衆議院

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第6号 平成24年5月23日(水曜日)

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平成二十四年五月二十三日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 中野 寛成君

   理事 武正 公一君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 古本伸一郎君 理事 松本 大輔君

   理事 和田 隆志君 理事 逢沢 一郎君

   理事 伊吹 文明君 理事 西  博義君

      井戸まさえ君    石井登志郎君

      稲富 修二君    江端 貴子君

      岡田 康裕君    勝又恒一郎君

      岸本 周平君    櫛渕 万里君

      小室 寿明君    斉藤  進君

      階   猛君    篠原  孝君

      白石 洋一君    田嶋  要君

      田中美絵子君    田村 謙治君

      中野渡詔子君    中林美恵子君

      永江 孝子君    長尾  敬君

      花咲 宏基君    浜本  宏君

      早川久美子君    福田衣里子君

      藤田 憲彦君    馬淵 澄夫君

      三村 和也君    宮島 大典君

      向山 好一君    室井 秀子君

      湯原 俊二君    柚木 道義君

      渡部 恒三君    石田 真敏君

      加藤 勝信君    金子 一義君

      鴨下 一郎君    齋藤  健君

      田村 憲久君    竹下  亘君

      橘 慶一郎君    野田  毅君

      馳   浩君    町村 信孝君

      茂木 敏充君    高木美智代君

      竹内  譲君    塩川 鉄也君

      宮本 岳志君    豊田潤多郎君

      渡辺 義彦君    吉泉 秀男君

      浅尾慶一郎君    山内 康一君

      中島 正純君

    …………………………………

   内閣総理大臣       野田 佳彦君

   国務大臣

   (社会保障・税一体改革担当)           岡田 克也君

   総務大臣         川端 達夫君

   財務大臣         安住  淳君

   文部科学大臣       平野 博文君

   厚生労働大臣

   国務大臣

   (少子化対策担当)    小宮山洋子君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   内閣府大臣政務官     大串 博志君

   財務大臣政務官      三谷 光男君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 中村 昭裕君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    古谷 一之君

   参考人

   (日本銀行理事)     木下 信行君

   衆議院調査局社会保障と税の一体改革に関する特別調査室長          佐藤  治君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十三日

 辞任         補欠選任

  石井登志郎君     向山 好一君

  江端 貴子君     馬淵 澄夫君

  岸本 周平君     中林美恵子君

  田村 謙治君     福田衣里子君

  早川久美子君     中野渡詔子君

  室井 秀子君     階   猛君

  湯原 俊二君     斉藤  進君

  柚木 道義君     浜本  宏君

  渡部 恒三君     小室 寿明君

  田村 憲久君     茂木 敏充君

  馳   浩君     齋藤  健君

  竹内  譲君     高木美智代君

  宮本 岳志君     塩川 鉄也君

  豊田潤多郎君     渡辺 義彦君

  中島 隆利君     吉泉 秀男君

  山内 康一君     浅尾慶一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  小室 寿明君     渡部 恒三君

  斉藤  進君     花咲 宏基君

  階   猛君     室井 秀子君

  中野渡詔子君     櫛渕 万里君

  中林美恵子君     岸本 周平君

  浜本  宏君     柚木 道義君

  福田衣里子君     田村 謙治君

  馬淵 澄夫君     江端 貴子君

  向山 好一君     井戸まさえ君

  齋藤  健君     馳   浩君

  茂木 敏充君     橘 慶一郎君

  高木美智代君     竹内  譲君

  塩川 鉄也君     宮本 岳志君

  渡辺 義彦君     豊田潤多郎君

  吉泉 秀男君     中島 隆利君

  浅尾慶一郎君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  井戸まさえ君     石井登志郎君

  櫛渕 万里君     早川久美子君

  花咲 宏基君     湯原 俊二君

  橘 慶一郎君     田村 憲久君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七四号)

 被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七八号)

 子ども・子育て支援法案(内閣提出第七五号)

 総合こども園法案(内閣提出第七六号)

 子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七七号)

 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第七二号)

 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案(内閣提出第七三号)


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     ――――◇―――――

中野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律案、被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案、子ども・子育て支援法案、総合こども園法案、子ども・子育て支援法及び総合こども園法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案及び社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、参考人として日本銀行理事木下信行君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として内閣府大臣官房審議官中村昭裕君、財務省主税局長古谷一之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中野委員長 本日は、各案の審査に関し、社会保障と税の一体改革のあり方について集中審議を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。和田隆志君。

和田委員 おはようございます。民主党、和田隆志でございます。

 昨日までに各党の質疑が一巡いたしました。きょうから二巡目でございますが、そういった時期に、一つの論点整理的に、ごくわずかの時間でございますが、各大臣にお聞きし、最後に総理に総括していただきたいというふうに思います。

 それでは、早速ですが、まず第一枚目のパネルをお願いいたします。

 昨日までの質疑を拝聴しておりまして、私どもももう一度考え直してまいりたいと思いますが、まず、今回、一体改革というふうに名前をつけて各法案を出させていただきました。いろいろな御質疑をお聞きしておりまして、やはり国民の皆様方は社会保障を変えてほしい、そして、その財源としてなら税制を変えることも認めていただける、そんなふうに感じた次第です。

 今、皆様方にごらんになっていただいている、きょうは中継を入れていただいておりますNHKの世論調査でございますが、野田政権が発足してからこの数カ月、ずっと継続的に行われております。

 この数字、真ん中辺を見ていただきますと、社会保障制度についてしっかりとやってほしいという期待は次第次第に高くなっているともとれるわけでございます。実は、表記しておりませんが、お答えなしとかわからないという答えを除いた母数でいうと、実は比率はどんどん増しております。

 こういったことから考えてみても、今回、社会保障と税制とを一体的に改革する必要があるのではないかというふうに思っております。

 次のパネルに行っていただけますでしょうか。

 また、これから先、いろいろな方式を考えていかなければなりませんが、各党の御質疑を聞いておりますと、やはり社会保障制度というのは、自助、共助、公助、こんな概念で構成されており、それらをどのように組み合わせていくかという議論をこれからしっかり行わなければならないと考えています。

 実は、私どもがこの政策を立案していく中で、やはり非常に大事だなと考えているのは、このパネルの上の方にごらんになっていただきます、いろいろな意味での社会経済の変化がある。今までずっと続けてきていた制度が、その当時にはよかったのかもわからないんですが、だんだん変化していることに対して、しっかり対応する必要がある。

 そして、さらに一番下をごらんになっていただきたいと思いますが、やはり国民の皆様方からすれば、政権交代のあのときに、先般お話がございましたが、若い世代の方々が投票所に行ったということがございました。そうした方々も含めまして、全ての方々に社会保障制度の受益を感じていただける、そんな制度づくりが必要なんだろうと考えています。

 次に行っていただければと思います。

 次のパネルは、そうした社会保障制度をつくっていくにも財源が必要だということで、今まで随分政府側からも御説明いただいているところでございますが、今回引き上げる財源は全て社会保障制度に使うということをもう一度再確認していきたいというふうに考えています。

 このようなパネルを国民の皆様方にごらんになっていただいたところでございますが、まず、財務大臣にお聞きいたします。

 今回、この七法案が出ている中で、税制の法案の担当大臣でいらっしゃいますが、やはりここは野田内閣全体として、社会保障と税制とを一体的に改革する必要があるのではないかという問題意識を持って取り組んでいただきたいというふうに思っています。

 そんな中で、大臣の今までごらんになってきた国民生活の中で、自助、共助、公助のそんな組み合わせや、そして社会保障制度を組み立てるためにどんなことが必要なのか、そんな御所見をいただければと思います。

安住国務大臣 二つのことをちょっと簡単に申し上げたいと思います。

 日本の社会保障制度というのは、保険料と税負担で賄われているわけですよね。ですから、そのトータルでいうと、高齢化社会の中で百兆円を超えるやりくりをしないといけない。そういう中で、税負担がなかなかやはり大変になってきたので、これは、これから高齢化社会を迎えて、ここの部分をやはり何とか補填していかなきゃいけない。そのためには、やはり広く薄く皆さんに、お預かりした税金はそのまま、今までは、平成十一年から、年金、医療、介護、高齢者三経費ということでございましたが、これに新たに少子化も加えさせていただいて、これに充てるための目的税化ということで、この制度、そして消費税を引き上げさせていただくということでございます。

 もう一つは、私の個人的な体験と感想だけ申し上げますと、ちょっと、私はマスコミにいたからですけれども、当時、昭和三十年代から、社会のライフスタイルが随分変わってきたと思うんですね。流行語で言うと、あのとき、家つきカーつきばば抜きという言葉がはやったのを御存じかもしれませんが、自助というのは、やはり家族で支えて、みんなで助け合って、地域で子供を育てていくという社会だったんです。

 ところが、今私が言った流行語になったような社会、昭和三十年代以降というのは、核家族化が進んで、やはり面倒を見るのが大変な時代になってきたというのがあると思うんですね。高度成長の中で、私ども宮城なんかからもいっぱい出稼ぎで東京へ来て、おばあちゃんとおじいちゃんがやはり田舎に残されてきて、コミュニティーで支える力はあったんですが、それもなくなりました。

 私の経験では、私の近所にいたおばさんの話ですけれども、嫁いでこられて、義理のおばあさん、義理のお母さん、自分の御主人、三人の介護をお嫁さんに来てから三十年近くやりっ放しの方がいたんです。私も父とよくお酒を飲んだときに、生前、父が生きていたときに、隣の奥さんのことなんですけれども、嫁いできて、田舎の言葉でいえば、本当に下の面倒をずっと見続けて、それで子供三人立派に育てた奥さんがいらっしゃったんです。

 やはり日本の女性の戦後の苦労というのは並大抵なものでなかったと思うんです。そういう中で、今言ったような、私が言ったような言葉が出てきたり。そうすると、やはり公的なサポートをしっかりしていって、女性の自立、そして社会に合った助け合いの仕方をやらなければ、これが悲劇と言ったら大変失礼ですけれども、本当に何のために、自分の時間もつくれず介護のしっ放しのお嫁さん、こういうものを解放するためにこそ、やはり日本の社会保障というのを充実していかなければならない。また、今後もそういうことは続きますから、自助や地域での助け合いも核にしないといけませんけれども、さらなる公的な支援の充実というものを図っていかないといけないと私は思っております。

和田委員 今のお話にあったように、自助で頑張っている人は本当に頑張っていらっしゃるんですが、やはり社会経済のいろいろな変化の中で、本当に自分だけでは大変だという方々がたくさん出てきているだけに、共助、公助というのを有機的に組み合わせる必要があるんだというふうに感じました。

 さて、それでは次のパネルに行っていただければと思います。

 ここから先は、年金制度についてと、子ども・子育て支援制度についてお話しさせていただきたいと思います。

 年金制度については岡田副総理にお伺いしたいと思います。

 国民の皆様方に今お示ししましたパネルは、今回の制度改革の一端でございます。一部分であることは最初からお断りしておきますが、これも先ほど申し上げたとおり、社会経済の変化の中で本当に就職構造が激動する、そんな状況にありまして、若い方々の中で、正社員になりたくてもなかなか就職口がない。十万円のフリーターの例を今表に示しておりますが、こうした方々にとって、将来自分が生活をしていく、そしてまたお年寄りになったときのことも考えていく、そんな視点を持たれたときに、やはり日本の国が安心、安全な社会保障を提供する必要があるというふうに考えてつくった内容でございます。

 岡田副総理には、ぜひこういった例を参考にしながら、今度の改革法案が年金制度上どのように自助、共助、公助をバランスよくとっていこうとしているのか、先般、高額所得者に対して年金の一部分を削減させていただくという内容も盛り込みましたが、それはあくまで財政資金の範囲内であって、個人の保険料をお支払いいただいたその分の計算をしっかり行っているんだということも御説明いただければと思いますが、いかがでしょうか。

岡田国務大臣 まず、委員御指摘の厚生年金の範囲の拡大でありますが、もともと我々は、働き方に中立な、そして基本的に一つの年金制度ということを申し上げてきたわけでございます。

 今、例えばパートで働いておられる方で三十時間以下の方というのは、多くは国民年金に加入しておられるということになります。国民年金も含めて一元化ということを我々言っておりますけれども、しかし、一応、国民年金というのは自営業者の方を対象にスタートしたという歴史もある、そこに多くのそういった非正規で働いておられる方々が加入しているという現実。正社員として厚生年金に加入しておられる方と余りにもそこに格差がある。

 このお示しになった図で見ても、結局、国民年金ですと、基礎年金ですから、六・六万しかない。それが、厚生年金に加入すれば、当然、そこに基礎年金部分だけじゃなくて報酬比例の部分が加わるということになって、もらえる年金の額はふえるわけであります。

 そういった観点からいうと、なるべくその範囲を拡大していきたいという思いはございます。ただ、一方で、これは事業主の負担というのがかかってくるということで、中小企業を初め事業主の負担も一挙にやっていくということになると大変だということで、今回一定の範囲に絞らせていただいたわけですが、やはりそれは多くの関係方面の理解を得ながら、その範囲を拡大していくということが大きな方向だというふうに思っております。そのための第一歩というふうに位置づけているところでございます。

 それから、二番目に言われた、高額所得者の方の年金を少し削らせていただくということについては、これは、高額所得のある方であっても、厚生年金、その中の基礎年金部分については半分税金ということに今やなっているわけであります。もともと三分の一でしたが、これが半分ということにふえました。私は、所得の多い方は、税金を出している範囲でそれを削減させていただくということは十分合理的な理由があるし、全体の財源のやりくりの中でそういったことは御理解いただけるのではないかというふうに思っております。

 きのうもこの場でも議論がありまして、いや、それは削減するんじゃなくて、所得税でお払いいただいた方がいいだろう、こういう御意見もあります。それも一つの見解だと思いますが、税で入れている部分についてその範囲で削減するということは、私は十分納得していただけるのではないかと。

 それは、我々今考えているのは、せいぜい一%程度の方であって、幅広く税金部分を削減しようと考えているわけではない。同じ世代であっても、高齢者であっても、負担能力のある方にはある程度御負担いただく、そういう方向性というのは、私は、これから避けられないし、むしろ望ましいことであるというふうに考えております。

和田委員 今のお話も、いろいろと本当に、年金制度がいわゆる保険制度であることを原則としてしっかり見据えつつも、この経済状況の中でございますので、いわゆる共助、公助として、高額所得者の方々にも助け合いの精神をぜひ御理解いただければというふうに思います。

 さて、次は子育ての方に移りたいと思います。

 パネルが移動しましたが、ごらんになっていただけると思います。これから二枚のパネルをお見せしたいと思います。

 まず、今最初に御提示申し上げたのが、「総合こども園」というふうに書いてあります。この総合こども園でどのように私たちの生活が変わるのか。そして、もう一枚の方、ぜひ、カメラさん、映していただけると思いますが、昨日までの御議論でございました、そういった都市部を中心に待機児童を解消する施策はいろいろ考えられるけれども、地方においてはどうなんだ、こんな議論もございました。

 これらを両方見据えて政策を考えているということをしっかりと、厚生労働大臣もしくは少子化担当大臣にお答えいただきたいと思います。小宮山大臣、いかがでしょうか。

小宮山国務大臣 和田委員の方で、いろいろ皆さんの御意見もこの吹き出しで書いていただきましたが、本当に、ここにあるように、やはり働き方によって幼稚園、保育所で違うということに対する疑問とか、いろいろ実感の言葉がここにあるというふうに思います。

 現状は、保育所でも養護とあわせて教育もしている。それから、幼稚園でも預かり保育も七五%がしている。現場の方は理念についてももう一緒になってきているのに、ところが、省庁が縦割り、大人の方の都合でこれがばらばらになっている。そのことが都市部では待機児さんを生んでいるし、地方ではそれぞれが成り立たなくなっている。これを子供の視点で総合的に財源それから所管を一体化、一元化をしまして、子供にとって、就学前の子供は全て、親の働き方にかかわらず、質のよい学校教育と保育を受けられるようにする、そのようなことの大改革を私たちはしたいというふうに思っているんです。

 これは、今までの認定こども園制度の中の課題を解消する、二重行政を解消して財源をちゃんとつけるということですとか、長いこと現場の皆さんの声も伺って、こういう大改革をしない限り、ずっと前政権でもお取り組みいただいた待機児もなかなか解消しないし、それから幼児教育も必要だし、いろいろな観点から、都市部では土地もなくて、認可保育所をどんどんつくればいいといってもできません。ですから、三割あきがある幼稚園の施設も使って、子供にとって本当によりよいものをつくるということは、私自身も子育てをし、今孫も苦労していることを見る中で、これは実感として、ぜひ、こういう形で改革を子供の視点でさせていただきたい。それは与野党合意できるところじゃないかというふうに思っております。

和田委員 このように、子ども・子育ての面でも、自分で頑張っている人もいるんだけれども、それをしっかり社会的にサポートする必要があるのではないかと思って、都市部においてもそのサポート、地方部においてもそのサポートを考えてみたというのが今回の法案でございます。

 さて、総理、私自身、実は三歳児の父親でもございます。最近、子供を保育園にやっておりますが、その保育園にやっている保護者の方々、そして幼稚園に子供を通わせている保護者の方々とも語り合ってみました。一生懸命みんな頑張っているんですが、むしろ、子供を保育園や幼稚園に通わせてみてわかったことは、いわゆる共助、公助として、社会的にいろいろな子供と接すること、いろいろな保育園、幼稚園の先生と接すること、そして保護者の方々と接することは、子供にとっては非常によい経験だということを実感いたしております。すごく小さいころから社会になれてきて、大人がどんなことをしているのかというのをよくわかる子供が育つように思います。

 そういった意味におきまして、自助、共助、公助というのは、お互いにそれぞれを刺激していくとよい影響が生まれてきて、全体としてよい社会保障制度になっていくんじゃないかというふうに実感した次第です。

 最後に、総理、一体改革の決意と、それから先ほどから議論しておりますように、自助、共助、公助について総理のお考えをお聞きして、質問を終わりたいと思います。

野田内閣総理大臣 社会保障を考えるときに、基本はやはり自助があると思うんです。それをいかに共助、公助がうまく関係づけをする中でサポートしていくかということが大事だと思いますが、自助が基本でも、残念ながら、核家族化が進んでいる、地域のつき合いが希薄になっているという中で、あるいは雇用の問題、非正規がふえている等々、自助を実現するための環境が非常に今損なわれているんだと思います。それをどうサポートするかというのが今回の一つの理念ではないかと思います。

 それで、自助を共助や公助がサポートしながら、今御自身の体験を言われましたけれども、自助、共助、公助の関係が好循環に持っていけるような、そういう仕組みに持っていきたいなというふうに思います。

 今回は、冒頭、世論調査のお話もありましたけれども、社会保障改革を期待されている方がたくさんいらっしゃいます。それをしっかりと実現するために、安定財源を確保するための一体改革であるという意義をしっかりと国民の皆様にお訴えし、御理解をいただけるように努めていきたいというふうに考えております。

和田委員 ありがとうございました。政府・与党を挙げて取り組んでまいりたいと思います。

 終わります。

中野委員長 これにて和田君の質疑は終了いたしました。

 次に、馬淵澄夫君。

馬淵委員 民主党の馬淵でございます。

 きょうは、消費税並びに社会保障、社会保障と税の一体改革、この審議に質疑の機会をいただきました。

 私も、与党議員として、昨年来より党内での議論にも参加させていただいています。その中では、私は、慎重を期すべきであるとして、経済状況の好転、このことを実現することがまずは政府の最大の使命ではないか、このように提言もしてまいりました。今回、どのような経済状況で消費税を引き上げるべきか、また、このことが極めて重要な課題であるということをこの質疑の中でも確認してまいりたいというふうに思います。

 日本経済がデフレから脱却し、そして景気が順調に推移をする、こうした中で低所得者対策が行われれば、私は、税の引き上げによっても税収増が十分に図られる、あるいは経済に与える影響は少なくなるのではないか、このようには考えております。しかし、こうした低所得者対策がなく、また、デフレ下、いわゆる価格転嫁も非常に困難な状況の中では、増税を行うと日本経済にとって劇薬となりかねない、逆に税収が下がってしまう、そうした状況も十分に考えられます。

 今回のこの消費税の法案の審議、与党内審議がございました。十分に議論をした、し尽くした、これはいろいろな御意見があるかもしれませんが、私自身は、消費税の引き上げが日本政府、日本国家にとって劇薬とならないような幾つかの工夫がなされているというふうに理解をしています。その中での、名目三%、実質二%の経済成長率、これを目指した新成長戦略の忠実な履行、並びに、経済状況に応じて税の引き上げの法の執行そのものを、停止を含めて所要の措置を講ずるとした附則の十八条、これはまさにその工夫の一つであるというふうに思っております。

 与党内議論では、さまざまな議論がございました。歳入庁構想やあるいは簡素な給付措置、これらも修正にも盛り込まれました。

 そこで、まず冒頭、総理にお尋ねいたします。こうした与党内議論の中で盛り込まれた今回の法案、先ほど申し上げた附則の十八条やあるいは歳入庁構想、これは七条八号にもございます。こうした法案の条文、総理、これらは全て政府として必要な条文だという御認識でいらっしゃいますでしょうか。

野田内閣総理大臣 今回、法案提出に至るまで、馬淵委員も大変積極的に御参加いただきましたけれども、党内で闊達な議論が行われました。その党内の闊達な議論の一つの柱が、財政再建と成長の両立だったというふうに私は思います。

 そのことは、この党内の議論というのは、まさに今、世界のトレンドといいますか、どの国も直面しているテーマであって、先般のG8でも、この財政再建と成長というのが最大のテーマでありました。どの国もそれぞれの工夫をしながら取り組んでいこうと。

 その反映が、今回の附則の十八条。御指摘をいただいたとおり、名目成長率三%、実質二%、向こう十年間、これは平均で実現をするということを政策目標として掲げて、デフレ脱却、経済活性化に全力で取り組んでいくということをこの附則に盛り込んでいただいたと思いますし、その経済の好転状況を判断しながら、これは二項に書いてあるように、その停止をするか等々の措置も講ずるということでございますので、あくまで、ここに書いてある附則にのっとって懸命に経済活性化に全力を尽くしていくということとあわせて、この再建というものを一緒にやっていかなければいけないというふうに思います。

 後段御指摘いただいた歳入庁についても、党から多くの御意見をいただいています。それを踏まえて政府としては対応していきたいというふうに考えております。

馬淵委員 閣法でございますから、当然、政府としては、極めて重要な法案、条文として、全てこれは必要だというふうに考えて御提出をいただいたというふうに理解をしております。

 その上で、今、附則の十八条についても総理からも御説明をいただきました。当委員会でもたびたび指摘をされている部分でありますが、この十八条、「消費税率の引上げに当たっての措置」としているのは、これについて、もともとは二〇〇九年、平成二十一年の所得税法等の一部を改正する法律、この附則の百四条を受けてのものであるというところから少しひもといていきたいというふうに思います。

 これは、平成二十年、二〇〇八年九月のリーマン・ブラザーズの経営破綻、これに端を発した世界金融危機の中で、日本経済が、輸出は大幅に落ち込みました、生産量も落ち込み、さらには在庫の大幅な増加、そして失業率の高騰、こういった中で、極めて厳しい経済環境が迫りくる状況で制定された法律の附則であります。

 当時、この金融危機に直面する中で、日本経済を立て直すということで、これは自民党政権下でありましたが、麻生総理は、全治三年と、日本経済の立て直し宣言をされました。向こう三年間は何が何でもこの経済を立て直すんだと。そこで、附則の百四条一項では、「平成二十年度を含む三年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提」、このように定められたわけであります。また、不確実性が高まっておりましたので、当然、その引き上げの時期あるいはその状況、経済環境を十分に見きわめなければならないということから、これも附則の百四条には、「景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極め、予期せざる経済変動にも柔軟に対応できる仕組みとする」と定められたものであります。

 こうした状況の中で制定された百四条、これがもととなって今回の消費税法案という形になっているわけでありますが、この百四条、当時と比べて現在の日本経済あるいは世界経済の動向、いかがなものか。

 まず日本経済の状況を考えますと、これはもう御案内のように、物価と為替の動向は、長期の物価下落傾向、デフレが続いております。また、二〇〇八年の世界金融危機以降、アメリカや英国、こういった国々のいわゆる量的緩和、マネタリーベースの増大によって、我が国は金融政策が十分ではなかった、その結果、円高が進みました。さらには、東日本大震災、こういった出来事があるにもかかわらず、円高は実は変わらない状況になっている。三年たった現在においても、実は日本経済は完治していない状況ではないか。

 こうしたことが考えられる中で、日本経済の状況を示す指標、これも幾つかございますが、わかりやすいものの一つに私はGDPギャップがあると思っております。このGDPギャップというのは、いわゆる一国の全産業の潜在的な生産能力と実際のGDPの差、これを示すものでありまして、不況などで企業が操業を落としていく、こういう場合は、このギャップ、差は大きくなります。逆に、完全雇用、こういった状況では、全産業がフル生産に向かえばギャップはゼロになる。こういう状況を示す指標としてGDPギャップ、政府はこれを定期的に発表しておりますが、この直近の数値について、内閣府事務方にお尋ねさせていただきます。

中村政府参考人 お答えいたします。

 二〇一一年十月から十二月期のGDPギャップでございますけれども、内閣府におきまして、マイナス三・四%というふうに試算をしているところでございます。

馬淵委員 今お答えいただきましたGDPギャップはマイナス三・四%、これは前期比、その前の期、七月―九月がマイナスの三・〇ですから、より悪化している、拡大しているという状況であります。

 すなわち、どういうことかといいますと、働きたいと思っている方々が十分に働くことができない、あるいは工場などの資産が十分に稼働していないということを意味しています。すなわち、この金融危機以降、日本経済はまだ立ち直っていないということを意味しています。

 一方で、世界経済は、これはもう先ほど来、総理、G8でもお話を、先ほどされましたが、世界金融危機は終わったか、いいや、とんでもない、新たな欧州債務危機というリスクが目の前に迫っています。

 こうした状況の中で、それこそヨーロッパ圏、ユーロ圏の失業率を含めて大変厳しい状況がある。これは少しパネルをごらんいただきたいと思います。

 このパネルをごらんいただきますと、ユーロ圏全体の失業率の推移、厳しい経済状況の深刻さが明らかであります。ドイツを除いてということになりますが、例えばスペインは二〇%を超えました。すなわち、四人に一人が失業という状況に近づいている。これはどういう数値かといいますと、米国の大恐慌に匹敵する数値になります。そして、ユーロ圏全体でも、御案内のように、ここに示していますように一〇・一%。これは昨年までの推移でありますが、こうした非常に厳しい状況が示されている。

 ユーロの経済圏というのは、世界に占めるウエートは二〇%です。すなわち、こうしたユーロ圏の問題が飛び火した場合には、アジア通貨危機どころではない、大変厳しい局面に立つことになる、このことを認識しなければなりません。

 だからこそ、私は、日本経済がデフレから脱却して景気が順調に推移する、このことが重要だと申し上げてきたわけであります。景気回復こそが、消費税増税のその大前提となる、日本経済に与える影響を最小化する、またさらには税収増に結びつけるための最大の条件である、このように申し上げなければならないと思います。

 今内閣府にお答えいただいたように、GDPギャップを抱える中で、デフレ下であります、円高も続いております。十分に回復していないという状況を考えれば、我が国においては、ここでも議論をされている消費税の増税、ここではしっかりと景気回復状況の確認、すなわち、法律においても弾力条項というものを認識しなければなりません。

 そこで、この弾力条項について、過去の歴史の教訓に学ぶということを少し確認したいと思いますが、これは、平成九年、一九九七年、消費税を三%から五%へ引き上げたときの話であります。

 このときには、金融危機や景気の急速な冷え込みということで、なかなか厳しい状況であると言われておりましたが、このときの景気に対する消費税のインパクト、これは昨年の五月三十日、当時の与謝野大臣指示のもとにつくられた内閣府の報告書、社会保障・税一体改革の論点に関する研究報告書で、消費増税と景気後退の関係について論じております。

 これについて、研究報告書でどのような結論を得ているか、事務方の方から説明をお願いします。

中村政府参考人 お答えいたします。

 昨年五月に公表いたしました研究報告書におきましては、最近の研究報告を踏まえまして、消費税増税は一九九七年から九八年の景気後退の主因であったとは考えられない、こういう分析をしているところでございます。

馬淵委員 内閣府、すなわち政府としては、九七年、このときの景気後退と消費税の関係というのに関しましては、これは、「「主因」であると考えるのは困難である。」このように結論づけられています。

 そして、この主因であるとは困難だと考える理由として、まずは、いわゆる所得の低下が消費にどういう影響を与えたかということについて、これは宇南山神戸大学大学院准教授の論文をもとに、所得の低下が消費に与えた影響というものは実は少ないんだ、こういうことから、今内閣府の説明にあった結論を導いています。

 当時は、九七年四月の税率引き上げによって、マイナスの所得効果は〇・三兆円、対GDP比で〇・〇六%だと研究の中で明らかにされています。すなわち、所得の低下が消費にはほとんど影響はなかった、こういうことを政府としては内閣府のレポートの中で一つの結論として導いているわけでありますが、一方で、実は宇南山論文には二つの検証がありました。もう一つの検証が入っています。

 それは何かというと、消費増税前後のいわゆる消費の変動であります。これは駆け込み需要と反動減ということであります。これに関しては、当時、宇南山先生の論文の中でも明らかになっているのは、駆け込み需要並びに反動減で一〇%以上の変動があったとされています。消費税率の引き上げが二ポイント、三%から五%の二ポイントの引き上げ、さらには徹底した周知期間がとられていました。にもかかわらず、増税前後での変動の幅一〇%以上というのは、これは看過できない、無視できない水準であるとしています。景気への大きな影響を与えないためにも、消費税引き上げの際の十分な移行措置の必要性ということを宇南山先生はこの論文の中でも指摘をしている。

 内閣府の研究報告では、実はこの二つの検証のうちの一方の、ある意味都合のいいところだけをとって、消費増税が景気の影響の大きな主因ではないとされていますが、一つ明らかに言えることは、私は、こうした消費増税のインパクトというものが変動となって起きるという事実については、しっかりと受けとめなければならないということだと思います。

 そしてその上で、政府、国家というものは、まさに経済は生き物です、経済をしっかりと安定させるということが最大の使命でもある。そのことを考えれば、こうした景気の変動、移行措置ということについては十分に施策を打っていかなければならないのではないか、私はそのように考えるわけであります。

 このように、日本経済状況は、まだまだ全治三年の中で完治し得ていない状況、また世界の経済状況も、欧州債務危機が迫りくる中、さらには消費増税のインパクトというものがどういう形で起きてくるかという過去の教訓を踏まえた上で考えると、実は私は、ここで経済状況の好転を確認する附則の十八条、政府はこれはあくまでも目標値だとおっしゃっておりますが、党内議論の中でもありましたように、弾力条項として強く認識すべきではないのかということを、今私が申し上げたような議論の中で、論旨の中で、私は総理のお考えを改めてお尋ねさせていただきたいというふうに思います。

野田内閣総理大臣 委員御指摘のとおり、平成二十一年度の税制改正法の百四条、そのときの趣旨なども踏まえて、あるいは党内の議論などを踏まえて、今回提出している法案の附則の十八条がございます。

 先ほど、九七年当時の消費税引き上げ時のいろいろな影響のお話がございました。これは消費税だけではなくて、エコカー減税でも何でもそうですが、何らかの制度を導入しようとすると、いわゆる駆け込み需要とか反動減はあります。そういう移行の過程等々もよく注意深く見ながら、特に今は世界経済もいろいろ下振れリスクがありますので、国内の経済情勢、世界の経済情勢等々をよく勘案しながら対応をするというのが基本だというふうに思います。そのことを十分に頭の中に入れながら対応すべきであるという御指摘は、しっかり踏まえていきたいというふうに思います。

馬淵委員 今、総理の御答弁は、すなわち、条文の中には、これは総合的に勘案するとなっています。さらには、新成長戦略の数値目標についても、達成できない、そこで自動的にとまるようなトリガーではないかもしれないが、「停止を含め所要の措置を講ずる。」という、これはぎりぎりのところで党内議論でも修正をいただいた部分だと思いますが、その意思としては、弾力条項のように、経済環境に対して厳しく執行というものを見るんだということを言っていただいた、私はそのように受けとめました。

 すなわち、トリガーではないかもしれないが、国民経済を十分に考えて、変動というものを最大限、最小化することが政府の責任である、このようにお考えだということで理解してよろしいでしょうか。改めての御答弁をお願いします。

野田内閣総理大臣 これまで、政権交代以降、リーマン・ショックの影響等があって厳しい経済情勢でしたが、一昨年の九月以降、四四半期連続プラス成長をなし遂げる等々の努力もしてまいりました。そして、昨年の九月に私の内閣が発足をしたときも、震災の復興と原発事故との戦いと経済の再生、これを重要な政策課題として位置づけております。

 そして、これからもなお一層国民に御負担をお願いする、そういう法案の御審議をいただいている中で、これは社会保障と税の一体改革でありますが、今御指摘いただいている経済の再生ということも、あるいは行政改革も含めて、包括的な改革だというふうに受けとめさせていただいております。

馬淵委員 今、政府のお考えということで総理はいろいろおっしゃいましたが、繰り返しになりますが、弾力条項ということ、すなわち、その意味をもってこの附則の十八条がつくられたんだという経緯をしっかりと重く受けとめていただいていると私は認識をいたしました。

 弾力条項というとすぐ、当時の党内議論でございますが、いや、それは、数字で縛られるとそれこそ増税できないじゃないか、こんな意見もありましたが、私は、これはむしろ全く逆だと思う。

