衆議院

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第4号 平成23年5月19日(木曜日)

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平成二十三年五月十九日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 川内 博史君

   理事 阿知波吉信君 理事 稲見 哲男君

   理事 熊谷 貞俊君 理事 空本 誠喜君

   理事 津村 啓介君 理事 馳   浩君

   理事 松野 博一君 理事 遠藤 乙彦君

      石田 三示君    石津 政雄君

      石森 久嗣君    小川 淳也君

      大西 孝典君    太田 和美君

      勝又恒一郎君    金森  正君

      川島智太郎君    熊田 篤嗣君

      阪口 直人君    菅川  洋君

      平  智之君    竹田 光明君

      豊田潤多郎君    中川  治君

      野木  実君    本多 平直君

      山崎  誠君    柚木 道義君

      河井 克行君    河村 建夫君

      佐田玄一郎君    塩谷  立君

      谷  公一君    吉野 正芳君

      吉井 英勝君    阿部 知子君

    …………………………………

   国務大臣

   (科学技術政策担当)

   (宇宙開発担当)     玄葉光一郎君

   内閣府副大臣       平野 達男君

   文部科学副大臣      笹木 竜三君

   内閣府大臣政務官     和田 隆志君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 武藤 義哉君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    小寺 次郎君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局次長)      渡辺  格君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少年総括官)          有松 育子君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      横尾 英博君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     寺坂 信昭君

   参考人

   (原子力委員会委員長)  近藤 駿介君

   参考人

   (原子力安全委員会委員長)            班目 春樹君

   参考人

   (独立行政法人日本原子力研究開発機構理事長)   鈴木 篤之君

   衆議院調査局科学技術・イノベーション推進特別調査室長           上妻 博明君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十九日

 辞任         補欠選任

  玉置 公良君     大西 孝典君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 孝典君     玉置 公良君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件


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     ――――◇―――――

川内委員長 これより会議を開きます。

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として原子力委員会委員長近藤駿介君、原子力安全委員会委員長班目春樹君及び独立行政法人日本原子力研究開発機構理事長鈴木篤之君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として外務省大臣官房審議官武藤義哉君、外務省欧州局長小寺次郎君、文部科学省科学技術・学術政策局次長渡辺格君、文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少年総括官有松育子君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長横尾英博君及び資源エネルギー庁原子力安全・保安院長寺坂信昭君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

川内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

川内委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平智之君。

平(智)委員 おはようございます。民主党の平智之です。

 本日は、第一原発についての質問をさせていただきます。

 冒頭、質問の機会をいただきましたことを委員会の与野党理事の皆さんに御礼申し上げます。そしてまた、朝一番からお集まりをいただきました、御答弁いただきます先生方、関係各位の皆さんに御礼を申し上げます。大変お答えになりにくい質問も幾つもさせていただくと思いますが、日本の原子力政策や科学技術の政策に深くかかわる内容でございますので、簡潔な、そして明確な答弁をお願いいたします。

 それでは、まず初めの質問でございますが、原子力の用語にインベントリーという言葉がございます。これは直訳しますと在庫でありますが、どれだけのインベントリー、放射能の在庫が炉並びにプールの中に残っているのか。これは、原子力の管理の中でも重要な用語となっております。

 そこで、最初の質問は、三月十一日の発災以前、直前に、炉とプールにどれだけの放射能があったのか、インベントリーがあったのか。そして、それが現在、本日で、どの程度残っているのか。この差分が外に出た放射能ということになります。この点をお聞きいたします。

寺坂政府参考人 お答え申し上げます。

 三月十一日よりも前のいわゆるインベントリー、推定と申しますか、そういう部分が入りますけれども、炉にありますもの、それからプールにありますもの、合わせますと、私どもの評価の推定の中におきますと、おおむね五・七掛ける十の二十乗ベクレル相当、そのような推計を持っておるものでございます。

川内委員長 院長、質問は、今はどうなっているかということもですよ。

寺坂政府参考人 大変失礼いたしました。

 それから、今現在と申しましょうか、どのくらい出たかということでございますけれども、これは四月十二日に、いわゆるINES評価として発表したものでございますけれども、私どもの概算におきましては、沃素換算におきまして三・七掛ける十の十七乗、三十七万テラベクレル相当のものというふうに評価をしてございまして、その後につきましては評価をしておりません。

 その後におきましては、モニタリングポスト、そういったものの値というものは非常に低いレベルで安定をしておりまして、放出量そのものがゼロというふうには考えておりませんけれども、先ほど申し上げました十の十七乗ベクレル相当、そういったものからいきますと、相当低い単位のけた数のものというふうに考えてございますが、いずれにいたしましても、四月十二日時点では先ほど申し上げましたことで、現在時点については推計の数字を持ち合わせておりません。

平(智)委員 モニタリングポストで非常に微量な量というのは、それは水蒸気で外に出たもの、スカイシャインから落ちてきたもの、その部分だけですね。海に出たものや地中に流れたものは一切評価されていない、そういうことになりますが、それでよろしいですか。

寺坂政府参考人 先ほど申し上げました四月十二日の数字、今のモニタリングポスト、これは大気中のものでございまして、委員御指摘のとおり、水中といいましょうか、水の関係についての数字は入ってございません。

平(智)委員 INESで評価をレベル7に、つまりチェルノブイリ並みに上げられたのは四月十二日ですが、そのときの記者発表の資料に、保安院みずからが今後も継続して情報を収集、評価していくとはっきり明言されておりますが、一月たって、その後も一切収集と評価をされていない、そういうことでよろしいですか。

寺坂政府参考人 もともと四月十二日の数字は推計によるものでございますけれども、その後におきましては、具体的な形、モニタリングポストの値とかそういったものは常に見ておりますけれども、放出量、そういった意味での作業については、今現在では行ってございません。

平(智)委員 これは極めて重大なことだと思います。今私どもが相手にしているのは、もうあれは発電装置でもなく、あるいは冷却装置と呼ぶものでもなく、放射能を閉じ込めるための対象のはずです。

 そうなれば、私たちが相手にしているのは、あとどれだけインベントリー、放射能が残っているのか、それを一ベクレルたりとも外へ出さないというプロジェクトを進めているんですよ。そのときに、そのインベントリーを一切その後収集、管理していないということは、マネジメントとしてあり得ないと思いますね。

 これは毎回、毎週単位でもいいですから、常に評価し、それを国民に公表するべきだ、そのことを明確にお願いしますが、いかがですか。

寺坂政府参考人 もともと四月十二日の数字につきましても、暫定の評価、推計ということで出しているものでございます。今の委員の御指摘も踏まえまして、しっかりとフォロー、そういった作業は進めてまいりたいと思います。

 いずれにいたしましても、どこかの段階におきまして、INESの評価の確定というものももちろんございますし、今委員御指摘のような点も含めまして、作業は進めていくことが必要だと思います。御指摘は十分意識して、これから作業してまいりたいと思います。

平(智)委員 いや、私は、毎週単位で評価し、公表されるかというふうにお聞きしたわけです。お願いします。

寺坂政府参考人 もともとの推計の作業というもの、いろいろな仮定、原子炉におけますデータ、そういったものも踏まえての推計でございますので、限界はあるかと思いますけれども、どのような形で行うのがいいのか、そういったことも含めて、しっかりと検討してまいりたいと思います。

平(智)委員 そもそも核種は千を超えるわけでありますし、沃素、セシウムだけじゃなくて多くの核種がございますから、その推計が大変であることは重々承知をしておりますけれども、しかし、大変な事態に直面しているわけですから、その大変な作業をぜひよろしくお願いします。

 私は、毎週単位の公表というものを要望いたします。できるかどうかは、追って委員会に報告をしてください。

 それから、INESの評価のときに、チェルノブイリ並みと評価をしたときには、千二百も超える核種の中のセシウムと沃素だけについて評価をされたわけであります。しかも、それも沃素に換算値を合わせて、セシウムと沃素、それらのベクレルを沃素に換算を合わせて、チェルノブイリの結果に対して四月十二日段階で十分の一であったということでありますね。

 十分の一ではあるけれども、レベルとしては7に該当する、そういうことをおっしゃいましたが、きょう私は二番目の質問で、それが今、十分の一から何分の一にふえているかということをお聞きしようと思っていましたが、それは現在わからないということでよろしいですか。

寺坂政府参考人 現時点で十二日の数字がどこまで拡大をしているのか、先ほど申し上げましたように、大きなけた数ではないと見てございますけれども、具体的な推計数字については今持ち合わせてございません。

平(智)委員 これは必ず、推定ということはモデルで計算できるんですから、出せないということがあり得ないわけであります。出してください。

 それから、十分の一という推計でありますけれども、沃素に換算すると一から二%ということだったと記事の方に書いてあります。チェルノブイリの十分の一の、今回第一原発から出た沃素換算のセシウムと沃素が一から二%外へ出た。ということは、残り九八から九九%は中にインベントリー、在庫されているということです。

 私どもは、第一原発をコントロールしない限りは、残りの九八%が外へ出てくる危険性に今直面している、こういう解釈をしなければなりません。この九八%が出ました場合には、簡単な計算になりますが、チェルノブイリの十倍の放射能を今在庫しているという考え方になります。ですから、どれだけの放射能、インベントリーがあるのかを常に公表することがいかに重要かということを改めてここで強調しておきたいというふうに思います。

 それでは、この質問を終わりまして、次に、水のリスクについて私は御質問申し上げたいというふうに思います。

 きょうお示しをしました、お手持ちの資料の二の方をごらんいただきたいんですが、今回のこの第一原発の収束に向けた道筋で何が目的なのかというと、冷やすことではないということをちょっとお尋ねしたいと思います。目的は、閉じ込めることではないのですかということです。

 原子力の炉の管理の三原則は、とめる、冷やす、閉じ込めるであります。とめるということは、地震のとき、緊急スクラムで制御棒が上がって、ラッチでとめて、とめるということには成功いたしました。

 それは他の原発でも同じでございましたが、その後、第一原発については冷やすということを、DGが喪失して、もともとあったシステムが動かないので、消防車でじゃばじゃばかけるということを続けています。今も、流れた水はもとに戻すことはできず、かけて、蒸気、フィード・アンド・ブリードをずっと続けておりますけれども、この結果、汚染がどんどん拡大している。

 閉じ込める、つまり汚染の拡大をとめるために冷やしているはずが、冷やしている行為自体が汚染を拡大するという結果を招いているということについて、とめる、冷やす、閉じ込めるの三原則自体の運用が誤っているのではないかということを感じておりますが、この点について、班目安全委員長にお尋ねします。

班目参考人 とめる、冷やす、閉じ込めるの原則が大切だということはおっしゃるとおりです。

 とめるということに関しましては、最初に制御棒が挿入されましたので、終わっております。

 問題は冷やすでございますけれども、今現在も必ずしも十分冷やされているかどうかということに関しては、我々、予断を持っておりません。したがって、注水をやめるというわけにはいかない、こういう認識は持っております。

 ただ、平議員おっしゃるとおり、閉じ込めるということも非常に大切ですので、そのあたりは適切なバランスを持ってやるべきだと思うというのが私どもの考え方であり、そういう意味では、海水などに流れ出すことがないように、海水のモニタリングもしっかりやるように等々の助言を行っているというところでございます。

平(智)委員 注水をやめるわけにはいかないが、汚染の拡大もとめなければならないというところで、最適化を図っているということはそのとおりであると思いますが、今のところ、いかがですか。汚染の拡大の被害の甚大さは、私は、はかり知れないものだと思っています。

 今回、道筋と呼ばれている、この後、その方が通りますので工程表と呼ばせていただきますが、工程表に書かれていることは、漏れてきた水をもう一回戻していく。戻していくときに、今その系統を構成しておられますが、戻すときに、ぐるぐる回しているとどんどん濃度が高くなるから、戻す前に一回除染をするということですね。そのときには、ゼオライトなり逆浸透膜によって放射性物質を取って、そしてやや下げて戻す、また汚染されてきたものをまた除染して戻す、この繰り返しをするとおっしゃっていますが、問題は、そのゼオライトや逆浸透膜でつくったものです。放射性物質を取ったそのものが超高濃度汚染物質になるわけですね。

 その物質の処理について、計画をいろいろ見ておりますが、整合性を見ることができないと私は考えておりますが、本当にその対策は可能なんですか。対策のポンチ絵はありますよ。その対策は本当に可能かどうか、寺坂院長。

寺坂政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、汚染水の処理について、当面の措置も含めましてさまざまな対応を進めてきているところでございますけれども、最終的には、今御指摘ございましたような、廃棄物として排出されるものが残るわけでございます。これらの廃棄物に関しましては、当面、厳重な管理のもと、敷地内において貯蔵することになるというふうに考えてございます。

 将来的にこれをどのように処分を行っていくのか、これにつきましては、どういう形の処分形態がよいのか、それから、安全対策上どのような措置、手当てをすることが必要なのか、そういったことにつきましては、今、具体的な確定的なものを持っているわけではございません。今後、実際に排出されてくるような、そういう廃棄物の特性などを踏まえまして検討していくことが大変重要な課題というふうに認識をしてございます。

平(智)委員 今の御答弁で明らかになったことは、漏れてきた水をもとに戻すという今の道筋の大根本、それが今、長期冷却の構築の真ん中、柱のプロジェクトですから、ところが、それ自体を実現させるための、除染した後の高濃度汚染物質をどうするかについては、まだ対策はない、まだ明らかではないということをおっしゃったわけであります。私は、このことを指摘しているわけであります。

 冷やして閉じ込める、そのために水をかける、班目委員長も注水せざるを得ないとおっしゃったが、その冷やしている行為自体がこの後の長期冷却の構築の妨げになっているじゃありませんか。もう既にこの段階で破綻をしているという可能性がないかということを、もう一度、班目委員長にお聞きします。

班目参考人 寺坂保安院長の方からも答弁がありましたように、現在のところ、この汚染水をどういうふうに処理するかという技術は明確でないのは事実でございます。したがいまして、これからの技術開発によって、まさに平議員のおっしゃるようなクローズドなサイクルを構築しなきゃいけない、これが非常に緊急な課題であるというふうに認識してございます。

平(智)委員 プラントの常識から見て、壊れていくプラントの中で完全に閉じたクローズドな仕組みをつくることは極めて難しいだろうと言われていますから、クローズドは無理だろうと私は思います、これは私の個人的感想ですが。

 そこで、資料三をごらんいただきたいんですけれども、注水の水がどうなっているかのモデルであります。

 注水された水は、一部は蒸気になる。そして、空中に飛散していくわけですね。そしてもう一つは、たまり水と言われている。建屋の地下にたまっていくわけです。それが、炉の建屋であったりタービン建屋であったりサブドレーンであったりします。そのところにたまたまたまってくるもの、そしてもう一つは、行方不明の水です。

 現在、恐らく一日五百トンぐらい流しておられると思いますが、この三つの水のバランスは今どうなっていますか。

寺坂政府参考人 注水の量に関しましては、日によって違いがございまして、昨日の数字は、先ほど委員がおっしゃられました五百トン相当よりも少し多い数字でございまして、七百五十一トン相当というふうに見てございます。

 そういう注水いたしましたものが、先ほどございました蒸発あるいはたまり水、そういったことになるわけでございます。大体、蒸発の量に関しましては、その日の注水量、そういったものとの関係があるわけでございますけれども、その燃料の現時点での崩壊熱、そういったものにつきまして、一定の仮定で試算いたしますと、大体その三分の一前後は蒸発していくのではないかというふうに考えてございます。ただ、蒸発したものがまた戻ってくるとか、そういった数字もございまして、あと、たまり水になるとか、そういったことがございます。

 そういったものがございますので、全体としてどういうバランスになるのかというのは、たまり水の現在の量、ここにも津波でもともと入っている量とかありますので、具体的に申し上げられる、そういう段階にございません。

平(智)委員 要するに、今、水棺作戦をやったので、五百が七百五十一にふえたんだと思いますけれども、その注水を日々している量のうち、どれだけがたまり水で、今、工程表ではそれを戻そうとしているんですね。しかしながら、蒸気になって空中に飛散していって地面にどんどん落ちていく量が毎日どれぐらいあって、そして行方不明の水がどれぐらいあるかは把握をされていないということであります。これを今保安院がはっきりと明言されたわけであります。

 私は、この資料三に書かせていただきましたように、行方不明の水というのは、土壌を汚染する、つまり土壌の中にとまるものと、地下の凝灰岩の、地下水が横に広がっていく地下水の層まで行くもの、つまり地下水に浸潤していくものと、それから海洋に排水溝を通して流れていくもの、この三つに分かれるだろうと考えられます。

