衆議院

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第10号 平成21年7月13日(月曜日)

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平成二十一年七月十三日(月曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 深谷 隆司君

   理事 木村  勉君 理事 小池百合子君

   理事 後藤田正純君 理事 新藤 義孝君

   理事 中谷  元君 理事 長島 昭久君

   理事 鉢呂 吉雄君 理事 佐藤 茂樹君

      あかま二郎君    赤池 誠章君

      赤城 徳彦君    秋葉 賢也君

      新井 悦二君    石原 宏高君

      猪口 邦子君    大高 松男君

      大塚  拓君    木原  稔君

      杉田 元司君    鈴木 馨祐君

      中根 一幸君    西本 勝子君

      松浪健四郎君    松本 洋平君

      三原 朝彦君    村田 吉隆君

      矢野 隆司君    安井潤一郎君

      若宮 健嗣君    大島  敦君

      川内 博史君    田嶋  要君

      武正 公一君    伴野  豊君

      平岡 秀夫君    松野 頼久君

      三谷 光男君    三井 辨雄君

      冬柴 鐵三君    赤嶺 政賢君

      阿部 知子君    下地 幹郎君

    …………………………………

   外務大臣         中曽根弘文君

   国土交通大臣       金子 一義君

   防衛大臣         浜田 靖一君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     河村 建夫君

   外務副大臣        伊藤信太郎君

   財務副大臣        竹下  亘君

   防衛副大臣        北村 誠吾君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  高田 稔久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中島 明彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 羽田 浩二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 石井 正文君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小原 雅博君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 福嶌 教輝君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            別所 浩郎君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    梅本 和義君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   鶴岡 公二君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 原  雅彦君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  前田 隆平君

   政府参考人

   (国土交通省政策統括官) 井手 憲文君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    岩崎 貞二君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  徳地 秀士君

   衆議院調査局海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別調査室長           金澤 昭夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月十三日

 辞任         補欠選任

  江渡 聡徳君     西本 勝子君

  葉梨 康弘君     大高 松男君

  橋本  岳君     若宮 健嗣君

  松本 洋平君     安井潤一郎君

  吉田六左エ門君    猪口 邦子君

  武正 公一君     三井 辨雄君

同日

 辞任         補欠選任

  猪口 邦子君     吉田六左エ門君

  大高 松男君     葉梨 康弘君

  西本 勝子君     江渡 聡徳君

  安井潤一郎君     松本 洋平君

  若宮 健嗣君     橋本  岳君

  三井 辨雄君     武正 公一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法案(内閣提出第六九号)


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     ――――◇―――――

深谷委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官高田稔久君、外務省大臣官房審議官中島明彦君、外務省大臣官房審議官羽田浩二君、外務省大臣官房参事官石井正文君、外務省大臣官房参事官小原雅博君、外務省大臣官房参事官福嶌教輝君、外務省総合外交政策局長別所浩郎君、外務省北米局長梅本和義君、外務省国際法局長鶴岡公二君、財務省大臣官房審議官原雅彦君、国土交通省航空局長前田隆平君、国土交通省政策統括官井手憲文君、海上保安庁長官岩崎貞二君、防衛省防衛政策局長高見澤將林君及び防衛省運用企画局長徳地秀士君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

深谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

深谷委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。冬柴鐵三君。

冬柴委員 公明党の冬柴鐵三でございます。

 この法案が成立することによりまして、海上保安庁におきまして海上における北朝鮮特定貨物の検査ということを行うことになるわけでありますが、国民の関心も集めている大変重要な業務でありますので、まず、海上保安庁長官のこれに対する決意を伺いたいと思います。

岩崎政府参考人 今回の法案で、海上保安庁は貨物検査を担うということになりました。海上におけるさまざまな活動を立入検査を含めて私どもはやっておりますので、この検査自体、私どもでもやっていける、このように思っております。

 ただ、関係省庁にいろいろ協力してもらわなきゃいけない分野、情報の集約であるとか分析であるとかいろいろな分野があろうと思いますけれども、そういう御協力をいただきながらやっていきたいと思っております。

 いずれにいたしましても、私ども、万全を期してこの任務を全うするということで頑張っていきたいと思っております。

冬柴委員 海上保安庁は、固有の権限、すなわち海上保安庁法第二条とか十七条というものに基づき、または個別法、例えば漁業法というようなものに基づき、それから私が大臣を拝命しておりました平成二十年七月一日に成立をいたしました領海等における外国船舶の航行に関する法律、このような個別法に基づきまして日常的に船舶に対する立入検査というものを行っているわけでございますけれども、内外、一日に約百隻以上に立ち入りをしていられると承知しているわけですが、外国船舶に対してどれぐらいの立入調査をやられたのか。過去三年ぐらいで結構ですけれども、その実績のようなものを示していただきたいと思います。

岩崎政府参考人 過去三年の外国船舶に対する立入検査の実績でございますが、平成十八年が一万七百二十四件、平成十九年は八千八百四十三件、平成二十年は九千百五十九件でございます。

冬柴委員 若干ばらつきはありますが、一万八千隻とか、昨年は九千百五十九隻というような多数の艦船に日常的に立ち入りをして、そして検査というものをやっていらっしゃる。そういう意味では、今回の法律で外国船舶に対する立入検査を行うという権限が付与されるわけですけれども、これまで行ってこられたいろいろなノウハウというものもこういうところに生かしていけるのではないかというふうに思っております。

 ただ、立ち入りといいましても、例えば、結果的には立ち入ることができませんでしたけれども、一九九九年三月二十三日ですか、能登半島沖不審船事案、これはもう有名です。それから、二〇〇一年十二月二十二日には九州南西海域における不審船事案というようなものがございました。これは、海上保安において、立入検査をするという事案に該当するわけですけれども、その前提としての停船をあらゆる手段によって命じたけれども、これに応じず、逃走を始めたという事案でございました。

 大変耳目を引きましたし、特にこの九州南西海域不審船につきましては、その原因はわかりませんけれども、こちらも停船射撃をやりましたし、それから最終的に沈没をした。その後、引き揚げをして、これが展示された。私ももちろん見せていただきましたけれども、外形は漁船でしたけれども、その中に積んでいる武器というのはまさに軍艦ですね。そういうようなものが我が国の周辺を不審船として航行しておる。こういうものの取り締まりというものには随分いろいろな御苦労があると思うんですね。これにはロケットランチャーとか機関銃まで装備していました。

 そういうことで、武装をしている場合、どのような対応を行ってきたのか。あるいは抵抗された具体的事例、これは二つとも抵抗されているわけですけれども、どうであったのか。そして、そういう場合に海上保安だけの手に負えるようなことになるのか。やはりある程度の助力をどこかから求めないとそういうようなものに対して対応ができないという事案もあるのか。そういう点についても御説明をちょうだいしたいと思います。

岩崎政府参考人 今先生御指摘いただきました北朝鮮の不審船関係でございますけれども、一件は逃げられて、一件は射撃をし合った、こういうことでございますが、海上保安庁のそういう武器に対する対応能力というのは必ずしも十分じゃなかったものですから、この十年間、私どもの方でも一定の攻撃性能があるいろいろな船を逐次整備させていただきました。ある程度北朝鮮の不審船に対する対応はできている、このように思っておりますけれども、今後さらに充実をしていきたいと思っております。

 それから、いろいろ抵抗された事例でございますけれども、今の不審船のほかに、最近少しおとなしくなりましたけれども、やはり韓国の漁船とか台湾の漁船とかを捕まえるときに、過去でございますけれども、相当抵抗されて逃げられたことがございます。強行接舷をして船に飛び移るとかそんなことをいろいろやってきた実績もございます。

 それから、基本的にこうした事案は海上保安庁でできると思っておりますけれども、やはりどうしてもという場合には自衛隊に助けていただかなきゃいけないということがございますので、能登半島沖のときには海上警備行動発令というのがございました。

冬柴委員 私も、ぞっとした、海上保安官の無事を本当に祈ったというか、念じた事案がありました。

 立入検査のために九名ほどの保安官が、たしかあれは韓国の漁船だったと思いますが、その中へ乗り込んで、そして立入検査をしようとしたところ、それが出航してしまったということで、どんどん逃げられた、そういう事案がありましたので、何とか無事に、九人を海へほうり投げられたり、殺されたりしたのでは大変なことになるということを非常に心配したことがありました。

 それは、韓国との中間線を越えて向こうへ入り込んで、向こうも向こうの海上保安の船が出てきて、話し合いによって事なきを得たという事案がありましたが、若干それについて説明いただけますか。

岩崎政府参考人 対馬沖で韓国の漁船が我が国の国内法に従わずに不法操業しているのではないかという疑いで、海上保安官がその船に乗り移って検査をいたしました。そのときに、今先生御指摘のとおり、その漁船が韓国の方に向かって逃げ出していった、こういう事案がございました。

 逃げ出していって、その先に、韓国の、我々の海上保安庁と同じような組織でございますけれども、海洋警察庁というのがございますが、その船のところまで行って、お互いにらみ合いみたいな形になったわけでございますけれども、最終的には、韓国の海洋警察庁と私どもの方で話をして解決をいたしました。

 先生御指摘のとおり、一時、数時間にわたって日本の海上保安官が韓国の漁船の中に閉じ込められている、こういう事案がございまして、大変私も心配をいたしましたけれども、何とか解決できた、こうした事案がございました。

冬柴委員 海上保安がやっている立入検査というのは、そのように、件数も非常に多いし、日本船舶を入れれば一日に百件以上、立入検査をやっている。それに対しては、必ずしもこちらの言うように従うわけではなしに、相当激しい抵抗とか、あるいは、こちらの海上保安官の身体生命にも危害が及びかねないような事態があるということを国民にも知っていただきたいわけでありますが、その上に、本法によって、今度は内水や領海以外の公海上においても検査をしなければならないということでありますので、海上保安の相当これに対する確固たる決意というものを示していただかなきゃならないと思います。

 さて、この貨物検査を行うためには、本法によって、「北朝鮮特定貨物を積載していると認めるに足りる相当な理由」というものが必要とされております。こういうものを認定するためには、その情報というものが集められて、そしてこれが評価されて、いろいろと確たる理由というものがなければ着手できないことになるわけですね。

 そこで、ちょっと伺いたいんですが、そういうふうになりますと、本法が成立した後、的確に運用していくためには、運用の基本的な考え方、役割分担、あるいは協力関係というものについて、関係省庁がきちっと認識をしていただかなければ、海上保安だけが情報収集してやれるような問題ではない。特定船舶が、仕向け地が北朝鮮である、あるいは仕出し地が北朝鮮であるという船はたくさんあるわけですが、その中に国連安保理によって禁止されたような貨物があるかどうか、こういう認定は、大変な情報の収集というものが必要になると思います。

 したがって、政府としては、その認識を一つにする枠組みというものをぜひつくっておかなければこの法律は的確に運用できないおそれがあると私は認識するのでございますが、この点については、内閣官房長官から御答弁をいただきたいと思います。

河村国務大臣 重要な御指摘をいただいたと思います。

 北朝鮮が特定貨物を積載していると認めるに足り得る理由がある、その判断をするための情報をしっかりつかむということが大事でございます。

 この中身について、一概にこうだというのはなかなか言いにくいのでありますが、当然、外国の関係当局の情報あるいは我が国の関係省庁の持つ情報、特に船舶の仕向け港であるとか仕出し港であるとか、そういうところから貨物の内容等の情報がもたらされるケースがある。そういうものを踏まえて、そして、いわゆる職務を遂行しておる海上保安官が職務を遂行しておりますし、また税関職員もみずから情報に接します、そういうものを得なきゃならぬということであります。

 そこで、この法案の円滑な実施のためにも、まずは国際的にも連携がどうしても必要であるということが一点と、この情報収集を含めて関係省庁間の連携が特に必要になってまいりますので、政府としては、御指摘いただきましたように、これに対応するために、速やかに関係省庁の連絡会議を設定する、こういうことで対応を考えておるところでございます。

冬柴委員 今、速やかにという言葉がありましたが、これは遅滞なくよりは早いわけでございます、直ちによりはちょっと遅いようですけれども。

 したがって、この法律が成立したら、本当に今おっしゃるようにこの枠組みをつくっていただかなければ、海上保安庁も情報収集の手段はある程度持っていると思うんですけれども、これは役割を果たせないと思うんですね。

 その中で、やはり在外公館等をお持ちの外務省の情報収集というものが非常に重要だと思われますので、外務大臣からも一言御答弁をちょうだいしたいと思います。

中曽根国務大臣 今、官房長官からも御答弁がございましたけれども、言うまでもございません、情報の収集は、まず大前提であり、大変大事なことであります。その上で、各国と緊密な連携をとる。そして、最後に官房長官からお話ありましたけれども、関係省庁連絡会議を設けることにしておりますので、これを速やかに設置して、しっかりとした対応ができるようにしていきたいと思っております。

冬柴委員 続きまして、今回、公海上の外国船舶に対して、貨物検査、特定貨物の提出命令あるいは回航命令というものを行う場合、そういう必要がある場合には、旗国の同意を必要としています。

 これは、公海上ですから、公海で先ほど言いましたような相当な理由がある船舶を見つけた場合に、これに対して、その掲げている旗の国の同意を求めなきゃいけないわけです。これは、どんな手続をとって、そしてその手続をとるときに、もし同意をしていただけなければ、この法律による重大な結果があるわけですよね。すなわち、本法による罰則の適用も事によればありますし、身柄を拘束する、あるいは武器を使用することもあり得るわけであります。

 それについて、だれがどのように説明をして、そして、旗国の本国でしょうか、そこからどのような同意、これは口頭でやっても、後で国際問題になっても困りますし、書面をとるということになるのか、口上書をとるということになるのか、責任の所在とかそういうものがはっきりしなきゃいけないと思うわけでありますので、これをどう考えておられるのか、ちょっと官房長官から御答弁をいただきたいと思います。

河村国務大臣 旗国の同意を取りつける、この手続、形式について、一般国際法上の慣行や規則というのはございません。今回の安保理決議にもその言及はないわけでございます。

 しかし、旗国から同意を取りつける際には慎重を期さなきゃなりません。その観点からしても、外交当局を通じて明確な同意の意図を表明する口上書等の外交文書をまず取りつけるということが考えられます。同時に、この場合には早急な対応が必要でございますので、このことも考えなきゃなりません。

 いずれにいたしましても、一般的に国際法上の規則、慣行がないものですから、個別具体的な状況に応じた関係国との関係等も踏まえてふさわしい形式を選択せざるを得ないと思います。対象となる船舶の旗国が、日本が円滑な検査の実施のために必要な措置をとることに同意をしていることが明確に示される、このことを第一重要事項として考えるということで、そのことがきちっとなされるということを求めていかなきゃならぬ、このように考えております。

冬柴委員 このことについて、一言でいいですけれども、海上保安庁長官から、どういう要件、旗国の同意というものをどういうふうにとっていただいたら自分の方としては検査に着手できるのか、その点についてちょっとお考えを伺っておきたいと思います。

岩崎政府参考人 私どもの現場が困らないようにやっていただけるとありがたいかと思っております。

 特に、同意を取りつける場合に、単に貨物検査の実施をするというだけではなくて、これについての船長の承諾手続がある、あるいは船長が承諾しない場合、回航命令を出す、あるいは特定貨物の提出命令がある、こういうシステムであるということを含めて同意をとっていただくのが我々現場で執行する場合にトラブルがなくていいかなと思っておりまして、そうしたことを含めて関係省庁でよく相談をさせていただきたい、このように思っております。

冬柴委員 外務大臣にお聞きしませんけれども、外務省がそのような衝に当たっていただけるんだろうと思いますけれども、後から国際問題にならないように十分に配慮していただきたいと思います。

 さて、先ほどの回航命令ですが、公海上でいろいろなものを提出させるとか貨物を提出させるというのが困難な場合には、特定の港まで回航を命じ、そしてそれに応じなければ罰則があるわけですけれども、とにかく回航をするということになります。

 特定の港に接岸したときには、これは海上保安がここまで連れてきているわけですけれども、税関がこれに対して検査をする権限を持つことになりますね。いわゆる競合すると思うんです、競合という言葉がいいかどうか知りませんけれども。海上保安庁と税関とがそれぞれに検査の権限を持つわけでありますが、この点についても、どこがやるのか、その連携はどうするのかとかいうような問題が起こると思います。

 税関の場合は、例えば非破壊検査の機器をお持ちであるとか、あるいは、麻薬、薬物についての検査犬といいますか、そういうものを持っておられる。あるいは、提出命令をかけた大きな貨物とか、そういうものもあると思うんですが、そういうものを保管する場所というものも税関はお持ちだろうと思うんです。それからもう一つは、化学兵器とか生物兵器というようなものになってきますと、これは鑑定とか、あるいはそういうものについての認識がなければ、海上保安でこれを扱えるのかなと私は非常に心配するんですね。

 そういう面についても政府間できちっとやっていただけると思うんですが、官房長官から、その点についての仕切りといいますか、そういうものについてお述べいただきたいと思います。

河村国務大臣 御指摘のとおり、海上にある船舶については海上保安庁、それから港にある船舶については税関ということになっております。しかし、基本的には、回航命令に従って岸壁に着岸した船舶による検査等については、これは回航命令を行った海上保安庁が行うというのが原則でございます。

 その上で、従来から海上保安庁と税関は、港に入港した外国船舶に対しては互いの知見を生かし合って合同で立入検査を行っておりますので、御指摘のこのような貨物検査等についても適切に連携協力して対応する、こういうことになると思います。

冬柴委員 よくわかりました。

 もう一つ、重要な問題ですが、日本船舶以外の船舶に対して、領海において立入検査をするために船長等に承諾を求め、回航を命じ、命令に従わない場合には罰則を適用する、こういうことがあり得るわけですが、例えば公海の場合は旗国の同意ということでできます。それから、内水の場合は、いわゆる固有の管轄権に基づいて立ち入りができるということですけれども、領海ということになりますと、ここに無害通航という問題が、海洋法に関する国際連合条約十九条とかいうところにありますが、こういうものをどう考えたらいいのか。領海を航行中の外国船舶に、いわゆるそういうような北朝鮮の特定貨物を積載しているということが疑われる、そしてそういう相当な理由が認められるという場合に、この無害通航との関係をどう理解したらいいのか。ここのところをはっきり整理しておかないと、そのような事例に遭遇した場合に、海上保安官が大変混乱するといいますか、どうしたらいいのかと。

 本法の中には、たしか八条二項だったと思いますけれども、確立された国際慣行とか条約は誠実に守らなければならないという規定までありますので、そこのところについて官房長官からの御答弁と、それから、外務大臣からもその点についてのお考えをお示しいただきたいと思います。

河村国務大臣 本件につきましては、安保理決議第一八七四号主文十一において、すべての国が、領海を含む自国の領域内で禁止されている品目を積んでいる合理的根拠があるという情報を当該国が有している場合には貨物検査をしなさい、こういうことが要請をされておるわけでございます。

 したがいまして、仮に外国船舶が日本の領海内で本来であれば無害通航とみなされる航行をやっておったとしても、この法律に言う北朝鮮特定貨物を積載していると認めるに足りる相当な理由があるときには検査を行って、あるいはこの法案に基づいて回航命令をやったとしても国際法上の問題はない、このように考えております。

冬柴委員 いわゆる無害通航は無害であることが大前提でございますので、それは有害だというふうな認定になるんだろうと思いますが、外務大臣からも一言。

中曽根国務大臣 今官房長官から御答弁申し上げましたけれども、この無害通航は国連海洋法条約の第十九条で規定されているわけでありますが、これは「通航は、沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り、無害とされる。無害通航は、この条約及び国際法の他の規則に従って行わなければならない。」となっておりまして、同時に、この二項におきまして、「その他の国際連合憲章に規定する国際法の諸原則に違反する方法によるもの」ということで、すなわち、安保理決議で禁じているものを運ぶ場合はそれに該当するということでございまして、今御答弁申し上げましたように、国際法上問題はない、そういうふうに思っております。

冬柴委員 大変明快な答弁を両大臣からいただきました、そのような方法でやると。

 最後になりますが、海上保安庁は、四百四十七万平方キロという大変広い、世界第六位の排他的経済水域を含む海域における海難救助とか、それから今言うような法の秩序維持という大変な役割を負っているわけでございます。

 しかしながら、「しきしま」級の艦船は一隻しかない。いわゆる二機のヘリコプターを搭載するに足るあれは一隻しかないということでございますので、この際、やはり相当な巡視船、航空機の整備、それからもう一つは海上保安独自の情報機能を強化するということが非常に必要だろうと私は思うんですが、その点について国土交通大臣のお話を聞きたいと思います。

金子国務大臣 冬柴委員かねてから御指摘いただいておりますとおり、海上保安庁の役割はますます広がってきております。しっかりした海上保安庁の体制整備、装備を充実していく、このことに引き続き真剣に取り組んでまいりたいと思っております。

 同時に、情報収集というのもこういう機会に非常に大事な点でありますので、その体制の整備も強化してまいりたいと思っております。

冬柴委員 どうかこの法律を完全に、的確に、確実に履行できるために、これは国際約束でもあります、したがって、そういうことを政府挙げて努力されることを希望いたしまして、私の質問を終わります。

深谷委員長 次に、松浪健四郎君。

松浪(健四郎)委員 おはようございます。自民党の松浪健四郎でございます。

 この重要な法案を審議するに当たり、質問させていただきますことを大変光栄に存じます。

 まず最初に、官房長官にお尋ねしたいと思います。

 きょうの新聞を読みますと、都議選の結果を踏まえてあすにでも解散があるかもしれない、こういう報道がありました。そして、野党の皆さん方も、問責決議案あるいは内閣不信任案、これらを提出して解散に追い込もうとされております。

 ということになりますと、この大事な法案は廃案になってしまうではないか、本当に政府はこの法案を成立させようとする強い決意があるのかないのか、官房長官にお尋ねしたいと存じます。

河村国務大臣 政府は、法案をいわゆる閣法として出させていただく場合には、その法案の成立を期していつの場合にも提出をさせていただいております。

松浪(健四郎)委員 野党の皆さん方は解散を迫っております。ということは、この法律はどうでもいいんだ。そして、政府もそれに呼応されるのか、本気で何としてもやろうとする決意があるのかないのか、もう一度長官にお尋ねしたいと存じます。

河村国務大臣 先ほど申し上げましたように、法案を出す以上はその成立を期して、私どもベストを尽くしておるところでございます。

 ただ、今おっしゃいましたように、解散の時期の問題との兼ね合いでございます。これはかねてから麻生総理が申し上げておりますように、解散の時期については適時適切に、我々の任期も近づいておる中でございますが、その判断をしたい、このように申し上げておるわけであります。

松浪(健四郎)委員 いずれにいたしましても、この法案は、国際的な信頼を得る上において、我が国が一八七四の決議をつくるに当たって大きな影響を及ぼした、そして国内法を整備しなければいけない、多くの国々は検討中である、しかし我が国は責任をとって何としてもまず最初にこの法案を成立させて、そして北朝鮮からの脅威に対し我々の覚悟を世界に示す必要がある、このように私は思っております。

 そこで、政府としては、臓器移植の法案も大切でありますし、この法案も、我々の安全保障の問題、これらを考えるに当たって極めて重要な法案でありますし、成立は国際社会に対する責任である、このように考えますが、官房長官、いかがでしょうか。

河村国務大臣 この法案につきましては、御案内のように、北朝鮮のあのような無謀な行為に対しまして、安保理決議を求め、先導的な役割を果たしてまいりましたし、特に近隣の日本にとりましては重大な影響がある、そういう観点からこの法案の成立を期してお願いをしておるわけでございますから、内閣にとりましても、そういう意味で国際的な評価も受ける重要な法案である、御指摘のとおりだと認識をしております。

