意見を伺いますと、現在の各自治体で取り組まれている地方の消費生活相談員、この実態というのは相当の温度差があるな、こう思いました。とりわけ、私は札幌へ行きましたから、北海道が、北海道の消費者協会、民間の中で、民間が主体的に立ち上げて、そしてそれを行政がサポートするという体制で今日まで来ているわけでありまして、なかなかいい流れだな、私は、そこが一番、札幌のケースについては関心があったわけであります。

 そういう、さまざまな自治体による取り組みがある。そんな中に、国の機関である地方消費者権利局のもとに非常勤、フルタイムかパートタイムかはあるとおっしゃいましたけれども、常勤の職員ではない、正規職員ではない、非常勤というような形で一律に進める。相談員のことを考えますと、本当にそれでいいのかな、相当乱暴じゃないかなと。一律に進めるということが体制の強化にはなるんだけれども、早道かもしれませんが、地方分権、あるいは本当の意味でそれぞれの地域に根差した消費者センターそれから相談員、この機能の健全な発展ということを考えると、いささか無理があるのではないか。

 常勤職員でもいいと思いますし、任期は十年以下でもいいし、いろいろな形態があるのではないか、その形態は十分お認めになって進められる必要があると私は思っているんですが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

階議員 お答えいたします。

 最初のころ、ちょっと説明が不十分で、誤解を抱かせてしまった部分もあるかと思いますが、我々、今ある消費生活センターの相談員をすべて国家公務員にしようということではございません。今、消費生活センター、そのまま運営していこうということであれば、そこで働いている方もそのまま働くということはできるわけでございまして、強制的に国の組織に移っていただくということではございません。ただ、身分を保障するという意味では、国家公務員にした方がいいというふうに考えております。

 また、十年という期間でございますけれども、先日もお話がありました、下谷内さんという参考人だったと思いますが、五年で一人前というお話もございまして、そうしますと、大体、一人前になってしっかり働いていただくには、十年という任期は適切なのではないかなというふうに考えております。

 あと、国家公務員は、待遇を上げるというだけではなくて、権限を持つことによって交渉力をアップするということと、消費者権利院という国の組織の一員として国のメンバーということになるわけでございますから、相談員が得た消費者からの情報が一元化されやすいのではないかという付随的な効果も期待しているところでございます。

 よろしくお願いいたします。

桝屋委員 民主党の皆さんも、当初我々が聞いていた案からは随分、現場の状況を御判断いただいて、柔軟な仕掛けをお考えになっているなと思っておりますが、引き続き、議論をしっかりしたいと思っております。

 きょうは、まだやりたいことはいっぱいあったんですが、総務大臣の最初のお答えで大分混線をいたしました。これで終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

船田委員長 次に、小川淳也君。

小川(淳)委員 民主党の小川淳也でございます。

 野田大臣には、毎回申し上げますが、本当に連日お疲れさまでございます。

 まず、一昨日、北海道、そして昨日も参考人からいろいろな御意見をいただきましたので、それを踏まえてお尋ねを申し上げます。

 お配りをさせていただきました資料をごらんいただきたいと思いますが、一ページ目、まさに平成二十年度、北海道庁の消費生活センターが受け付けを行った相談件数の分野ごとの一覧でございます。年間八千件の相談のうち、下線を入れました運輸それから通信サービス、これはまさに総務省にかかわる分野が二千件近い。金融・保険関連が、これは全国的な傾向ですが、一千件余り。大半が、この運輸・通信と金融・保険。

 これは両方とも消費者庁の所管法案に入っていないと思いますが、野田大臣、改めてこういう地方の実情を踏まえますと、何か物をおっしゃる必要があるんじゃありませんか。特にきょうは総務省関連ですので、通信分野に関して。

野田国務大臣 特に電気通信関連の法律を御指摘だと思っているんですけれども、代表的なものに電気通信事業法というのがございます。これは、電気通信事業の運営を適正かつ合理的なものにするとともに、その公正な競争を促進することにより、電気通信の健全な発達を図ること等を目的とするものであります。

 この法律は電気通信役務の利用者の利益の保護をうたっておりますけれども、その利用者とは、必ずしも消費者に限られていることはありません。消費者でない立場の個人や事業者も利用者となっています。

 また、行為規制を見ても、公正競争を実現するための事業者間取引に関する規制や、ユニバーサルサービスの確保のための規制、サービスの安定的供給を確保するための技術基準等を中心に構成されておりまして、消費者の利益の擁護及び増進のための直接的な規制が主たるものとはなっていないのであります。

 こうしたことから、この法律は、相対的に、消費者の利益の擁護及び増進を任務とする消費者庁が所管することの妥当性とか必要性が低く、必要に応じ、消費者安全法に基づきまして、内閣総理大臣が総務大臣に対して必要な措置を要求すること等により対応することが内閣全体の役割分担として適切であり、かつ効率的に消費者利益の保護を図ることができるものと考えています。

 なお、消費者からの苦情、相談の具体的内容をすべて承知しているわけではないのですけれども、例えば、消費者契約法の取り消し事由とか無効な契約条項に該当するような場合には、消費者契約法に基づく対応を消費生活センターで助言するなどの対応は可能であります。

 また、迷惑メールに関するものとしては、特定電子メール法を所管しております。

 御指摘のとおり、電気通信関連の分野も、消費者問題として重要な問題であることは確かです。主管している法律や措置要求等を通じて適切に対応をしていくことになると考えております。

小川(淳)委員 これは、この間、建築基準法についてお尋ねしたときも同様の御答弁をいただきました。必ずしも利用者が消費者に限られない。しかし、消費者が利用しているものに関しては幅広く物を言っていきますよという姿勢を明確に打ち出していただかないと、消費者以外が利用するものに関しては口出しできませんということでは、これは期待は本当にしぼむことになりますよ。

 迷惑メールに関する防止法、これは確かに共管されます。しかし、御紹介申し上げますが、総務省が一昨年、平成十九年に受けた相談件数、迷惑メールに関するものは百九十三件、しかし、高額な料金請求などの電気通信事業者との料金トラブルが七百五十六件、ほとんどがこの電気通信事業者にかかわるものです。

 大臣、時間も限られていますから、既にお述べになりましたけれども、電気通信事業法、まさにこれは携帯電話の普及などで本当に消費者、国民にとっても身近な分野になりましたが、第一条の目的では、利用者の利益を保護するんだと書いてある。業務の改善命令には、料金についてその額の算出方法が適切かつ明確でないため利用者の利益を阻害したときには業務改善命令をやるんだと二十九条ではうたっている。こういうときこそ消費者庁の出番だと思いますよ。

 一方的に御紹介するのもあれですが、総務省は、電気通信業界からは電波料、利用料を取っていますね。年間六百億か七百億か、特会の財源にしていますよ。そして、関連法人、電気通信事業者協会、日本データ通信協会、ほか三団体に七名の非常勤、常勤役員がいる。こういう体制の中で、野田大臣、総務省に任せっきりで本当に消費者、利用者の立場に立った行政が期待できますか。

 総務省、従前の業界指導を乗り越えて、利用者、消費者の目線に立った行政指導、これはちゃんとやれるんですか、こういう構造の中で。

石崎副大臣 お答えいたします。

 先ほど、電気通信事業法につきましては野田大臣から御答弁がございました。いろいろな問題、トラブルの発生の原因というのはさまざまございまして、法外な料金を請求されるという事例は数多くございます。その原因はさまざまでございますけれども、電気通信事業法につきましては、電気通信の事業者に対して、さまざまな登録、届け出、あるいは技術基準等々の電気通信役務の安定的かつ確実な提供を確保するための規定を定める、あるいは公正な競争ルールを定める、そういった法律になっております。もちろん、利用者の保護に関する規定が一部ございますが、法律全体としてはそういう規定ぶりになっているところでございます。

 総務省としては、利用者の利益の保護に資するように法の運用を進めるということ、それから、もちろん消費者安全法による内閣総理大臣の要求についてはしっかりと対応するということは当然のことだというふうに考えております。

小川(淳)委員 野田大臣、もう今週で審議は四週間目ですか。四週間目に入りました。最初から、所管法律をどうするんだということは議論してきました。結果的に、今、政府案では二十九法案。民主党案はゼロですから、法律そのものの所管は。

 私は、無限に所管法を広げて巨大官庁をつくれと申し上げているわけでは必ずしもありません。むしろ、仮に、こういうことを個別に議論していくことに無理がある、あるいはおっしゃったような相対的な理由でしか区別できないとしたら、出発点においてこういう打っ立ての仕方をすることそのものが、私は、スタート時点においてせっかくの消費者行政が各省横並びの業界行政に埋もれてしまう、こういう危険性をむしろはらむのじゃないかということで個別法律を含めて議論をしてきたわけです。これは、改めてきょうの後半でもう一回議論をさせていただきたいと思います。

 その前に、北海道の切実な声も踏まえて、とにかく交付金の使い勝手が悪い。私、前回の質疑で、定額給付金との関係で御批判申し上げました。ちょっと言葉遣いが荒かったかなという反省点も、私自身がみずからの良心に従って感じておりますので、その点はおわびをしたいと思いますが、それにしても、都合のいいときは、自治事務だがやりたくなくても金を渡す、都合の悪いときは、自治事務だから金は渡さない、こんな御都合主義の、場当たり主義といいますか、これが本当に日本の地方自治を廃らせている。その観点から、改めて交付税措置を初めとしてお尋ねしたいと思います。

 きょうも、総務省の方から既に御答弁がございました。消費者行政に関して、交付税措置をふやしている、そういう御答弁がございましたが、地域振興費に消費者行政費を盛り込んだという御答弁でありました。

 お配りした資料の二枚目をごらんいただきたいと思います。これは平成二十一年度の交付税の単位費用に関する細目です。下から四番目の地域振興費、囲み書きを入れましたが、平成二十年度の単位費用は人口一人当たり六百二十九円、平成二十一年度が六百十四円。これは減っているじゃありませんか。消費者行政、盛んに、ふやす、ふやす、地域振興費に盛り込みましたと。これは減っているじゃありませんか。どう説明するんですか。

久保政府参考人 今委員は、都道府県の個別算定経費の地域振興費、これの単位費用についてお話がございました。

 地域振興費、都道府県の場合、これに盛り込まれております費目といいますのは消費者行政推進費だけではございません。歳出削減の取り組み強化に要する経費あるいは地域経済新生費、地域総合整備事業債の元利償還に要する経費、そういったものが盛り込まれた結果、標準団体、都道府県でございますと百七十万人でございますので、これは人口を基準といたしておりますから、百七十万の標準団体の一般財源所要額をそういった項目に従って算定して合計いたします。そしてそれを百七十万人で割り戻したものが地域振興費の単位費用になってございます。

 消費者行政推進費、これは皆増といいますか、先ほども御議論がありましたが、従来包括算定経費の中で三千万円を措置しておりましたものを個別算定経費に移しかえまして、六千九百万円を措置しているということでございまして、この部分は皆増でございます。

 したがって、ではなぜ地域振興費全体の、総体の単位費用が減っているのかと申しますと、大きな要因は、これまでの地域総合整備事業債、この消費者行政推進費とは関係ないといいますか、それに対する元利償還分が減ったということが大きな要素になってございます。

小川(淳)委員 地域総合整備事業債に関する元利償還費をなぜ人口単位にして測定するんですか。

久保政府参考人 従来から、やはり地域総合整備事業債を行います際に、それと関連の深い測定単位というものは人口であろうというふうに考えてきたということでございます。

小川(淳)委員 いや、これは地方債の元利償還を手当てすると言い続けて、地方に対していろいろな景気対策とかやらせてきたわけでしょう。これは、本来ですと、地方債の残高に一定の割合なり一定の額を償還しますというふうにやるのが筋道じゃありませんか。

久保政府参考人 地方債の元利償還分をどういった形で交付税で措置をしているのかといったことに関係してまいりますが、委員から御指摘がございましたような公債費算入方式、これは、法律の根拠に基づいたり、そういったことで措置をしているものは公債費として措置をしておりますけれども、事業費補正といったような範疇のものは、公債費算入ではないところで措置をしているということでございます。

 つとに、そういった事業費算入といったような公債方式でないものについては、そういったものの元利償還金を交付税で見るといったことに対しては抑制的でなければならないのじゃないかといった御指摘もあって、これまで累次にわたって事業費補正方式といったようなものは縮小してきているといったことはございます。

小川(淳)委員 そこは本当に裏腹なんですが、もともと地方は、借金してやれば交付税で面倒を見てもらえるんだという前提で事業をやってきたわけでしょう。それで、ある日気づいたら人口単位になりましたと。この地方債をやった団体も、やっていない団体も、人口になると関係ないわけですよ。

 ここで申し上げたいのは、総務委員会ではありませんから、本来こういう議論を深入りする場ではないんですが、つまり交付税というのはこういうことなんです。総務省の胸先三寸で配分基準が決まっているんです。これが消費者行政をふやしますといったところで、大臣、この単位費用の一覧というのを初めてごらんになったでしょう。地域振興費の中にこういうのを入れましたとおっしゃったところで、全体が減っている。これで問題は二つある。

 総額の確保と含めて地方の立場から本当にふえるかどうかが一つの問題。もう一つは、本当にふえたところで、仮にこういう単位費用の一覧を見て、地方の立場からふやすかどうかという問題がもう一つあるんです。

 ということは、大臣、これは交付税で措置しています、人件費倍にしましたとか何だとか、そういうやったふりみたいなことは、そろそろ御答弁としてもうやめた方がいいと思いますけれども、いかがですか。

野田国務大臣 総務省がどのようなことをなさっているかは、それは総務省にいらした委員の方がよく御存じだと思っておりますけれども、今回は、私は担当大臣として交付税の中でしっかりとこの消費者行政に対するものを確保したんだと。もう一つは、地方がやるかやらないかというのは、今、先ほど土屋議員からのお話もありましたように、消費者庁ができて法律がしっかりできれば地方はやらざるを得なくなるんだ、そういうことを聞きましたので、そういういろいろな合わせわざで、しっかりと地方もリーダーが自覚を持って取り組んでいただきたいと。まさにこれだけ長時間審議をしているわけですから、消費者行政、とりわけ地方の消費者行政がいかに重要かということは、もうほとんどの首長さんは御理解いただけているものだと私は受けとめておるんですが。

小川(淳)委員 これは本当に時代認識ともかかわるわけですが、今の消費者行政そのものが非常に危機的な状況だという認識に立てばこそ、地方の現場からは、北海道では、例えば、交付税で措置しましたという、来るか来ないかわからない、あるいは来たとしても認識がはっきりできない、そういうお金よりも、むしろ、別枠の交付金で配ってもらった方がありがたいというお話もあります。

 それから、依然、この基金に対して縛りがきついこと。これは大臣、私もちょっと事務的にお聞きしましたが、基金の使途を縛っているのは、補助金要綱とそれから自治体に渡す要領ですよ。これは、大臣、要綱は事務次官決裁、要領は局長決裁とお聞きしましたよ。大臣、これは直接ごらんになってサインしていないんでしょう。

田中政府参考人 ただいま要綱と要領について、それぞれ事務次官決裁、局長決裁であるかということでございますが、これはそのとおりでございます。

 その内容、概要については大臣に御説明申し上げてございます。

小川(淳)委員 ですから、前回も申し上げましたが、この基金の縛りに関しては大臣の一存でどうにでもなることですから、地方の声を踏まえて改めて御検討を、再三再四お願いしたいと思います。

 そして、地方財政の議論をしてまいりましたし、ここは本当に難しいところだと思いますが、政府は、地方にやってもらいたい、頑張ってもらいたいという言い方をされ続けている。一方、民主党は、思い切って国でやるんだということをおっしゃっている。

 ここは非常に、ある意味両極端、両翼の議論だと思いますが、きのう参考人から非常に思い切った提案がございました。その両者をむしろつなぐ格好で、人の手当てなり財源については国が責任を持つ、実施の主体は地方にお任せする、法定受託事務として地方の消費者行政を位置づけたらどうかという大胆な御提案をいただきました。

 この点、地方分権の流れ等も含めて、さまざまな御意見、御批判もあるようですが、この提案について、民主党提案者の意見をお聞きしておきたいと思います。

枝野議員 お答えいたします。

 私どもは、今のやりとりでもおわかりのとおり、最も重要な地方の相談員の人件費の確保が、地方交付税では全く絵にかいたもちにすぎない、そうした中で、しっかりと地方の相談員の人件費、待遇を確保するという観点から、国が責任を持つしかないという提案をいたしました。

 これは、全体としての地方分権に対する認識の違いが前提にあると思っておりまして、地方分権といったときに、地方政府に中央政府の下請をやらせておいて地方分権はあり得ない。つまり、国が、あれやれ、これやれということを地方政府に命じて、これが分権だというのは本来の分権の趣旨ではなくて、地方分権というのは、それぞれの地方政府が、やるにしろやらないにしろ、それからやる中身にしろ、自由に自治で決められるから地方分権。

 地方自治というのは団体自治と住民自治と両面から成っておりますから、それぞれの自治体の判断で、こんなことはやらないとかということができることが地方の本来の事務だと私たちは思っておりますので、国として、しっかりと各地において消費相談ができないといけないということは、これは本来的に国の事務ではないかというふうに思っております。

 が、まさに私たちが最優先しているのは、こうした分権の理念以上に、現場の消費生活センターの質を高め、そこで働いている人たちの最低限の身分と処遇を保障するということでありますから、今言った理念的な観点から、国の責任で行うというところが、もし、なかなか与党の皆さんに合意をいただけないんだとすれば、次善の策として法定受託というような形、あるいは、例えば義務教育の教職員の給与については国が一定額をしっかりと支出しているというような形で、実質的に国が負担をして、地方に消費生活相談員の人件費という縛りでお金を、必要な額を渡せるという仕組みがとれるのであれば、柔軟に対応したいというふうに思っております。

小川(淳)委員 本当に国民の皆様が望んでおられるのは、とにかく両者しっかり議論をして、いい案ということでしょうから、いよいよ委員会審議も大詰めだと思いますので、私自身のことを含めて、しっかりと建設的な前向きな議論をしてまいりたいと思います。

 最後に、残り時間、私が冒頭申し上げました当初からの問題意識ですが、この消費者行政、歴史的な出発点に立って、スタート地点にあって、各省横並びの業界行政に埋もれてはならないというところから、すべてのお尋ねをこの間してきたわけです。それに関連して、最後、表示の問題から少し具体的なお尋ねをいたします。

 既にこの委員会でも、我が党の岡本委員からクローン牛に関して幾つかお尋ねをしています。前回これは御用意いただいていたと思いますが、そこまでたどり着けませんでした。そのことのおわびも含めてお尋ねをいたしますが、これは、世の中にクローン牛、受精卵によって生成されたクローン牛とそれから生体細胞、体の細胞からつくったクローン牛と両方あるようですが、世の中にどのくらい出回っているのか。そして、クローン牛をクローン牛と表示することを任意としたそうですが、それはなぜなのか。その点、御見解をいただきたいと思います。

塚本政府参考人 まず、私の方から、それぞれクローン牛の今までの出荷頭数なりを御答弁申し上げたいと思います。

 まず、受精卵クローン牛でございますが、現在までに七百十八頭が出生をいたしておりまして、売却などがなされましたものは、そのうち三百九十頭ということでございます。それから、体細胞クローン牛につきましては、五百五十七頭出生いたしておりまして、これは出荷はされておりません。

 以上でございます。

小川(淳)委員 これは表示を、野田大臣、どう思われますか。既に岡本委員とのやりとりの中で、表示は任意じゃなくて強制だという方向へ持っていく、そのお尋ねに対して、「はい。」とお答えになっていますよ、野田大臣。

 これは、ぜひその方向でお願いしたいと思うんですが、表示が任意である上に、受精卵のクローン牛、今御答弁いただきました、もう三百九十頭出回っているんですよね、世の中に。表示の内容が、受精卵クローン牛と書いてもいいし、Cビーフと書いてもいいと書いてある。Cビーフ、これは何ですか、Cビーフというのは。オージービーフの親戚か何かですか。

 これは、大臣、消費者の実質的な選択権、生命の安全、安心とはまた別の観点、きちんとした選択権を実質化するという意味からいえば、Cビーフなんという表示は不適切でしょう。これはクローン牛と書くべきだ。どうですか。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 まず、先ほど答弁が漏れておりましたが、任意表示とした理由でございますが、これにつきましては、平成十一年でございますが、クローン牛の表示のあり方につきまして、有識者あるいは消費者の皆さん方と大分一年ぐらいをかけまして議論いたしまして、その上で、受精卵クローン牛につきましては、これはなかなか科学的に一般の牛との差異が認められないこと、あるいは品質が同等であること、あるいは何かあった場合にそれを科学的に一般の牛と判別することが、これがなかなか困難だということで任意表示としたものでございます。

 ただ、やはり先生おっしゃっていただきましたように、消費者の理解といいますか、選択の幅が広がるということから、私ども、これについては任意表示としてきたところでございまして、試験研究機関の方に、できるだけ表示するように進めてきたところでございます。

 また、この受精卵クローン牛、あるいは、いわゆるCビーフというお尋ねでございますが、これにつきましても、平成十一年でございますが、この名前につきまして公募いたしまして、百以上にわたります名前が出てまいりました。その中で、この受精卵クローン牛という名前もいいんだけれども、非常に長いので、略称でCビーフということで、それを採用したらどうかという意見も次点を占めましたものですから、やはり国民の皆様の御意見を尊重していくということから、これにつきまして、選択制ということで採用させていただいたところでございます。

小川(淳)委員 野田大臣、これがまさに業界行政なんですよね。パブリックコメントとか、そういうことのみのをかぶった業界行政ですよ、これがまさに。野田大臣には、これと闘っていただかなければならない。

 もう時間がありませんが、ちょっと資料の三枚目をごらんいただきたいんです。食品安全基本法なり食品安全委員会の消費者庁への移管については、野田大臣、推進計画の中で具体的に触れられた、NPO法とともに。これは両方とも移管を見送っているんですよ、この中で触れられている。

 触れられているよりも、さらに具体的に書いている文面がある。これは、野田大臣、見覚えはありますか。食品安全基本法と食品安全委員会を消費者庁に位置づけることはもちろんであるが、さらに食品安全に関する横断的な見直しを行うことが必要である。この文面、野田大臣、見覚えはございますか。この文面、三枚目。(野田国務大臣「三枚目、線の引いてあるところですか」と呼ぶ)この文面そのものですよ、線が引いてあるところも含めて。これは何かわかりますか、意地悪するつもりはないんですが。なければないで結構です。

野田国務大臣 余りにたくさんの書類を見てきたので、にわかにちょっと今確定できません。

小川(淳)委員 本当に意地悪するつもりはないんですが、聞いてみたかったんですよね。

 これは、平成二十年三月十九日、自由民主党政務調査会消費者問題調査会最終取りまとめ骨子ですよ。自由民主党の政務調査会、平成二十年の三月十九日、これは会長はどなたですか。

野田国務大臣 私です。

小川(淳)委員 何回も言いますけれども、意地悪するつもりはないんですが、やはりここまで議論しておきながら、最終的にこういうところに落ちついていること。何回も繰り返しますが、この歴史的な消費者行政の出だしが各省横並びの業界行政に埋もれてはならない、改めてそのことをお願いもし、また、委員会審議が大詰めですから、前向きな議論が行われることを私自身の決意も含めて要請を申し上げ、質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

船田委員長 次に、田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成です。

 三十分という時間をちょうだいいたしましたので、ぜひ関係者には手短に、また簡潔に答弁をいただきますように、心からお願いを申し上げます。

 私も、一昨日、神戸の地方公聴会へお邪魔をしてまいりました。大変有意義ないろいろな御意見をちょうだいしてまいりましたので、それをもとに大臣にお尋ねをしたいと思います。

 大臣は、公聴会の議事録はもう手元の方に届いておりますか。ごらんになっていらっしゃらない。それならば、余計に私の方から、どういう意見があったのかも踏まえて御報告をさせていただきたいと思います。

 私も質問に立たせていただいて、やはり一番気になっていたのが、今回政府がとりわけ目玉として出していらっしゃる基金のあり方に対する意見でありました。今回用意されている基金、二十一年度から二十三年度の時限的な基金ということでありますから、二十四年度以降、一体政府がどのような支援を考えていらっしゃるのかが、私もそうでありますし、消費者行政に携わっていらっしゃる自治体の皆さんも、関心のネタであります。

 二十四年度以降のこの基金、ポスト基金の支援についてはどのように考えていらっしゃるのか、もしないのであるならば、二十四年度以降というのは自治体の自主財源で賄えというふうなお考えでいらっしゃるのか、そこを簡潔にお答えください。

野田国務大臣 基金を三年の時限としたのは幾つかの理由があります。

 まさに、消費者行政が極めて重要で、多種多様の消費者被害がどんどんふえていく中、ここ数年、地方の消費者行政はとりわけ後退ぎみにあった。これは地方自治体にいろいろな事情があったんでしょうけれども、被害はふえるわ、窓口はどんどん厳しくなっていく。また同時に、あるところはいいんですけれども、全くそこまで手の及ばない地方自治体、とりわけ、本当に地方では、何もないからこそ消費者の被害を食いとめることができなかった。

 そういう事実を踏まえて、とにかくこの三年、後ろ向きになっていた消費者行政のあり方、地方自治体において、人、物、金すべてにおいて、やはりもう一度重要な地方自治体の仕事だと位置づけていただくこと、今まで頑張ってくださった人にはさらにそのスキルアップができるような取り組み、または、全然ないところには窓口の設置、また、相談員が完全に不足しておりますので、そういう人たちには地方においても研修が受けられるような制度等々、さまざまなものを組み合わせて、まずは、その後退していた消費者行政というのを立て直していただきたい。それを強化するのには三年が必要であろうと思っています。

 その後につきましては、そこをちゃんと見きわめてから、どうあるべきかというのは、やはりそのあたりで検討しなければならないと思っています。

田島(一)委員 とりあえず三年、二十四年度後はまだわかりませんという御答弁ですよね。(野田国務大臣「そういうことじゃない」と呼ぶ)では、ちょっと続きを聞かせてください。

 地方自治体の自主財源に任せていく、これも当然一つの選択肢であろうかというふうに思いますが、まだそのあたりは明確にはやはり大臣はお答えになられませんでした。

 総務省として、では、平成二十四年度以降の全国の自治体の財政、どのような見通しを立てていらっしゃるのか、好転していくのか、それとも悪化していくのか、その辺、見通しをお答えください。

倉田副大臣 地方財政が非常に厳しい状況にあることは十分認識しているわけでございます。

 そうした中で、政府としましては、当面は景気回復を最優先として税収の回復に努めている一方、今後、平成二十年度を含む三年以内の景気回復に向けた集中的な取り組みによって経済状況を好転させるということを前提として、遅滞なく、かつ段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講ずること、こうしているわけであります。

 総務省といたしましては、その際、地方消費者行政に必要な財源の確保も図られますように、地方消費税の充実、それから地方交付税の法定率のあり方の再検討というような地方財源充実確保に向けた取り組みを強めていきたい、こう考えております。

田島(一)委員 必ずしも経済がよくなるという見通しが立っているわけではない。景気がよくなるということを前提にというふうに、あくまで断りをされてからのお話でありますから、はっきり言って、まだよく総務省の方も把握をしていないんだという状況にあります。とりあえず三年間だけは力点を置いてやりたい、しかしながらその先はまだわからない。果たして本当にこれで、一時しのぎで、この消費者行政がきちっと地方自治体で施策、政策として根づいていくのかどうか、まだまだ私は疑問を持っているところでもあります。

 とりわけ、地方自治体の相談業務に当たっていらっしゃる皆さんが、今回のこの基金でやはり不安に思っていらっしゃるのが、人件費に使えないという部分でありました。大臣もこれまで、自治事務だからという理由で、人件費には使えないということをずっとおっしゃってこられたわけでありますが、六日の地方公聴会で、ある公述人が、先週末に、百億円、基金が増額され人件費に使えるようになると聞きました、そしてまた、交付税も、積算根拠を百五十万円から三百万円に増額しているので使うようにと内閣府から依頼文が出たというお話であります。

 私も、そのような文書というのはこの委員会等々で拝見をしたことがありませんので、慌ててお願いをしたら、ゆうべ遅い時間に、この四月一日付で各都道府県の消費者行政担当部長あての生活局長名での「消費生活相談員の処遇改善について」という依頼文をファクスでちょうだいいたしました。同じように、総務省の自治財政局調整課長名でそれぞれの自治体の総務部長また財政局長あてに「消費者行政に係る地方財政措置について」という文書を初めて拝見したわけであります。

 大臣、こちらの方は、もう目を通していただいている文書ですよね。(野田国務大臣「その通達の文書ですか、はい」と呼ぶ)

 私たちがやはり国会でこういう審議をやっている最中にこの文書が出て、地方自治体の方々は、これで人件費が上がるんだと皆さん小躍りをされていらっしゃるようであります。

 この依頼文書の中身の一部を御紹介申し上げます。「基準財政需要の算定において、報酬を年間で約百五十万円から約三百万円に増額しています。」しかも、わざわざここに、必要があるのかどうかわかりませんが、「これに関しましては、平成二十一年三月十八日の衆議院消費者問題特別委員会において、麻生内閣総理大臣より、消費生活相談員の処遇改善が必要である旨の発言があったところです。」と、わざわざこういうふうに断りを入れていらっしゃるわけであります。

 総理大臣がおっしゃったから、それを受けてこういう文書を出した、総理大臣のおかげで百五十万円から三百万円にこの算定の報酬額が上がったんだと言わんばかりの、非常に政治的なにおいがぷんぷんする文書であります。

 では、処遇改善のお話を流していらっしゃるんだけれども、本当にこのように地方自治体できちっと増額がなされていくのかどうか、現実にやはりしっかりと見ていかなければならないと思うわけであります。大臣だって、この依頼文書をお出しなされたことがアリバイに使われるのはやはり心外だろうというふうに思います。

 しかしながら、これは、この間の公述人の方からも指摘がありました。地方自治体の財政課等々へ問い合わせたところ、自治体の予算要求ルールでは、継続的経費、いわゆる人件費について、永続的に特定財源の確保が担保されない予算措置は行わないことが大原則である、交付税は色分けされているわけではなく、そのまま相談員の報酬に積み増しできるものではない、人事部局との調整になる、特定財源が来たとしても、税金である一般財源が基金にかわるだけのことであるというようなお話をされています。

 こう考えていきますと、国が笛吹けども、地方自治体の現状としては踊りたくとも踊れない、いろいろな問題を抱えていることをおわかりいただけるのではないかというふうに思うわけであります。

 総理大臣の発言を受けての依頼文書なのかどうかは、真意は別にして、大臣がお考えになっていらっしゃるように、わざわざ四月一日付でこうして地方自治体に要請をかけていらっしゃるんだけれども、果たして本当に動くのかどうかというところまで把握していらっしゃるのかどうか、私は気になるんですが、どのように認識をされていらっしゃいますか。

野田国務大臣 この委員会でも何度も何度も、地方自治体に対して懐疑的でいらっしゃる、これだけ用意しても実際は使わないんじゃないかという声が随分多数寄せられているわけでございまして、それを受けて、しつこいようでありますけれども、こういうお知らせをさせていただくことで、そのために使っていただきたいということを明言させていただいたものでございます。

田島(一)委員 もう一度、基金の方に話を戻させてください。

 今回のこの基金には幾つもメニューが用意をされています。先ほども一部触れられたわけでありますが、その中の消費生活相談員養成事業というのがあるんですけれども、随分この基金が使いにくいという声も現場から聞いています。

 そのポイントが幾つかあるんですけれども、この消費生活相談員養成事業の中の七番目の留意点に、「本事業は、一般職の職員は対象外とする。」というふうに規定がなされているわけであります。

 非常勤職員であるこの相談員というのは、特別職の非常勤職員と一般職の非常勤職員、この二種類があります。どちらもそれぞれの地域で相談業務に当たっていらっしゃる、その日々の業務は変わりがないんですけれども、この非常勤職員である相談員を特別職と一般職に区分する理由は一体どこにあるんでしょうか。

田中政府参考人 舌足らずな表現であったようで、誤解を生じたようで大変申しわけございません。

 私どもとしては、ここのところは、「一般職の職員」との記載については、いわゆる普通のお役所の一般職、常勤で勤められている一般職を対象外とするということであって、非常勤職員について一般職と特別職を問わない、その区別をしないということを考えておりました。

 誤解を与えているということが今生じたわけでございますので、地方自治体の方に誤解のないように連絡したいと思います。

田島(一)委員 こんなのは誤解とかの問題じゃないですよ。

 私も、内閣府にお願いをして、この地方消費者行政活性化基金管理運営要領をいただきました。これを見ても本当にわかりにくいんですね。ただし書きで、例えば、部分的にはこの事業には使えない、こういうものの予算には使えない、そういうような書き方がされているんですけれども、とりわけ、今おっしゃってくださった常勤と非常勤というような、どこにも書いていない書きぶりを今ここでお話しされて、これを見ると明らかに、「一般職の職員は対象外とする。」と書いてあるんですよ。

 今ここで急に言い方を変えられただけなんですか。最初からそういう趣旨だったら、なぜそのように常勤か非常勤かというだけの区分で書かなかったんですか。では、ここに最初、わざわざ「一般職の職員は対象外とする。」とお書きになられた意図は何だったんですか。

田中政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますけれども、ここでは、いわゆる常勤の一般職の職員、フルで働いていただいていてお給料はフルに役所の方から出ておられる職員は、この養成事業の対象外にしますということを伝えたかったのでございますが、もし舌足らずであったら重ねておわび申し上げます。

田島(一)委員 常勤のフルタイムで働いていらっしゃる方々も相談員であります。非常勤の方でも相談員であります。どちらにしても、相談員としてのレベルアップを図っていかなきゃいけないわけでありますね。

 では、なぜ常勤のフルタイムの人だけはこの研修が受けられないんですか。

田中政府参考人 この養成事業では、まず、絶対的に足りないというので全く素人の方に来ていただいて、座学研修と現場での実務研修というのをやってもらって、将来的には相談員としてひとり立ちしてやっていただける人を養成するということを主としておりますが、それと同時に、今現実に、非常勤職員で、例えば三日間だけお役所の窓口で相談業務に当たっている人を、あと二日間レベルアップのために研修を受けるという枠組みはこの中でもさせていただきます。

 それで、きちんと月給でフルにお役所からお給料をいただいている一般職員の方でも相談業務に当たっておられる方がいます。その方々も当然のことながらレベルアップが必要であるということですけれども、ここのところは、今の養成事業とは別に、消費生活相談員等のレベルアップ事業というのを設けることによって、こちらの方にぜひ参加していただきたいと思っています。

 そういう職員の方の困難は何かというと、研修に行きたくても研修の費用、それからそこに行くための出張旅費等が出せないということに困難があると聞いておりますので、そういうところはこのレベルアップ事業の活用でカバーしていただければと思ってございます。

田島(一)委員 少し視点を変えて今の問題を分析していきたいと思います。

 今回の相談員の養成事業の実務研修には自治体参加型と法人募集型という二種類があるというふうにこの要領の中には書かれています。

 自治体参加型は、各市町村であるとか都道府県が研修参加要望を取りまとめていく、これはありそうな、理解できるものであります。

 しかしながら、法人募集型というのは、市町村や都道府県が研修生の実地研修受け入れ要望を取りまとめるということなんですが、一体これはどういうことなんでしょうか。実地研修とは、民間人研修生に役所の業務をさせて日当を払っていくというような仕組みになるわけですけれども、これは言葉は悪いんですが、研修の名をかりたやみ雇用というふうにとらえられるんじゃないでしょうか。

 自治体が任用していない方を消費者、事業者の秘密であるとか権利利益にかかわる相談業務に携わらせていくことが本当に可能なのかどうか、これは参考人で結構です、お答えください。

田中政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの相談員の養成業務に関して、自治体参加型と法人募集型というちょっとわかりにくい二つのものを設けました。

 御案内のように、自治体参加型というのは、素直にわかっていただけるということなんでございますけれども、先ほど言いましたように、本当にまだ相談業務の経験のない素人の方であっても、将来、行く行くは志があって相談員をやっていただこうという方を、自治体参加型の方は、一応自治体の方にある意味で研修生として雇っていただいて研修に参加させていただくということなんでございますが、それはいいんですけれども、したがって、将来的には、相談員としてグローンアップしたときにはその自治体できちんとお雇いいただきたいということを前提としたシステムとして自治体参加型というのを想定しているわけでございます。

 要するに、地域によっては、将来どういうふうに雇うかというのはともかくとして、いわば圧倒的に相談員の人材が足りない。特に、この事業を仕組みますのは都道府県でございますから、都道府県全域において、どこかで使っていただくための人材プールとしてやっていきたいという御要請、そういうことも受けまして、特定の市町村なりあるいは都道府県に直接に研修に入る段階で属するということではなくて、法人が募集をしてそれで研修に参加するという形で、地域のいわゆる相談員としての人材プールと、あるいはその方が将来的にその地域の中のどこかで相談員としての就職が可能であるという就業支援というのを考えたことでございます。

 それで、先ほど二番目の御質問として、こういうことは要するに名をかりたやみ雇用ではないかという御指摘でございますけれども、一応、このシステムはあくまでも研修というふうに考えてございます。

 御案内のように、とりわけ相談員の業務は、先生方の方が現場のことをよく御存じだと思いますけれども、要するに、座学的に法律の知識とかそういうものだけを詰め込んでもほとんど役に立たなくて、消費者の方々がさまざまなことを言ってこられたのを現場でいろいろ判断されて、これは何法の問題になるのかとか、どこに相談したらいいのかということを判断していただかなきゃいけない。そういうことで、ぜひとも現場での実習を重視したような研修のカリキュラムというのを自治体の方々と相談してつくっていきたいということで、そういうことにしております。

 三番目の御指摘として、そうした場合に、公務員でない方、そういう非常勤の方あるいは研修途中の方々が業務の近くに携わるということで、知り得た事実等について守秘義務等とかそういうことに関しての問題があるのではないかということなんでございますが、ここのところは、常に研修というものが携わってくるところで一番難しく、問題になるところだと思います。

 例えば医師のいわゆる研修医に関しても、それぞれの方に何かあったときには指導医が責任を持つということになろうかと思いますけれども、同様に、こうした場合にも、この方々はあくまでも研修でございますので、現場でそれを指導される方々の責任と、それから、地方自治体ごとに、例えば個人情報保護に関してどこまで守るべきかということについて条例等によってそれぞれ違いますので、具体的に現場の御判断でそこのところはぜひともやっていただきたいと考えているところでございます。

