衆議院

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第3号 平成25年5月16日(木曜日)

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平成二十五年五月十六日(木曜日)

    午後二時二十分開議

 出席委員

   委員長 渡海紀三朗君

   理事 馳   浩君 理事 牧原 秀樹君

   理事 三原 朝彦君 理事 宮下 一郎君

   理事 渡辺 博道君 理事 福田 昭夫君

   理事 伊東 信久君 理事 伊藤  渉君

      大串 正樹君    大塚 高司君

      大野敬太郎君    加藤 寛治君

      神山 佐市君    神田 憲次君

      小島 敏文君    関  芳弘君

      武村 展英君    豊田真由子君

      福田 達夫君    船橋 利実君

      前田 一男君    宮崎 謙介君

      武藤 容治君    八木 哲也君

      簗  和生君    山田 賢司君

      大島  敦君    津村 啓介君

      古川 元久君    杉田 水脈君

      鈴木 義弘君    西根 由佳君

      伊佐 進一君    岡本 三成君

      柏倉 祐司君    宮本 岳志君

      青木  愛君

    …………………………………

   国務大臣

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)

   (情報通信技術(IT)政策担当)         山本 一太君

   内閣府副大臣       西村 康稔君

   文部科学大臣政務官    丹羽 秀樹君

   厚生労働大臣政務官  とかしきなおみ君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  向井 治紀君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房宇宙審議官)           西本 淳哉君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 森本 浩一君

   政府参考人

   (内閣府沖縄振興局長)  竹澤 正明君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            吉田 大輔君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           平山 佳伸君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  原  徳壽君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           渡邊  宏君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    小糸 正樹君

   参考人

   (日本学術会議会長)   大西  隆君

   参考人

   (独立行政法人科学技術振興機構理事長)      中村 道治君

   衆議院調査局科学技術・イノベーション推進特別調査室長           雨宮 由卓君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十六日

 辞任         補欠選任

  小林 史明君     小島 敏文君

  福田 達夫君     神山 佐市君

  村井 英樹君     豊田真由子君

同日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     福田 達夫君

  小島 敏文君     小林 史明君

  豊田真由子君     村井 英樹君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件


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     ――――◇―――――

渡海委員長 これより会議を開きます。

 科学技術、イノベーション推進の総合的な対策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本学術会議会長大西隆君及び独立行政法人科学技術振興機構理事長中村道治君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官向井治紀君、内閣府大臣官房宇宙審議官西本淳哉君、内閣府大臣官房審議官森本浩一君、内閣府沖縄振興局長竹澤正明君、文部科学省研究振興局長吉田大輔君、厚生労働省大臣官房審議官平山佳伸君、厚生労働省医政局長原徳壽君、経済産業省大臣官房審議官渡邊宏君及び特許庁総務部長小糸正樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

渡海委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

渡海委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大野敬太郎君。

大野委員 自由民主党の大野敬太郎と申します。

 まずは、きょう質問をさせていただく機会を与えていただきました委員長並びに理事の先生方に厚く御礼を申し上げたいと思いますし、また、大臣、お忙しいところ御出席を賜りましたことに厚く御礼を申し上げたいと思います。

 実は私、出身が香川県でありまして、うどん県でありますけれども、大臣の御出身地は群馬県。群馬でもうどんが結構有名だそうでありますけれども、何となく親近感が湧くな、そんなことを思っております。逆に言えば競争相手かななんて思ったりしているんですけれども、競争するのは、うどんじゃなくて、やはり日本の成長戦略。産業の競争力、国際競争力、あるいは科学技術の競争力をどうしていくのか、本当に重要な問題じゃないかと私もずっと思っておりましたし、初当選以来ずっと、こういった分野に何とかちょっとでも力を注げないかな、そんな思いできょうに至っております。

 そこで、まず科学技術、アベノミクスの三本目の成長戦略の中で最も中長期的な戦略として重要な課題であると思いますが、その中で、司令塔機能、どうやって科学技術を引っ張っていくんだ、こういう問題であります。この点について、これまでの科学技術政策は一体何がいけなかったのか、どういう問題点があってなかなかうまくいかなかったのか、その部分について、まず基本的なところでありますけれども、大臣の所見を賜れればと思いますので、よろしくお願いします。

山本国務大臣 大野委員は、自民党の科学技術・イノベーション戦略調査会の司令塔機能小委員会に毎回出席をされて発言をされているということで、本当にこの分野にお詳しいので、お手やわらかにお願いしたいと思います。

 まず、総合科学技術会議の司令塔機能強化、特に従来の科学技術政策の問題点をどう捉えているかということなんですけれども、まず一つは、関係省庁の縦割りがありまして、必ずしも政府が一体となって包括的な科学技術・イノベーション政策を推進できなかった、こういう点はあると思います。

 二つ目として、基礎研究の成果が必ずしも経済社会のニーズにつながらない、課題解決型の戦略が十分に実施されてこなかった。安倍政権の哲学の一つは、非常にレベルの高い研究開発を国民が享受できるようにする、すなわち、出口をしっかり見据えた戦略が必要だということですから、こういう意味でもこの二点目は反省しなければいけないと思います。

 従前の縦割りの行政の弊害を打破しつつ、国家戦略として科学技術・イノベーションを推進する、このためには、総合科学技術会議の司令塔機能強化を図り、これまでにない強力な推進力、これは安倍総理の方からも御指示が出ていまして、予算、機能両面でこれまでにない推進力を発揮できるような抜本的な機能強化をしてほしい、こういうことですので、これを踏まえて、私もしっかり司令塔機能強化に取り組んでまいりたいと思っております。

大野委員 大臣、おっしゃるとおりだと思います。

 まず第一番目には、府省連携が足りなかった、そこの部分に戦略がなかった。ある種、水平の軸での戦略性のなさ。そしてもう一つは、死の谷。これは広義の死の谷でありますが、基礎研究から産業応用までの死の谷、あるいは、いろいろな規制とか金融の分野、あるいは産業、いろいろな分野がありますけれども、そういった部分の死の谷、ここが全く連携ができていなかった、そういう戦略性のなさ。ある種、垂直の軸での連携のなさ。

 つまり、この水平と垂直の軸の中で問題を解決していくのが司令塔の機能だと思うんですけれども、かなり広範囲の分野に及んでいると思うんです。

 そんな意味では、例えば、ちょうどきのうだったんですけれども、テレビを見ておりましたら、介護ロボットを開発しているという方が、ようやく基礎研究から何とか製品化にいこうといって製品化になるんですけれども、そこで何か規制があってなかなかうまくいかない。こんなことを考えていたら、まさに基礎研究でちょっと芽が出た時点で規制という問題もある種取り組んでいかなくちゃいけないとか、いろいろな問題があると思うんです。

 今、日本経済再生本部の中では、もちろん、産業競争力会議とか、規制改革会議とかいろいろなものがありますけれども、そのほかにも、税制とかの問題、先ほども申し上げましたけれども、いろいろな分野にまたがっていると思うんです。本当に強力な政治力、指導力が要りまして、かつ、総合科学技術の司令塔機能というのを物すごく強力なものにしていかなくちゃいけないと思うんですけれども、その取り組みに対する大臣の意気込みというのをぜひおっしゃっていただければと思いますので、よろしくお願いします。

山本国務大臣 今、大野委員御指摘になったように、省庁の縦割りを乗り越えて総合戦略をつくっていくというのは並大抵のことではないというふうに、科学技術担当大臣、総合科学技術担当大臣になって五カ月近くたつんですけれども、改めてそう思っています。

 今おっしゃったように、総合科学技術会議、科学技術・イノベーションと規制改革は非常に関係が深いと思っていまして、そういう意味で、実は、経済再生本部の最も重要な機関である産業競争力会議と、規制改革会議と、そして私の担当する総合科学技術会議が横串になって、産業競争力会議のメンバーにもなりましたし、連携をしていかなければいけないということです。

 今言ったお話も、山ほどお話があるんですが、一言で言うと、やはり省庁の縦割りを何とか乗り越えて、司令塔機能をしっかり強化して、総合的に、おっしゃったように、基礎研究でいい芽が見つかったらこれをしっかり産業化できるまでの道筋をつけていきたい、担当大臣としてしっかり取り組みたいというふうに考えております。

大野委員 ありがとうございます。

 司令塔機能として、ある種、ほっておいても府省が連携していくようなインセンティブを何か一つやらなくちゃいけないと思いますし、死の谷の解消についてもそうだと思いますので、いい司令塔機能ができればと思っておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 ちなみに、安全保障会議というのもありますけれども、そこら辺の連携というのも大臣はお考えでありましょうか。

山本国務大臣 今党の方からもよく提言の出ている総理の科学技術顧問という話がありますが、例えばアメリカには大統領顧問でホルドレン大統領補佐官というのがおられて、この人はナショナル・セキュリティー・カウンシルのメンバーなんですね。ですから、ありとあらゆることで、恐らく、いろいろな政策に科学技術の側面でオバマ大統領に直接アドバイスをするという形になっているんですが、日本の場合は、総合科学技術会議、科学技術・イノベーションと安全保障というのは、今直接つなぐ仕組みというのはありません。

 ただ、例えば私の担当範囲でいうと、これは科学技術ですけれども、宇宙、宇宙政策なんかは民生と安全保障がありますので、これは関連しておりますけれども、今の時点で総合科学技術会議と安全保障の分野を直接つなぐという仕組みはございません。

大野委員 ぜひ固定観念にとらわれずに、いろいろな分野との連携を図っていただければと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 次に、連携と申しました、あるいは、大臣は先ほど宇宙関係の分野の本部の話をおっしゃいましたけれども、実は今、内閣府の中に、司令塔と言ってもいいのかもしれません、宇宙関係、宇宙開発戦略本部、それから、先ほど本会議でお触れになりました海洋の本部とか、ITとか、いろいろな分野があります。これは、立ち上げのときにこういうものを設置するというのは、ある種、牽引力としてはすごくいいものだと私は思っているんですけれども、こういうものを設置するときに、どこまで来たら解消するんだという出口のことも実は考えていかなくちゃいけないと思うんです。

 今、例えば日本版NIHみたいな話が先般新聞にも出ていましたけれども、こういったものは本当に最初の取っかかりとしてはいいのかもしれないですけれども、いつまででもやっていると単に内閣府が肥大化するだけの話になってしまって、何をやっているんだかわからなくなる。そんなことが起こり得たらちょっとまずいなという感覚があるんです。

 なので、いろいろな会議体と申しますか司令塔、この司令塔も、総合科学技術会議との関連でいえば、何だか横に並んでいるような感じがしないでもないんです。アメリカの場合でいったら、プロジェクトベースのそういう司令塔というのはあると思うんですけれども、必ず政府の、大統領の司令塔の下にぶら下がっているんです。だからこそ、それぞれの司令塔が横の連携ができる、自動的に連携ができていくんだ、こういう形になっているので、ぜひこの司令塔機能はちょっと組織を見直していただければと思っているんですけれども、その点について大臣の御所見をお願いしたいと思います。

山本国務大臣 今、大野委員の方から司令塔のあり方についてお話がありました。

 内閣府の肥大化、これはもちろん避けなければいけないと思うんですけれども、内閣府はもともと、設置法の趣旨からいけば、他の官庁よりもある意味一段高みに立って総合調整をする、こういう発想の中から、例えばITならIT、宇宙なら宇宙、国家戦略として考えるべきものは一つ横串を刺そうということで生まれてきたということなので、いつまでやるのかという話がありましたけれども、これはそれぞれの分野を国家戦略としてどう考えるのかというところに多分つながってくるのかな、そういう議論だと思っています。

 内閣官房には、IT総合戦略本部、知的財産戦略本部、総合海洋政策本部、宇宙開発戦略本部に加えて、先ほどおっしゃったNIHにも関連すると思うんですが、健康・医療戦略室というのが設置されていまして、実は、IT戦略本部、知財戦略本部、総合海洋政策本部、宇宙開発戦略本部、全部私の所掌でございます。

 実は、総合科学技術会議が全体を俯瞰したらいいんじゃないかという考え方もありました。ただ、例えば総合海洋政策でいうと、海洋資源は科学技術だけれども海の安全保障は科学技術じゃないということで、それぞれ、関係はなかなか簡単に整理できないものがあって、例えばIT戦略本部では、今、安倍ITビジョンというのをつくっています。知財本部でも、今、知財ビジョンというのを実は起草委員会をつくってやっているんですが、それぞれの司令塔がいろいろな省庁との関連を乗り越えて、それぞれの政策で横串を刺そうとしている。

 だから、これを今の段階で、何となくどこかから出てきて一遍にまとめるというのはちょっと難しいと思っています。

 ただ、今、大野委員の方からも御提言もありましたが、考えたら全部私の所掌なので、司令塔機能調整会議という勝手に名称もつけて、実は、各本部のトップを全部呼んで、新しくできた健康・医療戦略室からもナンバーツーぐらいの人を出してもらって、どうやって司令塔を連携させていくか、あるいは、今、大野委員のおっしゃった司令塔のあり方というものをどう考えていくのか、こういう議論をやりたいと思っています。

 司令塔機能調整会議、私がつけた名前ですが、これを最初に来週の火曜日に開催しようと思っていまして、今の問題意識も入れてしっかり議論していきたいと思います。

大野委員 ありがとうございます。

 司令塔調整機能会議……(山本国務大臣「司令塔連携調整会議」と呼ぶ)連携調整会議というと、では司令塔はどこなんだろうとちょっと思ったりしないでもないんですけれども。

 私は、もっと機動的に、科学技術という切り口ではこういう組織がばんと海洋でも何でも入ってくる、安全保障が入ってきたら、その下にそういったものが入ってくる、いろいろな切り口で機動的になるような組織が一番いいと思っているんです。だから、ぜひそういったものもちょっと検討いただければと思うんです。

 そこで、次に、ちょっと時間もありませんので、予算と権限という項目に移らせていただきたいと思うんです。

 先ほど申しました機動性、軍隊式という言葉があると思うんですけれども、軍隊というのは、何となく、司令官がいて、上意下達で、部下に命令を出したらさっと動くんだ、こういうイメージがあると思うんですけれども、実は、最新の軍隊というのはそんなふうになっていなくて、非常に機動的なんです。

 Aという部隊があってBという部隊があって、ある事態が生じたら、例えばAの下にBをくっつけて対処する。別の事態が生じたら、今度はBが先頭に立ってAが下にくっつく。あるいは、平時のときはパラレルでいる。本当に機動的でありまして、有機的と申しますか、そういう組織というのが一番機能を発揮する、実効性があると私は思っているんです。

 だから、司令塔のところに予算をぱんとくっつける、もちろんある程度の予算は必要だと思いますが、省庁から全部予算を吸い取ってきて、そしてそこの司令塔に全部渡してしまうなんということになると、実に硬直的になってしまいやしないか、そこの司令塔が単なる陳情の場になってしまいやしないか、こういう危惧を抱いているところであります。

 そういった意味で、この司令塔、予算はどんな感じになるのかなというのがすごく不思議なんですけれども、では、予算について司令塔としてはどのように考えているのかというのをまず。

山本国務大臣 先ほど申し上げたとおり、安倍総理から指示されているのは、総合科学技術会議を、予算それから権限の両面で、これまでにない推進力を発揮できるように抜本的な機能強化をしてくれというふうに指示をいただいています。

 その予算でいうと、今、大野委員のおっしゃったように、では、予算だけ持ってくれば司令塔機能を発揮できるのか。そういうふうには思っていません。

 ただ、今回、総合科学技術会議が、特に新しい安倍政権になって、とにかく出口戦略に重きを置いていく、もちろん基礎研究も大事なんだけれども、やはり産業化をしっかりやっていく、経済活性化に結びつけていくというところにフォーカスを当てる、そういう路線を引いた中で、やはり総合科学技術会議として、省庁の縦割りを超えたところで、戦略的なプロジェクト、科学技術・イノベーションを引き起こせるようなプロジェクトについて、これを予算配分権を持って決めるということは大事だと思っているんです。

 実は、アメリカのホルドレン大統領補佐官は、かなり力がある。補佐官の力の源泉は二つあって、一つは、予算局と常に連絡をとり合ってやっているから、実はアメリカにも縦割りの問題があるけれども、それで各省庁は大統領補佐官のアドバイスを聞かなきゃいけない。もう一つは、やはりオバマ大統領との関係、恐らくいつでも会えるんだと思いますが、そうやってある意味でいうと省庁の縦割りというものを克服している。

 ですから、総合科学技術会議の機能強化という点でいうと、やはりある程度の枠は戦略的なものとして、私は最低五百億と言っているんですが、それは総合科学技術会議が、各省のバランスとかあるいは各省の予算に上乗せをするんじゃなくて、本当にいいプロジェクトを選んでつけるという仕組みは一つ必要だと思っています。

 ただ、大野委員のおっしゃったように、例えば少なくとも五百億、たとえ千億であっても、では、それで各省連携ができるのかというとそんなことはなくて、そこは今までも内閣府の方で努力してきましたが、アクションプランというのがあって、概算要求前から各省と協議をしながら重点分野を決めていって政策誘導していくということもあるでしょうし、FIRSTプログラムというのがありました。このFIRSTのようなプログラムをさらにつくるという考え方もありますし、やはり、そういう幾つかの矢を総合して司令塔機能を高めていくというのが一番効率的な方法ではないかというふうに思っています。

