衆議院

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第6号 平成21年4月22日(水曜日)

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平成二十一年四月二十二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 深谷 隆司君

   理事 木村  勉君 理事 小池百合子君

   理事 後藤田正純君 理事 新藤 義孝君

   理事 中谷  元君 理事 長島 昭久君

   理事 鉢呂 吉雄君 理事 佐藤 茂樹君

      あかま二郎君    赤城 徳彦君

      秋葉 賢也君    新井 悦二君

      石原 宏高君    猪口 邦子君

      浮島 敏男君    江渡 聡徳君

      越智 隆雄君    大塚  拓君

      木原  稔君    北村 茂男君

      杉田 元司君    鈴木 馨祐君

      冨岡  勉君    中根 一幸君

      西本 勝子君    葉梨 康弘君

      萩原 誠司君    松浪健四郎君

      松本 洋平君    三原 朝彦君

      矢野 隆司君   吉田六左エ門君

      大島  敦君    川内 博史君

      田嶋  要君    高木 義明君

      武正 公一君    伴野  豊君

      平岡 秀夫君    松野 頼久君

      三谷 光男君    渡辺  周君

      石井 啓一君    冬柴 鐵三君

      赤嶺 政賢君    阿部 知子君

      保坂 展人君    下地 幹郎君

    …………………………………

   外務大臣         中曽根弘文君

   国土交通大臣       金子 一義君

   防衛大臣         浜田 靖一君

   法務副大臣        佐藤 剛男君

   外務副大臣        伊藤信太郎君

   国土交通副大臣      加納 時男君

   防衛副大臣        北村 誠吾君

   国土交通大臣政務官    岡田 直樹君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    宮崎 礼壹君

   会計検査院事務総局第一局長            鵜飼  誠君

   政府参考人

   (内閣官房総合海洋政策本部事務局長)       大庭 靖雄君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 甲斐 行夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            別所 浩郎君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    梅本 和義君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            鈴木 敏郎君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ審議官)      秋元 義孝君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   鶴岡 公二君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 永長 正士君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   木下 康司君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  伊藤  茂君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    岩崎 貞二君

   政府参考人

   (防衛省防衛参事官)   岩井 良行君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  徳地 秀士君

   衆議院調査局海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別調査室長           金澤 昭夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  杉田 元司君     浮島 敏男君

  中森ふくよ君     西本 勝子君

  橋本  岳君     猪口 邦子君

  伴野  豊君     高木 義明君

  阿部 知子君     保坂 展人君

同日

 辞任         補欠選任

  猪口 邦子君     萩原 誠司君

  浮島 敏男君     杉田 元司君

  西本 勝子君     中森ふくよ君

  高木 義明君     伴野  豊君

  保坂 展人君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  萩原 誠司君     橋本  岳君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案(内閣提出第六一号)


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     ――――◇―――――

深谷委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房総合海洋政策本部事務局長大庭靖雄君、法務省大臣官房審議官甲斐行夫君、外務省総合外交政策局長別所浩郎君、外務省北米局長梅本和義君、外務省中東アフリカ局アフリカ審議官秋元義孝君、外務省国際法局長鶴岡公二君、財務省大臣官房審議官永長正士君、財務省主計局次長木下康司君、国土交通省海事局長伊藤茂君、海上保安庁長官岩崎貞二君、防衛省防衛参事官岩井良行君、防衛省防衛政策局長高見澤將林君及び防衛省運用企画局長徳地秀士君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第一局長鵜飼誠君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

深谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

深谷委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高木義明君。

高木(義)委員 民主党の高木義明でございます。おはようございます。

 当委員会におかれましては、連日真摯な御議論がなされております。心から敬意を表したいと思います。

 さて、私は、この審議に当たる前にまず申し上げたいことは、一つは、きょう今の時点でも、世界の海で、いわゆる物資輸送、旅客輸送あるいは遠洋漁業などで、しっかり志を持ちながら、国民のため、あるいはみずからの暮らしのために、あるいは地域のために懸命に仕事をされておられる方がおり、そして、これらに従事する方々の安全を何としても確保しなきゃならないということ、その上で、海賊の犯罪に毅然として対処できるような的確な法整備を早くすること、このことが私は大事だと思っております。

 その上で、以下質問をいたします。

 まず、私は、ある随筆をきょうは持ってまいりました。全日本海員組合の月刊誌であります「海員」という中、「ソマリア沖への自衛艦の派遣について」、かつて外航海運の船長もなされた方でございます、谷頭正仁さんという方でございます。

 私、ちょっと今から少し紹介をさせていただきますが、「この文は二〇〇九年二月六日に書いています。」中略「自分は六年程前まで、外航貨物船の船長をしていました。ソマリア沖アデン湾は二十四回以上、マラッカ海峡、シンガポール海峡は百回以上通ったと思います。幸いに海賊には遭いませんでしたが、実にいやなものです。」中略「今回の海上警備行動に関する国会での論議は二〇〇八年十月十七日、民主党の長島昭久さんの問題提起に対し、麻生太郎首相が前向き姿勢を示したのが最初と報告されています。その後、国会、政府内でこの事件の論議は進まず、十二月になって中国が軍艦を派遣することを表明、十二月二十六日に駆逐艦二隻、補給艦一隻をソマリア沖に向かわせ、韓国も派遣の用意をしていると伝えられ、政府は大あわてになったということではないでしょうか。」中略「ソマリア沖アデン湾の海賊は三年ほど前から顕在化しているのではないでしょうか。 これに対して日本政府は、関係諸国は、国連はどのような策を取って来たのでしょうか。」中略「平和な海、平和な地球を願って一筆しました。 事件の解決のためには広報と会話、議論が必要だと思います。」こういうふうに結んでおられました。

 そこで、私が指摘したいのは、御承知のとおり、我が国は一九九六年七月十二日に国連の海洋法条約に批准されました。これは、発効は一九九四年でありますが、百条以降の条文に海賊に対する事柄が触れられております。それに基づいて、海洋基本法、これは議員立法でありました。二〇〇七年七月二十日に施行されております。この基本法の三条、二十一条の規定には、海賊に対することが触れられております。その後、二〇〇八年、昨年ですが、三月の十八日に海洋基本法に基づく海洋基本計画の閣議決定がなされました。第二部には、海洋に関する施策に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策を記載しております。

 なぜ今ごろになって海賊対策の新法かという率直な疑問を持たれておる方がたくさんおられます。例えば、日本の関係船舶でありました「高山」が海賊に遭遇したのは昨年の四月二十一日でありますから、ほぼ一年が経過をしておりますが、このことを見ても、我が国が国内法の整備をおくらせてきた、こういうことを私は率直に指摘せざるを得ない。

 先ほどの私が紹介をいたしました元船長さんの随筆に対して、担当大臣としていかに御所見をお持ちなのか、この点についてまずお聞きをしておきたいと思います。

金子国務大臣 今の御質問は、国連海洋法条約を批准したにもかかわらず、海賊に対する法整備がなぜおくれてきたのかという御質問でございます。

 この国連海洋法条約で、海賊行為の抑止につきましては、それぞれ各国が国内法令の範囲内で、最大限に可能な範囲で協力義務を規定しておるということでありますので、各国ができる限りの協力を行うことを義務づけるという趣旨でありまして、海賊行為の具体的な取り締まりを条約上の義務として課したものではないと承知しておりますし、また政策的にも、我が国が国籍を問わず海賊行為を処罰し、抑制し、取り締まる現実的な必要性がなかったという経緯であります。

 ただ、政府部内では昨年の二月から、この国連海洋法条約に則しまして法案を海賊法案として整備しよう、罰則もそこで規定しようという検討チームを、法制のチームを立ち上げておりました。去年の八月ころから月を追うごとにこういう海賊事案というのがふえてきているということと、そしてまた、累次の国連安保理決議が出されたということで、この法制チームが法案を具体化した。その前にも、どういう形で海賊に具体的に対応するかということが議論されてきたわけでありまして、遅きに失したではないかという御批判は甘んじて受けなければいけないと思いますが、そういう事情で進められてきたものと承知しております。

高木(義)委員 金子大臣は、国土交通大臣であるとともに海洋担当大臣ということであります。口々には、我が国は四面を海に囲まれた海洋国家だ、そういうことをよくあちこちで聞くわけですが、その意味でも、今、海洋大臣の位置づけというのは相当な重いものがある、私はそのように認識をいたしております。そういう意味では、これまでの取り組みについて、遅かったということについて、私はここで指摘をさせていただきたいと思っております。

 その上で、今回やむなく海上警備行動ということになって、今、自衛隊の艦船が二隻現地に赴いておるわけであります。自衛官の皆さん方あるいは海上保安官の皆様方の御労苦には改めて私は敬意を表するわけでありますが、この海上警備行動がどのような効果をもたらしておるのか、まずはその評価についてお伺いしておきたいと思っております。

浜田国務大臣 これは、我々とすれば警護任務を主として考えてやっておるわけでございますので、今のところ我々の任務の内容については順調に経緯をしておるところでございまして、そしてまた、あの地域におけるいろいろなほかの艦船にも、未然にそういった海賊行為を防ぐという効果は出てきているものと思っておるところでありますし、また、これは船舶の皆さん方に対する安心感というものも効果があるものと思っておるところであります。

高木(義)委員 海洋担当大臣としては、これについてどのように思われておりますか。

金子国務大臣 浜田大臣が御答弁されましたように、今は海上警備行動ということで出ておりますが、現在の海上警備行動で補えない部分、外国船籍を対象とできない。アデン湾を通過する、世界で二万隻該当しますけれども、我が国の船舶の構造上、かなりの部分が外国船籍に物資の輸出入を頼ってきているということでありますので、外国船籍を対象にしていくということも大事なことであると思っておりますし、国連海洋法条約でも海外船籍も含めてということを規定しておりまして、それにのっとりまして、今度の新海賊法制ではこれを対象にする。

 あと、武器使用という点につきましても、今度の海賊対処法の中で、今の海上警備行動では使えない武器使用の部分について、危険を未然に防止するということから、海賊行為をもって接近をしてくるということを停止させる目的としての武器使用基準を新たに新法で書かせていただいた。

 第三点に、今度はこういう行動、警察行動でありますので、その警察行動、国内のいわば国家公務員の行為として、公務執行妨害等々の公務員の法案を適用すると同時に、その処罰に対して、国内法を適用するということを決めさせていただきました。それによりまして、役割が、今の海上警備行動から、航行の安全という意味でかなり大きく前進するものと期待をしているところであります。

高木(義)委員 今大臣が申されたように、海上警備行動での不備を補うために新法を出した、これはこれで私は大事なことであろう、このように思っております。

 そこで、後でまた質問いたしますが、いわゆる海上保安庁の位置づけと、また、いわゆる国会の事前承認という話もございますが、その前に、もうこれまでも議論が出た、またこれからも続くんでしょうけれども、やはりこの海賊対策で触れておかなきゃならないものは、特にアデン湾・ソマリア沖については、当該国と周辺地域の安定がやはり基本です。そういう意味では、ソマリアの民生安定あるいは国の統治機構の確立ということが何よりも大事なことだろうと私は思っております。

 これまでも本会議、委員会を通じまして外務大臣がお答えをしておりますが、いまいち姿が見えぬ、ある意味では国際的な枠組みも含めて、これらの早期解決のために、特にソマリアの内政安定のための外交努力をすべきだと思っています。この点についてお伺いしておきたいと思います。

中曽根国務大臣 ソマリアの情勢については、もう委員は十分御承知かと思いますが、せっかくの機会でございますので、情勢の御説明も含めて答弁させていただきたいと思います。

 ソマリアの情勢は、今までは国際社会としてなかなか有効な手だてを講ずることができなかった、極めて複雑で困難な問題でございます。

 昨年の八月には、暫定連邦政府と、それからソマリア再解放連盟の穏健派、これはイスラムグループの穏健派でございますが、との間で、武力行使の停止等を含むジブチ合意が成立をいたしました。また、ことしになりまして、暫定連邦政府におきましては、新大統領それから新内閣が誕生いたしまして、新議会も誕生しつつある、そういう状況でございます。

 しかし、暫定連邦政府には、すべての勢力が参加しているわけではございません。そういうところから、このような動きがソマリア全体の和平につながるか否かは、今後の動向を慎重に見ていく必要があると思っております。

 ソマリアの民生安定が大事だと今委員がおっしゃいましたけれども、やはり、アデン湾・ソマリア沖海賊の根絶に向けましては、我が国といたしましては、周辺国の海上取り締まり能力の向上、それから地域間の協力、さらにはこの海賊行為による被害の増加の背景にあります不安定なソマリア情勢を安定化するという、そういう中期的、長期的な視点、そういう取り組みを一層進めていくことが大事だと思っております。

 ちなみに、人道支援を中心といたしましたソマリアにつきましての国連の統一アピールに対しまして、これは二〇〇九年分といたしまして、我が国を含む各国は、既に金額にいたしまして約二・七億ドルを拠出しております。また、我が国につきましても、人道支援それから治安向上等のための支援といたしまして、最近二年間で約六千七百万ドルを国際機関を通じて拠出しているところでございます。

 また、昨年のジブチ合意以降の肯定的な動きに対応しまして、国連の安保理や、それからソマリア情勢に関心を有する欧米、アラブ、アフリカ諸国等から成るグループが今後の和平進展への支援等につきまして今検討も行っておりまして、我が国といたしましても積極的に協力をしていく考えでございます。

 なお、ことしの三月、アフリカのボツワナにおきまして、私は、ソマリアの暫定連邦政府のワルサム計画・国際協力大臣と会談をいたしました。その際、先方、ワルサム大臣は、軍や警察の整備それから公務員の育成などの治安改善や、さらに、避難民の帰還の促進、元戦闘員の雇用機会の創出等、そういうような人道状況の改善が非常に大事である、そのための支援を国際社会に期待すると述べていたところでございますので、私からも先方に対しまして、ソマリア情勢の安定のために支援をしていくとの立場を伝達したところでございます。

高木(義)委員 これからも、どうぞひとつ強く外交努力を行っていただきたいと思っております。

 さて、海賊新法の七条には「防衛大臣は、海賊行為に対処するため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において海賊行為に対処するため必要な行動をとることを命ずることができる。」とありますが、この「特別の必要がある場合」ということは、一体どういうことでしょうか。

金子国務大臣 この海賊対処法案で規定をしております「特別の必要がある場合」とは、海上保安庁のみでは海賊行為に適切かつ効果的に対処することができない場合であります。

 本法案におきまして、防衛大臣は、海賊行為に対処するために、今申し上げました「特別の必要がある場合」には、閣議決定に基づく内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海賊対処行動をとることを命ずることを定めております。

 なお、防衛大臣は、内閣総理大臣の承認を受けようとするときは、関係行政機関の長、私の場合には海上保安庁の長官であります、海賊対処行動の必要性などを対処要項の中に明記することとしております。

 したがって、海上保安庁のみで海賊行為に適切かつ効果的に対処できない場合において、その必要性の判断は政府全体として適切に判断するものであります。

高木(義)委員 だとするならば、海上保安庁が主体的に判断することを明確にするために、国土交通大臣が、海上保安庁のみでは海賊行為への対処が困難ということを、内閣総理大臣に実施計画等の要請をするという枠組みが必要ではありませんかと私は思うんです。

 まさに海賊行為の対処については、ずっとこれまで、海上保安庁が第一義的な役割を果たす、こういうことを何遍も言ってこられましたので、法律の中身にそれを具体的に書くことが私は欠かせない要件だと思っております。そういうことで、書く気持ちはありませんか、書き直す気持ちは。どうぞ。

金子国務大臣 お考えの一つだと思います。この点についてさまざまな議論があることは承知をしております。

 ただ一方で、自衛隊法八十二条で、海警行動については防衛大臣の判断でできるという、他の関係の法令とのバランスあるいは規定というものも配慮して決めたものでありますし、同時に、今申し上げましたように、防衛大臣が内閣総理大臣の承認を得ようとするときには、特別の必要がある場合には閣議決定をするということで、国土交通大臣である私もこれに参加していく、あるいは協議をして、その上で内閣総理大臣の承認を得るというプロセスを経ておりますものですから、今度のこの法案をこういう形でお出しさせていただいている次第であります。

高木(義)委員 いわゆる自衛隊法第八十二条の海上警備行動では、国会の関与はできない、また、法の不備もある。それを補うために新たな法律として今提案をされていると私は考えております。

 したがって、この点の主体性、海上保安庁が第一義という言葉を使うならば、その主体性を明確にする意味で、この点についてはぜひ見直しをいただきたい、私はこのように思っていますが、いかがでしょうか。

加納副大臣 委員からは、第一義的というのを明示的に書くということの御意見をおっしゃったと思います。

 私は、現在の提案しております法律の中で、第一義的とは文字としては確かに書いてありませんけれども、明らかにそういう構成になっているというのは、第五条があるということでございます。

 第五条は、何といっても、「海賊行為への対処は、この法律、海上保安庁法その他の法令の定めるところにより、海上保安庁がこれに必要な措置を実施するものとする。」こうありまして、ここで言い切っております。ということは、これはまさに先生のおっしゃる第一義的ということの何よりのあかしだと思っております。

 ただし、そういう言葉を入れるようにした方がよりいいのではないかという御意見は真剣に承っておきたいと思いますけれども、今のでは書いていないと言われますと、そういう構成になっていて、それを受けた後で、第七条で、先ほど海洋政策担当大臣からお答え申し上げましたような叙述になっていて、関係行政機関の長と協議をする、これは防衛大臣ですけれども、それで対処要項をつくって、内閣総理大臣に提出し、閣議でこれを承認するという手続がありますから、そういうことで位置づけがされている。明らかに防衛大臣が単独でやるものではない。

 第一義的にというのが真っ先に書いてあるのは第五条であるということも補足させていただきたいと思っております。

高木(義)委員 今の答弁ではとても納得はできませんが、時間も限られておりますから。

 そういうことも含めて、大臣、必要のあるときには自衛隊が出るという枠組みですが、自衛隊が海外に出るということは、やはり特別な縛りをかけること、これが内外の疑念を払拭することですよ。したがって、より国民の合意が得られやすくするためにも、この海賊行為は犯罪ですし、紛争や戦争ではないんですけれども、だからこそ、私は、国民の大多数の合意の中でこれが進められていくということが一番重要だと思っております。

 したがって、ぜひ、この法案に国会の事前承認ということを明記するべきだと思っております。この点についてお考えを伺います。

金子国務大臣 委員が御指摘いただきましたように、この海賊行為というのはまさに犯罪行為でありまして、それへの対処というのは警察行動であります。そういう意味で、海上警備行動と同様に、国会の事前承認に関する規定は設けなかったものであります。

 御指摘のように、海賊対処行動では、自衛隊を的確な文民統制のもとで運用することが求められており、国会への説明責任は十分に果たす必要があることは言うまでもありません。

 そういう意味で、本法案では、内閣総理大臣が海賊対処行動を承認したときは、海賊対処行動の必要性、海上保安庁では対応できないということもここへ入ってきますけれども、区域、期間等々、部隊の行動を定めた対処要項の内容を遅滞なく国会に報告することとなっておりまして、国会に報告することによって国民に説明責任を果たしていきたいと思っております。

高木(義)委員 海賊対策に当たっては、特に、海上自衛隊ありきじゃないかとか、あるいはなし崩し的に自衛隊を海外に派遣する、そういう疑念はありますよ。そうじゃない。やはりこの件についてはきっちり国会が関与する。閉会中審査でもできるんですよ。私は、国会承認をできないという理由がわからない。この点について、さらに再考を加えておきたいと思います。

 時間もございません。最後になりますが、やはり船で働く多くの方々、私が冒頭申し上げましたように、ただでさえ過酷な現場の仕事です。荒波の中で国民の経済のための物資や人を運ぶ、あるいは魚をとる、そういう仕事に対して、私たちは今後、若い我が国の船員さんの育成というのも大事な課題でございます。ましてや、海賊に遭って、そういう怖い海に、望んで仕事をする若者がいるでしょうか。

 やはり、それは国際社会の連携の中、あるいは我が国としても平和でそして安全な海をつくるという意味で、この法律が十分な機能を果たせるように、そして国民の合意が得られるような、そういうものにしていただきますように特にお願いを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

深谷委員長 次に、下地幹郎君。

下地委員 海上警備行動が発令されて、このアデン湾における海賊対策の法律が成立をしてという二つを想定してのお話なんですけれども、この海上警備行動においても、海上自衛隊と海上保安庁は共同で護衛の任務に当たるというふうなことは法律上できるのかできないのかということをまずお聞きしたいんです。

 昔の、五十二年の海上保安庁の長官の答弁だと、領海の警備について一般的に海上保安庁が責任を持っております、それから、特別に必要がある場合に自衛隊法の八十二条により自衛隊が海上警備行動ということを行いますと。海上保安庁の勢力に対して二つの場合が考えられますが、おおむね海上保安庁の能力をもって担当し得るというような場合には、自衛隊は支援後拠ということで行動するということがあります。特に海上保安庁の能力が不足するというときには、自衛隊は逐次後方から任務、行動を区分して行動することになっておりますと。また、海上保安庁と防衛庁の間で海上警備行動及び治安出動に関する協定が結ばれておりますというようなことを言っていますけれども、私が今申し上げた、海上警備行動の際、この法律が通った際に、海上保安庁と海上自衛隊は一緒に共同で活動することが法律上問題ないのかどうなのか、法制局にお願いをしたいと思います。

 まだ来ていないそうです。私の方が悪いんです、ちょっとあれが遅かったので。

 それで、このことは今の形からすると、間違いなく法律上は大丈夫じゃないかなというふうに私は思っているんですけれども。

 私たちが、海上保安庁の船がなかなかできないという三つの理由、日本から遠いということ、相手側の武器の問題があること、他の国が軍艦を出しているという、この三つについてちょっと質問させていただきたいんです。

 私たちが今週の月曜日に見てきた「しきしま」は、プルトニウムの輸送においては往復百十日間の遠洋航海を行う能力を持っていますし、平成四年の十一月から五年一月までは六十二日間にわたって無寄港で航行していましたり、三月ですね、遠洋航海で三十一日間タイやインドネシアを回るという、遠洋航海にたえ得るだけの能力がこの「しきしま」にはあるわけなんです。

 今回、アデン湾において、二週間余りで海上自衛隊の船が行っておりますけれども、それからさまざまな活動をしておりますが、海上保安庁がどうかじゃなくて、この「しきしま」という船は共同で対処できるような能力があるというふうに、遠距離であっても大丈夫だというふうに私たちは思っていますけれども、海上保安庁長官、どうですか、これは。

岩崎政府参考人 先生御指摘のとおり、「しきしま」という船は、遠洋航海にもたえられますし、一定のダメージコントロールにもたえられる船でございます。

 ただ、海上保安庁、「しきしま」という船一隻しかそういう仕組みではないものですから、これまで答弁させていただいていますとおり、安定的、継続的にこのオペレーションをするのは難しい、このように説明させていただいておるところでございます。

下地委員 海上保安庁全部で対処しろとは言っていないですけれども。

 もう一回聞きます。この「しきしま」という船がアデン湾に行って護衛活動をすることは可能だというふうに思いますか。「しきしま」という船ですよ。海上保安庁全体じゃないですよ。

岩崎政府参考人 船の能力という意味では可能だと思いますけれども、ほかにも、ほかの国や軍隊がやっていること、それから海上保安庁だけではできないこと、こうしたことを勘案すると、繰り返しになりますけれども、安定的、継続的にやるのは難しい、このように判断したところでございます。

下地委員 船の能力的には大丈夫だということですね。

 それで、その次に、海上保安庁ができない、「しきしま」ができないというのは、相手側の海賊の武器、装備が非常に高度なためにできないというふうなことを言っておりますけれども、平成十三年の九州南西海域での工作船の問題がありましたけれども、そのときに引き揚げられた工作船から、犯罪の供用の武器というのが、分析が行われているわけですね。発見された武器類は、自動小銃のほか携帯の地対空ミサイル、手りゅう弾に加えてロケットランチャー二丁も含まれておりました。こういうふうな装備がありますけれども、海賊が持っている装備と、北朝鮮の工作船が持っていたと言われる装備、この能力的には、海上保安庁長官はどう思いますか。

岩崎政府参考人 北朝鮮の不審船でございますけれども、ロケットランチャーを持っておりましたけれども、ロケットランチャー以上の、破壊力はロケットランチャーほどはありませんけれども、射程距離がより長い、一キロ、二キロの射程距離の武器も持っておりました。そういう意味では、北朝鮮の不審船の方が、今の海賊はロケットランチャーどまりでございますが、それ以外も多様な武器を積んでいたということは、北朝鮮の不審船はそういう武器を積んでおりました。

下地委員 海上保安庁は、ロケットランチャーを持っている北朝鮮の不審船に対しては、射程外の適切なところから対処するというふうに言っていますよね。きょう、海上保安庁のこのメモを見ますと、新しくつくられた船からしますと、ロケットランチャーの有効射程距離は五百メートル、海上保安庁がつくられた船からすると、四十ミリ機関砲だとすると、このロケットランチャーの範囲外のところから攻撃をするというようなことが、もう明確に図式で書かれているわけなんですけれども、海賊対処を行う場合に自衛隊がどういうふうな対処をしますかということに関しても、運用局長は、射程外に適切な距離をとりながら対処することにしておりますというふうに言っておりまして、対処方法は、今の北朝鮮の対処方法と海賊に対する対処方法は全く一緒なんですよね、変わらない。

 遠くから、届かないところから対処していくというようなことをやっているわけですから、海賊の武器が高度だから派遣できない、「しきしま」では対応できないということは、これからしてもあり得ませんよね。

岩崎政府参考人 北朝鮮の不審船については、今先生御指摘のとおり、私ども、向こうの持っている武器の射程外から、私どもの持っております武器で攻撃することによって対処したいと思っております。

 自衛隊が海賊に対してどのようなオペレーションをされるかというのは、私ども十二分に承知しているわけじゃありませんが、基本的に、それは射程外で、できるだけ離れてやるというのは基本だろうと思いますけれども、ただ、海賊というのは、私どもの承知している限り、非常に見分けにくい、それから、近接して寄ってくる、こうしたことがありますので、そういうこともやはり考慮に入れてオペレーションをするべきものだ、このように考えております。

下地委員 いや、僕が言っているのは、オペレーションの基本的な考え方は一緒ですよねと言っているんですね。海上保安庁が北朝鮮に対処する対策と海賊対策で運用局長がおっしゃっている対策は、射程外からそれをオペレーションするというふうに言っていますから、基本的には、海上保安庁がやっていることとこの海賊対策で自衛隊がやろうとしているオペレーションの対策は、北朝鮮においても海賊においても同じようなやり方ですねというふうに答弁しているんだから、一緒ですと言った方がいいんじゃないですか。

岩崎政府参考人 そういうふうにできればもちろんいいと思いますけれども、繰り返しになりますが、ソマリアの海賊というのは、非常に偽装をしていて、それで非常に近接して高速で民間の商船にやってくる、こういうパターンのものですから、私どもの想定しているようなやり方だけで対処できるものとは思いません。

 具体的にどういう形でやってくるかというのを十分検証しながら、シミュレーションしながら、それが対応できるかどうかというのを判断すべき問題だと思っております。

下地委員 だからこれは一緒だと言っているんですけれども、まあいいでしょう。

 それで三点目ですけれども、三点目には、この海賊対策に各国が派遣しているのは軍艦であって、海上保安庁が行ってもオペレーションが十分にできないというようなことを言っております。

 情報共有の側面から秘匿の通信の問題があると言われておりますけれども、四月十五日の本委員会の運用局長の答弁で、平成十一年三月の、いわゆる能登半島沖の不審船事案の当時、海上自衛隊と海上保安庁の艦船間で秘匿の通信ができないというようなことがあったことを受け、両者間の通信を適切に行うことができるように、相互に連携が図れるように、連絡体制の確保や通信機器の整備に努め、秘匿の通信方法の取り決めを行い、秘匿の通信訓練を実施するなど、改善を図ってきたところでありますというようなことを言っておりまして、自衛隊と海上保安庁はその秘匿の問題に関しても改善をなされて、十分に可能な状態になっているというふうなことを言っているんです。

 イエメンは、公海での海賊対策には装備が不十分であるとしながらも、軍艦ではなく、海上の法執行機関に当たる機関の艦船を派遣している。

 軍艦しか対応が困難というのは理由にならないというふうにも思っているんですけれども、海上保安庁と海上自衛隊はもう通信網の改善だとかいろいろなことをやっているわけですから、海上保安庁の「しきしま」が行って、他の国との秘匿の問題とか通信関係ができないというふうに断定なされるんですか、海上保安庁長官。

岩崎政府参考人 先生御指摘のとおり、私どもの海上保安庁と海上自衛隊の間では一定の秘匿の通信システムを共有しております。

 ただ、先生も今おっしゃったように、私どもと他の国の海軍の軍艦、これとの通信システムはございません。

下地委員 通信システムはないけれども、海上自衛隊が行っているようなことを、「しきしま」が行って絶対にできないということを言い切れるんですかと言っているわけです。

岩崎政府参考人 一般に、やはり軍の秘匿通信というのは非常に高度なものだと我々は理解しております。したがって、他の国の軍と日本の海上自衛隊でそうした通信システムが整備されるということについては非常に難しい、このように判断をしております。

下地委員 海上保安庁だって、さまざまな国と秘匿の通信網が全部が連携がとれているわけではないと思いますよ。

 本当に海上保安庁は、他の国の軍隊とこういう共同訓練も秘匿の通信の交信も一回もやったことないんですね。

岩崎政府参考人 共同訓練という意味では、PSIというテロリストの対応のための訓練というのを、これは一定のシナリオに基づいてやったことはございます。

 ただ、そのときに秘匿の通信というのはやっておりません。

下地委員 海上保安庁はさまざまな訓練をしながら、このような軍であっても十分に対応できる能力が「しきしま」にはあるというふうに私たちは思っているんです。

 だから、今私が三つの質問をさせていただきましたけれども、海上保安庁は一隻しかないから、海上保安庁で全部やれとは言いませんよ。言いませんけれども、この「しきしま」という船が一隻ある。では、この「しきしま」という船は、ソマリア沖という距離があるから、そこまで行って活動ができないのかといったら、そんなことはないだろうと。百十日間も警護をしてみたり、無寄港で六十日間もやってみたり、この前はタイとインドネシア、ずっと演習で三十一日間も行ってみたり。ソマリア沖まで二週間しかかからないわけですから、そういうふうな距離という問題からすると、「しきしま」は大丈夫でしょう。

 それと、武器の話をしていますけれども、北朝鮮が持っている武器、北朝鮮に対する対応、今度、防衛省が答えている海賊に対する対処は、海上保安庁が北朝鮮に対応するような、射程外のところにいて、ロケットランチャーの当たらないところから四十ミリ機関砲や三十五ミリでこのことを考えていくというやり方は、今度のソマリア沖での海賊対策、何ら問題のないやり方ですよ。海賊が突っ込んでくるとか突っ込んでこないとかといったら、これは北朝鮮の問題でも一緒なんですから。だけれども、基本的な戦略は、そういうふうな距離を置きながらやるというのも問題ありませんねと。

 三点目に、全く軍艦との共同の活動もできないというようなことはあり得ない。これまで私たちが知っている範囲では、アジアの中でも軍隊と訓練を行ったりやっているケースが海上保安庁にある。

 この三つからしたら、船がないから海上保安庁でこの海賊対策をやれということは言えませんけれども、しかし、「しきしま」という船一隻は出せる能力があるんじゃないですか。

岩崎政府参考人 繰り返しになりますけれども、航続距離であるとかダメージコントロールであるとか、そういうものについては「しきしま」はできます。

 それから、オペレーションでございますけれども、北朝鮮の不審船というのは、その一隻をどうやって警戒し、場合によっては停船させ、あるいはその行為をとめるかというのが北朝鮮の不審船に対するオペレーションでございます。今度の海賊に対するオペレーションというのは、そうした海賊を民間船に近寄せない、商船に近寄せない、そのためにある程度近づいてもやっていかなきゃいけないことがあるオペレーションでございます。(下地委員「ちゃんと運用局長が違うと言っているんだ、答弁でそれは」と呼ぶ)

 それは、繰り返しになりますけれども、そういうことは、海上自衛隊のオペレーションであれ、海上保安庁が例えば海賊に対するオペレーションであっても、ロケットランチャーの射程距離に入ってやることについては、それは決して好ましいことではないので……(下地委員「入らないと言っている」と呼ぶ)入らないようにするのが基本ではありますけれども、入ることもある程度覚悟してやらなきゃいけないということでございます。

 北朝鮮の不審船については、そういうことに対して、ただの一隻の不審船だけですから、対処のオペレーションの仕方は当然違ってまいります。

 それから、繰り返しになりますけれども、外国の軍隊との一定のそうしたシナリオに基づいた訓練をやったことはありますけれども、それ以上のことをやったことはありません。

 そうしたことを総合的に勘案して、それもこれも継続的に、安定的にやらなきゃいけないオペレーションですから、私どもとして、海上保安庁の巡視船を派遣することは難しい、このように判断したところでございます。

下地委員 長官、あなた、もうろれつが回っていないよ。何を言っているか意味がわからなくなってきているね。これは説得力が全くないね。

 一隻出せるかどうかというのは、もう少し自分のところでできますけれども、一隻「しきしま」ができますけれども、全体ができませんと言うのならわかりますけれども、そのために橋本大蔵大臣は「しきしま」をつくってきたわけだから、それは、「しきしま」という能力がありますけれども海上保安庁にはありません、一隻にはありますよと言うのだったら説得力があるけれども、今の答弁では少し意味不明ですね。自分のつくっている海上保安庁というものに対する誇りがないね、答弁に。

 法制局長官、先ほど私が言った共同対処ができるかどうか。長官、お願いします。

宮崎政府特別補佐人 お答えいたします。

 法案の第七条では、「海賊行為に対処するため特別の必要がある」ときと書いてございまして、御案内のとおり、これは現在の自衛隊法の八十二条の「特別の必要」というのと同じ趣旨でございます。

