衆議院

メインへスキップ



第11号 平成21年7月14日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十一年七月十四日(火曜日)

    午後三時九分開議

 出席委員

   委員長 深谷 隆司君

   理事 木村  勉君 理事 小池百合子君

   理事 後藤田正純君 理事 新藤 義孝君

   理事 中谷  元君 理事 佐藤 茂樹君

      あかま二郎君    赤池 誠章君

      赤城 徳彦君    秋葉 賢也君

      新井 悦二君    石原 宏高君

      江渡 聡徳君    越智 隆雄君

      大塚  拓君    木原  稔君

      杉田 元司君    鈴木 馨祐君

      冨岡  勉君    中根 一幸君

      葉梨 康弘君    橋本  岳君

      松浪健四郎君    松本 洋平君

      三原 朝彦君    村田 吉隆君

      矢野 隆司君   吉田六左エ門君

      石井 啓一君    冬柴 鐵三君

    …………………………………

   外務大臣         中曽根弘文君

   国土交通大臣       金子 一義君

   防衛大臣         浜田 靖一君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     河村 建夫君

   外務副大臣        伊藤信太郎君

   防衛副大臣        北村 誠吾君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  福島 克臣君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  高田 稔久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中島 明彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 小原 雅博君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            別所 浩郎君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   鶴岡 公二君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 原  雅彦君

   政府参考人

   (文部科学省国際統括官) 木曽  功君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           西本 淳哉君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     上田 英志君

   政府参考人

   (防衛省防衛参事官)   枡田 一彦君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   衆議院調査局海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別調査室長           金澤 昭夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法案(内閣提出第六九号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

深谷委員長 これより会議を開きます。

 開会に先立ち、民主党・無所属クラブ、日本共産党、社会民主党・市民連合及び国民新党・大地・無所属の会所属委員に出席を要請いたしましたが、いまだ出席が得られておりません。

 再度理事をして出席を要請いたしますので、しばらくお待ちいただきたいと思います。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

深谷委員長 速記を起こしてください。

 理事をして再度出席を要請いたしましたが、民主党・無所属クラブ、日本共産党、社会民主党・市民連合及び国民新党・大地・無所属の会所属委員の出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 内閣提出、北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官福島克臣君、内閣官房内閣審議官高田稔久君、外務省大臣官房審議官中島明彦君、外務省大臣官房審議官小原雅博君、外務省総合外交政策局長別所浩郎君、外務省国際法局長鶴岡公二君、財務省大臣官房審議官原雅彦君、文部科学省国際統括官木曽功君、経済産業省大臣官房審議官西本淳哉君、経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長上田英志君、防衛省防衛参事官枡田一彦君及び防衛省防衛政策局長高見澤將林君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

深谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

深谷委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小池百合子さん。

小池委員 小池百合子でございます。

 先ほど、衆議院本会議場にて、麻生政権に対します不信任案、これに対します採決が行われました。そして、粛々と麻生政権が信任をされ、そして、我々、政治の責任を預かる議員として、国家の一番基本である安全保障政策、その一端であります貨物検査特措法案について審議を行うところでございますが、野党席は空席となっております。生活が第一と言いながら、結局、政局が第一であるということをこの空席が証明しているのではないでしょうか。

 ましてや、安全保障政策がいまだに一枚岩であるということは聞いておりません。この特措法の審議をめぐりまして、党内で一致した意見が見られない、そのためにこの特措法の採決に参加しないのではないかと言われても仕方がないと思うのは私だけでございましょうか。

 私たち自民党、公明党は、国家の真の責任を背負って、国民の安心、安全を守るという大きな政治の目的を、議員としてこの委員会の場でしっかりと果たしていかなければならない、そんな思いを抱きながら、本法案の審議に入らせていただきます。

 さて、このたびの貨物検査特措法でございますけれども、そもそも、ことし四月五日の北朝鮮によりますミサイル発射、そして五月二十五日には二度目の核実験を実施した北朝鮮に対しまして、国連の安保理決議一八七四号の実効性を確保するというための国内法の整備でございます。国際的な協調体制を築くに当たりまして、北朝鮮にほど近い我が国が、国連において決議の採択をリードしておきながら、実は十分な対応ができないということでは話にもなりません。

 これまでも、主な論点についてはかなり審議が行われ、そして論点の整理もされてきたと思います。だからこそ、きょう採決をし、また早急に法案を成立させた上において、我が国をそこにある危機から守ることこそが責任ある政治と言えると思います。

 それでは、加えまして、幾つか政府に認識をお伺いしてまいりたいと思います。

 第一に、サイバーテロについて伺います。

 実は銃声なき戦争は既に始まっている、ちょっと物騒で恐縮でございますけれども、日米韓のインテリジェンスのエキスパートらは口々に今そう警告をしております。北朝鮮、そしてまたその追従勢力によると見られる大規模ハッカー攻撃が行われたわけで、ソウル、ワシントンの中枢をねらいました前例なきサイバーテロが発生したことは、既に報道されているとおりでございます。

 つまり、銃声こそいたしませんが、明らかに現代の戦争、一九五〇年の金日成によります朝鮮戦争がアナログ戦争であったならば、現在起こっておりますことは第二次朝鮮戦争。非常事態が起こっている、その危機認識が政府にとって必要だと思うわけでございます。

 そこで、まず、このサイバーテロについての現状、そして政府としての認識、さらには我が国の対処策についてお答えを願います。

河村国務大臣 小池委員御指摘のサイバーテロ、先般も、アメリカや韓国においてもサイバー攻撃があった、こういう報道がされておるわけでございます。

 現時点では、日本に対する、特に日本の政府機関等に対する同様の攻撃は確認はされておりませんが、ITの発達した現代社会は、いつ何どきこのサイバーテロの脅威にさらされるかわからない。このことは絶えず考えておかなきゃいけないことだ、こう思っております。

