衆議院

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第4号 平成25年4月4日(木曜日)

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平成二十五年四月四日(木曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   会長 保利 耕輔君

   幹事 伊藤 達也君 幹事 岸  信夫君

   幹事 中谷  元君 幹事 葉梨 康弘君

   幹事 平沢 勝栄君 幹事 船田  元君

   幹事 武正 公一君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 斉藤 鉄夫君

      秋本 真利君    泉原 保二君

      上杉 光弘君    衛藤征士郎君

      大塚  拓君    大野敬太郎君

      黄川田仁志君    新谷 正義君

      鈴木 馨祐君    高木 宏壽君

      高鳥 修一君    棚橋 泰文君

      土屋 品子君    土屋 正忠君

      土井  亨君    徳田  毅君

      西川 京子君    西村 明宏君

      野田  毅君    馳   浩君

      鳩山 邦夫君    原田 憲治君

      松本 洋平君    武藤 容治君

      山下 貴司君   山本ともひろ君

      大島  敦君    篠原  孝君

      古川 元久君    三日月大造君

      山口  壯君    伊東 信久君

      坂本祐之輔君    新原 秀人君

      西野 弘一君    三木 圭恵君

      大口 善徳君    浜地 雅一君

      小池 政就君    畠中 光成君

      笠井  亮君    鈴木 克昌君

    …………………………………

   衆議院法制局法制企画調整部長           橘  幸信君

   衆議院憲法審査会事務局長 窪田 勝弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月四日

 辞任         補欠選任

  河野 太郎君     秋本 真利君

  土屋 品子君     新谷 正義君

  保岡 興治君     大野敬太郎君

  山本ともひろ君    黄川田仁志君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     河野 太郎君

  大野敬太郎君     保岡 興治君

  黄川田仁志君     山本ともひろ君

  新谷 正義君     土屋 品子君

    ―――――――――――――

三月二十九日

 日本国憲法九条を変えること反対に関する請願(阿部知子君紹介)(第二一四号)

 同(吉川元君紹介)(第三一一号)

は本憲法審査会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法の各条章のうち、第五章の論点)


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     ――――◇―――――

保利会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、特に日本国憲法の各条章のうち、第五章の論点について調査を進めます。

 本日の議事について申し上げます。

 まず、衆議院法制局当局から説明を聴取し、その後、各委員からの自由討議を行うことといたします。

 衆議院法制局当局から説明を聴取いたします。衆議院法制局法制企画調整部長橘幸信君。

橘法制局参事 衆議院法制局の橘でございます。

 本日は、第五章内閣の章につきまして、お手元配付の資料に基づき、その主要論点について御報告をさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

 先生方の御議論に資するため、冒頭、日本国憲法の定める内閣制度の特徴につきまして、旧大日本帝国憲法、いわゆる明治憲法との比較を通じた論点整理の観点から、幾つか、ごく簡単に御説明申し上げさせていただきたいと存じます。

 まず、明治憲法においては、国務各大臣が行政権の主体である天皇を輔弼することとされており、内閣は、憲法上の機関ではなくて、勅令である内閣官制によって定められていたものにすぎませんでした。したがって、内閣総理大臣も、憲法上は国務各大臣の一人にすぎなかったわけでございます。

 これに対して、現行憲法においては、第六十五条において、行政権は内閣に属するとされ、内閣は憲法上の機関として明確に位置づけられております。また、内閣総理大臣も、第六十六条第一項におきまして内閣の首長たる地位を有するものとされ、この首長たる地位から、一定の統制的、指導的権限が各条項において認められております。

 このような意味におきまして、現行憲法下における内閣あるいは内閣総理大臣の地位及び権限は、明治憲法のもとにおけるそれよりも著しく強化されたと一般に評されているところでございます。

 もう一つ、明治憲法との比較における現行憲法の内閣制度の特徴は、内閣が、天皇に対してではなく国会に対して責任を負うという議院内閣制を採用し、内閣は国会に対し連帯責任を負うとする第六十六条第三項を初めとする一連の詳細な規定が設けられているところでございます。

 そして、これから御報告させていただきますとおり、衆議院憲法調査会等におけるこれまでの議論の特徴は、一方では、この内閣総理大臣の地位及び権限をより一層強化するべきではないかとされ、他方では、そのように強化された内閣総理大臣あるいは内閣の権限行使が暴走、独走しないように、国会の行政監視機能についてもさらに一層充実強化するべきではないか、こういう二点にあったと言うことができるかと存じます。

 以上の点を前提に、以下、具体的な論点の御報告に入ってまいりたいと存じます。お手元配付のA3縦長の論点表をごらんいただければと存じます。

 幹事会での御指示に基づきまして、大きく三つの分野に分けて論点を整理してございます。

 まず、第一の分野は、首相公選制を含む内閣総理大臣のリーダーシップのさらなる強化に関する論点。第二の分野は、内閣の成立や総辞職等の内閣の組織に関する論点。第三の分野は、国会による行政監視機能の強化に関する論点でございます。

 まず、内閣総理大臣のリーダーシップの強化に関する論点ですが、これに関して明文改憲を主張する御意見は、論点表のA1からA3までにありますように、現行憲法下において、いずれも合議体である内閣の権限とされている行政権それ自体あるいは衆議院の解散権などを内閣総理大臣個人の権限としたり、あるいは、あくまでも「閣議にかけて決定した方針に基いて、」という条件のもとに行使されることとされている内閣総理大臣の行政各部に対する指揮監督権などを、そのような条件なしで内閣総理大臣の権限としようとするものでございます。

 例えば、衆議院の解散権を例にとって御説明、御報告申し上げたいと存じます。

 衆議院の解散権は、一般には首相の専権事項などと言われておりますけれども、憲法上は、内閣総理大臣の権限ではなく、合議体としての内閣の権限でございます。あくまでも、閣議決定を経た上で、国事行為としての衆議院の解散権を有する天皇にその旨助言と承認をしなければならないこととされているものでございます。したがって、後ほどの論点とも関連いたしますが、閣議は全会一致制をとっておりますので、天皇に解散の助言と承認をするためには、全閣僚の了解、署名が要ることになります。

 ただ、反対して署名をしない閣僚がおられるときには、首相はこれをいつでも任意に罷免できることになっておりますから、結局は、首相はみずからの解散の意思を貫徹することはできるわけでございますけれども、ただ、反対閣僚の罷免という手続をとらなければならないという点がポイントになっているわけでございます。

 論点表Bは、現行憲法の枠内で首相の権限の強化を図ろうとする御主張です。

 例えば、「閣議にかけて決定した方針に基いて、」といったような先ほど述べた制限を、内閣法を改正して撤廃するか、あるいは、これをより緩やかなものにできないかというものです。

 ただし、現行憲法の解釈として、この内閣法六条の「閣議にかけて決定した方針に基いて、」というのが、行政権が合議体としての内閣に属することからストレートに導かれる憲法上の要請であるという現在の政府解釈の立場に立てば、このようなことを立法措置で行うことはできず、明文改憲によるほかはないということになりますので、このBの見解は、そのような政府解釈のような立場に立たず、憲法はもう少し緩やかなことまで許容しているのだという解釈を前提にしているものと推察されます。

 例えば、内閣の明示の意思に反しない限りなどとして、行政権行使の主体が合議体である内閣にあることとの整合性を図るなどしたほかの規定の仕方が可能ではないかと主張しておられるものでございます。

 いずれにしても、慎重な検討の必要があるものと思われます。

 なお、明文改憲も特段の立法措置も要しないというCの欄の御主張には、二つの異なった主張が掲げられております。

 一つは、首相のリーダーシップを強化するという趣旨についてはAやBの立場と共有しながらも、閣議の全会一致方式を改めるという運用改善を図ればいいというのがC1の主張です。

 ただし、これにつきましても、閣議の全会一致方式という現在の慣行は、憲法第六十六条第三項の内閣の対国会連帯責任制から直接に導かれる憲法上の要請であるという政府解釈の立場に立ちますと、そのような運用改善はできない、明文改憲を要する事項ということになってしまいますから、このC1の立場は、憲法六十六条三項について、別の解釈、例えば、閣議を多数決で決めたとしても、各閣僚がその結果を尊重し、それに拘束されるものとすれば、国会に対する連帯責任制を規定する憲法六十六条三項の趣旨と何ら矛盾はしないのだというような解釈に立つことを前提としているものと推察されます。

 他方、以上のような首相のリーダーシップの強化の主張それ自体に対して疑問を投げかける主張として、C2のように、首相個人ではなく、あくまでも、現行憲法のシステムのもと、合議体である内閣全体の機能強化をこそ図るべきだ、それこそが内閣全体としての政策統合能力を高めることができるとの御意見もございます。

 二つ目の論点は、首相公選制の是非に関する有名な論点でございます。

 これに関しては、首相公選制の導入に積極的な立場にも二つのお立場があるように思われます。すなわち、憲法改正をして導入すべきとするAの欄の御主張、現行憲法の枠内で実質的な首相公選制度を導入することをまずは目指すべきとするBの欄の御主張でございます。

 Bの立法措置で導入可能だとする立場としては、例えば、みんなの党の先生方が参議院に提出されました内閣総理大臣の指名に係る国民投票制度の創設に関する法律案が、直近では最も具体的なものかと存じます。

 これらの導入積極論に対しては、ポピュリズムにつながる危険性や天皇制との関係、さらには、議院内閣制とは異なり、公選された首相は必ずしも議会内多数派を基盤とするものではないことになるため、かえって議会との関係にねじれが生ずる度合いが頻繁に起こってしまい、その制度趣旨とは逆にリーダーシップを発揮できにくくなるのではないかなどなどといったことを理由として、首相公選制は導入すべきでないとするCの欄の消極論の御主張も根強くございます。

 特に、衆議院憲法調査会がまとめられました二〇〇五年の最終報告書におきましては、首相公選制の唯一の導入国であったイスラエルでの詳細な海外調査を踏まえて、首相公選制の導入に消極的な意見が多数意見であったと結論づけておられました。

 いずれにいたしましても、首相公選制については、首相を公選するという以上の具体的な制度設計のあり方を含めて議論される余地があるように思われます。

 次に、二つ目の分野の論点に入ります。

 まず、国務大臣の任命による内閣の構成に関する論点です。

 現行憲法は、国務大臣の過半数は国会議員でなければならないと定めておりますが、これについては、従来から、議院内閣制の趣旨を徹底すれば、全員が国会議員であることが望ましいとの学説もあるところです。Aの欄の明文改憲の御主張は、これを端的に表明した意見です。

 ただ、この御主張の中には、衆議院議員に限るものとするべきか、参議院議員を含めた国会議員とするべきか、議論が分かれているところです。衆議院議員に限るべきとするのは、不信任決議権と解散権によるチェック・アンド・バランスといった議院内閣制の趣旨や衆議院の優越を定める現行憲法の趣旨を徹底するべきとの御主張です。

 なお、これに関しては、現行憲法上、内閣総理大臣は必ずしも衆議院議員でなければならないかといった論点もあることは先生方御承知のとおりでございます。

 また、国務大臣は衆議院議員に限るべきとの御主張は、明文改憲を要せずとも運用ベースで、参議院議員は入閣しない、そのような運用を確立するのが望ましいとするC1の主張にもつながる発想かと存じます。そして、これらの御主張の背景には、両院の役割分担、権限分配の見直しの議論があることは容易に推察されるところでございます。

 これらの御主張に対して、現在の運用のままでよいとするC2の御主張もございます。

 次は、内閣不信任決議と衆議院の解散に関する論点です。

 先生方御承知のとおり、現行憲法では、衆議院が解散される場合について明確な条文があるのは、第六十九条に規定されております、衆議院で不信任決議案が可決されるか、信任決議案が否決されるかした場合、いわゆる六十九条解散の場合だけでございます。

 しかし、これ以外の場合においても、実際には、内閣、より端的には内閣総理大臣でございますが、その判断で民意を問うべきとした場合には、六十九条の場合によらずに衆議院は解散されております。このような六十九条解散以外の解散は、憲法第七条第三号の天皇の国事行為に対する内閣の助言と承認という手続的規定の中に実質的な内閣の解散権限を読み込んで行われているものでございますけれども、そして、これが七条解散と呼ばれる衆議院解散権の解釈、運用でございます。これは先生方御承知のとおりでございます。

 ただ、このような憲法解釈が決してわかりやすいものではございません。実際に、新憲法施行直後の初めての衆議院解散のときには、六十九条解散限定説をとる野党と非限定説をとる政府とが対立し、GHQのあっせんにより、野党と政府が妥協し、野党の不信任決議案の提出を待って、これを可決した上で内閣が衆議院を解散するという手続をとったと言われております。

 そこで、これに関して明文改憲を主張するAの欄は、六十九条解散以外のいわゆる七条解散についても明文の規定を置くべきというものです。その際には、解散権濫用に関する内容的、手続的な制限規定をあわせて設けるべきではないのかというような御主張もございます。

 もちろん、これらの御主張に対しては、今でも解釈、運用上行ってきているものであり、不都合はないのであるから、何ら明文改憲をするような必要はないとするCの欄の御見解もございます。

 次は、内閣総理大臣が欠けた場合などに置かれる内閣総理大臣の臨時代理に関する論点です。

 現在、臨時代理に関する規定は内閣法第九条に定められているところですが、このような事項は安全保障上も重要な事項であるから、憲法にこそ規定するべきであるとするのがAの欄の御主張です。

 これに対して、内閣法に規定が設けられており、それで足りるから現状のままでよいとするのがCの欄の御主張です。

 最後に、大きな三番目の分野の論点は、国会の行政監視機能の強化に関する論点です。

 変転する国内外の事情に即応して適宜適切な行政的対応を可能とするためには、内閣総理大臣のリーダーシップを強化し、迅速に決定、実施できるような統治構造を構築する必要があるけれども、同時に、その行き過ぎをチェックするためには、それを監視する国会の機能の強化をも図らなければならないとする発想が背景にあるものと推察されます。

 そのような具体策として唱えられているのが、国会の附置機関として、アメリカのGAOのような会計検査院あるいは行政監視院を設置するべきとか、前回も御紹介申し上げましたように、現行の日本国の会計検査院を国会の附置機関とするべき、あるいは、議院の国政調査権を議員個々人の権能とするべきといった、A1やA2に掲げる明文改憲の御主張です。

 これに対して、現行憲法の枠内でできること、例えば、これも前回御紹介申し上げましたように、少数会派による国政調査権の発動を可能としたり、また、立法措置でもって国会に行政監視院を設置するなど、Bの欄の御主張もございます。

