衆議院

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第4号 平成24年4月11日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十四年四月十一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 赤松 広隆君

   理事 石関 貴史君 理事 佐々木隆博君

   理事 田島 一成君 理事 武正 公一君

   理事 山花 郁夫君 理事 赤澤 亮正君

   理事 森山  裕君 理事 斉藤 鉄夫君

      磯谷香代子君    今井 雅人君

      緒方林太郎君    大谷  啓君

      奥野総一郎君    加藤  学君

      柿沼 正明君    笠原多見子君

      京野 公子君    小室 寿明君

      近藤 和也君    近藤 昭一君

      高井 崇志君    高橋 英行君

      高邑  勉君    中屋 大介君

      野田 国義君    橋本  勉君

      花咲 宏基君    福島 伸享君

      藤田 大助君    藤田 憲彦君

      山尾志桜里君    山岡 達丸君

      吉川 政重君    伊東 良孝君

      石田 真敏君    加藤 紘一君

      川崎 二郎君    佐藤  勉君

      坂本 哲志君    橘 慶一郎君

      谷  公一君    中谷  元君

      西村 康稔君    三ッ矢憲生君

      西  博義君    塩川 鉄也君

      中後  淳君    重野 安正君

      山内 康一君    中島 正純君

    …………………………………

   議員           武正 公一君

   議員           田島 一成君

   議員           山花 郁夫君

   議員           森山  裕君

   議員           赤澤 亮正君

   議員           斉藤 鉄夫君

   総務大臣         川端 達夫君

   国務大臣

   (郵政改革担当)

   (金融担当)       自見庄三郎君

   内閣官房副長官      齋藤  勁君

   内閣府副大臣       石田 勝之君

   内閣府副大臣       中塚 一宏君

   総務副大臣        松崎 公昭君

   外務副大臣        山口  壯君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   農林水産副大臣      筒井 信隆君

   総務大臣政務官      森田  高君

   財務大臣政務官      三谷 光男君

   参考人

   (日本郵政株式会社取締役兼代表執行役社長)    齋藤 次郎君

   参考人

   (日本郵政株式会社取締役兼代表執行役副社長)   坂  篤郎君

   参考人

   (日本郵政株式会社専務執行役)          佐々木英治君

   参考人

   (日本郵政株式会社専務執行役)          中城 吉郎君

   参考人

   (日本郵政株式会社専務執行役)          斎尾 親徳君

   衆議院調査局郵政改革に関する特別調査室長     阿部  進君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十一日

 辞任         補欠選任

  近藤 昭一君     吉川 政重君

  橋本  勉君     磯谷香代子君

  山岡 達丸君     中屋 大介君

  佐藤  勉君     西村 康稔君

  谷  公一君     伊東 良孝君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     笠原多見子君

  中屋 大介君     山岡 達丸君

  吉川 政重君     近藤 昭一君

  伊東 良孝君     谷  公一君

  西村 康稔君     佐藤  勉君

同日

 辞任         補欠選任

  笠原多見子君     橋本  勉君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 郵政民営化法等の一部を改正する等の法律案(武正公一君外五名提出、衆法第六号)


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     ――――◇―――――

赤松委員長 これより会議を開きます。

 武正公一君外五名提出、郵政民営化法等の一部を改正する等の法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として日本郵政株式会社取締役兼代表執行役社長齋藤次郎君、取締役兼代表執行役副社長坂篤郎君、専務執行役佐々木英治君、専務執行役中城吉郎君及び専務執行役斎尾親徳君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥野総一郎君。

奥野委員 おはようございます。民主党の奥野総一郎でございます。

 私は、きょうのこの日を本当に感無量で迎えさせていただきました。総務省時代、平成十年、中央省庁等改革のころから、公社法、民営化とずっと担当してまいりまして、いよいよきょう、この法案で質問をさせていただきます機会をいただきましたこと、本当にありがとうございます。

 私は、郵政事業というのは、公益を追い求めながら、追求しながら、同時に利益を上げていく、税金を投入しないで、利潤を上げながら公益を支えていくというのが郵政事業の本質だというふうに思っております。

 ところが、最近、経営状況が悪化してきた。例えば、郵便については二百六十億通あったものが今は二百億通を割っている。これは電子メールの普及あるいは景気、時代の流れだと思います。また金融についても、資金量が減っている、契約数が減っているという非常に厳しい状況にあります。こうした時代の流れを受けて、郵政事業も変えていかなければならない。そうした中で、さまざまな試みが行われ、私も担当しましたが、公社化になり、そして民営化になっていったということだと思います。

 経営の自由度を付与する、利潤を上げるという観点から、あるいは経営の透明性を確保するという観点から、株式会社化という民営化については、私は正しい方向だと思っております。しかし、現行法、平成十七年に成立した現行の制度は若干の問題があったというふうに思っております。

 一つは、ゆうちょ、かんぽを売却していく。このドル箱、稼ぎ頭の事業を切り離して、本当に郵政事業、郵便局ネットワークが成り立っていくのかという疑念が当時もありました。

 そして、もう一つは、郵便局会社、窓口だけの会社が本当に経営が成り立つのかという疑念が当時もございました。当時、いや大丈夫だ、不動産業をやっていくんだ、あるいはコンビニになっていくんだという答弁がございましたけれども、現実はどうなったかということは、この局会社が問題になったということが明らかにしていると思います。

 そして、きょう、前にいらっしゃる提案者の皆様、党派を超えてこの問題にしっかりと取り組んでいただきまして、今回、公益性を追求しながら利潤を上げるという仕組みが第一歩を踏み出したというふうに思っております。本当にありがとうございました。

 三事業、金融のユニバーサルサービス、郵便のユニバーサルサービスを確保しながら郵便局ネットワークを維持していく、そして、問題だった局会社を統合して四社体制にしていくということで、私は、これは本当に正しい方向だと思っております。また、今の民営化法では公益性というのがはっきり前面に出ていなかった。公益を追求しながら利潤を上げていく、難しいんですけれども、この公益性の基準がはっきりと示されてこなかったと思います。

 今回の法案の中で、「郵便局ネットワークの活用その他の郵政事業の実施に当たっては、その公益性及び地域性が十分に発揮されるようにする」という規定が追加をされました。この趣旨について伺いたいと思います。

武正議員 奥野委員にお答えをいたします。

 公益性、また地域性ということだというふうに思いますが、この点については、政府の提出をしておりました改革法の中でも盛り込まれていた点を、今回この民営化法の改正案に盛り込んだ点でございます。

 郵便局ネットワークの長年にわたっての国民共有の財産として築き上げられた経緯、歴史を踏まえまして、広く国民全体の利益に資する形で、過疎地を含めた全国の地域に貢献することを旨としての利用者ニーズを踏まえ、例えば、住民票の写しの交付などの地方公共団体の事務の取り扱い、地域住民の利便の増進に資するよう幅広く業務が行われるようにすべきであるとの考えに基づきまして、この規定を追加したものでございます。

 かねてより、国民生活を確保し地域社会を活性化することを目的に、または国民の権利を保障するためにということで、郵政事業の抜本的見直しに取り組むとしてきた我が党としての考え方をここに映したものと考えております。

奥野委員 どうもありがとうございました。

 公益性、そして郵便局ネットワークの維持という大きな改革をこの法案でなされたと思います。その上で、これをスタートとしてどうやって収益を会社として上げていくのかという問題が残っておりますが、これは最後に伺いたいと思います。

 ここで、何点か確認をさせていただきたいと思います。

 御存じのように、郵便局の検査監督は、一般の都市銀行、地方銀行と同じ基準、同じ方法で行われております。郵便局ネットワークの半数以上が二、三名の小規模局から占められておりまして、この小規模局が検査監督によって業務に支障を生じているといった話も耳にいたします。小規模局に十分に力を発揮していただかないと、今、武正委員の方から説明がございましたような公益性の発揮もなかなかできないということだと思います。

 そこで、金融担当大臣としての自見大臣に伺いたいんですが、私は、都市銀行、地方銀行と同じ基準で検査監督を二、三名の局に行うというのはおかしい、均衡を失しているというふうに思います。検査監督について、郵便局の業務の円滑な遂行に配慮すべきと私は考えているんですが、その点について大臣に伺いたい。また、具体的にどのような方法及び考え方で検査監督をされるのかということもあわせて伺いたいと思います。

自見国務大臣 奥野総一郎議員にお答えをさせていただきます。

 金融行政を所管する金融庁その他の行政機関においては、検査監督に当たり、当該金融機関の規模、それから特性等を踏まえた対応を行っているところでございます。

 今先生御質問のように、小規模な郵便局の検査監督においても、国会での論議、あるいは郵政事業に係る基本的な役務の確保、これはユニバーサルサービスも御存じのように今度の法律に入っておりますが、それに関する規定が設けられた趣旨に鑑み、できる限り業務の円滑な遂行に支障がないように、今、小さな局に大きな銀行に来るような検査が来ると非常に障害になるんじゃないかというような御意見も言われましたけれども、障害を生じないようにできるだけ配慮して行っていくべきものだというふうに考えております。

奥野委員 今、小規模局の検査監督については、金融大臣として御配慮いただけるという答弁をいただきました。しっかり取り組んでいただければと思います。

 続きまして、WTO等の国際協定との整合性について外務副大臣に伺いたいと思うんです。

 これは、四月七日付ですか、朝日新聞に記事がございまして、「米、郵政見直し問題視」、こう書かれておりまして、「郵政民営化見直し法案を国会に共同提出したことについて、米生命保険協会や米商工会議所など欧米の十六業界団体は六日、「強い懸念」を示す共同声明を発表した。米政府もこの法案を問題視しており、」そしてまた、「十六団体は「競争条件を公平にするよう求めてきた業界団体の長年の懸念を無視した」と強く批判。」こういう記事が出されております。

 この報道について、今回のこの民営化法等の一部改正法案がWTO協定等の国際約束に照らして問題があるのかどうかということを外務副大臣に伺いたいと思います。

山口副大臣 先ほどお尋ねいただいた件ですけれども、米国の現地時間六日に、米国生命保険協会等、米国、カナダ、欧州、メキシコの約十六団体で連名で郵政民営化法改正法案に懸念を表明する声明が出たようではあります。

 ただ、この郵政民営化法改正法案については、民主党、自民党、公明党の三党により提出されたその作成過程の中で対等な競争条件の確保についてもきちっと議論が行われたということを承知しております。

 同法案については、これから国会で議論されるわけですけれども、WTO協定を初めとする国際約束との整合性、今も確保されているし、これからも確保していくということで政府としては頑張っていきたいと思います。

 私もよくアメリカの関係者、USTRというのは議会の関係者ですから、議員さんの意向に非常に左右されるわけですけれども、この人たちと議論しているときには、例えば保険の新商品販売に関する手続については、むしろ、どっちかというとアメリカの方が今楽になっているんじゃないのかと。例えば、アメリカの会社が、金融庁長官による認可が出れば、あとはもう新商品販売にこぎつけられるわけですけれども、かんぽ生命については、金融庁長官による認可のほかに、総務大臣による認可なり、またこれからは届け出なり、どちらかということになるんでしょうけれども、そういう意味では、かんぽ生命の方がむしろ大変なんじゃないかなということを私は申し上げているような次第です。

奥野委員 これはTPPの交渉なんかにも響いてくる話だと思いますので、しっかり国益を主張していただいて、郵政事業をやっていけるように見守っていただければと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 続きまして、雇用の確保について伺いたいと思います。

 この十年間で本当に経営形態が二転三転どころか四転五転しているという状況でありまして、職員の士気が問題だと思います。皆さんがしっかり働けるように、雇用の確保が最優先だと思いますが、今回の法案で合併が生じますけれども、従前の雇用契約がしっかり確保されるのか、引き続き、日本郵便、局会社にいらした皆さんの雇用が確保されるのかについて伺いたいと思います。

田島(一)議員 お答え申し上げます。

 一般に、合併におきましては全ての権利また義務が包括的に継承されまして、労働関係の権利義務におきましても包括的に継承されるものというふうに考えております。したがいまして、社員の方々に不利益が生ずる場合はほとんどないというふうに想定しておりまして、雇用は確保されるものと考えております。

 日本郵政におきましては、今回の合併に当たりましては、雇用の確保に特に十分に配慮していただきたいと考えているところでございます。

奥野委員 雇用が確保される仕組みになっているということでございます。会社側もぜひそこはお願いしたいと思います。

 続きまして、確認をさせていただきまして、最後、経営の話を少しさせていただきたいと思うんですが、これで、ユニバーサルサービスの確保等々、経営形態論には一応終止符が打たれたというふうに私は思っております。

 そして、その上で、どうやって収益を上げていくのかということをこれから会社側にしっかりやっていただかなければならないんですが、民営化によりまして、公租公課についてはもう民間とイコールフッティングになっている、預金保険料も払っているというのが現状であります。一方で、サービスの提供については、限度額が据え置かれ、また、ゆうちょ等は原則貸し付けもできないという中で、どうやって収益を上げていくのかということであります。

 また、株式を売ると言っていますが、赤字の会社の株は売れません。企業価値をしっかり高めてやっていかなきゃいけないと思います。これは復興財源にもなると言っているわけですから、自見大臣に伺いたいんですが、できる限り早期に、企業体としての価値を上げた上で株式を処分していく、そのためには、ゆうちょ、かんぽの新規サービスについても柔軟に取り組んでいただきたいと思うんですが、この点について、自見大臣のお考えをお願いします。

自見国務大臣 お答えをさせていただきます。

 金融二社の新規業務については、内閣総理大臣及び総務大臣の認可が必要とされていますが、日本郵政株式会社による両社の株式の二分の一以上の処分後は、先生御存じのように、届け出制となる仕組みとされております。

 ただし、この届け出る新規業務についても、他の金融機関との間の適正な競争関係等への配慮、郵政民営化委員会への通知、それから、内閣総理大臣及び総務大臣による監督規定の対象となるものでございまして、こういった制度の趣旨を踏まえて適切に運営していただけるものというふうに考えております。

奥野委員 経営状況をしっかり見ていただきながら、もちろん経営努力も必要だと思いますけれども、経営陣が力を発揮できるような仕組みに、運用にしていただければと思います。

 時間もなくなってまいりまして、ちょっと早口で、駆け足で行ってしまいましたけれども、先ほどスタートだと申しましたが、これからが大変でありまして、きちんと土俵が整備されたわけでありますから、今、自見大臣にもお願いしましたけれども、新サービスも含めて前向きに検討していただいた上で、今度は経営陣の責任ということになるわけですが、経営改善に向けての社長の決意を伺いたい。

 それから最後に、この郵政事業を所管されます川端総務大臣の御決意を伺って、私の質問を終わりにしたいと思います。

齋藤参考人 今回の法案におきまして、郵政民営化の目的は、株式会社に的確に郵政事業の経営を行わせるための改革とされております。したがいまして、私どもは、郵政事業の経営を預かる者として、法律の趣旨を踏まえてしっかりと経営を行ってまいりたいと思います。

 具体的に申しますと、貯金、保険のユニバーサルサービスを全国の郵便局を通じて提供するということが新たに義務づけられておりますことから、お客様の生活に密着した郵政事業の一体的な提供が可能となるよう体制の整備を行っていくことがまず第一だと思います。

 その上で、株式の処分に向けた取り組みも行われ、できるだけ早期に株をできるだけ高値で売るということも義務づけられておりますので、そのために、一層収益性を向上させ、安定的な財務基盤を構築し、新規事業への進出もできるだけお認めいただいて、他の企業との連携など企業価値の向上に努めてまいって、できるだけベクトルを上に向けていきたい、そのために懸命の努力をしていきたいと考えております。

川端国務大臣 まず、昨年来、三党を中心とされまして協議を重ねていただいて、そして成案を得て、今回、議員立法で御審議いただく段階まで来ました。各般の御努力に改めて感謝を申し上げたいというふうに思っております。

 今回の法律の提出によりまして、将来の経営形態がはっきり形づけられると同時に、従来言われていました過度の分社化による経営の弊害、ロス、あるいは、利用者の利便性の低下等々が大きく解消されるものと期待をしております。

 この法律が、御審議の上、成立させていただけるならば、日本郵政グループとしては、今社長からお話ありましたように、新たな枠組みのもとで、経営陣が将来の経営方針を定めて、従業員に対してしっかりとその方向を示して、しっかりとやっていただくことになるというふうに期待をしております。と同時に、総務省といたしましては、法制度の適切な運用を図ると同時に、郵政事業の経営の改善、安定化を実現するとともに、引き続き、国民共有の財産である郵便局ネットワークを維持して、また、郵便局の地域における公共性、地域性が十分発揮されるよう、しっかりと監督してまいりたいと思っております。

奥野委員 以上で私の質問を終わりたいと思います。

赤松委員長 次に、中島正純君。

中島(正)委員 国民新党の中島正純でございます。よろしくお願いいたします。

 重ねまして、各党の皆様にお力と御協力をいただきまして本日のこの日を迎えることができました。心から感謝申し上げます。ありがとうございます。

 きょうは、いただいた十分の中でできれば五問の質問をさせていただきたいなと思っておりますので、早口でいかせていただきますので、どうかよろしくお願いいたします。

 今回の改正法案は、一番の目的は、何といいましても、三事業一体化によってユニバーサルサービスを実現させる、それによって経営の効率化そしてサービスの向上を図るということでございます。それによって国民の皆様が全国の郵便局を便利に使っていただけるようになるということだと思っております。

