衆議院

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第2号 平成23年8月10日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十三年八月十日(水曜日)

    午後三時三十一分開議

 出席委員

   委員長 松原  仁君

   理事 楠田 大蔵君 理事 首藤 信彦君

   理事 武正 公一君 理事 中野  譲君

   理事 武田 良太君 理事 中谷  元君

      相原 史乃君    石田 三示君

      磯谷香代子君    稲富 修二君

      小原  舞君    緒方林太郎君

      奥野総一郎君    加藤  学君

      勝又恒一郎君   菊池長右ェ門君

      小林 正枝君    斉木 武志君

      坂口 岳洋君    玉木雄一郎君

      中塚 一宏君    中野渡詔子君

      中林美恵子君    長尾  敬君

      長島 一由君    浜本  宏君

      藤田 大助君    藤田 憲彦君

      三村 和也君    水野 智彦君

      宮島 大典君    渡辺浩一郎君

      稲田 朋美君    岩屋  毅君

      江渡 聡徳君    柴山 昌彦君

      徳田  毅君    西村 康稔君

      浜田 靖一君    松浪 健太君

      松野 博一君    石井 啓一君

      赤嶺 政賢君    照屋 寛徳君

      柿澤 未途君

    …………………………………

   外務大臣         松本 剛明君

   国土交通大臣       大畠 章宏君

   防衛大臣         北澤 俊美君

   外務副大臣        伴野  豊君

   防衛大臣政務官      松本 大輔君

   政府参考人

   (内閣官房総合海洋政策本部事務局長)       小野 芳清君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 甲斐 行夫君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   長嶺 安政君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  井手 憲文君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    鈴木 久泰君

   衆議院調査局海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別調査室長           湯澤  勉君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月九日

 辞任         補欠選任

  石井 啓一君     遠山 清彦君

同日

 辞任         補欠選任

  遠山 清彦君     石井 啓一君

同月十日

 辞任         補欠選任

  中塚 一宏君     相原 史乃君

  中野渡詔子君     石田 三示君

  早川久美子君     勝又恒一郎君

  森山 浩行君     磯谷香代子君

  谷川 弥一君     柴山 昌彦君

  望月 義夫君     松野 博一君

  服部 良一君     照屋 寛徳君

  山内 康一君     柿澤 未途君

同日

 辞任         補欠選任

  相原 史乃君     中塚 一宏君

  石田 三示君     中野渡詔子君

  磯谷香代子君     森山 浩行君

  勝又恒一郎君     長尾  敬君

  柴山 昌彦君     谷川 弥一君

  松野 博一君     望月 義夫君

  照屋 寛徳君     服部 良一君

  柿澤 未途君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  長尾  敬君     早川久美子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する件


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     ――――◇―――――

松原委員長 これより会議を開きます。

 海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房総合海洋政策本部事務局長小野芳清君、法務省大臣官房審議官甲斐行夫君、外務省国際法局長長嶺安政君、国土交通省海事局長井手憲文君及び海上保安庁長官鈴木久泰君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松原委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。緒方林太郎君。

緒方委員 民主党、緒方林太郎でございます。

 この海賊・テロ特別委員会、私が当選してから恐らく実質的な審議は今回が初めてということで、トップバッター、本当に光栄でございます。委員長そして筆頭理事、さらには理事の皆様方に御礼を申し上げたいと思います。

 もう時間もございませんので、すぐに入っていきたいと思います。

 まず最初に、シーシェパードの問題から始めさせていただきたいと思います。

 シーシェパード、日本の捕鯨船に対して大きな大きな害を与えていると思います。私はあれは海賊だと思うんですけれども、御意見いかがでございますでしょうか。

伴野副大臣 緒方委員にお答えいたします。

 シーシェパードによる調査捕鯨活動に対するこれまでの妨害行為でございますが、その行為の態様や目的にかんがみれば、国連海洋法条約上の海賊行為に該当すると断定することは甚だ困難ではないかと考えております。

 いずれにしましても、シーシェパードの妨害行為は我が国の船舶及び乗務員の安全を脅かす極めて悪質かつ危険な行為とは考えておりますが、政府といたしまして、引き続き、旗国等関係国に対しまして、妨害行為の再発防止に向け、しかるべき措置をとるように申し入れていく所存でございます。

緒方委員 国連海洋法条約の海賊の定義に照らしてなかなか難しいんじゃないかという御答弁がありましたが、何で難しいんですか、局長。

長嶺政府参考人 お答え申し上げます。

 国連海洋法条約の上で海賊行為の定義でございますけれども、私有の船舶の乗組員等が私的目的のために行う一定の不法な暴力行為、抑留または略奪行為というふうにされております。

 この条約におきまして海賊行為が私的目的というふうに限定されておりますが、これは、起草されたときの解釈等に照らしますと、国家自身による行為とか、あるいは国際的に承認された交戦団体等によって正統政府に対して行われる一定の行為、こういったものを海賊行為に含めないという観点から、この私的目的という限定がなされたということであります。

 他方で、条約上、私的目的そのものの定義は置かれておりませんで、ただいま伴野副大臣から御答弁申し上げましたように、シーシェパードによるこれまでの妨害行為がこの私的目的によるものに該当するか否かについては議論が分かれるところであり、断定することは困難である、こういうことでございます。

緒方委員 私的目的かどうかということが判明しないということですが、あれは明らかに私的目的だと思うんですね。プライベート。けれども、ノンプライベートだということは、どこかにパブリックな要素がある、公的な要素があるから私的目的じゃないんだということですね。

 では、そこにおける公的な目的というのは何ですか。

長嶺政府参考人 国連海洋法条約に言います私的目的でございますけれども、これは確かに、必ずしもみずからの金銭のために行うものに限られるということではないと思われますけれども、しかし、いかなる行為がこの条約で言う私的目的に当たるかということにつきましては、個々の事例の状況に照らして判断される必要があると考えております。

 そこで、先ほどのシーシェパードの行為につきましては、一概に申し上げることはできないということになっております。

緒方委員 一概に申し上げることができないと言ったんですが、だれが判断してくれるんですか。別に世界政府があって、これは私的だ、これが公的だと判断できなくて、しかも、日本の外務省設置法を見れば、条約の解釈権は外務省にある、外務省国際法局にあると言っているのに、そこで、いや、一概に言えないと言われても、では、それはだれが判断するんですか。

 これは、やはり日本が国としてしっかりと意思を持って、これは私的目的だというふうに言うべきじゃないですか。どうですか。

長嶺政府参考人 委員御指摘のとおり、国連海洋法条約でございますので、この解釈につきましては、それぞれの締約国に解釈権がございます。

 今、副大臣、それから私の方からも申し上げた考え方、これはもちろん我が国としての考え方でございます。ただ、ほかの締約国の状況を見ましても、シーシェパードの行為を海賊であるというふうに認めているものがあるということは、我々承知しておりません。そういったことも含めまして、我が方としては、一概にこれが海賊行為に当たるというふうには考えていないということでございます。

緒方委員 どこかで日本国が、これは私的目的なのか、それとも非私的目的なのかということについて意思を決めるべきだと思うんですね。それを持って、断固たる決意でシーシェパードに対する姿勢、あなた方は海賊なんですということを私は言うべきだと思いますけれども、これはこれ以上やっても水かけ論になるので、次のテーマに移りたいと思います。

 では、海賊でないとき、海賊でないけれども、あれは国際法上犯罪じゃないのかということが次は出てくると思います。

 私が外務省にいたときにシージャック条約という条約がありまして、これは海賊とはまた別の条約ですけれども、この条約で、船舶を破壊する行為はこれを犯罪とすると。犯罪の類型の中で、船舶を破壊する、そしてそれに加担する行為も含めて犯罪だというふうに、シージャック条約、我が国も批准をしているし、オーストラリアも、そしてアメリカも批准をしている条約。

 こういった条約を適用して、シージャック条約の枠組みの中でこれらを犯罪化して訴追していく。どうでしょうか。

長嶺政府参考人 委員お尋ねの件は、海洋航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約、いわゆるSUA条約のことを御指摘になられたと理解いたしました。

 このSUA条約は、不法かつ故意に行う暴力等による船舶の奪取、管理、破壊、これらの海洋航行の安全を損なう行為を条約上の犯罪と定めております。

 実際、平成十九年二月、南極海におきましてシーシェパードのメンバーが行ったロープを調査船のスクリューに巻きつかせる等の妨害行為に関しまして、我が国は、国際海事機関事務局長に対して、本条約、SUA条約上の犯罪に当たるということから、当該メンバー四名を国際手配した旨、情報提供を行った経緯がございます。

 当該事案以降の事案は、現在関係当局により捜査中であり、同条約上の犯罪に当たるかについて現時点でコメントすることは差し控えますけれども、引き続き関心を持ってフォローしてまいりたいと思っております。

緒方委員 一度シージャック条約が発動したというのを新聞記事で見たことがありまして、なかなかやるなと思ったことがあるわけですけれども、その後の適用については今関係当局との間で検討中だということでありますけれども、アディ・ギル号とかを見てみれば、どう考えたって、あれは船舶を破壊する試みをやっていて、そしてそれを後ろで支えて加担している人間がいる。加担している人間まで犯罪の類型に入っているわけですから、後ろでそれをサポートしている人間も訴追可能だと思います、ありとあらゆる手段を使って。

 そして、このシージャック条約というのは、国際的にテロ法制の中で網をかけていくという条約ですので、その国が起訴をしないのであれば、例えばシーシェパードの人間が滞在している国が起訴をしないのであれば引き渡せ、起訴するか引き渡すかどっちかだ、そういうシステムででき上がっているというふうに承知をいたしております。

 シーシェパードが行っていることがSUA条約上の犯罪の類型に当てはまらないという国は恐らくないと思います。仮にそうであれば、おたくの国で起訴しないのであればうちに引き渡せ、そこまで強く出るべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

長嶺政府参考人 緒方委員、SUA条約については大変エキスパートでいらっしゃる。今、条約の中身も御紹介いただきましたが、まさにそのとおりでございます。

 そういう意味では、我が国が締結しているこの条約をしっかり適用していくというのが基本的な考えでございますが、個々の事例につきましては、これは捜査との関係もございますので、それぞれのところとよく協力してまいりたいと思います。

緒方委員 頑張ってください。

 国連海洋法条約の海賊の定義のところもなかなか難しいということであれば、そうじゃない別の条約のところでどんどん相手への包囲網を狭めていくことというのは重要だと思います。

 あともう一つ。シーシェパードが持っている船、ブリジット・バルドー号、スティーブ・アーウィン号、そしてボブ・バーカー号、この三つが今たしか動いていると思いますけれども、ブリジット・バルドー号がオーストラリア船籍、そしてスティーブ・アーウィン号がオランダ、ボブ・バーカー号もオランダというふうに聞いていますが、これは多分、便宜置籍船だと思うんですね。実際には、では、オランダがそのボブ・バーカー号とかスティーブ・アーウィン号とかいった船に対して有効な管轄権を行使しているとはとても思えない。単に便宜的にオランダの旗を使っているだけ。

 かつて、どの船だったか忘れましたけれども、アフリカのトーゴの船籍を持っている船を、日本からアプローチをかけてその国籍を剥奪させたということがあったと思います。

 これは副大臣にぜひお願いしたいと思うのが、オランダ、オーストラリア、こういった国に対して、こういうけしからぬやつらの旗国になるんじゃない、国籍を剥奪しろ、そういうアプローチを外交的にかけられませんか。いかがですか。

伴野副大臣 先ほど来からの情熱あふれる緒方委員の御質問、私も、シーシェパードに対しては同じ思いでございまして、常日ごろ沈着冷静、温和を持ってやっておる私でございますが、この事柄については相当激しく抗議をさせていただいております。

 先ほど申し上げた、シーシェパードの船舶の旗国でございますオランダ、オーストラリアに対しまして、不法な妨害行為の再発防止に向けた実効性のある措置をとるように、累次にわたり申し入れ、抗議をしているところでございます。

 そして、それらを受けまして、オランダ政府につきましては、船籍の剥奪を可能にする国内法改正の準備をしていると承知をしております。また、我が国からもオランダ政府に対しまして、同法の改正が早期に行われるよう引き続き働きかけを行っていく所存でございます。

 また、オーストラリアにつきましても、オーストラリア連邦政府の警察によりまして、シーシェパードの妨害に対する捜査が継続中であると承知をしております。

 以上でございます。

緒方委員 どうもありがとうございます。

 外務当局のみならず、ありとあらゆるルートを通じて、そういった国に、こんな船の旗国でいるんじゃない、旗を外させろというアプローチをぜひ続けていっていただきたいというふうに思います。