 問題は、今回の道筋で言われているように、たまり水を戻せば閉じたループになるんだという誤解があるということです。たまり水を幾ら戻しても、まず除染のところで今破綻しているということと、もしうまくいったとしても、漏れ水は、行方不明の水は依然として今後も生産され続ける。しかも、プラントは日々刻々壊れていきますから、漏れていく行方不明の水はふえていくはずなんです。

 そうすると、今後、六カ月や九カ月という期間がなされていますけれども、十年単位でこれから第一原発とつき合っていく中で永遠にこの行方不明の水は出され続ける、しかもふえていくという単純な考え方に至ってしまいますが、その解釈はいかがですか。これは班目委員長にお聞きします。

班目参考人 非常に正しい指摘だと思います。

 そういう意味では、まずはマスバランスといいますか、現在注入している水がどのようになっているのかということをまず把握しなきゃいけない。残念ながら、現在のところ行方不明の水の量がどれだけであるかということすら把握できていない状態では大変なことになりますので、至急これには手をつけるべきだというふうに考えます。

平(智)委員 原子力安全委員会は、まさにその点を官邸に対して、原災法に基づく対策本部にアドバイスをするお役目でありますから、ぜひ、その御意見を強く強く対策本部に助言をいただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、三つ目の質問に移ります。

 まず最初に、ちょっと確認をしておきたいのですが、燃料棒が熱くなると放射能が高くなるという通説があるのですが、燃料棒が熱くなると放射能レベルが高くなるということはありますか、班目委員長。

班目参考人 放射能自体というか放射性物質自体が熱くならなくてもいいんですが、例えば、水の温度が上がれば沃素がそれだけ出てきます。やはり、セシウムなども揮発性のものが出てきます。そういう意味では、冷却している水の温度が高いか低いかによって空気中に出てくる放射性物質の量は変化する、これは事実でございます。

平(智)委員 熱くなると、極端に放射線の量が高くなるという話がよくあるものですから、今おっしゃったのは、要するに、放射性物質、FPがやや出てくるということですから、それはコンテナの中に閉じ込めておけば出てこないわけでありますから、まず熱くなると放射線量が高くなるというのは私は誤解であるというふうに申し上げておきたいと思います。それでよろしいですね。

 それで、ちょっとお聞きをしたいのですが、この資料五の方を先にごらんいただきたいんですけれども、万一、大きな余震か、あるいは改めて津波が来るようなことがあって、現在再び構成した注水のポンプ、外部電源が全部喪失した場合です。

 その場合に何が起こるかということですが、明らかに、私が資料四に書かせていただきましたように、圧力容器の中のシュラウドの中間地点に存在しているかもしれないもの、圧力容器の下にたまっているかもしれないもの、そして格納容器の下のペデスタルと呼ばれるコンクリートのたたきの上に落ちたもの、この三つの場所に存在する可能性があるわけですが、注水がとまってしまったら、ずっとこの燃料が熱くなって、全部落ちるはずです。つまり、資料四の右側に書いているように、汚染源が一個に固まってくるということであります。その後です、その後を教えてください。

 ペデスタルに落ちてから、資料五にありますように、十メートルにわたるコンクリートの壁をずっと下へ下がっていって、さらに非透水性の岩盤層まで至る、ここまでに至る時間はどれぐらいだとお考えになるでしょうか。

寺坂政府参考人 今委員の御質問の件につきましては、いろいろな条件によって異なりますので、なかなか一概には申し上げられないというふうに考えてございます。

 現在は、まさに注水によりまして、溶融したデブリ、塊、こういったものが継続的にコンクリートなどを侵食している可能性は小さいというふうに考えてございます。何らかの原因で注水が不能となった場合に侵食する可能性につきましては否定できませんけれども、既に二カ月を経過して、崩壊熱も小さくなってきているというふうに考えてございますので、注水を早期に復旧して、大きな損傷を引き起こさないようにすることが大切と考えてございます。

平(智)委員 全くお答えをいただけませんでした。

 私がここで指摘をしたかったことは、時間がありませんので結論から申しますと、コンクリートの十メートルの層、大きな熱容量です、この層を熱い燃料の溶融デブリが下に落ちていくまでの間、どれぐらいの時間があるのか。例えば半年あるのか、一年あるのか。その間にもし注水をやらなかった場合、それ以上汚染水はふえないんですから、その間に対策がとれるのではないかということであります。しかも、炉内のどこにあるかわからない燃料の熱源、汚染源が散在するよりは、一カ所にたまっている方が管理がしやすいのではないですかということです。

 班目委員長に申し上げたとおり、水を注水するしかないとおっしゃっているが、それによって汚染が拡大するということ、このことのデメリットの方がはるかに大きく、一たん注水をとめて、そしてその間、ずっと下へ潜っていく間にすべての掃除をする、その後もう一回注水に関して考えるという選択肢はないかということをきょうここで御提案しておきたい。この点はまた追って、改めて別の場所で議論させていただきたいと思います。

 そこで、これは文科省に対してお聞きをしたいのですが、WSPEEDIというものがあります。これは、現在SPEEDIが二十―三十キロの範囲、狭い範囲を想定していますが、日本じゅうを想定することができるWSPEEDIというシステムがJAEA、日本原子力研究開発機構にございますが、このデータを、発災から本日に至るまでの積分値としてどの程度汚染が進んでいるかの情報を出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

笹木副大臣 今の平委員の御質問なんですが、このWSPEEDIは、日本原子力研究開発機構、研究の開発の一環で進めているわけです。現状では、その数値なんかも広い範囲でいろいろ推定ができるんですが、その数値はSPEEDIに比べてもかなり粗いということで、原子力防災対策においてその活用を位置づけられてはいない、これが現状です。

 もう一つ、かなり日にちがかかる、結果を出すのに数日から一週間ぐらい日にちがかかるので、避難の指示とかに対して、なかなか現状では使えるものにはなっていない、これが今現在の状態です。

 ですから、委員がおっしゃるような条件条件に従って出すといっても、その結果はなかなかSPEEDIに比べても数値的には信頼性がまだそう高くないということで、対応する形になっておりません。

平(智)委員 副大臣、それでよろしいわけです。二週間かかろうが計算をいただきたいし、緊急じゃないんです、とにかく現状を把握するための情報としてWSPEEDIを出していただきたい。それから、精度が落ちても結構なんです。目安として、日本じゅうの、それぞれの核種ごとのベクレルあるいは総合シーベルトでもいいですが、これを出していただきたいということであります。

 もう一度、御答弁をお願いします。

笹木副大臣 まず、現状でやっていることだけちょっとつけ加えますが、空間線量については、各都道府県、全都道府県、これは一時間ごとの数値を毎日公開しておりまして、一日の積算量も、これも今のものとは別に、毎日、研究機関とか大学機関において一日ごとの空間の線量率も出している。沃素、セシウムについては、蛇口水、土壌の調査、これも各都道府県ごとに出している。これで、今いろいろ数値は公開しているんですが、WSPEEDIについては、現状ではお話ししたとおりですが、さらにちょっと検討はしてみます。おっしゃることに従って、検討はしてみます。

平(智)委員 何とぞ御検討いただきたいと思います。それぞれのモニタリングポストで配っているものは場所場所の特異値になりますので、統一した見解で、シミュレーションによるモデルが要るんです。その結果が必要なはずなんです。

 最後になりますが、玄葉大臣に、ここまでの議論についての御所見と、そして原子力政策、これから日本の政策は極めて重要だと思いますが、今のお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

玄葉国務大臣 平委員のこれまでのプラントの問題あるいは原発の被災者についてのさまざまな御指摘、特にプラントの問題は、専門的な議論を極めて論理的にわかりやすく御指摘をいただいて、お世辞じゃなく本当に、さすが平さんだなと思いながら聞いておりました。

 私も災対本部に出させていただいて、班目委員長も恐らく御記憶だと思いますけれども、最初に指摘をさせてもらったのは、複数の選択肢を持って臨んでほしいと。電源喪失の事態だったあの晩でありますけれども、大事なことは、常に複数の選択肢を持って対策に臨む。そしてあとは、私が気をつけたのは、専門家じゃありませんから、私は余り中途半端な口出しを逆にしないで、総力戦、そういう体制づくりのために自分なりに努力をした。同時に、なかなか当初は目が届かなかった原発被災者の問題に対しての、いわば支援の方に尽力をさせていただいた次第であります。

 今いろいろと御指摘いただきましたが、そういった御指摘も含めて、これから原発の事故の対応に万全を期す、そのためにも、やはり情報をオープンにする、オープンにして、国会でも大いに御議論いただいて、そしてまさに知見を結集して総力戦で事に当たる、そういうことが大切だというふうに思いました。

 ありがとうございました。

平(智)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

川内委員長 寺坂さん、平さんが冒頭質問したインベントリーですか、現時点におけるインベントリー、それから放出された放射能の量、本委員会に報告をしていただくことを求めておきます。

 次に、石森久嗣君。

石森委員 おはようございます。民主党の石森久嗣でございます。本日は貴重な時間をいただきまして、ありがとうございます。

 この委員会、技術開発、技術イノベーション、一たび間違ってしまえば天災が人災に変わってしまう、この委員会は本当に重要な立場をこれから担うのではないかなというふうに思っているところでございます。

 まず冒頭、玄葉大臣にお伺いしたいと思います。

 被災地出身の議員でもあられ、今回の被災、震災、津波そして原発事故は三重の苦しみではなかったかというふうに思っております。本当にお見舞いを申し上げたいと思います。

 この状況を受け、先日、菅総理は五月六日、浜岡原子力発電所全面停止を決定されました。そして、十一日はエネルギー基本計画の白紙を決定いたしました。

 しかし、昨日、十八日午後、総理官邸におきまして、定期検査で運転停止中の原子力発電所については、安全措置がきちんとされたものは従来方針どおり稼働を認める、そのように述べられました。

 一転このような発言をされた総理、被災地でもあり、原発を抱える福島出身の大臣としてどんなふうに思われているか、まずは冒頭お聞きしたいと思います。

玄葉国務大臣 被災地の出身でもある玄葉に聞く、こういうお話でございますから、あえて申し上げれば、福島県民の原発に対する県民感情というのは、なかなか言葉にできないほどの極めて複雑な思いを持っているということは、冒頭申し上げたいというふうに思います。

 その上で、エネルギー基本政策を見直ししていく、実は、これは新成長戦略実現会議、私が国家戦略担当大臣として所管をする、その会議で基本的な方向を決めていこう、こういうふうに考えているところであります。

 その上で、まず大切なことは、これは総理もおっしゃっておられますけれども、再生可能エネルギーなどの新エネルギー、あるいはエネルギーの絶対量そのものを省エネ技術等で削減していく、あるいは発電効率を高めていく、そういうことがまず大切だというふうに思います。同時に、やはり、経済のリスクとか電力の需給の問題を考え合わせれば、現実も踏まえていかないといけないだろう。そういう意味で、一定の工程表をこれからつくり上げていかなければならないんだろう。

 原発を稼働させるに当たっては、新しい安全基準で稼働させる。その間に、まずは短期、中長期に分けて、短期的には新エネ、省エネの既存技術の集中投入を図る。中長期的には革新的な技術を開発する。その革新的技術の開発のスピードとの競争にこの原発の問題というのは一つはなるのかな、そう考えておりまして、ここは一種の逆転の発想で、我が国は、例えば再生可能エネルギーの導入先進国であると言われているようなドイツであっても、私から見れば、その割合は日本と同じですから、旧パラダイムであります。でき得るだけ新しいパラダイムにシフトできるような、そんな体制と工程表ができるように、私として努力したいな、そう考えているところでございます。

石森委員 ありがとうございます。

 何しろ国民の皆様、特に福島近辺、私も栃木県でございますが、原発の放射能被害に本当におびえながら生活をされている方々に対しまして、ぜひ被災地の代表として、玄葉大臣にはこのイノベーションをしっかりと引っ張っていただきたいというふうに思います。

 それでは、私の方、お手元に配らせていただきました資料の一ページ目にあります各電源の発電コストについて、若干お尋ねをさせていただきたいと思います。

 これを見ると、太陽光が極めて高い。これは一キロワットアワーに対する単価でございます。四十三円から四十九円。片や原子力は五円―六円と非常に単価が安いということで、これを見て、原子力は安全で安心でと言われて、そしてなおかつ単価も安い、そしてクリーンエネルギーだと言えば、どこの市町村も何となく手を挙げるのではないかな、そして、国民としてもやはり原子力はエネルギー政策の中心に持っていくべきだというふうにだれもが思うのではないかと思いますが、何となくここに違和感を私は感じております。

 その違和感、このコスト、発電コストの計算なんですけれども、聞くところによりますと、五円から六円、極めて低いコストになっておりますけれども、簡単に言えば、建設費、大体一基当たり三千億円から五千億円と言われておりますが、資本費、プラス燃料費、そして運転維持費、ランニングコストを足して、それを発電電力量で割ったものが発電コストと言われているわけであります。

 このウラン燃料、一炉心当たり二百四十億円と言われております。十三カ月に一回原子炉をとめて、そして三カ月間点検をする、それをずっと繰り返しながらやっているわけでございますけれども、例えば、まず、一炉心当たり、年間のウランのコストはどれぐらいになるんでしょうか、お聞きしたいと思います。

横尾政府参考人 済みません、一炉心当たりのウランのコスト、通告になかったものですから今手元に用意をしておりません。今、調べてみます。(石森委員「年間のです。年間の」と呼ぶ)年間、済みません、年間の、これはBWR等でやりますと、千百十万キロワット級の原子炉で約二百四十億円になります。

石森委員 それは私が答えたことでございまして、ウランを年間でどれぐらい消費し、それがどれぐらいのコストになっているかをお聞きしているんです。

川内委員長 横尾さん、資料はないの。ないならないと早く言って、後で。

横尾政府参考人 済みません、今手元にないものですから、後ほど御報告に参りたいと思います。

石森委員 わかりました。

 一炉心当たり二百四十億円ということでございますけれども、これは単純に計算すれば出てくることだと思いますが、では後ほどお伺いしたいと思います。

 先ほどお話ししました建設費、燃料費、ランニングコスト、そのほかにいろいろなお金がかかっている、そのように感じているところでございます。

 例えば、研究開発に対しましては、独立行政法人原子力研究開発機構、JAEAについては年間で二千億円の国費が投入されている、そのように言われております。この研究開発費が発電コストに入らないということは、先日もお伺いいたしました。

 でも、実際に、例えば風力あるいは太陽光、このような発電に対しましては各企業がみずから研究をされている、もちろん大学でも研究をされておりますけれども、メーンではやはり企業が研究をされているということでございますから、私は、こういう研究開発費もこの発電コストに含めるべきではないかな、そのように考えているところでございます。

 また、そのほかには、よく皆さんも御存じのとおり、電源三法交付金、これがやはり多く言われております。実は、このパンフレット、「電源立地制度の概要」というものがつくられておりまして、この二ページ目には「原子力発電所が建設される市町村等には、電源三法交付金による財源効果がもたらされます。」というふうに書いております。工程表は、四十五年間で各都道府県に対しましてこのような交付金が出ますよという非常においしいお話がこのように書かれております。

 年間でどれぐらいの交付金、二十三年度で構いませんので、どの程度この交付金が出ているんでしょうか、教えていただきたいと思います。

横尾政府参考人 電源三法の交付金でございますが、二十三年度の予算の数字を御報告いたしますと、一千二百九十九億円でございます。

石森委員 一千二百億円、これは電源コストの方には含まれておられるんでしょうか。

横尾政府参考人 今申し上げた電源三法の交付金及び補助金も若干入ってございますが、これにつきましては、電源ごとになかなか切り分けも難しいということから、先ほど先生がお話しになりましたコストには入れてはございません。

石森委員 電源コスト、非常に低コストと言われている原子力の中には、やはり含まれていない部分が多くあるというふうに思います。

 国民の皆様に、単に電源コスト、建設費、運転、燃料費だけではなくて、こういうこともある程度わかるようにしていかないと、原子力発電、原子力がエネルギー政策の中心になっていくというのは、本当にこれから進められるのかと非常に疑問が残るところでございますので、しっかりこの辺は説明をしていただければというふうに思います。

 各市町村がこの交付金の工程表を見れば、悪のささやきとは言いませんけれども、だれもが何となく手を伸ばしたくなる。一つ建設すれば、結局は、十年間、スタートするまでの交付金は非常に高いけれども、そこからの減額というのが極めて強いために、また二基目、そしてまた三基目、四基目と、福島第一原発も六基ありますが、七基目、八基目がもう既に建設予定になっております。

