衆議院

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第3号 平成23年4月26日(火曜日)

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平成二十三年四月二十六日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 川内 博史君

   理事 阿知波吉信君 理事 稲見 哲男君

   理事 熊谷 貞俊君 理事 空本 誠喜君

   理事 津村 啓介君 理事 馳   浩君

   理事 松野 博一君 理事 遠藤 乙彦君

      石田 三示君    石津 政雄君

      石森 久嗣君    小川 淳也君

      太田 和美君    勝又恒一郎君

      金森  正君    川島智太郎君

      岸本 周平君    熊田 篤嗣君

      阪口 直人君    菅川  洋君

      平  智之君    竹田 光明君

      玉置 公良君    豊田潤多郎君

      中川  治君    野木  実君

      本多 平直君    山崎  誠君

      柚木 道義君    江渡 聡徳君

      河村 建夫君    近藤三津枝君

      佐田玄一郎君    塩谷  立君

      谷  公一君    吉野 正芳君

      斉藤 鉄夫君    宮本 岳志君

      阿部 知子君

    …………………………………

   内閣府大臣政務官     阿久津幸彦君

   参考人

   (原子力委員会委員長)  近藤 駿介君

   参考人

   (原子力委員会委員長代理)            鈴木達治郎君

   参考人

   (原子力委員会委員)   秋庭 悦子君

   参考人

   (原子力委員会委員)   大庭 三枝君

   参考人

   (原子力委員会委員)   尾本  彰君

   衆議院調査局科学技術・イノベーション推進特別調査室長           上妻 博明君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  泉  健太君     空本 誠喜君

  三日月大造君     熊田 篤嗣君

同月二十六日

 辞任         補欠選任

  阪口 直人君     岸本 周平君

  河井 克行君     近藤三津枝君

  吉井 英勝君     宮本 岳志君

同日

 辞任         補欠選任

  岸本 周平君     阪口 直人君

  近藤三津枝君     河井 克行君

  宮本 岳志君     吉井 英勝君

同日

 理事泉健太君及び三日月大造君同月二十二日委員辞任につき、その補欠として空本誠喜君及び稲見哲男君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 参考人出頭要求に関する件

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件(原子力政策について)


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     ――――◇―――――

川内委員長 これより会議を開きます。

 理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が二名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

川内委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に

      稲見 哲男君 及び 空本 誠喜君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

川内委員長 この際、阿久津内閣府大臣政務官から発言を求められておりますので、これを許します。阿久津内閣府大臣政務官。

阿久津大臣政務官 内閣府大臣政務官の阿久津幸彦でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 初めに、このたびの東日本大震災でお亡くなりになられた方々とその御遺族に対しまして深く哀悼の意を表しますとともに、また被災者の皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 科学技術政策、宇宙開発戦略、知的財産戦略及びIT戦略等の政策を担当する大臣政務官として、玄葉大臣、平野副大臣とともに、科学技術・イノベーションの推進に向けて力を尽くしてまいりたいと考えておりますので、川内委員長初め、理事、委員各位の御指導と御協力をよろしくお願い申し上げます。

     ――――◇―――――

川内委員長 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件、特に原子力政策について調査を進めます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として原子力委員会委員長近藤駿介君、同委員長代理鈴木達治郎君、同委員秋庭悦子君、同委員大庭三枝君及び同委員尾本彰君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

川内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

川内委員長 参考人各位には、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。

 それでは、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人からそれぞれ十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に簡潔、端的にお答え願いたいと存じます。

 それでは、まず近藤参考人にお願いいたします。

近藤参考人 おはようございます。

 本日は、私どもに発言の機会を与えていただきましたこと、感謝申し上げます。

 本年三月十一日、三陸沖を震源地とするマグニチュード九・〇の巨大地震が発生いたしまして、東北地方沿岸部を中心に広い地域を巨大な津波が襲い、多くの貴重な命が失われました。犠牲者の方々に心からの哀悼の意をささげたいと思います。

 また、東京電力福島第一原子力発電所の一号機から三号機は、サイトを襲った津波が想定をはるかに超えるものであったために、熱の最終逃がし場を失い、大量の放射性物質を放出するに至りました。

 原子力災害特別措置法十条、第十五条の通報を受けた政府は、直ちに原子力災害対策本部を立ち上げ、原子力発電所周辺に避難地域や屋内退避地域を設定し、周辺住民の皆様に避難や屋内退避をお願いいたしました。また、実際に放射性物質が周辺各地で検出されたことを踏まえて、そのレベルに応じて、さらに広範な地域で放射線安全の観点からの取り組み、御協力をお願いしていると承知しております。

 原子力委員会は、原子力政策の一環として、原子力災害の防止の取り組み、万一の重大事故の際に備えての原子力防災計画の取り組み、そして原子力損害賠償制度を整備、充実することを関係各省に求めた上で、原子力施設を国民生活の水準向上に寄与するものとして、立地地域の皆様がこれと共生できる条件を整備することを重要施策としてまいりましたので、それにもかかわらず、この事故が発生し、国民の皆様、とりわけ発電所周辺に居住されているゆえに避難された皆様、屋内退避を強いられた皆様、農産物等の生産者の皆様が不安の最中にあり、また避難所で大変不便な生活を強いられておるなど、甚大な被害をこうむっておられることについては、まことに申しわけなく存じ、深刻に受けとめている次第でございます。

 また、私個人としまして、若いときから研究者として、政府におけるこうした制度の整備のお手伝いをしてまいりましたが、そうした仕組みが今日、到底十分なものとは言いがたい、十分に機能しているとは言いがたいことに関しまして、みずからの至らなさを思い知らされ、深くおわびの気持ちを持っている次第でございます。

 さて、原子力委員会は、皆様御存じのとおり、政府の原子力災害対策本部に法律上の位置づけはございませんが、事故発生以来、こうした不安と不便の最中にある多数の皆様の御苦労と御心痛を片時も忘れることなく、この災害対策本部の事故の収束に向けての取り組み、及び避難、屋内退避に伴って不安、不便をおかけしている皆様に、放射線安全を第一に、生活基盤を確保していくことについての適切な措置が講ぜられるよう、できるだけ多くの内外の知見と専門家に寄与していただくことに対して努力をしてきた次第でございます。

 同時に、現在も他の地域においては、余震が続く中、原子力発電所が運転を続けているわけでございますから、こうした地域の皆様の不安にも思いをはせる必要がございます。

 そこで、先般、政府が、たとえそれぞれの発電所が想定を超える津波に襲われたとしても大きな被害を発生しないで済む備えを緊急に用意するべきとの観点から、いわゆる緊急安全対策を取りまとめ、事業者においてこれを速やかに実施することを求めた際に、私どもとしましては、もちろん所掌は原子力安全委員会でございますが、それにもかかわらず、この取り組みを重要とし、関係者がこの取り組みを的確に行い、さらにその内容の妥当性を立地地域社会の皆様に丁寧にきちんと御説明していくことが大事であると、原子力安全・保安院並びに事業者にお願いをしたところでございます。

 ところで、皆様御承知のとおり、原子力基本法は、原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨とし、民主的な運営のもとに、自主的にこれを行うものとして、その成果を公開し、進んで国際協力に資することとした上で、原子力委員会に対して、これを通じて、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もって人類社会の福祉と国民生活の水準向上とに寄与することという目的を達成するために、政府が計画的に取り組むべき施策を決定する責任を課してございます。

 そこで、この責任を果たすために、原子力委員会は、この施策の基本的考え方を二〇〇五年に、平成十七年でしょうか、原子力政策大綱に定めました。

 この大綱の要点を申し上げますと、第一には、安全性、核不拡散、そして核セキュリティーを確保しつつ、国民の理解と協力を得ながら、原子力発電及び放射線が国民生活の水準向上に効果的に利用されるよう、安全規制、核物質に係る保障措置、核セキュリティーに関するリスク管理を徹底しつつ、人材育成、国民との対話と相互理解活動、関連産業体制の整備、核燃料サイクル及び放射性廃棄物の管理に至る諸活動を、原子力発電に関しましては、二〇三〇年以降も発電電力量の三〇ないし四〇%以上を担うことを目指して、体系的にかつ計画的に進めるべしということでございます。

 このうち、原子力防災を含む原子力安全規制に係る取り組みは、原子力安全委員会の所掌するところですので、私どもとしましては、しかしながら、この取り組みにおけるリスク管理の徹底が原子力利用の前提であるとして、その重要性を強調してきたところでございますが、それにもかかわらず今日の事態が発生しているのですから、その要請が不十分であったことを深く反省しているところでございます。

 第二は、研究開発の取り組みについて、第一に、現在利用されている軽水炉とその燃料サイクル技術、並びに学術研究から産業活動にまで多方面に利用されている多種多様な放射線発生装置の利用に関して、安全を確保しながら、より効果的、効率的な取り組みをなされるべくの、いわゆる短期的視点に立った取り組み、研究開発、それから第二に、現在利用されているこれらの装置がいずれ陳腐化するに違いないと考えて、これらを置きかえるための原子炉、例えば高速増殖炉やその燃料サイクル技術、そして粒子加速器等を用意するためのいわば中期的観点に立った研究開発、そして第三に、核融合に代表される革新的なエネルギー技術あるいは革新的な放射線発生装置、利用装置の実現可能性を探索するいわば長期的観点に立った取り組み、この三つの取り組みを適切な資源配分のもとで並行して推進するべしというものでございます。

 第三は、近年、各国においてエネルギー安全保障、地球温暖化対策が緊要な課題となっておりまして、再生可能エネルギー、原子力発電、二酸化炭素回収、貯蔵技術に関する研究開発や導入の取り組みが活発に進められておりますので、各国における原子力利用の取り組みが安全性、核不拡散、核セキュリティーを高い水準で確保しつつ推進されるよう共同するとともに、共有する短期的、中期的、長期的課題を解決するための多国間あるいは国際機関を通じての取り組みを積極的に推進するべしというものでございます。

 こうした内容を含みます大綱を定めましてから五年が経過いたしましたので、委員会は、昨年末から、今後十年を見据えた新しい原子力政策大綱を策定すべきかと考えまして、その検討を開始しましたが、福島原子力発電所の事故を受けまして、この四月、検討を中断することにいたしました。

 私どもといたしましては、当面は、まずはこの事故の収束への取り組み及び避難されている人々の暮らしの確立の取り組み、そして、その後の環境回復、必ず再び住める土地とするためのさまざまな取り組みに関係者が全力を注ぐこと、あわせて、我が国の電力供給のある割合を担っている原子力発電について、これが周辺住民の皆様の御理解を得つつ運転を継続できるよう、さきに触れました緊急安全対策の的確な実施と、さらに原子力施設をこの事故の教訓を踏まえてリスク管理の観点から十分なものにしていくこと、そして、これらの取り組みを進めるためには、これまでにも増して志の高い人材と知恵が必要でございますから、そうした人材の確保と関連する研究開発活動を充実する取り組みが的確になされるよう、政府に対して施策をお示ししていく所存でございます。

 また、今後の原子力発電の取り組みを考える場合、広範にわたる莫大な被害の発生に加えて、膨大な量の放射性廃棄物が発生しておりますし、まだ今後も発生し続けると考えられますので、この取り扱いに関しましては新しい考え方が必要ではないかと考えておりますし、さらには、今後、政府において、事故の根本原因分析を踏まえた我が国の原子力安全確保への新しい取り組みに向けた総括と提案の作業も、時宜を失せず行われると考えております。

 したがって、私どもは、こうした三・一一以後の我が国の原子力発電のあり方についての基本方針は、こうした取り組みを踏まえて検討なされるべきと考えております。

 私からは以上です。御清聴ありがとうございました。

川内委員長 近藤参考人、ありがとうございました。

 次に、鈴木参考人にお願いいたします。

鈴木参考人 おはようございます。鈴木でございます。

 このたびは、このような貴重な機会を与えていただき、まことにありがとうございます。福島原子力発電所事故を踏まえて、原子力政策について所信を述べさせていただきます。

 まずは反省の言葉です。原子力に長い間携わってきた研究者として、また、一年余りですが、原子力行政の責任を担う一人として、このような深刻な事故が起きましたことに対し、私自身、深く反省しております。特に、事故により故郷の地を離れることを余儀なくされた住民の皆様には本当に申しわけなく思っております。

 既に、今回の事故をめぐり、特定の組織とか個人の責任を指摘する御意見もありますが、今回の事故については、私は、原子力に携わってきたすべての人それぞれがその立場で責任を共有すべきものと考えておりまして、私自身、痛恨の思いでいっぱいであります。

 一方、事故直後から現場で日夜作業をされている方々や、収束に向けて協力を申し出てくださった方々には、感謝の思いで言葉もありません。さらに、個人的な話になりますが、国内外の友人や専門家から、それぞれの立場を超えてアドバイスや激励の言葉を多くいただいております。この場をかりて厚く御礼を申し上げたいと思います。

 では、本題の原子力政策についてお話しします。

 まずは、今回の事故に際し最優先で取り組むべき課題として四点、その上で、今後のエネルギー、原子力政策について三点ほど申し上げます。

 まず、事故関係についての第一番目は、この事故の持つ国際的な重要性と我が国の責任についてです。

 従来より、原子力では、世界のどこで深刻な事故が起きても世界じゅうに影響を与えるという認識のもと、安全の確保については国際協力、協調が基本となっております。今回の事故についても、我が国はもちろん、世界の原子力開発に深刻な影響を与えることが考えられます。この事故にかかわる情報は、国内のみならず世界と共有しなくてはいけません。我が国としては、情報の共有、収拾策、対応策の検討、今後の安全対策など、あらゆる面で国際社会に向けて情報を発信し、協力していく責任があると思います。

 また、事故当初より、情報の提供や説明の仕方などについて、国民とか国際社会から信頼を十分に得られていないという御指摘がありますが、これについては私は大変憂慮しております。今後、情報提供のあり方については、外部の第三者機関などの活用も含め、国民や国際社会から信頼される方法を検討していかなければならないと考えています。正確さと迅速さは実はトレードオフの関係にありますが、迅速さを優先させて、できるだけ情報を公開することにより、正確さは多くの人の検証を受けることでカバーできると考えております。

 第二に、事故調査のあり方です。

 この事故の重要性を考えますと、早急に事故の原因究明、改善策提言に向けての事故調査を開始する必要があると考えます。既に、枝野官房長官から独立の調査委員会という言及がありましたが、これまで以上に客観的で透明性を持った、国際的にも検証可能で信頼される調査の進め方が必要ではないかと考えています。

 事故調査は、もちろん日本政府が最終的に取りまとめる責任を有していますが、調査の透明性、信頼性を高める意味でも、また世界の知見を有効に活用するという意味でも、海外の専門家や国際機関に何らかの形で関与してもらう方法を考えるのが望ましいと私は考えています。また、航空事故調査委員会のように、ある程度の調査権限を法的に持たせ、調査のためには運転員などの免責も可能となるような仕組みも必要かと思います。

 三番目に、収束から地元復興に向けての体制づくりについてです。

 先日発表された東京電力のロードマップは、最終的な廃止措置に向けての第一歩です。今後も、数多くの技術的、政策的課題に挑戦しなければいけません。破損された使用済み燃料の取り扱い、大量の高濃度放射性汚染液の処理処分、汚染された大量の瓦れき対策や汚染土壌の処理など、従来の枠組みや規制では対応できない課題が山積みです。その際、この問題が国際的な重要性を持っていることや、世界の知見を集積すべきという観点から、国際的な連携を強化した体制にすることが必要と思います。

 また、周辺住民の安全確保と生活支援、風評被害の最小化あるいはなくすこと、それから賠償のあり方、避難解除から住民の復帰と長期的な地域の復興まで考えた包括的な計画が必要であり、そのための資金確保、技術開発など、縦割りを排した効率的な実施体制が必要だと思います。これらに長期的に対応できる体制を構築する時期に来ているのかと思います。

 これらの努力により、福島という言葉が、原子力災害の代名詞ではなく、災害から見事に立ち直る事例の代名詞となることを切に願っております。

 第四は、福島以外の既存原子力発電所及び施設の安全確保についてです。

 既に、原子力安全・保安院が緊急安全対策を公表していますが、既存の原子力発電所、これは停止中の原子力発電所も含みますが、その安全確保は、周辺住民にとっても、短期的なエネルギー需給を考えても、最も優先順位の高い政策課題と認識しています。原子力発電所以外にも、核燃料サイクル施設や研究施設など、重要な施設が数多く存在します。これらの安全確保も重要な課題であり、特に使用済み燃料の安全確保は早急に対策が必要と考えています。

 また、今回の事故は、核セキュリティー、いわゆる核テロリズム対策上も重要な意味を持っていると思いますので、この点についても対策を強化する必要があるかと思っています。

 ここからは今後のエネルギー政策についてです、原子力政策を含めて。

 世界的なエネルギー情勢や地球温暖化対策という観点から考えますと、原子力は重要な選択肢であると私自身は今でも考えております。しかし、原子力を進めるためには、安全の確保と国民の信頼が大前提であり、徹底した原因究明と、それを踏まえたこれまで以上の幅広い国民的議論が必要であると考えています。