 これについては、るる御答弁がありますように、海上保安庁のみでは海賊行為に対処することが不可能または著しく困難であるということでございますので、御質問の、両方が、つまり海上保安官が護衛艦に同乗してともにやる場面があるということが別段排除されているわけではないというふうに思います。

下地委員 排除されているわけじゃなくて、海上警備行動が発令された後、能登半島沖でも不審船の対応には海上保安庁も当たっているんですよ。そうですよね、海上保安庁長官。海上保安庁は撤退したわけじゃないですよね。

岩崎政府参考人 能登半島沖のときにも海上警備行動が出ました。そのときには自衛隊で対処しましたけれども、海上保安庁はその近辺になかなか必死になっても追いつきませんでしたけれども、広い意味で、海上保安庁も後方に待機、監視したという意味では、共同でやったということになります。

下地委員 法制局、先ほど一緒に対応したと言っていますから、海上警備行動が発令されても海上保安庁と共同で対処ができる、今度の法律が通っても海上保安庁と海上自衛隊は一緒に共同の対処ができる、これは法律的に問題はない。いいですか。

宮崎政府特別補佐人 ただいまの御質問につきましては、法律的にはそのとおりだと思います。

下地委員 金子大臣、法律的には海上保安庁も海上自衛隊も共同で活動が、対処ができるというふうなことが明確になりました。そして、「しきしま」という船は、今まで三つの問題と言われるものに三つとも対応できるということもはっきりいたしました。

 そうなると、今度の対応に海上自衛隊と海上保安庁の能力を発揮して一緒に、民間の船舶を守るために海上保安庁も海上自衛隊も共同で対処するというようなことがこの法律の趣旨にのっとっているんじゃないかと僕は思うんですね。それを、大臣、一緒になっておやりになるつもりはありませんか。

加納副大臣 下地委員の御質問の一番のポイントは、「しきしま」が一隻出せるだろうというところからスタートしていると思います。私は、はっきり申し上げまして、一隻行くことができるか。できます。ならば、出すべきか。これは政策的に、つまり物理的には可能であっても、政策的には不適切だと思ったので、今回のような選択にしました。

 なぜ政策的か。政策的というのは、これは、実際の護衛は、先生御案内のとおり、前と後ろで二隻で挟んで護衛する。護送船団方式みたいなものですが、速度を調整して、前後で挟んで移動する。それが前後が違った組織のものであるよりも当然同じ組織の方がいいのは、これは常識でございます。これが一つ。二つ目、「しきしま」を出しますと、長期にわたってこれはそこに固定されてしまいます。ということは、「しきしま」の運用の自由度が著しく損なわれます。

 このような理由から、私どもは、物理的には一隻出せるかどうかということももちろんありますけれども、最も大切なのは、私は海洋政策の担当副大臣でございますので、海洋政策として海上保安庁も見ておりますけれども、そういう意味では、物理的には出せても政策的には出すべきでないということで、今回の選択をいたしました。(拍手)

下地委員 どこで拍手が起こるのか意味がわからぬな。まあいいや。

 これは恒久法なんです。(発言する者あり)静かにしろ、人の質問のときは。恒久法なんですよ。これは恒久法。この恒久法で、一義的には海上保安庁がやるというふうに言っているわけだから。もしそれでなければ出せない、出さないというんだったら、これは、自衛隊法にかえて、特措法で自衛隊を表に出してやればいいじゃないですか。やりましょうよ。その方が国民もわかりやすいんだから。人道支援のときだってやったじゃないですか。自衛隊が頑張る。海上保安庁が一義的にやってその後やるんじゃなくて、ずっと出さないとおっしゃるんだったら、自衛隊法にかえてやった方が国民は一番わかりやすいんじゃないの。

 それと、大臣、あなた、「しきしま」は去年一年間で何日行動に出たか、わかっていますか。

 いやいや、答弁したんだから、大臣、答えてくださいよ。自分がわからないで答えたら大変ですよ。何日訓練に出て、向こうに滞在したらオペレーションができないみたいな言い方をしたけれども、私たちは聞いてきましたけれども、わかりますか。(発言する者あり)いやいや、だから、保安庁長官が答えるのはわかりますよ。答弁をするんだったら、答弁する人が、本人がちゃんとやりなさいよ、これ。(発言する者あり)いやいや、自分がわかる答弁したのなら自分で答えなさいよと言っているんだよ。正確な答弁というから答えたんでしょう、本人が。

加納副大臣 今の御質問に答えたいと思います。

 「しきしま」がどのくらい動いているのかということですけれども、現場海域への回航、これは実際の仕事としてですね、これが二十六日、船舶の修理や法定検査が七十三日、乗組員の訓練で三十日、乗組員の休養がございますが、これが九十五日、それから現場に配備した日数が百四十一日で、合計で三百六十五日か六日でございます。

下地委員 この前聞きましたら、海外とのコミュニケーションをとるための訓練であるとかさまざまなものをやっていますけれども、実際に現場に行ってやるのは半分もないんですよ、「しきしま」は。だから、「しきしま」がこのアデン湾に行って活動したからといって、日本近海の護衛が、日本近海の対策が怠るようなことはないんですよね。そのことははっきりしているから、それをわかったふうには言わないでもらいたいということです。

 時間が来ましたから最後になりますけれども、今、政府が言ってきたことが「しきしま」に関しては全く当てはまらない。そういう中で、大臣にもう一回だけ、「しきしま」と海上自衛隊とを出すおつもりはありませんか。

金子国務大臣 もう副大臣から答弁をしたとおりでありますが、オペレーションをやりますときに、二隻でペアを組んでやる。そういう場合には、当然でありますけれども、相互に、装備それから職員の能力を詳細に知っている、私と下地先生とがこうやってペアを組んでやる、下地先生の能力をちゃんと知っている、というようなことを詳細に把握した上で、単一の指揮下のもとでオペレーションを当然でありますけれどもやらなければいけない。そういう意味で、護衛艦と巡視艇、自衛官と海上保安庁というのは、それぞれの任務に合わせて建造されておりますし、また育てられておりますので、やはりそこが一体オペレーションを行うということは必ずしも適切でない。

 今回、特に、出没する時間、場所、形態、これは全く予想できませんので、緊急した事態に遭遇した場合には、この護衛対象の船と海賊船舶との対処を的確に、迅速に行うという意味で難しいんだと思います。

下地委員 最後になりますけれども、北朝鮮の対応においては海上保安庁と自衛隊は非常に緊密に、協定も結びながら連携をし合って、能力をお互いが発揮できるような状況にある、そのことははっきりしています。

 私は、将来、自衛隊が海外に行く恒久法も検討に値するんだと思うんですけれども、こういうふうなやり方じゃなくて、表からやらないと、最終的にはなかなか国民の理解を得られないんじゃないかなと。そのことを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

深谷委員長 次に、石原宏高君。

石原(宏)委員 自由民主党の石原宏高でございます。海賊対処法の質疑をさせていただきたいと思います。

 まず、報道されているようなことの事実関係と、あと国連決議と日本のこの行動に対する関連について質問をさせていただきたいと思います。

 まず一問目に、防衛省は四月の十八日に、ソマリア沖の海賊対策に派遣された海上自衛隊の派遣部隊が、不審船に追われた護衛対象外の外国船からの救援を求められたため、艦載ヘリコプターで状況確認したところ、不審船は追跡を中止したという発表をされました。この詳細について教えていただけますでしょうか。

    〔委員長退席、木村(勉)委員長代理着席〕

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 四月十八日土曜日、日本時間で申しますと二十時四分ごろでございますが、アデン湾の西方において八回目の護衛のために護衛開始地点に向けて航行していた護衛艦に対して、護衛艦の北東約三十七キロメートルに位置する護衛対象でない船舶から、小型船舶が接近しているという旨の通報があったわけであります。この通報を受けまして、二十時二十四分ごろ、状況の確認のために護衛艦「さざなみ」の艦載のヘリを発艦させたところであります。

 この哨戒ヘリによる状況確認の結果、三隻の小型船舶を確認して、通報をしてきた船舶との距離が既に離れておりましたので、二十一時過ぎには状況確認を終了して、二十一時十七分ごろ、このヘリは「さざなみ」に着艦をした、こういうものでございます。

石原(宏)委員 済みません、また報道関係でありますけれども、ソマリア沖の海賊対策で、浜田防衛大臣が十七日、現地で活動している海上自衛隊の護衛艦二隻に加え、上空から海賊の動きを監視するP3C哨戒機二機を追加派遣する準備を指示した、防衛相は五月に再び海上警備行動を発動し、アフリカ・ジブチに部隊を派遣する、P3Cの海外派遣は初という報道がありますけれども、防衛省が考えるP3Cの任務内容、また他国の同様の機種の配備状況等、わかる範囲で教えていただけますでしょうか。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 ソマリア沖・アデン湾の海賊対処につきましては、護衛艦によります護衛活動に加えまして、日本関係船舶の防護というものをより効果的に実施するためには、固定翼の哨戒機P3Cによりまして、空から広域の哨戒活動を実施することが適切であると考えておるところでございます。そこで、四月十七日、P3Cの派遣の準備に関する指示、命令が防衛大臣から発出をされたところであります。

 このP3Cの具体的な運用要領につきましては、現在検討中でございますけれども、現在護衛艦二隻によって護衛活動を行っている約九百キロメートルの航路があるわけですけれども、これを中心といたしまして、アデン湾の海域を広域に哨戒いたしまして警戒監視あるいは情報収集を行う、こういうことが基本になると考えているところでございます。

石原(宏)委員 ありがとうございます。

 また報道関係の確認でありますけれども、四月の十五日に米国のクリントン国務長官は、再び増加している海賊事件への新たな対策として、海賊行為に対する刑事手続の強化のほか、海賊が身の代金などで得た資金の追跡調査や凍結などを挙げたとの報道があります。

 外務省で把握をしているクリントン国務長官の具体的な対策の内容について、わかればお聞かせをいただきたいと思います。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 アメリカにおきましても、最近アメリカ関係船舶の海賊襲撃事案の発生がございまして、海賊への対応策を強化するという動きが見られているわけでございます。

 そういう中で、クリントン国務長官は、四月十五日の記者会見におきまして、以下の四つの措置を即時とるというふうに発表したというふうに承知をしておるところでございます。

 その四つは、一つは、二十二日、二十三日にブラッセルで開催予定のソマリア治安機関構築及びアフリカ連合ソマリア・ミッション支援のための国際会議へ特使を派遣すること。第二は、多国間の対応拡大のため、海賊問題に関するコンタクトグループの即時開催をするということ。それから三番目は、米外交当局によるソマリア暫定連邦政府及びプントランドの地域指導者との接触を図るということ。四番目は、海運業界及び保険業界との協力。この四つを即時にとるということを発表したというふうに承知をしております。

 また、クリントン長官は、二十日の会見において、海賊問題に関するコンタクトグループを五月上旬にニューヨークで開催するということもあわせ述べている、こういうことでございます。

石原(宏)委員 そうすると、報道されている刑事手続の強化とか、身の代金で得た資金の追跡調査や凍結というようなことは、具体的にはクリントン長官は明言していないということなんでしょうか。ちょっと済みません、確認を。

梅本政府参考人 クリントン長官は、二十日の記者会見におきましては、我々は、海賊が捕らえられた後に法に照らし処罰するための最良の方策を検討するために、NATOにおいて協議しなければならないとか、質問で、NATOの加盟国が海賊を捕まえたけれども解放しなければならないというようなケースがあったということについて、こういうことについて、やはりすべての国や機関の対応をよりよく調整する必要があるんだというようなことをお答えになっているというふうに承知をしております。

石原(宏)委員 ありがとうございます。

 次は、報道というか現状把握ということで、各国が軍隊を送って護衛をしているわけですけれども、例えば、つい最近だと四月の十二日に、マースク・アラバマ号、これはアメリカの船ですけれども、米軍がフィリップス船長救出劇に際し海賊三名を射殺して一名を拘束したとか、また、四月十五日にはフランスの海軍がケニア沖で海賊容疑者十一名の身柄を拘束したといった報道がなされておりますけれども、外務省が把握している範囲で、今まで何名程度の海賊が各国の軍隊によって殺害されたり拘束されているのかどうか、現状把握ということで、わかる範囲で結構です、教えていただけますでしょうか。

別所政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、各国、機関、それぞれ海賊の取り締まりをする中で、拘束するということもあるわけでございます。外務省としてこういった事案を網羅的に把握しているわけではございませんけれども、私どもが個別に聞いている範囲内で申し上げますと、デンマーク、フランス、ドイツ、オランダ、アメリカなどは海賊を拘束した例があるというふうに聞いております。

 また、射殺といいますか、海賊が死亡に至ったケースという意味では、フランス、イギリス、先ほど委員が御指摘になりましたフランスの場合の海賊二名、アメリカについての海賊三名の死亡という事例がございます。それ以外に具体的に海賊が死亡に至ったという例については、私ども承知しておりません。

石原(宏)委員 ありがとうございます。

 次も報道関係なんですけれども、報道関係というか実際に外務省の方でやられたんですが、中曽根外務大臣が四月三日にアフリカのジブチのユスフ外相と外務省で会談をされまして、海賊対策としてソマリア沖に派遣した海上自衛隊の法的地位を確保するために地位協定に署名したということであります。また、活動中の護衛艦二隻が寄港するほか、海賊対処法の成立を待って五月にも派遣する予定のP3Cの哨戒機がジブチに拠点を置く、その内容についても協定の中で結ばれたというようなことがあります。

 また、会談で、ジブチの食糧援助など約十八億円の無償資金協力も決めたというふうに聞いておりますけれども、地位協定の中身と食糧支援等無償資金協力の内容についてお聞かせをいただけますでしょうか。

中曽根国務大臣 今、委員がお話しされましたように、四月の三日でございますけれども、ジブチのユスフ外務・国際協力大臣との会談の際に、ジブチにおける自衛隊などの地位に関する交換公文に署名をいたしました。

 この交換公文におきましては、ジブチにおける自衛隊やそれから自衛隊の隊員などの特権及び免除等についてこれを規定しておりまして、自衛隊等の任務の円滑な実施に資することが期待をされているところでございます。

 また、無償資金協力につきましては、八億六千万円の食糧援助及び九億二千五百万円のラジオ・テレビ放送局番組作成機材整備計画に関する交換公文に署名も行ったところでございます。

 この食糧援助は、ジブチの非常に厳しい食糧事情の緩和のために、昨年来の国際的な食糧危機に対応して、食糧の購入に必要な資金を供与するものでございます。

 それから、ラジオ・テレビ放送局番組作成機材整備計画は、これはジブチにおける唯一の国営放送局でありますジブチ・ラジオ・テレビ放送局に対し、放送設備及び機材の調達を行うために必要な資金を供与するものでございます。

石原(宏)委員 済みません、外務大臣、無償援助なので、アンタイドなので、さっき言ったテレビ関係の機材を日本の製品を買ってもらうということは難しいと思うんですけれども、そこのところはやはり一般入札で、アンタイドということでしょうか。まあ、そうでしょうね。

別所政府参考人 失礼いたします。私、直接担当しているものではございませんが、一般的な話といたしまして、無償資金協力につきましては、その調達に、入札したときにそれに応札するエージェントといいますか、契約する企業という意味では日本企業が受けるということになっております、応札するということになっております。ただ、その中でどういう機材を使うかというのは日本企業にゆだねられているという状況でございます。

石原(宏)委員 あわせて、食糧援助なんですけれども、これも当たり前だと思うんですが、食糧援助と言っておいて多目的に使われないような処置をちゃんととられていると思いますけれども、このジブチの食糧援助についても。よく昔なんか、そういう食糧援助とか言って、いつの間にかアフリカの、これは済みません、語弊があるかもしれませんが、いつの間にかランボルギーニになっていたとか、一般的なサラリーマン、私がサラリーマンのころはそんな冗談なんかを言っているんですけれども、ちゃんとそういう対処がとられているかどうか、ちょっと確認をさせてください。

秋元政府参考人 これは、必ずしもジブチに食糧援助を行う場合に限ったことではございませんけれども、食糧援助を含みますこういう無償資金協力を行います場合には、当然、日本政府とジブチの間で国際約束を結ぶわけでございまして、その中で、ジブチ政府に対しまして、当然、贈与される資金を適正かつ専ら協力対象となる事業のための必要な生産物を購入するために使用するということがジブチ政府に義務づけられているわけでございます。

 では、実際どういう仕組みで行われるかといいますと、先ほど総政局長からも答弁ありましたように、実際には、JICAの本部から協力の対象となる、この場合ですと食糧援助ですけれども、食糧援助の事業を行う受注企業に対してお金が実際に払い込まれまして、その受注企業が必要な物資、食糧を買うということになっていますので、基本的には、ジブチ政府がこの資金を別の目的に流用するとか、本来の目的でないことに使われるということは一応できないような仕組みになってございます。

石原(宏)委員 ありがとうございます。

 今までのものは事実関係の確認だったんですけれども、民主党の平岡先生とか共産党の赤嶺先生がずっと御質問されている中にもちょっと絡むかと思うのですが、私もこれはすごい大事なことだと思うのですが、日本のソマリア沖の海賊対策の行動と国連決議の関連というのは、やはりしっかりと整理をして、そして国民の皆様に理解をしていただく必要があると思います。

 それで、済みません、これはわかってはいるんですが、安保理決議の、いろいろとあります、一八一四とか一八一六とか一八三八とか一八四六とかありますが、この内容の経緯をもう一度ちょっと御説明をいただいて、経済制裁のようじゃなくて法的拘束力がないとか、そういうところもあわせて、この安保理決議の内容について、簡単にちょっと、まずおさらいで教えていただけますでしょうか。

別所政府参考人 ソマリアの関係で、御指摘のとおり、安保理決議一八一六から一八四六あるいは一八五一、そういった主として四つの決議があるわけでございます。

 これらの決議は、ソマリアの現状にかんがみまして、海賊問題がソマリアの現状をさらに悪化させている、そういった認識を踏まえた上で、各国に対し、海賊に対する対策のために可能な限りの協力、参画をするようにということを呼びかけているわけでございます。それが一般的な話としてございまして、累次にございましたのは、一つはそういったものを延長するということがございましたし、さらに、特別なものといたしましては、ソマリア暫定連邦政府、TFGと略しておりますけれども、TFGと協力して、ソマリアの例えば領海なども含めて、各国がどういう形の協力ができるかということを定めた決議でございます。

石原(宏)委員 済みません、ちょっと確認をしたいんですけれども、安保理決議の中で、要は、ソマリアの海域における海賊対策についても安保理で認める、それでソマリアの暫定政府が承諾をしたケースということが、これは一八一六。要するに、海賊対策を要請しているんですけれども、その要請している範囲というのは紅海プラスソマリア海域なのか、安保理決議が要請しているものはどういうことなのか。ただ、紅海も含めてなんですけれども、ソマリア海域の場合は、ソマリアの暫定政府の許可を得て、ソマリアの暫定政府が安保理の議長の方に許可を出したよという報告をさせるということになっているのか。ちょっとその点を確認させてください。

別所政府参考人 安保理決議の一八一六と一八四六でございますけれども、委員の御指摘のとおりに、ソマリア暫定連邦政府と協力してこの暫定連邦政府が国連事務総長に事前に通知を行う各国が、ソマリア領海内においてでございますが、関連する国際法に合致する方法で海賊行為の抑止のためにすべての必要な措置をとるということを一定期間認めているわけでございます。

 それで、これらの安保理決議でございますけれども、TFG、暫定連邦政府との協力国などが、一定の条件のもとで、海賊船舶の拿捕など、国連海洋法条約により明文化されている国際法に基づき海賊に対して各国が公海上でとることが可能な措置、それをソマリア領海内においても可能にする、そういう枠組みでございます。

石原(宏)委員 そこでなんですけれども、そもそも論というか、今回の一八一六とか、延長した一八四六というのは、要請であって、例えば北朝鮮に対する経済制裁の決議のように法的拘束力はないんじゃないか、あくまでも要請だということなんですけれども、その点をちょっともう一度確認させていただけますでしょうか。

別所政府参考人 委員の御指摘のとおりでございます。

石原(宏)委員 となると、そもそも法的拘束力はないということですから、赤嶺先生の質問の中で、安保理決議との関係で、安保理に言われたからやっているみたいな、ちょっと私は聞こえたんですが、そういうことはなくて、そういう要請があったので、あくまでも日本政府が自主的に今回の三月の海上警備活動を決断した。

 そして、この法律が通ると、海賊対処活動をこの法律に基づいて実施、あくまでもみずから、要するに、法的拘束力とか安保理決議にあってそれに縛られてやるのではなくて、要請があったことについてみずから決断をしてこの行動をとるという解釈でよろしいかどうか、ちょっと御確認をさせていただけますでしょうか。

浜田国務大臣 今先生のおっしゃったとおりでございまして、今回の海上自衛隊の派遣につきましては、ソマリア沖において海賊事案が多発、急増しておって、日本国民の人命、財産を緊急に保護する必要があることから、新法の整備までの応急措置として海上警備行動を発令し、したがって、国連安保理決議の要請に応じて派遣を決定したものではないというふうに言えると思います。

 なお、国連安保理決議は、昨年、ソマリア沖海賊対策に関して、決議の第千八百五十一等の四つの関連の決議を採択して、各国の軍艦等を派遣することを要請しました。このことを踏まえれば、我が国による海上自衛隊の派遣も、関連する国連安保理決議の趣旨にかなったものというふうに考えているところであります。

石原(宏)委員 ちょっとそこでまた確認なんですけれども、これはもう質問が出たとは思うんですが、安保理決議の中では、この海賊対策を要請して、各国の対応を報告を求めるような内容になっているんですけれども、この決議に基づいて、例えば、日本政府が今回の海上警備活動について報告を安保理に行われたのか。また、この法案が成立して、新たな法制度のもと海賊対策活動がスタートしたときに、この内容について安保理に報告する必要があるのか。また、各国がこの決議に基づいて、要請を受けて、自主的に各国も行動されていると思うんですけれども、そのことについて安保理に報告を遅滞なく行っているのかどうか。その状況等を教えていただけますでしょうか。

中曽根国務大臣 国連の安保理は、決議の一八一六号それから一八四六号におきまして、この決議に基づいてソマリアの領海内で行いました海賊抑止の取り組みについて安保理に情報提供するよう要請をしております。

 他方、我が国は、先ほどもお話ありましたけれども、関連の安保理決議の要請に応じて自衛隊の派遣を決定したものではなくて、また、自衛隊はこれまでソマリアの領海内で活動も行っておりませんので、この決議に基づく報告も行ってはいないところでございます。

 また、海賊対処法案が成立をした場合につきましても、そのことをもって我が国が安保理決議上の情報提供を行う必要が生じる、そういうわけでもございません。

 他方、政府といたしましては、海賊対処法案及び海上警備行動に関する三月十三日の麻生総理の談話の発出を受けまして、国連側に自発的に情報提供を行ったところでございます。

 三月十六日に発出されましたソマリア沖海賊対策に関する国連事務総長の報告書におきましては、そういう我が国による取り組みについての言及がなされております。事務総長はまた、この報告書におきまして、その他の各国や地域機構等から提供のありました情報をもとに、各国等の取り組みについて安保理に対して報告を行っているということでございます。

石原(宏)委員 大分時間が迫ってきたんですけれども。

 済みません、ちょっとこれは事前通知をしていないんですけれども、解釈論で、今の海上警備活動は公海でしかできないと思うんですけれども、この今回の法律が通ると、日本政府が決断をしてソマリアの暫定政府が許可を出せば、警備活動みたいなものを、日本の船がそもそも、その日本の守っている護衛の船がそこを通らないかもしれませんけれども、やるかどうかは別として、法律的には、ソマリア海域における、日本船籍の船がもしそこを通るときに、その護衛活動ができるという解釈でよろしいんでしょうか。

金子国務大臣 今度の法案では想定しておりません。

石原(宏)委員 最後に、これは私の、自分の個人的な考え方なんですけれども、安保理決議は、法的拘束力があるにせよ、国際法なので、ではそれを守らなかったからといって罰則というのがあるわけではないと思うんです。ですから、例えば北朝鮮の制裁決議でも、法的拘束力があるといっても、やらなくても何も、そのやらなかったことに対してまた制裁を加えて、それもやらなかったら効力がないということで、やはりある意味、安保理決議の限界というものを私は感じていますし、そういうことはみんながよく理解をしておかなければいけないんですが、その一方でまた、もちろん、メッセージ性というか、実際にそれに各国が従って行動をとれば実効性は伴ってくるんですけれども、そういう安保理決議の限界、そして、時によっては実効性があるということについて、中曽根外務大臣、いいですか、御感想というか、どういうふうに。

別所政府参考人 国際社会の現状については、まさに委員御指摘のとおり、共通的な法執行機関があるというわけでもございません。そういう意味での、国内的な意味での刑罰のようなものがあるわけではございません。

 ただ、その決議のいろいろな意味での拘束力、おっしゃいましたとおりに、例えば、制裁をやった場合にそれをどうするかというのもありますが、同時に、特定の国に対して特定の行動をしっかりととるようにという決議をされる場合がございます。それにつきましては、それに反した場合に、どういう手段、手だてがあるのかということについては、これもまた国際社会として一致して安保理決議で決めるということがあるわけでございまして、過去におきましても、かなり厳しい措置がとられたこともございます。

 ただ、一般的に申せば、おっしゃるとおり、刑罰規定等があるわけではございません。おっしゃるとおりでございます。

石原(宏)委員 済みません、ちょっと時間が前ですけれども、これで質問を終わりにします。ありがとうございました。

木村(勉)委員長代理 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 金子海洋政策担当大臣、参議院の本会議とも私の質問の途中重なるそうでございますが、事前に了解しておりますので、しかるべきタイミングで退席していただければありがたいと思います。

 それで、この当委員会も、きょうの質疑を入れましたら二十二時間、時間がたつわけでございますが、きょうは三十分時間をいただきましたので、野党の皆さんに相当時間を割り振って質問していただいたんですけれども、きょうは、野党の皆さんの論点とはまた少し、与党として違うところを論点として提示をさせていただければありがたいなというふうに思っております。

 一つは、まずお聞きしたいのは、国連海洋法条約との整合性について、まず何点かお聞きをさせていただきたいと思うわけでございます。

 世界の情勢をまずお聞きしたいんですが、一九九四年に国連海洋法条約が発効されてから、今回の海賊対処法案のような、海賊行為の処罰及び対処に関する法律案、こういうものが国内法として整備をされたという、そういう国があるのかどうかということについて、まず外務省にお尋ねをしたいと思います。

別所政府参考人 御質問の海洋法条約でございますが、一九九四年に発効したわけでございます。それ以降に海賊対処法案に類する法整備を行った国があるかというお尋ねでございますが、外務省として網羅的に把握しているということではございませんけれども、調べてみた結果、把握している状況ということで申し上げます。

 一つそういう動きをした国があるということはございまして、スリランカでございますが、二〇〇一年に海賊法を制定しております。海賊行為とは、窃盗、脅迫、詐欺あるいは同種の行為によって不正を働くかあるいは船舶を盗用する行為であるというような定義をしている、そういうものができております。

 また、例えば英国では、海賊法というのは従来からございました。その中で海賊行為の処罰が規定されていたわけでございますけれども、海洋法条約発効を受けてということと存じますけれども、一九九七年に、商船及び海上安全に関する法律ということで、英国法上の海賊行為の定義というものについて、海洋法条約の海賊行為と一致するというように直したというものがあると承知しております。

 それ以外、一部の国で審議中であるとか政府案を作成中とか、そういう話はあると伺っております。

    〔木村(勉)委員長代理退席、新藤委員長代理着席〕

佐藤(茂)委員 なぜこういうことをあえて聞くかといいますと、二月の上旬に、私ども、ロンドンに行かせていただきましたときに、IMO、国際海事機関の、今、日本人で関水さんという方が海上安全部長というナンバーツーの位置にいらっしゃるんですけれども、関水さんを初め何名かのIMOの海賊対策の専門家の皆さんとお話をさせていただいた最後に、IMOの方から、日本には、世界のよきモデルとなるような、そういう国内法をぜひ整備していただきたい、そういうエールを送っていただきましたので、こういうことをあえて聞かせていただいたわけでございます。

 今お聞きしましたように、スリランカ、また、英国が海賊行為の定義を少し変えた、そういうことぐらいで、我々が今論議しているこの海賊対処法案というのが、今IMOから言われているように、世界のモデルとなるような、ぜひそういう法案にしてまいりたいな、そのように考えております。

 その中で、今言いましたように、国連海洋法条約に則した、あるいは国連海洋法条約との整合性の確保ということを、この法律をつくるに当たって、我々与党の側からも政府側に非常に要求したのが一つのポイントでございます。

 特に、国連海洋法条約の、犯人の国籍と犯行地のいかんを問わず刑罰を適用するということを初めとした普遍主義、こういう考え方、これが今回の海賊対処法案にどのように反映されているのか、できれば条文に即して御説明いただければありがたいと思います。

大庭政府参考人 お答え申し上げます。

 普遍主義に関しますお尋ねでございます。犯人と犯行地のいかんを問わず、その実行者の身柄を抑留し逮捕したすべての国が自国の刑法の適用を認められるとする原則を普遍主義というとされております。

 国連海洋法条約におきましては、人類共通の敵とされる、そのような行為である海賊行為に関しまして、すべての国が最大限に可能な範囲で海賊行為の抑止に協力するとされておりまして、公海における旗国主義の原則の例外として、公海その他いずれの国の管轄権にも服さない場所において行われる海賊行為につきまして、海賊船舶等の国籍を問わず、いずれの国も管轄権を行使することが認められておるわけでございます。

 この趣旨を踏まえまして、法案第二条において、海賊行為に関係する船舶や行為者、被害などに関しまして国籍について何ら限定を付しておりません。そのような規定ぶりをいたしております。

 すなわち、若干例を申し上げますと、第二条、「この法律において「海賊行為」とは、船舶に乗り組み又は乗船した者が、」という書き出しになっておりまして、この船舶、あるいは乗り組み、乗船した者、これらに国籍に関する限定を一切付していない。

 また、一号におきまして、「暴行若しくは脅迫を用い、又はその他の方法により人を抵抗不能の状態に陥れて、航行中の他の船舶を強取し、」云々という、この一号に書いてある人なりあるいは他の船舶というものに関しましても国籍などを限定しておりません。

 このように、関係船舶や関係者の国籍を問わず、広くこの法律が適用されるようにいたしたものでございます。

 第三条以降におきましては、これらの行う海賊行為の処罰や、これへの適切な対処というものを定めているところでございます。

佐藤(茂)委員 今答弁いただきましたように、犯人の国籍であるとか犯行地のいかんを問わずきちっと刑罰にかけられる、そういうことがこの対処法案にはきちっと反映されている、そういうことでございます。

 ただ、条約との整合性ということを考えましたときに、今、第二条の定義というところを御説明いただきましたけれども、一つ確認をさせていただかなければいけない点がございます。

 基本的に、国連海洋法条約第百一条における「海賊行為の定義」の範囲内で具体的な行為が特定されていると原則としては思いますけれども、その上で、一、二点お尋ねをさせていただきたいのは、国連海洋法条約の百一条の「海賊行為の定義」では、「私有の船舶又は航空機の乗組員又は旅客が私的目的のために行うすべての不法な暴力行為、抑留又は略奪行為であって次のものに対して行われるもの」とあります。また、百三条では、わざわざ「海賊船舶又は海賊航空機の定義」ということまでうたわれているわけでございます。

 何を言いたいのかというと、要は、国連海洋法条約の段階では今回の対処法のような船舶だけに限っていないわけであります。要するに、航空機の乗組員が行う海賊行為まで含めておりまして、しかしながら、今回の海賊対処法案にはその海賊行為の定義から航空機というものが外されているわけですね。何ゆえ航空機による海賊行為を含めなかったのか、ぜひ理由をお聞かせいただきたいと思います。

大庭政府参考人 海賊行為を行います主体に関しましてのお尋ねでございます。

 航空機という条約上定められておるものをこの海賊対処法案ではどうして規定しておらないのかという御質問でございますが、航空機によります船舶の強取といったような行為は、この海賊対処法案では海賊行為には該当しないという整理をいたしましたけれども、これは、これまでに航空機を使用した海賊行為が発生していないということがまず第一でございます。

 そしてまた、現段階において、私人が私的目的で航空機を使用した海賊行為を行うということは基本的に想定しがたいというふうに考えております。と申しますのは、例えばヘリコプターなど航空機が単独で民間船舶に取りついて、高速であるいはジグザグ航行をしながら逃げているそういう民間船舶の上でホバリングをして、その船にロープを伝っておりるというようなことは技術的に大変難しいものでございまして、我が国でも、仮にあるとすれば、ごく一部の自衛官などの特殊な訓練を受けた者にしか行えないような、そういう行為であろうというようなことでございます。

 このように、これまでこういう事例が発生していないこと、また今後もなかなか想定しがたいというようなことを踏まえまして、この海賊対処法案におきましてはそういう前提での海賊行為の定義ということにいたしたわけでございます。

佐藤(茂)委員 あわせてもう一点、今主体が航空機であるということとともに、何に対して行われる行為かという点についても、条約の百一条では、「公海における他の船舶若しくは航空機又はこれらの内にある人若しくは財産」というようにありまして、何を対象にされるのかということについても、船舶だけではなくて、航空機まで対象にする場合が海賊行為の場合はある、そういうように条約では言われているわけでありますが、今回の対処法案では船舶だけを対象にされているわけでございます。同様に、なぜ国内法整備に当たって海賊行為の対象に航空機を含めなかったのか、これもあわせて御答弁いただきたいと思います。

大庭政府参考人 ただいま、海賊行為を行う側に関しまして、航空機による海賊事案は海賊行為とは定義しなかったということをお答え申し上げましたけれども、それと同様でございまして、船舶や航空機の乗組員などによって他の航空機に対する海賊事案があったというようなことは、これまで承知しておりません。また、現段階においても、そのような海賊事案が行われるということは基本的に想定しがたいというふうに考えておりまして、これを踏まえて本法案における海賊行為を定義したというものでございます。

 なお、別に、航空機の強取等の処罰に関する法律、いわゆるハイジャック法がございますけれども、これは既に、暴行、脅迫その他の方法によって航行中の航空機を強取または運航を支配する行為を処罰するという趣旨の規定、法律があるということでございます。

