衆議院

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第5号 平成23年11月24日(木曜日)

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平成二十三年十一月二十四日(木曜日)

    午後三時四十四分開議

 出席委員

   委員長 松宮  勲君

   理事 菊田真紀子君 理事 田村 謙治君

   理事 高井 美穂君 理事 津村 啓介君

   理事 吉田 統彦君 理事 馳   浩君

   理事 松野 博一君 理事 遠藤 乙彦君

      相原 史乃君    石田 三示君

      石森 久嗣君    稲富 修二君

      江端 貴子君    大泉ひろこ君

      大西 健介君    大山 昌宏君

      川内 博史君    熊谷 貞俊君

      熊田 篤嗣君    空本 誠喜君

      平  智之君    高木 義明君

      中後  淳君    橋本 博明君

      平山 泰朗君    水野 智彦君

      柚木 道義君    江渡 聡徳君

      金田 勝年君    佐田玄一郎君

      松浪 健太君    吉野 正芳君

      斉藤 鉄夫君    吉井 英勝君

      阿部 知子君    柿澤 未途君

    …………………………………

   参考人

   (イーター国際核融合エネルギー機構機構長)    本島  修君

   衆議院調査局科学技術・イノベーション推進特別調査室長           雨宮 由卓君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十四日

 辞任         補欠選任

  大畠 章宏君     相原 史乃君

  河井 克行君     松浪 健太君

同日

 辞任         補欠選任

  相原 史乃君     大畠 章宏君

  松浪 健太君     河井 克行君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件(我が国の科学技術、イノベーション推進の今後の在り方について)


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     ――――◇―――――

松宮委員長 これより会議を開きます。

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件、特に我が国の科学技術、イノベーション推進の今後の在り方について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人としてイーター国際核融合エネルギー機構機構長本島修君に御出席をいただいております。

 この際、本島参考人に委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。本島参考人におかれましては、本当に大変な御重職について御多忙の中、私どもに大変貴重な、有意義な御説明を賜りたいと思いますけれども、どうぞ御忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、本島参考人から二十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に簡潔、端的にお答え願いたいと存じます。

 御発言の際は着席のままで結構でございます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、本島参考人にお願いいたします。

本島参考人 委員長、ありがとうございます。

 フランスの南プロバンスにありますITERと申します、これはラテン語で道という意味ですが、核融合実験炉計画が今建設期に入っております。今回、貴重な機会をいただきましたことをまずお礼申し上げたいと思って、こちらへ参りました。

 お手元の資料で、きょうは二十枚ほどのビューグラフを使って、ITER計画の現状、目的、今後の見通し等について説明させていただく予定にしております。

 そのほかの参考資料としまして、この冊子ですが、現場の建設が建物等を中心として進んできておりますのをまとめたものです。目で見える形で建設が進んでいるということをお示しするための資料です。

 それから、こちらの小冊子は、これは「パリティ」が、来年の一月の新年号で各分野の科学研究がどう進んだかということを特集するんですが、そこに頼まれて原稿を書いたものです。御参考にしていただきたいと思います。

 それから、これは文部科学省の方で各分野について、一家に一枚というキャッチフレーズのもとに、その分野のアクティビティーを示したポスターなんですが、右の方にITERが書いてありますとおり、いろいろな分野に私どもの研究がスピンオフしておりますので、それを示すためのものです。御参考にしていただきたいと思います。

 それでは、早速ですが、この資料に基づいて御説明をさせていただきます。

 まず一枚目ですが、ITER計画、インターナショナル・サーモニュークリア・エクスペリメンタル・リアクターの略ですか、日本の未来のために、世界の未来のためのエネルギーの研究を進めるためのビッグプロジェクトでございます。

 一言でまず申し上げたいのは、エネルギーを出すことが求められておりますので、五百メガワット、これは通常の発電所の規模ですが、五十万キロの核融合エネルギーの達成を目指しております。これを二〇二七年に実現することによって、先生方、社会の皆様方から、核融合エネルギーが役に立つということを認めていただける、こういうふうに信じて研究を進めておるわけです。

 このITERは、核融合エネルギーの科学的、技術的な実現可能性と安全特性の実証を目的としております。カダラッシュに太陽をというのをキャッチフレーズに現在建設を進めております。

 私は、出身は科学者、この分野の実験家でございまして、日本で進められてきました大学共同利用機関の核融合科学研究所の創設に加わりまして、一九八九年から九八年にかけて、大きな超電導装置、大型ヘリカル装置と申します、現在も世界一の装置ですが、その建設の責任者を務めまして、その後十年間ほど実験の責任者そして所長を務めて、所長をリタイアした後、昨年からITER機構のディレクターゼネラル、機構長を務めさせていただいております。

 私がこの国際機関の機構長に推挙されましたのも、日本の高い科学技術のバックグラウンドがあったからでございまして、私もそのことを第一に誇りに思うとともに、日本の科学技術の推進のために、エネルギーの推進のために、カダラッシュで現在仕事をしております。

 このサイトは、一・五キロ、横一キロのサイトでして、この写真のとおりです。

 やはり核融合の目的について一言申し上げたいと思いますので、二ページ目をお願いいたします。

 ITERの目的は、地上のミニ太陽を実現することでありまして、太陽の中で起こっております核融合反応、これは四十七億年も安全に反応が起こっております、これを地上で実現しようというものです。

 原理は、左の方にありますとおり、アインシュタインの相対性原理に基づいて、物質とエネルギーが同じだということを原理にしております。燃料は、左の上にありますように、Dが重水素、Tが三重水素でして、この水素の同位体、仲間を約一億度に加熱いたしますと、核融合反応が起こってヘリウムと中性子が出てくる。この中性子をリチウムという軽い元素に吸収させるとさらにエネルギーが起こる、こういった原理をもとにしております。

 重水素は、先生方の体の中にも〇・〇三%入っていて、放射性物質でも何でもないんですが、トリチウムは放射性物質ですので、取り扱いの技術は、十分安全なものを開発する必要がございます。

 化石燃料はいずれ枯渇するわけですし、炭酸ガスを出すエネルギー源というのは、今後、温暖化の問題をさらに深刻化していくこと、これも非常にクリアになってきているところでございますが、この核融合反応は、海の中に豊富に存在する重水素を燃料といたしますので、我が国のように海に囲まれている国の場合は特に燃料について問題がないという特徴、それから、排出ガスがヘリウムです、黄色いところですが、地球温暖化を起こさない、低コストの水素ガスの生産に適している、こういったことを特徴としております。

 このITER計画は、我が国が引き続き世界をリードしていくための科学技術のイノベーションを生み出すことができます。そして、科学技術立国に必要な優秀な人材を育てることができます。

 左の下にありますのは、どれぐらいのエネルギー効率があるかということですが、石油のタンク一個分の水の中にあります重水素を燃料として核融合反応を起こしますと、約二百五十本分の石油に相当するエネルギーを出すことができます。こういう非常に大きな可能性を持ったエネルギー源の研究をしておるわけでございます。

 ITERは、地球環境の保全と世界平和への貢献、そして、人類の高度文明、私どもの高度文明を一万年以上続かすことができる可能性を持ったエネルギー源である、こういうことが申せます。

 三ページ目に移っていただきたいと思います。

 なぜITERか。ITERは、こういう大きな装置でして、全体で二万三千トン、高さが三十メーター、横幅が三十メーターという装置で、超電導のコイルを使って強い磁場を発生させて、このピンク色で書いてありますようなドーナツ状のプラズマをつくりまして、一億度に温度を上げる、そこで核融合反応を起こさす、こういう仕掛けです。

 ITERは、将来の商業炉のために必要なステップでありまして、いろいろな技術の塊であります。超電導、材料、コンピューター、制御、大電力機器、リモートハンドリング、ニュートロニクス、こういったものでございます。

 そして、我が国は、準ホスト国として貢献しておりまして、高いプレゼンスを発揮しております。私が機構長に選ばれたということも、その象徴的な一つであると自負しております。

 得られた科学技術的な知見は各国で共有されるわけでございますが、いかに活用するかは各国の今後の戦略に大きく依存いたします。したがいまして、我が国の利益を最大化するために、国内の受け皿、大学、研究所、企業等の基盤でございますが、これを整備すること、そして、より多くの人材をITERに送り込んでいただきまして、次の段階に備える必要がございます。

 四ページ目は、今までの研究の進展を示したもので、横軸が時間で、縦軸がプラズマの性能です。ここまで、我が国は核融合研究開発に大きく貢献しておりまして、日本の国旗がついておるとおりです。プラズマの性能が高くなっていくことに大いに貢献しております。

 この性能の進展は、青い色で書いてありますのがスーパーコンピューターの進展、進捗ぶりを示しておりますが、二年ごとに二倍という最も速く進んだ科学技術と言われておりますが、これよりも少し速いぐらいだということを示しております。

 五ページ目でございますが、各国がしのぎを削って研究をしているということがこの絵で、左の方にいろいろな装置が国旗とともに並んでおりますが、その結果がITERに集約されていると同時に、各国、特に中国、韓国も最近大きな超電導装置をつくる実力を備えてきておりまして、非常に厳しい競争と、それから共同研究が同時に進行しているということを示しております。

 相互に利益をもたらす協力関係をつくること、それから、各極の、各国と同じ意味で使っておりますが、利益の最大化ということが同時進行しております。

 次のボタンを押してください。中間に赤い線がありますが、最初の左側の線がITERの計画でして、二〇二〇年に装置の完成、そして水素の実験をしまして、二〇二七年から、実際に重水素と三重水素を使った五十万キロを発生させる実験を行います。それと同時に、次の段階の計画が進むわけでございまして、設計、建設、安全性等の許認可を経まして、二〇四〇年、五〇年には次の原型炉、実証炉がITERの成功をもとに可能になるわけでございます。ITERは非常に大きなステップであるというふうに申し上げられます。

