衆議院

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第7号 平成21年4月23日(木曜日)

会議録本文へ
平成二十一年四月二十三日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 深谷 隆司君

   理事 木村  勉君 理事 小池百合子君

   理事 後藤田正純君 理事 新藤 義孝君

   理事 中谷  元君 理事 長島 昭久君

   理事 鉢呂 吉雄君 理事 佐藤 茂樹君

      あかま二郎君    赤城 徳彦君

      秋葉 賢也君    新井 悦二君

      石原 宏高君    江渡 聡徳君

      越智 隆雄君    大塚  拓君

      木原  稔君    北村 茂男君

      杉田 元司君    鈴木 馨祐君

      冨岡  勉君    中根 一幸君

      西本 勝子君    葉梨 康弘君

      萩原 誠司君    橋本  岳君

      松浪健四郎君    松本 洋平君

      三原 朝彦君    矢野 隆司君

      吉田六左エ門君    小川 淳也君

      大島  敦君    川内 博史君

      田嶋  要君    武正 公一君

      伴野  豊君    平岡 秀夫君

      松野 頼久君    三谷 光男君

      村井 宗明君    渡辺  周君

      石井 啓一君    冬柴 鐵三君

      赤嶺 政賢君    阿部 知子君

      菅野 哲雄君    下地 幹郎君

    …………………………………

   内閣総理大臣       麻生 太郎君

   外務大臣         中曽根弘文君

   国土交通大臣       金子 一義君

   防衛大臣         浜田 靖一君

   国土交通副大臣      加納 時男君

   外務大臣政務官      柴山 昌彦君

   国土交通大臣政務官    岡田 直樹君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    宮崎 礼壹君

   政府参考人

   (内閣官房総合海洋政策本部事務局長)       大庭 靖雄君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    岩崎 貞二君

   衆議院調査局海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別調査室長           金澤 昭夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十三日

 辞任         補欠選任

  中森ふくよ君     西本 勝子君

  松本 洋平君     萩原 誠司君

  大島  敦君     小川 淳也君

  渡辺  周君     村井 宗明君

  阿部 知子君     菅野 哲雄君

同日

 辞任         補欠選任

  西本 勝子君     中森ふくよ君

  萩原 誠司君     松本 洋平君

  小川 淳也君     大島  敦君

  村井 宗明君     渡辺  周君

  菅野 哲雄君     阿部 知子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案(内閣提出第六一号)


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     ――――◇―――――

深谷委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房総合海洋政策本部事務局長大庭靖雄君及び海上保安庁長官岩崎貞二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

深谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

深谷委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷元君。

中谷委員 おはようございます。自由民主党の中谷元でございます。

 これまで、この委員会におきまして、二十時間以上に及びソマリア沖の海賊対策を初め政府提出の海賊対処法案につきまして審議をしてまいりましたけれども、先ほど、本日この委員会質疑の後採決をするということが決まりました。

 そこで、本日は、総理にも御出席をいただきまして、国家として海の安全に関してどのような対策をするべきであるのか、また世界から日本は何を求められているのか、今後の海賊対処のあり方についてお伺いをさせていただきます。

 昨年以来アフリカのソマリア沖におきましては海賊行為が頻繁に行われておりますが、最新のデータによりますと、四月二十二日現在、四月に入って約三十件発生をしております。一日一件以上。また、ハイジャックされた船舶は二十隻。そして、現在十五隻の船が抑留をされまして、約二百五十名の乗員が人質になっているということでございます。日本では余りその被害の状況が実感されませんが、現実に日本も、一時人質として日本人が拘束をされ、そして日本が所有している船舶も実際に被弾をしているわけでございます。

 昨日でございますが、日本船籍である「ぱしふぃっくびいなす」、これは、乗員乗客五百二十八名、日本人が三百七十六名乗っておりまして、世界一周の航海をいたしておりますが、海上警備行動で発令されております「さざなみ」「さみだれ」の海上自衛艦艇が護衛をしまして、無事この海域を通過したということでございます。

 まず、防衛大臣に伺います。現在海上警備行動におきましてアデン湾に自衛艦艇が派遣をされていますが、これまで海上自衛隊が実施した成果と現状につきまして伺います。

浜田国務大臣 三月十三日に海上警備行動を発令して、護衛艦二隻を派遣し、三月三十日よりアデン湾において日本関係船舶の護衛を開始いたしました。これまでに合計九回の護衛を実施いたしまして、合計二十六隻の日本関係船舶の護衛を実施してきたところでございます。日本の国民の人命、財産の保護という政府の責務を着実に果たしてきたところでございます。

 また、四月四日、十一日及び十八日には、護衛対象外の船舶からの通報を受け、人道上の観点から、強制力の行使を伴わない行為として、LRAD、指向性大音響発生装置による呼びかけや艦載ヘリによる状況確認等の対応を実施するなど、できる限りの措置を講じてきたところでございます。

 以上のように、適切に任務を果たしたところでございますけれども、今後とも適切に任務を実施していくためには保護対象船舶が限定されない形で対処することが望ましいと考えておりまして、新法の早期成立をお願いしたいと考えているところでございます。

中谷委員 今、防衛大臣から状況説明がありましたが、お話にもありましたように、行動が非常に制約をされている、日本の関係する船だけしか守れない、隣に困っている船があってもこの法律においては守る権限がないということで、大変苦労しながら現地の状況に備えていると聞いております。

 そこで、今度は外務大臣に伺いますが、このソマリア沖の海賊が急増しているということはどのような原因があって、どのようなことが背景にあるのか。この点、外務大臣に伺います。

中曽根国務大臣 最近のこのソマリア沖の海賊事案の多くは、もう委員も御承知のとおり、人質の身の代金を目当てにした、そういう船舶に対する襲撃とか乗っ取りでございます。ソマリア沖のこの事件は、先ほどお話ありましたけれども、昨年は一年間で百十一件でございますが、これはおととしの二・五倍になるわけでございますし、ことしに入りましては、まだ四月ですが既に八十件を超えている、そういう状況でございます。

 このような海賊の事案が、最近、特に昨年の夏以降増加している。そのことにつきましての原因また背景といたしましては、一つは、ソマリアにおきまして国土全体を実効的に統治する政府が存在をしていない、法執行とか司法機関が全く機能していないということが一つ挙げられます。それからもう一点は、犯罪集団の組織化、分業化が進んでおりまして、身の代金目当てに船舶を襲撃、乗っ取る行為がビジネス化している、そういうことがある。そういうふうに認識をしております。

 海賊対策の根本的解決には、やはりソマリア情勢を安定化させるということが不可欠でございますが、我が国といたしましては、ソマリアに対しまして、人道支援とかあるいは治安向上のために最近二年間で約六千七百万ドルの支援を行ってきておりまして、昨年のジブチ合意以降の和平に向けての肯定的な動きに対応いたしまして、国連の安保理や、ソマリア情勢に関心を有する欧米とか、あるいはアラブ諸国、アフリカ諸国等から成るグループと連携をしながら、今後のソマリアの安定化や、また和平進展への支援のため積極的に協力をしていく、そういう考えでございます。

中谷委員 この海賊の原因というのは、ソマリアという国がまさに無政府状態になってしまって、犯罪行為を取り締まる能力も機関もないという状況だということであります。そもそも、海賊というのは一般人の生命財産を脅かす犯罪行為でありまして、こういったものにだれかが取り締まりを実施しなければならないということでございます。

 先ほど外務大臣は、国連の決議も出された、まさに国際社会として看過できない状況に陥っているということでありますが、この国連決議の内容について御説明を願います。

柴山大臣政務官 御質問のありました昨年ソマリア沖海賊に関して採択された国連安保理決議、こちらは、第千八百十六号、第千八百三十八号、第千八百四十八号及び第千八百五十一号と四本あるわけですけれども、この具体的内容といたしましては、例えば、ソマリア沖で海軍艦船及び軍用機を展開させている各国に対して海賊行為への警戒を要請したり、あるいは、ソマリア沖の公海上における海賊対策に特にこうした海軍艦船及び軍用機を派遣することによって積極的に参加すること等を要請しています。

中谷委員 国際社会が一致協力してやろうと決議されたにもかかわらず、我が国はいまだにこの国際活動の中で他国の船を護衛することもできないという状況でありますが、この海の安全の根拠になるのが国連海洋法条約でございます。

 この条約は、一九九四年に発効し、日本は一九九六年に批准をしておりますが、なぜ現時点までこの海賊を対処する法律が整備されてこなかったのか、この理由を説明してください。

金子国務大臣 国連海洋法条約は、海賊行為の抑止について各国ができる限りの協力を行うことを義務づけているものでありまして、具体的な取り締まりを条約上の義務として課したものではありませんでした。したがって、本条約を批准するときには、海賊行為の処罰、取り締まりのための国内法を整備することが必ずしも求められなかったということで、批准時点では法整備をしておりませんでした。

 しかし、昨年の二月、既にこの法整備をして対応しようということで、内閣として法整備を準備してまいりましたし、同時に、昨年夏以降、月を追うごとにソマリア沖・アデン湾におきまして海賊事案が急増してきたことを思いまして、国籍を問わず海賊行為を処罰し防止する法整備を行うこととして、今回この法案を提出させていただいておるところであります。

中谷委員 今御説明をいただきましたが、各国が可能なことを日本ができない、そういう残念な状況が続いていたわけでございます。この状況を打ち破ったのがこの委員会の質疑でございました。

 今から半年前、十月の十七日でありますが、テロ対策特別措置法の、インド洋に派遣されている自衛隊の艦艇が燃料補給をするという活動の継続を質疑しておりました。その十月十七日に、民主党の長島議員が、自衛艦艇による海賊対策のためのエスコートはかなり効果がある、武力行使の目的の派遣ではないんですよと提案をされました。それに対して総理は、大変建設的な話だ、検討させてもらうと応じまして、その日のうちに、私は現在自由民主党の安全保障調査会長をしておりますが、私に党内の取りまとめを指示されました。その後、与党としてプロジェクトチームをつくりまして、公明党の佐藤茂樹議員と共同座長になりまして、まず海上警備行動による自衛隊の派遣の是非、また基本的な考え方、これは十分整理されておりませんでしたけれども、それを整理いたしましたし、またソマリア周辺の国に現地視察にも参りましたし、現在提出されている海賊対処法案の基本的な考え方もお互いに議論をしながら、政府の関係者とともにこの新法を検討してまいりました。

 そこで、改めて伺いますが、この海賊の現状、対策、そしてこの法案に関するお考え、また現在のこの国際社会における安全保障の認識、この点について総理からお伺いをさせていただきます。

麻生内閣総理大臣 確かに、昨年の十月ぐらいだったと記憶していますけれども、今御指摘のありましたように、予算委員会だったか何委員会だったか、委員会は記憶していませんが……(発言する者あり)このテロ特でしたかね、長島先生から御質問がありましたので、まことに建設的な御意見と申し上げた記憶もありますし、ちゃんと民主党内をまとめていただくのが一番ですなと、そうも申し上げた。何かえらい照れておられましたけれども、そう申し上げた記憶があります。

 既に御存じのように、日本は海に囲まれておりますそういう島国でもありますので、しかも、資源というものの大部分を海外から輸入して、日本というのは貿易立国をなしておるという状況にあります。したがいまして、海上輸送の安全確保というのは優先順位としては極めて高いものだ、私はそう理解しております。

 その中で、このソマリア沖、イエメンのところというのは、これはアフリカの角と言われる部分ですが、マラッカ海峡ほどではないにしても、ここは二千隻からの船、日本の船籍というのが年間で通過をいたしておりまして、三百六十五で割りますと、一日五、六隻通っているという計算になろうと存じます。

 そういうような状況にありますこのソマリア沖・アデン湾というところで、明らかに昨年ぐらいから急増してきております海賊行為というものによって被害が起きる前に何とかしてもらいたいということは、これはいろいろな方々からの陳情もありましたし、船舶を持っておられます会社の方からももちろん、いろいろな方から御要望もあっておりましたので、こういった形で、日本の持っている人命、財産というものをきちんと対応するというのは、政府に与えられている大きな仕事の一つだ、私はそう思っておりますので、これは極めて緊急かつ重要な課題だと認識をいたしております。

中谷委員 今総理の認識を伺いましたが、先ほど外務大臣に、海賊が多発する背景を伺いました。これは本当に最近のことなんですね。つまり、冷戦構造が崩壊をいたしまして、世界というのはまさに、暴力の抑止、ブレーキをするものとか、また法律の秩序というものを失いつつあります。

 このような時代は、日本はどうすればいいかということで、沈黙をする国というのは国際秩序の谷間に埋没をしてしまう時代だ、世界が混迷になれば日本も混迷になって身を滅ぼしてしまうということでありまして、単にコストとかお金を負担するだけでは国際社会の中で存在感を持ち得ない。つまり、リスクを共有して初めて発言権というものが得られるのでありまして、まさに海賊対策というのは、世界の中で何ができるかということを問われている時代でございます。

 日本は、戦後六十年間、安全保障につきましては、日米同盟のもとに、アメリカの後方支援に徹すれば、経済大国、ODA大国としてそれなりの安定感と存在感を示すことができたわけでございますが、国際社会が流動する時代になりましてこの手法というものは通用しなくなったと考えます。

 また、シーファー前駐日大使が離任に先立つ会見の中で、海賊は国家ではなくて犯罪者の集団であり、集団的自衛権の問題や憲法九条とは別であります、日本がみずからを守る用意がなければだれが守るのかということで、我が国の積極的な対応も求めました。また現に、米国は今自分の国の経済のことで大変な状況でありまして、自国の国益というか、自国の関心の薄い国また地域から順次撤退をいたしております。

 そうなりますと、好むと好まざるにかかわらず、日本が独自に国際安全保障のために対応せざるを得ないという状況でございます。このような状況認識の中、総理にお伺いをいたしますが、この国際安全保障を日本がどう守っていくのか、また、シーレーンと申しますが、海の安全保障をどう確保するのか。

 そして、もう一つ伺いたいと思いますが、海洋国家日本ということで、国連海洋法条約の批准によりまして世界で六番目に広い海域を日本の管轄下に置くとなったということで、まさに海こそ日本の海洋資源でもあり、海洋国家としての新しいビジョンを築かなければならないと存じますが、海洋国家日本として、国家のこれからの歩む道、またビジョンについて、総理に伺います。

麻生内閣総理大臣 先ほども申し上げましたけれども、周囲を海に囲まれております。二百海里をとりますと、今言われたように、海域を含みます領域というのは極めて広がって、世界で六番目、七番目の大きな面積を持つ。しかもその中には、いわゆる鉱床やら、海底にあります資源というものがまだ未開発、しかもそれは日本の将来のエネルギーにとりましてもかなり大きなものも有している可能性が極めて高いというようなことを考えていったときに、積極的に海洋を利用しようと努めるのは国家として当然の務めであろうと思っております。したがいまして、間違いなく日本にとっては、海洋国家というのは正しい表現だと思っております。

 したがいまして、昨年三月でしたかに定められました海洋基本法というものに沿って、海洋環境保全というものと調和した海洋資源などの開発利用というものを実現していく、また、貿易活動の維持及びこれを支えるに必要な海上輸送の確保、シーレーンと言われましたけれども、海上輸送の確保、そして、国際海洋秩序の構築ということになろうと思いますが、これは世界的に全人類的な課題でもあろうと思いますが、こういったものに貢献していく覚悟というものが、新たな海洋国家というものを意識したときに非常に重要な要素であろう、私はそう考えております。

中谷委員 政府に海洋政策本部、対策本部も設けられておりますので、しっかりとした海洋国家日本のビジョン、そして政策をこれからも推進していただきたいと思います。

 先ほどお話ししましたが、与党で海賊対策プロジェクトチームというものを立ち上げまして、公明党の佐藤議員とともに現地視察をしてまいりました。

 行った先は、IMO、国際海事機関の本部のあるイギリス、また、EUの海軍の司令部もロンドンにあります。そして、米軍、フランス軍のアフリカにおける司令部のあるジブチ。そして、バーレーンには米国の統合司令部もあります。また、UAEにはいろいろな海賊情報が集まっている機関もございます。これらの国々に対する視察を行いましたが、行って感じましたことは、各国ともに、軍を派遣して、各軍の司令部を使った非常に効率的なオペレーションを行っておりました。

 したがって、基本的には、軍による、海賊を取り締まる警察活動を行っているということでありまして、米軍も、海賊対策のために、このテロ活動と区別するためにオペレーションを分けまして、CTF150はテロ対策のいわゆる軍事活動である、CTF151というのは海賊の取り締まりをする法律の執行機関であるということで、アメリカの司令官も、軍人は法律の取り締まり執行は直接はできないということで、アメリカすらも法律の執行官を乗船させてやっていると聞きました。

 そして、現在この海域には、米国、カナダ、EU、NATO、ロシア、インド、マレーシアなど、二十一の国と機関が海軍艦艇を派遣しておりますが、こういう表現をされました。この海域では、アメリカも、欧州も、ロシアも、中国も、韓国も、つまり、第二次世界大戦後最大の各国の共同警備作戦、作業をしているということで、これは新しい人類の安全保障につながるのではないかということでございました。

 そういうことで、この海賊対策につきましては、国家として最大の力をもって対応していると思いますが、特に印象的だったのは、EU、ロンドンにおいて司令官から聞いたことで、海賊というのは灰色の船を見ると逃げ出すのだと。非常にそれだけ抑止力という観点の効果があるということで、総理も同じ御認識を持たれていると思いますが、私は、国家として、国家国民を守るために、国の持ち得るあらゆる組織と機能、これを活用して、最大限の力をもって、国民そして世界の人々のために活動するというふうに思っております。この法案におきましては、政府全体として、その組織、人材を有効に、総合的に活用するということでございますが、この運用の仕方、最高司令官は総理大臣でございますが、総理はどのように考えておられるのか、お伺いさせていただきます。