田島(一)委員 現場の判断で本当にいいんですね、それは。では、いわゆる非常勤の職員が研修に出ますよと、そのかわりにこの民間人研修生が窓口に入るということがあり得るわけですね。これは本当に、その自治体にお任せをしていてうまくいくのかどうか。もっと見方を変えれば、この仕組み自体が大変うさん臭いなというふうに私は思ったわけであります。

 例えば、労働という観点からすると、労働者派遣法に違反するんじゃないかなというおそれも私は思いましたし、財政上の問題からすると、補助金適正化法にもひっかかるんじゃないかな。

 もっと言えば、総務省がいらっしゃるので、せっかくですからぜひお尋ねをしたいんですけれども、地方公務員法上、問題は果たしてないのかどうか、自治体のやり方として本当に妥当なのか、適法なのかどうか。つまり、民間人の研修生を自治体の役職者が指揮監督をして働かせて、自治体から支出した財源が法人を迂回して研修生に日当が支払われるという仕組みなんですね。

 これは、自治体財政の今日までの法治主義とか公務員給与の条例主義だとかにひっかかるんじゃないかと私は思うんですが、大臣、来はったばかりで申しわけないんですけれども、おわかりいただけたら答弁いただけませんか。

鳩山国務大臣 今戻ったばかりであれですが、多分御質問は、例えば消費生活相談員に将来なっていただけるような方の研修ということで、実地研修の場をつくる。そこで実際、研修を受託する法人を経由するケースが多いのかとは思いますが、そうした中で、実習中にいろいろと知り得ることがある、こういうことでございますね。

 そういうことに関して、いわゆるまだ公務員になっていない人を実地研修として職場での体験をさせること自体について、地方公務員法上には特段の規制はないというふうに考えております。インターンシップだとか教員実習とかそういうのも、ある意味では似たような形なのかなと。

 ただし、受け入れに当たっては、実習中に知り得た秘密の保持とか事故に備えた保険加入、そういう適切な配慮は求められるものであって、各自治体には個人情報の保護条例もあると思いますから、そうした内容等も踏まえていってもらわなければ困るわけでございまして、今後、どういう対応が必要なのか、内閣府とも詰めていかなければならないと考えております。

 なお、補助金適正化法上の判断は、逃げるわけではないんですが、総務省としては非常にコメントしにくいことでございまして、内閣府から答えてもらった方がいいと思います。

田島(一)委員 もちろん、それぞれの担当するところがありますから、総務大臣にそこまで尋ねるつもりもありません。

 しかし、お答え一つ聞いていても、やはり相当無理があるんですね、今回。しかも、養成事業の研修を修了された方が、お医者さんのインターンであるとか学校の先生の教生のような形で入られたのと同じように、では、研修修了した人がきちっと就職する先があるのかどうかといえば、残念なことに相談員の増員ができない、いわゆる人材養成をしても意味がないということにまでなってしまいます。もちろん、この方々が正規職員にでもなっていくのだったらばまだいいんですけれども、残念ながら、総務省の方では、公務員の数は縛りがある中で、正規職員に登用するケースというのは本当にごく一握りであります。

 こういう状況を考えていくと、研修をやって日当を払っていても、法律的にも問題がある、また将来的にもいろいろな不安がある中で、果たして、三年だけ、とにかく人を入れてふやしましょうとやっていって、これから先がきちっとやっていけるのかなというふうに心配するんですが、この点についても議論は多分尽きないと思うんですけれども、時間もなくなってまいりました、最後に一点、私、これはどう考えても地方の自治事務として扱うにはおかしいんじゃないかと思う、現場のPIO―NETに関してお尋ねをさせてください。

 情報一元化をしていこうということで、PIO―NET自体は必要な主要ツールだというふうに考えておりますけれども、現場の相談員さんに聞くと、かなりこの入力事務というのは負担になっていらっしゃるように聞いています。内閣府が国センの方にお金を出して、リースした端末を置いていらっしゃる。相談内容を要約して、キーワードであるとか分類項目をつけて入力していくんだけれども、これが相当膨大な時間がかかっています。

 膨大な時間がかかるということは、人件費がかかるということであります。PIO―NETシステム自体は、国が苦情情報を吸い上げて集約する情報一元化が目的であり、スタートしたわけでありますから、本来この入力事務というのは、自治事務ではなく、国がやらなきゃいけない、国が入力の人件費を一〇〇%負担しなければならないものではないのかというふうに私は思うんですけれども、野田大臣、どのようにお考えですか。

野田国務大臣 PIO―NETは、御指摘のとおり、集められた情報を、地方公共団体を含めた行政機関が消費者政策の企画立案や法執行等に活用するといった性格に加えて、消費生活相談員が全国的な相談情報の現況把握や類似事例の検索など、相談業務そのものへ活用しているという、二つの性格、むしろ後者の方がこれまで随分利用されてきたと思います。

 そういうPIO―NETの役割にかんがみて、現在、PIO―NETの設置に係る経費は国が手当てをしております。そして、国民生活センターより地方公共団体に対して同端末を無償で貸与している一方で、苦情相談情報の同端末への入力については地方自治体で手当てをしていただいているわけです。

 その際、PIO―NETシステムへの苦情相談情報の入力については相談業務と一体として行われていることから、入力に係る相談員の報酬そのものについては支援の対象とはしておりませんが、国においては消費者行政に係る地方交付税措置を拡充することとしておりまして、これを踏まえて、地方公共団体では適切に予算措置をしていただきたいと考えています。

田島(一)委員 このPIO―NETの入力業務はかなり高度な知識等々を要求されるんですけれども、では、国が一括してこのPIO―NETの入力に関する研修だとかというのをやられたことはありますか。参考人で結構です。

田中政府参考人 ただいままでは、国というか国民生活センターが、入力のさまざまなマニュアルが改定されたりいたしますので、それに関しての説明会という形で行ってございます。

田島(一)委員 分厚いマニュアルをぽんと渡して、さあ入れてくださいよというようなものでは本来ないはずです。ましてや、お願いしているのはやはり国でありまして、入力すること自体も大変大きなウエートを占めている状況にあります。この入力事務、ほとんど国がお願いしている、いわゆる委任事務みたいなものですから、本来は、国がやはりこの入力に関する人件費を持たなきゃいけないと私は思うんですね。

 やはり、この点についても今後ぜひ見直しを含めて前向きな検討をしていかないと、もうPIO―NETをやめますという自治体もこれからどんどん出てくるかもしれません。そうなっていったときに、では果たして統一した情報の一元化が本当に図れるのかどうかという、今、危機的な状況にまであるんですよ。そこのところをぜひ御認識いただくことを心からお願い申し上げて、時間が参りました、質問を終わります。

船田委員長 次に、枝野幸男君。

枝野委員 まず総務大臣に、これは細かくは通告しておりませんが、すぐおわかりだと思いますので確認をさせていただきたいと思います。

 この間問題になっている普通地方交付税については、基準はいろいろあるけれども、使い方は地方自治体に任されている、これは間違いありませんね。

鳩山国務大臣 そのように、地方の自主財源と認識いたしております。

枝野委員 それから、これは予算委員会でも総務大臣等がいろいろ答弁されているのを聞いておりますので、確認ですし、大臣わかっていらっしゃると思いますが、現在の経済情勢下における地方税の税収見込みであるとか、地方交付税交付金の財源になる地方交付税の税収見込みなどを考えると、地方が具体的に自由に使える一般財源が伸びる、そういう経済状況であるとか税収状況ではない、これも間違いないですね。

鳩山国務大臣 平成二十一年度の地財計画をつくる上でも、こういう経済情勢でございますから、また地方交付税の原資である国税五税が減額補正を余儀なくされるような状況があったものですから、これはさまざまな加算をして、また総理が最後に一兆円の特別加算をして、何とか前年度より四千百億多いという形には持ってくることができましたが、これから入る地方税の状況とか、あるいはことしの国税、地方交付税の原資となる国税の状況等は、極めて厳しいものがあると認識いたしております。

枝野委員 ということですから、地方の相談員の皆さんの財源に充てられる、そのための財源は、全体としてふえない状況の中、つまり、そこに充て得る一般財源が全体としてふえない中で、なおかつ使途が自由なんですから、前回の質問でも申し上げましたとおり、銚子市などが問題になっていますが、医療すら切らざるを得ないという地方財政の中で、幾ら国が笛吹けど、それは、地方を我々は懐疑的に思っているんじゃなくて、地方の財政状況を考えたら、自分が例えば地方の知事や市長だったとしても、国から幾ら消費者行政が重要だと言われてもなかなかそこに財源を回すことはできない、こういう状況であるということを前提とさせていただいた上で、具体的な質問をさせていただきます。

 では、地方の自治事務で仕方がないというか、例えばそれが正しいんだとした場合に、国が地方公共団体の人件費を使途限定で、そこの人件費に充てなさいという形で交付をしている例はありますか。

鳩山国務大臣 地方財政措置を講じて人件費に対して支払っている例としては、典型的なのは、先ほど申し上げましたように義務教育教職員の国庫負担制度というのがございます。それ以外に、試験研究機関などで開発した技術を農業者に普及させるため、都道府県の普及指導員の設置に必要な経費を支出する協同農業普及事業交付金、これは交付金でございます。あとは林業普及指導事業交付金。

 ですから、義務教育の場合は、負担金という補助金で、昔二分の一、今は三分の一、残りは一般財源の方で、いわゆる一般的な基準財政需要の方に積むという形になっております。

枝野委員 義務教育は、三分の一使途限定ですが、ほかは交付税では使途限定されませんよね。いいですね、うなずいておられる。

 では、義務教育の教員について国がお金を支出している仕組みについて、簡単に、大枠だけで結構ですから、文部科学省、お答えください。

松野副大臣 公立義務教育諸学校の教職員の給与費につきましては、都道府県が負担をしております。国は、義務教育費国庫負担法に基づき、その三分の一を負担しております。

枝野委員 国家公安委員会は副大臣がいないので、警察庁の政府参考人やむなしということできょうお呼びをしておりますが、警察官の定員について、私も埼玉県知事上田さんから何度も、警察官をふやさなきゃならないので国の方で頑張ってくれと言われているんですが、警察は自治事務なんですけれども、警察官の定員を地方の都道府県知事が国で何とかしてくれと言っている、この仕組み、どういうことになっているんですか。警察庁、お願いします。

金高政府参考人 地方警察官の定員につきましては、国の立場から見て、各都道府県の治安体制を維持するため必要最小限の基準を設けるという趣旨で、警察法五十七条二項に基づきまして、政令で基準を定め、その基準に従って都道府県で条例で定数を定める、こういう形になっております。

枝野委員 念のため、もう一回確認しますが、今の教員も警察も自治事務でいいですよね、総務大臣。

鳩山国務大臣 自治事務でございます。

枝野委員 もう一点確認を、野田大臣に。

 消費者行政充実のために地方の消費生活相談員の数と待遇を強化しなければならない、その大臣の決意、間違いないですね。

野田国務大臣 おっしゃるとおりです。

枝野委員 ずっと、自治事務については国が使途限定で金を出すことはできない、これは大原則です。私も理念的にはそうあるべきだと思います。理念的にそうあるべきだと思いますが、しかし、地方の消費生活相談員の皆さんの数と待遇を何とかしなければならないという状況の中で、現に出せるじゃないですか。あるいは、現に地方自治体に事実上義務づけることができるじゃないですか。

 やり方として、一つは、義務教育費のように法律をつくって、国から消費生活相談員の人件費について直接交付をする、こういう法律をつくるか、そうでなければ、警察官のように、地方の消費生活相談員の配置基準等について法律に基づいて政令で数を定めて、そのことで事実上地方に義務づけるか。どうしてやらないんですか。

野田国務大臣 消費者行政が極めて重要なこと、地方消費者行政を強くしていかなきゃいけないこと、さらにそこの最前線である相談員の方たちをしっかりはぐくんでいかなきゃならないことは、お互いに気持ちは同じだと思います。

 ただ、今のように、警察とか義務教育の教員とにわかに比較して、だから同じようにやれというのは、ちょっと乱暴な議論ではないか。

 というのは、そもそも今私たちが基金を設立しなきゃならなかった理由というのは、義務教育や警察において、全国津々浦々、北海道から沖縄まで警察官はいる、または教員がいるという中でそういう手当てがされているのと違って、まずそこも至っていない。相談員がいないところがたくさんある、ましてやその窓口もない、そういうところがあるから、まずは、そういう地方の行政のリーダーたる人たちがしっかりと、これからは消費者庁ができる、法律ができる、ゆえに、地方自治の大切な仕事の一つとして、ずっと後退で来ていた、人も財源も後退してきた消費者行政をもう一回見詰め直して、原点に戻っていただいて、頑張る強化期間というのをまずつくって、そしてスタートをしていただかなきゃならないのかと。

 その先々のことについては当然検討はしていきますけれども、今にわかに同じようなことをやれといっても、人もいません、場所もありません、それをどういうふうに手当てするかということを、この基金やいろいろな交付税なんかを使ってはぐくんでいく。第一歩をようやく迎えたのではないかと思っています。

枝野委員 人もいないとかそういう話というのは、倍増するんでしょう、百五十万を三百万に、地方交付税の基準を倍増するんでしょう。少なくとも、今地方で出している人たちに、処遇を倍増しましょうという話の基準で、スタートとしては十分な数じゃなかったとしても、十分な費用じゃなかったとしても、そういう基準でまずスタートの基準をつくって、それこそ段階的に上げていけばいいんですよ。

 それから、警察や教育とは違うとおっしゃいました。(野田国務大臣「違うとは言っていない」と呼ぶ)違うんです。何が違うかといったら、義務教育も警察も、スタートは、立ち上げは、国が金を出してやったんですよ、明治維新の後。何も地方にないところにつくり上げていく、あるいは地方が不十分、寺子屋はありましたからね。

 だけれども、全国津々浦々にきちっと義務教育や、明治維新の場合は初等教育です、初等教育や警察というシステムを成り立たせるためには、国が直接金を出していたんですよ。それをだんだんだんだんと、段階的に、例えば義務教育費についても、直接金を出すのは二分の一になり、三分の一になってきたわけですよ。それは、地方が充実してきたからそれは地方にお任せをしてもいいからという話なんです。

 今野田大臣もおっしゃられたとおり、窓口もないような自治体はたくさんあるし、地方の予算が半分に減っているという現実があるんですよ。そこに対して、本当に消費者行政を一元化して消費者対応しなきゃならないんだったら、地方をしっかりやらなきゃいけないと言うんだったら、野田大臣がそれを否定する理由はないじゃないですか。

 法律をつくっていきなりスタートから、我々だって、我が党の対案だって、将来的には相談員を一万人にしたいと上限をつくっていますけれども、スタートのところでそんなにできませんよ。現に今、相談をしているその人たちだって、例えば週に一遍だからやっていますという人もいるかもしれないから。だから、いきなり数を必要なだけ全部来年からやれだなどと言うつもりはありません。数については段階的でもいいです。

 でも、枠組みとして国が直接、例えば全額じゃなくても、半額でも三分の一でも、消費生活相談員は人口これぐらい当たり何人必要だ、それについての人件費の例えば三分の一は直接使途限定で交付する。これをやれば地方だって、厳しい中でも残り三分の二は出しましょうとか、そういう話になりますよ。

 今のように、一銭も出ないんですからね、見かけの計算上だけで地方が自由に使える。笑わないでください、人件費には一銭も使えないんですからね。恒常的人件費には一銭も使えない中で、やれやれと言うのは結構ですよ、やれやれと言うんだったら、地方に自由に使える金を、一般財源をふやしてやる、ふえている中で、そのふえた分はこっちにちゃんと回すだったらいいけれども、ふえない、むしろ苦しくなっている地方財政の中で、これは大事なんだからここの人件費にちゃんと回せだなんというのは、地方自治体に対して私は物すごい無責任だと思う。

 法律上の根拠に基づいて、自治事務だとしても国から金を出す、あるいは、先ほど私答弁しましたけれども、法定受託事務にすれば国から直接金を出しやすくなります。どうしてそういう知恵を考えないんですか。

野田国務大臣 明治以来という話がありましたけれども、今、私たちは平成の時代にあって、地方自治の取り組みというのは、正確に言えば平成十年に地方分権推進計画というのができているわけですけれども、それに基づいて、やはり自立した地方自治体をつくっていこうということで、政府を挙げて取り組んでいる一環だと思っています。

 私は、決して枝野議員と反目しているわけではありません。ただ、やはり地方自治の中で、地方にあって、国から言われたからやらなきゃいけない、そういうものではないはずだ。やはり地方に住む、とりわけ情報が届かない田舎ほどそういう被害に遭いやすいということは多くの国会議員もわかっているはずですけれども、そういうところで自発的に地方自治体が、自分たちの住民の福祉のためにこれはしっかりやらなきゃならない。

 例えば多重債務一つとっても、これは被害が多いわけですけれども、それがなければ生活保護を受ける必要もなかったという人たちはたくさんいたはずですね。そういうことを考えたときに、やはり地方自治がしっかり自覚を持って、消費者行政というのがまさに地方を守っていくんだ、育てていくんだ、そういう自立心を持っていただきたい。

 そのために決して何もしていないわけではなく、国としては、そのあかしとして、まずは今まで法律にも全く規定されていなかったそういう地方のお仕事をしっかりと法律で明記させていただいた上で、都道府県には必置義務をつけ、そして、当然カウンターパートとして、明治以来できていなかった、中央政府の中に消費者庁という消費者目線の行政組織をつくることで、今までのおくれを取り戻そうということで取り組んでいるわけであります。

 ただ、いろいろな取り扱いについては今政府部内でも一生懸命検討しているところで、ぎりぎりのところで何ができるかというのは、まさに検討を重ねていきたいという時点であります。

枝野委員 大臣、これはまさに大臣がリーダーシップを発揮して踏み込んでほしいんですよ。まさにそれができるような消費者担当大臣じゃなかったら、いてもしようがないんですよ。まさに、それはもう大臣おわかりだと思うんですね。できれば国から直接金を出したいと。出してあげた方が、それは地方は充実するんだから。

 その上で、地方の独自性とかいろいろなことについて、我々の案のように国家公務員にしちゃったら独自性をなかなか発揮しにくいという批判は一理ありますよ。だから、百歩譲って、これは百歩譲らないんだけれども、自治事務にするなら自治事務でもあり得る、そのかわり国が責任を持って金を出す。そんなもの、野田大臣が財務大臣と総務大臣をうんと言わせればできる話じゃないですか。

 総務大臣、いいでしょう。ぜひとも地方消費者行政充実のために、国が使途限定で地方の消費生活相談員の人件費を、全額じゃなくてもいいですよ、三分の一でも半分でも、それを持ちますと野田大臣が強く言われたら、総務省としては異論ないですよね。

鳩山国務大臣 いや、なかなか鋭い御質問ですね。

 私は、警察官のことを政令で定員を決めていくということは総務大臣になるまで知らなかった。つまり、これも自治事務で、一般財源でやっておるわけですから、これが警察官給与負担法として出しているわけじゃないから、もうちょっともやっとしたものだと思ったら、これは政令があるということで、でも自治体警察なのに、ああ、こういう仕組みになっているんだな、やはり治安とかそうしたことはそれだけの厳しさがあるんだなとか、こう思いました。

 ただ、実際問題として、総務大臣をやっていますと、ほとんどすべての県警というか地域の国会議員の方から、うちが少ないんだ、うちが少ないんだと、四十七全部からうちが特別に少ないんだと言われたら、どこをどうしたらいいのか全くわからなくなる、こういう経験をしました。

 確かに枝野委員がおっしゃっていることは一理あると思うのは、だから、警察官と同じぐらい必要なものに将来なっていくのかどうか、そういうふうに見きわめるような時代が来たら、そんな方法もあるだろうと思いますが、やはり、消費者問題というのはすごく多様で、地域によってまたいろいろ違うと思うし、地域に密着したことは地域でという地方分権の考え方で、私は、スタートはこんな今のような形でやるのがいいんだろう、こう思います。(発言する者あり)

枝野委員 総務大臣、今やじがあるわけですが、スタートは四十年前なんですよ、消費生活相談というのは。四十年前は、それこそよく例えが出るように、漬物の漬け方を教えてあげるとか、そういう相談については、まさに地方の地域事情に応じていろいろなことをやってきた、それが自治事務として発達してきた。それが、時代の変化とともに、まさに消費者被害みたいなものをどうやって救済するかという役割に大きく変わったんです。

 そして、恐らくこれは野田大臣も同意していただけると思うんですが、警察署が全国各地にちゃんとあるように、全国どこに住んでいても義務教育の学校にちゃんと通えるように、全国どこにいてもきちっとした消費生活相談を受けられる、消費者被害を受けたら駆け込める相談先がある、このことは、少なくとも、もう実は十年、二十年おくれぐらいで、この社会において必要だと私は思います。

 だから、それをちゃんと津々浦々に整備するために、私たちは、今の自治法とかの仕組みをクリアするのに国家公務員にしてしまえ、国の責任でやってしまえと。乱暴かもしれませんが、これが一番簡単ですよ。

 もしどうしても地方自治体の義務としてやるんだったら、法定受託というやり方もあるし、義務教育のような、金も出す、基準もつくる、法定するのもあるし、いや、地方交付税でちゃんと手当てしているんだから、地方に金は行っているんだと、それは我々は同意しませんが、でも一応そういうことになっているんだったら、それに基づいて基準を法定して、それ以上の相談員を配置しないのはだめだということを地方自治体に義務づける。これぐらいのことをやらないと、今の地方財政の状況では、仮に私が首長だってやりませんよ。

 私は、野田さん御承知のとおり、十六年間一緒に、男女共同参画と周産期医療と消費者問題、党は違ってもほぼ一緒にやってきた。でも、今の地方の財政状況の中では、医療をやらなきゃならないもの、介護をやらなきゃならないもの、保育所をやらなきゃならないものという中で、全体としての収入は減るんだから、ふやしたくたってふやせないじゃないですか。

 現に、これは野田大臣もよくおわかりだと思いますけれども、自治事務で地方自治体に義務を課しても、数を義務づけていないから、保育所はいつになっても足りないじゃないですか。保育所はそうですね、自治事務ですよ。自治事務だけれども、保育所を必要としている子供がちゃんと保育所に入れるようにと地方自治体に義務づけているんですよ。だけれども、自治事務で財政的にも交付税措置しかないから、保育所はいつになっても足らないじゃないですか。同じ状況に消費者問題をしていいんだと私は思わないし、野田さんも思っていらっしゃらないと思うんです。

 だから、野田大臣が、まさに強く、これは人件費で直接金を出せるように、総務省も財務省も金を出せということを外に向かって発信していただきたいんです。どうですか、野田大臣。

野田国務大臣 たしか、この委員会が始まったやさきに、そういうような話がありました。

 シンプルに考えれば幾らでもお金はあった方がいい、それはだれもが思いますが、ここが民主党、小宮山さんと私の違いだったんだけれども、民主党の場合は、政権交代すれば予算のつけかえとかをやって幾ら幾ら兆円お金が出るので、そこから支払うことができますということをおっしゃった。

 しかし、私は、今現実の政府の中にいて限られた財源しかないことはわかっていて、今いみじくも枝野さんおっしゃったように、保育園にもつけなきゃいけない、介護にもつけなきゃいけない、さまざまな問題の中で、財源が非常にシビアだという中で、ぎりぎりここまで、消費者庁の出発のために使える基金の手当てなり交付税の措置が辛うじてできたかな、そういう思いがいっぱいあるわけですね。

 ですから、一番大切なことは、やはり景気の回復とか経済がしっかり正常化することである、税収がちゃんとふえることであるけれども、今やはり一日も早く消費者庁をつくり、そして少しでも地方消費者行政というのを促進し、相談員を育てていくということであれば、今の私たちのできる限界を私は今皆さんにお示ししているところだと思っております。

枝野委員 現実に地方で何が起きているのかといえば、これは野田大臣もおわかりのとおり、消費生活相談員の皆さんの処遇、待遇のところで、この人たちのボランタリー精神で今支えられているんですよ。それは否定されませんよね。

 その状況を、せっかく国で立派な消費者庁ができて、局長ポストはふえるんじゃないですか、高級官僚の。そういうところには金がつくんだけれども、私たちのところには来ないのかと。おかしいじゃないですか。ボランタリーに現場を支えてきた人たちにこそ先に金をつけるべきじゃないですか。それが具体的に見えるようにいくべきじゃないですか。そこのところが、残念ながら、地方の自治体に頑張ってもらいます、金全体がないんだからしようがない、金全体がないんだから、ない金の中でやりなさいと。いみじくも、ちょっと揚げ足をとるようで申しわけないんだけれども、今大臣が言っちゃっているようなものなんですよ。

 やはりここは、消費者行政の司令塔として、今まで立ちおくれてきた消費者行政をしっかりと位置づけるということがこの両案の趣旨だとすれば、その担当大臣である野田大臣が、よくわかります、全体の財政状況が厳しくて、ほかの役所のあの財源を削ればこっちへ持ってこられるじゃないかというのは慣習的にやってきていないんだから、そんなことやりにくいわというのはよくわかりますが、でも、消費者行政の司令塔である野田大臣が、いや、こういう消費生活センターの実情なんだから、それはそこに金をつけなきゃならないと。

 スタートは、全体の財政状況が厳しいから、うちの案の言っているような一千億だなんてつけられないかもしれない。でも、百億とか二百億とか言っているんだから、百億でも二百億でも、それが人件費に流れるような枠組みをつくっておく、その中でふやせるものはふやしていく、これぐらいのことはおやりになるべきじゃないですか。どうですか。

野田国務大臣 いみじくも今枝野議員の方から、ボランタリーだったと。それが、今度、消費者庁の関連三法ができて法律できちっと位置づけられるということは、ボランタリーだった相談員がプロフェッショナルとして国民からは高い専門性を要求されることになるわけですね。ですから、そのためにまず、今頑張っていただいている相談員の方々のやはり一つの問題は、お金を削られて研修が受けられない、旅費が出ないんだと。そんなような話、現実の話からまずしっかりと埋めていこうということで積み上げてきたのが基金の考え方だったと思います。

 何度も繰り返しになりますが、人件費については全く議論もなされなかったわけですけれども、今総務大臣のもとで、ようやく交付税の中できちっと先ほど来位置づけてこられたということだけは、私自身は総務大臣にも感謝いたしますし、これからもっともっとステーブルなものになって、消費者相談員というのは、まさにボランタリーでやっている相談窓口ではなく、やはり消費者被害のスペシャリストとして位置づけていくために、まず、今いる相談員の皆さんが一番不安なのは、それに見合うだけの研修を受けてこられなかったという事実がございましたから、それに関してはきちっと国の方で手当てをして、それに見合う支給はさせていただく。

 なおかつ、処遇改善をしたからといって、いきなり人をふやすわけにもいきません。ただ人をふやせばいいわけじゃなくて、そもそも専門性が求められるわけですから、国民の被害者から。そのときに、人はいるけれども話にならないじゃ困るわけで、そういった意味を踏まえて、やはりこの基金というのを三年間しっかり活用することが一番大事ではないか。

 そういうボランタリーからスペシャリストへの移行期間だと思えば、まずその必要となるお金はそこにつけさせていただいて、自腹で払っていた旅費とか研修に伴うさまざまなそういうものについては、私たちの方で必ずきちっと面倒を見るということでスタートを切らせていただきたいなと思っています。

枝野委員 ボランタリーは変わらないんですよ。だって、つまり、やっている仕事の内容や求められる能力に比して、圧倒的に低い報酬で、圧倒的に不安定な状況で、一生懸命現場の皆さんの多くは、こういうのが全部とは言いませんよ、多くはなさっているわけですよ。

 しかし、そうした中で、今の自治事務の位置づけだとすると、地方各地で起こっている雇いどめの問題をどうなるんですか。地方自治体では、特別職の非常勤公務員について横並びのルールがあるから、消費生活相談員だけ五年も十年もというわけにいかないんです、ほかの特別職の非常勤が全部三年なんだから三年で切ります、ごめんなさいねというようなところがたくさんあるじゃないですか。それから、現に、ここ数年は数をふやすどころではなくて、いる相談員にやめていただくとか、出勤日数を減らしていただくとかということをやってきているじゃないですか。その状況を改善するためには、消費者庁が位置づけられて、消費者安全法に消費生活センターが位置づけられるだけでは現場は変わらないんですよ。

 そこに対して、おっしゃることはよくわかります。現に、今の国の財政状況と財務省などとの力関係では、いきなり全国に必要な数を配置して、今の相談員の皆さんの、例えば、常勤を希望する人全部を常勤にしてそのための財源をいきなり来年からつけろと言われたって、そんな予算はとれませんとおっしゃりたいのはよくわかります。

 でも、せめて枠組みをつくっておかなければ、その枠組みの中で、例えば、現に、頑張って一応百五十兆ですか、地方交付税交付金の枠をとったんでしょう。それを地方交付税じゃなくて特定使途で百五十兆のっけたらいいじゃないですかと言うと、のっけられないですね。(発言する者あり)百五十億、ごめんなさい。百五十兆つけたいけれどもね。百五十億を交付税から外してこっちに持ってこられればいいけれども、それもできないわけですね、現実に交付税のところに百五十億の金がないわけだから。

 だから、せめて五十億でも百億でも金額はともかくとして枠組みをつくって、そして、しっかりとした処遇、待遇ができる自治体からそれを交付していく。あるいは、その金を使って、それこそスタートのところは人を集めて研修というところからもあるかもしれない、スタートのところではまず窓口をつくるところから始めるかもしれない。あるいは、本当に地方の小さな町や村では、いわゆる相談員の皆さんを別途雇うのではなくて、現に今まで公務員でやっていた人をそれの専門家として養成する、そういうことでは野田大臣が繰り返しおっしゃってきている研修とかが役に立つんですが。

 しかし、現に相談をしている人たちが、この間、ボランタリーに、こんな安い報酬でこんな不安定だけれども、やりがいのある大事な仕事だからとやってきた人たちに、せめて、今すぐじゃないけれども、これからよくなっていくんだ、そのために国はちゃんと財源的手当てをしてくれているんだと。現場のその人たちと待遇などについて折衝、交渉をする市役所や県庁の総務だか人事だか財務の人も、いや、これから国から皆さんの人件費が来るようになるから、いきなり財源はとれていないから一気には上がらないけれども、ちゃんと処遇は上がっていきますよと説明ができるように、そのためには、やはり使途限定で金を出せる枠組みをつくるしかないじゃないですか。どうですか。

野田国務大臣 枝野議員とずっといろいろな政策をともにしてきて、ほとんど気持ちの上でシンクロしているので、そうやって冷静におっしゃればおっしゃるほど私も胸が痛くなってくるわけで、できる限りのことはやはりしっかりやっていきたいと思います。

 今申し上げられることは、これだけ長時間に及んだこの委員会の議論がありました、それを踏まえて、ぎりぎりのところでいろいろと検討させていただきたいな、そう思います。

枝野委員 残りの時間、ちょっと通告した趣旨と離れていって、若干揚げ足取りになって申しわけないんですけれども、実は、今のやりとりと野田大臣の立場というのが本当に消費者庁で機能するのかということを、今議論をしながら改めて思っているんですよ。

 なぜかといえば、これまでを思うとまさに大事なポイントなんですけれども、まさに野田大臣は、政府の一員として、閣僚の一員として、全体としての財政状況、それはもちろん我々野党だって考えていますけれども、我々以上に考えなきゃならない立場ですね。それから、他の省庁、例えば総務大臣は太っ腹だからいろいろやってくれるかもしれないけれども、例えば総務省なりと、少なくとも財務省とは、今の話なんかについては、そこと折り合いがつかなければ、やりますと言ったってやれないわけですね、野田大臣限りでは。

 そういう中で苦慮されて、野田大臣なりには努力していることを多とするんですけれども、多とするだけに、結局、内閣の内部に消費者庁ができたとしても、その消費者庁長官や、できた後の消費者担当大臣というのは、今この財源問題のところで野田大臣が苦慮しているのと同じ立場で、例えば、各省庁が所管している法律、各省庁が所管している業界との、そこの閣僚との間で、やはり苦慮せざるを得ないんじゃないですか。

 そのことを我々は危惧するし、現に、過去の、今の霞が関の状況や内閣の状況を見れば、例えば、大臣席で何か答弁をされるに当たっては、少なくとも、例えば今の財源問題なら、財務省と総務省の了解をとってからじゃなきゃ、野田大臣単独ではやりますとは言えないわけですよ。それと同じ構造が、消費者庁ができたときの消費者担当大臣と、例えば経済産業大臣や農林水産大臣との間でも、幾ら消費者担当大臣が内心ではやりたいと思っていても、それは、例えば共管なら共管の経済産業大臣、あるいは共管ですらない、こっちが法律を持っている、例えば旅行業法を持っている国土交通大臣がうんと言ってくれている、それか、内々しようがないなと言ってくれている状況じゃないと、やりますとは言いにくい、言えないという構造があるんじゃないですか。

 そのことについての危惧を我々は持っているから、内閣の内側では、もちろん、内閣の内側につくることも否定はしないけれども、内側だけではだめで、内閣の一員なんだから、やはりこっちの役所とこっちの役所とをうんと言わせてからじゃないと責任を持ったことは言えませんよねということを気にしなくていい立場でやらないといけないんじゃないか。これが我々の基本的な立ち位置なんです。どうですか。

野田国務大臣 今の財源の議論というのは、ちょっと違う次元だと私は思っているんですね。

 今、私たちは、消費者庁をつくるというプロセスにあって、これまで明治以来あった役所の中で、環境庁から数えると約四十年ぶりに新しい行政組織をつくる中で、肥大化しちゃいけないとか、簡素で効率的につくらなきゃいけないとか、さまざまな縛りがあって、その中で、苦労したり、努力、汗をかいてきて、中には、やはり引く場面もあったり押す場面もあったりするわけですが、この今の消費者庁をめぐる、またこれからの消費者行政を取り巻く財源の議論と、これから関連三法案が成立して消費者庁ができた暁の大臣というのは、明確に法律の中で権限が規定されているわけですから、それにのっとって、慎重的なことでやるわけにいかないんですね。違反や事故が起きたら、速やかに、やはりその権限を持って司令塔として即断していく。それはちゃんと法律で担保されているわけですから、これは、私であっても、枝野さんであっても、どなたであってもきちっとできるようなことをやはりこの関連法の中につくっておかなければだめだということで、それとこれとは全く立ち位置が違うということを御理解いただきたいと思います。

枝野委員 そうなのかな。司令塔が今ないからとか、ずっとこの間の答弁でもおっしゃってきているんですが、従来だって、庁という位置づけではなかったけれども、内閣府の中に国民生活局があって、消費者行政については内閣府の業務として、あるいは内閣府の長たる個別大臣としての内閣総理大臣の権限として入っていて、そこに基づいて、そこと内閣官房との共管で、事実上の共管で今度の法律もつくって、そして、平成二十一年度予算にも予算要求をしているんだから、これは多分、所管大臣としては内閣府の長たる内閣総理大臣だと思いますが、内閣総理大臣が予算要求をして、それでこの予算しかとれていない、あるいはこの枠組みしかとれていないんですよ。そこは、誤解を世の中に与えちゃいけませんよ。

 もちろん、局レベルにすぎないというのと、庁であるというのは世の中の受けとめは違うかもしれないけれども、庁、消費者庁になっても、予算要求するのは内閣府の長たる内閣総理大臣じゃないんですか。これは通告していないから、わからなかったらしようがないんだが、副大臣ならわかりますよね。そうでしょう。消費者庁になっても、今回の消費者庁ができる前の消費者庁予算の要求をしたのと同じ、内閣府の長たる内閣総理大臣なんですよ。

 そこのところは構造が一緒で、やはり、せっかくつくる、スタートのところで、まさに一番予算がとりやすいところで、枠組みがとりやすいところでがちっととれないのは、それは、財務省が簡単にうんと言わないのはわかりますよ。そんなもの、こんな財政が厳しい中で、そんなに百億も二百億も消費者行政で出せるかと財務省は言うでしょう。総務省だって、それは大臣は太っ腹かもしれないけれども、そのことで地方交付税の総額が減っちゃ困るし、総務省の予算が減っちゃ困るから、それはそう簡単にはいかないですよ。

 でも、その構造で、結局、内部調整に時間をかけていてもらっちゃ困るし、特に地方の消費者の声とか消費者団体の皆さんの期待にこたえるためには、そこで、ないそでは振れないですから、結果的には財源問題がありますけれども、少なくとも我々としては、例えば、予算はこれぐらい必要なんだということをもっと堂々と遠慮なく言えるようなポジションが必要だと思うし、あるいは、実際の権限行使に当たっては、業者に対する監督などに当たっては、経済産業大臣はいろいろごちゃごちゃ言っているけれども、消費者の視点から急いで経済産業省に権限行使してもらわなきゃ困るんだということを、役所間の事前調整なんかなしにやれる仕組みをつくっておかないと、逆に、でき上がった消費者庁が、長官や担当大臣が、経済産業大臣からむちゃ言うなと言われているからなかなかちょっと踏み込めないんだなんということがあったら、期待を裏切ることになるわけですよ。

 そのためには、消費者庁は消費者庁であってもいいかもしれないけれども、まさにそういうところに遠慮しないで、気を使わないで、これは経済産業省がやらなきゃいかぬだろうとか、農林水産省がやらないのはおかしいんだとか、そういうことを遠慮なく言える公的なポジションがどこかに存在しないと期待にこたえることはできないんじゃないか。私たちはこう考えているんです。大臣、どうですか。

野田国務大臣 私自身、今大臣を預かっていて、結構横暴な方なので、自分の範疇以外のこともやっているんじゃないかということをちょっと確認しなきゃいけなかったんですけれども、法律上は、私自身は各大臣に対して、今現在は勧告はできます。だけれども、措置要求というのはできないんです。今度の消費者安全法の十六条には、措置要求はできるということになっているので、今まさに御心配の点は不要だと思っております。

