衆議院

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第3号 平成23年8月23日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十三年八月二十三日(火曜日)

    午後二時三分開議

 出席委員

   委員長 松原  仁君

   理事 岡島 一正君 理事 楠田 大蔵君

   理事 首藤 信彦君 理事 武正 公一君

   理事 中野  譲君 理事 武田 良太君

   理事 中谷  元君 理事 赤松 正雄君

      稲富 修二君    小原  舞君

      緒方林太郎君    奥野総一郎君

      加藤  学君   菊池長右ェ門君

      小林 正枝君    斉木 武志君

      坂口 岳洋君    玉木雄一郎君

      中塚 一宏君    中野渡詔子君

      中林美恵子君    長島 一由君

      浜本  宏君    早川久美子君

      藤田 大助君    藤田 憲彦君

      三村 和也君    水野 智彦君

      宮島 大典君    森山 浩行君

      渡辺浩一郎君    稲田 朋美君

      岩屋  毅君    江渡 聡徳君

      谷川 弥一君    徳田  毅君

      西村 康稔君    浜田 靖一君

      松浪 健太君    望月 義夫君

      石井 啓一君    赤嶺 政賢君

      服部 良一君    山内 康一君

    …………………………………

   参考人

   (日本郵船株式会社代表取締役・専務経営委員)   諸岡 正道君

   参考人

   (社団法人日本船主協会会長)           芦田 昭充君

   参考人

   (社団法人日本船長協会会長)           小島  茂君

   参考人

   (全日本海員組合組合長) 藤澤 洋二君

   参考人

   (獨協大学外国語学部教授)            竹田いさみ君

   衆議院調査局海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別調査室長           湯澤  勉君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する件


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     ――――◇―――――

松原委員長 これより会議を開きます。

 海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する件について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として、日本郵船株式会社代表取締役・専務経営委員諸岡正道君、社団法人日本船主協会会長芦田昭充君、社団法人日本船長協会会長小島茂君、全日本海員組合組合長藤澤洋二君及び獨協大学外国語学部教授竹田いさみ君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、諸岡参考人、芦田参考人、小島参考人、藤澤参考人、竹田参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず諸岡参考人、お願いいたします。

諸岡参考人 日本郵船株式会社代表取締役の諸岡でございます。

 このたびは、我が国経済を支えるアジアと中東、欧州、アフリカとを結ぶ大通商路を崩壊させかねないリスクのあるソマリア・アデン湾並びにインド洋における海賊問題に関しまして、弊社の意見、要望を述べさせていただく機会をいただき、まことにありがとうございます。

 初めに、二〇〇九年の海賊対処法により、ソマリア・アデン湾に海上自衛隊の護衛艦や哨戒機を派遣していただき、海賊対処活動に御尽力をいただいております日本国政府並びに国会議員の皆様、関係者の皆様に対しまして、厚く御礼を申し上げます。

 しかし、海賊問題の現状に目を向けますと、我が国を初めとした各国の懸命な対策にもかかわらず、残念ながら、身の代金目的の人質事件など、海賊による被害はますます急増、凶悪化し、また、発生海域も広域化しており、今後さらなる海賊・テロ対策が強く求められている状況でございます。

 本日は、日本船主協会より芦田会長が御出席されておりますので、ソマリア・アデン湾並びにインド洋における昨今の海賊事件の概要説明と、海運業界における海賊対策の現状並びに要望につきましては、後ほど芦田会長よりお話しいただくことになろうかと存じます。

 よって、私からは、実際昨年十月にハイジャックをされました、私ども日本郵船の完全子会社であります日之出郵船株式会社が運航していました貨物船イズミの事例を御紹介させていただき、あわせて弊社の要望を述べさせていただきたいと思います。

 本船イズミは、フェアフィールドシッピングという会社が所有している船舶で、日之出郵船がフェアフィールド社から同船を借り受け、運航を行っておりました。

 同船の概要につきましては、お配りした資料に記載されておりますように、総トン数一万四千百六十二トン、全長百四十七メートル、乗組員は全員フィリピン人で、二十名が乗船しておりました。

 同船は、日本と東アフリカの間を三カ月間で一巡する定期航路に従事しており、事件が発生した航海では、昨二〇一〇年八月三十一日に神戸、九月十二日に君津で鉄鋼製品や雑貨一万七千四十トンを積み、九月二十二日にシンガポールで燃料油を積んだ後、ケニアのモンバサ向けに航海を開始しました。

 モンバサに至るまでの航路は、海賊の出没が多数報告されている海域を通る直行航路を避け、安全だと言われていたマダガスカル島の南端からアフリカ諸国の領海内を通過する迂回航路を選定しておりました。航路の概要は、お配りした資料に記載しております。

 また、インド洋を航行中から、万一海賊に襲撃された場合でも容易に乗り込むことができないよう、船体の周囲に有刺鉄線を張りめぐらし、さらに、操舵室の見張り員を増員しておりました。航行速力は全速力の約十三ノット、時速に換算すると約二十四キロで、同船の安否に関しては、船長からの報告とともに、弊社の船舶動静管理システムでも毎日確認しておりました。

 モンバサには現地時間の十月十日十一時に到着予定でしたが、到着の約二時間前、八時五十三分に、同船が異常を知らせる船舶警報通報装置を作動させました。その後、フェアフィールドシッピング社、日之出郵船並びに弊社の安全運航を担当する部署が同船に連絡をとりましたが、いずれも連絡をとることはできませんでした。

 その後、同船の付近を航行していたEU軍のデンマーク艦船がハイジャックされていることを確認し、その事実が国土交通省経由、日之出郵船に連絡された次第です。ハイジャックされた地点は、タンザニア領ペンバ島東方沖約十五キロの海域です。

 その後、同船はソマリア沖に拘束され、本年二月二十五日に解放されました。遺憾ながら、拘束されている間、海賊の母船として使われていた模様です。

 人質となった船員や本船の被害に関しましては、同船の備品や乗組員の貴重品、現金などが盗難に遭い、船室のドアや床が損傷を受けましたが、乗組員に危害が加えられた様子はありませんでした。

 日之出郵船は、今回の事件以降、安全な航海を確保する有効な手段がないという理由で、東アフリカ航路を中断しております。同社は欧州航路も運営しておりますが、海賊行為がアデン湾のみならず、インド洋北西部、紅海南部で多発し危険なことから、スエズ運河を通過せず、アフリカ南端の喜望峰を迂回する航路を選定せざるを得ない状況でございます。

 ペルシャ湾方面への配船は、最短航路をとらず、インド沿岸を航行する迂回措置をとっております。日之出郵船のみならず弊社の他のグループ会社でも、航路の休止や迂回による燃料費の増大など大きな影響を受けております。

 また、一九九六年以来、十五年連続して運航している弊社客船飛鳥の世界一周クルーズも、昨年、ことしと二年連続して、スエズ運河通航から引き続き地中海クルーズを断念したため、一部乗客の予約取り消し等、客船運航面においても経済的なダメージを受けております。

 以上、本船イズミのハイジャック事件を御紹介いたしましたが、同船以外にも数隻の弊社関係船が海賊の被害を受けております。特に、二〇〇八年四月に、原油を満載しましたタンカー高山がアデン湾で襲撃された事件は日本でも大きく報道されました。その他の事件に関しましては、お手元の資料に記載してあるとおりでございます。

 仮に、このまま凶悪化する海賊行為への対処を放置した場合、私どもが危惧いたしますことは、現在、四百人前後の船員を海賊に拘留されているわけですが、フィリピンやインド等の船員供出国が、適切な海賊対処を行わない国が運航する商船への乗船を拒否する事態でございます。

 我が国の海運会社が運航する外航商船の船員のうち、外国人船員は約九五%を占めていると言われております。これらの船員が乗船拒否するような事態が発生することとなれば、我が国の商船の運航は全く成り立たず、石油、LNGなどのエネルギー、食料、鉄鉱石の輸入も、また自動車、機械などの輸出も途絶えてしまいかねません。

 ペルシャ湾の出入り口に当たるホルムズ海峡は、我が国の原油輸入量の約八八%、一億六千万トン、LNG輸入量の約二六%、千六百万トンが通過する資源エネルギーの最大通商路です。また、紅海、アデン湾は、欧州、アフリカ諸国との工業品、消費財、エネルギーの重要な通商路です。

 これらの地理的なリスクに加え、船員供出国の乗船拒否リスクもあわせると、冒頭で申し上げましたとおり、ソマリア・アデン湾並びにインド洋における海賊問題は、我が国経済を支えるアジアと中東、欧州、アフリカを結ぶ大通商路を崩壊させかねないリスクであると御理解いただけるものと思います。

 ますます広域化、凶暴化する海賊行為に対処する有効手段としては、後ほど日本船主協会より、海上自衛隊の護衛艦または補給艦の追加派遣や日本籍船への武装警備員の乗船を可能にする措置など、具体的な要望が挙げられます。

 特に、国際的には、武装警備員を乗船させてハイジャック対策を施している傾向が見られますため、弊社も、これら具体策の実現、実施に向けた御検討を強くお願いするところでございます。

 また、ソマリアにおける海賊問題の抜本的な解決策として、海賊行為はおいしいビジネスではないということを認識させ、海賊行為を抑止する施策を重ねていくことが重要であるかと思います。

 具体的には、海賊を厳正に処罰するための国際法、裁判システムの整備、周辺国の海上警戒態勢整備への積極的援助、さらには、疲弊するソマリア社会への人道、治安維持、インフラ整備のための支援や協力について、国連や国際海事機構など、国際的な機構、枠組みの中で、我が国が今後とも積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 これこそ、三月の大震災で各国から多大な支援を受けた我が国の、世界各国に向けた返礼の一部になるものだと信じております。

 国会議員の皆様方の強力なリーダーシップをお願い申し上げます。

 私からの意見、要望は以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)

松原委員長 ありがとうございました。

 次に、芦田参考人、お願いいたします。

芦田参考人 日本船主協会会長の芦田でございます。

 本日は、海賊問題に関する当協会の意見、要望を述べさせていただく機会をいただき、まことにありがとうございます。

 また、二〇〇九年三月よりアデン湾において実施していただいています海賊対処活動により、これまで二千隻を超える商船が海賊の襲撃を受けることもなく安全に航海することができました。日本国政府、並びに国会議員の皆様を初めとして海賊問題に関係されているすべての皆様の御尽力に対しまして、厚くお礼申し上げます。

 七月に行われましたジブチにおける航空隊拠点の開所式典には、私以下十一名の当協会メンバーが参加させていただきましたが、実際に現地を訪問いたしまして、酷暑の中で海賊対処活動に従事されている自衛隊、海上保安庁、さらには現地大使館の皆様の御苦労の一端に触れまして、心から感謝申し上げると同時に、大変お礼を申し上げてまいりました。

 ところで、本日は、せっかくの機会でございますので、ソマリア・アデン湾における海賊事件の概況、海運業界における海賊対策の現状、さらには海運業界としての要望について簡単に述べさせていただきます。

 まず初めに、ソマリア・アデン湾における海賊事件の概況についてですが、二〇〇七年以降にふえ始めた海賊事件発生数は、二〇〇七年の百二十件から、二〇〇八年には百八十九件、二〇〇九年には二百六十四件へと急増しています。昨年の二〇一〇年も二百五十九件とほぼ横ばいながら高い水準で推移いたしましたが、本年に入ってからの海賊事件発生件数は昨年を上回る勢いで増加しており、八月十二日現在で百七十九件の事件が発生しています。

 また、発生海域で見ますと、各国軍が展開しているアデン湾での発生件数が減少傾向にあるのに対して、ソマリア東方沖、特にオマーン沖のアラビア海での海賊事件数が急増しています。EU軍の調べによれば、八月十五日現在、十七隻の船舶が拘束され、三百七十八名もの船員が人質として捕らえられています。

 海賊事件の発生数もさることながら、最も懸念されるのは、海賊の襲撃海域が、アデン湾及びソマリア東方沖から、より北方のオマーン沖、さらにはより東方のインド沿岸に近いアラビア海全域にまで拡大し、日本経済の生命線とも言えるペルシャ湾と我が国、極東を結ぶ航路までが海賊の脅威にさらされているという現状にあります。

 ことしに入ってから五隻の日本関連船舶が海賊の襲撃を受けました。資料の中で一から五の数字で示しています。五隻のうち四隻がアラビア海で、残る一隻が紅海において襲撃されました。

 このうち、数字の「1」で示したものがペルシャ湾に就航していた船舶です。この海域には、油タンカーやLNG、これは液化天然ガスでございますけれども、LNG運搬船などの危険物積載船を中心として、年間約三千四百隻の船舶が就航しています。

 この船舶は、本年二月、原油約三十万トンを満載し、ペルシャ湾より極東に向けて航行中、二隻の小型ボートに分乗し、RPG、これはロケット砲でございますけれども、それと自動小銃で武装した海賊によって約二十分にわたり発砲を受けましたが、現場付近を哨戒中の外国軍艦艇が駆けつけたことによって海賊の攻撃から逃れることができました。

 また、本年三月には、燃料油十万トンを満載した当協会関係会社の運航するタンカーも海賊の襲撃を受け、一たんはハイジャックされながらも、現場に急行した米軍により解放されるという事件が発生いたしました。数字の「3」で示された事件です。この船舶はペルシャ湾に就航する船ではありませんでしたが、ペルシャ湾への航路付近で発生した事件であります。

 このように、ペルシャ湾に就航する船舶の安全が脅かされるのは、我々海運業界にとっても極めて深刻かつ懸念される事態であります。

 海運各社は、国連や各国軍の監修による海賊対策指針を遵守し、関係先への位置通報、海賊の襲撃に備えた準備や対策に努めるのは当然のこと、危険なアデン湾海域を避けるために、相当な遠回りを覚悟して喜望峰経由で欧州に向かう迂回航路を採用する、あるいは、ペルシャ湾就航船についても、最短航路ではなく、より安全なインド沿岸寄りの航路を航行するなどして、海賊による襲撃のリスクを軽減するよう努めています。

 船舶における具体的な対策としては、有刺鉄線やレーザーワイヤ、放水銃、防弾ヘルメットやチョッキ、夜間用の暗視装置、窓ガラスの飛散防止フィルムといった対策を採用して海賊の襲撃に備えています。最近は世界的な傾向として、シタデル、これは海賊に襲撃された際に船内の特定場所に籠城するための設備であります、このシステムの採用、あるいは、非武装または武装した保安要員を船舶に乗船させる事例が増加しています。また、日本関係船社におきましても、各社の判断により、こうした籠城設備や保安要員を採用する会社がふえる状況にあります。

 このうち、武装した保安要員の乗船につきましては、旗国の、旗国と申しますのは船舶の籍を置いている国であります、旗国の法律が適用されるため、これまでは民間人が船内に武器を持ち込むことを禁止する国が数多く存在していました。しかしながら、海賊事件の発生海域が各国艦艇による護衛や哨戒活動が及ばない海域にまで拡大していることから、これまで船内への武器持ち込みには慎重な立場をとってきた欧州諸国の多くもこれを認める方向にかじを切っています。

