衆議院

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第6号 平成26年4月15日(火曜日)

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平成二十六年四月十五日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山本 幸三君

   理事 泉原 保二君 理事 大塚 高司君

   理事 北村 誠吾君 理事 永岡 桂子君

   理事 原田 憲治君 理事 郡  和子君

   理事 重徳 和彦君 理事 古屋 範子君

      秋本 真利君    穴見 陽一君

      小倉 將信君    大岡 敏孝君

      金子 恵美君    菅野さちこ君

      小島 敏文君    佐々木 紀君

      田畑  毅君    田畑 裕明君

      豊田真由子君    藤井比早之君

      藤丸  敏君    藤原  崇君

      細田 健一君    堀井  学君

      堀内 詔子君    宮崎 政久君

      八木 哲也君    山田 美樹君

      泉  健太君    武正 公一君

      上西小百合君    河野 正美君

      清水鴻一郎君    國重  徹君

      浜地 雅一君    柏倉 祐司君

      井出 庸生君    穀田 恵二君

      青木  愛君

    …………………………………

   参考人

   (一般社団法人日本経済団体連合会専務理事)    久保田政一君

   参考人

   (公益財団法人食の安全・安心財団・理事・事務局長)            中村 啓一君

   参考人

   (甲南大学法科大学院教授)

   (神戸大学名誉教授)   根岸  哲君

   参考人

   (公益社団法人全国消費生活相談員協会専務理事)  増田 悦子君

   衆議院調査局第三特別調査室長           清水  敦君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十五日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     大岡 敏孝君

  武井 俊輔君     佐々木 紀君

  比嘉奈津美君     八木 哲也君

  宮崎 謙介君     細田 健一君

  井坂 信彦君     井出 庸生君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     鬼木  誠君

  佐々木 紀君     武井 俊輔君

  細田 健一君     菅野さちこ君

  八木 哲也君     藤井比早之君

  井出 庸生君     井坂 信彦君

同日

 辞任         補欠選任

  菅野さちこ君     宮崎 謙介君

  藤井比早之君     比嘉奈津美君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第五四号)


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する等の法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、一般社団法人日本経済団体連合会専務理事久保田政一君、公益財団法人食の安全・安心財団・理事・事務局長中村啓一君、甲南大学法科大学院教授・神戸大学名誉教授根岸哲君、公益社団法人全国消費生活相談員協会専務理事増田悦子君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、主に景品表示法の部分につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず久保田参考人にお願いいたします。

久保田参考人 おはようございます。ただいま御紹介いただきました経団連専務理事の久保田と申します。

 きょうは、こういった意見陳述の機会を設けていただきまして、まことにありがとうございます。

 きょうは、不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する等の法律案について、経団連の考え方を御説明させていただきます。

 お手元にレジュメというか、意見書の要約でございますけれども、お配りしておりますので、それを見ていただきながらお聞きいただければというふうに思っております。

 まず、改正法案に対する基本的な考え方でございます。

 今回の景表法改正の議論の契機となりました、昨年の秋に相次いだ食品誤表示の問題に対しましては、経団連といたしましても、消費者の皆様の信頼を損ねる行為ということで、大変残念に思っているところでございます。企業にとりましては、顧客である消費者の皆様の信頼を得るには、事業者がみずからの商品、サービスの適正な表示を確実なものとすることが重要であるというふうに考えておりまして、そのために、社内体制の再点検を行い、誤表示を防ぐことに努めることが肝要であるというふうに考えております。

 経団連自体としましても、企業行動憲章というのを定めておりまして、その実行の手引きを策定しまして、会員企業に対してその遵守を日ごろから強く求めているところでございます。その中で、消費者、顧客に対して商品、サービスに関する適切な情報を提供するよう、日ごろから呼びかけているところでございます。それにもかかわらず、今般このような誤表示の事案が相次いで起きたということにつきましては、大変遺憾なことだというふうに思っております。

 事案の発生を受けまして、昨年の十一月には、消費者庁の御支援を得まして、担当大臣、当日は御欠席でございましたが、代理の方に御出席いただきまして、あるいは消費者庁長官にも御来席いただきまして、消費者志向経営トップセミナーというのを開催して、経営者を初めとする三百名を超える企業関係者に改めて企業の責任について注意喚起を行うなど、周知徹底に力を入れているところでございます。

 次に、不当表示が相次いで明らかになったことを踏まえて、政府が今般法制度の整備を検討していくということにつきましては、私どもも理解しているところでございます。

 不当表示の原因はいろいろございますが、その一つには、何が景品表示法上違法とされるかということが不明確な部分もありまして、表示を実際に行う現場レベルまで景品表示法のルールが十分に周知徹底されていなかったこともあるのではないかというふうに考えております。

 景品表示法は、今回問題となりました食品やメニューの表示だけではなくて、消費者に対する全ての表示に関係する法律でございます。まずは、現行法上どのような表示が禁止されているのか、わかりやすいガイドラインを策定して、適法、違法の境界を明確にしていただくことが重要であろうというふうに考えております。

 また、表示は、消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害しない範囲において各企業がそれぞれの商品、サービスに適した形態を工夫できることが重要でございまして、それが活発な消費、ひいては我が国経済の活性化にもつながるというふうに考えております。

 既に多くの業界では、公正な競争と消費者の利益を守るために、業界団体において公正競争規約などを定め、それに基づいて適正な表示を行っております。誤表示により消費者の信頼を損なうことがあってはならないのは当然でございますけれども、他方で、自由で活発な市場をつくり出すためにも、公正競争規約に基づく各企業の取り組みを十分に尊重することが必要であるというふうに考えております。

 次に、今回の改正法案で示されております各論点についての意見を述べさせていただきます。

 今回の改正法案では、消費者庁を中心とする国における体制の強化及び都道府県知事の権限強化で行政の監視指導体制の強化を行うというふうにされております。

 まず、都道府県知事への措置命令権限の付与についてですけれども、権限付与そのものについては私どもも賛成しているところでございます。しかしながら、都道府県知事に措置命令等の権限が委任されることによりまして、都道府県ごとにばらばらの運用が行われるということになりますと、何が違法な表示なのかについての予測可能性が損なわれる、また公平性に欠けるということにもなりかねません。法令を遵守している健全な事業者にとって萎縮効果が生じないように、事業者の予見可能性を高めるとともに判断基準を統一して、わかりやすく示していただきたいというふうに思っております。

 また、関係省庁による調査等の権限の委任については、関係省庁ごとに異なる基準で調査等が行われた場合には事業者に混乱が生じかねません。関係省庁による調査等についても、統一した基準で行われるようにしていただきたいというふうに思っております。

 次に、改正法案では、事業者の表示管理体制を明確にするということが提案されております。自社の商品や役務の表示をどのように管理するかについては、業種、業務内容や規模等の違いによって異なるというふうに考えております。組織体制、管理方法を含め、表示に関する具体的な実務を十分に踏まえて、実務の対応が可能なものにしていただきたいというふうに考えております。

 冒頭に述べましたように、例えば、業界によっては既に公正競争規約等が定められておりまして、これに沿った表示を行っている事業者には必要以上の手続あるいは体制整備の負担を求めるべきではないというふうに考えております。

 加えて、改正法案では、事業者が講ずべき措置に関して内閣総理大臣が指針を定めるということになっております。指針の制定に当たっては、事前に事業者などから十分に意見を聴取する機会を設けるとともに、迅速に企業が対応できますように、速やかに公表して周知をしていただきたいというふうに考えております。

 最後に、改正法案において検討規定が置かれております課徴金制度の導入について意見を述べさせていただきます。

 まず、故意に消費者を混乱させたり、不正であることを知りながら不当表示を行うような事業者は市場から排除されるべきでありまして、こういった場合には厳格かつ迅速な対処が必要というふうに考えております。

 課徴金の目的につきましては、あくまでも違反行為の抑止と捉えるべきだというふうに考えております。

 そもそも不当表示といいましても、故意に行う悪質性の高いものから、単なるミスと言えるものまで、さまざまなものがございます。無限定に課徴金が課されることになった場合には、事業者に無用の混乱や萎縮効果を生じかねないことから、対象行為は故意または重過失による優良誤認、有利誤認となる不当表示のみに限定するとともに、課徴金を課すべき違反行為であることの立証責任は、行政手続の原則どおり、不利益処分を課す行政の側が負うべきこととすべきだというふうに考えております。

 不実証広告規制に係る表示につきましては、合理的な根拠なく商品または役務の効果や性能の著しい優良性を示す表示を迅速に規制するために、措置命令の規定の適用についてのみ優良誤認表示とみなすというものでございます。

 これらを課徴金の対象行為とすることは、課徴金制度は措置命令のように違反行為の差しとめや誤認の排除を目的とする緊急的な措置ではないこと、実体的には不当表示と確定し切れない表示行為に対して課徴金を課すことになりかねないということで、不適切であるというふうに考えております。

 課徴金額の算定に当たっては、違反行為の抑止という課徴金の目的を超える課徴金を課すことがないようにすべきというふうに考えております。また、独占禁止法の不公正な取引方法に対する課徴金との整合性というのもとる必要があるというふうに考えております。

 なお、事業者の自主的な取り組みを促す観点からは、事業者が顧客に返金等の対応を行った場合には、課徴金を減算する措置を設けるということも考えていただきたいというふうに考えております。

 そして、課徴金納付命令が下された場合の事業者の社会的、経済的な不利益の大きさに鑑み、弁明の機会の付与等の適切な事前手続を定めるべきというふうに考えております。

 また、徴収した課徴金については、独占禁止法あるいは金融商品取引法の場合と同様に、国庫に入れるべきでありまして、消費者団体等への経済的支援のあり方については、別途、消費者政策の予算配分の中でその適否を論ずるべきだというふうに考えております。

 また、違反行為の抑止が目的である課徴金制度に、個人への配賦をすることによって民事手続が果たすべき損害填補の役割を担わせることは、我が国の法体系にはなじまないものであるというふうに考えております。

 課徴金という非常に厳しい行政制裁を課す前提として、明確なガイドラインの策定を急いで、周知徹底を行っていただきたいというふうに考えております。

 冒頭にも述べましたとおり、表示に関する問題は、事業者みずからが自主的に自己の商品、役務の適正な表示を確実なものとし、消費者の信頼を得ることを最優先させるということが不可欠でございます。

 経団連としましても、企業が、社会的に有用で安全な商品、サービスを開発、提供し、消費者の皆様の満足と信頼を獲得することができるよう、引き続き努力していきたいというふうに考えております。

 私からの説明は以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

山本委員長 ありがとうございました。

 次に、中村参考人にお願いいたします。

中村参考人 公益財団法人食の安全・安心財団事務局長をしております中村と申します。よろしくお願い申し上げます。

 本日は、このような場で意見を述べさせていただく機会をいただきましたことを感謝申し上げます。ありがとうございます。

 当財団は、もともとの母体は、実は外食産業界が出資をした団体が母体になっております。それが、相次ぐ食品偽装等、食の安全、安心が大きな社会的テーマになったことから、やはり独立した立場でこの問題を正面から捉うべきであろうということで、五年前に独立し、今の形になっております。したがいまして、理事等にも、学識経験者、消費者、それからメディア出身者、業界も入っております。多様な人材をお招きして活動をしております。

 活動は、専ら東日本大震災に伴う原発事故の風評被害、あるいは食中毒問題、あるいは食品表示問題、これらをテーマに活動しているわけでございます。

 それから、私自身でございますが、二〇一一年まで農林水産省におりました。在職中の後半は、いわゆる食品Gメンと言われておりますが、食品表示を行政の立場から取り締まる立場で長く仕事をしておりました。その関係から、食品表示の問題が起きると各報道機関等から意見を求められるということも多うございます。その関係で、本日、ここにお招きをいただいたのかなというふうに感じているわけでございます。

 景品表示法の一部を改正する法律案につきまして、私の考えを述べさせていただきます。

 お手元に一枚紙を用意しておりますので、それに沿って御説明させていただきます。

 今回、きっかけとなったのが、一連のメニュー表示問題ということでございます。消費者を偽る行為、これはどのような理由があろうと許されるものではありません。一連のメニュー誤表示については、事業者は真摯に受けとめるべきですし、反省すべきと考えているところでございます。

 ただ、基本的には、景品表示法は、事業者の自由で活発な経済活動を前提に、不当な顧客誘引や消費者の選択を阻害する等、行き過ぎた行為について制限するものでありまして、法の改正が事業活動を萎縮させるものであってはならないと考えてございます。

 今回のきっかけになりましたメニュー問題でございますが、昨年十月二十二日の関西のホテルの公表がきっかけになっております。実は、まだこのホテルの記者会見が続いている最中から、私のところに報道関係者から問い合わせが参りました。来た問い合わせの内容が、この問題をどう捉えたらいいのかということ、それから、悪質な偽装と言えるのではないかという問い合わせでございました。

 そのときに、どういう内容か、取り寄せて、四十七項目を見たわけでございますけれども、これを偽装、ましてや悪質な偽装と言うには、大きな議論が二つあったわけでございます。

 一つは、このホテルの公表は三社目だったということですね。その前に関東で二社公表されておりますが、これは大きな問題になっておりません。それが三社目にして非常に大きな問題になったということです。

 この背景といたしましては、公表する側、あるいは取材する側、これが食品表示に対して十分な認識を持っていなかったということが挙げられるのではないかなというふうに思っております。

 メニュー問題を振り返りますと、誤表示として公表された多くが、大きいエビはクルマエビ、小さいエビはシバエビというような中国料理の世界の慣習ということがありました。それから、ステーキ等に牛脂を注入する等の下処理加工を施した旨の説明がなかったということ。その後、続々と公表されておりますが、この二つが非常に多く見られているわけです。

 料理界の慣習、これは言いわけになりません。やはりブラックタイガーとクルマエビは違うわけですから、これは許されるものではないということになります。

 ただ、牛脂注入はちょっと事情が違いました。二〇一一年に、消費者庁はこの問題で措置命令を出しております。つまり、牛脂注入をした、加工した牛肉を霜降りステーキとして販売していたわけですね。それに対して、景表法違反、優良誤認であるという指摘をしております。その理由が、霜降りという言葉が、いわゆる飼育方法に工夫した牛肉の霜降りと誤解される、人工的に牛脂を注入したものであるからということでございました。ですから、業界は、牛脂を注入した牛肉のステーキに霜降りという言葉は禁句だということは理解していたわけでございます。

 実は、もう一つ、それにあわせて消費者庁がQアンドAをホームページに公表しておりました。そのホームページのQアンドAによりますと、牛脂注入肉を霜降りビーフステーキとしては言いません、単なるステーキと表示する場合にどうですかというQがありまして、そのAが、やはりそれは一枚の生肉を焼いた料理と消費者は誤認されます、ですから牛脂注入であることを明確に書くようにしなさいというQアンドAがあったわけですね。それを、実は周知されていなかった、ほとんどの業者が知らなかったということでございます。