 そういう状況を考えますと、世界的にも日本の原子力というのは一カ所に集中している。これはデータを見れば皆さんおわかりだと思いますけれども、一カ所に集中している。なぜこうなっているのかということを、この委員会も含めて、やはりこれからしっかり説明していかなければいけないのではないかなと思うところでございます。

 さて、次の質問に移らせていただきます。使用済みの燃料でございます。

 我が国の使用済み燃料は、各原子力発電所あるいは六ケ所村の方に、使用済みプールに保存されております。お手元の方に配らせていただきましたけれども、そこには、今現在、どれぐらいの管理容量があるのか、そして貯蔵量がどれぐらいになっているのかということが記載をされております。

 この数字、そして貯蔵量の余力、あと何年ぐらい、例えば、今の原子力発電所が回転していった、稼働されていったときに、このプールはどれぐらいためる容量があるのか、お答えいただければと思います。

横尾政府参考人 二十三年三月末時点で、各発電所に一万三千九百二十トン保管されておりまして、保管容量から考えますと、各発電所の容量は残り約七千トンでございます。大体一年当たり一千トン程度使用済み燃料が発生をするというふうに言われてございますので、六ケ所の再処理工場にこれから仮に使用済み燃料を全く搬出できないと仮定しますと、各発電所で状況は違いますけれども、全体で約七年分ということになります。

 また、ちなみに、今、青森県むつ市に使用済み燃料の中間貯蔵施設という施設を建設中でございます。これが完成すればトータル五千トンの容量になりますので、先ほどの七年分にこの五年分が加わるという格好になります。

石森委員 この表ですと、一回取りかえるたびに年間一千三百四十トンウランが出るというふうに書かれておりますが、千トンでよろしいんですね。

横尾政府参考人 十三カ月の運転で三カ月の定検で一取りかえ分十六カ月になりますので、これを十二カ月で割ると千トンになるということでございます。

石森委員 わかりました。

 残すところ七年程度しかないという状況を踏まえて、以前は、使用済みですね、使用済み燃料という表現をしないといつも怒られてしまうんですけれども、一九六九年から二〇一一年、ことしまでフランスで、また、イギリスでは一九九〇年から一九九九年まで、日本の使用済み燃料をイギリス、フランスにお願いして再処理されていたというふうに聞いております。

 これは、例えば、一トン当たりの使用済み燃料を再処理するのにどれぐらいのお金がかかるのか、そして、今までどれぐらいの量の使用済み燃料をフランスあるいはイギリスで処理していただいていたのか、お願いいたします。

横尾政府参考人 今先生御指摘の、イギリス、フランスに再処理を委託しておりました直接のコストについては把握をしてございませんが、平成十六年一月に、私ども、先ほど、コストの計算をしたコスト等検討小委員会の報告で、当時委託をしておりましたフランスのアレバ社の再処理単価として、一トン当たり一・八三億円という推定になってございます。

 それから、フランスとイギリスに再処理を委託しました契約量でいいますと、七千百三十トンでございまして、フランス分はすべて完了して、イギリスもほとんど済んでございます。

石森委員 そうすると、かなりな金額をかけてほかの国に再処理をお願いしていた。これを、年間はともかくとしても、このコストは、先ほどお話ししております発電コストに含まれているんでしょうか。

横尾政府参考人 先ほどの原子力発電のコストには、この再処理のコストも含めて計算をしてございます。

石森委員 昨日お伺いしたときに、このフランスあるいはイギリスで再処理をお願いしているところのコストは含まれていないという御回答をいただいていたんですが、今、含まれているとおっしゃっておられましたけれども、どちらでしょうか。

横尾政府参考人 済みません。舌足らずでございました。

 先ほどの五円から六円というときには、再処理のコストというものも含んでございます。この再処理のコストは、日本の六ケ所工場で今後やるということを想定した上で、その再処理分を含んでいるということでございます。

 フランスで、海外で再処理をお願いした場合のコストも、これは推計でしかございませんが、大体ほぼ同額のコストであるというふうに承知をしております。

石森委員 要するに、これから核燃料サイクルを回すということを前提にしたコストであるということで、以前というか今もそうですけれども、このサイクルが回っていない、MOX燃料がつくられていないこの状況での数値ではないはずなのにもかかわらず、この載っている表については、恐らくこれから六ケ所村で核燃料サイクルが回ることを前提とした数値ということでありますね。

 そうしますと、例えば太陽光発電については将来推計のものは入っていない。この四十三円から四十九円というのは、太陽光パネルが二百三十万円、それを現実に年間に換算して一キロワットアワーに計算した数字であって、片や原子力の方は、今後、燃料サイクルが回るということを前提とした上での数字。でも今は回っていない。でも、それはフランスやイギリスにお願いした再処理と同じコストだということをおっしゃりたいという理解でいいんですか。

横尾政府参考人 現在の原子力発電所でのコストに再処理は、先生御指摘のとおり、これから将来行うものについては、今直ちに費用の発生はないわけでございますが、現在の原子力発電のコストを勘案する上では、いわゆるバックエンド、再処理、最終処分のものも含めないと正しいコストが出ないだろうということで、再処理分も入れて試算をしたというのが計算値でございます。

石森委員 そうすると、お手元に配らせていただいたバックエンドのコストの表なんですけれども、核燃料サイクルがまだ回っていないけれども、これから回るであろう。そしてまた、そのときにつくられる最終的な廃棄物を埋めるところも、世界的にもまだ、スウェーデンで若干場所が決まったということを聞いておりますけれども、日本ではまだまだ今の段階では到底考えられない。

 場所も決まっていない状況で、燃料サイクルがこれから回るのかどうか非常に不安が多くありますし、本当に回せるのかどうか、回していいのかどうか、安全性はどうなのか、まだまだ担保はされていない状況で、このまま原子力発電をエネルギー政策の中心に置いていくのは大きな問題があるかとは思いますけれども、やはりしっかりこれは、このイノベーション委員会でも位置づけを中心に置いていただいて検討していかなければいけないというふうに思っております。

 時間もなくなってまいりました。ちょっと話をかえさせていただきたいと思います。

 先日来、私は厚生労働委員会の方でも土壌汚染について問いかけてまいりました。というのは、福島第一原発の事故から非常に多くの沃素、セシウムが拡散をされています。私の栃木県にも飛んでまいりまして、ホウレンソウあるいはかき菜が出荷停止という、農家の方々にとってみれば、まさに出荷どきに非常に痛いことを受けたわけですけれども、今、沃素については、半減期が八日ということでございますから、徐々に減りつつあります。しかし、セシウムについてはいまだに残っている。

 そして、先日来、空間線量をはかっているということでございます。しかし、セシウムだけではなくて、放射性物質というのは、質量がありますから必ず地面に落ちる。雨が降るたびにその量はふえ、また、それが地中に入って地下水に入っていくんでしょう。その土壌の検査、これをなぜやっていただけないのか。

 確かに、福島県内では、やっておられます。サンプルをとってきて、その核種をはかっている。でも、そこまでの核種をやるのは、文科省の方々は、非常に大変だ、コストもかかるとおっしゃっております。でも、簡単じゃないんでしょうか。ガンマ線を出す検出器を例えば市町村単位で持っていけば、栃木県やあるいは群馬県、茨城でも、茨城ではもう県の方で各市町村に配付したということを聞いております。

 幼稚園、保育園、私の子供も四歳であります、砂場で遊びたい。でも、そのときの土壌が汚染されているかどうかわからない。そこで、表土を除去する。では、除去したときに、何をもって除去すればいいのか、また、除去した土をどこに置くのか、全く工程もわからないままに、先日、福島のある主婦からメールが来ました。これはパソコンに移せませんので、読み上げさせていただきます。

 福島の中通りはとても微妙な位置にあります。乳幼児を抱えた世帯は母子だけ一時避難や週末だけ他県に避難しています。わざわざ予防接種に三時間、四時間かけて郡山に戻ってきます。避難地区ではないため、他県での接種は補助がありません。国の暫定基準値とやらで線引きをされた結果であります。今や私たちは、がんの告知をされた、ほうり出された患者のような気持ちであります。

 そのようなメールが私のところにも幾つも来ております。

 この土壌検査、空間線量だけではなくて、土壌検査をしっかりとする計画を立てていただきたいと思います。簡単です。線量計を地面につけるだけでわかる。線量計、そんなに高いものではありません。そして、子供たちにフィルムバッジをつければ、それでお母さんたちは安心なんです。

 その安心をやはり我々議員として、政府としても、しっかりと国民の皆さんの命や安心を今こそ発信していくべきだと思いますが、文科省からコメントをいただきたいと思います。

渡辺政府参考人 先生御承知のとおり、現在、文部科学省においては、福島第一原子力発電所の事故がいまだ収束していないという中で、まずは福島県内における継続的なモニタリングというものを最優先に実施していくことが不可欠というふうに考えているところでございます。

 先ほど副大臣からもちょっと一言ございましたが、各都道府県におきましては、水準調査ということで、空間線量率あるいは上水及び地上への降下物について、定常的にデータを集めて公表させていただいているところでございます。

 また、航空機によるサーベイというのをやっておりまして、現在までは八十キロ圏内のサーベイをやりましたが、現在、それを超えて、八十から百キロ圏内の航空機によるサーベイを行っております。この航空機のサーベイによっても、一定程度、地上の放射性物質の状況がわかる状況になっている、今そういう状況になっているわけでございます。

 文科省としても、今後とも関係機関と連携して、環境モニタリングは確実に実施してまいりたいと思っております。

石森委員 全然答えになっていないんですけれども、空気中ではかる、例えば、ここに先日我々の同僚議員の空本議員がはかっていただいた線量計で、一メートルの高さではかりますと〇・六五マイクロシーベルト・パー・アワーなんですね。でも、地面ではかりますと二・一一に上がるんですよ。どういうことか。当然、地面に落ちるからですね。

 子供たち、ずっと一メーターの高さで遊びますか。転びますよ。土をさわります。私の子供は四歳、砂場が大好きです。砂をさわります。さわっちゃいけないと言うのでしょうか。では、何をもってさわっていいと言うのでしょうか。

 サーベイをやっていると聞きました。八十キロ。宇都宮まで百三十キロ。出荷制限がある。飛んできているんです。この間、神奈川県、茶葉に吸収された報道がありました。神奈川県まで飛んできているんですよ。御存じのとおり、沃素は揮発性が高いですから、どんどん飛んでいくでしょう。福島県のこのデータを見て、本来であれば、もう既に沃素は飛んでこないはずですね。でも、いまだに沃素の数値があるということは、どんどん出ているからじゃないんでしょうか。

 こういうことを考えて、国民の皆様に、文科省としてサーベイやっています、空間線量やっています。地面は安心か安全か何も言わない。福島の方々だけじゃなくて、栃木県の皆さんも、子供たちをどうしていいか困っている。だから自治体で表土を取っているんです。

 文科省の方に聞きますと、それは自治体に任せている。国の政策でやってきたエネルギー、原子力政策でこういうことになった。人災になってしまった。それで、自治体に任せています。それでは子供たちに対して何て説明すればいいんですか。コメントを下さい。

渡辺政府参考人 御承知のとおり、現在の時点で、空間線量率ということに関しましては、福島県以外の近隣のところも含めて、比較的それほど高いレベルが出ていないという状況でございます。

 したがいまして、先ほど申し上げましたように、今後、都道府県に一つずつとともに、大学などに協力を求めまして、それに加えて五十四カ所で空間線量率をはかってございます。

 このような取り組みを今後とも引き続きやっていきたいと思います。

川内委員長 渡辺さん、土壌をはかれと言っているんだけれども。

渡辺政府参考人 その辺については今後の検討課題だと思っております。

川内委員長 検討課題だと思っている、検討課題なんでしょう。

渡辺政府参考人 現時点では検討課題でございます。

石森委員 検討課題って、もう本当に手おくれになっているかもしれないんですよ。土壌をはかるんですよ。別に採取してやらなくても、こうやってこのデータを見ていただければ、線量計を地面に置くだけで数値が出るんです。この数値をもって、では土壌の表土を取り払いましょう。では、取り払った表土、これは放射性廃棄物になる、だったらそれをどうにかする、その法律をつくらなきゃいけないんじゃないですか。それが我々の役目じゃないのでしょうか。

 文科省に聞きません。やはり、もう本当に私、お金出して各都道府県に線量計を、市町村単位の教育委員会でもいいです、学校でもいいです、自腹を切ってでも渡したい、それぐらい思っています。多分、国会議員の皆さんに一人一人に声をかけたら、みんなお金出しますよ。私はそれぐらいの思いだと思います。

 ぜひ、この表土の検査、簡易検査で構いません。そして、基準をつくって、その表土をどうしていくのか、これをぜひ進めていただきたいと思いますが、玄葉大臣、どうでしょうか。

玄葉国務大臣 石森委員の御心配、そして御指摘、思うところが多々あるんです。実は、私の事務所にも、お子さんを持つ、特に乳幼児を持つお母さんからのメール、相談が殺到しています。プラントの問題以外では、この放射能の問題とどう向き合うかというのが福島県内では一番の関心事でございます。その親のお気持ちはよくわかります。

 ですから、私も、本部というよりは、いわゆる原発被災者の担当の方に、今おっしゃったような、例えば線量計を全員に配ったらどうだとか、さまざまな提案をしているところでございまして、すべてを申し上げるとまた閣内で意見がいろいろ違うのではないかというようなことも出ますので申し上げませんが、ただ、高木文科大臣のもとでしっかりとした対応がなされるように、私も国務大臣の一人として、また被災地の国会議員として尽力したい、そう考えております。

石森委員 ありがとうございます。

 何にしろ、被災地の玄葉大臣だからこそやっていただけることだと私は確信しておりますし、福島だけではなくて、本当に周辺の地域の、お母さんじゃないです、子供たちです。子供たちは何もわからない。その子供たちに我々は責任を感じて、しっかりと、この委員会として、そして大臣としてもやっていただきたい、そのように思いまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

川内委員長 次に、遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。

 この科学技術・イノベーション推進特別委員会、今国会で設置をされまして、先般大臣の所信が行われ、きょう初めての質疑ということでございます。

 特に大臣は、科学技術の所管であるのみならず、国家戦略担当、また与党の政策責任者でもいらっしゃる、そしてまた福島県の出身でもあるということがありまして、いろいろな意味で、特にきょうは、この委員会の審議を今後どう進めていくのか、任務をつくっていくのか、そんな視点も含めまして、大きな視点から質疑をさせていただければと思っております。

 最初に、この委員会設置の経緯、趣旨といったことでございますが、若干御紹介をさせていただきますと、昨年十二月の臨時国会終了間際に、議運の理事会におきまして、私も議運の理事でございますので、公明党の提案として、この委員会の設置、科学技術・イノベーション推進特別委員会の設置を提案させていただきました。

 これは、実は異例のスピードで合意に至りまして、最初に提案をしたその場で即、各政党からも強い賛同の意が表明されまして、ぜひともそれはやるべきだ、すぐにやろうということになりまして、あっという間にでき上がった。そして、今国会の出発になったわけであります。

 また、従来の名称、科学技術に加えまして、イノベーションが加わった。これは非常に重要な特徴でございます。

 こういったことになった背景でございますけれども、特に議運の理事会、各政党理事間の問題意識というのは共通しておりまして、今、日本が、バブル崩壊以降二十年、失われた二十年になってしまって、この間、日本の国際的地位の急激な低下、例えば国際競争力が急速に低下しております。

 九〇年代の初頭には、いわゆるスイスのIMDが発表していたランクでは一位だったわけですね。それが、この二〇一〇年には何と二十七位。一位がシンガポール、三位がアメリカ、中国や韓国よりも下になっておりまして、これは大変深刻な事態。国際的なシンポジウム等におきましては、日本のことをディクライニングネーション、衰退途上国といった表現で言及がされるようになったということでありまして、このままいくと、日本は二流国に転落してしまう。大変な危機意識を実は各政党間で共有していたわけでございます。

 特に、日本は非常に科学技術の水準は高いのに、なぜこういった経済が停滞しているのかということ、非常に強い問題意識、あるいは危機意識を共有していたというふうに言ってもいいかと思います。したがって、このとおり、科学技術あるいはイノベーションというのが日本立て直しの一番のポイントだ、そういう認識があって、こういった委員会の設置ができたということでございます。