 なお、行政監視院設置法案については、平成八年に、当時の民主党の先生方が衆議院に提出された事例がございます。

 また、以上の主張とともに、さらに運用面でも国会の行政監視機能の強化策を講じるべきであるとして、委員会審議の充実や、議院法制局や調査局などの補佐スタッフの強化など、予算措置等でもって対応できることも重要であるとするCの欄の御主張もございました。

 最後に、国会の行政監視機能の強化に関連して、オンブズマン制度の導入に関する論点がございます。

 オンブズマンと申しましても、行政内のオンブズマンや市民オンブズマンなど、さまざまな類型のオンブズマン制度がございますが、ここで取り上げるのは、国会の行政監視機能の強化の観点からの、いわゆる議会オンブズマンと言われる制度です。

 議会オンブズマン制度は、議会によって選任されたオンブズマンが、国民の苦情を受け、行政の不適切な執行から国民の権利利益を保護するとともに、それを通じて行政活動を監視するという制度でございます。

 すなわち、行政内部における行政監察、評価の一環としてだけではなく、国民代表機関である国会こそ、国民の権利利益の最後のとりでとも言える国家機関であるべきであり、日々の国民生活の喜怒哀楽や苦情に寄り添いながらそれを解決していく、そういう機能をこそ果たすべきであるとする哲学のもとに、そのような職責を担う国会議員の先生方の監督のもとに、独立した機関として議会オンブズマンを設置し、これに当たらせるというものです。

 この議論の背景にあるのは、衆議院憲法調査会の先生方の海外調査におけるスウェーデンやEUの議会オンブズマンの実態調査に関する知見があるものと拝察されます。そして、これを諸外国の事例に照らして憲法改正をして設置するべきだというのがAの欄の御主張です。

 他方、かつての民主党御提出の議員立法である行政監視院法案のように、法律の制定でもってこの議会オンブズマンの制度も設ければよいとするBの欄の御主張もございますし、また、そもそもそのような制度の導入自体に消極的なCの欄の御意見もございました。

 以上、本日は、第五章内閣の章に関する主要論点につきまして、大変に早口、駆け足になってしまって恐縮でございましたが、御報告をさせていただきました。ありがとうございました。

保利会長 以上で衆議院法制局当局からの説明聴取は終わりました。

    ―――――――――――――

保利会長 これより自由討議に入ります。

 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派を代表する委員が順次発言を行い、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 発言の中で、事実確認等のため、衆議院法制局当局に対する質問を含んでも結構であります。

 それでは、まず、各会派を代表する委員の発言に入ります。

 発言時間は七分以内とし、その経過については、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構であります。

 発言の申し出がありますので、順次これを許します。岸信夫君。

岸委員 自民党の岸信夫でございます。

 本日は、日本国憲法第五章内閣について、自由民主党を代表して見解を述べたいと思います。

 近年、我が国の政治のリーダーシップ、とりわけ総理大臣のリーダーシップ強化が論じられることが多くなっておりますが、これはまさに日本国憲法の第五章の主要論点であると思います。

 まず、首相公選制について述べたいと思います。

 首相の選出に直接民意を反映することを通じてリーダーシップ強化につなげるとの考えに基づいた首相公選制については、長い歴史の中で形づくられた我が国の国柄、すなわち天皇を権威の象徴として中央にいただく国の形をとる我が国においては、首相公選制はそぐわない、なじみにくいものと考えております。国民の代表機関たる国会が総理を選ぶという議院内閣制は、民意の国政への反映という観点と国会と政府のねじれを防ぐという観点とのバランスが図られた制度であると考えます。

 自民党の党内議論においても、首相公選制の導入を強く主張する議論は見られませんでした。むしろ、議院内閣制が長年にわたって定着していることに鑑み、行政権が内閣に属するという現行憲法の根幹は維持しながら、総理の専権事項の拡大を通じてリーダーシップを発揮できるようにすべきと考えております。

 自民党の憲法改正草案では、内閣総理大臣が閣議に諮らずみずから一人で決定できる専権事項を三点設けております。

 具体的には、まず第一に、行政各部の指揮監督、総合調整権であります。

 現行憲法及び内閣法では、内閣総理大臣は、全て、閣議にかけた方針に基づかなければ行政各部を指揮監督できないことになっておりますが、我々は、内閣総理大臣が単独で、閣議にかけなくても、行政各部の指揮監督、総合調整ができると規定したところであります。

 第二には、衆議院の解散の決定権であります。

 かつて、解散を決定する閣議において閣僚が反対する場合に、その閣僚を罷免するという事例もあったわけであります。そのような事態に至らぬように、これらは総理大臣の専権事項として単独で決定できるよう、衆議院の解散は内閣総理大臣が決定するということを明文化すべきと考えております。

 したがって、論点表においては、内閣総理大臣のリーダーシップ強化についてはA2及びA3、また、首相公選制についてはCであります。

 さらに、総理の専権事項として明記すべきことの第三点目として、軍の最高指揮権があります。

 現在、自衛隊法第七条では、「内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する。」とありますが、自民党の憲法改正草案では、自衛隊を国防軍として憲法上位置づけ、「内閣総理大臣は、最高指揮官として、国防軍を統括する。」と憲法に規定することにより、最高指揮権が総理大臣にあることを憲法上明らかにし、法律に特別の規定がない場合には、総理大臣が、閣議にかけないで国防軍を指揮することができるようにすべきであると考えております。

 国務大臣の任命については、内閣の存在が国会の信任に基づくという議院内閣制の趣旨と、有為の人材を国務大臣に登用できるという観点を踏まえ、現行制度を特に改める必要はない、論点表におけるC2の立場であります。

 内閣不信任決議と衆議院の解散については、論点表Aの立場であります。

 先ほど申し上げましたとおり、我が党の憲法改正草案では、衆議院の解散は内閣総理大臣が決定するとし、現在、七条の中で読み込んで解釈されている解散の決定権を、総理の権限として明文化すべきと考えております。

 内閣総理大臣が欠けたときについては、論点表Aの立場です。

 現行憲法では、内閣総理大臣に不慮の事態が生じた場合に、憲法七十条の内閣総理大臣が欠けたときに該当するか否かを誰が判断して、また、内閣総辞職を決定するための閣議を誰が主宰するのかということについて、規定の整備がなされておりません。これでは危機管理上も問題があるのではないかとの観点から、内閣総理大臣によりあらかじめ指定を受けた国務大臣が臨時に総理の職務を行うことについて、憲法上、規定すべきであります。

 最後に、国会の行政監視機能の強化についてであります。

 国会の重要な機能の一つである行政監視機能の強化については、そのための機関を新たに設置するよりは、法律の制定、改廃や、国会審議の充実を含めた運用改善を通じて果たされるべきと考えております。

 以上、自民党を代表しての意見表明といたします。

保利会長 次に、古川元久君。

古川(元)委員 民主党の古川元久でございます。

 民主党は、これまで党内で行ってきた憲法論議の中で、統治機構のあり方につきまして、国民主権の徹底と権力分立の明確化を基本として内閣総理大臣主導の政府運営を確立する一方で、国会の行政監視機能を拡充強化すべきであると考えてまいりました。

 本日、日本国憲法第五章内閣の章に関して論議するに当たり、これまでの党の議論を紹介するとともに、私自身が政府の中で経験したことを踏まえて若干の私見を申し述べたいと思います。

 まず、内閣総理大臣主導の政府運営の実現に向けた我が党の考え方を申し上げます。

 現行憲法では、第六十五条で、行政権は内閣に属することとなっており、かつ、第六十六条第三項では、内閣はその行使について連帯して責任を負うこととなっています。そのため、全会一致の閣議決定に権限行使が委ねられており、第六十六条第一項に言う、首長としての内閣総理大臣のリーダーシップが強く制限されています。

 そこで、内閣総理大臣主導の政府運営の確立のため、従来、行政権という概念の中に包含されてきた、統一的な政策を決定し、さまざまな行政機関を指揮監督してその総合調整を図る執政権、いわゆるエグゼクティブパワーを、行政権の概念から切り離して、これを明確化し、この執政権を内閣総理大臣に持たせ、執政権を有する内閣総理大臣が内閣を構成し、行政権、いわゆるアドミニストレーティブパワーを統括することといたします。

 具体的には、憲法第五章内閣における主体を内閣総理大臣とするとともに、第六十五条における行政権を執政権に切りかえ、首長としての内閣総理大臣の地位と行政を指揮監督する内閣総理大臣の権限を明確にします。加えて、内閣法や国家行政組織法など憲法附属法の見直しを行って、内閣総理大臣による政治任用や行政組織改編が柔軟にできるようにし、内閣総理大臣の行政組織権を明確なものにします。

 以上が、党のこれまでの考え方であります。

 この内閣総理大臣のリーダーシップ強化に関して、私自身の経験に基づく私見を申し上げますと、私は、最終的には、今申し上げたような形で憲法上その地位の強化を明確にするのが好ましいとは思いますが、そこに至る以前の段階、すなわち、法律や運用の改善によって、内閣総理大臣のリーダーシップの強化は、かなりの程度実現できるのではないかと考えます。

 例えば、民主党政権で実現を目指した国家戦略局の設置は、まさにこの内閣総理大臣のリーダーシップ強化のためのものでありました。私は、初代国家戦略室長として国家戦略室の設立に携わり、また、後には国家戦略担当大臣として仕事をしましたが、国家戦略室は、総理直属の機関として、各省庁の一段上の立場に立ち、内閣の重要政策に関して、関係各省庁に対し指示を出したり、総合調整を行う役割を果たしました。この国家戦略室は、総理大臣決定によって設置されましたが、これが当初のもくろみどおり、法定化されて局に格上げされ、その権限もきちんと法律上担保されていれば、もっと強い力を発揮することができたと思います。

 残念ながら、国家戦略室は政権交代によって廃止されてしまいましたが、私は、誰が政権を担うにせよ、内閣総理大臣のリーダーシップを強化するためには、国家戦略局のような組織が必要だと考えております。

 次に、国会の行政監視機能の拡充強化に関する我が党の考え方を申し上げます。

 立法府における行政監視機能の拡充強化は、行政府における内閣総理大臣のリーダーシップ強化と裏腹の関係にあります。したがって、国会を単なる法案審査の場とするのではなく、今日の複雑な行財政システムや対外関係を律することが可能な専門的情報管理とチェック機能を果たす仕組みとし、行政府に対する国民のコントロール権限が十分に発揮されるようにすることが重要であります。

 具体的には、行政府の活動に関する評価機能をあわせ持った行政監視院を、政府から独立した第三者機関とするのか、あるいは国会のもとに設置するのかについては検討を要しますが、設置することといたします。

 また、憲法上の規定が曖昧なまま、現在、行政府が所管しているいわゆる独立行政委員会については、その準司法的機関としての性格を踏まえ、内閣とは別の位置づけを明確にします。その上で、それらに対する国会による同意と監視の機能を整備します。

 さらに、国政調査権の発動を少数会派でも可能といたします。

 以上が、党のこれまでの考え方であります。

 この国会の行政監視機能の拡充強化に関して若干の私見を申し上げますと、行政監視院の設置が望ましいのはもちろんでありますが、私は、まずは、決算行政監視委員会の分科会という形か、あるいは、各常任委員会のもとに小委員会という形ででも、民主党政権で政府において行った事業仕分けを国会で常時実施する場所を設けるべきだと考えています。

 私は、鳩山内閣におきまして、行政刷新担当副大臣として事業仕分けを企画し、実施いたしました。この事業仕分けは、行政内部のPDCAサイクルの一環として行ったもので、政権がかわっても引き続き行われるべきものと考えていますが、公開の場で、第三者の目で、行政が行っているさまざまな事業をチェックするという点では、国会がやるべき行政監視と重なり合う部分があります。

 したがって、さきの総選挙前に、決算行政監視委員会においていわゆる国会版事業仕分けが行われたことがありましたが、今後は、これを一時的なものではなく、恒常的かつ対象も行政全般にわたって広く行うことができるようにすることが国会の行政監視機能を拡充強化することにつながると考えております。

 最後に、内閣総理大臣の解散権に関し、一言申し上げます。

 私たちは、国家非常事態においても、国民主権や基本的人権の尊重などが侵されることなく、憲法秩序が確保されるよう、国家緊急権を憲法上明記し、その仕組みを明確にしておくことが必要であると考えておりますが、その中には、非常事態における内閣総理大臣の解散権の制約が含まれると考えております。

 以上で発言を終わります。

保利会長 次に、坂本祐之輔君。

坂本(祐)委員 日本維新の会の坂本祐之輔です。

 第五章の内閣について、憲法審査会が提示された論点に従って我が党の意見を申し上げます。

 まず、首相の地位については、内閣総理大臣のリーダーシップの強化のため、行政権の主体を内閣総理大臣にする方向で議論を進めてまいります。特に、道州制を導入した場合、強力な権限を持った州知事が登場することになり、それら州知事と対応するためにもより強力な権限を持った首相を生み出すことができるようにすることが重要であると考えます。

 また、衆議院の解散等を内閣総理大臣の専権事項とすることも賛成する方向で議論してまいります。

 行政各部の指揮監督、総合調整権を内閣総理大臣単独の権限として明記することについても、基本的に、首相は大臣、副大臣、政務官等を任命できるなど、行政各部に広範な人事権を有する方向で検討してまいります。

 さらに、総理大臣が自衛隊の指揮権を有することを明記する方向で議論してまいります。

 首相公選制導入については、日本維新の会は公約でも明記しており、全面的に賛成です。ただし、首相の選任が人気投票的になることを防ぐ方策も十分に検討すべきであり、例えば、首相の立候補資格については、一定数の国会議員の推薦を要件とすることなどを検討していきます。

 あわせて、第一章でも主張しましたが、国の代表者はあくまで天皇であり、我が国は立憲君主国であることを同時に明確にしておきます。

 また、首相公選制が根強く主張される背景としては、市長や知事は住民が直接選ぶのに、首相は国民が直接選ばないのかという根本的な疑問があります。私は、市長経験者として、現場の市民の声が国政において政策をつくる側に届いていないとの実感がありましたが、それは国政のトップを国民が直接選ばないというところから来ているのではないかと考えます。

 首相公選制については、イスラエルの制度が失敗に終わったことを踏まえ、首相と議会多数派が異なるねじれ状態を深刻化させるといった懸念が指摘されています。しかしながら、民族、宗教などで多数のグループに分かれるイスラエルと我が国の国情は大きく異なっており、しかも、イスラエルでは議会の選挙制度に完全比例代表制を採用していることが首相と議会とのねじれの発生を助長してきた面があると考えます。

 イスラエルの制度の失敗から、首相と議会とのねじれの問題を解決するためにも、国会議員の選挙制度も含めて制度を検討していくべきと考えます。そして、首相公選制を導入することにより、国民の声がより国政に反映されるようにすべきだと考えます。