 そして、さらにこれは続きがありまして、国連海洋法第百十条、臨検の権利のところで、国籍を持たない船に対する臨検の権利というのが認められています。認められているというか、軍艦でやっても構わないというふうに書いてあります。

 私の言いたいことというのは、どんどん無国籍船にして、公海上で見つけたらそれをどんどん臨検していく。これは別に、国連海洋法条約上、全く禁じられるものでもないし、無国籍船というのは何の庇護も受けないというのが国連海洋法条約の考え方であります。

 である以上、やはり国内法制上も、公海上において無国籍船を無国籍船である事実をもって取り締まることができるような法制度整備、これを行うべきではないかと思いますが、参考人のいずれかにお答えいただければと思います。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、無国籍船につきましては、国連海洋法条約で、公海において、軍艦、軍用航空機、または政府の公務に使用されている船舶、航空機が無国籍の船舶を臨検するということは可能となっております。

 国内法整備の必要性についてでございますけれども、先ほど副大臣の方からも答弁がございましたとおり、シーシェパードが所有する船舶の船籍国で現在動きがございます。こういった動向などを踏まえながら考えてまいりたいというふうに考えております。

緒方委員 これで、仮にオランダの船籍が、ボブ・バーカー号であれ、スティーブ・アーウィン号であれ、そういったものが外れても、法整備しない限り、日本の自衛隊であれ、権限を持っている船が仮にその船を見つけたとしても、取り締まる権限がなければ、単に無国籍船が行っているだけであって、別に何も変わりないわけです。やはりこれは全体としてやっていく必要があって、国籍を外させる、そして国籍を外した後は、それを取り締まれる権限を国内でしっかりと法整備していく。これは必要だと思いますけれども、いかがでしょうか。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、オランダの方でそのような動きがございますので、十分情報を収集いたしまして、おくれることのないように考えてまいりたいと思います。

緒方委員 いろいろな形で、やはりシーシェパードは本当にけしからぬと私は見ていて思います。ああいったものが、国際的な網でどんどん包囲網をかけていって、活動しにくくなる、そういうありとあらゆる、きょう幾つか申し上げました、シージャック条約を適用して国際的な引き渡しを求めるとか、引き渡してこないと思うけれどもその圧力をどんどんかけていくとか、そして、旗国であるオランダ、オーストラリアに、もう国籍を外すと。

 実際にはあれは便宜置籍船ですから、恐らく有効な管轄権を全く行使していないと思います。オランダの船として、オランダの政府がちゃんと管轄権を行使しているとはとても思えないわけでありまして、そもそも便宜置籍船というのは船のあり方からして本来適当でないと思いますし、船と母国との関係で真正の連関が存在しないものについては、しっかりと日本としてもただしていく必要があるだろうと思います。

 シーシェパードの話はこれぐらいにして、次のテーマに移りたいと思います。

 次は、日本の領海の守りの話でありますけれども、基本的に領海というのは十二海里を主張することになっている。昭和五十二年に設けられた領海法において十二海里だということになっていますが、そこに、下に一つ附則がついておりまして、特定海域というものが設けられている。宗谷海峡、そして津軽海峡、対馬の東水道、西水道、そして大隅海峡、この五つの海峡については領海の主張を三海里にとどめているという現実が、今この日本にはございます。

 この制度、何でこんな制度になっているんですか。

小野政府参考人 先生御指摘のとおり、領海及び接続水域法では、宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道それから大隅海峡の五つの海峡を特定海域として、領海の幅を当分の間三海里にするというふうに規定されてございます。

 これは、我が国は海洋国家として、それから先進工業国として、国際交通の要衝たる海峡における商船、大型タンカーなどの自由な航行を保障することが重要であろうというふうに考え、我が国の総合的な国益の観点からそうすることとしたものというふうに理解をしています。

緒方委員 昭和五十二年、一九七七年にこの法律ができて、当分の間と書いてあります。当分の間が既に三十五年続いています。いつまで続くんですか。

小野政府参考人 私の認識では、昭和五十二年当時に考えました、私が先ほど申し上げましたような考え方は、現在でも基本的には変わっていないというふうに考えております。

緒方委員 なかなか難しいですね。

 しかしながら、考えてみれば、我が国の領海があいているわけですよ、三海里しか主張せずに。そこを自由に通っていいと言われますけれども、当時外務省で幹部だった方の回想などを読んでみると、とどのところ、核搭載艦が領海を通過するときに、核兵器を積んだ核搭載艦が国内を通過するときに、領海内を通過するのも持ち込ませずに当たるから、だから、公海部分をあけておかないと日本海に核兵器を持った核搭載艦が入っていけない、そういう背景があるからこの特定海域を設けているんじゃないかという、これは私が言ったことではありません、外務省の元事務次官の方が言われたことであります。こういう背景が実はあるんじゃないかと思います。

 本当に核の密約の話というのは、この問題に取り組んでようやくケースクローズだと私はいつも思っているんです。この問題、まさに核の密約があるなしと、核の密約に当たらないように、日本の領海の主張を、十二海里でなく、中間線まででなく三海里まででとめておいて、公の海をあけておいて。

 しかし、こういったことというのは本当に事実なのかなと思うんですね。核搭載艦が通れるようにするために三海里の状態にしてある、そういう考え方について、外務当局のコメントをいただければと思います。

長嶺政府参考人 先ほど、特定海域を設定した際の考え方につきましては海洋政策本部事務局長から御答弁がございましたが、今委員御指摘のこととの関連で、特定海域が領海となった場合、委員御案内のように、国連海洋法条約におきまして、こういう海峡におきましては、国際航行に使用されている海峡における通過通航制度というのが設けられております。

 この制度を導入するかどうかという点でございますけれども、そもそもこの制度が、いかなる場合に、いかなる範囲で適用され、また具体的にいかなる形態の通航が許容されるのかにつきましては、私どもも各国の国家実行をいろいろと調べております。既にこの通過通航制度を導入している海峡もございますし、またそうでない海峡もございます。また、導入されている場合の実行もさまざまでございます。

 それから、この制度を導入するに際しましては、まさに我が国の安全保障の観点からもいろいろな慎重な対処が必要であるというふうに考えてきておるところでございまして、こういう本件をめぐる基本的な状況には、これまでのところ、大きな変化があるとは考えておりません。

 その意味で、我が国の特定海域における領海の幅を三海里のまま維持することにつきましては、適切であるとの政府の判断を現時点で変えるということは考えておらないわけでございます。

緒方委員 国連海洋法条約が日本に発効して、もう十五年です。国家実行を見ていく、国家実行を見ていくと言っていますけれども、世界にこんな感じの国際海峡というのはそんなにあるわけではないわけでありまして、いつまで国家実行を見続ければ国際海峡というのはこんなものなんだろうなということがわかるのかというのは、これはよくわからないですよ。このままずっと待っていると、実行を見ていく、実行を見ていく、各国の実行をずっと見てそれで判断させていただくと言うけれども、では、そんなにこれから実行が山のように、十個、百個、二百個と積み上がっていくかというと、積み上がっていかないですよ。いかないと思います。

 実際に、国際海峡のあり方については、例えば、分離通航帯を設けることができるとか、いろいろなことが書いてあります。それを使った上で、日本の安全保障との関係というのもございました。微妙な物言いだと思います。けれども、そのありとあらゆるツールを使った上で、日本の領海が、我々が本来主張できるはずの領海が日本の自発的な判断によって三海里のところまで戻ってきて、あいているというその事実、それはやはり重く考えるべきだと思いますけれども、もう一度、いかがですか。

伴野副大臣 委員にお答えいたします。

 委員が先ほど来御指摘いただいていること、私自身も深くテークノートさせていただきました。

 その上で、さまざまな、領海、海峡におけます基本的諸課題あるいは諸要素、我が国を取り巻く安全保障環境の変化等の要素も踏まえまして、特定海域におけます領海の幅の問題につきましては、国際的な情勢を注視しつつ、不断に、しっかりと検討させていただきたいと思っております。

緒方委員 それでは、少しこの件について、ちょっと違った視点から提起をしたいと思います。

 外国との関係で、外国と接している、外国がトイメンにある海峡というのが二つあります。宗谷海峡、そして対馬の西水道、この二つは、外国と日本との間で海峡ができていて、日本が三海里だと。

 相手国、宗谷海峡におけるロシアの領海の主張、そして、対馬西水道における韓国の領海の主張、それぞれ何海里ですか。

長嶺政府参考人 申しわけありません、突然のお尋ねですので、正確かどうかあれですけれども、私が理解しているところでは、ロシアにつきましては十二海里、韓国につきましては三海里ということであります。

緒方委員 そうです。

 ロシアについては、十二海里というか、多分二十四海里未満だと思うので中間線だと思います。ロシアについては中間線、韓国については三海里ということですね。

 ということは、対馬の西水道については、一つの海峡があって、お互いが三海里、三海里で自制をして、そして公海部分をあけている。しかし、ロシアの場合は違うんですね。ロシアは、満額、中間線までばんと主張しているんです。けれども、日本だけが三海里を主張して、そして公の部分であいているというのは、本来日本が中間線まで主張すれば全部埋まってしまうところ、本来日本の領海であるべきところだけがあいている。非対称性がここに存在するわけです。

 この非対称性が存在していることというのは、そんなに正当化できるものというのは、先ほど特定海域の意義について、なぜこの海峡をこういうふうにしているんですかと言われたら、海洋の自由な航行を維持するため、それが利益だと。その利益と比較したときに、我が国が主張できる領海を主張しないというデメリットと、自由な航行を確保するというメリットを比較したときに、自由な航行の方が上だということですね。お答えください。

長嶺政府参考人 今御指摘の点につきましては、これまで御答弁申し上げてまいりましたとおり、また、さまざまな諸要素、安全保障環境その他、基本的な諸要素をよく勘案した上で、今後この領海の幅の問題につきまして、国際的な情勢も注視しながら、不断に検討してまいると先ほど副大臣から答弁がありましたが、そういう観点から総合的な検討を進めていくということでまいりたいと思っております。

緒方委員 余りお答えになっていなかったんですけれども、領海は、多分、日本の国のもとをなす部分ですよね。そのもとをなす部分をあえて日本の自発的判断で狭くすることというのは結構重大な判断だと思います、日本が本来領海として保持することができるエリアがあるにもかかわらず、それを保持しないというのは。

 領土に対して、今、意識が物すごく高まっています。領海に対しても同じだと思います。我が国のテリトリアルシーですよ。それをあえてセットバックして、そして、その対価として得られているものというのは、世界全体の人が自由にこの海域を通っていいですよと。何が通っていくかというと、これは中国の艦船であったりロシアの艦船であったり、それも自由に、公の海ですから、太平洋のど真ん中を通るのと同じ感覚でばんばん通っていいわけですよ。

 これは、対馬の西水道のように、韓国との関係であれば、お互いが三海里を主張しているからそれはよかろう、お互いが三海里だからなと何か納得するところもあるんですけれども、ロシアとの関係では、ロシアは中間線まで主張している、こちらが三海里だ。

 この非対称性を考えて、そしてそれが日本の自発的な領海の放棄によって成り立っている、これはやはりおかしいと思いませんか。以上、どうでしょうか。

伴野副大臣 先ほど来から本当に貴重な御指摘、改めてきょうは重く受けとめさせていただきまして、不断の検討をさせてください。

緒方委員 この件は、もっともっと深くやっていくといろいろなテーマがあるんですけれども、多分、知らなかった方が多いと思います。知らなかった方が多くて、多分、聞きながら、そんな話があったのかと。そして、日本の領海が、そんな日本の判断によって狭くなっているということ、これは、今、意識が物すごく高まってきている中で、単なる海洋の自由な航行とか、国連海洋法条約の実行が積み上がっていないとか、そういう理由だけで我が国の貴重な貴重な領海が狭くなっているというのは、なかなか説明が苦しくなってくると思います。しかも、領海法ができて三十五年、そして国連海洋法条約を批准して十五年、それぞれ、もう月日もたっています。当分の間みたいな言葉で何か議論を続けていくことというのは、なかなか難しいと思います。

 結論としてどうなるかわかりませんが、真摯なる見直しを、外務そして防衛、海上保安庁、海洋政策本部、いろいろなところがあると思います、そういったところでやっていただきたいと思うんです。

 かつて、三十五年前とか、これまでずっと綿々と国会答弁の積み上げがあると思います。その答弁の延長でいる限りは、これは五十年たっても百年たっても同じことを絶対言っているはずなんです。これをもう一度見直して、見直した結果として、やはりそれでも今の制度がいいんだという判断であれば、それはそれでいいと思います。けれども、何となく惰性で、かつて何か外務大臣がこんな答弁した、外務省の何とか局長がこんな答弁した、それだけに引きずられてやり続けるということは、これは正しくないと思いますし、そこを政務の側からしっかりと取り組んでいただければと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

