衆議院

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第3号 平成23年12月8日(木曜日)

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平成二十三年十二月八日(木曜日)

    午後二時三十分開議

    ―――――――――――――

 出席両院合同協議会委員

  衆議院

   会長 小平 忠正君

   幹事 松野 頼久君 幹事 山井 和則君

   幹事 笠  浩史君 幹事 川内 博史君

   幹事 塩崎 恭久君 幹事 佐藤  勉君

   幹事 遠藤 乙彦君

      田名部匡代君    糸川 正晃君

      鷲尾英一郎君    太田 和美君

      高木  毅君    佐々木憲昭君

      服部 良一君

  参議院

   会長代理 鶴保 庸介君

   幹事 榛葉賀津也君 幹事 松井 孝治君

   幹事 川崎  稔君 幹事 松山 政司君

   幹事 義家 弘介君 幹事 長沢 広明君

   幹事 水野 賢一君

      川合 孝典君    藤本 祐司君

      相原久美子君    中谷 智司君

      徳永 エリ君    岩城 光英君

      山崎  力君

    …………………………………

   衆議院議員        田中 康夫君

   参議院議員        荒井 広幸君

   東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員長   黒川  清君

   東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員    石橋 克彦君

   東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員    大島 賢三君

   東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員    崎山比早子君

   東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員    櫻井 正史君

   東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員    田中 耕一君

   東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員    田中 三彦君

   東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員    野村 修也君

   東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員    蜂須賀禮子君

   東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員    横山 禎徳君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月一日

 辞任         補欠選任

  横峯 良郎君     水戸 将史君

  岩城 光英君     磯崎 仁彦君

  山崎  力君     石井 浩郎君

同月二日

 辞任         補欠選任

  松井 孝治君     徳永 エリ君

同月五日

 辞任         補欠選任

  徳永 エリ君     松井 孝治君

  水戸 将史君     大石 尚子君

同月六日

 辞任         補欠選任

  大石 尚子君     水戸 将史君

  松井 孝治君     徳永 エリ君

  長沢 広明君     草川 昭三君

同月七日

 辞任         補欠選任

  藤原 良信君     松井 孝治君

  水戸 将史君     中谷 智司君

  草川 昭三君     長沢 広明君

同月八日

 辞任         補欠選任

  松井 孝治君     藤原 良信君

  石井 浩郎君     山崎  力君

  磯崎 仁彦君     岩城 光英君

同月六日

 幹事松井孝治君同月二日委員辞任につき、その補欠として松井孝治君が会長の指名で幹事に選任された。

同月八日

 幹事松井孝治君及び長沢広明君同月六日委員辞任につき、その補欠として松井孝治君及び長沢広明君が会長の指名で幹事に選任された。

同月六日

 委員外議員中島正純君が辞任した。

同日

 委員外議員田中康夫君を選任した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員長及び同委員就任挨拶並びに各党からの発言


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     ――――◇―――――

会長(小平忠正君) これより会議を開きます。

 本日は、先ほど両院議長より正式に任命されました東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員長及び同委員の方々に御出席をいただいております。

 私は、本両院議運合同協議会の会長を務めております小平忠正でございます。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 このたび、大変御多忙な皆様方に東京電力福島原子力発電所事故調査委員会委員長及び委員の要職をお引き受けいただきましたことに、本協議会を代表して厚く御礼申し上げます。

 御承知のとおり、福島原子力発電所事故は、我が国のみならず、世界にとって未曾有の原子力災害であり、今もなお多くの方々が避難を余儀なくされております。早急な事故の収束とともに、事故原因を究明し、原発事故防止、被害軽減のための対策を樹立することは、我が国が取り組むべき喫緊の課題であり、それは、被災した方々を初めとした国民に対する、そして国際社会に対する我が国の責任でもあります。

 そのために、国会におきましても、憲政史上初めて、国会議員以外の有識者から成る第三者機関として、事故調査委員会を設けることを全会一致で決定した次第であります。

 両院合同協議会におきましては、専門分野のバランスを考慮しつつ、各分野において最も適任の皆様方を委員長及び委員に推薦させていただきました。

 皆様方に、これから半年を目途に調査に取り組んでいただくに当たり、私から、協議会を代表して、事故調査委員会に対する各党共通の思いを述べさせていただきます。

 まず初めに、事故調査委員会法等成立時に、両院それぞれの議院運営委員会におきまして三項目の申し合わせをいたしました。

 その内容は、国会が国権の最高機関として、超党派的な見地から原発事故の原因究明等を行うことを目的とするものであることにかんがみ、第一に、両院の所属議員においては、党派的な立場から、事故調査委員会を政治的に利用し、またはこれに政治的な影響を与えてはならないこと、第二に、事故調査委員会におかれましても、与えられた使命の重大さにかんがみ、客観的な原因等の究明に努めるとともに、その調査活動の遂行に当たっては、いささかも政治的中立性に欠けるとの疑念を持たれることのないよう留意していただくこと、第三に、事故調査委員会が参考人その他の調査対象者から意見を聴取するに際しては、参考人等の置かれている立場、職務等に十分に配慮し、調査の態様及び頻度等に留意していただくこと、以上の三点であります。

 次に、両院議運合同協議会幹事会において、事故調査委員会設置に当たっての基本的考え方について合意をいたしました。

 その内容は六項目にわたりますが、第一に、専門家による冷静、客観的かつ科学的な、独立した徹底検証をお願いしたいということであります。

 脱原発か原発推進かという結論ありきではなく、政府、関連業界、政治から独立した事故原因の客観的、科学的徹底糾明を通じ、事故に至る経緯及び原発のリスクとコスト、すなわち安全性と経済性の厳正な検証を行い、今後の我が国並びに世界の原子力政策のあり方に関する真剣な論議に資する報告を期待いたします。

 第二に、目的に沿った委員会の公開をお願いいたします。

 今回の目的の一つは、これまでとかく秘密主義、隠ぺい体質が指摘されてきた原子力の分野について、国民の代表たる立法府が国民の知る権利にこたえることであります。したがって、徹底的な情報公開を原則としていただきたいと存じます。ただし、究極の目的は、事故原因の究明と真相究明ですので、かかる目的を害することのないよう、公開方法、公開の是非について、本調査の目的に沿った判断を行っていただきたいと存じます。

 第三に、世界的視野に立つことを重視していただきたいと存じます。

 原発事故の問題は一国に限られるものではなく、世界全体の課題であり、スリーマイルやチェルノブイリ事故等の教訓を十分に参考にする必要があります。また、世界には四百四十基以上の原発があり、福島事故の真相解明は我が国の世界への責任であります。片や老朽化した原発が多数存在するとともに、新興国を中心に多くの原発の建設が予定されており、一たび原発事故があればその影響は一国にとどまるものではありません。世界全体として原発事故の再発防止のため、人類益の視点から調査に取り組むことが必要であります。

 第四に、人間の安全保障を重視した調査をお願いいたします。

 従来、原子力安全というと、原子炉の構造上の安全性に重点が置かれておりましたが、守るべきは人間の健康、安全と環境であります。とりわけ、チェルノブイリや福島の事故を通じて、低線量の放射線被曝が中長期的に人間の生命、健康に及ぼす影響が極めて重要であり、医学、生理学の最新の知見を踏まえつつ、人間の生命と健康を守る視点からの調査に注力することが肝要であります。

 第五に、地震大国、津波大国における原発という視点からの調査をお願いします。

 我が国は世界でも有数の地震大国、津波大国であることが、今回の事故でも改めて再確認されました。この点についても、地震学、津波学の最新の知見を踏まえた上での原発のあり方についての調査が必要であります。

 第六に、提言に富んだ未来志向の調査をお願いいたします。

 今回の、民間による委員会が国会のもとに設置をされ、独立した調査を行うという史上初の試みが、我が国の国会による行政の監視機能の充実強化に資するのみならず、日本の三権分立における国会の役割を再認識する契機ともなることにかんがみ、提言型かつ未来志向の調査を行うことを期待いたします。

