衆議院

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第6号 平成23年5月31日(火曜日)

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平成二十三年五月三十一日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 黄川田 徹君

   理事 後藤 祐一君 理事 橋本 清仁君

   理事 藤村  修君 理事 三日月大造君

   理事 山口  壯君 理事 谷  公一君

   理事 額賀福志郎君 理事 石田 祝稔君

      井戸まさえ君    石津 政雄君

      石原洋三郎君    石山 敬貴君

      稲富 修二君    打越あかし君

      太田 和美君    梶原 康弘君

      川口  博君   木村たけつか君

      城井  崇君   菊池長右ェ門君

      熊田 篤嗣君    郡  和子君

      近藤 洋介君    斉藤  進君

      斎藤やすのり君    階   猛君

      柴橋 正直君    高井 美穂君

      高橋 昭一君    富岡 芳忠君

      豊田潤多郎君    中野渡詔子君

      中林美恵子君    長尾  敬君

      畑  浩治君    村越 祐民君

      谷田川 元君    若井 康彦君

      鷲尾英一郎君    渡辺浩一郎君

      秋葉 賢也君    井上 信治君

      小里 泰弘君    小野寺五典君

      大島 理森君    加藤 勝信君

      梶山 弘志君    中川 秀直君

      長島 忠美君    西村 康稔君

      吉野 正芳君    斉藤 鉄夫君

      高橋千鶴子君    阿部 知子君

      浅尾慶一郎君    柿澤 未途君

      下地 幹郎君    田中 康夫君

      園田 博之君

    …………………………………

   議員           石破  茂君

   議員           加藤 勝信君

   議員           石田 真敏君

   議員           齋藤  健君

   議員           橘 慶一郎君

   内閣総理大臣       菅  直人君

   外務大臣         松本 剛明君

   財務大臣         野田 佳彦君

   文部科学大臣       高木 義明君

   厚生労働大臣       細川 律夫君

   経済産業大臣       海江田万里君

   国務大臣

   (防災担当)       松本  龍君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     枝野 幸男君

   国務大臣

   (金融担当)       自見庄三郎君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   与謝野 馨君

   農林水産副大臣      筒井 信隆君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  辻   優君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    西村 泰彦君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 細野 哲弘君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     寺坂 信昭君

   参考人

   (原子力委員会委員長代理)            鈴木達治郎君

   参考人

   (原子力安全委員会委員長)            班目 春樹君

   参考人

   (東京電力株式会社取締役副社長原子力・立地本部長)            武藤  栄君

   衆議院調査局東日本大震災復興特別調査室長     関根 正博君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十一日

 辞任         補欠選任

  梶原 康弘君     高橋 昭一君

  近藤 洋介君     井戸まさえ君

  階   猛君     城井  崇君

  高井 美穂君     稲富 修二君

  中野渡詔子君     中林美恵子君

  長尾  敬君     柴橋 正直君

  鷲尾英一郎君     木村たけつか君

  井上 信治君     西村 康稔君

  小里 泰弘君     中川 秀直君

  吉泉 秀男君     阿部 知子君

  柿澤 未途君     浅尾慶一郎君

  下地 幹郎君     田中 康夫君

同日

 辞任         補欠選任

  井戸まさえ君     近藤 洋介君

  稲富 修二君     高井 美穂君

  木村たけつか君    熊田 篤嗣君

  城井  崇君     豊田潤多郎君

  柴橋 正直君     長尾  敬君

  高橋 昭一君     梶原 康弘君

  中林美恵子君     中野渡詔子君

  中川 秀直君     大島 理森君

  西村 康稔君     井上 信治君

  阿部 知子君     吉泉 秀男君

  浅尾慶一郎君     柿澤 未途君

  田中 康夫君     下地 幹郎君

同日

 辞任         補欠選任

  熊田 篤嗣君     鷲尾英一郎君

  豊田潤多郎君     渡辺浩一郎君

  大島 理森君     小里 泰弘君

同日

 辞任         補欠選任

  渡辺浩一郎君     階   猛君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件 

 東日本大震災復興の基本方針及び組織に関する法律案(内閣提出第七〇号)

 地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、現地対策本部の設置に関し承認を求めるの件(内閣提出、承認第五号)

 内閣法及び内閣府設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第七一号)

 東日本大震災復興再生基本法案(石破茂君外四名提出、衆法第八号)


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     ――――◇―――――

黄川田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、東日本大震災復興の基本方針及び組織に関する法律案、地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、現地対策本部の設置に関し承認を求めるの件及び内閣法及び内閣府設置法の一部を改正する法律案並びに石破茂君外四名提出、東日本大震災復興再生基本法案の各案件を議題といたします。

 本日はテレビ入りでありますので、質疑者の的確な質問に答弁者は簡潔明瞭に御答弁いただき、そして、この委員会の進行に御協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げる次第であります。

 この際、お諮りいたします。

 各案件審査のため、本日、参考人として原子力委員会委員長代理鈴木達治郎君、原子力安全委員会委員長班目春樹君及び東京電力株式会社取締役副社長原子力・立地本部長武藤栄君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官辻優君、資源エネルギー庁長官細野哲弘君及び資源エネルギー庁原子力安全・保安院長寺坂信昭君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

黄川田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

黄川田委員長 本日は、各案件の審査に関し、原発問題等について集中審議を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。階猛君。

階委員 おはようございます。民主党の階猛です。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 もとより、国会議員は憲法四十三条で国民の代表でございますが、本日は、私の故郷でもあります岩手の代表としてもお話しさせていただければと思います。

 そこで、まず最初に、冒頭、岩手のすばらしさについて少し述べさせていただきたいと思います。

 今回、津波で甚大な被害をこうむった沿岸地域を初めとしまして、岩手県は本当に風光明媚で、海の幸、山の幸にも恵まれ、広大な自然、その中で人々がつつましくもまじめに暮らしている、そういう土地柄でございます。

 昔から偉大な政治家を輩出している土地でもあります。古くさかのぼれば、奥州藤原氏のころから東日本の政治の中心でございました。また、近代に入りますと、原敬さんを初めとして、東北、北海道では唯一、総理大臣を四人も輩出した県でもございます。(発言する者あり)

 今お話もありましたけれども、この復興特別委員会、復興基本法案をまさに審議しているところでございます。この復興という言葉は、関東大震災のときに、復旧ではなく復興を目指すんだ、そう語ったのが後藤新平、この方も岩手の人でございます。

 そういう偉大な人々を輩出した土地柄ではございますが、私は、もっと誇るべきことは、偉大な人よりも、それぞれの持ち場持ち場で、どんな苦境にあっても自分の使命を一生懸命果たそうとする、そういう人間が多いことだと思っております。

 先日のこの委員会でも、岩手の農協の会長さんがお見えになられまして、釜石市でございましたでしょうか、農協の金融課長さんのお話がありました。津波が来た、みんな逃げろ、おれが残って金庫に大事なものはしまっていく、そう言って、一人残って、金庫に重要書類を全部しまって、そして、最後に逃げようとしたところで津波に襲われたそうです。津波が去った後、職員たちが戻ってくると、金庫はきちんと重要書類もしまってあるような状況で閉められていた。しかし、どこを見渡してもかぎがありませんでした。津波に金庫のかぎが流されてしまったんだろうか、みんなあきらめておりましたところ、かぎがありました。どこにあったか。津波で命を落とされた金融課長さんの手の中にしっかりと握られていた。命をかけてまでも職責を果たす、そういう人間が岩手におります。

 私の目の前にいる黄川田委員長も、まさにそのようなお一人でございます。

 津波で御家族を失ったにもかかわらず、先日までは、総務委員会の筆頭理事として与野党交渉の先頭に立って、本当に法案の一つ一つをしっかり前に進めてきた、成立に導いてきた。どのようなお気持ちであったか。私は、余り周りには言っておりませんけれども、黄川田さんが空港の待合室で一人ぽつんと座っていた姿を今でも思い出します。黄川田さんは、御家族を亡くされて、よれよれのコートを着て、本当に憔悴し切った姿でありました。しかし、そういうことは全くおくびにも出さずに、きょうもしっかりこの委員会を運営されていらっしゃる。

 そういった岩手の人たちが、今も被災地では懸命に闘っている。これを全国の皆さんにもぜひ御認識いただいて、そして、細く長くで結構でございます、岩手を初め被災地の皆さんに……(発言する者あり)そうです。宮城も福島も、それ以外の県もそうです。ぜひ皆様の細く長い御支援をお願いしたいと思います。

 本題に入ります。

 そういった持ち場持ち場で責任を果たす人の中に、私は福島第一原発の吉田所長という方もいらっしゃったと思います。私は、東電社長らの意思に反しても海水注入を継続したこの吉田所長の判断は責められないと思います。総理の見解をお願いします。

菅内閣総理大臣 私が吉田所長にお目にかかったのは、震災の翌朝、現地視察に行きまして、福島第一原発に出かけたときが初めてであります。その中で、ベントのことなどを私の方からもさらに催促などもいたしましたが、非常にしっかりした受け答えをされて、私の印象としても、頑張っている人だな、しっかりしているなという印象を強く受けました。

 この間の経緯の中で、私は、法律的にも、事業者であり、原発の現場責任者は自分の判断で危険を回避するための行動をとることは認められているわけでありますし、また、結果として、海水注入を始め、そしてそれを継続されたということは私は正しい判断だった、このように理解をいたしております。

階委員 私も同じ思いです。

 ただ、ややうがった見方をすれば、今回は結果的によかったから総理がそうおっしゃるのではないか、あるいは、自分の指示ではなく東電社長の指示に背いたから問題ないと言っているのではないか、そういううがった見方もあります。

 その点について、総理は、結果いかんによらず、また、自分の判断に背いた場合であっても、今のような正しい判断だったとお答えになれるのかどうか。そこは国民の皆様の前ではっきりおっしゃっていただきたいと思います。端的にお願いします。

菅内閣総理大臣 私は、原子力災害対策本部を震災当日に設置してから、ほぼ、原子力事故に関しての議論をするときには、まず東電からも責任者に来てもらい、それから原子力安全・保安院からも責任者に同席してもらい、さらには原子力安全委員会からも責任者に来てもらい、そして海江田大臣と私と何人かの補佐官等で一つの部屋に詰めて、いろいろな状況報告を聞いて、そういう専門家の皆さんの意見を聞きながら、本部長として何らかの判断をしなければいけないときには、安全委員会の助言も必ず受けて判断をしてきました。

 そういった意味で、原子力事故が発生したことそのものが、冷却機能の停止ということが十五条規定になりますので、注水をして冷却することが何よりも重要だということは、すべての関係者が一致した見方、私も含めてそうでありました。

 そういった意味では、今回のことについては、結果としてだけではなくて、そういう基本的な認識においても、私は、関係者は私を含めて一致していたと思いますし、そういう意味で的確な判断であったと。

 本部長としての責任というものは本部長としての責任としてありますので、そこは最終的には本部長として下した責任は私自身が責任がある、こういうふうに認識しております。(発言する者あり)

階委員 私もよくわかりませんでしたけれども、この問題というのは普遍的なものを含んでいると思います。トップの指示と自分の使命が相反するときにどういう行動をとるべきか。私は今、岩手県の代表だと申し上げましたけれども、トップの指示に反しても、自分の使命として、この国を守るために、復興のために本当に役立つことを実行していきたい、それをお誓い申し上げます。

 次の質問に移ります。二重ローン問題です。

 この資料をごらんになっていただきたいんですが、パネルをごらんになっていただきたいんですが、今回、多くの被災者や被災中小企業が二重ローン問題に苦しんでいると言われておりますけれども、実は、二重ローンの問題、今はまだその手前だと思っております。二重ローンというのは、今まであった債務に加えて新たな借り入れをするから二重ローンになるわけでありまして、今はまだ、新たな借り入れをする、そういう気持ちにもなれない、まちづくりがはっきりしないと、これからどうするか、借り入れするかは決められない、こういう状況であるのが多くの方たちです。

 そこで、ここで御提案申し上げますけれども、これからしばらくの間は、今までの債務は返済を猶予し、また利払いについては国が利子補給をするなどして、一定時間は安心して次のことを考えていただく。そして、その結果、再生していこう、そういう人たちには、ここでニューマネー、新たなお金を国や民間金融機関、政策金融機関が出していく、あるいは復興ファンドが出していく、その中で既往の債務については減免をするなりして、トータルで見て再建に役立つ仕組みをつくる。また、不幸にして再生できない方については、これも裁判手続によらず簡易な方法で債権が放棄される、債務が免除される、こういう仕組みをつくるべきではないかと考えております。

 官房長官の御見解をお願いします。

枝野国務大臣 現地の事情を踏まえた貴重な御指摘と思っております。

 御指摘のとおり、二重ローン問題、大変重要でありますが、現地の皆さんの多くがそれ以前の問題であるという御指摘も、現場のそうした実感だろうというふうに思っております。

 ここまでも、金融大臣に御努力いただいて、金融機関において当面の返済猶予等の貸し付け条件の変更申し込みに積極的に対応していただいているところでございますが、いわゆる本体としての二重ローン問題も含めて、既存の融資についての中期的な、今御指摘いただいたような提案についても含めて、今鋭意、関係省庁連携しながら対応を協議しているところでございまして、できるだけ早く具体的にお示しをして、実際に今ローンで苦しんでいる、そして財産をすべて失ってしまったような皆さんの、あしたへの希望が持てるような状況をつくり出したいと思っております。

階委員 ありがとうございます。

 財務大臣にも来ていただいておりますので、一つお尋ねしたいんですが、この利子補給をするのに、きのうもこの委員会で出ていましたけれども、年間五百億ぐらい財源が必要だということであります。

 私がこの五百億という数字を見て思い浮かんだのが、政策投資銀行が今期の決算で五百億、特別配当の二百五十億を含めて五百億の配当をする計画だということを先週公表されました。この配当金の原資、もとをたどってみれば、あのリーマン・ショックのときの危機対応融資。これは、そのときに融資した結果、企業が立ち直って、そして利益になったものです。

 まさに、お金は天下の回りもの、ここで得られた利益を今度は国が被災者のために利子補給として使っていく、こういうスキームを考えるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

野田国務大臣 階委員御指摘のとおり、二重ローンの問題は大変大きな問題ですし、利子補給は有効な一つの施策だと思います。

 政投銀が決算発表会で追加の配当をしようというお考えを発表されたことは事実でございます。これが決まれば、貴重な財源として生かしていきたいと思います。

 ただ、これはまだ、株主総会であるとか幾つかのプロセスがあって、確定した財源ではないので、まだ具体的にコメントできる段階ではないというふうに思います。

階委員 時間が参りました。まだまだお尋ねしたいことはたくさんありますが、これからも黄川田委員長初め委員の皆様とともに復興のために全力を尽くすことをお誓い申し上げ、質問を終わります。

 ありがとうございました。

黄川田委員長 これにて階君の質疑は終了いたしました。

 次に、田中康夫君。

田中(康)委員 新党日本の田中康夫です。

 本日は、与党統一会派、国民新党・新党日本を代表して、改めて基本的な、そして本質的な質問をさせていただきたく思います。

 官房長官の枝野幸男さん、あなたは、四月二十二日、計画的避難区域の設定を官房長官会見で発表されました。これは、閣議決定や閣議了解という形を経ず、原子力災害対策本部の本部長である菅直人さんの指示に基づき会見されたと伺っております。

 このときの配付資料によりますと、計画的避難区域の基本的考え方として、事故発生から一年以内に放射線の積算線量が二十ミリシーベルトに達するおそれがある地区なので、おおむね一カ月をめどに別の場所に計画的に避難を求めると。他方で、福島県内の学校等の児童生徒の受ける年間被曝線量は、年間二十ミリシーベルトまで許容するとなっているわけです。

 すると、二十ミリシーベルトに達するおそれがあるから住むな、しかし一方では二十ミリシーベルトまでは大丈夫と。私は、これは矛盾をしているのではないか、この点に関して改めて御見解をお聞かせください。

枝野国務大臣 計画的避難区域の皆さんには、年間二十ミリシーベルトに達するおそれがあるということで計画的避難をお願いいたしました。

 一方で、学校等につきまして、これは、二十ミリシーベルトまでの被曝を許容するというふうな受けとめられ方をしてしまっておりますが、二十ミリシーベルトに達することのないように、そして、今現時点では、学校での被曝を一ミリシーベルト以下に抑えるという目標をさらにお示ししているところでございますが、できるだけ二十から一の間で一に近づけるということの姿勢というか方針をお示ししたものでございまして、決して二十ミリの被曝を許容するとか容認するとかという趣旨ではございませんでした。その点のところは、十分にその趣旨が伝わらなかったことについては反省しなければいけないというふうに思っております。

 そうした意味で、これは国際機関における基準も踏まえて、まずは第一段階として年間二十ミリシーベルトという被曝を受けないようにということの基準に基づいて、両者はある意味では整合性のとれているものだと思っております。

田中(康)委員 私は、やはりこれはもっとシンプルに考えるべきなんじゃないかと思うんですよ。

 二十ミリシーベルトといいますけれども、既に朝令暮改ということです。だって、従来の上限は一ミリシーベルトだったわけですから。そして、原子力発電所で労働されている方というのが約八万四千人いらっしゃいます。これらの方の今までの年平均被曝量というのが一・五ミリシーベルトなわけですよ。にもかかわらず、二十ミリシーベルトには達しないように努力をすると言いますけれども、前回の、四月二十九日、五月十六日の予算委員会でも私は述べましたけれども、放射線というものは、まさに、範囲であったり濃度であったりあるいは残留であったりというものが変幻自在なわけですね。(パネルを示す)ごらんいただきますとわかりますように、まさに同心円状に広がる形ではないという形です。

 そして、航空事故や列車事故というものは、一定の場所の一定の時間の一定の集団の方々に悲劇が訪れます。しかし、この問題というのは、海上も空中も地上も地中も海中も、範囲も社会も時間も、これはもう予測不可能、そしてまさに私たちの国土は、放射能に汚染されたのではなく占領された領土であるということだと思っております。

 これがまさに示しているとおりでありまして、後ほど扱う南相馬市というものは、二十キロから三十キロ圏内がありますけれども、まさに東京電力や原子力安全・保安院の方々が逃げていった県庁所在地の福島市の三分の一の放射線量という形なわけです。ですから、この問題というものは、お子さんがいらっしゃる枝野さんにとっても、もっと想像力を働かせていただきたいと私は思っています。

 続いて、緊急時避難準備区域というものを同時に設定されました。これは、二十キロから三十キロの南相馬市という場所において、常に緊急的に屋内避難や自力での退避ができるようにしなさいと。住んでもよいと言っているんです。しかし、住み続けたければ自己責任で住みなさいと言っていて、判断、責任を、地域主権といって住民に丸投げしている、自治体に丸投げしているということです。では、判断できるだけの情報を下さいというのが地域住民の考えです。後手後手の情報を、今のところは大丈夫と言いながら、何カ月もたって、外国の機関の圧力があれば違うことを言うというのでは、これは私は信が立たないということだと思います。

 もう一点、この点に関してお尋ねをいたしたいのでございますけれども、年内に既に工程表の終了は無理だと東京電力自体も認めてきているわけです。

 次のパネルに行きたいと思いますが、南相馬市というのは、実は二十キロまでの範囲というのがありました。ここはもう既に人は住めないという形になっています。しかし、二十キロから三十キロがあり、そしてさらに三十キロから上の地域という三つに分かれている。厳密に言えば、それ以外に計画的避難区域になっているところもあるから、四カ所に分かれているわけですね。

 しかも、この南相馬市というのは、双葉町や大熊町と違って、東京電力関連の原子力交付金を一円ももらっていない、つまり原発交付金とは無縁の自治体なわけです。原発のおかげで体育館や公民館や役場が立派にできたわけでもない。まさにそうした原発交付金の麻薬的な中毒とは無縁の自主自立の町だったわけです。そして、ここがあめならぬむちを一方的に打たれているということだと思います。

 まず、学校の問題、そして病院の問題を質問いたしたいと思います。

 枝野さん、このまさに二十キロから三十キロの人たちは、住んでもいいけれども、いつ何どきでも逃げられるように自分で努力せいと言われている。この南相馬市が今置かれている、医療や教育に関しての不自由を超えた理不尽な状況というもの、準備区域に指定されたわけですから御存じかと思いますが、その状況というものの御認識をお話しくださいませ。

枝野国務大臣 緊急時避難準備区域という指定をいたしました地域においては、この間に積算されている、降り積もっている放射性物質の量は比較的低いということで、そのことによる健康被害のおそれというものは低いという地域でございますが、一方で、原子力発電所が残念ながらまだ完全に安定している状況ではないというリスクを考えますと、万が一、原子力発電所の状況が急に悪化をした場合には、緊急に避難をお願いする可能性が生じる地域ということで、そうした場合に、避難の困難な皆さん、お子さんや妊婦さん、あるいは要介護者、入院患者の皆様方などにはこの地域には入らないでいただきたいということをお願い申し上げているところでございます。したがって、保育所、幼稚園、小中学校及び高等学校は休園、休校としております。

 ただ、残念ながら、さまざまな生活の御事情等も含めて、区域内で生活を続けざるを得ないお子さんや患者の方も一部残っておられます。こうした方々に対しては、通学費の支援を含めて柔軟な対応を行っているほか、区域内の医療機関の一部においては医療サービスも提供されております。同時に、区域外に避難をしていただけるような環境整備に取り組んでいるところでございます。

田中(康)委員 いや、一部の方ではなくて、ここには、市役所があり、スーパーマーケットも開いていて、多くの児童、子供、病弱な方、まさに弱者とおっしゃる方が住んでいるんです。あえて申し上げれば、今のところは大丈夫と言いながら、枝野幸男さんも岡田克也さんも宇宙服のような防護服を着て、まさにこの二十キロから三十キロの範囲に、人々は普通の生活をしていらっしゃるにもかかわらず、短時間お入りになったかもしれない。でも、私は、ぜひ皆さんに、同じ与党の一角にいる我々七人として、ノーブレスオブリージュ、やはり社会的使命を持った指導者の哲学と覚悟を持っていただきたいと思うんです。今そのお話をいたします。

 と申しますのは、この二十キロから三十キロには多くの児童生徒が住んでおります。市全体の七〇%が、原町地区と言われる二十から三十の居住圏内です。今どうなっているか。この三十キロを超えた鹿島地区というところの学校にすし詰めになって、体育館やあるいは武道場で、空調設備もないところで、複式学級のような暮らしになっている。一たんバスで行くわけです。しかし、バスに集合するのは、津波も地震の被害もない、今も建っている二十キロ―三十キロの学校の体育館に集合して、二十台のバスを市が一日百万円の自己負担をしてバスを出しているわけです。

 では、これは一体どういうことなのか。私たちは、出ていきなさい、疎開しなさいと言われるならば、まだつらくてもわかると。そして、その移った場所で職業や住まいというもの、意欲を持つための意職住と前回も申し上げました。しかし、住んでもいいけれども、自分で、素手で、自力で避難しなさいと言われているわけです。

 もう一個言うと、この北側に相馬市というのがございます。相馬市にも百人近い方々が親戚がいるから移っております。本来は、これは隣接区域として、相馬市の学校が受け入れることは、平時においても全国で行っているのに、なぜか相馬市長はそのことを拒んでいることによって、相馬市からもバスを出しているわけです。

 そして、驚くべきことに、福島県は、何と、五月の二十三日の日に、事前通告なしに、教員を百名、複式学級のような形になったからいいだろうということで、他の場所への発令を行ったわけです。本来は、この場所で、津波の怖さもあるような子供たちのためにPTSDの臨床心理士も加配すべき場所を、教員を百名も福島県は切っている。自治かもしれません。しかし、これは、私たちの国というのは、義務教育は皆に満遍なく行うということが、本来、憲法で保障されているはずです。

 この件に関して、現在の福島県知事の佐藤雄平さんは、皆さんの民主党の参議院議員であられた方です。にもかかわらず、一方的なこうした形で、平成の棄民状態に南相馬市が置かれている。このことに関して、きちんと政府として指導を行う、この御意思があられますでしょうか。

枝野国務大臣 まず最初に、私が南相馬を訪れた際に、防護服を着ておりました。それは、二十キロ圏内に入らせていただいて、二十キロ圏内で作業をされている、当時は警察の皆さんだったと思いますが、を激励するために、二十キロ圏内は防護服を着て入ってくださいということを政府としてお願いしている立場でございますので、そのお願いをしている立場が、お願いをしている事情と違う行動をとれば、それはお願いしていることに対して応じていただけなくなるということでございますので、二十キロ圏内に入るために防護服を着ていたものでありまして、決して二十キロから三十キロ圏内に滞在するために防護服を着ていたものではございません。

 その上で、今御指摘いただきました点は大変重要なことだというふうに思っておりまして、南相馬市がそうしたお子さんの学校への移動等のためのバスの費用等を負担されていることについて、これはしっかりと国において対応しなければいけないというふうに思っております。

 また、学校の教員の方の異動については、文部科学大臣に御連絡をいたしまして、南相馬地区のお子さんたちが教育環境をしっかり整えられるように、福島県の方ときちっと御相談をするように文部科学大臣に対して指示をしたいと思います。

田中(康)委員 私は、もっとロジカルに、理にかなった発想と決断をしていただきたいと思うんです。バスの代金を出してほしいという話じゃないんです。現実にここで人々が暮らしていることを国は許しているわけです。弱者と呼ばれる子供たちがいることを皆さんは黙認しているわけです。

 そして、ここには南相馬市立総合病院というのがあります。この病院は病床が二百三十床あるにもかかわらず、五床しか福島県は使うことを許していません。しかし、ここには脳外科医もいます、外科医もいます。ここでも人々が暮らしています。交通事故が起きるかもしれない、脳卒中になられる方がいるかもしれない。しかし五床しかない。そして、その五床に関しても、認めているのは緊急的に七十二時間、三日間だけはその病床を使っていいと言っている。脳挫傷を起こされた方が、三日後には一体どこの病院に行くのか。

 このような非現実的な、私は、まさに硫黄島のときと同じ、兵たんというもの、ロジスティックスというものがない。

 実は、この南相馬の方々は震災直後にも、東京電力からも県からも国からも連絡が一週間近くない中、自宅待機しなさいと言われた。けれども、物資は自分で用意せよと言ったんです。日本も戦争で、七割の方々が戦闘ではなく飢餓によって亡くなられました。自宅待機していろと言われたんです。その後、皆さんはここから自主避難要請をしたんです。なぜ自主避難命令ではなかったのか。このことは、共同通信が政府関係者の発言としてそのとき書きました。命令や指示をするとその移動の費用も国が持たなくてはならない、しかし要請であるならば、これは自主的である。