松原委員長 次に、中谷元君。

中谷委員 自由民主党の中谷でございます。

 本日議題となっております海賊対処法案につきまして質問させていただきます。

 この法律も、一年延長ということで、満二歳となりました。

 二〇〇九年の三月十四日、海上警備行動のもとで「さみだれ」「さざなみ」が出航いたしました。このときの大臣は浜田防衛大臣でございますが、そのとき、国会でこの海賊法案を審議いたしております。四月に衆議院を通過、六月には参議院で否決をされまして、六月の十九日に再議決によりましてこの法案が誕生いたしました。

 このとき、きょうお越しの大臣は、この法案に賛成しましたか、反対しましたか、伺います。

松本国務大臣 当時私が所属していた委員会をちょっと正確に記憶いたしておりませんが、海賊の対処そのものは必要であるという民主党の基本的な考え方に立ちつつ、やはり、自衛隊の艦隊を出す場合に、国会の関与などのあり方について議論がありまして、与野党の間で、私自身も議論に加わったことがあります。どのような関与の仕方があるかということを含めて議論をいたしましたが、率直に申し上げれば、話がまとまりかけたところもあったんですけれども、結果としてはまとまらず、その点について一致ができなかったために反対をしたというふうに記憶をいたしております。

中谷委員 それでは、防衛大臣に伺います。

 防衛大臣は、当時参議院の外交防衛委員長だったと思いますが、かなりこの法案の成立には妨害というか抵抗されたわけで、結局、審議が衆議院を通過して二カ月半ですか放置されまして、それで参議院で反対、そして衆議院で再議決だったんですが、当時、何をもって反対されたのか、そして、今回は何をもって再延長されたのか、伺います。

北澤国務大臣 私も当時のことをそんなに今鮮明に思い出してはおりませんが、党としての法案の取り扱いということで、二カ月という中で、いわゆる国会用語でのつるしという期間もかなりあったというふうに思います。

 それから、委員会での審議は、私は委員長でありますから採決には加わらなかったということでありますが、本会議においては、会派の方針として、もちろん反対をいたしました。

 今、外務大臣からお話のあったような、党全体としてのさまざまな議論の中で反対を決定したというふうに記憶をいたしております。

中谷委員 この間、きょうは当時の浜田大臣も委員でおられますけれども、大変つらい期間で、つまり、法律がないのに海警行動を出していました。これは、やはり我が国の船舶の安全を考えますと、やむにやまれず海上警備行動で直ちに現地へ行きまして、法案を審議していたのに、そういうつるしというか、全く現場や国民のことを考えずに民主党が対応されてきたわけでございますが、そういう点におきまして、再議決のときに、反対理由の説明に平岡議員が、この法案は国会承認がないのがだめだ、そして、国会承認が賛成の条件だというふうに言われました。

 そこで、この法律、一年ごとに延長になりましたが、確かに国会承認はございません。しかし、やはり国会としては、民主党がそう言われるなら、しっかりと一年ごとに議論をして、延長するかどうか国会の承認を得てやるのが筋でありますが、本日までこの国会承認を求めるような委員会が行われてこなかったことに対して、防衛大臣はいかがお考えでしょうか。

北澤国務大臣 さまざまな経過を経て、また御質問があれば申し上げてまいりたいというふうに思いますが、今日かなりの成果があり、そしてまた国際的にも評価が高くなって、私とすれば、この活動は定着をしてきているというふうに思いますので、特段、今この場で国会承認を求めるということの必要性はないほどに合意形成はできているのではないか、そのように思っております。

中谷委員 別に意地悪で言っているわけじゃなくて、やはり、国会というのはシビリアンコントロールの大要素でありますので、しっかりとみずから進んで国会で議論をしていただきたいということを申し上げたかったわけであります。

 そこで、満二歳になりますが、これまでの護衛回数が二百七十回、護衛船隻数が二千七十六隻、P3Cの飛行回数が五百十一回ということで、本当に、派遣された隊員は休みもなく、しかも、ジブチという砂漠のど真ん中で、六十度を超える非常に暑い地域で、ソマリアという不安定な要素の中、懸命に努力をしているわけであります。

 しかし、そういう努力にもかかわらず、ソマリア沖の海賊件数は、昨年は二百十九件、ことしも、八月七日現在百七十七件発生して、急増しております。

 昨年十月には日之出郵船が運航していますイズミが乗っ取られ、大東通商運航のオリエンタルローズが十二月に襲撃を受け、そして、本年三月五日に商船三井運航のグアナバラが海賊四人に乗り込まれて、米海軍が拘束をされ、そして、海上保安庁派遣捜査官が身柄を引き取って、現在日本で勾留中でございます。

 伺いますが、このグアナバラが海賊に襲撃された場所はどこの付近か、御存じでしょうか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 三月五日に、このグアナバラ号が海賊に乗っ取られる事件が発生いたしましたが、オマーンの南東の海域、アラビア海の洋上ということでございます。

中谷委員 オマーンの沖なんですね。したがって、我が国が海上対処のために活動しているジブチの周辺からかなり離れております。アデン湾からかなり離れたオマーンで、そして、防衛省から説明をいただいた資料によりますと、この二年で、海賊の発生箇所が急激にこのオマーン沖に集中をしておりまして、海賊発生の三分の二がこの場所で行われております。

 伺いますが、この海域で日本船が襲撃を受けたり、また攻撃を受けた際に、我が国としての護衛、対処の仕方はいかなる方法がありますか。また、現在、民間のこういった商船会社等からこの付近の護衛をしっかりしてもらいたいという要請を受けていますか。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のように、自衛隊の護衛艦が二隻でサンドイッチするような形で護衛している海域というのは、ジブチの沖合からアデン湾を抜けたその先のあたりぐらいまででありまして、それ以外にも海賊が発生している場所は、オマーン沖、あるいは紅海の入り口の海峡が狭くなったようなところ等でございます。

 日本の船社に対しては、海賊の襲撃を受けた場合にはジグザグで走行して、海賊は小型のボートみたいなもので、はしごをかけて乗ってきますので、それに乗り移られないように、なるべく高速ジグザグ走行をしてこれを振り切るというようなことで指導しておりますし、私どもも共同訓練等で実際に指導したりもしております。

中谷委員 質問をしたのは、このオマーン沖で我が国が海賊の襲撃を受けた際に、我が国としていかなる対処や援助ができるかという質問ですが、今のところはできないということですね。

鈴木政府参考人 自衛隊の護衛艦が護衛しているのは先ほどの海域でございますが、ほかにも、ヨーロッパあるいはアメリカの多国籍の軍艦等がこのあたりを警備しておりますので、それに連絡をして、この前のグアナバラ号の事件も米軍に助けてもらったわけでありますけれども、援助を仰ぐというようなことで対応しているものと承知しております。

中谷委員 したがって、問題は、このオマーン沖の海賊案件が急増して、現在、日本の商船会社等から、何とか安全確保をしてもらいたいという要請が来ていると思いますが、現実は、結局、アメリカ海軍とか友好国からこういったときに救出に出てもらって、米海軍のように、拘束したら、日本で裁いてほしいという身柄の引き渡しがありましたけれども。

 そこで伺いますが、米海軍などほかの国々は、国際法的に何を根拠として、拘束したり、この海域でこういった海軍の活動をしておられるのか、御存じでしょうか。

鈴木政府参考人 海賊につきましては、国連海洋法条約で、これは人類共通の敵でありますので、いかなる国もこれに対して取り締まりができるということになっております。公海上では、基本的には旗国主義というのがありまして、その船籍国が管轄するわけでありますが、海賊に対してはいずれの国も管轄権を有するということになってございます。

中谷委員 それでは鈴木長官に伺いますが、我が国を救出してくれた米艦艇の船、この艦艇は、いわゆるCTF150、151と152があります。150というのは、OEF・MIOですね。こういったOEFという、海の安全に関してどの国でも持っている権益で、海軍が中心になってやっています。CTF151というのは海賊対処で、おっしゃったように、国際的な海賊法に基づいて海賊を取り締まるという船なんですが、我が国の船隻を救出していただいたその米艦艇は、このCTFの150なのか151なのか伺いますが、どっちなんですか。

鈴木政府参考人 申しわけありません、御質問の通告がなかったので、そこのところの、どちらの行動かは私も承知しておりませんが、いずれにしても、米国の軍艦がそばにおって、海賊事件が近傍で発生しておれば、これに対して対応する権限があるということでございます。

中谷委員 そこのところがこの法案の肝なんですね。いわゆる海賊かどうか、そして相手がテロであるかどうか。

 我が国は、法律によって海賊に限定をして、その任務一つしか与えておりませんが、米国は、今言った海賊、OEF、またはペルシャ湾内の安全、こういった任務をそれぞれの船に二つ、三つ、四つと与えながら勤務をしておりますので、アメリカの艦艇にとっては、相手が海賊であろうがテロであろうが、対処は、同じ船の中で二つ、三つ任務をこなしながら、そして海賊の場合は海賊用に対処できるように、いわゆるバーレーンに米海軍のCENTCOMという指揮所がありまして、先ほど言ったように、150、151、152というオペレーションを適切にやっておりますが、我が国は海賊に限りますということで、本当に非効率ですけれども、テロか海賊かという中で確認しながら任務をしているというのが実態ではないかと思います。

 私が申し上げたいのは、要は、こういったオマーン沖で海賊対処ができるようにしたらいいわけでありますので、かつてインド洋で任務を与えていたOEF・MIOですね、これはテロを支援するような国々の密輸とか密航などを阻止するために国際的に認められた歴史ある活動であります。

 もう少し詳しく説明しますと、MSOという海上治安活動というのがありまして、これは、十八世紀からスペイン、イギリスによって海賊船の取り締まり、また、アメリカ海軍のドイツの潜水艦への攻撃等に備えて、各国の海軍の任務の一環で与えられていましたが、最近はMIOという海上阻止活動、これはMSOの一環で、そういった取り締まりのために臨検をしたり停船を求めたりしておりまして、実際、自衛隊はこのMIOに参加しておりました。武力行使ができませんので燃料補給しかできませんでしたが、こういった国際的な取り締まりに対して参加をしていたわけでありまして、残念ながら、その活動がやまってしまったわけでございます。

 そこで、海賊活動しかなくなったわけですが、今、問題としては、オマーン沖に海賊が多く出没するということで、再びこのOEF・MIOを再開して、そして艦艇を派遣するなり、また、アデン湾で勤務している船にダブル任務としてこちらの方も任務があるんだということで勤務をさせれば、より日本の商船が安全に航行できると思いますが、この点について、外務大臣、防衛大臣、いかがお考えでしょうか。

松本国務大臣 私も、浜田前大臣もおいででいらっしゃいますけれども、海賊のときにもさまざまな議論をいたしました。憲法との関連でもいろいろ議論をいたしました。

 確立された慣習法がそもそもの起源だろうと思いますが、さらに、今鈴木長官からも付言をいたしましたように、国連海洋法条約にも定められて一般的に犯罪として国際的な国際社会の中で認識をされている海賊と、テロという言葉そのものは私どもも認められないものだと思っていますが、何がテロでどうなっているのかということについては、先ほども幾つか例示をされたのではないかと思いますが、やはり国連の安全保障理事会の決議などでそれぞれの事案に基づいて行動を起こしているものとは、同列に論じることはなかなか容易ではないというふうに考えております。

 なお、海賊の対処について、確かに、残念ながら、我が国を初めとして、アデン湾を中心に態勢が整ってくることに応じて発生箇所が移っていったりしている、ありていな言葉で言えば、追いかけっこというか、イタチごっこのようなことになっていることは事実であります。であるからこそ、国際的な協力の枠組みの中で、それぞれの資源を出し合って可能な限り対応をしているというふうに考えております。

 もちろん、現下の状況がそのままであっていいというふうに考えているわけではありませんので、海賊そのものに対する対策であると同時に、私どもとしては、海賊を生む起源となっている東アフリカの情勢、残念ながら今大変大きな飢饉が発生をしておりますけれども、この情勢に対する貧困の撲滅の取り組みにも力を注いでまいりたい、このように考えているところであります。

北澤国務大臣 今いろいろお話を承っておって、自民党が既に参議院へ提出されておられる法案、私は、今の論調の中からすれば、我が国の制約の中でなかなか活動ができない、そういう部分を補うという意味で、補給活動については、十分国会の中で議論をして成果を上げていただければありがたい。私は、既に委員会の答弁等において、この海賊対処の補給活動について前向きなことを少し申し上げてきておりますので、できる限り国会での議論が深まるようにお願いをしたいというふうに思っています。