 そこで、重要と思われる点を三点ほど申し上げたいと思います。

 第一に、エネルギー政策、原子力政策の意思決定プロセスの改善とそれへの国民参加のあり方です。

 原子力の役割や位置づけは、全体のエネルギー政策であるエネルギー基本計画で、これは閣議決定ですが、議論すべきものと考えますが、まず、この議論を国民的議論とするようなプロセスが必要です。

 この事故を踏まえ、国民が納得いく議論を行うには、これまでにない議論の場や手法が必要かと考えています。例えば、アメリカの原子力の将来に関するブルーリボン委員会のような首相直轄の特別賢人会議、または、国民参加を担保するようなやり方では、スイスで行われた市民参加による電力と社会会議などが参考になると考えます。

 次に、この政策議論の質を上げるためには、徹底した情報公開のイニシアチブが必要だと思います。

 これは、実は昨年、原子力委員会が発表した成長のための原子力戦略において、新しい情報技術を用いてだれもがアクセス可能なデータ公開イノベーションということを提言させていただきました。

 我が国では、政策決定にかかわるデータが不十分だと思います。また、国民が自由にアクセスできるような体制も余り整っていません。これが政策に対する透明性、信頼性不足につながっています。例えば、これまで日本には不足していると言われる独立不偏の立場からの科学技術の社会的影響評価、これはテクノロジーアセスメントと呼ばれますが、このような機関の設立なども検討すべきではないかと個人的には思っております。

 第三に、原子力予算についてです。

 原子力委員会は、原子力予算の企画、審議、決定をすることとなっていますけれども、今回の事故を踏まえて、この予算についても、福島の恒久措置を考えますと、優先順位を十分に検討し、聖域をつくらずに大幅な予算の見直しが必要だと考えています。

 最後になりますが、原子力委員会そのものの存在意義についても一言だけ述べさせていただきます。

 今回の事故対応でも痛感いたしましたが、助言組織としての原子力委員会の役割についても再検討する時期になるかと思います。安全規制体制の見直しに加え、原子力を含むエネルギー政策全体を総合的に検討する体制が必要と考えます。原子力の比率が非常に高いと言われていますフランスでも、代替エネルギー・原子力庁として総合的なエネルギー官庁になりました。この事故を契機に、エネルギー政策にかかわる省庁体制についても検討することが望ましいと考えます。

 私からは以上です。ありがとうございました。

川内委員長 鈴木参考人、ありがとうございました。

 次に、秋庭参考人にお願いいたします。

秋庭参考人 おはようございます。秋庭と申します。

 三月十一日の地震発生から一カ月半が過ぎましたが、福島第一原子力発電所の事故はいまだ収束せず、長期化が予想されています。国内外のありとあらゆる技術や知恵を結集して、一刻でも早い収束を願っております。また、この事故に伴い避難生活を余儀なくされている方々に、心よりお見舞い申し上げたいと思っております。

 原子力基本法第一条に、原子力の研究、開発及び利用を推進することによって、人類の福祉と国民生活の向上のために寄与することを目的とすると書かれております。しかし、この事故により多量の放射性物質が環境に放出され、八万人を超える住民の皆様が避難を余儀なくされて、さらには野菜や魚の出荷制限や飲料水の摂取制限など、国民生活に不安を与えることになってしまったことは大変残念に思っております。

 私は、原子力委員に就任する以前は消費者団体やNPO法人で活動しておりましたので、本日は、国民の視点に絞って三点申し上げたいと思っております。

 まず第一に、避難なさっている方々への支援についてです。第二には、福島原子力発電所以外の原子力発電所の立地地域の住民の方たちへの情報提供、そして全国の国民への放射線、放射性物質についての情報提供についてです。そして第三に、今後の原子力政策の検討に当たっては国民参加の仕組みが必要である、この三点について述べさせていただきます。

 まず第一に、避難なさっている方たちへの支援についてです。

 安心、安全と言われていたのに、なぜこのような事故が起きて避難しなければならなくなったのか。原子力発電所と共生する町づくりを目指していたのに、田畑や家畜、そしてせっかく誘致した工場もすべて捨ておいて、遠く離れていなければならないのか。避難なさっている方たちの憤りや苦しみは、例えようがないほど大きいものと思います。しかも、その電気は、首都圏に送るための電気です。その怒りや苦しみに対して、安全確保が前提とはいえ、原子力を推進してきた原子力委員として大変申しわけなく思っております。

 原子力委員会は、組織的には、避難なさっている方々への直接生活支援をする、そういう役割ではありません。しかしながら、NPOの活動などを通じて私は立地地域の町長や住民の方々と交流があったため、いても立ってもおられず、新幹線が通じることを待って、休暇をとって四つの町の避難所にお見舞いに行ってまいりました。富岡町と川内村の一部が避難している福島ビッグパレット、そして先週末には、楢葉町、大熊町、そして隣接であります浪江町が避難している会津方面に行ってまいりました。

 それぞれの町長を初め役場の方々は不眠不休で働いており、そんな中、お話を伺うのは大変恐縮いたしましたが、どこでも町長は熱心にお話をしてくださいました。そのことが大変印象的でした。

 四人の町長が共通しておっしゃったことは、国は、何千人もの住民を率いて大変な苦労をして避難している町長の意見をもっと聞いてほしいということでした。例えば、このたびの計画的避難区域と緊急時避難準備区域の設定や一時帰宅の件についても、何の打診もなく、テレビの報道で初めて知って驚いているところに、ようやくファクスが一枚入っただけだったという町もありました。住民からは、なぜ自分の家に行ったら十万円の罰金が取られるのかと町長に詰め寄る、そんな場面を目撃することもありました。今後、損害賠償のことなど、ぜひ現場の声を聞いていただきたいと四人ともお話しになっていらっしゃいました。

 避難生活が長期化する中、町と県や国とのコミュニケーションの問題は今後ますます重要となると思いますので、まずは避難なさっている現場の声をしっかり聞いて、それぞれの地域性に応じたきめ細やかな対策を講じることができるような仕組みにするべきと痛感いたしました。

 現在、計画的避難区域になった地域には、避難する前に説明があり、また、国の窓口も役場につくり、住民の相談に乗ることになっています。これは大変重要な取り組みだと思っております。ぜひ、避難指示により既に避難している町役場の中にも、同様に国の窓口をつくるべきではないかと思っております。

 本来は、住民の要望は町が聞くことになっておりますが、今回の事故に関しては、住民からの要望を国が直接聞く窓口も必要だと思っています。地域によって事情は異なりますが、国の対応はできるだけ公平にするということが重要だと思っております。

 そして、現在、各町長が抱えている課題は、情報伝達とコミュニティーの維持です。いまだに二千人規模の避難所で段ボールで区切って生活している避難所もあり、いち早くホテルや民宿などに二次避難しているところもあります。

 前者は、プライバシーもなく衛生環境も非常に悪化しておりますが、避難している方たちは減少することがありません。なぜなら、町役場と一緒にいないと、さまざまな生活支援の情報が得られないからと聞きました。避難所の壁一面に張られた生活支援情報などを皆熱心に見ていらっしゃいました。また、避難所にいればほとんど無料ですが、外に出れば生活資金も負担しなければならなくなるからです。

 後者の場合、つまり、それぞれホテルや民宿などに分かれている場合は、その裏返しとして、生活環境はよくなりますが、行政からの情報がなかなか届きにくく、中には二百カ所にも分かれて避難している町もあり、コミュニティーから孤立してしまうというおそれがあります。町としても、情報伝達のために巡回したくてもなかなかできないという悩みがあります。現在、各町では、住民の九割程度の行方は把握できているようですが、遠く離れた県外に避難している方々へのフォローが課題になっています。

 避難なさっている方から話を伺うと、だれもが、とにかく一刻でも早く家に帰りたいと願っています。

 長期化する避難生活にとって必要なのは、生活資金と仕事です。生活資金は、既に東京電力が一世帯当たり百万円を支払うことになっており、避難なさっている方々もひとまず安堵なさったと思いますが、今後重要なことは仕事です。

 お金があっても、何もすることがなく時間が過ぎると、生きるエネルギーがなくなるような気がすると避難なさっている方から伺いました。当面は、避難している地域での雇用を何とか確保するとともに、町に帰宅後に始まる新しい町づくりのプランを避難なさっている方々でつくることによって、希望を持てるようにすることが重要だと感じました。

 以上、個人的に訪問してまいりましたが、さまざまな要望や御意見を伺い、今後の政策に取り入れることも原子力委員会の役割ではないかと痛感いたしました。

 第二に、福島原子力発電所以外の原子力発電所の立地地域の住民の方たちへの情報提供及び全国の国民への放射線、放射性物質についての情報提供についてです。

 福島第一、第二以外の現在動いています全国の原子力発電所の立地地域の住民は、自分たちの地域の発電所でも同様な事故が起きて、避難生活をしなければならないということを大変御心配になっていらっしゃると思います。まずは、不安に思っている住民の皆様の声をしっかりと聞くということが重要だと思っております。

 そして、緊急安全対策についても、単なる説明ではなく、納得のいくように御説明、そして御質問に答えていくということが大変重要だと思っています。

 二十五年前のきょう、チェルノブイリ事故が起きましたが、そのとき、私は食品の影響について大変不安になりました。今回も同じレベル7の事故となり、食品や飲料水に対する不安、子供への放射線影響に対する不安の声が原子力委員会にも多く寄せられています。この不安の高まりは風評被害につながる場合もありますので、今、放射線の専門家を活用した草の根からの丁寧な説明が有効な手段ではないかと考えております。

 現在は、原子力広報はほとんど行われておりませんが、私は、このようなときだからこそ、事故の概要や放射線の体への影響などについてわかりやすい情報提供が必要だと思っております。

 第三に、今後の原子力政策を検討するに当たって、国民参加の仕組みが必要であるということについてです。

 先日、原子力政策に関する報道機関による世論調査の結果が発表されました。幾つかの機関が発表されました。いずれも、原子力について現状維持が四〇から五〇%と、ほぼ過半数に近い数字でありました。すべて廃止にすべきだという意見は一一から一三%でした。私は、国民は冷静であり、資源のない日本において安定供給するためには、原子力をすぐに廃止することは現実的ではないということをよく理解していらっしゃると思いました。首都圏で実施された計画停電のとき、交通が混乱し、医療などの社会的な混乱を招いたということもあり、このような結果になったのではないでしょうか。

 しかし、だからといって、今までのように、国策だからとトップダウン的に原子力を推進することは難しいと思っております。まずは、国民的な議論を行い、国民の納得のいく上で原子力の利用を進めることが必要だと思っております。

 原子力委員会は、従来より広聴、広報を基本としておりますが、既に、この事故について六千四百通以上もの御意見が寄せられております。今後は、今まで以上に国民の声を真摯に聞き、政策への国民参加の仕組みを検討する必要があると思っております。

 以上です。ありがとうございました。

川内委員長 秋庭参考人、ありがとうございました。

 次に、大庭参考人にお願いいたします。

大庭参考人 このように、原子力委員会全体としての見解ではなく、原子力委員個人それぞれの見解を聞いていただくという貴重な機会を与えてくれたことに対して感謝申し上げたいというふうに思います。

 福島原発事故を踏まえて、原子力政策についての私の見解を述べたいと思います。

 まず、このたびの東日本大震災で被災なされた方々に改めてお悔やみとお見舞いを申し上げます。また、福島第一原子力発電所の切迫した状況下で避難を余儀なくされている方々に改めてお見舞い申し上げますとともに、この事態が、国民の皆様のみならず国際社会に与える多大な影響を深く憂慮し、重く受けとめております。

 また、避難されている方々へのさらなる支援体制の充実、及び補償の枠組みの構築が急務であると切に感じております。加えて、現場や対策本部で事態収拾に向けて懸命に努力されている皆様、また、海外からの支援組織及びその関係者の方々に敬意を表したいと思います。

 私は、国際政治を専門とする研究者であり、二〇一〇年一月の就任以来、原子力の知見を得つつ、委員としての業務を行ってまいりました。その際、私の役割は、特に二つあると考えてまいりました。

 一つは、国際社会の構造の変化を踏まえ、日本が今後どのように国民の利益を確保しつつ、近隣諸国や緊密な協力関係にある国々と利益増進を図り、かつ国際社会の公益に寄与していくかという、より広い観点から原子力政策の方向性を検討し、意見を述べるということです。

 それからもう一つは、原子力専攻ではない有識者として、原子力村のありようを客観的に考察し、いわば外からの視点を忘れず意見を述べるということです。本日も、そうした立場で見解を述べたいと思います。

 私は、原子力推進政策は、安全性の確保が大前提であるというふうに考えてきました。よって、今回の福島の事態を大変重く受けとめるとともに、この事故原因の徹底究明が必要であると考えています。

 先日、枝野官房長官が記者会見の際に、事故調査委員会を設置するという考え方を示されましたが、女川、東海第二と十分な比較も含め、技術的な原因を明らかにすることが重要だと思います。さらに、きのうの合同会見で細野総理補佐官も言及されましたが、危機対応に関し、特に初動態勢における意思決定がいかになされたのか、政府、事業者及び地方自治体も絡む意思決定プロセスについて十二分に切り込んだ詳細な原因究明が必要であると考えています。これらは、日本の今後の原子力のあり方の議論だけではなく、国際社会への信頼回復に向けた情報提供という意味でも、必ずやらねばならないことです。

 今回の福島原発の事故を受けて、多くの国で、原子力の廃止論も含め原子力政策についての議論が活発になされていることは承知しています。しかしながら、政策として原子力の撤廃の方向に明確にかじを切った国は、今のところ多くはありません。

 フランス、ロシア、アメリカは、安全性の担保について十分な対策をとる前提の上で原子力発電を維持していく方向です。また、中国、インドを初めとする国際社会の構造変動を牽引する役割を果たしている新興国、途上国においても、日本との協力も含め、今後も原子力の推進を継続する姿勢を示している国は少なくありません。現実にBRICS諸国は、原子力は将来の新興国のエネルギー構成で重要な役割を占め続けると、原発推進姿勢を鮮明に示しております。

 エネルギー需要の拡大が見込まれる中で、各国の原子力への期待が消滅する方向には簡単には向かわないと思います。すなわち、仮に日本が原子力発電の即時撤廃という政策をとったとしても、国際社会の多くの国は原発を持ち続けるということになります。

 日本の今後の原子力政策のあり方いかんにかかわらず、原子力発電導入国に対して、この福島原発の事故はなぜ起こったのか、また、事故の収拾を図るプロセスで、何が具体的な問題として関係者の前に立ちはだかり、それに対してどのような対策をとったのか、このようなことについての十分な知見を提供することは、我が国の国際社会に対する義務であろうと考えています。

 また、日本のエネルギー政策の中での原子力のあり方を見直すべきであるという意見がさまざまな場で出されています。このことに関しては、三つの点を踏まえた冷静な議論が必要であると考えています。一つは、エネルギーの安定供給の確保、二つ目は、国際社会全体として地球温暖化対策を進めていこうとする中で日本が掲げるべき目標、三つ目は、再生可能エネルギーの供給能力についての現実的な評価です。

 日本の近年のエネルギー政策の策定の際、低いエネルギー自給率とともに、高い中東依存度が問題になっていました。特に、中東諸国の情勢が混乱している現在、この中東への石油依存の問題はさらに深刻です。また、アジア諸国を中心に世界のエネルギー需要は急増しており、二〇三〇年には現在の約一・四倍になる見込みです。資源価格も継続的に上昇傾向にあり、また、投機資金の流入によって市場価格の変動幅は拡大しています。

 こうした中で、各国は、資源獲得のさらなる強化を目指して戦略を展開しています。また、日本は、ヨーロッパ諸国などと異なり、電力を外国から輸入できないという制約もあります。

 従来、原子力は、こうした厳しい状況において、我が国のエネルギー安定供給確保のための重要な手段の一つとして位置づけられていたと理解しています。そして、今回の福島原発の事故後の今現在でも、前述のような日本の置かれた状況は変わっておりません。

 また、地球温暖化への取り組みについて、鳩山前首相は二〇〇九年の九月、二〇二〇年までに一九九〇年比で二五%のCO2削減を目指す目標を掲げました。この目標について、現実可能性も含め議論があることは承知していますが、日本の国際的信用の維持は、日本及び日本国民が、グローバリゼーションの進むこの世の中において生きていく上での環境整備であるという観点から非常に重要なことであり、その目標の変更には慎重でなければならないと考えています。

 一部報道では、フィゲレス国連気候枠組み変動条約事務局長が、今月初めの記者会見で、日本政府の目標見直しに反対する姿勢を示したとのことです。

 いずれにせよ、日本が地球温暖化対策に主導的な立場で貢献せねばならないことには変わりがありません。

 先日、環境省が、再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査を発表し、その中では、風力発電で原発四十基分の発電可能性があるなど、再生可能エネルギーの将来に明るい見通しが示されました。

 もともと、日本のエネルギー政策は、一つのリソースに頼らない多様性を担保した形で行うべきとされていましたし、私自身、原子力政策大綱の策定会議の席上でもベストミックスの重要性を訴えてまいりました。その中で、再生可能エネルギーが果たし得る役割は大きく、また、現在の情勢を受けて、今後さらにその重要性は高まると思います。