 具体的には、自国の軍隊を武装ガードとして乗船させる、あるいは民間の武装ガードが自国籍船に乗船できるよう所要の法改正を実施していると認識しています。

 なお、我が国においては、民間人による船内への武器の持ち込み、すなわち民間の武装ガードを日本籍船に乗船させることは認められていません。

 以上、簡単に、ソマリア・アデン湾における海賊事件の概況、海運業界における海賊対策の現状について説明させていただきました。

 海運各社としましても、海賊事件の増加、凶悪化に対抗するため、できる限りの海賊対策を実施しているところではありますが、船舶における自衛措置にはおのずと限界があります。

 特に、ペルシャ湾に就航する船舶の安全が危惧される状況にあることから、スリランカ南端からペルシャ湾、ホルムズ海峡に至る航路を含むインド洋及びアラビア海の全海域において、有効な海賊対処行動が実施できるよう行動海域を拡大することが必要との観点から、三点要望させていただきたいと思います。

 お配りしている資料、要望事項にありますとおり、一点目は、護衛艦または補給艦の追加派遣であります。

 二点目は、日本籍船への武器持ち込みが認められていない現状から、日本籍船への公的武装ガード、自衛隊員、海上保安官等でございますけれども、この乗船、これが不可能な場合は、民間武装ガードの乗船を可能とする措置の実現であります。

 最後に、中長期的な課題となりますが、海賊事件の根本的な解決を図るために、ソマリア国の安定化に向けた国際的な支援が必要不可欠となることから、我が国としても積極的な支援をお願いしたいと思います。

 また、当面は、各国による海賊対処活動、艦艇、哨戒機等の派遣でございますけれども、この継続、強化及び国連や国際海事機関における取り組みなど、海賊問題に対する国際的な取り組みの強化に関しましても、引き続き我が国のリーダーシップに期待したいと思います。

 以上、当協会の要望を申し上げました。実現に向けて御検討いただきますようお願い申し上げます。

 ありがとうございました。(拍手)

松原委員長 ありがとうございました。

 次に、小島参考人、お願いいたします。

小島参考人 日本船長協会会長小島茂です。よろしくお願いいたします。

 本日は、こういう場に呼んでいただきまして、発言できることを非常に感謝しております。こういうところに来たのは初めてで、船長になって初めて船に乗っていったときと同じように非常に緊張しておりますので、よろしくお願いいたします。

 きょうは、私、船で、現場で働いている船長、乗り組みの代弁ということで発言したいと思います。

 まず、アデン湾に派遣していただいています護衛艦に乗船している自衛官の方、それから海上保安庁の保安官の方、それとジブチの基地で働かれている隊員の方及び関係者に深く感謝を申し上げます。

 さて、船長は船では最高責任者です。安全運航、それから貨物の安全管理の責任及び乗り組み全員の安全を守る大きな責任を持っております。乗り組みは船では家族と一緒で、またその乗組員たちも一人一人、国に家族がいます。

 今、芦田会長も述べられたように、海賊の活動域が最近非常に広くなってきております。それと、悪質、辛らつ、武器も高度化していると聞いております。

 現在、アラビア海は、西風の強い、それからうねりが高くなって、モンスーンシーズンです。これが十月ごろまで続きます。だいたい六月ごろから十月ごろまでなんです。うねりも五メートルから六メートルぐらい立つんです。

 普通ですと、漁船とか小型船は沿岸から遠くまではちょっと行けない状況なんですが、海賊の件数がふえております。減っておりません。これは、先ほども話されたように、母船が、大きな船が捕まって、母船からということで、海賊の行為が減らないと私は思っております。その中には、先ほどのように、やむを得ず、不本意ながら、人質になって、おどされて運航作業をさせられているというのも現実です。

 このモンスーンシーズンが十月に終わった後、また海賊行為がふえるのではないかと非常に危惧しております。

 それで、海賊行為の増加、それから広域範囲に広がっているということで、より効率的に監視、追撃ができるように、そして多くの船を守っていただくために、ぜひとも自衛艦追加派遣、または補給艦の追加派遣をお願いしたいと思います。

 日本人船員含めて乗組員みんな頼もしく思うし、国に残してきている家族の心配も和らぐのではないかと思います。ぜひともお願いしたいと思います。

 実際に襲撃を受けている船からのVHF、これは船舶電話なんですけれども、護衛艦に助けを求めている悲痛な声が頻繁になっているということを聞いております。

 私も、船をおりてからもう十一年になるんですけれども、現役のときに、スリランカ・コロンボ港の沖で沖待ちをしているときに、同じように、私はそのとき、いかりを入れずにエンジンをとめて潮に流していたんですけれども、この地域はかなり襲撃が多いという警告は受けていました。ちょうどインド系のタミール人のゲリラが多かったときなんですけれども、本船はライトをたくさんつけて、それから見張りを増して、定期的な巡見をしておりました。

 そして、ミッドナイトごろに、近くにいた船から、VHFでポートオーソリティーに、今、武装した賊が乗り込んできた、助けてほしいという連絡をしているのが聞こえてきました。ポートオーソリティーは、そのままいろ、今からスリランカの海軍が向かうから、ただし抵抗はするなよということを言って、その後応答がなくなりました。その後どうなったか、ちょっと確認はしていませんでした。

 それからまた、先日、ある情報ソースから、ソマリアの海賊に人質になっているデンマークの船の船長、機関長、一等航海士それから甲板長が機関銃を突きつけられて、囲まれて、悲痛な、悲壮な訴えかけをしている映像がありました。

 その船は、ことしの一月から捕らわれている、非常に暑くて食事もとれない、衛生環境が非常に悪い、それから、精神的に参っています、家族とも一度も連絡をとれていない、お願いですから身の代金を払ってください、自由にしてください、助けてください、お願いですという映像でした。非常に卑劣な行為でした。

 武器もかなり強力化してきておりまして、聞くところによりますと、イスラム原理主義者への上納金と引きかえに武器を手に入れているということも聞いております。

 本船の方も、先ほど芦田会長が言われたようにいろいろなことをやっております。見張りは十分にやっておりますし、サーチライト、夜間暗視装置。それから、レーザーワイヤ、先ほども言いましたが、普通の有刺鉄線よりもっと、さわるとすぐ手が切れちゃう、ひげそりの刃のようなものを船の周りにずっと回しております。それから、高水圧の放水機、消防の放水のああいうものですね、高圧でやります。それから、弾が当たったときガラスが飛散しないような飛散防止のテープもガラスに張っております。防弾チョッキ、それから防弾ヘルメットも用意しております。

 それと、先ほど言ったシタデルという、エンジンルームそれから操舵機室、この辺に囲いをしっかりつくって内側からロックできるようにする。賊に侵入されたときに全員がそこに立てこもる。大体三日間ぐらいをめどにそこで立てこもって、通信装置もしっかり設置して、護衛艦の到着を待って、それから交戦の間はそこに隠れているということで、かなりの効果があらわれている船も何隻かあります。

 操船の方については、スピードのある船は逃げられるんですけれども、余りないような船についても、とにかく増速、できる限りスピードアップしたり、それからジグザグ走行して振り切るということもトライしているそうです。

 それから、現在、あのエリアは漁船もかなり出るんですけれども、ただ、漁船が、その中に突如として海賊に早変わりする船が紛れていたりするそうです。

 このアラビア海は、私もペルシャ湾に何度も行ったんですけれども、ペルシャ湾の暑い中で積み荷をして、ホルムズ海峡をやっとこ出てきて、アラビア海を航行するんですが、このあたりからスリランカの沖ぐらいまでは一息入れるエリアなんです。その後また、マラッカ、シンガポールと難所が待っているんですけれども、この本当に一番ほっとする海域。

 それから、ヨーロッパからのコンテナ船も、スエズ運河を抜けて、紅海を抜けましてアデン湾、それからソコトラ島という島があるんですけれども、そこを過ぎると本当はほっとするエリアなんですが、現実はそこが一番注意しなくちゃいけないエリアになってしまいまして、船も非常に大変な状況になっております。とにかく小さな船を見ると、漁船なのに海賊船、すぐそういうことでストレスがたまっていくということです。

 それから、週刊タイム八月第一週号に、タイムの記者がソマリアの海賊のリーダー、親分と会って話を聞き出したという記事がありました。

 ソマリアの海賊、とにかく今、何人捕まえても、次から次にソマリアの若いジェネレーションの人たちは海賊になりたいということで控えているということです。

 このリーダーは、我々はどんなことをされても海賊行為はやめないぞということを言っているということです。

 もう皆さん御存じかと思うんですが、ソマリアの沖でほかの国の漁船が魚を乱獲したり、産業廃棄物、ごみをどんどん捨てまくった、これは非道な、大きな罪だということを言っておったということです。それから、母船として捕まえた場合は、乗り組みに、命をとられるか命令に従うかどっちだ、抵抗する場合はすぐ殺すぞとおどしているそうです。

 ソマリアという国をこれから本当の国らしくしていくにはどうしたらいいかということは悩ましいことです。それから、先ほどもあれなんですけれども、日本の経済は船なしでは成り立ちません。その船を安全に運航するのは我々船乗りです。

 ロケットランチャーをいとも簡単に発射したり、凶暴化している海賊は、現場の船長、乗り組みにとっては非常に脅威です。彼らの命を守るためにも、ほとんどの船長の意見、要望は、自衛をできる装備を持ったガードの乗船です。

 乗り組みの毎日のストレスは非常に大変です。ぜひ、日本籍船への武装ガードを乗せられるようにお願いしたいと思います。

 この場合、いろいろ法律の整備、改定が必要になるかと思いますが、早急な対応をお願いしたいと思います。

 外国人船員の中には、ソマリア沖へ行く船には乗りたくないと、他の国の会社に転じていく船乗りもかなり多いです。

 ソマリアの海賊行為の根本的原因は、貧困と打ち続く部族間の内戦、統一政府の確立が進まないことにあると思います。自助努力もありますが、国連を通して一日も早く国際的な取り組みの強化を進めていただきたく思います。

 あと、日本船長協会は、平成十二年から、船長母校に帰るということで、子供たちに海と船を語るという活動を進めてきました。ことしで十一年目になります。

 全国の小学校、中学校を訪問しまして、生徒に海と船のことを話してまいりました。海と船に興味を持ってもらう活動です。既に全国で九十五校を回り、約一万九千人の生徒に聞いてもらいました。

 その講義の後、質疑応答をするんですが、必ず、今でも海賊はいるんですかという質問があります。それの答えは、残念ながらいますという答えになります。しかし、君たちが船に乗るころには海賊はいなくなっているよ、だから安心して勉強してくださいという答えにしています。これは本当に実現させないといけないと思います。これは我々の役目だと思います。

 最後に、もう一度要望を申し上げたいのは、まず、海賊襲撃エリアの拡大に対応して、護衛艦の追加派遣、または補給艦の派遣をお願いしたいと思います。それと、日本籍船への武装ガードの乗船の実現化。それから三番目に、国際的に、海賊問題の根本解決へ向けて、IMO、国際連合を通して活動を積極的に進めていっていただきたく思います。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

松原委員長 ありがとうございました。

 次に、藤澤参考人、お願いいたします。

藤澤参考人 全日本海員組合組合長の藤澤と申します。

 私も、かつてこのエリアを航海士として就航した経験を持っております。本日は、現在このエリアに就航している船員、海上から寄せられた意見、要望を中心にお願いをしたいと思います。

 海洋貿易立国である我が国は、その経済安全保障を国家間の通商にゆだね、日本商船隊、日本人船員は大きな貢献を果たしてまいりました。

 しかしながら、日本商船隊、そして日本人船員は、国家間の戦争状態から海賊行為、海事テロリズムまでの幅広い危険事象を含めて想定した国家対応を求める現実に置かれているのでございます。

 国家の究極的な存在理由は、国民の安全保障にあり、国益は、突き詰めると、国民の生命と財産を守ることにあると考えております。

 国家的見地に立った、船舶の運航における海上輸送のリスクは、ホルムズ海峡、マラッカ海峡、ボスポラス海峡、スエズ運河、パナマ運河等の通航リスク、そして海賊行為、海事テロリズムに対するリスク、海峡封鎖リスクに大きく分類されると思います。

 海洋貿易立国として、これらのリスクを処理するためにとり得る手段といたしましては、国家による防衛、沿岸警備隊や海上保安庁など海上法執行機関による直接対処方法が想定されます。

 我が国においては、海上保安庁による警察権の発動が、邦船、邦人を守るベクトルとして最有力と考えます。政府は、一刻も早く、海上保安庁における大型巡視船の追加的保有に努めるべきであります。

 ソマリア・アデン湾、インド洋、そしてアラビア海に北上する海賊略奪行為につきましては、国際運輸労連、ITFの船員部会、七十二万四千人構成でございますけれども、この国際会議におきましても、ハイリスクエリアへの船舶就航、就労拒否を主張する国が増大しています。

 日本商船隊の安全運航に従事する日本人船員からも多くの声が寄せられました。

 その多くは、アデン湾の海賊対策については一定の成果を上げており、感謝します。海賊略奪行為は、現在においてはインド洋において、最近はアラビア海、そしてホルムズ海峡近郊に北上していますし、インド西岸域にも進出しています。このような現状におきましては、インド洋域にも多国籍軍による護衛を望みます。

 去年の秋ごろから、アラビア海全海域に海賊が出没し、現状では一日に三から五件の襲撃事件が発生しています。一方、アデン湾は安全回廊があり、海賊被害は減りました。しかし、母船方式による新たな海賊略奪行為が横行し始めました。母船となる船は補油や食料の積み込みをするはずであり、まず母船を拿捕し、海賊の行動範囲を縮小させるべきです。特に、日本経済へ重大な損害を及ぼすペルシャ湾航路就航船につきましては、国の対応として重点護衛対処をお願いします。

 航行警報によれば、セキュリティーチームが乗船していることで海賊行為を回避できたとの事例もありました。セキュリティーチーム等も検討すべきと思うし、それができないのであれば、危険海域航行中は警察権を有する人間、警察官、海上保安官等に武器を携行させて乗船させてはいかがでしょうか。

 欧州―極東航路就航船からは、現在の海賊活動範囲は安全回廊を大きく越えています。本船はコンテナ船特有の速い足で駆け抜けることができますが、被弾する可能性などはリスクとして変わりません。昨今の被弾事件にかんがみ、鉄板にてポールドを防護するぐらいしかできなく、恐怖を感じながらの航行です。

 本船は一カ月に一回のペースでアラビア海を航行していますが、海賊襲撃に対して本船でできる具体的な手段は放水ぐらいしかありません。ほとんど丸腰であり、乗り込まれたら手の打ちようがありません。

 海賊危険エリアは保険等においても明確化されており、危険と認定されているのですから、それなりの対策が政府や関係機関でとられるべきです。結果が何も出ず、海上において不安な日々を過ごしております。