 そのために、政府におきましては、現在、情報セキュリティ政策会議、私、官房長官が議長を務めてございますが、先般、米韓に対して行われましたDDoS攻撃への対策を含めた、政府機関の情報セキュリティー対策のための統一基準を定めておるところであります。これに基づきまして、各省庁が所要の対策を今講じておるわけでございます。

 また、内閣官房情報セキュリティセンターを設置しておりますが、ここにおきましては、政府機関に対する攻撃を横断的に把握して分析する、そしてそれに対応する体制、GSOC、略すとそうなるそうでありますが、これを整備しながら、平成二十年度から本格的な運用をいたしておるところでございます。

 さらに、内閣官房におきましては、重要インフラ事業者の情報共有体制、これを整備しながら、事業者等と関係省庁との訓練を実施しております。そうした官民連携の強化にも努めておるところであります。

 なお、実際に政府機関等への大規模な攻撃が確認されるということがございましたら、政府の初動対処体制についての閣議決定に基づきまして、内閣官房、ここでは情報セキュリティセンターを含む安全保障・危機管理担当がおりますが、ここを中心にいたしまして、政府一体となった初動対処体制をとって、この対処に万全を期す、こういうふうに体制を整えておるところでございます。

 御指摘のとおり、サイバーテロ対策には万全を期していかなきゃいかぬ、さらにそれに努めてまいりたいと考えております。

小池委員 e―Japan構想は着々と進んでおります。一方で、かつて、政府の関係のプログラムを、孫請、孫々、ひ孫請をやっているうちに、オウムの関連の企業にそれが発注されたなどということもございました。

 このサイバーテロというのは、せんだっての新型インフルエンザではございませんけれども、これはもちろんテロではございませんけれども、新しい脅威として真剣にとらえていかなければ、金融システムから何から何まで壊れてしまう。そのことに、ぜひともこれからも注視し、そして必要な対策を講じていただきたい。

 そして、これは非常に大胆な挑発行為が続いているわけでございますけれども、北朝鮮のこの行為の背景に、その内的要因として、去年の夏からの金正日の健康不安、また、それに伴います後継者問題が絡んでいると考えられるわけでございます。

 また、せんだって、七月の八日でございましたけれども、金日成十五周忌の追悼式が行われて、久しぶりに生の、生といいましょうか、動く映像で金正日が姿を見せたわけですが、驚くことに、やせ衰え、足元もおぼつかない、また表情もうつろであった。その表情をそのまま映したことにまず北朝鮮の政府の考え方が出ていると思いますが、客観的に申し上げると、アメリカのCIAはあの状況を分析して、余命はあと一年だ、それから、五年以内に死亡する確率は七一%という韓国紙の報道もございます。

 ポスト金正日でございますが、二十六歳の三男、正雲が有力だと言われつつあります。日本でも世襲が問題視されておりますが、これはまさに金王朝ということでございます。かの国のリーダー、次のリーダーが一体だれになるのかというのは、我が国にとって、そして我が国の安全保障にとりましても大変大きな関心事でございますが、しかしながら素顔はよく知られていない。お母さんが、もともと在日の朝鮮人で大阪出身の高英姫だというふうにも言われている。いやいや、正雲というのはもう既に三人ぐらいいるんだなどという説もございます。

 いずれにしましても、今、北朝鮮は、ポスト金正日に向けて、体制維持のために死に物狂いで後継者デビューの舞台を整えようとしていると考えていいと思います。テポドンの発射であるとか二度の核実験、それから日本全土を射程におさめたノドンミサイルの発射、これらの行為は、アメリカに対するラブコール、挑発であると同時に、若い後継者の実績づくり。二十六歳の青年に対して、北朝鮮の軍部がどのようにして忠誠を誓うか、忠誠心を持っていくか、これは結構大変な作業で、神格化しなければならない。

 いずれにいたしましても、この金正日の健康状態、それから後継者について、政府ではどのように認識されておられるのか、聞かせてください。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 政府としては、北朝鮮のさまざまな情報について、我が国の持つ情報収集、そしてまた各国との情報交換、あるいは脱北者を含む関係者から、いろいろな方法で聴取して、また全力で分析し、取り組んできているところでございます。

 委員御指摘のように、北朝鮮情勢については、さまざまな情報に接しておりますけれども、後継問題、あるいはその金正日国防委員長の健康問題といろいろあります。ただ、確定的に申し上げることは、この委員会の状況もかんがみ、なかなか困難でございますが、また、北朝鮮は極めて閉鎖的な体制をしいており、政府として確定的には申し上げられませんが、いかなる行動であってもこういう挑発行為は正当化することができないということであります。

 そして、御質問の、金正日国防委員長の後継者にだれがなるのか。今御指摘の正雲さんという若い息子さんがなるという報道あるいは観測もあることも十分認識しております。しかしながら、そこも含めて確定的にどのような方がなるかということを、この委員会の場で申し上げるということはなかなか困難だということは御理解願いたいと思います。

小池委員 困難であると同時に、むしろこの後継者問題に我々は目を奪われていてもいけない、真の危機管理から目をそらすという手法でもあるということに気がつかなければならない、こう思います。

 そして、この北朝鮮のような独裁王朝におきましては、権力の承継期というのは実は大変危険な時期でもあるわけでございます。忠誠競争のために軍部が冒険主義に走るという可能性、かつては対南工作を進めるために日本人拉致をどんどん進めたというのも、これも一つの忠誠心競争の犠牲となったと言えると思うわけでございます。すべて後継者の実績にするためでございます。

 皆様方のお手元にこの写真をお配りしておりますが、きれいに飛んでいるのが、これがテポドン2でございまして、これが、〇六年、北朝鮮の舞水端里から発射されましたテポドン2の航跡であります。

 要は、このテポドン2は日本列島を越えたわけでございます。そして、ことしに入って、このテポドン2を初めとする飛翔体なのか人工衛星なのか、いろいろと言われていますが、しかし、テポドン2を初めとしてミサイルの発射、それから地下核実験、ノドンミサイル、これも日本を全部射程に入れることができる。