佐藤(茂)委員 ですから、同様に二つのことを言われているわけですね。これまで発生していない、現段階において想定しがたい、そういうふうに言われているんですが、しかし、現実に国連海洋法条約にはそういうように明記されているわけであります。

 ですから、国連海洋法条約が締結された当時は、少なくとも船舶のみならず航空機も含めて、海賊行為に使われ、また海賊行為でねらわれる対象になり得る、そういうふうに各国が考えていたがゆえにこの条約上に明記されている、そういうふうに考えておるわけですが、条約締結当時の議論の状況について、ぜひ外務省の方から御答弁をいただきたいと思います。

鶴岡政府参考人 海賊行為の定義を定めております国連海洋法条約第百一条は、もともとは、一九五八年の公海条約第十五条の内容をおおよそ引き継いだものでございます。その公海条約の規定の中にも、航空機の乗組員による海賊行為について書いてあった次第でございます。

 他方、国連海洋法条約自体の作成過程におきまして、特に航空機の論点について詳しい議論がなされたという経緯は必ずしも明らかでございませんで、基本的には公海条約の規定をそのまま引き継ぐという整理で条約が作成されたというふうに承知をしております。

佐藤(茂)委員 ですから、今の御答弁ですと、要するに公海条約を引き継いだんだ、そういうことでございまして、要するに、ここについて本当にきちっと議論されているのかどうかということについては国際的には定かでない。ただ、今回の国内法をつくるときには、そこについては非常に想定しがたいので、また、そういう実績もないから、罪刑法定主義の考え方に基づいて今回は削った、そういうことかなと。

 ただ、今後もしそういう事態が出てきたら、これはやはり考えなければいけない部分ではあるかなというように感想だけ述べさせていただいて、次の問題に入らせていただきたいんです。

 次は、今、当委員会でも何人かの方が言われておりますが、第七条の海賊対処行動の派遣手続について、何点か、もう一度確認で押さえておきたいと思います。

 第七条二項の、「防衛大臣は、前項の承認を受けようとするときは、関係行政機関の長と協議して、」と、そういうように明記されておりますが、この関係行政機関の長というのは具体的にどなたになるのか、これについて御答弁をいただきたいと思います。

大庭政府参考人 お答え申し上げます。

 海賊対処法案第七条第二項におきまして、防衛大臣は、内閣総理大臣の承認を受けようとするときは、関係行政機関の長と協議して、対処要項を作成し、内閣総理大臣に提出しなければならないという規定を置いているわけでございますが、この当該行政機関の長につきましては、個別の海賊の事案に即して決せられるということになるものでございます。

佐藤(茂)委員 ですから、個別の事案といっても、海賊の事案ですから、すべて広く含めても、想定される行政機関の長というのは大体限られてくると思うんですね。その可能性の範囲で、どこまでが入るのかということをぜひ御答弁いただきたいと思います。

大庭政府参考人 第七条によります海賊対処行動の発動に関します手続でございますので、海上保安庁による対処が難しいというような事情、あるいは、海上交通による輸送活動を管理しております国土交通省、そのような国土交通省や海上保安庁などを含む関係機関になるというふうに思っております。

佐藤(茂)委員 最初からそう答弁していただくと次に移りやすいんですが、要するに、第七条二項ですけれども、防衛大臣は、対処要項を作成し、内閣総理大臣に提出しなければならない、こういうようになっているわけです。

 それで、その後、四つの号が書かれているわけですね。この四つの号の内容について定めた対処要項を作成することになるんですけれども、一番目の海賊対処行動の必要性というものを定めるときに、海賊行為への対処に第一義的に当たる今答弁された海上保安庁長官または国土交通大臣からの要請あるいは御意見、御見解、こういうものが当然必要になってくるのではないのか、自衛隊が出動することがなぜ必要なのかということについて当然なってくるのではないのかというように考えますけれども、政府の見解を伺いたいと思います。

金子国務大臣 委員おっしゃるとおりであります。防衛大臣は、内閣総理大臣の承認を受けようとするときは、関係行政機関の長と協議して、海賊対処行動の必要性等を対処要項の中で明記するということになっております。また、特別の必要がある場合には、閣議決定に基づきまして、内閣総理大臣の承認を得るという手続でございます。

佐藤(茂)委員 もう一つは、この第七条二項のところで、余りどなたもその後言われていないんですけれども、ただし書きというのがあるわけであります。我々与党の中でも議論したときに、今回の対処法案では、自衛隊が海賊行為が行われようとしているときに居合わせた場合まで想定した、そういう海賊対処行動というものが余り言われていないんですけれども、一つの特徴なんですね。

 要するに、今のソマリアの事態のように、事前の準備をして、そういう対処要領的なものを決めて挑める、そういう事態ばかりではない。きのうも参考人の質疑のときに船長協会の森本参考人が言われておりましたけれども、自衛艦といえども、これは別に海上保安庁の船もそうですけれども、海の中で偶然に海賊行為に居合わせる、そういう場合が想定されるわけですね。そのときにシーマンシップを発揮して、きのうの表現で言うと海の男の仁義として、当然精いっぱいのことはやらないといけないわけでございます。

 そういう不意遭遇型、すなわち、たまたま居合わせた自衛隊が海賊対処行動をとるというような事態の場合、そのことを想定して、この第七条の二項のただし書きには、「現に行われている海賊行為に対処するために急を要するときは、必要となる行動の概要を内閣総理大臣に通知すれば足りる。」そういう形の書きぶりにしてあるわけでございます。

 そこで、こういう事態のときに、今、修正協議をしておりますけれども、野党の一部から要求されているような国会の事前承認、そういう手続をとっていたら、とてもじゃないけれども、目の前で海賊行為が行われているわけですから、間に合わない。

 すなわち、国会の事前承認というのは、こういう事態というのはそぐわない事態ではないのかなというように思うんですが、そういうことから考えると、国会の関与ということでも、国会への報告がやはりこういう事態についてはふさわしい案件ではないのかな、そのように考えるわけですが、政府の見解を伺っておきたいと思います。

金子国務大臣 御指摘のように、第七条二項ただし書きで示されておりますとおり、現に行われている海賊行為に対処する、非常に急を要するとき、その場合でも、必要となる行動の概要を内閣総理大臣に通知するということは定めさせていただいています。

 しかし、海賊行為、これはまさに犯罪行為でありますし、それへの対処というのは警察行動でありまして、海上警備行動と同様に、国会の事前承認に関する規定は設けなかったものであります。

 また、今御指摘の、現に行われている海賊行為に対処するために急を要する場合、これは、現に存在する危機を排除するため速やかに対処する必要がありますので、海賊対処行動を実施するための国会の事前承認を必要とした場合には、国会における御審議に一定の日数を要することになるため、速やかな対処が困難となるおそれがあると考えております。

佐藤(茂)委員 それで、不意遭遇型、いわゆる居合わせたというような場合の対処行動の場合のことでございますが、今大臣が答弁されたように、「行動の概要を内閣総理大臣に通知すれば足りる。」そういうふうになっているんですが、この必要となる行動の概要というのは具体的にどういう内容なのかということをきちっとやはり詰めておいた方がいいと思うんですね。

 概要と本来の対処要項の違いは何なのか。それによっていずれにしろ内閣総理大臣が承認するわけですから、ある程度の内容、中身についてははっきりさせておくことが必要ではないのかと思いますが、政府側の答弁をいただきたいと思います。

大庭政府参考人 第七条の二項のただし書きにかかわる部分でございますけれども、これは「現に行われている海賊行為に対処するために急を要するとき」ということでございます。

 刻々と変化する状況に柔軟かつ的確に対処するということが求められるわけでございますから、期間、区域あるいは部隊の規模といったようなことについてあらかじめ明確に定めるというのはなかなか困難な状況であるというふうに思います。したがいまして、このような場合には、防衛大臣は必要となる行動の概要を内閣総理大臣に通知すれば足りるという旨の規定を置いたわけでございます。

 この行動の概要の具体的な内容に関しましては、実際そこで生じております事案の状況などを踏まえて特定されるということになるわけですけれども、基本的には、対処要項に定めるということとされております海賊対処行動の必要性、区域、部隊の規模、期間といったようなものに関しまして、その時点で特定し得る範囲のもの、そういうものであるというふうに考えております。

佐藤(茂)委員 だから、この場合ですと、その時点で特定し得る範囲のものを行動の概要として通知すれば足りる、そういうことになっているわけでございますが、ただ、その後、第三項では、「内閣総理大臣は、」「遅滞なく、国会に報告しなければならない。」そういうふうになっているわけですね。

 一般的には、この「第一項の承認をしたとき」、要するに、事前にそういう期間があって、対処要項を、防衛大臣が作成したものを踏まえて承認をしたときには、この第二項の一から四号の、今言われた必要性とか区域とか装備、期間、重要事項、こういうことがしっかりと報告されるということになるんですけれども、今まさにるる質問してきましたただし書きの部分、不意遭遇型の場合には防衛大臣から行動の概要を通知されるにすぎない場合、そういう場合には、内閣総理大臣から国会へ報告をする場合にも、一から四号の事項について、具体的にもう一度だれかがきちっと作成をして国会に報告しなければならない、そういう事態が生じると思うんですね。

 通常の場合でしたら、防衛大臣が一から四号の内容を内閣総理大臣に提出して、内閣総理大臣はそれを踏まえたものを国会に報告すれば、十分、内容もほとんど一致していると思うんですが、行動の概要しか防衛大臣が内閣総理大臣に提出していない場合は、やはり国会報告の場合には改めてそういうものをきちっと作成しなければいけないと思うんですけれども、これは具体的にだれが作成して国会に報告をすることになるのか、確認をさせていただきたいと思います。

大庭政府参考人 ただいま御指摘のように、第七条第二項ただし書きにおきましては、「必要となる行動の概要を内閣総理大臣に通知すれば足りる。」ということを規定しているわけでございますけれども、この場合におきましても、ただし書き以外の部分、もともと対処要項を定めるべき事態の場合と同様、第七条第三項の規定は適用されるわけでございます。

 したがいまして、この第三項の規定に基づいて、内閣総理大臣は、海賊対処行動を承認した後に、対処要項に定める事項と同様の内容を遅滞なく国会に報告するということにいたしております。

 この報告は、内閣の長たる内閣総理大臣が国会に報告するというものでございますから、対処要項に定める事項と同様の内容を閣議で取りまとめた上、国会に報告する、そういう手順を踏むことになります。

佐藤(茂)委員 あと一分ありますので、最後にもう一つ、武器使用について確認をさせていただきたいんですけれども、本会議のときには、停船射撃の武器使用の整備をお尋ねいたしました。

 それに加えて、もう一つの検討課題として、海賊が、武器を未使用のまま、民間船舶に対してロープや縄ばしごをかけてよじ登り、乗り込む、そういう行為をしている場合において、海上保安庁あるいは海上自衛隊は武器使用が可能なのかどうなのかという点があります。

 この場合に、警察官職務執行法第七条に基づく武器使用で対応できる、そういうふうに判断されているのか、その理由もあわせて、ぜひ政府側の答弁をいただきたいと思います。

大庭政府参考人 武器を携帯した海賊が船舶の強取あるいは運航支配といったような目的で民間船舶にロープを使用してよじ登るあるいは民間船舶に乗り込むというような行為、まさに他の船舶に侵入する行為ということに当たるわけでございますけれども、これは、本法第二条第五号におきまして犯罪行為と位置づけている行為でございます。

 この行為に引き続きまして、船舶に乗り込んでその船舶を強取する、あるいは乗組員などの生命身体の自由が侵害されるようなそういう事態、あるいは船舶の安全な運航を阻害するというような事態、そういう大変大きな法益侵害が間近に迫っている状況にあるというふうに評価できると思います。このような行為は、刑法第三十六条に規定する正当防衛の要件でございます緊急不正の侵害というものに該当すると考えられます。

 したがいまして、そういうものに該当する、その上で、使用する武器の種類や使用方法、程度といったものが事態に応じて合理的に必要とされる限度で、やむを得ず犯人に危害を与えるような武器使用は、正当防衛に該当するものとして、警察官職務執行法第七条に基づき許されるというふうに考えております。

佐藤(茂)委員 どうもありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

新藤委員長代理 次に、下地幹郎君。

下地委員 それでは、十五分だけまた質問させていただきます。

 先ほどちょっと、質問に品位がないと言われたので、品位を持って質問させていただきたいというふうに思います。

 浜田大臣、この法律をつくるというふうなことになってまいりますと、恒久法になってくるわけでありますけれども、先ほど海上保安庁長官の答弁、そして金子大臣の答弁を聞くと、「しきしま」という船が外に出られるんだけれども出しません、新たな整備も今は考えておりませんということを明確に言っていますよね。海上保安庁がそうおっしゃるんだから、それはそれでいいと思うんです。

 それで、この法律は、一義的に海上保安庁が表に出てやって、それができない場合に海上自衛隊にというような法律でありますけれども、こういうふうな近海以外のところになってまいりますと、海賊対策だとかいろいろなものをやっても、おやりにならないと言っているわけですから、そういうふうなことが国民の前で海上保安庁はあらわになってきたわけですから、実質的な国際貢献をする自衛隊の恒久法になるのではないかというふうに僕は思うんですよ。

 僕は国際貢献をする自衛隊の役割というのは非常に大事だと思っていまして、そういう意味でも恒久法の論議は十二分にやっていいのではないかというふうに思っているんです。ただ、今回のように、言葉は悪いけれども、海上保安庁を一義的にというやり方をして、海上自衛隊がいつでも出られるようなものをやるというのは余りよくはない。

 先ほど僕が申し上げたように、行くんだったら海上自衛隊が、恒久法的なものを論議しながらやっていく、国会の承認の問題だとかさまざまなルールをつくりながらやっていくというのが、一つの国際貢献の中の役割じゃないかなというふうに私は思っているんですけれども、この自衛隊の国際貢献に対する、恒久法に対する浜田大臣のお考えを少しお聞かせいただきたいんです。

浜田国務大臣 今回の法律に関しては、今先生がおっしゃったように、海賊というものに特化をした法律でありますし、そして一義的という、その意味というのは、多分これから、今回はソマリアに関してはそういった一義的な部分が使えないということで我々がということを意味していることだと思いますので、今後、実際に一義的に海上保安庁が対応可能なものが出てくる可能性はあるわけでありますので、その法律については、我々とすれば、今回出した法律の範囲内でしっかりやっていくというのが我々の任務だと思っております。その点はそうだと思います。

 恒久法につきましてはいろいろ御議論のあるところでありますので、先生のおっしゃったような特措法の対応というもの、これだったら特措法の方がわかりやすいんじゃないかという御指摘も多分そうだと思いますし、今後、そういった恒久法というか一般法というか、そういうものの中で議論していくことは大変重要なことだと思います。我々も、自衛隊を出すに当たっては、先生がおっしゃったように、国民の理解を得て、その賛同のもとに出ていくというのが極めて重要だと思っておりますので、そういった意味では、その枠組みとかつくり方というのは国会の方でしっかり議論をしていただきたいと思います。

 我々も、定められたいろいろな枠の中でできることをしっかりやっていくということが重要だと思いますので、あくまでもこれは国会の議論というものを我々とすればしっかりと見守っていきたいというふうに思っているところであります。

下地委員 国際貢献の恒久法をつくっていくためには、さまざまな疑問を、今国民の理解と言いましたけれども、乗り越えていきながら、世界の皆さんの理解も得ながらやらなければいけないんです。

 テロ特措法のときもイラク人道支援のときも国会承認がありましたよね。今回はないんですね。今回はなぜないかというと、警察行為だからないと言っているんですよ。

 しかし、警察行為だからないというふうなことを言っておりますけれども、海上自衛隊という組織が実質的には出ていく、これからもずっと出ていくような形になるでしょう。海上保安庁の緊急整備計画も二〇一〇年の早い時期までといって、何年になるかわかりませんけれども、そう簡単に整備ができるとは思えないというふうになってくると、今の段階では海上自衛隊が出ていくという可能性は非常に大きくなってくるだろうなというふうに思うんです。

 今回の法律に、特措法のときでさえも国会承認という項目が入っていた、しかし、今回のような、恒久法であるけれども実質的に海上自衛隊が出るような法律の中で国会承認が入らないというのは、なぜ入らないのか、大臣のお考えを少し。

浜田国務大臣 今回の法律の立て方というのは、今先生がおっしゃったように警察権に基づいてということもございますし、そしてまた、逆に言えば、海賊というものに対処する法律をつくるということもありました。また、一義的には海保ということもありますし、それが出られない場合に海上自衛隊が出ていくということで、あくまでも法律の立て方の中でいえば、そういったことになろうかと思うわけであります。

 ただ、今回の御議論の中でも、そういう意味では自衛隊に対する、何となく皆さん方の御心配等々多々ありまして、そしてまた、もっと明快に、自衛隊が出るときには承認をかけた方がいいのではないかという声も多くあるわけでありますので、一般論から言えば、我々、そういった自衛隊に対するいろいろな思いというものを払拭する意味でということを考えるならば、当然これは今までどおり事前承認というのもあり得べしということなのでありましょう。我々、それこそ今回のようにいろいろな制限がかかった中でやるよりも、自衛隊員が海外に出るときには堂々と出ていくということを考えれば、そうだと思います。

 ただ、今回の法律に関しては、海賊に対する法案ということもありますので、その点については、我々とすれば、そういう考え方、法律の立て方がそういう立て方だというふうに言われれば、そのとおりだというふうに思っているところであります。

下地委員 いい答弁だったと思います。

 それで、法律はあらゆるものに対応できなきゃいけないと思うんですけれども、きのうも質疑の中でありましたけれども、海賊という名のもとの海賊が、海賊じゃなくてテロリストになる可能性もありますよという話がありましたね。

 だから、結果的には変質をしていくといいますか、海賊だよといって実際的には物取りだったものが、これで世界各国の軍隊が出てくるわけだから、ここでテロリズムの人が出てきて、結果的にテロ集団が海賊の名をかりて行うという可能性もなきにしもあらずというようなことになってくるので、相手が変わる可能性があるので、先ほどから金子大臣が言っているような海賊対策という論議だけでやっていて、本当に変わらないで済めばいいけれどもなというふうなことを私は感じていたんです。

 そういう意味では、テロになろうと海賊であろうと、ちゃんと国会承認を受けて行くことが、私は、国民の理解を得られて、海上自衛隊の今後にもいいんじゃないかなというふうに思うんですけれども、相手先が変わる可能性について、大臣、どう思いますか。

浜田国務大臣 我々の任務は、それこそ海賊であれテロであれ、我々の護衛している船を安全に航行させるのが目的でありますので、そういった意味では、先生の御懸念というのもいろいろあろうかとは思いますけれども、我々とすれば、とにかくその船を守るためにこれを近くに寄せないということが一番重要で、追い払いも含めてやらにゃいかぬということであります。

 今先生のおっしゃったように、テロに拡大する可能性があるといいながらも、それとはまた別の意味で、自衛隊の出方というのは議論のあるところかなという思いはしております。

    〔新藤委員長代理退席、委員長着席〕

下地委員 海賊は警察行為、テロ行為は戦争というふうな区分を私はしているんですけれども、どうですか。

浜田国務大臣 これは相手方がどうあれ、我々サイドで今回法律で警察権を使用するということでありますので、それ以上でもそれ以下でもないのでありまして、先生のおっしゃる、そういうふうな区分けもあるのかもしれませんが、我々とすると、それの対応範囲内で活動するということしか今の時点では私は言えないと思っております。

下地委員 この法律がきちっと通って、先ほど私が法制局長官にもやっているんですけれども、海上保安庁との連携によって、海上自衛隊がさまざまな施設の問題だとか整備の問題だとかをやってきていると思うんですけれども、海上保安庁との連携というのは、今後、海上自衛隊はどうあるべきだと大臣はお考えになりますか。

浜田国務大臣 我々は、当然、我々の組織でやれることというのを今までしっかり法律の中でやってきたわけでありまして、逆に言えば、海上保安庁との連携というのは、今までもいろいろと試行錯誤を繰り返しながらお互い協力関係の中でやっているわけですから、これからこういう形でやれということであれば、それに対応する能力は我々は持ち合わせているというふうに思っておりますので、その点はまさに、今後、政府としてどのようにやるかということだと思います。

 我々とすれば、あくまでも、一義的という言葉をとらえれば、我々はそれを補完する立場にあるわけでありますので、それに対してこうせいということがあれば、それに対応するだけの能力は持ち合わせていると思っておるところでございます。

下地委員 今回の目的は、さっき言ったように、テロというのでなくて海賊対策だ、警察行為だというふうな中で海上自衛隊が出ていく。そして、海上自衛隊も海上保安庁も一緒にやったって法制的には問題ないと。

 今大臣がおっしゃったように、海上保安庁との関係も、一緒にできることはやっていくというふうなことを考えているならば、私は、何回も言うようですけれども、この法律を見た場合に、一義的にといって海上自衛隊しか出られないような仕組みだったら、この法律じゃなくて、自衛隊の法律、特措法の方がいい。そして、将来は、恒久的に出られるような、国際貢献ができるような方向につなげていく論議も進めていくべきだというふうになっているんです。

 ただ、いつも、私たちの悩みは、あいまいさが問題になるんですね。だから、この前も、大臣の前で日米の再編計画のところも言ったんですけれども、グアムの移転と普天間の移設と嘉手納の返還はパッケージですよねと言っても、どこがだれに言ってもパッケージだと言うけれども、国会答弁するとパッケージじゃないと。アメリカの関係者に会ったら、こんな話はないよと。僕らも一兆円かけて、アメリカに、グアムにお金を投下して基地もつくる、普天間の移設がうまくいかない限り、これも使いこなせない、八千人は来られないと言っているんだから、これはパッケージだという認識に日本が立ってもらわないとうまくいきませんよと言うから、僕はそのとおりだと思うんですね。しかし、パッケージじゃないとあいまいなことを言う。

 だから、あいまいなことをやっていると信頼を失うんじゃないかと私は思うんです。これはこれ、あれはあれという法律を絶えずつくっていく。日米安保においても、私は、そういうような方向をやらないと、国民向けにはこうです、海外向けにはこうですと言っていると、最後は日本の外交があきれられるんじゃないかなというふうに思っていまして、そういう意味でも、この法律のあいまいさもなくしてやる。

 そして、一義的にというんだったら、大臣がおっしゃるように、ある意味、海上保安庁も連れていきながらやる、だめだったら法律を変える。私は、そういうふうなわかりやすい仕組みを国民に示すべきではないかと申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

深谷委員長 次に、川内博史君。

川内委員 民主党の川内でございます。

 前回に引き続き、この海賊対処、ソマリア沖・アデン湾における海賊行為への対処をなぜ海上保安庁ではできないのか、あるいは、みずから積極的に行おうとされないのかということについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 この間、海上保安庁の長官から、この委員会での議論の間、ずっと、できないんです、行けないんです、できません、できませんと繰り返し御答弁があったわけでございますが、そもそも海上保安庁は、では何のために存在をしているのでしょうかということから御答弁をいただきたいと思います。

岩崎政府参考人 海上保安庁は、海上の治安、安全を守るというのが一つの大きな任務だと思っております。

 それから、海賊対策につきましても、今回のソマリア沖への事案については対応が難しいということは、先生御指摘のとおり何度も答弁させていただいておりますけれども、この海賊の事案についても、例えばこれまでの東南アジアもちゃんとやってまいりましたし、それから、たとえ東南アジアを越えても、もし「しきしま」一隻でできるようなオペレーションがあれば、それは積極的にやっていきます。それから、東南アジアを越える案件であっても、相手の武器がそこまでではないような場合、ロケットランチャーまで持っていないような場合、こういうものについては必要に応じて我々ちゃんと対処していきますから、今回ソマリア沖への派遣というのは大変難しいということは申し上げましたけれども、海賊事案全般に対して、私どもの持てる能力でできることはきっちりやっていきたい、このように思っております。

川内委員 いや、私が聞いているのは、海上保安庁法の第一条に、「海上において、人命及び財産を保護し、並びに法律の違反を予防し、捜査し、及び鎮圧するため、国家行政組織法第三条第二項の規定に基づいて、国土交通大臣の管理する外局として海上保安庁を置く。」と。海上保安庁は何のために存在するのですか。海上において人命及び財産を保護し、並びに法律の違反を予防し、捜査し、及び鎮圧するために存在するのですということでよろしいですか。

加納副大臣 委員のおっしゃるとおりでございます。

 海上保安庁法の第一条に明確に書いてございますが、今先生がおっしゃいましたので繰り返しません。けれども、おっしゃるとおりであります。

川内委員 私は海上保安庁長官に答弁を求めていますからね。庁法について聞いているんですからね。

 第二条においては、「海上保安庁は、法令の海上における励行、海難救助、海洋汚染等の防止、海上における犯罪の予防及び鎮圧、海上における犯人の捜査及び逮捕、海上における船舶交通に関する規制、水路、航路標識に関する事務その他海上の安全の確保に関する事務並びにこれらに附帯する事項に関する事務を行うことにより、海上の安全及び治安の確保を図ることを任務とする。」

 何のために存在するかということを第一条で書き、それらの目的を達成することによって海上の安全や治安の確保を図るんだというのが海上保安庁の任務であるということでよろしいですね。

岩崎政府参考人 先生の御指摘のとおりでございます。

川内委員 これらの任務を達成するために、第四条では、「海上保安庁の船舶及び航空機は、航路標識を維持し、水路測量及び海象観測を行い、海上における治安を維持し、遭難船員に援助を与え、又は海難に際し人命及び財産を保護するのに適当な構造、設備及び性能を有する船舶及び航空機でなければならない。」ということで、第四条で、目的や任務を果たすのに十分な設備、性能、構造を有する航空機、船舶を有するようにしなければならないよということを書いてあるということでよろしいですか。

岩崎政府参考人 これも先生御指摘のとおりでございます。

川内委員 そうすると、この海上保安庁法には、地域とか、相手がだれであるかとか、あるいは海上保安庁が持っている装備がどうであるかにかかわらず、海上保安庁は、海上の治安あるいは犯罪の捜査、犯人の逮捕をするというのが海上保安庁法が求める海上保安庁のお仕事であるということになります。

 したがって、ソマリア沖のアデン湾における海賊に対処する、犯罪行為に対処するというのは、海上保安庁の任務であるということでよろしいですか。

岩崎政府参考人 海上保安庁に与えられた任務であるとは思いますけれども、これが現実に私どもの巡視船艇でできる能力を持ち合わせていない、こういうことだろうと思っております。

川内委員 任務であるということで、海上保安庁法は、できないものはやらなくていいよというふうに書いてあるんですか。できないものはやらなくていいよ、別にやらなくていいんですよと書いてあるんですか。

岩崎政府参考人 海上保安庁法にそういう規定はございませんが、先生も御案内のとおり、自衛隊法の方で海上警備行動という枠組みをつくられております。

川内委員 いや、自衛隊は自衛隊で一生懸命頑張るわけですから、私は今、自衛隊のことを海上保安庁に聞いているわけではなく、海上保安庁法に定められている海上保安庁の任務は何ですかということを繰り返しお聞きしているわけで、その中で、任務に制限があるわけではないと。したがって、ソマリア沖・アデン湾における海賊に対処する任務も海上保安庁の任務であるということまで確認させていただいたわけですね。

 そこで、私は、岩崎長官が、できないんです、できないんです、無理です、無理ですと再三にわたっておっしゃられるのは、海上保安庁の、海の現場で仕事をしていらっしゃる海上保安官の皆様方は大変な御苦労をしていらっしゃるわけで、できません、できません、やる気もありません、なぜなら補正予算に予算要求していないからですということになるわけですが、自分たちの一番親方のそういう発言を聞いて、めちゃめちゃ情けない思いをしていらっしゃるんじゃないかなというふうに思うんですね。

 できないんです、だけれども懸命に努力しますとか、補正予算に予算要求して巡視船を建造する準備を進めておりますとか言うのならまだしも、できません、できません、予算要求もしませんと。これは海上保安庁法違反じゃないですか、長官。

岩崎政府参考人 補正予算の件でございますけれども、この国会でも答弁させていただいていますように、自衛隊と同じような形のオペレーションをやろうとすれば、額も千七百五十億の予算が必要となります。また、それを建造する期間も四年以上かかる、このように見込んでおります。そうしたことを踏まえますと、ソマリア沖に向けて海上保安庁の船を、巡視船を整備していくということは政府全体としても適切ではない、このように判断をしたところでありまして、補正予算には計上しておりません。

 ただ、巡視船艇等の緊急整備をさらに進めるという意味で、今度の補正予算でも、緊急整備について従来にない規模の予算額を要望しているところでございます。

川内委員 今、政府全体として適切ではないと判断したという御答弁がありましたけれども、海上保安庁法で、ソマリア沖・アデン湾における海賊対策も海上保安庁の任務であるということを確認しているわけですよね、任務であると。それにもかかわらず、予算要求をすることが適切ではないというのは、どういうことなんですかね。ちょっと私にはよくわからないですけれども。任務を遂行するのに必要な装備を整えるために予算を要求する、これは当然のことだし、また、しなければならないことではないかというふうに思います。

 ちょっと事実関係をよく教えていただきたいんですけれども、今回、補正予算に予算要求をしないということを、だれが、いつ、どのように決めたのかということについて教えていただきたいと思います。

岩崎政府参考人 先ほど申し上げました、ソマリア沖に対応するための巡視船を建造することの是非について、これは、私ども海上保安庁も参加した形で海洋本部等々とも話し合って、繰り返しになりますけれども、多額の予算を要すること、それから時間がかかることから、ソマリア沖という意味では直ちに政府全体としては建造しないという方針を出したわけでございます。

 その方針につきましては、私どもも金子大臣にも相談しながら決めたことでございます。

川内委員 多額の予算を要する場合に、建造しなくていいよ、装備しなくていいよと海上保安庁法のどこに書いてあるんですか。予算的な制約がある場合に、あるいは行きたくない場合に、その装備をする必要はないよ、やりたいことだけやっていればいいんだよというふうに海上保安庁法のどこに書いてあるんですか。岩崎長官、教えてくださいよ。

岩崎政府参考人 私どもは、行きたいとか行きたくないとか、そういう意味で議論しているつもりは決してございません。任務は任務としてやりたいと思っております。

 ただし、その任務をやるのに対して、多額の予算を要し、非常に時間がかかるということについて、現実の問題としてどう考えるかというのを政府全体で話し合ったということでございます。

川内委員 任務としては当然やるべき仕事だと考えていると。政府全体として却下されたんですか。要求はしたんですか。自分たちとしては、この仕事は我々の仕事であるという主張はしたんですか。

岩崎政府参考人 海上保安庁の巡視船をソマリア沖に派遣するためにはどうしたことが必要かということを踏まえて、政府部内で話し合ったところでございます。

 個別の議論の内容については差し控えさせていただきたいと思います。

川内委員 個別の議論について差し控えさせていただきたいと。

 海賊対処法案は、今までの海上における治安の確保というものを、特別の必要がある場合というふうに限ってはいるが、しかし、内閣提出法案によれば、防衛大臣が自衛隊に命ずることができるという形で特記して、海賊対処行動というものを認めます、権限を、自衛隊に海上における行政警察権を付与するという法律の立て方になっているわけで、海上保安庁的には、もうあなたたち要らないよと言われてしまうかもしれない法律ですよ。

 そういう法律が出ているときに、いや、自分たちの任務であると言いながら、個別の話には答えられませんというのはどういうことなんですか。海上保安庁法に任務がちゃんと書いてあって、任務を満たす設備を持つんだよと書いてあって、そのことをあなた方はきちんと主張したのかということを聞いているときに、そんなことには答えられませんというのはどういうことなんですか。

深谷委員長 加納副大臣。(川内委員「いやいや、加納副大臣は求めていません」と呼ぶ)

加納副大臣 私は担当ですから……(川内委員「いや、担当だからといって、求めていないものを答弁されても困りますよ」と呼ぶ)

 私は、海上保安庁を担当しております副大臣の加納でございます。(川内委員「権限ないでしょう。設置法上位置づけられていないじゃない」と呼ぶ)今の御質問は、海上保安庁法違反ではないかということでありますので、これについてだけお答えします。

 海上保安庁法には違反していないと思います。根拠でありますが、海上保安庁法の第四条に、「海上保安庁の船舶及び航空機は、」先ほど先生おっしゃったとおりでありまして、これこれに「適当な構造、設備及び性能を有する船舶及び航空機でなければならない。」

 現在、海上保安庁が抱えております案件あるいは対処しなければならない事案について、現在の設備が非常に老朽化しているので、それと、アデン湾ということが想定されますが、そういうところへ派遣するものとの優先度の話で、今現に抱えている船の老朽対策を優先したいというのが私どもの結論でありました。

川内委員 岩崎長官が海上保安庁長官として、海上保安庁法に定められている、まさしく今加納副大臣がおっしゃられた、性能を有していなければならない、その性能を有する巡視船を建造することによって海賊対策に当たることができるのだというふうになるわけですから、海上保安庁法に基づいて自分たちが海賊対策を行うのだ、したがって予算を要求する、これが必要であるということを海上保安庁長官として御主張なされたのかということを聞いているんです。

岩崎政府参考人 海上保安庁は、先生御案内のとおり、老朽化した船舶の代替建造もやらなきゃいけない、こういう事情でございます。

 私も、補正予算に要求しないということについてはいろいろ検討はいたしました。海上保安庁の任務として、ソマリア沖ないし同種事案が発生した場合の対応をどうするかということについても考えなきゃいけない。一方、日本近海でもいろいろな事案が起こっている。それに対して、老朽化した巡視船で十分対応できていない。そういうことで、どうやっていくかということについて、それは私なりにも悩みました。

 その結果、繰り返しになりますけれども、こちらの、ソマリア沖の巡視船を対応しようと思えば、つくろうと思えば、多額の予算、相当の年数がたってしまう。それから、一方で老朽化した巡視船の整備を進めなきゃいけない、それはそれで優先しなきゃいけないという課題の中でどう考えるかということで、私も納得した形で、今回の補正予算にソマリア沖の巡視船を建造するという予算を盛り込まないという判断をしたわけでございます。