 しかしながら、風力や太陽光の性質上の最大の課題である安定供給が難しいという事実は、まだ変わっていません。今後の再生可能エネルギー関連の技術革新には大きく期待をしています。しかしながら、原子力が果たしてきた役割を、少なくともすぐさま代替するとは考えておりません。

 これらの点を踏まえると、すべての原子力発電所の即時撤廃は非常に難しいと思います。よって、短期的には、既存の原子力発電所をいかに安全に稼働させていくかということが最重要課題の一つと認識しています。その際、現在の安全基準を見直し、十全の対策を徹底させることが特に重要です。

 他方、中長期的な原子力政策については、改めて議論した上で今後の方針を決めるべきであるというふうに考えております。その際、国際情勢も含めた日本のエネルギーの安定供給、地球温暖化対策としての達成目標、そして再生可能エネルギーについての技術的、経済的評価などの情報や知見を国民の皆様に十二分に共有していただく必要があると思います。

 さらに、日本社会が目指すべき方向性、すなわち今後の産業構造や社会構造のあり方についての議論やそこでの結論に沿って、原子力政策のあり方も決定されるべきと考えております。

 また、原子力行政、事業のあり方そのものも再検討が必要であると考えています。原子力発電は民間事業ですが、他方、我が国のエネルギー安全保障の一環として進めてきた国策でもあります。その性質上、政府が責任及び義務を負うべきであるというふうに考えています。

 また、原子力発電は十分過ぎるほどの安全対策が必要な事業です。

 これらのことを勘案すると、政府がつくった安全基準のもとで民間事業者が原子力発電を担う体制、経済産業省の外局として原子力安全・保安院というものがあるという現在の姿、そして助言機関としての原子力安全委員会のあり方といった安全規制の制度について、抜本的な議論がなされるべきです。

 さらには、総合的な原子力ガバナンスを目指す上で、我々原子力委員会も含めた原子力行政全体のあり方についても、根本からの議論が必要であるというふうに考えています。

 最後に、原子力発電所の事故に限らず、緊急時の危機管理にかかわるガバナンス体制について、三・一一以降の日本の経験は大きな課題を突きつけていると考えています。政府関係者、事業者、地方自治体の方々、NPOやボランティアの方々、さらには国際的に支援してくださった諸外国の関係者の皆様が懸命の努力をされたと考えておりますが、この経験を踏まえた上で、緊急時の危機管理に関するガバナンス強化を徹底的に図る必要があるというふうに考えております。

 以上です。御清聴ありがとうございました。

川内委員長 大庭参考人、ありがとうございました。

 最後に、尾本参考人にお願いいたします。

尾本参考人 おはようございます。

 福島の原子力の事故と原子力政策に関して、考えるところを述べたいと思います。

 まず最初に、原子力災害により、避難等多くの方々にさまざまな艱難辛苦をおかけすることになったのを、原子力関係者の一人としてまことに申しわけないというふうに考えております。

 私自身は、原子力工学を専攻した学生時代を含めまして、一貫して原子力にかかわってまいりました。大学を出た後は、電力会社で原子力発電の仕事をしてまいりました。かつて、三十年以上前になりますが、私自身、福島の地で勤務しておりまして、そこで親しみました大熊、双葉、富岡、浪江等々の地域の方々が、現在避難で非常につらい思いをされていることに、非常に心苦しく思っております。大変痛恨のきわみであります。

 私は、その後電力会社を離れて、国際機関IAEAにおきまして、途上国における原子力導入のための基盤整備支援等にかかわってまいりまして、二〇〇九年末に帰国後、二〇一〇年初めに原子力委員を拝命しました。委員会では週二日の非常勤の委員ですが、そのほかの日は大学に勤務している毎日であります。

 まず、福島事故との関係で、原子力委員会の役割は何かという点ですが、既にお話がありましたように、委員会の設置法と原子力災害対策特別措置法のいずれにおきましても、原子力災害に際しての委員会の役割が定義されていないところではありますものの、委員会としては、現在目を向けるべき重要な点は何かを適宜発信することが大切ではないかというふうに考えております。

 その観点から、四月五日の定例の委員会におきましても見解を出しておりますが、個人としても、至極当然なことではありますが、短期的には、一刻も早く事故を収束させて、生態系を含む環境への放射線による影響を最小限に抑えるべきこと、そして避難されている方々に今後の見通しを明らかにし、プラントの安全な冷却保管と汚染水管理に万全を期すること、さらに国内外の原子力発電所における事故未然防止方策、そして炉心損傷事故に至る場合をも考慮して、今回の事故から得られた教訓をできるだけ速やかに反映すべきこと、こういった考え方を述べております。

 今後さらに、環境の除染対策や廃棄物の処理処分、廃炉に向けた技術開発、あるいはこの分野への人材の傾斜配分といったことなどに政策的に取り組む必要が出てくるものと考えております。

 福島の事故を踏まえての今後の原子力政策全般のあり方につきまして語るのは、まだ事故収束とは言えない段階ゆえ早計かとは思いますものの、当面は、設置法上は安全委員会にゆだねられた事項が多いかとは思いますが、いずれの委員会に属する事項かということを余り気にすることなく、今、私が考えるところを原子力発電を軸に申し上げたいと思います。

 まず第一のステップとして、政府により、早期に客観的で中立な事故調査委員会が設置され、その場で事実関係の解明が体系立ってなされる必要があると考えております。その結果を、国際機関の場で世界の専門家のレビューも得て、世界じゅうに今四百三十基ある運転中の原子炉、さらには六十基を超す建設中の原子炉の今後の安全確保に早急に役立ててもらうことが重要であると考えます。

 既に、六月末にIAEAにおきまして大臣級会合が事故に関して開催される予定であるところ、まだ事故が収束していない今日において大変困難ではあるかと思いますが、例えばチェルノブイリ事故の場合には四カ月でIAEAに出された包括的なレガソフ報告、報告者の名前にちなんでこう呼ばれていると記憶しておりますが、このレガソフ報告に相当するファクトファインディングと、これに立脚して出された主要な教訓事項を含んだ報告がなされて議論される必要があるのではないかというふうに考えております。憶測や主観ではしっかりとした教訓事項は得られませんし、世界をミスリードする可能性があるというふうに考えます。

 第二に、利用に伴うリスク、すなわち核拡散、セキュリティー、安全の三つのリスクでありますが、このリスク管理が十分に行われるシステムのもとでの原子力発電の利用という、いわば資格要件を満足しているということの確認に、原子力安全委員会も含めて当面の原子力政策の軸が置かれるべきものと思います。

 ここでは、国内的な処理だけではなくて、安全基準や安全設計のレビューのやり方などについて国際的な枠組みの強化といった議論があり得るかと推察しますが、ここに福島事故を経験した国としての考え方を発信する必要があるというふうに考えております。

 工学技術の利用は、失敗を含む経験の積み重ねが重要で、世界における運転経験とデータ、これは今までに一万炉年を超える膨大な運転経験を踏んでおりますが、そこから得られた経験と教訓を生かして、技術を安全に利用することが大切と考えています。

 その観点からしますと、今まで得られた経験に比べて、歴史時間によるデータ蓄積に依存して、データも豊かにはない頻度の低い自然現象に関しては、原子力技術者一般は、より謙虚な姿勢が必要であったのではないかというふうに福島の事故を見て考えております。しかしながら、当時の知見に照らして限界があったのではないかとも同時に思っておりまして、まことに残念に思っております。

 第三に、その先ですが、将来の長期にわたる原子力利用に関しての議論は、原子力以外のさまざまな発電オプションの現実的な利用可能性、低炭素社会への移行シナリオとこれに伴う国民経済負担、さらには、今の市場価値評価には含まれていないが将来の世代にも及ぶ可能性のある負担、エネルギーの需給動向などを総合的に見て決めていく必要があるというふうに考えております。

 このように、エネルギー全体を見る必要があり、かつ、市場でのプレーヤーと需要家にその選択の多くがゆだねられるところかというふうに思っております。

 この中での、長期にわたって原子力の果たすべき役割につきましては、専門家あるいは国民の間にさまざまな意見があるのを聞きながら議論を進めていくのが当然であると思いますが、既に事故前から進めておりました原子力政策大綱の発電の中間取りまとめ文においても示しておりますように、核不拡散や核セキュリティーに関する国際約束を遵守し、原子力発電が安全性、信頼性、経済性に関してすぐれたエネルギー供給であることを絶えず示していくことがどこまで可能か次第というふうに考えております。

 なお、市場でのプレーヤーと需要家にその選択がゆだねられるというふうに申しましたが、原子力とその他のエネルギー源との比較におきましては、市場価値以外の要素、すなわちいわゆる外部性を含めた考察が、諸外国においてもとられてきている原子力政策の背景にあるというふうに考えております。

 具体的には、オイルショック後に、エネルギー供給構造の脆弱な国にとっては、短期あるいは長期で見ても、石油、ガスと異なり価格が安定で、資源供給においても安定性のある電源の持つ価値は重要というふうに考えて原子力を進めてきた国がたくさんあるわけであります。その後、八〇年代以降、温室効果ガス放出が長期的にもたらす可能性のある経済と環境への影響も考慮して、低炭素社会への移行は原子力なしでは容易ではないというふうに多くの国が考えてきたのも事実であると思います。

 なお、今日、原子力事故は、その発生確率が低くても、一たん発生すると経済と環境への大きな負担をもたらすという現実を前にして、原子力政策の中では、こうした市場以外の要因も考慮した議論を行う必要があると思っております。

 最後に、原子力委員としてこれまでの原子力政策の形成に関して持ってまいりました考え方について少しお話ししたいと思います。

 開発途上国を含めて世界の共有する価値観は、持続可能な発展を追求することだというふうに考えております。経済、社会、環境の三つの次元で見たときに、原子力は重要な選択肢の一つとして、その技術開発、基盤整備、国際協調が政策上重要という考えをとってまいりました。もちろん、今後につきましては、ポスト福島の環境の中でよく検証していく必要があると考えております。

 しかしながら、とりわけ重要だと考えてまいりましたのは、第一に、今申しました持続可能な発展の追求という世界が共有する目標に照らして考えること、第二に、国際機関で諸外国を見ながら仕事をしてきた経験から、日本が狭い世界にこもることなく、世界各国の経験をよく見て、よい慣行を広く習得し、世界の標準から乖離することのない形で原子力利用を進めること、第三に、長期にわたる技術開発で国際協調と国際標準化を考えるべきこと、第四に、技術リスクの管理には、世界からの多様な意見に耳を傾けていく必要があるという立場をとってまいりました。

 この最後の、世界の多様な意見に耳を傾けるという観点ですが、原子力発電に関しては、開発途上国が、その経済成長、人口増加、生活水準の改善に伴い急速に増加するエネルギー需要を、安全、セキュリティー、核拡散というリスクは最小限にしながら原子力オプションをとろうとしていること、そして、そういった数が数十に及ぶことを国際機関の勤務を通じて知っております。

 原子力を運営する基盤が脆弱な国において満足すべき運転基盤、これは法的なものの整備から人材育成、産業基盤等を含む非常に広範なものでありますが、この整備に国境を越えて日本が積極的な支援をすべき、さらには国際的な安全レビューの仕組みもつくるべき、そうしないと、さきに述べました三つのリスクが顕在化しかねないというふうに考えてまいりました。

 そういう立場で、原子力委員会が深くかかわっております、アジア諸国の原子力開発にかかわるFNCAと呼ばれる会議におきましても、原子力基盤整備に貢献してまいりました。

 昨年十一月に開催されたFNCAの大臣級会合におきましても、地震、津波、火山といった自然災害の多いアジア地域で原子力開発を行う場合に、専門的な技術と経験をできるだけ共有し、さらには、他国であれ、設計のレビューをも考えて、お互いにリスク低減を進める必要があるということを会議の場で提言してきたところであります。しかしながら、日本がまず第一に問題視される国になってしまったのは、まことに皮肉で、残念なことであるというふうに考えております。

 以上、福島事故及び原子力政策に関する私の考えを述べさせていただきました。

 ありがとうございます。

川内委員長 尾本参考人、ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

川内委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山崎誠君。

山崎(誠)委員 おはようございます。民主党の衆議院議員、山崎誠でございます。

 本日は、科学技術・イノベーション推進特別委員会、トップバッターの質問をさせていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。

 本来であれば、この特別委員会は、科学技術を未来にどうやってつなげていくのか、そういうすばらしい議論をする場というふうに考えております。ぜひそうしていかなければいけないわけですが、きょうのテーマは、本当に残念な、今大きな事故の真っ最中、さなかのこういう委員会となりました。

 今、貴重な御意見を参考人の皆様からいただきました。この東日本の大震災でとうとい命を亡くされた方にお悔やみを申し上げますとともに、まだまだ被災地で苦しんでいる方々にお見舞いを申し上げます。そして、この委員会の議論が、本当に国民の皆様に開かれた議論であって、そしてその議論が本当に国民の皆様の心に届くように、できるだけわかりやすくお答えをいただきたいと思います。

 各委員からもありました、今回は個人的な意見もいただけているということでございますので、恐らく、原子力行政の組織の壁だとか組織のいろいろな枠組みの中で、皆さんの発言もなかなか慎重にならざるを得ないところがあると思いますが、あえてそこは御容赦いただきながら、御質問をさせていただきます。

 例えば、安全、大きなテーマになると思います。原子力安全委員会があるから原子力委員会は安全については踏み込めないということでは決してないと思いますし、大綱の中では安全確保というのは大きな柱ですから、そういった意味で、皆様の御意見を順次伺っていきたいと思います。

 まず、委員長に、そもそも原子力委員会として、今回の三・一一の事故を受けてどういう対応をとられてきたか。毎週火曜日に定例の会議が持たれているわけですが、三回ほど休会になって、四月五日に、第十回になるんでしょうか、開会されて、そこから皆さんのさまざまな情報発信が始まったと伺っておりますが、これまでの経緯、そして皆様の活動の状況をお知らせいただきたいと思います。

近藤参考人 今御質問の点、定例会議の開催でございますが、三回ほど中断させていただきました。このことについて御批判があることは承知していますが、しかも法律に定例会議の開催が規定されている以上、中断、開催しない場合にはその理由を明らかにすべきだったと反省をしております。

 今その理由を申し上げれば、この委員会の使命に基づけば、この危機的状況に役立つ原子力の研究、開発、利用の施策はいかにあるべきかを審議して決定すべきであったわけでございますが、そのためには正しい情報の収集が必要であると考えるところ、あの原子炉が爆発する状況において、対策本部等に詰めておられる皆さんから情報を聞くという行為をなすのが国のために大切か、どちらが優先するか、どちらが大切かということを考えましたときに、私どもといたしましては、皆さんが事態の鎮静化に最大限の努力をしていただくこと、これを応援することが我々の役割というふうに考えまして、委員会は開催せずして、先ほど既にお話がありましたように、各委員がそれぞれ持てる知的ネットワークを最大限活用して、本部の活動に役立つ知的貢献あるいは情報収集等を行い、海外の多くの友人からいただきました情報等を対策本部の活動に役立てていただくということに、いわばサポートに徹することをお願いいたしまして、みずからもそうした活動をして、四月に入るまで定例会議の開催を中止させていただいたわけでございます。

 それぞれの委員の活動という御質問でございました。

 ほかの方に答えていただくのが適切かと思いますけれども、私自身が総括して申しますと、今申し上げたとおりでございまして、それぞれがそれぞれのエキスパーティーズを最大限活用して、例えば鈴木委員であれば国際社会との交流、非常にたくさんのネットワークを持っていますので、そこで発言をし情報を提供する。私自身は、各国の原子力機関のトップの方からさまざまな問い合わせ、あるいは援助の申し出があるところを関係各部局にお伝えするということ。ようやく、今日に至って鎮静化してまいりましたが、そういう活動に毎日時間を使っていたというのが正直なところでございます。

 もちろん、こうした国難的とも言える危機的状況におきまして、その影響を受ける国際社会との情報交流はいかにあるべきか、先ほど大庭委員からお話ありましたように、こうした緊急時における国際関係における制度、こうしたことは、今後、事故の根本原因分析とその対応のあり方についての政府の調査委員会等ができました際には、私どもの見解を反省も含めて申し上げることについて準備をしたいと考えているところでございます。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 緊急時ですから、現場が動いている中で皆さんがどういう動きをするかというのは確かに重要だと思います。

 ただ、私は、三回休会で、そして四月に入ってからの開会、その中で出された文案を見ておりますけれども、この内容であればもっと早目に出してもいいんじゃないか。あるいは、先ほども鈴木代理の方からありました、さまざまいい提案をなさっている、情報公開の仕方であるとかいろいろな検証の仕方だとかさまざま新しいアイデアをお持ちで、それをもっと早目に発信していただけたらどうかなと思います。

 それで、運営の仕方なんですが、細かいお話かもしれません。例えば、十回終わりました、十一回が四月十二日、それで十二回が四月十九日。議論を積極的にここからスタートさせていただいているんですが、この議事録はまだ公開されていません。お聞きをすると、これは二週間あるいは三週間後に公開をされるというお話です。このスピード感。

