衆議院

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第11号 平成25年6月6日(木曜日)

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平成二十五年六月六日(木曜日)

    午前九時四分開議

 出席委員

   会長 保利 耕輔君

   幹事 伊藤 達也君 幹事 岸  信夫君

   幹事 中谷  元君 幹事 葉梨 康弘君

   幹事 平沢 勝栄君 幹事 船田  元君

   幹事 武正 公一君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 斉藤 鉄夫君

      井野 俊郎君    泉原 保二君

      上杉 光弘君    衛藤征士郎君

      大塚  拓君    勝沼 栄明君

      島田 佳和君    新谷 正義君

      鈴木 馨祐君    高木 宏壽君

      高鳥 修一君    土屋 正忠君

      土井  亨君    西川 京子君

      西村 明宏君    馳   浩君

      鳩山 邦夫君    原田 憲治君

      星野 剛士君    細田 健一君

      松本 洋平君    武藤 容治君

      保岡 興治君    山下 貴司君

      山本ともひろ君    大島  敦君

      篠原  孝君    田嶋  要君

      三日月大造君    山口  壯君

      伊東 信久君    坂本祐之輔君

      新原 秀人君    西野 弘一君

      三木 圭恵君    大口 善徳君

      輿水 恵一君    小池 政就君

      畠中 光成君    笠井  亮君

      鈴木 克昌君

    …………………………………

   内閣官房内閣総務官室内閣総務官          河内  隆君

   人事院事務総局職員福祉局長            井上  利君

   総務省自治行政局公務員部長            三輪 和夫君

   総務省自治行政局選挙部長 米田耕一郎君

   法務省大臣官房審議官   萩本  修君

   法務省刑事局長      稲田 伸夫君

   文部科学省大臣官房審議官 山脇 良雄君

   文部科学省初等中等教育局長            布村 幸彦君

   文部科学省高等教育局私学部長           小松親次郎君

   衆議院法制局法制企画調整部長           橘  幸信君

   衆議院憲法審査会事務局長 窪田 勝弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月六日

 辞任         補欠選任

  棚橋 泰文君     島田 佳和君

  土屋 品子君     新谷 正義君

  土屋 正忠君     井野 俊郎君

  徳田  毅君     星野 剛士君

  古川 元久君     田嶋  要君

  浜地 雅一君     輿水 恵一君

同日

 辞任         補欠選任

  井野 俊郎君     細田 健一君

  島田 佳和君     棚橋 泰文君

  新谷 正義君     土屋 品子君

  星野 剛士君     勝沼 栄明君

  田嶋  要君     古川 元久君

  輿水 恵一君     浜地 雅一君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     徳田  毅君

  細田 健一君     土屋 正忠君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府当局者出頭要求に関する件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法の改正手続に関する法律における「3つの宿題」)


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     ――――◇―――――

保利会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、特に日本国憲法の改正手続に関する法律における「三つの宿題」について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、内閣官房内閣総務官室内閣総務官河内隆君、人事院事務総局職員福祉局長井上利君、総務省自治行政局公務員部長三輪和夫君、総務省自治行政局選挙部長米田耕一郎君、法務省大臣官房審議官萩本修君、法務省刑事局長稲田伸夫君、文部科学省大臣官房審議官山脇良雄君、文部科学省初等中等教育局長布村幸彦君及び文部科学省高等教育局私学部長小松親次郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

保利会長 次に、本日の議事の順序について申し上げます。

 まず、選挙権年齢・成年年齢の十八歳への引下げについて政府等から説明を聴取し、自由討議を行った後、公務員の政治的行為の制限と国民投票運動をめぐる問題及び国民投票の対象拡大について、順次同様に進めることといたします。

 それでは、選挙権年齢・成年年齢の十八歳への引下げについて、政府等から順次説明を聴取いたします。まず、衆議院法制局法制企画調整部長橘幸信君。

橘法制局参事 衆議院法制局の橘でございます。

 御指示に従いまして、いわゆる三つの宿題について御説明申し上げます。

 まず、三つの宿題とは何かでありますけれども、これは、憲法改正国民投票法の制定過程において議論されてまいりました幾つかの論点のうち、国民投票法制定後の課題として残された法整備に関する問題で、いずれも国民投票法の附則に検討条項として規定されているものでございます。

 まず、一つ目が、附則第三条に定められております十八歳選挙権実現等のための法整備でございます。

 先生方、お手元配付の衆憲資七十三号、表紙と目次をおめくりいただきました一ページ目に条文を掲げておきましたので、ごらんいただければと存じます。

 まず、憲法改正国民投票法の本則第三条におきましては、憲法改正国民投票の投票権者は十八歳以上とされております。しかし、世界各国の年齢条項の趨勢等にも鑑みて、公選法の定める選挙権年齢や、さらには民法の定める成年年齢などもこれに合わせるのが適当ではないかとの観点から、この附則第三条が設けられたところでございました。

 その第一項では、まず、「国は、この法律が施行されるまでの間に、」と定めて、この規定による法整備の期限、いわば締め切りを規定しております。「この法律が施行されるまでの間」というのは、本法が成立し、公布されました平成十九年五月十八日から起算して三年を経過する日、すなわち平成二十二年の五月十七日までという意味でございまして、現時点においては既に徒過していることになります。

 次に、この条文では、年齢十八歳以上二十歳未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう、公選法や民法その他の法令の規定について検討の上、必要な法制上の措置を講じなさいということが定められております。

 すなわち、先生方にここで御留意いただきたいのは、この附則三条一項では、国民投票の投票権年齢が本則第三条で十八歳とされたことを前提として、選挙権年齢も十八歳に引き下げるべきこと等と明示していることでございます。

 なお、ここで等と申しますのは、その直後に民法を明示していることから、民法の成年年齢につきましても基本的に十八歳に引き下げるべきであるという趣旨であり、このことは、提出者の先生方において、その旨の御答弁がなされているところでございました。

 したがいまして、この規定によってその後の検討に委ねられているのは、公選法の選挙権年齢や民法の成年年齢の引き下げの是非それ自体ではなく、それを引き下げることを前提とした上で、一つは、公選法などの年齢引き下げが、ここで明示されていない他の法律、例えば少年法や未成年者喫煙、飲酒防止法など、その他の法令のどこまで及ぶべきかということ、もう一つは、公選法などを含めて年齢を引き下げるべきとされた法律について、その改正法施行のための準備期間や環境整備はどの程度必要かといった事項であるというのが、最終的に成立した当時の自民・公明案のみならず、当時、対案として提出されていた民主党案を含めた双方の提出者の共通の御理解であったと存じます。

 その上で、この条項に基づく法整備は、各省庁の所管するさまざまな現行法令に及ぶことに鑑みて、まずは政府部内で検討し、本条項の定める期限までに内閣提出法律案として整備法案を提出すべきこと、そして、本憲法審査会は、それを監視し督促するべきことと考えられていたところでございました。

 さて、このように、この年齢引き下げのための関係法律の整備法は、この附則三条一項の規定によって三年間の準備期間の間に成立させなければならないものとされておりましたが、法整備が三年以内に行われた場合であっても、その施行までにはさらに一定の周知期間を要することが予想されておりました。

 そこで、附則三条二項では、前項の法制上の措置が講ぜられることを当然の前提条件とした上で、それらの改正法律が施行されるまでの間は、経過的に憲法改正国民投票も二十歳投票権で実施する旨の経過規定が設けられていたところでございました。

 しかし、そもそも、十八歳選挙権実現のための公選法改正や民法改正のための整備法が成立していない現時点におきましては、この「前項の法制上の措置が講ぜられ、」という前提条件自体が達成されていないため、国民投票が実施できるかどうか判然としないという不完全な状態に置かれていることになるかと存じます。

 このような現状に対する評価は、もちろん各党各会派においてさまざまであることとは存じますけれども、しかし、いずれにいたしましても、このような状態は、本法の制定当時は全く考えられていなかったことであるかと存じます。

 以上、憲法改正国民投票法附則三条の意味と現状につきまして、先生方の御議論の前提となる基礎的な御報告をさせていただきました。ありがとうございました。

保利会長 次に、内閣官房内閣総務官室内閣総務官河内隆君。

河内政府当局者 おはようございます。内閣総務官の河内でございます。

 内閣官房として政府全体の取りまとめをする立場から、現在の検討状況につきまして御説明を申し上げます。

 平成十九年五月に公布されました日本国憲法の改正手続に関する法律の附則第三条におきまして、法律の施行までの間に、選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法、成年年齢を定める民法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるとされたところでございます。

 これを受けて、政府といたしましては、お手元の資料一にありますとおり、平成十九年五月、内閣官房副長官のもとで、各府省事務次官等を構成員とする年齢条項の見直しに関する検討委員会を設置し、二十歳以上などの規定を有する法令の年齢条項について、総合的な検討を行ってまいりました。

 しかしながら、平成二十一年十月の法制審議会答申におきまして、民法の成年年齢引き下げについては、直ちにこれを行うことは適当ではないとされたこともあり、国民投票法が施行された平成二十二年五月まで、さらには法施行後三年が経過した現時点でも、必要な法制度上の措置を講ずるには至っておらず、この点については大変申しわけなく思っております。

 政府といたしましては、年齢条項引き下げに関する国会における議論も踏まえ、引き続き関係法令についての検討を進めるとともに、法制審議会答申において指摘されました消費者保護教育など、成年年齢の引き下げに向けた環境整備のための施策を積極的に推進しているところでございます。

 テーマごとに具体的に申し上げます。

 二の対象法令の検討状況についてでございます。

 政府の検討委員会では、公職選挙法や民法、少年法を初めとして、法令上、二十歳以上などの年齢に関する条項について、総合的に検討を行っております。

 資料二をごらんいただきたいと思います。

 その対象法令数は、現時点で三百四十三であり、内訳として、法律が二百八、政令が三十七、府省令が九十八となっております。このうち九割につきまして、各府省庁における検討が終了しているところでございます。

 第五回検討委員会が開催された昨年の二月時点と比較いたしますと、法務省所管の国籍法や性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律、厚生労働省所管の特別児童扶養手当等の支給に関する法律等について検討が終了したほか、新たに成立した法令が加わるなどの理由により、検討対象の法令の数も若干変わっております。

 対象法令数は多いものの、この中には、条文上、具体的な年齢を規定せず、公職選挙法における選挙権年齢や民法における成年年齢の規定を引用しているため、公職選挙法や民法の改正に伴い自動的に年齢が引き下がるものも数多く含まれております。このように、年齢引き下げには法令改正を必要としない法令も多くなっております。

 具体的に申し上げますと、資料二の二枚目にありますとおり、法律欄を見ていただきますと、Aのところの下に、「(うち要改正)」と書いてございますが、これは検討が終わったもので、実際にそれを実現するために、国会に法案を出して法律を改正しなければならないものの数を記載しております。一番下でございますが、ごらんのように、現時点で年齢引き下げを行うために法令改正を必要とするものは、法律十二本、政令三本、府省令五本程度と考えております。

 もとより、Bの欄にありますように、まだ検討が終わっていない法令がございますので、検討結果によってはこの数がふえる可能性はございますが、全体三百四十三という数に対しては、さほど多くの数ではないという点を御認識していただければと思います。

 三番目が、成年年齢の引き下げに向けた環境整備でございます。

 平成二十一年十月の法制審議会答申におきまして、民法の成年年齢につきましては、十八歳に引き下げるのが相当であるが、消費者被害の拡大のおそれ等の問題点の解決に資する施策が実現されることが必要であるとされたところでございます。

 法制審議会で指摘されました民法の成年年齢引き下げに向けた環境整備につきましては、資料三をごらんいただきたいと思います。関係府省において各種施策を推進しているところでございます。

 例えば、その二ページ、文部科学省においては、学校、地域、家庭における消費者教育の推進に取り組んでいるほか、一ページ、法務省、国税庁、金融庁などにおきましても、それぞれの所管分野におきまして、学校教育における法教育、租税教育、金融教育等を推進してきております。

 また、四ページ、消費者教育につきましては、昨年十二月に施行されました消費者教育の推進に関する法律に基づき、消費者教育の推進に関する基本的な方針が策定段階にあるところでございます。

 平成二十四年二月の第五回検討委員会から約一年三カ月が経過し、その間、二回にわたって開催された本審査会の幹事懇談会での御指摘も踏まえ、昨日、年齢条項の見直しに関する検討委員会の第六回を開催し、各府省における検討状況や環境整備に向けた施策の推進状況について、改めて報告を求め、議論を行いました。

 その結果、公職選挙法、民法、少年法における年齢条項の取り扱いにつきましては、それぞれ、国民生活や社会全体に与える影響も大きいことから、これら三法における年齢引き下げについての社会的影響を踏まえ、国民意識の醸成等の環境整備を一層進める必要があるとの認識で一致し、今後も引き続き年齢条項の見直しに向けた取り組みを進めるとの方針が改めて確認されたということを報告させていただきたいと思います。

 今後の対応といたしましては、昨日の検討委員会でも確認された方針に沿って、各府省においては、所管法令における年齢条項の取り扱いについての検討作業を進めますとともに、それぞれの所管行政において必要な環境整備の取り組みや施策を効果的に進めることにより、年齢引き下げに向けた国民意識の醸成や見直しに向けた各般の環境整備を進めることとし、その効果の評価、検証を進めていくということとしております。

 また、公職選挙法、民法及び少年法における年齢条項の取り扱いにつきましては、総務省、法務省、内閣官房において、今後の対応方針について早期に結論が得られるよう、引き続き検討を深めてまいります。

 私からは以上でございます。

保利会長 次に、総務省自治行政局選挙部長米田耕一郎君。

米田政府当局者 総務省選挙部長でございます。

 私からは、選挙権年齢の引き下げに関する検討状況について御報告させていただきます。

 先ほども御報告ありましたとおり、平成十九年五月の日本国憲法の改正手続に関する法律の成立後、政府におきましては、同法附則第三条第一項を踏まえ、公職選挙法、成年年齢を定める民法その他の法令の年齢条項について検討が行われてきたところでございますが、平成二十二年五月の同法の施行を経て、今日まで、公職選挙法、成年年齢を定める民法その他の法令の規定について、必要な法制上の措置を講ずるに至っていない状況でございます。

 選挙権年齢の引き下げにつきましては、法律体系全体の整合性を図りながら進めていく必要があります。仮に、民法の成年年齢や少年法の適用対象年齢と選挙権年齢とにずれが生ずることとなりますと、総務省としては次のような問題があると考えております。

 まず、選挙権年齢と民法の成年年齢につきましては、社会的、経済的に自立し得る主体と認められない者である民法上の未成年者に対し、成年者に保障された政治への参加資格である選挙権を認めることとなり、社会的な常識に照らして適当でないと考えられます。

 また、選挙権年齢と少年法の適用対象年齢につきましては、原則として刑事責任を問われず保護処分とされる少年法上の少年に対し選挙権を認めることは適当でないこと、具体的には、選挙運動が認められることとなる十八歳、十九歳の者が犯罪を犯しても刑事罰が科されないこととなる場合の選挙運動等に与える影響についてどう評価すべきかといった課題が懸念されるところであります。

 なお、諸外国におきましても、選挙権年齢、民法の成年年齢及び刑事手続において少年として取り扱われなくなる年齢は、例えばG8では、原則として一致しているところであります。

 したがいまして、選挙権年齢の引き下げにつきましては、総務省としては、民法の成年年齢や少年法の適用対象年齢との整合性の観点から、これらと一致することが適当であり、また、引き下げの時期についても一致することが望ましいと考えております。

