衆議院

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第5号 平成26年5月8日(木曜日)

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平成二十六年五月八日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   会長 保利 耕輔君

   幹事 伊藤 達也君 幹事 齋藤  健君

   幹事 中谷  元君 幹事 平井たくや君

   幹事 平沢 勝栄君 幹事 船田  元君

   幹事 武正 公一君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 北側 一雄君

      青山 周平君    秋本 真利君

      池田 道孝君    泉原 保二君

      上杉 光弘君    衛藤征士郎君

      小田原 潔君    大岡 敏孝君

      大塚 高司君    大塚  拓君

      鬼木  誠君    城内  実君

      佐藤  勉君    桜井  宏君

      瀬戸 隆一君    薗浦健太郎君

      田中 和徳君    田野瀬太道君

      高木 宏壽君    棚橋 泰文君

      土屋 正忠君    中谷 真一君

      西村 明宏君    野中  厚君

      馳   浩君    鳩山 邦夫君

      原田 憲治君    福井  照君

      前田 一男君    松本 洋平君

      宮崎 謙介君    武藤 容治君

      保岡 興治君    山下 貴司君

      山本ともひろ君    枝野 幸男君

      長島 昭久君    長妻  昭君

      古本伸一郎君    細野 豪志君

      伊東 信久君    坂本祐之輔君

      新原 秀人君    西野 弘一君

      三木 圭恵君    大口 善徳君

      斉藤 鉄夫君    大熊 利昭君

      三谷 英弘君    小池 政就君

      畠中 光成君    笠井  亮君

      小宮山泰子君    鈴木 克昌君

    …………………………………

   議員           中谷  元君

   議員           船田  元君

   議員           枝野 幸男君

   議員           馬場 伸幸君

   議員           北側 一雄君

   議員           三谷 英弘君

   議員           畠中 光成君

   議員           鈴木 克昌君

   議員           吉川  元君

   総務大臣         新藤 義孝君

   参考人

   (上智大学総合人間科学部教育学科教授)      田中 治彦君

   参考人

   (元慶應義塾大学大学院法学研究科講師)      南部 義典君

   参考人

   (日本自治体労働組合総連合副中央執行委員長)   松繁 美和君

   参考人

   (日本弁護士連合会副会長)            水地 啓子君

   衆議院憲法審査会事務局長 阿部 優子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月八日

 辞任         補欠選任

  大塚 高司君     野中  厚君

  河野 太郎君     秋本 真利君

  鈴木 馨祐君     瀬戸 隆一君

  高木 宏壽君     前田 一男君

  棚橋 泰文君     桜井  宏君

  野田  毅君     田野瀬太道君

  原田 憲治君     池田 道孝君

  松本 洋平君     宮崎 謙介君

  山本ともひろ君    小田原 潔君

  三谷 英弘君     大熊 利昭君

  畠中 光成君     小池 政就君

  鈴木 克昌君     小宮山泰子君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     河野 太郎君

  池田 道孝君     原田 憲治君

  小田原 潔君     青山 周平君

  桜井  宏君     棚橋 泰文君

  瀬戸 隆一君     薗浦健太郎君

  田野瀬太道君     鬼木  誠君

  野中  厚君     中谷 真一君

  前田 一男君     高木 宏壽君

  宮崎 謙介君     松本 洋平君

  大熊 利昭君     三谷 英弘君

  小池 政就君     畠中 光成君

  小宮山泰子君     鈴木 克昌君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     山本ともひろ君

  鬼木  誠君     野田  毅君

  薗浦健太郎君     大岡 敏孝君

  中谷 真一君     大塚 高司君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     鈴木 馨祐君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案(船田元君外七名提出、衆法第一四号)


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     ――――◇―――――

保利会長 これより会議を開きます。

 船田元君外七名提出、日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として上智大学総合人間科学部教育学科教授田中治彦君、元慶應義塾大学大学院法学研究科講師南部義典君、日本自治体労働組合総連合副中央執行委員長松繁美和君及び日本弁護士連合会副会長水地啓子君に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。

 本日の議事の順序について申し上げます。

 まず、田中参考人、南部参考人、松繁参考人、水地参考人の順に、それぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対しお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度会長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 御発言は着席のままで結構でございます。

 なお、一言申し上げますが、御発言になります前は挙手をされ、そして会長の指名を受けて御発言をいただきたいと思います。速記が入っておりますので、速記には発言者の名前を明確に記する必要がございますので、そのようにお願いをする次第であります。

 それでは、まず田中参考人、お願いいたします。

田中参考人 皆さん、おはようございます。田中でございます。

 まず、私自身につきまして簡単に紹介させていただきます。

 参考人であります田中は、現在、上智大学で生涯教育、開発教育を教えております。特に、青少年期の社会教育ということで、子供から大人への移行をどう支援するかということを生涯教育の立場から研究してまいりました。

 また、もう一つ、最近話題になっておりますが、ESDと申しまして、持続可能な開発のための教育ということで、グローバルな時代にあって持続可能な社会はどういうふうに可能であるか、そのために教育は何をすることができるかということで、ある意味ではグローバルな時代の市民教育ということを専門にして研究をし、また教えている者でございます。

 今回この審査会で議論になっております十八歳選挙権問題につきましては、平成十三年に、その当時、荒れる成人式ということで話題になったことがございまして、そのときに私自身があるメディアで、そもそも二十というのが区切りにならない年である、高校でも大学でもない、区切りにならない年にしていること自体を問題にしまして、世界的な傾向も含めて、成人自体を十八歳に下げてはどうかというような議論をいたしました。

 それがきっかけでございまして、その後、ほとんど反応もなかったのでございますが、この国民投票法案の審議とか、あるいは民法の改正に関する審議とかいうたびにマスメディアから発言を求められまして、自分自身でも発言してまいりましたし、またホームページなどでも自分の主張を申し上げてまいりました。

 本日におきましては、まず、再三この審査会では議論されている点でございますけれども、なぜ十八歳選挙権が求められているのかということを、簡潔に三点にまとめたいというふうに思っております。

 まず一点目でございますけれども、十八歳といいますと、一般には大学生、専門学校生というイメージがございますけれども、実は、三割近くの方がもう働いていて、自活しているということがございます。自分で稼いでいるという人たちが少なくとも三割近くおるということ、その人たちの権利をやはり認め、守っていくということが大事ではないかということが一点目でございます。

 また、二点目は、これもたびたび議論されるところでございますが、少子高齢化ということの中で、若年層、特に二十代層の、あるいは三十前半の方々の政治参加、特に投票行動におきまして投票率が低かったり、あるいは、そもそも人口自体が二十代は少ないので、若い人の意見が国政に、あるいは地方自治体の政治に反映できていない。

 しかしながら、若い人ほど、自分の将来にかかわって、年金にしてもしかり、あるいは国債のような問題にしてもしかり、長く自分の人生にかかわってくるわけでございます。そういった層の参加を促していくことが、政治自体の活性化にもつながりますし、また日本の社会全体の活性化にもつながるのではないかというふうに考えております。

 そして、世界では、ここに八割以上というふうに私のメモでは書いてありますが、実際九割の国が十八歳以下の選挙権を既に実現しておりまして、国際的に見ましても、例えば、G8の中でも日本だけが二十歳でございますし、あるいはG20でもそうでございます。

 あるいは、子どもの権利条約、児童の権利に関する条約など、日本も批准しておりますけれども、ここでも、十八歳未満を児童、十八歳以上を成人というふうに規定をしておりまして、世界的なスタンダードから見ましても、やはり十八歳選挙権が妥当ではないか。

 以上三点をもちまして、十八歳選挙権が求められるというふうに考えております。

 一方で、世論調査にもありますし、また、こちらの御議論でもたびたびあるわけでございますが、十八歳に選挙権を与えることにつきましては、否定的な見解もあるわけでございます。

 その最大のものは、やはり十八歳がまだ未熟であって、政治的な判断が難しいのではないのかというような御意見、あるいは、十八歳の時点ではまだ自活をしていない、親から仕送りを受けたりしているので、国政に参加することはいかがなものかというような御意見がございます。

 この点につきましては、先ほど申し上げましたように、もう既に十八歳時点で生計を立てている者が三割近くおりますし、また、政治的な判断力につきましては、日本の場合には、もう既に十八歳の時点で、小学校、中学校、高校の十二年間の教育を受けているわけでございます。

 世界の百七十カ国以上の中には、小学校レベルの教育をやっと充実させることができて、これから中等教育、中学校、高校を充実させるというような国もたくさんあるわけでございますが、そういった国々の若者と比べて日本の若者が著しく政治的判断力がないという根拠は私はないというふうに考えておりまして、日本の若者は十分政治的な判断力を持つだろう。

 本審査会でも発言をされておりますけれども、十八歳以下の高校生の模擬投票を実際にしているような幾つかのNPOもございますけれども、そこでの判断力を見ましても、例えば二十以上の成人の投票と比べてそう大きく異なるものではございませんで、いわゆる成人層の判断力と同等の、あるいはそれに近い判断力を持っているというふうに考えております。

 また、地方自治体によっては、条例によりまして、特定の課題について十八歳以下の者に参画させるような投票行動もありました。例えば町村合併において、十六歳からとか、ところによっては中学生にまで参加させた事例がございますが、そういったものを見ましても、非常に真剣に、むしろ大人よりも真剣に物事を考えて投票していまして、評価を受けているわけでございます。

 そういった意味でも、事例もございますし、私自身は、十八歳に下げることにつきまして、政治的な判断力につきましては十分成人に近いものを持っていると。

 しかしながら、後ほど申し上げますが、それでよいわけではございませんで、やはり教育段階での公民教育、市民教育といったものは必須でございます。これにつきましては最後に申し述べさせていただきたいと思います。

 そして、十八歳選挙権が実現しますとどのようなメリットがあるかということにつきまして申し上げたいと思います。

 まず、若者の投票率の増加が期待されることでございます。と申しますのは、十八歳というのはまだ高校三年生でございますけれども、その時点で親元にいるわけでございます。したがいまして、その時点で投票権がある、あるいは選挙権があるということになりますと、地元の小学校、中学校といったところで、地元で投票ができるわけでございます。

 これに対して、二十歳になりますと、職場とか大学とか、地元から離れてしまうということが多うございまして、投票に行くのに一つバリアがあるといいますか、あるいは住民票自体を移していないというようなことがあって、実家に帰らなければならないというようなこともございます。

 最初の投票行動というのは非常に大事でございまして、先生方もそうかもしれません、私もそうなんですが、最初に投票に行った投票所の風景というのは今でも覚えておりますし、これで何か自覚が、一つ国政に参加した自覚というものも生まれましたし、また、近所の全く知らない、ふだんはつき合いのない人たちが投票所に向かう様子を見て、国民としての連帯感というようなものも感じた覚えがございます。

 やはり、投票というのは一種の習慣にもなるわけでございまして、最初の投票にまず足を運ぶということがすごく大事だろうと思います。これによって、若年層の、若い方々の投票を習慣化するといいますか、その次の選挙にも行ってみようというようなことのバリアが非常に低くなる。

 特に、高校三年生で十八になって投票に参りますので、二十歳になりますと、なかなか大学とか職場で投票行動を呼びかけるのは難しいわけでございますし、大学の教員の私がこう言うのもなんですけれども、大学に一旦入って自由を謳歌してしまった後に、再度、投票に行く、あるいはそういった話を友達同士で話題にするということはなかなか難しいわけでございますけれども、十八歳の段階で、十八歳になった者が、自分たちの友人が、知人が行くということになれば、お互いに話題にすることにもなるわけですし、自覚も生まれてくる、あるいは投票行動を促すこともしやすいということがございます。そういう意味で、若者の投票率の増加ということにつながるというふうに考えております。

 また、先ほど申し上げましたように、若者自身が将来の決定にかかわるということで、政治的な意識あるいは社会参加につながるということでございます。

 ただ、最後に課題を申し上げておかなくてはいけないわけでございますけれども、十八歳に下げた場合に、やはり、中学、高校における公民教育、市民教育、あるいは政治教育というものの充実、これは必須であるというふうに考えております。

 現在、中学校では社会科の公民的分野、高校におきましては公民の中の現代社会あるいは政治・経済といった科目で、政治にかかわることあるいは社会にかかわることが教えられておりますけれども、実は、高校になりますとやはり受験科目というようなことがございまして、どうしても知識中心のこと、すなわち三権分立とか国連の機構とかについては知識的にはわかっているけれども、では、実際に自分が何か問題を感じたときに、それをどういうふうに修正していくのか、誰に訴えたらいいのか、議員さんはどこにいるのか、あるいは市役所のどこに行ったらいいのかというようなスキルの側面であるとか態度の側面は、そこでは養われないわけでございます。

 知識中心の公民教育ではなくて、参加型の公民教育、市民教育といったものが大事だろうというふうに思っております。

 特に、地域の課題、ここでは日本国憲法の改正というような非常に大上段に構えたことを議論して、そこが十八歳ということでございますが、それ以上に、やはり地域の課題を自分で発見して、地域で何が問題になっているのか、そしてそれをどうやったら解決できるのかといったこと、参加型、体験型の学習といったことが大事でありまして、それを一つ一つ解決していく。

 あるいは、地域の課題の解決に向けて、例えば市役所に行ってみたり、議員さんに話を聞いたり、地域の人に聞いたりすることによって大人社会と関係を持つ。そのことによって、自分の意見が聞いてもらえるとか、あるいは大人はいろいろなことを考えているということがわかったりということで、いわゆる無力感の反対に効力感という言葉があるわけでございますけれども、自分が言ったことが少しは聞いてもらえる、あるいは、自分が言ったことで少しでも社会が変わるという成功体験、これを積み上げることが、効力感、何をしてもだめなんだという無力感ではなく、効力感につながるわけでございまして、こういった教育を、これはもう小学校から当然するべきですし、特に中学、高校という段階でなすべきだというふうに考えております。

 そういう意味では、十八歳の選挙権が実現いたしますと、高校三年の段階で大人社会に少しずつ入っていくわけでございまして、そこでの公民教育、市民教育、大人になるための教育といったことが実現できるということになります。それによって、若年層の投票率も上がり、また若者の社会参加、将来の政治にかかわるというような体験をすることによりまして、政治の活性化あるいは日本社会の活性化につながるというふうに考えております。

 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

保利会長 ありがとうございました。

 次に、南部参考人、お願いいたします。

南部参考人 おはようございます。南部でございます。

 本日は、貴重な発言の機会をいただき、本当にありがとうございます。あらかじめ先生方に発言メモを御案内しておりますので、このメモに従いまして意見陳述をさせていただきます。

 まず、前回の対政府質疑におきまして、政府参考人の看過できない答弁を承知しております。

 法務省の当日配付資料で、少年法の適用対象年齢を引き下げる必要はないとの見解が示されておりましたが、早速、この見解はいつまとめられたのか、内閣官房、総務省にしかるべき通知をしたのかとの質疑がございました。

 これに対し、法務省の政府参考人は、昨年九月の段階で、法務省として、現時点において、十八歳または十九歳の者に対する保護処分の必要性が失われたとまで評価すべき事情はなく、少年法の改正は不要であるとの判断に至ったところでございます、この状況につきましては、内閣官房及び関係省庁にもその当時にお伝えしてございますと答弁しました。

 私は、この答弁に驚きました。各府省庁別の対象法令検討状況で明らかなように、少年法はB1というカテゴリー、つまり、現在、法制上の措置について検討中であるものに該当するものと理解していたからです。

 その後の質疑で、私は疑念を深めました。内閣官房の政府参考人は、議論の焦点は、公選法、民法及び少年法の取り扱いに絞られてきたと認識しております、しかしながら、これまで、内閣官房、総務省及び法務省を中心に検討、調整を進めてまいりましたが、残念ながら、この点につきましては、今なお政府部内では成案を得るに至っていないところでございますと答弁しました。

 結論は出たという法務省と、出ていないという内閣官房の政府参考人答弁が、同日の対政府質疑の中で、百八十度食い違っております。

 法務省の政府参考人の答弁が真実であれば、少年法はB1からAのカテゴリー、つまり、法制上の措置の要否、改正方針が確定したものとして内閣官房で整理し直し、正確な情報をもとに、本審査会で質疑を行う必要が生じます。

 改正法の施行後、各党PTを中心に年齢条項の見直しの検討が始まりますが、言うまでもなく、政府との十分な連携を要します。政府内の見解不一致が現時点で露呈するようでは、PTの運営、法整備に向けた合意形成に対する不安を禁じ得ません。

 先生方におかれましては、前記の政府参考人答弁に係る事実の調査、確認を徹底していただきますよう、お願い申し上げます。

 民法成年年齢の引き下げに関して、法務省が制定法の立法者意思を別誘導し、あたかも選挙権年齢とは方向性の異なった議論が可能であるかのような論理を後づけに挟み込むなど、政権の枠組みにかかわらず、直接、間接の遅延行為が続けられております。

 思えば、七年前のきょう、与党併合修正案の対案として、参議院民主党案が提出されました。

 この案は、衆院段階の民主党原案、修正案と同様、制定法附則三条二項に言う経過措置規定を置かず、公布から全面施行までの三年間で、公選法、民法その他の法令が定める年齢条項の見直しを確実になし遂げようとする立法者意思が強く反映していました。法案提出者の千葉参院議員は、趣旨説明の中で、投票権者を十八歳とする点についても、与党案では公選法等の改正がなされない限り実施を幾らでも先送りできる、まやかしの規定にすぎませんと述べ、経過措置規定を置く与党併合修正案を、当時、厳しく批判したところです。

 両案審査の後、与党併合修正案が可決、成立し、公布されたものの、その後、両院で憲法審査会規程が制定されず、審査会が始動しないことをよそ目に、法制審議会民法成年年齢部会が活動を始めました。法務大臣の諮問文にある「成年年齢を引き下げるべきか否か」という文言が、既に制定法附則三条一項の趣旨を逸脱していたことは、既に先生方の共通認識が醸成されているものと思います。

 この文言は、諮問の前、既に問題視されていました。部会の設置を決めた法制審議会第百五十五回会議の議事録によりますと、ある委員が、「この諮問の文章も可否ということでどっちでもいいみたいなふうに読めるように書かれておりますが、立法府の意思として、国民投票法案に係るいろいろな議論もあったと思うのですけれども、その立法府の意思はどの辺にあるのか、その確認等はきちっとできて、なされた上でどっちでもいいということなのか。」「その立法府の意思とそごを来すような受け止め方になっていないのかということを、やはりもう少し吟味をしていただく必要があるのではないか」と発言しています。

 民法成年年齢部会の最終報告を総会が採択し、法務大臣に答申がなされる手前で、政権が交代しました。さきの参院民主党案提出者の千葉参院議員が法務大臣に就任され、国民投票法の全面施行日までに民法改正が何とかぎりぎり間に合うのではないかとも思いましたが、その後、政権再交代となり、現内閣に至るまで、膠着状態が打開され、具体的な立法措置が講ぜられようとする気配がありません。

 その根本原因は何か、先生方の鋭い洞察をもって御理解いただけることと思います。

 政権の枠組みがいつ、どのように変わろうとも、法制上の措置が遅々として進まないことは、国会の権威を傷つけ、立憲政治を動揺させることにほかなりません。

 改正法附則三項は、制定法附則三条一項と同様、民法が頭出しになっています。法制定時の立法者意思が、七年の歳月を経て八党間で広く再確認され、政治主導の機運が高まっているのではないかと希望を抱きながら改正案を拝読した次第です。

 そこで、法制審議会答申を逆手にとりつつ、次のような立法提案を申し上げます。

 答申自体、成年年齢の引き下げを是とする結論であることから、民法等の改正法案を提出し、まず成立させてしまうのです。

 しかし、施行期日については、若干の工夫が必要です。つまり、改正法の附則一項で、この改正法の施行期日を、別に定める法律で定める日とすることとし、附則の二項で、前項の施行期日を定めるに当たっては、若年者の自立を促すような施策や消費者被害の拡大のおそれ等の問題点の解決に資する施策の効果等の若年者を中心とする国民への浸透の程度やそれについての国民の意識を踏まえて行うこととすると規定するのです。消費者教育推進計画の最終年度が改正法施行の一つのタイミングとなるでしょう。

 これは、環境が整備されてからの成年年齢引き下げという法務省の言い分をそのまま条文化するもので、いかなる反対、抵抗をも許しません。もし反対、抵抗するようなら、そもそもの本音は成年年齢の引き下げそのものにあることを自白することになります。施行期日につき、再度国会の議決を経る点も重要です。強い政治主導をぜひともお願い申し上げます。

 国民投票権年齢、選挙権年齢、民法成年年齢、少年法適用対象年齢の四つは、いわば車のタイヤのサイズのように一致して扱われるべきで、これこそ制定法附則三条の原意であると理解しております。同条の源流にある民主党原案の附則三条は、「国は、若い世代に、国政への参加の機会を保障するとともに、社会の一員としての責任感を醸成し、積極的な社会参加を促進するため、」と公布後速やかに年齢条項の検討、措置を講ずることを国に命じていました。公選法改正はもちろん、民法改正、少年法改正を意識した書きぶりですが、改めて読み返してみても何の遜色もなく、この立法理念は各党PTに継承されていくものと確信しております。

 今や、個別に立法事実の調査研究に深入りする場合ではなく、公選法、民法、少年法について公布から施行までの期間をどう設定するかという政策判断、政治判断のフェーズにあると思います。スタートは段階的であり、ゴールの時期もそれぞれ異なります。各党PTで具体的なロードマップの策定に着手されることを要望いたします。

 まず、参政権グループに属する選挙権年齢の引き下げを可及的速やかに実現する必要があります。

 確認書項目一では「改正法施行後二年以内に十八歳に引き下げることを目指し、」とありますが、国民の誤解を招かないよう、現段階では改正公選法の成立、公布までが目標設定されており、施行までではないことを周知することが必要です。

 改正法附則三項に「国民投票の投票権を有する者の年齢と選挙権を有する者の年齢との均衡等を勘案し、」とありますが、「均衡」には消極、積極の両方向があります。決して現状維持にはまらず、参政権年齢が食い違うことにならないよう、スピード感を持って対応することが必要です。また、「等」には民法成年年齢とのバランスが含まれることを確認させていただきます。

 猶予はわずかでありますが、次回の国政選挙は必ず十八歳選挙権が保障されたもとで行う、このことに対して、全ての法案提出者の答弁が担保されることを期待したいと思います。

 確認書項目一の後段部分では、改正法施行後四年を待たずに、国民投票権年齢と選挙権年齢がそろって十八歳となることが想定されています。少なくともこの時点で、年齢満十八年以上満二十年未満の者の参政権の享有と刑事制裁を受ける地位とのバランス論が顕在化します。

 改正公選法と改正少年法の施行期日の前後関係がどうなるか、今は断定できません。仮に改正少年法の施行期日が後になる場合、国民投票犯罪、選挙犯罪にコミットした十八歳、十九歳の者を成人の刑事手続で取り扱うには、少年法の該当規定を適用除外する措置が必要となります。

 メディア情報によると、この案は一時期与党で検討されたようです。法務省も了解しているのではないでしょうか。先日の質疑で同省の政府参考人は、この案ではなく、保護処分を受けた少年に対する公民権の停止と連座制の適用という、公選法上の特則を設ける案に触れました。

 いずれの法整備が適当か、少年法適用対象年齢の引き下げを真摯に検討するのであれば、適用除外措置を設ける案の検討を加速するべきと考えます。

 新設される百条の二は、公務員による純粋な賛否の勧誘行為、意見表明に関し、公務員法上の政治的行為の制限規定の適用を除外するスキームです。特例となる一部適用除外の理論構成としては、厳格な部類に属します。

 この点、行為主体にとっては、憲法改正案の字面だけを頼りに勧誘行為に徹することはまれであり、どこまでが純粋なのか、同条の基準をもってしても、字義どおり画一的に判断することが困難なこともあるでしょう。

 そこで、地位利用型、非利用型を問わず、公務員による国民投票運動等が許容される範囲につき、法規解釈、各種事例への適用関係をわかりやすく整理したガイドラインが不可欠です。昨年、インターネット選挙運動等に関する各党協議会が政府側と協議、作成したQアンドAがすぐれた先行事例です。

 ガイドラインの整備に当たっては、制定法九条が公選法七条を準用し、取り締まり機関に対する公正の確保を求めていること、制定法百条が適用上の注意に係る解釈規定として置かれていること、確認書項目四において、公務員に萎縮的効果を与えないよう政府に配慮を求めるとしていることの趣旨を踏まえる必要があります。

 改正法附則四項は、公務員による組織的な勧誘運動等の規制に関する検討条項です。

 この点、制定法附則十一条の検討、措置は、あくまで公務員が国民投票に際して行う賛否の勧誘行為や意見表明が制限されることとならないようというのが出発点です。この意味で、組織的な勧誘運動等の規制は、同条の趣旨とは逆向きに、国民投票運動への公務員の関与を強く規制するもので、そもそも宿題の範囲外と言えます。

 また、この論点は、公務員法制全般の中で検討される性質のものですが、何をもって組織的な運動と判断するか、その基準が明確でなく、恣意的な運用と萎縮効果をもたらす弊害は小さくないことを念頭に置かなければなりません。

 したがって、この論点は、いささか不意打ち的な印象も否めず、法制上慎重な取り扱いを要望します。

 改正法附則五項の憲法改正問題国民投票は、制定法附則十二条が想定した憲法九十六条の周辺部分に位置する予備的国民投票の制度理念を踏襲し、検討が進められることを希望します。

 そして、八年前、民主党原案が初めて立法提起したものですが、確認書項目五に従い、国政問題国民投票制度のあり方も、今後定期的に議論されることになります。任意、諮問的な性格のものとして投票結果の法的拘束力は否定されるものの、実施手続を定める法律案の審査過程、投票期日までの国会の役割づけに一定の工夫の余地があります。表決結果をその後の間接民主制のプロセスにどのように反映させ、骨太な民主政治を確立するべきか、制度設計に関する新たな政治的知恵が求められます。

 「私たちが誇るべきは、憲法の変えやすさでも変えにくさでもなく、憲法を変えるかどうかについてどれだけフェアなルールを持っているかです。」中山太郎先生のこの肯綮に当たる言葉を心に刻みつつ、国民投票法制のさらなる展開に向けて、各会派の先生方による真摯な合意形成が続くことを願ってやみません。フェアなルールづくりにゴールはありません。

 以上、私の意見陳述とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

保利会長 ありがとうございました。

 次に、松繁参考人、お願いいたします。

松繁参考人 自治労連の松繁です。

 本日は、このような場で発言する機会を与えていただいたことに、まず最初に感謝を申し上げたいと思います。

 日本自治体労働組合総連合は、全国の地方自治体で働く公務員、そして関連する公務公共労働者約十六万人を組織し、地方自治と住民の暮らしの発展と自治体・公務公共労働者の権利擁護を統一的に考え、運動している労働組合です。

 憲法尊重擁護義務を宣誓した公務員労働者を中心に組織する労働組合として、地方自治体首長と懇談するなど、憲法を生かした国と自治体づくりの取り組みを進めており、現在までに七百を超える自治体の首長や幹部の皆さんと憲法懇談を行ってまいりました。

 私自身も、「私はここに、主権が国民に存することを認める日本国憲法を尊重し、且つ、擁護することを固く誓い」、中略いたしますが、「全体の奉仕者として、誠実且つ公正に職務を執行することを固く誓います。」という宣誓書を原点として、地方公務員としての仕事、労働組合の活動にかかわってまいりました。

 二〇〇七年に成立した改憲手続法は、明文改憲のレールを敷くためのものであり、国民の側が求めたものではなく、政府の側が要求して進め、権力の手を縛るという立憲主義の原則にも反するものでした。そして、投票年齢、公務員の政治的規制と投票法との関連など、制定過程から問題が山積をし、参議院では十八項目の附帯決議がついた欠陥法でありました。

 こうした欠陥法となった原因は、国民の中で十分な議論を尽くさず、改憲ありきで結論を急いだことにあります。今回、また同じことを繰り返すことは、到底容認できるものではありません。

 本日、私は、自治労連を代表してこの場で意見表明の機会を与えてもらっておりますが、前回の改憲手続法の際にも当時の自治労連副委員長が参考人として意見を述べ、中央公聴会においては私自身が現職の地方公務員の立場から意見表明をさせていただきました。当時の到達点よりさらに後退したものにしようとしていることに対して、改めて今回の法案そのものに反対を表明しておきます。