松浪(健四郎)委員 ともかく、この法案成立のために与党としては全力を傾注すべきである、このように私は思います。

 そこで、一八七四の国連決議について御質問をさせていただきたいと思います。

 本年五月二十五日の北朝鮮による核実験は、我が国の安全並びに北東アジア及び国際社会の平和と安全に対する重大な脅威であり、国連安保理決議第一七一八号等に明確に違反しておりました。このような認識のもと、我が国は直ちに国連安保理緊急会合を要請して、そして関係各国と連携しながら対応を行った結果、六月十二日、安保理決議採択の運びとなりました。

 この内容は相当我が国の考え方が入っている、こういうふうに思いますけれども、まず、官房長官あるいは外務大臣に、この対北制裁安保理決議、いわゆる一八七四の決議案の内容についての感想、これをお聞かせいただきたいと存じます。

河村国務大臣 国連安保理の決議一八七四号、その前に決議第一七一八号もございます。北朝鮮との間の輸出入禁止対象となります武器及び関連物資の範囲を拡大した上で、一七一八号の決議をさらに拡大した上で、各加盟国に対しまして、これらの禁止物品を含むと信じるに足る合理的な根拠が示された情報がある場合には、当該貨物の検査等を行うことを要請し、また決定をしておる、こういうことでございます。

 現法律のもとでの北朝鮮特定貨物に該当する貨物について検査等の措置を行うことができないために、今般、当該措置を可能にすべく立法措置をお願いしておる、こういうことでありまして、この国連安保理決議第一八七四号を実効あらしめるべく、この法律の必要性が、どうしても必要であるということであります。

 政府といたしましても、この安保理決議一八七四号に基づきます措置を着実に実施していくことによって、この決議を実効あらしめると同時に、日本を含む国際社会の平和及び安全に対する脅威を除去する、このためにこの法案を国会に出させていただいておる、その意義をそのように考えておるわけであります。

松浪(健四郎)委員 今、官房長官がそのような認識、感想を述べられたわけでありますけれども、であるとしたならば、何としてもこの法律はこの国会で成立させるんだ、こういう強い思いを持って臨んでいただかなければ、国際社会に対して我々は信頼をかち得ることができないのではないのか、私はこう思っております。

 それで、我が国の対北朝鮮措置について、いろいろ言われておりますし、政府は政府なりにいろいろな面で努力をされてまいりました。

 我が国の北朝鮮措置のあり方については、いろいろ行ってきておるんですけれども、実際の対応については、拉致、核、ミサイルといった諸懸案に対する北朝鮮の対応や六者会合、国連安保理等における国際社会の動きを踏まえて、総合的に判断することを基本方針とされております。

 しかし、実効性があるのかどうか、これらは国民の皆さん方も疑心暗鬼でありますし、果たしてこの六者会合、国連安保理等における国際社会の動きを踏まえ、総合的に判断するだけでいいのかどうか、このことについてお尋ねしたいと存じます。

    〔委員長退席、木村(勉)委員長代理着席〕

河村国務大臣 対北朝鮮に対しましては、拉致、核、ミサイルという、これを総合的に一括的に解決をし、将来的には国交正常化へというのが日本の政府の基本的な考え方でございます。特に拉致の問題につきましては、六カ国協議に戻して、そこでしっかり議論をして、今の北朝鮮のとっておる行動というものが北朝鮮にとって決して利するものではなくて、世界の中で孤立するものであるということを強く理解を求めていかなきゃならぬ、こういうことで、いわゆる対話と圧力という言い方をいたしておりますが、十分話し合う会合を持ちながらも、しかし、北朝鮮に対する理解を強く求めていく、この両面を持っております。

 それがゆえに、この六カ国協議の重要性というのは非常に高いものがあると私は思います。これは日米韓だけではなくて、特に、一番近いところにあります中国との連携も非常に重要になってきております。

 そうした中で、六カ国協議を進めていく、この実効性をあらしめることに、これからの一つの大きな外交課題として日本も最大の努力をしなきゃいかぬ、このように考えておるわけであります。

松浪(健四郎)委員 今官房長官から拉致問題についてお話がございましたけれども、昨年八月に合意した調査のやり直しはいまだに着手されておりませんし、具体的な行動をとった、こういうふうに耳にしないわけであります。

 核問題について、六者会合において検証の具体的枠組みに合意しない、また、非建設的な対応を続けておるわけでありますけれども、安保理決議違反等に当たる核実験を五月二十五日に実施しました。さらに、ミサイル問題についても、同様に安保理決議違反等に当たるミサイル発射を強行して、大量破壊兵器の運搬手段となり得る弾道ミサイル能力を増強しておる、こういうふうに我々は聞いておるわけであります。

 これは大変な脅威でありますけれども、この脅威について政府はどのような見解をお持ちであるのか、お尋ねしたいと存じます。

河村国務大臣 御指摘のとおり、ミサイル発射あるいは核実験、これはまさに国際社会に対する大きな脅威であり、国際社会の平和を願う気持ちにまさに反抗するものでございます。それに対しては、国際的にもこのことは断じて許すことはできないというもとで、各国も世界的にも、いわゆる北朝鮮が核保有国であることを認めない、強い国際的な合意がなされておるわけであります。

 今まさにこの法案も安保理決議に基づく包囲網の大きな力を持つ一つであるというふうに考えておりますが、北朝鮮が国際社会の中で生きていく道をどのようにとらせるかということが今回の安保理決議の裏側にある大きなねらいだというふうに考えております。

 そのことを強く理解させる、その努力が今まさに我々に求められておる。特に、安保理決議をした安全保障理事会にその大きな役割があるというふうに考えておるわけでございまして、特に日本がその役割を先頭を切って果たしていかなきゃいけない、絶えずそういう認識を持ってこの問題に対応している、こういうことであります。

松浪(健四郎)委員 とにかく、一八七四の決議がなされて、そして国内法を整備しなければならないということで今審議をさせていただいておるわけでありますけれども、検査をする、おおむね船舶についての話であるわけですけれども、大体これは日本海に限られるのではないのかというような考え方も私は持っております。しかし、日本海は普通の海と違って厳しい海である、こういうふうに言われております。

 今から数年前、平成九年一月二日の話でありますけれども、ロシア船籍のナホトカ号は、C重油約一万九千キロリットルを積載して中国の上海を平成八年十二月の二十九日にロシアに向けて出港した。それで、浸水し、傾いているという遭難信号を発信したんですね。その遭難信号を受けた海上保安庁はどういうふうな対応をとられたのか、お尋ねしたいと存じます。

岩崎政府参考人 海上保安庁の船は現場に急行した、このように記憶しております。

松浪(健四郎)委員 急行して何をされたのか。

 私の聞くところによれば、西の風二十三メートル、うねりが六メートル、荒天、大変な状況下で遭難をした、それでも海上保安庁は駆けつけて、そして人命を救助した、こういうふうに聞いております。

 ということは、どんなに日本海が荒れておっても海上保安庁は出動して、そして助けを求めておる船を救助することができるという自信を持っておるということなんですか。

岩崎政府参考人 今先生御指摘のとおり、やはり冬の日本海は相当荒れることが多うございます。波浪が六メーターを超える、これを大しけと我々は呼んでいますけれども、それが年間十四日あるというようなデータもございます。私どもは、こういうときでもちゃんと対応するようにやっていかなきゃいけない、このように思っております。

 日本海側の方には、こうしたしけにも強いような大型の巡視船も数隻配備をしております。まして海難が起こったときとか、油が流れるとか、人命の救助という場合には、最大限努力をして、きっちり対応するように体制の整備もしておりますし、またそのつもりで仕事をしております。

松浪(健四郎)委員 人命の救助、これは当たり前のことでありますけれども、当然のことながら、このような荒れた海で、北朝鮮の不審船、これが出動することも十分考えられます。その北朝鮮の不審船が、もし浸水して傾いておるというような遭難信号を発した場合、海上保安庁はどうされるんですか。

岩崎政府参考人 不審船であれば、相当警戒をして出動はいたしますけれども、遭難信号を発して人命の救助が必要な場合であれば、それは海上保安庁は船を出しまして、その人命救助に向かいます。

 ただ、明らかに不審船であるとか不審船の疑いの強いという場合であれば、通常の人命救助のための巡視船の派遣だけではなくて、その不審船が変にこれを偽装してまた変なことをするかもしれないということで十分に警戒に当たりながら、そうしたこともできるような船も備えながら出動するといったことになろうかと思います。

松浪(健四郎)委員 ナホトカ号の折は、災害派遣で航空自衛隊の小松救援隊のヘリコプターが出動して、そして十二名の人たちを救助されました。これは、海上保安庁と自衛隊が連携がうまくいったということなんですか。それとも、別個に遭難信号を受信して救難に当たったということなんでしょうか。

岩崎政府参考人 今、ナホトカ号のときどうだったかということについて、私も明確に承知しておるわけではございませんけれども、遭難信号が発せられますと、これは、海上保安庁が受信するあるいは自衛隊が受信する場合であっても、直ちにそれぞれ関係機関のところには通報するという体制をとっております。それで、海上保安庁の飛行機それから自衛隊の飛行機、そうしたものが何が一番早く出られるか、どれが行くのが一番適切かということで、これは協力しながらやっているところでございます。

松浪(健四郎)委員 今までの海難発生状況、これらの統計を見ますと、七百三十七件、海上保安庁が海難の連絡を受けて、そして対応されておる。巡視船は一年に六百六十回も出動されております。そして、航空機も百四十五機出動されておるわけであります。

 ここへ新しい法律ができて、そして不審船に対応する。海上保安庁は、今までの海難、そしていろいろな不審船もあった、これプラス、大量破壊兵器等をも含むそういったものを運ぶ不審船をも警戒、チェックしなければならないということになりましたけれども、現在の海上保安庁の力でこれは十分にやっていけるという自信がおありであるのかどうか、お尋ねしたいと存じます。

岩崎政府参考人 今回の北朝鮮の貨物検査でございますけれども、先ほども答弁させていただきましたように、立入検査の実績もございますし、それからそれなりの巡視船、航空機の装備も持っておりますので、十分検査自体は対応できると思っております。ただ、海上保安庁だけで情報の収集、分析でありますとか、そうしたことを含めてはやはり関係省庁の協力が必要だろうと思っております。

 いずれにしろ、万全を期するよう頑張ってやっていきたいと思っております。

松浪(健四郎)委員 いずれにいたしましても、この法律は主役が海上保安庁であります。海上保安庁にきちんとしっかりした体制でこの法律に対応していただきたい、このようにお願いをするわけであります。

 法律の第九条、「関係行政機関は、第一条の目的を達成するため、相互に緊密に連絡し、及び協力するものとする。」こうあります。そして、二項の後ろから二行目に、「海上保安庁のみでは対応することができない特別の事情がある場合において、海上における警備その他の所要の措置をとるものとする。」つまり、特別の事情がある場合、この特別の事情というのはどういうことであるのか、お尋ねしたいと存じます。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘の九条二項のケースでございますけれども、基本的には、検査の対象は商業目的の船舶ということでございますので、海上保安庁で十分対応できるというふうに考えておりますけれども、海上において、対象船舶から、海上保安庁では対応できない激しい抵抗を受けるような特別な事情というような場合も全くは排除されないということでございますので、そのような場合には、自衛隊法に基づきます海上警備行動などを発令して所要の措置をとるということが考えられるということで、こういった規定を置かせていただいているところでございます。

松浪(健四郎)委員 この前、米軍はカンナム号を追尾していきました。この不審船、これは旗国の許可がなければ検査ができない、また船長の許可も必要であります。しかし、明らかに不審船で、何かを積んでおるとなれば、この不審船を追尾していかなきゃいけない。

 この追尾は、海上保安庁がどういうふうにしてどこまでやるのか。あるいは、これは海上自衛隊と連携をとって海上自衛隊が追尾するのか。その辺のことをお尋ねしたいと存じます。

岩崎政府参考人 二つのケースがあるんだろうと思っておりますが、一つは、旗国が同意しない場合どうするかという問題と、それから、旗国が同意をしたけれども船長が承諾しない、そのときに回航命令を出しますけれども、その回航命令に従わないで逃げていく、こういう二つのケースがあるんだろうと思っております。

 最初の、旗国が同意をしないケースでございますけれども、これは国連の安保理決議においても旗国の同意というのが前提条件になっていますから、同意がなかったからといって直ちに違法になるわけじゃございませんので、そのときに、しかし、私ども、その船を追尾し、監視していくということをやっていくことも非常に重要な有効な手段だろうと思っております。

 どの辺までどういう形でやるのか、これは日本だけでやるものでもございませんので、関係国との協議も踏まえながら、事案ごとに適切に対応していきたいと思っております。

 それから二つ目のケースの、旗国は同意したけれども船長が回航命令に従わない、こうした場合は、それはもう既に犯罪になっておりますので、やはり犯人の逮捕という意味で、前者の場合よりもいわゆる追跡というのをやっていきたいと思っております。

 ただ、海上の場合ですので、本当に強行接舷をするかぶつけるか、そんなことをすると、より大きな災害になることもありますので、慎重に対応はしていきたいと思っております。

松浪(健四郎)委員 海上自衛隊の場合は、米軍との訓練もありますし、緊密な連絡をとり合い、情報を共有するということは日常のことだと我々は思います。そして、そのような情報はどういう形で海上保安庁にもたらされるのか、そして今までそういうようなケースがあったのかどうか、このことをお尋ねしたいと存じます。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 防衛省と海上保安庁の関係につきましては、平素からいろいろな形で情報共有というのをしっかりやるということが重要だと思っておりまして、これは、いろいろな不審な船の動向にかかわらず、あらゆる情報について常に共有しながら、政府一体としてやっていくということが重要だというふうに思っております。

 それで、具体的な例としましては、これまでの不審船の対応の際でございますとか、あるいは平素、いろいろな不審な船があるのではないかというようなときにはお互いすぐに連絡をし合って、現場レベルでも、あるいは中央レベルでもやっているというようなことでございますし、また、内閣官房を中心としたいろいろな情報の会議でも、常にお互いが知っていることを共有し合ってやっていくというような形でやっているということで、情報共有の体制はしっかりできているというふうに思います。

松浪(健四郎)委員 情報の話が出ました。

 最後の質問でございますけれども、北朝鮮と思われるわけですけれども、サイバー攻撃で韓国が大混乱を来しております。加えて、アメリカも十四のサイトがハッカー攻撃を受けた。このようなサイバー攻撃によって情報が遮断されたり混乱したりする、これも大きな脅威だ、こういうふうに思っております。

 アメリカと韓国がこういう攻撃を受けておるわけでありますが、我が国はこのサイバー攻撃に対してちゃんと対応できるようにしておるのかどうか、心配しなくていいのかどうか、これをお尋ねして、質問を終わりたいと存じます。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘になりましたように、最近の軍事情勢の中で非常に重要な問題として、サイバースペースにおけるいろいろな戦いというものがあろうかと思います。ですから、政府としては、内閣官房にもいろいろなものがございますし、私どもも、各国の動向も踏まえながら、また各国とも協力しながら、このサイバー空間における防衛、あるいはいろいろな情報がどのように流れているのかというようなことについて真剣に対応していきたいというふうに考えておりますし、これは大綱ですとか中期防、これからあり方の検討も行いますけれども、その中でもこのサイバーにおける対応というものは非常に重要になってくるというふうに認識をしております。

松浪(健四郎)委員 とにかく、この法律が今国会で成立するように、また政府はそのために全力投球してくださいますようにお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

木村(勉)委員長代理 次に、秋葉賢也君。

秋葉委員 自由民主党の秋葉賢也です。

 きょうは、貴重な時間をいただきまして、どうもありがとうございます。

 先週の金曜日、議論に入る前に、冒頭、中谷委員から、いわゆる非核三原則の問題について質問がございました。政府側のこれまでの答弁どおり、密約はないし、調査もするつもりはないという中曽根大臣の御答弁があったとおりでございます。

 戦後数十年を経て、やはり日米安保体制の中での信頼関係をより確かなものにして実効性あらしめていくためにも、私は、運用を非常に現実に即してこれから対応していくことが必要ではないのかなと思うんですね。

 我々が金曜日に審議していたときに、河野太郎外務委員長は京都まで行って村田元次官に会ってきたというわけですね。その中で、密約はあったというような証言を得てきたんだ、そして今後の外務委員会としては密約はないという答弁は認めない、そして密約を否定してきた答弁の撤回を求める意向を示した、こう報じられているわけでございます。

 いわゆる厳密に、事前協議がないから持ち込みはないんだというのを建前にやってきたことは事実でございまして、むしろ、こうした密約があったのかどうかということ以上に、運用の面で現実に即していくということが私は必要だと思っておりますけれども、改めて外務大臣に、こうした密約の有無、そしてまた、ないという答弁だとすれば、国民の不信の声にこたえるという意味で再調査などをする意向がないのか、改めて伺っておきたいと思います。

中曽根国務大臣 政府といたしましては、本件に係る河野委員長と村田元次官のやりとりを承知しておりませんので、お答えするのは困難でございますけれども、いずれにいたしましても、政府が従来から申し上げておりますとおり、これは、御指摘のような密約は存在いたしません。この点につきましては、歴代の総理大臣及び外務大臣がかかる密約の存在を明確に否定しているところでございますが、政府の見解はこれに尽きるところでございます。

 日米安全保障条約のもとでの核兵器の持ち込みに関する事前協議制度、これについての日米間の合意は、日米安保条約第六条の実施に関する交換公文、いわゆる藤山・マッカーサー口頭了解がすべてでございまして、このほかに何らかの取り決めがあるという事実はございません。

秋葉委員 従来どおりの政府見解ということだと思うんですけれども、この是非論はこれで終わりにしたいと思います。ただ、これからの運用の中で、例えば一時的な寄港でありますとか領海の一時的な通過ということは、やはり現実に即して考えれば、核の抑止力というものの中身も大分変容してきておりますけれども、私は重要なことだと思いますので、運用の中で見解を変えていくというような考えはないのかどうか、伺っておきたいと思います。

中曽根国務大臣 非核三原則、すなわち核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませず、そういう非核三原則に関しまして、その中の核持ち込みにつきましては、寄港それから領海通過、これも含まれますけれども、この原則につきましては、政府の大変重要な、また基本的な政策として今後ともこれを堅持していく、そういう考えでございます。

秋葉委員 日本の安全保障をこれから強固にし、国民の信頼を得ていくという観点からも、今後、実態に即した運用をしていくことが大事だということを申し上げておきたいと存じます。

 あと、法案に入る前に、もう一つだけ大きなところをちょっと一問伺いたいのでございますけれども、我が国の防衛予算が年々縮減をしてきているという問題を私は大変危惧いたしております。ここ十年で見ますと、金額も大分落ち込んでおりますし、伸び率で見てもマイナス四%近い縮減傾向でございます。特に心配なのは、物件費の中の装備品の更新が予定どおりできているのかどうかということを強く危惧するものでございます。

 あわせて、近隣諸国を見ておりますと、中国などは、この十年間に防衛予算も約五倍近く伸びております。伸び率は毎年一〇%、二けた以上、多い年には二割を超える伸び率で整備をしてきているわけでございますし、お隣の韓国も、この十年間で防衛費も二倍に伸びてきているわけであります。特に、日本海、東シナ海を中心とした緊張感が相変わらず散見される状況がございます。

 そういう中で、そもそも日本の防衛予算というのは幾らだったらどうだという議論は非常に難しいわけですけれども、国家予算に占める防衛予算のあり方、そして専守防衛とはいえ、これまでどおりの整備状況で十分なのかどうか、基本的な考え方を伺っておきたいと存じます。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、防衛関係費は、この七年間、連続をしてマイナスになっております。その中で、最近、いろいろ経費のかかるものとしては、米軍再編関連経費、それから装備品等の維持関係の経費でございます。それから、特に昨年ございましたけれども、油購入費等が非常に大きくなるというようなことで、これはなかなか我々の努力では削減しにくいところでございますけれども、いろいろ効率化をしておりまして、装備品の見直しとか短期集中調達というようなことを努力しております。

 ただ、全体として、装備品の、これからいろいろ、更新、近代化に係る新しい購入経費というものを考えますと、こうした努力というものをしてもなかなか難しい状況にございますけれども、我々としては、これからの大綱、中期防の検討の中で効率化も図りながら、必要な、最も効果的な予算というものを追求してまいりたいというふうに考えております。

秋葉委員 本当に装備品は日進月歩でございますので、常に更新をしながら、最先端に備えていくということをお願いしたいと思うわけであります。

 さて、時間も限られておりますので、法案に移りたいと思うわけでございますけれども、今回のこの特措法は、国連決議を受けて即応するという意味では大変すばらしいものだと思います。何としてもこの通常国会でしっかり解散前に仕上げていくということでなければならないと私は思っておりますが、その中で一番重要なのは、やはりこの法案の実効性ということだと思います。これについては、この委員会でもいろいろな議論がございました。やはり主体が海上保安庁であるということで、どこまで実効性が担保できるのかということがこの法案の運用の中で一番大事な点になってくるんだろうというふうに思っております。

 特に船上での検査がいろいろ難しいということで、回航命令なんかも出すことができるわけですけれども、先ほど松浪委員の質問とも一部重複をいたしますけれども、船長がこれに承諾をしなかった場合にはどうなのか。あるいは、今回の法案では警告射撃や威嚇射撃もできるというふうにしておりますけれども、そういった威嚇射撃にも従わずに逃走した場合に、海上保安庁としてどこまで追尾するのか。それはケース・バイ・ケースだというような御答弁ではなくて、一つのメルクマールというものをしっかり運用の中で準備をしておく必要があるのではないかと思いますが、こういった点について伺いたいと思います。

岩崎政府参考人 従わない場合、私ども、通常やる手段といたしましては、船の前を横切る進路規制をする、あるいは強行接舷をして飛び移っていく、こうした手段をとることがございます。そうした形で、乗り込んでいって船長を逮捕するということでございます。こうしたこともやっていきたいと思いますが、ただ、洋上でございますので、私ども、あるいは強行接舷なんかしますと向こうの船が沈んじゃうとかそうした危険もありますので、それなりに慎重に対応する必要があろうかと思いますけれども、与えられた手段の中できっちりやっていきたいと思います。

 地理的範囲、どこまでやるかということでございますけれども、やはり日本周辺、近海を中心にやっていくことだと思いますが、ケース・バイ・ケースで考えていきたいと思っております。関係省庁ともよく相談しながらやっていきたいと思います。

秋葉委員 例年、何千件、何万件の検査も既に実績としてやってきているわけでありますから、そうした経験を生かしながら、十分実効性が上がるようにしていただきたいと思うわけです。

 その一方で、検査の実際のやり方ということなんですけれども、恐らく、書類を中心に積み荷の点検ということになるんだと思うんですが、場合によっては現物を目視するというようなことも必要になってくるケースがあるんだと私は思いますけれども、その場合の目きき能力の問題とかそういったことについてはどのように担保されているのか、伺いたいと思います。

岩崎政府参考人 私どもも一定の知識はありますけれども、なかなか万全の知識があるわけでは決してございません。したがいまして、私どもの方でもやはり研修とかそういうことをしていかなきゃいけないと思いますし、かなり専門的になりますと、これは私どもの能力で手に余るところがございますので、関係機関に照会をしながら、そのものがどういうものであるかというのをちゃんと分析して対応したいと思っております。

秋葉委員 その辺の、せっかく検査したのはいいけれども見抜けなかったということにならないようにしていかなければならないと思います。

 さて、今回のこの特措法は、時限措置ではなくて、安保理決議一八七四の関連部分が失効したときに改めて法律をつくって廃止をするんだという規定が盛り込まれております。この安保理決議の効力がなくなったということをどういう形で認識をして廃止法案を出していくのかということが、具体的にわからないところでございます。