 以上でございます。

保利会長 次に、法務省大臣官房審議官萩本修君。

萩本政府当局者 民事局担当の官房審議官でございます。

 法務省における民法の成年年齢の引き下げに関する検討状況について御説明いたします。

 平成十九年五月に成立し、公布がされました、いわゆる国民投票法の附則第三条の規定及び同年十一月に開催された政府の年齢条項の見直しに関する検討委員会における決定を踏まえまして、平成二十年二月、法務大臣から法制審議会に対し、民法の成年年齢の引き下げの当否等について諮問がされました。この諮問を受け、法制審議会に専門の部会である民法成年年齢部会が設置され、民法の成年年齢の引き下げの当否等について調査審議が開始されました。

 民法成年年齢部会においては、教育問題や消費者問題の専門家、若年者の研究をしている社会学者や発達心理学者などからの意見聴取が行われたほか、部会のメンバーが高校や大学に赴いて、高校生、大学生との意見交換が行われました。また、平成二十年十二月には成年年齢の引下げについての中間報告書を取りまとめ、これをパブリックコメントの手続に付して、国民の幅広い意見を聴取しながら検討が進められました。

 そして、合計十五回の調査審議の結果、平成二十一年七月、民法成年年齢部会において、民法の成年年齢の引下げについての最終報告書が取りまとめられました。

 法制審議会の総会においては、部会の取りまとめた最終報告書を踏まえて、民法の成年年齢の引き下げの当否等について二回の審議が行われ、平成二十一年十月、法務大臣に対して答申がされました。

 法制審議会の答申の内容を申し上げますと、答申は、民法の定める成年年齢については、これを十八歳に引き下げるのが適当であるが、現時点で成年年齢の引き下げを行うと、消費者被害の拡大などさまざまな問題が生じるおそれがあるため、引き下げの法整備を行うには、若年者の自立を促すような施策や消費者被害の拡大のおそれ等の問題点の解決に資する施策が実現されることが必要であるとしております。その上で、民法の定める成年年齢を十八歳に引き下げる法整備を行う具体的時期については、関係施策の効果等の若年者を中心とする国民への浸透の程度やそれについての国民の意識を踏まえて判断するのが相当であるとしているところでございます。

 ちなみに、法制審議会における調査審議がされていた平成二十年七月に行った世論調査によりますと、成年年齢を十八歳に引き下げることに約八割の国民が反対している一方で、一定の環境整備が進めば成年年齢の引き下げに賛成という者が六割を超えるという結果が出ているところでございます。

 民法の成年年齢の引き下げを行う場合の問題点を解決するための施策としましては、まず第一に、消費者被害の拡大のおそれ等の問題点を解決する観点から、消費者庁による消費者行政の充実に向けた取り組みのほか、改訂がされた学習指導要領に基づく消費者教育、法教育、金融経済教育等の充実に向けた取り組みなどが行われております。また、第二に、若年者の自立を援助する観点から、子ども・若者育成支援推進法に基づく若年者の総合的な支援に向けた取り組みなどがされております。

 もっとも、これらの関係施策の効果が実際にあらわれ、国民の間に浸透するのには、なおある程度の時間を要するものと考えられます。

 法務省といたしましても、法制審議会の答申も踏まえて、法教育の充実に努めてきたところですけれども、引き続き、関係省庁とも連携を図りつつ、民法の成年年齢の引き下げに必要な環境の整備に努めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

保利会長 次に、文部科学省初等中等教育局長布村幸彦君。

布村政府当局者 御説明いたします。

 お手元に、小学校から高等学校までの教育課程における憲法教育等についてという一枚紙と、それを説明いたします、束になってございますけれども、小学校から高等学校までの教育課程における憲法教育、法に関する教育、消費者教育に関する学習指導要領の主な記述をまとめた資料と、お二つをお配りさせていただいております。

 一枚紙により御説明申し上げます。

 憲法に関する教育につきましては、後ろに添付させていただいた資料のとおり、学習指導要領に基づき、小学校、中学校、高等学校の各段階の社会科、公民科などにおきまして、日本国憲法の基本的な考え方、議会制民主主義や選挙の意義、主権者としての政治参加の重要性などの学習を行っているところでございます。

 また、法に関する教育、消費者教育につきましても、社会科、公民科、家庭科、道徳、特別活動の中で学習を進めております。

 実際の指導に当たりましては、概念的、抽象的になったり、細かな用語や数字などを覚えさせたりする指導に偏ることのないよう、例えば、模擬投票あるいは模擬裁判、契約のトラブルの場面に対応したロールプレーイングを取り入れた体験的な学習を行うなど、実際の社会生活と関連づけながら具体的な事例を通じて、児童生徒がより理解を深めることができるような工夫を行っております。

 教育基本法、学校教育法におきましては、教育の目標として、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うことを掲げており、これを踏まえて、文部科学省としては、学習指導要領に基づき、各学校において、国家社会の有為な形成者として必要な公民としての資質を養う教育がしっかりと行われるよう、引き続き努めてまいりたいと存じております。

 以上です。

保利会長 以上で説明は終わりました。

    ―――――――――――――

保利会長 これより自由討議に入ります。

 この際、委員各位に申し上げます。

 本日の自由討議におきましては、発言を希望される委員は、お手元にあるネームプレートをお立ていただき、会長の指名を受けた後、発言してください。発言が終わりましたら、ネームプレートはもとへ戻していただくようにお願いいたします。

 発言は自席から着席のままで結構です。また、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただきますようにお願いいたします。

 なお、幹事会の協議によりまして、一回当たりの発言時間は五分以内といたしたく存じます。委員各位の御協力をお願い申し上げる次第であります。

 発言時間の経過については、終了時間一分前及び終了時にブザーを鳴らしたいと存じます。

 それでは、発言を希望される委員は、ネームプレートをお立てください。

船田委員 自民党の船田でございます。

 私どもは、平成十九年の前半でございましたが、国民投票法を議員立法で提出をし、審議をしていただき、採決を見たわけであります。その際、我々が立法者の強い意思として考えておりましたのは、やはり国民投票の投票権年齢を十八歳にするということであります。

 これは、できるだけ多くの人々、つまり、若い人々や、また、たとえ公民権を停止された者であっても、あるいは収監者であっても、国の基本的なルールを決める、あるいは方向性を決めるという大事な憲法でございますので、それをどのように変えていくのか、変えるべきか変えないべきか、そういうことを決めていく憲法改正国民投票におきまして、できるだけ多くの人々に参加をしていただきたい。また、選挙権年齢というのは、世界を見渡してみますと十八歳というのが世界標準である。このような二つの理由によりまして、十八歳ということで決めさせていただきました。

 今御説明がそれぞれありましたように、国民投票を十八歳としますと、当然のこととして、公職選挙法における十八歳、それから民法の成年年齢も十八歳にそろえる必要がありまして、公布された平成十九年五月から二十二年五月の三カ年の間に、公職選挙法、民法その他の法令を十八歳にするよう国に求めてきたわけでありますが、いまだに実現をしていないということは極めて残念であると思います。

 速やかな措置をお願いしたいと思っておりますけれども、遅々として進まないような場合には、やはり国民投票制度とその他の法令を切り離して、本則の十八歳を生かしてそれを動かしていくということも視野に入れなければいけないというふうに考えております。

 その上で、文科省とそれから法務省それぞれに質問をいたしたいと思っています。

 まず文科省でございますが、国民投票が十八歳で実施される、こういったことが現実の問題になった場合、先ほど学習指導要領等の説明をいただきましたけれども、高校までにおける憲法に関する教育内容は当然変えなければいけないと思っております。その際、例えば各学年に配置をされる教育内容については、特に憲法につきましての教育は高校二年が修了するまでに終えていなければいけないと考えております。

 したがって、それぞれの学年ごとの教育内容の配置を変えるための学習指導要領の変更というのを私は必要とするのではないかと思っています。ただ、学習指導要領は、約十年に一回程度ぐらいしか改訂されておりません。そういうことを考えますと、このスケジュールというのは一体どのようになっていくのか、そのあたりの考え方をお聞かせいただきたいと思っております。

 もう一つは法務省に対してでありますが、先ほども触れられましたが、消費者教育の推進に関する法律が平成二十四年十二月に施行されました。それに基づいて、現在、その基本方針を策定中であり、今月中に閣議決定されるというふうに聞いております。

 これが実施された場合、成年年齢の十八歳引き下げの条件がかなり整っていく、このように思っておりますが、法務省としてはこのような動きに対してどう評価をされているか、この二点をお伺いしたいと思います。

 以上です。

布村政府当局者 お答えいたします。

 最初に、憲法教育の教育内容についてから御説明を申し上げたいと存じます。

 学校におきましては、全ての児童生徒に国家社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことが重要な課題というふうに捉え、憲法に関する教育につきましては、児童生徒の発達段階を考慮して、小学校、中学校、高等学校の各段階で行っているところでございます。

 その中でも、高等学校におきましては、現行憲法を踏まえまして、良識ある公民として必要な能力と態度を育てるという観点から、公民科の現代社会または政治・経済のどちらかを選択して履修するということになってございます。

 そのうち、政治・経済におきましては、日本国憲法における基本的人権の尊重、国民主権、天皇の地位と役割、国会、内閣、裁判所などの政治機構を概観させるとともに、政治と法の意義と機能、基本的人権の保障と法の支配、権利と義務の関係、議会制民主主義、地方自治などについて理解させ、民主政治の本質や現代政治の特質について把握させ、また、政党政治や選挙などに着目して、望ましい政治のあり方及び主権者としての政治参加のあり方について考察させるということを展開してございます。

 また、政治参加のあり方につきましては、憲法改正手続における国民投票や地方自治における直接請求権など、多様な政治参加の道があることを理解させるようにしているという内容になってございます。

 また、この履修形態につきましては、現在、高校三年間の間で生徒が選択をするという形態になっているところでございます。具体的には、高校三年間の間で、現代社会、または、倫理、政治・経済の二科目、どちらかを選択するということになりますので、必ず憲法についてはしっかりと学ぶという形になってございます。

 先生御指摘いただいた、高校二年生までにしっかりと履修をさせるべきではないかという点につきましては、今後の高等学校の教育課程に関する検討すべき課題の一つというふうに受けとめさせていただいております。

 文科省としては、成人年齢の十八歳への引き下げに関する検討の状況をしっかりと踏まえつつ、まずは、二十五年度、今年度から年次進行で実施されております新しい学習指導要領に基づいて、しっかりと、国家社会の有為な形成者として必要な資質を養う教育が行われるよう努めてまいりたいというふうに考えてございます。

萩本政府当局者 御指摘のありました消費者教育の推進に関する法律、これは、先ほど御説明いたしました幾つかの問題点のうち、消費者被害の拡大のおそれ等の問題点の解決に資する重要な施策の一つであるというように私どもとしても認識しております。

 もっとも、この法律に基づく基本方針が作成されたことのみで直ちに消費者被害の拡大を防止する効果が実現するとまではなお言いがたいと考えられますし、法制審議会の答申におきましては、若年者の自立を援助するような施策の必要性も指摘されているところでございます。

 したがいまして、引き続き、関係府省庁と連携しながら関係施策を推進しつつ、これらの施策がどの程度の効果を上げているか、成年年齢を引き下げることについての国民の理解が得られているかということを見きわめていく必要があるものと考えているところでございます。

武正委員 民主党の武正でございます。

 十八歳、国民投票の投票年齢については、民主党が主導してきたというような形で、この憲法審査会でも、あるいは特別委員会でも議論がかねてよりされてきたというふうに考えております。

 そういった中で、先ほど船田委員からお話のあったような、自民党さんの方でも十八歳投票年齢というような形で歩み寄っていただき、この十八歳、憲法改正国民投票の投票年齢が施行されたというふうに考えております。

 これは、本審査会あるいは特別委員会、そしてまた憲法調査会で、現憲法九十六条の衆参両院三分の二以上の発議要件、これを前提に、この十三年間丁寧な議論を積み重ね、真摯な議論を重ねてきた結果、この憲法改正国民投票法においては、特に十八歳投票年齢が象徴的でありますが、与野党が合意形成に努めながら法律が施行されたというふうに考えております。

 そういったことでありますので、将来の日本を規定するもの、最高法規である憲法の改正の投票権年齢については、幅広く多くの方が参加できるようにということで、世界標準でもある十八歳投票年齢が望ましいというふうに考えております。

 政府においては、三年あるいはまた六年既に経過をしておる中で、先ほど内閣官房から御説明をいただきましたが、昨年の検討会から一年を置いての検討会の開催など、やはり政府としての取り組みが、先ほどおくれたことについての御説明がありましたが、おわびの言葉もありましたが、政府において、十八歳投票年齢あるいは民法の成年年齢、それぞれ引き下げについての取り組みは、やはりもっともっとスピードアップをしていただかなければならない。それが憲法改正国民投票法の求める附則であったというふうに考えております。

 そうした中、先ほど船田委員からも提起があったり、あるいは既に維新の会から議員立法という形で提出にあるような形で、この十八歳投票年齢について法改正をして、公選法と民法の引き下げを待つ間もなく切り分けるべきだという御提案あるいは議員立法が出されております。これについては、十八歳投票年齢を主導してきた立場からも、一つの選択肢というふうに受けとめております。

 ただ、やはり前提は政府の取り組みであり、また、提出者の再三の国会における答弁からも、十八歳投票年齢並びに民法成年年齢十八歳への引き下げ、先ほど橘さんからも御説明があったようにこれが前提ということでの法律でありますので、例えば、切り分けたとしても、他の年齢の引き下げにかかわる部分については、選挙権年齢などの引き下げについては、改正法施行後何年を目途として必要な法制上の措置を講ずるというような形で取り組むことも必要ではないか、そういった前提の上の切り分けかというふうに思っております。

 そういった中で、先ほど内閣官房から、十二の法律、三つ、五つの政省令のみ改正、これにプラスアルファだということで、可能である旨の発言もありましたので、そういった意味で、年数を区切って切り分けということも一考ではないかというように思っております。

 法務省に質問したいんですが、先ほど説明のあった引き下げが前提、あるいはまた、この附則からいえば、年齢満十八歳以上満二十歳未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう、選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法、成年年齢を定める民法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとするというこの附則からすれば、法制審議会への諮問が、なぜ「成年年齢を引き下げるべきか否か等について御意見を承りたい。」というような諮問になったのか。これについて、法務省の見解を伺いたいと思います。

萩本政府当局者 御指摘の国民投票法の附則の第三条一項ですけれども、この附則第三条一項を読みますと、十八歳以上の者が国政選挙に参加することができること等となるようということで、この等に何を読み込むかという問題があるわけです。

 法文上、直接的には、十八歳以上の者が国政選挙に参加することができるということについて方向性が明示されているにとどまっているという見方ができることとあわせまして、国会審議の中では、それぞれの立法の趣旨に立ち返って一つ一つ精査をし、十八歳に引き下げるもの、あるいは現状のまま二十歳にとどめるもの、これを一つ一つ検討していく必要があるということもまた述べられたところと認識しております。

 したがいまして、それらのことを踏まえて、民法の成年年齢につきましても引き下げるべきか否かという諮問に至ったところでございます。

武正委員 その点なんですが、そういった今のお話で、国会の議論でということで既に説明があったというふうに聞いております。法制審議会でもそういった意見が述べられております。