枝野委員 大臣、僕は制度論の話をしているんじゃないんですよ。現に、霞が関の中において、他の役所に対して別の役所が勧告をしてそれに従わせるというようなことをやるときに、少なくとも過去の例を見れば、事実上事前のすり合わせがなされるんですよ。それは、憲法上の独立機関である会計検査院ですら、会計検査院が何か霞が関に物を言うときは、事実上事前のすり合わせをしているわけですよ。こんなことは、まさに組織論の問題じゃなくて、実はあそこの会計検査院の検査官に霞が関のOBが行っているだなんというようなめちゃくちゃなことをやっているという人事の問題が大きいんだと思いますが、しかし、独立機関にしたとしても、実は人事とかに気をつけないと、事前のすり合わせをしてからしか外部監視は働かないんですよ。

 確かに法律上は強い権限を持っている形になったとしても、従来の霞が関の前例から考えれば、普通は、消費者庁と例えば何とか省の間でこういう措置要求をする、いや、そんなことはやめてくれ、勘弁してくれ、そんなものは応じられぬという話になったら、なかなか事実上出せない。出すときには、しようがない、出してもらったら、うちもやりたくないけれども、わかったと言うからというすり合わせができないと、実はなかなか動かないですね、過去の例からすると。

 では、そこを本当に乗り越えるだけの強い権限が法律上認められているかというと、強い権限が認められているわけではないというのが……(発言する者あり)いや、そのおっしゃっている措置要求というのは、まさに従来の内部におけるすり合わせをした上でないとやってきていませんね。人事院勧告はちょっと別種類ですけれども、会計検査院の検査ですら事実上のすり合わせがなされてきているということを乗り越える形になっていませんね。そこのところが、我々が、政府案では足りない、だから外につくらなきゃならないと言ってきている本質なんだということだけ申し上げて、時間が来ちゃいましたので、ぜひまたやりましょう。

 ありがとうございました。

船田委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 これまでから地方財政の問題については伺ってまいりましたけれども、きょうは総務大臣にも来ていただいておりますので、改めてこの問題について確認をしておきたいと思います。

 最初、総務省の政府参考人に伺っておきますが、地方財政法上は、自治事務について、補助金で恒常的人件費の支出をしてはならないとしている、そういう規定がありますか。

久保政府参考人 地方財政法では、例えば第十条第一項第一号には、義務教育職員の給与に要する経費を国が負担しておりますけれども、そういった規定もございますし、あるいはまた、明確に個々の人件費の規定ではございませんが、地方財政法の第十六条、奨励的補助ですね、これに基づいて幾つかの人件費を支出しているといった例はございます。

吉井委員 ですから、補助金で恒常的人件費を支出してはならないとする規定はないということですね。逆に、補助金で人件費に使ってもよいとしているものもあるということですから。

 では、その方の規定を、今若干触れられましたけれども、補助金で人件費に使ってもよろしいとするその規定について伺っておきたいと思います。

久保政府参考人 地方財政法の第十六条は、これは奨励的な補助金というふうに言っておりますが、「国は、その施策を行うため特別の必要があると認めるとき又は地方公共団体の財政上特別の必要があると認めるときに限り、当該地方公共団体に対して、補助金を交付することができる。」という規定がございます。

吉井委員 今は十六条の奨励的補助金の方ですね。

 恒常的に人件費に使ってもよろしいということですが、それとは別に、これは地財法九条の規定と、それを受けて十条以下のところででも、きちんと、補助金で人件費に使ってもよろしいという規定があるんではありませんか。

久保政府参考人 先ほど私は義務教育職員の人件費について申し上げましたが、これは地方財政法の第十条第一項第一号に「義務教育職員の給与に要する経費」ということで、それは国と地方公共団体相互の利害に関係があるということですから、国も一部を負担する、地方も一部を負担する、こういった規定になっておりまして、現実には、あの三位一体改革で、それまでは折半だったのでございますけれども、国が現在では三分の一負担をしているということになってございます。

吉井委員 これはもともと、地方分権改革の話、よく出てきますけれども、九八年の閣議決定された地方分権推進計画においても、経費負担と事務の分類は直接連動するものではない、このことをきちんとうたっていますね。

 それで、伺っておきたいのは、まず地財法九条で、第十条から十条の四までに規定する事務を行うために要する経費についてはこの限りではないということで、ですからこれは、地方が行うものであっても、法定受託事務だとか自治事務だとか余りそういうことにこだわることなく、自治事務であっても補助金で人件費に使ってもいいんだ、これは規定の中できちっとありますね。それを再度確認しておきます。

久保政府参考人 地方財政法には、自治事務であるとか法定受託事務であるといったような表現では分けておりませんが、御指摘のように、義務教育職員の給与、これは、義務教育は自治事務でございますので、当然、自治事務について給与費の一部を国が負担しているということになります。

吉井委員 えらい義務教育ばかりこだわってはるんですけれども、もっと広く、十条と十条の四までの間にはたくさんの規定があって、これはちゃんとやっていけるんだということをもともとうたっているわけですから。

 この問題というのは、私、ずっとこの間の議論を聞いていまして、発端となったのは、やはり野田大臣の答弁が、今回の補助金で人件費に充てるメニューがないのは、消費者行政は自治事務なので人件費は出せない、この発言が発端だと思うんですね。

 そういう発想でいくと、消費生活相談員を国家公務員にしないことには待遇改善など図れないということにもなってきますし、しかし、よくよく見れば、財政上の問題は、地方公務員であっても国家公務員であっても解決できるわけですよ。

 地方自治体には自治事務と法定受託事務がありますけれども、この自治事務か法定受託事務かという区別と財政の間には、自治事務はすべて地方の財源で賄わなければならないというふうな、そんな関係はないんですよ。それは、先ほども御紹介しました、九八年の閣議決定された地方分権推進計画のときから、そういうことはきちっとうたってきているわけですから。

 結局は、やはり政策的判断によって、地財法十条では、国が経費を負担する三つのメルクマールというのを挙げておりますけれども、これは、法令に基づいて実施しなきゃならないもの、国、地方公共団体相互の利害に関係があるもの、円滑な運営を期するため国が進んで経費を負担する必要があるものというふうに三つのメルクマールを挙げていますね。

 しかし、そのことをきちんと踏まえて、それに見合う政策判断を下すならば、実は財政の分野からの問題の解決もできるし、それから消費生活相談員の方の待遇改善だってできるということを、やはりこれはきちっとしなきゃいけない。それは政策判断なんだということを言っておかなきゃいけないと思うんです。

 せんだって、地方公聴会へ参りましたときに、野洲市の生水陳述人は、十年間の非常勤から正職員に昨年秋からなられて、例えばサラ金相談に乗る段階から、以前だったら相談に乗るところから始まるんですが、実はやはり公権力の行使という公務員の立場になると、さらに進んで、あらかじめ他の部局の人と図って、税金とか国保の滞納者、そういう人の実例に着目して、実はその人はサラ金に苦しんで滞納しているんだとか、早く実態を見出して、その実態に応じた対応ができると。

 だから、相談に来る人を待つんじゃなくて、逆に掘り起こしをやっていくことができるということが今やれるようになって、そのことによって、地方の税にしても国保にしても、徴収もよくなっていくわけですし、サラ金業者に苦しめられていた人の問題も解決できるし、場合によっては福祉の対応もできるし、やはりそういう点では非常勤から正職員になったということが非常に大事な意味を持っていたということを、お話を伺って、私も本当に大事だなというふうに思ったわけです。

 この委員会にも、三月二十七日の参考人質疑で、下谷内参考人の方から、私どもの相談員の処遇は非常に劣悪な状態でございます、昨年調査いたしました結果によりましても、ともかく仕事に見合った報酬が得られない、優秀な人材が逃げていってしまうという陳述をされておりました。

 大阪で消費者問題に長年かかわってこられた国府参考人の方からは、相談員の皆さんは、法律の勉強であったり、それから食品衛生の勉強であったり、非常に専門性の高い勉強をやっています、しかも、事業者とのあっせんをやらなきゃならないという人になると、非常に高いスキルが要求されてくるわけですというふうに述べておられました。

 私も、本当によく頑張っておられる相談員の方のお話をたくさん伺っているんですけれども、まさに専門家として働いておられると思うんですが、この待遇、処遇の方ですね、それにふさわしいものになっているのかどうか、野田大臣の認識を伺っておきたいと思います。

野田国務大臣 そもそもやはり、御指摘のとおり、私もこの大臣になってから飛び込んだ先々は地方の消費生活センターであり、今お話に出てきました生水相談員とか下谷内相談員とも、ざっくばらんに現状について大変厳しいんだということを聞いてきたところであります。

 ただ、さまざまな御意見があるという中で、私たちが国として考えていかなきゃならないことは、先ほども枝野議員とのやりとりの中にありましたけれども、これまではボランタリー的でも許されていた相談員のお仕事というのが、いわばキャリアのような形になってくるわけですね。消費者庁ができて、法律ができて、法律で位置づけることによって、単なる相談というよりも、やはりプロフェッショナルとして、あっせんもきちっとやってもらいたい、いろいろな対応に迅速に応じてもらいたいという国民のニーズが急速に高まると思うわけであります。そういうときに、やはり今の処遇を見ていると大変厳しいと。それは、私の知る限りでは全く同じ意見を持っています。

 ただ、唐突に人をふやす、お給料をふやすということでは、実は専門性への移行というのは解決できず、今まで数少ない方たちもボランタリーであったというのは、例えば研修に行く費用も自弁で払ってくださっていたりとか、旅費も全部自分で払っていたりということも半ば強制されていた、やはりそういうところをきちっと正して、しっかりと、すばらしい相談員、消費者の味方である相談員になってもらうための必要な経費というのはやはり国で、基金なりさまざまな形でバックアップしようということが、まずは最初にやるべきことではないか。

 そして、処遇改善につきましては、今ようやくこの委員会が始まったことによって、多くの国会議員はもちろんのこと、全国民の皆さんが、やはり表に出たことによって、大変だったんだなという実感を、相談員の人たちの苦労というのがマスコミを通じて順々に御理解いただけているのではないかと思います。やはりそういう新しい波をつくることによって、処遇改善に向けてのさまざまな努力はしていきたいと思っています。

吉井委員 雇いどめの問題も伺っておきたいところなんですが、時間が大分たってまいりましたので、人事院に次に伺っておきます。

 昨年八月二十六日、「一般職の職員の給与に関する法律第二十二条第二項の非常勤職員に対する給与について」という通知を出しておりますが、その中には「相当長期にわたって勤務する非常勤職員に対しては、期末手当に相当する給与を、勤務期間等を考慮の上支給するよう努めること。」とありますが、この通知を出した意味を簡潔に伺っておきます。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 非常勤職員に対する期末手当につきましては、昭和二十七年に給与法におきまして常勤職員に期末手当等が制度化されたことを踏まえまして、昭和二十八年に通達を発出して、相当長期にわたって常勤職員とほぼ同様の勤務を行っている者には、常勤職員との均衡を考慮して取り扱うようにという指導をしてきました。

 この経緯を踏まえて、今回の指針発出の際にも同様の取り扱いをするようにということを示したものでございます。

吉井委員 そういうことなんですが、恒常的に必要と考えられる業務を代替している人たちですね、現状の運用を見てみますと、本来の非常勤職員制度の趣旨に合わない面も見受けられるということについても報告の中でうたわれておりますが、長期にわたって勤めてこられた。

 これは両大臣に伺っておきたいんですけれども、野田大臣の場合に伺っておきたいのは、国民生活センターの相談員も、非常勤の、いわば準国家公務員として長期にわたって頑張ってきてはるんですね。この指摘に該当するのではないかと思うんです。

 それから、総務大臣に伺っておきたいのは、この人事院の指摘というのは、長期にわたって地方で恒常的な業務に携わってきた非常勤の地方公務員の場合にもやはり該当するのではないかと思うんですが、両大臣からこの点について伺っておきます。

野田国務大臣 国民生活センターについてお答え申し上げます。

 まさに働きやすい環境をつくるということが重要ですから、国民生活センターにおいても、相談員の待遇の改善を働きかけてまいりました。

 この四月から、相談員の給与日額を三割程度引き上げました。可能な限り待遇改善に努めています。例えば、日額一万一千五百円の方は一万五千円、一万五千五百円であった方は一万九千円に引き上げたとともに、通勤手当も、それまで上限があったんですが、それを廃止しまして全額実費支給というふうに手当てもして、限られた予算でありますけれども、期末手当というわけにはまいりませんが、できる限りの待遇改善は図ってきております。

鳩山国務大臣 いいことか悪いことかわかりませんが、地方公共団体の地方の公務員と国家公務員と、若干いろいろな仕組みが違っているわけですね。そのことが最近実は、地方の県会議員等からも、国会議員と同じような扱いにしろという要求はいろいろと皆さん方も聞いておられると思います。

 確かに、人事院の昨年八月の通知というのは、国の非常勤職員の場合でも、長くやっていれば、給与あるいはボーナス、こういうことを支給すべきだということなんだろうと解釈をしますが、地方自治法上は、地方公共団体の非常勤職員はそもそもが、給料と手当ではなくて、報酬と費用弁償という体系になっているわけでございます。この場合、考え方としては、常勤職員と異なるもの、つまり、任期を限って任用される者であって職務内容が常勤職員と大きく異なっているから、そういう理由づけになっているんだと思うんですね。

 ですから、そういう意味では、地方の非常勤職員には結局、報酬と費用弁償しか支給できなくて、給与そして期末手当は支給できない、こういうことになります。

 これはもう先生御承知と思いますが、地方独自の制度である任期付短時間勤務職員制度、これは、職務内容が常勤職員と同等というふうにみなされる、ただ任期があるのと短時間だ、こういうことで、しかし、この制度では給料や手当の支給は可能でございます。

 私は、消費生活相談員のイメージが私自身まだ完全に確立しておりませんが、この任期付短時間勤務職員という扱いで、給与やボーナスを支給するという方法は考えられるな、こういうふうに思っております。

吉井委員 これは、国府参考人が勤務年限について、大阪市では、非常勤職員で任期が一年、二回更新されますから、三年たったらその時点で更新しない、公務員の法制上、非常勤だと、先ほど大阪の例で言ったように、三年でやめざるを得ないという、雇いどめによって経験が生かされないということも指摘がありました。

 それから、非常勤で専門職の知識経験が蓄積して生かされるようにどうするかという問題もありますし、それから、今のような、同じ仕事をしながら、国民生活センターの方は準国家公務員と呼ぶべき人の待遇、少し昨年の人事院の通知文書に基づいて考えようというお考えは、においは感じましたけれども、総務大臣の方も、本当に地方で担っている人たちが簡単に雇いどめされて経験が生かされないとか、これもまずいし、それから、やはり処遇、待遇の面でも前進が図られるように、総務大臣としてもぜひ取り組んでいただきたいというふうに思うんです。何か手を挙げられましたが、いいですか。

 では、時間になりましたので、質問を終わります。

船田委員長 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森でございます。

 総務大臣に基本的なことをお伺いしたいと思うんですが、先ほど、消費生活相談員についてイメージがわかないというお話でした。地方の消費者行政そのものについてなかなかまだイメージが持ち切れていないのではないかと思いますが、いずれにしましても、この間この委員会の中でも、各委員の発言の中で、地方の消費者行政が惨たんたる状況になっているというお話がたくさん出されました。基金や地方支援事業などで、あるいは交付金で何とかしましょうとかいう話で、それなりに立て直そうという意思は十分感じられるんですが、しかし、いかにせん、これだけでは極めて不十分だというふうに思っているわけです。

 野田大臣はいつも、首長さんのやる気というような話が出てくるんですけれども、これはやる気だけではなかなか難しいということになっているんですが、その際、結局、なぜ地方の消費者行政がこれほど衰退といいますか後退をしてしまったのか、どこに原因があるのか。先日、神戸の地方公聴会で、和歌山県の知事さんは、すべて財政だ、財政だ、金がないんだということを一貫しておっしゃっておられましたが、鳩山大臣、この辺どんなふうにお考えなのか、最初にお聞きをしたいと思います。

鳩山国務大臣 衰退したのかどうかというのは、私また認識はそれほどはないんですけれども、先ほど消費生活相談員についてのイメージがわかないと申し上げた理由は、どういう方がなるのか、例えばすごい専門家がなるのか、あるいは弁護士さんがなるとかいろいろなケース、あるいは私は、生え抜きで正規職員として、常勤職員としてなさる方もこれからはふえていくべきではないか、そういうふうに考えるわけでございますが、いずれにいたしましても、特に市町村にまだこの法案では義務づけられておりません。また、市町村に義務づけるべきものかどうかわかりません。むしろある程度広域で、一部事務組合でやった方が効率的なのかなと思う部分もございます。

 そんなことでございますが、要は、地方税と地方交付税の合わさったものがいわゆる地方の自主財源でございまして、これが今のような非常に厳しい状況、これはやはり三位一体の、五兆一千億円も地方交付税を削った、四・七兆円の補助金を削りながら税源移譲は三兆円にとどまった、この影響が今の地方財政を襲っておるわけでございまして、そういった意味では、和歌山県知事がおっしゃったことは、一部は当たっているとは思います。

日森委員 そこで、消費者基本法の第三条というのがあるんですが、国の責務を決めておりまして、基本理念にのっとって消費者政策を推進する責務を国は有しているんだというふうに書いてあります。まさにそのとおりだと思いまして、確かに、自治事務にしろ法定受託事務にしろ、そこに国がきっちりと支援をしていくということはこの責務の中身に入っていると思いますし、そういう意味では、実際には地方で仕事をする、ここが拠点になっているわけですけれども、これはある意味では、国の仕事の一部を、一部というか大事な部分をそこでしっかり担っているんだという認識に立っていかなければいけないというふうに思います。

 そういう意味では、財政の話はちょっと重複しますので触れませんが、先ほどの枝野委員の話、吉井委員の話、全く同感でございまして、本当にこれをきちんとしておかないと実はできないというふうに思います。そこは省きます。

 ただ、その際、先日参考人として出席いただいた圓山先生が、消費者行政は、消防、病院、警察と並ぶ、国民生活の安全、安心の拠点としてのナショナルミニマムを保障するシステムだというふうにおっしゃっておりました。私もまさにそのとおりだと思うんです。安心、安全の拠点としてのナショナルミニマムである、そういう立場に立って消費者行政をお進めになるのか、まずその点をお伺いしたいと思います。

 時間がありませんから、ちょっと続けて言っちゃいますけれども、それは否定できないことだと思うんですね、いや、消費者行政はそうではないよということにはならないと思いますが、仮にそういうナショナルミニマムを保障するシステムであると位置づけるとするならば、これも何度も出ているんですが、枝野委員からも言われましたけれども、消防とか警察とかと同じように、事業指針であるとか、担当者数の基準であるとか、配置基準であるとかということを明確にして、きちんとサポートしていく必要があるんだ。それはあしたやれという話じゃありませんけれども、これ抜きに地方の消費者行政を発展させるというか充実させることはできないんじゃないかというふうに思うんですが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

鳩山国務大臣 確かに消費者行政は、消費者である国民が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる社会の実現に寄与することを目的としておると消費者安全法案第一条に書いてあるとおり、国民生活の安全、安心に欠くことのできない重要な分野だということはよくわかるわけでございます。

 ただ、私は、消費者行政は、非常にスケールの大きな問題も起きるかもしれませんけれども、やはり地域住民の声が自治体に届くこと、あるいは、自治体に消費生活センターでしたでしょうか、そういうのができておって、そういうところで相談をしていくということが非常に大事であって、地方自治として行うべきものだと私は考えているわけで、それはやはり身近な問題、身近な問題は身近な団体、すなわち、例えば市町村が行うというのが正しいのではないか。

 それは、先ほども御答弁申し上げましたが、事故米のときに福岡の農政事務所へ参りまして、それは皆さん一生懸命仕事はしているけれども、やはり国家公務員で、地元住民に被害が出るとかいうことについての危機意識は乏しいのではないかなというふうに思った点があるから、私は地方自治で行うのが正しいと思っております。とりわけ、国が一律の基準を設けるのではなくて、都道府県、市町村、国、すべてが連携をとっていけばいいんだろう、その中心に消費者庁あり、こういうふうに考えるわけでございます。

 ただ、私は先ほど枝野委員の御質問の中でもやはり若干感じ入るものがありましたのは、今先生がおっしゃった、消防、病院、警察に並ぶナショナルミニマム、安心の拠点であるということに将来なっていけば、警察と同じぐらいこれはもう絶対必要なものであるというふうなことになっていけば、それは警察と同じように人員について例えば政令で定めるというようなことも将来的にはあってもおかしくはないと思います。

増原副大臣 お答え申し上げます。

 地方消費者行政は、消費者の安全、安心を確保するために、地域住民である消費者の声に日々丁寧に耳を傾け、それに対応していく、これを基本としていると思います。そして、これは極めて重要な業務だというふうに思っております。

 これをナショナルミニマムという形、あるいは、先ほどはナショナルスタンダードというようなものもございましたけれども、そういう形でそれを示していくかどうか、これにつきましては、先ほど来大臣からもお話がありましたように、まだそれ以前の問題で、あちこちにでこぼこがあって、非常に薄いところがある、これをまずは引き上げていこうというところで基金などもつくっているところでございます。

 そういう意味で、将来そういったものにしていくかどうか、これは消費者事故等の発生状況もありましょう。また、地域によっては、都市部と田舎では相当違う。私が知っているところでは、町の消費生活センターができないものですから、町の総務の方がそういう相談に応じていらっしゃるというようなケースもあります。いろいろなケースがあるものですから、そこらあたりをしっかり見据えてこれから取り組んでまいりたいと思います。

日森委員 私の質問はそういう意味ではなくて、将来そういう条件ができれば位置づけるかもしれないということじゃなくて、両大臣が今現在の決意、哲学として、消費者行政というものをそういうナショナルミニマムのシステムなんだというふうに位置づける決意を持っておやりになるのかどうかということをお聞きしたわけで、それは当然お持ちだろう。であれば、むしろこういう配置基準だとか国が事業指針を出すとかいうようなことを早急に考えていただきたい。

 これはちょっと時間がありません。ちょっと枝野さんとの約束がありますので、そちらを優先させていただきたい。先週、宣言をしてしまったんですが、実は確認のための質問になってしまいます。枝野さんにというか、民主党提出者に御質問申し上げたいと思います。

 地方の相談員等の問題なんですが、仮に安定的な雇用とか人件費、適正な人員配置、こういうものが確保されるならば、これは非常勤の国家公務員、当面国家公務員にするとおっしゃっていたんですが、そうである必要はないのか、それとも、これは極めてユニバーサルな仕事であるから国家公務員でなければならないというふうにお考えになっているのかということについて、ちょっと時間がないのでまとめて聞いてしまいますが、改めて御意見を伺いたいと思っています。

 もう一つは、国家公務員として位置づけることによって、これは何か特別な意味があるのか。この間の議論の中で一定のお話を伺っていますが、改めて御意見を伺いたいと思います。

枝野議員 国家公務員とするといいますか、消費者権利院のもとにしっかりと位置づけて、権利官の権限を代行するというような立場にすることによって、相談、あっせんに対する実質的な効果、力は大きくなるだろうというふうに思っておりますが、やはり最優先なのは、相談員の皆さんの処遇、待遇、あるいは配置というところについて、現行の厳しい地方財政の状況のもとで現実的にこれを引き上げていくためには、国が財政的な負担をして、地方にしっかりと配置をし、待遇を引き上げなきゃいけないということでございます。

 先ほど来お話が出ておりますように、そのことがきちっと担保される、つまり法定受託でもいいでしょうし、あるいは国で基準をつくって、それに見合った人件費を使途限定で直接地方自治体に交付をするというやり方であっても、それがきちっと担保されるのであれば、私たちが国家公務員とした趣旨は大部分かなえられると思っておりますので、ぜひ、そこはきちっととらないと前に進まないぞということを、社民党さんや共産党さんも足並みをそろえて、押し切るために力を合わせていただければというふうに思います。

日森委員 ぜひ一緒に頑張りたいと思います。

 もう時間が全然なくなりましたけれども、ちょっと最後に、今の考え方だけで結構なんですが、市町村は大変なんですけれども、これから地方の消費生活センターなどを配置していく。都道府県は必置ですが、市町村は努力義務になっているんですけれども、いろいろな意見があります。全市町村に窓口をつくってとか、あるいは都道府県がサテライトをつくっていくとかいうやり方があるんですが、どんな形でこれを配置していきたいと思っていらっしゃるのか。現段階での、それは地方分権だから、お金はないけれども勝手にやってくださいということなのか、ちょっとそれだけお伺いしておきたいと思います。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 先日の参考人の御発言の中でも、例えばブロック単位で整備したらどうかという御意見もあったというふうに聞いておりますので、そうした御意見は非常に傾聴に値するものであるとは思います。ただし、現在、実情どうなっているかということですけれども、地域ごとにさまざまな手法で運営されてございます。

 例えば、市町村が中心となって消費生活センターを設置している県がございます。一例で言いますと、山口県の中には二十一、消費生活センターがあります。そのうち、県で運営しているのが一、市が十三、町が七ということで、これは市町村主導ということで運営されています。一方では、例えば岩手県。ここには十三のセンターがございますが、県が十二、市町村がやっているものは盛岡にある一つのみというようなことで、それぞれ地方で特色があります。それから、複数の県が、これは割と有名な例だそうでございますけれども、小田原、真鶴、箱根、湯河原といったところが連携して運営をしているということで、それぞれ、今までの歴史的な経緯の中で、地域の実情、連携の仕方等のいろいろな実情を踏まえて、お知恵を出されてございます。

 したがいまして、今直ちに何か国の方で一律の配置基準を定めるというのではなく、先ほどから大臣が言っておられますように、まだまだ相談員の養成が足りないということで、これを進めることを第一に、その底上げを図っていくところから始めたいと考えております。

日森委員 ありがとうございました。

船田委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 きょうは、各委員の先生方もやはり消費生活相談員の処遇の問題というのはどうしても注目されているところでありまして、私もまずそこから質問をさせていただきたいというふうに思います。

 相談員の九割が非常勤職員だということで、そういう意味での、年収も低い、所得が低いということもございます。地方自治体によっては、財政難、こういうことから職員の削減が進んでしまっている、職員全体の半数以上が非正規職員というところもあります。

 今回、相談員の待遇改善、これが一つの論点でございますけれども、非正規職員の中で相談員だけを突出して処遇を改善するということができないというような役所側の声も聞こえてくるわけです。この相談員の正規職員化というのをやはり進めていかないと、なかなか処遇改善、こういうものも進まないのではないかなというふうに思いますが、これはどういった対応を今後考えられていらっしゃるのか、まず野田大臣の答弁をお聞きしたいと思います。

野田国務大臣 私も数多くの相談員の方々とお目にかかる機会を得まして、まさに処遇、待遇の改善というのが非常に大切だということは議員と意見を同じくするところであります。

 先ほども雇いどめの話が出ましたけれども、一年ぐらいでころころかえる地方自治体があるという話でした。これはまさにお勉強不足というか、下谷内相談員から多分お話があったと思いますけれども、やはり五年で一人前と言われるぐらい業務の範囲が広いんですね。食品の安全から金融の問題とか、ありとあらゆる消費者被害相談が、窓口にいらしたり電話で受けなきゃいけないという中で、生半可な知識だけでは対応できないということ。

 そもそも、相談員の方がそういうレベルが高い人たちだという認識が、まだこの消費者行政がちゃんと進んでいない中、なかったんじゃないかということで、今後はこういう消費者庁の今の委員会の審議とかさまざまな表になった審議の中で、多くの人たちが相談員の人たちの技術の専門性の高さというのをもっともっと評価していただきたいなというふうに思っています。

 そんな中で、では、正規の職員として位置づけてほしいのかとか、フルタイムがいいのかとか、さまざまな意見があったことも確かです。そういう中で、私は、常勤、非常勤を問わないで、それぞれの相談員の人たちのニーズに応じた柔軟な就業形態と、それに見合う適切な待遇、処遇が必要なんだというふうに思っています。

 私自身は、先ほどから話があるように、ボランタリーであった位置から、スペシャリストとしての、やはり専門家としての位置づけを、しっかりと地方において位置づけていただくことが大切だということを強く主張していきたいとともに、地方公共団体においては、そういう相談員の方たちの要望を真摯に受けとめてほしいと思います。ですから、地域の実情に応じて、当然、正規職員化ということも含めて、相談員の雇用の安定を図っていただきたいということを考えております。

糸川委員 今の大臣の答弁を聞いていたら、やはり正規職員化をすることがさらに専門性を高めることにもつながると思いますし、恐らく、今五年で一人前とおっしゃられたのは、フルタイムで働いて五年で一人前という意味なのか、非正規職員で週一回で、それで五年たてば一人前というお考えなのか、それもわかりませんけれども、ただ、私が聞いている限りでは、フルタイムで働いて五年間たてば大体の知識が入ってくるということになっているんじゃないかなというふうに聞こえます。

 そうすると、ある程度の処遇、待遇というんでしょうか、こういうものをよくしていかないと、長いこと継続もできないでしょうし、早くにやめてしまう、早期退職してしまうということにもつながりかねない。人材の育成をしている中で、非常にもったいないのではないかなということを感じるわけですね。

 ですから、そういう意味で、もちろん、さまざまな仕事の形態を選ばれる方というのは、それは個人の自由でありますけれども、やはりなるべく正規職員として雇用していくことを考えられた方が適切ではないかなというふうに思っています。

 次に、これは総務大臣に御質問したいんですけれども、全国消費生活相談員協会の報告書によりますと、民間が運営しているセンターの相談員の方の半数以上が民間委託の弊害があるというふうに言っております。特に、指定管理者が変更となった場合の継続性の問題、それから、行政担当官との連携がうまくいかないということでセンサーとして機能しにくい、こういうような意見が述べられているわけです。

 北海道の民間団体、これはこの間視察もさせていただきました、長い歴史もあるということで、これは自治体によってさまざまな例もあると思いますけれども、今回、政府案において、消費生活センターは、消費者事故等を察知するセンサーとしての機能を期待されているわけでございます。行政との連携、情報の共有、こういう点から、自治体が直接運営する形というのが望ましいのではないかなというふうにも思うわけですけれども、総務大臣としてどのような御見解をお持ちでしょうか。

鳩山国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、消費者庁をつくるという大変重要なテーマで議論をしていただいて、そこで消費生活センターというのがあって相談員がいるということでございまして、大体、財政措置するときに、市町村ベースで二千六百人ということで計算している。二千六百人というのはどういうふうに配置されているのかなというイメージが、私、いまだにわいていない。つまり、消費生活センターのない市町村がかなり多いんだろう。圧倒的に多いのかもしれません。

 大体どれくらいの密度で消費生活センターというのが置かれるべきかという議論も、これから煮詰まっていくのかと思うわけで、私としては、ただ、消費者庁をつくって、そこからこれからきちんと行政をやっていくということであるならば、消費生活センターというのはまさに自治体の中にあるべきものだと。今まではいろいろ任意でしたけれども、これから法律上の存在になりますね。この法律上に基づく存在になりますから、すべて市町村の中にあるべきではないか、私はそういうイメージを持ってここに参りました。

糸川委員 やはり、自治体が直接運営して、それぞれの自治体、いろいろな考え方があると思いますので、そういうところに対応できるように消費者庁が連携をしながらやることが一番いいのかなというふうに思っています。

 きょうは、せっかく総務大臣がお見えですので、私は予算委員会等でも質問させていただいているんですけれども、地上デジタルテレビ、このことについて。きのうは、衆議院の議員会館でも、地デジの大使の方々がいらっしゃって、何かレクチャーをされていたようですけれども。

 二〇一一年の七月二十四日に地デジに移行される。これに伴って、受信機の更新ですとか、UHFのアンテナ、アダプター、こういうものが必要になるわけですね。地デジに絡む詐欺事件、こういうものも数多く発生しているわけでして、なぜ地上デジタル放送に移行するのかということで、この理解が一般の消費者に浸透しているとは言いがたいのかなというふうにも思うわけです。

 消費者保護の観点から、地デジ移行の問題に対して、総務大臣の認識、まずこれをお伺いしたいなというふうに思います。

鳩山国務大臣 地デジへの移行は、ハイビジョンの大変きれいな画像であるとか、いろいろなデータ放送が送られるとか、あるいは一チャンネルで幾つもの番組が見られるとかいうことがありますが、一番簡単に違いがわかるのは車の中に置くテレビでございます。私の自分の車はアナログのテレビでございまして、野球中継を見ますと、大体、投手が三人、バッター三人、球三個という画像でございますが、これがデジタルのものですと、全く家で見るのと同じように野球が見られるということ。でも、最大は電波の節約で、アナログからデジタルにテレビが移行した場合に、あいた電波をさまざまに利用するということなんだろうと思っております。

 したがって、これは国策で進めていくわけで、二〇一一年七月二十四日にアナログを停波するということになっておりますので、これで、それこそデジタル放送を楽しむことができないということが起きれば、これはまさに消費者の問題になるな、そういうふうに思っておりまして、これは今ありとあらゆる施策をやっております。

 実際、デジタル受信機の数は予定よりも上回るスピードでふえているんです。ところが、世帯別に見ますと、今ごろは五八%ぐらいに普及していなくちゃいけないのが四九・一%にとどまっている、こういうことなんです。NHK受信料全額免除世帯、二百六十万世帯にはチューナーを配付するということでございますし、テレビ受信者支援センター、デジサポというのを全都道府県につくりまして、ここできめ細かく相談を受けて、例えば、お宅はチューナーが必要です、お宅はアンテナを直しなさいというようなことをやっている。

 問題は共聴施設ですね。辺地の共聴施設、あるいはビル陰のいわゆる受信障害の共聴施設、それからマンションの共聴施設、私は技術的なことは余り詳しくないんですが、これは今までのアナログとかえなければいけないケースがかなりあるわけでございますので、これも一つ一つ、全部やっていかなければならない。また、CATVを利用してデジタル波を持ってこられるというケースについても、これは非常に有力な資産でございますから、支援の方法を考えなくちゃいけない。

 というようなことで、ありとあらゆる支援をしていく中で、できれば、今回の新しい経済対策を打ち上げるのであるならば、この地デジ移行推進の政策もぜひ取り入れてもらいたい、こう思っておりまして、この国策は二〇一一年七月二十四日に見事達成されるように頑張ってまいります。

糸川委員 大臣、確かにコマーシャルとかそういうところで、今、アナログから地デジにということでかなりコマーシャル等はやっているんですけれども、恐らく一般の消費者の皆さんというのはまだまだ全然わかっていないと思うんですね。テレビを新しいものにかえればデジタルが見られるというふうに思っていらっしゃる方もいらっしゃるでしょうし。これはアンテナもかえなきゃいけないですね。逆に、アンテナをかえれば地デジが見られるのかという方もいらっしゃるかもしれません。

 こういう中で、やはり今この委員会でも議論しているような、例えば悪質なリフォーム詐欺のような人たちも存在をしているわけですから、こうやって対応していかないとテレビが見られませんよなどとお年寄りの皆さんに言えば、ああそうなのかなと思って取り組んでしまうような被害もこれからふえるかもしれませんね。やはりこういうところに大臣がどういうふうに取り組まれるのか。二〇一一年七月二十四日、確かにそれは、地デジに移行されるのはわかるんですけれども、そういう消費者をどうやって保護するのか、守っていくのかということをお聞きしたいなと思っているんですけれども、どうでしょうか。

鳩山国務大臣 守っていくというのは、悪質な人が出てきた場合ですか。(糸川委員「そうです」と呼ぶ)

 これは、大体定額給付金でも定額給付金詐欺が予想されていろいろ手を打ってまいりましたが、地デジ詐欺が既にありまして、おたくのはこうだからといって、勝手に工事して高い金を取っていくというようなことがございます。とりわけお年寄りの方や立場の弱い方がわけもわからずお金を取られるというケースがふえておりますので、今、住民の方々の身近な存在として、民生委員とか児童委員の方々に、そうした方々に注意を喚起して回っていただくようにお願いをしているところでございます。

糸川委員 ぜひ、テレビのコマーシャルでも、例えば民生委員のこういう資格を持った、身分証を持った方が回ったときは、そういう相談に応じてもいいけれども、そうでないときはだめだとか、かなりセーフティーネットを広げていかないと、せっかく消費者庁をつくっても、つけ込むわけでしょう、結局イタチごっこになっていくというところもこの議論の中でもあるわけですから、先に消費者の皆さんに危険性を促すということが必要なんじゃないかなというふうに思っていますので、大臣、どうぞよろしくお願いいたします。

 終わります。

船田委員長 次回は、明九日木曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十三分散会

  〔本号(その一)参照〕

    ―――――――――――――

   派遣委員の北海道における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成二十一年四月六日(月)

二、場所

   ロイトン札幌

三、意見を聴取した問題

   消費者庁設置法案(第百七十回国会、内閣提出)、消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(第百七十回国会、内閣提出)、消費者安全法案(第百七十回国会、内閣提出)、消費者権利院法案(枝野幸男君外二名提出)及び消費者団体訴訟法案(小宮山洋子君外二名提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 船田  元君

       並木 正芳君 やまぎわ大志郎君

       泉  健太君   小川 淳也君

       仙谷 由人君   田名部匡代君

       桝屋 敬悟君   糸川 正晃君

 (2) 現地参加議員

       町村 信孝君

 (3) 意見陳述者

    北海道大学大学院法学研究科教授        池田 清治君

    札幌市市民まちづくり局市民生活部消費者センター所長         渡邉 三省君

    社団法人北海道消費者協会会長         橋本 智子君

    帯広市長        砂川 敏文君

 (4) その他の出席者

    内閣官房消費者行政一元

    化準備室長       松山 健士君

    内閣府国民生活局消費者企画課消費者行政推進室長           甘利 敏一君

     ――――◇―――――

    午後一時開議

船田座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院消費者問題に関する特別委員会派遣委員団団長の船田元でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつ申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、第百七十回国会、内閣提出、消費者庁設置法案、消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案及び消費者安全法案並びに枝野幸男君外二名提出、消費者権利院法案及び小宮山洋子君外二名提出、消費者団体訴訟法案の審査を行っているところでございます。

 本日は、各案の審査に当たり、国民各界各層の皆様から御意見を承るため、当札幌市におきましてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いいたします。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願い申し上げます。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。

 まず、派遣委員は、自由民主党のやまぎわ大志郎君、並木正芳君、民主党・無所属クラブの仙谷由人君、泉健太君、小川淳也君、田名部匡代君、公明党の桝屋敬悟君、国民新党・大地・無所属の会の糸川正晃君、以上でございます。