 以上、本協議会を代表して、各党合意による共通の思いを述べさせていただきました。

 本日は、この後、皆様方から就任のごあいさつをちょうだいした後、各党の代表議員から発言を行いますが、各党が事故調査委員会に対して抱いている期待や要望、思いなどをお伝えさせていただく最初で最後の貴重な機会となろうかと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 以上であります。ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

会長(小平忠正君) それでは、本日の議事の順序について申し上げます。

 まず、委員長及び委員の方々に就任あいさつをいただき、次に、各党から発言を行い、その後、各党の発言を受けて、再度、委員長から御発言をいただきたいと存じます。

 なお、発言する際は会長の許可を受けることになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。また、各党発言者は発言時間を厳守されますよう、よろしくお願い申し上げます。

 それでは、委員長及び委員の就任あいさつをいただきます。

 まず、黒川清委員長にお願いいたします。黒川清委員長。

黒川清君 小平会長、このような本当に憲政史上初めてという重責でありまして、六つの点を強調されました。これにこたえるべく、私どもも、割合最近にこれを言われたことですので、やり方、それから組織のあり方その他、新しく知恵を絞らなくてはならないところがあるので、非常に苦慮しております。

 ですが、この委員会全体としては、私なりの考えからいえば、一つ、国民、二つ目、未来、三つ目、世界という視点で、大きく考えてみたいと思います。

 一つ、この使命は第一に、国民による事故調査ということです。国民から選ばれた国会がしたということは、国民に負託された先生方に負託された、国民の国民による国民のための調査という心づもりでおります。

 二番目は未来でございます。そういう意味では、未来ということについては、もちろん負託されたところにもありますが、過去を知らずに未来は語れないということでありまして、未来は過去を学んだ上の現在から将来を見据えた提言でなければいけないと思っております。そのためには、国会の今度の調査の負託その他に、今までの行政とは全く違った、政府、行政あるいは業界あるいはその他とは全く独立した責務があると認識しております。

 三番目の世界という意味でございますけれども、今グローバルな世の中で、日本は少なくとも先進国の一つ、しかも経済大国であったという歴史からいえば、どういうプロセスでこのような政策が出てきて、どうしていわゆる原発安全神話のようなことが出てきたのかということはもちろんですけれども、このようなことはこれからも起こり得ることであります。世界でこれだけありますし、新しくつくられます。

 ということは、今回の、四十年前にできたこともそうですけれども、歴史を振り返りながら、どこにどういう問題があったのか、さらに、その被害をどのようにこれから調べていくかということによって、これから世界に起こり得る、新しい原発にしても、よりよい設計、よりよいデザイン、よりよい材料、いろいろな知恵があると思いますね。

 それから、日本に万一起きたときに、どういう対策をするのか、どういう行動をするのか、コンティンジェンシープランは一体何なのか、それと、放射能の実際に被害が起きたときにはどういうことをするのかというのを、やはりこれからの世界の中と共有する。透明性を持って共有することによって日本の国家としての信頼をかち取っていくということが非常に大事で、それによって世界の英知を結集しつつ、原子力がよそでもいろいろ建てられると思いますけれども、そのときには、よりよい、より安全で、もし何か起きたときにはどういうことをすればいいかという世界の英知を結集する基盤にさせていただきたいと思っております。

 そういう意味では、今回の意見は、このようなプロセスが立ち上がったこと自身が立法府が機能したというふうに私は認識しております。ぜひ先生方の期待に沿えるよう、委員一同力を合わせて、例えて言えば、スリーマイルアイランドのあのときはアメリカはどういうことをしたのか、ナイン・イレブンの後にはアメリカはどうしたのか、今度のブリティッシュ・ペトロリアムのときはアメリカ、イギリスは何をしているのか、狂牛病のときは何をしているかという世界的な意味のあることについては常にこういう委員会ができておりますので、そういうことが世界から期待されているというのは間違いないことですので、そのような負託にもこたえるように、皆さんで相談しながら答えを出していきたいと思っております。

 ありがとうございました。(拍手)

会長(小平忠正君) ありがとうございました。

 次に、石橋克彦委員。

石橋克彦君 石橋と申します。

 私は地震の研究者として、地震列島日本の原子力発電所はいずれどこかで大地震、津波で大変なことが起こるのではないかということをずっと懸念しておりましたから、今回の事故はもう本当に痛恨のきわみであります。ですが、今回図らずもこの委員会の委員を仰せつかりまして、日本の全原子力発電所はもちろんのこと、全世界の原子力発電所で二度とこのようなことが起こらないように、微力ではありますけれども、委員長を初めほかの委員の方々と力を合わせて、その耐震安全性に関して世界じゅうの大きな参考あるいは教訓になるような結果を出していくよう努力したいと思っております。

 特に私の専門でいいますと、三月十一日十四時四十六分から約一時間の間に福島第一原子力発電所で本当のところ何が起こったのか。これはまだ、明らかにされていない重要なことがあると思います。それから、その直前のプラントの地震、津波に対する強さというものがどうであったのか。恐らくここに問題があったと思いますが、それのよって来るところは過去のかなり長い経緯を持っているわけですので、そこのところも長いタイムスパンでもって見る。もちろん予断を許さず、あらゆる可能性を排除しないで、そこのところを明らかにするべく努力していきたいと思っております。

 どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

会長(小平忠正君) ありがとうございました。

 次に、大島賢三委員。

大島賢三君 委員を拝命いたしました大島でございます。

 福島第一原発事故は、事故の規模、それからその影響の甚大さからいいまして、日本国内はもとより世界じゅうから、その真相究明、それから再発を防ぐにはどうしたらいいかということで注目をされております。また、この事故調査委員会は、この種の試みとしては我が国では初めてのことというふうに承知いたしております。このような事故調査委員会の委員の一人を務めることになりまして、任務の重大さ、責任の重さというものをひしひしと感じているところであります。

 私自身がなぜこの委員の一人に選ばれたかよくわかりませんけれども、私自身は、直接、原子力発電所とか放射能汚染といった問題について、特に専門知識とか深い知見があるわけではありませんけれども、あえて申し上げれば、二点、ひっかかりがあったのかなというふうに思っております。

 一つは、私は外務省のOBでございますけれども、今世紀初め、国連事務局に出向いたしまして、二年半ほど、当時、コフィ・アナン国連事務総長のもとで人道問題担当という仕事をしました。その任務の一部に、チェルノブイル原発事故の被災者に対します国際的な人道支援、これを国連本部のもとで調整していくという役目をいたしたわけでございまして、この関連で、ロシア、ベラルーシ、ウクライナの政府当局とのコンタクトも幾つかありましたし、現地も訪問したりした、こういうことがございました。

 それからもう一つの関連は、私は広島市の出身でございます。広島県と広島市が中心になって組織し活動しておりますものにHICAREという組織がございまして、このHICAREは略称であります。名前が少々長いんですけれども、放射線被曝者医療国際協力推進協議会、こういう組織がございまして、原爆被爆者の医療支援、特に海外に在住の被爆者に対する医療支援活動を行ってきている組織でございまして、私は地元出身でもあるということで、この理事を務めさせていただいております。このHICAREは、最近、ウィーンに本部のあります国際原子力機関、IAEAとも協力関係を結ぶなど活動を広げている、こういうこともございます。

 こういった多少の経験を踏まえまして、この調査委員会の仕事に取り組んでまいりたいと思っております。私個人としては非常に荷が重過ぎるというのが正直な感想でございますけれども、委員に就任することになった以上は、しっかりと役目を果たしていけるように全力で取り組みたいと思います。

 この調査委員会がつくることになります報告書は、客観性、科学性、専門性というものにしっかり裏打ちされて、世界的にも信頼性の高いものであるべきだというふうに思います。そういう信頼性の高い調査報告をつくることによって後世に残るような仕事をするということが、この調査委員会に課せられた任務であろうというふうに思います。

 黒川委員長のもとで、他の委員の皆様方とも協力しながら、しっかり取り組んでまいりたいと思います。

 どうかよろしくお願いいたします。(拍手)