麻生内閣総理大臣 最初に訂正させていただきますが、先ほど海洋基本法と申し上げましたが、海洋基本計画でありますので、訂正をさせていただきます。

 今、どのような意義があるかということで言われましたけれども、おっしゃるように、灰色の船を見たら逃げ出すというのは、それは海の上の強盗ですから、こちらも、陸上において強盗している最中にお巡りさんの制服を見たら普通逃げるのが通常ですから、海の上でもほぼ同じような効果がある。私は、しかもゴムボートから艦船を見た場合には、かなり高低差がありますので、正直申し上げて、想定というのは常識的には考えられないと申し上げてきたところです。

 いずれにしても、日本としては、こういった公共の安全とか秩序の維持というものは非常に重要なものでありまして、そういった意味では、今後とも一層の貢献を果たしていく責務というのが世界の中において大いに期待をされている、それにこたえるべき義務というものもあろう、私自身はそう考えております。

中谷委員 以上で質問を終わります。

深谷委員長 この際、新藤義孝君から関連質疑の申し出があります。中谷君の持ち時間の範囲内でこれを許します。新藤義孝君。

新藤委員 おはようございます。新藤義孝でございます。

 きょうは、総理、御出席いただきましてありがとうございました。また、各大臣、連日お疲れさまでございます。

 この海賊対処法案は、特別委員会におきまして非常に熱心な、しかも濃密な議論が行われてきた、このように思っております。そして、いろいろな問題が浮き彫りになりましたけれども、議論もいよいよ尽くされてきたかな、論点が絞られてきたと私は思っております。

 そして、きょうは、いよいよこの審議の後に採決をさせていただくということになりました。ですから、きょうは総理にもお出ましをいただいて、今回、この海賊対処法案によって何をしようとしているのか、そこを、テレビの中継も入っておりますから、国民の皆さんと一緒に整理をしたい、このように思っております。

 何よりも、私たちの国における海上輸送の重要性、これは全国民が知らなければいけないというふうに思います。日本貿易のうちの海上輸送に占められる割合は、量で九九・七%、それから金額においては六八・五%が海上輸送だということです。ですから、海上輸送の安全の確保、これを図ることが、また、円滑に、約束どおりに物が運ばれる、そして入ってくる、これは私たちの国にとって死活的重要な事態なわけでございます。

 この海運の安全を脅かしているのが、今ソマリア沖で多発しております海賊行為だと。ですから、これにしっかりと国として対処しようじゃないかということは当然のことだというふうに思うのでございます。

 そして、このことはもう既に世論調査においても、これは賛成が圧倒多数を占めているという状態でございますし、過日、参考人質疑を行いました。これは、船主協会、船主さんですね、それから船長協会、船長さん方、そして海員組合さん、こういう各団体の方がおいでをいただきましたが、すべての海にかかわる団体の方が賛成をして、早くこの法案を通してほしい、こういう御意見をいただいているということなのでございます。

 そして、この海賊対策の強化については、先ほど中谷議員からも触れられましたが、昨年の十月の十七日、私も質問させていただいたんです。総理にも御質問させていただきました。そして、この海賊行為というものを、あのときはインド洋上のテロの補給の延長について審議したんですが、その隣の海域で海賊が頻発していて、これに対処しなければいけないんじゃないでしょうかということを申し上げました。

 そして、去年の十月時点で、日本の国は何の対策も打っていなかったんです。これをこの半年間で、まずは海上警備行動で自衛隊を出し、そして今度は新法をつくってこれにさらに対処するようになった。わずか半年なんですね。それは麻生総理の強烈なリーダーシップがあったと私は認識しております。与党の中において、総理からの御指示があってプロジェクトもできましたし、法案もこうやってつくってきたわけでございまして、このことはぜひ指摘というか、これは総理がしっかりやってくれた、我々も頑張ったということを明らかにしなきゃいけないと思うんです。

 その思いをお聞かせいただこうと思いましたが、先ほどもう言っていただきましたから、総理の並々ならぬ決意と、我が国の死活的重要問題だということを、改めてこれは確認したいというふうに思います。

 そこで、この新法が制定されますとどんなことが起きるか。新法の制定の意義とそれから効果、これについて少し確認をしたいと思うんです。

 それで、現場に海上警備行動で自衛隊が行っているんですが、やはり今の状態だとまだ不十分だ、それから不安な点があるということが、この委員会の審議を通じても明らかになってきました。

 まず第一に、そもそも海賊行為、それから、その海賊行為が行われたときはこういう処罰をしますよという法律がなかったということなんですね、この国には。ですから、まず第一に、海賊対処の明確な基準を法制化したということが非常に大きな意義だったと思います。

 それから次に、他国の船も守れるようになった。現状では日本の船とそして日本人船員、日本関係の船しか守れない、こういうことになっているんです。そこで、これもちょっと御紹介します。こういうことが起きているということです。

 船長協会の会長さんが、参考人の意見陳述の中で御報告いただきました。初めて自衛艦のエスコートを受けて航行したが、自国艦船の護衛を本当に誇らしく思った。部下の、船長さんは日本人ですが、部下はフィリピンの人なんですね、フィリピンの人たちもとても明るい顔で、日本をさらに尊敬する、リスペクトするよ、こういうふうに言ってくれたと。

 しかし、この船長の報告は続きがございまして、ある船、日本以外の船から、この自衛隊がエスコートしている、守られている船の船団にほかの国の船が入れてほしいという要請があったそうです。それに対して自衛艦側は、あなたの船の船舶所有者、オーナーに連絡して救助の可否を検討します、こういう連絡をして、何かとても歯切れの悪いような印象があったということなんです。

 その船長さんは、海上においては、遭難した、また困った船の救援に駆けつけることは、国連海洋法条約それから船員法において規定をされていて、これは国籍に関係なく、どんな船も困った船がいれば他の船は救助するのが、これがいわば海の男の仁義なんだ、こういうふうにおっしゃいました。そして、その海の男の仁義が歯切れよくできないことに残念だという気持ちを船長も持ったというし、逆に言えば、自衛艦の海の男たちもどんな思いでそういう問い合わせを交信していたのか。そして、その交信は周りじゅうの船や関係の国に聞かれているわけでございますから、今、日本の置かれている状態はこういうことだというのは、我々、認識しなければいけないというふうに思うんです。

 ちなみに、約二十カ国がこのソマリア沖で海賊対処行動をやっておりますが、保護対象は自分の国とそれにかかわるものだけですよという制約を加えている国というのは、日本以外にあとどこの国があるのか教えていただきたい、このように思います。

 それから、今回は、必要最低限の武器使用権限を与えるということも新法において加わりました。乗り込まれて占拠されてから対応しても遅いわけでございまして、これはどうしても接近をやめない海賊船に対してその停止のための武器使用を行うことはまことに妥当だと思いますが、こういう新法制定の意義とそして効果について、海洋担当大臣また担当大臣、お答えいただきたいと思います。

金子国務大臣 新藤委員御指摘のとおりであります。新法の効果、三点について今御指摘いただきました。

 国連海洋法条約を踏まえて、海賊行為の抑止を実効あらしめるために海賊行為の定義をした、そして、それに伴いまして、今度は、国内法の犯罪として所要の罰則規定を定めました。

 二つ目。他国の船も守れるのかということでありますが、今度の新法では、国連海洋法条約上、海賊行為というのは犯罪行為でありますので、すべての国が関係船舶の国籍を問わずに海賊行為を抑止する協力を、義務を負っているということで、国籍を問わず保護対象にすることができるようになるという、今御指摘の、歯切れよく今度は保護ができるようになります。

 武器使用でありますけれども、現在あります正当防衛等々、警察官の職務執行に加えまして、この海賊行為の特性を踏まえました停船のための武器使用を可能とする。

 以上の三点が、この新法の委員御指摘の点であります。

浜田国務大臣 もうこれは、今担当大臣からお話のあったとおりでございまして、我々とすれば、非常に我々としての任務を果たすに当たっての要件を満たしていただいているというふうに考えておりまして、なお一層これをうまく使って対処してまいりたいというふうに思っておるところでございます。

新藤委員 歯切れよく対応するということを言っていただきました。そのとおりだと思いますし、海の男の仁義、わかりやすい言葉ですよね。ただ、もしかすると女の人もいるかもしれませんから、海の男と女の仁義にしなければいけないのかもしれませんけれども、とにかく、そういうシーマンシップというのを我々はどんなときも忘れてはいけない。(発言する者あり)シーマン・ウーマンシップですね、そのようにしなければなりません。

 次に、今回の委員会の法案審議で注目された個別論点について、二つ三つ確認をしておきたいというふうに思います。

 この海賊対処法は、今はソマリア沖が頻発していますからソマリア沖のことがクローズアップされていますが、ソマリアに限らず、世界じゅう、日本近海も含めて、どこにおいてでも海賊が起きたときには対処をするという意味においては、これは恒久法と言われます。ですから、今後、いつどこで起こるかわからない海賊行為に対して、有効かつ最善の対処ができるようにしておかなければいけないわけです。

 その意味において、まず、国会との関係、このことを整理したいというふうに思います。

 今回、この法律においては、内閣が自衛隊の活動について、自衛隊が海賊対処を行った場合には国会報告を行うということを規定しました。これは正しい判断だと思います。まず、今出かけている自衛隊の海上警備行動においては国会の承認も報告もないんですね。ですから、今回、自衛隊の海賊対処法案が成立して、自衛隊がそれに基づいて派遣されて初めて国会報告をやることになるんだということです。委員会審議の中では、他党の委員から、自衛隊派遣するんだから国会承認を条件にしたらどうか、こういう意見も出ていました。しかし、私は、これは賛成するつもりはございません。

 自衛隊の活動といっても、海賊対処というのは、国際社会を相手にした平和協力活動ではないんですね。そうではなくて、海賊という特別の犯罪の取り締まりのための警察活動だ、こういう位置づけになるわけでございます。ましてや、国外の海上の活動であって、それ自体が国民の生活の日常に直接大きな影響を与えるわけでもないという意味において、私は、今回の国会報告というのは極めて妥当だと思います。大体、海上保安庁が海賊対処する場合には承認も国会報告もないんだよね。当たり前のことなんです。

 しかも、さらに加えさせていただきますけれども、今、現状、自衛隊が海外に出かけているものは何かというと、まず、海上警備行動で今出ていますね。これは承認、報告なし。それから、国連のPKOで、東ティモール、カンボジア、もう帰ってきましたが、これは報告のみ。それから、今ゴラン高原に行っていますが、これも報告のみ。そして、インド洋の洋上補給は、これは何もなし。

 ですから、今回の海賊対処法案が報告規定を設けるというのは、要するに、今自衛隊が出ている活動に並べたという意味においてはバランスのいいことであり、本来であれば、警察活動であると位置づければ、承認はおろか報告も必要のないものなんですから、そこに報告を置こうというのは、私は、国会のバランス、それからシビリアンコントロールの確保という意味において意義があると思っておりますが、これについて、海洋担当大臣並びに防衛大臣、見解を。

金子国務大臣 御指摘のように、本法案に規定をします海賊行為というのは犯罪行為であります。それへの対処は警察行動でありますから、海上警備行動と同様に、国会の事前承認に関する規定は設けなかったところであります。

 ただ、海賊対処行動では、自衛隊をやはり的確な文民統制のもとで運用することが、ある程度長期間活動するというようなことも求められておりますので、遅滞なく国会に報告をするという国会への説明責任を十分果たす仕組みにさせていただいております。

 本法案では、内閣総理大臣が海賊対処行動を承認したとき、そのときには海賊対処行動の必要性、区域それから期間などなどを定めました対処要項の内容を遅滞なく国会に報告していただく、また、海賊対処行動が終了したときにも同様に報告をいただくことになっております。

浜田国務大臣 今回の法案に関しましては、いろいろな議論がございまして、一義的には海上保安庁ということで、こういった法律の立てになっておりますし、そしてまた、それが警察権の範囲内でということでございますので、その意味では、確かに承認の問題については、報告ということになろうかとは思います。

 ただ、一般論からして言えば、今まで自衛隊が海外に派遣をされる際には事前承認等もあったことも当然でございますし、今後、国民の皆様方そしてまた多くの方々に理解をしていただくためには、この自衛隊の事前承認という考え方というのは大変重要なことだろうと私は思っておるところでございます。

 これはあくまでも一般論として私は申し上げたわけでありますが、この法案に関しましては、そういったくくりがあるということだけは明確にしておきたいというふうに思います。

新藤委員 いろいろなパターンがあるんですよ。国会の関与を深くかかわらせなければいけないものもある。しかし、現実には、今、インド洋も、それからゴラン高原も、ゴランの方は報告があり、インド洋は報告規定もない。そして、今回は、海保が海賊対処するならば何もないところを、自衛隊を出す場合には報告をする。こういうバランスをとって、しかもそれは極めて適当な判断である。私は、ここはしっかり整理する必要がある、このように思っております。

 それから、今防衛大臣からお話がありました、一義的には海賊対処は海上保安庁が行うんだ、こういうことです。そして、その能力を超えたと判断される場合において、これは自衛隊が出動する。こういう順番。これはもう確立されたことなんですけれども、この法律においてさらにこれが明確になったと私は理解しております。

 そして、自衛隊が出動するには、勝手に自衛隊が、これは海保では無理だからと判断するのではなくて、まず海保や関係省庁と連絡をとり合い、協議をして、最終的には総理のもとで閣議が行われて、そこで決定したものによって自衛隊の役割が決まるということであります。

 ですから、そういう役割があるにもかかわらず、これ以外に、また対処本部をつくるだとか、それから自衛隊員に海上保安官の身分を併任させて出かけたらどうだとか、では任命書というのをもう一回出さなきゃならないのかとか、何かこういういろいろな提案がございました。一言で言えば自衛隊色を薄めたいんだなという気持ちがあるのかしらと私は思いますが、現行しっかり機能しているものなわけですから、私はそんな必要はない、こういうふうに思っています。

 これについては、総理、内閣の長として、海上保安庁とそして自衛隊、この関係について御見解をお聞かせいただきたい、このように思います。

麻生内閣総理大臣 この法案は、海上保安庁だけでは対応ができないというような特別の場合に自衛隊が対処できるというようにしてある、御存じのとおりです。この仕組みは現行の海上警備行動と基本的には同じでありますので、適切かつ効果的に海賊行為にきちんと対処できるものと考えております。

 したがって、自衛隊について、あえて対処本部の設置とか身分の併任といった措置を別に行って外形を整える、そういった上で海賊対処に従事させるという必要性、合理的な理由は見出せないと考えております。

新藤委員 時間がなくなってまいりましたが、この際、これは私からもつけ加えさせていただきますが、第一義的には海上保安庁と。今回、海賊に対処するということがはっきりするわけですから、さらに海保の任務遂行体制の強化というのは我々も考えていかなきゃいけないことだなというふうに、また委員会の中でいろいろな意見も出ておりましたが、それは私どももこれから検討してまいりたい。海上保安庁にもしっかりと頑張ってもらいたいと大臣の方にもお願いをしておきます。

 それで、最後になりますけれども、これは総理にお尋ねします。

 結局、この海賊対処はまさに対処であって、海賊問題解決法案ではないということでございます。ですから、根本の問題を解決しなければ、結果として、手段として海賊行為が行われているわけですから、その意味において、破綻国家となってしまったソマリアの安定だとか周辺の情勢の安定化、これが非常に大事なことでございます。

 折しも、ちょうど今、きょうやっていると思いますが、ベルギー・ブリュッセルで国連のソマリア支援会合、こういうものも行われております。日本からは橋本外務副大臣が参加をして、外交的な解決、支援に向けて活動しているわけです。

 私たちの国は、よく平和国家と標榜しますけれども、私はもう一歩進めて、平和国家というのは、自分の国だけが平和でも意味がないので、周りや世界じゅうが平和にならなければ私たちの国も平和にならないんです。だとするならば、正確に言うと、平和構築国家を目指すべきじゃないかと私は思っているんです。

 私たちの国は、世界で大きな経済を持って、技術を持っています。いろいろな貢献ができると思いますけれども、私たちはその国家ビジョンというものをもう一回見直して、我々の国は何をするんだと。国内に向けて、それから世界に向けて、これをやるんだよという、環境技術、低炭素社会、医療技術、物づくり、いろいろなことがありますが、その柱の一つに平和構築国家なんだと。

 だから、そのソフトパワーで、国の力を使って日本の得意な分野で世界の平和に貢献するんだよ、こういうことをこのソマリア問題だけでなくて世界に展開していかなければいけなくて、私は、その意味において今のソマリアに対する支援というのは我々にとって非常に大事なプロジェクトになるんじゃないか、こういうふうに思うんです。

 私は、実は今、自民党のマルチメディア局長を務めさせていただいております。過日、総理にインタビューをさせていただいて、麻生総理の着ボイスというのを録音させてもらいました。すごかったですね。私のような者が案内したって全国から四千件見に来て、二千件コメントが来た。総理から着ボイスを録音してもらったんですけれども、そのときわかったことは……(発言する者あり)いや、総理の着ボイス。それで、麻生総理の電話が鳴るとき、麻生総理の着メロは君が代なんですね。僕は、国を本当に大事にしているんだなとすごい感銘を受けたんですけれども……(発言する者あり)いや、自分の声じゃありません。君が代なんです。