 さらに、この委員会は、単にアカデミックに議論するだけではなくて、雇用と成長にどう具体的につなげるか、これが非常に重要な問題意識、期待として表明をされておったわけでありまして、ぜひとも、そういった視点に立った実際的な議論をしていくことが非常に重要だと思っております。

 また、審議のあり方につきましても、今までのような各委員会のやり方にとらわれることなく、実際に雇用と成長につながるような、もっともっと積極的な役割を果たしていいのではないか。各委員会、いわゆるチェック機能が非常に強く意識されておりますが、それだけじゃなくて、政策提言機能、そういったこともしっかり発揮して、特に最高の見識と最新の情報を集約して発信していく、そういう役割をぜひこの委員会が担おうではないか、そういった認識を持ちました。

 具体的には、報告書、提言、あるいは決議、こういった形を折々タイムリーに出して、ぜひとも日本の政策決定に影響を与えていこう、こういった趣旨が実は共有の問題意識だったわけで、ぜひともそれを私は今御紹介したいと思っております。

 若干例を引きますと、アメリカにおいても、特に八〇年代に非常にアメリカ経済は停滞をしました。そういった中で、重要な国家戦略の報告書が出版をされまして、例えば一九八四年にはヤング・レポートというのが出されました。これは、当時の、ヒューレット・パッカードでしたか、そこの社長のヤングさんという人が委員長になって、産業競争力委員会として出版したものであります。

 これは、当時日本が急速に経済を強くしている、ジャパン・バッシングといった空気もあったわけでございますが、どうやって日本と対抗していくか、そういう戦略を考えようということでこのレポートが出されました。特にマネジメントテクノロジー、技術経営、日本が技術を基盤に徹底した合理的な経営をやっている、それを研究して技術経営という概念を確立したこと、それからプロパテント政策、知的所有権をしっかり打ち出して、これを活用していこう、そういったことを柱とした提案を出したわけでありまして、それをもって日本に対抗して、アメリカをもう一回再生させようという非常に重要なレポートでございました。

 さらに、今世紀に入って二〇〇四年にはパルミサーノ・レポートというのが出ました。これはイノベート・アメリカという表題でございまして、特にイノベーションを徹底的に推し進めよう、継続的にやろう、これこそがアメリカの競争力の根源だという認識に立って打ち出したものでございます。プロイノベーション政策並びにそれを支える人材育成、国内及び国外からそういった優秀な人材を集めてアメリカの競争力をつくっていこう、これこそが、今後のアメリカが世界をリードするかぎだという非常に重要な国家戦略を表明したわけでございます。

 できれば日本も、特にこの委員会が中心になって、そういった日本を再生させるような指針となる国家戦略報告書を出していければいいな、そんな期待もあるわけでございまして、ぜひ、そういったことを踏まえて、これから審議の活性化に取り組んでいきたいと思っているところでございます。

 こういった委員会設置の経緯、趣旨に対しまして、大臣の所感をお伺いしたいと思います。

玄葉国務大臣 この特別委員会がつくられた趣旨を、まさに提言された遠藤委員から直接聞くことができて大変ありがたかったです。特に、確かに各委員会は、国会のことなので私が申し上げるのは口幅ったいんですが、やはりチェック機能というのが主であるというところがあると思いますが、この特別委員会は提言機能を強く持たせようじゃないかということに特に共鳴をし、また感銘をしたところであります。

 おっしゃったとおり、失われた二十年、なぜこの二十年が生まれたのか、さまざまな分析が可能だというふうに思います。それは、バブルの崩壊があって資産デフレになったとか、あるいは九〇年代半ばから労働力人口が減少していったとか、さまざまあるんですが、これからこの国を成長させる、しかも、少子高齢化、人口減少、現役世代の減少という本質的な課題の中で一定の成長をもたらすためには、科学技術、もっと申し上げれば、遠藤委員が御指摘のとおり、科学技術・イノベーションまで大切だ、もっと言えば、そのことがかぎになるというふうにさえ考えているところでございます。

 そういう趣旨の、アメリカで出されたようなさまざまな国家戦略レポートが本委員会で出されることを期待したい、そう考えております。

遠藤(乙)委員 大臣に御理解をいただいて、大変うれしく思っております。

 もう一つつけ加えますと、これほど重大なテーマ、科学技術・イノベーション。ところが、従来、文科委員会でこういったものを所管してきたわけでございますけれども、現実に、審議の状況を見ると、非常に教育にウエートがある。これも大変重要なテーマでありますから当然理解できるわけですが、具体的に数字で言いますと、過去五年間の一般質疑の中で、科学技術、あるいはイノベーションも含めて割かれた時間が一一・六%、一割ちょっとということですね。これは余りにもいかがなものかということがあります。

 かつて、この科学技術委員会、以前は科学技術振興特別委員会というのがあって、その後常設委員会になった。ところが、省庁の統合によって文部省と科学技術庁が統合されたことに伴い、委員会も統合されて文科委員会になったわけでございますが、まさにその結果、この重要な科学技術・イノベーションという問題がいわば非常にしわ寄せを受けたというのが現実でありまして、これは問題だろうと。

 やはり、この問題をしっかりと取り出して、焦点を当てて議論するのも必要だということで、一たん文科委員会から科学技術を分けて科学技術・イノベーションとしてつくって、そしてしっかりと審議をして、その上で教育問題と連動させていこう、そういったことも実はあるわけでありまして、決して文科からこっちをとってくるというような意味でもなくて、むしろ教育と科学技術・イノベーションは本来両輪であって、お互い緊密に連携すべき話であって、そういった意味で、一たん立て分けた上で統合していこう、そういう意識もあるということをぜひ御理解いただきたいと思っております。

 また、科学技術と政治、また繰り返しますが、この関係をどうつくっていくのかということがやはり日本の将来に決定的な意味を持つということであります。雇用と成長の問題、それからまた今回の原発問題も含めて、やはり科学技術と政治が疎遠な関係になっていては問題が起こってくるというふうに考えております。

 私が思い出すのは、歴史学者でトインビー博士という方、もう亡くなった方ではありますが、彼の言葉の中で、今まで科学技術は驚くほど創造性を発揮して人類の生活に貢献してきた、ところが、政治は驚くほど創造性を発揮してこなかった、そこに問題がある、二十一世紀は、政治が創造性を発揮して、科学技術とどうコラボレーションしていくかということが一番の大きなポイントだ、こういった言葉を残しており、非常にこれは含蓄に富む言葉であると思っておりまして、これからどう科学技術と政治の対話、コラボレーション、建設的な枠組みをつくり上げるかということがまさに日本再生のかぎだということを改めて強調しておきたいと思っております。

 そういうことで、大臣にも同じような問題意識を持っていただいていることは非常にうれしく思っておりまして、ぜひ委員長におかれましても、そういった方向性で今後もまた御指導を賜ればと思っているところでございます。

川内委員長 承知しました。

遠藤(乙)委員 そこで、もう一つ、そういったことをやっていくには、単に国会で政府と議員がいわば閉じられたサークルの中で議論していたのでは、これはなかなか議論が発展していかない。

 やはり、もっと幅広いコミュニティー、科学者、専門家のコミュニティー、さらには一般市民も含めた、そういった科学技術あるいはイノベーションの知的コミュニティーといった形で幅広い議論をし、開かれた知性、開かれたマインドを持って共通のコンセンサスをつくっていくような場も必要であるかと思っておりまして、そういったことにつきましても、大臣の御所見を賜りたいと思っております。

玄葉国務大臣 いろいろな御指摘、御提言をいただいて本当にありがたいんですけれども、科学、技術、イノベーション、ある方が、科学は個人戦である、技術は団体戦である、イノベーションは総力戦であると。私は、そのとおりだなというふうに思うんですね。

 まさに、その総力戦をこれから、この委員会あるいは政治が国民の皆さんと一緒に行っていかなければならないということじゃないか。そのためのオープンなコミュニティーをつくり上げる、形成する、そういう努力が必要だというのは、私も遠藤委員と共通の認識でございます。

遠藤(乙)委員 ぜひ今後、そういった問題意識を持ちながら対話をしていきたいと思っております。

 そこで、次のテーマに入らせていただきます。

 今回の東日本大震災、大変悲劇的な事態でありました。これは多分、日本社会に対して大きなインパクト、特に価値観を転換させるようなインパクトを持つだろうというふうに思っております。特に、大臣はいろいろな場で、今回の三・一一が日本人、日本社会の価値観を転換させるような事態になっていくだろうといったことを発言されているというふうに報道で承知をしております。

 私も同感でありまして、例えで言えば、明治維新については黒船に象徴される欧米列強のプレッシャーというものが一つの契機となって、日本はこのままでは植民地化されるかもしれないといった危機意識、それで大きく日本は近代国家へとパラダイムシフトをした。また、第二次大戦の敗戦ということで、このままでは日本は衰退するということで大きくパラダイムシフトがあって、経済大国として再び盛り返した。

 今回は、自然災害という大きな問題によって再び、日本人の将来、日本の将来について大きなパラダイムシフトにつながっていくだろうというふうに私は考えておりますが、大臣としては、どういったポイントでパラダイムシフトが今後起こっていくのか、特に、この三・一一をどうとらえ、それがどうパラダイムシフトになっていくのか、より具体的に所見をお聞かせいただければと思います。

玄葉国務大臣 今回の三・一一は、自然からの挑戦と原発からの挑戦、二つの大きな挑戦を受けたというふうに思います。その挑戦にあって私は、やや私ごとですが、人生観が変わるような出来事だった。つまりは、世の中には不条理というものが存在をするということを実感として感じたというのがまず一つあります。

 ただ、国家戦略担当大臣として当然、冷徹にこの国の将来を見据えて、打つべき手を打っていかなければならないということだろうというふうに思います。したがって、国家戦略の再設計、再強化をするに当たっては、成長戦略の質的転換をする、その際に、やはり一定程度、今回の価値というものの問い直しの中で、引き継ぐべき豊かさの問い直し、こういうものを考えていかなきゃいけないんじゃないか。

 私は、遠藤委員も恐らく同じだと思いますけれども、現代に生きる政治家の役割は、子供や孫たちに豊かさを引き継ぐことだというふうに思っています。その豊かさの中身についての問いかけというのが今回あった、その問いかけをしっかりと受けとめて、成長戦略の質的転換を図っていかなきゃいけないんじゃないか、私はそのように考えているところでございます。

遠藤(乙)委員 私も多々共通する見解を有しております。

 今、大臣は、自然からの挑戦、それから原発からの挑戦ということを言われました。私も全く同感でありまして、特に自然からの挑戦ということで、私自身の思いでは、やはり改めて、日本列島が地震大国である、特に四つのプレートがせめぎ合う非常に地球物理学上特異点にこの日本列島が存在をしていて、しかも非常に新しい地層、地殻であって、地震がいつどこでも起こり得る、しかも大きな地震が起こり得るという基本的な事実から出発しなければいけないだろうということであります。

 さらにそれを突き詰めていくと、やはり一極集中の大きなリスクということであって、リスク分散という戦略を基礎に据えなければならないだろうと。さらに言えば、多極分散型ネットワーク社会というものがこういった地震や災害と共生していく、いわゆるレジリエントといいますか、しなやかに災害を乗り越えていくための基本構造だろうという認識がある。

 当然、それがまた一極集中に対する見直し、例えば東京一極集中の見直し、首都機能移転論であるとか道州制の問題であるとか、あるいは原発自体が今六つも七つも一カ所にあることのリスクといったことが認識をされまして、リスク分散の戦略というところにパラダイムが移行していくだろう。今のITはまさにそういったネットワーク型であります。それにむしろ非常に親和的な構造を持っているわけでありまして、そういった意味でも、自然からの挑戦をそういうふうにとらえるべきだろうと思っております。

 それからもう一つは、原発からの挑戦。これはやはり、特に自然エネルギーへの重視、エネルギーシフトということでありまして、当然、原発も重要な選択肢であり続けることに変わりはないですけれども、もう一度、リスクそれからコストを厳密に評価した上で、本当に開かれた議論をする中でエネルギーのあり方を探求する、そういったことになるんだろうかと思っております。

 それから、もう一点だけ、三つ目の指摘をしたいと思っているんですけれども、私は、日本の社会が今回の震災を通して、きずなとかコミュニティー、これの重要性を改めて再認識したのではないかと。

 特に、東北の被災者の人たちが、これだけの悲劇的事態に遭いながら整然と助け合って行動している。世界から称賛の声が集まりました。まさに、このこと自体が私は無形の世界遺産だろうと思っておりまして、日本の強さ、日本の美点といいますか、むしろ利点の大きなポイントじゃないかというふうに思います。

 特に近代化以降、日本が経済大国を目指し、工業化、都市化が進む、これによって家族が崩壊し、コミュニティーが崩壊し、職場の人間関係等も崩壊して、いつの間にか孤立社会、無縁社会になってしまった。これが日本のエネルギーを失わせ、異常な自殺率、異常なうつ病、そういったようにモチベーションをどんどん失わせてしまって、意味を失わせてしまって、日本自体の活力をそぐ一番大きな背景ではなかったか。

 改めて、今回の震災を通して、やはり日本はそういったきずなこそが大事だ、また支え合う社会へ向けていくことが大事だということを国民が再認識したんじゃないか。私は、これは非常に大きなある意味ではポイントだと思っておりまして、むしろこれから、自助だけではなくて公助、共助をしっかりと構築して、日本の社会システムをもう一回つくり上げる。これは特に社会保障なんかにも関連してくる、あるいはボランティア、NPO等にも関連しますが、そういったことをしっかりと社会の中にもう一回再構築していくところに日本の活力や新しい知恵が生まれるだろう、そういうふうに思っておりまして、ちょっと私的な見解になりますけれども、三つに整理をしておきました。

 もしあれでしたら、大臣のコメントをお願いしたいと思います。

玄葉国務大臣 一言で申し上げれば、全く同感なんです。

 あえて申し上げると、特にリスク分散の話は、阪神大震災のときに私は当選一回だったのでありますけれども、あのときも、いわゆる副首都構想とかいろいろ議論が出ました。でも、時間がたつにつれて議論がなくなっていきます。忘れ去られていきます。お金がない、そんな財政状況の中で忘れ去られていく。

 そんなにお金をかけずとも、首都のバックアップ機能とか、あるいは国土構造をより複眼的にするとかということができ得ると思っておりますので、そういった巨大リスクへの対応ということも、ぜひ、遠藤委員からさらに御提言をいただければありがたいなというふうに思いながら聞いておりました。

遠藤(乙)委員 それでは、別のテーマに移りたいと思います。

 今回、特に原発事故に際して、いろいろな責任ある立場の方々から想定外という言葉が連発をされました。私は、これは非常に奇異に思って、本当にそうなのかというふうに思っております。

 例えば、千年に一度の災害とかいうような言葉が飛び交っておりましたけれども、実際に調べてみると、特に地震についても、マグニチュード九・〇以上の巨大地震、日本だけに限定すれば今回の地震が初めてかもしれませんが、アジア太平洋、環太平洋造山帯に広げてみると、この六十年間ぐらいで五回起こっているんですね。

 特に、一番大きかったのが一九六〇年チリ地震、マグニチュード九・五、世界最大と言われております。第二位が二〇〇四年のスマトラ沖地震、M九・三ですね。このときは、大津波が起こって二十二万人の方が亡くなられております。それから第三位が、一九六四年アラスカ地震、マグニチュード九・二。それから第四位、これは同率なんですけれども、今回の東日本大震災がマグニチュード九・〇、カムチャツカ地震が一九五二年に起こっております。

 何と、この五十八年間で、マグニチュード九・〇以上の超巨大地震が環太平洋造山帯の中で五回起こっているんですね。要するに、十二年ぐらいに一回の割合なんですね。とても千年に一度ということはない。事実によってこれが否定されているのではないかと私は思います。

 また、津波についても、明治三陸津波、これは二万二千人が亡くなられ、三十八・九メートルという津波が記録されている。また、昭和三陸津波も同様な、被害者はそれほどではなかったんですが、高い津波が記録されております。

 また、地震の強さ自体も、先般、新潟中越地震で刈羽のところでも高い記録が出ましたし、特に二〇〇八年の岩手・宮城内陸地震、この場合には、一関で何と三千八百六十六ガル、こういった地震加速度が記録されております。

 原発の耐震設計基準も、かつて四百五十ガルだったのが六百ガルに引き上げられ、八百ガルに引き上げられ、今では千ガルとなっておりますけれども、こういった直近に起こった地震から比べても、この基準はとても到達していない、十分カバーしていないわけであって、何の根拠もない。事実によって否定されているわけでありまして、とても想定外どころではなくて、既に身近に起こっているではないか。しかも、アジア太平洋という地域で見ても起こっているわけであります。