 これは、現場の海上から上げられてきた意見、要望でございます。

 ここで、諸先生方に訴えたいのは、かつての海賊略奪行為といたしましては、東南アジア、特にインドネシア・スマトラ島とマレー半島に挟まれるマラッカ海峡を中心に頻繁に出没し、多数の船が被害を受けました。積み荷のほかに乗組員の現金が奪われましたが、海賊は、元来マシンガンやロケットランチャーなど近代兵器を備えているのが特徴でございます。国際シンジケート、それに準ずるものが、沿岸国の政情不安に乗じて、沿岸の貧困漁民による船舶の襲撃と金品の略奪行為を激化させたと言われております。

 実例といたしまして、一九九七年、タイのバーツ切り下げとともに、アジア金融危機を契機に年々増加の一途をたどり、海賊は組織化、凶悪化、ビジネス化した経験を持っております。ソマリアの無政府状態のもとで生じている海賊問題と重ね合わせることができると思います。

 我が国は、東南アジア各国へ海上警察組織の立ち上げを支援し、海上保安庁による合同訓練を行い、現実に海賊は減少しておりますが、これは高度な当時の政府判断、賢明な行政指導によるものと思います。

 現在のソマリア海賊につきましては、二〇〇七年十月、日本のケミカルタンカーが乗っ取られ、二〇〇八年、先ほど御案内のように、大型タンカーがロケット弾による攻撃を受け被弾しました。この時期、国連決議に基づき、アメリカ、ロシア、EUが共同して駆逐艦を派遣し、海賊掃討を目指しています。

 日本も、海上自衛隊を派遣し、日本商船隊を護衛しています。護衛手段は、威嚇射撃とLRADによる警告音などです。また、我が国は、国際的な情報共有や連絡体制の整備の必要性について言及しています。

 海上自衛隊は極めて高い評価を受けていますが、それは、直接護衛方式の採用、護衛スケジュールの正確性、そして護衛船団に対する海賊行為が皆無であるという点で、各国からも高く評価されております。

 ソマリア海賊対処における問題は、海賊行為は国際犯罪であり、旗国主義の適用による保護を受けず、その処罰は、公海上で海賊船舶を拿捕した国家にゆだねられます。拿捕を行った者の国籍及び海賊船舶の船籍にかかわらず、すべての国が取り締まりや処罰を行うことができますが、ここが問題でございまして、各国におきましては、拿捕した者の裁判、身柄の勾留が非常に困難ということで、解放している国もある次第でございます。こういったことから、ソマリアにおける刑務所の増設が急がれております。

 最後に、政府そして国会議員の先生方に要望いたします。

 護衛頻度を増加するなど、護衛活動をより効果的に実施していただきたい。中長期的には、国際機関と連携し、沿岸諸国の連携した海上警備活動の確立、強化、同時に、海賊を発生させている地域の民生の安定と治安体制の確立に貢献していただきたい。マラッカ海峡の海賊対策においては、近隣諸国の協力と、特に日本からの警備艇の供与とその教育訓練などが大きな成果を上げていることに留意していただきたいと思います。

 日本商船隊は、日本から、南シナ海、バシー海峡、シンガポール海峡、マラッカ海峡、そしてホルムズ海峡、アデン湾を往来します。

 海上保安体制の確立のもとで、これらの船舶の就航航路の選択、確保に政府もかかわっていただきたいし、就航船に対する安全保障に貢献していただきたいと思います。そして、ソマリア治安の維持に向けた内政干渉、食料の安全性確保、感染症の予防、沿岸漁民の生活権確保などによる海賊撲滅に日本が中心的役割を果たしていただきたいと思います。

 どうか、よろしくお願いいたします。(拍手)

松原委員長 ありがとうございました。

 次に、竹田参考人、お願いいたします。

竹田参考人 獨協大学の竹田いさみでございます。

 およそ十年前から、海賊問題に関して研究を重ねてまいりました。マラッカ海峡の海賊研究を手始めに、ソマリア沖の海賊に関心を広げ、ここ数年はイギリス海賊の世界史に取り組んでまいりました。

 このたびは、衆議院の海賊・テロ特別委員会に参考人として出席させていただく機会をちょうだいし、まことにありがとうございます。日本や世界の経済活動を脅かし、船長や船員の命を脅かす海賊問題に光を当て、本委員会を招集してくださった委員長初め理事の先生方に御礼を申し上げたいと思います。

 既に参考人として御登壇された関係者の御尽力によって、海賊の脅威に直面しつつも商船を運航されていることに、一人の国民として感謝を申し上げるとともに、深い敬意を表したいと思います。

 また、現場で汗を流して、二十四時間体制で護衛任務についておられる海上自衛隊員や海上保安官に感謝しつつ、日本の取り組みについて意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず第一に、ソマリア沖の海賊をめぐる国際情勢についてお話しさせていただきます。

 リビア、エジプト、シリア、また北アフリカ、中東情勢が不安定化するに伴い、欧米諸国の海軍は、地中海を重点警備するため、アデン湾から海軍艦艇を移動させております。その結果、ソマリア沖の海賊対策が手薄になるという状況が生まれました。

 加えて、ソマリア本土では、大干ばつによる食料危機が発生しており、日本を初め国際社会による食料支援が行われておりますが、食料の輸送船を護衛する必要がふえ、そのため、ソマリア沖の海賊対策を強化できないというジレンマに陥っています。

 その中で、日本の対応を見ますと、諸外国と異なる点があります。三・一一東日本大震災が発生し、また、東シナ海での領海警備の問題が起きましても、日本は、アデン湾での護衛作戦を縮小したり中止することもなく、安定的に継続しています。

 それでは、護衛の日本モデルについて触れさせていただきます。

 先ほど藤澤組合長の方から御指摘がございましたように、日本の海上自衛隊と海上保安庁が護衛するアデン湾では、海賊によるハイジャック事件が減少しています。アデン湾の東西九百キロから千百キロを、護衛艦二隻、哨戒ヘリコプターで護衛し、さらにP3C哨戒機二機で情報収集、さらに監視飛行をしています。護衛艦には約四百名の自衛隊員が乗り込んでおり、警察権を行使するために海上保安官八名が同乗しています。

 本年七月には、ジブチにP3Cの活動拠点が開設され、より安定的な哨戒飛行も可能となりました。

 私が日本モデルと呼ぶ護衛作戦は、海上自衛隊による高い護衛能力、綿密な計画と持続性、海上保安官による高度な法執行能力によって遂行されている護衛方式です。このため、日本の護衛船団が海賊から襲撃されたことは一度もありません。中国や韓国の護衛作戦では海賊からの襲撃があったことを考えますと、いかに日本モデルがすぐれているかが理解できるかと存じます。

 しかし一方で、ソマリア沖の海賊事件数は増加しているという、極めて皮肉にも事態の悪化があります。ソマリア沖の海賊は、アデン湾を避け、それ以外の海域での海賊行為に拍車をかけています。

 ソマリア沖の海賊の特色ですが、現象面でとらえれば、広域化と悪質化です。活動する海域は、アデン湾からソマリア沖の西インド洋、セーシェル海域、アラビア海へと拡大の一途をたどっております。また、洋上で商船が海賊から銃撃され、ハイジャックされた商船の船員が殺害の危険に直面する事態も発生しています。

 ソマリア沖の海賊は、自動小銃やロケットランチャーなどで武装し、漁船やダウ船を母船として利用し、海賊行為に加担しています。母船に積み込んだ二隻から三隻の小型ボートに乗り込み、洋上で商船を襲撃、ハイジャック、さらに、商船をソマリア本土沿岸に移動させ、船長や船員を人質にとり、高額な身の代金を要求するというのが一般的な手口です。

 最近では、ハイジャックされた商船を母船として悪用するなど、悪質化が目立つようになりました。海賊事件は、季節風が吹く時期は減少するのが一般的な傾向ですが、商船など大型船を母船に悪用すれば、季節風に左右されなくなる可能性も生まれ、海賊事件が今後さらに増加することも懸念されます。

 では、日本の取り組みを取り上げたいと思います。

 第一に、商船の護衛があります。これは先ほど触れましたように、海上自衛隊の護衛艦、それからP3C哨戒機、海上保安官らでの護衛作戦です。

 第二に、外務省が中心に行っている対ソマリア人道支援、治安向上に向けた支援があります。これは、国際機関と連携して、小型兵器の回収、大干ばつによる食料危機への支援、国境管理を強化するプログラムなどへの支援で、人道と治安が柱となっています。

 第三に、今後ますます重要になるのが、ソマリア沿岸国や周辺国への支援だと思います。具体的には、ジブチ、オマーン、イエメン、ケニア、ナイジェリア、セーシェルなどへの支援を強化、向上させ、ソマリア沖の海賊を域内で対処する仕組みを整備することだと思います。

 一言で表現すれば、法執行能力の育成、強化、向上で、キャパシティービルディングと呼ばれる支援枠組みです。人材を育てるプログラムですから、即効性は期待できませんが、中長期的には大きな成果が期待できます。海上保安庁がJICAと連携し、日本国内で実施している海上犯罪取り締まり研修などはその一例だと思います。

 また、中長期的には、沿岸国への巡視艇などの機材供与も視野に入ると思います。人材を育てても、巡視艇などの機材がなければ、海賊の制圧は期待できません。しかし、むやみに機材を供与すればよいのではなく、沿岸国の能力を総合的に向上させることが不可欠となります。そのために、沿岸国のキャパシティーやニーズに関する調査と情報収集が大切です。

 次に、民間財団の活動に触れさせていただきます。

 日本財団と海洋政策研究財団は、海洋の安全航行、安全保障に関して、長期的な視点から、持続的で総合的な支援活動を展開しています。専門家の人的交流、研修プログラムの実施、国際セミナーの開催、奨学金の提供、また海洋安全保障情報週報の発行など、世界的な視野で海賊対策を推し進めるためのインフラを整備されておられます。敬意を表したいと思います。

 しかし、ソマリア沖の海賊をめぐって、新たな課題も浮上してきています。それを触れたいと思います。

 例えば、国際的な法執行体制の整備、ソマリア本土での産業育成、海賊資金フローの遮断、民間武装警備員の乗船などがあります。ここでは、法執行体制の整備とソマリア本土での産業育成に絞って触れたいと思います。これは要望にもつながります。

 第一は、法執行体制の整備です。

 ソマリア沖の海賊を逮捕し、裁判手続を行い、有罪であれば収監する点に関して、現在、国際的な法執行体制の整備が求められています。いずれの国でも、特殊言語であるソマリア語の通訳の確保が難しく、裁判そのものをスムーズに進めることが難しいという現状があります。

 一つの解決策としては、ソマリア沖の海賊が活動するインド洋沿岸国で裁判を行い、ソマリア本土で収監することです。例えばセーシェルなどでは、海外から法律の専門家を招き、裁判を行い、有罪の判決が下った海賊をソマリランドやプントランドなどソマリア北部や北東部に移送し、刑に服させるという手法が考案されるようになりました。

 中央政府が存在しないソマリアですが、地方に複数の自治政府があり、こうした地方政府と連携することで特定の自治政府を立て直す機会にもなります。

 次に、産業育成です。

 ソマリア沖の海賊問題で、最終的な解決策は、海賊が発生するメカニズムを崩壊させることに尽きます。ソマリア本土で青少年が海賊組織にリクルートされ、海賊はふえ続けています。これらの仕組み、雇用を生み出すことによって、青少年が海賊組織にリクルートされない仕組みをつくることが肝要かと思います。

 それでは、最後に四つの要望を申し上げて、発言を終わりたいと思います。

 一、日本の護衛作戦を少なくとも現行レベルで継続していただきたい、二、ソマリア周辺国支援の強化、三、国際的な法執行の整備、そして第四にソマリア本土での産業育成への支援です。以上四点です。

 ありがとうございました。(拍手)

松原委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

松原委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長島一由君。

長島(一)委員 お疲れさまです。民主党の長島一由です。

 きょうは、参考人の皆様、貴重な御意見を聞かせていただきましてありがとうございます。

 私も、ちょうど昨年の九月一日だったんですけれども、このテロ対策特別委員会で五人のメンバーで調査団を組んで、現地視察をさせていただきました。

 中谷先生、武田先生、それから公明党から佐藤先生、それから民主党は当時の石田委員長と私と五人で行ってきました。当時、ちょうど五十度以上気温もあって大変暑い中、まだ基地も開設していませんで、米軍の基地の一画を借りて自衛隊の方も活動されて、本当に頭が下がる思いであったんです。

 それから一年たって、今、参考人の御意見の中でもいろいろ御説明がありました。この一年間で、ちょうど一年前ぐらいからも言われていましたけれども、海賊の活動範囲が拡散している。特に、私自身も皆さんもそうだと思うんですけれども、一番懸念しているのが、活動範囲がペルシャ湾岸に広がっている。特に、東日本大震災以降、原発から石油のウエートが高くなって、ここが脅かされるとなると本当に国益に直結する大事な話だと思っております。

 そこで、先ほど、船関係の四人の参考人の方が特に言われていまして、その御要望というのが、恐らく、芦田参考人の海賊問題に関する要望事項にある程度集約されるのであろうと思っております。

 そこで、護衛艦または補給艦の追加派遣、それから二つ目の日本籍船への公的武装ガード、それからソマリア国の安定化に向けた国際的な支援及び海賊問題に対する国際的な取り組みの強化ということで三点御要望をいただいているんですが、簡潔にお答えいただきたいんですけれども、もう少しく具体的に教えていただきたいんです。

 例えば、護衛艦あるいは補給艦であれば、どの地域にどれぐらいの数が必要なのかとか、それから、公的武装ガードということでいうと、一つの船に何名ぐらい、どんな武器を持った人間を乗せればいいのか、もしおわかりになりましたら、まず教えていただきたいと思います。簡潔にお願いします。

芦田参考人 お答えします。

 まず、現在、護衛していただいています海域というのは、アデン湾、千百キロでございます。この間は、海賊の襲撃は大変減っております。ところが、ソマリアの東方の方に海賊が張り出してきたということでございますので、千百キロプラスあともう千キロぐらい延ばすとか、そういうことをやっていただく、そのためには護衛艦の数がさらに必要であるということ。

 あるいは、同じ護衛艦が行く場合も、現在は千百キロ行ってまた折り返ししているわけなんですけれども、そのまま二千キロぐらいずっと行く、そのためには補給艦が必要ではないのかな、こういうふうに考えております。

 それから、武装ガード、何名必要かということなんでございますけれども、現在は三名ぐらいが乗る、配乗するということがどうも一般的なようでございます。

 以上、御回答申し上げました。

長島(一)委員 あと、一般論としての武器は、どんな武器を持っていると抑止力になるんでしょうか、もしおわかりになったら教えていただきたいんですけれども。

芦田参考人 お答えします。

 ちょっと私、武器の専門家じゃございませんので。

 ブローニングオートマチックライフル、ライフルですね。それから、HK417アソールトライフル、これもライフルでございますね。それから、御承知のようなAK47、ロシア製の、これもライフルだと思います。種類は違いますけれども、大体ライフルでございますね。