 建国以来、最大の危機にあるという分析も行われている北朝鮮情勢でございますけれども、これはすなわち、日本にとっての危機でもあるわけでございます。北は体制維持のためにはあらゆる軍事オプションを展開してくるということを、まず我々は安全保障の要諦として、また危機管理の要諦として、それを考えておかなければならない。

 さて、九月の十六日、いわゆる百五十日戦闘が終わることになっておりまして、その後、権力闘争が激化するのかどうか、粛正がどれぐらいの規模で行われるのかなどなど、注視しなければいけないポイントはたくさんございます。

 また、にわかに三十八度線もきな臭くなっております。西海での韓国軍と軍事衝突の危険性も語られているところでございます。そしてまた、新しい指導者が軍事戦略の天才と宣伝するためにそのような行動を、冒険主義に打って出て、ほら、こんなにすごい新しい将軍様だ、そういう神話をつくっていくということが考えられる。

 また、新しい指導者というのは、実は日本と戦わなければならない運命を背負っております。これは、北朝鮮のメディアは、後継者を白頭山の血統を引いた人物だということを示唆している。白頭山というのは、パルチザンの党首であります金日成が日本と戦ったとする革命の聖地なんですね。その革命の血を引く指導者は日本と戦う運命にある。日本へ対しての軍事挑発もしなければ、白頭山の血統が泣く、そういうストーリーになっているわけでありまして、だから、ノドンミサイルの発射実験は続けるということが考えられる。標的は日本になります。

 彼らは、失うものがないというところが一番恐ろしいところであります。ですからこそ、この法案を含めまして、あらゆる想定のもとで必要な措置を準備しておくということが一番必要になるわけでございます。

 さて、ここで、この貨物検査の特措法でありますけれども、ポイントは、日米韓、そして国際社会との情報の共有にある、一言で言えばそれに尽きると思うんですね。

 そこで、北朝鮮による脅威がかつてなく高まっている今、日本における政権交代というのは、政治の空白、そして混乱を生む、実は金正日を喜ばせるだけということになるわけでございます。また、インテリジェンスというのは、時間の蓄積や互いの信頼感がなければすぐに効果を発揮できない。

 日本の国民の安全を守るためには、今この対北朝鮮戦略の上で最も重要なときに、例えば、今政権交代の四文字をうたっておられるところが特に参議院において社民党との連携を組むというようなことがありますと、さあ、アメリカから超一級の情報が本当に即座に来るのかどうかというのは、これは極めて重要な話なんですね。九三年ごろ、北朝鮮危機が高まっているとき、あのとき、七党一派でございましたけれども、実は、官邸から情報が北に漏れるのではないかという心配はアメリカは本気でしておりました。

 この情報の共有こそ、今後どうやって貨物検査をシームレスにタイムリーに行うかというところの一番肝心なところなわけですね。

 この情報の共有というのは生命線なわけでございまして、その意味では、日米安保の根幹にもかかわるような安全保障政策、これまでいろいろな人の口から第七艦隊だけでいいんだとか、それから、米軍の基地を県外移設の県議会での議決があったりとか、そういう中において非常にこの辺の信頼感の醸成には時間がかかるわけですね。そのことについて、官房長官、どうですか、一言。これは次の展開の話でお答えにくいと思いますが、情報の共有の重要性についてお答えください。

    〔委員長退席、中谷委員長代理着席〕

河村国務大臣 御指摘のとおり、日米韓、特に同盟あるいは友好国、この間の情報の共有というのは私も非常に大事だと思います。それを醸成するのは、日米間には日米安保条約というものがある、このかたい同盟というものがあってやれるということでありますが、それはお互いの信頼関係に立っております。特にインテリジェンスの問題については、お互いに約束を間違わないようにしていかなきゃなりませんし、どこまで情報を共有しながら、また、お互いに情報を持ちながら、どのようにその情報を活用するかという問題になってくるわけであります。

 これはまさに信頼関係がなければできないことである、こういうふうに思いまして、情報の保全の体制がきちっとできておりませんと、またその信頼関係も築けない、こういうことで、これまでも必要な情報を得、それを保全するために努力をしてきておりますが、さらに築き上げてきたこの信頼関係を確たるものにしてお互いの情報共有に努めたい、そういうふうに考えております。

小池委員 私が防衛大臣の際に例のイージス艦の情報漏えいの話がございました。非常に私は神経をとがらせた部分でございます。

 やはり高い情報を得ようとすると、それだけこちら側の守り、安心感、それがないといけない。ですから、スパイ防止法というのは私は本当に必要だと思うんですが、長官、いかがですか。

河村国務大臣 このスパイ防止法の考え方、特に国家公務員が扱うことが多い、この守秘義務規定をやらなきゃいかぬということで、実は現在、国家公務員法等の守秘義務規定に係る罰則の懲役刑は一年以下ということでありまして、その抑止力が十分でない、こういう話もございます。

 そこで、昨年四月、当時の町村官房長官の時代でありますが、官房副長官を長とする検討チームを設置いたしておりまして……(小池委員「スパイ防止法ですよ」と呼ぶ)御指摘のようなスパイ防止の、そのもとになる政府部内のそういう検討会をまず設けたという段階でございます。

 今御指摘のような防止法、秘密保全を守る、このようなものについて、これはやはり国民の理解を得るということも必要かと思います。

 そういうことで、当面、まず国家の機密保全に今全力をかけておるところでございますが、このような形で日本の情報が外部に出ていくということについては、これは細心の注意を払っていかなきゃならぬ。これは企業等においても営業の秘密ということで非常に厳しいものを持っておりますので、日本もそういうことは考えていく必要がある、このように考えます。