 ホテルが公表した後、認識していなかったと一様に口をそろえて言っておりますけれども、ある意味それは事実でございまして、実は私も、この問題が起きてから初めてそのQアンドAの存在を知ったというのが現状でございます。

 産地、銘柄を違えるということは消費者を偽る行為でございます。このような信頼を損なう行為は、いかなる理由があろうとも許されるものではないと考えております。しかし、メニュー問題に限って言えば、関係省庁の連携による適切な指導と現行制度の的確な運用で十分対応が可能というふうに私は考えております。

 景品表示法は全ての商品、全ての役務を対象としております。今回の改正は、インターネットの普及や消費者の高齢化等を背景に、情報ツールあるいは取引、これらの多様化、複雑化に対応するものと理解をしているわけでございます。

 二つ目が、食品表示等の管理体制の整備でございます。

 提供する商品について、表示を含めて法令を遵守し、品質管理を適切に行うということは事業者としては当然の責務であろうと考えているわけでございます。このため、事業者は、社内の品質管理、法務、広報、それぞれの部署が連携して、業態、規模に応じた、表示を含めたコンプライアンス体制というものを自主的に進めているというのが今の現状でございます。

 しかし、我が国の大宗を占める小零細事業者の存在、多様な業態を考慮した場合に、全ての事業者に対して、法律をもって、一律にしかも画一的な体制の整備を求めるということは現実的でないというふうに考えております。物理的、人的に制約のある小規模事業者に対しては、実態を踏まえた配慮が必要ではないかというふうに考えているわけでございます。

 三つ目が、権限の委任でございます。

 改正案では、事業所管省庁や自治体に権限の一部を委任できるものとされております。

 二〇〇九年に消費者庁が発足しましたが、当時から、現場の実行部隊を持たない組織がどこまで対応できるかと心配する声はありました。全国組織を持つ省庁と連携を密にして、全国にネットワークされた組織と現場の人材を有効に活用する、これは行政の効率化を図り、実効性を高めるためにも有効であると考えております。

 しかし、多数の組織と人が関与する場合は、どの組織も同じ目線、判断基準で仕事ができることが必須の条件ということになります。現場に同じ目線で仕事をさせるためには、同じ物差しを持たせることが必要であります。

 景品表示法は、事業者の任意の表現を前提に、行き過ぎた表示を制限しております。

 三月二十八日、消費者庁は、いわゆるメニュー表示ガイドラインを公表されました。

 成案の公表に先立ちまして、ガイドラインの案と称するものが昨年十二月十九日に公表されて、パブリックコメントが実施されております。ともすれば、行政のパブリックコメントは形式的なものが多いわけですけれども、昨年の案と成案とを比較しますと、実態を踏まえた現実的なものにかなり見直されております。本来のパブリックコメントが機能し、その役割を果たしたということについては、非常に高く評価しているものでございます。

 そのメニュー表示ガイドラインによりますと、「景品表示法は、表示から受ける一般消費者の印象・認識を基準として、消費者の自主的・合理的な選択を阻害するおそれのある表示を不当な表示として禁止しているものであるから、事前に、どのような表示をすべきか、又はどのような表示をしてはいけないかを具体的・網羅的に明らかとすることはできない。」という説明をしております。いわゆる個別に判断するということになります。これはどういうことかといいますと、行政の裁量の幅が広いということになるわけでございます。

 昨年、消費者庁は、メニューガイドライン案を公表いたしました。その同日に、ホテル三社に対して措置命令を出したわけでございます。実は、メニュー表示に問題があったという公表は数百社に及ぶわけですが、なぜ三社だったのか。これについて理解に戸惑っている事業者は実は少なくありません。

 今回の改正案では、措置命令の権限を都道府県に委任することができるとされておりますが、都道府県によって対応に差があるということになりますと、事業者、消費者ともに混乱する結果となるわけでございます。多数の組織と人が同じ目線で仕事をする、そのためには、必要な仕組みづくりというのが不可欠だというふうに考えております。

 それから、適格消費者団体への情報提供でございます。これは一部、よく理解できないところがあります。

 適格消費者団体は、事業者が優良誤認あるいは有利誤認の行為を認めるときは、差しとめ請求権等の行使をできることになっております。他方、消費者安全法で新たに設けられます消費生活協力員等は、得た情報を行政に提供することが職務の一つとなっております。つまり、不特定多数の消費者の利益を損なう情報を行政が把握しながら、一方で、適格消費者団体に守秘義務を外して情報を提供するという場面がどういう場面なのか、ちょっとイメージができかねております。

 それから、さらに懸念されておりますのが、適格消費者団体が差しとめ請求権を行使するに必要な情報という限定があるわけですが、その必要な情報の判断を誰がするのか。これまでの説明では、生活協力員の個人が判断するというふうに聞いておりますが、これで果たして大丈夫なのかどうなのか。この辺を大変懸念しております。

 それから最後に、課徴金の導入でございます。これまでも、食品偽装と言われる大きな事件は多数ありました。社会をにぎわせたわけでございますが、これらは基本的にはJAS法で摘発しております。悪質な場合は不正競争防止法で後追いをしているわけでございますけれども、これらについては課徴金という制度はありません。また、このような大きな事件を後追い的に景表法で摘発したという例は記憶にございません。そういうことから、課徴金の導入につきましては慎重な検討が必要なのではないかというふうに考えてございます。

 それから、この議論の中で、課徴金を消費者活動の支援に充てるという議論があります。

 もちろん、活発な消費者活動は歓迎すべきですし、そのためには消費者団体の育成も大切だというふうに考えております。しかし、それに必要な財源は、国民的合意のもとに、そのための予算措置を講じて行うべきものであり、課徴金を財源とすることは適切でないというふうに考えております。

 私の意見は以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

山本委員長 ありがとうございました。

 次に、根岸参考人にお願いいたします。

根岸参考人 根岸でございます。

 多分、お手元に私の簡単なコメントというのがついておりますが、それに従いましてお話ししたいと思います。

 まず、今回の改正の必要性と方向性ということですけれども、これまでも、優良誤認表示というのは景表法によってずっと禁止されてきたわけですね。しかし、それにもかかわらず、今お話しのような優良誤認表示というのが同時多発いたしました。そして、かつ、これへの対応が必ずしも十分でなかったということでございますので、一定の改正は必要であろうというふうに考えております。

 食材、メニュー等につきまして、例えば、これは事業者側に細かい専門的知見がある、それから、事業者の業種とか規模などの違いがありまして、一律的な対応は困難だというふうに考えます。また、全国的かつ地域的に多発する可能性があるということにも留意する必要があると考えています。

 したがって、消費者庁の力だけで、あるいは国の行政機関の力だけで、一律あるいは硬直的に、かつ大なたを振るうような対応では、優良誤認表示をなくすことは困難だというふうに考えます。

 優良誤認表示をなくすためには、実態に即して新たな発想で柔軟に対応することによって、実効性ある執行体制を確保することが必要であると考えます。

 そのため、消費者庁だけではなくて、他の関係省庁、自治体との協力連携及び事業者側、消費者側との協力連携が不可欠であると考えています。

 事業者のコンプライアンス体制の確立でございますけれども、事業者側にコンプライアンス体制、これは、今回の例でいいますと、厨房部門と表示部門との間に情報の共有化が十分でなかったとかいうことがございましたし、それから内部通報制度なども含めて、事業者側にコンプライアンス体制の確立を促すことが必要だと考えます。

 しかし、コンプライアンス体制の確立というのは、本来、事業者側で自主的に対応すべきものであります。しかし、自主的対応が困難な事業者も相当割合存在するということを考慮いたしますと、事業者側の自主性に委ねるだけではコンプライアンス体制の確立は難しく、消費者庁において必要な指針を定めてコンプライアンス体制の確立を促すこともやむを得ないと考えます。

 指針の策定に当たっては、公正取引委員会その他の関係省庁と十分協議するとともに、消費者委員会の意見を聴取することも必要であると考えます。また、何よりもやはり事業者側の意見を十分に聴取することが不可欠であると思います。その際、業種、規模などを考慮いたしまして、実態に即して実効性の上がる指針の内容とする必要があると考えます。

 また、事業者が指針に沿ってコンプライアンス体制の確立に向けた必要な措置を講じていない、こういう場合には、消費者庁において指導助言し、指導助言の実効性を担保するため、勧告あるいは公表ということも必要であると考えています。

 次に、監視指導体制の強化であります。

 国の執行体制の強化のため、地方部局を有する関係省庁へ調査権限を委任することが必要であると考えます。

 これは私の持論でありますけれども、公正取引委員会の地方事務所に調査権限を認めるだけではなくて、そもそも景表法は、もともと執行経験のある公正取引委員会と消費者庁の共管の法律にすべきだというふうに私は考えております。他の消費者関連法は全て、全てかどうかわかりません、ほとんど消費者庁と関連省庁との共管となっているということでありますので、この点はぜひ考えていただきたいと考えております。

 優良誤認表示を含む不当表示は、全国的に行われるだけではなく地域的に行われるということが多いことから、景表法の実効性ある執行体制を確保するためには、都道府県知事に措置権限を付与することも必要であろうと思います。

 しかし、私の勝手な見方かもしれませんが、現時点では、多くの都道府県に措置命令権限を使いこなせるだけの実力が備わっているとはとても思われません。したがって、地方消費者行政の充実のための人的、財政的手当てが不可欠だと思います。

 また、優良誤認表示について都道府県に全面的に立証責任を負わすことになると、執行がおぼつかなくなるおそれがある。そこで、都道府県の措置命令権限の行使のために、あわせて不実証広告規制権限を付与することも不可欠であります。

 先ほども御意見がございましたけれども、こういうふうに、いろいろ、連携協力でありますから、ばらばらにやっていたのではもちろん困るわけでありまして、統一的なルールというか基準のもとにやっていただくということがもちろん必要でございます。

 最後に、課徴金の検討でございます。これは今回の改正に入っていませんが、近い将来これを検討するということでございますので、少し意見を述べさせていただきます。

 優良誤認表示を含む不当表示に対して、やり得を防止して違反行為を抑止するために、課徴金を賦課することを検討する必要があると考えています。ただ、検討する場合に、いろいろ考慮しなきゃならない要素があると考えています。

 消費者庁に義務的で一律的な課徴金を賦課する権限を付与するということは、かえって執行が慎重になり、鈍化するおそれがあるというふうに私は懸念しております。この点は、公正取引委員会が現在行っている不公正な取引方法に対する課徴金の賦課がどうなっているかということについて十分御検討いただきたいと考えています。

 強い権限を持つということは、確かにプラスの面もありますけれども、しかし、それを使おうとすると相当慎重にやらなきゃならないということになりまして、かえって執行が鈍ってしまうというおそれも十分考慮する必要があると考えております。

 この課徴金制度を入れようとすると、例えば不実証広告や指示、告示違反のものはどうするかというような問題がありますけれども、私の考えでは、これももちろん不当表示でありますから、基本的には課徴金の対象にする必要があろうと考えております。

 しかし、この課徴金賦課によって景品表示法の現実的かつ実効性ある執行を確保するためには、先ほど述べましたように、執行鈍化のおそれを回避する必要があると考えています。そのための工夫として、いろいろ検討しなきゃならないと思います。私自身も確定した意見を必ずしも持っているわけでありませんけれども、いろいろ検討する必要があろうと考えています。

 不当表示、優良誤認表示を含む行為の態様も多様だし、それによる社会的影響も多様であるということを考えますと、実効性ある執行を確保するためには、裁量型の課徴金の導入を検討する必要があると思います。

 それから二番目は、主観的要素を不要とする。不当表示自体は、今は主観的要件を課していません。要するに、一般消費者向けに不当表示があれば景品表示法違反というのが原則でございます。しかし、この課徴金制度を運用する場合には、主観的要素を欠くことを事業者側で証明した場合には賦課対象から除外することも検討に値すると考えています。

 それから、事業者の自発的な申告あるいは被害回復措置、こういうことをやった場合に、課徴金の減免制度あるいは措置命令を控えるということも検討する必要があろうかと思います。

 現在、下請法、下請代金支払遅延等防止法という法律がありますけれども、この運用において、下請法では、例えば代金の減額がございますと、返還するということを勧告されます。勧告されて公表される。しかし、自主的に返還する、被害回復をとるということになりますと、その勧告、公表をしないというような取り扱いも行われておりまして、これは参考になるというふうに考えます。

 いずれにいたしましても、従来の課徴金制度というのは、今まで各省庁あるいは公正取引委員会にもありますけれども、そういうものとは若干発想を新たにして、本当に実効性のある執行体制を確保していただきたい、こういうふうに考えております。

 以上でございます。(拍手)

山本委員長 ありがとうございました。

 次に、増田参考人にお願いいたします。

増田参考人 全国消費生活相談員協会の増田でございます。

 本日は、意見を述べさせていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。

 本協会は、全国の消費生活センターで勤務しております消費生活相談員を会員とする、全国七支部の組織でございます。会員は日々、消費生活相談窓口で消費生活相談を受け付けておりますし、私どもの自主事業としまして、行政がお休みの土日の週末相談を十五年前から開催しておりまして、今現状、どういう消費生活問題が起こっているのかということを把握しているというふうに考えております。

 そのような中、本日は広告、表示による消費者被害と、現状の景表法の限界について少しお伝えしたいというふうに考えております。

 最近では、商品、サービスが高度複雑化しておりますので、その内容とか性能が非常にわかりにくくなっております。そのため、広告、表示の影響がより一層大きく、事業者の責任も重くなってきているのではないかというふうに考えております。

 例えば、昔の黒電話であれば、その性能というのはすぐわかるわけですけれども、スマートフォンやタブレット、WiFiルーターなどの通信機器の性能は、これまでの自分たちの経験ではなかなか推測ができない。しかも、エリアの問題であるとか、それから3G、4G、LTEというような電波も関係してくる。それから、今どこで使っているかという建物の状況、環境にも左右されるというようなことから、これは正しく本当に表示どおり性能が備わっているのだろうかと、使っていても実感ができないというのが実態ではないかというふうに考えているところです。

 現実に、LTEエリアの問題とか、それからルーターの速さの問題で、既に措置命令が出されているということがございます。そのような場合、消費者の方としても、非常に有益なサービスですので使いたいというふうに考えておりますので、広くこの商品を購入している方がたくさんいらっしゃいます。

 ところが、実際の実態とは違っていたのではないかということが明らかになったとしても、返金してほしいというところが現状ではなかなかままならない。実際にはWiFiルーターあるいはスマートフォンとして使えていたのではないか、であるから利得はあるんじゃないかということで、なかなか取り消しが認められないというのが消費生活センターでの実感でございます。

 それから、金融サービスに関しましても、現状では、CO2取引であるとかコンテナの所有権取引とか、非常に難しい取引が行われております。過去にも平成電電、近未來通信などのように大型の消費者被害がございましたけれども、これにつきましては、新聞広告あるいは有名な雑誌の広告、折り込みチラシなどによって募集が繰り返され、それにより被害が拡大したというふうに考えております。消費者としては、有名な雑誌であるとか大手の新聞であるとか、そのようなものに対する信頼が厚いですので、そこで信頼性が増していたのではないかというふうに推測する次第でございます。