 そういった中で、撤回された、以前の郵政改革法案では、郵政民営化により郵政事業が縦割りに分社化された結果、郵政事業の経営基盤が脆弱となっていることに対して、郵政事業の経営形態の見直し、郵政事業の基本的なシステムが利用者にとって郵便局で便利に、一体的に利用できるようにするとともに、将来にわたってあまねく全国において公平に利用できることを確保するための改革法案でありましたが、今回、三党合意によって新たな法律案を提出していただきました。

 その内容は、第一条の目的の部分こそ異なるものの、改正案には、経営形態の見直し、ユニバーサルサービスの提供などが盛り込まれていることから、その基本的な方向としては、本改正案とさきの改革法案では同じ方向を向いていると考えますが、それでよろしいでしょうか。

武正議員 中島委員にお答えいたします。

 今回、政府提出法案を取り下げて衆法を出すというのは、昭和三十年代以降では初めてのケースに当たります。

 今御指摘のとおり、改革法でうたった、分社化の弊害を解消する点、あるいは金融ユニバーサルサービスの確保といった点については、今回の改正法案に盛り込まれたところでございます。

中島(正)委員 ありがとうございます。

 それでは、引き続き提出者にお伺いをいたします。

 現在の日本郵政は、分社化によって三事業一体の運営が損なわれております。それによって利便性が低下しております。日本郵政は、郵便、銀行、保険の三つのサービスを郵便局で一体的にあまねく全国で利用できるようにする必要があります。

 本法案では、郵便、金融窓口業務についてのユニバーサルサービス義務を負うということになっておりますが、親会社である日本郵政株式会社は、その責務の履行のためにどのような措置を講じていくのでしょうか。

山花議員 委員御指摘の点でございますけれども、昨日の参考人質疑でも、檜原村の村長さんから、やはり都市部と違って、金融は人口密度の低いところ、過疎地においては非常に重要だという御意見もございました。

 今回の法律案におきましては、そのユニバーサルサービスの責務を日本郵政株式会社に課すという形になっております。

 その上で、日本郵便株式会社の一〇〇%の株主という立場になりますので、同社の銀行・保険窓口業務が適切に行われるように、経営管理や必要な株主権の行使であるとか、具体的に言いますと、役員人事、定款の変更、維持などについて関与を行うという形になります。また、金融の二社につきましては、その株主という立場になりますので、銀行、保険会社として日本郵便株式会社に対する業務委託が適切に行われるように、必要な株主権の行使をする、具体的に申し上げますと、金融ユニバーサルサービスを定めた定款の維持などについて関与を行うという形になります。

中島(正)委員 ありがとうございます。

 ユニバーサルサービスを実現される、その点だけは何とかよろしくお願い申し上げます。

 引き続きまして、提出者にお伺いをいたします。

 本改正案第七条第二項において、金融二社の株式処分について、「郵便貯金銀行及び郵便保険会社の経営状況、次条に規定する責務の履行への影響等を勘案し」とありますが、具体的に、会社の経営状況などにどのような内容を勘案することとなるのでしょうか、お伺いいたします。

山花議員 この七条二項の規定に関してですけれども、具体的に何を勘案するのかということは、その売却の時点で、一義的には日本郵政株式会社の経営判断に委ねられるということになろうかと思います。

 ただ、その上で、ではどういったことを勘案するのかということで、こういう条件のときと言うことは余り適切でないかもしれませんけれども、一応、想定されることについて幾つか挙げますと、その時点における金融二社の経営状態であるとかその後の経営の見通しというのが一つあろうかと思います。そしてまた、今御質問いただきました金融ユニバの確保をどう見通していくのかということが一つ大きなポイントになろうかと思いますし、あと、株式市場の動向ですね。それは、そのときの株価がどうなっているかで、もちろん高いときに売ろうというインセンティブが働くことになろうかと思います。また、政府による日本郵政株式会社の株式処分の動向がどういう状況になっているか、さらには、日本郵政株式会社や日本郵便株式会社の経営状況がどういう状況であるか、こういったことなどを勘案した上でのものとなるというふうに想定をいたしております。

中島(正)委員 ありがとうございます。

 それでは次に、かんぽの宿のことにつきまして、また提出者にお伺いをいたします。

 かんぽの宿等につきましては、郵政公社時代から赤字が続いていた施設は数カ所を一括して売却しております。現行法では、平成二十四年の九月三十日までに残りの施設を譲渡または廃止すると定められております。しかし、平成二十一年一月のオリックス不動産との契約を解約した後、同年十二月に凍結法が成立したことで、かんぽの宿の売却はストップしたままであります。

 本法案では、貴重な公共の財産であるかんぽの宿等についてはどのように扱われるのか、お伺いいたします。

田島(一)議員 お答え申し上げます。

 かんぽの宿やメルパルクは、今御指摘をいただきましたとおり、現在は、郵政株式処分凍結法によりまして、譲渡または廃止の義務が停止をされているところでございます。現在も、こうしたかんぽの宿、またメルパルクは多くのお客様に利用されておりまして、今回の東日本大震災の被災者を受け入れる実績もあるというふうに仄聞をしているところでもございます。

 この法案におきましては、業務をやめなさいであるとか、また逆に続けなさいという強制力はこの法律の中には盛り込んでおりませんで、会社の経営判断に委ねることというふうにしております。会社が今後業務として続けていくのでありますならば、さらなる経営改善を期待しているところでございます。

中島(正)委員 ありがとうございます。

 かんぽの宿につきましても、やり方次第では黒字に転じるかなというふうに思っております。経営改善の方をしていきたいというふうに思います。どうかよろしくお願いいたします。

 最後に、自見大臣にお伺いをいたします。

 先月、郵政民営化委員会から、郵政民営化の進捗状況についての総合的な見直しに関する郵政民営化委員会の意見の報告が提出されました。しかし、この中では、全国銀行協会や生命保険協会、在日米国商工会議所から聴取した意見を記載しているものの、肝心なユーザーである一般国民からは全く意見を聞いておりません。さらに、郵政民営化委員会は、昨日の参考人質疑においても問題となりましたけれども、民間金融機関が存在しない地域がわずか二十三町村と、地域の切り捨てを正当化するような主張を行っておられる。

 このように、現在の民営化を支持する意見のみを聞き、肝心な国民の意見を聞かない不平等な現在の郵政民営化委員会に疑問を感じます。今後の郵政民営化委員会のあり方について、その人選についてはどうされるのか、政府の御見解をお伺いいたします。

自見国務大臣 中島議員に答弁をさせていただきます。

 新たな郵政民営化委員会の委員については、すぐれた見識を有する方のうちから内閣総理大臣が適切な方を選任することとなっておりまして、私からコメントは差し控えたいと思っておりますが、一般論として言えば、こうした委員会等の委員については、意見、学識、それから経験等が公正かつ均衡のとれた構成となるように留意すべきものだというふうに考えております。

中島(正)委員 提出者の皆様、大臣、ありがとうございました。この法案が成立する瞬間まで各党の皆様、お力と御協力をどうかよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

赤松委員長 次に、中谷元君。

中谷委員 自由民主党の中谷元でございます。

 本日、郵政民営化改正法案が審議されるわけでありますが、これまで政党間で協議をされ、取りまとめをされた共同提案者の皆さん、御苦労さんでございます。また、自見郵政担当大臣、今から十五年前ですけれども、平成九年に、郵政省最後の大臣として、私は最後の政務次官として大臣にお仕えをさせていただきました。本日は野党席から質問をさせていただきますが、よろしくお願いいたします。

 さて、今から七年前の平成十七年、民間ができることは民間にの思いから、郵政民営化法が成立をしました。そして平成十九年の十月に、郵政民営化法施行後、日本郵政グループが発足をしました。

 自民党では、よりよい郵政三事業のあり方を追求していくために、郵政民営化推進に関する検証・検討プロジェクトチームが立ち上げられまして、三年目の見直しを行うに際しまして、郵政各社はもとより地方の特定局、銀行業界、生保業界など関係者から十数回の聞き取りを行いまして、平成二十一年三月、その取りまとめを行いました。

 お手元に資料を配付させていただいておりますけれども、これは、運用による改善と法律の改正の検討の提言をいたしまして、当時、自由民主党の総務会で了承されたものでありますが、三年前は、まだ民営化三年後ということで、法の改正は時期尚早という結論でございました。

 しかし、今回の郵政民営化改革法案は、この見直しをもとに、党内で、PTで議論を重ねまして、賛成、反対の意見はありましたけれども、トータル数百時間の真摯な議論を積み重ねた結果でございます。

 民主党の提案者に伺いますが、政権与党である民主党におきまして、この郵政民営化改革法案について、いつ、どのような議論、どれだけの時間をかけて本日の結論に至ったのか、お伺いをいたします。

武正議員 中谷委員にお答えをいたします。

 平成十九年の民営化以降、我が党は野党時代でしたが、党総務部門会議、また三党での郵政事業見直し検証委員会での議論、そしてそれをマニフェストに郵政事業の抜本見直しとして記載したのが平成二十一年でございます。

 政権交代後、郵政改革関係会議ということで十六回議論を経て、政府の法案を提出し、その後、去年は、郵政改革法のワーキングチームで七回議論を行い、そして昨年九月以降は、三党協議というものが始まりましたので、民主党の総務部門を中心に議論を行ってまいりました。

 三党協議の経過、進捗状況については、党の政策にかかわる党議の決定方法に沿って、総務部門会議、政調役員会等において随時、報告、協議を行ってまいりました。また、党を挙げて取り組もうということで、民主党の幹事長室、また国会対策委員会の担当とも常に連携をし、党内の議論を行ってまいったところでございます。

中谷委員 私は余り見えてこなかったので、政権を担う党としては、全員参加の開かれた、オープンな議論があってもよかったというふうに思います。

 ポイントは株の売却問題でありまして、民主党は今から二年半前に、株式凍結法案、これを強行採決もして、この法案が成立されました。この法案のおかげで民営化の作業が二年半おくれました。PBRも下がりまして、株を売るチャンス、タイミングを逃した。そしてその結果、この間、新しい事業の認可も限度額の拡充も認められずに、郵政民営化をしたメリットを著しく損ねたということでありますが、民主党はこの株式凍結法案を出したことをどう総括しておられるのか。そして、なぜ今の時点においてもこの株式凍結法案を取り下げていないのか。本来、ゆうちょ、かんぽが自由裁量を求めるなら、もっと早期に株の売却凍結を解除すべきではなかったかと思いますが、いかがですか。

武正議員 先ほどお答え申し上げましたように、野党時代からの郵政事業の抜本見直しという中でこの凍結法を提出してまいりました。野党時代は、参議院では可決、衆議院で継続あるいは否決ということを通ってきたわけでございまして、今回、政府の改革法案では、法律が通りますとこの凍結が解除という仕組みになっておりまして、今回の民営化法改正法案でも同様の仕組みになっております。

 振り返ると、この二年間、国会に判断が委ねられながらこの法案の審議がなかなかできなかったという中で、今回、先ほど触れましたように政府案を取り下げ、そして民営化法の改正ということで三党が合意をして提出をした背景というものはしっかりと踏まえていく必要があろうかと思います。やはり今の状況を一刻も早く打開すること、そしてまた、特に昨年、震災発災後、復興財源確保法附則十四条に基づいて、日本郵政の株式の売却、速やかにといったことなどを踏まえての今回の提出ということになっているかと存じます。

中谷委員 私は、株の売却を凍結したことが諸悪の根源だと思っています。

 というのは、先ほどPBRの話をしましたけれども、これは株式の純資産倍率ということで、一株当たりの純資産の何倍まで株価が買われているかということを示す指標であります。例えばメガバンク、六年前はPBRは一・七でありました。ところが現在は、三井住友フィナンシャルで〇・八、そして三菱UFJフィナンシャルで〇・六九、一を割り込んで、きのうのPBRを見ましたら、実績は〇・五八でありました。

 これでいきますと、額面十兆円弱の日本郵政株を売却しても六兆九千億から八兆程度でしか売却できない可能性が高くなっておりますが、きょうは日本郵政の齋藤社長、お越しをいただいております。今、日本郵政の成績も悪化をしまして、郵便局の手数料も減少してきておりますが、これは制度が悪いのか、それとも経営努力が足りないのか、また、時代の流れなのか、そして、私が申し上げました株式売却を凍結したことが悪いのか、どう判断されておりますか。

齋藤参考人 先生御指摘のとおり、郵便、銀行、保険の三事業は、民営化以前から、郵便物の数、それから預金残高、保有契約数等がいずれもずっと減少が続いておるわけでございます。郵便につきましては景気の低迷、電子メールの普及とか、金融については低金利の長期化、集中満期等の要因もあったというぐあいに考えておりますけれども、いずれにしろ、全てのベクトルがマイナスの方向を向いていることは確かでございます。これは民営化以前から続いている傾向でございます。

 民営化以降、こうした減少傾向に歯どめをかけるべく営業努力や業務の効率化に一生懸命努めておりまして、当面の水準は、平成二十三年度でグループ全体で経常利益は一兆を超える一兆六百億円、それから税引き後の当期純利益も四千三百億円ということで、何とか社員の頑張りと私どもの経営努力で一定の経営水準を確保しているということは申し上げられると思います。

 ただ、今後の見通しとしては、いろいろな厳しい経営環境のもとで非常に厳しい状況にあるということは間違いございませんので、関係方面に、新規業務など規制緩和をお願いし、経営の自由度を高めていただけるよう強く要望してきたところでございまして、これは、この新法の成立を契機として、ぜひともお願いをしたいと考えております。

中谷委員 これからも厳しい状況が続くということですが、だから私は、民営化をして、早期に株を売却して、手足を縛った状態を外すことが必要だということです。

 PBRを一以上にするためには、株の売却益、売却収入、これを新規投資に回すことで収益力を高めて潜在的な成長力を上昇させるということが必要でありまして、そのためには、今後、株を速やかに売却していくことが必要でありますが、この法案が成立しますと株の売却問題が出てまいりますが、自見大臣、この株の売却についてどうお考えですか。

自見国務大臣 中谷議員にお答えさせていただきます。

 郵政民営化法成立時の骨格経営試算においては、株式売却額を推計することは市場動向等にもよるものであり困難であるとしつつも、先生御存じのように、民営化時点での郵便貯金銀行、郵便保険会社の資本の額はそれぞれ二・五兆円あるいは一・四兆円と見積もった上で、金融二社の株式売却額をこの程度以上と見込んでいたものだというふうに承知をいたしております。

 皆さん方に大変御努力いただいた今回の案では、市場動向等に加え、金融二社の株式について、日本郵政株式会社はその全部を処分することを目指すとされている以上、日本郵政株式会社が、今さっき齋藤社長さんも言われましたけれども、経営判断に基づいてその処分量を考えるものであるから、現時点では売却収入を具体的に見込むことは難しいというふうに考えております。

中谷委員 それでは懸念が生じます。というのは、今回の法改正で地域貢献基金というものがなくなってしまいますけれども、それでは、将来、郵便局維持のために一体どのような運営を行っていくかというためには、先ほど言ったような税外収入、株の売却収入、これを新規投資に回すことで会社の株の資産価値を上げることが必要であるし、また、経営の自由度、限度額の撤廃、がん保険の新規拡充、企業に向けた融資を行う政府金融機関との連携など、こういったことを早期に認めさせることではないかと思いますが、川端大臣に伺います。

 その肝心の株の売却は、復興財源の捻出ということが報道されますが、それありきなのか。やはり東日本の大震災の復興財源とこの郵政問題はリンクすべきではなくて、別々に考える課題であると思いますが、政府としてのお考えはいかがですか。

川端国務大臣 お答えいたします。

 復興財源、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法の中で、「日本郵政株式会社の経営の状況、収益の見通しその他の事情を勘案しつつ処分の在り方を検討し、その結果に基づいて、できる限り早期に処分する」ということでありますので、復興財源への充当が一応は法的に見込まれているものであります。できるだけ企業が経営努力によって企業価値を向上させて速やかに上場ができるように、これは上場する手続でも二年以上かかりますので、努力をしていただくことを注視してまいりたいと思います。

 なお、一方で、今の日本郵政の株式でございますが、日本郵政の保有する金融二社の株式の処分については、日本郵政が法律の規定に適合するように適切に判断されるものと思っております。

中谷委員 それでは、当分、新規事業においてはなかなか認められる条件ができないということであります。しかし、郵政は、国債を利ざやで運用して、貯金を集めての経営で賄うということには限界がありまして、今後、二〇一七年までは代理店契約が義務づけられておりますが、それ以降、かんぽ、ゆうちょからの手数料が入りますけれども、一兆円の運用基金がなくなった場合に、どのように継続を確約されるのか、その将来像についてどうお考えなんでしょうか。

自見国務大臣 お答えをいたします。

 今回の案においては、日本郵政株式会社及び日本郵便株式会社に対して郵政事業の基本的な役務を確保する責務を課しており、そのために必要な手段は日本郵政株式会社等に委ねられているというふうに理解をいたしております。

 日本郵政株式会社が法律に規定された責務を履行することにより、ユニバーサルサービスは確保されるものというふうに考えております。

中谷委員 答えになっていないんですが、もう一点ちょっと深く聞きます。

 許認可に関して、金融二社の株式が二分の一売却された後は、新規事業が許可制から届け出制に移るとされておりますけれども、それぞれ、預け入れ限度額の撤廃、住宅ローンへの進出、第三分野への進出といった、経営の自由度を上げてほしいということにおきまして、株式の二分の一までの許可の範囲をどう考えていくのか。二分の一売却後は、こういったものは、届け出をされれば認めていくと考えてよろしいんでしょうか、自見大臣。

自見国務大臣 中谷先生御存じのように、この法律のたてつけでございますね、金融の方は一般の銀行法の業法の適用を受けますし、また保険業についても当然保険業法の一般の業法の適用を受けるわけでございますから、そういった一般業法としての規律、規制が当然いろいろあるわけでございます。