小池委員 多分、次のページだと思うんですけれども、ないでしょうか。

 これはもう情報の漏えいの話ではございません。インテリジェンスの話でございまして、そこのヒューミントとか、それからデータもそうでございます。サイバーテロの逆の話なんですね。この部分でございまして、それからまた、スパイ防止法というと必ず人権の問題が出てくるわけで、私は、この辺あたりがまともな論議もされてこなかったことは、国家としての本当の意味の危機管理が我が国は全くおくれている、このことを一言申し上げさせていただきます。

 さて、肝心のこの特措法にかかわる物流の話でございますが、この法案の最大の目的は、ミサイルや核開発にかかわります物資の輸出入をとめるということなんですが、ちょっとこちらをごらんください。

 実は、北に物資が入らないように包囲網をつくってくるというんですが、現実には直接北朝鮮の港に入る、もしくは港から出た船、カンナム号などもそうでございますけれども、それをチェースする、追跡してまた検査をするということと同時に、現実の話として、実は迂回輸入が行われている。ミサイル、核関連物資などまで北に流れているのではないか。そして、ここでごらんいただいて、ちょっと次の分に行きましょうか。

 実は、中国の遼寧省、吉林省というのがあるんですけれども、これまでは吉林省からの輸入額が、〇八年の十二月、その前の年から比べますと、圧倒的にふえている。これまで遼寧省が多かったのが吉林省になっているというのは、これは舞水端里というのがこちらの側に近いわけですけれども、吉林省から入れた方が舞水端里に近い、ミサイルのサイト、軍事サイトに近いということから、吉林省からの流入がふえたのではないかということでございます。

 先ほどごらんいただきましたテポドンの発射基地でございますけれども、まさに中国の吉林省と接した咸鏡北道というところにありまして、去年の暮れから緊急にこの咸鏡北道という地域へ物資を運ぶ必要があったというふうに考えるのがむしろ自然ではないだろうかと思うわけでございます。

 今ごらんいただいているのが、省別に見た数字の変化でございまして、遼寧省が約二倍にふえているのに比べ、吉林省は異常に貿易輸出額がふえてきているわけでございます。

 そして次、品目リスト、お買い物リストがこちらでございますけれども、いろいろな、衣類から、プラスチック、革製品などなど、傘、人造繊維などが含まれているんですが、それをさらに細かく見てまいりますと、次でございます、大分お金かかっております。

 これが、金額別で見ていきますと、例えば釣り針、消しゴムなどというのも入っております。この釣り針もそうでございますし、それから次、二番目の赤いところですが、例えば、眼鏡、光学製品など、ミサイルの実験への転用のためと考えられるものでございますし、また、ミサイルや核実験のために民生品にカムフラージュして、大量の物資が中国経由で輸入をされている。

 もう一つ、せっかくつくったから使いましょう。五百万ドル以下になりますと、今度は鉄鋼製のくぎであるとか鋼など、ミサイルの組み立て部品と考えられる。プラスチック製の貯蔵庫などは、ミサイルの燃料タンクということも考えられる。

 いずれにいたしましても、中国を経由して北朝鮮に物が運ばれている。そしてまた中国にはこれらの北朝鮮関連の商社がある。そこに、例えばイランとか、核、ミサイル関連の製品などが行き来をしているのではないか、そういう情報もございます。

 ポイントは、まず、北朝鮮の冒険的な軍事挑発をやめさせるということが一点。そのための物資を兵糧断ちするというこの二点が極めて重要なポイントでございまして、今回の貨物船舶検査というのは、まさにこうしたミサイルの関連物資などを北朝鮮に入れさせないためにやっているわけではないですか。ですから、日本への脅威を除去するための必要な措置であるわけでございます。

 そこで、ポイントは、実は中国だと思います。今回の国連決議、前回の議長声明にトーンダウンさせたときも、いつも中国の対応がポイントになってきています。今回は何とか制裁決議に中国も入っている。しかしながら、実際には、中朝国境において中国が明確にこれらの物資についてチェックをしているとは私は思えません。そしてまた今回のラクイラ・サミットにおきましても、胡錦濤主席が新疆ウイグル地区での問題のため、すべての国際的なものに優先してまでも帰らなければならない事情があったのでございましょうが、しかしながら、やはり中国に対してこの点をきつく日本から要請をしなければならないんですが、いかがでしょうか。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 まさに委員のおっしゃるとおりだと思います。中国、あらゆる面において、特に政治経済分野において北朝鮮と密接な関係を有しておりますので、中国の協力というのは北朝鮮問題を解決する場合に不可欠であります。

 委員御指摘のように、ラクイラ・サミットにおいては、御存じのような中国側の事情で急遽帰国ということで、日中首脳会談というのが実現しなかったわけでありますけれども、他方、G8首脳会合においては、麻生総理により、北朝鮮による弾道ミサイルの発射及び核実験は容認できず、北朝鮮の核は絶対認めないとの国際社会の姿勢を明確に示すべきことを強調したところでございます。その結果として、最も強い表現で北朝鮮を非難し、安保理決議一八七四号の完全履行を各国が取り組むことの重要性を確認し、拉致問題を含む人道上の問題に係る国際社会の懸念に北朝鮮が直ちに取り組むことを要請する首脳宣言が採択されたところであります。

 それから、中国に対しての直接の働きかけですが、私も、安保理の協議でも、またあらゆる国際場裏において直接やっておりますし、先日中曽根大臣の方からも、十日ですか、六者会合の議長であり、先般訪日した武大偉外交部副部長に対して、北朝鮮の核保有を阻止することが日中を含む地域の共通の利益であり、我が国としては拉致、核、ミサイルといった問題を包括的に解決するとの方針に変わりはない、六者会合は北朝鮮問題に取り組むのに最も現実的な枠組みであり、六者会合のプロセスの再開に向け、五者間でしっかり協調していきたいというふうに働きかけたところでございます。

小池委員 さあ、中国、かなめでございます。

 それから、私は、もう第二次朝鮮戦争は始まっているという認識のもとにおいて、政府としてしっかり危機管理、危機対応をお願いしなければならない。そのためには安全保障政策こそ与党・政府としての大きな責任であり、野党にその安全保障政策があるかないか……(発言する者あり)ないです。ありません。これを政権交代の四文字にひっくるめてしまうのは、余りにも国家にとって危険。