 国会審議における提出者の答弁において、たくさんいろいろな法律があるけれども、それぞれの立法の趣旨に立ち返って一つ一つ精査し、十八歳に引き下げるもの、あるいは現状のまま二十にとどめるものを一つ一つ検討していく必要があるという意見、見解も述べられておりますということで答弁をされているようなんですが、調べますと、立法者である船田委員、筆頭幹事ではございますが、十回の発言のうち九回は、民法、公選法両方ともやはり十八歳に引き下げるべきと言っておりまして、一度だけ、場合によっては公職選挙法のみということもあり得ると言っていますが、十回中九回はやはり両方とも引き下げるということを提出者として述べておられます。また、その他の委員の方も、二回中二回とも、その旨を述べておられるということであります。

 やはりこれは、提出者あるいは立法者の趣旨からすれば、諮問時において、引き下げられるか否かという形での諮問というのが果たして法制審にとっては適切な諮問内容だったのかということは、私自身は疑問に思います。

保利会長 ちょっと、どうも結論的なことがはっきりしません。検討するということの条項が非常に多うございますので、政府の取り組みをもう少ししっかりやっていただきたいなと思っております。

 特に、総まとめをしておられる内閣府におかれましては、環境整備に努めるということをおっしゃっていますが、環境整備というのはどういう方向でどうやるのかというようなことについて、十分に我々に教えておいていただきたいと思います。

 同時にまた、会長としてはちょっと余計なことを言い過ぎですけれども、文部科学省は十八歳まで引き下げるということについてどういう意見を持っているか、先ほどお話がありました。

 教育内容について大分お話がありましたが、学校現場において、高校三年生が十八歳になった者とまだなっていない者とに分かれる。そしてまた、高校三年というのはちょうど大学受験を控えているときでありますから、非常に忙しい年代であります。そういう者を対象にして、クラスの中で高等学校三年生をどういうふうにリードしていくのかというようなことについては、本来これは、ほかは例えば法務省におかれましては法制審議会で審議をしておるというようなお話でしたが、中央教育審議会ではどういう議論をされているのか、あるいは全然していないのか、その辺が気になるところであります。

 この点については、内閣府は、環境整備について具体的にちょっとお話をいただきたいのと、それからもう一つ、文部科学省については、高校三年生というものの現場的な扱いはどういうふうにするのか、また、これを中教審に諮っているのかいないのかということをちょっと御答弁いただきたいと思います。

河内政府当局者 まず、政府としての取り組みにつきまして、会長初め委員の先生方から大変厳しい御指摘を賜りました。

 そもそも、平成二十二年五月の法施行までに必要な法制上の措置が講じられることが国権の最高機関である立法府からの要請でございます。さらに、法施行後三年が経過した現在でも必要な法制上の措置を講ずるには至っていないことにつきましては、立法者にとって想定していない事態となっているというふうに認識しており、この点は大変申しわけなく思っておる次第でございます。

 そして、会長からの御質問におきます環境整備に関する部分でございます。

 昨日の第六回検討委員会におきましても、三法における年齢引き下げについての社会的影響を踏まえ、国民意識の醸成等の環境整備を一層進める必要があるというふうになったところでございますが、お手元の資料についているところでございますが、若年者の自立を促すような施策、そしてまた、消費者被害の拡大のおそれ等の問題解決に資する施策、つまり、十八歳、十九歳の者が例えば悪徳商法などに巻き込まれるなど、社会的経験の乏しさにつけ込んだ取引が行われないよう、そういった消費者教育施策の充実等々が図られているわけでございます。

 そしてまた、先ほど来文科省からも御説明ございましたように、学習指導要領が改訂され、小中高それぞれの段階におきまして教育をする。そしてまた、ことしの四月からは高校生の教科書も変わり、消費者教育を受ける時期が来たという状況の中におきましては、この新学習指導要領に基づいた教育を受けた方々がこれよりも大人の方に傾いているというような面が期待されるところでございます。

 ただ、いずれにいたしましても、この環境整備、それぞれの省庁がそれぞれの取り組みを着手したばかりの部分もございます、あるいは既に行っている部分もございますが、その効果につきましては、なかなか、どこまでどういう形で浸透しているのかというところについての判断が大変難しいところではございます。

 ただ、これにつきましても、今後、適宜、その効果検証につきましても、昨日の副長官からの指示事項にもございます各般の環境整備を進めるとともに、その効果の評価、検証を進めるということが大事だというふうに認識しているところでございます。

布村政府当局者 先ほどは、憲法教育の学習内容について主として御説明をさせていただきました。その際にも、船田先生の方から、公民科あるいは現代社会の履修を高校二年生までにできないのかというお尋ねもございました。それを踏まえて、また先ほど保利会長からの御指摘もあり、現在の学習指導要領では、例えば保健体育につきましては、高校一年次あるいは二年次にわたって履修をさせるものという規定がございます。あるいは、総合学科、これは普通科と職業学科の中間的な、両方の機能をあわせ持つ学科になりますけれども、総合学科の中の産業社会と人間という科目につきましては、全ての生徒に原則として入学年次、一年次に履修をさせる、そういう規定がございます。

 ということを踏まえて、今後、選挙年齢あるいは投票年齢の引き下げということが検討されるという流れの中で、憲法に関する教育、あるいは法律に関する教育というものについて、どの段階までにしっかりと履修させるかということは、十分検討すべき課題かと認識しております。

 現在、まだ、中央教育審議会に諮問する、直接お尋ねするという形はとってございませんけれども、今後のこの投票年齢の検討を踏まえながら、必要な対応はとっていく必要があるのではないかというふうに認識をさせていただいたところでございます。

保利会長 私ばかり話をするのもまずいんですけれども、高等学校というのは義務教育ではありませんから、高等学校に行かなくても、日本国民としては育っていくわけです。十五歳でそのまま実社会に入る方もいらっしゃるわけですから。そういう点で、高等学校でこう教えているから憲法については全国民がわかるんだというのはちょっと論理的におかしなところがあると思いますので、そこら辺は十分考えておいてください。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。

 早速、総務省、法務省、文科省に、それぞれ二問ずつ質問させていただきます。

 まず総務省。総務省は、先ほどの話の中で、選挙権年齢と民法の成人年齢は一致することが適当、引き下げ時期も一致させることが必要という立場のようですが、いわゆる国民投票権年齢についても一致する必要があると考えているのかどうか。

 もし、その点については必要なし、これは前回の幹事懇での勉強会でそういう発言があったわけですが、必要なしという場合、ここにございます、これは総務省の文書ですが、成年者に保障された政治への参加資格である選挙権を認めることとなり、社会的な常識に照らして適当ではない、未成年者に対して選挙権を与えることは社会的な常識に照らして適当でないと考えていますが、もし、投票権年齢については一致させる必要がないということであれば、この整合性をどう考えるか。少年法、連座制も同じような理由として挙げていますが、その整合性をどう考えるか。これが総務省への質問です。

 法務省に対しては、成年年齢を十八歳に引き下げるのが適当だが、時間が必要だ、選挙権年齢と一致する必要はないという立場のようです。国民投票権年齢についても成年年齢と一致する必要はないと考えるのか。これが法務省への質問です。

 もう一つ、将来的には成年年齢を十八歳にすべきだという立場、これは我々はすぐにでもということですが、将来的に成年年齢を十八歳にすべきとの立場ですが、その理由を聞きたいと思います。

 それから、文科省。これは先ほどの保利会長の質問と基本的に同じなんですが、高等学校は中等教育です。初等中等教育局、きょうも、布村さん、初等中等教育局長という、ある意味では、初中局、これは高等教育と根本的に違って、例えば生活指導というようなことは高等教育には基本的にはないわけですが、最近の大学では生活指導も必要だというような話もないわけではありませんけれども、初中教育の中で成年年齢が来る、また選挙権年齢が来る、投票権年齢が来る、こういうことの教育現場へ与える影響をどのように考えているか。

 この三つの質問をさせていただきたいと思います。

米田政府当局者 総務省の選挙部でございます。

 まず最初に、憲法改正国民投票の投票権年齢と、成年それから選挙権年齢等他の年齢との一致の問題でございますけれども、この問題につきましては、私どもも、憲法改正国民投票の投票権年齢についても、成年や成人の権利と義務について定めた選挙権年齢等他の年齢と一致していることが最も望ましいとは考えております。

 しかしながら、投票権年齢と選挙権年齢は、現行法におきましても考え方が違っているということ。具体的に申し上げますと、選挙につきましては、憲法第十五条第三項で成年者に保障された選挙権を行使して、国民、住民の代表である公職につく者を選ぶということ。それに対しまして、憲法改正国民投票は、国家の根幹をなす憲法改正に対する国民主権の行使にかかわるものであって、先ほども船田幹事の方から御説明ございましたとおり、できるだけ多くの国民が国民投票に参加することが望ましいという観点から投票権が認められているというふうに理解しております。

 具体的に申し上げますと、選挙権を有する者と国民投票の投票権を有する者の範囲、それから運動の規制、罰則などに多くの相違点がございます。

 例えば、憲法改正国民投票につきましては、選挙権が認められていない犯罪者等にも投票権が与えられているといったこと。それから、選挙運動につきましては、非常に厳格な規制、罰則が設けられているところでありますけれども、国民投票運動につきましては、自由かつ活発に行うことができるよう原則自由とされ、未成年者にも国民投票運動が認められているとともに、罰則、規制は、投票が公正に行われるための必要最小限のものとされておりまして、連座制もないといったことがございます。

 そういう性格の違い、それから、実質上、特に少年法等との関係の、具体的には連座制等々の違いといったことが現にございます。

 先ほど私どもが申し上げました、投票権と民法上の成年年齢等が一致するということが必要であるとは考えますけれども、その際の理由となっております性格、それから、実務上、法律上の課題といったものが投票権年齢との場合には生じないというふうに考えられますので、必ずしも投票権年齢が選挙権年齢等と一致する必要はないというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

萩本政府当局者 一点目の、国民投票権年齢と民法の成年年齢との関係ですが、国民投票権年齢は、選挙権年齢と同様に、政治参加の手段を与える年齢を何歳以上とすべきかという観点から定められるものと理解しております。

 これに対し、民法の成年年齢は、親の同意なく一人で契約をすることができる年齢を何歳とすべきか、親権に服する年齢を何歳までとすべきかという観点から定められておりまして、国民投票権年齢や選挙権年齢とは立法趣旨が異なるものでございます。

 したがいまして、民法の成年年齢と国民投票権年齢とは理論上一致する必要はなく、民法の成年年齢を現行法のとおり二十歳のままとしつつ、国民投票権年齢を十八歳以上とすることに問題はないと考えております。

 二点目、将来的に民法の成年年齢を十八歳に引き下げるのが適当であると考えている理由でございますけれども、先ほども若干触れましたが、もともと国民投票法の附則が、法文上、満十八歳以上の者が国政選挙に参加することができること等となるようという形で、選挙権年齢について十八歳とする方向性を明示されておりましたので、それを前提に考えますと、特段の弊害がない限り、民法の成年年齢も少なくとも将来的にはそれと一致させるのが望ましいであろうということが一つございます。

 それに加えまして、民法の成年年齢を十八歳に引き下げることにつきましては、十八歳に達した者を大人として扱うことになり、若年者の大人としての自覚を高めることにつながるということですとか、十八歳に達した者がみずから就労して得た金銭などを法律上もみずからの判断で使用することができるようになるといった、そういった積極的な意義もあるとされたところでございまして、これらが理由とされているところでございます。

布村政府当局者 お答えいたします。

 中等教育段階に選挙権年齢あるいは成年年齢が位置づけられることに対する文科省としての受けとめというお尋ねでございます。

 最初に、選挙権年齢、投票権年齢についてでございますけれども、まずは、教育基本法におきまして、義務教育の目的を今回新たに規定をいただきまして、義務教育の目的として、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことということが掲げられ、それを踏まえて、学校教育法におきまして、義務教育の目標として、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うことが規定されたところでございます。

 そういう意味合いでも、義務教育終了までに全ての子供たちに対し、この教育基本法及び学校教育法に掲げる目的、目標の達成に向けた教育を行うということが大前提として取り組むべき課題と認識をいたしております。

 その上で、高校段階におきまして、憲法教育、法教育、消費者教育というものにつきまして、まずは、今年度から実施されております新しい学習指導要領に基づく指導が的確に行われるように取り組んでまいりたいというふうに考えております。その上で、先ほども御指摘がございました、今後、高校段階における履修のあり方、何年次までにしっかり教えるべきかどうかという点につきましては、しっかりとまた検討すべき課題として受けとめさせていただきたいと考えております。

 それからもう一つは、成年年齢が来た場合の教育現場への影響ということのお尋ねがございました。

 民法上の成年者につきましては、みずからの意思のみにより法律行為を行ったり、父母の同意を必要とせずに婚姻したりすることができるほか、親権との関係では、父母の監護教育権、懲戒権に服さずに、居所を自由に定めたり職業を自由に選んだりすることができるというふうに受けとめてございます。

 このため、成年年齢が十八歳に引き下げられた場合には、高等学校においては、成人年齢に達するまでに成人として自立するために必要な判断力などをしっかり身につけさせることが必要と考えられ、学校においては、消費者教育、法教育に関する取り組み、生徒指導に関する取り組みを一層充実させることが必要、重要というふうに認識しております。

 また、例えば、仮にでございますけれども、成年年齢の引き下げに合わせて少年法を適用する年齢が引き下げられる場合には、十八歳の年齢を迎えた生徒、高校生は実名報道等の制限が適用されなくなることから、生徒の個人名とともに学校名の報道などが行われることが考えられ、当該学校の他の生徒に対する影響が生ずるおそれがあるのではないか、そのような影響についても検討すべき課題かと受けとめております。

 さらに、飲酒、喫煙等の規制対象年齢が引き下げられた場合につきましては、実際に高校で行われる生徒指導あるいは健康教育のあり方につきましても、少なくない影響があり得るかというふうに考えられるところでございます。それらの生徒指導上あるいは健康教育上の課題につきましても十分また今後検討すべき、この成年年齢の御検討に並行して、文科省としてもしっかり検討すべき課題ではないかというふうに受けとめさせていただいたところでございます。

保利会長 今の文部科学省の回答は非常に微妙なところがございまして、高等学校は義務教育じゃないということを念頭によく物を考えていただきたいなと思っております。

畠中委員 みんなの党の畠中光成です。

 この三つの宿題については、党内で引き続き検討を行っているところでありますが、検討の途中経過事項や私の私見も含まれることを御了承いただいた上で、私から、十八歳への引き下げについて三点お伺いしたいと思います。

 まず、皆さん御存じのとおり、日本国憲法の改正手続に関する法律附則三条では、国は、この法律が施行されるまでの間に、十八歳以上の者が国政選挙に参加すること等となるよう、公選法ほかについて検討し、必要な法制上の措置を講じると定められています。

 この法律の施行日は二〇一〇年五月十八日となっております。したがって、この日までに十八歳以上の者が国政選挙に参加できるよう公選法改正が行われているはずですが、現在、そうはなっていません。これは、現状の選挙権に関する規定が違法状態であるということでしょうか。確認のため、見解を総務省にお伺いしたいと思います。これが一点目です。