 なお、現地参加議員といたしまして、自由民主党の町村信孝君が出席されております。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 北海道大学大学院法学研究科教授池田清治君、札幌市市民まちづくり局市民生活部消費者センター所長渡邉三省君、社団法人北海道消費者協会会長橋本智子君、帯広市長砂川敏文君、以上四名の方々でございます。

 それでは、まず池田清治君に御意見をお述べいただきたいと存じます。

池田清治君 北海道大学の池田と申します。

 本日は、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございました。また、先生方には、お忙しい中、本当にお疲れさまでございます。

 私は、現場に身を置く者というよりも研究者ですけれども、今から二十年以上前に書きました最初の論文というのは消費者契約とも関連するものでございます。また二〇〇二年には、内閣府の研究会で、本日も取り上げることになります消費者団体訴訟について検討をさせていただきました。さらに二〇〇六年には、北大の法学部というのは研究活動が非常に活発なところでございまして、消費者法に関するシンポジウムを開きまして、さらに二〇〇七年には、日本私法学会という一番大きな学会で、消費者法も含んだ形のシンポジウムで報告をさせていただきまして、さらに、つい二カ月前の二月にも、消費者法に関するグローバルCOEという大きなプロジェクトのシンポジウムを開催した次第でございます。したがって、本日は、基本的にそのような研究者の立場からという意見になります。

 しかし他方で、二〇〇五年以来、私は北海道の消費生活審議会の委員を務めておりまして、〇七年からは会長をしております。現場の実情ということになりますと、渡邉さん、あるいは橋本さん、さらに砂川さんの方がよく御存じだと思いますけれども、この間の地方の窮状というものは著しいものがございますので、その点についても、全体的な枠組みについて少しだけ述べさせていただきたいと存じます。

 本日、レジュメといいますか、十五分ですので、A4一枚の資料をお配りさせていただきました。

 まず、「はじめに」ということなんですけれども、最初に基本的な立場を明確にしておきたいと思います。

 一研究者としてというよりも、一国民として消費者政策を一歩でも二歩でも前に進めていただきたいというのが率直なお願いでございます。消費者の権利とか利益を守ることを任務とする行政庁の存在というのは、それが消費者庁であれあるいは消費者権利院であれ、とにかく必要なものだと思っております。

 次に、消費者庁の構想と権利院の構想を拝読させていただきましたけれども、その相違というのは、政策の企画立案の機能と監視の機能、これのどちらに重点を置くのかということではないかと存じます。そして、そのどちらを重視した方が実効性が上がるのかという認識の違いに基づくように感じておりますけれども、しかしながら、政策の企画立案機能と監視機能というのは、これはいずれも必要な機能でございます。しかも、一つの組織で完全に実現可能という保証はございません。そうだとすると、消費者庁にある種の限界があったとしても、そのような機関はおよそ不要であるということにはならないと思いますし、権利院構想に何らかの問題点があったとしても、その組織に、あるいはそのような考え方、発想に一定の有用性があることは疑いがないのではないかと僕は思っております。

 ですので、問題点のみを指摘しちゃうという議論は、その意味では余り生産的ではないと思いますので、私は、きょうはそれぞれの機能ごとに、つまりレジュメで申しますと、2で企画・立案機能、それから3で監視・実効化機能というお話をさせていただいた上で、消費者団体訴訟についても今回の提出法案は触れられているところがありますので、4でそれを検討させていただき、5で地方における実効的な制度について少し意見を述べさせていただきたいと存じます。このような順番で話を進めさせていただきます。

 そこで、2でございますけれども、要するに、消費者政策の企画立案機能ということでございます。

 消費者政策の企画立案を目的とした省庁、つまり、自分の力で法律を立案して議会に提出することのできるような省庁があるということ、それ自体は望ましいことだと考えております。しかしながら、だからといって、別に権利院のような存在が不要であると言っているわけではございません。ですので、消費者庁という発想は実効的な消費者政策に資すると思うんですけれども、法案を読ませていただいた限り、私の理解不足かもしれませんけれども、なお改善すべき点が若干はあるのではないかと考えております。

 まず第一点目、1、2と書かせていただきましたけれども、まずは所管する法律が二十九しかない、その中でも、いわゆる共管が多いという点ですけれども、これらは先生方にはむしろ釈迦に説法だと思っております。

 残りの四十三はどうしたということなんですけれども、例えば、私が研究者として少し関連があります分野でも、金融商品販売法は共管になっておりますけれども、金融商品取引法は共管ですらないということになっています。もちろん、この区別に理由がないと言っているわけではありません。ありませんけれども、これらの法律は一体となって企画立案され、そして運用されていくべきものなのではないかと感じております。ですので、もちろん所管の法律をどうするかというのは慎重な検討が必要だろうと思いますものですから、今すぐにとは申しませんけれども、継続的に、そして前向きに御検討いただきたいと存じております。

 ところで、この第一点目を指摘いたしますと、すぐに反論が返ってきそうでございまして、そんな場合でも、所管の法律じゃなくても消費者政策委員会が意見具申できるではないか、こういうふうにおっしゃられるかもしれません。しかし、そもそも意見具申だけで十分だったら、それは権利院構想の勧告だけでも十分ではないか。要するに、所管する法律を持つということは、他人に指図をしているだけでは足りない、それでは遅くなってしまう、まさに自分の責任で国会に最終的には法案を提出する、そういう意味があるのではないか。もちろん、そこには限界があるのかもしれませんけれども、あるのではないかと思います。ですので、その点は、そこに矢印で「今後もさらに検討。」などと生意気なことを書かせていただきましたけれども、ぜひとも御検討をお願いしたいと存じます。

 二番目なんですけれども、まさにこれは意見具申にかかわる問題でございます。

 端的に申しまして、意見具申をした後は一体どうなるんだろうかということでございます。もちろん、誠実に対応されるでしょうし、対応が期待されるということなんでございましょうけれども、そういう保証というのはどこにもない。どこかにあるというわけでもございません。このような観点から権利院の構想の方を拝見いたしますと、すぐれた工夫がなされているように思います。

 それは具体的にどういうことかというと、期間を区切って回答義務を課すという点でございます。では、こういう制度づくりは別に消費者政策委員会制度においても可能ではないかと思うわけでございます。意見とその回答等を例えば消費者庁のホームページにできましたら載せて、国民に公表して風通しをよくする、国民に最終的に監視させる、そういう方法もあり得るのではないかと思う次第でございます。

 次に、3の「監視・実効化機能」と書かせていただきました。そちらに移らせていただきます。

 消費者権利院という発想でございますけれども、監視を通じまして政策の実効性を上げようとする権利院の構想には、さすがにいろいろな工夫が施されていると私は感じました。ただ、権利院構想自体が、法律を所管する、あるいは総合的に消費者政策を考えていくという消費者庁構想そのものを否定するものなのかというと、どうも、必ずしもそうではないのではないかと思います。先ほども申し上げましたとおり、私は消費者庁というそういう存在は今すぐにでも必要な存在ではないかと考えておりますけれども、しかし、そうであるにしても、この権利院構想で示された知恵あるいは工夫というものは取り入れるべき点が多々あるのではないかと感じております。

 具体的に申します。これが(2)でございます。これは「消費者庁法案の要考慮点」ということでございます。

 まず、消費者庁の法案によると、消費者庁の長官は関係機関に協力を求めることができるとされているわけでございまして、できるんだから必ず回答があるだろうということはわからないわけでもないんですけれども、むしろ、そういう回答とか、例えば資料提供を求められたときにはちゃんと提供しなければならないと義務づけるような条文があってもいいのではないかと思います。

 それから、先ほども申し上げました意見具申と同じ趣旨からですけれども、例えば内閣総理大臣が措置要求をした、それについてどういう対応をしたのかということをきちんと公表していくということも大変大切なことなのではないか。もちろん、十分に対応すれば別に公表しなくたって大丈夫じゃないかというのはわからないわけではありませんけれども、国民への透明性を確保するという意味からも、そういう措置というのは重要ではないかと思っております。

 さらに三番目、3の(2)の3のところでございますけれども、「消費者政策委員会の機動性」という点を書かせていただきました。

 法案を見せていただく限り、消費者政策委員会には、重要基本事項の調査審議のみならず、意見具申の権限まで認められております。その意見の中には、ひょっとすると迅速性を要するような意見もあり得るのではないか。例えば、内閣総理大臣、これは今危ないから直ちに措置要求してくださいというような意見が考えられると思うんですけれども、しかし、そうであるとすると、非常勤の十五名から成る委員会ではなかなか小回りがきかない可能性もあるのではないかと思います。

 これは、決して十五人の委員会が悪いと言っているわけではございません。そうではなくて、中長期的な消費者政策を企画立案するというのであれば、従来の国生審と同様、このぐらいのサイズの委員会で議論するというのはいいとは思うんです。しかしながら、意見具申という、ある意味では監視機能とかかわりのあるそういうものであったとしますと、少なくとも十五名のうち数名は常勤として事務局と一緒になって汗をかいていく、恒常的に汗をかいていく、そういうタスクフォースみたいな、そういうことも考えられるのではないかと思います。あってほしいとは思いませんけれども、消費者庁ができ上がって、何か最初のことですから、若干機能不全が起こるかもしれません。そういうときに、消費者庁長官に物を直接言える委員会の存在というのは非常に重要ではないか、こういうふうに考えております。

 要するに、私の意図するところは、せっかく委員会をつくるんだったら、それを少しでもよりよい意味のあるものというのは考えられないのだろうかということでございます。

 以上は、要するに、既に、先生方はごらんになればわかるとおり、権利院構想で示された工夫をこういう形で生かす方法はないのだろうかという考えでございます。とりわけ、最初の情報提供の義務化とか、措置要求とそれに対する対応の公表というのは、財政的措置さえ別に必要がないはずのものでございますので、ぜひお考えをいただきたいと存じます。

 次に、消費者団体訴訟について述べさせていただきます。

 違法収益の剥奪を目指す法案が提出された、そのこと自体は大変重要だ考えておりますし、提出された先生方には敬意を表したいと思います。それから、政府から出されなかったことは、それはいろいろ検討し残った点があるとは存じますけれども、私としては非常に残念な思いをしております。

 また、出された法案を読ませていただく限り、実にさまざまな工夫がなされているように感じました。例えば、あらかじめ財産を差し押さえておく仮差し押さえ制度ですとか、あるいは分配して残った財産は国庫に入れるという点、その点がきれいであるという点は大変考慮されている。ほかにもいろいろあると思いますけれども、大変工夫されている点があるのではないかと思います。

 ただ、(2)でございますが、要考慮点と書かせていただきましたけれども、別にこのままの形でも特に問題はないのかなと思うんですが、まだまだ、改善しようと思えばその余地がないわけではない点があるのではないかと存じます。

 第一点目は、これはやや学問的になって恐縮なのですけれども、損害賠償というのと違法収益の剥奪というのは必ずしも同一ではございません。

 例えば、具体的に申しますと、百グラムのものを一キロと称して売っている場合、これは消費者には損害があって、その損害の額とほとんど同じ額が悪徳業者には利得がある、こういう形になるわけでございます。この場合は違法収益の剥奪と損害賠償とはイコールでありまして、このような事案を想定する限り、この法案は実によくできていると思います。これはどうしてそういうことが言えるかというと、損害がある種数量的、定型的だからでございます。しかしながら、例えば有毒物質を混入したような商品を食べて消費者が被害を受けた場合はどうかと申しますと、これは消費者には損害があります、しかしながら業者に利得があるとは限りません。しかも、損害自体に個人差が結構ある場合がございます。すなわち、定型的ではないということです。

 そうなりますと、こういう場合ももちろん団体訴訟を活用する方法はあると思うんですけれども、一々一人一人の損害額云々をやっていくのか、それとも、消費者が団体に望みたいのは、違法な行為だったんだ、過失もあったんだ、だから損害賠償の基礎となる要件はそろっているんだ、あとは、損害額は私の方で立証してやっていきますよ、こういう場合もあるのではないかと思いまして、このような事態に備えた規定もあるとなおいいかなと思うんですけれども、ただ、これがそもそもいい法制かどうかと聞かれると、なお慎重な検討が必要と思いますので、この点で、今回出された法案について何のかんのと言うつもりはございません。いろいろな事態に備えたものは検討を継続した方がいいのではないかという点です。

 二番目の、私が感じましたより深刻なと申しますか問題は、この法案によると、分配手続まで団体が行うことになっております。勘違いしないでいただきたいんですが、だから絶対だめだと言っているわけではありません。しかしながら、訴訟提起についてすら費用的に難しい消費者団体に果たして分配までさせられることができるんだろうか、実効性に乏しいのではないかという点でございます。もちろん、法案を読む限り、いろいろな支援が用意されております。しかしながら、それが本当に実現できるのかというと、さて、どうなのか、よくわからない点があります。

 この際、むしろ、取ったお金については訴訟費用を抜いた上で国庫に入れる、国庫に入れるというのは基本的にどういうことかというと、分配の手続は国に任せてしまう、国の費用でやってもらうという工夫の仕方もあるのではないかと思います。そんな根拠はあるのかと言われるかもしれませんけれども、例えば被害回復給付金制度、この場合については現に法務省がやっているはずでございます。これが二番目の問いかけでございます。

 三番目なんですけれども、これはこの法案とは関係がございません。ございませんが、こういう制度もなければいけないのではないかという提言でございます。

 要するに、違法収益の剥奪を団体訴訟だけで任せていってうまくいくのだろうか。現実問題として、団体ができるのはこれは象徴的な事件だけではないかと思います。いかに支援したとしても、費用も時間もかかります。ですので、この際、違法収益の剥奪を目指した課徴金制度のようなものを導入するべきではないかと考えております。

 これが消費者団体訴訟に関する点でございます。

 五番目でございます。地方における実効的な制度ということでございます。

 伺うところによると、消費生活相談員を国家公務員にするのか、地方に財政支援することでその待遇改善を図るのかという点で御議論が分かれているとのことでございますけれども、次の二点だけは確認をさせていただきたいと存じます。

 まず、相談する市民の側としては、すぐに相談に応じてもらえる体制、これが重要なのでありまして、相談員の皆さんがどういう身分であるのかというのは、極論をすれば余り関係のある話ではないということでございます。

 二番目なんですけれども、いずれの構想にも、不安といっては失礼なんですけれども、危惧感のようなものはあります。国家公務員化については、これで本当に地方の役所とかあるいは警察との連携がうまくいくのかという点がありますけれども、もちろん、中には周到にも連携を図るという規定があることは存じておりますけれども、うまくいくのかなという不安というか危惧感でございます。

 他方、地方に財政支援をすることで待遇改善と人員の増加を図るという政府の御方針だと思うんですけれども、では本当にそうなるんだろうかということがなかなかわからないところがございまして、地方交付税の積算の基準を変えても、総額に変化がなければ結局別のところにという話もあるのではないかと思います。ただし、この種のお話については、次の渡邉さん、あるいは橋本さん、砂川さん、こちらの方がお詳しいと思いますので、そちらにゆだねたいと存じます。

 最後に、「キーポイント」と書かせていただきました。

 キーポイントだけははっきりしていると思います。人材育成には時間がかかります。ですので、恒久的な予算措置が必要なのではないかと思います。結局は人、人件費であらなければいけないと思っております。もちろん、スキルアップのための予算というものは大事ですけれども、その対象となる人がいなくなったり、あるいは現状に余りにも失望して去っていくような形では意味がないと申しますか、大変残念な結果になるのではないかと思います。私は、審議会で、ある委員の方から、かなり前なんですけれども、その方は別に相談員をなさっていた方ではないんですけれども、これはもはや人権問題ですよ、こういうふうに言われたこともございました。

 また、そのような観点からしますと、最後のところの基金のお話なんでございますけれども、基金をどうも人件費には使えないというお話があるようでございますが、率直に疑問です。

 要するに、豊富なメニューを用意したということなんでしょうけれども、肝心のメニューがないと申しますか、それに、自治事務だ、地方のことなんだ、地方のことは地方に任せるんだとおっしゃるのであれば、せっかくの基金なんですから、このお金の使い方も地方に任せていただくわけにはいかないのだろうか。自治事務である以上、人件費に充てることができないという建前というか原則論はわからないわけではないんですけれども、何せ今は非常時だと思います。原則論だけでうまくいっていくという時期ではないのではないかと思いますので、先生方のお力で何とかお願いしたいということでございます。

 地方の窮状を伝えようとする余り、若干何か陳情まがいになってしまいまして、あるいは大変失礼な物言いがあったかもしれませんけれども、同じ百五十億円を使うんだったら、少しでも生きた形でという一心からでございますので、この点はどうか御了解をお願いできるならと存じます。

 本日は、重ねまして、このような機会を与えていただきましたことを心より感謝申し上げます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

船田座長 ありがとうございました。

 次に、渡邉三省君にお願いいたします。

渡邉三省君 ただいま紹介にあずかりました札幌市消費者センター所長の渡邉でございます。

 衆議院消費者問題に関する特別委員会がこのように地方公聴会の場を設けていただきまして、改めてお礼を申し上げたいと思います。

 福田前内閣の在任中に消費者行政活性化が進められ、このように与野党から出されました法案が審議されるということは、私ども消費者センターに勤務する者にとっても喜ばしいところでございます。

 二十年度第二次補正予算で措置されました地方消費者行政活性化交付金につきましては、後ほど詳細を申し上げたいと思っておりますが、地方にとっては消費者行政にかかわる貴重な財源でありますことから、効果的で有効な活用を考えていきたいと考えております。

 札幌市は、御承知のとおり、現在人口が約百九十万人ということで、北海道の人口の約三五%を占めるに至る大都市でございまして、十九年六月、消費者の権利の尊重と自立の支援を基本理念に据えました札幌市消費生活条例の全部改正を行いまして、昨年二月、施行したところでございます。

 この条例では、第十条におきまして、市長は消費者基本計画を策定しなければならないと規定しておりまして、札幌市消費生活審議会の答申を踏まえ、さらにパブリックコメントを経まして、昨年九月に、期間が五年の計画を策定したところでございます。また、巧妙化している悪質商法による消費者被害に対応できるよう、不当な取引につきましては、条例及び規則によりきめ細かに規定して、事業者指導に当たっているところでございます。

 消費者からの相談につきましては、この五年間、年間二万件程度で推移しておりますが、相談室に専門の相談員を十五名配置し、相談、苦情に対応するとともに、あっせんによる解決により消費者被害を救済しているところでございます。

 私の方からは、以下、札幌市消費者行政の現状と消費者センター・相談室の現状、地方消費者行政活性化交付金の三点に絞って意見を陳述したいと考えております。

 なお、皆様には、レジュメといいますか、消費生活条例のパンフレットと中身、それから、私どもが今高齢者向けに力を入れております高齢者消費者被害ネットワーク事業につきまして資料を配付しておりますので、これは後ほどごらんになっていただければなと思っております。

 まず第一点目の、札幌市消費者行政の現状についてでございます。

 札幌市では、昭和三十九年に消費生活相談窓口を設置し、当時、北海道消費者協会に業務委託いたしました。その後、昭和四十五年から現在に至るまで約四十年間にわたりまして、札幌消費者協会に相談業務を委託しておるところでございます。これは、消費者運動の高まりの中で、団体設立の機運が醸成されてきたという側面と、札幌市が協会と連携協力して消費者問題の解決に当たるという二つの側面があったものと思われます。

 この間、札幌市は、消費生活相談業務の円滑な実施のほか、消費者啓発や物価の調査も含め、消費者センターと受託団体でございます札幌消費者協会との間で連携協力を図りながら消費者行政を進めてまいりました。

 札幌市の消費者行政の予算額、事務職員数、相談件数についてでございますが、予算額及び職員数ともに縮小傾向にございまして、平成九年度と平成二十一年度の比較で申し上げますと、予算額は約三〇%減になっております。それから、職員数は四二%減ということで、ほぼ全国と同じような傾向を示しております。ただ一方では、相談件数は増加傾向にございまして、平成九年度と十九年度の比較でいきますと、一万八千九百六十六件という平成十九年度の相談件数でございますが、平成九年度に比較して二倍以上の数値になっております。

 最近の消費生活相談の特徴は、内容が複雑となり、解決までの一件当たりの時間を要する相談が増加してきているとともに、高齢化社会の進展に伴い、加齢による判断能力が低下した単身高齢者からの相談の増加等によりまして、消費生活相談体制の充実強化が求められております。このことは、二十年度に策定した消費者基本計画においても触れているところでございます。

 消費者基本計画の中では、優先的に取り組むべき重要事業として、皆様にお配りしております高齢消費者被害防止ネットワーク事業、あるいは若者向け消費者教育に関する環境整備、それから悪質商法追放モデル地区事業、あるいは消費者教育モデル実践事業など八事業を定めまして、これに取り組むことにより、消費者被害の防止に努めようとしているところでございます。

 実のところ、札幌市は指定都市でございますが、消費者行政につきましては、都道府県と比較しても決して大きな権限を有しているわけではございません。二〇〇〇年の地方分権一括法の施行とともに、家庭用品品質表示法と消費生活用製品安全法に基づく事務を北海道知事から権限移譲を受けておりますが、それ以外については、決して権限は大きくございません。消費生活条例を適切かつ効率的に執行するとともに、予算を伴う施策、事業についてはスクラップ・アンド・ビルドを行いながら、相談業務を初めとする消費者行政を効果的に実施しているところでございます。

 また、消費者基本計画に基づき、例えば家庭用電気製品関連事故に対しまして、迅速に情報収集し、消費者からの問い合わせに適切に対応するとともに、消費者に対し効果的に情報提供することを通して被害の未然防止や拡大防止を図るため、事業者、NITEと言われている独立行政法人製品評価技術基盤機構あるいは消費者協会、行政等で構成する札幌消費者危害情報連絡会を設置するなど、現在、市の行政の中での限られた人的、財源的な資源と外部の資源との連携協力を図ることで、市民の安全、安心を維持するように努めているところでございます。

 次に、二点目の、消費者センター・相談室の現状でございます。

 札幌市は、昭和三十九年に消費生活相談窓口を設置した当初より消費者団体に業務委託をしてきておりますが、当初は北海道消費者協会に対し、昭和四十五年からは札幌消費者協会の設立とともに同協会に相談業務を委託し、現在に至っております。これは、先ほど申し上げましたとおり、消費者運動の高まりの中で、団体設立の機運が醸成されてきたという側面と、連携して消費者問題の解決に当たるという二つの側面があったということでございます。

 そこで、札幌市と社団法人札幌消費者協会との間の、このような委託者と受託者の関係とはいえ、連携協力して消費者問題の解決に当たってきた関係が四十年にわたり続いてきておりまして、よい意味で緊張関係を保ち、相談業務に精通した相談員を確保しながら、札幌市としての相談業務等を担ってきたところでございます。

 現在の相談体制でございますが、年末年始、祝祭日を除く月曜日から金曜日までの九時から午後の七時まで相談を受け付けております。四時半以降は電話相談のみとなってございますが、夜間の電話相談と、それに合わせた電話回線を四回線から五回線に増設いたしました。これは、市民からの要望等を踏まえ、十九年度から実施しているものでございますが、電話相談の延長によりまして、十九年度相談件数は一万八千九百六十六件ございましたが、その延長部分は一一・五%を占める二千百八十九件にも上っております。

 消費者相談につきましては、十五年度から十九年度の五年間の中で、おおよそ一万八千から二万三千件ということで、ほぼ二万件前後で推移しているという相談件数になっております。十九年度につきましては、六十歳以上の消費者と二十代の若者の相談件数が比較的多いことから、札幌市としては、これらの世代に対する対策の強化が必要と感じておりまして、消費者基本計画の中でも重視しているところでございます。

 消費者安全法案に規定されておりますあっせんにつきましては、実は、札幌市の十九年度の相談件数一万八千九百六十六件のうち千三百六十六件と、全体の七・二%に及んでおります。二十年度においても、十九年度と同様の傾向にありまして、あっせんに伴う救済額が、額にいたしますと約三億円に上るという額になっております。

 相談員については、十五名が毎日消費者からの相談に対応しておりますが、そのほとんどが消費生活アドバイザー等の資格を有しております。しかしながら、相談が複雑化、多様化、高度化するとともに、相談者に占める高齢者の割合が高くなるなど、最近の消費生活相談は、法律や周辺情報の整理を含め、解決までの一件当たりの時間を要する相談が着実に増加してきております。

 もとより、北海道消費者センターや北海道経済産業局に加え、札幌弁護士会や民間の業界団体の相談室とも連携協力を図っているところでございますが、今後、消費者センターの役割として、消費者安全法の規定に基づき消費者の期待にこたえていくためには、個々の相談員の苦情相談内容の調査分析に要する時間を十分に確保する必要があると思っておりまして、センター自体の相談体制の強化、相談員の充実が必要不可欠であります。また、相談内容の複雑化、多様化、高度化に対応するため、弁護士等の専門的知識を有する者を活用するとか、あるいは、相談業務の効率化、迅速化を図るため、相談受け付け体制を専門分野別に再構築することを検討しなければなりませんが、そのためにも、センター自体の相談体制の強化あるいは相談員の充実が必要不可欠であると考えております。

 最後に、地方消費者行政活性化交付金でございます。

 先ほど申し上げましたとおり、貴重な財源でありますことから、効果的で有効な活用を図っていきたいと考えております。現在、交付金の活用としては、国の要綱で定められましたメニューに基づきまして、具体的に検討を続けているところでございます。

 消費者センターの相談体制の充実強化といった場合、二つの考え方があると思います。一つは、現在在籍する相談員のレベルアップであり、もう一つは、優秀な相談員、この場合、資格を有しあるいは相談員としての適格性を有する、その優秀な相談員を新たに確保することではないかと思います。

 しかしながら、この交付金は、先ほども池田先生の方からお話がございましたとおり、人件費に充てられない、三年間の時限措置である、一過性の事業には充てられないことに加えまして、基金活用事業に限度額が設けられているとか、相談員のレベルアップ事業の研修参加支援の場合には使うだけのメニューが実は掲載されていないなど多くの制約がございまして、自治体としては活用しづらいところでございます。

 確かに、行政が研修をきちんと実施することや消費者センターの環境整備を図ること等によりまして、相談員の処遇改善につながるものではございますが、他の自治体を含め、一般的に処遇改善といった場合の一番大きな要素、また何よりも大切なことは、消費者被害の深刻化、悪質商法の巧妙化等への対策としましては、消費者センターにおいて相談員をふやすとか、相談員の報酬を改善するということではないかと思っております。

 消費生活相談は、市民、消費者からの相談に対し専門性を持って対応することが必要でございまして、やはり人が最大の財産であり、人的体制を充実化する、あるいはモチベーションを高めるための処遇の改善が大前提ではないかと思っております。

 実は、二月に札幌市周辺の自治体と情報交換の場を設けまして、そこでは、相談員が一名しかいないところでは、せっかく研修の場、研修のメニューを設けていただいても参加できないということになる。そういうこともありまして、この交付金では、人件費にも使えるような、すなわち新たな相談員が確保できるような柔軟な運用が図られることが肝要ではないかと思っております。そうでなければ、消費者センターという箱物だけができて中身がないということにもなりかねないかなというふうには考えます。

 このたびの交付金は、本来、消費者行政は自治事務であるという理由で人件費には充てられないことにはなっておりますが、実は、今、札幌市でもこれから本格的に給付に入るところの定額給付金も自治事務でございますが、人件費分を見ていただいているということとの整合性が図られていないのではないかなと思っております。

 さらに、交付金は三年間の市町村プログラムと年度ごとの市町村計画に基づき交付されることとなります。先月、基金条例を制定し、交付金の受け皿をつくりました北海道及び道内市町村に対しては、最大三カ年で十億円余の交付金が見込まれておりますが、いかんせん、使途が限定されておりますことから、北海道全体でも、大事な財源を効果的に使いづらいのではないのかなというふうには感じております。

 これらのことを踏まえますと、財源措置をしていただける交付金につきましては、人件費を含めた柔軟な使い方に関する御配慮をいただきたいなと考えております。弱体化しております自治体の消費者行政を、この集中期間三年の中で、通常のレベルにするためにも、柔軟な活用が必要ではないかと考えております。

 さらに、国は自治体に対する四年目以降の自主財源確保を強く求めておりますが、自治体は御承知のとおり極めて厳しい財政状況の中、交付金事業終了後の自主財源の充実確保は難しいと考えております。また、交付税措置を二倍にしたということでございますが、一般財源であり、また交付税の総額は定まっておりまして、必ずしも消費者行政に対する交付税の追加措置が自治体の交付税の上乗せにつながるということでもないことから、それも難しい状況にございます。

 一月十九日、御承知のとおり、全国知事会の岡山県石井知事から野田大臣に対しまして、基金造成による地方消費者行政活性化事業についての申し入れがなされておりますが、基金活用に当たっての自治体の自主性尊重、基金活用の条件緩和等について特段の御配慮を賜りたいなと考えております。

 国は、消費者庁、消費者安全法等の関連三法案におきまして、自治体の消費生活センターの法的な位置づけを明確にするとともに、消費者事故等の発生に関する適切な対応や、いわゆるすき間事案についてもその対応を盛り込み、また、二次補正では、地方消費者行政活性化事業を実現させるなど、消費者行政の充実強化を図ることについてはまことに時宜にかなったものと考えておりまして、そういった意味では、内閣府ほか国の皆様におかれましては敬意を表したいと思っております。

 しかしながら、しつこいようでございますが、交付金の取り扱いにつきましては、改めて、自治体の行政運営上の実情を考慮の上改善をお願いしたいというふうに考えておりますし、消費者行政は自治事務であり、まさに地方自治そのものと国は従前からおっしゃっておりますが、これまでの内閣府による制度設計が必ずしも自治体の声を反映したものとなっていないこと、国と自治体は対等、協力の関係であるという地方分権の趣旨を踏まえてまいりますと、今後は、正直なところ、一方通行ではない、適時適切な情報提供をお願いしたいなと考えております。そのためにも、この特別委員会の場で、国会議員の皆様方に対しましては、公聴会を踏まえた対応を心からお願いしたいなと思っております。

 最後に、改めて、このような場を設けていただきました船田委員長を初め、委員の皆様にお礼を申し上げて、私の陳述を終了させていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

船田座長 ありがとうございました。

 次に、橋本智子さんにお願いいたします。

橋本智子君 私は社団法人北海道消費者協会会長の橋本智子と申します。このたびは、衆議院消費者問題特別委員会地方公聴会にお招きいただき、公述させていただきますことに対して、心よりお礼を申し上げます。

 当協会は、昭和三十六年に発足して以来、約半世紀にわたり、北海道の消費者活動を推進してきました。非常に歴史のある協会でもあります。現在は道内七十七の市町村に地域消費者協会を持ち、会員数は約一万六千名となっております。その間、社団法人北海道消費者協会は、昭和四十四年から、道の補助を受けまして、北海道消費者センターを開設してまいりました。このセンターは、当時としては珍しい民間運営の消費者センターということでありました。平成十二年からは、これが北海道立消費生活センターに移管されており、引き続き社団法人北海道消費者協会が相談業務等の受託事業を行っております。

 このたびの消費者、生活者の視点に立った消費者行政の一元化につきましては、当消費者協会の長年の悲願でもありますし、昨年は、六月に、内閣官房長官あてと当時の消費者行政担当大臣にあてまして、消費者庁の創設を求める要請を文書で出しております。ですから、ぜひ実現していただきたく、本当によろしくお願い申し上げます。

 本日は、消費者行政の一元化の推進にかかわり、地域の課題と地域から国への要望について、述べさせていただきたいと思っております。

 まず最初に、消費者行政の一元化につきましては、これは先ほども述べましたように、消費者協会としても長年の悲願でもありますが、消費者保護の立場に立つ十分な権限を発揮できる組織をつくっていただきたいなというふうに思っております。

 ただ、組織をつくっただけではすべての国民の目線ということにはなりませんので、そうした幅広い情報の集約のためにも、消費者団体の意見、質問を迅速に酌み取る、そういった仕組みづくりも必要ではないかと思いますし、消費者団体に対する財政支援等もお願いしたいなというふうに思っております。

 その財政支援につきましては、今もお二方からお話がありましたように、地方財政はとても厳しく、人件費の確保もなかなかうまくいっていないというところもあります。道内でも、一応窓口はあるんだけれども、専任の職員ではなくて兼務をしているといった実態、また相談員は、いても一人ということから、相談業務のみを行って、本来であれば未然防止のためのいろいろな啓発活動をしなければいけないのになかなかできないといった実態もございます。

 また、先ほどから言われている地方消費者行政活性化のための基金も三年間という期限が区切られておりますし、せっかく研修それから消費者センター等の機能を充実させたいと思っても、それにかかわる人の人件費が出ない、これはかなりのネックであるというのは私どもも感じております。

 さらに、いろいろ論議がされていますけれども、全国の都道府県の消費者センターの中には、直轄ではなくて、NPO法人であるとか私どものように消費者団体に対して全面委託しているところが、既に全国で六カ所あると聞いております。また、先ほどの札幌市の例を見ましても、既に消費者団体と四十年にもわたる連携が続いている。こういった地方のいろいろな歴史であるとか、それから地域性をかんがみて、いろいろな仕組みづくりを考えていただきたいというふうに思っております。

 また、人件費等のことで言われていますが、人材の育成の確保といったところを述べさせていただきますと、相談員のほとんどが非常勤の職員です。しかも、北海道は、全部の市町村に窓口はあると言っておりますが、専任職員のいるところはまだまだ少のうございますし、相談員といっても、一人や二人であっては、先ほど言いましたように、研修に行くにしても、それから地域に出ていって相談を受けたり啓発活動をするにしても、かなりの制約があります。特に、北海道はとても広いということもありまして、七十七の協会の役員の中には、消費者協会の役員がボランティア的な立場で相談を受けている。交通費すら出ないという状況の中で、ボランティア的にしているというところが数多くあります。

 そういった北海道各地の相談員の育成といいますのは、相談員の資格としては消費生活アドバイザーとか消費生活専門相談員といった資格はありますけれども、本州では消費生活コンサルタントも、三つの資格というふうに言われておりますけれども、北海道はなかなかその研修に行けないということから、資格は消費生活アドバイザーと消費生活専門相談員が多いのですが、北海道独自の制度がありまして、社団法人北海道消費者協会が昭和三十八年から実施しております消費生活リーダー養成講座の修了者によって行われているということが、地方の消費者協会それから地方の消費者相談窓口の相談員にはたくさんおります。この講座は今年度で四十六回を数えまして、修了者は平成二十年度で千三百五十七人に及びます。

 しかし、これらの相談員の高齢化が進んでおりますが、何しろ市町村の財政が厳しく、遠くの道東とか道北からも札幌で勉強しなさいということで、以前は市町村から財政援助を受けることが多かったんですが、そういった交通費等も削減されまして、なかなか地方から札幌に来て勉強するという機会がなく、新しい人材の確保というものがなかなかなされていないというのが現実であります。

 また、現在の消費者問題というのは、多様性、専門性を備えておりまして、資格を取ったから、またはこういったリーダー養成講座を受けたからそれで終わりということではなくて、その後の研修が非常に大切になります。ところが、北海道は、とても地域が広く、しかも交通の便が悪く、朝十時からの講座に対しても、前の日から札幌に来て泊まり込んでその勉強をしなければいけない。これを自費でしている。本当に人の気持ちだけでやっているところがあるんですけれども、そういったことはなかなか続きません。

 ですから、財政支援に対して、そういった地方の特殊性というものもかんがみて考えていただきたいなというふうに思っております。

 また、今財政的なことから縮小傾向にあります商品テスト部門につきましても、一言述べさせていただきたいと思います。

 商品テストをするに当たりましては、かなりの高額な機器類が必要でありまして、地方の財政だけではなかなか確立することができません。ただ、消費者の安全、安心を確保するためにも、消費生活センターの商品テストというのは非常に重要な役割を持ちます。私どもは、これから企業等と、消費者被害、それから事故等のいろいろなあっせん、それから仲介などをしていく中で、消費者の側がきちんとした商品テスト部門を持っていないと、科学的に対抗するということが非常に困難です。国民生活センターには立派な商品テスト室がありますし、これも活用していくというのも非常に大事ですが、地方において、特に北海道などのように、寒冷地だからこその商品の使い勝手、そういったものを勉強したり、それからテストをしたりということをするためにも、すべてのところにというわけではありませんが、地域地域にも、商品テスト室の充実をお願いしたいと思います。

 ただ、これも、テスト室の機材があるからといっていいのではなくて、そこでいろいろな技術を発揮する技官が必要です。私たちの消費者相談の窓口に寄せられた相談がもしかしたら製品事故につながるかもしれないとか、それから今後つながる可能性があると予見するぐらいの技官がいなければ、これは商品テストの機械だけが立派でも務まりません。私どもも、そういった高度な技術を持つ専門性のある商品テスト室の職員にいろいろ話を聞くことによって、単にそういうことがあったのかというのではなくて、これはもしかしたら重大な事故につながるのではないか、そういった観点を予見していただけるためにも、相談員だけではなく、こうした技官や職員に対するさまざまな措置をお願いしたいなというふうに思います。

 最後に、北海道消費者協会は、もちろん相談業務も行ってはいますけれども、消費者問題というのは未然に防止されなければいけない、相談が充実していても、それを根本から取り除かなければいつまでたってもおさまらないということから、地域における地域消費者協会、七十七協会もありますので、こういったところと連携して、パンフレットを配ったり、ビデオを送ったり、消費生活展といった場において、消費者に対してそういった未然防止策というものをとっておりますし、全道でも、北海道消費者被害防止ネットワークをつくり、これを地域にも広げていこうということで、今三十六の地域にこういったネットワークを構築しております。お金のないところは知恵等使ってということもありますが、そういったものも消費者団体があるからこそだというふうに思っております。

 そういったこともありまして、北海道だけではなくほかの地域も、そういった未然防止を含めた活動ができる消費者団体の育成をぜひ一元化とともに図っていただきたいなというふうに考えております。

 また、消費者被害が発生した場合、消費者被害の救済ということもありまして、私ども北海道消費者協会を含めて、道内の関係団体、個人などと一緒に、NPO法人消費者支援ネット北海道、通称ホクネットと申しますが、この団体をつくりまして、今後適格消費者団体に認定していただくように運動しております。

 自立した消費者を確立するためにも、こういった消費者団体、それから団体訴訟が起こせるんだよ、そういうような団体の育成こそが消費者の自立につながるのではないかなというふうに感じております。

 最後に、北海道の現状を踏まえ、きょうの意見を公述させていただく機会を与えていただきましたことにお礼申し上げます。

 以上です。(拍手)