大野委員 ありがとうございます。

 決して、総合科学技術会議、司令塔に予算をつけたらいけないと言っているわけではありません。そういった意味で、重点プロジェクトというのはどんとやるんだというのは確かにそうだと思います。そういった意味で、大臣、ぜひいい司令塔の機能になればなと思っております。

 予算でちょっとついでながら申し上げますと、例えば府省連携という観点についてでありますけれども、例えば、司令塔が指定するプロジェクト、推進しようとするプロジェクトにまつわる事業だったら、一省庁の提案はだめよ、連携して提案してこないと予算はつけないよ、そんな枠組みにしたら、実はインセンティブがちょっと働くんじゃないかななんて思ったりしているんですけれども、そういったいろいろな角度でぜひ検討いただければと思っております。

 実は私が一番質問したかったものを、あと時間が一分しかありませんけれども、ちょっと御質問させていただければと思っています。責任と評価についてであります。

 その司令塔機能にはもちろん手足が必要だと思います。そういった意味で、研究開発法人、これは本当に重要な役割を担っているかと思うんですけれども、これが実は効率化をある種評価にしている独法制度のもとに置かれているというのは、ちょっといろいろな問題が出てくるんじゃないかなと思っているんです。

 効率というのは何か。つまり、無駄とか無駄じゃないとか、事業仕分けとか、そういう分野だと思うんですけれども、では、一体評価はどうするんだ、評価とは何なんだろうということになってくると思うんです。

 評価、これがもし仮に成果だけだとしたら、アウトプットだけだとしたら、実に科学技術になじまない分野だと思っているんです。評価しないわけにいきませんので、評価を成果だけじゃなくて期待値、期待感、むしろこっちの方が重きだと思うんです。

 アメリカにはDARPAという組織があります。これはまさにそうした期待値に対してハイリスクな研究開発投資ができる、本当に自由度の高い制度でありますけれども、私は、このDARPAの文化こそが科学技術の振興に一番必要だ、思想と申しますか文化と申しますか、それが必要だと思っているんです。

 そういった意味で、まず、研究開発法人の制度のあり方とか、もし御所見がありましたら、そして、DARPA、これが思想なり文化なりを取り入れる要素があるのか、もしくは、DARPA自身、そういった組織化できるのかどうか、その点について御所見をお願いしたいと思います。

山本国務大臣 今委員がおっしゃったアメリカのDARPA、このDARPA型のやり方というのは、もちろんずっと総合科学技術会議でも議論していまして、今度は、府省連携といいましたけれども、その言い方は少し狭いと思っていまして、例えば集中科学技術・イノベーション創設プログラム、どういう名前にするかまだ決めていませんけれども、余り型にはまらずに、本当にいいものにお金をつけられるようなものにしたいと思っていまして、その中で、今まさにおっしゃったDARPA型をどのくらいにするのか。

 連休にアメリカに出張していろいろな方に会ったんですけれども、科学技術関係の団体とか大統領補佐官とか、皆さんが言っていたのは、まさにおっしゃったとおり、科学技術・イノベーションはどこから起こるか、ハイリスク、ハイインパクトだと。

 なかなか普通で芽が出ないと思っているようなものに、リスクがあっても資金が行く仕組みをつくらないと生まれないということなので、今の大野委員のお話はしっかり参考にさせていただきたいと思いますし、六月中旬の成長戦略に間に合わせるべく今準備をしている科学技術イノベーション総合戦略の中にも、今のような思想はしっかり反映をさせていきたいというふうに思います。

大野委員 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

渡海委員長 次に、武村展英君。

武村委員 自由民主党の武村展英でございます。

 本日は、大臣に直接お話を伺える機会を頂戴しましたことを大変ありがたく、そしてまた心から感謝を申し上げます。

 本日は、経済成長との関連で科学技術・イノベーションの推進というものについてお話をお伺いしたいというふうに思います。

 昨日、平成二十五年度の予算が成立をいたしました。このことによって、安倍内閣の掲げる二本目の矢、機動的な財政政策がこれから実行段階に移されるわけでございますが、いよいよこれから第三の矢、成長戦略が検討されることになるわけです。今後の我が国の経済成長、これを、一時的なカンフル剤ではなくて、持続的な成長軌道に乗せていく場合には、成長戦略をどのようにするのか、こうしたことが最も重要になってまいります。

 ここで、経済成長というのは何かというものにまず触れたいというふうに思います。経済というものを生産の側面から改めて見直してみますと、一つの製品をつくるためには、労働力を投入する、そして資本設備を使う、そこに技術が入ってきて製品をつくることになると思うんですけれども、そのように考えますと、経済の成長率というのは、労働力人口の伸び率、そしてまた資本ストックの伸び率、さらには技術の効果がどのようにあらわれてくるのか、この三つの要素に分解をされるというふうに思います。

 今後、長い視点で考えますと、少子高齢化が迫ってくる中で、労働力人口の伸びというのは余り大きな期待はできません。そしてまた、過剰な設備があるような現状の中で、持続的に資本ストックの伸び率というものを維持していくというのは大変困難であろうと思います。したがいまして、残りの技術による部分、科学技術・イノベーションが成長戦略の中核をなす、まさにイコールだと言っても過言ではないというふうに思います。それほど科学技術・イノベーションの推進というのはこの三本目の矢にとって重要なものであるというふうに私は認識をしております。

 それでは、どういう分野に重点を置いて、戦略的にこの科学技術政策というものを伸ばしていかなければならないのかというのを考えたときに、私は、やはり最先端の技術、一番を走っている技術に手厚く施策を行っていく必要があると思います。

 科学技術というものは、最先端、一番である、そして、そうした地位を維持していく、継続してその地位を保つために努力をしていく、そのプロセス自体が重要ではないかというふうに思うんです。一番手であり続けるということは、二番、三番と全く異なる。つまり、常に一番手であるということは、誰も経験をしたことのない未知の世界の中で、新たな障壁にぶつかってそれをクリアしていく、そうした試行錯誤の連続を経験するというふうになろうかと思いますが、これはマラソンと同じで大変苦しい状況なんだと思うんですね。

 しかしながら、そういったプロセスの中で、技術の分野の裾野が広がっていく、そしてまた、技術の知見が蓄積をされていく、そして、科学技術・イノベーション力というものが育ち、産業が発展していく、こういうサイクルになっているのではないかなというふうに思うんです。つまり、科学技術・イノベーションの成果と産業活動というものは、一体となって経済を発展させていくもの、そしてまた、そういった社会の仕組みを構築して経済を発展させていくことが重要ではないかと日々考えているわけでございます。

 少し前置きが長くなってしまいましたけれども、まず、総合科学技術会議の司令塔機能の強化、先ほどもちょっとお話をいただいたところではありますが、この司令塔機能の強化についてお伺いをしたいというふうに思います。

 私は、科学技術の基礎研究、応用研究、そして開発段階、実用化段階、各段階がありますが、そういった各段階で一貫した政策の推進を行っていくために、独自で配分できる予算を持つべきであるというふうに強く思っています。この点につきまして、改めてお伺いをいたします。

山本国務大臣 御質問ありがとうございます。武村委員とここでお目にかかれて本当によかったと思います。

 さっき大野委員の御質問にもお答えしましたけれども、正確に申し上げますが、総合科学技術会議が司令塔機能を発揮して、重要な国家的課題の解決のために、府省の枠にとらわれず、予算を重点的に配分することは重要だ、私も全くそういうふうに思っておりまして、これは先ほど申し上げたとおり、安倍総理からの、抜本的な司令塔強化という指示の中では一つの大事な側面だと思っています。

 これについて総理から、四月十七日の産業競争力会議で、府省横断型の研究開発プログラムの創設を検討するという方針が出されて、今大体こういう流れになりつつあります。

 四月二十三日の総合科学技術会議では、このプログラムの対象や配分の仕組みを含めた制度設計は総合科学技術会議が行う、こういう指示もありました。ですから、今、武村委員にもおっしゃっていただいた、予算の配分、この枠がどのぐらいになるのかというのはまだはっきりしませんが、少なくとも五百億程度の規模は、私は科学技術担当大臣として必要だと思っていますが、これを機能強化の一つの柱としてしっかり確保できるように全力を尽くしてまいりたいと思いますし、ぜひこの点は応援をしていただきたいというふうに思っています。

武村委員 ありがとうございました。

 そうした予算の中でも、特に競争的資金は大変重要なものだというふうに認識をしておりますが、科研費の基金化の拡充についてお伺いをしたいと思います。

 科学研究費助成事業は、平成二十五年度から、各年度の研究費を前倒しや繰り越しを可能とする調整金という制度が導入されているところであります。

 しかしながら、この制度は、個人の研究費単位ではなくて制度全体で調整金の枠を設けて、各研究者の申請で振り分け調整をする、こうした仕組みになっているところです。例えば、前倒しを希望する研究者が多い場合には個々に前倒しを行うことができない、限界が生じることも考えられるわけであります。

 一方で、平成二十三年度から、科研費の一部が基金化をされたわけであります。年度をまたがった使用が可能となりまして、研究の進捗に合わせて、研究者が総予算額の範囲で柔軟な予算執行ができるという非常に使い勝手のよい制度であるというふうに考えます。

 しかしながら、この基金化を利用できる上限が五百万円以下というふうになっておりまして、少額の研究しか利用できないこととなっております。

 私は、研究者の方々が、例えば高額の研究機器の調達を柔軟に行えるようにするためには、こうした範囲を拡大することがぜひとも必要ではないかというふうに考えますが、政府の御見解をお伺いいたします。

丹羽大臣政務官 武村先生からの御質問のとおり、研究の進展に合わせて柔軟に研究費を使用できるということは大変重要であると考えております。

 文部科学省におきましては、科学研究費助成事業、つまり科研費につきまして、平成二十三年及び二十四年度に、一部研究種目において、研究費の複数年度にわたる使用を可能とする基金化を導入させていただいています。

 現在でも、先生おっしゃるとおり、五百万とか、若手、基盤とか、いろいろな条件の中でそういった活動はやらせていただいております。

 また、この二十五年度予算においても、基金化していない種目において、研究費の年度間融通を可能にする調整金の導入をするなど、さらなる改善に努めております。

 今後、基金化された科研費の執行状況や研究成果創出への影響等について、検証結果を踏まえながら、しっかりこの調整金の活用状況も考えて、科研費のさらなる効果的また効率的な使用に向けて取り組んでいきたいと考えております。

武村委員 ありがとうございました。

 国の予算が単年度主義という中で、研究者の方々が柔軟な予算執行ができるように、効果が大きなものとなるように、ぜひともこれからも御検討いただきたいというふうに思います。

 次に、長期的な視点でのエネルギー問題への対応について、ITER計画についてお伺いをしたいというふうに思います。

 成長戦略を推進していく上では、長期的なエネルギーの安定供給というのは不可欠なものであるというふうに考えます。

 しかしながら、現在、将来にわたって国内の原子力発電所を稼働させていくということに対して、国民の皆様からの御信頼をいただくというのは極めて困難な状況にあるというふうに認識をしています。

 その代替エネルギーとして、太陽光や風力、こうした再生可能エネルギーの活用が期待されているところではありますが、こうした再生可能エネルギーといったものは、自然条件に大きく左右をされるわけであります。したがいまして、こうしたエネルギーとは別の、安定した基幹エネルギーを確保することが極めて重要だというふうに思います。

 私は、これまで国際プロジェクトとして進められてきました、次の世代のエネルギーである核融合実験炉、いわゆるITER計画と言われていますが、このITER計画をさらに加速して進めるべきではないかというふうに考えます。

 ITER計画の現在の進捗状況と今後の見通し、そして核融合に対する政府の取り組みの方針についてお伺いをいたします。

丹羽大臣政務官 委員御指摘のITER計画でございますが、ITER計画の中身については、皆様方の方が御理解あると思います。まさに、地上に太陽を実現する、核融合エネルギーの大きな課題であります。

 そういった中で、一つ目の利点として、少量の燃料から莫大なエネルギーを発生させて、その燃料が実質的に無尽蔵に得られる。そして二つ目といたしまして、温室効果ガス、二酸化炭素が発生しない。さらに三つ目で、速やかな反応で停止する。まさに安全性が高いという面では非常に注目された、将来の基幹的なエネルギーの源として国際的にも大いに注目されております。

 このITER計画につきましては、今ドイツなんかも非常に注目しております。運転開始は二〇二〇年を予定しておりまして、我が文部科学省といたしましても、このITER計画について、フランスのカダラッシュにおいて装置の本体を設置する建屋の建設等を進めておりますが、さまざまな分野を精査しながら、また総合的な科学研究の分野もあわせ持ちながら、しっかりとした対応で、国際社会に日本が何とかこの研究を一歩前へ出て進めていく、そういう覚悟で臨んでいきたいと考えております。

武村委員 ありがとうございました。

 次世代のエネルギーとして大変希望の持てる技術だと思います。これからも、どうか、ITER計画について前向きに取り組んでいただきたいというふうに思います。

 次に、宇宙開発利用について御質問をいたします。

 私は、以前監査法人に勤務をしておりまして、一度、国の研究機関の会計監査をする中で、ハワイ島にマウナケアという山がありまして、その山頂にすばる望遠鏡がございます、これを一度視察に行ったことがあります。

 この望遠鏡は、直径が八・二メートルもある世界有数の望遠鏡ですが、これが標高四千二百メートルの山の頂上にあるわけです。麓は年じゅう夏に近い気候でありますが、山頂に登ると、雪も積もるような気温が低い状態、そして空気が薄い状態でございます。これは日本の望遠鏡なんですが、こうした望遠鏡を利用して宇宙の起源を解明する、こうした世界でも最先端の研究がなされてきたわけでございます。

 宇宙の起源を解明する、こうした研究というものは、我々の暮らしだとか経済成長にどのように結びつくのか。これは、一般的には大変想像しづらいものであるというふうに思います。

 しかしながら、実際に直径が八・二メートルもある大きな口径の望遠鏡を四千二百メートルの標高で、気圧も温度も過酷な状況ですが、精密に設置する技術、そしてまた、これらの技術を支える技術、こうした先端的技術は多くの周辺技術の積み上げによって成り立っているわけでありまして、多くの関連企業の中で技術や人材を蓄積していく、醸成していく、こうしたことにつながってくるわけであります。

 こうしたことと同様に「はやぶさ2」、H3型ロケット、こうしたものの開発や搭載する衛星の開発、こうした技術革新は我が国の産業の振興に大きく寄与するものであるというふうに考えます。

 一方で、宇宙ビジネスというものは国際間で大変熾烈な競争があります。政府の力強い後押しがなければ、この厳しい競争に勝ち抜くことは到底できません。

 そこで、宇宙開発利用につきまして、政府の支援、そしてまた、経済成長との関連について政府の御見解をお伺いいたします。

山本国務大臣 宇宙政策担当大臣としてお答えしたいと思います。

 本年一月に、新たな宇宙基本計画を宇宙開発戦略本部で決定をいたしました。御存じのとおり、宇宙開発利用の拡大と自律性の確保、この二つの哲学を打ち出しました。この本部決定に当たり、本部長である安倍総理からは、宇宙政策を経済成長と産業の活性化の観点から関係府省が連携して強力に推進せよ、こういう御指示をいただいています。

 今委員の方からありましたが、世界の宇宙関連市場、今毎年一四%で拡大しておりまして、我が国の宇宙産業の市場規模を現在の九兆円から十五兆円に拡大させたい、こんなふうに考えています。特に宇宙インフラを整備することによって、すごく裾野が広いので、宇宙利用産業の裾野の拡大を目指すことが大事だと思っています。

 早口で言いますが、具体的には、準天頂衛星システム、後でまた御質問が出るようですが、この整備によって、衛星測位の利用場所、時間の拡大、精度、信頼性の向上を図ることで、位置情報を活用した新たな産業の創出を図る。それとともに、今私もあちこちでPRしているんですが、ASEAN防災ネットワークの構築によって、安全保障、防災、資源開発、農林水産業の高度化等、産業振興、経済成長に貢献するということとしております。

 また、アジアを初めとする新興国に我が国宇宙インフラを展開する。あちこちの国が実は大変興味を持っていますので、このインフラを展開することによって我が国の経済成長の促進にぜひ貢献したい、こんなふうに考えております。

武村委員 ありがとうございました。

 ぜひとも、世界で急速に広がっているこのマーケットを取り込んでいただけますよう、お取り組みを期待申し上げます。

 最後になりますが、先端技術と経済成長を結びつけるための施策についてお伺いをいたします。

 研究には、基礎研究から事業化に至るまでさまざまな段階がありますが、こうした事業化の過程の中で、いわゆる研究制度上の切れ目、つなぎ目、先ほど大野委員から死の谷というお話もございました。資金が不足したり規制の壁に阻まれる、こういったことで研究が頓挫してしまう、こうした死の谷を克服するための施策が必要であるというふうに思います。