長島(一)委員 ライフルということで、バズーカ砲とかそういうものではないんですね。

芦田参考人 ではございません。

長島(一)委員 それと、竹田先生に少しお伺いしたいんですけれども、竹田先生が、昨年の八月ですか、中央公論に「勢力を増すソマリア海賊と身代金還流闇ルート」という論文を出されています。

 これもぜひ、ちょっと参考までにお聞きしたいんですが、この論文の中で、海賊の一番の目的は今、身の代金になっている。それが金額も高騰しているということで、この昨年八月の論文では、人質解放の相場が二百万ドル前後だったということなんですけれども、それが七百万ドルまでに達するというゆゆしき事態であると先生の論文に書いてあるんですが、一年たって、何か現状の新しい情報とか最近の動向とか把握していたら教えていただきたいと思います。

竹田参考人 身の代金の金額ですが、これは推定値ですが、今、一千万ドル台まで上昇しているということを聞いております。

 以上です。

長島(一)委員 ありがとうございます。

 それから、この論文には、身の代金を軸にいろいろな事件が起きているので、マネーロンダリングとかを抑止する必要性があるんじゃないかということを先生は論文で訴えられていらっしゃいますけれども、それについてもう少し、論文からはわからないところもあるので、時間が限られていますけれども、簡単に御説明いただけるとありがたいんですが。

竹田参考人 身の代金の流れ、海賊マネーのフロー、それからマネーロンダリング、資金洗浄、これをトレースするのは非常に難しいんですね。これはテロ資金をトレースするのが難しいのと同じように、やみの資金ですから、通常の銀行送金で捕捉できない、アンダーグラウンドのお金の流れですので。

 これはどうするかというと、まず、国連のフレームワーク、国際機関のフレームワークで、世界的に銀行、金融機関がタイアップして、大手の銀行での資金をモニターする。実際、九・一一の後の国際テロ対策で同じようなことがあったわけですね。それを今回のソマリア海賊の資金還流、資金フローに関しても応用していけばいいのではないかというふうに私は思っております。

長島(一)委員 それから、少し話が戻るんですが、船関係の方から、国際的な取り組み強化ということで、これは船長協会の小島参考人だったかもしれませんけれども、たしかマラッカ海峡の事案をちょっとお話しいただいたのかなと思ったのですが、違いましたか。

松原委員長 藤澤さんですね。

長島(一)委員 失礼しました。藤澤参考人だったということですけれども、マラッカ海峡と同じような、周辺国の協力による警備強化ということがここのソマリアのところで成立するのかどうかということについて、何かおわかりになれば教えていただきたいと思うんです。

藤澤参考人 全くの私見でございますけれども、あそこのマラッカ海峡は非常に沿岸国がしっかりしております。それに日本がやはりコーストガードの延長でいろいろな支援をいたしましたし、現在もやっております。それから研修もやっております。

 これは、アデン湾、ソマリア沖、インド洋と拡大している中では非常に難しいし、また、インド洋の沿岸国に非常に憂慮すべき国がたくさん出てまいっておりますので、なかなかそれが当てはまるような状況ではないというふうに私的には思っております。

長島(一)委員 時間も限られているので余り質問ができないんですが、今回の皆さんの意見を参考にさせていただきながら、私も一議員として、何らかの形でこういった環境整備に取り組んでまいりたいと思います。

 ありがとうございます。

松原委員長 次に、森山浩行君。

森山(浩)委員 民主党の森山でございます。

 本日は、委員会までお越しいただきまして、御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 また、自衛隊、また海上保安庁の皆さんも含めて、現場で頑張っていただいているということにも感謝を申し上げながら、質問をさせていただきたいと思います。

 先ほどの中で、小島参考人の方から現場の話をいろいろいただきました。見張り、レーザーワイヤ、放水機など、今の状況についての話でしたけれども、籠城するというような話がありました。

 相手がロケットランチャーを持っている中で、籠城するというようなことで、うまくいっている例があるんだというお話でしたけれども、これは具体的にどんな形でされているのかというのを教えていただければと思います。

小島参考人 実は私も、情報というのは、余り詳しいものは持っていません。ただ、何例か、そのシタデルというところに全員が入ったときに、即軍艦が来てくれて、通信はずっとできていますので、来てくれるということで安心感を持ちながらそこに入って、それで、実際に乗り組んでいただいてやったということを聞いております。

森山(浩)委員 ありがとうございます。

 これなんかは、政府のベストマネジメントプラクティス、BMP、これはフォーが出たんですかね、というようなところでも紹介をされている内容でありますけれども、まあ、ないよりもいろいろなものがあった方がいいというところなんですが、先ほどから皆さん口をそろえておっしゃっていた部分が、自衛の武装ガードが要るんだというところであります。

 先ほどの御答弁の中でも、ロケットランチャーじゃないけれども、ライフルや自動小銃、こういったもので武装をしているだけでも大分違うんだというお話がありました。

 ことしの一月に、韓国の船がやられたのに対して、韓国の特殊部隊が八人の海賊を射殺し、五人を拘束したというような事例がございました。それに対して、今度は韓国の人間を捕まえて殺してやるんだというような脅迫を受けている、こんな話もあります。やるなら、きちっとやっつけるというか拘束をするというようなところまでやらないと、かえって危険な感じを持たれるのではないかということを恐れるわけなんです。

 小島参考人、それから藤澤参考人、現場の感覚として、民間人の方が鉄砲を持つというようなことで、これは抑止力としては、特に日本は使える人が少ないと思うんですが、効果はどのぐらいあるというふうにお感じになっておられますでしょうか。感覚で結構です。

小島参考人 実際、私も、これはイメージですけれども、民間人がどういう形で乗るかというのは最初は考えませんでした。公的な武装を先にまず考えていただいて、やはり、そういう方の方が、身元もしっかりしている人ですし、そういう現場に行ったときに落ちついてやってくれるのかなと。民間の方も、どういう形でどういう人たちを民間で集めるかとか、そういうのはちょっとまだこの場で私もよくわかりません。

 したがって、乗り組みとしては、そういう武器に対して、武器で守るということがあることによって、船乗りというのはやはりとにかく安心というか、頼りになるということではないかと思います。

 以上です。

藤澤参考人 我々の方で、実は、民間に武装した軍人経験者等々が乗ることについては、現在慎重な論議をロンドンで行っております。

 これは、国際運輸労連、ITF、世界で七十二万四千人の船員が加盟しておりまして、先生御案内のように、各国、もう既に法律で整備されている国もあれば、日本のように厳格に禁止されておる国もあるわけで、そういった船員が一堂に会して、乗せるべきだ、いや武装すべきではない、こういう論議が今非常にたけなわになっておりまして、まだ結論は出ておりません。

 私は、私的には、やはり民間船が武装につながるような行為についてはもっと慎重にやるべきではないのかなというふうに考えております。

森山(浩)委員 現場の中でもまだやったことのないことでもありますし、また日本という事情もあるかと思いますが、竹田参考人、このあたりのところはどのように考えたらいいというふうにお考えでしょうか。

竹田参考人 お答えいたします。

 一般論として、商船が、国家の庇護を受けられないのであれば、自分のことは自分で守るということは、私は許されていいと思います。ですから、商船が公海で危害を加えられる、船長、船員の命が脅かされた場合、民間武装の要員を乗せたいというのは、私は、船会社の責任において、あっていいと思います。

 しかし、では、すべての国でそれが可能かといいますと、私は難しいなと。例えば日本の場合、日本の警備会社で銃刀を持った警備会社はいません。日本の警備会社は、銃とか自動小銃、ライフルを持った警備会社は一つもないと思います。

 それは、日本は厳しく銃規制を行っていまして、もし商船で銃刀を携行することがオーケーになりますと、陸上においても警備会社が銃を携行する、日本の場合はその問題も起きてしまうんですね。ですから、私は、日本ではこの問題はかなりハードルが高いと思います。

 以上です。

森山(浩)委員 ありがとうございます。

 制度上のハードルが高いということと、私なんかは、本当にそれができる人がどれだけいるんだというところあたりも難しいのかなと思います。

 せっかく言っていただきました、芦田参考人、いかがでしょうか。

芦田参考人 直接お答えになるかどうかわかりませんけれども、ちょっと御理解いただくために、ことし一月から八月十二日までの間に海賊の襲撃を受けた件数、百七十九件でございます。

 これをどういうふうにかわしたかというと、六十四件が、自分で、とにかく船に乗っけないということで、ジグザグ航走をやって大きな波を立てて、相手は小さな船ですから波に翻弄されて近づけない、これでやる、あるいは放水する、あるいは熱い蒸気を噴射する、こういうことで船に乗せない、まずこれをやるんですね。

 次は、百七十九件のうち五十八件が、武装ガード、これが撃退しております。韓国の例は少し極端だと思うんですけれども、一般的には、民間であれ公的武装ガードであれ、海面に向けて威嚇発射するんですね。これによって撃退するということが目的です。射殺するとかそういうことは目的でございません。

 その後、ちょっとシタデルの御質問がありましたけれども、その百七十九件のうち三十八件、これが、シタデルに閉じこもって近くの艦艇の到着、救助を待つ。ただし、これも一〇〇%の効果はございません。三十八件のうち三件は、シタデルを破壊されてハイジャックされております。そのうち三十五件はそれを排除できたということです。

 差し引き、全部それを引いていただきまして二十二件、これがハイジャックにつながっているということでございます。

 ですから、武装ガードは相当効果がございます。シタデルも効果はございます。それからその前に、六十四件の放水銃、ジグザグ航走、これも効果がございます。

 以上でございます。

森山(浩)委員 ありがとうございます。

 中期的には各国と協力してより厚い状況をつくっていく、あるいは、長期的には向こうの国の安定を図っていくというようなことは当然やっていかなきゃいけないところですけれども、せっかく現場の皆さんに来ていただきました。短期的に何からできるのかということをしっかりと我々も議論して進めてまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

松原委員長 次に、中谷元君。

中谷委員 自由民主党の中谷元でございます。

 本日は、五名の参考人の皆様方から貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。

 まず、日本郵船の諸岡参考人にお伺いします。

 実際に昨年十月にイズミが乗っ取られまして、四カ月後の二月二十五日に無事解放されまして、乗組員には危害がなかったということでございますが、せっかくの機会でありますので、当時の襲撃の状況を、どういう手口で襲われたのか、そしてどのような武器を持って海賊行為が行われたのか、そのとき自衛はどういう手段があったのかという点につきまして、参考になる話がありましたらお聞かせいただきたいと思います。

諸岡参考人 本船イズミなんですが、船会社の場合には幾つか持ち分というのがございまして、この船はフェアフィールド社、英語の名前なんですけれども、これは日本の会社でございます。そこが所有して、船員を集めて、配乗というんですけれども、乗せているという形でございまして、日本郵船、日之出郵船、同一ですけれども、こちらが船を借りている、これは用船という形をとっているので、基本的にクルーを一義的に守る責任というのは船主であるフェアフィールド社にございます。これも念のため、わかりやすく説明するために申し上げました。

 こちらのフェアフィールド社の話によりますと、我々は毎日、海賊が出没する地域をデータで、連合軍だとか英国の海軍から情報をとっておりまして、海賊の出撃地域がないところを通って、それでモンバサ、これはケニアなんですけれども、ここで鉄鋼製品の揚げ荷をするために、パイロットが来る、ほぼ待っているような状態のところで襲撃された、こういうふうに聞いております。

 襲撃の細かい状態というのは、既に気がついたときには乗り込まれていたということですので、乗り込まれていたということは、もうその時点で、抵抗すれば危害が加わるので、サレンダーするというようなことだったと聞いております。

中谷委員 それと、先ほどのお話の中で、その後、海賊の母船にイズミが使われたということですが、これは乗組員の皆さんも半ば強制的に操船をさせられたり海賊行為に加担をさせられたということでしょうか。

諸岡参考人 非常に残念なことですが、人質になれば海賊の言うとおりに行動しなきゃいけないので、じっとしていなさいと言えばそのままなんですが、この船を使って新しい船を、ターゲットを探しに行くんだと言われて、動かせと言われれば、それに従わないと危害を加えられますので、私どもの了解では、このイズミ号はそういった母船として使われたというふうに聞いております。

 先ほどからも話が出ておりますが、この母船というのは、一万四千トンの船ですとかなり長いところを走っていけるわけでございまして、今自衛艦で護衛してもらっている千キロのアデン湾からの、コリドーという一つの回廊があるわけなんですが、それをずっと越えたところまで出撃してきまして、そこから、ターゲットを見つけてきたときに、スキフというんですけれども、小さな小船を落として襲撃に行くということです。

 実際上は、自衛隊の護衛が、先ほどからも御案内がありましたけれども、非常に完璧なまでの護衛をしていただいているんですが、その護衛のランデブーに行くポイントまでが極めて危険で、弊社の子会社である日之出郵船については、そのランデブーのポイントまで行くこと自体ができないということで、例えばスエズ運河を通過する航路については取りやめているということですので、せっかく護衛をしていただいているんですが、そのポイントに行く、あるいはポイントから離れた地域にまで母船の拡大で広域化しているということだものですから、先ほどから自衛艦の増派をお願いしたいというふうに申し上げているわけでございます。

中谷委員 だから、装備も非常に近代化をし、また、身の代金によって非常に高度化をしている、どんどん強くなっているというのが実態だというふうに思って結構でしょうか。はい。

 それで、今度は芦田船主協会会長に伺います。

 先ほど、フィリピンとかインドですか、乗組員の乗船を拒否している国がふえてきたということで、経営にも非常に不安定な要素を与えていると思います。では、ほかの国々はどういう乗組員の安全対策を講じているのか。ほかの国々の安全対策で、具体的に実例がありましたらお話をいただきたいと思います。

芦田参考人 まず、フィリピンについて申し上げますと、ある時期に国会の方で、アデン湾を通航する船にはフィリピン人船員を乗せてはいけないという法律を国会に出すという情報がございました。これは、フィリピンの船員組合それからフィリピンの船主組合等と連絡をとりまして、それは少し行き過ぎだということで、事前にそういう打ち合わせをやりまして、国会に法律が上がるのを事前に中止していただいたということがございます。

 それ以外の国は、特にそこまで、国会でそういう法令を通すとかいうところまではいっていませんけれども、海員組合の段階で乗船拒否という動きがあるようでございます。その場合は、例えばインドであればインドに船員を採用している我々の現地法人がございます。こういうところを通して、我々は、まず日本からは護衛艦を出していただいている、それからシタデルも設営する、いろいろな対策を説明しまして、何とか行ってくれということで説得して、今のところは問題がない。

 ですけれども、襲撃回数がもっとふえるということになりますと、大変なことになるんじゃないのかなということを危惧しております。

中谷委員 その上で伺います。

 アメリカとか南米とかイスラムの国は、自分の護身用の武器の使用が認められているんですね。そういう一環で、自衛ではありませんが、船舶にある程度武器を持っていて、いざというときは正当防衛ということで襲撃に備えるという国があっても不思議ではないんですが、そういった、自分の商船で、自分で自衛をしているというケースがあるのか、それから、ほかの国の軍隊を乗船させている国、民間のガードマンを武装で乗せている国があるのかどうか、この点について伺います。