 繰り返しになりますけれども、海上保安庁は、何か逃げているとか、そんなことでやっていることは決してございません。

川内委員 だから、逃げているなんて言っていないじゃないですか。海上保安庁法に定められているように、きちんとお仕事をされているのかということを私は聞いているわけで、逃げているとか逃げていないとか、そういう評価を私は一切していませんからね。

 もう一度聞きますけれども、今納得されたという言葉が出ましたけれども、政府全体として、予算をつけないよ、ソマリア沖に対応する巡視船の新しい建造に予算をつけることはしないよということを言われて納得したと。ということは、岩崎長官は、予算をつけるべきである、予算をつけて新造船を建造すべきであるということを主張したということでいいですか。

岩崎政府参考人 いろいろ選択肢の一つとして考えはいたしましたけれども、繰り返しになりますけれども、老朽化している巡視船艇の代替更新を急いでいるという状況の中で、政府全体で話し合ってそのように方針を決めたところでございます。

川内委員 要するに、ソマリア沖に対応する「しきしま」級の巡視船について新たな建造はしませんよと政府全体として決めたのだということは、それはもう前々から何回も聞いていますから、ああ、そうですかと。それが正しいとは思いませんが、ああ、そうですか、それが政府の考え方なんですねということはわかりますよ。

 だけれども、一方で、岩崎長官が、海上保安庁を取りまとめられる立場として、海上保安庁法に基づいて必要なのだという御主張をされたんですかということを聞いているわけですよ。政府全体としてはこうしました、これこれこうだったんですという説明をしてくださいということを聞いているんじゃなくて、海上保安庁としてはどのような御主張をされたんですかということを聞いているんです。

岩崎政府参考人 繰り返しになりますけれども、私どもの方も、一方で老朽化した巡視船艇の建造をしなきゃいけないという課題があります。その課題と、それから、先生のおっしゃるとおり、ソマリア沖に巡視船を派遣するような態勢をとるということは、これはなかなか両立することが難しいと思っております。

 そのため、私も悩みましたし、いろいろ考えはいたしましたけれども、最終的に政府全体として、これは政府全体で決めたことですから、海上保安庁のソマリア沖に向けた形での巡視船の建造についてはしないという方針に従ってやっているところでございます。

川内委員 岩崎長官は、別に政治家ではないわけですから、政治的判断のことを答弁される必要はないんですよ。官僚として、私が聞いたことに淡々と答えていただければいいんです。そういう政治的答弁は閣僚の皆さんにしていただければいいんですからね。岩崎長官がお答えになられるのは、淡々と海上保安庁法にのっとってきちんと仕事をしているか否かということを私は聞いているわけですよ。

 なぜかなら、ソマリア沖の海賊対策も海上保安庁の任務であると。任務であるというのは、さっきおっしゃいましたよね。だけれども、海上保安庁が考えるに船がないのだということをおっしゃられた。それでは、この海上保安庁法に準ずれば、第四条で、性能を有する装備を急いでしなければならないねということになり、そしてまた、大型の補正予算が組まれますというときに、それでは大型の補正予算に合わせて、大変に国民の皆様方からも関心の深い海賊対策について早急に対応できる巡視船艇の予算要求をしなければならないというのが、この海上保安庁法の素直な読み方だと思いますよ。それをしたんですかと。

 いや、しました、ところが、政府全体としての政治的な判断でそれは却下されたのです、自分も、そう言われたから、今回はあきらめろと言われたので納得しましたというのであればわかりますが、この海上保安庁法上は、予算要求をして装備を整えなければならないというのが海上保安庁長官のお仕事ではないんですか。

岩崎政府参考人 私の、もちろん政治家ではありませんけれども、海上保安庁を預かる立場として、どうした船の建造を優先していくかというのは考えなきゃいけない立場にあると私も思っております。

 そういう中で、今回、ソマリア沖の巡視船を建造するということではなくて、繰り返しになりますけれども、やはり日本近海、いろいろ事案もございますし、現にいろいろ発生をしております。それに対して、私どもの船艇、航空機が老朽化して十分対応できていない、こういう現状を踏まえて、私の最終的な判断として、今回の補正予算には盛り込まないということを決断したわけでございます。

川内委員 今やっとわかりましたが、岩崎長官は、そもそも予算要求をしないという判断を自分がしたのだということをおっしゃられたわけですね。確認してください。

岩崎政府参考人 もちろん私一人で判断したわけではありませんけれども、海上保安庁としてどうかということを聞かれれば、それは、海上保安庁として私が判断をいたしました。

川内委員 これはめちゃめちゃ大きな答弁で、海上保安庁法に明確に違反すると思いますよ。海賊対策は海上保安庁の仕事である、任務である、ソマリア沖・アデン湾の海賊対処も海上保安庁の仕事である、任務であると言いながら、それに対応する装備を予算要求するか否かについて、いろいろ考えた結果、やめておきましたわと。これは任務を放棄しているんじゃないですか。(発言する者あり)いや、言葉じりじゃなくて。

 それでは……(発言する者あり)いや、だって、私はだから聞いたじゃないですか、行政マンとして真実を話してくださいねと。自分はこれが必要なんだということをおっしゃったんでしょうと気を使って言っているじゃないですか。だけれども、いや、自分の判断だとおっしゃるのですね。

 それでは、金子大臣は、国土交通大臣の管理する海上保安庁ですから、海賊対処は海上保安庁の仕事である、任務であるというときに、装備が不足している、ではどうするかというときに、財務大臣や麻生総理大臣、あるいは与党の幹部と相談なり交渉なりを全くしなかったんですか。

金子国務大臣 海上保安庁法の第一条あるいは第二条におきまして、海上保安庁のまさに任務として、海上の安全及び治安の確保を図ることを任務としているということで、地理的概念を問わず海上保安庁が今申し上げたことの任に当たるということは、海上保安庁の役割であります。

 一方で、海警行動もそうでありますが、今度の法案第五条では、海上保安庁によるこういう海賊対処への対応は、今申し上げた海上保安庁法その他の法令の定めるところによりまして、海上保安庁がこれに必要な措置を実施するものとしております。

 一方、今度の法律第七条で「防衛大臣は、海賊行為に対処するため特別の必要がある場合には、」この「特別の必要がある場合には、」は、海上保安庁の装備をもってしては対応できない、これは海域の問題だけではありませんし、当然、海賊行為が行われる相手側の武器等々、様々な状況がありますけれども、つまり、地理的だけでない要件、相手の武器の要件もありますけれども、こういう特別の必要がある場合、第七条におきまして、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海賊行為に対処する必要な行動を命ずることができる、こういう法律をつくっておるわけであります。

 そこで、今御指摘の海上保安庁の装備についてということであります。

 海上保安庁の長官が答弁されましたように、金が幾らでもあればいいんですけれども、今海上保安庁が持っております装備については緊急整備計画の渦中にあります。

 繰り返しの答弁になりますけれども、昭和五十二年に漁業専管海域が二百海里になりましてから、我が国のいわばEEZというのが五十倍の規模に膨れ上がりました。そのために、五十四年にかけまして、海上保安庁が急速な装備の増強をしてまいりました。そういう装備、それが次々と耐用年数を今迎えておりまして、四〇%が耐用年数、船舶、巡視船で二十五年、航空機で二十年でありますが、耐用年数を迎えております。

 そういう意味で、広がりましたEEZ管内でも、まさに海洋対策本部として、こういうEEZ、大陸棚に埋蔵されておると思われておりますさまざまな海洋資源、これはメタンハイドレートですとか、あるいは海底熱水鉱床と言われるようなレアメタル等々を含んだ資源の埋蔵が確認をされておりまして、メタンハイドレートについては、十年後をめどに商業化していこうという政府としての考え方を既に出しておりました。そういう意味で、こういう権益をきちっと守っていくということも一方で海上保安庁の大事な機能であります。

 そういう意味で、先ほど申し上げました、緊急整備計画というものを最優先にして更新をしていくということを岩崎海上保安庁長官は選択をされたということであります。

 そういう意味で、補正予算については、「しきしま」級、さらなる装備というものは今私のところには出てきておりませんが、しかし一方で、海上保安庁の役割というのが、この法案を機会に改めてその必要性というものを認識していただいている。また、この委員会でも、与野党の皆様方からそういう装備の増強というものは必要であるという御意見も出てきております。

 たった今、ソマリア沖向けに「しきしま」級というのを新たに創設するということは目下考えておりませんけれども、しかし、将来におけるいろいろな活動、あるいは先ほど申し上げたような海洋権益、広がっていく海洋権益に対する対応等々ということにかんがみ、「しきしま」級のさらなる装備の増強というものは真剣に考えてまいりたいと思っております。

川内委員 この海賊対処法が出てきている立法事実は、ソマリア沖の海賊が大きな被害を民間船舶に与えているからである、だからこの法律を内閣として御提出になられているわけですね。その法律の中でも、そしてまた海上保安庁法の中でも、海賊の対策、海賊行為に対する対処は海上保安庁がやるんです、必要な措置を講ずるんですということを書いてある。

 しかし、今すごく長い間金子大臣から御答弁をいただいたわけですが、結局、建造はしない、一言で言えば建造しないということを御答弁されたわけですけれども、私が聞いたのは、財務大臣や麻生総理あるいは与党の幹部と金子大臣が、海上保安庁の装備、特に遠くに出かけていく場合の装備について不足があるので、これは早急に装備をしなければならないんだがというような御相談をされたのですかということをお聞きしておりますが。

金子国務大臣 遠くに行くということではなくて、先ほど答弁申し上げたような、これから海上保安庁の装備というものもますます大事になってくる、こういうことをこれから財務大臣及び内閣総理大臣ともどもに真剣に相談をしてまいって、そして内閣の海洋政策本部として内閣の考え方とできるように真剣に進めていきたいと思っております。

川内委員 実は、「しきしま」の建造期間は、今まで累次の答弁では四年かかるということで御発言があるわけですが、実際には二年でできるのではないかという指摘がなされているわけですけれども、ちょっと真偽のほどを教えていただければと思います。

岩崎政府参考人 「しきしま」の建造でございますけれども、契約いたしましたのは平成二年の三月でございます。それから、起工、進水を経て、平成四年の四月に引き渡しを受けました。契約から引き渡しまでという意味では、当時、二年一カ月でございます。

 それから、もちろん契約をする前に、その基本設計でありますとか仕様書を作成するでありますとか、いろいろな手続がございます。こうしたものは、「しきしま」の場合、昭和六十三年の夏あたりから徐々に準備をしておりました。造船所に契約をして引き渡しを受けた期間は二十六カ月でございますけれども、それ以前の基本設計、仕様書の検討等をやった期間を含めますと三年強の時間がかかっております。

川内委員 正式に予算要求して、契約して、引き渡しを受けるまでは二年一カ月であると。

 その基本設計というのは何ですか。正式なものですか。予算がついて、正式に海上保安庁の仕事としてやられたものなんですか。

岩崎政府参考人 契約をする前に、発注者として、どういう船をつくってほしいか、どういう仕様のものにしなければいけないかというのを、これは私どもの方で考えます。どれぐらいの大きさ、どれぐらいのスピード、どれぐらいの、「しきしま」でいいますと、議論になっていますダメージコントロールを与えるか、こうしたものは、これは造船所側で考える話ではなくて私どもの方で考える話でございます。

 その基本設計、仕様書の検討、それを踏まえて予算要求、予算成立ということについて、契約の前に、「しきしま」の例でまいりますと本格的に検討し始めたのは昭和六十三年の八月でございますので、一年強の時間を要した上で契約をし、繰り返しになりますが、その契約後、造船所でかかった時間は二十六カ月、二年強でございました。

川内委員 いや、私が聞いているのは、その基本設計なり仕様書の作成なり、基本設計があるから仕様書ができるのか、仕様書があるから基本設計ができるのか、私ちょっとプロではないのでわかりませんが、いずれにせよ、予算がついてやられているものなんですかということを聞いているんですけれども。

岩崎政府参考人 最終的にはそれは予算額に応じた設計をいたしますので、発注をいたしますので、予算が成立しないとできないものでありますが、その準備は予算の要求過程でやっておりました。

川内委員 正式なものじゃなかったと。だから、正式には二年一カ月ぐらいでできるわけですよね。

 いろいろ言いわけされますけれども、結局、「しきしま」クラスを建造するとすれば、今後は、もう大体仕様もわかっている、基本設計もできているということで、二年ぐらいでできるということですね。

岩崎政府参考人 無理に我々四年かかると言っているわけではございませんけれども、今のは「しきしま」を建造したときの工程を御説明させていただきました。

 それで、今「しきしま」級の船を建造しようとした場合どうなるかというシミュレーションは、当然私どももやりました。

 一つ、先生おっしゃるとおり、基本設計でありますとか仕様書でありますとか、ここの部分は「しきしま」というモデルがありますから、その後、二十年前の船ですから、少し新しい考え方を入れたり、ルールが変わったりしたことで修正しなきゃいけないことがありますので、そこについては期間がゼロではありませんけれども、一定はかかりますが、当時一年余りをかけてやったという期間は短縮できると思います。

 ただ、二つ目に、契約につきまして、当時は随意契約でやっておりました。御案内のとおり契約手続を透明化していくということでございますので、今、特にエンジンにつきましては、随意契約ではなくて国際入札になっております。国際入札になりますと、予算の成立から契約まで、いろいろな手続が要りますのでやはり半年強かかります。

 それからもう一つ大きな今の状況の違いは、昭和六十三年当時、造船所の方は受注がそんなに多くはございませんでした。今、御案内のとおり、造船所は受注を大変多く抱えておりますので、「しきしま」と同じような工程でやるのはとても難しいという回答を得ております。

 そうしたことを踏まえて、「しきしま」級のものを今つくるとすれば四年以上の年月がかかる、このように答弁させていただいているところでございます。

川内委員 時間が来ておりますのでやめますが、造船所からすぐできないという回答が来ていると。その回答の文書を下さい。委員会に御提出をいただきたいと思います。

 きょうの質疑でも、できません、できません、時間がかかります、時間がかかりますと、本当に情けない。これではやはり自衛隊派遣ありきで、自衛隊がやるから我々は別にいいんですということで、海上保安庁法を改正して、もう東南アジアだけに限定しますというふうにした方が余計すっきりしますよ。

 終わります。

深谷委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

深谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として外務省中東アフリカ局長鈴木敏郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

深谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

深谷委員長 質疑を続行いたします。長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 同僚議員がほとんどいない中で、大変寂しい中でございますが、気を取り直して質問に移りたいというふうに思います。

 午前中の質疑で、公明党の佐藤議員が非常に重要なポイントを新たな視点で指摘をしていただきました。私も実はそのポイントを準備しておったので、ちょっとフォローアップの意味も込めて、まず冒頭に質問したいと思います。

 それは、たまたま海賊行為に出くわした場合の、いわば遭遇型の海賊対処についてでございます。状況を一応みんなでイメージをさせていただきたいと思いますが、例えば練習航海の途中とか、あるいはスマトラ沖で地震があった、そこに護衛艦が行った、国際緊急援助隊としての活動で行った、その帰りに、どこかの海、公海上で、明らかに海賊行為を働いている、つきまといとかそういうことを含めて商船を襲おうとしているような船に出くわした場合、これに対してこの法案で対応できるのか、これが佐藤委員の御質問だったというふうに思います。

 それに対しては、七条の二項ただし書きがあって、特に一つ一つ内閣総理大臣の承認は必要ないんだと。現に行われている海賊行為に対処するために急を要する場合、まさに今私が設定をさせていただいた状況だと思いますが、「必要となる行動の概要を内閣総理大臣に通知すれば足りる。」こういうことでございます。

 まず、国際法の観点から外務大臣にお伺いしたいんですが、国連海洋法条約に基づく場合、各国としてこういった海賊事案についてはどのような対応をすることが求められているんでしょうか。

中曽根国務大臣 国連の海洋法条約上では、海賊行為はすべての国がその取り締まりの権限を有するとともに、各国は、その抑止のために最大限に可能な範囲で協力する義務を負っているところでございます。

 こうした点にかんがみましても、御指摘のような急を要する海賊事案に海上自衛隊の艦船が遭遇をして、国連海洋法条約に規定する手続に従って臨検などのそういう行為というものを行うことは、これは国際法上、当然認められているものと認識をしております。

長島(昭)委員 それでは、浜田大臣にお伺いする前に、海上保安庁長官お見えですので伺いたいんですが、海上保安庁の場合はこの七条二項のような規定がないと思うんですが、そういうことにかかわらず、対処することができるんでしょうか。

岩崎政府参考人 海上保安庁法十八条に基づいて対処したいと思っております。そのような規定がなくても、海上保安庁法十八条に基づいて対処可能でございますので、特段そのような規定はありません。

長島(昭)委員 そこで、政府にお尋ねをしたいんですが、同じ警察活動、海上自衛隊が出る場合でも海上保安庁法を準用する、そして、武器の使用については、警察官職務執行法七条に基づく武器の使用に限定される。ですから、対処の形態は、海上保安庁も海上自衛隊も何ら変わるところはない。

 しかし、なぜ、海上自衛隊については、こういう急を要する場合であっても、このような七条二項の規定に従って通知をする、これは事前に通知をするのか、事後に通知をするのかも含めて伺いたいと思うんですが、まず、この法の精神、これは海洋大臣に伺った方がいいのかもしれませんが、これは防衛大臣でしょうか、まず、この法の精神を伺いたいと思います。

大庭政府参考人 先ほど外務大臣から御答弁がございましたように、公海上において行われる海賊行為に対しては、各国はできる限りの対処のための、抑止のための努力をするということになっております。

 それを踏まえて、この海賊対処法案を用意しているところでございまして、そのような遭遇型にしろ、公海上で海賊に遭遇した場合には、第五条の海上保安庁が対処する、あるいは、それによりがたい場合には七条によって対処する、そういう仕組みを用意しているわけでございます。

長島(昭)委員 質問を聞いていてください。同じ警察活動だと。同じ海賊行為への対処、一方で、海上保安庁は海上保安庁法に基づいて、一々総理大臣への通知など必要なく、その場で対応ができる。しかし、海上自衛隊の場合はこういう通知が必要となっている。その違いはどうしてですかという質問です。

大庭政府参考人 海賊対処に関しましては、まずは海上保安庁がこれに対処する。これによりがたい場合、特に必要がある場合には自衛隊による行動を命ずることができるという根拠を設けているわけでございます。

 これは、自衛隊に関しましては、まずは我が国の防衛に関する任務を持っておって、必要がある場合には公共の秩序の維持にかかわる任務に従事することができるということになっている。その本来の、その組織の任務を前提として、まずは海上保安庁、そして特に必要があるということが認定される場合には自衛隊、このような位置づけにしてあるわけでございます。

長島(昭)委員 今の説明ですと、従たる任務であるから一々こういう仕組みを設けてワンクッション置いている、そういう説明なんですが、ちょっとにわかには納得しがたいんですけれども。

 実力部隊を海外に出すから、ここはひとつワンクッション置こう、そういう意図じゃないんですか。海洋担当大臣、お答えいただけますか。

金子国務大臣 海警行動を八十二条でやったときには、総理大臣の承認になっていますね。同じようなコンテクストで、今おっしゃられました自衛隊法三条、主たる任務という部分に、公海の安全というのが規定されておりますね。そういう意味で、こういう……(長島(昭)委員「本法案の七条二項を聞いているんです」と呼ぶ)七条二項にそういう規定をしているわけであります。

長島(昭)委員 大臣、規定されているのは私も読めばわかるんです。なぜこういうワンクッションを置いているんですか。もう目の前に海賊行為が行われているんだから、すぐ対処しなきゃいけないんじゃないですか。国連海洋法条約でもそういうふうに各国に要請しているわけですよ。そういうまどろっこしい仕組みをわざわざ設けた理由は何ですか、そういう質問です。

金子国務大臣 言葉足らずでした。

 自衛隊の活動ということでありますので、ここで文民統制をきちんと明示するという意味で規定をさせていただいているという趣旨であります。

長島(昭)委員 最初からそういうふうにお答えいただければ。そうですよ。そういう法の趣旨なんですよ。大庭さんもぜひそこは認識をしていただきたいと思います。

 それはわかりました。やはりここはワンクッション置いておこう、こういうことでございます。そのワンクッションが本当に適時、タイムリーな対応の阻害要因にならないのかというのが私のもう一つの疑問でありまして、防衛大臣、これから海上自衛隊が出ていくわけですけれども、この通知というのはどういうタイミングで総理に対して通知をすることになっているんでしょうか。これは法の枠組みですから、海洋大臣にお伺いしなきゃいけないのかもしれませんが。

 つまり、現認しました、もう商船に取りつきそうになっているというときに、一々、北緯何度、東経何度、今ありますなんという話を通知している間に取りつかれちゃったら、もうこれは一巻の終わりでしょう。その辺はどういう仕組みになっているんでしょうか。

 きのうあたりは事後報告だとかそういうような話も出ていましたけれども、ここはもう一度、政府として統一見解を求めたいと思います。

浜田国務大臣 先生、その場合場合の事態というのがあると思うんですね。それが要するに、かなり遠くから情報が得られて、している場合には、報告も基本的には逐次というのがあるかもしれませんが、基本的にはやはり事後になる可能性が高いのではないかなというふうに思っております。

 ただ、いずれにせよ、事態がすぐ近くで、海の場合はおかの場合と違いまして距離的要件がいろいろありますので、その辺のところの時間の差というのがどのように出てくるかというところで、可能であればそういう報告もできるかもしれませんが、正式な意味での要するに報告ということになれば、当然紙も出しということになれば、事後報告になるのかなというふうに思っております。

長島(昭)委員 ここは議事録に明記をさせていただきたいと思います。

浜田国務大臣 極めてあれですが、大変、私が答弁を間違ったようでありまして、事前にやるようになるということでありますので。ということは、見つけて、そういう状況が起きたら、即そのまま連絡しなくてはならないということになろうかと思いますので、そこのところのイメージが私の方にもちょっと今できておりませんでしたので、ちょっと今先生がおっしゃったことに対してのイメージがわかなかったので、今そういった答弁をしてしまいましたが、基本的には、運用の面からいくと、少々、今私の頭の中によぎったのは、本当に先にできるのかなと思ったので、言ってしまいました。

長島(昭)委員 大臣は、国会承認に対する考え方といい、今の問題に対する姿勢といい、本当に真っすぐ答えていただいて感謝しておりますが、これは、しかし、大問題でしょう。事前に通知するか事後で通知するかは結構大きな問題ですね。

 運用企画局長、いますか。今大臣がまさにお触れになったように、本当に大臣の御答弁は正直なところだったと思いますよ。距離があって時間的に余裕があるんだったら、それは事前に通知することは可能だと思いますが、現に目の前で起こっていたとしたら、これは通知しているいとまがあるんでしょうか。

徳地政府参考人 まさにそれは、どのようにして海賊行為に遭遇するかということの状況いかんによるんだろうとは思いますけれども、いずれにしても、この七条の二項のただし書きにつきましては、まさに、対処するために急を要するときは通知と書いてあるわけですので、これに基づいて事前にやるということになると思います。

長島(昭)委員 私、実は、この問題にこんなに時間をとるとは思っていなかったんですが、これはオペレーション上、非常に重大な問題でありますので、これは、委員ひとしく、これから考えていかなきゃいかぬ問題だと思っています。

 この七条二項を貫くとすれば、さっき言ったように、文民統制の観点からこのワンクッションは必要だ。一方で文民統制の要請があり、もう一つは海賊行為をきちんと取り締まらなきゃならないという現場の事情もあるわけですから、これをどうやって整合させるかというのは、私は非常に重要な問題であると思います。

 さっき佐藤委員の方から、この急を要する問題があるので、七条二項を認める場合には国会の事前承認なんか一々とっているいとまはない、こういう御発言がありまして、私もなるほどなと思って聞いておったんですが、これは条文の立て方の問題でありまして、私は、この急を要する部分については、別個、国会での承認、これは仮に事後承認としてもいいでしょう、そういう場合があってもいいですけれども、全体として国会の事前承認を求めていくことは何らこの七条二項と矛盾するものではないということを一言だけ申し添えておきたいと思います。

 それから、二番目の論点でありますが、これも防衛大臣の、十七日、先週の御答弁で、例えば今みたいなケースで、商船がつきまといに遭っているのを現認したとしますね。にわかにそれが海賊かどうかというのはなかなか判別しがたいということで、大臣の答弁によれば、「例えば警告射撃等により海賊船舶を停止させ、特別機動船を用いて海賊船舶に接近し、接舷し、立入検査を実施するというような対応が考えられる」、こういう御答弁でありました。これは間違いございませんね。

 それに加えて、不審な海賊行為をやっているらしい船を見つけたときに、それに対して警告射撃などをやる、あるいは呼びかけなどをする、そういう手続をもう少し時系列的に詳しく説明していただけますか。

浜田国務大臣 基本的な手順とすれば、今先生がおっしゃったことにつながってくるわけでありますけれども、基本的に、護衛艦による民間船舶の護衛や、護衛艦、哨戒機による哨戒活動を実施することによってこれを抑止し、そしてまた退散させるということでありますので。また、このような考え方に基づいて、例えば海賊船が民間船舶に著しく接近する行為などを確認した場合は、今先生がおっしゃったように、呼びかけ、サーチライトの照射等、こういったことで海賊に対処することが考えられております。なお、このような対処の後に、継続した場合には、警告射撃等によって海賊行為を制止することが考えられるということでございます。

長島(昭)委員 ところで、最終的に確認するために立入検査を仮にするとしたら、立入検査というのは何のために必要なんでしょうか。これは海洋担当大臣でしょうか、それとも、事務方でも結構ですが。

大庭政府参考人 海賊と疑われるような船舶を確認した場合には、その船舶に停止を求め、立入検査をして、その意図なり目的なりを確認するための手順として立入検査をするものでございます。

長島(昭)委員 今おっしゃったように、海賊というのはなかなか見分けがつかない。さっき、岩崎海上保安庁長官も、海賊は見分けがつかない、こういうふうにおっしゃっていました。

 それから、過去、これは現行法の海上警備行動で行っている自衛隊の護衛艦も、三件、四月四日、十一日、十八日、なぜか毎週土曜日に出没するわけですけれども、三件あったと。その三件は、もちろん立入検査なんか権限がないですからできません。その結果、その三件が何だったのか、相手がどういう船だったのかというのは見分けがついているんでしょうか、いないんでしょうか。

北村副大臣 お答えをします。

 先生のお尋ねに、時間が大切ですから、結論のところだけ簡潔に申し述べることをお許しいただけるならば、よろしいですか。(長島(昭)委員「はい、結論だけで」と呼ぶ)

 三件の対応において、対応した護衛艦は、それぞれの小型船舶を確認はいたしておりますけれども、海賊船かどうかの確認はとれておりません。

 以上です。

長島(昭)委員 そうしますと、これは防衛大臣でも海洋大臣でも結構なんですが、相当疑わしいといって、さっきおっしゃったように、警告して、サーチライトを当てても、さらに継続してつきまとい行為を続けているという場合に、当然立入検査に及ぶ。立入検査をした結果、あ、実は漁船でした、非常に疑わしい外観だったけれども、最終的には単なる漁船であったというようなことも判明するということがあり得るという認識でよろしいんでしょうか。

金子国務大臣 そのとおりであります。

 確認をした結果、本法案で定める海賊行為には該当しないと判断した場合には、本法案に基づきます対処を継続することなく、行っていた確認手続についても速やかに終了することとなります。

長島(昭)委員 もし、確認した結果、漁船だったといった場合には、その後のプロセスはどうなるんでしょう。

 つまり、疑わしい行動をしていた、だから、例えば警告射撃、バンバンバンと、テレビでも皆さんごらんになったと思いますが、警告射撃なんかをして、ある種無理やりとめるわけですね、とめて、入っていく、そうしたら漁船でしたと。その後のことについては、その漁船に対して、済まなかったと謝るのかどうかわかりませんが、どういうプロセスが考えられるんでしょうか。

大庭政府参考人 今の御質問の点に関しましては、それぞれ具体的な状況に応じて、その時点でどういう行動をとっておったのかということを踏まえて、判断、対応することになるんだと思います。

 立入検査をして漁船だったということがわかったとして、それ以前の行動が、商船につきまとうような、非常に近くまで寄るような危険な航行、行為を行っていたようなことであれば、その点について、危険な行為をやめるようにという指導をするようなことになると存じます。

 いずれにしても、その後、速やかに退去するということになると存じます。

長島(昭)委員 そうしますと、立入検査をした結果、相手が単なる漁船だったということがわかって、つまりは、あの不審な、異常な行動は海賊行為が目的でなかった、海賊行為なんか目的ではなかったということが判明したとしても、今はっきりはおっしゃりませんでしたけれども、その場合、警告射撃を事前にした場合でも、それがさかのぼって違法だったとかそういう評価にはつながらないという理解でよろしいんでしょうか。

大庭政府参考人 その状況を判断して、その船舶を立ち入って検査する必要があるという合理的な判断に基づいて行ったものであれば、特に問題はないと存じます。

長島(昭)委員 そうじゃないと、安心して隊員も職務を遂行することは恐らくできないんだと思うので、今の御答弁はそのとおりだろうというふうに思うんです。

 整理しますと、逆からいいますと、立入検査というのは、その疑われる船が、海賊行為の要件、海賊行為をやっている、そういう要件を満たしていない、満たしているということが確認されないと立入検査ができないわけではないということですね。もう一回お答えください。

大庭政府参考人 立入検査の段階で既に、海賊対処法案第二条に定める海賊行為に該当するという認定がない段階であっても、疑わしいという状況でこのような行為はとることができるものでございます。

長島(昭)委員 ということは、これは論理的な帰結として、先ほど浜田大臣からも御解説をいただいたように、停船命令、警告射撃、呼びかけ、いろいろなことを通じてその疑わしい船に接近していくわけですが、海賊行為を働いている以外の行為であっても、場合によっては、さっき大庭さんがおっしゃったように、合理的な疑いがあれば、不審な小型船が、例えば商船の周りをつきまとったり急速に移動したり、外見上そういうことがあった、こういう場合、合理的な疑いがあれば、結果として海賊行為でない場合にも、一連の、立入検査を含む警告射撃などができる、こういう理解でよろしいですね。

大庭政府参考人 今委員御指摘のとおりでございます。

長島(昭)委員 わかりました。

 それでは、次の問題に行きたいと思います。

 海洋担当大臣が先週の十五日の質疑でお触れになった、外国の領海に入り込んでいく可能性があるかないかという話。これは、状況として、海賊取り締まりのために我が国の船、自衛隊にしろ海上保安庁にしろ、他国の領海内に入っていって取り締まりを行う可能性があるんだということを金子大臣は答弁をなさっておられますが、具体的にどんな事態を想定してこういう御答弁をなさったんでしょうか。

金子国務大臣 前回の答弁では、あわせて申し上げたのは、他国の領海において、その他国、つまり沿岸国が、その領域主権に基づきみずから取り締まりを行うのが通常でありますので、我が国が警察活動のために立ち入るということは基本的には想定はしておりません。

 ただ、この法案で立ち入ることが可能であるというケースとしては、日本人が公海上で人質になって、そしてその船がその国の港に入る、これを見届けるというようなときに、当該国の同意を得て他国の領土に入るということはあり得るのだと思います。

長島(昭)委員 例えば、日本人が連れ去られたりとかけがをさせられた、こういう場合に追っかけて入っていく可能性があると。

 そこで、大臣は、十五日の答弁の中で、「これを追跡して取り締まりを行うことは、国際法上は問題がないという理解、認識であります。」とおっしゃっている。外務大臣、これで間違いございませんね。

中曽根国務大臣 国際法上の話について申し上げれば、領海は、先ほどからお話ありますように、沿岸国の領域の主権に服するわけでございますけれども、当該沿岸国の要請とかあるいは同意がある場合などにおきましては、沿岸国以外の国が当該沿岸国の領海において管轄権を行使することは問題はないと考えております。

長島(昭)委員 つまり、他国の領海内で、つまり領域内で管轄権を行使することはあり得るということは、すなわち公権力を行使することはあり得る、こういう理解でよろしいですね。

 最後の論点に行きたいと思います。

 我が国は、調査捕鯨をこれまでもずっとやってまいりました。これは、浜田防衛大臣も非常にかかわりの深い論点だろうと思いますが、例のシーシェパード、この荒くれどもが、我が国が実施している調査捕鯨を毎年のように、二月、三月、妨害をしている。新聞報道によれば、酪酸というんでしょうか、液体入りの瓶を投げつけたりとか、あるいは船に何度も衝突をするとか、これはことしの事例だと思いますが、信号弾を水平に発射している。これは明らかに、暴行というよりは傷害ですよね。もしかしたら、当たりどころが悪かったら即死するかもしれない。そういう行為をこのシーシェパードというのはやっています。

 まず外務大臣にお伺いしたいんですが、最初に伺いたいのは、国際法上、我が国が実施している調査捕鯨というのは合法的な活動ですよね。大臣、その点。

鶴岡政府参考人 我が国が行っております調査捕鯨は、国際法上合法な活動でございます。

長島(昭)委員 国際法上合法的な活動をしている我が国の調査捕鯨船に対して、今私が少し紹介した、まさに暴力行為を働く。海上における妨害行為というのは国際法上どういう評価を受けるのかを伺いたいんですが、こういうのをまさしく海賊行為というんじゃないんでしょうか。外務大臣、いかがでしょう。

中曽根国務大臣 海上における暴力行為の具体的態様によりましては、例えば今のシーシェパードのようなものは、抗議行動ということではありますけれども、ある意味では妨害行動ということになるわけでございますが、国連海洋法条約上の海賊行為に該当する、そういうふうに判断される可能性というものは直ちに排除されないもの、そういうふうに考えております。

長島(昭)委員 私もこういう活動というのは海賊行為だと思うんです。

 しかし、本法案では、海賊行為というものを、言ってみれば狭く定義をして、二条各号に書いてあるようなものに限定をして定義をしているんですが、あえて限定的に定義をする理由は何でしょうか。海洋担当大臣、お願いします。

金子国務大臣 海上自衛隊を派遣するという行動であります。そういう、海賊行為ということを認定する、シーシェパードの行われている活動というものが、本当に我々が定義しております海賊行為に当たるのかということについては、やはり世界的に理解が得られるのかどうかということに照らしまして、それには当たらないということで排除させていただいた次第であります。