 そこで、先端技術を経済成長に結びつけていく施策、これまでの反省も踏まえて、今後の戦略についてお伺いをいたします。

山本国務大臣 先ほども大野委員との質疑の中で言及をさせていただきましたけれども、これまでの科学技術・イノベーション政策、これは、第四期科学技術基本計画に基づいて、科学技術とイノベーションを一体的に推進する、こういう基本方針のもとで、さっきもちょっと申し上げましたが、科学技術重要施策アクションプラン等で科学技術関係予算の最重点化に向けて各省施策を誘導する、こういう取り組みに力を注いでまいりました。

 他方、今委員もおっしゃったように、科学技術・イノベーション政策については、例えば、経済社会の変化が求める政策ニーズに対する的確かつ機動的な対応が十分にできているのか、やはり出口を見据えるということが少なかったのではないか、あるいは政策の全体像、目指すべき方向性は明確なのかという問題、それから、基礎研究から製品化、市場展開、今おっしゃった死の谷ですが、この各フェーズの一体的推進、連携が十分なのか、こういう課題が指摘されているというふうに考えております。

 これらの指摘を踏まえて、さらに、今おっしゃったように、大変グローバルな競争も激化をしておりますし、日本の厳しさを増す経済環境、深刻化する社会的課題などの状況変化に対応すべく、今まさに科学技術イノベーション総合戦略を策定中でございます。

 この総合戦略において、科学技術・イノベーション政策の全体像を含む長期のビジョン、その実現のための短期の行動プログラム、総合科学技術会議が、府省間の縦割り排除、産学官の連携強化、基礎研究から出口までの迅速化のためのつなぎなどに強力に取り組むためにしっかり司令塔強化を図る、こういうことを、先生の問題意識も踏まえて、しっかりこの総合ビジョンの中に盛り込んでまいりたいというふうに思います。

武村委員 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

渡海委員長 次に、大島敦君。

大島(敦)委員 本日は、準天頂システムについて、政府の所信を伺いたいと考えております。

 私、二〇〇九年から二〇一〇年まで内閣府で宇宙政策を担当しておりまして、そのときに、準天頂衛星の整備に携わらせていただきました。二〇一〇年の九月十一日に一番最初の「みちびき」が順調に打ち上げられて、さまざまな知見が今政府の中で蓄えられていると思います。

 特に宇宙政策は、各党ともに宇宙政策を推進する議員が非常に多いです。ですから、各党ともに多いということは、政権交代が起こったとしても、その推進力については大きな変化がないと思っていまして、「みちびき」については、前の政権の成果物だと思いますし、それを打ち上げ、その知見をもとにしながら次にと考えたわけでございます。

 特に、おととしですか、三月十一日、東日本大震災が発災をして、四月か五月だったと思うんですけれども、宇宙部局の方が、当時、私は党に戻っていまして、私のところにいらっしゃってくれました。そのときに、大島さん、携帯電話の電波が宇宙に届くんですよということを伝えられたんです。もちろん、準天頂衛星に大きなアンテナをつけないと、室内からは難しいんですけれども、野外であれば携帯電話の微弱な電波が宇宙まで届くという話を聞いたときに、当時、予算獲得はフィージブルであると直観したんです。

 これまでの準天頂衛星の使い方は、国土地理院的な使い方です。ですから、アメリカのGPS衛星が十メーターの誤差。日本の「みちびき」については、精度を上げれば、空間上の大体三センチから五センチのここが特定できますので、地図をつくったり、あるいは農作業、広い耕地を無人のトラクターが耕作できるようにするとか、そういう運用を目的として「みちびき」という衛星を打ち上げたんです。

 アンテナを広くすることによって携帯電話の電波が届く。特に、三月十一日以降であれば予算獲得がフィージブル、現実可能であると直観したのは、二つのことをお願いさせていただきました。

 一つは、せっかく届くんだったら、安否確認をしてくれということ。当時、皆さんそうだと思うんですけれども、発災、揺れながら携帯で電話しても、届かないわけですよ、通じない。家族に対しても、会社にも役所にも通じないということがありました。私自身、埼玉県なんですけれども、私の妹が東京に通勤をしていて、無事だとはわかっているんですけれども、本当に無事だとわかったのが翌日です。恐らく、そういう安否システムというのは、私たち、日本の国土に住む皆さんが一番必要だと感じたことが一つです。

 もう一つは、先ほど述べたとおり、準天頂の精度というのが三センチから五センチであれば、沖合の五キロ、十キロ、二十キロ、三十キロに潮位計のブイを置いて、その上がり下がりを正確に捕捉できるとすれば、津波の速度、そして潮位の上がり方によって、何時何分後、どこそこ湾には何メーターの津波が来るということを宇宙から携帯電話に直接津波情報を打てる。

 この二点において、今後の日本には必要なシステムだと思ったわけなんです。ですから、この二つについて、アイデアを出してくれないかということを宇宙部局の皆さんにお願いいたしたわけなんです。

 一つには安否確認システムですよね。

 もう一つは、おととしの三月十一日の東日本大震災は、千百年前の貞観の地震の再来だと言われています。貞観の三陸沖があって、慶長年間の三陸沖がありまして、そして、明治、昭和の三陸沖の前後十年、四回中四回起きているのが首都直下型なんです。そして、四回中三回、東海、東南海、南海の地震が起きています。ですから、我が国は今災害のリスクは高まっていると考えておりまして、そうすると、この衛星をできるだけ早く整備することが、何回もこれまで、例えば、チリの津波があって津波情報を流していても来なかった、そんなに高くなかったということで、今回も恐らく逃げおくれた方も多いと思うんです。ダイレクトに、携帯電話に宇宙から直接、十五分後、二十分後、何メーターの津波ということが届いたら、野外であっても皆さんに声をかけながら多くの命が救えると思っています。

 ですから、一点伺いたいのは、準天頂システムにおける安否確認の機能はどのような仕組みであって、今後どういう体制で開発されるのかについて、政府参考人の方に伺いたいと思います。

西本政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、安否確認機能は準天頂衛星システムの大変重要な機能の一つというふうに位置づけられております。

 準天頂の安否確認機能でございますけれども、これは、地上の通信回線がダウンしましても、災害時に携帯電話の方から準天頂衛星にメッセージを送信するということで安否が確認できるという仕組みでございます。

 詳細は今後開発を進めていく中で具体化してまいりますけれども、災害時には、短時間に、この間に多数の人が送信をいたします。こういった中で、どのような周波数帯域でどのようなサービスを提供すればいいのかということにつきまして、技術面も含めまして、それから国内外の関係者と調整をしながら、しっかり検討してまいりたいというふうに思っております。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 恐らく電波を所管しているのは総務省だと思うので、電波の関係もよく政府の中で調整をとっていただいて、瞬時に多分何百万件の安否確認が日本国内で行われると思うんです。でも、安否確認ができるということは物すごく大切だということ、もう一つは、できるかどうかわかりませんけれども、安否確認ができればその方がどこにいらっしゃるかという位置情報もわかるわけですので、そのことについてもフォローするようにしていただけると助かります。そこについては、今後ぜひ対応をとってください。

 もう一つは、準天頂衛星の予算というのは極めて高額な予算なわけです。多分、四基打ち上げても、全部整備が終わるまでには一千六百億円ぐらいかかる予算ですよね。ですから、非常に高額の予算なので、国土地理院的な使い方だと一千六百億円を突破するのは難しいなと思ったわけです。

 ですから、防災上の観点だと、この一千六百億円というのは、当時の二〇一〇年でしたら、今でもそうですけれども、政府の中での優先順位が上がると考えまして、それで閣議決定までさせていただいたわけなんです。

 準天頂衛星は日本版のGPS衛星ですから、常に日本の上空に何基か飛んでいて、幾つかの電波を受けながら、今ここだということを捕捉するのが準天頂衛星です。

 もう一つは、きょうは国土交通省の方は呼んでおりません、今後ここに来ていただいて説明していただこうかなと思っているんですけれども、津波のシステムです。

 東海、東南海、南海ですと、意外とプレートが近いところにありますから、瞬時に津波が来てしまう。それでも、十分でも二十分でも、瞬時に今の地震の速報と同じように携帯電話に入れば、多くの方が逃げることが可能なんです。そのためには、一つには衛星の精度を上げていただくことと、ブイを置いたり予測システムをつくるのは国土交通省の気象庁だと聞いておりまして、その点の、その前の段階での整備の状況について、政府参考人からの答弁をお願いします。

西本政府参考人 お答え申し上げます。

 準天頂衛星システムを用いますと、先生御指摘のとおり、数センチオーダーの非常に高い精度の測位ができるようになります。津波警報に今活用されているさまざまな計器におきましても、準天頂衛星を用いれば、これは東西南北だけではなくて高さ方向も出ますので、波の高さなどを高精度で観測することが可能になるというふうに考えております。

 準天頂衛星は、津波対策を初めといたしまして、さまざまな防災用途への活用の可能性があるというふうに思います。関係各省としっかり連携をいたしまして、準天頂衛星のアプリケーション開発にしっかり取り組んでまいりたいというふうに思います。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 山本大臣にお願いしたいのは、当時、与党にいましたので、役所の皆さんには、反対した政治家の名前はしっかりテークノートしてくれというお願いをしました。要は、反対して、もしもこれの予算取りとかできない、準天頂衛星が飛ばない、災害が起きた、何万人単位の方がもしも不幸なことに遭ったら、それはその人たちの責任だということを明らかにしなくちゃいけなかったものですから、役所にはお願いしまして、でも、それはちゃんと今でも順調に推移しているものですから、テークノートする必要はなかったのかなと思っています。

 ですから、政府内でも、特に国土交通省が所管なものですから、その点の連携を、内閣府が持っていらっしゃる企画と調整という機能を使いながら、ぜひお願いしたいと思います。

 もう一つ、先ほど大臣の御発言でもありました、なぜ準天頂衛星に私がこだわっているかというと、一つぐらいはインフラを持ちたいなと思ったんです。

 私たちが使っているGPSは、米国の空軍のシステムです。もう一つ、インターネットのプロトコル、TCP/IPは、一九六〇年代の、要は、米国のソ連からの核攻撃に備える分散化ということに対応するためのシステムなわけです。

 今私たちが使っている産業インフラは、GPSもインターネットのプロトコルもアメリカの世界標準を使っているわけです。今後我が国が日本版の準天頂衛星を持つということは、我が国独自のシステムを持つことになると思います。

 政府参考人に手短に答えていただきたいんですけれども、準天頂衛星の守備範囲、日本というのは非常に小さな国ですから、日本の小さな国の天空に何基か衛星を整備するということは、そのサービスの提供を受ける範囲は非常に広いと思うんですけれども、その点について手短にお答えください。

西本政府参考人 お答え申し上げます。

 今構想しておりますのは、準天頂衛星は東経百三十五度近辺に8の字状に北に行ったり南に行ったりする衛星でございます。したがいまして、そのカバレッジは、オセアニアの方も含めまして、それから東南アジア、東アジア、全部カバーすることになります。

大島(敦)委員 そうしますと、四基の体制が整備されると、我が国だけではなくて、中国ぐらいから下はオーストラリアまで、アジアが全て入って、恐らくインドの半分ぐらいから、多分グアム島の先ぐらいまではカバーできますから、そこの地域についての産業インフラとして、私たちの国のさまざま国益を考えるとちょっと露骨なので、アジアの国の防災システムという観点で貢献をしよう、この電波をただで利用していただこうということで、アジアの皆さんの日本に対する信頼感が極めて高くなると思います。

 もう一つは、中国でも同じような衛星を考えていらっしゃっていて、もう既に上がっていて、使ってくれなんという話をしていると伺っているので、その点についても手短に答弁いただけますか。

西本政府参考人 先生御指摘のとおり、今、測位衛星は、アメリカのGPSのみならず、ヨーロッパもやっておりますし、ロシアもやっております。それから中国も、北斗というシステムをこれまで十六基上げて、今積極的に展開されておるというふうに把握しております。

大島(敦)委員 大臣、そうすると、中国も売り込んでいるはずなんです。中国は、まずは依存させるというのがありますから、皆さんに使っていただいて中国に対して感謝していただこうという思いもあるかと思うんです。でも、我が国のシステムを使っていただいた方が安定をし、かつ正確であれば、それを利用しながら、アジア域内における、特に我が国に友好的な態度を示していただいている国から使っていただくということも必要だ、そういう戦略も必要だと思います。

 その中で、一つだけこだわっているところがありまして、一昨年の九月三十日の閣議決定で、四基体制。まだ四基ですとアメリカのGPSがないと機能しないです。まだ四基だと半分ぐらい。七基まで打ち上げると、アメリカのGPSに依存しないで、我が国単独でこのインフラをアジア全域の皆さんに使っていただくことができる。

 私が聞いたところですと、アメリカは有事の際にはGPS衛星は自衛隊しか使えないということを伺っています。例えば今、日本の領海の警備に当たっていらっしゃる海上保安庁、あるいは警察、消防署、私たちの車についているGPSも、アメリカが有事の際には使えなくなります。

 ですから、それを考えると、四基体制ですとどうしてもまだ、もう一歩踏み込んで、多分、予算的にはあと五百億円ぐらいかな、七基までふやすとすれば。ですから、閣議決定の中でこだわりまして、将来的には、持続測位が可能となる七基体制を目指すこととするということで、一応七基ということをうたっています。

 ですから、今四基までは予算はついているんですけれども、七基を確保すると我が国が独自でこのシステムを運用できるようになるものですから、ぜひその点について大臣の決意をいただければと思います。

山本国務大臣 大島委員が宇宙政策担当副大臣のときに準天頂衛星導入で大変汗をかかれたということは私もよく存じ上げておりますし、その後も、宇宙政策について、与野党を超えていろいろといい御提言をしていただいているというのも内閣のスタッフの方から伺っています。

 まさにおっしゃったとおりだと思います。まず、四基体制については二〇一〇年代後半というふうになっているんですけれども、七基についてはなかなか現時点で道筋を示せないというところはあるんですけれども、担当大臣としては、先生の御提言を受けて、何らかの目標をもう少し示せるように努力をさせていただきたいと思います。

 それから、先生がおっしゃった防災の観点、これは大変説得力があるなと思って今伺っていたんですが、それと同時に、国際貢献、ASEANの国々に対する、ASEAN防災ネットワーク等々を通じた国際貢献もありますが、先生がおっしゃった日本独自のシステムという点でいうと、私は、実はビジネスという言葉を使うのはよくないかもしれませんが、宇宙産業競争力強化にも大きく資すると思っていまして、千六百億は国土地理院の話だけだと危ないというふうにおっしゃったんですけれども、この準天頂が持つ経済裨益効果、それが日本の経済活性化につながる可能性を考えれば、私は十分やる価値があると思いますし、七基体制の整備に向けて、担当大臣としてしっかり発信もしていきたいと思いますし、なるべく道筋をつけられるように、先生の御提言を受けて、努力をしてまいりたいと思います。

大島(敦)委員 山本大臣、積極的な御答弁、まことにありがとうございます。

 これは国益の問題ですので、与党も野党もないと思っていまして、日本全体として、御関心ある先生も多いので進めていきたい、御協力したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 最後に、きょうは沖縄部局の方をお呼びしておりまして、沖縄大学院大学。

 この間、地下鉄に乗っていましたら、地下鉄の動画の広告で、沖縄大学院大学の生徒募集というのがOISTで出ていまして、ここまで来たのかなと思っています。

 沖縄大学院大学は、紆余曲折、いろいろとあったんですけれども、平成二十一年の七月十日に、沖縄科学技術大学院大学学園法ということで、これは全会派一致で通した法律です。

 もう一つは、私も担当だったときに、やはり研究者はいい研究者を招聘しないと、その周りに集う先生方、学生もなかなかいらっしゃらないので、独自に世界じゅうでヘッドハンティングをさせていただいて、学長の給与というのも世界標準に近い形で決めさせていただいております。ですから、非常にいい方が、今ノーベル賞級の方が学長に来ていただいて、ですから、そういう先生がいると周りもそういう方が集まって、生徒さんも集まる、非常にいい循環になっています。

 もう一つは、この間、これは、有馬先生には大分お話を伺っていまして、有馬先生にはいろいろと御指導をいただきながら、特に科学技術の分野について物すごく御見識があって、積極的に多くの方を集められているので、理事の皆さんを見ても、今、十五人中四人がノーベル賞を受賞された方。ほかの方も、全米の科学財団の長官だった方とか、あるいは学術会議の会長さんだった方とか、そうそうたるメンバーで学際的にこの学園の運営に当たっていらっしゃいます。

 ですから、今後、沖縄大学院大学、いい形で、各党の協力を得ながら、最初はなかなか大変だったものですから、各党の御協力を全体的に得ながら、日本の一つのモデルとして進めていけたらなと思っていますので、その点につきましての大臣の御答弁をお願いいたします。