会長(小平忠正君) ありがとうございました。

 次に、崎山比早子委員。

崎山比早子君 崎山です。よろしくお願いいたします。

 私は、放射線医学という立場からこの委員にならせていただきました。

 事故原因ということよりは、健康影響というのはこれからの問題ですので、どの程度の放射能がどのように放出されて拡散していったのか、そういうことをきちっと、データが出ておりませんので、そういう正確なデータを出していただいて、それに基づいて、どういうことがこれから起こるのかということを想定する、そして、被曝された皆さんがこれからどうなるかというようなことも、チェルノブイリとか今までの被曝者の健康調査をいろいろ見て、その予防ができるような対策をとるということが一番大切ではないかと思います。

 それで、今の健康調査というのがあれで本当にいいのかどうか、県民の皆さんの信頼を得ていないような感じで健康調査がなされているというのは、これからはどうなのかということ、最善の方法を使って、皆さんの健康が障害されないようにどうしたらいいかということを考えるのが一番大切じゃないかと思います。

 よろしくお願いいたします。(拍手)

会長(小平忠正君) ありがとうございました。

 次に、櫻井正史委員。

櫻井正史君 ただいま委員を拝命しました櫻井でございます。

 この会議に参加いたしまして、自分の責任の重さというものを改めてひしひしと感じているところでございます。

 私は、科学ではなくて、経歴でおわかりのとおり、法律の世界で生きてきた者でございます。その意味では、国会に初めて設置されたこの委員会の重要性、その役割ということについてはよくわかっているつもりでおります。そのことについて常に頭に置きながら、これから調査に当たっていきたいと思います。

 その点に関しまして、私の分野で二点だけ、この機会に話させていただきますと、一つは、私の経歴のように、私は、事実の認定ということをずっとこれまで仕事としてやってまいりました。評価の前に事実の認定が狂ってしまっては仕方がない、それは検察もそうですし、防衛監察もそうでございました。その点に常に冷静な目で、それをやっていきたいということが第一点でございます。

 もう一つは、安心、安全ということ、あるいは安全、安心ということがよく言われます。安全というのは、今回の事故に関して言えば、どちらかというと科学的な分析、技術的な問題が大きいのではないかと思います。しかし、安心という面になりますと、それだけでは済みません。世界を含めた人々の気持ち、心の問題が十分入ってくるわけでありまして、安全だけではなくて安心にも配慮しない限り、人々の生活、社会活動、日本でも、国際的にもこれは機能しないのではないかと思っております。

 私は、冒頭申し上げましたように、科学についての知見はほとんどありません。しかし、そのような部分においてできる限りの努力をいたしまして、世界に向けての安心、安全というものが発信できるように努力する所存でございます。

 それぞれ専門の方が委員その他たくさんおられますので、このような方々と共同しまして立派な仕事ができたらありがたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

 どうもありがとうございました。(拍手)

会長(小平忠正君) ありがとうございました。

 次に、田中耕一委員。

田中耕一君 田中耕一です。よろしくお願いいたします。

 私の専門は分析、計測で、原子力ではありません。ただし、この原発事故によって引き起こされたその問題点、それを解決、解析するためには、さまざまな学術あるいは技術を総動員して当たらなければならないことだと考えております。

 この委員会の目的というものを読ませていただきましたら、事故の経緯、原因を究明し、そして改善提案を行うと述べられております。とりわけ改善提案に関しましては、事故に伴い発生する被害の軽減のため講ずべき施策または措置について提言を行うこと、そういった目的を示されております。

 私を含め国民が最も不安に感じていることといえば、多分、がんになるリスク、それが増大する、そういったことと考えられます。私自身、今、国のプロジェクトで、創薬、診断への貢献を目指しておりますし、私あるいは私の周りの人間が行えることはそんなに大きくなく限られておりますが、日本の国内あるいは世界の方々がそういったがんをできる限り撲滅したい、がんになっても安心して構わない、そういうことが一生懸命行われておりますので、そういった方々の、何が今できるか、あるいは将来何ができそうかといった、将来に向けて希望が持てるような何か提言をできればというふうに考えております。

 よろしくお願いいたします。(拍手)

会長(小平忠正君) ありがとうございました。

 次に、田中三彦委員。

田中三彦君 田中三彦と申します。

 私に求められている役割というのは恐らく、先ほど石橋先生がおっしゃっていたように、三月の十一日の地震発生、午後二時四十六分から水素爆発に至るまで、あるいは二号機の場合はそれが起きたのか起きなかったのかとか、そこら辺の事故のプロセス、どういうことをきっかけにしてどういうことが中で起きたのかということを主に明らかにしていければいいのかなというふうに考えております。

 現在のところ、政府のIAEAへの中間報告書あるいは先日出ました東京電力の中間報告書、事故後の報告書を読みますと、地震という問題についてはそう大きいものではなかったというふうに断定をしております。ただ、私の方から見ると、それはほとんど科学的な裏づけのないものです。私自身は、予断を持つわけではありませんが、地震とあるいは津波ということで、今後の日本の原発の安全性の問題に対する対策あるいは考え方等が根本的に変わるだろうというふうに思っております。

 その辺を予断のないところで、それから合理的に、できるだけ冷静に考えていこうと思いますが、何しろ相手は、真実というのはやみの中といいますか、原子炉格納容器の中にあります。あそこは当面、かなり長い期間、人もロボットもカメラも入らない、そういう空間です。そこで何かが起きたということをデータだけから、外回りからいろいろ推測していかなければなりません。

 したがって、かなり時間のかかることかと思いますけれども、これまで出ている報告書なども参考にしながら、できるだけよい、客観的な報告書を書くように努めていきたいというふうに思っております。

 よろしくお願いいたします。(拍手)

会長(小平忠正君) ありがとうございました。

 次に、野村修也委員。

野村修也君 このたび委員を拝命いたしました中央大学法科大学院の野村でございます。

 私は、専門は会社法という分野でございまして、コーポレートガバナンスに関する研究をさせていただいております。

 そういう関係で、これまでも弁護士としても、企業の不祥事などさまざま調査をさせていただいたという経験を持っております。さらには、役所の方からさまざまな職員の不祥事などについての調査をさせていただいたり、あるいは最近では年金記録問題につきましての調査などをさせていただいた経験を持っております。

 そのときに感じましたのは、やはり役所から依頼されたり、あるいは政府から依頼されますと、どうしても踏み込んで調査をすることのできない部分があるということを痛感してきたわけでございます。

 今回、このような形で国会のもとに調査委員会ができたということを私自身の中で考えますに、私も法律家の一人としまして、この画期的な意味というのは、私ども国民がみずから調査をしているんだというところにあるんだろうというふうに考えております。国民であれば、やはり知りたいことはすべて知る権利があるということに立脚しつつ、しかるに、国民一人一人ではみずから調査をすることができませんので、その負託を受けて、また国会議員の皆様方のお持ちになっておられます国政調査権というのをフルに活用させていただきながら、真実の究明に当たらせていただければというふうに考えております。

 やはり国民の信頼を獲得すること、さらには世界の信頼を獲得すること、これが私どもに与えられているミッションだというふうに思っておりますので、ごらんのとおりの若輩でございますし、非力ではございますけれども、黒川委員長のもと、精いっぱい努力したいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)

会長(小平忠正君) ありがとうございました。

 次に、蜂須賀禮子委員。

蜂須賀禮子君 福島県大熊町は、原子力の一、二、三、四を持っております。私のうちは、原子力発電所から四・三キロ、五キロ圏内であります。

 本日、こういうふうな重大な委員に任命されまして、本当に私でいいのかなと思いながらここに参りました。

 しかしながら、今、私は会津若松の方に避難をし、そして仮設に住んでおります。この声を福島県の代表として、そして、大熊町はもちろん、日本のこういうふうに苦しんでいる人たちの声を先生方にお届けするのが私の責任かなと思いまして、微力ながらもこの場に立たせていただきました。

 これからは、国が隠していること、東京電力が隠していること、そして、私が三月十二日の朝、避難してから、報道されて、その違い、何でテレビはうそをつくんだろう、そういうふうな思いをしながら、八カ月、九カ月避難をしてきました。それを、委員長初め委員の皆様に現実を知っていただきながら、本当のことを調べていただきたいと思います。そして、調べていきたいと思います。

 これからもどうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

会長(小平忠正君) ありがとうございました。

 次に、横山禎徳委員。

横山禎徳君 横山でございます。

 私は、この委員会の委員を拝命しまして、極めて感慨深いものがございます。

 と申しますのは、私も大島さんと同じ広島の出身でございまして、二歳と十カ月のときに原爆を経験しています。幸い、私は二十キロ離れたところにおりましたが、私どもの家は爆心地から二・五キロというところでございまして、その後、戦後のいろいろな、まあいろいろなお話があるわけですが、それを経験してきた。このたび図らずも福島の原発の事故調査ということで、感慨深いものがございます。

 私はどういうことをやってきたかということをざっとお話しして、何ができるのかを考えたいと思います。

 私は、もともと建築家としてスタートし、それから経営コンサルティングという世界で、戦略を立案しそれを実施する体制をつくるということを長年やり、その後は、建築のようにさわれて見えるものではなく、さわれなくて見えないものを設計する、すなわち運営システムを設計するというのが社会システムデザインでございます。社会システムというのは、世の中が縦割りであるところに横ぐしを通して、生活者、消費者に価値を提供する仕組みは何なのか、そういう形で統合を考える職能だと私が定義しております。というのは、世の中にそれほど社会システムデザイナーと称しておられる方はおられませんので。

 そういう観点からしますと、いろいろな議論がされてきておりますが、建築家から見ると非常に不思議だなと思うことが幾つかあるんですが、それについての議論は余りされていない。そういう観点も持ち込めるのではないかと思いますし、やはり部分部分の突っ込みも大事ですが、それを全体として統合して何が言えるのか。事故の経験を生かして今後どうするのかというのは、新しい運営の仕組みを組み立てるということが必要であると思いますので、そういうことにも力を注ぎたいと思っております。

 それから、そこの中に東大EMPの企画、推進と書いてございますが、これは、世の中が非常にわかりにくくなって、自分の経験の範囲内でないことがたくさん出てきて、みんなそういうことに直面する、そのときにどうやって本質をつかむのかということを考えたいということで、プログラムをつくり、日夜努力しておりますので、それやこれやの雑多な経験ではございますけれども、それを統合して最終的な成果に結びつけたいと思っております。

 よろしくお願いします。(拍手)

会長(小平忠正君) ありがとうございました。

    ―――――――――――――

会長(小平忠正君) 次に、各党から発言を求められておりますので、順次これを許します。民主党・新緑風会松井孝治君。

松井孝治君 民主党所属の参議院議員の松井孝治でございます。

 本日は、会派を代表して意見を述べさせていただきたいと思います。

 最初に、黒川委員長初め十人の委員の先生方、本当に御多忙にもかかわらずこの要職をお引き受けいただきまして、まことにありがとうございました。

 先ほど、会長の方から、両院の議院運営委員会での申し合わせ事項あるいは当協議会での基本的な考え方、御説明があったところですから、そこは繰り返しません。しかし、私どもから申し上げましても、これは、国会の中で、今までの憲政史上で初めて、しかも両院の全会派が一致して、全会一致で設置された調査委員会でございます。その独立性、公平性、非常に期待が大きいものがございます。どうぞ、先生方、半年という限られた時間、大変お忙しい中でございますが、よろしく御調査をお願いしたいと存じます。

 その上で、少し具体的に申し上げさせていただきたいと思います。

 今、なぜ震災から九カ月近くたった今日において国会が調査をしなければいけないのか、もう委員長が先ほどおっしゃったとおりだと思います。既に政府は調査を始めています。電力事業者も事故検証を開始しております。しかし、やはりここは国権の最高機関として、国民を代表する視点で、独立の立場で調査をしっかりお願いしたい。先ほども委員の方からお話がございましたが、国政調査権、その裏打ちを持って我々はこの独立の委員会の調査をサポートしていきたい、そのように考えております。

 私ども国会議員一人一人といたしましても、憲政史上初めてのこの本格的な調査というのは、真の意味での国会の機能強化につながる挑戦であるとともに、被災され、今なお苦しんでおられる被災地の方々、その他の方々、国民の皆さんに対する国会としての責務であると考えておりますので、先ほど先生方から、それぞれの専門的な知見に基づいて、なおかつこの調査委員会に対する強い思いを御表明いただいたわけでありますが、ぜひとも我々として全力でそれをサポートさせていただきたい、そのことを申し上げます。

 そうした意味でも、重要なのは、独立かつ専門性の高い調査体制をどう確立するかということだと思います。本日任命されました委員長、委員の皆様方におかれては、短期間で厳正中立的な専門調査を遂行する、そのためにも、先生方の調査を補佐、支援できる専門スタッフを、専門員という形になるのか、あるいは事務局の調査スタッフという形になるのかわかりませんが、幅広く委員会で登用いただきたい。そのために必要な我々としての環境整備というものは、これは党派を超えて弾力的にさせていただきたいと思います。

 事故の調査に与野党の区別がないということは、先ほど会長からおっしゃったとおりであります。両院の議運委員会の申し合わせのとおり、政争の具とすることなく、その独立性を最大限尊重させていただくということは、私どもからも約束をさせていただきます。

 なお、今回の原発事故では、事業者や監督官庁を含めて、いわゆる原子力村の秘密主義や隠ぺい体質というものが広く指摘されています。この村社会的な関係の中で、ややもすれば二の次にされがちであった安全の文化や風土、また万が一のときに本当に機能する危機管理体制のあり方、これを抜本的に見直すような議論も行っていただきたいと思います。

 徹底した情報公開も必要です。会議は公開が原則でありますけれども、その方法は多様だと思います。公開での会議に加えて、必要な予備的会合についても、議事概要、議事録の公表や、国民のより多くの方々がアクセスしやすいような工夫をいただきたい。そのことは、当然のことながら、半年の限られた活動期間の中での準備的なヒアリング、インタビューを積み重ねることの重要性を否定するものではございませんし、そうした地道な活動が厳正な調査の基礎であることは言うまでもないと思います。

 今回の原発事故で、我が国の対応には国際的にもさまざまな疑問や批判が投げかけられました。その観点からも、この独立委員会が国際的な信頼回復のための事故の原因究明、真相解明を徹底的に行い、国際的に発信していただくことをお願いしたいと存じます。

 現在、世界で稼働中の原発は四百を超え、その中には老朽化したものも数多く存在します。事故の防止とともに、万一事故が発生しても、最新の医学や生理学の知見を踏まえて、人間の生命と健康を中長期的にも確実に守り、生態系への影響を最小限にする指針を見出すという貢献を通じて、事故後に援助をいただいた国際社会への答礼とすることができると考えます。

 先ほど委員長からありましたが、原発事故の問題は一国に限られる問題ではなくて、世界の英知、最新、最高の知見に基づいて徹底的な真相究明を行い、その教訓を人類全体で共有すべきであります。そのためには、海外の有識者も積極的に招聘いただくのも一案ですし、また、必要であれば、委員の皆様方で海外にも、実際に実地調査といいましょうか、そういった海外調査も行っていただきたいと思います。

 この委員会のミッションは、法律の第十条の各号に書いてあります。時間の関係でその各号を申し上げることは差し控えさせていただきますけれども、厳正な調査とともに提言もしっかりと行っていただきたいと思います。政府や関係事業者から完全に独立したこの調査委員会だからこそできる、真摯で本格的な検証をお願いしたいと思います。

 各先生方におかれましては、それぞれの専門分野での知見ということに基づく調査に加えて、そのそれぞれの御専門を超えられて、高い、ある意味では科学的なコモンセンスあるいはそれぞれの良識に基づいた総合的な御議論を行っていただきたいと思います。

 結びに申し上げたいのは、こうした調査を独立の立場で国会が行うのは憲政史上初めてのことであります。その意味で、今回の調査で原発事故の徹底的な原因究明あるいは提言というものを行っていただくとともに、立法府の抜本的な調査機能の強化につながる大きな弾みとなるプロジェクトにしていただかなければならないと思います。