芦田参考人 お答え申し上げます。

 十三カ国の国が民間の武装ガードを乗せることを法的に認めております。それから、二カ国が公的ガードを乗せることを認めております。

 十三カ国の中には、アメリカ、スペイン、シンガポール、ポルトガル、ノルウェー、リベリア、イタリア、イギリスの近くにありますマン島というところ、それから、香港、フィンランド、デンマーク、キプロス、バハマ、こういうところが民間の武装ガードを乗せることを認めております。

 それから、フランス、オランダにつきましては、公的ガード、これは軍隊でありますけれども、軍隊が乗船することを認めております。

 それから、イギリスは、武装ガード乗船を認める方向で政府と協議中、こういう情報を得ております。

中谷委員 そういうことでしたら、海賊に対して正当防衛という見地で武器の使用をしているというのが国際社会でありますので、民間のガードが認められるということなら、自分たちで自衛の武器を持っても、それは同じ理屈じゃないかなという気がするわけでございますが、実例を挙げていただきましてありがとうございました。

 それから、小島船長協会会長に伺いますが、実際、犯人に対峙したり、交渉したり、判断するというのは船長の重大な任務で、事に臨んでは、非常に身の危険を顧みず対応すると思いますが、国際的に、海賊に対する対処のマニュアルとか撃退方法とか、そういうものがあるんでしょうか、伺います。

小島参考人 まず一つ、法律の方なんですが、今、船員法というのがあります。これは大正時代か何かにできたと思うんですが、この法律の趣旨というのは、乗組員が何か危険なことをやってほかの人に危害を及ぼすとか、それから客船の場合はお客さんとか、そういうときの船長の警察権でもないんですけれども、現在船員法に書いてあるのはそういう人を対象にした法律であって、このような海賊に対する対処ということに関しては、今の船員法では非常に難しいのではないかと思います。

中谷委員 本来でしたら、船長は船員の命を守るということでありますので、こういった事態が生じた以上、対応は我々の方で検討しなければならないなというふうに思います。

 もう一点伺います。

 先ほどいろいろな情報で、テロリストとつながっているというような話もありますが、ここの場合は、イスラムで、アルシャバブという組織がございまして、海賊行為の資金がそこに流れているという話も聞かせていただきますが、そういった情報があれば伺いたいんですけれども、現地では海賊かテロかというような区別が本当につくんでしょうか。その点、いかがでしょうか。

小島参考人 私も詳しい情報は持っていないんですけれども、三週間前に海運クラブで海賊に対する講演会というのを聞きまして、評論家の、ちょっと名前をお忘れしたんですけれども、かなり詳しい話をしてくれまして、先ほど言われましたアルシャバブですか、これにも上納金を二〇%取られている、その海賊のリーダーも、ここに上納金を渡さないといつ殺されるかわからないというようなことも言われておりました。

 以上です。

中谷委員 続きまして、藤澤参考人に伺います。

 先ほど、日本商船隊の使命として、日本の貿易を守るために、海賊やテロなどからシーレーンを守るというのも一つの民間のなしている任務ということで、本当に御苦労だなというふうに思います。

 しかし、お話しのとおり、これは本来は国家がしっかり守っていかなければならないわけでありまして、参考人の言うように、今後、海上保安庁や保安官などの増加が必要だと思います。しかし、相手はロケットランチャーとか非常に物騒な武器を持っていますので、本当に保安庁や保安官で大丈夫かなと思いますと、やはり各国は海軍の兵士を乗船させたりして護衛をしております。

 海上自衛隊や海上自衛官などが乗船して保安をしたり、また護衛をするということについては、組合長はどう思われますでしょうか。

藤澤参考人 公的に自衛官とか警察とか海上保安庁の方が警察権を持って乗船することには賛成でございます。

 ただ、船員の方はそういう情報についてはかなり不安感を持っておりますので、これはまだ現状においては民間ベースでは無理だ、こういうふうに認識しております。

中谷委員 ただ、相手がマシンガンとかロケットランチャーを持っていますので、海上保安庁も非常に訓練はしておりますが、よりそういったものに対応するということにおいては検討する一つではないかなというふうに思いますので、今後、ぜひそういう点も御検討いただきたいなというふうに思います。

 それでは最後に、きょうは、学界の方から来ていただきました竹田さんに伺います。

 日本のモデルとして今やっていることに対して、非常に高い評価を得ています。しかし、広域化、悪質化しているということで、実際、アラビア海で海賊のケースがふえておりますが、今のところはアメリカとかフランスに頼らざるを得ないんですね。やはり自分の国は自分でやっていくという点で、どのように対応すればいいのかという点を、中長期的じゃなくて、現在すぐでの対応という点でお考えがあればお述べいただきたいということ。

 もう一つは、武器使用において、民間人はハードルがなかなか高いというお話がありましたけれども、やはり民間人の警備のガードマンを日本の船に乗せないとほかの国に経営で太刀打ちできないという現状になっておりますので、こういった民間のガードマンを、ほかの国のガードマンや、日本のガードマンが一番いいんですが、そういったことを可能にすること。

 最初に私が申し上げましたが、船自体が、自衛のためにそういった武器をあらかじめ置いておいて、いざとなったらそういうことに対処するということにつきまして、また先生の御見解を伺えればありがたいと思います。

竹田参考人 まず、護衛方式ですが、日本の場合は護衛船団を組んでいるわけですね。諸外国の場合はパトロール方式ですので、いろいろなところに自由に、もちろんゾーンがあるんですけれども、方式そのものが違うと私は思うんですね。

 ですから、日本のように確実性と持続性を持った護衛方式を拡大するのであれば、例えばインド海軍とか韓国海軍とか、同じような日本モデルを採用していただいて、ある特定地域を護衛する。それをふやしていく以外ないと私は思うんですね。ですから、護衛の方式そのものが、日本の船団方式、もしくは諸外国のパトロール方式、圧倒的に私は違うと思います。ですから、ベストな答えというのを今すぐ私は持ち合わせておりません。

 しかし、日本のモデルがかなり高く評価されておりますので、これは諸外国がよしとすれば、同じようなモデルを、ミニモデルをつくっていただければいいな、これが一番の近道だと私は思います。そのために、海上自衛隊、海上保安庁、これは非常に精度の高い計画、綿密な計画を立てられて護衛されていますので、そのモデルをぜひ諸外国にもさらに情報を提供して、そういうフレームワークをつくっていけたらいいなと私は思っております。

 それから、民間の武装のことに関してですけれども、私は、日本が運航する外国船籍が民間の武装警備員を乗せることに関しては賛成です。しかし、日本の船籍の場合、日本国内と法体系が同じですから、そうしますと、日本国内の法体系をどうするかという大きな問題があります。

 ですから、心情的に、気持ちの上では、日本の船に民間の武装された警備員の方がお乗りになるのは、私は気持ちの上では賛成です。しかし、日本は非常に高度な法治国家ですから、そこだけ例外扱いにしていいのかどうか。そうすると、そこを例外扱いしないと、日本の民間の警備会社も銃を携行していいということになりますので、その辺の国内法との整合性をどういうふうにするかというのが私は一番大きな問題だと思います。その場合、刑法初め日本のさまざまな法律を改正しなきゃならない。その意味で、私は非常にハードルが高いと申し上げました。

 以上です。

中谷委員 どうもありがとうございました。

松原委員長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。

 きょうは、五人の皆さん、大変に貴重な御意見をありがとうございました。

 基本的に、きょういただいた要望につきましては、私ども、各政党間協力をして真摯に対応してまいりたい、まず冒頭、それを申し上げます。

 それで、竹田先生、先生と初めてお会いして十数年がたちます。きょう、こうやって来ていただいて、海賊の問題についていろいろお聞きするのは私にとっても大変に大事な場面だと思っております。

 まず、二年前に公明党の会合に来ていただいて、テロ、海賊の問題を聞きましたときに、どういう場面が来たら、今、ソマリアの問題に端を発した海上自衛隊等の行動、こういう問題が、撤収するかという話をあのときにした。

 短期、中期、長期に分けて、先生は、短期的には海賊事件が減少する方向にあるということが起きたとき、中期的にはEUの動向、EUが撤退する動向を見せたときに撤収するということが起きるだろう、三つ目はソマリアのコーストガードが強化される、こういうこととか、ソマリア自体の経済的な発展等というふうなことを二年前におっしゃいました。

 これはいずれも、二年前に、私たちも、どういう事態が来れば日本のこういうかかわりがなくなることは来るんだろうか、そういうある種楽観的な予測のもとに質問をして、それに対して答えていただいたんですけれども、この見通しは、聞かずとも到底これは難しいということはわかるんですが、改めて、その短期、中期、長期についての見通しを聞かせていただきたいというのが一点目。

 それからもう一点は、さっき、竹田先生が冒頭でこのペーパーにのっとってお話しされた中で、日本の海賊対処法のもとにアデン湾での護衛作戦を継続した、三・一一大震災後でも継続したということについて積極的な評価をされましたが、言外に、それ以外の国、他国のかかわり方に若干問題があるのかなというふうな印象を私は受けて聞いてしまいましたけれども、そういうほかの国の対処の仕方ということについて、とかくの問題点はないのかどうか。

 以上二点について、まず冒頭、聞かせていただきたいと思います。

竹田参考人 先生からいろいろ御指摘をちょうだいしまして、ありがとうございます。

 今いずれも非常に難しい御質問をいただきまして、私もこの場でどのようにお答えしていいのか、悩みながらこの場に立っております。

 まず、ソマリア海賊の見通し、短期、中期、長期で見ますと、海賊事件は今ふえる傾向にある。まず、御指摘になった前提が、日本の海上自衛隊等が撤収する条件はどういうことが可能かということで、短期、中期、長期という前提があったと思いますけれども、そうしたときに、短期的には、減少していませんから、どんどん上昇している、ということは、海上自衛隊は撤収できない。

 それから、中期的に、例えばEU、欧州連合の部隊とか、もしくはNATO、北大西洋条約機構の部隊が撤収するというような時期が訪れるかどうか。今のところ、その訪れる気配はない。依然としてインド洋それからアデン湾、ペルシャ湾は不安定な状態が続いていますから、艦隊の配備の状況は常に刻々と変化していると思いますけれども、そこに欧米の海軍勢力が常駐し続けるということは変わらないと思うんですね。

 長期的に、ソマリアのいわゆる治安、コーストガード初めそういった治安機関が強化されて、ソマリア人そのものがソマリア沖の海賊を退治できるかどうかといったときに、その明るい兆しが見え始めたと私は思います。これは二年前に公明党の勉強会で私が申し上げられなかった、そのときにはそういうような明るい兆しがなかったんですが、現在、その明るい兆しが、余り楽観論は私は許されないと思いますが、少し見え始めました。

 それはどういうことかといいますと、ソマリアは全体として中央政府が存在しない、破綻国家と言われております。しかし、地方には政府が幾つか存在するんですね。自治政府と称しているものが存在します。もちろん、日本の地方政府、県と比べれば全く異なるレベルの、非常に統治能力の弱い、しかし、地方自治、自治政府らしきものが存在している。それは北部のソマリランドと、あと海賊の出撃拠点になっているプントランド、ここに自治政府らしきものが今存在して、一番高度に安定しているのはソマリランドと言われています。

 この二つの自治政府が、実はことし、インド洋の島国ですが、セーシェルと海賊の犯人の移送協定を結んだんですね。これは協定といいますかむしろ覚書なんです、MOU、メモランダム・オブ・アンダースタンディングと言われているものですが、セーシェルもしくは他国が捕まえた海賊をセーシェルの裁判所で裁いて、有罪の判決が下った場合は、この海賊をソマリランドもしくはプントランドに移送する、そこで収監するという新しい動きがことし誕生しました。

 そういう動きに対して、国際社会、例えば国連であればIMO、国際海事機関とか、もしくは民間であればIMB、国際海事局とか、特に国連を通じて、フレームワークを通じてこのような国際的な司法、法執行を許可するということがことしから生まれてきました。

 これが二年前と大きく状況が異なる点だなと。その点を強化していけば、ソマリア海賊問題というのは、ソマリア人がソマリア沖の海賊を自分たちの手で裁くということが少しずつ可能になってくる。これは最初から一〇〇%私は期待できないと思いますが、でも、その道筋ができますと、国際社会がモニターできます、ソマリアそのものに入り込んで。ソマリランドとプントランドに国際機関が入り込んで、資金を投入し、そこで収監手続を全部監視しということで、世界の監視下に置かれるようになるんですね。私はその動きをぜひ進めていっていただきたいなと思っております。

 以上です。

赤松(正)委員 ありがとうございました。

 引き続いて、今のことと関連ですけれども、今おっしゃったように、ソマリア自体に少し明るい兆しが見える。それとほとんど同一に大事なことは、ソマリア周辺国の問題だろうと思うんです。

 先ほど竹田先生は、ソマリア周辺の国、例えばジブチとかオマーンとかナイジェリアとか、ケニアも入るんでしょうか、そういった国々のキャパシティービルディング、そういった方向性に向けてのニーズ、こういった点について調査研究をしていかねばならない、こうおっしゃいましたけれども、今挙げたような国々は、本当の意味において、本当の意味と言うとおかしいですが、ソマリアがもたらしている現在のこうした海賊的事態というものに対して本当に解消するべく真剣に取り組んでいる、そういうふうなものはあるんだろうかということ。

 私は、遠く離れていて余り現場にも行ったことのない人間としては、そういう周辺国が果たして真剣に解決への支援強化、周辺国としてのそういう問題への取り組みについて意欲的なのかどうかには若干疑問視しているんですが、その点はいかがでしょうか。

竹田参考人 また、難しい御質問をいただきまして、ありがとうございます。

 こういう周辺国、インド洋沿岸国が真剣に取り組んでいるかどうかというのを、期待値としては取り組んでいるというふうにお答えしたいですね。

 というのは、いずれの国も、表と裏の顔があると思うんです。いろいろな国々は、少なくとも、国際会議とか、そういう表の場では、真剣に取り組んでいるという姿を見せるのが上手です。いわゆる外交のPRは上手です。外交交渉で相手を説得して資金を獲得するということを行うわけですから、その意味では、こういう国々は、発展途上国ではありますけれども、先進国からの資金を調達するのは非常になれているというところはあると思う。

 しかし、何もしなければ資金を継続して獲得することはできませんから、実績をつくらなくちゃいけないわけですね。その意味では、我々は、こういう国々とタイアップしながら、常に緊張感を与え、モニターして、我々が資金を投入し、国際社会が投入したお金がちゃんと適正に使われているかどうかというのは、常に見るしかないんですね。そういう緊張感を与えることによって、一緒に目標を達成していくということが肝要かと私は思います。