長島(昭)委員 本当にそうですかね。世界的にこれは海賊行為と認められないんでしょうかね。私は、にわかにそれは信じがたいですよ。

 海上保安庁長官、お見えですね。二年前ですか、捕鯨船に上乗りをしておられた保安官、たしか三名けがをされたというふうに聞いておりますが、その状況を端的にお答えいただけますか。

岩崎政府参考人 先生御指摘のとおり、シーシェパードから投てきされた酪酸の飛沫が、海上保安官の二名と日新丸の乗組員一名、この三名にかかって、目の洗浄を受けたということでございます。この件については、傷害罪等の容疑で捜査を進めております。

長島(昭)委員 捜査を進めているといっても、もう二年以上たってしまっていまして、これはどこに行ったかよくわからぬという話で、泣き寝入りに近い状況で、本当に、私ども海洋国家として、こういうことを許しておくわけにいかないと思うんですよ。ですから、こういうものをやはり加えて取り締まりができるような法案にぜひしていかなければいけないと思うんです。

 なぜかというと、これは恒久法である海賊対処法案なんですよ。これはソマリアの海賊だけに対応する、先ほど浜田防衛大臣もそういう意向もあったような御答弁をなさっておられましたけれども、特別措置法だったら、シーシェパードみたいなものを排除するというのは説明としてはそれなりに納得がいくわけですけれども、しかし、恒久法たる海賊対処法案、これだけの被害が日本で出ている。当然、海洋担当大臣としては捨ておけないと思うんです。

 最後に、ことしの三月十七日に、河村官房長官の内閣委員会での御答弁ですが、こういう御答弁がある。「日本は海洋国家であり、いささか遅きに失したかもしれませんが、海洋基本法ができた。」中略「特に、最近のシーシェパードの妨害行為、これは非常に私も遺憾なことであるし、これに対して早急な対策を立てなきゃいかぬ。これまで決議もいただいていることでございます。 実は、今回のソマリアのいわゆる海賊対策、海賊法案、これについてもこれが取り入れられないかという議論もあったんでありますが、これはまずは海賊というところまで入らないということになりまして」これは今御説明のとおり。「今回の中には入っておりませんけれども、しかし、それに類する考え方だということで、海洋本部の事務局が中心になって、今、成案を得るべく、関係府省との連携協力の下で今進めておるところでございます。」

 進んでいるんですか。これは海洋政策本部で、新しいこういうシーシェパードなんかに類する海賊まがいの行為に対してしっかり取り締まる、そういう立法を準備しているんでしょうか。お答えいただけますか。

大庭政府参考人 海賊対処法案で対象といたしております海賊行為に関しましては、国連海洋法条約の趣旨にかんがみまして、公海における旗国主義の原則の例外として、我が国が直接管轄権を行使できるもの、そういうものとして対処しようとしているものでございます。そういうものであるだけに、国際的に理解の得られるような、いわゆる海上強盗と申しましょうか、そのような行為を管轄権を越えて我が国が実施できるようにする、そういう根拠を設けようとしているものでございます。

 今御指摘のような、海上におけるさまざまな違法な暴行と申しましょうか、そういう行為自体は違法な行為でございます。例えばSUA条約という条約がございますし、我が国の刑法上の適用もございます。そのような法令に基づいて、先ほども御答弁があったように手配が行われたりもしているわけでございますけれども、そういうさまざまな手だてがより効果的に推進できるようにするためにはどうしたらよろしいか、そういう点について、私ども海洋政策本部事務局と関係省庁と連携しながら検討を進めていくということにしているものでございます。

長島(昭)委員 政府に立法を迫るというのも立法府としては変な話ですから、これは国会議員として、立法府の一員として、きちんと立法をこれからしていく努力も我々していかなきゃいかぬと思っています。

 質問を終わります。ありがとうございました。

深谷委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 渡辺でございます。引き続きまして質問をさせていただきます。

 今、長島委員が質問でも触れられましたけれども、ちょっと質問通告の順番を、関連性をもちまして変えさせていただきたいと思います。

 アメリカの貨物船アラバマ号が海賊に襲われまして、船長が人質にとられ、出動したシールズ、海軍の特殊部隊によって無事奪還されたわけでございます。海賊四人のうち三人を射殺、一人を拘束した。後で読んだところによりますと、二十五メートルとも四十メートルとも言われる海賊との距離を、揺れる洋上で狙撃をして、このシールズという組織の物すごさを知ったわけでございます。アメリカのニュース番組CNN等でも、救出された乗組員のいろいろインタビューなんかも随分見ましたけれども、実際問題として、まさにハリウッド映画さながらの事件が洋上で起き、しかも、ここで特殊部隊の手によって今回は解決をされたということでございます。

 今、長島委員も触れられましたけれども、万が一、我が国の艦船、我が国の商船なり貨物船がこのような目に遭った場合に、私どもの国が救出をするということを考えれば、まず最初に聞きましょう、もし人質が連れ去られて、万々が一、他国の領海、特にソマリアの暫定政府の領海内に連れ去られたという場合には、我が国はいかなる対応ができるのかということにつきまして質問をさせていただきたいと思います。

大庭政府参考人 法制上の観点から御説明をいたしますが、外国の領海においては、当該沿岸国がその領域主権に基づいてみずから取り締まりを行うというのが通常でございますから、我が国の海上保安官などが警察活動のために他国の領海に入って活動するということは基本的には想定をいたしておりません。

 他方、当該沿岸国の同意を得て、または要請を受けて、公海等から海賊行為を行った者を追跡して当該沿岸国の領海内に立ち入るということは本法案の規定上も可能であるというふうに承知をいたしております。

渡辺(周)委員 想定はしていないけれども、起こる可能性としてはこれはゼロではない。もし、日本の商船なりが襲われ、人質になった、そして船長なり人質がその海賊船に乗せられて逃走している、もっと言えば自国に逃げ込むということになった場合は、当然、日本の派遣されている海上保安庁なり海上自衛隊は追跡をして奪還をすることができる、それは可能だということでよろしいですか、確認ですけれども。

大庭政府参考人 公海上で海賊行為を行い、日本人を人質にとった海賊船がそのままある国の領海内に入り込んでいく、それを公海上で我が国の取り締まり機関が追跡をしているということ、そういう状況のもとで、その当該国の領海の境界付近まで追っかけることは当然にできるわけでありますけれども、その際、通常であれば、その領海内は当該国の管轄権に基づいてその国が主権を行使するエリアでございますので、我が国の警察機関が当然に追跡をしてその領域内に入って活動するということはないわけでございます。

 しかしながら、通常であれば、例えばその当該国の警備機関に連絡をとって、ここまで追跡をしたけれども、この後しっかりフォローしてくれというような連絡をとるなど、連携をとって対処するというのが基本になろうかと存じます。

渡辺(周)委員 では具体的に言いますと、先ほど申し上げましたけれども、ソマリアという国が当該主権国家として、これが果たして国家と言えるのかどうか、私は言えないと思うんですが、このソマリアにそれでは了解を得れば、ちょっとややこしいので、ソマリアの了承を得て領海内に入ることができるということかと思いますけれども、では、当該国の了承あるいは同意を得てその領海内に入る、特にソマリアに限定した場合、これはいかなる外交的なアプローチをして可能になるんでしょうか。その点についてお答えいただけますか。

別所政府参考人 現実的には、ソマリアと日本との関係、ケニアにおきます私どもの大使館がソマリアとの関係をつかさどっております、兼轄国ということでソマリアを担当しておりますので、そのルートを使って先方に連絡をとるという形になると思っております。

渡辺(周)委員 それは時間的にどれぐらいかかることなんですか。つまり、追跡をしている、領海の手前まで来た、相手国の領海内に逃げ込んでしまった。我が国は、ケニアにある日本大使館を通してソマリアの当局と交渉をして、今から、日本人が人質になっている船を追いかけて手前まで来たんだけれども、了承をもらえないとおたくの領海内に入れないという交渉をするわけですね。それは果たしてどれぐらいの時間で可能になるんですか。

別所政府参考人 正直な話、実際どれぐらいかかるかというのは私推測することはできませんけれども、時間がかなりかかってしまう場合もあろうかと思います。

渡辺(周)委員 では、その場合は、追跡をしている日本の艦船はどのような対応をとるんでしょうか、その了承が得られるまでの間は。もし領海内に入ってしまったら、それはあくまでも、今度は逆にソマリアの警察当局なりコーストガード当局に連絡をとって、日本の追跡した船がおたくの領海内に入って、そこに日本人の人質が乗っている、あるいは日本の物資が載っている、引き続き、拘束するなり逮捕あるいは何らかの出動をしてほしいということをどっちにしてもしなきゃいけないわけですね。

 それは果たしてスムーズにできますか、ソマリアという国家と一緒に。

別所政府参考人 先ほど申し上げませんでしたけれども、委員御存じのとおり、安保理決議のもとで、ソマリアとの関係で事前にもちろん了解をとっている場合には、スムーズにそういう手当てができるという制度はございます。ただ、日本は今そういうことをやろうとしておりません。

 そうじゃない場合に、連絡をとってやっていくことがどれほどスムーズにいくかわかりませんが、先ほどの委員の状況設定という意味で、どの段階で先方の協力を求めるのか、どの段階で自分が入ることの了承を求めるのか、そのあたりは、できるだけ一番効果的な方法というのを現場では判断せざるを得ないんだろうとは思っております。

渡辺(周)委員 それは、もう時間も限られていますから率直に言えば、要は、このままいくと領海内に逃げ込む可能性が高い、だから、追跡している船が、例えばこれはどこに連絡するんですか、これも教えていただきたいんですが、連絡をとって許可を得て、つまり、ソマリアの警察当局あるいは海上保安当局と話をしてくれ、それがだめな場合は、このまま外交ルートを通して、この船がこのまま追跡をしていくということを同時進行にやらなきゃいけないと思うわけですけれども、そのことについては想定をして、考えては当然いるわけですね。

 つまり、追跡している船が、同時に、追跡をしながらソマリア領海内に入るという外交ルートでの了解を得る、あるいは、もし入れない場合には、ソマリアの国家機関というのか、治安当局にその先をゆだねる、引き継ぐということをやるということで当然想定をしているわけですか。それはよろしいですか。

別所政府参考人 私から申し上げられるのは、国際法的に申せばそういうやり方が当然あり得るということでございます。具体的な現場における手順について、あるいはその御担当の方にまた御質問いただければと思います。

渡辺(周)委員 では、それについては、御担当の方というと海洋担当大臣ですか。防衛大臣。

浜田国務大臣 基本的に、我々とすれば、今先生が想定されているような状況というのをまず生起させないことが重要というふうに考えておりますので、まずは、要するに割り込みなりなんなり、警告なりをして、そこで離して、我々の任務はあくまでも要するに船団防衛というか、安全な航行をするための警護をするのが我々の仕事でありますので、追いかけていって人質を救出するとか奪回するというのは、これは我々としては想定しておりません。

 それでまた、基本的に、これは先ほど来いろいろなお話、議論がありましたけれども、その中において、人質の救出というのは、世界的に見てもこれは大変難しいことでもありますので、そういったことを考え合わせると、我々とすると、まず、先生の想定で、追いかけていってというお話がありましたが、そうではなくて、やはりそれ以前の、要するに追い払いとかそういったことに集中することが重要かなというふうに思っているところであります。

渡辺(周)委員 もちろん、法の中身はわかっております。ただ、実際、もうこういう事件が起きているわけですよ。だから、全くないとは言えない。だけれども、それが起きた場合にどう対処できるかということは考えておかなきゃいけないと思うんです。想定していないから、その場になって、起きた場合に対応が何もできないというのではなくて、もし万々が一そういうことが起きた場合はどうするのか。実際、すべての日本の商船、ここにいる何らかの船すべてを警護できるわけではありませんから、実際、こういうことに偶発的に出くわすことだってあり得るわけですね。

 ですから、その場合はどうなんですかということを私は当たり前のように聞いたわけでございまして、これは想定していないというのは、公式的な、建前的な答弁かもしれませんけれども、実際そうなった場合にはどう対処しなければいけないかということ、あるいはどのようなルートで、もっと言えば、ソマリア領海内まで追跡するとなると、これは暫定政府の許可がなきゃいけない、暫定政府の判断が待たれる、しかし、もう時間的余裕がないということになったときにはどうするか、あるいは、これは外交ルートなのか現場レベルの判断なのかわかりませんけれども、その点については当然考えているんですねということを私は素朴に聞いただけでございます。

 何か御意見がありましたら、どうぞ。

浜田国務大臣 ただ、我々とすると、実際に現場に出ている人間、自衛官のことを考えれば、当然、今先生のおっしゃったようなことを考えないわけではありませんけれども、しかし、やれること、やれないことというのは当然出てくるわけでありますので、それも考えながら、その事態に対応しながらやるのは当たり前の話でありますが、そこは考えてやっていこうと思っております。

 しかしながら、一般論として言えば、確かに今先生が御心配な部分というのは多分あると思いますが、しかし、我々とすれば、まずそこの追い払いとか警護というのが我々の今の任務でありますので、そこに集中させていただいているというのが今の現状であります。

渡辺(周)委員 もちろん、何のために行くかということもわかっていますけれども、そういうことは当然あり得る。相手は、ある意味でアウトローですから、これは海賊なんですから。

 実際、もうこれはアメリカの貨物船の船長を人質にし、あるいはフランスのヨットは襲われて、実際殺されているわけですね。それ以外にも、人質になっている人たちの話はもうたくさんあるわけでございます。ですから、そういう可能性は蓋然的にあり得るということは当然考えていると思うんです。ただ、もしかしてこの場では答えられないということなのか、その辺はわかりませんけれども、とにかくこの点については、最悪の可能性、考えられるあらゆる可能性を想定しておくべきだろうというふうに私は思います。

 この問題で大分時間をとってしまいました。

 さて、ではちょっと質問をかえます。

 たまたま海上保安庁のSSTという特殊部隊の本を読みまして、私は大変関心を持ったんです。

 SSTというのは、八〇年代の関西空港が建設されるときに、いわゆる海の成田化を防ぐために、海上警備隊が海保の中に設けられました。そして、いわゆる海上警備に当たり、それが前身でございまして、八八年に、ソウル・オリンピック、関釜フェリーの乗船警備、八九年の八月には、東シナ海でパナマ船籍の鉱石運搬船が、フィリピン人船員による暴動が起きたものですから、監禁された英国人の乗組員を救出に行った、そして暴徒を鎮圧した。さらには、九二年十一月に、プルトニウムの輸送、核ジャック阻止のために、あかつき丸と「しきしま」に乗り込んで警護に当たった。大変な精鋭部隊でありまして、アメリカの特殊部隊のシールズの指導も受けたというふうに本には書かれているわけでございます。

 海上保安庁の精鋭が集められて、非常にベールに包まれた組織なのでありますけれども、こういう組織が存在するということは幾つかもう既に報道もされて、一部公開されているということも聞いているわけでございます。

 九九年の九月には、東ティモールでの独立暴動で取り残された邦人の救出のために行っている等々の実績を残しているわけでございますけれども、このSSTという組織の概要あるいは実績については今述べたとおりでよろしいのかどうか、お答えいただけますでしょうか。

岩崎政府参考人 海上保安庁のSST、特殊警備隊でございますけれども、先生御指摘のとおり、昭和六十年に関西空港建設の海上のために創設された関西国際空港海上警備隊と、それから平成四年のプルトニウム輸送でテロ対応のために編成された警乗隊を統合して、平成八年に創設したものでございます。

 過去、出動した実績でございますけれども、不審船の事案でありますとか、シンガポール籍の貨物船の船内暴動事案等、出動いたしました。

 その詳細につきましては、今後の活動に支障を来すおそれがあると考えますので、回答を差し控えさせていただきますが、こうした実績がございます。

渡辺(周)委員 恐らく、この組織について公式に認められたのは私は今初めてじゃないかと思うわけでございますが、詳細については私は別に聞こうとは思いません。これはやはり特殊部隊ですから、特殊部隊の中身がつまびらかになれば、これは当然、それを超えるテロリスト等があらわれた場合には、今度はこのSSTの隊員の身の危険にも及ぶことですので、目的の違う人間には情報をとにかく持たせないことが当然彼らの身を守ることであるということも百も承知でございます。

 今回、このSSTが、今お話がありましたけれども、これまでも大変な実績を積んで、もう既に東南アジアでは海賊対策等の指導的立場として、実際、このSSTが東南アジアのコーストガードの特殊部隊等のある意味では教官たる指導的立場もとるようになったということでございます。

 私自身は、こういう特殊任務に当たる組織は必要でありまして、海洋国家日本として、先ほどお話があった不審船であるとかあるいは密入国だとか、あるいはさまざまな麻薬や覚せい剤といったものがこの国の沿岸に運ばれてきている現状を考えれば、こういうまさに国境警備隊というか洋上の特殊部隊は必要であろう、さらに充実、育成をしていただきたいというふうに思うわけでございますけれども、このSSTもしくはこうした同等の訓練を受けた方々というのは今回の派遣の中には含まれていない、既に海上保安庁長官はそのようなことを一月二十二日の記者会見で、通常の捜査現場の職員を派遣するというふうに記者会見されておりますけれども、そういうことでよろしいんでしょうか。

岩崎政府参考人 今回、ソマリア沖に派遣した自衛艦に海上保安官が乗っているのは、司法警察業務を行うためでございますので、したがって、それに堪能な捜査のベテラン等をそろえて派遣しております。

 海上保安庁は、例えば東南アジアの海賊事案等でそうした凶悪な場合に対応する場合は、私どものこのSSTの乗船もこれは当然考えていく課題だと思っております。

渡辺(周)委員 ただ、先ほども冒頭に質問しましたけれども、例えば何らかの形で海賊が接舷をしてきて、これは非常に近接して何らかの形で危害が及ぶ等の可能性も考えれば、私は当然乗り合わせるべきではなかったのかなというふうに思うわけでございますけれども、今後、将来的にこのSSTの隊員に当然同乗、別に、司法保安官、海上保安官、通常の方にも乗っていただいて、こういうSSTを活用するということも当然考えられることだと思いますけれども、その点については見通しはいかがなんでしょうか、長官。

岩崎政府参考人 自衛隊と私どもとの役割分担というのがございます。今回は、そうした海賊を追っ払ったり、場合によっては拘束をしたり、こういうことについては自衛隊の方にお願いしましたので、その役割分担の中で考えていったところでございます。

 繰り返しになりますけれども、海上保安庁独自で海上保安庁の巡視船でオペレーションする場合は、こうした部隊の同乗というのも検討すべき課題だと思っております。

渡辺(周)委員 では、ちょっと質問をかえます。防衛大臣に。

 もし、万が一、この今乗っている自衛官の方々が対応するということになった場合、例えば海上自衛隊のやはり特殊部隊、SBUですか、ありますけれども、例えばこういう訓練を受けている方々が海上自衛隊の護衛艦に乗って、万々が一、いわゆる追跡してきた船や、あるいはつきまとってきた船を追っ払うということ以外に、もし、接舷してきた、何らかの形で非常に近接した形で対処しなければいけないということを考えたときに、当然対応すべく何らかの形で乗っていると思いますけれども、自衛官としての対応はどうなんでしょうか。こういう特殊部隊の方々が実際に乗っているんでしょうか。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、海上警備行動によって、ソマリア沖・アデン湾の海賊の対処につきましては、護衛対象船舶への海賊行為を制止するために警告射撃を行うということも想定されるところでございます。このために、射撃などにつきまして高い能力を擁する隊員が必要であるというようなことも考慮いたしまして、先生御指摘の特別警備隊の隊員も今回護衛艦に同乗はしております。

渡辺(周)委員 今射撃の話がありましたけれども、これ以外で万が一、これは私は、いつも、さっきから最悪のことばかり言っているんですが、何らかの形で人質をとる、とらない、あるいは何らかの形でだれかが拘束をされて危害が及びそうだというときには、当然、交渉する人間も必要だと思うんですよ。それなりのスペシャリストが当然必要だと思うわけですね。こういう場合にはどう対応するかということ。

 そのことについての十分な対応は当然されていると思うんですけれども、それぞれ乗っている方々の中に、例えばそういう場合の交渉術をできる方、あるいはそういう専門知識を持った、あるいは専門教育を受けた人、そういう方々も当然何らかの形で乗っている、スペシャリストが乗っているということで理解してよろしいでしょうか。その点について。

徳地政府参考人 特別警備隊と申しますものは、そもそも海上警備行動によって不審船に対して立入検査を行うような場合に、この不審船の武装解除でありますとか無力化を実施する必要がありますので、もともとそのような事態に備えて新編をされたものでございます。

 それで、今回ソマリア沖に派遣されました護衛艦にも若干、特別警備隊の隊員、乗っておりますけれども、これは、先ほど申し上げたとおり、基本的には、射撃についての高度な能力というものに着目をしたものでございます。ただ、もちろん、海賊対処のために派遣されておるわけでございますので、具体的にどういう能力かということについてはちょっと事柄の性質上なかなかお答えできないところもございますけれども、必要な能力は身につけているということでございます。

渡辺(周)委員 では、この質問の最後に、もう一回海上保安庁に伺いたいんですが、当然つまびらかにはなかなかされていない組織ですけれども、きょう、こういう組織があるということは先ほどお認めになられました。

 私は、やはり何らかの形で存在をもう少し広めてもいいんじゃないかな。もちろん、その隊員の氏名、年齢であるとか構成であるとか、あるいは貸与されている武器の詳細だとか、そんなことは別に出せとは言いませんけれども、実際、シールズにしても陸軍特殊部隊のデルタフォースにしても、アメリカはハリウッドに協力して、当然映画の主役等になるわけでございまして、時にはこういう映画の監修をして、時には演技指導まで、実技指導までしている。実際、そういうことをやって、特殊部隊、海難救助隊の「海猿」という映画は、大変にその存在が表に出て認知されたことによって、大変な尊敬を集め、また非常にその志願者もふえているというふうに聞くわけでございまして、特殊部隊に入れとは言いませんけれども、特殊部隊は高い使命感を持ち、危険が伴う任務でありますけれども、私は、こういう活動についても何らかの形でもっともっと認めていくべきじゃないかというふうには思っているところなんでございます。

 ちょっと派生して質問しますけれども、実は、海上保安庁は、こういう治安をつかさどる機構でありながら緊急車両の指定を受けていないというような話を聞いたんですけれども、これは現状もそうなんでしょうか。

岩崎政府参考人 特殊警備隊をもう少し周知せよということにつきましては、先生御指摘のとおり、こうした部隊を持っているということは一つの抑止力にもなりますので、検討はしていきたいと思います。一方で、これも先生御指摘のとおり、その内容を余り明らかにするわけにもいきませんので、どういう形が適切か考えていきたいと思います。

 それから、海上保安庁、緊急車両でございますけれども、海上保安庁、緊急車両という指定は受けたことはございません。主に海が活動の場であるためでございます。陸上で警備あるいは救難のために必要なときは、警察の車両に誘導を依頼して対応しているという現状でございます。

渡辺(周)委員 ただ、幾つか事例を見ますと、現場海域まで例えばヘリなり海上保安庁の飛行機で行った場合に、最寄りの空港まで行くのに、海上保安庁のこのSSTなる部隊が移動するときには、実は緊急車両ではないので、信号も守らなければいけないけれども、制限速度も守らなきゃいけないということが、例えば不審船事案なんかの場合には、これは一刻を争うわけですから、三十分、四十分おくれれば、そのままでは領海にそれこそ逃げ込んでしまうわけでして、私は、やはりぜひこの点についてはお考えをいただきたい、というよりも、前向きにぜひ善処をされるべきではないのかなと。

 やはり、ガス漏れや、あるいは電気事故のときもそうですけれども、当然緊急車両として現場に行くわけですね。こういう本当に一刻を争うような事案が万々が一起きた場合には、これは国内あるいは我が国の領海内、沿岸の話でありますけれども、これだけの装備を持った特殊部隊がありながら、実は、緊急車両、警察の車に乗らないと移動できないということに非常に驚いたわけですけれども、この点については、ぜひ何らかの形で改善されるように働いていただきたいなというふうに思います。

 最後の質問、もう数分しかありませんが、防衛大臣に伺います。今度のP3C派遣の目的につきまして、ぜひお尋ねをしたいと思います。

 P3Cは、かつては対潜哨戒機と言い、今は哨戒機と呼ばれますが、不審船の発見やあるいは潜水艦の発見に威力を発揮してまいりました。このP3Cが今回派遣されるということで、この目的。

 そして、集めたデータ。このデータは、そもそも、そこにストックがあるから、例えば潜水艦の形状を見て、これはどこの潜水艦であるということのストックがあって、やはりそれは哨戒機が飛ぶことのデータ蓄積あるいは分析に当然役立つわけですけれども、今回、このP3Cが行くことによって、不審船、海賊船のデータや情報が我が国に今現状あるとはとても思えませんけれども、実際は情報収集に行かれるということでどのような効果が期待できるのか、その点についてお答えいただけますでしょうか。

浜田国務大臣 自衛隊の任務を効果的に実施するために、任務遂行にかかわる情報の確保が重要でありますので、ソマリア・アデン湾の海賊対処においても必要な情報収集等に努めているところでございます。

 具体的には、米国やEUを初めとする関係国、関係機関との間で、現地の海賊の状況、各国の活動状況等の海賊対処にかかわる情報交換等を行っているところであります。

 今後、P3Cを派遣することになった場合においても、任務遂行に万全を期すべく、引き続き、必要な情報の収集を行ってまいる所存であります。

渡辺(周)委員 となると、このP3Cは、これまでもそうですけれども、洋上のかなり低いところ、低空、十メートルとかいうところで飛んでいって、当然、海賊船の形状なり、あるいは装備している火器があるならばそれが何であるかということをかなり詳細に記録できると思いますけれども、反面で、このP3Cが海外派遣されるのは初めての話。もちろん、訓練ではインドやオーストラリアですか、行っているという話、あるいはパキスタンに派遣されたということも知っておりますけれども、実際に海外で活動することをそもそも前提としていないものでございます。

 問題は、相手がどのような火器を持っているかわからない中で、例えば低空で情報収集した場合に射撃をされた。当然、防弾対応をしていなければいけないわけですけれども、私が知り得たところによりますと、実は、P3Cは防弾対応をしていないのではないかという意見がございまして、実際、それは防弾装備しているかどうか。

 つまり、相手が何を持っているのか、AK47、小火器であっても射程五百メートルぐらいありますから、低空で情報収集しているときに、これまでかなり海賊たちも学習しているでしょうから、つまり、だんだんだんだん、今度は報復をする、あるいは強硬な手段をとってくるということも考えられます。その場合の対応はできているのかどうか、その点を確認したいと思います。

浜田国務大臣 P3Cの具体的な運用要領については現在検討中でございますけれども、海賊が所有していると思われる重火器の射程、威力などを考慮した上で、適切な距離をとりながらアデン湾の広域哨戒を行うことになると考えておるところでございます。

 また、みずから防護するためのものを含め、どのような装備品を装備するかについては、現在検討中でございますけれども、適切に哨戒任務を実施するための準備を引き続き進めてまいりたいと思っておるところでありますが、P3Cに関しては、先生の御懸念のところは解消すべく、それなりのものを持っておるところでございます。

渡辺(周)委員 これは当然ですけれども、相手はどんな人間かわからぬわけですね、海賊ですから。実際どんな火器を持っているかも正直わからないわけでございまして、これは、私たちは第一義的に海上保安庁が行くべきだというふうに思います。

 しかしながら、実際、もし行くという、いろいろさまざまなオプションが出てきたときには、やはり隊員の身の安全を当然考え、最善のことをしていただきたいな。そのことを最後につけ加えまして、もう時間が来ましたので終わりたいと思います。

深谷委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 引き続き、海賊対処法案の質疑をさせていただきます。

 民主党からも、修正協議ということで、四点を中心にさらに二つを加え、提案をしているところでもありますが、やはり、この間の質疑を聞いておりますと、政府側のこの法案の説明、また、海上警備行動で今派遣をしていることの説明、非常に無理があるなということを思わざるを得ないわけであります。

 まず、警察活動であると。しかし、公海上、旗国主義といっても、ソマリア沖・アデン湾まで警察活動なんだ、これはなかなか、やはり無理があるんじゃないのかなということ。

 そしてまた、これまで、テロ特措法、イラク特措法、再三、政府が引用を前文でされてきた累次の国連決議が、なぜこの法案には盛り込まれていないのか。

 そしてまた、きょうも午前中指摘がありましたように、恒久法であることは間違いありません。恒久法であるということで、これまで唯一の恒久法はPKO法でございますので、やはりPKO法にのっとった枠組みがあってしかるべきであろう。なぜそれを、防衛大臣の判断で派遣ができるような、しかも、海上保安庁第一義といいながら、それが明記されていないのかということでございます。イラクあるいはテロ、それぞれ特措法でも国会承認もあったわけですので、これが盛り込まれていないということはやはり無理があろうというふうに思うわけであります。

 まず、国交大臣、資料一ページは国交省からお出しいただいたんですが、ちょうど一年前でしたでしょうか、原油タンカー「高山」の襲撃ということで、テレビあるいは新聞を通じて、日本の原油を運ぶタンカーが狙撃をされたと。さぞかし、日本の輸入量の多くがアデン湾を通過するのではないのかな、そういう印象を多くの国民の方は持っておられると思うんですが、この資料を見る限り、総輸入量の約四%がこのアデン湾を通過するという国交省さんからの資料でございますが、改めてこの点について確認をさせていただきたいと思います。

金子国務大臣 日本向けの原油のうち、アデン湾を運航する原油量、これについて確認しましたところ、これは石油連盟に対して確認をとったところでありますが、二〇〇七年においては九百五万六千キロリットル、総輸入量の四%に当たるところであります。

 ただ、総輸入量の四%なので、アデン湾の航行というのが国益にとって重要なのかどうかということに関しての御指摘であるとすれば、アデン湾というのは、やはり年間二千隻の日本関係船舶が運航しておりますし、スエズ運河を経由し、アジアと欧州を結ぶ、我が国にとって極めて重要な航路である。

 平成十九年でいいますと、我が国の貿易総額百五十七兆円のうち、日本と欧州間の海上貿易というのは十四兆円、約九・二%。これらのほとんどの船舶がアデン湾を航行していると考えられますので、そういう意味で、アデン湾の航路は我が国の国益にとって経済的な意義が大変大きい、これは武正委員と極めて共通の認識ではないかと思っております。

武正委員 極めて大事な航路であることは共通の認識でありますが、ともすると、原油タンカーが襲われたという報道がテレビ、新聞で出ますと、どうしても、ほとんどあのアデン湾を通過して日本に来るのかな、そう国民の皆さんが思われるのではないのかなと。やはりある面の冷静な議論がこの国会で求められる点でありますので、きのうも、船主協会、海員組合、船長さんのそうした会ということで、参考人の方にも御出席いただきましたが、ただ、あのときでも、実際の通航料とか、あるいは喜望峰回りとの額の負担の件とか、なかなかそうした数字的なものがまだまだ十分、特にこれは国交省さんの管轄だと思うんですが、やはりそうした点をきちっと出していただくというのが冷静な議論に付せるという条件だというふうに思います。

 そういった意味で日本にとって死活的な意味合いを持つこの原油の輸入ということでは、マラッカ・シンガポール海峡の持つ意味、これは大変大きいということだというふうに思いますので、私は、民主党がテロ根絶法二十八条でも提案してまいりましたが、海上警察の国際連携を図っていく中で、ある面、その役割分担というものがあるのではないのかな。例えば、マラッカ・シンガポール海峡などは日本を中心としてと。

 今のお話ですと、多分、ヨーロッパの石油の輸入ということでいうと、かなりの分がこのアデン湾を通過している可能性がありますので、それだけEUがアタランタ作戦などに熱心なのも、そういったところにあるのかなと。そういった国際的な役割分担というものもあっていいのではないのかということでございます。

 そこで、前回も質問をさせていただきましたが、新テロ特措法、給油支援法で派遣をされた補給艦が、今回、海上警備行動で派遣をされた護衛艦に給油をした、これについて防衛大臣にその根拠法を聞きますと、まずは、今回、海上警備行動でそのことを命令したんだ、給油新法で派遣をされた給油艦に、海上警備行動で発令をされた護衛艦に給油するように、こういうことでありました。

 ただ、きょうお手元の方の資料に、海上警備行動でいただいた、まずは七ページ、準備命令ですね。防衛省、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処のための準備に関する命令あるいは準備に関する防衛大臣指示、それぞれことしの一月二十八日、そしてそれらを受けて、三月十三日の安全保障会議決定、閣議決定の、「海上における警備行動に係る内閣総理大臣の承認について」といういわゆる海上警備行動の中身、そして別紙と一緒に九ページにつけておりますが、これらにはどこにも、給油支援法で派遣をされた給油艦に、今回の海上警備行動で派遣をされた護衛艦に給油するべし、こういったことが盛り込まれていないんですが、これは一体どういうことなのか、どういう形でその命令は下されたのかもあわせてお答えをいただけますでしょうか、防衛大臣。

浜田国務大臣 基本的に今回の海上警備行動の命令というのは、やはり海上自衛隊に対してこの命令を出したわけでございまして、その意味では、海上自衛隊の艦艇同士が必要に応じて補給支援を行うことについては、おのおのの艦艇が与えられた任務を適切かつ効率的に実施するためには当然のことでございまして、海上警備行動によって派遣される護衛艦が給油等を必要としている際に、近傍の海域で補給支援活動を行う補給艦が補給支援活動に支障を生じない範囲で当該護衛艦に給油等を行うことは問題がないと考えているところでございます。

武正委員 私は、海上警備行動で今回命令を下したというふうに聞いておりますので、いただいた資料には記載がないわけなので、具体的にどのように指示をしたのかをお聞かせいただきたいと思います。

浜田国務大臣 これは、私の方から命令、海上警備行動、十三日の日に出させていただいたものに関して、「その他」のところで、「補給支援活動の実施に関する自衛隊行動命令に基づき活動する部隊は、必要に応じ、同命令によって命ぜられた活動に支障のない範囲において、(一)により編成された部隊に対し、燃料等の提供を行うものとする。」という形で、「海上における警備行動に関する自衛隊行動命令の発令について」という中で出させていただいたところでございます。