 委員の皆様のこれからの調査活動、大いなる期待を表明いたしますとともに、民主党としても、また各会派を超えて、その使命の遂行のために微力ながら全力でもって御支援を申し上げることをお誓い申し上げて、私からの意見表明とさせていただきます。

 ありがとうございます。(拍手)

会長(小平忠正君) 自由民主党・無所属の会塩崎恭久君。

塩崎恭久君 自由民主党の塩崎恭久でございます。

 今回、こうして超多忙の先生方が私どもの調査委員会に任命されて、これから調査が始まるということで大変感無量の思いであります。また、特に蜂須賀さんにおかれましては、いまだに会津若松に避難が続いている中で、こうして地元の御苦労されている皆様方の声を代表しておいでいただくことになりました。我々も大変ありがたく思っているところでございます。

 もう既にいろいろ、会長からも、また同僚議員からもお話がありましたが、この議員立法の提案者の一人として、最初からかかわってきた者の一人として、この委員会の意味合いというものについてもう少しお話をさせていただきたいと思います。

 私は、この委員会は、いわば日本の新しい民主主義を形づくるものではないか、そしてまた国家の自浄機能を強化する試みじゃないかというふうに思っております。

 この委員会は、国家の失敗、政府の失敗、政府の監督を受ける電力会社の失敗、これを国民の代表たる立法府が真相解明をする、そして、国会議員によってではなくて、国会議員からお願いをした民間の専門家の皆さん方に、客観的、科学的にこの事故原因を徹底的に究明してもらって教訓を引っ張り出して、再発防止などの将来のための役に立てさせていただきたいというものでございます。そして大事なことは、政府からも、原子力業界からも、政治からも独立して調査をするということだろうと思います。あらゆる意味で、憲政史上初めての試みだというふうに思っております。

 振り返ってみれば、例えば薬害エイズあるいは金融バブル、こういった国家の大きな失敗が数々ありましたけれども、国家がみずから本格的な原因の検証、そしてまた教訓を導き出したということはやってこなかった日本であります。

 今回の深刻な事故を受けて、この真相究明の試みは、いわば今後の日本の新しい国の形をつくる、そういう大きな意味があるんじゃないかと思っております。したがって、地震から九カ月たとうとも、政府や民間の事故調査よりもおくれても、重要性はやはり大きいというふうに思っております。

 また、原発の安全神話、コスト安神話は完全に崩れました。ここは聖域なき調査が必要であります。当然、これまでの原子力政策の多くは自由民主党の政権下で導入をされたものでありますから、自民党も責任を負わなければならない。いわばお白州に出るつもりで、我々も調査の対象にならなければならないというふうに覚悟をしているところでございます。

 今回、重要な独立性でありますけれども、この独立性の確保のために、政府の審議会などの場合、関係省庁の官僚やあるいは関係業界のいわゆる御説明というものがよくあるわけでありますが、そういうものとか、あるいは党派的、政治的な圧力というものを排除するために、委員による利害関係者や国会議員との接触はすべて衆参議長に報告をされる、こういう報告用紙もちゃんと御用意をしておりますので、変な人が来たときにはすぐにこれに書いて、議長に届けていただくということになっております。これも全く初めてのことであります。

 また、委員の先生方には、政府の場合のような、いわゆる官僚のシナリオに乗っけられるというようなことはございません。民間人を中心に構成される事務局に置くみずからのスタッフとともに、そしてまた他のスタッフとともに委員会全体の独自の調査を行っていただく、それに基づいて議論を行って、参与なども含めて議論を行い、委員長を中心に独自に調査結果をまとめていただくということだと思います。

 今後、国会が、エネルギー戦略や原子力政策の新しい基本を決め、立法を行い、政府の原子力行政を監視するために資する有益な判断材料をぜひとも提供していただきたいと思います。

 同時に、世界は、今回の事故は日本だから起きたのか、それとも他の国でも起きるのか、原発は人間の手に負えるものなのかどうか、こういったことを、かたずをのんで調査結果を待っていると思います。ぜひ、我々の説明責任は、日本の国民に対してのみならず、世界に対しても負っているということを考えた上で御調査を願いたいと思います。

 本来は、この原因調査をしっかりやった上ですべてのことは考えなければいけなかったはずで、原発の再起動問題あるいは原発の輸出の問題も、本来は調査結果を待ってからの話かなと私は思っております。

 委員会の目的は、やはりまずはファクトファインディング。そのために私どもは、調査権を付与して、そして国政調査権も御用意をさせていただいております。NRCでも、やはり初動における詳細な時系列のデータが欲しい、こんなふうに言っておりました。

 そして、今回の委員会の使命は、特定の個人の根拠なき攻撃とかそういうことではないことはさっきお話があったとおりでありまして、やはりそういうことは排除するわけでありますけれども、一方で、責任ある立場の人がどういう行動をとって判断をしたのかということはやはり徹底的に調べてもらわなければいけないというふうに思っております。

 そして、調査結果に基づいて、教訓を私どもに調査結果として出していただきますが、もう既に国会で我々が決めてしまったこと、あるいは政府で決めてしまったことがあります。こういったことについては遠慮なく、その教訓から見たらおかしいときは、それはおかしいということをその提言の中で言っていただきたいと思います。

 最後になりますが、我々の原子力政策はどちらかというと、産業の保護とか、あるいは施設を守るとかいうのが原子力保安院の基本でありました。しかし、他の外国の規制当局の使命にありますように、それはやはり人間の安全と健康、自然環境を守る、そしてまた国家の安全保障を守る、これでなければいけないというふうに思っているわけで、特に放射能汚染を見てみれば、それが守られてこなかったことは明らかであります。

 したがって、今回の調査も、ぜひ人間を中心とした調査をやっていただいて、そのような教訓を出し、これからの日本の社会を新たにつくり直していきたいと思います。

 よろしくお願いいたします。(拍手)

会長(小平忠正君) 公明党遠藤乙彦君。

遠藤乙彦君 公明党の遠藤乙彦でございます。

 黒川委員長、そして委員の皆様方におかれましては、今回、大変重大かつ困難な任務を快くお引き受けいただきましたことに対し、衷心より感謝を申し上げる次第です。本当にありがとうございました。

 また、先ほど先生方のごあいさつ並びに抱負を伺いまして、大変に心強く、強く印象づけられた次第でありまして、私は、本当にドリームチームが誕生したのではないかと思うわけでございます。

 冒頭、会長の方から申し合わせ並びに基本的な事項につきまして申し上げましたので、これに尽きているわけでありますが、若干重複するかと思いますけれども、何点か申し上げたいと思います。

 特に、福島原発、被災者の方々の思いをぜひ共有していただければと思っております。先ほど蜂須賀委員からもお話がありましたが、先般、私ども、衆議院の議運として福島に現地調査に参りました。特に、浪江町の町長さんのお言葉の中に、今の被災者の人たちの思いは、ふるさとを奪われ、生活の基盤を奪われ、未来を奪われ、まさに不安と絶望のふちに突き落とされたような思いであると、大変痛切な言葉があった次第でありまして、これはお願いでありますが、ぜひとも先生方も、できるだけ早い機会に現地調査並びに被災者の方々と対話をしていただき、その思いを基本にして調査を進めていただければと思う次第でございます。

 それから、考え方の冒頭にありました、この委員会は決して脱原発ありき、あるいは原発推進ありきではなくて、あくまでリスクとコストという視点から、科学的、客観的に冷静な検討をお願いしたいということであります。まさにこれは、今後原子力政策のたたき台になるわけでありまして、大変重大なポイントでありまして、ぜひそういった視点での御検討をお願いしたいと思います。

 また、地震大国、津波大国と改めて再確認されたわけであります。日本列島が地球物理学上特異点に存在する、これは今後あらゆることを検討する大前提であります。

 特に、この原発との関連では、従来、原子力安全委員会が、いわゆる残余のリスクということにつきまして、主流派の見解は、いわゆる想定外の事態については可能性はゼロではないけれども確率は非常に小さいので考慮しなくてよい、こういった想定に立って進めてきたわけで、まさにこの点がつかれたわけでありまして、ぜひとも厳格な吟味、検証をお願いしたいと思う点でございます。