 以上です。

赤松(正)委員 ありがとうございました。

 では次に、これは諸岡参考人か、あるいは芦田参考人か、お二方どちらでもいいんですが、ベストマネジメントプラクティスの実施ということは徹底されているのかどうか、あるいはまた問題点というものはあるのかどうか、こういう点はいかがでしょうか。

芦田参考人 お答えします。

 ベストマネジメントプラクティスは、国際海事団体がつくったもので、私は、これは非常によくできているんじゃないかと思います。

 私、実は、船主協会の会長であると同時に、商船三井という会社の会長もやっておりますので、ちょっと会社の事情を申し上げますと、これを最大限利用すべく、陸上にいます船舶管理をやっている海上安全本部の人間、あるいは現場の乗組員、これに徹底させております。

 問題があるかどうかというところは、あった場合は、こういう国際機関にさらにフィードバックしまして、さらにいいベストプラクティスになるように我々も努めているという状態でございます。

赤松(正)委員 先ほどお四方のお話を聞いておりまして、ふっと聞いてみたいなと思った、突然にわいた疑問というか思いというものをちょっと聞きたいんですが、藤澤さんの方から、全世界の船員の皆さんが集まる機会があるとおっしゃいましたね。

 では、船の船主とか船の経営者というか、そういう皆さんが全世界的に集まって、こういう海賊の問題をどう考えるのかというようなことを議論する、検討する、そういう場面はあるんでしょうか。

芦田参考人 全世界的には、ロンドンにICSという機関がございまして、これが海賊問題をいろいろ研究しております。

 それから、アジアにおきましては、アジア船主フォーラムという機関がございまして、これはアジアの船主が毎年一回、一堂に会しまして、海賊問題も話し合う。それから、一年に一回、春にあるんですけれども、その間に各委員会等がございまして、海賊委員会ももちろんあります。それから、それ以外にも、各国のトップだけが集まるという会合もございまして、そういうところでは、各国それぞれどういう対策をやっているか、お互いに情報交換なり、あるいは、それをさらにそれぞれの国が採用すべくやっております。

赤松(正)委員 そういう場において、今回というか、もうかなり相当の期間続いておりますこのソマリアの事態をめぐって、何か私どもが聞いておいた方がいいようなことはないんでしょうか、なければないでいいんですけれども。

芦田参考人 その前に、世界の船腹の七〇%はアジアが持っている、こういうことでございます。

 その中で、例えば香港それからシンガポール、こういうところはもう既に民間の武装ガードを自分たちは乗っけている、法的にもこれは認められている、こういうことを我々は聞いております。非常にクイックアクションで、うらやましいな、国が守っているんだなということをひしひしと感じております。

赤松(正)委員 そのことについてさらに突っ込んでお聞きしたいんですが、要するに、先ほど来の私たちの仲間の委員の話、最後の中谷委員からの話で竹田先生がお答えになったのですが、要するに、日本人の民間の方が武器を持ってどうこうというのは私は非常に難しいと思うんですが、いわゆる傭兵、外国人を使って、さっきフィリピンの話がありましたけれども、そういう船員たちの乗っている船に使う、こういうことについて、今、戦争請負人なんという言葉があるぐらいですが、この海賊をめぐっての問題について、いわば売り込みというか、そういうのを助けるよというようなことを言う動きはあるんでしょうか、日本に対して。

芦田参考人 お答えします。

 民間の武装ガード会社は、我々が知る限りでは、世界に七社ないし八社ございます。この多くがイギリスの会社になっております。そこが採用している保安員がどういう国籍であるかということは我々も詳細はつかんでおりませんけれども、経歴は軍隊出身あるいは特殊部隊経験者ということで、かなり精度の高い保安員をそろえているというところでございます。

 我々が運航する外国籍の船、これには既にそういう会社に委託して武装ガードを乗せて、その結果として、日本だけやっているわけじゃなくて、さっき言った十三カ国ございます、こういうところが百七十九件のうち五十八件も撃退している。殺害しているということではございません。撃退しているということでございます。

赤松(正)委員 最後に、小島参考人にお聞きしたいんですが、先ほどのお話で一番最後にお話しになられた部分が非常に私は興味深かったんですが、日本全体の子供たちに、船会社の立場として出かけていって、一万九千人の子供たちの前でいわば船の話をされるわけですね。そういうときに、私がここで最後にお聞きしたいのは二つ。

 一つは、改めて基本的なことをお聞きしますが、要するに、ソマリア、ここは危険だという印象ですけれども、多くの日本人の船員の皆さん、日本人の船長の皆さんが活躍をしている海域、国、そのあたりはどこかというのが一つ。

 もう一つは、子供たちとお話をされての印象。今、尾田栄一郎さんの「ワンピース」、竹田先生は全巻をそろえていると最新の本の中で豪語しておられましたけれども、私どもも子供のときはそういう海賊に大いなる興味を持ったんですが、最近の子供事情を海賊との関係でちょっと語っていただければありがたいと思います。

小島参考人 まず最初の質問ですが、どういう航路に乗っているかということですが、これは、ほとんど世界をぐるっと回って、どこでも乗っています。ただ、絶対数が非常に少ないです。まさに混乗、全く混乗になっていまして、二名混乗、これは船長と機関長だけ日本人であとは外国人、こういう船もあるし、もうほとんどコンテナ船とかタンカー、いろいろなところに行っています。LNG、LPG。

 それから、子供たちへの話なんですが、これは先ほどもちょっと言いましたが、平成十二年、船長協会の名誉会員の柳原良平さんの発案で、船長が自分の学校に行って子供たちに話をして、海の話と貿易の話、それから船員の話、この辺も全部話をして、大体一時間ぐらい基本的な話とDVDをお見せして、その後、私たちの経験談、船はおもしろいということを話してきました。

 この間は天草に行きました。天草で中学校二つ。それから、この間は栃木県の佐野市から車で三十分ぐらい行った山の学校なんですけれども、海を見たことのない子も一人か二人いました。でも、小さな学校でした。

 今、子供たちがかなり海離れというか、私たちのころは臨海学校というのがあって、もうとにかく楽しかったという思い出があって、海の水はしょっぱいというのがそこで初めてわかるんですけれども、現在は、子供の安全のために小学校はそれをやめています。ですので、臨海学校がありません。それから、もう一つは少子化ですが、海に行くことを父親、母親が非常にあれということもあります。でも、皆さんすごく興味を持ってくれて、船乗りになってみたいという感想文もよく来ています。

 以上です。

赤松(正)委員 終わります。ありがとうございました。

松原委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、参考人の皆さん、本当に御苦労さまでございます。そして、先ほどから大変貴重な御意見を聞かせていただきまして、これからの議論にも生かしていきたいな、こう考えたところであります。

 まず、竹田参考人に伺いますが、ソマリア沖・アデン湾での海賊事件の増加を受けまして、二〇〇八年ごろから、世界から軍隊を派遣してきたわけですが、先ほどから議論になっていますように、海賊は軍隊のいない海域に活動拠点を移して、発生件数も年々増加してきている。今や東はインドの沖合、南はモザンビークの海峡にまで及んでおり、およそカバーし切れるものではないな、こういう議論をしてきたところであります。

 これまでの延長線上での対応では事態の改善は図れないと思いますが、今後、海賊の発生そのものを抑えていくためにどのような対策が必要なのか。先ほど竹田先生の方からは、ソマリアにおける産業の振興、若者の雇用の場とお話がありましたが、その話をもうちょっと具体的にお聞かせいただきたいと思います。

    〔委員長退席、楠田委員長代理着席〕

竹田参考人 ソマリア本土での産業育成に関して、まずお答えしたいと思いますけれども、海賊は犯罪者ですから、犯罪者がなぜ生まれるのかといったときに、やはりソマリア本土そのものの経済破綻があると思うんですね。ですから、雇用吸収能力を持つような産業を興さなければならない。

 私は、端的に申しますと、水産業だと思いますね。つまり、ソマリア沖の海域というのは、キハダマグロとか、いわゆるマグロを初めとした回遊魚のいい漁場なんですね。日本もそこの、ソマリア沖、インド洋のマグロ等をいろいろ購入しているわけですから、日本ばかりじゃなくて、中国もそうですし、欧米もそうなんですが。ですから、世界が求めるニーズというのは、一つは良質なお魚ですから、それがインド洋でとれるんですね。もちろん、最高級のクロマグロ、ホンマグロというのは地中海とか大西洋とか南極海とかまた別のところなんですが、そうじゃない中程度の価格帯のマグロはソマリア沖なんですね。ですから、ソマリア沖での漁業振興をすればいい。

 そのときに、ソマリアそのものに中央政府は存在しませんから、現在ある自治政府らしきものとタイアップして、そこで産業振興をする。国際的な漁業団体なり国際機関なりが入って、そこでジョイントで、共同で起業していく、産業を興していく。そういう形で、なるべく労働集約型で、ある程度の収入を得るようなメカニズムをつくることが一番重要だと私は思っております。

 以上です。

赤嶺委員 ありがとうございました。

 それで、引き続きお伺いしたいんです。

 今、自治政府について一つの希望的な思いも語っていただいたんですが、やはり政治プロセス、ソマリアという国はなかなか大変な状態になっております。しかし、抜本的には、やはりソマリアの内戦の終結と貧困の打開、先ほど雇用のお話も聞かせていただきましたが、この問題を避けて通るわけにはいかないと思います。しかし、政治プロセス、あの二〇〇八年のジブチの合意以降も、暫定連邦政府とアルシャバブの戦闘は継続して、思うような前進も図れていない。その上に、今度の飢饉の問題があります。大干ばつ、食料危機も起こっています。

 今のこの現状、まさにソマリアの内政問題の解決、この点についていろいろ考えていらっしゃると思いますけれども、この点についても先生の御意見を伺いたいと思います。

竹田参考人 とても難しい御質問をありがとうございます。

 ソマリアそのものに中央政府が存在しないということは、政府、軍隊、警察、消防、何も存在しないということですから、そういう中で、内戦状態は一九九一年から起きていた。なおかつ、そこに大干ばつや飢饉がある、貧困であるという形で、国家としては最悪の状態なんですね。

 そこで、即効性のあるいい解決策があるかといったら、私はないと思いますね。考えつくあらゆることをやって、何か少しずつ少しずつ解決する以外ないというふうに私は思います。そのときの取っかかりは、やはり自治政府らしきものとタイアップして、そこから立て直していく。やはり全体を立て直すのは難しいと思うんですね。

 ソマリア全体は、国土でいうと日本の一・八倍です。人口数は九百万人だ。そういう中で、今、飢餓に直面している人が三百万から四百万人いる。なおかつ、子供が三十万人から四十万人ぐらいかなりひどい状態に置かれている、餓死の危険性があるという中で、一体どこから手をつけたらいいのかというぐらい、余りに問題が大き過ぎるんですね。

 ですから、私は、日本を初め国際社会が考えつくいろいろなことを同時に進める以外ないと思います。

赤嶺委員 この点でもう少し、あと一点具体的に伺いたいことがありますが、国際社会の努力として、海賊の抑止という観点から、あるいは内戦終結という観点から、ソマリアへの武器の流入を食いとめるという問題があるのではないかと思います。

 武器禁輸を定めた国連安保理決議の実効性を高めることが非常に重要だと思いますけれども、この点での国際社会の取り組みの現状を先生はどのように見ていらっしゃるのか、御意見を伺いたいと思います。

竹田参考人 内戦が継続して大きい、なおかつ激化するというのは、やはり小型兵器が大量に流入するということが根本原因だと思うんですね。そのときに、では、経済的に破綻している国がどうして小型兵器を購入できるのか。つまり、資金を提供する人が海外に存在するとか、もしくは国内に存在するとか、さまざまな資金ルートがあって武器が調達されるわけですね。

 ですから、国連安保理等での武器禁輸、制限ですが、これは決議されていますけれども、実効性はまだ十分じゃないと思いますね。

 というのは、ソマリアそのものに警察機構とか軍隊は存在しませんが、取り締まる人がだれもいません。ということは、自由にだれでもソマリアに、武器以外でも、消費財でも、食料でも、何でも持ってこれる。つまり、あらゆる人が密輸する。輸入という概念がないわけですね。我々から見ればすべて密輸になります、政府が存在しませんから。そうすると、あらゆるところから武器も入ってくる。その一つの大きなルートが、メディアでの報道によりますと、パキスタン・ルートですね。

 パキスタンというのは、自動小銃等を大量に生産し、なおかつ、アフガニスタン国家のペシャワールという町では、AK47小型自動小銃をファミリービジネスでつくるような産業形態を持っています。そういうところから大量の安価な武器が流れてくるということがあります。ですから、その意味では、パキスタンからの武器の流出ということも一つの大きなテーマになっていると思います。

 それに関して、パキスタン政府は武器のそういった流出は食いとめたいという方針ですから、国連とパキスタン、アメリカとは合意して、武器の流出はパキスタンだけではないんです。少なくとも過去においては、一つの大きな流出ルートはパキスタンだった。そこを食いとめるということが私は非常に大事だと思います。

赤嶺委員 次に、芦田参考人にお伺いいたします。

 先ほど来、国際海運集会所などがまとめておりますベストマネジメントプラクティスの問題が話題になっております。今月、最新版が公表されたようでありますが、これによると、見張りの強化、先ほどから説明がありました有刺鉄線の問題や放水設備、船舶避難所の設置、また、運航事業者や船長がとり得るさまざまな対策を列挙しておられます。大変効果も上がっているというお話でありました。

 乾舷が八メートルあれば海賊の攻撃を回避できる可能性が高いことだとか、十八ノット以上で運航している船舶が攻撃された報告はないということもこの中で指摘しておりましたが、こうした点で日本の取り組みの現状について教えていただきたいと思います。

芦田参考人 お答えします。

 先ほど申し上げましたように、ベストマネジメントプラクティスにつきましては、できるところは大体もう全部やっているのが現状でございます。

 ハイリスク船と申します乾舷が八メーター以下、スピード十八ノット以下、この船は大きくしようと思ってもできないんですね。

 それから、商売の形態上、あるロット、数量が大体決まっておりますから、大きな船でも、例えば三十万トンタンカー、これは長さ三百三十三メーター、幅六十メーターで船の深さ三十メーターあるんですけれども、空船で行くときには、十メーター沈めて二十メーターあるんですね。ペルシャ湾に入って満載して出てくるときは、三十メーターの高さがあっても、二十メーター沈みまして、上は十メーターしか出ていない。八メーターと十メーター、ぎりぎりぐらい、あるいは、一番満載しているときは二十二メーター実は沈めるんですね。そうすると、八メーターしか上に浮かないということがございます。

 それから、ケミカル船、化学品を運ぶ船、それから石油製品を運ぶ船、これはもっと小そうございます。三万五千トンから六万トンぐらいの船になりますから、これは乾舷が八メーター以下でございます、スピードもそんなに出ません。ですから、こういう船は非常にねらわれやすい。