 国連の安保理決議も、御案内のとおり、一九四六年に十五件の採択がされて以来、昨年までの六十二年間でもう千八百件を超える採択件数でございます。ことしも既に十七件の決議が採択をされているわけでございまして、年平均にすれば三十件近い、あるいは三十件を超える決議が採択をされてきているわけです。この採択された決議が、そのものが無効になったとか、あるいは国連の安保理でこれはもう失効したんだとか、そういう手続は過去一度もないわけですね。いわゆる一つの団体意思としての表明ですから。

 ですから、そういう前提に立ちますと、国連の安保理決議というものが失効したときにということの定義の仕方というのは余り妥当性がないのではないかと私は考えているわけでありますけれども、そういう意味におきまして、安保理決議の効力がなくなったときというのをどのように定義をして、そして、事実上、安保理決議の効力というものをどう考えているのか。安保理自体では、この決議は、内容は、もう拘束力がないんですよとか何かということはないんですね、そういう取り決めというのは。

 だから、その辺との兼ね合いで、なぜこういう文言が入ったのかということで伺っておきたいと思います。

別所政府参考人 安保理決議の効力について御質問でございましたので、私の方からお答えさせていただきます。

 一般的に、国連安保理決議で各加盟国に科せられた制裁措置の効力を失わせるためには、別途の安保理決議の採択によることが多いわけでございまして、例としては、例えば当時のユーゴスラビア連邦共和国とか、あるいはハイチに対して一連の安保理決議で定めた各種制裁措置がございましたけれども、その後の別途の安保理決議で終了された、そういう例があるわけでございます。

秋葉委員 そうしますと、今局長の答弁を踏まえますと、今回のこの一八七四について、いわゆる不要の安保理決議が新しくされたら、この法案の廃止法案もつくるという理解でよろしいのかを確認して、時間ですので、私の質問を終わりたいと思います。

別所政府参考人 別途の決議により効力がなくなる、そういう決議がされれば、この失効ということに当たると思います。

秋葉委員 どうもありがとうございました。

木村(勉)委員長代理 次に、矢野隆司君。

矢野委員 自由民主党の矢野隆司です。

 今回のこの審議中の特別措置法案、改めて国民の皆さんにわかりやすく説明をすれば、北朝鮮による大量破壊兵器、ミサイル、通常兵器の生産、開発、貿易、これができないように北朝鮮の輸出入を各国が協力して規制していこうという、いわば国際社会が一体となって北朝鮮による脅威を取り除こう、こういうものだと思います。

 しかしながら、一方で、北朝鮮は、核兵器の放棄など絶対にあり得ない、こういう声明を出したり、さらに、プルトニウムの弾頭化、兵器化、こういったものを宣言するなど、まさに暴走していると思います。

 我々は、このことに対し断固立ち向かうという意味で、本法案は大変重要なものであるという認識のもとで、幾つか質問をさせていただきます。

 まず、法案の第八条ですが、公海上の船舶の貨物検査に際し、その船舶の旗国の同意を得てと。加えて、日本の場合、船長等の承諾まで求めているわけですけれども、いざ実際に実施しようかというときに、その船舶が北朝鮮の船であった場合、日本と北朝鮮の間には外交関係が存在しておりません、そういう中で、現時点でどのように、どうやって旗国との意思疎通を図るのか、このことを説明していただきたいと思います。

 北朝鮮から包括的な同意など得ることは事実上不可能であると思います。そういう中で、例えば日本の国連代表部あるいは北京にある日本の在中国大使館を通じてのルートなど、いろいろ考えられるのかなと思いますし、また、北朝鮮と外交関係を有する第三国を通じてアプローチをするのか、いろいろあると思うんですが、そのあたりを教えていただきたいと思います。

中曽根国務大臣 この安保理決議の一八七四号で言及をされております公海上での船舶の検査のための旗国の同意というものは、国連の加盟国が本決議に基づいて公海上での船舶の検査を実施する場合に、当該国が公海における船舶に対して排他的管轄権を有する旗国から同意を得る行為、これを指しているものと解されるところでございますが、このような旗国の同意を取りつける手段につきましては、一般国際法上の規則とか慣行はございません。また、今回の安保理決議、これにおきましてもそのような言及はないわけでございます。

 また、これは個別具体的な状況に応じて異なってくるものというふうに考えておりますが、そういうところから確定的なことを申し上げるのは非常に困難でございますが、例えば、外交当局を通じた確認などによりまして、このような同意を得ることが考えられるわけでございます。

 この対象船舶の旗国が我が国と国交のない北朝鮮の場合には、これは、例えば北京の大使館ルートを通じるなどして北朝鮮側に同意を求めることが考えられるわけでございますが、北朝鮮が公海上における北朝鮮籍の船舶への検査等について同意を与えないといたしましても、安保理決議の一八七四号に基づきまして、北朝鮮は、当該船舶に対し、検査のために適当かつ都合のよい港に回航するよう指示する義務を負っております。北朝鮮がそのような措置をとらない場合には、かかる不作為につきましては安保理に報告をされることになっているところでございます。

矢野委員 ありがとうございます。

 先ほど来から、海上保安庁の活動のことについて、どこまでが活動範囲で、あるいはどこまで追いかけていくのかというような質問あるいは答弁がありましたけれども、それに関連しまして、要するに、検査対象の船舶を発見したものの、検査できないというか検査させないままに逃げられた場合あるいは逃げられる場合、こういったときの政府として考えられる対応と措置を教えていただきたいと思います。

高田政府参考人 なお逃亡しようとする場合、それは巡視船艇でございますとか、あるいは航空機により追尾をしたりということが考えられるわけでございます。

 それにもかかわらず、さらに逃亡していくということになりますと、まさにこれは国際的な協力で対応するということでございまして、対象船舶が向かっている沿岸国に対しまして情報提供をするというような国際的な連携が考えられます。

 その沿岸国、仮にそこに入港すれば、これまた国連決議で定められておりますように、その国として検査をする必要がございますし、また、検査をするまでは、油の供給ですとかそういうことはしてはいけないということになっております。

矢野委員 そこで、そもそも論で恐縮ですが、今回の安保理決議第一八七四号で、いわゆる北朝鮮特定貨物として検査対象となる貨物は、核関連、ミサイル関連その他大量破壊兵器関連の物資、武器その他の物資で政令で定めるものとのことですが、この中の政令で定めるものというものは具体的にどういった内容なのか、現時点で答えられる範囲で教えていただきたいと思います。

高田政府参考人 まさに今作業が行われておると思いますけれども、北朝鮮特定貨物、安保理決議一七一八号それから今回の一八七四号によりまして、北朝鮮との輸出入が禁止をされました。今先生おっしゃいましたように、核関連それからミサイル関連その他の大量破壊兵器関連の物資、武器その他の物資でございます。

 具体的な対象品目の指定に当たりましては、決議一七一八号によりまして設置をされております安保理のもとの制裁委員会での議論を踏まえまして、本法案を受けて行われることになります政令の作成あるいは追加改正といった作業において、しかるべく反映をしていく考えであります。

矢野委員 確認ですが、今御答弁ありましたように、国連安保理のもとにある制裁委員会、ここで検査対象物資のリストをつくられて、それに準拠して政令で定める、こういうことでよろしいですか。

高田政府参考人 はい、さようでございます。

矢野委員 そこで、国際社会では、大量破壊兵器の不拡散という観点からのミサイル技術管理レジーム、あるいは、テロ国家やテロリストに通常兵器や関連技術が渡ることを防ぐことを重要な目的とした、品目の性能基準などを示して輸出管理の指標を定めたワッセナー・アレンジメント、これはココムの後継機関と言われている協定みたいなものですが、さまざまな輸出管理の規制基準が図られてきておるわけです。

 これらは法的拘束力のない紳士協定のようなもので、我が国では経済産業省が所管をして、これらの国際ルールを踏まえて、外国為替及び外国貿易法によって輸出管理を行い、輸出貿易管理令別表一といったものを作成してきたわけです。

 今回の法案第一条でも、外国為替及び外国貿易法などによる措置と相まって、安保理決議の実効性を確保する、こういう文言がございますけれども、実は、これらの国際ルールで掲げる輸出管理内容というか、その性能基準に満たない、あるいは掲げられていない、いわばローテクの民生用物資でも、北朝鮮では実際に軍事転用しているものがあると聞いております。きょうは時間がありませんので個別の具体例は申し上げませんが、だからこそ我が国では、これらの国際的な規制ルールを踏まえつつ、補完的輸出規制、いわゆるキャッチオール規制を設けてきたのかな、私はこう理解しております。

 そこで、今回の北朝鮮特定貨物検査の対象物資には、過去の事例を検証し、きめ細かく精査した上で、仮にそれがローテクであれ、軍事転用のおそれがあるような機器や物品については、日本から国連安保理の制裁委員会に検査対象物資のリストに入れるよう公式あるいは非公式に積極的に求めていく、アプローチをとるということも私は大事なこと、重要なことじゃないかなと思っております。

 しかも、北朝鮮の兵器や武器開発の財源となる覚せい剤やにせ札、こういったものがひょっとして貨物検査でたまたま見つかる場合もなきにしもあらずというか、そういった場合も想定に入れる必要が私はあるんじゃないかなと。当然これらも私は個人的には当該リストに入れるべきだとは思いますけれども、この制裁委員会へのアプローチについて、日本政府はどう考えておられるのか、教えていただきたいと思います。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 国連決議第一七一八に基づき設置された制裁委員会でございますけれども、この一七一八号の主文八の規定及び安全保障決議の一八七四に課された措置を調整することとされておるわけであります。このような措置の調整には、団体、そして今御指摘の物品及び個人の指定を行うことが含まれております。

 日本はこの制裁委員会のメンバーであります。この制裁委員会における議論の詳細については、ほかの国との関係もあり、明らかにすることができないことは御理解いただきたいと思いますけれども、我が国としても、この制裁委員会の一員として、先生御指摘のように、安保理の決議に基づく措置が実効あるものになるように、品目の指定も含め、議論に積極的に参加しているところだと承知しております。

矢野委員 済みません、通告にない質問ですが、一問、今の関連で。

 今のリスト、制裁委員会の方でおつくりになる、頼もしいことに我が日本人の方もメンバーでおられるという御答弁でありましたが、これは一体いつごろまでに決まるのか。もし今この時点で、あらあらでも結構でございますので、わかっておられれば、ちょっと御答弁をお願いしたいと思います。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 まず、この制裁委員会は、同決議の採択から三十日以内に、つまり十二日、きょうでありますが、安保理に報告することを定めてあるわけでございます。十日でございますけれども、制裁委員会は、安保理に対して作業の状況について報告した上で、現在も作業を継続しております。日本と制裁委員会のあるニューヨーク、時差がありますので、まだ十二日の頭の方ということになると思いますけれども、この安保理決議一八七四の主文二十四は、制裁委員会が行動しなかった場合には、前述の報告の受領から七日以内に措置の調整のための行動を完了するとされております。

 という日程が予測されるわけでございますが、いずれにしても、我が国としても、この安保理決議に基づく措置の実効性を担保するために、引き続き関係国と連携しながらこの制裁委員会のメンバーとしてもしっかり取り組んでいくという考えでございます。

矢野委員 突然の質問で、どうもありがとうございました。

 最後に、この法案の第九条について、先ほど来先輩議員からも質問がありましたが、関連で改めて一問伺いたいと思います。

 先週の官房長官の御答弁では、検査中に船舶側から激しい抵抗を受けるような場合、これは私流に解釈すれば、例えば銃撃などがなされた場合といったようなこともあり得るのかなと思っておりますが、その場合、自衛隊は海上警備行動をとることもできるとされております。

 法案には「相互に緊密に連絡し、及び協力するもの」という文言がございますが、これはまさに迅速な連携ということを言っているのかなと思うんですけれども、この点、政府として、迅速な連携という意味でどのように今担保されているのか、教えていただきたいと思います。

高田政府参考人 大きな枠組みといたしましては、先般官房長官が御答弁なさいましたように、法案成立後、速やかに関係省庁連絡会議というものを立ち上げて対応したいと思っております。

矢野委員 もうちょっと具体的な御答弁がいただけるかなと思ったんですが。

 いずれにせよ、最悪の場合は海上自衛隊による海上警備行動へ円滑に移行できるように、遺漏なき体制整備、こういったものを改めてお願いして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

木村(勉)委員長代理 次に、大島敦君。

大島(敦)委員 民主党の大島です。

 三十分ほど質問をさせていただきます。

 まず、北朝鮮という国なんですけれども、平成十八年の七月五日にはミサイルを発射して、同年の十月九日には核の実験をして、今回も同じように、ことしになってからもミサイルの発射と核の実験がありまして、これまでも我が国としては北朝鮮に対する独自の制裁の抗議は行ってきたかと思います。

 その中で、例えば輸入については禁止をしておりまして、今回、輸出についても禁止をしてきたわけなんです。しかしながら、統計資料を見ますと、北朝鮮の国別対外貿易総額においては、日本は貿易総額については毎年毎年減ってほぼゼロに近くなっているんですけれども、中国あるいは韓国については、大体二〇〇〇年比で五倍ぐらいにふえてきておりまして、この日本の輸出入の禁止の制裁措置が、北朝鮮の皆さんにとっては、北朝鮮の政府にとってはそれほど効き目がないのかなと考えておるんですけれども、その点についての政府の御所見をいただければ幸いと存じます。

河村国務大臣 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、輸入禁止の後、輸出もいたしました。確かに数字的には御指摘のとおりでありまして、金額的にかなり減少しております。そこだけ見ますと、果たしてこれは効果があるのか、実効性があるのかというお話になろうかと思います。

 しかし、あわせて、これは日本の北朝鮮に対する強い決意のあらわれでありまして、まさに日本は強い決意を持って北朝鮮に対して、これまで積み上げてきた六カ国協議もしかりでございます、また日朝間の約束事もある、これを強く求めておる、この日本側の強い意思のあらわれ、すなわち、いわゆる対話と制裁といいますか、そうした圧力といいますか、その日本の強い圧力に対する思いがそこに込められておる、そのことを北朝鮮は十分知るべきである、こういう思いであります。

大島(敦)委員 なかなか、北朝鮮の政府としては、日本からの輸出入の金額が過去においてもそれほど多くないということもありまして、これがたとえゼロになったとしても、決意としては少しは感じるかもしれませんけれども、中国なり韓国なりから相当数の輸出入があるとすれば、それは余り気にならないのかなと考えておるんです。

 それで、前回、今回も、四月五日のミサイルの発射、そして五月二十五日の核実験がございました。平壌宣言、この平壌宣言は平成の十四年だったかと思うんですけれども、平成十四年の九月十七日に平壌宣言が交わされておりまして、この中では、日本と北朝鮮双方は、国際法を遵守し、お互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した、これは三項なんですけれども、あるいは四項では、双方は、北東アジア地域の平和と安全の維持、強化するため、お互いに協力していくことを確認したとありまして、前回の平成十八年の七月五日に我が国の領土の上空を通ってミサイルが発射されたときに、個人的には、この平壌宣言を破棄すべきかなと、ちょっと憤りを覚えたことがあります。

 その後いろいろと聞いてみますと、平壌宣言の中にもそれなりの記載があって、政府としては平壌宣言を破棄しなくてもいいのかなという見解もあるかとは思うんですけれども、その点について、今、現時点での日朝平壌宣言の位置づけについて御答弁いただければ幸いと存じます。

中曽根国務大臣 日朝平壌宣言は、もう委員が十分御承知のとおり、拉致、核、ミサイル、そういう諸懸案、これを包括的に解決して、そして不幸な過去を清算して国交正常化を図ることが北東アジア地域の平和と安定にとって重要である、そういう基本原則に立ちまして日朝両首脳が署名をいたしました。これは政治的に極めて重みのある文書である、そういうふうに考えております。

 我が国といたしましては、この日朝平壌宣言を全体として履行することが、北朝鮮との間の諸懸案を解決し、日朝関係を前進させる上で最も効果的なやり方であると考えておりまして、日朝平壌宣言に従って国交正常化を図る、そういう従来からの考え方に変わりはございません。

 したがいまして、これを破棄するということが我が国の利益であるとは考えていないところであります。また、北朝鮮側も日朝平壌宣言を破棄するといった立場を我が国に対して表明したこともございません。

 我が国といたしましては、北朝鮮が拉致問題を初めとする諸懸案の解決に向けて日朝平壌宣言にのっとって具体的な行動をとるよう、引き続きまして対話と圧力のバランスに意を用いながら取り組んでいきたいと考えております。

大島(敦)委員 今の御答弁を伺いまして、ないよりもあった方がいいのかな、何かのときに使えるかもしれないなと受け取らせていただいたんですけれども。中には日本と北朝鮮の双方が合意した重要な部分もありますので、その点については御理解をさせていただきます。

 続きまして、今回、先ほど申し上げました四月五日のミサイルと五月二十五日の核実験を行ったときの我が国の中での反応、これは別の委員会で政府参考人にも伺わせていただきました。このときの我が国の反応としては、例えば、我が国の議員から、日本も核武装をすべきだとか、あるいは敵基地攻撃もできるんじゃないかとか、そういう発言があったかと思うんです。やはり北朝鮮に対する圧力というのは、貿易量の多さからも、中国の、そして韓国が非常に大きいかなと思っているんです。その中でも、中国からの圧力というのが一番北朝鮮にとっては脅威、あるいは気にしなければ、あるいは検討しなければいけないことかなと考えております。

 そうしますと、我が国にとりまして、我が国にこういう世論があったときに、新聞報道とかを見ても、それほど今までに比べれば大きく、あるいは批判的な記事もあるんですけれども、そのことについての大きな報道はなかったかなと思っているんです。要は日本国民として、このような発言について容認する風土が徐々にできてきているのかな、そういう、あれっという感じを覚えたんです。

 そうすると、中国の方に対して、北朝鮮がこの間もミサイルを発射いたしました、あるいは今後も、核実験とか日本の上空を飛んでミサイルを発射したときの、我が国国民の世論というのが大きく今変わってくるのかなということを中国の皆さんにも御理解していただくことが必要かなと思うんですけれども、その点について、お考えがあれば伺わせていただければ幸いと存じます。

河村国務大臣 北朝鮮がとりましたあのような行為、これはまさに世界を敵に回す暴挙であることは間違いありません。特に、核実験については、御案内のように、中国側も強い反応を示しておりますし、これを核保有国として断固認めないという方向であると思います。

 日本政府としても、いかに北朝鮮が国際社会の中でいわゆる共存できる体制をとるかということ、これに、これからの一つの大きな外交案件として取り組んでいかなきゃならぬと思っております。

 ここは日本としても冷静に対応すべきときであろう、私はこのように考えております。

大島(敦)委員 ただいま官房長官の御答弁ありましたとおり、余り感情的あるいは過剰な反応をすることは相手方を利することにもなるかなと思います。相手方としては、外交交渉の手段としてはそういうことしかないのかもしれませんので、冷静に判断して対応することが必要だと思います。

 続きまして、今度、質問の内容は移らせていただきまして、警察作用の位置づけについて伺いたいんです。

 今回の特措法の根拠になっている国連安全保障理事会決議の一八七四の中を読みますと、こういう文面がございまして、「北朝鮮により行われた核実験及びミサイル活動が地域内外の緊張を更に増大させていることに深刻な懸念を表明するとともに、国際の平和及び安全に対する明白な脅威が引き続き存在することを認定し、すべての加盟国が国際連合憲章の目的と原則を支持することの重要性を再確認し、」ここからなんですけれども、「国際連合憲章第七章の下で行動し、同憲章四十一条に基づく措置をとって、」と書いてありまして、これは集団安全保障の枠組みかなと考えております。

 今回は、枠組みとしては、こちらの集団安全保障の措置の一環ではなくて、これまでもこの場で議論ございました、海上保安庁ですから、我が国の警察作用として位置づけられているかなと思っております。この点についての御見解を伺わせてください。

河村国務大臣 集団安全保障の考え方、これは国際法上は明確な定義は存在していないわけであります。日本においては、講学上の概念あるいは学問上の概念という言い方をいたしております。

 しかし仮に、国連憲章第七章のもとでとられます国際の平和及び安全を維持し、または回復するための措置であって、経済制裁措置を含むものであるとすれば、この法案に基づく海上における検査その他の措置は、国連安保理決議に基づいて行われる国連憲章下の措置でありますから、そういう意味では集団安全保障に係る措置の一環として位置づけられる、このように考えます。

 この法案に基づきます検査等の国内法上の位置づけにつきましてもあわせて申し上げておきますと、安保理決議一八七四号の趣旨にかんがみまして、国連加盟国が武力の行使に及ぶことは想定しがたいこと、すなわち武力の行使が想定される集団安全保障ではないということが前提となっておりまして、海上保安庁が、国際法の許容する範囲内で、対象船舶に北朝鮮の特定貨物を積載していると認めるに足りる相当な理由があるということを要件にして、我が国の警察権の行使として実施する、こういうことであります。

大島(敦)委員 ありがとうございました。

 続きまして、今回の自衛隊の役割について、重なる部分もあるかと思うんですけれども、質問をさせていただければ幸いと存じます。

 今回の法律の九条の中で、関係行政機関は、第一条の目的を達成するため、相互に緊密に連携し、及び協力するとございまして、ここにおいての自衛隊の役割、具体的にどのような行動を行うかについて、政府の御見解を伺わせてください。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 防衛省・自衛隊におきましては、平素から、北朝鮮に限らず、あるいはこういった特定貨物の監視に限らず、幅広いいろいろな情報収集活動を行っているところでございまして、そういった形で防衛省・自衛隊が収集、整理した情報あるいは警戒監視によりまして把握した情報というようなものを、関係行政機関なりに対して適時適切にお話をして協議をしているということでございまして、こういった平素からの関係を生かしまして、この法案目的の達成のために、関係行政機関の一つとして協力をしてやっていくということでございます。

大島(敦)委員 あと、同条の二項なんですけれども、また自衛隊は海上保安庁のみで対応することができない特別の事情がある場合に、関係法律の定めるところに従い、所要の措置をとるとありますけれども、この特別な事情についての御見解を伺わせてください。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 ここで申し上げております特別な事情ということになりますと、基本的には海上保安庁で、検査等の対象が商業目的の船舶であるということですから対応可能だというふうに思いますけれども、万一の可能性としては、海上において対象船舶から海上保安庁では対応できない激しい抵抗を受けるような特別の事情がある場合も全く排除されるものではないということでございまして、そのような場合に、自衛隊が、自衛隊法の八十二条に基づきまして海上警備行動といった所要の措置をとるといったことが考えられるということでございます。

大島(敦)委員 続きまして、これも重なる部分があるかと思いますけれども、今回は旗国及び船長の同意ということで、公海上の外国船舶に対する検査等に際し、安保理決議の一八七四では旗国の同意を求めておりますが、今回は公海、領海での活動に際し船長の承諾を求めているのはなぜかということについて、手短に御答弁をお願いします。

高田政府参考人 公海上あるいは領海上でございますけれども、今回の安保理決議を受けて行います貨物検査につきましては、洋上で検査をするか、あるいは最寄りの港等に回航させてそこで検査をするか、いずれかの措置をとることが必要でございます。

 それで、対象船舶が公海あるいは領海といった外洋、岸から遠いところにある場合に洋上で検査を行うことにつきましては、荷積みの状況等によっては危険を伴うといったようなことも考えられます。そういうことから、船舶側の事情を考慮する必要もあるということで、船長等の承諾を要件としたものでございます。

大島(敦)委員 そうしますと、この旗国とか船長が要請に同意しないケースも考えられると思うんです。その場合、船長が承諾をしない場合に、今回の法律に基づく検査等の実効性は確保されるのかどうかについて、御答弁をお願いします。