山本国務大臣 大島委員がたしか沖縄担当の副大臣をなさっていたときに、今のドーファン学長を決める流れができたというふうに伺っていますが、沖振法のときも随分党の方で御尽力をしていただいたというのも沖縄担当大臣として伺っております。大変力強く思っております。

 OISTは、非常に可能性もあると思いますし、長くは申し上げませんけれども、科学技術・イノベーション拠点になる。ここから産業クラスターをつくっていこうという目標を一応私たちは持っているわけですが、そういう方向に向けてしっかりと活動していかなきゃいけないと思いますし、全面的にバックアップをしていきたい、こう考えております。

大島(敦)委員 ありがとうございました。

 ここで私の質問は終わります。ありがとうございました。

渡海委員長 次に、津村啓介君。

津村委員 民主党・無所属クラブの津村啓介でございます。

 本日は二十分の時間をいただいておりますが、山本大臣、就任から大変、若い科学者の皆さんと車座のトークをされたりとか、毎週行われております大臣有識者会合、これは兼務が多くて御出席がなかなか大変だと思うんですけれども、非常に熱心に出席をされているでありますとか、あるいは、総合科学技術会議の本会議、これはなかなか総理のお時間をとっていただくのが難しいんですけれども、二度三度と開催をされているということで、科学技術コミュニティーの皆さんからの評価も大変高いと伺っております。すばらしいことだと思います。

 そういう中で、科学技術の分野は党派を超えて、みんなで国を挙げて支えていく分野でございますので、私自身も、民主党政権の時期に一時期政務官を務めた経験も含めて、ぜひ問題意識を共有していきたい、そういう趣旨で二十分使わせていただこうと思います。

 最初に伺いますが、山本大臣は今どういった分野を所管されていますか。

山本国務大臣 私は、内閣府特命担当大臣、IT政策担当大臣及び海洋政策・領土担当大臣として、沖縄政策、北方対策、科学技術・イノベーション、宇宙政策、日本学術会議、IT政策、知的財産戦略、海洋政策、領土、原子力委員会、遺棄化学兵器処理などを担当しております。

津村委員 その所管部署は幾つの建物に分散していますか。

山本国務大臣 私が所管している部局は、日本学術会議を除くと、合同庁舎の四号館を中心に六つの建物に分散しているというふうに承知しております。

津村委員 近年、二〇〇一年の省庁再編以降、縦割りの是正ということが随分言われて、内閣府を中心に横串を刺していこう、各省横断的なテーマについては内閣官房と内閣府がしっかりとこれを見ていこうという流れが、自民党政権期、民主党政権期を通じて大きな流れとなっていまして、いわば政治主導の、あるいは官邸主導の一つの重要な器として内閣府、内閣官房が大変重用されている。しかしながら、物理的にはなかなか、人の配置であるとか予算、そして定員、それから、こういった建物のロジがそれに追いついていない、そのために非常に兼務が複雑になって、ロジ的に御苦労が多いということだと思います。

 それを解決していこうという一つの試みが、今建設中の内閣府八号館、合同庁舎八号館だと思いますが、これをどういうふうにきちんと活用していくのかということが非常に重要で、それでも全部はおさまり切らないんですけれども、きちんと兼務の関係と、例えば科学技術と宇宙とか、そういう近い分野についてはフロア的にも配慮をして、せっかく大きな器を入れるのに、科学技術関係の山本大臣の部署が引き続き八号館と四号館と、また民間施設というようなことにならないように、ここはよく政治家の皆さんがグリップをして検討するべきだと思うんですが、今検討状況を大臣はどう把握されていますか。

山本国務大臣 津村委員は、科学技術政策担当の政務官だったころから本当にいろいろと一生懸命お仕事されて、やめられた後も与党でいろいろ政府の御相談に乗っているというふうにずっと伺っていたんですが、津村委員が与党時代に、この八号館の合同庁舎の建設の話が持ち上がったときに、できれば、科学技術とITとか、あと宇宙とか、そういうところはやはりきちっと近くに置いた方がいいというふうに御提言をいただいたということで大変感謝をしていまして、今のところ、レイアウトは完全に決まっていないんですけれども、流れとしては、私の担当する部局のうちかなりの部分は、まだはっきりわかりませんけれども、八号館及び隣接する内閣府の本府、こっちの方に集約される方向で検討が進んでいる。津村委員のあのときの発言が実はかなりきいているんじゃないかと思いますが、私の方も、まだ完全に固まっていないんですけれども、内閣府の方には指示を出していますし、しかるべきところにしっかりお願いをして、できるだけ近くに集まっていただくように努力をしたいと思います。

津村委員 ありがとうございます。

 大臣、これは、私たち民主党と自民党の対立的な問題では決してなくて、もちろん対立的な問題ということではないんですが、むしろ政治家と官僚の皆さんとの関係に大きくかかわることでありまして、もちろん志の高い官僚の方は多いわけですから、そこは協力的、補完的にやっていけばいいんですけれども、やはり中には、縦割り官庁がそのまま内閣府にも縦割りのまま植民地として移しかえられているだけで、そうやって近接の部署と近接のフロアになることを嫌がる方たち、それによって余計な調整が発生してしまうということを恐れる方たちというのが潜在的にはいらっしゃると思うんですよね。

 そういう意味で、私は大変心配しているのは、この八号館のレイアウトの問題をロジとして事務方に丸投げをしてしまうと、いろいろな力学が働いて、複雑怪奇なレイアウトになるということがもう容易に想像できますし、それを民主党政権下にあっても私は非常に警戒したので、ある時期から政治主導が大きく後退しましたので、それを私は、ぜひ、同じ政治家として、自民党政権をきちんと回していただくためにも、山本大臣に注意喚起したいという趣旨でこの質問をさせていただいております。

 内閣府の担当大臣は多うございますから、山本大臣だけの御意向では動かせないのはわかるんですけれども、ここは大臣御自身の仕事のしやすさに大きくかかわると思いますので、副大臣や政務官の皆さんの御意見もぜひ聞かれながら、緩めず進めていただいたらいいかなと思っております。

山本国務大臣 ありがとうございます。

 今の委員のちょっとアドバイスもいただいて、早速、官房長官に会ってこようかなというふうに思っております。

 いずれにせよ、内閣府の方々、少なくとも私がつき合っている限り、かなり一生懸命やっていただいているんですが、先ほども大野委員との質疑で出ましたけれども、かなり戦略本部があちこちにあるので、とにかく来週からは司令塔連携調整会議もやりますから、今の委員のアドバイスもしっかり踏まえて、しっかり一体感を持てるように、余り面倒くさいから調整しないみたいな雰囲気が出ないように、そういう協力する文化を大臣としてつくってまいりたいと思います。

津村委員 ありがとうございます。すばらしい御答弁と思います。

 続きまして、これは立法府の話をさせていただきますが、この衆議院の科学技術・イノベーション委員会というのは、たしか二年前にできた比較的新しい委員会でございます。一期生の方も大勢いらっしゃいますので、ここで皆さんと共有しておきたいんですけれども、この委員会ができた趣旨といいますか経緯について、どう御理解されていますでしょうか。

山本国務大臣 科学技術・イノベーション推進特別委員会については、百七十七回の通常国会ですか、平成二十三年の一月に設置されたというふうに承知をしております。

 設置に当たっては、従前、科学技術政策に関する国会の議論は内閣委員会と文部科学委員会を中心に行われてきた、内閣委員会は御存じのとおり非常に分野が多いということと、文科委員会はやはり教育の分野がかなり多いということで、科学技術政策、イノベーション政策に焦点を当てて議論を行うための委員会として、公明党の遠藤乙彦議員の提案を受けて、当時の与野党の非常に前向きな協議の結果、特別委員会として設置された、こういう経緯があったというふうに伺っております。

津村委員 そのとおりでございます。

 本来、当時の与党でありました私たち民主党からすれば、委員会をたくさんつくるというのは、それだけ大臣の時間をとられてしまうので、面倒くさいことなわけですよね。親委員会であります内閣委員会の方は、こういう一般質疑、所信に対する一般質疑は大臣の数掛ける一時間というのが慣行でございますので、つまり、山本大臣がお答えになるべき時間は一時間でいいわけでした。ところが、この委員会をつくったことによって、きょうは三時間ですけれども、三倍のお仕事をしていただくことになるわけですし、当時、それを恐れた与党側は、必ずしも大臣の出席をマストとはしないという申し合わせまでして、その委員会をつくったということでございます。

 私は、今野党になったからというわけではないんですが、やはりこれは科学技術を重視する大きな器ですので、これから足を引っ張るような質問はいたしませんので、ぜひ、ここには時間をとっていただくということをお願いしたい、そういう趣旨で御質問いたしました。

山本国務大臣 昨日か一昨日か、科学技術・イノベーション推進特別委員会の質問者の方々の名前を見て、委員の方々の名前を見て、やはり政策通の方がそろっているので、正直言って、これは大変だなと思ったんですが、答弁の準備は大変なんですけれども、ある意味、こういう委員会があるというのは、やはり科学技術担当大臣としては大変幸せですし、政治家冥利に尽きると思っておりますので、ちょっと頭脳が小さいんですけれども、一生懸命きょうも準備してまいりましたし、この委員会では一つ一つ真摯に答弁をさせていただこうと思いますし、万難を排して必ず出席するようにしたいと思います。

渡海委員長 委員長としても、津村委員の今の意見を体して運営をさせていただきます。

津村委員 そうした中で、党派を超えて、継続性ということが科学技術は重要でございます。毎年のように単年度で物事の成果が出ない分野でございますので、ここはそういう中長期の視点というものを共有していきたいわけですが、二年前にできましたこの科学技術基本計画、先ほども議論されていましたけれども、これを踏襲されるお考えですか、それとも政権交代に伴って廃棄をされますか。

山本国務大臣 政権がかわっても、前政権のやったいいことは別に引き継げばいいと思っていまして、基本的に第四期科学技術基本計画というのは、これは二〇一五年度までの中期計画として策定をされておりまして、これに基づいて、現在、課題対応型の重点化が図られた科学技術・イノベーション政策が推進されているということでございます。

 先ほどから何度か申し上げましたけれども、今検討が進められている、安倍内閣の科学技術・イノベーションの哲学ともいうべき総合戦略、これはまだ仮称ですけれども、この第四期基本計画との整合性を保ちつつ、厳しさを増す経済環境、より深刻化する社会的課題などの状況変化を踏まえて、全体の政策の長期ビジョン、それから短期の行動プログラムを盛り込んで策定をしているということで、いいものはきっちり踏まえて作業を進めさせていただいているということでございます。

津村委員 その次の二つほどの質問をちょっと飛ばしながら、私なりに総括をしたいと思います。

 この基本計画、皆さんにもあえてお配りさせていただいたんですが、これの非常に新しいところは、PDCAサイクルという言葉を使って、今大変予算制約が厳しい中で、しかし、科学技術政策についてはしっかりと予算を確保していこうと。そこに、これは財務省と大変なやりとりがあって、最後少し語尾が丸まっておりますけれども、四十八ページのところの下の方に「政府研究開発投資を対GDP比の一%にすることを目指すこととする。」と。本当は目指すじゃなくて一%にすると書きたかったんですけれども、財務省との調整でこうなったわけです。

 いずれにしても、こういう大規模な予算をこの財政難の折に国民の皆さんに御理解いただくためには、きちんとある種の説明といいますか、そういう国民とのコミュニケーションということをやっていかなきゃいけない。その一つの政策的な角度でいえば、PDCAサイクルだろうということが一方の大事な考え方であります。

 しかし、片や、そうやって、ある種、国民の皆さんの理解、原発問題等も含めた国民の皆さんとの対話ということを進めることが、予算面で、政策面で出口オリエンテッドになってしまっては、日本の財産である基礎研究といいますか、非常に裾野が広いことによってさまざまな相乗効果が生まれているというもの、この両方を追わなきゃいけないというのが科学技術政策だと思いますので、基礎研究をされている方々のいろいろな意味での仕事のしやすさということを追求したわけですね。それが、提出書類のフォーマットの統一であるとか、あるいは競争的資金の基金化でございます。

 これもぜひ続けていただきたいところなんですが、最近、恐らく財務省の強い圧力があると思いますけれども、それがやや後退しているのではないかということを懸念しております。大臣は、競争的資金の基金化、科研費の基金化についてはどういう御評価でございますか。

山本国務大臣 科研費は文部省の所管なので、なかなかどこまでコメントしていいかというのはありますが、私は科学技術担当大臣ですので、その立場からできるところまでちょっとお話をさせていただきたいと思います。

 まず、総合科学技術会議は、津村委員御存じのとおり、科学研究費補助金の基金化に先駆けて、最先端研究開発支援プログラム、FIRSTにおいて基金化を行っています。

 さっき文科大臣政務官からも説明がありましたけれども、科研費は二十三年度予算で一部種目を基金化する改革がなされた。もう釈迦に説法ですけれども、五種目だったでしょうか、たしか新規採択されている課題の九割はこの基金化で、しかし、多分、規模が余り大きくないので、配分額は四割ぐらいだったと思いますけれども、そういう拡充がなされた。平成二十四年度予算でも拡充がなされた。

 こういう一部基金化は、先般も京都で若い研究者の方々と意見交換をしましたが、やはり、研究計画の変更が必要となる場面での研究費の効率的な使用が可能となったり、あるいは繰り越しの事務コストが低減されたりする等のメリットがありますので、これは研究費の効率的な使用や研究の成果向上等に寄与するものと考えておりますし、多くの研究者からも高く評価する意見を伺っております。

 さっき武村委員の方からたしか調整金のお話がありましたけれども、これはなかなか私の立場で言いにくいところもあるんですが、一つは、基金化ということになると、初年度に後年度分の研究費も含めて予算措置をするので、これは単年度の研究費よりも大きな財政措置が伴うということでなかなか、財政の壁にぶつかるということで、限られた資金を効果的かつ効率的に使用するためには、基金によらない方法で複数年度を見通した安定的な研究資金を手当てすることも有効だということで、恐らくこの調整金の制度が出てきたんだと思います。

 いずれにしても、私としては、これは文部科学省の所管ではありますが、科学技術担当大臣として、津村委員の問題意識も持ちながら、しっかりこの推移は私なりにウオッチをしていきたい、こう考えております。

津村委員 これは、科研費は確かに文科省かもしれませんが、これに類する競争的資金は各省にあるわけですから、そこに横串を刺されるのがまさに大臣のお仕事なので、文科省さんがやっていることについて言うこともさることながら、他省にちゃんとやれと言うことと、それから、その調整金というのは、基金化のある種ちょっと変則なといいますか、ある意味では中途半端なものになってしまっていまして、これはぜひ車座で聞いていただければいいと思うんですけれども、評判はよくないです。

 ですから、そこは、これからも、ちょっと時間が押していますのでこの話は問題提起にとどめますが、大臣の大事な取り組みになると思いますので、ぜひここは頑張っていただきたいと思います。

 最後に、お忙しい中、お二人をお呼びさせていただいております。日本学術会議の大西会長と科学技術振興機構の中村理事長でございます。

 まさにこの科学技術政策、特に国民とのコミュニケーションですね。先ほど申し上げましたように、私は決して出口オリエンテッドなことを言いたいのではなくて、基礎研究が非常に重要で、そこをウオッチしながらも、そこにお金をかけるからには、こっちの出口の方も、国民とのインターフェースも考えなければ、長い意味での支持は得られないということを申し上げたいわけです。

 ここ数年、JSTと日本学術会議、大変強いリーダーシップを発揮していただいて、新しい組織をつくられたり、若い皆さんが頑張っていらっしゃるということを仄聞しておりますので、最近の取り組みについてそれぞれ簡潔に御紹介いただければと思います。

中村参考人 科学コミュニケーションセンターというのを私どもは運営しておりまして、広く国民と研究者等が集まりコミュニケーションを行うために、全国イベントといたしましてサイエンスアゴラを毎年開催してございます。ここで研究者にアウトリーチ活動をやってもらう、そういう機会を与えております。加えて、地域におきましても、研究者等が参加して行われる科学フェスティバルあるいはサイエンスカフェなど、さまざまなアウトリーチ活動に対する支援もきめ細かく行ってございます。

 さらに、科学技術コミュニケーション活動の高度化を図るということが重要だと考えて、そのための調査研究を実施しております。その一環として、研究者のコミュニケーション能力の向上を目指した研修プログラムを開発して提供しております。また、日本科学未来館においては、科学について一般にわかりやすく伝える専門人材であります科学コミュニケーターを養成し、種々の機関にこれら人材を輩出しているところでございます。

 また、内閣府が推進している最先端研究開発支援プログラム、FIRSTの一般向けシンポジウムを受託して開催し、我が国のトップレベル三十名の研究者が直接高校生などに語りかける機会を提供するなど、若い人たちの科学技術に関する関心を喚起しているところでございます。

 最後になりますが、科学技術振興機構としては、東日本大震災を契機に科学技術コミュニケーションの重要性がますます高まっているというふうに認識しておりまして、こうした活動を今後とも進めてまいりたいと思っております。皆様の御理解、御支援をお願いいたします。