 でも、私は、これはだれも国民が納得しない事業仕分けであるのではないかと思っております。私たちは、やはり信じられる日本にしていく、おかしいことは一緒に変えていこうということが、国民新党も新党日本も二〇〇五年に結党した精神であります。それは、地域や家族や人々に立脚をするということだと私は思っています。

 そして、南相馬市は先日、二十一日に二人の副大臣がいらっしゃったときに、十一項目の要望書を出しました。その中には、被曝線量をはかるバッジを全部の生徒にぜひ供給してほしいということも書きました。しかし、この回答書に関して、一週間以内に返答されると政府はおっしゃいましたが、残念ながら、まだ返答が来ておりません。ぜひともこれに関して返答していただくと同時に、一点、その線量測定のフィルムバッジをすべての、弱者と皆さんがおっしゃる方々に即刻配付してくださることをお約束いただきたいと思います。

 この件の答弁をいただき、私の質問を終わりたいと思います。

枝野国務大臣 まず、今御指摘された共同通信の報道が報道されたとすれば、それは誤報でございます。そうした事実はございません。

 いずれにしても、自主的なことを含めて、こうした地域の皆さんのさまざまな費用負担については、国と東京電力においてしっかりと負担をさせていただくつもりで一貫して進めてきているところでございます。

 御指摘いただきました御要請について回答がおくれているとすれば、それは督促させますし、私も、実際にどれぐらいの量をどう調達できるのか、御通告ございませんでしたので今把握をしておりませんが、可能であるならば、できるだけ早くそうした対応をとるように指示したいと思います。

黄川田委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。

 次に、中川秀直君。

中川(秀)委員 自由民主党の中川秀直であります。

 きょうは復興特の原発問題の集中審議ということで、極めて大事なことでございますから、普通の質問というよりも、お越しいただいた参考人の方に、真実を明らかにするためにいろいろお尋ねをしたい。あるいはまた、私どもがなぜそう主張するかしっかりと申し上げる、そういうことになるだろうと思いますが、どうぞ御海容いただきたいと存じます。

 まず、総理、あの大震災があった三月十一日に、原子力災害対策特別措置法に基づく原子力緊急事態宣言が出されました。それ以降、法律上、原子力災害対策本部長たる総理にこの原子力問題対応のすべての責任と権限がございます。

 そこで、私は、本部長としてそういうお立場の総理の、まことに残念だけれども、三つの誤りあるいは罪、そういうものに関してきょうは質疑をさせていただきます。

 第一の罪は、いろいろ指摘されていますが、初期対応の政治利用で被害と混乱が拡大されたという罪であります。これは、あなたが緊急時のリーダーとして失格であるということを意味します。

 第二の罪は、国民の生命、そういうものを危険にさらした誤り、罪です。後ほど触れますが、初期段階で原子炉のメルトダウンの可能性をやはり政府も認識していたと思います。それにもかかわらず、これまで二カ月半、あたかもメルトダウンがなかったように誤った対応を続けて、子供たちや多くの人々を被曝の危険にさらし続け、大気や海洋を汚染し続けている、これは本当に罪万死に値することです。

 第三の罪は、こうした間違った原発対応を継続することによる日本経済を破綻させる罪、国家財政を破綻させる罪であります。遺憾ながら、今ここで何としてもそうしたことを改めるために、あなたに責任をとってやめてもらう必要があると残念ながら申し上げざるを得ないわけであります。

 第一の罪の、初期対応の政治利用で被害、混乱を拡大させたことについてですが、きょう、原子炉の圧力を下げるベント問題とあの翌日の総理の福島原発の現地視察については、この後同僚議員が質問をさせていただきますので、私は、発表が二転三転して、もういいかげんにしてくれと言われている海水注入問題について取り上げさせていただきます。

 この問題については、もうごらんになっていると思いますが、あらゆる新聞が、不信きわまる原発発表、何を信じていいのかわからない、混乱を招いた過剰な介入など、全紙厳しく批判していますし、ことしの流行語大賞は班目原子力安全委員長の、私は一体何だったんでしょうかということで決まりだというコラムまで出ているような状態です。

 菅首相は、三月十二日の十八時に、真水による処理はあきらめて海水を使え、こういう総理指示を出したとされていますね。これは、その当日、三月十二日、発災の翌日ですが、この二十時五十分以降きのうまで、またけさも確認しましたが、そうなって官邸のホームページに記載をされているので、間違いございませんね。

 そして、この指示の説明として、我々は、東京電力が廃炉を恐れて海水注入に消極的だったために総理が指示を出して海水注入をさせているんだというふうに、何かそんな説明を聞かされてきたような気がいたします。しかし、調べてみると、事実は全く違うようです。

 そこで、きょう参考人としてお越しいただいた東京電力の副社長、原子力・立地本部長でもあられます武藤栄さんに幾つかお尋ねをさせていただきます。

 まず、武藤さん、我々の調査では、東京電力は既に、社長が、三月十二日の十二時、震災の翌日の昼ですが、海水注入の準備について確認、了解をした、さらに十四時五十分には、同じ十二日ですが、海水注入の実施について確認、了解していたと、これは記者会見でしょうか、五月の二十六日に発表されておられますね。

 つまり、その時間から、八万リットルの真水注入が終了することに備えて、海水注入の準備をしていたのでありましょうか。であれば、消極的だということにはなりませんね。

 また、私が調べたところでは、東電は、水素爆発前の十五時十八分ごろに、準備が整い次第海水注入する予定である旨を経済産業省、さらには内閣官房、地元の県、市町村、警察、消防機関にファクス通信しておられますね。関係機関から私も入手しましたが、現物がここにありますけれども、「今後、準備が整い次第、消火系にて海水を炉内に注入する予定。」と書かれています。そのファクスですね。これは、吉田昌郎福島第一原発所長から各所に出されている。内閣官房には、内閣情報調査室、内閣情報集約センターに十五時二十一分に届けられたと、私どもの調査では聞いています。

 武藤さん、これに間違いありませんか。

武藤参考人 お話しいただきましたような事実関係であったというふうに認識をいたしております。

中川(秀)委員 五月二十六日、原子力安全・保安院の西山審議官が、東京電力は保安院に加えて内閣官房にもこのファクスを送ったということは知っているというようなことをお話しになったと、ある新聞のちっちゃい記事に載っておりまして、私も気がついたわけですが、保安院それから内閣官房、このファクスを受け取った事実はあるんですか。答えてください。

寺坂政府参考人 お答え申し上げます。

 そのようなファクスは受け取っております。

中川(秀)委員 内閣官房。

辻政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のファクスにつきましては、当日十五時二十分ごろ内閣情報集約センターで受け取りまして、直ちに危機管理センターの方に送付してございます。

中川(秀)委員 つまり、この官邸のファクスの、十八時に総理が、真水による処理をあきらめて海水を使え、そういう指示を出す二時間四十分前、三時間前に、東電はもう海水注入しますと政府に伝えていたんじゃないですか。これは重大なことですよ。官邸、十八時の真水処理をあきらめて海水を使えという総理の指示は、つまりホームページに書かれていることは、嫌がる東電に自分の政治主導で海水を注入させたという、政治的なパフォーマンスに受け取れてしまうじゃありませんか。

 それで、総理は、海水注入についておれは知らなかったと言っているそうだが、内閣官房にファクスが届いているのに、知らないでは済まされませんよ。そんなもので危機管理になるんですか。

 総理、三月十二日十八時の総理指示の正確な内容、意味は何なんですか。だれに対して指示したものなんですか。文書、記録はございますか。

枝野国務大臣 まず事実関係を詳細に御説明申し上げますが、内閣官房というのは、今もお答えがございましたが、内閣情報集約センターの方にファクスが届きまして、これは中川先生も御存じだと思いますが、官邸の地下の危機管理センターの中の情報集約ルームの方、つまり、大人数の、各省何十人という方がいらっしゃるところで回覧をされたというところまで確認がされております。

 ただ、そのファクス自体が、緊急参集チームと呼ばれる各省の局長クラス、幹部が集まっている部屋のところで回覧されたかどうかということについては確認はされておりません。

 ただ、いずれにしても、六時ごろの段階で、総理を含めて海水注入についての議論がある段階では、官邸に東京電力の方が来られておりまして、口頭等で、海水注入に向けた準備を進めている、そして、それにはもう一時間半ぐらいかかるという報告があって、それに対して、それをしっかりやるようにというような趣旨の総理からの口頭の指示があって、それについて走り書きをしたメモが危機管理センターのところに残っているという経緯でございます。

中川(秀)委員 先ほどの、ホームページで六時に総理が指示したというのが載っているのは、もうその日の八時五十分からずっと、官邸のホームページではけさまで記載をされているわけです。何か都合が悪いからこれを変えちゃうなんということになると、かえって新しい問題になってしまうと私は思います。

 では次に、今の官房長官の答弁を受けて、我々が調べてわかったことをもう一点申し上げさせていただきます。

 次に、三月十二日の十八時の、先ほどから言っている総理指示の直後の十八時五分、六時五分ですね、国から海水注入に関する指示を受けたと東電は発表しているんですよね。

 私たちの調べでは、ここにありますが、東電の中にはテレビ会議のようなものがあるんでしょうか、いろいろ各現場と本社とのそういうシステムが、さすがにそういう公益企業ですからあるんでしょう。その時系列記録というのをちょっと私は入手しましたが、これにも、小森副本部長が「首相官邸、経産大臣から法令に基づく指示(注水すること)」となっています。これは六時五分ですね。また、五月二十六日の記者発表でも、国から海水注入の指示を受けるとなっていますね、この東電の記者発表の資料を見ますと。

 一方、五月の二十一日それから二十二日、一日違いですが、二回にわたって政府・東電統合対策室の発表している資料として、三月十二日、福島第一原発一号機への海水注入に関する事実関係という発表文がございますが、これにはこの事実について、なぜ二十二日とこんな一日違いで同じ文書が出てくるかというと、これこそがまさに、班目原子力安全委員長が、一枚目の紙は、再臨界の危険性があるという意見が出されたので、防ぐ方法を含め検討しているという表記が書いてある。それが一枚目。二枚目は、班目さんの抗議によって、それは、可能性はゼロでないという趣旨の回答をした、そこで防ぐ方法を含め検討と変えられた、これが訂正版ですね。

 しかし、二十一日の最初の発表文も訂正版の分も同じように、十八時から十八時二十分ごろに「経済産業大臣から、東電に対し、海水注入の準備を進めるよう指示。」と書かれているんです。これは、東電は法令に基づく海水注入の実行の指示を受けたと言っているんです。社内記録でそうなっている。しかし、経済産業大臣は準備指示だと言う。おかしいですね。

 さらに不思議なことに、五月二日の参議院予算委員会では、海江田経産大臣は、十八時に総理から指示があり、私が保安院に対して指示文書の準備をするように指示したと答弁している。今度は文書の準備だ。ちょっとわけがわからないですね。

 そこで、参考人の武藤さんに聞きます。三月十二日の十八時五分にどんな指示を受けたんですか。内容を具体的に述べてください。それから、指示を受けた証拠がありますか。命令書があれば当委員会に提出していただけますか。

武藤参考人 十八時五分の御指示がどういう内容であったかという御質問でございますけれども、私どもといたしましては、経済産業大臣から、法令に基づきまして、原子炉に海水を注入せよという命令を受けたというふうに理解をいたしております。

 この内容につきましては、後ほど文書で社長あてにいただいておりまして、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第六十四条第三項の規定に基づく命令についてということで、原子炉容器内を海水で満たすなど適切な方法を検討した上で、その原子炉容器の健全性を確保することを命じることという内容が書かれております。

 この文書、資料の提出につきましては、これは公文書でございますので、御提出が可能かと思います。

中川(秀)委員 資料提出については、委員長、適宜、理事会でお諮りください。

黄川田委員長 はい。

中川(秀)委員 いずれにせよ、二転三転している印象はもう否めませんが、さらにその後、現地の吉田発電所長が海水注入を継続していたことがわかり、発表されたわけですから、当然、この政府・東電統合対策室の事実関係という文書、これは改正しなければおかしな公式文書になっちゃいますよね。だから、当然、再訂正しなければならないはずであります。

 しかし、そういう中で、今の十八時の総理指示というものの意味が何だったのか。十八時五分の経産大臣の指示、準備なのか法令に基づく指示なのか。どっちももうなぞだらけみたいな、そんな扱いにもなっている。

 さらにもう一言申し上げますと、さらなるなぞは、総理が、みずから総理指示を十八時に出した、もう真水はあきらめて海水注入しろと出した。その時間に、遺憾ながらまた迷って、本当にそれでいいのかと検討してくれという指示を出していることなんですよ。

 このなぞの総理指示と経済産業大臣指示と同じころ、この政府の資料によれば十八時から十八時二十分ごろ、この間にかけて、総理のもとで、御前会議というか何かそういうものが開かれていたらしい。それは、本委員会において総理自身が、先ほどの答弁にもありましたが、この間に、この十八時から十八時二十分の間に、再臨界という課題もあり、海水注入に当たってどうすべきかという検討を、東電の官邸に詰めていただいていた責任者、安全・保安院のメンバー、そして原子力安全委員会の委員長を初め委員の皆さん、そして私、あるいは海江田大臣、あるいは補佐官で検討していたと答弁していますね。

 原子力の素人である私でもわかることは、三月十二日十八時の段階で、総理のもとで、あるはずのない再臨界を議論し、原子炉がもう一回反応を起こして分裂を始めて、熱が発生して発電していく、そんな議論をして、その話が現地の福島原発まで行ったことの異常さなんですよ。

 ちょっとフリップを見せてください。

 地震発生当日の三月十一日の夜に、原子炉建屋の放射線レベルが異常に上昇していますね。明らかにもう空だきの状態が進行していた。これはもう兆候が確認されています。翌日午後には、セシウム、沃素、ストロンチウム、プルトニウム、セリウムなど、数十種類、五十種類ぐらいか知りませんが、放射性物質が漏れ出していることも確認されている。

 もう完全に、この図にあるように水がもう下がってしまい、四十分後にはもう空だき状態になり、燃料棒も制御棒も溶け、一時間半後にはこういう状態になり、そして二時間後にはこうなる。炉心がもう完全に本来の形を失っていることは疑いがないわけであります。二カ月以上たってから、炉心溶融みたいなことを、メルトダウンみたいなことを認めているではありませんか。

 したがって、こんな時期に及んでも再臨界を本当に心配していたというのは全く認識がずれていますし、愚かだったと思いますね。あり得るのは、本当にこれも偶然のことですが、スリーマイルの例も知っていますが、四十分、一時間半ぐらい、もう本当に、制御棒のジルコニウムというのは溶けちゃうんですが、何か膜みたいなのが残って、そして偶然にそういうことが起こる可能性が全くないとは言えないが、そういうことだということで、もうせいぜいそれは、十一日の発生から四十分から一時間半後。翌日の十二日の段階の夕方になって再臨界なんて、そんな議論をすることは、かつて科学技術庁長官で多少勉強しましたが、あり得ぬことですよ、そんなことは。

 班目委員長、あなたはこの御前会議で、再臨界について、最初は危険性があると言ったとされ、御自身が抗議されて、それは可能性はゼロでないと言ったことになり、しかし、それは事実上ゼロだという意味だとおっしゃり、最終的には、本当は海水注入が現地所長の判断で、これは正しい判断なんですが、続いたことがわかったから、最後に、私は一体何だったんでしょうかと言ったんですね。

 改めて聞きたいですが、三月十二日、翌日夕方十八時の段階で総理の前で海水注入を議論していたころには、もはや再臨界なんて懸念する、そんな時期は過ぎ去ってたんじゃないですか。正確に言わなきゃいけませんよ、国民に対して。総理のための安全委員長じゃないんです、あなたは。メルトダウンになっていたんじゃないですか、このときはもう。そのことを言うのがあなたの役割のはずだ。それを総理に言ったんですか。再臨界は事実上ゼロとあなたが言ったことに対し、総理は聞く耳を持っていたんですか。何と答えたんですか。

班目参考人 まず第一に、私は、もうはるか前の時点から、こうなった場合には、真水がなくなったら海水注入しかないと言い続けておりました。

 それで、十八時からの御前会議でそのような議論があったかどうかについては記憶してございません。私がはっきり申し上げるのは、私の方から再臨界という言葉を持ち出すはずは絶対ございません。これはもう、私の専門性からいってどなたも認めていただけると思います。しかしながら、どなたか、これも総理かどうかわかりませんが、再臨界の可能性についてどうかと聞かれたら、それはゼロじゃないかもしれませんねと言うかもしれません。

 ただ、ここで理解していただきたいのは、その空気で何か起こったとかいうんですが、そのときに周りの方がざわざわしたとか、私に再臨界についてもっと検討しろとか、そういうような話があったという記憶は全くございません。

 とにかく、私としては、事故の収束だけが念頭にあったので、何時何分にだれからどのように聞かれたかとまで言われてしまうと、正直申し上げて、はっきりとしたお答えはできないというのが実情でございます。

中川(秀)委員 これは国際的な問題にも今なっていて、五月二十四日にはIAEAも、政府も受け入れを決めたんですが、一カ月も前に申し入れてきてようやく受け入れたんですが、国際調査の対象になることなんですね。もう調査は始まっているんですよ。正確に答えなきゃいけないんです、これは。それは義務なんです、我々の、IAEAの加盟国として。

 それが、二カ月前のこの一番クリティカルな大事な日の、そんなところの記憶が、そういう話題になったかどうかもわからぬ、総理が何と言ったかもわからぬ、だれが言ったかもわからぬ、それじゃ、委員長、済みませんよ。それはあなたの責任の問題ですよ。正確に記憶を戻して、正確に答える責任があります。

 武藤さん、東電の方の事業者の原子力の責任者として、この三月十二日十八時の段階で再臨界の可能性があったとあなたは考えますか。私は、素人でもわかることですが、この三月十二日十八時時点では、泥水でもいいから冷やさなければならなかったんではないんですか。吉田さんが結局そう判断して、続けたわけですよ。また、再臨界があるとするなら、不純物の多い海水よりも、むしろその前の、もう八万リットルの、それだって起こり得ないんだよ。しかし、理論上は海水よりも真水の方がむしろ可能性が高い、そうなんじゃないんですか。いかがですか。

武藤参考人 再臨界の可能性についての認識でございますけれども、私どもとしては、再臨界の可能性は大変に小さいというふうに考えておりました。社内で、最初に淡水を入れるときには、大変に小さい可能性ではありますけれども、そうした議論はあったように記憶をいたしておりますが、淡水を海水に切りかえることで再臨界の可能性がふえるといったような議論は一切なかったというふうに思っております。

 物理的にも、海水の方が原子炉を臨界にしにくいということは自明だというふうに思っております。

中川(秀)委員 まさにそうなんですよ。

 さらに、私の調査では、東電は、官邸で再臨界がどうのこうのとがたがたやっているときに、三月十二日の十九時四分ですが、もう既に海水注入を開始しているんですね。そして、その直後の十九時六分に、海水注入を開始した旨、保安院に連絡したと言っている。

 五月二十二日の政府・東京電力統合対策室の海水注入の事実関係、さっき言ったものですが、その訂正版、二十二日の分です。この訂正版ペーパーには、十九時四分の海水注入開始について「東電担当者から保安院に口頭連絡したが、保安院側にはその記録はない。」と書いてあります。

 保安院、こんな大事なことなのに、なぜ、本当に記録がないんですか。

寺坂政府参考人 当時、さまざまなことの動きの中でいろいろあったわけでございまして、そういった中での口頭連絡ということについては、東京電力の方の資料にあるわけでございますけれども、私どもには、大変申しわけございませんけれども、その連絡を受けたという記録が残っていないというのが実態でございます。

中川(秀)委員 それでは、東電側に聞きますが、今言ったように、三月十二日の十九時四分、海水注入を始めた、そして六分、二分後にそのことを保安院に連絡した、そう主張しているわけですが、その記録や証拠はございますか。そして、保安院の連絡はどういうルートで行われたんですか。

 もし記録や証拠があるならば、これも委員長のもとで協議していただいて、大事な点ですから、提出していただいて、事実関係を確認していただきたい、このように思います。

武藤参考人 海水の注入の開始につきましては、十九時六分ごろ、本店に設置をいたしました緊急時対策本部から、原子力安全・保安院に常駐をいたしております当社の派遣者に対しまして連絡をいたしております。その派遣者が、その場にいらっしゃいました原子力安全・保安院の担当部署に伝えております。

 記録でございますけれども、その担当者が伝えた内容とその時間を自分の個人のノートに記載してございます。

中川(秀)委員 そこまで言い切っておられるならば、委員長、これはちゃんと事実関係を究明するためにも、提出のことを後ほど理事会で協議してください。

黄川田委員長 後刻、理事会で記録の提出については協議させていただきます。

 引き続き質問してください。

中川(秀)委員 さらに、東電の五月二十六日の記者会見を私、もう一回また読みましたが、その後の十九時二十五分、東電の官邸派遣者からの状況判断として「官邸では海水注入について首相の了解が得られていない」、もう一回言いますが、十九時二十五分、当社の官邸派遣者から、官邸では海水注入について首相の、菅総理の了解が得られていないという連絡が本店本部、発電所にあり、本店本部、発電所で協議の結果、一たん注水を停止することとした、こういう発表をしている。しかし、実際は発電所長の判断で、海水注入は継続されたということであったわけですね。

 武藤さん、この東電の官邸派遣者というのはだれのことですか。武黒一郎さんというたしかフェローが、前の原子力の責任者でいらっしゃるんですか、いらっしゃったと思いますが、この方なんですか。もしその方だとするなら、どんな人物なんですか。また、この人の状況判断というのはどういうことなのか。本部長として、あなたは現場の責任者として東電の本社の本部にいて、どういうことを聞いたんですか、これは。正確に言ってください。

武藤参考人 当時、官邸に派遣をされておりましたのは、先生御指摘のとおり、フェローの武黒でございます。武黒は、首相の技術的な補助者、アドバイザーということだというふうに私ども理解をいたしております。

 私は、当時、オフサイトセンターにおりましたが、テレビ会議を通じて状況は見ておりました。後ほど私が聞きました内容によれば、官邸では、当時、海水注入のような具体的な施策まで首相が御判断をされるという感じがあって、その御判断がない中で注水の継続を続けることは難しいという雰囲気があったということが伝えられたというふうに理解をしております。

中川(秀)委員 何事も総理の判断が下されていない中で、実施できない雰囲気だ、そういう連絡だと。(菅内閣総理大臣「逆、逆。逆じゃないか。やれと言ったんだよ」と呼ぶ)総理、あなたは今そんなやじを言っていますが、ちょっと整理しますよ。

 武藤さん、この武黒さんは本当に官邸に詰めていただいていた東電の責任者なんですか。総理はそんなことを言っていますが、東電と政府の正式ラインは、先ほどの、もう注水始めましたよという連絡をしたいわゆる事業者側の官庁へ連絡するセクションと、それから緊急対策本部、政府と一緒になっているその本部のルート、そして政府側と、それが正式のルートでしょう。正式なラインはそういうものであったにもかかわらず、武黒さんというのは総理のアドバイザーだと。そうすると、正式ラインじゃない、官邸直結の正式でないルート、そういう二つのルートがあった、それが結果的にこんなことになったんじゃないですか、指揮命令系統に混乱を来したんじゃないんですか。

 もう少し整理すると、三月十二日の十八時ごろ、政府内部で、東電は海水注入を三時間も前からやるといって通告しているのに、総理の政治主導を演出する、それも必要だ、政治主導で海水注入をさせたという政治的パフォーマンスを演出するための総理指示の……(菅内閣総理大臣「違う、違う」と呼ぶ)違うと言ったって、ホームページに書いているんじゃないですか。総理指示の動きがあった、十八時には総理指示があったということをホームページに飾ってある。二カ月もずっと飾っている。そして、十八時五分には経産大臣から、準備なんて今ごろ言っていますが、東電は法令に基づく海水注入の指示だと受け取っている。

 しかし、このシナリオが揺らいだ。総理は、あなたは、あるときは原発の知識がある、原子力の知識がある、あるときは素人だといって使い分ける。まさにこのとき、政権の延命第一のためにあなたは判断を誤ったんじゃないですか。シナリオが揺らいだんですよ。急にろうばいをなさって、自分の政治判断による海水注入の発表について不安になってきた。そこで、予定どおり、総理指示や経済産業大臣のそうした指示が出された同じ時間に、再臨界のことを検討するように指示してしまった。

 だって、統合対策室の中の、十八時か十八時五分ぐらいに、そういうような、班目さんが抗議されて、可能性はゼロでないという趣旨の回答をしたというふうになったが、しかし、それを、再臨界の可能性について総理から問われた、そのときにあなたがそう答えたので、「ホウ酸投入などそれを防ぐ方法を含め検討」になっているじゃないですか。やれやれじゃないじゃないですか。これがやれやれなら、この文章を変えなきゃいけないじゃないですか。何を言っているんですか。(菅内閣総理大臣「全然違うよ」と呼ぶ)違いませんよ。

 いずれにしても、水素爆発直後、大気に水に放射性物質が飛散している中で、政府対策本部の中枢で、現場の人たちは信じられないような混乱が起きているということにほかなりません。これは、シナリオどおりの政治的パフォーマンスが裏目に出ることを恐れて右往左往しているのが、震災当時、三月十二日十八時における原子力対策本部長、菅総理の姿だったんじゃないんですか。

 もしいろいろ言うんだったら、法令でちゃんとやるべきです。しかし、あなたはそうじゃなかった。この瞬間のあなたの一挙手一投足が、この二カ月半の原発をめぐる日本の悲劇そのものだと私は思います。反論があるなら、どうぞおっしゃってください。

黄川田委員長 中川委員、官房長官、総理から答弁させます。

枝野国務大臣 何度か申し上げておりますが、政府の官邸の中枢部、首脳部としては、できるだけ早く水を入れるべきであって、真水がなくなれば海水を入れるべきであるということは、当時、一貫して一致をしているところでございます。