 そういう総理だから、この国のことをどうするんだというのはすごい考えがあると思うんですけれども、そういった観点から、ぜひ日本の新しいソフトパワーの展開について見解をお聞かせいただきたい、このように思います。

麻生内閣総理大臣 おっしゃいますように、これは国家としての体をなさなくなったという表現はいかがなものかと思いますが、そういった地域において海賊が多発していることによって、周辺を通過する艦船、船舶がいずれも被害を受けるという状況にある。

 したがって、もとのもとは国の対応ができなくなったというところに問題がありますので、海賊だけをきちんとしても、その中がなければ根本的な解決はできないというところは、この法案ができますときに、同様に外務省に対してこの地域の今の状況というのを考えた方がいいよという話をして我々としては対応をしてきておりますので、その意味では、今後ともきちんとした現象面と、その地域の根治療法、対症療法、両方必要なんだと私も思っております。

新藤委員 質問を終わります。ありがとうございました。

深谷委員長 これにて中谷君、新藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、冬柴鐵三君。

冬柴委員 公明党の冬柴鐵三でございます。

 ソマリア・アデン湾で海賊事案が多発をしている、これは先ほど中谷元委員からお尋ねしたところでございますから重複を避けますけれども、我が国の船、それから、他国の船ではあるけれども我が国が運用している船というものが現に被害を受けたということがございます。このような危険を避けるためにここに何らかの手を打たなきゃならないのは当たり前のことでございまして、その主体として海上保安庁が、海上における人命、財産の保護、そして法秩序の維持ということを目的に、国土交通大臣の管理下の外局として海上保安庁というものがつくられているわけでございますから、ここが第一義的に対応するのは当然の話でございます。

 しかしながら、日本の海域、EEZというのは、日本の国の周辺に六千八百四十七というようなおびただしい島があります。それを中心に領海とかEEZを開きますと、何と領土面積の十二倍にも当たる四百四十七万平方キロという、世界で六番目に広い海域を保有するわけでありまして、それとともに海岸線も、それほど広い、世界六番目の長い海岸線を持っているわけであります。

 我々は四面環海でございますから、このような広い海域と海岸線から、密輸、密入国、特に最近は深刻の度を増しております銃器、薬物というようなものが我が国に密輸される、こういうことが行われるわけであります。こういうものを海上保安は、少ない人数、そしてまた少ない予算と言っていいと思いますけれども、これをフルに活用して一生懸命やっている。そういうことを私は国土交通大臣在任中に本当に現認しました。心から感謝をいたしたこともあります。それとともに、日本近海で海が荒れるときに、海難事故が非常に起こるわけです、多発するわけです。その海難救助も、海上保安庁は、特に「海猿」という映画を見られた方もあると思いますけれども、大活躍しておられるわけであります。すなわち、今、海上保安は、そのような広い海域と海岸線を守るために、あるいは領土を保全するために、昼夜を分かたず頑張っている。

 その中へ、日本の国から一万二千キロも離れた遠隔海域であるアデン湾を今から守れと言われたときに、その装備とか、あるいは今、危険はきょうも迫っているわけですから放置するわけにいかない、これから船をつくりますということでは守れないというような状況があるわけでございまして、このような状況の中でも、海上自衛隊を出すのは許されないとか、あるいは海上保安が一義的に義務を負っているんだからそこがやるべきであるという議論が非常にあるわけです。それは海上保安の現実の姿ということをもう少し観察すればそういうことにはならないのではないかという観点から、きょうはいろいろとパネルなども用意をいたしまして、そういうことを国民にもわかっていただきたいという観点から質問をさせていただきたいと思います。

 まず、先ほど総理も御答弁されましたけれども、海上警備行動というものが自衛隊法八十二条で認められるわけですけれども、それは、特別の事情、特別の必要がある場合に内閣総理大臣の承認を得て海上警備行動というものを防衛大臣は発令することができるわけであります。特別の必要というのは、ちょっと抽象的ですけれども、もう少し具体的に言えばこのような事態、今アデン湾で起こっていることを防止するために国としてやるべきことが海上保安庁では対応が不可能か、または、そうでなくても著しく困難を伴うという事態がこの必要だという判断のメルクマールになると思うわけであります。

 そこで、海上保安庁長官にお尋ねしたいんですけれども、資料をお配りしておりますので、その一枚目の資料を見ていただきたいと思います。

 それに基づいて、海上保安庁が現在持っている巡視船でございますけれども、特にこのようなところで警備をするためにはヘリコプターを搭載した巡視船というものが必要だと思うわけでございますが、現在、海上自衛隊が派遣をいたしております護衛艦、すなわち、「さざなみ」とか「さみだれ」に匹敵するような巡視船というのはどういうものがあるんでしょうか。それを説明してください。

岩崎政府参考人 お答えいたします。

 先生に配付いただいた資料に沿ってお話しさせていただきますと、ここに載っておりますのは、海上保安庁が持っておりますヘリコプター搭載型の巡視船のすべてでございます。ヘリコプター一機搭載型の十隻、「そうや」から「だいせん」でございますけれども、これは搭載するヘリコプター一機、船の長さも百メートル前後でございます。アデン湾に派遣されました護衛艦二隻はそれぞれヘリコプター二機を搭載し、長さも百五十メートル以上でございますので、大きさとしては劣っております。

 それから、上の「しきしま」「みずほ」「やしま」でございますけれども、これはヘリコプター二機を搭載し、船の長さも百五十メートル、百三十メートルと、アデン湾に派遣された護衛艦二隻とほぼ匹敵する大きさの巡視船でございます。

 しかしながら、下の備考に書いていただいていますとおり、重火器による攻撃を受けた場合であっても、被害をある程度食いとめて業務を継続する能力があるのは「しきしま」のみでございます。したがって、海上保安庁の所有する巡視船のうち、護衛艦にある程度匹敵する、ソマリア沖でも海賊行為に対応することができるというのは、「しきしま」一隻のみと考えております。

冬柴委員 ヘリコプター搭載艦というのは十三隻持っているけれども、護衛艦に匹敵するようなものは、残念ながら「しきしま」一隻である。そういうふうに、量的に、そこへ派遣するというのは非常に無理だということがおわかりいただけると思うわけであります。

 次に、これは資料として二枚目につけてありますが、海上保安庁が行った過去五年間の立入検査、これをここへ挙げました。

 内外の船舶に、平成二十年は、実に三万六千百六十回の立入検査をやっております。十六年からの数はそこに書かれたとおりでございますけれども、外国船九千百五十九隻、そしてまた日本船舶は二万七千件という驚くべき数の捜査、立ち入りをし、そして犯罪捜査等をやっているわけであります。下の欄には、このようにして立ち入りしたところで、犯罪を認知して立件した数が書かれてあります。去年は八千二十一件、一日二十件近くですね。上では百件ぐらい立ち入りしているんですね。もう言うまでもない話ですけれども、これは非常に危険が伴う作業であります。そして、検察官送致したのが、去年は五千七百三十一名の被疑者を捜査して、証拠をまとめて送っているわけです。

 次に、その結果、ここを見てください。このように銃器とかを押収した事例でございます。ちょっと見えにくいですね、総理、手元に資料は送ってあると思いますけれども。

 これはちょっと税関の人の顔をつぶしてありますけれども、これは全部覚せい剤ですよ。大変な、末端価格で百八十億円ぐらいのものなんですね。

 こういうものを海上保安は、広い海域、海岸線がありますので、そこを警戒しながら日本近海のそういう違法行為を取り締まっているということでございます。

 何かつけ加えることがあったら、長官。

岩崎政府参考人 先生お示ししていただいたパネル、密輸の事案でございます。関係機関と合同で、いろいろ内偵しながら摘発した事案でございます。

 密輸、薬物の事案、こうしたものについてはやはり水際で挙げるのが大変重要なので、私どもも力を入れているところでございます。

冬柴委員 それから、また、大きな仕事は海難救助でございます。日本の近海、四面環海でございますから周りは海でございます。そういうところで、台風、集中豪雨というようなことによって、日本近海で、これは内外を問わない船舶が遭難をするわけです。

 その遭難救助の隻数でございますが、これは一年間に五百隻以上を救助しているんですね。五百隻、これは二日に三隻ぐらいあるわけでございます。そして、救助した人数でございますが、大体二千人、去年だけは千八百とちょっと少ないですけれども、二千人以上の人命を救助している。

 この救助の仕方というのも大変危険が伴います。荒れる海へヘリコプターからロープを伝ってその船の上へおりて、そしてそこで、被災した人たちを抱きかかえてヘリに乗せて救助するわけであります。

 これは、約八万数千トンという大きな船でございますけれども、鹿島沖で、平成十八年の十月、私が大臣に就任させていただいてすぐに起こった海難事故でございましたけれども、これには二十四人の船員が乗っておられました。しかしながら、見えにくいんですが、ここにヘリがありまして、そしてヘリからつり下げて二十四人全員を救助したという事案。海は荒れております。

 これも、先ほどと別のあれですけれども、同じように、発達した低気圧によってすごく海が荒れていますね。その中を、これがヘリですが、この船も、二十四人の乗員全員をつり下げて救助することができたわけでございます。

 十八年十月は、六日ごろに、これ以外にももう一隻、今度は十万トン級のやはり鉱石船ですが、座礁しました。これは二十六人乗っておられました。十六人は救助できたけれども、十人は行方不明ということで、流されてしまいましたけれども、これは、昼夜を分かたない海猿の活躍によってそのようなことが行われているわけであります。したがって、海上保安庁としては、こんな仕事を毎日、これはたまたまじゃないですよ、こういうのを二日に三件ぐらいやっているわけですね。そういうことを国民の皆さんにも知っていただきたいわけであります。

 それから、尖閣列島に魚釣島というのがあります。魚釣島に、中国や台湾の一部の人ですけれども、領有を主張いたしまして、年に二、三回来るんですよ、二隻、三隻。これのために海上保安は常時哨戒機を飛ばし、そして常時巡視船をそこに派遣して、やるわけでございます。これが中国のそういう抗議船。後ろに重なっているからわかりにくいけれども、これが巡視船なんです。密着するようにして、そして領海へ入らないように、ある場合はホースで放水しながら、あるいは体当たりしている場合もあるんですが、こちらの船も傷がつくほどのことで。領海へ入らないように、もちろん大音響でやるわけですけれども、領土を守るためにそういう本当にすごいことが行われているんですね。そういう仕事が海上保安庁がやっている仕事でございます。

 この「しきしま」初め、艦船あるじゃないか、だから向こうへ行けるじゃないかと言われましても、これは本当に筒いっぱいのところで仕事をしているわけでございます。

 例えば、資料九というのが配られておりますけれども、海上保安庁の定員は一万二千四百十一名でございます。そして、予算は千八百九十一億円ということでございます。これは防衛白書からでございますけれども、海上自衛隊の定員は四万五千八百十二名でございます。したがって、海上自衛隊の四分の一の定員でこのような仕事を日夜やっているということでございます。それから、予算でございますが、これは、海上自衛隊の一兆一千四百七十三億円に対して、千八百九十一億ですから六分の一の予算であるということであります。そういうことで、装備も、巡視船百二十一隻ありますが、その四三%はもう耐用年数を過ぎているんですね。そういう装備になっておりますので、現在、年間三百五十八億円という巨費を投じて、毎年、更新のための整備を一生懸命やっているというのが現状でございます。

 そういうことから見て、この状況の中で、もうソマリアへきょうあした派遣しなきゃいけないわけでございまして、海上保安が出ていくというのは、物的にも非常に無理だということはおわかりだと私は思うわけでございますが、その点について、ちょっと一言、海洋政策担当大臣であり、総合海洋政策本部の副本部長でもあります国土交通大臣から感想を聞かせていただきたいと思います。

金子国務大臣 海洋基本計画を閣議決定されましたときの御担当大臣、冬柴委員でありますので、海上保安庁の仕事について、あるいは業務の、あるいは装備についてまで、非常に詳しく御存じの上での御議論をただいまいただきました。

 海上の安全については、第一義的に海上保安庁がきちんと対応するということは揺るぎもないことでありますが、しかし、今回のソマリア沖・アデン湾の事態に対しましては、今御指摘の装備の状況から、また海賊が使っております武器、ロケットランチャー等々を所持しているという状況から、今回、海上保安庁では無理であるという判断をさせていただいているところであります。

冬柴委員 今の国土交通大臣の答弁のとおりだと私は思います。できない、できないとばかり言うなという話もありましたけれども、海上保安庁は、士気においても本当に充実をいたしておりますし、決して与えられた任務を逃げるというようなことはないわけでありますが、しかしながら、るる申し上げましたように、日本近海で日々起こっているこういうものに対処するためにもう精いっぱいの中で、こういうふうな大型に割くということはできないということになっているわけであります。

 しかしながら、今回の法律は恒久法であります。今回はソマリア沖で起こっている問題ですけれども、日本は、いわゆる鉱石は一〇〇%外国から仰いでいますし、そして原油は九九・七%、そしてまた天然ガスは九九・六%を外国から仰いでいます。また、食料の自給率は四〇%ですから、六〇%は海外に仰いでいます。

 そういう国民生活に直結するこのようなものが海を越えて来るわけでありまして、海を越える手段は外航船と航空機ですけれども、圧倒的に、九九・七%までが外航海運によってこれらは運び込まれ、そして日本の製品は、貿易立国ですから外国へ運んでいるわけですけれども、それは一〇〇%と言ってもいいほど船が使われているわけであります。

 ですから、海上の安全ということは大事なことでありますし、今後も、あってはなりませんけれども、海上の警備ということが遠洋において必要となる事態が考えられるわけであります。その際は、いつも海上自衛隊に頼って、いわゆる特別の場合だということで海上警備行動に頼るということは許されないのではないかと私は思います。

 したがって、やはりこういうものに備えて、今海上自衛隊が行っていただいているような護衛艦級の巡視船を遠洋海域に二隻派遣するということを仮定した場合、どれほどのものが必要になるのか、それにはどれぐらいの費用がかかるのか、そしてまた、それには海上保安の要員も当然増員しなきゃいけませんが、どれぐらい必要と考えておられるのか、海上保安庁長官から御答弁をいただきたいと思います。

岩崎政府参考人 仮に「しきしま」級の巡視船を常時二隻、本邦から遠く離れた海域に配備するとしました場合、今「しきしま」一隻ございますけれども、そのほかに五隻が必要となります。

 今現在で「しきしま」級の巡視船をつくろうと思いますと、ヘリコプターも含めてでございますけれども、三百五十億円かかります。五隻建造しようと思いますと千七百五十億円。また、建造には四年以上の期間を要すると見込んでおります。

 人員でございますけれども、「しきしま」に今百名程度乗り組んでおります。プラス五隻になりますと五百名程度の増員が必要になると考えております。

冬柴委員 相当巨額のものが要りますし、それから、建造にはやはり数年以上の日時がかかると思うんです。

 しかしながら、私は、海洋国家日本、そして生活に直結する、そのようなシーレーンというものを守るためには、やはりそういうものが、海上保安庁として、長い目で見れば、いつ、どういう政治決断をされるかは別として、必要であろうというふうに思うわけでございますが、その点について、国土交通大臣の答弁をいただいて後、総理の答弁もちょうだいしたいと思いますが、どうでしょうか。

金子国務大臣 ソマリア沖海賊対処を目的として「しきしま」級を新たに建造するということはただいま考えておりませんが、しかし、御指摘いただきましたような外航海運の安全確保と同時に、我が国のEEZ、大陸棚延長を国連に申請している、海底で重要資源、レアメタル等々も発見されている、こういう我が国の海域をきちんと確保していくという上でも、海上保安庁の課題というものがまた新たに加わってきたと思っておりまして、真剣に検討してまいりたいと思っております。

麻生内閣総理大臣 今金子大臣の方から御指摘があっておりましたように、海上輸送に限らず、二百海里というようなものが現実的になりますと、EEZ、いわゆる海域が巨大に広がりますので、その意味では、先ほどの尖閣の話に限らず、もっと南の、もっと東というか、沖ノ鳥島等々いろいろございますので、そういうところにおける熱水鉱床とかメタンハイドレートとかいろいろなものが今後予想されるところでもありますので、その意味では、外航海運、もちろんのことですけれども、そういった遠方海域でのものと同様に、こちらも領域内とはいえ、かなり遠方の地域になりますので、今の「しきしま」の話といわゆる海上保安庁の持っております艦船の内容等々につきましては、引き続き検討していかなければならぬところだと思っております。

冬柴委員 ぜひそのような方向で、これは重要な国の意思の決定によると思うわけであります、多額の費用がかかりますしね。しかしながら、これは大変大切な視点だと思いますので、内閣を挙げて検討していただきたいと思います。

 私は、先ほどちょっと総理もおっしゃいましたけれども、沖ノ鳥島も南鳥島にも参りました。南鳥島は周辺わずか五・五キロの小さな島ですけれども、太平洋の絶海の孤島ですね。それでEEZを開きますと、日本の領土面積を超えるEEZ、だから、こういうものを守るということは大変大事な話です。

 そういう意味で、海洋基本法もつくっていただきましたし、それから海洋基本計画も立派なものをつくっていただいておりまして、その中には、そのような今言われたメタンハイドレートとかあるいは熱水鉱床というような海底資源の開発の問題にも論及をしていますけれども、そこの中にこの海上輸送の安全の確保ということは非常に大部を割いて書かれてあります。

 そういう意味で、今回のこのことを一つの契機としまして、海上保安の充実、そういうことを今後心からお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