大西参考人 委員から「日本学術会議の機能強化について」という報告を配っていただいていると思います。それに関連して答弁をさせていただきます。

 この報告は、二〇〇五年に施行された日本学術会議法の改正による諸改革からちょうど六年目に、国民の期待に一層応えるための日本学術会議のあり方についてみずから機能を点検して、改善すべき論点を整理したという報告でございます。

 その背景は、いわゆる社会における科学という国際的な潮流がありまして、それを踏まえて、科学あるいは科学者の社会的役割の大きさを重視して、その社会的責任を自覚するという観点が重要だ、そういうことに立脚してまとめたものであります。

 こうした点を踏まえて、二〇一二年の四月でありますが、学際的な観点から東日本大震災の復興に関する提言をまとめました。また、科学者の責任については、ことし一月になりますが、科学者の行動規範について、これを改定しまして、政府を初め関係者に御説明するとともに、広く国民に理解いただくようなシンポジウム、サイエンスカフェ、あるいはホームページ、動画配信を行ってきているところです。

渡海委員長 会長、時間が過ぎておりますので。

大西参考人 はい。

 それでは、最後に、若手アカデミーの活動について一言だけ申し上げます。

 次世代の科学者が、専門分野の探求と同時に、広い視野で社会における科学のあり方について見識を深めて活動していくことが大事だということで、若手アカデミーの活動を私どもとして非常に重視して行っています。

 以上、かいつまんで私どもの活動について報告させていただきました。ありがとうございます。

津村委員 ごく短く一問だけ最後に聞かせてください。

 リニアコライダーの誘致の機運が今大変盛り上がっております。これは文科省さんが大変熱心にされているんですが、学術界においては、これで、科学技術予算が、文科省主導でやることによって、そこにとられちゃうんじゃないか、その分しわ寄せが来るんじゃないかというものを懸念される方もあるんですね、国内では。

 これは、ぜひ、全体をごらんになっているお立場から、そういうしわ寄せとかではなくて、前向きにしっかり取り組んでいくというお言葉が欲しいです。

渡海委員長 山本大臣、端的にお答えいただけますか。

山本国務大臣 リニアコライダーについては、全体を見ながら対応を考えてまいりたい、こう思います。

津村委員 済みません。ありがとうございました。

渡海委員長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 民主党の福田でございます。

 先日は、内閣委員会においでいただいたのに、質問できずに申しわけありませんでした。

 きょうは、山本大臣の所信に対して、基本的な考え方について、特に哲学、考え方をお伺いしたいと思いますので、簡潔にお願いをいたします。

 まず、成長戦略についてでございますけれども、安倍内閣の成長戦略の一丁目一番地は規制緩和だ、こう言われておりますけれども、大臣はどう思われておりますか。

山本国務大臣 安倍内閣の成長戦略については、恐らく甘利大臣とか茂木経産大臣が答弁されるべきなんだと思いますが、私の立場からいうと、もちろん規制改革も大事だと思いますが、科学技術・イノベーション、これもやはり日本経済再生の原動力であり、成長による富の創出を実現するための重要な柱だと思います。

 科学技術・イノベーションを市場開拓、経済成長の原動力として、我が国が直面する制約、課題を乗り越える、この切り札としてしっかりと活用すると意識を持つことが極めて大事だと思っていまして、今後とも、科学技術・イノベーション政策、成長戦略の大きな柱の一つだ、こういう認識を持って、担当大臣としてしっかり進めてまいりたいと思います。

福田(昭)委員 安心をいたしました。

 成長戦略の柱は、私はもう科学技術のイノベーションだというふうに思っておりますので、規制緩和はいいところもあれば悪いところもありますから、いいところを生かしていくのはいいですけれども、やはり本質的なものは科学技術のイノベーションだと思いますので、そういった考えで、ぜひ、ほかの大臣に負けないで頑張っていただきたいなというふうに思っております。

 次に、新しい産業はどうやって創出していくのかということなんですが、大臣は、科学技術、宇宙、IT、知的財産、原子力政策を担当する大臣として、新しい産業をどうやって創出していったらいいか、お考えをお聞かせいただければと思います。

山本国務大臣 科学技術・イノベーションを市場開拓、経済成長の原動力とするというのは先ほど申し上げたとおりですが、これは、具体的に言うと、イノベーションを継続的に創出するという仕組みをつくることが大事だというふうに考えていまして、産学官がそれぞれの役割を踏まえて補完性を最大限に活用するべく連携体制を組む。

 一つは、やはり産学官の連携が極めて新しい産業の創出には必要だ、いろいろな分野の仕事、特に科学技術・イノベーションにかかわる仕事を担当して、改めてそういう認識を深めております。

 さらに言うと、新産業を創出するためには、ベンチャー企業の活性化もやはり必要だというふうに思いますし、研究開発型ベンチャー企業等の発掘、育成、それから技術の実用化、実用化のための環境整備、こういう施策をやはり一つのサイクルとしてつくっていくことが大事だというふうに思っています。

 そういう意味でも、総合科学技術会議の司令塔機能を強化して、新産業創出のためにも、府省の枠を超えて、一丸となって科学技術・イノベーション政策を推進していく、このために努力をしたいというふうに考えております。

福田(昭)委員 おっしゃるとおりだと思いますが、よくシーズとニーズのマッチングが大事だと言われておりますが、大臣は、民主党政権時代にスタートした総合特区制度というのを御存じですか。

山本国務大臣 存じ上げております。

福田(昭)委員 実は、民主党政権、消費税の増税等、党の分裂で、国民から大変厳しい審判をいただきましたけれども、なかなかいいことをたくさんやったんです。そのうちの一つが私は総合特区制度だと思っています。

 この総合特区制度は、まさに新しい産業を生み出すために、地方自治体と大学、研究機関、民間企業が一体となって実は新しい政策を生み出す、そのことを政府は規制改革や規制制度あるいは制度の改革、さらには財政、税制、金融、あらゆる応援をしていくというのが総合特区制度でございまして、これによって新しい産業がどんどん生まれてくるということで、私も内閣府で直接、口頭辞令だけで担当していたんですけれども、紙の辞令が出ないので、こんなこと、国であるのかなと思いながら頑張ってきたんです。

 担当の皆さんには、あなたたちが日本を救うぞ、デフレから脱却するのはあなたたちがその役目だということで、叱咤激励してやってきたわけですが、そのことについては後からまたぜひ話題にしたいと思っています。

 やはりシーズとニーズを組み合わせていく、そういう仕組みが本当に大事だと思っていますので、ぜひ頑張っていただきたいと思っています。

 次に、知的財産戦略についてお尋ねをしたいと思います。

 まず、知的財産権の日本と米国の現状がどうなっているのか、それぞれの国がどのくらい稼いでいるのか、その現状についてお伺いをしたいと思います。

山本国務大臣 今の委員の御質問ですが、知的財産使用料の収支は、ちょっと統計によって数字が違うんですが、例えば、我が国の知的財産使用料収支は順調に増加しておりまして、国際収支統計、これは日銀ですけれども、日銀によると、二〇一一年の時点で約一兆円ということの受け取り超過となっている、世界第一位の米国が約八兆円、こういうことになっております。なお、総務省の科学技術研究調査報告によると、二〇一一年の我が国の技術貿易黒字額は約二兆円、米国は約四兆円。

 ちょっと統計のとり方によってデータが異なりますけれども、やはりかなり差があるということは間違いないと思います。

福田(昭)委員 ありがとうございました。

 我々が小さいときには、日本は貿易立国だ、こう言われてきたわけでありますが、いつの間にか日本も産業投資立国になっちゃって、貿易収支が、大震災もありましたけれども、赤字になっても、所得収支が黒字で、それで何とか経常収支の黒字を保っている、そういう状況でありますので、まさに産業投資から受ける利益あるいは知財から受ける利益、そうしたものを確保することによって、日本の国益を守っていくということがますます重要になってきているというふうに思っておりますので、そうしたことについて大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

山本国務大臣 今の福田委員の御指摘はまことにもっともだというふうに考えておりまして、先ほど申し上げたとおり、我が国は、特許を初めとする知的財産権、ノウハウの実施許諾契約等を通じて、約一兆円の収益を上げているということですが、我が国の企業が、国内のみならず海外においても、ライセンス等を通じて知的財産権を積極的に活用して利益を上げる、これはもう我が国の産業力を強化するためには極めて重要だと知財担当大臣として考えております。

 政府としては、我が国の海外における知的財産権の取得、活用を後押しするべく、今アジア新興国を中心に知的財産制度の整備への協力を行っております。さらには中小企業、中小企業を初めとした我が国の企業が海外展開を行う際の知的財産権の権利化から活用まで、総合的な支援、いろいろなアドバイスも含めて、これも実施しております。

 今後とも、我が国企業が海外市場において知的財産を有効に活用して、国際協力を高めていけるように、さまざまな支援をしっかりと展開してまいりたいと考えております。

福田(昭)委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 そこで、TPPに入りそうなISD条項なんですけれども、私は、投資家または企業が国家を訴えて賠償金をもらうようなルールは、これは全くとんでもないルールだというふうに思っているんですね。投資家こそ自己責任ではないか。

 低開発国に進出するときに投資家を守るんだということで始まったこのISD条項のようでありますけれども、しかし、先進国同士のアメリカとオーストラリアの間には、FTAにはこのISD条項が入っていない。そういうことを考えると、これからより高度な自由貿易をやるんだったら、ISD条項は除くというのが基本的な考え方としてあるべきじゃないか、実は私はそう思っているんですが、副大臣、いかがですか。

西村副大臣 TPPを担当しております副大臣の西村でございます。

 御指摘のとおり、ISDS条項、ISD条項と言ったりISDS条項と言ったりしていますけれども、投資家の保護のための規定でありまして、先進国の場合は、大体、内外無差別に、そうした不利な扱いをするようなこともありませんし、法的にも非常に安定した国々が多いですから、先進国間の場合には入っていないケースもあります。

 日本の場合、途上国と結んだような投資協定とかEPAについては、多くの場合、このISD条項を含んでいるというのが現実的なところでございます。

 御指摘のTPP交渉においては、まだ我々参加をしておりませんので、どういう交渉が行われているかというのは、詳細はわからないんですけれども、これまで得られた情報を総合すれば、まさに投資の保護とそれから国家の統制、その権限の確保との間で公平なバランスを保つという観点から、ISD条項の手続の濫用を防ぐための規定が検討されているというふうに承知をいたしております。

 今後、参加することになれば、こうした情報をさらに得た上で、投資受け入れ国としての我が国の規制権限、これはあるわけですから、こうしたことに十分配慮しつつ、その一方で、日本企業が海外で活躍する、投資をするということになるわけですので、それを保護するという両面を勘案しながら、御指摘のありました先進国と途上国の間で異なる配慮が必要かどうかといった点も検討しつつ、適切に対処してまいりたいというふうに考えております。

福田(昭)委員 今お答えいただきましたけれども、基本的に、私は例外のないルールはないということわざは世界じゅうにあると思っているんですよ。ということは、完全な自由貿易にも例外があって当然だ、これが実は世界の常識かな、こういうふうに私は思っております。

 まさにこのISD条項は例外を取り除くような条項であって、これは全く自由民主主義といいますか、そういうものをむしろ滅ぼすような考え方だというふうに私は思っております。

 そういった意味で、こういう条項が入って、今、西村副大臣から話があったように、それは阻止するんだ、こういうお考えをいただきましたけれども、仮に、どこかの投資家なり企業が日本政府を訴えて、損害賠償金を日本の政府が払うとなったときに、私は物すごく腹が立つんですが、どうですか、腹が立ちませんか。

西村副大臣 日本政府は投資をしてくれた企業に対して内外無差別に、何か不利なような条件でその企業に接するというようなことはしていないというふうに私は認識をしておりますので、いろいろなケースが考えられますから一概に言えませんけれども、基本的には、日本政府が訴えられるようなことはないんだというふうに私自身は認識をいたしております。

福田(昭)委員 ぜひそうやってほしいと思っていまして、これはまた別なところでしっかり議論したいなというふうに思っています。

 次に、新しい産業の創出と雇用促進に伴う内需拡大策についてということで御質問をしたいと思います。

 まず、TPPへ参加した場合の経済効果と雇用創出効果について、三月に公表したTPP影響試算について、一旦、まずお答えをいただきたいと思います。簡潔で結構でございます。

西村副大臣 もう委員御存じのとおりだと思いますけれども、関税撤廃の効果のみを対象とする、あるいは、関税は全て即時撤廃する、追加的な国内対策は計算に入れない、そういう極めて単純化された仮定を置いて計算したところ、全体ではGDPが〇・六六%、三兆二千億円の底上げがなされるということであります。

 他方、この使いましたモデル、GTAPモデルというんですけれども、これは制度的な限界というか前提がありまして、雇用者数全体は関税撤廃前後で変わらないという仮定を置いておりますので、国内雇用全体への影響はこのGTAPモデルからは出てこないということであります。

 ただ、一般的に言えば、GDPがふえればその分雇用がふえるのは当然でありますので、全体としてGDP増加に伴う雇用への波及効果は期待をしているところでございます。

福田(昭)委員 副大臣は期待しているという話ですが、私はとても期待できないと思っているんです。

 私が出した資料をごらんいただきたいと思いますが、これは、内閣府の、官房と一緒になっていますかね、地域活性化総合特区事務局が作成した資料でございます。この後、この総合特区については、二次、三次指定がなされておりまして、この数字よりもさらに大きな数字になっております。

 国際戦略総合特区と地域活性化総合特区と指定をしてあるわけでありますが、この第一次指定の国際七地区、地域活性化総合特区二十六地区、三十三地区合わせて、五年間で政府が財政支援する額が二千百六十九億円、これが五年目で、一年間で経済効果が九兆一千二百二十五億円、雇用創出効果が三十六万五千人、こう出ております。

 ですから、TPPと比べたら、この総合特区を本当にしっかりやっていったら、実はTPPに参加するどころじゃない経済効果と雇用創出効果が生み出せるんですよ。ですから、私が先ほど申し上げましたように、この担当の事務局には、あなたたちが日本がデフレから脱却するその役割を果たすんだ、頑張れ、こう言っていたのは、そういう話でございます。

 例えばでありますが、左の方の国際戦略総合特区の2とそれから6、つくば国際戦略総合特区とか関西イノベーション国際戦略総合特区とかこういったところでは、まさに大学やそういったものが一緒に参加をして新しい産業づくりを実はやっているわけであります。

 したがって、私は、この総合特区制度を担当してみて感じたのは、新しい産業づくりは、国が直接やるよりも、地方自治体、それから大学や研究機関、あるいは民間企業、この人たちに任せた方が新しい産業が出てくる、そういう確信を持ちました。ですから、国が直接、各省庁がこの産業を興そうなんと考えるよりも、みんな考えがあったらぜひ出してこい、こういうやり方の方が私は効果が出てくるというふうに考えておりまして、数字を見てもおわかりなように、TPPへ参加しても十年でたった三・二兆円の経済効果だ、雇用なんかわからないと言っているんです。それと比べたら、全くこれは違うんです。

 ですから、こうしたものにやはりしっかり取り組んでいくということが、日本国内の内需を拡大して、そしてデフレから脱却していく、そういう成長戦略になっていくと私は思っているんですが、いかがですか、山本大臣。

山本国務大臣 特区については特区室ですから、官房とそれから新藤大臣が担当かと思いますが、ちょっと管轄外でありますけれども、それを申し上げた上でお答えをいたします。

 総合特区については、先ほど福田委員の方からもいろいろ御指摘ありましたが、これまでに全体で四十四地域を指定したということで、各特区においては、再生可能エネルギーの普及促進とか医療品、医療機器の開発促進等さまざまな分野にまたがる取り組みが行われているところと聞いております。

 こうした地域の先駆的な取り組みに対して国が政策資源を集中投資するというのがまさに総合特区の本旨だと思いますし、規制の特例措置、税制、財政及び金融上の支援措置による総合的な支援を行っているということで、議員御指摘のとおり、これは一定の経済効果、雇用促進効果はあるというふうに認識はしております。

 今後、規制制度の特例措置が可能となる総合特区制度も活用しながら、私は科学技術担当なので、科学技術・イノベーション推進を図ってまいりたい、こう考えております。

福田(昭)委員 時間が来ましたので、最後に一言言って終わりにしたいと思います。

 そういった意味では、まさに三大都市圏だけを振興するようなアベノミクス特区なんてやっちゃだめですよ、これは絶対。ですから、そんなことをやらずにしっかりこの総合特区制度をさらに拡充する、それこそ、科学技術・イノベーションビジョンができたら、それをしっかりこうした中で生かしていくような、そういう政策の方が重要だというふうに私は思っています。

 それから、リニアコライダーについては、質問ができなかった、時間がなくなっちゃいましたけれども、先ほど津村委員からありました。私が仮に予算担当、予算をつける権限がありましたら、今度の十三兆の補正予算で一千億ぐらいはとっておきました。ですから、それはやはり成長戦略がちゃんとできていないからそういうことになるんです。

 ですから、本当は三本の矢は私も賛成ですけれども、成長戦略を先にまとめて、それから予算をくっつけていくということをやらないから順序が逆になっているのであって、リニアコライダーはぜひ頑張ってほしいなというふうに思っています。