中谷委員 それでは一つ確認させていただきますが、補給については国会で議論をして成果を出してほしいということで、では、このOEF・MIOにおける、先ほど説明しましたけれども、いわゆるCTF150の海上阻止活動については、憲法上、当然武力を伴わない活動でありますが、参加をして活動できるという認識でよろしいでしょうか。

北澤国務大臣 残念ながら、そこについて、きょうは特段質問の通告もございませんので、知識をそんなに深めておるわけではございませんので一概に申し上げられませんけれども、私は、今現在行っている以上のことをこの地域で展開することはなかなか難しいというふうに思っています。

中谷委員 事は、今オマーン沖で海賊の件数が急増して、日本の運航している船舶の安全が非常に脅かされて、そして、船舶関係の方からも何とかしてほしいという要請がありますので、これはやはり国家としてやれることを検討する。

 その上で、もう実際、我が国はインド洋のOEF・MIOに参加して大変国際的な高い評価を得ていたわけですから、かつてやってきたことも、こういった蓄積も経験もありますので、あわせてやればさらに日本の船舶の安全にもつながるし、国際的な評価も高いし、また、バーレーンというところでは、同じ司令部で海賊、テロ対策、ペルシャ湾内、こういったところをいわゆる多国籍でさまざまの国の代表者が集まってオペレーションをやっていますので、法律が廃案になってしまいましたので早急に出していただいて、我が党はもう既に両方使えるような法律を出しておりますので、ぜひ実施をしていただきたい。

 申し上げたいのは、湾岸戦争のときに日本は小切手外交だと言われて批判されて、インド洋のテロ活動対策においてようやくそれが払拭をされたわけであります。

 やはり、沖縄もそうなんですが、安全保障と外交というものはどちらが政権についても安定したものでありまして、一度壊されるとなかなか復旧、復活が難しいわけでありますので、ぜひこのインド洋のテロ活動対策も、もう既に二隻の船が出ていますので、あわせ持ってできるような、先ほど大臣が言われました補給艦の派遣もその一つでありますが、可能なようにお願いを申し上げたいというふうに思います。

 そこで、これからの懸案としてお伺いをさせていただきますが、いわゆる海上においての武器使用について、もう一度法律を整理する必要があるんじゃないかと思います。

 この法律においては、前進阻止射撃ということで、いわゆる正当防衛の範囲から、国内の対応から一歩進めて、前進してくる海賊がいれば、人質になる可能性のある民間人の身に危険を及ぼすかもしれないということで、ある程度早目に、危害射撃というか、前進を阻止する射撃が認められております。

 ところが、日本の海上保安庁の現在の法律では、国内の警備においても、いわゆるこういった危害射撃が認められておりません。

 そこで伺いますが、尖閣事案で非常に、相手がどんな行為をしても、ただ単にぶつけられるまで海上保安庁は手出しができませんが、やはり領土とか個人財産というのは国家がしっかり守ってあげないといけない問題であって、特に領土というのは、国そのものが国際的に存在が問われるわけであります。

 北方領土四島においても、ロシアは非常に厳しい警備をして、日本の漁船が近づいて銃撃をされて死亡する実例もあったように、あれほどしっかり守っているから日本はなかなか近づけない。そして、竹島もあれだけの物すごい警備をしているからなかなか近づけない状況になっています。

 一方、尖閣列島は、我が国が領有権を支配した状態で、これこそしっかり守っていかなければなりませんが、海上保安庁としては、現場の隊員はぎりぎりの努力をしていると思いますけれども、撃たれるから近づかないというぐらい、やはりそういう体制にしておかないと尖閣列島という領土は守り切れないと思いますが、昨年の事案を受けまして、武器使用において検討なり改正をする意思はお持ちでしょうか。大臣に伺います。

大畠国務大臣 中谷議員からの御質問にお答えを申し上げます。

 確かに、御指摘のように、現在の海上警備行動についてはさまざまな制約があるというのは御指摘のとおりであります。

 ただ、これまでのさまざまな経験の中で、この現状でいいのか、こういうことについては私も中谷議員と同じ認識を持っておりまして、さまざまな状況の中でどこまで海上保安庁として現実的な課題に対応できるか。こういうことについては、現在、海上保安庁全体の強化に向けて、船ですとかあるいは体制ですとか、こういうことを検討しているところでありますが、武器使用についても、どのような形になるべきなのか。

 かつて、たしか北朝鮮の船との銃撃戦というのを私も記憶しておりまして、そういう現実を踏まえた対応というのが必要だろうとは思いますが、現在、海上保安庁内でもこの問題についてもいろいろ論議をして、検討をさせていただいているところであります。

中谷委員 ここはしっかりしてもらいたいと思うんですね、海上保安庁の武器使用がそのまま平時の海上自衛隊の武器使用に準用されておりますので、やはり、国境というのは国として守るべきものなのですね。気概を持って、現場で非常に緊張感のある中で国境というものは守られるわけでありまして、いわゆる危害要件がありますと、現場は迷ってしまいます。それこそ気概が打ち砕かれてしまいます。やはり、しっかり守るべきものは守らなければなりません。

 各国いろいろな事案がありますが、国境を守るためにいろいろとアクシデントが出たとしても、しっかりとした領土なり所属の根拠があれば国際社会から批判されることはありませんので、そういった根拠のあることを守るところにおいては厳格にしていただきたい。

 そういう意味で、武器の使用基準も国際社会に沿った程度にしておかないと、日本はますますなめられて、今も尖閣付近にはたくさんの漁船が入り込んでいるような状況が続いておりますので、しっかりとした対応をとっていただきたいと思います。

 この件、もう一度伺いますが、法律の改正などを行う意思があるかどうか伺います。

大畠国務大臣 今、海上保安庁長官の方に私の方から要請をしておりますのは、世界の沿岸警備隊というのは、どのような体制で、そしてどのような基準に基づいて行動しているのか、カナダですとかアメリカですとかイギリスですとか韓国ですとか、さまざまな国々の状況について調査をして、そして、日本においてはどのような行動をとるべきなのか、そういうことについて今検討をさせているところであります。

 このことについてはなかなか難しい制約もありますが、防衛大臣等ともよく連絡をし、また外務大臣とも連携をとりながら、日本における海上保安庁としての一つの考え方というのをよくまとめたいと考えているところであります。

中谷委員 やはりこの辺をしっかりしておかないと、まさに日本はなめられた状態になりますので、特にロシアとか韓国は一体どうなのかということに基づいて、それなりの同じレベルでしっかりと国境を守っていただきたいと思います。

 そこで、外務大臣に伺いますけれども、今度、あさって、韓国の国会を竹島で開催するという報道がなされております。

 このことで、外務省は現在、韓国に対してどういうことを申し入れて、この国会の開催を阻止しようと外交努力をされているかどうか、その点はどういうふうに対処されておられますか。

松本国務大臣 海賊の件についても記憶がよみがえってまいりました。たしか、私と先生と委員会でともに理事をしていたような記憶がよみがえってまいりまして、相当いろいろ議論をいたしたような記憶がいたしております。

 外務大臣として申し上げるのが適切かどうかわかりませんけれども、ただ、一つだけ、そのときに議論していたことで今あえて申し上げたいと思うことは、やはり、実力を行使することが可能な部隊を動かす場合には、出口をどうするのかということは、過去の我が国にとどまらず、世界の歴史を見たときに常に考えておく必要があるのではないかということは、ぜひ、この議論においてもあえて申し上げたいと思います。

 先ほど御指摘ありました、十二日の日に韓国の領土守護特別委員会、ちょっと正式名称が今手元にないので正確ではありませんが、そういった趣旨の特別委員会が十二日に竹島で委員会を開くということを発表している、そういう意思を示しているというふうに理解をいたしております。

 私自身が、本件については、直接、韓国の外交通商部長官、我が国の外務大臣に当たりますが、にも申し入れを行い、また、あらゆるレベルで、さまざまな形で申し入れ、働きかけを行っているところであります。

 もちろん、私どもの直接のカウンターパートはいわば行政府である外交当局になります。本件については、向こうも立法府の委員会ということになる点があることは申し上げなければいけないと思いますが、そのことも念頭に置いた上で、今あらゆる努力を行っているところだというふうに申し上げたいと思います。

中谷委員 最近、やはり日韓関係は非常に神経質になり過ぎていまして、以前なら、こういった問題も、双方の指導者がお互いに相手の嫌がるようなことはせずに、問題を大きくしないのがいい状態なんですが、韓国の国会を竹島で開くとなりますと、これは両国の国民において、非常に決定的な対立というか問題の溝が大きくなって、これは歴史に残るわけでありますので、あと二日間ありますので、外務省を挙げて、大臣が先頭になって、この前も、我が国から韓国を訪問するときにはいろいろなことがありましたが、それを阻止したわけであります。

 大臣として、もう一度、韓国政府に、これを中止させるためにはこういうことをやりますというようなことを申し上げていただけませんでしょうか。

松本国務大臣 おっしゃったように、日韓の関係は大変重要でありまして、先般のASEAN関連外相会合のマージンで日米韓を行った際にも、対北朝鮮の問題などで緊密な連携をとることである意味では動き出した。まだ、成果は全くこれからでありますので、評価をするまでには至らないと思っておりますけれども、動き出したわけでありまして、そのような意味で、全体としては進んでいるところもあるというふうに私は考えております。

 他方で、今お話がありましたように、この竹島の問題が大変クローズアップをされている中で、日韓の将来にとっても決してよくないということはおっしゃるとおりであります。同時に、我が国の立場と相入れないものでありますから、この十二日については、これまでも積み重ねをしてまいりましたけれども、残された時間についてベストを尽くすようにしてまいりたい、このように思っております。

中谷委員 では、最大限努力をお願いします。

 それから、スーダンについて伺いますが、昨日、大臣のところに国連の潘基文事務総長が来られたと思います。

 今度、南スーダンが独立をするということで、国連南スーダン派遣団に自衛隊の参加を要請されてきたと思いますが、報道では防衛大臣は司令部要員の派遣を協議するというふうに伝えられましたが、現在、この南スーダンへの国際貢献、自衛隊の派遣をどうすべきだとお考えでしょうか。

北澤国務大臣 お話しになりましたように、潘基文事務総長がおいでになって、予定よりも大変時間をとってお話し合いをしました。そういう中で、施設部隊の要請があったことは事実であります。

 しかし、私の方とすれば、司令部要員については非常に関心を高めておるというお答えを申し上げて、施設部隊そのものについては、東日本大震災がまだ全部片づいていない状況の中で、今すぐこれを検討するという段階には来ていない、そういう国内事情も十分御理解をいただきたいということでお話をいたしたところでございます。

中谷委員 これは隊員といっても三百人ぐらいですから、陸上自衛隊がそんなに能力がないと私は思っておりません。多面的にいろいろな活動ができる幅広い柔軟な組織だと思っております。

 実際、私は昨年、スーダン・ハルツームに行きまして、PKOの司令部へ行ってきました。二名の隊員が派遣されていましたが、本当に能力が高くて、チームワークもよく、非常に向こうの司令官も感謝されていました。

 私は、自衛隊員の能力を考えますと、国連活動の司令官、これぐらいはもうやってできる能力も人格も装備もあるわけで、いまだに、PKOが始まって十年、十五年以上になるのに、司令官も出ていないわけであります。やはり、大臣もスーダンに行かれまして、実際南スーダンがどうなっているのかということで、自衛隊の派遣を考えていただきたいと思うんです。

 PKO法の改正、今は制約されたPKOでありますが、もう少し活動自体も、安全に、大胆にできるために、我々は、自衛隊の一般活動における恒久法の法律をもう既に提出いたしております。

 民主党を初め、今の防衛省は十分時間もある中で、PKO法の改正、何でこの法案が出てこないのかな、そう疑問に思っておりますし、司令においても、いつまで司令の一要員でおるのかなというふうに思っておりますが、この件について、大臣、いかがお考えですか。

北澤国務大臣 南スーダン共和国ミッションへの協力のあり方については、もちろん検討はいたしておりますし、これからも進めてまいりたい、そういうふうには思っておるわけであります。

 その上で、一般論として、PKOへの自衛隊の派遣を検討するに当たっては、現地の治安情勢、期待される任務の内容、その他の任務との優先順位などを勘案しつつ、自衛隊が現行法の枠内で適切に対応することが可能であるなどの観点を踏まえながら検討を進めていくということになろうかというふうに思います。

 そこで、現地を視察せよ、こういうお話でありまして、まことに適切な御示唆でありますが、今、国会開会中ということで、恨み節を申し上げるわけではありませんが、2プラス2に行くのにも四苦八苦で行ってきたような状況でありまして、現在、南スーダンまで足を運ぶということにはなかなか難しい状況があります。しかし、政務三役もおることでもありますし、また担当の職員がいることでもございますので、その点については前向きに検討してまいりたいと思います。