深谷委員長 これにて冬柴君の質疑は終了いたしました。

 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 質問に先立ちまして、与党の皆さんに強く抗議をしたいと思います。

 本委員会では、この法案について一週間ちょっとしかまだ審議をしていないという状況であり、かつ、自衛隊が武器を使用する活動をするということを前提にして海外に派遣されるということに対して国会の関与が十分でないというこの法案について、修正協議を民主党としても求めてまいりましたけれども、それが打ち切られたということでございます。十分な審議と十分な修正協議を行うべきであるということで、本日の質疑終局と採決については強く反対をいたしたいというふうに思います。

 そこで、海賊対策の問題でありますけれども、総理も御案内のとおりでございます。東南アジア、マラッカ・シンガポール海峡では、日本がイニシアチブをとって進めてまいりました。二〇〇一年に当時の小泉首相がアジア海賊対策地域協力協定の提案をし、そして二〇〇四年にそれが成立して、それから海賊がかなり減ってきた。二〇〇〇年二百四十二件であったものが二〇〇八年には五十四件まで減った。こういうように、非常に効果を上げてきたという実績があるんですね。

 しかし、今回のソマリア沖の対策を見てみますと、何か唐突に出てきたような、そんな印象がします。今回の政府による海賊対策の進め方、海上警備行動の発令、あるいは今回の海賊対策新法と呼ばれているものの内容について、多くの国民が不安を抱いているというふうに思っています。

 きょうは、その不安のうちで、特に、ソマリア沖に派遣された自衛隊が武力紛争に巻き込まれるおそれはないのか、二つ目は、海賊対策として自衛隊が海外に派遣されることについてシビリアンコントロールというものが確保されているのか、このことを中心に質問していきたいというふうに思います。

 その前に、ちょっとソマリアの情勢について、紙が配ってあると思いますので見ていただければと思うんですけれども、皆さんも御案内のとおり、ソマリアは、一九六〇年独立以来、内戦状態が続いているということでございまして、現在、ここに書いてありますように、ソマリアの国内というのは、暫定連邦政府というものはありますけれども、ソマリランドとかあるいはプントランドとかといった地域的な政府というようなものがあったり、あるいは現在の連邦暫定政府に対してはイスラム過激派勢力というものが武力攻撃をしたり、こんなような状態にあるということで海賊が起こっているという状況にあるということでございます。いずれにしても、ソマリアは依然として破綻国家という状況にある、こういう前提であろうかというふうに思います。

 そこで、まず本題に入る前に、私はどうも今回の対応を見ていますと、初めに自衛隊の派遣ありきというのが麻生総理以下の政府の発想ではなかったか、こんなふうに思うんですね。

 いろいろと新聞報道等を見てみますと、昨年の十二月以来のことがちょっと書いてありまして、昨年の十二月十六日に国連安全保障理事会の閣僚級会合で中国の外交副部長が、中国は海軍を派遣すべく積極的に検討しているというようなことを発言したことから、麻生総理に対して内閣官房の政府高官が中国に負けるわけにはいきませんと進言し、総理がそれはそうだというふうに答えられたというようなこともあって、十二月二十六日に中国が軍艦を派遣したというときに、浜田大臣に海上警備行動の命令を含む対応を検討するように指示をしたというふうな報道です。

 この報道、別に余り確認する必要もないと思います。私が聞きたいのは、総理は、浜田大臣に対して指示をしたとき、あるいはその前に、海上保安庁が海賊対策については第一義的な任務を負っているという仕組みの中で、国土交通大臣に対して、ソマリア沖の問題について対応できないのかという指示は出しておられますか。どうですか。

麻生内閣総理大臣 先ほども与党の議員の御質問の中にありましたが、昨年十月の国会の中において、長島議員の質問を受けまして、政府部内においてソマリア沖の海賊対策を検討したらどうだという話を私の方から与党の中谷委員長というか、そのときの委員長……(平岡委員「もっと端的に。国土交通大臣に対して指示をしましたかというのが問いです」と呼ぶ)

 ちょっと待ってください。経緯を説明しないと、ちょん切って話をとられると話が込み入るでしょうが。これは大事な法案ですから、きちんと説明する時間も与えてください。時間も与えていただくようにしないと話になりませんよ。

 したがって、そういう検討をしてもらった結果、海上保安庁による対応、対処が難しいということであったので、自衛隊による対処の可能性について浜田防衛大臣の方に指示をしたのが、たしか昨年十二月の二十六日。

平岡委員 この質問は、先日、国土交通大臣にも聞きましたけれども、明確に、麻生総理から指示はされていないと。ただ、いろいろな協議もなさったそうで、なかなか難しいだろうなというような雰囲気は閣議の中でもあった、そんな話ですよ。

 やはりそこは、第一義的な任務は海上保安庁にあるというふうにみんなが言っているわけですから、まずそこに指示を出して、どうだ、それがだめだとなれば海上警備行動についてどうだと、これが本来のあるべき姿だと私は思いますね、それはそれとして。

 それで、私、もう一つ、ちょっと気になる話として、長島委員が質問したとき、同じ日に私も質問しておったんですけれども、そのとき、麻生総理が二年前に「自由と繁栄の弧」の中に書かれているフレーズをちょっと引用しました。自衛隊の船の補給活動についてなんですけれども、「始めて五年半。」「「ネイビー」をこれだけ長い間遠方に展開したことは、我が国の歴史始まって以来のことです。」と非常に誇らしげに言っておられたわけでありますけれども、今回の派遣というのが、総理はどのぐらいの期間、自衛隊の艦船を派遣するという思惑で内閣総理大臣としての承認を与えたんですか。

麻生内閣総理大臣 これは、海上警備行動による海賊対処につきましては、そこに書いてありますように、別に命ずるまでの間、実施することにしてある、もう御存じのとおりであります。したがって、六カ月後に改めて継続について議論することにしておるというようになっていると記憶をいたします。

 いずれにせよ、新法によるものを含めまして自衛隊がいつまで活動を続けるのかということにつきましては、これは、活動をまだ始めたばかりでありまして、現時点でお答えすることは極めて困難だと存じます。加えて、海賊という状況が、ソマリア沖またアデン湾においてこの状況がいつまでの間にどの程度落ちつくのか、または終息するのかにつきまして、現時点で予測をするのは極めて困難だと存じます。

平岡委員 私は、総理が著書で書かれた中で五年半というのを非常に強調しておられて、今七年半に多分そのときからなっていると思うんですけれども、この記録を更新するために自衛隊の艦船をソマリア沖に派遣しようという気持ちがないことを私は望んでおります。

 そこで、本題としての、ソマリア沖で自衛隊が武力紛争に巻き込まれないかという問題について質問をいたしたいと思います。

 まず、武力紛争ということで、それに巻き込まれるというのは一体どういうことなのかということについて、ちょっと確認をしておきたいというふうに思います。

 今、図でお示ししましたけれども、今までの我が国の憲法解釈でいきますと、自衛隊等が国に準ずる組織に対して任務遂行を妨げる企てを排除するための武器の使用をする場合には、憲法九条が禁じている武力の行使あるいは武力による威嚇に当たるというふうに言われています。

 そして、国に準ずる組織とは一体何なのかという点については、平成十五年の七月十日の参議院の外交防衛委員会で、当時の秋山内閣法制局長官が、一定の政治的な主張を有し、相応な軍事的実力を有するものというようなものが国に準ずる組織であるというような答弁をしております。

 今私が説明したことで間違いはないか、内閣法制局長官の確認を求めます。

宮崎政府特別補佐人 お答えいたします。

 憲法第九条第一項で規定しております武力の行使とは、基本的には、我が国の物的、人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいい、この場合における国際的な武力紛争につきましては、国家または国家に準ずる組織の間で生ずる武力を用いた争いをいうのであると考えております。

 その上で、お尋ねの、いわゆる自衛隊の任務遂行を妨げる企てを排除するための武器の使用ということにつきましては、相手が国家または国家に準ずる組織である場合には、憲法第九条一項の禁ずる武力の行使に該当するおそれがあるというふうに考えております。

平岡委員 そこで、ソマリアの海賊というのは一体何なんでしょうかということなんですけれども、これについては、昨年出た安保理決議千八百四十六号に従って、国連の事務総長がことしの三月の十六日に報告書を出しております。これも資料としてお渡ししているので、見ていただければというふうに思うんです。

 この報告書によれば、ソマリアの海賊というのは海賊民兵、パイレート・ミリシアズというふうに表現されるとともに、この組織というものは、軍事的能力及び資源基盤の面において、ソマリア当局、これは複数になっていますけれども、それに匹敵する、ライバルとなる勢力となっている、こういうふうに評価されているわけであります。

 そこで、お聞きいたしますけれども、我が国が自衛隊をソマリア沖に派遣するに当たって、ソマリアの海賊というのがこういう国に準ずる組織であるのかどうかについて、外務大臣、それを確認されましたか。どういうような調査をされましたか。いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 委員がずっとお話しになられております国に準ずる組織、これは国際法上は存在しない概念でございまして、そういうところから、過日の委員会におきましても、私は、これは国際法への当てはめの問題としては判断することができない、そういうふうに答弁をさせていただいているところでございます。

 今、国連事務総長報告ということで委員からお示しになられましたけれども、このソマリア沖・アデン湾において頻発をしております船舶の強取などの行為、これは海賊行為でございますが、これはソマリア国内の混乱した状況を初め、外国による違法操業や、それからソマリア領海内における有害物質などの不法投棄などの影響を受けて経済状況が悪化する中で、地元の漁民などにより、いわばこれは生活の手段として、金銭、主として身の代金を目当てに行われていると考えられております。

 そういう背景や動機のほか、漁船などの小型船を使用して襲撃する、そういう行為ということに照らしまして、ここで行われている船舶の強取等はいわゆる私人の犯罪行為である、そういうふうに考えておる、これが政府の考えでございます。

平岡委員 国際法上の評価として定まっていないから、その調査をしていない、判断をしていないというのは、日本国憲法を守らなきゃいけない大臣としては、それは私はおかしいと思いますよ。やはり大臣として、政府として、そういうものに当たらないんだということを確認した上で自衛隊の出動ということについて考えなければいけない、私はこのように思います。という意味で、全く無責任な今回の自衛隊の派遣であると言わざるを得ないというふうに私は思います。

 ところで、この問題については、実は政府は余り触れたがっていないのでありますけれども……(発言する者あり)ちょっと静かにしてください。

 国連決議というのが、一連の決議が出ておりますね。千八百十六号、千八百三十八号、千八百四十六号、千八百五十一号ということでありますけれども、これは総理、国連憲章第七章のもとでの行動として各国に要請をするという仕組みなんですね。第七章というのは、平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動を促す、そういうことができる、そして武力行使もできる、そういう第七章になっているんですね。このもとで要請しているというのは、何か私、非常に違和感があるわけであります。

 それはさておいても、この国連決議千八百五十一号について言うと、パラグラフ六で、ソマリアにおける必要なすべての手段をとることができるというふうになっているんです。この点について、ソマリア領土内にある海賊基地に対する空爆等も認められると解釈している国もあるというふうに聞いていますけれども、我が国もそういう理解ですか。

中曽根国務大臣 今の御質問にお答えする前に、一つ御説明させていただきたいんですが、先ほどの御質問に関連することでございますけれども、従来、政府から答弁いたしておりますように、海賊行為への対処のために、海賊行為であって、我が国の刑罰法令が適用される犯罪行為に当たる行為を行った者に対し法令の範囲内で武器を使用することは、憲法九条が禁ずる武力の行使には当たらないということをはっきりと申し上げさせていただきたいと思います。

 それから、ただいまの御質問でございますけれども、国連の安保理は、決議の一八五一号におきまして、ソマリア沖の海賊対策に協力をし、かつ、ソマリア暫定連邦政府、これはTFGといいますけれども、これが国連事務総長に対して事前通知をする各国及び地域機構が、一定の条件のもとに、海賊行為を抑止することを目的として、TFGの要請に基づいて、一定期間、ソマリアにおいて適当なすべての必要な措置をとることができる旨決定をしているところでございます。

 以上の条件や目的に合致している限りにおきましては、本件のこの安保理決議というものは、ソマリア沖の海賊行為を抑止するためにソマリアにおいて各国等が必要な措置をとることを認めているものでありまして、その中で空爆の可能性が排除されているわけではございません。

平岡委員 さっきの、最初の答弁ですけれども、海賊行為というのが、もともと定義として私人の行為というふうに限定されているから、それを前提に議論をしたら今のような大臣の言った話になるんですけれども、世の中の実態というのは、それが私人であるのか、それとも組織体なのか、テロリストなのか、そういうことがわからないという中で判断をしていかなければいけない話ですから、全く答弁になっていない。そこは明確に否定させていただきます。

 そこで、今、外務大臣が、空爆の問題については、それは一定の条件のもとではあるけれども否定されない、できるんだというふうに言われました。

 そこでお聞きしますけれども、現に二〇〇七年とか二〇〇八年に、米軍はソマリア領土内で、イスラム過激派アルシャバブ等、これはアメリカがアルカイダとの関連があるというふうに指摘しているような組織でありますが、このイスラム過激派に対して空爆等を行っているというふうな報道が多々あるのでありますけれども、外務省はこの事実を把握していますか。

中曽根国務大臣 米国の国防省の発表によりますと、米軍によりますソマリアに対する軍事行動に関しましては、今委員からもお話ありましたけれども、二〇〇七年の一月七日、米軍機AC130によるソマリア南部のアルカイダ幹部に対する攻撃、それから二〇〇七年六月一日、米海軍駆逐艦によるソマリア領内のアルカイダ関連目標に対する攻撃、そして二〇〇八年三月の二日、ソマリア南部のアルカイダ及び関連目標に対する攻撃がそれぞれ行われたと承知をしております。

平岡委員 それは、国際法的には、どういう根拠に基づいて攻撃が行われているんですか。

中曽根国務大臣 我が国は本件の当事国ではございません。そして、本件をめぐる個々の具体的な事実について確認をすることができませんので、本件の国際法上の評価について申し上げることは困難でございますけれども、米国の当時の発表によりますと、テロとの闘いの一環を攻撃の理由としているものと承知をしております。

平岡委員 先ほど地図でお示ししましたけれども、ソマリアというのは、まさにそういう混沌とした、破綻国家になっているような状況ということですね。国連の決議に基づかないで空爆も行われているというようなことであります。

 私は、こういう状況にある中で、ある国がソマリア領土内でイスラム過激派や海賊基地に対して空爆とか地上攻撃を始めたような場合に、我が国は、やはりこの現状というのをよく見きわめて、我が国のあるべき対応を考えなければいけないと思うんですけれども、そういう場合は、今派遣している自衛隊の艦船について撤退するというふうなことはお考えですか。

 これは、総理に答弁してもらいます。

麻生内閣総理大臣 仮定の質問というのは、なかなか一概にはお答えできません。これだけでは木で鼻をくくったような答弁になっちゃうから、もうちょっと丁寧に言わぬといかぬのでしょうけれども。

 一般論として言わせていただければ、自衛隊の活動については、活動海域という地域が決められておるんですが、決められているというか、あの地域になるんですが、海賊の活動状況とか、我々が、輸送しております船舶、艦船の海上交通の安全の状況などというものを考えながら、自衛隊派遣をしております目的を達成できるのか否かというのをよく考えた上で、見きわめた上で判断するということになるんだと存じます。

平岡委員 先日も外務大臣が非常に消極的な答弁をされまして、今の麻生総理も、消極的なのか積極的なのかわかりませんでしたけれども、そういうことがあっても残っていく可能性はあるんだという答弁だったと思います。

 まさに、私が最初に申し上げましたように、ソマリア地域における武力紛争に巻き込まれるおそれがあるということを国民が心配している、そのことが現実のものにならないことを私は望んで、次の質問に移ります。

 次の質問は、海賊対策として自衛隊が海外に派遣されることにシビリアンコントロールが確保されているのかということであります。

 今回、国会の事前承認が法案の問題として……(発言する者あり)ちょっと静かにしてください。

 国会の事前承認を私たちは求めておりますけれども、海上警備行動を盾にして、あれがないんだからこれもなくていいじゃないかというようなことで、応じてくれないということでありますけれども、これまでの海上警備行動の発令というのは、日本の近海で二例だけですね。こんな遠くまで行ったものはないということであります。

 過去の経緯をちょっと探ってみますと、もともと自衛隊の海上警備行動は日本の近海を想定していたということは、この前の委員会で、一九五三年の三月十一日の衆議院の外務委員会の岡崎勝男外務大臣、この答弁を援用して防衛大臣にお聞きいたしましたけれども、きょうは時間がないので、そこはとりあえず置いておいて、もう一つ紹介しました。

 ここに、今、紙でお配りした、パネルにしてあるものでありますが、参議院の決議というものがございます。有名な決議でありますけれども、自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議、「本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、茲に更めて確認する。」と。

 そして、これに対して、当時の保安庁長官であり、初代防衛庁長官になりました木村氏は、この決議に対して、ここに書いてありますように、申すまでもなく自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略並びに間接の侵略に対して我が国を防衛することを任務とするものである、そして、海外派遣などというような目的は持っていないので、したがいまして、ただいまの決議の趣旨は十分これを尊重する所存でございます、こういうふうに言っているわけですね。

 私は、自衛隊法を立法したときにこういうことがあって、ああそうか、それなら自衛隊を海外に出動させることはないんだから、それに対して国会の承認とかというのはなくてもいい、まさに国内における警察活動と同じようなものだ、こういうような意識でこうなっていると思うんですね。