 審議の過程で、憲法尊重擁護義務を宣誓した公務員こそ、憲法改正国民投票の際に率先して国民の中で意見を述べ、国民的な議論を進めることこそが求められるという私たちの主張にとどまらず、幅広い方々の意見を取り入れて、公務員の運動は原則自由という答弁を与党共同提案者が行いました。そして、附帯決議に明記されたことさえもほごにする今回の七党共同提案は、憲法の原則にも反し、労働組合が自由に意見を述べることさえも規制することにつながっているということで、この点でも反対を表明しておきます。

 さて、今回の改正法案に関してですけれども、先ほども述べました、公務員の投票運動は原則自由としたことから後退させた三点にわたって述べさせていただき、そのことによる弊害についても述べさせていただきます。

 一つ目は、特定公務員の投票運動の禁止についてです。

 現行法は、特定公務員の範囲を中央選挙管理会の職員等に限定となっていますが、改定案では、裁判官、検察官、公安委員会の委員及び警察官を禁止の対象としており、七年前の当初の自民・公明案の考え方に逆戻りをしているというふうに思います。

 前回の到達点は、憲法尊重擁護義務の宣誓をしている公務員こそ、憲法に精通している者として積極的に国民投票運動に関与すべきであり、それを規制することは国民運動を萎縮させるとの判断がありました。今回の改正案は国会審議をも軽視するものであり、前回の到達点に立って法整備を行うべきだということを指摘しておきます。

 二つ目の、組織的な行為の規制について。

 公務員の労働組合にとどまらず、公務員が加わった市民団体などの活動を規制することにつながり、結社の自由に反し、市民の自由な活動も制限することになりかねないものです。

 労働組合は、労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的とし、労働者の要求を基礎に、その目的を達成するために必要な政治活動や社会活動を行うことができます。このことについて、さらに三点にわたって述べます。

 第一に、そもそも憲法は権力者のものではなく、国民のものです。国民の中で大いに議論することが必要であり、そのためにはいろいろなチャンネルが必要です。労働組合の議論を保障すること、そしてその提案をアピールする機会が必要です。

 第二に、憲法を生かして住民のための仕事がしたいというのは、正規労働者、非正規労働者にかかわらず、現場の切実な要求です。個人としてはもとより、労働組合としても、組合員の要求実現、すなわち、憲法を生かして住民のための仕事がしたい、これを実践する責任があります。

 第三に、現在の公務員は、憲法の理念に反する社会保障制度を進めるなど国民の利益を阻害しかねない制度がつくられて、そうしたもとで個人として憲法尊重擁護義務を果たすことに困難が生まれています。それを補うのが公務員労働組合です。自治体・公務公共労働者が労働組合に参加して初めて、当局から独立をして、憲法を生かし、守る仕事も可能となってまいります。憲法二十一条の言論、表現の自由は、公務員労働組合にも保障されています。附則第四項は削除すべきだと思います。

 三つ目の、地位利用による国民投票運動の禁止規定の違反に対する罰則について。

 地位利用の行動はあってはならないことです。しかし、悪質な行為に対しては、信用失墜行為等の公務員法制上の懲戒処分という制裁で十分対処できます。このことに関しても、無用な自粛や国民の萎縮効果が働いてはいけないという観点があったと認識をしています。

 無用な自粛の弊害について、この点では既に全国で弊害が出ています。憲法問題が政治的な問題になっているからと、政治的中立への配慮という言葉を使って、公共の施設を使わせなかったり、自治体が集会の後援を断るという事態が相次いでいます。

 先月四月二十一日のNHK午後七時のニュース報道によりますと、施設の貸し出しを断ったのは二件、内容の変更を求めたのは六件、後援の申請を断ったのは二十二件、これは都道府県、県庁所在地の市、東京二十三区、政令指定都市を合わせた百二十一の自治体の調査ですので、市町村を加えるともっとふえるのではないかというふうに思っています。この内容では、憲法が十一件、原発は七件、ほかにTPPや介護、税、社会保障といった問題が内容となっております。

 公共の施設を使っての市民の自由な活動は保障されなければならないものです。憲法問題にとどまらず、原発問題やTPP、社会保障にかかわる問題でも同様のことです。政治的な問題には多くの国民、住民に関心を持ってもらい、日本の国のあり方、自治体や地域のあり方をみんなで考えるために公共の施設をどうぞお使いください、自治体も協力をいたしますという意味で後援をしていく、こういうことが本来の自治体のあり方ではないでしょうか。

 規制のない今でもこうした事態が起こっていることを考えると、公務員に規制をかけることにより、主権者である国民、市民団体に対しても、政治的な論議はするべきではない、政府の進めていることに反対の意見を言うのはいかがなものかという言論統制のようなことが起こり、結果的に国民の政治離れへとつながっていくのではないかと考えます。

 安倍政権が、現在の憲法九条の理念を百八十度変える集団的自衛権行使容認など、憲法改悪をもくろんでいる状況のもと、憲法改正手続を考える場合、いかに主権者である国民が萎縮することなく自由に憲法改正についての意見表明ができるかが重要となってきます。そうしたもとで、憲法に深くかかわって仕事をしている公務員や公務員労働組合の政治活動の制限は、国民全体の意見表明の萎縮につながりかねないものです。

 国民の多くが憲法九条改悪に反対をしており、自治体関係者も危惧をしています。日本の将来に大きくかかわる、日本国憲法をどうするかという問題であり、関係者の意見も聞き、大いに論議を尽くすべきです。

 憲法は国民のもの、国民の意見を聞いて決めるべきとの考えを内外に明らかにし、国民の声を聞き、国会の場でも徹底審議をお願いして、私からの意見表明とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

保利会長 ありがとうございました。

 次に、水地参考人、お願いいたします。

水地参考人 弁護士の水地啓子と申します。

 本日は、貴重なお時間をいただきまして、まことにありがとうございます。

 日本弁護士連合会には、従来より憲法委員会という委員会がございまして、憲法問題に関し、調査研究、意見表明などさまざまな活動をしてまいりましたが、本年二月、さらに多くの会員の力を集め、充実した活動をしていこうということで、憲法問題対策本部を設置いたしました。

 私は、今年度、副会長といたしましてこの本部を担当しておりますので、本日、日弁連から意見を申し述べさせていただくということで、伺わせていただきました。

 日弁連は、憲法改正手続法につきまして、これまで、二〇〇五年、二〇〇六年、二〇〇九年の三回、意見書を発表しております。また、二〇〇六年には、複数回にわたりまして衆議院憲法調査特別委員会改正手続小委員会で発言の機会もいただいておりましたが、二〇〇七年に成立いたしました現行憲法改正手続法につきましては、さらに見直しをしていただきたい点があるということで、二〇〇九年十一月十八日付で見直しを求める意見書を発表しております。本日はその意見の趣旨を抜粋いたしましたものをお手元に配付させていただいておりますので、お目通しをいただければと存じます。

 この意見書では、八点について意見を述べております。

 第一点は、投票方法について、原則として各項目ごとの個別投票方式とすることでございます。

 第二点には、公務員、教育者に対する国民投票運動の規制を削除するということでございます。

 この点につきましては、本日審議されております改正法案に関するところでございますので、改めて述べさせていただきます。

 第三点、組織的多数人買収・利害誘導罪を削除すること。

 第四、国民への情報提供について、国民投票広報協議会の人選、公費による意見広告、有料意見広告放送について、公平と中立が確保されるべきことです。

 主権者である国民一人一人が憲法改正案について自分の頭で自分の考えをしっかり持てるように、多角的な情報が的確に提供されることが必要であるという趣旨によるものでございます。

 第五、発議から国民投票までの期間について、六十日は短過ぎ、最低でも一年間は必要であること。

 これも、国民が十分に情報や意見を交換し、一人一人の国民が十分に熟慮した上で投票できるようにするためでございます。

 第六、最低投票率を定めるべきであること、また、過半数の算定につきましては、無効票を含めた総投票数を基礎、つまり分母とすべきであることでございます。

 憲法改正の正当性を確保するためには、有権者のどの程度の賛成が必要とされるべきかということは、最も基本的な問題であると考えます。

 第七には、国民投票無効訴訟の提起期間は三十日では短過ぎること、管轄裁判所が東京高等裁判所だけとするのは少な過ぎること。

 第八、各議院の独立性確保の観点から、衆参両院の憲法審査会合同審査会や両院協議会の規定を削除すること。

 以上八点の見直しを日弁連は求めてまいりました。

 いずれの項目も、人権を保障し統治機構の基本を定める憲法について、十分な情報をもとに、国民の間で、さまざまな人生、生活や職業経験に基づく多様な意見を自由闊達に交換した上で、主権者である国民一人一人が、改憲案について自分の頭で考え、自分の考えをしっかり持って、よりよい国をつくっていくためにどうすべきかをみずから判断し、意思表示していくための提案でございます。憲法を改正するという作業は、国民それぞれが英知を持ち寄って、熟慮の上に考えを練っていくという、まさに国民総体の力量を集大成する作業だと考えます。

 このような考えから、日弁連は、これら八つの問題点はいずれも極めて重要であるとして本意見書を発表いたしまして、その後も、会長声明などにより、これらの問題点についての抜本的見直しを求めてまいりました。また、現行法の施行期日に至りましても、ただいま御審議されております附則事項について法制上の措置が講じられていないことなどに関し、施行延期を求める会長声明を発表するなどしてまいりました。

 以上、前振りが大変長くなりまして恐縮でございますが、本日審議されております附則第十一条に関する改正法案第百条の二は、ただいま申し上げました日弁連の意見書でいいますと、第二の公務員、教育者に対する国民投票運動について改善をされるものでありまして、その点につきましては賛成するものでございます。

 しかし、改正法案第百二条は、裁判官、検察官、国家、都道府県等公安委員会委員、警察官につきまして国民投票運動を全面的に禁止するというものでありまして、この点につきましては反対し、見直しを求めるものでございます。

 憲法改正国民投票は、憲法を改正するべきかどうかについて、主権者としての国民の意思決定をするものです。他方、選挙は、特定の候補者を当選させ、または特定の政党に属する候補者を当選させるために実施されるもので、性質が大きく異なります。したがいまして、特定の候補者あるいは特定の政党に属する候補者を当選させるためになされる運動を罰則で規制する公職選挙法や公務員法制の手法を憲法改正手続法に用いられることには疑問がございます。

 先ほども申し上げましたとおり、憲法改正手続では、いかに主権者である国民が萎縮することなく自由に憲法改正についての意見表明ができるか、憲法改正の最終決定者である国民の間において、いかに自由闊達な議論ができるかが何より重要であると考えます。本法百条が「この節及び次節の規定の適用に当たっては、表現の自由、学問の自由及び政治活動の自由その他の日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。」と規定しておりますのは、これら憲法上の人権は、国民投票に当たって、とりわけ強調されなければならないからにほかならないと考えます。

 したがいまして、憲法改正手続におきましては、あらゆる公務員を含む国民の意見表明の自由が実質的に確保されなければならず、ましてや罰則をもって規制されるべきではないと考えます。

 確かに、投票事務関係者がその管轄区域内において国民投票運動をすることを規制することは、国民投票の公正さの担保のために理解できるところであります。中央選挙管理会の委員等についても同様です。しかし、このような規制を裁判官、検察官、公安委員会の委員、警察官にまで及ぼすことには反対でございます。

 特に、裁判官、検察官は、法曹として、我々弁護士と同様、諸立法について専門家として意見を述べることが期待されております。また、現に、意見を述べるのみならず、立法に関与している立場にある者も存するということは、委員の皆様も御承知のことと存じます。このような立場にある者が、各法律等の上位にあり、かつ、法律等が合憲か違憲かの判断の前提となる憲法自体の改正の是非について自由に意見を表明することが、投票の勧誘行為をなし得ないとする国民投票運動の禁止ということで規制されるということは、理解しがたいものがございます。

 確かに、裁判官等は中立であるべきですし、その公務の公正性は確保されるべきです。しかし、例えば、商事事件を担当している裁判官が会社法改正について執筆をしたり各種意見を述べたりすること、少年事件を担当している裁判官が少年法の改正について意見を述べることが職務の中立性に反する、あるいは公務の公正性が疑われるなどといったことは考えられず、このことわりは憲法改正についても何ら異なるものではございません。

 また、公安委員会の委員や警察官につきましても、同様に、国民投票運動の禁止により、これらの者が憲法改正の是非についての意見表明をする自由を規制するということには、何ら合理的根拠がないものと考えます。

 むしろ、裁判官や検察官、警察官の方々は、憲法九十九条により憲法尊重擁護義務を定められている、いわばその名宛て人となっておられるのですから、そのような観点からも、これらの方々の憲法に対する考え方、憲法改正に対する意見を聞くべきであると考えます。また、これらの方々の職務経験、人生経験などに基づく意見は、国民が憲法改正についての議論を深める上で極めて重要であると考えます。そもそも、これらの公務員の方々は、職務上、最もみずからの政治的中立性を厳しく律しておられまして、法律上禁じておく必要はないものと考えます。

 次に、組織により行われる勧誘運動、署名運動及び示威運動の公務員による企画、主宰及び指導並びにこれらに類する行為に対する規制のあり方について意見を述べます。

 この点につきましては、必要な法制上の措置を講ずるとの検討条項を改正附則に規定することとされておりますが、公務員が、公務員の地位を利用して、職務権限に直接絡めて賛成投票もしくは反対投票をすることを強制するなどの事態が万一生じた場合には、それは公務員職権濫用罪その他既存の法規にも抵触するものでありまして、改めて憲法改正手続法に規定を置く必要はないものと考えます。

 そもそも、憲法改正についての意見表明を規制すべきでないことは前に述べたとおりでございますし、公務員にも、組織を結成し活動する自由があります。また、組織によりという概念で公務員の活動を規制することは、これらの者の意見表明や活動を萎縮させる危険性を持つものであり、疑問があります。

 組織による企画等という概念は曖昧でありまして、このような規定が置かれること自体が萎縮効果を生じさせることを危惧いたします。例えば、学校において憲法改正についての議論がタブー視され、本来、これからの社会を担っていくべき生徒、学生たちにこそ議論してほしい憲法問題が学校の場では議論されないという現象すら生じかねないものと考えます。例えば、憲法関係のサークルで顧問の先生が指導することができないというようなことでは、学生たちの議論が深まらないというおそれがあると考えます。

 したがいまして、この点についてのさらなる法制上の措置は不要と考えます。

 今回の改正法に関する意見は以上のとおりでございますが、さきにも述べましたとおり、現行の憲法改正手続法には、投票方法及び発議方式について、いかなる場合に関連性ありとされるか明確な基準が定められていないこと、国民に対する情報提供についての手続の整備が極めて不十分であること、さらには、最低投票率に関する規定が定められていないこと、有効投票数の過半数をもって国民の承認があったとすることなど、見直すべき点が多々あります上、今回審議されております改正法によりましても、いまだ選挙権年齢、成年年齢等についての検討が了されていないこと、公務員や教育者の地位利用による国民投票運動の規制についての制限も今後の検討課題とされているところであります。

 日弁連といたしましては、憲法改正手続法におきましては、これらの見直しが必須と考えておりますので、これらの課題につきまして、引き続き十分な検討をされることを心から希望いたします。

 最後になりますが、御承知のとおり、日本国憲法は、五月三日の憲法記念日で、施行されて六十八年目に入っております。

 私どもの世代は、戦争を体験した両親や祖父母の世代と異なり、まさに日本国憲法のもとで平和を享受してまいりました。私たちの子供たち、さらにはその子供たちの世代も、この平和を享受し続けることができるよう願ってやまないものでございます。

 憲法改正国民投票は、この憲法のあり方を決める手続です。全国民の自由闊達な意見交換の上で、国民総体の英知を集めて行うべきものであるということを再度申し上げまして、私の意見とさせていただきます。

 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

保利会長 ありがとうございました。

 以上で各参考人の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

保利会長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。

 質問の順番を変えていただきまして、御理解いただきましてありがとうございます。

 水地参考人、松繁参考人、南部参考人、田中参考人、きょうは本当にお忙しいところありがとうございます。非常に貴重な御意見をありがとうございました。

 それでは、今から御質問させていただきます。

 今回、衆参八党の合意を経て、そして七党共同の形で衆議院に改正案が提出できたわけでございます。この意義につきまして、国民投票法制定当時の事情もよく御存じの南部参考人に、その評価についてお伺いしたいと思います。

南部参考人 大口先生、御質問ありがとうございます。

 今回、七会派共同の提出ということになりまして、改正案、いろいろ読ませていただきました。また、この法案審査についても、いろいろと中継等で拝見をさせていただいております。

 法律案の本則、附則、確認書という三段構造になっているかと存じますけれども、非常に少数会派の意見が尊重され、質疑のやりとりの中で、どの党がどういう考え方を持っていて、どこまでが合意できていて、また今後の課題は何かということが非常によくわかる、そういう仕組みができ上がっているというふうに思っております。

 また、今回の法案ができる前、昨年十二月ですけれども、いわゆる与党案ができる過程において、今回の、国民投票権年齢十八歳に四年後に自動的になるとか、公選法百三十六条の横並び的に特定公務員の範囲をしないとか、あとは、後ほど議論になると思いますが、公務員等の地位利用に罰則を設けないようにするとか、それも北側先生、斉藤先生、大口先生の御努力によって、意見が尊重されたものだというふうに思います。

 そういった形で、いろいろな各会派の意見が尊重され、そういう議論が続いているということにつきまして、船田先生のリーダーシップとは思いますけれども、各会派の先生方の良識ある運営に謹んで敬意を表したいと思います。

大口委員 ありがとうございました。

 今の先生の御意見をさらに尊重していきたいと思っております。

 国民投票法制定過程の議論においては、投票権年齢、選挙権年齢、成年年齢、また少年法適用年齢等は一致しているべきである、こういうことで現行法の附則三条が設けられたわけであります。しかし、その後、三年間の中の宿題ができない、立法の不作為ということで、私も反省しなきゃいけないわけではございますけれども、そういうことから、特に成年年齢については、検討法令も多くて、引き下げに伴う社会的影響が大きいというようなことが明らかになってきています。

 一方で、選挙権年齢については、同じ参政権グループであり、投票権年齢と一致しているべきであると我が党も考えておるわけであります。それで、選挙権年齢と投票年齢というものは一致していることが大事だということで特に合意に至りまして、それで二年以内にまず選挙権年齢の十八歳以上への引き下げを目指す、こういうことになったわけであります。

 選挙権年齢と成年年齢を切り離して、そしていわば選挙権年齢の引き下げだけを先行させるような形で法整備を行うことについてどうお考えなのか、田中参考人と南部参考人にお伺いしたいと思います。

 そして、我が党としましては、今回の改正案及び八党合意で示されたように、投票権年齢を四年後に自動的に十八歳に引き下げる設計をしたわけでありますが、選挙権年齢は二年以内を目指して先行して引き下げることによって、それで成年年齢その他の年齢についての引き下げに弾みがつくのではないか、こういうふうにも考えております。

 そういう点で、成年年齢引き下げのインセンティブとして作用するのではないかと思いますが、それについてもお伺いしたいと思います。

 そして、南部参考人、十八歳選挙権を保障すべきだということで、次回の国政選挙から十八歳選挙権年齢でやるべきだ、こういうことで、私も非常にそうすべきであると考えております。

 また、田中参考人、十八歳選挙権、これは私は、次回国政選挙で十分できるんだ、こういう御意見のようにもお伺いします。十八歳選挙権の課題とリンクすると、その課題が解消されないとできない、こういう意見もあるわけですけれども、その点についてお伺いしたいと思います。

田中参考人 御高説ありがとうございます。

 まず、御質問の点につきまして申し上げたいと思います。

 一つは、選挙権年齢とそれから投票権、これにつきましてまず申し上げたいと思うんですけれども、国民投票権の年齢と選挙権の年齢はやはり一致すべきだというふうに考えます。いきなり憲法改正というようなことに十八歳が参加するということではなくて、やはり地方自治体の選挙、国政選挙といった、そういった身近なところから参加をするということが非常に大事でありまして、それとともに憲法のことも考えていく。余り抽象的に物事を考えるのではなくて、具体的な、地域の問題あるいは自分の問題、そして国政の問題というように、リンクさせながら考えていく必要があるというふうに思います。

 その意味で、憲法改正だけに参加できて地方自治体に参加できないということになりますと、何か、例えがいいかどうかわかりませんが、高級料亭で食事はしてもいいけれども地域の定食屋では食べるなと言っているような感じに思えるわけでございまして、これはやはりどう考えてもおかしいのではないかというふうに思っているわけでございます。

 二点目の、選挙権年齢と成人年齢につきましても、私自身はできるだけ近い期間でこれは実現していく方向が望ましいというふうに考えております。

 十八歳で選挙権という、国政への参加あるいは地方自治体への参加ということで大人としての意識を持つわけでございますけれども、それから二年もたってからほかの権利が生じると、例えば成人式もその場合どうなるのかというようなこともございますし、私も先ほど申し上げましたように、二十歳というのは区切りにならない年でもあり、やはり十八歳に引き下げて、権利と義務の関係もバランスをとりながら十八歳にそろえていくということを早急にすることが必要ではないか。

 その意味では、大口先生がおっしゃられましたように、今回の国民投票権の十八歳引き下げが確定をし、あるいは選挙権年齢を引き下げることによりまして弾みがつくということになりますし、また、これは高校教育に対しましても非常な刺激になると思いますので、もう一回教育の目的というのを見直して、大人にするための教育、大人になるための教育、今現在はなかなか社会と自分とのかかわりが持てないような時代になっておりますので、その点につきましてもまた意味があるのではないかというふうに思っております。

南部参考人 選挙年齢を先に引き下げるべきではないかという議論がいろいろこの間も展開されていることは承知しております。

 その点ですけれども、もともと民法についても引き下げる気持ちがなければ、当時の制定法附則三条一項の法整備規定に民法は頭出しになっていないはずでありまして、それがずっとやってこられない中で今日に至っているということなんだろうなというふうに思います。

 私が先ほど申し上げたのは、もう既に先生方の政治判断、政治決断のタイミングだということで、本来なら、改正公選法、改正民法が同時に公布され、同時に施行されると、それは世の中的には非常にわかりやすいんですけれども、そうはなかなかいかないということで、前回まで船田先生からもしかるべき答弁があるところで、まずは公選法で弾みをつけて、次に民法というような、そういうプロジェクトチームでの議論になっていくのかなと、そこの点は肯定的に受けとめたいなというふうに思います。

 ただ、それは、大口先生含め政治家の先生方が政治的なリーダーシップをとられるのはいいんですけれども、私先ほど申し上げましたように、法務省の政府参考人があえてそういう議論を仕向けようとする。成年年齢が引き下げられなければ選挙年齢を引き下げることはできない、そういう観点での検討を、本日いらっしゃいますけれども、中山太郎先生以下、当時の与野党の先生は誰一人として法務省にそういう議論をお願いした記憶はありませんので、これはぜひ先生方の御判断として、政治の議論としてやっていただければということを願っております。

大口委員 次回の国政選挙は、やはり十八歳選挙年齢でやることについては、私は支障はないんじゃないかと思うんです。

 田中参考人、十八歳選挙権の課題を述べられたわけでありますけれども、この課題というのはリンクをするのか、この課題が解消されない限りは十八歳選挙権というのはなかなか難しいと考えておられるのか。

 また、田中参考人は、積極的に、次回国政選挙で十八歳選挙年齢でやるべきだと。こういうお考えについてもう少しお話しいただければと思います。

田中参考人 私は、次回の選挙からでも十分可能というふうに思っております。

 この十八歳選挙権の問題あるいは十八歳成人の問題が出て、既にもう十年以上、議論がいろいろされておりまして、私の周りの、例えば予備校の問題の出題に、十八歳選挙権の問題を小論文にするとかありますし、私がかかわっている開発教育の関連の、ESDの関連の中でも、グローバルな視点に立った市民教育というようなことをここ十年来進めております。

 やはり教育は長い問題ですので、これは同時並行で進めていくことが望ましいというふうに思っておりますので、次回の選挙に十八歳が参加するということにつきましては、それはむしろ現場の教育を促進させるという意味でも可能だというふうに思っております。

南部参考人 十八歳選挙権を早期実現することについて、本当にスピード感を持って対応することが必要だというふうに思います。

 いろいろな議論があることは承知しています。若年者にそれまでの判断能力があるのかどうか、いろいろ批判的な意見もありますけれども、最近は、国会事故調の報告書を、高校生たちが、大人が読んでも難しい内容の報告書を自分たちで読み解く、そういう勉強会を開いて、自分たちで解説のビデオまでつくってそういう勉強会をやっている。まさに政治のいろいろな事象を自分たちのことと捉えてそういう勉強会をやるというような、そんな活動も始まっていたりします。

 私は、そういう意味で、今の高校生、中学生に大変期待をしておりますので、ぜひその辺の立法政策上のインセンティブを、早く道筋をお願いできればというふうに思っております。

大口委員 高校三年生が、投票権年齢あるいは選挙権年齢の引き下げによって投票権あるいは選挙権を持つようになりますと、教育現場におきまして、投票権、選挙権を持つ者と持たない者が出てきます。こういう状態が教育に与える影響について、田中参考人にお伺いしたいと思います。

田中参考人 高校三年生で、確かに十八歳になる者とそうでない者が出てくるわけでございますが、これが永久にできないわけではございませんで、一年待てば十八になるということですので、近い将来に自分は投票権ないし選挙権を持つということはわかっているわけでございますから、そのことによる混乱というのは、特に生じるということは考えておりません。

 むしろ、投票に行く者と行かない者とが、投票に行ってどうだったかとか、あるいは、なぜ投票に行かなかったかというようなことを、現実的な社会と接する中で議論をするということは非常に望ましいことではないかと思っております。

大口委員 公務員の政治的行為につきまして今回整理をいたしまして、公務員であっても原則として自由に国民投票運動を行えるようにすることにしたということで、改正法の百条の二において、純粋な賛否の勧誘行為及び意見の表明については、法令により禁止される他の政治行為を伴う場合を除いて自由にする、こういう法整備ができたわけであります。

 この点につきまして、松繁参考人に御意見をお伺いしたいと思います。

 さらに、公務員や教育者の地位の利用禁止については、現行法では罰則が付されていないわけであります。この禁止の実効性を期すために罰則を付するべきだ、こういう意見もありますけれども、地位の利用について、その構成要件がいまだ明確でないということで、今回、八党合意によって検討課題としたわけであります。

 この点について、水地参考人から御意見をお伺いしたいと思います。

松繁参考人 お答えいたします。

 公務員の政治的、個人としての活動は原則自由にするということをきちっとしたことについては、これは大いに評価をさせていただきたいと思います。

 以上です。

水地参考人 地位利用の点についてでございますけれども、この点につきましては、きょう配付させていただいております意見書の第二項のところにも記載しておりますけれども、禁止される行為と許される行為の明確化というのはやはり極めて困難であると考えますので、委員御指摘のとおり、構成要件がいまだ明確とはやはり言えないものですので、罰則を置かないといたしましても、意見表明に対する萎縮効果は避けられない、特に教育者につきましては学校での教育の機会を失わせることになるということで、これは入れるべきではないというふうに考えます。

 例えば、法学部での憲法教育というところで、意見をどこまで言っているのかという明確化は大変難しいので、事実上どのような教育ができるんだろうかというふうに考えてしまいます。よもや、どちらに投票しなければ単位をやらないぞというような先生はおられないと思いますし、そういうような利用については、もちろん申し上げるまでもなく別の規制が十分できるというふうに考えます。

大口委員 時間が来ましたので、以上で終了いたします。ありがとうございました。

保利会長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 参考人の皆さん、きょうは早朝から、大変お忙しい中、ありがとうございます。

 大変明快な最初のプレゼンテーションをしていただきました。改めて感謝を申し上げたいというふうに思います。

 きょうは、いよいよ午後には総括的な質疑、こういうことでございますので、もう一度、問題点を再整理するという意味で、三つの宿題を中心に、参考人の先生方に伺いたいと思います。

 まず、十八歳の選挙権実現等のための法整備について、田中参考人、南部参考人。それから、公務員の政治的行為に係る法整備について、松繁参考人、水地参考人。そして三つ目、国民投票の対象拡大についての検討、これはまた南部参考人それから水地参考人にお伺いしたいと思います。

 まず、最初の十八歳選挙権実現等のための法整備についてでありますが、田中参考人の方から、国民投票権それから選挙権、いずれも十八歳に引き下げることの積極的な意義について非常に簡潔に御説明をいただきました。既にその年齢の三割近くが自活している、それから若年層の政治参加を促す意味がある、それから国際スタンダードはもう既に確立している、この三点だというふうに認識しております。