 次に、六ページ目ですが、やはり三月十一日の未曾有の大災害と福島第一原発のことがございます。核融合の安全性ということの説明責任というのはより大きくなっておるわけでございまして、次の二枚で、核融合はどういう安全性を持っているかということを簡単に御説明申し上げます。

 ITERでは、つまり核融合では、福島原発のような事故はあり得ません。その理由が左の方に書いてあるわけですが、燃料の蓄え、これが極めて少ないわけでして、装置の中にはたった一グラムしか燃料が入っておりません。ですから、人間のつくったものですから、故障する可能性というのはゼロではないわけですが、故障しても自然にとまる性質を持っております。それから、ウランを使いませんから、暴走する、メルトダウンを起こすというふうな危険もないわけです。

 次のページに移らせていただきまして、七ページ目ですが、ITERでは長半減期の高レベルの廃棄物は出ません。これはウランを使わないからです。住民の方の被曝量というのは、自然界の被曝量の千分の一ぐらいに実際に抑えることができます。それから、最悪の事故シナリオは関連施設での火災ですが、この場合でも、近隣の放射線量は自然界の量と同等または少ないレベルに抑えることができます。

 現在、フランス当局の安全審査がほぼ最終段階に来ておりまして、十二月末に実質的な許認可をいただけるめどがついているところでございます。住民の皆様の御意見を聞く、いわゆるパブリックインクワイアリーというプロセスをことしの夏に終了しております。

 八ページ目ですが、原子力と核融合エネルギーの違いは、もう既に申し上げましたように、核融合発電の場合は、燃料を補給しながら発電いたしますので、燃料をとめれば十秒ぐらいで反応がとまって、いわゆる暴走が起こらない。原子力につきましては、もちろん日本の技術は非常に高いものがあるわけですが、燃料を大量に発電所の中に置きますので、その制御ができなくなったり、青く書いてあります、水が下がると反応が、熱が大量に出て制御できなくなってしまう。この違いがクリアに八ページ目に示されているとおりです。

 九ページ目ですが、ITERは、中国、ヨーロッパ、インド、日本、韓国、ロシア、アメリカから成る国際協力でして、世界の人口の五〇%以上と世界のGDPの八〇%を占める国々の国際協力です。二〇〇六年に、パリのエリゼ宮におきましてITER協定が署名されまして、二〇〇七年に正式に発足しております。

 次の十ページ目は、装置の中で主要機器、ITERの本体を示しておりますが、各国がどういう責任を分担しているかということを示すものでございます。

 コイルと書いてありますのは、超電導コイルでございます。一つずつ御説明する時間がないわけですが、主要な機器につきまして、各国がこのように分担をしている。これは、各国が自分の利益も考えながら、国際協力として分担を決めていったという経緯がございます。

 日本は、中心の磁場を出すコイル、それから熱を最後に取り出す部分のダイバータを中心としてのコントリビューションをしております。

 次に、関連して、十一ページですが、各極がどういう調達をしているかという分布を示したものです。それから、コスト的なものも書いてあります。

 私どもは国際協力でありますので、特殊な予算の単位を使っております。これをクレジットと通称申しますが、その単位がキロIUAという単位でありまして、過去、ドルをベースにして決められたものです。四千七百キロIUAがトータルの建設コストでありまして、一キロIUAが一・五五ミリオン、だから百五十五万ユーロに相当いたします。この詳細については、後ほどまた御質問等でお答えする機会があるかと思っております。

 欧州は四五%を分担いたします。これはホスト国でして、建屋等もこの中に入ります。その他の極は九%ということになっております。

 建設計画でございますが、次のページをお願いいたします。サイトがバックにございますが、二〇二〇年に装置完成、組み立てが十九年まで、そして、その後いろいろな試運転等を行いながら、最初の実験、ファーストプラズマと書いてある部分です、二〇二〇年の十一月を予定しております。核融合反応は二〇二七年でございます。

 それから、機構の職員につきましては十三ページにあるとおりでございまして、日本からは三十五名、私を入れて三十五名のスタッフがITER機構におりまして、大変レベルの高い仕事をしてくれております。日本がプレゼンスを発揮していることの一つであるということが申し上げられます。

 そして、十四ページ目は、機器の製造も開始している、それから現状を示したものでございまして、十六ページ目は超電導コイルの一種でございますが、大きなコイルの製造が始まっているということを示した写真です。

 それから、十五ページ目は、これは日本で進んでおります超電導導線の製作でございます。こういった大きな電流を流す太い超電導導線がつくられてきております。日本は、この分野でも大変高い技術を持っております。

 それから、次の十六ページですが、欧州におきますコイルの製作の状況を示しております。右側に人の写った写真がありますとおり、これはトロイダルフィールドコイルでございますが、装置の中心部をなす部分です。上で日本がつくった超電導導線が下のコイルに装着される、こういうわけです。欧州と日本で九個ずつ、十八個をつくって装置に据えつける計画であります。

 十七ページ目は、日本におけるトロイダルコイルの製作の工場におきます写真でして、非常に複雑な製作機具を使いながら精度の高いコイルをつくる、その写真でございます。

 十八ページ目は建設の現場でございます。今、三カ所で、メーンになります本体棟の建設、それから本部の建物、そしてコイルをつくる工場を建てております。今後さらに、カダラッシュのサイトでの建物の建設も加速されていきます。

 十九ページ目はもう少し詳細な写真ですが、本体棟基盤、一・五メーターのコンクリートの層をつくりますが、多くの鉄筋をつくって建設を進めているのが左上。それから、その一部となります、地震に対する耐震構造物の鉄筋の写真です。それから左下は、PFコイル、これはポロイダルフィールドコイルと申しますが、ヨーロッパが五つ、ロシアが一つつくるんですが、ヨーロッパのつくる部分が、半径が大き過ぎまして運べないという事情から、現場で工場を建ててつくる、その建物です。右側は本部ビル、オフィスビルでありまして、来年の夏に完成いたします。来年の夏以降、先生方にこちらへ視察に来ていただけるときには、こちらでごあいさつ申し上げることができるようになります。

 これが現地での建設の現状を示す写真です。どんどん建設が進んでおります。

 その次のページですが、一言、私どもの分野でどういう波及効果が出るかということを示しておりまして、左側の木が、いろいろなところに技術を波及させることができるという、その可能性も含めたものを示しておりまして、核融合は総合技術でございますので、いろいろなところにスピンオフしていくわけです。真空関係、材料関係、極低温関係、電力、制御、こういったものです。

 右側はその成功した一例を書いてあるわけですが、プラズマというのは電離した気体ですので、電子とイオンから成るんですが、電子を加熱するためにマイクロ波を使います。電子レンジみたいなものです。これを使いますと、陶磁器が非常にうまく焼けるという技術を開発いたしました。私が前にいました研究所で行った技術開発なのですが、これは炭酸ガスを出さない加熱です。自然環境にも大変優しいわけです。

 これが驚くことに溶鉱炉の、溶鉱炉は石炭と鉄鉱石をまぜて溶かして鉄をつくるわけですが、マイクロ波を使いますと、三十メーターの溶鉱炉が八メーターぐらいになる、こういう研究も出てきまして、現在、科研費等を使って、さらに進んだ溶鉱炉の開発、炭酸ガスの排出量を三分の一ぐらいに抑えることができるわけですが、こういった研究も進められるようになりました。重要な波及効果の一つとして御紹介申し上げます。

 二十一ページ目は、最初に申し上げました、一家に一枚の「未来をつくるプラズマ」のポスターでありまして、いろいろな可能性があるし、現在、テレビはもうそのプラズマが使われている典型ですし、ICチップ等の製作にもプラズマが使われるわけでございます。いろいろな可能性を示している図でございます。

 最後に、二十二ページですが、ITERは新たな時代へのステップでありまして、地球の環境を守りながら、エネルギー需要の増大にどう対応していくかという重要な命題に対する一つの答えを出させていただこうと。そのために七極が予算を、これは非常に高い装置であります、それだけ成果が求められるわけでございますが、今、力を合わせて建設を開始したところです。

 ITERは、人工的に安全で無尽蔵に生産可能なエネルギーの実現に向けた新たな時代へのステップを開こうとしております。

 そして、日本はITER計画の主要な牽引車でありまして、今、世界は日本の高い科学技術力に注目するとともに期待をしておるわけでございます。

 一言、三月十一日の大震災につきましては、各国から日本に対して、何でも言ってください、協力できることは何でもいたします、そういう国際協力ならではのやりとりがございまして、その結果といたしまして、日本の原子力機構の震災によるダメージを最小化すること、それから企業の受けたダメージを最小化する新しい建設計画をまとめて、現在、その計画をもとに建設を進めております。

 おくれと言うとなんですが、昨年の段階では、二〇一九年の十一月に装置を完成させるということがベースラインという文書として七極の理事会で承認を受けたのですが、そのベースラインの中の考え方の範囲という理解のもとに、一年完成を延ばして、二〇二〇年の十一月に装置を完成させるということが七極で、つい先週の理事会で承認いただきましたので、現在、それに基づきまして、鋭意建設計画を再スタートしているところでございます。

 大変手短で、十分な説明ができなかった面があるのは大変申しわけないとは思いますが、現状を説明させていただきましたことを大変感謝申し上げたいと思います。

 委員長、ありがとうございました。(拍手)

松宮委員長 ありがとうございました。

 これにて本島参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

松宮委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 参考人に対する質疑は、理事会の協議に基づき、まず、各会派を代表する委員が順次質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は自席から着席のままで結構でございます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田統彦君。

吉田(統)委員 民主党の吉田統彦でございます。

 貴重なお時間ですので、早速、質問をさせていただきます。

 核融合反応というのは、太陽が光り輝いてエネルギーを放出する原理そのものであって、核融合に対する研究というのは、地上に太陽をつくる研究と言えると思います。原理としては、重水素と三重水素、トリチウム、以下トリチウム、の原子核を融合させてヘリウムと中性子を生成する、その中で、いわゆる質量欠損の部分でエネルギーを生成するというものであります。