 今や、これだけ海外に出そうというときには、やはり私は、この決議に従って、国会の特別な立法なり国会の承認なりを得て出ていくというのが本来あるべき姿だというふうに思うんですけれども、総理はいかがお考えでしょうか。

麻生内閣総理大臣 今般の海上警備行動、いわゆるソマリア沖・アデン湾というものは、これは公海上においてですから、日本のいわゆる関係する船舶を海賊行為から防護するための目的の活動と、はっきりしていると思います。したがって、武力の行使をもって行われる、いわゆる海外派兵に当たるというのは全く関係ないんじゃないか、基本的にそう思っております。

 御指摘の決議につきましては、その有権的解釈は参議院によって行われたものだと考えておりますが、今回の派遣のようなものを想定したものではないと存じます。

 ただ、これを読ませていただきましたけれども、この二行をわざとこれは切っておられるんですか。これは二行目とちゃんとつながっている間に間接部分がありましたでしょう。(平岡委員「わかりやすくしたんですけれども」と呼ぶ)いや、わかりにくくしてあるように見えるんですが……(平岡委員「でも、私は全部読み上げましたよ、今」と呼ぶ)

 「国を防衛することを任務とするものでありまして、」というのがつながって、その後の「海外派遣というような目的は持つていないのであります。」と。したがって、防衛のための海外派遣を目的とするものではないということでありまして、そういうようにつなげていただかないと、意味をわざと切られたというふうに、私ども、誤解をいたしますので、ぜひその点は、きっちり文章をそのとおりに言っていただいた方が正確だと存じます。

平岡委員 これは、わかりやすくするためにこうしただけであって、私は、ちゃんと質問のときには全部読み上げました。

 それでも、総理は海外派兵という言葉を使われましたけれども、私は一言も海外派兵という言葉は使っていませんし、この決議の中でも、どこにも海外派兵という言葉はありません。海外出動あるいは海外派遣という言葉ですね。

 そこで、総理、当時、宮沢総理も、これは平成四年の六月二日の衆議院の大蔵委員会で、この決議について言えば有権解釈は参議院にあるというふうに言っています。この前の浜田防衛大臣に聞いたときもそういうふうに言っていました。

 総理、念のために参議院の有権解釈を求めるということを総理自身やられたらいかがですか。求めたらどうですか、私がこれだけしつこく食い下がっているんだから。こういう人もいるんだから、こういう人を納得させるためにも参議院の有権解釈を求めるべきだと思うんですけれども、どうですか。

麻生内閣総理大臣 御指摘の決議につきましては、それは有権的解釈は、参議院によって行われたものということでありまして、今般のソマリア沖・アデン湾における海上警備行動のような派遣を想定したものではないということははっきりしておると存じますが。

平岡委員 総理、それはあれですか、参議院の有権解釈ですか、今のは。何かそういうふうに聞こえましたけれども。参議院の有権解釈ですか、それは。違うでしょう。それは政府がそう考えているというだけでしょう。ちょっと訂正してください。

麻生内閣総理大臣 有権解釈を求めるものではないということであります。

平岡委員 それなら聞きますけれども、参議院が有権解釈を下した場合は政府はそれに従いますか。どうですか。

麻生内閣総理大臣 私どもとしては、基本的には、海上警備行動により自衛隊を派遣するものであれば、これは海外出動ということは確かだと思いますが、これによって直ちにこれが憲法違反になるかのような話につながるとは全く考えておりません。

平岡委員 私は憲法違反という話をしているんじゃないですよ。これは法律そのものが、自衛隊法そのものが憲法違反だという議論は当時ありましたよ。だけれども、それはともかくとして、海外出動だけはしないでくれ、こういう決議になっているわけですね。

 有権解釈は参議院にあると言われているので、私は、ぜひ参議院で有権解釈を出していただいて、それと今回の海外の海上警備行動の存在、そして今回の新法の存在、これがどういうものであるべきかということをもっと真剣に議論してほしい。私は、今回の問題について言えば、国会の関与が余りにも少ないということを冒頭申し上げました。民主党は、国会の事前の承認をすべきである、これだけの実力部隊を海外に派遣するわけですから、それを求めて修正協議を求めてまいりましたけれども、結局は与党が受け入れるところではありませんでした。

 しかし、考えてみると、今までの自衛隊の海外派遣について言えば、特別法を立法したり、あるいは国会の承認をしたり、そういうことを前提に法律の仕組みがつくられているわけですよ。

 総理、そういうような仕組みにすべきだというふうには思われませんか、どうですか。

麻生内閣総理大臣 先ほどから言っておられますが、国会の決議というものは、参議院ならいわゆる参議院という議院の意思表示でありまして、これは当然、政府としては十分尊重すべきものだと考えております。それは当然のことだと思いますが、他方、武力行使を伴わない自衛隊の海外派兵というものにつきましては、これまで、ペルシャ湾の掃海艇の派遣、またPKOを初めとする各種の法律の制定とそれに基づく諸活動の積み重ねをこれまでやってきたと思っております。

 今般のソマリア沖についての海上警備行動につきましても、いわゆる他の諸活動と同様に、武力行使を目的としたものでないことだけは明確だと思っております。したがいまして、仮に、国会において、今般の海上警備行動につきまして、御指摘の決議との関係で御議論というものをされるのであれば、今申し上げた点に留意することが必要だと考えております。

平岡委員 武力行使を目的に自衛隊が海外へ行ったら、それこそ本当に憲法違反ですよ。だれも武力行使を目的に行っていると言っていませんよ。だけれども、結局、行ったところで武力紛争に巻き込まれるというケースもあるということですよ。

 だから、そういう場合もあり得るので、やはりちゃんとしたシビリアンコントロール、国会の承認というものが私は必要だ、このことを申し上げて、時間が参りましたので、質問を終わります。

深谷委員長 この際、長島昭久君から関連質疑の申し出があります。平岡君の持ち時間の範囲内でこれを許します。長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 本題に入る前に、どうしてもこの機会に総理大臣にお伺いをしておかなければならない問題が一点ございますので、まず冒頭、お伺いしたいと思います。

 それは、谷内正太郎政府代表、前の外務次官、たしか麻生総理が外務大臣をなさっておられたときの外務次官だというふうに記憶しておりますが、その谷内政府代表の北方領土をめぐる発言でございます。

 最初、毎日新聞に掲載されたんですが、ちょっと引用させていただきます。

 「日本側が四島」、これは歯舞、色丹、国後、択捉でありますが、「日本側が四島、あるいは二島、ロシアが〇というのでは両国民の納得できる結果は出てこないと思う。」少し略しまして、「私は三・五島でもいいのではないかと考えている。北方四島を両国のつまずきの石にしないという意思が大事だ。二島では全体の七%にすぎない。択捉島の面積がすごく大きく、面積を折半すると三島プラス択捉の二〇〜二五%ぐらいになる。折半すると(三・五島は)実質は四島返還になる」、こうおっしゃったというふうに報道されております。

 総理大臣、この点について、この谷内正太郎政府代表の御発言について、どのような御感想をお持ちでしょうか。

麻生内閣総理大臣 これは二十日の時点でしたが、谷内代表から中曽根大臣に対して、三・五島返還でもいいのではないかと考えているといった発言をしていると、いや、発言はしていない、しかし、全体の発言の流れの中で誤解を与えるものがあったかもしれず、結果として関係者に誤解を与えてしまったことは遺憾であるとの説明があったと報告を受けております。これを受けて、中曽根大臣の方から、谷内代表の発言が結果として誤解を与えたということは甚だ遺憾であると伝えて、同代表に厳重に注意を行ったというように承知をいたしております。今、一連の流れです。

 いずれにしても、この北方四島の話は、長島先生、これは、何をするにしても、四島の帰属の問題がはっきりしない限りは、いろいろな話を、何かなかなか前に進まないんだと思っております。

 当然、外務次官としてこの種の交渉役として、相手側も、双方、帰属の問題が一番の問題というのははっきりしておりますので、それを前提にしてしゃべっておると思いますが、帰属の問題というものは、これは、ロシアとの間で平和条約というものを締結するということを長く、五十年、六十年やっておるんですが、それの一番の根底になりますのは、この四島の帰属の問題を明らかにした上で、その上でどうするかという話にしていくべきというのが基本的な政府の考え方でありまして、このことに関しては一貫して変わっていないと思っております。

長島(昭)委員 一貫していないから、私、伺っているんです。実は、この谷内政府代表の御発言と、麻生総理が外務大臣時代を通じてこの北方領土についてお触れになった点が非常に共通点があると私は思っているので、質問させていただいているんです。

 例えば、麻生総理はこうおっしゃっているんです。向こうが二島、こっちが四島では全く進展しない。それから、私もちょうどたまたまその場に居合わせましたが、三年前の外務委員会の席上、当時外務大臣の総理は、択捉島の約二五%を国後、歯舞、色丹の三島にくっつけると、面積はフィフティー・フィフティーの比率になる。これは、いわゆる面積等分解決案、こう言われているものでありますが、総理はもともと、こういう谷内政府代表が御提案をされたやに報道されているこの北方四島の解決方法と符合するような御発言を何度かなさってきたんです。

 そこで物議を醸したものだから、その後、政府の答弁書が出ています。その政府の答弁書では、北方四島の我が国への帰属が確認されれば、実際の返還の時期、態様及び条件は柔軟に対応すると。これが従来の政府の見解ですよ。今総理もそういうふうにおっしゃった。ただ、総理は、ことしの二月の日ロ首脳会談でこうおっしゃっている。独創的で型にはまらないアプローチが領土交渉には必要だ、こう御発言なさっていますね。

 この政府答弁書は、何ですか、これは従来の繰り返しで、型にはまったアプローチじゃないんですか。この政府答弁書。総理は、独創的なアプローチと言った。しかし、私の質問にたった今答えた総理の言い方というのは、非常に型にはまった、全く独創的でもないやり方。一体どっちが本当なのかというのが国民の皆さんの心配なんですよ。

 総理、時間がないので簡潔にお答えいただきたい。

 私が危惧しているのは、こういう二枚舌外交をしていると、日本の国民にも、あるいはロシア側にも、両方を欺くことになりかねないんです。ですから、私は、総理、この谷内さんというのも相当な戦略家だと思いますよ。総理がもし大戦略がおありだったら、いろいろなことをこういう形で解決するという大戦略がもしおありだったら、きちんと国民の前で説明をしていただきたい。もしそういう戦略がなく中途半端な火遊びでおっしゃっているんだったら、国民の前でわかりやすく、この際撤回をして説明し直してください。お願いします。

麻生内閣総理大臣 長島先生、少々時間をいただきます。かなりいろいろなところをつまみ食いしておられるところがあろうと思いますので。

 まず最初に、御質問がありましたが、これは前原議員に対するものです。歯舞、色丹が四島のうち何%で、では三島、国後まで入れたら何%か、あなた知っていますかという御質問だったんです。おられましたから御記憶のことと存じます。それに対して私の方から、「択捉島の二五%を残り三島にくっつけますと、ちょうど五〇、五〇ぐらいの比率になります。大体、アバウトそれぐらいの比率だと存じます。」そうお答えをしておるのでありまして、私どもとしては、この話に関して、北方四島の面積について問われたので、それに対してお答えをしたというのが正確であって、前原議員の御質問に答えたというのが正しいところだと思っております。

 また、先ほどの二月のユジノサハリンスクにおける話、またその前のペルーのリマにおけるメドベージェフの話ですけれども、新たな独創的で型にはまらないアプローチをしようと向こうが言ったのに対して、向こうがそう言ったのに対して、私の方は、当然今までのように役人にだけやらせておいたらできないんじゃないかというお答えをしたというのが経緯でして、私が言ったんじゃない、これはメドベージェフが言ったのに対して私がこたえたというのが正確なところであります。

 いずれにしても、日本政府としては、そのときも先方に対して、帰属の問題というのがはっきりすれば、あとの問題はいろいろ柔軟に考えられるのではないかという話はしてあります。

長島(昭)委員 従来どおりということで私も安心をいたしました。ぜひこの領土問題、日本の外交の基軸でもございますので、今後、発言がぶれのないように、政府の総理の側近の皆様にも徹底をしていただきたい、このように思います。

 それでは、本題に入りたいと思います。

 今回、深谷委員長にも御努力をいただいて、与野党の間で修正協議をこの数日間かなり徹底的に詰めてきたわけでありますが、最終的に一致点を見出すことができず、大変残念でございます。

 国民の皆さんに誤解を与えてはいけませんので一言申し上げたいと思いますが、私ども民主党も、我が国は海洋国家であり貿易立国である、我が国の輸出入の九九・七%は海上交通に頼っている。したがって、海上交通の安全というのは我が国の死活的な国益である。したがって、この国益が侵されるような事態、つまりは今回のソマリア沖の海賊事案、こういう事案については、もちろん、第一義的には海賊事案は海上保安庁の皆さんのお仕事でありますけれども、それでは困難だという場合においては海上自衛隊の出動もやむない、こういうことは、私ども民主党の立場でございます。これは、私ども民主党のコンセンサスを得ております。

 この点までは……(発言する者あり)委員長、ちょっとうるさいですね。

深谷委員長 お静かに願います。

長島(昭)委員 この点までは、実は与野党の間で一致をしていたんです。

 ところが、ここから先なんですが、(パネルを示す)自衛隊という実力部隊を海外に派遣する、こういうことでございますので、その派遣の際には、やはり十分な国民的な議論あるいは十分な民主的なコントロールが必要だ、こういう立場に立っているわけです。

 アメリカでも、大統領が米軍を運用することができますけれども、しかし、海外で戦闘行動を起こすときには、必ず連邦議会が承認決議を行っております。したがいまして、我が国も、これまでいろいろな積み重ねの中で、こういう自衛隊の運用に係っては国会の関与というものを重ねてきたわけであります。

 きょう、ここにお示ししたことを少し説明させていただきたいと思います。

 左側に自衛隊の活動を明記しております。これは主要なものだけ、先ほど新藤委員の方からいろいろなお話がありましたけれども、特に主要なものだけピックアップをして掲げてあります。

 それで、活動の性格に応じて国会の関与のあり方が変わってくるわけです。一番右側に二重丸、丸とありますが、二重丸が国会の事前承認です。そして、丸が国会の事後承認でいい。そして、報告のみであったり特になかったり、こういう体系になっているんです。

 活動の性格を三つのカテゴリーに分けました。左側から、武力行使あるいは武器の使用との近接性、つまりは、武器を使う可能性が高いか低いか、それによって赤色を少し濃くしてあります。例えば、防衛出動の場合は、これはもう武力行使、国際法上認められておりますから、武力行使ですから濃い赤になっているわけです。あるいは、PKF活動、真ん中辺にありますけれども、これは普通の国連のPKOに比べてもう少し前面に出ていく活動ですから、武器の使用の可能性が高い、こういうことで整理をしております。

 それから、二番目のカテゴリーは、その活動によって我が国の国民の権利義務が制約される可能性が高いか低いかで、これも色分けをさせていただいております。

 それから、自衛隊の運用を決定するに当たって時間的な余裕があるかないか、これについて、やはり赤い色を濃淡で示しております。

 つまり、一見してわかっていただけるように、濃い赤い色が多ければ多いほど国会の関与は厳格にかかってくる、これがこれまでの我が国の防衛法制の基本的なポイントなんです。

 そこで、個々にちょっと見ていきますと、先ほど防衛出動のお話をさせていただきましたが、防衛出動は武力の行使の可能性も高い、しかも国民の権利義務を制約する可能性も高い。したがって、原則として事前の国会承認になっているんです。

 治安出動の場合は、もちろん武器の使用の可能性はそんなにないんだけれども、国民の権利義務を拘束する可能性があるので、これは一段下がって、国会関与においては国会の事後承認ということになっている。

 例えばPKO。PKOの場合は、国民の権利義務を制約する可能性はないです。ないですが、武器の使用の可能性は若干ある。こういうことで、報告のみとなっています。

 それで、PKOの中でも、先ほど申し上げた、多少正面に立つ可能性のあるPKF活動については、二〇〇二年に凍結が解除されました。この活動については、やはり国会の事前承認がかかるようになっています。

 それから、武力攻撃事態あるいは周辺事態、このいずれにおいても、厳しい国会承認の手続がかかっております。特に武力攻撃事態については、これは一重丸になっていますが、閣議決定後直ちに国会の承認を求めるということで、実質的には事前承認と同じ縛りがかかっています。

 これは、今るる見たように、最後、一番下に、今回の海賊対処法案の自衛隊の活動についての縛りについて書いてありますが、先ほど平岡委員に対する答弁にもあったように、武器の使用の可能性は今回極めて高い。警察活動ではありますけれども、しかし、海賊行為をやっている海賊と遭遇した場合に、警告射撃とかいろいろなことをやるわけですから、これは武器の使用をする可能性が極めて高い。

 それから、決定に当たっての迅速性もあるんですね。これは、七条の二項で、さんざんこの委員会でもやりましたけれども、現に海賊行為をやっているところに出くわした場合には、これについては、国会に対して、あるいは総理大臣に対して何も承認を求めることなく、通知するだけで対処することができる、こういうことになっている。したがいまして、これが本当に報告だけでいいのかというのが私たちの問題意識なんです。

 したがって、こういう防衛法制に非常に明るい浜田大臣は、この委員会でも、あるいは記者会見の場でも、やはりこういうこれまでの国会における議論、あるいは自衛隊をめぐる運用に国会の関与を厳しく定めてきた、こういう経緯に照らして、今回もやはり国会の事前の承認が必要なのではないか、一般論とは断っておられますけれども、そういうお話をされているんですね。