 南部参考人、この十八歳に引き下げるべきだという積極的な意義について、改めて御説明いただければありがたいと思います。

南部参考人 十八歳選挙権、投票権の流れは、もう理由だけで七つぐらいありますので、一つ大きな論点といいましょうか、この憲法審査会にかかわることだけ申し上げておきますと、中山太郎先生が特別委員会の委員長だったとき、それから憲法調査会の会長だったときも含めてですけれども、海外調査に行かれて、各国の国民投票制度を、いろいろと回られて調査をされました。それらの国々のほとんどが十八歳選挙権で、国民投票年齢についても同じ年齢で参政権を統一している国ばかりである。

 そこで、日本にこの法制度を導入する場合に、既存の法律は、公選法、民法は二十であるけれども、やはり世界標準をこの際取り入れるべきではないか、そういうコンセンサスが今から約七年前、八年前に既に醸成されたんだというふうに理解しております。

 その他は、いろいろな、日本の社会で起こっている少年の凶悪な事件による少年法の引き下げでありますとか、各地の住民投票条例で、十八歳、中には十六歳とか非常に低年齢の有権者を認めた例がありますので、そういったいろいろな議論の潮流があって今回の議論につながってきたのかなと理解しております。

長島(昭)委員 ありがとうございました。

 そして、お二人とも、民法上それから刑法上の成年年齢の十八歳への引き下げについても肯定的、積極的というふうに認識しておりますが、田中参考人にお伺いしたいと思います。

 よくある批判、批判というか懸念、消費者として契約主体となり得るのかという問題、あるいは、物すごく少年犯罪もふえているんですけれども、まだ更生可能性のある少年に対する厳罰化というのが適当であるのかどうか、こういった一般的な批判や懸念に対して、先生の御意見をお伺いしたいと思います。

田中参考人 民法につきましては、特に、消費者として契約の主体になれるということが懸念されている。現に、現在でも二十歳の段階での消費者被害というもののパーセンテージが高いというようなことがあるわけでございますが、逆に言えば、二十で被害に遭いますと、例えば親に相談するとか友達に相談するということになるんですが、大学生だった場合、なかなか、本人から申し立てがない限り、大学ではケアができないということがあるわけですね。

 それに対しまして、むしろ十八歳ですと高校三年生のレベルですので、被害に遭わない方がいいわけですけれども、消費者教育もしやすいですし、また、何かあったとしても学校に相談ができるということで指導もしやすいというようなメリットもございます。

 そういう意味で、九割方が高校三年まで在学しているという、世界的に見てもこれは非常に希有な国でございまして、民法も選挙権も含めまして高校で指導できるというのはむしろメリットというふうに考えた方がいいのではないかと思います。

 少年法につきましては、これはいろいろな御議論もございまして、建前的に言えば、もちろん権利と義務との関係がございますので、バランスをとりながら十八歳にそろえていくという、長い意味では方向性がございますが、十八、十九歳の更生可能性等、これはやはり専門家の方も交えて議論していただいて、しかるべき措置をとっていただくのがよろしいのではないかと思います。

長島(昭)委員 ありがとうございました。

 十八歳に投票権を引き下げる、選挙権を引き下げる、こういうことになりますと、当然のことながら、教育的な側面からの施策というのは大変重要になってくると思っています。

 先ほど田中参考人の方から、これまでのような公民教育ではだめだ、知識偏重型ではだめだ、もっと体験型、参加型でいこう、こういうお話もありましたし、無力感から効力感というのは非常に端的な表現だったというふうに思っていますが、具体的なカリキュラム、こういうカリキュラムが必要だというアイデアがもしあれば、田中参考人、それから南部参考人にそれぞれ伺いたいと思います。

田中参考人 ありがとうございます。

 現在、子供たちが抱えている問題の中の一つに、やはり社会との接点が非常に少ないということがございまして、昔のように、地域社会とか大人社会との接点があった時代、そういう時代とは違ってきているということがございます。

 そういう意味で、教育の現場でも、特に小学校、中学校を中心に、地域に出かけていって地域の人たちから学ぶとか地域の文化を尊重するとかいうような、特に総合学習なども含めて進んできているわけでございます。あるいは、社会との接点のための、よのなか科というような科目をつくったり、市民科というような科目をつくっている学校もあるわけですね。

 やはり、これは高校が一番、そういう意味ではなかなか社会との接点が持ちにくい教育課程であるわけですけれども、小中同様、やはり高校におきましても、地域社会、自分たちの生活に、高校生の生活に、あるいは将来の生活にかかわるような事柄に関して積極的に考えていくようなカリキュラムをつくっていく。

 その一つとして、先ほどもちょっと申し上げましたが、例えばアクションリサーチというような、地域に出かけていって課題を発見する、その課題を解決するにはどうしたらいいか。ただ発見するだけだと調べ学習で終わってしまうわけですけれども、調べ学習ではなくて、解決するために、市役所に行ってみるとか、議員さんに声をかけてみるとか、あるいはNPOの人に聞いてみる、住民に聞いてみる、そういう大人社会とのかかわりの中で解決策を真剣に考えて提案するような、そういう教育もなされているわけでございまして、私どもも、ESDとか開発教育の中で市民教育のカリキュラムを現在提案しつつあるところでございます。

南部参考人 カリキュラムという点では、今、田中先生がおっしゃったことに尽きるんだというふうに思います。

 それから、実践的な政治教育という点につきまして申し上げますと、例えば、選挙の当日の開票立会人とか投票立会人とか、そういう作業をぜひ若い人たちの目に触れるようにしたらどうかなということを私は常々思ってまいりました。

 例えば、開票所におきましては、投票期日投票、期日前投票、不在者投票、在外投票、全ての投票用紙を一堂に集めて、開票管理者と立会人が全ての投票用紙をチェックするという作業をやります。そこにはいろいろな他事記載があったり無効票があるんですけれども、その有効、無効のチェックをしたりとか、まさに民主政治の一つの完結する部分がそこにはありますので、ぜひそうした現場を若い人たちの感受性に触れる場にしたいと私は常々考えてまいりました。ぜひ先生方もそういった御工夫をいただければと思っております。

長島(昭)委員 次に、公務員の政治的行為に係る法整備について、松繁参考人と水地参考人にお伺いしたいと思います。

 本件の核心というのは、公務員の政治的中立性の確保と、公務員であれ国民投票運動への参加の自由、この二つをどうバランスするかということなんだと思うんです。

 四月二十二日の本審査会での参考人の意見の中に次のような意見がありました。お二人に感想も含めて御所見を伺いたいと思うんです。

 公務員や教員にも当然、意見表明の自由は認められなければなりませんが、全体の奉仕者としての立場や公務員、教員としての地位の特殊性などに鑑み、国民投票運動のもたらす弊害を防止するため、その組織的、党派的運動に制約が加えられることは、最高裁判決に照らしても当然であると思われます。猿払事件最高裁判決を引用しておりました。

 さらに、もし、選挙運動以上に高度な政治性を有する憲法改正のための国民投票運動に、政治的、教育的に中立であるべき公務員や教員が自由かつ組織的に参加することになれば、行政や教育の中立性は侵害され、行政や教育に対する国民の信頼は著しく失墜することになるであろう。

 こういう意見を表明された方がおられたんですが、御感想、御所見を承りたいと思います。

 まず、松繁参考人。

松繁参考人 お答えします。

 最初のところで述べたことの繰り返しになるかもしれませんけれども、私もその四月二十二日の憲法審査会の様子は拝聴しておりました。やはりここを、政治的なということと中立性の問題と、国民投票の問題をきちんと切り分けて考えていけば何ら問題が起こるものではないというふうに思っております。

 最初に申しましたように、私たちはきちんと憲法を宣誓して仕事をしているわけですので、それから逸脱したようなことはやるべきでないし、地位を利用して何らかをするということになれば、それは、述べてきましたように、別な法で対処されるべきということですので、既に弊害が起こっているということも申しましたけれども、ここに何か規制を加えることによって、何となく全体として自粛しなければならないんじゃないかというムードをつくり出すことの方に危機感を持っております。

 以上です。

水地参考人 今の松繁参考人の意見とかなり重複するところでございますが、私どもも、先ほど述べましたとおり、中立性とそれから憲法についての意見表明の重要性、そのバランスをどうとるかというところであると思います。

 先ほどの二十二日の御紹介の中でも、選挙等よりさらに重要であるのだからさらに弊害が大きいという形でおっしゃったと思うんですけれども、その点が意見を異にいたしまして、選挙というようなまさに政治的なことではなく、国の将来をどう決めるかという、憲法という最も重要な点について意見表明の機会というのを制限する、さらに、罰則等によって制限するのではないとしても、萎縮させるということの、その弊害の方がはるかに大きいというふうに考えますので、可能な限り意見表明の自由は尊重されるべきでありますし、松繁参考人もおっしゃいましたとおり、それが認められないところに踏み込むようなものであれば、それは現在も既にある法制によってすぐ制限されるわけですから、それ以上の規制を置く必要はないというふうに考えます。

長島(昭)委員 ありがとうございました。

 それでは、最後の論点、もう時間がありませんけれども、国民投票の対象拡大について伺いたいと思います。

 今回の改正案では、附則の十二条が修正されまして、憲法改正を要する問題及び憲法改正の対象となり得る問題についての国民投票制度に関し、その意義及び必要性について検討を加え、必要な措置を講ずると。その前は、必要性の有無も検討するという文言だったんですが、それは削除されました。すなわち、予備的な国民投票制度に一歩前進をしているわけです。

 南部参考人と水地参考人に伺いたいのですが、まず、この予備的国民投票制度創設についての御所見。それから、四月三日の八会派で合意された確認書では、これを超えて、さらに国政の重要課題についての一般的な国民投票制度のあり方についても検討すると。先ほど南部参考人は新たな知恵が必要だ、こういうふうにおっしゃいましたけれども、この点についてお二人の御所見を承りたいと思います。

南部参考人 制定法附則十二条は、いわゆる憲法改正問題予備的国民投票と言われるもので、憲法改正の本番の国民投票に先立って、ある意味、国民の、有権者として憲法改正についてどういう意向を持っているか、どういう意見を持っているか、あらかじめその多数意見を把握する中で、その後の本番の九十六条一項前段の手続に結びつけていく、そういうスキームだと思います。

 確認書の五で言われているのは、いわゆる一般的な国民投票、これは国政問題国民投票で、一応その両者は区別して議論されるべきであるというふうに思っております。今後、定期的に議論されるということでありますので、ちょっと簡単に二点だけ申し上げます。

 まず、内閣による発議は外した方がよろしいかと思います。各会派の先生方が一致して議員立法でもって発議をする。内閣がやるということになりますと、いわゆる時の独裁者、為政者が信任投票、人気投票のためにやるんじゃないか。そういう議論に先生方が引きずられてしまいますので、そういうことはあえて外した方がよろしいかなというふうに思います。

 それから、二点目の、先ほど長島さんがおっしゃられた政治的な知恵ということなんですけれども、ただ単に、投票案件を決めて、投票期日を決めて、発議しておしまいではなくて、その審査するプロセスの中で、今回の法律案のように、政調の正副会長クラスの先生方がずらっと提案者に並んでいただいて、例えば私が質疑者ならば、この案件が多数だったら我が党はこうします、他方、こちらの案件が多数派だったら我が党はこうしますということを、一つ一つ、質疑の中で私はそれを尋ねていって、結果、その問題がどうなるか、政治の中でどういうふうに、間接民主制のプロセスの中でビルトインされていくかという、一つのマニフェストづくりになるのではないかというふうに思っています。

 その国民投票の結果、約束を破った与党は当然その次に、国民投票が終わった後の、次の総選挙でまた政権交代が起きるかもしれない、そういう意味で結果が問われるということになるかもしれませんし、そういう仕組みを入れていくべきではないかなということを考えております。

水地参考人 基本的に、国民自身が国の方向性に対して意見を述べる機会を与えられるということ自体はもちろん否定すべきことではないと考えますけれども、間接民主制との関係で、議員の方々がそこの意思決定をするということを国民から負託されているわけですので、そのこととの関係というのはやはり慎重に考えるべきであるというふうに思います。

 そういう意味で、ストレートに法的効果を持つものではありませんけれども、国民投票を行った場合には、予備的なものであったとしても、事実上の法的な拘束力を持つということは否定できないわけでありまして、そういうことから考えますと、どのような事項についてどういった手続を踏んで国民投票にかけるかということは慎重に検討されなければいけないと思います。

 特に、今回も意見書の方で述べております、本物の国民投票と同じように、それぞれのテーマについて十分な情報の提供がされて、国民がその問題について深く考えた上で、それは、何となく、本番の国民投票とは違うということでアンケート的な感じに意見を述べてしまい、それに国会が、各党といいましょうか、制約されるということがあってはいけないと思いますので、そういった国民投票を、ここに言っているようなものをとる場合にも、十分な情報提供ですとかそういったことが必要であるというふうに考えます。

長島(昭)委員 質問を終わります。ありがとうございました。

保利会長 次に、坂本祐之輔君。

坂本(祐)委員 日本維新の会、坂本祐之輔でございます。

 参考人の皆様には、お忙しい中、大変ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

 日本は今、国際的な大競争の中で、二十世紀には長所とされていた中央集権の国家運営が妨げとなって、多くの分野で停滞、弱体化しつつあります。

 日本維新の会は、決定でき責任を負うことができる民主的な統治機構を構築するために体制維新を実行したいと考えています。そのためには、現在の統治機構を規定している現行憲法の改正が不可避と考えております。したがって、この憲法改正の是非を判断する国民の権利を保障するためにも、一日も早く国民投票法を整備するべきであると考えております。

 そこで、四人の参考人の皆様にお伺いをいたします。

 私は、国民投票年齢、選挙権年齢、そして成年年齢、少年法の適用対象年齢はそろえて引き下げるべきと考えております。そのためにも、選挙権年齢や成人年齢の引き下げを行うに当たっては、憲法を含めた政治教育や消費者教育等の充実が必要であることは言うまでもありません。将来、我が国の政府債務を返済していくのは紛れもなく若者であることを鑑みても、選挙年齢を引き下げて、早くから若者に政治への興味あるいは関心を持たせるのが適当であると考えています。

 そこで、まずは政治教育等を充実させて、ある程度の期間を置いて教育効果が浸透してから選挙権年齢等の引き下げを行うべきと考えるか、それとも、まずは選挙権年齢等の引き下げを行って、そのことによって政治的判断能力を育てていくべきと考えるか、四名の参考人にお伺いをいたします。

田中参考人 坂本先生、ありがとうございます。

 選挙権年齢の引き下げにつきましては、教育が先かあるいは引き下げが先かというような御議論でございましたけれども、私は同時並行で進めるべきだと思います。まず引き下げをするということをしませんと、なかなか現場の教育も動かないというようなこともございます。

 準備はいろいろ、この間十年ぐらい議論しておりますので、NPOですとか一部の学校ではカリキュラムをつくったりしておりますけれども、やはり目の前に、選挙権が引き下げられる、あるいは今回の投票年齢を引き下げるということがございませんと、なかなか現場は忙しいものですから、高校は特に進学教育、就職教育で手いっぱいというようなこともございまして、高校教育を考えたときに、やはり早い段階で引き下げるということがよろしいというふうに私は考えております。

南部参考人 政治教育を全うするのが先かという話ですけれども、私は、もう先行して法制度を整備して、無理やりと言っては語弊がありますが、子供から大人にする、大人と扱うということを決めることが先決で、自覚を促すことになると思います。

 スイスであったと思いますが、十八歳になると戸籍が独立するとか。日本だけだと思います、成年年齢で、親の同意がなくて重要な契約や賃貸借ができるか、そんなレベルをしているのは日本ぐらいで、諸外国にはそういう国もあります。

 法制度をもって大人にするという仕組みもつくっていく必要がある、それが日本の近代化が完結する一つの意味だというふうに思いますので、先生方の御議論に期待したいと思います。

松繁参考人 お答えいたします。

 どっちが先かというよりは、むしろ私は、こういう政治的な課題、国の将来のあり方を決める問題について、子供の時代から学校教育の中でもあるいは社会教育の中でもそういったことを行っていく、そういう土台づくりが大事だというふうに考えております。

 私たちが自治労連として自治体の首長さんと、憲法キャラバンということでいろいろお話しに伺った際の、少し前のお話になりますけれども、市町村合併にかかわっての論議をしたことがありました。そのとき、北海道の奈井江町の事例をお聞きしましたが、町の将来を決めることだからと、中学生以上の子供たちにも投票できるような条例を整備した。そしてそれは、条例を整備しただけではなくて、きちっと小学生にもそのことをお配りし、小学生の意見も聞いた。中学生は、二十以上の投票の方とカウントの仕方は変えたけれども、実際に同じように投票させた。そういうふうな努力をする、そういうふうにして町の将来を決めようじゃないか、そういう姿勢が大事なんだというふうに思います。

 そして、福島でもそうです。全町民が避難をしている浪江町でも、復興計画を作成するに当たって、大人は本当にもうこの状態に展望を持てなくなっている。その中でも、子供たちは町の将来について作文を書いた、この作文を読ませていただいてみんなが励まされ、復興計画をやはりつくろうじゃないかということになったという事例も聞いております。そういうことをつくっていく。

 そして、私は、国民の声を広く聞くという意味でも、投票年齢は引き下げられるだけ引き下げるのがいいというふうに思いますので、制度をつくりつつ、そしてそういう条件もつくっていく、これを同時にやっていくことが大事だと思います。

 以上です。

水地参考人 委員御指摘のとおり、まさしく教育が重要であるということはそのとおりだと思います。

 日弁連としましても、国民投票ですとか選挙につきましては、この十八歳というところで、それは、もちろん教育をしつつ、実際に実践するということがまた教育の実につながるわけですから、そういったもので引き下げていくことについては、そもそも現行法ができた段階での附則の間になされるものと思っていたところでございます。

 しかし、そのほかにも並べておっしゃいました、例えば民法の成年年齢ですとか少年法につきましてはちょっと意見を異にしております。

 法律というのは、それぞれの制度趣旨に従って定められるものでございます。もちろん教育をしていくということであったとしても、消費者被害の実情から、教育をすればそれが本当に如実に下がるのであろうかということ。それから、少年事件につきましては、私は多数の少年事件にかかわってきておりますので、そういう意味で、彼らの可塑性であるとか、彼らに、保護主義ということで、大人であれば起訴猶予になってしまって何ら指導を受けられないところが、保護観察であるとか、そういった指導を受けることで立ち直っていくというようなことをたくさん見てきております。

 そういう意味では、それぞれの制度趣旨に従った御判断をいただきたいというふうに思っております。

坂本(祐)委員 ありがとうございました。

 それでは、次に、田中参考人にお伺いをさせていただきます。

 例えばドイツでは、直近の社会問題に授業で触れて政治教育を行い、EU諸国やアメリカでは、現職の国会議員を初めとした政治家たちが学校に来るような場を設けているといった事例もあるようです。

 これまで我が国においては、教育に求められている中立性とは政治と教育とを遮断することだと誤解されてきたのではないか、そうした誤解が十分な政治教育の実施を阻害してきた側面があると思います。

 この点について、私は、さまざまな考え方を教え、若者の政治的能力を高めることこそが、本当の意味での政治的中立に資するのではないかと考えています。したがって、教育現場は政治に対してできるだけオープンにして、さまざまな考え方を持つ方々が平等に教育の現場とかかわる機会を持つことが重要ではないかと考えます。

 今回の改正案によって投票権年齢を引き下げるに当たっては、こうした観点から政治教育が重要になると考えますが、田中参考人にお伺いをいたします。

田中参考人 私も坂本先生と同じような意見を持っております。

 政治的中立性という名のもとに、実際、政治教育がなされてこなかったという歴史があることは存じております。教育基本法でも学校教育法でも、政治教育自体は推進するということがあったわけでございますけれども、それが実際にはなされていなかったというふうに思います。

 いろいろな原因があるわけでございますけれども、狭い意味の政治教育というよりは、政治というのは非常に広い。地域の、自分の生活にかかわる全ての事柄は政治にかかわってまいります。あるいは、憲法の教育といっても、憲法も、非常に広い権利と義務の関係を規定しているわけでございます。個人と地域社会とか、あるいは国家、あるいは、今、グローバル社会と子供たちは同時に直面せざるを得ない状況が出ているにもかかわらず、教育の現場だけがおくれている。特に高校教育ですけれども、社会と遮断をして、実物を教えずに、受験ということもありまして、知識的な教育だけになっているという実情があるかと思います。

 その意味では、ドイツやEUがやっていることをそのまま取り入れることがいいかどうかはまた別問題だと思いますけれども、積極的に、諸外国の事例にも学びながら、子供たちが現在直面し、あるいは将来直面するであろう課題を生の形で、しかも、意見が違うのであれば、その違った意見も全て公開、開陳する形で判断力をつけていく、そういったことを積み上げていくことが大事かというふうに考えております。

坂本(祐)委員 ありがとうございます。

 例えば、具体的には、憲法改正について、高等学校の体育館で全校生徒を集めて憲法についての討論会を開くとか、そういったような事例等、御参考になるようなものがあればお伺いいたしたいと思いますが、田中参考人、何かございますでしょうか。

田中参考人 憲法そのものをディベートさせたという事例は私自身は存じていないんですけれども、書物でしか読んでございませんけれども、模擬投票をやっておられるグループもございますよね。ああいうようなときに校内でディベートするというようなことは聞き及んでおります。

坂本(祐)委員 そういった学校教育の現場でさまざまな意見を平等に聞く、そこから子供たちに判断をしてもらう、こういったことがふえていけばいいなというふうに私は考えております。

 続いて、田中参考人にお伺いいたしますが、例えばスウェーデンでは、四年に一度の国政選挙、地方選挙の際に、中学校と高校において模擬選挙が行われているそうであります。二〇一〇年の選挙の際には、全国千三百八十三の学校が参加をして、約四十四万人に上る生徒が投票したそうであります。

 こうした模擬選挙の取り組みについて、我が国でも、例えば神奈川県の全高等学校で行われているようであります。田中参考人のホームページでは、こうした模擬選挙の結果は一般の選挙結果と大きく変わるものではなく、高校生は一般成人と同程度の判断力を持ち合わせているとの御指摘も拝見いたしました。

 このような模擬選挙などの取り組みは、若者の政治への興味、関心を高める教育的効果もあると考えますが、御見解をお伺いいたします。

田中参考人 模擬選挙は、目の前の選挙のことにつきまして議論をする、しかも、その場合、マスメディアも含めて資料も大量にありますし、議員さんたちも、公報などで各政党も配りますし、そういう意味では、生きた教材として非常に有効であるというふうに私は考えております。

坂本(祐)委員 私も、地元の大学の講義で市議会議員選挙の模擬選挙を行ったことがありますけれども、それは、実際に開票された順位と余り変わりはありませんでした。

 将来の地域を担う青年たちは、郷土の現状を学び、政治がどのような町づくりを進めていくのか知ることによって、政治に対する関心を深め、自分自身の夢や希望につなげていくのではないかと考えます。また、そのことが可能になるのではないか。ですから、郷土教育や、田中参考人がおっしゃる市民教育、あるいはキャリア教育など、若いころからしっかり身につけさせることが肝要だというふうに私も考えております。

 それでは、南部参考人に、最後になりますが、お伺いをいたします。

 私は、国民投票権年齢と選挙権年齢や成年年齢はそろえて引き下げるべきと考えておりますが、今回の改正案でも、こうした方向性のもとで各党が合意を行い、選挙権年齢等について速やかに引き下げの検討を行うことを附則に定めた上で、選挙権年齢については二年以内の十八歳への引き下げを目指すことを八党合意で確認いたしております。

 そこで、国民投票法制定時の経緯に詳しい南部参考人に、この八党合意にある二年間という期間について、果たして実現可能かどうか、この実現可能性をどのようにお考えになるのか、また民法の成年年齢についてはどのようにお考えか、速やかに引き下げることは可能だと考えるかどうか、あわせてお伺いをいたします。

南部参考人 その二年という期間は、かなり余裕があるようで、実は余裕がないということも考えられます。

 当面、この衆議院においては選挙はないのかなという気もしておりますけれども、参議院の方では必ずあるというような状況の中で、この課題がどういうふうに進んでいくのか。また、来年、統一地方選挙もございます。そういった中で政治の状況がどうなっていくか。こういう、できるだけ多くの会派の合意のもとで進められるべきテーマが、逆にいろいろな政局的なことになってしまって、また前回のように宿題が放置されるというようなことに至っては、せっかくの今回の改正法の意味がないというふうに思いますので、ここは今回の改正案の趣旨に基づいて、しっかり議論を進めていただきたいというふうに思います。

 それから、民法は、もうこれは方針が決まっていることですので、確認書、それから附則の三項にあるとおり、頭出しになっていますので、先生方の方針に従って、多少、それは公選法の改正よりも公布がおくれたり、改正法の施行がおくれるという、そのずれはあるとは思いますが、それは行政の判断で、法務省が判断するのではなくて、先生方の決意と実行のもとでお願いしたいというふうに思います。

坂本(祐)委員 私たち日本維新の会は、昨年五月、他党に先駆け、この憲法審査会に国民投票法改正法案を提出いたしました。国民投票法の改正の論議をリードしてきたところでもございます。

 今回、八党の合意案である国民投票法を一日も早く成立をさせるために、全力を尽くしてまいりたいと考えております。

 以上です。

保利会長 次に、泉原保二君。

泉原委員 自由民主党の泉原でございます。

 私は、年をとってこの議会に出てまいりまして、勉強も不足でありまして、学生時代はスポーツに明け暮れて、卒業後は生活のために生きてきたようなものでございます。憲法審査会で質問をせよという依頼がありましたけれども、非常に戸惑っておったわけでございますけれども、一遍、人生の経験者として、先輩として質問したい、かように思います。

 私は、公務員でもなければ弁護士でもありませんので、十八歳の国民投票権、選挙権に関して、絞って質問をさせていただきたいと思います。

 まず、歴史を考えたときに、私は、世界大戦の直近に生まれまして、それから四年間を経て敗戦ということになりました。戦後の生き方というのは随分勉強してまいりまして、また、生活に、身に感じたこともございます。

 戦中というのは、まず、B29の音はいまだに頭にありますし、B29が飛んできたら電気を消して防空ごうへ入れということで、防空ごうへ入った経験もございます。その防空ごうといえば、下に水を張って、非常に簡易なものでありまして、上から爆弾が落ちたらもうおしまいです、一家全部全滅やという防空ごうへ入れられたわけでありますけれども、そういう経験をしながら、私も人生を送ってまいりました。

 焼夷弾のことも覚えております。私の住んでおるのは兵庫県の尼崎で、重工業地帯でありまして、非常に焼夷弾が落ちてくる。花火のような形で、焼夷弾は横にも走るんですね。そういういろいろなことを体験し、これは、戦時中ということの意識が一切ありませんでした。今考えれば、ああ、あれは戦争中やったなというぐらいのものであります。

 また、子供が遊んでおりましたら、お金が降ってきても拾うな、そのお金には毒がついていると。これは、原爆が広島に投下された時期に匹敵するんだろうということで、戦後、理解しております。

 そういう中で私は生きてきまして、それの中で、参考人の皆さんに質問させていただきたいと思います。

 まず、再度確認ですが、先ほど、世界各国で、八割から九割の国が十八歳以下の投票権、選挙権がある、こういうふうにおっしゃいましたが、これは、数を言えば何カ国でしょうか。

南部参考人 国会図書館のデータですけれども、百九十の国・地域のうち、もう百七十幾つと。ちょっと正確な数は覚えておりませんが、そのうちの八割、九割だというふうに理解しております。

泉原委員 それでは、その国々は、国民投票並びに選挙権、投票権が決められておりますか。田中参考人にお聞きしたいんですが。

田中参考人 今の数でございますけれども、百九十一カ国、データがある国のうち、百七十六カ国が十八歳以下で認められる地域でございます。

 国民投票があるかどうかは、国によって、制度によって違いますけれども、国政への参加が十八歳でできるということでございます。

泉原委員 その百七十六カ国ですか、その国は全て軍隊を持っておりますか。教えていただきたいと思います。

田中参考人 持っていると思います。一部持っていない国もあるようでございますが、ほとんどの国は持っていると思います。

泉原委員 今質問させていただいた追加でございますけれども、軍隊というものを持っておりますか、それとも日本のような自衛隊というものでありますか、それをお聞きしたいと思います。

田中参考人 私、そちらの方は専門家ではないわけでございますけれども、ほとんど軍隊だというふうに思います。

泉原委員 水地参考人、松繁参考人に聞きたいんですが、先ほどの件を御存じでしょうか。投票権のある国。

水地参考人 正確な国の数とかいうものにつきましては、今回、こちらにお呼びいただきました際に資料をいただいたところに今の数字がございましたので、そこまで多いというところは、この段階で具体的なところは初めて知ったというところでございますが、多くの国が十八歳ぐらいであるということは今回より以前にも知っておりました。