 二点目なんですが、先ほどの会長と少し重なるかもしれませんが、この附則が放置されてきた理由について、端的に内閣官房からお伺いしたいと思います。

 附則を放置してきた国には、当然、私ども立法府も含まれます。

 塩野七生氏は、ローマ法の研究を通じて、憲法を普通の法にすべきとおっしゃっておられます。憲法を普通の法にしようという動きがなかった理由は、五五年体制が憲法改正と真剣に向き合ってこなかったからだと思います。自主憲法制定を党是とする党は、仮に憲法改正を発議して国民投票で否決されれば、レーゾンデートルを失うことになります。護憲政党については言うまでもありません。このような状況の中で、憲法は、まるで神聖不可侵なものであるかのように、その姿をこれまで変えることがありませんでした。

 我が国の戦後民主主義の形成、発展において現行憲法が果たした役割というのは忘れてはいけませんが、一方、日本も世界もあらゆる構造が変転する中で、国を覆う閉塞感を取り払うためにも憲法の見直しは必要だと考えます。したがって、その改正についてはできる限り多くの国民の意見を問うべきだと考えます。このような観点から、国民投票権年齢、選挙権年齢の引き下げは即時に行われるべきだと考えております。

 三つ目の質問を申し上げますが、立法府において附則が放置されてきた理由をお聞かせいただけますでしょうか。これは衆議院の法制局にお願いいたします。

 以上です。

米田政府当局者 お答えいたします。

 選挙権年齢の引き下げの附則の問題でございます。

 今御指摘いただきましたような必要な法制上の措置が講ぜられていない状況であるというふうに認識しておりますが、これは、憲法改正国民投票法が求める必要な法制上の措置が講ぜられておらず、法提案者の予定していない状況にあるという認識をしております。

 ただ、公職選挙法について申し上げますと、公職選挙法の九条につきましては、これは選挙権を定めた規定でございますけれども、「日本国民で年齢満二十年以上の者は、衆議院議員及び参議院議員の選挙権を有する。」こういうふうに明確に書き切っておりますので、現行の選挙につきましてはこちらの規定でされているというふうな理解でございますので、こちらの規定に影響が今及んでいるという状況ではないというふうに理解しております。

河内政府当局者 お答え申し上げます。

 必要な法制上の措置がいまだ講じられていないことはなぜかという、その理由を中心に問われる御質問でございますが、先ほど来申し上げていますように、立法者にとって現在の事態は想定していない事態と受けとめており、この点については大変申しわけなく思っている次第でございますが、政府といたしましては、内閣官房副長官のもとで検討委員会を開催し、内閣官房を中心に関係制度所管部局との間で検討を進めてまいりました。決して放置していたわけではございません。

 これまでの検討の中では、先ほど御説明させていただきましたように、数多くの法令、いわば九割方整理はできたところでございます。ただ、扱いが焦点となっております公職選挙法、民法、少年法の三法につきまして、なかなかいろいろな難しい課題を抱えているというところを指摘せざるを得ません。

 公職選挙法における選挙権年齢につきましては、民法の成年年齢や少年法の適用対象年齢とのずれが生ずることについて、その部分をどういうふうに考えていくのか、整理がし切れていないということ。また、民法につきましても、消費者被害の拡大のおそれ等の問題解決に資する施策の実現が必要というふうになっているわけでございますが、各施策の効果が難しい上に、この問題、十八歳、十九歳の方の意識に係る問題だけに、非常に総合的な判断を必要としているという部分がございます。また、少年法につきましては、少年法固有の観点からの見直し等々の検討が必要である。

 こうした理由によりまして、協議に時間を要しているという次第でございます。

橘法制局参事 畠中先生、御質問ありがとうございました。

 ただ、立法府全体でのお取り扱いについて私が御答弁申し上げるのは大変に僣越であると思いますので、この間の経過だけ御報告させていただくことでお許し願いたいと存じます。

 先ほども申し上げましたように、平成十九年五月に憲法改正国民投票法が制定、公布されたところでございました。この憲法改正国民投票法によって国会法が改正され、憲法審査会、本審査会は、同年七月の参議院通常選挙を経た同年八月召集の臨時国会で設置されるはずでございました。

 ただ、その七月の参議院通常選挙において、参議院がいわゆるねじれの状態になり、これをめぐって、与野党の先生方のこの憲法審査会の始動に関して大きな意見の相違点が出てまいったというふうに承知しております。そのため、平成十九年八月召集の臨時会冒頭で議決されるべき衆参の憲法審査会規程、すなわち、憲法審査会の員数を定めることや議事細則を定めるそのような国会法の下位規則が制定されず、法律上は衆参両院に憲法審査会が設置されていることにはなっているものの、実際上はそのようなものは存在しないという状態が長らく続いてきたわけでございます。

 結局、衆議院でこの憲法審査会規程が制定されましたのは、それから二年後の平成二十一年六月でございました。さらに、参議院で同規程が制定されたのは、それにおくれることさらに二年、一昨年、平成二十三年の五月でございました。この衆参両院の憲法審査会規程という国会法の下位法令が整備された時点で、既に三年間という、この国民投票法の附則に明記されていた法整備の期限は過ぎていたということかと存じます。

 もちろん、先ほども御報告申し上げましたように、十八歳成人年齢引き下げのため、選挙権年齢引き下げのための法整備は、閣法として提出されるべきことが予定されていたわけですけれども、そのような閣法も、先ほど来御説明がございましたように、なかなか難しい問題を抱えて国会に提出されてこなかったこと、そして、今申し上げましたように、それを監視し督促すべき憲法審査会が国会において始動されてこなかったこと、これらの状況から、現在の状態に至っているものと拝察いたします。

中谷(元)委員 総務省に伺います。

 先ほど、民法の未成年に選挙権を認めることは社会的な常識に照らして適当でないと言いますけれども、私は、全く理屈になっていないと思うんですね。未成年者に選挙権を認めることは社会的常識に照らして適当でないとするなら、憲法改正、やはりこれを十八歳にすることは、同じように適当でないと言っているに等しいと思います。

 先ほど、できるだけ多くの国民が参加するようにしたということで、選挙権とは違うと説明しましたが、この判断の重要性からすると、同じことではないですか。政治を誰に任せるかという選択も憲法をどういう規定にするかという選択も、同じぐらいの重要性がある国民の選択であって、総務省の論法でいくと、重みが違います、憲法改正は軽い基準でいいんじゃないですかと言っているように聞こえます。

 本来は、やはり公選法も幅広く意見を聞く場を提案すべきで、そう言うならば、公職選挙法を改正して幅広く国民の意見を聞くというのがより正しい政治判断だと思いますが、一向に総務省はそういうことは言いません。

 先ほど法務省は一致する必要がないんだと言っていますし、私もそう思うんですけれども、立法府の判断として、では公職選挙法の年齢引き下げを提案した際に、総務省は、それは適当でないと同じような答弁をするつもりなんでしょうか。

 同じ意見を、きょうは内閣府も来られていますので、内閣府にも伺いたいと思います。

 二点目は、内閣府は昨日、一年三カ月ぶりに六回目の検討委員会を開催したそうなんですけれども、それは、本日のこの憲法審査会があるために急遽実施したんでしょうか。それだと全くのつけ焼き刃で、やる気もなければ主体性もないということであります。その結論としましても、まだまだ環境整備を進める必要があるということですが、では、その成果が出るというのは、いつを目標としているのか、そういった議論がないのか、まず目標時期。

 それから私は、形から入る、制度から入るということの検討をしないのかと。やはり、ある程度の、成年の意識を持たせるために、形から入って十八歳にするということで、自覚を持たせるということによって消費者対策等も進めることができると思いますけれども、その点をお伺いいたします。

 最後に、文部省に伺いますが、六・三・三制というのがあって、その呼称も、高校は初等中等教育局となっていますが、なぜ、一般的に高校と言われているのに初等中等教育というふうに言うのか。そして、なぜ中学までが義務教育で、高校は義務教育ではないのか。もう相当の方が高校進学するようになっておりますけれども、なぜ初等中等教育の中に、半分は義務教育の中学校、半分は選択制の高校ということで、同じ局で扱っているのか。

 もうそろそろ制度見直しをしなければならないと思いますし、また、何のための六・三・三制かということで、やはり、六・三・三制を終えたら成年になるための教育であるという目標にすべきではないんですか。改めて、なぜ六・三・三制を今続けているのか、その点を伺いたいと思います。

米田政府当局者 先ほど、国民投票の投票権年齢と選挙権の問題について申し上げたところでございますけれども、そこでも申し上げましたとおり、私どもといたしましても、国民投票の投票権年齢についても、選挙権年齢、成年年齢等他の年齢と一致することが最も望ましいというふうには考えておりますが、現行の法のたてつけから違っているということから、法律上、実務上の問題点が選挙権と国民投票の投票権年齢とでは異なっているということで、そこだけのずれということは法律上、実務上の問題点がないということを申し上げたつもりでございます。

 それから、選挙権年齢の引き下げについて、総務省としてどのような意見を言うのかというような御質問でございました。

 きょうも意見を出させていただいておりますけれども、私どもといたしましては、民法の成年年齢、少年法の適用対象年齢との整合性の観点から、これらと一致することが適当であり、また、引き下げの時期についても一致することが望ましいと考えているところでございます。

中谷(元)委員 今の答弁に対して、それでは、憲法改正の国民投票においては、それは一致しなくても支障がないと言うのか。先ほど質問しましたけれども、一般の選挙と憲法改正の選挙、重い、軽いを含めて、その意義について違いがあるというふうに、どう認識しているんでしょうか。

米田政府当局者 憲法改正国民投票の投票権につきましてどのようにお考えになるかというのは、基本的にはこの国会の場で、立法の場でお決めいただくことというふうに認識をしておりますが、現行の、まさに立法でお決めいただいた法律自体のたてつけが既に違っているということを前提にして、私は、現行法を前提として申し上げると、投票権のずれといった点の法律上、実務上の問題点がないというふうに御答弁をさせていただいたつもりでございます。もちろん、この国民投票の投票権、軽々しいものであるというふうには全く考えておりません。

河内政府当局者 お答え申し上げます。

 幾つかの御質問をいただきましたが、まず、憲法改正の国民投票と公選法の取り扱い等々につきまして、国権の最高機関たる立法府の判断が示される場合には当然尊重することになることは言うまでもございません。

 昨日、第六回の検討委員会を開いたという点についてでございますが、先ほども申し上げましたように、第五回の検討委員会から約一年三カ月が経過し、さらに、その間二回にわたって幹事懇談会でも、三月のときにも御指摘をいただいております。その御審議を踏まえ、また、これまで内閣官房としては三法の取り組みを中心に関係省庁と協議をしていたわけでございますが、法令の検討状況そしてまた環境整備の推進、進捗状況についても改めて直近の情報を把握する必要があることから、昨日開いたところでございます。

 また、いつを目標とするのかという点でございます。先ほど申し上げましたように、内閣官房としても、関係省庁と協力をしながらそれぞれの課題について進めていきたいというふうに考えているところでございますが、いつという点につきましては、これはなかなか申し上げにくい部分がございます。各施策の効果等の若年者を含む国民への浸透の程度、国民のやはり意識を踏まえる必要があるのではないか。もとより、最終的には国会の御判断を仰ぐという形になろうかと思います。

 以上でございます。

布村政府当局者 お答えさせていただきます。

 この六・三・三・四制及び義務教育が九年間ということは、先生御案内のとおり、戦後、当初の学校教育法で定められたところでございます。それ以降、基本的には変わっておりませんけれども、高等専門学校制度ですとか短大制度、専修学校、各種学校制度という形で、多少幅を持つ複線化の方向には向かっていますけれども、基本的に六・三・三・四制、義務教育九年というのは変わっていないところでございます。

 お尋ねの学校の段階につきましては、初等教育六年間、中等教育六年間、高等教育ということで、児童生徒、学生の発達段階に応じて、国際的にはおよそ初等教育、中等教育、高等教育という形に分かれております。中等教育につきまして、前期の中等教育が中学校、後期の中等教育が高校に相当しております。

 この区分につきましては、学校教育法では普通教育と専門教育という形で区分してございまして、小学校の目的として、義務教育として行われる普通教育のうち基礎的なものを施すことを小学校の目的としてございます。それから中学校につきましては、小学校における教育の基礎の上に、義務教育として行われる普通教育を施すことを目的とするということで、この普通教育が、全ての児童生徒に共通に学んでもらいたいという内容を示す言葉になってございます。

 一方、高等学校につきましては、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、高度な普通教育及び専門教育を施すことを目的とするということで、義務教育段階の普通教育というものと、高校の段階では、それをより高度化させた教養的な普通教育と専門教育を施すという形で位置づけ、それで、小学校、中学校、高校の目的をそれぞれ規定し、そのうちの九年間、小学校、中学校の九年間を義務教育というふうに位置づけてございます。

 なお、この六・三・三・四制につきましては、今後、教育再生実行会議におきましても御議論の対象となるというふうに伺っております。それらを踏まえて、また今後検討すべき課題であろうかというふうに受けとめてございます。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 一点、内閣官房に、先ほどとのかかわりで質問したいと思うんですが、先ほど、昨日の第六回検討委員会での検討状況についての説明がありました。そして、選挙権年齢と成年年齢の十八歳への引き下げの今後の見通しについてもなかなか難しいという、今、直近答弁もあったわけですが、昨年二月も、審査会をやって翌日に第五回をやって、そしてきょうは、この審査会の前日に、きのう第六回をやったということですけれども、では、第七回というのは、次の段階で、見通しを立ててやれるというのは、いつ開催ということで大体今考えるんですか。

河内政府当局者 お答え申し上げます。

 今の時点で、いつ開催というのが決まっているわけではございません。ただ、昨日の第六回検討委員会におきましても、三つの指示事項が出ております。この点につきまして鋭意具体的な検討を進め、それの状況を見つつ、適宜、委員会を開いていきたいと考えているところでございます。

笠井委員 鋭意、適宜というのは、もう本当にいつかわからないということだと思うんです。

 私、ちょっと意見を述べたいと思うんですが、政府の説明は、昨年の二月二十三日の審査会あるいはその翌日の第五回の年齢条項の見直しに関する検討委員会以降、一年三カ月できのう第六回をやったということでありますけれども、選挙権年齢も成年年齢も、多少の検討作業はあったかもしれないけれども、基本的には、焦点の課題については進んでいないし、今後も見通しは立っていないということであります。

 そもそも、振り返ってみると、この改憲手続法というのは、二〇〇六年の第百六十四だと思うんですけれども、通常国会の会期末直前のちょうど五月二十六日、今ごろだったわけですが、自民・公明案と民主党案ということで提出をされました。七年前ですけれども、私もちょうどこの近くの席に座っていましたが、私自身も、審議未了ということが明らかな法案の議論を開始したことは異例だということで、その場で批判をさせてもらいました。

 その後、海外調査を挟んで実質の審議が始まったのが、二〇〇六年の秋の第百六十五臨時国会でありました。提出された自民・公明案というのは、当初、投票権年齢を二十歳にしていたわけです。それを、その臨時国会最後の特別委員会になった二〇〇六年の十二月十四日、そこで、提出者の当時の船田理事が、投票権年齢を十八歳に修正するということと、選挙権年齢、成年年齢も十八歳にしていくという旨の発言をした。

 ところが、投票権年齢を十八歳にする修正案及び選挙権年齢と成年年齢の十八歳への引き下げの経過措置が附則第三条として出てきたのは翌年、二〇〇七年の三月二十七日で、併合修正案ということで出されたわけですが、突然の出来事だということで私も驚いて、そのときを覚えております。