 次に、国務大臣の任命については、全て国会議員の中から選ぶように改正することには反対する方向で議論していきます。基本的には民間からも登用できるようにしておくべきだと考えます。

 衆議院の解散権につきましては、内閣総理大臣にあることを明確にする方向で議論してまいります。また、第七十条の内閣総理大臣が欠けたとき等の職務の臨時代理についての規定は、当然整備すべきと考えます。

 続いて、国会の行政監視機能の強化について。国会に行政監視院や会計監査院など行政監視のための附属機関を設置することは、特別会計などについてチェック機能が十分に働いていない現状を踏まえ、基本的に賛成する方向で具体策を検討してまいります。そもそも、いつ、どこで、誰の責任で政策が決まったのか、不明確な場合も多いため、行政監視の前提として、政策決定の過程の見える化を実現する制度の整備も重要と考えます。

 その他の論点としては、議院の国政調査権を議員の権能とするかどうかについては、オンブズマン制度等の導入を含め、政党政治との関係で慎重に検討していきます。

 また、第六十五条に「行政権は、内閣に属する。」とあり、行政権の行使については、内閣は国会に対して責任を負わなければならず、内閣は行政各部に対して指揮監督するはずなのに、内閣の指揮監督から外れている人事院や会計検査院などの行政機関をどうするのかという点につきましては、責任と権限とを連動させていく観点から検討してまいりたいと考えています。

 以上で終わります。

保利会長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 憲法第五章内閣に関する諸論点について、公明党を代表して意見を申し上げたいと思います。

 内閣総理大臣のリーダーシップの強化につきましては、近年、我が国の統治のあり方を課題として、内閣総理大臣のリーダーシップ強化が強く主張されています。行政権の主体を内閣総理大臣にすべきとか総理の専権事項をふやすべきといった意見や、後に触れる首相公選制の導入論も、総理の指導力強化という趣旨が基本にあると思われます。

 しかしながら、現行憲法でも内閣総理大臣は内閣の首長とされ、国務大臣をみずから任命、罷免、議案の国会提出などについて、内閣を代表する地位を有しています。行政各部の指揮監督権については、これを内閣総理大臣単独の権限とすべきという意見もありますが、内閣法六条により、閣議で大枠としての基本方針を定めておけば、これに基づいて総理が臨機に指揮監督するということも、現行法上、可能となっています。

 閣議にかけて決定した方針に基づくという要件は、総理の独断での権限行使に対する最低限の歯どめと考えられるため、総理の権限強化という趣旨からこの要件を削ってしまうことについては慎重であるべきと考えます。

 総理のリーダーシップが発揮できないという指摘については、その原因が、制度的な問題、中でも立法で対応できない憲法上の問題に由来しているのか、あるいは、我が国の政治文化や、歴代の総理の政治手腕、個性に由来するものなのかなど、その背景を検証する必要があると考えています。

 連立政権下での意思決定との関係でいいますと、近年、我が国では連立政権が続いているという事実を踏まえて考える必要があります。連立政権の運営においては、与党間の政策のすり合わせが不可欠であります。さらに、閣内においても、与党各党を代表する閣僚の全会一致により政策決定を行うという形の方が連立政権の実態になじむものと考えます。

 首相公選制について述べます。

 首相公選制につきましては、これを導入した場合、首相と国会の多数派との間で新たなねじれが生ずる可能性があり、政治的停滞や膠着状態を起こしかねないなどの指摘がされています。また、人気投票の弊害というものもあります。

 衆議院憲法調査会がイスラエルの首相公選制を調査しましたが、政権安定のために導入した首相公選制が、かえって首相と議会の間のねじれを深刻化させてしまい、首相公選は三回実施されただけで失敗に終わり、二〇〇一年に廃止されています。このため、公明党では、議院内閣制を実効的に機能させれば内閣の政策決定能力を高めることができるという意見が大勢です。

 さらに申し上げれば、国会による内閣のチェックを十分に機能させるという点でも、議会が政府に対して民主的統制を及ぼすという議院内閣制がすぐれていると考えています。

 なお、道州制の導入と憲法改正はリンクしないというふうに考える方が多いと思います。

 次に、国務大臣の任命のあり方についてです。

 現在、国務大臣は、そのほとんどが国会議員の中から、衆参のバランスなどの事情も踏まえて選ばれていますが、特に参議院からの選任のあり方については、日本国憲法の議院内閣制の趣旨や二院制における衆参の役割分担についての考え方を踏まえて、どのような形が望ましいか検討すべきであると考えます。

 その他、衆議院解散の決定権の所在や、内閣総理大臣が欠けたときの臨時代理など、現行憲法下での慣習や、立法により特例扱いが確立している点については、あえて憲法を改正する必要はないと考えます。

 次に、国会の行政監視機能についてでございます。

 国会の行政監視機能については、その位置づけの強化を図るため、憲法上、明文で位置づけるべきとの意見もありますが、現行憲法でも、内閣の国会に対する連帯責任や国政調査権の規定など、憲法全体の構造から導くことができると考えます。また、決算行政監視委員会等をしっかり充実させていくことが大事だと考えます。

 また、行政監視機能についてのポイントとなるのが、議会多数派と政府が同一政党で構成される議院内閣制のもとで国会の行政監視機能を有効に機能させるために、少数会派による調査の機会をいかに確保するかという点が大事だ、こういうふうに思っております。

 現行憲法六十二条では、行政監視の重要な手段である国政調査権が議院の権能とされていますが、これを議員個人の権能とすべきとの意見もあります。

 もっとも、衆議院においては四十人以上の議員の要請に基づく予備的調査命令の制度が設けられているように、現行憲法の六十二条で国政調査権が議院の権能とされていることと少数会派の意向に基づく調査の重視という点の調整を図るため、必要な取り組みが現行行われています。この四十人以上ということについては、さらに検討を加える必要があると思います。

 最後に、オンブズマンなどの行政監視のための専門機関を新たに憲法で置くかどうかという点でありますが、本来、行政監視の機能は議会そのものが果たすべき役割であることから、議会のチェック機能を強化することが本質である、新たに組織をつくることの優先度は必ずしも高くないというのが党内での多くの意見であると思います。

 以上、公明党を代表して、第五章内閣の章に関する現時点での見解を、若干の私見を交えつつ申し上げました。

 以上でございます。

保利会長 次に、小池政就君。

小池(政)委員 みんなの党の小池政就です。

 みんなの党は、昨年四月に発表いたしました憲法に対する基本的考え方において、憲法第五章内閣に関し、二点を含めた方針を提示しております。

 第一点目は、総理大臣及び内閣の権限を拡大することです。

 まず、予算の編成権限を財務省から分離し、内閣が掌握することで、政治主導を確立することを目指します。財務省から予算編成部門の主計局を分離し、総理官邸に内閣予算局を設置します。これにより、政治主導による予算編成を実施し、当初予算だけで、一般会計と特別会計を合わせて約二百三十兆円にもなる国家予算を抜本的に組み替えます。全ての予算をゼロベースで見直します。

 次に、人事権の拡大を通じて、総理大臣、内閣の権限の強化を行います。

 内閣が幹部官僚の人事を掌握し、総合職を一括採用することにより、真の政治主導の枠組みを確立します。

 人事権を掌握した内閣の長たる総理大臣を司令塔とし、国家戦略スタッフとして政治任用された政治家、民間人、学者等とともに国家戦略を策定し、遂行する、責任を持った行政のあり方を目指します。そこで、各省局長以上も内閣交代ごとに総理大臣が任用することとします。

 また、道州制との関係では、内閣に担当専任大臣を置くと同時に、中央官庁の役割を縮小もしくは再編、削減することや、中央に残った機能を強化することなど、新たな国の行政の形を示します。

 担当大臣のもとで、地域主権型道州制の理念、実現までの工程表、地方の代表も参加した遂行機関の設置等を明記した道州制基本法を早急に制定していきます。

 総理大臣及び内閣の権限の拡大により真の政治主導が行われることを目指す一方、その暴走を国民が適切に監督できるよう、内閣の権限を国民が監督する仕組みも考慮しています。

 具体的には、行政情報の記録化を徹底し、公文書の管理を厳格化するとともに、国の会計に複式簿記等の企業会計手法を導入し、会計制度改革を推進、法令適用の可能性を事前に確認する手続であるノーアクションレター制度の適用範囲拡大や利用促進を通じて、官僚による裁量行政を徹底的に排除する等であります。

 以上が第一点目であり、これらは現状の憲法においても実行可能な項目と考えます。

 第二点目は、首相公選制の導入です。

 現在の国会議員の互選による首相の選択は、必ずしも民意を反映したものとはなっていません。

 小選挙区比例代表並立制が採用されて以来、政党はマニフェストを掲げるようになり、衆院選は、地域代表の選択を通し、マニフェストの選択、ひいては政権政党及び首相の選択という認識が高まってきました。

 しかし、その民意をよそに、政党内での党首の任期終了に伴って首相が交代していきます。しかも、手続が不明瞭であり、密室で新党首が決められることも少なくありませんでした。政党内で党首選挙が行われる場合もありますが、国民へ選挙時に示したマニフェストと全く逆の公約を掲げる候補者も登場する例も散見されます。結果として、国民の意思とは無関係もしくは反対の立場の首相が誕生していきます。

 このような民意と首相選択の乖離は、有権者に無力感を与え、政治への信頼を喪失させていきます。

 真の政治主導を目指す上での実行力についても課題が見受けられます。

 国会議員の内輪の論理で選ばれた首相には継続的で強力なリーダーシップが期待できず、我が国が直面する重要な課題に対する改革の推進力も乏しいものとなってしまいます。

 かつて、戦前の日本では、元老が短期間のうちに次々に首相を交代させ、国内外の対応に大きな混乱をもたらしました。現在では、一部、党員を含めた党首選が行われるも、与党内の派閥の論理に基づく国会議員の選択により、結果として、内向きで改革実行力に乏しい首相が短期間で何人もかわっていきました。内政のみならず、リーダー間の信頼関係が大きな意義を持つ外交における損失ははかり知れません。

 そこで、主権者たる国民が首相を選ぶ選挙権を持つことが、日本を変えるのに一番わかりやすい手段であると考えます。

 みんなの党はまず、憲法改正を必要としない日本型首相公選制の導入を目指します。国民投票によって国民が総理大臣にふさわしいとする候補者を選んだ後、国会議員は、その投票結果に示された世論を尊重して総理大臣の指名に関する投票を行うものとします。

 また、将来的には、真の政治主導を実現する権力の裏づけたる国民の支持を明確にさせていく上で、憲法改正による首相公選制の導入を進めていきます。その際、首相は、議員、民間を問わない文民とし、また、責任は国民に対して負うこととなります。

 なお、天皇との関係においては、第一章での討議でも示したように、国家の元首は天皇と明記し、象徴的元首としての権威と国事行為を、基本的には従来どおり、かつ、明確にいたします。

 そのほか、党内での議論として、国会の解散権及び国会からの不信任決議のあり方をどうするか、国民に直接責任を負う中で、不信任投票の発議と実施の権限を国民に委ねるべきではないか等の意見もあり、憲法改正を伴う首相公選制の実施に向け、幅広い観点から検討していきます。

 国民から直接選出される首相が国民に対して直接責任を負い、国民自身も、これまでその意思と乖離して選ばれたリーダーに対する傍観者的視点から、みずからが責任をともに有するという意識に変革することにもつながるものと考えております。

 以上、大きく分けまして二点がみんなの党の憲法第五章に関する基本的考え方です。

保利会長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 憲法第五章内閣で重要なことは、国民主権のもとでの議院内閣制を採用していることです。憲法は、民意を正確、公正に反映した国会の形成と、その国会から内閣総理大臣を指名し、民意を忠実に執行する内閣を組織することを命じています。では、現実には、歴代内閣がこの憲法の規定どおりに職務を果たし、執行してきたか、しているか、このことが厳しく問われます。

 例えば、憲法第二章とのかかわりでは、この間も述べてきたとおり、九条がありながら、歴代内閣はそれをないがしろにし、日米安保条約を最優先にする政治を行ってきました。戦争が終わって六十八年もたとうとするのに、いまだに沖縄を初め全国各地に百三十二もの米軍基地が存在し、数々の治外法権的特権を行使しています。こんな国は世界にありません。

 最近も、沖縄普天間基地へのオスプレイ配備と日本各地での低空飛行訓練強行に物も言えず、辺野古の埋立申請を強行するなど、オール沖縄、国民の声よりも米国の意向を重視する内閣の職務執行の現状は、およそ民主主義国家にあるまじき許しがたいものであります。

 また、第三章とのかかわりでも、本来、憲法が定めた国民の基本的人権の保障に内閣として全面的に責任を果たさなければなりません。

 ところが、実際にはどうか。日本は働く人の所得が減り続け経済成長がとまったという、世界の先進国の中でも特異な状態に陥っています。労働者の三人に一人が非正規雇用に置きかえられ、低賃金と劣悪な労働条件のもとで、人間らしい働き方が奪われ、最後の命綱である生活保護は一層の引き下げを強いられようとしています。

 東京電力福島原発事故によって、国策として推進してきた原発政策が根本から問われています。ところが、事故の収束、廃炉、除染と全面賠償に向けた政府の責任を果たさず、事故原因もわからずに原発を再稼働させようとしているのであります。

 国民の基本的人権よりも、財界、大企業の目先の利益を最優先にする政治を行ってきたのが歴代内閣の実態です。こうした内閣の職務執行の現状は、民意を忠実に執行するどころか、逆行するものにほかなりません。

 その矛盾を逆手にとって行おうとしてきたのが一連の政治改革でした。特に、一九九〇年代以降、政治の停滞などを口実に、強い内閣、官僚主導から政治主導への名のもと、内閣機能の強化、首相の権限強化が打ち出され、それと一体に小選挙区制の導入と二大政党づくりが進められてきたのであります。

 現行の小選挙区並立制のもとで実施された六回の総選挙の結果は、その根本的欠陥を浮き彫りにしています。二〇〇五年、〇九年、昨年末の総選挙ではいずれも第一党が圧倒的な議席を獲得しましたが、小選挙区制での第一党の得票率は四割台にもかかわらず、七、八割もの議席を占めました。得票率と獲得議席に著しい乖離を生み出し、議席に反映しない死票が過半数に上っています。民意の反映を大きくゆがめる小選挙区制の害悪は明白であります。