 この危機の状況にあって、原子力委員会でその議論を早く国民の皆様にお知らせして、そしてそれを情報として国民がしっかりと受けとめる。情報が大事だと皆さんおっしゃっている。その中で、こういう対応がとられていることを私は残念でなりません。

 もっと驚いたことがあります。

 最後の十九日の十二回の委員会配付資料の中に、第三回原子力委員会定例会議議事録というのが出てきます。第三回です。一月二十五日の議事録が、この四月十九日の会合の中で机上配付をされて正式に公開される。三カ月ですよ。

 委員長、これはどうですか。

近藤参考人 私も、会議でその配付資料を見まして、このことを大変びっくりいたしまして、国民の皆様にも大変申しわけないことと思っています。

 私ども、速記録をそのまま誤字脱字も気にせず公開するという方式もあるのかなと思いつつ、しかし、先ほど来皆さんがおっしゃる、速さと正確性というのはトレードオフでございます。なるべく、きちんと読みやすい議事録にして公開をするということで発言者に訂正等をいただく、そういうポリシーで臨んできたわけでございますが、その結果として、発言者からの応答が遅いことを理由に発行がおくれてはならないので、このことについては事務局に、日程管理をきちんと行うように指示したところでございます。

 一方で、原子力政策大綱の審議の場合には、三十人に近い方の発言を確認しなきゃなりませんので、ある程度時間がかかることはやむを得ないと考えまして、この際、しかし、大綱策定会議には全国から大変御関心をいただいているところでございましたので、会議録ができるまではビデオ録画を原子力委員会のホームページに公開して、議事録ができたらそれをやめる、そういう方式で運営していたわけでございます。

 定例会議は、従来、大体二週間ぐらいのペースで議事録が出るということで、そのようなことはいたしておりませんでしたが、御指摘のようなことでございますので、どういうふうに改善するかについては今後検討させていただきたいと思います。

 御指摘ありがとうございました。

山崎(誠)委員 この第三回の資料を見ると、こういうのがあるんですよ。「国際動向を踏まえた我が国の原子力安全規制高度化への取組み」というのを原子力安全・保安院に説明を聴取されて、意見をされている。この中で、委員長も最後の方でコメントをされていて、時間があれば、これはぜひしっかりとお聞きをしたいんですけれども、バックフィットルールというお話ですね。今後、プラントをどうやって安全にしていくかという議論をしっかりとされているんですよ。

 まさに、この議論がこれから必要だ、そういうものが公開されていない。もちろん、ビデオで公開されているのかもしれません。でも、正式なものとして出ていない。それが今、事故のさなかにぽんと出てくること、これは一つの事例でございます。

 私は細かいことを言うつもりはございませんけれども、やはり原子力委員会そのものが、原子力行政、そして今起きていることに対してどのぐらい認識を持たれているのか、改めて再認識していただいて、スピード感を持って、これから多分原子力の行政についての再編のお話が出てくると思います。その中で、委員の方からもございましたけれども、やはりしっかりとした議論を組み立てていかなければいけないと思う次第です。

 では、次のテーマへ行きまして、鈴木代理の方にお聞きをしたいんです。

 現状の事故の状況、私は、情報発信にいろいろ問題があるということが言われている中で、最悪の事態というのがどういうふうに把握をされて、それについて、さかのぼって今どういう状況なんだよ、今どういう段階だからこういう情報なんだよというような流れが危機管理の中では必要だと思うんです。

 パニックは避けなければいけません。ですから、その情報発信は慎重を期さなければいけないけれども、最悪の事態というのを踏まえてお話をしなきゃいけないと思いますが、現時点で最悪の事態をどういうふうに把握されて、それについてどのようにお考えか。情報発信の仕方等、御意見をお聞かせください。

鈴木参考人 御質問ありがとうございます。

 私も常に、海外の方とか一般の方とお会いしても、最悪の事態は一体どういうふうに考えたらいいのかという御質問をよくされるんですね。

 現場の全部の情報が私どものところに来るわけじゃありませんので、なかなか正確なことは言えませんが、アメリカの原子力規制委員会が早目に、八十キロでしたか、避難を出しましたね。あれは非常な概算で、最悪のケースをあの時点で想定して、あれ以上の被害は出ないだろうという推測を出したわけですが、私、個人的には、あれから考えますとかなり既に状況はよくなっておりますので、現在の避難区域及び計画避難区域以外のところに被害が及ぶようなことは、最悪の場合でもないであろうというふうには思っております。

 それから、その根拠になるデータ、全体の放射性物質の排出量がどれくらいなのか、これも少しずつデータが出てきておりますけれども、できれば、これをもう一度早目に出していただいて、それに基づいて最悪の事態ということを考えていくのが必要なのではないかというふうに思います。

 以上でございます。

山崎(誠)委員 今のお話で、例えばドイツの気象庁の情報を見ると、シミュレーションの結果が本当に日々更新されて、それも動画で。シミュレーションですよ、どのように広がっているか。全世界でそういう情報が今飛び交っていて、みんなそれを見ているわけですよ。今やインターネットの時代ですから、日本国民だって気づいて見ている。そういう中で、かなり危ないぞと。

 今、計画的な避難区域も広がっていく。その汚染の状況というのは、何も同心円じゃなくて、部分的に、地形もあれば気象条件もあれば、それでどんどん危険性についての詳細な情報が今出つつあります。原発が今のまま収束したとしても、もう既に相当なものが漏れている。あるいは、海に対する放射能の漏れている状況なんかは、我々は分析結果を見たことが正直まだありません。

 こういう状況の中で、今のお話というのは楽観過ぎるし、世界のそういう常識と皆さんが把握をしている日本の情報とのギャップが大きい。だからこそ、今、日本の信頼が失われている、国民が本当に不審に思っているんじゃないですか。いかがですか。

鈴木参考人 海外で出されるデータも、先ほど申しましたように、正確な情報に基づいてやっているわけではないと思います。

 ただ、先ほど申しましたように、正確さと迅速さというのはトレードオフにありますけれども、日本政府からもより速いデータを出して、そのデータを出した上で、外の方からも検証をしていきつつ正確さを追求していくというやり方の方がいいのではないかと個人的には思っております。

 現状は、先ほど申しましたように、今でも予断を許さない状況ではあると思いますが、多分、現在の状況を考えますと、アメリカの原子力規制委員会の方でも、あるいは先ほどおっしゃいましたドイツの気象庁のデータでも、今やりますと、それほど日本のアセスメントと変わっているものではないというふうに考えております。

山崎(誠)委員 それであれば、早急に出すように皆さんからアドバイスしていただかないと、やはり間違った情報であれば、日本政府としてあるいは日本の専門家として、それはしっかりと否定して、正しい情報はこれです、今ここまでわかっているんだ、それを発信していかなきゃいけない。ぜひ動かしていただきたいと私は思う次第です。

 もう一つ、ちょっとテーマをかえます。

 秋庭参考人にお伺いをしたいんです。

 今、避難所のお話をお聞きいたしました。現場にも足を運んでいただいて、本当に感謝を申し上げる次第ですが、原発の事故の特殊性みたいなものが先ほどの御説明の中で余り私は感じられなかった。原発の特殊性みたいなものを、避難生活やあるいは市民の立場からどういうふうにお感じになられたか、お聞かせいただきたいと思います。

秋庭参考人 原発の事故の特殊性ということになりますと、まずは、住民にとっては被害が目に見えないという怖さ、これがほかの災害と全く違うところだと思います。そして、現在のことだけじゃなく、何年後、何十年後にその結果があらわれるかもしれない、そこが一番大きな違いではないかと思います。

 そのことに対して、立地地域の住民においては、いわゆる放射線、放射性物質の体への影響のことなんですが、今までも立地地域についてはいろいろと、ほかの地域に比べると情報がたくさんあったと思います。しかし、必ずしも全員が同じようにその情報を受けていたというわけではありませんので、それで、先ほど私も自分の意見の中で、再度それぞれの避難所に、やはり皆さんが不安に思っていらっしゃることについて専門家を派遣すべきだというふうに思っております。

山崎(誠)委員 専門家を派遣する、最もいい御提案だと思うんですけれども、今のこの被害、あるいはさまざまな風評被害も含めて、被災地だけではありませんね、避難所だけではありません。ある意味、もう日本全体で広がっている。これはまだまだ危険がある。あるいは世界的にも広がっていく。

 先ほどの情報公開の話もありますけれども、そういう中で、例えば先ほどの御提案の中に、わかりやすい広報、情報提供をすべきだというお話がありました。これは私は重要だと思います。ただ、今までの広報とは根本的に質が変わらなければ、国民の皆様に納得はいただけないと思います。

 今までの広報は何ですか、安全だったんですよ。原発は安全、これだけの安全の設備を持って安全を重ねてきているから大丈夫だという広報をやってきた。今、時代は大きく変わりました。どんな広報が要るんですか。

秋庭参考人 私もそのとおりだと思っています。

 今までは、安全、安心を前提にした広報をしてまいりました。しかし、そのことが崩れた以上、同じようなやり方をすることは絶対にできないと思っています。

 そこで、先ほどお答えさせていただきましたが、まずは、こちらから情報を発信する前に、皆さんが何を聞きたいのか、何を不安に思っているのか、そこをしっかりお伺いするということが今一番重要なことだと思っています。

 それは、避難なさっている方々と、そしてまた全国の地域の方々、あるいは都市の住民、国際社会、それぞれによって共通のものと、あるいはそれぞれの地域性のものと、また別のところがあると思います。そのようなことに対して、まずはしっかり伺い、そしてきめ細やかに対応をしていくということが必要だと思っております。

山崎(誠)委員 どんな広報をやるか、大変難しい課題だと思います。

 先ほどの御説明の中で、六千四百通の御意見をいただいたと。これを徹底的に分析していただいて、どういう情報提供をすれば国民の皆さんが納得できるのか。恐らく、これはかなりネガティブな情報を発信しないといけないと思います。その中で、みんなが本当に冷静に行動できるようにしなきゃいけない。大変重要な局面だと私は思います。ぜひ、この分析を徹底的にやっていただきたい。お願いを申し上げます。

 続きまして、大庭参考人にお聞きをしたいんですが、先ほどの中で、原子力は大事だ、重要だ、エネルギーセキュリティーの面でも地球温暖化対策の面でも大事だというお話がございました。

 では、この現状の中で、既存の原子力発電所をとめることはなかなかすぐには難しいという御発言も、いろいろなところから御意見があると思うんですが、新設、増設についてどうお考えですか。

大庭参考人 御質問ありがとうございました。

 私が今現在の時点で結論づけられることは、既存の発電所を即時にとめることは難しいという点です。ただ、今何人かの委員の先生方もおっしゃられていますように、今後の原子力政策のあり方は、国民的議論が大事になってくると思います。

 今、こういう危機の中で、原子力に対しての危機感が非常に高まっています。それは当然のことです。

 ただ、その一方で、なぜ原子力というものが今まで選択されてきたのか、どういうようなリスクがあって、そういうことをある程度関係者は承知していたと私は理解をしているんですけれども、そういうことを選択してきたのはなぜなのかという前提条件について、私は、エネルギーの安定供給の話、それから、二十一世紀に入ってからは特に地球温暖化の話、そういうような前提があって、そしてなおかつ、再生可能エネルギーの今の技術の制約というものの中で、今まで原子力というものが選択されてきた現実があるのですが、こういったことについて国民も十全に知識を得た上での国民的議論というものがあってこそ、中長期的な原子力の政策のあり方があると思います。

 その上で、増設をするのかどうなのかということも決まっていくのではないかというふうに考えております。

山崎(誠)委員 国民参加とか国民的議論という言葉、実を言うと、私は皆さんの口からは余り聞きたくないです。

 というのは、国民の皆さんは、皆さんに専門的な見地から意見を求めているんです。例えば、国民が原子力にやはり頼らなきゃいけないよねと結論を出したら、それを跡づけるのが皆さんの役目ではないはずです。原子力はこういう危険があるからここまでしか使えないよ、あるいは、今こういう不安定な状況だから原子力に頼るべきじゃないよと。

 専門家、私は、原子力行政のアクセルとブレーキがあるとするならば、皆さんはどちらなんだか、それをしっかりと確認したいと今思っています。ブレーキは国民ですか。国民がブレーキを踏むのか、皆さんがちゃんとブレーキも操れるのか、私はそれがすごく大事だと。国民にそれを預けていいんですか。私は、委員にぜひそこは確認をいただきたい。皆さんの判断をしっかりと示していただかないと、国民をミスリードすることになります。

 最後に、尾本参考人にも御質問をしたいんですが、今御説明の中でもリスクがありました。核拡散、セキュリティー、それから安全。リスクはこれだけですか。

 私たち、原子力の事故に今直面をして、その地域の人たちのいろいろな生命、あるいは働いている方々のいろいろなリスクもあります。安全というのに含まれているんだといえばそれまでかもしれません。でも、生物多様性だとか環境に与える影響、これは大きなリスクです。こういったものを残念ながら原子力というのは抱えて運用をしている、それが改めて今明らかになったと思います。

 リスクについて、もう一回御見解をお聞かせください。

尾本参考人 御存じのように、原子力発電所は内部に放射性物質を内蔵しておりまして、それが外に出ていくことによりまして大きな環境リスクになる可能性を持っております。

 私は、大きく抽象的に三つの分野でのリスクということを申し上げました。すなわち、核拡散とセキュリティー、それから安全。この安全に関しましては、冒頭申しました、放射性物質の持つさまざまな影響が顕在化すること、これは環境のみならず人間に対してでもありますが、これが最終的には一番大きな論点であって、リスクを考えるときに一番重要な点であるというふうに思っております。

山崎(誠)委員 私、いつもリスクを考えるときに、今本当に科学技術がこれだけ進歩して、私たちはいろいろな知見ができてきた。例えば、原子力の利用もそうです。あるいは、メキシコ湾のオイルの流出事故がございました。あれも、あれだけの海底の原油を掘ることができるような技術を得た。あるいは、遺伝子組み換えだとかそういう技術もあります。

 これは、人間が今到達した技術のある成果ではございますけれども、そのために大きなリスクを同時に抱えているんだと。そのリスクというのは、一たん事が起こったら本当に大変なことになる、そういう技術を我々は今手にしている、そういうリスク観というのをぜひ私は皆さんにも共有いただきたいと思うんですが、委員長、いかがですか。

近藤参考人 私はもともとリスク管理学が専門でございまして、確率は小さいけれども一たん起こると大きな被害を生ずるシステムをどう管理するかということ、これは、この二十世紀、おっしゃるように、我々が巨大技術を利用するという覚悟をした瞬間に我々が抱えた大きな問題と考えております。

 それにつきましては、もちろん、自然は人間をはるかに超えたものであるから、そういうチャレンジはしてはいけないという立場の方もいらっしゃいますし、またそれも一つの行き方だと思いますが、私は、科学技術の世界に身を置きまして、そうしたものにチャレンジしつつ、人類が、この地球上に百億になんなんとする人間を抱え込んでいる、これが現実だと思いますので、したがって、いかにしてそうした潜在的な危険性が顕在化しないようにするかということに知恵を尽くすことが大切と考えて、リスク管理ということを志したわけでございます。

 その観点で、原子力は、その中の最も重要な問題をたくさん抱えている問題として認識しておりますがゆえに、大変申しわけございませんが、繰り返し、原子力委員会であるにもかかわらず、原子力政策大綱等におきましても、広い意味でリスク管理については、結局のところ、絶えず最新の知見を商量し、それがリスクに与える影響を正確に評価し、もしそれがリスクを高めることあらば直ちに処置をするべしということを、原子力委員会の発行する各文書に、さまざまなところに書き込んで、また関係者にそのようにお願いしてきたところでございます。

山崎(誠)委員 私は、リスク、これを冒していい条件は何かなと、あるいは冒しても守っていかなければいけない。

 まさに、皆さんの設置の目的に、人類の福祉と国民生活の向上のために寄与する、これがあるから、安全をもちろん守りながら、そのリスクを冒してもやるんだということであればまだわかる。でも、人類の福祉、この事件に遭遇した我々は、やはりこれが一番今崩されています。だから、このリスクの考え方というのは、その危険をどこまで冒していいのかしっかりと考えなければいけないと思います。

 質問時間が終わりますが、最後にどうしてもやはりお聞きしておかなきゃいけない。

 これから既存のものがどんどん老朽化をしていくと、新しいものにとにかく建てかえていかなければいけない。莫大な投資がまた何年、十年あるいは二十年かかっていきます。その莫大な投資をして、そして今の敷地の中にまた例えば増設をする、狭いところにまたプラントを建てていかなければいけない。そういうことをこの二十年あるいは三十年、五十年続けていかなければいけない原子力というシステム。あるいは、核燃料のサイクルの話もございます。廃棄物の処理の話もあります。

 システムとしてこういうものは成り立っているのかどうか、鈴木代理に。

鈴木参考人 おっしゃるとおり、原子力を進めていく上の大前提であった安全の概念と申しますか、規制そのものの前提が崩れている、崩れたというふうに私は思っておりまして、これを事故の調査委員会を通じて徹底的に究明することが非常に重要である。それをしない限りは、私は、新設、増設についても慎重になるべきだというふうに思っておりますので、早急に事故の究明について取り組むべきだというのが私の考えであります。