 それを守りつつ、実は、先生御存じのように、今の法律では、この上に上乗せ規制というのがございまして、これは非常に優越的地位にあるわけですから、それをどういうふうに国際的にもWTOの精神に違反しないようにきちっとやっていくかということは、大変この法律の肝だと私は思っております。

 そういった意味で、この二分の一を売った後も、処分後も実は届け出制というのを、これは上乗せ規制としてございまして、他の金融機関との適正な競争関係への配慮義務、民営化委員会への通知、必要に応じて関係各大臣への意見、それから内閣総理大臣、これは実際は委託されている金融庁の大臣、金融大臣になると思いますが、及び総務大臣による監督上の命令、そういった上乗せ規制があるわけでございます。

 確かに、これをできるだけ自由化して利益を生んでいただきたいということもございますが、同時に、国際的にWTOからも懸念をされております。そういった問題もあるわけでございますから、そこら辺は、実に細心な、きちっと国際情勢を見詰めて、なおかつ国際的なWTOの基本的精神、しかし同時に、その中でしっかり経営努力として日本郵政に頑張っていただかなきゃいけませんから、そういったバランスの上にこういう法律ができたんだろうというふうに私は思っております。

中谷委員 答えは、もうできるだけ早く株を売却して、民営化を進めて、民間企業並みの経営体制と発想を持って経営努力をしていくということではないかと思います。

 そこで、各党の法案提出者に伺いますが、郵政会社の人事につきまして、やはり、より民間の経営者の発想、経験を生かして意識改革をして、収益性の高い事業ができるようにすべきでありますが、現在、旧大蔵省出身者で人事がなされておりますが、これに政府保証がつきますと、役人がトップに君臨して、どう見ても国策金融会社、民営圧迫という印象が、体制ができると思いますが、この人事のあり方について各党の代表者から御意見を伺いたいと思います。

森山(裕)議員 お答え申し上げます。

 個別論につきましては、株主である政府に判断が委ねられていると基本的に認識をいたしております。一般論で申し上げますと、やはり天下りの弊害というのは除去されるべきであろうというふうに思います。

 以上であります。

田島(一)議員 お答え申し上げます。

 ただいま提出者森山議員からもお答えがありましたように、いわゆる天下りの弊害は、あたう限り除去すべきだというふうに考えております。

 また、経営トップの人事につきましては、政府が今後判断をされていくものでありますので、適切に判断されるものというふうに考えております。

斉藤(鉄)議員 お答え申し上げます。

 民営化の本質は、会社の経営に民間的手法を取り入れるということにあると思っております。そういう意味では、その民間的な経営に秀でた人が経営者になるべきだ、このように思っております。

中谷委員 最後に申し上げますが、今回の共同提案、共同修正というのは、ベストではないが、国民のためにベターな選択だとして進めていくべきだと考えます。公益性と収益性、ユニバーサルサービスとイコールフッティングという難しい課題がありますので、せっかくこの協議ができたわけでありますので、今後、ぜひ政党間の協議を継続して、よりよい郵政事業にしていただきたい。

 そして、齋藤社長におかれましては、これまで見直しが前にも後ろにも進まずに、職員の士気の低下、閉塞感、また経営の見通しに対する危機感も、我々が想像する以上に大変なことではなかったかと思いますが、これからは多少なりとも前が開けてくると思います。今後は、この法律の改正を契機に、郵政グループのトップとして、職員の士気を鼓舞し、お客様である国民に一層のサービスの向上と利便性の追求に努めていただきたいということを要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

赤松委員長 次に、西村康稔君。

西村(康)委員 自由民主党の西村康稔でございます。中谷委員に続きまして質問をさせていただきたいと思います。

 もう既にいろいろな議論がなされているとおり、郵貯、簡保、今でも合わせて三百兆近いお金があって、これは日本にとっての大事な財産であります。これを、国債だけではなくて、いかに日本経済を活性化するのに活用できるかということ。そしてまた、他方、全国津々浦々にある郵便局ネットワーク、これも日本にとって大事な財産であります。この二つをしっかり守りながら郵政民営化をやろうというのが我々の考えでありましたけれども、政権交代後の硬直状態の中で両方の財産を失いつつある。残高は減っておりますし、郵便局も地方で大変厳しい思いをしている。そんな中で、何とか打開しようということで、今回、三党の合意、ぎりぎりのところで案が、方向性が出されたものというふうに認識をしております。

 私は自民党の財務金融部会長という立場でありますので、その立場から、きょうは、民間金融機関との対等の競争条件を中心に、幾つかの規定について確認、質疑をしたいというふうに思います。

 まず最初に、自民党の提出者に伺いたいと思いますが、自民党は郵政民営化の方針を掲げてきたわけですが、ゆうちょ、かんぽの全株売却をやるというこの方針に変わりはないのかどうか、この点についてまず確認したいと思います。

赤澤議員 西村委員の質問にお答えをいたします。

 金融二社の株式の全株処分の方針については維持をしているということで、具体的な規定を申し上げれば、第七条第二項において、その全部を処分することを目指し、両社の経営状況、ユニバーサルサービス責務の履行への影響などを勘案しつつ、できる限り早期に、処分をするということが義務づけられております。この規定に沿って、日本郵政株式会社によって処分が進められるものと理解をしております。

西村(康)委員 全株売却の方針は変わらないということでこの規定ができたものというふうに理解をしておりますが、その株式が、売却の過程でまだ出資が残っている状態が続くわけですが、仮に二分の一以上売却をしたとしても、民間との適正な競争条件が図られるのかどうか。この点について幾つかの規定が置かれておりますが、きのうも銀行協会からその対等条件について懸念の意見表明がありました。

 きょうは、農水の副大臣にお越しいただいています。農協、漁協からも同様の懸念が既に示されておりまして、確かに田舎で競合しているわけでありますけれども、この株式、政府の出資が残存している状態において、適正な条件が保てるのかどうか。その段階において、新規業務を認めたり、あるいは限度額の引き上げをやること、これは対等条件なのかどうか。この点について、農水省の見解をお伺いしたいと思います。

筒井副大臣 農水省は政府全体の範囲に入りますから、農水省としての政府と違った見解はありません。自見大臣等々が今まで答弁されてきたことと全く一緒でございます。

 ただ、今言われました、全中を初めとした農業関係団体、漁協関係団体はこういうふうに主張をしております。出資が残っている段階では官業とみなさざるを得ない。だから、民業圧迫をしないように、民業の補完をするように、きちんと対応していくべきだ。特に、預け入れ限度額、保険加入限度額、これらを維持すること。そして、新規業務を規制すること。これらの点を強く主張しているというふうに承知をしております。

西村(康)委員 その懸念についての規定が幾つか置かれていますが、後でまた幾つか御質問したいと思いますが、アメリカも幾つか懸念、先ほども議論がありました。民主党政権はTPP参加に向けての交渉を開始されておりますが、この民間金融機関との対等条件について、石田副大臣、訪米されていろいろ議論をされてきたと伺っておりますので、アメリカがどういう考えを示したのか、ぜひお伺いしたいと思います。

石田副大臣 西村委員にお答えいたします。

 先般、私は、TPPに関する情報収集と意見交換のために訪米いたしまして、マランティスUSTRの次席通商代表、それからホーマッツ国務次官、関係団体の関係者、また有識者等と意見交換をしてきたところでございます。

 その意見交換の場では、まず公的医療保険制度の変更や混合診療の導入、また単純労働者の受け入れ等は求めないということを改めて確認いたしました。

 米側から、自動車、それから保険について、関心事項として指摘をされました。その中で、保険について、郵政民営化法改正案の動きについて懸念が示されたところであります。私の方からは、私が行ったときはまだ法案の趣旨説明がされる前でありましたので、また議員立法でありますので、しかし法案の概要について御説明を申し上げました。先方は具体的な内容について誤解をされている印象がありましたので、改めてしかるべき時期に法案について説明をするという旨を申し上げたところでございます。

西村(康)委員 TPPについては、またどこかで別の機会に議論させていただきたいと思いますが、今のお話のとおり、農協、漁協といった田舎の民間の金融機関、アメリカの金融機関、それからきのうは銀行協会あるいは生保、そういったところから、民間の金融機関が対等の条件で本当に競争できるのかという懸念が示されているわけでありまして、この法律の運用が物すごく大事になってくるわけであります。

 その中で、まず自民党の提出者にお伺いしますが、そうした対等条件を確保していくという観点から、まず、この預け入れ限度額あるいは保険の限度額、上限ですね、これについて当面は引き上げをやらないということで認識をしておりますが、その点、どうお考えですか。

赤澤議員 西村委員にお答えをいたします。

 限度額については、民営化法の第百七条それから百三十七条に基づいて、他の金融機関などとの間の競争関係、それから金融二社の経営状況などの事情を勘案して政令で定めることとされております。

 具体的な額は法律事項ではございませんが、このたびの法律が施行されたからといって、考慮すべき事情が急に変わるわけではないと考えられることから、提案者としては、当面は引き上げないことが適当と考えております。

 政令改正をしようとするときは、民営化委員会の意見を聞かなければならず、また、パブコメも予定されております。政府の判断の透明性、公正性は確保されるものと理解しておりますし、限度額の政令委任の仕組み、額を政令で定める際の判断要素は、現行法と変わりがございません。

西村(康)委員 自見大臣に、今の点だけ確認をしたいと思います。引き上げは当面行わないということでよろしいですか。簡潔にお願いします。

自見国務大臣 ただいまの提案者の答弁の趣旨に沿って制度を運用してまいりたいというふうに思っております。

西村(康)委員 ありがとうございます。

 提案者に、もう一点お伺いします。

 仮に二分の一以上の株式を売却した場合に、新規業務は認可制から届け出制に変わるわけですが、預け入れ限度額の引き上げについては当面行わないということだと思いますが、この段階でも出資が残っているわけで、この段階での引き上げについてどうお考えか。

 本来なら、何年までに全株を売却するという計画があって、その中での移行過程ということで、あわせて段階的な引き上げというのが考えられるんじゃないかと思いますが、そういう方向性、計画のない中での引き上げはあり得るのかどうか、立法者の意思をぜひお伺いしたいと思います。

赤澤議員 西村委員にお答えを申し上げます。

 個別の事案については、今後の経済情勢、社会情勢、あるいは二社の経営状況、さらには金融市場の状況等を総合的に勘案して、政令で引き上げが行われるかどうかの判断がされていくと理解をしておりますので、必ずしも計画がなければできないかといったような個別の事案について、今ちょっとお答えができるわけではございません。

 しかしながら、先ほど御説明をした法律の趣旨に従って、しっかりと、当面というものが崩れるような事情の変更があったかどうか、そこを適正に政府に御判断いただき、さらには民営化委員会の意見も聞き、パブコメも踏まえて手続が踏まれていく、そのような中で、きちっと納得の得られるものが運用されると理解をしております。

西村(康)委員 民営化委員会にも判断できる余地があって、そこで、その意見も尊重しながら対応するということだと思いますが、先ほど申し上げた、認可制から届け出制に変わる、新規業務について、株式を二分の一以上売却した場合、この場合も届け出制に変わりますけれども、民営化委員会に通知がされ、そして民営化委員会が意見を言う。

 そして、この民営化委員会が、対等な競争条件とならない、なっていないという判断をした場合には、これは総務大臣にぜひお伺いをしたいと思いますが、総務大臣は、それを尊重するのか。この法律のたてつけからいうと、それを尊重することになるんだと思いますが、その上で、内閣総理大臣と総務大臣は監督上の措置をとるということになっておりますが、総務大臣として、例えば、新規業務の届け出がなされた後、民営化委員会がこれは対等ではないというときに、停止の命令を行うのかどうか、この点について確認したいと思います。

川端国務大臣 お答えいたします。

 その時期でのどういう状況であるのか、先ほどの提案者の御説明でも、いろいろなそのときの状況が、今のところは全く変化がないから変えないというときに、どういう変化なのかということの状況で個別にいろいろあると思うんですけれども、もともとこの法律の立て方としては、今の通知の義務は百十条の二の三項に書いてあるんですけれども、その前提として、郵貯銀行は、「前項後段の規定により業務を行うに当たっては、」ここからですね、「他の金融機関等との間の適正な競争関係及び利用者への役務の適切な提供を阻害することのないよう特に配慮しなければならない。」ということが大前提としての仕組みでありますので、それをしっかり踏まえて対応したいというふうに思っております。

西村(康)委員 多くの民間の金融機関から懸念が表明されておりますので、実際の運用に当たっては、民営化委員会の意見も尊重していただきながら、適正な運用、民間金融機関との対等な競争条件ということをぜひ頭に置いて運用していただければと思います。

 そこで、重要になるのが民営化委員会でありまして、この人選が非常に大事なわけであります。民間との競争関係をしっかり判断できる方になっていただかなきゃいけないわけですが、そしてまた、過去も、民営化のいろいろな調査審議に当たっては、各団体、先ほど申し上げたような懸念を表明する団体からのヒアリング等も行っておりますが、今後の運用に当たってぜひ適正な人選をしていただきたいということ、これについてはぜひ官房副長官にお伺いしたいと思うんです。

 これは国会同意人事ではありませんけれども、国会同意人事並みに与野党でしっかり協議をして適正な人選をやっていただきたい、この点について官房副長官にお伺いしたいと思いますし、自見大臣には、ぜひ、民営化委員会において適正なヒアリングの機会を設ける、そうしたこともしていただくように運用していただきたいと思いますが、この二点についてお伺いしたいと思います。

齋藤内閣官房副長官 お答えさせていただきます。

 まさしく西村委員御指摘のとおり、郵政民営化委員会の委員については、国会同意人事ではございません。しかし、また、法律に基づきまして、すぐれた識見を有する者のうち、内閣総理大臣が任命することとされております。

 ただいまの御意見もございますが、委員の人選に当たりましては、郵政民営化委員会の重要な職務に鑑みまして、適切な方が任命されることが肝要だと認識しているところであります。

西村(康)委員 この国会の審議も踏まえていただいて、ぜひ適正な人事をやっていただきたいと思います。

 自見大臣に、そうしたヒアリングの機会を設けていただくようお願いをしたいと思います。

自見国務大臣 西村議員から、御存じのように、これは届け出制でございますが、新規業務届け出は、単なる届け出ではなく、私がさっきから何度か申し上げ、先生もよく御理解しておるように、他の金融機関への配慮義務が課されておりまして、それから、民営化委員会への通知により同委員会でチェックされるもの、それから、最後には内閣総理大臣と総務大臣による監督上の命令の規定があるわけでございますから、そういった上乗せ規制がしっかりある。

 同時に、先生が今話題にしておられました、実際の届け出の際にも、例えば、金融二社が具体的にどのような配慮をするか、ヒアリング等を通じて把握するなど、制度を適切に運用してまいりたい。

 そして、郵政民営化委員会の意見を尊重しなければならない旨の規定は設けられておりませんが、相当な理由がないにもかかわらず民営化委員会の意見を考慮しないという事態はないというふうに考えておりまして、御意見もしっかり踏まえながら、適切に対処してまいりたいというふうに思っております。

西村(康)委員 今、金融二社のヒアリングと言われましたけれども、これは、関係する、競合する団体のヒアリング等も行っていただくと理解していいですね。うなずかれましたので、そういうふうに理解をしたいと思います。

 それから、五十嵐副大臣にお越しをいただいております。

 対等条件の中で、銀行業務や保険業務を日本郵政に委託する際の手数料に係る消費税について、これまで日本郵政あるいは総務省からは非課税措置についての要望がなされておりましたが、今後、対等条件ということを考えれば、これを認めることはないですねということを確認したいんですが、いかがですか。

五十嵐副大臣 お答えいたします。

 二十五年度税制改正においてもこの問題について引き続き検討を加えるということになっておりますけれども、基本的な消費税のあり方として、薄く広く消費全般にかけるという税の性質からいって、そのような特定の業務、特定の団体について減免するということは困難というふうに思っております。

西村(康)委員 ありがとうございます。

 以上、民間金融機関との対等条件について、ぜひ、この法の趣旨あるいは立法者の意思、この審議を踏まえて対応していただきたいと思います。

 最後に、きょうは坂副社長にお越しをいただいておりますので、ぜひ日本郵政も努力をしていただきたい。私の田舎の郵便局も、個々にはそれぞれ頑張っておりますが、大変厳しい状況の中で、先ほど申し上げた硬直状態の中で、なかなか新しい展開が見えない状況であったわけですが、もともとは、地域に密着して、地域の皆さんから信頼される郵便局であったわけでありますので、その財産を生かして、これまでも、一部でやっておられる住民票の交付であったり、あるいはパスポートを取得したりとか、都会にまで行かないと田舎ではなかなかできないようなことを、田舎のワンストップサービスの窓口として、福祉のいろいろな機関を紹介したりとか、いろいろな地域の相談事に応えていく、そういう存在であっていただきたいと思いますので、郵便局はそうした努力をぜひ地域でやっていただきたいと思いますし、必要な規制緩和は我々応援をしたいと思いますので、その点についての決意だけをお伺いしたいと思います。

赤松委員長 質問時間が終了しておりますので、簡潔に答弁ください。

坂参考人 簡潔に申します。

 先生御指摘のとおりでございまして、この御審議中の法律で決められております郵便、貯金、保険の三事業、それは当然でございますが、そういったものに加えまして、やはり郵便局の存在というものをいかにうまく使っていくか。そのために、いろいろなサービスも、自治体とも御相談をし、あるいは、最近、社会保険庁さんの、機構なんかともやっておるのでありますが、そういうこと、あるいは、例えば昔からやっているふるさと小包なんというものも、もう少しいろいろ工夫の余地があろうかと思います。そうしたことを精いっぱいやっていきたいというふうに存じております。