高田政府参考人 公海または領海上の外国の船舶につきまして船長等が検査の承諾をしない場合、あるいはさらに、その場合に、回航命令にも従わない場合でございますけれども、基本的には、命令違反の容疑で船長等に罰則を適用するということにしております。これでもって貨物検査の実効性を確保することとしております。それでもなお逃走しようとする場合には、巡視船艇あるいは航空機により追尾をしたり、対象船舶が向かっていると考えられます沿岸国に対して情報提供をするなどして、国際的に連携して対応することが考えられます。

大島(敦)委員 次に、武器の使用について質問をさせてください。

 今回は、この検査の対象の、これは商船と思うんですけれども、商船が、軍艦等以外の船舶であり、軍艦等に護衛されていないものと定められております。しかし、商船が武装している場合も考えられ、武器使用により抵抗される場合もあるかと思うんです。この場合、本法律案により海上保安庁の武器使用はどの範囲まで認められるのかについて、御答弁をお願いします。

岩崎政府参考人 海上保安庁が業務を執行する場合に武器を使用することができるという規定が海上保安庁法にございます。その具体的なものは警察官職務執行法により行うということになっておりますので、いわゆる警職法に準拠してやることになります。正当防衛の場合等々がございます。それから、犯人の逃走の防止のために射撃をすることがございますが、いわゆる危害射撃というのは正当防衛以外の場合は認められない、このように理解をしておりまして、その方向でちゃんと運用する予定でございます。

大島(敦)委員 今回のこの特措法の第九条の二項で、「この法律の規定による検査その他の措置に関し、海上保安庁のみでは対応することができない特別の事情がある場合において、海上における警備その他の所要の措置をとるものとする。」と書いてありまして、この場合の特別の事情がある場合について、具体的に御答弁をいただければ幸いと存じます。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの繰り返しになりますけれども、海上保安庁のみでは対応することができない特別の事情ということは、これはまさに海上保安庁の対応ではできないような、先ほど申し上げましたような、抵抗してくるような場合というのはそういうことも想定してお答えをさせていただいているところでございます。

大島(敦)委員 次に、公海での活動の範囲について何問か質問をさせてください。

 今回、公海での活動の範囲について具体的に定めていないと思います。具体的に定めなかったのは何ゆえかということと、海上保安庁の船の能力は、公海全海域で活動するには十分だとは思えないんですけれども、その点についての御答弁をお願いいたします。

河村国務大臣 この法案におきましては、この検査、これは、御案内のように、国連安保理決議第一八七四号の要請を踏まえたものであって、我が国の警察権を旗国の同意を得て公海上まで及ぼす、こういうことになっております。したがいまして、検査等を行う区域を制限して、場所によって検査等の実施の取り扱いを変えることは、我が国警察権の行使といたしましては法的性格になじんでおりません。このために、区域については法律上の限定を設けていないわけでございます。

 しかし、北朝鮮特定貨物の北朝鮮への出入りを防止するというこの法案の目的、また実施機関の能力等を勘案しますと、運用上、おのずと実際の活動地域は限られてくると考えておりまして、現海上保安庁の能力はそれにたえ得る、十分な働きをするというふうに考えておるところでございます。

大島(敦)委員 今の官房長官に対する、ちょっと確認答弁になるかと思うんですけれども、遠方の海域まで追跡することも考えられるか、これは考えられないということになろうかと思います。

 その場合に、補給の問題が生じることもあると、補給船を保有していない海上保安庁では対応することが困難となることが考えられるが、その場合は、本法律案の九条二項の特別の事情として自衛隊が対処することになるのかについて、御答弁いただければ幸いと存じます。

浜田国務大臣 本法案に基づく検査等の措置につきましては、その対象が商業目的の船舶であるため、海上保安庁によって対応が可能であると考えておりますが、万が一海上保安庁のみで対応することができない特別の事情がある場合には、自衛隊は、八十二条に基づく海上警備行動などの措置をとることとしております。

 他方、本案に基づく検査等のために海上保安庁が必要に応じ不審な船舶を追跡するようなケースも想定される一方で、仮にそれが遠方まで及ぶ場合、必ずしも海上保安庁のみで対応するのではなく、対象船舶が向かっている地域の沿岸国や寄港地の所在国等、国際的に連携して対応することも十分考え得るところであります。その上で、海上保安庁の巡視船が補給が必要となる遠方海域まで対象船舶を追跡するかどうかについては、これは一般論としては個別的状況によりますけれども、海上保安庁のみで対応することができない特別の事情に当たるかどうかは一概に申し上げることはかなり困難であると認識しております。

 いずれにしても、状況に応じて、我々、関係法律で対応していくことになると思います。

大島(敦)委員 その場合、もしも自衛隊が遠方の海域に出動する場合には国会の承認が必要かどうかについての御答弁をお願いします。

浜田国務大臣 法案第九条第二項は、自衛隊が防衛省設置法や自衛隊法等の既存の関係法律の範囲内で活動することを確認的に規定したものであります。この規定によって自衛隊に新たな任務や権限が付与されるものではございません。

 このため、海上警備行動についても、法案の規定を根拠として行うのではなく、あくまでも自衛隊法八十二条に基づいて行うことになりますので、本法案に基づく検査等の措置に関し万が一海上警備行動を命ずる場合があったとしても、国会の関与につき改めて規定をする必要があるとは考えておりません。

大島(敦)委員 次に、先ほど、答弁の中で他国との連携という言葉がございました。他国との連携については規定されていないが、どのような連携協力が考えられるのかについて御答弁をいただきたいと思います。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 政府としては、いろいろな機会をとらえて、今回の安保理決議一八七四を受けての諸外国の対応について、関係国との間で意見交換や情報収集というものを行ってきております。ただ、その具体的内容については、相手国との関係もあり、対外的に明らかにできないことがあるということは御理解いただきたいと考えますが、各国とも、決議を履行できるように検討や作業を行っているものと承知しております。

 また、検査等の措置を実施するに際し、対象船舶及び積載貨物に関する情報の交換を含め、必要に応じ、各国と緊密に連絡をし、協力し合っていくということでございます。

大島(敦)委員 北朝鮮の特定貨物を輸送している船舶の情報を入手した場合に、海上保安庁が他国船舶等と連携して実施することは想定しているんでしょうか。

岩崎政府参考人 海上保安庁の船で単独で検査することを基本的に想定しております。

大島(敦)委員 質問通告にはなかったんですけれども、今回の国連の決議は、船舶検査については各国に対する要請だったかと思うんです、要請。そうすると、してもしなくても、義務じゃありませんから、国によってはしないことも考えられるかなと。

 我が国の周りですと、北朝鮮からの船舶については、我が国があり、韓国があり、そして中国があり、ロシアがあり、あと、もちろん米国もあるかとは思うんですけれども、我が国の周辺国でのこの今回の国連決議についての対応についてどのようになっているのか。

 あるいは、先ほど、協力というのもあったかと思うんですけれども、協力をするためには、それぞれの国が我が国と同じようにその要請にこたえていなければいけないのかなとは思うんですけれども、その点についての御所見があれば、伺わせていただければ幸いと存じます。

別所政府参考人 今御質問がございました関係国、日本以外に、中国であれロシアであれアメリカであれ、そして韓国ということがございました。今の中のうち、韓国を除きますと、すべて国連安保理のメンバーでございます。そしてまさに、その安保理の中で全会一致でこれを決めているわけでございまして、全会一致でこういった行動をするように要請している、そういうことでございます。

 また、各国とも、それぞれこのたびの北朝鮮の行動に対して強い非難をしておりますし、この安保理決議についてはきちんと実行していくんだというような考えも示しております。韓国についても当然そういうことでございます。

 おっしゃるとおり、各国が協力してこれに対処していくということは必要でございますけれども、先ほど伊藤副大臣からも答弁申したとおり、各国とのいろいろ意見交換、情報交換をやっておるところでございます。実際にいろいろと活動する際には、各国の連携が当然必要だろうと思っております。

大島(敦)委員 これで質問を終わりますけれども、今回の特措法については、政府の決意が必要かと思うんです。これを実行した場合のリアクションは非常に大きなものが想定されておりまして、相手に対する圧力としては、その決意があることが必要かなということを最後に述べさせていただきまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

木村(勉)委員長代理 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

深谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。伴野豊君。

伴野委員 民主党の伴野豊でございます。

 本日は、海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会にて、北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法案について質問させていただく機会をいただきましたことを、まずもって御礼を申し上げたいと思います。

 私も議論を拝聴しておりまして、総じていい議論がされているんではないかなというふうにも思います。そうした中で幾つか、きょうは、外務大臣が何か参議院の方の表決の関係でおくれてくるということでございますので、外務大臣にはいらっしゃってから質問させていただければと思いますが、関係閣僚にお話を賜りたいと思います。

 そうした中で、できるだけ国民的関心が高いところに焦点を絞ってお話をさせていただきたいと思います。とりわけ国民的関心の高い、これはもう与野党超えて関心が高いんじゃないかと思うんですけれども、まず、もうずばりお聞きしたいと思うんです。

 正直言いまして、報道ベースでは、七月二十一日解散、八月三十日投開票というようなのが、もうこのお昼にも流れておりましたし、私のところにもコメントをとりにいらっしゃった報道機関が何社かいらっしゃるんですけれども、官房長官、いろいろお答えにくいこともあるのかもしれませんが、昨日もけさほどもいろいろ打ち合わせをされているというふうに伺っておりますので、こういった具体的な解散の日時について、総理から何らかの御指示があって、準備をせよと言われたのか。また、今流れている七月二十一日解散、八月三十日投開票ということは、これは事実としてあるのかどうか。

 また、仮定の話で恐縮ですが、金子国土交通大臣あるいは浜田防衛大臣におかれましては、閣議でこれにサインをされるのかどうかも含めて、ちょっとお聞きをできればと思います。よろしくお願いいたします。

河村国務大臣 お答え申し上げます。

 本日十二時半から与党と政府との連絡協議会がございました。その席上におきまして、麻生総理から、解散については今月二十一日の週に断行したい、投票日は八月三十日ということの言明がございましたので、私としては、この法案をぜひ通すべく皆さんに御協力を賜りたい、このようにお願いを申し上げる次第でございます。

金子国務大臣 ただいまの件について、この委員会の場で、私が発言する場ではありません。

浜田国務大臣 麻生総理の任命のもとになった大臣でございますので、私とすれば、当然麻生総理の意向をそんたくして判断をさせていただきたいと思います。

伴野委員 いずれにしましても、勇気ある御発言あるいは御英断、感謝申し上げたいと思います。もっと早く御決断していただいてもいいのかなと個人的には思いますが、本法案につきましては、やはり私は重要法案であると思いますので、しっかり議論をさせていただければ、そんなふうに思っております。

 では、いま一つ、これも国民的関心の高いところでございまして、政府の信頼性が問われているという点ではどうしても委員会の前段として確認をさせていただかなければいけないと思います。

 きょう午前中には自民党の秋葉議員からも同様の質問があったかと思いますけれども、やはりここは、私は密約という言葉もいかがなものかと思っている節がございまして、いろいろな案件でも、例えば例示がいいかどうかわかりません、目の前に駐車禁止区域というのがあった場合に、その横で大火事があったと。人命を助けなきゃいけないといったときに、ここは駐車禁止だからどこそこへとめに行かなきゃいけないといって人命をおろそかにしていいかといったら、私はそんなのよりも駐車禁止のところへぱんととめてでも人命を救いに行けばいいということでありますから、これは法律を逸脱したということに結果的になっちゃうのかもしれませんが、いろいろな意味で、例外とかいろいろな特例とか、後ほど歴史的に判断して検証した場合にそれはその当時正しかったというようなことがあればいいわけで、あったものがないように振る舞われたり、あるいは本当になかったのならないでいいんですけれども、やはり、事務方のトップが心を決して述べられているということに関して、私はうそと言う方がなかなか無理があるのかなと。また、当該外務委員長さんも、大変お忙しい中、御本人にお会いになっているというようなことも伺いますし、私はやはり政府の信頼性を高めていくことがいい外交になると思いますし、ひいては建設的な防衛論議をする上での大前提じゃないかと思います。

 そうした中で、急遽の質問で恐縮ですが、まず、今までどおり密約は、村田証言に係る密約ということで限定させていただいて結構だと思いますが、これはあったのかなかったのか。やはり今までどおり、なかったということになるんでしょうか。

河村国務大臣 政府が従来から申し上げておりますとおり、御指摘のような密約は存在しない。この点については、歴代の総理大臣及び外務大臣がかかる密約の存在を明確に否定しているとおりでございます。

伴野委員 お立場とか今までの政府の方針というのを、ある面、できるだけ理解してさしあげたいし、インテリジェンスにかかわるものというのはあると思うんですけれども、私は、その同意相手なりあるいは協議相手であったところが明かしているような文書であり、関係者からの今までの信頼性からすれば、ほぼこれはあるといったようなものは、これに限らず国民の前に前広にすることが、もうそういう時代ではないか、それは民主主義の根幹にかかわることじゃないのかなと。

 一部の人が、さもありなんということをないように建前論で言っているというのは、これは多分非核三原則の中で不一致になってしまうということが大前提にあるのかもしれませんが、そうしたら、これはやはりあれですか、官房長官、村田さんがうそをついているということなんでしょうか。いかがでしょうか。

河村国務大臣 政府といたしましては、村田元次官が述べられた内容について承知しているわけではなく、お答えすることは困難であると考えております。

伴野委員 でも、御党の河野外務委員長まで行かれて、実際お調べになったというかお聞きになって、そこでも同様の回答があったやにということからすれば、なかなか、それというのは本当に苦しい答弁になってきているのではないですか。

 ここはやはり、歴史的背景あるいはそのときの事情をかんがみて、国民が納得される範囲であるならば例外規定もあっていいと思いますし、私は、一番いけないのは、うそが一番だめだと思うんです。実際あったことがなかったかのようにやられていくということは、これはやはり民主主義の一番重要な部分にかかわることでありますので、これはもう与野党を超えて、政府が信頼できないということになると私はいかがなものかと思いますので。そうすると、この件に関する次官引き継ぎの文書、それから日米会談の議事録も本当にないということでよろしいんですか。

河村国務大臣 御指摘のような密約にかかわるものはない、このように考えております。

伴野委員 密約という言葉、先ほど申し上げたように、私はいかがなものかと思っている一人でございまして、一定期間を経たもの、例えば二十五年から三十年というようなものに関しては、これは相手国のあることですから、まさにそこと同意も信頼関係も結ばれているという前提の上で、私は歴史的な検証をする意味でも、あるいは建設的な議論をする意味でも、あったものはあったと言う時期に来ているのではないかと思いますし、突然どなたか違う人が検証をして、やはりあったんだということになれば、それまでの何十年間は何だったんだ。歴代政府で答弁された、きょうも官房長官は苦しい答弁をされていますが、いかがなものかと言われるような時代が来ないことを私は願っております。

 では最後に、もうこの話をくどくしていてもせんない部分もあるかもしれませんが、時代が解決してくれると思いますし、河野外務委員長が答弁変更を求めていらっしゃる点については、やはり政府としては絶対に受け付けられないということでよろしいんでしょうか、いかがでしょうか。

河村国務大臣 受け付けるとか受け付けないとか、そのことに対してお答えするつもりはございません。

 政府としては、立法府の方針、活動等について、私の方から見解を述べる立場にないということを御理解いただきたいと思います。

伴野委員 もう東西冷戦の時代でもございませんし、その当時からさまざまな環境は変わってきているということを私自身も承知した上でいろいろ質問をさせていただいているわけで、やはりきちっと歴史的な検証、あるいは子供たち孫たちの時代になったときに、我々大人たちはきちっとやってきたんだということを述べるためにも、私は建前論と現実がずれてこない方が絶対に政府にとってもいいと思いますので、ぜひそのあたりは再考していただければいいと思いますし、堂々と外交、防衛をやっていく時代じゃないかと思います。よろしくお願いしたいと思います。

 では、本題に入らせていただきたいと思います。

 今回、北朝鮮の、私はもうはっきり言って暴挙と言いたい。わけがわからない、理解できない、一言で言えばそういうことです。いろいろ国内事情であって、核実験をしてみたり、あるいはミサイルを撃ってみたり、あるいは対米交渉カードとして使うために、いわゆる瀬戸際外交の一環としてやっているとか、いろいろ報道や各御専門家が分析されているわけなんですけれども、こういった分析、つまり北朝鮮の本当の意図は何なんだ、正直言って私はわかりません。

 普通に国民のことを考えれば、あそこの国の窮状、いろいろ漏れてまいります。そういうものを為政者として考えるならば、この行動が国民のためになる、独裁国家でございますから、なかなかそうはならないのかもしれませんが、どう考えても彼らの行動は許されることでもありませんし、理解できることではないんですが、こういったことについて政府、外務省は公式にはどういった意図で北朝鮮が現状の諸行動をしていると分析されているんでしょうか、教えてください。

伊藤副大臣 お答え申し上げたいと思います。

 ことしに入っても北朝鮮は、四月五日のミサイル発射、そして五月二十五日の核実験、そして七月四日に再び弾道ミサイルの発射ということで、まさに暴挙といいますか、緊張を高める言動といいますか、行動を繰り返しているわけであります。

 委員御指摘のように、昨今の北朝鮮のこういった連続する行動についてはいろいろな見方があるということ、またそのことについていろいろな事情や意図があるというような指摘がいろいろな方からあることも事実であります。しかしながら、いかなる事情であれ、これらの挑発行為を正当化することはできないわけでありまして、また、政府の立場として公式的に北朝鮮の意図を推しはかって云々するというのは適当でないということは御理解願いたいと思います。

伴野委員 そうすると、わかっているけれども言えないという解釈、どう今の最後の言葉を解釈すればいいですか。

伊藤副大臣 わかっているという言葉の定義もなかなか多様だと思いますけれども、もちろん、外務省としてもいろいろな分析や考察は行っているわけでありますけれども、そのことを公表すること自体、また、複数の人間がいるわけですから、いろいろな意見もありますね、ですから、そのことも含めて、こういう委員会の場で云々することは適当でないということだと思います。

伴野委員 副大臣の苦しい御答弁も理解してさしあげたいですけれども、しかし、北朝鮮の意図をある程度想定しないで対策を練るということというのは、そもそもこの議論というのは何なんだと思うんですが、いかがですか。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 北朝鮮のいかなる事情や意図にかかわらず、これらのミサイル発射、核実験、また累次の国連の安保理決議に違反する、こういうことはよろしくない、断じて日本としても容認できないわけでありまして、我が国としては、北朝鮮に対して、弾道ミサイルの計画に関連するすべての活動の停止や核関連の活動の停止を求めている関連の国連安保理決議の即時かつ完全なる履行を求めていきたいと思うわけであります。

 そしてまた、北朝鮮は、関連の安保理決議を遵守し、六者会合に復帰して共同声明を完全に実施することが、北朝鮮自体の、自身の利益であるということを理解すべきだと思います。

 我が国としては、引き続き北朝鮮のこういった動向を注視しながら、米国、韓国を初めとする、また中国とも、関係国と密接に、緊密に連携して、北朝鮮をめぐる諸懸案の解決に向け、最大限努力していく覚悟でございます。

伴野委員 確かに、犯罪者の意図というのはわからない犯罪も多い時代になってきていますから、副大臣のおっしゃる意味も理解してさしあげたいと思いますが、そうではない、この民主主義の我が国において、かつ、情報がこれだけいろいろインターネット等でとれる時代に、今の答弁で本当に国民が納得していただけるかどうか。最終的には税金で有効な手だてを最大限していただかなければいけないわけでございまして、それなりの今の、だれが見てもというか、ある程度の方が最大公約数的に確からしいといった情報で分析をして、これからこれぐらいの範囲のシナリオのことが起こり得るのでこういう対応をしていると言った方が、私は今の国民は納得しやすいんじゃないかと思うんですね。これは見解の相違があるかもしれません。ただ、必要以上にあおってもいけませんし、必要以上に無防備であってはいけないと思いますが。

 先ほどの密約の話でもありますし、今のお話も、私は、どこかに政府の無謬性のわなというのがあって、どこかのときに検証されたときには、それが間違いだったとか、あるいはちょっと行き過ぎた、あるいはこういった判断の方がよかったということに対して、余りにも恐れている。つまり、人間ですし、政府ですし、場合によっては、後から考えればというのはいろいろあると思うんですね。その上で、国民にきちっと、こういう考え方とこういうシナリオでこういった効果をもたらしたいからこういうことをやると言った方が、私は国民は絶対についてくるし、納得するし、そういう時代だと思うんですね。

 そういった中で、これもまたなかなかシナリオがつくれないと言うかもしれません。相手ははっきり言って独裁国家ですから、彼が考えていることがすべてだと言われてしまえばそうかもしれませんが、それでも、やはり私は、国民に説明する意味で、わかりやすい説明をする、そうした中で、今回の対策が各国協調の中でうまくいったら、いいシナリオとしてこうなっていくんだろう、一番いいのは、北朝鮮が普通のまともな民主的な国家に将来なってくれるのが一番望ましいと私は個人的に思っておりますが、そうでない、場合によってはこんなことも起こり得てしまうというようなことも、私はある程度、最大公約数的な確からしさの中で想定をしていくべきだと思いますが、楽観的なシナリオと、もし悲観的なシナリオがおありになるとすれば教えていただけませんか。そもそもないとおっしゃってしまうかもしれませんが。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 まず、北朝鮮の意図に対する御質問と私のそれに対する答弁に対するお考えですけれども、一般的に申し上げて、一つの国がある行為を、特に外交上あるいは安全保障上するという場合は、単一の理由で行うということは考えづらいわけでありまして、複合的なあるいは複数のいろいろな事情が絡み合って行われるわけで、ですから、その解答が単一であるということ自体がなかなか難しいんだろうと思います。そして、そのバランスについても、それこそいろいろな見方があるということをまず御理解いただきたいと思います。

 その上で今考えられるシナリオということでございますが、多少繰り返しになりますけれども、四月二十九日、北朝鮮の外務省のスポークスマン声明は、核実験及び大陸間弾道ミサイルの発射を行う旨の立場を表明して、五月二十五日は実際に核実験を行いました。そして、六月十三日に採択された今回の安保理決議一八七四に対して、北朝鮮は同じ日に外務省声明を出しまして、今や核放棄など絶対にあり得ないものになったなどとした上で、プルトニウムの兵器化やウラン濃縮作業を行う旨を表明するとともに、制裁には報復で、対決には全面対決で断固立ち向かうなどとして、七月四日には実際にまた弾道ミサイルを発射したわけであります。

 こういう一連の行為を見てみますと、まさに今後の北朝鮮の動向については予断を許さないわけでございますが、北朝鮮が引き続き挑発的な言動を繰り返す可能性というのは否定できないものだろうというふうに考えております。

 いずれにしても、外務省としては、国民の安全、安心を確保する観点から、今後とも最大限の外交努力を継続していくということでございます。そして、我が国としては、北朝鮮が関連の安保理決議を遵守して、六者会合になるたけ早く復帰して、共同声明を完全に実施することが北朝鮮自身の利益になるというふうに考えており、そのことを北朝鮮にも理解するべく強く働きかけております。北朝鮮が今後、強弁路線、強硬路線というものを維持してさらなる孤立を招く道ではなく、諸問題の解決に向けて具体的な行動をとることを求めてまいりたいということであります。

 そして、我が国としては、北朝鮮にこういう挑発行為をやめさせるためにも、我が国一国だけではこれは無理なわけで、国際社会全体が、先般の核実験に関して採択された安保理決議一八七四号に盛り込まれた武器禁輸、貨物検査、金融面での措置などを着実に実施し、同決議の実効性を高めていくことが重要であると考えており、そのために今回のこの質疑も行っているわけでございますが、引き続き、北朝鮮の動向を注視しながら、米国、韓国、中国を初めとする関係国と緊密に連携して、北朝鮮をめぐる諸懸案の解決に向け、しっかり取り組んでいく考えでございます。