 逆に、弾力条項というのは、税の引き上げの先送りを意味するのではなくて、新成長戦略を実行して経済をよくするんだという政府のメッセージであります。政府の強い意思を、日本を元気にするという強い意思を示すわけでありますから、私は、その原点に立ち返って政策を実行していただくことによって、政府の政策実行を見る市場、すなわち、企業や家計が政府を信頼して積極的に投資を行うという循環が生まれるということを申し上げたい。決してマイナスの要素ではないんだということを改めて確認したいというふうに思います。

 その上で、私は、だから、繰り返しになりますが、この名目三%、実質二%というのは、政府と企業、家計との信頼関係を築くための第一歩になるんだという重要な意味が込められていると申し上げたいと思います。

 そこで、では、この二%、三%の達成の話なんですが、先ほど、実質二%成長率のことに関しましては、内閣府の答弁で、GDPギャップ、これがマイナス三%以上という答弁をいただきました。さらには、ことしの一月の内閣府の中長期試算では、成長戦略シナリオで描かれる潜在成長率、これは一・九%という数値が置かれております。デフレから脱却して、政府が着実に経済成長、新成長戦略に向けて施策を実施すれば、GDPギャップが縮小する過程の中で実質二%程度の成長は十分に可能である、この数値はそれを意味しているというふうに私は理解をしております。

 一方で、名目三%の達成ということであります。これをどのように達成するのかということをお尋ねしていきたい。

 附則の十八条の中には、これはデフレ脱却を明示しています。「物価が持続的に下落する状況からの脱却」、このように明示をされているわけであります。これも総理にお尋ねしたいんですが、では、どのようにデフレ脱却を行うと政府は意思を持っておられるのか、お答えいただけますでしょうか。

野田内閣総理大臣 これはまず、一昨年六月に財政運営戦略とともに同時に閣議決定した新成長戦略というものがございます。これを加速していくということと、震災後、いろいろな環境の変化もありますので、今、その検証を行わせていただいております。

 検証の結果、きのうもちょっと御議論がありましたけれども、やっていることは九八%やっているんです。ただ、成果については厳しく見ている。成果を厳しく見ることによって、年央にまとめる日本再生戦略に生かして、それをもとにきちっと成長を促していくというのが基本的なラインでございます。

 その中は、これはもうあえて余り詳しくは申し上げませんが、ライフイノベーションであるとかグリーンイノベーション等々の柱があります。これらの政府の取り組みとあわせて、多分この後いろいろ御議論があるかと思いますが、日銀と緊密に連携をしながら、日銀には果断な政策を期待しながら、しっかり連携をしていくというスタンスのもとで対応していきたいと考えております。

馬淵委員 新成長戦略は、先ほど、実質のところにも当然それは影響するものですから、やっていただくということで。

 今、日銀のお話が出ました。まさにこのデフレ脱却は日銀の金融政策が中心となると私は思っております。

 その中で、二月の十四日、これも予算委員会や財金でもさんざん議論されましたが、バレンタインギフトと呼ばれる、日銀のインフレ率一%めど、いわゆるインフレ目標、ロンガー・ラン・ゴールと称される、デフレ脱却の指標となるインフレ目標の明示、これを示した段階で、為替は円安に振れました、また、株高となりました。それまでの為替介入九兆円、こうしたことを行った効果というのも、確かに今まで確認はできたかもしれないが、はるかに大きな効果を示したと言えるのではないかと思っています。

 こうした金融緩和策、しかしながら、日銀の年度内の追加的な金融緩和策が行われなかったゆえに、実は、欧州債務危機の再燃より以前に円高方向に振れ、また株安という方向に振れ出してしまいました。すなわち、今の枠組みでは、今の日銀、政府、連携を緊密にとおっしゃっていますが、この枠組みでは企業や家計の信頼を得るに至らない、これが実は明らかなんじゃないでしょうか。

 先週、前原政調会長のこの委員会での質疑にもございましたが、日銀総裁にデフレ脱却に関連した質問をされました。

 これを見ると、白川総裁は、金融政策の効果には時間的なラグもございます、さまざまな構造政策、取り組みが不可欠でございます、こうおっしゃりながら、したがって、そういうことを抜きに、例えば金融政策だけで行ってまいりますと、今度は金融市場に不測の事態が生じてくると。すなわち、白川総裁は金融政策だけでは難しいと答弁されておられます。前原政調会長も、若干十分ではない気がしますが仕方がないと思う、こういう発言をされておられますが、私は、このような状況においてデフレ脱却をするには、やはり今の現状の枠組みではだめなんだ、新たな環境整備が必要ではないかというふうに考えます。

 それは日銀法の改正です。デフレ脱却という大きな目標を政府と日銀が共有をする、そして日銀の役割として明示することを、政治として、極めて重要な役割として果たしていく。日銀がデフレ脱却を目指す、物価の安定を目指す、これを法律に明示的に示し、さらには、安定目標に向けて具体的に金融政策を実行していくことを求める、また、物価安定に断固たる日銀の行動をとるということを担保してもらうためにも、総裁の解任権などを条文化する。デフレ脱却に向けて、私は極めて重要な作業だというふうに考えます。

 こうした日銀法の改正、単にこれは銀行法、中央銀行の問題だということではなくて、この社会保障と税の一体改革がまさに経済の問題を中心に据えるということであるならば、デフレ脱却が今日においてなかなかに進まない状況は、もうこれは既に十年を経過しています。このような状況の中では、法律改正で明確に日銀がデフレ脱却に向けて行動ができるような、そうした取り組みが必要ではないか。私は、それこそが、むしろ附則の十八条の経済状況の好転に大きく資するものではないかというふうに申し上げたいと思います。

 総理、今申し上げたような論旨で、社会保障と税の一体改革の成立と同時に日銀法の改正が求められる、これは一部野党の中にもそういった声が上がっているように聞いておりますが、まさにそういったことが求められるという考え、これについては総理はいかがお考えでしょうか。

野田内閣総理大臣 日銀と、デフレを脱却しなければならないという問題意識を強く共有することが私は大事だと思います。

 そのために、これまでも日銀の金融政策決定会合には政府から、内閣府、財務省から政務三役が出席をしておりますし、月例経済報告等、日銀から政府の会議に来られることもあります。そのコミュニケーションだけでは足りないと思いましたので、最近は、私はバイで、直接総裁と膝突き合わせて日本経済の現状等々、議論をする場をつくるように試みております。

 そういう努力をしながら、二月に、先ほど委員が御指摘があった、中長期的な物価安定のめどというものをみずから日銀がつくられたわけでございますから、当面、それを実現するための努力というものを私は期待をしたいというふうに思いまして、まだ日銀法改正云々という段階ではないというふうに私は思っております。

馬淵委員 では総理、逆に、どういう段階になれば日銀法改正というものを真剣に考えるべきときなんでしょうか。お答えいただけますか。

野田内閣総理大臣 果断に、今の経済の現状を見ながら金融政策を適切適時に行うかどうかということをずっと見ていくことが大事だというふうに思います。そのためのコミュニケーションを図っていきたいというふうに思います。

馬淵委員 今は早いと。いつなのかと私はお尋ねしたら、今は、果断に、適宜政策をとっていただくのを緊密に連携をとりながら見ていくとおっしゃいましたが、私がお尋ねしているのは、どういう状況ならばこの中央銀行の法律改正ということを考えるべきときなのかとお尋ねしているんです。お答えいただけますか。

野田内閣総理大臣 私は、日銀の独立性等々、これは論点がたくさんあると思います。したがって、一つは懸命に取り組んでいるかどうかということを見ることと、そういう多様な論点をしっかり議論することが大事だと思います。

馬淵委員 総理、改めて確認です。

 懸命に取り組んでいるかどうかということをどの期間まで確認するということでしょうか。その取り組みをいつまで確認し続けなきゃならないんでしょうか。

 少なくともこの十年間、デフレ脱却が十分になされなかった現実があります。先ほど申し上げたように、日銀の二月十四日の判断によって間違いなく前に進んだこの円安、株高という、まさに金融政策の効果が確認をされている中で、今おっしゃったのは、緊密な連携としかおっしゃっていません。

 一体どこまでそれを見きわめるおつもりでしょうか。消費税増税まででしょうか。そうお答えいただけますでしょうか。

野田内閣総理大臣 これは、毎月、金融政策決定会合をやって、その都度判断をされています。その累次の積み重ねを見ていきたいというふうに思います。

馬淵委員 本日、金融政策決定会合が行われております。したがって、きょうは総裁、午前中お見えになれないということをお聞きしております。

 今お話がありました。金融政策決定会合でしっかりと日銀の金融政策の実行、実施を見ていくということで、これは、その都度にそういったことが判断されるタイミングが訪れるんだというふうに私は理解をいたしました。

 今申し上げたように、日銀による金融政策、これは極めて重要なデフレ脱却のための一歩であるというふうに思っておりますが、日銀法改正というものも、私は与党内でも十分に議論を行うべきだというふうに思っております。そしてこれは、ひいては国民生活の安定を図る重要な要素であるということを申し上げたい。

 そして、国民生活を考える上においては、まさに民主党が政権交代前から申し上げてきた、国民の生活第一、このことを掲げるという中でいうと、実は今回のこの議論の中でも、低所得者対策、冒頭にも申し上げました、これについても少し触れたいと思います。

 低所得者対策については、これも十七日の政調会長の質疑の中で、軽減税率について野田総理のお答えがございました。「いわゆる逆進性対策の中で、軽減税率を効果的に使えないかという御議論もあります。」と。この発言が、マスコミは大きく取り上げて、軽減税率導入か、前向きだ、このように報じられました。

 一方、同日の民主党の税制調査会の役員会では軽減税率を導入しないと確認、藤井裕久税調会長は、そういう立場、軽減税率導入はとらないと切り捨てたとも報じられております。

 さて、確認でありますが、こうした状況の中で、低所得者対策というのは本当に重要です。貯蓄があったり、あるいは所得が高ければ、取り崩しや、銀行からお借りすることができる。あるいは、そうでない低所得者の方々は所得を圧迫されるというわけであります。この中での低所得者対策の存在というのは非常に重要である。

 そこで、軽減税率は導入しないという税調の中での議論があったということでありますが、この軽減税率については、実は財務省でも十分に、これが間違った政策だということを御理解されていると私は思っています。

 財務省は、九月八日、昨年でありますが、財政制度分科会の中で議論を行っております。ここでIMFから、マイケル・キーン・シニアアドバイザーからの報告を受けておる。

 このパネルに示しておりますのはその資料をまとめたものでありますが、一番下に要約として書いております。単一税率を維持すべきだということ、そして、対象を限定した歳出措置、軽減税率などよりもよい方法だ、このように結論を一番下に書いております。

 そして、こうした状況の中で、日本が仮に軽減税率を行った場合にはどういう結果になるかという試算がこのグラフであります。

 これは、向かって右側は所得の上位ということですから、高所得者層です。そして左側が所得の下位、低所得者層。黄緑は、仮に単一課税一五%とした場合の税負担です、九・三%。高所得の方は四・五%。

 ここで、食料品を軽減税率一〇%にした場合、では負担はどうなるのかというと、この真ん中の緑です。これは九・三%、低所得者の方々。実は単一税率と変わらないんですね。そして、高額所得者の方々は四・六%と少しだけ上がります。

 さらに食料品の軽減税率を下げます。五%に下げる。その場合は、これは紫ですが、低所得者の方が九・二、高額所得の方は四・七。

 実は、軽減税率というのは低所得者の対策にはならないということは明らかなんですね。そして、こうしたことは、実はヨーロッパ、諸外国ではもう既に実例の中で十分に把握をされています。

 マイケル・キーン・アドバイザーは、このヒアリングの中で、他の地域における事例から得られる主要な教訓、これはヨーロッパの教訓ですが、この公平性という目的を達成するためには複数税率を用いるよりもよい方法、これは下にありますように、限定した歳出措置、すなわち給付つき税額控除です、これがよりよい方法であるとして、そして、過ちを犯すと修正困難だ、こうおっしゃっています。

 この意味は何かといいますと、一たび軽減税率で下げてしまったらもう上げられないんですね。イギリスは食料品をゼロ税率にしてしまいました。ゼロ税率にしてしまったがゆえに、これはこの棒グラフと同様に、低所得者の方々に決してプラスにならない状況が起きています。しかし、もうこれは変えられないとおっしゃっている。政治的な自殺行為、このようにマイケル・キーン・アドバイザーもおっしゃっています。

 さて、総理、こういうことは、まさにこの給付つき税額控除が、我々党としてもしっかりと定めた方向であります。軽減税率についての御答弁、報道では前向きとなされましたが、私は、党で決めた、あるいは党で議論をしたことを踏まえた閣議決定のこの法案の中で出されている給付つき税額控除の検討というものについては当然ながら変わらないものであるというふうに思っておりますが、総理、改めて確認です。

 この低所得者対策に対して軽減税率の導入というのは対策にならないということ、これを御認識されているかどうか、お答えいただけますでしょうか。

岡田国務大臣 私は、政府の中でこの問題の責任者でございます。

 委員御指摘のような問題が、複数税率、軽減税率にはあるということと、それから、加えて、やはり何を対象にするかということで、ここでまたいろいろな議論があり得る。これは、それぞれの国を見ても混乱があるというか、必ずしも説得的でない。加えて、インボイス方式を導入することが必要になる。そういうことになれば、これは中小企業者の皆さんは、こぞって団体、反対している、そういうデメリットがあるということでございます。

 ただ、この委員会の中でも、複数税率が望ましいという立場で御議論される方もいらっしゃいますので、この委員会での議論をしっかりと尽くしていく中で、我々の基本的考え方は今委員がおっしゃったとおりでありますけれども、違う意見にも耳を傾けながら、いい着地を目指していきたいと思っております。

馬淵委員 議論に耳を傾けることを私は否定はしておりません。ただ、認識の確認なんですね。軽減税率は低所得者対策にならないことは、政府としても、これは自明であるということは、私は皆さん認識されていると思う。そして、この閣法を出されたわけでありますから、少なくとも給付つき税額控除、そしてこれを実現するためにはマイナンバー制度と歳入庁の創設というものは一体となっていなければなりません。

 そこで、そのことについても、最後、時間がありませんが、確認をさせていただきたいと思います。

 歳入庁の設置、これは、もともとは消えた年金の後の未納問題、これに契機を発したものでありました。そして、歳入庁を設置することによってこの未納を削減することができるということを私たちは言い続けてきた。この歳入庁設置の問題に対しては、政府は、四月二十七日、税と社会保険料を徴収する体制の構築についての作業チームの中間報告を出されました。そこで、類型一から類型三までの徴収体制のイメージが示されたんですね。

 これを見ると、類型一の徴収業務統合というのは、これは、徴収は一緒だけれども給付は年金の機構の側の組織の方でやるんだよということです。これは一体となっているという前提だと思いますが。類型二は全業務統合です。そして、問題は類型三。これは、連携強化ということで、現状の国税庁と年金機構、変わらない状況なんですね。

 この類型三が議論に入っていることから、マスコミは一斉に、歳入庁先送り、このように報じました。また、このようなことがもし現実のものとなって、歳入庁創設が先送りされるような骨抜きは絶対にあってはならないと私は思っています。

 その上で、この歳入庁の設置、言いかえれば、私は、少しここは言い過ぎになるかもしれませんがあえて申し上げれば、先ほど申し上げた軽減税率の導入は、歳入庁の創設を必要としないということになりかねない、そして、歳入庁の創設を拒否したい、避けたがっている一部の霞が関もあるのかもしれない、どこの役所とは申し上げませんが。

 そのような状況の中で、仮に軽減税率に前向きになる、あるいは歳入庁創設が先送りになるというようなことがあった場合には、それこそ社会保障と税の一体改革とはほど遠い改革になりかねないんですね。

 私は、この点について、改めて総理に確認をさせていただきたいと思いますが、この一体改革の名にふさわしい改革を実現するためには、歳入庁創設というものを決して先送りにしてはならないと思っています。したがって、具体的なスケジュール、これは例えば消費税引き上げまでに実施をするんだ、こういう御決意をお持ちかどうかということを、総理、改めてお尋ねをさせていただきたいと思います。

岡田国務大臣 この歳入庁も、私のもとで検討させているところでございます。中間報告は出ましたが、そのことが一定の結論の方向性を出したものではございません。今、それぞれの論点についてしっかりと議論をしているところでございます。

 一つの論点は、やはり国税当局と、それから国民年金の保険料の徴収、そこでどのぐらい対象がオーバーラップしているのか、こういう問題がございます。従来国税庁が把握していない所得層のところまでカバーするということになった場合に、国税庁を中心にやるとして、どういう体制の中でやっていくのかということについて、これはきちんとした答えが必要だというふうに思っております。

 そのほか、やはり年金制度そのものを、確実にもらえる、国民年金はもらえるという状況をつくり出していけば、そういった保険料を払わないということはなくなってくるわけであります。そもそも我々は、そういう中で、税負担による最低保障年金ということを唱えたわけですから、こことの関係をどう考えていくのかという問題。

 それから、もう一つだけ申し上げさせていただくと、やはり……(馬淵委員「副総理、時間がないですから」と呼ぶ)しかし、答えはちゃんとさせてください、それは。いろいろおっしゃったわけだから。

 それから最後は、今若者の間にあるのは、いや、いざとなれば生活保護を受ければいい、それと水準は変わらないじゃないか、こういう議論があるわけで、ほかの制度との整合性というか、ちゃんと払った者が得をする、ちゃんと得られる、そういう仕組みを、これは年金制度全体の中で考えていかなくてはいけない問題だというふうに考えております。

馬淵委員 いずれにせよ、ここでの議論は重要だということは、私は否定をいたしません。政府は、常に危機管理ということに目を向けなければならない。経済の問題、あるいは低所得者の問題、国民の生活の安心、これに対してもしっかりとした危機管理の目を持って取り組んでいただくことを最後にお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

中野委員長 これにて馬淵君の質疑は終了いたしました。

 次に、階猛君。

階委員 民主党の階猛です。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございました。

 私も、この社会保障と税の問題について、地元でさまざまな人と意見交換をしております。ミニ集会も二十回程度開きました。

 そうした中でよく出てくる意見、消費税を上げることについては、その必要性はわかる、ただ、それを納得できるところまではいっていない。なぜ納得できないかというと、私の地元岩手は被災地ですから、復興をまず進めてほしいという意見もあります。それ以外にもいろいろありますけれども、やはり増税するんだったら行政改革をしっかりやってほしい、この意見が非常に多いです。

 具体的に言うと、やはり増税するということは、これまでよりも多く税収が入ってくる。しかし、入ってきた税収が、あたかも穴のあいたバケツに水を注ぐがごとくどんどん漏れていく、こういう状況になるんだったらとても納得できませんね。この意見が多数を占めております。

 そこで、きょうは野田総理に、この行政改革に関する総理の思いをぜひお聞きしたいと思います。

 まずお聞きしたいのは、政治改革、行政改革、そうしたことに対して、税と社会保障の一体改革と同様、総理は不退転の覚悟で臨むお気持ちがあるのかどうか、この点をお聞かせください。

野田内閣総理大臣 行政改革、政治改革とこの社会保障と税の一体改革は、包括的に進めていかなければならない改革だと思っております。社会保障と税自体にもいろいろな論点があります。でも、国民の皆様の声は、先ほど委員御指摘のとおり、まずは隗より始めよをちゃんとやっているかどうかをよく見ていらっしゃると思います。そういう声にしっかりと答えを出していくことが、この議論を進めていく上では不可欠だと思います。

 ただし、行政改革も政治改革も、そういう世論があるから特に馬力を入れてやっていかなければいけないと思いますが、一過性のものではないんです。政権交代以降、行革は我々やってきたつもりです、事業仕分け等々。これまで以上にその取り組みを強化して、そしてそれについての評価を得たいというふうに思いますので、これは一過性じゃなくて不断の努力でやるテーマでありますけれども、その国民の声に目に見える形で答えを出せるように努力をしていきたいというふうに思います。

階委員 非常に大事なお話でありまして、よく身を切る努力をしろと言います、増税の前に。その身を切る努力というのは確かに大事なことなんですが、一過性のもののようにも聞こえます。また、身を切って増税した後、その後はどうなるんだ、そういう気もします。

 なので、今、私も党の方で行政改革調査会の事務局長という役職を拝命しておりまして、党の方では行政改革実行法案というものを議員立法で提出しました。

 ちょっとパネルをお願いします。

 まさに、我々が目指す行政改革は一過性のものではありません。「基本理念」という左上の部分を見ていただきたいんですが、まずは、「国民本位の行政の実現」ということで、よらしむべし、知らしむべからずではなくて、親しみやすくわかりやすい行政を目指す。それから、「行政に係る資源配分の最適化」、これは単なるスリム化ではなくて筋肉質にしていく、そのことによって効果的かつ効率的な行政サービスを提供する。さらに、「新しい公共の構築」ということで、民間の力を活用して担い手をふやして、公共サービスの質の維持向上を図る。こういう理念に基づいて、右上の方にありますけれども、集中改革期間は三年と定めますけれども、その後も行政構造が自律的、持続的に改善、刷新されていく体制構築を目指す、こういう理念に基づいて我々は行政改革に取り組んでいるわけです。

 この重い行政改革、民主党の行政改革調査会、昨年の十二月十四日でしたか、野田総理もおみえになりまして、第一回の総会が開かれました。その場で野田総理は、党の方から政府のお尻をたたいてほしい、このようにおっしゃられました。そして、初代の会長、お隣にいらっしゃる岡田副総理、二代目が、きょうはいらっしゃいませんけれども、中川特命大臣、そして三代目は、今委員長席に座っていらっしゃる中野先生です。

 私が申し上げたいのは、この重い行政改革を進めるのに、確かに皆さん有能な方ですから、政府の方としてもほかの地位にもつけたいというのはあるでしょう。ただ、私としては、ちゃんと行政改革を総理が進めていくんだというのであれば、トップはかえない方が総理の本気度というのがより国民に伝わると思いますが、その点、いかがでしょうか。

野田内閣総理大臣 階議員におかれましては、行革の調査会の以前の党の決算・行政監視の部門の座長を含め、一貫して実務的に我々の行革の考え方、取りまとめの中心になっていただいていることに敬意を表したいと思います。

 その上で、調査会の会長がかわってきていることについての御指摘がございました。

 ただ、よく見ていただきたいんですが、最初が岡田副総理、その後、中川大臣、それから、中野先生なんですね。いずれも閣僚級の人たちであって、岡田さんは行革担当を政府でやっていらっしゃいます。中川さんは公務員制度改革の担当をされている。そういう中での人事の配置であって、重要視しているんです。だから、その分、重要視しているから、階さんに事務局長をやっていただき、あるいは閣僚経験のある蓮舫さんなどがサポートをしているわけで、閣僚の人事の関係で異動はありましたが、行政改革を重視している体制であるということは、これは一貫をしているということをぜひ御理解いただきたいというふうに思います。

階委員 はい、わかりました。

 それでは、この行革実行法案、これを早く成立させたいんですけれども、このねじれ国会の中でそんなに簡単には成立しないということはわかっております。ただ、そのような場合も想定して、あの税と社会保障一体改革の大綱において、法案成立前から閣議決定ベースでやれるものはやるということを明記していただきました。

 そうであるならば、行革実行法案に定めた項目については閣議決定ベースでなるべく早く進めていく、この覚悟をお示ししていただきたいと思います。野田総理、いかがでしょうか。

岡田国務大臣 私からも階委員に、大変熱心に取り組んでいただき、本当にありがとうございます。

 党の時代に調査会長として、特に若手の皆さん、階さんを初めとする若手の皆さんと意見交換をさせていただいたことは、今、私の非常に大きな財産になっております。党と連携をよくして行政改革を力強く進めていきたいというふうに考えております。

 今の御指摘につきましては、既に行政改革実行本部を設けております。そして、行政構造改革会議は、これは法律に基づいて設置をするものでありますが、それの前段階として、京セラの稲盛名誉会長を初め、各界の非常に力のある皆さんに行政改革懇談会というものをつくっていただいて、そこでさまざま行革についての御議論をスタートさせていただいたところでございます。

 そのほか、最近ですと、独法の宿舎の見直しとか公益法人などへの会費の支出の見直し、これはこの法案の中にも書いてあることでありますが、既に実行したところでございます。

 そのほか、国家公務員の総人件費の抑制、これについても、新規採用の抑制とか、それから退職給付の官民格差四百万、これの是正とか、あるいは年金の職域加算部分をどうするかという議論とか、あるいは公務員の給与体系、民間とかなり違いがあるということがだんだんわかってまいりました。特に、民間では五十代ぐらいで大体ピークを迎えてそこから下がっていく。公務員はそうはなっておりません。

 そういうことについての検討とか、さまざまなことを今私のもとで、あるいは総理のもとで進めさせていただいている。できたものから次々実現していきたい、こういうふうに考えております。

階委員 具体的に、閣議決定ベースで早く進めていただきたいものを幾つか取り上げたいと思います。

 この実行法案のポイントに書かれておりますが、左下の方に「基本方針」ということで項目が列挙されております。

 この法律の大事なところは、岡田副総理には別の委員会で申し上げましたけれども、工程表をつくって、何をいつまでにどこまでやるのか、これを明確に示すことによって、行革がちゃんと進んでいるかどうか、これを国民に理解していただける。確かに、我々は今までも行革をやってきました。しかし、計画を立ててそれを着実にこなしているという印象が与えられてこなかった。だから、何となく、結果が出ていても伝わらない。

 そういうことではなくて、工程表をきちっと定めて、それを着実に実行していく体制をつくるんだ、これで我々は行革をやっているということを示していきたいわけです。

 その中で、工程表でまず定めていただきたいのは、国有資産の処分です。五千億以上五年間で処分するということを法案の中に書き込んでおります。これについては岡田副総理も十分御承知だと思います。この点について早急に定めていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

岡田国務大臣 国有資産の売却、スリム化は非常に重要なテーマでございます。したがって、工程表をつくって順次やっていくということは非常に重要なことなので、取り組ませていただきたいと考えております。

 ただ、その前に、実際どのぐらいの可能性があるのかということについて、ある程度見通しをつけなければなりません。今委員は五千億という数字を挙げられましたが、あるいはもっとあるかもしれません。そういうことについて、もう一度党の御協力もいただきながらしっかり洗い出しをして、そしてそういった工程表をつくっていきたい。つくるだけではなくて、それを順次実施していきたい、そういうふうに考えているところでございます。

階委員 それから、天下りの問題です。

 これは、政権交代後、あっせん禁止はやりました。独法については、公募制を導入して成果は上がっています。しかし、公益法人を初め政府関係法人については、先日も、AIJの関係で厚生年金基金に多数の公務員OBが再就職しているという問題が発覚しました。

 この政府関係法人の天下りの問題について、我々の法案では二十六条というところに規定を設けておりますけれども、これについても早急に手だてを講じるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

岡田国務大臣 まず、AIJは、これは公益法人ではないという、ちょっと範疇が別の話になります。

 公益法人というと、財団、社団、こういうことになるわけですけれども、全ての財団、社団に網をかけるというのは必ずしも適切ではないというふうに思います。それぞれの活動の自由というものもある。政府が一方的にそれに対してブレーキをかけるというか規制するということについては問題がある。

 そういうことになりますと、やはり、政府なり独法から一定額の予算が行ったりしている、そういうものについてどういう規制をかけていくか、こういう問題だと思います。

 しっかりとそういったところを整理して、そういったことがないように対応していきたいというふうに考えているところでございます。

階委員 それから、これもすぐにできると思うんですが、無駄の削減に貢献した官僚あるいはそのチームについては人事評価で配慮していく、この仕組みをすぐつくるべきだ。これも法案には盛り込んでおります。この点、いかがでしょうか。

岡田国務大臣 この点については、ある意味では既に対応されておりまして、そういうことについて評価をすべしという通達も出しているところでございます。

 ただ、私、考えますと、やはりそもそも公務員における評価というものをどう考えるかという、もう少し大きな問題として議論しなければいけないんじゃないかというふうに思います。

 これは、先ほど申し上げましたように、民間との比較で、給与カーブとかそういう議論をしておりますと、年功序列じゃなくて、やはり実績をきちんと評価して、その上で、よくやっている、優秀な人にはきちんと処遇する、そうでない人はそれなりに処遇する、こういうことをきちんとできなければならないわけであります。

 そういう評価システムというものをどうつくっていくかという中で、おっしゃるような、行革に対してあるいはコスト削減についてしっかりと成果を上げた、それを評価項目の中に位置づけてやっていく。その根本の評価のところが、評価に基づく人事というところがまだ十分ではないものですから、そこまでさかのぼってしっかりとした考え方を打ち出していかなければいけない、そういうふうに考えているところです。

階委員 行政事業レビューシートというのを我が政権で導入して、政府がやっている全五千四百ですか、そういう事業について、一個一個、目的を達成しているか、お金の使い道がどうなのか、チェックできるようになりました。これは大変な成果だと思います。

 しかし、結果が出てから、決算が出てからチェックする、これも大事なんですけれども、もう一つやらなくちゃいけないのは、予算を執行する際に不透明な随意契約などで無駄遣いがされていないかどうか、つまり発注段階でチェックしていく、そういうレビューもしなくてはいけないと思います。

 きょう、私の隣に藤田議員が座っていますけれども、調達改善計画というのを政府の方に御提言しました。これは大変画期的なことでございまして、これが達成されているかどうかを見ていけば決算を待たずして不用額がどんどん出てくる。そして、その不用額は、財政再建にも充てられるし社会保障にも充てられる。こういうこともぜひ早急に取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

岡田国務大臣 この行政事業レビューというのは、各省が自主的に取り組むということで、私は政権交代の非常に大きな成果であるというふうに思います。そして、その中の公開プロセスについては、これは六月から、各省庁、始めるということになっております。

 いずれにしても、若干、まだ国民の中にこれは定着していないというか、知られていないというところがありますので、これはいかに重要なことかということをしっかりとPRしていきたいというふうに思います。

 同時に、この結果を概算要求に盛り込んでいく、そういうことも、もちろん、各省庁は当然そういったことは行うわけですけれども、それを後押しできるようなことを我々としてもやっていかなければいけないというふうに考えております。

 それから、もう一つだけ、今言われた政府調達については、まさしく党の方で各省庁のヒアリングをしっかりやっていただきまして、そして、いいことをやっている省庁、効果的なことをやっている省庁の事例を他の各省庁に示して、そして、なるべく政府調達において無駄がないように、そういう結果を出していただいたことに対して心から感謝申し上げたいと思います。

 我々がそれを受け取って、しっかり、それが一時的なものに終わらないようにやっていきたいと思いますが、党においてもさらに御協力をいただければ大変ありがたいことだと思っております。

階委員 野田総理にもぜひお伺いしたいんですけれども、私、政権交代直後、政務官になってからずっと、国家公務員の総人件費二割削減のテーマに取り組んでまいりました。今もやっておりますけれども、これをやっていくには、今ようやく一割削減まで来ましたけれども、今の人事院勧告制度のもとではこれ以上はなかなか厳しいと思っています。

 したがって、今、国会でまだ滞っていますけれども、公務員制度改革関連法案、これを何としても成立させていただいて、そして、オープンな場で、労使交渉で被用者の理解を得ながら、国民の理解を得られるような、そういう形で人件費の削減を計画的に進める仕組み、これをつくりたいと思いますが、ぜひ、公務員制度改革関連法案成立に向けての総理の決意をお願いします。

野田内閣総理大臣 階委員御指摘のとおり、国家公務員の総人件費、何とか一割削減までは持ってきました。ただ、目標としていた二割削減に持っていくには、今、法案提出をさせていただいている公務員制度改革の関連法案の御審議をいただいて、その成立をさせることが不可欠だと思いますので、その実現のために全力を尽くしていきたいというふうに思います。

階委員 これで終わりますが、中野委員長におかれましては、行政改革調査会の会長もやっていただいています。したがって、この行革実行法案について、成立を図るべく、できればこの委員会でも審議の場が与えられればいいなというふうに思っていますので、ぜひそのあたりも御検討いただければと思います。

 きょうはありがとうございました。

中野委員長 これにて階君の質疑は終了いたしました。

 次に、中島正純君。

中島(正)委員 国民新党の中島正純でございます。

 これまで、消費税を増税することによってということで、委員会の質疑はきょうで四日目になりますが、これまでの三日間、増税することによって国民にどのようなメリットが生まれてくるのかという議論がされてきませんでした。ですから、私は、増税のメリットという観点から御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 最近のマスコミの世論調査などの結果を見ていますと、将来的に消費税の増税が必要と考えている人は五〇%を超えております。今国会で消費税の増税法案を成立させるべきと答えている人は約三八%、逆に、成立させるべきではないと答えた人が約五八%となっております。この結果を見ると、国民の皆様は、増税には理解を示しているが、早急に結論を出す必要がないと考えているようです。ですから、国民の皆様により理解を深めてもらうためにも、この委員会での審議時間に縛りをかけることなく、徹底的に議論していくことが重要だというふうに考えます。

 さらに、今回審議しているのは社会保障と税の一体改革ですから、増税の議論と並行して、増税によって社会保障がいかに充実するのかを国民の皆様に見える形できっちりとお示しをしなければならないと思います。

 それでは、年金、医療、介護、そして子ども・子育て、それぞれの分野について担当大臣に御質問をさせていただきます。

 最初に、年金について厚生労働大臣にお伺いをいたします。

 創設以来五十年以上が経過した年金制度でございますが、さまざまな問題も指摘されております。例えば、現在の年金制度のもとでは、低年金、それから無年金の方がいるという問題があります。こうした高齢者の生活をどう考えるのか。そしてまた、非正規雇用の若者は、短時間労働では厚生年金に加入できないために国民年金に加入せざるを得ないという状況で、将来の年金保障が十分でないという問題。そして、年金保険料の未納者の問題。これは、将来の年金の持続可能性に不安があることが大きな要因ではないかというふうに思います。