船田座長 ありがとうございました。

 次に、砂川敏文君にお願いいたします。

砂川敏文君 帯広市長の砂川でございます。

 お三方がいろいろ御意見を述べましたので、私は、消費者行政に対する今の段階での基本的な考え方、それから市町村事務としての消費生活センター等の消費者行政のあり方、現状、それから自治体としては、財政措置の欠点について申し上げたいと思います。

 まず、消費者行政に対する基本的な認識でありますけれども、いろいろな事件が起こりまして、国民の皆さん、消費者の皆さんは、非常に不安も覚え、被害も受けということがありまして、自治体としても、そうした市民の皆さんの不安感なり実被害に対してどう対応していくかということに本当に日々頭を悩ませているというのが現状でございます。

 そういう中で、帯広市は、特に食の安全、安心について関心が高うございます。というのは、帯広市は農業地帯の真ん中にありまして、食料の安全、安心について、生産者サイドも非常に気を使って、いろいろな施策を進めて、安全なそして安心できる食べ物を市民の皆さんに、国民の皆さんに提供しようということで努力をしております。そういう中で、一大食料生産地帯としての役割ということからも非常に生産面からの関心の高いところであります。

 一方で、消費者サイドからも、北海道内では、地方の消費者協会というんですか、これが一番早い段階から発足しまして、非常に活躍をしてきている。そういう土地柄でありますので、生産者そして消費者の両面から、私どもとしては非常に関心を持たざるを得ないし、持っているところでございます。

 今、大きな観点としては、従来、農業に限らず、製造業を含めて、あるいは契約等々を含めて、今までは提供者、生産者のサイドから見て消費者を保護するためにはどうすればいいか、そういう感じの視点がどうしても多かったんだろうというふうに思ってございます。

 それが最近は、逆に消費者のサイドから、ではどういう生産の仕方が、ありようがあるんだろうか、こういう形の見方というのが非常に広まってきたというふうに思ってございまして、これは市民の間でもそういうことが言えるというふうに思います。

 そういう意味では、現状は従来の消費者行政というのが大転換期にあるというふうに思ってございまして、まさにこの衆議院の特別委員会で議論されているというのはそういう時期だからこそであろうと思いますし、非常に敬意を表したいというふうに思ってございます。

 そういう意味で、まず消費者の皆さんの被害の拡大を防止するとかいう話があります。要するに、苦情相談が消費者から来るわけでありますけれども、これは非常に大事にしなければならないというふうに思ってございます。

 今モニター制度とかいろいろな制度がありますけれども、まさに苦情というのは、広い意味ではモニターからの御意見だというふうに受けとめることができるんじゃないかなというふうに思っているわけであります。そういう意味で、情報の収集、そしてそれを整理して、さらにそれに対する対応を考えていく、それをまさに消費者行政としてしっかりやっていかなければならないというふうに思ってございます。

 それからもう一つ、お話にありましたけれども、すき間ということがありました。

 先ほど言いました、生産者サイドから見て消費者保護ということを考えますと、どうしても生産者サイドは、自分たちのところというのは、エリアは決まっていますから、それで見ていくんですけれども、どうしてもすき間ができるというのは、ある意味ではやむを得なかったというか、そういう仕組みだったというふうに思うんですが、今申し上げましたように、逆に消費者サイドから見ると、消費者というのは一人というか全般でありますから、すき間というのは必ず目に見えてきますから、それをどうするかというのが大きな問題だろうというふうに思ってございました。

 今回の政府案あるいは民主党案等々でも、趣旨としてはそのすき間をしっかり埋めていこう、こういう中身になっているというふうに思いますので、この点は非常にありがたいなというふうに思っているところであります。

 そこで、政府案で消費者庁は二百人程度の役所ということが書かれておりますが、そうなりますと、専管するあるいは共管する法律もありますね。それから、移管するもの以外にもたくさん法律がありますから、それを実際に執行するのは従来から所管している省庁だと思います。そういう中で、二百人程度の職員で、期待できる機能が、きちんと制度設計した機能が発揮できるかどうかというのは、若干危惧というか懸念も持たないわけではありません。これはやり方をいろいろ工夫しなければならないのではないかなというふうに思ってございます。これが現状における私の消費者行政というものに対する今の基本的認識だというふうに考えていただければと思います。

 それで、今、実際に市町村がやるべきことは、消費者からの御意見、苦情というものをきちんと受け付けて、それを専門的に相談をする。そして、情報を整理して、国の方に上げてもらうということでありますけれども、今、橋本さんの方から消費生活センター、相談センターの実態等のお話が詳しくありましたけれども、帯広市も北海道の中では比較的力を入れている仕事の一つであります。

 ただ、課題は何点かあると思いますけれども、消費生活相談員の多くは、今、帯広市の場合は、消費者協会に委託してやっていますが、七名の相談員がいらっしゃいます。これは国民生活センターの認証します消費生活専門相談員の資格を持っているというのは当然なんでありますけれども、それが担っております。協会でも、非常勤というかそういう身分でございまして、勤務時間も週に三日あるいは四日という感じでございまして、身分が非常に不安定だということが一つあります。

 それから、処遇、待遇が、今、日額で七千円ちょっとな感じでございます。道内いろいろなところがあると思いますが、平均的にはもっと低いんじゃないかなという状況だと聞いています。五千円前後というのが多いのではないかなという話も聞いています。

 これでは、橋本さんからもお話があったように、繰り返すようで申しわけないんですけれども、なかなか人材が確保できない。それから、人材のスキルアップがなかなか難しい。実は、ベテランの相談員が一生懸命頑張ってくれているんです。これは賃金とかそういう問題でなくて、それもありますけれども、それプラス、やはり消費者としての意識が非常に高い方々がこういう相談員の資格を取って担当していらっしゃいます。半分そういうボランティア精神で頑張っていただいているのが実情だろうと思いますが、仮にそういうベテランの人が一人抜けますと、後はそのセンターの相談体制というのはがたがたになってしまう、後任を見つけられないということを含めて、そういうおそれがある。こういうのが地方の消費生活相談センターの実情ではないかなというふうに思っています。

 特に、私ども帯広市は十七万人の人口であります。したがいまして、それなりの体制は組めるのでございますけれども、今、消費者行政に私が割いている予算は一年間で約二千五百万です。そのうち、委託業務ですけれども、消費生活相談センター業務に約千五百万ぐらい、約六割ですね。あとは市の職員がいろいろなその他の消費者行政に携わっている経費だということであります。これは結構多い方だというふうに思います。残念ながら多い方だと思います、申しわけないんですが。

 交付税措置という話がありましたが、十万ぐらいの都市だと五百万円、それを倍増して一千万円ぐらいのあれは考えますよという話ですけれども、それでは全然足りない。帯広市も交付税措置で算定している額の二倍以上は出しているんですけれども、それでも行政のあり方としては不十分だというふうに私は思っています。

 もっと小規模な自治体になりますと、それがもっとひどい状況になってきます。後ほど申し上げますけれども、それはお金の面です。

 それともう一つは、小規模な市町村だと、そもそも相談件数が少ないんですね。人をしっかり置いて、常駐させて賄うというには達しないぐらいの件数しかない。そうすると、〇・三人置くというわけにはなかなかいきませんので、そこのところが難しいんじゃないかなという気が一つしています。

 それと、相談員のお話を聞きますと、非常に相談の中身が複雑かつ多様化して難しい。いろいろな契約が新しく出てきますし、ITがどうだこうだといいますと、契約とかも非常に難しいんですね。

 これを、常にスキルアップ研修とかやっているんですけれども、これもその人たちの意気でやっているという感じであります。もちろん交付金等利用させていただいてスキルアップの予算を組んでいるんですけれども、なかなか難しい面がある。弁護士さんに相談するという機会も当然つくらなきゃならないということでやっておりますけれども、それが一つの悩みであります。

 そんなことで、今度、消費生活相談センターが都道府県は必置ですけれども、市町村は任意というか努力規定ということであります。小規模な市町村が北海道には多いんですけれども、一万人以下の市町村が過半数ですから、そういうところはどう処理していくのかなというのが現場の現実の悩みとしては一つあるかなというふうに思ってもおります。

 それから、財政措置の話をちょっとさせていただきたいと思います。

 札幌市さんから、橋本さんからもお話がありましたけれども、今地方自治体の財政は非常に厳しい状況の中で取捨選択しておりまして、聖域なき見直しをやらざるを得ない。というのは、保険とか医療とかあるいは生活保護とか、義務的にふえていくものは削るわけにはいかない。ということは、それ以外のところは極めて厳しい見直しをかけざるを得ないということであります。

 そういう中で、消費者行政をどうするかというのは首長としても非常に悩ましいところなんですが、帯広市の場合は、従来からの経過もありまして、何とかそれなりに体制はとれているかなと思っていますけれども、いずれにしろ、今は厳しい状況であります。

 私も自治体を代表して、代表というのはちょっと変ですけれども、自治体全体の状況もお話ししなきゃならないなと思っていまして、先ほど申し上げました小規模な自治体については、苦情相談そのものがあるかどうかというところは多いと思いますし、そういうところもどうするかということ。

 それから、では自治体職員がやればいいんじゃないのという話になりますと、自治体職員は定数削減でどんどん削られてきていますから、そういう人を割けるかどうかという問題。

 それから、生活相談員というのはさっき言いました非常に複雑で難しいものを扱いますので、簡単に、だれでも、頭数いればいいというものではありませんから、そういう意味で、非常に小規模な自治体は苦労されるかなというふうに思っているところであります。

 それから、総務省が二十一年度から交付税措置を手厚くするよという話がありました。これが、基準財政需要額に反映するということでありますけれども、私どもで試算したところ、十万人規模の町では今五百万と算定されていますが、これは倍になっても一千万ということであります。先ほど言いました、私どもでさえ二千五百万実際かかっているということでありますから、これでかなり厳しいのかなというふうに思っています。

 それから、交付金がありますね。これの事業でも、三年間は弾力的にメニューに沿ってやれるんですけれども、将来、三年間、四年目以降どうするんだということがあるんですけれども、こういう事案では、私どもこれは常に頭を悩ませるところでございます。

 それから、あとは人材確保の面で、相談員の皆さん方は、自分の経験も含めて、消費者の利益を守ろうということで、犠牲的精神といいますか、給料の問題じゃないという形で頑張っていただいているのが現状であります。そういう人たちがいるうちはいいですけれども、そういう人たちがぽんと抜けたりすると、行く末はどうなるのだろうかというのがあって、処遇の改善はしっかりやらなきゃならないというのがございまして、私どもも処遇は十分ではないと思っていますので、これをしっかりやれるような財政、財源措置がなされる必要があるんじゃないかなというふうに思っています。

 それから、私ども北海道の市長会でも、この件については二点ほどお話をさせていただいています。

 自治事務として消費者行政をやるということについては地域の実情というのをしっかり踏まえてやれるように柔軟性を持たせてほしいということが一つ。もう一つは、いろいろなことをやるについての財源手当てをしっかりやってほしい、突き詰めればこの二つを国の方に要請をさせていただいています。これは全国市長会でも同じ趣旨で要請させていただいております。それなりの措置をぜひお願いしたいというふうに思ってございます。

 それから、民主党さんからの案で、地方の消費生活センターを国の機関という形のもので整備していけばどうかという話があるわけでありますけれども、これについては、今、地方分権の時代というか大きな流れでありますので、今新しくこのために国の組織、機関というのを地方に置いていくというのは、そういう意味では、地方分権の趣旨からいって、いかがなものかなという気持ちは私ども持ってございます。要は、そういう機能をしっかり発揮できるような手だてをお願いしたいということはもちろんあります。

 いずれにしましても、ここまで来まして、政府を含め各党から案が出て、今議論をされているということに敬意を表したいと思います。修正協議を本格的に進められて、できることなら全会一致で、国民、消費者のためにいい法律、制度、そういうものが確立できて、安心して国民の皆さんが生活できるように願っているところであります。

 以上であります。(拍手)

船田座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

船田座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。やまぎわ大志郎君。

やまぎわ委員 皆さん、本当に貴重な御意見をありがとうございました。自由民主党のやまぎわ大志郎と申します。

 お四方からお話を伺っていて、ほとんど基礎の部分は同じ問題なんだなということ、すなわち人と金、これに尽きるなということを改めて実感いたしました。

 そこで、イメージとしてまだわかない部分がありまして、人とお金というのは、あればたくさんあった方がいいに決まっているんですが、それはコストをなるべく少なくしながら十分な機能を果たしていくという観点からすると、皆さん、それぞれのお立場において、あとどれぐらい人がふえればいいんだろうか、あとどれぐらい予算があればいいんだろうかと。それはもちろん完璧には言えないと思いますが、イメージとして、例えば三割増しなのか五割増しなのか。そのことについて、少しイメージを膨らませたいので、それぞれの陳述人の方々から短くお答えいただければと思います。

池田清治君 私自身は研究者という立場でございまして、地方の、それぞれどのぐらい具体的にふえればいいのかということについては確たることを申し上げられる立場にはありません。

 ただ、先ほど申しましたけれども、せっかくある種のお金がある、それをなるべく効率的に使わせていただけるような形にしていただきたいというのが一点目です。

 二点目なんですが、先ほど橋本さんからもありましたけれども、研修に行くといったって、もう一人いなければ、これはなかなか行かないわけですね。大事なポイントは何かというと、あるセンターなり相談体制があるとして、少なくとも複数は必要なのではないかと思っています。それは各市町村に一つずつ、複数ということは理想かもしれませんけれども、それは先ほど言ったとおり効率的でない面もあります。北海道は特に地域が広いんですが、逆に、だからこそ集約とかうまく図っていかなければいけない。一人が真ん中にどんと構えているけれども、もう一人は、電話で済むこともありますけれども、直接きちんと話を聞かなきゃわからないこともありますから、そういうことですので、どのぐらいのものかというのはちょっとわかりませんけれども、やはり複数で効率的で実効的な制度をぜひともお願いしたいと考えております。

 以上でございます。

渡邉三省君 今の御質問についてでございますが、確かにおっしゃるとおり、湯水のようにお金は出てこないというのもございますが、ただ、現状としましては、札幌市の場合でいいますと、相談だけじゃなくて、その後、バックヤードというか、相談が終わった後に的確に事務処理していかなきゃならないということもありますし、先ほど皆さんからも出ておりましたとおり、実際の相談状況、内容というのは多様化、複雑化、高度化しているということもありまして、専門分野別の相談というのも今後出てくるだろうなというふうに考えてまいりますと、まだ突き詰めたわけではないんですが、今十五人で対応している中でいうと、やはり二割とかそのぐらいはふえた方がいいのかなと思っております。

 ただ、先ほども申し上げたように、そもそものこの交付金の使い勝手の限定的なというところもあるので、まずは自由に使えるようにするという、百五十億という金額でしたか、先ほども言いましたように、恐らく道内でいうと余すような事態にもなりかねませんので、まずはいただける総体の中で自由にというか効果的に使うというふうに考えておりまして、その後のプラスがどうなんだという部分はなかなか難しいところもありますが、まずは自由に使えるような部分というのはふやしていただければ、少なくとも今の部分でいうと充実強化につながっていくのかなというふうには考えております。

橋本智子君 北海道消費者協会が道から受託している北海道消費生活センターの場合には、現在、職員は道内のサービス業並みの賃金ということで契約をしております。それではちょっと職員のモチベーションが低くなるということもございます。

 あと、道内全域でいいますと、先ほど帯広の市長さんからもお話がありましたけれども、相談件数ということでいえば、一人の専任職員も置けない、まして相談員も置けないというような現状がありますので、そこは広域化するなどの工夫も必要だとは思いますが、先ほど言いましたように、交通の便の悪い北海道の中で、専門性の高い人が例えば各支庁に一人いればいいかというと、またちょっと違うなというふうに思います。その辺は地域性それから交通の便等でいろいろと考えていかなければいけませんが、先ほど池田先生の方からありましたように、研修一つ行くにしても複数でないとなかなか行けないという現状がありますので、そういった件数だけではないところで見ていただきたいなというふうに思っております。

 現在、札幌市のある石狩支庁を除いて十三支庁に推進員というものを置いておりますが、この方たちも地方の相談員の相談を受けるという形をしていますが、逆に、来てもらうのではなくて出かけていって、そういった相談のバックアップをする、そういう制度もあるのかなというふうに思っております。

 具体的な予算措置はというふうに言われると、地方地方でちょっと違ってくるし、北海道は広さと交通の便の悪さというところを一律に見ていただきたくはないなというふうに思っております。

砂川敏文君 帯広市の場合は、消費生活センターの委託料の九二%が要は人件費なんです。それで、財源措置というのは人件費をいかに確保するかということですね。

 それで、先ほどお話ししましたけれども、帯広の場合は七千四十円の日額でお願いをしているということでございまして、大体、月の稼働日数が一人当たり十四日ぐらいなんです。そうすると、一月約十万円ぐらいですね。これでは、何をやるにしてもちょっとかわいそうかな、私が言うのもなんですけれども、ちょっと課題があるかなというふうに思っていまして、倍とは言いませんけれども五割増しぐらいは何とかというのが、常識というか、あってしかるべきかなと。私が予算をつけていながらこう言うのもあれですけれども、そういうのが現状ですね。

やまぎわ委員 ありがとうございました。

 本当にそれぞれ御事情があるというのもよくわかります。今も共通したお話として、とにかく自由に、しかも柔軟性を持って、各地域地域、地方で使えればいいのになということでありました。これは本当に我々も考えなくてはいけないと考えております。

 そこで、今回はすき間という言葉が一つのキーワードとしてありまして、このすき間をなくしていこうというコンセプトに基づいて我々議論を進めてきた部分がございます。

 渡邉所長の方から、先ほど、このすき間という意味でいうと、県から政令市に関して言うと、それは権限としてそんなに多くのものが移譲されていないという話がありました。恐らくすき間というのはいろいろな意味であるんだろうと思うんですが、札幌市と北海道、あるいは北海道と帯広という地方自治体、行政体が違うことによって、そこでのすき間というものは現実の問題としてないのかどうかということ。そして、両者の連携が、先ほど橋本会長からはそのお話も多少ありましたけれども、ネットワーク化をするというお話がありましたが、どのような形でそこの連携というものを進められるのか、そのアイデアがありましたら、多分これで時間が来てしまうと思うので、渡邉所長、橋本会長、そして砂川市長、お三方からお答えいただければと思います。

渡邉三省君 今の御質問についてでございますが、北海道との関係におきましては、確かに札幌の場合、権限移譲というのは分権一括法で二つ大きな事務があった、それ以外は、基本的な事業者に対する処分とかは、道があると。

 ただ、冒頭で私が申し上げたように、消費生活条例に基づきまして、事業者指導等につきましては適切に当たっているのかなと。それは、最前線の基礎的自治体であるがゆえに、消費者の権利を守るというのは当然ですが、事業者の意見もよく聞きながらという意味では、消費生活条例は十分に機能しているのかなと。そういう意味では、権限は必ずしも多々なくても、条例を使ってやっている部分と、あと、広域的な、北海道という中では道がしっかりと見ていただいているのかなと。

 その中で、お互いに事業者に関する情報はメーリングリストとかで情報交換させていただいておりますし、それがすなわち道内における連携につながっているということで、例えば、ある市で何か問題のある事業者が出てきたら、こういう事業者が動いているので気をつけてくださいねというのは、行政の中では情報連携はしていますので、そういった意味での連携はできているのかなという部分と、もう一つ、最後に、北海道そのものとの関係におきましては、道の消費者協会さんも含めて、何せ私ども四、五百メートルの距離にありますものですから、そこは常日ごろからお互いに行き来をするとか連携をして、情報の共有化に努めているところでございます。

橋本智子君 きょうの中で、私、触れなかったんですけれども、一元化に当たって、情報の共有化というところがあったと思うんですが、今、渡邉センター長からもお話がありましたが、北海道では赤レンガインターネット室というメーリングリストがありまして、PIO―NETでは今同時入力されていなくて情報が古いんですけれども、このインターネットニュースはPIO―NETを導入していない地域の相談窓口でも見ることができます。

 ですから、今言ったように、こういった業者が今このように移動しているよといったものがわかりまして、私も地域に帰りますとたまに相談窓口に出ることがあるんですけれども、そのときは必ずこれをチェックいたしまして、今現在北海道内でどういった業者がどういったようなことをしているのか、それから、札幌市さん初め北海道で業者指導があったとか、その中には、これは業者にも言ってもいいですよとか、内部だけでとどめてほしいですよというような、そういったものまでありまして、これは非常に役に立っております。

 ですから、こういったものが地方の中で共有化されると本当にこれはすごく便利だなというふうに思っておりまして、そういう意味で連携はあると思っております。

砂川敏文君 北海道と市町村の関係、指定都市なり中核市等についてはそれなりの分担があって、そこの分担の状況はどうかというのはありますが、私ども一般市にとりましては、ほとんど権限はおりてきていませんから、そういう意味では道とすき間等は出てこないというふうに思います。

 問題は、一つは、先ほども言いましたが、小規模な自治体、要するに地理的にすき間ができるんじゃないか、まあ、すき間の意味が違いますけれども。北海道の場合は、特にそういうことが懸念されますね。それは北海道側が考えればいいことではないかというお話になると思います、道の独自性を持って処理していくということだろうというふうに思いますが。

 一つの案としては、ちょうど北海道の支庁あるいは広域行政をどうするかという議論がされていますから、その中で、こういった消費者行政をどう整理していくか。支庁の単位でまとめてやっていくか、あるいは共同で処理をするか、道の支庁の単位で一つのセンター的なものをきちんと整備していくかとか、いろいろな考え方があるんだろうというふうに思いますが、いずれにしろ、小規模な市町村を全部網羅していくというのはちょっと厳しいかな、これは自主的にやりなさいという話ですから、そこを実際にやるにはどうすればいいかなということが出てくるかなというふうに思っています。

やまぎわ委員 ありがとうございました。

 時間となりましたのでこれで終わりますが、本当に貴重な御意見をありがとうございました。きちんと持ち帰って反映をさせてまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

船田座長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 四人の陳述人の皆さん、大変にありがとうございます。早速質疑に入りたいと思います。お一人ずつ、一つずつ伺ってまいりたいと思います。

 まず、池田陳述人にお伺いをしたいと思います。

 先ほどの御説明で、とにかく一歩でも前へと、こういうお話はしっかり受けとめさせていただきたいと思いますが、今回、野党側と政府側、二つ出ておりまして、内閣の外か内かという議論もあるわけでありますけれども、先ほど陳述の意見では、消費者庁については否定するものではない、両方並び立つのではないかというお話もいただいたんですが、私どもは行政の一元化ということ、あるいは消費者行政についてコントロールセンターといいましょうか、そうしたものが政府に必要だ、いい機会だと思っているんですが、ここはまず第一歩だと思っているのであります。

 消費者安全法案の仕組み、仕掛けと同時に、そのことは非常に大事だと思っているんですが、改めて御意見を端的に伺いたいと思います。

池田清治君 私もその限りでは同じ意見でございまして、先ほど申しましたけれども、消費者庁の今の法案そのものではなく、失礼ですけれども、私はまだこういう点を改善する余地はあるんじゃないかなと申し上げましたけれども、そのようなものは必要である、私の心の中ではそれが今一番焦眉の急なんじゃないかと思っております。

 ただ、監視機能というのも劣らず重要なものですから、ただ、それをオンブズマンみたいにするのか、せっかく委員会をつくるんですから、ある程度そこにも機能を持たせていくのかというのは、もちろん、それは中につくりますから限界はありますよ。限界はありますけれども、持たせていくのかというのは、あるいは工夫の余地があるのではないかなと考えている次第でございます。これが私の答えです。

桝屋委員 ありがとうございます。

 消費者政策委員会の意見具申の機能、先ほどの御意見は参考にさせていただきたいと思っております。

 続きまして、渡邉陳述人にお伺いしたいと思うんですが、札幌市においては、札幌市消費生活条例で積極的なお取り組みを以前からいただいているわけであります。

 さっきの御説明で、相談件数の中で実際にあっせん件数につながっているもの、これが七・二%ぐらいという御説明がありました。千三百件程度、金額にして三億円ということでありますが、条例の中でも、札幌市消費生活審議会、この中にあっせんの機能を規定しているわけでありますが、全体の相談件数の中であっせん件数が七・二%になっているということは、これで妥当と思われているかどうか。もう少し前に進められないのかどうか。それにはどんな問題があるのか。端的にお答えをいただきたいと思います。

渡邉三省君 今の御質問でございますが、おっしゃるとおり千三百件くらいですか、七・二%というあっせん件数がございますが、冒頭で申し上げたとおり、相談員の体制の中で、複雑化、高度化、多様化する相談に的確に対応するためには、人数がもう少しいればいいなというのは確かにございます。そういう意味では、あっせんに向けてより的確にやっていくためには、人数が実際のところは、きめ細かにやっていくとすれば、今の人数ではちょっと不足しているのかなというふうに考えておりまして、それが充実化することで、より私どもが先ほど申し上げたあっせんにつなげていけるのではないかと。

 つまり、通常の消費者契約の中で無理やり買わされたというケースが多々あるものですから、よりきめ細かにやることによりまして、もう少し掘り起こしがふえてくるのではないか。それが結果的にはあっせんとしての解決、救済金額の増加にもつながってくるのかなというふうには考えてございます。

桝屋委員 ありがとうございます。

 重ねてお伺いしますが、札幌市の消費生活審議会の開催状況、審議会の場であっせんの作業というのはどの程度の頻度で行われているのか。お伺いしたいと思います。

渡邉三省君 実際のところ、消費生活審議会というのは年間五、六回と申しますか、最近でいうと、それこそ先ほど申し上げた消費生活条例とか消費者基本計画の部分があるんですが、今先生がおっしゃったあっせんに係る分については、昨年、エステに係る若者の契約が問題になりまして、それはその方だけじゃなくて今後大きく広がる可能性もあったものですから、それを消費生活審議会のあっせんということでかけたものでございます。

 ただ、千三百件というのは、そこに至らないまでも、相談員が御努力することによってあっせんに導かれたという数字でございます。

桝屋委員 続きまして、橋本陳述人にお伺いします。

 先ほど帯広の市長さんから、帯広はともかく、まさに小規模の市町村、道としては百八十ですか、ここをどれほど均一にカバーできるか、近いところで窓口として消費相談を受けられるかと切実なお話をいただいたんでありますが、そういう意味では、北海道の場合、先ほどの御説明では、消費生活推進員の活動を、いわゆる道全体をカバーする方向で取り組まれているという話でありましたが、この推進員さんは相談員さんとほとんど同じ身分なのか、処遇なのか。そして、これから我々が国において人、金をしっかり確保したとすれば、この推進員さんの機能は、小さい市町村をカバーするとして大きなツールになるのかどうなのか、どういうお考えなのか。お伺いしたいと思います。

橋本智子君 現在、推進員は十三人いるということなんですけれども、十四支庁といっても一支庁もかなり大きいところが多いですので、一時的なところは各市町村でお願いするとしても、高度な専門性とかが必要な場合には、そういう高度な専門知識を持った相談員が二次的にいるということが非常に大事だというふうに思っております。

 現在は推進員は道の受託事業というところでやっておりまして、非常勤というところでは道センターの職員とは同じですが、出勤日数がちょっと違いますので、月額の報酬でいうと若干異なってまいります。道の場合には四日間勤務ですけれども、推進員の場合は二日程度の勤務というふうになっておりますので、その辺でちょっと違ってくるかなと。今の現状ではそういうことになります。

 あと、既に広域化ということをいえば、富良野と釧路のところで、私が把握している範囲ですが、中核になる市に協定等を結んで、応分の負担をとって、周辺の町村が中核の市のセンターなどに相談業務を委託している、そういう現状もあります。

 どういった形がいいのか。今までは、ない予算の中で知恵を絞ってまいりましたけれども、今後、こういった消費者センターの充実を図るというところで、そういう予算が使えるのであれば、もっといろいろな取り組みが考えられるのかなというふうに考えております。

 以上です。

桝屋委員 ありがとうございます。

 いずれにしても、財源をしっかり確保しなきゃいかぬということでありますが、先ほどの市長さんの話を聞きながら、小さい地域、小さい市町村をどうカバーできるかというのは、我々としても大きな課題だろうと。今、総務省は、自治体同士で契約をするという定住自立圏構想、こういう手法も検討されておりまして、財源の確保に努力をいたしますが、ありよう、やり方については御検討いただき、また御提言もいただきたいなと思います。

 最後に砂川陳述人に伺いたいと思うんですが、大変な中を御苦労さまです。基準財政需要額以上のお取り組みをいただいていることに敬意を表したい。全千八百四の自治体が全部市長さんのようであればいいなと私は思いながら聞いたのであります。

 そこで、お伺いですが、我々がしっかり財源を確保したとして、では十分な財源があった場合に、ただいま七名の相談員さんの身分なり相談員さんの扱いを、これからどういうふうに、三年間なり四年間なり、発展過程で、移行過程で処遇しなきゃいかぬと思うんですが、いろいろ現場の声を聞くと、全員が常勤というよりも、有期で採用した方がいいということがあったり、あるいは専門性を持つには、五年ぐらいどうしても養成期間がかかるという声があったりと。

 したがって、もし十分な財源が地方財政措置されたならば、どういうふうに七名の方々の処遇を段階的に拡充されていかれるのか。七名全員を常勤の職員にされるお気持ちなのか。端的に教えていただきたいと思います。

砂川敏文君 おっしゃるように、全員が必ずしも常勤の、フルタイムのそういうものでなければならないということもないと思いますし、それから、逆に、嘱託とか短時間勤務とか、そういう勤務体系を選ぶ方もいらっしゃいますので、そういう意味では、常勤でフルタイムでなければやれませんよということには僕はならないというふうに思っています。

 ただ、スキルもすぐれて、まとめて、指導もできるような、そういう人たちについては、できるだけ常勤に近づけたいというふうに思いますので、そうしますと、一人ではあれですから二人、複数ぐらいはそういう常勤的な形の人を最低置いておく必要があるんではないかなというふうには思ってございます。

 それと、今、帯広市の場合は年間大体三千件ぐらいの相談を受けます。札幌市は二万件、人口比でいけばちょっと帯広市が多いのかなと思いますけれども三千件ぐらいです。そのうち一五%ぐらいは帯広市以外の相談を受けております。そういう意味では、先ほど橋本さんがおっしゃったように、そちらの方も含めて、帯広市をもっと中核的に充実して、周りの小規模な市町村の相談をしっかり受けていくという方向も一つはあるんではないかなというふうに思います。

 それは、例えば財政負担を求めるかどうかは別にしまして、小規模な市町村からの負担を求めるかどうかは別にしましても、一つのやり方としては、小規模な自治体を救うというのは変ですけれども、その相談を受けるということはあるかもしれません。

桝屋委員 ありがとうございました。

 きょうも現場で相談員の方、十年のベテランさんがいらっしゃいました。十年間、非常勤嘱託ということで処遇されるということは、自治事務である以上、私はそれはいかがかなというふうに実感をさせていただきました。ぜひとも改善策について取り組みたいと思っております。

 きょうは、ありがとうございました。

船田座長 次に、小川淳也君。

小川(淳)委員 民主党の小川淳也でございます。

 きょうは、諸先生方には、大変お忙しい中、お時間をいただきまして、また、貴重な御意見をいただきましたことに心から感謝を申し上げたいと思います。

 時間の関係もございますので、まとめてそれぞれ二、三点ずつお尋ねをいたしますので、お尋ねをした順番にそれぞれの方からお答えをいただきたいと思います。

 まず、池田先生に、研究者としてのお立場から御見識をいただきたいと思いますが、既に金商法の取り扱いについてもコメントをいただきました。

 私ども、現在国会で消費者安全法について、いわゆる重大事故ということで消費者庁が積極的にアクションを起こすことができる事案が、生命身体にかかわる事案を原則として考えている。ところが、きょう拝見しました北海道の相談案件を見ておりますと、全八千件のうち、一千件余りはまさに金融・保険サービス、二千件近くが情報通信の関連。これらからいたしますと、こうした金融関連、情報通信を含めた全商品、サービス一般について、消費者庁が十分な手だてをとる体制が必要だと思いますが、この点に関する御見識が一点目でございます。

 二点目、北海道の消費者被害防止ネットワークの構成団体に公正取引委員会が入っていることに大変注目をいたしました。現在、公正取引委員会は全国に出先機関を持ちまして、恐らく八百名近い体制で市場監視に当たっているはずでございます。消費者行政も、個別の消費者被害の救済等の観点からいえば、ある程度国が責任を持ってイニシアチブをしっかりとっていくということが必要ではないかという気がいたしますが、分権との観点から既に先生御指摘ではございますが、改めてこの点、御見識をいただきたいと思います。

 そして、橋本参考人にお尋ねいたしたいのは、私ども民主党は、先週末、河村官房長官に対して十分な処遇の改善について申し入れを行ってまいりました。この基金の活用をぜひ人件費にも充てられるようにということで、現在国会で盛んに議論をいたしております。改めて、処遇の改善についての基金の活用への御希望、あわせて、これは三年間の措置でございますので、果たして四年目からどうするのかというのは大変大きな悩ましい点かと思いますが、その点に対するお考えをお聞きしたいと思います。

 そして、渡邉陳述者にお尋ねをいたしますが、先ほど道との連携というお話がございました。一方、逆の立場からお尋ねをいたしますが、日ごろよく、都道府県行政と特に政令市との間には、二重行政、あるいは場合によっては無駄が生じたり、あるいは効率的に行えなかったりという指摘が多々ございます。この点、消費者行政に関しては、札幌市が二万件の相談を受ける一方で、道が八千件、しかもそれは目先四百メートルの場所で行われている。この観点からいたしますと、むしろ一元化、一本化というようなことも考えられるのではないかと思いますが、この点に対する御見識をいただきたいと思います。

 最後に、砂川市長様にお尋ねをいたしたいと思います。

 既にお触れいただきましたが、今般の政府案では、中小の市町村に至りますまで生活センターを設置することが努力義務として課されるという見込みでございます。現在、北海道内七十七市町村のうち三十九しか設置をしていないというふうに午前中お伺いをいたしました。これが果たして可能かどうか。私どもは国の責任でということを考えておるわけでございますが、改めてこの点に対する御認識をいただき、最後に、交付税でございます。

 消費者行政に関する費用分を上乗せしても、一方でほかの費用が削られたり、あるいは総額の確保に失敗した場合には何ら手助けにならないおそれもございます。その点、別枠の補助金あるいは国が責任を持って配置をする、こういったことの方がむしろ解決策になるのではないかと思いますが、この点に対する御見識、以上をお尋ねして、終わりたいと思います。

池田清治君 どうもありがとうございました。

 まず最初の、第一点目の御質問というのは、消費者被害の実態を見ると、例えば検討対象とされている四十三の法律の中には、かなり密接で、消費者庁なら消費者庁という組織があったとすると、まさに主体的に関与していかなければいけない法律があるのではないかという御質問ではないかと受けとめさせていただきました。そのとおりだと思います。その点は申し上げたいと思います。

 あとは、先生、重大事故あるいは生命身体とおっしゃいましたが、私、実は十五分しか時間がございませんでしたので、ちょっと説明をはしょらざるを得なかったんですけれども、その点をつけ足すのをお許しください。

 まず第一は、いわゆるすき間事案です。すき間事案を内閣総理大臣は措置できる、これは大変いいことです。しかしながら、それはどうやら私の誤読でない限りは消費者の生命身体にかかわる問題だけのようであります。しかしながら、本当の悪徳業者は何を考えるかお考えをいただきたいんです。消費者が困っても、死んでも、別に何の得にもならないわけです。彼らはむしり取ることを考えるんです。

 消費者法の歴史というのは、これは実はすき間の歴史でございました。例えば、今はネズミ講なんてだめだと言っていますけれども、当時、では厳密にそういう法律があったのかというとそうではなくて、すき間すき間にうまく入り込んで消費者からむしり取っていく、こういうことをやっているわけなんですね。そうだとすると、もちろん生命身体は大事です。大事ですが、せっかくすき間事案、もちろん新しいビジネスモデルなのか悪徳業法なのかこれはわからないところがあるかもしれませんけれども、これは内閣総理大臣までがやるというのであれば、これはよほどひどいものということなんですから、一定の限定をかけるのは仕方がないかもしれませんけれども、やはり財産上の措置みたいなものを含めていいのではないかと考えます。

 二番目です。重大事故について直ちに情報を上げろというわけですが、それも生命身体か何かのはずでありまして、経済的損害については、さらに何か、流布する可能性があるとかなんとかという制限をつけているかに、もし間違いでなければ私にはそう読めました。しかし、先ほど橋本さんから御説明があったとおり、まだ事故が顕在化していないけれどもあっちこっちで起こっている、それさえ全部上げてくれれば、消費者庁全体で見れば、ああ、これは危ないねとわかる場合だってあるのではないか。確かに、全部上げるということは、情報の渦になってしまいますから、そういう限界はあるいはあるのかもしれませんけれども、そういう点から、これは時間がなくてはしょったものですから、指摘させていただきたいと思います。

 二点目です。手早く言います。

 要するに、公正取引委員会は独禁法みたいなものをどういうふうに考えていくかという問題だと思います。経済的な事象になりますと、これは競争法なのか消費者法なのかというのは、区別は相対化します。もちろん、公正取引委員会には公正取引委員会の特別な職能がありますから、私は融合しろとかそのままにしろと言うわけではありませんけれども、互いに重なるという面は出てくると思います。僕は、それは重なったとしても、それを称して二重行政ということにはならないと。つまり、そういういろいろな発展してくる商品をすき間なくある程度埋めていくためには、ある程度ののり代はやむを得ないのではないかと思っています。

 ですので、所管は、まさに専門の技能ですので、競争法、独禁法は公正取引委員会にしても、ある程度消費者の方からももちろん物が言えるような、そういう制度づくりというのはぜひとも必要なのではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

橋本智子君 民主党の申し入れに関しましては、拝見して、非常にこのとおりであるというふうに思っておりますので、ぜひ進めていっていただきたいなと思っております。

 あと、活性化基金に関しましては、八つのメニューが書かれているんですけれども、なかなか使いこなせないというところもありまして、うちも担当の方と頭を抱えながら、やはりそのときにネックになるのが、三年間、四年目からどうなるんだろう、せっかくいい事業を展開しても、お金がなくなりましたので四年目以降はできませんといった場合に、道民の皆様、市民の皆様にどう説明していくんだろうというところが非常にネックになっております。