 そして、六時前ぐらいの段階で、これはしっかりと法令に基づいて指示をしないと、それまで、ベントが口頭での指示をしながらなかなかなされなかったという、その理由についてはその段階ではわかっておりませんでしたが、事実がありましたので、したがって、海江田大臣がまずは口頭で法令に基づく指示をされた。その上で、そのことの御報告を含めて総理のもとで武黒さんを含めた打ち合わせがありました際に、東京電力の側から、準備を進めているけれども、その準備のためには一時間半程度かかるという報告がありました。そして、その場においては、この日は後に水素爆発とわかる爆発のあった日でございます、爆発等は起こらないというような御意見も専門家の皆さんからあった中にもかかわらず、炉の爆発ではなかったんですけれども、建屋において爆発が起こったということがございました。

 これは、安全の観点からは、あらゆることを想定して、万が一のことが起こらないのかどうかということについて、念のために、一時間半どうせ準備に時間がかかるのならということで、爆発をするとか再臨界するとか、あらゆる可能性がないのかどうかということをそこで確認して、そしてその準備にかかる一時間半の間に検討しろというお話があったことは、できるだけ万が一の事態を防ぐという観点から、ある意味で当然のことであったと。残念ながらそのことが、十分な意思疎通が図られていなかったということについて、これはしっかりと今後も我々も検証してまいりたいというふうに思っております。

 なお、ホームページの記載については、ホームページにそういった記載をしていること自体を、私を含めていわゆる首脳部のところでそういった細かいところまで把握をしておりません。ただ、事実関係はできるだけ詳細、具体的にホームページ等で報告するように、国民の皆さんに報告するようにという指示はいたしておりました。

 そして、先ほども申しましたとおり、これはしっかりとメモが残っておりますけれども、総理のもと、あるいは海江田大臣のところで、東京電力に対して、準備を進めて、準備ができ次第海水注入をするようにという意思は明確に六時前後に出されておりますので、そのことについて、これはメモを記述した者がどなたであったのかということについては確認されておりませんが、危機管理センターで回覧されたメモにそれがあった。そして、私などの方から、できるだけ詳細に事実関係について国民の皆さんに公表するようにという指示は一貫して出しておりましたので、そうしたメモに基づいてホームページに記載をされたものというふうに考えておりますが、明確にそれが否定されるような事実が出てきておりませんので、そのことについては、途中で書きかえるということはかえって疑義を持ちますので、そのまま残っているということでございます。

 なお、さらに申し上げますと、先ほど来、海水注入を東京電力が嫌がっていたのを政府がやらせたんだというようなシナリオというふうにおっしゃっていますが、少なくとも、政府の幹部においてそのようなシナリオを考えて外に向かって言ったことはございません。政府の外の皆さんがそういったことの疑いを持ってそうした御主張をされたことについては承知をいたしておりますが、政府といたしましては、少なくとも、この十二日の午後の海水注入については、東京電力が海水注入に抵抗したとかというようなことについて申し上げたことはないと思っております。

 ただ、ベントが指示をしたのになされなかった、そのまさに翌日でございますので、やりますと東京電力がおっしゃっておりましたが、あらかじめ早い段階から法令に基づく指示を出した、こういう経緯でございます。

菅内閣総理大臣 まず、中川先生、この事故が最初に起きたときの十五条事象というのは、非常用炉心冷却装置注水不能ということが起きたことの通知から、あの十五条の発令になったわけです。

 その時点で何を考えたかといえば、もちろんいろいろな方に集まってもらいましたけれども、とにかく冷却をしなければいけない、しかし、残念ながら、いわゆる本来の海水を使った冷却機能は停止しておりますから、炉心に注水をして冷却をするしかほかに手がないということで、それは、東電も保安院も安全委員会も、そしてその話を聞いた私や海江田大臣も、ずっと一貫してそのことは考え続けて、また、聞かれたときには常にそういう指示をする、あるいは、そういうことを当然やるべきだということを言い続けてまいりました。それは、どなたもそうです。

 ですから、まず、大きい流れとして、私が注水をやめていいとかやめろと言うようなことは、一貫してあり得ないんです。だって、今日まで、現時点だってずっと注水しているんですよ。注水が最も重要だということは、もちろんそこに集まった専門家の皆さんの意見も一致していたんです。

 そして、先ほど、いろいろな時点がありますから、私のところだけに絞って申し上げますと、まず、真水の注水があったわけです。真水がどこかで切れた後は海水にするしかないという認識も、関係者では一致しておりました。海水の注入ということについて、先ほど官房長官からもありましたが、十八時ごろ、そういう議論をしようとしたときに、武黒さんという方、東電が官邸に派遣されていたんですから、あと二人ほど若い人がついていましたが、その方が、海水の注水準備には一時間半程度はかかるという話もありました。そこで、いろいろな可能性を考えなきゃいけませんから、再臨界のことも、どうですかというお尋ねをしました。

 また、海水の場合は、入れた後、水は蒸発しますから、塩が残るんです。その塩による影響もいろいろ専門家の中では心配されているんです。ですから、なるべく早く海水からまた真水に戻さなきゃいけないということで、実際、今は真水に戻っています。つまりは、海水をずっと注入し続けていって、温度が上がってどんどん蒸発しますから、塩がどんどんできるんです。塩による腐食の可能性とかそういう問題もあるんです。

 また、中川さんは、もうあの時点ではメルトダウンしていたんだからという言われ方をしましたけれども、少なくとも、保安院の五月に至るまでの見方は、まだ水の中にかなりつかっているという見方をしていた。あるいは、東電も、水位計が事実上機能していなかったんでしょうけれども、少なくとも……(中川(秀)委員「長過ぎるよ、答弁が」と呼ぶ)いや、ちゃんと聞いてください、ちゃんと。

 ですから、そういう意味で、海水を注入したときのいろいろな可能性の問題を検討するのは当然じゃないですか。水素爆発の可能性、水蒸気爆発の可能性、再臨界の可能性、そして、塩が入ることによるいろいろな影響。そして、その間、時間が一時間半程度あると言われたので、そこにおられた専門家の皆さんに、では、そこも含めて検討をしてみてくださいと。しかし、基本的に、海水注入とかということはやるべきだということは当然言っていましたから、そのことが十八時の時点で、私としては、海水注入はやるべきだけれども、それに伴っていろいろなことがあるとしたら、そのことはちゃんと専門家の中で検討してください、そういう趣旨で一貫して申し上げたわけでありまして、何か私が政治的な別の意図を持ってそういうことをやったとか、そういうことは全くありません。

 それから、何度も申し上げますように、私が海水注入をとめたなんということがありようがないわけですよ。今も中川さん御自身が認められたように、私のところには海水注入を始めているということは、十九時四分から始まっているんですから、当然十八時の時点では始まってもいませんし、また、始まった時点でも私のところには届いていませんから、私はずっと、その後に報告が来た段階から始まったものだと思っていましたけれども、現実にはそれより前から始まっていて、先ほどもほかの委員の方が言われましたが、そのことは結果としては現場の責任者として正しい判断をされた、私はこう思っています。

中川(秀)委員 私のお尋ねしたことに対して三倍ぐらい時間をかけて御答弁になっていますね。もう言った言わないみたいなそんな話は余りしたくないが、塩による影響とか腐食だとか、あるいはそれと再臨界の関係とか、科学的な説明に全然なっていない。

 それから、ベントの話については後ほど、なぜそれができなかったかということは明確に申し上げますよ、我が党が調べたあれで。

 もう次へ行きましょう。

 いずれにしても、これは正確に言わなきゃいけないんですよ、IAEAにも。もう三時前に真水の注入は終わっているんです、水素爆発が三時半にあったけれども。そして、既に海水注入をしなければならぬ段階に来ている。そのときに再臨界の可能性などということを言う。そして、実際、海水注入の検討結果を、大丈夫ですよと言って保安院が総理に説明したのは十九時四十分。海水注入の指示を正確にしたというのは大方八時、十九時五十五分。大臣が命令したのが八時五分。これは政府の発表文です。

 私は、我々の調査で、今私が申し上げたことが間違いなく正しかったと思いますね。

 第二の間違い、罪について簡単に触れます。国民の命を危険にさらした、今メルトダウンのことを総理が言われたから言うんです。

 ちょっとフリップを出してください。

 現在、福島原発一号機、二号機、三号機のメルトダウンの状況は、これから示すうちのどれでしょうか。

 一枚目は、破砕した燃料ペレットにまじって高レベルの汚染水が流出しているような状態です。二枚目は、格納容器が損傷している初期の段階、つまり圧力容器から格納容器へ漏れている。C、メルトダウンによる格納容器の大規模損傷に至っている。D、これはチャイナ・シンドロームと言われている、もう最悪の事態。今メルトダウンということをもう認め始めているわけですが、今一体どの状況なんでしょうかね。

 私は、総理や官邸も初期の段階からメルトダウンの可能性は認識していたと思いますよ。いろいろ話題になった保安院の中村審議官、十二日に記者会見で、炉心溶融が進んでいる可能性があると述べましたね。枝野さんも何回も強調されているように、十四日午後九時ですか、記者会見で、福島一、二号、三号機で炉心の燃料棒溶融が起きている可能性について、三つとも起きている可能性は高いと述べましたね、確かに。みんなメルトダウンの可能性を考えていた。総理だけがメルトダウンの想定外だったなんというはずはないと僕は思いますね。

 メルトダウンということは、もう最初の段階で飛び散った放射性物質のことを重視して対策を考えるべきなので、原子炉にはもう穴があいているんですから、そこからどんどんどんどん汚染水が流れるリスクがあるということです。

 ところが、政府と東電が一号機のメルトダウンを認めたのが約六、七十日後の五月十五日。二、三号機のメルトダウンを認めたのが五月二十四日。この約六、七十日間、あたかもメルトダウンがないかのように対応してきたんです。私は、当初からその可能性を認識していたにもかかわらず、そのことがないことを前提に間違った対応策を続けてきたということが大きな間違いだと思いますよ。

 なぜそんな間違った対応を続けたのか。私の考えられる唯一の理由は、また反論は当然あるでしょうが、何か四月十日から二十四日に統一地方選挙があったからですか。それまでは真実を語らないでおこうとしたんですか。

 福島原発の二十キロ圏の避難対象者は八万人です。二十キロから三十キロの屋内退避対象者は十四万人。五月二十四日に撤回されるまでの約一カ月間、校庭利用基準、年間二十ミリシーベルト、不安を抱えてきた子供たち、その親の皆さん。一ミリシーベルトに変えましたが。

 二十キロ圏に牛は三千四百頭、豚三万一千五百頭、鳥が六十三万羽いたんです。これを抱えていた酪農家、どんな思いでしょうか。私は、えさがなくて、畜舎で牛や豚が多数死んでいる映像を見て言葉を失いましたよ。

 文科省の調査でも、宮城県気仙沼沖から千葉県銚子市沖まで約三百キロにわたって、海底の土から最高で通常の数百倍の濃度の放射性物質が検出されたことを発表されている。漁業関係者は今どんな不安を抱えているんでしょうか。その他風評被害に遭って莫大な損害にあえいでいるいろいろな皆さん、観光業も含めて。

 私は、こうした被害は、政府が最初からメルトダウンを前提に対策をしておればもっと少なかったかもしれないと思います。

 しかし、こんなごまかしは、IAEAの調査団が二十四日に日本に来たことでいよいよ無理になりました。みんな正直に言い始めた。日本は、今の政権のもとでは真実がわからない、国際調査団でなきゃわからない、そんな国になってしまったんですか。国際的な信頼の失墜は致命的じゃないですか。

 私は、総理、あなたは、国民の生命を危機にさらしている、そういう責任感を持たなきゃいけないと思いますよ。大気を、海洋を汚染している、この福島原発問題を国際問題に発展させ続けている、そういう認識を持って、私はもう罪万死に値すると思いますね。

 G8でも原発についての日本の不信感はぬぐえなかったじゃありませんか。終わってしまったじゃないですか。あなたへの内外の不信はもう歯どめがきかなくなっている、そのように思いますよ。

枝野国務大臣 一方的に、メルトダウンを隠していたという前提でお話しになられているんですが、中川委員が御質問でもお認めいただいておりますとおり、御質問では十四日の会見のことを引いていただいておりますが、私は十三日の会見以来、炉心溶融の可能性についてしっかりと御説明申し上げております。これが十分私の言葉足らずで伝わっていなかったのかなと心配になりましたが、当時の新聞等を確認いたしましても、政府として炉心溶融の可能性を認めているということはしっかりと報道されております。

 そして政府として、炉心溶融が起きたということの確証が得られたのは五月の半ばでありましたので、そのことをその時点で発表したわけでありますが、この十二日、十三日ぐらいの時点から、炉心溶融が起きている可能性を前提に、したがって、今御指摘いただいたとおり、避難区域の家畜等について、あるいはそれを飼育されている皆さん、大変申しわけない事態でございましたけれども、かなり広範にわたって、しかも長期にわたっての避難区域をお願いしたということでございます。

菅内閣総理大臣 中川委員に申し上げますけれども、私たちがメルトダウンというものを、例えば東電なり保安院なりから、こうなっていますということがあったのを隠したなんということは、それはあり得ません。まして、統一地方選挙があるからないからでそんなことを隠したなんということはあり得ないことなので、そこだけはちゃんと正していただきたいと思うんです。

 もう経緯は皆さんも御承知のように、私も当初、空だき状況があった中で、いろいろな意見は聞いておりました。しかし、私が物を言う場合には、経産省のもとにある保安院とそれから東電とがいろいろなことを、例えば水位が今このぐらいにありそうだとか言われることを基本にして言うのがやはり私の立場であります。

 もちろん、セカンドオピニオンとかサードオピニオンの中にいろいろな意見がありまして、かなりの損傷、あるいは燃料棒の溶融、さらにはメルトダウン、いろいろな表現があり、いろいろな指摘があったことは私にも伝わってきております。しかし、少なくとも本部長という立場で言うときに、いろいろな可能性がありますという言い方を余りすると余計におかしい情報になりますので、私としては、保安院なり東電が公式的に認めたところまでは申し上げましたが、それ以上のことは私の口からは申し上げない方がいいと思っていましたので、申し上げませんでした。

 同時に、もう一つだけ言います。あらゆる可能性を考えた上で対策は打っておりました。ですから、まだ燃料棒が原形をとどめていたとしても、あるいはメルトダウンしていたとしても、何よりも重要なのは冷却ですから、冷却をとめたことは、少なくとも、とめろと言ったり、とめたことはその後ありません。あらゆる努力を通じて冷却を続けているというのは、結果としてそのことの拡大を防ぐ最大で、最も効果的な対応だったと思います。

 そして、避難区域については、十二日の十七時三十九分に十キロ圏内の避難、あるいは十八時二十五分には二十キロ圏内の避難ということで、あらゆる場合に備えて、ここまで避難をしていただいておけば大丈夫だというところまで避難の範囲を拡大したということもあわせて申し上げておきます。

中川(秀)委員 時間がないので、もうああだこうだということはあえて申しません。

 最後の大事なところをもう一つだけ言わせていただきたい。日本経済それから国家財政とこの原発問題という問題について申し上げます。

 浜岡の運転停止の要請を出した。これは評価する人もいる。しかし、浜岡だって燃料棒や使用済み燃料はその原発のサイトにあるんです。運転停止したからって、これは冷やし続けなきゃだめなんです。当たり前のことですね、よく御存じのように。稼働してもしなくても津波が来たら大変なことになる。

 なおかつ、あなたは、五月六日に、浜岡の停止要請をした記者会見で、電力需要に対しては十分対応できると申されましたが、これはほかの原発が稼働することを前提にしているんですね。ところが、実際どうですか。今回の停止によって他の原発も停止せざるを得ない状況にもうなりつつあるんですよ。

 なぜなら、十三カ月に一回定期点検が必要なんです、原発は。十三カ月に一回なんです。地元自治体の同意を得られないと再開できないんです。菅総理が浜岡を停止したんだから、うちの原発もとめろと言う。そうなる。このままいけば、来年の今ごろは五十四基の原発すべてが停止になる。来年の今ごろ、とまって電力供給不足にならないと断言ができるんですか。法令に基づかずとめたんだからここの原発もとめろという声を前に、知事さんたちが原発再開の同意ができるんですか。

 確かに、定期点検から再開するルールがないんです、今、日本は。運転再開するルールがないんです。その都度安全協定などでやってきているんですが、今こそ国の責任を明確にする新しいルールが必要なので、その再開ルールができるまではあなた自身が各原発の再開を要請すべきで、そうでなきゃ日本列島全体が電力不足に陥りますよ。日本経済、地域経済、国民生活の打撃は避けられませんよ。

 だから、あなたみずからが原発のある自治体や特に住民に、行って再開を要請する、そのことをせざるを得なくなると私は思いますよ。そうでなければ、格好のいいことは要請するけれども、点検から再開するのがつらい、そんなことから逃げるのかと言われますよ。そういう政治的パフォーマンスでいいのかということになりますよ。

 もう一つ、国家財政のことを申します。

 原発の現状認識をしっかり把握しないと、これからどの程度の対応をするか、これがわからない。これはフリップの四ですが、専門家は、人工地震を利用した弾性波探査と電気伝導度探査によって、どの程度メルトダウンしているのか、そういうことが簡単に調査できると言っています。保安院はそれをやらなければいけないはずです。そうでなければ今後やるべき対策が決まりません。単なる水冷式だけで、工程表で今言っていますが、それだけで今後の対応をしようというのには問題があります。

 もう時間がないから、いろいろなやり方があるということは申しませんが、これで費用が全然違うんです。一兆円から二十兆円ぐらい違うんです。一々細かいことを言いませんが、専門家に聞くとそういうことです。このフリップの一、二、三というのがそうですね。やはりそういう意味で、単純に水冷式のこの工程表を、メルトダウンを認めた段階で、どう変えていくかということをしなければなりません。

 そろそろ私の時間が参りましたから、結論を申し上げて、最後に総理の答弁を求めたいと思いますが、私は、今のような対応では、国家財政破綻や日本経済破綻のリスクを避けることはできないと思いますね。また、海洋、大気汚染のリスクも避けることはできないと思います。

 菅総理、あなたは、五月二十五日のパリにおけるOECDのスピーチで、日本には昔から足るを知るという言葉があると言って、この言葉が教えているのは適切な欲望の水準を知るということの大切さだと言われたが、私は、遺憾ながら申し上げなきゃなりませんのは、あなたのリーダーとしての使命は、この言葉を率先垂範して、日本のリーダーがみずからそんな権力欲の過剰さなんかを反省して潔く職を辞したという姿を示すことじゃないかと思いますね。

 昔、同じ橋本内閣の閣僚として、あなたは厚生大臣として薬害エイズに取り組む、私は一カ月前に起きた高速増殖炉「もんじゅ」の事故の担当大臣として科学技術庁長官を務めました。あなたは情報公開の重要性を強調しておられた。私は、アカウンタビリティー、説明責任、もう事故が起きておりましたから、その重要性を強調しておりました。原子力安全委員会を科技庁の建物から別のところに移したり、すべての専門分科会まで会議を公開させました。敦賀へ行って、大臣と市民と語る会、数百人を相手に数時間語ったことも私もございます。

 閣僚席もあなたと隣り合わせでしたが、いろいろ先ほど言ったようなことで熱く語ったことも今思い出しますが、あのときのあなたはどこへ行ったのでしょうか。何か、残念ながら、情報もうまく政権が続くようにコントロールしようとか、あるいは、都合のいいときだけ記者のぶら下がりに応じようとか、政権の執着だけでやっているような、そんなあなたの姿はちょっと見るにたえない、そんな気がいたします。

 先ほど、きのうも質疑があったけれども、私も、黄川田委員長の地元陸前高田あるいはまた大槌あるいは大船渡、釜石から気仙沼までずっと行きました。陸前高田も参りました。瓦れき処理なんかは大船渡はほとんど進んでいませんでした。だって、業者に一円もお金を払っていない。地元の瓦れき処理する業者は、自分で借金して機械を借りてきて、人を雇い、どこまで進むんですか。もう二カ月半たってそんな状態。避難所にいる人たちは貯金も尽きていますよ。仮設住宅にも入れない、義援金は届かない。もう今、本当に日本が、こんな対応で国民みんなが苦しめられていると言っても、残念ながら事実であります。

 私は、こうした皆さんの思いをみずからの思いとして、残念ながらあなたに引導を渡さなきゃいけない、そんなふうに言わざるを得ません。次のリーダーに、潔く辞任をして引き継ぐべきです。

 世論調査でも、首相を交代すべきが七割を超えました。あなたの原発対応を評価しないは七四%、八割、情報の発信の仕方も八割が問題だと言っている。こうした民意に対して、それでもなおあなたが権力への未練を断ち切れないというならば、内閣不信任案によって辞職へ介錯することがやはり国会の使命だ、そういうふうに言わざるを得ません。私たちはそういう使命を、残念ながら完遂せざるを得ないんじゃないか。

 以上申し上げて、最後に総理の御反論を伺って、質疑を終わります。

菅内閣総理大臣 私は、総理に就任して最初に、二十年にわたる日本の低迷をどうやって脱却していくのか、そういう課題に取り組むということを申し上げました。そして、三月十一日のこの大震災を経て、危機の中の危機、そういう二十年にわたる低迷の中で、この大震災、さらに加えて原子力事故という問題が発生いたしました。まず優先すべきは、この大震災と原子力事故のまさに復旧復興あるいは収束であります。

 特に、原子力事故については、ジェー・シー・オーのことを先ほど言われましたけれども、まさにジェー・シー・オーの事故は臨界事故でありました。私も当時、なぜこんなことが起きたのかと、野党ではありましたけれども……(中川(秀)委員「私は「もんじゅ」のことを言ったんです」と呼ぶ)失礼しました。「もんじゅ」だと違いますかね。ではちょっと、失礼しました。

 そういうことも含めて、とにかく、今やらなければならない責任を放棄してしまうということは、私はできません。何としても、まずは原子力のこの事故の収束を実現して、そして危機の中の危機を次の段階まできちんとつないでいく役目が自分の役目だ、私はそう考えておりますので、私としては、その義務を果たしていく覚悟であることを申し上げて、反論とさせていただきます。

中川(秀)委員 もう質問を終わると言ったんですが、一言。

 あなたがおやめになった方が、原発の対応の事故の処理ももっとスムーズに進む、国民の信頼も国際社会の信頼も取り戻せる、そのように申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

黄川田委員長 この際、お諮りいたします。

 各案件審査のため、本日、政府参考人として警察庁警備局長西村泰彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

黄川田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

黄川田委員長 質疑を続行いたします。

 この際、西村康稔君から関連質疑の申し出があります。中川君の持ち時間の範囲内でこれを許します。西村康稔君。

西村(康)委員 自民党の西村康稔でございます。

 中川委員に引き続きまして、菅内閣の原発対応、そして被災地への対応、このことについて質問させていただきます。

 先ほど来、やりとりを聞いておりまして、菅内閣において情報がいろいろ混乱をし、官邸の認識と東電の認識にも差があり、また官邸内部で、いろいろ書類が届いているのに十分に流通していない、上がっていない、こうした状況の中で、先ほどお話がありましたとおり、原発対応については特に、世の中の多くの皆さん、七割、八割の皆さんがおかしいと不満を持っているということであります。

 先ほど総理も、いみじくも言われました。メルトダウン、最近になってわかったんだと。もちろん、私は、当日から保安院がその指摘をしたことを前回指摘させていただきました。しかし、つい最近まで水に浸っていたと思っていた、この甘い見通しが、すべて後手後手に回って、被害を拡大してしまっている。このことについて、きょうしっかりと議論をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、同じことが被災者生活再建支援制度にも言えるわけであります。フリップ、パネルを出していただきまして、資料の一であります。

 もう御案内のとおり、私の地元であります阪神大震災の後、この被災者生活再建支援制度ができまして、住宅を失われた皆さんには基礎支援金として百万円、そして住宅再建をする場合には加算支援金として、建設する場合には、百万円などなどのこうした支援があるという制度であります。

 まず、この制度についてお伺いをしたいと思います。松本大臣、この生活再建支援金について、これまでに何件支払われていますか、支給されていますか。

松本(龍)国務大臣 お答えをいたします。

 被災者生活再建支援金につきましては、都道府県から支給事務の委託を受けている財団法人の都道府県会館が申請を受け付けております。今、おとといも行ってまいりましたけれども、二万四千件の申請のうち、約四千四百件の審査を終了し、振り込み手続が行われておると聞いております。

西村(康)委員 総理、今の答弁を聞いておられましたか。どう思いますか、総理。何万人の方、何万世帯の方が被災されているのか。総理、この今の状況をどうお考えですか。

菅内閣総理大臣 今、松本防災大臣の方から申し上げましたように、現在、この生活支援金については順次支給を開始いたしているところと承知をしております。そのことを、できるだけ急いで、そういう申請があったものに対しては対応するように私からも進めてまいりたい、こう思っております。

西村(康)委員 総理、今、松本大臣からは、四千数百件、今の時点で振り込みが行われている、そういう状況だとありました。

 総理、今回、どれだけの世帯が被災をして、どれだけの建物が失われていると思いますか。

松本(龍)国務大臣 今避難をされている方は十万人、十一万人というふうに聞いておりますし、全体の被害、あるいは、広域的なものでありますから住家被害が何世帯というところまでは、全体の把握はまだできておりません。

西村(康)委員 総理、今回の津波の被害でどのぐらいの建物が失われたのか、それを御存じですか。

菅内閣総理大臣 現在避難されている方が約十万強というふうに理解をしておりまして、そういう中で、少なくとも、正確な数字は私も記憶をいたしておりませんけれども、その被災者の数の中で考えれば、十万あるいはそれを少し下回る程度ではないかと思います。

西村(康)委員 ぜひ、総理、全体像をよく把握していただいて、そして対応に当たっていただきたいと思います。

 警察庁が調べているデータで、全壊に遭った建物が十万軒以上、半壊のものは六万軒、七万軒、さらにいろいろなプラスアルファがあります。つまり、この十万軒の中には、一軒家もあれば集合住宅もあるわけです。半壊の大規模半壊もあります。恐らく、十五万世帯、二十万世帯、こうした方々が家を失って大変厳しい思いをしておられる。着のみ着のまま逃げてこられた。日々のお金にも苦労をしておられる。十万、十五万、二十万の世帯の方が苦労している中で、何で今、もう震災後三カ月もたとうとしているのに、たった四千四百件なんですか。数%じゃないですか、数%にも行かないじゃないですか。