 総理、今るる私が説明をさせていただきました。今回私たちは修正を求め、衆議院では折り合いがつきませんでした。しかし、これから参議院の審議もございます。私どもは、まだこの問題について国民の皆さんの理解も深まっておられないという観点に立って、これから参議院でも徹底的な議論をしていこうと思っています。

 総理、どうですか。こういうことを見て、もう一回政府として、国会審議の行方を見ながら、あるいは与野党の修正協議も見きわめながら、柔軟な対応をおとりになるおつもりはありませんか。

麻生内閣総理大臣 これは、海上警備行動というものが基本にまずある。したがって、これは海上保安庁が一義的にという話をずっとこれまでしてきた経緯がありますのは御存じのとおりです。

 したがいまして、海の上の強盗みたいなものに対処をするに当たって、事前の国会承認が要る要らない、武器の使用を伴うにしろということになろうというのが考え方の基本にあるんだ、私はそう理解をしておりましたので、私は、基本的に制服を着たお巡りさんにかかってくる強盗というのは余りいないんじゃないんですかという話を最初にした記憶もありますけれども、少なくとも海の上でゴムボートから撃ってくる人が軍艦にしかかってくるかというようなものを考えたときに、そこに存在するだけで抑止力になり得るということも十分に考えられるのではないか。今までのところは、少なくとも何回かの行動はいずれもそうなってきております。

 したがって、サーチライトとか音響マイクとか、ああいったものだけで十分対応はこれまでのところはできておりますが、今後そうならないケースのことも考えておくというのが大事なところでありまして、そういったことを考えていったら、これはいずれも強盗というか海賊相手の話なので、基本的には海上警備行動というもので対応できるというように考えております。基本はそう思っております。

 ただ、今問題になってきているのは、隣の日本国籍に所属していない艦船に対してということで、向こうから救助を求められたというようなときが、だんだんその範囲が、同じ地域にいれば、そっちの方は助けるけれども、こっちは助けないというようなことができるかなという現実問題を考えたときに、今回の法案を出させていただいたという経緯を考えた場合、今回の考え方としては、基本的には間違っていないと思っております。

長島(昭)委員 総理、ぎりぎりいっぱいの御答弁をいただいたと実は思っています。

 去年十月、私が総理とここで議論をさせていただいた当時は、総理の御認識、例えばグレーの軍艦が一緒にエスコートしていれば、それに挑みかかってくるような強盗、海賊はいない、こういう前提で私もお話をさせていただきました。海上警備行動がいいのではないか、これも私が、野党の中にはいろいろな異論もございましたけれども、私自身はそういう提案もさせていただきました。

 ただ、その後、委員も御承知のとおり、いろいろな事件が起こっていますね。例えば、インドの海軍が海賊船を沈めたりとか、あるいはアメリカで海賊から船員の奪還作戦が行われたとか、アルカイダが海賊を使ってアメリカ艦船に対して攻撃しろと言ってみたりとか、こういう状況になっておりますので、今、総理も正確におっしゃっていただきました、今後はどういう状況になるかわからない、こういう趣旨の御発言だったと思いますので、私は、これは与党の議員にもお願いしたいんですけれども、ぜひ虚心坦懐に考えていただきたいと思っているんです。

 今まで、政府提案で国会承認が最初の政府原案の段階からかかっていたのは、武力攻撃事態、それとイラク特措法だけだったんです。それ以外の国会承認は、全部議院修正、つまり国会の修正によってつけ加えられてきたんですね。ですから、私どもも、ぜひ英知を集めてよりよい法案をつくり、浜田大臣がいつもおっしゃっておられる、本当に衆参両院で、つまり国民の代表がきちんとした形で自衛隊を海外に送り出していくことのできるそういう枠組みをつくろう、総理、これは建設的な提案でございますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 そして、最後の論点、これは実は非常に重要な論点なんですが、きのう私、海洋担当大臣それから浜田防衛大臣と、この海賊行為への対処というのが実は一連のプロセスであるということを確認させていただきました。

 つまり、海賊行為の疑いのある船舶がまずいる、それが商船につきまとったり、あるいは猛スピードで追っかけてきたり、こういうところをまず現認するわけです、海上保安庁の方であれ海上自衛官の方であれ。まずそういう現場に出くわすわけです。それで、その船が本当に海賊かどうか、海賊行為を行っているかどうかを確認するために、とまれと言ってみたり呼びかけをしたり、あるいはさっき総理がおっしゃったサーチライトを照射したり、あるいは警告射撃をしたり、そして最終的には立入検査までいくわけです、停船命令をして。立入検査をして、そして海賊行為を行っているのか行っていないのかを確認して、仮に行っていなかった、実は漁船だったとか、こういうケースにおいては、そのときは、そういう危険な走り方をしないでくださいとかなんとか言って、そこで対処行動は中断、中止、そしてリリースという運びになっているわけです。

 ここでお尋ねをしたいんですけれども、結果として海賊行為を行っていたと判断されなかった船舶に対してそれまでの時点で行われていた警告射撃等の武器使用、これはさかのぼって違法になることはないのかどうか。一連のプロセスとして海賊行為に対処するために使う武器の使用、これは憲法九条に反するものではないということを、国民にわかりやすく簡潔に、内閣法制局長官、説明をしてください。お願いします。

宮崎政府特別補佐人 お答えいたします。

 直接、御指摘の問題の焦点は、新法案の六条、それから八条で準用する六条によりますいわゆる船体射撃ということなんだろうと思いますけれども、御指摘のとおり、その六条のところに……(長島(昭)委員「警告射撃。船体射撃じゃない」と呼ぶ)はい。

 いずれにしましても、そういう射撃をする場合におきましては、法案の所定の要件を認定いたしまして、そしてその認定に基づいて行うわけでありますので、そのときに、その相手方の船舶が、例えば外観上漁船の姿を装うなどの偽装を行って我が国の法令に違反する行為をしているという外観があり、そして、客観的な状況に基づいて合理的に判断してそういう認定ができたということでありますれば、事後的にその対象が、あるいは、その対象といいますか、ある国が何らかの主張をして、それは自分のところのメンバーであった等々の主張をいたしましても、さかのぼって、その最初に行いました射撃の違法性が生ずるとか、あるいは違憲性が生ずるということはないと考えております。

長島(昭)委員 それでは確認をさせていただきます。

 今、ボード、皆さんのお手元にもあると思います。最初、出くわしたときは、海賊行為の疑いがある、さっき法制局長官は、合理的な疑いがある、こうおっしゃった。疑いがあるけれども、本当に海賊行為をやっているのかやっていないかわからない。だから、AとBをある種組み合わせて書いてあります。それを確認するために呼びかけたり警告射撃をする。つまり武器の使用をする。停船命令をする。海賊行為だった、A。海賊行為であればこれは問題ないですね。

 しかし、船舶検査、立入検査をした結果、ああ海賊ではなかった。きのうは私、漁民だったという話をしましたが、今の法制局長官のお話ですと、反政府組織の一員だったとしても、偽装してこういう船に乗り込んでいたとすれば、それは、相手がテロリストであろうが反政府武装組織であろうが、つまり国に準ずる者ですよ、こういうものであろうが漁民であろうが、これは、ここで行った射撃、武器の使用はさかのぼって憲法九条違反にはならない、こういうことでよろしいんですか。

宮崎政府特別補佐人 疑いがある場合ということではありませんで、海賊行為を行っている、あるいは海賊行為のまさに強取に至ろうとする、法案で申します要件に当たるということが射撃の際に認定されることが必要なのでございますので、認定した以上は、海賊行為をしたと。海賊行為というのは、前々から申し上げておりますように、何人も領有、支配を許さない領域であります公海における私有の船舶による私的な目的に基づく犯罪行為という、私人の行為であるということを認定して射撃をするということでありますから、それは、国家なり国家に準ずる者の行為として評価されるものではないということでございますので、最終的には御指摘のとおりであろうと思います。

長島(昭)委員 法制局長官にしては相当しどろもどろなんですね。

 長官、認定をしたと言ったけれども、認定できないんですよ、最初はわからないんだから。わからないところからいろいろな……(発言する者あり)いやいや、だから取り調べの過程で警告射撃までいくんですよ。武器の使用をするんですよ。まだ認定し切れない段階から武器の使用をするけれども、今まで法制局は、国または国に準ずる者、つまり反政府組織みたいなものに対しては、自衛隊は武力の行使に当たるからそういう武器の使用はしてはいけないとずっと言ってきた。そういう基準を立ててきた。しかし、今回はその基準とは違う基準でやるんですか、こういうふうに申し上げているんです。お答えください。

宮崎政府特別補佐人 今までの考え方を変えたということは全くないと考えております。

 それで、委員御指摘の、第六条で、あるいは準用第六条で、海賊行為の制止に当たり、当該海賊行為を行っている者が、他の制止の措置に従わず、なお船舶を航行させて当該海賊行為を継続しようとする場合において、その船舶の進行を停止させるために他に手段がないと信ずるに足りる相当な理由のあるときには、武器を使用することができるということでございますから、これは、この要件をどう認定するかということは一つの完結した手続だと思います。

 御指摘のとおり、その後、立入検査に至りまして、そういうことがどれだけあるかちょっとなかなかわかりませんけれども、そうでないということがわかれば、それは、その後の手続については、おっしゃるとおりリリースをするわけでございますけれども、六条の行為をしたときの時点は、それで正当であったということだと思います。

長島(昭)委員 今、これは非常に重要な答弁だったというふうに思います。

 総理、これは、現場に行かれる隊員の皆さんにとっても、何だかわからない、今までの法制局の答弁だと、これは海賊行為を行ったという認定を受けないと、それに対して対応することができなかったと私たちは受け取ってきたんです。

 しかし、今、一歩踏み込んで、現場で対応する皆さんが戸惑わないような、そういう解釈をしていただいたので、総理からもう一度、もしそういう形で、停船命令あるいは立入検査をする前の段階で、警告射撃、つまり武器の使用をしたとしても、さかのぼって憲法違反にならないということを言明していただきたいと思います。

麻生内閣総理大臣 合理的に判断をして海賊行為であると認めて対処したというのは当然なんですが、そこがなかなかあいまいであったと。だけれども、これは長島先生、現実問題として、普通の漁船が追いかけてきたといったって船舶は逃げませんから。だから、やはり、常識的に言えば、猛烈なスピードで寄ってきてというような前提というのは、通常普通の漁船じゃ考えられない話なんだと思っております。

 したがって、テロリストということをやった場合に、それがテロの行為に及ぶ前の段階で、いろいろなことを想定、これは仮定の問題としては、頭の体操、シミュレーションとしてはいろいろ出てくるんだと思いますが、しかし、今の場合で、仮に、やった結果、しかるべきものがなかったという例があったときはどうするかといったときには、そこに至るまでの行為において、十分に危ないとか、テロリストかもしれぬ、海賊かもしれぬという行為によって危害、被害を受ける可能性を未然に防ぐという話であろうと思いますので、それに当たって、その前に遡及して武器の使用がというようなことはないという法制局長官の意見というのは正しいと思っております。

長島(昭)委員 ありがとうございました。

深谷委員長 これにて平岡君、長島君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、ソマリア沖の海賊問題についての総理への質問であります。

 ソマリア沖の海賊は、国際的な犯罪行為であり、現地周辺国の警察活動を基本に国際的な連携協力で対処すべき問題です。日本は、ソマリアと周辺国の海上警察力の強化や、ソマリアの内戦と貧困の解決に向けた支援を行うべきであって、自衛隊は派遣すべきではないというのが私たちの立場であります。

 そこで、外務大臣に確認しますが、ことしに入って以降、ソマリア沖の海賊事件はふえているのか、あるいは減っているのか、端的にお答えいただけますか。

柴山大臣政務官 お答えいたします。

 ソマリア沖の、またはアデン湾の海賊事案は、特に昨年の夏以降急増しております。昨年は百十一件で世界の約四割、〇七年の約二・五倍の事案が発生しています。

 今委員御質問のことしについてですけれども、ことしに入って海賊事案は四月二十日現在で八十二件発生しておりまして、既に昨年の件数の七割強、ハイジャックされた船舶は二十隻に達しております。そして、十六隻が抑留されており、約二百七十名の乗員が人質となっているということで、顕著な増加傾向が見られるというように判断できると思います。

赤嶺委員 昨年から、各国がソマリア沖に軍隊を派遣し、そして政府も自衛隊を派遣しました。しかし、海賊事件は減るどころか逆にふえているわけです。それは海賊が広域化しているからであります。軍隊が活動を行っている海域とは別のところで海賊事件が多発しています。まさに、今あの海域ではイタチごっこになっています。

 アメリカの国防総省のモレル報道官は、世界じゅうの海軍の艦船をすべてソマリア沖に集めても問題は解決しないと述べています。総理は、こうした発言や現状についてどのように受けとめておられますか。

麻生内閣総理大臣 今の、報道官がそのように言ったかどうかを知りません。したがいまして、今の御質問に対して、その質問の内容を知りませんので、お答えのしようがないんですが、少なくとも、今我々としては、ソマリア周辺国家の政情不安に対応するため、いろいろなことをやらねばならぬ。これは外務省が今いろいろやっておる最中でもあります。

 しかし、同時に、現実問題として、日本の二千隻に上る船が通航するあの地域で、我々としては、日本船籍の船舶というものをきちんと護衛するというのは、我々に与えられた大事な仕事の一つだと思っておりますので、したがいまして、我々としては最善の努力を払うのは当然のことだと思っております。

 出してもだめじゃないか、では、出さなければもっとすごくなったかもしれぬ、そういうことも考えておかねばならぬことだと思っております。

赤嶺委員 私は、軍隊では問題の解決はできないと思います。そもそも、ソマリアの海賊がなぜ生まれてきたのかという根本原因にきちんと目を向けるべきだと思います。

 外務大臣に聞きますが、ソマリアでは、一九九一年以降、内戦状態が続いてきました。そのもとで、外国漁船による違法操業、廃棄物の不法投棄が横行するようになりました。国連の報告書が出ておりますが、そこでは、放射性廃棄物や産業廃棄物、医療廃棄物など、さまざまな有毒廃棄物がソマリア各地に投棄され、深刻な健康被害を引き起こしてきたとも指摘をしております。これに対して、漁民が自衛手段として高速船や武器を使って外国船を追い払うようになり、それが海賊ビジネスと言われるほどの一大産業になっていったと言われております。

 外務大臣も、そういう認識ですか。

中曽根国務大臣 基本的には同様の認識でございます。

赤嶺委員 つまり、海賊は犯罪であります。孤立させなければなりません。ところが、ソマリアでは海賊が英雄視されていると言われております。それは、こうした海賊発生の経緯とも無関係ではありません。これまでの国際社会の関与のあり方が問われているんです。

 今、ソマリアでは、昨年八月、暫定連邦政府とソマリア再解放連盟の穏健派グループが武力行使の停止などで合意し、内戦終結と国民的和解に向けた努力が続けられています。ソマリアの暫定政府のアハメド大統領は、ソマリアの治安部隊を確立するための国際援助として、一億六千五百万ドルがあれば当面の海賊対策に十分で、海賊の攻撃の四分の三は防止できると発言しております。

 私、総理に伺いたいんですが、今総理が席にいないんですが、どういうことですか。総理に伺いたいんですが。

深谷委員長 今、生理的な理由で、直ちに戻ってまいりますから、他の大臣に質問してください。

赤嶺委員 総理に伺うところでありますけれども、我が国も、このソマリアの今起こっている積極的な努力、こうした方向を後押しする考えはありますか、外務大臣。総理がいなくなっていますから、外務大臣、答えてください。

 委員長、だめですよ、テレビ質問でこんな委員会のやり方。

中曽根国務大臣 このソマリア沖の海賊問題、これを根本的に解決するには、もう再三この委員会でも議論になっておりますけれども、ソマリア情勢を何よりも安定化させるということが非常に大事であるということでございます。

 一方、ソマリアの情勢は、国際社会として、今までなかなか有効な手だてを講ずることができなかった、極めて複雑で、また難しい問題でもございます。

 昨年の八月には、暫定連邦政府とそれからソマリア再解放連盟の穏健派、これはイスラムグループの穏健派でございますけれども、これとの間で武力行使の停止などを含むジブチ合意が成立をいたしました。そして、ことしになりましてからも、新大統領とかあるいは新内閣が暫定連邦政府において誕生し、また新議会も誕生しつつあるわけであります。

 しかし、この暫定連邦政府にはすべての勢力が参加しているということでもございませんので、なかなか全体の和平につながる、そういうような形になっていないわけで、我々といたしましては今後の動向を慎重に見ていく必要がある、そういうふうに思っているところでございます。

赤嶺委員 私はやはりソマリア自身の警察力の能力向上の支援、こういうことこそ日本が大いにやるべきだと思います。

 そこで、問題は自衛隊です。政府は、自衛隊の活動は海賊対策だから警察活動だといいますが、一たん軍隊を派遣すれば、それにとどまらない問題に発展しかねません。

 防衛大臣に伺いますが、海上自衛隊の護衛艦や今後派遣するP3Cの哨戒機、これは各国軍隊とさまざまな協力や情報の共有を行うと思いますが、その点は間違いありませんね。

浜田国務大臣 当然、それは我々、護衛の任務があるわけでありますので、その護衛の任務にかかわる情報の共有というのはこれは当然でありますし、そして、我々がその情報によってしっかりと護衛の任務を果たすことが我々の目的でありますので、そういった中での情報のやりとりというのはやっていくつもりでございます。