 一グラムの重水素とトリチウムから約八トン分の石油のエネルギーが出るという本当にすばらしい技術だと思いますが、特徴としては、トリチウム、重水素は非常に海水中に豊富にあるということ、また、核融合反応は停止しやすく暴走しづらい、また、二酸化炭素の排出も少ない、低レベルの放射性廃棄物が発生しないというものがあると思うんですが、それに加えて特記すべき特徴と、想定される一番恐ろしい事象というのを簡潔にお願いできますでしょうか。

本島参考人 ありがとうございます。

 まず、燃料については、もう先生が御指摘のとおりでございます。

 次に、私どもが重要視しておりますのは、やはり放射線のレベルでありまして、燃料のトリチウムは、ベータ崩壊という弱い電子を出す放射性物質でございます。ですから、トリチウムの安全な取り扱い技術の開発が必要でございました。こちらは、もう既にITERの計画の中で、具体的な装置、それから運転計画等で実現されております。

 次に、材料を二万三千トン使いますので、中性子が当たったときに放射化いたします。核融合エネルギーの場合には、その放射性物質を、放射化の量を最小化するということが必要になりまして、ウランを使う原子炉のように、高レベルの、しかも長い間、一万年も放射線を出し続けるような問題はないわけですが、放射化しにくい材料を使うということによって、全体の放射線レベルを物すごく抑えることができるという特徴がございます。それが核融合の次の重要な点として御指摘申し上げたいと思います。

 一番重大な想定事故ですが、これは、トリチウムを扱う建物等が火災に遭った場合が想定できまして、その場合に、周辺に対する影響がどれぐらい大きくなるかということを事前に検討しておく必要がございます。ITERの場合は、その最悪シナリオでも、周辺の住民の皆様に及ぼす影響は自然界のレベルであるということがはっきりしております。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 では、もう少し具体的なお話に移っていきたいと思います。

 東日本大震災の影響が懸念されます。先ほど先生がお話しされたように、ファーストプラズマの発生二〇二〇年十一月、プラズマを今度燃焼させるような実験は二七年三月ぐらいと伺っております。この予定は変更がないということなんですが、実際、日本が請け負っているITERの中核機器であるトロイダル磁場コイルが製造がおくれていくという可能性があるんですが、このファーストプラズマはやはり律速段階になりますので、ここのおくれというのは、想定は大丈夫でしょうか。

本島参考人 やはり、トロイダルコイルの日本における製作のおくれというのは、日本の影響を加味した新しいスケジュールをつくり上げるときに一番大きなことの一つでした。

 どういう解決策をとったかと申しますと、半分はヨーロッパでつくりますので、従前、日本が先につくって、ヨーロッパが少しおくれてつくるという工程でしたが、ヨーロッパとの技術的な協議の結果、それを逆にするということで、日本の災害の影響によるおくれを最小化することができました。これが一番重要な点だと思います。

吉田(統)委員 ありがとうございます。

 少し予算のお話をさせていただきます。

 現在想定されている予算、総経費、日本円で以前の額だと一兆七千億円程度で、日本の費用分担、建設期九・一%、運転期一三%と聞いております。それで、もし不足した場合、どのように捻出していくかということが一つ。

 もう一つは、最終的な着地点として、核融合発電の原型炉を完成していくのは二〇四〇年代ごろ、また実用化は二〇五〇年代以降というふうに聞いておりますが、このスケジュール観に関しては、しばらく変更なくいけるのかどうか。

 そして、実用化、今回発電しない実験炉でございますので、発電をしていく実用化に向けてブレークスルーとしては何が必要なのか。また、予算として最終的にどれくらいのもの、最終的な原型炉ができるまではどのくらいを想定しているのかを御教示ください。

本島参考人 まず予算ですが、予算の縮減につきましては、私が昨年着任してから既に、まだまだ続けていく必要はありますが、最大の努力をしてきたところでございます。

 今回の日本の影響を受けての予算増というのは、いわゆる、私どもキャップドコストという言葉を使う場合が多いんですが、建設に関してはトータルのコストがふえないように計画をつくろうということを目的として、一部先に延ばすことも含めて、そんなに大きい金額ではありませんけれども、建設費には変わりがないような計画をまとめました。大変難しいことだったんですが、各極の協力も得ましてそれを実現して、先週のITER理事会に御報告申し上げたという点で、そのためには、さらに大幅なコストダウンの可能性を具体的に示す必要がありましたので、そういった作業も行いました。

 例えば、私のところの、ITER機構のマネジメントコストは、一年間の検討結果で約百億円ぐらいのコスト削減を実現しております。それから、物づくりにつきましても約八十五億円ぐらいのコストダウンをしておりますので、そういったこととバランスをとって、一年、これはおくれということではなくて、やはり全体として、いろいろなものを今までの計画それから目的に沿ってつくる、こういう覚悟でやってきたわけです。

 その後のことにつきましては、実際の五十万キロ出す、DT燃焼と呼びますが、これが二〇二七年で年をまたぎませんので、非常に重要視して新しいスケジュールをつくったわけですが、したがって、その後の工程には実質影響が出ないようにできた、こういうふうに考えております。

 それから、発電をしないということは、ITERの計画の初期に各国でいろいろな検討をした結果、そういう選択肢が採用されたわけですが、ITERにはテストブランケットと呼ばれる、リチウムを入れて実際の実証炉、商業炉と同じことのできるモジュールを装着いたしますので、こちらの研究によって発電、ITER自身は発電はいたしませんけれども、その次のステップに必要な技術開発というのは十分習得できる、こういうふうに見ております。

吉田(統)委員 時間がもう来ましたので最後ですが、核融合反応を起こすため、原子核を毎秒千キロ以上で飛ばしてぶつけなきゃいけない、非常に長時間高温プラズマ状態を維持して、それを外部に出さない、そういった技術が必要になります。

 現在、磁場閉じ込め式はトカマク、ヘリカル、そして今、原理実証を目指しているレーザー方式がございます。今回のITERはトカマクですね。先生がいらっしゃった土岐市の核融合科学研究所はヘリカル型を研究されていました。日本の技術という上で、このヘリカル型が今後進んでいく可能性ということに関して簡潔に一つ。

 もう一つは、今回、ITERサイトはフランスになりました。しかし、今度、発電をしていくような次世代炉に関しては、ぜひ青森六ケ所村を中心に日本でやっていただきたいというのが我々日本国民の願いだと思います。そこに関して先生の御決意をいただきまして、最後に、この日本に太陽を生み出すために今後も頑張っていただきたいと思いまして、私の質問を終わります。

本島参考人 ありがとうございます。

 トコマックも研究が進んできて、実際に二〇二七年に核融合反応を起こそうという段階ですので、トコマックかヘリカルかという対立の構図というよりは、いかに磁場を使う核融合を最適化していくかという段階にもう既に来ていると思います。ヘリカルも多くの特長、特長は長い方の特長ですが、持っておりますので、日本におきますこの研究活動というのは今後さらに発展していく、こういうふうに私自身、期待もしていますし、考えております。

 それから、ITERは七極の共同研究、国際共同プロジェクトですが、もう明白に次の段階は、ITERはパワーアンプリファイアー、加熱のパワーを入れて、その十倍のパワーを取り出すわけです。しかし、私は、次の段階はマネーアンプリファイアーに近い状態になる、またはまさしくそうなると思います。実際に電気を出して売るということになりますから。そうしますと、各極で独自にやるという可能性が非常に高くなってくるわけですから、日本でも、先生の御指摘のように、サイトを確保して次のステップに備えることが必要になると思います。

 いろいろな国の方は、次は日本は青森につくるんですねということを私に言ってくる場合が結構ありますので、私も大いに期待しております。

松宮委員長 次に、江渡聡徳君。

江渡委員 自由民主党の江渡聡徳でございます。

 本日は、本島機構長、大変お忙しいところおいでいただきましたこと、ありがたく御礼申し上げたいと思います。

 先ほど御説明をいただいたわけでありますけれども、この核融合エネルギーの実現のためには、実験炉のITERの建設、運転というのは必要不可欠なステップであるというふうに私は認識しているわけでありますけれども、この核融合研究開発におけるITER計画の位置づけ、そして進捗状況についてお伺いしたいと思います。

 また、今現在、欧州の方では非常に金融不安という状況下のわけでありまして、ですからこそ、果たして資金の拠出の方が大丈夫なのかなということについても心配しているわけでありますけれども、その点につきましても本島機構長のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

本島参考人 ありがとうございます。

 まず、私がカダラッシュに家内と、あとは、もう子供は独立しておりますから愛犬を連れていきまして、そして大きな責任をみんなで果たしていこうとしておりますのも、やはりITERという実験段階の核融合炉の完成のためでございます。ですから、私ども人類の歴史で一回だけあるチャンスだ、こういうふうに思っております。

 ITERは、実験炉として五十万キロを出すことを実証してみせるということが、将来、核融合エネルギーが日本の社会そして世界に認めていただいて定着していくために絶対に必要なことでございますから、核融合研究の非常に重要なステップになる、こういう覚悟でカダラッシュへ参りました。

 そのためには、ITERのオーガニゼーションの組織をよりラインマネジメントにするとか、各スタッフの責任をより明確にする、これは、やる気を出してもらうということにもつながるんですが、そういったことも各国の協力を得ながらここまで来ております。

 やはり実験炉というのは、人類の歴史におきましても、今までになかった科学と技術をつくり出して、それを総合化して初めて成功させるプロジェクトであるという点で非常に重要な意味を持つ、こういうふうに思っております。次は、電気を出して社会に供給するというステップがすぐそこに参ります。

 それから、欧州の予算につきましては、最終段階に来ているというふうにブラッセルの方からも聞いておりまして、先週の月曜日には私自身が直接ブラッセルへ行って、先方の責任者とも予算のことについて協議して、その後で理事会に臨んだんですが、現状といたしまして、ヨーロピアンパーラメントは予算委員会に相当していると申せますが、五月に私どものサイトを御視察に来ていただきまして、予算についていろいろ厳しい御質問を受けながら、ITER計画の目的等を直接御説明する機会がございました。