 どうもありがとうございました。

西村(康)委員 ありがとうございました。これで質問を終わります。

赤松委員長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 初めに、長年にわたる懸案でありました郵政改革に関する議論が提案者を初め関係者の皆さんの御尽力で自民、民主、公明三党の合意に至ったこと、深く敬意を表したいと存じます。

 時間が限られておりますので、質問に入ります。

 今回の郵政民営化の見直しは、次の三つの視点がポイントだというふうに思っております。一つ目は郵政三事業を引き続き一体的に行えるようにすること、それから二つ目は地域における金融機関を存続させること、三つ目は民間との公平な競争条件を確保する、こういうことだと考えております。これらの視点を踏まえて、以下、順次質問をさせていただきます。

 まず初めに郵政民営化についてでありますが、本法案における目的規定の改正については、形式的には五社体制から四社体制への移行に伴う改正だというふうに理解しております。現行法の目的規定には、平成十六年九月十日に閣議決定された郵政民営化の基本方針に則して行われる改革、これを郵政民営化というふうに定義しておりますが、さらに加えて、この基本方針には、基本的視点、組織形態の枠組みや各事業会社のあり方などが示されております。今回の改正案では、この基本方針に則して行われる改革を変更し、株式会社に的確に郵政事業の経営を行わせるための改革、これを郵政民営化として、定義の変更を行っているわけでございます。

 一般的に民営化とは、国や地方公共団体が経営していた企業や特殊法人などが民間企業に改組されたり、運営を民間委託されたり、民間に売却される等の形態を指しております。その際、根拠法の廃止や改正によって商法上の会社となりますが、公社、公団、現業事業などが特殊会社に移行する、このことも含めて民営化というふうに言われております。

 現行法では、基本的視点、組織形態の枠組みや各事業会社のあり方など、民営化するための手段が含まれております。これらの手段が目的化すると、本来の民営化の趣旨が損なわれかねないということになりますが、今回、改正されましたことにより、一般的な定義に即した内容となって、法の目的が非常に明瞭になったというふうに私は評価をしております。

 目的規定の改正に関し、実質的な意義についてどのようにお考えなのか、提案者にお聞きをしたいと思います。

斉藤(鉄)議員 西委員にお答え申し上げます。

 現行法の目的規定は、先ほど委員からお話がありましたように、平成十六年九月十日に閣議において決定された郵政民営化の基本方針、このようになっております。この基本方針は五社体制を前提としておりまして、また、ユニバーサルサービスの範囲は郵便事業のみとなっております。

 今回の案では、五社体制を四社体制に改める、また、ユニバーサル義務の範囲を三事業に広げるということでございまして、先ほどの基本方針と矛盾をいたします。この部分を改正することでございますけれども、今回の案は、現状の民営化を、お話がございましたより、より現実に即した、よりよいものとするということでございまして、民営化の基本方針は全く変わっていない、このように理解しております。

西委員 続きまして、銀行法及び保険業法には、金融持ち株会社に関する法規制があります。金融持ち株会社は、金融機関の経営管理以外の業務を行えないということになっております。したがいまして、郵便事業の経営管理を行う日本郵政株式会社に対しては、金融持ち株会社に関する法規制の特例が設けられ、規制が適用されないということになっております。しかし、この規定はあくまで特例措置ですから、民間とのイコールフッティングの観点から、できるだけ早くこの特例の適用がない状態に戻すべきであるというふうに思います。

 ところで、商法や独占禁止法上、子会社とは、親会社による持ち株比率が二分の一以上の会社であり、日本郵政が金融二社の株式二分の一以上を売却した時点で子会社ではなくなります。つまり、日本郵政は、金融二社の株式二分の一以上を売却すれば特例が必要なくなるということでございます。その意味では、最低限度、株式の半分は売却しなければならない、まず第一段階としてはこういうことだと思いますが、提出者のお考えをお聞きしたいと思います。

山花議員 株式の売却については、先ほど来、届け出制への移行という観点からの御議論がございましたけれども、西委員からは、特例の観点からの御質問でございます。

 金融二社の株式の二分の一以上が売却される、失礼、処分されるということは、日本郵政は、金融二社の経営上の事項に係る決議が単独でできなくなるということを意味します。具体的には、取締役の解任決議であるとか、剰余金の配当等ができなくなるということになります。

 このことは、委員御指摘のとおり、子会社ではなくなるということを意味しておりまして、事業を行う上での一体的な関係というのがこの時点で失われるということを意味します。さらに、金融持ち株会社でなくなることから、金融持ち株会社規制の適用除外の特例措置を受けることもなくなるという関係にございます。

 この結果、金融二社だけではなくて、日本郵政株式会社自身も相互に独立性、自主性が相当程度に確保されることとなりまして、過去、国とか公社を通じて一つの組織で事業を行ってきたではないかとか、あるいは、両社が公社の資産を承継した経緯を考慮すべきでないかというような話がありましたけれども、そういったことも、ゼロにはなりませんけれども、相当程度低下をして、ひいては他の金融機関との適正な競争関係を阻害するおそれ、懸念も低下をするということになりますので、民営化法第八条の趣旨を踏まえて、新規業務に関する認可制を緩和して届け出制とするものとしております。

 したがいまして、委員御指摘のとおり、届け出制ということに向けて、新規業務が機動的に展開できるようになるということで、会社としても、株式を売却するインセンティブが、二分の一まで頑張れば自由になるぞと。自由といっても、先ほど議論がありましたように、多少、純然たる届け出ではありませんけれども、経営の自由度が高まるということで、そうした株式売却のインセンティブとして働くものと我々は考えております。

西委員 次に、完全売却についてお伺いしたいと思います。

 金融二社の完全売却については、さまざまな意見や議論があります。民間とのイコールフッティングを確保するために完全売却は必要であるという意見もある一方で、完全売却をしてしまうと郵便局で金融サービスを確実に提供できる担保がなくなる、こういう意見もあります。

 さらに、日本郵政が金融二社の株式を一瞬でも完全売却してしまえば規制もなくなる、たとえその後、日本郵政が金融二社の株式を買い戻したとしても金融二社には規制をかけられない、こうした点については、金融業界などからイコールフッティングの観点から異論も出ているというところでございます。

 日本郵政株式会社が保有する金融二社の株式について、本法案では、「全部を処分することを目指し、郵便貯金銀行及び郵便保険会社の経営状況、次条に規定する責務の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に、処分するもの」と改められております。完全売却を目指しながら、金融二社の経営状況などを勘案しながらという条件を付しているところに、金融二社の株式売却に関する意見の相違を乗り越えようとした工夫の跡が見られると思います。株式売却については、基本的には日本郵政の判断に委ねられるということか、確認をしたいと思います。

 一般的な法規制の適用範囲内であれば、金融二社の株式を何%保有するかについては、日本郵政の経営判断というのが妥当な考え方ではないかと思いますがどうかということでございます。金融二社の株式の完全売却についての基本的なお考えをお示しいただきたいと思います。

赤澤議員 西委員の御質問にお答えをいたします。

 委員みずから、かなりお答えの部分もおっしゃったような感じもいたしますが、株式処分については、第百十条の二第一項において、具体的な期限は明記しないものの、日本郵政株式会社に対して、郵貯銀行それから郵便保険会社の経営状況、ユニバ確保等への影響を勘案しつつ、金融二社の株式の全部を処分することを目指し、できる限り早期に、処分することを義務づけているということでありまして、金融二社の株式の保有については、もちろん経営判断なわけですけれども、全くの経営判断に委ねられる趣旨ではなくて、処分の時期、量などについて一定の説明責任はやはり求められる、その法律、規定を受けてそのようになっているというふうに考えていることでございます。

 また、二分の一以上処分をすれば新規業務が届け出制に移行する仕組みとなっておりますので、法律の構造上全く処分されないといったような事態は想定されていないということであります。

 金融二社が機動的に経営できるよう、バランスよく処分を進めていくものと考えております。

西委員 続きまして、イコールフッティングの確保についてお伺いをしたいと思います。

 日本郵政株式会社の金融二社の株式を半分以上売却すれば、金融二社の新規事業規制の見直しについて認可制から届け出制になります。これは先ほどからさまざま議論があるところです。また、政府は、内外の金融情勢を踏まえて、他の金融機関との競争関係や利用者へのサービス提供に問題がないと認めるときは、株式を完全売却した状態と同様とみなされ、郵政民営化委員会が廃止することとなります。

 政府は日本郵政株式会社の株式を三分の一超保有する以上、間接的には政府の影響力が働くと一般的に見られることに十分留意する必要があります。このため、民間企業との競争条件が確保されるかどうか判断する際には、十分慎重に行うことが望まれます。

 特に、総理大臣及び総務大臣は、適正な競争関係を阻害するおそれがないとして決定する場合、どのような事項または基準で判断することになるのか、明確にされたいと思います。そうした客観的な事項や基準等を策定していないならば、ぜひ関係者と十分協議して策定し、公表すべきではないかというふうに考えておりますが、総務大臣のお考えをお聞きしておきたいと思います。

川端国務大臣 金融二社とその他の金融機関の間の適正な競争関係の実現や、一方で、利用者への役務の適切な提供というのは極めて重要な二つの課題であるというふうに思います。

 今述べられましたように、いわゆる規制を解除決定する場合には、他の金融機関等との適正な競争関係を阻害するおそれがないと認めるときに、郵政民営化委員会の意見を聞いた上で、総理及び総務大臣がその旨を決定されるということになっております。その判断についてどういうものがあるのかということであります。

 一つは、そのときの内外の金融情勢としての金融市場の状況、我が国の金融システム安定への影響等々という、金融システム全体にどういう影響を与えるのかということ、どういう状況にあるのかというのが一つの判断の環境だというふうに思います。

 また、イコールフッティングということでよく言われますが、これは、いわゆる政府関与の状況、度合いがどの程度なのか、例えば、日本郵政株式会社が保有する金融二社の議決権の割合とか、金融二社が受託している民営化前の郵便貯金及び簡易生命保険の政府保証つき債務がどれぐらい残っているのか、それから、日本郵政グループ各社が自立をどの程度できているのか、自立状況、各社の経営状況が赤字であるのか黒字であるのか、それと同時に、日本郵便株式会社と金融二社との間の関係といいますか、どれぐらい財務的に経営的に依存度があるのか、これがなくて自立していけるのか、これがなかったら自立していけないか、こういう状況等々が考えられるということで、これらを総合的に判断しなければならない。

 我々としては、いろいろなこういう項目が影響する、ある種の指標になり得るだろうということはもう少し精査をしなければいけないと思っていますが、この数字が幾つになったらというのは、なかなかそれは難しい状況がありますので、総合的に判断をしながらやるということでは、あらかじめこの基準がこうなったらというのは、ちょっとなかなか技術的には難しいんだろうというふうに思います。

 いずれにしても、最終的には、先ほど民営化委員会の意見もしっかり尊重をしろということで御意見ございまして、そういう幅広な部分で、客観性、透明性を十分に確保して判断していきたいというふうに思っております。

西委員 さっきおっしゃられました、客観性、透明性という部分で、できるだけそういうことが達成できるようにお願いをしたいと思います。

 続きまして、金融二社の株式を完全売却すると、日本郵政は金融二社への支配力を失うため、安定して金融事業を提供できなくなる可能性があるとして、政府が提出していた郵政改革法案では、日本郵政に銀行、保険業務を提供する会社、関連銀行及び関連保険会社ですね、この株式の三分の一超の保有を義務づけておりました。この改正案では、関連銀行や関連保険会社の株式保有に関する義務づけを今回は規定しないことにしております。

 したがって、郵便局で提供される銀行等のサービスは、他の金融機関と提携して業務提携をするということも考えられます。例えば、地域によっては、地元の金融機関である信用金庫、信用組合、それから農協などと契約を結んで、郵便局において銀行・保険窓口業務などを委託するということも考えられるわけでございます。日本郵政にとっても経営上の自由度を増すということになりますし、また、地元の金融機関とウイン・ウインの関係も築ける可能性も開けてくるというふうに考えられますが、こういうことも積極的に検討されてはいかがかと思いますが、日本郵政の方から御答弁をお願いしたいと思います。

齋藤参考人 今回の法改正において金融サービスもユニバーサルサービスの一環となりましたので、私どもとしては、従来以上に、ゆうちょ銀行、かんぽ会社との連携が重要であると考えております。

 ただ、先生御指摘のように、その他の金融機関との提携ということも非常に重要な課題でございまして、特に地元の金融機関である信用金庫とか信用組合、農協との提携につきましては、地域の活性化という観点からも重要であると思っていますので、今後、これら金融機関の御意向もよく伺って検討を進めてまいりたい、前向きに対処したいと思っております。

 御提案どうもありがとうございます。

西委員 大変積極的なお考えでございます。田舎の、特に過疎地等の郵便局のあり方について、一つの方向性を聞いていただけたというふうに思っております。

 時間が少なくなりました。最後に、簡易郵便局法についてお伺いをしたいと思います。

 郵便窓口業務の委託等に関する法律の改正について説明をいただきたいと思います。また、簡易郵便局に関して、郵政民営化法及び独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法等の改正を行っております。このことについて説明をお願いしたいと思います。

斉藤(鉄)議員 簡易郵便局につきまして、公社化以降、法律の規定から簡易郵便局という用語がなくなっておりました。今回の案では、簡易郵便局の位置づけを法律上明確化した、そして簡易郵便局長と呼称できるようにしたということでございます。

 また、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構が公社から承継した旧郵便貯金及び旧簡易生命保険は、確実に郵便局において取り扱われるものとされております。簡易郵便局においても、旧郵便貯金及び旧簡易生命保険を取り扱うことができるよう、関係法律の改正を行ったということでございます。

 そして最後に、簡易郵便局というのはユニバーサルサービスの一翼を担うもの、このように位置づけておりまして、今後とも、簡易郵便局の置局状況を適切に把握し、置局水準を現行より後退させることがない。このように、例えば省令等必要な措置を講ずることを我々は立法者として考えておりますし、そのように政府に望みたいと思っております。

西委員 特定郵便局、簡易郵便局、いわばユニバーサルサービスの最前線だと思います。そんな意味で、立法者には、今の考えをもとにして、また政府におかれましても、その考えをもとにして適切な措置をお願い申し上げたいと思います。

 以上で終わります。

赤松委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 郵政特別委員会が設置をされて、ちょうど一年であります。一年たって、法案審議がきょうの一回だけというのがきょうの理事会でも改めて確認をされたところであります。

 この一年間に、理事懇、理事会、私が承知している限りでは二十七回ぐらい行っておりまして、それなのに法案審議はわずか一回であります。非常に慎重な理事会、理事懇運営は行われたと思いますが、法案審議そのものは余りにも時間が少ない。三党の皆さんは十二回協議をされたということを聞いております。そういう点でも私は、法案審議も十二回ぐらい行って、国民の前で十分な審議を行う、このことこそ必要だ。きょう三時間での質疑終局、採決という日程については、私自身は同意ができないということを改めて申し上げておくものであります。

 そこで、提出者の皆さんに質問をいたします。

 最初にお聞きしたいのが、郵便局の定義の変更についてであります。現行の民営化法に対して、今回の改正法案では郵便局の定義が変更されております。どのように変更されているのかについてお答えください。

田島(一)議員 お答え申し上げます。

 今回の案では、郵政事業に係る基本的な役務の確保の責務を新たに設けたところでございます。この責務規定におきまして、郵便、貯金、保険の役務を郵便局で一体的に利用できるようにすることとしております。このため、郵便局では、これまでの郵便の業務に加えて貯金及び保険を行う日本郵便株式会社の営業所を指すものとしたところでございます。

 以上です。

塩川委員 今御答弁いただきましたように、現行の法律では「「郵便局」とは、会社の営業所であって、郵便窓口業務を行うものをいう。」つまり郵便窓口業務を行うところを郵便局とするとなっていたわけですが、今回の改正案では「「郵便局」とは、会社の営業所であって、郵便窓口業務、銀行窓口業務及び保険窓口業務を行うものをいう。」ということで、つまり三事業を行う日本郵便の営業所のみが郵便局となることになります。そうなりますと、あまねく全国に郵便局を設置する、あまねく全国置局義務の対象となる郵便局も、三事業を行う営業所のみとなるわけであります。

 そこで、日本郵政にお尋ねをいたしますが、現在、三事業を全て行っていない郵便局というのは幾つあるんでしょうか。

斎尾参考人 本年三月末時点での数字となりますが、郵便、貯金、保険の窓口サービスの提供状況につきまして、主要なサービスを取り扱っていない郵便局の具体例を申し上げますと、ゆうちょ銀行の直営店が併設されているために貯金サービスを扱っていない営業中の直営郵便局が二百三十局、そして保険募集を扱っていない営業中の簡易局が三千四百二十九局、それから富士山の山頂などで季節限定で郵便のみを扱う直営の郵便局が三局、このほか、保険を取り扱わないで機能を限定されている直営局の分室が二十五ございます。

塩川委員 別に富士山のことは言いませんけれども、今のように、保険業務を行っていないところが三千四百二十九とか、あるいはその後二十という数字もおっしゃいました。つまり、三事業を行っていない、保険の窓口業務を行っていないというところが三千四百以上に上るんです。これが、全国あまねく置局の義務から外れるところに入ってくるということになります。ですから、改正案では、ここが郵便局じゃなくなっちゃうわけですね。