 さらに、健康食品に関してですけれども、病気がよくなるとか、病気を予防する、痩せるなどの効能、効果を説明してはいけないわけですけれども、それらの広告があふれているのが現状でございます。長期間使用することによって効果があるのであるということで、大量の健康食品を買ってしまうというケースもございます。

 過去に、例えば化粧品の措置命令を受けて処分を受けたような事業者が、今、健康食品で誇大広告の販売をしているというようなケースも見られておりまして、商品が違いますと過去の措置命令が全く生かされていないというのがございますので、このような再犯事案とも言えるようなものも処分していただきたいというふうに考えているところです。

 もう一つ、インターネット通販の問題がございます。

 インターネット通販などは、表示、広告だけで取引に入ります。それによって誤認して契約してしまうということが多数ございますので、やはり今後も監視体制を厳しくしていただきたいというふうに考えております。

 地域による不当表示に関してですけれども、消費生活センターには、レストランあるいは外食だけではなくて、スーパーなどの二重価格、おとり広告などの情報が寄せられます。

 ただ、消費生活センターの相談員としては、これらについて情報として記録していくわけですけれども、果たしてきちんと調査してくれるのだろうか、それから、消費者庁が措置命令を出してくれるのだろうかというところが、非常に遠い感覚があります。これが実感だというふうに思っております。

 今後、これが都道府県の方に権限が付与されるということになりましたらば、速やかにそのような措置命令が出されるということであれば、そこで期待したいというふうに考えておりますし、相談員としては、きちんと情報収集して正しく伝えていきたいというふうに考えているところです。

 一方、実際に運用する職員がいないとか運用する力がないということになると、法律改正の意味がないというふうに思いますので、実効性を持たせるために、ぜひとも消費者庁として、都道府県職員の方への研修、職員への相談対応の強化、運用するための支援をしていただくことと、職員増員について首長の方へ強く要請していただくことをお願いしたいと思っております。

 話は違いますが、特商法によって行政処分を行いますけれども、その処分を行った後、ほかの都道府県の方へ移って同じ被害を起こすということが繰り返されております。そのようなことがないように、都道府県で措置命令を出した場合は、全国でその情報共有を行っていただき、同種のことが行われていないかどうかということを監視する制度をつくっていただきたいというふうに考えております。

 最後に、課徴金でございますけれども、ぜひとも導入していただきたいというふうに考えております。

 消費者は、正しく表示していたら選択しなかったというふうに思います。表示が事実でなかったのであれば返金してほしいと思っているところです。

 ただ、表示した性能がなかったとしても一定程度使用できたでしょうとか、表示を指摘されただけなので表示は訂正しました、今後は気をつけます、ですが返金はいたしかねます、それから、表示だけの問題であって、効果はあるのであるというようなことを言う事業者もございまして、実際には、消費者被害というのは回復されていないのが現状でございます。

 実際に利得があるケースもございますので、その利得の算定が困難であるとか、金額が小さい多数被害であるというようなことからも、なかなか個別の救済というのは難しいということはわかっておりますので、そのようなところからも、課徴金制度をぜひとも導入していただきたいというふうに考えております。

 それから、実際に備わっている性能を確かめてから広告、表示して販売するということが通常の事業者のあるべき姿というふうに考えておりますけれども、それを不実証のまま広告、表示するということは、消費者から見れば、悪質性が高いのではないかというふうに言わざるを得ません。不実証広告の場合に課徴金の対象から外すということはあってはならないというふうに考えております。

 確かな性能を備えた商品や有益なサービスを提供するために尽力して、適切な表示となるよう費用をかけて厳しく管理している事業者が正当な利益を得ること、これが、ひいては消費者の利益にもつながるというふうに考えておりますので、ぜひともよろしく御検討いただきたいというふうに考えております。

 どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

山本委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

山本委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 四人の参考人の皆さん、貴重な御意見をありがとうございます。

 では、全参考人にお聞きします。

 本法案では、都道府県の監視執行体制を強化するというのがポイントの一つです。地方の実情や現場の実態を知っている都道府県が必要な措置を迅速に講ずることが、被害拡大を防ぐ力になると私も考えます。

 ただ、現場の実態はどうかといいますと、私、さきの国会で、食品偽装表示問題質疑で、景品表示法等による法規制の強化は必要だが、それを担保する監視システムがないと実効性がないということを指摘しました。

 例えば、その際に、国内の食品安全の監視指導は、全て、都道府県の食品衛生担当局と、保健所に配置された食品衛生監視員が実施することになっています。ところが、私が住んでいる京都では、国際観光都市でもあり政令指定都市でもあるんですけれども、食品衛生監視員百六十二人、そのうち専任の食品衛生監視員はゼロ、これが実態なんですね。

 そこで、私は、参考人の皆さんに、先ほど根岸参考人も実効性ある執行体制が大事だとおっしゃいました、増田参考人も、研修、支援、増員ということをおっしゃいました、実効あらしめるために都道府県の監視執行体制強化に向けた支援のあり方はどうあるべきかということを、さらに突っ込んでお聞きしたいと思います。

久保田参考人 具体的にどういうふうに支援を強化すべきかということについて、経団連として検討したことはないので。

 ただ、こういった状況でございますので、監視体制を強化するということは必要だと思います。行政あるいは予算措置等を踏まえて、いろいろ対応していくことしかないのではないかというふうに考えております。

中村参考人 お答えいたします。

 御指摘の点は非常に重要だと考えてございます。私は実は、近畿農政局というのが京都にございまして、そこの課長をやっておりました。そのときにちょうどBSE問題が発生いたしまして、雪印食品の問題があったわけでございます。その立入検査に行ったわけですが、それ以降、いわゆる食品偽装というのが続発いたしました。

 JAS法は、事業範囲が、事業所等が都道府県をまたがるものは国が担当、都道府県内におさまるものは自治体が担当ということですみ分けができているわけでございますが、相次ぐ食品偽装は都道府県を巻き込んだものになったわけです。

 ただ、当時、やはり都道府県の体制によりましてその実行に相当な差があった、全国的にまだら模様になったというふうに感じております。やはり、人それから組織の充実、連携、これが不可欠ではないかというふうに感じております。

根岸参考人 おっしゃるとおりだと思います。やはり消費者問題というのは、もちろん地方というか地域の問題ではありますが、しかし、全国民の問題なんですね。したがって、こういう権限を与えたときに、それについてはしっかり都道府県でやりなさいと言うだけではとても無理だと私は思います。やはり、全国民、全消費者の問題だから、国がしっかり支援体制をとらないと、とても無理だと思います。

 もちろん、私の知っているところは非常に限られていますけれども、一人の担当官がいろいろなことをやっていて、あれもこれもと権限はもらったが、とても対応し切れないというのが現状ではないかと思います。こういう言い方は大変失礼ですけれども、多分、できるのは東京都ぐらいじゃないかな、ほかはとても無理だと私は思います。したがって、やはりそのための人的、財政的な国の支援というのが不可欠だというふうに考えています。

 それから、今もお話がございましたが、この法律が制定されると、都道府県でとどまるものは都道府県で、それを超えるものは消費者庁と言っていますけれども、これは、またそれをやると、すみ分けでぽとっと落ちるという問題がありまして、やはり、それはうまく連携しないと、これはどっちの問題だというようなことで、そういう権限のなすり合いというような問題が起きないような体制づくりが必要だと考えています。

増田参考人 私も同じでございますけれども、専任の職員を置いていただいて、交代などがないようにしていただきたいということと、それから、都道府県に任せるのではなくて、国による研修ということで、同じレベルになるのではないかというふうに思います。

 それと、問い合わせ窓口を広く国の方に設置していただいて、問い合わせをするということがハードルが高くならないようにしていただくことが必要ではないかというふうに思います。

穀田委員 ありがとうございます。

 私、この間調べたんですけれども、四月十日に質疑をやったときなんですけれども、地方消費者行政の予算は、一九九六年度は全国で合計百九十億なんですね。ところが、二〇〇八年度には約半分の百億に減る。そして、昨年度は百四十五億と、これは減っているんですね。ですから、今皆さんからありましたように、国の支援、なかんずく財政的支援という問題は極めて大事だと私も思いました。

 ついでに言っておきますと、この間、四十ある特例市というのを新中核市にしようと今しているわけですよね。それで、あそこは保健所の設置が条件なんです。そうしますと、調べてみると、全国特例市市長会アンケートでは、保健所設置を積極的に検討すると回答したのはたった九市なんですね。四分の一なんですよ。だから、多額の運営費用だとか専門人材の確保の困難が背景にある。

 ですから、こういう実態があるというもとでやっていることについて、踏み込んでやらないと、私はなかなか、いわば、今農政局の方も、かつての近畿農政局、私が住んでいるところにありますけれども、その話もありましたけれども、極めてこれは、国の財政的支援というのがなければだめだということを痛感しました。

 そこで、次は久保田参考人にお聞きしたいと思います。

 今回の景品表示法の改正は、昨年発生した一流ホテル、百貨店、レストランでのメニュー等の食材虚偽表示問題が一つのきっかけとなっています。誤認、誤認とおっしゃる方がいらっしゃるんだけれども、誤ってやったというのもあるんだけれども、明らかに偽装だったということが既に例として出ていますので、私はそういう言葉を使っています。

 景品表示法では全事業者が対象となるために、中小零細業者が多い業種については、実情を踏まえて、過度の負担にならないように考慮する必要があることは当然であります。そうすると逆に、消費者を誤認させる不適切な表示を行うことによって不当な利益を得ようとする大手事業者の虚偽表示などに対しては、厳正な対応をすべきだと私は考えています。

 昨年の当委員会での質疑を通じて、この問題の背景には、業界団体のリーダーシップをとるべき大手事業者のコンプライアンス意識の不足、社会的モラルの欠如があったことが明らかとなっていて、これは森消費者担当大臣がわざわざそのことに触れられて、業界にもお出かけになったところであります。ですから、事業者のコンプライアンス体制の確立ということが本改正のポイントにもなっています。

 そこで、事業者のコンプライアンス体制の確立のためには何が必要か。先ほど根岸参考人は勧告、公表ということもおっしゃっていましたけれども、それらを含めて、どういう手だてが一番必要かということについてお話しいただければと思います。

久保田参考人 昨年来のいわゆる偽装表示と言われるものについては、私どもも非常に残念だと思っております。

 コンプライアンスの問題については、やはり一番原則は各事業者、企業がモラルをきちっと持ってコンプライアンスを遵守していくということだと思います。

 経団連としては、先ほど御紹介しましたけれども、例えば経団連の封筒の後ろに企業行動憲章という形で十原則を掲げておりまして、まさに消費者に適切な情報を提供するというのが経団連会員企業の遵守すべき基準であるということをやっておりまして、毎年、企業倫理月間というのを設けたり、セミナーを開催したり、私どもとしては、こういった情報提供、それから遵守を呼びかけるということで、モラルをきちっと持ってもらうように喚起していくというようなことを引き続きやっていきたいというふうに思っております。

穀田委員 公表問題や勧告問題は触れられませんでしたけれども、私は去年も言ったんですけれども、単なる認識不足では済まぬ問題が大きい。それは、特に、アレルギー成分が含まれていた例が判明していて、命や健康にかかわる問題として捉まえるのが業界全体に不足していたという問題を私は指摘したわけです。

 しかも、個々の問題じゃなくて、例えばホテル業界でいうと、一流ホテルと言われた業界の四割がやっているわけですから、四割となると、コンプライアンスの、今、経団連企業行動憲章を含めた、あれはどないになって徹底しているのかいなとふと私は思った。

 次に、増田参考人にお聞きしたいと思います。

 課徴金の考え方なんですが、先ほどありましたように、消費者被害というのは、金が返ってこないと回復しないと思うんですね。だから、不当表示を抑止する効果と同時に、私も、不当に得た利益について言うならば、消費者や被害者へお返しするという視点が必要だと思うんですね。

 景品表示法改正案第七条で、事業者の管理体制強化を図るためとして、事業者の表示等の管理上の措置を義務づけると書いているんですね。この内容については指針で定めるということで、指針には、私は、納品書等の保存、管理による帳簿管理等を義務づけるべきだと考えています。

 この話をすると、そんな、手間がかかると言うわけですけれども、そんなもの、納品書を保存したらどうやと言ったら保存するに決まっているんですよ、だから、そんな大したことじゃないと私は言っているんですけれども。

 納入伝票を見れば、不当表示があった場合に見破ることができるし、それによって不当に得た利益も算定することが可能となる。この点についてどうかということが一つ。

 二つ目に、本改正で適格消費者団体への情報提供を初め、関係機関の間での相互の連携を図るための仕組みをつくるとしています。消費者被害の広がりを防ぐには、同様の被害の件数が少ないうちに、その共通する問題や課題をいかに迅速につかみ、全体のものとして注意喚起等の対応をするかが鍵だと私は思っています。

 この点について、実際に相談員として活動されている中で、現状と今後の課題、今後運用するに当たっての要望を伺いたいと思います。この二点。

増田参考人 納品書等の保管を義務づけるということについては、私もそのようにお願いしたいと思います。実際にどのような売り上げがあって、それによって利得がどのくらいあるのかということの算定に多分時間がかかるんだろうというふうに思いますし、それに従って課徴金ということにつながっていくわけですから、そういうことはやっていただきたいなというふうに考えております。

 それから、適格消費者団体との連携ということですが、実際に、私どもは土日の相談を週末相談として受け付けておりますので、そういう中から苦情だけではなく表示の問題なども出てまいります。そういうことから適格消費者団体としての活動をしておりますけれども、これが全国的にどの程度被害があるのか、件数があるのかというところは、やはり問い合わせをするということが必要になりますし、それについてはやはり連携をしていただきたい。反対に、私どもで情報を入手したものについて、速やかに都道府県あるいは国の方へ提供するという道筋が明らかになっているのであれば、それはやっていきたいというふうに考えております。

 課徴金がどのように使われるかという点についてもですが、これは適格消費者団体にということで意見もあるようですけれども、適格消費者団体ということに限らず、消費者のために還元していただきたいというのが考えでございます。例えば、適格消費者団体ではない消費者団体というのも数多くありますので、そのようなところも含めて御検討いただけたらいいなというふうに考えております。

穀田委員 最後にもう一度、増田さんにお聞きします。

 これをこの間いただきまして、「これだけは知っておきたい食べものの話」、なかなかすぐれたものでわかりやすいなと思います。ただ、ちょっと字が多いなという気はしますけれども、なかなか全部詰め込もうと思ったら大変なんだと思うんですね。

 そこで、ここで言っておられるのは、遺伝子組み換え食品の問題や、それから原産国表示の問題について言っておられます。これは法的に言いますとなかなか難しい問題ではあるんですが、原材料の原産国表示、こういったことについてなど、実際に相談その他やられている関係でいいますと、また、遺伝子組み換えというのはTPPの問題でも問題になっていまして、アメリカはさっさとこんなものはやってしまえということで、なくてもいいじゃないかということをやっていますけれども、表示にかかわったこういった問題について、どのようにお考えかだけお聞きしておきます。