伴野委員 今、伊藤外務副大臣が貨物検査と言ったときに、私の目を見ながら、あれはかなり目で伝えていらっしゃったんだと思いますけれども、多分、今目で伝えたいと思われた方は、国民の皆さん方にきちっと情報提供をして説明されれば、私は今、日本の国民はついてくると思っています。そこに何らかの、大変失礼な言い方をすれば、ロジック的なトリックや、あるいは過去との整合性の中でどうしてもこう言わざるを得ないというようなことが見え隠れすると、やはり国民はそこをぴしっと突いてきて、そこに疑いを向けて、全体がちょっとと言い出すんじゃないかと思うんですね。今、伊藤副大臣が目でささやかれたとおり、私は、正直にやっていただければ絶対国民がついてくると思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 そうした中で、現時点で言えないこともあろうかと思いますが、私は、我が国の外務省を信頼したいと思いますので、分析はしていらっしゃるんだと思います。ただ、今は言えないんだと思いますし、やはり意図をある程度、想定なき対案あるいは対抗策というのはあり得ないと思うんですね。そうした中で、今後、あの国が今の現状を維持しつつ、例えば国民の胃袋だけを満たしてほしいというのが本当の主目的、中心的な意図であるならば、ハードパワーに頼らない方法だっていろいろ考えられるわけですから、多分、そういうことも考えていらっしゃる上での今回の実効性あらしめる貨物検査だというふうに解釈しているんですが、ぜひ、そういったことも、あの当時、こういう意図で分析していて、こういう対策でこういう法案をつくったんだということは、伊藤副大臣が政治家であれば、将来ぜひきっちり明かしていただきたいな、私はそんなふうに思います。

 それで、時間もなくなってきておりますが、多少、前の大島委員とダブるところもあるんですが、できるだけダブらずにお話しさせていただければありがたいと思うんです。

 先ほど申し上げたように、貨物検査をする上で、警察権の延長、一つは、いわゆる内陸から港湾、内水、領海、公海へ警察権を広げていく上での今回の立法であるというふうに解釈しているわけです。ただ、第一条の目的、「我が国を含む国際社会の平和及び安全に対する脅威の除去に資することを目的とする。」という最初の、前段の「我が国を含む国際社会の平和」というと、ぴんとくるのが、平成十一年五月十二日に行われた参議院での日米防衛協力のための指針に関する特別委員会で政府が答弁された集団安全保障のことが頭をよぎってしまうんですね。

 そうではなくて、今回は警察権の行使だということであろうかと思うんですが、そうであるならば、私は、先ほど大島さんの質問にもあったように、特別の事情がある場合、こんなような場合は多分、偽装商船がロケットランチャーをぶっ放したようなことを想定されているんだと思うんですが、そういったところは自衛隊にお任せするというと、国民の皆さんからすると、やはり自衛隊が出てくるのかと。そうすると非常にややこしいことになるような気がするんですね。

 だから、私は、組織的に見ても、もし海上保安庁で、先ほどいわゆる特別の事情がある場合ということを想定され、それが一つのエグザンプルとして偽装商船がロケットランチャーを撃ったときというようなことを考えていらっしゃるならば、いわゆる自衛隊の海上警備に頼るということではなくて、海上保安庁に、そこまで網羅した整備なり、あるいは対応策、あるいは韓国の、これは名前が非常に勇ましいので、日本でもしやる場合は名前を変えてほしいと思うんですが、特攻隊というのがあって、何か本当に武装したような警察官が船の中に入っていくという訓練なんかもしていらっしゃるようですが、海上保安庁にそれなりの予算をつけて、今想定されているところの部分は全部海上保安庁でできるようにした方が、あるいは、この間通っちゃいましたけれども、補正予算なんかではそういうところにつけた方がよかったのではないかと個人的には思うんですが、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、中谷委員長代理着席〕

岩崎政府参考人 北朝鮮の不審船の例もございましたので、この間、海上保安庁では一定の武器に対応できるような装備を強化しております。ある程度できておると思いますし、対応できると思っております。

 ただ、やはり北朝鮮ということですから、どういうことをするかわからない。よほどのことがない限り我々は対応できると思いますけれども、万が一ということがございますので、こうした海上警備行動を発令するという枠組みも必要だろうと思っております。

伴野委員 今の予算で十分ですか。この際言われた方がいいですよ。いかがですか。

岩崎政府参考人 今回の検査活動を含めて、海上保安庁の仕事、いろいろ多岐に拡大をしております。私ども、装備は本当に十分なのか、これまでも予算は一生懸命やっておりますけれども、引き続き前向きに頑張っていきたい、検討していきたいと思っております。

伴野委員 行き過ぎた対応とか、いわゆる過剰な整備とか、それから無駄なものというのは絶対に許されるものではない、そういう時代だと思いますが、こういう対応のときに必要なものを必要であるとおっしゃっていただいて、予算がなかったからできなかったというようなひずみあるいはゆがみが絶対に現場に行かないようにしていただきたい、それをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

中谷委員長代理 次に、松野頼久君。

松野(頼)委員 民主党の松野頼久でございます。

 幾つか質問が出ている、若干繰り返しになるかもしれませんが、本法の確認をしておきたいところが幾つかございますので、ぜひお答えをいただきたいと思います。

 言うまでもなく、本法は国連決議一八七四をベースに法案化をされているということでありますが、一八七四には、上記禁止物品を輸送していると信じるに足りる合理的な理由がある船舶に対して検査を行うということであります。これを法律でも同じように落としておりまして、「北朝鮮特定貨物を積載していると認めるに足りる相当な理由があるとき」ということです。

 これは、政府が判断をして、この法律を施行しよう、運用しよう、検査を行おうという、この「相当な理由」というのはどういうときなんでしょうか、お答えいただけないでしょうか。

金子国務大臣 三条二項、第一項に、相当の理由ということを今度の法案で記させていただきました。

 海上保安庁だけの情報では必ずしもそれが判断できないんだと思います。外国からの情報等々もいただいて、その上で、政府の中で関係者の協議会をつくりまして、そこで、いろいろなところからもたらされる情報を総合的に判断させていただくということ、そういう中で相当な理由かどうかの判断を、適否を決めていくということであります。

松野(頼)委員 そこを伺っているんです。それは甲板にミサイルを積んで走っていることはないわけでありますから、この法律の大前提であります、旗国にまず同意を求めなきゃいけないわけですね。その旗国に対して、どの程度まで情報を明らかにして、こういう理由があるから検査をさせてほしいという、旗国の同意の前提となる、どの辺までの情報を出すのかということを伺っているんです。

岩崎政府参考人 個別具体の状況によるとは思いますけれども、やはり私ども海上保安庁だけでそうした情報が十分集まると思いませんので、海上保安庁でも努力をいたしますけれども、関係省庁にも協力してもらいながら、一定の情報の収集、分析をやっていきたいと思います。

 旗国にどのようにそれを伝えるのかということについては、これも相手国との関係を踏まえて適切に外交ルートで判断されるものと思っております。

松野(頼)委員 ですから、そこを伺っているんですよ。どの辺まで精度が高ければ、検査をさせていただきたいということを旗国に同意を求めるわけですね、そのルールは全くないわけですか。ちょっとお答えいただけないでしょうか。

岩崎政府参考人 これはやはりある程度、なかなか答弁が難しいですけれども、一定の情報を与えなきゃいけないと思いますし、しかし、かといって、敵対する国に対して情報を与え過ぎるというのも、これはなかなか適切ではないと思っております。

 個別の事案に応じて、対象国に応じて、繰り返しになりますけれども、外交ルートを通じて適切に対応される、このように思っております。

松野(頼)委員 この委員会でたびたび議論になっているんですけれども、要は、本法での運用なのか、それとも自衛隊法による海上警備活動になるのか、それとも周辺事態による船舶検査、臨検等になるのかというところが交差をしているから多分いろいろな角度の議論が出て、非常にこの議論がわかりづらくなっている大きな原因だというふうに私は思うんですね。例えば、相当な理由を提示しないで検査を求めたとしたらば、これは臨検と極めて近くなるんですね。違いますか。

 ですから、ある程度本法に基づく相当な理由は、船長なりその旗国に、これだけの情報がある、これだけの確信がある、これが決議一八七四に匹敵をする、信じるに足りる合理的な理由であるから、旗国、同意をしてくれということを運用上はやっていかざるを得ないと思うんですね。

 多分日本に、これは当然自衛隊なり海上保安庁に、衛星で監視をするような仕組みというのは持っていないんですね。そうすると、我が国が独自でこの法律を運用して判断をするに足りるだけの情報というのは、非常に限られているものなのではないかというふうに私は思うんです。

 ですから、要は、相手もわかりました、本法に基づく相当な理由ですねと言って旗国が同意するかしないかの部分に非常にかかわってくるので、ある程度ここの目安というものを決めておく必要があるのではないかというふうに私は思うんです。ただやみくもに、こういう情報があったからちょっと検査をさせてくれと言っても、これは船長も同意できるものでもありませんし、旗国としてもなかなか同意できるものではない。こうこうこういう確証があるから検査をしたいということを言われるというふうに思うんですけれども、もう一回、ちょっとそこを具体的に解説、説明をしていただけないでしょうか。

高田政府参考人 岩崎長官の答弁と重複になると思いますけれども、まず、認めるに足りる相当な理由があるときといいますのは、そういうことについての具体的な情報がある場合ということでございます。

 それはどういうことかといいますと、まさに外国の関係当局、我が国の関係省庁からもたらされましたその船の仕向け地あるいは仕向け港、仕出し港、貨物の内容等の情報を合理的に判断して、その船舶が北朝鮮特定貨物を積載していると認めることが相当である場合を指します。これは、国連決議で言っております合理的な根拠があることを示す情報と同一でございます。

 また、我が国が、例えば公海上の外国船舶に対して旗国の同意を求める場合にどういう情報を示すのかということにつきましては、個々具体的なケースがあるものですから今一概に申し上げられませんけれども、そういうことにつきまして、外国との連携あるいは国内省庁間でもよくそこは十分連絡をとって対応したいと考えております。

 その国内省庁の連絡体制につきましては、大きなものとしては、関係省庁連絡会議を速やかに立ち上げることを考えております。

松野(頼)委員 多分、今、民間ベースでの貿易は北朝鮮はもちろんゼロです。ですから、事実上、日本から北朝鮮に物品が渡ることはないんですね、外為法の規制もありますので。事実上、この法律が執行されるというのは、多分、アメリカから、こういう情報があるから、日本は出動してくれという以外には想定できないんじゃないかと私は思うんですね。

 独自でそれだけの情報を得るだけの、日本は情報収集能力があるとは私には考えられませんし、では、民間ベースの輸出入を、もう既に外為等でチェックはされているわけですから、日本から北朝鮮に何か物品が渡る、奢侈品が渡るということは、今のところほとんど想定できない状況でありますので、今慌てて法律をつくられようとしているんですけれども、実際にはこの法律が発動されることはほとんどないんではないかというふうに私は思います。

 ただ、アメリカから、こういう情報がある、日本に出動してもらいたい、衛星でこういう形で映ったとか、何らかのそういう精度の高い情報があって、初めて出動が行われる場合がもしかしたらあるというぐらいの内容ではないかなというふうに、実際の運用上は思っております。

 今のところのその相当な理由で、公海上も当然含まれるわけでありますから、さっきも申し上げましたように、自衛隊法における海上警備活動、あと、金曜日、長島委員が議論をしていました周辺事態における船舶検査法と今回の本法の区切りが、非常にわかりづらくなっております。ぜひその辺は政府内で、政令をつくる法律のつくりになっておりませんけれども、しっかり何らかの目安みたいなものをきちんとつくっていただいて、こういうときにはこの法律が運用される、こういうときにはこの法律で行うということをしっかりつくっていただきたいということをお願い申し上げる次第です。

 次に、もう一点伺います。

 ちょうど資料をお配りさせていただきました。資料の一、二をごらんください。

 要は、これも金曜日、佐藤先生の質問に対して、九条の二項、海上保安庁のみで対応できない特別な事情、これは一体どういう前提なんですかということを、きょうも幾つか議論が出ています。きょうも、激しい抵抗をした場合というふうにお答えをしていただいているんですけれども、もう一度、この海上保安庁のみで対応できない特別な事情というのを御答弁いただけないでしょうか。

    〔中谷委員長代理退席、木村(勉)委員長代理着席〕

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 先生お配りになりました資料にございますけれども、きょうの委員会でもそうでございますけれども、万が一の可能性として、海上保安庁では対応ができないような激しい抵抗を受けるようなケースというのを一つの例として出させていただいておりまして、これが全く排除されないということで規定を設けているというふうになっております。

松野(頼)委員 いや、この本法で話をするならば、高見澤さん、旗国の同意が前提なわけですよ。ですから、旗国の同意を前提として、本法で検査を行う場合には、激しい抵抗というのは当然考えられないわけですね。

 ですから、本法における海上保安庁では用が足りない場合というのを聞いているんです、本法における。もう一回お答えいただけないでしょうか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 まさに本法はそういった通常の商船を対象にしてやっているわけでございますので、そういった疑いのある情報がある場合であっても、商船ということでありますので、基本的には海上保安庁の能力で対応できるとすべく、かつ、その同意を求めて行うとする、これは強制的な措置ではないということで、それはすべてお答えしているとおりであります。

 ただ、実際に、そういった状況になったときに、行ってみたらこういう抵抗が出てきたというようなことは全く排除されないという意味でお答えをさせていただいているというふうに御理解をいただきたいと思います。

松野(頼)委員 だから、激しい抵抗をしたら、もう本法じゃないわけですね。本法は旗国の同意ですから、前提が。

 それで、本法で海上保安庁じゃなく自衛隊が出動しなければいけない場合、本法で聞いているわけですよ。これは一体どういう場合ですか。激しい抵抗というのはもう関係ない話なんです。

高田政府参考人 法律の立場から申し上げます。

 公海上の外国船舶に対する検査、旗国の同意をとるわけでございますけれども、これはまさに我が国としてその外国船舶に対して調べをするということで、その当該国の国の管轄権をへこますといいますか、我が国が検査をしても国際法上問題ないということで同意をとるわけでございます。

 ただ、先ほど来政府側から答弁をしておりますように、そういう事態であって、また船長の同意をとっても、通常想定はもちろんされませんが、万が一、船長の統制に服さないような船員が乗っているとか、あるいは、検査のところで承諾をしつつ、しかし実際に検査に入ってみるとそういうことがある、そういう可能性は皆無ではないというふうに考えております。

松野(頼)委員 いや、それは、旗国が同意をして、現場で暴れた場合には、海上保安庁は司法警察権を持っているわけですから、そこで逮捕すればいいわけじゃないですか。違いますか。自衛隊が何も出動する必要はないんじゃないですか。

 ちょっと今の答弁はまじめではないというふうに思うんですけれども、本法における海上保安庁では間に合わない場合というのをもう一回御説明いただけないでしょうか。

高田政府参考人 ですから、通常といいますか、基本的には想定はされないであろうと申し上げております。ただ、そういう私が先ほど申し上げたようなことが完全にないのかということについては、排除できないのではないかと申し上げております。

松野(頼)委員 だって、今回のこの本法で、自衛隊の出動の部分というのは唯一そこの条文しかないんですよ。でしょう。ですから、海上保安庁で間に合わない場合には自衛隊が出動するということになっているんですけれども、その間に合わないのみで、対応できない特別な事情というのがわからないんですよ。お願いします。

岩崎政府参考人 いろいろなケースが、これは想定ですから、ほとんど起こり得ないケースだと思いますけれども、今まで関係省庁で答弁されたほかに考えられるのは、例えばこの船が北朝鮮の便宜置籍船のような場合、第三国であって、それはもう同意をしました、しかし実際の乗組員はほとんど北朝鮮の人です、それで非常に激しい抵抗をします、こんな場合がないわけじゃないので、先生のおっしゃるとおり、これがケースとして本当にどれぐらいあるのかと言われれば、そんなケースが物すごくあると思っておりませんけれども、やはり万が一のことがいろいろあるので、法律としてはこういう規定が置かれた、このように理解しております。

    〔木村(勉)委員長代理退席、中谷委員長代理着席〕

松野(頼)委員 極めてわかりづらい部分なんですが。

 では、例えばこれで、この法律に合わない場合は、自衛隊法の海上警備行動を運用するというふうにも本来はできるんでしょうけれども、ただ、海上警備行動の方の性質を見ると、人命もしくは財産の保護または治安の維持という、ある意味では警察権的な部分があって、これが要は、長島委員も言っていた周辺事態的なものには当てはまらないのではないかと。実はどこにもぴたりと当てはまらない、集団安全保障的な部分も今回持っているわけですね。ですから、ぴたりとはまるところがないから、僕らもすとんと落ちないわけです。

 だから、本法は、では完全に自衛隊はもう出動はさせないということにして、でも、次の行ける法律もこれはなかなか非常に難しいという状況があるので、ここのところの文言が非常にわかりづらいんですね、私たちとしては。ここも、どういう場合には自衛隊、どういう場合には海上保安庁というのをやはりしっかり、ある程度線引きを明確にしていただきたいというふうに私は正直思っております。

 その延長線上なんですけれども、これも先週の金曜日に、これは資料をお配りしてございます。高見澤さんと浜田大臣の、これも若干食い違いがあるんですね。

 高見澤参考人は、自衛隊がこれを行うということはございませんというふうにお答えをしているんです。浜田大臣は、北朝鮮特定貨物を運んでいる船がいるときに、自衛隊が船舶を停止させ、そして貨物を検査することができるんですかということを平岡さんが聞いているんですね。これに対して大臣は、海上保安庁法にのっとって、その検査はできる、自衛隊ができるというふうにお答えになっているんです。

 大臣に伺いたいんですが、これは、本法に基づいて自衛隊ができるということですか。それとも、違う法律、自衛隊法にのっとってできるということですか。ちょっとお答えいただけないでしょうか。

浜田国務大臣 先生、その質問の先がまだまだ、一番重要なところがありまして、というのは、平岡先生から御質問があったときに、佐藤委員に対する政府参考人答弁において、自衛隊は海警行動において、自衛隊法九十三条により準用される海上保安庁法第十七条一項の立入検査が実施できない旨の答弁をしていたように聞こえたがそれを確認したいというのが、その前にあるわけですね。

 私がお答えしたのは、要するに、海上保安庁法によってはそれができる、だけれども、今回の本法によっては北朝鮮に対してはできないと。だから、高見澤局長が答弁したのと同じことでありまして、今回の本法の中では認められていないということで、要するに、海上保安庁、海警行動でやるときの立入検査はできますが、今回の法律によってはそれは認められていないということを言ったわけであります。

松野(頼)委員 すると、では、自衛隊は検査をできないということでよろしいんでしょうか。

浜田国務大臣 今回の法案ではできません。

松野(頼)委員 要は、今申し上げているように、上記禁止物品を輸送していると信じるに足りる合理的な理由があって、そして海上保安庁のみで対応できない特別な事情があっても、自衛隊は北朝鮮の特定物品に対しての検査はできないということですか。

浜田国務大臣 できません。

松野(頼)委員 だから、海上警備行動としてできるということですね。

浜田国務大臣 その際には、当然、この立入検査は、要するに、海警行動において立入検査をするということに関しては海上保安庁法に準用してできるということになりますけれども、しかし、今回の法律に対して我々が海上保安庁と同じようなことができると思っておりません。(発言する者あり)

松野(頼)委員 後ろでいろいろやじが飛んでいるんですけれどもね。

 だから、さっきの質問と同じなんですけれども、要は、海上保安庁のみで対応できない特別な事情があるときは自衛隊ができるというふうに法文上はなっているわけですね、自衛隊の要件として。だけれども、実際には、北朝鮮の特定貨物に対しての検査は自衛隊はできないということですか。

浜田国務大臣 そういうことです。

 我々、海上警備行動の範囲の中でしかできませんので、それ以上のことはできないと。

松野(頼)委員 いや、本法で書いてあるからですよ、ここに。本法では、海上保安庁では手に負えないときには自衛隊ができるというふうに条文は書いてあるわけです。だけれども、実際には、北朝鮮の特定貨物、旗国の同意があって、船長の同意があってもできないというお答えをいただいているわけですよ。そこは一体どうなんですか。であれば、この条文は要らないじゃないですか。

浜田国務大臣 ですから、我々とすれば、今回の法律というのは、あくまでも、それができない、海上保安庁ができない場合に、我々、海上警備行動、出すか出さないかも含めて判断をしろということでございますし、通常任務において我々のやっていることもあるわけでありますので。しかしながら、万一の場合が排除できないということであるならば、それは自衛隊が海警行動でやるということを書いているだけでありますので、我々とすると、今回の法律によって権限を付与されたところは一つもございませんで、通常の法律の中で対処していくということであります。

松野(頼)委員 これもさっき申し上げているんですけれども、海上警備行動も、その目的は、人命もしくは財産の保護なんですね、または治安の維持なんです。

 今回のこの北朝鮮の特定貨物の検査、国連決議一八七四の目的と、ここがやはり少しずれているような気が僕はするんですね、正直言って。人命もしくは財産の保護ではないですね。国内治安の維持でもないですね。ですから、ここが多分この法律の非常にあいまいなところだと私は思っているんですが、この海上警備行動で北朝鮮の荷物の検査はできるんですか、海上警備行動で。今度は逆に聞きます。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 松野委員の御質問は、自衛隊に海上警備行動が発令されれば、海上自衛隊は、この法律、つまり今度の新しい法律で規定する検査とか提出命令とか保管とか回航命令が行えるのか、こういうお尋ねだというふうに思います。

 結論から申し上げれば、万が一のケースでございますけれども、海上警備行動が発令された場合でしても、今回の法律でこういった検査等の措置を実施することはないということでございます。

 まず、その考え方を申し上げますと、海警行動が出される場合の権限というのは、自衛隊法の九十三条で準用しております海上保安庁法の十七条とか十八条とかそういったものでございますので、そういった形での立入検査は可能でございますけれども、この法案の検査というのは、我が国に寄港したり我が国の領海を通過したりする船舶に積載されている貨物であって、我が国の輸出入に当たらない北朝鮮特定貨物についての検査でございますので、こういったものとは根拠や目的が違うものでございます。

 したがいまして、仮に、自衛隊が海上保安庁法十七条に基づく形でいろいろな検査を行って、その結果、特定貨物を発見したということになっても、この法律の問題ということにはならないというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、自衛隊法九十三条で準用されるようなケースというのは全くないわけではないわけですけれども、それはまさに、天災事変等危険な事態がある場合で、人の生命もしくは身体に危険が及ぶなどの要件を満たす場合というのは、まさに、航路を変更させたり船舶を指定する場所に移動させるということができるように、これは、自衛隊法で準用しております海上保安庁法の中にあるわけでございますけれども、それと今回の法律で言っている回航命令というのは性格が違うものだというふうに理解をしております。

松野(頼)委員 ですから、ちょっとわかりやすく具体的に聞くと、例えば、これは北朝鮮の特定貨物を積んでいるのではないかというふうに考えた、そこの船に、旗国に同意を求めても同意をしなかったという状況で、では、その海上保安庁の船はどうするんですか。旗国は同意をしません、だけれども、これはもしかしたら北朝鮮の特定貨物を積んでいるという情報があった船ですといった場合に、海上保安庁はどうするんですか。

岩崎政府参考人 旗国の同意のない場合は、検査はできません。しかし、そうした船について、どういうところに行くのかどうか、追尾、監視をするというのも一つの手段だと思っております。