 そのときに、終わった時点でプレスコンファレンスをされて、ITERをサポートしますと委員長がはっきりおっしゃっていただいて、それで具体的に動き出しておるわけですが、現状まだ決着は見ておりませんが、ヨーロッパ議会としてはITERに予算を支出することは認めるという決定をしてくださっております。

 あとは、どこからその予算を持ってくるかということで技術的なと申すとなんですが、具体的な検討が今進んでいるところだ、こういうふうに把握しております。

江渡委員 ありがとうございました。

 ITER計画とともに、今現在実施しております青森県六ケ所村でのブロードアプローチの活動、BA活動も、将来の核融合の実験のためには大変大事であるというふうに私は考えております。ですから、このBA活動に対しての機構長のお考えもお聞かせいただければありがたいなと思っております。

本島参考人 非常に重要な位置づけにあると考えております。

 特にブロードアプローチは、日本とヨーロッパの間の二極間の計画として現在進んでおるわけでございますが、ITERの先の、材料の開発をするための中性子源の研究、スーパーコンを使っての研究、シミュレーションの研究、そしてITERのリモートオペレーションセンター、こういったことが中心になるわけでありまして、より長期的な観点で重要な働きをしてくれないと困る、こういうふうに考えております。

 したがいまして、ITER計画の建設の進展と、それから六ケ所村でのブロードアプローチの進展というのは、フェーズを合わせて進めていく必要が非常にあると思います。現在、建物等もかなりできておりますから、これからさらにアクティビティーが上がっていく段階だ、こういうふうに期待しております。

江渡委員 私も、このBA活動というのは大変重要だと思っていますし、また、その形がきちんとうまくいきませんと次の実験炉にもつながらないなというふうに思っているわけであります。

 さて、日本におきましては、三月に大変悲しい原子力事故があったわけでありますけれども、この原子力事故を踏まえまして、今、原子力政策の見直しというような議論が出ていますけれども、ITER計画ということについては少し事情が異なるであろうというふうに私は思っております。

 先ほど機構長からも御説明がありましたとおり、世界人口の半分を占める国々が協力して、未来のエネルギーの選択肢を広げよう、そういうふうにしているものでありまして、エネルギー資源の乏しい日本として、また核融合研究の先進国である日本としても、やはりリーダーシップをとって貢献していくという必要があろうと思っております。その点につきまして、機構長のお考えをお伺いしたいと思います。

本島参考人 私、着任しましてから幾つか、今までの私の経験も含めて、日本だけではなくて世界のコミュニティーの皆さんの動向等も勘案しましてしたことの一つ、絶対に必要だと思っております、それは、若手にITERの門戸をより広げるということでありまして、したがって、ITERが成功裏に終わったときに何が残るかと申しますと、ノウハウ等は残りますけれども、やはり人だと思います。そのときに、より多くの人を育てた国が一番成功した国だというふうに言えると思います。その人たちがリーダーシップをとって、次の段階の責任を担っていく。

 ですから、ITERというのは、実験の計画で大きなプロジェクトで責任も非常に大きいわけですから、やはり責任をとれるエクセレンスを持った人たちもより多く来てもらう必要がありますが、若手についても、教育とかトレーニングをする非常にいい機会になるはずだと思います。

 おとといも、金沢で国際会議があったときにそのことを特に申したんです、人をどんどん派遣してくださいと。もちろん予算もいただきたいわけですが、それと同じぐらいに人を出して、修羅場をくぐらせてくださいと。私も若いときにそういうふうに先生から鍛えられたように思いますし、その点が非常に重要なことなんじゃないかと思います。

江渡委員 時間が参りました。これで終わりたいと思いますけれども、機構長、これからも一生懸命、人づくりのためにも頑張っていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

松宮委員長 次に、遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。

 機構長におかれましては、一時帰国の大変多忙の中、御出席を賜り、御講話いただき、本当にありがとうございました。

 早速ですけれども、今、原子力政策、一つは核分裂に依存する在来型の原発、そしてまたもう一つは将来的に核融合という大きな選択肢が出てきて、これは非常に魅力的で重要な選択肢であるとは思います。しかしながら、これは、リスクの面、コストの面、実現可能性等の面で、やはり精査が必要だと思います。

 リスクにつきましては、核分裂に比べればずっと安全であるということは多分理解が広まってくると思いますけれども、コスト面で、このITERにしても、非常に巨大なもの、かつ、多数国でやらないと財政的にも支援できない形になっておりまして、やはりどうしても、巨大で、コストがかかる。将来的にも、果たして実用炉になった場合でもコスト面でちゃんと競争力を持ち得るのかというのが非常に重要な一つの問題だと思っております。

 その点につきまして、将来の実用炉になった場合のコスト的な見通し、実現可能なのかという点、これをまず御意見をお聞かせいただければと思います。

本島参考人 やはりコスト面の見通しをつけるということもITERの非常に重要な点でありまして、ITERで開発した技術というのは、もちろんさらに付加価値、開発要素をつけていく必要がありますが、その次の段階で使えるわけです。

 ですから、次の段階になりますと、そういったRアンドD要素、RアンドDにかかるプレッシャー等もかなり下げていくことができるわけですし、非常に重要と申し上げられる点ですが、ITERは実験炉ですから、実験という言葉がついておりますように、あれもできるようにこれもできるようにというわけではありませんが、いろいろなことが可能になるような装置でないといけないわけなんです。

 私は、少なくとも二つの最適化された状態をつくり出すことがITERにとって非常によい結果をもたらす、そうしますと、その次をやるときに、この国はこの状態を選ぶ、日本はこの状態を選ぶ、そういう選択肢が可能になります。ですから、戦術と戦略を使い分けていくこともできます。

 コスト面については、ITERはいろいろなことができるようにという実験装置ですから、その分、これは決して言いわけではないんですが、どうしても高くなるということがあります。

 ですから、実験炉で得た技術、それからオペレーション、運転の最適化された状態等を次の段階の実証炉で使うことによって、コスト的には、ITERで使った予算に比べてかなり効率的にできる。

 これは私自身が核融合科学研究所におりましたときの設計研究ですが、次の実証炉の段階でコストは今の電気代の二倍以下に抑えることが可能だ、こういう研究結果もまとめておりまして、そのさらに先に行けば、さらにコストが下がっていくわけですから、将来の、二〇五〇年以降の社会の皆様に十分受け入れていただけるコストになるはずだ、こういうふうに考えております。

遠藤(乙)委員 次の質問でございますが、今の核融合については、磁場にプラズマを閉じ込める方式、今のトカマク、ヘリカル型、それともう一つはレーザー方式、二つがあって、基本的に考え方が違うわけでございます。

 今のITERはトカマク方式であると承知をしておりますが、このレーザー方式について、先生の御見解、今後、実用炉はトカマクでもうほぼ方向が決まっているのか、あるいはまだそこは決まっていないのか。磁場型とレーザー型の利害得失について、また見通しについて、先生の御見解をお聞きしたいと思います。

本島参考人 まず、レーザー方式は、アメリカのDOEの予算で、カリフォルニア州のリバモアの研究所で行っておるわけです。

 現在、レーザーエネルギーを順次大きくしていっている段階です。来年、比較的早い時期に当初のイグニッションという点火の段階に到達するということを目標に研究を進めておりますので、私としては、その結果を十分見きわめてから判断できるし、したいし、していただけるんじゃないか。もちろん、レーザー方式というのはディフェンスの面があることも御承知のとおりでございますので、レーザーを評価していく上でのそことのバランスと言うとなんですが、総合評価の上では勘案されるべきことだと思います。

 レーザーは、周りから光のエネルギーを一カ所に集める。日本では、パイオニア的に大阪大学が開発してまいりました。私自身も大変、山中千代衛先生に始まる研究成果は非常にこのレーザー核融合に貢献したと尊敬もしております。

 トコマック、ITERと違うところは、レーザーとトコマック、磁場核融合は順番が逆になるということでして、トコマックは、JT60という日本の原子力機構の装置とかイギリスの装置が、研究した結果、入れた入力と出力が同じになるブレークイーブンという条件を約十年前に達成しております。その後、ITERでイグニッション、点火を実証するわけなんです。

 レーザーの場合は、非常に簡略化した説明になりますが、それが逆になりまして、イグニッションが先に来ている。それは光を集めて瞬間的にやりますから、イグニッションが先に来る。その後は、レーザーの効率とかを十分上げて、イグニッションの後のブレークイーブンに持っていく必要がある。

 だから、ITERのイグニッションとレーザーのイグニッションはこれぐらい違うという点もありますので、ここも十分学問的に、科学的に検討する必要がある、こういうふうに考えております。もう少し様子を見て、一年ぐらいで結論がかなり出るんじゃないか、こういうふうに思っております。

遠藤(乙)委員 最後に一点です。

 核融合はまだ非常に先の長いプロセス、まだ数十年ぐらいはあると思いますけれども、先生も先ほど人材の育成あるいは結集の重要性を訴えられましたけれども、その中でどうやって研究者のモチベーションを維持していくのか。非常に重要なポイントだと思いますけれども、この点について先生の御所見をお聞かせいただきたいと思います。

本島参考人 やはり若い方というのは前しか見ませんから、大いに期待したいと思います。

 具体的には、やはり核融合の分野も巨大科学になって、昔だったら、テーブルトップデバイスと申しますか、小さい装置をつくってやりたい研究が全部できたという時期もあるわけです、一九六〇年から七〇年。そういった形の研究手法がとりにくくなっているということは事実です。

 ですから、分野全体でシステマチックに若手の育成それからキャリアパスをつくるというシステムをつくらないといけませんし、そういうことができた分野は、勝ち残っていく、成功していく分野だと思います。

 先生の御質問に私の言葉でお答えさせていただきたいと思いますのは、小さくてもいいから、とにかく難しいテーマを与えるように、指導者になる、もちろんキャリアを積んだ人は、それを幾つか引き出しを用意してあげる、そこに若い人が自分の考えを入れてその人の方向を決めていく、こういう仕組みをつくり上げるのが非常に大事だと思います。