 また、委員の御質問の、ほとんどの国が軍隊を持っているか、自衛隊かということにつきましては、日本以外のほとんどの国が、その多くの国が軍隊を持っているということも理解しておりましたし、自衛隊ということではなく軍隊というところが多いということも存じております。

泉原委員 松繁参考人にお願いします。軍隊か自衛隊か、御存じでしょうか。

松繁参考人 お答えをいたします。

 この件に関しても、もちろん、日本は憲法九条があるから自衛隊、そのほかの国は、それぞれが軍隊を持っているということは承知をしております。

 以上です。

泉原委員 それでは、田中参考人、南部参考人にお聞きしたいんですが、これらの国は徴兵制をとっておりますか。それを御存じだったら教えてください。

田中参考人 具体的な数はわかりませんが、徴兵制をとっている国は幾つかあると思います。

南部参考人 たまたま今私が持っている手元のデータですけれども、現在徴兵制をとっている国、ドイツ、ロシア、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、オーストリア、スイス、韓国、中国。徴兵制を廃止して志願兵にした制度など、いろいろあるようですけれども、そのおおよそ兵役の年齢が参政権の年齢に一致して、十八という国が多いように見受けられます。

泉原委員 この十八歳の選挙権について、かねてより私は、この審査会に来る前までは、投票率の悪い点とか、いろいろなことを聞いてまいりましたが、私の持論とすれば、戦前の、被選挙権が三十歳、選挙権は二十五歳にしたらどうやという持論を持っておりました。これはなぜかというと、やはり、社会に出て成人としての立派な社会生活をしてきた人たちが投票をするということに対して私は賛成しておりました。

 ただ、この憲法審査会で勉強させていただきまして、まず、社会で悪法と言われる、少年法の問題が今議論されておりますけれども、私は、少年法については、義務教育の十五歳から十六歳の中で行うべきだという持論を持っております。

 それから、十八歳に選挙権とか国民投票権を与えますと、非常にその時代、高校三年生でして、受験生を持つ親にも聞いてきました。そうしたら、もう受験戦争でそんなこと余裕ない、それやったら改めて秋の入学に切りかえてくれたらどうやろう、そういう意見もございました。秋にやると、その半年間でじっくり勉強して、選挙の勉強もし、政治の勉強もするだろうということで言われておりましたので、十八歳のこれについては私は賛成をしておるわけでございまして、その条件として秋の入学をお願いしたいというのが一点。

 それと、時間がないので質問をかえますが、社会貢献、社会奉仕というものが今の段階では行われていないし、角度を変えて話をしますと、やはり、権利ばかりを主張して、義務と責任をどういうような形で十八歳が果たすんだということの議論がないように私は思います。

 私は、やはり権利を主張する前に義務と責任がなければいけない、かように思うわけでありまして、社会貢献また社会奉仕について、二年間そういう任務について、これは費用もかかりますが、二十で堂々と成人として認める。

 だから、十八歳の選挙権並びに国民投票権は私は賛成をいたしますが、それについての条件として、社会貢献、社会勉強をしていただきたい、その制度も並べてつくったらどうかという持論を持っております。

 田中参考人、どうでしょうか。

田中参考人 権利を主張するだけじゃなく義務をというお話ですけれども、それは当然だというふうに思います。

 中学、高校段階でも、奉仕活動、ボランティア活動の推進を今されておりまして、この奉仕活動、東京都などは義務化されておりますけれども、一面で見ると、それは社会とのかかわり、あるいは社会に対して自分が貢献していくということにもなっていくわけなので、これも市民教育の中で、知識とそういった具体的な活動とを結びつけて、福祉の現場を見る、そのことによって、一体どんな問題があるのか、解決するにはどうしたらいいのか、それに自分は何ができるのかと。

 最後は、私は、参加ということをすごく大事だと思っておりまして、単に批判をするだけではなくて、自分も社会をつくっていく一員であるという自覚を持って社会に貢献していくということは大変大事なことだというふうに思っております。

泉原委員 最後に質問したいと思います。

 私は、十八歳以下の皆さんが意識改革をもって、自国は自国で守る、自分たちで守るんだという意識が芽生える教育もこれから必要だと思いますので、その点、南部参考人にお聞きしたいんですが、どうでしょうか。

南部参考人 この国をどうするかということについて、若い人たちがみずから考え、そういう学ぶ機会を保障するのが国、政治行政の役割であるというふうに思っております。

泉原委員 終わります。

保利会長 次に、三谷英弘君。

三谷委員 みんなの党の三谷英弘です。

 本日は、御多用中、まことに貴重な御意見ありがとうございます。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 まず、田中参考人に質問させていただきます。

 私自身は、今の投票権年齢を含めてしっかりと十八歳に速やかに下げるべきだ、成人年齢も十八歳に下げるべきだ、このように考えているわけでございます。

 事投票権年齢に関して言いますと、基本的には、G8では日本のみが二十、それ以外は十八歳、そして、OECD加盟の三十カ国の中では日本と韓国以外が十八歳に引き下げられている。

 そういう意味で、今日本と韓国が二十、その影響というのがどのように今の状況にあらわれているかということを考えると、日本と韓国、この二つの国は、十八歳、大学受験をするという中で、物すごく受験勉強に必死になっている、もうそれしか見えていないんじゃないかというぐらい、とにかくそういった勉強ということをやっているんですが、個人的には、そういった高校二年生、三年生というときに、もっと世間に、社会に、目を外に向けるというようなきっかけがあればいいんじゃないかなというふうに思っております。

 その意味でも、やはり高校教育の中に政治というものをしっかり入れていくべきではないか、その意味でも、十八歳に投票権年齢を引き下げるということが必要ではないかというふうに考えております。

 その意義というものについてはもう既にお話をいただいておりますので、それについて今は御質問しませんが、質問は以下のとおりです。

 十八歳に引き下げると、当然ながら、十八歳、十九歳の人が投票できる。恐らく、二学年で大体二百万人ちょっとというような規模になるんじゃないかというふうに思っております。一方で、一例ですけれども、農協さん、JAさんに加盟されている方、准組合員数を含めると大体一千万人いらっしゃるわけです。

 若い方々に投票権を与えたとしても、それによって実際の政治へのインパクトというのはどれぐらいあるかというと、必ずしも大きなものじゃないんじゃないか、必ずしもバラ色ばかりじゃないんじゃないかというふうに思っておりますが、それでもやはり成人年齢を引き下げることに意味があるということについて、積極的な御意見を伺えればと思います。

 これは、田中参考人、それから、ぜひとも南部参考人にもお願いいたします。

田中参考人 ありがとうございます。

 私も三谷先生の御意見に賛成でございます。

 二百万人という数が多いか少ないかということでございますけれども、有権者の中で二百万人という数は、有権者は今、七千万ですか、八千万ですか、そのぐらいだとしますと、やはりそれなりの数を持ってまいりますし、恐らく先生方も、そういう段階で選挙をされる場合には、当然十八歳、十九歳の御意見も意識されるということになると思いますので、すぐにどれだけ影響があるかということを申し上げることは難しいですけれども、じわじわと影響が出てくるのではないかというふうに思っております。

南部参考人 三谷先生の最初の質問の中で、韓国の成人年齢、選挙権年齢についての言及がございましたけれども、今、法改正が行われて、ともに十九歳になっているというふうに記憶しておりますが、また改めて御確認をいただければというふうに思います。

 先生の御質問なんですけれども、まさにここにおられる先生方の政治活動そのものに直結する話で、先生方が日常的に使われる政治活動用のチラシとか、政党でつくられるマニフェストの中身も、おおよそ高校二年生ぐらいでわかるような内容になっていくのかなと。

 また、ぜひ今の段階からそういうふうにしていただきたいと思いますし、毎朝街頭に立たれて、制服を着た方が通り過ぎると、どうしてもチラシを渡さないという癖が先生方はついておられると思うので、今後は、先生方におかれましても、有権者としての自覚を促すためにも、そういったところをちょっと工夫していただければなというふうに思っております。

三谷委員 逆に、チラシを配っている側としては、そういう学生とかにチラシを配っちゃいけないんじゃないか、学生を政治に巻き込んじゃいけないんじゃないかというような余計な気遣い等々もあるところではないかと思っておりますけれども、そこは両者、歩み寄れればなというふうに思っております。

 それから、南部参考人に御質問させていただきます。

 きょうお話をいただいた、まさに政府参考人答弁の中での矛盾ということを御指摘いただいたことについては、非常にありがたいというふうに思っております。

 まさにそういったところをこれから詰めていくということですが、そういう意味では、前回の政府参考人の答弁の様子をごらんいただいたということだと思いますが、お互い、どうぞどうぞ、お先にやってください、うちからは動きません、三すくみのような状況だったんじゃないかというふうに感じておりますけれども、それを見て率直にどう思われたか。

 十八歳に年齢を引き下げることがここ数年の間にできるかどうかということについての御意見と、それから、それを突破するために何が必要というふうに思われているかということについて、見解を伺いたいと思います。

南部参考人 本来であれば、二〇〇七年八月七日に衆議院に憲法審査会が設置をされて、その翌年の二月に、先ほどまで鳩山先生いらっしゃいましたけれども、法務大臣の諮問があって、その法務大臣からの諮問に答申があったわけで、その両方において、衆議院、参議院ともに憲法審査会が立ち上がっていないという状況でありました。

 政府に宿題を投げかけておきながら、その政府の動きをチェックする機関がこの立法府に存在しないという状況がずっと続いておりましたので、今回、その宿題の未解決が、一定の利息をつけたような形で降りかかってきてしまっているのかなという気がいたします。

 法務省と総務省の見解の相違というのは、もう昨年の段階から明らかになっていることでありまして、本来であれば、この三つの宿題が片づく以前からこういった検討を早くやるべきであったというふうに思います。

 先生方にもその場で政府参考人に言い返してほしいという場面がかなりありまして、そもそも、制定法附則三条一項の、「国は、この法律が施行されるまでの間に、年齢満十八年以上満二十年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう、」という、この「等」に何を読み込むかなんですけれども、法務省はそこを、参政権の引き下げ、選挙権年齢の引き下げだけというふうに読み込むわけですね。それで、選挙年齢と成年年齢のイコール、成年年齢の引き下げができなければ選挙権年齢の引き下げができないのかというような問題にすりかえて、議論を始めてしまった。

 本当にそういういろいろな矛盾が出てきて今日に至っているという気がしますので、まさに、この辺の矛盾を解決するためには、先生方の八党の合意でブレークスルーしていただくしかないというふうに思いますし、各党PTも、このようなオープンの場で、政府参考人を呼ぶ形で、その時々の進捗状況、法整備の状況などを厳しく追及していく、もうこれに尽きるのではないかなというふうに考えております。

    〔会長退席、武正会長代理着席〕

三谷委員 ありがとうございます。

 それから、水地参考人に御質問させていただきます。

 まず、日弁連のスタンスについて改めて一度確認させていただきたいというふうに思うんですが、成人年齢の引き下げについては、基本的に慎重、どちらかというと反対、投票権年齢の引き下げについてはやってもいいんじゃないかということでよかったかどうか、まず確認させてください。

水地参考人 おっしゃったとおりでございます。

 ただ、意見書という形で日弁連としての意見をまとめているかということにつきましては、選挙権については特段発表しておりませんけれども、その点についてはそれを想定に置いて、民法の成年年齢については慎重に判断すべきという形で意見をまとめております。

三谷委員 質問を続けさせていただきます。

 特に、世界的に見ても、成人年齢と投票権年齢というのは基本的には一致しているという国が大半である。大半というよりは、ほとんどというふうに考えているわけですけれども、その中で、先ほど私が申し上げたとおり、G8では日本以外が十八歳、OECD三十カ国でも、先ほどの指摘は受けてもなお、十八歳になっているのは日本と韓国以外という状況であろうというふうに思っております。

 世界の趨勢が十八歳というふうになっている中で、二十歳というものを維持するということについては、逆に、そういう必然性、理由があるんだ、立法事実がこっちの方にあるんだということを説明する、説明する側は、むしろ二十歳を維持しようという側じゃないかというふうに思っておりますけれども、その点についてどのようにお考えでしょうか。

水地参考人 どちらに主張立証責任があるかということになりますと、もちろん、世界の趨勢がそうであるということが変更する一つの理由であるというふうには思いますけれども、日本のこれまでのありようを変更するというのが、世界がそうであるからというだけ、まあ、だけではもちろんないですけれども、ということで合わせる必要はないというふうにまず一点考えます。

 あと、結局、民法の年齢というのがどういう意味を持っているかというと、法律行為をできる年齢ですとか、民法の中でも、御承知のとおり、婚姻年齢とか、さまざまな年齢の置き方をしておりまして、最も一般的な法律行為を行い得る年齢として二十というのを置いているということで、基本的には、どの年齢を基準としてそれぞれの行為ができるかということは、それぞれの目的に応じて行うべきだというふうに考えております。

 さまざまな法政策の中では、必ずしも引き下げるというだけではなくて、投票とかなんかができる、そういった行為ができるという意味では十八歳にしようとしていますけれども、逆に、青少年を保護していくというような観点からすると、三十歳ぐらいまでをそういった保護の対象にしていくというような社会政策ももちろん置かれているところでございます。

 それぞれの目的に応じた年齢にすべきということで、民法の基本的な行為能力等については、二十を特段引き下げる理由というのが、日本の社会の中において、消費者保護とかいったような観点で、十分な教育ですとか、それから、そういった施策がまだ整っていないということから慎重にということで、基本的に、合わせること自体にもちろん反対しているわけではございません。

 それぞれの目的に応じて、これは下げてもよいという十分なところが整えばすべきであって、ただ、基本的に十八歳ということだけで、そのほかの施策が整っていないのに引き下げるということで、むしろ消費者被害を拡大したりするであろうということが容易に予測される中で、そういうふうに直ちに変えていくというのは拙速であろう、そういったような意見でございます。

三谷委員 そういう意味では、日弁連さんのお考えとしては、日本という国が、世界の中において、消費者、特に若年者の保護が欠けているんだというふうにお考えだと理解してよろしいでしょうか。

水地参考人 特段欠けているかどうかは各国の施策の問題だと思いますけれども、そういった被害を少なくするという施策がとり得るだけの社会であるのにとり得ていないという意味で、さらにそういったことを充実させるべきだというふうな、むしろ積極的な意見として考えております。

    〔武正会長代理退席、会長着席〕

三谷委員 もちろん、健全な判断能力とは何かということ自体も非常に議論されるべきだとは思いますけれども、ただ一方で、例えば若い方であれば、そういった判断能力がない、未熟だというふうに言われます。逆に言うと、年齢がいけばいくほど熟し過ぎているという話もあるわけですから、そういう意味では、何をもって適切なのかということを判断するのは難しいという中で、世界の中で、例えば成年後見だとかそういった制度というのが高齢者も含めてとられている、それは当然だと思います。

 若い方々についても、余りにも若い方々については、判断能力がない、行為能力、意思能力がないというような判断をされるのは当然だと思いますし、そういった方々に関して保護するというのは当たり前だとは思いますが、その一方で、日本が、ほかの国が十八歳をとっている中で、日弁連さんが二十じゃなきゃ若年者の保護に欠けるんだと。

 若年者の保護というのはできるならどんどんとっていった方がいい、当たり前のことだと思いますし、それがまだまだ不十分だというのは当然だと思いますけれども、あえて、日弁連の見解として二十であるべきだということについて、それはある意味、日弁連さんというのは強制加入団体というところもありますから、その中で、そういった意見を言い続けることが果たして日弁連という組織自体にいいことかどうかということも、ひとつ慎重になっていただきたいなというふうに私は思っております。

 この場においては、北側先生もそうですし、大口先生も、もちろん保岡先生も枝野先生も、恐らく皆さん、弁護士登録されていると思うんですけれども、強制加入の団体として、今、一生懸命、十八に引き下げるべきだと言っているわけですよ。そういう中で、日弁連という母体が二十歳だと言うことというのは、何となくそこにすごくそご、違和感を感じるんですが、その点についてどのようにお考えでしょうか。

水地参考人 委員会がまとめた意見について述べているところで、なかなか難しいということは、先生方、御理解いただけていると思いますが。

 正確に申しますと、この意見書を出しましたのは二〇〇八年の段階でございまして、その段階でさらにそういったことを進められるべきだというふうに申し述べておりますので、その後、既に数年の間にそれぞれの施策がとられているというところで、十分にとられているということであれば意見が変わるということはもちろんあり得るというふうに思います。

 ただ、今先生のお話にもありましたけれども、それぞれの人の成長、発達の過程というのは大変に幅のあるものでございまして、もちろん、かなり若い段階からいろいろなそういった成長を遂げる人もいれば、それが遅々としている人もいるわけですね。

 そういう中で、投票とか、積極的なことをすることができるのは、そういった幅の中の可能な人がいるならばできるようにしてあげるということが必要だと思いますし、それから、幅があるということからすると、責任を負ってしまう、契約をしたけれども取り消すことができないといったことについて、どこまでそういった保護をすることができるかというのは、むしろ成熟しているところであれば、そこの幅が広がるということはあり得ると思いますので、そういう意味では、私は、この申し上げている見解が個人としてそんなにそごしているというふうには思っておりませんが、先生方も含めての強制加入団体でございますので、いろいろな御意見をいただいて、団体としての意見はまた検討していきたいというふうに思います。

三谷委員 ありがとうございます。

 先ほどの中に、保岡先生の名前を挙げるのを忘れておりました。失礼いたしました。

 これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

保利会長 次に、畠中光成君。

畠中委員 結いの党の畠中光成です。

 本日は、四名の参考人の先生方、貴重な時間、また有意義な意見をいただきまして、ありがとうございます。

 特に、南部さんが中山太郎先生の言葉を引用されました、私たちが誇るべきは、憲法の変えやすさでも変えにくさでもなく、憲法を変えるかどうかについて、どれだけフェアなルールを持っているかという言葉、私どもこの憲法審査会の委員も、そういった考え方に基づいて今回の国民投票法の審議を進めてきた次第です。

 当初、我が結いの党も、三つの宿題それぞれについて案を持って意見を表明してまいりましたが、事憲法改正手続に関する法律ですから、できるだけ多くの会派の賛同の中での方がふさわしいという意見の中で、七党の合意に加わりながら議論を進めてまいりました。

 そういった中で、参考人の皆様に質問を幾つかさせていただきたいんです。

 一つ目、十八歳の投票権、選挙権について、我が党は速やかな引き下げを訴えてきた立場でありますが、この間さまざまな議論があった中で、この引き下げについては、ほとんど全ての会派がその方向性について一致しているところであります。

 この引き下げについて、先ほども議論がありましたように、教育、学校教育が重要なのは論をまたないと思います。ただ、その際に、田中参考人から知識中心ではなく体験型という御意見もありましたけれども、判断能力以前の、情報収集とかあるいは読み取り、いわゆるメディアリテラシーが、昨今、テレビ、新聞のみならず、インターネット等、情報が氾濫している中で、このリテラシー能力というのが極めて重要だと思っています。

 これは、単なる公民だとか現代社会とかといった領域とはまた別の能力といいますか、教育的な観点が必要になってくるのではなかろうかというふうに思っておりますが、従来の学校教育外の、私が申し上げましたメディアリテラシー能力も含めて、こういったところをどうしていくかということについて、四名の参考人の皆さんから簡単に御意見をいただけますでしょうか。

田中参考人 畠中先生、ありがとうございます。

 メディアリテラシーにつきましては、大変重要な課題だというふうに私も考えております。

 特に、昨今のインターネットの普及に伴いまして、結構、政治的な主張も多いわけでございますけれども、往々にして、その根拠は何なのかよくわからないままに一つの方向に意見が、そうだそうだというような形でなったりというようなことがあるわけですけれども、これは、現実の社会とのかかわりの中で判断能力を身につけて、それプラス、メディアとのかかわり、両方の能力をつけていきませんと、一方的に偏るということになりかねないと思うんですね。

 そういう意味では、メディアリテラシーの教育というのは、インターネットとかあるいは新聞等の情報を読み解く能力とともに、特に地域ですけれども、自分が体験している世界に直にかかわる中で身につけていく判断能力というものがすごく大事で、その際、先ほど申し上げましたように、地域の人にヒアリングをするとか話をするとか、聞く、話す能力から始まりまして、新聞を読み解く力、インターネットの情報がどこまで正しいのかを知る力というような、総合的に考えていかなくてはいけないわけでして、これは、公民系の教科だけでなくて、もちろん国語とかあるいは総合学習も含めて、教育全体でメディアリテラシーについては考えていかなければならない課題というふうに思っております。

南部参考人 この問題を公職選挙法の改正に絡めてお話しさせていただきたいというふうに思っております。

 インターネットによる選挙運動が解禁されましたけれども、相変わらず未成年者は選挙運動ができません。うっかりリツイートをしたりとかできない、そういういろいろなガイドラインが発表されましたけれども、ぜひ、十八歳で選挙権というようなことになった場合は、もっと自由な運動ができるように同時にしていただいて、文書図画規制であるとか、そういうのを抜いていただく必要があると思います。

 学校でいろいろ自分たちでチラシをつくって議論したり、あるいは、私の住んでいる、さいたま市で県立高校が合同で各候補者の公開討論会をやるとか、そういった企画がどんどん自由にできるようになるように、主体的にそういうことができるようになるように、今規制する法律がかなりあると思いますので、必要な見直しを行っていただければというふうに思います。

 能力については、先ほどから申し上げているように、全然遜色ないというふうに思っておりますので、その点は御心配はないというふうに考えております。

松繁参考人 申し上げます。

 本当に学校教育が大事だということでいきますと、今の学校教育のあり方も、もう一つ見直す必要があるのではないかというふうに考えております。今、子供たちを学力テストで、点数で縛るような教育が先行しがちですけれども、そうではなくて、自由な論議ができるような教育、そういったことを保障することがあわせて必要だというふうに思っております。

 そして、いろいろなメディアが氾濫する中でどういう情報をつかむかということは、学校図書館の役割も随分大きいというふうに私は思います。学校図書館にきちんと司書がいて、新聞も見られる、そしてそういうメディアの情報も見られる、いろいろな情報判断ができる場所として、そういう公教育の場に、きちんとした図書館教育であるとか、あるいは、社会教育を担うのは行政の役割になりますけれども、そういったことにもきちんと参加をさせていく、そういった教育のあり方を求めていくことが大事だというふうに思っております。

 以上です。

水地参考人 今のメディアリテラシー等の問題でございますけれども、SNSの利用等につきましては、子供たちの方が情報を収集するということだけについてはどんどん進んでいってしまっているところがあるわけですけれども、そこで得た情報等をどのように信じるのか、どう取捨選択するのかといったところについての判断には極めて危ういところがまだあると思っておりまして、そういった点の教育が本当に重要だと思うんです。

 例えば、ちょっと現状はわかりませんが、私の子供たちの時代に、ほんのちょっと何年か前ですけれども、パソコンの利用については技術の時間に習っていたんですね。技術の時間に技術としてパソコンの利用方法は習うんだけれども、多分、そこから出てくる情報等をどう読み解くかといった部分についての教育といったものが、そういったことがまだ十分に織り込まれていないのではないかというふうにその段階では危惧いたしました。ですから、ちょっと現状はどうなっているかわかりませんけれども。

 それと、そういった判断をしていく、集めた情報をどう判断するかという中で、ちょっと宣伝になりますけれども、弁護士会でやっています法教育といったようなことは、法律のことを勉強するということではなくて、いろいろ出てきた情報を法的に考えていくということを学ぶということで、小中高といった形でそういったこともやっておりますので、そういった形でいろいろな考え方といったことも身につけていくということが必要であるというふうに考えております。

畠中委員 ありがとうございます。

 私は、まず、投票権、選挙権年齢引き下げに当たっては教育が大事だというふうに思いますし、また同時に、教育の中身についても、いろいろな考え方があるということを理解することが極めて重要だろうと思っています。

 例えば、各新聞の社説等でも、一つのテーマについてさまざまな考え方があるということを常に整理する力をつけていくとか、こういったことで、例えば、実際、国民投票の際もそうですし、選挙の際にも、どの候補がいいのか、どの考え方がいいのかという判断能力につながっていくというふうに思いますので、まず、いろいろな考え方があるということを学校教育の中で取り入れるのが極めて重要だろうというふうに思っています。

 では、次の質問に移らせていただきます。

 公務員の政治的行為について、組織による勧誘行為の制限については今後の検討課題になりましたけれども、また、この件については参考人の間でもそれぞれ賛否はおありかと思いますが、今後の課題としてぜひ御所見をお聞かせいただきたいのが、そもそもこの組織というのは一体どういうものを言うのか、どうあるべきか、あるいはどういう認識をお持ちか、御所見を簡単に四名の方それぞれお聞かせください。

南部参考人 当初、この論点が七党の法案で出てきたときに思い出しましたのは、国民投票法の立案当時に、外国人による組織的な国民投票運動の規制というのを検討した時期が一時期、ほんの一時期だったんですけれどもありまして、それはすぐに論点としては消えてしまったんですけれども、また、そういうちょっと懐かしい論点が出てきたなという気はいたしました。

 組織性の要件というのは、法学的に明確な定義ができるようで、実はできない面がかなりあると思います。フェイスブックページみたいなもので公務員の方々がつながっているというようなことが現にありますので、そういったものにも広げていくと、検討課題といいましても非常に議論がループしてしまう可能性があると思うので、私は非常に消極的に考えております。

松繁参考人 申し上げます。

 組織というものも、本当に、どういうものだろうというふうにこの法案を見たときには思いました。それで、いろいろな論議の中で、やはり公務員が加わる労働組合などを少し名指しして批判しているんじゃないかなという思いがありましたので、最初の意見表明のときには、公務員労働組合、私たちの労働組合はこういうものだよということの説明をさせていただきました。

 どうも、今後の検討の中で、労働組合にとどまらずに、いろいろなサークル活動をやっているところであるとか、あるいは山岳をやっているところだとかも含めて、幅広いところが対象になりかねないのではないかなということがいろいろ危惧をされますので、これも含めて、自由に国民投票法、憲法について論議する場合においては、組織というものは全て取っ払う方がいいのではないかというふうに思っております。

 以上です。

水地参考人 私どもも、先ほど述べましたとおり、組織というのがむしろどういうものを想定するかという御質問でございましたけれども、組織という概念は大変に幅広いものでございますので、そういった幅広の概念で規制するということについては消極に考えております。

畠中委員 ありがとうございます。

 では、最後の質問を一点だけ、またお聞きします。

 これも公務員の政治的行為についてなんですが、国民投票の性格に鑑みて、基本的には自由であるべきだというのが我が党の立場ではあるんですけれども、先ほど三谷委員から日弁連さんの組織内の話も出ましたように、今回、国民投票でありますから、国民が広く参加できるという趣旨については、それぞれしっかりとその趣旨を考えていく必要があるという前提で、公務員の政治的行為は基本的には自由であるべきだとは思うものの、一方で、その分、地位利用についてはあってはならないわけですから、その罰則について我が党も主張してきたわけであります。

 萎縮するというのは心理的にはわからないわけではないけれども、しかしながら、その範囲、何が地位利用に当たるのか、これを明確化するのは十分に検討できることではなかろうかというふうに思っているわけです。

 この地位利用の範囲は明確化できるのか否か、あるいは地位利用そのものについてどのようにお考えか、御所見を田中参考人と水地参考人にお願いします。

田中参考人 私は、原則自由でいろいろな方が発言できるのはいいと思いますが、どの点で公務員として制限をかけるかということにつきましては、ある意味で私も専門外ですので、意見は差し控えさせていただきたいと思います。

水地参考人 明確化できるかということにつきましては、一定程度、例示をしたりというような形で明確化するということはもちろん可能であると思いますけれども、私どもの考えております自由にすべきだというところの限度というのは、明確にしたものというのは、地位利用として今回新たに法制化しなくても、そこに当たるようなものは、現行の公職選挙法ですか、そもそも公務員として職権濫用とかそういったところに当たるものと重なり、それを超えるものはないというふうに考えております。

畠中委員 終わります。ありがとうございました。

保利会長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 きょうは四人の参考人の方々、本当にありがとうございました。貴重な御意見を伺いました。

 冒頭に、会長に一言申し上げたいんですが、この局面で、きょう参考人質疑ということになって、お忙しい中、四人の方々からいただいたんですが、先ほど来、若干、喚起したところ戻られたようですけれども、特に最大提出会派の中で空席が目立っている状況になっているということについては、改めてきちっと会長としても対応していただきたいというふうに思います。本当に参考人の方々には失礼になるということを、私、申し上げたいと思います。