 重ねてお聞きしますが、この三千四百ぐらいの三事業を行っていない郵便局というのは過疎地にあるんでしょうか、それとも都市部にもあるんでしょうか。わかりますか。

斎尾参考人 過疎地が中心になると思います。

塩川委員 これはわかれば教えてほしいんですけれども、三事業を行っていない現行の郵便局ということになりますと、改正案では郵便局から外れてしまいます。その際に、郵便局のあまねく全国置局義務の対象からも外れます。そのときに、この三千四百のうち、あまねく全国置局義務がかかっているのが幾つぐらいあるのかというのは、日本郵政さん、わかりますか。

斎尾参考人 これは今後の法令の定義にもよると思いますけれども、恐らく大体この数字が郵便局の対象からは外れるんじゃないかというふうに思っております。

塩川委員 あまねく全国置局義務というのは民営化法で後退させられまして、全部かかっていたものを、過疎地などを中心にというふうに変更されました。ですから、過疎地は撤退してはならない、やはり金融のユニバーサルサービスと郵便のユニバーサルサービスをしっかりと保障しなければならぬというのが少なくとも民営化法であっても担保された中身でありますけれども、今のように、郵便局の定義の変更によって、三事業を行っていないといっても、保険の窓口業務を行ってない、郵便と金融の窓口業務を行っているというところなども郵便局ではなくなってしまう、そういうところのあまねく全国置局義務も外されるということになったら、これでは置局義務の水準が大きく後退することになるんじゃないのか。提出者はどのようにお考えですか。

武正議員 お答えをいたします。

 そういった意味で、先ほど来答えておりますが、簡易郵便局を法的に位置づけるといったことも今回の改正案に盛り込んでいるところでございますし、ユニバーサルサービスの確保の義務を日本郵政と日本郵便に課した上で、今の全国置局義務、あるいは銀行・保険窓口業務契約を事前に届け出させるなどの仕組みを行っているわけでありまして、繰り返しますけれども、簡易郵便局の法的位置づけといったことが明確にされているということでございます。

塩川委員 いや、簡易郵便局の定義の話を聞いているのではなくて、そもそもあまねく全国置局義務のかかっている過疎地の、三事業を行っていない、改正案では郵便局ではない営業所、そこは義務が外れるわけですよ。そうしたら、撤退ということに対して歯どめがないんじゃありませんか。

斉藤(鉄)議員 確かに、御指摘の置局義務の直接の対象は三事業を行う局ということになっておりますが、これはユニバーサルサービスの提供を行う対象を今回三事業に広げることに伴う法律上の整理に伴うものでございます。しかし、他方、今回の案では、三事業を行う局だけでなく、三事業を行わない局も総務大臣への届け出制の対象に加えておりまして、総務大臣から日本郵便株式会社に対し、適時適切に監督が及ぶようにしております。仮にサービス水準を落とすような廃局が行われるおそれが生じても、これを阻止することが可能でございます。

 政府においては、今後とも引き続き、簡易郵便局の置局状況を適切に把握するとともに、少なくとも現行のサービス水準を低下させることのないよう必要な監督を行っていただきたい、このように法案提出者として政府に要望いたしますし、総務省令等でそれを確かなものにしたいと思います。

 その上で、先ほど申し上げましたように、今回初めて法律上に簡易郵便局の法的位置づけを明確にし、ユニバーサルサービスの一翼を担うもの、このように位置づけております。

塩川委員 廃局のおそれがあったような場合に阻止することが可能だというんですけれども、もともとあまねく全国置局義務がかかっていたのを外しているんですよ。それなのに、どうやって阻止するんですか。

斉藤(鉄)議員 先ほど申し上げましたように、総務大臣への届け出の対象に簡易郵便局もなっております。総務大臣がそれを判断するわけで、そのときに阻止することが可能ということでございます。

塩川委員 では、総務大臣にお尋ねしますが、どうやって総務大臣は、廃局のおそれがあるこういった営業所、この阻止というのをできるんですか。その法的な制度上の仕組みはどうなっているんですか。

森田大臣政務官 お答え申し上げます。

 先ほど斉藤先生がお答えされたとおりで、今後、本法案が通り次第、政府、特に総務省におきまして、省令改正を通じて、絶対に置局基準を劣化させないということに取り組んでまいりたいと思いますし、具体的な阻止をどうやってするかというお尋ねでございますけれども、年間の事業計画の認可等がありますので、そういったところでしっかりと把握をしてまいりたいというふうに思います。

塩川委員 要するに、法文上は、今まであった規定から外れることによって、あまねく全国置局義務が外れるような現行の郵便局が三千四百も生まれる、このことははっきりしているんですよ。あと、どうやって廃局を阻止するかというのは、省令で書くとか監督体制の話とかという話なんですけれども、では、そういう省令案というのはどうなっているんですか。そういう中身なんかも全然示されていないじゃないですか。法文上ではなくなっていて、後で省令で何とかしますなんて話は通りませんよ。

 こういうことを考えても、置局義務の水準を後退させる仕組みとなっていることには変わりがありません。郵便局ネットワークの後退につながる重大な懸念がある法案だ、このことを強く申し上げておくものであります。

 次に、金融のユニバーサルサービス確保の問題について質問をいたします。

 法案提出者は、今回の郵政民営化法改正案の趣旨の一つとして、金融のユニバーサルサービスの確保を挙げています。

 そこでお尋ねしますが、郵政改革法案でも金融のユニバーサルサービスの義務づけを規定しております。この郵政改革法案に規定していた金融のユニバーサルサービス義務づけ、四つの柱があると承知をしておりますが、どのようなものかをお示しください。

自見国務大臣 塩川議員にお答えをいたします。

 既に取り下げられました郵政改革法案においては、具体的に法律の中では、一番目は、日本郵政に、郵政事業に係る基本的な役務を郵便局で一体的に、かつあまねく全国において公平に利用できるようにするような責務を課していた。二番目に、郵便の業務のほか、銀行窓口業務、保険窓口業務を日本郵政の必須業務としていた。三番目は、日本郵政は、金融ユニバーサルサービス提供のための銀行・保険窓口業務契約を締結し、その内容を総務大臣に届け出ることとされていました。

 今、一、二、三と申しましたのは三党で議員立法していただいた法律にも含まれておりますが、四点目が実は今審議中の三党の提出の案と違うところでございます。日本郵政は、銀行・保険窓口業務契約の締結の相手方となる銀行、保険会社の三分の一を超える議決権を保有し、その株主として権利を行使することとされていた。その点が違っておりますが、このような措置により、郵便に加えて貯金、保険のユニバーサルサービスの提供を義務づけ、確保する仕組みがとられておりました。

塩川委員 今お答えいただいたことを踏まえて、自見大臣もお答えになりましたように、三党の法案との違いのお話もありましたが、確認でありますけれども、提出者に、現行民営化法と比較をして、今回の郵政民営化法改正案において金融のユニバーサルサービス義務づけの仕組みがどう変わったのか、この点についてお答えください。

武正議員 現行法との違いということだと思いますが……(塩川委員「いえ」と呼ぶ)改革法とのですか。

 改革法との違いということでありますが、今回の案では、日本郵政株式会社に対して関連銀行、関連保険会社の株式の三分の一の保有を義務づけることによる担保の仕組みではなく、改革法ではそれを義務づけたわけでありますので、これではなくて、金融二社の株式については全部を処分することを目指し、両社の経営状況、ユニバーサルサービス責務の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に、処分するものとし、この規定の趣旨に沿って、日本郵政株式会社がその経営判断によりユニバーサルサービス確保の責務を履行する仕組みとしております。

塩川委員 金融二社に対する株式保有三分の一超による株主としての権利行使、その部分が落ちている。かわりに、七条二項に今述べていただいたような株式処分についての規定が入っているということであります。

 そこで、ちょっと確認で、どなたでも結構なんですがお答えいただきたいのは、この金融二社に対する株式保有三分の一超による株主の権利の行使について、具体的にどのように金融のユニバーサルサービス義務づけを担保する仕組みとなるのか。私は、三年前に議論しましたように、定款ですよね、定款にちゃんと書き込む。その定款を変更することを阻止するのが三分の一を超える株式だというふうに承知しているんですが、それでよろしいでしょうか。

森田大臣政務官 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおりでございます。

塩川委員 改めておさらいしますけれども、郵政改革法案に規定をしていました金融のユニバーサルサービス義務づけの四つの柱のうち、一番の根幹であります、金融二社に対する株式保有三分の一超による定款変更阻止の規定が落ちているのが今回の法案であります。

 そこで、金融二社の株式処分についてお尋ねをいたします。

 今、武正議員からお答えもありましたように、民営化法改正案の七条二項には「日本郵政株式会社が保有する郵便貯金銀行及び郵便保険会社の株式は、その全部を処分することを目指し、郵便貯金銀行及び郵便保険会社の経営状況、次条に規定する責務」いわゆる郵便と金融のユニバーサルサービスですが、「の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に、処分するものとする。」とあります。

 そこで、提出者にお尋ねいたしますが、この場合に、郵貯それから郵便保険の会社の株式を全て処分するということもこの条文からは想定されるということでよろしいでしょうか。

赤澤議員 塩川委員にお答えをいたします。

 法令上、「全部を処分することを目指し、」ということで、先ほど読み上げられた「できる限り早期に、処分する」がそこにかかっておりますので、「できる限り早期に、処分する」の対象には株式の全部がまさに含まれている、全部処分することもあり得るということでございます。

塩川委員 全株処分することもあり得るという御答弁でありました。郵政改革法案では金融二社に対する三分の一超の株式保有が義務づけられておりましたが、今回の法案では日本郵政の経営判断による全株処分も可能となっています。

 そこでお尋ねしますが、郵政改革法案では、日本郵政が金融二社に対する三分の一超の株式を保有することで、金融ユニバを規定した定款変更を阻止することが担保となっておりました。今回の法案では、仮に三分の一を超えて株式処分がされた場合に、金融ユニバが確保される保証というのはどこにあるんでしょうか。

山花議員 今回、ユニバーサルサービスをどうかけていくのかということについて、三党でもいろいろ協議をしてきたところでございます。

 まず、たてつけとしては、日本郵政にユニバの義務がかかっていて、それについて、貯金、保険について、政府提出の郵政改革法だと三分の一の株を保有することによって、先ほど委員御指摘のように、定款変更の特別決議の阻止をするというたてつけになっておりました。

 今回、いろいろ協議の中で、金融ユニバを提供する銀行、保険会社については、必ずしも郵便貯金銀行、郵便保険会社に限らないということでございます。どういうことかというと、日本郵政株式会社が、将来、郵便貯金銀行、郵便保険会社の株式について、その三分の一を割り込んで処分するというケースですけれども、例えば、郵便貯金銀行とか郵便保険会社以外の銀行、保険会社を関連銀行だとか関連会社とするようなケースですとか、もう一つは、日本郵政株式会社の出資を受けた関連会社が郵便貯金銀行、郵便保険会社の新たな株主になるというような手法によって金融ユニバの責務を果たしていくようなことを想定しております。

塩川委員 今御答弁ありましたように、日本郵政の出資を受けた関連会社が株式を取得するといった場合に、日本郵政として三分の一未満の株式保有ということもあり得るという御答弁でありました。

 ここで言う日本郵政の出資を受けた関連会社というのは、例えば日本郵便ということでよろしいでしょうか。

山花議員 今答弁申し上げたのは、例えばということでございますので、必ずしもそういうことではなくて、ほかにグループ的な会社ができるようなケースがあれば、そういったことが想定されるということでございます。

塩川委員 日本郵政の一〇〇%出資の子会社が日本郵便ですから、日本郵便がここで今御答弁いただいたような日本郵政の出資を受けた関連会社ということは当然想定されるものであります。

 そうしますと、日本郵政の完全子会社である日本郵便による金融二社の株式保有の数と日本郵政の金融二社の株式保有の数の合計が三分の一を超えるから金融ユニバは確保されるという趣旨ですか。

山花議員 済みません、余り今の時点で決め打ちしてここの会社ということを答弁することは好ましくないと思うんですけれども、ただ、銀行とか保険などでも、例えば業界の再編などがあったりとか、あるいは再編の中で、再編というのは合併だけではなくて分割も含めてですけれども、その中でグループの企業になるようなケースも想定をしてということでございますので、必ずしも郵便ということに限って今回の想定をしたわけではございません。

塩川委員 では、日本郵便というのは使いませんけれども、日本郵政及び日本郵政の出資を受けた関連会社の金融二社の株式の所有が金融二社に対する株の三分の一を超えるということをもって金融ユニバの義務を果たすことができるという制度設計だというお考えかと聞いているんです。

山花議員 例えばのケースですけれども、もしそういうケースであればどうかということであれば、そのとおりでございます。

塩川委員 ということであります。ですから、三分の一を超える株式保有について、日本郵政と関連会社で担保する。先ほど山花議員も処分と売却は違うという話をされて、直接はしていませんが言葉の言いかえをしましたから。処分と売却はイコールではありません。処分の場合は、かつての民営化法の議論のときにもありましたように、信託という場合も当然ありますし、自社株ということもありますし、また持ち合いという格好も含めてあり得るということです。

 いずれにしても、今言ったように、日本郵政と関連会社で三分の一を超える株を持たないような場合は、これは金融ユニバというのは果たせるんですか。

山花議員 そもそもで言うと、法律的な枠づけとしては、日本郵政にユニバの義務がかかっているということになっております。先ほど他の委員にも答弁申し上げましたけれども、その処分に当たっては、このユニバの義務がどの程度確保できるかということも処分の際の一要素でありますので、そういったことを勘案して、三分の一を超えて処分をするケースについてはなされるものと理解をいたしております。

塩川委員 日本郵政、日本郵便に金融ユニバの義務は課されているんだけれども、実際に金融の窓口業務を提供する金融二社にはかかっていないわけであります。ですから、どうやって言うことを聞かせるかという話になってくるわけです。

 その担保が、三分の一を超える株式保有とそれに基づく株主の権利の行使、つまり、重要な決議で定款で金融ユニバの提供の義務づけについて変更することを阻止する仕組みになっているということであるわけですけれども、そこでも、そもそも制度設計上、改革法案でも問題としていた、金融ユニバの義務づけが親会社の方にある、つまり金融二社にはないという矛盾があるわけですよね。

 ですから、金融ユニバの義務が課されていない金融二社は、株式処分に伴い、営利追求の民間金融機関となっていきます。幾ら日本郵政に金融ユニバの義務を課しても、金融二社の多数の株主の利益追求を目的とするそういう性格上、金融二社が必ず金融ユニバの提供に応じるとは限らないということも想定されるわけであります。

 そこで、そもそも、金融ユニバを確保するためにはコストがかかります。このコストは誰が負担するんでしょうか。

武正議員 先ほど来のお話で、日本郵便にはユニバーサルサービス義務が課せられて、そのユニバーサルサービス義務のもと、ゆうちょ、かんぽが銀行・保険窓口業務契約を結んでいる、そういうようなたてつけでのユニバーサルサービス義務が、先ほどの日本郵政の株の保有とダブルでかかっているというたてつけだというふうに理解をしております。その上で、今の誰がコストを負担するのかということでありますが、金融ユニバの責務を負う日本郵政株式会社及び日本郵便株式会社、また、銀行、保険のサービスを提供する金融二社がグループ全体として負担することとなります。

塩川委員 義務づけを受けている会社が本来筋ですけれども、グループ企業として、受委託の手数料も含めて金融二社の負担ということも当然想定をされるということであります。

 そこで、重ねてお聞きしますが、金融ユニバのコスト負担について、金融窓口業務の委託手数料などを考えると、金融二社と日本郵政や日本郵便の間で意見の相違があるかもしれない。要するに、手数料水準について、高い、低いということで、金融二社は、もっと低くしてくれ、それで日本郵政、日本郵便は、いやいや、そうはいかないよという話になったときに、意見の違いが生まれた場合にはどういうふうに調整するんでしょうか。

武正議員 先ほどお話がありましたが、株の売却の過程に伴って子会社が子会社でなくなったりとか、そういう時系列の推移があろうかと思いますけれども、現段階では、日本郵政がそれぞれの三社の株式を一〇〇%保有しているわけでございますので、当然、日本郵政のそうした全体的なガバナンスのもと、運営のもと、グループとしての対応を考えていくということだと思います。

塩川委員 この点でも、基本はやはり定款の話になってくると思うんですよね。やはり、具体的にどういう書きぶりになるのかというところというのが重大関心があって、定款において、例えば金融ユニバについてどういう書きぶりをしているのか、こういうことについてぜひ明らかにしていただきたい。金融ユニバを担保する仕組みの一つである定款がどのように書かれるのか、この点についてお示しいただけませんか。考え方の整理をしてもらえばいいです。

赤松委員長 それでは、総務省が答えると思いますが、ちょっと待ってください。

 では、その間に、提出者山花郁夫君。

山花議員 基本的な考え方だけ提出者の側から申し上げますと、委託の契約を締結する前に、その内容については総務大臣に届け出るという形になっております。金融二社が日本郵便株式会社に支払う手数料については、事務費用だとか営業戦略等を勘案して算定されるというふうに私どもは理解をいたしております。

 定款の具体的な中身については、ちょっと会社の方にお願いしたいと思います。

塩川委員 定款についてあわせてお聞きしたいのが、郵政改革法案をつくるためのたたき台となりました郵政改革素案の資料があるわけですけれども、そこの資料六に「出資比率による経営関与のあり方」というのがあるわけですよね。このペーパーで見ても、金融二社の定款に郵便局を通じた金融サービスの提供を書くというふうになっているわけであります。