 核融合プラズマの分野も、この絵に象徴されていますように、いろいろな難しいことがありますから、これからも長期にわたって若手の興味を引き出していける、こういうふうに考えています。

遠藤(乙)委員 ありがとうございました。ぜひ頑張っていただければと思います。

松宮委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 一カ月余り前になりますか、カダラッシュで先生にお世話になりまして、ありがとうございました。

 きょうは、最初に、あらかじめ事務局の方から、先生方がお書きになったものが「電気評論」ことしの六月号ですか、ここに出ている部分で、未来のエネルギー源の有力な候補として、五十年以上前から核融合を進めてきたというお話がありました。

 ちょうど、核分裂も核融合も、物理学の世界では一九三八年、九年のころ非常に進んだわけで、理論的にはできていたんですが、原発の方は、プルトニウム生産炉とか原子力潜水艦とか、兵器生産から始まって、そして使用済み燃料の後始末とか高レベル廃棄物の後処理なしに進んだという経過はありますけれども、とにかく、この間に動力炉としてできたわけですね。しかし、核融合は、五十年取り組んできて、それが動力炉になるにはまだ二〇五〇年ごろという話ですから、大体百年の単位でかかるわけですね。

 この五十年取り組んで、動力炉になかなか、未完の状態になっているというのは、何がネックであったというふうにお考えになっておられるかを最初に伺っておきたいと思うんです。

本島参考人 一九五八年にジュネーブでIAEAの核融合の国際会議が開催されて、平和利用が始まったわけです。そのときに、三十年後には核融合ができると言った科学者がいるのは事実でございます。

 私は、そのとき既に生まれてはいましたけれども、その五十年後の二〇〇八年にジュネーブで五十周年の記念大会が開かれたときに、サマリートークを頼まれて、いたしました。そのペーパーにも、もしその五十年前の科学技術で三十年後にできると言った人がいたとしたら、それは科学者じゃないと私ははっきり書きましたけれども、やはり何が難しかったかと申しますと、高温のプラズマの磁場による保持、閉じ込めが非常に難しかった、これに尽きるように思います。

 小さい装置ですと、高速のパーティクル、粒子がすぐに壁に当たりますから、保持、閉じ込めが思いどおりにいかなかった、それから不安定性も起こった、こういう事実がありますので、やはり超電導コイルの大きなものをつくれる技術、それから、中にできるプラズマの現象を理解する物理の研究、こういったものに時間がかかったことは事実です。

 それから、政府によります予算等もどんどん大きくなっていきますから、その予算をつけていただくためにも十分検証していく必要もあったわけで、これはアメリカでもそうですし、ヨーロッパでもそうだったわけです。

 原子炉につきましては、第二次世界大戦中に、マンハッタン計画で、シカゴ大学の高弟にフェルミという確かに天才がいたわけですが、ウランの棒とグラファイトの棒を重ねていきながら、計算尺でもうすぐイグニッションになるだろうというふうなことをやりながら点火した原子力とは、やはり核融合は大分ハンディキャップがあったんじゃないか。

 しかし、今はもう夢ではなくて現実の目標になっているということ、これは社会の皆様方にも、本当に私どもからもっとよくわかっていただくように情報を発信する必要があるなとは思いますが、本当に現実の目標になってきているということはきょうのこの場でも申し上げたい、こういうふうに思います。

吉井委員 この号でも書いていらっしゃいますし、先ほどの最初のスライドのところでも、パワーポイントの方でも見せていただいたんですが、原子炉の場合は、制御棒を入れてとめても、機器冷却系が働かなかったら今回のようにメルトダウンを起こします。一方、核融合ですと、要するに真空を破ってしまったらプラズマが消えるわけですから、この点はとめるのは簡単だと思うんです。

 ただ、その場合も、二〇〇〇年の五月の核融合会議の開発戦略検討会議から、日本でもトリチウムの除染と回収という問題が提起されるようになりましたが、このトリチウムの除染と回収の問題と、それからもう一つは、先ほどもありました、中性子によってたたかれるという、この問題による炉材料の問題。きょういただきました「パリティ」の原稿の中でもダイバータのことが紹介されておりますけれども、やはり、炉材料の面で、高速中性子にたたかれても大丈夫なものをどうするのかという炉材料の開発と、トリチウムの除染及び回収、これの技術的に現段階ではどういうところに行っているのかということをお聞かせ願いたいのですが。

本島参考人 トリチウムの回収それから取り扱いの技術につきましては、日本は世界の最先端を走っていると申し上げられると思います。実際にも、原子力機構の東海研の中にトリチウムの実験設備を、ITERから依頼して、グローブボックスと申しますか、もちろんこの部屋に入るぐらいの大きさですが、そういった研究施設で今までの技術の再確認をして、ITERに使える技術として完成させようと、完成できるところまで来ております。

 ITERのトリチウムの時間当たりの取扱量というのは、その次のステップの実証炉と同じ量になりますので、ITERで安全性も実証されて、この技術というのは実用化できる、こういう段階に来ております。

 それから、炉材料につきましても、二〇〇〇年段階と比べますと、さらに研究が進んで、どんどん進んでいる分野の一つだと申し上げられますけれども、現在では、鉄の合金それからモリブデンの合金、こういった材料が実際に核融合炉に使えるであろう。これは、これから実証しないといけません。要素研究として十分可能性があるということが示されるところまで来ております。

 ITERの材料について一言申し上げたいんですが、ITERは実験炉だから、いろいろなことをできるだけ早くやりたいという考え方がありました。したがいまして、建設計画が最終化されて、二〇〇一年に現在の基本設計案がまとまっているわけですが、そこではステンレスを使うということが採用されています。

 ステンレスは、さっき申しました鉄とかモリブデンに比べますと、はるかに放射化されやすい材料であります。それを使って、既存の技術として完成されたものをITERでは採用しよう、これは私は今でも正しい結論だったと思っております。そのかわり、中性子の発生量を実際の次の段階の十分の一ぐらいに抑える、こういう安全確保のシナリオがつくられたわけなんです。

 ですから、材料の研究は、先ほど御質問いただいた六ケ所でも今後さらに加速されていきますし、そういう点でもブロードアプローチの重要性というのが言える点の一つになってまいります。

吉井委員 あとの質問はまた後ほどに回させていただきます。

松宮委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党の阿部知子です。

 本日はわざわざ、お忙しいところ、またフランスからお越しいただきまして、遠藤理事初め各理事の御尽力でお話を伺うことができて、ありがとうございます。でも、正直言ってとても難しいので、頭が追いついていくかどうかちょっとわかりませんけれども、直截なところで伺わせていただきます。

 きょう本島参考人もお触れになりましたが、三月十一日の東京電力の福島第一原発事故と申しますものは、それまで、ほぼそうした事故は起こり得ない、多重電源喪失なども起こり得ないと想定外にも近い言い方をされていたけれども、現実には起こり、多大な被害をいまだに及ぼしているところにあるわけです。

 この事故をめぐって、国民も含めて、私ども政治家もそうですが、何を考えているかと申しますと、この間ずっと、戦後の中で、エネルギー政策は大規模化して、国家投資の最たるものだと申しますけれども、核分裂の原子炉を用いてエネルギーを得るという方式から、より小規模というか、各地域に応じた分権型のエネルギーがやはりこれからは重要なのではないかということで、再生可能エネルギーを進める法案も成立させたところであります。

 そういう観点からいたしますと、本島参考人がおまとめになりました「ITER」の特に最後のスライドで「新たな時代へのステップ」というところで書かれている点について、例えば、これからエネルギー需要の増大にどう対応するのかということも、確かに地球規模で考えると人口増も加わってエネルギーというのは必要度は増してまいりますが、また逆に、その地域地域でのエネルギーの供給や、あるいは大きく言えば省エネなどの形で、例えばドイツなどの例を見ましても、エネルギー需要の増大と経済の活性化というのは必ずしも同方向ではなくて、エネルギー需要はある程度抑えながら経済も発展させていくという道もこの間実証もされていると思いますし、それから、二点目の核融合エネルギーによる大規模なエネルギー生産の可能性という点も、小規模分散型というものも一つ視野に入ってきているのかなと思うわけです。

 時代時代、物の考え方というのはあると思います。本島参考人御自身は、今そうした大きな転換点にあるのかなと私は思いますが、大前提はどうお考えか。もちろん、私は、プラズマ研究のこととか核融合の研究については非常に御尽力いただいていることを評価しております。ただ、これを実験炉あるいは現実の実用炉にしていって、大規模化してエネルギーの量を増していくという考え方が時代から見てどうか、これは直截な質問ですので、よろしくお願いします。

本島参考人 この二十二ページで書かせていただいた大規模と申しますのは、現在の発電所の規模、百万キロワットぐらい、こういう意味で使っておるわけですが、日本もエネルギー効率それから発電の効率、使用効率等は世界のトップクラスなわけですから、ほかの発展型の国と比べても、既に随分先進型のエネルギー需要それから使用のひな形になっていると私は考えております。

 自動車は大体、石油といいますか、ガソリンとかディーゼルで動くわけですが、百万キロワットの発電所から電気または水素でエネルギーを供給しても、一日三十キロ走ると仮定した場合に、せいぜい二百万台ぐらいの車にしかエネルギーを供給できないという事情があるわけです。

 そうしますと、石油がだんだん使いにくくなっていった段階で、原子力も頑張らないといけない。核融合も、日本の国力からいって、一年に一カ所つくっても百年で百台しかエネルギー源がつくれない。いずれにしても長期的な視野が必要なことは間違いないわけですから、そこがやはり政治で長期的なビジョンをつくり出していただく必要が絶対にあるところなんじゃないか、こういうふうにも思ってこちらに参っておるんです。