 総理、この状況をどう考えますか。

松本(龍)国務大臣 基本的に、この事務を行うのは都道府県会館でございます。これはわかっているというふうに言われますけれども、考えてみても、私も発災から、長島委員あるいは新潟の森市長等々から罹災証明の発行手続がおくれるということで、速やかに迅速化、簡素化を行いました。自分たちの仕事はやってきたつもりであります。

 都道府県会館におきましても、恐らく三月の二十日前後にはほとんどの状況を把握しているというふうに思っております。そういう意味では、そのときにコンピューターが何台要るか、あるいはマンパワーがどのくらい要るか、財政がどのくらい要るかということは、ずっと二カ月半考えておられるというふうに思っております。

 それがおくれているということを聞きまして、私も、先週来ていただいて、事務処理を迅速にやるように申し入れをいたしました。

西村(康)委員 やっと先週になって大臣は、その現場の処理のところに行かれたと。全部都道府県会館、都道府県任せにしているわけであります。国が何でもっと責任を持ってやらないのか。

 総理、総理にお伺いしたいと思います。できるだけ早くこの支援金を被災された皆さんにお届けをする、これをお約束していただきたいと思います。いつまでにされるのか、総理のお考えをお伺いしたいと思います。

黄川田委員長 補足答弁で、国務大臣松本龍君。

松本(龍)国務大臣 先ほど繰り返したとおりであります。実はもう二カ月半以上たっております。そういうことはしっかり督励をしてまいりたいし、私ももう一カ月前からずっと言っておりました。

 そういう意味では、これから被災者生活再建支援金、とても大切なお金であります。百万円の基礎支援金、二百万の加算支援金等々、必ず皆さんにお届けをする。そういうことはしっかりここでお約束をして、これからも励んでまいりたいというふうに思っております。

西村(康)委員 いつまでに被災された方にお届けをするんですか。総理、総理の御決意をお伺いしたいと思います。

松本(龍)国務大臣 一刻も早く届けたいというふうに思っております。

西村(康)委員 総理、答弁をされませんけれども、総理の決意をぜひお伺いしたいと思います。仮設は夏までにということで言われておりましたけれども、できるだけ早く。いつまでですか、総理。

菅内閣総理大臣 申請があったものに対してできるだけ早く対応するように、私からもさらに督促をしてまいりたいと思っております。

西村(康)委員 今回の一次補正では五百億ちょっとの予算を計上されております。県の分、県がこれまで積んできた分と合わせて約一千億です。

 これで足りるんですか、総理。できるだけ多くの人に、全員の人に渡そうと思ったら、全然これじゃ足りませんよ。二十万世帯としても、仮に百万円だけとしても二千億。もちろん、さらにプラス二百万があります。全然足りませんよ、総理。

 わざとおくらせて、そして二次補正を組まなくてもいいようにしているんじゃないですか。二次補正を直ちに組んで、全員の人に安心してこのお金が行き渡るように、総理の決意を伺いたいと思います。

松本(龍)国務大臣 基金の中には五百三十八億ございます。これは、委員御承知のとおり、都道府県が相互扶助の観点で積み立てたものであります。今回の一次補正では五百二十億積み立てて、それに対応するようにしております。

 今御指摘のとおり、これで足りるというふうには思っておりませんけれども、次の補正までに国と都道府県との負担の割合をしっかり検討していきながら、総務大臣、財務大臣と協議をしながら、私の責任で努力をしてまいります。

西村(康)委員 総理、早急に二次補正を組んで、すべての人にこの支給金が行き渡るようにする、その御決意をお伺いしたいと思いますが、総理のお考えはいかがですか。

菅内閣総理大臣 今、防災大臣からも、地方負担のあり方も含めてどうするかということは議論しなければなりませんが、基本的に、被災された方がきちんとこの資金が受けられるように、お金がないから出せないなんということは絶対に起きないように、補正も含めてしっかり対応していきたい。

 つまり、作業の進展を、今一部の人が、何かお金がないから進展していないのではなくて、それはいろいろな手続の問題でのおくれがあると思いますけれども、少なくとも資金的な問題でショートするようなことが絶対ないように、二次補正を含めて手当てをしていきたいと考えています。

西村(康)委員 ぜひ、人が足りないなら人をふやして、コンピューターが足りないならコンピューターを入れて、総理、すべての被災者の皆さんに安心していただけるようにしていただきたいと思います。

 この問題、さらに詰めたいと思いますが、時間がありませんので、同じようなことをお話し申し上げます。原子力の損害賠償です。

 これは東電が仮払いを進めています。もちろん、一義的に東電に責任があるということで、東電もしっかりとリストラをしていただいてその資金を捻出して、できるだけ多くの方に早く、被害を受けられた方にそのお金が渡るように、支給されるように努力をしていただきたいと思いますが、しかし、農業者、漁業者、中小企業者は、いまだ営業損害、被害に対して補償がなされていない、多くの方が資金繰りに困っておられる。

 総理、これはいつまでも東電任せではいけないんじゃないですか、国が国策として進めてきたことを。少なくとも国は一千二百億、国が保険として支払う分があります。この一千二百億については、少なくともこの補正予算で早く計上して、計上しないとお金が出せません。東電の資金繰りがどうなるか非常に厳しい状況にある、これは以前に清水社長も、非常にぎりぎりの厳しい状況にある、資金がショートする可能性もあろうか、こういうことを答えております。

 東電だけに任せていては資金繰りがショートする可能性がある。さらに、法的根拠のない債権放棄まで言うと金融機関もお金を貸さない。そんな状況の中で、国がやはり責任を持ってこの損害賠償をやらなきゃいけない。そのためにも、一千二百億、少なくともこれは早く補正予算に計上して、国としてその分はしっかり担保するぞという姿勢を示さなきゃいけないと思いますけれども、総理のお考えをお伺いしたいと思います。

海江田国務大臣 西村委員にお答えをいたします。

 まず事実関係でございますが、一時避難を余儀なくされた方々、これはおよそ五万世帯ございますが、この五万世帯は、恐らくきょうでこの五万世帯に対する支払いが終わろうかと思います。

 そして、続きまして、農林漁業の方々であります。この方々は、漁協など、あるいは農協などを通じまして、これも本日から実際の支払いが始まることになろうかと思います。

 そして、最後に残されました事業者、中小企業の方々でございますが、これも中小企業、事業者の団体との協議会がございまして、本日もこの協議会が開かれる予定でございますが、ここで枠組みが決まりますと、直ちに支払いがスタートするかと思います。

 そうしたことを踏まえまして、そしてお話の一千二百億円につきましても、これはやはり一日も早く私どもがバックアップをしなければいけないと考えております。そのためには、ぜひスキームの仕組みを国会で御議論いただきまして、成立をさせていただきたいと思います。

西村(康)委員 スキームを早く出していただいて、これは党内、我々もいろいろな議論がありますし、場合によっては対案も含めて、修正も含めていろいろな議論をしたいと思いますが、早く出していただく。そして、他方で、一千二百億についても補正予算で早く計上して資金繰りに万全を期す、被災をされた方々に万全を期す、このことをお願いしたいと思います。

 もう一点、農林漁業者そして中小企業者、この方々への仮払いもおくれています。これからやるんでしょうけれども、おくれています。それを東電にすべて任せるんじゃなくて、国が先に立てかえ的に払う。先ほどの都道府県に全部任せているのと同じです。国が責任を持って立てかえ的に賠償する、そのための議員立法を我々は考えておりますし、民主党の中にもこれに賛同していただける方がおられます。

 総理、この一千二百億の補正予算の計上と、そして国が立てかえ的に仮払いをする、この議員立法についてどうお考えか、御意見を伺いたいと思います。

菅内閣総理大臣 被災者、特に今、次に御指摘のあった農林漁業あるいは中小企業の皆さんに対する仮払いについて、もちろん一定のルールを決めることは必要ですけれども、実際に仮払いをするに当たって、財源がないからそれがおくれるとかできないとか、そういうことにはならないように、政府としてもきちんとした責任を持った対応が必要だと考えております。

 その中で、一義的には東電の責任ではありますけれども、ちゃんと仮払いが進行できるためにどういうやり方をとるべきか。今提案のありました議員提案をされるという趣旨のことも含めて、前向きに検討してまいりたい、こう思っています。

西村(康)委員 前向きにとおっしゃいましたので、我々もこれは早急に提案をしたいと思いますので、できれば超党派で早く成立をさせたいと思います。総理にもぜひ御協力をいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 原発の話を引き続きやりますけれども、チェルノブイリの事故との比較をさせていただきます。

 原発については、安全基準や規制体制について、これは自民党時代にも進めてきた話でありますので、我々にも責任があります。そのことを反省もしながら、そして、一日も早く収束させることが我々にとっても責任だという思いで、これまで私も各党、政府との実務者会議の場でもいろいろ提案をし、協力をさせていただきながら、一日も早い収束に向けて努力をしてまいりました。

 しかし、やはりどう考えても事故発生後の対応の悪さ、先ほどの中川委員の指摘のあった海水注入をめぐるいろいろな混乱、そして、先般来私が指摘をしている初動のおくれ、こうしたものについてもう一度しっかり議論をしたいと思いますけれども、現状、今、汚染の状況がどうなっているか、これを確認したいと思います。

 パネルにはチェルノブイリの様子が出ていますけれども、これは真ん中に丸く円をかかせていただきました。チェルノブイリから大体三十キロ圏内でどんなふうに汚染されているか、これを見ていただきますと、一番高いところで三百七十万ベクレルの数字があります。これはセシウム137でありますけれども、三百七十万ベクレル、一番赤いところですね、中心部分であります。

 さて、それでは、日本の今の福島第一の周辺の様子はどうかということでありますが、これは先般、文科省とDOE、アメリカのエネルギー省が航空機のモニタリングをやった結果であります。これを見ていただきますと、同じセシウム137でありますけれども、五百万ベクレル以上のところが一番中心部であります。右上の数字を見ていただきますと、一番高いところで一千四百七十万、一千四百万を超える数字になっている。

 チェルノブイリですら、チェルノブイリは何年かたった後ですけれども、三百七十万、その後、三十キロ圏内は基本的に人が住まないというふうなことになっておりますが、これは非常に厳しい状況、汚染は進んでいる。このことは、先般、原子力委員会で河田さんが同じ報告をされたと伺っております。

 原子力安全委員長にお伺いをしたいと思います。

 この状況をどう考えるか。そして、先般の予算委員会の質疑で委員長は、少なくともベントがここまで遅くならなければこれほど被害は広がらなかった、事態の悪化は防げた、それは確かだったと思いますという答弁をされました。この状況を見て、今の状況をどう評価するか、そして、やはりベントのおくれがこうした状況を招いた、このようにお考えなのかどうか、お考えをお伺いしたいと思います。

班目参考人 ベントがもしもう少し早く実施されていたらばこのような状況にはならなかった、特に二号機の格納容器の破損というのが結構大きな問題だと思っていまして、ベントによってそれを防ぐことができれば被害の量はもう少し少なかっただろうというふうには認識してございます。

西村(康)委員 そのベントのおくれについてこの後議論をさせていただきたいと思いますが、その前に、こうした状況の中で福島の学校の校庭で土壌汚染が大変問題になっております。先般、二十ミリシーベルトという基準を当初に発表された。これは、国際放射線防護委員会、ICRPの勧告値でありますけれども、まず平常時は年一ミリシーベルト以下だ、これが普通の方の年間の許容量だと。子供はさらにそれより少ない。当然吸収量が大きいからだと思いますが、一般的には一ミリシーベルト。そして、緊急時にはやや高くなりますが、緊急時終了後には一から二十。この数字をとられて二十ミリシーベルトとされた。

 しかし、平常時一ミリシーベルトで、子供に対してこの最高の値の二十ミリシーベルト、これはおかしいんじゃないか。これは我々もいろいろな場で指摘をさせていただきました。そして、小佐古参与も抗議の決意で辞任をされた。その後、二十七日になって、文科省は一ミリシーベルト以下を目指すという発表をされました。しかし、二十ミリシーベルトの基準を取り下げたわけではないんです。この中途半端な対応はかえって現場を混乱させます。

 総理、なぜ最初から一ミリシーベルト、今でも一ミリシーベルトを目指すとしなかったのか。総理は小佐古参与と意見の差があったということを発言されておられます。総理は今でも二十ミリシーベルトでいいと考えているんじゃないですか。総理の考えをお伺いしたいと思います。

高木国務大臣 西村委員にお答えをいたします。

 先ほどの御指摘の中で、暫定的な考え方については、既にお話がありましたように、国際放射線防護委員会の勧告に基づいて、原子力安全委員会の助言を踏まえ、そして原子力災害対策本部として取りまとめさせていただいたものです。

 この暫定的考え方は、まず、できるだけ放射線を浴びないようにするために設定されたものでありまして、年間二十ミリシーベルトを浴びてもよいということでは決してありません。いまだ福島原子力発電所の事態は収束をしていない、そういう状況の中で、事故後の復旧時における参考レベルである年間一ミリから二十ミリシーベルトの暫定的な目安を置きまして、今後できるだけこの線量を減らしていく努力、これが適切だ、そういう考え方をとったわけであります。

 したがいまして、五月二十七日には、この考え方に沿って、さらに安心を確保するために、今年度においては、当面、児童生徒が受ける線量については一ミリシーベルト以下を目指す、こういうことを改めて申し上げました。

 今後とも、私たちは、この考え方に沿って、できるだけ線量を減らしていく努力をしてまいりたい、このように思っております。

西村(康)委員 二十ミリシーベルトはまだ生かしたまま目指すとか、そんな中途半端な基準ではなくて、しっかり一ミリシーベルトなら一ミリシーベルトにするというふうに基準を変えていただきたいと思いますが、時間がありませんので、これは指摘だけさせていただきます。

 福島県内の学校で、郡山市内の中学校では、このように、表面が汚染をされた土を端っこの方に寄せて、そして凝固剤で固めて、ブルーシートでとりあえず囲ってあります。文科省は上下入れかえる方法あるいは穴を掘る方法を指針で示されましたけれども、それ以前にこのような方法で郡山は取り組んでいる。

 確かに、入れかえる方法も科学的にはすごく数値が減るからいいんでしょうけれども、親御さんからすると、これは地下にある何かで流されてくるんじゃないか、校庭の隅に穴を掘って埋めてある、ある意味、汚染されたものの処理場、ごみ場が校庭内にある、地下にあるということですので、大変親御さんたちは心配をする。これは我が党の根本匠前代議士からも現地の心配の様子をよく伺っております。

 そして、この指針を示される前に郡山市はこういう処置をしました。この状態がもう数週間続いているわけであります。私も、早い段階から、各党との実務者会議、政府との会議で、これを早く処理してくれということを申し上げてきました。なぜこれを放置しているんですか。

 確かに、発電所の外の放射能に汚染された廃棄物の処理については、どう扱うかという法律がありません。ここは法の不備がありますから、これはぜひ超党派で早くこの対応をしなければいけませんけれども、そんなのを待っている場合じゃありません。

 梅雨どきになって、放射性物質が流されてくる可能性もある。大変親御さんたちは心配をしております。なぜこれを放置しているのか。一刻も早く処理をしていただきたいと思いますけれども、総理、いかがですか。

高木国務大臣 今、郡山市の状況がお示しになられました。

 私どもとしましても、四月の十九日の時点では十三校が屋外活動が制限されるという学校でございましたが、その後、線量が低下をいたしまして、現在は該当校がなくなっております。

 また、土壌に関しましては、五月八日に現地で実地調査をいたしまして、線量を減らしていく観点から有効性が確認をされた、いわゆる上下転換方式あるいはまとめて地下に埋める方法、こういったものがございます。もちろん、この点については、きちっとした除染シートをしっかり敷きましてやっていくことに対して、非常に効果があるということも指摘されております。

 したがいまして、私たちはこれからも、教職員が携帯をする線量計など注意を施しまして、取り組みを進めてまいりたいというふうに思っています。

 校庭に積み込まれた土砂でございますが、その土砂の処理をするところ、これにつきましては、福島県を初め関係庁と慎重な検討をしなければなりません。今その関係省庁とも一体となって、その問題について取り組みを進めております。

西村(康)委員 もう何週間も前からこれを私は指摘をさせていただいていますし、県からも市からも上がってきているんだと思います。なぜこんな状態で放置しているんですか。

 総理、これは一日も早く処理をする。もちろん、処理先は難しいでしょう。二十キロ圏内へとりあえず持っていく、それもできなければ自衛隊に頼む、あるいは福島の発電所内まで場合によっては運ぶ、いろいろな案があると思いますが、ずっと検討している、検討しているなんです。

 子供たちが、これから梅雨どきになって、放射性物質が流れてきたらどうするんですか。総理、ぜひこの対応を急いでいただきたい。総理の決意を伺いたいと思います。

菅内閣総理大臣 削り取った土を移すということは、学校にとってはそうあるべき姿だと思います。移す先について、いろいろこの間の関係者の議論をお願いしているわけですが、率直に申し上げて、なかなか移す先のめどが立たないというのが現状だと認識しております。

 しかし、子供たちの安全ということは何事にもかえがたい重要事項でありますので、関係者に一層の議論の促進を私からもお願いして、何らかの結論をできるだけ早い時期に出せるように、そして移せるように努力をしたい、こう思っています。

西村(康)委員 総理、今こそ、そんな関係者に何とかじゃなくて、総理の政治主導で、リーダーシップで、例えば自衛隊にお願いして、自衛隊はドラム缶に詰め込むいろいろなノウハウを持っておられます、それでどこかに運ぶ。二十キロ圏内へ運ぶ、十キロ圏内へ運ぶ、一つの方法だと思いますが、ぜひ総理に政治主導をこういうときこそ発揮していただきたいと思います。いかがですか、総理。

枝野国務大臣 総理からもその趣旨は伝わったと思うんですが、今申し上げましたとおり、処理を例えば自衛隊にお願いをするということについては、これは政府の責任でできると思います。

 しかし、これを受け入れていただく、今実際に避難をされておられますが、例えば原発、第一原発の敷地の中にとか、あるいは十キロ圏内にということについては、それは当該地域の皆さん、自治体の皆さんからすれば、少しでも放射線の影響を少なく抑えて、そしてできるだけ早く帰りたいという思いを持っておられるわけでございます。こうした皆さんに、これをトップダウンで、持っていくから受け入れてくれ、置いてくるぞというわけにはなかなかいかない、そこのところは十分御理解をいただきたいと思います。

西村(康)委員 このままほっておかれるということですか。梅雨どきでもう雨が降って、台風が来て、流されていく可能性もあるのにほっておくということですか。

 ぜひ、総理の強いリーダーシップ、早くされるとおっしゃいましたので、そのことに期待をしたいと思います。

 そして、福島でのこういう状況、仮払いでの様子、現地でそれぞれ対策本部があって対応してくれていると思いますが、現地の対策本部の責任者はだれですか。

海江田国務大臣 私どもの副大臣が担当しております。

西村(康)委員 どなたですか。

海江田国務大臣 池田副大臣でございます。

西村(康)委員 きょう、現地の対策本部の池田副大臣にぜひお話を伺いたいということで質疑をさせていただきましたが、今も池田副大臣は対策本部長で福島で指揮をとっておられますか。

海江田国務大臣 体を壊しまして、私も診断書を受け取っておりますが、入院が終わりまして、今、自宅で待機、療養だと思います。

西村(康)委員 現地には責任者がいないんですか。どうなっているんですか。今初めてそのことを聞きました。我々、経産委員会でも、副大臣は現地に行っているから呼ばない、そういうふうに理解をしてきた。

 いつから入院しているんですか。いつから現地にいないんですか。現地の責任者はいないんですか。

海江田国務大臣 私どもは、今、保安院の次長がそちらに行っておりますので、彼に代行してもらいまして、逐一報告は受けております。

西村(康)委員 そんなことをこれまで発表されていますか。責任者である、現地の対策本部長である副大臣が入院をしている、この大事な事実を発表していたんですか。隠していたんじゃないですか。

海江田国務大臣 隠してはおりません。本日、池田副大臣がこちらに出られないということも、その理由は入院加療、入院が終わって、今加療だということでお伝えをしてございます。

 それから、私どもは、以前に、副大臣の体調もございまして、時々この現地の本部長をかえましたところ、やはりそれではいけない、一人の方に責任を持っていただかなければいけないということで、それで池田副大臣に本部長という任務を果たしていただいたわけであります。

西村(康)委員 いつから入院して、いつから不在の状態が続いているんですか。正確にお答えください。

海江田国務大臣 予算委員会の委員の方々が現地に視察された十八日だったと記憶をしておりますが、そのときは現地で対応しております。そして、翌日から病院に入ったと私は覚えております。

西村(康)委員 現地の本部長が入院をする、その任務を離れる。当然、公表して、そして同時に、それにかわるべき、まさに政治主導でいろいろなことを進めておられる。こういう話も、本来なら現地でいろいろ調整をしながらやるべき話もある。もちろん、本部で自衛隊と調整するような話もあるでしょう。しかし、トップダウンじゃできない、現地でいろいろ相談をしなきゃいけない。そこに政治家がいないじゃないですか、本部長がいないじゃないですか。そんな状態でどうして地域の対策ができるんですか。

 なぜ発表しないんですか。なぜ隠してきたんですか。

海江田国務大臣 隠してはおりません。私は総理にも、そういう意味では、任にたえないならば、これはかわりの方にやっていただきたいということをお伝えしてございます。

西村(康)委員 まさにこういう、福島の皆さんも苦労しておられる、大変な思いで原発事故に、被災をされた方々がいる、市町村は一生懸命やっている。そこに政治家が、まさに政治主導で、行っていろいろなことを調整しながら進めていかなきゃいけない。そして官邸と連絡をとっていく。

 不在の状態が続いているんですよ、総理。それを許しているんですか、総理は。総理に相談した、上げたと言っていますよ。

 総理、なぜこんな状態が続いているんですか。なぜ本部長を置かないんですか。

菅内閣総理大臣 現地にできるだけ副大臣あるいは政務官が常駐できる体制が好ましいとは私も思っております。

 今、そういうことで、副大臣が体調を壊されて、復帰が少し難しいということでありますので、早急に他の副大臣あるいは政務官に対応してもらうように海江田大臣とも相談をしたいと思います。

西村(康)委員 何日たっているんですか。十八日の視察の後ということですよ。もう十日以上たっているんですよ。その間、不在になっている。

 総理は、これを放置しているんですか。なぜすぐ任命しないんですか。要らないんですか。副大臣や政務官が行っても役に立たないんですか。なぜ直ちに任命しないんですか。まさに、こういう問題が起こって、現地といろいろ調整しなきゃいけない。その現地で調整する役がいないじゃないですか。

 総理、なぜほったらかしにしているんですか。総理に伺いたいと思います。

枝野国務大臣 原発の現地対策本部長が長期にわたって不在であるというのは望ましくない状況であるというふうに思っておりまして、それについては先ほど総理から御答弁もあったところでございます。

 ただ、一方で、事故の発災当初と異なりまして、現地で問題になっている事項はかなり個別具体的になってきております。例えば学校の校庭の問題などについては、文部科学省において、大臣以下、政務含めて、現地の教育委員会等とも御連絡をとっていただく等を含めて、現地対策本部長は残念ながらこの十日ほど不在でございますが、それは一方では事務方の保安院の次長を先頭に、そして各省の政務が必要に応じて現地の関係当局との調整については担わせていただいているところでございます。

西村(康)委員 十日間も不在になる、これはもう大きな問題だと思います。

 海江田大臣は、総理に池田副大臣の交代を進言したと言われました。しかし、十日間、総理はこれをほったらかしにしている。その本部長の権限は、今だれがやっているんですか。その次長ができるんですか。法律的な手続はとったんですか。

 総理、十日間もほったらかしにしている。総理、なぜ送らないのか。本部長としての権限はだれがやっているのか。総理、しっかりお答えいただきたいと思います。総理に進言したと海江田大臣は言われているわけであります。

黄川田委員長 確認の意味で、経済産業大臣海江田万里君。

海江田国務大臣 今の決裁の仕方でございますが、現地におります保安院の次長から起草されてまいりまして、私と池田本部長がそれをきちっと決裁をしております。

 特に、現在は一時立ち入りのあるときでございますので、私は、一日も早く帰ってもらいたい、現地で、それはいろいろ体の都合もあろうかとは思いますが、ぜひお願いをしたいということを再三申し上げてまいりました。

西村(康)委員 池田さんは頑張られたんでしょう。それはそれで、早く療養されて回復されることを祈りたいと思います。

 しかし、それとは話は別です。そのかわりを本部長としてやるべき政治家が行かなきゃいけない。

 総理、十日間放置をされたこの責任をどうお考えですか。

菅内閣総理大臣 私も、基本的には副大臣なり政務官が常駐することが望ましいというふうに、基本的には思っております。

 この間の経緯で体調を崩されたという話を聞いておりまして、最終的に、他の人に行ってもらうか、あるいはどうするかということを、私もG8から帰った後に今相談をしておりまして、できるだけ早急にきちんとした体制をつくるよう、私と海江田大臣の責任できちんと対応したいと思います。

西村(康)委員 これまでも、菅内閣の対応は地元の自治体を軽視してきた。低レベルとはいえ、あの汚染水を放出するときにも、地元の自治体にも説明がなかった。全くなかった。いろいろなことを発表する際に、地元の町長、村長は聞いてない、たびたびありまして、このことは何度も指摘をしてまいりました。全く地元自治体、地元軽視と言わざるを得ません。

 現地に本部長が不在の状態が十日間以上続いている、これは許されることではないと思います。情報を隠していた。公表して、こうなっている、それはそれで我々も受けとめて、早く回復していただきたい。しかし、それを隠して、今ごろになって発表している。全くの情報隠ぺいだと思います。このことについてもまた追及していきたいと思いますが、時間がありませんので、初動の話をしたいと思います。

 IAEAに、四月四日に日本政府は説明をされました。その文書をお配りしております。三枚紙をお配りしております。日本政府の説明として書かれております。

 これを見ていただきますと、一号機の経緯については、ベントを開始した時間が書いてありません。そして、政府が講じた措置を見ると、ベントの命令を出したことも時間も書いてありません。つまり、ベントが非常におくれた。先ほど班目委員長がおっしゃったように、ベントが早ければここまでならなかった、チェルノブイリみたいにはならなかった。そのベントがおくれたことが、私は今回の初動、決定的な原因だと思っておりますが、それを隠すために、IAEAに出す資料にはそれが書いてない。自分の都合の悪いことは書かない。説明しない。この姿勢は、まさに自分の都合のいいことだけを外に示す。