 今までの事故とは根本的に違うというふうに私は考えておりまして、今回のことを踏まえて、安全に対する考え方をもう一度しっかり考え直す、それに基づいて新設、増設も考えるということだと思います。

山崎(誠)委員 終わります。ありがとうございました。

川内委員長 次に、吉野正芳君。

吉野委員 自由民主党の吉野正芳でございます。

 私の出身は福島県です。まさに第一原発、第二原発、これが選挙区でございます。本当に委員の先生方には御尽力いただいて、ありがとうございます。また、秋庭委員には現地まで赴いていただいて、本当にありがとうございます。

 福島に対して、全国から、また全世界から多くの御支援、いろいろな物資、そしてマンパワーの派遣等々御支援をいただきました。この場をおかりして感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 さて、まず大庭委員に、先ほどの意見陳述の中で、私が間違っていたらごめんなさいね、地球温暖化のことなんです。

 委員は、国際関係の専門家という形で外国と日本の関係をかなり重視している。今、環境省は地球温暖化対策法という法律を出しています。この中身は、二〇二〇年までに二五%削減する。これは前提条件つきなんですけれども、でも、二〇二〇年というのはあと九年間なんですね。原子力発電所九基増設という大前提の中での二五%なので、委員の中では、いろいろ再生可能エネルギー等々をやっても、原子力を全部やめたらそこの部分で代替できない、だから原子力は必要なんだという意見にもかかわらず、私が聞き間違ったら申しわけないんですけれども、世界に向かって言っている二五%削減の変更は慎重にしたい、こういう発言がありました。

 現実論として、原発がない中で二五%はできないんですね。できないにもかかわらずその目標を、私は取り下げろと言っているんです、もうできないんだから、正直に日本のありのままの姿を全世界に見せて取り下げろと言っているんですけれども、委員は慎重にという、そこら辺はどういう意図があるのか、お聞かせ願いたいと思います。

大庭参考人 先ほど私が意見陳述の中で慎重にするべきだと言ったのは、確かにそのとおりでありまして、聞き間違いではないと思います。

 そして、今までの試算によれば、九基の増設ということで二五%の削減を考えていたということで、それも原発の増設の上での前提だったということになりますが、私は、やはり国際政治の専門家としては、一回首相が行った国際公約を、簡単にというのは言葉が悪いんですけれども、こういう事態が起きたからすぐにそれを取り下げるというのは、やはりまずいのではないかというふうに言わざるを得ません。

 そして、原子力発電のいわば増設ということに関して非常に今厳しい制約がかけられたというのは、正直本当だと思います。ただ、これにより、いわば今までの既存の原子力発電所というものを十二分に稼働させ、かつ再生可能エネルギーの可能性を探り、そして節電も行い、最大限の努力をした上でどうしてもということであれば、それはそういう可能性もあるのかもしれない。つまり、見直すということもあるのかもしれません。

 しかしながら、私は、まだそのところについて議論を尽くしたとは考えておりません。ということで、私は、先ほどの陳述の中では慎重にということを述べさせていただきました。

 以上です。

吉野委員 あと十年ないんですね。現実に、省エネをやり節電をし、そして二五%というものが現実論として、委員も先ほど、再生可能エネルギーの代替率はあと十年ではなかなかできないと。二〇五〇年の八〇%、これはまだ遠い将来、またイノベーションをしていけば確実にできるわけなんですけれども、私は、もう正直に言うべき。

 そして、二五%、最後はお金で外国から買ってくるんです。日本の国で削減できない差額はお金で買ってくるんです。お金で買ってきてまでも、国際公約といいますか、一たん言ったことは実行しなきゃならないんですか。

 状況ががらっと変わっちゃったんです。正直に世界に物を申すこと、これが世界の信用を得ることになるのではないのかなと思うんですけれども、再度お願いしたいと思います。

大庭参考人 我々の社会で、正直であることというのは非常に大事だと私も理解をしております。

 しかしながら、正直という場合に、やはり相手が納得する形できちんとこちらの事情を話すということが重要で、今の段階で二五%削減が無理であると言うのは、私はまだ早いというふうに考えています。それが、慎重にという言葉に反映させておる私の意見であります。

 以上です。

吉野委員 わかりました。

 なかなか二五%削減、日本の国の大前提、すべての前提が崩れ去った中で、昔の前提なら、何とか頑張れば、また足らないところはお金で買ってくることもできるでしょうけれども、ここまで日本の国が大きく変わった。例えば放射性物質でも、今もう身近にあるんです。今まではなかったんです。医療事故か何かで、ちょっと盗難に遭って出た。もう世界が変わったんです。世界が変わったというそのところも、きちんと委員として認識をしてほしいと思います。

 さて、近藤委員長にお話を伺いたいんですけれども、実は、私も原子力推進派、自民党の電源立地及び原子力等調査会の会長代理兼事務局長をしておりました。近藤委員長とも、一度私たちお伺いして、原子力委員会は日本国の原子力政策のトップなんだから、もっと積極的に意見を述べるべきだなんということもお話をしたことを記憶しております。

 今の東電のやっている工程表、私は、世界の英知、これは人類と原発との闘いだと思っています。一日本だけでなく、世界を含めた人類と原発、いわゆる東電第一発電所の闘いだと思っていますので、この構図が見えないんですね。今まで日本の原子力政策、全部国策だ、国が前面に立つ、言葉は言っているんですけれども、全部事業者任せ、そして地方任せだったんです。

 今度の事故もそうなんです。例えば、東電に仮払いせよと経産相は命令しました。一時金十万円でも、もう本当に五万円でもいいから、なぜ国がまず被災民の方々にお金を配らなかったのか。全部人任せ、事業者任せ、地方任せ。

 今度の仮払いだって、住民票添付なんです。もう役場がないんです。移っているんです。その中で、全住民に住民票を出せと。これは町役場の仕事なんです。なぜここまで事業者任せ、地方任せにしていくのか。

 これは私、日本の原子力政策の一番の、国は言うだけ、やることは全部下請といいますか、そんな思いをしているんですけれども、委員長としてどう感じているのか、お伺いしたいと思います。

近藤参考人 大変難しい質問だと思います。

 日本の原子力政策と申しましょうかエネルギー政策、さらには電源立地政策の中で、やはり主要な、電源を整備する任にあるのはもちろん、公益事業法等があるといたしましても、電気事業者であるということで、それに対して、それが適切な活動をされるようにということでさまざまな制度を国会等でお決めになって進めてきた、そういう経緯の中でそれぞれの役割分担というのが決まってきているのだというふうに理解をしております。ですから、その中で関係者が物を考えるのはいたし方ないのかなと思います。

 そのことと、今御質問のいわゆる危機管理、こういう緊急事態において国と事業者がどういう役割分担をするべきかということについては、先ほど来御指摘がありましたように、私も、今そのことを踏まえて、政府が東電といわば一緒に、国と民間企業が一緒というこれもまた非常に新例だと思いますけれども、そういう状況で統合対策本部というものをつくって仕事をされているという状況にあること。これは、一つ目には、おっしゃるように国際社会の英知を集めるためにこういう取り組みも必要だろうし、かつ現場で起こる問題について直ちに官邸が理解をしてアクションをとれるという意味でこういう制度をつくっているというふうに理解をしております。

 その中で、おっしゃるように、なお地域社会から見まして迅速さに欠けるとかさまざまな御批判があることについては私も、中にいませんのでなかなか申し上げにくいんですが、御批判があることについてお伝えするように努力はしていますが、にわかに、今御質問に対して、かくあるべしということを言うことが、そういう御批判を伝えて、今あるシステムがよりよく機能するようにすることが私どもの務めというふうに理解しているところでございます。

吉野委員 今の工程表をつくったのは東電とあとメーカーさん、いわゆる技術屋さんだけでつくったんじゃないかというふうに私は推察しています。世界の英知を集めて、人類と原発との闘いという観点から今のあの工程表ができたのかというと、そうではないのではないのか。そうすべきなんです。人類と原発の闘いなんです。人間がつくったものですから負けるはずがないんです。私はそう信じています。

 でも、それが、一事業者、メーカーだけの狭い世界で今闘っているんです。これでいいのかなというのが正直疑問なんです。代理、どうなんでしょうか。

鈴木参考人 先ほども申しましたように、あれは、これからの長い闘いの第一歩だと私は認識していまして、あの情報をもとにこれから、長期的な収束及び復興に向けて国際的な連携を強化し、おっしゃるとおり、人類と原子力の闘いというふうな形で取り組んでいくべきだと私も思っております。

 ただ、責任は全部、最終的には日本政府にありますから、そこのところで司令塔として政府がしっかりコーディネートして、そういう体制をつくっていかなきゃいけない。今のままでは、私は、長期的な対策がなかなか不十分ではないかと思っておりまして、御指摘のような国際的な連携を強化したような体制づくりが大事ではないかと思っております。

吉野委員 技術屋集団と、学者、科学者集団と二つあると思うんですね。私は、技術屋集団だけで今やっているのかなという心配をしています。いわゆる学問的な、科学的なアドバイス、これをしてあの工程表ができたのかどうなのか。

 これは、東電に長くいられた尾本さんがわかるか、また代理がわかるか、ちょっとその辺、お答え願いたいと思います。

尾本参考人 現在の事故収束に向けての活動の中で、私自身も一部参加しておりまして、そこで得られた知見から申しますと、おっしゃるように、技術者集団が主導であるという点においては確かにそうであると思いますが、日本国内あるいは東京電力だけというものではなくて、世界から、フランス、アメリカ、アメリカでは例えば国立研究所の力も得て、さまざまな英知を集めた格好で収束に向けた活動、それから長期安定に向けた活動がなされています。

 例えば、今回発表されているものの中には水処理についての活動がありますが、ここでは、フランスの技術とアメリカの技術とを合わせて、さらにはそこに日本の技術を組み合わせた形で進められておりますところで、国際的な連携については、完全とは言えないものの相当行われているというふうに考えております。

 御指摘の、技術者に対して科学者がちゃんと取り組んでいるかというところにつきましては、大学それから研究機関とも、特に原子力機構でございますが、話をしておりますので、純粋に科学者かという点においては違いがあるかもしれませんが、幅広い英知を結集して活動が行われているのは事実であるというふうに認識しております。

吉野委員 原子力委員会と原子力安全委員会、この意見交換はなされたんですか。

近藤参考人 原子力委員会と安全委員会の間には連絡会という会合を年に数回持つようになっていますが、この事故が発生して以来は、そういういわゆる連絡会というものは開催しておりません。

 ただし、私ども、専門家ですから、当然のことながら、さまざまな意見、海外からの情報も安全委員会にお伝えするようにしてきました。そういう意味での専門家としてのコミュニケーションはありましたが、政策論という意味での連絡という意味では、そういうことはいたしておりません。

 向こうは本部の一部でありますし、私どもはその外にいますので、そこは邪魔しないと言うと皆さんに怒られるかもしれませんけれども、基本的にはそういうスタンスで臨んでまいりました。

吉野委員 安全委員会で出しているSPEEDI、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムというまさにSPEEDIであります。これは、安全委員会は三月二十三日と四月十一日、二回しか公表していません。

 実は、きょうの新聞で、きょうから公表するという形になっているんですけれども、実際には、原子力安全技術センター、これは文科省の傘下にあるところなんですけれども、三月十一日、事故のあった当日の十七時から一時間ごとにすべて計算しているんです。

 このデータ、情報は原子力委員会の方には全部来ていたんですか。

近藤参考人 そもそも私ども、繰り返しますけれども、本部、緊急助言組織というシステムの外にいますので、オフィシャルにはそういうチャンネルはないわけです。

 もちろん、その近くにいますから、SPEEDIの結果とは別に、一般的に原子力安全委員会がそういう情報を管理して扱っているということは承知はしていますけれども、そういうものが今委員御説明のような形でなされていることについては承知をしておりませんでした。

吉野委員 原子力委員会は、日本国の原子力政策の最高の機関というふうに私は認識しています。

 SPEEDI、一時間ごとに出している。これは実際、同心円じゃないんです。実際に、風向き、地形等々で、だから三十キロの外も計画避難区域に今度はなったんですけれども、その情報をいち早く出していたんです。これをずっと隠していたんです。

 こういう情報の隠ぺいに対して、原子力委員会として、隠すんじゃないよと言ってほしかったんですけれども、委員長個人はわかっていたんですか。

近藤参考人 お答えします。

 今申し上げましたように、そういうことが一時間置きに公表されているということについては、公表というんですか、計算されていたということについては存じていませんでした。

川内委員長 今の質問は、助言機関として何かSPEEDIのことについて助言しましたかという質問だったと思うんですが、近藤参考人、もう一回。

近藤参考人 このSPEEDIの取り扱いにつきましては、私どもが申し上げるまでもなく、新聞等でも話題になっていますし、また、私どもに対しては専門家の間から、公表すべきという専門家の御意見と公表すべきでないという専門家の御意見をちょうだいいたしましたので、そういう考え方があることについて安全委員会にお伝えをいたしました。

 しかし、それを公表すべきや否やについては、安全委員会には安全委員会の理屈があったと私は記憶していますが、恐らく、要すれば、どれだけの放射性物質が出ているかわからないので、たしか計算をしているのは単位放出源を前提としたものが計算されている、それを公表することが果たして混乱を招かないかということについて危惧があるということが政府の基本的な認識であって、したがって、公表しないということを政府としてお決めになっているというふうに仄聞をしておりますが、私は、それは一つの理屈としてあるかなと。

 他方、海外の皆さんが、さまざまな同種のツールを使ってそれぞれの推測で数字を入れたものが、確かにホームページを見ますと出ていました。それを日本国民の皆さんも見ておられるわけで、そうした状況においては、私としては、公表できるような準備を早くすることの方が大事ではないかということを申し上げ、結局、ソースタームをきちんと決めるということがとても重要なわけで、事故の進展に応じてどういうことになるかということを推定できるシステム、要するに、原子炉の事故の進展解析のシステムを使っておおよそのところを想定して公表するということもあるんじゃないかということは申し上げてまいりましたが、そうした解析自身に大変苦労しているという返答をいただいたという状況でございます。

吉野委員 実は、第一原発のある双葉町、十二日の午前中に避難を開始したんです。どこに避難したか。川俣町というところに避難しました。まさに北西方向なんです。今、川俣町の一部は計画的避難区域になっているんです。風下に逃げちゃったんです。

 でも、SPEEDIで、こういう方向に行くよということが最初からわかっていれば、わかっていたんです、十一日の夕方十七時から一時間ごとに計算しているんですから。なぜその情報を渡さないんですか。そうすれば、風下に絶対逃げなかったはずなんです。

 情報隠し、本当に情けなくて情けなくて仕方ないんです。原子力委員の皆様方はそういうSPEEDIという仕組みが、私はわからなかったです、でも皆さん方はわかっているはずです。緊急時、迅速に予測するシステムがあるということをわかっているはずなんです。

 なぜ、緊急時に迅速に出さなかったんだというふうに原子力安全委員会に対して強い申し込み、抗議なりをしなかったのか。鈴木代理、お願いします。

鈴木参考人 見解のところでも私は述べましたけれども、先ほど山崎議員の御質問にもありましたが、個人的意見として、御指摘のとおり、情報は原則として早く出す、不正確でも出すことの方が大事だと私は思っております。

 残念ながら、今回どうしてそういうことが起きなかったかということについては、これも私は事故究明委員会の調査の重要な対象だと思っておりますので、これらを踏まえて、どういう基準でどういう考え方でこれをできなかったのか、そのことについても検証すべきだと思っております。

吉野委員 申しわけないんですけれども、何か評論家、おれは外にいるんだ、言うだけなんだというような感じがします。

 私の思っていた原子力委員会は、日本国最高の原子力政策についての意思決定を持っているはずなんです。原子力委員会の意見は、ある意味で命令といいますか、聞かねばならない命令、意見、そういうふうに私は思っていました。それが、外部の一評論家的に私は今聞こえているんですけれども、そういう意味で、原子力委員会、安全委員会等々すべての原子力政策の組織論、これを十分にこれから検証していかねばならないと思っていますけれども、そんなふうに聞こえます。

 秋庭委員、本当に現地を視察していただいてありがとうございます。私も何回も何回も行っています。

 今の避難の状況、秋庭委員は仕事が大事だと。仕事の前に生活環境。体育館の床に寝ているんです。ビッグパレットに行ったでしょう。段ボールで仕切って、あそこにインフルエンザがはやっているんです。風邪もはやっているんです。

 まず、あの住環境、あれを改善することが一番最初なんじゃないのかなと思っているんですけれども、委員はどう感じたでしょうか。

秋庭参考人 私もそのとおりだと思っています。

 まず、私もビッグパレットに行きましたが、本当に通路といわずテラスといわず、ありとあらゆるところに段ボールで区切られて、そこに足も伸ばすことは最初できなかったと言われました。そして、その周りを多くの人たちがすることもなく歩いておりますので、ほこりもすごく多くて、まずは命が大事ということであそこに来ました。

 しかし、こんなに日々がたつことを皆さん予想されていませんでしたので、その次には、やはり今おっしゃられたように住環境が大変重要だと思っています。住環境、それからまた栄養のことも、どうしてもおにぎりとかパンなど、炭水化物がほとんどですので、あそこには調理設備もございません。そのことも重要です。重要なことはいっぱいあります。