武正委員 訓令というふうに聞いているんですけれども、ただ、私たちはそういった訓令を見ることができないということなんですが、それは、今言われたとおりであれば、ぜひ国会に、当委員会に御提出をいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

浜田国務大臣 済みません、訓令ではなく私の命令でございますので、今申し上げたのは訓令ではなくて命令でございますから、これは確認して出させていただきます。

武正委員 あわせて訓令というものも出されているんでしょうか。

浜田国務大臣 済みません、私の命令の方は出せますが、訓令の方はちょっと出せないということでございますので、よろしくお願いします。

武正委員 委員会の方に御提出をいただけるということであります。

 あわせて、既にインド洋に派遣をされている補給艦についての実施計画、これが二、三、四ページにありますが、これはもう既に国会の方に提出をされているわけであります。この「補給支援活動を実施する区域の指定に関する事項」、二ページから三ページにありますが、ここでは、いわゆる非戦闘地域なんだということを、既にインド洋に派遣している補給艦にはその活動海域を指定しておりますが、今回、海上警備行動で補給艦に、近くに行くんだから自衛隊の護衛艦に補給しなさいということを今命令を下した、その命令の文書は出せるというお話でしたけれども、既に国会に出されている実施計画、ここには非戦闘地域ですよというふうに書いてあるんですけれども、それとの検証、本当に非戦闘地域なのかどうかということは、今回の海上警備行動の発令では考慮をされたんでしょうか。

浜田国務大臣 今回の場合は海上警備行動に関してのみの命令を出しておりますので、補給の面に関しては、要するに、非戦闘地域という部分はこれに載っていないというのは、なので載っていないということだと思います。

    〔委員長退席、新藤委員長代理着席〕

武正委員 資料二ページから三ページをごらんいただきたいんですけれども、これはいわゆる給油支援法の実施計画でありまして、日時は平成二十年一月十六日から平成二十一年、ことしの七月十五日までの間ということでの実施計画でありますが、二ページ一番最後の行、「当該活動が、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域において実施されるよう、また、当該活動の安全が確保されるよう、諸外国の活動の全般的状況、現地の治安状況等を十分に考慮するものとする。」ということでありますが、これは自衛隊の艦船同士であるから、この非戦闘地域ということについては考慮しないということなんでしょうか。

浜田国務大臣 そのとおりでございます。

 この件に関しては他国のことを書いておると思いますが、今回は自分の国同士で、自衛艦同士なので、それは入っていないということです。

武正委員 他国であると非戦闘地域であるかどうかを非常に考慮し、実施計画でもしっかり書いているけれども、自国の艦船同士であれば非戦闘地域であるかどうかは考慮しないというのは、非常に問題ではないでしょうか。

浜田国務大臣 しかしながら、我々とすれば、今先生の御指摘のあった点というのを常に考慮に入れつつ我々自衛官は活動しているわけでありますので、そして我々の活動というのが警護任務に特化しているわけでありますので、戦闘地域にいるということは想定していないというのもあります。そういった意味においては、自国艦同士の中での確認作業ということになろうかと思いますので、その点は実施計画の中に入っていないということだと思っております。

武正委員 やはりこれも非常に無理がある一つだというふうに思うんですね。

 というのは、国会でこれまで、我々、最初のテロ特措法のときには、この国会の事前承認に非常にこだわってきたわけでありますが、それが政府は守られず、テロ特措法を可決された経緯もあり、そうした中で、新テロ特措法、給油支援法ということで、前よりも国会のかかわりはさらに緩くなってしまっておりますことは、六ページをごらんいただくとおわかりいただけると思います。

 旧テロ特措法では事後承認を求めたわけですが、新テロ特措法ではそうした承認規定もなくなっているということで、今回の海賊対処法案は、この新テロ特措法とかなり国会とのかかわりが似ているわけであります。ただ、対処要項を報告ということは、変更時のものも今回は抜けているという整理になっておりますが。

 こういった中で、改めてもう一度聞きますが、この給油支援法で、新テロ特措法で派遣された補給艦について、海上警備行動で、防衛大臣の命令、しかもこうした国会に今まで文書も出されていない中で補給をしなさいと。しかし、これまでは、その補給艦の活動というものは、この実施計画に限定された活動ということで、戦闘地域ではやってはいけませんよということをしっかり書いて、インド洋に出しているわけです。それを、今度、海上警備行動の命令だけで、この意味では自衛艦同士だったら戦闘地域か非戦闘地域かは考慮しないでいいんだと、いや、先ほどそういうふうに言われたんだと思いますよ、ということは、私はやはり無理があると思うんですよね。

 自衛隊という実力組織を海外に出す以上、これまで国会は、非常に慎重にその派遣についてシビリアンコントロールをきかせてきたわけです。ここで、海賊対策、警察活動ということで、海上警備行動で派遣をしている。それも、ソマリア沖・アデン湾ということでの公海上、旗国主義、国連海洋法条約にのっとった警察活動、かなり無理がある一万二千キロ。その上、これまで国会が大事にしてきたシビリアンコントロールで派遣をされた自衛艦船の補給艦が、その海上警備行動の護衛艦に補給ができる、しかも、戦闘行為、非戦闘行為については考慮せずと。

 いかがですか、もう一度お答えをいただきたいと思います。

浜田国務大臣 基本的に、あれだけの議論をした中で、我々は、防衛省・自衛隊の船が戦闘地域に行くということも考えておりませんし、そもそも、非戦闘地域で活動するというのが、これは我々とすれば当たり前の話でありますので、その中で、我々の命令、その枠の中で活動しているつもりでありますし、また、先生のおっしゃるように、自衛艦同士の補給というのは、基本的には、我々とすれば、当然、一つの命令のもとに自国の船同士が助け合ってやるというのは、これはもう当然のことだと思っております。

 別にそこで、今先生が御懸念のような、戦闘地域に行って何かをするとか、そういったことは全く想定をしていない中で、やはり自分たちの任務が、護衛という任務があって、その中でやっているわけでありますので、先生が今そういうふうに御指摘されるということに対しては、我々としては、そうではないというふうに今この場でお話をさせていただきたいと思っているところであります。

 通常一般、自国同士の船に関しては、どこの国でも同じような形をとっているものと考えますので、その点だけは御理解いただければと思います。

武正委員 質問を先に行きます。

 P3Cの派遣についてもちょっと聞きたかったんですけれども、ちょっと時間も押してまいりましたので、今言われたように、戦闘地域ではないというエリアなんだ、ただ、海賊が発生している、それに対して、国連海洋法条約で認められている警察活動であるということなんですけれども、海賊が場合によってはテロリストになるんじゃないのかというような指摘がありますよね。きょうもありました。いわゆる国及び国に準ずる組織になる可能性、あるいはそういった組織である可能性、こういったものは否定できるんでしょうか、今回の海上警備行動での発令。これは海洋担当大臣に聞きたいというふうに思います。

加納副大臣 海洋政策担当副大臣の加納として回答させていただきます。

 御質問のことでございますけれども、ソマリア沖・アデン湾で頻発している行為が、テロリストということでしょうか、国とか国に準ずる組織であることがあるかどうかという、そこら辺がこの質問の一番ポイントだと思っております。

 実は、このソマリアの海賊の背景でございますけれども、これはやはり、御存じのとおり、経済状況が非常に悪化している中で、地元の漁民等により、いわば生活の糧として、金銭、主として身の代金を目当てに行っているものが多いようでございます。それからまた、小型船を使用して襲撃するといったようなことから見ますと、これは何かテロリスト国家とかその手先とかそういうテロリスト集団というよりも、これは私的目的による私人の犯罪行為である、したがって、私どもも、これを警察行為として対処しようということにしたところでございます。

 そこで、行動の態様そして周辺の状況から見て必ずしもテロリストとは思いませんけれども、たとえ万一、仮にテロリストのようなものであったとしても、私どもは、その人間がどんな人間かじゃなくて行為に、海賊行為に当たるかどうかで対処いたしておりますので、海賊行為に当たるということであれば、相手がだれであれ、対応をしたいと思っております。

武正委員 今のはちょっと無理があるんじゃないですか。だって、海賊行為をテロリストがしている場合は海賊行為だから海賊なんだというのは余りにもちょっと無理があると思うんですね。

 海洋担当大臣、どうですか。これまでの質疑で、ロケットランチャー、ロケットランチャーと随分出てきましたよ。この間、ちょっとスリランカの方にお話を伺ったら、今、タミールのトラですか、スリランカでももう掃討寸前まで行っているそうなんですが、このタミールのトラのテロリストの特徴というのは、小型の船を駆使してロケットランチャーを持って自由に移動する、これが一つ特徴なんだ、場合によっては、インドネシアの千の島のどこかに潜んでいて、要はスリランカとマラッカ・シンガポール海峡を自由に行き来すると。こういったことを聞くと、何かソマリア沖の海賊とある面符合するようなところも出てくるわけなんです。

 そういったところはどうなんでしょうか、海賊というものは、今の副大臣の説明はちょっと私は合点がいかないんですが、テロリストといっても海賊行為をしていればそれはこの法律ではあくまで海賊なんだということなんでしょうか。大臣、いかがですか。

金子国務大臣 武正委員、特にソマリア沖でありますけれども、この海域で頻発している船舶の強取、これは明らかに私人による私的目的による犯罪行為でありますので、やはりこれは海賊行為に当たるということであります。

武正委員 冒頭、指摘をしましたが、この法律に累次の国連決議を入れなかった理由というのは、やはり累次の国連決議でいわゆる国連憲章七章下の行動ということが書かれている、こういったことがあるからこの法律には累次の国連決議を入れなかったということでしょうか。海洋担当大臣、法律の担当大臣として。

金子国務大臣 この海賊法制は、昨年来出ております個々の国連安保理決議に基づくものではありませんで、国連海洋法条約にのっとりまして、国連決議を踏まえてこの法案をつくったところであります。

武正委員 国連海洋法条約と、国連とちゃんと書いてあるんですよね。ですから、例のSUA条約でしたか、あれとはまた違うわけですよ。国連でみんなで合意をしてこの条約を決めて、そして署名をして締約をしていく。その条約にのっとってということが、これまでのテロ特、イラク特、みんな前文に累次のこういう国連決議ということを掲げてきたのに、今回なぜそれを入れないのかというのは、あくまで警察活動であるということで自衛隊を派遣する、こういったところの論拠になっているとすれば、私はやはりかなり無理があるなというふうに思っておりまして、過去、自衛隊を海外に派遣する唯一の恒久法であるPKO法、やはりこれに準じた国内法制の仕組みが必要ではないかなというふうに思います。

 そこで、PKO法との比較ということで、お手元に、五ページをごらんをいただきたいと思うんですが、これが、国際平和協力業務の仕組みということで、国連の決議あり、国連の要請ありということで、内閣総理大臣が国際平和協力本部長として閣議決定を経て国会へ報告、PKFについてはもう既に本体業務については凍結解除されておりますので、ここでやはり国会の事前承認が必要であるということで、自衛隊を国際平和協力隊の設置などを通じて派遣していく。こういったきっちりとした枠組みを、国会は、自衛隊を海外に派遣する唯一の恒久法であるPKO法でつくったわけであります。

 今回、午前中も同僚議員から意見があったように、自衛隊を海外に派遣する恒久法であります。警察活動であるということで国連海洋法条約が根拠であると。どのように言われても、自衛隊を海外にずっと派遣し続けられる法律であります。

 私どもは、例えば海上保安庁の能力の向上などを求めているところもありますので、やはりそうした推移を見守る必要もあるということで、見直し規定ということも提案をしているわけでありまして、PKO法に次ぐ第二の恒久法である本法については、例えば国際平和協力本部に準じたようなそうした本部をつくり、そしてその本部の隊員として、あるいは本部の隊の中に自衛隊が自衛隊として派遣をされる、これまでのPKO法と同じような枠組みがあっていいというふうに思うんですが、まずは防衛大臣、この点についてはいかがでしょうか。

浜田国務大臣 今回の法律は、先ほど整理されましたように、海賊に特化して警察権ということでございますので、海上保安庁法に基づいての活動になっているわけでございますので、我々とすると、今回の法律に関しては、先生のおっしゃる部分というのは御懸念に当たらないということだと思います。

 ただ、一般論からいえば、先生のおっしゃられるようないろいろな自衛隊に対する思い、そして、いろいろな形での御意見もあることも十二分に承知をしております。そういった議論、我々とすれば、これに耳をしっかりと向けながら、今いろいろなお話し合いがされているというふうにも聞いておりますので、その推移を見守りたいと思いますけれども、今回の法律に関してはそういう方向で進めさせていただいたということだというふうに聞いておるところでございます。

武正委員 海洋担当大臣にはまたPKO法との比較についてお聞きをしたいんですけれども、先に外務大臣の方に次の質問をまず聞いてからというふうに思っております。

 自衛隊法の在外邦人の輸送ということで、自衛隊法八十四条の三では、「防衛大臣は、外務大臣から外国における災害、騒乱その他の緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する邦人の輸送の依頼があつた場合において、当該輸送の安全について外務大臣と協議し、これが確保されていると認めるときは、当該邦人の輸送を行うことができる。」

 これが、在外邦人の輸送ということで、ある面、外務大臣からの要請という形が入っている法律の条文だと思うんですね。今回、あくまで第一義は海上保安庁という本法でありますので、私たちは、やはり海上保安庁あるいは国土交通大臣がより積極的に今回のこの法律では主体的な役割を果たしていくべきだというふうに思っているんですけれども、一つ、その参考になる条文ではないかなというふうに思っております。

 あわせて、PKO法第六条がありまして、第六条の三項にはこういう規定があります。「外務大臣は、国際平和協力業務を実施することが適当であると認めるときは、内閣総理大臣に対し、第一項の閣議の決定を求めるよう要請することができる。」

 この第六条の第一項というのは、閣議決定ですよね。PKO部隊を派遣するための閣議決定を外務大臣が要請するというような形で、PKO本部の設置、そして本部の部隊員としての自衛隊の派遣について、そしてある面、内閣の中での相互牽制というか、そういった作用を加えているわけでありまして、私は、今回、第二番目の恒久法ともいうべき本法では、これもやはりあっていいんじゃないかなというふうに思うんですが、これはどうでしょうか、海洋担当大臣。(金子国務大臣「外務大臣に聞きたいんじゃないの」と呼ぶ)そうですね。

 外務大臣、これはそれぞれありますから、外務大臣として、こういった条文も参考に、この法律について、やはり内閣の中での相互牽制というか、これがあってもいいんじゃないかと思うんです。具体的には、海上保安庁あるいは国土交通大臣というものの要請といったものが必要ではないかと思うんですが、御所見を伺いたいと思います。

金子国務大臣 幾つかございました。

 PKO法に準じて本部をつくったらどうかというお話がありました。

 このPKOにつきましては、国際平和協力業務が、自衛隊だけでなくて広く関係行政庁が協力して、政府が一丸となって取り組むためにもこういう国際平和協力本部というものが設けられておるものでありまして、今回は、そういう意味では、自衛隊が実施する海賊対処行動、これは警察行動でありますので、本部というのをつくらず、海上警備行動と同様の枠組みとしたものであります。

 それから、要請ということについてお話がありました。この点については、まさに今、与野党協議をなさっている渦中であると思います。

 ただ、PKOとの比較でいえば、本法案は、公海等におきまして、国際法上認められた管轄権を行使して海賊行為という犯罪行為を処罰する、あるいは同行為への対処に必要な権限を規定するものでありまして、自衛隊による対処は、海上警備行動同様、警察活動。ただ、他方で、PKO法は、武力紛争の停止を受けまして、国際法上認められた管轄権の行使とは整理されない新たな業務を創設し、自衛隊員や海上保安庁以外の者も平和協力隊員として活動することなどを定めたものでありますので、そこは本法案とは性格を異にするものであると思っております。

中曽根国務大臣 先ほど、委員が自衛隊法八十四条の三を御紹介いただきました。

 委員が御紹介されたとおりなんですが、外国における災害とかあるいは騒乱、そういう緊急事態における生命等の保護を要する邦人の自衛隊機等による輸送についてこれは規定をしているものでございますが、その中で、外務大臣は、当該輸送機について、防衛大臣に依頼をして、そしてまた、当該輸送の安全について同大臣と協議をすることになっているところでございます。

 PKOについては、今、海洋担当大臣からも説明がありました。

 一方、この法案におきましては、防衛大臣は、特別の必要がある場合に、内閣総理大臣の承認を得て自衛隊に海賊対処行動を命ずることができる、そういうふうにしているわけでございまして、この承認を受けようとするときは、原則として、対処要項を定めて内閣総理大臣に提出することとなっております。

 この対処要項につきましては関係行政機関の長と協議して作成されるということになっておりまして、その事案に応じまして外務大臣は関係行政機関の長に当たり得る、そういうふうに考えています。

武正委員 国会承認についてもやりたかったんですけれども、最後に一言だけ。

 海外の海賊対処ということでの派遣については、今回も一月二十八日の準備命令から三月十三日の海上警備行動発令ということで、これについては一定の時間の余裕があるということで、国会の関与、事前承認、これがやはり必要であることを申し述べて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

新藤委員長代理 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 前回は、少し全体像を見るというような意味で幅広く問題を取り上げさせていただきましたけれども、きょうは、法案の中身も含めまして、少し気になっているところについて質問をしていきたいというふうに思います。

 最初に、ちょっと私、印象として言えば、今回の海上警備行動の発令にしても海賊対策新法の法案の内容にしても、どうもいろいろごまかしがあるような気がしてしようがないんですね。初めにやはり自衛隊派遣ありきということから物事が進んでいるのではないか、こんなふうな気が非常にするものでありますから、この前からもいろいろ質問させていただいているんです。

 その中の一つが、例の、今海上警備行動で出かけている自衛艦が船員法十四条で活動しているという説明のある部分なんですね。これについては、ソマリア沖で既に四日の日にシンガポール船籍の船、十一日にマルタ船籍の船、十八日にカナダ船籍の船について通報があったということで、船員法十四条で対処したというふうに説明をされています。これは、麻生大臣が本会議でもそういう説明をしておりますけれども。

 では、仮にの話ですけれども、海上保安庁の艦船が同様な事態に遭遇したときは、海上保安庁の艦船は救援のための対応をすることは可能なんでしょうか、国土交通大臣。

岩崎政府参考人 外国籍船から不審船に追われているといった旨の通報や連絡を受けた場合、海上保安庁の巡視船においても、例えば今回自衛隊がとられたような無線やスピーカーで呼びかけをするとか、いろいろな対応はとることが考えられます。

 これの根拠でございますけれども、これは、海上保安庁法第二条第一項の任務に含まれておると考えておりますので、その任務に沿った措置としてそうした措置が可能になると承知をしております。

    〔新藤委員長代理退席、木村(勉)委員長代理着席〕

平岡委員 任務があれば何でもできるということではないわけでしょう。いろいろな具体的な業務をしているわけですよね。その業務の根拠となっている規定もちゃんとあるんじゃないかというふうに思うんですけれども、大臣どうですか。これは、事前に通告している話ですから、ちゃんと大臣が答えてください。

岩崎政府参考人 海上保安庁法の十八条に、こうした危険な事態がある場合においては必要な措置をとることができる、こういうことがございますので、それに基づいてできる業務だと思っております。

金子国務大臣 長官が今言いましたけれども、平岡委員の御指摘のところは、海上保安庁法第二条の第一項で今の根拠法になっております。

平岡委員 何か同じことを言ってちょっと時間稼ぎしないでください。

 これまでに、公海上にある外国船舶の船で、外国人しか乗船していないような状況のもとで、海上保安庁が、まさに二条第一項あるいは十八条の規定に基づいて活動したことがあると思うんですね。国土交通大臣、これは独自に答えられますよ。そのときに、やはり海上保安官は武器も携行してちゃんと活動をしているということでありますから、ちょっとその事実関係を確認させてください。

加納副大臣 お尋ねの件でございますが、公海上を航行中で外国人しか乗船していない外国船籍に対して、海難救助のために海上保安庁が対応した事実はあるかということですが、御指摘のとおり、ございます。そして、この事件で銃を持っていたのかということでございますが、銃を持っておりました。発砲したかというと、発砲しておりません。

平岡委員 今まさに説明があったように、これは、自衛隊の船なら、船員法という、船に乗っている人ならだれでも適用されるような一般法的なものでしか対応できないけれども、海上保安庁の船なら、ちゃんと海上保安庁法に基づいてしっかりとした業務ができる、そういう仕組みになっているんですよ、もう既に。それにもかかわらず、あえて自衛艦を送っていくということについて、私は非常に疑問に思います。

 今回、皆さんの説明の中では、外国の船あるいは外国人だったら保護の対象にできない、自分たちは護衛ができないから、だからこの法律が必要なんだというふうに言われていますけれども、まさに海上保安庁なら、こんなことは問題なしにできるということですよ。

 さっきから人質の救出の話が出ていました。

 この人質の救出については、現行法のもとで自衛隊はできるのかどうか。これは、その人質が日本人である場合と外国人である場合と、どうでしょうか、防衛大臣。

浜田国務大臣 基本的には、今おっしゃったように、我々とすれば、船の警護の部分では、日本国籍船、そしてまた日本人ということを限定しておりまして、他の船には、これでない他国籍の船には、我々は護衛の任務はついておりません。もう一つは、何かあった際にはこれを守れないということがあるわけでありますが、これが今度は、新法では守れるわけであります。

 しかしながら、人質の救出に関しては、先ほど来法律的なお話がありまして、できることを先ほどの答弁にも述べさせていただいたことでありますが、今現在、我々の海上警備行動においては、当然、この人質救出までの想定は我々としては入っていないと先ほど申し上げたところであります。

平岡委員 私は制度を言っているので、実際にやるかやらないかというのはまた別の判断だと思います。

 それでは、国土交通大臣にお聞きしますけれども、人質が日本人である場合または外国人である場合、海上保安庁は人質の救出ができるんですか。これは、日本人と外国人の場合で違いがあるんでしょうか、どうでしょうか。

岩崎政府参考人 現行の法制度の中でという意味で解釈させていただきますと、まず、日本船舶の場合、これについては、海上保安庁法十八条一項の強制措置によって、制度的に人質を救出するという措置をとることも可能と考えております。

 外国船舶で発生する場合、このときには、実際の問題として、先ほど副大臣が申し上げたようなケースで外国船舶に乗り込んでやったこともありますけれども、今の現行法では、旗国の同意、了解を得て行っているというのが現状でございます。

 したがいまして、海上保安庁が外国船舶に乗り込んで必要な強制措置ができるかと言われれば、現行法では、旗国の同意を得た上で行うということになります。

平岡委員 それは旗国の同意がなければできないんですか。私は制度を聞いているんですよ。今まで運用として旗国の同意を得てやっている、それはそれで別に構わないでしょう。私が聞いているのは、制度的に、そういう外国の船の中で、外国人が遭難をしているような状態、あるいは人質にとられているような状態、それを救出するということについて、今の現行法上、海上保安庁法上、海上保安庁はこれに対して救出をすることはできないんですか。

岩崎政府参考人 より厳密に申しますと、基本的に、海賊以外の行為、これについては、それぞれの船に対しては旗国の管轄権がございますので、旗国の同意を得て、了解を得てやるというのが国際的なルールでございます。

 ただし、海賊については、海洋法条約でそれは海賊行為に当たるということであれば旗国の同意または了解なしにできることに、国際法上のルールではなっております。

 ただ、これまで海賊行為の定義というのが必ずしも明確にされていなかったために、実際にやったことはございませんけれども、もしこうした海賊行為での、外国船に乗り込んでいくということについては、旗国の同意を得た上でやるということになろうということを申し上げた次第であります。

平岡委員 自衛隊の場合はどうですか、浜田大臣。自衛隊の場合は、外国船舶、相手が外国人の場合、旗国の同意があれば、自衛隊の場合でも救出ができるんでしょうか。

徳地政府参考人 仮定の問題でございますので、お答えするのはちょっと難しいところがあるんですけれども、海上警備行動が発令をされていた場合ということでございますけれども、その場合におきましても、基本的には、もちろん立入検査等はできるわけでございますけれども、それ以上のことを想定するということは、能力的にもなかなか難しいものではないかと考えております。

平岡委員 ちょっとなかなか、ちゃんとした答弁になっていないのであれですけれども、今までの流れでおわかりのように、海上保安庁の船であれば、外国船舶、外国人について、一定の手続をとることは事実上それはあった方がいいんだろうと思いますけれども、対応することが可能であるというような状況の中で、あえて自衛隊を派遣したということ、そして自衛隊を派遣したということで今度はこういう新しい法律をつくらなきゃいけないんだというような説明をしていること、これは順番が逆だというふうに私は思います。

 そういうことを言うと、自衛隊の船でなければ能力的に対応ができない、相手側の武器に対応できないんだ、そういう説明もあろうかというふうに思うので、ここでちょっと質問します。

 海保の「しきしま」とか「みずほ」とか「やしま」というのが大きい船のようでありますけれども、今海上自衛隊がソマリア沖で予定している護衛艦の活動について、そういう活動に対応する装備、能力をこの「しきしま」「みずほ」「やしま」というのは持っていないんでしょうか。もし、持っていない、備えていないというのであれば、それはどのような装備であり、どのような能力なんでしょうか。

岩崎政府参考人 海上保安庁で、ヘリコプターを二機搭載している大型巡視船として、今先生おっしゃった「しきしま」「やしま」「みずほ」がございます。

 そのうち、「しきしま」につきましては、護衛艦に準じたような設計、構造になっております。プルトニウムの海上輸送の護衛を目的に特別に建造された船でありますので、重火器、ロケットランチャー等による攻撃を受けた場合であっても、被害をある程度食いとめながら業務を継続できる能力を有しております。

 「みずほ」と「やしま」については、そのような設計にしておりませんので、被害を受けたときに十分な対応ができる、継続して業務ができるという能力は備わっておりません。

平岡委員 ちょっと確認ですけれども、被害を受けた場合に対応する能力がないということであって、今自衛隊の船が、護衛艦が行ってやっている活動というのは、前と後ろに二つの船が行って護送しているだけの話ですよね。そういう活動は、「やしま」とか「みずほ」はできないんですか。そういう能力は持っていないんですか。

岩崎政府参考人 お言葉ではございますけれども、自衛隊の船も今の、商船の前と後ろについてただ走っているということではないと私は承知をしております。襲われたときにはある程度きっちり攻撃をする、襲われることも、これは余りあっていいことではないと思いますけれども、襲われても業務を継続していくということを勘案して派遣されたものだと理解をしております。

平岡委員 私はそんなことを聞いているんじゃなくて、それでは、今の「やしま」とか「みずほ」というのは、船を護送していくというようなことは不可能な、そういう船だということですか。

岩崎政府参考人 もちろん、「やしま」も「みずほ」も警備に当たることがあります。ただし、「やしま」と「みずほ」は、ソマリアでロケットランチャーに対応してということの任務に当たる能力までは備えていないということでございます。日本の沿岸であるとか、あるいはロケットランチャーほどではない自動小銃等の武器であれば十分対応できる能力を持っておりますし、そういう場合には、「しきしま」はもちろんのこと、「みずほ」「やしま」を使って警備に当たる予定にしております。

平岡委員 先ほどからの質問の中で、ロケットランチャーを持っているのは別にソマリアの海賊だけじゃなくて、いろいろなところに、日本の近海にもそういう不審船なんかについてはあるというような話ですよね。ロケットランチャーを持っているから海上保安庁の船は対応できないんですというようなことじゃ、まさに業務放棄じゃないですか。

 ついでに聞きますけれども、これまでソマリア沖でロケットランチャーが使われたケースというのは大体どのぐらいあるんですか。

岩崎政府参考人 何度も御説明させていただいておりますけれども、北朝鮮の不審船はロケットランチャーを持っております。これは日本近海に出没をするので、こうしたロケットランチャーを持っていても、私ども海上保安庁は多くの船を派遣することができますので、そうした船を何隻もで集団で追い詰めながら北朝鮮の船に対処するという能力は持っているところだと思っております。また、そういうふうにして整備を進めております。

 それから、ソマリアでロケットランチャーがどれぐらい撃たれたかということについては、すべての数字を承知しておるわけではございませんけれども、民間の商船がロケットランチャーを受けて穴をあけられたとか、こうした事例については幾つかの報告を受けているところでございます。

平岡委員 幾つかというのは、どの程度あるんですか。五個ですか、十個ですか、百ですか。きのうレクをするときに、これは聞きますからと言っておいたんですけれどもね。

岩崎政府参考人 具体的に何件かという数までは承知をしておりませんけれども、報道でありますとか、それから我々独自でイエメンの海上保安機関の職員から情報を入手したり、いろいろなところで情報を入手しておりますけれども、ロケットランチャーを持っていて、ロケットランチャーを撃ったという事例を聞いておるところでございます。

平岡委員 その程度のことしか答えられないで、ロケットランチャー、ロケットランチャーと言って鬼の首でもとったような答弁を今までしてきたというのは、私はおかしいと思いますね。本当に自衛隊でなければ、自衛艦でなければ対応できないのかということの、まさに根幹になっている部分じゃないですか。そんなことに答えられないというのは、もう本当にこれは、先ほど私が冒頭申し上げましたように、初めに自衛艦の派遣ありき、それですべてを押し切ってきている、こういうふうにしか評しようがないですよね。

 この情報については、外務省、国土交通省、両方でちゃんと統計的な数値を出してもらえますか。

金子国務大臣 情報は必ずしもすべてを把握してはいないようでありますが、既にロケットランチャーが使われている、我が国のタンカー「高山」もロケットランチャーで襲われて、そして大量の油が漏れ出るという現象が、被害が既に起こっているということで、すべての海賊がロケットランチャーを使ったかどうかというところは把握し切れていないようでありますが、現実に使われていることも事実でありますし、そういう意味で、そういう危険に対処することはきちんと考えるのが役割だと思っております。

平岡委員 その「高山」のケースは私も知っていますけれども、護衛艦であったりあるいは巡視船がロケットランチャーを相手が持っているからといって対応できるかできないか、どの程度の量があって、どの程度使われているかということがわからなければ、そんなことの検証なんかできないですよ。

 ちゃんと私は、皆さん方、どれだけのロケットランチャーが使われているかということについて、この委員会に報告していただくことを、委員長、よろしくお願いします。

木村(勉)委員長代理 後ほど理事会で協議します。

平岡委員 そこで、この話も前から出ている話でありますけれども、ちょっと司法手続の話に入っていこうかと思うんです。

 これは隣におられる小池理事さんも質問されておられるところですけれども、与党ですから突っ込みが余り深くなかったので、私はもうちょっと突っ込ませていただきたいというふうに思います。

 逮捕した海賊、被疑者について、どのような者は司法手続をとるために日本に引致し、どのような者は関係国に引き渡し、どのような者は現地で釈放することになるのか、この点について、国土交通大臣、お答えください。

金子国務大臣 逮捕した海賊の身柄の取り扱いについてのお問い合わせでありますが、大きく分けて二つ。日本に移送して刑事手続を進める。二つ目、釈放した上、被害船舶の旗国、被害者の国籍国、あるいはソマリア周辺国等に引き渡して、当該国の官憲、法令に基づく処分にゆだねるといった方法も考えられます。

 いずれにしましても、自衛艦の警護業務が円滑に行われるよう考慮しなければいけませんし、また、現在ソマリア沖に海軍の軍艦等を派遣している各国の動向も踏まえて、個別事態の事件の内容に応じ、捜査機関において関係省庁と協議してまいりたいと思っております。

 小池委員が非常に突っ込んで前回も御質疑いただいたのでありますが、これを判断する判断基準は何だということに対しては、被害の程度、犯罪行為の態様、我が国に及ぼす影響の程度、それから証拠の状況等を総合的に考慮して、ケース・バイ・ケースで適切に判断することとしております。

平岡委員 そのほかにも鈴木委員もこの問題について聞いておりまして、これについてはこういう答弁がありましたね。刑訴法二百三条などで釈放し、船員法二十六条、二十七条の必要な措置として下船させるんだ、これは釈放するケースの場合ですけれども。

 でも、よく考えてみると、海賊行為というのは、今回すべて長期三年以上のいわゆる凶悪な罪に該当するものにしたわけですよね。こういうものについて、私は単純に、軽微だから釈放しますというのはちょっと筋としておかしいんじゃないかというふうに思います。

 それはそれとして、私が思うには、先ほど大臣の答弁の中にもありましたけれども、外国の官憲との間でどうするのか、この点がはっきりしていないんですね。つまり、先ほどの鈴木委員の答弁に対して言えば、二百三条等で釈放して、あとは船員法二十六条、二十七条で下船させるんだと。では、下船した後どうなるのかという、その制度的な保障はあるんですか。本当に釈放するならいいけれども、先ほど外国の官憲なんかに引き渡すようなケースがあるというふうに言いましたけれども、そんなことはどこにも書いていませんよね。そんな釈放の基準はできていないというふうに私は思います。

 この点について、大臣、どのようにお考えになりますか。

大庭政府参考人 我が国の刑事訴訟法に照らして、我が国において刑事手続を継続すべきかどうかという判断をした上、その必要がないと認められる場合にはこれを釈放する。その場合に、近隣国の官憲などと連絡をとって下船させるというようなことでございます。

平岡委員 今の場合、近隣国の官憲とどういうことになったら釈放するんですか。近隣国の官憲とどういう場合になったら釈放するんですか。何の根拠も、どこにも書いていませんよ。

大庭政府参考人 判断は、刑事訴訟法に基づき我が国における刑事手続を継続する必要があるかどうかということを司法当局と相談して、我が国として判断をする。その後の手続に関しましては、近隣国と適宜連携をとって対処するということでございます。

平岡委員 今のケースの場合、私は、釈放するケースとして二つあるんだろうと思うんですよね。本当に軽微な罪であるから、もうどこで処罰することも必要ない、それで釈放するというケースがあるでしょう。もう一つは、やはり外国との関係で、その外国が、しっかりと刑事手続を進めていくから、自分たちの方でやりますよというケースですよね。