増田参考人 その件についてすぐに今お答えするというのが難しいので、基本的には、正しい表示をわかりやすくしていただきたいというのが原則の考え方でございます。これに関して今お話しするというのが、ちょっと情報として不足しておりますので、また、別途先生のところに伺ってお話しさせていただいてもいいかなと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

穀田委員 終わります。

山本委員長 次に、小倉將信君。

小倉委員 自由民主党の小倉將信です。

 本日は、消費者問題に関する特別委員会で初めて質問に立たせていただきます。

 参考人の皆様におかれましては、御多忙の中、当委員会にて御説明を賜りまして、本当にありがとうございました。

 また、委員長、理事並びに委員の皆様には、このような貴重な機会を設けていただきましたことを感謝申し上げたいと思います。

 十五分という限られた時間でございますので、今回の景品表示法の中で、とりわけ課徴金について詳しくお伺いしたいと思います。

 課徴金につきましては、法四条に、法施行から一年以内に検討を加えて、必要な措置を講ずると書いております。これを受けて、消費者委員会では、課徴金制度等に関する専門調査会を設けて、今月の頭に中間整理をまとめたと聞いております。

 消費生活相談の相談件数のうち、表示、広告に関する相談は五万件、全体の六%にすぎませんが、いわゆる訪問販売以外の大半の事例の端緒が不当表示、広告であることを考えると、措置命令だけでなく、課徴金導入によって不当表示の抑止効果を一層働かせる必要があると思います。

 また、表示に関する被害は、その範囲や被害額の算定が難しく、現行の民事手続だけでは不正業者のいわゆるやり得を十分に防ぐことはできません。

 こういった現下の状況に鑑みますと、課徴金導入の必要性についてはほぼ衆目の一致するところと思いますが、しかし、どのような形で課徴金を導入するのかについては、各参考人の意見陳述をお伺いしていても、意見が分かれているところであります。例えば、現在の独禁法、金商法、公認会計士法に課徴金の定めがありますが、それぞれ制度は異なります。

 そこで、景品表示法ではどのような課徴金制度のあり方が立法趣旨に照らして望ましいのか、お伺いします。

 まず、課徴金の対象となる行為の範囲です。

 先ほどの専門調査会の議論を見ておりますと、優良誤認、有利誤認はその対象に含めること、指定告示はその対象にしないことにはおおむね異論はないようですが、不実証広告規制については賛否両論あると伺っております。

 特に、これは個人的な意見ですけれども、ネット上がひどいと思っておりまして、これを飲めばあっという間に二十キロ痩せられるであるとか、それがあれば本当にありがたい話なんですけれども、明らかに根拠の薄い広告がちまたには氾濫しております。また、大手のテレビ局ですら、宣伝番組で、モニターに語らせて、あくまでもこれは個人的な意見ですというテロップを付すだけで免罪符になっているといった感もあると思います。

 こうした広告における最近のモラルの低下を考えると、これらを課徴金の対象にした方がよいとも思いますが、一方で、不実証広告による課徴金を回避するためには、中小企業も含めて、企業は全ての商品、サービスについて合理的な根拠を用意しなければならないことになりますし、多大な負担がこの点についてかかると思います。また、不実証広告に当たるか否かの判断も、これは実際に微妙なんじゃないかと思います。

 以上の点を踏まえまして、不実証広告の課徴金が制度として本当にワークするかどうか、まずは根岸参考人に御意見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

根岸参考人 今の御質問でございますけれども、私自身は、不実証広告についても、これは不当表示でございますから、基本的に課徴金の対象にすべきだと思います。

 今、問題になっているような、レストラン、百貨店とかホテルとか、そういう場合には、特に積極的に表示を義務づけられていないんですよね。不当な表示をしたら問題だ、だから景表法、こうなっているわけですよね。だから、積極的にアピールしてお客さんを誘引するというのであれば、それはやはり一定の根拠を持ってやるべきでありまして、したがって、基本的に、不実証広告について課徴金の対象から外すという考えをとるべきではないと私は思います。

 ただ、私自身としては、課徴金という制度をどういうふうに工夫して入れるかということが非常に問題でありまして、今までというか、多分前回の改正のときにも、義務的、一律的に入れるということになっていまして、それをやると、場合によると執行が鈍ってしまうというおそれもあるので、したがって、私は裁量型の課徴金を検討すべきだというふうに考えております。

 ですから、確かに、行為の態様とか業種あるいは影響とかが違いますので一律にすることは難しいと思いますが、しかし、基本的に不実証広告も不当表示として課徴金の対象にすべきだと考えています。

小倉委員 根岸参考人、どうもありがとうございます。

 私も、この件については、類型ごとに考えて、若干ちょっと神学論争になっている感があろうかと思います。根岸参考人がおっしゃるように、行政の円滑な執行の観点あるいは消費者保護の調和を図る観点から、ある程度行政に裁量を任せる形でやった方が実際に制度としてワークするんじゃないかな、大変現実的な御意見だなというふうには思っております。

 次の論点に移らせていただきます。

 主観的な要件についてでございます。つまり、不正行為を知りながらあえて行った業者のみを罰するのか、不注意でミスを犯してしまった業者をも罰するのか、それ以外の業者の責任も問うかの問題だと思います。

 これについては、抑止効果という目的また経済活動を萎縮させないという観点から、故意、重過失のみを対象とする意見と、やり得を許さない、あるいは、そのつもりはなかったとの言い逃れを防ぐために、広く過失を要件とする意見があるようです。

 この議論は、優良誤認表示や有利誤認表示に関して、事業者の故意や過失を判定することがどれぐらい難しいかが大きなポイントになると私は感じております。すなわち、ここの判定が容易であれば、善意の事業者は罰すべきではありませんし、難しければ、その判定に結局時間がかかってしまい、実効性のない制度になってしまうんじゃないでしょうか。

 そこで、中村参考人には、不当広告の事例において、故意、重過失の事業者とそれ以外の事業者の判別が実際にどれぐらい可能かどうかをお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

中村参考人 お答えいたします。

 私の経験といいますのは、専らJAS法に基づく食品表示を調査していたわけでございます。その経験から申しますと、十分な調査さえできれば、仕入れ先からの情報それから商品への表示内容、表示の内容決定までのプロセス、これを検討すれば、その表示違反が計画的であるか、組織的であるかの見きわめは難しくはないというふうに考えております。ただ、見きわめることと、法的にそれを立証するということは全く別の問題でございます。

 JAS法あるいは景表法もそうだと思いますが、食品表示違反の動機によって行政の措置が変わるということはありません。結果において、現在進行中の違反を是正させる、これが主目的になりますので、違反の事実を確認した場合に改善を指示する等の対応をいたしてきたわけでございます。

小倉委員 どうもありがとうございます。

 中村参考人の御説明をお伺いしておりますと、JAS法に基づくこれまでの行政運営は、故意か過失かを厳密に判断して行うのではなくて、むしろ違反行為の速やかな是正にプライオリティーを置いていらっしゃるようであります。言いかえれば、故意、過失の有無は、プロの目から見ればわからないわけではないけれども、それを一々立証するとなると、行政上大変なコストがかかってしまうということだと思います。これは、今回の景品表示法で、事業者の故意、過失の要件を入れるかどうかの判断に当たって、ぜひとも参考にしなければならない現場の意見なんじゃないかなというふうに思います。

 続きまして、規模の要件に移らせていただきます。

 例えば、課徴金制度を設けております独禁法は、私は、強い者、強者を罰する法律だと思っております。例えば、優越的な地位にいる企業、談合で実際に価格をコントロールし得る企業がその対象です。しかし、景表法はちょっと違っておりまして、対象とする行為は、中小企業、大企業に関係なく発生します。経営環境が厳しい中小企業を除外するべきか、あるいは景品表示法の目的に照らしてあらゆる企業を対象とすべきか、これは、不当な表示によって得た利益が一定額を下回る場合、いわゆる裾切りを設けた方がよいかどうかという論点になろうと思いますが、これにつきまして、産業界と消費者団体の立場から、それぞれ久保田参考人と増田参考人に御意見を仰ぎたいと思います。よろしくお願いします。

久保田参考人 課徴金を課す対象につきまして、軽微なものまで対象とすべきかどうかということはよく検討する必要があるというふうに考えております。

 平成二十年の改正法案では、売上高一億円というのを基準にして、それ以下のものについては課徴金を課さないというふうにしておりましたけれども、これも一つの参考ではないかというふうに考えております。

 他方、いわゆる裾切りをすることによりまして、消費者をだますために故意に不当表示をするような悪質な行為が対象から外れるということになると、これも、違法行為を抑止するという課徴金の目的が全うされないという指摘もございまして、非常に難しい問題だなというふうに考えているところでございます。

増田参考人 課徴金は、事業規模によって区別することなく、全ての事業者を対象者とするべきというふうに考えております。

 不当な表示によって得た利益の大きさによって、場合によっては裾切りが必要であるというふうに思います。法律に実効性を持たせるためには仕方がない部分であるのではないかというふうに思います。

 背が伸びるサプリメントを売っていた非常に小さい事業者ですけれども、これは薬事法で逮捕されましたけれども、それが、その後、六億円の売り上げを得ていたというふうな報道もございましたので、事業規模によるものではないのではないかというふうに思います。

小倉委員 ありがとうございます。

 中小企業の大半は、経営環境が厳しい中、一生懸命真面目に頑張っています。これ以上行政の対応コストが上乗せされるともたなくなってしまうという中小企業の皆様からの悲痛な叫びも、私も地域を回っていてよく耳にいたします。

 一方で、中小企業も、本当にほんの一握りではございますが、不正行為を働く会社があるのもまた事実だというふうに思っております。平成二十年の提出法案のように、この重要な線引きを果たして売り上げ高などだけで行っていいのか、今後さらなる検討が必要だと私は思います。

 事業者と消費者の間には、情報の非対称性があります。つまり、事業者が知っている商品、サービスの品質のことを、消費者が事業者と同じように正確に把握することはできません。例えば、レストランに行って、調理されたものがシバエビかあるいはバナメイエビか、食べて判断できる客はそう多くないと思います。大概の場合、店側の言っていることを客側としては信じるしかないわけです。先ほど、増田参考人が、金融サービスや情報通信機器における同様の事例も御紹介いただいたかと思います。

 しかし、製品に関する情報を独占している事業者のモラルの低下が行き過ぎてしまうと、今度は、消費者サイドが、市場に出回っている商品、サービスが質の悪いものばかりと思うようになってしまって、本当に質の高い商品、サービスが疑念を抱かれて買い控えられるようになります。経済学ではこのような状態をレモンマーケットと呼んでおりますが、レモンマーケットになって困るのは、消費者というよりも、むしろ、真に価値があるものを売れなくなってしまう、まともな事業者だと思います。

 レモンマーケットを防ぐすべは、政府が、不良品を売る業者をしっかりと監視する、時には罰することですし、今回の景品表示法の改正はこれを強化する試みの一つだと思いますが、スリム化を求められている政府にのみその責めをさらに負わすのではなく、最終的な受益者たり得る事業主、あるいはその集まりである経済団体が、消費者保護に関してもっと前に出て、公正な市場づくりに貢献してもよいのではないかと私は思います。

 最後に、この点について、久保田参考人、増田参考人にそれぞれ御意見を仰ぎたいと思います。

久保田参考人 今先生御指摘のとおり、もちろん、いろいろな誤表示等で消費者の方に迷惑をかけるという側面もありますけれども、他方、ほとんどの事業者は善良に商行為を行っておりまして、一部の悪質な事業者がいるがゆえに他の事業者全体が非常に迷惑するということ、まさに御指摘のとおりだと思っております。

 そういった観点から、私どもとしましては、会員企業を中心に、できるだけコンプライアンスの遵守ということを呼びかけておりまして、それでもそういったものが徹底せずに故意に不当表示を行う者に対しては、ピンポイントで政府の方で厳しく対処していただいて、市場からの退出を命じていただくということが正しいやり方ではないかというふうに思っております。

増田参考人 私も、事業者さん自身が内部で整備すべきというふうに考えております。

 このたびの改正案の中で、事業者のコンプライアンス制度の義務づけがありますけれども、本来は法律に書かれるまでもなく自主的に行うべきところ、自主性に任せていては違反がなくならないという現状があるため、ぜひ進めていただきたいというふうに思っております。

 同時に、本協会では、以前より、事業者団体あるいは事業者さんとの意見交換などをして、消費者の利益を図るというような活動をしてまいっておりますけれども、消費者団体としても、事業者団体、事業者などとより一層連携することによって、事業者の方の意識改善がされるのではないか。また、消費者団体の方としても、有用で有益な商品、サービスを提供する事業者の方の努力であるとか志などを理解することができる。

 一般的な消費者が、その表示を見て、あるいは読んで、どのように認識するかということを、事業者目線それから消費者目線というものを一致させる、そういうことを私どもも活動していきたいというふうに考えているところでございます。

小倉委員 もともと景品表示法は競争法の一部であったように、消費者保護と、あと公正な市場づくりというのは表裏一体の関係だと思っております。その意味では、中小事業主だと、なかなか時間がない、余力がないということがありますので、ぜひ、経済団体の皆様方には、より一層公正な市場づくり、ひいては消費者保護のために頑張っていただきたいというふうに思っております。

 今回は、大変有益な御意見、どうもありがとうございました。以上で質問を終わらせていただきます。

山本委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 四名の参考人の皆様、きょうはどうぞよろしくお願いいたします。

 まず、四名の皆様にお伺いをしたいんですが、やはり、各業界、団体の自主的な規制、自主的なそういう規制ルール、こういったものが、ある面、こうした今回の不当表示問題については大変大事だといったことが指摘をされております。

 ただ、公正競争規約については外食、中食分野にはない、こういったことが言われておりまして、外食、中食分野でなぜこの公正競争規約がつくられなかったのか、できていないのか、このことをどういうふうにそれぞれ捉えられるのかが一点。

 あと、やはり、外食、中食におけるアレルギー表示、これについて義務化の必要性があるといった指摘もあるんですが、この二点についてそれぞれ御意見を伺いたいと思います。

久保田参考人 外食、中食のところが外れているという経緯については、私どもは存じ上げておりません。

 アレルギーの問題等、健康に直結するような問題については、いろいろな被害が重要な問題を引き起こすということから、きちっとそういったガイドライン等で規制すべきということだと思っております。ただ、私どもとしては、実務的にそういったものが対応可能なものであるというふうなことをぜひお願いしたいというふうに思っております。