 これから、我々が求めているとおり、国会に事故調査委員会、検証委員会を置いて、そして偽証罪も適用する。全く政府とは別に、政府の中においてお手盛りでやるのではなくて、全く政府とは独立して、国会においてしっかりと検証していく。その中で、IAEAの皆さんにも入っていただいて協力をしていただいて、正しいことを、何が起こったのか、何が原因だったのか、しっかりと検証していきたいと思いますけれども、この法律についても出したいと思いますが、直ちに、我々は準備をしておりますので、国会に提出をしたい。超党派で賛同してくれる方もたくさんおられます。

 総理、まずこのことについて、この調査委員会を国会に置くこと、そしてIAEAにこんな報告をしていること、このことについて総理にお伺いしたいと思います。

菅内閣総理大臣 まず、今回の原子力事故、原発事故について、徹底的な調査、検証が必要である、その点については全く私もそう考えて、そして今回、この調査・検証委員会を立ち上げました。

 その顔ぶれが明らかになっておりますが、三つの原則、一つは、これまでの原子力行政からの独立性、それから内外に対する公開性、そして、技術的な問題ばかりではなくて、いろいろな制度的な問題等々を含めた包括性、この三つの原則を満たせるような形で徹底した検証をお願いしたいと思っております。

 IAEAについても、調査団が来ておりますし、来月にはIAEAの関係閣僚会議も行われます。また、G8で私の方から申し上げたのは、来年の秋には、IAEAと日本政府が合同で、日本において原子力事故を含めた国際会議を催したいので、G8の皆さんにも参加をいただきたいということを申し上げました。そういう形で、徹底した検証を行うことは必要だと思っております。

 また、国会に置かれるという考え方は一つの考え方ではありますので、ぜひ国会で御議論いただきたいと思います。

西村(康)委員 ぜひ、これは超党派で進めたいと思いますので、各党にもまた御協力をお願いしたいと思います。

 初動の話ですが、なぜベントがおくれたのか。きょうは、東電、原子力の御専門でもありますし、当時事故直後に福島第一に入られた武藤副社長に来ていただいていますので、なぜベントがおくれたのか。一時半まで決裁がかかる。清水社長は一時半に了承したと言われています。しかし、何でもっと早い段階でできなかったのか。会長、社長が出張でいなかったからじゃないですか。そしてまた、三時の段階でも、小森常務は、いつでもゴーサインでできる、こういう記者会見をされています。しかし、実際には十時十七分までかかっています。

 東電、なぜこんなにベントがおくれたんですか。本当にまじめに現地でやっていたんですか。この点についてお伺いしたいと思います。

武藤参考人 ベントの経緯でございますけれども、私ども、発災直後からすべての電源がなくなる、いわゆる冷却機能がなくなるという大変厳しい状況の中で、進展の状況によってはベントが必要だという認識は早期から持っておりました。

 格納容器の圧力を見てベントを判断するわけでありますけれども、格納容器の圧力がわかりましたのが十二日の零時を少し回ったところでございまして、直ちにベントが必要であるというふうに判断をして、当時本店におりました副本部長の常務の小森が、社長の了解を得た上で国にベントの提案をして御了解いただいたということでございまして、ベントの意思決定が遅かったということはございません。

 ただ、その後、ベントを実際にするためには、大変に高い線量の中で、また照明もなく、通信手段もないといったようなところで、大変厳しい状況の中で精いっぱいの努力をする中で、ベントの時間が今御指摘のような時間になったというのが事実関係でございます。

西村(康)委員 最終的にベントができると判断された、これは恐らく住民の避難が完了したということを確認したんだと思いますが、この時間はいつですか。

武藤参考人 発電所長が、ベントの操作を朝九時目標で行うようにという指示を八時過ぎにしております。八時三十七分に、今御指摘の避難の状況などを踏まえて、避難が終了してからベントをするということで福島県に連絡をして、九時ごろからベントをするというふうに申し上げております。

西村(康)委員 住民の避難完了は九時ということでいいですか。確認させていただきます。

武藤参考人 結構でございます。

西村(康)委員 枝野長官は、前回の答弁でもそうですし、記者会見でもそうですが、朝三時の時点で避難が完了したということを言っておられましたが、それは事実ですか。

枝野国務大臣 私の記憶を申し上げます。

 午前三時過ぎに、まず、東京電力と海江田大臣が、ベントを行うことについての記者会見を行いました。それに若干おくれて、私の方から、そのことについて同じように記者会見を行いました。そのときには、前の晩、十一日のうちだったと思いますが、三キロ圏内の避難についての避難指示はもう出ておりまして、ベントをするに当たって、これは東京電力と海江田大臣等でお話がございましたが、そのときに、その三キロ圏内を超えての避難指示等についての御意見とかそういったことがあった記憶はございません。

 そして、三キロ圏内についての避難指示、前夜のうちに出しておりましたので、今後ベントが行われるということを、電気の落ちている状況ですから、実際に被災者の皆さんが直接得られるかどうかはともかくとして、少なくとも、ベントが行われますということを、その三キロ圏内で避難をされている方に対しても公表するということでありまして、三時の段階で三キロ圏内からの避難が終わっていたと確認していたかどうかというのは、申しわけありません、確認をしなければ正確にはお答えできません。事前に御通告ございませんので、確認は今できません。

西村(康)委員 それでは、記者会見を私がかわりに読み上げさせていただきますけれども、三月十二日午前三時、枝野長官は、発電所から三キロ以内の避難、十キロ以内での屋内待機の措置により、住民の皆様の安全は十分に確保されており、落ちついて対処いただきたいと思いますということを言われていますので、この時点で避難を確認しておられます。しかし、実際に東電が避難を確認し終えてベントをする態勢に入ったのは翌朝の九時二分であります。このずれがある。

 東電、これはどういうことですか。どの部分の避難を確認されておられたんですか。

武藤参考人 当日九時ごろに福島第一原子力発電所近傍の住民の皆様方が避難をされたという情報が来たということで、条件が整いつつあったというふうに理解をしたということでございます。(西村(康)委員「どの地区かわかりますか」と呼ぶ)発電所の南側の地域だったというふうに記憶をいたしております。

西村(康)委員 よくわからないんですけれども、南側の地域。

 実は、事故が起こった三月十一日の夕方から、文科省、安全委員会、保安院それぞれがこのSPEEDIを使っていろいろなことを予測しております。

 SPEEDIというのは、二つの情報を入れないと予測はできない。一つは気象情報です、どっちから風が吹いているか。これによって、どういう方向に放射性物質が飛んでいくかということを予測する。もう一つは、放射性物質が出た量がどのぐらいあるのか。これによって、その風向きと一緒に、どの方向にどれだけの放射性物質が飛ぶのかということを予測するシステムであります。

 このSPEEDIのシステムを十一日からこの三つの省庁は活用して、そして避難にも、本来なら、避難する人たちに、どの地域に避難をしなきゃいけないか、そうしたことも予測をしながら使わなきゃいけなかった。

 SPEEDIの活用状況の表を見ていただきたい。整理をさせていただきました。

 文科省は、三月十一日の夕方から数時間ごとに予測をしています。しかし、官邸にはその結果は連絡をしていない。

 そして、原子力安全・保安院は、十一日の夜二十一時過ぎ、そして十二日の未明、一時過ぎにもこの予測をしていますが、二つ目のものについては官邸に連絡を、ファクスを送った。これは枝野官房長官も確認をしておられますが、その後、その情報は上がってこなかったということを記者会見で言われています。送ったけれども活用されなかった。それ以降、保安院は四十二回やっていますが、全く官邸に報告をしていない。

 そして、原子力安全委員会も十二日にこの予測をしていますが、官邸に連絡をせず、そして、五月三日になってからすべて公表するようになった。

 一例だけ見ていただいて指摘をさせていただきますが、例えば、三月十二日の七時二十七分時点、十二日の朝です。格納容器が破裂するかもしれない、これは班目委員長がその危険性も前回答弁をされました。この予測を見ていただくと、確かに、おっしゃるとおり、朝七時の段階で南方向に広がっている。これは一歳児が沃素をとった場合にどのぐらいの影響を与えるかということですけれども、信じられない数字が出ています。五キロ圏内でも、ここにありますように、一歳児の子供であれば五千ミリシーベルトもの沃素を吸収してしまう、こんな予測をしています。

 しかし、これは全くこの避難にも使われなかった。単にコンパスで、三キロ圏内だけで大丈夫と言ってベントの指示をされていた。実際には、これはむしろ、東電の側がさらにそれより広げて、風向きなりから予測をされて、配慮をして、避難に時間がかかったということだと思います。

 申し上げたいのは、SPEEDIという、これは我々の時代から、いざというときに使おうということでしてきたこの仕組みを、今回、これだけのものを予測し、なぜすぐに公表しなかったのか、なぜこれを避難に使えなかったのか。総理、全くこれは宝の持ち腐れであります。

 しかも、関係省庁は全部予測をやっているんです。それが官邸に上がってこない。上がってきても無視をする。まさに統治する能力がないんじゃないですか、総理。この三つの、何度も指摘をされてきた、安全委員会、文科省そして保安院、ばらばらに対応している。これも、何でばらばらにこんな予測をしなきゃいけないんですか。一カ所でやって統合して、それを直ちに避難なり今後の対応に生かす、それがまさに政治主導であり、総理としてのリーダーシップ、統治能力ではないですか。

 総理、このことについてお伺いしたいと思います。

枝野国務大臣 SPEEDIの情報が官邸の幹部、危機管理センターの緊急参集チーム等に届いていなかったことは大変遺憾だというふうに思っております。

 この危機管理センターでは、私も何度か、ここには気象庁も来ておりましたので、放射性物質が出た場合には、それは風向きによっていろいろあるだろうということで、これは私に限らず、風向きはどっちなんだというようなことについての情報を気象庁に対して何度か求めた場面がございます。これについては、関係省庁の担当者も同席をしておりますので、十分承知をしていたものというふうに思っております。

 結果的に、縦割りが原因なのか、何が原因なのかというのはまさにこれから検証が必要だというふうに思っておりますけれども、このSPEEDIの活用について、少なくともこういったシステムがあるのに活用されていないと把握をした段階で、なぜ使えないのかということで関係者を呼びまして、少なくとも彼らが言った説明は、放射性物質の量がわからないと使えないシステムですという説明が私に対してございましたので、私も決して技術系ではありませんけれども、周辺の放射線量がもうわかっているんだから、逆にそこから、そういうシステムなら逆算できるはずだし、逆算したものに基づいてさらに推測を働かせればいいんじゃないですかという指示をして、これで初めて、ようやくその数日後に、一枚だけ、指示のとおりにシミュレーションしましたというのが上がってまいりました。

 結果的に活用されなかったということについては大変残念なことでありますし、これについての原因と経緯についてはしっかりと検証していかなければいけないというふうに思っております。

西村(康)委員 この二枚の紙は、十二日の七時二十七分の時点では、一号機の格納容器が仮に破損した場合にどうなるかという想定を置いて計算しています。十二日の十三時時点のものは、一号機でベントを行ったときにどのぐらいのものが出るのか、どの方向に出るのか、これを予測しているわけです。

 官房長官が言われましたけれども、確かに、途中からはモニタリングの結果から逆算して入れるようにしました。しかし、事故の起こった十一日からこの予測をやっているんです。それが官邸に一部上がっているけれども、官邸はそれを無視したんですよ。上がってこなかったんですよ、あなたのところまで。官邸の中の統治の仕組みができていないんです。関係省庁はばらばらにやっているし、上がってこない仕組みなんです。そんなところに我々は政権を任すわけにはいかないんです。

 そして、総理、本来、この仕組みを使って、ベントをやればどの方向に放射性物質が飛んでいくのか、何時にやればどの方向へ飛んでいくのか、これを予測しながら、単にコンパスで三キロだけじゃなくて、これは五キロ、十キロまで影響を与えることがわかっています。そうしたところに避難をさせることがあなたの仕事だったんじゃないですか。現地に行くのではなくて、避難をさせることがあなたの仕事だったと思います。

 あなたが行くことによって、いろいろな人がその対応に割かれた。きょう警察庁、来ていただきましたけれども、警察庁、総理の警備の体制をつくったと思いますが、いかがですか。

西村政府参考人 総理警護の警備体制についてお尋ねですので、お答え申し上げます。

 当日、総理担当の警護員による身辺警護を実施したほか、福島県警察におきまして所要の警備を実施いたしました。

西村(康)委員 もう時間がありませんから細かいことは聞きませんが、所要の警備、つまり、総理が行くとなったら物すごい人数の警官を割くんです。事故の、津波のあった翌日ですよ、総理。警察官は救助に当たっていたんです。総理が行かなければ、この警察官は救助に当たって、一人でも多くの命が救えたかもしれないんです。

 総理がしなければいけなかったのは、警察官を救助に当たらせ、そして、渋滞も起こってなかなか避難ができなかった、それを警官に避難させる、それを優先させるのが総理の仕事だったんです。

 総理、総理が行ってベントが早く進んだのかどうか、これもお聞きしたいと思いますが、もう時間がありませんから、最後に、SPEEDIを避難の態勢に使わなかった、そしてその結果、東電はみずから予測をして、恐らく三キロ圏内だけじゃなくて、その外の人たち、南の方の人たちの避難も確認してからベントをやったんでしょう。結果的にベントがおくれているんです。そして総理が、警官を割いて、本来救助に当たる人まで割いているんです。総理、この責任をどう考えますか。

菅内閣総理大臣 三月十一日に震災が発生し、そして原子炉の事故も発生をいたしました。その中で私なりに考えたのは、私としては、被災地を上空からでもまずは見て、その後のことを考えたい。また、原発事故についても、この間の議論でもおわかりのように、官邸にある危機管理センターと東電の本店との間でいろいろな議論があっても、なかなかそれが実行までつながらないといったような、そういう状況もありましたので、やはり現地の担当者ときちんと意見を交わすことは重要だ、そう考えて現地に足を運びました。

 そこで、吉田所長初め二、三の方とお会いして意見交換ができたことは、その後の原子炉事故の対応にとっては大変プラスになったということだけは明確に申し上げておきたいと思います。

西村(康)委員 各省庁がばらばらで、その上がってきた情報も官邸で処理ができない、その体制が問題なんです、総理。総理の統治能力、その統治の体制が問題なんです。

 そのことだけを最後に御指摘申し上げて、時間が来ましたので終わらせていただきます。

黄川田委員長 この際、大島理森君から関連質疑の申し出があります。中川君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大島理森君。

大島(理)委員 きょうの中川委員そして西村委員の質問に対して総理の答弁を聞いていますと、まず一つ、心がない。それから第二点は、私に報告がない、知らなかった、そして総理の言葉から、今日までの今起こっている現象に対して、自分の責任というものが感じられない。

 その一つを言いましょう。先ほど西村さんが質問したときに、今の被災の現状はどうですか、戸数はどのぐらいですかと聞いたとき、あなたは何も知らなかった。私は、本当にこれは大変なことだと思うんです。委員長は今どういう境遇に置かれているかわかっているでしょう。奥さんそして御長男さん、行方不明二人を抱えられてここに座って、この災害復旧に全力を尽くそうとしておられる。

 多分、死亡一万五千二百七十人。総理、ちゃんとメモしておきなさいよ。行方不明八千四百九十九人。(発言する者あり)にわか勉強じゃありません、私も被災地だ。黙っていなさい。

 そして、避難をしている人が十万二千二百七十三人。これは朝日新聞が毎日出している。あるいは、週一遍出している。つまり、総理は災害対策本部長でしょう、そうしたときに、そういう方々の思いをしっかり受けとめて、施策を実行しなければなりませんよ。

 そこで私は、時間がありませんから、きょうは結果責任について、総理の責任感をちょっと問いたいと思うんです。我々は絶えず結果責任を問われる、私はそう思って今日まで参りました。総理も同感ですか。

菅内閣総理大臣 私も、現地そして避難所などを何度かお邪魔し、また関係者ともいろいろとお会いしました。そういう中で、今なお十万人を超える避難の方、そして、今数字を挙げられましたが、多くの方が亡くなり、行方不明になっている状況、私としても大変本当にお気の毒だということを超えて、強く責任を感じているところであります。一日も早く地震、津波の復旧復興に、そして、原子力については何としても一日も早く収束にたどり着く、それが今の私の責任だと考えております。

 そういう意味で、今、大島委員の方から結果責任ということを言われましたけれども、政治家というのは、おっしゃるとおり結果責任を負う、その仕事だと私も認識しております。

大島(理)委員 改めて、本当に被災者の皆さんにお見舞いとお悔やみを申し上げなければなりません。

 そこで、総理が今負わなければならない結果責任は三点あると思います。

 まず第一、きょうもさまざまな質問がありました、総理の発言に対する不信が内外に高まっているという結果責任です。

 先ほど質問の中にありましたように、いろいろなことをおっしゃいますけれども、いろいろな答弁の、あるいはホームページの変更等々があれば、それを、ああでもない、こうでもない、そしてまた、聞いていない、報告がない。SPEEDIの話もそうです。やはり、なぜ上がらなかったのか、なぜそうなったのかということからあなたは分析して、判断をして、結論を出して、そして進めていかなきゃならぬでしょう。官房長官もそうですよ。いいんです、言いわけは。これからどうするかなんだ。少なくとも、内外の官邸が出す言葉の責任が、国民の皆さんが信じられないということに対して責任を負わなきゃなりませんよ。

 そこで、言います。

 先ほどIAEAの話がありました。その中に、ベントの報告が記載されていない。これからIAEAに対して報告するんでしょう。これは、私どもからすると、報告の前にこの委員会にきちっと、こういう内容で報告しますということを見せないと、また適当に書いているんじゃないか、またどこかで捏造しているんじゃないか、こういう疑心をわかせていることに結果責任をあなたは負っているんだ。

 どうですか、その報告はちゃんとここに出しますか、ちゃんと報告する前に。

菅内閣総理大臣 いろいろな問題で、確かに、当初の発表と、後にその発表の中身が違っていたということで訂正などがあっていることは、全体の責任者の私として責任を感じております。こういう問題も、最終的には調査検討委員会で、こういったことがなぜ生じたのかということもあわせて検討いただきたいと思っております。

 それからIAEAについては、来月に閣僚会議が開かれ、それまでに我が国としての報告書をまとめて提出することになっております。それについて、事前の段階でも内容的にはお示しすることができると思いますので、最終的には英文で出すことになっておりますけれども、最終的な段階でお示しできるものがあり得ると思いますので、そのときにはお示しをしたいと思います。

大島(理)委員 まだまだ言葉の不信という結果責任について申し上げたいのですが、第二の不信を申し上げましょう。政策を実現できない不信です。

 まず第一に、今年度の予算案の税法も、そして特例公債法も、いまだかつて成立していません。加えて、先ほど来からお話しされているように、災害復旧、そして原子力の問題もこういう状況になっているという結果責任。

 例えば、先ほどいろいろな具体的な事例をお話ししました。瓦れきの処理を考えてみましょう。あるいは、各市町村長が、病院をなくしたところもあるんです。今財政がどうしようもないときに、自分たちで病院を建てろというんですか。そして、先ほど西村君から、いわゆるお金の問題がありました。そうしたら、何を答えましたか。あそこで事務を全部任せたよと。都道府県会館。何人いると思いますか、総理。後で調べてごらんなさい。つまり、現場感覚とリアリティーがないんです。

 そして、四兆円の補正予算、私どもも賛成しました。検証しましたか。さっき言った病院の問題、瓦れきの処理。副長官が直轄でやった方がいいと言ったでしょう。やったらいいんです。なぜあの瓦れきができないか、検証しましたか。燃やす場所と最終処分地がないんですよ。塩分を含んだものを燃やせば、今持っている市町村の焼却炉がおかしくなるんだ。阪神・淡路のときに臨時のプラントをつくった。国で買ってやったらいいじゃないですか。

 そういう、もう三カ月近くたっているときに、検証していないんですよ。現場に行っていないんですよ。行って対話だけしておるだけじゃないですか。委員長に聞いてごらんなさい。被災民の方々が今、歯を食いしばって頑張っているんだ、悲しみを乗り越えて。そのときに、あなたが、魚のにおいがするあの瓦れきのところで、梅雨が、これから雨が降って、そしてそこに魚を揚げなきゃならぬとしたら、漁民はどうするんですか。瓦れきを集めて集積したら、分別して燃やすかリサイクルなんだ。燃やす場所がない。燃やした後の捨て場がない。そういうものは、早急にお金を用意して、市町村事業ではなくて、国や県でやったらいいじゃないですか。全部遅いんです。全部小さいんです。

 今、基本法を議論しています。これはもうワンストップでやってくれ。何で大臣を三人もこれからふやすんですか。被災が起こったら、あなたは原子力で頭がいっぱいだった。それを私は了としましょう。しかし、判断が間違っていた。だとすれば、被災担当大臣を置いて、それ以外の、七百キロですよ、そういう人たちに対する対応をどんどんやったらいいじゃないですか。今ごろ大臣をふやして何をするんですか。

 これは、総理、我が方の基本法に乗りなさいよ、そのまま。これが一番なんだ。そして、あなたももう一度委員長のところに行ってごらんなさい。一泊してごらんなさい。そして、そういう人たちの声を聞いてごらんなさい。この政策を実現していないという責任はあなたにある。

 三点目の責任です。

 あなたが民主党の代表になって、総理になって、いまだかつて民意から信任を受けたことがありますか。参議院の選挙も負けたでしょう。地方選、負けたでしょう。補欠選挙も負けたでしょう。これは大事なことなんです。官房長官が幹事長代理になって私のところの役員にあいさつに来たときに、私は言ったんだ、あなたたちは選挙に勝てないかもしれぬよと。そうなっちゃったでしょう。信任を得られていないあなたが今この危機を乗り越えるというのは無理なんです、もう。ですから、参議院の西岡議長が、おやめなさいと。予算委員会であなたの党のあの福島県の渡部先生が何と言いましたか。もし連立をお願いするのなら、ひれ伏してお願いしろと言ったでしょう。最後にあなたは、国民新党の亀井代表を使って、あえて言いましょう、我々と一緒にやりませんかと言った。あなたから何のメッセージが来ましたか。

 そういうもので、本当にこの危機を乗り切れる、まさに、参議院が逆転してねじれ国会になっているという現状をしっかりわきまえて、寛にして栗なる対応でやらなきゃならぬのですよ。協力して当たり前だ、そんな姿で私どもが、一緒にやりましょうとはできませんよ。あなたが総理をやめたならば、我々は、このスピーディーな復興のために新しい政治体制をつくる用意があります。ですから、あなたにこの席をおやめなさいと言うんです。責任を感ずるならそうしなきゃならぬのです。

 総理、これは危機です。そしてなおかつ、今度は検証委員会をつくる。内閣につくる。先ほどの検証委員会の目的をあなたは言われました。その中に、政治のジャッジも検証になるということをあなたは言いませんでした。それはおかしいと思うんです。つまり、総理も枝野さんも検証の相手になるんです。検証の被告席に座らなきゃならぬのです。だとすれば、あなたは内閣総理大臣を去って、静かに、その検証の対象にして、新しいエネルギー政策、新しい危機管理、こういうものをつくる方が、あなたにとっては歴史的に名を残す一つなんです。

 あなたがよく使われる永井陽之助さんがこう言っております。戦略の本質というのは、自己の持つ手段の限界に見合った次元に、政策目標水準を下げる政治的英知が必要だと。あなたはよく永井先生のお話をする。もう一つ言いましょう。プロぶる専門家ほど危険なんだ、こう言っている。

 私は、特に一番、あなたにはその力がないとするならば、当然に野党に協力を求めるのは、それはあるべき姿でしょう。求めるに当たっての真心も姿勢もないこの一年間。あなたでは、残念ながら、この危機を乗り越えられない。ですから、去ることによって、私たちはこの危機を乗り切るために新しい政治体制をしっかり用意する、構えるということを申し上げます。

 その三つの結果責任を私は申し上げました。もし所感があったらおっしゃってください。

菅内閣総理大臣 大島先生から、私の不十分さについて御指摘をいただきまして、おっしゃることは、私の不徳のいたすところも多々あるとお聞きをいたしておりました。

 ただ、あえてもう一つだけ私が申し上げますと、何年か前に金融危機がありました。当時、私は民主党の責任者でありました。そのときに、どういう対応をするのか。政府から出された法案では不十分だと対案を出しまして、そして、当時の自民党中心の政府がそれをのんでいただいて、そして日本発の金融危機が私は回避された、こう思っております。

 私は、そのときも、それは場合によれば、そういう対案を出さない方があるいは政局的には有利になるのかもしれませんけれども、やはり国民の皆さんにとってそういうやり方は好ましくないと思って、そういう行動をとったわけであります。

 確かに、先ほどおっしゃったように、私の態度が必ずしもそういうふうに理解されないで、何か私が自分の延命だけを考えてやっているように思われているとすれば、それはすべて私の不徳のいたすところでありますけれども、決して私は、谷垣総裁に対しても、いろいろな言い方をすればもう言いわけになりますけれども、できれば一度お目にかかってお話をしたいということは何度か申し上げましたが、そういうことで、今でもその気持ちは変わっておりません。

大島(理)委員 私は、不徳のいたすところで済むのであれば、政治家の結果責任、ましてや総理大臣の結果責任というのはそれで済むものじゃないということを今申し上げたんです。

 最小不幸社会、これは総理の言葉です。被災地は今、最大不幸社会になっていませんか。

 不条理という、カミュの言葉かどうかわかりませんが、不条理という言葉も正したいとおっしゃった。不条理というのは、人間が全部不条理な存在だ、だから秩序や道徳が必要だということを、本来そういう使い方をすべきだったんでしょう。もし、この危機を乗り切る、そういった場合に、不条理は、一体おれの不条理はどこにあるのか、総理はまずそこから考えるべきですよ。

 同じ世代です。なったときは頑張ってほしいという思いもありました。この一年間を見て、不徳のいたすところというあなたがおっしゃったことは全くそのとおり。徳がないんです。しかし、そう思われているならば、それをみずから反省し、高め、国のリーダーとして責任を持たなきゃならぬのでしょう。それはもう限界です。