 そうした小選挙区による国会での多数を背景に政権を担ってきた与党は、首相の強力なリーダーシップで盤石の政権運営を思い描いてきたかもしれません。しかし、現実には、わずか一年前後で首相が交代する短命内閣が続き、政権交代を繰り返し、盤石どころか脆弱な政権運営とならざるを得ないことをこの間の実態が示しています。それでもなお、民意に立脚して、憲法の規定に沿って内閣の職務の執行の責任を果たすのではなく、あくまで民意に背く政治を繰り返そうとしているのであります。主権者国民はそのような政治を決して望んでいません。こうした現実の徹底検証こそ、今必要なのであります。

 最後に、安倍首相みずからが、まずは九十六条の改正に取り組むと国会答弁で明言し、官房長官も、政府として九十六条の改正に全力を挙げて取り組みたいとしている問題であります。

 憲法九十六条は、「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。」と規定しています。

 憲法の本質的な役割は、時の政治権力、国家権力が平和、自由と民主主義、基本的人権を壊すことができないように、国民主権の立場に立って権力を縛ることにあります。

 憲法の制定、改廃は、国民の重要な主権行使なのであります。九十六条の規定は、まさに時の政治権力が自分たちの都合のよいように憲法を改変できないようにするためのものであります。この発議要件を過半数に引き下げようとすること、まして、時の内閣がその先頭に立つことは、憲法の本質的性格を壊す危険な動きと言わなければなりません。決して手続や形式の問題ではなく、まさに憲法の本質にかかわる重大問題です。

 この点においても、憲法が定める内閣の権能に照らした検証が必要であることを厳しく指摘して、意見表明とします。

保利会長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 生活の党の鈴木克昌です。

 憲法第五章内閣について意見表明をいたします。

 生活の党では、現在、憲法全体について、党としての考え方を取りまとめるべく検討を進めております。国民主権、基本的人権の尊重、平和主義、そして国際協調の原則、この四つの理念を維持すべきということを基本として、昨今盛んになっている九十六条改正論のような政治的な背景からの議論ではなく、理性的に、論理的に憲法を見詰めながら党内議論を進めていきたいと考えております。

 これから述べる意見もまた、検討過程のものとして御報告させていただきたいと思います。

 まず最初に、内閣総理大臣の地位についてです。

 生活の党は、現在の議院内閣制の根本は維持すべきと考えており、行政権が内閣に属するという規定もまた、これを維持すべきと考えております。

 内閣総理大臣のリーダーシップを強化すべきという指摘に関しては、内閣総理大臣が、閣議にかけなくても、単独で行政各部の指揮監督、総合調整を行えるようにするという、論点表のA3の考え方をとっております。

 そのほか、内閣や内閣総理大臣と国会、特に参議院との関係をどのように整理するかについては、党内のさまざまな意見を踏まえて、二院制のあり方とあわせて、引き続き検討していく必要があると思います。

 次に、首相公選制についてです。

 首相公選制と一口で言っても、論者によってその中身はさまざまであり、世界を見渡しても、過去において成功をおさめた制度は存在しません。

 また、首相公選制は、主権者国民が国の政治の最高権力者を直接選ぶという大統領制に近い制度になりますが、天皇制のもとで、このような制度を理論的にどう位置づけることができるのか、難しい問題があります。

 以上から、首相公選制は採用すべきではないという、論点表におけるCの立場です。

 次に、衆議院の解散についてです。

 現在は、形式的な規定にすぎない七条の中に内閣の実質的な解散決定権を読み込むという不自然な憲法解釈をとっています。このため、内閣の解散権、解散決定権を明文で位置づけるべきと考えています。論点表のAの立場ですが、その際、解散について何らかの制限を加えるべきか否かについては、引き続き検討する必要があると考えています。

 具体的には、解散できる場合の要件を憲法に定めるべきか否か、解散できる場合の要件を定める場合はどこまで具体的に規定するのか、さらに、なぜ解散・総選挙という形で国民の判断を仰ぐこととなったのかというその理由を国民に説明するような仕組みが必要かどうかといった点について検討を進めていきたいと考えています。

 次に、内閣総理大臣が欠けたときの臨時代理については、かつて、小渕総理が倒れられた際に、青木官房長官が臨時代理となったことがありましたが、このような場合の取り扱いを明確にするためにも、憲法に規定すべきであると考えます。論点表のAの立場です。

 その際、現在、内閣法で定められている臨時代理の規定をそのまま憲法に位置づけるということでよいのか、何らかの事件によって総理大臣以下全ての国務大臣が欠けた場合なども想定した規定を置くのかといった点も含めて規定を整備する必要があります。

 最後に、行政監視機能の強化については、会計検査院を国会の附属機関として位置づけるか、あるいは、会計検査院を改組し、国会の附属機関として行政監視院を設置すべきと考えています。加えて、政府に対する国会の行政監視機能をさらに実効的なものとするため、野党主導による国政調査権の発動が容易になるよう、いわゆる少数者調査権について規定すべきです。論点表ではA1及びA2の立場です。

 以上が、内閣の章についての現時点での意見であります。

保利会長 これにて各会派を代表する委員の発言は終了いたしました。

    ―――――――――――――

保利会長 次に、委員各位による自由討議に入ります。

 この際、委員各位に申し上げます。

 本日の審査会におきましては、論点を、第一に、首相の地位に関する論点、第二に、国務大臣の任命、内閣不信任決議と衆議院の解散及び内閣総理大臣が欠けたとき等の臨時代理に関する論点、第三に、国会の行政監視機能の強化等に関する論点、その他第一及び第二で議論の対象としていない論点の三つに分類いたします。

 各委員におかれましては、おおむねこの三つの論点の分類ごとに意見表明をしていただきますように、御協力をお願いいたします。

 なお、この三つの論点の分類はあくまで目安ですので、各委員の発言がそのほかの論点等に及ぶことは結構であります。

 発言を希望される委員は、お手元にあるネームプレートをお立ていただき、会長の指名を受けた後、発言ください。発言が終わりましたら、ネームプレートは戻していただくようにお願いいたします。

 発言は自席から着席のままで結構です。また、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようにお願いいたします。

 なお、幹事会の協議によりまして、一回当たりの発言時間は五分以内といたしたく存じます。委員各位の御協力をお願いいたします。

 発言時間の経過につきましては、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、まず、首相の地位に関する論点について御発言を希望される委員は、ネームプレートをお立てください。

高木(宏)委員 自由民主党の高木宏壽でございます。

 内閣の危機管理機能の強化という点から申し上げたいと存じます。

 ことし一月に発生した、日本人十名が犠牲になったアルジェリア・テロ事件、古くは湾岸危機や阪神・淡路大震災、あるいは地下鉄サリン事件、ペルー人質事件、また、カンボジアなどの在外邦人保護における自衛隊機派遣の問題、また、最近の近隣諸国の情勢を見ますと、テロ事件、地域紛争、大災害などの危機に際しての内閣機能の強化というのは喫緊の課題になっているものと認識しております。

 内閣の危機管理機能の強化の障害の一つになっているのが、私は、法システムが構築されていないことが挙げられると考えております。元来、我が国の法体系は危機を想定したものにはなっておりません。危機管理というものが国民に国家への信頼と安心感を持たせるものであるということを考えれば、憲法を含めた法体系を見直すべきと考えております。

 現行の内閣の憲法解釈の基本は、憲法六十六条第三項について、国会に対する連帯責任から、閣議の全員一致が求められると解釈されております。また、内閣法第四条及び第六条で、内閣総理大臣が直接に行政各部に指揮監督権を行使できないものと解釈をされております。

 緊急事態というのは通常の手続をとり得ない場合をいうのであって、緊急事態に備えるのも法の役割であります。総理大臣が危機に際して適切にリーダーシップを発揮できるようにするためにも、行政各部に対する指揮監督、総合調整の権限、内閣総理大臣単独の権限として明記すべきであると考えております。

 以上であります。

高鳥委員 自由民主党の高鳥修一でございます。

 私は、内閣総理大臣のリーダーシップの強化について申し上げます。

 自民党の日本国憲法改正草案では、第九条の二第一項と第七十二条三項において、内閣総理大臣が国防軍の最高指揮官であることを規定いたしました。現在、自衛隊法第七条において、「内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を有する。」とされております。最高指揮官が防衛大臣でも統合幕僚長でもなく内閣総理大臣であることを内閣総理大臣の職務の中に明記するべきであると考えます。

 以上であります。

船田委員 自民党の船田でございます。

 行政権という点については、憲法におきまして、内閣に属するということであります。現在の憲法によりますと、行政権については、やはり内閣が合議体として機能する、これが原則ではございます。この点は十分尊重する必要があると思います。

 しかしながら、先ほど来さまざまな議論にありますように、危機管理、あるいは、総理大臣のリーダーシップというものをさらに発揮しなければいけない国際情勢あるいは国内の情勢などを考えますと、やはり内閣総理大臣の専権事項というものを、制限列挙という形ではありますけれども、限定的にそれを規定しておく必要があるのではないかというふうに感じております。

 具体的には、衆議院を解散すること、これは後ほど出てきますけれども、七条解散という曖昧な形ではなくて、やはり内閣総理大臣の専権事項による解散権というものは明記するべきである。二つ目には、これも議論に出ておりますが、自衛隊の指揮権の最高責任者、こういう形での明記。さらには、内閣の合意でなくても、単独で内閣を指揮し、総合調整を行う。この三つの機能というのは、やはり総理大臣のリーダーシップを発揮するためには大変重要な要素である、このように思っております。

 それから、首相公選制でございます。

 これについては、かつての憲法調査会以来、さまざまな議論がなされております。

 ただ、私は、この点については、やや慎重に考えたいと思っております。今申し上げた総理大臣のリーダーシップを発揮するための幾つかの権限が十分に保障される、そういう状況になれば、首相公選制というのは、当面、必要はないのではないかということであります。

 しかしながら、これから将来、この首相公選についても議論は続けていくべきだというふうに思っています。その場合、克服する課題としては、議会の多数派と総理大臣の所属する政党が違った場合、ねじれが生じたときの対応、それから、元首という意味合いでの天皇制との関係、さらには、ポピュリズムを助長するのではないかというような社会的な問題、このあたりを解決しなければ、首相公選制度というのはなかなか難しいのではないかな。ただ、政治的な課題としては存在すると思っております。

 以上です。

武正委員 首相の地位ということでございますが、今の小選挙区制度導入以来、衆議院選挙については、首相を選ぶ選挙ということが標榜されております。そしてまた、マニフェスト選挙、これについては各党捉え方が異なりますが、さきの政権、三年三カ月の間では、国民が国民主権の名のもとに政権与党のマニフェストを一つ一つチェックする、そういったことができたというふうに考えるところであります。

 もちろん、政党の法的な位置づけを明確にするといったことも大事だというふうに考えておりますが、そうした中、内閣総理大臣のリーダーシップ、これをやはり発揮すべきというのが我が党の考えでございます。

 その際、内閣に予算編成権あるいは人事権、これを、内閣総理大臣、官房長官のもと、より明確に位置づけるべきということで考えられてまいりましたし、また、前政権時代、事務次官会議を廃止し、政務三役などがリーダーシップをとるといったことにもあらわれていたというふうに思っております。

 首相公選制をとらなくても、こうした内閣総理大臣のリーダーシップを高める方法があるといったことで取り組んだわけですが、先ほど古川委員が申したように、そうした統治機構改革については道半ばであったということが言えようかというふうに思います。

 また、内閣法第三条にある、「各大臣は、別に法律の定めるところにより、主任の大臣として、行政事務を分担管理する。」この分担管理が、いわゆる各省各庁の縦割り行政といった弊害があるのではないかというふうに私は考えておりまして、やはりこの各省各庁の縦割り行政に横串を通す必要があろうかというふうに思っております。そうした観点からの取り組みが必要というふうに思います。

 以上です。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 首相公選制について、一言述べておきたいと思います。

 先ほど来お話がありましたけれども、かつても、憲法調査会の時代に、当時の小泉総理がその導入を掲げたこともあって、一つの論点になったと思うんですけれども、結論的には導入に否定的な意見が多数を占めたということだと思います。

 我が党としても、この事務局が配付している資料集の七ページにありますが、政府の独走を野放しにする首相公選制に反対するということを、当時も態度を明らかにしております。

 やはりそこでも言っておりますが、国民が首相を選ぶから民主主義にふさわしいと言えるのか。首相公選制というのは、首相と政府を、憲法が国権の最高機関と定めた国会から事実上独立させるものだ。今でも国会では与党の多数横暴がまかり通って、国民いじめの悪法が次々に成立させられている。その上、首相と政府が国会のチェックから制度の上でも切り離されたら、それによってもたらされるのは、執行権力の独走体制だということで、首相公選制の導入に反対し、議会制民主主義を守り抜くという立場を明らかにしました。

 先ほど来紹介もありますイスラエルのことについても、史上初めて導入されたということで憲法調査会でも調査に行って、それを踏まえて、それは失敗だったというのが共通した声だったと思います。

 そうした首相公選制を導入するんじゃなくて、やはり憲法が定めた国民主権に基づく統治の諸原則を徹底する、これが大事だというふうに考えております。

 以上です。

高鳥委員 自由民主党の高鳥修一でございます。

 首相公選制について意見を申し述べさせていただきます。

 日本維新の会とみんなの党は首相公選制を主張されておられますが、どのようなお考えなのか、この機会にぜひ勉強をさせていただきたいと思います。

 日本維新の会では、維新八策各論の基本方針の中で、「首相公選制(人気投票的になることを防ぐ方法を措置)」「首相公選制とバランスのとれた議会制度」ということをお書きになっておられます。

 それから、みんなの党は、アジェンダ二〇一二の中で、「憲法改正を必要としない日本型首相公選制を導入。国民投票によって国民が総理大臣にしたい候補者を選んだ後、国会議員はその投票結果に示された世論を尊重して総理大臣の指名に関する投票を行う。将来的には、憲法改正による首相公選制を導入。」とされておられます。

 大統領制と言わず首相公選制ということは、内閣という合議体の長を選ぶということであると思いますが、閣僚は今までと同様に国会議員主体でよろしいのか。そして、国民が直接投票するということがこの制度の中核であると思いますが、候補者の資格についてどのように考えておられるのか。

 基本的なことで大変恐縮でありますが、維新の方にお聞きをしたいんですが、あくまで国会議員の中から選ぶという理解でよろしいのでしょうか。そうであれば、例えば現時点では、石原代表は選ばれる可能性がございますが、橋下代表は候補者になれないということになりますが、そういう理解でよろしいのでしょうかというのが第一点。

 それから、世界で唯一、首相公選制を導入したと言われるイスラエルが、結果的に政権が安定せず、失敗して廃止したというのは、先ほど来お話があったとおりであります。イスラエルとは国情が異なるというお話もございましたが、首相の属する党派と議会の多数党派に食い違いが生ずる、いわゆるねじれ現象が起こり得るというのは事実であると思います。