 そのケースが全然区分けされていないですよね、今の説明の中では。これはどうやって区別するんですか。どのようにして区別するんですか。

大庭政府参考人 ただいま御指摘の件に関しましては、関係する沿岸国などとの間で海賊の身柄あるいは武器などの引き継ぎに関してそのような枠組みが整うようなことがあれば、それはそういう枠組みに基づいて対処する。そういうことがなければ、事実上の相談として連携をとって対処するということになろうと存じます。

平岡委員 外務大臣にちょっとお聞かせいただきたいと思います。

 私が聞いた限りにおいては、我が国以外の国が派遣した軍艦等が、海賊を、これは被疑者ということなんでしょうけれども、これを逮捕あるいは拘束した場合、その後の手続についてケニアと協定を結んでいるとか、あるいはイエメン等に引き渡しをしているというようなケースがあるというふうに聞いていますけれども、協定を結んでいる国としては、どことどこの国が協定を結んでいるのかというのは御存じですか。

中曽根国務大臣 ソマリア沖で海賊行為への対処を行っている各国が、海賊を逮捕、拘束した後にとっている司法手続の詳細につきましては、我が国としてはどの国がどういうふうにというふうに具体的に承知しているわけではございませんが、それぞれの国の関係法令に基づいて司法手続を行い、またさらに、他国に身柄を引き渡す場合には、相手国政府の同意を得て、それぞれの国の関係法令に基づいて身柄の引き渡しを行っているものと承知をしております。

 今御質問がありました、ソマリア沖で海賊行為への対処を行っている各国が拘束をいたしました海賊を他国に引き渡した例を、これは網羅的に承知しているわけではございませんけれども、米国、フランス、イギリス、ロシアの各国が拘束をいたしました海賊をケニア、イエメン及びソマリアのプントランド自治政府に引き渡した例があると承知をしております。

 具体的に申し上げた方がよろしゅうございますか。(平岡委員「協定の」と呼ぶ)協定といいますか、委員がおっしゃいますのは国際約束的なものという意味でよろしゅうございますか。(平岡委員「各国と引き渡しを受ける国との間の協定」と呼ぶ)

 一般に、海賊の身柄を他国に引き渡すためには、あらかじめ当該国との間にいわゆる国際約束を締結しておかなければならない、そういうことはないわけでありまして、必要に応じて、当該国政府の同意を得れば、身柄を引き渡すことは可能でございます。

平岡委員 私が聞いているのは、私もいろいろな資料とかを見て、各国が周辺国と協定を結んでいるというケースがあるというふうに聞いていますけれども、どういうところが協定を結んでいるんですかということを質問したんです。

中曽根国務大臣 例を挙げさせていただきますけれども、EUとケニアとの間で、海賊とされる者の引き渡しに関する交換書簡が署名されて、ことしの三月の十日ですが、EUのアタランタ作戦に参加しているドイツのフリゲートが拘束した海賊の身柄がケニアに引き渡されるなど、あらかじめ法的拘束力のある国際約束が締結される例もございますし、また、米国と英国も、ケニアとの間で、捕らえました海賊の引き渡しに関するアレンジメント、これは了解覚書、法的拘束力のない了解覚書を作成している、そういうふうに聞いております。

平岡委員 協定を結んでいる国があるということでありますけれども、私が思うには、単なる事実行為としての、海賊を下船させるという船長の行為、これで相手方の外国の関係が、本当に微罪なら別にそれでいいのかもしれませんけれども、やはりまた海賊行為を起こすかもしれない、あるいは、外国の官憲でちゃんとした刑事手続、司法手続をとっていくという保証があるのなら、下船させるというようなこともあるんだろうと思うんですね。

 そういうものが明確になっていない、法的根拠がないという状態というのは、私は、これは海上保安官にとってみても大変運用に困るところであるというふうに思いますし、私たちも、海洋のちゃんとした秩序を守っていくという意味においても不十分な状況であるというふうに思います。

 周辺国が司法手続をとることを法的に確保して、海賊、被疑者を引き渡す、そういう国際約束を関係国としていく必要があるんじゃないかというふうに思います。この点について、海上保安官を所管している国土交通大臣と外務大臣にお尋ねいたしたい。

中曽根国務大臣 外務省といたしましても、自衛隊と海上保安庁が海賊対策を行うに当たりましては、関係国との調整などに遺漏なきを期していきたいと考えておりますが、今御指摘のような、海賊の身柄を例えば第三国政府に引き渡す必要が生じる可能性も視野に入れて、関係国との間で協議や意見交換を行っております。

 しかしながら、その具体的内容等につきましては、今、相手国との関係もございますので、この場で具体的に申し上げることはできません。

 また、既に申し上げましたとおり、一般に、相手国政府の同意があれば身柄を引き渡すことは可能でありまして、必ずしも海賊の身柄を引き渡すための国際約束を特定国との間であらかじめ締結しておく必要があるというわけではございません。

平岡委員 私は、制度としてしっかりとした対応をとるということを、恒久法としてつくるなら、やはりそこをしっかりしておくべきだということを言っているんですね。その時々の運用で物事を進めていくというのは、やはりあるべき姿ではないというふうに私は思いますので、この点、しっかりと詰めていただきたいというふうに思います。

 そこで、逆に、今度は我が国に引致をしてくるというケースですよね。ソマリア沖であれば、我が国の当局に引致してくるのには時間がかなりかかるというふうに思います。この点については、昨年の十二月十一日の参議院の外交防衛委員会で、法務省の方からこういう答弁があります。「できる限り短時間で海賊を日本に護送する現実的な方法等については、現在関係省庁の間で協議をしている」というふうになっていますけれども、この協議というのはどのようにまとまったでしょうか。

加納副大臣 お答えします。

 被疑者を逮捕した場合は、例えば沿岸国を経由して航空機で我が国に身柄を移送するなどして、できるだけ速やかに検察官に身柄を送致するなどの所要の刑事手続を進めることにしますが、その場合、やむを得ない事情等によって検察官への送致等の時間制限に従うことができなかったときは、検察官において刑事訴訟法に基づく所要の手続をとることにより適切に対応することができるものと考えております。

平岡委員 だから、私が聞いていることにちゃんと答えてくださいよ。それは制度を説明しているだけで、私は、関係省庁との間でできるだけ短時間で日本に引致できるということについて協議をしているというふうに答弁されているから、その協議はどう調ったのかを聞いているんですよ。

 関係ないところを答弁するなら出てこないでください。

岩崎政府参考人 ジブチを経由して連れて帰るということを考えております。

 まずジブチの方に自衛隊のヘリコプター等で運んでもらって、ジブチ経由で民間航空機、あるいは、場合によっては私どもの海上保安庁の飛行機をジブチまで持っていって、その犯人を連れて帰るということを考えておりまして、ジブチとの間でそういう取り決めを外務省がやっていただきました。

平岡委員 そのやり方でやると、日本に引致するのに大体どのぐらい時間がかかるんですか。

岩崎政府参考人 具体的にまだ計算をしておりませんので確かなことは言えませんけれども、やはり、一週間程度あるいはもう少しかかる可能性もあると考えております。

平岡委員 かなりの時間がかかるということは今の答弁でもあったわけですけれども、もともと二十四時間あるいは四十八時間といったような時間制限のある中での話ですね。こういう対応をしていくについては、先ほど来から、運用の世界でやっていく、副大臣が、こういうふうにやります、こういう法律の仕組みになっていますということを言われたわけですけれども、運用の世界でやっていくというのは、私は法的安定性に欠けると思うんですね。しっかりとこういう事態に対応するように、制度としてどういう引致の仕方をするのか、これを法律に明記すべきだというふうに思いますけれども、どうでしょうか。

佐藤副大臣 先生は、内閣法制局参事官として、プロ中のプロでございますから、立法政策の問題で、光栄の至りでございます。

 この問題は、一つは現在の刑事訴訟法の解釈の問題ですね。これは、やむを得ない理由があった場合、先生御指摘のように、場所が違う、いろいろなケースが考えられるわけです。遠さも違う、新しい分野のお話でございますから。そういうふうなときにおいて、事後的でございますが、事後的に、やむを得ない理由があった場合に、これは刑事訴訟法にいみじくも規定されておりまして、これに従ってやっていくということで関係方面と一つの解釈の考え方ができ上がっておる、このように承知いたしております。

平岡委員 今回、恒久法とはいえ、特別法でこういう形をつくって犯罪化する、そして、それに対してはやはりしっかりとした活動をしていくということでありますから、本来、こういった状況に対応するための刑事手続、あるいは先ほど来から出ています国際的な取り決めの問題についてもしっかりと固めた上で制度を発足させるべきだというふうに私は思います。

 次の問題に移りますと、先ほど来からるる出ている海上保安庁の体制整備の話なんですけれども、ちょっと気になるのは、国土交通大臣の答弁が定まっていないといいますか、何か、どっちなんだろうかというふうに、矛盾しているような気がするので、あえて確認をいたします。

 今後の海上保安庁の能力向上の問題について、国土交通大臣は、十四日の本会議での答弁では、新たに建造する巡視船の行動が可能となった時期にはソマリア沖海賊が鎮静化している可能性があること等々から、政府全体の結論として、現時点では考えていないと答弁しております。それに対して、この委員会での答弁の中では、例えば「しきしま」級をあと二隻持つべきだという指摘について、手おくれにならないよう真剣に検討してまいりたいという答弁もしております。

 この答弁、全然逆の答弁をしているように私には思えるんですけれども、一体国土交通大臣は何を考えておるんですか。

金子国務大臣 極めて明白に申し上げているつもりであります。

 今起こっているソマリア沖海賊対処への目的として「しきしま」級をつくることは、現時点においては考えておりません。

 ただ、一方で、海上保安庁の責務というのは極めて、この委員会の今回の議論を通じても、改めて責務の重大さというものが明確にされてきております。遠方海域における重大事案の対処のあり方についても検討しながら、新たな海上保安庁の船艇、装備の充実は真剣に考えてまいりたいと思っております。

平岡委員 それだったら、具体的に、これから中長期的にどういうふうに整備を進めていくのか、これを国土交通省として、国土交通大臣として私たちに示していただきたい。示せますよね。どうですか。

金子国務大臣 今現在行われております、海上保安庁における、例えばEEZ、あるいは区域を分けて哨戒活動をしておりますけれども、そういう活動というものも見直しながら計画をつくってまいりたいと思っております。

平岡委員 こういう法案を今審議しているわけですから、この法案に基づいて海上保安庁が本当に対応できるのか、このことを我々は法案を審議するときに確認しなきゃいけないんですよ。

 ぜひ、中期的な計画、ビジョンをこの委員会に示していただきたい。

 委員長、よろしいですか。

金子国務大臣 今回議論になってまいりましたソマリア沖の海賊問題に対しては、現有、持っている海上保安庁の装備ではソマリア沖まで行って継続的に業務をこなすのは難しいということを閣内でも議論してまいったところであります。

 そういう中で、昨年二月に、海賊に対処するために、どういう部隊で、どういう法律で海賊対処をしていけばいいのかということを政府内で法制チームをつくって議論してまいったところでありまして、今の海上保安庁が持っている装備の状況、あるいはソマリア沖で使われている武器等々に照らして、海上保安庁では無理である。

 今後についても、海上保安庁の業務というのは海上の秩序維持でありますから、いろいろな海域が考えられます。ただ、海域に制限はありませんが、相手方がどういう武器を使うか、どういう状況かによっても対応というのは当然でありますけれども違ってくるわけでありまして、したがいまして、今ある海上保安庁の装備と、あるいは現在行われている活動というものをきちっと検証しながら、設備を増強する場合には、検証しながら進めていきたいと思っております。

平岡委員 私の質問に全く答えようとしない、意味のない話をずらずら続けて、本当にこれでは全然審議できないですね。

 だから、海上保安庁が今回の法案に対応するだけの整備をしていく中期的ビジョンを示してください。

 委員長、よろしくお願いします。

木村(勉)委員長代理 では、後ほど理事会で協議しましょう。

平岡委員 では、以上で終わります。

    ―――――――――――――

木村(勉)委員長代理 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、政府参考人として外務省大臣官房長河相周夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

木村(勉)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

木村(勉)委員長代理 次に、保坂展人君。

保坂委員 社民党の保坂展人です。

 日本の外交の中で国際貢献ということが言われて久しいわけですけれども、湾岸戦争後の、いわゆる九〇年代に、ソマリア信託基金という基金がつくられたと聞いております。このソマリア信託基金も含めて、こういった国連関係のいわば日本が拠出をした金額及び使途、何に使ったのかということを報告いただきたい。外務省にお願いします。

別所政府参考人 ソマリアでは、一九九一年のバレ政権崩壊以降、無政府状態となりまして、内戦による多数の難民、死傷者の発生に加えて、干ばつの被害などがございまして、深刻な飢餓状態という悲惨な状況が続いておりまして、治安の欠如により、人道援助活動に著しい支障があるという状況がございました。

 そういう中で、国連の方は、一九九二年に安保理が決議七百九十四号を採択いたしまして、統一タスクフォースというものが採択されました。また、ソマリアの人道支援活動の安全な環境を確立するために、関係国へ事業に拠出金を充当する目的で、国連に今御指摘のありましたソマリア信託基金が設立されたわけでございます。

 その内容、目的などでございますけれども、私どもが出した国連ソマリア信託基金でございますけれども、ソマリアでの人道支援活動、そのための安全な環境の確立を目的とするという、先ほど申しました国連統一タスクフォースの活動のために設立されたわけでございまして、深刻な飢餓の中で活動を続けたわけでございますけれども、その基金に対して日本が拠出した全体の金額というのは一億ドルということでございます。

保坂委員 質問は、その基金も含めて、統一タスクフォースと言われましたけれども、そういったアメリカ中心の多国籍のアプローチ、こういったものも含めて、日本政府がこのソマリアの事態に九〇年代前半に出したお金は、この一億ドルでいいですね、それ以外はありませんね。

別所政府参考人 基本的に一億ドルだったと理解しております。

保坂委員 会計検査院が、配った資料にあるように、国連のさまざまな基金に日本政府から拠出をされながら、もう既に任務が終了している基金、つまり、動いていない、閉鎖をしている基金にも多数のお金が残っていて、国連代表部に対して国連から早くとりに来いと言っても、二年、三年放置していたということを、昨年、私、これは外務委員会でしたか、取り上げました。外務大臣にも答弁をいただきました。

 ところで、外務省がみずから、会計検査院に指摘をされる前に、これは基金としては終わっているということで閉じた基金、これが資料の十一番「ソマリア信託基金」、こういうふうにあります。この残余金は当然国庫に返納されるんだろうと思っていたら、「振替」というふうに書いてあります。この「振替」というのは、他の基金にいわば流用する、こういうことなんだと思いますが、この残余金、幾ら、どこの使途に流用されたのか。外務省、お願いします。

別所政府参考人 残余金でございますが、利子を含めまして我が国の拠出金残高が四百三十七万ドルございました。それで、ソマリア信託基金の設立趣旨に基づきまして、国連機関が管理、実施するソマリア関連プロジェクト二件に支出することを承認したわけでございます。

 具体的には、ユニセフが実施する少年司法制度改革、少年犯罪防止関連プロジェクトに三百八十九万ドル、UNDPが管理する平和と安定の構築プロジェクトに約四十九万ドルをそれぞれ支出したところでございます。

保坂委員 出したときには国会審議があっても、余ったらどういう報告があるのかというと、実はないわけですね。

 この問題を私、昨年の外務委員会で十一月に取り上げまして、外務省はこれをよく調べてみるということでしたが、この一枚目の資料にあるように、十二月には、国庫返納は三つで、あとは振りかえをしてしまいました。つまりは、今答弁があったように、二枚目の資料を見ていただくと、国連の信託基金についてのガイドラインというものを新たにつくりました。その下の(注)というところの2で、国連事務局からの振りかえ先について要請があることが条件だが、しかし、これがなくても、積極的に振りかえるべき理由がある場合は、この限りではないと。これまでは自由自在にやってきたんだと思いますけれども、これからも振りかえはしますよということなんですね。

 そこで、会計検査院に伺いますけれども、この残余金に着目した理由、そして、憲法八十三条は、「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない。」こういうふうにあるわけで、今後も振りかえをやりますよというこの外務省のあり方についてどういう見解を検査院は持っているんでしょうか。

鵜飼会計検査院当局者 お答えいたします。

 まず最初に、残余金に着目した理由でございますが、国際連合の会計検査委員会は、平成十六、十七会計年度監査報告書におきまして、長期に活動を停止していて閉鎖すべき信託基金を調査して特定するよう勧告しており、当該二年間に一切の支出がない信託基金を掲記しておりました。このようなことから、外務省が長期に活動を停止している信託基金を適切に把握しているかどうか、信託基金の閉鎖に際して、当該信託基金を管理する国際機関からの拠出残余金の処理についての照会等に対して適切に対応しているかなどに着眼して検査をしたところでございます。

 また、検査の結果でございますけれども、平成十九年度決算検査報告におきまして、「国際機関の信託基金の閉鎖に伴う拠出残余金の返還等について、受入れなどに係る具体的な事務手続を定めることなどにより、早期に処理するよう改善させたもの」として掲記しておりまして、拠出残余金の返還受け入れなどが早期に行われていない事態を指摘した結果、外務省におきまして、拠出残余金の取り扱いに関するガイドライン等を定めて、拠出残余金を早期に処理するという措置を講じたことを報告いたしました。

 外務省は、そのガイドラインにおきまして、拠出残余金が生じた場合には原則として返還を求めるとしておりますが、拠出残余金が生じている信託基金と振りかえ先基金における趣旨、目的の整合性、国連事務局からの要請等の条件を満たす場合は、他の基金への振りかえを求めることができるとしておりますので、その適否につきましては個々の事案ごとに検討する必要があると考えておるところでございます。

保坂委員 検査院もよく踏み込んで検査をしたと思いますけれども、これは決算書にも載ってこない、もちろん国会への報告もないということなんです。

 この問題に私が行き着いたのは、実は国連広報センターの不正経理問題からでした。これは中曽根外務大臣にも何度か答弁をいただきましたけれども、不思議なお金、いわば国連に対して我が国が分担をしていたり拠出をしていたりする多額のお金、これがUNIC東京の民間銀行の口座を通して支払われている。つまりは、外務省からの送金は、UNIC東京を経由して、円で払われたものがドルに交換をされてニューヨークの国連本部に送金をされる。

 なぜこんなことが行われていたのかということなんですけれども、これは外務省が出してくれた文書ですけれども、円高傾向が続いていた期間において、実勢レート払い方式は外務省予算の節約の観点からも有利な方法だったというふうにしているわけです。

 具体的には、資料につけてありますけれども、有利な方法というのは、要するに、円高の動向を見て、一年で円相場も上下がありますから、最もよいタイミングで送金をすると外務省予算全体が節約できる、こういうことかと思うんですが、外務大臣、これでよろしいでしょうか。要するに、有利な方法で為替の運用を、外務省として国連分担金、拠出金などで行っていたということでよろしいのかどうか。

別所政府参考人 今委員御指摘のとおりに、国連分担金の支払い方法でございますが、平成十二年度までは実勢レート払いで国連分担金の支払いを行っておりました。平成十三年度以降は、いわゆる支出官レートのやり方になっております。

 私どもとしては、先ほど御指摘ございましたように、いただいた予算、これをできるだけ有効に活用するという観点でやっていたわけでございまして、運用するということではなくて、基本的に、きちっと分担金を支払い、かつ、それが不足を生じないようなタイミングでやるということを念頭に置いて、できるだけ一番適切な時期にそういう支払いを行っていたというふうに理解しております。

保坂委員 それでは、会計課を預かっている官房長にも来ていただいていますので、お聞きをしますが、実際の運用実績を見ると、かなり円高のピークのところで送金をされているんですね。ちょっと外れるときもありますけれども、これは仕方がありません。

 そういう意味では、外務省に外国為替運用の専門担当官がいたんでしょうか。いなければ、これは民間銀行などに委託をして指示を仰いでいたのか。どういう仕組みでこれをやっていたのか、明確に答弁していただけますか。

河相政府参考人 平成十二年、今からかなり前の話でございますので、必ずしも細かい事実関係はつまびらかでない部分がございますけれども、私が承知している限り、その時点で外務省内に為替取引の専門家がいたというようなことは承知しておりません。

 今御指摘があったように、では、銀行に運用をある程度任せていたのかということについても、そういう事実関係は現時点で私は少なくとも承知していないということでございます。

保坂委員 私が調査したところ、この外務省の多額の国連分担金の送金の仕組みなんですが、これは簡単な図をつくってみましたけれども、外務省から送金の連絡がこの銀行にあって、そしてUNIC東京から依頼があって、そしてUNIC東京から国連本部に送金連絡があって、そしてこのUNIC東京の口座を通していくというところでは争いがないわけですね、こういうことだったと。

 それでは、例えば、国連の分担金だけで三百億円とか、こういう大変多額の費用です。これを、さあ、きょう半分送れというのを外務省のだれが判断して、だれが決裁をして、この送金作業を指示していたのか。この部署名と責任者はだれだったんですか。

別所政府参考人 基本的には、分担金を担当している部局が判断をしていたというものと承知しております。

保坂委員 分担金の判断している部局が、では何となくきょうこの辺でやっちゃおうかなといって判断していたということなんですかね。到底それは合理的な説明になっていないと思いますが。

 官房長、これは、こういったやり方を改めたわけですね。現在はUNIC東京の口座を経由しないで直接国連に、しかも、現在は外為特会のドルで送金をしていると聞いています。これを改めた理由と、そして、当時、〇一年でしょうか、平成十三年当時の大臣官房会計課長はだれだったんでしょうか。

河相政府参考人 送金もしくは為替をどういう形でドルなりに転換して送金するかということ、御指摘のとおり、十二年以降、この年以降、やり方を変えているということでございます。その変えた理由ということは、必ずしも私、ここの時点でつまびらかにしていないのでございますけれども、御質問の二〇〇一年、平成十三年の会計課長、これは、前半、初期においては木寺という人間が会計課長をやり、後期においては鈴木という人間が会計課長をしております。

保坂委員 きょうはソマリアの問題をこれから聞いていくので、この鈴木中東アフリカ局長に来ていただいていますけれども、当時会計課長だったわけですね。ルールを変更した後の会計課長だと思いますが、どうしてこのような送金方法を変更したと前任者から聞いたか。これは大事な問題ですので、答弁をしてください。

鈴木政府参考人 お答えします。

 私、当時、御指摘のように、後半、会計課長を務めさせていただきましたけれども、今急な御質問ということでもありまして、いろいろ当時の記憶を呼び戻そうとしておるんですが、正直申し上げて、必ずしもはっきり覚えておりません。当時、さまざまな会計上の改革とか見直しを、一連のことをいろいろ行いましたので、その一環だったのではないかと思いますけれども、申しわけございませんけれども、直ちにちょっと思い出すことはできません。

保坂委員 当時の外務省というのは大揺れに揺れていたわけですね。小泉内閣のもとで田中眞紀子外務大臣が就任をし、そして、外務省の不祥事というのもたくさん出てきました。不透明な金銭の行方というのも連日新聞をにぎわしたという中で、こういった、何か日本政府全体が国連に出すお金が、理由も定かではない、こういった国連の日本人職員がすべてであるUNIC東京という事務所を経由していく、そして、それは為替の有利な時期にタイミングをねらって有利な方法でやっていたんだ、こういうことなんですね。そこは見直されたんではないかというふうに思いますけれども。

 ちょっと財務省に伺いますが、国の機関で外国為替を専門に見ている部署はどこなのか、根拠法は何なのか。そして、今外務省の話をしていますけれども、こういう外務省予算、国連への大変多額の予算が、いわゆる運用されていたということは御存じだったでしょうか。

永長政府参考人 お答え申し上げます。

 外為法という法律がございまして、その規定によりまして、財務大臣が、外国為替相場の安定のために外国為替等の売買などを行う、このようにされています。この売買を円滑に行うために外国為替資金というものが、これは特別会計法で置かれていまして、この資金の経理を行うために外国為替資金特別会計ができている、こういうことでございます。

 組織面を申し上げますと、この外国為替資金の管理及び運営、運用、これを財務省の国際局が所掌しております。その職務の一環といたしまして、為替の安定という観点から国際金融市場のモニタリング等を行っておりますが、民間経済主体の売買はもとよりなんですが、政府各部門の外貨にかかわる支出、この個々の事象については、これを管理する、こういったことは行っておりません。

保坂委員 為替の安定のためにモニタリングはしているけれども、外務省がどういうふうにやっていたのかということについては、財務省も、財政当局もわかっていないし、そして我々国会にも全く報告がない。では決算を見ればいいのか、決算委員会もありますが、決算にも出てこない。

 いろいろ苦労して、非常にわかりにくいので、この資料のちょっと後ろの方につけておりますけれども、横組みの表で、経済協力国際機関分担金、これの決算書に記載をされている資料をまとめてみました。

 ここには、例えば、ちょっと古いですが、平成元年には二百九十五億円、約三百億円ですね。そして、流用額三十四億、外為変動で経済協力国際機関等拠出金に流用、こう書かれております。さらに見ていくと、平成五年、九三年には、国連ソマリア活動などに係る分担金を支出することになり二十七億を流用と書いてありますね。

 これは、いわゆる為替の変動のタイミングを見ながら、円高局面だったので、本来は不用額というふうに載るんでしょうけれども、流用ができるということで措置をしてきた、こういうことでしょうか。決算書にこう書いてあるので、答弁してください。

別所政府参考人 先ほどの私の答弁、ちょっと舌足らずなところもございまして、一言補足させていただきますが、実勢レートを使うか支出官レートを使うかというのは、国内の口座に振り込む場合は実勢レート、海外については支出官レートということになっております。国際機関について、どこに口座を開設するかということについては国際機関自身が決めるというのが基本ではございます。その辺ちょっときちんと御説明しておりませんでしたので、補足させていただきます。

 今御指摘いただきました話でございますけれども、外務省といたしましては、国会で御承認いただいた予算に不用額などが生じた場合、例えば先ほどの為替の話などであった場合には、補正予算で減額修正するなどで……(保坂委員「そんなこと聞いていないよ。これを聞いたんです」と呼ぶ)ですから、まさにそこは、流用という話をしておられるわけでございますが……(保坂委員「流用と書いてあるじゃないか」と呼ぶ)ですから、私が申しましたのは、有効に使うために、場合によったら減額修正とか、あるいは国庫に返納ということもあるわけでございます。

 また、その一環として、国会で御承認いただいた予算について、財政法第三十三条の規定に基づきまして、財務大臣の承認を得た上で予算科目間の流用を行うことが認められておりまして、こうした制度も活用して予算を最大限有効に活用するように努めてきている、そういうことでございます。

保坂委員 全く答えになっていないですよ。

 結局、円高局面で、外務省が為替相場を見ながら、プロの専門家はいないんだけれども、年に二回ぐらい、タイミングを見て運用差益を出してきたんですよ。外務大臣、どう見ますか。

 私は確認しましたよ。今、総政局長が、ソマリアには一億ドルの基金以外にも出していませんかと言ったら、一億ドルですというふうに答えているんですよ。ここに出ているじゃないですか。この二十七億円は何なんですか、国連ソマリア活動等に係る分担金。これはきちっと答弁してくださいよ。

 外務大臣、どうですか、ずっとお聞きになって。

中曽根国務大臣 この一億ドルにつきましては、先ほど総政局長が御答弁申し上げましたように、財政法に従ってきちっとやっている、そういうふうに承知しております。

保坂委員 だから、その一億ドル以外にありませんと言っておいて、これは何ですか。決算書に載っているんですよ。さっきの局長答弁は、では撤回するなら撤回してよ。今この委員会の場でソマリアのことをやっているわけでしょう。過去の問題を聞いているわけでしょう。では、何に使ったんですか、この二十七億円。おかしいでしょう。

別所政府参考人 先ほど申しましたように、ソマリア基金の残余金につきまして、その残りのものをUNDPとユニセフの活動に使ったと。

保坂委員 ちょっと委員長、整理してほしいんですが、一億ドルの基金については、日本円にして四億か五億か余ったわけですよ。それの使途は答弁したとおりらしい。そうじゃなくて、この二十七億円というのはそれとは違うんじゃないですか。これは平成五年なんですよ。先ほど私が配った資料の基金の最終拠出というのを見ると、平成四年なんです。おわかりですか。総政局長、どうですか。違うお金じゃないのと言っているわけですよ。二十七億というのは決して少なくないお金ですよ。これは何に使ったんですか。

別所政府参考人 申しわけございません。この資料、私、今急な御質問なのでしっかりとしたお答えができませんので、後ほど、調べまして御報告申し上げたいと思います。

保坂委員 私は、こういうことになるんじゃないかと思って、ちゃんと紙で、質問予告のときに三行書いているんですよ。国連決議を経てソマリア信託基金がつくられた、一億ドルの拠出を決めて積極的な対応をしたと聞くが、ソマリアに係る国連の活動及び米国を中心とした統一タスクフォースなどの活動に総額幾ら支出をしたのかと。一億ドルと答えたでしょう。二十七億円というのはどこに位置づけられているんですか。つまり、こうやって流用していくから外務省自身もわからない、こういうことですか。

別所政府参考人 申しわけございません。私、ただいま手持ちの資料で的確な御返事ができない状況でございますので、調べまして、御報告申し上げたいと思います。

保坂委員 外務大臣、一億ドルといったら当時のレートで百二十九億円ですか、当時の日本はかなり思い切った支出をしたわけですよ。しかし、残念ながら、国連のアプローチはソマリアにおいてうまくいかなかったわけですね。そして今日の海賊事案につながっているわけじゃないですか。翌年、二十七億円を支出した。

 私は、きのう、こうやって紙でちゃんと、こういうことにならないように、総額幾らなのかというのを聞いているのに、その答えがないんですよ。ソマリアは今始まったわけじゃない、そして、この海賊の解決のためには、根本的には、ソマリアの安定なり統治の回復というのは重要なわけでしょう。ですから、この委員会で答えられないというのはおかしいですよ。すぐに答えるように手配してくださいよ。

中曽根国務大臣 最初に御答弁申し上げました一億ドルにつきまして、またその残余金につきましては御説明したとおりで、これはこれでよろしゅうございますね。

 今の御質問の方のことにつきましては、今局長からも答弁いたしましたように、きちんと調べてまた御報告させていただきたいと思います。

保坂委員 また御報告といっても、近く採決なんという話もありますので。

 これはソマリアの安定のために、九〇年代、日本政府が前向きにとり行った活動。二十七億円も含めて、どういう成果があったんですか。それは総括してもらえますか、外務省。どういう成果があったんですか。

別所政府参考人 我が国が国連ソマリア信託基金に拠出したわけでございますけれども、ソマリアでの人道援助のために安全な環境を確立する目的ということで、国連統一タスクフォースができたわけでございまして、それの活動のために設立されたわけでございます。

 その当時のソマリアにつきましては、先ほども申し上げましたとおり、極めて深刻な飢餓と内戦の影響を受けた貧困の状況でございまして、このUNITAFという統一タスクフォース、人道援助活動の安全確保という点では一定の成果をおさめたとは思っております。

 ただ、その後、一九九三年、UNITAFが武装解除、人道支援、政治和解の促進を任務とする第二次のソマリア活動に移行するということを安保理で決定したわけでございます。

 その後の活動でございますけれども、残念ながら、武装勢力によるUNOSOM側の要員への襲撃事件などがございまして、犠牲がふえる結果となって、結局、一九九五年に安保理決議により完全撤退するという残念な結果になっているということでございます。

保坂委員 財務省の主計局次長に来ていただいていますので。

 我々、この外務省予算も含めた予算審議権というのが国会にあるわけですね。同時に、財政当局が予算編成をして、外務省の例えば国連関係の基金の出し方について、これが過大でないのかどうか査定をするという役割を負っていると思いますが、ここにある振りかえも含めた、要するに、会計検査院が指摘をした、外務省がみずから気づいたもの、これは全部含めると二十億余っているんですよ。

 そして、今お聞きのように、我々は何のことかさっぱりわからないわけですよ。二十七億浮きましたといっても、国会への報告もない。財務省に何か手続があるんですか。この点についてどういうふうに把握されていますか。

木下政府参考人 お答えいたします。

 済みません、当時の点についての外務省との詳細なやりとりについては現在ちょっと承知をしておりませんが、予算の執行については、一義的には各省各庁において責任を持って行われるべきものでありまして、委員御指摘の予算に係る執行についても、外務省の責任において適切に行われているものと考えております。

 流用ということであれば、財政法に基づいて流用の承認手続というものがございますけれども、そこに至らない執行段階におけるものにつきましては、ただいま申し上げましたように、基本的には各省各庁において適切に執行を行っていただくものであるというふうに考えております。

保坂委員 予算委員会、我々はまじめにやっているわけですね。ただ、これだけ多額のお金が出てきても、国会にも何の報告もない。わかりにくいですよ、外務省の決算書は。見ても何もわからない。

 外務大臣、これからこういう残余金が出たら、一たんは国庫へ返納したらどうですか。それで、必要があれば予算要求したらどうですか。

別所政府参考人 先ほど委員御自身も御指摘になりましたように、私どもの新ガイドラインでも、原則として国庫に返納するということで考えております。

保坂委員 では、大臣、いいですか。

中曽根国務大臣 国庫に返納すべきものは国庫にきちっと返納するということでございます。

保坂委員 どうもすっきりしないやりとりなんですけれども、では浜田防衛大臣に聞きましょう。

 この海賊対策が、これまでのPKO、あるいは災害派遣や人道派遣に比べて、極めて武器使用に至る蓋然性が高いんじゃないか。いわば海賊という形で活動しているわけですから、これに対する対応ということで。こういう認識はありますか。

浜田国務大臣 武器の使用の蓋然性が高いというお話でありましたけれども、いずれにしても、イラクでもそういった経験もしました。ただ、今回の場合には、海の上ということもありましてかなり陸の上とは状況が違いまして、かなりの距離のところから我々も確認ができて、なおかつ、それを避け得るだけの距離感を保っていれば、そういったことにはならない。我々が撃たれることもなければ、我々も、要するに、まずヘリコプターを飛ばし、また音声で警告したりしながらやっていくわけですから。