赤嶺委員 総理、先ほどの質問、聞いておられなかったと思うんですが、さまざまな協力を行う先の米軍、これは、あのインド洋で、あるいはアデン湾で海賊対策だけを行っているわけではありません。テロリストの海上の逃亡を阻止する活動、ソマリア本土への空爆、さまざまな軍事作戦が混然一体となって行われております。その米軍に対してP3Cや護衛艦が得た情報の提供を行えば、それは米軍の軍事活動の全体を支援することにならざるを得ません。

 先週、アラビア半島のアルカイダという組織が、ソマリア沖に派遣されている各国軍隊への攻撃を呼びかける声明を発表しました。アメリカ政府内ではソマリアのイスラム系過激派組織の訓練キャンプに対する軍事攻撃を議論している、このように報じられています。

 総理に聞きますが、一たん自衛隊を出せば、海賊対策から新たな紛争に発展しかねない、そうではありませんか。

麻生内閣総理大臣 私どもとしては、その可能性は限りなくゼロに近いと存じます。

 基本的に、海上自衛隊が海上保安庁の保安官を乗船させた上で、日本の艦船、船舶護衛のために、主たる目的としてここに派遣をされております。それの関係で、我々としては、安全航行を確実にするためにどうするかという主たる業務で我々はそこに人を派遣しておるわけでして、そのために、今それが直ちに米軍の何とかにつながるというような飛躍的な話、話が飛躍するという可能性は限りなくゼロに近いと存じます。

赤嶺委員 現地に米軍がいて、その可能性をゼロだという認識そのものを私は疑いたいと思います。

 今回の海賊新法では、抵抗、逃亡する海賊への危害射撃、海賊行為を制止するための船体射撃まで規定しています。ところが、アメリカの海軍大学の教授は、ほとんどの場合、海賊船は漁船と同じに見え、特定できるのは襲撃が起こった後になってからだ、このように指摘しています。遠く離れたソマリア沖で自衛隊が戦後初めて人を殺傷しかねない、こういう事態になっているのであります。

 海の航路はこの海域だけではありません。現に、アフリカの喜望峰回りに切りかえた船もあります。私は、海の関係者の意見もお聞きしてまいりました。船主は安全な航路を選択し、船員を危険にさらすべきではない、軍艦に守ってもらって危険な海域で商売をするなどもってのほかだという意見が出されました。

 私は、こういう意見の検証も含めて、冷静な議論が必要だと思います。海賊問題の解決にならず、新たな紛争を招きかねない自衛隊の派遣はやめるべきです。憲法九条を持つ日本は、ソマリア和平を後押しする外交努力と民生支援で積極的役割を果たすべきことを強く求め、質問を終わります。

深谷委員長 これにて赤嶺君の質疑は終了いたしました。

 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄です。

 本日、海賊対処法案を、審議が十分尽くされないまま、与党が強行して採決することを決めています。このことに、冒頭強く抗議しておきます。

 現在、自衛隊法八十二条の海上警備行動が発令され、「さざなみ」「さみだれ」の二隻の自衛艦がソマリア沖・アデン湾に展開しています。このことは、自衛隊法の趣旨から見ても、明らかに法を逸脱していると言わなければなりません。海賊対処法案は、海上保安庁による対処が第一義であるとしています。その上に立って、海上保安庁が対応し切れない場合に海上自衛隊が対応するということになっています。

 まず指摘したいのは、海上保安庁では本当に対応できなかったのかということであります。総理、このことに対して明確に説明していただきたいというふうに思います。

麻生内閣総理大臣 このソマリア沖の海賊への対処の問題に当たりましては、海上保安庁の巡視船を派遣するということにつきましては、これは政府部内でかなりいろいろ検討をされております。現状では、その上で困難であると判断をした結果、これまでも国会答弁でその経緯等々明らかにしてこられたと存じます。

 今般、海上警備行動の発令ということによってソマリア沖に海上自衛艦の護衛艦というのを派遣することにしたんですが、護衛艦の派遣に合わせて、いわゆる海賊行為の抑止とか、また海賊を追っ払う、退散させる、海賊退散などのための訓練というものを海上保安庁と一緒にさせていただいたり、いろいろなことをしたと思いますが、その訓練を行った上で、海上自衛隊の特別警備隊というのを同乗させるなどなど、最善の配慮をした上での行動と御理解いただければ幸いであります。

菅野委員 党の同僚議員が二十日、海上保安庁の「しきしま」を視察に行ってまいりました。「しきしま」は横浜港で待機している状態だったということです。

 まず自衛隊を出動させるという政治判断があって、そのために海上保安庁による対処可能性の検証が不十分だったんではないのかなというふうに私どもは考えているんですけれども、海上保安庁は本当に最大限の努力をしたのか。「しきしま」は海賊対策より優先する任務についているのか。なぜ訓練を積んだ海上保安庁特殊警備隊ではなく海上自衛隊の特別警備隊が行くのか。この検討の中身について、海上保安庁の長官の説明を求めておきたいと思います。

岩崎政府参考人 ソマリア沖の海賊への対処につきまして、私ども海上保安庁も、昨年の四月でございますけれども、タンカーの「高山」が襲撃されました。それ以来、いろいろな関連の情報を集めて、巡視船の派遣の可能性について真摯に検討してまいりました。

 これまで答弁させていただいていますとおり、日本からの距離でありますとか海賊が所持する武器でありますとか、諸外国から派遣された海軍、軍艦等が海賊事案への対応を行っているということを総合的に勘案して、海上保安庁の現状では困難であると判断したところでございます。

 それから、「しきしま」でございますけれども、海上保安庁で今唯一、こうしたことに対応できる能力を持っている船でございます。この船は、海上保安庁の指揮船としていろいろな任務についているところでございますけれども、「しきしま」の任務が、こうした任務についているから派遣できないということではなくて、「しきしま」一隻では継続的、安定的に仕事ができないということで判断したものでございます。

 それから、最後に御質問ございました、今回、私どもの特殊警備隊が乗っていないということでございますけれども、これは、私どもの仕事が司法警察業務ということからでございます。

菅野委員 日本は憲法の平和主義のもとで、海上保安庁と海上自衛隊の任務を厳格に区別してきたと私は思っております。海上保安庁法第二十五条は、こう言っていますね。「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない。」とわざわざ明記しています。海上保安庁が軍隊ではなく海上警察であるということを明確にしてきているのであります。

 本来、海上保安庁が対処すべき海上における犯罪に対して、安易に自衛隊に対応させることは、私は、こうした区別というものをあいまいにするものだと言わなければなりません。海上保安庁の海賊対処能力に問題があるとするならば、これを強化していくのが筋だというふうに思って、そして、その上に立って、今派遣している自衛隊を引き揚げるべきだと思うんですけれども、これに対する見解を求めておきたいと思います、総理。

麻生内閣総理大臣 海賊行為への対処というのは、これはもう先生おっしゃるまでもなく、一義的には海上の法執行機関であります海上保安庁の責務であるということであります。しかし、海上保安庁のみでは対応できないという特別の必要がある場合に、自衛隊で対処するということにいたしております。このような仕組みは海上警備行動と同様ということになろうと思いますので、今御指摘の点は少し当たらないんじゃないかなと思っております。

 したがって、この新しい法律では、関係行政機関の長とよく協議をして、その上で、海賊行為に対するための対処要項を策定する規定を整備するということなどによって、海上保安庁と自衛隊との関係というものを一層明確にしたものだと考えております。

 また、対応能力の強化につきましては、これは、アデン湾は約一万二千キロぐらい離れていると思いますが、そこのために新たに巡視船をもう一台、二台、何台要るのか知りませんけれども、そういったものを新たに追加保有するということを今現時点で考えているわけではございません。

 いずれにいたしましても、遠方海域、かなり遠方海域でありますので、こういった重大事案へ対応するということに関しては、望ましい体制のあり方というものにつきまして、全般的に、海賊行為をめぐる国際的な動向など、いろいろ検討しなきゃいかぬところだと思いますが、引き続き検討させていただかねばならぬところだと思っております。

菅野委員 二〇〇〇年代前半に多発したマラッカ海峡、東南アジアにおける海賊問題について、日本は、アジア海賊対策地域協力協定、ReCAAPの成立や同協定に基づく情報共有センターの設立に向けて、リーダーシップを発揮してきました。JICAスキームによる沿岸諸国の海上法執行能力向上のために、人材育成、海上保安庁の巡視船を派遣して訓練を実施するなど、積極的な貢献を行って成果を上げてきました。

 この東南アジアの海賊の事件は、二〇〇三年の百七十件から〇八年の五十四件と大きく減少してきたわけですね。このときに、自衛隊は日本として派遣していなかった。海上保安庁が中心となって、マラッカ海峡における海賊対策を周辺諸国と積極的に行ってきたというこの経験を、私は、アデン湾におけるものにも適用すべきだと思うんですね。私は、このアデン湾における海賊対策がすぐに解決するというふうには思っていないわけです。長期的な視点に立って、海上保安庁をどう活用していくのかという視点をしっかり持つべきだと思っています。

 麻生総理大臣、総理大臣が決断することが必要なんだ、海上警備は海上保安庁が本来任務なんだ、そのことを政府としてはしっかりと行っていくんだというこの方向性だけは私は曲げてはならないというふうに思うんですけれども、大臣の再度の答弁をお願いしたいと思います。

麻生内閣総理大臣 先生、その周辺国が、マラッカ海峡の場合は、シンガポール、マレーシア、インドネシア等々、いわゆる国家としてきちんと機能しております。しかも、海賊に対しては断固対応したい、これに断固たる態度をとると。当時外務大臣でしたので、当時、海上保安庁の古くなった艦船というか船をたしか寄贈するということにしたので、本部もたしかシンガポールでつくるという、それは周りの国がしっかりしていましたから。

 だけれども、今回は、しっかりした組織、政府がないという地域に出しておるわけですから、その意味では、これは対応としては甚だ難しいというのが我々としては最も頭の痛いところだと思います。

 したがって、周辺の国のソマリアという国がどうなっていくのかというのは今後とも大事なところでありまして、ずうっと自衛隊の艦船を永久にここへ出しておくなんというわけにはとてもできませんので、我々としては、当然のこととして、一日も早くここから撤収できるようにするためには、海賊自体が日本の艦船含めて他の艦船に行わないようにする状況をつくるためには、このソマリアの政情というものが、今二つとか三つとか、ちょっといろいろ表現はあるんですが、かなり状況というものはくちゃくちゃになっておりますので、この状況をきちんとするためにどうするかというのは、我々としては、国際機関と一緒になって、この安定というものに努めてまいらねばならぬと思っております。

菅野委員 やはり、周辺諸国はしっかりしていないと言うけれども、イエメンとかオマーンとかジブチとか、そういう周辺諸国がこの海賊対策に積極的に取り組んでいこうという姿勢を示しているわけですから、そこといかに連帯していくのか、連帯していくためには、やはり海上保安庁が主体となって国際的な連帯強化というものを図っていくべきだ、その経験を、東南アジアにおいて持っているというこの経験を生かすべきだということを強く指摘しておきます。

 最後になりますが、このソマリア沖海賊事件急増の原因は、ソマリアの事実上の無政府状態、ソマリア人の経済困窮等があると言われております。この他国の実力行使による海賊対策は対症療法にすぎず、ソマリア問題の政治的解決こそが必要だというふうに思っています。

 先ほども言いましたように、今、イエメンやオマーンとかジブチとか、周辺国の海上法執行能力の向上に向けて日本政府が果たすべき役割は大きいと考えていますが、外務大臣の答弁をお願いしたいと思います。

中曽根国務大臣 先ほどからお話にありますように、ソマリアの海賊問題の解決には、ソマリア自体の治安の回復とか、いろいろやることがあるわけでありますけれども、特に、周辺国の海上の取り締まり能力の向上や、あるいは中長期的な観点からのいろいろな人道復興支援活動等が必要でございます。

 我が国といたしましては、今までソマリアにつきまして、国連統一アピールに対しまして、我が国を含む各国は人道支援を中心に二〇〇九年分として既に約二・七億ドルを拠出しておりますし、また我が国自身も、人道支援それから治安向上等のための支援として、最近二年間で約六千七百万ドルを国際機関を通じて拠出をしております。

 また、昨年のジブチ合意以降の和平へ向けての肯定的な動きに対応いたしまして、国連安保理や、また、ソマリア情勢に関心を有する欧米とかアラブとかアフリカとか、そういう諸国等から成るグループとともに和平進展への支援等を行っているところでございます。

 きょう二十三日、ちょうどベルギーでソマリア治安機関創設及びアフリカ連合ソマリア・ミッション支援に係る国際会議が開かれるところでございますが、外務省の橋本副大臣を派遣して、我が国も積極的にそういう議論それから支援策に参画をしているというところでございます。

 なお、ことしの三月、アフリカのボツワナにおきまして、ソマリア暫定連邦政府のワルサム計画・国際協力大臣と私が会談をいたしまして、その際に、先方からは、軍とか警察の整備とか、あるいは公務員の育成などの、そういう治安改善、あるいは、避難民の帰還促進、元戦闘員の雇用機会の創出といった、そういう人道支援、これの改善が重要であるので、ぜひ日本の支援を頼むということがございまして、我々としてもできるだけの努力をするということをお伝えしているところでございます。

 なお、マラッカ海峡でのいろいろな経験がございます。それを、ジブチの会合におきまして、我が国も参画してそういう経験等を披露して、参考にしてもらおうということでやっているところでございます。

菅野委員 以上で終わります。ありがとうございました。

深谷委員長 これにて菅野君の質疑は終了いたしました。

 次に、下地幹郎君。

下地委員 きょうは、二点御質問をさせていただきたいんです。

 一点目に、ソマリア海賊の問題の前に、総理に少し要請みたいな形なんですけれども、総理も三月の七日に沖縄の不発弾の件でお見舞いに行かれていましたね。それで、総理がお見舞いに行ったことで非常に県民も喜んでおりましたし、彼にとっても、非常に元気になったというふうに思うんです。

 しかし、左目がもう失明していまして、そして右目も今まだ明かりが見えるか見えないかという状況ではありますし、顔面にも傷害を持っていますから、整形手術をしなきゃいけないというようなことであります。しかも、もうずっと経過がたちまして、壊れた重機のリース代もかかりますし、手術代もかかりますしと言っていますけれども、なかなか解決していないと言っているんですよ。関係者からもいろいろと問い合わせがありまして、これだけ厳しい環境の中にいて、二十六歳、三人の子供がいらっしゃるというふうなことを考えますと、早目の解決策が必要かなというふうに思うんです。

 国が起こした戦争で、国がやはり最終的にはその責任をとらなければいけない。この戦争を知らない二十六歳の子供が、戦争の負の遺産でこんなに人生の中で一番厳しい目に遭っているということを考えると、私たち、もう一回政治が決断をして結論を出さなければいけないなと思っているので、一国の総理大臣がお見舞いに行って、あれから一カ月もたっていてまだ結論が出ないという悩みを持っていますから、ぜひ総理の指導力でこの問題を解決していただきたいと思いますけれども、御答弁をお願いしたいと思います。

麻生内閣総理大臣 この不発弾の話というのは、下地先生御存じのように、これは今東京にも起きたり、愛知県でも出てきたり、いろいろ今でもありますが、その比率は圧倒的に沖縄に多い。しかも、その地域は糸満周辺とかなり限られた地域、全体に多いんですけれども、限られた地域に特に多い。しかも、その探査を、あらかじめレーダーで探査できるんですが、探査すると金がかかる、コストはかかる、だからやらない、結果として巻き込まれるという話が今現状でもありますので、知事と話をして、この分の、不発弾処理の基金をきちんとしようというような話をさせていただいたところです。

 いずれにいたしましても、この種の問題というのは、現実、かなり悲惨な話でもありますので、今御要望の点を踏まえて対応させていただきたいと存じます。

下地委員 この二十六歳の若者の人生のためにも早目に解決していただきたいというふうに思いますから、どうぞよろしくお願いします。

 それで、今度は海賊対策なんですけれども、国民新党も、海賊対策で、ソマリア沖に行って海賊対策するというのは賛成なんですよ。まあ、賛成なんです。

 しかしながら、この法案の趣旨を見ると、先ほどからもう何度も出ていますけれども、一義的には海上保安庁と書いてあるものですから、一義的に海上保安庁ということをしっかりと受けとめるべきだと。しかし、海上保安庁で全部やりなさいと言ったら、できませんと言うことははっきりしています。

 だけれども、海上保安庁の中にいる「しきしま」という船は一隻でも使えますかと言ったら、きのうの答弁を見ると、「しきしま」という船は、遠洋に出る能力も、北朝鮮の不審船対策もありますから、できる能力もありますよと。そして、法制局長官に聞いても、法制局長官は、海上保安庁と海上自衛隊が一緒に共同活動をすることは何ら法律的にも問題ないとおっしゃっています。そして、浜田防衛大臣も、きのうは、そういう指令があれば、こういう形でやればできるかといえばできますよというふうに答えておりますし、加納国土交通副大臣は、物理的には可能だが政策的には不適切と言っておりまして、あとは政治判断だということは明確なんですよ。

 そこで、この法の趣旨をしっかりと踏まえて、これがまた恒久法であるわけですから、そして、今海上保安庁はそのままの形ではなかなかこの対応ができるような状況ではないということははっきりしていますので、ここは共同で一回やって、この法の趣旨にのっとって、ソマリアで、この「しきしま」も行かせて海上自衛隊と共同で行動するというようなことについて総理はどうお考えなのか、ひとつ答弁をお願いしたいと思います。