 そしてまた、もし朝鮮半島の有事の際に拉致日本人をどうやって保護するのかも考えておいていただかなければならない。さらには、今、貨物の検査をしようと言っていますけれども、一方では精巧なるにせ札づくりが行われております。これに対してのチェック体制、これを進めていかなければならない。

 そして、最後に申し上げますと、何のことはない、この十年、二十年、二十年と言った方がいいかもしれませんが、北朝鮮情勢によって日本の政界は大きく常に揺れてきているのであります。

 かつて、社会党が入った連立政権の折も、小沢代表は、閣議で閣僚がサインをしなくなるかもしれないといって社会党切りに走り回って、そして大内啓伍さんを筆頭にした会派「改新」というのを立てようとして、そのときに大騒ぎするんです。

 私は何かこれらの北朝鮮の流れというのは、デジャブではなくて、これからの日本で行われるような、政治の空白をつくらせないためにも、しっかりと責任を持った政治を進めていかなければいけないということを改めて思い、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

中谷委員長代理 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 先ほど本会議におきまして、麻生内閣に対する不信任決議案が否決をされました。このタイミングで民主党を初め野党の皆さんが麻生内閣に対する内閣不信任決議案を提出されること自体、実は鳩山偽装献金疑惑隠しのパフォーマンス以外の何物でもない、そのように私は訴えておきたいと思います。

 その上で、本会議で内閣不信任決議案が否決されたんですから、今、当院は正常化されているわけでございます。正常化されているにもかかわらず、大事な、大詰めに来たこの特別委員会の審議を勝手に放棄される。こういう暴挙に出られたこと自体、実は、私が思いますのは、野党、特に野党第一党の民主党は、外交、安全保障政策がばらばらでございまして、今回の貨物検査法案についての賛否の態度を明らかにすることから逃げた、全く無責任な姿勢でしかない、そのように私はお訴えをしておきたいと思うわけでございます。また、そういう政党に、果たして政権交代などと言う資格があるのか、政権担当能力などないのではないか、そのように私はお訴えをしておきたいわけでございます。

 その上で、きょうは、もしかするとこの衆議院の質問の最後の機会になるかもわかりませんので、何点かお聞きをしておきたいと思います。

 先ほど小池先生の質問の最後の方にもございましたけれども、実は総理がきょうお見えになったら、総理にお聞きするのが一番よかったんですが、今回は北朝鮮の法案でございますから、ラクイラ・サミットでの北朝鮮問題に関する成果をどのように政府として見ておられるのかということをまずはお聞きしておきたいと思います。

 他国はともかく、日本にとっては北朝鮮問題がこのラクイラ・サミットでは焦点だったと私は思います。というのは、直前に北朝鮮は国連安保理決議一八七四をあざ笑うかのように弾道ミサイル七発を撃ったわけでございます。その直後の今回のラクイラ・サミットでございましたので、安保理決議の完全履行に向けて、本当に国際世論を大いに喚起することができたのかどうか、また、北朝鮮に対する国際包囲網の強化ということがしっかりと図られたのかどうか。

 先ほど副大臣の方から、政治問題に関する文書の内容等若干の紹介はございました。それ以外にも、総理自身、ワーキングディナーとかでもそういういろいろな発言をされたという報告は外務省からいただいておりますけれども、あわせまして、総理にかわって、このラクイラ・サミットで北朝鮮問題についてどのような成果があったというように政府として考えておられるのか、御答弁をいただきたいと思います。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 まず、ラクイラ・サミットの首脳会合において、麻生総理より、北朝鮮による弾道ミサイルの発射及び核実験は容認できず、北朝鮮の核保有は絶対認めないとの国際社会の姿勢を明確に示すべきということを強く強調したわけであります。

 その結果として、最も強い表現で北朝鮮を非難し、安保理決議第一八七四号の完全履行に各国が取り組むことの重要性を確認し、拉致問題を含む人道上の問題に係る国際社会の懸念に北朝鮮が直ちに取り組むことを要請する首脳宣言が採択、これも具体的なしっかりした成果だと思います。

 また、今御質問があったように、ラクイラ・サミットの際にはいろいろな二国間の首脳会談があったわけでございますが、特に日米首脳会談、日ロ首脳会談等も行われました。

 日米首脳会談においては、北朝鮮をめぐる諸問題に関する日米間の連携及び安保理決議一八七四号のもとで国際社会の協力が進展していることを確認し、北朝鮮への対処が日米両国にとって高い優先事項であるという共通認識のもと、引き続き日米が緊密に連携していくことの重要性を確認したわけであります。

 また、日ロ首脳会談においては、交渉を通じて朝鮮半島の検証可能な非核化を実現すべく、引き続き日ロ両国が緊密に連携していくことを確認したところでございます。

佐藤(茂)委員 今、伊藤副大臣からもありましたように、巷間、なかなかマスコミ等はまともに報道されなくて、影が薄かったとか、そういうような表現をされておりますが、私の追求した限りでも、総理は事あるごとに、この北朝鮮問題について、各国の二国間の首脳の会議、さらにはワーキングディナーを初めさまざまに、まず麻生総理から、この北朝鮮問題についてはテーマとして、話題として出されていた、そういうことは本当に事実だと思いますし、そういうことから、完全履行ということがこの政治文書の中にうたわれたことを、やはり我々、政府、さらには立法府たるもの、しっかりと責任を持ってとらえないといけないと思うんですね。完全履行するためには、後でまた質問をいたしますけれども、今回の貨物検査法案というのはきちっとこの国会で通しておかなければいけない、そういう重要課題ではないか、そのように私は思うところでございます。