 これらの課題に対して、今回の一体改革では、税制の抜本改革とあわせてどのような年金改革を行おうとしているのか、また、高齢者と若者双方にとってどのようなメリットがあるのか、わかりやすく御説明をお願いします。

中野委員長 小宮山厚生労働大臣、中島君の持ち時間が少ないものですから、端的にお答えいただきます。

小宮山国務大臣 はい。

 今回の一体改革、全世代対応型ですが、高齢な方については、消費税収をもって低所得の方に加算をする、また資格の期間を短くするなどして年金を受けやすくするということをしています。また、若い世代に対しては、年金の国庫負担二分の一を恒久財源をもってやるということ、また特例水準の解消などで負担の軽減を図り、将来安定をするようにするということ、それから、今御指摘があった非正規雇用についても、社会保険の適用を拡大する、また産休期間中の保険料の免除をするなど、高齢者、若者両方にとって今回の改革でメリットがあるように考えています。

中島(正)委員 ありがとうございます。

 それでは、次に、医療と介護についてお伺いをいたします。

 今後、国民が安心して生活していくためには、どこに住んでいてもしっかりと医療と介護サービスを受けられることが必要であるというふうに考えます。今回の一体改革大綱では、医療と介護について具体的に踏み込んだビジョンが示されております。しかし、国民にはわかりやすく情報が伝わっていないのではないかというふうに思っております。

 まず一点目ですが、医療について伺います。

 今回の改革では、医師数や看護職員の増員、そして医療給付費の増額などが盛り込まれておりますが、具体的にはどのように改革を進めていくのか。また、改革により、患者、国民にとってどのようなメリットがあるのかについて、これが一点目。

 そして二点目には、介護です。

 介護についても、利用者数の増加、そして介護職員の増加、介護給付費の増加が盛り込まれておりますが、具体的に、介護サービスがどのようによくなるのかを国民にわかりやすく説明してください。

小宮山国務大臣 医療につきましては、一つは、まず、かかりつけ医を持っていただいて、まずは地域の病院で、その後、急性期、回復期、それぞれ機能を分化しまして、急性期のところのスタッフを増加させたいというのが一つ。

 それからもう一つ、これは介護ともかかわりますが、住みなれたところで在宅医療、在宅介護が受けられるように、地域包括ケアサービス、こうしたことをしっかり充実させたいと思っています。

 今回法案は提出していませんが、診療報酬、介護報酬の改定の中でこの在宅医療、在宅介護ということはもうスタートをしておりますし、また、医療については、二十五年度からの新たな医療計画の策定に向けまして、在宅医療の充実などということに力を尽くしているということで、今、予算措置、診療報酬の改定などで既に取りかかっておりますけれども、そうした方向で進めていきたいと考えています。

中島(正)委員 ありがとうございます。

 小宮山大臣、済みません、次に子ども・子育てについてお聞きしようと思っていたんですが、ちょっと時間がありませんので、それは飛ばしまして、最後に総理にお伺いをいたします。

 今回の一体改革では、社会保障が充実することによって日本経済にどのようによい影響が出るのか、また、日本がどのようによい方向に向かっていくのか、きょうはテレビ中継も入っておりますので、全国の皆様にも御説明をしていただきたいというふうに思います。約三分ございますので、よろしくお願いいたします。

野田内閣総理大臣 今回のいわゆる社会保障と税の一体改革というのは、若い世代も含めて、国民の皆様が社会保障そして財政について、これが維持可能だということで安心をしていただくための、そういう改革でございます。

 その安心を通じて、特に今、経済との絡みでどういうことが起こり得るか、これは期待も込めて申し上げなければいけないんですけれども、一つは、社会保障の充実、安定化を通じて、需要と供給の両面で経済成長に寄与していくことが期待をされます。

 具体的に申し上げますと、例えば、医療、介護、保育サービスの充実により、大きな潜在需要に応えていくことで雇用が創出をされる、その可能性があるというふうに思います。それからもう一つは、社会保障の充実、制度の持続性確保によって、老後の安心が確保されて過剰貯蓄が消費に回るなど、経済活動を拡大させる可能性があるというふうに思います。

 さらに、これは新成長戦略と絡めて包括的な戦略として持っていかなければいけないと思うんですが、ライフイノベーションという新成長戦略、医療・健康分野、これを柱とした戦略があるんですが、この分野を成長産業として促していくこと、まさにそれが経済成長に結びつく、そういう面があるというふうに思いますので、この一体改革は、社会保障と税の一体改革ではございますが、そういう経済再生もにらみながらの包括的な改革として全力を尽くしていきたいというふうに考えております。

中島(正)委員 ありがとうございました。

 いずれにいたしましても、今回のこの社会保障と税の一体改革の特別委員会は、国民の皆さんがよくわかったと言っていただけるぐらい徹底的に議論することが大切だというふうに思っております。

 六月二十一日の国会の会期にこだわることなく、徹底的に議論することを希望いたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

中野委員長 これにて中島君の質疑は終了いたしました。

 次に、茂木敏充君。

茂木委員 おはようございます。自民党の茂木敏充です。

 きょうの質疑、私は直球勝負です。変化球、チェンジアップは投げません。総理にも、ぜひフルスイングで打ち返していただきたいと思います。

 そして、きょうの質疑を通じて、私の方からも、前向きな提案、五つの具体的な提案、申し上げたいと思います。球は多少高目ですが、球種はストレートですから、しっかりと受けとめていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 きょうは、マニフェスト違反のことを追及するつもりは全くありません。ただ、国民の側から見ますと、民主党政権ですぐに消費税の議論がスタートして、増税法案がこの国会に提出されると誰も考えていなかったと思います。民主党の消費税に対する方針転換、これについて、私は、やはり国民に対するしっかりした説明が必要だ、このように思っております。

 そこで、まず、では、なぜ消費税の増税法案が必要と考えるようになったのか、そのことをお伺いしたいと思います。

 総理は、我が党の大島副総裁そして公明党の石井政調会長に対します本会議での質疑での答弁でも、四つの理由を述べています。一つは税収の大幅な落ち込み、二つ目に東日本大震災の影響、三つ目に少子高齢化社会の進展による社会保障費の増加、そして四つ目に欧州の金融危機の波及、この四つの理由を挙げていますが、総理、この四つの理由で間違いありませんか。そして、あえて、一番大きな理由、挙げるとしたらどれになりますか。

野田内閣総理大臣 一番大きな理由は、今三番目に御指摘をされた少子高齢化の進展、これは人口構成の大きな変化です。

 これはもちろん、わかっていたことだと思います。前から指摘をされておりました。でも、現実に私が政権を担当する中で、特に財務の担当をする期間が長かったんですが、その上で、少子高齢化に対応するためにいろいろな事業をやらなければいけないんですが、その財源を確保することが困難であるということ、そして、これはもう時間との勝負になりつつある。四番目の欧州の危機の問題も連動しますけれども、先送りできない状況になっているということが一番の原因でございます。

茂木委員 東日本大震災、これが発災したのは昨年の三月十一日です。それに対しまして、民主党での一体改革の議論、その前の年、一昨年の十月に本部を立ち上げて、検討をスタートしていると思います。欧州の危機も、確かにギリシャ危機はおととしから発生しておりましたけれども、欧州全体の危機として認識をされるようになったのは昨年の秋からだと思います。

 そういった意味で、私は、東日本大震災、それから欧州危機の波及、これ以上にやはり、総理が指摘をされた少子高齢化社会の進展に伴います社会保障費の増大、そして税収の減、これの方が大きな理由だと思います。

 ちょっと図の一をごらんください。

 これは数値的に見たものでありますけれども、平成二年、バブル崩壊以降の国債残高増加の要因、これを分析したものであります。

 図を見ていただきますと、純増分が四百二十二兆円あります。そのうち、数字的に一番大きな要因、これは右側の税収の減少、二百三十六兆円、割合にして五六%です。そして、次に、総理の指摘された、左側の社会保障費の増加、百八十二兆円、割合にして四三%になりますが、この二つで純増分の大半が説明をできるわけであります。

 要するに、消費税増税、これが必要になった理由は、基本的には、バブル崩壊以降の税収の落ち込み、もちろん我々にも大きな責任があります。そして、少子高齢化社会の進展に伴う社会保障費の増大であります。しかも、これらの問題は、震災と違って突然に発災したわけではなくて、マニフェスト作成時の二〇〇九年総選挙のときにはもう既に見通せたはずだ、当然見通せたはずだと思います。

 自民党は、それまでの財政運営、この責任も含めて、衆議院選挙前の平成二十一年度の税制改正の附則百四条におきまして、消費税を含む税制抜本改革のスケジュールを示し、一昨年の参議院選挙でも正直に、消費税増税、このことを公約させていただきました。

 民主党はいかがでしょうか。やはり、この消費税についても、マニフェストと同じように、見通しが甘かったと率直に認められるのか。それとも、選挙が終わってから、政権についてからやはりこのことに気づいたということなんでしょうか。お答えください。

野田内閣総理大臣 非常にわかりやすい資料を御提示いただいて、ありがとうございました。

 やはり社会保障費がかさんできているということ、そして、残念ながら税収減がずっと続いてきたということ、傾向としては我々としても当然のことながら押さえていたと思います。ただ、やはり、リーマン・ショック後の税収の落ち込みがあそこまで落ち込むというところまでは、残念ながら、見通しとしては立てておりませんでした。

 平成二十一年度の第二次補正予算から予算編成にかかわりましたけれども、非常に厳しい状況であるということをそのことによってより一層肌で感じたというところがありますし、マニフェストについては、その前につくっていた部分がありますので、そこのやはり認識のずれがあったというふうに思います。

 したがって、昨年の八月に党としてマニフェストの中間検証を行いましたけれども、いろいろな要因が書いてありますが、財源確保についての見通しの甘さは率直に認め、このことについては国民の皆様におわびをしているところでございます。

茂木委員 景気の問題、そして税収の落ち込みの問題についてはこの後また改めて議論したいと思いますが、税と社会保障の一体改革の法案、閣議決定前に、民主党の中でも事前審査、八日間にわたりまして四十六時間半、私、前原政調会長も相当辛抱強くやられたと思っておりますけれども、そういった手続を経て、正式に党として決定をされた、そしてまた、閣議決定により政府・与党として正式決定した法案だ、このように理解をいたしております。

 そうしますと、この法案の採決で民主党議員が反対ということになれば、当然、党議違反になると思いますが、いかがですか、総理。

野田内閣総理大臣 法案決定に至るまでのプロセスをお示しいただきましたけれども、まさにその前から、一昨年の十月からこの議論が始まって、六月に成案を得て、そして一月に素案になって、そして大綱として閣議決定をし、その大綱を踏まえて三月末に法案提出をするまでの間は、先ほどの四十数時間だけではなくて、相当な時間を経ながら議論をしてまいりました。

 そのことによって、附則百四条に基づいて法案を提出しましたけれども、プロセスにおいては相当丁寧な議論が行われましたし、いただいた御意見の中では、附則なども含めて相当に内容を盛り込んでおります。

 したがって、私は、これはもう党議になっていると思います。党の方針でございますので、政府・与党一体となってその成立を期していきたいというふうに思います。

茂木委員 反対したら党議違反になる、そのようなお答えだと理解いたします。

 それで、総理が近々お会いになる小沢代表初め、この法案に反対を明言されている民主党の議員にどう厳しく対処をされるか、総理の今後の対応を見きわめたいと思います。

 その一方で、この法案、事前審査の議論で幾つかの修正が加わったわけであります。特に、一つは、実施の時期につきまして、当初の一三年十月に八%、一五年四月に一〇%、これが半年先送りになりまして、一四年四月に八%、そして一五年十月に一〇%となりました。それから、数値目標の追加ということで、一〇年から二〇年度の平均で名目成長率三%、実質成長率二%程度を目指す、こういう数値目標を法案の中に書き込むことになったわけであります。

 そこで、まず、消費税の引き上げ時期を先送りした問題についてお聞きいたしたいと思います。

 実施時期が半年ずれることによりまして、プライマリーバランスの財政赤字を二〇一〇年代半ばに半減する、こういう目標の達成、私は、より厳しくなっていると思います。実際に、内閣府の試算を見ましても、二〇一五年度のプライマリーバランスの財政赤字は、対GDP比で三・三%、十六・八兆円で、半減目標には達しておりません。

 一層の歳出削減策など具体策を固めた上で半年の先送りを決められたのか、それとも、歳出削減等の具体策は今後検討ということですか。いかがですか、総理。

安住国務大臣 半年後ろにずれたことで、二〇一五年の基礎的財政収支の赤字、対GDP半減目標の達成は、現時点では厳しいものになっていることは現実でございます。

 そうした中でありますが、さまざまな努力を我々としてはいたしまして、何とかこの数値にやはり近づけていかなければならないというふうに思っております。

 現時点でそれでは具体化があるのかということでございますが、これとこれをやりますということはまだ明確にあるわけではございませんが、歳出の削減等々を図ると同時に、税収をふやしていくような努力をしていかなければならない、こういうふうに思っております。

茂木委員 財務大臣から正直にお答えいただきました、具体策は固まっていないと。残念ながら、やはり、社会保障同様、大切な部分が先送りになっているな、こういうふうに指摘せざるを得ないと思います。

 その一方で、わざわざ法案に規定することになりました数値目標、実質二%、名目三%の達成もなかなか厳しいと思います。日銀の直近の見通しでも、実質GDPは、二〇一二年度は、復興需要もありまして、一一年度のマイナスの〇・二%からプラスの二・三%に改善いたします。しかし、消費税の引き上げを判断する二〇一三年度には、またプラスの一・七%に下がるというわけでありまして、名目GDPも大体二%程度だと思います。

 そこで、お聞きしたいのは、この数値目標の達成、何年からを考えているのか、また達成に向けての基本方針、簡潔に総理からお答えいただければと思います。

安住国務大臣 まず、附則十八条の第一項では、二十三年度から三十二年度までの十年で……(茂木委員「わかっている、それは。わかっています」と呼ぶ)はい。名目成長率三パーで実質二ということで、これは、政府全体として、こうしたさまざまな施策を講じてこういう方向に向けて軌道に乗せていって実現をしていきましょうと。

 ということですから、まず申し上げたいのは、消費税率を引き上げる前提条件としての数値目標を規定しているものではないけれども、努力目標であると。次のところで、「所要の措置を講ずる。」というのは、経済状況の激変も含めて、何かあったときには果断に対応しなさい、時の政府で最高の政治決断をしなければならないということだと思います。

 そこで、先生、復興需要等を含めて、この一―三は比較的順調に経済が伸びております。ですから、年率換算すると、それはとらぬタヌキの皮算用でございますので申し上げられませんけれども、しかし、順調にもし仮に推移すれば四%。これを、需要をつないでいくには、経済的な、ある意味では財政的なことも含めて、また金融緩和も含めて、さまざまなことをやりながらやはり経済的には成長をしていく努力をしなければならないというふうに思っております。

茂木委員 どうも、何年から達成する、また、そのための手段、さまざまなことをやると。当たり前ですよ、いろいろなことをやるのは。具体的にどうしていくという方針をやはり明示することが必要ではないかな、そんなふうに私は思っております。

 もちろん、我々も、日本をギリシャとかイタリアのようにしてはいけない、こういう強い思いは持っております。しかし、財政再建には、増税だけではなくて、図の一でも先ほどお示ししましたように、景気の回復による税収増、これが必要不可欠だと考えております。特に、長引く円高、デフレ、そして日本の国際競争力の低下、震災からの早期復興、こういったことを考えれば、財務省的な消費増税即財政再建、これはやはり景気への悪影響等々が大きいんじゃないかな、こんなふうに考えております。

 自民党は、今後の予算配分の見直しとして、民主党政権の短期のばらまき政策を見直して、事前防災の考え方に立った国土強靱化政策の推進や、技術開発、人材育成、そういった将来への投資に資源配分を転換すべきだ、このように考えております。

 昨年の東日本大震災で明らかになったことは、コンクリートから人へ、こういう空虚な言葉だけでは国民の安心、安全は守れないということであります。例えてみれば、交通事故が起きてから信号機をつける、こういう後追いの対応ではやはり被害は大きくなる、そして復興にかかるお金も大きくなってしまう、こういうことなんだと思います。

 具体例で議論したいと思います。

 東大の地震研究所の予測によりますと、首都直下型の地震が今後四年以内に起こる可能性は七〇%、このように予測をされております。首都直下型の地震が発生した場合、その被害額は、東日本大震災より一桁大きくなります。東日本大震災の直接の被害、資本ストックのダメージは十七兆円でありましたが、内閣府の試算でも、首都直下型地震が起きた場合は被害額が百十二兆円、こういうふうに予想されております。

 さらに、これは東京の問題だけではなくて、東京には国会、霞が関、そして本社機能の半分、データセンターの七割以上が集中をしている。まさに日本の中枢機能が集中をしているわけでありまして、その中枢機能のバックアップ、こういったことも極めて重要だと考えております。

 そういった中で、平成二十四年度の、政府の地震に対します首都機能のバックアップ対策の予算は一千万円です。総理、一千万円で首都機能のバックアップ対策、十分だとお考えですか。

野田内閣総理大臣 いや、もちろん、本格的に首都機能のバックアップをするんだったら、もっとお金がかかります。この一千万というのは調査費的なものでございますので、そういう研究を始めているということで御理解いただきたいと思います。

茂木委員 四年以内に七割かはわかりません。しかし、災害はいつ来るかわからないんです。直近のテーマなんです。ことしは調査だけでいい、来年以降ゆっくりやります、こういう発想ではだめなんだと私は思うんですよ。それが結局、事が起こってからあたふたと災害に対応する、こういうことになるんじゃないかな。東日本大震災から我々は何を学んだんだろうかともう一回考えていただきたい、そんなふうに思います。

 自民党は、事後対策ではなくて事前防災、この考え方に立ちました、今後想定されるさまざまな災害について、例えば学校や公共施設の耐震化、そして今申し上げた首都機能のバックアップの強化、そして災害現場を孤立させない、そのためには交通網の整備が必要なんです。そして昨年は、大震災でつながらない携帯電話、家族の安否がお互いにわからない、こういったことが問題になりました。やはり災害に強い情報通信網をつくっていく、こういったソフトとハードを組み合わせた強くてしなやかな国土づくり、まさに国土の強靱化を進めていきたいと考えております。

 その方針に沿いまして、近く、国土強靱化基本法を我々として国会に提出いたします。さらに、公明党とも共同提案を視野にしまして、首都直下型震災対策特別措置法、そして南海トラフ巨大地震津波対策特別措置法、これも準備をいたしております。法案提出の際には、ぜひ御賛同いただきたいと思いますが、総理、基本的な考え方、共有していただけますか。

野田内閣総理大臣 大震災の総括、教訓を生かして、やはり国土を強靱化していかなければいけない。学校耐震化とか病院の耐震化とか進めてきたつもりでございますけれども、そのほか、まさにインフラ整備も、真に命にかかわるところのインフラ整備等はやはり集中してやっていかなければいけない等々の認識は同じでございますので、御提起いただいたならば、それはしっかりと吟味をさせていただきたいというふうに思います。

茂木委員 ぜひ、コンクリートから人へ、こういう方針も見直していただきたい、こんなふうに思っております。

 もう一点、自民党は、ばらまきから将来への投資に転換する、このことを基本に、平成二十四年度の予算にも対案を提案いたしました。その中で、例えば子ども手当、これは三党合意によりまして所得制限がつくことになりました。我々は、高校無償化にも所得制限が必要だと思っております。そして、さらに、マニフェスト政策を全面的に見直すことで三・七兆円の予算の削減を提案いたしました。その一方で、日本を新たな成長軌道に乗せる。このためには、今、生産拠点は各国に分散をしております。生産拠点は各国に分散しても、一番キーになる、鍵になるような技術であったりとかソフトを日本が確保できるような技術開発、こういった形で重点投資をする必要があると思っております。

 そこで、政権交代後、事業仕分けで、民主党の仕分け人の蓮舫さんが、日本の技術につきまして、二番じゃだめなんですか、こういう言葉を言って注目を集めたことがありますが、この発言について、総理はどのように考えていらっしゃいますか。

野田内閣総理大臣 あれは、蓮舫さん自身が二番でいいと思っているような印象を与えているんですよね。

 これは、仕分けをする前に、事前のいろいろな、相手とのスパーリングみたいなものがあるんです。そのときに、それをやるよと言っていたんです。二番目でいいですかと聞いて、どうしても一番じゃなきゃいけないという理由を聞きたかったんだけれども、明確な答弁がなかったというのが事実であるというふうに私は理解をしています。

茂木委員 少なくとも総理は、一番になることが必要だ、このような理解を持っていただいていると思います。

 そこで、図の二をごらんください。

 これは、主要製品、部材の市場規模を縦軸にとりまして、日本企業の世界シェアを横軸にとった図表であります。

 図からも、左上にあります自動車、そして電子機器、エレクトロニクス関連産業が日本のリーディングインダストリーであることには変わりありません。しかし、右側に行って、デジタルカメラ、これはCCD、つまり画素を細かくする技術を持っているキヤノンやニコンが圧倒的に強い分野であります。そしてまた、次世代の自動車駆動システム、リチウムイオン電池、こういった部品、素材の分野で、日本がいまだ圧倒的シェアを誇る、こういう分野がたくさんあります。これらの成長分野で競争力を維持していく、このことが大事なのであります。

 自民党は、これらの分野での研究開発、そして技術開発、さらに、我が国の将来を担う人材育成などの重点分野に、平成二十四年度予算で三・七兆円削りました、その一方で、二・六兆円、重点投資をすべきだ、こういう提案をしているわけであります。つまり、大切なことは何なのか。パイの分配の前に、パイの拡大、成長戦略によって、まずパイそのものを拡大することが必要なんだと思います。

 そこで、図の三をごらんください。

 これは、サブプライム問題の発生、そしてリーマン・ショック前後、それぞれ三年間の日本の名目GDPの推移を見たものであります。

 我々の時代に導入したエコポイント、またエコカー補助金によります景気の押し上げ効果がある程度あったものの、政権交代以降、名目GDPは年平均で四百七十五兆円と、リーマン・ショック前の五百八兆円より、いまだ三十兆円以上下回っているわけであります。二〇〇八年度以降の日本経済の落ち込みは、確かにサブプライム問題そしてリーマン・ショックという外部要因、全世界的な問題でありましたが、景気後退は、当時の政権与党、つまり自民党批判につながり、そこに、政権交代こそ景気回復という民主党のキャッチフレーズが期待を集めたんだと私は思っております。

 何もここで、民主党のキャッチフレーズを批判するために言っているんではないんです。指摘をしたいのは、現在の政府・与党、さらには政治全体への不満の根底、背景にも、いまだ解消されていないこのマイナス三十兆円のハンディというものがあるんだ、この理解がまず必要だと思います。さらに、今後、消費税増税に伴います需要の落ち込みが発生するわけであります。

 もちろん、同様の問題、これは所得税であったりとか法人税の増税でも起こります。そして、所得税や法人税の方が経済への影響が大きいとも言われているわけであります。

 図の四をごらんください。

 ただ、今回の消費税引き上げも、政府の財政の中長期試算でも、消費税増税直前の駆け込み需要、この反動もありまして、二〇一四年以降、当面の経済成長率は落ち込みまして、下にありますように、毎年一兆円から二兆円のいわば需要不足が生まれる、このように試算がされているわけであります。

 そこで、この内閣府の経済モデルですが、総理が我が党の金子議員に対します国会質問の答弁でも強調されておりました非ケインズ効果、つまり、社会保障の安定や財政の健全化によります需要の拡大効果を毎年どれぐらい見込んでいるか、どなたでも結構です、お答えください。

岡田国務大臣 今おっしゃったのは、消費税を入れることで社会保障制度が安定化する、そのことによって、将来の消費というもの、将来、安心感が来て、消費がその分ふえる、こういうお話だと思いますが、これは非常に心理的な問題であって、なかなか、数字で計量する、結果を出すというのは、私は余り簡単なことではないというふうに思います。

茂木委員 数字で出すのは簡単ではないと。ところが、それは総理が本会議の答弁で、非ケインズ効果、これが大きいんだとおっしゃったわけですから、どれぐらい見込んでいらっしゃるんですかという話をして、モデルの中では見込んでいるはずです。わからないんだったら、わからないで結構です。お答えください。

安住国務大臣 数字的に申し上げますと、名目で、ことしが二、それから二〇一三年が、先ほど御指摘があったように一・七、二・六、これが実質でいうと、もうちょっと下がってきます。

 この中にどれぐらい非ケインズ効果、将来への不安を経済的に計算をしながらそこに入れ込んで置いているのかということでいうと、率直に申し上げて、それを統計的に出した数字はございません。

茂木委員 議論を先に進めたいと思うんですけれども、内閣府の資料、私も詳細に分析をいたしました。そうしますと、この非ケインズ効果を含めて、消費税の引き上げ直後から、本来だったら需要が落ち込む分をある程度上に底上げをする、こういう効果が毎年一兆円以上出てくる、こういったものが出てくると見ております。これは明らかに過大評価だ、私はそういうふうに思います。それから、消費税の価格転嫁の見通し、これも楽観的過ぎる、このように思っております。

 この点、今、自民党として、より妥当なモデルを回して試算を行っているところでありますが、どう見ても、実際の需要の落ち込み、需給ギャップはさらに大きくなる、こんなふうに考えております。

 そして、非ケインズ効果を含めて、需要の拡大を過大に評価している、見積もっている内閣府のモデルでも、図にあるように、平均成長率、慎重シナリオでも一・一%、成長シナリオでも一・八%。消費税引き上げ後数年間は、成長率は目標の二%には届かないわけであります。

 つまり、二つの課題があるんですよ。まず第一に、リーマン・ショック以降のGDPマイナス三十兆円の回復をしていく、こういった課題に加えて、今後は、消費税増税に伴います需要の落ち込みをいかにカバーしていくか、こういう二つの課題への対応が求められているわけであります。

 ここで、消費税増税と並行した当面の財政運営のあり方について、こちら側から提案をさせていただきたいと思います。

 何も、引き上げ時期をおくらせろ、こういう話ではありません。我々は、消費税引き上げ直後に予想されます需要の落ち込み、これを補って、そして日本経済を再び成長軌道に乗せるために、財務省的な消費税増税即財政再建ではなくて、当面、消費税の引き上げと並行して、デフレ対策、雇用の創出、そしてまた成長戦略に重点を置いた財政運営を行う方針を明示すべきだ、このように考えております。これに沿いまして、二〇一五年度末までにプライマリーバランスの赤字、これを半減する、こういった財政運営戦略のスケジュール、これも私は現実的には引き直しが必要だと思っております。

 これは、我が党にとっても新しい方針で、あえて、方針転換、こういう批判を覚悟で、しかし、昨今の欧州危機初め今の経済の現状、こういったことを考えたときに、私は、現実的な対応だ、こんなふうに考えております。

 先週末のG8首脳宣言、これにおきましても、世界各国が財政再建に偏るのではなくて、経済成長も追い求めるべき、総理も出席されておりますが、そのように強調されていたはずであります。

 私は、極めて現実的な提案を申し上げている、そのように思っておりますが、総理、この財政運営の方針、そして財政再建のスケジュール、見直しますか。それとも、一五年、二〇年、今のスケジュールにこだわられますか。はっきりお答えください。

野田内閣総理大臣 私どもは、一昨年の六月にまとめた財政運営戦略、御承知のとおり、これは自民党の財政健全化責任法と同じゴールでした。二〇一五年は基礎的財政収支、対GDP赤字を半減する、二〇二〇年黒字化するということでございましたが、今ちょっと、初めて聞いたんですが、それをおくらせるんですか。ほう、それは初めて聞きました。

 後でちょっと具体的によくお聞きしたいんですが、では、赤字の半減が例えば二〇一七年とか二〇一八年とか、黒字化はどれぐらいになるんでしょうか。お受けしていておかしいですけれども。

 というのは、G8を含めて各国、我々は、さっき申し上げた財政運営戦略、こういう取り組みをやっていきますということは表明しています。それぞれの国が、例えば二〇一三年までに何をやるとか、いろいろ言っています。変更した国はまだないんですよね。ないんです。だから、そこは国際社会の動向もよく踏まえながら判断しなければいけないと思いますが、ちょっと詳しくお話をお聞かせいただければ大変ありがたいというふうに思います。

茂木委員 申し上げたいのは、当面の財政運営、これで消費税増税したから財務省的にすぐ財政再建では、やはり経済の腰折れを起こしてしまう。やはり、今の状況を考えたときに、もう少し、当面の間、恐らく数年間だと思いますけれども、積極財政、こういったものをとっていく必要があるんじゃないかな。そして、景気をきちんと立ち直らせる、そういったことを消費税と同時に進めることが必要であろう、これが基本です。

 そして、その上で、そうなってくると、現実的には、プライマリーバランスの半減、そして黒字化のスケジュール、見直さなくて済むんだったらそれで結構なんです。ところが、案がないんですよ、実際に。今だって、案がない、こういうふうに言っているんですから、それも見直したらいかがですか、こういったことであえて申し上げているわけであります。いかがですか。

野田内閣総理大臣 私も、財政再建と成長を両立させなきゃいけないと思っているんです。御指摘のとおり、特に成長のところを、最大限力を生かしていかなければいけないと思うんです。

 ただ、今申し上げたような基本的な計画、ゴールを変えてしまうことが市場の警戒感が強まっているときにいいのかどうかというそのメッセージは、よく勘案しなければいけないと思います。

 私は、この間、金子先生の御指摘だったと思いますが、本会議、財政のいわゆる対応力の回復の趣旨の御質問がありました。そういう御指摘というのは、ある意味よくわかるんです。ただ、いつからどういうやり方をしていくかということは、これはよく考えなければいけないと思っています。

 さっき財務大臣が、財政運営戦略に基づいて二〇一五年のゴールは厳しくなったと言いました。それは歳出削減等その他の政策努力が必要だと申し上げました。そういうことを含めて、中期財政フレームを三年ごとに転がしながら二〇一五年の目標を達成する。それは、毎年の予算編成が大事になるんです。そのことを意識した、成長を意識した予算をどういう形で組んでいくのかということを心がけていくことが当面大事ではないかというふうに思いますので、問題意識としては多分共有する部分はあるんですが、やり方論はよく議論すべきではないかなというふうに思います。

茂木委員 やり方論は議論するということなんですけれども、やり方が見えてこないんですよ。そういった心配もあって申し上げているんです。

 私は、きちんと、この財政戦略を転換しながらも、二〇一五年にプライマリーバランスを半減できる、二〇二〇年に黒字化できる、その方がいいと思います。ただ、どう聞いてもそうならない、今でも。

 そうすると、そこの中で、本当に景気の腰折れを、消費税の増税後数年間、確実に悪くなる部分はあるんですから、それを起こさないためにはこうしたらどうですか、こういうことを申し上げておりますので、またよく、政府の側の方が私より数字を持っているはずなんですよ、きちんとそういったことも検証していただきたい、そんなふうに思っております。

 そこで、次に、社会保障制度についてお聞きをしたい、こんなふうに思っております。

 自民党も、社会保障制度の維持、充実のために消費税の増税の必要性を正直に公約してきました。ところが、今の閣法、政府案を見ますと、一昨日そして昨日の法案審議でも明らかになりましたように、それとは似て非なる、単なる増税法案になっているんじゃないかな、私は、そういう批判も出てくる、そんなふうに考えております。

 税と社会保障の一体改革、こういうふうに言いながら、新年金制度、そして皆さんが公約をされた後期医療制度の廃止、こういった民主党がマニフェストで約束をされた社会保障の重点政策、全てやはり先送りになっているんですよ。一体改革になっていないと言われてもこれは仕方ないんだ、私はこんなふうに思っております。

 確かに、自民党も、政権与党時代、制度の微修正を繰り返してきたのではないかな、こういう反省も我々は持っているところであります。

 そこで、今回、自民党は、あるべき社会保障制度、これの土台となるべき基本的考え方を取りまとめることにいたしたわけであります。

 今後、自民党として、この国会に社会保障基本法を提出する予定であります。その中に盛り込みます我が党としての社会保障の基本的な考え方をお話ししますと、その要約が図の五であります。ごらんいただけますか。

 まず一つが、額に汗して働き、税金や社会保険料などを真面目に納める人が報われる、そういった社会をつくっていかなきゃならない。

 二つ目に、自助そして自立を第一とし、共助さらには公助の順に従って政策を組み合わせ、安易なばらまきの道は排する。

 三つ目に、家族による自助、そして自発的な意思に基づく共助を大事にする。

 四つ目に、我が国の社会保障は、社会保険制度を引き続き基本とし、必要な是正を行う。

 そして最後、五つ目に、社会保険料では賄い切れない給付の公的負担の財源については消費税を中心に。

 そこで、提案であります。

 総理も、この特別委員会で、社会保障の骨格の考え方、自民党と差はない、このように答弁されておられますが、改めて、具体的に確認をさせていただきたいと思います。

 この社会保障についての五つの基本的考え方、総理として御賛同いただけますか。もし違う部分があるのでしたら、どの部分がどう違う、そのようにお答えください。

野田内閣総理大臣 この五つを見る限り、特に違和感はありません。(発言する者あり)いや、だから、根幹が同じで、まあ、政策論で多少違いがあるんでしょうけれども、これは別に、全然私は違和感ありません。