 総理にみずから辞職されることを強く求めて、終わります。

黄川田委員長 これにて中川君、西村君、大島君の質疑は終了いたしました。

 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時開議

黄川田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。

 私は、まず初めに、福島市に住んでいらっしゃる方からいただいたメールをちょっと紹介させていただきたいと思います。

 毎日放射線に悩まされています。特に土壌の汚染によって、子供を外で遊ばせられません。学校や公共施設は汚染土壌の一部は除去されても、すべては除去されません。どこが大丈夫で、どこが危険なのかがわかりません。自宅の庭も怖くて子供を遊ばせられません。庭のイチゴもサクランボも食べさせられません。新たに野菜もつくれません。花もさわらせません。でも、だれに聞いても自己責任でと言われます。不安を抱えたままずっと生活をしていかなければならないのでしょうか。どなたでも結構です。この疑問を解消する答えをいただきたく存じます。

 この福島に住んでいらっしゃる方の悲しみや恐れ、これがわかりますか。

 私は、先日政府が発表したロードマップ、そして原子力被災者への対応に関する当面の取組方針、これを見て、菅総理そして菅内閣に、この方の恐れや悲しみがわかっていないということを痛感しました。すなわち、モニタリングはします、しかし、この方々の心配、できるだけ早く汚染を除去して、そして特に子供たちの被曝を低減したいということに対して、何ら一切書かれていない。私は、ここに、この菅政権では国民の命と安全を守ることはできないと、このロードマップを見て強く感じた次第でございます。

 「どなたでも結構です。この疑問を解消する答えをいただきたく存じます。」総理、どのようにして、この被曝を低減させる、そういう不安にこたえようとされていますか。

黄川田委員長 まず初めに、文部科学大臣高木義明君。(斉藤(鉄)委員「委員長、これは国民一般の話です。まだ、子供たちの話はこの後します」と呼ぶ)

 では、初めに内閣総理大臣菅直人君。

菅内閣総理大臣 今、斉藤委員が福島に住む方のメールを紹介いただきましたけれども、そういうお子さんをお持ちの方の心配、私にも、私なりによく理解できるつもりです。

 どうすればいいのか。これはもう斉藤委員もよくおわかりのように、この原発事故はまだ完全に収束しておりません。何とか冷温休止、そして放射能の排出がとまる、そこを目指して、ステップ1、ステップ2ということで、東電はもちろんですが、政府としても全力を挙げているところであります。

 もちろん、その間でもでき得る除染作業とかいろいろなことはやらなければならないということで、それぞれの担当のところで御苦労をいただき、また多くの皆さんに大変御迷惑をおかけいたしております。そのことはよくわかっておりますけれども、最終的には、まずはこの発生源そのものを完全にとめる、つまりは、放射能物質の排出をとめ冷温停止にさせるという収束を何よりもやらなければならない。そこまで来れば、その後のいろいろな見通しについてもそういう皆さんに伝えることが可能になると思っております。

 ですから、もちろん、その前にやれるべきことは全力を挙げてやりますけれども、学校の校庭の土の問題とかいろいろな努力は行いますけれども、基本的には、ステップ2の原子力事故の収束そのものを何としても実現させたい、これに向けて政府としても全力を挙げているところであります。

斉藤(鉄)委員 総理、おかしいですよ。このロードマップも、まず事故の収束という一部、そして二部は被災者の方にどう安心していただくか、これを同時にやらなくてはいけない、そのようになっているんですけれども、除染作業については一切この中に触れられていない。

 私たち公明党は、まず詳細な汚染マップをつくって、そして、できるところから、ホットスポットもわかってきております、徹底した除染作業、汚染を除いていく作業をしていくべきだ、このように主張をしているところでございます。

 次に、高木文部科学大臣、二十七日に発表されましたけれども、私は怒っていますよ。あの発表は国民に対するだましじゃないですか。

 一ミリシーベルトを目指す、一ミリシーベルト以下にする、このようにおっしゃいました。しかし、あの発表を聞いた人はだれもが、いわゆる二十ミリシーベルトという枠が、目標が一ミリシーベルトになったんだな、国民の多くはそう感じていますよ。

 ところが、あなたの発表を見たら、あれは学校の中の生活だけからくる被曝量を一ミリシーベルトにしますと。過去、二十ミリシーベルトという大枠の中で、学校の中の被曝量は一・七ミリシーベルトでした。そのように計算されていました。その一・七を一・〇にするというだけの話じゃないですか。それをあたかも二十ミリは一ミリになりました、このような誤解を与えるような発表だった。

 私は、本当に子供の健康を、安心を考えているお母さん方に対してこんな申しわけないことはない、このように感じましたけれども、大臣、いかがですか。

高木国務大臣 斉藤委員にお答えをいたします。

 斉藤委員も非常に詳しいと認識をしております。先ほどの質問にありましたように、ロードマップの中にも、いわゆる原子力災害の一つとして、校庭での土砂の除去等について触れられております。私たちはそのようなものを踏まえて、暫定的な考え方の基本は、二十ミリシーベルトに達していいということではなくて、これはあくまでも放射線の国際的な基準、いわゆるICRPの考え方、勧告に基づいて、そして一ミリから二十ミリシーベルト。今まだ原子力発電所は収束をしていない状況でございます。そういう中で、できるだけ線量を下げていく、こういう努力をしていかなきゃならぬ、このように申し上げてきたわけでございます。

 そこで、他の委員会でも、斉藤委員の指摘もございました、特に学校において線量の高いのは校庭であります。したがって、私たちも実地調査もしながら、まさに天地返しも含めて、線量の軽減の試験もいたしました。したがって、今回、私たちとしては、あくまでも一ミリシーベルト以下を目指すという努力の一つとして、国の財政負担も持って土壌の改良に取り組もう、こういうことを発表したわけでございます。

 私はかねてから、放射線について決して甘く見てはいけない、やはり厳しいチェックが要る、そのために、教職員の協力をいただきながら、線量計もこのたび完全に配付をいたしましたので、日々刻々と児童生徒の活動の中でそういうものはチェックをしていく。そして、これを原子力安全委員会にも少なくとも二週間に一回以上の頻度で報告する。あるいは、これはあくまでも夏までの暫定的な考え方でございますので、状況においては、我々としては見直しも含めていく。

 あくまでも、今回、安全性という、安心感の醸成のために、我々は、我々が努力をすることを明らかにしたのでございます。どうぞひとつ御理解をいただければと思っております。

斉藤(鉄)委員 要するに、二十ミリシーベルトという大枠は実は変えていなかった、その二十ミリシーベルトの中の一・七という学校生活での被曝、これを一ミリシーベルトにするという目標なんだ、そのことをわかってほしいと。イエスかノーで、そういうことですね、それは間違いありませんね。そのことを簡単に答えてください。

高木国務大臣 暫定的な考え方は変わっておりません。ただ、我々は、実際に今、線量計測の中で年間一ミリシーベルト以下を目指すということは、可能性は十分ある、こういう現実も受けとめております。

斉藤(鉄)委員 私たち公明党は、引き続き、この二十ミリシーベルトという枠そのものをもっと低い値にすべきだ、一ミリシーベルトという値にすべきだ、このように主張し続けていきたいと思います。

 次に、今大きく議論になっております海水注水問題に移ります。

 ちょっと図を用意いたしました。これは後でも使いますけれども、この図は、三月十一日、地震が起きてから、翌日の夜十二時までを示しております。結局、注水なしという項目が図の下の方にございますけれども、淡水の注水が始まったのが三月十二日の六時前、そしてそれが、三月十二日の午後二時五十三分、停止いたします。そして、海水の注水が始まったのが結果的に三月十二日の十九時〇四分に海水注入を開始したというのが今のわかっていることでございます。

 しかし、この三月十二日十九時〇四分に海水注入が開始されたというのは、五月二日まで、二カ月間近く、一切公表されませんでした。最も原子炉の行方にとって大事なとき、そしてそこに水を入れるか入れないかというのも最も大切な措置、操作。その措置、操作が、二カ月近くも正しい表記、公表がされていなかったわけでございます。

 ところが、突如、五月二日、海江田大臣が、国会質問に答える形で、この十九時〇四分というのが出てまいります。ちょっとこの国会答弁を読みますと、「そうしましたところ、十九時〇四分に、これは私どもの資料でございますが、一旦東京電力が福島第一原子力発電所の一号機の海水注入試験です、試験の注入をこれを開始をして、」云々と、そこで初めて、突然この十九時〇四分というのが出てまいります。

 出てくるんですが、それまで何と言われていたかといいますと、すべての公式資料、これは国立国会図書館に調べてもらいましたので間違いないと思います、すべての公式の資料が、十八時、首相、海水による注水を指示、二十時二十分、この十九時〇四分から一時間以上後ですね、一号機に海水と硼酸による注水開始となっております。これが五月二日までの政府の公式見解でした。

 この海水注入開始が本当は十九時〇四分だったということが二カ月間近く一切公表されなかった、国際社会に向いても公表されなかった、これは大きな情報隠しではありませんか。海江田大臣、どうですか。

海江田国務大臣 私どもは、その情報がわかり次第、これはできるだけ速やかに発表しております。ですから、今お話のありました、十九時〇四分に海水が入ったということは、その直前の時点でわかりましたものですから、私はその資料に基づいて国会でそのように答弁をしたわけでございます。

 そして、それまでは、先ほど委員お話しのとおりに、もう少し後の八時ぐらいに入ったんではないだろうかという報告がございましたので、それを私どもも信じまして、そういう時間に入ったものと思っております。それが、直前になって正確な時間がわかりましたので、それを私の方から、国会での質問に答えて発表したわけでございます。

斉藤(鉄)委員 では、この五月二日以降、一切の資料の変更がなされておりません。十九時〇四分に海水注入が始まったというのが公式資料として出てくるのが、五月十六日、東電の資料、「東北地方太平洋沖地震発生当時の福島第一原子力発電所プラントデータについて」という二千六百ページに及ぶ膨大な資料の中にちょこっと出てまいります。十九時〇四分より海水による注水開始、十九時二十五分停止というふうに出てきます。ここには、先ほど海江田大臣がおっしゃった試験という言葉は使われておりません。

 なぜ、東電では五月十六日までこの十九時〇四分という数字、またそのときに海水注入を始めたということを発表しなかったんですか。また、大臣は試験という言葉を使っている、東電は試験という言葉を使っていない。なぜですか。

武藤参考人 十九時四分に海水を注入していたという事実につきましては、今お話がございましたように、五月十六日にまとめて報告したところでございますけれども、この注入開始の時間を含めまして、こうした時系列につきましては、その都度国と共有をしてまいりました。その中身につきまして、国会の答弁でも御紹介をいただいたということだというふうに思っております。

 今般、中断していたはずの注水が継続していたということがわかりまして、関係方面に御迷惑をおかけしたことにつきましては、大変申しわけなく思っております。

 試験注入につきましては、この海水注入の表現でございますけれども、試験注入も含めて注入というふうに表現をしたものでございます。

斉藤(鉄)委員 今、大臣は、直前にわかったからと。では、なぜ二カ月間もわからなかったんですか、こんな大事なことが、メルトダウンにも関係する大事なことがなぜ二カ月間も。そして、なぜわかったんですか。

海江田国務大臣 私が国会で答弁をしたのはまさにおっしゃる時点でございますが、はっきり申し上げまして、その当時は、本当に一生懸命それぞれやっておりまして、何時何分に入ったかということは、実は正確な時間もわかっておりませんでした。

 ただ、海水が入ったということはわかっておりましたので、そしてそれが、東京電力から来る最初の報告では、これでいきますと二十時二十分ということでございましたから、私どもは、恐らく、八時なのか七時なのか、そのあたりで入ったということで、二十時二十分という報告をそのとおりだと思って、答弁などでそれまではお答えをしていたわけでございますが、その後、正確に、十九時〇四分だということがわかりましたので、それを訂正して、私は十九時〇四分であったというふうにお示しをしたわけでございます。

斉藤(鉄)委員 私は、二カ月間この時刻が明らかにならなかったのは、何か重大なことを隠したかったからではないか、このように疑わざるを得ません。

 海江田大臣のこの五月二日の答弁では、その後、こういうふうに続くんです。この海水注水が「十九時二十五分に停止をしました。ですから、二十分間ぐらい試験をやりましたけど、停止をしました。 そして、時刻は刻一刻と過ぎていきますので、再度重ねて総理からの本格的な注水をやれということで、そこで私が、先ほど答弁をしましたように」云々ということで、総理がこの一たん停止を知って、そして再度重ねて総理からの本格的な注水をやれという指示があった、こういう答弁になっているんです。

 これは、先日の総理の答弁、ストップしたこと、中断したこと自体を知らなかったから、とめろ、とめないなんて言うはずがないという答弁をされました。その答弁と大臣の「総理からの本格的な注水をやれ」、本格的な注水というのは、試験注水をやっていたから、それが今とまった、いよいよ本格的な注水をやれ、こういう意味だと思います、食い違っているじゃありませんか。どちらかが、うそをついているんですよ。どちらかが、うそをついているんですよ。総理、海江田大臣がうそをついているんですか。

海江田国務大臣 私も総理も、うそはついておりません。

 今お話でありましたけれども、その時点で私どもの手元にありました、これは先ほどもお話をしましたけれども、東電が試験的に注水を行って、そしてそれをとめたということ、これは何度もお話をいたしますが、私どもは、その当日、そういうような認識はないわけですよ。しかし、そういうデータが出てまいりましたので、そして、私どもは一刻も早く入れなければいけないということでは一致をしておりましたから、よく読んでいただければわかりますが、一度もとめるなどということは言っておりませんので、そういう試験的な注水があって、その試験的な注水が私どもの指示でなしに終わったのなら、早くもっと本格的な水を入れろということで、私どもは一貫をしまして、とにかく早く入れてくださいということを申し上げていた。

 それから、後になってわかりましたけれども、私は、十七時五十五分に、口頭でありますけれども、東京電力に海水を入れてくださいということを既に命令として発しておりますから、一貫して私どもは、とにかく淡水が切れたら海水に切りかえて、そして海水を入れてくださいということはお願いをしていたわけで、一度も途中でとめるなどということを言った覚えはございません。

斉藤(鉄)委員 では、中断はなかったとしましょう。中断ということは知らなかった。しかし、既に海水の注水は始まっていたということは知っていた。だから、本格的な注水をしろ、こうおっしゃったわけです。でないと、先日総理は、注水そのものを知らなかったんだから答えようがない、こういう答弁だったんです。今の大臣の答弁は、注水は知っていたけれども、中断ということは我々は知らなかった、そういう答弁ですよ。

海江田国務大臣 これは、本当に私どもは注水が始まったことも知らないわけですよ。ただ、後から見ましたらそういうデータがありましたから、そのデータに沿ってお話をしたことは事実でございますが、ただ、私どもは、いつ、何時何分に注水が始まったということもその場では知らなかったんです、これは。

斉藤(鉄)委員 今の海江田大臣の答弁と五月二日の答弁と、明らかに異なります。

 まず、東電に聞きますが、なぜ東電は海水の注水を中断することにしたんですか。

武藤参考人 海水注入の中断の判断でございますけれども、緊急時体制の本部長であられます総理のもと、官邸の中で安全委員会の助言などを得ながら御検討が続いている状態だということがわかりました。

 総理の御了解を得ずにその後注水を継続するということが難しいということがわかったということ、それから、官邸に派遣をしておりました者が、早期に注入を開始するという交渉、説明をしていたということで、短期間の中断となるだろうという見通しがあったことから、やむを得ず海水注入の中断を判断したという経緯でございます。

斉藤(鉄)委員 その場の雰囲気は、これは総理も海江田大臣も答えられています。とにかく水を入れることが大切なんだ、こういう雰囲気だった。なのに、なぜ東電の人が、では、やはりここは一たんやめた方がいいですね、こういう判断になったんですか。矛盾するじゃないですか。その場がそういう雰囲気だったら、東電の人は、今もう既に水を注入しています、御安心ください、こう言うのが自然だと思いますよ。

 しかし、現実には、そういう空気がもし支配していたにもかかわらず、やはりここはやめておいた方がいいよと言わざるを得ない何かがあったんじゃないですか。それを武藤副社長は、まあ、その場にいらっしゃらなかったからわからないけれども、わかりますか。

武藤参考人 官邸に派遣をされていた者によりますと、官邸の中では、海水注入の実施のような具体的な施策につきまして総理が御判断されるという感じがあったということ、したがいまして、総理の御判断がない中でそれを実施するということはできない、そういう雰囲気、空気があったというふうに聞いております。

斉藤(鉄)委員 明らかに矛盾していますよ。その場は、とにかく水の注入が大事なんだ、こういう雰囲気だった。にもかかわらず、東電の人は、それが言い出せなかった、そういう雰囲気があった。総理の了解が得られなければ何もできない、こういう了解があったと今東電の人が答えたじゃないですか。

 班目委員長、先日、この委員会で吉野委員の質問にお答えになっております。そこで、六時からの会合はどういう趣旨でしたかということで、この統合対策本部、政府の発表では、再臨界について議論をしたという発表になっておりますが、班目委員長は、その吉野委員の質問に対して、私の記憶としては、再臨界の議論が中心だったとは思っておりません。とにかく、こういう事態ですから、水を入れる。海水だろうと何だろうと、水を入れなければ炉心の溶融がどんどん進んでしまうという認識です。したがって、それがすぐできるんだったらもう何も考えずにしてくださいというふうにずっと助言をし続けてございます。申しわけないんですけれども、私の記憶としては、再臨界ということが大きな話題となったという記憶はございません。

 ここまで明確にお答えになっておりますが、間違いないですね。

班目参考人 間違いございません。

斉藤(鉄)委員 ここでも矛盾するじゃないですか。その会議では、とにかく水を入れ続けなくてはいけないということは共通の認識だった、こうおっしゃった。しかし、東電は、それが言い出しにくい雰囲気だった、総理の了解が得られなければとても言い出しにくい雰囲気だった。そして、班目委員長は、そんなことは議題にならなかった、こうおっしゃっているわけで、私は、ここに大きな矛盾があると思いますが、総理、お答えください。総理、お答えください。時間がないので、短目にお願いいたします。

菅内閣総理大臣 いや、これは大変重要なことなものですから、しっかり答えさせてください。

 まず、もう斉藤委員もよくおわかりで言われていると思いますけれども、とにかく、冷却機能が失われた中で水を炉心に注入して冷却するということが何よりも重要だということで、もうそのことは、もちろん原子力安全委員会、保安院、あるいは東電、そして私や海江田大臣も、一貫してそのとおりだと考え、また、あらゆる場面でそのことをプッシュする方向で行動してまいりました。

 そして、淡水が入れられて、ある段階で淡水がなくなった後のことは、それはもう海水でも入れるべきだということも、全員が一致してそういう考えでおりました。

 そして、十八時というのは、当然ながら、十九時四分から入ったということは私はずうっと後になるまで全く知りませんでしたけれども、十八時の時点では、東電から担当として来られた方が、海水を入れる準備をするのにやはり一時間半程度はかかるからということもおっしゃいました。その中で、確かに再臨界のこともお尋ねをしました。また、海水ということになると、蒸発した後塩が残りますから、その影響ということも聞いておりましたし、また、状況によっては水素爆発とか水蒸気爆発とかあらゆる可能性を、そこに専門家の方がおられますから、そういうことについてもどうなんですかということをお聞きして、そして一時間半ぐらいはあるからという話だったので、それではその部分も検討してくださいと言ったんです。

 その次は、十九時四分から云々という話は、ずうっと後には知りましたが、全く私は聞いておりませんでしたので、その後、たしか十九時四十分ごろですか、私がそういう海水にしたときのいろいろな可能性についてお聞きしたことに対して、これこれはこうで、そういう危険性はありません、ただ、まあ、硼素を入れておきましょう等々の話があったのが、十九時四十分に保安院等から私に説明があって、私はその時点では、もう入ったとかとめたとかということは全く聞いておりませんので、それでは早速でも入れましょうと申し上げたわけです。

 ですから、私が申し上げていることが何かこう、つじつまが合わないとは思いませんし、海江田大臣が言われていることとも全く平仄は一致していると思います。

斉藤(鉄)委員 私の感想は、これをずっと続けていても水かけ論になりますけれども、少なくとも、海江田大臣の総理からのさらなる注水をやれという指示があったという答弁、それから東電のその場の雰囲気、また班目委員長の、そのときに、表向きは再臨界が話題になっていると言ったけれども、再臨界のことはほとんど記憶にない程度だったという、それらの状況を考えると、とても総理の今の答弁は、私は信用できません。

 それから、最終的に、実は、海水注水を中断していなかった、続けていた、これは発電所長のヒアリングで明らかになったとのことですが、これさえも証拠はありますか。吉田所長が一人泥をかぶれば、すべての人がある意味で助かるという状況もございます。こういうことも、今までの経緯を見れば、疑わざるを得ない。

 そして、東電は、二十時二十分に海水注水を開始ということを公式に発表しているということは、これはもう全くのうその報告、注水を再開したということも全くうその報告書を国に上げてきたことになりますが、この責任はだれがとるのか、この辺の真相を教えてほしいと思います。

海江田国務大臣 一つだけ事実として確認をしておきます、お伝えを申し上げておきます。

 これは、いろいろな資料を合わせまして、そして証拠のメモも見つかったわけでございますが、既に私から、十七時五十五分、およそ十八時ごろではないだろうかということでございますが、一号機の格納容器を海水で満たすよう、炉規制法に基づいた命令を出しておりますから、そこから海水の注入をする具体的な私どもとしての意思というものは固まったわけでございます。

 そして、その後の時間にいろいろな議論をしたことは事実でありまして、最初、私どもは東電が水を入れたのは八時過ぎだと聞いておりましたけれども、その後に東京電力が、先ほどお話をした試験注入云々の話をしましたので、私は、それも知らないときではありましたけれども、そういうこともあったのかなと思いまして、先ほどの答弁をしたわけでございます。

 そして、今お答えをしておりますのは、すべてその後わかったことでございますが、私が聞いておりましても、東京電力も事実を申し述べていると思います。

 ただ、私ども保安院に対して、試験注入を開始して、そしてそれをとめたということは事実ではありませんので、そうした虚偽の報告はしないように、今後絶対にしないようにということは、強く東京電力に申し渡しをしてございます。

武藤参考人 海水注入の中断があったかどうかということについてでございますけれども、発電所長のほか、注水作業の責任者からもヒアリングを行いました結果、海水注入は停止していなかったということが確認できてございます。

 それから、注水をとめようとした場合に、その指示を受けまして現場作業を実施する者たちからのヒアリングでも、注水が中断されていないということを確認してございます。

 二十時十分に総理の御了解が出たということを受けまして注水の再開を御報告したわけでございますけれども、この注水が中断していないということが判明をいたしましたので、おわびの上、訂正をさせていただきたいと存じます。

 中断していなかったということにつきまして、大変に皆様方に御迷惑をおかけいたしておりますこと、重ねておわびを申し上げたいと思います。

斉藤(鉄)委員 中断していなかったということ自体は、技術的にはよかった。しかし、そのことについて国民をだました、政府と東電が一緒になって国民をだましたということは事実ですから、このことについてははっきり申し上げておきたいと思います。

 私は、今回のポイントは、官邸での議論の中で、東電から来られている方が、その場の雰囲気で、東電に電話をして、総理がまだ了解していないからやめた方がいいよという電話をかけざるを得なかった、そこに問題があると思うんです。

 二十一日の東電の記者会見では、海水の注入を首相官邸の意向で一時中断した、そして、官邸は指示していないけれども、ということは、東電が官邸の意向をそんたくして中断した。ということは、官邸の明確な指示はないが意向は東電に伝わった。そして東電は、それを実行せざるを得ない。責任は政府はとらない、しかし、実行はさせる。今回、菅総理がとった手法は全く同じじゃないですか。

 浜岡原発については、停止を要請する。そして、東電の賠償問題については、銀行に債権放棄を要請する。それから、二十キロ―三十キロ圏の中の住民の方には、自主的な避難を要請する。節電は、国民に対して一五%を目標に要請する。

 すべて政府の意向が伝えられ、それに従うかどうかは、中部電力や銀行や住民や国民が判断するという形。政府からの指示ではなく、単なる意向。意向ですから、責任は負わない。これこそ無責任政治の典型ではないか、私はこう断ぜざるを得ません。

 あのジェー・シー・オー事故のときのことを簡単にお話しさせていただきたいと思います。

 あのときは、小渕さんが総理大臣でした。小渕さんは、原子力安全委員長代理の住田先生に全権を委任すると言って、住田さんが即東海村に行きました。そして、あの人が、原研の、原子力研究所のバックアップを受けながらすべての指示を出す。そして、再臨界を防ぐために水抜きをしなきゃいけない。その決死隊の編成も、その委員長代理がみずから社員を説得して行うということで、非常に早い段階に収束がつきました。

 やはり最終責任者たるもの、その現場がわかっている人に全権を任す、そして、すべての責任をとるというのが本当の姿ではないか。私は、今回菅総理がとられた姿は全くその真逆であった、こう言わざるを得ません。

黄川田委員長 斉藤議員、疑義があれば質問でただして、答弁を強く求めてください。

斉藤(鉄)委員 では、ここまでで。

菅内閣総理大臣 まず、私が海水注入をとめるような要請を出したことは一度もありません。

 何回も言っていますように、真水がなくなれば海水注入をすべきだというのは、私を含め、そこにいた者の全員の意思でありまして、ですから、十八時の段階でも、海水注入ということを前提として、準備に時間がかかるという中での幾つかの懸案事項の検討をお願いしたわけで、その検討が上がってきた段階でも、すぐ注入するようにと私は言っていますし、結果としてはその途中の段階でもう入っているわけですから。ですから、何か、私が要請したことをそんたくしてというふうな言い方をされましたが、それは全く逆です。つまり、常に海水であっても何であっても入れるようにということを申し上げたわけです。

 それから、ジェー・シー・オーのときは、たしか斉藤さんは副大臣で担当されていたと思いますし、私は野党の時代でありましたが、多少の経緯はいろいろと当時も聞いておりました。委員長代理の住田先生が頑張られたということも、よく聞いております。

 そのことも大変よかったと私は思っておりますけれども、今回の場合には、事業主としての東電というものがあって、そしてそれに対して、あの冷却機能がダウンしたときに法律が発動されて、私が本部長という形になって、ですから、常に当事者である東電の意見は当然ですけれども聞いていました。単に意見というよりも、東電が実際のオペレーションはするわけですから。それのそばにいるのは保安院で、そしてさらにそれをチェックするのが安全委員会ですから、私たちは、東電なり、そして保安院なりがどういうことをしようとしているのかという報告は受けますけれども、実際にやるのは東電の作業の皆さんが、あるいは責任者がやるわけですから。