保利会長 御発言はよくわかりました。また、幹事会のときにお話をしたいと思います。

笠井委員 それでは、幾つか質問をさせていただきます。

 最初に、水地参考人それから松繁参考人に伺いたいと思うんです。

 まず、二〇〇七年の改憲手続法成立以降、今日までの経過にかかわってのことなんですけれども、現行の手続法でいうと、法施行までの三年間で選挙権年齢や成年年齢の十八歳への引き下げを行うことなどを義務づけていたわけですけれども、七年たってもそれができていないという現状にある。

 ところが、今回出てきた法案について言いますと、当時、大前提と言っていたこの選挙権年齢等の引き下げについては、期限は明示的に決めていない、そういう意味では棚上げにされていて、先ほど来ありました公務員の国民投票運動については、一層規制を強化するという内容が盛り込まれているということだと思うんですが、その点でいうと、改憲手続法審議の際の法案提出者の答弁とも明らかに違う中身が出ていると思うんです。

 日弁連としても、あるいは自治労連としても、七年前にも御意見をいただいたりした経過もあったわけですが、こうした経過についてどう見ておられるか一言ずつ伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

水地参考人 日弁連といたしましては、今御指摘のような点がございまして、きょう最初の意見でも申し上げましたとおり、この期間内になされていないということから、施行自体を延期すべきであるというような意見を述べていることもございます。

 ただ、先ほども申し上げさせていただきましたとおり、現行法の段階では本当にいろいろな意見聴取等もされたと思うんですけれども、それでも日弁連として考える点というのは、さらに考えていただきたい点がたくさんございますので、そういう意味では、年齢の点だけをとってみるならば、確かにもう施行期日も来ておりますし、その点について、必ずしも二十というのを四年間待つ必要はないというふうに考えますけれども、その他の点についての議論をさらに深めていただきたいということでございますので、現行のもので直ちに運用してほしいというふうな意見ではございません。

松繁参考人 申し上げます。

 この七年間の経過とかを含めて、最初に改憲手続法に対するスタンスのところで申し上げたことの繰り返しになるかもしれませんが、とにかく成立をさせたい、そのために修正を加え、十八もの附帯決議をつけて、ある意味問題を先送りにして無理やりつくったものではないかというのが感想です。だからこそ、実際に動かすことができなかったのではないか。

 四月二十四日の憲法審査会では政府質疑が行われたところですけれども、法整備を進めるに当たって府省によって見解が違うということも出されましたが、こういった事例からも、細部を曖昧なままにして成立させたことにやはり無理があったんだということを、私はそのときに改めて実感いたしました。

 いわゆる宿題と言われるものを解決されないばかりか、前回の到達からも後退するというふうに申し上げておりますが、そういった内容になぜ、さらに七党での共同提案に至ったのか、八党の確認書が交わされたのかというのは非常に納得しがたい、そんな思いです。これは、先ほど申し上げましたが、国会審議を軽視しているのではないかというのが率直な思いであります。

 以上です。

笠井委員 松繁参考人に続けて伺いたいんですが、今国民が改憲のための手続法が使えるようにすることを望んでいるのかという問題なんですけれども、このこととのかかわりで、松繁参考人は、意見陳述の最後のところで、九条改憲に対して国民の多くが反対するとともに、自治体関係者も危惧をしているというふうに述べられました。

 この間、自治労連が自治体の首長や議会関係者などとの懇談もされたというふうに先ほどもおっしゃっていましたけれども、具体的にどのような危惧の声が出されているか。特に東日本大震災や東京電力の福島第一原発事故、ここで被災された自治体からは憲法とのかかわりでどのような声が出されているか、御紹介いただけると思うんですが、いかがでしょうか。

松繁参考人 お答えいたします。

 私たちは、憲法が保障する権利は、地域での人々の暮らしと営みの中にこそ具体的に保障されるべき、そういうふうな観点を持っておりますから、そういうことで地方自治を大事にしよう、地方自治、憲法を生かした行政をつくっていこうということで、自治体の首長さんなどと懇談をしているということでありますが、この間、三・一一以降、震災と原発事故を経験して、多くの自治体関係者の中では、自治体は住民の命に責任を持つところ、そういった発言が特に多く出されてくるようになってまいりました。

 岩手の被災地でも憲法キャラバンを行いましたけれども、首長さん方が言うには、地方自治はどこに住んでも住民が平等に豊かな暮らしができるようにすべき、憲法改憲のハードルの高さは尊重すべきだ、大事なことを変えるのに半分でいいのか、憲法と平和はセットで考えるべき、地方自治に携わる者にとって憲法の基本理念は特に重要だ、さらに、九条や二十五条の改正は国民は望んでいないというふうに、これは、三・一一とは大きな、被災地では特に変化です。

 そういったことで、私たち岩手の仲間も、憲法の基本理念を被災地に貫けば、多くの課題が解決し、住民本位の復興へ向かう、そういうことが首長さんとの懇談の中で明らかになったというようなこともお話をされています。

 さらに、福島の地もずっと首長さんと懇談してまいりましたけれども、今まで政府の言うことを聞いていて、例えば原発政策も推進してきた、それがいいと思っていたが、こういう事故が起こって初めて、どうも国が言うことも、政府が進めることにも間違いがあるのではないかというようなことを思い始め、そして、今、全町避難されているところの浪江の馬場町長は、基本的人権も生存権も奪われ、財産権も取り上げられた、そういうふうに語ってきています。

 そういった反省があり、やはり憲法を生かすべきだというようなことが広がり、そして、国民投票についてはこの間どうこう言うことはないですけれども、今進めているこの問題と絡んで、集団的自衛権行使容認の問題であるとか、昨年、特定秘密保護法が成立しましたけれども、その成立した後も、特定秘密保護法については、これは戦争につながるもの、憲法九条を変えるのにつながるじゃないかというようなことで、異例の数で、法が成立した後で地方の議会の皆さんが意見を上げるなんという、かつてなかったことが起こっている。それは、やはり国が進めることにそのまま、うん、それでいいですよと言っていたのではどうも地方は守られない、そんな思いがあるのではないかということで変化をしておる。

 本当に自治体関係者は、一つ一つのことが直接、手続法であって、これでそのまま憲法が変えられるという問題ではないですけれども、この背景に、憲法を変える、この動きがあるんじゃないかというようなことで危惧をしているということがあるということです。

 以上です。

笠井委員 年齢問題について、田中参考人、それから水地参考人、南部参考人に一言ずつ伺いたいんですが、今度の改定案では、選挙権年齢、成年年齢の引き下げについては二年あるいは四年でやるというふうに発議者は言われているわけですけれども、しかし、四月二十四日の政府質疑でも依然として、年数を明示することは困難というのが政府答弁だったわけです。

 この問題が進まない大もとには、選挙権や成年年齢の十八歳への引き下げについて、国民の中でやはり実態としては賛否が割れているという現実があるというふうに思うんです。

 先ほども、提出会派で最大会派の中の質疑者からもさまざま条件という話も出たりしましたけれども、結局、国民的議論とコンセンサス抜きに幾ら附則で書き込んでもまた同じ繰り返しにならないか、まずは、やはり一刻も早く十八歳への引き下げの国民合意をつくるということが大事なんじゃないかと思うんですが、その点について。

 それから、南部参考人には、加えて、前回の対政府質疑の中で政府内の見解不一致が露呈したことを厳しく指摘もされて、政府参考人答弁に係る事実の調査、確認の徹底をということを提起されました。かなり強く言われましたけれども、その調査、確認というのがなされないままに拙速にこの法律をつくっちゃう、改正案をつくるということについてはやるべきでないという趣旨なのかどうか。その点も加えて、一言ずつ、田中参考人からお願いしたいと思います。

田中参考人 ありがとうございます。

 笠井先生が言われるとおり、国民の中で議論が二つに分かれているというのは事実だと思います。

 私自身は、二〇〇一年ですから、十三年ぐらいこの問題にかかわっているわけでございますけれども、やはり長い目で見ますと、当初はもっと反対が多くて、あるいは議論にすらならなかったということがございます。

 国民投票法案がきっかけとなって何回か議論を重ねていく中で、マスコミの論調も徐々に変わってはきておりますし、議論も少しずつ変わってきてはいるわけですけれども、そうはいっても、この委員会の外に出るとまた違う空気が流れているわけでございまして、やはり世論形成という点でも、今後、これをきっかけに努力していかなくてはいけないのではないかなというふうに考えております。

南部参考人 四年たって一番私が恐れるのは、国民投票権年齢だけは十八歳、選挙年齢、民法成年年齢、少年法が二十歳のままという、私は冒頭で車のタイヤのサイズに例えて申し上げましたけれども、タイヤのサイズが一つだけ違ったら真っすぐ走れないんですね。そういうおかしな状況にならないようにということを、まず、一つ強く念じております。

 今回の年齢引き下げについて、過去数年間、この審査会においても国会図書館でいろいろ各国の法定年齢を調査されたと思いますけれども、逆に日本の年齢を他国の国会図書館の調査員が調べたときに、日本という珍しい国があって、国民投票権年齢だけは十八歳で、そのほかは全部二十歳なんという、そういう笑い物にならないように、ぜひこの場にいらっしゃる先生方にはその点の自覚を持って各党のプロジェクトチームを推進していただきたいというふうに思います。

 笠井先生の後半の御質問なんですけれども、本当に、政府とのやりとり、議員立法で出すのか閣法で出すのか、いろいろな政治的なやりとりもあるというふうに思いますし、私は、すぐにでもロードマップを先生方で合意していただいて、多少公選法からおくれて民法、さらに少年法がおくれるとか、そういう形で進んでいくのかなというふうには予想しておりますけれども、その段階で常時チェックして、監視していただく体制をとっていただく必要があるというふうに思いますので、また午後、審査会はまだ続くようでありますので、そういった議論も、各党のPTをどう進めていくかという点で、笠井先生含め、コンセンサスをつくっていただければ幸いでございます。

笠井委員 水地参考人には、そのこととあわせて、先ほど来おっしゃっているんですが、日弁連はこの間ずっと意見も出されてきたという経過がある中で、最低投票率の問題を含めて、結局はまだ積み残しというか解決されていない問題がある中で、さらに、やはり拙速ではなく徹底審議ということが必要なんじゃないかというふうに受けとめているんですけれども、その点をあわせて二つのことをお答えください。

水地参考人 今委員がまとめられたようなところでございますが、基本的に、まず選挙権の引き下げについては国民の意見が割れている、国民的合意がつくられていないというのは、確かに現状はそうかもしれませんが、そもそもその問題がどれほど国民に浸透しているか。選挙権年齢を十八歳とすべきかどうかというこの問題が、青少年の教育という論点の前に、現段階で国民にどれだけ浸透しているかという意味で、まだそれが全く不十分なのではないかというふうに思います。

 それと、年齢の点だけについてはそこで十八歳としましても、先ほど来申し上げておりますように、最低投票率その他、本当にまだこの改正法には多くの問題があると思いまして、そういった点をさらに慎重に御協議いただきたいというふうに思います。

 本当の国民の意見が聞けるという制度でなければ、憲法の改正という手続をしたとしても、結局、それが本当に国民の意見を反映していたのかということで、次にまたさらなる禍根を残すということになると思いますので、そういった意味で、さらに多くの論点について御検討をいただきたいというふうに思います。

笠井委員 ありがとうございました。終わります。

保利会長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 生活の党の鈴木でございます。

 参考人の皆様方、本当にありがとうございました。私が最後の質問になろうかと思います。どうぞ、ひとつよろしくお願いをいたします。

 まず、投票権年齢の引き下げに関連して、田中参考人に最初にお伺いしたいと思うんです。

 お話の中にもありました教育の問題、憲法教育や政治教育、これが非常に大事であると。私どももそのことを本当に重く受けとめておりまして、どういう形での教育があるのか、そしてまた、それが国民の皆さんにとって一番幸せなことなのかということを考えていくと、非常に大きな課題があるのではないのかなというふうに思っております。

 教育といえば、例えば家庭教育も教育ですし、社会教育も教育ですし、学校教育も教育です。そういう中で憲法や政治教育をどうしていくかということになるというふうに思うんですが、いずれにしましても、お話の中に、中学生、高校生に対してやはり教育をきちっとしていく必要があるんだというお話でありました。とりわけ田中参考人からは、知識中心の公民、現代社会では不十分だという御指摘もありましたし、それから、参加型の市民教育で地域の課題を認識して解決していくんだというような御指摘もありました。

 そういうことを踏まえて、できるだけ具体的にというと、これは本当に難しいかもしれませんけれども、必要であるということを前提に、では、どういう形が考えられるのかということを、参考人の御経験の中でお示しいただきたいなというふうに思います。

田中参考人 ありがとうございます。

 教育につきまして、御質問をいただきました。

 今、何が大変かというと、やはり子供たちにとって、かつては、いろいろな問題があったときに、それに答えがある程度大人の側に用意されていて、それを教えていけばよろしいというようなことがずっと続いてきたわけですけれども、今、直面している問題というのは、グローバルな問題もある、環境の問題もあり、あるいは、国のレベルの問題もあり、地域の問題もあり、答えが必ずしも目の前にない、一つではない、あるいは、答えは未来にあって今にないというような課題がたくさんあるわけでございます。

 そうしたときに教育はどうすべきかということで、この間、文科省でも指導要領も変えて、教育の内容とか方法を変えつつあるわけですけれども、やはり政治教育とか憲法とか公民教育もその流れの中にあるわけで、青少年が直面する、あるいは将来直面する課題にどう取り組むのかということを例えばシミュレーションで。

 例を一つ挙げると、例えば消費者教育でも、いろいろな詐欺とかありますね。それをロールプレーというような形で、詐欺をする側とされる側を実際にやってみて、自分は詐欺にかかってしまうなというようなことを体験するとか、単に、こういうケースはいけませんよということを頭から教えてマル・バツをつけるのではなしに、実際にそういったことをロールプレーでやることによって消費者教育というようなことは進められますけれども、それは大学ではなかなか難しいですね。

 やはり高校レベルあるいは中学レベルでそういったことを参加、体験型でやっていくことによって、自分は絶対大丈夫だと思っていたけれども、どうもひっかかりそうだなとかいうようなことを経験しながら、シミュレーションしながら学んでいくというのが一例かと思います。

鈴木(克)委員 まさに誰がそれを教えていくのか、そして、どういう教え方をしていくのか、これは議論を始めれば五分や十分でできる話ではないので、要するに、こういう大きな課題を持った、やはり我々が新たに直面をしていかなきゃならない現実があるということをお互いに踏まえて、今後、憲法だけではありませんけれども、しっかりと議論を進めていく必要があるのではないのかなというふうに思いますので、きょうお見えいただいた参考人の四人の方を含めて、ぜひこれからも御指導いただきたいな、御意見をいただきたいな、このように思っています。

 次に、南部参考人にお伺いをしたいんです。

 いただきました資料、本当に、ある意味では、政治がもっとしっかりしろよというふうに私は受けとめさせていただきました。

 というのは、私も内心じくじたる思いがあるんですが、七年前には、私も現在の法律を提案した一人なんですね。その間、結局できなかった。これはいろいろ言いわけをすれば切りがないんですが、まさに前回、政府参考人のあの答弁を聞いて、本当に先生は唖然とされたということでありますけれども、私も、何を言っているんだというふうに正直思いました。

 しかし、限られた時間でありましたし、今後きちっとやっていかなきゃいけないなということで、四年間ということですから、我々は、もちろん二年でやるべきだということを提唱しておりますけれども、いずれにしても、成年年齢の引き下げを行っていくためには、どのような条件あるいは環境整備が必要というふうにお考えになっているのか、その中で政治がどういうふうにリードしていくべきなのか、その辺のところをお示しいただきたいと思います。

南部参考人 本来であれば、国民投票権年齢、選挙年齢、民法成年年齢、少年法の適用対象年齢は、改正法が四つ一遍に同時に公布され、施行されるという関係が一番理想的なのかもしれませんけれども、やはり元来議論があるように、それぞれの立法趣旨やその周知期間の長短が明らかに異なるということを考えますと、まずは選挙年齢、その次に、できれば民法成年年齢、できれば少年法も。少年法につきましても二年以内に参政権グループと合わせるということですから、今回の改正法の附則の二項を削除するための国民投票法の改正がその時点でもう一度必要になりますので、どうせいずれは議論になるというふうに思います。

 先生方には、そのためのロードマップをぜひともお願いしたいというふうに思いまして、漠然として改正法の附則の二項で読みかえを置いて、三項で新たな法整備規定を置くということだけでは、今この中継を見ている総務省や法務省の職員は本当に余裕で見ていると思いますので、先生方も油断することなく、本当に政治主導というのはかくあるべきということを、どの政党が政権をとってもこれはずっと続かない問題だということで私は冒頭申し上げましたけれども、こういうことが今後も続いては、日本の法律、法制度の近代化が終わらないということだと私は認識しておりますので、先生方の御努力に期待するしかございませんので、鈴木先生もぜひよろしくお願い申し上げます。

鈴木(克)委員 政治がしっかりしろよということだと思います。もちろん、私どもも本当に、こうした法律を出させていただく以上、その責任はあるというふうに思っていますので、しっかりやっていきたいというふうに思っております。

 続いて、私どもは一般的国民投票ということについて一つのこだわりを持っておりまして、一般的国民投票を導入すべきだ、そして重要なものについてはやはり国民に審判を仰ぐというか、やっていくべきだというふうに考えておるんですが、それに対しての田中参考人、南部参考人のお考えをお聞かせいただきたいというふうに思うんです。

 また、一般的国民投票を入れることによって、さらに若い人たちの政治への関心というのが高まってくるのではないのかな、こんなふうに私は思うんですが、その辺も含めてお二方から御意見をお示しいただきたいと思います。

田中参考人 ありがとうございます。

 私も、一般的な国民投票については十分検討に値すると思いますし、先ほどから申し上げていますように、非常に世の中が複雑になって、決定をする場合に、すぐに決定しなきゃいけない場合もあるし、なかなか選挙を待って、投票行動を起こすまでに時間がかかるということもございますので、今後十分検討していかなければいけない課題と思っております。

南部参考人 もともと民主党案の提出者であった鈴木先生にお話しするのは大変私も恐縮いたしますけれども、もともと民主党案は、案件によっては十六歳まで投票権年齢を引き下げるという案で、本当にできるだけ多くの有権者の声を拾う、特に憲法改正問題というのは若い世代に非常に影響の多い問題でありますので、そういう世代を取り込もう、投票人の名簿についても、十八歳でつくるのではなくて、一旦十六歳でつくってはどうかみたいな議論も一時期ありましたので、そういう議論をぜひ今後プロジェクトチームの方でも検討していただければなというふうに思っています。

 ちょっと一つ、余談になりますけれども、国政問題国民投票をつくるときに、当時の民主党案は、公務員の政治的運動の制限規定について全面適用除外という案をとっておりました。それは、憲法改正国民投票に関しては全面適用除外でしたけれども、国政問題国民投票の際に公務員が行う国民投票という話があって、それについては全面適用除外をしないという、百三十八条という当時の条文があって、ちょっとその辺の議論もありますので、念のために御紹介をさせていただきます。

鈴木(克)委員 ありがとうございます。

 最後の質問になろうかと思いますが、松繁参考人と水地参考人にお伺いをしたいと思うんです。公務員の政治的行為に関する問題でございます。

 いずれにしても、この現在の形が公務員の皆さんを萎縮させないかどうかといいますか、その辺のところが、我々は萎縮をさせることのないようにという立場で合意に署名もしているんですけれども、そういうことの観点から、公務員に対して萎縮的な形になる可能性があるのかないのか、その辺のところを順次御答弁いただきたいというふうに思います。

松繁参考人 お答えいたします。

 公務員の運動を規制するということは、公務員というか、あるいはそういう組織にすることは、その当事者のみならず、国民全体、地域住民全体に影響を及ぼす、そこに萎縮効果があらわれるということを危惧しておるわけですので、できるだけ萎縮しないようにつくるというのであれば、もう取っ払うのが一番手っ取り早い、それしかないというふうに思っております。

 以上です。

水地参考人 今、極めて明快におっしゃいましたけれども、結局、抽象的な概念、勧誘行為といったような評価が入ることを含めて、どこまでもそんなに具体的にするのはどう英知を集めてもできないところで、やはり勧誘という意味では、かなり限定されたいという御意向はあると思うんですけれども、どこがその勧誘で、どれは単純に自分が意見を言っただけなのか。

 意見をそんたくされてしまったということで勧誘になるのかといったようなことになりますと、やはりどうしても萎縮効果があるということと、また公務員にはそういう制限があるということで、それらの方々が意見を言うことについて、受けとめる側としても、その意見をどのように受けとめるかというところでも、またそういった一種マイナスの受けとめ方もあると思いますので、そういう意味で、もともとの罰則規定のある法律に反するところ以外、改めてここで萎縮のおそれがあることをするよりも、本当に広く多くの人が意見を自由に言えるということを重視する方が、この法律については重要であるというふうに考えます。

鈴木(克)委員 これで終わります。

 参考人の皆さん、どうもありがとうございました。

保利会長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見、また的確な御答弁をお述べいただき、ありがとうございました。憲法審査会を代表して、心から御礼を申し上げます。(拍手)

 午後二時から審査会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時開議

保利会長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、船田元君外七名提出、日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案について議事を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。保岡興治君。

保岡委員 自由民主党の保岡興治でございます。

 平成十七年から十九年にかけて、国民投票法の制定時、私は、当時の特別委員会、中山太郎先生が委員長でしたが、そのもとで与党筆頭理事として、今ここにおいでの船田先生や枝野先生とともにこの法律の取りまとめに当たりました。あれから七年の時間が経過いたしましたけれども、制定時の議論の現場となった十八委員室で、私たちが積み残した三つの宿題が、保利会長のもとで、また皆様のもとで、今まさに解かれようとしていることに、非常に感慨深いものを覚えるものでございます。

 憲法調査会長、特別委員会の委員長として一貫して憲法に携わってこられた中山太郎先生、きょうも傍聴席におられましたが、憲法は与野党一緒に力を合わせてつくるべき、憲法は偉大なる妥協によって生まれるものという確固たる信念をお持ちでした。これは、憲法の制定、改正を何度も経験している欧州各国の海外調査から得られた知見だったと存じます。

 その意味からは、憲法、そして憲法関連法規については、与野党がお互いの立場を超えて真剣に向き合う、その上で、可能な限り幅広い合意形成を図るべきでありますが、この改正案も、七会派の共同提出、そして八会派の五項目の合意が確認されるという、まさに幅広い合意が形成されているところです。制定時から国民投票法に関与していた私としても、これを高く評価したいと思うものでございます。

 さて、このように取りまとめられた改正案について、船田提案者にお伺いをしたいことの第一点目でございます。十八歳選挙権年齢、成年年齢への引き下げについてでございます。

 十八歳選挙権年齢は圧倒的な世界的潮流であることは、午前中の参考人の質疑でも明らかになっているとおり。また、国民投票の投票権年齢と選挙権年齢、さらには成年年齢が同一であることも、これまた世界標準と言うことができます。私は、衆議院派遣の海外調査でこれらのことを目の当たりにして、我が国でも、十八歳投票権、十八歳選挙権に加えて、十八歳成年年齢の実現こそ将来における我が国発展の基礎となるものであると確信いたしました。

 鉄は熱いうちに打てと申します。柔軟で、夢や理想に向かう情熱を持つ若者が、その夢や希望や情熱を社会に生かすことができるということ。そのために、こうした若者の特性を、しっかりした教育、公民教育とか消費者教育とか、けさの参考人質疑でもいろいろ工夫されるべき教育が出てまいりましたが、そういう教育のもとで、国民としての自覚や責任、社会人として、あるいは共同社会における責任者としてどのように振る舞うべきか、このような制度の確立こそ、心血を注ぐべき課題と私は考えます。

 この点、選挙権年齢の引き下げを目指して八党間プロジェクトチームを設置されたのは極めて意義深いことですが、今回設置されるのと同じ枠組みにおいて、成年年齢の引き下げについてもしっかり協議して答えを出すように持っていくべきだ、これは大きな、国家の将来のかかった政治テーマだと考えます。

 船田提案者のお考えをお伺いしたいと思います。

船田議員 保岡委員にお答えいたします。

 保岡委員とは、今御指摘いただきました衆議院憲法調査特別委員会のもとで、平成十七年から十九年の間に、この憲法改正国民投票法案のさまざまな過程にともに参加をしてまいりました。大変懐かしい話もいただきました。

 また、保岡委員は、法務大臣に在職されましたが、その当時におきましても、投票権年齢、選挙権年齢、成年年齢の引き下げ問題、とりわけ成年年齢の引き下げ問題につきまして、その作業を加速するように、こういう指示を大臣として出されるなど、この問題におけるリーダーシップを発揮されてこられたことには、心からの敬意を表したいと思っております。

 御指摘のとおり、選挙権年齢につきましては、二年以内に十八歳に引き下げることを目指しまして各党間でプロジェクトチームを設置するということが八党間で合意をされております。これは、少なくとも、参政権グループであります投票権年齢と選挙権年齢はそろっているべきである、こういう問題意識を反映したものでありまして、その趣旨は、附則第三項にも書き記しましたように、投票権年齢と選挙権年齢の均衡等を勘案し、必要な法制上の措置を講ずる旨の検討条項にもあらわれております。

 一方、選挙権年齢と成年年齢に関しても、両年齢等の引き下げに関する法制上の措置を速やかに講ずるため、自民、公明の与党プロジェクトチームを設置するということも、既にこれは合意をされているものであります。

 これらを踏まえますと、まず各党プロジェクトチームにおいては、選挙権年齢の引き下げについて二年以内を目途に結論を出すべく精力的に議論を進め、その後、成年年齢その他の年齢の引き下げについても、できれば四年以内を目途に最大限の努力をすることを合意したものである、このように理解をしております。

 そして、成年年齢の引き下げの場におきましても、与党合意に基づく与党プロジェクトチームを発展的に吸収する形で、より多くの会派による各党プロジェクトチームにおいて協議していくということ、すなわち、今、保岡委員が御指摘になりましたような、大きな枠組みでこの成年年齢についても協議が行われることが望ましいと私自身は感じている次第でございます。

 以上でございます。

保岡委員 許された時間があと二分というようなことでございますので、いろいろ質問したいこともたくさんありましたが、一つは、今後、この法案ができますと、憲法改正原案というものが提出されて、審議され、成立を目指す、具体的な憲法改正に入ります。この点についても、できるだけ幅広い会派で率直に意見を述べ合って、そして合意形成を図る。

 このことは、憲法調査会が、きょうも、各党どんな政党も同じ時間発言しているんです。質疑者も同じ時間発言している。要するに、政党の数で時間を割り振らないで、みんなに平等にチャンスを与える。海外派遣という五年間の調査も、共産党、社民党、いわゆる護憲勢力も含めて、みんなが参加して、あらゆるテーマに意見を述べて、そして、憲法調査会の報告書はそれをしっかり体現した。全員の意見が全てのテーマについて明らかになっている。これを今度は具体化していく。

 同じような方法で、この憲法審査会は今後も運営して、憲法は国民のもの、あるいは、政党が活躍する同じ土俵をつくるものという観点から、私たちはいい憲法改正原案というのを逐次得ていくべきだと思いますが、簡単で結構ですが、船田提案者のお答えをよろしくお願いします。

船田議員 中山太郎先生が率いてこられました憲法調査会あるいは特別委員会において憲法問題を議論してきた我々にとりましては、憲法問題というのは、より多くの政党によって議論が行われ、幅広い合意を得た上でその問題の解決が図られるべきものである、こういう、いわゆる偉大なる妥協による憲法問題の解決が重要であるということは、多分共通の認識であろうと思っております。

 その上で、保岡委員の御質問にお答えすれば、今後の憲法改正論議におきましては、多くの政党による合意を得ることが可能なテーマを見きわめ、絞り込んでいくということが何よりも重要である、このように感じております。

 その場所として、もちろんこの憲法審査会もございます。また、各党で年齢の引き下げという点で合意をいたしました八党の枠組み、あるいは七党の共同提案の枠組み、そういったものも十分に駆使しながら、できるだけ幅広い合意を得るべく全力を尽くしていきたいと考えております。

 以上でございます。

保岡委員 ありがとうございました。終わります。

保利会長 次に、細野豪志君。

細野委員 民主党の細野豪志でございます。

 今、保岡委員の方からも御発言がありましたけれども、この重要な法案につきまして七会派が共同提案に至った、これは、先人の皆さんの大変な御努力も含めて、非常に重要なことであったし、私は、その御努力をされた皆さんに心より敬意を表したいと思います。

 その中で、民主党もこの合意に加わる形になったわけでありますけれども、その一つの大きな要因は、公務員の政治的行為についての制限が基本的にはなされないという、基本的には自由であるという部分が入ったところだろうというふうに思います。