 また、原子力安全といいますと、従来は原発の構造上の安全性に重点が置かれておりましたが、それだけではなくて、やはり低線量放射線の健康被害への影響、これがむしろ国民にとって大きな問題であります。また、実際に、学者、研究者などの意見が分かれているのが国民の不安をかき立てているわけでありまして、どうか現実に即した、また最新の知見に沿って、この問題を徹底的に検討し、ガイドラインを示していただければ幸甚に存じます。特に、DNAのレベルあるいは分子生物学的レベル等も含めた最新の知見に立った検討をお願いしたいと思っております。

 また、世界的視野ということも申し上げてあります。特に、チェルノブイルあるいはスリーマイル島は、ぜひ教訓を最大限に活用していただければと思っております。

 我々、実は衆議院の議運が先般チェルノブイルにも視察をしてまいりましたが、実際、日本で受け取られていることより大きくかけ離れて、大変深刻かつ広範な被害が広がっているという認識を持ちました。また、国際機関の報告とも大きく乖離があるとも思ったわけでありまして、ぜひとも、そういった意味で、チェルノブイルやスリーマイル島の実態に十分即して、参考にしていただければと思っております。

 また、これから原子力安全、国際的レジームをどう強化していくか。日本からぜひ発信して、我が国の国際貢献の重要な分野としてもこれを考えていただくよう、ぜひともよろしくお願い申し上げる次第です。

 IAEAにも行ってまいりましたが、彼らもこの委員会のことをよく知っておりまして、明年夏ごろ、多分七月か九月ぐらいかと思いますけれども、原子力安全に関する大きな国際会議を開く予定であるそうでございまして、そのときの重要なインプットとして期待をしているという発言もございました。こういったように、非常に世界じゅうが注目をしているわけでありますから、ぜひとも、そういった意味でもよろしくお願いしたいと思います。

 最後に、今、日本の学術界、科学技術界はタコつぼ構造と言われておりまして、それぞれの分野が、自分たちのことしか関心を持たない、交流がないということがありまして、これがまさに今回の事故を起こした大きな背景にあるのではないか。決して閉ざされた知性ではなくて、開かれた知性として機能していただいて、ぜひ、この原子力が人類の英知にふさわしいように、そういった形でこれからの検討をお願いしたいと思っております。

 以上でございます。(拍手)

    〔会長退席、会長代理着席〕

会長代理(鶴保庸介君) ただいまの時間から、私、会長代理を仰せつかっております鶴保が、小平会長に成りかわりまして、司会をさせていただきます。

 それでは、各党からの意見表明を続けます。みんなの党水野賢一君。

水野賢一君 みんなの党の水野賢一でございます。

 委員長を初め十名の先生方には、大きな使命を引き受けられたことに対して、心から感謝を申し上げると同時に、また大きな期待を抱かせていただきたいというふうに思います。

 既に政府の方には事故調査・検証委員会があるという中で、国会にもこうした機関をつくったということには、これはこれで大きい意味があるというふうに思います。政府の委員の方々というのがそれぞれ真摯に御努力をしていらっしゃることは、これは当然そうしたことに対して敬意を持つわけですが、しかし、政府の責任、対応等々も問われている中で、政府にそうした機関を置くのが、果たして中立性、信頼性というのがあるのかという声も一方にあるわけでございます。

 そうした中で、各党が賛同する中で、まさに中立的、客観的な形で、国会でこうした事故の検証委員会を設けるということには大きい意義があると同時に、もう一つは、法的な根拠を持った委員会、そしてそれによって、もし例えば、資料を提出してこないとか、資料を黒塗りで提出してきたというような場合があれば、それに対しては国政調査権の発動という形で、強制権を持って資料を要求したりできるということも権限として持っていらっしゃるわけですから、もし発動の必要があるというような御判断を委員の先生方がされた場合には、ちゅうちょなく国会の方にそうした発動の要請などもしていただければというふうにも思います。

 きょう、各党のメンバーがこうやってさまざまな意見を申し上げておりますけれども、今後、接触制限といいましょうか、正しく言いますと、接触をした場合には報告をというような形になりますので、まさに委員長と委員の先生方の自主的な運営によって進められる部分が多いというふうに思いますから、私たちが意見を申し上げるということはこういう形では最後になるかもしれませんけれども、そうした意を酌み取っていただいて、そして、すばらしい実績を残され、先ほど委員長がおっしゃられたような国民、未来、世界への責任ということを果たした報告書が六カ月をめどにでき上がることを心から期待いたしまして、私、参議院議員水野賢一からの発言とさせていただきたいと思います。

 よろしくお願い申し上げます。(拍手)

会長代理(鶴保庸介君) 日本共産党佐々木憲昭君。

佐々木憲昭君 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 福島第一原発事故の調査委員会発足に当たりまして、私からも意見を述べさせていただきたいと思います。

 三月十一日に発生した東日本大震災によりまして、福島第一原発はすべての電源を喪失し、冷却機能を失い、炉心溶融に至りました。その後の水素爆発により大量の放射性物質を大気中に飛散させ、汚染水を海洋に流出させるなど、チェルノブイリを超える史上最悪の原発事故となったのであります。

 このような事態を招いた政府と東京電力の責任は、極めて重大です。事故を収束させ、放射能汚染・被害から住民の命と暮らしを守り、二度とこのような事故を起こすことのないようにするため、事故原因の徹底究明が不可欠でございます。

 事故の当事者であり加害者である東電は、今なお必要な情報、資料を明らかにせず、政府も情報公開に消極的で、政府の事故調査・検証委員会は、その法的権限があいまいなまま、非公開で調査を進め、議事録も公開しておりません。

 このもとで、国政調査権を背景として国会に設置される調査委員会が、政府から独立し、政治介入を排し、公開を基本として事故原因の究明に当たることは、極めて大きな意義を持つものでございます。

 以下、調査に関して幾つか問題を提起しておきたいと思います。

 まず第一に、事故原因の究明で重要なことは、地震、津波による原発設備の損壊の実態を初め、福島第一原発で何が起こり、どう対応し、どのような事態が進行したのか、事故にかかわる事実関係を逐一具体的に明らかにすることであります。プラントデータも含めた事故事実を把握することは、原因究明の土台でございます。

 東電はいまだに想定外の津波が原因だと主張しておりますけれども、地震動のデータのすべてを公表しているわけではありません。プラントの破損状況とともに、それぞれの破損の原因が何なのか、地震か、津波か、あるいは水素爆発なのか、この点を検証すべきでございます。

 また、原発の危険性と過酷事故対策について、国会でも再三指摘、警告されていたにもかかわらず、なぜ対応がとられなかったのか。そもそも、福島第一原発はどのような想定で設計され、建設されたのか、徹底究明が必要であります。

 第二は、事故後、政府、東電が原子力災害対策特別措置法に基づく対応をしなかったのはなぜかという問題です。

 例えば、三月二十四日、日本共産党の吉井議員が事故にかかわる基礎データの提出を要求しましたけれども、政府は事実を把握しておりませんでした。原子炉規制法に基づき東電に報告徴収命令を出すべきだという質問を受けまして、四月二十五日にようやく東電に報告を命じ、一カ月後に報告文書を受け取るという状況でありました。

 なぜ、政府はその権限をすべて行使し、法的権限に基づいて事態の把握をしなかったのか。東電は、事故対応マニュアルを知的財産だと称して提出を渋り、黒塗りで提出するという対応で、事実の解明に極めて消極的な態度に終始してきたのであります。

 一方で、法律に基づかない統合本部が事故対応を行い、日米合同チームというのがつくられましたけれども、その経緯、具体的対応の内容も詳細に明らかにすべきだと考えております。

 また、住民の安全確保のためにSPEEDIが活用されなかった問題、安定沃素剤の配付と服用が指示されなかった原因、避難指示をめぐる混乱などの検証も必要であります。

 最後に、原子力行政と原子力政策の検証でありますが、原子力行政では、規制と推進の分離が言われながら、二〇〇〇年の中央省庁再編の際に原子力安全・保安院を新設し、原発推進の経産省のもとに規制権限を事実上一元化したのはなぜか、その経緯と弊害の検証が必要であります。