 そこで、首相公選制とバランスのとれた議会制度にするとおっしゃっておられますが、これはどういうことでしょうか。この中身をもう少し具体的に教えていただきたいというのが第二点であります。

 それから、みんなの党に対してお聞きをいたしますが、憲法を改正せずに導入しようとしている日本型首相公選制というのは、全ての国会議員の中から、国民が自由に、ふさわしいと思う人に投票するという理解でよろしいのでしょうか。

 国民投票の世論を尊重して総理を選ぶという場合の尊重してとは、最終的な判断権は各国会議員に残されているようにも見えます。しかしながら、実際には、国民の多数意思が示される中で、それと異なる形で投票することというのは極めて困難となるのではないでしょうか。このため、形式的には憲法六十七条の規定に違反しないように見えながら、実質的には、内閣総理大臣の指名を国会議員の自由な投票に委ねた趣旨に反するのではないか。これが第二点であります。

 それからまた、将来的に憲法改正による首相公選制を導入するとされておられますが、憲法を改正しないままで行う首相公選制とどこがどう違うのか、もう少し詳しく教えていただきたい。これが第三点であります。

 それから、両党に対してお聞きをいたしますが、首相公選制にした場合、議会との関係がどうなるのかというのが大変重要であると思います。内閣の不信任と解散権はセットであると考えますが、議会が内閣不信任を可決した場合、首相を選んだ民意との関係はどのようになるのでしょうか。

 現時点である程度内容を詰めておられると考えますが、どのような制度設計になっているのか、先ほどの質問に対して御教授いただけると大変ありがたいです。よろしくお願いいたします。

 以上です。

保利会長 ただいまの発言につきましては、維新さんとみんなの党に対しての御質問でございますが、発言を御希望される方はいらっしゃいますか。

馬場委員 まず、会長に基本的な部分をお伺いしたいんですが、ここはそういう委員同士の議論をする場なのでしょうか、それとも各政党が意見表明をする場なのでしょうか。その辺が明確になっておりませんので、今後のこの審査会の運営に大きな影響を与えると思いますので、まずその辺の整理をお願い申し上げたいと思います。

保利会長 この基本的な問題については幹事会で後ほどきちんと整理をしたいと思いますが、かつては、そういうことで政党間でやりとりをしたことがございます。したがいまして、この場において、差し支えない限りは、どうぞやりとりをしていただいて結構だと思います。

 ただ、余り激しいやりとりになった場合には会長として整理をしなきゃならない場合がありますので、それはお含みをいただきたいと思います。これは高鳥さんの方にもお願いしたいと思いますし、また、もし必要であれば個々に当たっていただくということも考えられますので、ぜひお願いを申し上げたいと思います。

 その上で、何かあえて御発言の方はいらっしゃいますか。

馬場委員 よくわかりました。

 我が日本維新の会は、第一回目のときにも申し上げましたが、まだ自由民主党さんのような立派な憲法草案というものができ上がっておりません。党内でただいま議論中でございますので、詳細な制度設計ができているかと言われると、まだ道半ばでございます。

 先ほど御指摘いただいておりますいろいろな点を党内でもこれからきちっと制度設計していきたいというふうに考えておりますので、貴重な御意見として参考にさせていただきたいと思います。

 以上でございます。

小池(政)委員 先ほどの質問で、少しまだ議論が私たちの党内でも残るところがあるんですが、まず、最初の尊重するという件に関してでありますけれども、これは参議院の方で私たちの案を出させていただいていますとおり、国会議員の方にあくまでこれは尊重していただくということを示したものであります。

 自民党の総裁選も、党員票を恐らく尊重するという形で、また国会議員の方がそれを踏まえて総裁を決めていらっしゃると思いますけれども、その結果として、それが必ずしも一致しないという例も昨年拝見させていただいております。ですから、そこは、私たちもあくまで尊重するということを示させていただきたいと思います。

 また、不信任の件につきましては、冒頭で申し上げさせていただきましたとおり、議論は党内で今いたしているところであります。

 以上になります。

山下委員 論点がかわるんですけれども、首相の指揮権限についてであります。

 ここにある資料を見ると、総理大臣指揮監督権というのが、閣議決定がない場合についてはないようなことが書いてあるんですが、実は最高裁判決がありまして、最高裁判決には、これはロッキードの大法廷判決であるんですけれども、閣議決定された方針がない場合にも、内閣の明示の意思に反しない限り、行政各部に対し、随時、所掌事務につき一定方向で処理するよう指示する権限を有するという最高裁の権威ある判決が出ております。

 これは、前に枝野委員が行革特別委で平成十年に指摘したところであるんですが、それに対して内閣法制局が、これは内閣の一部局にすぎないわけでありますけれども、この指示というのが任意の実施を求めるという概念だというふうに解釈しているわけです。

 この大法廷判決の解釈によって、総理の指揮権というのが、あるいは指示権というのがどういったものか、リーダーシップがかなり変わってくると思うんですが、現段階の衆議院法制局の解釈についてちょっと伺いたいと思います。

 単に任意の実施を求める権限だということであれば、今まで官邸から総理指示とか各閣僚にやられているわけですけれども、それがもう任意の実施なんだ、意に沿うようだったらやってください、そういうような解釈を今内閣法制局がやっているということはゆゆしき問題だし、内閣の一部局にすぎない、副大臣級である内閣法制局長官が言ったことで内閣が政府答弁として縛られるというのは私はおかしいと思いますので、その点について衆議院法制局の答弁があればと思います。

橘法制局参事 御質問ありがとうございました。

 ただ、先生御下問の点とはちょっと違うと思いますけれども、私ども衆議院法制局は、国会法及び議院法制局法の規定に基づいて、先生方の議員立法を初めとする法制立案に資するため設けられている補佐機関でございます。内閣法制局設置法において権限を与えられている内閣法制局とは違って、私ども自身が憲法解釈あるいは法律解釈を有権的に申し上げる立場にはございません。また、それが本当には適切ではないというのも私どもの考え方でございます。

 というのは、国会での御議論はあくまでも先生方が有権的に解釈されるべきであって、先生方の立論、例えば自由民主党の法律案をお手伝いする場合には自由民主党の先生方のお立場に立っての憲法解釈あるいは法律解釈をさせていただきますし、その他の政党の先生方の議員立法のお手伝いをするときにはまた別の立場から憲法解釈をし、法律解釈をするという職務でございます。これが適切かどうかは、先生方から私どもに対して与えられている権能がそういうふうになっているということで御了解いただきたいと思うわけでございます。

 そういう意味では、ここで衆議院法制局の解釈は何かと言われますと、それは、今先生のお立場からすればこういう立論が可能だと思いますということ以上には申し上げられないことをどうぞお許しください。

 その上で、先生御指摘の点は、衆憲資八十号の十九ページに書いてある論点でございます。

 論点整理のためだけに若干だけお時間をお許しいただきたいと思いますが、いわゆるロッキード事件の丸紅ルート判決、平成七年の最高裁大法廷判決では、総理の権限、総理に職務権限があるかないかというのが大変大きな論点になりました。総理が航空機選定に関する職務権限があるとすれば、それは罪に問われるし、総理には閣議にかけて決定した方針に基づいてでないとそういう権限がないとすれば、それは職務権限がないという形で判断が下されるという極めてクリティカルな論点であったと存じますが、これに関する大法廷判決は、今先生が読まれましたように、総理には、内閣の明示の意思に反しない限り、すなわち、閣議にかけて決定した方針などないにもかかわらず、その明示の意思に反しない限りは、行政各部に関して、随時、指導、助言などの指示を与える権限があるんだと。

 これで田中元首相に対する判決が下されたわけですが、この指導、助言等の指示というのがここで御議論になっておられる指揮監督かというと、それは違うのだというのが内閣法制局の大森長官の当時の御答弁であったと思います。法的に拘束力がある指揮監督については、それは閣議で決定した方針に基づかなくちゃいけないけれども、より緩やかな任意の指導、助言などの指示は、それは総理に抽象的にあるのだ、それが広い意味での刑事における職務権限なのだと。

 それで、このような解釈がいいのかどうかという論点の御指摘だと思いますが、多分、先生御指摘のような立論も可能だと思いますし、先生にそのような立論のもとに別の法律をつくれと言われたときには、私どもはそのような立場でお手伝いさせていただきます。

山下委員 先ほど、衆議院法制局には答弁の法的根拠はないということですが、内閣法制局が国会で憲法解釈を答弁する権限規定、具体的な根拠規定があれば教えてください。直接定めたものがあるのであれば。

 もう一つ、指示というのは任意の実施ということでありますが、では、総理指示に反した場合には罷免事由になるのかならないのか、もしなるのであれば任意ということにはならないのではないか、その点について、もしお答えできればと思います。

橘法制局参事 わかる範囲内でお答えさせていただきます。

 後者の点につきましては、行政各部というのは、ここは各担当大臣、主任の大臣である大臣であると思いますけれども、この指示に反した場合に内閣総理大臣が当該大臣を罷免できるかどうかについては、当然罷免できます。というのは、憲法上、内閣総理大臣は、違反行為があろうと、非違行為があろうとなかろうと、任意に国務大臣を罷免できるという規定があるからでございます。

 内閣法制局の法令解釈権につきましては、私が答弁するのは大変僣越であると思いますが、今手元に内閣法制局設置法がないのであれですけれども、恐らく政府内における法令の解釈権が内閣法制局には与えられていたと存じます。そのような内閣法制局の法令解釈を内閣として是とするのかどうかは、合議体である、より高度の内閣の御判断であるかと拝察します。

山下委員 簡潔に申し上げます。

 内閣法制局設置法に書かれているのは、「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること。」ということでありまして、国会で答弁することということではないということを付言しておきます。もし追加であれば、また教えていただきたいと思いますが、今のところは以上で質問を終わります。

保利会長 今のは御意見の表明ということで、答弁はしなくて結構だということであります。

 法制局としては、今の発言に何か答弁する必要はございますか。なければ結構ですけれども。

橘法制局参事 大変生意気であることは重々承知の上で、国会での事柄ですので、一点だけ申し上げさせてください。

 内閣法制局長官が国会において御答弁される根拠は、国会法で政府特別補佐人として、先生方がそれでよしというふうにお認めになった点にあるかと存じます。根拠は国会法だと思います。

保利会長 ほかに首相の地位についての御発言はございますか。なければ、次の課題に移りたいと思います。

 次に、国務大臣の任命、内閣不信任決議と衆議院の解散及び内閣総理大臣が欠けたとき等の臨時代理に関する論点について御発言を希望される委員は、ネームプレートをお立てください。

武正委員 民主党の武正です。

 内閣不信任案でありますが、内閣不信任案あるいは問責決議案の提出について、前政権時代もいろいろ議論があったというふうに思います。

 これは一つ参考になるのかと思うんですが、ドイツの例でありますが、内閣不信任案は審議されることが明確でない限り提出できないというようなことで、事前に後任首相を決めなければ不信任案が提出できないといった、建設的不信任案といったものがございます。こうしたものが、いたずらに政局に利用されないようにということで、ドイツではあるといったことがございますので、これは一つ参考になるのではないかというふうに思っています。

 また、政権交代時に行政が立法府をサポートするという点については、既にイギリスでは影の内閣をサポートする点が費用の面からも全うされておりますし、また、イギリスでは、原則その任期は全うされるということで、解散というものが行われないまま、政権がその任期を全うするような形が行われているということも指摘されております。

 あるいは、政権交代前に野党に対して行政情報などを伝えるような形で、政権交代がスムーズにできるような形がサポートされているといったこともありますので、内閣不信任案などの絡みでもありますが、政権交代についてのサポート体制というものが、行政府から立法府について行われる必要があるのではないかというふうに思っております。

 これについては、とりあえず以上です。

船田委員 自民党の船田でございます。

 私は、一点、国務大臣の任命というところで、現在の憲法においては、過半数が国会議員でなければならない、この規定なのでございますが、これは確かに、民間の方々で、非常にその分野において特別の知識を持っている方、経験のある方、そういう方を大臣として任用する、総理大臣の権限にはそういうものもあってしかるべきだろうというふうには思います。

 ただ、私はやはり、国務大臣という職責の重さなどから考えますと、国会議員以外の方がなった場合には、国民に対する責任の所在というのが曖昧ではないだろうか。我々国会議員は、国民から選ばれる、選挙によって選ばれる、こういうことで、もしそこで問題が起これば次の選挙で落選する、そういう責任を常にとりながら仕事をしているわけなので、そういう国務大臣としての職責の重さからして、民間人の大臣が国会議員の大臣と同列であるというのはいかがなものかということが一つあります。

 もう一つは、政党や政治的立場というものが、必ずしも民間人の場合には明らかではないということです。内閣という、一つの政権として機能していくためには、やはり所属している政党が与党であるということが極めて大事な要素であると私は思います。

 そういう点からすると、民間人の大臣としての性格からすると、私は、若干弱いものがある、曖昧になってしまう部分があるのではないか、そういうことなどを考えると、やはり国務大臣は全て国会議員の中から選ぶことが望ましいのかなというふうに考えております。これは私の私見でございます。

 以上です。

西川(京)委員 自由民主党の西川京子でございます。

 私も、国務大臣の任命について、船田委員と全く同様の意見でございますが、改めて、あえてまた私も同じ思いであるということを申し上げたいと思います。

 特にマスコミその他で、民間の方から運用すると、内閣自体が清新なイメージであるというような雰囲気づくりというんでしょうか、いわばそういう雰囲気のもとに解釈されることが間々あります。そういう中で、基本的に、選挙で選ばれていない、民意に最終的責任を持つ立場ではないという方が国務大臣の地位につくというのは、やはりちょっといかがなものかなという思いを持っております。

 民間の方の、いろいろそれぞれの専門の知識の方々の御意見を頂戴する場合は、内閣の中に各委員会がいろいろあります、その中で大いに意見を言っていただいて、そこを参考に取り上げていけばいいことですから、少なくとも、責任を持つという一点から、やはり国務大臣は議員の中から選ぶべきだ、そういう思いを持っております。

 それから、内閣総理大臣の不信任、内閣の不信任は、やはり総理大臣に特化してきちんと与えるべきだ、これは明文化してきちんと与えるべきだと思います。今の、閣僚全部の一致、総意がなければいけない、結果としてまた、オーケーを出さなければその方を罷免できるということであれば、当然、内閣総理大臣一人が持っている専権事項ですから、そういう二度手間を省くという見地からも、やはり内閣総理大臣の専権事項にすべきだ、そう思っております。