 やはり、憲法改正についての国民投票運動というのは、できるだけ制限をかけない、国民の幅広い自由な活動を重んじるということが極めて重要だというふうに考えておりますので、その意味で、第百条の二が入ったことについては非常に大きな意味があるというふうに思っています。

 ただ、午前中の参考人の皆さんの御意見の中で、特に弁護士会の方からは、ややこれが萎縮効果を持つ、制限的なものに過ぎないか、そんな発言もありました。

 そこで、提出者の枝野議員にお伺いをしたいと思いますが、これをどう制限的でない形でこれから運用していくのか、課題があるとすればそれをどう乗り越えていくのか、そのあたりについて御答弁をお願いいたします。

枝野議員 御指摘のとおり、そもそもが、政治活動の自由というのは、基本的人権の中でも特に徹底した保障が求められる分野であります。

 一般的に言っても、公務員の政治活動の自由については、公務の中立公正などの観点から必要最小限のところにとどまるべきものでありますが、特に憲法の改正の国民投票に当たっては、公務員制度そのものの土台となる憲法秩序についての国民の意見表明という機会でありますので、これについてはさらに、必要最小限でなければいけないということを徹底しなければならない。そうした観点から、これについては、基本的には従来の公務員に対するさまざまな規制で弊害は除去できる、したがって国民投票制度においての何らかの対応は必要ないという基本的な考え方で我々は一貫をしております。

 ただ、御承知のとおり、地方公務員については公の投票という住民投票にかかわる規制がありまして、これがそのまま国民投票に適用されますと、地方公務員についてはむしろ厳しい規制が入ってしまうということで、それを避けつつ、国民投票運動に名をかりた許されない政治活動はちゃんと排除するということで今回の規定が置かれた、こういった流れでございます。

 したがいまして、基本的には、この規定そのもので萎縮効果をもたらすようなことにはならないであろうというふうに思っておりますけれども、これまで、公務員の政治活動の自由については、長年の判例の積み重ね、あるいは運用の積み重ねもあります。そこから大きく逸脱するような新たな規制が盛り込まれているものではありませんので、従来の運用や解釈、そして判例というものを踏まえた行動をとれば問題はないということで、萎縮効果は生じない、こうしたことをしっかりと周知していくことが重要であろうと思っております。

細野委員 合意文書を見ますと、確認書などを見ますと、こうしたことについて各党の担当部局に引き継ぐという、やや、余り聞きなれない形になっておりまして、かなりこの部分については、さまざま党によっても考え方は若干違うでしょうし、課題があるというふうに思いますので、国民にしっかりと開かれた環境をつくるということで、各会派に御努力をいただきたいと思います。

 この法案がきょう採決をされるということですので、可決をされるということになれば、憲法改正の発議が、環境としてはできるという形になります。

 与党の皆さんにぜひお伺いしたいと思いますのは、今回、七会派でとったアプローチ、すなわち、幅広い合意を経て憲法については考えていくというスタンスをこれからも貫いていかれるのか。それとも、憲法改正については、もう既に自民党が改正案を出していますから、率直に言って、かなり立憲主義の観点から問題点がある憲法改正案だというふうに私は考えています。そういったことも含めて違うアプローチをとるのか、そこなんです。

 先ほど、船田議員の方からは、テーマを絞り込んで合意をしていきたいという御発言がありました。もうその答弁で、船田議員からは結構です。

 先日、中谷議員の、質問に対する答えを聞いておりますと、安全保障は御専門ということで、国の安全保障についてやるんだという強い意気込みを答弁されていますが、そこは、合意を目指してテーマを絞り込んでいくというスタンスが自民党として、もう既に方針として明確なのか、それとも、これから党内で議論をしようとしているのか、そのあたりについて中谷議員のお考えをぜひお聞かせいただきたいと思います。

中谷(元)議員 それぞれのテーマにつきましては、超党派でいろいろな勉強会や研究会がありますので、専門的にそれぞれの議論を重ねていけばいいと思いますが、しかし、それは、各党で最終的には取りまとめをした形で、各党の代表者また担当者のレベルの協議が必要になってこようかと思います。

 そういう意味におきましては、国会内においては、この憲法審査会がありまして、幹事レベルで協議がされておりますので、幹事会でも各党の協議ができると思いますし、また、改正に向けた内容を詰めるという形の協議会もつくっていけると思いますので、それぞれ各党で内容を絞り込んで、その後、協議をすべきだと思っています。

細野委員 北側委員にも、その点をお聞かせいただきたいと思います。

 特に、与党を組んでおられて、憲法については、非常に難しい、考え方のやや相違もあると率直に思うんですが、そこは、与党だけではなくて各会派がしっかりと議論して、よりいいものをつくっていくというアプローチを公明党としても目指されるのかどうか、そこを御答弁いただきたいと思います。

北側議員 この憲法改正の発議には、そもそも三分の二の賛成多数が必要です。そういう意味でも、この憲法改正については、一つの会派ではなくて、できるだけ与野党を超えて多くの会派が一致できる、そういう点から改正をしていくというのがいいんだろうというふうに私は思っております。

 特に、憲法制定以来六十八年たっておりますけれども、今まで憲法を改正した経験がないんですね。ようやく、国民投票手続についても、皆様の御理解を得て何とかこの国会で通したいというふうに考えておるわけでございまして、初めて憲法改正について具体的な議論ができる、そういうことにやっとなったわけでございます。

 ここは、まず最初は、我々国会議員、また国民の皆様を含めて、初めての経験になります。そういう意味では、できるだけ多くの会派の方々が、そこは変えた方がいいねと言えるようなところからまず始めてみる。実際にやってみることによって、逆にまた、いろいろな課題がわかってくるんだろうというふうに思っております。

 そういう意味で、まずは多くの会派の方々が一致できるところから進めていくのが現実的ではないかというふうに私は考えております。

細野委員 時間もなくなりましたので、最後に。

 さまざまな問題を、特に憲法については信頼関係のもとに協議できるこの枠組みというのをぜひ各党に大事にしていただきたい、このことを最後に申し上げて、終わりたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

保利会長 次に、新原秀人君。

新原委員 早速、質問させていただきたいと思います。

 今回、ようやく国民投票を実施できる環境が整うということになりますけれども、まさに多くの政党が歩み寄って、憲法改正の三分の二、つまり、三分の二を超えたいわゆる法律の賛成者をもって今回の法案が成立する見込みであるということに対して、非常に感謝しております、喜んでおります。

 そして、こういったことで、本来、これは憲法が成立すると同時になされているべきものでありましたけれども、憲法制定から七十年近い年月が流れて、一人前の憲法、つまり立憲国家になったということが言えますけれども、この議論がここまでおくれてきた理由なり経過、そして、そういった気持ちなりをどのようにお考えでしょうか。船田提出者の方にお願いいたします。

船田議員 お答えいたします。

 少し過去の経緯を振り返りますと、憲法改正手続に関する法整備については、昭和二十七年から二十八年にかけまして、吉田茂内閣当時の自治庁、現在の総務省でありますが、自治庁において具体的な法案が検討、作成されたという記録が残っているようでございます。ただ、閣議決定の段階になり、内閣が憲法改正の意図を持っていると誤解されるとの理由から、国会提出が見送りになったというふうに言われております。

 また、国会における発議手続に関しましても、昭和二十年代末に検討されたことがありましたけれども、諸般の事情で、最終的には法律として定められることはなかった、このように聞いております。

 時間は大分過ぎてしまいましたが、その後、平成十二年から衆議院憲法調査会がスタートをして、五年に及ぶ調査を行いました。そして、その最終段階として、報告書の中に、圧倒的多数の意見をもって法整備を提言し、それを受けて、本審査会の前身であります憲法調査特別委員会が設置をされ、そして、今回の法律改正の大もとの法律制定に向けて各党が努力をし、平成十九年に成立をした、こういう経緯があったと思います。

 ただ、その制定過程におきまして、さまざまな問題が発生をいたしまして、三つの宿題がどうしても残ってしまった。これを今回解こうということで、多くの政党の皆様の御理解をいただきまして、ようやく成立直前まで来たわけでございますので、この流れを大事にしなければいけない。しかし、結果的に六十年以上、この手続法が定められていなかったこと、そのこと自体はやはり立法府の怠慢であった、その怠慢を一日も早く解消しよう、こういうことで我々は日々努力をしている、そういう価値観を持っております。

新原委員 ありがとうございます。

 中山先生が、私たちが誇るべきは、憲法の変えやすさでもなく変えにくさでもなく、憲法を変えるかどうかについて、どれだけフェアなルールを持っているかというふうに御発言されています。まさにフェアな形になりましたので、今後、いわゆる発議されるのかどうかわかりませんけれども、そういった意味で、憲法研究ではなく、こういった正式な場でけんけんがくがく討論されることを願っております。

 そういった中で、我々日本維新の会といたしましては、十八歳に引き下げる議論ということで、これは馬場提出者にお聞きしたいんですけれども、参考人斎木君の意見によりますと、十八歳選挙権が実現すれば、高校三年生が国民投票あるいは国政に参加することができ、高校に政治の話題がおりていくということですね。我々の政党、維新の会では、小沢委員、西野委員からも、例えとして元服の年齢について指摘があったと思うんですけれども、十八歳と言わず、義務教育課程を修了した者には参政権を認めるといった考えも議論を今後されるべきではないかと思っておりますけれども、その点どのようにお考えですか。

馬場議員 新原委員の御質問にお答えいたします。

 選挙権年齢については、改正法施行後二年以内に十八歳に引き下げることを目指して各党間でプロジェクトチームを設置するとともに、改正法施行後四年を待たずに選挙権年齢が十八歳に引き下げられた場合には、これと同時に、投票権年齢についても十八歳に引き下げる措置を講ずることが提出会派の間で合意をされております。これは、少なくとも参政権グループである投票権年齢と選挙権年齢はそろっているべきであるという問題意識を反映したものであると考えております。

 しかし、御指摘のように、先日、高橋参考人から、欧州では選挙権を十八歳から十六歳へと引き下げる動きも起きていることの紹介がありました。また、維新の会の小沢鋭仁委員、西野弘一委員からは、元服はおおよそ十五歳であった、二十という年齢にこだわる必要はないのではないかという御意見も頂戴したところでございます。

 ただ一方で、高橋参考人は、十六歳へと一気に下げることに現状とのギャップが発生するのではないかという考えのもと、現行の高校三年生の教育を受けた段階に合わせて十八歳にするのが妥当ではないかという指摘もされておられます。

 以上に鑑みますと、まずは、同じ参政権グループである選挙権年齢の十八歳への引き下げについては、確認書で合意しているとおり、二年以内の法整備を実現するべく、可及的速やかに実現していきたいと考えております。それが実現した暁においては、その施行状況や社会状況を踏まえて、義務教育課程修了者へのさらなる年齢引き下げという議論も十分議題に上がってくるのではないかと考えておるところでございます。

 以上です。

新原委員 ありがとうございます。

 それにつきまして、ちょっと私の意見なりを含めてお話しさせてもらいますと、日本という国の仕組みは年度制というふうになっております。つまり、四月一日で教育が始まり、そして、例えばスポーツにしても、十八歳になる年の一年間は、つまり十七歳であろうと同じ学年と同じスポーツに出られるということですね。

 だから、参考人の方々からお話があった、高校三年生、例えば十八歳になる四月には、例えば七月生まれであろうと三月生まれであろうと、もう全ての、何で年齢で区切らないとだめなのか、学年で区切るという、十八歳ということは、ほとんど、九十何%が高校生で、教育の世界におります。だから、その中で国民投票という、教育、憲法に対しての勉強ということも含めれば、四月からその学年として投票権を上げるという考え方も私は可能だと思っています。

 高校三年生、もちろん選挙権も含めて、年齢で決めることがいいのかどうか、やはり教育、同じ学年が全て同じ権利を持つ、そういった考え方もありますので、そういったことも含めて、今後、十八歳年齢というときに検討いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 以上で終わります。ありがとうございました。

保利会長 次に、大口善徳君。

大口委員 公明党の大口でございます。よろしくお願いいたします。

 今回、こういう形になったわけでございますけれども、投票年齢が四年後、自動的に十八歳となるということでございますので、これまでの参考人の意見もありましたように、少なくとも同じ参政権グループである選挙権につきましては早期に引き下げが必要だ、こう考えています。

 八党合意の第一項に、「選挙権年齢については、改正法施行後二年以内に十八歳に引き下げることを目指し、各党間でプロジェクトチームを設置することとする。」こういうことでもありますし、また、附則の三項で、速やかにという形で規定をされているわけでございます。

 この改正法施行後二年以内というのはどういう意味なのかと私なりに考えてみますと、二十八年の夏には参議院選挙がありますし、また、二十八年の十二月には衆議院も任期満了となるわけであります。ですから、次回の国政選挙というものを視野に入れてこの二年以内ということが規定されているのではないかな、こう思うわけです。

 そして、田中参考人でありますとか南部参考人からも、あるいはほかの参考人からもそうでありますけれども、確かに政治教育ということは充実させていかなきゃいけない、しかし、それは選挙権年齢を十八歳に引き下げることのストッパーではなくて、同時進行でやはりやっていくべきだ、両方相まって、さらに選挙というものが、また政治というものが活性化していくんだ、若い発想で活性化していくんだ、こういうことだと思うんですね。

 そこで、北側委員にまず、これを二年以内という意味、それから、リンクする課題というのは私はないと思います。これは同時進行でやっていくべきであって、何らかの課題を解決しなければ選挙権年齢を十八歳以上へ引き下げることができないんだということはないだろう、こう思っております。北側委員にまずお伺いしたいと思います。

北側議員 おっしゃっているとおりでございます。

 今回、国民投票の投票権について、四年後に自動的に十八歳にするということを決めました。本当は、同時に公職選挙法も改正しまして、選挙権の方も十八歳にするのが一番ベストなわけでございますけれども、それができないという中で、国民投票そして選挙権、これは同じ参政権でございますので、できるだけ同じ年齢にした方がいいという考え方に立って、二年以内にそうした法制上の措置をとろうということで合意を八党でしたわけでございます。

 これまでのこの審査会での論議、また、審査会に法案を提出する前に各党間でも協議をいたしましたが、十八歳に引き下げるということについて、私の知る限り、反対の意見をおっしゃった方は一人もいなかったようにも思えます。そういう意味で、これはある意味、政治判断だというふうに思います。この改正法案が成立をし、施行がされましたならば、できるだけ早くプロジェクトチームを発足いたしまして、各党間の協議をスタートさせていただいて、できるだけ早く公職選挙法の投票年齢の十八歳引き下げということが実現できるように、しっかり取り組みをさせていただきたいというふうに考えております。

大口委員 船田委員に同じ質問なんですが、船田委員は、四月二十四日の答弁におきましては、周知期間というものをやはりきちんと置かなきゃいけないと。また、総務省からの答弁の中でも、三カ月から半年は選挙人名簿の調製に時間がかかるということで、次の衆議院、参議院選挙でこれが可能になるかどうかというと、かなり厳しい状況にあるのではないか、このように理解しております、こういう答弁でございました。

 どうでしょうか。これは政治決断だと北側委員からもありました。そういう強い意思を持ってやれば、衆議院の場合は解散というのはいつなのかはっきりしませんけれども、参議院の場合でありますと平成二十八年の夏でありますので、そこでは十八歳選挙権年齢の保障のもとで実施すべきだ、こう考えておりますが、いかがでございましょうか。

船田議員 今御指摘の選挙権年齢の引き下げという点でございますが、私ども、確認書の中で、二年以内に十八歳に引き下げることを目指しまして各党間で努力をする、こういうことで取り決めをさせていただきました。これは公党間の約束でございますので、極めて重い取り決めである、このように思っております。

 ただ、次の国政選挙を考えますと、衆議院は別としましても、参議院は二年後の七月に行われるだろうという状況にございます。その時間的なタイミングを見ておりますと、私どもは、まず、十八歳への選挙権年齢引き下げの法案を国会に提出する、これは議員立法で行うという予定になります。それが議論されて、改正案が認められる、つまり採決されて成立をする。しかし、その後、公布があり、それから、今御指摘いただきました周知期間をどのぐらいとるべきなのか、こういう点におきましては、やはりこれは総務省などとも相談をしながら決めていかなければいけないことでございます。

 少なくとも、我々としては、これから二年後までの間に改正を必ず行う。しかし、実際にそれが施行されるかどうか、この時期と参議院選挙がかなり絡む状況になると思いますが、必ずその手前で施行されているかどうかというのはちょっとまだ読めない状況でございます。ただ、今御指摘のような点で、できるだけ急ぎたい、急ぐべきであるということには変わりがなく、その決意を持ってやっていきたいと思っております。

大口委員 次に、いよいよ国民投票法改正案が、今度参議院でも議論していただいて成立するということになりますと、その次、どういうことになっていくかということでございます。

 公明党は、従来から、国民主権主義、恒久平和主義、基本的人権の保障の憲法三原則は普遍のものとしてこれを堅持した上で、時代の大きな変貌の中で、新しく定義された環境権など新しい人権を加える加憲という立場をとっているわけでございます。

 平成二十四年五月二十四日から平成二十五年五月二十三日まで、憲法審査会で各章ごとの審査も行われましたし、そういうことで、これまでもこの審査会でも議論してきたわけでございます。

 五月一日の、都内で開催された新憲法制定議員同盟の大会に、北側委員あるいは船田委員は出席されております。

 北側委員は、その席上で、憲法改正手続を定める国民投票法の改正法が今国会で成立する見通しとなったことに触れて、ようやく憲法改正について具体的、現実的な議論ができるようになったと指摘し、その上で、現行憲法には大規模災害発生時に衆議院が解散している場合の対処規定が存在していないことを挙げ、憲法のさまざまな不備や課題、新しい時代にふさわしい憲法規定などを各会派で議論し、前へ進めていきたい、こう主張されております。そういう点で、今後どういうふうに取り組んでいくのかお伺いしたい。

 また、船田委員は、八党合意の枠組みで議論し、改憲原案をつくりたい、また、この後は憲法改正原案をつくる大きな仕事がある、同じ枠組みを使っていきたい、こうおっしゃっておられて、四、五回に分けて国民投票をして、そして、一回の国民投票で三カ所ないし五カ所のブースということであれば、掛け算すると、大体問いかける全体の項目がおのずから決まってくるだろうと考えている、こうおっしゃっておるわけでございます。この発言について、この審査会においても、今後どうするかについてお伺いしたいと思います。

北側議員 いよいよ、今おっしゃったように、憲法改正について具体的、現実的な議論ができる環境が整います。したがって、これからの憲法幹事会等を通して、憲法改正について、どこから手始めに進めていくのか、そういう順序をよく議論させていただきたい。

 先ほど答弁いたしましたように、初めての憲法改正でございます。憲法にも不備があるところはあると思うんですね。また、新しい時代にふさわしいものも入れるべきという意見もあると思います。まずはそういうものをしっかり議論させていただいて、多くの会派が一致できるところから進めていったらどうかというふうに私は思っております。

船田議員 今、北側委員から答弁したものとほとんど変わりございません。

 国会法の六十八条の三、これは、憲法改正の国民投票においての個別発議の原則というのが定められております。これによりますと、「憲法改正原案の発議に当たつては、内容において関連する事項ごとに区分して行うものとする。」つまり、何回かに分けて国民投票もあるし、また、一回の国民投票でも、なるべく、内容が違うものをくっつけて、それでそれを一問にしちゃうということのないようにしよう、こういうことでもございますので、今後の私どもの進め方としては、できるだけ多くの政党の皆さんが賛成できる、賛同できる、そういうものから順次かけていこう、こういう基本的なスタンスでございます。

 また、それを議論する場としては、もちろんこの憲法審査会の場が正式な場でございますけれども、同時に、八党会派で合意をしたものがございます、これまでの改正案の審議の中で。そういった枠組みというのも大事にしながら進めていきたい、このように考えております。

大口委員 持ち時間が終了しましたので、以上で終わります。

 ありがとうございました。

保利会長 次に、大熊利昭君。

大熊委員 みんなの党の大熊利昭でございます。本日はよろしくお願いいたします。

 提出者のみんなの党の三谷委員にお尋ねいたします。

 まず、投票権年齢について、成人年齢、選挙権年齢について十八歳に引き下げることへの意気込み、これをお伺いしたいと思います。

三谷議員 大熊委員の御質問に回答いたします。

 まず、投票権年齢と選挙権年齢、これは同じ参政権グループに属しておりますので、一刻も早くこれをしっかりと十八歳ということでそろえていくことが必要ではないかというふうに考えております。

 特に、選挙権年齢についても、世界の趨勢が十八歳ということでございます。日本だけがおくれているというようなことは何とか解消しなければいけないというふうに考えておりますし、また、若年者層の保護ということに関しても、消費者庁が発足いたしましてもう大分時間がたっております。そういったところに関しても、成人年齢をしっかりと十八に引き下げていくというような環境がもう既に整っているのではないかというふうに考えております。

 この点に関して、日本の国内のことではないんですが、以前、セバン・スズキさんという方の、ブラジルの地球サミットでのいわゆる伝説のスピーチというものがありました。これは、当時十二歳のセバン・スズキさんという方が地球サミットで、直せないものを壊し続けるのはもうやめてください、そういった趣旨のことを表明して、それがいわゆる伝説のスピーチとして世界に広まったわけですけれども、必ずしも十八歳が、二十歳を下回っているからといって政治的に未熟ではないんだということをしっかりと訴えていきたい、このように考えております。

大熊委員 続きまして、公務員の勧誘行為等についてお伺いいたします。

 今般、地位利用については罰則が付されない形での法改正ということになると承知しておりますが、この点についてどう考えるのか、お答えいただけますか。

三谷議員 もともと、みんなの党の考えとしては、そういったものに対して罰則を付していくということは当然必要だろうというふうに考えておりましたけれども、現時点ではそこについてのコンセンサスというものがとられていないというような状況の中で、今後の議論、八党の合意の中での確認書ということでは、今後の検討課題というふうに位置づけております。ですので、その中で我々みんなの党はそこについて議論をリードしていきたい、このように考えているところでございます。

大熊委員 続いて、同じ公務員の関係でございますが、国家公務員と地方公務員とで取り扱いが異なっている、この点についてどういうふうに考えるのか、お答えいただければと思います。

三谷議員 今回は、国民投票運動に関して、いわゆる純粋な賛否の勧誘行為に限ってこれは許されると。国家公務員と地方公務員のアンバランスというのは、その点に関しては解消されているというところでございますが、その点以外のところについては、国家公務員法と地方公務員法の差異というものに起因する問題であります。

 この点についてどう考えるかというのは各党で違う意見もあるとは思いますけれども、国家公務員、地方公務員、同じだ、同じような規制がなされるべきだというような考え方を持たれている政党さんも数多くいらっしゃいますので、他党ともしっかりと連携をしながらその点についてのコンセンサスを広げていきたい、このように考えているところでございます。

大熊委員 ありがとうございました。

 ちょっとこれは今の更問いでもあるので、もし可能ならばということなんですが。

 私はずっと公務員改革を担当でやらせていただいていまして、同じ国家公務員といっても、内閣人事局が幹部の人事の一元化を、普通の行政職以外にいろいろ差異を設けて、要は一元管理をやらない、検察官とか、あるいは警察もあったでしょうか、あるいは内閣法制局も一部、いろいろな機能を一元化しないというようなものがあったと思うんですが、この点は、国家公務員の中の分類というのはどんなふうになっていらっしゃるか、もしよろしければ教えていただければと思います。

三谷議員 今の質問にお答えいたします。

 例えば裁判官ですとか、そういった特殊な判断権者というような方々ですとか直接的に判断をされるような立場の方々、この法案では六職種というふうになっておりますけれども、そこについてはそもそもそういったことは一切してはならない、それは規定をしているというところで、そこら辺での中立性というものは担保しているというところではございますが、我々はもともと六職種ではなく八職種ということを訴えてきたわけでもございますし、まだまだ、国家公務員制度を含めて、これでは甘いんじゃないかということは、まさに委員の専門というところでございますから、今後しっかりと追及していただきたい、このように考えております。

大熊委員 ありがとうございました。

 続いて、国民投票の対象についてでございますが、今後、いわゆる一般国民投票、こちらについてはどう取り組んでいかれるおつもりなのか、教えていただければと思います。

三谷議員 我々、もともとみんなの党として考えてきたときには、一般国民投票というのも広く認めていくべきだということは訴えさせていただいておりましたし、この法案を通すからといって、そこの点について諦めるというふうなことを考えているわけでは決してありません。

 ぜひとも憲法審査会の中でも定期的にこの点について議論をして、しかるべき時期にこの一般的な国民投票というものを導入する方向で議論できれば、このように考えているところでございます。

大熊委員 引き続き、みんなの党が求めてきました一般国民投票についても検討を加えていただければというふうに思います。

 さて、続きまして、今般の法律によって憲法改正がいよいよ俎上に上るということになろうかと思うんですが、この関連についてお伺いします。

 まず、私どもみんなの党のアジェンダを実現しようというふうになった場合は、特に統治機構改革に関する部分について念頭に置く必要があるんだろうというふうに思いますが、この点についてどのように考えているか、教えていただければと思います。

三谷議員 現行憲法、日本の憲法というものについては、戦後一度も改正されたことがありませんでした。しかしながら、日本も世界もさまざまな構造が変転をする中で、一度たりともバージョンアップをしたことがないというような形では、なかなか今の情勢に的確に応えていくということは難しいだろう、このように考えております。

 我々みんなの党としては、統治機構の憲法改正、特に、首相公選制ですとか総理大臣の権限拡大、一院制の導入、さらには緊急事態法制の整備を含めて、そして道州制、そういったものをしっかりと時代の変遷、時代の求めに応じて改正していくということをやっていこう、こういった観点からそもそも今回の法案の共同提出に加わっているわけですし、これからの議論においてもそういった観点というものを訴えていきたい、このように考えているところでございます。

大熊委員 ありがとうございました。

 そこで、例えばなんですが、憲法改正案、これは、変えないという改正案は出し得るんだというふうに考えてよろしいでしょうか。

三谷議員 憲法改正というものがいよいよ俎上にのるということですから、変えたい点というのは数多くあるだろうというふうに考えているわけでございます。

 もちろん、先ほど申し上げた点のみならず、集団的自衛権について、基本的に解釈でいくのか憲法改正でいくのか、さまざまな考え方はあるだろうというふうには思います。本当にいろいろなタブーなく議論をしていくということは必要だと思いますが、一方で、改正しないということも、もちろん十分選択肢の中に入っているということになろうかというふうに思いますので、その意味では、そういったさまざまな議論というものを深めていくことは必要だろうというふうに思っております。

 ただ、今の日本国憲法の中で、そもそも、いわゆるアメリカがつくったというふうに言われておりますが、日本語に直すときに、多少なりとも、誤字なりそういったものによって意味が不明確になっている部分というのもあるんだろうというふうに思っております。

 そのうちの一つが、天皇の国事行為、七条のところで、国会議員の総選挙というふうなことが書いてあるところがありますが、総選挙というのであれば衆議院の総選挙ですし、国会議員のということであれば、これは「総」を取って国会議員の選挙というふうに直すというぐらいは修正すべきだと思いますし、また、憲法八十六条で、予算の作成に関しても、内閣は予算を作成というふうになっておりますが、厳密に言うと、これは予算案の作成というような、非常に細かい点ですけれども、どうせ変えるんだったらそういったところも変えたらいいのかなと思っておりますので、さまざまな議論というのはこれから国会の場で行ってまいりたい、このように考えております。

大熊委員 ありがとうございました。

 憲法というのは、私の理解では権利の章典ですから、今委員も言われたバージョンアップというのは、やはり権利を強化するバージョンアップだ、その手段としての統治機構ですから、そういう観点から、変えないことも含めて、いろいろ幅広に検討してまいりたいというふうに思います。

 以上です。終わります。

保利会長 次に、小池政就君。

小池(政)委員 結いの党の小池政就でございます。

 当審査会では久々に質疑をさせていただきます。十分は大変短い時間だということがわかりましたので、順番を変えて、いきなり最後の質問をさせていただきます。船田委員、また中谷委員、よろしくお願いいたします。

 今回の法案を経て、改正手続が整うわけでございますが、他方、現在では集団的自衛権をめぐる憲法解釈の変更の議論というものがなされているところでございまして、当審査会におきましてもそのような質疑がされたということを確認はさせていただいております。

 一方、憲法審査会におきましては、私も昨年、ずっと一緒にさせていただきましたが、法令の違憲性という観点ではございましたが、憲法裁判所の意義、また、最高裁判所の憲法部の意義というものが議論されておりました。