 さらに、我が国の原発政策の根幹をなす日米原子力協定と電源三法のもとで安全神話をつくり上げ、地域住民の反対を押し切って原発を推進してきた政官財学の構造そのものにメスを入れる必要があります。地域独占体制と総括原価方式に守られた電力会社を中心とし、原発メーカー、ゼネコン、銀行など、財界中枢で構成する原発利益共同体ともいうべき利益構造の解明に及ぶ調査が求められていると思います。

 以上、委員各位がその職責を十分に果たされんことを求めまして、発言を終わります。(拍手)

会長代理(鶴保庸介君) 社会民主党・市民連合服部良一君。

服部良一君 社民党の服部良一です。

 黒川委員長初め委員の皆様、歴史的使命を持つ重要な役割をお引き受けいただき、まことにありがとうございます。

 高い見識をお持ちの皆様を前に、僣越ではございますが、この際、私どもの問題意識と期待を申し上げます。

 私たちは、この福島の事故は人災であると考えています。

 東京電力、同時に監督すべき保安院は、津波の想定を高くする必要があると認識されていたにもかかわらず、対策を実行せず、その事実さえ隠していました。GEマーク1という炉の欠陥や高経年化、老朽化に対する警告も無視しました。避けられたはずの事故を引き起こし、かつ事故後、甚大な被害を拡大させた責任は極めて重いものがあります。東京電力や保安院は、事故当初からメルトダウンあるいはメルトスルーという深刻な事態が指摘されていたにもかかわらず、このメルトダウンという言葉を、事実をかたくなに認めませんでした。

 また、東京電力は、地震による重大な損傷はなく、津波による電源喪失がこの事故の主たる原因であると言っております。しかし、地震により配管破断が起こり、津波が来る前に冷却材喪失とメルトダウンが始まっていたのではないかという有力な分析があるのに、なぜ津波だけが原因であると断定できるのでしょうか。地震動で一体何が起こったのか、この点は徹底的に調査をしていただきたいと思います。

 また、現在、これまでに得られた知見を踏まえたという名目で緊急安全対策等が講じられ、安全設計審査指針、耐震設計審査指針等の見直し作業が進められております。さらには、原発の再稼働を判断するためのストレステストが実施され、間もなく最初の評価が示されるのではないかと言われております。

 しかし、地震や津波でどこにどのような影響が生じ、事故がいかなる経過で進行したのか、それが明らかでないままに重点的に分析する機器の選択が行われ、イベントツリーが設定されるのは明らかにおかしいと思います。検証が終わらないままの見切り発車では、再び想定外の事故が起こることは目に見えております。

 また、どのような経過、背景によって想定外とされる事故が起こってしまったのか、その徹底的な解明が必要です。たび重なる警告、有力な警告があったにもかかわらず、それらを想定することが不適切と切り捨てた構造を解明しなければなりません。マニュアルが全く役に立たなかったことや防災体制が機能しなかったことなどが、事故の深刻化、被害の拡大をもたらしました。また、SPEEDIが公表されなかったことにより、放射線量が高い方向に避難することになり被曝をされた地元の皆さんは、これは犯罪であるという怒りの声すら出ております。

 避難指示のあり方、学校二十ミリシーベルト問題、食品暫定規制値、緊急作業従事者の被曝上限の切り上げ問題など、政府の判断の妥当性が疑われることが余りにも多過ぎます。厳しい検証が必要です。事故発生後の経過の中で、どのように情報が伝わり、あるいは遮断されたのか、だれが判断をし意思決定をしたのか、どのようなやりとりがあったのか、今に至るまで判然とせず、矛盾した証言が並立しています。判断のおくれや情報公開の悪さは、大きな不安と怒りを生みました。放射能汚染の現実の中で生きなければならず、生活や事業の再建が見通せない不条理が避けられなかったのか、多くの人々が疑問に思っています。

 既に政府の事故調があり、保安院や東電でも調査、検証が行われています。民間の事故調も発足しました。しかし、国会に事故調が設置されたのは屋上屋を重ねることではありません。まさに、国民による国民のための検証であります。この事故調の一番の目的は教訓を引き出すことにあります。しかし、その前にまず真実が明らかにされなければなりません。同時に、今後の日本のエネルギー政策の重要な示唆になるものでもあります。

 異なる分野からお集まりいただいた皆様が、それぞれの専門性を発揮されるとともに、それをさらに乗り越えて議論を闘わせていただくことによって、重大な使命を遂行されることを切に願って、意見表明とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

会長代理(鶴保庸介君) 国民新党・新党日本田中康夫君。

委員外議員(田中康夫君) 田中康夫です。

 本日十二月八日は日米開戦から七十年。本委員会発足に当たり、与党統一会派、国民新党・新党日本を代表し、見解を述べます。

 航空事故や列車事故は、一定の場所、一定の時間、一定の社会グループに悲劇がとどまります。原発事故は、社会的にも、地理的にも、時間的にも、さらには陸上、海上、空中、地表、地中、海中を問わず、被害が連続、拡大し続ける蓋然性が極めて高く、範囲、濃度、蓄積のいずれも変幻自在な放射能は、無色、透明、無臭。人間の五官が察知し得ぬ極めて厄介な存在です。

 二十世紀は、科学を信じて技術を疑わずの無謬性に立脚する物質主義でした。脱物質主義の二十一世紀は、可謬性の視点に立ち、科学を用いて技術を超える時代であるべきです。

 直ちに影響はない、すなわち今のところは大丈夫と当時の枝野幸男官房長官は繰り返し、九カ月後の現在、今は既に大丈夫である旨、細野豪志原子力行政担当大臣も繰り返しています。

 震災直後、政府は南相馬市の二十から三十キロ圏の住民に自宅待機を命ずる一方、物資は自己調達すべしと伝え、その後も、国が費用負担する避難命令でなく、自己負担の自主避難要請にとどめ、自力で避難し得る者に居住を認める緊急時避難準備区域に指定しました。

 さきの大戦の戦病死者は、その七割が栄養失調による飢餓でした。かつても今も、国民の生命と財産を守る上で大前提のロジスティック、兵たんの発想が日本には欠落しています。

 代表取締役の座にとどまる事業者、東京電力株式会社の勝俣恒久会長も、再び黙して語らずです。

 立法府が設けた本委員会は、政府、東京電力、関係機関のリーダーに、事故発生以降、的確な認識と決断、迅速な指示と行動、明確な責任と賠償の哲学と気概が兼ね備わっていたか否か、的確、迅速、明確な検証とあわせ、国民及び世界に対し、放射能の加害国となった日本の今後のあり方を具体的に指し示す使命を果たされんことを強く望みます。

 百二十二年前、奈良県十津川村の十津川大水害被災者は、北海道の空知平野に新十津川町を築きました。

 メルトダウンを超えた東京電力福島第一原子力発電所の周囲は、放射能に占領された領土と冷徹にとらえるべきで、原発から少なくとも三十キロ圏内は居住禁止区域に設定し、愛着を抱く郷里から離れる当該住民には、国家が新たな住居と職業を保障、提供すべき。これが、国民の生命と財産を守る政治、立法府の責務です。

 放射能汚染土壌の仮置き場を福島県内の国有林に、同県内に設置する中間貯蔵施設も三十年間、その後の最終処分場は県外設置を約束と政府は述べていますが、最も年若い大臣の細野氏とて三十年後は七十歳。大半の政治家は引退しています。国有林内の保管物が雨水にまじり河川に流れ出たら、イタイイタイ病どころの話ではありません。

 映画「十万年後の安全」に登場するフィンランドのオンカロもいまだ建設中。イギリスのセラフィールドも迷走中。今、この瞬間も排出される放射性廃棄物の最終処分場が世界に存在しません。住民移住後の三十キロ圏を世界じゅうから核廃棄物を受け入れる最終処分場としたなら、これぞ最大最強の安全保障政策となります。