 大規模かどうかというよりは、私は、ネットワークをうまくつくって、そして、要らないところからより必要としているところへロスなく送るような仕組み、それから夜は蓄える仕組みとか、そういったまだまだ日本の科学技術の知恵を絞って、使える、または先生が今御指摘のような方向に持っていく方法というのは幾つかある、こういうふうに思います。ネットワークということが非常に大事なんじゃないかというふうに今御質問を受けて考えておりました。

阿部委員 二点目は、そのネットワークということについて、実は、先生が今フランスでやっていただいているお仕事も、そういう各国の協調、協力のもとに、核融合技術も、やはり切磋琢磨して磨かれていくものではあると理解しております。

 その一方で、しかしながら、また、実験炉などを使う場合に、各パーツ、パーツをいろいろな国々が分担した場合に、それぞれ、規格と言っていいのかどうかわかりませんが、いろいろ違いがあったり、今度それを一体として動かして、実際に動くときに逆に問題が生じやすいという側面も、これは組み立てという初歩的なことを考えても、私はあるように思うんですね。

 そういう点で、実験炉段階ではありますが、機構長として、例えば、こういう各国それぞれの文化も技術もレベルも違うものを、しかし、一体として運用していくような計画、すなわち、これは核融合の方が本当に核分裂よりもさらにもう一歩進んだというか次の技術なので、おのおの各国だけではやれないからという協力体制ではあるんですけれども、しかし、実用化するときの、実験段階でもそうですね、おのおのの違いがデメリットに出る場合はないのかということをお尋ねいたします。

本島参考人 これは、仮定してということでお答えするので、実際の場合と、実証できるかどうかという点の問題が起こるかもしれませんが、やはり一国でやる場合と七カ国でやる場合は、七カ国でやる場合の方が手間暇はかかるというのは事実だと思います。それを承知の上でITER協定もつくられておる、こういうふうにも申し上げられるんですが、やはり建設段階でのクオリティーコントロール、製品管理、これをいかに成功裏に進めるかということがすべてだ、こういうふうに考えます。

 ITERは物納で物が来たときに受け入れ検査ということをやるわけですが、ITERはそれをやればいいということでは、もし受け入れ検査に合格しなかったらまた何年もおくれるという結果になるだけですから、やはり、ある部分について国が物をつくるときに品質管理をどうするか。

 それから、設計は、ほとんどのものが、ITERがビルド・ツー・プリントと申しまして三次元モデルをつくって、それをプロキュアメントアレンジメントと申しまして各国と契約を結んで、その図面のもとに各国が企業に発注する、こういう形態をとっております。

 製品管理、品質管理は、各国の責任ですが、ここをITER機構も直接踏み込んで参加しながら進めることによって、御指摘いただいた問題点というのは結果として解決できるようになりますので、非常に重要な点である、こういうふうに考えております。

松宮委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 きょうは、本島先生、ありがとうございました。

 私は完全に文系の人間ですので、こういうことにははっきり言えば門外漢なんですけれども、核融合と聞いて、私と同世代の議員の方もたくさんいらっしゃるので最初によた話をしますと、例えばアニメの「宇宙戦艦ヤマト」とか「機動戦士ガンダム」とか、こういうものというのは、基本的に小型の核融合炉をエネルギー源として駆動する、そういうものだと思うんですよね。こういうものが私たちが生きているうちに実現に向かって動き出しているというのは、本当にSFの世界を実感するような、そんな思いもいたします。

 さて、これが本当にいつ実現をするのか、こういう話でありますけれども、二〇二七年に核融合反応ということで実証炉に進んでいく、このタイムスケジュールに向けた見通しがどんなものなんだろうかということをまずお伺いしたいと思います。

 核融合反応で発電をするための条件というのは、いわゆる臨界プラズマ条件、こういうものが満たされなければならない。さらに言うと、それを持続させるための自己点火条件というのが満たされなければならないということであります。原研のJT60の高圧力プラズマの保持時間というのは大体三十秒間ぐらいだとかいうことを、いろいろインターネットで調べて、知りました。

 現状、そういうことで、核融合として実用化に向けたレベルのところまで持っていける持続時間というのはわずか三十秒間ということであるわけですけれども、これは、実際に、先ほど申し上げたような臨界プラズマ条件をクリアし、さらに自己点火条件をクリアする、こういう上で、技術的な障害になっているのはどんな点で、なおかつ、それを乗り越える見通しが今の時点でどのぐらい立っているのか、こういうことについてお伺いをしたいと思います。

本島参考人 まず、ITERは、十倍の出力を出す、五十万キロの出力を出す場合で四百秒を設計基準にしております。それから、その半分になったときは、二十五万キロワットぐらいですが、完全に定常を実現できます。自己点火条件をそれだけの時間続ける。やはり、今の四百秒、それから少し出力が下がったところで定常というのは、次の段階の実証炉に必要な条件だからなんです。

 原子力機構のJT60は、臨界プラズマ条件一の、入れたパワーと出たパワーが一の条件を達成しました。このときに、三十秒ぐらい、数十秒ぐらいという短いパルスだった理由は、JT60は超電導の装置ではないので、実験に必要な磁場が時間がたつとゼロになってしまうわけですね。

 定常で磁場が出せない、パルス的にしか出せない、そういうテクニカルな理由から決まってきておりまして、実験家は、ある実験をするときに、その現象に、典型的なタイムスケールと申しますか、済みません、余り具体的な説明になっていないんですが、この現象は、例えば三十秒間プラズマをつけて実験すると、定常と同じ扱いとして検討できるかどうか、こういう前提の検証をしておりますので、三十秒のプラズマをつけて、高性能のプラズマ実験をやったということは、それは次の段階で定常でも行けるんですよということを理論的には証明しているんですね。そういう手法をとってまいりました。

柿澤委員 すると、現時点では、技術的な面でいうと、二〇二七年に定常的な核融合といいますか、こうしたことを阻む要因というのは、乗り越えなければいけないような技術的な障害というのは、特段大きなものはない、順調に進んでいる、こういう理解でよろしいんでしょうか。

本島参考人 建設計画をつくって、そして実験を開始した後の実験のシナリオ、これはコンピューターシミュレーション等で、ITERだけではなくて他の極の科学者等と、いろいろ現在までのデータベース、JT60のデータベース等を勘案しながらしております。ですから、見通しとしては、もちろん達成可能です。

 しかし、やはり実証しなければ意味がないわけですから、少し乱暴な言い方をすれば、それはやらせてくださいというか、やってみなければわかりませんよというわけじゃありませんけれども、やってみて、予定どおりまたは予定以上の結果が出せて何ぼの世界だろう、こういうふうに思います。しかし、見通しとしては、もちろん確信があるので私も機構長を受けましたし、みんなも、それから七極も頑張っている、これは間違いございません。

柿澤委員 そうすると、私が生きているうちにガンダムは実現をするということになるわけですね。大変感銘を受けました。

 お話はかわりますけれども、にわか勉強で恐縮でありますが、しかし、核融合時に発生する中性子が核融合炉の炉壁を傷める、こういうことがあると言われています。そうすると、実用化した炉が、材質によりけりで、どのぐらいの年数もつのかということになってくる部分もあるのかなというふうに私なりに考えるんですけれども、それは、先ほどのコスト・ベネフィットの問題にもかかわってくる。実際に、実用化された炉が何年ぐらいもつ、こういうものであるとされているのか、この点、お伺いをしたいというふうに思います。

本島参考人 一番プラズマに近いところに、ブランケットという壁とそれからエネルギーを取り出す装置をつけます。ITERでは、ベリリウムを表面に張ったステンレスの、厚さが一メーターぐらいの、一メーターよりは小さいんですけれども、そういう構造物を使います。この構造物は、ITERの寿命の間は、一部それはメンテナンスで外したりすることは想定しておりますが、寿命中はもつ、こういう設計です。

 将来のリアクターについての御質問については、やはり低放射化の材料を開発することと、それから、五十年ぐらい核融合炉としては寿命がもつ必要があるわけですから、その間に一回か二回交換することによって核融合発電所が成り立つ、そういう材料を開発してきております。ですから、それが鉄系でありモリブデン系である、こういうわけでございます。

柿澤委員 最後にいたします。

 今、日本は、原発依存から脱却をするという脱原発、これが唱えられていて、その一方で、そうした形になると、核物理等の研究者の人材が日本において枯渇をしていってしまうのではないか、こういう技術の継承というか発展が行われなくなるのではないかというような、そうした懸念も言われています。

 そうした中で、先ほど、人材を残すということの大切さ、こういうことをおっしゃられたわけですけれども、今後、こうした時代状況の中で、日本のこうした問題に関する教育研究、人材育成、こうした点について、将来の姿ということについてどんな思いをお持ちであるか、お伺いしたいと思います。

本島参考人 まず、やはり教育のことですから、特に高度な教育にかかわりますから、私は、大学の先生方により頑張っていただきたいということを、僕も教授でしたから、率直に思います。

 そのためには、今、政府、国会等でも御検討されていると承知しておりますけれども、今後の長期的視点を踏まえての大学の改革等の進展もより一層必要になってくるんじゃないか、こういうふうに思います。やはり、やる気を持つ人材というのは貴重ですし、一人でも多くつくる必要がある、育てる必要がある、こういうふうにも思います。

 原子力、脱原発ということについては、もちろん福島の事故の後、加速されている面もあると思いますが、既にそれ以前から、原子力分野の教育というのはもう完成された技術だという考え方が随分あったはずですので、原子力教室、原子核教室といったものが改組されて名前が変わっていきましたね。そういうことも一つここで見直すというか、私は決して高いところから物を言うつもりはありませんけれども、教育として、過去を振り返りながらより日本に合った形をつくっていっていただきたいな、こういうふうに思います。

 フランスの私がいる町の近くにシステロンという町がありまして、三月の下旬に日本の災害に遭われた方を悼む式をしたいということで、私、市長に呼ばれて、そのときはフランスの国旗と日本の国旗がありまして、日本の国旗を半旗にするという大変荘厳な儀式をしていただいたんですけれども、そのときに私が市民の皆様を前に申し上げたのは、日本は高い技術を持っているわけですから、より安全性について技術の開発をしていくことになるはずだということを申し上げました。