 ただ、あえて付言すると、自助、共助、公助の組み合わせだと思うんです。

 冒頭、きょうの和田さんの質問にも答えましたけれども、これは基本なんですが、例えば核家族化であるとか非正規雇用とか、自助の基盤が弱くなっている。だから、精神論だけで自助を言ってもいけないんじゃないんでしょうか。そこで共助や公助がかみ合ってきて、もう一回自助が戻ってくるという好循環をつくっていきたい。そういう考え方で私どもは今回の制度改正をしているわけで、基本的な考え方に私は違和感はありません。

茂木委員 基本的な考え方について賛同していただけると。自助を強くする、まさに三番目にも、家族による自助、核家族化の問題ですよ、こういったものを強くしていかなきゃならない、こういう問題意識を持っております。

 総論、基本的な考え方では一致とおっしゃる。ところが、個別の政策になると、なぜか全く反対の方向に見えると。例えば、そこにあります一番目の、税金や社会保険料を真面目に納める人が報われる、そして四番目、我が国の社会保障は社会保険制度を引き続き基本とする、こういった考え方に総理は賛同していただける。そう言いながら、年金の一元化、最低保障年金、この考えは相入れないんですよ。私はそういうふうに思います。

 総理も、一昨日の我が党の鴨下委員の質問に対しまして、こんなふうに答えています。現行の年金制度、これは破綻していない、そして、移行期間は現行制度の改善、年金一元化は将来の話、こういうお話をされているわけであります。

 ですから、年金の一元化、一旦この話は白紙に戻して、将来の話ですから、社会保障制度改革国民会議、こういった場を設けて、ぜひ一緒にそういった議論、しっかりこのことは将来の話としてつくっていったらどうか、そんなふうに思います。

 一緒に、このことは白紙に戻して話し合おうじゃありませんか。いかがですか。

野田内閣総理大臣 大変前向きな御提言だと思います。社会保障のあり方を考える国民会議、そういうものは必要だと思うんですね。そういう協議はぜひどんどんやっていきたいと思います。

 だけれども、その国民会議で議論する前に、旗をおろさなきゃ協議できないというのではなくて、私どももいろいろ積み重ねの議論があったわけですね。その積み重ねの議論を踏まえて議論に参加させていただいて、それぞれのお立場の御意見があると思います、そこで合意形成を見出すということではいけないんでしょうか。

茂木委員 今議論していることは、まさに直近の、この国の財政状況をどうするか、社会保障制度をどうするか。そしてそれについては、総理は、移行期間は現行制度の改善、こういう話をされているわけであります。そして、将来の話として年金の一元化があると。ですから、この法案の中からおろしてください。そして、別に、すぐに主張を変える、変えられないではなくて、一旦法案からおろして、このことは社会保障制度改革国民会議で議論しましょうという話であります。

 一旦白紙に戻すということ、いかがですか。

野田内閣総理大臣 これは前、御党の谷垣総裁と党首討論で議論したとき、一つの例えで谷垣総裁が新幹線の話をされてきました。上越新幹線に乗るのか、東北新幹線に乗るのかという違いでおっしゃってきましたけれども、私は、東北新幹線でも一緒じゃないですか、ゴールは違っても途中の福島まで一緒じゃないのか、そういう折り合える議論はできるのではないかと申し上げました。

 私は、だから、お互いそれぞれ立場はあります、結論を導き出すために演繹的手法と帰納的手法があるけれども、だけれども、折り合えるところはあると思うんです。そういう議論はできないんですかね。ぜひやらせてください。

茂木委員 だから、大宮まで一緒に行きましょうと。この法案の話は、大宮まで一緒に行くという話なんですよ。だから、その先、青森に行くのか、秋田に行くのかというのは、国民会議の方で話をしましょうと。

 一旦白紙にして、それぞれの案があるでしょう、青森に行きたい、秋田に行きたい、山形に行きたい、盛岡でとまりたい、いろいろな人がいるでしょう。そのことは国民会議でもう一回仕切り直ししましょうと言っているわけです。いかがですか。

野田内閣総理大臣 大宮よりはもうちょっと、福島ぐらいまで行けると思いますけれども。

 だから、最低保障年金を掲げている、そのゴールから見て今対応しなければいけない、改善しなければいけない私どもの意見と、それから、現行制度、これは大丈夫だ、それはもちろん大丈夫なんですが、それを改善しながらよりよいものをつくっていこうという姿勢の中で、私はかなり一致点は見出せると思うんです。

 だから、背景にある考え方を全部あなたたちは否定しなさいというやり方ではなくて、だから、白紙という意味はわかりませんけれども、虚心坦懐にお互いの意見を出し合うということはできないのかということでございます。

茂木委員 我々として、国民年金も含めたこの年金一元化、これは妥当ではない、このように思っておりますが、御党としてお考えになったことですから、それを全く否定すると。

 我々とは考えが違います。ただ、一緒に行ける部分、現行制度をどう改善するかということをまず考えなくちゃならないんですよ。そこも一致すると思います。そして、この法案でまさにやるべきことは、そのことなんですよ、国民の安心を確保するために。

 そして、将来の話については、例えばスウェーデンでも、七年間かけて与野党でこの年金の議論をして、政争の具にしてはいけない、こういったことで国民会議をつくってやってきたわけであります。

 ですから、別に、この考え方を今百八十度変えなさいということではないんです。この法案からはおろしてください。そして、国民会議の場で議論しましょう。我々は我々の考え方があります。公明党さんは公明党さんの考え方があると思います。民主党にも民主党の考えがあると思います。そこでやりましょうよ。いかがですか。

岡田国務大臣 今委員が言われた、この法案からおろしてくださいということの意味がよくわからないんですが、この一体改革の中で、我々、年金についてのさまざまな法案、改革内容を出しているわけですね、二法案を出しているわけです。その中に、恐らく御党と我々で意見の違うものがあると思いますが、例えば被用者年金の一元化とか、あるいは二十五年を十年にするとか、そういう共通点のものもあるわけでありまして、そういうことをまずこの場で議論させていただきたいということを申し上げているわけでございます。

 別途、各党間で議論するということは私はいいことだと思いますが、それは各党それぞれ考え方を持っていなければ議論できないわけで、我々の考え方というのは、さきにお示しした一元化であり、最低保障年金であるということでございます。

茂木委員 せっかく前向きな提言をさせていただいているつもりです、議論を進めるために。

 我々は、やはり行き先が全く違う電車には乗れないんですよ。ただ、やはり行けるところまで行こう、その上でその先のことは一緒に考えましょう、こういう前向きな提案をさせていただいているつもりです。総理、いかがですか。

野田内閣総理大臣 何よりも、国民会議なるそういう会議体の中で、お互いに虚心坦懐に議論をするということは賛成であります。そうしなければいけないだろうと思います、特に中長期にかかわることについては。

 当面の課題のこの法改正をやって、少なくとも二〇一五年をにらんで、安定財源を含めての議論との整合性をどうとるかだと思うんです。

 多分、御指摘としては、法案に書いてある最低保障年金、例えば文章とかを除かなければいけないという御趣旨なのか、文章は入れてあるけれども、事実上この法案を出すというのは来年の通常国会だ、そのために今党で制度設計をやっているんだというこの立場を御理解いただいて、そういう状況だから、いわゆる工程表的には法律に書いてありますけれども、実際の法律は来年出すということの準備をしているということ、その準備をしている間にそういう協議会を設けながらどういう議論をしていくか、その推移を見守る、そういう立場ではどうなのか、ちょっと、そういう意見のやりとりを今後やらせていただければありがたいと思います。

茂木委員 将来のことは将来で議論すると。

 私は、あえてきょうは、例えば平成十九年度の年金改革のときに皆さんが今出している厚生年金と共済年金の一元化について反対されたとか、そういう話を言うつもりはないんです。現行制度の見直しで今一致できる部分がある、そこについてはきちんと一致してこれはやっていきましょう。ただ、将来の話については考えの違う部分がありますから、合意できるとしたら、やはり与党の側から譲歩をして一旦白紙にする。そして、協議しないと言っているわけじゃないんですから、我々から、国民会議をつくりましょうよ、こういう話をしているわけですから、ぜひ前向きに考えていただきたい、そのように思います。

 社会保障についてもう一点申し上げます。生活保護の問題であります。

 やはり明らかに民主党政権になって生活保護はふえております。社会保障費の中でも今一番増加が激しい。平成二十年は、生活保護の受給者は百五十九万人でありましたが、ことしの一月には、これが二百九万人。五十万人も増加をいたしております。また、保護費も、平成二十年の二兆七千億円から三兆七千億円、一兆円近く増加をしているわけであります。

 この生活保護は三つの特徴があります。

 まず、図の六をごらんください。図の六にありますように、地域別のばらつきが非常に激しいということでありまして、都道府県別で見ますと、最も多い大阪府は三・三五%、百件に三件であります。最も少ない富山県は〇・三一%、千件に三件ということで、十倍の差があるわけであります。

 そしてもう一つ、図の七に飛びたいと思いますが、この十年間で、高齢者や障害者以外の働ける世代、これらの生活保護が非常にふえている。特に、生活保護の比率の高い地域ではこの傾向が強くなってございます。現役世代、稼働年齢層、二十から六十四歳、この生活保護受給者、図七の左側にありますように、八十一万人に達しております。そこの中で、多少なりとも働いている人が十四万人、未就労の人が六十六万人、こういった状態であります。

 自民党は、手当より仕事、これを基本にして、図の右側にあります就労支援プログラム、これを現在の七万人から就労が見込める二十八万人全てに広げるべきだ、こういうふうに考えております。予算額は大体、試算をしますと百六十億円です。そして、この人たちが生活保護から脱出をして、自分で生計を立てる、こういうことになりますと、最大五千億円以上の財政効果が期待をされるわけであります。

 まず、働ける人には働いてもらう、そして、就労支援プログラム初め、そのための環境整備をする、このことが大切だと思いますが、いかがですか。

小宮山国務大臣 それは、おっしゃるとおりだと思います。政府の方としても、当然、働ける人には働いてもらう、その支援をするために、この秋をめどに生活支援戦略もつくろうとしていますし、なかなか、生活保護の人に働いてもらうのは、寄り添ってやらないと難しいので、秋の戦略の中では、NPOとか社会的事業をしている人とか、一緒に協力してもらう人たちも含めて、少しでもそこをふやしていきたいという考え方は同じでございます。

茂木委員 残念ながら、政府の方に具体案がないようですから、単刀直入に提案します。

 図の八をごらんください。

 手当より仕事を基本とした生活保護の見直し、五つの柱。我が党として相当な検討をしてまいりました。

 その一番目が、年金とのバランスの配慮などによります生活保護給付水準の一〇%の引き下げであります。

 東京都区部の生活保護費、これは標準三人世帯で二十四万一千九百七十円であります。これに対しまして、一日八時間、二十日間働くとしますと、東京都の最低賃金八百四十円掛ける八時間掛ける二十日間、十三万四千円なんです。そして、国民年金は満額で六万五千五百四十一円。逆転現象が起こっているんですよ。真面目に働いてきた人、そして真面目に保険料を積んでいる人と、生活保護の世帯の収入の逆転現象が起こっている。早急な是正が必要だと考えております。

 それから二つ目に、食費そしてまた被服費などの生活扶助、住宅扶助、教育扶助、できるものは現金支給から私は現物支給にした方がいいと思います。

 そして、稼働層の自立の促進、公的機関での採用等の就労の支援対策。

 そして、過剰診療の防止などによります医療扶助の大幅な削減。医療扶助が半分行っているわけですよ。そこの中できちんとしたレセプトのチェックも行われておりません、残念ながら。ジェネリックもちゃんと使われていない。そして、向精神薬初め、薬の重複処方の問題がある。こういったものをきちんとしていかないと、国民に対して増税のお願いなんて私はできないと思います。

 そして最後に、自治体の調査権限の強化、財政圧迫への対応、こういったことも必要だと思っています。

 大きな項目をストレートで投げさせていただきました。総理、受け入れていただけますか。総理です。

野田内閣総理大臣 大変建設的な御提起、ありがとうございました。

 一番の、水準の話ですよね。これは、今厚労省の専門部会で客観的に検証中だというふうに思います。水準についての議論が今行われているので、それを踏まえて対応していきたいというふうに思います。

 三、四、五は基本的にいいと思っているんですよ。

 二番はちょっと、例えば受給者のプライバシーあるいは仕組みの運営コスト等々、生活扶助、住宅扶助を現金給付から現物のところ、ここはいろいろ検討事項があるんではないかなと思います。

 三番については、これも基本的にそれでよろしいんではないでしょうか。就労支援プログラム充実等々、これは必要だと思います。

 四番も、基本的には、ジェネリックなどは問題意識は同じです。法制化するかどうかは議論があると思いますが、基本的には問題意識は同じだと思います。

 五番も、法的な根拠を付与するなど、これは自治体などの意見もお伺いしながら、検討する余地はあると思います。

 ということで、総じて四か三・五ぐらいは同じではないかと思います。

茂木委員 全体の提案についても四・五とか認めていただきますと、私は、五のうち四・五進めていただきますと議論は進んでいくんじゃないかな、こんなふうに思います。

 生活保護については、改めて、やはりやらなくちゃいけないんです、今、本当に。さまざまな改革を進めないと国民にお願いもできない、こういった意味から、また議論させていただきたいと思っております。

 もう一つ、円高、デフレ対策、この問題に入りたい、こんなふうに思っております。

 今また、欧州危機の再燃、こういう懸念から、円高そして株安が進んでいるわけであります。自民党は、現在の長引くデフレ、超円高について、日銀がもっと大胆な金融緩和策をとるべきだ、こういう主張をしてまいりました、訴えてきました。

 二月の十四日に、日銀の金融政策の決定会合でも、これまでの物価安定の理解、国民の誰もが理解できないこういう表現から、物価安定のめど、こういう表現に変わった。半歩前進だ、こんなふうに思っております。

 ただ、このめど、英訳を見ますと、FRBと同じようにゴールになっているんです。別に私は、ターゲットじゃなくてゴールでも目標だと思います。もし、めどというのなら、英語で言えばヤードスティックです。なぜ国内と海外で違う表現を使われるんですか。

 きょうは、日銀が金融政策の決定会合と重なってしまって白川総裁にお越しいただいておりませんが、かわりに木下理事、参考人としてお越しをいただいております。ゴールならば率直に、目標、こういうふうにおっしゃればいいんじゃないですか。いかがですか。

木下参考人 お答え申し上げます。

 目標と申しますか、めどと申しますか、なかなか難しい問題がございます。その中で、私どもといたしましては、特定の目標という言葉には機械的な運用を行うというようなイメージがあるのではないかというようなことを考えまして、めどという言葉。また、英語におきましても、いろいろお考えがあろうかと思いますけれども、ゴールという言葉を使わせていただいたところでございます。

 ただ、これをほかの国の中央銀行と比べますと、三つの点でおおむね共通しているというふうに認識しているところでございます。(茂木委員「そんなこと聞いていないよ」と呼ぶ)では、それにつきましては省略させていただきます。

茂木委員 木下理事、全く日本語になっていないと私は思うんですよ、今の答弁。安住大臣の東北弁の方がよっぽど明確だ、私はそんなふうに思っております。

 安住大臣は、二月の二十日の衆議院の予算委員会で、この十四日の金融緩和策について、実質的なインフレターゲット、こういうふうに受けとめている、このように答弁をされていますが、そのお考えに間違いありませんね。

安住国務大臣 はい。実質的な設定をちゃんとしていただいて、というのは、一%という数字を挙げて、そこに近づくまでの金融緩和をやっていくというふうに捉えておりますので、その後の株式市況等の傾向を見ても、私と認識は同じだと私は思いますし、日銀も、そうした点では、それに向かって果断な対応をしてくれているというふうに思っております。

茂木委員 実質的なインフレターゲットと。木下理事、同じ考えでよろしいですか。

木下参考人 お答え申し上げます。

 実態的な意味でインフレターゲットというような呼び方をなさるのであれば、私どものとっております枠組みもそれに実態的には近いというふうに承知いたしております。

茂木委員 やはり、財務省、政府と日銀のところにずれがあるんですよ。連携強化といっても、そういうふうにならないと私は思っております。

 しかも、この物価目標、図の十をごらんください。図の十を見ますと、アメリカも二%、イギリスも二%、カナダも二%プラスマイナス一%、ユーロ圏は二%未満ですけれども、ビロー・バット・クロース・ツー・ツーパーセントということですから、極めて二%に近い。日本だけ一%なんですよ、低い目標。しかも、めど、こういう言い方であります。

 やはり私は、これから政府と日銀、これがアコードを結ぶ、協定を結ぶといった形で物価目標を定める、日銀法の改正も視野に入れながらそういったことをやりまして、それで金融緩和、そしてデフレからの脱却、全力でやるべきだと思いますけれども、大臣、いかがですか。

安住国務大臣 私としても、この一%の目標達成に向けて金融緩和はしっかりやっていただかないといけないと思っています。

 二%というもう少し高い目標を持てという御指摘でございます。そうした意見も強いことは承知しておりますが、政調会長御存じのように、この十数年間、日本の実質的な、名目、実質を含めた成長を見ても、デフレの状況の中で一%を達成するのも、小泉さんの構造改革の中で、不良債権を処理した後に比較的経済の好景気は生まれましたけれども、そういう中でもやはり一%の達成というのは大変な難しい状況だったと思いますので、実質的に、まず確実に一%の目標を実現していくために、私どもとしても、日銀と連携をしっかりとりながら、私もしっかりとこの目標達成のためにやっていきたいというふうに思っております。

茂木委員 大臣御案内のとおり、今、国際金融マーケット、つながっているんですよ。日本だけじゃないんです。そうすると、日本だけ違う目標という話にはならないんですね。ここのところはきちんと、日本が過去どうだったからということではなくて、今、本当にデフレから脱却しようとしたらどういう対策が必要なのか。もし政府がやらないのなら自民党がきちんとやります。そういったことをやっていきたい、そんなふうに思っているところであります。

 きょうは、さまざまな議論、総理を中心にさせていただきました。本当にありがとうございます。

 選挙を通じて、我々は、消費税の引き上げ、これを約束しました。国民から授権を受けているのは自由民主党だけだ、こういう自負を持っております。民主党には、その資格、本来ならありません。

 しかし、そういった中でも、自民党は、きょう、質疑を通じて五つの具体的な提案、さらに踏み込んでさせていただいた思いであります。

 まずその一つが、財政再建と景気対策のバランスについて。当面、消費増税即財政再建ではなくて、消費税の引き上げと並行して、今申し上げたデフレ対策、有効需要の創出、そして成長戦略に重点を置いた財政運営を行う。そして、この方針に沿って、もしプライマリーバランスの達成がそれでもできるというなら結構です、できないんだったら現実的にこの目標を引き直す、こういったことも必要だと思います。これが第一点です。

 そして二点目は、その具体的な有効需要の創出策として、事前防災、この事前防災の考え方に基づきます国土の強靱化を進める。そして、短期のばらまきから、技術開発そして人材育成など、将来への投資に資源配分を転換するということであります。

 そして三番目、社会保障につきまして、額に汗して働く人が報われる、自助を基本にして共助、公助を組み合わせるという社会保障の基本的な考え方。そして、我が国の社会保障は、社会保険制度を引き続き基本とし、必要な是正を行う。そして、この方針に沿って、年金の一元化、最低保障年金、さらには後期高齢者医療制度の廃止の方針、これは一旦白紙に戻して、我々がまさに提案をしている社会保障制度改革国民会議で別途議論を進めましょう。こういう三番目の提案であります。

 そして四つ目に、生活保護に関しまして、給付より仕事、これを基本にしまして、給付水準、これにつきましては、若干今後議論はあるかもしれませんが、一割削減。そして、何よりも医療扶助、これの適正化、徹底的な見直しを行うことであります。

 そして五つ目に、最優先のデフレからの脱却。ここにおいて、日銀が独自に、勝手に目標を設定して、海外と国内で言うことも別々、こんなことではなくて、きちんと本当に連携強化をとるために、政府と日銀、これの協定、アコードによって話を進める。日銀法の改正も視野に、こういったことを進めながら、デフレからの脱却、これを図っていくことが第一なんだ、こんなふうに私は思っているところであります。

 率直に申し上げて、今の消費税に関します七法案、政府の法案、閣法のままで我が自民党として賛成する、こういったことはできません。大幅な修正、そして法案の一部につきましては撤回が必要だ、私はこんなふうに考えております。

 ですから、我々も責任政党として具体的な提案、きょうも申し上げたわけであります。この五つの提案、ぜひしっかりと受けとめていただきたい。受け入れていただくか、もう一度確認をさせていただきたいと思います。

 政府の方針、そして法案について、見直すべきは見直す、そして撤回するべきは撤回をする、これが総理の思いを前に進める、そして日本を前に進める唯一の道だ、私はこんなふうに思っております。もう会期も一カ月なんです。まさに、総理の決断、総理の覚悟が最後なんですよ。ぜひその決断、覚悟をここでお示しいただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 大変きょうは前向きな、建設的な御提起をいただきましたこと、心から感謝を申し上げたいと思います。

 むしろ、きょうは、私は答弁の側なんですが、逆に、質問をしてお尋ねしたいところがたくさんございました。

 こういう議論を積み重ねながら、私どもの考えは、これまでの長い経緯があって、私たちなりにはベストのものを出しているものがあります。だけれども、その発想が足りなかったところとか変えた方がいいもの等々を、きょうの御提起を含めて、よく検証させていただきたいというふうに思いますし、まさに胸襟を開いた議論というのはこういう議論だと思います。

 きょうを契機に、さらに議論を深めていきたいと思います。御提起ありがとうございました。

茂木委員 我々として、率直に、我々が考えてこれがベストだという提案を惜しみなくさせていただいたつもりです。こうすべきだということを言わせていただきたいと思います。

 ボールは、まさに今、総理の側にあります。ストレートを投げさせていただきました。早目に投げ返してください。お待ちしています。

 以上、終わります。

中野委員長 これにて茂木君の質疑は終了いたしました。

 次に、逢沢一郎君。

逢沢委員 自由民主党の逢沢一郎でございます。

 総理並びに関係閣僚に質問をいたします。

 野田総理、毎日御苦労さまです。きょう、特別委員会四日目でありますが、まず与党質問に対応いただいて、それからサミットがありましたね、帰って休む間もなく今週は野党中心の議論でありますが、総理がまさに政治生命をかける、命をかけるとまで言い切ってスタートをしたこの特別委員会であります。根性を入れて、気合いを入れて、しっかりと委員会に向き合っていただきたい。そして、私たちも虚心坦懐に総理に向き合ってまいりたい、そのように思います。

 しかし、総理とは、考えてみると、長いおつき合いになってまいりました。もう三十年以上ですよね。人生の半分以上ということになります。

 昭和五十五年の春、松下政経塾の一期生としてともに政経塾の門をたたいた。当時はまだ松下幸之助塾長も大変お元気でありました。三十年前の野田佳彦さん、まさに紅顔の美少年でありましたね。今よりもちょっとスリムだったかもしれません。キャッチボールが大好きで、よく鈴木康友さんとキャッチボールをやっていたのを覚えております。全寮制でありましたから、毎晩夜遅くまで議論もやったし、酒も飲んだし。

 しかし、総理の印象は、そうですね、余り口数の多い方ではなかった、人をかき分けて前に出るような野田さんじゃなかった、そんな印象であります。しかし、自分の意見はきちんと述べる。政経塾では、主座を保つ、自分の立ち位置をしっかり保って、しっかりと発言をする、そのことを大切に扱ってまいりましたけれども、まさにそういう野田総理であったことをよく覚えております。

 総理にはよい仕事をやってもらいたい、本当に私はそう心から願っています。いい仕事をしてほしいというふうに思うんです。そのためには、野田総理はぜひ王道を歩む必要がある。正しい道、正道を歩んでいただきたい。その王道を歩む、正道を歩む野田総理をしっかりと私たちは応援すべきは応援をしていきたい、最初に申し上げておきたいと思います。

 ただ、そういう、ある意味でエールを送ったはなから、ちょっと残念な向きの質問をしなくてはなりません。

 総理が政治生命をかける、そして命をかけるとまで言い切ってスタートした今回の社会保障と税の一体改革でありますが、どうも、引き続き、総理の足元、民主党内が定まっていないようですね。最後は何とかなるんだ、こういう発言を総理自身も繰り返しておられますけれども、きょうの朝のニュースで本当に私、目が覚めたんです。目が覚めていたからNHKニュースを見たんだけれども、二重に三重に目が覚めました。

 何て報道されていたかというと、総理は、必ず今国会でやり切るんだ、法案は成立させる、一体改革を成功させる、そう何度も強調しておられるけれども、政府・与党の中には、野党側との修正協議を粘り強く行うため、来年の通常国会が始まる直前までの延長も視野に入れるべきだ。

 これは一体どういうことですかね。来年の通常国会というと、一月に召集をされる。今、五月でしょう。あと何カ月あるんでしょうかね。事実上、これはもうやらないということを言っているに等しい。国民の皆さんはどう受けとめたか。我々はそう受けとめざるを得ない。

 あるいは、こういう発言もあったようですね。採決を行えば党の分裂につながりかねないから、会期を延長しないで継続審議にすべきだ、会期を延長しないでもう継続にしよう。

 総理がおっしゃっておられることと全く違うことを、どなたがおっしゃっておられるのか。主要な幹部なんでしょうかね。まさか、一年生や二年生、ここの委員の方がこんなことをおっしゃるはずはないと思うんですが。

 これは、総理、民主党の中、政府・与党内ということでありますが、一体どうなっているんですか。もう一度、足元の党内、政府内がどうなっているか、きちんと説明をいただきたい、また、総理の思いをきちんと述べていただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 逢沢委員とは本当に長いつき合いなので、私のいいところ、悪いところ、悪いところをいっぱい御存じなので、きょうはやりにくいなと思っているんです。

 最初、出だしは優しいかなと思ったんですが、いきなり厳しい御質問が来ました。

 基本的には、これは、どなたがどういう御発言をされているかはわかりません。わかりませんけれども、ずっと長い間、党としては議論をして、先ほど来申し上げていますが、もう党としてまとめたことです。そして、政府として法案を提出している以上は、政府・与党一体となって、今国会中に成立を期すということが、これは当然のことだと私は思っております。

 きのうもちょっと御質問いただいて、いつも、会期について御質問ですと、私の立場で何か物を申すのは、なかなか言いにくい部分があります。だから、そういうことも含めてですが、党内で、特に党の執行部で、会期の話を今どうするかという議論はまだしておりません。

 当然のことながら、この国会中に成立を期す、これが大前提であり、そしてそれを推進するための推進会議を、私どもの幹事長を中心にメンバーを選びまして定めました。きのう、おとといと議論をしているはずでございますので、しっかりと、一体となって推進をしていきたいと考えております。

逢沢委員 先ほど茂木政調会長からも、非常に前向きな、建設的な提言、提案を含めた発言をさせていただいた。

 我々も、社会保障の安定性、あるいは持続可能な体制じゃなきゃいけませんよね。当面、消費税一〇%程度は必要だ、国民の皆さんにそのことを真摯にお願いをする、お願いをしてきた、そういう立場でありますし、さっき、今国会で、社会保障に関する基本法、あるいは、経済が強くなきゃ社会保障だってやはり安定しない、税だけで支え切るというわけにいかない側面があるでしょう、そういう思いを込めて、国土強靱化のための考え方をまとめた法律を出す、そういう積極的な、前向きな姿勢であります。

 武正次席理事と、日程協議等委員会のことは全て伊吹筆頭から任されちゃったものですから、ちょっとこれは大変だなと思いながらも、今、その仕事をしています。しっかりと充実した審議を行い、もちろん、これだけの大法案でありますから、拙速というわけにはいかないけれども、必要な審議を行えば、きちんとこの委員会で採決をする。当然のことですよね。そして、衆議院本会議に上程をする。

 しかし、我々はそう心から考えているんだけれども、野党の方は積極的に審議をしよう、採決を必ずやろうと言っているけれども、与党の方がどうも、聞こえてくる声を聞けば、及び腰だ。やれ継続だ、大幅延長だ。場合によっては与党が審議拒否に入るんじゃないか、場合によっては審議を理不尽に引き延ばすことに入るんじゃないか。まあ、余り悪い話を先走って申し上げてはいけないのかもしれませんが、そのことが非常に心配になるわけであります。

 野党理事の立場で、ではいつごろこの委員会で採決だということを申し上げる立場にはないかもしれませんけれども、あえて申し上げれば、しっかりと審議が予定どおり進めば、六月半ばぐらいには一定の判断をする、そういう環境さえ整うんじゃないか、そんなことを武正さんとは言っているんだけれども、総理も恐らくそういう気持ちでいらっしゃるとは思うけれども、しかし、全く別の思いや考え方を持っていらっしゃる方がいるとすれば、これは大変なことであります。

 確認のため。必ず本委員会で採決を行う、そして採決の後は衆議院本会議で議決を行う、当然のことでありますけれども、必ずそうするんだということを、総理として、民主党の代表として、もう一度確約をいただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 待ったなしの改革だという位置づけの中で、こういう形の枠組みをつくって、こういう特別委員会という形で特別なお計らいをいただきながら御審議をいただいているんです。

 私どもは提案者であります。提案者であるということは、御提案をしていることを御理解いただいて、そして国民のために成立をさせるということが最大の責任であります。その責任から逸脱した行為は基本的にあり得ません。お願いをしている以上は通す。

 もちろん、委員御指摘のとおり、拙速で決まる話ではありません。重要な観点がいっぱいあります。でも、議論を尽くして、尽くした後にはお互いに歩み寄って成案を得るということを国民は求めていると思います。

 決断をする政治の象徴的なテーマと従来から申し上げておりました。そこから逸脱することは基本的にはあり得ませんということは、ぜひ信頼をしていただきたいというふうに思います。

逢沢委員 総理の、より一層の強い、また適切なリーダーシップを、まずきょうの段階では改めて心から期待をいたしておきたいというふうに思います。

 さて、審議が始まってまだ四日目でありますけれども、四日間私も議論を聞いていまして、これはなかなか難しい道筋に入っている、そう率直に感じるところもあります。

 戦国武将の戦いに例えるとすれば、天の時、そして地の利、人の和という言葉があります。野田総理の面構えを見ていると、そうですね、よろいかぶとを着せれば非常に似合うかな。岡田副総理も似合いそうですね。安住さんはちょっと、余りかもしれません。

 戦国の武将は戦いに挑むに当たって、まさに天の時、地の利、人の和、そういうことに思いをめぐらせたんでしょう。そして今、総理はまさに不退転の決意でみずからの戦いに挑もうとしておられる。もう船は出たわけであります。

 本当に今、天の時になりつつあるのか。国民のこの議論に対する共感、理解、とりわけ消費税を引き上げるということについて理解がぐっと進みつつあるのかどうか。あるいは、マニフェストの整理の議論を中心とした道筋、折り目がきちんとつけられつつあるのかどうか、理屈が整理されつつあるのかどうかということ。そして、人の和ということについては申し上げるまでもないわけであります。若干、先ほどもそのことに関することについて、もう一度確認をさせていただいた。

 天の時、地の利、人の和。まさに総大将野田総理の立場から見て、今、どのようにみずからの大チャレンジを認識しておられるのか、どういう状況にあるのか、率直に語っていただきたいというふうに思います。

野田内閣総理大臣 まず、天の時かどうかでありますけれども、これは去年の八月三日号だと思いますけれども、イギリスのエコノミスト誌に書かれた日本の記事。イラストでオバマとメルケルが出ている、二人とも和服を着ている、メルケルはかんざしを挿している、背景は富士山。タイトルは、これはいわゆる日本化する欧米でした。それぞれ債務上限問題、債務問題を抱えている中で、自己決定できない政治についての批判、それは日本と同じじゃないかという論文なんです。そこが、今、国際社会が見ている目だと思います。

 決定しなければならない、もう待ったなしの状況。特に、国内的にも社会保障の改革を切望している国民が多い、そして欧州の債務危機等もあって、財政も、よくこれは市場の警戒感を要注意で見なければいけないという意味で、天の時というか、もう時は外せない、時は今だというふうに思います。

 それから、地の利は、何をもって地の利とするか難しいんですけれども、少なくとも、我が党においても一昨年の十月から、先ほど来ずっと申し上げているように、丁寧な議論を進めてきたつもりであります。議論は積み上げてきている。御党においては、当然、もうこれまで社会保障のあり方、税のあり方について蓄積があります。そういう利というものは本来今あるのではないかと思いますし、そういうことを踏まえて先ほどの建設的な御提言もいただいたというふうに思います。

 それで、和のところですね、問題は。

 和のところは、今は党内の問題としてお話しされましたけれども、やはり国民の理解だと思います。何のための社会保障改革、そして税の改革なのか、その意義をしっかりとお伝えをしながら、国民のいわゆる理解が広がるように一生懸命努めていきたいというふうに思います。

逢沢委員 困難な仕事であればあるほど、大仕事であればあるほど、やはりこの言葉を肝に銘じなきゃならぬのだろうと思いますよね。野田総理のひとりよがりでも物事はもちろん成就しない。まあ、ちょっと失礼な表現だったかもしれない。あるいは他力本願、最後は野党だって何とかしてくれるだろう、最初からそういう気持ちがあるとすれば、やはりうまく物事は進まないんだろうというふうに思います。

 きちんと地の利を整え、そしてまずは政府・与党内の和をしっかりつくり上げていく、そうすれば、天の時を引き寄せることができる、あるいはそれにつながる、そう議論を整理させていただきたいというふうに思います。

 さて、いろいろこの議論がなかなかそろわないのは、やはり行き着くところはあのマニフェストの問題なんだろうというふうに思うんです。

 〇九年の、民主党の皆さんが選挙のときに掲げたマニフェストをどう今回の議論との整合性の中で整理ができるかということにやはりなってくる、そこに行き着くんだろうというふうに思うんですね。