 その上で、きょうは何点かお聞きをしたいわけでございますが、一つは、お手元の資料に、二枚お配りをさせていただきましたけれども、なぜ今回この法律が必要になるのかということを一覧表にさせていただきました。

 要するに、安保理決議の一八七四のパラ十一から十四に貨物検査が書かれているわけでございますが、その内容で、現行法令で対応できるものと対応できないものというものを、私なりにマル・ペケをつけさせていただきました。

 パラ十一関連でいうと、要するに二つしかできません。輸出入貨物、我が国から北朝鮮への輸出の検査、北朝鮮から我が国への輸入の検査、これは現行法でできます。そして、次にできるのはもう一つしかないんですね。パラ十三関連の、公海上での他国から日本籍船舶への立入検査の同意を求められた場合の対応、これだけが現行法令で対応ができる。

 残り、例えばパラ十一関連でいうと、内水、領海において、我が国に寄港するが、我が国への輸入輸出貨物を持たない船舶への立入検査、これはできません。また、内水、領海において、我が国領海内を通航して北朝鮮と第三国間を往来する船舶への立入検査、これもできません。また、パラ十二関連ですけれども、公海上での検査、旗国の同意のもと、外国籍船舶を立入検査、これもできません。さらに、一番下ですが、パラ十四関連では、検査において確認された禁制品目の押収及び処分、これも、決議での決定事項であるにもかかわらず、できません。

 一つだけ三角にしているのがあります。パラ十三関連で、公海上において、日本船舶に対して検査が求められたけれども同意を与えない場合、日本籍船舶に対し、検査を受けるために、適当かつ都合のよい港に航行するよう指示。これはなぜ三角にしたかというと、民間の船にはなかなか強制できない、任意での回航というものは要請することが可能だということで三角にしております。日本船主協会等を通じて回航の指示はすることができるということで、三角という形にさせていただいているわけでございます。

 要は、私がぜひ言いたいのは、今、現行法では、ここに挙げました八項目の中でも、現行法で問題なくできるのは三項目しかないわけですね。ですから、今この審議をしております本法のような根拠がなければ、間もなくと言われておりますが、たとえ安保理の制裁委員会が禁輸品リストを決めても、日本はこの安保理決議の要請や決定を執行できない、そういうことになると思います。それとも、超法規的措置として実行されるのか、そのあたりにつきまして、内閣官房長官の認識をお聞きしておきたいと思います。

    〔中谷委員長代理退席、委員長着席〕

河村国務大臣 佐藤先生が、この特措法をつくるに当たりまして、PTにおいてもいろいろな議論を進めていただいてこの法律提案に至りましたこと、感謝をいたしております。

 今、この実効性をいかに、対応措置をやるかということでございます。

 今御指摘のように、この表をいただいて見ましても、確かに丸がついているのは三つであります。それ以外のことについて、特に、例えば日本に寄港した、あるいは日本の領海を運航している船に積載されている貨物であって日本の輸出入に当たらない貨物については、現行法では検査等はできないわけでありますから、今回のこの特措法をもってこれを実行することによって実効性を高める、こういうことになるわけでございます。

 そういう意味からも、この特措法の極めて重要性が思われるわけでございまして、一日も早く、きょうその方向で進めていただいているわけでございますが、これを成立せしめ、本格的な実効性をあらしめなきゃいかぬ、このように思っておるわけでございます。

佐藤(茂)委員 私も、前回金曜日の委員会でも指摘しましたが、北朝鮮の脅威を最も深刻に受ける日本が何もそういう根拠法をつくらないままでいいのかということは、政府よりもむしろこの立法府の、特に我々与党ではなくて野党の皆さんにぜひ真剣に考えていただきたいな、そのように思うわけであります。

 その上で、何点か、法案審議の中で、前回は検査の実施主体を中心にお聞きしましたけれども、それ以外の論点につきまして、きょうは旗国の同意ということでお聞きをしたいと思います。

 資料二枚目、資料二を見ていただきたいんですけれども、今回の公海上での船舶検査の手順を私なりに図にさせていただきました。

 要は、検査等の要請をするときに、検査するということ、提出命令を出すということ、回航命令を出すということも含めて旗国に諮る、旗国が同意するか同意しないかで二通りのその後の流れがある、そういう資料にしておりまして、旗国が同意すれば船長の承諾を得て検査、旗国が同意したけれども船長が承諾しない、それは回航命令を出して我が国の港等で検査を行う、こういう流れになります。もう一つは、旗国が同意しないという場合には、一番下の流れで、今度は旗国が当該船舶に対して回航を指示して、適当かつ都合のよい港で検査をする、こういう流れになるわけであります。

 そこで、与党内の議論でも非常に多かったのが、今回のこの貨物検査の措置は、公海上で旗国の同意を得ることを要件にしていることを踏まえ、例えば北朝鮮の船舶であればそもそも同意を得るのは困難、そういう見方もありまして、この措置に実効性はあるのか、そういう疑問が投げかけられていたわけであります。

 しかし、よくよくこの図を見ていただいてもわかるように、これはそもそも、今回の国連安保理決議一八七四号の主文パラ十二の公海上での船舶検査の決議において、「旗国の同意を得て公海上で船舶を検査することを要請する。」そのように定められているわけですので、この国連決議を守ろう、また適合しよう、そういう範囲内で措置をとるとなると、この公海上での船舶検査では当然旗国の同意が要件となるのは仕方のないことと考えます。

 しかし、旗国の同意のない場合の実効性というものを、今回の措置の実効性というものをそもそも政府としてどのように担保されようと考えておられるのか、政府の考えをここで確認しておきたいと思います。

河村国務大臣 まず、旗国の同意というのが原則になっておるわけでございますが、しかしこれは、旗国の同意もない、また回航指示もしない場合には、これができないという不作為に対しては、これは安保理にまず報告する、こうなっております。

 そういう意味で、我が国を含む国際社会が協調してこれに取り組むということによって、船舶の旗国が貨物検査を忌避したりすることが難しくなる、結果として北朝鮮による禁制品の輸出入活動が著しく制限されるということが期待される、ここに実効性が担保されることになる、このように考えておるわけでございます。