 なぜこういったことが想定外ということになるんだろうかと非常に私は不思議に思っておりまして、むしろこれは、自分の能力がないとか、勘が鈍いとか、無責任だということを逆に裏返して言っているんじゃないかというふうに私はとらえております。

 こういったことにつきまして大臣の所見を、この想定外という言葉が頻発されることについて大臣はどうお考えなのかということを伺います。

玄葉国務大臣 自然の厳粛さの前で、いわば人間の力が及ばないということはあるだろうと私は思いますが、それでもなお、想定外という言葉を今回の事態で使うべきではない、そういうふうに考えております。

遠藤(乙)委員 そういうことだと思いますが、何でこう想定外という言葉が出てくるのかなと私なりにちょっと考えてみたんですが、いろいろあると思います。

 一つは、養老孟司さんという解剖学者が「バカの壁」という本を出しておって、その中で、ちょっと言葉は悪いんですけれども、要するに、自分が知りたくないこと、あるいは無関心なことについては、どんなに情報が入っても、それを理解しようとしないという壁が存在する、それを彼は、ばかの壁というちょっときつい表現で言っています。これはよくあることですね。特に、私は、専門ばかの壁というのがやはりあるのではないかと。

 例えば原子力工学という専門家であれば、そのことについては大変精通しているけれども、それ以外のことについてはむしろ余り関心を持たないというようなことがあって、原発という存在に対してはさまざまな要素を考えなければならないけれども、やはり専門以外のことについてはそういった感度が鈍い。特に、y=axという一次方程式でいえば、aという係数がゼロか限りなくゼロに近ければ、xにどんな値が入っても、y、アウトプットはゼロかゼロに近いということになるわけでありまして、そういう構造があるのではないかというのが一つですね。

 それからもう一つは、一たん原子力推進というパラダイムができ上がってしまいますと、それに不都合な真実が出てきた場合には、これを意図的に排除しようとかそういった作用が働く。特に、原子力推進といったことが一たんパラダイムとしてでき上がると、これはまた、それによる既得権とかさまざまな現実的な問題が発生をして、そういった視点からも、不都合な真実といったことを排除しようということがある。

 決して、科学的な態度ではないと思いますので、やはりこの委員会としては、政治の視点からも、真の意味で科学的な方法論、議論でこういった現実の問題にアプローチすべきではないかというふうに考えております。

 ぜひともこれから、真の意味で科学的な態度をもって、こういった重大な政策課題を探求する場をつくっていくべきではないかと考えておりますので、大臣にもまたそういった御理解をいただきたいと思っているところでございます。

 そこで、先ほどのエネルギー政策につきましては、既に大臣から御見解をいただきました。一点だけもう一回私から申し上げますと、今後エネルギー政策を議論するにしても、反原発とか原発推進といったイデオロギー的な立場で議論する、これは極めて非生産的でありますし、国論が分裂をしてまいりますので、やはり真の意味で科学的な方法、態度で議論すべきであると。

 それは、具体的には、安全な原発ということでもう一回つくるというような選択肢を極とする、片や全面的な原発停止という極端な選択肢もありますが、中間的にさまざまな選択肢を設けて、かつまたロードマップも、どれぐらいの時間的な基準で将来を考えていくのか。省エネ、創エネ、蓄エネとさまざまなことを考えた上で、どの選択肢が国民にとってリスクの上からもコストの上からも最適かということを、よく冷静に、オープンに議論していくという方法論をとってこそ初めて、また、そういうことをとることによっておのずから結論が見えてくるんだと思いますので、ぜひとも、この科学技術・イノベーション委員会におきましては、そういった議論をしっかり主導して、正しい科学的な議論がまた幅広く国民的にも定着するように努力をしていくべきだと思っております。

 一言、その点につきまして、大臣の所見をお願いします。

玄葉国務大臣 こうして遠藤委員と建設的な議論ができることを本当に有意義に思います。

 先ほどおっしゃったように、私は一月十七日から、国家戦略担当大臣は以前からやっていたんですが、一月の半ばごろから、この科学技術政策、普通はおっしゃるとおり文科大臣ということなんでしょうけれども、全体を俯瞰するという立場で担当させていただいていますが、タコつぼ化という話は私も感じております。ですから、全体を俯瞰したマネジメントをできるようにしなきゃいけないし、そのためには、政治の役割も大事ですが、同時に組織の中にそういう人たちを育てていかなきゃいけないな、もっと言えば戦略派を育てていかなきゃいけないな、こう思っています。

 また、エネルギー政策を考える上でも全く同感なんです。つまり、結局、原発の不幸な歴史は二項対立の歴史だった。中間層が薄かった、中間の立場がどうしても少なかった。原発は認めるけれども安全性を徹底して追求するという方々が、やはり割合としては少なかったと私は見ています。

 ですから、これからエネルギー政策を議論するに当たっては、もちろんすべてオープンで、どんな立場の方々とも議論をしていくということですが、いわゆる中間的な、戦略派というか、そういう方々がしっかりとたくさんの層で存在をするということが極めて大切だというふうに考えております。

遠藤(乙)委員 大臣のそういった見解を、私も大変うれしく思っております。

 これはチャーチル元首相の言葉だというんですが、彼は、危機管理に当たって専門家、科学者の意見によく耳を傾けなければいけない、しかし彼らをトップに置いてはいけない、こういう言葉を残しているんですね。これはやはり、今のタコつぼ化といいますか、どうしても政治が、専門家の限界をもよく見きわめた上で、より広い視点、総合的な視野に立って、どううまくマネージしていくかという視点を持たないと、一部のタコつぼ化したスクールの暴走になってしまって、とんでもないことになるということでありまして、これはぜひ心して今後の日本として議論していくことだと思っております。

 そういったことで、特にまた昨今ではテクノロジーマネジメントといったような考え方も出てきておりまして、要するに、推進派と規制派がそれぞれ違った立場で徹底的に議論を尽くしていく、そういったことによって科学の持つメリットとともにデメリット、潜在的な危険性も十分に認識した上で適切な政策を遂行し、国民の福利厚生を高めるといった発想が強いわけでありまして、ぜひともそういう方法論で今後進めなければいけないと思っております。

 そういった視点に立って、原子力委員会、あるいは原子力安全委員会、保安院、あり方が非常に問題になっておりますけれども、大臣として、まずどのようなあり方が望ましいとお考えか、所見をお伺いしたいと思っています。

玄葉国務大臣 これは、さまざまな観点から回答が可能だというふうに思います。

 まず、安全規制のチェック体制というものをどう考えるのかということがあると思います。これは、多くの方が実は考えていたんだけれどもできなかったことなんですが、経産省の旧保安院を分離して、本格的なチェック機能を持たせるということを、これは政党のことを申し上げて恐縮ですが、民主党が、たしか二〇〇〇年から法案にして言ってきた。私の知るところでは、昨年かなりの議論が実は経産省の中でも始まっていた。それを打ち破れなかったということは、我々は反省をしなければならないという問題が一つ、組織の問題としてあるのではないか。

 もう一つは、やはり人の問題。もちろん、それぞれすぐれた知見、識見をお持ちの方々だと思うんです。ただ、どうしても、先ほど遠藤委員が指摘をされたように、賛成と反対、黒か白ということに、この原発、原子力の推進の問題というのはなってしまったものですから、どうしても推進側の方々に偏ったそれぞれの委員会構成、組織構成というものになってきたんじゃないか。

 これからとても大切なのは、やはりここで立ちどまって考えなきゃいけないのは合意形成のプロセスではないか。先ほどおっしゃったとおり、反対だという人もそうですけれども、やはり中間的な立場で戦略的に思考される方々をしっかりと位置づけていく、そのことがこれからのエネルギー基本政策を考える上では極めて大切ではないか、そう考えております。

遠藤(乙)委員 ぜひ、参考人の方からも御意見がもしあれば。原子力安全委員会班目参考人ですか。

班目参考人 組織の問題自体につきましては、これは原子力安全委員会自体もこれから検討の俎上にのせられるということなので、コメントを差し控えたいと思います。

 しかし、今、玄葉大臣がおっしゃられたことは非常に大切でございまして、やはり原子力村という、原子力に詳しい人間がいるんだけれども、原子力の安全だけを必死になって考える人間というのが薄かったのかもしれない。要するに、原子力村の中には泥棒もいれば警察もいればでいいわけですけれども、警察がしっかりしなきゃいけなかったのかなというふうに思っております。これは、全くの個人的な見解でございます。

遠藤(乙)委員 非常に個人的な御発言だと受けとめておきます。特に、警察をしっかりするということは非常に大事なことだと思っております。

 あと、原子力災害の情報公開の件なんですが、原子力基本法には、基本原則として民主、自主、公開ということがありまして、特に情報公開は非常に重要な原則として言われております。

 しかしながら、今回の事態を振り返ってみると、原発事故が起こって、全電源喪失、冷却機能停止。そうしたら、メルトダウンが起こって水素爆発が起こり、大量の放射性物質が放射能雲となって出る。それが北西方向に風に乗って流れて、雨や雪が降って飯舘村等に非常に強い放射性物質が降下したということがあるわけであります。

 こういったことを、例えばSPEEDI等はちゃんと予測できていたわけでありまして、先般、吉野議員からも参考人質疑でこの点非常に強く指摘がありましたが、なぜそっちの方向に避難誘導したのか、あるいはまた、なぜ飯舘村等の人たちに対して早急に避難勧告をしなかったのかと、非常に強く糾弾をされておったと伺っております。

 また、メルトダウンも、むしろ常識的には、全電源喪失、冷却機能が喪失すれば短時間で起こることはいわば常識として受けとめられているわけでありまして、それが、この期になってメルトダウンということが発表されたわけでありまして、こういった仕方も非常に問題がある。実際の原子力災害の対応に当たっても、これが非常に大きな問題を起こす。また国際的にも、逆に、いわゆる風評被害を招き、日本の信頼を大きく失墜させることになったんだと思っています。

 こういったことに対して、今後どういう対応をとっていくかを含め、見解をお聞かせいただければと思います。

玄葉国務大臣 先ほど平委員の質問に答えたときも申し上げたんですけれども、今、大分総力戦になりつつあると思っているんですが、総力戦にするためにも、迅速な情報公開というのが極めて大切だというふうに思っていますし、これからもそうあらねばならないというふうに思いますし、同時に、事故調査委員会では、その点もこれは第三者からしっかり検証をしてもらって、次の教訓にしていくということが大切ではないかというふうに思います。

遠藤(乙)委員 私も、どうも、行政関係者も含め科学者も含めて、今回の情報公開については何か推定無罪みたいな論理が働いているのではないか。要するに、推定無罪というのは、人権の分野で、刑事訴訟法の分野で、有罪と確定するまでは無罪と推定するという、これは確立された原則で、当然だと思いますが、こういった危機管理の分野、住民の多くに危険性が及ぶ分野については逆に推定有罪だと私は思っていまして、合理的に推測されて危険だと思われることについては、確証はなくても、計器が故障していて把握できなくても、やはりまず避難勧告を出すとか、これは危険性が高いということで、そういう前提で行動するということが大原則だろうというふうに思いますので、そういったメンタリティーも転換していく必要があるんじゃないか。

 どうも、日本の行政は手がたくて、確実な証拠があるまでは出せないというようなメンタリティーを非常に強く感じますけれども、やはりこういった危機管理に当たっては、逆に、合理的に推測できる部分については早目早目にそういった警報を出していくようなことも必要だと思っていますので、ぜひ、こんなことも含めて今後検討をいただければと思っております。

 それから、外務省にもお越しいただいているかと思いますが、チェルノブイル、ついこの前二十五周年を迎え、キエフで国際会議も行われたと承知をしております。日本として、果たして十分にこのチェルノブイルの教訓を生かしてきたかといったこともいろいろ今思われるわけでありますけれども、外務省の参考人に、先般の国際会議に副大臣が出席をされたと思いますし、ごく簡単にそのポイント、それからチェルノブイルの教訓、特にその後の放射能被害の追跡調査等も含めて、チェルノブイルではどういうことになっているのかも含めまして、御意見をいただければと思います。

小寺政府参考人 ただいま御指摘がありましたように、四月十九日に、チェルノブイリの二十五周年ということで、ウクライナ政府が主催する安全で革新的な原子力エネルギーの利用に関するキエフ・サミットというのが開催されておりまして、日本からは高橋外務副大臣が出席された次第であります。

 高橋副大臣は、そのサミットにおきまして、我が国を代表しまして、例の福島原発の後でありましたので、まずは大震災に関する国際社会の協力に謝意を表明した上で、原発事故に関しまして、原子力安全の重要性、事故の原因、状況及び我が国の取り組み、チェルノブイリ原発事故との相違点、国際社会との経験共有の意思等について説明したわけであります。

 このサミットにおきましては、成果といたしまして、我々としては、福島原発事故後に行われた原子力安全に関する最初の首脳会合であったということでありますので、その際に、我が方の責任ある立場の方が出席して、原子力の安全の重要性を改めて日本政府として強調するとともに、福島原発事故に関しまして、客観的で丁寧な説明をすることによって国際社会への情報提供を約束したということが広く肯定的に受けとめられたというふうに理解をしております。

 それから、その際に、IAEAの事務局長である天野氏が来ておられましたので、天野氏とも今後の協力について意見交換を行うことができました。それと同時に、主催国のウクライナの外務大臣との間でも意見交換をいたしまして、チェルノブイリの知見を共有していくということを約束したということでございます。

 そして、チェルノブイリの話でございますが、どういうことを把握しているか、あるいはどういう協力をしようとしているかということでございますが、お時間の関係でごく簡単に申し上げますと、チェルノブイリ二十五周年の間に、国際社会、関係国、それから各専門家がいろいろな報告書を出しております。これを我々としても勉強していきたい、こういうふうに思っておりますし、チェルノブイリの知見を一番持っているウクライナそしてロシアに関しましては、外務省の副大臣がそれぞれ訪問いたしまして、今後ともチェルノブイリの知見を生かしていきたいということで協力を要請し、先方から快く、日本がどういうことを知りたいか、どういうふうな協力をすればいいかということを明確にしてくれれば何でも協力したいというような回答をいただいております。

 先ほど申し上げました報告書とか各種の知見というのを念頭に置いて、現場のニーズというものを考えながら具体的な協力関係に入っていきたい、このように考えております。

遠藤(乙)委員 今回、特に、日本が国際的に説明責任を十分果たしていないと、厳しい批判が国際的に言われておりまして、また、これによって逆に風評被害が非常に大きくなっている。観光客が来なくなった、日本の食品がほとんど輸入ストップしてしまった、こんな事態で非常に被害甚大でありまして、こういったことを改善するためにも、やはりきちっとした科学的な分析と説明責任、情報公開が大変重要でありますので、ぜひ、これから努力をしていただければと思っているところでございます。

 時間が非常になくなってまいりましたので、ひとつ話題をかえて、現時点で災害復旧の大きな問題は、十一万人以上に及ぶ被災者の人たちが、二カ月を超えていまだに一時避難所、学校や体育館に毛布を敷いて、そこでずっと寝泊まりしている状態である。プライバシーもない、栄養も偏っている、それから非常に衛生状態も悪くなっている、極めて条件が悪い中で、このままずっといつまで置いておくのかというのは、大きな人道問題ではないかと私は思っております。仮設住宅をつくるにはまだまだ時間がかかるわけでありまして、これから夏が来ると、また熱中症とかさまざま問題がある。

 つい先般、NHKの特集では、石巻の避難所で調査したところ、高齢者の二人に一人は血栓ができている、また、ほとんどの人が上の血圧が百六十以上の高血圧症状で、非常に心筋梗塞や脳梗塞のおそれが高まっているという報告がありまして、何とかしなきゃいけないといったことが報道されておりました。

 したがって、被災者への支援のイノベーションという視点から改善する余地が相当あるというふうに思っておりまして、具体的には、とりあえずの一次避難、これは緊急避難です、せいぜい一週間、二週間の範囲で置くべきであって、さらに、仮設住宅の定着型の避難を三次避難として、その中間の二次避難、これをぜひとも拡充する必要があるのではないか。特に二次避難、例えば温泉地の旅館やホテルに収容して、最もいい条件で災害からのリハビリを図る、将来を考える余裕を与える、こういったことが非常に大事だと思っておりまして、二次避難のシステムをやるべきだと思っております。