 その際におきまして、船田委員、中谷委員におきましては意見が一致しておりました。両人ともこの点については賛成ということでございまして、船田委員からは司法消極主義の解消、また、中谷委員からは、特に視察後におきましても、早急に憲法裁判所の導入を検討すべきだということをおっしゃっておりました。また、私は憲法解釈について当審査会でも質疑をさせていただいたんですが、立法府や連邦政府が勝手に決めてはいけないという認識がドイツにあるということから、ドイツの憲法裁判所のあり方というものについても答弁をいただいたことを記憶しております。

 一方で、自民党におきましては、去年の審査会、四月の段階では、現状、明確な方針を持っていない、一方で、今後も引き続き党内で議論をしていくというところではございましたが、ここで質問をさせていただきたいと思います。

 昨今の状況を踏まえて、今、憲法裁判所、また最高裁判所の憲法部としての意義をどう捉えていらっしゃるかということと、また、与党自民党として、党方針として、これからどうしていくということをお考えなのか、お二人からお聞かせいただきたいと思います。

中谷(元)議員 今、砂川判決が話題になっておりますが、国の存立にかかわるような問題において、誰がどのように判断しているのかということを考えますと、最高裁判所が的確に判断する場所となっているかどうか、その点については疑問を感じる部分がございます。

 その原因の一つは、具体的な訴訟が提起されて初めて裁判所が憲法に対する判断を行うという付随的違憲審査制を採用しておりまして、私は、このような憲法問題を一回的かつ終局的に解決させるためには、抽象的に法令の違憲性を審査できるような憲法裁判所、これを設けるべきではないかと。

 やはり職業的な裁判官中心の司法裁判所ではなくて、各界の識者、マスコミ、行政の経験者、政治家経験者などで構成される、法律の素養を背景としつつも、民意を酌んで政治的な判断も行えるような特別な裁判所であるべきでありまして、そういう意味において、今後、この裁判所について検討すべきではないか。

 現に、ドイツ、フランス、イタリア、タイ、韓国などではこの裁判所が導入されておりますので、この際、これも導入に向けた議論を行ったらいいと思っております。

船田議員 今、小池委員から御指摘いただいた点、自民党としては、二年前の憲法改正草案では、憲法裁判所の設置は特に触れませんでした。ただ、自民党として全く考えていないというわけではなくて、自民党の中にもいろいろと考えている者がいるということは御指摘をしたいと思います。

 その中で、私個人の見解ですが、これは、今、中谷議員が説明したものとほとんど同じでございまして、やはり、付随的違憲審査制というものを最高裁では採用しておりますので、どうしても具体的な訴訟事件の解決に即した違憲審査というものにとどまってしまう。すなわち、司法消極主義の状況になってしまっているというのが一つの考え方。

 それともう一つは、やはり、最高裁自身が非常に多忙であるということを理由にして、なかなか違憲審査が進まないという状況も、現実の問題としてはあるというふうに思っております。

 ただ、このことを放置しておくことは、行政の一部局である内閣法制局が憲法に関する有権解釈を行い、そのことがまた我々国会の中での議論も左右してしまっているという現状、これは、私は余り望ましい形ではないと考えておりますので、やはりできるだけ、最高裁判所にかわる憲法裁判所、あるいは最高裁の中に憲法部というものを設けて、そこで抽象的な問題においても憲法に関する議論ができ、そして判断ができる、そういう環境をつくることが、私個人としては望ましい、このように思っております。

 これは、党内でもこれからも主張を続けていきたいと思っております。

小池(政)委員 ありがとうございます。

 大変明確な答弁をいただきました。ぜひ党内でも議論を続けていただきたいと思います。

 また、この件に関しましては、船田委員は、これからの改正の優先事項といたしまして、九条の改正は難しいということから、環境権ということを挙げていらっしゃいますが、一方で、憲法裁判所等につきましては、野党の中でも、民主党を初め、この方針に賛成する党は多いわけでございます。船田委員は、本来は改正が望ましいということを今回の集団的自衛権の件でもお話をしている中で、ぜひ、この改正手続が整った際には、憲法裁判所、また憲法部というものを優先事項として考えていただくようにお願いしたいと思います。

 次に、もう時間が来てしまいそうですが、もう一点、船田委員、また、これは結いの党の畠中委員にお伺いさせていただきたいと思います。

 今回、投票権年齢は、期限を大分過ぎておりますが、ようやく引き下げについてめどが立ちそうなところではあります。選挙権年齢につきましても、これから二年以内に引き下げるということで方針を示しているところであります。各党間でプロジェクトチームを設置することも確認されているところであると確認しております。

 ただ、その際に、この二年間というのは、きょうの午前中の質疑にもありましたように、大変短いということもありますし、また周知期間ということもあったりする中でかなり、具体的にこれからどうするかということを早急に詰めていく必要があるかと思いますし、また、筆頭理事としてのリーダーシップというのが問われているところでございます。

 その際に、このプロジェクトチーム、工程表、また設置の手順及び取り組み、どのような方針というものが望ましい、もしくは、予定があるのであればそれについて示していただきたいと思います。

船田議員 まず、私の方からお答えいたしますと、今先生御指摘のように、この選挙権年齢の引き下げということにつきましては、ほぼ方向としては各党とも一致をしているものでございますので、これに基づいてプロジェクトチームを設置して、少なくとも二年以内に法の改正はきちんとやりたいと思っています。

 ただ、今おっしゃったように、周知期間というものがどのぐらいの長さに設定されるか、これはまだわかりませんので、それも二年以内というのはなかなか厳しいのかもしれません。でも、できるだけ急ぎたいという気持ちには変わりがございません。

 そして、これをプロジェクトチームで議論する過程におきましては、当然、我々のこの国民投票法の改正が大もとにはございますけれども、しかし、選挙権年齢というのは、いわゆる総務関係といいますか、総務部会、あるいは選挙制度の関係の部門にまたがることでございますので、各党の中での、その選挙制度関連の部門と一緒になって議論するということが必要であろう、そして、最終的には議員立法という形で国会に提出をする、これが順当な方法ではないか、このように思っております。

 ただ、期限は限られていると思いますので、できるだけこれは早急に取り組んでいきたいと思います。

畠中議員 今回、七会派共同提出に至った本法案ですが、その前提として確認書が交わされましたが、これは公党間の約束ですから、極めて重いものだと認識しています。

 この確認書の中で年齢引き下げについてのプロジェクトチームを設置することが合意されていますけれども、これまでの議論の中でもありましたように、対象法令の検討状況を見ましても、大分整理されてきている印象を私は持っておりまして、あとは政治決断だと。

 立法府の意思はこの七会派の共同提出で明確だと思っておりますから、あとは、先ほど船田筆頭提出者もおっしゃられましたように、プロジェクトチームを可及的速やかに始動しまして、特にこの年齢引き下げについてのロードマップを示すことが私は大事だと思っております。先ほど二年というお話がありましたけれども、しっかりとゴールを明確にしながら、その工程表をしっかりとつくっていく、この作業に入っていくというところを、私も共同提出者の一人として議論をリードしていきたいと考えております。

小池(政)委員 終わります。ありがとうございました。

保利会長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 まず、船田議員と三谷議員に質問いたします。

 これまで年齢問題の質疑を何回かやってまいりましたが、何が明らかになったかということなんですけれども、現行法の附則第三条では公布後七年たっても実現できず、そして、今度もまた、選挙権年齢と成年年齢の引き下げについて、政府答弁でも、先ほどから指摘もありましたが、年数を明示するのは困難ということで、四月二十四日にはそういう答弁がありました。そういうことだと思うんです。

 そうしますと、幾ら附則で決めようと、これらの問題が進まない根本には、やはり十八歳への引き下げに関して国民の中で賛否が割れている、そういう現実があるんじゃないかと思うんですが、そうはお思いになりませんか。

船田議員 今御指摘の部分でございますが、投票権年齢、そしてそれと関連をいたします選挙権年齢を十八に引き下げるということについて、もちろん、国内の世論においては、当然、それはまだ尚早である、こういう意見があることも重々承知をいたしております。

 ただ、我々は、これまで、この審査会におきましても、あるいはまたその前の特別委員会におきましても、数度にわたって海外調査をしてまいりました。また、国会図書館などを初め、さまざまな情報をとりますと、世界の普通選挙を行っている国の中で、やはり八割を超える国々が既に十八歳に選挙権年齢を引き下げているという、いわゆるグローバルスタンダードが十八であるということ。

 それから、我々立法者の趣旨、考え方としましては、できるだけ多くの人々に参加をしていただいて、憲法についての議論をする、あるいは一定の方向を見出していくという点において、例えばでありますが、公民権停止を受けた者についても憲法においては国民投票ができる、こういうことで、できるだけ多くの人々に投票していただこう、こういう我々立法者としての意思がございます。

 そういったものを踏まえると、選挙権年齢、国民投票年齢、いずれも十八に下げていくということについては、これは時代の要請である、このように考えた次第でございます。

 その後、さまざまな曲折がございました。この点につきましては我々も大いに反省をするところが大きいわけでありますが、従来より、投票権年齢、選挙権年齢、いずれも十八に下げるという非常に根本のところにおいてはずっと変わらずに今日までその姿勢を貫いてきたということはぜひ御理解をいただきたいと思っております。

三谷議員 今の船田さんのお答えに補足する形でお答えをさせていただきます。

 基本的には、選挙権、これは権利でございますから、これを広く認めれば認めるほど、もちろんながら、それまで権利を持っていた人たちの権利は希釈化されていくわけですから、そういう意味では、新しい権限をほかの人に与えるということについて、今まで既得権益を持っている側が積極的に認めていくなんということはそもそも考えにくい話なのであって、そういう意味では、若い方々が欲しいというのであれば、それを積極的に認めていくというようなことが政治側の決断として必要なのではないか、このように考えているところではございます。

 もう一つ、今までの政府答弁というものを見ると、どうしても自分から進んでいくというような、主導権を握ってやっていこうというような姿が見えなかったわけですから、そこは、これが適切な言葉選びかわかりませんが、自民党さんがどれぐらい本気になってこの問題に取り組んでいただくかということによってこれが進んでいくのではないかというふうに考えております。我々みんなの党としても、その決断というものにぜひとも御助力させていただきたい、このように考えているところでございます。

笠井委員 枝野議員と鈴木議員に伺いますが、私ども日本共産党も、十八歳選挙権はこの手続法にかかわりなく速やかに実現すべきであるということをかねてより言っているんです。だから、政治の決断は大事だと思うんです。

 しかし、この間の経緯を見ますと、国民的議論によるコンセンサス抜きに、机上で議論して、附則でつくったりしてやったって、実現の担保はなかなかないというのは現実が示していることだと思うんですね。

 つまり、そういう点でいうと、今やるべきは、このような法改定でやるということじゃなくて、まず、選挙権年齢などを一刻も早く十八歳に引き下げる方向の国民的合意づくり、これにこそやはり力を注ぐべきだと思うんですけれども、その辺はお二人はいかがでしょうか。

枝野議員 国民的な合意づくり、あるいはその前提となる国民的な議論を盛り上げるための努力をさらに進めていくということについては、委員御指摘のとおり、重要なことだろうというふうに思います。

 と同時に、今、三谷提案者、大変いい御指摘をされたというふうに思っておりますが、当事者になる、つまり、これによって利益を受けるという人たちは二年間の人たちであり、なおかつ、この人たちは常に異動していくという構造になっていることの中ではなかなか、当事者として、これをぜひ進めるべきだという声が大きなうねりにはなりにくいという性質を持っています。

 そうしたことの中では、先日もこちらに参考人で来ていただいた皆さんなどは、御自身が二十を過ぎられても、自分たちが十九歳のころに思った思いを次の世代のためにということで努力をされている、大変敬意を表すべき皆さんだと思っておりますが、そうしたことの中では、やはり政治がリーダーシップを発揮して国民に世論喚起をしていく、そのことに向けては、今回の附則も、そしてこの附則に基づいて、共産党にはお入りいただけないのかもしれませんが、各党で協議をしていくということ、そのこと自体が国民的合意形成に向けた大きな意義を持つのではないかと考えております。

鈴木(克)議員 国民的合意というのはおっしゃるとおりだというふうに私も思っております。

 今、それぞれ御答弁もあったわけでありますが、鶏が先か卵が先かという議論をするつもりはありませんけれども、やはり憲法教育とか政治教育とか、そういうものが今我が国として非常になされていない、また、どういうふうにしていけばいいのかという議論も余り深まっていないと私は思います。

 そういう意味で、少し問題はあるかもしれないけれども、こういう形で法律が整っていったということで、やはりこの教育の問題をしっかりとやっていくということは、ある意味で私は非常に大事なことではないかなと思っています。

 それから、世界の趨勢という話もありました。それから、なるべくこういうものは多くの国民の皆さんの判断を仰いだ方がいいという、この流れについては我々もそのとおりだということで共同提出の中に入っておるんですが、問題は、七年前に同じような形で出したんだけれども、結局できなかった。

 そこはやはり、今の国民的合意という部分はあるけれども、ある意味では、例えば、法務省とか総務省がなかなかそういう形での整備を進めてこなかったというところもありますので、きょうの南部参考人ですか、やはり政治がしっかりとそういうところはやっていかなきゃだめだよというお話もありました。そのところは我々もきちっと受けて、これから政治家としてしっかりとやっていきたいなというふうに思っております。

笠井委員 政府を動かすような国民的な合意を抜きに事を進めてもなかなか決してうまくいかないというのが、この七年間が示している、証明していることだと思うので、二年間、四年間と希望的な観測を言われても、これは仕方がない話なのかなということは申し上げておきたいと思います。

 次に、船田議員に、公務員、教育者のいわゆる地位利用の問題について伺います。

 今回、罰則を法律に規定せず、確認書なるもので今後の検討課題とされているわけですけれども、その理由について、四月十七日の質疑の中で、船田議員が、地位利用の形態というのがまだこなれていないというふうに言われて、北側議員は、選挙における地位利用は比較的明確だけれども、国民投票の地位利用というのはその範囲が明確でないというふうに答弁されています。

 ということは、現行法にある地位利用についても、その形態、範囲は不明確だということなんでしょうか。

船田議員 この地位利用につきましては、これまでもさまざまな議論をこの場でも申し上げてまいりました。

 地位利用について罰則を加えるべきではないか、こういう案も出まして、ただ、これは、申し上げたように、その形態とかあるいはその範囲、そういったものがまだ明確ではないので、これは検討課題とする、こういうことにいたしたわけであります。

 ただ、罰則をつけるべきだという意見も、非常にこれは根拠のあることであって、これまで我々は、国家公務員でも地方公務員でも、その勧誘行為が純粋であるかどうかということを見て、純粋であるならばそれは制約をされないようにしようと、新たな切り分けを今回の法の改正で行おうとしているわけです。

 そういう中で、地位利用に罰則をつける問題は、新たな課題として浮上してきたもの、つまり、宿題を超えたものというよりも宿題が深まった、こういうふうに我々は位置づけてこの議論をしているという状況でございます。

 確かに、公選法における地位利用の問題、それから、現在の国民投票法においての地位利用の形態、これは定義がやや違っておりまして、公選法におきましては、割と簡単に規定がされております。「その地位を利用して選挙運動をすることができない。」こう公選法では書いてあります。百三十六条の二。

 それに対して、私どもの日本国憲法の改正手続に関する法律におきましては、この同じところに当たる部分は百三条にございまして、「その地位にあるために特に国民投票運動を効果的に行い得る影響力又は便益を利用して、国民投票運動をすることができない。」少しこれは、より定義を細かくしていこう、こういう努力を一応行ったものでございます。

 しかしながら、その改正手続法における定義におきましてもなお、なかなか切り分けが難しい、こういう部分もありますので、そのものに罰則をつけるということは、その運用上さまざまな問題を起こしかねないということで、罰則をつけることは見合わせたというのがこれまでの経緯であったわけでございます。

 そういうことで、現時点においては、公選法、それから改正手続法、いずれにおいても、その地位を利用するという形態についてまだまだ十分に、少なくとも公選法においては判例が積み上がっていない、こういう状況にあり、また、国民投票法における地位利用というものは例が全くありませんので、そういう点では慎重に議論していくべきである、このように整理をさせていただきました。

笠井委員 現行法は懲戒処分のみで、それであっても、地位利用の形態、範囲というのが明確でなければ処分できないというわけでありまして、今、船田議員も言われたんですけれども、改憲手続法審議のときに法案提出者は、「その地位を利用して」という規定では曖昧だからということで、二〇〇七年三月の併合修正案で、「その地位にあるために特に国民投票運動を効果的に行い得る影響力又は便益を利用して、」と文言を改めて、概念をより明確にしたんだと説明したわけですね。

 この文言自身は、一九六二年の公選法改正のときに、「その地位を利用して」の意味を説明した、当時の自治省の局議決定を引用したもので、私は、ただ言葉をかえただけだというふうに批判したものであります。とにかく法案提出者は、これで地位利用の意味内容をさらに具体化したと説明したんだけれども、あのときの答弁は何だったのかという問題になってきて、結局、現行法の地位利用も、その形態、範囲というのは不明確、曖昧ということではないかと思うんです。こんな規定で公務員や教育者の国民投票運動を規制するなどとんでもないということを申し上げたいと思います。

 そこで、もう一問なんですが、船田議員に伺いたいんです。

 今回、罰則を法律に明確に規定しなかった理由について、船田議員は、さらに罰則の明確な構成要件を設定することが必要でございますが、それが非常に困難であるという状況であるというふうにも答弁をされました。北側議員も、罰則を設ける以上は、その構成要件が明確であることが大前提だが、設定することが現時点ではなかなか難しいというふうに説明しているわけです。

 しかし、二〇〇六年五月の自民、公明の自公案では、いわゆる地位利用で違反した場合に、公務員は二年以下の禁錮または三十万円以下の罰金、第百二十二条第二項、それから教育者は一年以下の禁錮または三十万円以下の罰金、百二十二条の第三項というふうになっていたわけで、あのときは明確な構成要件が設定されないままに罰則を設けていたということになるんでしょうか。そこをちょっとお願いしたいんですけれども。

船田議員 今御指摘のころの私たちのさまざまな検討におきましては、この地位利用については、公職選挙法における地位利用というものについてはかなり明らかであるということがございましたので、それを援用する形での国民投票法における地位利用、それに罰則を、こういうことを考えたわけでありますが、その後さまざまな検討を加えた結果、なかなか国民投票運動における地位利用の形態というのが一様ではない、さまざまなケースがある、こういうことがその後明らかになってまいりまして、この点については、そのことを十分に踏まえた上で、もう少し我々としては検討を加える必要があるということで、最終的には、禁止は禁止でありますけれども、罰則はつけないということで最終的に判断をさせていただいたという経緯でございました。

笠井委員 要するに、伺っているのは、二〇〇六年五月に提出した自公案というのは、いわゆる地位利用について明確な構成要件を設定せずに罰則を設けていたということだったわけですね。

船田議員 二〇〇六年時点のことについては記憶が定かでないところもございますけれども、この点については、当時、やはり公職につく者の選択としての選挙における地位利用、こういったものがかなり明確になっている、そういうことを前提として、我々としては、このことがまた国民投票法における国民投票運動にも援用できるのではないか、このように考えた次第でございますが、国民投票運動におけるその地位利用の形態が実にさまざまであるということがその後議論の中で判明をいたしましたので、これは、この際、禁止は禁止だけれども、罰則をつけることは見合わせるべきである、そのように考え方を変えた次第でございます。

笠井委員 いずれにしても、形態、範囲というのが極めて不明確、曖昧という形で規制という話が議論になっているというのは、とんでもない話だと思います。

 次に、引き続き船田議員に、公務員が組織を使って行う勧誘運動等を企画したりすることについて規制の検討を行うという改定案の附則四項について伺いたいと思うんです。

 四月十七日の答弁で、公務員が組織を使ってさまざまな活動をするということは国民に対する影響力が大きい、大き過ぎるというふうに述べられましたけれども、なぜ公務員が組織を使って国民投票運動をすると国民への影響力が大きくなるのか、また、国民に対してどういう影響力が働くと思っていらっしゃるのか、伺いたいと思います。

船田議員 明確にお答えすることは難しいと思いますが、ただやはり、公務員の社会的な地位それから影響力というのは、一般の人々に比べれば大きいものがあると思います。しかしながら、我々は、公務員であっても国民の一人であることには変わりがない、そして、憲法改正という国の重要な政策選択においては、やはり公務員といえども、自由に発言をする、あるいは一定の行動をされるということは許容されるべきである、このように整理をさせていただきました。

 ただやはり、もともと公務員の力、影響力が一般人に対しては大きいということが前提にございますので、そのことにより、公務員がさらに組織を使うこと、あるいは、組織の中で企画をしたり指導をしたり主宰をするということは、やはりこれは大きな影響を一般の人々に与えることは明らかであろう。そういうところから、組織による勧誘、署名あるいはデモ、それを企画したり指導したりすることはやはりやめていただくのが妥当ではないかということで、我々はその新たな部分を設定させていただこうとしたわけであります。

 ただ、これについては、その組織による勧誘、署名、デモのあり方がどのように規定をされるのか、あるいは、勧誘、署名、デモという政治的な行為、それだけを対象にしていいものか、さまざまな議論が残るところでございますので、これは将来の検討課題として附則におろさせていただいたという経緯があります。

笠井委員 組織的に行う国民投票運動ということを言うのだったらば、ほかにも国民への影響力が大きくなり得るものはたくさんあると思うんです。前にも、七年前にも議論をやったと思うんですが、例えば大企業とか日本経団連などがぐるみで国民投票運動を行えば国民への影響力は相当なものになると思うんですけれども、なぜ公務員だけを問題にするんでしょうか。

船田議員 私どもがここで組織によりと書きました中には、組合のこともございましょう、しかしながら、同時に、企業のこともあります、あるいはまた、NPOの団体などもあるいは考えられると思います。公務員の組合に限ったものではないということで、この組織によりの組織という点においては、少しいろいろと考える余地が残っている、このように思っております。

笠井委員 そうすると、NPOとかそういうところも組織的にやるとこれは問題になる、こういう形になるという新たな問題も今言われたということは非常に重大だと思います。

 結局、日本国憲法の尊重擁護をする義務を負って、遵守することを宣誓して仕事についている公務員、けさ方も参考人からお話がありましたけれども、そうした公務員について言えば、国民投票運動を積極的に行えばそういう形で影響力は大きい、改憲案が否決されてしまうかもしれない、だからそれを抑えてしまおうという意図が働いているんじゃないかと思わざるを得ないような問題になっているというふうに言いたいと思います。

 さて、若干、もう少し聞いていきたいんですが、船田議員と枝野議員、まず船田議員に伺いますが、四月二十二日と本日の午前中の参考人質疑でも、参考人の方々から、現行法の検討すべき論点として指摘されてきた最低投票率などの問題が改定案では一顧だにされていないとの指摘がありました。また、参議院で付されたものでありますけれども、十八項目の附帯決議についても、改定案を出すからにはその内容が検討されてしかるべきだと思うんですが、発議者からは一言の説明もなかったと思うんですけれども、改定案をつくるに当たって、十八項目の一つ一つは検討されたんでしょうか、船田議員。

船田議員 最低投票率につきましては、これは、七年前の憲法調査特別委員会におきましても相当な議論がございました。また、参議院でも同様な議論が相当ございまして、結果として、参議院における附帯決議の一つになっていたわけでございます。この点につきましては、その後も私どもとしては十分に頭に入れながら対応いたしているつもりでございますが、今回の改正案の審議におきましては、三つの宿題をメーンとして対応いたしましたので、最低投票率はその課題にはなっていない、そういう状況で議論をさせていただきました。

 しかしながら、今後、具体的に憲法改正原案の審議、あるいはその他もろもろの審議が行われる場合においては、最低投票率につきましても再度焦点を当てて議論する必要がある、このように思っております。

 また、十八項目の参議院における附帯決議でございますけれども、今手元に明らかにございませんけれども、そのうちの幾つかは事務的な処理でできる問題というのがあると思います。それから、我々がこれからつくろうとしております年齢関係のプロジェクトチームで議論するものもあると思います。それから、憲法審査会そのもので議論すべきものもあると思っております。

 ただ、残念ながら、例えば三年間の間にやるべきことというのができなかったという点で、二項目程度は多分、その附帯決議に応じられなかったというものがあると思います。

 しかし、いずれの場合も、かなり、これから先の課題というのが幾つか述べられておりますので、そういうことについては、プロジェクトチームや、あるいはこの憲法審査会でしっかりと議論していく対象になり得るし、議論していかなければいけない、こういう認識で今後対応していきたいと思います。

笠井委員 枝野議員に伺います。

 弁護士会などの法曹団体は、改憲手続法が成立した後も、最低投票率の設定など法律の抜本的な見直しを要求していたと、午前中に水地参考人が日弁連の立場も改めて表明をされて、改定をするならばそういうことについてもしっかりやるべきだということで、強く言われたと思うんです。

 参議院の附帯決議は、自民、公明、民主が共同で提出したものでありますけれども、そういう意味では、三党自身の責任、それから、政府に対してこの附帯決議の実行を迫る責任があったのではないか。そこに盛られた内容というのは、法律の見直しを含めたものもあります、もちろん実務的、技術的な問題もあるけれども。そういうことについて、結局のところ、この審査会の場では一顧だにされるような話になっていない、そして説明もないということになると、国会軽視も甚だしいということにならないかと思うんですが、いかがでしょうか。

枝野議員 最低投票率についてはいろいろな御意見がありますが、例えば、仮に最低投票率を有権者の五〇%とした場合に、絶対得票率が四八%賛成で、一%反対という場合でも、これは最低投票率に満たないので、否決をされます。一方で、絶対得票、賛成二六%、反対二五%だと、投票者が五一%になりますので最低投票率をクリアする、なおかつ過半数が賛成であるので、これは可決をされます。

 二六対二五で可決をされる、四八対一で否決をされるというのは明らかに不合理であるということで、私は信念を持って最低投票率には反対でありますし、また、そういったことも踏まえた上で、今回こうしたことについての提案をしていないのは当然で、もし最低投票率が必要だと思うのであれば、改正案を御提起されればいいんじゃないでしょうか。

笠井委員 今、枝野議員が個人的な見解ということで述べられたわけですが、そうした最低投票率をめぐる問題というのはさんざん議論があったわけです。そういう結果として、結局、参議院の附帯決議の中でもそういう問題についてどうするかということについて盛り込んできたわけで、反対であるかどうかということを聞いているんじゃなくて、この法改定については、きちっと見直しをするのであれば、そういうことについて説明があって、だけれどもこれはやりませんよと言うかどうかというのは最低限必要なことじゃないかと私は申し上げたいと思います。

 時間が迫ってきたので最後の質問ですけれども、この審議の後に附帯決議ということで提案があって、幹事会でも出されました。我が党以外が共同提案ということでありますけれども、若干そのことについて、船田議員でも結構ですし、どなたでも結構ですが、伺っておきたいんですが、この附帯決議を拝見しますと、非常に支離滅裂だと一言で申し上げたいんです。

 まず一項目めで、選挙権を有する者の年齢については、民法で定める成年年齢に先行してこの法律の施行後二年以内を目途に、年齢満十八歳以上の者が国政選挙等に参加することができることとなるよう、必要な法制上の措置を講ずることということがあります。

 七年前のときにも、結局、こういう形で名宛て人が明確でなくて、誰がやるのか、誰に責任があるのかというのがなくて、そういう形で付されたものが、結局、附帯決議にあったわけですけれども、そんな形で、政府は国会のせいにする、そして国会は政府のということで、なすりつけるみたいな話があったわけですけれども、こういう問題についてどういうふうに考えるのか。

 それから二つ目の、二項目めで、政府は、国民投票の投票権を有する者の年齢、選挙権を有する者の年齢、成年年齢等が満十八歳以上に引き下げられることを踏まえ、国民に対する周知啓発その他必要な措置を講ずるものとすることとありますが、引き下げられることを踏まえといいますが、今回の改定によっても、引き下げられることは踏まえられるような、そういう具体的な拘束力あるもので縛られていないわけですね、附則で年限を定めずに、検討だけ目指すというふうに言っているわけですから。なぜ、それをわざわざ、引き下げられることを踏まえというふうに、違うふうに述べて、つまり偽って述べて、その周知啓発を求めて、政府にやらせるのか。

 それから、もう一点だけ申し上げますと、第五項目めで、地方公務員の政治的行為について国家公務員と同様の規制とすることについては、各党の担当部局に引き継ぐものとすることというふうにあります。これは、先ほど民主党の細野委員から、なかなか、要するに聞きなれない、やや聞きなれないという言葉で言ったんです。私も、附帯決議で各党の担当部局に引き継ぐということを求めるようなものは寡聞にして見たことがないんですけれども、こういう形で、なぜこういうことを盛り込むのか。