 また、その中で、今までなかなかできなかった研修、本当に研修費は削られ削られで相談員の皆さんには大変御迷惑をおかけしていて、研修費は出た、だけれどもそこに行く時間がない。先ほど言いましたように、一名とか二名体制で、その日抜けられないというようなことがありますと、やはり、研修費は出ても、では一体だれが行くんだろうね、だれが使うんだろうねというようなことがあります。

 せっかく皆さんの税金を使わせていただくのであれば、お金が来たからといって、ばんと使おう、そういう感覚は消費者にはないので、できるものをやらなきゃいけないという頭でやるとすると、活性化の基金については人件費というものも本当は見ていただかないと、だれがこのメニューをこなすのかというのは担当者の方に言われます。これだけ事業をするけれども、だれがやるんですか。だれがやるんでしょう。今あるだけで目いっぱいなのに、その上に、この事業メニューをこなす人の人件費が全然見込まれていないというのは非常にネックですし、四年目以降のことも不安でなりません。

 以上です。

渡邉三省君 先ほどの二重行政の御質問でございます。

 一般行政としましては、今、道と市の間で知事と市長の行政懇談会を行いましたり、あるいは法律により、あるいは事務処理の特例条例によりまして北海道から権限移譲を受けている項目は指定都市ですので結構ございます。

 そこで、問題のといいますか、消費者センターというか相談の一元化という部分でございますが、恐らく、地域的な事情と申しますか、関東の指定都市と都道府県との関係以上に、札幌市と道との関係は、広域性が非常に北海道の場合高いというか大きいものですから、札幌市は札幌市の消費者の対応、あるいは北海道さんであれば、たまたま近くにセンターはございますが、広域性という使命というか、そういった部分をカバーするということでございますので、そういう意味での役割分担は今しているのかなと。

 たまたま距離的に近いから、そういうお話も確かに厳しい論点なのかなと思っておりますが、現実的にはそういう状況で、ほかの指定都市と県との関係とはちょっと違うのかなというふうには考えております。

砂川敏文君 小規模な自治体での設置ですけれども、これは相談件数が少ない可能性もありますし、そういうことも含めて、あるいは、今、国の補正予算でいろいろ整備の促進方を措置されましたけれども、一たん設置されても、それを維持していくのは、今お話ししていますように、相談員を確保していくとかそういう面で非常に難しい点があろうかというふうに思います。そういう意味では、北海道の場合は非常に広域的なところもありますので、道が、例えば十四支庁ありますけれども、今支庁の再編の事務をいろいろやっています。

 そういう中で、例えば、ブロックごとにまとめて道としていろいろ措置するかとか、あるいは、もう一つの方法としては、それぞれのブロックというか地域の中核的な市で既にやっているところを充実して、それを周辺の市町村も可能かとか、いろいろな考え方はとれるかと思いますので、そちらの方が現実的かなというふうに思ったりしています。

 それから二点目、交付税ですけれども、確かにおっしゃるとおりで、小川先生も専門ですけれども、問題は総額が本当にしっかり確保できるかというのが一つありますね。ところが、それは定かでない。もちろん、我々としては総額確保というのは最大のあれで、要望させていただいておりますけれども、それが一つあります。そこが必ずしも総額として潤沢には来ないとなると、やはり消費者行政というのは、今までもそうでしたけれども、ついついわきの方に押しやられているという例が多かったように思います。

 そういう意味では、しっかり消費者行政を根づかせるためには、次善の策かもしれませんけれども、ある意味ではひもつき交付金という形でしっかりとやっていくのがより現実的かなというふうに思います。一方では、地方の自主性とかそういう意味で補助金のカットとか交付金どうだとかいろいろ議論ありますけれども、そういう中でも、消費者行政については、こういう交付金的なものでしっかり別枠でやった方が効果があるかなというふうに思っています。

小川(淳)委員 大変参考になりました。

 ありがとうございました。

船田座長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党・大地・無所属の会の糸川正晃でございます。

 本日は、四人の陳述人の皆様方、大変貴重な御意見をありがとうございました。最後の質疑者でございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず、池田陳述人にお尋ねをさせていただきますが、先ほどのレジュメにもございました消費者団体訴訟、これは非常に重要だろうなというふうに思っています。というのも、悪徳業者をどうやって規制をして排除していくのか、イタチごっこだというところもありますけれども、どうやってその排除をしていくのかというところ、これを考えたときに、業者に対して重いペナルティーを科していくということも一つの手段ではないかなということがあるわけです。

 そこで、悪徳業者の違法収益の剥奪、こういうものについて、各国で、いろいろなところで制度がございます。我が国にもこうした制度の導入というものが必要だというふうにも言われているわけですが、今後、日本に導入する場合、先ほど先生は、例えば課徴金制度というものも必要ではないか、こういうこともおっしゃられました。もしくはまた父権訴訟というものが必要になってくるのかもしれませんし、被害者の立場からすれば、数万円の被害ですよね。例えば三万とか四万、五万、こういうような被害の場合、訴訟費用の方が多くかかってしまうから、泣き寝入りをせざるを得ない。では、かわりにどこか団体が訴訟をして、訴訟をしていただくのはいいんですけれども、それが自分に返ってこないのか、返るのかということもあります。

 ですから、例えば少額訴訟制度の援用のような形とか、もっと簡易的な訴訟のあり方というものもあってもいいのかなというふうにも思うんですけれども、こういうことを検討していく際に、どういった点に留意をしたらいいのかということをお尋ねしたいというふうに思います。

池田清治君 どうもありがとうございました。

 先ほどの説明は舌足らずで、もうちょっと詳しく説明をさせていただきます。

 今、先生お挙げになったのは、課徴金制度、消費者団体訴訟、それから父権訴訟という三種類でございます。それぞれ特徴がございます。

 まず、消費者団体訴訟というのは消費者団体がやりますので、行政が動かなくても消費者が自主的に行ける、団体が動いてくれれば行けるんだということでございます。

 問題は、先ほど言ったとおり、その訴訟費用をどうするか、支援の問題でございます。訴訟は、さすがに団体にやってもらわなければいけないでしょう。しかし、民主党案を見ますと分配までなさるというんですが、これは別のやり方もある。負担を軽くするやり方、つまり国に分配手続をやらせるという手段もあるのではないかというのが、私のやり方でございます。

 二点目です。

 課徴金とか父権訴訟というのはそれぞれ制度の組み方でございますので、それぞれ国会でこういう課徴金制度、こういう父権訴訟制度と、つくってしまえばこれはいろいろなタイプがあるんですけれども、基本的に課徴金ですと、普通は具体的にこういう行為をしてはいけないと明確に決めていって、この場合については課徴金をこういうふうに課しますよ、具体的な金額は、金幾らと政令か何かで定めるにしても、行政庁だけでできますので、これが多分一番迅速だと思います。ただし、問題点がございまして、これはまず取っちゃうわけですね。後から不服審査とか、あるいは訴訟とかできるわけですけれども。

 これは、例えば課徴金制度で、社会的に違法な行為だったら取れますなんて、そんな包括的なことはできません。個別具体的にやっていかなきゃいけないんです。これはその意味で非常に効率的ですし、課徴金を分配するかどうかはちょっと別ですけれども、もし分配手続までできるとすると、これはかなり有効だと思います。先生おっしゃった少額訴訟でも、かなり有効だと思います。ただし、問題があって、先生方の用語で言うと、多分すき間事案みたいなもの、つまり法律の条文はない、しかしながら社会的に言うと違法だ。民主党の案もそうなんですけれども、これは別に、団体訴訟で、個々の条文は必要ないわけですね、民法七百九条という一般的なもの。

 父権訴訟の場合ですと、行政庁がかわりになって訴訟を起こすわけです。つまり、裁判所の審査を入れるわけです。そうすると、別に、法律上の根拠は民法七百九条ということになるんですけれども、必ずしも明確な条文で金幾らという形にならなくても、包括的にすき間を埋めていけるという、多分制度の仕組み方ですけれども、機能がございます。ですので、三つともそれぞれ特徴があって、多分限界があると思います。父権訴訟は、すき間を埋める以上はきちんと裁判所の審査を受けなきゃいけない、だから制度は重くなってしまうということはありますけれども、すき間を埋めることはできる。

 では、三つとも必要か。三つあればいいと思うんですけれども、なじみやすいものから例えば入れていって、それで実効が上がるのであれば、そのあたりである程度考えていくという方法もあるのではないか。ですので、留意点なんですが、いろいろな制度があるかもしれませんが、それぞれ特徴がありますので、それをどう使いこなしていくか。

 最後に、もっとテクニカルな問題になりますと、課徴金も取った上に消費者団体からも取られるのかとか、そういう調整もございます。それは現にドイツではやっている調整、やっている規定もあるんですけれども、そういう点も行く行くは問題になるかもしれませんけれども、今は課徴金ならばそれほど、現にあるものですから、僕は知りませんけれども、景表法の改正のときには課徴金を入れるんだけれども、消費者庁に所管が移ったら何か課徴金の規定がなくなったとかなんとかとあるものですから。

 きょうはわざわざ父権訴訟じゃなくて課徴金を挙げましたのは、こっち側の方が結構実効的でリアリティーがあるのかなと思って、挙げさせていただきました。

 長くなって済みませんでした。

糸川委員 どうもありがとうございました。

 次に、渡邉陳述人にお尋ねをしたいんですけれども、先ほどこういうリーフレットもいただきました。札幌市が全国的に見ても早い時期から消費生活関係の条例とか、こういうものを制定するということで、非常に消費者行政に関しては先進的な地域だなということも感じているわけでございます。

 消費者問題への対応の状況、特に高齢者の消費者に対する被害の防止、そして救済の取り組み、今、予算も三〇%ぐらい減らされ、そして職員も四二%減ったというような陳述もございました。

 そういう中で、実際、高齢者の方々の相談が非常に多いと思うんですけれども、では、高齢者の防止をどういうふうに事前にしていくのかということ、それからお取り組みの状況と実際に被害に遭われてしまった方をどうやって救済するか。このリーフレットに一部書いてございますけれども、また陳述人の御意見をいただきながら、少し御説明いただければと思います。

渡邉三省君 今の御質問でございますが、私は、消費者行政そのものというのはまちづくりに直結するものなんだろうなと思っております。

 先ほど申し上げましたように、札幌市は百九十万人で十区体制になっておりまして、各区大体二十万から三十万ぐらい人口を擁しております。その中で何をどうやって消費者被害を防止していくかということになりますと、今の上田市長になりましてから、まちづくりセンターということで八十七カ所を地域に設けておりますが、そこが各町内会とか関係団体と連携して、いろいろなまちづくりをしている。

 実は、この高齢者の消費者被害防止ネットワーク事業というのも、消費者センター・相談室だけではとても無理な話で、地域のケアマネジャーとか包括支援センターとか、高齢者の方々と地道に接している方々の御協力を得て、何か問題が起こりそうになったときに相談室の方につなぐとか、危うい場合は警察というのも書いてありますが、そういうところと連携していくということでございます。

 日ごろから御高齢者の方の姿というか生活を見ている地元の方々が、そういうアンテナを張りめぐらして、その結果を相談室につないでいくというのが、消費者被害の未然防止とか、あるいは仮に布団を何枚もたくさん買わされたときも、ふだん日ごろから自宅に行っている民生委員さんとかそういう方々が何か異変を察知して、それを消費者センターの相談室につなぐとかしていくというのが、私どもの消費者行政がまちづくりそのものだという意図でございます。

 先ほど申し上げましたように、相談室自体は消費者協会が実際受け持っておりますが、それは四十年かけてお互いに消費者協会と私ども札幌市が連携協力、今風に言いますと協働ということになりましょうか、その中で培ってきたということでございますので、今どき委託が、民営化云々、人を減らすというふうに見られますが、私どものは、本当にこの四十年間の中で培ってきたその結果として、この高齢消費者被害ネットワーク事業もあると。

 追加で一つ申し上げますと、地域として、そういった方々だけじゃなくて、隣近所のおじいちゃん、おばあちゃんを守ろうという意味でいいますと、先ほど申し上げた悪質商法追放モデル地区事業というのを設けまして、要は、この高齢者のネットワーク事業が線的なものであるとすれば、この悪質商法追放モデル地区事業というのは面的な中で連携をしていくというものでございまして、まちづくりの中でこれに取り組んでいるものでございます。

糸川委員 ありがとうございます。

 では、橋本会長にお尋ねをしたいと思います。

 ちょっと今までと違う部分かもしれませんけれども、食の安全と安心という観点からお尋ねしたいんですけれども、今、例えば生産者と消費者の連携のあり方とか、現在の食品表示の問題点とか、最前線で消費者の相談に当たっていらっしゃる陳述人が感じていらっしゃる食をめぐる問題について、何か御意見がございましたらお聞かせいただけますでしょうか。

橋本智子君 食の安全、安心に関しては、消費者団体としては当然取り組んでおりますし、その一環として、毎年、道の協会の重点目標というのをつくっているんですけれども、食の安全、安心というのは最近の大きな重点目標の一つです。その中で、北海道という特性を生かした地産地消運動などを展開していたりしておりまして、そういう中で感じるのは、今、消費者は食の安全、安心に関して非常に敏感になっているなという思いがいたします。

 連携というところでは、今言いましたように、地産地消ということで、生産者等といろいろと各地域協会が本当に地域で各生産者と連携を持っているというところが、いろいろな事例もあります。私どもも、地元では、地元のJAなどといろいろと連携をして、特別栽培米であるとか、地元でとれたものを積極的に買う、そういうふうなことをしております。

 表示に関しましては、今回、一元化に当たって共管、移管される、例えば景品表示法であるとか、それからJAS法であるとか、そういったところが、今までは縦割り行政の中でちょっと私どもでは見えなかったところが、今回一元化に当たりまして、全面的にというのは景品表示法というふうになっていますけれども、ほかのところも共管というところで、もっと使いやすくなっていくのではないかなというふうに感じておりますし、一昨年になりますか、食の偽装というところで、そういった縦割りの、法律自体も縦割りというところでなかなかわかりにくかったところが、一元化になったときにもう少しわかりやすくなっていくよう、私どもも提言していきたいなというふうに思っております。

糸川委員 ありがとうございます。

 もう時間もございませんので、最後に、砂川陳述人に質問させていただきますが、先ほどの陳述の中でも、帯広市は食の大生産地であるということであり、そして、人口十七万人の消費都市であるということでございました。

 生産者と消費者の連携を進めているということも聞いておりますけれども、生産者そして事業者と消費者の連携、こういうことについて御意見をいただきたいのと、帯広で元気なお菓子メーカーで、柳月という会社もございますね。この会社なんかは本当に消費者のことを考えられていますので、こういう業者と市との連携というものをどのように常日ごろ考えていらっしゃるのか、御意見をいただきたいというふうに思っております。

砂川敏文君 生産者と消費者の連携、特に食の問題ですけれども、おっしゃるように、帯広の場合は、生産者も食の安全、安心に非常に敏感にならざるを得ないという状況であります。

 そういうことで、日ごろから農業、畜産等々の生産現場を消費者の皆さんに直接見ていただくという事業を市が主催したりしてやってございまして、それまで消費者の皆さんは、商品は見ますけれども、それがどういう現場でつくられてどういう状況で生産されているか、扱われているかというのはよくわかっていない部分がありました。それをしっかり見ていただく必要があるということで、そういう現場を見ていただくツアーをやったりして、消費者の皆さんも生産面に対する理解も非常に深めていただいているというふうに思っています。

 私としては、実はこの議論の中で、消費者の皆さんの責務といいますか、それも一つあるんじゃないかなというふうに思います。一方的に生産者に要求なり、それを消費者が弱い者だと、とにかくもう何もできない、ただ行政的に組織として悪い生産者を取り締まってくれ、それに消費者が寄りかかっているというだけではなかなかうまくいかないなというふうに思いますので、一つの例ですが、消費者の方々が実際にそういう生産の現場なりを見て、提案できるものは提案していくし、そして応援するものは逆に消費者サイドから応援していく、こういう取り組みが必要だと思って、私どもやっているところであります。

 それと、元気な企業というか、柳月さんのお話が出ましたが、地元の原料、材料を、安心、安全なものをしっかりと使用して、そしてそれを目に見える形で消費者に返していく、商品として返していくという企業は、非常に最近もふえてきてございます。

 それで、私どもとしては、そういう事業者に、できるだけ行政サイドにもいろいろ意見をいただきたいということで、市がつくっている産業振興ビジョンという、それの委員とかになってもらって、そういう意識を持った生産者の方々の意見というか、それをしっかり反映させていく、それを産業政策にもつなげていく、こういう感じで今進めてございます。

 いずれにしても、消費者の皆さんもしっかりと、そういう意味では啓発事業も消費者行政の大きな範疇に入っていますから、これもまたしっかりやっていかなきゃならぬかなというふうに私は思っております。

糸川委員 大変貴重な御意見をありがとうございました。

 これで質問を終わります。

船田座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつ申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、御多忙の中、また長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただきました御意見については、当委員会の審査に資するところ極めて大きなものがあると思っております。ここに厚く御礼を申し上げます。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後三時十四分散会

    ―――――――――――――

   派遣委員の兵庫県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成二十一年四月六日(月)

二、場所

   クラウンプラザ神戸

三、意見を聴取した問題

   消費者庁設置法案(第百七十回国会、内閣提出)、消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案(第百七十回国会、内閣提出)、消費者安全法案(第百七十回国会、内閣提出)、消費者権利院法案(枝野幸男君外二名提出)及び消費者団体訴訟法案(小宮山洋子君外二名提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 岸田 文雄君

       鍵田忠兵衛君   亀井善太郎君

       七条  明君 とかしきなおみ君

       枝野 幸男君   小宮山洋子君

       階   猛君   園田 康博君

       田島 一成君   大口 善徳君

       吉井 英勝君   日森 文尋君

 (2) 現地参加議員

       谷  公一君

 (3) 意見陳述者

    神戸市消費者協会専務理事           妹尾美智子君

    九州大学大学院法学研究院教授         清水  巌君

    和歌山県知事      仁坂 吉伸君

    滋賀県野洲市市民健康福祉部市民課市民生活相談室主査         生水 裕美君

 (4) その他の出席者

    内閣府大臣官房審議官  堀田  繁君

     ――――◇―――――

    午後一時六分開議

岸田座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院消費者問題に関する特別委員会派遣委員団団長の岸田文雄でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、第百七十回国会、内閣提出、消費者庁設置法案、消費者庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案及び消費者安全法案並びに枝野幸男君外二名提出、消費者権利院法案及び小宮山洋子君外二名提出、消費者団体訴訟法案の審査を行っているところでございます。

 本日は、各案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当神戸市におきましてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いを申し上げます。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うこととなっております。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、本日の出席者を紹介いたします。

 まず、派遣委員は、自由民主党の七条明君、鍵田忠兵衛君、亀井善太郎君、とかしきなおみ君、民主党・無所属クラブの園田康博君、枝野幸男君、小宮山洋子君、階猛君、田島一成君、公明党の大口善徳君、日本共産党の吉井英勝君、社会民主党・市民連合の日森文尋君、以上でございます。

 なお、現地参加議員といたしまして、自由民主党の谷公一君が出席されております。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 神戸市消費者協会専務理事妹尾美智子君、九州大学大学院法学研究院教授清水巌君、和歌山県知事仁坂吉伸君、滋賀県野洲市市民健康福祉部市民課市民生活相談室主査生水裕美君、以上四名の方々でございます。

 それでは、まず妹尾美智子君に御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

妹尾美智子君 皆様方御存じのように、日本の消費者問題あるいは消費者行政と申しますのは、消費者運動が先行いたしまして、その後を追うような形で法律なり制度ができたということに非常に大きな特徴がございます。したがいまして、運動が先行しておりますので、やはり私どもといたしましては、結論から申し上げますと、とにかく早く私たちの中心になっていただく中央官庁ができること、これが唯一のお願いでございます。

 運動が先行いたしまして、それに行政なり法律が後手後手に、後から後から追っかけてきたという一つの例を申し上げますと、例えば過大包装の追放運動というのをやりました。そのときにも、運動として、過大包装というものの基準を消費者団体の方でつくりまして、それを受けて、当時の通産省が包装基準というのをおつくりになったというような一例がございます。

 ほかにたくさん例はございますけれども、そういうふうに運動が非常に先行してきたということがありますだけに、やはり私どもは、運動をやっておりまして何か問題が起きるたびにうろうろしながら、一体どこに相談に行ったらいいのよ、どこで話を聞いてくれるのよと言って、うろうろしていたというのが実際の実態でございます。そして、まあ仕方がない、それじゃ、国民生活局にお願いしようか、国民生活センターにお願いしようかと、もう本当に国民生活局、国民生活センターを唯一の頼りどころにして運動の問題の解決を図ってきたということは間違いのない事実だと思っております。

 私ども、そういう運動をやっております中で、とにかく消費者の味方になってもらえる局が、あるいは部署が一日も早くできないものだろうかなということは悲願に近い願い、私どもも、過去、比較的長いこと消費者運動をやってまいりましたけれども、本当にいつになったら私たちの身を守ってくれる、私たちの味方になってくれる消費者関係の庁ができるんだろうかというのが、実は切実な願いだったわけでございます。

 したがいまして、もしここで、せっかく一生懸命に消費者団体が頑張ってまいりましたいろいろな消費者問題、消費者運動、そういうものが芽を出さないというようなことになりましたら、消費者団体、消費者運動をやってまいりました私たちにとっては、政治への不信というか、何か本当に悲しい思いになってしまうんじゃないだろうかなということが、私どもの消費者庁に対する一つの、一番大きな期待であるということでございます。

 いろいろ難しいことはわかりませんし、我々、地方におりますと、新聞報道が唯一の頼りで、今どういうふうに動いているのかなということを判断しながら、いろいろ考えていっているわけでございますけれども、消費者庁が消費者問題を一元化させました一つの独立した省庁として立ち上がりましたときに、同時に消費者政策委員会というのができるということを新聞報道その他で知りました。

 私は、消費者庁が、どっちでどうあろうと、一元化されるということが非常に関心があることであって、消費者庁、あるいはどういう名称になるかわかりませんけれども、そういうふうなものを実際にチェックし、そういうものを本当に見守っていくというか見ていく権限、これはやはり消費者政策委員会に強い権限とチェック機能を持たせていただいたら、消費者庁というのも、ある意味ではふわっとした形ででき上がるかもしれません。考えてみましたら、環境省でも、初めは環境庁から出発いたしまして、それが環境省という、あそこまで大きく成長したわけでございますけれども、それに近い歩みができましたら本当にうれしいなというような感じがいたします。

 それから、三つ目でございますけれども、今消費者問題の最先端を行っておりますのは、実は消費生活相談員でございます。この消費生活相談員が、神戸の場合には消費者協会の方へ全面委託をいただきまして、消費者協会の方から、職員、相談員の人を探し、そして相談員の人を、きょうごらんいただきました、あの生活情報センターに派遣をしている。

 だから、一日に十二人で二組でございますから二十四人。それから、六十歳の定年を過ぎました人たち、一番奥の部屋で見ていただきました、あのいきいきトークの講師になっております皆さん方。そういう方々の様子を私どもはじっと見ておりますけれども、私は、やはりこの方々に、例えば地方公務員であるとかあるいは国家公務員であるとかというような資格はむしろない方がいいんじゃないだろうかなという気持ちを持っております。

 その理由といたしましては、公務員になりますと、どうしても公務員の人員の枠がございます。その枠にもしはめられた場合に、今我々がやっておりますだけの相談員の人たちの活動の場が果たしてできるだろうかどうだろうかということの不安が、実は一方であるわけです。そういう意味で、いわゆる消費者と同じ目線と申しますか、視点に立って、そして自由に消費生活相談が受けられるというふうな立場に立ってもらった方がいいんじゃないか。

 ただ、もし地方公共団体なり地方行政の消費者行政の中にそういう専門職の方が必要ということであれば、むしろ地方公務員の方々の専門職の一つとして消費生活相談員という資格を与えていただいて、そしてこういう方々が各地方公共団体におっていただけるような義務づけ、そういうふうなことをしていただいた方がいいんじゃないだろうかな、そういう感じがいたしております。

 消費生活相談員さんの一番大事な視点は、消費者と同じ目線に立って、あるいは消費者と同じような生活をしながら、その中から問題を探していくということになりますから、やはりそういう我々と同じ立場に立った人たちが相談員で頑張ってくださるということを願っております。

 ただ、きょうもちょっとお話が出ましたように、神戸の場合に、生活情報センターにいわゆる警察のOBの方がいらっしゃいます。この方々の存在などをお考えいただきますと、今、消費生活相談員の方の安全を守るということが割合大きな問題となって浮かび上がってきております。きょう役所の方はおっしゃいませんでしたけれども、相談員としての顔写真とか、相談員だということが余り人に知られないような立場、それはやはり自分を危険から守りたいからということをよくつぶやきのようにしておっしゃる相談員さんがいらっしゃいます。

 そういうふうなことをいろいろ考えてまいりますと、むしろ相談員さんに身を守るということの安全のために保険を掛ける、その保険を掛けるということをむしろ義務づけていただいて、そして相談員の方々の安全を守ってあげていただくということが今相談員さんへかかります非常に大事な問題ではないだろうかなというふうな感じがいたします。

 次にお願いいたしたいと思いますのは、センターの充実でございます。これは、きょうごらんいただきまして、神戸はおかげさまでセンターが充実いたしております。割合小さくなるわけでなし、むしろ拡張しながらセンターとしての役割をあの汚い建物の中で一生懸命頑張ってやってくださっているわけでございますけれども、やはりお金が欲しいなというのが本音の考えでございます。センターはセンターで神戸市役所が運営なさっておりますけれども、相談員その他の仕事というのは我々消費者協会の方へ委託事業として参りますから、お金がちょっとでも多かったら委託費用もちょっとふえるかな、何かそういうふうなことを考えますと、やはりどうしても、センターにもいろいろな意味でお金が地方の方へ流れてくるということをしていただけたら本当にありがたいなという感じがいたします。

 もう時間もあれでございますから、私申し上げたいと思いますのは、私たちが今問題として考えておりますことの中に、いわゆる認定消費者団体というんですか、適格消費者団体というんですか、あの枠がちょっと厳し過ぎまして、私どもがどれだけ、何十年、一生懸命になって消費者運動をやっていても、あの枠にはめようと思いましたら手も足も出ません。そうすると、訴訟制度に対する支援制度というのは条例の中でございますけれども、消費者団体が表に立ってやれるということは不可能になってまいりますので、できましたらあの枠をもう少し緩めていただけないだろうかなというような感じがいたします。

 六番目でございますけれども、地方の行政機関の充実と申しますのは、私ども本当に神戸は恵まれていると思います。灘神戸生協さんがあり、それから非常に神戸市の消費者行政に対する理解があり、そして企業の方々と一緒になってという三者合意システムという考え方を消費者運動の一番視点に置いておりますので、そういう意味では非常に恵まれた形の中で我々も消費者運動をやっておりますし、神戸市の消費者行政というのも非常に充実してきているのではないだろうかなという感じがいたします。

 ですから、消費者の権利を主張するということもさることながら、ここで消費者主権の確立ということに向けて、むしろ消費者教育の充実というのにもっともっと私どもは力を入れていかないといけないのではないだろうかなという感じがいたします。

 その消費者教育の充実でございますけれども、それにつきましては、ある意味では段階的な消費者教育のプログラムというのがございません。ですから、段階的なカリキュラムというか、段階的な消費者教育のプログラムをここで皆さんと御一緒になって考えていく。そして、だんだんと指導者を養成していき、とにかく消費者一人一人の主権の確立ということに教育活動を通じて頑張っていきたいなというのが今の私どもの思いとしての一番大事な部分になってきているような感じがいたします。

 消費者教育は、どうしても、指導者の養成という部分がございませんと、消費者問題を教えられる人がいないというのが今の現状でございます。だから、その教えられる指導者を、確実な、段階的なカリキュラムの中で養成していきたい、これが消費者教育の充実ということの中で一番お願いしたいことでございます。

 もう時間でございますのでここでやめますけれども、最後にもう一度お願いいたします。とにかく一日も早く、消費者が頼りになる、消費者が頼っていける、そういう窓口、それを一日でも早くつくっていただきたいというのが地方で消費者運動を頑張っております私の切実な願いでございます。

 どうも長々とありがとうございました。(拍手)

岸田座長 ありがとうございました。

 次に、清水巌君にお願いいたします。

清水巌君 それでは、私は、消費者法をおよそ三十年近くにわたりまして研究し、また、適格消費者団体ひょうご消費者ネット、現在その理事長を務め、消費者運動も行ってきた立場から、私が主としてその歴史から学べることについて意見を申し述べたいと思います。

 私のレジュメが、先ほど直前につくったところ、プリンターのぐあいが大変悪く、本当に読みづらいものになってしまいまして、恐縮です。今からできるだけ言葉で補いながら御報告したいと思います。

 一つは、まず消費者庁設置法案、それから二番目が消費者安全法案について、三番目が消費者団体訴訟法案についてであります。

 まず消費者庁設置法案についてですけれども、レジュメに書きましたように、消費者の保護あるいは権利擁護の視点に立った専門的で統一的、一元的行政組織として、これまで、国民から見ますと、三十年以上期待してきたいわば悲願と言ってもいいようなものであります。

 例えば、下に書きましたが、三十年以上前に、例えばカナダとかノルウェーとかフィンランドとか、あるいはスウェーデンで消費者オンブズマンがある、そういったことが我が国に紹介されて以来、我が国でもこういう消費者庁ないし消費者省といった行政組織がないと、消費者被害に対して予防も適切にできない、被害の救済もなかなか適切にできないという実態がありましたので、そういう悲願があったわけですけれども、今国会でこうして与党、野党の議員の先生方の協力で設置に向けて本当に真剣な議論を今現在していただいているということは、研究者として見ましても、ちょっと主観的な表現になりますが、大変うれしいことであります。

 ぜひ、この国会では必ず、まずこういう組織を実現していただきたいと思います。ここで何らかの形でできなかったら、また再度エネルギーを上げるというのはこれまでの歴史から見ても大変なことなので、ぜひ今回は、これまでの消費者基本法と同じように、できれば与野党の全会派一致の新しい統一的消費者行政組織ができることを期待しております。

 これまでも数多くの総理大臣が、生活者優先、消費者中心の消費者行政に転換しなければならないということを所信表明演説でおっしゃいましたが、なかなか実現できなかった。それが今回本当に実現しそうであるという意味で、私もそういう点でも本当に大きく期待しております。

 ちょっと研究者的表現ではないんですが、これは本当はカットしたかったんですけれども、時間の関係で、私個人用のメモなんですが、組織というのは人情のある人間が動かすものであるとちょっと書いていますが、つまり機械ではなく人情のある人間が動かしています。

 また、身近により多く入ってくる情報源、それは官庁から見れば事業者側の情報が圧倒的に多いわけですけれども、それによってこれまでも行動しがちでありました。主に産業の育成、発展を支えることを使命としてきた官庁は、たとえ理論的には国民生活優先あるいは消費者の権利擁護ということが理解できていても、具体的に人間として行動する場合には、産業助成官庁の対象である産業との板挟みになって、的確な決断ができないこともあったということは御存じのとおりであると思います。

 これまでも、手心を加えたり、経営に配慮して規制を行わなかったり、基準を緩めたりする。具体的にもう裁判所で国家賠償責任が肯定されてしまったり、担当の課長が有罪判決を受けるなどもあったわけですね。そういう意味では、消費者の権利、国民の安全を第一義とする官庁があれば、このようなことは防げるのではないか。そういう意味で、消費者庁の設置については心から期待しております。

 その次に、消費者庁設置法案につきましては、関連の法令の多くが消費者庁に移管されております。これも、私がさまざまな立場でこれまで国や地方公共団体の消費者行政にかかわってきたときに、絶えず大きな壁として省庁の壁というのがあって、なかなか本来の消費者被害救済制度ないし予防制度ができなかったわけであります。

 明治以来百四十年のこの大きな縦割りの壁を今回こうして突き崩す方向で法案をつくっていただいたということは、法案の中によっては、あるいは見方によっては、もっと移すべきであるという意見もあるかもしれませんが、ここまでできたということを、私は、正直言って、過去の私自身のさまざまな縦割りの壁にぶつかった経験からしますと、本当によくここまでしていただいたということで、研究者としても評価したいというふうに思っております。

 それから、所管法を、消費者関連の法律を一部移し、また一部移さず、また共管にしているという事態もありますけれども、例えばすべてを移管してしまいますと、では、これまでの各省庁は、さまざまな政策を企画立案する場合に、消費者の権利や利益のことについては、これは消費者庁にお任せすればよい、自分たちはもう考えなくてもよいんだという意識がもし出てくれば、私は非常に危険だと。たとえ消費者庁にほとんどの権限が移ったとしても、どの省庁も常に消費者の立場は考えて企画立案してもらわなければならないと思いますので、そういう意味では、共同管轄にしているというのも、私の勘ですけれども、恐らく合理的に機能するのではないかというふうに考えます。

 それから、地方公共団体の自主性、自立性が発揮できるような制度にしていただきたい。

 これまで、消費者に関するさまざまな制度は、地方から国へという流れと、国から地方へという流れがありますが、例えば消費者啓発、苦情処理、消費生活センターの設置あるいはクレジット取引の規制などはまず地方公共団体から始まり、それが次々と国にも取り入れられたという経緯があります。また、国から地方へは、申し上げるまでもなく物すごいものがありますが、こういうふうに、消費者問題に対応する制度というのは、各地方公共団体が住民の意見を反映しながら創意工夫することによってでき上がり、それがまた国にも刺激を与え、またそれが国から全国に広まりといったこともありますので、国がほとんど抱えるのではなく、できるだけ地方自治による地方住民の意思を尊重できる制度も残しておいていただきたいというふうに考えます。

 二番目に、消費者安全法案についてでありますが、ここで主に消費者の相談ないし苦情処理の制度のあり方について、少し気になったところについて意見を申し上げます。

 これまで、消費生活センターの設置の都道府県の義務とか市町村での努力義務とか、あるいは、それ以前から、消費者保護基本法の時代から既に努力義務が規定され、さらに消費者基本法へと名称が変わってからも同じようにそういう制度ができておりまして、都道府県はすべて消費生活センターが設置されていますが、市町村については、ほとんど充実していないという問題があります。

 その実態を、なぜそうなのかということを理解していただいて、抽象的に努力義務を置くだけでは今までと同じ形になってくると思いますので、そこについてぜひ理解していただきたいというふうに思います。

 もう一つは、消費生活センターが苦情処理をする場合に、しばしば事業者の方は、一体どういう法的根拠があって自分を呼び出すのかとか、相談員さんに対して、あなたは一体どういう立場でどういう地位で一々私にこういうことを言ってくるのかとか、そういう形で事業者がなかなか信用してくれない、信頼してくれない、あるいは応じてくれないといったことが非常に多いということですので、いわば、消費生活センターや苦情処理の努力義務とか責任があるではなくて、あっせんの権限がある、あるいは調停の権限があるという権限を消費者安全法で認めていただくということが非常に重要ではないかと。単なる行政機関の義務の方ではなくて、行政機関にそういう権限があるということを明確に規定していただきたいと思います。

 それとの対応で、相談担当者の専門職としての待遇の抜本的改善、これは私もお願いしたいと思います。

 これまで相談員の方の待遇については恐らく既に何度も、ここでも議論されておりますので詳細については申し上げませんが、ぜひ相談員の方については、まず国家によってきちんとした資格制度を、さらにより明確な資格制度を設けていただいて、消費生活センターにはそういった資格を持った専門職員を一定数は必ず配置しなければならないという法律上の義務づけをしていただきたい。これは、全員がその資格を持った者でなければならないという意味ではありませんで、消費生活センターというからには何名、そういったような形にしていただいて、ある程度多様な相談担当者の任用も残しながらも必ず一定の相談担当者を置いていただく。

 そして、相談担当者は基本的にはすべて正規職員化していただきたい。国家公務員か地方公務員かは別としまして、正規職員化しなければ、いわゆる嘱託等の立場ですと、常に、都道府県の条例によって嘱託にはこれ以上の待遇はできないんだ、自分たちは相談員の方の能力とか立場はよくわかるけれども、できないといったようなことをたびたび言われながら、そのまま今日まで来ておりますので、基本的には正規職員化する方向で考えていただきたい。

 相談員は、私はずっとこれまで三十年間にわたって養成講座、研修講師を務めてまいりましたが、相談員の立場というのは、いわば、正しい法適用をするという意味では裁判官、交渉力の弱い、情報力の弱い消費者の味方をするという意味では弁護士、そして消費者教育を担当するという意味でいえば教育者、そしてさらに悪質業者を指導しなければならないという行政官としてのこれだけの高い能力と業務を行っておられるわけです。それを、これまでの物すごい個人的な努力をも含めた献身と経験の積み重ねの中で現在適切な処理を行っておられるわけで、それにふさわしい待遇を必ず実現していただきたいというふうに思います。

 ちょっと時間の関係ではしょりますが、三番目の消費者団体訴訟法案につきましては、真の消費者の権利の実現と悪質業者の市場からの駆逐というか追放のためには必要不可欠な制度でありますので、これはぜひ強力に推進していただきたいと思います。

 ただ、適格消費者団体がこのような権限ないし任務を負わされた場合、例えば現在私が所属していますひょうご消費者ネットでは、会員数は百三十六名で、個人会員としては全国で多分最多だと思いますが、予算額は平成二十年度で九十四万円、こういう形です。それで、本当に、今、弁護士五十名ぐらいと相談員の資格のある方とか行政職員とか市民とかで頑張ってボランティアで活動しておりますけれども、活動すればするほど負担も非常に大きく、やはり一定の限界があります。

 特に、損害賠償請求権で得た資金を裁判所の管理のもとに配分するという業務を行うようになれば、当然、専門の職員を置かなければならず、その場合は、推定で言えば、二人の職員を置いた場合も年間最低四百万ぐらいは必要になるということでありまして、やはり前提条件として、適格消費者団体には公的な、決して個人の、会員たちだけの利益のために行動しているわけでは全くありませんので、いわば公的な立場で活動していますので、そういった資金的な援助をぜひお願いしたいと思います。

 ちょっと時間が超過してしまいましたが、また改めて、御質問のところでお答えしたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