 さらに、これにはコミュニティーが非常に重要でありまして、やはりばらばらになるのは非常に皆さん嫌がる点がありまして、コミュニティーぐるみで受け入れて、それにトータルサポートをしていく。受け入れの自治体で、医療の支援、介護の支援、教育の支援、場合によっては就労支援も含めてやっていく。

 それから、特に被災者の人たちは、一たん外へ行ってしまうと仮設住宅に申し込めないんじゃないか、そんな不安が強いんですが、同じ条件で応募できる。また情報も、行き先でも提供するといったこと。

 それからまた、地元のことが非常に気がかりですので、いつでも帰ってこられる、シャトルバスでも走らせて、行きたい人はいつでも行ってこられるような状況にする。

 さまざまな工夫を凝らして、被災者の人たちにもできるだけ人間的な条件をつくってあげて、安心と将来への希望をどう与えてあげるか、やはりこれは非常に大きな政治の課題だと思っております。

 現実問題でネックになっているのが、私の知る限り、やはり縦割り、三段重ねの構造。要するに、各省ごとに縦割りになっていること、それから市町村、県、国という三段重ね、これが非常に硬直的な構造でありまして、被災者のニーズに合った対応がなかなかできにくいという状況があるわけでありまして、これを乗り越えていくのがやはり政治主導だと思っておりますし、被災者の支援のあり方のイノベーションという点からも、ぜひ、二次避難の概念の確立とコミュニティートータルサポートの考え方、さらに、縦割り、三段重ねを乗り越えていく政治主導を、特に国家戦略担当の大臣にはぜひともそういった力を発揮していただきたいというふうに期待をしております。

 一言コメントをお願いします。

玄葉国務大臣 国家戦略担当大臣ということもあるかもしれませんが、公明党の山口代表からも、私、政調会長という立場で、被災者支援のあり方については御提言をいただいているところであります。

 今回は、広域性があって規模が大きいということもあって困難が伴っておりますが、反省しなきゃいけないところも多々我々もあると思っています。特に、今おっしゃったような概念も含めた、きめ細かな対応がこれから必要になるんだろうなというふうに思います。

 私も避難所とかに参りますので、いろいろとお話をお伺いするんですけれども、なかなかミスマッチがあります。特に、県外に行きたがらないというのが一番大きいですね。県外での受け入れ先というのは実はかなりあるんですけれども、雇用の問題などもあってどうしても近くにいたい、近くに二次避難したい、そういう方々が非常に多くて、そこで一番苦労しているというのが現状だと思いますが、今おっしゃったような概念も含めて、それこそ創造性を持って、これから被災者支援に当たれるように私も努力したいというふうに思います。

遠藤(乙)委員 いろいろな理由があってミスマッチになっているんですけれども、やはりきめ細かく、スピード感を持っていくのが大事だと思いますし、例えば職場の心配のある人、また、まだ行方不明が心配の人、そういった人は残ってもいいけれども、逆に、例えば高齢者とか子供たち、そういった人たちを中心に避難させて、あと、親は行ったり来たりできるような、ショートステイも含めて考えるとか、そんなことが必要かと思っております。

 それから、子供たちも、学校自体が被災している、避難所から通っている状況であります。非常に環境がよくないわけでありまして、学童疎開というと暗くなりますけれども、ロングサマースクールとか長期の林間学校みたいな発想で考えることも必要かと思っております。ぜひとも、政治の創造性を発揮して、被災者の立場になって、きめ細かに、スピード感を持ってひとつ努力をしていただければと思っております。

 最後に、非常に時間がなくなってまことに申しわけないんですが、用意した資料、これは前にも予算委員会で一回ちょっとやったことがありますので、大臣は御記憶かと思いますが、今、日本の科学技術の一番の問題は、科学基礎研究の水準は非常に高い、また技術も、特許出願件数は世界一、二位を争う、アメリカと断トツな状況です。科学技術としては極めて高いのに、なぜ日本が、過去二十年間でこれほどの停滞、世界から突出して停滞しているかということが大きな問題意識でありまして、私も、そういったことを私なりに整理してこういったメモにまとめさせていただきました。

 ちょっと説明する余裕はありませんが、特に日本は、ドルベースではこの二十年間一番成長率が低いんですね。しかも、これはドルベースですので、継続的に円高傾向ですので、日本経済が過大評価されていることを考えると、日本はもっと停滞をしているということでありまして、それほどに深刻な事態です。

 なぜ、科学技術の水準が高い日本がこれほど停滞するかということですね。これは、その後半に書いてあるように、日本が、今までのキャッチアップの時代から、本当に今先進国になって、逆に創造革新の時代に入ってきたということ。したがって、プロセスイノベーションからプロダクトイノベーションに移行しなきゃいけない。

 それからまた、ガラパゴス化ということも非常に大きな要因でありまして、日本の国内市場だけに特化して標準化したやり方が、世界に目が向いていない。したがって、日本市場自体が縮小していくわけですから、そんな意味でやはり成長のチャンスを奪っているということで、真の意味でグローバルな視野に持っていかなきゃいけないということ。

 また、今まで日本が得意だったインテグラル型のアーキテクチャーから、今世界全体がモジュール型のアーキテクチャーに変わってきて、それを踏まえたビジネスモデルで今先進国は成功をおさめているわけですから、そういったことも含める必要があるということで、イノベーションの戦略自体、イノベーションが今までなかったわけではないけれども、今までのイノベーションは非常にキャッチアップ型イノベーションだった、しかもガラパゴス化している、それを、そうではない方向に大きくイノベーションモデル自体を変える、戦略転換をすることが日本の科学技術をフルに発揮していく道だろうというふうに考えておりますので、ぜひそういう方向で、今後もさまざまな議論をこの委員会等含めて展開していきたいと思っております。

 最後に、ぜひ大臣の方から、イノベーション戦略の転換の必要性について大臣の所見をお伺いしたいと思います。

玄葉国務大臣 予算委員会で遠藤委員と議論したときに、「もしドラ」を読みましたか、こういうお話があって、私知りませんでしたので、あれから手にとって、熟読まではいかないんですが読んだんです。いかにマネジメントという概念が、実はこれから科学技術・イノベーション戦略を考える上でも大切かという意味でとても参考になりました。

 私は、先ほども申し上げましたが、日本が本質的に持っている課題、現役世代の減少とか少子高齢化とか、そういった問題に加えて今回の三・一一ということになりましたけれども、これまでもやはり日本人は、困難に向き合ったときにそのばねをきかせて跳躍するという歴史でもあったというふうに思います。

 私は、今回の事態に当たって、特に科学技術・イノベーション戦略の質的転換を通じて、しっかりと成長戦略をつくり上げて、そのロードマップをつくり上げて、その実現を図っていくことで豊かさを子孫に引き継げるように頑張りたい、そう考えております。

遠藤(乙)委員 大変心強い決意表明と伺いました。

 ぜひ、今回の三・一一を契機に大きくパラダイムシフトをして、どうしたら日本がもう一回再生できるか、すばらしい可能性を秘めたこの日本、日本社会を、もう一度といいますか、新たな二十一世紀以降の世界に飛躍させるためにも、ぜひパラダイムシフト、特に科学技術・イノベーションの転換が必要だというふうに思っております。

 そういったことも含めまして、この委員会で今後、自由な幅広い議論、建設的な議論を進めたいと思っておりますので、ぜひともよろしくお願いしたいということをお願いしまして、私の質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

川内委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 私は、きょうは最初に「もんじゅ」にかかわって伺っておきたいと思います。

 二〇〇八年の四月四日の内閣委員会で、実は原発敷地や直下に活断層のあるものはあるのかという質問をいたしましたときに、当時の佐藤均原子力安全・保安審議官は、原電敦賀の敷地表面に耐震設計上考慮すべき活断層がある、関電美浜については、原発の地下深く活断層があります、「もんじゅ」から二百メートルのところに活断層を認めているという御答弁がありました。

 寺坂院長も五月十一日の経産委員会で、活断層から一キロメートル以内の原発として上記三つを挙げられたわけですが、福島第一では、外部電源の喪失が炉心溶融の大きな要因の一つになりました。たとえ津波で内部電源が喪失しても外部電源が生きておればよかったんですが、夜の森線、受電鉄塔倒壊ということによって外部電源がとれなくなった。

 女川原発の調査をやりましたら、外部電源は生きていたわけですね。五系列のうち四系列だめになったけれども、一系列生きていた。これは、仮に女川で内部電源が喪失しても大丈夫だったということになると思うんです。

 そこで、最初に寺坂保安院長に伺っておきたいんですが、よく原発プラントの評価はやるんですね。しかし、今、活断層の上とか近くにある福井県の三つの原発について見たときに、外部電源の鉄塔そのもの、送電鉄塔あるいは受電鉄塔、これの耐震安全性についての評価というものはやっているのかどうかを伺います。

寺坂政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力発電所の耐震安全性を検討するに当たりまして、外部電源、そういったものについての評価は一応行いますけれども、耐震安全性という意味合いにおきましては、原子炉あるいはその他の重要な設備に比べますと、重要度が相対的に低い、そういう内容での審査になっているのが現状でございます。

吉井委員 ですから、プラントの評価はするんですけれども、外部電源等の評価についてはやっていなかった、これが今回、夜の森線の鉄塔倒壊につながったと思うんです。

 あわせて伺っておきますが、内部電源もまた問題になるわけですね。巨大な地震動が来たときにDGが破損しないのかどうか、それからバッテリーが大丈夫か、あるいはバッテリーの破損だけじゃなしに断線、そういったことがないのかということについての点検が必要だと思うんです。

 伺っておきたいのは、ディーゼル発電機についても破損事故がこれまで結構あったのではないか。これは、何も東電の福島だけじゃないですよ、ほかも含めてですが、そのことについて伺っておきたい。

 もう一つ、この機会に寺坂保安院長に伺っておきたいのは、福島第一の二号機の今後の進展についてというプラント班の、プラント解析予測システム、ERSSによる保守的に評価した結果がどうなるかというのはいただいていますし、国会にも出ているんですが、同じことは、二号機だけじゃなしに、一号機についても三号機についても四号機についても、当然プラント班としては予測というものを当日行っていると思うんですが、これについても伺っておきます。

寺坂政府参考人 まず、非常用電源と申しますか、バックアップ電源に係りますトラブルに関しましては、手元の資料で、過去十年間、法令報告の対象になるトラブルについてさかのぼってみましたら、これまでに法令報告対象のトラブルは七件ございます。さまざまなケースがあるわけでございますけれども、そのような件数がトラブルとして法令報告をされてございます。

 それから、事故進展の関係でございますけれども、二号機に関しましては、先ほど委員からお話がございましたような、当面二号機についてどのように評価をしていくのかということについて情報共有をしたものでございます。

 あと、他の号機に関しましては、全体としてどこまでの情報共有ができているかということについてはともかくといたしまして、幾つかの作業をしていることはそのとおりでございます。

吉井委員 要するに、一号、三号、四号についても、一号の方が早く問題になったわけですから、プラント班の方でちゃんと進展予測を行っていたということで理解していいですね。

寺坂政府参考人 先ほど申し上げましたように、どのような形で最終的に情報共有がなされているかということについては確認をする必要がございますけれども、さまざまな作業をいろいろなレベルでやっておるということは、そのとおりでございます。

吉井委員 事故から既に二カ月余りたちますから、これは委員長にお願いしておきたいんですけれども、二号機だけは紹介されているんですけれども、やはり全部の号機についてプラント班のデータを出すように、委員長の方にお取り計らいをお願いしておきます。

川内委員長 原子力安全・保安院の寺坂院長に申し上げます。

 一号機、三号機、四号機のERSSによる事故進展予測の情報を本委員会に提出していただくようにお願いします。

吉井委員 それでは次に、鈴木理事長に来ていただいておりますから、「もんじゅ」にかかわってさらに質問していきます。

 福島第一の場合には、外部電源が地震で破壊され、内部電源が津波で破壊されたということですが、しかし、実際には、内部電源の方のDGもひょっとしたら巨大な地震の方でやられておったかもしれないわけです。いずれにしても、そこはまだこれからの解明になってくる問題だと思います。

 そこで、高速増殖炉「もんじゅ」で一〇〇%出力で運転していた場合、あるいは、今政府の方で計画しております、まあ変更になるんでしょうけれども、二〇五〇年に百五十万キロワットで商業炉として高速増殖炉をやっていこうという計画、こういう規模のもので一〇〇%出力で運転中に今回のような緊急停止をやる、全電源喪失という事態が生じたときに、MOX燃料の崩壊熱を除去するナトリウムの二次系の全ループも、それからすべての送風機も、ナトリウム循環ポンプなども全部停止するということになりますね、電源が失われれば。そのときに崩壊熱をどのように除去していくのか、これを伺います。

鈴木参考人 お答え申し上げます。

 先生も御存じかと思いますが、「もんじゅ」の場合は、原子炉の炉心と、中間熱交換器及びその後の二次系の冷却、この装置の配置を工夫いたしまして、電源等が確保されない場合は自然冷却で炉心の冷却を確保するということが設計思想になっておりまして、そのようになっております。基本的には、そのような考え方がナトリウム冷却の高速炉の場合は非常に重要だ、そのように考えております。

吉井委員 構想はいいんですけれども、しかし、現実には、通常は、炉心冷却と、一次ナトリウムを冷却する二次ナトリウムがあり、さらにそれを水で蒸気にしてタービンを回す、これが原理的なものですが、この蒸気は、また海水で冷却するということでやっているわけです。

 全電源喪失となりますと、海水冷却はまずだめになるわけですね。水による二次系ナトリウムの冷却はだめになる。二次ナトリウムを冷却する送風機もストップしてしまう。その二次系冷却ナトリウムを格納容器内の熱交換器に送る二次主循環ポンプもストップしてしまう。熱交換後の一次主循環ポンプもストップする。

 これで原子炉容器内のMOX燃料の崩壊熱除去の機能が失われるという心配は、今おっしゃったのは自然冷却で何とかなるというお話ですが、それじゃ、実際に実証したものはあるんですか。コンピューター解析とか部分部分の実験ぐらいはあるにしても、実機でのそういう実証をしたものはあるのですか。

鈴木参考人 お答え申し上げます。

 先生おっしゃるように、基本的には、コンピューター解析等でそこを確かめているわけでございますが、ただ、今回の事象も踏まえまして、私としては、やはり実際、実機で確認する作業をこれから確実にやっていくということが大事だと考えておりまして、そのために必要な改造を、今現在、規制行政庁に提出し、そのような方向で検討させていただいております。

吉井委員 もともと、今回の問題にしても、鈴木理事長は原子力安全委員長の時代に、福島第一で全電源喪失ということはないというお考えで来られたんですよ。私がこれを国会で質問したら、いや、バックアップ機能はあれがあります、これがありますと。同じサイト内にほかの原発があるから、そこから電源もとれるとか言ってこられて、現に、今回全電源喪失になったんです。

 ですから、私は、今の時点で何か部分的に「もんじゅ」を動かして実験をやってデータをとればいい、そういうものじゃないと思うんですよ。

 もともと、一九九五年に、これは地震じゃないですよ、平時のときに、温度計さや管の破断でナトリウム漏えい火災をやったんです。地震で配管破断を起こした場合には、大量の液体ナトリウムの漏えいと火災を起こす。しかも、核燃料の崩壊熱除去に、この場合は福島と違って、海水をぶち込んででも冷やすということはできないんですよ。そんなことをやったら、ナトリウムと水の爆発的な反応になってしまうし、その前に、空気との反応で問題が出てきますし、大量に漏えいしたナトリウムとコンクリートの中の水分とが、ナトリウム・コンクリート反応、これは爆発的に反応して、原発の破壊ということも考えなきゃいけないんですね。

 何か、ほかの条件が全部大丈夫で、「もんじゅ」のその部分だけが緊急停止したときに崩壊熱をどう除去するか、そういう実験というのは、余りにも想定が現実とは離れ過ぎているんじゃないですか。

鈴木参考人 お答え申し上げます。

 先生がおっしゃる中で、まず、全電源喪失に対します考え方は、先ほど申し上げましたように、自然冷却で炉心の冷却を確保するということでありまして、その場合には、いわゆる動的機器は必要としないということでございます。これは「もんじゅ」の一つの特徴でありまして、全電源喪失に対する安全確保は、「もんじゅ」の場合はそのような考え方が成り立つし、それでいいのではないかと私は思っております。