 具体的なケース、個々に応じて変わってくるかと思いますけれども、そうしたこともやることを念頭に置いて考えております。

松野(頼)委員 例えば、その犯罪要件が明確でなくても、追尾、監視というのはできるんでしょうか。

岩崎政府参考人 相手に対する権力的な行為ではございませんので、追尾、監視はできると思っております。

松野(頼)委員 では、例えば、自衛隊の船が、自衛隊がほとんど出動しないのかもしれませんけれども、さっきの回航命令が出るか出ないか、そういう船に、そういう物品を積んでいるであろうという情報があった船に出くわした場合に、自衛隊は何ができるんでしょうか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 自衛隊は平素からいろいろな警戒監視活動をやっておりますし、またいろいろな形で情報収集活動をやっておりますので、我々としては、平素からそういった、いわゆる大量破壊兵器なりミサイルの拡散につながるような各国の動向というのは常にモニターをしております。そういったものに対して、我々として、情報として関係省庁と共有する場合もあれば、いろいろな艦艇なり航空機を派遣してそういったものを監視するというようなことはあろうかと思いますので、常に所掌事務の範囲内でそういった活動をやっていく、しかもその情報を政府全体として共有していくというのが基本になろうかと思います。

松野(頼)委員 出くわした場合に、例えば旗国が同意しなかったという場合には、追尾、監視はできるんですか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 基本的には、もし今回の特定貨物の関係に当たるようなものがあれば、それは当然、政府全体として共有することになりますので、海上保安庁にも連絡をすることになろうかと思います。

 それから、一方において、私どもとしては、これが特定貨物に該当するようなものであるかないかということを問わずに、ふだんから監視なり追尾を続けていくべきものだというふうに考えておりますので、相手国に対して、その場で私どもがこの法律に基づいてそういったことを行うということはございません。もともとそういった権限はありませんので、我々としては、そういう状況を適切にフォローしていくということになろうかと思います。

松野(頼)委員 では、これも一つのケースなんですけれども、海上自衛隊に対してアメリカから、こういう船が北朝鮮を出発したようだ、出動をしてほしいという出動要請がもし来た場合にはどうされますか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 一般論で申し上げれば、まさにいろいろなこの辺の不穏な動きなりに対して、あるいは情報上非常に重要な関心を持つべき事案に対して、米側との間でいろいろな形で協力をしていくというのは当然のことだというふうに思いますけれども、もし御質問が、まさに今回の特定貨物というようなことの問題であるとすれば、先ほど申し上げておりますように、関係省庁が協力をするということでございますので、そういった情報については適切に関係の当局に伝える。例えば関税の問題であればそういうことになるでしょうし、海上保安庁なりにもいろいろな形で当然連絡が行くということになろうかと思います。

松野(頼)委員 その場合には、一義的に海上保安庁であるということで、海上保安庁が出動すると考えた方がいいんですか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 いろいろなケースがあると思いますので、一概に必ずこうなるということにはならないと思いますけれども、当然、それは海上保安庁なりがきちっと対応していただくのが基本だろうと思います。

松野(頼)委員 この辺が少し、どの法律でどういうふうに運用していくのかというのが非常に僕らとしてはわかりづらいので、幾つかこういう事例を挙げて御答弁を残していただいたということであります。

 ただ、実際には、それほど出動されるような法律なのかな、現実的にはほとんどないのではないかなというふうに正直思っているところであります。

 ただ、先ほども申したように、自衛隊法における海上警備活動、周辺事態法に基づく船舶検査法と本法と、やはり同じ海上の活動ということで、できれば少しきれいに整理をしていただいて、整合性をつけていただいた方がいいのではないかというふうに私は思っております。

 やはり安全保障の分野というのは、ある程度きちんと法律があって、国会があって、そしてそのルールに基づいて動くような、これは僕は絶対に必要なことだと思っておりますので、ちょっとここのところがそれぞれ帯に短したすきに長しで、ここにすぽっと入るわけでもない、ここにすぽっと入るわけでもないという状態で何か法律が何度も、幾つもつくられているというような感じを受けておりますので、ぜひこれはどっしりと正面からきれいな法整備をしていただきたいということをお願いする次第であります。

 若干時間は余りましたけれども、次の川内さんにバトンタッチをしたいと思います。ありがとうございました。

中谷委員長代理 次に、川内博史君。

川内委員 川内でございます。

 早速、関係の閣僚の先生方に、いろいろ疑問なことがございますので、聞かせていただきたいというふうに思います。

 まず、先ほど、うちの伴野委員の方から、核の持ち込みの密約の文書について、ある、あるいはないというやりとりが行われたわけでございますが、ちょっと私も聞かせていただきたいと思います。

 まず、日米安保条約第六条の実施に関する交換公文、これは岸・ハーター交換公文と呼ばれているそうですけれども、「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする。」こう書いてあります。

 この岸・ハーター交換公文をさらに詳しく解説したものとして、藤山・マッカーサー口頭了解というものがあるんだそうです。昭和四十三年四月二十五日に国会等に文書にて提出と書いてございます。

  日本政府は、次のような場合に日米安保条約上の事前協議が行なわれるものと了解している。

 一 「配置における重要な変更」の場合

   陸上部隊の場合は一個師団程度、空軍の場合はこれに相当するもの、海軍の場合は一機動部隊程度の配置

 二 「装備における重要な変更」の場合

   核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設

 三 わが国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設・区域の使用

こう書いてあります。

 非核三原則にかかわる部分としては、この藤山・マッカーサー口頭了解の「二 「装備における重要な変更」の場合」に当たるわけでございますけれども、「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設」、こう書いてあります。

 この持ち込みという言葉の定義について、日米両国政府間でどのような合意がなされているのかということについて御説明をまずいただきたいと思います。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員が御指摘になりました、岸・ハーター、いわゆる安保条約第六条の実施に関する交換公文の規定、それからいわゆる藤山・マッカーサー口頭了解からして、米軍による我が国への核兵器の持ち込みはすべて事前協議の対象となります。そして、この持ち込みの中に寄港、通過が含まれていることについては十分に明らかであるというのが日本政府の立場でありますし、また、日米両政府においてこのような考え方に違いはないというふうに考えております。

川内委員 その持ち込みという言葉の中には、寄港あるいは通過が含まれているというのは十分に明らかであると。

 これは、日米間で、この持ち込みという言葉の定義について文書を交わしているという理解でよろしいですか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 この安保条約第六条の実施に関する交換公文の中の「装備における重要な変更」の対象たる「同軍隊」とは、日本国に配備されているか否かにかかわりなく、日米安保条約の適用を受けるすべての合衆国軍隊、すなわち、日本に配置された軍隊、我が国の施設・区域を一時的に使用している軍隊及び領空、領海を通過する軍隊等、我が国の領域内にある軍隊を意味することは、この交換公文の文脈上、明らかであるということでございます。

川内委員 今の説明、私はちょっとよくわからなかったんですけれども、この持ち込みという言葉に寄港、通過が含まれているということが、日米両国政府間で文書で取り交わされているんですかということを聞いておりますが。

梅本政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、安保条約第六条の実施に関する交換公文、これはいわゆる岸・ハーター交換公文という、まさに安保条約と一体をなす取り決めであります。これは文書でございますが、その中に、「合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする。」というふうになっているわけでございます。

 ここで言う、第二の、「同軍隊の装備における重要な変更」というその「同軍隊」というのは、先ほど御説明をいたしましたように、日本の領域内にある、安保条約の適用を受ける軍隊ということでございますから、それが領海の中にいる、あるいは港の中にいるということであってもその「同軍隊」に該当するということでありまして、まさにこの交換公文の規定でそのようなことが明らかになっているというふうに私ども御説明をしているところでございます。

川内委員 三木内閣のときに、三木先生がここの持ち込みのところについて国会で御発言をされているということを聞いたんですけれども、どのように御発言をされているのかということをちょっと教えていただきたいと思います。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっとこの御質問については、つい先ほど御通告をいただいたものですから、私どもの調査が必ずしも十分でないかもしれませんけれども、三木内閣、これは三木外務大臣ですね。先ほど申し上げましたように、寄港、それから領海通過も事前協議の対象であるということを一貫して説明しているわけでございますが、これは、安保条約当時から、その中で、しかしながら無害通航に当たるものは一般国際法上認められているものであるから事前協議の対象ではないというふうに言っていたわけでございます。それで、安保条約の締結当時は、核搭載艦船がいわゆる我が国を無害通航する場合は、これは事前協議の対象ではないという説明を国会でもしていたわけでございます。

 ところが、昭和四十三年だったと思います。三木外務大臣のときでございますが、この無害通航についての政府の見解を変えたということでございまして、一九六八年以降、核搭載艦の我が国領海の通航はすべて無害通航とは認めない、したがって、そのようなものも事前協議の対象となるというふうに答弁をしているということではないかなと思ったんですが、ちょっと、必ずしも質問が十分にわかりませんので、そこだけは申し上げておきます。

川内委員 私は答弁がよくわかりません、今の。

 ごめんなさい、私が間違ったのは三木内閣ではなくて三木外務大臣がというところですけれども、三木外務大臣は、無害通航に関して、すべての航行が無害通航ではない、すなわち、寄港あるいは通過についても事前協議の対象となり得るのだという御答弁をされたというふうに聞いておりますが、それでよろしいですか。

梅本政府参考人 三木外務大臣が昭和四十三年四月十七日、衆議院の外務委員会で、外務大臣の所見という形で述べられております。その中で、「ポラリス潜水艦その他核兵器を常備しておる軍艦の航行は無害通航とは考えない。原則としてこれを許可しない権利を留保したいと思います。」というふうにお答えになっているということは、私ども承知をしております。

川内委員 昭和四十三年の四月何日ですか。もう一回言ってください。(梅本政府参考人「十七日」と呼ぶ)四月十七日。

 そうすると、昭和四十三年の四月十七日に三木外務大臣が、寄港、通過も事前協議の対象ですよという趣旨の国会答弁をしている。しかし、その一週間後、四月二十五日には、藤山・マッカーサー口頭了解で、持ち込みについて、持ち込みという言葉を使って口頭了解しているわけですが、それは寄港、通過が含まれているという日米両国政府の理解なんですか。何かちょっとよくわからぬですけれども、ちょっとそこを整理して……。

 いや、三木外務大臣が答弁が間違っていたんだ、当時の答弁が間違いだったのだというのであれば、そのように御答弁をいただきたいというふうに思いますし、終始一貫して、日米両国政府は持ち込みという言葉の中には寄港、通過は含まれていないのだということを最初から合意していたんだというなら、そのように御説明をいただきたいと思います。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、安保条約、それから安保条約第六条の実施に関する交換公文に言うところの「装備における重要な変更」が核持ち込みを指す、そして、その核持ち込みの中には寄港、領海通過も入っているんだということは、安保条約の締結時から一貫して御説明をしているわけでございます。

 ただ、その寄港、領海通過の中に無害通航のものがあり得るわけでございます。いわゆるちょっと我が国領海をかすめて通るような場合でございます。こういう無害通航については、一般国際法上認められているわけだから、これは事前協議の対象ではないんだということを、ずっと、昭和三十五年から説明してきたわけですが、昭和四十三年に、いや、そういうものもこれは無害通航ではないんだ、したがって事前協議の対象にするんだというふうにしたということでございますから、領海通過、寄港を事前協議の対象とする、その例外である無害通航の部分について政府の考え方を昭和四十三年に変えたということでございます。

川内委員 委員長、わかる。

中谷委員長代理 わかります。

川内委員 僕はちょっとよくわからないんですけれども、昭和四十三年に加えたんですか、変えたんですか。

梅本政府参考人 無害通航の範囲を、それまでは、核搭載艦船がいわゆる無害通航の形態で領海を通過していくようなものは無害通航だという立場をとっておりましたけれども、昭和四十三年の四月十七日以降は、そのようなものは、核搭載艦船がそういうふうに単に通過していくというものであっても、それは無害通航には当たらないというふうにしたということで、いわゆる無害通航の範囲を、政府としての考え方を変えたということでございます。

川内委員 わかった。事前協議の対象となる寄港、持ち込みもあれば、事前協議の対象とならない寄港、通過もある、そういうことですね。

梅本政府参考人 まさに、領海通過の中には無害通航に該当するようなものがあるということでございますので、そこについて、昭和四十三年以前は、領海通過であっても無害通航に当たるものは事前協議の対象ではなかったわけでございますが、昭和四十三年以降は、そのような通航が無害通航でないということに政府の見解が変わりましたので、その結果として、そうであればそれは事前協議の対象であるということでございます。

川内委員 だとすると、先ほどの、持ち込みという言葉は寄港、通過が含まれているというのは最初からの合意だというふうにおっしゃったけれども、何というんだろう、その最初からというのはいつからのことなんですか、最初からというのは。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 昭和三十五年一月十九日に日米安保条約は署名をしておりますが、まさに安保条約が署名し発効したとき以来、そのときからそうであるというふうに御説明をしているところでございます。

川内委員 今、いろいろ御説明いただいたわけですけれども、私でもすごくこんがらがるわけでございます。クリアに、日米両国政府の間で、こういう場合はこうだ、こういう場合はこうだというふうに何か書いておかないと、わけがわからなくなるんじゃないかなというふうに思うんです。そういう紙があるんじゃないかなというふうに思うんですけれども、やはりそれがないとわからなくなっちゃうと思うんですけれどもね。

梅本政府参考人 この点につきましては、安保条約そのものの御審議をいただきました、いわゆる安保国会以来、政府として、この安保条約、それから第六条の実施に関する交換公文、それからいわゆる藤山・マッカーサー口頭了解以外に何らの取り決めもないということを申し上げておるところでございます。

 先ほど、藤山・マッカーサー口頭了解について、昭和四十三年四月二十五日に国会等に、これは国会の御要請により文書の形で出したわけでございますが、これについては、もちろん口頭了解ということでございますが、それを、私どもの内容を国会に御提出をしたということでございます。

川内委員 いずれにせよ、先ほど伴野委員もおっしゃったわけですが、アメリカ側には、イニシャル入りの文書があります、それが公文書館に保管されていますと。日本側は、そんな文書などは存在しないのだということを繰り返しおっしゃっていらっしゃって、持ち込みという言葉の定義について、ちょっと私もこんがらがってよくわからない、いまだにちゃんと理解できているかどうかわからないんですけれども。

 そうすると、それを密約と呼ぶのかどうかは別にして、きちんと紙があるのだろうなということは想像にかたくないわけで、今後その紙が出てきたときに外務省は何とおっしゃるんだろうなとか、本当にちょっと心配をいたします。

 この問題を押し問答してもしようがないので、また次の機会に譲らせていただきます。

 北朝鮮の特定貨物の検査等に関する特別措置法について、次の話題として聞かせていただきます。

 先ほどから、海上保安庁による本法による特定貨物の検査、並びに、特別な事情の場合、自衛隊による海上警備行動による検査、それぞれ違うわけですけれども、まず聞かせていただきたいのは、そもそも、旗国の同意が必要なわけですけれども、北朝鮮から同意がとれるのか、北朝鮮が同意すると思いますかということをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 対象船舶の旗国が北朝鮮である場合ですけれども、これは同意を得るには、例えば、北京の大使館ルートを通じるなどいたしまして、北朝鮮側に同意を求めることになる、そういうふうに考えております。

川内委員 大使館を通じて同意をとることになると思いますという手続を今御説明いただいたんですが、北朝鮮が同意すると思いますかということをお聞きしております。

中曽根国務大臣 同意されるかどうかは、そのときにならないとわかりません。実際にそういう事態になって同意を求めてみないとわからないと思いますが、公海上における北朝鮮籍の船舶への検査などにつきまして、北朝鮮が同意を与えないといたしましても、安保理の決議の一八七四号に基づきまして、北朝鮮は、当該船舶に対し検査のために適当かつ都合のよい港に回航するよう指示する、そういう義務をこの安保理決議で負っているわけでございます。また、北朝鮮がそのような措置をとらない場合には、このような不作為について安保理に報告をする、そういうことになっているところでございます。

川内委員 いろいろなことが決まっているという御説明ですけれども、同意を求めた場合に国連決議では、どのくらいの間に返事をしなさい、あるいは、どのくらいの間に同意しない場合には船舶に対して指示をしなさいというふうに書いてあるんでしょうか。時間的制約があるんでしょうか。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 安保理決議の一八七四号の十二項でございますが、この中では、旗国の同意を得て公海上で船舶を検査することを要請する、それから十三項では、すべての国に対して、旗国が公海上の検査に同意しない場合には、旗国が、先ほど大臣も答弁されましたが、港に航行するよう指示することを決定する等々ございます。特に時間的な制約ということでは書いてございませんが、一般的に、我々、これは安保理決議に基づきます加盟国の義務でございますので、速やかに対応する必要があるというふうに理解しております。

川内委員 速やかに対応する必要があると理解しておりますと日本の政府が幾ら言ったところで、国連決議の中に、速やかに対応することを要請するとか速やかに対応することを決定するとか、そういうことは書いてあるんですか。

小原政府参考人 ただいまの繰り返しになりますが、安保理の決議の一八七四号の中には時間的な言及ということはございません。ございませんが、安保理決議につきましては、これはもう加盟国の義務でございまして、まさに安保理が加盟国に課している義務をしっかりと遵守するという観点から、当然ながら、こうした要請に対して速やかに対応する必要があろうかと思います。

 ちなみに、十六項におきましては、旗国の協力が得られない場合には、これは報告を委員会に対して速やかに提出するといったような表現もございます。

川内委員 報告は速やかに提出することを要請すると書いてあると思いますけれども、提出しなくてもいいんだと思いますが、同意を求められた国について、その同意について、どういうふうに返答する、あるいはどういうふうに船に指示をするということについての時間的制約は課されていないということでよろしいですね。

小原政府参考人 繰り返しになりますが、時間的な要請についての言及はございません。これは……(川内委員「はい、もういいです」と呼ぶ)はい。

川内委員 何で、国連決議を米国と一緒に日本が主導してつくったわけですけれども、速やかにという言葉を入れなかったんだろうなというふうに思うんですが、そこを御説明いただけますか。

小原政府参考人 国連加盟国として安保理決議を遵守するということは、これは加盟国の義務でございますが、今回の一八七四号の表現上では、要請する、コールズ・アポンということで、十一及び十二の規定に基づく検査に協力することを要請し、また、旗国がそれに同意しない場合には云々というようなことがございますので、そういった観点から御理解いただければと思います。

川内委員 私は、何で速やかにという言葉を入れなかったのか。入れればさらに、そもそも、この法律は、法律をつくること自体に価値があるわけですね、政府的に言えば。実際には、しかし、法律をつくったとしても、北朝鮮が同意をすることはないでしょう、実態としては、法律の効果は、法律をつくって、対話と圧力の圧力というものをしっかりと見せていきますよ、拉致、核、ミサイルを解決するに当たって圧力というものをしっかりかけていきますよ、そのための法律ですということになるんでしょうけれども、であれば、もうちょっと文言に、厳密に、あるいは北朝鮮に対して国連決議違反であるということを言いやすい、あるいは言えるような国連決議に、もうちょっと私は工夫をすることができたのではないかということを指摘させていただきたいというふうに思います。

 さらに、八条の旗国の同意というのは、条文三条二項一号の検査のための船舶の進行の停止を求めることは、検査に入るのか、入らないのかということを教えていただきたいと思います。

高田政府参考人 法案におきまして、船舶に対する検査については、船舶が北朝鮮特定貨物を積載していると認めるに足りる相当な理由があるときは、領海または公海においては、船長等の承諾を得て、検査のため当該船舶の進行を停止させ、当該船舶に立ち入り、貨物、書類その他の物件を検査し、または当該船舶の乗組員その他の関係者に質問すること等とされております。

 それで、狭義の、狭い意味での検査につきましては、今御指摘の第三条第一項第二号等にございますように、船舶に立ち入った上で貨物等に対して行われますけれども、広い意味の、広義の検査につきましては、第三条第一項第一号の船舶の進行を停止させる段階から始まるものと考えております。

 なお、領海または公海において必要な船長等の承諾につきましては、本法案では、法文上いずれも船舶への立ち入り以降に対して求められている要件でありますけれども、実際上は、船舶の進行を停止させる段階から始まる一連の措置に先立って得るということになると思います。

川内委員 済みません、確認させてください。検査のため当該船舶の進行を停止するよう求めることも検査である、同意を必要とする検査の一環であるということでよろしいですね。

高田政府参考人 まさに法案での要件としては、船長等の承諾というのは、いずれも船舶への立ち入り以降に対して求められる要件でございます。今先生がおっしゃいましたように、進行を停止するよう求めることというのは、実際にはその段階から始まる一連の措置ということで船長の承諾を得るということになると思いますけれども、まさに「求めること。」と書いてございますように、まず進行を停止してもらって、それから具体的承諾をとって立ち入るということになります。

 したがいまして、ちょっとまた重複をいたしますけれども、停止をするよう求めること自体が、承諾といいますよりは、一連のまさに措置に先立って、まずはとまってもらって、次いでこの法文上の要件として船長等の承諾を求めるということでございます。

川内委員 具体的なやり方として、北朝鮮特定貨物を積載しているのではないかということを合理的に疑われる船が航行している場合、大使館経由で同意を取りつけるための連絡をします、さらにその同意が得られるのか得られないのか、時間的には制約はありません、しかしその間にも船はどんどん進んで行きますと。そういうときに、ちょっと停止してくださいね、とまってくださいねということは言いません、言えませんと。そうするとその間は、海上保安庁は、当該疑いのある船舶を追尾している、ずっと追跡しているということになるわけですね。

岩崎政府参考人 基本的にそういうことになろうかと思っております。

川内委員 そうすると、ずうっと追尾していく、どのぐらい追尾しなきゃいけないのか、それはいろいろ具体的な事例にもよるんでしょうけれども、「海上保安庁のみでは対応することができない特別の事情がある場合において、海上における警備その他の所要の措置をとるものとする。」という第九条の規定などが生きてくるのかなというふうに思うわけでございますけれども、防衛省、それでよろしいんでしょうかね。

浜田国務大臣 先生のおっしゃるとおり、我々とすれば、しかしながら、海上警備行動を発令するその場合というのは、その都度その都度判断することになろうかと思いますので、特別な事情というものに対する考え方というのは、今この時点ではっきりしているわけではございません。

川内委員 具体的に自衛隊が何をするのかということに関して、いろんな場合が想定されるのでにわかには答えられないんだということは、全体像としては、世の中には森羅万象いろいろなことが起きますから、すべての想定を答えることはできませんが、例えばこういうことは考えられるよ、こういうことはちゃんとやるよというようなことはあろうかと思いますが、どうでしょうか。

浜田国務大臣 今回、海上警備行動というあれがありますが、我々、通常の活動の中で、領海そしてまた領空において我々の能力を使っていろいろな形で情報収集活動も行っているわけでありますので、基本的にはそちらの方で、ほとんどの部分、我々の任務の中でこなせるものと考えるところであります。

川内委員 そうすると、自衛隊の艦船あるいは航空機が、疑いのある船舶を、同意がとれるまでの間、海上保安庁の艦艇あるいは航空機とともに追尾するというようなことも十分に考えられるということでよろしいでしょうか、海上警備行動が発令されている場合。

浜田国務大臣 海警行動の発令された場合というのは、先ほど来お話がありますけれども、要するに、例えばそういった重装備のものに海上保安庁が攻撃を受けている場合とか、そういったことなのだろうというふうに思っています、一概にはそれは言えませんけれども。

 しかし、通常の監視体制の中でもやれることというのがありますので、特別の事情などというのは本当に万が一の状況だと私は思っておりますので、その点は、その場その場の判断ということになろうかと思います。

川内委員 今、攻撃を受けている場合というようなお話があったわけですけれども、そうすると、自衛隊の役割というのは、海上保安庁が意外に重装備な船から反撃を受けていますというようなときに、その場に大急ぎで駆けつけなければならない、あるいは時間的な余裕もないだろうというふうに思うんです。

 そうすると、この海上警備行動というのは、あらかじめ、こういう場合に海上警備行動を発令しますよという場合を想定して閣議決定をしておくという理解でよろしいでしょうか。