 そういった意味で、東電が第一義的な責任を持ってやられることは当然ですが、この災害の、例えば避難の問題とかあるいはいろいろな問題について、最終的に私にも指示をするという権限が与えられていたわけで、私は、少なくともその権限を使うときには、必ず例えば安全委員会の助言を受けて、あるいは他の人たちの意見を聞いてやったわけでありまして、ですから、決して現場の意見を無視して、あるいは反して何かを強引にやらせたということは、少なくともこの海水注入については全くありませんので、そこだけは国民の皆さんに誤解を招くような表現は改めていただきたいと思います。

斉藤(鉄)委員 もうこのことについては議論しませんが、今回のこの議論を聞いて、国民の皆様に判断をしていただく以外にないと思います。

 次、メルトダウンについて質問をさせていただきます。

 この図ですけれども、これは先ほど、地震が来てから津波が来、そして三月十二日の夜まで書いてございます。この図は、原子炉の水の量を示しております。燃料頂部というのは燃料のてっぺん、そして底部というのが燃料の底でございます。

 先日の私の質問について、総理は、水はずっと水位計が示す値が正しい、こういうことで、この燃料の三分の二はずっと水位があった、だからメルトダウンということは考えなかった、このように答弁をされております。(菅内閣総理大臣「違う」と呼ぶ)

 いや、違うとおっしゃいますが、総理はどう答えていらっしゃるかというと、最近になって水位計が壊れているということがわかった、しかしその前は、三分の二程度は圧力容器の中で水に浸っているということで、燃料棒の損傷ないしは燃料棒の一部溶融であろうということが言われ、この保安院の考え方が、政府としての正式なといいましょうか、形の考え方であります、このように答弁されております。

 つまり、保安院は、当時、一号炉におきましては、燃料棒の三分の二は大体ずっと水につかっていたと。これが政府の正式な見解であったということでよろしいでしょうか。短くお願いします、あと五分しかないので。

寺坂政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の事故につきましては、水位計を初めとする一連のデータをどのように見るのかという点についての難しさというものはございましたけれども、水位計が示しておりますものは、今図でお示しいただいておりますように、有効燃料頂部から少し下の部分に入っている、下がっているというようなものもございました。

 したがって、水そのものは何らかの形で維持をされている、水位計の維持、そういったものについては基本的にはそのように見ておったところでございます。

斉藤(鉄)委員 つまり、これが政府の正式な見解だったわけです。しかし現実には、この赤い線、どんどん蒸発して水がなくなっていって、その日の六時過ぎにはもう燃料がすべて露出した、そして翌朝にはメルトダウンをしたのであろうという解析結果が出てきます。

 その下に正門付近の線量率を、私、東電のホームページから拾ってきて書きました。ちょっと模式図ですけれども。この六時ごろ、線量率が百倍に上がっております。まさにメルトダウンが起こるあたりに周辺の線量率がどんと上がって、そして、ベントでまた百倍どんと上がっております。総理は、この一番大切な時期に官邸を離れて、福島第一原子力発電所に行かれます。

 私は、このとき、線量率がこれだけ上がった、そして水位計はどうもおかしいと。だって、この水位計は、これは後からの話ですけれども、ずっと一定値を示して動かなくなります。そして、この十一日から十二日にかけての動きを見ても、これはおかしい、明らかにこの水位計の値を見て判断してはいけないと。そしてこの線量率、何かが起こったに違いない、最悪の事態としてはメルトダウンが十分考えられる、だから最悪の事態を想定して避難計画を立てようと。そして、国民にも世界にも、最悪の場合はここまで考えられます、しかし今私たちはこういうことを考えておりますのでこういうふうに避難してください、こういう情報の発信をしなくてはいけなかったのに、総理はそのとき、最も大切な自分の持ち場を離れていらっしゃった。

 そこが、今回、その判断を大きく誤って、先ほども自民党の方からもありましたけれども、ベントもおくれて、そういう大きな事態になったのではないか。私は、自分でこの図をつくりながら、それを確信した次第でございます。

 そしてもう一つ。政府がそのことをわかっていたということで、例えば中村審議官がその当日、炉心溶融が進んでいる可能性がある、こういう発言をしたその直後から、審議官はこの審議官のポジションをやめられております。なぜかは知りません。そして、細野さんは、四月三日ですけれども、事故発生直後は炉心溶融、メルトダウンの危機的な状況を経験したしということも正直におっしゃっております。つまりこれは、政府部内としてメルトダウンは十分考えられたけれども、しかしその情報の発信を抑えたということの情況証拠でございます。

 このことについて、私は、国民をだました、国際社会をだましたと言わざるを得ない。

枝野国務大臣 午前中も答弁申し上げましたが、その時点では、残念ながら、専門家の皆さん、保安院の皆さん含めて、炉心溶融、メルトダウンが起きている、全部が溶けているということについての裏づけがないという状況でございましたが、最悪の場合には炉心溶融している可能性があるということで、今御指摘をいただいている十二日の保安院の記者会見の後も、私が、十三日や十四日においても、炉心溶融の可能性があるかというお尋ねに対して、可能性はありますということを記者会見において御答弁申し上げておりまして、決して炉心溶融の可能性を隠ぺいしたということはございません。

斉藤(鉄)委員 時間が来ましたから終わりますが、私は、今回の原発災害初期対応において、情報の発信、また総理の初動態勢に大きな過ちがあった、このことを申し上げざるを得ないということを申し上げて、質問を終わります。

黄川田委員長 これにて斉藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 初めに、昨日、九州から東北の広い範囲で、低気圧や前線の影響により、大雨や強風に襲われました。地盤沈下が進んだ被災地も直撃し、土砂崩れ、冠水、停電などの大きな被害をもたらしました。また、処理の進んでいない被災地の瓦れきが風で飛ばされたとの報道もありました。

 巨大津波の恐怖や長引く避難生活の疲れから抜け出せないまま、二次被害にならないようにしてほしい、このように思いますが、松本防災大臣に伺います。

松本(龍)国務大臣 お答えいたします。

 二次災害の防止というのは大変重要な御指摘だと思います。

 私も、一カ月前に避難所を見て、いわゆる危険な場所にある避難所の点検をするように指示をいたしました。同様に、国土交通省もそういった対策を行ってまいりまして、二週間ほど前に、危険区域あるいはさまざまな二次災害の被害に遭うような区域があるということで、改善するように指示をしました。

 二十七日の午前中に、大雨が来るということで現地対策本部に連絡をいたしまして、いわゆる大雨への注意喚起を促しまして、情報収集に努めたところであります。それぞれ現地では政府の対策本部がよく収集をしてくれたと思います。

 同じく、二十七日には霧島山の新燃岳に行きまして、爆発的な噴火から四カ月たちましたので、同様に、都城あるいは高原町、霧島の皆さんに、土砂災害あるいは土石流があったら、避難計画に沿って要援護者、障害者の避難に全力を尽くしてくれという指示をいたしました。

 これからも、被災地の二次災害については注意をしてまいりたいと思います。

高橋(千)委員 しっかりとお願いいたします。

 きょう、私は、原発被災者の支援を中心にお話を伺いたいと思います。

 本委員会においては、二十五日には参考人質疑が行われ、五県の商工、農協、漁協、各三団体の代表から御意見を伺いました。また、二十七日には、三県の知事さんに会って意見を伺うために、本委員会の理事メンバーが現地に出向きました。いずれの方も、一日も早い収束を、知事さんは、祈るような気持ちです、このように訴えられました。あらゆる知恵と技術を集中して事態の収束を図っていただきたいと思います。

 我が党も、直後から、モニタリングポストの増設、原子力災害対策特別措置法に位置づけられている放射線拡散予測図のSPEEDI、この活用をいち早く求めてきました。これが最初に発表されたのが十日以上たった三月二十三日、その後は四月二十六日です。そして、八十日たとうという先週になって、ないないと言っていた予測図が実はあったということが発表されました。

 被災者の思いを逆なでするように、メルトダウンを最近まで認めなかったこと、先ほど来議論されている、とめた、とめないの騒動、校庭の二十ミリシーベルトの基準をめぐる対応、隠されていた情報、あるいは見解の不一致、内閣と総理と現場と言うことがそれぞれ違う、その一つ一つが、国の言うことは何一つ信じられないという事態をつくってしまったのではないでしょうか。そのことが、県民の期待を裏切り、復興と幾ら叫んでもその取り組みを妨げる最大の障害になっているのではないか。

 総理にその認識を伺いたい、謝罪をしていただきたい。いかがですか。

菅内閣総理大臣 今おっしゃるように、原発事故に関して、メルトダウンの問題あるいは注水の問題等々で、国民の皆さんの目から見て、明らかに以前の発表と異なる発表を、訂正といいましょうか、してきた出来事が幾つもあった、このことは、私もこの問題の最高責任者として痛切に反省をし、またおわびを申し上げたいと思います。

 当初のことの中では、ある段階から、統合対策本部、今の連絡室をつくることで、かなり現場と連絡室の情報交換がその部分ではうまくいくようになりましたが、その後も幾つかの問題で今のような御指摘のところもありましたので、今後そういうことが起きないために、もちろんしっかり取り組まなきゃいけないと同時に、この事故の調査・検証委員会においても、こういったことも含めて徹底的に調査、検証をお願いしたい、こう考えております。

高橋(千)委員 事故直後から何度も、この同心円といいますか、原発から二十キロ、三十キロの円の図を皆さんもごらんになったと思います。どれほどこの地域の方々がこの図に翻弄されたのかということであります。

 三月二十七日、私は志位委員長とともに南相馬市、飯舘村を訪問したときに、市長、村長それぞれが共通して述べていたことは、よい情報も悪い情報も隠さず示してほしいということでした。

 飯舘村は、標高が高く、冷害に何度も泣かされた土地柄ですが、農畜産業を頑張って育ててきました。合併も選ばす、救援物資を大根一本でも分け合うような地域のコミュニティーをつくってきました。村長さんは、村を出ることはもう村がなくなること、そう悲痛な思いを訴えられました。とはいえ、村民の健康にはかえられない、こうも述べておりました。もし放射線量が高いから避難しなければならないと言われれば、それは村民のために決断しなければならないという思いを秘めていたと思うんです。でも、それが四月二十二日、改めて、今から振り返れば高かったよと言われて計画的避難を指示された、そういう状態でありました。

 何度か取り上げられた南相馬市。同じ市の中で、避難指示や屋内退避など、区域が分断されている。桜井市長は当初から、屋内退避は籠城状態、どっちかはっきりしてほしい、出入りは自由にするべきだと訴えていましたが、これも四月二十二日まで全く放置をされていました。

 なぜそこまで政府が放置をし続けたのか、その罪は大きいと思いますが、いかがですか。

海江田国務大臣 まず、委員御指摘のように、文科省の環境モニタリング、これは三月二十五日以降、原子力安全委員会がこれに対して評価を行いました。そして、その評価の結果も公表したところでございます。この評価に従いまして、飯舘村も含め、原子力発電所から半径二十キロメートルより遠い地点で局所的に比較的高い空間線量が観測されている測定箇所が認められましたけれども、その地域が限定的であること、それから、屋内退避区域を変更する状況にはないものと考え、その後、この地域の線量率の推移を注視してまいりました。

 そして、こうした推移や分布等の蓄積をもとに、国際的な基準値もこれは考慮をいたしました。そして、原子力安全委員会の意見を聞いた上で、四月二十二日でございますが、事故発生から一年の期間内に積算線量が二十ミリシーベルトに達するおそれのある区域を計画的避難区域としたところでございます。

 このように、政府としましては、実際の放射線量の測定結果やその推移を注視しながら、適用すべき基準について必要な検討を行った上で計画的避難区域の範囲を設定するとともに、屋内退避区域におられる方々に対して生活物資の供給など、最大限の対応をしてきたものと所存しております。

高橋(千)委員 私がこの二十キロ、三十キロの線を引かれたことにこだわるのは、ここがこれから先の被災者の支援あるいは賠償にすべてが土台となってつきまとうからなんです。だから、はっきりさせなければなりません。

 手元にあるのは、三月十五日十一時、内閣総理大臣名で福島県知事と周辺十二市町村長に向けた指示文書であります。「原子力災害対策特別措置法第十五条第三項の規定に基づき下記のとおり指示する。」この内容は、二十キロ圏内は退避、それから、二十キロ以上三十キロ圏内は外出せず、自宅など屋内に待機することと書いてあります。公示の内容について、「排気筒モニタの値:不明」「発電所敷地周辺のモニタリングポストの値:不明」、こういう状態であります。そして、地域住民に対しては、「きっちりと情報をお伝えいたします。」国民に対しては、「必要な情報はきっちりと発信していきますので、落ち着いて情報を確認いただきますようにお願いいたします。」こう添付文書が書かれている。

 どこが落ちつけますか。その後、きちんとした情報はずっといただけなかったんです。そもそも、政府の指示にも放射線量などの根拠は何ら書き込まれなかった。ともかく逃げてと言われたので、暗やみの中、どっちへ逃げたらよいかわからなかったと、当時の状況をある町長さんは述べていました。

 政府は、当初のデータが不十分だったことについて、通信も電源も遮断されてデータがとれなかったので仕方がない、こう言いわけを繰り返してきました。でも、そこまで政府が混乱していたんですから、避難者が混乱するのは当たり前じゃないですか。自主避難が相次いだのも当然ではありませんか。

 それなのに、三十キロの線引きがしっかりとされて、原子力損害賠償法による第一次指針に基づく仮払いは、三十キロ圏内までと明確に線を引かれました。しかも、その後、避難に基づく精神損害の認定においても、その避難された人だけということで、しっかりと基準になってしまっているんですよ。

 自主避難についても、分けるな、線引きするな、それが福島県の強い要望ですが、いかがでしょうか。

枝野国務大臣 まず、初期の避難区域の設定に当たって、政府としても十分な情報がない中でありました。特に放射線量については、放射性物質が出てから避難をお願いしたのではなくて、出るおそれということの段階で、最悪の事態を想定して避難をお願いいたしましたので、その時点で放射線量等についての記述がなかったということになります。

 ただ、御指摘のとおり、周辺住民の皆さんがそれぞれの御判断で、まさにみずからの命と健康を守るという観点から、避難指示の区域以外の地域の皆さんが自主避難をされた方がいらっしゃることも、それはある意味当然だろうというふうに思っているところでございます。

 そして、この賠償に当たっても、特に仮払いについては、できるだけ速やかにまず仮払いを行わなければならないということで、避難指示等が出ている地域については、これはもうどう考えても明確でございますので、ここについては、一次指針等で仮払いの方針を定めて既に仮払いが進んでいるところでございます。

 自主避難をされた皆さんについては、自主避難をされた方にも極端なことを言えばいろいろな種類があります。まさに二十キロ、三十キロの非常に近いところで自主避難をされた方、こうした方は、これは最終的には審議会で決めていただくので踏み込み過ぎてはいけないのかもしれませんが、ある意味損害の賠償の対象になり得るものだろうと思いますが、一方では、百キロ、二百キロと非常に離れた地域の方が、例えば海外の方が自分の国に戻られたというような話を同様にできるかというと、できません。

 そうすると、その間のどこのあたりのところに線を引いたらいいのかというようなことについては、これはやはり独立した専門家の皆さんに一定の基準を示していただかなければならないということで、その検討はいただいている。なかなかすぐには結論が出ないというふうにも聞いておりますが、できるだけ早くそうした指針を出していただけるようにお願いをしてまいりたいと思っております。

高橋(千)委員 今、対象になり得るとお答えいただいたと思いますので、そこをしっかりやっていただきたいと思います。福島県として、やはり自主避難をされた方たちの状態についても十分に把握をして声を上げようという取り組みを始めておりますので、ぜひそれにこたえていただきたいということを重ねて要望いたします。

 そこで次に、福島県が全県民二百万人を対象に健康調査を行うと決めました。福島医大に委託をして、内部被曝の影響など不安が広がる県民の声にこたえて取り組もうとしております。

 そこで伺いたいのは、九九年、東海村のジェー・シー・オーの臨界事故以来、住民の健康診断や心の相談は今も継続して行ってきたと思います。どのように取り組まれているのか。福島原発のその後の対策に当たっても、当然、長期にわたり国自身がちゃんと希望者全員の健康診断、相談を行うべきだ、援助をするべきだと思いますが、いかがでしょうか。

細川国務大臣 ジェー・シー・オーの事故の後につきましては、文部科学省それから茨城県、関係市町村が連携して、ジェー・シー・オー周辺住民の健康管理をずっと定期的に続けてまいりました。今回のこの福島の原発の事故の後も、住民の皆さんの健康がやはり何といっても一番心配でありますから、この調査もやっていかなければというふうに思っております。

 今委員が言われましたように、福島県では、五月の二十七日に福島県県民健康管理調査検討委員会が開催をされまして、福島県が実施主体となって県民の健康調査を行っていく、こういうこととされたようであります。そこでは、全県民を対象として、被曝線量の推計のための行動記録をまず呼びかける。それで、六月中には先行地域についてパイロット調査を実施するということ。そして、この調査については福島県立医大が中心となって行っていくということが決められたと承知いたしております。

 国といたしましても、原子力対策本部のもと、関係省庁と連携をいたしながら、この福島県の調査に対しても必要な支援を行いながら、住民の方々の長期的な健康管理のために適切に対応してまいりたい、このように考えているところでございます。

高橋(千)委員 適切に対応ということでしたので、必要な支援を必ず行う、国が責任を持って行うということを確認していきたいなと思います。

 あわせて、原発労働者の被曝対策がこの間も衆参の各委員会で繰り返し指摘をされてきました。ところが、昨日、福島第一原発で復旧作業に当たっている東電の社員二人が、緊急時の上限とされる二百五十ミリシーベルトを超える被曝をした疑いが報道されました。

 本日、厚労省が、その人たちがマスクをしていないと言っているようだ、ほかにも同様の作業員が数十人いるということで、すぐに作業を中止し、内部被曝の調査を指示したということがお昼のニュースで報じられております。この事実関係について伺いたいと思います。

細川国務大臣 今質問になりましたこれまでの原発事故の結果も、まずは御報告をいたしましょうか。これはよろしいですか。(高橋(千)委員「それは後で」と呼ぶ)後でいいですか。はい。

 それで、報道がございました原発の作業の方の、二百五十ミリを超えるような、そういう結果が出るのではないかということでの、それの対応についての御質問でございました。

 これは、福島の第一原発の第三、第四号機の中央操作室というところで業務に従事をいたしておりました東電社員の二名の方につきまして、内部被曝を含めた被曝線量が二百五十ミリシーベルトを超えるおそれがあるというふうに東京電力の方から昨日報告がなされたところでございます。

 この報告を聞きまして、私としましては、なぜ内部被曝の線量の確定がこんなに遅いのか、時間がかかるのかと。また、被曝線量が二百五十ミリを超えるのではないか、こういうような報告でありますから、これもまた大変高い線量でありますから、極めて私としては遺憾に思ったところでございます。

 そこでまず、昨日、東京電力本社を呼びまして、これまで緊急作業に従事をいたしてきた労働者に対する内部被曝線量の測定、評価を至急行うよう強く指導いたしたところでございます。

 また、昨晩、厚生労働省の担当者がその二名の社員に直接話を伺ったところ、三月十二日の第一号機建屋の水素爆発の直後に同じく中央操作室で作業を行っていた他の労働者につきましても、同様の内部被曝の可能性が否定できない、こういうことがわかったところでございます。そのため、これらの方々については、内部被曝線量が確認できるまでの間、福島第一原発での緊急作業につかせないようにということを東京電力に指導を強くしたところでございます。

 いずれにいたしましても、私ども厚生労働省といたしましては、五月二十日に設置をいたしました原発作業員健康管理等対策推進室、これを中心にいたしまして、作業員の健康確保に万全を期してまいりたい、このように考えているところでございます。

高橋(千)委員 今、報告の中で、二人にはとどまらないということが明らかになったと思うんですけれども、高いという言葉を大臣はおっしゃいました。高くしたのは厚労省ではなかったか、緊急時の被曝上限を二百五十ミリシーベルトに掲げた、そういうやり方が、危険な作業だからやむを得ないんだということで上限を上げる、そのこと自体が問題ではなかったのか、これを指摘したいと思うんですね。これはもとに戻すべきなんです。そして、本当にしっかりと、内部被曝の状況を、全体の労働者に向かって取り組んで、対策をとらなければなりません。

 簡潔に、数字だけお答えください。

 これまでの原子力関係の施設労働者の被曝による労災認定が何人で、そのうち一番大きい被曝線量、また一番小さい線量は幾らですか。

細川国務大臣 原子力発電所での業務に従事いたしました労働者の放射線被曝に関する労災認定事案は、昭和五十一年度以降で十件でございます。そのうち、一番高い被曝線量は百二十九・八ミリシーベルト、一番低い被曝線量は五・二ミリシーベルトであり、いずれも疾病名は白血病でございます。

高橋(千)委員 今お聞きになっていただいたと思うんですね。最大でも百二十九・八ミリシーベルトで白血病になる。そして、一番小さくても五・二ミリシーベルトで白血病になっている。だから、五ミリを年間の基準として、どれだけ長く従事していたかということを一つの目安にしていたわけなんです。

 それでも十人しか労災認定されていないというのは、これは実は少ないですよ。なぜかというと、白血病しか基準がないからなんです。ほかにも、多発性骨髄腫とか悪性リンパ腫の方がいらっしゃいます。でも、基準がないから、これを労災認定するためには検討会が開かれますけれども、議事録さえ公開をされていないわけです。だから、本当に必要な人が認定されているかどうかがわかりません。こうしたこともしっかりと今見直すべきではないか。

 被曝の影響を小さく見るということ、これは原爆症認定の問題でも繰り返し指摘をされてきたことですが、これからの健康調査に当たっても、健康被害に当たっても、福島県民の不安にこたえる上でも本当に大事なことなんだ、それを厚労省が責任を持ってやらなければならない、これを重ねて指摘したいと思います。時間がちょっとあれですので、質問したかったんですが、ここは指摘にとどめます。

 今、福島県からの避難者が全国に広がっています。四十七都道府県すべてに避難をされているということで、ちょっと見にくいかもしれませんが、地図に落としてみました。今わかっているのが三万五千六百七十人。県の担当者に聞きますと、まだまだ自主避難の方たちなどが掌握されていないので、もっといるのではないかとおっしゃっております。

 政府は望むすべての人たちがふるさとに帰るまで責任を持つということを確認したいと思います。

海江田国務大臣 特に原子力発電所の事故により避難を余儀なくされている方々の心情を思いますと、本当に胸が締めつけられるようでございますが、まず原子炉を安定させるということ、これが一番でございます。原子炉を安定させて、そして、避難されたふるさとの地に一刻も早く帰れるように、除染等を行いまして、そして、本当に帰れる最後の最後の日までしっかりと責任を持っていくつもりでございます。

高橋(千)委員 まず、原発の収束に合わせた工程表ですので、帰れる日が書き込まれていない、そのことに対する県民のつらい思いが聞かれております。しかし私は、だからこそ、まず、掲げた被災者支援は本当にしっかりと進めていかなければならないと思います。単に人が移った、避難をさせられたというだけではなくて、生活の基盤が失われているわけです。避難区域内の事業所が外に移って仕事を続けるためには、新たな土地や店舗、工場などの取得、これは融資では幾ら低利でも難しいです。特別の支援が必要です。このためには、二次補正をきちっと明確に、福島の被災者支援のための予算なのだと枠をつくる必要があります。

 あわせて……(発言する者あり)もちろんです。だけれども、明確にしなければならないということを福島県が言っているわけです。例えば、法案には、原子力発電施設の事故による災害を受けた地域の復興については、当該災害の復旧の状況を勘案しつつ復興されるということが書かれていますけれども、何か人ごとのように思うんですね。先の見通しが全く持てないというのが一番の気持ちなんです。復興基本法第十三条には、合議制の機関を置くと書いています。でも、それには復興構想会議の審議を得てからと、それに従うと書いているんですね。そうすると、本当に県民の声が生かされるんだろうかということが一番の心配なんです。

 別枠の特別立法を求めております。一言お答えください。

黄川田委員長 内閣官房長官枝野幸男君。簡潔にお願いします。

枝野国務大臣 復旧、被災者支援について、原発の被災者の皆さんについては別の視点でしっかりとやっていくということは、当然それで進めてまいりたいと思います。

 復興についてでございますが、復興構想会議においても福島県知事や福島にゆかりのある方にもお入りをいただいておりまして、そこでも、全体の復興の中で原発事故を含めた議論もいただいております。しかし、福島の原発被災地の復興については、残念ながら時間的にも若干おくれるでしょう。原因もある意味で違っています。それから、いろいろな意味で違ったことがありますので、まさに福島の特性を踏まえた復興構想を描かなきゃならないということで、そうした規定を置いております。

 復興構想会議本体でも御議論を関係者も入っていただいておりますので、そうしたことも当然その段階では御参考にいただくということで条文上書いておりますが、これは福島県知事からも当初からお話しいただいておりますが、福島の特別な事情を踏まえた復興構想をつくり、そして復興に向けて政府として責任を持ってやっていく、そういう考え方で進めているところでございます。

高橋(千)委員 お願いします。

 終わります。

黄川田委員長 これにて高橋君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 三月十一日の被災以来もう二カ月、やがて三カ月になろうとしております。被災地でもあるいは避難所でも、テレビ等々を通じてきょうはこの放送をごらんの方も多いかと思います。本日のこの委員会が、そうした方々に一つでも二つでも前向きに、実際に物事をもっと前に進めることができるように、私も質疑をやってまいりたいと思います。

 時間の関係で、きょうは特に原子力の安全問題について集中して質疑を行わせていただきます。

 菅総理はフランス・ドービルでのG8でいろいろなメッセージを出されました。特にこのサミットは、エネルギー関係、原子力発電関係のことが多く話題になりました。菅総理は四つの挑戦ということを挙げられて、一つは原子力発電の安全性、あるいは石炭等化石燃料がより二酸化炭素を少なく出すように、あるいは自然エネルギー、再生可能エネルギーがもっと進むように、そして四番目は省エネルギー、もっと節電なりエネルギーの効率のいいものを開発する。