佐藤(茂)委員 もう一つ問題になりましたのが、論点としてありましたのが、船長の承諾ということでございまして、この一八七四の主文パラ十二で、公海上の船舶検査のところを見ますと、旗国の同意のみを要件とここではされているんですね、国連決議上は。ただ、それを今回の法案は、この検査の段階で、第三条第二項で、旗国の同意に加えて、船長等の承諾を要件とされている。

 もう一つは、領海での貨物検査についても、国連決議の中では、特に旗国の同意も含めてそういう要件は課しておられないんですが、領海についても船長等の承諾を要件とされているわけであります。

 公海、領海ともに船長等の承諾を要件とされたのは何ゆえか、わかりやすく御答弁をいただきたいと思います。

河村国務大臣 ただいまの船長の承諾の要件でございますが、御指摘のように、今回の安保理決議を受けて行います貨物検査につきましては、洋上で検査をするか、あるいは最寄りの港等に回航させてそこでやるか、いずれかの措置をとらなければならない、とることが必要になってくるわけであります。

 そこで、対象船舶が公海または領海といった外洋にある場合には、その洋上で検査を行うことについては、これは荷積みの状況等によっては危険を伴うこともある、船舶側の事情も配慮する、考慮する必要があろう、そういうことで、船長等の承諾を要件として、この検査というものをまさに実効あらしめるための措置、こういう配慮がここに求められておるわけであります。

佐藤(茂)委員 その上で、もう一つ、領海の検査について、あえて国際法上の考え方を確認しておきたいと思います。

 領海の外国船舶については、国連海洋法条約上、第十七条、第十八条、第十九条の無害通航権があるわけでございます。すなわち、沿岸国の平和、秩序、安全を害することなく、継続的かつ迅速に行われる通航を行う船舶に対しては立入検査を実施することはできない、そのようになっているわけです。その無害通航権を超えて外国船舶に検査ができる、そういう理由、根拠というのは何かということです。その場合に、特に旗国の同意は必要ないのか。そこをどう考えられたのか。ぜひ政府の見解、特に外務省の方だと思いますが、見解を伺っておきたいと思います。

鶴岡政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、領海におきましては、沿岸国が、航行する外国船舶に対して無害通航を認めることが国際法上求められております。

 今回の安保理決議第一八七四号主文十一におきましては、すべての国が、領海を含む自国の領域内で、禁止されている品目を含むと信じる合理的根拠があることを示す情報を当該国が有する場合には、貨物を検査することが要請をされております。

 したがって、仮に、外国船舶が我が国領海内で、本来であれば無害通航とみなされる航行を行った場合に、本法案に言うところの北朝鮮特定貨物を積載していると認めるに足りる相当な理由があるときに、検査を行い、同法案に基づき回航を命じたとしても、国際法上問題はないと考えております。このような場合には、旗国の同意は必要ないと考えております。

 もともと、先ほど公海についてのお話がございました、公海はそもそも自由航行でございます。自由航行が原則になっているところで旗国の同意を求めて貨物検査ができることを今回の国連決議は、安保理決議は要請しておるわけでございまして、我が国の領域、主権の及んでおります領海におきましては、無害通航の権利が国際法上あるということを前提にした上でも、今回の安保理決議によって求められている要請にこたえて我が国が貨物検査を行うことは、国際法上何ら問題を生じるものではないと考えております。

佐藤(茂)委員 次に、情報収集活動や各国との連携協力につきましてお尋ねをしたいと思います。

 前回も質問させていただいたんですが、海上保安庁と自衛隊の役割分担として、与党内の議論では、今回北朝鮮のカンナム号に対して米軍が行ったような追尾も含めた、貨物検査活動に関する情報収集活動や警戒監視活動というのは自衛隊が行えるようにすべきである、そういう意見が大勢を占めていたわけでございます。

 今回のこの法案の中で、自衛隊の情報収集能力、警戒監視能力を生かして対応する規定というのはどこにあるのか。また、それが、自衛隊が情報収集や警戒監視を十分に行える、そういう法的な根拠となっているのか、ぜひ防衛大臣にお伺いをしたいと思います。

浜田国務大臣 自衛隊に主として期待される役割といたしましては、平素から実施している警戒監視活動において収集された情報を海上保安庁を含む関係行政機関に提供することになると認識をしております。

 このような情報の提供については、関係行政機関の協力を定めた法案第九条の第一項が規定している内容に含まれていると考えております。法案第九条は、防衛省・自衛隊を含む関係行政機関が既存の法律の範囲内で協力等を行うことを規定したものでありまして、自衛隊としては、防衛省設置法や自衛隊法等の関係法律に従って活動することになります。

佐藤(茂)委員 今ありましたように、防衛省設置法で、それを生かせれば通常の調査研究という範囲で十分行える、そういう答弁だったというふうに認識をしておきたいと思います。

 次に、法律の考え方としては、検査を行う地域や領域については特に範囲が指定されていない、限定されていないというふうに思うんですが、今後、運用上、アメリカや韓国等と連携、調整して、日本が主に担当する区域を割り振る可能性があるのか、そういう今後の見通しと、また、そういう区域の割り振り以外も含めて、他国とどのような連携協力が考えられるのか、政府の考え方をお聞きしておきたいと思います。

河村国務大臣 この特措法における検査等が安保理決議一八七四号の要請を踏まえていることは御承知のとおりでありますが、これは、日本の警察権が旗国の同意で公海上に及ぶということになるわけであります。したがって、検査等を行う区域を制限して、場所によって検査等の実施の取り扱いを変えることは、我が国の警察権の行使としては法的性格になじまないために、区域について法律上の限定を設けておりません。

 また、北朝鮮特定貨物の北朝鮮への出入りを防止するとの本法案の目的がございます。そして、実施機関の能力等を勘案すれば、おのずと実際の活動地域は限られてくるのではないか、こう考えるわけであります。