中村参考人 お答えいたします。

 外食、中食について公正競争規約がない、これは、実はJAS法においても適用されておりません。

 なぜかと申しますと、外食、中食は、基本的に各店舗で調理、加工されて、その場で提供されるというものでございます。例えば、加工食品であればJAS法等の適用になるわけですが、これらは、工場で基本的に生産され、そこでパッケージされ、流通される。それでスーパー等で売られる。今、加工食品を買う場合に、スーパー等で、ほとんど消費者は無言で買い物ができます。表示あるいはPOPを頼りに物を買うしか方法がないということになりますが、外食は、基本的に現場で調理、加工されて、人がおりますので、そこで情報提供ができるということからでございます。

 それから、外食、中食を一口にくくりましても、先ほどの問題のホテルから、あるいは町のまさに定食屋さんから手づくり総菜屋さんから、実は非常に多様な業態の集まりでございまして、これを一律的なルールを適用するというのがなかなか現実的でないという問題がございます。

 それから、アレルギー表示についてでございます。

 アレルギー表示につきましては、いわゆる原産地表示等、これはうそはいけませんけれども、それ自身が直接安全に結びつくものではありません。ところが、アレルギー表示は、健康、時に生命まで及ぼすということで、慎重にならざるを得ないということになります。

 外食の特徴として、厨房でさまざまなものが調理されるという現状があります。コンタミネーションの問題がどうしても避けられない問題になるということです。それから、工場生産の加工品と違いまして、日々食材を仕入れます。日々変わります。これらについて、間違いない情報提供というのがなかなか難しいということになります。

 特に、アレルギー情報の場合は、使ったものを表示するのは極めて簡単でございます。使ったというものでいいわけですが、問題は、表示をしない判断、使わないという判断が非常に難しいということです。表示がないということは、消費者にとって、アレルギー患者にとっては、それは安全のメッセージということになります。

 例えば、先ごろカシューナッツ、ゴマが追加になりましたけれども、ゴマはゴマ油等も対象です。そうすると、原材料の範囲が非常に広くなります。ですから、仕入れている加工品の子原材料、孫原材料までさかのぼって確認しないと、表示を落とす判断がなかなかできないということになります。ですから、一律に義務づけたところで、実行性、真正性の確保が非常に難しいということになります。

 ただ、情報が必要ないかというと、そうではございませんで、既に大手は、ホームページ、あらゆるツールを使って情報提供に努めているというのが現状だと理解しております。

根岸参考人 外食、中食について公正競争規約がないというのは、もちろん私もつまびらかにはわかりませんけれども、多分無理だと思うんですね。非常に数が多いし、業種、業態がいろいろであって、それを公正競争規約でまとめるということが難しかったからだと思います。したがって、やはり今回の指針という形で示してやっていくのがベターな方法だというふうに私は考えております。

 それから、アレルギー表示につきましては、これは、今は多分、聞けばおっしゃってくれるとか、あるいは自主的にやっているところもあると思いますけれども、基本的には、やはり原則として何らかの形で表示は義務づける必要はあると思います。私自身も十分にはわかりませんけれども、しかし、やはり、アレルギーで非常に、亡くなるとかそういうふうな事故もあるわけですから、何らかの形で義務づけが必要だ。ただ、その義務づけるときのやり方について工夫は要るかもしれないということでございます。

増田参考人 外食に関して言えば、表示が今なされていないわけですけれども、ただ、今は、冷凍食品をそのまま中国から輸入してきてそれを提供するというようなケースもございまして、対面取引といえども、実は、実態としてはそうではないという場面もたくさんあるかと思います。レトルトカレーを仕入れて手づくりカレーというふうに表示して売っているようなケースも見聞きしているところでございますので、今後は何らかの表示の義務づけということが必要なのではないかというふうに思います。

 それから、アレルギーに関しましては、先ほど中村様の方からお話しいただいたように、問題がたくさんありますので、これからも深く検討していただきたいというふうに思っております。

武正委員 ありがとうございます。

 特に、今、中村さんからは、一律的なルールというのはなかなか難しいんだ、なぜ公正競争規約がなかったかというような形についても、大変多様な業界であるというようなお話がございました。大手のホテルから町の総菜屋さんも含めて地域のお店ということで、そういったところはよく理解ができるわけであります。

 ただ、例えば中華組合とかあるいはそば組合とか、それぞれ中小のお店もそうした組合をつくったり、あるいは食品衛生協会とか、そういったような団体で、日ごろから食品衛生に努めている団体もありますので、何か、それぞれの規模あるいは業種、業態に応じて、今度の指針で細やかなそうした対応を求めるようなこともできるのではないのかなというふうに思っております。

 そういったときに、都道府県に今回措置命令の権限を付与するわけなんですが、先ほど来、多くの参考人から、都道府県は、そうはいっても、予算も限られているし人も足りないというお話で、なかなか難しいのではないのかというお話がございました。しかし一方、今のようなきめ細やかな対応をしていくには、自治体の力というものはやはり必要であろうというふうに思っておりますので、この都道府県の能力の育成について。

 一つに、統一基準とか、国のそうした全体的な取り組み、これが必要な一方、それぞれの、全国で統一基準も必要でありますが、北海道から沖縄、九州まで、やはり地域性もあるわけです。ある面、そうした分権の中で、柔軟な対応、それぞれの都道府県のそれぞれ個別の対応といったものもあってしかるべきではないかと思うんですが、この点について、中村参考人、御意見を伺いたいと思います。

中村参考人 お答えいたします。

 確かに、都道府県、地域によって実情というのはあるということは事実だと思います。ただ、事業者、特に全国展開をしている事業者におきましては、各地区によって行政の判断基準が違うということになりますと、事業活動において相当の支障がやはり生じるということは否めないと思います。やはり、同じ目線で全国が統一できる仕組み、これはぜひ必要ではないかなというふうに考えております。

 それから、やはり県の体制が非常に弱いということもあります。そういうことで、先ほども御意見が出ていますが、業界みずからが体制を整備するということも大事じゃないかというふうに考えております。

 これは当財団も協力しておりますけれども、日本フードサービス協会におきましては、従来から行動指針というものを設けまして体制を進めておりますが、今回、新たなガイドラインが示されたということで、相談センターというものを設けました。これは消費者、事業者からの相談を受け付けて対応するということでございまして、そういう自主的な対応を業界みずからが進めるということもあわせて必要かなというふうに考えてございます。

武正委員 根岸参考人にお伺いをいたしますが、先ほど、そうした中で新たな発想、柔軟な発想が必要だというようなお話をいただいております。

 その中では公取と共管を提案もされておりますが、この点について付言をいただけますでしょうか。

根岸参考人 先ほども申しましたけれども、消費者庁ができたときに、さまざまの消費者関連法というのは別々の関連省庁が運用していたところ、それを消費者行政の一元化ということで、一元化だけれども共管にするということですよね。一元化を徹底すれば、それは専管にすればいいのかもわかりませんが、実際上は、やはり、先ほどからお話がございますように、地方事務所等、そういうものを持たない消費者庁ではなかなか難しいということから、かつ、実際の予算とかマンパワーとの関係で共同管轄ということになったと思うんですね。

 私の考えでは、なぜ景品表示法だけはそうならなかったのかというのは、私は合理的な理由がわかりません。私自身は独禁法というのをかなり専門にやっておりまして、そのような観点から、やはり景表法というのは、もちろん消費者法の一つではありますけれども、しかし、公正な競争を確保する、そういう観点が非常に強いわけですね。したがって、本来は、もともと共同管轄にすべきであった。

 もちろん、共同管轄にすることによって全部ハッピーではないと思いますけれども、それはやはり、まさにうまく協力連携するという仕組みをつくらなきゃならないと思いますけれども、それは他の消費者関連法でも同じだというふうに考えております。

武正委員 もう時間も限られてまいりましたが、久保田参考人には、課徴金の減算措置について付言がありました。根岸参考人もそうした減免制度について触れられておりますが、久保田参考人にこの減算の措置についてのさらなる付言と、最後に増田参考人には、生活相談員、こうした協会の運営について、先ほどいろいろ工夫を、日曜日も含めてされているというお話がありましたが、こうした団体に対してさらに充実を進めるためにはどんなことが望ましいか、あるいは希望されるのか、それについてお答えをいただければと思います。

久保田参考人 減算につきましてはいろいろな考え方があるかと思いますけれども、例えば私どもの場合で今一つ考えておりますのは、事業者が自主的に、被害に遭われた方に、消費者に対して返納したりとか、そういう場合には減算ということも考えられるのではないかというふうに考えております。

増田参考人 私どもの活動の中で、やはり情報というものが非常に重要だというふうに思っておりますので、ぜひとも、私どもの情報が速やかに提供できるような仕組みであるとか、それから問い合わせなどをしたときに速やかにいただくというようなルートができるといいというふうに思っております。

武正委員 今の点については、先ほど都道府県、そういう意味では、身近な都道府県の方が、消費者庁というか国に情報を求めるよりも求めやすい、日ごろから顔なじみである、あるいは近いといったことも先ほど述べられたことに符合するなというふうに思いました。

 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

山本委員長 次に、上西小百合君。

上西委員 日本維新の会の上西小百合でございます。

 参考人の皆様方、本日は貴重な御意見をいただき、どうもありがとうございます。

 私は、まず、不当表示に関連した質問からさせていただきたいと思っております。

 昨年、一流デパート等で頻発したメニュー表示等と異なる食材での料理提供は、日本の食に対する国内外の信頼を失墜させました。しかし、提供側の責任者は、当初は、偽装ではなく誤表示だ、こういったふうにしらを切っていたように、キャビアと称して畑のキャビアとの別名を持つトンブリを提供していたとか、カニと称してカニかまを提供していたとか、そういうところまでではなく、クルマエビと書いていたフライが輸入されたブラックタイガーだったなど、ざっくりエビという形で表示をしてしまえばうそではなくなるレベルのものだったため、残念なことではございますが、この日本では慣例化してしまっていたのかもしれないというふうに思っております。

 しかし、このようなことで日本の食への信頼性をこれ以上低下させるわけにはいきませんので、先ほど、こういった問題は全国民が関連することで、国が責任を持っていかなければならないという趣旨の御答弁があったかと思いますが、私は、この法案を早期に成立させるということに期待をしておるところでございます。

 また、私は、騒動のとき、全国ほとんどの一流店を総ざらいした一方で、国民が国にだまされているのではないか、こういった危惧を抱き続けているわけでございます。

 どういったことかといいますと、例えば、うどんやパンなどの小麦粉製品、また豆腐、納豆、みそなどの大豆製品を購入するとき、必ず国産小麦使用とか国産大豆使用と表示してあるものを買うように心がけているといった方が多くいらっしゃいます。そして、私は、その表示は国産の原料だけでつくられているもののあかしだ、こういうふうに思っていたわけでございますが、親しいうどん屋さんから、以前、小麦にしろ大豆にしろ、国産の原料含有量が五〇%を超えていれば国産というふうに表示していいと国が認可している、こういうふうに伺いまして、大変ショックを受けたわけでございます。そうだとすれば、国産大豆を五一%、米国や中国の遺伝子組み換え大豆を四九%使用した豆腐や納豆が、正々堂々、国産大豆使用、こういった形で明記しても構わないということだそうです。

 この表示基準を知らない国民も多いかと思うのですが、この国産の定義と、本改正案で旧来と扱いが変わってくるのか否かについて、農林水産省時代からその道の権威として御活躍された中村参考人から、それらの安全性も含めて、御説明をお願いできますでしょうか。

    〔委員長退席、原田(憲)委員長代理着席〕

中村参考人 お答えいたします。

 先生の御指摘ですが、一つ、ちょっと誤解があるかと思います。

 豆腐、納豆等に国産が五〇%使用されていれば国産という表示ができるというルールは、かつて業界にありました。十五、六年以上前だと思います。

 平成十二年に、JAS法が改正されまして、その後、加工食品の品質表示基準というのができました。そこでさらに細部、細かなルールが決められておりまして、国産大豆使用と書く場合、現行ルールでは一〇〇%でなければならないことになっております。一〇〇%を下回った場合には国産大豆○○%使用というふうに書くのが今の現行のルールということで、御理解いただければと思っております。

上西委員 ありがとうございます。

 国産大豆を一〇〇%使用していなければ、国産大豆○○%使用ということで書かなければいけないということで、勉強になったわけでございます。ありがとうございます。

 ということは、一般的に、私どもがスーパーなどに行っていると、基本的には何%使用という形ではなく、国産大豆使用という形で書かれておりますが、これは、今販売されているものほぼ全てが国産大豆一〇〇%使用されているものということでよろしいのでしょうか。済みません、ありがとうございます。

 そして、今ちょっとお伺いしたんですけれども、遺伝子組み換え、こういったものに関する安全性に関してはどういった御所見をお持ちでしょうか。

中村参考人 遺伝子組み換え農産物につきましては厚生労働省、食品衛生法の方でございますが、安全を確認されたものしか我が国への輸入は認められていないということになります。

 ですから、それが安全性についてどうかということであれば、それは、国が法的に認めたものしか我が国には入っていないということでございます。

 ただ、遺伝子組み換え食品につきましてはかなり大きな議論がありまして、やはり消費者としては、安全かどうかの判断は私たちがしたい、私たちがするので情報を提供しなさいという要望がありまして、現在、遺伝子組み換え農産物を使ったものにつきましては、使用品目につきまして、遺伝子組み換えを使用した旨、あるいは遺伝子組み換えでないものを分別している場合には分別した旨、それらの表示ができることになっております。

上西委員 ありがとうございます。

 今、遺伝子組み換えのことについてお伺いをしたわけでございますが、加えて、近年いろいろニュースなどで取り上げられていますクローン技術、こういったものを使って生まれた牛肉、マトンなどについても少しお伺いをしたいと思います。

 こういったものに関しても安全性が一〇〇%確立されたものなのか、こういったことも疑問なわけなんですけれども、これに関しても本改正案で旧来と扱いが変わってくるのか否か、まず、こういったことをちょっと中村参考人から御説明をいただけますでしょうか。

中村参考人 その辺になりますと私は専門家ではないんですが、基本的に景品表示法というのは、現状の経済活動の上に立って物を考えるということだと理解しております。ですから、安全性につきましても、やはり国として審査をし認められたものが流通していることを前提に景品表示法というのは成り立っているのではないかなという理解をしております。

上西委員 ありがとうございます。

 国がどういった安全性の基準を設置するか、こういったことで変わってくるということですので、私どもは、国民の皆さんが安心してこういった商品を買えるように、しっかりと安全性について確認をしていきたいと思います。

 それでは、次の質問に参りたいと思います。

 消費者が今回の改正法が想定しているような被害に遭った場合、一番頼りにするのは当然消費者庁なわけでございますが、まだ出先機関や地方組織ができておりませんので、何かあった際には、国民は、国民生活センターやあるいは地方の消費生活センターにわらをもすがる思いで相談に出向くわけでございますが、残念ながらその機能は十分に稼働しているとは限らず、その点は、過去に何度か当委員会で私から指摘をさせていただきました。