麻生内閣総理大臣 この「しきしま」というかなり大き目の船、六千トンか、大きな船で、しかも三十五ミリの連装砲がついていると思いますが、これは多分あそこに一隻しかないと思いますので、この種のものは、たしかあれは、プルトニウムじゃなかった、何かの核廃棄物処理の輸送でしたか、あれのときにこの話をやらされたのが、ちょっといろいろ交渉しましたので記憶があるんですが、とにかくずっと遠洋航海にたえるもので対応するということであのときさせていただきました。

 しかし、それ以後、あれは一隻しかありませんので、船というのは飛行機と同じで、ある程度メンテナンスするためには、壊れるというのは常にあり得る話ですので、そういうときのために最低二隻は持っておかねばならぬ。ましてや、それを遠洋に派遣した場合は、国内の海上保安の分はどうするんだという話になろうと思います。

 その分を考えますと、長期的にこの種の船を何杯も海上保安庁が持つという方がいいのか、それは当然新しいコストがかかりますので。それとも、今回のように海上自衛艦の船に海上保安官を便乗、乗せて、臨検等々の部分、いろいろ対応ができる、警察的な行動は海上保安官にさせた方が合理的で安上がりという、アメリカはそれをやっておるわけですけれども、そういったやり方は、下地先生、どちらがいいかというのは、コストの問題と直結するところでもありましょうし、このところは、ソマリアの状況を踏まえた上で今後いろいろ検討していく長期的な課題の一つかと考えております。

下地委員 総理、私もずっと委員会でも言ってきたんですけれども、今の総理の答弁どおりなかなか海上保安庁ができない。実質、この法律をつくっても、最終的には海上自衛隊しか行けないというような法律、仕組みに、実際的にですよ、なるんだったら、この法律は海上自衛隊を出す特措法がいいんじゃないかということを私は言っているんですよ。

 こういうふうに、私は、将来は海上自衛隊の国際貢献をやるというのは表で論議しなければいけないと思っていますから、また、海上自衛隊は間違いなく国際社会からも評価を受けていますから、そういう意味では、今回のような法律をつくって、一義的には海上保安庁ですよと言いながらいつでも海上自衛隊が行くという仕組みじゃなくて、これは海上自衛隊がやるという仕事にするんだったら海上自衛隊でいい、そういうふうなわかりやすいことをやらないと、恒久法でもありますし、何か海上保安庁を隠れみのにして自衛隊を出すというようなことを、国民に誤解を与えないようにすべきだというふうに私は思っていますから、すみ分けをはっきりしてやられた方がいい。

 そして、この法律どおりやるんだったら、「しきしま」を一回行かせてみたり、金子大臣には、あらゆる装備をしてみたり、これからの対応ができるようにしてみたりということをやったらいいというふうに思っております。

 金子大臣、最後ですけれども、こういうふうな整備計画を、一〇年前半以内と言っていますけれども、前倒しをして海上保安庁の整備をして、「しきしま」級の船をつくって、この法律にのっとった形でおやりになるというお気持ちはありませんか。

金子国務大臣 改めて、この委員会でも海上保安庁の責任というのが議論されておりますし、また、海洋権益ということを守っていく、これは我が国周辺でありますけれども、という課題もますます大事になってきておりますので、現在の海上保安庁がとっている巡視警戒でいいのかどうかということも含めて、新造船のことも真剣に考えてまいりたいと思っております。

下地委員 十五兆円の補正予算でつくりましょうよ、対応しましょうよ。ぜひそのことをお願いして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

深谷委員長 これにて下地君の質疑は終了いたしました。

 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

深谷委員長 この際、本案に対し、鉢呂吉雄君外二名から、民主党・無所属クラブ提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。武正公一君。

    ―――――――――――――

 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 ただいま議題となりました海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案に対する修正案について、民主党・無所属クラブを代表して、その提案の趣旨及び内容を御説明いたします。

 国連海洋法条約では、旗国主義の例外として、すべての国に海賊取り締まりの権限が与えられています。主権の枠組みを超えて各国が連携して対策を講じる必要があるのであり、民主党は、国連海洋法条約に基づく国内法整備の必要性について以前から指摘してきました。

 また、貿易立国である我が国にとって、船舶の主要な航路帯における海上輸送等の安全を確保することの重要性にかんがみ、第百六十八回国会に提出したテロ根絶法案において、政府に先駆けて、公海における航行の自由の確保のため、海上警察の国際連携等の取り組みに積極的かつ主導的に寄与することを規定したところです。

 しかし、我が国の海賊対策は、一義的に海上保安庁の任務とされているにもかかわらず、ソマリア沖には海上警備行動により自衛隊が派遣されており、衆議院本会議及び本委員会における質疑全体を通じても、海上保安庁の積極的な姿勢が見られません。

 さらに、政府提出法案では、防衛大臣が特別の必要がある場合を判断して、閣議を経て海賊対処行動として自衛隊を出すことが可能となっており、判断の主体が海上保安庁ではない点に問題があります。

 また、自衛隊という実力部隊を警察活動として今回のように一万二千キロ離れた遠洋にも派遣するものであるため、シビリアンコントロールの観点から国会の関与が必要です。

 以上の認識に立ち、本修正案を提出することとした次第であります。

 次に、本修正案の内容について申し上げます。

 第一に、国土交通大臣は、海上保安庁による措置のみによっては海賊行為への対処が困難であると認めるときは、内閣総理大臣に対し、海賊対処本部を設置するよう要請ができるものとします。

 第二に、内閣総理大臣は、第一の要請があった場合において、海賊行為に対処するため特別の必要があると認めるときは、閣議にかけて、臨時に内閣府に海賊対処本部を設置できるものとし、本部に置かれる海賊対処隊が、海賊対処実施計画に従い、海賊対処措置を実施するものとします。

 第三に、自衛隊の部隊が実施する海賊対処措置については、内閣総理大臣は、当該措置の実施の開始前に国会の承認を得なければならないものとします。また、実施計画の決定または変更があった場合及び海賊対処措置が終了した場合には、遅滞なく、国会に報告しなければならないものとします。

 第四に、政府は、公海等における海賊行為を抑止し、船舶の航行の安全を確保することが極めて重要であることにかんがみ、国際間における海上警察の連携の促進、関係諸外国の海上警察の能力の向上のための支援等、海賊行為に適切かつ効果的に対処するために必要な国際協力の推進に努めるものとします。

 第五に、政府は、速やかに、海上保安庁が海賊行為に適切かつ効果的に対処するために必要な船舶等の装備の充実その他の海上保安庁の体制の整備の方針について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとします。

 最後に、政府は、この法律の施行後三年を目途として、施行状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うものとします。

 以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)

深谷委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

深谷委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。石井啓一君。

石井(啓)委員 公明党の石井啓一です。

 私は、自由民主党及び公明党を代表しまして、ただいま議題となりました内閣提出の海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案に賛成、これに対する民主党提出の修正案に反対の立場から討論を行います。

 海賊がばっこし被害が急増するソマリア沖やアデン湾では、既に海上警備行動が発令され海上自衛隊が活動中ですが、四月四日、十一日、十八日の三度にわたって、現行法では護衛対象外である外国籍船から救助を求められ、船員法の規定に基づいて大音響発生装置を使うなどして対処しました。本法律案の必要性を改めて示す出来事と言えます。

 以下、政府案賛成の主な理由を申し述べます。

 第一に、この法律を整備することにより、保護対象が外国船まで拡大され、海賊行為の抑止協力を求めた国連海洋法条約や四度の国連安保理決議など、国際社会の要請にこたえることとなります。

 第二に、海賊対処は第一義的には海上保安庁の責務でありますが、それがかなわない特別な理由がある場合に、内閣総理大臣の承認を得て、防衛大臣が自衛隊に海賊対処行動を命ずることとし、自衛隊の海賊対処のあり方を明確化したことです。

 第三に、本法案では、武器使用の規定を整備し、停船射撃という民間船舶に接近する海賊を停船させるための武器使用が盛り込まれましたが、海賊事案の態様を踏まえた適切な措置であることが審議で明白になったと考えます。また、海賊対処という警察活動での武器使用権限の整備であることから、自衛隊の他の海外活動全体の武器使用の無原則な拡大に結びつくものではないことも明らかです。

 第四に、自衛隊の派遣については国民の理解と支持が必要との公明党の主張により、自衛隊の派遣について、海賊対処行動の発令後と終了後に、遅滞なく、国会報告する旨を定めました。これらにより、国会及び国民に対する説明責任を十分果たせるものと考えます。

 以上、現実的かつ国民の十分な理解と支持を得られる内容と判断し、政府案に賛成します。

 次に、民主党の修正案について、反対する主な問題点を指摘させていただきます。

 修正案では、国土交通大臣の要請により内閣総理大臣を長とする海賊対処本部を設置し、自衛官に本部員の身分を併用するものとしておりますが、自衛隊の責任の所在が不明確なものとなるだけでなく、屋上屋を重ねるような体制であると考えます。もしくは、自衛隊という名称での活動を覆い隠すために新たな組織を設ける以上の理由は見当たらないと考えます。

 また、国会の事前承認を主張されておりますが、現に行われている海賊行為に対処するために急を要するときの対応を想定すれば、到底適当とは思われません。

 以上、主な問題点を指摘し、反対を表明します。

 海賊という犯罪から国民の生命財産を守り、海上における公共の安全と秩序に対する重大な脅威を取り除くためにも、一日も早い政府案の成立を期待し、私の討論といたします。(拍手)

深谷委員長 次に、川内博史君。

川内委員 川内でございます。

 民主党・無所属クラブを代表し、政府提出の海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案について反対、民主党提出の同法案に対する修正案に賛成の立場から討論をさせていただきます。

 ソマリア沖は、我が国の主要な貿易航路であり、日本人や日本関係船舶も海賊被害に遭っていることから、早急な対策が必要であることは論をまたないわけであります。

 しかし、本法案の提出前に、本来我が国周辺海域を想定し、かつ、恒常的性質の活動ではない海上警備行動を根拠として、海上自衛隊を泥縄式に派遣したことを初め、我が国の海賊対策は海上保安庁の任務であるとされながら、まず自衛隊の派遣ありきで、本当に海上保安庁では対処できないのかどうかということの検討を十分にした痕跡もなく本法案の提出に至ったことは、極めて問題であると考えます。

 海賊対処の原則は、海上警察の任に当たる海上保安庁の任務であり、政府案もその前提には立っています。しかし、今自衛隊が行っている活動は、法的な性質が行政警察的活動であるとはいえ、これまでのPKOやインド洋での海上阻止活動のような、いわゆる後方支援や補給活動とは異なり、実際に目前の海賊に対して、必要とあらば武器の使用も許されているという極めて実戦に近い対応が迫られ、場合によっては当事者の殺傷に至ることも覚悟せねばならない性格の活動であります。

 このような重い任務を現場の隊員に課すにもかかわらず、単に国会への報告で事足りるという政府・与党の姿勢は、物事の本質から目をそらすに等しいものではないかと考えます。民主党が求める海賊対処本部の設置や国会の関与は、活動の性質が武力行使ではないとしても、国会によるシビリアンコントロールを徹底する観点から提案しているものであり、与党からのゼロ回答は、民主党が承認行為を必要とした趣旨を全く理解していただいていない、極めて残念であるというふうに申し上げさせていただきます。

 国際間の協力姿勢にしても、既にあると言いながら自衛隊の対処を安易に先行させている姿勢こそが問題であり、海上保安庁に対する国際社会の高い評価をないがしろにするものであり、与党のしゃくし定規な対応は、大きな柱としての国際協力の必要性を強調するためにあえて法律事項にした民主党の姿勢に対する本質的な理解をしていただいていないのではないかと考えます。

 以上、民主党案は、海洋国家日本の姿勢として、海賊対処に真に役に立つ修正を施し、政府案で不十分であると思われる点を補強させていただいているものと考えますが、全くその修正に応じていただけなかったということを重ねて残念であると申し上げ、政府案に反対であり、民主党の修正案に賛成ということを申し上げさせていただくが、最後に、まだまだ私どもはこの不十分な法律に対する修正を最後まであきらめないということを申し上げて、討論といたします。(拍手)

深谷委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 私は、日本共産党を代表して、海賊対処法案に反対の討論を行います。

 審議は尽くされていません。本日の採決強行に強く抗議します。

 本法案は、自衛隊に海賊対処行動という新たな海外任務を与え、武器使用権限を拡大するものであり、断じて容認できません。

 第一に、自衛隊の派遣では、海賊問題を解決できません。

 昨年から、各国がソマリア沖に軍隊を派遣し、政府も自衛隊を派遣しましたが、海賊事件は減るどころか、逆にふえています。海賊が広域化し、軍隊が活動していない海域に活動拠点を移しているからです。まさにイタチごっこになっているのです。

 軍隊の活動で問題が解決できないことは、現地の米軍司令官自身が認めています。

 憲法九条を持つ日本は、自衛隊の派遣ではなく、現地ソマリアと周辺国の海上警察力の強化、ソマリアの内戦と貧困の解決に向けた支援を行うことを強く求めます。

 第二に、海賊対処を名目にした自衛隊の活動は、米軍が行う軍事作戦全体を支援するものにほかなりません。

 もともと米軍は、ソマリア沖・アデン湾で、海賊対処だけを行っているわけではありません。対テロ戦争やソマリア本土への空爆など、さまざまな軍事作戦を混然一体となって進めています。

 その米軍に海上自衛隊のP3C哨戒機や護衛艦が情報提供を行えば、米軍の軍事作戦全体を支援することになるのは明らかです。

 第三に、自衛隊の活動は、憲法九条が禁じる海外での武力行使につながりかねません。

 政府は、自衛隊の活動は警察活動だと言いますが、アメリカ主導で採択された国連安保理決議は、国連憲章第七章に言及し、ソマリア空爆を含むあらゆる必要な措置をとる権限を与えています。

 こうしたもとで、本法案は、自衛隊に対し、抵抗、逃亡する海賊への危害射撃、海賊行為を制止するための船体射撃の権限を与えています。遠く離れたソマリア沖で、自衛隊が戦後初めて人を殺傷しかねないのであります。海外での武力行使につながる危険は重大です。

 なお、民主党提出の修正案は、海賊対処を口実にした自衛隊の海外派遣の拡大という法案の骨格を変えるものではなく、反対です。

 以上、討論を終わります。(拍手)

深谷委員長 次に、阿部知子さん。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合を代表して、内閣提出、海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案に対し、反対の討論を行います。

 まず、本法案の問題点を指摘いたします。

 第一には、海上保安庁と自衛隊の役割の分担が不明確ということです。海賊対策は第一義的には海上保安庁の任務としながら、直ちに防衛大臣が海賊対処行動を発令し、自衛隊が出動できる構造となっております。司法警察の領域の個別犯罪行為に自衛隊が関与する制度はほかになく、司法警察制度に対する自衛隊の過度の介入と言わざるを得ません。

 第二に、海賊の定義が十分ではなく、海賊行為の構成要件があいまいだということです。海賊行為の処罰を定める本法案は、特別刑法の性質を持ち、初めて海賊行為の構成要件を定めるにもかかわらず、行為に着目した定義しかありません。海賊ではない者が法案第二条のような行為を行った場合はどうなるのか。例えば、内戦当事者が交戦団体として戦闘に接続ないし付随して同様の行為を行った場合はどう対応するのか、環境保護団体等の接近、つきまとい等は海賊行為とされるのか等、多くのあいまいな点が残されています。

 第三に、海賊行為に対する刑事手続の規定がないということです。ソマリア沖で海賊容疑者を拘束した場合、その後の刑事訴追をどうするのか、この手続について十分な検討は行われておらず、これは人権にかかわる重要な問題と考えます。

 第四に、武器使用基準の緩和の問題です。本法案第六条は、海賊行為の制止に当たり、合理的に必要とされる限度での武器使用を認めています。これは、これまで自衛隊が海外に派遣される場合に認められなかった任務遂行のための武器使用に当たるものです。警察権の行使を名目に、任務遂行射撃を事実上定着させる一歩となり、いずれは海外派遣恒久法にこの枠組みがスライドされていくことが危惧されます。

 第五に、自衛隊を抑制するためのシステムが不在であるということです。自衛隊が海賊対処行動を行う特別の必要がある場合の判断基準もあいまいであり、国会の承認の規定もありません。これまでの自衛隊の海外活動の中で最も武器使用の可能性が高いと考えられる活動であり、国会の事前承認などの制度を組み込むことは不可欠です。

 第六に、本法案が期限の定めのない恒久法であるということです。本法案の立法に当たって、専らソマリアを想定した議論しか行われておりませんが、法律の形式はあらゆる海賊行為に対応できる恒久法となっています。海賊は、海あるところ海賊ありと言われる普遍的な犯罪行為であることを考えれば、海賊対処を名目に海上自衛隊が将来にわたって海外で活動し続けることにもなりかねません。しかし、それは、海賊対処の本来的かつ効果的な姿ではありません。

 以上、本法案の問題点を指摘させていただきました。

 本法案は廃案とし、海上警備行動として出した護衛艦は日本への帰国を命じた上、まず海上保安庁を派遣し実態を把握しつつ、日本が行う海賊対処の基本方針を、海上保安庁を軸に、その体制整備も含めて早急に再検討することが必要と考えます。

 なお、民主党提出の修正案は、海上保安庁による任務の遂行を最大限追求する枠組みであることは評価しつつも、自衛隊の艦船による対応が主であること、武器使用基準の緩和などの点で賛成しかねることを申し上げ、私の反対討論といたします。(拍手)

深谷委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

深谷委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、鉢呂吉雄君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

深谷委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

深谷委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

深谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

深谷委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十一分散会


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