 特別委員会での趣旨説明は三月二十九日、法案の採決は四月十二日で、この間審議が行われたのは、三月二十九日と四月五日の公聴会それから四月十二日と三回だけです。

 国民は徹底審議を求めました。先ほど中谷委員も質問されていましたが、ああいう議論をあのときもっとやらなきゃいけなかったわけですよ、政府に対してだって。それもやらずに、提出者は、とにかく附則に盛り込んで、三年間で結論を出すから法案を通してくれとあくまで押し通したわけです。

 民主党から先ほどお話がありましたが、合意形成ということでなくて、そういう意味では、中身の議論をいろいろ詰めてやっていたけれども、そういう状況の中で民主党はこの法案に反対したわけですよね。

 民主党の当時の理事は、安倍政権が憲法記念日までに通せと言った、私の内閣で改憲と言った、そうした安倍さんが謝らなければ、もう憲法議論はできないとまで言ったわけですよ。そういう状況で押し通した経過があった。

 この附則三条というのは、投票権年齢という法律の根幹にかかわる条文です。法案審議の際に、提出者の船田議員は何と言われていたかというと、公選法、民法、これは、国民投票法案が十八歳にする大前提として、少なくともこの二つは改正しなければならない、こう言われました。それから、公選法の規定を変えるということが最低限の条件ということも参議院の審議の中で言われました。答弁したわけです。私たちはそれでよしとしなかったわけですけれども、少なくとも提出者は、法成立の暁には三年間で公選法、民法等を十八歳に引き下げるということを言ったわけです。明言したわけです。それで通してくれと言ったわけです。

 その確たる見通しもなく約束していたことになるわけですが、結局、ところが、法成立後六年たっても、十八歳問題も結論が出ていないし見通しも立っていないというのが、今日この時点なわけです。

 こういう状況のもとで、法案審議の際の提出者自身の明確な国会答弁があるわけですが、その提出者自身がそれをほごにして、選挙権年齢と成年年齢の十八歳の引き下げを棚上げにして、投票権年齢のみを十八歳で先行させる法改正を考えないといけないときょうも言われましたが、これは本当に、そういう切り離しというのは、提出者の言い分からしても断じて許されないということを言わなきゃいけない。

 投票権年齢とともに選挙権年齢、成年年齢も十八歳にするという提出者がこだわってきたその前提と最低限の条件が崩れてしまっているのが現実であります。それが三年でできなくて、六年たってもできていない、見通しがないというわけですから、もとに戻って改憲手続法は廃止するのが筋だ、ここの議論になると思うんです。

 なお、選挙権年齢と成年年齢、世界の趨勢に倣って、これ自身は改憲手続法とかかわりなく速やかに十八歳にすべきなのは当然だということは、申し上げておきたいと思います。

 以上でございます。

保利会長 今現在で四名の方の札が立っております。ちょっと時間の関係もございますので、四名の方の意見開陳で一応ピリオドを打ちたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

山口(壯)委員 民主党の山口壯です。

 今、年齢の十八歳引き下げということに対して、役所の方から、環境整備している、あるいはその検証も行わなきゃいけない、あるいはいろいろな検討を行うというところで、結局、十八歳引き下げに対するコンセンサスは国会にほぼできているのではないかと私は思うんですけれども、それに対して行政が必ずしもできていない。多分、役所というのは、前例をよく考えて、どうやって、何で難しいのか、何でできないのかというのを説明するのが仕事ですから、しかし我々政治家というのは、やはりそこを、前例を打ち破って新しい法律をつくっていくというのが仕事ですから、そこにまだギャップがあるのかもしれません。

 ただ、昔の武士でいえば、もう十五歳で成人になっていたわけですから、昔の武士の時代に学習指導要領なんというのはなかったわけで、私はきょうちょっと文科省の話を聞いていて、学習指導要領で人間をつくっていくというのは、ちょっと私は非常に強い違和感があります。

 人間というのはいつまでたってもなかなか完全ではないし、何をやったら完全だということもないということを考えれば、そういう意味では、この十八歳に引き下げるというところをまず先に心合わせをして、そして、例えば消費者被害とかということに対して心配があるのであれば、そういうセーフティーネットをどうつくるかというところを考えていくというのが、今のこの国会における雰囲気、雰囲気というか一つのコンセンサスになりつつあるんじゃないかと思うんです。

 そういう意味では、きょう我々は特に役所からいろいろ意見を聞いているわけですけれども、やはりこの政治の場で、まず十八歳の引き下げというところ、これは、人間を信じて、そしてその人間が間違いをするのであれば、間違いをしたときのためのセーフティーネットをつくってもらおうという指示を我々はメッセージとして出す時期に来ているんじゃないのかなというふうに思います。

 我々が政権をとらせていただいて、民主党になったらいろいろなことをもっともっと役所に対してもがんがんがんがん言って、やるんじゃないかという期待をしてもらったのが、必ずしも十分じゃなかったのかもしれません。だけれども、どうやってこの閉塞状況を打ち破るかというところに国民の総意があるように私は今も思っていますから、そこら辺は役所の方でもよく感じていただいて、そして、この十八歳引き下げというところの意味をどうやったら実現できるのか。

 今聞いていると、環境整備がまず先だ、その検証はいつになるかわからない、笠井さんの議論でも、次の検討はいつかということに対してもはっきりした答えはないということで、先に我々が国会の場で、十八歳引き下げということを大きな、合意されたメッセージとして出すということの重要性をきょうは感じた次第です。

 質問でもありませんから、答えは要りません。

 以上です。

山下委員 自由民主党の山下貴司でございます。

 会長、どうも御指名ありがとうございます。

 私は、中谷先生、斉藤先生、山口先生の御発言の関連で、総務省に対して、選挙権年齢の引き下げに関する検討状況について質問させていただきたいと思います。

 この総務省の御説明を見ると、結局、言っていることは、法律体系全体の整合性を図りながら進めていく必要があるんだ、だから、民法成年年齢や少年法の適用対象年齢が変わらない限りは、我々は変える必要がないんだという理由しか実は書いていないわけであります。

 確かに、それらが一致してできれば望ましいことではありますけれども、この国民投票法と最も関連する選挙権年齢の引き下げについて、それを引き下げることがどういう影響があるのかということについての独自の理由があるのか、それを総務省にお伺いしたいと思います。

 と申しますのは、総務省が先ほど御説明いただいた民法の成年年齢についてでございますけれども、これについては、要するに、法律行為をする能力があるかないかを選挙権に係らしめるということでありますが、つい先般、国会は、民法の成年被後見人について選挙権を与えるという政治判断をしているわけであります。この時点で、この総務省の御説明というのは破綻しているのではないかと思うのが一点。

 そして、少年でございますけれども、ここで、少年は可塑性があるということで、刑事手続ではなくて少年保護手続と手続を変えましょう、処分も、刑事処分ではなくて保護処分にしましょうという、少年保護の目的からやっているものであって、それと選挙権とは違うのではないか。選挙権の年齢の引き下げというのは、刑事罰に係るかどうかではなくて、若年者、特に大学生や社会人となった者の政治参加をどのように認めるのかという観点から考えられるべきものであると思っております。

 そういった観点から、総務省にいま一度お伺いしたいのが、要は、民法や少年法と一緒にしなきゃいけないんだという以外に、選挙権年齢を引き下げたら困るんだ、あるいはこういうデメリットがあるんだということを省としてお考えなのかどうか、御回答いただきたいと思います。

米田政府当局者 私どもは、この投票法の附則の規定に従いまして、十八歳に選挙権年齢を引き下げるということを前提にして検討しておりますので、その点で、まさに民法、少年法とずれたことの問題点ということを指摘させていただきましたけれども、それ以外のところで特段の支障があるというふうには考えておりません。

山下委員 ということは、民法の成年年齢や少年法の適用年齢と切り分けられるんだという判断があった場合には、総務省としては選挙権年齢の引き下げについては特段問題は考えていないということでよろしいですか。

米田政府当局者 私ども、今申し上げましたとおり、民法、少年法の年齢とずれた場合には、やはり大きな、選挙そのものに与える影響、選挙運動に与える影響があるということでございますので、基本的に望ましくないと考えておりますけれども、そこが一緒であれば、投票権年齢十八歳に引き下げということでの検討を進めておりますし、実務的に申し上げましても、現在、選挙人を登録する手続等につきましても既に着手をしているところでございます。

坂本(祐)委員 日本維新の会の坂本祐之輔です。

 選挙年齢、成年年齢の十八歳への引き下げについて意見を述べさせていただきます。

 私は、昨年十二月に衆議院議員に就任をし、今国会より、衆議院の憲法審査会の委員として憲法改正の論議に参加をさせていただいております。

 憲法改正国民投票法の平成十九年の成立後、憲法審査会が衆参両院に設置されたにもかかわらず、その後、四年以上にわたって憲法審査会の委員の選任すら行われず、一度も開かれることがなかったとの説明を伺っております。国会みずからが設置を決めた憲法審査会が活動せず、その結果、国会みずからが残したいわゆる三つの宿題に何ら対応もせず、事実上放置してしまったことは、国会の怠慢と言わざるを得ないと私は思います。

 昨今、憲法改正をめぐる議論が熱を帯びる中、憲法改正が現実の政治課題となりつつあります。このような中で、これ以上これらの宿題から目を背けることは、国民に対し、真に説得力のある憲法論議を行っているとは言えないと考えます。

 憲法審査会がようやく始動し、憲法自体の論議が進んでいる現在、このような国会の不作為の状況を一刻も早く解消することが、国の唯一の立法機関として国民の負託を受けている我々国会議員の責務であり、我々日本維新の会の役割であるとも考えております。

 日本維新の会は、これら三つの宿題に対応するために、五月十六日に、三つのうちの二つについて国民投票法の改正案を提出いたしました。特に選挙権年齢や成年年齢等の十八歳への引き下げについては、国民投票の投票権年齢を先行して引き下げ、選挙権年齢や成年年齢については引き続き検討していくといたしました。

 これまで憲法審査会の各条章ごとの検証作業の中で深めてきた憲法論議を一層前進させていくためにも、国民投票法の三つの宿題の解決について、憲法審査会のこの解決に向けての討論は喫緊の課題であると考えております。

 以上、私の意見でございます。

小池(政)委員 みんなの党の小池政就です。

 一点、手短に、文科省に確認をさせていただきます。

 投票権の引き下げということにつきましては、世代間格差がこれほど大きい中、やはり若年層の声を酌み取るということは必要であると思いますが、一方で、判断能力、またその基盤となる最低限の知識がどの程度かということを確認するために、ちょっと参考としてお聞きさせていただきたいと思います。

 そもそも、現状の国家体制等がわからずに、例えば一院制の問題とか首相公選制といったテーマを提示して、判断できるのかなという疑問もあります。確かに、家庭ですとか地域ですとか社会教育、そういうところの差はある一方で、やはり学校教育の影響というのは否定できないところであると思います。

 その中で、現在、例えば現代史でありますとか、それから公民の中で政治・経済でありますとか、それがどの程度教えられているのかということについて、先ほどちょっと中身の話はありましたけれども、客観的にそれがわかるような資料もしくは指標等があれば示していただきたいと思います。

布村政府当局者 ただいまお尋ねのありました現代史あるいは政治に係る教育の量的な御説明で、わかる範囲でお答えさせていただきたいと思います。

 中学校の社会科の歴史的分野というのがございますけれども、大きく指導項目が、六つの大項目があります。そのうち一つが戦後史ということで、「現代の日本と世界」という項目が立ってございます。

 それから、高等学校においては、日本史A、Bという科目が設定されております。日本史Aというのが、主として近現代史を中心として学ぶものでございます。そこでは三項目のうちの一つが戦後史を扱う「現代の日本と世界」という位置づけで、項目としては、三つのうちの一つが現代史になります。日本史Bという科目は、全体で大きく六つの大項目があります。そのうち一つが戦後史を扱う「現代の日本と世界」という位置づけになります。

 それから、政治に関する教育は、中学校の社会科の公民的分野、これは四つの大項目があります。そのうち一つが政治教育で、具体的には「私たちと政治」という大きな項目が立ってございます。

 それから、高校における現代社会は、全体で七つの項目が立っています。そのうち二つが政治に係る教育の内容で、一つは「現代の民主政治と政治参加の意義」、もう一つは「個人の尊重と法の支配」ということで、これらの中で、先ほど御指摘のありました現行憲法の、国会あるいは行政の現行制度についての記述がありますが、それをどこまで十分認識して一院制のあり方について議論ができるかという個々の生徒の評価については、なかなかお答えしづらいところがあるというのが現状でございます。

 また今後、よりわかりやすい資料がありましたらお届けさせていただければと思います。

小池(政)委員 私の感覚としては、非常にそこら辺が短いような、割合が少ないような感覚もいたしますので、また分析のほどよろしくお願いいたします。

保利会長 以上で選挙権年齢・成年年齢の十八歳への引下げについての自由討議は終了いたします。

    ―――――――――――――

保利会長 次に、公務員の政治的行為の制限と国民投票運動をめぐる問題について、政府等から順次説明を聴取いたします。衆議院法制局法制企画調整部長橘幸信君。

橘法制局参事 それでは、御指示に従いまして、二つ目の宿題である附則第十一条の公務員の政治的行為の制限に係る法整備に関しまして、国民投票法制定時における議論の経過等について御報告申し上げます。

 先生方、お手元配付の衆憲資七十四号、これの表紙と目次をおめくりいただきまして、一ページ目の条文をごらんいただければと存じます。

 国民投票法附則第十一条におきましては、先ほどの附則第三条の場合と同様に、この法律が公布されてから三年間の準備期間を経た平成二十二年五月までの間に、公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないようにとの観点から、国公法や地公法等の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとされております。

 その趣旨は次のようなものでございました。

 すなわち、現行の国公法や地公法、その他一般職、特別職のさまざまな公務員に関する法令の規定では、公務員の政治的中立性の確保の観点から、一定の政治的目的を有する政治的行為が禁止されているところでございます。しかし、憲法改正は主権者国民としての究極的とも言える権利行使の場面であり、そもそもそのような公務員制度の土台ともいうべき国家統治の基本構造を決する場面であることに鑑みれば、公務員といえども、みずからの意見を表明したり、それに基づいて他人に対して賛否の勧誘をする行為ぐらいは許容してもいいのではないのか、あるいは、許容すべきではないのかという問題提起がなされたところでございました。

 しかし、これに対しましては、憲法改正の国民投票への賛否はいいとしても、それにとどまらず、他の政治的目的、例えば特定政党への支持、不支持といった目的をもってする政治的行為、例えば政党機関紙等の配布などを伴う場合もあることから、純粋に国民投票の賛否に関するものに限定することを含めて、どのような行為を許容し、どのような行為については禁止することとするのか、その具体的な切り分けを検討する必要があるとされ、この切り分けについては、本法制定後三年間の準備期間の間に、本憲法審査会において具体的な制度設計の詳細を詰めるべきとされたところでございました。

 なお、ここで御注意を要するのは、今申し上げたところからも容易に御理解いただけますように、この二つ目の宿題は、公務員法制全般に関する見直しという観点からのものではなくて、あくまでも憲法改正国民投票に関する限りのものであり、憲法改正国民投票法の改正という形で、本審査会における議論を通じて議員立法によって措置することが当然の前提とされていたということでございます。この点、先ほど御議論いただきました一つ目の宿題が政府部内における検討を要請していたものであることとはその趣旨が異なっていることについて、あらかじめ念頭に置いていただければ幸いに存じます。