 冒頭指摘しましたように、この法案では郵便局の定義が変更されています。三事業を行っていない日本郵便の営業所は郵便局でなくなります。定款の書き方次第では、全国の三千四百カ所で郵便、貯金業務が保障されないことにもなりかねない。そういう点でも、定款がどのように書かれるのか、極めて重大なんですが、こういうのをお示しいただけますか。

森田大臣政務官 お答え申し上げます。

 先ほどから御議論いただいております定款に関しましては、法案が成立後、法施行、会社の合併までの間に定款が出てくると思います。その中において、総務省として、御指摘の点も踏まえて適切に、認可の話でございますから、判断してまいりたいというふうに考えております。

塩川委員 金融ユニバを担保する根幹である定款の中身なんですよ。本来、金融ユニバの確保とおっしゃっているわけですから、では、その担保の仕組みである定款の中身についてもおおよそ概要を示すということは審議の上での大前提だ。極めて重大な問題に対して基本的なそういう資料も出ていないわけで、これではやはり十分な審議もできないし、きょうだけでの審議で終わってしまうというのも納得できないというのも多くの方のお気持ちではないでしょうか。

 定款のたたき台などの資料提出をぜひ要求したいと思います。お取り計らいいただけますか。

赤松委員長 今そういうお申し出につきましては、次回の理事会で協議したいと思います。

塩川委員 最後に、日本郵政による金融二社の株式保有が三分の一を割り込んで、全株処分ということも排除されていないわけですから、そういう場合に金融ユニバの担保の保障は全くないわけであります。

 もともと郵政民営化は日米大資本の要求でありました。アメリカ政府は二〇〇四年の年次改革要望書で郵政民営化を要求し、その後もアメリカ政府は米国保険業界の要望を受けて、再三、簡保会社の完全民営化、全株売却も要求してきました。その中で小泉郵政民営化も行われたわけであります。

 今、日本政府はTPP交渉を推進しております。在日米国商工会議所からも、日本郵政と民間金融機関との間で、金融、保険、EMS等における競争条件などについて非関税障壁が存在するなどという指摘がある。TPP交渉を推進する今の日本政府の立場では、こういったアメリカからの要求が全株処分の圧力となりかねない、これでは金融のユニバーサルサービスが保障されないということを申し上げて、質問を終わります。

赤松委員長 次に、重野安正君。

重野委員 社会民主党の重野安正でございます。

 きょうのこの委員会を迎えるに当たって、小泉郵政改革に強い異議を唱えてまいりました社民党としては、それを見直す法案が審議される節目の日を迎えたということを歓迎するものであります。ただ、審議時間については我々も極めて不満を持っておりますけれども、本日の審議を通して、あまねくという言葉が盛んに使われるわけでありますが、文字どおり、この日本の郵政事業を国民の期待に応えられるようなものに仕上げていくという立法府の我々の役割があるんだ、そういう気合いを持って、若干の質問を申し上げたいと思います。

 郵政民営化から四年以上が経過いたしました。この間、公社化、民営化によってさまざまな弊害が発生いたしました。窓口での待ち時間の増加であるとか郵便外務員による配達先での貯金等の預かりの制限、遅配の増加など、利用者からはさまざまな苦情が寄せられているという現実がございます。さらに、かんぽの宿問題を初めとした不明朗な経営も露呈をしたという時間帯もございました。

 そうした中で、郵政民営化を見直すべしという声が全国で広がり、それが〇九年の政権交代の一つの原動力ともなったわけでございます。政権交代から既に二年以上が経過し、紆余曲折はありながらもようやくここまで来た、そういう実感を持っておりますし、この審議を通じてよりよいものに仕上げていくという役割と任務を我々は背負っておるということをお互い自覚しなければいけないと思います。

 そこで、まず法案提出者に尋ねますけれども、今回の改正案では、閣法と違い、小規模郵便局に対する検査監督の規定が入っていない。その理由は一体那辺にあるのか、お伺いいたします。

    〔委員長退席、石関委員長代理着席〕

武正議員 重野委員にお答えをいたします。

 先ほど塩川委員からも定款というお話がありましたが、民営化して会社が今進んでおりますので、そうした、ある面、会社の自由度というものはやはりおもんぱからなきゃいけないということや、また、今回、日本郵政の株式の売却益、これを国民負担を軽減することに充てるということで、ある面、ビジネスモデルというものも示していかないとそれなりの株価がつかない、こういった前提に立って法案提出に当たっていることを冒頭申し上げたいと思います。

 今の御質問でございますが、御指摘の小規模局に関する規定は、改革法案には盛り込まれておりました。今回、この民営化法の改正案についてどうするかということは協議もしてきた経緯もございます。

 ただ、やはり過去の改革法については基本方針の章のみに書かれたいわゆる訓示規定であったと理解しておりまして、今回の案では、同様の規定を置かなくても政府において実施可能な内容、新法ではなく現行の民営化法の一部改正という形式をとったことも踏まえて、一つの判断として、あえて置くこととはしなかったものであります。国会での御議論や金融ユニバ確保の趣旨等も踏まえ、政府において対応されるものと理解しております。

重野委員 関連して、自見大臣に尋ねますが、郵便局が郵便、郵貯、簡保の三事業を営む以上、利用者保護あるいは業務の健全性の確保のために検査、監査が必要になる、このように思うんですが、他方で、ユニバーサルサービスを末端で支える小規模郵便局については、当該局の業務が円滑に遂行できるよう、実情に合った対応が行われるべきだと考えます。大臣はこの点についてはどのような考えを持っておられるか、お伺いいたします。

自見国務大臣 敬愛する重野議員にお答えをさせていただきます。

 金融行政を所管する金融庁その他の行政機関においては、今さっき質問もございましたが、検査監督に当たっては、当該金融機関の規模、特性等を踏まえた対応を行っているところでございます。

 小規模郵便局の検査及び監督においても、今先生ございました、全国に二万四千六百の郵便局のネットワークがございますが、これは約半数が二人局、三人局でございまして、そういったことの特性をしっかり踏まえながら、国会での論議、あるいは郵政事業に係る基本的な役務の確保、ユニバーサルサービスでございますが、関する規定が設けられた趣旨に鑑み、できる限り、今先生も御指摘になられましたように、業務の円滑な遂行に支障がないように、注意深くしっかり配慮していくべきものだというふうに思っております。

    〔石関委員長代理退席、委員長着席〕

重野委員 特に、地方の過疎地域に行きますと簡易郵便局等々がたくさんあるわけですけれども、そういう小規模郵便局においても、言われるようにユニバーサルサービス、この法案の中に、あるいはこの法案審議の中で、あまねくという言葉をもう何千回聞いたかわかりませんけれども、まさに文字どおり、あまねく、郵便局の大小規模にかかわらず、それを利用する国民の側の利便のために努力する、そういう決意の表明であったと私は受けとめております。

 それは了としながらも、次に、先ほど塩川さんからも質問がなされましたけれども、私も同じような問題意識を持っていることがございます。

 それは、あまねく全国において公平に利用できる郵便局について、今回の改正案では郵便、貯金、保険の三事業を行うものとされておりますが、一方で、全国の簡易郵便局のうち、三事業を行っているのは二割弱、こういう認識を持っております。残りの八割は、定義で言うところの郵便局でなくなるわけですね。定義から押さえていくと、そうなる。結果として、簡易郵便局が閉鎖されるなど、利便性が損なわれるような事態が生まれるのではないか、こういう懸念を持つわけでありますが、これを払拭される答弁をお願いしたい。

森山(裕)議員 重野議員にお答えをいたします。

 今先生がお持ちの懸念でありますが、我々もその懸念をなしといたしませんでした。ゆえに、今回の案では、三事業を提供している簡易郵便局はもちろんでありますけれども、三事業を提供していない簡易郵便局につきましても、日本郵政及び日本郵便がユニバ責務を履行していく上で重要な一翼を担っていただいているという基本的な考え方に立っておりまして、御指摘の置局義務の直接の対象は三事業を行う局のみとはなっておりますけれども、これはユニバの対象を三事業に広げたという法律上の整理であります。他方、今回の案では、三事業を行う局だけでなくて、三事業を行わない局も総務大臣への届け出対象に加えておりまして、総務大臣から日本郵政に対し、適時適切に監督が及ぶというふうに理解をいたしております。仮にサービス水準を落とすような廃局が行われるおそれが生じても、これを阻止することは可能であるというふうに理解をしているところであります。

 政府におかれましては、今後とも引き続き、簡易郵便局の置局状況を適切に把握するとともに、少なくても現行のサービス水準を低下させることのないような、必要な措置を講じていただきたいというふうに思っているところでございます。

 以上でございます。

重野委員 今の答弁、加えて、先ほども議論になりましたけれども、ユニバーサルサービスという点について、日本郵便に郵便局をあまねく全国に設置する義務を課すという、ユニバーサルサービスの中の一項にそのことがございます。文字どおり、それを正面から受けとめて、今懸念されるような事態が発生することのないように、ぜひこれについてはしっかり、言葉だけではなしに、実態論としても行うように申しておきたいと思います。

 次に、簡易郵便局の今後について日本郵政に聞きたいと思うんです。

 簡易郵便局に関して日本郵政に尋ねますけれども、定義で三事業を行うものを郵便局としていること、さらに、金融も含めたユニバーサルサービスが義務づけられていることを考えますと、多くの簡易郵便局で三事業が行える体制をつくっていく、このことも極めて重要ではないか、ということを具現化していく上にも、前提として、そのことが必要ではないかというふうに考えるんですが、この点について日本郵政の考えをお聞きしたい。

斎尾参考人 簡易郵便局は、現在、過疎地それから離島等における郵便局ネットワークの拠点としましてユニバーサルサービスの提供に重要な役割を果たしているところでありますが、法案成立後におきましてもこの役割は変わらないものと考えております。

 現在、簡易郵便局では、基本的には郵便、貯金、為替、振替、保険料の収納、それから保険金の支払い等のサービスを提供しておりますが、保険の募集を行っている局は二割弱となっております。

 私どもといたしましては、法案上の郵便局の定義に該当するよう新たに保険募集を行うことを希望される受託者につきましては、地域のお客様の利便性も踏まえつつ、その御意向に沿って保険募集を行っていただけるよう取り組んでまいりたいと考えております。

 なお、保険募集を行っていない簡易郵便局につきましても、先ほど申し上げましたように、貯金などほかの金融サービスを実施しておりますので、今後とも、現行のサービス水準が低下することのないよう、引き続き簡易郵便局の維持に努めてまいりたいと考えております。

重野委員 今の答弁を聞きまして、私もまた安心いたしましたけれども、そのとおり実行していただきたい、そのことをしっかり見詰めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 同時に、それを実行するために、もし足らざる部分が要員も含めてあるとするならば、そこ辺についてもやはり正面から受けとめて、そういう現場の声というものをしっかり受けとめて、それの実現のために努力していただきたい、そのことも強く要望しておきたいと思います。

 次に、かんぽの宿の問題について。

 郵政改革あるいは郵政を語るときに、このかんぽの宿問題というのは必ず出てくるわけでありますが、かんぽの宿問題は郵政民営化見直しの機運の一つのきっかけとなった。

 そこで、現在、かんぽの宿等について、凍結法によって譲渡や廃止の義務が停止されている、このように認識をしておりますが、今回の改正案ではこうした施設についてはどのような扱いとなるのか、そのことを聞いておきたい。

斉藤(鉄)議員 かんぽの宿やメルパルクにつきましては、もともとの法律ではことしの九月三十日までに廃止もしくは譲渡ということが決まっておりましたが、現在、株式売却凍結法によってこの譲渡または廃止の義務が停止されている、こういう状況でございます。

 現在も多くのお客様に利用されております。この法案では、業務を続けるとか、また、やめるとかいうことをこちら側が強制するということではなくて、会社側の経営判断に委ねるということにしております。会社が業務として続けるのであれば、さらなる経営改善を立法者としては期待しております。

重野委員 そういうことだろうと思いますけれども、私の選挙区においても、このかんぽの宿というのは非常に地域の皆さんからも重宝がられておるし、私もしょっちゅう行くのでありますけれども、全国各地からそこに来て、ゆっくり休養して、また元気を出して帰っていく、こんな話を聞くと、やはりかんぽの宿というのが果たしている役割とか意味というのはあるんだということを実感いたしますので、そこ辺をしっかり現場と連携をとりながら対処していただきたいな、このように考えております。

 次に、経営陣の今後の決意について聞いておきたいんです。

 郵政民営化によって、利用者の利便性が低下をし、経営効率はかえって悪化をした、このように私は認識しています。今回の改正はそうした弊害を除去するためのものであって、改正案では施行期日について、一部は公布の日から、それ以外については公布の日から起算して一年を超えない範囲内で政令で定める日となっている。

 法案が成立してからの一年間が最も重要な時期、時間帯になるわけですが、民営化の大きな弊害の一つに、分社化によってサービスが縦割りとなり、横の連携がとれなくなったということがあります。国民からは、同じ郵便局なのにという不満が聞かれてきました。今回、事業会社と局会社が合併しますが、その統合で、これまでの縦割りの弊害を一掃し、利用者の立場に立ったサービスが展開できるよう、十分な準備が必要だと思います。そのことが今回の改正の最大の柱でもあるというふうに考えるんですが、この点について経営陣の決意を聞いておきたい。

齋藤参考人 先生御指摘のとおりでございまして、今回の改正によって、従来郵便局のフロントラインとバックラインが別会社だったという弊害が解消され、一つの会社になります。

 その意味で、具体的に申しますと、組織、人事の面での非効率というのが相当改善されるだろう。それから二番目には、指揮命令系統が非常に複雑化しておりましたけれども、これが単純化されて、その面でもすっきりした形になるのではないか。それから三番目には、例えば郵便外務員が配達中に通帳のお預かりができないというようなことがありましたけれども、そういう不便が解消されるのではないかということで、まさにそういう意味で縦割りの弊害が解消されて、お客様の利便を大事にした業務展開ができるんじゃないか。私どもは、懸命にそのための努力をいたしていきたいと思っております。

重野委員 私ども地方の立場からしますと、地方は高齢者が非常に多い、高齢化率が高い。郵便局に対する期待の声の多くは、そういう弱者でもあるというべきか、高齢者の皆さんの局に対する期待というのは非常に大きいんですね。今社長の決意が披瀝されましたけれども、文字どおり、そういうことを実態論としても語れるように、最大限の努力をするということを私は信じておりますので、そういう点での努力をぜひぜひお願いしたい、このように思います。

 最後になりますが、総務大臣に聞いておきます。

 今、日本郵政から、国民、利用者の立場に立った郵政事業の再構築に向けた決意が述べられたと思います。総務省としても、監督官庁としてそうした日本郵政の努力を支えて、適切な支援を行うべきだと考えますが、総務大臣の決意を聞いておきたい。

川端国務大臣 お答えいたします。

 先ほど来、民営化に伴っていい面もあったけれどもいろいろな不都合もたくさんあったということでございまして、そういう部分で、現行の民営化の課題の多くが今回の法改正で解消されるということで、経営者が確信を持って、経営形態をしっかりするわけですから、経営方針をしっかり定めて、社員に対しても事業の将来像を示すことができるようになるというふうに期待をしております。

 そういう中で、今社長の決意もありましたけれども、法案が成立すれば、日本郵政グループにおいても、例えば経営の健全化に向けた取り組みについてもより効率的な事業運営が可能になる等、さらに経営努力に取り組まれるというふうに思っております。

 そういう意味で、今議員が御指摘のように、総務省としても、引き続き、国民生活に不可欠な郵便、金融、貯金、保険のサービスを国民共有の財産であるネットワークを通じてしっかりと全国の郵便局で提供できるように、監督と同時に支援をしてまいりたいというふうに思っております。

重野委員 冒頭に申し上げましたように、この法律の審議時間、短いなということを申し上げましたけれども、しかし私は、今やろうとしているこの法案に盛られた思いというのは非常に重いものがある。だから、今後、国あるいは会社においてもその法律の重みというものをしっかり受けとめて、本当に国民の、あまねくという言葉が文字どおりそうだと言われるような日本の郵政事業に発展させることをぜひ決意していただきたい。

 そのことを申し上げ、私の質問を終わります。ありがとうございました。

赤松委員長 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一です。

 法案提出者に質問させていただきます。

 先ほど来、もう既にいろいろな方が質問されておりますけれども、株式の二分の一以上を処分した段階で民間と同じ業務が届け出でできるということは、政府保証つきのビジネスを自由化されるということで、民間からはいろいろな批判の声が上がっております。民業圧迫という批判がたくさん出ておるわけですけれども、先ほど来、答弁を聞いていると、大丈夫、大丈夫、大丈夫という御説明だと思います。どんなふうに大丈夫なのかをもう少し詳しく説明していただきたいと思います。

 実際に、この法案が通って、株式が二分の一処分されて、ゆうちょ銀行、かんぽ生命がビジネスを始めました、新規事業を始めました、そして民間の企業のパイをどんどん奪っていく、そういうことが仮に起きた場合はどうされるおつもりでしょうか。その点についてお尋ねします。

武正議員 お答えをいたします。

 先ほど来お答えしておりますように、二分の一以上の処分後には、いろいろな形で、日本郵政と両会社との関係が、ある面、自立性、独立性が確保されるようになってくる。そして、他社との適正な競争関係を阻害するおそれが低下する、こういったことを申し述べました。

 先ほど来、ちょっと加えておりませんでしたが、これは政府の改革法案に盛り込まれていたものを、今回、民営化法の八条の二につけ加えまして、「日本郵政株式会社及び日本郵便株式会社は、郵政事業についての国民の理解を得るため、その経営の状況に関する情報を公表するものとする。」こういった情報公開の徹底というものもやはり盛り込んだところは、そういった意味でのいろいろな懸念を払拭するといったところが加えられたものというふうに考えております。