 そこで、ちょっと理屈の整理を総理との間でさせていただきたいわけであります。

 今我々は、議院内閣制の中で、こうして政府・与党、野党の立場で真摯に向き合っているわけであります。一番大切なのは国民との契約、約束、つまり、政権選択のときの選挙のマニフェストですよね。政権選択のときの選挙のマニフェスト、これで四年間、この人を総理に、この党に国民生活や外交や国の安全を託そうということで国民が判断する、それが一番大事に決まっている。

 しかし、お互いに、議院内閣制でありますから、党首がかわることはありますよね、その任期の間に。自民党だって総裁選挙がある。あるいは、民主党も代表選挙、毎年のようにありましたけれども、選挙がある。政権公約で掲げたときの公約と、その代表選挙に出て当選をされた方のいわばマニフェストが、余り差異がない、主要政策において一致だったら問題がないかもしれないけれども、しかし、主要どころで、大どころで、骨格をなす政策で大きく違うということがあったとすれば、それはあるでしょう、今回の民主党の場合がまさにそうだということも言えるんでしょうね。自民党も民主党も将来そういうことがあり得るわけであります。

 その場合に、選挙のときのマニフェストと代表選挙に出て立候補した人が掲げたマニフェスト、どっちが優先するんですか。どっちをとらなきゃいけないんですか。一般論、基本論で整理をすればどうなるというふうに総理はお考えでしょうか。非常に大事な議論なんです。

野田内閣総理大臣 大事な御指摘だと思います。

 基本的には、やはり総選挙の際に示された民意、その民意を問うために打ち出したマニフェスト、これが大事だったというふうに思います。それはやはり、国民の皆様に我々はこういうことをやりたいということをお訴えしながら、わざわざ投票所に足を運んでいただいて投票行動をしていただいたわけでございますから、この重みというものは十分自覚しなければいけないと思います。

 だから、そこにおいて消費税を語っていなかったことについては、ずっと御批判をいただきます。そこは甘んじて受けなければならないし……(逢沢委員「そこはまだ次の議論だから」と呼ぶ)次の議論。済みません。

 では、その後の民主党代表選挙の意味なんです。

 これは、私、昨年の九月、しっかりこの社会保障と税の一体改革をお訴えさせていただきました。もちろん、マニフェストに比べれば、その位置づけは、それは比較からすれば低くなると思います。

 だからといって、全然軽いものではありません。なぜならば、それは、我が党の今の代表選挙は総理を選ぶ選挙になりました。総理を選ぶ選挙を、多くの有権者を背景にして、それぞれの議員の皆さんが投票行動をしています。この国のためにどうするかということを、政策の優先順位を決めて、しっかりそれぞれが投票していただいていると思います。

 したがって、全く国民の民意からかけ離れた投票行動ではないと思っていますので、民主党代表選挙でお訴えしたことも私は重たい公約だと思っております。

逢沢委員 大切なところでありますので、きちんと整理をさせていただきたいというふうに思います。

 いろいろ私も勉強してみました。二十一世紀臨調、いい思い出やさまざまな思い出がありますけれども、東大の佐々木先生や飯尾先生や、いろいろな方とのディスカッションをしました。私の結論は、やはり選挙のときの公約が一番大事。しかし、国際情勢も変わるでしょう。経済やさまざまな状況が変わって、選挙のときはこう言ったけれども、新しい代表は別の新機軸を打ち出す、こういうことだってあるんです。そのときどうするか。

 それは、新しい代表が掲げて、党の皆さんがみんなで選んだ新代表の訴え、新代表のマニフェストを党のマニフェストにきちんと議論し、整理をしていただいて、それで選挙を行う。選挙を行って、国民の皆さんとの新しい信頼関係、契約を結び直して初めて正当性が出てくる。

 政策が大きければ大きいほど、枝葉末節なことを言っているんじゃないんですよ、国家経営、国家運営の根幹にかかわること、まさに今がそうですよね。前の選挙、それはもうマニフェスト違反ではないというふうにおっしゃるかもしれない。四年間は上がらない、いや、議論はしないとは言わなかった、いろいろなことをおっしゃるけれども、言われれば言われるほど、国民の皆さんはふざけるなという気持ちを持たれるんです。

 十六兆八千億円でこれもやる、あれもやるという民主党から、社会保障の安定、継続性のためにはやはり消費税を一〇%まで上げなきゃいけないんだという野田政治、これは百八十度違うわけですよね、国民の皆さんから見れば。それをどう整理していくか。岡田副総理はいつものようににやにやしながら首を振っておられますけれども、それは野田さんの方がよっぽどか態度が真剣ですよね。さすがに総理だというふうに思います。そこの整理というものをやはり私たちは大事にしていかなければならない。

 今の混乱、党内の混乱、あるいは国民新党でもいろいろあったようでありますけれども、さまざまなことは、今私が申し上げたような整理がきちんとなされていないからそういうことが起こってくる。

 そして、国民の皆さんも、今どういう目で見ているかというと、それは、社会保障のこれからを考えれば、まあ一〇%程度はやはり引き受けなきゃいけないのかな、だんだんそういう理解も進んできているでしょう。

 しかし、今の野田総理に、今の民主党政権にそれが本当にできるんだろうか、やってもらっていいんだろうか、だんだん時間とともに大きな疑問が出てきている、率直に言って、そういう今の状況ではないかというふうに思います。

 今の私の発言を受けて、総理、もう一度発言をいただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 改めて、よく頭の整理ができました。かなり、私の言いたかったことも逆に言っていただいたように思います。

 マニフェストで掲げたことは大きいんです。ただ一点だけ、マニフェストで言っていなかったことと今回提起していることは百八十度違うわけではないんです。私どもも社会保障のあるべき姿を考えてきたし、財政健全化については考えてきました。ただ、消費税という形で明言をしていなかったことは、これは率直におわびしなければなりません。おわびしなければなりませんけれども、この問題を提起することの必要性と正当性はあるというふうに私は思っていますし、代表選の公約との関連の整理づけは大変参考になりました。ありがとうございました。

逢沢委員 きちんと整理すべきことを整理し、まさに地の利をしっかりと整えていただきたい。もう一度申し上げておきたいと思います。

 来週にも野田総理は小沢元代表に会われるということ、そう報道で承りましたけれども、そういうことになると理解していてよろしいんでしょうか。

野田内閣総理大臣 来週のどこかの段階ではお会いできるというふうに思っております。

逢沢委員 元代表にお会いになって、どんなお話をなさいますか。

野田内閣総理大臣 この大事な法案、一体改革のこの関連法案についての、改めて御協力をお願いしたいというふうに思いますし、大局観に立って、どうしてもこれは必要な法律であり、成立させなければならないということをしっかり御説明させていただきたいというふうに思います。

逢沢委員 この大切な委員会が始まって、来週というともう相当審議も進んでいますよね。あすでいわゆる総括的質疑が終わって、予算委員会的に申し上げれば一般質疑、グループ分け質疑とでもいいますか、そういう段階に入ってくる。そんなタイミングでそういった会談を持たなければならない、ようやく持つことができる、そういう現実に、国民は本当に、不安な、あるいは心配な気持ちを持っていらっしゃるんだろうというふうに思うんです。

 先ほどの整理をさせていただいた議論を大事にしていただくとすれば、これは多少僣越な言い方になるかもしれないけれども、総理の立場と元代表の立場は平行線というふうに伝えられていますよね。一致点を見出すとすれば、やはりこれしかないんじゃないでしょうか。つまり、代表に選ばれた私の考え方、私のマニフェスト、それを民主党全体のマニフェストに整理をして、そして国民の信任を得てしっかりと成案を得ていこう、そういう手順を踏もうじゃないかというふうに小沢元代表に話されたらいかがですか。

 マニフェスト違反というふうにおっしゃっておられるわけでしょう。そう伝えられている。マニフェスト違反を乗り越えるためには、先ほど、理屈の整理がよくついた、頭の整理がついたというふうに総理はおっしゃっていただいた。

 総理は代表選挙で本当に格好よかったですよね。消費税の必要性を訴えた。前原さんが出てくると聞いたときは、これはもう泡沫候補になるんじゃないかと友人の一人として本当に心配しましたよ。しかし、大変な粘り腰だった。そういう野田さんを支えようという考え方が党内にあるんだということがよくわかりました。

 だから、自信を持って、野田さんの考え方を民主党全体の考え方に整理をして、そして国民との契約を結び直して堂々と胸を張ってやろうじゃないか、こういう議論を小沢先生にされれば、小沢先生という方はある意味で非常に筋道立った方というふうに思う。そこだけ見れば、マニフェスト違反だという国民の声を受けた小沢先生の発言の方がやはり当を得ているなというふうに大半の国民の皆さんも思っていらっしゃるはずです。

 ぜひしっかりと整理をしていただくことを心からお願い申し上げ、また午後一時から議論をさせていただきたいと思います。

 午前中は終わります。

中野委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。逢沢一郎君。

逢沢委員 午後もどうぞよろしくお願いをいたします。

 午前中最後の質疑の中で、来週にも民主党で予定をされていると報道されました、野田総理、野田代表と小沢元代表の会談のことであります。

 端的に申し上げれば、マニフェスト違反であるかどうか、この溝をどう乗り越えるか、そのことについて、他党のことながら、僣越とは思いながら、ある種の提案のような発言をさせていただきました。民主党の代表と元代表の会談ではあるけれども、これはやはり国家の立場からしても、今後の日本を考えても、本当に重大な会談であると考えるからこそ申し上げたわけであります。

 私が整理をさせていただくとすれば、それは、午前中の繰り返しになりますけれども、消費税を引き上げるということが社会保障の安定や持続可能な体制を確保する、財政再建の道を開いていく、どうしても必要だ、そういう考え方を民主党全体のマニフェストに、きちんと議論を重ね、手続を踏んで整理をされ、それを新たな民主党の皆さんのマニフェストにして国民の審判を仰ぐ、選挙をやる。国民の皆さんともう一度契約、約束を結び直して、胸を張って正々堂々、そういう体制をつくって消費税を引き上げ、社会保障制度を安定させる。そういう正道、王道を歩んでいただきたい。また、そういう方向にぜひ民主党全体を持っていく、そして小沢先生を説得し切る。これはもう本当に、総理として鳥肌が立つほどの殺気を持って、また裂帛の気合いを持って小沢元代表に向き合っていただきたい。

 そのことをもう一度総理に、あえて要請させていただきたいというふうに思います。期待をしたいというふうに思います。ぜひ総理の所見をお聞かせいただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 来週中には小沢元代表とお話をしたいというふうに思っております。

 これまで、一昨年の十月からの議論の経緯もございます。これまでの議論の積み重ねで、党内からいただいた御意見を最大限今回の法案に取り入れるということも含めて、まさにこれは党議になっている、党の方針になっているということは基本的な認識として一致しなければいけないというふうに思います。

 残念ながら、小沢元代表におかれましては党員資格停止状況が続いておりましたので、党内のいわゆる意見交換の場には参加をされておりません。そういうところのギャップもあるかもしれません。きちっとこれまでの経緯と、そしてなぜやらなければいけないか、もともと消費税の引き上げに絶対反対というお立場ではないというふうに思いますので、大局観に立って腹蔵なく話をすれば、きちっと御説明をすれば御理解をいただけるものと私は確信をしておりますので、そういう機会にしたいと思いますし、もちろん、小沢元代表におかれましても、これまで党内の議論に参加をされていなかった部分、いろいろお話をしたいこともあるんだろうと思います。そういう御意見もよくお伺いをしながら、基本的には、でも、党の方針として固まっているということについては御理解をいただきたいというふうに思っております。

逢沢委員 いずれにしても、野田・小沢会談、幹事長も同席をされるというふうに承っておりますが、私どもの立場でしっかりと注目をさせていただきたいと思います。

 さて、野田総理、余り聞きたくない話だとおっしゃるかもしれませんが、参議院において問責決議案が可決をされた、いわゆる問責二閣僚をどうされるおつもりですか。今のままでこの委員会を進めようというおつもりなのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 参議院といういわゆる我が国の二院制の一つの院、ハウスにおきまして問責決議が可決をされたわけでございます。このことの意味というものは非常に重たく、そして厳粛に受けとめなければいけないと思っています。

 その反省を持って、緊張感を持って各閣僚は職責を果たすように指示をしていますが、特に、問責決議が可決をされた二閣僚におきましては、より大きな反省のもとに職責を果たしていただきたいというふうに思いますし、今回の一体改革法案を含めて、その他の重要法案には、ぜひこれは切り離してお考えをいただき、議論が前進できるように御協力を賜ればというふうに思います。

逢沢委員 旧来からの答弁の枠を出ない野田総理の言葉に、本当にがっかりする気持ちであります。

 本当に総理は、今回の一体改革に政治生命、命をかけようとしておられるのか、その根本がやはり問われる事態になってきたなというふうに私は思うんですね。もう後がない、この一点にかける、そういう総理のお気持ちであるとすれば、先ほど天の時、地の利、人の和という言葉も使いましたけれども、しっかりと地の利を整えていただかなきゃいけない、またそれが当然ではないかなというふうに思うんですね。

 確かに、二人の閣僚は、直接今この委員会で扱っている法案の所管大臣ではないかもしれない。しかし、消費税を引き上げるわけでしょう。十三・五兆円ですかね、安住大臣の計算。なぜ一%が二・七兆円かという議論がきのうありましたけれども、一応、公式的には十三・五兆円の新たな負担を国民の皆さんに求めようと。最初のときは減税先行だった。二回目はいわゆるレベニュー・ニュートラルというんですか。今度はもう、もろ負担を国民の皆さんにお願いする。社会保障であるからとはいっても、これは大変大きなことであります。

 それだけの新たな負担を国民に求めようとする大事業をやろうとするときに、内閣に問責を受けた閣僚が二人もいる。一点のしみもない、真っさらの、真っ白な、正しい、清い、そういう内閣を堂々とつくっていただきたい。そうじゃなきゃ、総理、国民がかわいそうじゃないですか。国民がかわいそうですよ。国民の皆さんだって、それは理を尽くして語ればわかるんです。だんだんわかる面もあると思う。しかし、こんな、一院から、大臣とは認められない、そういう烙印を押された閣僚を抱えたまま、何で強引に前に進めることができるのか。

 これはもう本当に、野田佳彦という人と長年つき合ってきたけれども、最も野田佳彦さんらしくない、今本当に見たくない姿を、率直に申し上げて、言いにくいけれども、言いにくい割には大きな声で申し上げていますけれども、そう申し上げなくてはならないというふうに思います。

 きのう、公明党の斉藤先生からも指摘がありましたよね。国交大臣だってここに来てもらわなきゃいけませんね。住宅税制の議論もありますよ。賃貸住宅をどうするのか、引き続き非課税であるべきだと思うけれども、そんな議論も必要だし、自動車の重量税、取得税の問題、これはやはり整理すべきだと私も思うけれども、そういう問責を受けた、大臣とは認められていない方と議論できないわけですね。質疑できないじゃないですか。

 質疑ができるきっちりとした環境を総理の責任においてぜひつくっていただかなきゃならない。内閣全体でこの大改革に責任を負う立場なんでしょう、皆さん。総理が一番のその立場だけれども、全閣僚でこの大改革に責任を負う立場であるということであるとすれば、速やかに国民が納得いく結論を出していただきたい。あらゆる世論調査を見ても、このお二人は閣僚としては適格ではないということを国民の皆さんも、五割を超える、六割、場合によっては七割、そういった国民の声、総理に届いていないはずがないじゃないですか。

 どうですか。もう一度しっかりとお答えをいただきたいと思います。

野田内閣総理大臣 御批判は、厳しい御批判でございますけれども、その声は真摯に受けとめさせていただきたいと思います。

 そういう御批判が国民各層にもあるということも承知をしておりますけれども、先ほど来申し上げたとおり、その批判にいっぱい応えるべく、しっかりと今まで以上に責任感を持ってその職責を果たしてほしいという気持ちのもとで、その上で、ぜひ引き続き御審議をお願いしたいというふうに思います。

逢沢委員 今、大変残念な発言でありました。

 参議院において問責であります。総理も昨日おっしゃったように、衆議院の審議そして採決、そして参議院において議論が行われ、採決があって、初めて成案を得る、法案が成立する。参議院で問責を受けたということの重さ、参議院だから衆議院はいいんだということを申し上げるつもりではありませんけれども、その意味もしっかりと受けとめておいていただかないと。そのことを申し上げておきたいと思います。ぜひ善処いただきたい、重ねてそう発言をさせていただきます。

 さて、きょうは日銀の政策決定会合ですか、開かれて、もう終わったというふうに聞いておりますが、何か新しい判断、新しい決定が生まれたんでしょうか。

 特に、ヨーロッパの方からさまざまなニュースが届いてまいります。ギリシャについて、あるいはスペインの銀行あたりも相当厳しい状況にある。それを受けて、新たな為替やあるいは株価の動きになっている。大きく報道されていますね。

 そういう状況の中で、きょう、どんな判断が下されたのか。時間の都合もありますので、簡潔にお答えいただきたいと思います。

木下参考人 お答え申し上げます。

 先ほど政策決定会合が終わりまして、後ほど総裁が記者会見させていただけるというふうに考えておりますけれども、簡潔にお答え申し上げますと、これまで、基金により長期国債の買い入れの枠、二十兆円まだございますので、これを積み増すことによりまして、引き続き強力に金融緩和を進めてまいりたい、このようなことになったところでございます。

逢沢委員 安住大臣、こんなことでいいんでしょうかね。

 午前中、茂木政調会長から、二月十四日のあの新たな用語の理解の仕方等々については細かく確認をいたしました。繰り返しはいたしません。

 二月十四日、国民は事実上の一%インフレターゲットと受けとめた。また、市場もそう理解をした。それを受けて、円安あるいは株高の方向に進みました。お手元に資料を、午前中も同じ資料を配りましたけれども、明らかであります。テレビを通じて、国民の皆さんももう一度この折れ線グラフを見ていただきたい。

 二月十四日のところに線を引いているわけでありますが、確かに、目に見えて円安そして株高、よい方向に進み始めたな、日銀もやっと重い腰を上げてくれたんだなと。そして、安住大臣にも期待がかかっているかもしれない、政府と日銀、財政当局と金融当局が緊密に連携をして、これをきっかけによい方向に日本を導いてくれるのかなと、市場もあるいはまた国民も期待感を持ったわけでありますけれども、しかし、長続きしませんでしたよね。

 為替の方は、三月十五日が、私の見方に間違いがなければピークで、八十三円七十四銭まで行ったんだけれども、また円高の方にずっと振れてきた。株価が一万円台を回復したのは、三月十四日から、わずか四月三日まででありますから、二週間少々ということでしょうか。ピークは三月二十七日の一万二百五十五円十五銭であります。

 あの二月十四日は一体何だったんだろうな。不十分だったのかな、あるいは方向が必ずしも的確ではなかったのか、その後のフォローの仕方がよくないから、こういうことになったのか。

 もちろん、為替であるとか株価は日本だけの状況で決まるものではない。ヨーロッパがどうなる、アメリカの景気、中国、アジアの動き、そして何よりも、株価については、外国人の方がどう判断し、どう動くか。いろいろなことがあるにしても、この折れ線グラフにまた国民は、恐怖感、不安感、あの二月十四日は一体何だったのか、あの後、安住大臣はどうしてくれていたのかというふうに今思っているわけですね。

 財務大臣、どうしてこういう状況を招いてしまったのか。そして、そういう状況にもかかわらず、きょうの午前中の会議では、一段の踏み込んだ新たな決定、このままじゃまずいぞという判断に基づく新しい判断というものがなかったということでしょう。これをどう我々は受けとめたらいいのか。国民にどう説明をするのか。まず、財務大臣からお伺いをいたしたいと思います。

安住国務大臣 日銀の問題もありますけれども、逢沢先生御存じのとおり、やはり欧州での、特にギリシャの問題等々、それからアメリカの指標が思いのほか、期待に反してといいますか少しよくなかったという点もありまして、やはり日本の株式市場は、外資の話がありましたが、非常にそうしたものに、アメリカの市場に反射的に影響される傾向が強うございます。

 ですから、日本の株式会社個々の上場企業の状況が非常に堅調であっても、残念ながら、それを反射するよりは、ニューヨーク市場が明け方までで下がれば日本も下がっていくような残念な傾向がございます。ですから、実体経済は決して正しく私は反映していないのではないかということを再三会見では申し上げております。

 日銀につきましては、七十兆円になる基金の増額によって、積極的な、いわゆるマネタリーベースの増強というのはやってきております。さらなる、この一%を目指して緩和というものを私は適時適切に弾力的にやっていただけるとは思いますが、一つだけ申し上げますと、ベースの部分でふえても、日本の場合、マネーサプライ、つまり市中の中でお金をどういうふうにでは回していくのかというところに、やはりもう一つの問題が存在をいたします。(発言する者あり)これは財政の出動も確かに必要かもしれません。これはあるんです。(発言する者あり)いや、それは公共投資、しっかりやっていますから、ですから内需が起きて底がたいんです。

 ただ、一方で、構造的に調整をしないといけない部分というのはやはりあって、長年、自民党も、二〇〇〇年以降、数次にわたる公共事業投資をやってまいりましたが、それでもやはり、ではデフレは直ったかといえばそうではないわけで、そういう意味での国内における構造改革、そうしたものもやはりやっていかなければならないので、政府と日銀と一体となって、この状況というものをしっかり克服していかなければならないと思っております。

逢沢委員 またしっかりとした議論をしたいと思いますが、日銀に発言していただく前に、実は、二月十四日、こういう決定をしたにもかかわらず、翌月三月、その次の四月、対前年比、比べますと、マネーサプライ、貨幣供給量、市中にどれだけお金が出たかということを見ると、実は減っているんですね。減っている。どうしてなんだろう。

 説明ぶりは、いやいや、これは去年の三月十一日、あの大震災、お金をたくさん出したんです、三月、四月、もうべらぼうに出した、それと比べれば確かに減ってはいるけれども、しかし二月十四日の決定の趣旨、それに反する貨幣供給量ではないんだ、そう理解をいただきたいとの説明でありましたが、本当にそれを真に受けていいのかどうか。そういう説明ぶりは、三月、四月、マネーサプライが減っているという報道に、しかし去年こうだったからという解説、説明は何にもないわけですよね。もしそうだとすれば、財務当局あるいは日銀が、いや、これは国民に誤ったメッセージを送ることになるからということで、矢の催促というか、ふざけるなということで怒らなきゃいけない。怒ったのかもしれないけれども、そのあたりのことがちっとも国民に伝わってきていないわけですね。

 そのことも含めて、きょうのこの決定、ヨーロッパの動き等々を考えて、本当に国民にどう説明をされるのか、納得いくことなのか、端的にお答えをいただきたいと思います。

木下参考人 お答え申し上げます。

 まず、マネタリーベースのことでございますが、先生今御説明いただきましたとおりでございまして、それを国民の皆様にちゃんとお伝えするということにつきましては、私どもなりに力を尽くしているところではございますけれども、今後ともさらに、御指摘を踏まえまして頑張っていきたいと思っております。

 それから、金融政策につきまして、二月十四日でございますが、マーケットの動きにつきましては、先ほど財務大臣からお話ございましたように、いろいろな要素が反映いたします。そういう意味で、その中で二月十四日につきましては、私どものとったアクションが好意的に受けとめられて、そういうような流れになったというようなことで承知いたしております。

 しかしながら、金融政策の効果が実現していくプロセスにおきましては、実際に金融市場に働きかけ、経済活動に影響を及ぼしていくということでラグがございます。そのラグもよく見きわめながら適時適切に運営をしていかないといけないということでございまして、そういうようなことを勘案しつつ、今後とも適切に強力な金融緩和を進めてまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。

逢沢委員 どうやってデフレを乗り越えていくか。行き過ぎた円高を是正していくか。簡単な話ではないことは、もちろん我々も理解をいたしております。引き続き、しっかりとこのことについては議論をさせていただきたいというふうに思います。

 さて、私の持ち時間もあと五分足らずということでありますが、野田総理にもう一度お伺いをいたしたいと思います。

 野田総理は、生まれと育ち、出身が千葉の船橋、首都圏ですよね。東京の、大きな意味では近郊ベッドタウンと言えるかもしれません。いわゆる地方の感覚、地方が今どういう状況になっているかということに、都会育ち、シティーボーイの野田さんが疎いということを最初から言うつもりは決してありませんけれども、地方の経済の苦しさ、特に地方経済の主役、担い手はやはり中小企業、中小零細ですよね。被災地であればなおさら、二重に三重に大変な状況にあるわけであります。

 きょうの日銀からもらった紙を見ますと、経済は横ばいの圏内だとか、持ち直しに向かう動きが明確になりつつあるであるとか、設備投資は、企業の景況感に改善の動きがある、緩やかな増加基調等々、全体を整理すればこういう表現になるのかもしれませんけれども、しかし、実際に岡山がどうなっているのか、九州がどうなっているのか、あるいは宮城がどうか、そういうところにもっと総理は日本の最高責任者として細かい神経を使っていただきたい。また、どうなっているかということについて目を向けていただきたいというふうに思います。

 失業率でありますとか、あるいは有効求人倍率でありますとか、あるいは信用保証協会で焦げついた分ですよね、弁済率がどう動いているのか、そういうことには目を通していただいているんだろうというふうに思うんだけれども、こういった数字の、こういった指標の向こう側にある本当の現実、本当の実態、この数字の向こう側にある油のにおいや、あるいは泥のにおいや汗のにおいや、そういうものにもっと敏感な日本国の宰相であっていただきたい、心から私はそう願っているわけであります。

 結局、今回の一体改革を成功させるのは、もちろん、国会で法案を通すということになると、やはり自民党の協力を取りつけなきゃいけない、あるいは野党に何とか協力してもらわなきゃ参議院を乗り越えない。確かにそれはそうであるけれども、もっと直接総理が国民一人一人に向き合うという姿勢を大事にしていただく、そういう姿勢をもっと前面に出していただくという姿勢が本当に私は大事ではないかなというふうに感じております。

 町工場のおっちゃんに、あるいは商店街のおばちゃんにどう理解をいただくか、納得をいただくか。これはもう今でさえ大変なのに、八パー、一〇パー、とてもじゃないけれども転嫁できるわけないですよというふうに、まあ、私の理解では十人が十人そう感じているわけなんですね。売り上げも落ちる。本当に不安がいっぱいであります。

 そういう人たちに直接総理が的確なメッセージを届けていただくということの必要性、重要性、きょうは時間が来ましたのでまた再度再度この議論をさせていただきますけれども、一言、地方で頑張る中小企業、地方で頑張るさまざまな立場の方々に今総理はどういうメッセージを届けられるか、簡潔に発言をいただきたいと思います。

中野委員長 野田内閣総理大臣、一言でお願いします。

野田内閣総理大臣 私どものお師匠さんの松下幸之助さんも、中小零細企業からスタートでした。中小零細企業が希望を持って働ける環境をつくることが日本の元気の源だと思いますし、私も、シティーボーイじゃありません、中小企業の皆さんからお支えをいただいてこれまでやってまいりました。

 したがって、日本再生戦略の柱の中に中小企業対策はしっかり位置づけていきたいというふうに思います。

逢沢委員 質問を終わります。

中野委員長 これにて逢沢君の質疑は終了いたしました。

 次に、野田毅君。

野田(毅)委員 今週に入りまして、我が党から、石原幹事長、伊吹筆頭理事初め、今の逢沢さんまでちょうど十人、こうして主として総理を中心にしての質疑をいたしました。

 私が今回のシリーズの本日の最終バッターということになるわけですが、既にこれまでのやりとりの中で、率直に言って、かなり進んだかなと思うところもあるんだけれども、全く乗り越えられていないハードルもあるんだな、種々あるように思いました。その点はこれから後で進めていきたいと思います。

 そこへ入ります前に、けさの報道にあったんですけれども、格付会社のフィッチが日本の国債を格下げしましたよね。一民間の格付会社の判断に一喜一憂するのはつまらぬ、それはそれでまあ横目で見ておけという判断もあろうかと思うけれども、ほかの格付会社も当然横にらみをしているだろうし、そもそも何でそういう判断になったんだろうか、その背景、これはやはり大変気になる、放置しておくわけにいかないね。これはもう御承知のとおりだと思います。

 それは、当面の日本の財政赤字が減るとか減らないとかだけじゃなくて、構造的にどうなのかと。特に、消費税の引き上げを結局はし切らぬのじゃないかという日本の政治構造に対する一つの評価というようなことが反映されているという見方もあるわけで、そうなると、事はそう甘い話ではない。

 これは、率直に、おたおたすることはないけれども、過小評価することもいかぬのだろう、こんなふうに私は思っています。

 この点について、簡潔に総理から受けとめをお伺いしたいと思います。

野田内閣総理大臣 これはもう野田先輩御指摘のとおりでありますが、基本的には、民間の格付会社のその評価について逐一コメントしないというのが政府の基本的な立場です。ましてや、こういう議論をやるときに、余りマーケットのリスク等々を持ち出す議論も、これも差し控えなければなりません。

 ただし、この国においてのまさに財政健全化にかかわるいわゆるこの法案の審議が、市場も警戒感を持って、国際社会もある意味非常に注目をしているということは心の中にしっかり押さえながら議論しなければいけないというふうに考えております。

野田(毅)委員 国会での議論はそういった市場への影響等々を頭に置きながらしなければなりませんので、過剰反応が出るようなことのないようにしなきゃいけないということを我々も心得ておるつもりです。だけれども、特に与党の皆さんはしっかりとそのことを認識しながら事柄に対応してもらわないと。

 私は、この前からいろいろな議論を聞きながら、総理自身の思いは伝わっているんです。政治生命をかけると。必死でおやりになっているんだ。だけれども、もちろんそれが我々には大分わかってきているんですけれども、与党の皆さんにどこまでわかっているんだろうかな。それから、国民にどう理解されているんだろうかなと。

 この前、本会議で、私があえて、大平総理あるいは中曽根総理の時代の売上税、竹下総理のときの消費税、過去の話を持ち出した。それは、やはり大きなリスクなんですよね。率直に言って、国民がみんなもろ手を挙げて賛成するなら、今ごろどんどん上がっていますよ。だけれども、財政再建はやるべきかやらざるべきかと言えば、それは、みんなやれと言うに決まっておるんですよ。消費税がそのために必要だという上で必要かどうかと言うと、みんな消費税引き上げに賛成になるんですよ。だけれども、では、今やるべきかどうかという話になったら、途端に話は違うんだ。実は、ここが今まで常に苦労してきた背景にあるということなんですね。

 実は、中曽根さんのときもやったんですが、それは今で言うよりも物すごく大変なことをやったんですよ。三公社五現業からなくしたり、三K赤字をなくしたり、国家公務員は十万人削減したり、それから、当時、まだ物価が相当上がっている時代に、五年間一般歳出の伸びゼロで抑え込んだり、本当に、民活をやったり、特にあの強烈なプラザ合意の後の円高、あの中で、内需拡大はせにゃいかぬ、財政は悪くできないという中で、のたうち回りながらやってきた。もうこれでいいんじゃないか。そして、マル優改革もやってきた。やるだけのことをやっちゃったよと。それで、よかろうと思って出したけれども、やはり潰れたんだ。一言、約束違反ということで売上税は潰されたんです。

 つまり、そういう意味で、国民の理解を得なければ選挙は通りません。だから、やはり何より先に大事なことは、国民の理解を得ることが最優先のテーマなんですよ。政治家だって選挙で成り立つんだから。国民が反対している中を、それはとてもじゃないが、偉そうなことは言えませんよね。だから、それだけに、公約違反ということの重みは大きいんですよ。

 ということで、私はあえて三つのハードルをこの前申し上げたんです。(パネルを示す)

 本会議でも指摘しました。そういう意味で、まず国民の理解、これはやはり公約問題、マニフェスト問題です。これをどう乗り越えるんですか。

 それから、民主党内政局。全く、総理のおっしゃることと、どうやら、幹事長以下の皆さんの最優先のテーマが食い違っているんじゃないか。片っ方は、消費税を政治生命をかけてでもやらなきゃいかぬとおっしゃっているんだけれども、幹事長以下の皆さんは、むしろ党が割れないことを最優先にして、消費税は二の次になってしまっているという大きなそごがあるということ。

 もう一つは、政策論としては、我々は、今回の社会保障に対する考え方、政府から出された、あるいはさまざまな基本法、年金なりいろいろありますけれども、随分と違いますねという問題。税制も、この前も指摘したとおり。これは幹事長からもお話があったけれども、二十八項目ずっと検討が並んでいて、これはとてもじゃないが税法の体をなしていないね、これはとてもじゃないが、このまますんなり賛成などという話にもならないねというようなこと。

 幾つかハードルがある、こういうことです。

 私ばかりしゃべってはいけませんので、総理にも聞いておきたいと思うんです。

 そこで、国民の理解というのは、やはりマニフェスト問題ですよね。もうずっと我が党は指摘をしてきました。多くを言いません。ただ、簡潔に言えば、マニフェストをつくる責任者の一人であった小沢さんが、明確に、違反だと言っているんだ。これは、幾ら野田総理がおっしゃっても、作成責任者が違反だったと言っちゃっているんだから、これはもうやはり、素直にごめんなさいと言う方がいいです、余りあれこれあれこれおっしゃらないで。

 だけれども、違反かもしれないが、もっと今大事な立場に日本は直面しているんだ、むしろそう率直にお話しになった方がすとんとくるんじゃないのかな、こう思うんですが、もう一遍、どうでしょうか。

野田内閣総理大臣 マニフェストでも、あるいは歴代の代表が掲げた政策でも、社会保障改革はずっと明記をしてきております。残念ながら、その安定財源としての消費税を位置づけた議論はしてきておりませんでした。もちろん、議論はやってきましたが、明確に国民の皆様に、マニフェストも含めて、打ち出しはしておりませんでした。