 また、国センでは、相談の窓口が土日や祝祭日には休みでありますが、サラリーマンや学生などのために休日も電話で相談を受け付けており、制度ができて以来、今まで国センのその委託業務の入札に応札したのは、毎年、公益社団法人全国消費生活相談員協会の一者だけであり、この国セン理事長が当委員会で御答弁された相談員の人数、日当、稼働日数を掛け合わせても遠く及ばない高額で全相協が契約を締結し、つい最近までは超破格の安い家賃で全相協は国センに同居をし、今でも役員クラスの人事交流も盛んに行われていることが前回の委員会ではっきりいたしましたが、全相協の増田参考人は、そうした事実を御存じだったでしょうか。また、この事実に関して御所見をお聞かせいただけますでしょうか。

増田参考人 事実というところが、どこまで事実かというところは認識の違いというのもあるのではないかというふうに思いますけれども、先生の御発言につきましては私の方も聞いております。

 私どもの入札に関しましては、正当な評価を受けているというふうに聞いております、評価されておりますので、何ら問題はないというふうに認識しているところです。

 費用に関しましても、首都圏一般の報酬プラス土日祝日であるという休日の割り増しであるとか、交通費、研修費、それから、その日のうちにカードを全部決裁するために正確なカードをつくるというようなことで、朝九時から夜の九時、十時までかかるようなこともございますし、二百四十数名の会員を登録しておりまして、その管理など、それから週に一回以上の国民生活センターとのカードチェック、情報交換などをしているというようなことからも、利益が残っているというようなことはまずございません。

 人事交流があるということは、別に交流するということではなく、理事が私どもの方からたまたま推薦というか登用されたというふうに考えておりますので、私どもの方としては、そこのところはよくわからないということでございます。

上西委員 わかりました。

 今御答弁いただいた内容で、ちょっと疑問に思うところがたくさんあったわけなんです。

 まず、事実というところは、どこまでの事実かわからないというふうにいただいたわけなんですけれども、私、先日の委員会でいろいろ御答弁をいただきまして、そういった人事交流がある、そして入札、これに係る費用、相談員の人数、日当、そして稼働日数が百十一日、日当が一万五千円でしたでしょうか、こういったものを計算しまして、たしか、ちょっと今はっきりした数字を持ってきていないんですが、それで積算が、私の積算で三千六百万円ぐらいだったと思います。そして、落札金額が六千万円台だったと思うんですね。

 この差を割りますとかなりの利益が残っているわけで、こういった業務に関してどうして応札する者が一者だけなのかということに関して御答弁をいただいたときには、そういった利益が出る業務に対してなぜ応札があるのが一者だけなのか、そういうのはちょっとわからない、なぜ一者しか応札しないのかわからないという御答弁をいただきまして、それに関して、私は、要するに、国民生活センターと全相協の間で密接な関係があるからではないか、そして、全相協が国センに同居している、こういった事実を踏まえた関係があるのではないかということで先日指摘をさせていただいたところでございます。

 的確な入札であったというふうな御答弁ですが、まず私が申し上げたいのは、こういった業務は日本国民の税金で運営されている、こういったことをしっかりと認識していただき、そういった上で成り立っている業務でございますから、一万五千円の日当、そして百十一日の稼働日数、こういった形で御答弁をいただいたわけですから、しっかりとした経費管理をしていただきまして、そして、本日お越しいただいております増田参考人、全相協の専務理事ということでございますので、しっかりとそういった経営理念を持ち、また今後も職責を果たしていただきたい、このように思っております。よろしくお願いいたします。

 また、全相協は高度な経験や能力をお持ちの相談員を多数抱えていらっしゃるのは私も存じ上げておりますし、これは周知の事実であると思います。そして、さまざまな消費者被害が続く中、今回の改正法施行後もますますお世話にならなくてはならない機関であり、これに対しては心から敬意を表するわけでございます。ただ、先ほど申し上げましたように、国民に疑われるようなことがあっては、真面目に任務遂行されています全相協の職員の方も大変不本意なことではないかと思っております。

 そこで、お伺いします。

 全相協は公益社団法人でございますが、収益ということに関しますと、どういった収益があるのか、また、もし収益があるのでしたら、その収益に関してどのように処理をされているのか、増田参考人の御説明をお願いいたします。

増田参考人 本日は、ちょっと細かい数字については用意しておりませんので、大きなところでお話しさせていただければというふうに思います。

 私どもは公益社団でございまして、全国に二千百名の会員がおります。その会員たちは、基本的に、消費生活相談の自分たちのレベルアップ、あるいは一般消費者に対する啓発活動などを私どもの協会としてやっていくということの志を持って活動しておりますので、そのためにみずから会費として払うということで、会費の収入があります。

 それと、実際には、いろいろな自治体から事業を請け負って、その事業を行っています。それはやはり公益に資する事業であることがもうほとんどでございまして、そういうところで得た利益によって、週末相談であるとか公開シンポジウム、それから、先ほど穀田先生がお持ちになっていたようなああいうブックレットなどの冊子を無料配布するなどの活動もしておりまして、私どもの得た利益というのは、ほとんど全てでございますが、最低限の管理費というのもございますけれども、それらは右から左へ、公益のために使われているというふうに私は思っておりますし、それが事実でございます。

上西委員 ありがとうございます。

 もし利益が上がれば、しっかりと啓発活動などにお使いいただいているということで御理解をさせていただきました。

 また、ちょっと時間がなくなってしまいまして、一般社団法人ではなく公益社団法人である全相協がどのような経緯で適格消費者団体の認定を受けられたのかなど、本当にまだまだ聞きたいことがあったんですけれども、ちょっと時間の方が参りましたので、本日はこれで終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

原田(憲)委員長代理 次に、國重徹君。

國重委員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。

 本日は、御多用な中、本委員会までお出ましいただきまして貴重な御意見を賜りましたこと、心より感謝と御礼を申し上げます。

 早速、質問の方に入らせていただきたいと思います。

 今回の景表法改正法案では、内閣総理大臣が定めた指針に基づいて、事業者が景品類の提供、表示を適正に管理するために必要な体制整備など必要な措置を講じなければならないとされております。この立法趣旨は、事業のコンプライアンス体制の強化であります。

 ただ、この体制整備をとったり必要な措置を講じたとしても、このことについては特に報告義務等は課されておりません。こうなりますと、うちはもう面倒だから、そんな体制整備とか必要な措置なんて講じないよとか、また、そもそも総理が示した指針なんて知らないよというような業者も出てくる可能性があると思っております。先ほども、初めの意見開陳の中に、そもそも今回の食品QアンドA自体も知られていなかったというような御意見もございましたけれども、今回も、結局、法律は定めたけれども、実際にコンプライアンス体制が強化されていないじゃないかというようなことも起き得ると思います。

 現場を熟知している四名の参考人に、今回の改正法を受けて、具体的にどのようにすれば事業者が必要な措置を講じていくとお考えか、この促進策、こういったものについてお伺いしたいと思います。

久保田参考人 やはり一番重要なのは、企業が自主的にそういったコンプライアンス体制をもう一度見直して遵守していくというようなことが重要だと思っていまして、経団連としましては、そういった事業者に対する啓発セミナーとか、遵守の徹底を呼びかけたりとか、いろいろなことをしていきたいと思っております。

 既に、昨年来のあの一連の問題が生じた後も、企業の関心も非常に高まっていまして、そういったことがないように自主的な取り組み、再点検をしているところが非常にふえております。そういった観点から、今回、法改正が行われれば、またそれに沿って、私どもとしましても、会員企業に対して遵守の徹底をしていきたいというふうに考えております。

 ただ、一点、その指針を定めるときには、事業者の規模、業種、業態によっていろいろ管理体制が異なりますので、ぜひ実務家の声を聞いていただく、そういった相互のやりとりの中でまた企業の意識も高まっていくのではないかというふうに思っているところでございます。

中村参考人 お答えいたします。

 企業の自主的な対応が必要であるということは、全くそのとおりだと存じております。

 これまで企業の中にそのような体制がなかったかというと、実は、表示に限らず、コンプライアンス体制というのは既にあるわけでございます。今回はホテルが問題になりましたけれども、多分、ホテルとしてのコンプライアンス体制はあったんですが、外食事業者としての目線での体制があったかどうか、この辺が疑問であったということでございます。

 そういう意味では、今回、QアンドA等の問題もありますけれども、やはりこのような情報も行政の方も広く周知して、事業者の自主的な対応を助けるということも必要ではないかというふうに考えております。

根岸参考人 二つあると思いますけれども、一つは、この法案では、もしコンプライアンス体制をしいていないという場合には、指導助言して、もしそれに応じなければ勧告、公表、そういう担保措置がとられているということであります。この場合、やはり、地域的に行われますから、消費者庁のみならず、都道府県レベルとの連携協力というのは非常に大事だと思います。それぞれの地域においては、都道府県がそういうことについてしっかり指導するということが必要だと思います。それから、もちろん事業者団体との連携も非常に重要だと思います。

 それから、何よりも、やはりコンプライアンス体制をしくということは、これは要するに違反行為をなくすということ、法令遵守体制をしくということでございますので、コンプライアンスをいいかげんなことをしていて、そして違反をやれば、それは厳しく景品表示法で措置命令が加えられるし、あるいは課徴金が命ぜられるかもしれないということでありますので、コンプライアンス体制をしっかりやらなければそうなるということでございますので、そういう二つの観点からコンプライアンス体制の確立を期待しているというところでございます。

増田参考人 コンプライアンス体制をきちんと整備しないまま問題が発生してしまった場合については厳罰措置をしていただきたいというふうにも思っておりますし、それから、これをきっかけに業界が認識を深くしていただいて、日本の企業は優秀で、すばらしい企業が多いので、そこを期待いたしたいというふうに思っております。

 それと同時に、業界のアウトサイダーに対する対応を業界の方としてどのように対処していただけるのかというところも、あわせて検討していっていただきたいなというふうに思っているところです。

國重委員 四名の参考人、ありがとうございました。

 今、根岸参考人の方からもございました、そのような体制を整備していないところに対しては指導、勧告、公表とかもやっていくんだと。

 ただ、私が懸念しているのは、そもそも、どういう人員体制で、そのような体制を講じていないところを見つけるのか。違反行為をした場合というのはそれがわかると思うんですけれども、違反行為をする前の段階で、今回、それぞれの業者が必要な体制整備、必要な措置というのをどう講じていくのか。これは、私も政府の方に、広報も含めて、今回、改正法でこのように定めたんだ、だから、改めて、今までやっているところもあるけれども、やっていないところも含めて、コンプライアンス体制を強化していくんだというようなことをしっかりと広報するように促してまいりたいと思います。

 続きまして、中村参考人にお伺いします。

 本日いただきましたこのペーパーの「権限の委任」という項目の中に、「事業所管省庁や自治体に権限の一部を委任し、全国を網羅した組織と現場の人材を有効に活用することは、行政の効率化を図り実効性を高めるために有効です。 しかし、多数の組織と人が関与する場合は、どの組織も同じ目線(判断基準)で仕事ができることが必須の条件であり、そのための仕組み作りが不可欠です。」と書かれております。

 この「仕組み作り」とは具体的にどのようなことをお考えでしょうか、お伺いします。

中村参考人 仕組みのつくりということですが、まず、人を育てなければいけないということがあるかと思います。やはり、人材育成のための体制と研修等があるかと思いますが、それが不可欠であろうというふうに考えております。

 それから二つ目は、連携でございます。

 各県に行く場合、各県で時に、例えば首長さんの方針で、県によって対応が違うという場面が、実はかつてのJAS法で随分ございました。国が全国事業者に対して改善を指示し、公表した場合でも、県によっては、それは県の判断で、同じ事案でありながら公表は避けるとか、そういうのが、立ち上がり当初、随分見られたわけでございます。

 景品表示法は、特に行政裁量が広いということを考えれば、JAS法以上にそういう問題の発生があるのではないかということも懸念されているわけでございます。ですから、関係都道府県の横の連携、それから消費者庁との縦の連携、これが不可欠だろうというふうに考えております。

 ですから、都道府県の対応等については、消費者庁からの指導、場合によっては助言等々の体制がとれることが必要ではないかというふうに考えてございます。

國重委員 ありがとうございました。

 続きまして、久保田参考人にお伺いします。

 久保田参考人からも、きょうお配りいただきましたペーパーの中から質問させていただきたいと思います。

 一ページ目の一の「法律案に対する基本的な考え方」の中の二番目の丸ポツのところですけれども、「景品表示法上違法となる表示が不明確であることも不当表示の原因の一つと考えられることから、現行ルールの周知及び徹底が不可欠。ガイドラインによって適法・違法の境界を分かりやすく示すべき。」ということが書かれてありまして、次に、三ページ目の一番最後のところに、「課徴金という厳しい行政制裁を課す前提として、明確なガイドラインの策定を急ぎ、周知徹底を十分に行うべき。」と記載されております。

 両者ともガイドラインということが書かれてありますけれども、今回、食品偽装表示の問題がありまして、食品の表示について今さまざま取り沙汰されておりますけれども、この景表法というのは、食品だけにとどまらず、広く、全産業をくくるものだと思います。

 これに関して、全産業に関してガイドラインというのを作成せよという趣旨でここに書かれてあるのか。全産業となると、消費者団体とかさまざまな関係者、識者を集めて、一個一個そういうようなものを精緻に記載していくのは結構大変な労作業になると思うんですけれども、そういうことを含めてここを望まれているのかどうなのか、ちょっとお伺いしたいと思います。

久保田参考人 先生おっしゃったように、景表法の対象範囲は非常に広いわけですけれども、これは全てに、全産業にということではなくて、やはり問題が発生しやすいような分野についてピンポイントでガイドライン等の作成あるいは見直しをしていくべきだというのが私どもの考え方でございます。

國重委員 わかりました。

 また、消費者庁とさまざまな意見交換をするときに、そういう優先順位、こういうようなものについてまずガイドラインを作成してほしいんだということをしっかりと連携してやっていただければと思います。

 続きまして、根岸参考人にお伺いします。

 根岸参考人は、昨年も当委員会にお出ましいただきまして、御意見の方を聞かせていただきました。そのときは、平成二十五年の十一月二十九日、食品表示問題に関する参考人質疑でしたけれども、その中で、根岸参考人はこのように言われております。

 「消費者庁は、公正取引委員会の地方事務所に調査を頼むということはできますけれども、しかし、やはりそれには大きな限界がありますし、公正取引委員会の職員の仕事のインセンティブということにも関係がございます。したがって、公正取引委員会との共同所管にする必要があると思います。」このように述べられております。

 この少し具体的な中身をお伺いしたいんですけれども、ここで言われている、大きな限界があるという、この限界とは具体的にどのようなことなのか、また、職員の仕事のインセンティブとの関係もあるという、このインセンティブとの関係とは具体的にどのようなことをおっしゃられているのか、御教示いただければと思います。