 そういうことで、いろいろな有刺鉄線とか、とにかくまず、船にはしごをかけても上の方に行ったら危ない、レーザーワイヤとかそういうのがある、あるいは放水される、熱いお湯がばあっとかかる、こういうことでできるだけ防ぐ、これしかないという状況でございます。ですから、武装ガードがさらに重要性を増してくるというふうに私は判断しております。

    〔楠田委員長代理退席、委員長着席〕

赤嶺委員 その武装ガードも今回の議論になっているわけですが、諸外国や日本の海運業界の現状も先ほどあったわけです。

 私は藤澤参考人にこの点でお伺いしたいと思うんですけれども、武装ガード、武装警備員を乗船させることによってかえって海賊の攻撃がエスカレートしはしないか、こういう懸念を持つわけですが、この点はどのようにお考えでしょうか。

藤澤参考人 今、日本の商船隊は約二千四百隻あります。そのうち、日本籍船は百十数隻だと思います、ちょっと数字は正確じゃございません。ほとんどは、全部便宜置籍、外国籍になっておりまして、先ほども御説明しましたように、全船員が集まった世界のいろいろな協議の中では、やはり日本商船隊といっても、船籍によってそういうものを認めている国の船籍もありますし、いろいろな国があるわけです。

 したがいまして、先ほど来私が言っているのは、日本籍船にガード態勢をとる、このことは否定するものじゃございませんけれども、まず警察権を持った海上保安官とか、いろいろな警察だとか、極端に言いましたら、そういう人たちが乗り込んでガードすることについては理解できるんですけれども、この百数十隻の船に、日本の領土にそういう武装態勢をとるということにつきましては、反対だとは言っているわけじゃないんですけれども、まだ現場で働いている皆さんの方のコンセンサスを得られる状況にない、そういう判断をしております。

赤嶺委員 もうちょっと時間があるようでありますので、ちょっと海賊の問題で竹田参考人にお伺いしたいと思います。

 七月に公表された国連のモニタリンググループの報告書によりますと、多くの場合、海賊がかなり老朽化した武器を持ち、そして入手ルートの特定もできないことを指摘しております。また、外国軍隊の艦船を海賊が襲撃してしまう事例も何度も起こしているということも挙げております。彼らの情報収集能力に疑問を投げかけているわけです。

 ことし初めに韓国に移送された海賊の一人が、韓国でこのまま生活がしたいとか、アフリカにある普通のホテルよりも韓国の留置場の方がよい、こう語ったことも報道されました。

 この海賊というのは、およそ洗練された犯罪集団とは非常に言いがたいんじゃないかと思いますが、こういう指摘についてはどのように考えればよいでしょうか。お聞かせください。

竹田参考人 お答え申し上げます。

 ソマリアの犯罪集団は、私の見立てでは二種類あると思うんですね。これは明確なデータに基づいて自信を持ってお答えすることは今できませんけれども、大きく分けて恐らく二種類の犯罪グループが存在するのではないだろうか。一つはかなり洗練されたグループ、もう一つはそれほど洗練されていないグループ。

 もともと洗練されたグループで出発し、かなり襲撃事件、ハイジャック事件を起こし、それで身の代金を獲得するという行為が、二〇〇七年から八年、ずっと進んできたわけですね。言ってみれば、それがソマリア海賊の主流部隊みたいな存在。それ以外に、そういう行為を見て、別のグループが海賊行為に加担し始めているなというふうに私は思います。前者の洗練されたグループというのは、かなり組織力があって情報収集能力も高いと私は思います。だからこそ非常に成功率が高いし、なかなか逮捕されなかった。

 どうしてかといいますと、一つは、もともとのグループというのはソマリアの氏族、氏族というのは民族、部族よりもっと小さい単位、ファミリーでつながっている、お父さんが一人でその子供が全部血がつながっている。その意味でいくと、ソマリアの海賊グループというのは氏族、部族ではなくて氏族、もっと小さい単位なんですね。つまり、巨大なファミリービジネスなんですね。

 ですから、ソマリア海賊の小型ボートを見たときに、私は、ひょっとすれば、ここにいる海賊はみんな兄弟じゃないかというふうに思うことがよくあります。それはちゃんと血液検査をしなきゃわからないです。しかし、社会構造からすれば、それはあり得る話だと思います。そういうグループがかなり組織立った形で海賊行為を二〇〇七年、八年ぐらいからずっとやってきたと私は思います。

 それとは別に、そういう海賊行為を見て、別にそこまで組織立っていないグループが登場して、海賊行為にどんどん加担していくという現象がある。そういうグループが、今先生御指摘になったように、それほど情報収集能力もないだろうし、母国にも帰りたくない、韓国にいたいとか、いろいろなことを発言する。もともとの洗練したグループは非常に結束がかたくて、ファミリービジネスですから口を割らないんですね、黙秘権を行使しますから。それで、大筋としては、私たちは貧しい漁民でしたという決まったフレーズを発言するというパターンが多いと私は思います。

 以上です。

赤嶺委員 どうもありがとうございました。

 きょうは、質問できませんでした参考人の皆さんも含めて、御意見を拝聴したことを今後の議論に生かしていきたいと思います。

 大変ありがとうございました。

松原委員長 次に、服部良一君。

服部委員 社民党の服部良一です。

 きょうは、現場の非常に生々しい御意見をいろいろ聞かせていただいて、大変ありがとうございます。

 このソマリア問題、海賊問題は、たしか〇八年、麻生政権のときの秋から、国会でいろいろ議論になりました。そのときの議論と今の状況の違いなり共通性をやはりきちっと認識して、その上で、どういうふうに対策をすべきかということを整理して本来議論をしなければいけないなということを感じているわけです。

 改めて、竹田先生の中央公論の論文を読ませていただきまして、何か当時とやはりいろいろな意味で違いも出てきているなと。例えば、当時の海賊は、貧しい漁民がやむにやまれず出ているんだというような議論もあったんですけれども、先生の論文を読ませていただくと、極めて高度化したというか武装化した専門家集団になっているというような指摘もございます。

 そこで、今までの質問と若干かぶるかもしれませんけれども、幾つか質問をさせていただきたいんです。

 きょうの資料の中で、芦田会長ですか、我々は自衛隊が出ていくことに対してはもっと慎重であるべきだ、海上保安庁がやらぬかいというような議論が当時あったわけですけれども、少なくとも、自衛隊が出ていけば、自衛隊だけじゃないわけですから、各国が軍隊を出しているわけですから、当然減るだろうと思っていたわけですよ。

 ところが、実際にふえているわけですね。二〇一一年は去年の比率でいくと二割、三割ふえているということなんですけれども、この資料を出されている芦田会長、これは何でふえているというふうに考えられていますか。

芦田参考人 お答え申し上げます。

 もし護衛艦が出ていなくて、あるいは哨戒機が派遣されていないとすると、もっとふえていると思います。二割、三割どころじゃないと思います。

 それで、なぜふえるかに至った理由なんですけれども、やはり国がさらに一層悪化している。一つは、ソマリアという国は、牧畜業と農業、これが二つの産業なんですけれども、牧畜も草が生えなきゃ飼育することができないわけですね。干ばつでやはり影響を受けている。さらにそれに追い打ちをかけたかのごとく、そういう牧畜は、自分らが食べると同時に、周辺国に輸出して、それが外貨獲得の大きな手段だったんですけれども、周辺国が、これは理由は私はわかりません、ソマリアの家畜輸入禁止という措置をとったということで、そちらの方がまず断たれた、それから干ばつによって農業が壊滅的な影響を受けたということで海賊がふえていった。

 海賊のいろいろな、ソマリアの国における海賊の、そういう金をこれだけとったという話はすぐ口コミで広がると思います。そうすると、手っ取り早い、それから外貨が一千万ドルも一挙にとれるということで、そちらの方にやはり出ていったのかなというふうに思います。

服部委員 普通、永久に自衛隊を展開するというわけにはいきませんね。これが三年、四年でめどが立っていくというんだったらいいですけれども、十年、二十年、三十年、五十年と自衛隊を派遣せないかぬのか。これはちょっとあり得ない話だと私は思うんですね。

 それで、皆さんも共通した理解としては、ソマリアの陸の体制を何とかしないといけないというのは、これは皆さん多分共通の思いで、二年前のときも、短期的な方針と長期的な方針があるのじゃないか、こういう議論もあったわけです。

 竹田先生にお聞きしますけれども、先生の主張は、一つは、日本がマラッカ海峡で成功した事例、これをきちっとソマリア海域でもやるべきではないかということ、それから陸の作戦、これについては極めて幅広い、マネーロンダリング対策を含めていろいろ御指摘なさっているわけですけれども、我々も、自衛隊ありきじゃなくて、まず海上保安庁だという中で、「しきしま」が一隻しかなくて対応ができるとかできぬとか、そういう議論はありました。

 しかし、基本的な方向性として、こういった外務省あるいはJICA、そして現地の沿岸警備艇との多国間協力、そこを海保がそういうノウハウを活用してやる、そういう基本的な流れといいますか方針については、もう無理だというふうに思われますか、それとも、まだそれは基本的には正しいというふうにお考えでしょうか。

竹田参考人 現行の海上自衛隊と海上保安庁による護衛作戦、護衛船団方式に関する御質問だと私は理解しましたが、それは私は正しいと思います。

 これは、能力からいって、やはり海上自衛隊の艦船をそこに派遣し、そこに海上保安官が警察行動をとるために八名乗船するという方式が、今のところ、限られた予算とかスタッフとかさまざまな環境を考えたときに、ベストだと私は思います。

 それで、マラッカ海峡の成功例とか、あと陸の作戦ということですが、これは具体的に何か……

服部委員 マラッカ海峡での日本の取り組みの経験というものは、二年前のときはそうすべきだという議論が非常に強かったんですよ。今はどうなんでしょうか。

 例えば、ジャスミン革命がございました。非常に中東が今流動化していますね。先生の論文を見ますと、ソマリア、イエメンの海賊連合が出てきておるということもおっしゃっていますし、それから、ソマリア北東部のプントランド、ここに資金が流れて、ここあるいはケニアのナイロビに豪邸が建っておる、こういう話が出ているわけですね。ですから、周辺諸国が本来は一緒になって沿岸警備をきちっとせないかぬのですが、実際には資金がいろいろなところに流れていって、一体、海賊だけがやっているのか、もっと背後にいろいろな組織があるのか、わけがわからないような状態になっているじゃないですか。

 だから、そういう意味で、私は軍隊ありきというのはもともと反対ですから、何とか海保をうまく使って、長期的には地域の、各国との共同でやるべきじゃないかという考えを今でも持っているわけですけれども、その辺の理解について御意見をお伺いしたいと思うんです。

竹田参考人 マラッカ海峡の事例に関してですけれども、基本的に、マラッカ海峡のさまざまな海賊対策は成功していると私は思います。さまざまな情報収集とか洋上における海賊対策というのもかなり進んでいると思います。ですから、洋上における海賊の発生件数というのはかなり減っているということが言えると思います。しかし、去年からマラッカ海峡における海賊件数が若干ふえているんですが、洋上ではなくて港湾、港における武装強盗の事件がふえてきていると私は思います。

 そういう意味では、日本がかかわったマラッカ海峡における海賊対策の地域協力というのはかなり実績がある。これを今まさにソマリアの海賊対策に使おうとしているんですね、その成功事例を。

 一つは、情報収集を現地で行う。つまり、沿岸ソマリア海賊、ソマリア沖海賊に関連する情報収集を現地で行う、それを集約する、それを発信する、みんなで共有するということがまず第一です。

 第二に、やはり沿岸国のキャパシティー、能力を向上させていく。つまり、先ほど先生がおっしゃったように、やはり海上警察、コーストガードの能力を高める。現実には現地に、沿岸国にコーストガードと言えるようなしっかりとしたものが、日本のようなすばらしい巨大なコーストガードが存在しませんから、そのノウハウを持ち込んで、小さなコーストガードを少しずつ少しずつつくっていただく。それによって現地で、自分たちの力で海賊対策の実効性を高めていく。私は、まさにマラッカ海峡での事例を今現在ソマリアの海賊対策に関して少しずつ応用している、そういう段階だと思います。

 それでよろしいでしょうか。

服部委員 ありがとうございます。

 日本郵船の諸岡社長のこの中に、当時も実は議論があったんですけれども、アフリカのケープタウン、喜望峰を経由していったらどうなんだという話がありました。そうすると、多分、当時の議論では、一週間ぐらい余計にかかるとか油代がちょっとかかるねという話が実はあったんですけれども、結局、自衛隊を派遣するにも金が要るわけですね、国民の税金が。ですから、トータル的なコストとしてどうなのかという話はそれはそれであるというふうに思うんですが、ただ、きょうの竹田先生の話なんかを聞いていますと、海賊の領域がもうインド洋全体に広がっている。

 だから、ケープタウンを経由していく場合のメリット、デメリット、あるいは今の今日的な状況、そこら辺についてどなたか御説明いただくとありがたいんですけれども。

諸岡参考人 一企業としての私見ということで申し述べたいと思いますが、確かに、ヨーロッパに行く、あるいはヨーロッパから日本、アジアに来る船につきましては、ケープタウンを経由していくというルートも、コストがかかるという海運会社にとっての経済的なダメージはございますが、そういったルートはあるわけですけれども、先ほどから出ているのは、まず東アフリカに行くもの、あるいはアデン湾を通過するもの、広域化しましたので、ペルシャ湾から出てくるあるいは入ってくるもの、この辺がちょっとごっちゃになって議論されているのかなと思うんですね。

 先ほど先生は、ずっと自衛艦を派遣しておくわけにはいかないんじゃないかというお考えを述べられましたけれども、私、これまた個人的な意見で申しわけないんですけれども、大変僣越ですが、我が国の国益に一番大きくかかわる、例えば原油の輸入とかLNG船の輸入というのは、これはヨーロッパの諸国とか、ちょっと事情が違うんじゃないかと思います。

 というのは、海上輸送というのは、大きく東西に交通しているものと南北に交通しているものがありまして、原油やLNGだとかいった資源エネルギーの部分が、今までは、そこのところはこのソマリア問題というか、海賊問題からちょっと離れていたんですけれども、今や世界の中で一番日本がリスクが高くなってきて、ほかの国は今リビアだとか地中海の、北アフリカの情勢が悪いので、先ほど先生もおっしゃっておりましたけれども、艦艇の一部移動を行われているというのは、彼らの権益というか利害が、北アフリカとヨーロッパの関係だとかがあるんですけれども、我が国においては、何としても原油やLNGというようなものを日本に持ってこられなければ原発どころの話じゃなくなるという意味においては、このライフラインを守っていくという状態が、これは最初のソマリアの海賊対処法ができた後に新たに起こってきた問題じゃないかなと私は思います。

服部委員 短期的には派遣もやむを得ないという議論もあったわけですけれども、派遣してもかえってふえている。ほんだら、これ、本当にいつまで続くんや。要するに、根本的な対策をやはり打っていかないとどうしようもないじゃないか。だから、きょうの話を聞いていると、エリアも広がっているし、中身的にも事態はかえって深刻になっているなと。