 さて、以上の附則第十一条の概要に引き続きまして、あわせて、これが規定されるに至った経緯についてもごく簡単に御報告させていただきたいと存じます。

 同じ衆憲資七十四号をおめくりいただきまして、その四ページの「法案・修正案の推移」をごらんいただければと存じます。

 この表にありますとおり、提出当初の法案におきましては、自民・公明案においても民主党案におきましても、公務員の政治的行為に関する規定は設けられてございませんでした。それは、国民投票法の問題ではなくて、一般的な公務員法制の問題であると考えられていたからでございました。

 しかし、先生方が御議論を進められていく中で、資料を一枚お戻りいただきまして三ページをごらんいただきますと、現行の国公法、人事院規則による規制と地方公務員法による規制とのごく単純な対比を記した図表がございますが、国公法も地公法もともに、憲法改正国民投票のような制度を念頭に置かずに制定されているものですから、国民投票のためだけの純粋な勧誘行為のようなものを想定いたしました場合、国公法と地公法とでその規制にばらつきが生ずることがわかってまいりました。

 この現行法の規制の詳細につきましては、後ほど人事院及び総務省の御担当者の方から御報告があると存じますけれども、いずれにいたしましても、全国一律に行われる国民投票の場面に関しては、国家公務員も地方公務員も基本的に同様の規制に服するような制度設計が望ましいとの観点から検討がなされるべきとされていたところでございます。

 その趣旨が、この附則十一条に定められているところであり、ここに盛り込まれました法整備の方向性というものは、先ほども御報告いたしましたように、一定の行為についてはこれを許容すべきこと、そして、許容されない行為の範囲を明確に切り分けることというものであったわけでございます。

 以上、附則十一条制定の経過も含めて、その意味及び趣旨に関する基礎的な事項について御報告をさせていただきました。ありがとうございました。

    〔会長退席、武正会長代理着席〕

武正会長代理 次に、人事院事務総局職員福祉局長井上利君。

井上政府当局者 人事院からは、日本国憲法の改正手続に関する法律附則第十一条に規定される、公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないよう、必要な法制上の措置を講ずるものとするとの規定と、現行国家公務員制度における政治的行為の制限との関係について御説明します。

 国の行政に携わる一般職の国家公務員は、その職務遂行に当たっては、憲法第十五条に定める国民全体の奉仕者として政治的に中立な立場を維持し、一部の政党や政治的団体に偏することがないようにすることが求められております。

 他方で、憲法上、表現の自由としての政治活動の自由が保障されており、公務員に対する政治的行為の制限も、表現の自由との関係で必要かつ合理的な範囲にとどまることが求められます。

 このため、一般職の国家公務員については、国家公務員法第百二条及び人事院規則一四―七により、一定の政治的目的をもってする一定の政治的行為が制限されることとなっています。具体的には、人事院規則で政治的目的と政治的行為をそれぞれ限定的に列挙した上で、あくまで人事院規則に掲げられる政治的目的をもってする人事院規則で定める政治的行為を制限するという形をとっています。

 制限の枠組みの基本となる政治的目的としては、衆参両院議員の選挙または地方公共団体の首長、議会の議員の選挙における選挙期間中の特定の候補者に対する支持、反対、特定の政党などに対する支持、反対等を掲げています。他方、地方公務員法と異なって、公の投票における支持、反対などは政治的目的として規定されていません。

 したがって、国民投票に際して行う憲法改正に関する支持、反対については、人事院規則で政治的目的として掲げられている事項には該当しませんので、国家公務員法が定める政治的行為の制限の対象とはなりません。

 このことは、国民投票法附則第十一条において、「公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないよう、」と規定されていることと整合しているものと理解しております。

 一方、さきに申し上げましたとおり、特定の候補者や特定の政党への支持、反対等を目的とした一定の政治的行為は国家公務員法の制限の対象となりますので、例えば、国民投票運動に際して、実質的に特定政党への支持、反対を目的として、多数の人に接し得る場所で意見を述べること、署名運動やデモ行為の企画などを行うこと等は現行制度上の政治的行為の制限の対象となるものと考えます。

 このように、一般職の国家公務員については、公務員の国民投票運動の自由確保の観点から規制の対象外とする行為と公務員の政治的中立性確保の観点から規制の対象となる行為とは、制度上切り分けられていると考えております。

 いずれにせよ、憲法改正に係る国民投票運動と公務員の政治的行為の制限との関係については、国民投票法附則第十一条を踏まえ、憲法審査会において、必要があれば国民投票法における法制上の措置について御議論されることとなっているものと理解いたしております。

 なお、お手元に、先ほど御説明いたしました現行の一般職国家公務員の政治的行為の制限の概要と関係条文を資料として配付させていただいております。

 以上でございます。

武正会長代理 次に、総務省自治行政局公務員部長三輪和夫君。

三輪政府当局者 続きまして、総務省から御説明を申し上げます。

 私どもからは、国民投票法附則第十一条に規定をされます、公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないよう、必要な法制上の措置を講ずるものとするとの規定と、現行地方公務員制度における政治的行為の制限との関係について御説明を申し上げます。

 一般職の地方公務員は、公務の中立性や公務員の全体の奉仕者としての性格の確保のために、政治的中立性を確保することが求められております。

 このため、一般職の地方公務員につきましては、地方公務員法第三十六条におきまして、公の選挙または投票において特定の人または事件を支持し、またはこれに反対する目的をもって、公の選挙または投票において投票をするように、またはしないように勧誘運動をすること、署名運動に積極的に関与すること、金品の募集に関与すること、文書を庁舎に掲示するなど、地方公共団体の庁舎、施設、資材または資金を利用し、または利用させること等が禁止をされております。

 この政治的行為の制限に違反する行為につきましては、刑事罰は科されておりませんが、懲戒処分の対象となります。

 こうした現行法の規定は、憲法改正国民投票を念頭に置かずに制度設計をされております。公の投票につきましては、制度趣旨としては住民投票などを想定いたしておりますけれども、字義上は国民投票も対象となり、国民投票運動も同法において禁止されている政治的行為に当たる場合があると考えられます。

 なお、附則第十一条は、国家公務員法、地方公務員法の定める一般的な公務員の政治的行為の制限について、国民投票運動の自由確保と公務員の政治的中立性の観点から、憲法改正の国民投票法上いかなる特則を設けるべきかという問題として国会において議論されてきたものと理解をいたしております。

 総務省といたしましては、憲法審査会における御議論を踏まえながら、その状況に応じて、関係府省とも協議しつつ適切に対応してまいりたいと存じます。

 なお、次ページ以下に、ただいま申しました制度の概要の資料、また参考条文を添付しているところでございます。

 以上でございます。

    〔武正会長代理退席、会長着席〕

保利会長 以上で政府の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

保利会長 これから自由討議に入りたいと存じます。

 発言を希望される方は、ネームプレートをお立てください。

船田委員 自民党の船田でございます。

 この公務員の国民投票運動における制限につきましては、我々の、当時立法した立場としまして、次のような趣旨がございました。

 国民投票運動においては、できるだけ多くの人々に参加をしていただきたい。また、政党や人を選ぶ選挙ではなく、この国民投票は政策を選ぶ、憲法改正是か非か、どう変えるかという高度な政策を選ぶわけでありますので、以上のような観点から、公務員といえども、特定の政党を支持しない、あるいは地位利用ではない、そういう形での意見表明や勧誘運動までは制限を加えないようにしたい。これが私どもの趣旨でございました。

 ところが、国家公務員と地方公務員では、その運動の制限の対象がそもそも異なっている、このためにさまざまな混乱が起こりかねないわけでありますので、当時、公務員であれば、国であれ地方であれ、同じ対応にするようにしてほしいというのが私たちの考え方でございました。

 そこで、質問に移りますが、これはいずれも総務省、場合によっては人事院にお願いしたいと思うんですが、一つは、公務員の政治的行為の制限対象について、今説明がありましたように、国家公務員については、人事院規則の中で、公職の選挙での投票勧誘と書いてありまして、一方、地方公務員の場合には、地方公務員法において、公の選挙・投票での投票勧誘、こうなっております。

 この規定をそのまま適用することになりますと、国家公務員においては、公の投票とも言える国民投票の投票運動については特に制限対象になっていない。それから、地方公務員の場合には、公の投票となっておりますので、これを国民投票と読み取れば、国民投票運動においての制限が加わる、このような違いがあります。

 そもそも、公の投票という言葉を地方公務員法の中に入れたのは、先ほどもちょっとありましたけれども、いわゆる住民投票というのを前提としたものであると思いますけれども、現状において、この矛盾あるいはそごをなくすためには、人事院規則そして地方公務員法の今申し上げた部分については、これを修正し、そして同じ表現にすべきではないかと思っておりますが、それについての考え方をお聞かせいただきたいのが一つ。

 もう一つの質問は、国家公務員は、政治的行為の制限規定に触れた場合に、罰則により対応するわけでありますが、地方公務員の場合には、懲戒処分の対象とはなりますが、罰則は設けておりません。この違いがなぜ生じているのか。また、この違いについては将来において整合性をとる必要があるのではないかと思いますが、総務省、人事院の御意見をいただきたいと思います。

 以上です。

井上政府当局者 最初に私の方から、国家公務員法に基づく人事院規則に公の投票という規定がないのはなぜかという点についてお答えしたいと思います。

 制限の対象となる行為を規定する人事院規則一四―七におきましては、昭和二十四年に現行制度が創設されて以来、現行のように、公職の選挙や最高裁裁判官の国民審査など、公の投票に該当するような投票について個別具体的に列挙した上で、これに対する賛成または反対の目的を規定しているところでございます。

 現行制度におきまして、政治的目的として制限の対象となる投票を現行のように個別に列挙する形としているのはどのような理由であるのかというのを現時点で申し上げることは難しゅうございますが、行政の政治的中立性の確保という国民全体の共同利益との関係で、表現の自由という重要な基本的人権を制約する制度であることを踏まえまして、規制の対象となる政治的目的を法令で限定的に規定する現行のような形になっているものというふうに理解をいたしております。

 それで、人事院規則に新たに公の投票を政治的目的として加えるということにつきましては、そういたしますと、政治的行為の制限の規制対象範囲が拡大をするということになります。公務員の政治的行為の制限につきましては、政治的中立性の確保と表現の自由の保障との両面からさまざまな考え方や意見があるところでございますので、慎重な対応が必要なのではないかというふうに考えております。

 なお、地方公務員法との関係につきましては、私ども、直接地方公務員法を所管しておりませんので、コメントは控えさせていただきたいというふうに思っております。

 以上でございます。

三輪政府当局者 お答え申し上げます。

 まず第一点目の、国家公務員法と地方公務員法の違い、その理由なり、あるいはこれを修正して合わせるということについての御指摘でございます。

 法律が制定された当初の昭和二十年代の詳細な議論というところまで、なかなか難しい点が私どもとしてもございますけれども、こういうような違いになっているというのは、規定の仕方の違いということであろうというふうに思っております。

 国家公務員法は、人事院規則に具体的な政治的目的と政治的行為を規定するということを委ねているということでありますのに対しまして、地方公務員法は、法律で政治的目的を規定した上で、法律及び条例で政治的行為を定める、このような規定の仕方というところの違いがあるものだろうというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、こういった違いを合わせるということにつきましては、公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他の意見の表明が制限されることとならないよう、必要な法制上の措置を講ずるものとする、こういう国民投票法附則第十一条の趣旨からいたしまして、何らかの検討が必要であろうというふうには思っておりますが、そういったことをまさに国会においてるる御議論をいただいているところだというふうに思っておりますので、私どもといたしましては、国会の御議論を十分踏まえまして適切な対応をいたしたいというふうに思っております。

 それから、二点目の、罰則についてのお話でございます。

 国家公務員の政治的行為の禁止規定に違反した場合、罰則があるのに対しまして、地方公務員の方につきましては、法律上、その違反行為に対しては罰則がないという、この違いでございます。

 まず、一般的に申し上げますと、地方公務員の政治的行為の制限につきましては、地方公務員法制定時、昭和二十年代でございますけれども、その当時に、懲戒処分をもって足りるという考え方から、罰則を付さないこととされたものでございます。

 一部の規定につきましては、政府提案の段階で罰則があったようでございますけれども、そういったことも国会の御審議の過程で修正をされて、罰則なしに変わった。具体的には唆し、あおり行為等でございますけれども、そういうものにつきましてのみ罰則を政府提案では用意をしておったようでございますけれども、これも国会の御審議を通じて修正して、罰則はなくなった、このような経緯をたどったというふうに理解をいたしております。

 それからまた、地方公務員の政治的行為の制限は、法律で定める行為だけではなくて、条例で一定定めるということもできる仕組みになってございます。したがいまして、こういったものを含めて、一律に法律上罰則を科すということは困難ではないか、そのような議論も当時あったようでございます。

 いずれにしましても、公務員の政治的行為の制限につきましては、基本的人権にかかわる問題でございまして、これまでも、立法府、司法府でもさまざまな御議論が行われてきたところでございまして、その取り扱いにつきましては慎重な議論がされるべき問題だろうというふうに考えております。

 さらにまた、国民投票に係る公務員の政治的行為の制限についての扱いということになりますれば、憲法審査会での御議論ということで、いろいろな御議論がされるものだろうというふうに私どもとしては理解をしているところでございます。

 以上でございます。

大島(敦)委員 憲法改正案が国民投票に付されるためには、両院の三分の二の賛成で発議されることが条件となっておりまして、衆参両院の中で合意形成に向けてさまざまな論点についての精査が行われ、かつ、その合意形成に向けての歩みについても報道機関等で国民にあまねく周知されると想定をしております。ですから、三分の二の賛成で発議されるのであれば、相当多くの国民がその改正案についての理解が深まっているだろうということを想定いたします。

 そして、憲法というのは、今後の統治のあり方や人権保障のあり方など、将来の国のあり方を選ぶ投票でもありまして、むしろ、広く一般国民が議論をして判断をしていくことが重要だと考えております。

 公務員についても同様でございまして、国民投票運動についても、もっとおおらかであってよいかと考えております。

 国民投票法が制定される過程の中で、民主党としては、当時、修正案を平成十九年に出しておりまして、「公務員が国会が憲法改正を発議した日から国民投票の期日までの間に行う国民投票運動及び憲法改正に関する意見の表明並びにこれらに必要な行為については、次に掲げる規定は適用しない。」ということで、全面的に適用除外にしているのも、おおらかに議論をし、深めた方がいいという考えでございます。

 以上です。

葉梨委員 自由民主党の葉梨康弘でございます。

 私も、この憲法改正国民投票法案の立案にかかわった者として、今、大島委員の方からも御議論がありましたけれども、当時、全面的に国民投票に関するものは除くべきであるという議論もありましたが、さはさりながら、国民投票に名をかりた形で別途の政治的目的をもって行うような政治的行為までが除かれてしまうということでは問題があるのではないかということで、宿題といいますか、検討事項ということで、さらに検討、協議ということになったような経過を思い出しております。

 そこで、基本的には、私は、地方公務員法の世界から、どういうような形で純粋な憲法改正の意見表明、これは、少なくともこの点については当時も多くのコンセンサスがあって、さらにそれをどこまで広げるかという話だったと思いますけれども、これをどのような形で自由にすることを担保するかということだと思うわけです。

 国家公務員法の世界においても、純粋な国民投票に係る意見表明については政治的目的にはならないんでしょうけれども、それに名をかりた形で、先ほど、特定の政党あるいは特定の候補者を支持する、反対するということについての例示はありましたけれども、例えば、まず人事院に一問です。