 以上です。

保利会長 今議論中のものは、大臣の任命と不信任案と解散のこと、さらにまた臨時代理はどうするかということでございます。

 御発言等はございますか。

 それでは、次の課題に移りたいと思いますが、ただいまの中で、会長として申し上げておきたいと思いますが、国務大臣の任命というのは、あくまでも天皇陛下のお仕事であります。総理大臣が任命する場合には、各省庁における役割、大臣の役割を総理大臣が決めるということでありまして、国務大臣の任命は天皇陛下がおやりになるということは間違いないようにしておきたいと思います。

 それでは、次の論点に移りたいと思います。

 次に、国会の行政監視機能の強化等に関する論点、その他これまでに議論の対象としていない論点について御発言を希望される委員は、ネームプレートをお立てください。

武正委員 行政府の情報公開は透明性確保が必要で、前政権時代には、行政刷新会議が役割を果たし、先ほど古川委員が触れたような、事業仕分けによる見える化が進められました。

 また、各省各庁による事業仕分け、行政事業レビューは、平成二十三年六月七日に閣議決定をしておりまして、これは政務三役が中心となって、会社でいえば、社長さん、専務さん、常務さんが入って、みずからそれぞれの会社の無駄な支出を見直し、あるいは効率、効果的な事業を推進するというリーダーシップのもとの行政事業レビューでございました。これは政権交代しても引き継がれておりますが、やはり政務三役が入っての、まさに意味があるというふうに考えております。

 昨年、決算行政監視委員会が国会版事業仕分けを進めたことは、国会としての行政府のチェックを進めるといったことで評価をするところであります。

 そして、論点には出ておりませんが、憲法七十三条二号、三号、内閣の専権事項としての外交関係処理、条約締結権に触れたいと思います。

 野党時代、特に米軍再編について、私も外務委員会で何度となく政府に質問をいたしました。ただ、残念ながら、外務大臣からは、日米関係の信頼を損なう可能性があるということで、なかなか答弁は国会でなされませんでした。しかし、一方、新聞にはさまざま米軍再編の情報が一面をにぎわわすといったことがありまして、こうした外交、安全保障についての、特に国会への説明責任、このことが、内閣の専権事項として二号、三号があるがために、もしそれが十分果たせないということであると、いかがなものかというふうに考えるわけでございます。

 現憲法下においても、与野党の情報共有を進めること、秘密会の開催、あるいは一部の与野党の議員によって情報共有をするというようなことで、こうした日本が今抱えている外交、安全保障上の状況への対応といったことでは、国会としてのそうした対応は可能かと思いますが、より外交、安全保障についての行政からの説明を、あるいは情報共有を、あるいは議員外交の充実を通じてそうしたものが図られるべきということで、七十三条二号、三号について触れさせていただきました。

 以上です。

船田委員 自民党の船田でございます。

 国会の行政監視機能の強化ということですが、現状において、国政調査権が憲法で規定をされておりますけれども、これまでの議論にもありましたように、国政調査権を行使するその具体的な手段、方法というのが、これまで十分に機能していなかったという感じがしております。

 現状では、衆議院には決算行政監視委員会がありますけれども、これは他の常任委員会と同じような一般の委員会ということで、その権限は、私は、十分に強いものではないというふうに思います。

 この国政調査権をより強いものにする、我々が期待する機能を持たせるには、やはり、国会の中に行政監視院、仮称でございますが、そういう特別な第三者的組織が必要であると私は考えております。

 また、その場合に、国会といいましても衆参両院あるわけですけれども、これは二院制の問題のときに指摘をしたわけでありますが、衆議院と参議院の機能分化を行って、二院制をより効果的に働かせる必要があると私は主張いたしました。その観点からしますと、衆議院は予算中心、参議院が決算中心の審議を行うとした場合に、この行政監視院は参議院に置くということも一案として考えられるのではないかな、そのように思っております。

 また、オンブズマンという話も出ております。これにつきましては、中山太郎前調査会長のもとで、海外での調査をともにしたことがございます。各国それぞれ、特にヨーロッパ、北欧では、このオンブズマン制度が極めて効率的に、そして効果的に発揮をされているという状況は把握をいたしました。

 ただ、さまざまな条件があると思っております。我が国の場合には、このような北欧型のオンブズマン、第三者的であり中立的な組織あるいは人間、そういったものがなかなか難しいのではないかということを感じた次第でございます。お国柄あるいは人柄、そういうものによって、オンブズマン制度というのは相当左右される制度ではないのかな。

 こういったことを考えますと、やはり、我が国でオンブズマンを導入するというのは時期尚早ではないのかな、検討する価値はあると思いますが、なお議論する時間は相当とらなければいけない、このように思っております。

 以上です。

大塚(拓)委員 今、国会の行政監視機能の強化という論点もあったわけでございますけれども、常日ごろ感じておりますことは、国会の行政監視機能の強化であり、あるいは立法機能の強化であり、こういう国会の機能を強化していこうと考えるときに、当然、国会そのものに附属機関を設置するという考え方もあると思いますけれども、政党の機能を強化するという考え方、そして、個別の議員の機能を強化するという考え方、三つあってしかるべきだろうというふうに思っております。

 しかるに、昨今は、身を切る改革というトレンドもございまして、国会議員が機能を強化される、政党が機能を強化、機能を強化するということは、すなわち予算措置も含むわけでございますので、こうしたことについては半ばタブーのように議論されないということがございますけれども、例えばドイツにおきましては、各政党に対して、国費でシンクタンクを設置させている。このシンクタンクもかなりしっかりしたものでございまして、与党の、大規模な政党のシンクタンクとなると、世界各国に出先機関を持っているというような規模のものにもなっているわけでございます。例えばアデナウアー財団というのもございますけれども、こういったことになっている。こうしたことで、政党の立法、行政監視機能というものをサポートすることを国費で行っているということもございます。

 あるいは、個別の議員ということに関して見れば、これはアメリカが突出して多いと思いますけれども、個別の議員の秘書の数、これは、秘書の数でアメリカは区切っているわけではございませんけれども、日本と比べて格段に多い予算が措置をされているわけでございます。

 現在、日本の国会議員は三人の公設秘書ということになっておりますけれども、三人の公設秘書で、これは実態として、おやりになっている皆様はわかると思いますけれども、とてもではないけれども、立法であり行政監視といったところに事務所のスタッフを回す余裕はないわけでございます。それどころか、独自に、どこかしらから必ず資金を集めてきて、プラス三人、四人、五人といった、最低限でもそれぐらいの私設の秘書を雇わなければならない、その資金を集めるための活動もしなければならないということで、当然それは、議員本人の立法あるいは行政監視に割く時間も大幅に減少しているという実態があるわけでございます。

 これは、実際に国会議員をやっている人間であれば、皆常識というふうに思う問題意識だと思いますけれども、なかなか、国会議員は身を切るべきだ、こうした世の中の流れの中で、また、財政が厳しい折に焼け太りか、こういうような批判も容易に出てくるわけでございますけれども、しかし、実際には、国の予算執行が正しくなされているか、正しい政策がなされているか、これを監視し、独自の立法をするためには、それなりの予算措置を、院そのもののみならず、政党、そして個別の議員というものにしなければならないということは、ここで問題意識として提示をしておきたいというふうに思います。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 行政の監督あるいは監視機能という問題では、私はやはり、憲法を生かす形でさまざまなことができるというふうに思っております。

 先ほど来ありましたけれども、例えばオンブズマンという問題でも、国会に国政調査権がある、そして、立法や予算の議決権があり、大臣の議会への出席と答弁、説明の要求、そういう行政監督権が広く認められているということ、そして、十六条で国民の請願権ということも認められているというところから、そういうものを包含する形でオンブズマン制度というのが憲法上根拠を持つし、法改正によって新たな制度の構築ということが可能だというのは、憲法調査会でも参考人からもそういう話が出たりもしまして、それも私は同感だということであります。

 ヨーロッパでいうと、二十世紀後半に広くそれが広がったということでありますけれども、日本では、一九七〇年代にいわゆるロッキード事件などが起こった際に、行政への厳しい監督権が要請された。そういう中で、さまざま議論があったと思います。さらに、九〇年代後半には、薬害エイズの問題とか、住専処理をめぐる問題、あるいは官僚の不祥事とか、行政に対するいろいろな不信が広がるというもとで、さまざま、各党からも提案があったんだと思うんです。

 日本共産党としても、一九九七年に、一連の法案を出したときに、国会自身が本来持っている行政監視機能と国民の苦情救済機能をあわせ持つ制度として、行政監視院の法案大綱とオンブズマン法案大綱というものを発表いたしました。

 そこで言っていたのは、憲法が定めている国会の国政調査権や行政監督権を積極的に発揮する、そしてその機能を機動的に発動するための機構として国会に設置したらいいんじゃないかという提案だったわけで、そういう点で、この点、大いに憲法の立場に立ってやっていくということが大事ではないかというふうに思っているところです。

 それからもう一点、これは進め方の問題で、先ほども若干やりとりがあったので、ぜひ幹事会でも検討いただきたいと思っているんですが、この間ずっと一章からやってきた話というのは、総選挙前からやってきた続きだということですけれども、我々は、そのこと自体については大きな意見も述べてきて、そういう形で改憲の議論をやるのは問題だということを言ってきました。

 そういう中で、結局、この検証というのは、憲法の検証をやろうということをやってきたわけですよね。改憲あるいは護憲とかいろいろな立場はあるけれどもということで、公明党の赤松委員が当時幹事会でも提起されたという形で議論があって、要するに、憲法を検証する、改憲の議論とか、改憲案を出し合ってそれで何かお互いやりとりするというステージじゃないんだということで、いろいろ議論した結果で、憲法の検証をめぐって、憲法の論点を出し合っていこうということで言ってきたと思うので、その出た論点について意見を述べるということはお互いあって、それから、会長が言われたみたいに、今のに関連して自分はこうですと私も言ってきましたし、そういうことはあってもいいと思うんですけれども、ここでどういう形の運営をし、何をするのか。

 つまり、改憲の具体的な、例えば、草案出していますよ、うちはこういう提案ですよということでお互い質疑、やりとりしていくと、改憲議論をどんどんやるという話になるので。そもそも、そういうことをやるということでやってこなかったわけですよね。憲法の検証をやろうということで、我々は、憲法に照らして現実どうなっているかと検証しますよという立場で臨んでいるわけです。

 だから、今何をやっているのかということについては、やはり出発点があったわけなので、少なくともそれとの関係で、ぜひ幹事会でも、運営の仕方にかかわると思うんですけれども、きちっとした整理をやっていただきたいなというのが意見です。

 以上です。

保利会長 今の問題については、幹事会でよくまた調整をさせていただきたいと思います。

 ただ、現在、憲法改正案というのは、衆議院で受け取った正式な改正案は一つもないわけでありますので、どうしても各政党間の意見のやりとりというのがこの場の仕事に現在はなっております。

 実際、議員提案で改正案が出てきたときにどうするかというのは、また協議をしたいと思っております。

 それでは、ほかに御意見ございますか。

 先ほどの私の発言の中で、一部間違っていたところがございますので、おわびを申し上げて、訂正をさせていただきます。

 天皇陛下が任命をされるのは、内閣総理大臣お一人でございます。それで、そのほかは、内閣総理大臣が各大臣を指名し、そして、それに基づいて天皇陛下が認証をするという形になっておりますので、ちょっと誤解を生んだかもしれませんが、おわびをして訂正をいたします。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。

 国会の行政監視機能についての我が党内の議論、先ほど大口委員の方から簡単に紹介がありましたけれども、もう一度、一段詳しくお話しさせていただきたいと思いますが、基本的には、今の国会が国民が期待している行政監視機能を果たしていない、こういう基本的認識でございます。

 では、どうやってこの監視機能を強化するか。

 一つは、今、国会の権能とされております国政調査権を議員の権能とする、これは大変大きなステップ、飛躍ですけれども、ということが基本的に大事なのではないか。そのためには、議員の国政調査権をサポートするいろいろなシステムや、先ほども大塚委員から、スタッフが今のままではとてもそういう仕事はできないというお話もございましたけれども、そういうスタッフ機能や調査機能の強化等が必要になってくると思いますので、そう簡単にはできないと思いますけれども、基本的な方向性としては、国政調査権を議員の権能とするということも必要なのではないかと思っております。

 それから、民主党政権時代に事業仕分けが行われました。私は、非常に野心的な試みとして評価をしておりますが、その結果が、どちらかというと削りやすい、文化とか科学技術とか、そういうところが削られてしまって、もっと本質的なところにメスが入るというところまでいかなかったのは残念なんです。もっとあれを進めていればそういうところまでいったのかもしれませんが。

 こういう言い方をしたら失礼ですが、中途半端で終わったのは大変残念に思っておりますけれども、あの公開の場で、ある意味で、いわゆるパフォーマンスとしてではなくて、公開の場で専門家と国会議員がその事業の必要性について議論するということは非常に大切なこと。これを今、行政監視委員会等でやらなくてはいけないわけですけれども、これをもう少し明確化していく必要がある、このように思っております。

 以上です。

衛藤委員 自民党の衛藤征士郎です。

 笠井先生から、この憲法審査会のあり方についての御発言がありました。実は、私も全く同じ考えを持っているのでありますが、この憲法審査会の現状というのは、わかりやすく言うと、笠井先生のお話のとおり、まさに審査会そのものであって、今、保利先生からお話があったとおり、憲法改正原案がまだ国会にただ一度も提出をされていない、こういうお話でありました。

 では、なぜそういうことになっておるのかというと、笠井先生も御案内のとおり、憲法改正原案は、はっきり言いまして、提案されますと、それが議運に付託され、そして憲法審査会におりてくるわけですが、憲法改正原案の取り扱いについて、各党の機関の承認がなければ、これを議運に、あるいは憲法審査会まで付託できないような、そういう仕組みになっているわけです。

 ですから、例えば、私どもが昨年四月二十七日に、衆議院議長のもとに、百三十名の署名をもって憲法第四十二条改正原案を出しました。四百八十名の衆議院議員の中で百三十名の署名をもって出した、大変重い憲法改正原案であります。これにつきまして、各党のそれぞれの承認、機関の承認、そういう手続がとられていないから、衆議院議長としてこれは預かりだということで、ずっと預かりのままなんですね。百三十名の国会議員が国民を代表して憲法改正原案を出して、それが全ての党の機関の承認がなければ全く動かないという、こういう現状、これは速やかに改正しなければならないと思います。

 つまり、国会法の改正をやって、予算であっても五十、あるいは、非予算関連法律案は衆議院二十、こういう人数をもって取り扱いが前に進んでいくわけですが、そのことを考えたときに、憲法改正原案についてはということで特別にしっかりとした取り決めはあるんですけれども、しかし、現状はそういうことになっているということの御理解をいただきたいと思います。