 ということで、そのことについては、先般の本会議でもお尋ねがございましたけれども、この三つのハードルの中の大変重要な大きな壁、ハードルになっているというふうに思います。そこは率直に認めて、私は、心からその点はおわびを申し上げたいというふうに思います。

 おわびを申し上げた上で、だからといって、今回出している法案に正当性がないということではございません。確かに、これは余りにも大き過ぎる課題です。これまでも、歴代の先輩たちの御苦労というお話をお聞きしました。きのうも竹下亘先生から竹下登先生の御苦労等もお伺いをいたしました。それぞれ、私よりもはるかに政権基盤が安定をし、ねじれてもいない国会の中でも、大変な御苦労をされたということであります。

 そんな大きな課題でありますけれども、あえてここで法案として議論に供しなければいけないということは、それだけやはり待ったなしの状況がもう今まで以上に迫ってきている。財政は今までより悪化している、社会保障の未来に不安を持っている人もたくさんいる、それは一日も早く解決しなければならないし、G8でも、財政と成長のまさに両立を図ることが今世界的な議題になっている中で、日本がその戦列からおりていくわけにはいかないという状況の中で、まさに待ったなしだというふうに思いますので、そういう、今までのことで不備があったこと、足らなかったこと、言わなかったこと、言い過ぎたこと、いろいろなことも含めて心からおわびをしながらも、しかし、この改革はやらなければいけないということの御理解を強く求めていきたいというふうに思います。

野田(毅)委員 率直なお話をいただきました。

 総理が今おやりになろうとしていることは、私は間違っているとは思いません。ただ、その思いを具体化していくにはハードルがあるな。

 というのは、マニフェストの問題は、あのマニフェストを守らなかったことがいけないと言っているんじゃなくて、そもそもあのマニフェストはいろいろ問題があったんですが、何が一番問題か。私は、今改めて思うと、ばらまきだとかいろいろありますよ、だけれども、それだけじゃなくて、冒頭言ったように、必ず、いざとなったらやはり、その前にやることがあると。この、その前にやることがあるでみんな潰れるんですよ。今もそうでしょう。

 つまり、民主党のマニフェストの最大の問題は、その前にやることがあると言ってたくさんハードルを自分でつくっちゃったの。今、そういう自分でつくったハードルで、みんな越えられなくて、のたうち回っているんじゃないですか。そうでしょう。その前に事業仕分けでこんなに金を出しますよ、無駄をなくせばこんなになりますよ、お金はどんどんありますよ、消費税引き上げの前にもっともっとこんなこともやる、あんなこともやると。

 実際、我々は、小泉総理が二〇〇一年に就任してから、やはり、無制限な借金がふえることは困る、だから、歳出の膨張圧力を、とにかく聖域なき歳出カットをやるんだということで、いっぱい削って削ってやってきた。そして、ちょっと削り過ぎて血が出た。それが、二〇〇七年の参議院選挙で反動が来た。こういうことはこの前申し上げた。(パネルを示す)

 これは、この前の予算委員会で私が出したものと同じなんですが、少し説明をしていきたいと思うんです。

 これは、二〇〇一年から二〇〇七年まで、つまり、参議院選挙で我が党が敗北するまでにどんなことをやったかというと、これを見てください、二〇〇一年から二〇〇七年にかけてふえている、つまり、この七年間で予算でふえているのは国債費と社会保障関係費だ。この社会保障関係費も、本当はもっとふえるはずだったんだけれども、例の二千二百億、頭打ちとか聖域なき歳出削減等さまざまなことがあって、削って抑えて、まだこれだけふえているんですね。

 そのほか、見てください。ずらり。地方財政もおっこっちゃった。そして、大事な人材を育成する文教予算まで削っちゃって、今、大学が世界じゅうで一体どんなレベルにありますか。

 今、尖閣、いろいろあっちの方で、日本の安全保障が非常に、心配しているときに、もっともっと保安庁の警備船なり巡視艇なり、海自のいろいろな船があったっていいじゃないかと思うんだけれども、これもずっと、実は二〇〇一年に比べて削っちゃっているわけだ、防衛費を。その結果、彼我の、現実の船の多さから見てごらんなさい、完全に当たり負けだ。幾ら口で偉そうなことを言ったってどうにもならない。

 ちなみに、この間、中国の軍事予算は三倍ふえているんですよ。日本はマイナスですよ。世界じゅうで七年間の間にこれだけ減らしている国がありますか。文教もそうです。農業もそうだ。公共事業は特にひどかった。その上に、あなた方は、コンクリートから人へなんて、まだ削っているんだから。

 だから、とにかくめっためたになっちゃって、必要なところを全部削り過ぎて、もう今や日本の国力そのものがおかしくなっているんだ。だから、もうそろそろ限界ではないですかということで、我々は、麻生内閣でいよいよ方針転換をして、無駄の排除は引き続いて並行してやらなきゃいけないけれども、まず先に無駄をなくしてその次にといういわば直列型、その前にということをやめて、同時並行してやらないともうもたないよというのでスタートをしたわけですよね。ここがポイントなんだよ。

 せっかくそこまで、我々も血を流してそういうことをあえて言い出した。何とか理解してもらえないか。身を削る話も、国会議員の年金もなくしたじゃないの。率直に言って、私なんか、三十年以上いて、自分の払った元本も来ないんだもの。年金ゼロですよ、事実上。本当にどうするんだろうと思う、自分自身の。そういうことまで現にやっているんだよ。だけれども、まだ世の中は身を削れという話になっているんだ。

 だから、これをどうするんですか。せっかくそこまでやってきたのに、あなた方は、まだ削るところはたくさんあるんだというマニフェストを出してしまったから、今なお世の中は、その前にやることがあるといっぱい言っているじゃないですか。

 ハードルをつくったのは我々じゃない。我々はむしろ、並列的に、同時並行していかなきゃもうもたないと言って消費税の引き上げを含む抜本改革を世の中に提示したんだけれども、その前にやることがあると言って一生懸命宣伝して有権者から政権をとったんでしょう。そのことは済んだことだからではあるかもしれない。だけれども、自分らでつくったそのハードルの壁を乗り越えられなくてみんなおたおたしているじゃないですか、皆さん。

 これは、やはり与党の責任として、率直に皆さんが自分らの非を認めて、総理だけが認めるんじゃないんですよ、与党全体の皆さんが、総理の仕事じゃないですよ、皆さんの責任においてこのハードルをみずから下げる、取り除く、この努力を与党の中でするのが当たり前じゃないかと。本当は皆さんに一人一人聞いてみたいんだ、一体どこが与党なんですかと。本当は総理は気の毒なんだ、我々から見て。

 このところを総理はどう受けとめていますか。率直に言って、誰が見たって、公然たる批判があふれているじゃないですか。この点はどうごらんになっていますか。総理。

野田内閣総理大臣 あの政権交代以降、鳩山政権、菅政権、そして私の政権と、今三代にわたります、一貫して、無駄をなくしていこう、非効率な部分を見直していこう、事業仕分けであるとか政策仕分けであるとか、いろいろやってまいりました。これは一部の人がやったのではありません。やはり多くの議員がかかわって、その仕分けの作業を手伝ったりいたしました。

 その総力を挙げてやった結果が、それは、あのマニフェストに掲げた十六・八兆という数字からは残念ながら遠い数字でありましたけれども、でも一応兆単位で歳出削減は行いましたし、加えて税制改正も行って、恒久財源を確保しながらマニフェストの主要項目はその範囲の中で実現をさせていただきました。

 という意味では、そこは、よく御指摘をいただいているばらまきではないんです。政策目的が違うという方はいらっしゃるかもしれませんが、しっかり恒久財源を確保しました。ワンショットのお金も、税外収入も、例えば初年度は十・六兆円という最大限の規模で確保したり、努力はしてまいりました。

 しかし、残念ながら、十六・八兆という数字に比べれば、もちろん、これは足りなかったということは率直に認めなければいけないし、だからといって、これは午前中の議論でも申し上げたんですが、行政改革は何かのための一過性の問題ではないと思っています。これまでも一定の努力をやってまいりましたが、これからも、国民に御負担をお願いする以上は、その結果が出るような努力をしっかりとやっていかなければいけないと思います。

 ただし、これは野田先生と同じだと思うんですが、これをやらなければこの一体改革ができないんじゃないんです、順番論で申し上げると。包括的な改革であって、行政改革もやらなければなりません。一過性ではなく、これからもやらなければいけません。経済の再生もやらなければなりません。社会保障と税の一体改革でありますが、経済や行革や政治改革等々、包括的に進めることによって国民の皆様に御理解をいただける努力をする。

 その意味では、並行的に、まさに全部政治生命をかけるということになるのかもしれませんが、これは、一体改革を実現するための、周りの改革もやらなければいけないということを強く思っている次第であります。

野田(毅)委員 みんなに政治生命をかけたら、それは欲張りです。大体、一内閣一つのテーマで十分です。

 おっしゃったように、行政改革であったり無駄の排除にしたって、だって、何が無駄かというのは時によって違うでしょう。そのときには必要であったって、時がたてば要らなくなるんだし、当たり前のことです。また、人によって無駄かどうかというのは基準が違うんだもの。事業仕分けにしたって、みんなそうだ。もう細々言いませんよ。だけれども、いっとき、あの事業仕分けをやればうんとお金が出てくるぞと舞い上がってみんな喜んだじゃないですか。今全然下火になっちゃったね。結局は、それなりの、効果ゼロとは言いませんよ、だけれども、そんなことで消費税の議論を先送りしていいぐらいの話ができるわけがない。

 だから、同時並行してやるということが大事なのに、せっかく我々はそういう努力をしてきたのに、それをあなた、先にこっちをやれみたいなことをやっちゃったから、今動かない。そこはやはり率直に民主党の皆さんも反省して、これから与党の責任においてやってもらいたいと思うんですよ。

 さて、与党内の問題ということでいうと、先ほども小沢さんの話が出ました。やはり、何でか知らぬけれども、口に出したくないけれども、この人がいないと民主党は動かぬみたいになっちゃった。マニフェストをつくった小沢さんが、マニフェスト違反だ、反対だ、こう言っているわけだ。

 本当に僕が今心配しているのは、来週お会いになるでしょう。説得し切らぬと僕は思う。そんな暗いことを言うのは大変失礼だけれども、これからやるのに水をかけたくないが。

 なぜか。だって、彼が今まで言ったことを変えちゃったら、小沢さんのプリンシプルというのは何だという話になりかねないでしょう。

 それからもう一つ。より大事なのは、本質的な問題なんだけれども、政府原案そのものがマニフェストに違反しているから反対だ、こう言っているわけだ。いよいよこれから、いろいろ協議をして、我が党の考え方をも受け入れてというか、むしろどっちかというと我が党の考え方を主体にして一緒にやりましょう、こう言っているわけで、そういう意味では、我々の政策のハードルは決して低くはないんですよ。社会保障にせよ、税にせよ、政策論として。マニフェストの扱いにしても。それを、政府案にでさえ注文をつけている人が我々が出した案に賛成するかどうか。賛成しなきゃ一緒に出口を出られないはずだ。僕はそれを前から実は心配しておりました。

 だったら、与党も一本化して、野党と一緒になって、一つの案のもとで一緒に仲よくゴールインという構図はなかなか難しくなっているんじゃないでしょうか。何人かが言っていました。まさにどっちをとるかという非常に厳しい状況に総理はあられるな、きついと思います、同情しています。だけれども、同情じゃ済まないんです。

 この点を、来週お会いになる小沢さんにどう説得というか協力依頼というか、賛成への約束事をしてもらえるのか、少し聞かせてください。

野田内閣総理大臣 まず、どういう話の展開になるかというのは、これはやってみなきゃわからないところがあります。やってみなきゃわかりませんが、基本的な姿勢は、これはもう長い間議論をしてきた、唐突に持ち出した話ではないし、多くの党内の御意見も組み込んだ中で党の方針を固めて法案を提出しましたということの経緯のお話と、マニフェスト違反とおっしゃるかどうか、これはわかりません。そのことについての、マニフェストの考え方とこの一体改革の考え方をどう捉えていらっしゃるかということも、これは議論になるだろうと思います。

 マニフェスト違反というのは、これは仮定ですから申し上げませんが、マニフェストの中にはさまざまな社会保障の改革が書いてあるんです。それを支えるための安定財源をどう実現するかであるから、マニフェストの理念は国民の生活が第一であって、国民生活に極めて密接不可分の社会保障を支えるために責任ある態度として財源を確保するということは、国民の生活が第一という理念を損なうものではないと私は思います。

 我々がマニフェストを一字一句変えないで国会の中で何かやろうとしたときに、ねじれ国会の中で通るはずがありません。各政党それぞれの主張があるわけです。最初からもう過半数で決まるんだったら、それぞれの党の持っているもので、その数がもう決まっているんだったら、審議をしながらよりいいものということもあるけれども、自分の党のものをベースに全部押し切ることができると思います。

 だけれども、物事を通すためには、今お互いにそれぞれの立場、考え方があるけれども、いかに合意できるものは何なのかを模索するのが今のねじれ国会、特にこの重要法案についてはお互いの歩み寄りが必要だというふうに思いますので、そのことはもうベテランの政治家の方はよくおわかりだと思いますが、そういう議論をさせていただきたいというふうに思います。

野田(毅)委員 今ずっと聞いていると、私は海部内閣のときのことを思い起こすんですよ。あのときは消費税ではないんですけれども、いわゆる政治改革法案です。これにやはり一生懸命だったんですよ。だけれども、国民はやれという中で、実は政党の方が反対したんだ、内輪で。そして、とうとう委員会で通らなかった。そのときに重大な決意をされた。だけれども、解散して国会議員の首を切るんじゃなくて、自分で自分の首を切っちゃったんだ。そういうことがあるんですね。

 今回は、政治改革とはちょっとテーマは違う。だけれども、もっと重いと思う。政治改革の方は、国民からすればそんな切実な話じゃないもの。今度の場合はもっと切実だ、みんな選挙を抱えているから。だから、党内の反対も相当きついですよ。

 来週、これからやるわけですから、私は、よほどのことがないと、どっちの首を切っちゃうかわからなくなっちゃうことだってなくはないという海部内閣のことを思い起こすんですよ。

 これはそんな軽い話じゃないと僕は思うんです。うまくいかなかったときに、採決しなきゃ参議院に送れないんですよ。大体、野党が参議院で数が多いからどうの、そんな話は遠い先の話だ。まず衆議院を通過できるかどうかという、今その一点に集中しなきゃならぬときに、何を参議院の話を言っているんですか。そうでしょう。民主党の中が真っ二つになっていて通ると思いますか。そんな数合わせできますか。私は、政治生命というのはそんな軽いものじゃないと思うんですよ。

 一人でしゃべってはいけませんが、大事なところなので、あえてお伺いします。

 党内が賛否真っ二つになったままでも、採決しなきゃ通らぬのですよ。採決するだけの腹はありますか。最初からなかったら、どうにもならぬじゃないですか。

 だから、何か知らぬけれども、年内いっぱい延長しようなんて話があるじゃない。それは、採決したくないからそういう話になっているんだもの。誰が考えたって、輿石さんは消費税引き上げに一緒になって政治生命をかけるという立場にないですよ。党を割らないことが最優先だ。あとは、どうやって野田総理の顔を立てようかねぐらいの話だ。そういう局面の中に現にあるわけで、みんな国民はそれを見ているんです。

 ですから、政策論、先ほど来、我が党の政調会長からもお話がありましたが、少しフライングぎみだな、少し甘い球を投げたのかねと。ひょっとして、それに余り期待されていくと、そうでもない、ハードルはむしろ御党の中にあるんじゃないですか。だから、我が党も、もちろん足を引っ張るつもりは全くないですよ、我々はむしろやってもらいたいと思っているんだ。そのために、自分でやってほしい。

 六十六人が反対なら衆議院は通らない、民主党の中の造反が。何人になるかは知りませんけれども。だから、こういう状況では、やはり幹事長が政局の鍵を握っているというのはみんなわかっているわけですよ。だから、みんな何か閉塞状況に陥っているのは、ここに全ての原因があるんですよ。(パネルを示す)だから、このハードル、この二つ目の党内政局が全てだ。だから、与党対野党じゃない、衆議院対参議院でもないんだよ。まさに、民主党内の、ここの一番肝心かなめのところがわからないんだ。

 だから、僕はあえて言いますよ。去年のうちから言っていたじゃないの。そうでしょう、岡田さん。総理の周辺にも随分言ったじゃないの。こんなことはわかっているんだから、何でもっと早くから、何遍でも、小沢さんと何でさしで話をしないんだよと。何で今ごろまで先送りしてきているんですか。こんな状況だったら、悪いが、本当に政治生命をかけているかどうか、僕らにはわからないんだよ。

 この点についてもう一遍、総理自身が、ちょっとたくさん言ったので何を答えていいか迷うかもしれぬが、端的に、党内がまとまらなくても、二分されていても採決をするという腹はあるのかないのか。

野田内閣総理大臣 党内論議、本当に時間をかけてやってきた中で、小沢先生は党員資格がなかった分、直接その会議には入っていませんが、その関係の方も全て入りながらの議論をやってまいりました。そこで時間をかけて出てきた結論ですし、私自身も、昨年の暮れに、これは、成案から素案になる段階で、海外から戻った後に五時間ぐらい議論して、いろいろな皆さんの御意見を頂戴しながらまとめるところに私なりにも汗をかいてまいりました。

 そこで出てきたところに、絶対反対というのはなかったんです。さっきの、どっちが先かみたいな議論はありました、経済は大事だ、行革は大事だとか。そういう議論を踏まえてまとめたのが今回の法案でございますので、私は、党内が真っ二つという評価をされましたけれども、基本的には、この党議に従って行動していただく方がほとんどである、全てそうしていただきたいということを望みながら、採決をやらないということはありません。

 法案を提出している私どもは責任があります。法案の採決をしない議論をここでやっているとしたら、こんなに皆さんに迷惑なことはないと思います。それぞれのお立場で、真剣なお立場で御意見を出していただいています。その行動というのは、有権者が見ています、国民が見ています。そこは、しかるべき期間が経たときに、議論が煮詰まったときにどこかで採決をするというのは、これは国会のあるべき姿であって、そのことから逃げるとか、そのことをやらない前提で法案提出をするなんということは、政治家としてはあってはいけないことだと思うし、そんなことをするつもりは全くございません。

野田(毅)委員 必ず採決をすると。ただ、十二月までいってからじゃ遅いですね。問題は、いつ、どのタイミング、この辺は伊吹筆頭にしっかりとこれからぎりぎり詰めてもらうことになると思うが。

 いずれにしても、これだけは、我々が最も心配しているのは、本当に採決そのものを延ばすという可能性が非常に強いと僕らは見ているんです。もう一つは、なかなか小沢さんというのは知恵者ですから、賛成も反対もしないで棄権しちゃうという手だってあるかもしれないんだな。だから、いろいろなバリエーションがあるんですよ。

 そこで、一つ知恵を授けてあげます。

 小沢さんというのはいいかげんな人なんだよね。そうでしょう。二〇〇七年の参議院選挙で大勝したんでしょう。その年の暮れに何があった。大連立じゃないですか。大連立の中のテーマは何ですか。消費税でしょう。何でまたころっと変わるんですかなどということをあなたからもっと早くから言えばよかったのよ。来週、また言うかどうかは知らぬけれども。そうでしょう。だから、私から見ると、何をやっているんですか、民主党はと。

 もう一つ、ついでに知恵を授けてあげるとなんですけれども、これは授けていいのかな。

 一応、過去のことを踏まえながら、これはパネルにはしていないんですけれども、お手元にある資料の三枚目、これは古い資料です。

 これは、平成十年暮れに大蔵省の方が私のところへ持ってきて、自自連立のときに合意をして、そして自自連立がスタートをする。そのときに合意した中身、先般の自自連立協議の中で、消費税の使途を基礎年金、老人医療及び介護に限定する旨の合意をしましたと。それで目的税化のスタートを切る。だけれども、法律には書かずに予算総則でやりましたということで、ここにいろいろ書いてあります。このときの自由党の党首は小沢さんです。私もその下で責任者をやっていました、これをつくった張本人ですけれども。これはよく読んでいただければわかる。

 とにかく、このとき既に高齢化がどんどん進んできている。さっきお話ししたように、いろいろな分野の予算をみんな削り取って、全部社会保障、高齢経費にどんどんお金が行っちゃった。借金も限界だ。さあどうする。まだまだふえるんですよ。それを今までどおりの延長で、ほかの予算を削って回す、あるいは借金をふやすというやり方はできないでしょう。そうであれば、逆に、社会保障、特に高齢化に伴う社会保障の増加経費の中の歯どめをかけなきゃいかぬ。何を歯どめにするか。

 一つは、理念的、定性的な歯どめも必要だけれども、もう一つは、財政の裏打ちの中での歯どめが必要だ。したがって、これから消費税が、つまり、高齢三経費の財源は社会保険料だけではもう賄えない、だから公費負担せざるを得ないけれども、公費負担の源流は消費税でやるしかない。逆に言うと、社会保険料の引き上げ、消費税の引き上げの範囲の中での給付の内容になるということが、このときにつくった背景なんです。それは、今回のまさに一体改革という中の実は源流の一つでもあるんですよ。ほかの予算を削ってきて何でも持ってこいと。それはできないですよと。

 これをつくったときの責任者はあの人なんだから。私はそのことを、民主党の皆さん、ぜひよく頭に置いておいてくださいよ。でないと、次の若い世代は一体どうなりますかということを、私が言うのではなくて、本当はこんな話は与党の皆さんが国民の皆さんに言わなきゃいかぬのだよ。だから、そういったことを、僕はそのことをぜひ、与党みたいなことを言っちゃったらいけないんだけれども、だけれども、これは与党、野党を超えてまさに今国家的な大事な課題だからあえて問題提起しているので、ここが我が党の今回の社会保障に対する基本的考え方の原点でもあるわけです。

 社会保険を中心にしてその中でいくんですよということ、これがはっきりしなくて、今の民主党のマニフェストでいくと何が何だかわけがわからなくなっちゃっているということに問題がある、それが実は政策のハードルの一つでもあるんだ、こういうことを申し上げておきたいんだけれども、総理、いかがですか。所見を伺います。

野田内閣総理大臣 本当に、アドバイスとして受けとめさせていただきたいというふうに思います。ありがとうございました。

野田(毅)委員 そのとおりのお考えでこれからやりますということになりますかね。どうですか。

野田内閣総理大臣 今お示しいただいた資料というのは、これは平成十年ぐらいのころですよね。私は、このころ浪人なんです。厳しい浪人時代で、あのころの、覚えていますが、貸し渋り、貸し剥がし、日本の景気は厳しい状況の中でした。その中でも、こうやって消費税と社会保障との関係を議論していた、その当時もあったということなんですね。今回なぜ違うのかという議論は、基本的には成り立たないと思います。

 ということを踏まえて、野田先生にきょうは何か事前スパーリングしてもらっているみたいですけれども、いろいろなアドバイスを踏まえて対応させていただきたいというふうに思います。

野田(毅)委員 本当にこのテーマは与党、野党を超えたテーマだと我々は思っていますよ。だけれども、さっき言ったように、難しくしちゃったのはあなた方なんだよ。せっかくいいところまで来ていたのに、それをまた根っこからちゃぶ台返ししちゃったわけだ。そしてこうなっちゃった。普天間と一緒なんだ。

 だから、結局、何か玉手箱みたいなものだな、あけてみたら、わあっと大変なことになっちゃったしね。公約の受けはよかったんだけれども、国民は玉手箱をもらって。ふたをあけたらえらいことになっちゃったというようなことがあるんでしょう。青い鳥だな。パンドラの箱か。その種のおとぎ話がよく合うような今の民主党の対応だななんて思っております。

 さて、そこで、政策のところで言いますと、社会保障については先ほど茂木政調会長からもお話があったんですが、我が党としては、先週半ばに平場での議論を行いまして、社会保障に対する我が党の基本的な考え方の骨子案というので、これをたたき台にしてお話をして、いよいよ、これをもとにして我が党が法案化を進めるのか、あるいは、とりあえず基本的な考え方を取りまとめるという作業に今入っております。その中の要約部分を五項目ほど政調会長からお話をして、違和感はないという話だったんですね。

 これは本当に、違和感がないというだけでいいのかなと。これには伴うハードルがあるんですよね、あのときも指摘されましたけれども。

 現在出されている政府の法案は、私の目から見るとほとんど白紙にするしかないな。そこから先、修正するのか、撤回してもらうのか、どうするのかはこれからの論議の対象になるかもしれません。

 いずれにせよ、我々は、新年金制度についても、最低保障年金の話がよく出ていますが、そもそも、被用者年金と違って、半分負担してくれる人がいないような人たちと半分会社が負担する人たちとが全く同じ制度でいけるなんて現実にはとても無理があるということも含めて、これは根っこから、この点も問題がある。

 それから、後期高齢者医療の話も、どうせなら、ことし出さないのなら、いっそのこともうお蔵入りにしたらどうですかねということもあるというような話。

 それから、少子化の話も、これも田村さんからも厳しく言われたんだけれども、全然、害あって益なし、ちょっと言い過ぎかもしれないが、これは逆にかなり問題点があるぞというようなことをかねてから申し上げておったわけです。

 率直に言って、それぞれのテーマについて見ると、結構ハードルは高いですよということを承知の上でしっかりと党内の調整をしてもらうというなら、それで結構です。だけれども、あくまでそれにこだわっていくということであれば、このハードルを越えられないことになる、こういうふうにも思っておるんですが、その辺の覚悟のほどを、総理、どうですか。

野田内閣総理大臣 先ほど茂木政調会長から示された、五つの自民党の基本的な考え方という、その文章を見る限りにおいて、これは違和感はないとさっき申し上げました。特段、これに異を唱えるということはないと。

 自民党の骨子案というものを拝見させていただく中で、この五つの文章には違和感ないんですけれども、多分、具体的に、私どもの政策で相違点として主張されている項目がだんだん明白になってきているのではないかと。

 一つは、新しい年金制度の創設について、これは非現実的だとおっしゃっている。それから、年金の低所得者加算について、これも違うとおっしゃっている。それから、子ども・子育て新システムの創設についても、今ちょっと厳しい御批判がありましたけれども、これは採用しないというお立場ということ。それから、後期高齢者医療制度の扱い。

 というところが、この五つの項目では何となく違和感がなくても、具体策のところで少し、少しというかちょっと違いが出ていること、これをどうやって、これから議論の中で、折り合えるのか、本当に折り合えないのかということの詰めをさせていただければというふうに思いまして、これは対案としてどこかで具体的に御提示していただけるのかもしれませんが、そういうことも踏まえて、しっかり議論をしていきたいというふうに思います。

野田(毅)委員 社会保障に関しては、そういうことでこれから進めさせてもらおうと思っています。いろいろほかにもありますけれども。

 ただ、基本的な考えは、さっき冒頭言いましたけれども、我が党は、少なくとも、自助、共助、公助というのはよく言われて、これは大体御承知のとおりですけれども、やはり保険料あるいは税を払った立場、つまり受益と負担、本来、社会保険というのは、そこの対応関係があるから社会保険なんですよ。対応関係がなければ保険じゃないですよ、現実問題。この原点を忘れて、何でもかんでもいいから困った人にばらまくよというのでは、これでは社会保険にならない。この原理原則をしっかりしなきゃだめですよと。

 ただ、今でも、医療保険なんかは特にそうなんですが、高額のいろいろな、余り病名を言うと差しさわりがあるからなんだけれども、人工透析だとかいろいろあるじゃないですか、いろいろな手術をしたり。年間何百万とか、大手術をしたら一千万ぐらいのお金がかかるけれども、実際には高額医療の療養費の頭打ちがあって、自分の払っている保険料と受けるサービスの間にこんなにあるじゃないですか。

 たくさん保険料を払った人がより安くサービスしてもらえるというのが大体、普通は受益と負担の関係かもしれないんだけれども、逆に、余り払わない人の方が受益も大きいみたいな話が、自己負担も少ないというわけだから、これはどうなっているんだということになれば、それはやはり、保険料や税金を負担する側から見れば、給付の見直しについて、もうちょっとしっかりした理念があっていいじゃないですかということを、我々はそれを基本にして見直そうじゃないですかと。ただ気の毒だ、給付が必要だ、だから消費税だということだけでは、幾ら消費税を上げたって追いつきませんねということで、我々はそれを言っているということ。ここのところは随分民主党と違うんじゃないかな、我々はそう思っておるということを指摘しておきたいと思います。

 それから、税の方はいろいろ気になるところがあったんですが、これはまたおいおい、具体的な問題点はこれからの審議の中で詰めてまいりたいと思います。この前は給付つき税額控除についての問題点をお話ししておきました。

 ただ、きょうもどなたかが言っていましたが、歳入庁、私はこれは問題だろうなと思いますよ、あえて言いますけれども。

 実際、今、社会保険料というのは誰が徴収しているんですか。社会保険庁ですか。では、国民健康保険は誰が徴収しているんですか。

 いろいろなものを、年金でもそうだけれども、申請したら免除しているじゃないですか、半分免除とか。これは、言葉は悪いんだけれども、申請して免除してもらってお金を払わなければ、いわゆる加入期間にカウントしてもらえるんですよ。だけれども、申請しないで、黙って払わないで未納だということになったら、保険の加入期間にカウントしてもらえないという現実がある、年金でも。それはひどいじゃないかということで、今度は十年にしよう、こういう話になっているんだけれども。だって、お金を払わないのは一緒だからね。申請するかしないか、半分にするか、二分の一にするか全部にするのか、四分の一にするのか、四分の三、この前、四分の一……(発言する者あり)やったでしょう。誰がこれを決めるんですか。何を基準にしてやるんですか。

 税の世界ではこんなことはあり得ない。税はもっとオープンです。申告納税方式です。社会保険庁の行っているその保険料の決め方、徴収の仕方、本質が違う。だから、一緒にしたらいいという人はそういう現実をわかった上で言っているのか。私にはわからない。民主党の皆さんは何か書いてあるそうだけれども、やるなんて。きょうも、どなたかが何か言っていましたね、あれをやらなきゃだめだって。何だか知らぬが、あれをやったら何か十兆円ぐらいお金が余分に入るそうだ。どこにそんなお金があるんですか、実際。何を現実を知らないことを言っているんでしょうか。

 私は、そういうことを思うと、よほど人間をふやさないと無理だし、それから現場が、そういう裁量行政の中で決まっている保険料というものをもう一遍根っこから見直すのなら別ですよ、これがないのに何で、徴収だけじゃなくて、一緒にできるんですかね。

 この辺は、岡田さん、あなたの責任でやるの、これは。答弁してください。

岡田国務大臣 今委員が御指摘になった問題があることは事実であります。

 きょう、先ほど馬淵委員の質問に対して、私、それに加えてお答えいたしましたのは、やはり対象が大分異なると。国民年金の加入者の所得層、かなり低い方もたくさん入っている。それと、国税の対象になる所得層というのは比較的高い層ということですから、この辺をどういうふうに折り合いをつけていくかという問題があるということは申し上げたところであります。

 ただ、一方で、歳入庁という形で現に行っている国もあるということですから、もう少しそこはしっかり研究をさせていただいて、いい答えを見つけ出したいというふうに考えているところでございます。

野田(毅)委員 いい答えは、諦めることだね。もうちょっと本当に、超長期検討の対象になるかどうかでしょうね。

 私は、これは歳入庁だけじゃなくて、かねてから、我が党もひとつ反省もして、着手しなきゃいかぬのは、そういった社会保険の保険料の決め方などについて、もう少し見える化というのかな、そういったことを考えなきゃいけないね。

 今は、地方税もそうなんですが、大体賦課方式なんです。だから、お上が決めたら決まっちゃうんですよ。申告方式じゃないんですよ。旧内務省、大体そういう傾向なんですよ。だから、頭を下げていったらまけてもらえるんですよ。あなた、税金でそんなことをやったらどうなりますか、この国は。そこが、文化が違うだけではなくて、どっちがいい悪いじゃないけれども、それは当たり前ですよ。見える化をしたらいいです。

 だから、そういう社会保険の決め方、料率の決め方も、これはやはり与野党を超えて、もう少し相談しながら改善していくというのはあってしかるべきだ、私はそう思うんですよ。

 そんなことをちゃんとした上で歳入庁の話になるんだ。これをなしに、何か格好だけつけて役所と役所でくっつけてみたり、看板をかけかえてみたり、何かそんなことばかり、言葉に溺れて走っちゃって大体失敗するんだ。大体そういう傾向が強いですね、民主党は。幼保一体化だとか、地域主権だとか何とかとか、戸別所得補償方式とか、中身は大分変わってきちゃって、何か自民党が言っていた中身にだんだん変わってきているんですものね。今度の年金の話もそうなってくるかもしれない。

 いずれにしても、やはりそこは、もうそろそろ言葉遊びはやめにして、いわゆる現場力、地に足のついた、そういう本当に詰めた議論を積み重ねるということをしないと、頭の中だけで空理空論をやってもだめ。やはり現場感覚が大事。これからの消費税の具体的な仕組みをしていく上でも、頭の中だけで考えるんじゃない。

 給付つき税額控除も、現実にできないですよ、これは重ねては言いませんけれども。だって、そんな、人は簡単に、番号を入れれば取れるなんて、どうして取れますか、そんなもの。そんなことをする前に、大体、三文判で預金を預かるのは世界で日本だけですよ。そうでしょう。ここが一番の根本じゃないですか。金融分野、これさえできないじゃないですか。韓国は金泳三のときにやっちゃった。判こ文化というのは世界にほとんどないですよ。中国は全部ナンバリングをしていますよ。韓国も徴兵があるからやっていますよ。誰の預金かわからぬような休眠預金、世界でそんなのはあるはずないですよ、みんな。だから名寄せだって簡単にできるんですよ。日本の場合は、ナンバーなしに名寄せなんかできるわけがない。