 私どもは、国家公務員、地方公務員の規制という問題についてはくみしない立場であります。ただ、各党の担当部局に引き継ぐということで国会決議すれば、我々もそれで義務づけられることになるのか、日本共産党の担当部局もこれで縛られるのか、こういう問題になってきます。なぜこんなことが附帯決議になるのか。

 本当に、一項目ずつ挙げるとあれなんですが、矛盾だらけな問題だ、支離滅裂だと思うんですよ。しかも、具体的に何が言いたいのかわからぬ、誰に言っているのかわからぬ。何で日本共産党もこういう形で、担当部局に引き継ぐということで縛られなきゃいけないのか。どのように御説明になりますか。

船田議員 附帯決議につきましてはこの後の議題となりますので、ちょっと尚早かもしれませんが、御質問でございますので、答えられる部分を答えたいと思います。

 それで、この附帯決議の案につきましては、ベースとしては八党合意の確認書、これをもとにしたものでございます。したがいまして、若干字句の不明確さは否めないところは私も認めるところでございますが、八党合意の確認書は、あくまで、これは国民全体の前であるというよりも、政党間の合意を得たものでございますので、これをできる限り、やはりこの正式な憲法審査会という場において、あるいは法案採決のときの附帯決議として、多くの国民の皆様に知ってもらいたい、こういう趣旨でこの附帯決議をつくらせていただきましたので、まずその点は御理解いただきたいと思っております。

 それから、細かい点について一々申し上げることはできませんけれども、例えば、一番にありますような、つまり名宛て人は誰なのかという点でございますが、特に指定をされていないものについては、国または国会というふうに読み取ってよろしいんじゃないかと思っております。

 二と三は、これは政府にということで、はっきり政府に対してであります。次の六のところも、これも政府にということで書いてあります。そのほかにつきましては、本憲法審査会あるいは国に対してということで読み取っていただければ整合性はとれるものではないかと思います。

 なお、五番目の項目について、各党の担当部局に引き継ぐものとするという点は、大変恐縮でございますが、今回の法案の共同提案者になった各党であるということで御理解をいただきたい、このように思っております。

笠井委員 そんなもの理解できないですよ。国民が読んだら、各党の担当者といったら、共産党は党じゃないのか、国会構成でここにいないのかという話になるので、そんないいかげんな話ではだめだと思うんですよ。

 それで、不明確さは認めるとおっしゃったけれども、八党の確認書をそのまま国会の附帯決議にしてちょっと若干足すみたいなことをやるから、こんなことになるんですよ。支離滅裂で矛盾だらけだ。私は、こんなことをやることはかえって有害だと思うんです。

 時間になりましたから終わりますけれども、こんなことで、国民投票だけはいつでもできるようにする、そんないいかげんなことで憲法を扱う、国民は納得しないと思います。本来、きちっと法律で決めることなら決めて、徹底審議で決着をつければいいわけですよ。まだまだ私、聞きたいことだってあるし。

 こんないいかげんなことでやればやるほど、改憲反対の国民世論を盛り上げてくれることになる、逆に。そのことを申し上げて、さらに徹底審議を求めて、私はきょうの質問を終わります。

保利会長 次に、小宮山泰子君。

小宮山委員 生活の党の小宮山泰子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、本日もさまざまな議論が出ておりました。朝から見させていただいておりましたけれども、これまで、提出者を初め関係者の皆様方には、法案の取りまとめに対し御尽力いただいていることに、心から敬意を表させていただきたいと思います。

 さて、質問でございますけれども、選挙権年齢の引き下げに向けた取り組みについて質問させていただきたいと思います。

 この改正案では、選挙権年齢等の引き下げについて、速やかに法制上の措置を講ずると定められておりますが、八党による確認書では、「選挙権年齢については、改正法施行後二年以内に十八歳に引き下げることを目指し、各党間でプロジェクトチームを設置すること」とされております。選挙権年齢を早期に引き下げる方向性は明確になったと考えております。

 そこで、生活の党の鈴木克昌議員に伺います。

 今後の選挙権年齢の引き下げにどのように取り組んでいくのか、選挙権年齢の引き下げに向けた決意をお聞かせください。

    〔会長退席、武正会長代理着席〕

鈴木(克)議員 本法案の共同提出に当たって、我が党の中でいろいろと議論をさせていただきました。我が党としては、主張すべきは主張する、しかし容認できるところは容認をする、こういう方向で、基本的には、やはりなるべく多くの政党がそろって成案を求めていくということについて、我が党もそういう方向で議論を進めさせていただきました。今の話がやはり党内でも非常にポイントになったことは、小宮山委員も御承知のとおりだと思います。

 我々としては、法施行後四年以内というのが本当に担保されるのか、もっと急ぐべきではないのかということであったわけでありますが、結果的に、先ほどの議論の中にもあったように、各党間でプロジェクトチームをつくって、できるだけ早くするようにする、二年を目途としてやっていくということでありましたので、一応、そういうことであるならば納得できる範囲の中ではないかな、このように思っております。

 いずれにしましても、四年を待たずに選挙権年齢が十八歳に引き下げられた場合に、これと同時に、投票権年齢も十八歳に引き下げられるという措置を講ずることが大事であります。この部分については提出会派の間で合意をされた、このように理解をいたしておるところでありますが、いずれにしても、我が党としては、参政権グループである投票権年齢と選挙権年齢はそろっているべきであるという基本的な考え方でおるということでございます。

 いずれにしても、改正法施行後速やかに、投票権年齢と選挙権年齢の均衡等を勘案し、必要な法制上の措置を講ずるものとするということで、附則の三項にもあらわれているというふうに理解をいたしております。

 これらを踏まえて、まず各党プロジェクトチームにおいて、選挙権年齢の引き下げについて、二年以内を目途に結論を出すべく精力的に議論を進め、その後、成人年齢その他の年齢の引き下げについても四年以内を目途に最大限の努力をする、こういうことの合意ができたというふうに理解をしておるところであります。

 我々生活の党としては、このプロジェクトチームが設置をされるということを受けて、いずれにしても、選挙権年齢等の引き下げに関する議論をリードしてまいりたい、このように思っておるところであります。

小宮山委員 ありがとうございます。

 先ほどからの議論にありました、今後は、各党間でのプロジェクトチームを組み、そして、提出者である各党というものが大変大きな責務を負っていくかと思います。

 しかしながら、憲法に関することでもございます。国民主権という中において、一人一人が十八歳から投票ができるという中において、多くの国民が主権者としてそういう認識を持つ、そのような社会をつくるということもぜひ最大限の努力をしていただき、世論等、また、そういった方々一人一人が、誰かに左右されるのではなく自分自身で考え、投票ができる、そのような形をとる、またそういった方向に行ける、当たり前のことかもしれませんけれども、そのための努力をぜひし続けていただきたいと思いますし、私どもも、そのために国会議員として努力をしていきたいと存じます。

 さて、憲法全般の考え方、また今後の憲法論議について、最後でございますので、伺わせていただきたいと思います。

 提出者が答弁されているとおり、本改正案が成立すれば、実際に憲法改正の国民投票を行うことが可能となると思います。そこで、生活の党の鈴木克昌議員に改めて、憲法全般に対しどのような考え方をお持ちなのか、確認の意味を込めてお伺いしたいと思います。あわせて、今後どのように憲法改正に向けた議論を進めていくべきであるか、その考え方についてもお聞かせください。

    〔武正会長代理退席、会長着席〕

鈴木(克)議員 基本的に、我々の考える日本国憲法というのは、やはり四大原則、三大原則とも言いますが、これを堅持する、ここは絶対に譲れないところだというふうに思っています。

 憲法とは、国家以前の普遍的理念である基本的人権の尊重を貫徹するために統治権を制約する、いわゆる国家権力を縛るものであるという立憲主義の考え方を基本といたしております。基本的人権の保障については、専制政治のもとでは基本的人権の保障が完全なものとはなり得ないということでありますので、国民主権の原理と結びついて、人間の自由と生存、そして平和なくして確保されないという意味で、平和主義の原理とも、また人権及び国民主権の原理とも不可分の関係にある、このように理解をいたしております。

 したがって、基本的人権の尊重、そして国民主権、平和主義、国際協調という憲法の四大原則は普遍的な価値であり、引き続きどんなことがあっても堅持をすべきだ、このように思っています。

 それから、憲法についてもう少し加えさせていただくと、このような基本理念、原理を堅持した上で、時代の要請を踏まえて、国連の平和維持活動とか、国会とか内閣とか司法とか、国と地方の関係等統治機構改革、そしてまた緊急事態等々について、やはり憲法の一部を見直す必要があるということを考えておりまして、いわゆる加憲ということを基本的に考えております。

 最後に、九十六条、これは堅持をするということも我々としてはしっかりと主張をしてまいりたいというふうに思います。

 いずれにしましても、国の基本を定める規範である憲法について、通常の法律のような容易に改めることのできる性質のものではないということは言うまでもありません。かつ、最高法規としてその安定性が求められる性質のものである、このように考えております。今後も、憲法改正議論の中で、我が党としても積極的に議論をリードしてまいりたい、このように思っております。

 以上です。

小宮山委員 ありがとうございます。

 私もそうですが、四大原則と言われる、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義、そして国際協調というこの原則は普遍のものであり、また、憲法は立憲主義のもとにある、私たち国会議員もやはり襟を正し、憲法の前文に特にあらわれているかと思いますが、崇高な理想と目的を達するために、国民としてもそのための努力を惜しんではいけないと思います。

 また、先ほど九十六条の件に触れられておりましたけれども、簡単に変えられるものではない、それは国会に対し国民がしっかりと縛りをかける、当たり前かもしれませんけれども、そういった趣旨にきちんと私どもも思いをはせ、そして多くの国民がそれに賛同する、そういった発議ができるようにならなければならないんだと感じております。

 あわせまして、今回、本当に多くの皆様方に御協力いただいておりますが、提出者の皆様方を初め関係の皆様、連日、御努力いただいたことに心から敬意を表し、そして、毎回ではございますけれども、国民主権という基本的な考え方を多くの国民とともに私どももしっかりと大切にし、そして、国会議員自身も、最近、本会議場でのやじを聞いていますと、憲法自体を読んだことがない、全部の文章を読んだことがない国会議員がいるのではないかと思わざるを得ないような、大変レベルの低いやじも飛んでおります。こういったことがなく、国民に対してしっかりと、憲法論議ができる、そして恥ずることのない、そういった国会であることを心から願いまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

保利会長 この際、議員吉川元君から委員外の発言を求められておりますが、これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 吉川元君。

吉川(元)議員 社会民主党の吉川元です。

 まず初めに、本憲法審査会において委員外質疑をお認めいただきました会長並びに幹事の皆様、そして委員の皆様に感謝を申し上げたいと思います。また、四月二十四日の審査会でも質疑ができるということでありましたが、その際は辞退することとなり、大変失礼をいたしました。

 これまでの議論と重複するところも多々あるかとは思いますけれども、提出者に順次お伺いをしていきたいと思います。

 まず、船田提出者に伺います。

 いわゆる三つの宿題を解いたということの意味、繰り返しになりますが、簡潔に御説明ください。

船田議員 吉川委員にお答えいたします。

 三つの宿題のうちで、期限の定められている選挙権年齢の十八歳引き下げ、それから公務員の政治的行為に係る法整備については、本来は、制定後三年、すなわち平成二十二年五月までに法整備が行われるものでございましたが、諸般の事情がございまして、現在はその期限を既に徒過している、過ぎ去っている、こういう想定していなかった事態が生じました。したがって、現在、十八歳で投票できるのか、二十でなければいけないのか、これに明確な回答が出ないという状況になりました。

 今回、私ども、この改正案におきましては、改正法施行後四年間は二十以上、五年目からは十八歳以上としておりまして、投票権年齢は、法律上、どの時点においても明らかにされているということで、疑義が生じる余地がなくなったということでございます。

 確かに、改正法施行後速やかに、投票権年齢と選挙権年齢の均衡等を勘案し、必要な法制上の措置を講ずるものとするという検討条項が附則に設けられてはいるんですが、投票権年齢とのリンクは設けられておりません。いずれの時点でも投票権年齢は明らかであることから、宿題を解いていると認識をしております。

 公務員の政治的行為の法整備でありますが、純粋な賛否の勧誘及び意見表明に限って、公務員も行うことができることになりました。これにより明確に宿題を解いたところでありまして、賛否の勧誘行為について存在をしていた国家公務員と地方公務員のアンバランスも、その部分においては解消した、このように考えております。

 三つ目の国民投票の対象拡大につきましては、間接民主制のもとにおいて直接民主制の要素を導入することができるのかどうか、全般的な検討が必要であるということで、これは解決には至らなかったわけでありますが、この宿題を前向きに捉えまして、そして、八党の合意におきましては、本審査会において、四回から五回審査が行われる中で、一回は少なくともこの対象の拡大ということについて議論をしよう、こういうことで位置づけをさせていただきました。宿題を前向きに置き直した、こう理解をしていただいて結構だと思います。

 こういうことで、三つの宿題の大半については解決ができた、このように感じております。

吉川(元)議員 解いたということですけれども、私は、やはりどうしても解いたというふうには思えません。

 現行法の附則三条、それから当時の答弁ともども、立法意思は明確だったのではないか。ところが、これが果たされず違法状態になり、それに対して、改正案では、国民投票の投票権年齢と選挙権年齢等とのリンクを解いた。解いたのはリンクであって、宿題ではないというふうに私自身は感じております。

 また、これは、先ほどから聞いておりますと、八党の間での確認書ということもしばしば言及をされております。公党間の約束は大変重いというようなことも伺っておりますが、果たしてこれが担保になるのかということも私は疑問と言わざるを得ません。

 といいますのも、私も他の、具体的に言えば選挙制度ですけれども、各党協議に出ております。その際には、十党で、全ての政党が確認書に署名をした。その確認書が今ほごにされようとしている。そういう現状も踏まえたときに、やはり八党の確認書では、これはとても担保にはならないだろう、最低でも本法を凍結して仕切り直すということが必要ではないかというふうにも思います。

 次に、枝野提出者にお尋ねします。

 現行法附則十一条、すなわち、公務員の政治的行為の制限に関する検討の趣旨は何であったのでしょうか。また、これに照らして、本改正案における公務員の政治的行為に係る措置をどのように評価されているのか。四月二十四日の本審査会でも明確に答弁をされておられますけれども、改めまして、以上二点、端的にお答えください。

枝野議員 先ほど申しましたが、公務員に限らず、政治的行為の自由というのは基本的人権の中でも特に重視をされなければならない、必要最小限の制約以外は受けないということの中で、特に憲法は公務員制度自体の基礎になっている国家統治システムを構築する制度ですから、それについて、その上に乗っかっている公務員といえども、最大限意見表明の自由を確保しなければならない。これは一貫して我々の立場でありました。

 ただ、地方公務員には従来から住民投票を視野に置いた公の投票についての規制がかかっていて、ただ何も規制を置かないということだけでは国家公務員とのアンバランスが出てしまう。また、地方公務員の国民投票に対する制約が過度な規制になってしまう。これを解決しなければならない。ただし、あくまでも必要最小限の規制にとどめるべきだ。こういう趣旨であったものが、基本的にはその線で、今回、国民投票については運動が自由であるということが確認をされたと思っています。

 一点だけ、運動規制を受ける対象が警察官等に広がるという点はございました。これについては若干じくじたる思いはございますが、どこまでが、運動にかかわること自体が中立公正を疑わせるかという線引きのところで、実際に国民投票運動の違反等があった場合の取り締まりや判断にかかわる立場の皆さんまでということであれば、一定の合理的な説明がつくのではないかということで、やむを得ず受け入れたということでございますので、基本的には七年前の法制定のときに想定をしていた範囲で運動の自由というのは確保できたというふうに考えております。

吉川(元)議員 関連しまして、船田提出者に伺います。

 改正案の附則では、組織により行われる勧誘運動等の公務員による企画等の規制について検討条項を設けております。現行法の附則十一条には、公務員による賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないようと明記をされており、また、今ほど枝野提出者からの御答弁にもあったとおりだというふうに思います。

 公務員の運動制限の方向性を含んだ附則というのはもともとの立法意思に反するのではないか、これもまた宿題をきちんと解かずに約束をたがえて別物を出したということにはならないのか、この点について答弁を求めます。

船田議員 今の点につきましては、そもそものところからちょっとひもといてみますと、七年前におきましては、今、枝野議員からも指摘がありましたように、現行法においては国家公務員と地方公務員の運動規制がアンバランスであるということ、特に公の投票というのが地方公務員法にございますので、国民投票はこれに該当してしまいますので、地方公務員は非常に制限行為というのが強くなり、国家公務員はそうでもない、こういった逆転現象も生じている、同じ公務員でありながら、国家公務員グループと地方公務員グループでは、その規制の対象あるいはその強さが非常に違ってきている、こういうことがありました。

 我々としては、七年前に、国家公務員、地方公務員の勧誘行為が不当に制約されることのないように法制上の検討を加えるということにいたしまして、ようやく今回、七年過ぎましたけれども、国家公務員、地方公務員とも純粋な勧誘行為は原則自由である、このように切り分けさせていただきました。

 ただ、これを切り分けた結果、新たに公務員の皆さんにお願いをしなければいけない規制として考えられるものが、地位利用の禁止に罰則をつけるべきかどうかということ、そして特定公務員の禁止、これは盛り込むことにいたしました。そして三つ目には、組織による勧誘、署名、デモの企画、主宰、指導はいかがであるか、こういうことでございまして、決してこれは新たな問題を持ち込んだということではなくて、原則自由にした結果として新たに規制というものを考えるべき対象がふえたのではないか、宿題を超えるものではなくて宿題が深まった、こういうふうに私たちは理解をしております。

 このことについては各党間でまだ合意が得られておりませんので、今後、十分な議論を経て、慎重に対応していきたいと考えております。

吉川(元)議員 深まったというふうにはちょっと私自身は感じられません。別方向に向かっているような、もともとの立法趣旨、意思からは離れた方向に向かっているのではないかというようなことも感じざるを得ません。

 続きまして、再び船田提出者の方にお伺いいたします。

 私どもは、国民投票法は欠陥法であるというふうに申し上げてきましたが、その理由は、今ほど議論いたしました三つの宿題に限られたものではないというふうに思っております。

 先ほども質問がありましたけれども、参議院の方では十八項目にわたる附帯決議が出されております。その中で、最低投票率等々も先ほど議論にありましたけれども、いずれも憲法改正の国民投票の根幹にかかわるような問題も提示をされております。

 この附帯決議というのは、もちろんハウスが違うということではなくて、国会全体が名宛て人であるというふうにも考えられます。改正案において、この附帯決議、先ほど少し御答弁がありましたけれども、やはり検討された形跡が見られません。この点についての認識を改めて伺います。

船田議員 附帯決議は、言うまでもなく、衆参両院の各委員会における案件の議決に際しまして、当該案件の実施等に当たっての基本姿勢あるいは留意すべき事項などを委員会の意思として表明する議決であります。法的な拘束力を持つというよりも、これは政治的な意味として大きいものがあると思っております。

 もちろん、参議院の附帯決議が直接衆議院の意思決定を縛るものでないと思いますけれども、やはり附帯決議の持っている性格上、参議院での附帯決議におきましても、これは相当な政治的意味を持つものでございますので、我々はこれを重視していきたい、これからもそう考えていきたいと思っております。

 具体的に十八項目ございます。現在調査をいたしておりますけれども、その中で、もう既に、事務的に解決をしていく、あるいは解決した、そういうものが数項目あると思います。また、今後の検討課題として、まさにこの衆議院の憲法審査会でこれから議論しなければいけない、そういうものも七、八項目あると思っております。それから、プロジェクトチーム、いわゆる年齢PTを中心として詰めなければいけない部分というのも三つ、四つ考えられております。

 その他、例えば三年以内の間にやるべきことが規定されている部分もあります。これは、結果としてできなかった、附帯決議にそぐわなかったというものが二カ所程度あると思いますが、いずれにしても、その残りの部分につきましては、現在から将来に向けて我々がこの審査会あるいはプロジェクトチームで議論し、解決すべき問題であると考えておりますので、今後、重要視をしながら審議を続けていきたいと思っております。

 以上です。

吉川(元)議員 附帯決議も含めてきちんとした形で提出されるべきものだというふうに考えますし、また、それが十分にまだできていないというところもお認めになられるわけですから、その点については時間をかけてやはり議論すべきだろうというふうに思います。

 さて、社民党は、集団的自衛権の行使容認そのものに反対の立場ですが、少なくとも憲法解釈の変更でこれを行うべきではないという点では、四月二十四日の北側提出者あるいは枝野提出者の答弁に共感をいたします。

 これに関連して、憲法学の山内敏弘一橋大名誉教授に我が党の会合に来ていただきましてお話を伺いました。

 その際、憲法九十六条は、単に明文改正の場合のみに改正手続を必要としているだけではなく、実質的な意味での憲法の根本原理、国の基本的な形の変更を行う場合にも九十六条の改正手続を必要とすることをも要請しているというお話を伺いました。言いかえれば、憲法規定に一定の解釈の幅はあるとしても、その枠を超える解釈変更というものは、やはり九十六条の改正手続を要するということだろうというふうに思います。

 この山内名誉教授の御指摘を踏まえ、憲法解釈の限界と憲法九十六条の射程に関して、枝野提出者、北側提出者の御見解を改めて伺います。

枝野議員 今の大学の先生の御意見というのは私は初めてお聞きをするのですけれども、では逆に言うと、国会で抽象的に三分の二の賛成があり、国民投票はしないのでしょうから、何となく世論調査で半分賛成していれば解釈を勝手に変えていいのかということになると、基本的には、憲法に限らず、法令解釈というのは文理、文言と論理で組み立てられなければならない世界です。

 したがって、法令解釈の限界、つまり憲法における憲法解釈変更の限界というのは、あくまでも従来の解釈あるいは文言との論理的整合性がとれるのかどうか。論理的整合性がとれる範囲であれば解釈変更の余地はあるし、一義的には行政権がどうするのか、行政権に権限があると思いますけれども、論理的整合性を超えるようなことは許されない、こちらに一元化されて説明されるべきではないだろうかと私は考えます。

北側議員 今の枝野提出者の意見と同意見でございます。

 日本というのは法治国家、法の支配のもとに我々の行政等もあるわけでございます。したがって、法の解釈には一定の幅がありますが、やはりその幅を超える限界というのも一方であるわけでございまして、幾ら政策的な必要性があったにせよ、その限界を超えるような場合には法改正をしなければならない。これは、法治国家として当然の話だと私は思います。

 問題は、その幅の中におさまっているのかどうか。そこは、今、枝野さんがおっしゃったように、従来の見解との論理的な整合性、さらには法的安定性がちゃんと保たれているのかどうか。さらには、仮にそういう論理的な整合性等があるとして、これまでの解釈を見直した場合に、その見直したところが基準が明確かどうか、また、残された法というのは改正をしていないわけですから、その法規範そのものが規範性をちゃんと持っているのかどうか、そこが問われていくことになるんだろうというふうに思っています。一般論でございます。

吉川(元)議員 まさに論理的整合性というのは問われるだろうというふうに思いますし、集団的自衛権の問題に関して言いますと、少なくとも、これまでに積み上げられてきた解釈から百八十度変更する、解釈を変えるということは、これは法の支配、総理はよく法の支配ということを、ヨーロッパの方でも強調されたようですけれども、明らかに反することではないかというふうにも考えます。

 時間がもうありませんので、最後に申し上げます。

 最高法規たる憲法の改正手続が、政治的に翻弄、いわば愚弄されているというふうに言わざるを得ません。安倍内閣の解釈改憲のたくらみとあわせて、憲法の最高法規性が危機に瀕しているとも言わざるを得ないと思っております。

 もとより、改憲が急がれる事情がたとえあったとしても、拙速な手続整備が正当化されるということはありませんし、世論等を見ましても、改憲を急ぐべき状況あるいは急がす世論もないという中では、なおさら、立法意思を無視して解けていない宿題を解いたことにする、これは非常に乱暴なことで、許されるものではないというふうにも思っております。

 手続をないがしろにしては民主主義を崩壊の危機に陥れてしまうのではないかとも危惧をしております。そして、改憲をしたいがためのびほう策に国会が加担するようでは、国権の最高機関としての地位をみずから捨て去るようなことにもつながる、そう強く警告をいたしたいと思います。

 社民党は国民投票法改正案に断固反対であり、本法は廃止をし、政治的思惑を離れて議論をやり直すべきであると申し上げまして、私の質問を終わります。

 本日はありがとうございました。

保利会長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

保利会長 それでは、速記を起こしてください。

    ―――――――――――――

保利会長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。笠井亮君。

笠井委員 私は、日本共産党を代表して、改憲手続法改定案に反対の討論を行います。

 国の最高法規である憲法改定にかかわる法律改定に当たっては、現行法の問題点も含め、賛否を超えて徹底した審議こそ必要です。参考人質疑でも、これを強く求める意見が表明されました。にもかかわらず、わずか四日間の質疑で採決を強行するなど、到底許されません。断固抗議するものです。

 そもそも改憲手続法は、二〇〇七年五月、第一次安倍内閣のもとで、自公両党が国民の反対を押し切って強行成立させた法律であります。我が党は、その目的は九条改憲の条件づくりにあり、内容上も不公正で反民主的なものだとして、強く反対しました。

 その改定案に反対する理由の第一は、今日、安倍内閣が、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認への動きを強める一方、明文改憲についても、その条件づくりと国民の中での改憲に向けた「世論づくり」を図るものだからであります。

 この間の世論調査の結果が明確に示すように、国民の多数は解釈改憲も明文改憲も望んでいません。手続法の改定は、国民の要求から出たものでないことは明らかです。

 第二は、現行法が義務づけている選挙権年齢等の十八歳への引き下げ等を棚上げし、投票権年齢だけを確定して、ともかく憲法改定の国民投票ができるようにしようとしているからであります。

 手続法制定時、自公両党は、選挙権年齢等の十八歳への引き下げについて、投票権年齢を十八歳にする大前提、最低限の条件と答弁していたのであります。本改定案は、この立法者の意思にも真っ向から反するものと言わなければなりません。

 第三は、公務員による国民投票運動をさらに広範囲に制限することによって、主権者国民の自由な意見表明や国民投票運動を一層妨げるものとなっているからです。

 裁判官等の四職種の国民投票運動を禁止対象とすることは、手続法の審議経過さえ無視し、逆行するものです。公務員による組織を使って行う国民投票運動に規制を加える検討条項を新設したことも看過できません。

 最後に、法制定時に大きな論点だった「最低投票率制度の意義・是非について検討」などを定めた参議院での十八項目の附帯決議についても、一顧だにされていません。

 国民が求めておらず、欠陥だらけの改憲手続法は、改定ではなく廃止すべきことを断固として求め、反対討論とします。

保利会長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

保利会長 これより採決に入ります。

 船田元君外七名提出、日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

保利会長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

保利会長 ただいま議決いたしました本案に対し、中谷元君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党、みんなの党、結いの党及び生活の党の七会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。武正公一君。

武正委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

 一 選挙権を有する者の年齢については、民法で定める成年年齢に先行してこの法律の施行後二年以内を目途に、年齢満十八年以上の者が国政選挙等に参加することができることとなるよう、必要な法制上の措置を講ずること。

 二 政府は、国民投票の投票権を有する者の年齢、選挙権を有する者の年齢、成年年齢等が「満十八年以上」に引き下げられることを踏まえ、国民に対する周知啓発その他必要な措置を講ずるものとすること。

 三 政府は、遅くともこの法律の施行の四年後には年齢満十八年以上の者が憲法改正国民投票の投票権を有することとなることに鑑み、学校教育における憲法教育等の充実を図ること。

 四 公務員等及び教育者の地位利用による国民投票運動の禁止規定の違反に対し罰則を設けることの是非については、今後の検討課題とすること。

 五 地方公務員の政治的行為について国家公務員と同様の規制とすることについては、各党の担当部局に引き継ぐものとすること。

 六 政府は、この法律の施行に当たり、国民投票運動を行う公務員に萎縮的効果を与えることとならないよう、配慮を行うこと。

 七 憲法改正国民投票以外の国民投票については、この法律の附則第五項の規定を踏まえ、国会の発議手続、国民投票の手続、効力等に関し、本憲法審査会において検討し、結論を得るよう努めること。

  右決議する。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

保利会長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

保利会長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。新藤総務大臣。

新藤国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

保利会長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する憲法審査会報告書の作成につきましては、会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

保利会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

保利会長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十四分散会


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