 この点について、笠井委員、どういうお考えをお持ちでしょうか。

笠井委員 前半、冒頭のところは、私も、ああそうかなと思って伺っていたんですが。

 やはり私は、なぜ出せないかという話は、手続問題ではなくて、本質的に、やはり国民との関係、主権者国民との関係で、つまり、今そういう憲法改正を望んでいるかといえば望んでいないということが、今出せない状況になっているんだろうと思います。

 そこのところが一番問題だということなので、何か手続問題で国会法を改正すればどうかという話じゃなくて、やはりそこのところは、主権者国民との関係で各党もいろいろ判断があるんでしょうし、なかなかそれで踏み切れないところもあるんでしょうし、そこは国民の多くが、では、今そういう形で改憲を望んで、今やれと言っているかというと、そういうことではないということの反映だというふうに思っております。

衛藤委員 笠井委員、そういたしますと、御案内のとおり、政党会派は十五ございます。十五の政党会派があります。では、全ての政党会派が憲法改正原案が出たときに賛成かといいますと、必ずそのうちの二つ三つの政党が、それは、この憲法改正原案には反対ですということで、いわゆる政党としての機関承認を与えないと思います。それが欠けることによってこれはだめなんですよという国会法の今のルールになっているわけです、現実のところ。ここを改正しない限りは、いかなる憲法改正原案をしても非常にむなしいことになりはしませんかと、そのことを私は申し上げているわけです。

笠井委員 また、これは個別にいろいろやってもいいですし、エンドレスになってもあれですが、そういう点でいうと、憲法改正という問題について、国民の中で機が熟してくるということがあれば、そのときはそういう形で、いずれは、将来的にそういうことが、いろいろな議論があるかもしれない。それはそのときに国民が望むということになれば、そういうことができるというふうになるんだと思うんですけれども、そこはやはり世論との関係、主権者国民との関係で考えないと、何か手続で、一党派がどうかという話じゃないし、そもそもそういう規定ではありませんから、憲法自身は。そのことは申し上げたいと思います。

大塚(拓)委員 国民が望んでいないからそういう状況にないんだというお話でございます。余り激しくなくという委員長の話もありましたので、マイルドにいきたいとは思いますけれども。

 ただ、これは国会として、その原案、百三十人の議員が署名をして出てきたということであれば、それは、その百三十人を投票して選ばれた国民の意思でもあるわけでございます。それだけの意思を示して、これを少なくとも国会で審議するべきだという意思が示されたものについて、限られた政党、それが何議席なのかわかりません、限られた政党の方々の意思がそれを上回って国会で議論すらされないということになっては、国会での議論を見て、国民の皆さんも、それに賛成か反対か、そういう機運ができるかできないかということも決まってくるわけでございますので、これは国会としての職務放棄と言っても言い過ぎではない、全く不作為の責任だろうというふうに私は思っております。

 これは、いかに例えば反対の方が多いと笠井委員が思っていらっしゃったとしても、国会で一度議論をする、そしてそれをしっかりと記録に残す、そして国民全ての知るところとする、これが国会の責務ではないかと思います。

畠中委員 みんなの党の畠中光成でございます。

 若干今の流れと変わるかもしれませんが、本日の第五章内閣にかかわる議論でありますけれども、我が党、みんなの党は、首相公選を初め、大変重要なところだと思っております。だからこそ、建前よりも本音の議論でありまして、みんなの党のアジェンダの中にも、総理大臣を司令塔として国家戦略を策定、内閣が幹部官僚人事を掌握し、総合職を一括採用、真の政治主導の枠組みを確立、内閣主導の責任行政、情報公開を徹底し、ガラス張りの行政実現等、こういう公務員制度改革と大変かかわってくるところでございます。

 私どもは改憲勢力でありますから、この憲法審査会においてもしっかりと議論をしていきたいと思いますけれども、あわせて、憲法改正の前に、この内閣にかかわる公務員制度改革のところをやるべきだろうという立場を参考までに申し添えておきます。

 以上です。

鳩山委員 また話を戻して申しわけありませんが、先ほどの衛藤征士郎先生の御発言に関して言えば、国会の最大の改革というんでしょうか、決められない国会をもうやめようという面もあって、衆参対等合併、一院制を目指すということで、大変な勉強を重ねてきた結果、衛藤先生を中心として、何度も何度も集まって、そして百三十名の賛同を得て議長のところにお持ちしたものが、あのような結果になった。

 しかも、私も議運の委員長をやったことがありますけれども、決められたことで、こういう規定に反するから議長預かりに終わったというのではなくて、長年の国会の慣習がそうなっているということなんだろう。そういう形で、議長預かりのままで付託も全くされなかったというのは非常に残念なことでございますし、また同じように私ども集まって、衛藤先生中心に議論をして、再び同じような行動をするであろう、そう思っておりますので、残念な結果にならないような手を打つことを考えるべきだと思っております。

笠井委員 一言だけですが。

 不作為という話がありましたが、国民の側から国会に対して不作為なんて声は上がっていないですよ。やはり、憲法の制定とか改廃というのは国民の重要な主権行使の問題であるので、それとの関係なので、手続問題とかという話じゃないということだけは申し上げておきたいと思います。

篠原委員 民主党の篠原でございます。

 憲法改正についてもちょっと申し上げたいことがあるんですが、熾烈な議論が行われているので、ちょっと差し控えます。

 畠中委員のちらっと言われたことについて気になることがありますので、私の意見を申し述べさせていただきたいと思います。

 内閣のところで、公務員制度改革で、一括採用して云々といろいろ出てきて、それは多分、縦割り云々で、あちこちの省庁にそれを配置させるという、よく言われている議論ですけれども、私は、これはとんでもないことになってしまうと思います。どういうことかというと、自分の専門分野を持たない、耳学問だけでやる調子のいい役人をつくるだけです。みんな政治家みたいな役人。その人たちに任せちゃいけないんです。その道のプロをつくらなかったらだめなんです。

 ところが、公務員制度改革というと、縦割りをなくすということで、みんな一括採用して、例えば農政をやり、外交をやり、財政をやり、そんな万能な人間なんていないんです。私は、それは絶対反対です。それは空理空論の類いです。ほかの国でも、そんなことをしているところは一つもないんです。よく御認識いただきたいと思います。

畠中委員 みんなの党の畠中です。

 御意見ありがとうございます。しかしながら、これまでの日本の今の官僚主導の現状を見て、おっしゃるその縦割り行政の問題点、これはもう長い間言われている。こういう問題点を認識したときに、官僚にもすばらしい人は今もいますし、これからも、オール・ジャパンの認識を持った官僚の皆さんがしっかりと頑張っていただくような霞が関の改革というのは極めて重要だと思っておりますので、今の御指摘というのは決して当たらないというふうに思っております。

篠原委員 それはまさに、内閣総理大臣、各省の大臣、我々政治家の問題です。我々がしっかりすればいいんです。

畠中委員 ちょっと憲法の議論と違うかもしれませんけれども、これはまた別の場でぜひともやっていただきたいと思います。

大塚(拓)委員 ちょっとほかの議論を差し挟んであれでしたけれども、少し戻りまして、国民からそういう声は上がっていないという御指摘もございましたけれども、私、実際に多くの国民の皆様から、なぜ一院制にしないのという声を、国会で議論しているのかという声を、私自身、いただいたことがございます。

 私は必ずしも一院制のよしあしについて今申し上げているわけではありませんけれども、実際にそういう声がありますし、恐らく世論調査をとっても、一定の比率で、かなり多くの比率でそういう方々はいらっしゃると思います。

 これはやはり国会で議論をし、その結果、ああ、やはりそういう声が多数ではなかった、あるいは三分の二に達しなかったということであれば、粛々と国会として否決をするというのが国会のあるべき姿ではないかと思います。

笠井委員 余り手続論の話をしたくなかったので、大きなあれだけしておいたんですが、ちょっと橘部長にも一言、その辺を説明してもらえばいいと思うんですけれども、機関承認というのは歴史的な経緯があって、かつて、社会党の上田哲氏が裁判を起こしたこともあったというふうに思うんですね。機関承認というのは、立法府の裁量の範囲ということになっているんじゃないかと思うんだけれども、その辺がどういうふうになっているか。

 それから、国会法じゃなくて機関承認ということは、やはり政党の問題だというふうに思うので、衛藤委員がそういうことでけしからぬと思われるんだったら、みずから自民党におっしゃったらどうかというふうに思うんですけれども、自民党が機関として承認するというふうになるのかどうかという話になってくるんじゃないかと思うので、ちょっとその辺、経緯も含めて、橘部長、わかればお願いします。

橘法制局参事 記憶にある限りの事実関係だけ御報告させていただきます。

 先生方が、法律案であろうと憲法改正原案であろうと、議案を、衆参両院、衆議院の場合ですけれども、衆議院議長に御提出される場合には、衛藤先生、来ほど来御説明されましたように、二十人あるいは五十人、憲法改正原案の場合には百人の賛成者プラス提出者の先生方、お一人以上ですから、百一人以上、憲法改正原案であれば必要ということになっております。

 これに加えて、衆議院の先例上、笠井先生御指摘のような機関承認、当該提出者や賛成者の先生が会派に所属しておられるときには、当該会派の党議を経た旨の国対委員長などの機関の承認を要するというのが、衆議院では不文の先例だというふうにされています。

 もちろん、これは提出者と賛成者に名前を連ねておられる先生方の所属する会派ですから、それに反対する会派の機関承認が必要なわけではありません。賛成する先生方の所属する会派の機関承認が必要だと。

 これが、具体的に今笠井先生が御指摘のように最高裁まで上がる事件になったのが、当時日本社会党におられた上田哲先生が、日本社会党の国対委員長の判こがないまま衆議院議長に国政重要問題国民投票法案を提出され、それを正式に受理されなかったということでございます。

 その際の最高裁の判決、下級審の判決の趣旨は、どのような法案を受理し受理しないかについては、国会法、衆議院規則など明文の法規であると不文の先例であるとを問わずに、議院が自律的に当該院内の手続を定める議院自律権、憲法上の議院自律権の範囲内であるということでございます。

 もちろん、議院自律権でございますので、そのような取り扱いを変えるということもまた衆議院の自由裁量のもとに属しておりますので、衛藤先生御指摘のように、そのような先例をこそ変えるべきだという御主張は、まさしく先生方、あるいは直接的には議院運営委員会の理事会や議院運営委員会で御議論されるべき事柄であるかと存じます。

西野委員 今ので僕が言いたかったことを全部おっしゃっていただいたんですけれども、そのとおりだと思いますし、少なくとも、不作為じゃないというようなことには全く当たらないと思いますね。

 我々は当然、ここにおけるいろいろな課題をまず議論することももちろん我々の使命でありますけれども、議論をするだけではなくて、そこにおいて結論をしっかりと出していくということも我々の使命だというふうに思っていますから、やみくもに議論、議論と。議論もしないというのはとんでもない不作為でありますし、少なくとも、もし制度としてそういうものが残っているのであればその制度を変えていく、また、制度ではなくて、今までの慣例で、慣習でそういうことをやっているのであればそれを変えていくということも、当然我々の使命だというふうに思いますので、そういうことでまた諮っていただければと思います。

 あわせて、ついでに申し上げますけれども、今、選挙の一票の格差ということで、いろいろな不作為というものが指摘されております。それとあわせて、国民投票法の三つの宿題、そのうちここでも議論をさせていただけるのかもわかりませんけれども、これももうとっくに議論の期間の三年間は過ぎているわけであります。これも、いわば国会の不作為の状態に陥っているというふうに思いますから、このこともぜひ、早く結論を出すように、何かそういった機会を与えていただきたいなということをお願いしておきたいと思います。

土屋(正)委員 先ほど畠中委員から公務員制度の改革といいましょうか、変更ですね、改革になるかどうかわかりませんが、変更についての御提言がありました。

 これについてお尋ねしたいんですが、現在の憲法上は内閣制をとっていて、大統領制ではないわけですね。そして、内閣制をとっていて、主任の大臣を置く、憲法にも、主任の大臣が署名する、こういう規定もありますし、それ以下の内閣法や国家行政組織法などにおいては、それぞれの行政権を分任して、それによって内閣を構成していく、こういう仕組みになっているわけですね。

 それに対して、いわゆる公務員制度改革、となるかどうかわかりませんが、そういう現行のいわゆる大臣の任免権も含めての改革をおっしゃっているんだろうと思いますが、その場合には、憲法上、内閣制度そのものにも問題がある、こういうふうにお考えになっているのかどうか、お尋ねしたいと思います。

畠中委員 お答えさせていただきます。

 そもそも、憲法を変えずとも私どもの考える公務員制度改革はできるというふうに認識しておりますので、現状の憲法の範囲内で可能というふうに思っております。

土屋(正)委員 私も、小さな組織ですが、首長として行政権を担った経験があります。とりわけ国家の行政権は相当幅広い、司法制度も含むような、あるいは金融とか、いつも動いている経済、マクロ経済のような動いているものも含めてやっていくわけであります。

 そうすると、当然のことながら、それぞれの省庁の持つ役割とか権限、権限はもちろんですけれども、役割とか行政課題、目的が質的に違う場合があります。こういうことも含めると、今、篠原委員がおっしゃった専門性ということが非常に大切なことになってくると思います。

 現に、現行でも各省庁間の人事異動というのをやっています。ところが、たまたまそのポストについた人間が他の省庁から来た人間だとすると、議員の方が詳しくて、その担当者が答えられない、こういうことも間々あります。その場合には工夫をして総務課長が答えたり、いろいろな場面があるんですけれども、私はたまたま市の市長をやっておりましたが、市のように比較的守備範囲が狭いところでも相当専門性を要求されるにもかかわらず、これだけ幅広く統治機構を運営していくということからすると、専門性は欠かせないと私は思いますし、分任をしていくというやり方は相当いいやり方だと思います。

 私も第一次安倍内閣のときに政務官をやりましたが、いわゆる縦割りを廃止するためには、政務官会議とか副大臣会議とか、あるいは最終的には内閣そのものが目的的に行えばいいんだろうと私は思っております。

 したがって、御趣旨のことを貫徹して一括採用し、各省にばらまいて、人事権を実質上大臣から奪ってしまうというやり方が果たしていいのかどうか、現行の内閣制度になじむのかどうか。もしまたお考えがあったらお聞かせいただきたいと思います。

畠中委員 みんなの党の畠中です。

 まず、官僚の皆さんがキャリア官僚として学校を出て入職するというときは、当然ながら、特定の分野において活躍したいと思われる方もそれはおられるかと思いますけれども、私もたくさんの官僚の皆さん、若手の方ともお会いしておりますけれども、基本的には、日本のためにという、日本のことを思って入るという方が非常に多いというふうに思っております。