 以上で終わります。

渡海委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 日本維新の会、鈴木義弘です。

 まず初めに、知的財産について全般的なお話を聞かせていただければと思っております。

 まず初めに、三月の新聞に、安倍政権は科学技術によるイノベーションの創出を目指し、関連予算を大幅にふやして、再生医療など新しい医療や産業が生まれることへの期待が膨らむが、改革なしに科学技術の強化は実現せず、成果の実用化もおぼつかない、科学技術立国が抱える問題は何か、その実像を点検するという記事です。

 お読みになった方ももうたくさんいらっしゃると思うんですけれども、結論は、二十四年度の補正予算で、五百億の巨費を投じて国際科学イノベーション拠点事業が計上されたり、即効性に疑問符がつく事業が幾つも散見されたという内容です。

 一九九五年、科学技術基本法が施行された後、年々、科学技術予算がほぼ一貫してふえてきている中で、日本全体の科学技術力は向上したのかという疑問符を投げかける記事だったと記憶しております。

 では、大臣におかれては、約二十年間で日本で科学技術力が向上したと考えておられるのか、また、もし考えておられるのであれば、何をもってその指標としているのか、お尋ねしたいと思います。

    〔委員長退席、三原委員長代理着席〕

山本国務大臣 御質問ありがとうございます。

 我が国の科学技術について言うと、例えば、京都大学の山中教授のiPS細胞研究とか、筑波の山海教授のロボットスーツHALとか、世界に誇れるすぐれた研究開発の成果が得られているということはあると思います。

 他方、今委員も御指摘になったとおり、指標で見た場合に、例えば、世界経済フォーラムによる技術力の国別順位は五位、特許登録件数、これはWIPOだと一位とか、こういう上位にあるものもありますけれども、まさに今御指摘になったとおり、イノベーションに関する国際経済ランキングだと、二〇〇七年に四位だったのが二〇一二年に二十五位になったり、あるいは影響力のある論文数のシェア、これも一九九五年には六・九%だったのが二〇一〇年に五・八%になったりして、相対的に低下をしているものもあります。

 こうした中で、科学技術・イノベーション政策については、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、経済社会の変化が求める政策ニーズに対する的確かつ機動的な対応が十分にできていたのか、あるいは政策の全体像、目指すべき方向性は明確なのか、PDCAサイクルの話もありましたけれども、そういう方向性が明確だったのか、あるいは、基礎研究から製品化、市場展開までの各フェーズの一体的な推進、連携が十分なのか、こういった課題はやはり残っているといいますか、指摘されているというふうに認識しています。

 以上から、なお改善に向けて取り組むべき課題があるというのはまさに事実でございまして、政府としては、こうした課題の原因をよく見きわめながら、我が国の科学技術・イノベーションが持つ潜在力を集中してフルに発揮することができるように、科学技術・イノベーション政策の包括的パッケージ、今議論しておりますけれども、科学技術イノベーション総合戦略の策定に向けて取り組んでおります。

 なお、委員のおっしゃった記事、私は残念ながら拝見していないんですが、例えばWIPOのような科学技術・イノベーション拠点をつくる、こういうものが将来の経済成長に結びつかないという分析は、これは果たして正しいのかなとも思いますし、まさに科学技術・イノベーションは、先ほど申し上げたとおり、なかなか、今お金をつけて物になるかどうかわからない、そういうハイリスク、ハイインパクトのものもあるので、これはすぐに結果が出ないからということで一律に判断するのは少し早計なのではないかという印象を持っております。

鈴木(義)委員 例えば、古い話になるんですけれども、今カリフォルニア米というのはハイブリッド米と言われて、それのもとはどこからスタートしているのかといったら、日本の琉球大学の先生が開発をしたんですけれども、日本では花が咲かなかったとか、ヒトゲノムの六千パターンにも及ぶゲノムの特許を申請しているアメリカが権利を持っているんですけれども、それも日本が最初に研究していたんですね。

 でも、結局、バブルがはじけたときに研究開発費をどんどん削ってしまったがために渡米してしまって、もう今からやってもしようがないだろう、そういう状況があるわけですから、箱物をつくって将来的にどうだろうかというふうなお話をされる前に打つべき手を打てば、もう少し知財が日本の中に踏みとどまったんじゃないかというのは過去のいろいろな繰り返しの中であると思うんですね。そこのところをどう考えるかということであります。

山本国務大臣 今の御指摘は大変もっともなところもあると思います。

 例えば、私、今度、五月の連休にアメリカに行って、今、日本版NIHというのが話題になっていますけれども、NIHの本部で活躍する日本人研究者の方々に会ってまいりましたが、どうしてこういう方々が日本ではなくてアメリカに研究の場所を移したのか。

 そういうことについて言うと、これから、例えば総合科学技術会議も、もし予算の枠をきちっと確保できれば、国家戦略上非常に重要なプロジェクトにお金をつけるということになるわけですけれども、そのときの目ききは、今委員がおっしゃったように、本当にきちっとしないといけない。

 今おっしゃったように、本当に、日本で生まれた技術が日本で花開かず簡単に外に行ってしまうようなことはやはり避けなければいけないので、そういう意味では反省すべき点はあると思いますので、そこをしっかり踏まえて対策を講じていかなきゃいけない、こう考えております。

鈴木(義)委員 それではもう一つ、新聞の記事を御紹介させていただきたいと思います。

 米国の共同研究相手として、中国が英国を抜いて初めてトップになったことが文部科学省の科学技術政策研究所の調査でわかった。全八分野のうち、材料科学や工学など五分野で一位だった。中国は論文数では米国に次ぐ二位で、科学技術でも存在感を増している。米中それぞれの大学や機関に属する研究者らの共著論文は、二〇〇九年から二〇一一年の平均で一三・八%を占めた。二位は英国、三位はドイツ、日本は七位。中国は海外人材の帰国促進策をとっており、今後も影響力は増すと指摘しているという記事です。

 これを裏づける、政府が刊行した科学技術白書、これは二十一年度版か二十二年度版だったと思うんですけれども、私は興味深いなと思って、そのグラフを見させていただきました。米国の工科系の大学で博士号を取得する、国別と人数が載っているグラフなんです。日本は、過去三十年余り二百人ぐらいしか博士号を取得していない、近年、韓国では約千百人、中国では三千九百人の学生が博士号を取得しているというグラフが載っていました。

 それで、先ほど御紹介した新聞の記事になって、共著論文が二位になったというのは、それを物語っているわけですね。

 ですから、ただ大学へ行って博士号を取った、よかったねということじゃなくて、人的なネットワークが日本の二十倍も中国は持っているというのをそのグラフが示しているんじゃないかと私は思っています。米国との共著論文がここ数年で首位に立つというのも、結果が出ただけの話だと思っています。

 米国との共著論文が全てではないと思いますが、ノーベル賞受賞者が一番多いのも米国ですから、日本の共著や引用数も低下傾向にあると聞いております。大臣の御所見を伺いたいと思います。

    〔三原委員長代理退席、委員長着席〕

山本国務大臣 今、鈴木委員が持っていらっしゃる問題意識、危機感というものは私も担当大臣として共有をしています。

 ただ、いろいろと議論もありまして、論文の引用数というのは、論文の引用数が多いから本当に科学技術・イノベーションのレベルが高いのかということについては多少議論のあるところもありますが、特に、例えばライフとかランセットとか、世界的にすごく有名な科学雑誌に引用される数が多いということになれば、これは論文自体に独創性があるということですし、今言ったアメリカとの共著論文がふえているということも、やはり科学技術の分野でかなり追い上げられているということを示しているんだというふうに思います。

 それから、今委員のおっしゃった問題意識の一つで、韓国はアメリカでPhDを持っている方々が多いと。これは私の所掌じゃないので余り言うと叱られちゃうんですけれども、恐らく、PhDを取らないとなかなか韓国の大学では教えにくいという事情があるのかもしれません。

 むしろ日本は、NIHの若手の研究者、中堅の研究者、あるいは自分の研究所を持ってかなり地位を確立した方々も同じ意見だったんですけれども、外で研究をすると、その後のキャリアパスがなかなか見えないというところがあるんだと思います。

 ですから、今委員の話をお聞きしながら思ったんですけれども、外でPhDを取る、あるいはポスドクの人が外の研究機関に出て勝負する、そのときに、そういう人材を日本で活用できるような環境をやはりつくっていかなければいけない。

 これはもちろん私の所掌する総合科学技術会議だけではできないので、まさに文科省とかいろいろな関係省庁がよく連携をしながら、今の委員の問題意識も踏まえて、やはり、PhDを取る人たち、そういう研究をしてきた人たちがきちっと活用されるような、そういう環境をつくるということを、研究開発法人の改革も含めて考えていかなければいけないのかなというふうに考えます。

鈴木(義)委員 次に、ちょっと視点を変えさせていただきたいと思います。

 もう御案内のとおり、工業所有権と言われている特許を申請したときに、一年半たてば情報が開示されるような、特許庁ですごく見やすいようなホームページをつくっているんですけれども、それによって逆に情報が流出してしまうんじゃないかというふうに懸念されるところもあります。

 あえて数字を挙げてお尋ねする必要もないと思っておりますが、ドイツなどでは、企業が取得している知財を海外に持ち出したりバックアップするために移転をする、地続きの国が幾つもありますので、それを指しているんだと思うんですけれども、それを移転させるのにやはり厳しい規制がかかっているという話です。そこで、知財の流出を防止したり保護する観点から、やはり何らかの、日本は島国ですから、データだけ持っていくといっても、今はITを使えば幾らでもデータは外に出せるわけですね。そういった観点から、知財を保護するということを対策としてお考えになるのか、大臣にお尋ねしたいと思います。

小糸政府参考人 お答えを申し上げます。

 御案内のとおり、特許制度につきましては、新しい発明を公開することの代償として一定期間独占権を付与するという趣旨でございます。これによって新たな発明を奨励しようということでございまして、我が国におきましても、出願公開というのが原則になっております。

 一方で、委員御指摘のように、みずからの技術を公開することによってこれが海外に流出をして勝手に使われるといったような事態を防ぐような、そういった対応も極めて重要だというふうに思っております。

 まず、我が国企業におかれては、新たに創出した知財を公開して権利化するのか、あるいは秘匿してノウハウ化するのか、まずしっかり見きわめて選択をしていただく。その上で、権利化を選択した場合には、グローバルに権利を取得していただいて、その上で模倣品は徹底的に排除するような毅然とした対策をとっていく。そういった戦略的な知財マネジメントを私ども後押ししてまいりたいというふうに思っております。

 特許庁としましては、特許審査ハイウエーの拡充などを通じて、日本企業がグローバルに権利を取得できるように支援をいたしますとともに、国内外におきまして模倣品対策を積極的に講じて、こういった企業の知財マネジメントを支援して、御指摘のような知財の海外流出がないように積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

鈴木(義)委員 今御答弁いただいた中に、WTOに加盟している国ですら模倣品とかにせものが平気でつくられて売っている国が、近くにあるのか遠くにあるのかよくわかりませんけれども、あるのはもう周知の事実だと思うんです。

 大手企業は資本力がありますから、そういったものに対して、損害賠償を訴えたり、訴えの提起をするのはそんなに難しいことじゃないんでしょうけれども、中小零細とか個人で持っている知的財産、それで模倣品やにせものが他国でつくられたときに、単独で訴訟、損害賠償を訴えるというのはなかなか至難のわざだと思うんです。

 そういった中で、ただ苦情を外交ルートを介して言って、しっかりやってくださいよと言ったとしても、はい、わかりましたと言って何もしてくれないかもしれないし、そこのところを、やはり知的財産を保護するというのを国を挙げてきちっとしなければならないんだと思っているんです。

 そうしなければ、知財を日本の中に残すよりは、他国の企業でもそれを使ってくれるようなところがあれば売ってしまった方が何ぼ実入りがよくなるかというのはあるんだと思うんですね。

 そうすると、産業界から見ても損失になるんじゃないかと私は思っているんですけれども、ボーダーレス化がどんどんどんどんこれからも進んでいく時代の中で国がどこまでそういった中小零細、個人をサポートする考えでいくのか、そこをお尋ねしたいと思います。

小糸政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業の知財マネジメント支援というのは、私ども大変大事な取り組みだというふうに承知をいたしております。数年前から、全国各都道府県に知財総合支援窓口というのを設けまして、ここにおきましてワンストップで中小企業の海外出願、それから侵害のエンフォースメントも含めた御相談、そういったものに積極的に取り組むような、そういう体制を整備したところでございます。

 その上で、海外の大使館、ジェトロ等々を通じて、いろいろな侵害の現状ですとか、あるいは、海外の知財の制度の仕組みはどうなっているのかといったあたりをしっかり情報提供しながら、中小企業を支援してまいりたいというふうに思っております。

 その上で、私ども政府としても、新興国も含めた政府との関係で、ガバメントとガバメントのベースで、しっかり模倣品対策あるいは海賊版対策、そういったものの強化を徹底していただくように積極的に働きかけてまいりたいというふうに考えております。

鈴木(義)委員 これも新聞の記事にちょこっと載っていたかなというふうに記憶しているんですけれども、第一次産業からスタートしていって第二次、第三次というのはどこの国でも目指す中で、付加価値を少しでも高くして実入りをよくしようというのはどこの国も考えることだと思うんですね。

 では、日本の国の企業が子会社を海外につくって、日本の特許を使って相手国で商品をつくって利益を生み出した、それを自国に戻すよといったときに制約をかけられてしまうとか、その戻す期間を限られてしまうという国があったときに、日本の政府としてそれをどこまでサポート、サポートというんですか、大手さんはいいのかもしれないですけれども、中小零細は、それもきちっと知財を保護するのと一緒に利益も自国に戻して、またそこのお金を持って研究開発して、新しい知財を生み出して、また外に出ていくというような形でいい循環をつくっていかなければ、やはり産業として成り立たないんじゃないかと思うんですけれども、その辺のお考えをお尋ねしたいと思います。

山本国務大臣 大事な点だというふうに考えます。例えば、特許などの知的財産権に基づいて海外で得られた利益の日本への還元に関して、今おっしゃったように、一部の国々では、例えば日本企業が現地で技術ライセンス契約を締結した際にさまざまな制限がなされる、こういう問題が生じていることは承知をしています。

 具体的に言うと、国によっては、現地企業との技術ライセンス契約に係るロイヤルティーの料率に上限が設けられるとか、あるいは収入を海外送金する際に当局への登録が必要だったり、さまざまな課税がなされるというような事例があるというふうに承知しています。

 これは、今も御指摘があったように、我が国企業が保有する知的財産の活用を困難とする、しかも、ひいては我が国企業の国際競争力をそぐゆゆしき問題だというふうに考えておりまして、現在、知的財産戦略本部において検討中の知的財産政策ビジョン、ここでも実は重要な政策課題として位置づけて、今議論をしております。

 知的財産戦略本部、私が担当しているんですが、ここが司令塔となって、これも外交交渉の部分もあるので、外務省とか経済産業省と連携して、通商交渉とか政府間協議の場において相手国に強力に働きかけ、我が国企業の海外におけるビジネス環境の改善を図ってまいりたいと思います。

 一つ申し上げますと、ロイヤルティーについては、きのうメモを見ていたんですが、中国の例だと、技術ライセンス契約に係るロイヤルティー対価の設定について、地方とか担当者によっては行政指導によって三から五%の上限規制がなされるとか、例えばブラジルなんかは、海外送金のためには外国企業と現地企業間の技術ライセンス契約でロイヤルティー料率が製品の売上高の五%までと制限されているケースもありますし、また、ロイヤルティーを海外送金するためにブラジル中央銀行に登録しろ、こういう話があったり、さまざまな課税がなされているということで、外務省、経産省、やはり政府一体となってしっかりと交渉していく、働きかけていく、これが必要だと思います。

鈴木(義)委員 ありがとうございました。

 先ほどもちょっと話題になりました科学技術基本計画について、少し中身で御質問させていただきたいと思います。もう時間も大分押してきていますので、何点かに絞らせていただきたいと思います。

 一つは、ある程度スケールアップしていって研究開発をしていくんですけれども、ラボスケールから実用化していく段階でたくさんの資金が必要になってくる場合がたくさん出てくると思うんです。そのときに切れ目ない支援をしていくんだというのがこの科学技術基本計画の中にもうたっているんですけれども、たまたま知り合いの金融機関の方に、仮に私が特許を持っていたとして、特許を担保にして幾らお金を出せるのというふうに尋ねたんです。そうしたら、特許に対する担保でお金を融資することはできない、その企業の総合、トータルとしての融資という言い方をされてしまったんです。名前を出せば、名立たる、グローバル展開している大手の金融機関ですけれども、ベンチャーキャピタルだとか、ベンチャー企業の育成だとかと新聞にも大きくコマーシャルを出したような企業ですら、自分たちでもリスクをとらないんです。