根岸参考人 もちろん、役所のことについて私はそんなにつまびらかでございませんので、私の知る限りのことでございますけれども、やはりある省庁で、そのある省庁のトップから地方事務所に、こういうことを調査して、こういう問題があるから摘発するということであれば、それはみんなやるというか、インセンティブが非常に高いと思うんです。もちろん、ほかの省庁から来たらインセンティブが低いなどというのは、それはもちろん言えないとは思いますけれども、しかしながら、現実問題として、やはり自分の省庁のトップから、こういう問題があるからこれをやれというのと、他の省庁から、これはちょっと調べてくださいというのとでは、相当私は違うというふうに考えております。

 何よりも、私は、当初、なぜ景表法だけは消費者庁の専管になってしまったのか、理由が全くわからないというところに端を発しております。

    〔原田(憲)委員長代理退席、委員長着席〕

國重委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたので以上で終了しますけれども、本日は、四名の参考人の皆様、貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。

 以上で質問を終了いたします。

山本委員長 次に、柏倉祐司君。

柏倉委員 きょうは、お忙しい中、多くの参考人の方、お越しいただきまして、ありがとうございます。みんなの党の柏倉でございます。

 かなり議論が出尽くしておりますが、私の方からも課徴金制度に関して、皆様それぞれ立場が違いますので、それぞれ、お立場、そして個人的な見解を踏まえて御発言があったかと思います。

 私も、この課徴金の制度、国庫納入、国庫編入、これは消費者の声を反映したものになっているのかどうか、先週の委員会でも質問をさせていただきました。法的には、たてつけ的にはなかなか簡単じゃないなというのはよくわかりましたが、ただ、消費者の保護というのを一義的に考えなければいけない本法に関しては、やはり柔軟な運用、先例のないことかもしれませんが、やはり被害回復というのもしっかりと念頭に入れた運用をしていかなきゃいけないのかなというふうに思っておるところでございます。

 まず、久保田参考人にお伺いをいたしたいんですけれども、現行想定される法定の課徴金がございます。これぐらいかなという相場があると思うんですが、そうじゃない場合、被害回復、これは多くの方に例えば売り上げそのものを直接返す、こういうやり方はあると思うんですね。被害回復のための、これは課徴金といいますか、直接返還のようなもの。これで、どれぐらいの金額的な開きというのが、これは算定は難しいかもしれません。ただ、企業の方も萎縮してしまうというのは、そういった負の経済効果をある程度念頭に置いておっしゃられていることだと思います。

 現行の想定される法定金、そして直接の被害回復のためのお金、どれぐらいの金額、その差があるのか、もし御存じでしたら、お聞かせいただければと思います。

久保田参考人 課徴金の考え方につきましては、今先生から御指摘がありましたように、いろいろな考え方があるかと思います。

 私どもは、違反行為の抑止という観点から、課徴金を必要があれば課すべきというふうに考えておりまして、加えて、独禁法との並びで考えておりまして、一つは、平成二十年の景表法改正案では、当該商品または役務の売上額の三%ということで案が出されておりまして、私どもとしては、これは一つの考え方かなというふうに思っております。

 それで、課徴金の問題は、独禁法の議論の中でも、不当利得の問題と課徴金額の問題というのを比較してどうかという問題があるんですが、なかなか、不当利得というか、あるいはそういった誤表示による損害額を算定すること自体、私は非常に難しいというふうに考えておりまして、また、そういった被害の回復等であれば、それはまた別途民事手続で、各消費者あるいは集合訴訟というような形で行うべきだというふうに考えておりまして、景表法の関連する課徴金については、そういった形ではなく、独禁法に準じた形でやっていくべきだというふうに思っております。

 それから、企業にとりましては、もちろん課徴金というのは非常に重い制裁でございますが、そうでなくても、例えば企業名の公表とかいうことでありましても著しく信用を失墜するということで、悪質な場合は当然でございますけれども、それだけでも非常に企業にとってはダメージのあることだというふうに考えております。

柏倉委員 実際的な概算、試算というのはなかなか難しいとは思います。

 それで、もう一つ久保田参考人にお伺いしたいんですが、元来、行政の指導が徹底していない、こういったものが不当表示であるというような、最近はある程度ホームページなんかでつまびらかにはされているけれども、元来、そういった行政側の配慮が余り足らなかったんじゃないかというような指摘もあったかと思います。

 それはそのとおりだと思います。まず、全ての責任というのは、行政と営業主体がやはり分かち合うといいますか、ある一定のところ、割合、難しいですが、しっかりと行政も責任を担うという点で当然だと思います。これはこれで、問題提起を受けて、消費者庁の方でも鋭意改善に努めているとは思います。

 そこで、営業主体側の方では、勉強会とか研修会、こういったもので、不当表示に関する知識、これをしっかりと啓蒙していく、周知徹底をして、企業側からもなくしていく、こういう努力がさらに必要になってくると思いますが、今までの取り組みと、今後どのようにやっていくのか、お聞かせいただければと思います。

久保田参考人 経団連では、冒頭申し上げましたように、企業行動憲章、これはいろいろな形での信頼される企業づくりということで、十の原則を掲げていまして、そのうちのまさに第一項目の中でも、消費者へのきちっとした情報開示を徹底するということを書いてございまして、これは数年に一回、いろいろな改定も行っております。

 昨年来のそういったものも踏まえて、もう少し具体的にどういうふうにすべきかというようなことの改定も考えていきたいと思っておりますし、また、昨年の十一月には消費者庁とセミナーも開催しておりますので、法律が改正されれば、そういった周知徹底の強化を図っていきたいというふうに考えております。

 また、法案作成のプロセス、あるいは指針、ガイドラインの作成等で、いろいろ私どもの意見も聞いてもらいたいというふうに思っていますので、そういった中で行政とのやりとりもしていきたいというふうに考えております。

柏倉委員 やはり双方の努力といったものが結実して初めて消費者の利益というものが守られると思います。いろいろとお忙しいとは思いますが、そういったところも常に念頭に置いていただいて、改善の方向で検討していっていただければと思います。

 次に、根岸参考人にちょっとお伺いをいたしたいんですが、課徴金制度に関して、根岸参考人は、おもしろいといいますか、なるほどと言わせる提言をされておられると思います。事業者の自発的な申告、被害回復措置をすれば課徴金を減免してもいいのではないかというような御提言だと思うんです。

 これは、もし存じていらっしゃれば教えていただきたいんですが、現在、ひょっとしたらうちの商品自体がそういった不当表示に抵触する可能性はあるのかなというふうに認識をしていて、もしこういった減免制度があって、もちろん、名前を出す出さない、そういった一番重要な部分、これは検討しなきゃいけないんですが、そういったものが企業の今後の経営に差し支えないというような状況になった場合は、ここで、ごめんなさいといいますか、そうやって自分たちで申告をするというような企業というのはやはり多いんでしょうか、それとも少ないんでしょうか。もし把握していればで結構なんですが、教えていただければと思います。

根岸参考人 いや、それはもちろん把握しておりません、わかりませんが、私が先ほど申しましたように、下請法で運用されているんですよね。下請法違反の行為があったときに、自主的に例えば返額をするというようなことをやった場合には、下請法に基づく勧告とか公表をしない。

 結局、問題は、ただ、やった行為をけしからぬといって罰するとか、そういう問題ではなくて、基本的に不当表示をなくすることが問題なので、それによって早くなくすことができれば、私の言う実効性のある執行体制だと思いますので、そのような方法もやはり一つの重要な方法だというふうに考えております。

 下請法ではそれなりに成功しているというふうに私は感じておりますので、それも一つの方法ではないかと考えております。

柏倉委員 ありがとうございます。

 現実的にそういった相談等は当然ないとは思いますが、おっしゃるとおり、下請法等々のやはり既にあるものを十分、柔軟に運用するというところで、防げることは防げるということだと思います。そういったところもやはり本法は附帯等々で検討していかなければいけないんだなというふうに感じます。

 そこで、次は増田参考人にちょっとお伺いしたいんですが、増田参考人のお立場としては、やはり、不当表示というものは、いかなるものであっても、軽重問わず許しがたいというお立場だと思います。課徴金制度をもし立てるのであれば、被害回復を軸として、被害回復をまず主眼に置いてつくってほしいという御意見だと思います。それも、主婦のお立場からすればもう当然なことだと思います。

 そこで、私も、自分の嫁とか母親に、例えば、一万円のものを買って実は不当表示があった、では、どれぐらい返してもらえたら、まあ仕方ないかなと思うかと聞いたら、やはり、三千円という意見もあったし、七千円だという、まあ二人しか聞いていませんから、額に差があるんですね。

 これは、実は、どれぐらい現実的に返還がかなうものなのかというところを検討する場合に、そこの相場というものも主婦の皆様はお持ちだと思うんですが、私は、これは非常に大事な現場感覚だと思うんです。そこのところを、もし感覚としてお持ちであれば、個人でも結構です、お仲間でも話されたものがあれば、お聞かせいただきたいということ。

 あと、国は、課徴金は国庫編入だ、もうあとは被害回復は民事だから民事でやってくれという従来の姿勢を貫いております。そういった国の対応をどのようにお感じになるか。

 申しわけありませんが、二点、お聞かせいただければと思います。

増田参考人 非常に難しいお話なんですけれども、商品、サービスの種類によって、その金額のところは違うのかなというふうに思います。

 何とかエビを食べたんだけれども全然違っていたということで、でも、おなかはいっぱいになりましたということであれば、普通の価格の程度をお支払いするのか。ただ、場合によっては、そういうものじゃないものを食べて太りたくないという方もいらっしゃるので、やはり、そこら辺は個別に違うのではないかというふうに思います。

 でも、確かに、使った利益というのは残ることが多いかと思いますので、そういう意味でいうと、消費者被害を直接回復していただきたいというのが基本的な考え方ではありますけれども、実際には算定が難しいということであれば、やはり、そういう課徴金ということで徴収していただいて、それをどのように使うかというところをきちんと議論していただきたいというふうに考えているところでございます。

柏倉委員 非常に難しい質問をしてしまいまして、申しわけございません。やはりこれは、全部が損失というわけじゃありませんので、非常に難しいんだと思います。ですから、この課徴金の法定の算定、それも今後、非常にしっかりとしていかなきゃいけないのかなというふうにも思うところでございます。

 最後に中村参考人にお伺いいたしたいんですが、食品Gメンというのがあって、中村参考人、従事していらしたということですが、今回、JAS法などの食品表示関連法を一元化して、何人も事実に反する表示はしてはいけないといったような包括的な条例を持ち込むことで、Gメンが摘発できるといったようなことをおっしゃられていると思うんです。

 今後、そのGメンというものを、もし配置するのであれば、どれぐらいふやしていくのか、各都道府県に何人ぐらい、人口比でもいいんですが、その辺、もしありましたら教えていただけると都道府県の方も検討に入れると思いますので、最後にそこを教えていただければと思います。

中村参考人 どのくらい要るのかというのは大変難しい問題なんですが、実は、農林水産省の食品表示Gメン、私が担当したころは全国に二千名おりました。現在は千三百名ぐらいに減っております。行政全体の効率化、スリム化もありますし、人が育ってきて、それなりの効率的な調査ができているんだろうなというふうに考えております。

 今回、景表法の関係で、それらのGメンに調査の権限を与えるということでございますが、多分、専ら景表法だけをやるということではありませんので、JAS法等その他の業務を兼務しながら行うということでございますので、人数的に難しいんですが、現状の範囲で可能ではないかなというふうに考えております。

 あと、都道府県でございますけれども、私の知る限り、都道府県によって随分事情が違います。例えば東京都等大きな自治体であれば、それなりの体制が整っておりますけれども、やはり地方の県であれば、さまざまな業務を兼務しながら数名というのが現状かと思っております。それにつきましては、県の実態に応じながら体制の整備というのも検討する必要があるのかなというふうに感じております。

柏倉委員 きょうはお忙しいところ、どうもありがとうございました。これからも消費者行政に鋭意お力をかしていただけますよう、よろしくお願いいたします。

 どうもありがとうございました。

山本委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 結いの党、信州長野県の井出庸生と申します。

 本日は、四人の参考人の皆様、お忙しいところありがとうございます。よろしくお願いをいたします。

 私からまずお伺いしたいのは課徴金制度のことなんですが、皆様、それぞれのお立場で、事業者の萎縮につながるので慎重にという御意見もあれば、ほかの法令との兼ね合いから慎重にという、また、その裁量を認めて課徴金をという御意見もあれば、積極的にぜひ課徴金を不実証広告の方にもと。

 議論があるのは不実証広告の課徴金だと私も理解をしているんですが、どなたでも結構なんですが、特に、不実証広告に課徴金を導入すべしというお考えの方にお伺いをしたいんですが、こうした事例を、例えば海外の事例ですとか、そうした具体的な事例で、こういったやり方はどうかというような御提案がいただければいただきたいのですが、いかがでしょうか。

山本委員長 どなたか。根岸参考人、わかりますか。

根岸参考人 本来は勉強すべきだと思いますが、詳しくはわかりません。しかし、この不実証広告の規制というのは、もちろん海外にあった制度なんですよね。私の知る限りは、アメリカのFTC、連邦取引委員会の不当表示などの規制において存在したということで、それが非常に有用だと考えられたので多分導入されたというふうに理解しております。

 そのときに、それに対してどういうペナルティーが来るかということで、それはちょっと詳しくは私わかりませんが、シビルペナルティーといって、日本でいう課徴金のようなそういうものも用意はされているというふうに私は理解しております。

井出委員 ありがとうございます。

 そうしましたら、次に、消費生活相談員のことについて伺いたいのですが、相談窓口はかなり広がってきている、ほとんど、九五%近く都道府県にあると伺っておりますが、相談員にはやはり地域での偏在が見られる。地域のその偏在の解決と、あと、今回、これを国家資格として、消費生活センターに相談員を置くことが義務づけられる、その国家資格の浸透という観点をどのように考えていけばいいか、増田参考人に御意見いただければと思います。

増田参考人 国家資格にしていただくということは、レベルが一定程度以上のものでなくてはいけないというふうに思いますので、全体のレベルアップが図れるということと、それから同時に、そういう資格者が必要な窓口であるということを各自治体の方に認識していただくことで、現状の消費生活相談窓口の充実を図っていっていただけるのではないかというふうに期待しているところです。

 ただ、まだまだ、採用、雇用に関しましては、自治体の裁量でやるわけですので、なかなか難しいところであるかと思いますけれども、法的資格にしていただくことを契機に、これから先、五年、十年先に消費生活相談がなくなるわけではなく、ますます複雑化していくことを踏まえれば、やはりここできちんと整備していただくということを強く希望しているところでございます。

井出委員 ありがとうございます。

 次に、国民生活センターのことについて、中村参考人と増田参考人にお伺いをしたいのですが、国民生活センターについては、平成二十二年十二月の閣議決定で、消費者庁と一元化をして法人を廃止することを決めた。このときに、国民生活センターの相模原にある研修所も廃止を決めたのですが、昨年、二十五年の十二月二十四日の閣議決定で、これをことしの夏までに結論を得るとして、廃止決定が一旦立ちどまることになった。ただ、その相模原研修所の稼働率が一三%しかない。