岸田座長 ありがとうございました。

 次に、仁坂吉伸君にお願いいたします。

仁坂吉伸君 仁坂でございます。

 こういう大変重要な政策決定がなされる委員会にお呼びいただきまして、大変光栄でございます。

 どうして私が呼ばれたのかなというふうに思ったのでありますけれども、私は前職が国家公務員でありました。そのときに、実は経済企画庁の企画課長というのをやっていたときがありまして、消費者契約法という法案を官房の課長として国会にお諮りした、そういう経験があります。官房の課長ですから、本当はそんなに中身の話などしなくても原課がやってくれるというのが多いんですけれども、たまたまそのときは経済企画庁が二十年ぶりぐらいに本格的な法案を抱えたというような時期でしたので、なれないことが多くて、結構自分でもいろいろなことをいたしました。その経験があるので呼ばれたのかな、変だなと思いながら参上いたしました。

 ただ、そういう話ではなくて、現在何が和歌山県で行われているかということをきちんと御説明申し上げないといけないと思いますので、消費生活センターの相談員の方々と結構時間を長く使いましていろいろ相談をしてまいりました。まず、その状況について皆様に御説明申し上げたいと思います。

 和歌山県の消費生活センターは、若干恥ずかしながらでございますけれども、県は、和歌山市と田辺市に一つずつございます。それから和歌山市も消費生活センターを持っておりますので、三つありますが、三つしかないと言うべきであろうかと思います。ただ、各市町村にも相談窓口がありまして、センターではないんですけれども、それぞれの地方公共団体の職員が消費者の相談に応じて事実上の指導もしています。それから、難しいですから消費生活センターにどんどんと相談に来るという状況でございます。

 消費生活センターは、もちろん県の出向職員も行っておりますけれども、主力は相談員の方であります。特に、資格を持っておられる相談員の方が全体で十二名でございますけれども、いらっしゃいます。この方々は消費者サポートネット和歌山というNPOに所属していまして、和歌山県から相談の業務を委託申し上げておるというような状況であります。

 この方々といろいろなお話をしまして、私は大変感銘を受けました。その辺の役人でもちょっとなかなか使いこなせないような民法やあるいは消費者契約法の概念を全部心得ておられて、しかも大変な使命感を持って、困っている人たちを助けるんだというような気概に燃えておられる。それで、その前職とか、どうしてそのように御立派なんですかというようなことをお聞きしたら、別に、例えば今目の前にいらっしゃるような弁護士の資格を持っておられるような先生とか法学部をお出になった方とかそういう方では決してなくて、むしろ普通の主婦から使命感だけでこうやって勉強しました、そういうふうにおっしゃっている方が大変多うございました。そういう意味で、やはり大事なことは、使命感を持って一生懸命やるということが大事なのかなというふうに考えました。

 中身の相談は、ほとんどが電話相談です。したがって、そんなにたくさんセンターがなくても何とかやれますかねというようなことでありました。ただ、深刻な問題、あるいは問題になっているような案件、そういうものについては、実際に消費者の方と面会して、それでいろいろアドバイスをする。そのプロセスで、個別に指導、対応して、弁護士とも相談をして訴訟に持っていくとか、そういうこともやっておられますし、国民生活センターに連絡をしてアドバイスもいただくし、それから、国民生活センターに同じような案件がたまってくると、最近は、これを、内閣府の機能を通じて各省に働きかけて、いろいろと制度も変えてくださるように頑張ってくださっておる、そういうようなことを説明を受けました。

 では、どういうようなことをお望みですかというようなことを聞いてまいりましたが、まず、個別案件を丁寧に拾っている、拾っていても救えないものがたくさんあると言っていました。その救えないものは、実際に、例えば当人同士の法律手続等々から見ると、消費者側に手続的な瑕疵があるというか、油断があるような話が大変多い。それは、本人が訴訟しても、あるいは団体訴訟を仮にやったとしても、どうも負けちゃうという可能性が強いようなものがたくさんあるというようなことを言っておりました。

 では、それをどうやって救うかということで、一つは、消費者教育の重要性を強調したい。未然に、こうなったらこうなりますよというようなことをもっといろいろな人に教えないといけないというようなことを言っておりました。もう一つは、国民生活センター、それから新しくできる、名前はわかりませんが、消費者庁等々、そういう組織を通じて行政の内部で制度を検討していただいて、未然に、そういう消費者がひっかかりそうなものについてはルールをきちんと決めていただく、あるいはルールを変えていただくというようなことが必要なのではないかと言っておりました。

 さらに、先ほどもお話がありますが、もっと資金面で援助をと言われました。これは、現在は、一義的には県の責任であります。ただ、県の方も、例えば、ことし我々は百八十四人の退職者を出しましたが、八十七人しか雇っていません。そうやって行政改革をしながら何とか県の破産を食いとめている中で、なかなかたくさんの資源をここに投入することができないということも、国会の先生方にはおわかりいただきたいと思います。

 それで、実は、交付税をどのぐらいいただいているかということでございますけれども、大体、この関係で、我々は交付税の、基準財政需要額が千八百万円ぐらいの感じでございます。一方、消費生活センターを運用するお金、これはどのぐらいかというと、千七百五十万円ぐらいかかっています。かつ、実は、県からの職員とか、あるいは県の中にいる消費者行政をやっている職員の人件費などを入れますと、一億円以上それはかかります。

 したがって、もし国がこれを頑張れというのであれば、もう少し助けていただきたいなという気持ちも我々としてはございます。

 資料を読みますと、どんどん地方公共団体の予算が減ってきているといいますが、和歌山県は多少減っておりますけれども、そんなに減っていなくて、むしろ、ああ、これはいかぬというので、私になってから、この待遇は少しだけ改善しました。だけれども、少し苦しいということもおわかりいただきたいと思います。

 それから、この法律についてどうかということでございます。

 政府案を中心にして申し上げますと、担当の大臣を擁する消費者庁をつくる、それから表示規制、それから消費者と直接取引をするような法制の監督、そういうものを消費者庁に移したということについては大変立派なことだと思います。

 それから、他の法律の規定に基づく措置がないとき、事業者に措置勧告をしたり、あるいは譲渡等の禁止または制限を課する、消費者安全法の十七条、十八条、それから二十一条かな、回収命令とか、そういうようなものも直接持っておられるというのも、これまたなかなか立派なことだと思います。

 実は、志を持てば結果はついてくると私は考えます。先ほど何人かの方もおっしゃいましたように、消費者庁をつくってそれで頑張るというような役人グループ、それから大臣、そういう方がいらっしゃれば、それは内閣の内であろうと外であろうとみんな頑張れるんじゃないか、そういうふうに思いました。

 それから、消費生活センターの位置づけ、これは、地方において今までそれぞれつくっておったというのを必置という形で位置づけをしていただいた、それから、都道府県知事の内閣総理大臣への措置要請権も認めていただいた、この辺は大変評価したいと思います。

 それから、予算ですけれども、強化のための交付金も大変評価しております。

 一方、勉強いたしましたが、民主党がお出しの消費者権利院法も、同じような意味で立派な法律だと私は考えております。

 ただ、違うところは、行政委員会あるいは専門省庁の違いかなとか、あるいは行政庁による措置命令というのと、あるいは消費者権利官の要請による裁判所の命令ということで事態が決まってくるというような、私からいうと、法制上の違いはあると思いますけれども、同じような考え方でできているような気がいたしました。

 今後でございますけれども、二つございます。

 せっかく消費者庁をつくったのでございます。目的意識を持った者がそこに集う、それから専門の大臣ができる、あるいは別の意味で別の方がやられるかもしれませんが、それができる、それで任務をきちんと与えられる、そういうグループができるわけでございますので、そのグループの志というのはどんどん高まってくると思います。そうすれば、人事的にも、そういうことを任務としてやりたいという者を専門的にずっと一カ所に固めておく。今のままだと、経済政策とか分析とかいうのをやりたいという方々がたまに出向で来るということになるよりは、ちゃんとそこで専門の人たちを養成するということが大事なのではないかと私は思います。

 それから、先ほどからずっとありますけれども、消費生活センターの支援もお願いしたいし、それは単に予算だけではなくて、国民生活センターとの連携を、これは条文の問題ではなくて事実上の問題としていろいろお願いできればありがたいと思います。

 私は、新聞などで拝見いたしておりますと、本当の事情はわかりませんが、先ほど両先生からお話があったように、本件については対立があって、ひょっとしたら流れちゃうかもしれないなどという新聞記事を読んで、大変心配をいたしました。

 それにつけても思い出すのは、消費者契約法をつくったときに、やはり枝野先生御提案の法案が出ておりました。それから、政府案も出ておりました。その最後に枝野先生が討論に立たれまして、それを非常に感銘を持って聞いておった経験があります。それは、法律の必要性、趣旨、それをお述べになって、それで、消費者契約法というのが必要なんだ、政府案もいいけれども、民主党案はもっといいというふうに演説された。その後、反対多数で民主党案が否決され、その後、全会一致で政府案が採決されました。私は横におりまして、感無量の思いでこれを見ておりました。

 先ほどるる御説明ありましたように、小異を捨ててぜひ大同について、こういういい法律は何らかの形で通していただけますようにお願いを申し上げます。

 ありがとうございました。(拍手)

岸田座長 ありがとうございました。

 次に、生水裕美君にお願いいたします。

生水裕美君 野洲市役所市民部市民生活相談室の生水裕美といいます。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。

 昨年八月に、野田大臣が、滋賀県の小さな町である野洲市にわざわざ視察においでくださいました。現場相談員の声を真摯に聞いてくださったこと、本当に心から感謝しております。

 私は、平成十一年四月から、非常勤の消費生活相談員として働いていましたが、市長や職場の皆さんの御尽力によりまして、昨年九月、職員採用試験を受けまして合格し、十月からは正規職員として、今までと同じように相談現場で働いております。

 きょうは、お招きいただきまして、現場で働いている者の声として、また、非常勤と正規職員、両方経験した立場からお話しさせていただきたいと思います。

 センターの相談というのは、実情がなかなか知られていないように思うんですね。消費生活相談というのは、相談を聞いてアドバイスをして、PIO―NETシステムに打ち込んで国民生活センターに情報を送るだけではないんです。

 そこで、事例を二つ紹介させていただきます。

 一つ目は、資料三ページにあります下水道の排水管の清掃サービス、この事例です。

 相談者がペットボトルを汚水升に落としたことが原因で、排水管が詰まってしまったんですね。汚水が漏れそうになったので、電話帳に広告のあった水道トラブル二十四時間受付の業者に電話をかけて自宅に来てもらいました。現地を見た業者は、汚物を清掃する高額な薬品を使うので十七万円と高くなるけれどもいいですか、これをしなかったら大がかりな排管工事となるのでもっと高くなりますよと説明されたので、相談者は、高いけれども仕方ないかなと思いまして清掃をお願いし、十七万円払いました。一たん水は流れたんだけれども、結局また詰まってしまったんですね。御自身でペットボトルを処理なさいました。高額な清掃代金が納得いかないんだという相談でした。

 この水道トラブル二十四時間の相談というのは、センターには大変多く寄せられています。

 まずは、納得いかないから返金してほしいんだという内容証明を送るようアドバイスをしまして、センターがあっせん交渉に入りました。しかし、この業者は、清掃前に高額な薬品を使うから十七万円かかると初めに言うたやないかと返金を断固拒否したんです。

 そこで、市役所の下水道課長に私の方から事情を伝えたところ、もし問題のある薬品を流したんやったら下水道条例によって処分となると、すぐに業者を呼び出しまして、あんたのところ、一体何の薬品を使うたんや、報告するようにと指示してくれたんですね。

 驚いた業者は、いやいや、そんなとんでもない、これは全く問題のない薬品で、ただの石けん水です、大した効果もないので何の影響もございませんと、薬品名を書いた文章を下水道課長に報告してきたんですね。その内容を下水道課長から、生水さん、こんな言うてきはったよとすぐに連絡がありまして、私の方から業者に連絡しました。おたく、ただの石けん水やったそうですね、高額な薬品というのは不実告知だから消費者契約法、これで取り消ししますわと伝えまして、お金は即刻返金されました。

 実は、この事例を聞きまして、詰め将棋みたいだと言った方がおります。センターだけではこの詰め将棋はできないんです。ほかの部局の協力があって初めて悪質業者を挟み打ちにできたんです。これができるのも、下水道課と同じ市役所にいて、市民生活相談室からの依頼というので連携がとれるんですね。

 実は、この返金した業者も、処分を受けることがなかったので、生水さん、ありがとうねと喜んでくれたんです。相談者も喜んでくれたし、滋賀といえば近江、近江といえば商人、三方よしですから、まさに三方よしの解決でした。

 二つ目の事例を紹介します。

 資料は、四ページの金融商品の事例です。

 訪問販売でやってきた業者から、国の免許を持ってやっているので元本保証だから大丈夫だ、五十万預けたら毎月五千円の配当を振り込みますよ、実は、これはある外国の大使が役員をしているから信用できるんだ、大丈夫ですよと勧められまして、高齢者だったんですが、何度も断らはったんだけれども、しつこく言われ、結局、その日に五十万渡されました。一カ月後、証券が送られてきたんだけれども、家族にばれまして怒られて、だまされたと思うので解約したいという相談でした。

 相談を受けまして、まずは消費者契約法で取り消し通知を送りまして、業者に私の方から連絡をして、今内容証明を送りましたよ、問題点が多いのであっせんに入りますと伝えました。いわゆる宣戦布告するんですね。その外国の大使館の方にも資料をすべて送りまして、調査を依頼しました。金融庁の金融商品サービス室に情報提供して、このような投資の募集をするには有価証券届け出義務が必要なことを含めて、大変丁寧にアドバイスをもらいました。こうして、業者と交渉する前に専門機関に聞きまして法律を確認し、問題点を整理しておくことがとてもあっせんには大事なんですね。

 業者の方からは、内容証明を読んで、これは重大問題と判断した、すぐに五十万全額をぽっきり指定口座に振り込みましたと連絡があったんですね。被害者救済としては無事解決はしました。でも、これで終わりにしない。被害拡大防止のために何をするか、何ができるかを考えて実行するのが行政の相談窓口の役割だと考えています。

 そこで、金融商品販売業者の責任者を市役所に呼びまして、面談を実施したんですね。その際に、市役所には行政指導する権限がないので、滋賀県消費生活センターにいます不正商取引検査員に同席してもらいまして、業者に対し、聞き取りと、違反行為を改善するように指導してもらいました。この県の不正商取引検査員、元警察OBなんですね。物すごくすばらしくフットワークが軽くて、いつでも市役所のあっせんを支援してくれます。大変ありがたい県との連携です。

 大使館からの報告を待って、外務省にも情報提供する予定なんですが、私、十年やってきて、初めて外務省絡みなんですね。どのように動かれるのか、今から楽しみにしております。

 情報を集めて、やり方を工夫して、最後の最後までフォローする、ワンストップで解決していく、これが野洲市の相談のやり方です。

 この業者は、金融商品取引法に基づく登録をしていませんでした。無登録での営業というのは一番問題だと思うんですが、金融庁には登録業者しか指導や処分の権限がない、無登録業者の処分は警察が担当だと言います。しかし、警察は、通常は一件の被害ではなかなか事件としては動いてくれないんです。いわゆるすき間事例です。私は、こうした現場で集約した問題点を消費者庁に連絡すれば、被害救済、拡大防止のためにすぐに動いてくれるものだと期待しております。

 ただ、今の消費者安全法案を見ると、直接執行できるのは安全問題だけであって、いわゆる財産被害、つまり、こうした悪質商法は直接執行できる仕組みにはなっていないというのがわかりました。でも、こうした財産被害についても消費者庁は役割を果たしてほしいとぜひ要望します。

 二つ目のお願いです。センターや相談員の権限の問題です。

 滋賀県や神戸市のような都道府県、政令指定都市には消費生活条例がありまして、苦情処理のあっせんや、業者に必要な資料を提出させるなど、ある程度、知事や市長には権限が与えられています。そこに二つの問題があると思います。

 一つは、中小の市町村には条例がないので、私は何の権限もなく、しゃべくり一本でやっています。そこで、権限にでこぼこなく、ばらつきなく、センターに行政権限を与えてほしいんです。野洲市のセンターの室長名で呼び出しをかけたり、資料を提出させたり、お金を返さぬかいといって勧告できればいいなと思います。それが政府案には入っていないので、自治体任せなので、センターの権限を今回の法案に盛り込んでほしいと思います。

 もう一つの問題点は、たとえ条例があっても、非常勤の相談員には権限を使える職務が与えられていないんですね。センターというのは、所長とか室長とかいう管理職がいて、正規職員と非常勤職員がまざって働いています。だれがどの仕事を受けるのか、事務分担表で決められているんですね。

 今センターで相談を受けているのは非常勤の相談員がほとんどですが、この事務分担表では、相談員の仕事は、相談の受け付けやあっせん、啓発講座の講師などに限られています。非常勤では、補助の立場なので、こうした権限や予算編成、また企画立案を分担することはできません。

 私は、十月に正規職員に立場が変わりまして、予算編成や企画立案ができるようになりました。早速、私の名前で多重債務連絡調整会議の職員研修企画を立案して決裁をとり、二十の部局を集めて開催することができました。大変有意義だったです。

 相談員の仕事は、決して生易しいものじゃないです。業者にぼろかす言われたり、ばばあと言われたり、よく今まで生きてこられたなとおどされることも本当にあります。また、いろいろな機関とか職員に協力を求めるために、お願いしますお願いしますと、本当にコメツキバッタみたいに百回でも二百回でも頭を下げ続けます。相談者を思う気持ちと正義感が、全国で頑張っている仲間の相談員たちの原動力になっているんですね。でも、いつまでこの原動力に国が頼っているんでしょうか。

 このままでいくと、相談員は非常勤の立場のままで、わずかの自治体で報酬が少し上がるだけで終わってしまいます。相談員たちの待遇改善の期待は失望に変わって、あきらめに変わりつつあります。

 非常勤といいながら、正規職員と全く同じ勤務時間で働いている、でも残業代や手当はない、常勤的非常勤という相談員もいます。優秀な彼女が正規職員になれば、どれほど市民のためになるでしょう。私が知る限り、全国の仲間の相談員の多くは正規職員になれることを望んでいます。ぜひとも正規職員になりたいかどうかのアンケート調査をして、相談員の思いを知っていただきたいと思います。

 それに、待遇改善のことももちろんなんですが、役所の中で責任と権限を持って働くためにも、正規職員になることが必要だと思います。そのためには、正規職員の中で消費生活相談という職種をつくって、中途採用試験をぜひとも受けさせていただきたい。あわせて、総務省の定数是正枠の見直しをお願いしたいと思います。

 今、政府案と民主党案の二つで案が出されていますが、私は、私の経験から、非常勤相談員が正規職員になれる道を開いていただける案を支持したいと思います。少し時間をかけてもいいですから、二者択一でなくて、国会審議でよい法案にまとめていただきたいと思います。

 最後に、市民に必要だと思ってもらえることに、行政の、相談窓口の存在価値があるんだと思います。私は、市民からありがとうと感謝いただけるこの仕事を使命感を持ってやっています。市民の感謝の気持ちは、公務員である私の誇りでもあるし、宝物です。これからも、救える命はある、被害救済を合い言葉に、山仲市長の指導のもと、廣瀬相談員、野洲市職員一同、市民の安全、安心の暮らしを守るため頑張りますので、御支援いただきますようによろしくお願いいたします。

 御清聴、どうもありがとうございました。(拍手)

岸田座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

岸田座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。七条明君。

七条委員 では、四人の皆さん方に敬意を表したいと思います。本当にきょうはいろいろな御意見をお聞かせいただいて、ありがとうございました。

 特に、神戸というところは、消費者問題の先進地である。先ほど妹尾先生からはいろいろな現場の御苦労を話していただきましたが、私の徳島県の出身でもありますから、賀川豊彦先生が頑張っておられた、その気持ちを気持ちとして、皆さん方がさらにそれを大きく広げていただいたことに感謝を申し上げます。

 全員の先生にお聞かせをいただきたいんですけれども、先ほど生水さんが言われた、いろいろな現場の悩みというのはたくさんあろうと思います。我々、四人の各先生方が言われるように、早くこの法律案を通さなきゃならないと思っていますから、政府案でなければならないとは思っていません。政府案の悪いところもありますし、あるいは政府案のいいところは取り入れていかなきゃいけない。また、民主党案の中で折衷案がまとめられるものがないだろうかというふうに考えるところでありますので、先週から、我々与党の方からも、今できる範囲の中で何ができるかと考えて、野党の皆さん方に案を出して、これを今週取りまとめてでも、何とか早く参議院へこの法律を送りたいと思っているところであります。

 そういう観点からお聞かせいただくのでありますが、まず、この四月一日から、ADRというか法テラス、そういうようなものができてきたのでありますが、これをどういうふうに活用していけばいいのだろうかということを、各四人の先生方から御意見があれば。

 それから、仁坂知事には、相談員の待遇改善を何とかしてほしいというようなお話が今生水さんからありましたけれども、知事さんとして、こういう改善をするとき、国からの助成もありましょうが、待遇改善とか人材育成に対してどう思っておられるのか。

 それから、消費者権利の規定とかいう形については、もう少し具体的に、政府案を中心に考えてやったときに、清水先生がどういうふうに考えておられるのか。

 あるいは、妹尾先生や生水さんのところでは、先ほど言った、常勤と非常勤ですけれども、非常勤の方々を常勤にするという場合、ただお金だけ渡したらいいというんじゃないような気がしますから、そういうものがあれば、もう少し具体的にお聞かせをいただきたい。

 もう一つ、生水さんには、私は実は貸金業法というのを改正する張本人でやったんですが、貸金業法を改正してしまって厳しくすればするほど、やみ金業者が出てくるんですね。ですから、貸金業法を改正した後と前とでは違うことがあったのかなかったのか、もう少し具体的にお聞かせをいただければ。

 各先生方にこれだけお伺いして、十五分という話ですから、手短に、簡単明瞭にお聞かせいただいて、終わらせていただきます。

岸田座長 ちょっと整理しますと、まず質問が五つあったと思います。ADRの件は四人の陳述人の方にお答えいただき、待遇改善を仁坂知事さんにお答えいただき、消費者権利の規定については清水先生にお答えいただき、常勤、非常勤については妹尾陳述者とそして生水陳述者にお願いする、そして最後、貸金業法の件は生水さんにお願いする、そういった整理でいいですね。

 では、それぞれ、その整理でお答えいただきたいと思います。

 まずは、ADRにつきまして、四人の皆さんからそれぞれお願いいたします。ADRについて何か御意見があればということですが、妹尾さん、何かございますか。

妹尾美智子君 ありません。

清水巌君 ADRといいますか、いわゆる裁判外紛争処理制度の活用ということがどういうふうに消費者被害の救済に役立つかということと、法テラスとの関係の御質問だったと思うんです。

 御存じのとおり、法テラスの場合ですと、具体的に相談者の相談を聞いて、それをさらに事業者との間に入ってあっせんするとか、正しい解決方法を考えていくとか、そういった機関ではないわけですね。御存じのとおりで、相談を受けた後で適切な相談機関を紹介する、そういうふうな権限しかありませんので、現在の法テラスそのものが直接消費者被害の救済にそれほど役立つとは思えません。しかしながら、さまざまな相談機関が併存するということは非常に重要であって、今の法テラスが役に立たないとか、そういう意味ではありません。

 ですから、逆に言えば、そういう限界がある中で存在するというのは非常に大事な、市民が気楽に法律の権利に接触することができるというのか、わからないままに、法テラスに行けば適切な助言が得られるという意味で、非常に重要だと思います。

 しかしながら、消費者と事業者との間では、御存じのとおりで、交渉力格差も物すごくありますし、情報力も違うので、当事者主義を前提とする裁判でさえ、なかなか向いていない部分があります。もちろん、向いている部分もありますが、向いていない部分も非常に、特に少額多数被害などでは多いわけです。

 そういう意味では、消費生活センターのように、消費者のさまざまな弱い部分も理解しながら、かつ、事業者と消費者との間で公平な解決を目指す、そういう制度が最も合理的で効率的だというふうに私は考えております。

仁坂吉伸君 さまざまなそういう試みがあるということは非常にいいことではありまして、先ほど私は、消費生活センターの相談員の人も大変能力があるんですというようなことを申し上げましたが、それはやはり能力にも多少限度があるわけで、弁護士の先生方に相談をしたいとか、そういうときはたくさんあるんですね。

 したがって、そういうときに、横で連絡をとって、それで御相談したり、あるいはそこのあっせんに持っていったりするということも一つの手段だと思いますので、お互いに補完し合いながら発展するものじゃないかなというふうに思います。

生水裕美君 センターには呼び出し権限というのがないんですね。そこで、国民生活センターの方には四月から、ADR機能ということで呼び出し権限の方が付与されました。これによって、今まで出てこなかった業者を呼び出してもらうことになりましたので、まずあっせんの第一歩ができるんですね。

 ただ、その次に指導権限、これは国民生活センターにはないので、そこは消費者庁ができたときにどのようになるのかなというのを期待しております。

 ただ、今ADRで思うのは、国センの方に呼び出し権限ができたことは大変ありがたく思っています。

 以上です。

岸田座長 ありがとうございました。

 それでは、二問目の待遇改善につきましては、仁坂知事さん、お願いいたします。

仁坂吉伸君 先ほど交付税の話をいたしまして、それで人ごとのように聞こえたかもしれませんが、基本的には、県のセンターでございますから、本当は、その待遇が悪いということを私が責任を持たないといけないということだと思います。

 ただ、先ほど申しましたような事情で、これもあれもみんなお金がないというのが現状ですから、必置にし、それで力を入れてくださるんだったら、もう少し、私が動けるようにもしてほしいなというようなことも申し上げました。

 それとともに、実は、交付金を先ほど評価させていただきましたけれども、運用に使えるところというのは余りないんですね。新しくつくっていくところとか、そういうときには結構使えるんですけれども、待遇改善にそのまま使えるわけにいきませんし、それが無理としても、例えば、さっきのADRとの関係でいうと、法テラスへ持っていかなくても、弁護士さんにこちらに来ていただいて助けていただくようなことが必要な場合が結構あるんですね。そういうときに、消費生活センターが使えるお金というのが、そういうところからも出てくれば随分違うし、これはできると思いますけれども、研修などにも使いたいので、そういう点では、大きな意味での待遇改善は私どもやりたいんだけれども、できるだけ助けてくださいということだと思います。

岸田座長 ありがとうございました。

 それでは、三問目の消費者権利の規定につきましては、清水先生にお願いします。

清水巌君 消費者の権利の規定を……済みません、ちょっと、私の方から質問してはいけないんですよね。どういう御趣旨かだけ、恐縮です。

岸田座長 それでは七条先生、もう一度ちょっと質問を確認してください。

七条委員 今の法律の中で、政府案の法律の中と、それから今度は民主党案の法律の中で、ここが一番あるところとないところの差があるんだろうと思います。

 特に、消費者教育などというのも、この政府案の中に入っていませんし、権限をどこまで今の内閣の中で持たせるのか。あるいは、今民主党案は、内閣の外から権利院が出てきますけれども、その二つの立場の中で、今の政府案の中のことを採用していくとどういうふうにすればいいかということをお聞かせいただきたかった。ちょっと舌足らずで申しわけございません。

清水巌君 失礼しました。

 消費者の権利は、御存じのとおり、全会派一致の消費者基本法の改正のときに消費者基本法に入れていただいておりますが、今回の政府案、この消費者庁設置法案を、その権利と照合しながら私もずっと点検してみたんですけれども、御指摘のとおり、消費者教育の部分だけがないんですよね。ほかのところは、すべてそれに関連する法律が大体移管されているという形になっている。ですから、私も、その意味でいうと、消費者の権利の擁護というか権利の実現が消費者政策のいわば理念であり、基本的な目標ですので、それらが消費者庁によって実現されるような、消費者の権利規定そのものは理念的なものですけれども、具体化するのは個別の法律ですので、消費者庁設置法案の中でも、個別に各権利がそれぞれ実現できるような制度にしていただきたいと思います。

 その意味では、まず、この消費者庁設置法案の中にも、消費者の権利の尊重、権利の擁護といったような大きな目標を入れていただくことと、それから、消費者教育につきましては、消費者が教育を受ける権利ということなので、いわゆる行政規制ではないので、いわばサービス行政的なものですけれども、消費者教育についての情報を収集し、またそれを分析し、そして、それを国の各担当の教育機関ないし社会教育機関に伝達するなり、あるいは地方公共団体の消費者教育の各部門に消費者庁からもさまざまな支援をしていく、そういうことができるような、消費者教育を支援できるような、いわば具体化するような権利として実現していただければというふうに思います。

岸田座長 ありがとうございました。

 それでは四問目、常勤、非常勤の問題につきましては、妹尾さんと生水さんからお願いいたします。

妹尾美智子君 常勤、非常勤といいますよりも、むしろ、身分がどの程度保障できるかということの方が大事で、今私どもが一番悩んでいますのは、やはり相談員の方々の安全を守るということが一番気になっている部分なんです。

 その手当というのが高いの安いのか、よくわかりませんけれども、消費生活相談員の方が自由な立場で、自由に動けるというふうな方がいいんじゃないかなというのが、今の私の実感でございます。

生水裕美君 非常勤と正規職員という分け方で考えていただけたらと思います。

 消費生活相談という仕事の内容を考えれば、本当にこれは、責任と権限を持って職責を果たすためには正規雇用が必要です。ましてや、消費者庁が求める相談窓口一元化、何でも相談でき、最後までワンストップで責任を持って対応する、これを考えるのであれば、正規雇用が必要だと私は考えています。

岸田座長 ありがとうございました。

 最後に、貸金業法についてですが、同じく生水さん、お願いいたします。

生水裕美君 私はだまされてDVDに出させられた身分です。

 プログラムの中で、いわゆる多重債務改善プログラムですね、これが出たおかげで、市役所の中で職員の意識が変わりまして、連携が大変とりやすくなりました。各自治体、いろいろなところにシンポジウムに行きましても、なかなか多重債務の取り組みが進まなかったところでも、このプログラムが通知されたことによって大変進んだと聞いております。

 やみ金については相談は減っております。なぜかといいますと、これは警察が動き出しました。対応がよくなったんですね。以前は、民事不介入、借りた者が悪い、おまえが悪いんやからほっとけというような対応だったんですが、やはりこのプログラムのおかげで、大変警察の対応がよくなりました。ましてや、携帯電話の利用差しどめ、そして口座凍結、これができることによって、警察の動きも大変よくなったんだと思います。野洲市の窓口では、やみ金の相談は減っているのが実情です。

七条委員 本当にありがとうございました。

 急激にたくさんのことを質問しましたけれども、参考にさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

岸田座長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 四人の公述人の皆さん、それぞれがこの消費者問題に対して一生懸命仕事をしていただいたということで、大変貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございます。

 そして、皆さん一様に、この霞が関に中央組織を一日も早くつくることを望んでおられる。消費者行政の一元化、それからやはり地方行政の充実、特に相談員につきましてもっと充実をするように、こういうことで一致しているのではないかなと思います。

 それでは、個別に聞かせていただきます。

 まず、妹尾委員、よろしくお願いいたします。

 消費者政策委員会、これがこれから中央の行政についてチェック機能として非常に消費者の目線でやっていく上においては大事だ、そして、その独立性ですとかそういうことも大事ですし、それとともに、強い権限、チェック機能を持つ必要がある、こういうことでございました。

 この消費者政策委員会について、例えば、意見具申に対して各省庁の報告をさせるとか、あるいは資料の提出要求をする権限を持たせるとか、いろいろな権限を持たせる必要がある、こういうお考えでございましょうか。

妹尾美智子君 やはり消費者庁が一人で走っていくのではなくて、どうにもならない部分というのもたくさんありますし、いろいろな問題点はほかにございますよね。そういう場合に、この政策委員会が、今の消費者行政のあり方がこれでいいのかどうかということのチェックをきちんとしていただけたらありがたいと思うんです。

 ちょっと私、さっき言い忘れましたけれども、そのときに、どうぞ政策委員の中に地方出身の委員の方をぜひ入れていただきたい。そうじゃないと地方の話がわかりません。国民生活審議会の委員を私長いことしていたんですけれども、実はその過程の中でも、東京出身以外の方は私一人だったんですよね。そうすると、東京の消費者団体の方が、あんたは地方におっていいな、地方のことがよくわかるから、私らは東京におって何にも地方のことがわからぬから非常に物が言いにくいというようなことをおっしゃったことも覚えておりますけれども、やはり地方の意見が取り入れられるような委員の方を、ぜひその中に入れていただきたいということをつけ加えさせていただきたいと思います。

大口委員 次に、適格消費者団体につきまして、これも妹尾委員からは要件が厳しいというお話がございました。どのようにこの要件を緩和したらよろしいのか。民主党さんの案では、経験の実績は問わない、目的が地方消費者行政について推進する目的があればいい、こういう考え方もありますが、どのあたりまで要件を緩和したらよろしいのか。

 また、清水先生におかれましても、適格消費者団体の理事長をされていらっしゃるということでございますので、適格消費者団体の認定の要件緩和、これは登録制というようなことも民主党はおっしゃっていますれども、そのあたりのことについて、お考えをお伺いしたいと思います。

妹尾美智子君 どこまで枠を広げたらいいのかということを私も細かいところまでチェックしていませんけれども、ただ、いろいろ清水先生なんかからお話を聞きますと、到底、私どもの消費者団体では手も足も出ないなというふうな感じが実はするんです。

 だから、それは本当に本気になって枠を広げていただけるということになれば、その枠組みのしんどさをもう一遍調べ直しまして、具体的にお話しできたらいいんですけれども、今の時点では、とにかく、清水先生のお話を聞いたり、ほかのそういう団体の方のお話を聞いていると、到底、私らでは足も手も出ないなというような感じを持っております。

清水巌君 適格消費者団体は、御存じのとおり、いわば個別の被害消費者にかわって消費者団体が訴訟を起こし、その判決がある意味で全消費者に影響を及ぼすというふうな立場にあります。

 したがって、ある意味で、訴訟を起こすぞといいながら、例えば事業者から何らかの利益を得るとか、そういったようなことに利用されないとも限らない。そうなりますと、この適格消費者団体による団体訴訟制度、差しとめ制度も損害賠償制度も、ほとんど定着できない形になってまいりますので、そういう意味で、悪質事業者によって利用されないようなさまざまな制約があることはやむを得ないと私は考えております。

 これは単なる担当職員の方からの伝聞なんですけれども、実は認定されていない団体以外に、非常に多くの団体から申請がある、既にいっぱいあるんですよと。それらが本当に変な団体とかいかがわしい団体もいっぱい入っているんですよということを聞きますので、そういう意味では、それだけ大きな権限と大きな影響力がある。特に、損害賠償訴訟制度などがもし認められますと、私たちが損害賠償訴訟を起こしてもし負けてしまったりしたら、本来救済されるべき人が裁判を起こす権利がなくなってしまったりとかということにもなりかねないということなので、やはりそれ相応の能力を持った団体にせざるを得ない。

 ただ、私も細かいことは忘れましたが、確かに書類としては本当にこれぐらい、ふろしきで包み切れないぐらいの書類を提出させられました。そういう中には、細かいところでは確かに不要なところはあるかもしれませんが、大もとでは、やはり一定の厳しい要件は、この団体が信頼されるためには、国民からも事業者からも政府からも信頼されるためには必要ではないかというふうに私は考えております。

大口委員 仁坂知事にお伺いいたしたいと思います。

 知事は、地方分権には二つの要素がある。一つは自己責任、それからもう一つはナショナルミニマムということで、例えば、義務教育とか医療とか社会保障というものはナショナルミニマムという例に挙げられておられます。消費者行政につきましても、これは、国と地方の役割分担ということもあると思います。

 そういう中で、今回、財政的な措置といたしまして、地方交付税ということで、相談員の人件費については、基準財政需要額として倍増ということであったわけです。そして、いろいろな窓口やセンターの新規あるいは拡充、あるいは弁護士を入れるとかいうようなことは、地方消費者行政活性化交付金という形で三年間百五十億という形にしているわけなんですね。

 そういう中で、例えば、今、この活性化交付金については、やはり相談員の人件費にも使うべきではないか、こういうような御意見も、知事会等からも、知事さんのお声の中にそういうお話がございます。こういう消費者行政における国、地方の役割分担の中で、お金の負担のあり方についてお伺いしたいと思います。

仁坂吉伸君 今、地方分権のお話が大口先生からありましたので、ちょっと一言つけ加えますと、私は、地方分権が地方に任せられるものは地方にというだけで議論されるのは、実は危ないし、余り生産的でないと思っています。というのは、地方に任せるべきものは地方にというのは当たり前でありまして、それを具体的に何がそうかということを考えるときに、本当はこの国のあり方で何が国として責任を持たなきゃいけないのかということを先に決めるべきだと常々言っております。それを決めた上で、それぞれが自己責任を持ってやるべきだということだろうと思います。

 それとともに、先ほどおっしゃいませんでしたけれども、ナショナルミニマムと並んで、財政調整も現実の問題として必要かなというようなことも申し上げております。

 そういう観点から本件をとらえますと、例えば消費者相談を国がどうしてもやらなきゃいけないものかということは、ある意味では、国が統一的に全部びしっとやらなきゃいけないのかというと、どうもそこまででもないかなというふうに思います。

 私ども、負担ということを考えると、なかなか苦しいものですから、国が責任を持ってくださるというのは、別にそれを否定するものではないんだけれども、それでは、苦しいというのはほかにもいっぱいあるわけでありまして、そこを国がというのはちょっとした違和感があります。そうすると、我々がそれをきちんとしていかないといけないというのが基本だろうと思います。

 ただ、現実の問題としてなかなか大変でございますので、財政調整という観点から、何らかの意味で必置を国が指導されるのならば、何がしかの財政援助の金額及び内容、そういうものについてももう少し多くしていただくというのが現実的な対応として必要ではないかというふうに考えておる次第でございます。

大口委員 次に、生水陳述人にお伺いさせていただきます。

 生水陳述人は、スーパー相談員というふうにも呼ばれておられる、今お話をお伺いさせていただいて、もう本当に八面六臂の闘いをされているなとつくづくそう思ったわけでございます。