 一方、地震で機器等がすべて損壊した場合ということでありますが、これは、おっしゃるように、地震の規模をどこまで想定するかでありますので、これについては慎重な検討が必要でございますが、考え方としては、先生御存じのように、「もんじゅ」の場合は、冷却のループ数が通常より多くて、三ループプラス一ループという構成になっております。したがって、そのうち一ループでも確保できれば冷却は維持できるということになっておりまして、これも、そういう意味では適切な考慮がなされているというふうに私は考えております。

吉井委員 今の三ループプラス一ループで大丈夫というお話なんですが、その発想が福島でだめだということが明らかになったんですよ。

 あのときも、外部電源が失われても、例えばDGがだめになっても、ほかの機能があるから大丈夫だという発想だったんですが、三プラス一ですと四ループということになりますが、四ループが全部、そもそも全電源喪失となると、回らないんです、送風機も循環機も回らない。その上に立って考えなきゃいけない上に、巨大な地震となりますと、配管の損傷によってナトリウムの漏えいということを考えなきゃいけないんです。これは非常に深刻な事態を招いてしまうんです。

 しかも、冒頭、寺坂院長にもお伺いした、あそこは、「もんじゅ」というのは、表面に出ている活断層が、「もんじゅ」から二百メートル離れたところなんですね。活断層の上に立っている高速増殖炉なんですよ。フランスのスーパーフェニックスだって、もともと地震のないところなんですよ。活断層の心配がないところなんです。

 そんなところでやっているということが問題だということを私は言わなきゃいけないし、そもそもこれは、漏れたら、さっき言いましたように、海水注入して冷やすというわけにいかないんですよ。海水をぶち込んだら、ナトリウムと水で大変な爆発事故になってしまうんですよ。もちろん、漏れたら、ナトリウムと空気で爆発火災となります。

 そこで、私は玄葉大臣に伺っておきたいんですが、高速増殖炉「もんじゅ」開発というものは、エネルギー政策の中で、「もんじゅ」をやり、さらに将来的には二〇五〇年に百五十万キロワット級の高速増殖炉、こういう考え方でずっと来たわけですが、ここでもうストップをかけて、「もんじゅ」開発は中止して予算はゼロにする。研究者の方たちは、当面、もともとの原子力研究所などで引き取ってもらって、これから問題になってくる廃炉の研究とかそういうところに、優秀な人材はそちらで頑張っていただく。そういうことを政府としてもう考えるべきときじゃないかと思うんですが、これは玄葉大臣に伺っておきます。

玄葉国務大臣 今の吉井委員の質問は非常に重い課題であるというふうに私自身は認識をしているところでございます。

 そもそも核燃サイクルは、高速増殖炉がうまくいかなければ成り立たないシステムというのが私の認識でございます。現状が必ずしもうまくいっていないということは、やはりしっかりとしたオープンな議論をして、原子力そのものの位置づけもそうでございますし、今おっしゃったようないわゆる核燃サイクルについても、オープンな議論の中で検証していくということは必要だというふうに私は考えております。

 直接の担当ではございませんが、関係大臣と連携をしてまさに議論していきたい、こう考えております。

吉井委員 これは、実はエネルギー政策のかなめになってくるんですよね。

 要するに、軽水炉路線というのは、プルトニウム循環路線なんですよ。プルトニウムをどう循環させるかという中での課題で、これが今行き詰まっているんですから、「もんじゅ」をもうやめる、そして、廃炉研究等今なすべき課題に取り組むことが大事だということを申し上げておきたいと思います。

 次に、班目委員長に伺いますが、三月十一日の十四時四十六分に地震が発生して、外部電源が失われました。十五時三十分ごろに津波が襲来して、最初の地震によるものかどうかはともかくとして、とにかくDGが破損しました。十五時三十七分ごろ、バッテリーもだめになって、全電源喪失というふうに東電は見ているようですが、十五時四十二分ごろに、東京電力から政府に対して全交流電源喪失と、原子力災害対策特別措置法十条一項による報告がありました。十六時四十五分になるのですか、非常用炉心冷却による注水不能という通報もあり、十八時〇八分には冷却材漏えいという通報があり、せんだって発表された東電の解析によりますと、十八時ごろに冷却水の上に頂部が出てしまったと。

 そこで、東京電力のせんだって発表した公表資料によりますと、十八時ぐらいが炉心溶融の始まりと思うんですが、班目委員長にお伺いしておきたいのは、全交流電源喪失という報告を受けた後、バッテリーが生きているのかどうか、バッテリーが死んでしまったら大変なことですから、生きているかどうかの確認、機器冷却系が働いているかどうか、それから熱交換器の機能は大丈夫か、要するにバッテリーが生きているかというふうな確認を、いつ、何時の時点で判断されたのか。また、仮にバッテリーがだめですという回答があれば、これはもう全電源喪失ということを認識しなきゃいけないわけですが、それをいつ判断されたのか、伺っておきます。

班目参考人 何時何分というところまでは正確ではございませんが、まず、四時ごろ、ERCというところから全交流電源喪失、原災法十条に基づく連絡がございました。その時点で原子力安全委員会としては緊急助言組織を立ち上げた、これは事実でございます。

 それで、それから我々としてはいろいろな形で連絡をとろうとしたんですが、電話がつながらないという状況がかなり続きまして、実は、詳細な状況の把握というのはかなりおくれてございます。実際には、その後、原子力災害対策本部が設置され、たしか七時過ぎだったと思いますが、そちらの方に行って、危機管理センターの方で詳細なことを東京電力から初めて聞いたというのが実態でございます。

吉井委員 八時ごろ詳細な報告を聞いたというのは、聞いたのはいいんですよ。

 私がお伺いしておきたいのは、原子力安全委員長としては、全交流電源喪失ということになれば、交流電源が失われるだけじゃなくて直流電源まで失われたら、全電源喪失なんです。これは、圧力容器内ではどんどん蒸発が進み圧力が高まり液面は下がる、当然炉心溶融への道をたどるわけですね。ですから、全交流電源喪失ということをお聞きになったときに、全交流が全電源喪失になるなといつ判断されたかですね。これは大変だということをいつお考えになったのかを伺っておきます。

班目参考人 基本的には、バッテリーで動くものは計測関係と小さな弁のたぐいです。

 実は、外部との連絡がとれない中、中で少し議論させていただいて、その結果、バッテリーが生き残っている可能性はかなり高いだろうというふうな認識はしておりました。今現在も、我々、時系列できちんとした把握はしてございませんけれども、完全な意味でバッテリーも何もかもだめになったという瞬間というのはかなり遅いし、バッテリー程度だったら、いざとなればほかのところから持ち込むことによって何とかなるのではないか、いろいろな議論をそういうときにしていたというのは事実でございます。

吉井委員 私は、全電源喪失という問題は、もっと深刻な問題だと思うんです。

 今までの説明は、外部電源がだめでも内部電源があります、内部電源はDGとバッテリーの組み合わせですと。もちろん、おっしゃったように、DGが働けば、メーターその他計器類を多分読み取ることもできるんでしょうけれども、しかし、DGの機能を使って、逆にそれで交流電源の方を動かして、転換して、それで機器冷却系を動かすとか、それができるから大丈夫なんだ、これが今までのお話だったんですよ。

 だから、それだけに、全電源喪失ということになれば深刻な問題なんですが、今おっしゃったように全交流電源喪失だけでもだめだということになれば、全交流電源喪失を聞いた時点で、直ちにこれはベントしなさいとか、あるいは、真水が一番いいんですが、なければ海水注入してでも直ちに冷却をして、燃料棒の頂部が液面上に出ないようにしなさいということを指示する、その判断をしなきゃいけなかったと思うんですが、何時ごろその判断をされたのかを伺っておきます。

班目参考人 四時にそういう意味で緊急助言組織を立ち上げましたけれども、その後、原子力災害対策本部が立ち上がるまでに少し時間がございました。その間に、少し委員間で議論させていただいております。全交流電源、要するに非常用DGもすべてこれはだめだというふうに判断していますので、しかも、テレビの映像なんかを見ると、これはかなり長時間にわたって回復不能だというふうに考えました。

 したがいまして、その議論の結論として、もうこれは最終的には格納容器をベントするしかないし、それによって、消火設備等を使って炉心に水を入れなきゃいけないというふうに判断してございます。これは既に七時ごろ、もうちょっと前だったかもしれませんけれども、原子力災害対策本部の方へ向かう前にそういう判断を原子力安全委員会としてはしてございます。

吉井委員 それにしては、動きが非常に遅かったと思うんですね。

 原子力安全委員会がそういう判断をされて政府にそのことを言われたら、総理大臣権限を直ちに行使して、原子力災害特別措置法による指示、命令や、あるいは、経産大臣に権限が移されておりますが、もともとは総理権限なんですから、原子炉規制法に基づいて直ちにベント、注水を行って、どんなことがあっても核燃料棒を液面の上から出るようなことはさせない、このことが必要だったと思うんです。

 実は、二十時二十分からの記者会見の記録を見てみますと、中村審議官は、福島第一の二、四号機が津波により海水系ポンプの起動が確認できないとして、一、二号機の原発におきましては、原子炉の冷却というかその機能、これについて今後十分に機能しなくなるおそれがあると明らかにしています。山田課長は、津波で波をかぶって機能が失われた、バッテリーがショートしたとかは確認がとれていないという発言などもありました。

 いずれにしても、午後八時二十分の時点では、保安院としてはもう、ベントと冷却水注入をやらないといけないという考えに立っていた。それは原子力安全委員会も保安院もそういう立場で総理の方に進言したと思うんですが、これは寺坂さんの方に確認しておきます。

寺坂政府参考人 お答え申し上げます。

 その間の細かいやりとりについては確認できておりませんけれども、全交流電源の喪失、あるいはバッテリーについても確実なものはないということでございますので、さまざまな考え方、あるいはいろいろな推測に基づきまして提言はしていたかと思います。

 ただ、ベントに関しましても、ベント自身は放射性物質を外に出すという行為でありますから、そういう要素はございますけれども、いろいろな形で、どのように考えていけばいいのかということについてのさまざまなやりとりはやっていたというふうに承知しております。

吉井委員 時間が参りましたので終わりますけれども、やはり「もんじゅ」はもうやめにして、予算はもうゼロにして、研究者は旧日本原研の方に引き継いで、廃炉の研究などをしっかりやっていかないと、これからの課題なんですよ。

 それから、原発依存のこれまでのエネルギー政策というものは、大臣、先ほど伺いまして、時間がなくなったからおいておきますけれども、エネルギー政策を原発依存から根本的に改めていく、このことなしには今日の危機の打開の道は開かれてこない、このことを申し上げまして、質問を終わります。

川内委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、玄葉大臣にお越しいただきまして、所信表明を伺うということでございます。

 私は、先ほど遠藤委員の御質疑の中にもありましたけれども、遠藤委員が議運においてこの委員会の立ち上げを御提唱され、また超党派、各党の賛同を得て今日この委員会が始まったということは、本当に議会の歴史上画期的であると思っております。

 もちろん、これから政府は、科学技術の分野、イノベーションは大事な分野ですから、お進めになりますでしょうが、広くその科学技術が国民あるいは社会の意思をどう受けて進められるか、この双方がなければ、よく言うように、科学の進歩は光であり、影ももたらし得るものだからです。

 とりわけ、今般の原発事故というのはそのことを如実に私どもに示していただきましたし、また、きょうの審議を伺っていても、大変皆さんじっくりと時間をとって、深い審議が行われていると思います。なかなか忙しい国会の場で、こういう場面は少ないと思いますので、委員長初め、この委員会を持っていただけた皆さんに心からお礼申し上げて、そしてきょうは、実は、事故の問題一つとってもまだまだ究明、解明しなきゃならないことがありますが、せっかく大臣の所信表明の場ですので、基本的には全問大臣にお伺いしたいと思います。

 この科学技術という問題に対しては、一九九五年に科学技術基本法というものができまして、それも超党派というか全党派の賛同ででき上がったもので、推進をしていくという基本法ができ上がりました。それにのっとりまして、五年ごとに基本計画というものを立案いたしまして、予算づけをしていくというプロセスがもう三回進んだことになります、九五年から五年、五年、五年で。

 そうなってまいりますと、今回、いよいよ二〇一〇年度、これからのまた五年を計画していかなきゃいけないときになっているかと思いますが、その中で、玄葉大臣には、これまでの科学技術というものを推進しようという意思が政治の中にありながら、しかし、そのアウトプットはどうであったか、また、今回大臣になられて、骨子だけでも結構です、どんな基本計画をつくっていこうとなさるか、その点についてお伺いいたします。

玄葉国務大臣 第四期の科学技術基本計画ということになりますけれども、先ほど遠藤委員とも議論をいたしましたけれども、一つ大事なことは、イノベーションという概念をしっかりと組み込んでいくこと、もう一つは、重点化をしていくということが大事だろうということで、いわゆるグリーンとライフということに重点化するということにしましたが、さらに、今回の三・一一を受けて、私はもう一度、総合科学技術会議の皆様、つまりは学識経験者の方々にお集まりをいただいて、じっくりと議論いたしました。

 つまりは、この三・一一から我々は何を学ぶのか、そのまま、今まで決めてきたことの延長線上で行っていっていいのかということの議論の中で、グリーン、ライフという重点化に加えて、復興、再生、もっと言えばいわゆる安全性といったことも加味しながら、この科学技術基本計画を見直ししていかなければならないというふうに私自身は考えております。

阿部委員 私がきょうお手元に配らせていただいたこの五年、五年の下には、総括のようなものも多少書いてあると思うのです。今、大臣はその点については余りお触れになりませんでしたので、ちょっとここで確認というか、おさらいをさせていただきます。

 例えば、九六年から二〇〇〇年までは、ポスドクと呼ばれるドクターたちの一万人計画というのがございました。しかし、この間、ポストドクターが全く暮らせない、学術を続けられないような状況の中に置かれています。私は、これから、本当に科学を支える人材の生活を安定させ、やる意欲を持たせていただかないと、日本は、笛吹けどだれも踊らずになると思います。

 また、その次の二〇〇一年から二〇〇五年というところも、一応、重点分野の設定や、ここは非常にリアルですが、五十年間でノーベル賞受賞者三十人をつくると。いいと思います。その意気やよしといたしましょう。

 しかし、今、御承知のように、ノーベル賞をお受けになった方は七十歳代、八十歳代になっておられて、逆に言うと、昔、一生懸命いろいろな困難の中で研究され、海外にも羽ばたいた方が、現状、我が国にノーベル賞をもたらしてくれているということでありますので、大臣にはくれぐれも、こうした中における人材の確保ということを本当に保障できるものは何か。例えば、大学も独法化されまして、基本的にそこで働くというか研究する人たちの先ほど申しました身分不安定もございます。

 私は、日本がこれから尊敬される国になるためには、やはり科学技術というもの、それも、特に安全性や健康やあるいは環境に重きを置いた科学技術立国というものは、世界の中でこれから日本が占める位置だと思いますので、それを担う人材の問題をぜひお心にとめていただきたい。

 第三期は、ここはちょっと余りにも漠としていて、イノベーター日本とかいう言い方をしておりますが、科学技術の革新、それが広く普及し、社会の経済の発展や、いろいろな意味で社会そのものを持ち上げていくという概念だと思いますが、残念なことに、九〇年代半ばから今に至るまで二十年くらいは失われた十年、二十年と言われていて、社会は低迷し、日本が消えてしまいそうと言われております。これをよく見ていただきまして、今回のプランがつくられますように。

 そして、次のページを見ていただきますと、これは、では、さて政府は科学技術関係予算をどのように組んできたか。実は、けさ資料が届きまして、もう少し新しいものがあったのですが、私はここでOECDのものを利用させていただきましたが、購買力平価に直した数値でございますが、日本は二〇〇六年段階でも三・六兆円余りでございます。

 さて、大臣にあっては、やはりお金がどのくらいそこに投資できるかということはどんなことにおいても非常に重要ですし、日本は財政難だと言われて、切り詰めろ、切り詰めろということで、今年度予算もどうなっていくのかとみんな不安に思っておりますが、私は、ここを出し渋ると日本はイノベートできない、そこに立ち至っている、ちょうど震災もありましたし。

 大臣がこの表をごらんになって、あるいは、今後どんなお考えで進めていかれるか。これは政府内においても強力に発信していただかねばなりませんので、覚悟のほどを伺います。