 だから、日本は、投資か融資かといったら、投資という概念はことごとく金融機関の人たちはお持ちじゃないんだと思うんですね。だから、成長の三本の矢という中で、やはり投資という概念をきちっと金融機関に持ってもらうようなものを、この科学技術基本計画の中から、民間の投資を呼び込んで、さらにステップアップした中で実用化に向けてやっていくんだという後押しをするのに、ある意味では政府のお墨つきを出したら融資がしやすくなるとか、そこに投資をしてもらうというようなものを、マッチングファンド等とか民間資金の活用の促進という言い方をされているんですけれども、もう一歩踏み込んだ中で、やはり知財を担保として融資をされるぐらいなものを政府として後押ししていただけないだろうか、そういうお尋ねなんです。

山本国務大臣 今委員のおっしゃったお話ですけれども、やはりベンチャー企業の支援は非常に大事だと思っていまして、政府としては、ベンチャー企業等のニーズに合わせた技術開発支援、リスクマネー供給の円滑化のための仕組みの整備を行っていますが、こういうことをさらにしっかり進めていかなければいけないというふうに思っております。

 基礎研究から事業化に至るまで切れ目のない支援を行っていくためには、マッチングファンドも含めた民間資金の活用を促進する、これも大事な視点だと思っていまして、研究開発の成果が社会実装に至るためには研究開発型ベンチャー企業が重要な役割を果たすということで、こうした企業の活性化を図るにはベンチャーキャピタルによるリスクマネー供給の円滑化が必要になるということで、例えば、政府系金融機関とベンチャーキャピタル等のマッチングファンドといった方法によって、民間資金の活用を促進していくということだと思っております。

 例えば、中小企業に対する投資事業を行う民間機関等とともに投資ファンドをつくり、中小企業の資金調達の円滑化と踏み込んだ経営支援を通じて、ベンチャー企業や既存中小企業の新事業展開の促進、中小企業の再生等を支援する、そういう投資ファンドの仕組みはあるんですけれども、おっしゃったように、どこまで使い勝手がいいのかということについて言うと、そこは、全体のマインドセットを変えていくべく少し努力をしなければいけないのかなというふうに感じております。

鈴木(義)委員 最後に一問だけお尋ねしたいんです。

 中小企業技術革新制度というのがこの計画の中にもうたわれておりました。多段階選抜方式の導入を推進して、中小企業をもっと支援していこうと。大きな枠組みの中での、結局、技術支援もさることながら、ある一定枠を中小企業とか零細にきちっと見てあげるというのがやはり大事なんだと思うんです。

 それで、大手は基本的に自己資金で賄えるところがたくさんあるんだと思うんですけれども、中小零細の場合はそこまでいかない。日本の企業の九割を超えるのが中小零細企業で、大企業の、ある意味では技術の下支えをしているのが中小零細なんですね。だから、そこにきちっと手だてをするような科学技術のサポートの仕方というのが大事だし、その技術力を身につけることによって日本全体の産業を支えてくれるんじゃないかと私は思うんです。

 できれば、多段階選抜方式の導入をいち早く、もう入れておられるんだったらそれで結構ですし、また、その採用の基準だとか、審査員の系列化、ちょっと失礼な言い方かもしれませんけれども、権威主義ですから、ある何とか学会の偉い人が審査員になれば、自分の傘下にいる人しか大体採択しないというのは、この業界、当たり前の話だと思うんです。そこのところを、やはり系列化を排除するような仕組みをつくっていただけないかな、そういうふうに思っておりますが、御答弁いただいて、終わりにします。

山本国務大臣 中小企業の研究開発支援は非常に大事だと思っていまして、中小企業は、独創的な技術力とかタイムリーな対応力、これで我が国経済の活性化に貢献をしてまいりましたし、今委員がおっしゃったように、まさに日本経済を下支えしている、産業競争力を下支えしているということで、これは、やはり我が国の経済産業にとって非常に重要だという認識を改めて持たなければいけないと思います。

 国の技術開発予算の中小企業者への提供拡大等のため、今少しお話ありましたけれども、国等の特定補助金等の交付金額のうち中小企業に対して支出する目標額を設定する、これによって中小企業支援というのを今も行っております。

 ですから、こうした支援の仕組みをより活用していきたいと思いますし、今委員からあったいろいろな御提言については、ちょっと制度を確認して、いろいろと検討させていただきたい、そう思います。

鈴木(義)委員 ありがとうございました。

渡海委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会の伊東と申します。よろしくお願いいたします。

 私に与えられた時間は五十分ですので、いろいろ御質問させていただきたいんですけれども、時間の配分を見ながら、早速御質問させていただきたいと思います。

 私は医師免許を持っている開業医でして、開業医の場合、電子レセプトというのが最近導入されていまして、つまりは、診療報酬を請求する際に、これはマイナンバー法案と関連いたしまして、かつて厚生労働委員会で私が質問させていただいたんですけれども、マイナンバーをできれば医療の分野にも、もっと言うと医療保険の分野にも導入したいという思いが私の中にあったんですけれども、いろいろな問題があってそれは、今回はちょっと見送る、考慮の中には入らないということになりました。

 その際に、私、大手の病院では電子カルテ及び電子レセプトは進んでいるんですけれども、開業医の分野で、電子レセプト、CDじゃなくてネットでつないでいる、そういったレセプトのネット化というのが進んでいないのは、高齢者の方が多いからかなと思っていたんですけれども、当時、田村厚生労働大臣の御回答の中に、どうしてもデータが多いこと、そしてその整備、つくるとなると、また多大なる費用がかかるというような回答をいただいたんです。

 こちらは科学技術の特別委員会ですので、こういったことはいわゆるITの技術で何とかならないかということで、仮にレセプトに関して、医療保険に関しての連携を導入した場合、試算及びその技術的な煩雑さに関して、もしくはデータの容量について、政府からの御回答をまずいただければと思うんです。

とかしき大臣政務官 お答えさせていただきます。

 田村大臣の方から、内閣委員会総務委員会の方で、四月十一日、伊東委員に御答弁させていただいたのと同じことなんですけれども、今おっしゃっているように、システム上の負荷が大変かかるということと、費用の負担のことと、あと、プライバシーの保護、この三つで、今回、医療情報をこの中に入れていくというのがちょっと、今のところは難しいということで、試算というふうにお問い合わせがございましたけれども、残念ながら、ちょっとまだ試算の方はできておりません。

 以上でございます。

伊東(信)委員 申し上げたいのは、決してそのときの大臣とかの答弁がどうのとかいうんじゃなくて、科学技術特別委員会ですので、先ほど山本大臣からおっしゃっていただいたんですけれども、これもイノベーションに対する投資という考えで、仮に費用をかけても、ほかの、例えば医療連携が進みやすくなるとか、患者様に利益があるとか、将来的に費用が安くなるということで、技術的なことで、どなたか政府参考人の方で御答弁いただければと思いまして、昨日通告いたしました。

向井政府参考人 御答弁申し上げます。

 番号制度におきましては、医療保険制度そのもの、保険制度と事務に関してはマイナンバーは入ることになっておりますが、そのマイナンバーをどのように具体的に使うかは省令で定めるということになっております。逆に、医療情報、いわゆる身体情報につきましては、基本的には入らないという格好になっております。

 そういう中で、マイナンバーを拡張していくに当たりまして、やり方は二つあります。番号そのものの使い道を広げていく。今先生がおっしゃったのは、マイナンバーを使って例えば医療情報と連携する、こういうことも考えられますし、逆に、今、厚労省、総務省等々で実証事業をいろいろな地域で行っておりますけれども、これにつきましては、その地域の何らかの番号なりを使って患者を識別して、情報連携をしております。その地域の番号とマイナンバーを将来的にひもづけしていく、そういうやり方もあろうかとは思います。

 ただ、いずれにしましても、そういう各地域でやっている実証事業等、これも、うまくいっているところ、うまくいっていないところ、いろいろございますけれども、うまくいかない大きな要因の一つに、やはりコストがかかり過ぎるというのもございます。

 したがいまして、やはり、IT戦略の観点からは、そういう実証事業をできるだけコストのかからない形でやっていって、実証が済んだ後、実践していくようなやり方が重要じゃないか、それが広がっていけば、逆に、番号制度、マイナンバー制度とひもづけていく、そういう道が開けるのではないかというふうに考えております。

とかしき大臣政務官 先ほどの問いで、またちょっと。

 先ほどの番号制度の件なんですけれども、やはり大切なのは国民の皆さんの理解、かなり機微性のある情報を扱いますので、ここの理解を醸成していくことが大切なのと、先ほど言いましたように、医療情報と連携とか、こういったことがありますので環境整備を行うこと、この二つが前提とならないと導入がなかなか難しいなというふうに思っております。

 ただ、利便性という面もありますし、今後、各省庁とも連携しつつ、こういった方法については検討していきたい、このように厚生労働省は考えております。

 以上でございます。

伊東(信)委員 恐らく、政府も、与党の田村大臣、とかしき政務官を含め、会話の端々に、積極的に導入を検討していただけるということはうかがえております。コスト面、実際、きのうヒアリングしたときは、それをクリアできるような話題も出たわけなんですけれども、この点に関しては、政府を追及するというのは私の本意ではないので、次の話題に移らせていただきます。

 私自身、開業医と申しましたけれども、椎間板ヘルニアのレーザー治療という少し変わったことをやっています。レーザー治療というのはかつて先進医療にも入っていたんですけれども、これをリードしていくために、大阪大学の臨床医工学融合教育センターで招聘准教授をやっていまして、今スタッフが一生懸命研究してくれているわけなんです。工学部と医学部が融合したユニークな大学院大学での制度です。工学部の教授が私の上にいるわけなんですけれども、かつては高エネルギー講座でございました。そのときに、いわゆる電子の加速について研究したんです。

 今回、先ほど各党の皆様、民主党の津村委員、福田委員からリニアコライダーについて質問されましたけれども、リニアコライダーについてちょっとお尋ねしたいんです。

 リニアコライダーに関して、いわゆるリニアコライダーのモデルがまだございません。リニアコライダーを研究してからスタッフその他のことがありきだと思うんですけれども、リニアコライダー研究所なるもの、リニアコライダー機構なるものがまだなく、高エネルギーという名前で進んでいるわけなんです。今のその進捗状況について、わかることがあれば。

吉田政府参考人 国際リニアコライダー計画、いわゆるILC計画につきましては、ただいまのところ、国際的な研究者コミュニティーにおきまして計画づくりが進められているところでございます。

 昨年の十二月に技術評価報告書というものが公開をされまして、ただいまはコスト面でのレビューをしているところでございます。聞くところでは、六月にその研究者コミュニティーのレポートが最終版としてまとまるということでございますから、その動向を注目しているところでございます。

伊東(信)委員 いささか質問の順番がアップサイドダウン、逆さまだったみたいなんですけれども、リニアコライダー、目的としては、今までの遠心加速器と違って、三十キロに及ぶ距離の加速で、宇宙の創成期、ビッグバンのような状態をつくるというところまでお聞きしているんですけれども、その他、リニアコライダーを政府が推進している意義なり理念なりあれば、ちょっとお聞きしたいんです。

丹羽大臣政務官 伊東先生から今、国際リニアコライダー、ILCの御質問がございました。

 先生おっしゃるとおり、宇宙の始まりに匹敵する極めて高いエネルギー状態をつくり出して、宇宙創成の謎を解明するというところを目指した、大規模な学術研究の構想でもございます。

 この加速技術が、結果として、医療や産業で使用されている加速器のさらなる小型化、そういったものに結びついていくという側面もあると考えております。

伊東(信)委員 リニアコライダーに関する議連もしくは勉強会に参加させていただいて、私は、単純に夢のある産業に関してその夢を追い求める私ら科学者の側面と相反して、それもまたいいことではないかと思っております。日本においての我々政治家の役割として、やはり国民に希望と夢を持っていただくという面も、ある意味大事だと思っております。

 そうではなくてシビアにコストを考えた方がいいといった、私の中で自己矛盾した質問も後ほど用意はしておりますけれども、このリニアコライダーに関しては、レクチャーの中で、例えば医療面でも放射線治療の話とかを受けましたけれども、それも今やっている治療に関してのヒアリング、レクチャーばかりで、これからのことについての、こういうことができるかもしれない、ああいうことができるかもしれないというヒアリングはなかったんですね。

 ですから、できれば与党の皆さん、政府の皆さんには、宇宙の創成期を、我々がずっとずっと小さいころから、空を見て、星を見て、その先はどうなっているのだろう、宇宙の果てはどうなっているのだろうということをいよいよ解明できる時期が来た、そういった一点の夢を追い求めるということでリニアコライダーを国民に訴えるというのが私の思いなのですけれども、そういった思いに関していかが思われますでしょうか。

丹羽大臣政務官 委員の御質問、まさしく、これから国際リニアコライダーがどのように活用、経済的な出口、これから活用されるかという非常に重要な御質問だと考えております。

 ただ、現在、ILCについてはまだ学術的な部門の研究しか進んでいなくて、それをこれからどう幅を広げていくかということは、先ほども話がございましたが、やはり研究者間の今後のレビューをしっかりと踏まえた中で検討させていただきたいと思っております。

山本国務大臣 先ほどちょっと時間がなくて答えられなかったので、正確に申し上げたいと思いますが、国際リニアコライダー、ILC計画、これは、今もお話ありましたけれども、宇宙創成の謎の解明を目指した大規模な学術研究の計画だということで、今文科大臣政務官からもありましたけれども、研究者レベルで国際的な設計活動、検討が行われている、こういう段階だというふうに承知をしています。

 戦略的かつ重点的な科学技術・イノベーション政策の推進、こういうものを担っている科学技術政策担当大臣としては、この計画が、まず学術研究、基礎研究を目的としているものであること、さらには巨額の経費を必要とするということ、これはやはり留意をしていく必要があるというふうに思っております。

 すなわち、多様な基礎研究の推進を一層強化するというのと同時に、将来の経済社会の課題解決、実用化、これを見据えたイノベーション志向の科学技術政策が求められている、こういう状況があるというふうに思っておりますので、その中で、長期かつ高額な計画で社会や国民の理解が得られるのか、あるいは、他国で実施されているものを含め、現在実施中の類似、関連する研究プロジェクトとの関係が整理されるだろうか、こういった課題があることも事実だと思います。

 ですから、まず、学術研究プロジェクトの優先順位づけの中で検討がなされるということは、やはりあってしかるべきだというふうに私は思っていまして、いずれにせよ、余り委員の期待する答えではないかもしれませんけれども、やはり現時点では、先ほど文科大臣政務官もおっしゃいましたけれども、研究者レベルでの検討が進められている状況にありますので、その状況を科学技術担当大臣としてはしっかり見きわめたいというのが正確な私の考えでございます。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 言葉は違いますけれども、いわゆるアベノミクスの三本目の矢として、将来に投資する価値のある成長戦略というのがございますので、しっかりと出口を見きわめた大臣の発言だったと理解しております。

 もちろん、私が夢を求めると言っていたのは、大体科学者というものはそういうシンプルなところから始まっている、そういった趣旨でございます。

 成長戦略としてもう一つの目玉とされている再生医療についてお聞きしたいと思っております。

 再生医療に関しては、資料の方を御用意いたしました。

 再生医療と一言に申しましても、iPS細胞を使ったもの、ES細胞を使ったもの、幹細胞を使ったもの、もしくはいわゆる細胞治療というのがございます。たくさんのところにざっくりと予算をつけたりするのも一つの手かもしれないですけれども、山本大臣がおっしゃったように、その中でのセレクション、選別をするのであれば、iPS細胞、ES細胞、幹細胞もしくは細胞治療の中で、山本大臣はどの分野に御興味、もしくは、この分野にまずは力を入れるというのがもしございましたら、お伝えください。

山本国務大臣 これは先生がまさに御専門家なので、私がお答えをするのは僣越だと思うんですが、再生医療の実現化に向けては、基礎研究から実用化、事業化までを見据えた切れ目のない研究開発、これを関係府省及び産業界とも連携し、着実に推進する必要がある。今回出されている議員立法も、そういう趣旨だというふうに理解をしています。

 昨年度は、山中教授のノーベル賞受賞もありました。日本発の技術であるiPS細胞を用いた再生医療や創薬研究を推進することは、これはもちろん重要だと思いますが、他の再生医療、今先生がおっしゃった体性幹細胞とか、あるいは胚性幹細胞、こういったことについても、やはり科学技術・イノベーション推進の観点から、すぐれた研究活動を推進し、日本発の再生医療品の創出を促進していくということが必要だと思います。

 さらには、新たな技術である再生医療の実用化に当たっては、当然、安全性、有効性を確保した上での提供が必要であって、安全基準面の整備も取り組んでいくことが大事だ、このように考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 予算委員会のときにも申し上げたんですけれども、私は山中先生とは神戸大学医学部のラグビーの先輩、後輩の仲で、かつ大阪市立大学の大学院でも同じ実験舎で実験をしておりまして、私はハムスターを、山中先生はマウスを使って、私ははしかウイルスを、山中先生はアデノウイルスというウイルスを使って研究をされていました。