 しかし、今度のマイナンバーでも金融分野には使わないことになっているんだから、そんなことでどうやって資産性所得を、金融所得を捕捉できますか。できるわけがないじゃないですか。それだったら、正直者が損をするんですよ。不正直な人は余計得をするんですよ、たくさんもらえて。

 公平の中にもいろいろあります。垂直的公平、水平的公平あるけれども、私は、一番大事なのは、正直者が損をするという不公平、これはやはり社会正義にもとるだろうと思いますよ。特に税の世界は、長年やってきただけに、それは忘れちゃいかぬことだ。このことを余り軽々に扱うべきではない。

 この点について、これは総理かな、やはり財務大臣を経験したんですから。その上で、これが必要だということをわかったわけですから、どうぞ。

中野委員長 締めくくりの答弁を総理からお願いします。

野田内閣総理大臣 私どもは、給付つき税額控除が低所得者対策として基本的には有効であるという立場でございます。それの前提として、番号制度等の導入と定着ということです。

 今、給付つき税額控除については否定的な御意見があったというふうに思いますが、これはちょっと、時間があれば逆にお尋ねしたかったんですけれども、自公政権のときも中期プログラムで給付つき税額控除を検討することになっていたと思います。

 この給付つき税額控除の路線なのか複数税率かという議論があると思います。私どもは給付つき税額控除であります。違うお立場で御意見があるならば、そこは大事な低所得者対策だと思いますので、十分議論を深めていきたいというふうに思います。

中野委員長 これにて野田君の質疑は終了いたしました。御苦労さまでした。

 それでは、高木美智代さん。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 総理は、消費税の引き上げに政治生命をかけると何度もおっしゃっておりますが、国民の生活実感はそれとはほど遠いところにあるというのが私の実感でございます。置き去りになっているのではないか。

 私が先日お会いした中年の女性の方は、つい先日、十八年勤めた会社をやめました。液晶ビジョンの企業が海外移転になり、その下請の仕事をしていらして、企業が倒産寸前になったので、悪いと思ってやめました。でも、国はどういう経済対策をやってくれているんですか、消費税を引き上げることですか、こんな厳しい経済の状況で、仕事がない、若者の雇用もない、民主党は、消費税は上げないと言って政権交代したのではないですかと、私に怒りをぶつけておっしゃっていました。

 今の現場は、円高、デフレ、電力不足、そして電気料金の値上げ、雇用といった問題による悲鳴があふれているというのが状況と思います。

 そういう中で、総理は、去る十一日、母校船橋高校での同窓会の挨拶の中で、社会保障と税の一体改革に関連して、社会保障費が一兆円ずつ膨らむという現状をエベレストを使って説明されました。一万円札を平積みにしていくと高さは一万メートルになり、エベレストよりも高い、一万円札は重さ一グラムだが、一兆円集めたら百トンになり、とても持てない、このようにおっしゃったそうですが、総理の表現をかりれば、今般の消費税増税はその十三倍になるわけです。このような例え話で済ませていいのか。そんな高さや重さで軽々に説明することではないと思います。

 大きな、それだけの負担を国民の皆様にお願いすることの意味を総理はおわかりなのでしょうか。国民の生活実感がわかっていらっしゃらないのではないか。私は、先ほども、油のにおい、そして町のにおい、また企業の苦しみ、そうしたお声がありましたけれども、全く、そのようなにおい、また庶民の実感が官邸での総理の実感とかけ離れていると思います。国民の皆様に重い負担を課すことの意味を総理はおわかりなのでしょうか。

野田内閣総理大臣 消費税引き上げだけに政治生命をかけているんじゃありません。

 消費税の引き上げというのは、社会保障との一体改革の一環の中で、給付の部分と負担の部分、世代間の公平を図っていこう、特にその負担の部分は、現役世代中心では、これはもうずっと長続きしない。

 そうすると、基幹税というのは、法人税、所得税、消費税があります。でも、所得税は、これはまさに現役世代中心です。法人税は、これは国際競争力との問題、関連があります。全ての世代が、社会保障というのはどなたもどこかでサービスを受けなければいけないものでありますので、全ての世代で支え合おう、そういう趣旨で御負担をお願いすることですので、これは、消費税引き上げのために、それだけのために私が鬼のようになっているんじゃなくて、社会保障という国民生活に直結した部分を充実、安定化させるために必要な措置としてお訴えをしているということはぜひ御理解をいただきたいと思います。

高木(美)委員 私がなぜそのようなことを申し上げるかというと、三月三十日の総理の記者会見です。総理は財政の危機ばかり訴えていらっしゃいました。社会保障の危機が国民に伝わったかというと、ほとんど伝わっていない。そういう中で、肩車の話であるとか、また社会保障と税といいながら、むしろこうした社会保障の充実についての危機感が聞こえない。

 ですから、国民の皆様は今、これからどうなるのか、どこまで行けば断崖絶壁なのか、そこを踏みとどまるために何がどこまで必要なのか、こうした説明をきちんとしてもらいたい。その上での、国民の皆様にお願いするかどうか、その話ではないかと私は思います。

 ですから、官邸にいらして、その庶民の声が聞こえないんじゃないか、実感がわからないんじゃないかということは、私はむしろ、総理がそうした中に飛び込んでいって、そこで何人かの方をきちんと説得されればいいではありませんか。そうした例もほとんど聞こえない。むしろ、官邸にいて、財政の危機に洗脳されて、今総理は引き上げの鬼とおっしゃいましたけれども、私は引き上げの亡者ときょうは申し上げるつもりでおりました。そのようなぐらいに、国民の生活実感が、悲鳴が聞こえていないのではないか。

 総理、もう一度、いかがですか。

野田内閣総理大臣 私は庶民出身で、そこから政治家になりました。庶民感覚からかけ離れているとは思いません。確かに生活は、地元を離れて、今、官邸です、公邸に住んでいます。だけれども、その生活は基本的に変わっておりません。そして、私の応援団も特定の大きな力を持った人たちじゃありません。一人一人のまさに有為の、志を持ってお支えをいただいている人ばかりであって、これはみんな庶民です。そこからかけ離れた、その人たちを不幸にする、そんな政策実現をしようとは毛頭思っておりません。そこはぜひ御理解をいただきたいと思います。

高木(美)委員 私がなぜこういう話を申し上げるかというと、先ほど申し上げたような電力不足の問題、また一時期は原油高でした、そうした一つ一つに対して、官邸が、また政治がきちんと応えてこなかったからです。

 そこで、やはり一番現場で苦しんでいる方たちが、政治が遠い、しかも、そこのところは民主党政権だけではなく、自民党も、公明党も、国会にいる人たちは何を自分たちのためにやってくれているのかと。この怒りが、マグマが今大きくたまり始めている、またその怒りが今爆発寸前である、こういう実感をしております。

 総理の今の御答弁はよくわかります。しかし、今、時々刻々と変わる皆様の苦しみ、悲しみ、ここを真っ正面から受けとめていこうという姿勢がなかったら、どんなに説明を尽くしても人には届かない、このように指摘をさせていただきたいと思います。

 これから、一体改革関連七法案の中でも私が最も重要だと考えております子ども・子育て新システム法案について伺いたいと思います。

 次世代をどう育てていくかは国家の重要事項であり、日本の将来を決定づける話だからでございます。待機児童問題など、その解決も喫緊の課題でございます。しかしながら、そのためにまず国民の皆様に重い負担もお願いしなければならない。そのことについて、総理の決意のほどをお聞かせください。

野田内閣総理大臣 先ほど申し上げたところで、社会保障の安定化と充実のために消費税の引き上げを国民の皆様にお願いいたします。その中で、高木委員が一番関心のある、まさに人生の前半の社会保障にかかわる子育ての部分、ここは充実の分野として位置づけさせていただいております。

 これまでは、社会保障の中でも、いわゆる高齢者三経費、こちらに消費税を充当するということは予算総則で定めておりました。しかし、社会保障を持続可能なものにするためには、負担の面で現役世代中心のものから変えていくということだけではなくて、給付の面でも、高齢者の給付、これも安定性がなければいけないと思いますが、それ以上に、子育ての部分、人生前半の部分にスポットライトを当てて若い人たちも社会保障の恩恵を実感できるようにする、こういうことを改革の柱に掲げている。

 その中に、この後は厚労大臣中心に御説明があると思いますが、子ども・子育て新システムを位置づけているということでございますので、この分野については高木先生もずっと取り組んでこられたことでございますので、きょうは、具体的なやりとりの中で理解が深まればというふうに思います。

高木(美)委員 今、総理はできる限りこの後は厚労大臣にというお話がありましたが、実は民主党政権になられて少子化担当大臣は九人目でいらっしゃいます。くるくるかわっていらっしゃる。

 私は、そういう意味では、大事な次の世代をどうしていくか、国を支える大事な若者また子供たちの育成については、やはり総理がリーダーシップをとって進めていかれるべき課題であると思っております。総理の決意のほども伺いながら、また内容についても総理がどのようにお考えなのか伺わせていただきながら、できる限り総理とやりとりをさせていただきたいと思っております。

 まず、この新システム導入につきまして、そもそも整備のおくれていた保育サービスにつきまして、親の働き方にかかわらず必要な方全てが保育を受けられるよう、その質を確保しながら量の拡大を図っていくという保育制度改革の検討につきましては、自公政権時代からスタートをしたところでございます。

 平成二十一年二月、政権交代の直前ですが、社会保障審議会少子化対策特別部会の第一次報告がまとまりまして、いよいよ専門委員会での細部の検討、そして法案づくりという段階で政権交代となりました。したがって、具体的な法整備は民主党政権に委ねられたわけでございます。ようやく関連法案が提出をされました。

 という経緯から、よく、自公政権がやってきた、自公政権のときにつくったのと中身はほとんど同じというふうにおっしゃいますが、二十一年二月の第一次報告は、保育を中心に議論の中間的な取りまとめ、あくまでも中間的な取りまとめという位置づけであって、自公では議論していないということを私はあえて申し上げさせていただきたいと思います。

 この法案の中身は、賛否両論あります。関係者からさまざまな課題や意見が寄せられております。団体も、議論が真っ二つです。また、保育の分野以外でもさまざまな課題もある。そういう中で、安心して子供を産み育てられる総合的な環境整備に国を挙げて取り組む必要もあります。

 私は、もともと、この子育て支援は、一つは経済的負担の軽減、二つ目にはワーク・ライフ・バランスなどの子育てしやすい環境整備、この二つが車の両輪ということで、どちらか片方欠けても前にうまく進まない、これは我が党もずっと主張してきたことでございます。特に、非正規労働がふえている現在につきましては、両親の雇用というこの支援も、今必要なときと思います。このように、バランスが大事ということです。

 公明党は、結党以来、未来の宝である子供たちのために、その支援の充実に取り組んでまいりました。

 少し紹介をさせていただきたいと思いますが、一つは、経済的負担の軽減といたしまして、教科書の無償配付を実施しましたのは昭和四十四年のことになります。また、児童手当につきましては、昭和四十七年に創設をし、以来、拡充をしてまいりました。きょうは、あえて子ども手当のことは申しません。乳幼児医療費の軽減、また、出産育児一時金の拡充、これも四十二万円まで拡充をし、また、妊婦健診の公費助成を拡大して、十四回まで基礎健診部分につきましては無償にいたしました。また、奨学金の拡充などです。挙げれば枚挙にいとまがありません。

 また、子育てしやすい環境整備につきましても、育児・介護休業制度の拡充、今、育休も一年までになりました。また、育休が明けて支給されていたその育休手当を途中に欲しいというお声をいただきまして、休業中に受け取れるというふうにも変えさせていただきました。今また、パパ・ママ育休プラスという制度も始まっております。放課後児童クラブ、地域子育て支援拠点、安心こども基金の創設、また、児童虐待防止法や次世代育成支援対策推進法等々、バランスよくやってきたわけでございます。

 しかしながら、まず、今回の法案は、最初に申し上げた、さまざまな育児、そしてまた保育、教育といった内容はありますが、ワーク・ライフ・バランスが入っていないというふうに私は認識をしております。これにつきましては、後でまた申し述べたいと思います。

 この保育、幼児教育につきましては、今厳しい課題が多くございます。ここに今取り組んで、若い世代に少しでも安心していただかなければならないと思います。限られた財源の中で、何を優先して、どこから始めるかということですけれども、大事なことは、どこまでも子供たちの幸福のために、そして利用者の視点に立って、この新システム導入の可否を検討してまいりたいと思っております。

 そこで、まず、総理にお伺いしたいと思います。

 この我が国の子育て支援策につきまして、現状をどのように認識され、今何に取り組むべきとお考えか、お聞きしたいと思います。

中野委員長 基本的なことのようですから、厚生労働大臣、まず答えて。

 足らざるは、また総理にお尋ねください。

小宮山国務大臣 高木委員、そして御党がこれまで子供たちのためにいろいろと取り組んでこられたことには、心から敬意を表したいと思います。

 おっしゃいますように、子ども・子育てを支援するには、経済的な支援、そして今提出させていただいている就学前の居場所をちゃんとするということ、さらにワーク・ライフ・バランス、そして虐待防止とか小児医療など、総合的にパッケージとしてやる必要があるというふうに思っています。

 これまでに実現をされているもの、ただ、その中で、今いろいろと働き方が変わったり家族の状況が変わって、新しく、本当に、子供中心に私どももずっと考えてまいりました。その中で、やはり今までのいろいろとやってきたことをシステムとして、全体に、財源を一元化するとか、所管を縦割りでなくするとか、そういう改革が必要だと私どもは思ってやってまいりましたので、子供のことを中心に考えるというところは意見が一致すると思いますし、また、財源をそこに充てるということも御支援いただけると思いますので、ぜひ、論点を詰めながら、よりよい子供たちのための政策を実現したいと思いますので、御協力をよろしくお願いいたします。

野田内閣総理大臣 私も息子が二人います。過去をさかのぼってみると、一番感動的だったのは、一歳になるかならないかくらいのときに、はいはいしていたのに突然立ち上がろうとし始める、その場面でした。おじいちゃん、おばあちゃんが教えるわけでもありません、お父さん、お母さんが教えるわけでもないんだけれども、本能的に子供は立ち上がろう、立ち上がろうと、痛い思いをしても何回も繰り返す。それを見ていて、子供は本来伸びよう、伸びようとしているんだと思いました。ずうっと寝ていた方が楽だという赤ちゃんはいないんです。立ち上がろうとする、伸びようとしている。その伸びよう、伸びようとしている芽を幼児期の早い段階からしっかりとした教育と保育で伸ばしていくということをやることは、私は国として大事だというふうに思います。

 そのやり方、方法論はいろいろあるかもしれませんが、残念ながら、先ほどの答弁でも申し上げたとおり、社会保障の対象がどうしても高齢者への給付中心になっておりました。この分野にもっとスポットライトを当てて、現物、現金、両方あるかもしれません、そういう給付をふやしながら子育ての環境整備をしっかりとやっていって、その伸びよう、伸びようとしている芽を幼児期の段階からしっかり受けとめて伸ばしていくということが大事ではないかというふうに思います。

高木(美)委員 若いお母様、または利用者の方たちの今のその苦しみ、今の悩み、どういうところにあると思われますか、総理は。

小宮山国務大臣 ずっと党の中でもつくってまいりましたし、このシステムも、ずっと副大臣としてほとんどその議論の場にいましたので、私の方からまずお答えをさせていただきたいと思います。

 今の若いお母さんたちは、やはり……(発言する者あり)はい、短くします。子供を実は二人持ちたいと思っている方が非常に多いんですね。けれども、今家族が本当に小さくなって、東京などでは二人を切っているということ。だから、自助が、もちろん自分で育てるのは大事ですが、やはり社会からの手助けということも必要。その中で、都市部では保育園に入りたくても入れない、今度は、地方に行くと、子供が少な過ぎて幼稚園、保育所が単独で成り立たない。

 そういう中で、本当は自分の力を生かして働きたいと思っている方がたくさんいらっしゃるのに、子供を預ける場所がない。そういうことに対して、いろいろなニーズに応えられるような仕組みをつくること、それを非常に求めていらっしゃるということは、私も全国を歩いて、いろいろなお子さんたちをお持ちのお母様からもお話を伺って、そのように感じているところです。

高木(美)委員 これは感じ方なんでしょうけれども、私は、今の総理、大臣の御答弁を伺いながら、ちょっと甘いのではないかなという、そんな実感があります。

 押しなべて言うとそういう表現になるかもしれませんけれども、継続就労したい、働きたい、そういう女性を支援するためには、今現状がどうかというと、やはりまず待機児童なんですね。どうしても、育休がとりたいけれども育休もとれない、またそして、行きたい保育所に預けられないから、したがって育休明けといっても困る、そういう話もあります。

 また、今、保活という言葉があるんです。保育所に入るために活動する。就活、婚活、今、保活の時代に入りました。そのように、保育所に入るには、今、市町村の審査基準というのがあります。それがポイント制で行われるために、ポイントの実績をつくるために、育休中であっても、わざわざあえて無認可の保育ママさんとかそういうところに預けるんです。そして、実績をつくって、育休明けに間に合うように何とか保育所に入れてもらう、こういうことを今必死で、出産した後もやっているわけです。

 そういう中も、保育所に入れないという悲鳴を多く伺っています。御主人が夜勤の方については、昼間家にいるから御主人に見てもらえばいいじゃないか、なかなか区が入っていいというふうに認定してくれなかった、そういう怒りのお声も伺っております。

 私は、やはり、そういう中にありまして、今回のこの新システムが果たしてそれだけの疑問に応えられるものなのかどうか、その点もまたこれから説明をさせていただきたいと思います。

 先ほど総理は、幼児教育の重要性につきまして、子供の、伸びよう、その力を国が、またさまざまな周りの方たちが支えていくのが重要であるというお話をされました。私は、それは大変大事なポイントであると思っております。

 これはある識者の方ですが、幼児教育は小学校以降の教育の基礎を形成するものである、今の子供の遊びや生活の充実の中から将来に向けての芽生えを育てる、小学校教育を先取りして早期教育を行うのではなく、幼児期にふさわしい教育を行うところで、その中に小学校に向けての力を伸ばしていく芽生えが育っていくのである。まさに、子供が育つのを支援していく、こういう姿勢が大事で、前に立ちはだかって引っ張り上げる、そういうものではないと私は思います。あくまでも教育の目的は子供の幸福のためにある、これが大事だと思っております。

 そこで、まず、認定こども園の評価と課題につきまして伺わせていただきます。

 今ありましたように、この子ども・子育て、大事な課題であるということで、今、第一歩として、各国は幼児教育に戦略的、重点的に取り組んでおります。

 我々は自公政権時代、就学前の子供に幼児教育、保育を提供する機能を持つ認定こども園をつくりまして、地域の実情に応じた子育て支援の充実を図ってまいりました。四月現在で九百十一カ所。しかも、その中身を、利用されている保護者の方たちの八割が評価をされまして、約九割がそれをさらに推進してほしい、このようにアンケートで答えていらっしゃいます。

 まず、総理は、認定こども園についてどのように評価され、その課題についてどのように認識されていますでしょうか。

岡田国務大臣 認定こども園、私も先般、ある認定こども園にお邪魔をして子供たちと遊んで、その後、経営者の皆さんのお話も聞いたわけです。今九百十一ぐらいまでふえてきたということで、非常に有効な試みだというふうに思います。保護者の評価も高い。

 ただ、経営者の方がこう言われました。今の制度のもとでは、子供たちに幼稚園と保育園、この子は幼稚園、この子は保育園ということでそれぞれ決まっていて、そして、必要な補助金を求めるときにも教育委員会と市町村ということで分かれる、そういう意味では非常に手間がかかる部分がある、そういうところをもう少し合理的にできないか、そういうお話をいただいたところでございます。

 私は、方向性は非常に正しい方向だというふうに思いますが、そういった、より改良するという観点で、我々は総合こども園ということをお願いしているところでございます。

高木(美)委員 この検証につきまして、二十一年に行われました。そこでは、一つは財政支援がついていけなかったこと、もう一つは、今、岡田大臣がおっしゃった、文科、厚労という省庁の壁を取り払えなかったという、この二つが大きな課題であったと伺っております。

 そこで、まず、今も認定こども園の事業者の方からというお話ありましたが、私も何カ所か認定こども園に視察も参りました。そこでやはり成功している例は、もう御自分たちで現場で、文化の融合と言いながら、文科、厚労の壁を取り払って、そしてその地域ならではの行き方をしている、ここが成功しているというふうに思います。

 ところが、まず一つ、この財政支援について、これは総理にお伺いさせていただきます。

 まず、この検証の課題の一つの予算につきまして、総理は、この新システムにつきまして、先般、五月十日の本会議におきまして答弁をされました。もともと約一兆円必要というふうにおっしゃっていらっしゃいます。消費税から七千億、残りの三千億をどうするのか、こうした質問に対しまして、「今後、さまざまな政策の見直しを行う中で、さらに財源確保について検討を行っていくことにしており、政府として、財源確保のため、最大限努力をしてまいりたいと考えております。」。「最大限努力」です。どういうめどを総理はお持ちなんでしょうか。

 もともと、こども園給付、今回新たに提案されておりますけれども、これまでのシステムは、さまざまな補助金がいろいろなところから入ってきています。したがって、これから給付の目安もどういうふうになっていくのか、高いところに張りついていくのか、それとも給付が低い方になってしまうのか、ここすらもまだめどが立っていない。これも財源確保次第という話になってしまうのでは、私は、この新システム、入り口から議論もとても成り立たない、そのように思うわけでございます。どのように確保されるおつもりでしょうか。

岡田国務大臣 実は、この答弁、私も、自分でもやりながら、何と不十分な答弁かというふうに思っておりました。つまり、具体的なことが何も述べられていないわけで。しかし、七千億という新たな財源がプラスされることは事実であります。それにあとプラス三千億ということになるわけですので、ここはいろいろと協議させていただきながら、具体的にどこからどういう形で持っていくかということのめどをつけさせていただくことは、私は十分可能だというふうに思っております。

 ただ、いずれにしても、〇・七兆、七千億というのがプラスアルファであるということは申し上げておきたいと思います。

野田内閣総理大臣 今の副総理の答弁以上のことはなかなか申し上げるのは困難ですが、七千億はこの社会保障の充実という中で位置づけてしっかりとふやさせていただきますが、残りの三千億については、これからのまさに努力の中で編み出していきたいと考えております。

高木(美)委員 今おっしゃる三千億が、頭の中で十六・八兆円というのとつい重なってしまいますけれども。

 いずれにいたしましても、何をどういう優先順位でやっていくのかということすらはっきりしていない、ざっくりしている。三千億プラスするのであれば、どのような使い道になるのかというところも詰められていないということがよくわかりました。

 続きまして、もう一つの課題の、省庁の壁をどう取り払うかという話でございます。

 今回、総合こども園ということで、いろいろ類型が立ちました。今般の新システムでは、総合こども園の創設が柱になっていますけれども、当初の、幼保一体化と民主党さんがマニフェストに掲げていた内容とは異なりまして、既存の幼稚園などを残す、ブランド幼稚園は残ってもいいとか、こういう形になりました。しかも、その移行期間も、保育所については、私立は三年、公立は十年。この差は何ですか。ここから不公平感が広がってもいるわけでございます。

 しかも、類型も五類型。その内訳は、幼稚園、総合こども園、乳児保育所、そして基準を満たした認可外、また指定を受けない幼稚園。大変複雑になりまして、私は、これは一体化どころか、多元化といいますか、そうした類型になってしまったと思っております。

 しかも、この所轄官庁は、文科省と厚労省に加えまして内閣府が加わり、三元行政となります。

 先ほど岡田大臣おっしゃったように、文科、厚労が入り組んだ認定こども園のときも、それを必死で整理をしながら、例えばキャベツを一つ買った、これは文科省分、厚労省分、どういうふうに経理をしていくか、そこから始まったのが認定こども園の状況でございました。ですから、ここがきちんと一元化できなければ、今までの、利用者の方たちがいいとおっしゃっている認定こども園、しかしながらまだまだこうした課題がある、そこのところ、全く課題を残したまま総合こども園、これは私はあり得ないと思っております。

 したがいまして、そもそも民主党は、子ども家庭省ということを提案していらしたわけでございます。将来の一元化に向けたその方向性もよく見えません。我が国の保育また幼児教育はどうあるべきかという政府のビジョン、そして改革への決意が伝わってきません。このままでは、むしろ、こうした消費税を引き上げたいためにこの子ども・子育てをこの際のせて、そして、これであればどの党も賛成するだろうから、こういう意図があったと言われても、それは否定し切れないと私は思ってしまいます。

 なぜこのような中途半端な形になったのか、お伺いをしたいと思います。これは、総理、御答弁をお願いいたします。総理が責任でございます。

中野委員長 立ち上がっていますので、小宮山厚生労働大臣。(高木(美)委員「いやいや、立ち上がっていらしても、これは総理の責任です」と呼ぶ)後ほど、総理。

小宮山国務大臣 総理に後で答えていただきますが、この制度をつくったのは私でございますので、私からまず答えさせていただきたいと思います。

 子ども家庭省は将来つくりたいと思っています。省庁再編に先駆けてつくりたいと思っています。

 ただ、現在つくれない中で、内閣府の中に本部をつくって、そこでなるべくインセンティブをかけて総合こども園になっていただきたいと思いますが、そこと、あと、経過の間、それからまたその後も一部残る幼稚園、保育所の厚労省、文科省の担当者も併任をかけますので、所管は必ずこれは一元化をされます。その中で、先ほどおっしゃった認定こども園の二元行政というところは解消されますので、これは、認定こども園の経験も十分ワーキングチームで伺って、そこの課題を解消するということも大きな狙いの中でやっておりますので、今、認定こども園をやっていらっしゃる方からは大変評価をされている仕組みでございます。

 そういう形の中で、当面何元化もするように見えますけれども、将来は総合こども園になるべく統合していくように、御負担いただく消費税で、そこの配置基準とか職員の処遇とか、それから今、幼稚園も七五%預かり保育をしている、そこに対してしっかりと財政支援をするとか、なるべく多くのところでやっていただけるようにいたしますので、そういう意味では、地域でニーズ調査をして、ちゃんと受け皿をつくるという意味で、今までよりも、どこの地域の子供たちにとってもよい仕組みができると思っています。

野田内閣総理大臣 認定こども園を基本的には私どもは評価をしているということ、これは前提であります。

 先ほどの副総理のお話もあったとおり、これは、事業者の皆さん、あるいは利用されている保護者の皆さんの評価が高いと思います。その上で、二重行政の問題とか、あるいは財政支援の問題等の課題もありますので、そういうものを解消させながら発展をさせていきたいというのが総合こども園の考え方です。

 内容については厚労大臣からございましたが、総合こども園を含むこの新システムの議論というのは一昨年の六月からやってまいりました。一昨年の六月から一年半、三十五回にわたって、ワーキングチームをつくって、いろいろな関係者の皆さんの声を集めて、そしてこういう形の新システムをつくったわけですので、先ほど委員から、消費税引き上げのために何となく便宜的に使っているんじゃないかということではなくて、この一年半の、まさにこれからの子ども・子育てをどうするかという丁寧な議論を踏まえているということは、これは御理解いただきたいと思います。

高木(美)委員 申しわけありません、丁寧な議論とおっしゃる割には雑な仕上がりになっていると申し上げさせていただきます。

 ですから、賛否両論真っ二つなんですよ、総理。例えば、ここはいいとおっしゃっても、ほかのところはだめ、また、同じ団体でも、半分はいい、こっちはだめ、もう本当にいろいろなんです。しかも、その中身もまだはっきり詰まっていない、よくわからないということから、皆さんは本当に不安を抱えていらっしゃいます。先日私が伺った認定こども園の方たちも同じ状況でございました。しかも、多くの注文もいただきました。

 私は、この認定こども園、先ほど来、一元化ということを申し上げてまいりましたけれども、文科、厚労の、この行政の一元化というのは、例えば、認定こども園の延長に総合こども園がある、だったら、認定こども園のまんま、今の欠点をそのまま全部克服をして進めていってもいいはずでございますし、そう考えますと、これは最終的にはどこに決着をつけていくか、それぞれ私たちも今、我が党として検討をさせていただいているところでございます。

 いずれにしても、この行政の一元化というのは不可欠です。子供たちのためにどうしていくのか。したがって、私は、あえてきょう総理に提案をさせていただきますが、二年をめどに子供行政のあり方を検証しまして、その結果を踏まえて、省庁再編を含めて新たな体制について検討することも必要ではないかと思います。

 現場には、三年、十年で移れ。三年と言われたところはたまらないです。どうせやるんだったら、全部一緒に三年、これが普通だと思います。したがって、下はそういうふうに、現場ではいろいろな年限を課しながら移れとおっしゃる、でも上はばらばら。それでは一体化とはとても言えない、国の責任を果たしているとは言えないと思います。

 したがいまして、この検証をしっかり行いまして検討をしていただきたいと思いますが、総理、いかがでしょうか。

岡田国務大臣 委員の御心配もよくわかります。ですから、これはまずしっかり検証をする必要があると思います。しかし、それを二年も三年もかけて検証するということではなくて、やはり、この法案を今御提案して、審議していただいているわけですから、まずそこでしっかり御審議いただき、そして、我々も誠意を持って御説明をさらに重ねさせていただきますので、この法案が採決されるまでにそういった作業をぜひ終えさせていただきたい。

 もちろん、それで解決のできない問題が出てくれば、それはそのときにまた協議させていただきたいと思いますが、現場、なるべく混乱がないようにというふうに思っておりますので、やはり今のような、省庁、文科省と厚労省ということで二本立てになっているという状況を早く改善する必要はありますので、ぜひそこは協議をしていただきたいというふうに思います。

高木(美)委員 済みません。総理に明快な答弁を求めます。

 この子供行政のあり方について、二年をめどに、省庁再編を含めて新たな体制をおつくりになるおつもりがおありかどうか、その検討を開始されるかどうか、はっきりとお答えをお願いいたします。

野田内閣総理大臣 今回提出をしている法案については、さっき申し上げたとおり、約一年半かけて多くのいろいろな方の御意見を集約しながら出した法案でございますので、その法案を踏まえて、検証的にチェックをしていただいて御議論していただくことが大事だと思います。

 その上で、例えば組織の問題、体制の問題等については、これは引き続き協議する場面はあると思いますので、御提起については真摯に受けとめたいと思います。

高木(美)委員 それは、済みません、大事なことですので、やるということで、総理、よろしいんですね。

野田内閣総理大臣 子ども家庭省というのは、もともと私どもの主張として申し上げておりました。ただ、これは、子ども家庭省だけつくるんじゃなくて、全体の省庁再編の議論もあると思いますので、そういう包括的な視点の中での検討を進めさせていただきたいと思います。

高木(美)委員 今おっしゃった総理の御答弁では、何年先になるかわかりません。それはむしろ今着手しなければ、恐らく、これからまた政権もどうなるかわかりません。

 したがいまして、やはりこれだけの法案をお出しになるのであれば、また、それぞれの今やっていらっしゃる事業者の方たちに移行するということをお願いされるのであれば、国としてもちゃんと一元化をします、そのためにちゃんと検討を始めます、ここが一番の大もとではないかと思いますけれども、総理、これはきちんとやっていただきたいと思います。

 もう一度、いかがですか。

岡田国務大臣 私、行革担当で、今、行革についてのいろいろな構想を練っているところです。その中で、省庁についても見直しを考えているところでございます。

 これはそう何年もかける話ではなくて、議論をしているところですが、そういう中で、子ども家庭省、まあ、子供の問題というのは国にとって非常に基本的な、重要な問題ですから、我々も従来から子ども家庭省をつくるということをうたっているわけですし、そこはそういう方向性を持ってしっかり議論していきたいというふうに思います。

高木(美)委員 新システムの導入が待機児童の解消につながるのかということを伺わせていただきます。

 利用者の方の不安のお声は大きいものがあります。この新システムになりますと、利用者にとってどう変わるかといいますと、市町村にまず利用を申し込みます。市町村がそのお子さんについての支給認定を行います。それをもって、利用者は受け入れてくれる施設を探すわけです。そして、その施設と直接契約を結ぶ、これが状況となっております。

 しかし、今回の制度改正における最大の変更点の一つは、今までも議論になっておりますが、児童福祉法第二十四条の市町村の実施義務を外す、そして責務になるということでございます。

 若い方たちからも多くのお声をいただいておりますが、それでは産後間もないときから子供を入所させる保育所を探さなければいけないのか、そこで受け入れてもらえなければ、自分でまた次々と行かなきゃいけないのか、生まれたての赤ちゃんを抱えてどうするのか、もう悲鳴です。また、障害を持つお子さんが必要なケアを受けられる施設に本当に入れるのか、また、こども園の類型がばらばらだけれども、どうやって施設を選んでいいか本当に不安だ、こうした不安、疑問は多くあります。

 まず、待機児童数の把握ですけれども、これも、市町村の実施義務があるので、今まではほぼできておりました、そこで面倒を見るという形で抱えるわけですから。でも、これが今後できなくなるのではないかということを一番私も心配をしております。いかがでしょうか。

小宮山国務大臣 今回、市町村が潜在的なものも含めてニーズ調査をいたします。そのニーズを調査して、それだけの計画をつくって仕組みをつくるという責務をかけます。

 今回、児童福祉法の二十四条、これは今まで保育に欠ける子を対象にしていましたけれども、今回は必要な子をみんなということなので、仕組みを変えます。でも、そこは市町村に責務をかけますので、それで、保護者の方が走り回らなくていいように情報を提供し、また、必要な場合にはあっせんもいたしますし、虐待などがある場合には、そこにちゃんと要請もかけるというような仕組みもちゃんとしているところでございます。