 そして、みんなが一番望んでいることは、やはり生活資金を早くいただきたい、そのこともおっしゃっていました。それがこのたび百万円が配られることになったので、私も本当にほっとしているんですが、この長期化にあって、先ほどお話ししました仕事ということは、その先にあるものを見越して、いつも対症的にやるのではなく、その先のことにおいてもやはり生きがいと、そしてしっかり時間を過ごす中で仕事は重要だということを申し上げた次第です。

吉野委員 ぜひ、住環境向上のために委員として御尽力を願いたいと思います。

 もう時間も来ましたから、最後になります。

 地元の人は、やはり帰りたいんです。どんなことがあっても帰るんです。でも、言ったか言わないかわかりませんけれども、菅総理は、十年、二十年住めないかもしれないと。これは、言ったか言わないかわかりません。でも、十年、二十年住めないと。住めないんだったら、土壌を入れかえればいいんでしょう。

 この土壌入れかえについて、委員長、どう思いますか。住めないんだったら土壌を入れかえる、その辺までやはり原子力委員会として政府にきちんと提言をしてほしいと思うんです。お願いします。

近藤参考人 お答えいたします。

 繰り返しますけれども、私どもは、原子力政策の観点から、先ほど申し上げましたように、最重点課題、今の避難の方々の生活環境を整えることと並行して、むしろ今から環境回復の取り組みにかかるべきだと考えております。

 それには、過去のさまざまな知見、御承知のように、土壌の話もございましょうしチェルノブイリの知見もございます。それからなお、新しい技術もありましょう。ですから、日本原子力研究開発機構がこうした分野についても力を入れたいということを、私ども、この間、日本原子力研究開発機構のこの事故にかかわる取り組みについてヒアリングをしたわけですが、その席でも、そういうことについても考えるところあるべしということで、私どもは、ぜひそれを進めるべしというふうに考えておりまして、今後とも、そうしたことについて体系的な取り組みを私どもとしてもヒアリングし、政策として提言していきたいというふうに考えます。

吉野委員 ありがとうございます。

 最後に、お願いです。

 福島原発事故という言葉を皆さん使いました。これによって、我が福島県は風評被害がすごいんです。人も来ない。福島県でつくったすべてのものも行かない。子供もいじめられる。車も、福島ナンバー、いわきナンバーは来ないでくれ。東京電力第一原子力発電所なんです。東電第一原発。だから、福島という言葉をこれから余り使わないようにお願いしたいと思います。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

川内委員長 次に、斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。よろしくお願いいたします。

 まず初めに、これまで原子力政策また科学技術政策に携わってきた者として、今回の東京電力第一原子力発電所の事故は大変深刻に受けとめなくてはならないし、先ほど委員の方からも、関係者全員がこれを重く受けとめなければならないという発言がございましたけれども、私も全く同じ気持ちでございます。そういう気持ちで、きょうは質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、公明党の原子力政策の基本的な立場を表明しておきたいと思います。

 一九九九年、もう十二年前になりますけれども、原子力政策について、党内でかなりの大きな議論がございましたけれども、方針を明確にいたしました。

 長期的には、我々が目指すべきエネルギー社会は、太陽水素系社会である。また、キーワードとしても、分散型という言葉を入れております。このイメージは、再生可能エネルギーを主体とするものでございますけれども、核エネルギーとしては、固有安全炉と言われております核融合、水素を原料とする核融合ということもその言葉の中には入っているわけでございますが、基本的には、再生可能エネルギーを中心とする太陽水素系社会を目指す。原子力は、その社会までのつなぎ、過渡的エネルギーである、こういう位置づけでございます。

 しかしながら、そのつなぎの期間は、冷静に議論すると、かなり長期間にならざるを得ない。これは五十年、百年の期間だと思います。その期間は、原子力を過渡的エネルギーとして認める。その認める理由は、先ほど大庭委員からも話がございましたそれとほぼ重なるんですけれども、安定供給性がございます。これは、エネルギーベストミックスという観点も含めた安定供給性。それから、地球環境適合性。そして、これは後でまた議論しようと思いますけれども、経済合理性、コストということも入っております。この三つの理由から原子力を認めるということでございます。

 そして、短期的には、安全が大前提で、最新の科学技術的知見を不断に見直して、そのときできる限りの安全対策をとる。

 こういうのが公明党の基本的立場でございますけれども、もう十一年前に決めたものでございますし、かつ、今回、ある意味でその根底を覆すほどの大きな事故が起きましたので、もう一度、党として、真摯な議論をしてエネルギー政策を立てたい、このように考えているところでございます。

 そういう党の基本的な考え方のもとで質問をさせていただきたいと思いますが、尾本参考人からお話をさせていただきたいと思います。

 まず、技術者と倫理、技術者倫理という問題です。

 私も民間企業に二十年勤めました。ある分野の研究をしていたわけですけれども、二つの面がありました。一つは、一技術者として働いているときは、いわゆる技術者としての立場と会社の利益というものの相反。それから、ある程度その分野で認められるようになりますと、いわゆる技術標準をつくる、そういう社会的な委員会に参加するようになって、技術標準をつくっていくという作業。そこでは、会社の立場を離れて、何が社会の公益かということをまず念頭に議論しなくてはいけないんですが、それでもやはり、会社の利益ということは、最終的に頭の隅から外すことはできないわけです。

 そういう意味で、民間企業で働かれた、また、今回の原子力の現場で働かれた技術者としての立場と、今回こういう事故が起きたということに対して、技術者倫理という側面からどのようにお考えになっているか、まずお伺いします。

尾本参考人 技術者は、その技術を実際に使う、社会の中で利用するということに関して、それぞれの持てる知見を最大限に生かして、そして福祉に役立つようにしなければいけない。そのためには、個々の所属する組織の利益というよりも、その技術者自身の持てる観点から、ちゃんとした、正々堂々とした意見を主張して、そして技術を有効に役立てていく、こういったことが必要であるというふうに考えておりまして、私自身もそういう考えで今まで行動してきたつもりであります。

 ちょっと具体的に申しますと、先ほど、基準を策定するという話がございましたが、チェルノブイリ以降は、まさにそういう点で非常に重要な転機でありました。具体的には、九〇年代に入りまして、チェルノブイリにかんがみまして、アクシデントマネジメントという、今起きているような炉心損傷という事態に至るのをどうやって未然に防止するか、また、起きたときにどんな対応策をとるか、こういったことについて基準を策定する、そして、実際にそれを電力会社の中で実行に移すということに携わってまいりました。

 これは、ここにいらっしゃる近藤委員長がまさにその関係での各種委員会のヘッドでやられたわけですが、私自身も参加して、その成果は、九〇年代に、原子力安全研究協会におけるレポートという格好で、一種、民間基準としてまとまっております。

 もう少しそれについて申しますと、今ベント、注水等のアクシデントマネジメント方策が実際に行われているわけですが、これはその九〇年代に整備したものが生かされている。福島第一の五号機、六号機につきましてもプラントが安全状態に置かれているわけですが、これは、福島第一のいわゆるブラックアウトの可能性について懸念をして、そしてそのリスクを低減するために、福島第一の二号機、四号機、六号機にそれぞれ、海水冷却じゃなくて、空冷の非常用ディーゼル発電機を設置したということによって救われているわけで、そういう点では、おっしゃるような会社の利益を考えて投資を避けるということではなくて、真に社会の福祉のために、またリスクを低減するために努力するのが技術者の当然の務めでありまして、そういうことに個人としては努力してまいったつもりであります。

 しかしながら、例えば津波に関してですが、当時の知見が今日の災害を未然に防止するには十分ではなかったではないかというふうに非常に残念に思っているところであります。

斉藤(鉄)委員 それに関連して、尾本参考人にもう一問聞かせていただきます。

 今回、事故が起きてから、事故を抑え込むのにいろいろな分岐点があったかと思うんですけれども、東電の利益という観点がその判断の中に入っていたのではないか、こういう指摘もあります。この点についてはどのようにお考えでしょうか。

尾本参考人 実際に論議されている点は、例えば、ベントにちゅうちょがあったのではないか、海水を入れることにちゅうちょがあったのではないか、こういう点で、私自身もウォールストリート・ジャーナルからその点について質問をされたところであります。すなわち、海水を注入するに当たってちゅうちょがあったのではないか、こういうことを中心にいろいろな議論がされているところでありますが、これについては、憶測で物を申すよりも、ちゃんとした、事故調査委員会の中で経緯を明確にしていく必要があるというふうに考えております。

 例えば、海水注入に限って申しますと、実際に注入するためには、注水する力が弱いわけですから、原子炉を減圧しなければいけない。しかしながら、減圧に当たりましては、ちょっと細かいことで申しわけないんですが、逃がし安全弁というバルブを開かなければいけない。しかし、そのための駆動源がなかった。実際に置かれている状態は完全なブラックアウトで、空気も動力源も電力もないという状態ですから、そこに時間がかかって苦労したのは当然であろうというふうに思います。しかしながら、その場その場で利用できる資源を最大限に利用しながら最善の努力がされたものであろうというふうに私は想像しております。

 想像で物事を申すのは先ほど私の所信のところで申しましたように非常に問題がありまして、実際に事故調査委員会で詳しく解明をする必要があるというふうに思います。

斉藤(鉄)委員 今後のいろいろな技術基準の策定、また大きな原子力政策の方針について、やはり現場で民間技術者として働いた、しかしながら、いわゆる技術者倫理ということについて、今は技術者の世界でも大きくこれが言われてくるようになりまして、大学の教育でも、技術者倫理というのはまず第一に学ぶべきことになっております。そういう意味で、知見を生かして頑張っていただきたい、このように思います。

 次に、大庭委員にお尋ねをいたします。

 委員としての役割の一つに、原子力村の外からの視点を忘れずに意見を述べること、このようにおっしゃっております。原子力村というのがよく言われますけれども、外から見てどのように見られているでしょうか。

大庭参考人 私は、就任してたしか二カ月ぐらいたったころに、原子力委員会から出されているメールマガジンの中でこの原子力村についての話を書いたことがあります。私は、村という言葉は使わずに、島というふうに呼んだ覚えがあります。それは、村というのは、専門家集団であれば、私も国際政治の専門家ですし、それなりの村というのはどうしてもできます。ですから、村自体は私は仕方がないというふうに思うんですね。

 ところが、原子力に関しましては、やはり技術的に非常に難しいという点、それから、事業と官財民の今までの関係その他から、非常に閉じた世界になっている。ですから、村をつくるのは構わないのですけれども、外との交流がない、外からの意見というものが非常に反映されにくい、そういう社会になっているというのは非常に問題であるという指摘をしてきました。

 実際に、私がこの一年余りの間に原子力の村の中で、あるいは島の中で活動してきましても、そのように感じることが多々ありましたので、そのときには、私の知見から、なるべく意見を言うように努力してまいった所存です。

斉藤(鉄)委員 先ほど技術者の話をしましたけれども、どうしても技術者はそういう村なり島なりになる傾向がある。これは、私自身それを実感しておりますし、自覚しておりますし、そうであってはならない、このように思っているんですけれども、そういう発信をどんどんしていただきたいと思います。

 それから、先ほどの話の中で、いわゆる新興国、例えば中国、インドがこれから、中国については長期的には百基以上の原子力発電所を建設していくということ、またインドについても同じような方向だと思います。そういう中にあって、日本の経済的な国際競争力も一つの大きな考える視点として必要になってくるかと思いますけれども、この新興国の原子力発電と日本の今後の行き方ということについて、大庭委員の見解を伺います。

大庭参考人 日々考えていることを率直に述べさせていただきたいと思います。

 新興国と日本とのいわば競争ということについてそれぞれ取りざたされていると思いますが、日本は日本で、例えば高級品の製造に特化する、その他いろいろな形でこういった競争に勝ち、そして成長率というものは維持していかなければならないのであろうというふうに考えています。

 ただ、他方、こういう議論をするときに、やはり電力というものの重要性を私は非常に考えておりまして、すなわち、日本の中ではまだ製造業が非常に大事であり、しかも一億二千万人の人口を養う雇用というものを考えたときに、一部の経済学者が言うように、簡単に製造業を海外にすべて移転するというのはなかなか難しいという状況があります。

 そうしますと、新興国とのいわば競争、競争というよりも、むしろ日本国民の今までの繁栄というものを維持していくためにも電力供給ということを本当に考えていかなければいけなくて、その中で、原子力ということも念頭に置いて議論していかなければならないのではないかと考えております。

 以上です。

斉藤(鉄)委員 次に、秋庭委員にお伺いいたします。

 世論調査の結果、四〇ないし五〇%が現状維持を選択しており、国民は安定供給を望んでいる。しかしながら、非常に強い不安を持っているということで、今後の原子力政策の検討に当たっては国民参加が重要であるということですが、二点。

 一点は、私も実はこのアンケート結果を見てびっくりいたしました。非常に否定的な世論調査の結果になるのではないかと思っておりましたけれども、そうなっていなかったということについて、秋庭委員は率直にどのように考えられているか。

 それから、国民参加が重要である。国民的な議論、私は必要だと思います。それで、この議論になると、ついついイデオロギー論争的なことになりがちなんですが、本当に客観的な事実をもとにした冷静な議論が必要だと思うんですけれども、イデオロギー論争に落ち込まないためにはどのようなことが必要か。

 私の原体験を話しますと、若いころですけれども、そういう議論をしたときに一技術者として発言をしたら、目の前に指を突きつけられて、この権力の犬が、こう言われたわけですけれども、そういうことが、後々、私の冷静な議論をする大きな妨げになったというような気がいたします。

 そういうことも含めて、どのようにお感じでしょうか。

秋庭参考人 今御質問いただきましたアンケート結果については、私も実は驚いております。

 国民の気持ちとしては、今回のことについて、やはり原子力は怖いと思う方が多いのかなというふうに想像はしておりましたが、半数近く、四〇%から五〇%の方が、これはNHKや新聞社など四つぐらい発表されたと思いますが、いずれも同じような数字で現状維持となったことについて、大変私は驚いております。

 先ほども申し上げましたように、やはり電力ということが自分たちの生活の根幹にあり、その生活を安定的にするということが重要だと第一に国民としては思っているのではないかと私は思っています。そして、希望的に申し上げれば、これからまた、現在、福島以外にも原子力発電所が全国各地にありますが、何らかの手段をきちんとすることによってこの安全も保たれることもできるのではないか、そういう科学技術に対する希望もこの中に込められているのかな、それは私の気持ちとして思ったところです。

 そして、実際的には、先ほど言いましたように、何といっても、安定供給による社会の維持ということがやはり国民としては第一に考えられているのではないかと思った次第です。

 そして、二つ目の御質問の国民参加のあり方についてです。

 国民参加のあり方というのも、例えば国民的な議論といいましても、国民全員が議論することができるわけでもありませんし、また、その議論に当たっては、何もなく議論するわけにはまいりませんので、さまざまなデータや資料などもお示しする必要があると思っています。

 そのことについて、形としてはいろいろな形があると思います。

 一つには、私ども原子力委員会は、政策大綱を見直すかどうかということを昨年の七月から検討してまいりましたが、国民の意見を取り入れるために三つの方法でやってまいりました。

 一つは、有識者の方々に御意見を聞くということです。さまざまなジャンルの専門家の方々から御意見を聞いてまいりました。もう一つは、各地で国民の方から直接御意見をいただく、御意見を伺う会というものを開きました。そして三つ目はパブリックコメント、そういう方法をとりました。

 私は、そういうこともいろいろな形で必要だと思っておりますので、形は、全面的に対決型でなくても、いろいろなジャンルの方にヒアリングをするとか、さまざまな方法をとりつつやることはできると思っております。例えばコンセンサス会議というようなこともやられておりますし、手法としては、海外の知見などもいろいろ調べる方法はあると思います。

 そして、そのことについて一番重要なことは、あらゆる面において、環境性において、安定供給性についてどうなのか、あるいはコスト的にはどうなのか、さまざまな角度の資料、データをお示しして、冷静な判断をしていただくということが必要だというふうに考えております。

斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。

 鈴木参考人にお伺いいたします。

 鈴木参考人とは、全然別な民間の場でいろいろ議論を闘わさせていただきました。そういう鈴木参考人の立場からして、今の原子力行政をどのように見ていらっしゃるか。

 昔は科学技術庁の中にすべてがあって、原子力委員会も原子力安全委員会も、それから原子力局も原子力安全局もそういう中にあって、まさにブレーキもアクセルも一緒にあって、その体制はまずいと言われて、確かにまずいと思います、分離したわけですが、その結果として、おれは原子力でこの国を支えていくんだというような骨のある行政官がいなくなったような気がする。今回も、分散したせいでしょうか、それぞれサラリーマンになっちゃって、結局、昔、おれが支えているんだという人が復帰して、そういう現場に行って、今裏方として支えているようなことになっております。

 もちろん、組織の体制をきちっとした分権型にしてチェックし合うような形にしてやることは必要ですけれども、おれはこれで日本に貢献するんだというような骨のある行政官がいなくなったような気がするんですが、いかがでしょうか。