 我々の方は、武器使用に関しても、大変そういう意味ではしっかりと警職法の中でおさまっていますし、また、我々の武器使用もその中にあるということでございますので、そういった意味では、先生の言う、我々の武器使用の蓋然性が高いのではないかというのは、その距離感の問題等々を考えますと、さほど、当然これは緊張感を持って対応しているところでありますけれども、以前と比べての緊張感より高いのではないかということで言われるならば、我々はいつも同じような態勢のもとにやっているというふうに思っているところであります。

保坂委員 もう一点、では防衛大臣に聞きますが、つまり、海上警察である海上保安庁と違って、海上自衛隊のいわば装備している砲弾は強力だということがあるんじゃないか。

 ですから、海賊船に当たったときに、一部破損して航行がとまるというんじゃなくて、こっぱみじんに壊れてしまって瞬間で沈んでしまう、彼らは死傷者も当然出るということになった場合に、アメリカが既にそういうことになっていますけれども、自衛隊の武器使用で被害が出たということで、日本の船舶に、かえってねらわれていくというような心配がないかどうか。

 この二点についてお願いします。

北村副大臣 お答えいたします。

 海上警備行動による自衛隊の海賊対処につきましては、護衛艦による我が国関係船舶の護衛や、護衛艦、哨戒機による哨戒活動を実施することにより、海賊行為の抑止や海賊を退散させることが基本的な考えでございます。

 万が一、武器の使用をせざるを得ない場合には、自衛隊法第九十三条の規定により準用する警察官職務執行法第七条に基づき、事態に応じ合理的に必要と判断される限度におきまして武器を使用することとなっております。ただし、正当防衛または緊急避難に該当する場合等を除いては人に危害を与えてはならないということとなっておりますので、いずれにいたしましても、自衛隊の武器使用は法令に従い適切に行うということと御承知いただきたい。

 以上です。

浜田国務大臣 先生のおっしゃる、我々の武器の強さというか、それと、要するに船の構造にしても、当然我々とすれば、いざというときの態勢の準備というか対応からいってそうなっておるわけでありまして、先生が御懸念の、そういったことになった場合に、もしもぶつかって粉々になってなくなってしまった、そしてまた、それに対して海賊が逆恨みをしてもっと我々の方に向かってくるんじゃないかという今御質問だったと思います。

 今、副大臣が申し上げましたように、我々とすると、できるだけそういうことのないように、逆に言うと、追い払いながら、そして我々が牽制している間に早く船舶を行かせてというような、まずそこの任務が一番先になりますので、よほどのそういった追われ方をしない限りというか、なかなかそういった現状が出てくるとは思えないので、できるだけ、当然それはないとは言えませんが、ないように今後ともやっていきたいなというふうに思っております。

保坂委員 金子大臣に伺いたいんですけれども、私どもも「しきしま」を見てまいりました。十分な能力がある艦船だなと思って帰ってきましたけれども、インドネシアでアジア海賊対策地域協力協定、この委員会でも出ていると思いますけれども、これは、努力によって関係国と連携をして極めてうまくいっている。これは本来的には、ソマリアという国の統治が回復するまで時間がかかるとすれば、その沿岸の諸国の海上警察機能というものをもっと支援するとか、あるいは、インドネシアでの枠組みを生かして、そういう行動をとるということが必要じゃないですか。

 非常に広い地域ですから、海上自衛隊が行くということだけでは私は解決にならないと思うし、これは本来的には海上保安庁がまず取り組むべき事案だと思いますけれども、まず、そういうインドネシアの事例をしっかりこの地域でやっていくという、その考えはないんですか。

金子国務大臣 ソマリア海賊対策につきまして、ソマリア周辺国の海上保安機関の法執行能力を、インドネシア方式のような方式で能力を向上させていくということ、御指摘、このことは重要と考えております。

 昨年、イエメンの沿岸警備隊隊員をJICA、海上犯罪取り締まり研修に招聘いたしましたし、また、海上保安能力の向上などを目指すイエメン政府からの要請を受けまして、我が国は同国にODAの調査団を派遣することといたしております。近々派遣をされるということと聞いていますけれども、海上保安庁からもこの調査団に職員を派遣するなどして、どうすれば一番効果的に周辺国の海上保安機関の法執行能力を向上させるかということを調査することに対して協力してまいろうと思っております。

 国連ですとかIMOにおきましても、地域的な連携あるいは協力体制を構築する動きも今出始めております。そういう動きを踏まえつつ、東南アジア海域の海賊対策で培った知見を生かしまして、ソマリア周辺国の海上法執行能力の向上支援分野について、可能な範囲で積極的に対応していくこととしておる次第であります。

保坂委員 浜田防衛大臣に、もう時間も数分ですから、憲法の問題で二点、ちょっと伺いたいと思います。

 P3Cの情報を外国艦船に通報というか情報提供して、それが連携行動で攻撃ということになった場合に、憲法との関係で、いわゆる武力行使ということにつながっていく、手をかしたことになるんじゃないかという点が一点。

 もう一点は、先ほどもちょっと出ていたかもしれないんですが、海賊の取り締まりが厳しくなる、そして地域的には海上阻止活動などをやっている地域とつながっているわけですね。いわばアルカイダかもしれないし、あるいは他の勢力かもしれませんけれども、もともとは海賊だったけれども、反政府勢力というか、いわゆるタリバンなんかは、一たんは統治権力を握っていて、今また復活をしている。例えばそういう勢力と結びついて海賊が変容していく。いわゆる金品目当ての海賊だったんだけれども、いわば政治目的あるいは国家的な目的、そういうものに結びついてしまったというと、これは憲法が禁じている武力行使に当たるんじゃないか。

 この二点について。

浜田国務大臣 今回のP3Cの派遣については、ソマリア沖のアデン湾における海賊行為から我が国関係船舶を保護するための、海賊の動向について警戒監視、情報収集を行う目的で検討しておるわけでありますけれども、このP3Cが収集した海賊の動向に関する情報について、海賊対処のための活動を行う他国艦艇にその情報等を提供することはあり得ます。

 御質問に言う、海賊に対する武力攻撃の意味するところはちょっと我々もよくわからないのですが、しかし、国連海洋法条約の第百一条に規定されているとおり、そもそも海賊行為とは、私有の船舶等の乗組員等が私的目的のために行う不法な暴力行為、抑留または略奪行為等でありますので、これらの行為の抑止、取り締まりのための一般的な情報交換の一環としてこのような情報提供を行うことは、いわゆる武力の行使との一体化の問題を惹起するものではないというふうに考えておるわけであります。

 そしてまた、今先生から御指摘のあった、だんだん変容してくるということに関しては、これは我々とすれば、そこまでなかなか見た目ではわからないわけでありますし、どの点でどういった判断をするかというのを見きわめるのはなかなか難しいところもあろうかと思います。

 そういったことも含めて、その地域の我々の情報収集等が、我々自衛隊だけの対応ではなく、そして外務省等といろいろな情報を収集しながら、すべての総合的な判断のもとにこれをやっていかなきゃいかぬということになりますので、もしも、それがそうらしいということがわかった段階でどういうふうにするかというのは、やはりその時点にならないと、今の時点で想定してそれをどういうふうな対処にするかというのは、ちょっと私としては今のところイメージがわかないところであります。

保坂委員 これは恒久法ですからね、時限立法じゃなくて。だから、やはりそういった反国家、いわゆる内戦状態のようなそういう勢力と結びついた場合には、これはやはり憲法違反の行為になると私たちは考えますよ。

 時間になりますからやめますけれども、ぜひ外務大臣、先ほど外務省からあった、二十七億円も出しているわけですから、何に使ったのか、あしたの朝までにぜひ報告するよう委員長に求めて、終わります。

木村(勉)委員長代理 後ほど理事会で協議します。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、まずP3Cの派遣について聞きます。

 防衛大臣は、先週の十七日、海上自衛隊の固定翼哨戒機P3Cの派遣に向けた準備命令を出しております。五月中にも、米軍やフランス軍が駐留するジブチ空港を活動拠点として、二機のP3Cを派遣するとのことであります。

 防衛省に確認しますけれども、現在、ソマリア沖・アデン湾にP3Cを派遣している国はどこどこですか。それぞれ何機派遣していますか。

徳地政府参考人 我が方として今承知しておるところは、フランス、スペインといったようなところが哨戒機を派遣しているというふうに承知をしております。

赤嶺委員 報道ではアメリカが三機、ドイツも一機出している、そういうことでよろしいですか。

徳地政府参考人 済みません。ちょっと後ほど調べてお答えしたいと思います。

赤嶺委員 報道によりますと、アメリカが三機、ドイツ、フランス、スペインが一機ずつ出しているという、これはそのとおりじゃないですか。後ほど調べるほどもないと思いますよ。いかがですか。

徳地政府参考人 大変失礼いたしました。

 我が方として今承知をしておりますのは、各種の公開情報によってでございますが、フランス、スペインといった国が海賊対策のためにソマリア沖・アデン湾へ哨戒機を派遣しております。フランスにつきましてはアトランティック2で、スペインにつきましてはP3オライオン一機でございます。

赤嶺委員 アメリカやドイツは違うんですか。いかがですか。ジブチ空港にいますでしょう。

 もうちょっときちんと聞きますけれども、P3Cを現在ソマリア沖・アデン湾に派遣している国はどこですか、こういう質問です。

徳地政府参考人 アメリカにつきましても、ジブチに派遣をしているというふうに承知をしております。

赤嶺委員 すべてジブチを拠点に活動しているという理解でよろしいですね。

徳地政府参考人 すべてを我々として承知しているわけではありませんけれども、EUの部隊、それからアメリカにつきまして、ジブチを活動拠点としているものがあるというふうに承知をしております。

赤嶺委員 大臣、軍艦に比べて、P3Cはアメリカを除けば三カ国が一機ずつ出しているにすぎないんですが、日本がなぜP3Cを派遣する必要があるのでしょうか。

浜田国務大臣 要するに、海賊の動向等をしっかりと見きわめるというか、いろいろなものを事前に情報収集していけるという能力としては、P3Cの能力というのは非常に高いということもございますし、船の場合はどうしても遠いところがなかなか見づらいというのもございますので、上空からの確認というのは大変有用であって、その情報というのはどこの国も大変欲しがっている情報だというふうに感じておるところでございます。

赤嶺委員 情報収集が非常に高い能力を持っているP3Cを派遣するということですが、日本の商船護衛に直結した哨戒活動、これになるのか、それとも、インド洋、アデン湾の広大な海域で、いわば商船護衛にとどまらない情報収集活動を行うということですか。

徳地政府参考人 P3Cの派遣につきましては、現在、海上警備行動の一環として派遣することにつきまして準備を行っているところでございます。そして、仮に海上警備行動に基づいて派遣されるということになりますれば、今行われております日本関係船舶の護衛に必要な哨戒活動を行うということが任務になるわけでございます。

赤嶺委員 私が聞きましたのは、商船護衛に限定されているのかどうかということなんですよ。いかがですか。

徳地政府参考人 海上警備行動におきましては、ソマリア沖・アデン湾におきまして、人命、財産の保護という観点から、日本籍船等、日本関係船舶の護衛というものを現在やっておるわけでございます。そして、これに資するような目的でもって、実際、その護衛の一環としての情報収集、あるいはこれに必要な、つまり日本関係船舶の防護に必要な情報を収集する、あるいは哨戒をするということを考えております。

赤嶺委員 大臣、政府が海賊対策、海賊対処を目的にP3Cを派遣したとしても、能力が高いわけですから、実際にP3Cを飛ばせば、海賊にとどまらない情報を収集できることになると思いますが、いかがですか。

浜田国務大臣 そもそも、先生、どのような情報がほかの情報なのかということがちょっとよくわからぬのですが、基本的に、我々とすれば、海上にどういった不審な船舶があるかどうかというのを見定めるということもあろうかと思います。

 他の情報というのはどういう情報があるのか、よくわかりませんが、今、運用企画局長からお話がありましたように、我々の航行する船舶の、その地域の情報収集というのがメーンになるわけでありますので、そういった意味においては、他の情報がどの情報か、ちょっとお答えがなかなか難しくて、よくわからなくて申しわけないんですが、我々とすれば、その任務に特化してやっていくということだと思っております。

    〔木村(勉)委員長代理退席、委員長着席〕

赤嶺委員 先ほどの答弁にもありましたが、入手した情報、これは米軍にも提供するわけですね。

浜田国務大臣 今、先生が、アメリカにと特定しておっしゃられましたけれども、我々とすれば、今回の情報というものに関しましては、他国の艦船、アメリカに限らず、そういった情報というものを流していくことになろうかと思っているところでございます。

赤嶺委員 さらに確認なんですが、先週十五日の質疑の中で防衛大臣は、現在ソマリア沖で活動している護衛艦が米軍主導のCTF150、151の双方と情報共有をしているとおっしゃいました。認めました。

 P3Cも、護衛艦と同様に、CTF150、151の双方と情報を共有することになりますか。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 アデン湾・ソマリア沖のような広大な海域でもって日本関係船舶の護衛等を実施する際におきましては、諸外国との間の情報の交換というのは大変有益なことだと考えておりますので、必要に応じ、アメリカの、いろいろなところと情報交換をする、これは十分にあり得ることだと考えております。

赤嶺委員 そこで、ちょっと確認したいんですけれども、自衛隊が米軍と情報を共有することになれば、必然的に、入手したあらゆる情報はデータリンクで米軍と共有されることになるわけですね。

 米軍は、これまでインド洋、アデン湾の海域で、まず一つは海賊への対処、これをしております。テロリストの海上阻止活動、この活動も行っております。ソマリアへの軍事的関与、こういう少なくとも三つの活動を行ってきているわけですが、自衛隊のP3Cによる哨戒活動は、海賊対処だけでなく、この海域で活動する米軍の軍事作戦の全体を支援することになりませんか。

徳地政府参考人 P3Cを現場に派遣して情報収集を行う場合には、海上警備行動によりまして海賊対策を行う、この一環として情報収集を行うわけでございますので、したがいまして、情報の交換もその一環として行われるというものでございます。

赤嶺委員 金子大臣に伺います。

 政府は、この法案が成立した場合、自衛隊の活動根拠を海上警備行動から新法に切りかえるとしているわけですが、自衛隊のP3Cが、海賊関連の情報だけでなくあらゆる情報を、テロに関連する情報、こういうものも当然収集していくと思いますが、法律の目的とは異なる情報を米軍に提供すること、そういうことは新法のもとで認められますか。

金子国務大臣 海賊対処行動については、海賊についての行動についてのみ情報収集をP3Cがすると聞いております。

赤嶺委員 テロの情報はとらないということはありませんでしょう、防衛大臣。情報収集は当然行うわけでしょう。そして、米軍の艦船は、インド洋、アデン湾でテロ対策もやり、ソマリアの陸との関係もあり、海賊対策もある。しかし、P3Cがとった情報は、アメリカのテロ対策の方には、収集した情報であってもリンクさせませんよというわけにはいきませんでしょう。いかがですか。

浜田国務大臣 先生の我がP3Cに対しての評価の高さはありがたいなと思うのでありますが、しかし、情報の振り分けというのは、どれがどの情報でというのはなかなかわからぬわけですから。

 わかりませんけれども、しかしながら、我々の活動はあくまでも我々の、要するに、守っている船の周りの海賊船に対してのやはり情報収集を行うということになっているわけですから、もっと申し上げれば、先生がおっしゃったように、アメリカ軍はアメリカ軍のP3Cをお持ちになっているわけですから、そういった意味においては、我々がそこまで出張っていってそんな仕事をするということは我々としては全く想定をしておりませんので、情報が一緒だからということで御指摘をされても、なかなかそこは、我々とすれば、うんとは言えないところでございます。

赤嶺委員 情報を収集して、その収集した情報は共有する、共有したアメリカの側はいろいろな作戦をやっている。皆さんが、その作戦にお役に立つようにといって渡すかどうかは別にして、役に立つ情報が入ったなということになるのは当たり前じゃないですか、そんなの。(発言する者あり)一般情報というお話が今ありましたが、まさに一般情報の中に貴重な情報が得られたなということになるのは当然じゃないですか。海賊対処だけでお互いに情報交換しているわけじゃないですから。

 それで、まだ続きますから。

 まず、P3Cを派遣している国々の間の調整の問題です。これは、派遣国がそれぞれ勝手に飛ばしているんですか。それとも、派遣国同士で調整や分担をしながら飛ばしているんですか。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 諸外国の間でどういうふうになっているかということにつきましては、我々の方として詳細存じておりませんけれども、我が国といたしましては、自衛隊につきましては、我が国の独自の判断で派遣、そして実際に飛行させるということで考えております。

赤嶺委員 派遣は皆さんの判断でやると。私が聞いているのは、実際に飛ばす場合に、どこかの国と調整をするんですか。しないで、ジブチに行って、そのまま日本が勝手に飛んでいって情報収集に行くんですか。いかがですか。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 P3Cの派遣につきましては、日本関係船舶の防護というものを効果的に実施をするという観点から、空から広域的な哨戒活動を実施するということで考えておるところでございます。

 したがいまして、これに必要なP3Cの運用というものを我が国としての判断で行うということで考えておるわけでございます。

赤嶺委員 浜田大臣、これは報道ですが、報道にこういうのがあったんですよ。自衛隊がP3Cを派遣した場合、日本が海上の哨戒活動を担うことによって、米軍はその分をアフガニスタンの陸上偵察に回すことができる、こう報道があるんですね。米軍にはそういう意向があるんですか。

浜田国務大臣 済みません、先生、それは、我々とすれば純粋に今回海警行動で、我々は船舶協会等々の意向に沿って海上警備行動をやるわけでありまして、それを特化することで、要するに、しっかりやるためにもP3Cを出しているわけでありますので、アメリカがどのように考えようと、今こういう報道があるけれどもと言われても、我々の頭は今それしか考えておりませんので、そこまではお答えできないということでございます。

赤嶺委員 浜田大臣は純粋に海賊対処を真剣に考えていると。私は対処の仕方が間違っていると思うんですが、しかし一方で、米軍が自分の国のP3Cをどのように使うかということは米軍の判断に任されているんですよね。

浜田国務大臣 当然、先生、先ほどからお話ししておりますように、米軍は米軍の考え方でやっているわけでありますので、そういった意味においては、我々の能力に頼らなくても、彼らは彼らなりにやるということだと思います。

赤嶺委員 やはり、報道とはいえ、日本がP3Cを派遣した場合に、米軍の考えの一端が報道の中で出てくる。

 私は、この間も質問のときに言ったんですが、今回のソマリア沖への自衛隊派遣は、政府の言うような警察活動にとどまるものではないと思うんですよ。国連安保理決議も、その決議が規定する海賊対処の中身そのものも、警察活動の根幹、枠を超えたものになっています。政府が、浜田大臣がどんなに米軍への情報提供は海賊対処が目的と繰り返しても、米軍はこの海域で、対テロ戦争、ソマリアへの軍事介入、いろいろな活動を展開しているわけですよ。自衛隊の活動はこうした米軍の軍事活動の全体を支援することにならざるを得ないと私は指摘しておきたいと思います。

 ですから、この活動というのは、P3Cの派遣に至っては、警察活動どころか、私は戦争支援そのものにつながっていくということを強く指摘しておきたいと思います。

 武器使用について聞きます。

 先日、アメリカのコンテナ船の船長を救出する際、アメリカ海軍の特殊部隊シールズの狙撃兵が海賊四人のうち三人を射殺しました。

 これは外務省に聞きますけれども、米軍はこのような武器使用は以前から行っていたのですか。

別所政府参考人 委員も御存じのとおり、アメリカはこの地域で相当昔から活動をして、海賊の対策にも当たっております。ただ、私自身、具体的に海賊に死者が出たというのは、先ほど委員が御指摘のあった件以外は承知しておりませんので、具体的に今まで武器使用がどのようなものであったかということについては、残念ながら承知しておりません。

赤嶺委員 今回の武器使用はオバマ大統領がみずから下したと報じられているわけですが、今外務省の答弁にもありましたように、これまで海賊を射殺するという対応はしてこなかったと思います。

 船が海賊に乗っ取られ、乗組員が人質にされた場合の武器の使用について、ソマリア沖に軍隊を派遣している国の間で、同じですか、それとも違うのですか。違うのであれば、何がどう違いますか。

別所政府参考人 武器使用のルールといいますか、そういうものにつきましては、各国それぞれ決まりがございまして、私も今この場ですぐに御説明できる資料を持ち合わせているわけではございません。必ずしも画一的ではないということは少なくとも申せると思います。

赤嶺委員 各国の武器使用について整理してまとめて委員会に提出していただきたいと思います。委員長、よろしくお願いします。

深谷委員長 理事会でお諮りします。

赤嶺委員 十八日付のウォールストリート・ジャーナルによりますと、海賊が商船を乗っ取ろうとするのを阻止するために武器を使用することを認めるという点ではすべての国が同意していると思われる、このように言っております。

 一方で、船を乗っ取られた後に海賊と交戦することを望む軍隊は少ないとされています。NATOやEUはそうした武器使用はしない、ウォールストリート・ジャーナルの報道ではそうなっているわけですね。米軍も、今回の事例までは海賊と交戦するという姿勢ではなかったようであります。

 例外はフランス軍とインド軍とのことでありますが、これは外務省、どのように理解しておりますか、今の報道は。

別所政府参考人 今委員が御指摘のあったインドの軍の関係、フランスの軍の関係、私どもも報道で当然承知しております。

 他方、個々の軍隊の武器使用の基準について、私ども個々に知っているわけではございませんし、また各国、軍の武器使用の基準について必ずしも公にしていないというのが現状だろうと思っております。

赤嶺委員 このウォールストリート・ジャーナルによりますと、公海上で人質を拘束した海賊と対峙する場合、時間は海軍の側にあるという指摘をしているんですね。つまり、海賊は通常、イデオロギーが動機になっているわけではないわけですから、限られた物資しか持っていないわけです。疲れ果てさせれば断念させることができる、海軍の側が有利だ、このように報じているわけです。

 今回、海賊三人が射殺されたことに対して、ソマリアの海賊組織はアメリカに対する報復を宣言しました。アメリカの第五艦隊のゴートニー中将は、船長救出がこの海域での暴力をエスカレートさせるだろう、このように述べております。

 その後、アメリカの貨物船リバティ・サンが海賊船からロケット弾や自動小銃で攻撃を受ける事件も発生しております。

 そこで外務大臣に伺いますけれども、今回の海賊三人の射殺は情勢の緊張悪化を招いているのではありませんか。

中曽根国務大臣 突然の御質問でございますが、それはできればそのような事態にならない方が好ましいわけであります。また、当時の現場の状況等も私ども正確に承知しているわけではありませんので何とも申し上げようがありませんが、そのような海賊行為そのものが犯罪行為でありますから、そういうものに対処する上で、やむなくそういうようなことになったんだと思いますが、緊張は高まらない方がいいということは、これは当然のことであります。

赤嶺委員 いや、ですから、そういう行動というのは緊張悪化を招くんじゃないかと伺ったんです。

中曽根国務大臣 そもそも海賊がそういう犯罪行為をするからでありまして、そのために各国が、約二十カ国がそういうふうに国費を使って、また、多くの人がそのような活動をやっているわけですから、そういうものを根本を直さなければならないわけでありまして、そういう意味で、やむを得ず対応しているということでございます。

 緊張は、先ほどから申し上げましたように、それによって高まるということはあるかもしれませんが、しかし、国連の安保理の決議等もありまして、協力をしてこれをなくすということが大事ということは言うまでもありません。

赤嶺委員 今までアメリカも、海賊を捕らえても射殺ということはなかったわけですが、今回の行動が、やはりあの海域での緊張を激化させるものになると思うんですよ。

 そこで、それを受けて、先週の十五日ですが、クリントン米国務長官は、人質事件を受けて緊急対策を発表いたしました。中身は、ブリュッセルの会合への代表派遣やコンタクトグループの開催、プントランドの地元指導者との協議、船会社や保険会社による自衛措置の強化などであります。同時に、アフリカの角に海洋の安全を回復するための長期戦略を立案するとも述べております。

 この緊急対策、長期戦略について、日本政府に対して何か説明はありましたか。

別所政府参考人 クリントン国務長官が発表された、記者会見でおっしゃった話の中で、今後やっていくという話を幾つか言っておられます。その中の幾つかについては今後とも日米間で話し合っていくというつもりでございますし、また、海賊問題について、当然日米間で事務的にも話し合いをしているところでございます。

 ただ、この四月十五日の発表内容について事前に通報があったとか、そういうことではございません。

赤嶺委員 ブリュッセルの会合は二十三日から開かれるようであります。会合に関連してソマリアのアハメド大統領は、ソマリアの治安部隊を確立するための国際的援助として一億六千五百万ドルがあれば、当面の海賊対策に十分で、海賊の攻撃の四分の三は防止できると発言しております。

 日本政府は、このブリュッセルの会合に代表を派遣するんですか。そして、何を主張するおつもりですか。

秋元政府参考人 委員御指摘のブラッセルでの会合というのは、まさに国連の主催によりまして、ソマリアの治安機関の創設、それから、アフリカ連合が派遣していますソマリア・ミッション、これに対する支援を議論するための会議でございます。この会議には、我が国からは橋本外務副大臣が出席いたします。

 そういうことですので、この会議におきまして、我が国としても、こういうソマリアの治安強化のためにどういうことをすべきなのか、そして日本としてどういう貢献ができるのか、こういうことを主張してまいりたいと思っております。

赤嶺委員 大変大事な会合で、そして、日本政府がどういう態度をとるかというのは非常に重要になってくると思いますけれども、先ほど紹介しましたウォールストリート・ジャーナルでは、アメリカの国防総省当局者の話として、ソマリア沖の海賊に対し、陸上の拠点から海に出た時点をねらって攻撃することを検討している、こう報じております。また、十一日付のワシントン・ポストは、オバマ政権内で、ソマリアのイスラム系過激派組織アル・シャバブの訓練キャンプに対する軍事攻撃が議論されているということが報じられております。

 私は、このような軍事攻撃を行うことになれば、ソマリア情勢を一層本当に悪化させることになると思いますが、外務大臣、そういう認識をお持ちじゃないですか。

中曽根国務大臣 新聞報道ということでありますが、私、その新聞報道を読んでおりませんし、今委員からお聞きしたばかりでありますけれども、いずれにしても、各国が今そういうふうな会議を開きながら、ソマリアの安定とそれから海賊対策をやっているわけでありますから、我が国も積極的にそういうような活動をやって、一日も早くソマリアに安定が来るようにということで努力をする、そういうことに尽きると思います。

赤嶺委員 私は、暴力の連鎖を生むような対応はとるべきでないということをしっかりアメリカに言うべきだと思います。これが九条を持つ国の日本の役割でなければいけないと思います。暴力を容認したりするようなものが事態をどんな泥沼に持っていくか、国際社会は経験しているわけですから、私は、そういうことをしっかりアメリカに言うべきだということを強く申し上げておきたいと思います。

 次に、今度の法律とそれから国連海洋法条約の関係について聞きます。

 国連海洋法条約は、公海における旗国主義の原則の除外として、人類に対する犯罪行為とされる海賊行為について、公海などにおいて、海賊船の国籍を問わず、いずれの国も管轄権を行使できることを規定しております。これは、公海条約、国際慣習法として以前から確立していたものだと思いますが、いかがですか。

鶴岡政府参考人 委員御指摘のとおりでございまして、もともと慣習国際法として確立していたものが公海条約の規定に含まれ、その後、国連海洋法条約の規定に反映されたものでございます。

赤嶺委員 以前からこういう規定があったにもかかわらず、これまで法整備をしてこなかったのはなぜですか。

鶴岡政府参考人 平成八年に我が国が批准いたしました国連海洋法条約は、海賊行為の抑止につきまして、最大限に可能な範囲での協力義務について規定しております。これは、各国ができる限りの協力を行うことを義務づけるとの趣旨でございまして、海賊行為の具体的な処罰、取り締まりを条約上の義務として課したものではございません。

 批准当時におきましては、政策的にも、我が国が国籍を問わず海賊行為を処罰し、抑止し、取り締まる現実的な必要性がございませんでした。したがって、国連海洋法条約を批准する際には、海賊行為の処罰、取り締まりのための国内法を整備いたしませんでした。

赤嶺委員 つまり、現実的な必要がなかったからとおっしゃっているわけですが、これまでは現実的な必要がなかった、今はつくろうというと、何が違うんですか。何が変わったんですか。

鶴岡政府参考人 近年、ソマリア沖・アデン湾で急増、多発してきております海賊行為は、我が国のみならず、国際社会にとって緊急に対応するべき重大な脅威となっております。

 このため、麻生内閣総理大臣から、海賊行為の処罰、取り締まりのための新たな法案を早急に取りまとめるよう指示がございまして、総合海洋政策本部の取りまとめにより、昨年以来その作業を急ぎ、去る三月十三日に国会提出に至ったものでございます。

 最近多発しておりますソマリア沖を含む海賊行為は、海上における公共の安全と秩序の維持に対する重大な脅威となっておりまして、日本国民の人命、財産の保護の観点からも、我が国にとって喫緊の課題でございます。このために法案を用意いたしまして、国会での御審議をお願い申し上げている次第でございます。

赤嶺委員 念のために確認したいんですが、海洋法条約第百条は、「すべての国は、最大限に可能な範囲で、公海その他いずれの国の管轄権にも服さない場所における海賊行為の抑止に協力する。」このように規定しているわけです。この規定の趣旨は、海賊行為の具体的な取り締まりを条約上の義務として課すものではなく、この条約に基づいて具体的に何をするかは日本政府の判断にゆだねられている、こう理解してよろしいですか。

鶴岡政府参考人 基本的に委員の御指摘のとおりだと思います。

赤嶺委員 そうなりますと、海賊については、慣習法で長いこと国際社会の共通の認識になってきた国連海洋法条約が、新たな法律の制定を求めるものではない。しかし、今つくられている海賊対処法というのは、日本が海賊対策のために地球の裏側まで出ていく中身になっているわけです。さらには、海賊対策のためのいろいろな体制整備を行うようになっているわけですが、特段、条約でそれを求めていたわけではないという理解でよろしいですね。

鶴岡政府参考人 国連海洋法条約の規定に従って、加盟国が海賊行為について具体的な処罰、取り締まりを国内法を整備して行わなければならないというところまで義務が生じているわけではございません。

 他方、多くの国々におきましては、日本もその批准時点において同様でございますけれども、海上における強奪行為などの犯罪行為につきましては、それを海賊行為として特定をせずとも取り締まりの対象としてきていた次第でございます。

 先ほど他の委員からの御質問もございまして、世界各国におきましても、海賊法というものを特定した上で、海賊犯罪の取り締まりを国内法化しておる国は必ずしも多くございません。しかしながら、現時点において国際的な海賊活動が頻繁に生じてきた中で、このような海賊犯罪についての対応を整える上で、今般このような法整備が適切であるという判断に至ったものでございます。

赤嶺委員 今度は別のことを国土交通省に聞いていきますから、金子大臣、よろしくお願いします。

 きのうも参考人の質疑の中で聞いたことなんですが、今回の自衛隊派遣の必要性として、民間船舶が喜望峰やパナマ運河回りに切りかえた場合の経済コストがよく挙げられます。

 国土交通省に確認したいのですが、喜望峰回りやパナマ運河回りにした場合に、増加する燃料コストは具体的にどれだけですか。

 ただ、その一方で、アデン湾を通過する場合には、スエズ運河の通航料がかかり、最近は保険料も引き上げられたと聞いております。これらはどのくらいかかりますか。

 また、これらを相殺しますと、ソマリア沖・アデン湾を通過した場合あるいは迂回した場合の経済コストは実際どの程度変わってくるのでしょうか。

伊藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 喜望峰回りと、それからアデン湾、スエズを航海した場合の比較を準備してまいりましたので、ちょっと御紹介を申し上げますが、これは船の大きさとか船の種類、スピード等で変わってまいるわけでございます。

 航海日数で申しますと、六日から十日程度増加をいたします。それは、距離が六千五百キロメートル程度長くなるわけでございまして、その結果として航海日数の増加があるというわけでございます。

 コスト増についてのお話でございますが、これもまた、船の種類、大きさによってかなり異なってまいりますし、またそのときの油代でございますけれども、そういった価格とも連動いたしますので、大きく変動いたします。

 そういったことを前提にいたしまして、一定の仮定を置いて、さらに保険料の増も含めまして、船主協会の試算をいただいたところでございますが、例えばアデン湾を航行しているコンテナ船の例で申しますと、約二千万程度の負担増になるというふうに伺っております。(赤嶺委員「二千万ドル」と呼ぶ)二千万円でございます。失礼いたしました。

赤嶺委員 これまでアデン湾を航行していた船舶のうち、喜望峰回りあるいはパナマ運河回りに切りかえた船舶、これはどの程度ありますか。

伊藤政府参考人 これも私ども直接把握しておりませんので、いわゆる船主協会に伺ったところの結果でございますが、これは必ずしも航路変更してアデン湾を航行したという数について詳細に把握をなかなかできないというお話がございました。

 ただ一方で、喜望峰回りの通航実績が、例えば本年一月から三月の三カ月間でございますけれども、三十六隻ございました。なかなか難しいとは申し上げましたけれども、船主協会が確認がとれた船としては、航路変更してアデン湾にかえて喜望峰回りをとったという船は、この三十六隻のうちの一隻だという確認がとれたというふうに伺っております。

赤嶺委員 もう時間がなくなりましたけれども、私たちも外洋を航海している船員の方の意見も聞いてまいりました。なぜ軍隊に守ってもらわなければならないような危険な海域に船を出すのか、安全な海域に出すのが船主の責任ではないかと、安全な航路の選択というようなことも、いわば船員の中からの声として出てまいりました。

 私は、けさの理事会で与党の方から、何かもうあした討論、採決というような提案もされておりますが、疑問はまだまだあります。論じられた問題点についても一層深めていかなければいけない問題が積み上げられておりますので、引き続き、私も質問を用意しておりますので、この委員会で質問を続けていきたいと思います。

 終わります。

深谷委員長 次回は、明二十三日木曜日午前八時四十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時九分散会


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