 最初、冒頭四名の皆様のお話の中で、都道府県の職員ですとか人材の育成、そういったものが重要だということを挙げられた方もいらっしゃいましたが、この一三%という数字はちょっといかんともしがたいのではないか。

 研修の中身に魅力がないという議論もあるのかもしれませんが、相模原研修所というものの必要性について、増田参考人と中村参考人にそれぞれ御意見をいただければと思います。

中村参考人 申しわけございません。

 相模原研修所のこれまでのいきさつ、現状について、知見を持ち合わせておりません。申しわけございません。

増田参考人 確かに、稼働率が低いということは問題だというふうに私も思っておりますけれども、今後、稼働率を高めて、それで相模原研修所が有効な施設であるように検討をしていっていただきたいというふうに思っております。

 消費者教育推進法が施行されて以降、やはり消費者教育の重要性が事業者それから自治体などにも広がっているところでございますので、消費生活相談員に対する研修だけではなく、学校関係者に対する研修であるとか、それから自治体職員の研修が今非常に重要だというふうに言われております。法執行をするに当たっても、それから、その現場の理解をしていくということについても非常に重要なことでございますので、職員に対する研修、それから事業者さんに対する研修もぜひそのようなところでやっていっていただくような形で、有効な活用をしていってほしいというふうに思っております。

 本協会におきましては、相模原研修所の有効な活用について要望書を出しているところです。

井出委員 ありがとうございます。

 最後に、皆さんから、それぞれのお立場で忌憚のない御意見をいただきたいんですが、消費者庁が設置をされて四年半、さまざまな部署に分かれていたものの司令塔的な機能も期待されていたかと思います。

 しかし、実際やってみると、それぞれの業種の専門性また地域性、大きく言えば庁としての人材の問題もあるかと思うのですが、例えば、中村参考人が冒頭おっしゃった、霜降りとステーキのQアンドAの周知がなかったというようなお話もありましたが、ああいったことは私はすぐにできる問題なのかなと思うんです。

 消費者庁の果たしてきた役割について、当初期待された役割を果たしてきたのか、もっとこうしてほしい、そういうところを、それぞれのお立場から、四名の参考人にお伺いをします。

久保田参考人 経団連と消費者庁の関係というのは、非常に良好な関係で、適宜意見交換しております。

 やはり、消費者庁というのができたことによって消費者行政が一元化されたと思いますし、消費者と企業とがウイン・ウインの関係で市民生活あるいは国民生活を向上させていくということで、その媒介になるような形で消費者庁が入ってくるという形で、一挙に人員の拡充とか、これは行政全体の中で、スリム化している中で難しいかと思いますけれども、徐々にその役割を果たしつつあるのではないかというふうに思っております。

中村参考人 消費者庁ができたことによりまして行政のスタンスが明確になったということでは歓迎しております。

 ただ、名前が消費者庁でございますけれども、やはり消費者庁としては、幅広い意見、事業者等々も含めた幅広い意見を聞く体制も必要なのかなというふうに考えております。

 そういうことでは、今回のメニュー表示、当初、案を公開したときに随分混乱を招いたわけですけれども、その後、大変な議論が起きまして、パブリックコメントあるいは意見交換会等も開催していただけました。

 そういう意味で、見直すところは見直されたということで、本来の消費者庁の機能が今回は発揮できたのかなということで、大変評価をしております。

根岸参考人 私の考えでは、やはり、消費者庁ができたということは、消費者行政の認識というか、社会的認識を極めて高めたと思います。

 やはり、先ほど相模原の話で、ちょっと戻って恐縮ですけれども、私は地域でいろいろな消費者行政にかかわっておりますけれども、あの平成二十一年に消費者庁ができたことによって、私の考えでは地方の消費者行政はもうほとんど死んでいたと思うんです。人的にも予算的にも非常に少なくなっていた時代が非常に長く続いた、それをある意味では一気に回復したと私は思います。だから、消費者庁ができたことによって、消費者行政が飛躍的にその社会的認知度が高まったというふうに思います。

 ただ、それは当初から予想されていたというか、当然ですけれども、やはりそれは限られた人、地方事務所がないというようなことで、もちろんそれは限界はあると思います。

 食材のこの問題でも、消費者庁は何をしているんだというような、いろいろ意見はございましたが、私の考えでは、それは、長は内閣総理大臣ですから、オール・ジャパンでやるべきことである、それが非常に大事であって、消費者庁ができても、やはりほかの省庁というのがどう動くかということが決定的に重要であると。それは多分、消費者庁が幾ら言っても、なかなかそれはうまくいかないところが多いと思うんですよ。でも、やはり内閣総理大臣が長なんだから、それはオール・ジャパンで動かさなきゃいけないということをますますやっていただきたいと思います。

 ですから、消費者庁という、もちろんそれがかなめではありますけれども、でも、全省庁なんですから、その点に留意していただきたいと思います。

増田参考人 期待したとおりかというと、全て期待したとおりということではないと思うんですけれども、消費者庁ができたことによって、消費生活相談をしてもいいのだということが一般消費者の方に広く認識をされたのではないかというふうに思います。それによって相談をすることについてのハードルが非常に低くなって、いろいろなことについて御相談が寄せられるようになったということは非常によいことだというふうに思っております。

 実際には、全国津々浦々の自治体の窓口というのはまだまだのところはございますけれども、やはりそこのところの自治体と消費者庁との関係、それからほかの省庁と消費者庁との関係というのは非常に難しく、壁もあることだと思いますので、そこをいかにやわらかくしていくのかというところだというふうに思います。

 それと、安全法の中で個人情報の特例を設けるなどして、被害の回復をするために、あるいは被害の防止をするために、すごく難しかった個人情報の壁を少し低くするというようなことをできるのは消費者庁ならではのことだというふうに思っておりますので、それがスムーズに運用できるような、問題のないような運用になっていっていただきたいなというふうに思っておるところです。

井出委員 今お話のあった、やはりオール・ジャパン、そのお話が私もまさにそのとおりかなと思いまして、また今後とも皆様の御知見、御指導をいただきますようにお願いをいたします。

 本日は本当にありがとうございました。

山本委員長 次に、青木愛君。

青木委員 生活の党の青木です。

 きょうは、参考人の皆様から貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。

 早速質問に入らせていただきます。

 まず、消費者庁長官の権限委任について各参考人にお伺いをさせていただきます。

 今回の改正案におきまして、政令で定める事情があるときということではございますが、消費者庁の調査権限をほかの省庁に委任できるということになっています。人手不足が指摘される消費者庁にとりまして、この規定がうまく機能すれば効率的に監視体制が整備されるということになろうかと思いますけれども、この権限委任の規定について、より実効性のある制度とするために、制度面あるいは運用面で留意する点、あるいはお立場によっては御懸念の点もあろうかと思いますので、それぞれのお立場での率直な御意見をまず伺わせていただきたいと思います。

久保田参考人 今回の法改正の中で、行政の監視指導体制の強化というのは非常に重要なものだというふうに我々は考えております。基本的には、地域における表示に関する監視指導体制を充実させて迅速な対応を可能にするということについては、私ども賛成でございます。

 ただ、まず、経済界としましては、都道府県ごとにばらばらな運用になるということを非常に懸念しておりまして、仮にそういったことが起きますと、予測可能性あるいは公平性を著しく損なって、法令を遵守している健全な事業者に萎縮効果が生じかねないというふうに思っております。例えば、ある県では問題ない表示が別の県では不当表示というようなことになれば、ルールを守ろうとする事業者に萎縮効果が生じかねないということでございます。そういった意味で、基準を統一して、わかりやすくしていただきたいというふうに思っております。

 また、消費者庁あるいは各都道府県には、監視だけではなくて、常日ごろから適正な表示のあり方について事業者とコミュニケーションをとれるような体制をぜひ整えていただきたいというふうに思っております。

 以上です。

中村参考人 お答えいたします。

 今回のメニュー表示も、大変な数の事業者がみずから公表されたということでございます。多分、消費者庁はこの調査に大変混乱したのではないかというふうに考えております。もしこの事態に、例えば食品表示Gメン、全国一千名を超える人間を使えるということであれば、全国の一斉調査が可能であったのではないかなというふうにも考えております。そういう意味で、他の全国組織を持つ省庁、全国のネットワークを活用するということは極めて有効であるというふうに考えてございます。

 ただ、その場合に、これまでも申し上げましたが、やはり統一した基準で同じ仕事ができないと問題が発生するということになりますので、そのための判断基準、同じ物差しを持たせる、それから指揮命令系統、これも明確にするというようなことが大切だろうというふうに考えております。都道府県に対する権限移譲も同じ状況だというふうに考えております。

 以上です。

根岸参考人 不当表示というのはあらゆる産業分野が対象ですので、消費者庁だけでこれに対応することは不可能だと思います。したがって、各省庁に調査権限を委任するというのは当然のことだし、不可欠だと思います。これがないと、この不当表示自体、それだけとっても、その執行体制を確保することはとてもできないと思います。

 同じように都道府県にも地域ごとのそういう問題がございますので、同じような権限を委任するということは、これまた不当表示、景品表示法の執行体制にとって不可欠だというふうに考えています。

増田参考人 私も同様に思います。

 例えば、通信事業者であれば総務省、金融事業者であれば金融庁の方に、恐らく顔は向いているというふうに思いますので、消費者庁の言うことを聞かないというわけではないと思いますけれども、やはり、省庁に権限を渡して、そこで調査をする、そして、既存のネットワークを使うということは、非常に速やかな調査ができるのではないかというふうに期待しております。

青木委員 ありがとうございます。

 昨年のその後の調査の反省も踏まえて、各省庁とのネットワークづくりは不可欠だという参考人からの御意見だったというふうに捉えさせていただきました。

 中村参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 農水省の食品表示Gメンは、恐らく専門性もおありで、ノウハウも既にお持ちだと思いますので、機動力はあろうかというふうに思うんですけれども、これからあらゆる産業分野を対象とする中で、今お話があった総務省であったり金融庁であったりという連携の中で、果たして速やかな対応ができるのかなという懸念も一方で持っておるんです。実際、そのGメンとして現場で活動された中での率直な何か課題、問題意識ですとか、大変なことですとか、国に足りないことですとか、その辺のことをざっくばらんに教えていただけますでしょうか。

中村参考人 農水省の食品表示Gメンと申しますのは、JAS法を改正して、かつて雪印食品という大きな事件がございました、その後の反省から、旧食糧事務所、これを廃止いたしまして、消費安全部門に人を持ってきて発足させた組織です。ですから、実は、ある日突然、二千名という職員が、これまでの業務と全く違う表示監視というところについたわけです。ですから、立ち上がりは非常に大変でございました。ただ、その後、さまざまな経験をする中で、今日の姿になってきているわけでございます。

 実は、景表法等でも連携は必要だと私は申し上げておりますけれども、課題が幾つかあります。JAS法というのは、非常にきめ細かなルールが決められておりまして、現場で職員が動きますけれども、ある意味、現場の職員の裁量はほとんど排除しております。そのルールに従って対応するということになっております。片や、景表法と申しますのは、裁量は、一つ一つを個別に判断するということで、なかなか難しい部分があります。

 ですから、現場の職員に対してどこまで権限を任せるのか、いわゆる調査のみ、それ以上の判断は上級庁でやるという体制を整えるか、その辺のきめ細かな仕組みというのが必要になってくるかなというふうに考えてございます。

青木委員 大変貴重な御意見、ありがとうございました。

 続きまして、都道府県知事への措置命令権限の付与について、各参考人にお伺いをさせていただきます。

 今回の改正案によりまして、都道府県に措置命令権限が付与されることとなっておりますが、この規定が生かされるためには、何といっても都道府県にやる気になっていただかなければなりません。国と地方の情報、ノウハウの共有、あるいは連携強化、幾つか整理すべき点があろうかと思いますけれども、この点についても、何か問題点も含めて御意見をいただければ助かります。

久保田参考人 大体、先ほど申し上げたとおりでございまして、連携をよくとってやっていただければというふうに思っております。

中村参考人 同じでございます。これまで述べたように、連携は不可欠というふうに考えてございます。

根岸参考人 私は、前にこの場に寄せていただいたときも同じことを言ったんですけれども、確かに、都道府県知事に強い権限を与えるということは、一見したらよいんですけれども、しかし、もらったことによって、かえって運用が難しくなるというおそれを常に私は持っています。

 それは、そもそもその体制がないところで強い権限をもらっても、結局、動かない。現行法は、指示をして、そして問題があれば、消費者庁に、やってください、こういうわけですから、それなりに、安易にと言うと怒られますけれども、比較的簡易に事案を処理できたところを、自分たちが最終的にその権限を持つということになると、非常に慎重になってしまうのではないかと。わかりませんけれども。

 したがいまして、現在のところ、多くの自治体ではそんな実力は十分ない。なので、その実力を持っていただくためにどうするかということが一番重要で、やはりそれは、人的、財政的な体制というか、バックアップが不可欠であるというふうに思います。

増田参考人 私も同じように考えます。

 やはり人的なところでの研修が必要だと思いますし、先ほど申し上げたように、窓口の充実、国の方の窓口の充実をしていただきたい。国と、それから自治体との人的交流という形で、人を育てるというようなことをしていっていただきたいなというふうに思います。

青木委員 ありがとうございます。

 それでは、景表法の摘発例の中で、先ほど増田参考人からもお話がございました、健康食品の事案が多いということでございますが、消費者庁では、アメリカのダイエタリーサプリメント制度、これを参考に制度設計を検討しているというふうに伺っているのですが、果たして日本の見本となるのかどうか。メリット、デメリットについて、これは増田参考人にお伺いできますか。この点についてお伺いできる点は、参考人の皆さんの中でおありでしょうか。

 おありでなければ、では、質問をかえさせていただきまして、また改めて御指導いただきたいと思いますけれども、今回消費税が増税となりまして、質問でも取り上げたんですが、内容量を減らしたにもかかわらず、価格据え置きと表示する場合ですとか、二重の価格表示とか、こういう問題意識を指摘させていただいたんですが、現在、消費者の方から何かこれに関するさまざまな声は上がっておりますでしょうか。

増田参考人 現状、急にこの件について相談がたくさん寄せられているという状況にはありません。

青木委員 ありがとうございます。

 それでは、これも質疑の中でちょっと御要望を申し上げた点なんですけれども、適格消費者団体、これから実績を積んでいただくわけなんですけれども、スーパーコンプレイン制度ですとか、立証責任軽減規定というようなもの、行政措置であることは承知はいたしておるんですけれども、この適格消費者団体に、財政面あるいはさまざまな支援とともにこの制度設計での導入の検討ということというのは余り考えられないことなんでしょうか。増田参考人にお伺いさせていただきます。

増田参考人 済みません、ちょっと詳しくわからないものですから、お答えはきょうは。また情報を提供させていただきたいと思います。

青木委員 はい、わかりました。ありがとうございます。

 それでは、用意してきた質問は以上でございますので、次の質疑に参考にさせていただきます。

 大変ありがとうございました。

山本委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、来る十七日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十四分散会


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