 今も交流がございまして、今回の再生医療に関しての質問に関して、これは山中先生御自身の発言なんですけれども、私がノーベル賞をとったのは光栄なことだけれども、でも、これは最終的に医療の一環であるから、再生医療に関する過大なる期待もよくない、しかしながら我々研究者は頑張るので、政府の皆さん、よろしくお願いしますということなんです。

 その中で、再生医療のような先端医療技術研究の枠組みを考えるときに、常に、規制と推進と、適正なバランスが求められるわけです。

 ITの、いわゆる0、1のデジタルの言語でもそうなんですけれども、科学というのは万国共通の言語を使うんですけれども、進歩が著しい技術であればあるほど、その捉え方にはさまざまな問題が出まして、期待もありますけれども、不安が混在しまして、社会面と文化面、そして国民性などが反映されます。特定の制度それのみに捉えられるのではなく、さまざまな制度の組み合わせに広く目を向けることが、より柔軟かつ適正な制度の構築を考える上では有用と考えております。

 その際、正しい再生医療のあり方と、これはどうもという再生医療のあり方があるのが事実です。

 このiPS細胞に関して、正しいという言い方も変ですけれども、まず国民が期待しているのは移植医療、iPS細胞を使った移植医療、失われた体の一部を取り戻すのにどのような戦略があるかということで、用意させていただいたのが一枚目の資料です。

 これは、同じく神戸大学医学部ラグビー部の後輩で、かつ、私の高校の後輩である、京都大学の青井教授のペーパーから引用したものなんです。四月から神戸大学の教授になられています。

 図一、図二、図三はES細胞、iPS細胞の説明でして、図二で、創薬、薬をつくるのにiPS細胞を利用する、病気そのものを研究する、そして今話題になっている移植というもの、この三つがiPS細胞の医療応用に向けた戦略の柱になっているわけなんです。

 この移植に関してなんですけれども、この最後の図四、どういうことを言っているかといいますと、細胞というのは、ふやしていって、生き物ですから、食品と同じように考えていただいたらいいんですけれども、凍らせて、解凍してから生きている時間というのは限られているわけです。だけれども、その解凍した時間を、食品の場合だったら食べるわけですけれども、凍らす前に評価しているものがそのまま生きるわけですけれども、解かした後に評価するのが実験の世界でして、そこに時間がかかってしまうというギャップがありますということが、この図の四の上の「各種試験の“時間”VS細胞の“時間”」という意味です。

 実際、なぜそのように検査をしなければいけないかというと、そこでまた細胞の性質が変わって、がん化したりすると、山本大臣がおっしゃったように、安全面での問題があったりするからです。

 それだったらということで、次の二ページ目を見ていただきたいわけなんですけれども、ここに同種細胞バンクというのが書いてあります。

 これの前提として、iPSの細胞バンクをつくる。つまり、我々の皮膚の細胞、大体五十種類ぐらい集めたら拒絶反応なしにこういう臓器移植に使える細胞ができるというのが、今、山中先生のやられているプロジェクトなんです。

 この二番目のところは、同じ京都大学の形成外科が作成したペーパーなんですけれども、iPS細胞をやる前に、ほかの細胞治療を使って、例えば、これだったら、他人からとった皮膚をそのまま培養して、製品として、製品としてというのはちょっとおかしいかもしれませんね、バンキングして使いましょうということを書いているわけなんですね。

 冒頭、いろいろ再生医療というのは種類があるわけなんですけれども、こういった私の今の資料と説明でどれだけ御理解いただいているかどうか甚だ心配なんですけれども、再生医療というのはすごくざっくりと皆さん期待されていて、その割に、では、この製品を使いますとなると、iPSでなければどうなるのということで、いろいろ法的な整備が必要になってきて、かつ、皆様の理解が必要となってくるんですけれども、今回のiPS細胞及び再生医療に関する厚生労働省から検討されている法案について、説明をしていただければと思うんです。

とかしき大臣政務官 お答えさせていただきます。

 伊東委員がおっしゃいますように、この再生医療、非常に国民の期待が高まる一方、安全面とか倫理面とかそういった課題も留意しつつ、迅速な実用化を進めていくことが大切だ、このように考えております。

 そして、日本再生医療学会等からも、やはり法的なルールをきちっとつくってほしい、こういう御要望もいただいております。

 こういった治療は予期せぬことも起こってしまう場合もありますので、それによって実用化の動きがとまってしまうようなことがないようにということで、迅速で、さらに安全性をきっちり担保して提供できる、そういった体制をつくっていくことが大切である、このように考えております。

 そして、今お尋ねがございましたけれども、今検討中の再生医療新法案についてお話しさせていただきますと、特に再生医療のリスクにおいては、適切に安全性を確保するための必要な手続等を定めていくというのが一つと、あともう一つは、細胞培養加工について、医療機関から外部への委託を可能にするというところがポイントとなっております。

 法律上このような措置を講ずることによって、研究の推進にもつながっていくと考えておりますし、過度な規制によって再生医療の研究や実用化が停滞しないようにしていきたい、このように考えて取り組んでいきたいと考えております。

 以上です。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 さすがは薬剤師の免許を持たれているとかしき政務官。最後の、規制をしないように検討をいたしますという言葉をいただけるとは思わなかったので、ありがとうございます。

 現在、この再生医療を行っているところというのは二つに分かれています。一つは、研究所、大学病院を中心としたところの臨床研究としての治療と、もう一つは自費診療でございます。

 自費診療に関して、江上教授の方から、三ページ目、四ページ目にかけて書いているんですけれども、「昨今美容クリニックなどにおいて必ずしも再現性や有効性が科学的に確認されていない効能について高額な自由診療として実施されつつある幹細胞医療に対しては、あくまで患者目線に立った規制ガイドラインを整備する一方、優れたサイエンスと適切な前臨床試験でその有効性を立証し、探索的臨床試験によって安全性が確認された再生医療、幹細胞医療製品に対しては、早期に臨床成果を蓄積し更なる有効性の解明を加速しうる条件付き早期承認制度の整備が必要である。」こう書いていただいているわけなんです。

 この文章というのは、実際によくない自由診療の再生医療という治療があった、だけれども、ここを、過度に自由診療を制限すると、正しいところまで制限されるところがある。つまり、大学病院だけありき、研究所だけありきじゃないということで、先ほど、とかしき政務官の中で、恐らくCPCのこと、セルプロセッシングセンター、外部の細胞培養機関の話をしていただいたと思うんですけれども、それを利用することによって広がりというのがやはり出てくると思います。

 このことが、こういった公的なペーパーに、論文に載っている背景として、京都で、韓国資本の自由診療の病院で幹細胞治療による死亡事故が起こったという事件がございましたけれども、政府として、こういった事故に対しての確認とか検証とか、もしくはその事実というのは御存じでしょうか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生の御指摘のありました事例について、当然ながら、地元の保健所の方から実態についてはお聞かせいただくという形で聞いております。実際に、その原因が本当に細胞治療であったのかどうかというところまでは明らかではないですけれども、そういう事例があった。

 また、今現在、そういう自由診療でどのようなことが行われているかというのは、実は、実態をつかまえる手段もございません。

 そういう中で、今回、新しい法律の中では、そのようなものについてもやはり届け出をしていただこうということを考えておりまして、実態把握と、それから、それについての公表をしていこうというふうな方向で考えているところでございます。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 これはちょっと参考までに聞いていただきたいんですけれども、実際どのような治療をしていたかというのは、京都で行われたことなので私、把握しておりまして、韓国で自己の脂肪から幹細胞を取り出して、それを培養して、日本に持ち込んで点滴治療をいたしました。そういった症例は、何十、何百、何千、数までは把握していませんけれども、そこのクリニックでは行われていました。

 なぜわざわざ海外から自分の細胞を運んでくるかというと、これは薬事法の問題でして、韓国では、自分の出した細胞であっても、それを培養した場合、薬として扱われるので、新薬として承認されていないものは体に戻すことができない。ただ、日本においては、これは私の顧問弁護士に調べていただいた薬事法についてなんですけれども、治療を行う医師みずからが調剤したヒト組織細胞をみずからの患者に使用する場合、これは医師法が規制する医療行為の問題であり、薬事法の規制を受けませんということで、日本でそれは可能だということだったんです。

 肺塞栓で亡くなられた、つまり肺の血管が詰まってしまって亡くなられたので、その幹細胞が詰まったかどうかの病理解剖及びエビデンスはございません。因果関係も立証されておりません。しかしながら、このことによって再生医療のイメージがやや後退した感はやはり否めません。

 今回の法案に関して、このことを規制する目的もあるのではないかと私は非常に喜んでおるわけなんですけれども、それに反して、九州で関連の病院が、一人の医者を責めたりするという目的ではございません、そういった同じような医療機関ができて、どのようなことが行われているかといいますと、日本で治療した細胞をとって、それを韓国まで運んで、韓国でふやして日本で入れる場合、いわゆるCPCの制限を受けないので、実際に届け出をするかどうかを私ちょっと危惧しております。

 つまり、日本での医療機関では、点滴だけしかしないクリニックだから、再生医療を実際行っているかどうかわからないんです。

 こういった治療というのは、実際、関西にいて、再生医療を、そして自費診療に携わっていますと、こういった実態がございましたので、このことを参考にしていただいて、さらなる検討材料にしていただければいいと思います。

 よくない話ばかり言うのもなんなんで、いい話をします。

 次に期待できるのは、先ほど細胞シートの話をしましたけれども、再生医療の幹細胞、その他、一部を使って新しい薬がつくられようとしています。それが五ページ目の「製薬大手 再生医療に参入」ということです。アステラスを初め国内の製薬業界で、さまざまな細胞に成長するiPS細胞などを使った再生医療への参入が相次ぐということです。

 これは成長戦略として非常に後押しとなる部分なんですけれども、若干、この点に関して気になることだけ申し上げますと、最後の方で、「今国会に提出する薬事法の改正案では再生医療に必要な細胞を承認する手続きが明確になることも業界大手の研究にとってメリットとなる。」ということなんです。

 国家を挙げての大きなプロジェクトなんですけれども、ここにこそ、ベンチャー企業が入ってくる、そういった要因があるのではないかと思います。先ほど我が党の鈴木委員が質問したように、中小企業にこそ、こういったベンチャー企業の機会を与えてほしいということで、iPS細胞の再生医療に参入するところに、ベンチャー企業及び中小企業に光を与えていただくということで、先ほど鈴木委員のときにもお答えいただきましたけれども、中小企業に対して、ベンチャー企業に対しての後押しを政府として、山本大臣、もう一度お気持ちを聞かせていただければと思います。

山本国務大臣 今おっしゃった話、中小企業の話だと思いますけれども、まさにそこが、技術力といいますか、研究開発も含めて我が国の経済の活性化に貢献しているということですから、その視点を忘れずに、しっかり、今おっしゃったところを研究して、検討させていただきたいと思います。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 再生医療はこういった創薬にも期待がされていくわけなんですけれども、この場合、産官学の連携が必要となってくるんです。先ほど、産業の中にもやはり学術的な分野が必要となってきますし、学の中にも、研究所の中にもやはり産業的な分野が必要となってきます。

 その際、iPS細胞作成に関する基本的な特許は既に京都大学より申請していまして、国内特許は成立していますけれども、国際特許に関しては、それぞれの国の特許体制に依存することでありまして、いまだ不確定であります。ライセンス化の窓口を一本化するために、円滑に社会に還元できる体制を構成し、国際的な競争力の強化のために、京都大学は、中間法人としてiPSホールディングスをつくって、iPSアカデミアジャパンが特許の管理をしています。

 しかしながら、山中先生がおっしゃるのは、私は一研究者であって、そういったいわゆる出口のところまではやはり考えられない、それをマネジメントするのは企業であればCEOであると。

 実は予算委員会のときに安倍総理に、政府としてのCEOである安倍大臣、どうお考えですかとお聞きしたところ、それはそのとおりですとおっしゃってはいただいたんですけれども、再生医療ばかり安倍総理にお願いするわけにはいかないので、ここはやはり科学技術・イノベーション特別委員会の担当でございます山本大臣にそのことをお願いするしかないと思っております。

 医療と医療産業は、山中先生のその表現そのままですけれども、ラグビーとアメリカンフットボールの違いがあるらしいです。似ているけれども全然違うものであると。そういったことを御理解した上で、山本大臣のこの再生医療を牽引していく上での御決意をお聞かせいただければと思うんです。

山本国務大臣 今先生のおっしゃった、再生医療と医療の産業はラグビーとアメリカンフットボールぐらい違うという話がありましたけれども、そこをどうやって結んでいけるのかということは、しっかり行政の方としても考えていかなければいけないと思います。

 再生医療に限らず、すぐれた研究者が例えばその技術で特許を取る、こういうことについて言うと、例えば、筑波大学の介護ロボットHALを開発した山海先生がおられますけれども、御自分がまさに出口戦略を持って特許でも飛び回る、ああいう方々もおられるんだと思いますが、やはり、もうちょっと政府として、国として、研究者の方々を、医療に限らず、医療ももちろんそうですけれども、再生医療も、サポートできる体制というものをしっかりつくらなければいけないと思いますので、そういう環境整備のために、今の委員の問題意識も含めて、一生懸命取り組ませていただきたいと思います。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 そして、次の二枚なんですけれども、六ページ目、エーザイがアメリカで肥満治療薬をつくったと。実は、肥満に対する治療薬というのは過去にもございまして、いわゆる食欲抑制剤です。実際、絶食になるというわけではないですけれども、中枢神経に作用して食欲は抑えられます。こうなると、痩せ薬として、若い女性の方、年配の女性の方を中心として、美容外科で販売されるようにもなりました。

 ここで危惧されるのは、やはり、先ほどITのお話をしましたけれども、ネット販売の規制に関してなんですね。いわゆる再生医療も、キーワードはアンチエージングですので、若返り薬として、いわゆるネット規制の中にさらなる注意が必要だと思うんですけれども、創薬に対してのネット販売、ITに関して、山本大臣、担当だと思いますので、その辺のお考えをお聞かせいただければと思います。

山本国務大臣 対面販売の問題、特に薬のネット販売の問題は、今、産業競争力会議の方でもいろいろ議論になっておりまして、また、与党の中、政府の中でもいろいろな議論がありますが、それをしっかり今、IT戦略本部で安倍IT政策ビジョンというのをまとめていますので、その中でもしっかり議論してまいりたいというふうに思います。

とかしき大臣政務官 済みません、一つだけ御報告させていただきます。

 インターネットの薬の販売の検討会、厚労省の方で、きょう九回目の検討会が行われております。今議論をちょっと集約していて、ガイドラインをつくっていこうということで、安全性の担保を持ちつつ利便性をどう確保していくかということで、検討の委員の先生方にいろいろ議論していただいて、そろそろ収れんの方向性が見えてきたというところで、また、結果等決まりましたら御報告させていただきます。

 以上です。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 資料に関して、最後のところになりますけれども七ページ、卵子バンク三組選定ということで、集約されたところが、民法では生殖医療で生まれた子供を想定しておらず、現状では出産した親が法的な親として扱われるということ、もう一つ、倫理問題では賛否が分かれ、法制化は実現しないままということで、こういった問題というのは非常に難しいことだと思います。

 再生医療の中でこれを入れたのは、ES細胞という受精卵から取り出した幹細胞を使っての研究ではなく、皮膚もしくは血液からということでiPS細胞が出てきたという経緯がございます。

 ここでお尋ねしたいのは、いわゆる科学の発達と、今度は倫理面ということがどうしても議論になると思いますので、山本大臣でも構いませんし、科学の発達と倫理面の政策についてお答えいただければと思います。

とかしき大臣政務官 お答えさせていただきます。

 卵子バンクのことについて新聞等で報道されておりますけれども、これは、個人の生命の倫理、家族観にかかわる大変難しい問題であります。

 過去に厚生労働省の医療部会の中で検討したりとか、平成二十年にも日本学術会議で、代理母とかそういった形でお話しさせていただいたり、いろいろな検討会、いろいろ行われておりますけれども、今でもさまざまな議論がありまして、まだまだ収れんの方向性が見えない状況であります。

 厚労省といたしましては、引き続き、こういった議論を注視しながら、生殖補助医療の実態や諸外国の様子をちゃんと情報把握しながら今後の方向性を考えていきたい、このように思っております。

 以上でございます。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 そろそろ時間となってきましたので、最後に、再生医療に対しての次の戦略を御紹介して終わらせていただきたいと思うんですけれども、再生医療を予防医学に使うことです。

 健康と病気を管理するには、今以上に病気の潜在的な進行を早期に予想し、先制的に介入する治療法を開発することが必要である。NIHは、四つのP、個別化、予想的、予防的、参加的、全部英語でPがついているんですけれども、再生医療は確かに、先ほど申しましたけれども、組織破壊が進んでも再生医療によって治せるという過度の期待を抱くよりは、再生医療を使って予防医学に応用するということで、アメリカのNIHもこれを進めております。

 先ほど、山本大臣、日本版のNIHのことを検討していただけるということで、ここにまた再生医療のことも盛り込んで、今後ますます科学技術に関してのイノベーションを期待いたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

渡海委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十七分散会


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