 私は現在の内閣を強く支持している、それゆえ現内閣が政治生命をかけている今回の憲法改正に賛成だ、憲法改正に賛成して現内閣への支持を大いに盛り上げよう、そういうような目的を述べて、人事院規則の一四―七の六項各号に掲げるような行為を行えば、いかにこれは憲法改正の国民投票運動を装っていても、禁止される政治的行為に当たる場合が相当多いのではないかと考えます。明確に答弁を願いたい。

 そして、そういうようなことがケースとしてあるということであれば、やはり人事院としては、たとえ憲法改正国民投票運動を装っているとはいっても、政治的行為として禁止される場合があるということを具体的にわかりやすく示してやる必要があると思います。特に、一般職の国家公務員の政治的行為の規制というのは教育公務員にも準用されるということで、非常に大きな問題だと思います。

 以上二点について、簡潔にお答えを願いたいと思います。

井上政府当局者 お答えいたします。

 一般職国家公務員の政治的行為の制限について規定する人事院規則一四―七は、制限の対象となる政治的目的として、特定の内閣を支持しまたは反対することを掲げているため、特定の内閣を支持しまたは反対する目的をもって第六項各号に掲げる行為を行った場合には政治的行為の制限に抵触することになります。

 御指摘のようなケースは、憲法改正に関する意見表明を行ってはいるものの、その理由として現内閣への強い支持を述べるなど、特定の内閣を支持する意図を明確に示す発言を行っておりますことから、特定の内閣を支持しまたは反対することという政治的目的に該当するものと考えられます。したがって、そのような政治的目的をもって第六項各号に掲げる行為を行うことは、禁止される政治的行為に該当するものと考えられます。

 それから、二点目の、禁止される場合があるということを具体例を示してわかりやすく示すことが必要なのではないかという点でございますけれども、この点につきましては、国民投票法附則第十一条に基づき講じられる法制上の措置の内容も踏まえまして、どのような行為が政治的行為の制限の対象となるのか、典型的な事例を職員に対してわかりやすく示すなど、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

葉梨委員 ありがとうございました。

 さらにこの憲法審査会の場で議論を深めたいと思います。

 以上でございます。

坂本(祐)委員 日本維新の会の坂本祐之輔です。

 公務員の政治的行為の制限について意見を述べさせていただきます。

 先ほど、十八歳関係の問題について申し上げたところでございますが、日本維新の会が五月十六日に提出いたしました国民投票法の改正案の中で、公務員の政治的行為の宿題についても方向性を提示しております。

 その内容は、国民投票法附則十一条の趣旨を踏まえ、公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘や意見の表明が制限されることのないよう、他の政治的目的を持った政治的行為を伴わない純粋な勧誘行為、意見表明に限って認めることとしております。

 私は、公務員の政治的行為をいたずらに緩和するべきではないと考えております。憲法改正の大義を実現するため、必要最小限の範囲内でその宿題に対応するべきだと考えております。

 以上です。

西川(京)委員 先ほどの葉梨議員の意見と割合趣旨は同じだと思いますが、今回の国民投票法附則十一条に規定されております、公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることのないようにというのが、そもそも私はこれが疑問です。

 それは、国民投票法といいながら、この国民投票の対象となるのが、今の場合、想定しているのが憲法改正でありますから、その憲法改正に関して投票を勧誘するということは、一定の政党なりそれなりがそれぞれ、改正そのものが全て反対という政党もあるわけですから、この国民投票法に関して、自分の意見、さらに勧誘をするということ自体が非常に問題だと思います。

 個人の意見を、賛否を言うことは表現の自由として保障されるべきでしょうが、勧誘ということは明らかにそれは公務員の中立性を超えていることだろうと思います。ですから、一定の政治的目的をもって一定の政治的行為が制限されることとなっていますというこの人事院の一四―七に抵触すると思うんですね。

 要は、単に国民投票に行きましょうと言うことは、客観的に見るとそれほど政治的中立を侵しているとは思えないけれども、現実にその想定する対象が憲法改正という対象であるならば、そこに当然、政党としての表現がはっきりと分かれているわけですから、そのことに明らかに抵触すると思います。

 そして、地方公務員で罰則規定がないというのはやはりおかしいです、その奉職する対象の国民は、市民であり国民であり、同じなんですから、そこは国家公務員と同じように罰則規定を設けるべきだろうと思います。

 以上です。

畠中委員 みんなの党の畠中光成です。

 憲法改正については、幅広く国民の意見を問うべきという考え方から、公選法等に定める場合を除いて、基本的に全ての公務員について政治的行為の制限を見直すべきと考えています。

 一方で、それが組織の活動に利用される懸念も拭い去れません。二〇〇九年の衆院選の際の北海道の教職員組合の活動が、逮捕者まで出し、ついには支援された議員の辞職にまで至ったことなどを考えると、国民投票における公務員の政治的行為は幅広く認められるべきですが、違法行為については厳しく処罰されるべきだと考えます。現行の国民投票法においては、百三条において、公務員、教職員の地位利用の禁止を規定しているところですが、罰則はありません。

 そこでお伺いしたいんですが、過去の選挙において、公務員、教職員の地位利用についてどのくらい違反行為があったのか、また、どのような処罰がなされたのか、教えてください。

米田政府当局者 公職選挙法についてお答えいたします。

 公務員につきましては、公職選挙法の第百三十六条の二におきまして、「その地位を利用して選挙運動をすることができない。」と規定されております。これに違反をして選挙運動をした者につきましては、二年以下の禁錮または三十万円以下の罰金に処する旨の定めがございます。

 一方、さらに、教育者につきましては、公職選挙法の百三十七条におきまして、「学校の児童、生徒及び学生に対する教育上の地位を利用して選挙運動をすることができない。」と規定しております。この規定に違反して選挙運動をした者につきましては、一年以下の禁錮または三十万円以下の罰金に処する旨の定めがございます。

 お尋ねの、最近の違反の件数でございますけれども、警察庁の公開された資料によりますと、過去三年を見ますと、公務員等の地位利用で検挙された件数は、平成二十二年が二件、検挙の人員は二人、二十三年はゼロ、平成二十四年が五件で、検挙人員は八人となっております。教育者の地位利用で検挙された件数は、この三年で見ますとゼロ件でございます。

保利会長 この問題については、教職公務員の問題が非常にセンシティブな問題だと思います。

 例え話で言えば、学校の生徒が先生に、今度憲法改正というのがあるんだそうだね、私は投票権があるんだけれども、先生はどう思うと言ったときに、先生がどういう答えをされるのか、その答えが問題になるのかならないのか。その生徒がうちへ帰って、先生はこれは反対だと言っていたよということをお父さんに言った。お父さんは賛成派だった。そうすると、その問題が具体的な問題として浮かび上がってくる可能性がある。

 そういった問題に対して、教職公務員の扱いについて文部科学省はどういうふうにお考えになるか、意見があったらおっしゃってください。

布村政府当局者 お答えいたします。

 初等中等教育段階の公立学校あるいは公立大学の教育公務員の国民投票運動に関する行為の制限として、先ほど来出ております百三条において、他の国家公務員や地方公務員と同様、第一項によって公務員の地位を利用した国民投票運動が禁止されているということに加えまして、第二項により教育者の地位を利用した国民運動が禁止されているというところが規定がございます。

 具体的に、この規定に対応して、どのような行為が教育者の地位利用に当たるのかというのは、今後、個別具体に検討を重ねていかなければいけない課題ではないかというふうに考えております。

 また、この百三条以外の国民投票運動に関する行為の制限を検討するという際には、現行制度で教育公務員は、政治的行為の制限につきまして、教育公務員の職務の特殊性に鑑みまして、教育公務員特例法十八条によりまして国家公務員法及び人事院規則が適用されるということで、本来であれば地方公務員でありますけれども、教育公務員につきましては国家公務員並みの制限とされているという現行制度の趣旨を踏まえまして、今後は、この検討に当たりましては、国家公務員並びとするという現行制度を踏まえた検討が必要ではないかというふうに認識しているところでございます。

保利会長 先生は意見表明なんだよという気持ちで生徒に答えた。しかし、生徒の方は子供ですから、子供と言っては失礼だけれども、先生がそうおっしゃったんだということをうちへ帰って話をする、ほかで話をするということはあり得る。

 こういうことをどう考えるかということについては、よく文部科学省の中でも検討しておいていただきたいと、会長において要請をいたしておきます。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 端的に意見を述べたいと思います。

 公務員の国民投票運動をめぐる問題について言いますと、先ほど橘部長からも経過の説明があったと思うんですけれども、改憲手続法案が審議された当初は、法案の中の地位利用による禁止規定の問題ということで主に議論がされて、国家公務員法等による政治的行為の制限の問題というのは、私の印象ですけれども、提出者は余り気がついていなかったんじゃないかという感じが、議論を見ていて、参加していて思ったんです。

 私は、地位利用だけじゃなくて、国公法等による政治活動の禁止規定も国民投票運動の場面では適用されて、それが萎縮効果を生むことを指摘してまいりました。同時に、公務員の政治的行為を制限した国公法等の規定そのものが憲法違反だということも言ってきたわけであります。やるならそこも改めなきゃだめだと。

 そうした審議を経て、提出者は、二〇〇六年の、これまた十二月十四日ということになりますが、今、船田幹事が苦笑いされていますけれども、国公法等による公務員の政治的行為の制限規定については全面適用除外とする修正を表明した。

 ところが、翌年、明けて二〇〇七年三月二十七日に、突如、適用除外にしないという併合修正案を提出した。この資料にあるとおりです。これはやはり国民投票運動にかかわる重大な変更だったと思うんですね。

 にもかかわらず、さっきの問題ともかかわるんですけれども、その後の審議というのは、公聴会を含めてわずか三回しかやらなかったわけで、私は、三月二十九日に、また、四月十二日にも公聴会での公述人の意見も踏まえて質問いたしました。

 それは、憲法上、公務員はその職務に対して公正中立が求められているのであって、なぜ一国民として行う国民投票運動に制限が加えられなければならないかという大問題についてであったわけですけれども、しかし議論は、わずかな時間しか審議しなかったので、生煮えのままに自民、公明が採決強行と。だから、きょうだって自民党の委員の皆さんからも政府側に質疑があったり、そもそも当時の提出者の意見と違うという御意見が出たりということになっているんだと思うんですね。

 先週の幹事懇談会でこの問題を議論したときに、国民投票運動と政治活動との切り分けという問題がなかなか難しいんじゃないか、困難じゃないかという意見が与党の幹事からもありました。それほど重大な問題をはらんでいると思うんです。

 政治活動の制限を残せば、先ほどその典型的事例を示すというふうに言われたけれども、現場では国民投票運動を取り締まる側が拡大解釈しかねないし、どこまでが国民投票運動として可能なのかがわからなければ公務員は自由に運動に取り組むことができなくなる。これは自由にやろうというのがそもそも提出者が言われていることですから。そうすると、国民投票運動全体への萎縮効果が非常に大きくなって、結局、公務員ひいては国民の運動を抑え込むということになっていくということになる。この問題はそういう問題だということを指摘しておきたいと思います。

 以上です。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤です。

 既に、質問通告をしたことについてはほとんど出ましたが、改めて整理する意味でもう一度、人事院と文科省、文科省についてはお二人の方にお聞きしたいと思います。

 まず人事院ですが、国民投票運動について政治的行為の制限の対象とはならない、しかし、実質的な特定政党への支持、反対を目的としてはならないということでございますけれども、現実には政党がそれぞれ賛否を明らかにして、多分、政党がその運動の主体になる。したがって、意見表明をしたり運動したりすることは実質的に政党への支持の運動になり得る可能性が非常に強いと現場感覚では思うんですが、この点について人事院はどう考えているかということが一点目の質問です。

 二点目は、教育公務員。初等中等教育、それから高等教育、それぞれ教育公務員がおります。大学で大学の先生が自分の学説や信念に基づいて意見表明するというのは常識的にあり得るんだろうなと。しかし、初中教育の現場では、先ほどの十八歳投票ということになりますと、自分が教えているクラスの中に投票権を持った人もいる。そういう中で、先生はどう考えるんですかと聞かれたときに意見表明せざるを得ないというようなことが、こういうことが許されるのかどうかということについても真剣に考えていただかなくてはいけないと思います。

 それから、きょうは私学部長にも来ていただいておりますが、私立学校に勤めている先生は教育公務員、公務員ではありません。したがって比較的自由なこととなると思いますが、私立学校においても同様な問題がある。しかし、優越的地位を使って投票を誘導するようなことがあってはいけない、私立学校にあってもいけないわけで、この私立学校における学校の先生の国民投票運動についてどのように私立学校では考えているのか。

 以上、三点お伺いします。

井上政府当局者 それでは、第一点目についてお答え申し上げます。

 現行制度上、政治的行為の制限の対象となるのは、人事院規則一四―七第五項各号に掲げる政治的目的を有する場合に限られます。

 少し具体的な例により御説明申し上げますと、例えば、憲法改正の賛否等の意見を述べることを目的とする集会の場で一般職国家公務員が憲法改正に関する賛否等の意見表明のみを行うということは、現行制度上、該当する政治的目的がないため制限の対象とはならないというふうに考えられますが、その際に、特定の政党を支持し、またはこれに反対する意図が明確に認められる発言を行ったという場合には、特定の政党の支持または反対の目的に該当してくるため、制限の対象となり得るものと考えられます。

 御指摘のように、憲法改正の国民投票運動は、さまざまな政党や団体が憲法改正案の各項目について賛否を明らかにして運動をするということが想定されますが、一般職国家公務員がそのような場で憲法改正への賛否等の意見表明のみを行うような場合には、通常、特定の政党の支持または反対の目的には該当せず、制限の対象にはならないものと考えられます。

 以上でございます。

布村政府当局者 お答えいたします。

 初等中等教育段階の公立学校の教員につきましては、まず、この法律の百三条において、公務員の地位を利用した国民投票運動が禁止されていることに加えて、第二項により、教育者の地位を利用した国民投票運動が禁止されているという規定がございます。

 それを踏まえて、どのような教員の行動が国民投票運動として禁止される行動に当たるのかというのは、先ほど保利会長からの御指摘もあり、今後、十分、個別具体に検討すべき課題でございます。

 あわせまして、学校教育につきましては、教育基本法の十四条の第一項で、政治に関する教養を高めるということは重要な課題として位置づけられ、政治的な課題につきまして、学校の中においても十分議論を深める、理解を深めることが必要であります。

 その一方で、第二項では、「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」という政治的な中立性を求める規定もあわせ規定されてございますので、これらの規定をきちっと踏まえた形で、教員の場合、どこまでの国民投票運動が禁止されるのか、どこまでが許容されるのかというのは、国家公務員制度あるいは地方公務員制度の検討とあわせて、十分文科省としても検討するべき課題というふうに受けとめております。

小松政府当局者 文部科学省私学部長でございます。

 御質問の第三点目でございます。

 法律の第百三条第二項に関するものでございまして、先生御指摘のとおり、私立学校にも及ぶ規定でございますが、この規定、私立学校に限りませず、教育者、すなわち学校教育法に規定された学校の校長、教員一般について、その地位を利用した投票運動を禁止するという趣旨で規定をされております。したがいまして、一つは、私立学校という地位に着目をして、そこだけを独自に何らかの基準を設けるという考え方には立っておらないということでございます。