中谷委員 まずは政治が窓口を開かなきゃいけませんので、そういった意味では、副大臣、政務官を派遣していただきたいと思います。

 今度、外務大臣に伺いますけれども、PKOも、一つは外交のツールなんですよね。

 中国のヨウケツチ外相が昨日、南スーダンを訪問しまして、首都のジュバでキール大統領に会談しまして、石油開発などの協力の用意があるというふうに述べました。

 さすが、資源外交を中国は大胆に、早速という感じでありますけれども、まず外務大臣、やはり早速南スーダンへ行って、日本の姿勢やら、またPKOをするとしてもそういった姿勢を述べるというのが我が国の国益に即していると思いますが、大臣は、このスーダンの、日本外交としての一つの戦略とそれからPKOについて、いかなるお考えでおられるんでしょうか。

松本国務大臣 もうこれは北澤大臣が申し上げたので繰り返しませんが、ぜひ私も、お許しをいただければ、南スーダンにとどまらず、世界の多くの国々を訪れてしっかりと対話を行っていくことが、日本にとっても国際社会にとっても資するものだというふうに思っております。

 他方で、野党の皆様は今、現内閣に対する御姿勢も既に明確にされておられる中で、どのように回答申し上げるべきかというふうには思いますが、南スーダンにつきましては、七月の九日であったかというふうに思いますが、独立の記念式典にも我が方からは菊田大臣政務官を派遣いたしました。そこで先方外務大臣とも会談を行い、今後、南スーダンの国づくりに対して我が国としてもしっかり支援を申し上げるということを伝えてまいりました。

 既に委員もよく御案内のとおりだろうと思いますが、我が国のアフリカにおける支援はTICADという枠組みで行われてきております。地道な面が多いと思いますが、保健であるとか教育であるとか、さらには自立のための農業などに力を入れてきたこと、これが、アフリカのTICADで私自身も各国の外務大臣とお目にかかると、各国もやはり着々と民主化の度合いも進んできております。そうなりますと、国民に届く私どもの支援というのが高く評価をされるフェーズに入りつつあるのではないかな、このように思っております。

 そういう意味では、南スーダンにおいても我が国の特色を生かした支援を進めてまいりたい、このように思っております。

 なお、PKOについては、やはり大変有力な支援の一つの形だというふうに私も考えておりますし、有効なものであるというふうに考えていることに変わりはありませんが、先ほど北澤大臣からも御答弁申し上げましたように、実際に派遣をするとなれば、受け入れる向こう側の事情もありますし、送り出すこちら側の事情等、総合的に勘案をして決めていかざるを得ないというふうに考えているところであります。

中谷委員 いずれにしても、石油外交ということで中国は早速そういうことをしているということを御認識いただきたいと思います。

 それから、大臣にもう一点、我が国の領域警備というか国内警備について伺います。

 今心配しているのは、原子力発電所の事故がありまして、ああいった非常事態においても、原子力発電所を初めとする我が国の重要施設の警備、これは一体大丈夫かどうかということで、今、福島のあの場所に何人かの武装集団が入って格納庫、核施設を混乱させようと思ったら、簡単にできるんですね。

 というのは、あそこを警備している警備員には実弾を撃てる銃が与えられておりません、民間人ですから。そこは警察がカバーするということで、交番なり派出所がパトロールはやっていると思いますが、とても手りゅう弾とか機関銃を持った十人ぐらいのグループがあそこでテロ活動をした際に、それが防げるかどうか、これは甚だ疑問であります。

 私が防衛庁長官のときに、こういった国内の重要施設の警備においては、治安出動をかける前に、自衛隊がそういったおそれがある場合は出動していわゆる警備を行うようにするべきだと、ちょうど九・一一のテロ事件が発生しましたので、そのような法律改正を求めました。

 ところが、一番抵抗したのが警察でありまして、当時の国家公安委員長を使って、それには及ばないという非常に強い抵抗を受けまして、結局、その法案では、自衛隊の施設と米軍の関連施設だけは事前に警備の配置ができるような、いわゆる警護出動というものができました。

 しかし、原発の対応等を見まして、やはり日本の重要施設においては、自衛隊が治安出動の前にあらかじめ警備に参画をして、警察とともにこういった重要施設の警備をできるようにしておくべきではないかと思いますが、大臣はこの点についていかがなお考えをして検討されているんでしょうか。

北澤国務大臣 今回の福島原発の被害の状況を見ますと、これは地震、津波が発生して大きな被害が出たわけでありますが、今委員御指摘のように、この原因がテロであっても大変な被害が想定されるということは今回のことから十分に推測ができるわけであります。しかし、ただいまのところは、今お話のありましたように、第一義的には警察の力をもってこれを阻止するということであります。

 また、自衛隊法に基づく警護出動、これにつきましては、大規模なテロが行われるおそれがあり、かつ、その被害を防止するため特別の必要がある場合に下令されるものである、こういうことになっておるわけでありまして、警護出動の対象施設は防衛関連施設であるという特性上、自衛隊による警護が適切であると考えられるなどを総合的に考慮しますと、立法政策上の判断の結果、自衛隊施設と在日米軍施設・区域としたものでありまして、原子力発電所を追加すべきだという今のお話については、これはしっかり国会で御議論をいただくことが肝要かというふうに思います。

中谷委員 今、国会で議論しておりまして、それが必要だと申し上げていますので、ぜひそれについても努力していただきたいと思います。

 それから最後に、動的防衛力ということで今後の防衛の指針に挙げていますが、やはり運用面において、いざというときに迅速に部隊が行動できる体制をつくっていただきたい。

 そういう意味では、統幕ができまして統合運用になっていますが、いまだに運用企画局ですか、なるものは残って、一々大臣に上がるときに、そこの課長さんなりいろいろな人を通過して、大臣に上がるために二時間も三時間も浪費されて、ずっと部隊は待っています。

 したがって、従来から主張しておりますが、もういいかげんに局と統幕を一緒にすべきじゃないかなと思います。動的防衛力というとそこが一番のみそだと思いますが、大臣にこの件を伺いたいと思います。

北澤国務大臣 部隊運用にはさまざまな問題があるわけですが、統合運用ということを前内閣で決めていただいたことは私は非常に高く評価しておりまして、今回の東日本大震災でこれが非常に機能したということは大変有効であったというふうに思います。

 一方で、これから動的防衛力についてどういうふうにしていくかということについては、つい先日の五日に構造改革の答申が私のところへございました。これまたぜひごらんをいただいて、我々は、これに基づいて運用の面に効果をあらわすようにしてまいりたい、このように思っておりますので、またぜひ、経験の豊富な委員におかれては、さまざまな場面で御示唆をいただければ大変ありがたい、このように思っています。

中谷委員 構造改革というと、何か財政的な制約を受けてこうしなさいというような改革だと受けとめますが、本来は国防計画があって国家の運営がされるわけでありますので、ぜひそういった観点で御議論をお願いしたいと思います。

 以上で終わります。

松原委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、海賊・テロの初めての委員会でありますが、まず最初に、ソマリアを含む東アフリカ地域で、過去六十年間で最悪と言われる大干ばつによって深刻な食料危機が起こっている、この点について外務大臣に伺います。

 ソマリアでは、首都モガディシオを含む五つの地域が飢饉状態にあることが宣言をされました。地域全体で千二百四十万人が緊急人道支援を必要とし、ソマリアでは、多くの難民が首都や隣国に押し寄せております。

 まず外務大臣に、被害の現状と日本政府の対応について報告していただけますか。

松本国務大臣 今お話があったところはできるだけ割愛したいと思いますが、先般、潘基文国連事務総長も訪日をされた際にこの問題を取り上げられました。過去六十年で最悪で、支援を必要とする人が一千二百万を超える状況であるということであります。国際社会としては、既に約十九億ドルの支援を行ってきているところであります。

 我が国としては、国際機関と協力をして九千五百万ドルの支援を行ってきているところでありますが、加えて、NGOの同地域における活動支援として年百万ドル、さらに、先週末、緊急の物資の支援ということで、六十万ドル超だと思いますが、緊急援助物資の供与を決定したところであります。

 今後とも、情勢の推移を見ながら、必要な人道支援を行っていけるように努力をしてまいりたいというふうに思っているところでございます。

赤嶺委員 この九十日間で既に二万九千人以上の乳幼児が死亡したとの推計も出されております。事態は非常に深刻であり、政府の迅速で積極的な対応を求めたいと思います。

 そこで、海賊問題について聞きますが、ソマリア沖での海賊の増加を受けて、二〇〇八年以降、各国が軍隊を派遣してまいりました。日本も二〇〇九年から、海上自衛隊の艦船による民間船舶の護衛、P3C哨戒機による警戒監視を行っております。昨年に続き、この七月、活動をさらに一年間延長することを決めました。ジブチには、新たな活動拠点として自前の隊舎や駐機場まで整備をいたしました。

 防衛大臣にまず聞きますが、この活動をいつまで続けるのか、どのように終了させていくのかについて、どういう方針を持っておられますか。

松本大臣政務官 お答えいたします。

 ソマリア沖・アデン湾ですが、現段階においても多くの海賊行為が発生しておりまして、日本関係船舶に対する襲撃事案も発生していることから、我が国が海賊行為に対処しなければならない状況に依然として変化は見られないものと考えております。このため、先ほど御指摘ありましたとおり、引き続き一年間、海賊対処行動を継続する必要があると判断をしたところでございます。

 防衛省・自衛隊としても、海上輸送の安全確保を図ることは、我が国のみならず国際社会の平和と繁栄にとって重要であるとの認識のもと、今後とも、関係各国、各機関と緊密に連携の上、海賊対処を実施してまいりたいと考えておりまして、現段階において、いつまでという時期については決まっていないところであります。

赤嶺委員 いつまで続くかわからない状態があるわけですね。

 具体的に聞きますが、二〇〇八年以降も海賊の発生件数は増加し、広域化していることが先ほど来指摘されております。外務大臣に、最近の海賊の発生状況について説明をしていただけますか。

松本国務大臣 ソマリア沖・アデン湾付近ということで申し上げますと、二〇〇八年から急増をしておりまして、二〇一一年八月七日現在の発生件数は既に百七十七件に達しております。昨年同時期の発生件数の一・六倍というふうに認識をしております。

 ちなみに、二〇〇八年は百十一件、二〇〇九年が二百十八件、二〇一〇年が二百十九件というふうに私どもでは手元の数字で把握をいたしておりまして、現在は、八月七日現在で百七十七件という状況でございます。

赤嶺委員 したがって、発生件数は、減少するどころか年々増加している。ことしの勢いだと、去年を上回る勢いであります。最悪のペースになっているわけですね。

 発生場所も、アデン湾であったのが、今ではソマリア東方の海域でも多発するようになっているということでありました。最近は、東はインド洋、南はモザンビーク海峡にまで拡大し、極めて広範囲に及んでいるわけです。

 結局、外務大臣、各国が軍隊を派遣していない地域に発生場所が移っただけで、率直に言って、先ほど外務大臣もおっしゃいましたが、イタチごっこに陥っている、こういう現状。外務大臣の認識を伺います。

松本国務大臣 先ほどの答弁でも申し上げてまいりましたが、海賊そのものの発生を防ぐべく、この東アフリカ、ソマリアに対する支援も含めた国際社会の政策の展開が必要であるということを申し上げてきたわけでありますが、同時に、まさに目の前にあるこういった海賊犯罪というのはしっかり取り締まらなければならないですし、海上の航行の安全というのは確保をされなければなりません。

 広い海においてすべてをカバーすることは大変難しいことでありますけれども、国際社会が力を合わせてできる限りのことをすべきだというふうには思っております。

赤嶺委員 先ほど来、この委員会室に当時の浜田防衛大臣もいらっしゃるというお話でありましたが、当時も浜田大臣にも伺いました、軍隊を送って本当に海賊の発生を防げるだろうかと。当時の質問が今日でも、やはり軍隊を送っても防げない、イタチごっこという現状は指摘されなければいけないと思います。

 次に、国土交通省に聞きますが、民間船舶の護衛活動は国土交通省が窓口になって進められております。二〇〇九年三月末以降約二年四カ月にわたって活動が進められてきましたが、この間に護衛を受けた民間船舶の総数、そのうち日本関係船舶は何隻なのかを明らかにしていただけますか。

井手政府参考人 数字のお答えを申し上げます。

 本年の八月七日までの数字でございますが、延べ二百七十回、隻数で総数二千七十六隻の船舶が護衛をいただいております。

赤嶺委員 そのうち日本関係船舶は何隻なのかということを聞いたんですが。

井手政府参考人 約百数十隻でございます。

赤嶺委員 二千隻余りに対して約百数十隻ということですね。

 今まで、日本関係船舶の通航が多いことを護衛活動の必要条件として強調されていたと思いますが、実際には一割程度、こういうことでいいんですね。

井手政府参考人 手元の数字では百数十隻でございます。済みません、細かい足し算ができておりませんけれども。

赤嶺委員 大体、そんな非常に低い数字になっているわけです。すぐには答えられないようなものでありますが、それ以外の船というのは自衛隊の護衛を受けていない、そういう船舶があるわけですね。そういう船舶はどのような対策をとっているんですか。