 御質問の中で触れられておりませんが、国際約束との整合性などの確保についても、これは政府に心がけてもらえる、いたずらに民業圧迫を招く事態にはならないというふうに考えております。

 今のその懸念でありますが、認可のときでも、当然、新規業務、これは認可されるかどうかということでありますので、届け出でなくてもそれは判断になってくるわけです。やはり民営化した趣旨というのは、当然、そうした民間の活力を存分に生かしてほしいということを鑑みますと、私は、やはりグループの皆さんには、ビジネスモデルを提示しないと、日本郵政の株価というものもそれなりの値がつかないといったこともありますので、やはり今の認可段階でも、もっともっとすさまじい経営努力をしていただくといったことがまずあっての話ではないかというふうに思っております。

 そういった御懸念もあろうかと思いますが、先ほど言った公表義務なども含めて、政府としてしっかりとした監督をしてもらえるものと期待をしております。

山内委員 質問の趣旨に対して十分に答えていらっしゃらないと思います。

 もう一度聞きます。まだ政府保証が残っている段階で本当に民業圧迫が発生した場合にどう修正していくのか、そのことを聞きたいんですね。消費者からすると、政府の保証があって、社長が大蔵省出身というと、きっと政府が守ってくれるということになりますから、民間のパイをどんどん食ってしまうことが十分起こり得る。これは懸念というよりも想定すべきリスクだと思うんですけれども、そういうことが起きた場合、どうされるおつもりでしょうか。そのことを聞いているわけです。

武正議員 この二年間、こうした議論も国会でできずにきょうを迎えて、先ほど来、もっと議論しようというお話も重々承るんですが、やはり早くこれを、法案も可決させていただいて、前に進めていくことが大事であろうかというふうに思っております。やはり、景気や経済、これが回復していかないといろいろなものが回っていかないといったこともありますので、私も与党の一員ですが、政府・与党一体となって、このことも実現もしなければなりません。

 今の御質問は仮定の御質問ということでありますので、そういったことがないように、とにかくやはり全体的なパイも当然ふやしていかなければなりませんし、それぞれ、今の御懸念がないように、政府としてきちっと対応してもらいたいというふうに思います。

山内委員 かみ合わないので、次の質問に行きます。

 株式を二分の一処分した段階で民間と同じ業務が届け出制でできるということで、先ほど来お答えがありました。裏を返すと、二分の一の株を処分したら、もうそれ以上処分しなくてもデメリットは余りないわけですね。ですから、株の売却は、二分の一まではうまくすっとスムーズにいくかもしれません。その先は処分するインセンティブがなくなってしまうと思うんですね。その点、どうお考えなんでしょうか。

武正議員 これは会社の判断ということに委ねられているわけでありますけれども、しかし、法的にはきちっと書かれているわけですね、「全部を処分することを目指し、」「できる限り早期に、処分する」ことと。

 これは義務づけでありますので、やはりこのことを会社として対応していくということだと思いますし、先ほど、八条の二に設けられましたようなそうした情報公開の義務もありますので、特殊会社としての一定の説明責任というものは求めなければなりません。ということもありますので、この法律の構造上、今委員の御指摘のように、二分の一以上処分したら全く処分されないという事態は想定していないわけでありまして、金融二社が機動的に経営できるよう、バランスよく処分を進めていくものと考えております。

 なお、両社については、銀行法、保険業法が適用される一般の株式会社でありますので、こうしたことで対応がされていくというふうに考えております。

山内委員 今、想定していないとおっしゃいましたけれども、私の質問は、想定すべきじゃないですかと言っているわけですね。多分これ以上言ってもお答えがないと思うので、次の質問に行きます。

 今まさに武正議員がおっしゃいました、株式の処分に関して、「その全部を処分することを目指し、」ちょっと飛ばして、「できる限り早期に、処分する」とあります。目指すと、できる限り早期に、処分ということで、単なる努力規定、精神規定になっていて、余り意味がないんじゃないかというふうに思うわけです。

 二〇〇五年の郵政民営化法の場合は、二〇一七年九月三十日までに全株を処分するとちゃんと明記してありました。やはり明記すべきじゃないかと思うんですけれども、その点なぜ明記されないのか、質問します。

赤澤議員 山内委員にお答えを申し上げます。

 全株を処分することを目指し、できる限り早期に、処分するという規定があることは山内委員御指摘のとおりであります。そういった枠組みの中でよりよい郵政民営化を目指していこう、こういうことであります。

 努力義務とおっしゃったんですが、一点そこで申し上げたいのは、明確に法的な義務として、全部を処分することを目指し、できる限り早期に、処分するということを日本郵政株式会社に課している。これはよく努力義務と言われておりますけれども、そこは違うので、これがあるから一定の説明責任というものは日本郵政が負っているということは申し上げておきたいと思います。

 その上で、御質問ですけれども、これはやはり、郵政民営化後、いろいろな郵便局の状況、あるいは消費者といいますか利用者の皆様からの声を聞いていく中で、過疎地域も含めてユニバーサルサービス義務を金融の二社のサービスについてもきちっと維持していくということについては大変重要である、その点について、今の現行法のままで維持がきちっとやっていけるかという点に懸念が生じたことは間違いのない事実でありまして、その点も含めて判断をし、そういったユニバーサルサービス義務の執行の状況、確保の状況あるいは金融二社の経営状況、そういったものを総合的に判断して、先ほどから読み上げていただいております、全株を処分することを目指し、できる限り早期に、処分するという法律の枠組みにさせていただいたものでございます。

山内委員 できる限り早期というのは、何か具体的なイメージというのはおありなんでしょうか。例えば三年以内とか五年以内とか、何かそういう議論は三党の協議の中であったんでしょうか。

赤澤議員 山内委員にお答えをいたします。

 文字どおり、できる限り早期に、処分するということでありまして、これについては、全株処分することを目指し、できる限り早期に、処分するという法的な義務を負った上で、日本郵政がもろもろの考慮事項を考慮して適切に判断をするという法的枠組みになっております。

山内委員 次の質問ですけれども、この法案が通ると、当初の民営化からかなり変更していくわけでありまして、例えば、今の郵便局会社の収入の多くの部分が金融二社からの手数料収入に依存しているといったことを考えると、いろいろなところで指摘されていますが、リスク遮断の問題があるんじゃないか、金融ビジネスの常識から外れるのではないか、これをもって民営化と言っていいのか、そういう批判があります。これについて、どのようにお考えでしょうか。

赤澤議員 済みません、通告がなかったかと思いますので。ありましたか。(山内委員「もしかしたら、はい」と呼ぶ)

 済みません。ということで、ちょっと条文の詳しいところとかは申し上げられませんが、先ほどからお話が出ていますとおり、まず情報の公表義務というものを民営化法で定め、さらに各会社法にも情報の公表義務というものを定めております。それに加えて、きちっと収支については区分をして、それも公表していくということにしているところでございます。

山内委員 時間が短いので、次の質問に行きたいと思います。

 先ほど来、この法案が通ると、TPPあるいはWTOといった国際的な約束事との整合性が問われるんじゃないかという質問を何人かの方がなさいました。外務省の山口副大臣は、大変楽観的なお答えがありました。内閣府の石田副大臣は、一部保険について懸念が表明されたというようなことをおっしゃっておりました。今回の法案が通ると、やはり不公正取引じゃないかという指摘は前からありますし、恐らくこれから国会で成立した後はさらにその指摘が強くなるんじゃないかと思います。

 政府に質問します。

 その場合、民主党政権としてはTPP参加を考えているはずですが、これはTPP参加の障害になり得るんじゃないかと思います。TPP参加について、もう諦めたんでしょうか、それともちゃんと両立するものとお考えなんでしょうか。その点について、政府の見解をお聞きします。

森田大臣政務官 お答え申し上げます。

 先ほどからの答弁にもありましたので、できるだけ重複は避けたいと思うんですが、本法案の取りまとめに当たっては、金融二社と他の金融機関との対等な競争条件の確保についてかなり配慮されているというふうに聞き及んでおりますので、まず政府としてはその結果を最大限尊重するべきと思っておりますし、先ほど来の外務副大臣、内閣府副大臣の答弁にもありましたように、WTO協定等国際約束の精神に反するものではない。そして、米国政府も基本中立の立場を表明されているものと承知しております。

 政府としては、そういった考えをしっかりこれからも表明するということが大事であると思っておりますし、一言申し上げるとすれば、TPPのP4の一つでございますニュージーランドには、政府の一〇〇%出資のニュージーランド・ポストという会社がございます。そのニュージーランド・ポストの一〇〇%の子会社でありますキウイバンクそしてキウイインシュアランスという会社があります。ニュージーランドはP4の一つでございます。当然TPPに入っているわけでございますが、そのことが、つまり政府出資があるということとWTO、TPPとの決定的なそごにはなっていないというふうに私は理解しております。

 要は、先生御指摘のように、言っておられます、いかにきっちりとオープンに、フェアに会社が運営され、マーケットを見てもらえるかというふうに、これから会社そして政府が振る舞っていくということが一番大事であるというふうに考えております。

山内委員 残り五分ですので、次の質問に行きます。

 政府に質問します。

 これまで郵政民営化は失敗だったというような意見をおっしゃる方はたくさんいるわけですけれども、郵政民営化のメリットが余り出ていないのは、むしろ経営に問題があったんじゃないか。株の売却凍結もありますし、大蔵省の事務次官が社長になったり大蔵省の幹部が副社長になったり、そういう民間とはかけ離れたセンスをお持ちの方を経営陣に連れてきて、一年間で一万人以上従業員をふやしてしまったりとか、考えられないような、非常に民間的なセンスからはかけ離れた経営をやってきた、そこに問題があるんじゃないかと思います。

 もし今回の法案が通った後、将来的に、今の社長さんは大蔵省の方ですけれども、次の経営陣を選ぶときに、どういう経営陣を据えるおつもりでしょうか。また役所の天下りを社長と副社長にぽんぽんと据えるおつもりなんでしょうか。その点について、政府の見解をお聞きします。

森田大臣政務官 お答え申し上げます。

 現在時点で政府でどういう人事をするかということは全く集約されているものではございませんが、御指摘のように、民営化の目的は、民間的経営手法を取り入れて、国営企業にはないコスト意識を持った経営を実現することにございます。したがって、先生御指摘のように、民間出身の経営者を入れるということは大変重要であるというふうに思っております。

 しかし、一般的に、経営上のニーズがある場合に、内部人材の登用や官僚OBの専門性を全て排除するというものでもないと考えております。民間出身者、内部人材、官僚OBのそれぞれの専門性を相互的に補完するということで相乗効果は発揮されると思っております。

 一方で、民であれ官であれ、李下に冠を正さずというような姿勢は重要であり、それがなければ会社が、そして政府も国民から支持されないというふうに思っております。

 これらを踏まえ、日本郵政株式会社の経営陣の人事については、まずは株主総会に提案されます同社の取締役候補案に基づき、適材適所を原則として判断してまいりたいと思いますが、先生の御指摘の点に関しては十分重く受けとめてまいりたいと思っております。

山内委員 今の答弁を聞いていると、また役所出身の人が社長、副社長になっても全く不思議ではないという雰囲気がありますが、そうしたら、これまでの齋藤社長、坂副社長、これまでの経営でよかったという評価に立っていらっしゃるんでしょうか。

 事前通告していませんけれども、現経営陣の経営のあり方についてどのように評価されているのか。もしよろしかったら、事前通告していませんが、自見大臣、コメントをお願いいたします。

自見国務大臣 私は、今の経営陣、私の前の国務大臣が指導力を発揮されたやに聞いておりますけれども、適材適所でよくやっておられます。大変よくやっておられると私は思っております。

山内委員 また指導力を発揮して、官僚OBが社長になるんじゃないかなという強い疑念を持ちました。

 次の質問に行きたいと思います。

 先ほど共産党の塩川委員からも質問がありましたが、この審議時間。理事会、理事懇、時間数は恐らく延べ二十時間ぐらいになったんじゃないかと思いますが、わずか三時間の質疑しかないということですね。

 法案提出者に聞きたいんですけれども、二〇〇五年の国会では百九時間二十五分間、審議をやりました。百時間やれとは申しません。ただ、二〇一〇年の、政権交代後に民主党政権が強引に強行採決をして問題になった郵政改革法案がありましたが、あのときでも五時間四十五分はやりました。五時間四十五分やって、それでも短いと自民党の方もおっしゃっていたと記憶しておりますが、今回はわずか三時間。それについて、法案提出者の皆さん、もうちょっと議論した方がいいんじゃないか。

 正直言って、三党の関係者の実務者協議の内容も我々は知るすべがないんですけれども、どういうプロセスで、どういう議論の過程を経てこの結論に至ったか、ブラックボックスになっているわけですね。もっと丁寧な説明と質疑が必要だと思うんですけれども、その点について、法案提出者はどのようにお考えでしょうか。

赤松委員長 提出者赤澤亮正君。

 なお、時間が来ておりますので、簡潔に御答弁願います。

赤澤議員 山内委員にお答え申し上げます。

 特に、自民党も審議時間不十分と文句を言っていたじゃないかという御指摘があったので、私から答えさせていただきます。

 郵政改革法案については、これは現行法をある意味で否定して、全くさらから法案をつくるというものでございましたし、その点が今回の法案とは全く違うというふうに我々は理解をしています。

 郵政民営化法の中で、民営化委員会による三年ごとの見直しが定められている、見直しも想定されている中で、今回の法案については、郵政民営化の基本方針は維持した枠内で、よりユニバーサルサービス義務などに配慮をした改正をするということで、我々は民営化法の一部改正で十分対応できるというものであるから、今回、三党で協議をして合意をしたものです。そういうことでありますので、自民党が前回抗議していたというのとは我々は状況が違うという理解をしております。

 加えて、回数を重ねて、三党で協議をしてきて得た結論でありまして、理事会の場で状況を御説明してきた、丁寧な対応は心がけてきたつもりでありますが、御指摘のように短い審議時間で急いだ形で審議をお願いしていることは、我々としても申しわけなく思うところではございます。

 しかしながら、この法案、先日撤回承認されたものの、郵政改革法案が出てから二年もたっているということで、早期に安定した経営の環境の中で郵政グループに経営を始めてもらうという意味でも、早期に結論が衆議院で得られることをお願いしたいということでございます。

山内委員 質疑時間が終了しましたので質問を終えますが、これまでの質疑で私の立場からすると納得のいく答えをほとんどいただけておりませんので、本来はもっと丁寧な審議をお願いしたいと思います。

 以上で質問を終わります。

赤松委員長 次に、中後淳君。

中後委員 新党きづなの中後淳です。

 やっと郵政民営化法案の改正という形でこの郵政の問題、衆議院郵政特できょう採決までということで、万感の思いで、最後の質問者ということですので、質問させていただきます。

 先ほども出ていましたけれども、二年前、郵政改革法案、私は当時総務委員として可決に、起立をした一人でありますので、その改革法案と比べて今回どういう改正がなされたのかという視点から質問したいと思いますが、大きくは、五社体制が四社体制になる、あと、金融二社の株式の持ち方が変更になるというところで、この二つを重ね合わせて考えてみると、ユニバーサルサービスをどう維持していくのかというところの法制上の担保そのものが後退をしたというふうに私には見えているわけで、その点についてしっかりと議論をさせていただきたいなと思っております。

 まず、三事業一体、特に金融関係のユニバーサルサービスを確保する義務について、この状態、ユニバーサルサービスというのが、いわゆる電気だとか水道とかみたいに各家庭に届けられているということで維持ができているというものと違って、窓口をどう設置するかによってユニバーサルサービスが確保されているというのであれば、その窓口がどの程度あればユニバーサルサービスが確保されているというふうにみなせるのか、その定義みたいなものについてはほとんど議論がなされていなかったように思います。

 極めて概念的な、全国あまねく、公益性、地域性をというような表現になっておって、そこから先、どの程度あればということについてもう少し具体的な議論が必要なのではないかと思っているわけですけれども、どのような状況、窓口である郵便局の配置をもってユニバーサルサービスが確保されているというふうにみなすことができるとお考えなのか、まず、提出者にお聞きしたいと思います。

田島(一)議員 お答え申し上げます。

 概念的な話しか出てこないという委員からの御指摘を頂戴いたしましたが、今回の法案におきましては、郵政事業に係る基本的な役務の確保といたしまして、利用者本位の簡便な方法、また、あまねく全国において公平に利用できることが求められております。したがいまして、利用者に不便を生じさせないような状況、郵便局の配置というものが求められているというふうに考えているわけであります。

 具体的にとおっしゃっていただきましたけれども、具体的な地域に落とし込んで、このような形ということを十分にお示しすることはなかなか難しゅうございますが、ぜひ御理解をいただきますようにお願い申し上げたいと思います。

中後委員 御理解いただきたいということなんですけれども、きのうの議論でも、自治体で郵便局がないところのお話等はされていました。この議論でいくと、逆に裏返すと、自治体に全て配置していればあまねく全国にという話になるのかというと、私は決してそんなことはないと思っております。

 例えば、ことし三月現在で郵便局の数というのは二万四千二百二十八局、これは自治体の数で割り返すと、一自治体当たり十四局程度になります。都市部は別にして、地方においては、一市町村に対して一局もないというのは大変な状況だと思うわけですけれども、一局あればいいということにはなりません。これは、ほかのものと比較をして、何が地域住民にとってあまねく全国にというふうにみなすことができるのかという、ある程度の指標みたいなものは必要なんだというふうに私は思います。