 そこで、各国による検査を行う海域の区割りというようなことは現時点で考えておりませんけれども、検査等の措置あるいは情報収集を実施するに際して、個別具体的な状況も踏まえながら、各国との緊密な連携は必要だ、また協力関係は必要だ、このように考えております。

佐藤(茂)委員 それで、検査の実施主体また提出命令を出せる主体として、今までこの委員会でも海上保安庁あるいは海上保安庁長官の方ばかり光が当たっておったんですが、もう一つの実施主体として税関というのがあるわけですね。

 税関の権限だけ確認をさせていただきたいんですが、税関は、税関長が税関職員に検査の措置をとらせたり提出命令を命じることができるとされているんですけれども、そこで、法令違反に対して、今回罰則を設けられていますから、その法令違反に対して税関職員が、現行犯逮捕というのはできるのは当然として、現行犯以外の法令違反者を逮捕する権限を持っておられるのか、これをぜひ明らかにしていただきたいし、あわせて、仮に逮捕する権限がないとすれば、その場合に税関あるいは税関職員にかわって法令違反者をだれが逮捕し、その場合どういう手続で行われるのか、確認をさせていただきたいと思います。

原政府参考人 税関職員の逮捕権限についてのお尋ねでございます。

 税関職員は法執行の一端を担ってございますけれども、司法警察職員でございます海上保安官とは異なりまして、あくまでも一般行政職員でございまして、委員御指摘のとおり、刑事訴訟法の第二百十三条に基づくいわゆる現行犯逮捕の場合以外につきまして法令違反者に対する逮捕権は有していない状況でございます。

 したがいまして、現行犯以外で法令違反者を逮捕する必要がある場合には、司法警察職員たる海上保安官また警察官に対しまして、刑事訴訟法の第二百三十九条第二項、これはいわゆる公務員の告発義務を定めた規定でございますが、これに基づく告発を行いまして、必要な対応を求めることとなります。

 特に今回の法案におきましては、関係行政機関は緊密に連携するものとされておりますので、税関が検査等を行う際には、海保あるいは警察と緊密な連携協力が図られるものと考えております。

佐藤(茂)委員 最後に、この法案には関係しませんが、関連して、国連安保理決議一八七四のパラ二十八には、核関連の特別な教育や訓練の監視、防止策について各国に要請をされているわけであります。

 時間もありませんので端的にお聞きしたいんですが、この決議を受けまして、外務省としては、文書で、北朝鮮国籍者に対する核関連の特別な教育や訓練の監視について、文部科学省、経済産業省に要請をされたというようにお聞きしております。どういう要請をされたのかということを端的にお答えいただきたいのと、あわせて、それを受けて、文部科学省や経済産業省は、大学を初めとした教育機関や研究機関に具体的にどういう措置をとられることとされているのか、御答弁をいただきたいと思います。

伊藤副大臣 お答えを申し上げます。

 今回のパラ二十八を受けて、日本国内においては、北朝鮮籍を有する者が北朝鮮の核拡散上の機微な核活動及び核兵器の運搬システムの開発に関する分野の専門教育、訓練が行われることを防止するために、何よりも北朝鮮籍を有する者の入国、滞在に関する管理を厳格にすることが重要であります。その点、我が国は、現在のところ、北朝鮮籍を有する者の入国は特別の事情がない限り認めておらず、そもそもその種の教育、訓練が行えるような状況にはありません。

 いずれにしても、今回の決議を踏まえ、この種の教育、訓練が日本国内で北朝鮮籍を有する者に対して行われることがないように入国管理を厳格に行っていくことにつき、外務省から関係当局に対し文書で要請しました。

 そして、今御質問の文部科学省系の話でございますが、また、日本の大学や研究機関に所属する研究者等が何らかの形で北朝鮮籍を有する者に対し北朝鮮の拡散上機微な核活動及び核兵器の運搬システムの開発に資する分野の専門教育、訓練を行うことがないよう関係当局より日本国内の大学や研究機関に対し注意喚起を行うことにつき、外務省から関係当局に対して文書で要請したところでございます。

木曽政府参考人 文部科学省といたしましては、七月六日に外務省より協力要請が行われたことを受けまして、七月十日に、文部科学省より、全国の大学及び文部科学省所管の研究機関等に対しまして、北朝鮮の拡散上機微な核活動及び核兵器運搬システムの開発に寄与し得る分野の専門教育及び訓練が行われることのないように注意喚起をする通達を発出したところでございます。

西本政府参考人 私ども経済産業省といたしましても、外務省からの協力要請を受けまして、七月十日付で、産業技術総合研究所等の関係研究機関に対しまして、同様の注意喚起をする旨、通知文書を発出し、周知徹底を図ったところでございます。

佐藤(茂)委員 今の段階は注意喚起ということなんですけれども、ぜひ実効性ある措置をとっていただきたい。

 というのは、弾道ミサイルも、いろいろ報道されているとおりで、日本の技術が相当生かされているといううわさもございます。ですから、そういう技術であるとか知識、また人材というものが北朝鮮に悪用されないような対応というものを今後とも政府としてしっかりとっていただくことを最後にお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

深谷委員長 これより民主党・無所属クラブ、日本共産党、社会民主党・市民連合、国民新党・大地・無所属の会所属委員の質疑に入ることといたしておりましたが、質疑者の通告が得られておりません。

 再度理事をして、野党各会派の所属委員に対し、出席とともに質疑者の通告を要請いたしますので、しばらくお待ちいただきたいと思います。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

深谷委員長 速記を起こしてください。

 理事をして出席とともに質疑者の通告を要請いたしましたが、出席及び質疑者の通告が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 お諮りいたします。

 これにて質疑を終局することに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

深谷委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

深谷委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、北朝鮮特定貨物の検査等に関する特別措置法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

深谷委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

深谷委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

深谷委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十六分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.