 原子力については今後いろいろな議論をしていかれるというふうにもちろん承知しておりますけれども、核融合も原子力も他の分野もそうですけれども、ルーツについては、人ですし、基盤ですから、そういう点では、私は、核融合の技術が非常に高いということは原子力の分野の技術も非常に高いということだと信じておりますし、そのときに、日本は原子力は決してあきらめないんじゃないかということは個人的に申しました。

柿澤委員 ありがとうございました。

松宮委員長 以上で各会派を代表する委員の質疑は終わりました。

 これより自由質疑を行います。

 この際、委員各位に申し上げます。

 質疑のある委員は、お手元のネームプレートをお立ていただき、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。発言が終わりましたら、ネームプレートをお戻しください。また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べください。

 なお、理事会の協議によりまして、一回の発言時間は三分以内となっておりますので、委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 参考人及び質疑者におかれましては、御発言の際は自席から着席のままで結構でございます。

 そして、若干時間が予定より延びておりますので、これから、おおむね五時五十分から五十五分ぐらい、つまり、質疑応答は三十分以内ということを目途に進めさせていただきたいと思います。

 それでは、質疑のある方はネームプレートをお立てください。

熊田委員 民主党の熊田篤嗣でございます。

 先生、きょうはすばらしいお話をありがとうございました。

 三分以内ということですので、早速、簡単に質問させていただきたいと思います。

 先ほどからも何度か出ておりましたが、中性子の放射化のところですけれども、今までと違いまして、ITERで本格的に動き出すと、DTで動かすことになると思うんですが、DTの場合、これまでとは全然違う環境になるんじゃないかと思います。

 繰り返しになりますが、改めて、そういった状況下においても越えていけるものなのかどうなのか、そのあたりを教えていただきたいと思います。

 それと、今度のこのITERというのは、七極ということでございますが、日本、ロシア、アメリカ、EUは先行してやっておりましたが、やはり、韓国、中国、インドというのは後発組だと思います。

 先ほど阿部先生の質問にもありましたが、そういったレベルの違うところが複数でやることによって、例えば部材なども、先ほど、品質管理をしてということでございましたが、こういったところがおくれてくることによって全体のスケジュールが狂うことはないのか、そこはやはり心配があるなということ。あるいは、こういった後発組が入ってくることで、一緒に共同研究をしていくというよりも、むしろ、これまで蓄積された技術がとられていくというのか抜かれていくというのか、それによってライバルを育ててしまう結果になってしまうんじゃないか、そういった部分の危惧が少々ございますので、そのあたりはどういった状況であるか、教えていただきたいと思います。

 それとあわせて、BAの絡みになるのかもしれませんが、JT60SA、今つくり直しをしていると思いますが、そこが、日本とEUの共同開発でやっていると思います。そういった意味でいうと、七極ではなく、日本、EU、この二つが先行して開発をすることが可能になるのではないのかなと思っておりますが、こういった意義づけをぜひ教えていただきたいと思います。

 それと、もう一点だけ、申しわけありません。ある研究者の方が、ITERというのは非常に保守的な設計をしていると。ですから、これが終わってから、二〇二七年以降に次の炉に進んでいくという形で書いてありましたが、二〇二〇年から動かし出して、並行して次の炉を建設していく。要は、例えば、金額は別としてですが、その方がおっしゃったのは、二兆円、年間一千億円を先行投資できれば、実用化を十年早めることができるということを言われる研究者がいらっしゃいました。

 これは、現実的にそれくらいの自信を持って進めているものなのかどうか、そのあたりも含めて教えていただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。

本島参考人 中性子の問題、これは核融合炉にとりましても非常に重要です。

 中性子は、遮へいの技術というのは、既に原子炉、加速器等で開発されてきて、実証もされております。要するに、軽い水とかを使うのが一番効率がいいわけです。それから、コンクリートも使いますけれども、コンクリートがなぜ遮へいに効果があるかというと、コンクリートの中にも水がいっぱい入っているからなんですね。そういう原理的なところを十分検討して、それから実験で実証しながら使っていくことによって安全性というのは高まる、こういうふうに申し上げられます。計算に乗ってきている、こういう言い方もできます。

 したがって、中性子の遮へいはITERで十分検討されておりますので、実際の実験でそれが実証されるわけでございます。これは非常に重要な点です。どこかに穴があいていて、そこからちょっと余計に漏れたとか、そういうことは率直に申し上げてあり得るかもしれませんけれども、対応のできることですから、弱いところから出力を上げていくことによって、そういう問題というのは十分克服できるわけです。

 それから、ライバルを育てるかどうかという点については、確かに、ITERへの参加がキャッチアップ型の国と先行型の国があるのは事実でございます。私は国の名前を挙げることはちょっと差し控えざるを得ませんけれども、しかし、キャッチアップ的に来ておられる国はもうそれに徹していますから、そういう点で、インテレクチュアルプロパティーの押さえ方等については比較的問題が出にくいんじゃないか、こういうふうに思います、建前はすべて共有なんですけれども。

 ですから、結局、それを活用するのは人ですから、ITERへ来て、経験を積んで帰ったところで、その人がさらに、日本なら日本の次の段階へ発展させるかどうかというのは、それは日本の責任ですし、ものですから、そこで差が出てくる、こういうふうに思います。

 日本のお隣の韓国につきましては、今工程的には一番進んでおります。そういう面も実はあります。ヒュンダイ等が今後積極的に参入してくることが予想できますので、そういう点では、スケジュールのキープは非常にいいのではないか、こういうふうにも期待しております。

 あとは、ITERが保守的な設計であるという点については、やはりできるだけ早く実験炉として完成させなければいけないという事情が働いていた点が非常に大きいと思います。ですから、ステンレスを使ったと先ほど御説明申し上げました。これは保守的なことの典型なんじゃないかと思います。

 しかし、その決定には十分合理性があった、こういうふうに思います。ITERをやることによって、その次はもうこれだというのが決まってくるわけですから、随分先進性が出せるんじゃないか、こういうふうに考えております。

 あとは、並行してできるかどうかということについては、ぜひそれは並行して日本も国策としてやっていただけないかな、こんなふうに思っています。

 ITERが成功しているということを確認するのは、私の前の実験のときもそうでしたけれども、最初につくったプラズマの顔を見たら、それで成功しているかどうかというのは、私はそのときはそれは赤ん坊だと言いましたけれども、本当にその時点でわかりますので、そのときにもう次の段階のゴーサインを英断をもって出してもらうことも可能なんじゃないか。そのためには、専門家の意見を聞いていただいて、その上で判断していただくということになる、こういうふうに思います。

熊田委員 ありがとうございます。

馳委員 自由民主党の馳浩です。

 二、三点、簡単にお伺いいたします。

 政府の行政刷新会議から、提言型の政策仕分けというのが行われて、コメントが先般出されました。「ITER計画については、国際交渉を進めることにより、日本の負担を圧縮するなど、膨張する負担について、更なる削減、合理化の努力を図るべき。」極めて抽象的な表現ではありますが、何となく、本島機構長の後ろから鉄砲を撃つような表現かなと。

 なかなか私も指摘しづらいんですが、別に法的根拠のない会議から出たコメントですと言えばそれまでではありますが、そうはいっても、国民としての関心事であることは間違いない。したがって、出身の国から、政府からこういうふうなコメントが出る、その内容について、では、本島機構長としての反論をお聞かせいただければというのが一点目ですね。

 二点目は、脱原発依存という考え方については、三・一一以降、国民にも各政党にも理解されつつあるのですが、ここは二つですよね。そうすると、省エネと節電をどこまでやりましょうかという合意と、三分の一賄っているエネルギーの供給量をどこに求めるのか。五年、十年ですべて自然エネルギー、再生可能エネルギーが大丈夫かというと、そうではないというふうな認識もある中で、このITERが実用炉になった場合に、我が国の安定的なエネルギー供給源となり得るのかどうかという、やはり何となく明るい未来もお話しいただきたいなと。

 二点をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

本島参考人 日本は歴史的に武士道の精神がありますから、後ろから鉄砲で撃つということはないはずだと思います。しかし、私も、きょうも申し上げましたコストの削減にはさらに努めてまいりたいと思います。

 その方法は実はございまして、私、昨年の七月の終わりに機構長の指名を受けて、その後、次の日に全職員を集めて、当然、私のその方針を説明したわけですが、そのときに出したメッセージの一つがシンプリフィケーションという言葉です。あらゆるところでマネジメントをライン化してシンプリファイする、ディシジョンメーキングをシンプリファイする、それから設計もシンプリファイしていく、そのためには高度な経験と判断力が必要になるんですが、それによってコスト削減が百億単位でできてきております。

 今後も、企業との製作という段階に入りますので、各国の企業のテーラーメードな、日本は特に高いレベルを持っておりますから、そこの製作の現場から出てくる新しい技術の提案とか、そういうことを受けることによってさらにコスト低減はできるはずだ、これは私の経験からそういうふうに思います。日本でシンプリファイしたことは日本のコストの縮減につながるわけですから、プラスのフィードバックになっていくはずだと思います。こういった可能性をさらに追求していきたいと思います。

 これが最初の御質問だと思います。

 私も、日本人として、日本の高い科学技術が評価されたので、私の個人的な経歴ももちろん評価の対象にしていただいたことは誇りに思っておりますが、やはり日本の高い科学技術があったから私が機構長に推挙されたということは肝をもって銘じております。

 したがって、もちろんITERの機構長としての責任を果たしてまいりますが、各国、しかもその主要なメンバーである日本のベネフィットがあり、先生方から見ても十分あるというふうにならなければ、ITER計画というのは成功したとは言えないわけですので、この点については、さらに私の責任と努力を傾注してまいりたいと思います。シンプリフィケーションということによっていろいろな可能性が出てくると具体的に思っております。