 竹田先生、ここの中央公論の論文の中に、陸上作戦のかなめだということで、身の代金のマネーロンダリングを阻止し、海賊マネーによる不動産の購入に目を光らせる、小型武器の大量密輸を食いとめる、海賊マネーの胴元を根気よく割り出して、海賊行為に関係する国際シンジケートを摘発するというふうに書かれているわけですけれども、これをもしやるとしたら、だれがやられるんでしょうか。どういう可能性があるんでしょうか。

竹田参考人 現在、国連を中心とした海賊対策のフレームワークで最も大きな任務は、海賊マネーのトレースと、その胴元というか資金元といいますか、グループを割り出すことなんですね。それに関する会議だとかセミナーは、九月から毎月のように全世界で開かれていくと思います。

 ですから、今先生が御指摘になった点は、国際社会においても非常に大きな問題で、それを突きとめるのは非常に難しいんですね。なかなか我々は現地に行けませんから、その中で、現地で犯罪グループを特定化し、なおかつリーダー格を特定化し、その資金の流れを特定化していく。その作業を、まさにIMOを中心に、国際海事機関を中心にして作業を今進めている、そういう段階だと私は思います。

服部委員 ただ、ここにも書かれていますけれども、例えば国連が食料援助をしても、実際には地元のコントラクターに委託する関係で、結局横流しされているということも先生は御指摘されていますね。

 ですから、そういう意味では、現地がいかに飯を食えるかという状況をつくっていかないといけないというふうに思うんです。先ほど漁業を振興することだというふうにおっしゃいました。そういったこともぜひやっていかないかぬと思うんですけれども、一体、だれがどういう状況の中でそれが可能なのかという、その次のステップがどうも見えてこないなということを感じております。

 ちょっと舌足らずになりましたけれども、時間が来ましたので質問を終わります。ありがとうございました。

松原委員長 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一と申します。

 きょうは、大変貴重なお話をありがとうございました。

 最初に、船主協会の芦田参考人にお尋ねします。

 先ほどフランスとオランダは軍隊を船に乗せているという話がありました。これはどういう形態で何人ぐらい、あるいは全部の船が対象なんでしょうか、それとも特定の船が対象なんでしょうか、御存じでしたら教えてください。

芦田参考人 お答え申し上げます。

 フランス、オランダがどういうふうな公的な武装ガードを乗せているかということは、詳細は今のところつかめておりません。

山内委員 では、竹田先生にお尋ねしたいんですが、日本籍の船というと、先ほどの話だと百何十隻。そのうち、危険な海域にある時点でいる船というのは、多分そのわずか数%なり何割かしかいないと思うんですね、世界じゅう行っているわけですから。そうすると、百数十隻の例えば二割ぐらいがたまたま危ない海域にいると仮定すると、例えば二十隻、危険な海域にいるとすると、一隻に三人ガードがいればいいという話でしたから、六十人いれば何とかなってしまう。そうすると、実は日本籍の船だけに公的なガードを乗せるというのは、そんなに荒唐無稽でもなくて、結構現実的なんじゃないかなというふうに思ったんですが、竹田先生の御意見を伺えればと思います。

竹田参考人 これも非常に難しい御質問で、うまく答えられるかどうかわかりませんが、日本籍船が、多分百八十八隻ぐらい存在するんだと思いますが、危険な海域に行っている数は少ないと私は聞いております。例えば二割だとして六十名の警備員といった場合、この六十名は一体だれか。つまり海上保安庁の警察官なのか。それとも海上自衛隊がいらっしゃるのか。公的とした場合、一体どこから持ってくるかというんですね。

 海上保安庁の場合ですと、非常に限られた人員と予算の中で、日本列島を全部守り、東シナ海の領海警備があり、それから密輸、密航の取り締まりを行い、それから救難活動を行い、さらに消防活動も行い、それからアデン湾での警察活動も行う。人員的には恐らく回らない状態だと思います。今、アデン湾に派遣されている海上保安官は八名おりますけれども、全国から、とにかく一カ所からごそっと抜いていくのではなくて、全体のシステムが稼働するような形、支障がない形で人員を配置しているんだと私は理解しております。

 ですから、六十名といっても、やはりプロフェッショナルを六十名投入するというのは、私は海上保安庁の方はかなり難しいと思います。

山内委員 それでは、先ほど海員組合の藤澤様が、大変何度も議論に出ています、マラッカ海峡の海賊対策は、日本の協力もあって非常にうまくいっている。昔、ODAでインドネシアに巡視艇を三隻ですか、供与したりということもありました。同じようなことを恐らくインド洋でもやっていく必要があるのじゃないかなと思いまして、もう一度、竹田先生にお話を伺いたいと思うんです。

 私は海上自衛隊と海上保安庁、両方大事だと思うんですね。それで、特に取り締まりに関する国際協力ということでは、軍隊じゃなくて、むしろ海上保安庁の仕事の領域になると思いますから、長期的には、自衛隊と海上保安庁の連携等を、どちらかというと海保の比重をふやしていって、人が足りなければ全体の海上保安庁の予算もふやしながら、より海上保安庁の比重を高めて活動していく必要があるのじゃないか。

 例えばコスト的にも、護衛艦と海上保安庁の巡視艇でいうと、全然コストが違うはずなんですね。海上保安庁は別に対空ミサイルとか潜水艦用の機材とか全くないわけですから、多分一隻の値段は相当、もう何倍どころか、けたが一つ違うぐらい海上保安庁の船の方が安いはずなんですね。

 通常どの国でも、コーストガードは沿岸警備だから、ちっちゃ目の船しか持っていないんですけれども、日本は特殊事情があって、遠洋航海ができる巡視艇が一隻あるはずです、プルトニウムの輸送をもうやらないからあいているはずなんですけれども。そういう日本独特の事情がありますから、今後のことですけれども、やや大き目の巡視艇を建造して遠くまで行けるようにして、マラッカでやったのと同じように、インド洋で各国の沿岸警備隊に対して、ODAのスキームも使えるし、いろいろな形で国際協力の枠組みをつくっていくのは非常に有効ではないかと思います。

 そういった意味では、今後どういう形で海上自衛隊と海保の連携を深め、あるいは海保の比重をふやして、もっと海上保安庁を前方に展開させていくことができるか、お考えをお聞きできればと思います。

竹田参考人 まず、海上保安庁に関してですが、大型巡視船の数、「しきしま」級を複数持つとか、それに伴って人員をふやす、さらに、人員をふやすためには予算もふえるという前提があれば、将来的に海上保安庁が遠洋航海能力を高めていくことは私は賛成です。でも、それと海上自衛隊とはまた別なんですね。

 今、海上保安庁のお話をしました。現在の護衛船団方式というのは海上自衛隊と海上保安庁のタイアップですから、予見し得る将来、私はこのフレームワークは壊れないと思いますね。巡視船一隻をつくるといっても、やはり三年ぐらいかかるんですね。その前に国会審議がいろいろありますから、そう簡単にはできないということがあると思います。

 ですから、連携としては、私は、海上自衛隊と海上保安庁の現在の連携パターンというのは恐らくかなり長期間続くというふうに予想していますし、海上保安庁が急に、本当にこの数年間で主力になって取ってかわって、海上保安庁中心の護衛船団が生まれるかというと、私は生まれないと思います。物理的にそれはもう困難だと思います。

 やはり海上自衛隊を中心にして、戦闘ということを想定してつくられているのが軍艦です。海上自衛隊の船です。海保はそうじゃないわけですね。もともと戦闘ということを想定しないでつくっているわけです。ソマリア海賊は、ロケットランチャー、RPG―7とか、AK47自動小銃とか、AKMとか、さまざまな武器を持っているわけですから、それに対応する船を大量に持っているのはもう間違いなく海上自衛隊だと思いますから、海上自衛隊に今後活動していただかなければならないと私は思っております。

 以上です。

山内委員 船主協会の芦田さんにもう一度お尋ねしたいと思います。

 武装ガードが効果的ということは先ほど来お話がありました。仮に法改正して同乗できるようになったら、さっきからずっとお話がありましたけれども、どうしても外国の会社に頼ることになって、場合によっては傭兵と区別のつかないような民間の軍事会社みたいなところに頼むのかもしれないのですけれども、将来的には日本にもそういうガードをきちんとできるような会社が存在することが必要なんでしょうか。お考えをお聞きしたいと思います。

芦田参考人 お答え申し上げます。

 武装ガードも、第一義的にはやはり公的武装ガード、自衛隊、海上保安庁、警察、これでやっていただきたいと思います。というのは、日本で警備会社はございますけれども、ライフルを扱うとかそういうことについては、私は少し経験が浅いのじゃないのかなと思います。

 もし、公的ガードがだめで民間の武装ガードを乗せなきゃいけない、こうなったときは、いや、本当はなっちゃいけないんです、公的ガードでやっていきたいんです。これでもうピリオドなんです。ですけれども、あえて申し上げれば、民間でやる場合には、日本人を対象としたものはかなり無理があると思いますし、法的にその辺をやっていただいた場合でも、時間がかかると思います。そういう場合は、外国の民間武装ガード会社を採用するとか、そういうことも御検討いただきたい。長期的には、日本の民間武装ガード会社が運営できるような、これは人員の養成も必要でございますので、そういうことも必要かなというふうに思います。

山内委員 もう一度、竹田先生にお尋ねします。

 先ほど、セーシェルとか、ソマリア以外の国で法整備を行っていく、そこに日本で協力できるのじゃないか。日本はずっとODAで法整備をいろいろな国でやってきましたし、例えば法務省が犯罪研修所という国連機関を持っていたりとか、法執行機関とか各国の警察、コーストガードとの協力は何十年も前から日本でやってきたわけですけれども、具体的にどういうことをやると、今後必要とされる海賊対策ということに直結するような協力ができるのでしょうか。

 例えばセーシェルとどこか、マラッカ海峡も含めて、沿岸国の機関に対するどういう協力ができるのか。あるいは、IMOとかそういう国際機関に対してどういう協力ができるのか。人材なのか。お金というのが一番わかりやすくてすぐできると思うんですけれども、効果的なやり方、かつ日本のプレゼンスを示せるようなやり方、どんなものが考えられるでしょうか。

竹田参考人 先生は、日本の国際協力に関しては、もう現場も御存じでいらっしゃるでしょうし、造詣が深いと私は理解しておりますので、先生の御質問に的確に答えられるかどうか、ちょっと自信はございません。

 セーシェルというのはインド洋に浮かぶ島々なんですが、そこが今法執行の一つの拠点になりつつある、複数あるわけですけれども。例えば、そういう沿岸国の協力体制で日本が何ができるかというときに、日本は現行システムでかなり決められていますので、その枠組みの中でやるしかないわけですね。

 そういったときに、今も御指摘にあったように、法執行体制の整備。では、一体何かというと人材研修。人材研修を日本でも行い、なおかつ海外でも行う。それは、現地のいわゆるコーストガードもしくは警察の方々に法執行のイロハを、ABCを全部学習していただく、特に海における法執行のそういった研修プログラム。これは、日本はかなり実績があるし、ノウハウがあるし、評価が高いと私は思いますね。

 ですから、JICAでも、北九州の国際センターで国際犯罪取り締まり研修というのを海上保安庁とJICAがタイアップしてやっていらっしゃるわけですし、それからあと、海上保安庁の呉にある海上保安大学校においては、これは日本財団もタイアップした形ですが、東南アジアから留学生を呼んで、そういった法執行を学んでもらう。日本はアジアで飛び抜けた法秩序、法体系が整備された国ですから、そういった研修プログラムのノウハウを提供していくということがまず第一にあると私は思います。

 それと、あとは機材の供与ですね。これは巡視艇とか、さまざまな情報センターとかの機材を供与する。日本はノウハウを持っているわけですね。世界最高水準の造船技術を持っているわけですし、情報収集とその集約と発信する能力も高いわけですから。そういうようなノウハウを現地に持っていくということが、日本ができる、なおかつ日本のプレゼンスを発揮できることだと私は思います。

 そういうところに、日本単独ではなくて、国際機関を巻き込んでいく。特にソマリアのようなところですと、やはり日本単独では難しいです。これはもう通訳の問題もありますし、特殊な環境ですから、国際機関とかソマリアを統治したことのある国のノウハウとか、さまざまなことを受け入れながら、国際機関とタイアップしていくことが肝要だと思います。

 以上です。

山内委員 かつて、日本主導で国際機関をつくったことが幾つかありまして、余り知られていないんですけれども、例えば、メコン委員会という国際機関があります。日本のお金も人材も相当つぎ込んでメコン川流域の各国の協力の枠組みをつくったり、あるいは、また地味なんですけれども、SEAFDECといって、東南アジアで漁業関係の国際機関を日本が主導でつくったことがあります。

 同じように、インド洋の海賊対策の枠組みを、日本が中心になって、お金を出して、あるいは当然人も派遣して、それから沿岸国に呼びかけて、日本が主導になってそういう海賊対策の国際協力の枠組みをつくって、例えば、セーシェルでも、モルディブでも、スリランカでもどこでもいいと思うんですけれども、そういうところに置くというような、そういう構想というのはあり得るでしょうか。

竹田参考人 お答えいたします。

 結論から申し上げると、これは非常に難易度が高いと私は思いますね。メコン委員会にしても、今先生御指摘の東南アジアの漁業機関にしろ、やはり日本に近いアジアの国々ですから、今までの人脈とか知見とかを豊富に持っているわけですね。その中で、メコン開発をどうしたらいいかとか、もしくは漁業資源の開発をどうしたらいいかという形で国際機関を東南アジアのカウンターパートと話し合いながらやってきたわけですね。そこに外務省であるとかJICAであるとか、さまざまな機関が入ってやってきました。

 しかし、インド洋というのは、どちらかといいますと、我々は未知の世界なんですね。観光地であるとか、もしくは漁業関係地帯ではマグロの漁場であるとか、特定産業に関して言うと、インド洋に関する人脈とか知見を持っておると思いますけれども、総体として、日本はインド洋に関するプレゼンスが低いと私は思いますね、インド洋に限りますと。

 そういう中で、国際機関をつくっていくというのは非常に難しい。というのは、やはり人脈とカウンターパートが必要なんですね。そこが十分じゃないところでどうやってできるのか。

 あと、そこに欧米のプレゼンスがありますから、そういう国々が、もし何か利権をインド洋に持っていた場合、その利権調整、さまざまな利権があると思いますけれども、調査が出てくるでしょうし、さまざまなことを調整しながら国際機関をつくっていかなくちゃならない。

 その点、日本は、歴史的な経緯もありますので、アジアには非常にすんなりと入っていけたと思いますけれども、インド洋は我々の歴史の中から、どっちかというと、ぽっかり穴があいているところなんですね。そこに入っていくというのは非常に難易度が高いなと私は思います。

山内委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

松原委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の皆様方に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、参考人の皆様方におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼申し上げます。

 ありがとうございました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十八分散会


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