 そうしますと、学校の校長先生あるいは教員一般の方々のどのような行為がその制限に当たるかということにつきましては、ただいま初等中等教育局長からもお答えをいたしましたように、また保利会長から先ほど御指摘のありました、十分検討すべき点とも関連をいたしますが、それは個別具体的に検討する事柄ではございますけれども、ただ、現時点におきましては、例えば国会審議の過程で、同様の構造をしております公職選挙法との規定ぶりの関連等につきましても相当詳しく御議論が行われたように認識をいたしております。

 この中では、一般的には、学校の長あるいは教員の地位を利用して学生さんや保護者に対して働きかけるというような行為、例えば、単位を上げるか上げないかというようなことをほのめかしながら言うかどうかとか、そういった、かなりの具体的なところまで突っ込んだ御議論が行われております。

 こうしたことも十分参照しながら解釈し判断をしていくべきだと思いますけれども、実際には具体的な事案に即して総合的に判断されるという点は、従来の公職選挙法等の取り扱いと変わらないものというふうに理解をいたしております。

武正委員 この公務員の政治的行為に係る制限の緩和については、先ほど大島委員が述べたとおりでありますが、公務員が行う憲法改正に関する賛否の勧誘、意見表明等については、特定の政治的目的を持つものであって特定の政治的行為に該当する行為についてのみ国家公務員法等の政治的行為の制限に係る規定を適用するものとし、それ以外の行為についてはこれらの規定を適用しないものとする、いわゆるネガティブリスト方式とイコールのことを述べたところであります。

 ネガティブリスト方式とイコールということであれば、原則自由であり、より一般的な政治活動以上に制限は制約的でなければいけない、少なくなければいけない、こういった考え方にのっとっているわけであります。

 ただ、先ほど来、公務員及び教育公務員あるいは教育者の地位利用についてのお話があるんですが、これは法制局に伺いますけれども、憲法改正国民投票法の制定過程において、この地位利用についてどのような規定でこの法律が施行されたのか、これについて紹介をしていただければと思います。

橘法制局参事 武正先生、御質問ありがとうございます。

 公務員及び教育者の地位利用に関する規定、禁止規定については、国民投票法制定の際にも大変な御議論がありました重要な論点の一つであるかと存じます。

 御提出者の先生方がおられる前で私が御報告するのも大変僣越ではありますけれども、公務員及び教育者それぞれについて、どのような行為が地位利用に当たるのか、当たらないのか。一般に地位利用という文言の解釈で済ませるのか、それとも、それをより具体的に、公務員であることに伴って特殊のその優越的な地位を利用するのであるというふうに、より要件を具体化するべきではないのか、また、これに関する違反行為に対して罰則を設けるべきか否かについても大変詳細な御議論があったところかと存じます。

 詳細は当時の議事録にも掲載されておるところでありますが、具体的に、教育者の場合には、大学の先生と、大学の先生以外の、まさしく初等中等のレベルの教員の先生方の対応について、船田先生、保岡先生、葉梨先生を初め各先生方の御答弁があったと記憶しております。

 また、罰則を設けなかった理由につきましても、基本的には懲戒処分等で対応すれば足り、罰則によって国民投票運動に関する萎縮的な効果を与えてはいけないといったような御議論もあったように存じます。

 現在、国民投票法の百三条一項、二項に規定されている要件の具体化は、まさしく、地位利用に関する公選法の規定を参考にしつつも、国民投票運動の場合に限定して規定された条項であるかと存じます。

 以上です。

平沢委員 ちょっと人事院にお聞きしたいと思うんです。

 先ほどの人事院の答弁というのはちょっと理解に苦しむんです。要するに、先ほど言われたのは、公務員が憲法改正について賛否を明らかにすることは政治的行為には必ずしもならない、ですからこれは自由だということだろうと思いますけれども、今までのいきさつ、そして今の現状を見れば、憲法改正については、言うまでもなく、それぞれの政党が改正についてAとかBとかCということを明らかにするわけですよ。そういった中で、もし公務員が、この憲法改正については自分はAという立場、Bという立場、Cという立場ということをみんなの前で明らかにすれば、それは当然のことながら政党と密接に関係しているわけで、必然的に、その政党に対する、その政党の考え方に対する応援あるいはその政党の活動に対する応援につながるんじゃないですか。

 ですから、公務員が憲法改正について自分の立場を明らかにすることは、即同じ考えを持っている政党に対する支持または不支持につながるんじゃないですか。ですから、それはセパレートすることが果たしてできるのかどうか、そのことについてもう一度教えていただけますか。

井上政府当局者 お答えいたします。

 先ほど申し上げました例は、現行制度における考え方を踏まえて申し上げたものでございます。

 それで、憲法改正に関する賛否の意見のみを専ら表明するということ自体は、これは現行の政治的目的には該当しないというふうになります。

 それで、別途、特定の政党の支持、反対という目的は、規制される政治的目的に該当してまいりますので、そういった場で特定の政党の支持を明言するとか、行為の態様とか内容によりますので、いろいろな形態はあると思いますけれども、そういう、政党を支持するという意図を明らかに示すような発言をしたような場合については、これは特定の政党を支持、反対するというふうに該当する場合もあり得るということを申し上げたものでございます。

平沢委員 ちょっとよくわからないんですけれども、憲法改正について、ある立場を明らかにすることは、即その考えと同じ政党に対する支持、不支持を明らかにすることになるんじゃないですか、ですから政治的行為につながるんじゃないですかと聞いているわけです。

 ですから、今、人事院の方が言われたのは、憲法改正について立場を明らかにすることは必ずしも政治的行為とはならないと言っていますけれども、憲法改正というのは極めて政治的な問題で、それぞれの政党が立場を明らかにしていますから、それぞれの政党に対する支持、不支持に即つながるんじゃないですか、それをセパレートできるんですか、どうですかと聞いているわけです。

 もう一度お答えいただけますか。

井上政府当局者 あくまでも現行制度上の考え方で申し上げますと、特定の政党の支持、反対というのは、その政党の勢力の維持ないし拡大を目的とするものという解釈をしております。

 したがいまして、そういった目的を持つようなものについては該当するわけですけれども、純粋な意見、憲法改正なりについての意見、それ自体は、直ちに特定の政党の支持、反対、つまり特定の政党の勢力の維持拡大につながるということでは必ずしもないというふうに思います。

 でも、いろいろな形態とか事情、行為の態様とかございますので、一概には申し上げられないところはございますけれども、あえて具体的に、できるだけわかりやすく、例として言うと、専らそういう意見表明のみをやっている場合は、現行制度上は政治的行為に該当しない。その際に特定の政党を支持するということを明言しているような場合については該当し得るということで申し上げているところでございます。

平沢委員 ちょっとわかりませんけれども、これ以上やっても水かけ論ですからあれですけれども、私が言っているのは、これはセパレートできるんですかということなんです。

 ですから、今、人事院の方が言われたのは、ただ憲法改正について一つの立場を述べること自体は全然政治的行為じゃないということを言われているんだろうと思いますけれども、憲法改正について、ある立場を明らかにして、それと同じ考えを持っている政党があるわけですから、必然的に、その政党に対する支持とか不支持につながるんじゃないですかということを言っているわけですよ。

 それについての答えでは全然ないなという感じがしますけれども、これ以上やっても水かけ論ですから、結構です。

保利会長 ここは、こういう御意見がありましたということを踏まえて、よく考えておいていただきたいと思います。

中谷(元)委員 先ほどから審査会長が文科省に質問をしていますけれども、公選法の基準とかはもう既に示されています。したがって、国民投票法でこの条文が決められて、それが違うから質問しているんですけれども、どうも文科省も総務省も、その判断基準とか事例の研究など、本当にしているのかなと。幾ら聞いても、これから検討しますみたいな返事になっていまして、この法律に従って必要な措置を講じるという作業を本当にしているのかどうか、その状況について伺いたい。

 もし政治的に何か決定が必要ならば、我々がしなければいけませんけれども、そのような決定が必要かどうか、そういう認識を伺いたいと思います。

 そこで、会長が質問したものについてもう少し聞かせていただきますが、この法律は、憲法改正に関する賛否の勧誘その他の意見表明が制限されることがないようということになっていますが、先生が教壇で、私は反対です、理由はこうですといったのは、まさしく賛否の勧誘、意見表明ですから、これはマルじゃないんですか。

 例えば、入り口でビラを配りました、私の考えはこうです、そういうのも賛否の表明、勧誘ですから、マルじゃないんですか。例えば、宣伝カーで演説する、演説会で講演をする、この条文からいくとマルなんですよね。

 それについて、そう言えるのか言えないのか、何がいけなくて何が悪いのかという基準について、どう考えておられるのか、もう少しお伺いしたいと思います。

布村政府当局者 お答えさせていただきます。

 この法律の百三条第二項によって教育者として制限される行為の具体例ということにつきましては、この条文で、「学校の児童、生徒及び学生に対する教育上の地位にあるために特に国民投票運動を効果的に行い得る影響力又は便益を利用して、国民投票運動をすることができない。」という規定になってございます。これを踏まえて、具体的な教員の行動、活動がどのような事情の場合には許されないことになるのかといったところは、総合的に勘案して判断していくということになります。

 この具体的な事例等について、まだ学校現場に対して個別に通知をしたりという段階までには至ってございませんけれども、今後とも、国家公務員あるいは地方公務員としての制限ということを踏まえて、教育者に対する具体的な指導についても十分検討させていただければと思います。

中谷(元)委員 その作業をこれから行うということなんですが、では、その作業を行う上において何か政治的な決定が必要ですか。それとも、文科省等の、政府の判断でどんどんやれるのか、しなければならないのか、なぜしないのかという判断については、何か一つの政治的な要素が必要なんでしょうか。

布村政府当局者 繰り返しのお答えになるかもしれませんけれども、国家公務員あるいは地方公務員としての制限というものが具体化されたことを踏まえ、地方公務員たる教育者あるいは公務員ではない教育者にとって、どのような行動、活動を制限すべきかどうかといった点につきましては、先ほども触れさせていただきましたけれども、教育基本法の十四条というところで、政治に関する教養を高める、関心を高めるという規定とともに、「特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」という規定もございますので、それらを踏まえて、より具体的なものを学校現場に示すということが必要かと考えてございます。

 これは繰り返しになりますけれども、公務員全体の活動の制限の検討と並行して、教育者につきましても取り組まなければいけないというふうに認識はいたしております。

中谷(元)委員 同じ答弁なんですけれども、この法案では「必要な法制上の措置を講ずる」となっておりまして、この法律ができてからもう三年も四年もたつのに一向に進んでいないというのはどうしてなんでしょうか。何でできないのかなと。

 では、検討するということですが、いつごろまでに結論を出すつもりで検討するんでしょうか。

布村政府当局者 時期につきましては、速やかにというふうには考えますけれども、公務員全体の制限の位置づけを踏まえて検討すべき課題でもございますので、そういった点も十分踏まえながら対応させていただきたいと思います。

保利会長 非常に微妙な問題だと思います。したがって、十分に検討というんだけれども、検討だけじゃなくて、やはりガイドラインをきちっと具体的に整備するような努力をしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 先ほど、平沢幹事の方から、国民投票運動と政治活動をどうやってセパレートできるのか、できないじゃないかという話は、そういう問題意識は私は非常によくわかります。どっちに持っていくかは、その先はわかりませんが、議論しなきゃいけないと思うんですが。今も聞いていても、では目的、意図は誰がどう判断するのかとなったときに、これは非常に萎縮効果につながる、直結する話になってくるわけで、申し上げたとおりです。

 一つ、議論がちょっとごちゃごちゃになっていると思うので、橘部長に確認したいんです。

 いわゆる三つの宿題と言っていて、政治的行為の問題で、ここで今議論になっている問題で、この衆憲資の資料にもありますが、公務員の政治的行為の制限に関する検討条項ということで言われているのは、国家公務員法の百二条、百十条の話、地公法でいうと三十六条、人事院規則で一四―七にかかわる問題についての検討ということになっていると思うんですけれども、先ほどの教育者や教育公務員の話は、これはつまり地位利用の話で、先ほど、冒頭、説明もあったみたいに、改憲手続法、国民投票法でいうと百三条で、これは公選法との関係の議論だと思うんですよ。

 つまり、宿題に残っているから検討しなきゃ、いつまでにという話を、ちょっとごちゃごちゃになっていると思うんですが、その辺の整理をちょっとやっていただきたい。つまり、宿題というふうに言われているものというのは何について言っているのか、教育者の問題はそこに入っているのか、地位利用の問題はここで言っている宿題の項目になっているのかどうか、そこをちょっと整理してください。

橘法制局参事 笠井先生、御質問ありがとうございます。

 純粋に、実務的なというか、事務的な観点からのみお答えさせていただきたいと思います。と申しますのは、立法政策の場面では、政治的行為の問題と地位利用の問題が現場においては錯綜することがあるために、立法政策として先生方が一緒に御議論されるというのは、これは当然だからでございます。

 その上で、附則十一条の宿題の対象としているのは、国民投票法百三条の地位利用の問題とは別に、国公法百二条、地公法三十六条などに規定している公務員の政治的行為の制限をどこまで適用するかしないのかという問題に限られているものと存じます。

 そして、中谷先生からも御指摘がございましたが、この問題のもとで、この宿題のもとで、法整備をされるのは、政府ではなくて、まさしくこの憲法審査会の場で国民投票法の改正論議を先生方が議員立法としてなされるということが当時の当然の前提でございました。もちろん、それが閣法として出てくることは禁止はされておりませんけれども、この附則十一条の直接の名宛て人である国は先生方御自身であるというふうに考えられます。

 他方、現在の憲法改正国民投票法百三条のもとにおける地位利用として、特に公務員の場合、教育者の場合、教育者といっても大学の教授の場合、それ以外の教員の場合について、具体的にどのような行為が地位利用に当たるのか当たらないのかということの研究については、法律はもう既に制定されているわけですから、本法が施行された場合のときのことを考えれば、執行官庁において、それぞれの役所がそれぞれの御判断で当然になされているでありましょうし、また、なされるべきことかと思います。

 ただ、その際には、国民投票法がこの場で議論され、制定された際の立法者の意思、立法者において示された、例えば教壇において賛否の勧誘をなさるとか、そういうことは基本的に地位利用に当たるのではないのか、それに対して、幾ら教員あるいは公務員といっても、地域の集会においてみずからの意見表明をされた場合には、それは当然に当たらないのではないのかといった御議論はなされていたと存じますので、そのような立法者の意思を踏まえられて、各省庁においては、明確な、具体的な切り分けというか、そういう準備がなされていくのではないかと拝察します。

武正委員 今の質疑で、またある面すっきりしたというふうに思っておりますが、既に、当時の自民党さん、公明党さん、修正要綱ということで、全面適用除外ということで当時民主党とも一致をしていたところが、併合修正案というような形でこれが成立をしたわけですけれども、附則十一条の冒頭は、「国は、この法律が施行されるまでの間に、公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないよう、」云々かんぬんの検討を加え、措置を講ずると。やはりこの前提ということを改めて今確認されたというふうに思いますし、地位利用については百三条で規定をされているということが改めて、本法でそうした懸念については払拭をされているというふうに思います。

保利会長 以上で公務員の政治的行為の制限と国民投票運動をめぐる問題についての自由討議は終了いたしました。

 次に、国民投票の対象拡大について自由討議を行う予定となっておりましたが、既に予定の時間を超えておりますので、お諮りをいたしたいと存じます。

 国民投票の範囲の拡大についての議論は次回に譲ることといたしたく存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利会長 ありがとうございました。

 それでは、次回以降にこれをすることといたしまして、次回は、公報をもってお知らせをいたします。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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