 それから、脱原発という議論は非常に難しい議論になるはずだと思います。この点につきましては、例えばドイツは、まさしくそういう方向へ一たん進んで、また揺り戻しがあって、現在も進んでおりますね。しかし、フランスの原子力発電所から出た電気を買っているわけですね、これも御承知のとおりです。だから、そういう点では脱原発になっていないんじゃないか、そういうふうにも思いますから、やはり安全性についてしっかりレベルを高めるということが日本にとって非常に重要な点なんじゃないかな、申し上げるまでもないんですが、私はこういうふうに思います。

 核融合につきましては、やはり百台つくるのに百年以上はかかるロングスケールのエネルギー政策になるはずですから、国と政治の理解と支援がなければ実現しないわけですが、安定的なエネルギー源になる条件はもう十分整っている、それを実証するのがITERである、こういうふうに考えております。

馳委員 ありがとうございます。

大西(健)委員 民主党の大西健介でございます。

 二点、御質問させていただきたいと思います。

 一点目は、ITERはEUを含めて七極が参加をしていて、本島参考人は機構長として全体を取りまとめておられる立場にあるわけですけれども、参加各国のこういった先端技術への取り組みとか政府のバックアップとか、それぞれ国によって違うと思うんですけれども、取りまとめておられる立場からして、なるほど、この国は感心するなとか、さすが、見習うべき点があるなという点があれば、ぜひ教えていただきたいというのが一点目です。

 二点目は、本島参考人のきょうのプレゼン資料の十三ページのところで、「我が国からの人材投入はまだまだ不十分」というふうに書いてありまして、先ほどの質疑の中で、それは恐らく、一つは、人材育成という観点からもっともっと若手を送るべきだということを言われているのかなというふうに感じましたけれども、現在、どうやって人材を選抜しているのか。あるいは、細かいことになりますけれども、待遇というのは十分な待遇なのか。一流の研究者、科学者にとって十分な待遇なのか。それを含めて、それから、先ほどの質問と関連しますが、では、各国はどういう戦略を持って人材をITER計画に送り出してきているのかという部分について教えていただければと思います。

本島参考人 まず、七極は、七極七様と言ってもいいぐらいですので、そのことによりますおもしろいこともいろいろ出てまいります。それから、内部的な行き違いとか対立とかですね。

 今、まずヨーロッパについてですが、やはり地元だということもありまして、他の分野の研究機関から、例えばCERNですね、ああいったところから超電導の関連の技術者を大量に送り込んできたりとか、そういうフレキシビリティーがかなりあるように思います。

 この十三ページの表を見ていただいても、今EUは六〇%を占めておりまして、私としては、他の極に頑張ってもらって、予算の支出率に見合った人材構成ということになりますと、数字の上では四五%とか五〇%ぐらいが適正という、私も、他極から優秀な人をより多く得ることによってこのバランスを改善していきたい、こういうふうにも思っています。

 昨年私が着任したときは六五%でした。ですから、一定の努力をした結果、今六〇%で、ほかの国がチャンスがふえている、こういう傾向です。これはいい傾向だと思うんですが、ヨーロッパもそれを認めてくれております。

 セレクションについては、もう完全にオープンセレクションですので、あるポストで、ある国の方が定年になったり国から呼び戻されて帰ったときに、その国の方が次に入るという保証は全くありません。こういう競争原理で物事を決めております。

 例えば、インドの場合は、インド政府が当初お決めになって、五年契約が原則なんですが、三年契約で帰してほしいということが私の行く前はあったんですが、これですと、入れかえに、せっかく経験を積んだ人が三年でいなくなって、本人のためにもなりませんし、引っ越し費用は出さないといけない、もちろん、引っ越し費用については小さいことですが。インド政府とかけ合いまして五年に延ばしてもらうことに成功しているところでございますが、実質的にも結構やるべきことがまだこれからもあると思います。

 それで、人を送り込んでもらうという点については、今、ロシアが若手の研究者をロシアの費用で八人送りたい、これは研修生みたいなものですね。来年の二月から、その来た方の安全とかも確保する必要がありますので、準備を整えて、この仕組みが始まります。

 ロシア政府は非常に積極的だ、先鞭をつけているという言い方ができると思います。その中で残りたいという人がいれば、オープンセレクションに応募してもらって、結果が出れば採用していく。ロシアにとりましても非常にメリットがあるわけですね。

 それから中国とは、来週私は中国へ行きまして、USTCという大学と協定を結びますが、やはり、向こうの学生を向こうから送り込みたい、ITERのスタッフを客員教授にして採用したい、こういう非常に具体的な計画が進んでおります。

 ですから、日本からも既に、教授の先生のコネクションで一番最初に研究生が来たんですが、その後もう少し拡大をできれば本当に学生の興味ももっと引き出せるんだけれどもな、こういうふうに考えておるところです。

 御質問には大体お答えできたかどうか、やはり日本も積極的に人を出してほしい。日本の場合は、外国へ行った留学生で定着する人が二%しかいないというデータがあるようですね。逆に、留学生を受け入れても、二%しかその人たちは定着しない。もう少し数字がふえるといいな、ITERがそれに貢献できるといいな、こういうふうに思っております。

松宮委員長 ちょっとお願いでございますが、時間が相当迫っておりますので、簡潔に御質問いただき、また、参考人の方もできるだけ簡潔な御答弁をお願いしたいと思います。

吉野委員 一点、質問します。

 私、福島県でありまして、まさに私の選挙区がここの第一原発のところなので、先生のこの六ページを見ますと、もう福島原発のような事故はあり得ない、安全だと言っているんですけれども、逆に、どんなところが危険なのか。ITERはこんなところが危険なんだ、こんなところが危ないんだというところを教えていただければと思います。

本島参考人 最大の想定事故は、トリチウムの漏えいです。キログラムオーダーのトリチウムの漏えいがやはり一番気をつけないと、懸念すべき安全対策の対象になります。これに尽きるかと思います。

 あとは、ITERの場合、津波の問題はありませんが、上流にダムがありますから、そのダムが決壊したときに水位が何メーター上がるか、こういった検討はしております。三十メーター上がるんですが、私どもはさらに五メーター高いところに土地がある、こういう検討結果で安全審査をお願いしております。

 やはり、最大という点では放射性物質であるトリチウムです。

平(智)委員 きょうは、ありがとうございます。

 ぜひ夢のエネルギーとして完成することを心から願っておりますが、ちょっとあえて政策の面から。

 高速増殖炉の完成が二〇五〇年というふうに今設定されていて、この核融合の、商業炉になるんですか、二〇四〇年から運転するよとおっしゃっているとすると、夢のエネルギーが今二つ国内で動いていることになるので、膨大なエネルギーを二つ持つことになるんですが、このあたり、研究者のお立場からどう思われるかが一点。

 それからもう一点は、今回の福島第一で、私も関係議員として活動させていただいていますが、原子力村と呼ばれる言葉の中に、研究者の方が集まっておられて、例えば熱力学の先生とかプラントエンジニアの先生方がなかなか入っていけなかったということが今現在でもあります。

 学術会議も随分心配しておられて、どうしたものかと思っておられますが、このITER並びに核融合炉全体が本当に、理学、サイエンティスト、エンジニア全体の総合技術になり得るか、どう思われているでしょうか。その点について。

本島参考人 まず、ITERは、少しふろしきを広げさせていただきますと、と言うとちょっと表現力がないことを露呈してしまいますが、やはり各国のカルチャーを集めて新しいカルチャーをつくろうとしていると言えると思うんです。したがいまして、より透明性の高い科学技術になるはずだ、これが国際協力の非常にメリットの大きい点のはずだ、こういうふうに思います。

 したがって、各分野分野で細分化されて、各国の中では細分化されてしまっているものが、国をまたぐことによって、その垣根が取り払われる場合が非常に大きいと思います。そのために手間暇もかかるし、コストもかかる。しかし、それは時間をかけていいし、投資していただいてもリターンのあることじゃないか、こういうふうに期待しておるんです。

 それで、実際にインテグレーションをやりますから、そこでいろいろな分野からの参入というのが、やはりパイオニアですから、いろいろな可能性がある。そこは原子力の完成された技術と思われていた部分と違うところのはずだと思います。パイオニア精神を常に持てる、持つべきだということでもあると思います。

 あとは、「もんじゅ」とITERを比較して、さあ、どうなんだという御質問だとしたらちょっと答えにくいんですが、しかし、「もんじゅ」に投資された金額というのもかなりの金額のはずですから、やはりその投資した予算が効率的であったかどうかということについてはぜひ検証していただく必要があるのではないか。私たちも、何年か先にその検証にたえ得るように、きちっとした仕事をしていくのがITERオーガニゼーションの責務の最大の部分である、こういうふうに考えます。

松宮委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。

 この際、本島参考人に一言御礼を申し上げます。

 本島参考人には、大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げますとともに、ITERプロジェクトの現地におけるトップリーダーとして、どうぞこれからも御身御自愛の上、遺憾なく力量を発揮されますよう心より御祈念申し上げます。本当にありがとうございました。(拍手)

 参考人は御退席いただいて結構でございます。

本島参考人 ぜひカダラッシュへ御招待申し上げたいので、いつでも御連絡いただければと思います。よろしくお願いいたします。(拍手)

     ――――◇―――――

松宮委員長 この際、理事会の協議に基づき、委員長から報告いたします。

 本日の理事会において、十月二十五日の当委員会における古川大臣の吉野委員への答弁について、大串政務官より、「十月二十五日の当委員会における、古川大臣に対する吉野委員の核燃料サイクルについての質問であるが、吉野委員の通告・関心事項を幅広く古川大臣に伝えなかったため、吉野委員の質問に対する古川大臣の答弁に十分円滑でなかった点があった。このことについて、私以下、事務方一同、大いに反省している。」との説明を受けました。

 このことを受けて、私からも適切かつ円滑な委員会運営が図られるよう、いま一度内閣府に対し、注意を申し入れましたことを御報告します。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十七分散会


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