鈴木参考人 御指摘の点は、多分、役所の中の方だけではない、原子力全体のコミュニティーの中で、創成期のころの、原子力をつくられたときの方々がだんだん少なくなって、第二世代、第三世代と呼ばれる方になってくると、原子力に対する思い入れもだんだん減ってくるということがあるかと思います。そういう意味で、原子力に熱い思いを持ってつかれている人が減っていることは事実だと思いますが、そのマイナス面とプラス面、両方あると思います。

 今の私自身の考え方は、今述べたように、原子力というものの特殊性で必要なものについては、専門知識を十分にこれからも維持していかなきゃいけない。ところが、おっしゃるとおり、それが分散化してしまった結果、専門性もなくなってきているということがあるかもしれません。

 もう一つ、逆に一方で、原子力を客観的に見なきゃいけない、そういう評価もつくらなきゃいけない。これについては、今の行政システム、先ほどちょっとおっしゃいましたけれども、例えば、安全規制についての独立性についてもそうですが、政策的にも原子力を客観的に議論する場というのがなかなかつくれない。

 それで、私が先ほど提案させていただいたのは、原子力をエネルギー政策全体の中で議論する場というのが必要なのではないか。それから、テクノロジーアセスメントの提案もさせていただきましたが、これがまさに、特定の技術について推進とか批判とかをしない独立な立場で技術を評価する、こういう機関が日本にはないので、そういう立場から原子力をきちっと評価することが国民の信頼を得る上でも重要ではないかというふうに思っております。

斉藤(鉄)委員 最後に、近藤委員長にお伺いいたします。

 原子力委員会の本来の役目は、原子力政策についての長期的な大きな方向性を国民的議論とともに策定するということだと思います。それに対して、委員からもありましたけれども、本来の使命を果たしていないところがあるのではないか、こういう批判もございます。

 こういうときだからこそ、国民に正しい情報と、そして、今何が日本にとって、こういうことについて議論することが必要なんだという、決めるべきことの重要性、そういうことを提示して、国民的議論を引き起こしながら、かつ原子力委員会としてもわかりやすい議論をしていくということが重要だと思いますけれども、この点についての委員長のお考えを最後にお伺いします。

近藤参考人 お答えいたします。

 おっしゃるとおりと思っています。

 先ほど、最初に申し上げましたように、三・一一以後の日本の原子力政策がいかにあるべきかを考えるには、短期、中期、長期に分けるべきと考えています。

 先ほど、幾つか短期的な取り組みについて申し上げました。すなわち、現在の事故の収束、そして、これを原子力政策と言うべきかどうかという問題もございますが、しかし原子力にかかわることでございますから申し上げると、避難民の方々の生活の安定、不安の解消ということについての努力、そして、現場で発生します、あるいはこれからも発生する、極めて多量の放射性廃棄物の問題、そうした喫緊の課題について道筋をつけるということを政府に要請していくということが極めて重要。

 それから、中期的には、先ほど申し上げましたのは、今動いているプラントが本当に信頼できるんですかという率直な国民の問いに対して、きちんとした答えを用意すること、これは安全委員会の仕事でありますが、しかし、そういうことがちゃんとスピード感を持ってなされることを強く要求していくということが私どもの使命と考えています。

 また、それを踏まえて、あるいは、さらに事故調査委員会等の結果を踏まえて、先ほど御紹介のように、何となく我が国の、自分がという人が見えなくなったということも御指摘がありました。

 それは二つの面がありまして、一つは日常的な原子力の運転の問題、そして、今回のような危機的状況において、一体だれがその責任を持つのか、自分がという義勇軍になるべき方がどこにいるのかということが問われたわけでして、しかし、国家としては、一たん事あれば、そういう義勇軍がちゃんと集まるような仕組みをあらかじめつくっておくことがいかに大切かということを、このところ身にしみて感じていると思います。

 長期的観点からそういうものを整備していくということも含めて、この事故調査委員会の結果を踏まえて、そうした万全の仕組みをつくった上で、国民の皆さんに、こういうことで原子力を今後ともやることについてどう考えるか、原子力のこういう特性と、しかし、そういう万全の備えをするというふうにちゃんとコストをかけなきゃならないということをお示しして、政策を議論していく、それが私どもの使命というふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。

斉藤(鉄)委員 終わります。ありがとうございました。

川内委員長 次に、宮本岳志君。

宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。

 きょうは、貴重な御意見をお伺いいたしまして、ありがとうございました。

 先ほど、参考人の方々のお話をお伺いいたしましても、委員長からは、申しわけなく存じ、深刻に受けとめているという言葉もございました。それから、委員長代理の方からは、このような深刻な事故が発生したことに関し、深く反省している、痛恨のきわみというお言葉もあったわけであります。

 恐らく、原子力にかかわる者で、今回の事故を受けて、反省を口にしない者はいないと思うんですね。みんなが反省を口にはされるわけでありますけれども、ただ、さらにそこから進んで、一体この事故の何を反省しなければならないか、そして、どこを変えなければならないか、この中身にしっかり踏み込んでいく必要があると思うんです。

 これは参考人全員にお伺いしたいんですが、この事故の何を申しわけなく思い、何を反省しなければならないとお考えになるか、順々にお聞かせいただけますか。

近藤参考人 私は、私自身の個人的な経歴も踏まえて、最大の問題は、この巨大なシステム、なかんずく大量の放射性物質を内在する原子力施設の安全確保のためには、私の言葉を使えばリスク管理でございますが、リスクが十分に小さくなるようにすることが前提条件でございますから、十分に小さいということを絶えず最新の知見を踏まえてモニターする。これをリスクアセスメント、リスク分析といいますが、こうした手段を通じて、絶えず新しい情報、知見に目を凝らし、耳を凝らし、リスクを変えるものかどうかをチェックして、変えるものとすれば、低くなるように対策を講じる。

 こういうリスクマネジメントが総論としては口にされ、私どももまた、それが非常に重要ということを絶えず申し上げているつもりでございますが、これが、現場、規制の面でも、また運転管理をされている方にも、その重要性が、私どもの思いが共有されていなかったのかな、これが私のまさに研究者としての、最も残念に思うし、反省しというか、声が小さかったのか、さまざまな思いを持って反省しているところでございます。

鈴木参考人 細かいことはいっぱいあるんですけれども、一言で申しますと、チェルノブイリ事故の後に言われるようになった安全文化という言葉があるんですが、ちょうど私もアメリカにいて、その安全文化の研究をしたんですが、安全文化という言葉が本当に身にしみていたのかというのが、私個人的には、それぞれの立場でもう一度問い直さなきゃいけない。

 安全文化といいますと、普通は実際に発電所を運営している事業者に言われる言葉が多いんですが、実は規制当局あるいは原子力政策を推進している行政の責任もあります。それから、ほかの産業界のメンバー、あるいは実は反対を言っている方々の中にも、どこかで今回のような事故は起きないんではないかという意識があったのではないか。安全文化というのは、チェルノブイリの後、そういう社会全体の安全に対する意識というのを常に高く持っていかなきゃいけないという警告だったのです。それがどこかで欠けていたのではないかということで、私が申し上げたのは、原子力に携わる全員の人間がそれぞれの立場で考えると言ったのはそういう意味であります。

 今後の対策を練るときも、個々の改善はもちろんですが、原子力を取り巻くすべての社会システムとしての安全文化を高めていく方向に変えていかなきゃいけないというふうに思っております。

秋庭参考人 私は、先ほど、最初に申し上げましたように、この事故において、やはり国民の皆様を不安に陥らせたということが何といっても最大の痛恨のきわみです。私は技術者でもありませんし、国民の観点ではあるのですが、そういう信頼を裏切ったということがやはり最大の問題点だと思っております。

 そして、このことに対してどうしていくかということなんですが、国民からすると、今回の事故に対して、だれが責任を持って、だれがどのようにしてくれるのかというところが全く見えないところがあります。ここをやはりもう一度原点に戻って責任体制をしっかりつくること、それが国民のニーズにこたえるものである、そういうものをつくっていくことが一番重要だと思っております。

大庭参考人 私は、先ほども申しましたように、委員に就任する二〇一〇年一月までは原子力村の外におりました。しかしながら、私がこの委員就任の打診を受け、そして国会同意人事を通り、この役職についたことで、私は、この件について責任があるというふうに思っています。

 では、具体的にどのような責任があるのかという点に関してなのですが、この短い一年余りという期間で私が何か変えられたかというと、それは正直、そうは思いません。しかしながら、私は、やはり安全性の担保が十分になされるようなガバナンスシステムにあるということについて、そういう原子力村の人々が抱いていた観念、考え方について、もっと鋭い意見というものを述べる必要があったのではないかと思っています。

 実は、この点に関しては、述べていなかったというわけではないのですが、しかしながら、私は原子力を専攻している研究者ではありませんでした。やはり、先ほどから何人かの委員もおっしゃっているように、分散しているガバナンスシステムの問題点ということについては非常に問題意識を持っておりまして、それは何らかの形で改善はできないんだろうか、いわばもう少し原子力行政というものをきちんとできる方法はないんだろうかという問題意識はありましたが、しかしながら、そういうことについて今まで意見を述べるとしても、もっと意見が言えたのではないかという点に関しては、私は責任があるというふうに思っています。

 その上で、今後、何をするかということについてですが、もちろん、大きなガバナンスシステムの見直しということも非常に重要で、私が役割を果たせるとすれば、それは真摯に果たしてまいりたいというふうに思っておりますが、その前に、とにかくこの事故の原因の徹底究明ということについて、これが非常に肝要かというふうに考えております。

 先ほど見解の中でも述べましたように、技術的側面とともに、特に緊急時、初動のときのいわば意思決定システム、意思決定のプロセスということについて明確にしていく、そのことについては今後強く意見を述べていきたいというふうに思っています。

 以上です。

尾本参考人 原子力委員会としては、やはり安全に関しては原子力安全委員会の所掌事項という考えで、全体として、原子力の安全確保というのが前提条件でという認識があるにもかかわらず、その点で十分な発言をしなかったという点が、一つの仕組みとしては反省すべきところであるというふうに思っております。

 その上で、個人、つまり一介の原子力関係の専門家として技術的な分野で考えることを申し上げますと、冒頭の所信のところでも申し上げましたが、まず自然災害、殊に確率の低い自然災害に対してより謙虚に取り組む姿勢が不足していたのではないかというふうに考えております。

 それから、工学的な設計という点におきましては、安全な機能を果たすためには多重性よりもむしろ多様性が非常に重要なんですが、その多様性に対する配慮というのが歴史的に見ても順番に弱くなってきたところがあるというところを、今後反省すべきところがあるというふうに思います。

 それから、先ほども少し申しましたが、アクシデントマネジメントという方策はありましたけれども、実際にそれを運用する段階になりますと、思ってもみなかったようなことがいろいろと起きているようであります。そういう点から考えますと、アクシデントマネジメントがシビアアクシデントに至るような事態が本当に起きるんだということを考えて、より厳しい目での訓練というものがなされるべきではなかったのかなというふうに考えております。

 以上です。

宮本委員 秋庭参考人の方から、信頼を裏切ったという言葉が出ましたね。

 私、原子力政策大綱、これは平成十七年にまとめられたものでありますけれども、これを読ませていただいたら、この中には、「万一の際に国民の保護を図る防災対策や防護対策も整備されてきている。」という言葉が明確に書かれております。「安全確保に対する国民の信頼の確立に努めることが重要」というふうにしておりますけれども、今回のこの事故を目の当たりにすれば、今は、国民の保護を図ることも現状はできていないわけでありますし、それから安全確保に対する国民の信頼の確立も、これは現状ではできていないわけですよね。

 それで、近藤参考人は委員長としてこの大綱をおまとめになった御本人だと思うんですけれども、この中で言われている防災対策や防護対策、「万一の際に国民の保護を図る防災対策や防護対策も整備されてきている。」と言われているこの防災対策や防護対策とはどのような災害を想定したものだったのか、そして、今日の事態を受けて、防災対策や防護対策として何が必要だとお考えになるか、お答えいただけますか。

近藤参考人 御承知のように、原子力防災対策につきましては、日本では、TMI事故の後、そうしたものの重要性が指摘され、事前に防護対策を強化するべき重要地域という言葉を使っていますが、英語ではEPZと言いますが、そうしたものを我が国も定めるべきとして、八キロから十キロ圏内をそういう地域と指定するということを初めとする原子力防災対策が定められ、しかし、その当時は、そうしたことにする権能は地域のことを一番よく知っている自治体の長にゆだねる、そういう構造で整備をした。私も若いとき、十キロ、八キロを決めるための計算は一生懸命やった記憶がございます。

 その後、ジェー・シー・オー事故が起きまして、いやいや、県を越えて災害は広がるので、防災対策の主体は首相であるべきということになりまして、原子力災害対策特別措置法が制定されて、十条、十五条の通報を受けて、総理を長とする対策本部をつくる、そういう制度が用意され、臨機に、今回もそうでありましたように、まさしく原子力災害で人は一人も死ぬことなしということを目指して、あらかじめ避難地域を設定し、あるいは屋内退避地域を設定する、そういう行為がなされるべしというふうに決めてあると思いますが、そのときに前提にいたしましたのは、もちろんTMI事故のような、原子炉の炉心が溶融して大量の放射性物質が環境に出るというところ。そうした結果として、急いで避難をするとすれば、とりあえずどの範囲の方が避難をするのが適切かということで、状況によって決めるわけですけれども、そういうことが必ずできるように事前に計画していくという範囲として、八キロ―十キロというものを妥当として決めた、そういうことがございます。

 ですから、今日まさしくその法律に基づいて防災対策が実施されているというふうに理解をしていまして、その観点ではそれが機能していると私は思っていますが、ただ、問題は、たくさんのことが出てまいりました。

 つまり、原子炉からの放射性物質の放出は一回で終わるということを前提にしてつくっておりますけれども、今度の場合のように三つの原子炉が同時に被災をするということは前提にしておりませんから、結果として、長い期間避難をお願いしなきゃならないということになりますと、こうしたことについては想定していない。

 その後、時間があるから、あらかじめ考えることなしとして、そのとき起こってから考えるという考え方があったのかもしれませんけれども、現在の法律制度ではそういうことが整備されていませんので、現在、地元の皆様に大変な御迷惑をおかけしつつ、関係者がそれぞれのよかれというものを今考えているという状況でございまして、これは、まさしく現在のシステムの欠陥をあらわすものというふうに考えて、この経験を踏まえて早急に改善されるべき、既に各立地自治体から防災対策の考え方を変えたいという、変えるぞと宣言されているところもございますところからわかりますように、そうしたことは当然国としても見直すべきだというふうに思っているところでございます。

宮本委員 たくさんお伺いしたいんですが、なかなか時間に制約がありまして、どうしても聞いておきたいことがございます。

 私は、想定を超えたということは許されないというふうに思うんですね。耐震設計審査指針の改定作業の中心となった入倉孝次郎京都大学名誉教授は、新聞の取材に答えて、指針が津波に対する評価が正しくなかったことなどを認めた上で、想定以上の大地震が来たことは理由にならない、何があっても多重防護で大丈夫と言ってきたのがうそだった、人災だと思うとはっきり述べられておりますので、そういう点では、本当に反省、そして責任というときに、我々はしっかりそこを受けとめていかなければならないというふうに思うんです。

 それで、尾本彰参考人にお伺いをいたします。

 先ほど尾本参考人は、当時の知見において限界があったというふうに冒頭述べられましたけれども、我が党は、五メートルもの津波で福島第一原発も含めた冷却水の取水不能、冷却施設の設備の機能喪失が起きて重大事故に陥る危険性というものは、既にもう四年も五年も前から指摘をしてきましたし、東電にも直接申し入れもしてきたわけですね。

 その点では、この責任というものは非常に東電にとっても重いし、もともと尾本参考人は東電にもいらっしゃったということでありますけれども、そういう点では、事業者は、今回の事故を受けて、なおその当時の知見において限界があった、こういうふうに言えるのかどうか、私たちの指摘をなぜ聞き入れなかったのか、このあたりについてどうお考えですか。

尾本参考人 記憶を頼りにして言わざるを得ないところがあるんですが、津波に関しましては、設計指針の中で、津波を考慮すべきことというのが当然書いてありまして、もともとの設計においてはチリ津波を想定していたというのが事実だと思います。しかしながら、その後、一九八三年ですかね、奥尻島等を襲った地震等にかんがみて、土木学会において、津波に関する考え方を変えなければいけないのではないかということで、指針化の動きがありました。

 土木学会の原子力土木部会であるというふうに記憶しておりますが、そこが二〇〇二年にガイドラインを出しまして、そしていろいろな領域で地震が起きるということを想定して、不確かさの解析も行って、想定する津波をそれぞれ決めることというのが出ておりまして、それに従って、各電力さまざまな対策をとったというふうに記憶しております。

 例えば東京電力におきましては、取水ポンプの位置のかさ上げ、そして、今御指摘にありましたように、引き波に際してポンプが水を引くのに十分能力がなくなってしまうということを考えて、そういう場合には大きな循環水ポンプをトリップさせる等々の対策をとっておりますので、御指摘の懸念というものは考えられていたというふうに考えております。