井手政府参考人 お答え申し上げます。

 自衛隊の護衛活動の対象エリアでないエリアも日本関係船舶は航行しておりますが、こういうところは、個々の船舶がそれぞれのリスク評価を行った上で、国際海運集会所などの国際団体、海運関係の団体がございますけれども、こういった団体が共同でつくりましたベストマネジメントプラクティス、今はバージョンスリーになっております。これに基づきまして、その船舶の事情に応じてそれぞれ、例えば船員の訓練の実施でございますとか、あるいは海賊が船舶に乗り込むことをなるべく防げるような装置を設けるとか、あるいはアデン湾・ソマリア沖、これは、日本の自衛隊以外の各国の艦船もいろいろ哨戒活動等をやっていただいておりますけれども、そういった艦船との調整を行っておりますアフリカの角海事安全センターというセンターがございますが、ここにポジションの通報などを行うというふうなことを行いながら航行をしております。

赤嶺委員 私も、国際海運集会所が去年の六月にまとめましたベストマネジメントプラクティスというのを見せていただきました。これは、ソマリア沖を航行する民間船舶の対応指針ということになっています。それを読みますと、十八ノット以上で進んでいる船舶が海賊に乗り込まれたり攻撃された報告はないことや、あるいは乾舷が八メートルを超える船舶は、海賊の攻撃を回避できる可能性が大きいことを指摘しております。

 日本関係船舶のうち、こうした基準を満たす、あるいは満たそうとしている船舶、これはどのくらいありますか。

井手政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたベストマネジメントプラクティスの中で、赤嶺先生がおっしゃるとおり、十八ノット以上のスピードが出ている船、あるいは乾舷、フリーボードでございますが、八メートル以上の船が海賊の攻撃を回避しやすいというふうな記述がございます。

 御指摘のございました日本関係船舶における隻数なんでございますけれども、実は、こういった速度あるいはフリーボードの高さといいますのは、これは海洋の条件、気象の条件、それからまた積み荷がどうなっているかというふうなことによって刻々変わりますので、一義的に、速度やフリーボードを持っている船はどのぐらいかということを特定することは大変難しゅうございます。

 ただ、一般的に申し上げて、速力が速い、あるいは乾舷、フリーボードが高いという船の種類はございまして、コンテナ船とか自動車の専用船、こういったものがこういう特性を一般的に持っております。

 日本関係船舶は、日本商船ということでは今時点で二千七百隻ほどございまして、そのうちのコンテナ船の数が約二百七十隻、自動車専用船の数が三百二隻程度ということでございます。

 それから、先ほど御質問がありました、二千七十六隻ほどの自衛隊の護衛を受けた船のうちの日本関係船舶、恐縮でございますが、昨日の通告で聞き漏らしておったようでございますので、計算がすぐできませんで、先ほどは御無礼しました。

 再度、手元の資料をもとに計算しましたところ、百数十隻ではございませんで、五百七十一隻というのが日本関係船舶ということで、約四分の一程度ということでございます。おわびをして、訂正いたします。

赤嶺委員 ことしの三月に、アラビア海で商船三井の運航するタンカーが襲撃され、米海軍、トルコ軍が海賊四人を拘束し、日本に移送されました。

 このときに、乗組員全員が船内の避難所にいて無事だった。避難所に避難しながら船の操舵もできるものと聞きましたが、そういうことなんでしょうか。そうした避難所を整備した、あるいは整備を検討している船舶はどのぐらいありますか。

井手政府参考人 先ほどの商船三井の船の関係で出ました避難所でございますが、実は、船舶避難所、正式な国際的な定義があるわけではございません。

 したがいまして、乗組員が全員何らかの形で避難できるという広い意味でとらえますと、例えば機関室などもそういうことに当たるかとは思いますが、もっと狭い意味で、例えば専用の通信設備があるとか等々、特別な設備を設けた形での避難所ということで申し上げると、日本船主協会に五月の段階で問い合わせましたところでは、三隻しかないということでございました。ただ、さらに現在、船主協会の把握している数字によると、百隻程度の船舶がこういった船内避難所というものを設置する計画があるというふうに伺っております。

赤嶺委員 日本人初の国際海事機関の事務局長に選ばれました関水さんが、広大な海域を現態勢で警備するのは不可能だ、海軍の力だけでなく、船舶みずからも防衛能力を高め、地域の協力も得ていかないとと述べておられます。海運業界自身の努力も問われていると思います。

 ことし一月に、韓国軍が、海賊に乗っ取られた韓国船を救出する作戦を実行し、海賊八人を射殺し、五人を拘束いたしました。海賊の側は、今後は韓国人船員を人質にした際には殺害すると宣言をしました。その後、別の韓国人が乗る化学物質運搬船を乗っ取って、死亡した海賊八人の補償と五人の釈放を要求しました。力の対応はさらなる力の対応を招いて、かえって問題を悪化させかねないということを指摘しておきたいと思います。

 そこで次に、沖縄の問題、米兵犯罪について聞いていきたいと思います。

 二〇〇八年八月に、うるま市内で、米兵の乗用車が対向車線に進入し、当時三十八歳の男性が運転するオートバイに正面衝突し、死亡させた事件について、アメリカ側による処分結果を四月と五月の安全保障委員会で質問してまいりました。アメリカ側に照会中というのが政府の答弁でありました。

 外務大臣、照会をして、結果はどうでしたか。明らかにしていただきたいと思います。

松本国務大臣 大変残念でありますが、いまだに結果の報告ができる段階には現段階で至っていないと御報告申し上げざるを得ない状況でございます。

赤嶺委員 外務大臣が答弁席に座るたびに聞いてきたテーマでありますが、御返事がいただけません。

 日米両政府は明らかにするのを拒んでおりますけれども、ところが、六月の末に、沖縄の地元紙が処分結果を報道しております。兵士に対する刑事処分は行われなかったとのことであります。意図的に事故を起こしたものでも、他人の安全に対し注意を払わなかったものでもないというのが米軍当局の挙げた理由であります。

 結局、何の処分も行われていなかったから明らかにできなかったということではありませんか。一人の命を奪っておきながら、何の処分も行われていないなどということはあってはならないことだと思います。

 法務省は、米側が処分を行わなかったことを知っているんですか。米側が処分を行わなかった以上、日本側が裁判権を行使すべきではありませんか。

甲斐政府参考人 今お尋ねの米軍人の事故に関する処分結果につきまして、私どもも把握をしておりません。

 したがいまして、アメリカ側が裁判権を行使しなかったという仮定に基づいてどうこうするということは、なかなか今まだお答えする段階にはないというふうに考えております。

赤嶺委員 全く知らないのに、仮定も何もないですよ。説明し切れない人たちの答弁とはとても思えない態度であります。

 この間の審議で、アメリカ側が裁判権を行使した結果について、日本側に通知されるのは軍法会議の結果のみで、懲戒処分については通報されない仕組みになっていることがわかっております。裁判権を奪われたあげくにその結果さえ通知されない、不当きわまりないと思います。

 この点では、渉外知事会も七月の基地対策に関する要望書の中に、公務中の犯罪について、アメリカ側の司法手続による処分結果及びその審理過程を被害者、遺族及び地元地方公共団体に通知する仕組みを構築することを盛り込みました。

 外務大臣、この渉外知事会の要求に沿ってアメリカ側との交渉を開始すべきではありませんか。

松本国務大臣 現段階で御指摘の件について御報告ができないのは私も残念に思っておりますが、日本側が隠ぺいをしているという事実はありません。既に知っていて、もし私のところに報告が来ていないようであれば、これは大変なことだと思います。まだ報告できる段階にないということを先ほど申し上げました。報告できる段階であれば、きちっと報告をさせていただきたいと思っております。

 なお、お話がありましたように、裁判という形でない場合の処分について、自動的に報告をされる仕組みにはなっていないということは、既に議論などで明らかになってきているとおりであり、これについてぜひ結果の報告をということで、渉外知事会の皆様から御要請も先般いただいたところであります。

 私どもとしては、ぜひ、やはり処分の結果というのは関係の方々が知ることを求めているということがありますので、これにこたえられるようにしっかりと対応してまいりたい、このように思っております。

赤嶺委員 同時に、法務省にも求めますが、二〇〇二年の横須賀での米兵による放火事件、これも取り上げたことがありますが、放火事件でありながら不起訴処分となり、アメリカ側が裁判権を行使しました。その理由をただしたわけですが、記録が残っていない、この一点張りであります。

 これは主権にかかわる問題です。日本側が起訴、不起訴を判断した根拠についても、事後の検証にたえ得るように記録は保存すべきではありませんか。

甲斐政府参考人 不起訴事件の記録につきましては、記録事務規程というもので、それぞれの不起訴処分の内容でありますとかまた法定刑の差等に応じて、保管期間というものを定めております。

 ただ、そういった保管期間の定めがある場合で、仮にその保管期間を経過するという場合であっても、必要があるようなときには保存期間を延長することができるというふうにされております。

 例えば、検察審査会で審査申し立てがなされているというようなときに、それでまた廃棄してしまうとそういった審査に支障があるということで、保存期間を延長することができるということになっておりますので、そういった方策によって対応をするものと思っております。

赤嶺委員 検察審査会の話じゃないですよ。

 米側に聞いても、犯罪がどのように処分されたかわからない。日本側、法務省に何で裁判権を放棄したか聞いたら、資料が残っていないからわからない。すべてがやみの中なんですよ。これを解決せよと言っているんです。法務省に資料保存を強く求めたいと思います。

 若干質問を残しておりましたので、先ほどの、米軍が海賊四人を拘束し日本に移送された件について、海上保安庁長官に聞きます。

 今回のように海賊を拘束した場合に、その後どの国の司法手続に付すかについては、選択肢は一つではありません。ソマリアやその沿岸国、襲撃された船舶の船籍国、被害を受けた乗組員の国籍国、海賊を拘束した国、あるいは特別法廷などということも議論されておりますが、さまざまな選択肢が考えられます。

 その判断基準について、日本政府はどのように考えているのか、関係国ではどのような議論になっているかについて、説明をしていただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 三月五日に発生いたしましたグアナバラ号事件につきましては、米海軍はたまたま近傍におってこれを拘束してくれたわけでありますが、米国はこのタンカーについてほとんど無縁の国でございます。

 一番は、船籍国であるバハマが管轄権を持っておるわけでありますが、バハマもこれに対して司法手続にかけるというような意思はないということで、私どもも外交ルートを通じて確認いたしまして、それから、今、委員おっしゃった近隣国も、刑務所が今満杯であったりして、これを司法手続にかける余力はないということで、やはり日本関係船舶でありますので、ここは、日本政府がこれを引き取って司法手続にかけるというのが国際社会に対する日本の責務でもあろうということで、政府全体の方針に基づきまして、護衛艦に乗船している海上保安官がこれを逮捕し、私どもの航空機で日本に護送して検察の方に送致をしたという状況でございます。

赤嶺委員 終わりますけれども、海賊を逮捕し、日本の裁判にかけて本当に有効か。ドイツや韓国での裁判のことも報道されておりますが、どこで生まれたかと聞くと木の下で生まれたと言い、何歳かと聞くと二十年前の雨季だったと言い、文化も習慣も生き方もすべて違う。すべて違う国に対して、武力やあるいはそういう軍事力で対処しても、成功しない。

 もう一度、根本的に考え方を改めて、ソマリアの海賊はやはりソマリアの内政、貧困に原因がある、その対策を急ぐことこそ海賊の根絶につながるんだということを申し上げて、質問を終わります。

松原委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。

 八月九日付の朝日新聞「わたしの紙面批評」欄に、弁護士でヒューマン・ライツ・ウオッチ日本代表の土井香苗さんが、スリランカでの戦争犯罪調査に関して、日本政府の姿勢を批判する一文を寄せております。

 土井氏によると、インド洋の島国スリランカでは、長い内戦で最大四万人の民間人が殺害をされたようです。土井氏は、ヒューマン・ライツ・ウオッチ日本代表として、昨年、当時の岡田克也外務大臣を訪ね、国連が検討していたスリランカでの戦争犯罪調査を日本政府も支持してほしいと要請し、岡田外務大臣も、実際に、来日したスリランカ外相に国連との協力要請を行ったとのことです。ところが、その後、外務大臣がかわると、動きはぴたっととまってしまったと述べております。