 除染も、抜本的解決につながらず、再考すべきです。語弊を恐れず申し上げれば、桜島の噴火が終息しない中、鹿児島市内で愛車を水洗いしている状況です。人海戦術で駆り出される無辜の住民や自衛隊員が、内部被曝を起こさぬ保証はどこにもありません。考えるアシたる私たちは、トンネルじん肺やアスベストの悲劇から学ぶべきです。

 さらに、除染した水はどこへ行くのか。海へ流れ込んだら、水俣病を上回る惨劇です。

 参議院議員から転身した福島県の佐藤雄平知事は、人口が減少すると交付税も減少するから、疎開や移転には反対である旨の発言をしています。立法府に集う一人として、自戒を込め、問題先送りの空理空論を排し、今こそ立法府、いわゆる政治が機能せねばなりません。

 放射能それ自体は偉大な発見ですが、科学を信じて技術を疑わぬ中で、人類は「フクシマ」の地にグレムリンを生み出してしまったのです。

 黒川清委員長及び各委員におかれては、従来型のアームチェアの議論を超えた委員会として、新しい方程式を打ち立てられんことを要請し、国民新党・新党日本の発言を終わります。

 ありがとうございます。(拍手)

会長代理(鶴保庸介君) たちあがれ日本・新党改革荒井広幸君。

委員外議員(荒井広幸君) 荒井でございます。

 さきの大戦について、国民の手によって、つまり国会によって検証してこなかったことが今日まで課題を残してきていると思います。

 この観点からも、今回、史上初めて国民みずからによるこの委員会ができましたこと、深いものがあると感じております。それだけに、お引き受けをいただいた皆様にお礼を申し上げます。

 原爆に苦しんできた日本、そしてまた、この日本で原発事故が起き、放射線被害があってはならないのに起きてしまったというこの現実。私も、県会議員から二十数年になります。福島に住んでおりますので、原発を推進してまいりました。理由は、地域振興や経済、雇用、所得、こうした観点です。そのためには、みずから安全性や安心というものを十分に検証してこなかった、安全神話をつくった一人でもあります。皆さんの検証を待ちます。

 福島県民は、放射線の影響に恐怖、不安、そして心配でいっぱいです。同じような立場の人たちがこれからも、そして世界でも同じような境遇の人が出ないことを県民は祈っています。

 多くの県民の気持ち、いろいろな気持ちがありますけれども、総じて申しますと、だれを信用していいかわからないんです。何を信用していいかわからないんです。未来もわかりません。目隠しされているような状態です。

 科学的数値と心の数値は全く違います。これも実感いたしました。何も悪いことをしていないのに、どうしてこんな目に遭うんだろうと割り切れない気持ちの人も多いわけです。不安や不十分な賠償、そして行き届かない支援策などが絡まりまして、家族や地域コミュニティー、これが壊れつつあります。県民感情の分断や対立をこれ以上深くしてもなりません。

 命を守り、健康を守る。そして、人間性回復ができるように、それでも被災者の皆さんは、懸命にみずからを鼓舞して生活をしております。あす以降、どう生活していったらいいか、再建するか、子供の将来をどうつくっていったらいいか、これに悩んでおりますが、みんな、みずからにむち打って頑張っております。

 私は、政治手法としての原発という選択肢が正しかったかどうか評価していただきたいと思っています。日本国内外の原発の安全性と人々の安心をいかに守っていけるのか否なのか、検証をお願いしたいと思います。また、人間の安全保障とは何なんだろう、自然も含めた文明史的観点からの検証をいただければまことに幸いと思っております。

 重ねて、委員をお引き受けいただきました皆様に敬意を表します。(拍手)

    ―――――――――――――

会長代理(鶴保庸介君) それでは、ただいまの各党の発言を受けて、黒川委員長から御発言いただきたいと存じます。黒川委員長。

黒川清君 各委員のコメント、それから各代表の方々から気持ちを伺うと、いかにこの委員会が重要な責務を、国民に対しても、国会に対しても、また世界の中の日本に対して負っているかということをひしひしと感じさせられ、この重責にたえられるか、極めて不安でいっぱいです。時間、リソース、その他のことです。

 しかし、先ほど申しましたように、基本的には、国民、未来、それから世界の中の日本、この三つの座標軸で検証すべきだと思っておりますし、それを思うにつけて、私が今感じたことはこういうことです。

 きょうは十二月八日です。ちょうど真珠湾攻撃の七十周年ですね。そのときに、この数年のことですが、太平洋戦争生き残りの証言といういろいろなテレビが出てきまして、もちろん生存されていない方の資料も出てきたので、NHKその他で特集が何本もありまして、恐らくきょうあたりまたやると思うんですが、それを見ていると、わかっていたんだけれども言えなかったとか、いろいろなコメントがたくさん出てきます。では、死んだ人はどうしてくれるんだよということですね。

 最近またNHKで、この福島原発の話をいろいろな人にインタビューし、そこには、もとの肩書も出てしゃべっておられる方もおられます。この特集が何本かNHKで出ております。そのコメントを見ると、あの戦争の生き残りの証言と全く似ているんじゃないかと皆さん思いませんか。恐らく、それを直観的に国民は感じたと思います。ということは一体何なのかということが今問われていると思います。

 というのは、特に原発は世界的な課題です。しかも日本は先進国だったわけです。今でもそうです。ということで、日本は失敗から学ぶのかね、学ばなければ進歩もないじゃないのという話を国民が直観的に感じていると思います。

 それでは、どうしてそういうことがまた繰り返されたのかということを、この十人、皆で英知を絞り、この国民の極めて重い負託にどうやってこたえられるだろうかというこの大きな制限の中で、私は本当に、委員もそうだと思いますけれども、しばらく眠れないんじゃないかと思うぐらいの重荷だと思います。

 ということで、いろいろな御支援をいただきながら、国民に開かれた日本の将来の、ある通過点の、大きな通過点ではないかということを、特にこの国会という、国民から国政を負託された方々の一人一人が全会一致でこういうことを決められたということの歴史的な重要性と、それにこたえなくてはならない私たちの、おもしといいますか、重いことに非常に戸惑っているというか、そういうのが委員全体の気持ちではないかと思います。

 これからも、いろいろなことで御相談というか、それは違いますけれども、今後どういうふうにしていくかの話が、日本社会全体の問題、国民の意識の問題、そういう話の全体像をどういうふうに解明していくかということになるかと思います。

 これは、お礼を申し上げるわけではありませんね、どう見ても。精神的な御支援を、国民全体の代表者ですから、ぜひよろしくお願いしたいと思います。(拍手)

    ―――――――――――――

会長代理(鶴保庸介君) この際、一言ごあいさつを申し上げたいと思います。

 本日は、御多用中のところ、本協議会に御出席を賜り、まことにありがとうございました。

 この両院合同協議会におきましては、事故調査委員会が果たすべき役割が、先ほど来お話がありますとおり、極めて重要であると我々認識をしておりまして、その認識のもと、両院が連携し、また各党が一体となって、事故調査委員会の立ち上げの諸準備と、委員長及び委員の推薦を行わせていただきました。

 皆様方は、これからさまざまな調査活動を進めていかれることになりますが、本日の各党からの発言を踏まえつつも、従前の申し合わせのとおり、政治的な影響を受けることなく、中立的な立場で、徹底した原発事故の経緯の検証、原因の究明、ひいては、委員長のお言葉をおかりするならば、未来への提言を行っていただきたい、改めて私からもお願いを申し上げる次第であります。

 本両院合同協議会は、皆様方が正式に委員長、委員に任命されました本日以降は、皆様方の調査をお見守りさせていただくことになりますが、事故調査委員会において国政調査権の発動を必要とする場合には、我々両院合同協議会に御要請をいただき、本協議会において国政調査権を行使する仕組みになっておりますので、真に必要と判断される場合には、お申し出をいただきたいと存じます。

 半年をめどとする短い期間で大変恐縮ではございますが、皆様方の事故調査委員会が、精力的にその使命を果たされ、国民の期待にこたえられる内容の報告書を提出していただけますことを強くお願いするとともに、我々もしっかりサポートしてまいりたいと思いますので、そのことを申し添えて、私のごあいさつとさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十二分散会


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