玄葉国務大臣 先ほど、私が科学技術の担当、旧科学技術庁ということではありませんけれども、この担当になったのが一月十七日であります。予算の編成のとき、国家戦略担当大臣あるいは政調会長という立場で、それこそ阿部政審会長にもいろいろと御相談をさせていただいた経緯もありますけれども、そのときに留意をし、また、菅総理も非常にこの科研費、科学技術予算については強い関心を持っていたということは申し上げたいと思います。

 特に、先ほどおっしゃったいわゆる人材育成は、科研費の補助金三割増、あるいはポストドクターも三割増ということで、ここのところについては、私たちも厳しい財政状況ではありましたけれども、今回の一つの予算の特色になっているということは御存じのとおりということでございます。

 残念ながら、この阿部委員が出された米国とEUと日本の表を見ると、日本の予算が少ないということは一目瞭然なわけでありますけれども、これからまさに、選択と集中じゃありませんが、しっかりと重点化をし、また先ほど申し上げたようなイノベーションという発想もしっかり取り入れながら、戦略的にこの分野を進めていかなければならないというふうに考えております。

阿部委員 対GDP比で申しますと、今の政府関連予算が科学技術振興につぎ込まれる率は〇・七三くらいになっております。日本の科学技術振興の経費の特徴は、民間投資の方が多くて、政府支出は少ない。しかしながら、これからお話し申し上げますが、今後この日本が、さっき言った環境立国、健康立国、あるいは安心、安全立国となっていくためには、今起きました原発事故も含めまして、私は、大胆に政府が対応していく、研究面においても技術革新においても必要な場面が必ずこれから訪れると思います。

 ちなみに、これまでの予算の使われ方を見ますと、今回は政府予算案で三・六兆円余りですが、平成二十一年度は、補正予算も含めると五兆円余りが出ておりました。これは前政権の最後の時期でありますが、補正で何回か組まれたということであります。

 私は、二次補正の中でもぜひ玄葉さんに組んでほしいものがあるので、自分でその方向に引っ張っていきたいがために聞いているところもありますが、しかし、非常に今大事な局面にあると思いますので、この少なさをよく自覚していただいて、そして日本の国の将来のために、子や孫のために今ここで頑張るぞとぜひお考えいただきたいと思います。

 そして、三点目を伺わせていただきますが、先ほど私が申し上げましたように、日本の将来向かう姿は、安心や安全、健康あるいは環境などがキーワードになりますし、それはライフイノベーション、グリーンイノベーションと、御政権、今の現政権がおっしゃったことともマッチしてくると思います。しかし、そう言われている一方で、現実がそうなっているのかなということを私は懸念するわけです。

 それについて、三ページ目をおあけいただきたいと思います。これは、今般の事故の事故後の処理における対応でございますが、私は、一言で言って、この対応には健康配慮と環境配慮が非常におくれているどころか希薄、もしかして本気でないんじゃないかと思うので、きょう玄葉大臣に、先ほど来、福島の選出であることや、あるいは一大臣、国務大臣としてとおっしゃっておられましたが、科学技術担当大臣としてぜひ御発信していただきたいことがあります。

 私は、実は連休中にアメリカに行ってまいりました。原子力規制委員会、NRCに行き、またエネルギー庁にも行ってまいりましたが、NRCに行ったときの一番の驚きは、パブリックヘルス、公衆の健康を守ることと環境を守ることがゴールであり、掲げられた目標なのであります。NRC、原子力規制委員会の目標は、公衆の健康を守り環境を守る、あとは、核物質が、今は核テロもありますから、分散、散らばっていくことを防ぐということが掲げられております。

 翻って、日本で考えると、先ほどおられましたが、東電の皆さんも保安院も、もっと言えば安全委員会も、私は、どこか歯切れが悪いというか、本当にあなたたち、国民の健康を守ってくれるのか、あるいは、汚染水をじゃぶじゃぶ流して環境は大丈夫なのかと。

 私は、これから日本が国際会議で聞かれる場は多いと思うのですが、この事故は恐らく、スリーマイル、チェルノブイリ以上の福島という名を残してしまうと思います。であれば、我が国が総力を挙げて何に向かって何をメッセージしていくのか、その突端に大臣が立っておられます。

 この工程表の何に私がこれだけ怒っているかというと、これは五月十七日に発表されたものですが、下の、ずらっと並んでいる「政府の被災者への対応に関する工程表」という方を見ていただきたい。上は東電が御発表でありますが、さて、政府の発表はどうかというと、「帰還に向けた取り組み」のところに「土壌の放射性物質の蓄積状況の調査 ※五月以降実施」とか、もっとひどいのは、「中期的課題」でしかなくなっている「除染・改良の実施」。これはいつも言うんですけれども、簡単に言うと、原子力の灰や放射性物質は降り注ぐだけ降り注いで、落ちついたらお掃除しましょうという意味であります。

 今、実は、先ほど民主党の議員の御質疑である、地表の線量もはかられていません。空間線量と地表の線量は違うものです。地表の方が高くなります。子供は低いところに暮らしています。あるいは、土壌の線量は、今、五キロ掛け五キロのメッシュで福島県内のみはかられていると思います。これはどう考えても粗過ぎるし、これから取り組むべき土壌改良は、もちろん福島県の汚染のひどいところもそうですが、今、郡山でも問題になる校庭の問題もそうですし、もっと遠いところでも通常よりは高い線量が明らかに出ているわけです。

 ここで基準値争いをする以上に、私は基準は大事だと思います、でも、それ以上に、実態を知ること、現状を知ること、改善策に手を打つこと、これ以上のライフイノベーションはありません。でも、だれも手を挙げず、だれも取り組まず、放置されて今日まで来ております。

 実は、先ほどの文科省の御答弁で、私はちょっと半分あきれていましたが、チェルノブイリに学んでこれから協力をしてもらえると言われたと。まあ、それはいいことです。私は、この前予算委員会でも、それももっとやってくれと言いました。でも、実は、今言われているような、校庭の土壌の表面をかえるとか庭の木の剪定をするとか土壌の改良のために化学肥料を入れるとか、二〇〇一年のキエフの会議でもうレポートが出ています。

 なぜ十年間もほったらかして、今これから、さあ線量の測定に取り組みますよ、土壌の改良は事が決着しなければ手をつけませんよというような状態でよしとされるのか。

 ちなみに、地表の線量の測定は、科学技術総合会議の中にいる日本学術会議も四月の半ばに提言しておられます。四月の四日くらいだったと思います。もう一カ月も過ぎました。文科省はこれから検討すると言います。だれが国民の健康を守るのか。

 たくさん申し上げて申しわけありませんが、私は、科学技術担当大臣が、ライフイノベーション、環境イノベーションをするんだという決意において、このことをもっと全輪駆動していただきたいですが、いかがでしょう。

玄葉国務大臣 阿部委員から大変大事なことを言われたというふうに思っております。

 先ほど、科学技術の新しい挑戦をしなければならないという中で、もう一つ私が各先生方に申し上げたのは、チェルノブイリとスリーマイルは、広大な土地、それぞれ旧ソ連、アメリカですから、ある意味、その後も事実上放置状態にあったと私は認識をしています。日本国政府は放置をしない、よみがえらせるということで、これから、世界の英知のみならず、若い研究者を育てながらこの新しい挑戦をやっていこうということを申し上げ、同時に、人々が、つまりは今の被害者、被災者の皆様が地元に戻って初めて復興という基本的な考え方でまず取り組んでいくべきだというふうに考えております。

 その上で、先ほどおっしゃったような、例えばこれは石森委員からも御指摘がありました地表の測定、あるいは福島県に限らないんじゃないかとか、あるいは校庭の問題であるとか、私は私なりに、個人的に高木文科大臣にもこれは申し上げてございますし、担当者の皆様にも申し上げております。

 今おっしゃったようなことも含めて、しっかり私なりに、これは本当に実感として実は感じていることなので、あえて今この場で言葉にできないようなところもあるんですけれども、しっかりやっていきます。

阿部委員 玄葉大臣は今、チェルノブイリやスリーマイルはそこに立ち入らせないというふうにしたのと日本は違うとおっしゃいましたが、実はチェルノブイリでも、四月の二十六日の事故で汚染マップはもう六月にできているんですね。そして、その事故の近隣も含めた汚染マップができているんですね。

 あと、今、日本は二十キロ圏内でほったらかしにした動物たちも、実はチェルノブイリでは、避難するときに、飼っている人と一緒に外に出ているんですね。そこから、どうすればその動物が浴びた被曝量を軽減できるかということで、いろいろな改良努力をしているんですね。

 私は、チェルノブイリも情報隠しがあったと思います。社会主義的な報道統制があって、悲惨な実態が伝えられなかったのも事実です。でも、いろいろな取り組みはしておられますから、ぜひ謙虚に学んで、そして、それは日本のこれからの姿にとても大事です。

 私は、今の対策、さっき申しました除染が、こんなすべての放出過程が終わってからなんということは納得し得ません。だって、水はじゃあじゃあ汚れています。それから、最初に起きた放射能のちりを早く払わなければ、それはそこにい続けて拡散し続けます。風に舞い、雨に流れ、拡大する一方です。このプロセスが遅いということが、何としても、今の政権の取り組みの最も欠けたる部分だと私は思います。

 ただしかし、事故はないことを想定してきたので、大体環境を守る法律はないわけです。環境汚染法だって放射能被害はないわけです。それから、炉を守る法律はあっても、外に一歩出たらどうなるかは法もないわけです。ですから、政権だけのせいとは言いません。だけれども、謙虚に学んで、環境と健康を本当に守る覚悟、そうしたら、やっとアメリカのNRCレベルになるでしょう。でも、アメリカでも今原発が抱えている問題がありますので、それについてまた後ほどお話をさせていただきます。

 実は、その次にお願いしたいのは、自然エネルギーを促進させたいというのは、このような悲惨な状況が世界に発信された中で、さて日本はどうするんだろうとかたずをのんで見ています。今度G8で菅さんも行かれて発表なさるそうですが、あの震災のあった三月十一日に、同じ日に閣議決定された自然エネルギー促進法、買い取り法ですね、固定価格法と言ってもいいです。風力も太陽光発電も地熱も、あるいはこれから開発される波等々も、あらゆるものが可能性を持っている。

 しかし、これは政府が提案された閣法であります。そして、私は、国会を閉じるなんて言っていないで、この法律をきちんと政府の意思で通していただきたい。私たち議会側も協力します。でも、もう六月の中ごろで閉じるよとか言われたら、時間の優先順位とその審議にかかっている法案委員会がありますから、これすらも通さずに閉じるのかと非常に最近不安になっております。

 ぜひ、政府としての意思です、閣法なんですから、出したんですから、買い取りを進めたいんですから。決意表明をお願いします。

玄葉国務大臣 先ほど私は一言申し上げなきゃいけないことがあったんですが、まさにきょう、科学技術の推進費の中で半分以上、放射性物質による環境影響ということで使わせていただくことを正式決定したいというふうに考えております。

 具体的に言うと、放射性物質の分布状況等に関する調査研究、これをまさに細かなメッシュでやるということと、いわゆる土壌汚染に対する放射性物質の除去技術の開発、具体的に言うと、放射性物質の分布状況等に関する調査研究が七・一億円、農地土壌の問題が約五億円ということで正式決定して、これは推進費で機動的に対応できるということなので、早速行いたいというふうに考えております。

 また、国会の話はこの場で私が申し上げるのは適切じゃありませんが、固定価格買い取り制度の法律、ぜひとも成立をさせたいので、御協力をお願い申し上げたいというふうに思います。

阿部委員 私が先ほど申しましたように、政府だけでなくて、こうした委員会ができたということは、各党から来ていただいていて、各党の代表でもいらっしゃいますから、私からも各党の皆さんにもお願いし、でも、早くに閉じちゃったらできませんから、よもよも早期に国会を閉じるなどはおっしゃられませんようにお願い申し上げたい。

 あと、今のは七兆かなと思いましたら七・数億。でも、瓦れきの処理だって、例えば塩害で十年かかると言われて、そこでその処理をするための人工代というのが出るんですよ。十アール当たり三万円とか。放射性物質の汚染の除去、そこで人が働くわけです。そこで収入になるわけです。だって、いい土地が欲しいんだもの。そのための人工代だって出ないと、研究ばかりしたらイノベーションじゃないんですよ。社会の中に還元する、経済としても推進させる、雇用も生む、まさに玄葉大臣がおっしゃったとおりですよ。研究調査費がついたことはうれしいです。でも、もっと大胆にプロモートしていただきますよう。

 最後に、エネルギーシフトのお話をいたします。

 皆さんのお手元に中長期的な電力シフトイメージというものを出させていただきました。これは、今約三〇%くらいを原子力に頼っている我が国で、今後、四十年たった炉を閉鎖していく、そういうシナリオを書きます。四十年というのは、原子炉の普通の寿命からいうと高齢に入ります。今、原子力の世界は少子高齢化です。新しいものはなかなか生まれない。まして、これから生まれない。無理です、はっきり言って。大体、五基も六基も同じ場所に立地する。アメリカでさえやっていないです。一基か二基です、せいぜいワンサイト。

 でも、日本はなぜか福島にあれだけお世話になっています。申しわけないとも思います。でも、このありさまを見て、だれも国民の中に、いや、うちでいいよと収束もしないのに言ってくれる可能性は、ゼロとは言いませんが、極めて少ないです。これから海洋汚染だって広がってきたときにはもっと反発と反感が出ます。

 そこで、当然ながら古くなったものはやめましょうというふうにやったといたしますと、実は二〇二〇年までにあと二十基が四十年を迎えてしまいます。今、もう四十年を迎えたものが恐らく三基か四基あります。女川とか、今回の福島もそうですし、あと敦賀がそうだと思います。おまけに事故と同じ型の炉もあります。

 国民が求めているものは安心です。それをどう担保するかというのに、地震の問題、古さの問題、両方掛け合わせてシミュレーションをしてみますと、これは、上はただ単に古い方から閉じるということです。二〇二〇年には一七%になっちゃうから、どこかでエネルギーを持ってこなきゃいけません。それに天然ガスを使う、自然エネルギーを促進するなどです。下は二〇二〇年までに、そうはいっても、あと七年くらいで全部の原子炉をやめる、これにはさっき石森さんがおっしゃった使用済み核燃料のスペースがあと七年しかないんです。どこにも置けない。モンゴルに持っていこうなどというお話は論外であります。

 この一と二は、実は大胆に見えて現実的なプロセスなんだと私は思います。一つ、新しくつくれない。一つ、老朽化する。一つ、核燃料の使用済みの保管庫がない。いかがでしょうか。これは社民党で近々発表させていただきます。ぜひ御採用をいただきたいが、どうでしょうか。

玄葉国務大臣 今、原発五十四基、二〇三〇年までに新規十四基という計画をつくって、発電電力量に占める割合をたしか五二%にする、こういう計画だったと思います。再生可能エネルギーの割合を二割にする、こういう計画だったと思いますけれども、まさに、このところについて白紙で見直していくということだと思います。

 原発を考える上で、論点は今おっしゃったとおりだと思います。つまりは、新規十四基できるんですか、できないと思います。その問題、高経年化の問題をどうするか、これが一つの現実。しかし、もう一方の現実として、経済リスクとか電力不足の問題がありますから、ここにリアルな工程表、ロードマップをつくる必要性が出てくるということではないかと考えております。

 そのときに大切なことは、先ほど短期と中長期に分けて考えていかなきゃいけないと申し上げましたけれども、先ほど阿部委員が御指摘になられたとおり、特に中長期の部分は、国が主導で革新的技術の開発をやらざるを得ないと思うんです。

 つまり、もっと具体的に言うと、電池の革命、発電効率の革命、あるいは材料の革命、こういったものが私は必要だと思っておりますが、既存技術の改良に民間の研究開発投資は大体九割使っています。それは仕方がないと思います。ですから、中長期の革新的技術の開発についてはやはり国家主導で行うということが私は必要だと思っておりますので、そういった問題のスピードとの関連で、どこまでリアルなロードマップをつくって、どこまでベストミックスな、まさに安心という意味からしてもベストミックスなエネルギー政策がつくり得るかということで、私も奮闘していきたい、こう考えております。

阿部委員 ぜひ、大臣にエールを送りますので、また委員会の皆様と力を合わせて審議を深めていきたいと思います。

 ありがとうございます。

     ――――◇―――――

川内委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件、特に放射線の健康影響について調査のため、明二十日金曜日午前九時、参考人として原子力安全委員会委員久住静代君、琉球大学名誉教授矢ヶ崎克馬君、高木学校・元放射線医学総合研究所主任研究官・医学博士崎山比早子君及び中部大学教授武田邦彦君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

川内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、明二十日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時八分散会


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