 外務大臣にお尋ねをしますが、国連のスリランカでの戦争犯罪調査に対する日本政府の支持、協力はどうなったんでしょうか。

松本国務大臣 土井ヒューマン・ライツ・ウオッチ日本代表のお感じになったことでありますので、私どもとして何か反論をするのが適切ではないのかもしれませんが、一つは、スリランカに対する私どもの基本的な考え方は、岡田大臣以降引き継がれておりまして、何かぱたっと変わったとかいうことはないというふうに理解をいたしております。

 スリランカの内戦末期の人権問題への国連の対応については、御承知のとおり、ことしの四月に専門家パネルの報告書が公表をされております。

 我が国は、これまでも、スリランカ政府に対して、国連とは十分協議をする、説明責任を果たす、また国民和解に取り組むべきであるということを、要人往来の機会をとらえて申し上げてまいりました。ついこの五月にも、菊田大臣政務官がスリランカを訪問した際にも、人権担当大臣との会談や外務大臣との会談で、国連との取り組みということについて触れてきたところであります。

 その意味では、大臣がかわって全く方針が変わったかのようにもしお感じになっておられるとすれば、今私どもで続けている考え方からすれば、必ずしもぴたっとくるものではないというふうに認識をいたしております。

照屋委員 もちろん、大臣もその紙面を読まれたのかもしれませんが、土井さんは、欧米と日本のメディアにおける自国政府の外交行動を監視、分析して、報道する姿勢の違いについても指摘をした上で、それでもなお、スリランカで少数民族の虐殺というべき残虐な軍事行動進行中の二〇〇九年に、欧米などの政府が人権侵害の停止を求めたときも日本政府はこの動きに加わりませんでした、そういう批判があります。そのことについては大臣はどのようにお考えでしょうか。

松本国務大臣 当該記事は私も拝見をいたしました。土井先生は、たしか当該新聞の紙面評価委員というような立場で、むしろメディアに対する意見を言う場ということで論評を載せておられたというふうに思いますが、同時に、今のようなこともあったというふうに理解をしております。

 しかし実際には、二〇〇九年の四月の内戦末期、一般市民の安全を確保するために、スリランカ政府による一時的な停止とLTTEによる一般市民の解放が不可欠であるというふうに我が国も考えまして、我が国、そしてノルウェー、米国、EUのいわゆる四共同議長国との間で繰り返し協議を重ねてまいりました。もちろん、対外的に談話を出す、そしてG8の一致した立場から声明を出すなどすると同時に、政府とLTTEの双方に対して働きかけを行ったところであります。

 また、この四月の末には明石政府代表をスリランカに派遣いたしておりまして、今の四共同議長国の中で唯一、当時の大統領に直接懸念を表明するということも行っておりますので、御指摘の見解は必ずしも事実を反映していないというふうに私どもは考えているところであります。

照屋委員 土井氏は、日本政府は、かつてはビルマ軍事政権の巨額の支援国であり、今でもスリランカ政府の最大の経済的スポンサーであるとも指摘をしております。

 一般論で結構でございますが、外務省は、ビルマ軍事政権を初めとする海外の人権侵害あるいは戦争犯罪などについて、どのような方針をお持ちでしょうか。

松本国務大臣 人権は、普遍的な価値として国際社会が共有できるものだと思っておりますし、これを確保するためには、私どももやはりしっかりと努力をしなければいけない、こういうふうに思っております。

 その上で、先ほどビルマ、ミャンマーの件をお出しになりました。引き続き、少数民族に対する人権侵害があるなどの報道や情報もあるところであり、私どもとしても、しっかりと注視をしていかなければいけないし、働きかけを行っていかなければいけないというふうに思っております。

 その後、政府に対してのアプローチの方法としては、働きかけを行う、他方で何らかの制裁などの強い態度で行う、さまざまな方法が考えられると思いますが、これは、その時々において、やはり最も有効な方法によって働きかけを行っていくほかないものというふうに考えております。

 今お話がありましたミャンマーにつきましても、我が国が最大のスポンサーというようなことを表現されているようでありますけれども、もし、我が国を初めとする欧米などの支援が行われなかったとしても、別の国から大きな支援が行われるとすれば、この支援を打ち切るということ自身の有効性というのもまた考えなければいけないわけでありまして、その国が置かれている状況などによって、どのような形で働きかけを行うのが、その国の国民にとって最も有効かつ有力、迅速な働きかけになるかということは、しっかりと選択をし、判断をし、行っているものというふうに考えております。

照屋委員 それでは次に、ことし三月にアラビア海を航海中の商船三井のタンカーが海賊に襲われた事件で、東京地検が海賊対処法違反罪で自称ソマリア人四名を起訴してから三カ月が過ぎても、公判前整理手続が始まっていないようであります。その理由は、裁判所がソマリ語の通訳を確保できないためだとも報道されております。いろいろな問題がこれには含まれておると思います。

 裁判開始がおくれると、勾留が長引いて、被告人の人権上も問題だと思います。同時に、海賊対処法をつくって自衛隊が苦労して海賊をとらえて起訴しても、裁判がなかなか始められぬ。こういうことについて、外務大臣もしくは防衛大臣、どのようにお思いでしょうか。

松本国務大臣 先ほどもこの案件については取り上げられまして、私自身は、実は三月の九日に外務大臣に就任をいたしましたが、事案の発生がたしか三月の五日でありまして、日本に移送するかどうかという話は、私が就任して最も早く聞いた案件の一つではなかったかというふうに記憶をいたしております。

 ただ、先ほどからもさまざまな御議論がありまして、海賊そのものをなくしていくために、ソマリアに対する対策がやはり必要であるということについては、私どももそのように考えて外交的な支援も行っているわけでありますが、同時に、やはり海賊は犯罪であります。取り締まって、どこかでしっかりと法に基づいて裁判に付するということが必要でなかろうかというふうに思います。

 先ほど海上保安庁長官から御答弁をさせていただきましたが、関係国の中で幾つかの国々は裁判に付する意思がないということもありましたので、日本関係船舶での事案ということで我が国で裁判に付することにしたものというふうに理解をいたしております。

 なお、外国人でありますので、今言語の件について御指摘がありました。所管でありませんので、どういった事情になっているか、今手元にはありませんけれども、できる限り裁判の手続が円滑に行われることが望ましいことは言うまでもありません。先生におかれては、法曹の立場でもいらっしゃるのでよく御案内だと思いますが。その点については、関係の当局も努力をしているものというふうに理解をしております。

照屋委員 法務省か最高裁か、どちらか見えておるんですか。

甲斐政府参考人 御指摘の事件は、本年三月五日に、アラビア海の公海上におきまして、被疑者らが自動小銃を発射するなどしてタンカーに乗り移り、同船の運航を支配しようとしたものの、救助に駆けつけたアメリカ海軍に制圧されたという事件でございます。

 東京地検は、被疑者三名について四月一日に、被疑者一名については五月二日に、それぞれ、海賊行為に関する罪ということで東京地裁に公判請求をしたところでございます。

 現在の状況でございますけれども、公判前整理手続期日を開く準備をしている段階であって、御指摘ありましたように、通訳人がもちろん必要でございますので、裁判所において適切な通訳人を確保するべく努めているものと承知をいたしております。

 以上でございます。

照屋委員 今法務省から答弁がありましたけれども、いずれにしても、裁判所でソマリ語の通訳が確保できない、こういう事態、まさに想定外でしょうか。しかし、そういうことがあってはいけないので、私は、しっかりした対策をとるべきだ、こういうふうに思います。

 外務大臣にあと一点。

 最近、沖縄の地元二紙に、一九六〇年代から七〇年代の米軍普天間飛行場やホワイトビーチ、キャンプ・キンザーなどの米軍施設で、ベトナム戦争で使用された猛毒の枯れ葉剤を使用、貯蔵していた可能性が極めて高いとの関係者の証言が報道されております。英国系ジャーナリストのジョン・ミッチェル氏が、在沖米軍基地に駐留した退役軍人十数名から証言を得たようであります。

 御承知のように、在沖米軍基地はベトナム戦争の出撃前進基地であり、補給基地の役割を果たしておりました。黒い殺人機B52が嘉手納基地から毎日のようにベトナムに出撃をし、ベトナム人民を殺りくしておりました。沖縄は、米軍基地の被害者であると同時に、ベトナム戦争では加害者にもなっていたのです。ベトナムでは、猛毒である枯れ葉剤による深刻な健康破壊、環境破壊が今なお続いております。

 私は、日本政府は、主権国家として、アメリカに対して強く基地内の調査を求めるべきだと思います。

 なお、この問題については、昨日の参議院外交防衛委員会でも、自民党の島尻安伊子議員がかなり詳細に外務大臣とやりとりをやっております。私、その議事録も読ませていただきましたが、どうも外務大臣の答弁もいまいちはっきりしない。

 何か、今回の報道を受けて改めて米側に事実関係を確認しているところだとか、また、照会に対する速やかな回答を待っているという答弁もありますが、どういう照会をしているのか、文書なのか、口頭のようなものか。あるいは、事実関係の確認というのはどういう手段、方法でなされておるのか。加えて、それらを一括御答弁いただきたいと思います。

松本国務大臣 昨日の質疑の経緯は既に御案内というお話でありましたので、私の方から申し上げることはないかと思います。現段階では、報道が出ておりますので、米側に事実関係を確認しているところだというふうに昨日も申し上げました。

 大要について、今、私は手元で、どのような形での確認なのかということを持ち合わせておりませんが、昨日の質問も受けまして、改めて、昨日、委員会終了後には関係の部局を呼びまして、早急にかつしっかりとまずは回答を得るということで、要請をしたのであれば回答を得るように、そしてその回答を得た上で、今後必要な対応はしなければいけないということも考えていきたいということを指示いたしたところであります。

 現段階ではまだ回答を得ておりませんが、できるだけ早く回答を得るように、まずしっかりと対応させたい、このように思っております。

照屋委員 大臣、これは、ベトナム戦争の話でもう終わった話じゃないんです。私は、主権国家の日本として毅然とした姿勢で臨んでいただきたいということを要望しておきます。

 終わります。

松原委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 お疲れさまでございます。

 実はみんなの党は、衆議院では外務も安全保障にも委員ポストを持っておりません。ですので、インド洋だ、ソマリアだ、ジブチだというにとどまらず、少し広いテーマでお尋ねすることをお許しいただきたいと思います。

 まず、この間、日米同盟がいささかの揺らぎを見せる中、震災という出来事がありました。震災救援に当たって米軍が展開をしたトモダチ作戦、オペレーション・トモダチ、これについて私たちは局所局所での大変印象的な場面を見てきたわけであります。

 通告の一問目を二つに分解してお尋ねしますが、このトモダチ作戦、活動の全体的内容はどんなものであったのかということをまずお伺いしたいと思います。

北澤国務大臣 お答え申し上げます。

 東日本大震災において、米軍は、今お話しのように、トモダチ作戦として最大で艦艇約十五隻、航空機約百四十機、支援兵力約一万六千人を投入いたしました。そして、捜索、救助、救援物資の輸送、空港、港湾の復旧、学校の瓦れきの除去などの大規模な支援を実施いたしまして、また、原子力災害につきましても、CBIRFの展開やバージ船の提供など、自衛隊と連携をして対応してきたというのが概要であります。

柿澤委員 艦船十五隻、航空機百四十機とおっしゃいましたでしょうか、一万六千人、こういう規模で活動された。避難者に対するおふろの提供など、こういうことも含めてさまざまなことをやってこられたというふうに思います。

 そして、考えてみると、これは日本が国内で大規模かつ組織的なテロ、または何らかの形で入国した勢力による社会秩序を破壊するような実力行使、こういうことに仮に直面した場合、これは非対称的戦争というか、これからあり得る脅威だというふうに言われているものでありますけれども、こうした場合に、国民保護のため、日米がどのようにして協力できるのかという点について、実は大変示唆に富むオペレーションが行われたというふうにも思えるわけであります。

 その意味で、今回のトモダチ作戦というのが日米同盟を含めた安全保障の観点からどのような意義があったというふうに考えているか、御答弁をいただきたいと思います。

北澤国務大臣 日米の連携というのは極めて有効にできたというふうに認識をいたしております。これは、長年にわたって日米が共同で訓練を積み重ねてきた、その成果だというふうに思っております。

 そこで、このことについては、六月に行われました2プラス2において、日米間の特別なきずなを証明し、同盟の深化に寄与したとの点で、日米政府はともにこのことについて認識を共有したわけであります。