 私どもが申し上げておりますのは、まさに幹部官僚について、省益を優先するような今の日本の霞が関の姿を是正するということを一番の目的にしているわけでありまして、幹部のところとその下のところというのは、また認識を変えながら、実態の日本の今の問題を是正していくという考え方でありますので、幹部も含めて全てがエキスパートである必要はない、そのエキスパート性を補足する機能というのはまたほかでも補完できるというふうに考えております。

土屋(正)委員 これからの統治構造を考える際の重要なポイントですので、重ねて申し上げたいと思います。

 畠中委員がおっしゃったことは、現行では、それぞれの省の設置をする法律がありますし、所管の権限を決めた法律もあります。それから、本来、国権の最高機関である国会が決めた法律をどこが所管するのかということは、例えば、ある法律は財務省、ある法律は農水省、こういうふうに決めて、国会で議論し、決めるわけであります。

 したがって、すぐに省益という言葉を使われる方がいらっしゃいますが、省益は法が予定したものですから、それを追求するのは当たり前なんです。例えば、警察に勤めた方が福祉のことなど言っては権限の踰越なんです、国家公務員としての。ですから、省益を主張しない、省益といいますか、省益というのは、設置法に基づいた省の目的があるわけですから、これを追求しない官僚は職務怠慢か、あるいは、ほかの省に所属することについて必要以上に言うのは権限の踰越なんです。

 それは、国家の統治の根本を生み出すわけですから、もし俗に言う横串というのをやりたければ、それは、内閣あるいは内閣の中の大臣、副大臣、政務官などが、お互いに政治家として総合調整し、やるべき仕事であって、それは各省に配分された職員のやることではない、こんなように思います。

 もちろん、省の性格によっては、例えば財務省とか総務省とかというふうに、横串をするための省もあります。そこはそれぞれの機能に従ってやるべきだ、こんなように思いますが、いかがでしょうか。

畠中委員 根本的なところが若干違っているなというふうに思うんです。

 そもそも、公務員というのは国民のために奉仕するものでありますが、今までの日本の流れでいくと、国民のために働いているというよりも、省のために働くような仕組みになっている。これをしっかりと、大臣の抑えがきくような、そういう統治構造にしなくちゃいけない。

 ですから、大臣が官僚組織のトップをしっかりと抑えていくような、だからこそ、幹部官僚の人事を掌握するということが極めて重要。これはなぜかといいますと、繰り返しになりますが、国民のために働く官僚組織をつくる、この統治機構が一番の目的ということであります。

保利会長 やりとりが機微にわたる非常に難しいところに入ってきておりますが、この場ではある程度のところでおさめておいていただいて、あと、ペンディングにしていただきたいと思います。

土屋(正)委員 今、畠中委員がおっしゃった、国家公務員が国のために働くというのは当然ですよね。地方公務員が地方のために働くのは当たり前のことだと思います。

 ただ、働くという行為は、国権の最高機関である国会がつくったそれぞれの法に基づいて、その目的のために働くわけですから、それぞれの省は、それぞれの目的を与えられて、法的根拠と権限を与えられて働くんだろうと思います。

 先ほど、大臣が人事権が発動できないといいますが、人事権を発動できないのは運用の問題であって、能力がないだけだと私は思います。

笠井委員 若干戻って申しわけないんですが、一言だけです。

 先ほど橘部長からも答弁いただきまして、要するに、先例なりなんなりを議院は自律的に決めるわけですから、議院というのは、国会が決めるわけですから、その改変は、一般論としては、当然、議院の、要するに院としての権限ということだと思うんですけれども、前段でおっしゃったところでいうと、反対する会派の承認が何も要るわけじゃないんですよ、出すときに、議案であれ憲法改正案であれ。

 そうすると、今であっても、機関承認がという話になると、結局、衛藤委員おっしゃいましたけれども、一院制の問題だって、みずから属される自民党の中で、その多数にならない、あるいは承認が得られないというところに、私はむしろ、中身でいうと、主権者たる国民が、今、一院制をやらないのは不作為である、けしからぬという声を上げているわけじゃないから、自民党としたってそれが一致点にならないし、そして、そういうことで承認が得られないということになっているんじゃないかと思うので、むしろ、そういう中身の問題をきちっとやはり吟味する必要があると思っております。

衛藤委員 笠井委員の発言に対して発言申し上げます。

 私が申し上げたいのは、憲法改正原案が提案されたら、一定数の、国会、百一人以上ですよ、そのときは、議長は速やかに憲法審査会にそれを付託し、また趣旨説明を求めなければならないというふうにすべきではないかと。

 そうしませんと、これが議長預かりになったり、あるいは、これが議運におりてきたときに、議運で議題となったときに、議が調わないときには議運委員長裁定ということもあるでしょうけれども、そういうふうなことをしなくても、あるいは、ほかの会派の理事や委員が激しく反対をしたとしても、当然、百一名以上のものをもって出た憲法改正原案については、議長は速やかに憲法審査会にこれを付託して、趣旨説明をしなければならないというふうにしなければ、私どものこの憲法審査会、店開きはしたけれども、全く売る商品がないというふうな感じで、他の店の品定めに徹してしまうということになりはしませんかということも申し上げているわけです。笠井委員のおっしゃることはよくわかります。

山下委員 大きな論点の後でちょっと恐縮なんですが、実は、衆議院憲法審査会関係資料集にも載っている大切な論点でございますので。

 先ほど来、私は、法制局の憲法解釈について指摘しておりますけれども、この資料集の四十三ページにも、「政治部門における憲法解釈」ということで、「政治部門における憲法解釈が政府の一部門である内閣法制局に事実上委ねられていることは不当であるとする意見が多く述べられた」と。これは調査会の議論の中ですけれども、「国会がその解釈を鵜呑みにしていることが問題であるとする意見や、」というふうに書いてあるわけです。

 そこで、内閣のところで多分言うしかないと思って言っているんですけれども、内閣法制局というのは、これは言ってみれば、政権の、内閣の法律顧問にすぎないわけであります。ほかの国では、政権がかわるたびに顧問はかわって、その解釈が永続的に政府の解釈だということで次の政権を縛ることはないわけであります。

 ですから、私たちは、この国会でせっかく審議をしている以上は、もちろん守るものは守らなければなりませんけれども、内閣法制局がこう言っているからといったことで議論を進めるべきではないと思っております。あくまで憲法解釈は、最高裁、あるいは内閣であれば閣議決定、そういうものがあればということでございます。

 そういったことを御指摘させていただいた上で、必要があれば、例えば内閣法のレベルで、憲法の解釈権限は例えば内閣にあるであるとか、そういう規定があるいは必要かもしれませんし、また、ここの議論の進め方も、資料の中で、内閣法制局の長官というのがイの一番に出ておるわけですけれども、果たしてそれに沿う最高裁判例があるのかないのか、あるいは閣議決定があるのかないのかということを示していただければ、本当に客観的な議論ができるのではないかと思う次第であります。

 以上であります。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。

 今、山下委員から大変重要な問題提起がありましたので、私の意見を申し述べさせていただきます。

 憲法解釈は、例えば、今の日本国憲法ができてから六十年以上、それぞれ、その時々のいろいろな事柄による解釈等を積み重ねてきた、いわばその時点その時点で個人がどう考えるかという解釈ではなくて、この六十年の歴史の積み重ねの上、また議論の積み重ねの上に今の内閣の憲法解釈がある、このように思います。政権がかわったら政府の憲法解釈が変わるということは、簡単に変わるということがあってはならない。

 そういう意味で、内閣に入っている内閣法制局長官が、これまでの六十年以上の憲法解釈の歴史を踏まえて、もちろん内閣の皆さんの御意見も踏まえながら解釈をするということで、この積み重ねというのは非常に大事であるということを申し述べさせていただきます。

西川(京)委員 山下委員の問題提起、私は非常に大事だと、非常に同感するところがあります。

 国会議員になって大分たちますが、この内閣法制局の解釈というものが、なぜここまでずっと積み重なってきたのかなと。積み重なるということは、それぞれのいろいろな人間の議論があった上で、いい形に積み重なったのなら是としますけれども、そうではなくて、少なくとも、例えば集団的自衛権の問題にしても、持っているけれども行使できない、それは一つの、そのときそのときの政治状況、日本の置かれている過去の歴史の中の政治状況の中で、非常に政治的判断で、それが行使できないという方向が積み重なってきたと思うんですね。

 そういう中では、本来、絶対的なる解釈というのはあり得ないわけで、これは当然、今の国際情勢その他、そのときの政治家が判断すべき話であって、あくまでも法制局は、一解釈、アドバイスという意味において、こういう解釈ができますということまでが法制局の仕事だ、私はそう思いますので、これはひとえに、一にかかって政治家がきちんと判断すべきことだと思います。今まで法制局長官の答えが積み重なっているから不変のものだという考えは、ちょっと違うと思います。

 以上です。

武正委員 民主党の武正でございます。

 内閣法制局長官が、内閣として、憲法の有権解釈を初め法律の解釈、そして政府特別補佐人ということで、前までは国会で答弁をしていたわけで、憲法調査会あるいは憲法調査特別委員会などでの議論も踏まえて、前政権では、二〇一一年末まで政府特別補佐人としては認めていなかったわけで、出席をしておりません。

 ただ、やはりそのときに、御承知のように、憲法を初め有権解釈、内閣としての解釈を求められたときに、それを官房長官などが、事前の質問通告もなしにその場ですぱっとなかなか答えづらいというところも事実上あったということもあって、二〇一二年一月から、第百八十国会からは出席をしております。

 ただ、そのときに、やはり今議論があるような形で、内閣としての考え方を主体的に述べていこうという中での特別補佐人であり、また、先ほど斉藤委員が話されたように、やはりこの国会での議論、あるいは内閣としての見解、こういったものの積み重ねの中での判断かというふうに思います。

 また、閣議決定という話について、閣議決定は、じゃ、政権交代したら継承されないのかどうか、これは議論があるところだというふうに思います。なぜならば、我々が立法府として行政府をチェックするときに、政権交代したら閣議決定が継承されないとすると、行政の継続性といったことから、立法府としてそのチェックができなくなるわけでありまして、前政権時代の閣議であって、それをまた翻すのであれば、別な閣議決定をし直すなりのやり方でそれは見直されるわけでありまして、行政の継続性と三権分立における立法府としてのチェックといったことからは、やはりその継続性はしかるべきというふうに思っております。

 また、先ほど、内閣法三条の分担管理について、私は、やはり行政、各省各庁、横串を通すべきというふうに申し上げましたのは、かねて、各省各庁の間の覚書というものが交わされて、それが各省各庁ののりを越えずというようなところがあったやに聞いておりまして、こういったものはなかなか、覚書は表に出てきておりませんので、行政府のそうした覚書を立法府としてもチェックできなかった、こういった反省にも立っておりますので、やはり何らかの改善が必要かというふうに思っております。

 また、今、国会では、会派の承認で法案の提出権というものがありますので、私は、昨年の一院制についての、衛藤委員を初めとする与野党、民主党の議員も含めて、大変な御尽力を積み重ねられたことに心から敬意を表する次第でありますが、会派制というものは今の国会の一つのルールとしてありますので、やはり会派の承認を得ての法案提出ということにどうしても縛られるというのではないかというように思います。

小池(政)委員 いろいろな意見が複数交差していて、また途中で戻ったりして、ちょっとやりにくいんですが、その中で、私も最初の首相公選制の話に戻させていただきたいんですけれども、よろしいでしょうか。

 高鳥委員の方から、通告のない、かなり準備された意見をいただきまして、ちょっと野党なもので、答弁になれていなくて、何とかお答えさせていただいたんですけれども、ちょっと関連して、首相公選制について意見を述べさせていただきたいんです。

 反対の意見としていただいたのは、ねじれがやはり深刻化するんじゃないかという意見をいただきまして、その点については、維新の坂本委員の方からも、イスラエルの例というのは、やはり民族性も文化も違うから、日本には当てはまらないのではないかという意見もいただきました。それでもやはり、有権者の観点から、首相を選ぶ観点と国会議員を選ぶ観点で異なるということからのねじれというものも確かに残るかもしれませんが、私は、このねじれというのは、悪いねじれではなくて、いいねじれではないかということを考えております。

 今、国会を中心として、国会におきましてその議論が調整されて、また、その中で集約されたものが国民に提示されるというものが本来の国会の役割でもありますし、個別の利益と国益をどうすり合わせるか、そういう役割が逆に今形骸化しているんじゃないかなということを特に感じております。

 今回の補正予算等に関しましても、内閣、与党が一体化する中で、なかなかその議論の中身というものが国会、国民には提示されず、また、審議の時間もあっという間に過ぎてしまうという中で、やはりそのやり方というものも考えるべきではないかなと思っております。

 ただ一方で、衆参のねじれはどうなのかという話になりますが、私たち、一院制というものを訴えておりますとおり、こちらはちょっと悪いねじれの方でありまして、こちらは同様の、党に所属する議員がちょっと党利党略的な形での議論で時間を使ってしまっているということから、こちらはまた別の議論になるかと思います。

 また、もう一点、ポピュリズムに関しての反論というものもありますけれども、これは制度設計で改善するものだと思っております。立候補の条件をしっかりと明示するでありますとか、また、選挙を通して、その立候補者の能力、意見をしっかりと確認するということによって、ある程度これはしっかりと、何とかポピュリズムを少しでも改善できるのではないかなと思っております。

 最後に、先ほどの尊重するということの質問に対して、自民党の例をちょっと挙げさせていただいたんですけれども、ただ、今回の国民投票に関しましては、そうではなくて、やはり国民の意思というものを反映させるというのが大きな意義でありますから、当然国会議員もそれにある程度は縛られるというような形での選択になるかと思っております。

 以上です。

高鳥委員 自由民主党の高鳥修一でございます。

 余り激しくならない程度にさせていただきますので。

 今、小池委員から御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 私は、決して首相公選制に反対という意見を言っているわけではなくて、私の支持者の中にも、有権者の中にも、首相公選制、いいね、いいじゃないかということを結構言われるんですね。そのときに、私が、首相公選制というのはこういうものですよとなかなか説明ができないものですから、例えば公選された首相と内閣の関係あるいは議会の関係がどうなるのか、そして、どのような制度設計を考えておられるかということを純粋にお聞きしたいという意味で、きょうはちょっと唐突で失礼だったかもしれませんが、質問をさせていただきました。その点は御理解をいただきたいと思います。

 ありがとうございました。

保利会長 ほかに御発言はございますか。

 それでは、発言も尽きたようでございますので、これにて自由討議は終了いたしました。

 次回は、来る十一日木曜日午前八時五十分幹事会、午前九時審査会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十六分散会


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