 しかしながら、土木学会の指針では、私の記憶するところ、先ほど言いましたようなさまざまな震源域を考えてモデルをつくって想定して、それが過去の津波の既往歴、このデータベースに照らしてそれを十分包括しているということを確認しているという記述があったというふうに思っております。すなわち、過去経験したものをすべてカバーしているという想定であるというのが当時の知見であったというふうに思っております。

 残念ながら、その結果、福島におきましては五・七メーターという高さで、今回は十四メーターあるいは十五メーターというふうに言われておりまして、その二〇〇二年における土木学会の指針に従った算定という点においては、その当時の知見を最大限に生かしたものであったというふうに記憶しております。

 これは私の記憶でありますので、具体的にはきちっと事故調査委員会で精査して、確認する必要があるところだと考えております。

 以上です。

宮本委員 時間なんですが、もう一問だけお願いしたいんです。

 先ほど大庭参考人からも、規制機関とそして推進機関と分けるという話が出ましたが、これは我が国も批准している原子力の安全に関する条約第八条で国際的にも定められていることなんですよね。ここは本当に今回の問題での一つのポイントになると思うんですが、最後に近藤委員長に、やはりこれはきちっと分けるということについて、どのように受けとめるかお伺いして、質問を終わりたいと思います。

近藤参考人 御指摘の点、全くおっしゃるとおりと思っています。

 私は、国民の皆さんはダブルチェックということで何か一生懸命やっているというふうに思うんですけれども、しかしそれは、科学は、真実は一つですから、そこへ英知を結集して正しい判断をし、国民に問うていく、これが本来の行政のあり方というふうに思っていまして、規制機関は一本化する、そこが常に問題意識、クエスチョニングアティチュードといいますが、いつも問題がないかということを絶えず問いかける姿勢を維持しつつ、衆知を集めて正しい判断をするべく心がける、これがエッセンスというふうに思っています。

宮本委員 ありがとうございました。終わります。

川内委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党の阿部知子です。

 本日は、委員長初め、各委員の特別のお取り計らいによって、原子力委員会の皆さんに質疑できる場を国会で持てたことを私は大変重要な場だと心得ております。そして、国会の同意人事でも、さっき大庭さんもおっしゃいましたが、皆さんを私どもはこの国の原子力政策の推進役として認めたわけですから、本当に重要なきょうの場だと思います。

 そうした前提の上で、しかし、私は、きょうの皆さんの御質疑全般を伺いまして、新たに大きな不安にとらわれました。と申しますのは、果たして、原子力委員会とは何だったのかと、もう本当にありていに申しますといろいろな問題があり過ぎて、ここにゆだねていったということを私は国民に対しても申しわけなく思う余りであります。

 例えばであります。よく想定外というお言葉が出ますが、これは、リスクマネジメントの基本は、どこまで何を想定するかで当然リスクアセス、それからマネジメントも決まってまいります。地震も、津波も、三基、四基と複数の炉が問題を起こすことも、すべて想定外とされてしまっては、そのリスクマネジメントの、アセスメントのあり方自身が問題ではないか。

 そして、私がもっと驚きましたのは、事が一たん起きたときの原子力委員会の対応であります。先ほど冒頭の山崎委員の御質疑にもありましたけれども、一カ月近く開かれないということは、原子力委員会が安全性を旨としてとか第一としてとおっしゃっていますが、ある意味で、事が起きたときにはそこには一切関与しない、一カ月も関与しない、失礼ですが、ほうりっ放しているに等しい。

 そして、皆さん、個人としてはとおっしゃいますが、私は、やはり組織としてどう関与されたかが重要なんだと思います。

 ここにいるみんなは、個人としては、今般の地震や津波、原発事故は、皆それぞれにある意味で責任を感じておりますし、かかわりももっと頑張らねばならないと思います。でも、まず組織としてどうあるべきか、この点について、近藤委員長に特にお伺いをいたします。

 この組織とは一体何だったのか、緊急介入もできないし、安全はだれかに丸投げで、本当に果たして原子力行政はできるのか、一点目、お願いします。

近藤参考人 先ほど御質問に答えたときにも申し上げましたように、一たん事あれば、我が国は、皆様のお決めになった原子力災害対策特別措置法に基づいて、国の関係機関がそこへモビライズされて、まさに国の総力を結集して、そこで適時適切な判断をする、そういう仕組みになっているわけでございます。

 したがって、原子力委員会がそこでそれに対して何をすべきか。私どもの役割は、法律に定められていますように、我が国の原子力政策を企画、審議、決定するというのがミッションでございますので、そこで緊急のことを決めるといたしましても、そこは、まさに火事場で火消しをしている方々が一生懸命やっていることを応援するのが筋であって、こういう新しい火消しの方法があるよ、あるいはこういうこともやらなきゃならないよということを外部から言うことが適切かと。私はやはり、目の前で、十一日、十二、十三と、原子力が爆発しているような状況で、そういう会議を開いてそういうことを議論するのは適切でないというふうに考えたわけでございます。

 したがって、それを見て鎮静化したところで、我々がまさしく今、先ほど申し上げましたように、短期、中期、長期の観点からなすべきことを検討し、今後取り組んでいくことを皆様にお願いするというのが基本的な法律に定められたミッションと考えているところでございます。

阿部委員 確かに法律上は、今近藤さんがおっしゃったように、原子力委員会設置法にも原子力災害対策特別法にも、一たん事あれば原子力委員会がどうかかわるかは書いてありません。でも、原子力委員会の設置の大もとが、安全性を第一に、旨として、前提なんですね、ここがなければ、この委員会そのものは立脚点がないわけであります。

 私は、今の近藤委員長の御答弁というのは、逆に今後がさらに不安になります。それが燃え盛っていてもだれかに任せておいて、こっちでアクセルだけ踏まれては困るわけです。これは、そこほどに皆さんには責任があるし、やはりアクセルとブレーキは両方なければ暴走するだけであります。

 私は、鈴木委員長代理にも伺いたいです。

 なぜ一カ月も開かれないまま、代理としては何の取り組みも、せめて開こうとか、おかしいじゃないかとか、だって、SPEEDIの情報だって、個人的には云々とおっしゃいましたが、これは個人的にじゃないんですね。スピーディーにやるということを安全のために含み込んでやらねばならないわけです。

 簡単に伺います。

 なぜ一カ月も何のお声も上げられなかったのかという点です。お願いします。

鈴木参考人 御指摘の点、私自身、本当に反省しておりまして、実は、非常に原子力委員の中でも悩み込んだあげくの定例会を開かないということになったわけで、これは本当にもう一度原子力委員会の役割とは何だということを評価していただく必要があるかなと個人的には思っております。

 実際に、例えばSPEEDIの件にしましても、ほかの情報公開にいたしましても、個人的にはさっき申しましたように悩み多いことはあったんですけれども、やはり先ほど近藤委員長が申しましたように、とにかく現時点でできることは対策本部に対する支援ということで、それに徹底しようということで合意に達して、それが長期にわたってしまったということが、結果的には三回も定例会を飛ばすことになってしまった。そこが、結果的にはそういうことになってしまったわけですが、御指摘のとおり、反省はしております。

阿部委員 私は、過ちは起こり得るものとは思っていますが、それを今後どうなさるかということが非常に重要ですし、原子力政策というのは、これまで、だれもが安全性を担保しながらということは、どなたも、どんなスタンスに立って進めるという方も、私ども社民党はフェードアウト、もっと縮小していけという立場ですが、この立場の違いを超えて、現実の一致点は安全性であると思うわけです。

 そういう中で、先ほど来、皆さんの御議論を伺っておりますと、とにかく、この事故の原因が何で、なぜ対策がおくれたのか、なぜ原子力委員会が一カ月も開かれなかったのかは、すべて検証委員会にゆだねると。ここでまた丸投げ。

 私どもは、検証委員会は必要と思っております。そして、即刻立ち上げるべきだと思っております。実は、昨日も、官房長官の会見で、事故の収束見込みがあってからとおっしゃいますが、それでは遅いし、国民は納得できないと私は思います。

 なぜ委員会が開かれなかったのか、なぜSPEEDIはスピーディーに情報を伝えないのか。さっき吉野さんの質問にもありましたが、わざわざ風下に逃げてしまったわけです。私は、それを考えると、本当にこの検証委員会は即刻立ち上げる、今ある既存の原子力のためのいろいろな委員会は残念ながら国民の信を得ておりません、これだけのことがあったんだから。

 即刻立ち上げるべきだと、せめて近藤委員長、そして代理の鈴木先生は、総理に進言なり委員会としてのお考えをおまとめいただけませんか。どなたもおっしゃいました、検証委員会の重要性、早い方がいいと。どうでしょう、委員長。

近藤参考人 原子力委員会設置法二十四条にはもちろん政府に対する勧告権がございますので、私どもとして議論をいたしまして、それが適切とするところについては勧告ということもあり得るわけでございまして、心持ちは全く同じでございます。

 私どもも、即刻という言葉が適切かどうかわかりませんけれども、何より、現実に原子力発電所はまだ動いているところもあるわけですから、その方々にとって、あるいは世界の皆さんが実際に原子力発電所を動かしているわけですから、自分たちの原子炉に同じ問題があるのか、全く福島だけの問題だったのかということについての区別をなくして、安心して運転できないわけですから、このことについては、正しく原因究明をし、伝える。

 そして、今御指摘の原子力委員会の位置づけにつきましては、平常時の問題じゃなくて緊急時の問題なんです。緊急時に原子力委員会はいかなる役割を果たすかということについて、各委員から御指摘、御批判をいただいているわけですから、緊急時ということについて、日本のシステム全体として、まさにシステムがなかったということが今回よくわかったわけで、そういう日本における原子力緊急時のシステム全体を先ほど原子力災害特別措置法でカバーしていないことが多々見えたところについて、これまた緊急に見直す必要があるということもぜひ提言していきたいというふうに考え、その中で、原子力委員会とすれば、いかなるポジション、役割を果たすべきかということについても当然に言及されるべきと思っています。

阿部委員 直ちにかどうかは別にしてとは絶対おっしゃらないでいただきたい。今もって、ブレーキのない車に国民は乗っている。この思いは、本当に、きょう、皆さんがぜひ組織として今果たすべき役割なんだと思いますよ。ぜひ御提言いただきたいと思います。

 そして、あと皆さんに聞かねばいけないので、鈴木代理、いいでしょうか、即刻と御提言いただきたいが、お取りまとめは。

鈴木参考人 了解いたしました。即刻、定例会で議論して、みんなで決議したいと思います。

阿部委員 では、尾本委員にお伺いいたします。

 一体、委員は、炉心損傷あるいは溶融はいつお気づきになりましたか。そして、それを、個人としてはいろいろやられたのかもしれません、原子力安全委員会にも御提言されたのかもしれません。しかし、そうした事態、チェルノブイリであり、対応があり、IAEAでも学んでこられた、それをこの事故でいつお知りになったか、これをお願いします。

尾本参考人 事故の起きた当日の夜遅くには、非常に事態が深刻な状況に行っているということを電話連絡で知っておりました。具体的には、一号機で建屋内に入ることがもはや相当難しくなってきているようだという情報も、翌日には早いうちに知っておりました。

 それをもとにして一体何をしたのかというのが御質問の趣旨かと思いますが、私は個人的には、原子力発電所について知識のある専門家として東京電力の事態収束のチームの中に入って、その中でいろいろと議論を重ねてまいりました。また、現在においてもその活動は続けております。

 安全委員会等に対してしかるべき助言をしなかったのかということにつきましては、先ほど近藤委員長の方からもお話がありましたように、委員会のとるべき役割の中で、緊急に提言をすべきものというのはあるのかもしれませんが、それはそれで、例えば私どもの周辺にいる専門家、例えば環境放射線に関する専門家等と話し合いをとって、彼らなりにアクションをとるということについて話し合ってきたつもりであります。

阿部委員 今の御発言を聞いても、私は国民不在だと思います。それだけの危機があるなら、教えた上で、伝えた上で、全力を挙げるということに、先ほどのアンケート調査でもわかるように、国民は逆に冷静で、この先を一緒に考えようとしているわけです。ただ、隠されてしまえば、それほど深刻だと専門家が思っているときに、一方では非常に安易な憶測が飛びました。また、レベル7に上がったのも、実は三月十五から十七の線量に基づいていますが、実際に報道されたのは四月に入ってからでありました。これでは、情報の、国民との本当のコミュニケーションができないと思います。

 私は、次に秋庭委員にお伺いしたいと思いますけれども、非常に今現在も、単に立地の大熊や双葉や浪江の皆さんだけでなく、南相馬、飯舘、あるいは福島県、あるいは全国民、本当に、この原子力のリスクを正しく評価して、軽減できるものは軽減して、そして安全性をどう担保するかなど、皆深刻に真剣に見ていると思います。

 私は、とりわけこの原子力関係の事故では、被曝量といいますか受けた放射線の個人管理が必要だと思いますが、各避難所などをお訪ねになって、先ほどの風下に逃げてしまった方もあるわけです、この個人管理の状況について今後どうすべきか、お考えをお願いします。

秋庭参考人 個人管理のことですが、避難なさっている方たちは、各地でスクリーニングを受けていらっしゃいます。そして、そのスクリーニングの結果について証明書をいただいております。それをもとにして自分が被曝した量というのを自分で把握しているというところなんですが、先ほど申しましたように、決してそのことが、では、その量が自分の体にとってどれぐらい影響があるのかということ、ほとんどの方は実はそれほど深刻な影響を受けるほどの量を受けていないんですが、それ以上に不安に感じていらっしゃいますので、今必要なことは、この量はどれぐらいのものなのか、体にはどのぐらいの影響があるのかということをきちんとお知らせするということが大変重要だと思っております。

 そのことについて、では、私が思っているのにもかかわらず何をしたかと多分言われると思いますので、そのことをきちんと各方面にお願いして、迅速に避難所にそのことについて御説明する方を派遣してほしいということを申し上げたいというふうには思っています。

阿部委員 あくまでも、例えば発がん性がどのくらいふえるかとかは疫学的な調査でしかわからず、個人の感受性というのは全くまた違うところにあるわけです。原発のときもそうでした、相次ぐ原子力の事故のときも、必ず被曝手帳と個人管理、できればフィルムバッジみたいなものできちんと経年的に管理をしていく。

 今のように、何ミリシーベルトで安心、ここからは退去と、これを四角四面にやり続ける限り、本当のリスクマネジメントはできないと私は懸念していますので、ぜひ原子力委員会の中でも個人管理を徹底していくという観点を貫いていただきたいと思います。

 最後に、大庭参考人にお願いいたします。

 私は、アンケート調査などで、では原子力政策を続けるべきか否かと問われたときにフィフティー・フィフティーになる大きな理由の一つは、他の具体的なエネルギー政策の提案が実現可能性を持って、あるいは国の政策的な選択の優先順位を持って示されていない中でいろいろあると思います。さっき委員は原子力政策は当面続けねばならないとおっしゃいましたが、それは、ある意味真実かもしれないけれども、ある意味変わり得るんだと私は思うんです。

 特に、ドイツなどでは、エネルギー政策を環境・エネルギー省と、全体のエネルギー政策の中に原子力を位置づけているわけです。ここがない限り、相変わらず原発イエス、ノーが問われて、国民の選択肢も実は狭められていくと思いますが、この諸外国の状況と比較して、我が国の状況についての御意見を最後にお願いします。

大庭参考人 非常に大きな質問であるというふうに受けとめております。

 先ほど私が何度か述べております原子力についてのガバナンスシステムの改編の話とかかわるのですが、これは私個人の意見ですけれども、今の原子力政策は、確かに一つの大きなエネルギー政策の一部に位置づけられているものではあります。しかし、原子力というものの特殊なガバナンスというのが別にあって、その間の連携がうまくいっていないというのは、それは明らかです。これは、フランスにおいても、それから今阿部先生がおっしゃられたドイツにおいても、そのような総合的なエネルギー政策の観点から原子力を位置づけるというのは、もう当然のことであると思います。

 それから、もう一つ原子力について述べておかなければいけないのは、今、核セキュリティーということが非常に問題になっておりまして、すなわち、日本が原子力を導入した一九五〇年代と比べ、そのときはいわば研究開発ということにトピックが特化されていたわけですけれども、今は、実際に事業が行われ、かつ、九・一一以降に、世界的に核セキュリティーの問題というものも原子力を考える上で非常に大きな課題になってきています。

 そうしますと、まず総合的なエネルギー政策の中で原子力を位置づけるという視点と、それからそれ以外の、核セキュリティーといったほかの分野も含めた総合的な原子力行政というもの、これをどういうふうに統一してシステムの中でやっていくのかというのが今後の組織改編をする場合には課題になってくると思うんですね。そのことを勘案して、私としても、いろいろと考え、意見を述べていきたいというふうに考えています。

 以上です。

阿部委員 ハーバード大学のサンデル教授が、ぜひこれはあらゆる偏見を捨て、そして立場の違いを超えて深い議論をとおっしゃっていました。この委員会がそうした場を提供していただいたことを感謝して、質問を終わります。

川内委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して御礼を申し上げます。

 積極的に御提言をいただけますように。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十四分散会


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