 先ほど申し上げましたように、二国間の訓練、そういったものについて、これはまたガイドラインで規定されている調整メカニズムに準じる形で、ここのところが非常にうまくいったというふうに思っておるんですが、防衛省、まず市谷でありますね。それから、在日米軍の司令部、横田。そしてまた、統合任務部隊司令部、これは三月の十四日にこの部隊を編成して東北方面総監の君塚司令がこれの指揮をとったわけでありますが、現地と在日米軍と市谷の防衛省本部、この三つで指揮所をつくって、日米が相乗り入れて指揮をした、非常にこの調整所は機能を発揮したというふうに考えております。

柿澤委員 想像したくない有事の際にも、こうしたオペレーションが機能を発揮するということを大変強く期待をしたいというふうにも思います。

 質問をかえまして、トモダチ作戦の費用についてなんですが、四月の段階で、このトモダチ作戦の費用について、最大で八千万ドル、約六十八億円になるという見通しをアメリカ政府が日本政府に伝えてきた、こういうふうに報じられております。そのときの報道では、日米両政府が、予算が超過した場合に備え、日本側の負担割合も含め、対応の協議に着手した、こういうふうに報じられております。

 トモダチ作戦に関して、日本政府はアメリカ政府に対してどのような費用負担の取り決めをしているんでしょうか。お尋ねを申し上げます。

松本国務大臣 報道に書いてあることを正しい、間違っていると一つ一つ論評をするのは避けてきているところであるのですが、今、トモダチ作戦の経費ということでお尋ねがあったというふうに理解をいたしまして御答弁を申し上げますと、基本的には、国防省が実施をする災害救援・人道支援のための予算である海外人道災害市民支援、オーバーシーズ・ヒューマニタリアン・ディザスター・アンド・シビック・エイドのうちの八千万ドルが上限として充てられたというふうに承知をいたしております。

 なお、米軍によるトモダチ作戦に係る経費負担について、日米の政府間で何らかの取り決めがあるということはありません。

柿澤委員 たしか質問主意書に対する答弁書で、この経費については日本政府が負担をするということはない、こういう趣旨の御答弁があったかと思いますが、そういう理解でよろしいんでしょうか。

松本国務大臣 今御答弁申し上げたのは、現段階で我々が承知をしている限り、トモダチ作戦の経費は米国の予算の上限八千万ドルの中から支出をされるという理解であり、日米間に何か取り決めを行ったということはありませんので、現段階で、何か私どもが支出をする根拠を持っているわけではありません。

柿澤委員 御答弁としては、現段階でという前置きを二度使われていることに多少のひっかかりを感じるところもございます。

 私は、あれほどの大規模な支援活動について、本来、何もなさないということで本当に済まされるのかというふうに実は思っています。こうした形でのトモダチ作戦のオペレーションの費用を負担する、こういうことでなくて、来年度予算の他の費目に載せたりとか、こういうことが仮に行われるとすれば、私はそんなことがあるかわかりませんけれども、そういう形でやることはむしろ好ましくない、きちんと費用分担の取り決めを行って支出をすべきじゃないかというふうに個人的には思っております。

 これについては幾らお尋ねをしてもあれだと思いますので、次に移りたいと思います。

 一方、福島第一原発の事故の対応に当たって、先ほどCBIRFの話なども出てまいりましたが、こうしたことについての支出に関しては、アメリカ政府内でもその取り扱いが決まっていない、こういうことがやはり報じられております。

 考えてみますと、これについては、トモダチ作戦とは違って、人道支援費というわけにはアメリカ政府もいかないんだろうというふうに思います。しかも、アメリカ政府が全額負担をする、こういう根拠もこの原発事故に関してはなかなか理論上は見出しにくい、こういうものではないかというふうに思います。

 アメリカ政府が原発事故の対応のために支出した費用についてどういう扱いになるのか、そもそもこの件について日米間で協議が行われているのかどうか、お尋ねを申し上げたいと思います。

松本国務大臣 御案内のとおり、この原子力発電所の事故については、専門家の派遣、消防車、ポンプ、防護服など物資の提供も受けたところであります。

 費用負担のあり方については、日米の政府の間で意見交換を行っております。改めて現段階でと申し上げなければいけないかもしれませんが、現在は何か取り決めがあるわけではありません。

 日本政府としては、米側の支援には感謝をしておりまして、米側に対して、本件に関しては相応の負担を申し出ております。有償のものがあれば申し出てほしいという趣旨の内容の申し出になっていたというふうに理解をしておりますが、しかし、現時点で米側から回答をいただいてはいないという状況でございます。

 この意見交換そのものは、それなりに進行中の時期から行われていたというふうにたしか記憶をいたしております。もし要請が出てくれば、これを踏まえて政府部内で検討していくことになろうかというふうに思っております。

柿澤委員 アメリカに対して、相応の負担の用意あり、こういうことも伝えてあるけれども、アメリカ側から申し出が今のところは行われていない、そういうことがあった場合には、協議というか最終的な取り決めを行っていくということになるだろうという見通しであります。

 しかし、さらに突っ込んで考えますと、そのアメリカから求められた負担について、しからば日本政府が負担をするのか、あるいは事故の原因者である東京電力はどうなるのか、こういうことにもなるように思いますが、この点についても、仮定の質問ですから今の時点でどうこう言えない、こういう御答弁になるのかもしれないですけれども、お尋ねをしておきたいと思います。

松本国務大臣 全体の問題についても、今回の事故についての東京電力と政府との責任の関係というのをどのように考えるかということは、これまでもさんざん国会でもいろいろな場面で賠償の面も含めて議論されてきたというふうに承知をいたしております。その意味で、一義的に東京電力というふうに政府がよく申し上げてきたのは、やはり東京電力がその責任を免れるべきでないということで申し上げてきたかというふうに思います。

 ですから、対米関係上どのようにするのか、そして国内の実質的な負担をどのようにするのかというものは、どの物資もしくはどれに対する対価なのかということによっても、ひょっとすると検討の結論が変わるかもしれません。

 既に何らかの形で東京電力が利用、使用したような物資であれば、やはり東京電力に払っていただかなきゃいけないというふうにシンプルに答えが出るものもあるかもしれませんし、政府に対するアドバイスにつながるようなものであったということで、一定の分担をしなければいけないという内容のものの対価だというふうに考えるべきものもあるかもしれません。

 そういう意味で、政府部内で検討していくという表現をとらせていただいたというふうに御理解いただきたいと思います。

柿澤委員 一義的には東京電力が責任を負う、この言葉に従って整理をされていく、こういうことを御答弁としていただいたと理解いたします。

 さて、現政権はインド洋の給油の中止をされた。それと入れかわる形で、岡田外務大臣は、アフガニスタン支援として、五十億ドルの民生支援をコミットメントしたわけです。これは政治主導のコミットメントだった。しかし、五年間で五十億ドル、これは途方もない額であります。正直、額が先行して決められた感も否めません。五年間で五十億ドル。インド洋の給油活動にかかった経費は八年間で五億ドル。十分の一であります。

 そして、アフガニスタンのカルザイ政権の今の状況を前提にすれば、お金を出したとしても、それが有効に生かされるのか、こういう疑問を呈する向きも多いわけです。アフガニスタンの治安悪化も進んでおり、現実に民生の支援ができるか定かではない、こういうふうにも言われてきました。

 さて、この五十億ドル、五年間というわけですから、折り返し点に差しかかろうとしているわけですけれども、現状においてどうなっているのか、何に支出して、執行状況はどうか、お尋ねを申し上げたいと思います。

松本国務大臣 五十億ドルの支援ということは国民の税金を使って行うわけでありまして、何かの見返りにとかそういうことではなく、やはり国際社会におけるアフガニスタンの支援が必要であり、我が国の果たすべき責務があるということから決定をされたものだというふうに私自身は理解をいたしております。

 インド洋の補給活動についての議論は、今御質問の本旨ではないかと思いますので、余り申し上げることはいたしませんけれども、先ほどからもここで議論がありますように、出口をどこに設けるのかという視点というのは必要ではないかということは申し上げておきたいというふうに思います。

 なお、お尋ねのアフガニスタン支援の状況でありますが、現在までのところ、警察官の給与、訓練など五・五億ドルを含むアフガニスタン自身の治安能力の向上のための支援に六・四億ドル支出をいたしております。また、職業訓練や雇用機会創出のための小規模開発プログラムなど、元タリバンなどの兵士の社会への再統合のための支援に一・七億ドル支出をいたしております。また、農業、農村開発、インフラ整備、教育、医療、保健などの基礎生活分野に対する支援など、アフガニスタンの持続的、自立的発展のための支援に八・六億ドルを支出いたしまして、合計十六・七億ドルの支援を実施してきたところであります。

 今お話がありましたが、治安情勢なども踏まえて、効果の上がることで有効に支出をしていくことが必要であろうというふうに思っております。

 私自身も、アフガニスタンの支援というのは逐次報告を受けて、効果的、効率的な支援になっているかどうかということについては注意深く見てまいりたいと思います。

 また、例えば、近くスタートをすることになりますが、治安権限が第一対象地域であるバーミヤン県で道路の整備計画を進めるという話があります。

 ここは、御案内のとおりニュージーランドが地方復興チームを展開してきたところでありますが、私自身が国際会議などでニュージーランドの外相と何度か会う中で、双方の協力で有効な協力を展開できないかという議論になりまして、五月にニュージーランド外相が訪日をした際に、改めて両者で協力をしていくという方向性を確認し、現地で打ち合わせをしていく中で、このような現地のニーズにこたえた現場主導の案件がスタートをすることになってきております。

 一つ一つの案件についてしっかりと、おっしゃったように、全体としては大変巨額の内容でありますけれども、一つ一つは有効かつ効率的なものになるように、私どもも注意深く執行してまいりたい、このように思っております。

柿澤委員 お尋ねに対する答えとしては、五十億ドルに対して十六・七億ドルだ、これが答えであります。

 こうした状況の中、政府は、アフガンの安定に資する、こういう趣旨で何かこの五十億ドルを振り向けて、周辺国の支援にも充てよう、こういうことが検討されているかのような、そういった報道もございます。しかし、本当に震災復興にお金が必要だということで、国内では増税を行う、こういう状況である中で、この五十億ドル、現在の消化状況でいえば十六・七億ドルだ、こういう中で、本当に周辺国の支援にこの枠を使ってまでこれを使い切るということが果たして妥当なのかどうかということは、やはり私は検証されなければならないというふうに思います。

 更問いをしたいところなんですが、国土交通大臣もおいでいただいているので、最後に一問だけさせていただきたいというふうに思います。

 海賊対策は海上保安庁が一義的に行うこととされている。そして、海上保安庁は、海上自衛隊を海外にどんどん出していくというわけにはなかなかいかないわけですから、国際協力の中で、各国のコーストガードといろいろな協力をやって、高い評価も受けているところです。

 そういう意味でいうと、海上保安庁、ある意味ではどんどん外に出て活躍をしていただかなければならない、こういうふうに思います。そうした中で、このソマリア沖もそうですけれども、やはり海上自衛隊そして海上保安庁が連携して、それをもっともっと深めていく、これが大事だと思います。

 きょうは、そういう観点で、海上保安庁長官にこの間どんな方がなってきたか、こういうことを一覧表にしてお出しいただいたんですけれども、見たところ、これは国土交通省の幹部人事の一環として保安庁の長官が決められているというふうにしか見えない、こういうものだと思います。

 去年の尖閣諸島沖の漁船衝突事件のときにもこうしたことが一つの話題になりましたけれども、実力行使的な活動を含む、そうしたことをこれから国際的な舞台で海上保安庁もより求められていく、こういうことを考えますと、場合によっては海上自衛隊と海上保安庁が省庁の垣根を乗り越えて幹部の人事交流を行っていく、こういうことも必要になってくるのではないかと思いますが、ぜひ御見解をお尋ね申し上げたいと思います。

大畠国務大臣 柿澤議員からの御質問にお答えを申し上げます。

 ただいま、海上保安庁と防衛省の人事的な交流といいますか、こういうことも大変大事な視点じゃないかという御質問を賜りました。

 海上保安庁といたしましては、防衛省との間で部長級の人事交流はしているところでありますし、また、防衛省からの出向者については、常時幹部会に出席するなど、密接に連携をとっているところであります。

 これからの海上保安庁の役割というものを考えますと、御指摘のところは大変大事でありまして、今回の東日本大震災においても、海上自衛隊と共同で一緒に捜索を行うなどの現場での経験も積ませていただきました。

 今後、人事交流についても、私も同じ考えを持っておりますので、そのような形で、万全な海上保安庁としての経験を積み、人事的にもそのような体制がとれるように努力をしてまいりたいと思います。

柿澤委員 国土交通省に関しては、例えば気象庁長官とか、こういう人事の問題もあります。本当に専門性のある、そして本来の役割をしっかりと果たすことのできる、適切な人事を今後幹部を初めとして進めていただけますように、御答弁の趣旨を体してお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

松原委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する件の調査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時十分散会


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