浜田国務大臣 先生、今回のこの法案に関して言えば、九条の第二項は、自衛隊が防衛省設置法や自衛隊法等の既存の関係法律の範囲内で活動することを確認的に規定したものでありまして、この規定によって自衛隊に新たな任務や権限を付与するものではありませんと今までお答えしてまいりました。このため、海上警備行動についても、当然のことながら、本法案の規定を根拠として行うのではなく、あくまでも自衛隊法第八十二条に基づいて行うことになります。

 他方、本法案に基づく検査等の措置については、海上保安庁によって対応可能であると考えておりまして、自衛隊に海上警備行動を命ずるような状況は基本的には想定をしておりません。

 このことから、本法案に基づく検査等の実施に関して、あらかじめ海上保安庁では対応できない特別の事情がある場合を特定した上で、個々の事案の発生時に、改めて閣議決定を経ることなく、より迅速かつ柔軟に内閣総理大臣の承認を得て海上警備行動の発令を可能とするような事前の閣議決定をしておくことについては、検討しておるところではございません。

川内委員 検討しておらないということなんですけれども、しかし、大臣、海上保安庁の船が物すごい攻撃、反撃を受けているときに、これは大変だ、閣議を招集して閣議決定をしましょうというのでは、それから出かけていきましょうというのでは、全然間に合わないということになると思うんです。

 大臣が唯一具体的な海上警備行動の、本法における、海上保安庁のみでは対応できない場合として挙げられている、意外な反撃を受けている場合ということについて、その意外な反撃を受けた時点において、それから閣議決定をしたのでは間に合わないというふうに私は思うんですけれども、事前に、こういうときは出動しますよ、海上警備行動を発令しますよということをあらかじめ閣議で決定をしておいて、後は防衛大臣の判断であるというのが本法における自衛隊の行動としての合理的な行動ではないかというふうに私は思いますが、いかがですか。

浜田国務大臣 不審船の事案等々でも今までそういった形でやらせていただいておりますので、改めてそれを閣議決定しておく必要というものに対しては、私とすればその必要はないというふうに思っておりますし、先ほど来申し上げておりますように、通常の監視体制の中で我々もそういったものを常に確認しておりますので、今の時点でそういったことを検討することはないと思っております。

川内委員 もう一点。

 自衛隊が、万々々が一海上警備行動が発令されて、海上保安庁法を準用する形での立入検査をいたしましたと。その場合に、たまたま本法に規定する北朝鮮特定貨物を発見してしまいました。そうすると、それについてどうするかという権限は付与されていないわけでございますけれども、しかし、法律はすべての日本国民を拘束するわけでございますので、たまたま、わっ、これは北朝鮮特定貨物だということになりました。

 そうすると、自衛隊としても、この条文に書いてないわけですけれども、「海上における警備その他の所要の措置をとるものとする。」と書いてあるわけですが、「その他の所要の措置」というところの中に、海上保安庁長官に、北朝鮮特定貨物を発見しましたよ、しかるべき対処をしてくださいねという報告も入っているという理解でよろしいんでしょうかね。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のケースがどのような場合かということを一般的に考えてみますと、最初に海上保安庁が対応しているというのが前提にあるわけでございますので、そういう場面で海上自衛隊がそれに対して協力をするというようなことになりますので、その結果、もし発見したような場合には、そこで当然海上保安庁と自衛隊の協力関係があるわけでございますので、いわばシーン別に対応ができるのではないかというふうに考えております。

    〔中谷委員長代理退席、委員長着席〕

川内委員 第九条第一項には「関係行政機関は、第一条の目的を達成するため、相互に緊密に連絡し、及び協力するものとする。」と書いてあって、第二項に、自衛隊だけを抜き出して、「自衛隊は、」「海上における警備その他の所要の措置をとるものとする。」と書いてあって、海上保安庁にきちんと協力するよと。たまたま発見してしまった場合にはこうしますよというようなことが書いてないわけでございますけれども、それはちゃんと書くべきではなかったのかなというふうに思いますが、どうですか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 具体的にどのような規定の仕方をするかというのはいろいろ幅があるかとは思いますけれども、第九条第一項におきましては関係省庁の協力というのを書いてございますし、また、この関係省庁の中には、防衛省・自衛隊のみならずほかのいろいろな省庁が入っているわけでございますので、そういった協力体制を生かして政府全体として対応すべきというのが、まさに九条一項の趣旨でございます。

 しからば、九条二項ということについて、こういう規定があるということはどういうことかといいますと、やはり海上保安庁では対応できないようなケースということもあるということで、いわば自衛隊の実力組織としての側面が出ている部面でございますので、それについて確認的に規定をしているということで御理解いただきたいと思います。

川内委員 官房長官、この法律の中に北朝鮮という言葉が出てくるわけですが、この北朝鮮という、この法律の条文上の言葉は一体何を意味するのかということをちょっと教えていただけますか。

河村国務大臣 これは、安保理決議の一八七四に基づいた措置であるというふうに思います。

川内委員 この北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法、「この法律は、北朝鮮による核実験の実施、大量破壊兵器の運搬手段となり得る弾道ミサイルの発射等の一連の行為が」と目的が、第一条、始まっているわけでございますけれども、我が国は北朝鮮を国家として認めていないわけですね。そうすると、条文で言う北朝鮮という言葉は一体何を意味しているのかということをちょっと教えていただきたいんです。

河村国務大臣 北朝鮮は、国交は持っておりませんが、国連加盟国として認められている国であることは間違いないわけです。

 今回の北朝鮮という言葉は、安保理決議に基づいて、その前に、御指摘のように、核実験をやった、ミサイルを発射した、これまでの安保理決議違反も犯してきた、さらにその上に安保理決議がなされた、これに対する措置でありますから、この安保理決議一八七四号を実効あらしめるための措置としての北朝鮮特定貨物、これはまさに、ミサイル関連物資等々、大量破壊兵器物資等々を持っている北朝鮮に仕向けたり、北朝鮮が持っているであろう、また北朝鮮に利するであろう、そういうものに対する措置という意味での北朝鮮という国であります。

川内委員 そうすると、ここで言う北朝鮮というのは国家のことなんですか。

河村国務大臣 北朝鮮は国家の意思としてあのような実験をやった、それが安保理決議で規定をされた、こういうふうに理解しております。

川内委員 ちょっともう一回、官房長官、北朝鮮という言葉は北朝鮮という国家を意味するのかどうかということを御答弁いただけますか。

河村国務大臣 日本の国は、先ほど御指摘のように、国交を持っておりませんから、国としての規定はございません。しかし、この場合の北朝鮮は、国連に加盟している国の北朝鮮、こういう意味であります。

川内委員 ありがとうございます。

 この法律は、私は、つくることに、制定をすることに意味はあるというふうに思います。ただ、北朝鮮は絶対同意しないでしょうから、実効性としてはそれほど大きなものにはならないでしょうが、対話と圧力の方の圧力という意味において意義を有するものではないかというふうに考えます。

 ちょっと残された時間で、この間たびたび私が取り上げております、実は、我が国の平和と安全に我が国政府は最も注意を払っていらっしゃってこの法律も出てきているわけですが、もう一つ、我が国の平和と安全を守るはずの米軍の戦闘機が我が国の国民の安心と安全を脅かしている問題について質問いたします。

 私の地元である鹿児島県十島村トカラ列島の小宝島の小学校の上空を、再三再四、超低空飛行で軍事訓練を行っている米軍戦闘機の問題について、昨年十一月十四日の国土交通委員会から通算四回、最近では七月一日の外務委員会で質問をし、その都度、外務省には米軍に対して申し入れを行っていただいております。

 平成十一年一月十四日の日米合同委員会、日米地位協定に基づいてつくられている日米合同委員会の合意の中には、学校や病院については妥当な考慮を払う、あるいは、小学校の上なんかは絶対飛びませんというふうに書いてあるわけですけれども、これは何回もやるんですよ、官房長官。何回言っても、もう何度でも飛ぶわけです。

 実は、七月一日の私の質問の直後の七月七日に、午前と午後の一日二回、午後の方は今までで最もひどい超低空で、しかも戦闘機が反転して、これを繰り返しながら、いわゆるきりもみというんですか、をしながら、高度百メートルぐらいを、小学校の上空をフルスピードで飛行したという、小宝島の皆さんの報告を受けております。

 外務省、七月七日の事実関係について御報告をいただきたいと思います。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 川内議員からの御照会を受けまして、米側に事実関係を確認いたしましたところ、確かに、お尋ねの日時に米軍機は鹿児島県小宝島上空を飛行した、ただ、平成十一年一月の低空飛行訓練に関する日米合同委員会合意で適用されている最低安全高度は守っていたという回答があったわけでございます。

 これに対しまして、私どもは米側に対して、合同委員会合意で、その低空飛行の間、学校や病院等、公共の安全に妥当な考慮を払うこととされておるということでありますので、その辺が本当に的確にされていたのかということを含め、改めてきちんと検証してほしいというふうに申し入れをしているところでございます。

川内委員 いや、改めてきちんと検証してほしいということではなくて、高度とか飛行している姿勢についても確認をされましたでしょうか。

梅本政府参考人 お答えいたします。

 飛び方の具体的な詳細については、必ずしも、私どもは、今伺ったような詳しい説明を受けておりませんけれども、最低安全高度は守っていた、確かに上空は飛んだという説明は受けておるところでございます。

川内委員 確かに上空は飛んだというのであれば、その日米合同委員会合意に違反しているではないかと、小学校の真上を飛んでいるわけですからね。まず、日米合同委員会合意に反していますよということはお伝えいただいていますか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、具体的に真上を飛んだのかどうかというところまでは確認しておりませんけれども、今御指摘ございましたように、合同委員会合意で、公共の安全に妥当な考慮を払う、したがって、学校、病院等の上は飛ばないというふうになっているわけでございますので、そこは、今までもいろいろと、確保するために米側においていろいろな措置をとっているというふうに聞いておりますけれども、これは、もう一度、厳格に、そういうことのないようにきちんとやってもらいたいということをかなり強く先方には申し入れるところでございます。

川内委員 いや、強く申し入れてもらうんじゃなくて、まず遺憾であると遺憾の意を伝えていただきたいと思いますが、それは伝わっているんでしょうか。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、学校の真上を飛んだかどうかということは必ずしも確認できておりませんので、そういう意味では、そういう前提で遺憾の意を表明するということはしておりませんけれども、仮にもそういうことがあれば、まさに合意との関係で非常に問題でありますので、そういうことがあったのかなかったか、まずきちんと検証して、それからさらに、これから、むしろ、いろいろな飛行経路とか飛び方というようなことについては絶えずアメリカ側も検証しながらやっておりますので、そういう中で、きちんとやはり、この公共の安全に妥当な考慮を払うということを徹底してもらいたいということを強く申し入れているところでございます。

川内委員 いや、そういうことではなくて、まず、事実関係を確認していないというのはどういうことなんですか。

 私、小学校の真上を高度百メートルぐらいで飛んだそうですと。それは、小学校の先生方に確認してくれればすぐわかる話じゃないですか。そうすると、それを米側に伝える、遺憾の意を表する、お伝えする、あんたたち、ちゃんと守ってないじゃないかということを言っていただくのが当然の外務省としての責務であるというふうに思いますが、なぜそれをされていないのか。外務省というのは、米側が言うことだけを聞いて、ああそうですかというのが仕事なんですか。

梅本政府参考人 先ほど来申し上げているとおり、先方からは、小宝島の上空は飛んだ、ただ最低安全高度は守っていたという回答があったわけでございます。

 ただ、このような小さい島でございますので、その上を飛べばかなり学校の近いところを飛ぶことにもなりますので、そういう意味で、私どもとしては、この公共の安全に妥当な考慮を払うという合同委員会の趣旨を徹底してもらいたいということで、自後、これから低空飛行訓練をやはり全体としてはどこかでやらなければなりませんけれども、それをやるに当たって今まで以上に気をつけてほしいということを強く申し入れているところでございます。

川内委員 いや、そもそも、この日米合同委員会合意の、今、最低安全高度は守っていた守っていたと、何かいかにも金科玉条のようにおっしゃっているが、この最低安全高度というのは、官房長官、百五十メートルなんですよ、百五十メートル。この小宝島の七月七日は百メートルぐらいだったと言うんですよ、学校の先生が。上空百メートルとか百五十メートルを戦闘機が裏返しになってばあっと飛べば、これはこの世のものとも思えないですよ。そんなことを、最低安全高度は守っていました守っていましたと、何かいかにも正しくやっていますみたいなことを御答弁されるわけですけれども。

 では、そもそも最低安全高度というのは航空法八十一条で定まっているわけですが、それは、ヘリコプターとか遊覧飛行をするちっちゃな飛行機が飛行するときに安全に飛んでくださいねという意味で定められている最低安全高度であって、国土交通省は航空法八十一条でこの最低安全高度というのを定めているわけですけれども、ヘリコプターや遊覧飛行をする飛行機のことを主に想定しているのであって、軍用機、しかもジェット戦闘機が裏返って飛ぶようなことまでその航空法八十一条では想定していないということで、国土交通大臣、よろしいでしょうか。

深谷委員長 前田航空局長。

川内委員 いや、国土交通大臣、よろしいでしょうか。(金子国務大臣「法律の解釈でしょう」と呼ぶ)いや、解釈じゃなくて、政府見解です。

深谷委員長 今、委員長が指名しました。前田君。

前田政府参考人 航空法八十一条の条文の考え方について御説明させていただきたいと思います。

 先生の御指摘の航空法八十一条、これは飛行中の航空機、これに何らかの異常が生じた場合に、できるだけ損害が少ない地点に不時着が行えるように機長に余裕を持たせるために設けられた規定でございます。

 したがいまして、通常の航空会社の航空機、こういったものが最低安全高度付近を飛行するということは離着陸時を除いて想定しにくいということでございますし、先生がおっしゃいましたとおり、この規定は、取材あるいは遊覧飛行を行うヘリコプターなどが行う低空飛行の安全性を確保することを主な目的としているものでございます。

川内委員 ヘリコプターなどを想定して定められている高度を守っている守っていると。そもそも、そういう言い方をすること自体が国民に対するごまかしであって、委員長、ジェット戦闘機が高度百五十メートルで真上を飛んだときの恐ろしさ、私も経験しましたけれども、これはこの世のものとも思えないですよ。それで、いや、守っています守っていますと、そんなことを言われた日には、この国の外務省は一体何をやっているんですかということになるわけでございます。

 この日米合同委員会の合意、「在日米軍は、国際民間航空機関や日本の航空法により規定される最低高度基準を用いており、低空飛行訓練を実施する際、同一の米軍飛行高度規制を現在適用している。」こう書いてあるわけですけれども、そもそも、この最低高度基準というのはヘリコプターを想定しているわけですから、そんなものを使用していると堂々と合同委員会合意で言っていること自体が、もう大変な自己矛盾、国民に対する背信行為であると私は思いますよ。

 自衛隊の戦闘機などは、飛行訓練を行うときに、低空飛行訓練を行う場合においては国土交通大臣に申請を行うわけですけれども、「遵守事項」として、飛行経路については、「市街地、学校、病院、原子力施設、有形重要文化財指定構造物及び石油コンビナート地帯の上空は、飛行しない。」こう、日本の自衛隊は立派ですから、そんなことはしませんというふうにちゃんと言っているわけです。そうですね、防衛省。

徳地政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、自衛隊の戦闘機が最低安全高度以下の高度で飛行する訓練を行う場合には国土交通大臣の許可を受けるわけでございますけれども、飛行場の上空でありますとか演習場の上空、そういうところは飛ぶことはございますけれども、その他のところでいわゆる最低安全高度以下の高度で飛行する訓練というものは実施をしておりません。

川内委員 この申請書にも、住宅地の上空は飛ばない、市街地や学校や病院の上空は飛行しない、こう書いてありますね。そういう申請を出しますね。もう一回、ちょっと時間がないので、早く。駆け足でお願いします。

徳地政府参考人 いろいろな場合がございますけれども、そのようなことを書くということが通例でございます。

川内委員 外務大臣、自衛隊の戦闘機は、今申し上げたとおり、こういうふうに、住宅地や学校やそういう上は飛ばないと。米軍の戦闘機も、米軍本土においては、この前、外務委員会で外務大臣も聞いていらっしゃったと思いますが、砂漠地帯などのレストリクテッドエリアを設けて、そこで戦闘訓練を行っていますと。住宅地の上なんかを低空飛行訓練なんかしないわけですよ。

 ところが、日本の上空では、外務大臣の御地元でも米軍戦闘機がぶんぶん飛ぶということが起きている。これは、日米合同委員会合意をしっかり見直して、日米合同委員会というのは分科会が下にいっぱいあるわけですけれども、この低空飛行訓練については分科会さえ置いていないんです。平成十一年に、とりあえずヘリコプターを想定した最低安全高度を守りますよという合同委員会合意をしただけで、それ以降、何にもしていないわけです。そんなことでいいんですか、外務省、外務大臣。

 ぜひ、船舶検査も大事ですけれども、日米合同委員会で、最低安全高度じゃなくて、そもそも米軍の戦闘機の日本国内における飛行訓練について、もう一度しっかり議論しますということは御答弁をいただかないと、私ここは、恐らく本国会で最後の質問なので、ちょっと離れられませんよ、この席を。

中曽根国務大臣 先ほどから委員と政府参考人の間でやりとりがありますが、安全面に最大の配慮をするということはもう言うまでもないことでありまして、外務省としても政府としても、米軍には再三そのことについては申し入れをしているところでございます。

 七月一日の衆議院の外務委員会での委員からの御質問に対しまして、私は同様の御質問に対してお答えしたんですが、住民の皆さんに対する騒音、爆音、こういうものの被害をできるだけ少なくする、安全面にも注意を払ってやるにはどうしたらいいかということを私どもの中でもよく検討していきたい、そういうふうに思っております。

川内委員 やはり残念ですよ、こんな答弁では。物すごいことですよ。他国の軍隊の飛行機が、生活している上を、子供たちの上を、しかもあざ笑うように反転して飛ぶんですよ、高度百メートルを。それを、いや別に、安全面に配慮しています、これから政府部内で検討します、そんなことぐらいしか言えないようだから、私は、今の政府は国民の中から不信任を突きつけられるんだと思いますよ。

 しっかり議論すると。我々が政権をとったら、あっという間にきちんと米国と議論して、あっという間に日米合同委員会合意を変えるということを申し上げて、終わらせていただきます。

深谷委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 先週に引き続きまして、きょうはこの法案が想定する公海上の船舶検査とはどういう活動なのかという点について、一つ一つ順を追って聞いていきたい、このように思います。

 法案では、北朝鮮特定貨物を積載していると認めるに足りる相当な理由があるとき、船舶検査を実施できるようになっております。

 まず、そういう疑いのある船舶に関する情報、これはどこから入ってくるんですか。そして、だれが、どのようにして入手するんですか。

高田政府参考人 認めるに足りる相当な理由があるときというのは、北朝鮮特定貨物を積載していることについての具体的な情報がある場合をいいます。

 そういう情報源といいますか、情報の入り方についてはいろいろなケースがあると思います。外国の関係当局から入ってくる場合、あるいは我が国の関係省庁が収集をした情報、そういうことがあると思いますけれども、その船舶の仕向け港、仕出し港、それから貨物の内容等、そういう情報を合理的に判断して、まさにその船舶が北朝鮮特定貨物を積載していると認めることが相当である場合を指します。

赤嶺委員 もうちょっと具体的にお聞きいたしますけれども、今回のカンナム号のケースを見てもそうですが、実際には、アメリカが禁止物品を積載した疑いのある船舶に関する情報を入手して日本に提供することが考えられるわけですが、そういうことですね。

高田政府参考人 外国の関係当局からもたらされる場合もあるということで申し上げましたけれども、米国あるいは米軍との情報交換で入ってくるというのもそのうちの一つであり得るかと考えております。

赤嶺委員 そうした、米軍が疑いのある船舶に関する情報を得た場合、その情報が政府に寄せられるときは、我が国政府のどの機関に寄せられるということになりますか。

高田政府参考人 米国の有する情報が我が国に来るという場合、一つは軍から防衛省ということもあるかもしれません。また、外交ルートで外務省を経由してということもあろうかと思います。その他の可能性も排除はできないと考えます。

赤嶺委員 今、情報の寄せられ方、つまり積載していると認めるに足りる相当なという点についての情報の問題について聞いたわけですが、情報を得た後、法案にある相当な理由があるときに当たるかどうかを判断することになると思いますけれども、その判断はだれが、どのようにして行うのでしょうか。何をもって相当な理由があると判断するということになりますか。

高田政府参考人 いろいろなルートを通じて情報がもたらされるわけでございますけれども、そこで、相当な理由の有無ということについては、関係省庁間で緊密に連絡をしつつになりますけれども、法案におきましては、海上においては海上保安庁長官、それから、我が国の港及び空港それから保税地域でございますけれども、そこにおける貨物については税関長が判断をするということになっております。

赤嶺委員 安保理決議一八七四を見ますと、禁止物品のリストを制裁委員会が作成することになっています。そのリストが作成されない限りは違反物品も定まらない、つまり、この法案による船舶検査もできないということですか。

高田政府参考人 制裁委員会におきます物品の指定を受けまして、私ども、この法律にありますように北朝鮮特定貨物を政令で定めるということにしておりますので、まさにその政令をまずつくる必要がございます。

赤嶺委員 つまり、制裁委員会でリストがつくられない限り政令もつくれないという理解でよろしいですか。

高田政府参考人 まさに制裁委員会でそういう具体的な対象品目の指定というものがなされて、それを受けまして、政令の作成あるいは将来的に改正とか、そういう作業においてしかるべく反映をしていくということでございます。

 既に物品の大枠といいますか、そこにつきましては、核関連、ミサイル関連その他の大量破壊兵器関連の物資、武器その他ということでございます。あとは、具体的な指定というものを見て、それを政令に反映させるということでございます。

赤嶺委員 なかなか具体的な物品も定まっていないようであります。

 ただ、そのリストが作成されて、政府が、相当な理由がある、このように判断するケースがあった場合には、すべからく海上保安庁に出動を命じるということになるんでしょうか。それとも、まずはきちんと、関係国の情報の共有が大事だと思いますが、そうした情報提供は行うんでしょうか。

 それから、船舶の行き先の見当がつく場合に、その国に情報を提供して、その結果、その国が入港禁止の立場を明確にした場合はどういう対応になっていきますか。

高田政府参考人 ケース・バイ・ケースと申しますか、個々具体的な状況というのは種々あるのだろうと思います。

 例えば我が国が情報を持ち、直ちに我が国が行動するというような、何か一つのことが決まっておってほかのことを後からするというよりも、恐らく、関係国との情報交換、あるいはどういうふうにやるかというようなことの国際的な協調といいますか連携というのは、同時並行的に行われていくのではないかと思います。

 それから、行き先がある程度わかって、その行き先と思われる国が入港を拒否ということでございますか。その場合に、引き続き関係国が連携をしてその船の動向を監視するといいますか、追跡、追尾をするということだろうと思います。それでまた別の国に入るというようなことになれば、その国とも情報交換をいたしますし、その国に入れば、その国がきちんと検査をするということが要請をされておるわけでございます。

赤嶺委員 監視、追尾についてはまた後で少し質問をしますけれども、疑いのある船舶の付近に米軍艦船が展開して、米軍自身がその船舶に対処する場合に、自衛隊が何らかの支援を目的に出動することはあるんでしょうか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 先生の御質問のケースが具体的にどういう状況になっているのかというようなことはあろうかと思いますけれども、一般的に、この九条一項に言っておりますような関係省庁の協力というのは、平素から必要な所掌事務の遂行のための活動をやっているということでございますので、それが特定貨物かそうでないかということと関係なく、我が国の安全保障に必要な情報収集活動を行うというようなことでございます。