 そういう中で、相談員を、要するに雇いどめを防ぐために民間委託という形で、この神戸もそうですし、また和歌山もそうですし、やっておられますが、それについてどうお考えなのかということと、それから、多重債務の問題で、多重債務だけじゃなくて、その相談者の方の生活保護の手続をしてあげたり、あるいは精神的に大変な方についてはその手当てをしてあげたり、その相談者を丸ごと面倒見ようという野洲市の取り組みというのはすごいことだと思うんですね。

 それとともに、被害者をどうあぶり出していくか。要するに、市の行政のどこかで被害者の姿が見える、これをまとめて、市を挙げて、例えば相談員の方がコーディネーター役になるんでしょう、救っていく、こういう仕組みを私は非常にすばらしいことだと思うんですが、これについて課題等がありましたら、教えていただけますか。

    〔座長退席、七条座長代理着席〕

生水裕美君 まず、民間委託についてです。

 先ほどもお話ししましたように、消費生活相談、この仕事の内容を考えましたら、公務員が担当するに適した仕事だと思っております。

 市民の安全、安心な暮らしを守るために行政が責任を持って仕事をする必要性、これがあるからこそ、野洲市では、消費生活相談、これを重要な施策と位置づけまして、相談員が正規職員になったんです。公権力の行使も考えますと、公務員の仕事が適していると思っております。

 次に、先生おっしゃいました、多重債務の取り組みについてです。

 資料五ページをごらんいただければ、これは、野洲市の市民相談窓口ネットワーク図となっております。

 野洲市では、市民生活相談室が相談を受けまして、これはどこに相談していいかわからない、いろいろな相談事です、生活困窮から始まり、派遣切りから、いろいろな御相談を受けまして、消費生活相談員がコーディネート役となりまして、各担当課や専門家と協力、連携して、被害救済、生活再建に向けて必要な行政サービス、これを選択して支援しております。

 この取り組みの特徴は三つあります。

 一つは、相談者をたらい回しにせず、最後まで責任を持って対応しますワンストップサービス。二つ目は、相談を掘り起こして、生活再建、また被害救済するためのネットワークを構築する。三つ目、これらワンストップサービスとネットワークをスムーズに行うためのコーディネート役になっている、核となっているということですね。この三つです。

 先ほどおっしゃってくださいましたように、この連携ですね。どうしてこの連携ができたのかといいますと、これは本当に、十年前からやっておりますが、一つ一つの事例、これを解決することによって連携ができました。

 例えば多重債務の御相談の中で、みずから相談に来る方は本当に減っております、約半分。残りの半分は掘り起こしなんですね。これは、いわゆる税金を滞納している方、保育料を滞納している、給食費を滞納している、水道料金を滞納している、市営住宅を滞納している、こういった滞納している方々の中から職員カウンセリングをして、借金があるということがわかりましたらすぐに消費生活相談につなぐ、こうして掘り起こしをするんですね。

 御相談を聞いて、借金の整理、債務整理をしても、その後の生活が困窮していくとなりましたら、すぐに社会福祉課のケースワーカーと連携して、同席して相談を聞く。もし、その家族の中に介護を必要とする、介護サービスが必要な方であれば高齢福祉課、また成年後見等々必要であれば地域包括支援センター、そして、市営住宅の申し込みがあれば都市計画課を呼んできます。障害年金等々の必要性がある方でしたら保険年金課につなぐ。

 こういったことを、相談者にあっち行けこっち行けということを言わずに、こちらみずから市役所の方の職員が動いて対応していく。決して疲れ果てている相談者をたらい回しにせず、職員の方から、この方に、この世帯にとって必要な行政サービスを情報提供して支援していくということをやっております。やはりこれをしなければ、多重債務の解決というのは生活再建まですることが必要なんですね。借金を整理すればそれでいいというわけではない。

 行政が多重債務相談を受ける最大の利点、メリットというのは、この生活再建をするための行政サービスを持っているからということです。これをもって、いわゆる野洲市の職員全員研修をしまして、全員のどの部署の職員、どの窓口の職員も多重債務については理解をし、認識を持ち、そして借金についてカウンセリングすることが必要だということを研修しました。全員研修です。恐らくこれは珍しいと思います。

 常日ごろから意識づけ、モチベーションを高めていくということで、税金の回収もできる、そして市民の方からありがとうと感謝いただける、この感謝の気持ちが職員のモチベーションを高めるし、これによって、より掘り起こしができて、より生活再建につなげる。野洲市はこの取り組みでやっております。

 このネットワークの構築をしっかりやるためには、核となる、いわゆる国でいえば消費者庁ですね、この核となる窓口がしっかり最後の最後までコーディネートする、この役割が必要だと考えております。

 以上です。

大口委員 ありがとうございました。以上で終わります。

    〔七条座長代理退席、座長着席〕

岸田座長 次に、田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。

 きょうは、四人の陳述人の皆さん、本当にありがとうございます。

 時間がありませんので、端的に、皆様に大変厳しいことをお尋ねするかもしれませんけれども、お許しをいただいて、お答えをいただければと思います。

 まず、妹尾陳述人に対してですけれども、先ほどの他の委員からの質疑応答の中ででも、相談員の身分の保障よりも安全を守ることが大事だというようなお話がありました。

 実際に神戸市の相談員の方々の時給が今幾らか、高いか安いかわからないというお話もあったんですけれども、政令市の平均が今時給千四百七円ですから、神戸市の時給、先ほどお伺いしますと千二百二十円と随分低い状況にあります。これを見ても、必ずしも神戸市の相談員、二十余名の皆さんが、恵まれた環境で待遇に対して満足度を覚えていらっしゃるようにはどうも見えません。実際に、昨年十一月の内閣府の調査結果を見ますと、政令市の相談員の七四%の方が不満もしくはかなり不満というふうに待遇に対する満足度をお答えになっていらっしゃいます。

 神戸市の場合は、独自でそういった調査をされたことがあるのかどうかお聞かせいただきたいのと、市の方から民間委託を受けていただいておりますので、相談業務は一手に引き受けていらっしゃるんだろうと思うのですが、実際にさまざまな問題、例えばあっせんで不調になったりとかトラブルが起こったりしたときには、最終的にどなたにその問題を御相談になられて解決されていらっしゃるのか、その現場の現状をちょっとお聞かせください。

妹尾美智子君 決して私は、手当が安い高いとは思ってもおりません。

 調査をしたかどうかということでございますけれども、月に一度ずつ相談員の人と話し合いの場は持って、研修という名のもとにやっております。そういうときに、そういう話を聞いたという経験は今のところはございません。だから、調査をしたかどうかということに対しては、調査をしたという経験はないということでございます。

 それから、いろいろな相談を受けます、最終的にそれをどこへするかなとかということですね。結局、消費生活相談員の方も、専門的とはいいましても、最終的な結論を出すところまでにはまいりませんから、それは、例えば法律関係であれば弁護士さんのところへ、それぞれの専門のところ、あるいはそれぞれの専門の部局、そこへ問題を持っていきまして、そこで問題の最終的な解決を図るというふうに現在はやっております。

田島(一)委員 つまりは、最後は市の職員の方にもお尋ねをされているということですね。

妹尾美智子君 そういうことでございますね。その専門職の方にですね。

田島(一)委員 はい。わかりました。

 清水委員に対しては、大変丁寧なレジュメをちょうだいいたしました。

 私ども民主党が提案をさせていただいております消費者団体訴訟法案に対しても、また消費者権利官制度を置くことに対しても、一定の評価をちょうだいしていることに心から感謝を申し上げたいと思います。

 これだけレジュメをちょうだいしておりますのと時間がないので、清水先生には特段質問というのはございませんけれども、今後ともまた何かいろいろと御示唆がありましたらぜひ教えていただきたい、そんな思いでお願いをさせていただきたいと思います。

 続いて、仁坂和歌山県知事にお尋ねをさせていただきたいわけであります。

 地元のNPO法人である消費者ネット和歌山の方に今委託をされているということで、大変使命感に燃えて頑張っていらっしゃる相談員さんがいらっしゃるというようなお話があって、とりわけ知事の方も、使命感で勉強していくことが大事だという御認識を御披露いただきました。

 その後、生水さんの方が、いつまでも国はその相談員の使命感や情熱に頼っていてはだめだというような御意見があったので、何となく御回答をいただいたような気も私はしたんですけれども、実際に市町村も含めた和歌山県全体、消費者行政の総予算というものを見てみますと、これは内閣府の調査結果なんですが、平成十八年、十九年、二十年、三年連続和歌山県がやはり最下位という状況にあるんですね。

 もちろん、先ほどの中には、財政が大変厳しいというお話があったので、財政難が理由なのかなと思うんですが、多分これは和歌山県以外の都道府県どこへ行っても同じような状況にあり、トップの方の消費者行政に対する熱意一つなのかなと。

 例えば、先ほど、その後お話しいただいた野洲市などはもっと小さな自治体でもありますが、常勤職員と非常勤二名の相談員を置いて、非常に情熱を込めていらっしゃるということを考えると、仁坂知事にはまだまだ頑張っていただける部分があるんじゃないかなというふうに私は思うんです。もちろん国の支援としての一定の努力もしなければならないんですが、仁坂知事の今後のこの消費者行政にかける情熱をぜひ聞かせていただきたいと思います。

仁坂吉伸君 全くそのとおりであります。

 先ほども実は、私の責任なんですけれどもとか和歌山県の問題なんですけれどもとか、もぞもぞ言いながら、申し上げておりました。

 消費者行政というのは大変重要です。お金の問題ももちろん重要でありますが、それとともに、県を挙げて、消費者相談員の方々が活躍してくださっているのを支援する、見殺しにしないというか、そういうこともまた大事だろうと思います。

 そういう点では、御議論をしていただいたときはそんなに御不満はなかったんですけれども、県庁の内部とさらによく連絡をとってもらって、県庁も出ていくときは、我々、現状のままでは権限がある、公務員として対応できるわけです。

 それから法律的には、これは政府案ですけれども、内閣総理大臣に対する意見は、この法律の構造からすると、県が一度消費生活センターから吸い上げて、それで問題だと思ってこなして、文句と言ってはいけませんね、意見を申し上げなきゃいけないということだろうと思います。

 そういう任務をきちんと果たしていくということを、私どもとしてはもう一度心して頑張っていきたい、そんなふうに考えております。

田島(一)委員 ありがとうございます。

 民間委託といっても、神戸のパターンと和歌山県のパターンとはちょっとまたニュアンスが違うのかな、財政的な問題等々もあって、やむにやまれずというようなところも多分あったのかな、そんなふうに実は私は振り返らせていただいているところであります。

 しかしながら、消費者問題は、これは全国的に見ても同じような傾向にあり、同じような問題点も抱えているわけでありますから、先ほど陳述の中に、ほとんどが電話相談なのでセンターの数はそないにたくさん要らないというお話もあったんですけれども、恐らくやり方一つでまだまだ活躍していただける場が相談員の皆さんにも多分あろうかというふうに思いますので、ぜひ前向きな消費者行政の取り組みを期待したいと思っております。

 最後に、生水さんに対して質問をさせていただきたいと思います。

 今回の消費者庁関連法案の中で、各自治体に対して、地方消費者行政活性化基金なるものを設定して、各自治体がその基金を活用して、さらに厳しい財政状況にメスを入れていこう、そのようなうたい文句でお話がなされて、多分それぞれの自治体の方にも運営要領等々がもう回っているのではないかというふうに思うんですけれども、実際に、この活性化基金の内容等々を拝見いたしますと、人件費であるとか賃金の改善等々には使えないであるとか、不備な点が、私、随分散見されるなというふうに思っております。

 もし、この運営要領をごらんになっていらっしゃるのであるならば、この基金の内容について、どこに問題があるか、どこを直したらこの基金が有効に生きてくるというふうにお考えになられるか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

生水裕美君 資料の二ページには、野洲市の消費者行政に係る予算の内訳が載っています。そこにあるように、野洲市では九七%が人件費です。この割合を考えていただいても、消費生活相談はマンパワーなんですね。でも、当初、基金では人件費には使えないので、給料アップには使えない、相談員を雇うお金にも使えない、国に頼まれて入力しているPIOですね、入力費にも使えない、市が集まって広域化センターをつくろうと思ってもこれも使えない。ちなみに、ついでですが、PIOの研修もないし、国セン主催の研修も減りました。

 こんなに使い勝手の悪い基金であったら基金は地方の相談現場拡充のために全くならないなと思っていましたら、これは先週末、百億円の基金が増額されて人件費に使えるようになるということを聞きました。詳細はわかりませんが、人件費に使えるんだったらよかったなと思ったんですね。そこで、また地方交付税を、積算根拠を、百五十万から三百万に増額しているので使うようにということで、内閣府の方からも通知文が来ております。

 野洲市の企画財政課の職員に聞きましたところ、自治体の予算要求ルールでは、継続的経費、いわゆる人件費について、永続的に特定財源の確保が担保されない予算措置、これは行わないことが大原則であると。交付税は項目で色分けされているわけではなくて、そのまま相談員の報酬に積み増しできるものではない。人事部局との調整になる。また、特定財源が来たとしても、基金ですね。税金である一般財源が基金に財源がかわるだけのことであると言われたんです。

 次に、総務課に聞きました。野洲市では、既に相談員一人を正規職員にして、嘱託職員の報酬も二割増額しまして、単価を嘱託の最高レベルにした、最高額といっても、業務内容に比べれば低いんですよ。これ以上嘱託に置いて特定職種だけを抜き出して改善するのは難しいと。ほかの職種との均等がある、全体の嘱託の底上げからしなくてはいけないんだと。だから、国から手厚い財源があったとしても、相談員の報酬だけを特別待遇することはできない。本当に待遇改善するんだったら、非常勤であれば限界がある、やはり正規職員にすることだけれども、総務省の定数是正枠があるので、相談員を正規職員にして人数をふやすことはできないんだと言われたんです。これが現場の考えです。

 ですから、基礎自治体において交付税で報酬を倍増したからといって、給料が倍増する、基金の人件費をそのまま増額できるという簡単なものではなくて、期間限定の基金や交付税では待遇改善は望めないです。

 もし、政府案がこれしかないというのであったら、国が主体となって相談員を雇用する、いわゆる国家公務員ということは必要となると思います。その方が給料が上がるし雇いどめもなくなって、正規職員の道が開けるのであればです。

 民主党案は、ぜひとも国家公務員の具体的な内容、待遇の内容を教えていただければと思います。内容が見えてこないので、賛成か反対かわからないんです、現場の相談員は。

 しつこく言いますが、本当の待遇改善、これはやはり正規職員になることであって、それには総務省の定数是正枠の見直しをお願いしたいと思います。期間限定の基金、交付税の増額、これだけでは相談員の待遇改善は現場では望めないということを御理解ください。

 以上です。

田島(一)委員 ありがとうございました。

 具体的な民主党案をここで申し上げるには、多分私の残された時間では到底申し上げられません。今後、国会の中で皆さんにお示しできるように明らかにしていきたいと思っております。

 ぜひ、四名の皆さん、それぞれの現場で今後御活躍いただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

岸田座長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。

 四人の陳述人の皆さんには、大変お忙しいところ、貴重な御意見、ありがとうございます。

 それで、最初、妹尾陳述人の方にお伺いしたいと思うんですが、先ほども生活情報センターの方で御案内をいただきながら伺ったんですけれども、神戸の消費者行政の前進の背景にあったもの、それはまず生協の運動とか、また地域の女性団体の皆さんの運動とか、そういう消費者の運動があって行政の前進があった、そういうお話も伺いました。その点では、今度の消費者政策委員会の提案について、この機能とか権限をどう強めるかということが、今、一つ大事なところだと思うんです。

 そういう点では、何といっても消費者の参加というものをきちんと、先ほどおっしゃった、地方の方も含めて参加できるような、そして実際にそれが生きるような仕組みにするということが大事ではないかと思うんですが、この点についての御意見を伺っておきたいと思います。

妹尾美智子君 今先生のおっしゃったお話、よくわかりますし、やはりそれはそれなりの理解をしながら、これからの方向は進めていった方がいいんじゃないかとは思います。

吉井委員 次に、生水陳述人にお伺いしたいと思います。

 三点伺っておきたいと思うんです。

 一つは、相談員の方たちも、いろいろな交流会、全国的にも情報交換しておられると思うんですけれども、多くのところで任期制があって、そのために、経験とか本来蓄積したものが生かされてこそ役割が果たせるのに、三年や五年で雇いどめされるようなことになってしまうと、なかなかせっかくの力が発揮できないんじゃないかと思うんですが、この現状を伺っておきたいというのが一つです。

 それから二つ目に、資格を取っても、やはり現場の経験ですね、先ほどすてきなお話を伺ったんですけれども、そこへいかれるまでにはいろいろな御苦労もあったと思うんです。資格とともに、現場での経験蓄積というものにどれぐらいの期間を見なければいけないのか。これは最初の質問ともかかわるんですけれども、せっかく生かそうと思ったころに雇いどめじゃだめですから。

 それから三つ目に、今は二人で頑張っていらっしゃるというお話でしたけれども、多くの人たちの情報交換、経験交流というものが、この分野、やはり経験、ノウハウの蓄積とともに大事ではないかと思うんです。そうすると、できればセンターにはどれぐらいの方たちがいて、チームを組んでやっていくのがいいのかという、この三点について、伺いたいと思います。

生水裕美君 ありがとうございます。

 まず、三年、五年、雇いどめの問題だと思います。

 私は十年になります。ことしで十一年目に入りました。やっと物事がわかって、業者としゃべるのが怖くないな、何とかしゃべれるなと思い出したのが五年ぐらいですね。

 私の友人で、大変優秀な相談員がおります。彼女は五年で雇いどめの期間がありましたので、本当にこれからすばらしい相談員になったのに、センターをやめざるを得なかったんです。恐らく、そこのセンターの損失ということはイコール県民の損失です、これは非常に大きな問題だと思います。

 先生おっしゃるように、経験を積む、知識を学んでいく。何が一番大事かというと、相談を受けるごとに相談員というのは成長していくんですね。相談者のおかげで成長するんです。相談を受けることによってモチベーションも上がり、よし、また頑張ろうと思う。ここのところの経験を積むということで考えれば、やはり三年、五年の雇いどめというのはとんでもない話だと思います。ぜひともここを改善しないといけないんだけれども、やはり、嘱託という中にあっては、これを制度改正しないと難しい問題なんだろうと思います。

 三つ目になりますが、何人ぐらいのいわゆるセンターであればということですが、今、全国津々浦々で千八百の自治体で相談窓口を設置するということも言われておると思います。

 私は、平成十九年まで一人体制でした。一番初め、平成十一年四月に開設されたときには一人で、何にもない、初めての新設の窓口だったんですね。右も左もわからない。そうしますと、一人体制の窓口の場合は、どうしても自分本位の処理になってしまう危険性が高いです。お金がないので研修にも行けずに、相模原の国民生活センターの研修にも一度たりとも行くことはできませんでした。

 こんな状況の中で、やはり一人体制であるとなかなか隔たりが多いと思います。今、特に消費者庁が求めているのは、取引、安全、表示すべてに強い、最後の最後までワンストップでできる窓口、これをするには一人体制の窓口では絶対無理だと思います。最低でも十人は集まり、そして広域化センターにして専門家集団としての位置づけをしていかないと、この取引、安全、表示すべてに強い窓口、すべてに強い消費者センターというのはできないと思います。

 以上です。

吉井委員 ありがとうございます。

 次に、清水陳述人にお伺いしたいと思いますが、消費者被害が生まれて、それを拡大しないように取り組むという消費者被害拡大防止という点では、適格消費者団体の差しとめ請求などは非常に大事な意味を持っているというふうに思うんです。その現状と、これをさらに活発なものにしていくにはここをこういうふうにもっと取り組めるようにするといいという、何といいますか、これから前進させるための課題としてどういうものをお考えかを伺いたいと思います。

清水巌君 御指摘のように、団体訴権が認められまして差しとめ請求できるということは、ある意味で全国一律に、例えば不当な契約条件が使われている場合に差しとめることができますので、いわば潜在的な被害者も含めて、それは一気に被害の発生防止にはなります。ただ、救済はできませんので、現在差しとめしかできないので、その意味でいうと、先ほどもちょっと申し上げましたように、不当な契約条件を使っておいて、あるいは不当な表示とかもやっておいて、とめられたら、済みません、やめました、そう言えばいいんだから安心してやれよみたいな感じで、絶対に利益はそのまま戻っているからみたいな形になるのが一番私たちにとって悔しいというのがありますので、その意味でいうと、この民主党が出してくださっている団体訴訟法案というのは非常に私たちにとっては大事だというふうに思います。

 差しとめ請求そのものについての活性化ということでいえば、現在各団体ともに非常に頑張っておりますので、ちょっと私も正確な件数は今覚えておりませんが、裁判になる前の請求の段階で、事業者の方が次々と、不当な契約条件に関しましては改善の提案をしてこられます。我々の団体でも、いわば全国団体である生命保険協会の不当な文書も全部改善していただきました。

 さらに、訴訟につきましても、今ほとんどの団体が次々と訴訟を起こしている。私の団体も今、ジャルツアーズという旅行会社に対して、JALとジャルツアーズという非常に大きな企業に対して訴訟を起こしておりますけれども、その意味でいうと、今の状態で頑張れるといえば頑張れます。ただ、あえて言えば、行政からのいろいろな情報がなかなかもらいにくい。

 私たちは本当に公的な立場でしか訴訟を起こしませんので、個人的には決して自分たちの利益に何一つならないわけですから。しかも、御存じのとおり、消費者契約法で個人情報の保護に関しては非常に細かい規制があって、絶対に漏れないようになっている。まずそういうことを理解していただいて、ぜひ、単に国民生活センターの例えばPIO―NETが見られるとかいうだけではなくて、もっと個別具体的な各消費生活センターが持っておられる情報等も、事業者名も含めて教えていただきたい。そういうふうないわば情報提供についてもう少し積極的にお互いに協力ができるようにさせていただければ、私たちの立場での消費者の立場の権利行使が大変しやすくなると思います。

吉井委員 もう一問、清水陳述人にお願いしたいと思うんですが、差しとめ請求で被害拡大を防止する、加害者、加害業者に対して抑止力が働くわけですけれども、同時に被害者の方に、例えば裁判で決着がついたときに、これは国会でも参考人の方から御紹介もあったんですけれども、裁判で勝った被害を償う金が、業者からすると、新たな被害者を生み出して、それを原資にして支払いよる、これではもう解決しないということで、違法に上げた収益を剥奪する道、それをどのように考えていくかということがやはり大事だということも指摘がありました。この点について、違法収益の剥奪については何が必要かということについてのお考えを伺いたいと思います。

清水巌君 違法収益につきましては、例えば民主党からも出ていますが、非常に細かいところについての要件等についてはまだ出しておられませんので、ぜひ細かいところもきちんと規定していただいて、私たちが権利行使する場合に、これで勝てるんだろうか負けるんだろうか、裁判所は許可してくれるんだろうか、してくれないだろうかという不安がある状態で訴訟を起こしますと、もし負けたときには事業者から逆に損害賠償請求訴訟を起こされる可能性もあるので、そういう要件的なものとか効果に関しては、できるだけ裁判官によって解釈の余地が非常に広がるような規定は置かないでいただきたい。ちょっとこれはまず前置きなんですけれども、一般論です。

 不当に上げた利益につきましては、これはこの法案にも出しておられるように、まずその財産はできるだけ早く差し押さえてもらって保全していただくということが第一で、請求権を認めていただくということがその次に必要だと思います。

 差しとめ請求が認められた場合にも、例えば附帯的に和解する場合も、不当に収得した敷金とかを返すように、さらにさかのぼって、過去に収得した敷金についても返すようにとか、そういった要求をしながら私たちも訴訟を、私の団体ではありませんが、他の団体さんも皆、そういう配慮で訴訟を進めておられますけれども、法律にそういうふうな根拠規定は全くないんですね。ですから、裁判官自身も、どこまで、裁判でそういうことまで認めていいのかとかいうのが非常に困っておられるところがあるみたいなので、例えば差しとめの場合でも、不当な収益について消費者に返すようにというふうな制度が同時にできれば、かなり効果があるんじゃないか。改めて損害賠償請求訴訟を起こさなくても、効果があるかもしれません。

 その辺の効果についての詰めがまだできていないので、とめればよいというだけの法律なので、それ以外は私たちがさまざま、そういう附帯的に和解条項を出していくとかいう形で処理せざるを得ないというのが現状です。

吉井委員 それでは、仁坂陳述人、お願いします。多分、時間の関係で最後の質問になると思うんですが。

 この間、和歌山の田辺の方へ行ったときに、あそこに支所が一つあるんですね。それで、田辺市が、奈良県境から三重県境まで、町村合併で非常に広くなっています。実際に和歌山の方では消費生活相談窓口が少ないということがあったんですが、なぜこれだけ少ないんだろうかということで、率直に言ってなかなかわかりにくいところでした。なぜそうなっているのかということと、もう一つ、消費者基本法の中で消費生活相談業務というのは自治事務というふうになってきておりますが、自治事務としてやるとすると、それはどういうふうにやっていくとその体制がつくれるのか。財政の方としては、相談業務なんかは自治事務としてやるとすると、何を解決すればやりやすくなるのか。こういうふうな点についてのお考えを伺っておきたいと思います。

仁坂吉伸君 なぜ少ないかという点については、私も歴史学者ではないのでちょっとわかりません。憶測で物を言うのは恥ずかしいことですから控えさせていただきますが、これでいいかと言われると、そんなことはないと思っております。

 先ほど、とりあえず担当者による相談窓口を置いております、それから、相談が消費生活センターに来ますというふうに申し上げましたが、やはりそれよりも、地元で相談ができれば、それはそれにこしたことはないわけでございます。したがって、県としては、市町村にもそれぞれできるだけ消費生活センターを置いたりして、いろいろ充実してもらいたいというメッセージは伝えておるのでございますけれども、そこで第二の質問になると、では、なぜそう簡単にできないのかということは、やはり財政の問題だと思います。今度は自治事務になったときにどういう体制だったらできるのか、これもまた財政の問題だと思います。

 そういう意味で、財政はこの問題だけに深刻なわけではなくて、全体的に深刻な状況でございまして、私だけじゃなくて、和歌山県はおろか、日本じゅうの首長さんはみんな、心を痛めながら、何とか実だけは守ろうというふうに努力しているんだと思っております。

吉井委員 質問を終わります。ありがとうございました。

岸田座長 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森文尋でございます。

 四人の陳述人の皆様、大変お疲れさまでございます。私で最後でございますから、よろしくお願いをしたいと思います。

 消費者庁は、消費者に関係するすべての情報を一元化するというところが大変大きな役割を果たすということになるんですが、情報を一元化して、その後どうそれを公表していくのかということが大変重要な課題でもあると思うんです。今の政府案で言うと、概要を報告するだけということになっているんですが、先ほど清水先生は、消費者団体の立場からいうと、すべての情報を開示して、すべて判断できるようにしてほしいというお話がございました。

 そういうことで例えば消費者団体は進んでおられるのかどうか、まず最初に清水先生と、それから妹尾先生に、国生審の御経験もあるという話を聞いたものですから、それとの対比も含めて、もしそんなことをお聞かせいただけたらありがたいと思います。

岸田座長 それでは、まず清水陳述人、妹尾陳述人の順番でお願いします。

清水巌君 また私の方から質問しちゃうとちょっと……。質問の内容、いいですか。済みません。

日森委員 一元化された情報を開示するときに、我々は、概要開示だとかということ、それから、いろいろスクリーンをかけて開示してもらっては困ると。基本的には、私も何度も委員会で言っているんですが、例えば国土交通省の自動車のふぐあい情報の収集、開示のような形で、すべて開示をする、検索ができるというふうなことであれば、先ほど清水先生がおっしゃっていた、さまざまな問題について消費者団体の要求にこたえることになるんじゃないかというふうに思ったものですから、その辺について先生の、具体的に情報開示がどうあってほしいという要望も含めてお聞かせいただけたらと思います。

清水巌君 貴重なお時間を再度とりまして、申しわけありませんでした。消費者団体の方からの情報をどういうふうに出すのかというのか、どちらかちょっと私も判断しかねてしまいましたので、申しわけありませんでした。

 それは、先ほども申し上げましたように、行政機関が持っている消費者被害情報等につきましては、消費者団体にもよりますけれども、非常に細かい個人情報、これはもちろん消費者の情報だけではなくて事業者に関する情報についても保護をしていかなければならないという厳しい規制があって、その中で制度を活用したいと思っているわけですから、先生御指摘のように、持っている情報はすべて出していただければ、一番生かせるというふうに思います。

妹尾美智子君 個人情報の場合、その苦情の内容につきましては、いろいろな意味で予防措置や何かをとります都合がございますから発表することはございますけれども、個人の名前とか住所、その辺は必ず伏せて今のところは処理をいたしております。

 それから、苦情の内容によりましては、むしろ個人の名前なり住所をはっきりした方がいいというような場合もございますけれども、そういうときはやはり御本人の御了解をいただいて、御本人が了解をなさればお名前も何も出しますけれども、それ以外は、個人名、住所は全部伏せております。

日森委員 ありがとうございました。

 それから、清水先生の方で、消費者庁が本来の力を発揮するためには、法律案をみずから企画立案できるということが必要ではないかという提起がありました。これは具体的に我々も、権限をしっかり持たないと、横並び省庁ではこれは余り意味がないという思いがあるものですから、こうした問題も含めて、権限を消費者庁がどう持っていくのかということが、一つ大きな焦点になっていると思うんですね。

 ここでもう少し、法律案をみずから企画立案する権限は、例えば今の政府案をベースで考えていく場合、消費者政策委員会がそういう能力を持つのか、あるいは消費者庁かどこか、そういう法案をつくるようなところをやるのか、先生の組織図も含めて、イメージがありましたらお聞かせいただきたいと思いました。

清水巌君 ちょっと御質問にお答えする前に、済みません、私も、妹尾先生がおっしゃったとおりで、個人の名称とか住所とか、特に必要のない場合にまで開示してほしいと言っているわけではありません。それはもう妹尾先生のおっしゃるとおりだと思います。

 今の、消費者庁の方での具体的な法案の立案企画ができるようにというのは、私のこれまでの国生審の委員とか通産省の産業構造審議会の委員とかをして感じたことなんですけれども、国民生活審議会のように、現在でも前よりはやや位置づけは高くなっていますが、内閣総理大臣の諮問機関であっても、具体的に政府内部で法案を、当時、経済企画庁の国民生活局が担当で、所管していませんので、さまざまな報告書を国民生活審議会で出していっても、例えば、その件については、済みません、通商産業省が今考えておりますので待ってください、こちらではちょっと言わないようにしてくださいというようなことを、私も、昔、国生審で発言しているときに、そういう意見を聞いたりとかしています。

 当然、権限がなければ、権限がないところがそういう例えば消費者政策委員会であれこれ提案しても、何を言っているんだ、自分たちの所管でないところになぜ口出しするんだとかいう反応は自然だと思いますので、消費者の権利を守るための法案については、やはり基本的にそれが、消費者政策委員会の方がいいのか、消費者庁のそれぞれの部署で積み上げていくのがいいのか、ちょっとその辺のことは、私も、今、消費者政策委員会の権限自体がまだちょっとわかりにくいので、どちらとも申し上げにくいんですけれども、ただ、最終的には、もちろん消費者政策委員会の審議を経て消費者庁の法案として出すというのが恐らく消費者の意見を最も反映する形ではないかなと推測はします。

 ただ、ちょっと消費者政策委員会がまだ何か流動的なところがあるようなので、どちらとも何ともちょっとわかりませんが、どちらにせよ、消費者庁にそういう法案提出の権限がなければ、実質的には消費者の権利を守る制度は結局できないと思います。事業者側と絶えず接触されている省庁は、事業者側の情報が最も多く入るわけですし、事業者の立場はよく理解できます。それは人間として当然のことであって、その方がおかしいというんじゃなくて、そういう立場にある人たちが法案をつくるとなれば、それはやはり消費者にとってはええっと思うような法案になってくる可能性があるということなので、これは消費者庁になければならないというふうに考えています。

日森委員 ありがとうございます。

 ちょっと地方の消費生活センターについてお伺いをしたいと思いますが、仁坂陳述人と生水陳述人にお伺いしたいと思います。

 都道府県は必置になっていますが、その他は努力義務になっていて、それぞれいただいた資料を見ても、市町村で設置をしているのは物すごく少ないわけですよね。実際にその相談業務をやって、これからあっせんして解決していくという努力をやっていくとすると、非常に体制として弱いんじゃないかというふうに思うんです。

 京都の例をちょっと拝見しましたら、これは何か都道府県が中心のセンターがあって、それからサテライト、各広域行政区分か何かわかりませんが、そういうところに配置をしてカバーしていくとかいう、さまざまな工夫をして、なるべく相談窓口をふやしていくということにそれぞれ努力されていると思うんですが、全市町村に窓口は置いた方がいいという意見もありますし、あるいは、必置義務がある都道府県が責任を持ってサテライトなどをつくってカバーしていった方がいいのではないかという意見も、参考人の質疑を随分やってきたんですが、いろいろ意見ございました。

 ちょっと率直に、実際に相談業務を担当している生水さんや、それから知事はその指揮をする側にいてどんなふうにお考えなのか。当然強化をしていかなきゃいけないわけで、どんな方法で消費者のニーズにこたえる窓口体制をつくっていくのか、お考えがありましたらお聞かせいただきたいと思います。

仁坂吉伸君 法律は、今、日森先生がおっしゃったような形になっておりまして、私は、法律の書き方としてはああいうものかなと思います。

 と申しますのは、現実の問題として考えますと、和歌山県には北山村という飛び地の村があります。人口五百人であります。そういうところに、では、先ほど生水さんがおっしゃったようなレベルのセンターを置けるかというと、なかなか難しいと思います。だけれども、そこでもやはり消費者問題というのは発生するわけですから、仕事としては、それを扱う人がだれかいて、今おっしゃったように、サテライト的な、県庁のセンターと相談をしながら対応していくというのが、そこではそんなものかなという感じはいたします。

 ただ、やはり努力義務として置かれた、あるいは国の意思がそうやって示されたということからも、今後、我々も進めていきたいと思いますし、できるだけ可能な限り消費生活センターというのは置いた方がいいということで、市町村といろいろ親身になって相談していきたいと思っています。

 その間、実は、田辺に一つあるというのは、まさにそのサテライト的な意味合いを私ども持たせておるセンターでございます。その数も二つしかないじゃないかと言われるとうつむいてしまうのでございますけれども、そういうこともまた必要に応じて考えていって、本当に必要だったらその数をふやしていくべきかもしれません。

生水裕美君 ありがたい質問です。

 実は、例えば多重債務、先ほどお話ししましたが、この相談を受けるに当たっては、やはり基礎自治体が掘り起こし、またその後の生活再建を考えれば、行政サービスの提供ができます。市民からのいろいろな相談を受ける市民相談窓口、こういったものを基礎自治体が受ける相談としてきちっとしていく。それとともに、いわゆる消費生活相談というのは、先ほどお話ししましたように、安全、取引、表示等々専門的な相談になります。そうすると、専門家集団としての役割が必要なんですね。ですから、基礎自治体が受ける市民相談、それと専門家集団が受ける消費生活相談、この役割を区別してちゃんと考えていく必要性があると思います。

 例えば、全基礎自治体に消費生活相談を置けば、やはり格差が生まれます。相談格差です。そうではなくて、専門家集団がきっちり受けて、最後の最後まで解決を目指していくという専門家集団のセンターを、広域化センターとして、私が考えるには約三十万都市ぐらいに一つずつ置いていく。それと、基礎自治体にあります市民相談窓口等と連携をとりながら、例えば高齢者であったり障害者であったり、広域化センターに行けない人に対しては、そこの窓口まで出向いていって相談を受けていく、また出張相談を受ける。そこの基礎自治体と本当に密な連携をとりながら、専門家集団としての消費生活相談を解決し、そして、基礎自治体としての、例えば多重債務であるとか生活再建との連携をしていく。こういう役割分担をし連携をしていくというのが、私は全国において一番今必要なんだろうと思います。

 今、国会の中では、全千八百の自治体に窓口を置くのか、それとも広域化センターにするのか、こういった両者極端な討論になっているかと思うんです。そうではなくて、それぞれの役割を考えていただいて、お互い連携をして、それぞれ何ができるか、何をすればいいのかというところをぜひとも討論いただきたいと思います。

日森委員 ありがとうございました。

 仁坂知事に、ちょっと意地悪な質問で申しわけないんですが、首長さんは一人だけなものですから。

 消費者庁をつくるというのは、産業育成一本やりであった政策をいわば消費者主体の政策に大転換しようということで、パラダイム転換と言われているんですが、これは国だけパラダイム転換しても当然できないわけで、都道府県、市町村がそういう形で、とにかく都道府県はそうだと思うんですね、パラダイム転換をしていく必要があるというふうに思うんです。

 和歌山の県庁が今までどういうシステムになっているかよくわかりませんが、仁坂知事として、県がパラダイム転換をしていく、つまり消費者目線で県の行政を進めていくというために、今後どんな改革ということを和歌山県でおやりになろうとしているか、ちょっと意地悪で申しわけございませんが、決意をお聞かせください。

仁坂吉伸君 お言葉を返すようでございますが、私は、日本の政策が産業振興一本やりであったとは決して思いません。いろいろな意味で、消費者の権利も守りながら産業の発達も図るというのが、これまでやってきた日本の政策ではなかったかと思います。

 そうではありますけれども、では、県庁でどうだということでございますけれども、私は、一番大事なことは、県庁の、我々、私も知事ですから役人です、行政官でありますが、その知事以下のすべての行政官が、常に消費者の利益に立って、それで人々の幸せを考える、そのために秘術を尽くして、いいと思われる秩序をつくっていくように我々なりに努力をするということではないかと思います。

 そのためには、大変勉強しないといけないと思います。消費生活相談員の人にだけ難しいところをお願いして、我々が相談を受けても何のこっちゃと言っているようだと、我々の責務が果たせないというふうに思います。それは、我々は、やはり富も高めないといけない、産業も振興しなきゃいけないんですが、同時に、それは消費者の幸せを無視するような形で行われてはいけないと思いますから、そのためには、まさに実態をよく勉強して、法制を勉強して、それで必要と思ったら政府に、中央政府ですが、ちゃんと文句も言いに行くし、自分たちも速やかに対応する、そういう気概を持ってやっていくということが大事ではないかと思います。

日森委員 どうもありがとうございました。終わります。

岸田座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、御多忙の中、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただきました御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝を申し上げます。まことにありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後三時二十八分散会


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