 この四つはいずれもすばらしいと思いますが、でも、私にはとても違和感がありました。きょうの委員会を聞いても、さらに違和感は広がりました。そもそも総理の考えられる原子力の安全性とは何でしょうか、明確にお願いします。総理は原子力の安全性への挑戦とおっしゃいましたが、一体何を意味しているんですか。お願いします。

菅内閣総理大臣 原子力の持っている特性というものは、もちろん他の化学反応などとは根底的に違っているわけです。そういう特性の本質的な違いというものも考えなければならない場面もあるかと思います。

 ただ、私がこの間申し上げているのは、今回のいわゆる原子力発電所の事故を踏まえて原子力発電所の安全性というものをしっかりと検証し、そしてしっかりと確保する、そういうことに関して申し上げているつもりであります。

阿部委員 総理の今の御答弁からも、生身の、今被害に苦しむ人の健康被害あるいは恐怖におののく親御さんの心なりに沿う言葉がないんだと私は思います。

 アメリカの原子力規制委員会、NRCと申しますが、私も五月の連休に行ってまいりました。総理も今お手元に資料がおありかと思いますが、ここの、アメリカの原子力規制委員会の戦略目標、ちょっとお目を通していただきたい。一番目が、当たり前なんですが、国民の健康と安全、そして環境の保護、これが原子力規制委員会の戦略目標なんですね。

 今ずっと各委員の御質疑の中で、私は、総理が国民の健康ということをどう考えておられるか、あるいはこれだけ環境汚染を起こした原子力の事故をどう思っておられるか、生きた言葉が残念ながら伝わってまいりません。総理の性格もおありなのかもしれませんが、国民の求めるものはそうした直截なメッセージです。だって、国民の命を逆にあなたが任されているからです。このことを今後の御答弁で意識しながら、ぜひお願いしたいと思います。

 同時に、アメリカでは、核テロなどに備えるというか放射性物質の管理も戦略目標にはなっておりますが、いずれにしろ、国民の健康と安心と環境を守るというのが二大目標であるということであります。

 では、我が国の場合はどうであるか。きょうの委員会の簡単なおさらいになりますが、放射線事故が起きたことによって起きた数々の問題を、いわゆる外部被曝、外から放射線を浴びたことと、内部被曝、さっき高橋さんがお取り上げになりました、呼吸や食べ物で吸ってしまって被曝する、大きく二つ分けることができます。この外部被曝も、例えば広島の原爆のように一瞬に浴びるものと、それから、学校の校庭で問題になっているように、低線量だけれども、じわじわと体に負担を来すということがあります。

 実は、この間の政府の対応を見ていると、外部被曝、急性期についても、低線量被曝についても、内部被曝についても、私は、一貫して対策が後手後手であり、本当に健康を守るというふうになっておらないのではないかと思います。

 ここで、枝野さんにお伺いをいたします。

 皆様のお手元にお示しした、枝野先生にも、三枚目、めくっていただければわかりますが、これは、アメリカが三月十七日から十九日、今回の事故に際してどのように汚染が広がったかということを米軍がモニターしたものがネイチャーという雑誌に発表された、三月の下旬のことであります。こうしたデータがあります。簡単に言うと、今問題になっているような飯舘とか浪江とか、三十キロを超えても汚染が広がっていると。これは、米軍が三月十七から十九日に分析した結果であります。

 さて、枝野官房長官は、こうした実態を一体いつお知りになったか、そしてその後どう方針を立てられたか。

 実は、先ほど西村委員の御質疑の中でも、三月十二日の方の被曝の問題が、SPEEDIが遅かったゆえに大変に重大な問題であるという御指摘がありました。こちらは、三月十五日、二号炉と四号炉のところで火災が起きた、二号炉は爆発ですね、四号炉の問題が起きたときのデータでありますが、こうした実態、すなわち、二十キロや三十キロで済まない、ある方向に延びている、この汚染の広がりを官房長官はいつ知られたでしょう。

枝野国務大臣 申しわけありません、私あての御通告がなかったので確認をしてきておりませんが、危機管理センター等では、原子力発電所周辺、正門付近とか西門付近とかというようなところの放射線量と同時に、周辺地域のモニタリングの情報が順次ふえていきまして、そして、北西方向、飯舘村などの方向の地域の放射線量が相対的に高いという情報が、ちょっと正確に確認をしてきておりませんが、その十五日の何日か後にございまして、そして、そうだとすると、その周辺を含めてモニタリングを強化するようにという指示を出した記憶がございます。

阿部委員 実は、こうした図を枝野さんがいつお知りになったのかは、三月十五から二十日くらいの間なのかもしれませんが、実際にこの地域に計画避難という指示が出されたのは、一カ月も後の四月二十二日であります。

 この一番濃い線は、百二十五マイクロシーベルト・パー・アワー、こんないろいろな数値が飛びますが、簡単に言うと、年間でいうと千ミリシーベルトを超える。年間千ミリと言われると、高いと思っていただけると思います。これらの地域は、ここに長く置いてはいけない、放置してはいけない、危険を避けねばいけない、だけれども、一カ月後に方針が出されました。

 おまけがあります。ここで一番高い赤宇木の避難所、前も取り上げました、何と三百三十マイクロシーベルト。これは三月十五日でしたか、文科省の発表の中にあります。知っていて対策しなかったんですか。これは、私はいろいろ調べてみましたが、文科省のデータにございました。

 となると、この地域は一カ月もたって追われるように計画避難と言われておりますが、本来、ここにこのままい続ければ千ミリシーベルトを超えるということがわかれば、可及的速やかに移動していただくなり、ここの方の健康管理をきちんと政府として打ち出すべきではなかったでしょうか。

 私がこれを投げていなかったので、総理に伺います。私は、きょう、こういうことこそが政権が問われてしまうもとになりますよと。健康管理ということは、御自身であれば、我が子であれば、必死な思いだと思います。

 私がきょう申し上げたこと、御存じでしたか。御存じでなかったとすれば、政府の落ち度ではありませんか。いかがですか、総理。

菅内閣総理大臣 阿部先生はもともと小児科医で、特に健康とか安全ということに関心が強いということは承知をしております。私の答弁がやや無機質に聞こえるとすれば、私が物理学的に、つい放射能という言葉に反応しているせいかもしれないと、さっきのお答えを聞きながら反省をいたしておりました。

 今お話をされたことについて申し上げれば、私も、どの段階でどこまで、情報をすべて把握していたかと言われると、それぞれの部署に把握をしていただいて、そしてその中で判断をして避難区域等を決める、その段階で私に最終的ないわば指示を出すようにという形で来ますので、そういう点で、今御指摘になったような点について、もう一度しっかりと確認をして、今後そういったことがないように、より注意をしていきたいと思っております。

阿部委員 我が国の原子力行政が事故はないものとして、逆に事故を想定外としてきたことによって、事故によって最も影響を受ける人間、生身の人間と環境、今は、海も、空気も、水も、土も、全部被害を受けております。それらに対して統一的に、むしろ本当の意味で責任を持って対策する部署がなかったということだと総理にはお受けとめいただきたいと思います。

 続いて、高木文部科学大臣に伺います。

 斉藤委員との御質疑の中で、校庭の二十ミリシーベルト問題を論じておられました。高木文科大臣も御存じでしょうが、子供の生活を見てみると、何も学校あるいは校庭というところに縛られたものでなく、通学路には溝があり、低い木々が生え、あるいは放課後は原っぱや公園に行って遊び、すなわち、子供が受ける放射線の量は、何も学校に限られたものではありません。

 今、校庭をどうするかという問題、もちろん重要です。親御さん、心配です。でも、私は、各省庁に呼びかけて、公園も、原っぱも、溝も、あるいは木々も、低い灌木も、できるだけ除染すべきだと思います。それで初めて親御さんたちに大丈夫ですよと言えるんです。

 今は、はかってもいない、やってもいない。まだ校庭だって積んでいるだけです。私は、この取り組みが国民にとって本当に不安でならないんだと思いますが、そうした働きかけ、環境省にも国土交通省にも、政府を挙げてやっていただきたい。除染は政府を挙げてやらないと進められませんが、いかがでしょう。

高木国務大臣 阿部委員にお答えをいたします。

 委員御指摘のとおりでございまして、私どもは、当面、文部科学省としては、学校の校庭、園庭などについて、今後、年間一ミリシーベルト以下を目指す、そういう方向で、土壌の改良等も含めて努力をしていくことにしております。

 御指摘のとおり、いわゆる校庭外、通学路においても、あるいは子供たちが遊ぶところにおいても、私どもとしましては、これは原子力災害対策本部の方針の中で、関係省庁と連携をとってできるだけ地域の線量を下げていく、こういうことが必要であろうと考えております。したがって、一番もっともなことは、早くいわゆる原子力サイトの収束を目指すことに全知全能を傾けるべきだと思っておりますが、その上で今総合的に取り組んでいきたい。

 文部科学省といたしましては、例えば放射線防護に関する専門家のみならず、子供たちの心理の健康に関する専門家、あるいは教育等に関する、そういう人たちの、専門家の意見を聞く会合も立ち上げて、総合的に対応してまいりたいと思っております。

阿部委員 高木大臣の思いはわかりますが、実際に進めていかないと、除染は、今現実に子供たちが暮らしている環境そのものを、一刻も早く汚染を低減させるためのものです。悠長にはやっていられない。ぜひお心にとめていただきたい。

 最後になるかもしれません。

 ここには放射線の汚染マップ、これは先ほど西村委員もお出しになりました。ごらんいただきますとおわかりなように、実は今、校庭が問題になっている福島や郡山、あるいは伊達市や二本松も含めて、飯舘の一番汚染の軽いところとほとんど変わることがない汚染があるということなのです。

 これが今ごろ指摘されるのは、昨日も我が党の服部が指摘いたしましたが、きちんとした汚染マップがつくられていない、すなわち、環境がどんなふうになっているかが一切国民に明らかにされていない。そして、これだけ今、赤線で示したところ、赤線というのはちょっとわかりませんが、例えば、見ていただくと飯舘村の一番外側あたりです、ここと同じところがあっちこっちにあるんだということなんです。なぜ飯舘村は計画避難で、ほかのところはほとんど手つかずで、土壌改良もなされずに、作付はどうなるか不安で、放置されるのか。

 私は、ぜひ詳細な汚染マップをつくること、そしてあわせて、実は計画避難は、帰れる計画がなければ追放になります。帰れる計画はどう立てるのか、除染はどうするのか、この計画が一切ありません。この数日前、鹿野農水大臣がヒマワリの種を植えに行かれました。悪いことではないです。でも、もっと計画的にやっていただきたい。

 時間がないので恐縮ですが、海江田経済産業大臣、汚染マップをちゃんとまずつくるべきでしょう。それから、世界に言うところの汚染の広がり、チェルノブイリでは、日本の国土の四分の一の汚染、三万七千ベクレル・パー・平方メートル以上は日本の面積に相当する四分の一ありました。日本ではどうですか。この汚染地図は、どうしていまだにきちんと発表されないんですか。お願いします。

海江田国務大臣 SPEEDIは適宜発表しておりますが、委員のおっしゃるような汚染マップというもの、わかりやすい、だれにでもわかるようなものということでございましたら、それは文科省などと、それから保安院とも相談をして検討したいと思っております。

阿部委員 まずそれが第一で、プラス除染です。一緒に除染していかなければ、単にそれは人々を追い出す、不安に陥れるだけになりますから、政府として、くれぐれもそうした取り組みをお願いしたいと思います。

 終わります。

黄川田委員長 これにて阿部君の質疑は終了いたしました。

 次に、浅尾慶一郎君。

浅尾委員 まず総理に、原子力発電所の事故の責任について伺いたいと思いますが、私は、被災者に対しては、国と東京電力が連帯して責任を負うといった姿勢を示した方がはるかに被災者が安心できるというふうに思います。

 しかしながら、どうも今までの答弁を伺っておりますと、一義的には東京電力の責任だというふうに聞こえるわけでありますが、その点、もう一歩踏み込んで、国が被災者に対しては連帯して責任を負うんだという姿勢は示せないんでしょうか。

菅内閣総理大臣 原子力は、国策として歴代政府が取り組んできた政策課題でありますので、今回の事故についても、国の責任というものは大変大きいと思っております。

 今御指摘のように、決して、東電にだけ押しつけるという意味で一義的という言葉を使っているのではありません。まさに国も、国民に対して、この事故については全面的な責任を負う。ただ、その中での仕組みとして、まず第一義的には東電にということでありまして、国が同様の、あるいはもっと総括的な責任を負うということは、私は当然のことである、こう考えております。

浅尾委員 責任ということになりますと、先般の内閣委員会で枝野官房長官にも質問をさせていただきました。

 今般、枝野官房長官名で各省の幹部人事については凍結をする、しかしながら、経済産業省の事務次官は、まさに福島第一原発に対する津波が五メートルの高さで十分だということを決めたときの保安院の院長でありました、その人も含めて留任をさせるということは果たして責任のとり方としてどうなのかということを枝野官房長官に質問させていただきましたところ、その趣旨は総理にも、そして海江田経済産業大臣にも伝えるということでありましたけれども、しっかりと目に見える形で責任をとられるおつもりがあるかどうか、総理に伺いたいと思います。

海江田国務大臣 経済産業省でやめなければならないのはまず真っ先に私でございますから、まず真っ先に、やめるんだったら私がやめます。

浅尾委員 私は、今回の事故のときの津波の高さの基準を認めたということに原因があるということでありますから、その何代か後の経済産業大臣としてやめられるということであれば、それはそれで結構でありますけれども、その決めた当時の責任者については何ら責任がないというふうにおっしゃっているんでしょうか。

海江田国務大臣 何ら責任がないということではありませんが、今まさに事故が進展中でございます。きょうも実は四号炉で小爆発が起こりました、先ほどこの議論をやっている最中にも。今大事に至っておりませんが、そういう時期でございますので、私は、保安院も、それから次官も含めて、今、とにかくこの炉の安定化に向けて本当に心血を注いでいるところでございます。

浅尾委員 心血を注いでおられる方が、まさにその責任者が自分が責任があってやめられるということで、今回の津波が原因だとするならば、その前のときの人が責任がないというのは私は矛盾があると思いますが、そのことを指摘させていただいて、次の質問に移りたいと思います。

 きょうも話題になりました池田副大臣、これは早急に後任者を決めるなりされたらいいと思いますが、その点についてはどういうふうに考えておられるんでしょうか。

海江田国務大臣 そのようにいたします。

浅尾委員 次に、福島第一原発の状況について保安院に伺っていきたいと思います。

 私、今回、きょうも話題になりました海水注入も含めて、冷やすということは大事だと思いますが、同時に、メルトダウンをしているという中にあって、投入された水の量と現在把握している水の量が差があるということになると、その投入された水というのは、当然、原子炉の中に投入されているわけでありますから、今ある水が確認されている量がずれているとなると、これは大きな問題だというふうに思います。

 先日、資料提供をいただきました。私が今から申し上げますが、保安院、この数字が正しいかどうかだけお答えいただければ結構であります。

 福島第一原発の三号機、ここには、あらあらの数字で申し上げますと、もともと千六百九十五トンの水が燃料プールと原子炉の中にあった。今回、二万六千トン注入しました。二万六千トン注入したんだけれども、原子炉建屋の中にある水は一万トン足らず。隣のタービン建屋とトレンチを足しても、四千二百七十トンの水がどこに行っているのかわからないということでありますけれども、第一原発の三号機については今申し上げた数字で正しいでしょうか。

寺坂政府参考人 お答え申し上げます。

 概数でございますけれども、おおむねそういう数字と認識してございます。

浅尾委員 当然、これは原子炉を冷やすために入れているわけでありますし、メルトダウンがあるということでありますから、放射性物質を含んだものがその水の中に溶け出しているということになると思いますけれども、この四千二百七十トンの水が、これは安全委員会に聞いた方がいいんでしょうか、政府の中で専門家に伺った方がいいと思いますが、場所がわからないということになった場合にどういう影響があるのか、伺いたいと思います。

海江田国務大臣 これは委員御案内だろうと思いますけれども、もちろん、注水をしておりますと、まだ温度が高いわけでありますから、蒸発分もあるということは確かでございます。

 それから、今これは調査中でございますが、二号と三号の間が、トレンチなどもございますけれども、つながっているのではないだろうかというような見方もございます。これはそれぞれの建屋の水位をはかっておりますが、そういう可能性もございます。

 いずれにしましても、私どもとすれば、一日も早く、そうしてたまった水を一回そこで除染をして、そしてまた戻して注水をする、そういう循環型の冷水のシステムをつくることが必要だと思っております。

浅尾委員 まず、ちょっと誤解がないように申し上げておきますと、原子炉にもともとあった水というのは二百七十トンなんですね。四千二百七十トンがすべて蒸発して消えるほどの熱量、エネルギーがその場にあるとは私はとても思えないわけであります。

 私が伺ったのは、仮に高濃度のそういう水が現にどこにあるかわからないという中にあって、政府としては、その危険性についてどういうふうに把握しているのかということであります。

海江田国務大臣 以前、二号炉から大変高濃度の水が海水へ注ぎましたので、これはピッチというところがございます、これはかなり数がございますが、まずこういうものをしっかりと止水をするということをやっておりまして、環境中にそうした水が漏水しないように、例えばたまっている水も、今、地下水との関係がございますから、地下水の水位より低いところにとどめるようなこともやっております。

 それから、これは六月の中旬をめどでございますけれども、最終的には循環させなければいけませんので、その工事を今急いでいるところでございます。

浅尾委員 御質問にお答えいただけないようなので、ちょっと角度を変えて申し上げますけれども、今まで、注水した水を政府として把握をし、そして、現在そこにある水の量との差についてモニタリングはしてきたんですか。

枝野国務大臣 残念ながら、先ほど御報告のとおり、これまでに報道しているとおり、水が海に流れ出てしまった等という問題が生じております。したがいまして、どこかから漏れ出たりして環境に影響を及ぼしていないかどうかということについての監視をしっかりさせるということで、海におけるモニタリング、周辺から新たなものが出ていないかどうかというモニタリング、それから地下水等についてのモニタリング、こういったことは強化をお願いして、かなり詳細にモニタリングをして、これも公表しているはずでございます。

浅尾委員 なかなか御質問にお答えいただけないんですが、簡単な足し算、引き算なんですね。

 これは、きのう資料請求して、すぐこの場でわかる計算でありますから、そういうことについてちゃんと計算をし、そして、こういう事故があったときには、できるだけ早く、いろいろな危険性について間違いがない形で公表していくというのが筋だと思いますけれども、今までされていないのであれば、これからやる気があるかどうか、その点についてお答えいただきたいと思います。

枝野国務大臣 これは、入れた水の量とそれからたまっている水の量と、それから例えば、もともと建屋などにたまっていた水等については、津波の水が残っているのかどうかとか、それから地下水が出てきているのではないだろうかとか、つまり、入れた水と残っている水だけの足し算、引き算だけではできないというふうな報告を受けております。

 それだけに、漏れているところがないかどうかということをしっかり監視することによって、今、環境への影響についてモニタリングをしているということでございまして、そうしたことについても、これはできるだけしっかりとした把握ができれば望ましいというふうに思っておりますので、その努力は、保安院や東京電力においてさらに進めてもらおうと思っております。

浅尾委員 その調べる主体というのは、実はきのう、いろいろとレクをするに当たって、政府が一義的に責任というふうにおっしゃっておりますけれども、基本的には東京電力の現地の方がやっておられるということなので、私はもっと政府が主体的に現地で調べるべきだと思いますけれども、そういう体制を変える意思があるかどうかだけ伺いたいと思います。

海江田国務大臣 まず、海につきましては、発電所の周辺に、今プールのような状況になっております。もちろんシルトフェンスもやっておりますが、その近傍は、これは東京電力がやっておりますが、その外側になりましては、これは政府がモニタリングをやっております。

 ただ、いずれにしましても、そういう御懸念もありますから、モニタリングのポイントをふやすということは、これは心がけておるところでございます。

浅尾委員 モニタリングという間接的なことを申し上げているわけではなくて、仮に四千二百七十トンもの、かなりの確度で高濃度で汚染されている水がどこにあるかわからないということであれば、それをしっかりと把握し、それが外に漏れ出ないようにする責任は政府にあるのではないですかということを言っているんですが、その責任は、政府ではなくて東京電力にあるということですか。

海江田国務大臣 それは、私どもも今、東京電力との間で共同の対策室をつくっております。私はその副本部長でございますので、当然、私どもにも責任があろうかと思っております。

浅尾委員 では、総理に伺いますけれども、今、私どもにもという、「も」という言葉を使っておられました。私、冒頭申し上げましたように、この件については、少なくとも被災者に対しては、東京電力ではなくて政府が責任を持ってやります、賠償も含めてやりますというふうにおっしゃっていただいた方が被災者は安心すると思うんですが、その点について、総理としてはどういうふうに考えますか。

菅内閣総理大臣 それは、先ほども申し上げましたように、まさにこの全体の責任、それは、原子力災害特別措置法によって、この十五条状態が発生し、原子力緊急事態が宣言され、この本部がつくられ、私にその権限が与えられたということを含めて、政府の責任が全体に、総括的にあるということを先ほども申し上げました。

 と同時に、これはおわかりいただけると思うんですけれども、その宣言が出されるまでは、もちろん原子力安全・保安院は常駐等をしておりますけれども、基本的には、東電の原子炉は東電が運転をしているわけでありますので、今御指摘のあった水の問題も、私はやはり、きちんと政府としても把握をしなければならないとは思いますけれども、実際に何トン入れて、どういうところに水がたまっていて等々のことについては、やはり事業者たる東電が、そのまま信用するしないは別として、まずは自分の中でちゃんと調べて状況を報告していただかなければ、最初から政府だけでやるということは、なかなか実態上難しい。

 そういう意味では、まさにともに、両方でやるということに、海江田大臣が言われたのは決しておかしなことではない、こう認識しています。

浅尾委員 実態上、東京電力の現地の方が、あるいはその協力会社の方も含めてやっておられる。私は、現地の方が一生懸命やっておられることに対しては、敬意を表します。そのことを否定しているわけではなくて、責任をどっちがとるのかということを申し上げているわけでありまして、どうも、なかなか聞いてもその点についてお答えいただけないので、次の質問に移りながらそのお答えをいただきたいと思います。

 今回の賠償の枠組みについて伺いますけれども、この賠償の枠組みは、東京電力というのは、大体、電力販売量のほぼ半分に近い額を賄っている会社であります。しかしながら、原子力発電所そのものはいろいろな会社が持っているわけでありまして、仮に東京電力以外の会社が同じような事故を起こした場合にも、同じような賠償の枠組みが合理的に計算上もなし得たというふうに総理として考えられるかどうか、その点を伺いたいと思います。

海江田国務大臣 今、委員からは、会社の規模の大小ということでございますが、それは、とりもなおさず電気料収入の多寡ということになろうかと思いますが、本枠組みは、電力料金の多寡にかかわらず、この枠組みの中で行うということでございます。

浅尾委員 海江田大臣は経済の専門家ですから、電気料収入の少ないところで同じ枠組みをしたら、それはうまく回らないということはよく御存じの上でお答えになっておられるというふうに思います。

 では、総理に伺いますけれども、いろいろなことを今までおっしゃっておられます。おっしゃっておられる中で、この間サミットでは、一千万戸の家の上にソーラーパネルをつけると。そのこと自体、私は否定しているわけではありませんが、どうも、従来のサミットというのは、シェルパという方がいて、これが事前の調整を、国内の調整もすべてやっている。今回については、海江田経済産業大臣も御存じない中で発表されたということであります。政治主導ですから、それぞれ発表されるのは結構なんですけれども、実現できなかったら、単なるその発表をしたということだけになってしまうわけでありますが、どうやってこれを実現されるおつもりなのかということを伺いたいと思います。

 その前に、せっかく松本外務大臣がお越しですから、今までにサミットの中において、いわゆる首脳が国際公約をその場でされた例というのは、お答えになれる範囲であれば、具体例として挙げていただきたいと思います。

松本(剛)国務大臣 委員よく御存じのとおり、G8のサミットというのは、そもそも、首脳が率直に、忌憚のない意見交換をする場として設けられておりますので、総理を含めて、各国の首脳がそれぞれの考えを議論の中で自由に発言をされるというのが通例ではないかというふうに思っております。

 もちろん、各省も準備をいたします。議長国の方が事前に議題を設定されますので、そういったことに合わせて準備をするものでありますけれども、総理が実際にどのように発言されるかというのは、総理自身の御判断によるというふうに考えております。

 今回も、かねてから、再生可能エネルギーを一つの柱にするということは、既に私自身も総理との議論の間でお話をいたしておりましたし、再生可能エネルギーを拡充するとすれば、当然、住宅用太陽光発電というのは一つの柱になってくるわけでありますし、私自身もこれまでさまざまな議論に加わってまいりましたけれども、住宅用太陽光発電の目標として一つの目標を掲げられる、それをどのぐらいアンビシャス、野心的な目標にするかということは一つの御判断だと思いますし、どういう場面でどういう野心的な目標を掲げるかによって、これを実現につなげるのにはどうするか、まさにそこが御判断であったのではないか、こういうふうに考えております。

菅内閣総理大臣 この一千万戸という表現をいたしましたのは、現在のエネルギー基本計画で、二〇三〇年までに再生可能エネルギー、いわゆる自然エネルギーの割合を二〇%にするということが従来出されております。その内訳の中で見ますと、最初は石油換算になっておりますが、電力換算で申し上げますと、五千三百万キロワットを太陽光発電で発電するとされていて、そのうち七割を住宅に設置するパネルで三キロから四キロ程度の発電とすると、大体それが賄えるという数字になるということであります。

 私が今回、サミットあるいはOECDで申し上げましたのは、この二〇三〇年の現行のエネルギー基本計画は、これは白紙から見直さなければならないということは申し上げましたが、その中で、二〇二〇年代のできるだけ早い時期に、従来は三〇年の目標とされていたこの再生可能エネルギー二〇%というのを、二〇二〇年代のできるだけ早いところで実現を目指していきたいということを申し上げ、その数字の根拠は、二〇三〇年のときの同じ二〇%の根拠の数字から算出をいただいた。G8には経産省の担当者も来ておりましたので、そういう皆さんの検討も含めて、そういう数字を出させていただいたということであります。

浅尾委員 時間が参りましたので終わりますけれども、ぜひ被災者に対しては政府が責任を持つという姿勢を示していただきたいと思います。

黄川田委員長 これにて浅尾君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時一分散会


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