 そしてまた、そういった情報収集に当たりましては、関係国との協力関係というのも当然前提になっているわけでございますので、それが特定貨物かどうかということに関係なく、自衛隊がその情報収集をしたり、そのための監視活動をやっているということは十分あり得るところだというふうに思っております。

赤嶺委員 カンナム号の場合、米軍のイージス艦が追尾をしていたわけですが、そのときは自衛隊のP3Cは出動していたんですか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 自衛隊の運用に関係することに関して、カンナム号との関係で具体的にどういう活動をしていたかということになると、またいろいろな問題があろうかと思いますけれども、今回のカンナム号の追尾のために、米軍と協力をして、そのための活動、それをまさに目的とした活動を専ら行っていたというようなことはないと承知をしております。

赤嶺委員 何かだんだん出席者も少なくなってきているようですが、質問は続けたいと思います。

 政府が、公海上で船舶検査を行う方針を決めて、海上保安庁を出動させたとします。公海上で検査を行うためには旗国の同意が必要とされております。

 まず、北朝鮮船舶の場合ですが、恐らく旗国の同意は得られないはずであります。その場合には、この法案によってどういう対応をとることができるんでしょうか。

高田政府参考人 まず、北朝鮮ということで、北朝鮮が旗国として同意を与えないということであれば、次に、これは北朝鮮がその当該船舶に対しまして検査を受けるために適切かつ都合のよい港に航行するよう指示することを決定する。したがって、北朝鮮に義務が生じておると思います。

 これも恐らくそういうことをしないのだろうと思いますので、先ほど外務大臣も御答弁をされましたように、そういう義務の不履行あるいは不作為ということについて、国連安保理のもとの制裁委員会に通報をされるということでございます。

赤嶺委員 そうすると、旗国の同意が得られないで、適当な港に航行するようなこともしない場合には、日本ができるのは国連安保理に通報すること。それ以外のことはないわけですね。

高田政府参考人 それ以外にも、その船舶の動向を引き続きフォローするということがございます。

 それから、どこか違う国の港に向かっているというようなことであれば、その向かっている国に対して情報の共有をする。そうすると、その国が検査をする、あるいは検査をしない前には燃料の供給等はしない。そういうことによって、北朝鮮とそれ以外の国との間で禁止されている物品の流れが徐々に絞られていくということになると思います。

赤嶺委員 旗国の同意が得られない場合に、先ほどから出ているお話についての確認ですが、追尾など何らかの対応を行うことを国連安保理決議一八七四は要請しているのでしょうか。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 追尾ということでは具体的な言及はございませんが、これは、すべての国に対してその検査に協力することを要請するという文言がございます。

 また、カンナム号の件が出ましたが、このカンナム号につきましては、例えばこの決議の十七項に、加盟国は、その禁止されている物品を運搬していると信じる合理的根拠があることを示す情報を有する場合には、北朝鮮の船舶に対する燃料もしくは物品の提供等の供給サービスの提供またはその他の船舶の保守に係る役務の提供を禁止することを決定するというような言葉もございまして、これは加盟国がこの決議のもとで連携協力をしてこうした事態に対応していくということが書かれております。

赤嶺委員 追尾というのは安保理決議では要請されていないわけですね。

 次に、便宜置籍船について聞いていきます。

 第三国の船舶が北朝鮮特定貨物を積載している場合、これは便宜置籍船にですね、先週の審議の中で政府は、旗国の同意を得ることによって日本が執行管轄権を行使できるようになる、このような説明をされておりました。旗国の同意が得られたならば、日本が全面的に執行管轄権を行使できるんですか。それとも、それには限界があるんですか。この点について説明してください。

高田政府参考人 同意の範囲内でそこは執行管轄権を我が国として及ぼすということでございます。

 具体的に、法案第八条でありますが、第三条第二項の規定による検査または第四条、これは提出命令でございます、もしくは第六条の規定による命令、回航命令でございますけれども、それぞれ旗国の同意をとってするということになっております。同意がとれれば、その範囲において我が国が執行管轄権を行使できるということでございます。

赤嶺委員 済みませんが、今の範囲内について具体的に説明された件をもう一度、ちょっと念入りに説明してくれますか。

高田政府参考人 まさに、この国連決議が要請をしている検査、それから我が国のこの法律での検査、それから押収、処分ということを実効あらしめる提出命令、回航命令ということを、それぞれ旗国の同意をとりますので、まさにその範囲ということであります。

赤嶺委員 そうすると、その都度、旗国の同意をとるということですか。

 アメリカが、PSIの活動では、二〇〇四年以降、パナマやリベリアなどの便宜置籍船国九カ国と乗船協定を結んでいると聞いております。大量破壊兵器を積載している疑いのある船舶に対して、乗船する際の条件を定めた二国間協定になっておりますが、要請から二時間以内に同意を得て、米軍が乗船できることなどがあらかじめ合意されているわけですが、アメリカがPSIで便宜置籍船の九カ国と結んでいるような協定を日本は結んでいるのか、これから結ぶのか、それとも、その都度、旗国の同意を得てやるということになるのか、ちょっと答えてください。

中島政府参考人 御指摘の、まず米国の乗船協定の話についてお答え申し上げます。

 特に公海上の乗船、立入検査に伴います一般国際法上の制約を克服すべく、アメリカは二国間の乗船協定を締結しているものと承知しております。細部についての詳細は承知しておりませんが、米国は、幾つかの国とこういう協定を締結していると承知しております。

 御指摘の、では我が国が同じような協定を結ぶかどうかということでございますけれども、この点につきましては、現時点でそういうような考え方を政府がとっているということはございません。

赤嶺委員 その都度、旗国の同意を得なければできないということだろうと思います。

 それで、その範囲内で何ができるかということなんですが、アメリカの乗船協定を見てみますと、対象海域や検査をする際の武器使用、それから死傷者や損害が発生した場合の補償のあり方などについて具体的に規定しております。

 こういった点について、具体的に旗国から委任された範囲内に限って日本が執行管轄権を行使するということ、これは許されるんですか。

中島政府参考人 米国が結んでおります二国間協定の細部につきましては、政府としても必ずしも全体像を承知しておりませんけれども、一般的に申し上げますと、相手国からの乗船同意の要請に対しまして、一定時間以内に回答がない場合、一定の物資の拡散等、協定の対象とした行為に関与している疑いのある自国の船舶について、相手国、先生御指摘の場合はアメリカによることになろうかと思いますけれども、乗船、捜索等を受けることなどを定めているものと承知しております。

赤嶺委員 ですから、乗船する場合にはかなり危険な事態も想定され得るわけですね。それでアメリカは乗船協定を結んで、その中に出ているのが、対象海域や検査をする際の武器使用、死傷者や損害が発生した場合の補償のあり方、こういうのが入っているわけですが、日本も、旗国の同意を得て執行管轄権を行使するという場合に、こういう点についても、それが旗国から委任された範囲内ということになるのか、そういうことをやるのか、これを聞いているわけです。

高田政府参考人 旗国の同意を取りつける手続あるいは形式ということについて、一般国際法上で定まった規則あるいは慣行、そういうものはございません。今回の安保理決議にも言及はないわけでございます。ただ、当然、旗国から同意を取りつける際には慎重にやらなければいけない、慎重かつ明確にやらなければいけないと考えております。

 この法案で、検査それから提出命令、回航命令がございまして、その後、回航命令等に従わない場合の罰則という規定もございますので、そこは、我が国が旗国の同意をとる場合には、そういうことを明確に説明をした上で同意をとる。したがって、そういう同意がとれれば、まさにその同意の範囲内で、この法律に書いてあることは我が国としてできるということでございます。

赤嶺委員 それで、もうちょっと踏み込んで聞いていきたいんですけれども、政府が旗国の同意を得て、海上保安庁が現場海域で疑いのある船舶の船長に対して停船を命令し、停止しない場合は威嚇射撃もできる、こういうのを事前の説明で聞いておりますが、それはどういう根拠でできるんでしょうか。そこまで日本の管轄権の範囲に入るんですか。旗国の具体的な同意を得なくても、そういう対応は認められるということになるんですか。

高田政府参考人 当然、そういうことも含めて、旗国からは慎重かつ明確な形でとらなければならないと思います。旗国が、命令違反の場合に犯罪になるということを、もし同意をしないのであれば、旗国としてそれは同意を与えないということになろうかと思います。

赤嶺委員 そうしますと、旗国の具体的な同意がない限り、そういう武器使用は日本はできない、そういうことですね、威嚇射撃も含めて。

高田政府参考人 まさに個々具体的に、これこれこうしますという同意ではないと思います。我が国として、例えば船長の承諾をまず得るようにするわけですけれども、船長が承諾をしない、あるいは、必要がある場合の提出命令、回航命令というものをやり、それを罰則で間接的に強制といいますか担保をしますよということで旗国の同意をとりますので、旗国の同意があれば、その範囲の中で武器の使用というものも可能になろうと考えております。

赤嶺委員 旗国の同意というか、アメリカの場合は、先ほどから紹介している乗船協定の場合なんですが、武器の使用について、これも要員などの安全確保や公務執行妨害の場合に限定されていて、ただ自衛権の行使の場合はその限りではない、こういうことになっているわけですが、日本の場合には、執行管轄権という言葉は説明されるけれども、その中身というのはこの法律で詰められていないのかなという印象を持ちます。

 ただ、仮に、威嚇射撃をした場合、それでも停船しないというときにはどうするんですか。これは立ちはだかって停船をさせたり、あるいはヘリで強制的に乗船したり、回航したり、そういうことをできるわけでしょうか。また、それは安保理決議で要請されていることでしょうか。

高田政府参考人 あくまでも応じないという場合につきましては、これは海上保安庁の方で、警察官職務執行法七条で非常に厳格な警察比例のもとで一定の武器の使用は許されておるわけでありますけれども、具体的には、そこは非常に慎重に対応されると思います。

 午前に御答弁がありましたけれども、進路の前に行って説得をするとか、それが強制接舷かどうかというのは、非常に危険性も伴うということで慎重に対応されるというふうに承知をしておりますけれども、その範囲でいろいろな努力をされるということでございます。(赤嶺委員「決議で要請されているかという点」と呼ぶ)決議には、具体的に、どこまでのことをどうということまでは書いてございません。

 一般的に、一言追加をいたしますれば、旗国として検査に協力することを要請するということが国連決議においては書かれております。

赤嶺委員 旗国がそういう強制的な行動に本当に同意するのかどうか疑問ですが、ただ、今説明を受けたこれらの措置は、海上警備行動を命じられた自衛隊にも認められるということになるんでしょうか。停船をさせるために威嚇射撃を行ったり、強制的に乗船して検査をする、強制的に回航させる、そういうことが自衛隊にも認められるということでしょうか。

 防衛大臣、向こうを向いておりますけれども、いかがでしょうか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 先ほど来、本委員会で答弁させていただいているとおりでございまして、この法案に基づくいろいろな貨物検査でありますとか、そういった一連の措置というものは、自衛隊が海警行動を命ぜられた場合であっても行使をするということはないということでございます。

赤嶺委員 それでは、自衛隊の問題について聞いていきます。

 この法案は、この法律の規定する検査その他の措置に関し、海上保安庁のみでは対応することができない特別の事情がある場合、自衛隊が海上における警備その他の所要の措置をとると規定しております。自衛隊法第八十二条の海上警備行動、海上における人命、財産の保護、治安の維持のため特別の必要がある場合というのが発動要件になっていると。

 政府は、今回の法案によって自衛隊に新たに付与する権限は何もないということでありましたけれども、海上保安庁のみで対応することができない特別な事情がある場合というのは、具体的にどういう場合でしょうか。つまり、海上における人命、財産、治安の維持、どれに当たりますか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 本法案に基づきます規定におきましては、海上保安庁では対応できない事態というのは基本的に想定しにくいということをまず申し上げているわけでございます。

 その上で、万一の可能性として、海上において対象船舶から海上保安庁では対応できない激しい抵抗を受けるような特別の事情がある場合というものを全く排除されることはなかろうということで、そういう場合において、自衛隊が海上警備行動などの所要の措置をとるということも考えられるということでございますので、この場合においては、いろいろな厳しい抵抗というようなことでございますれば、まさに海警行動の要件に該当し得る場合があるということで、こういった規定を置いているところでございます。

赤嶺委員 ですから、万一の可能性に備えてこういう条文を置いていても、海上警備行動というのはあくまでも、海上における人命、財産の保護、治安の維持のための特別の必要がある場合というのが発動要件です。

 公海上で海上保安庁が検査を行おうとした船舶が重武装をしていたという理由だけで自衛隊は海上警備行動を発令できるんですか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 まさに、この要件について、個々具体的な、全体の状況がわからない、ある特定の場面を切り出して、これができる、できないというようなことは一概に申し上げにくいかと思いますけれども、委員会で従来から申し上げておりますように、まさにこういった要件として海上自衛隊が海上保安庁を支援するという規定があるわけでございますので、今回の一連の流れの中では基本的には想定しにくいわけでございますけれども、まさにそういった場合も当たり得るので、そのための確認的な規定というものを置いている。それは、自衛隊が実力行使を伴う部隊でもございますので、念のために九条二項というものを設けているということを本委員会でお答えさせていただいているところでございます。

赤嶺委員 万が一のことで想定できにくいけれども、まさにそういう事態もあり得ると言って、何か矛盾したことをいろいろ繰り返されているようですけれども。

 私が聞いているのは、海上警備行動というのは、海上における人命、財産の保護、治安の維持のための特別な必要がある場合、あくまでもこれが発動要件ですよね。そんな場合というのがこのときにあり得るんですか。人命、財産の保護、治安の維持のための特別な必要がある場合、これはこういう場合ですよ、万が一かもしれないけれどもこういう場合ですよというのを説明してくれますか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになって恐縮でございますけれども、先ほど来申し上げているとおり、万一の可能性として、海上保安庁では対応できない激しい抵抗を受けるような特別な事情がある場合というのも、まさにここで言っております海上警備行動の発令の要件に当たり得るということで、こういった答弁をさせていただいているところでございます。

赤嶺委員 大変気になることなんですが、今の説明を聞いていて、海上保安庁が対応できない激しい抵抗を受ける場合、人命もしくは財産の保護というのは、つまり海上保安庁の職員の人命の保護ということがそれに当たることになるわけですか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 この法案の前提としております状況というのは、北朝鮮の特定貨物に対して、要するに、一般的な商船がそういった貨物を積載している場合に、そういった合理的な疑いがある場合に、それを検査する、あるいは必要な措置を命ずるということでございますので、一般的にはそういった状況というのは想定しにくいわけでございますけれども、まさにそういった形で抵抗してくるような場合があるということであれば、そういったことが起きるということ自体がまさにこういった状況に当たり得る場合があるということを申し上げているのであって、この法案がそういったことを一般的に想定して、そのために海上自衛隊に対して海警行動を準備しておけというようなことを命ずる、そういう構造になっているものではないということは御理解をいただきたいと思います。

赤嶺委員 ですから、私は一般的にどんな想定をしているかということで聞いているんじゃなくて、どんな場合でも海上警備行動の発動要件というのは法律で決められているわけですよ。その要件は、人命、財産の保護、治安の維持のための特別な必要というわけですが、人命の保護という場合に、激しく抵抗された海上保安庁が、海上保安庁ではどうにもならない、その海上保安庁の人命の保護のために自衛隊が出かけていく海警行動、こういうのも万一の場合を想定してという形で入れてあるわけですか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 まさにこういった貨物の検査をするような状況において、そういった場合に海上保安庁では対応できないような抵抗があり得るというような事態というものが、想定はされにくいわけでございますけれども、そういった事態というのはまさに海上警備行動を発令してでも対応していくべき事態であるという認識があって、こういった規定が確認的、入念的に置かれている。それはなぜかといえば、自衛隊というのが実力の行使を行う部隊でございますので、その点を踏まえて規定をしているということであります。

赤嶺委員 今の説明もあいまいで、何でこういう場合に自衛隊の海上警備行動が発令されるのか。しかも、安保理決議は四十一条の措置で非軍事的にということが言われているときに、こういう行動に自衛隊も一緒に出ていけるような道がつくられていること自身に、やはり国際社会の協調を乱すものじゃないかというぐあいに考えているわけですが、それにしても、説明を聞いても余りにもわからないことだらけであります。

 こういう法案は速やかに撤回して廃案にすることを強く求めて、私の質問を終わります。

深谷委員長 次に、阿部知子さん。

阿部(知)委員 社会民主党の阿部知子です。

 私は、本法案の質疑に立つに当たりまして、ちょうど先週の金曜日、会期末も迫った中、しかしながら、我が国をも含む北東アジアの安全と平和のために今論じなければならない、特に核拡散の現状等々があるので、質疑に立ち、そして御答弁も伺うということで、先回もお時間をいただきました。

 きょうも朝からの委員会の中でこの席に座っておりましたけれども、まず審議の前提といたしまして、先週の金曜日に中谷委員がお尋ねになりました核密約ということに関しては、きょうも何人かの委員から御質疑がございましたけれども、ちょうど本日午後二時、外務委員会の委員長である河野太郎さんが、外務委員会においてはこの間の政府の答弁、核密約はなかった、あるいは二〇〇一年に関連する文書を廃棄したこともなかったということは虚偽の答弁に当たるのではないか、委員長としては、これを委員会の総意として政府見解の変更を求めるということをおっしゃっておられました。

 私は冒頭で河村官房長官にお伺いしたいと思うのですが、もちろん私どもは立法府でありますし、その立法府が行政府である内閣あるいは外務大臣も含めてお尋ね申し上げて、その答弁が審議に値するものでない場合は、この委員会すらやはり同じく虚偽答弁というふうに言わざるを得なくなってくると思うんです。

 河村官房長官にあっては、他の委員会であれ、こういうことが指摘されているということをどう受けとめておられるのか、まずこの一点をお願いいたします。

    〔委員長退席、木村(勉)委員長代理着席〕

河村国務大臣 事実、そのような密約はないということで歴代の総理大臣、外務大臣はこのような答弁をいたしておるわけでありまして、私もそのような密約はない、こう信じておるわけでありますから、これは偽証といいますかと言われるゆえんのものに当たらないのではないかというふうに考えます。

阿部(知)委員 この国会の委員会というのは質疑の場がすべてで、それが国民へのメッセージになるわけであります。たとえ他の委員会とはいえ、同じテーマを問われて、これが重要な、実際には、例えば元外務事務次官の方等にも委員長である河野さんがお会いになっての問題提起であるわけです。

 私は、これは委員長にもお聞きしたいのですが、この委員会にあっても、もしも河村官房長官ないしは中曽根外務大臣の御答弁が現実にそうしたことにきちんと答えていない、国民を欺くものであった場合、すなわち簡単に言えば虚偽答弁であった場合、この委員会の存在そのものが問題になると思うんです。

 外務委員会等々の動向をきちんとこの委員会としても見きわめていただきまして、同じ問題でありますし、事は、これから我が国がどのような核廃絶、核軍縮に向かうのかという重要なテーマで、みずからをごまかしては前に進めないと思います。

 ここで委員長にお願いがありますが、私は、そもそもこれだけ問題になったものを繰り返し各委員がお聞きになって、もしも政府側答弁が虚偽であれば本当に大変なことになると思うものです。この点について、委員長として適宜適切な御差配をお願いしたいですが、いかがでしょうか。

    〔木村(勉)委員長代理退席、委員長着席〕

深谷委員長 そのような疑義があった場合は、適時適切に対応いたします。

阿部(知)委員 疑義があった場合というのをどこで判断するかでありますが、何度も申し上げますが、外務委員会でも同じ御答弁に対して、この間、この委員会に先立つ委員会で、これは議事録を精査していただければわかりますが、同じ内容で問われているわけです。

 これは、この段になって、国民と政治との信任ということが最大問われている、そういう状況であります。内閣の処し方、特に国民に何を語り、何をもって向き合うかということにおいて、私は、こういう疑義がかけられ、一つの委員会の委員長が、自分の委員長の表明としても、また委員会の理事会に諮るということも含めて、そういう対応に出るということは前例がないと思いますので、この点について、委員長はそうした問題があればとおっしゃいましたが、現実に指摘されているところでありますので、きちんと踏まえてやっていただきたいと冒頭お願い申し上げます。

 引き続いて、私は、実はきょうの審議に際して、例えば、皆さんの熱心な審議と言いたいですが、先ほどまで赤嶺委員の御質疑の際にも空席が目立っておりましたし、そして、この事態の中でというのは皆さんも十分御承知おきと思いますが、今国民の信任が内閣にはないのではないかということが、昨日の東京都議選における結果においても非常に明らかになっているわけであります。

 そうした中で行われている委員会にあって、私はもう一つ極めて残念であるのは、例えば先ほど来の赤嶺委員の御質疑でもそうですが、なぜこの法案に自衛隊の活動ということを加えねばならないのか、この点について一貫して、防衛大臣の側からも、また海上保安庁並びに国土交通大臣の側からも、実は明確な御答弁がないのではないかと思うのです。

 先ほどの質疑を、先ほどの赤嶺さんと防衛省の方の答弁を受けた形で、私はむしろ海上保安庁の長官に伺いたいと思うのですが、便宜置籍船等々で、その旗国が了解をしていても、実際踏み込んでみたらそこで取り押さえられないような事態が生ずることもあるというのが、何か、先ほど来の万々々が一、この前の委員会では。今度の委員会では、あり得ないとは思うが、そうしたことのケースであるという具体的な御答弁は実はそれだけでした。どんなことが起こったら一体自衛隊にこの出動を実際にされることになるのかという具体的な御答弁はその一つだけだったと思うのです。

 まず、海上保安庁長官に伺います。

 ほかのケースは考えられますかというのが一点。

 それから、便宜置籍船等は、既に乗り込む前に、どこの国の船でどういう状況にあるということは、いかに何でも海上保安庁でも情報は得ておられるのではないか。だって、この間、海上保安庁は、そうしたさまざまな情報を各国から入手するということにも、いわゆるインテリジェンス、情報処理、インフォメーションとインテリジェンスという言い方でずっと取り組んでこられたはずであります。今さらになって、便宜置籍船が自分たちが想像できないような状態でそこにいるから、そのときに自衛隊に助けを求めようなどというのは、逆の意味で、これまでやってこられた海上保安庁の実績を私は否定するお話であると思います。

 具体的に、二点、お願いいたします。他にどんなケースがあり得るのか。そして、今私が指摘した情報収集における海上保安庁のこれまでの実績からいえば、前例に挙げられたようなことは起き得ない、逆に、起きさせないためにこれまで保安庁はやってきたんじゃないかということですが、いかがでしょうか。

岩崎政府参考人 先ほど便宜置籍船の例を申し上げましたけれども、便宜置籍船だけではなくて、北朝鮮船籍の船であっても、これはどういう形で北朝鮮の船が出てくるかというのはなかなか予測がつきません。そういう意味で、他の政府参考人も述べておりましたけれども、そうしたことも含めてこの規定は置かれているものだと思っております。

 それから、私どもがどれぐらいの情報収集をしているかということでございますけれども、もちろん私どもも、便宜置籍船であってもどういう国の船なのか、その船がどういう状況なのかということについては、我々なりに努力をして把握をしようとしておりますけれども、すべてのことについてわかるわけではございません。いろいろなことで万々が一のことはございますので、そうした意味で、対応する規定が必要だろう、このように認識しております。

阿部(知)委員 もちろん今の御答弁の内容にも納得しませんし、具体的にお話しいただきたい、実績を否定するようなことは言わないでいただきたいと思います。私どもは、例えばソマリア沖の問題でも、海上保安庁に、もっとマンパワーも充実して、世界の海をより安全にするために仕事をお願いしたいと思います。

 委員長、ここで、先ほど内閣不信任案が提出されましたので、本日の審議は私はここで打ち切らせていただきます。よろしくお願いいたします。

深谷委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

深谷委員長 速記を起こしてください。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後四時九分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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