 各自治体に窓口があればということではなくて、これはもうあくまでも必要条件であって十分条件にはなり得ていないという観点から、特に、自治体では基準を定めたエリア、もともと郵便局というのは明治のころに小学校と交番と郵便局を全国に配置するというところからスタートをしておるわけですが、例えば、小学校でいうと、今、公立小学校が二万一千七百校程度、交番でいうと、交番、駐在所を合わせると一万四千七百程度あるということです。小学校に関しては、これはある意味、交通手段が確保された中で、交通弱者が通える距離という観点で配置をされていると思いますし、それが解消されていけば、統廃合という形でエリアが広くなっているというのが現状だと思います。

 また、そういうものと数字上の比較、小学校区に対して郵便局が何局あるか、ないところがどのぐらいあるかみたいなものを指標として出してやり、そういうものを基準にしながら、ユニバーサルサービスが確保されているかいないかということの検証を行っていくという作業が必要なのではないかと思っているわけですけれども、まず提出者に今のことについて見解を伺った上で、実際に運用を行う政府の方に御意見を伺いたいと思います。

田島(一)議員 委員がただいま御指摘いただきましたとおり、一自治体に一つあればよいという短絡的なものではないことは私どもも十分承知をしております。また、近年の市町村合併の進展に伴いまして自治体のエリアも非常に大きくなりましたので、おっしゃってくださったように、自治体単位での郵便局のあるなしというものが指標にならないことも十分承知をしております。

 先ほども申し上げましたけれども、やはり、利用者の不便を生じさせないことが何より重要でございますし、事実、私の地元、私が生まれ育った小学校区にもまだ郵便局はございませんが、実は隣接した小学校区に十分ございますので、不便は感じておりません。

 こういったことも踏まえますと、こうした具体的な配置における定義づけについては、かなりの慎重な精査等々が必要になってこようかというふうに思います。

 ただいま御意見を頂戴いたしましたことも踏まえまして、不便を生じさせない状況をつくり上げるためにどのようにしていけばいいのかをまた政府の方にしっかりと申し上げさせていただきながら、私どもといたしましても、また先生の御意見をしっかりと承らせていただいて、今後に反映させていただきたいと思っております。

森田大臣政務官 お答え申し上げます。

 大変本質的な議論、問いをいただきまして、恐縮しております。

 法制上の担保としては、これから法律が通った後の総務省令をつくっていくにあわせてしっかりと検討させてもらいたいと思いますが、私は、ユニバーサルサービスとは何かということに関しましては、郵政三事業における今までのデファクトをしっかりと見るということが非常に大事であるというふうに考えております。

 それはすなわち、百四十年間の歴史がある中で練り上げられた今のネットワークですから、それなりの根拠というものがしっかりあるというふうに認識をしておりまして、山間部であれ離島であれ、それは厳しいところもありますけれども、人の分布あるいは人の動線というものが十分に織り込まれているというふうに考えておりますので、今までのデファクトをしっかり見て、それを堅持するということがまず基本になってくると思いますし、先生が御指摘された、郵便局は二万四千、公立学校は二万二千、これはまさに徒歩というアクセスを強く意識したものであるということは認識されるものでございます。

 そういった中で、今高齢化が進んでおりますから、単純に局だけでいいのかということも今度議論されると思います。つまり、渉外職員をレベルアップしていって、三事業のお客さんへの提供というもの、高齢化が進んでいる今だからこそ、そういったもののレベルアップも必要であると思っていますので、いずれにしろ、設置基準に当たっては十分な検討をさせてもらいたいと思っております。

中後委員 ありがとうございます。ぜひ、本当に十分な検討をいただいた上で、日本郵政としての会社の経営もその方針にのっとって行っていただきたいなと思います。

 そのユニバーサルサービスをどうやって確保するか。窓口をたくさん設置していくというと、これはいわゆるユニバーサルサービスコストがかかっていくという話になってまいります。

 今、四社体制で郵便会社の収益をどうやって維持していくか、また日本郵政としてどうやってその収益性を維持していくかということについては、日本郵便に関しては、金融二社からの委託料を受け取る仕組みで会社が維持されてきた、あとは郵便事業によってということになると思うんですが、金融二社からの委託料を受け取る仕組みというのは法制上どのように担保されているのかということについて、わかり切ったことかもしれませんが、お伺いさせていただきます。

山花議員 金融二社と日本郵便株式会社との業務委託の関係は、現在の移行期間中の業務委託と同様に、今回の案においても維持をされているようにしております。その上、日本郵便株式会社が銀行窓口業務契約及び保険窓口業務契約を締結する前に、その内容を総務大臣に届け出ることを義務づけております。

 また、日本郵政株式会社は、日本郵便株式会社、郵便貯金銀行及び郵便保険会社の株主という立場でございますので、これらの業務委託が適切に行われるように、必要な株主権の行使を行うことになっております。

 なお、金融二社が日本郵便株式会社に支払う手数料については、事務費用であるとか営業戦略等を勘案して算定されると承知をいたしております。

中後委員 先ほど共産党塩川委員のお話の中でも少しありましたけれども、株を全額売却をした後の姿ということについていろいろなオプションがあると思っていて、その点では、株主である政府、また経営者である日本郵政の方針によっていろいろな形をとり得るのが今回の民営化法の改正の姿なのかなというふうに見ている一面もあります。

 そういう中で、例えば、先ほども出ていましたけれども、金融二社、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式を日本郵便が取得して、それで株式を全額売却した、全株式を処分したとみなせるのか、法制上、そうやってみなすことで、この法律の要請は受けたとみなしてよいのかということについて、提出者のお考えをお聞きしたいなと思います。

山花議員 先ほども答弁申し上げました。いろいろな可能性がありますけれども、その可能性の一つとしてそのオプションは可能かと言われれば、可能であるというのが答えでございます。

中後委員 今のお考えのとおり、まあこれは極端な例かもしれません。そういう形になれば、日本郵便の子会社として、ある意味一〇〇%子会社という形もとれるんだと思いますが、ゆうちょ銀行、かんぽ生命ということで。今のその三社が、間に日本郵便が入って金融二社が下につくような形に株式の持ち方によっては変更できますし、また逆に、民間の金融機関というふうに、本当に全額売却をして、地域に密着したほかの金融機関と連携をとりながら、関連銀行、関連保険会社として生きていくという道もあると思います。

 いずれにしても、ユニバーサルサービスに係るコストをしっかりと負担しながら民間企業として生き残るために、今のようなさまざまあるオプションの中でどこが最適解なのかということについてこれからたくさん検討していかなきゃいけない、そういうことなんだと思います。この点については、ぜひ政府と、あと日本郵政としっかりと議論した中で落としどころというのを、幅広い落としどころが見えてきているわけですから、ぜひとも慎重に御検討いただきたいなと思います。

 それでは、先ほど簡易郵便局等のお話についてはありましたので、ユニバーサルサービスコストを課された日本郵政と民間金融機関の適正な競争関係ということについて。

 例えば、今ゆうちょの貯金残高は大幅な減少傾向にあって、一方、民間の預金残高というのは増加傾向にあります。また、民間であっても破綻時の公的資金の注入などがあって、政府の裏負担ということで競争優位性が極端に高くなっているというふうにみなすというのは、もう既に私は幻想になっていると思います。

 一方で、限度額等の事業範囲の制約、またユニバーサルコストを負担するという義務を負っているというのは、競争条件としては、むしろ日本郵政の方が厳しい側面もあると思っております。民間金融機関にユニバーサルサービスを義務づけることを想定したら、これは大変な話になりますから。大きな反発が出ることは簡単に予想されると思います。

 限度額、先ほど来出ているような新規事業届け出制、認可制の問題等、今後の事業展開について、ぜひとも民間金融機関に理解を求めるように話を進めていただきたいと思っておりますので、この点について、政府の方から意見を伺いたいと思います。

中塚副大臣 御指摘のとおり、貯金銀行、保険会社は、ユニバーサルサービス義務を負っている日本郵便と窓口契約をしなければならぬということになっております。

 ユニバーサルサービスの義務を負っているということが一概にデメリットになるかどうかというのは、これはちょっと言えない。恐らく経営の方針によっていろいろ変わってくるんだろう、そういうふうに思っております。

 いずれにしても、過去、国営、そして公社になり、民営化ということでありますが、他の金融機関には見られない規制がまだございます。これも、株式売却等の進行度合いによって順次経営の自由度が増していくということになっておりますので、そういったことについては他の金融機関にもしっかりと徹底をしていきたい、そう思っております。

中後委員 時間が参りましたので質問を終わりますが、いずれにしても、長い間政治の中心的な課題として取り上げられてきたものが、一旦ここで、衆議院特別委員会においてはきょう採決されるということですので、ぜひともこの法律が、うまく運用して、ユニバーサルサービスがしっかりと確保されながら、民間企業として、民間金融機関との競合条件を適正なものとしつつ運用されるような、しっかりとした落としどころを見きわめながらの運用を日本郵政また政府にお願いしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

赤松委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。塩川鉄也君。

塩川委員 私は、日本共産党を代表して、郵政民営化法改正案に対して反対の討論を行います。

 反対の理由は、この法案が、あまねく全国において公平に利用できる金融のユニバーサルサービスを義務づけるとされていますが、その提供を担保する仕組みとはなっていないからです。さらに、郵便局の定義の変更は、設置義務の対象となる郵便局の範囲を狭めており、郵便局ネットワークの縮小を容認するものとなっていることも重大です。小泉郵政民営化の見直しどころか、さらなる改悪を加えた上で株式売却の凍結を解除することになり、金融二社は利潤追求に走り出し、金融のユニバーサルサービスの後退は必至であります。

 郵政民営化によるサービス低下の不満や懸念する国民の声を受けて、民主党は政権交代を実現し、見直しの第一歩として株式売却を凍結しました。ところが、郵政事業の見直しをするとして提出されていた郵政改革法案は、根本的な見直しを行うものでなかったことは重大でした。その郵政改革法案を取り下げて提出されたこの法案は、郵政改革法案をさらに後退させた上で、株式凍結を解除することで、小泉郵政民営化を実質的に継続させるものにほかなりません。

 そもそも、この法案は、金融のユニバーサルサービスの義務づけを行ったのは日本郵政持ち株会社と新会社の日本郵便株式会社のみで、金融サービスを提供する郵便貯金銀行、郵便保険会社の二社に義務づけるものとなっていません。金融二社は、銀行法、保険業法上の民間会社であり、金融の全国一律サービスの義務づけが貫徹する制度設計になっていません。

 さらに、金融のユニバーサルサービスを義務づけられた日本郵政が保有する金融二社の株式について、完全処分を目指すとされています。これでは、日本郵政が二社にサービス提供を求めるための影響力を持ち続ける法的担保もありません。

 郵政改革法案では、その担保として、日本郵政による金融二社の三分の一超の株式保有の規定がありましたが、今回の法案ではそれがなくなっています。我が党は、改革法案も、金融のユニバーサルサービスを担保したとは言えないと反対しましたが、この法案では、その規定さえなくなっております。

 加えて、いまだに、金融のユニバーサルサービスを保障すると称する定款の内容は示されておりません。金融のユニバーサルサービスの担保のための基本的資料が示されない段階で、わずか三時間の法案審議で採決をすることは極めて重大だ、このことを指摘して、討論を終わります。

赤松委員長 次に、中後淳君。

中後委員 新党きづなの中後淳です。

 郵政民営化法等の一部を改正する法律案について、賛成の立場から討論いたします。

 私たち新党きづなのメンバーは、小泉構造改革路線、競争に任せれば世の中がよくなるという行き過ぎた市場原理主義が、地域間格差、所得格差、世代間格差等の拡大を招いて、地域社会を危機的な状況に向かわせているという思いで、当時は民主党の公認という立場で総選挙を戦いました。

 小泉構造改革路線によって進められた施策の象徴が郵政民営化であって、地域社会の重要なインフラである郵政を政権交代によって立て直す、すなわち郵政改革法案を成立させるという思いは、ともに総選挙を戦った同志共通の強い強い思いであったと思います。

 政権交代後、民主党内の郵政改革PTでは、当時を振り返ってみると、出席議員、開催回数等、非常にさまざまな議論が、幅広い意見が集約されて、民営化後、さまざまな問題を抱えた郵政を立て直すために、ぎりぎりの線で調整、意見集約が行われて、時間と労力をかけて郵政改革法案を取りまとめたという経緯を思い出すものであります。

 当時の民主党は、現在とは異なって、とても民主的で前向きな議論が行われていたことを思い出すと、政権交代後の二年半の月日の重さというものを改めて感じる次第です。

 私たち新党きづなは、郵政改革法案の取り下げに反対いたしました。改革法案をこの委員会で審議して、ぜひとも衆参両院で採決まで行っていただきたいという強い思いからであります。

 その思いは実現しませんでしたが、今回、郵政民営化法の改正ということで、議員立法で法案が提出されました。

 改革法案と比べると、会社形態、金融二社の株式保有のあり方など、ユニバーサルサービスを維持するための法案による担保は後退した感が否めません。しかしながら、株式凍結後の二年半の月日は、現場をぎりぎりの状況まで追い込んでおります。国政に翻弄され、大変な思いで過ごされている地域の現場の皆さんに、大変申しわけないと改めておわびを申し上げる次第です。

 本法案では、郵便、貯金、保険の三事業のユニバーサルサービスを郵便局において提供する義務を課しておりますが、極めて概念的な表現であり、今後の運用により大きく方向が変わる可能性を秘めております。

 ぜひ、法案運用を行う政府において、改めて、過疎、高齢化の進んだ地域においてユニバーサルサービスが確保されているとはいかなることか、慎重に御検討いただき、地域社会の重要なインフラとしての郵政がしっかりと日本全国において将来的に維持できるよう、改めて経営者である日本郵政にお願いいたします。

 苦渋の選択にはなりますけれども、現状よりはずっと前進するものだということを評価させていただいた上で、本法案に賛成いたします。(拍手)

赤松委員長 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党を代表して、反対討論を行います。

 民主党、自民党、公明党の三党提出の本改正案には、さまざまな問題があります。

 郵便貯金銀行、郵便保険会社の株式を二分の一以上処分した段階で、民間と同じ業務が届け出制でできるということは、政府保証つきのままビジネスを自由化されることを意味し、不公正であり、民業圧迫となります。金融市場をゆがめることにもなります。

 郵便貯金銀行と郵便保険会社の株式の完全売却については、目指すや、できる限り早期に、処分するなどという努力規定になっております。平成十七年の郵政民営化法が平成二十九年九月三十日までに郵便貯金銀行と郵便保険会社の全株処分を明記していたのと同様に、全株処分の時期を明記すべきです。金融二社の完全民営化の期限と数字を明示しなくては、政府が株式を売却するつもりがないとマーケットが判断するおそれがあります。本法案が成立すれば、もはや民営化とは言えなくなります。

 また、本法案が成立すれば、諸外国から不公正取引との指摘を受け、TPP参加の障害となるおそれがあります。野田政権はTPP参加を目指していたはずであり、TPP参加の障害をあえてつくることは賢明とは思えません。それとも、TPP参加はやめたのでしょうか。今回の法改正とTPP参加の方向性とは矛盾することを指摘しておきます。

 以上、本改正案の問題点を指摘し、反対討論を終わります。

赤松委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 これより採決に入ります。

 武正公一君外五名提出、郵政民営化法等の一部を改正する等の法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤松委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

赤松委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、石関貴史君外四名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会、公明党、社会民主党・市民連合及び国民新党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。石関貴史君。

石関委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    郵政民営化法等の一部を改正する等の法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一、郵便局ネットワークについて、利用者ニーズを踏まえ、地方公共団体からの委託等を通じ、地域住民の利便の増進に資する業務を幅広く行うための拠点として、より積極的に活用されるよう努めること。

 二、郵政民営化法第百七条及び第百三十七条の規定に基づき、他の金融機関等との間の競争関係、金融二社の経営状況等を勘案して政令で定めることとされている限度額の水準については、本法の施行により直ちに勘案すべき事情が変わるわけではないことから、当面は引き上げないこと。

 三、日本郵政株式会社が金融二社の株式の二分の一以上を処分した後の金融二社の新規業務等に係る届出制が、単なる届出ではなく、他の金融機関等との間の競争関係への配慮義務並びに郵政民営化委員会への通知義務を課すとともに、内閣総理大臣及び総務大臣による監督上の命令の対象としていることに鑑み、これらの規定に基づく政府及び郵政民営化委員会による二重のチェックが有効に機能することとなるよう、制度の適切な運用に努めること。

 四、簡易郵便局が今後とも、過疎地、離島等におけるサービスの提供に重要な役割を果たし、ユニバーサルサービスの一翼を担っていくことに鑑み、簡易郵便局の置局状況を適切に把握するとともに、置局水準を現行法より後退させることのないよう、必要な措置を講ずること。

 五、郵政民営化後の日本郵政グループの経営状況をしっかりと検証の上、本法の施行後、郵政民営化委員会の意見も踏まえ、グループ各社及びそれらの経営陣により、適切な経営努力が行われるよう努めること。

 六、かんぽの宿及びメルパルクについては、本法の公布に伴い、郵政株式処分停止法が廃止されることから、その事業の継続、譲渡又は廃止が日本郵政株式会社の経営判断に委ねられることを踏まえ、会社の経営に及ぼす影響を勘案しつつ、適切に対処されるよう努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

赤松委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

赤松委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、順次これを許します。自見国務大臣。

自見国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

 万感の思いでございます。ありがとうございました。(拍手)

赤松委員長 次に、川端総務大臣。

川端国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、その趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

赤松委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤松委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

赤松委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十九分散会


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