 先ほど委員がおっしゃったように、今までは、必要があってもキャパシティーを超えたときにはそこを受け付けない、そういう裁量の行政が行われてきたということがありますが、今回、市町村が主体になって、みずから調査をして受け皿をつくりますので、そのことによって待機児が一つ解消する。

 それから、この後御議論になると思いますが、指定できちんとした基準を満たしたところはNPOとか株式会社も入るので、参入するところが多くなって、そこでまた待機児を受け取る施設がふえるということ、また、総合こども園の中で、幼稚園は三割あきがございますので、インセンティブをかけてそこで受け取ってもらうということ、また、小規模な保育、家庭的保育もその基準を満たせば財政支援をいたしますので、いろいろな意味で今までより待機児童は確実に解消できると考えています。

高木(美)委員 まず、先ほどお話ありました需要の把握、もう市町村はできないと言っています。特に、待機児童が多くて、それでどうやってニーズの調査をするんですか。例えば、保育所をその地域につくれば、今、結婚される若い方たちは切実な問題ですから、きょうも若い女性の公務員の方たちが働いていらっしゃいますけれども、切実ですから、どこに住めばどういう保育所を用意できる、もう結婚するときから、住む場所を決めるときから選んでその地域に行かれるんです。それくらいにしなければ継続就労なんかできない、これが今の厳しい現状です。

 したがって、この潜在的な需要の把握なんというのは、つくれば、また移転をしていらっしゃいます。そしてまた、その方たちも面倒を見る。ですから、今、つくってもつくっても、どこまでやっていいかわからないというのが市町村の状況なんです。

 ですから、この需要調査、しかもこの計画は五年、私は五年なんというのはとんでもない話だと思っておりまして、市町村からは、本当にこれは無駄じゃないか、もうやめてもらいたい、そういう強いお声をいただいております。

 また、待機児童のいないところの市町村からも、こういう計画は本当に必要なのか、自分たちのところはもう満ち足りている、それなのにまた支給認定を全員を相手にやるのか、そしてまた計画までつくるのか、やめてもらいたい、今、人員削減で窓口は大変なんだ、四月だけの事業でも、それでもいろいろな方に臨時雇用で来ていただいてやっと賄っている、そういう状況なのに、果たしてそういう現状をわかってそういうことをやっているのか、こういうお話でございます。

 したがいまして、いろいろまた御答弁はあられるところだと思いますけれども、私は、こういう現場の声を伺いますと、まずこの潜在需要をきちんと把握すること自体、至難のわざであると思います。その入り口が崩れれば、そこの市町村は、では、どうしていけばいいのか、全く現場と合わない話ではないかなと私は思います。

 したがいまして、市町村の実施義務については、私はこれは外すべきではないと考えている一人でございます。

 もう一つ確認をさせていただきたいんですが、保護者の就労状況、疾病などによって保育が必要な子供、これを私は、必要な子供に変えることは必要だとずっと考えておりました。そのお子さんたちは市町村が抱えて面倒を見てきたわけです。障害を持つお子さんたちが、果たしてこの新システムになって、こうした直接契約のシステムになって、必要なケアを受けることができなくなるのではないか。

 当然、拒否する正当な理由ということも法文の中に書かれております。中身を聞きましたら、正当な理由というのは、一つは定員が既にオーバーしている、そしてまた専門的な職員であるとか施設がない、こうした場合には断ることができる。でも、そのお子さんたちはほかのどこに行けばいいのか、一番困っていらっしゃるそうした方たちが路頭に迷うだけではないのか、こうした懸念を強く持つからでございます。

 総理、今のやりとりを聞かれていて、どのようにお思いでしょうか。

小宮山国務大臣 そういう特別なニーズのある子供につきましては、これは市町村の方が情報を提供し、あっせんをする、さらに必要度の高い方は要請をしてちゃんと受け入れてもらう、そういうようなこともとろうとしておりますので、そういう意味では、そうした皆さんがそういう特別な事情のあるお子さんを抱えてあちこち回らなければいけないという仕組みにはならないようにしたいというふうに思っています。

高木(美)委員 今でも厳しい現状であるということをあえて申し上げさせていただきます。

 次に、保育士の処遇改善について伺わせていただきたいと思います。

 まず、これも総理にお伺いしたいんですが、保育の質というのは何をもって確保をされるおつもりでしょうか。実は、今回の新システムのさまざまな議論の中で、また今回の法案の中で、質についての、例えば保育と幼児教育と、質の高い両方を提供するとは書かれておりますけれども、では、質はどうやって担保をしていくのか、その具体的な中身のところが見えません。そこはどのようにお考えでしょうか。

小宮山国務大臣 保育の質を上げるためには、今回、消費税をお願いができれば、そこで量と質と両方と思っておりますので、かなり施設の数がふえれば、見ていただく方もしっかり確保しなければいけない。そういう意味で、処遇を改善すること、さらに、キャリアアップできるように研修などの機会を持つこと、そういうためには、今、資格を持っても実際になられていない潜在保育士さんというのがたくさんいらっしゃるので、そういう方たちがなれるようにすることですとか、今回は、五年間に限ってですけれども、認可保育所でやっていらした方も試験が受けられるようにするなど、その間口を広げることと処遇の改善、キャリアアップということにしっかり取り組みたいと思っています。

高木(美)委員 私も今回の法案の中で唯一これは絶対入れなければいけないと思ったのは、地域型保育の位置づけでございます。恐らく、ここのところはそれほど異論のないところではないかと思います。我が党もずっとこの政策を打ち、保育ママであるとか、また、この中には放課後児童とかさまざまなものが入れられておりますけれども、これも推進をしてまいりました。

 ただ、それをやるには保育士が足りません。しかも、その足りない原因というのは、一つは平均賃金にあります。

 これをごらんいただきたいんですが、保育士、平均給与額二十二・〇万円と書いてあるのですが、実は、ここの中にはさまざまな手当が入っています。基本給、職務手当それから精皆勤手当、家族手当、全部含まれて二十二・〇万円。これは、下をごらんいただきたいんですが、福祉施設の介護員、ヘルパー、この方たちとほとんど変わりません。

 しかし、この保育士という数字の中には、公立保育所、私立保育所、それから認可外、こういうところの細かいデータというのは、実はまだ私はいただいておりません。ぜひこれを出していただきたいと重ねてお願いをするものですが、恐らく、公立保育所は公務員ですので、平均給与も高いものが当然あると思います。しかし、恐らく認可外においては低い給与かと思います。それを全部ならして二十二万円ですから、この状況がいかに厳しいかということをぜひ私はお知りいただきたいと思うんです。

 有資格者であるにもかかわらず、全職種の三十二・四万円、この平均以下の賃金で働かざるを得ない。これも、平均賃金はまだ数字的には介護と並ぶ数字ですが、実は、パートになりますと本当に低いです。これは、全職種平均では時給九百八十八円、保育では九百八十二円です。これが幼稚園になりますと九百九十九円という状況でございますが、ほとんど変わりません。

 したがいまして、これは、新システムがどうなるかにかかわらず、介護士と同様、保育士の処遇改善、大至急やっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

小宮山国務大臣 それは、今回の消費税を増税した中で処遇改善にも取り組みたいと思っていますので、そこは全力を挙げてやりたいと思います。

 一つ訂正させていただきたいんですが、先ほど、認可外の人たちの受験資格五年と申しましたが、これは五年という期限をつけておりません。今年度からできるようになる。五年というのは、今、若い方は両方の免許を持っていますけれども、片方しか持っていない方がもう一方の幼稚園の教諭あるいは保育士の免状を取るのを五年に限って認めるということで、とにかく幅を広げていきたいということは思っております。

高木(美)委員 恐らく、七千億の中にはこの数字は入っていなかったと思います。ですので、消費税が引き上げられた暁には処遇改善できるという保証は何もないと思いますが、いかがでしょうか。

小宮山国務大臣 キャリアアップとか研修ということは七千億の中に入れていると思います。質を改善するためには私も必ずここは上げなきゃいけないと思っておりますので、先ほどの財源確保ということも含めまして、そこは全力を挙げて財源を確保していくようにしたいと思います。

高木(美)委員 済みません、役所からいただいた紙の中で、約〇・三兆円、ここは、職員配置基準の改善を初めとする保育等の質の改善のための費用。ですから、当然、質の改善として想定されている体制強化とか、それからまたさまざまな研修であるとか、こうしたことは盛り込まれておりますけれども、いずれにしても、七千億の中の三千億、この中に処遇改善、給与を引き上げるということは入っていないと思います。

 もし入っているのでしたら、明快な答弁をお願いしたいと思います。また、入っているとおっしゃるのであれば、どの程度引き上げるおつもりなのか、数字をはっきりとお示しください。

小宮山国務大臣 これは先ほど申し上げたように、その七千億プラス三千億の一兆を超える予算を確保する中に項目として盛り込んでございまして、職員の定着、確保を図るために、キャリアアップの仕組みとあわせた処遇の改善の仕組みを入れるということをこの中に入れてございますので、先ほど私が答弁したとおり、先ほど総理、副総理もお話をしたように、全力を挙げてその財源を確保して処遇改善に取り組みたいと思います。

高木(美)委員 保育士の不足は本当にこれから深刻になります。恐らく、企業等が参入主体とか、これも撤退規制とか、もっともっと基準を考えていかなければいけないと思っておりますが、需給見込みでは、平成二十六年度末四十万九千人必要、二十九年度では四十六万人が必要と推計されております。ところが、この二十九年度末、今から五年後になりますけれども、七万四千人が不足するという状況です。

 当然、処遇が低ければ、給与が低ければ入ってこれないわけです。本来は、若者の雇用とか、またそうした支援という話であれば当然こうした、若者が今担ってくれている介護とかそれからまた保育とか、こうしたところにもっときちんと基金を積んで処遇改善を図るとか、こうしたことが私は急務ではないかと思います。

 これだけの多くの方たち、先ほど大臣からはキャリアパスのモデルを提示するとか、能力の高い経験豊かな保育士の支援を通じて保育の質を充実させたいとか、そうしたお話がございましたけれども、人材の確保がなかったら、新システムで地域型保育まで大きく位置づけするといっても、絵に描いた餅になってしまうではありませんか。

 これが入り口なんです。ですから、この人材の確保、総力を挙げてお願いしたいと思います。またこれは後日質問をさせていただきますので、しっかりと、総理、リーダーシップをおとりいただきまして、ぜひとも若者の支援、これが入り口です、どうぞよろしくお願いいたします。

 そこで、最後の質問になるかと思います。

 先ほど来さまざまな、今後の国会運営のお話がございました。私も、先ほど来、自民党の議員の方たちと総理とのやりとりを伺わせていただきながら、今こうして消費税引き上げの議論、社会保障と税の一体改革につきまして議論をさせていただいておりますが、当然、来週、小沢さんに会われる。民主党の中の反対派をどこまで説得できるか、説得できないなら採決もしないのか、こうした御質問に対して、採決はすると総理は明言をされました。

 では、その採決につきましては、例えば継続にして次の国会の成立も容認するという、そこまでの幅を持ってのお考えなのかどうなのか、総理の率直な見解をお伺いしたいと思います。

野田内閣総理大臣 大事な法案として提出をしているわけです。政府として提出をしている法案は、政府・与党一体となって成立を期すというのが基本です。成立を期すという意味は、まさに、採決を通して、御賛成いただく方が多いという状況をこの国会中につくるということであります。

高木(美)委員 国民の皆様からいただいているお声を冒頭に御紹介させていただきましたが、もう皆様からは、民主党は、やると言ったことはやらない、やらないと言ったことはやる、早くちゃんともとの選挙に戻して、総選挙を早くやって、そこから落ちついた議論をしてもらいたいと。もう圧倒的なお声でございます。

 改めて早期の総選挙を求めまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

中野委員長 これにて高木さんの質疑は終了いたしました。

 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、消費税の価格転嫁問題について質問をいたします。

 中小企業関係団体は、消費税増税に反対の意見、または、安易な税率引き上げは避けるべきだという声を上げています。共通して問題にしておりますのが、消費税を価格に転嫁できないという問題であります。

 最初に総理にお尋ねしますが、そもそも、消費税の仕組みとして、消費税を負担するのはどなたか、そして、その消費税を納税するのは誰なのか、この点についてお答えいただけますか。

安住国務大臣 納めていただくのは事業者で、消費をしていただく方が、いわば税を負担していただく方であるということでございます。

塩川委員 最終的に消費税を負担するのは消費者とされておりますが、納税義務者は事業者であります。この分離、分かれていることが矛盾となって価格転嫁問題というのが生まれてまいります。

 そこで、パネルをごらんいただきたいんですが、全国商工会連合会のつくった資料で、消費税の問題点、消費税の価格への転嫁、これをごらんいただきたいと思います。日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会及び全国商店街振興組合連合会が共同で実施をした実態調査であります。

 一番右側の年間売り上げ二億円超でも、現在転嫁できていないという事業者が三二・八%、税率が引き上げられた場合に転嫁できないというのが四六・二%。年間売り上げ三千万円以下では、現在転嫁できていない、四八・九%、税率が引き上げられた場合に転嫁できない、六四・五%。年間売り上げ一千万円以下でも、現在転嫁できていない、六四・九%、税率が引き上げられた場合に転嫁できない、七五・四%。

 総理に認識をお伺いしたいと思うんですけれども、中小企業や小規模事業者にとって消費税の価格転嫁が非常に困難だということを示しているものだと思うんですが、総理はどのように受けとめておられますか。総理。

安住国務大臣 これは、どういう資料かよくわかりませんが、アンケート調査ですよね。どこがやられたかはちょっとわかりませんが。ただ、懸念が……(塩川委員「中小企業庁も関与しているよ」と呼ぶ)ああ、中小企業庁ですか。要するに、実態としてというよりは、そうした懸念があるということを塩川さんは御指摘になっておられるのではないかと思います。

 そこで、私どもとしても、中小零細企業の転嫁対策に万全を期さなければならないというふうに思っております。

 例えば、前回引き上げ時に比べれば、独禁法改正が強化をされ……(塩川委員「委員長、聞いておりませんから」と呼ぶ)排除勧告制度が廃止され、より迅速に排除措置命令等の行政処分を行えるようになったわけで……(塩川委員「対策の話はこの先聞きますから」と呼ぶ)

中野委員長 的確な答弁をお願いいたします。

安住国務大臣 はい。課徴金制度を導入したり、つまり、弱い者が、またいわゆる小規模な皆さんが、こうした転嫁ができないで、いわば泣き寝入りをしないような仕組みというものをいろいろ考えながら対応していきたいというふうに思っております。

塩川委員 総理にお尋ねしますけれども、うちの佐々木憲昭議員の質問に対しても、弱い立場の方がしわ寄せを食っている傾向があると述べられました。そういう認識だと承知をしておりますが、いかがでしょうか。

野田内閣総理大臣 実態としてはあるというふうに思います。

 実際に、下請の方が結局自分の責任のもとで負担をせざるを得なくなっている等々の実態はあるというふうに思いますので、今回の消費税を引き上げる際には、適正に転嫁できるようにどうするかということは大事な議論だと思いますので、そこは重要視していきたいと思います。

塩川委員 実態として価格転嫁が困難だということをお認めになりました。

 そこで、重ねてお聞きしますが、では、なぜ転嫁できないのか。この点はいかがでしょうか。

安住国務大臣 価格競争やコストダウンによるいわばそれぞれの業界の熾烈な競争の中で、例えば、それは証明をしているわけじゃありませんけれども、優越的な地位を利用した立場の人が、その下に対して、今御指摘のようなことで、消費税の上乗せ分は、例えば、あなたのところで何とかなりませんかとか、そうしたことがよく言われるケースとしてあるのではないかというふうに思っております。

塩川委員 優越的地位の立場にあるいわば親事業者が、下の立場とおっしゃいましたけれども、いわゆる下請事業者に対して、転嫁をすることを拒むような事例が現にあるということであります。

 この価格転嫁が困難というのは、今の点もそうですけれども、二つの面がある。一つは、やはり小売業者と消費者の問題であって、勤労者の所得の減少や、デフレのもとで消費者に転嫁ができないという声、実態があるということと、もう一つ、今安住大臣がお答えになったような、元請と下請の関係で、弱い立場の下請事業者が親事業者に要求できないということであります。

 それで、一点目の小売業者と消費者との関係についてですけれども、一九九七年、消費税が三%から五%に増税をされたときは、全体として、勤労者の年収も可処分所得も消費支出も上昇傾向にありました。それでも転嫁できないという事業者の声が多数だった。その後、今に至るまで下降線で、勤労者の年収や可処分所得や消費支出は減り続けているわけです。

 そこで、お尋ねしますが、消費税を価格に転嫁したら消費者が逃げてしまうというのが今の小売業者の現状じゃないのか。そうじゃないんですか。

安住国務大臣 それは、しかし、例えばヒット品目なんかは別に消費税がかかっていても売れるようになったりしたり、売れている本だってあるわけです。

 ですから、全体に、そこだけを見て消費税が悪いという話にはならないのは、もう一方で、では社会保障の財源等はどうするのかということもあるわけでして、いわゆる所得の低い方に対する例えば年金、医療、介護のサービスのためのお金というのは、社会保障の保険料だけでは賄い切れないので、こうした消費税についてしっかりと充てていくと。それは、水平性の税ですから、しわ寄せがあるという意見もあるかもしれませんが、そこは、塩川さん、逆進性対策とかをしっかりやっていくと。

 ですから、できるだけ消費に影響を与えないような形で我々も努力をしながら、この税の浸透を図っていきたいと思っています。

塩川委員 いや、そんな答弁だったら、もう視聴者は驚いて、笑うだけじゃなくて怒りますよ。

 でも、転嫁が難しいということはやはり否定をできない。国民の所得が減少しているときに消費税転嫁が事業者にとって困難であるということは、まさに明らかであります。

 もう一つの、親事業者と下請事業者の関係についてでありますけれども、下請事業者にとっては、親事業者、いわば大企業への価格転嫁が極めて困難であります。

 価格転嫁の実態はどうなっているか。

 先ほども確認しましたように、最終的に消費税は消費者が負担するとはいえ、納税義務者は生産、流通などの各段階のいずれかにいる事業者であって、消費税の仕組みは、各段階で適正な価格転嫁ができるという前提でつくられています。

 一方で、実際の契約においては、受注者の立場は弱いわけで、発注者からの値引き要求を断り切れない、断れば次回以降の受注がなくなるんではないのか、こういう懸念の中で、発注者と対等な立場で適切な価格転嫁を求めていくことが事実上不可能だということを言わざるを得ません。

 それで、ここにパネルとして、新規発生滞納に占める消費税の割合をお示しいたしました。

 ここでは、消費税導入後、件数でも税額においても、ほかの税金に比べて、消費税の滞納の割合がどんどんどんどん高くなっております。消費税が五%に引き上げられた九七年、九八年の間で大きく、件数でも税額でも新規発生滞納がふえているというところにもそれが見てとれるわけであります。消費税の滞納割合が増加をしているのは、価格への転嫁ができないもとで、受け取ってもいない消費税を払えと言われても払えないという実態を示しているわけであります。

 そこで、お尋ねをしますが、総理にお答えいただきたいんですが、消費税を価格転嫁できていないのに、それでも払えということになれば、そのとき、では、消費税分というのは誰が負担することになるんでしょうか。

安住国務大臣 最初のその資料では、四九・七%、全体の滞納額の中で消費税がということですが、消費税収に占める割合でいうと、これは三・四%でございます。逆を言えば、九六・六%は滞納することなくきちんと納めていただいております。

 ですから、そういう点では、また、この中からもうちょっと詳しく言うと、滞納者の中でも……(塩川委員「いやいや、聞いていませんから」と呼ぶ)聞いていないですか。滞納者の中でも、この二年間の中で、納税はしていただいている方が比較的多いです。(塩川委員「いやいや、委員長、質問がわかっていないからもう一回」と呼ぶ)それで、塩川先生……

中野委員長 それでは、もう一度質問してもらいます。質問者、どうぞ。

塩川委員 総理にお答えいただきたいんですが、消費税の価格転嫁が困難だということをお認めになりました。なぜかといえば、やはり優越的地位の濫用のように、親事業者に対して下請事業者が転嫁が困難だということであったわけであります。

 そういったときに、消費税を払うとなった場合には、その分、転嫁できていない分は、では、誰が払うのかということなんです。

安住国務大臣 ですから、滞納なさっている方に納めていただくということは、事業者に納めていただくということに理論上はなるんです。つまり、消費者からお預かりをしている、それで最終的に事業者がこれを納めるわけですから、そういう原理でやらせていただいています。

塩川委員 いや、親事業者に転嫁ができていない現状があるわけですよ。消費者との関係でも、デフレ下で困難だと。

 ですから、全国商工会連合会のこの資料においても、最初、「一、消費税の価格への転嫁」、その下のところに「規模の小さな事業者ほど、立場が弱く、販売価格に消費税を転嫁できないため、消費税率が引き上げられると、転嫁をできない分を自らの利益を削って納税することとなる。」と。みずから自腹を切らなくちゃいけないというのが実態ということじゃありませんか。

 総理、どのように受けとめておられますか。総理。

安住国務大臣 ですから、私どもとしては、消費税というものをよく理解いただいて、そして、その上で、いわば親事業者が、今塩川さん御指摘のようなことで、下請事業者に不当にしわ寄せをしないかどうかというような監視等はしっかりやっていかなければならないと思っています。与党の中でも、転嫁Gメン等を設置して、体制の強化を図る。

 これは、申し上げておきますけれども、自民党時代からずっとそういうことで、転嫁対策はしっかりやるという話ですから、私も引き続き強化をします。

塩川委員 いや、だから、転嫁できないという事態がずっと続いているんですよ。事業者が自腹を切って納税することにならざるを得ないというのが実際の事業者の実態を反映した声である。そのことを受けとめられないということ自身に、消費税増税を言うような資格がないということを言わざるを得ません。

 消費税には制度的な欠陥があるということは、民主党におきましても、価格転嫁問題を検討するワーキングチームを立ち上げて作業しておられるわけであります。その中では、いろいろな団体にヒアリングも行っておられます。

 そのヒアリングに答えた団体の一つに、全国建設労働組合総連合、全建総連もございます。その全建総連が民主党のワーキングチームに提出をした資料においては、価格転嫁のどこに問題があるのかを以下のように述べております。

 消費税制度が、価格転嫁ができない場合に、実態上、事業者自身の負担で納税せざるを得ないという問題を包含していることは、この制度が抱える根本的な問題である、支払いを受けることができない経費は消費税に限らない、契約上優位な立場を利用した直接的、間接的な値引き強要の常態化が問題の根底にある、消費税の価格転嫁がとりわけ問題なのは、実態上、受け取っていない消費税を納めなければならない点にある、消費税の滞納がほかの税金に比べて多いこともこのことに起因をする、このように述べておられます。

 今度はぜひ総理にお答えいただきたいんですが、このように、価格転嫁ができない場合に、事業者自身の負担で納税せざるを得ないということに、消費税制度の根本的な欠陥があるということじゃありませんか。

野田内閣総理大臣 消費税の抱える問題の一つに、適正に価格に転嫁されるかどうかという課題があることはあります。

 その環境については、先ほど委員が御指摘あったとおり、前回、三%から五%に引き上げたときに、独禁法であるとか下請法の強化を行いながら、そういうことにならないような法的な環境整備はできてきました。ただ、実態としては、まだ懸念があるんですね。それはやはり、下請の方が親業者の方に転嫁できない、言いにくいとかはあります。

 そういう問題をどう乗り越えていくかということを党の中のワーキングチームで御議論をいただいております。それは、対消費者との関係であるとか、事業者間の関係とか、整理をしながら、さっき財務大臣もその一端を御披露しましたけれども、Gメンをつくったりとか、そういうあらゆる、党から出てくる御提起であるとかも踏まえながら、スムーズに価格転嫁ができるようにしたいというふうに思います。

 転嫁という課題はありますが、だから、この問題があるから消費税が絶対だめという議論ではないと思います。乗り越える課題ではありますが、しっかりと議論していきたいと思います。

塩川委員 そもそも、消費者に、このデフレ下で、所得の減っている中で消費税を増税するということが、深刻な、暮らしを圧迫することにもなる。

 加えて、消費税の転嫁ができない事業者にとってみれば、身銭を切って、いわば自腹を切って払わざるを得ないというのが消費税制度の根本的な欠陥だ。こういう中では価格転嫁問題は解消できないわけで、私は、消費税増税をやめることなしに、こういう根本問題、欠陥を取り除くこともそもそもできないということを言わざるを得ません。

 そこで、対策をとるということをおっしゃいました。この間、民主党のワーキングチームの話もありましたし、消費者あるいは親事業者との関係で、しっかりとした対策をとるとか、監視を強化するとか、Gメンとかという話がありますけれども、そもそも、消費税導入時に竹下総理が消費税の七つの懸念とか九つの懸念ということを指摘しておられましたけれども、そのときから、価格転嫁問題というのは課題として挙げられているわけであります。

 それなのに、いまだに価格転嫁問題が大きな課題となっている。二十四年間何をやってきたのか。いかがですか。

岡田国務大臣 今の委員のお話を聞いておりまして、ちょっと腑に落ちないのは、全建総連の例なんですね。

 全建総連、例えば、家をつくるというときに、一千万の家をつくる。一千万の契約をしますね。それが、例えば五%上がって五十万円ですね、消費税がその分に上乗せされる。それを払わなかったら、それはやはり契約違反ということになるわけで、そこはまさしく、買った人と家をつくった業者の方の問題として十分に裁判でも争える、そういう問題だというふうに思います。

 もし、全建総連ということでおっしゃった、大工さんがいい家をつくって売るときに、実際の契約の価格に消費税が上がって上乗せできないということであれば、私は、そういう問題だというふうに思います。

塩川委員 全建総連というのは、皆さん、下請事業者として、そこに働く労働者、建設職人の方の組合ですから。わかっていないんですよ。

 ですから、民主党ワーキングチームに行って聞いてほしいんですけれども、支払いを受けることができない経費は消費税に限らない、契約上優位な立場を利用した直接的、間接的な値引き強要の常態化が問題の根底だ。

 ですから、消費税の価格転嫁がとりわけ問題なのは、こういう値引き強要が常態化をしている中で、実態上、転嫁ができないような消費税分まで納めなくてはならないからだというところが問題だということを言っているわけで、事の本質というのをしっかり受けとめて取り組むべきだということです。

 そこで、二十四年間何をやってきたのかということですけれども、そこは先ほどお答えになりましたから、それなりにやってきたという話ですけれども、先ほど言いましたように、二十年以上たってもこの価格転嫁の問題というのは解消されておりません。

 いろいろ対策をやると言うけれども、この間、公正取引委員会が行った調査では、価格転嫁はどうだったのか。実際の中小企業、小規模事業者にしてみれば、価格転嫁できないという声が多数の声となっている。

 そういう実態がある中で、中小企業庁と一緒に公正取引委員会が実施した特別調査、一九八九年の消費税導入直後と一九九七年の五%増税直後に行った調査、そこの調査におきましては、下請事業者の回答はどのような結果だったんでしょうか。

竹島政府特別補佐人 お答え申し上げます。

 まず、平成元年の消費税導入時におきまして、公正取引委員会が中小企業庁と連携して、資本金一億円以上の親事業者約七千社、それと取引のある下請事業者約六万六千社を対象に、転嫁状況に関する特別調査を実施いたしました。

 その結果でございますが、親に関しましては九八・六%、下請事業者からの回答に関しましては、九四・九%が消費税額分を上乗せして取引が行われていたと。要するに、一〇〇%近い転嫁が行われていたということが平成元年の特別調査でございます。

 平成九年の税率引き上げ時におきましても、これは規模が縮小されておりますが、親事業者約一千社、それと取引のある下請事業者約五千社、これを対象に、転嫁状況に関する特別調査を実施いたしました。

 その結果、親に関しましては九六・八%、下請事業者に関しましては九四・六%が消費税の引き上げ分相当額を上乗せして取引が行われているという結果になっております。

 それで、先ほどの先生のパネルと随分違うじゃないかという御印象を持たれるかもしれませんが、公正取引委員会が管轄しておりますことは、いわゆるBツーB、事業者間の取引に関しまして、優越的地位の濫用であったりカルテルであったりということを取り締まっているわけでございまして、BツーC、小売業者が消費者との間でどのように取引しているかについてはカバーしていないわけでございます。

 それで、私が今申し上げたのはBツーBのデータでございまして、下請事業者といいましても、大方は、本体価格での取引をして、それにプラス税額を乗せて請求し、支払われているというのが実態であると我々は把握しております。

 問題は、小売、BツーCにおいて本当に転嫁できているかどうかという問題ではないのかと。この大きな違いはそこにあるというふうに思っております。

塩川委員 親事業者と下請事業者ですから、BツーBの話をしているんです。この中にもその実態が反映をしているということを言っているわけであります。

 今答弁があったように、平成元年の消費税導入時、平成九年の五%増税時の調査で、下請事業者が価格転嫁できましたよという回答が九割以上なんですよ。本当かなと誰もが思わざるを得ないような回答の結果であるわけです。中小四団体の実態調査と余りにもかけ離れているということを言わざるを得ません。

 なぜそうなるのか。それは調査方法にあるわけです。中小四団体の実態調査というのは、各団体を通じてアンケートを依頼し、集計をしたものであります。中小企業や小規模事業者のありのままの姿が反映をしているものであります。

 そこで、では公正取引委員会にお尋ねしますが、公正取引委員会の特別調査の調査対象、下請事業者の調査対象はどのように決めておられるんですか。平成元年の場合についてで結構ですから、答えてください。

竹島政府特別補佐人 平成元年につきましては、先ほど申し上げましたとおり、資本金一億円以上の親事業者、それと取引のある下請事業者、親に調査をかけまして、あなたはどこの下請に出していますかということを調べます。それでわかった取引先である下請事業者が六万六千社、これについて調査をかけたわけでございまして、特別の何か細工をしているわけではございません。

塩川委員 つまり、親事業者に取引している下請事業者の名前を書き出してくれと言って、それをリストにしているわけですよ。ですから、下請事業者が回答しようと思ったとしても、親事業者は回答している下請事業者のリストを持っているわけですから、そうなったときに、本当に正直に、実態をあるがままに回答することができるのかということを言わざるを得ません。

 親事業者に名前を握られている下請事業者にすれば、転嫁できないということを正直に回答しにくい、こういうふうにならざるを得ないとお考えになりませんか。

竹島政府特別補佐人 その点の御懸念はごもっともでございまして、私どもは、であるがゆえに、この得られた情報は決して外に出ないように、親にばれないように工夫をしております。

 ばれて報復を受けたという話は、私、もう十年近くになりますが、聞いたことがありませんので、そこは御信頼いただきたいと思います。

塩川委員 消費税の特別調査は同じ仕組みなんですよ。親事業者が自分の下請事業者を全部リストアップして、その先に聞いているんです。だから、下請にしてみれば、消費税を転嫁したよということを言わざるを得ないというか、実態はそうなっていないということを言えないと。だから、回答数だって、母数からすれば三割、四割にならざるを得ないんですよ。そういうのが今の実態であるわけであります。

 そういう秘密をしっかり厳守しているというお話をされますけれども、この点について、私は、こういう事業者にとって、秘密が厳守されなかったというより漏れてしまった、そのことによって不利益が及んでいるという事例を実際に聞いていますよ。

 私が地元で聞いたお話ですけれども、金属加工の社長さんですが、ある親事業者、大企業との取引があります。そのときに、公正取引委員会から定期書面調査についての要請があって、その定期書面調査に、親事業者の問題のある行為、違法行為を書き込んで回答したわけです。そうしたら、その後どうなったのか。その親事業者、大企業の、大手メーカーですけれども、その大手メーカーの調達担当者から呼び出された。何を言われるのかと思ったら、おたくは公正取引委員会の書面調査に答えたでしょうと。こういうことですよ。

 結局、親事業者にしてみれば、下請事業者の名簿を握っていますから、何らか匿名でやったとしても、公取が親事業者に問い合わせするようなことがあれば、もう特定できるというのが実態なんですよ。そういう中で、結局、この中小企業の社長さんの仕事というのはそのときで切られてしまった、これが実態であります。ですから、仕事を切られて大きな損失をこうむった、これは誰が責任をとるんですか。

 こんなことが現に起こっているというのが公取の調査の実態なんですよ。こういう現状を放置したままで、どうして今回のような消費税の価格転嫁の是正などできるのか。これについて誰か答えてください。

竹島政府特別補佐人 仮に報復があれば、それも違法行為でございますので、ぜひ、そういう情報は公正取引委員会に提出をしていただきたい。きちっと、厳正に処理します。

塩川委員 公正取引委員会の書面調査そのものに問題がある、限界があるということを言わざるを得ません。

 何でこんなことになるのか。この点について、下請いじめを本気で公正取引委員会が是正をできない構造的な問題として、公正取引委員会の天下りの問題を取り上げたいと思います。

 総務大臣にお尋ねをいたします。

 公正取引委員会からの天下りが五代以上続いている公益法人はどこか、その天下りのポストは何か、お答えください。

川端国務大臣 総務省が平成二十一年十二月二十五日に公表いたしました調査によりますと、公正取引委員会からの再就職者が五代以上連続している公益法人は、平成二十一年五月十四日時点で、社団法人首都圏不動産公正取引協議会、社団法人自動車公正取引協議会、社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会の三法人となっておりまして、それぞれの役職は専務理事であるということでございます。

塩川委員 三つの公益法人に五代連続天下りが行われている。

 このパネルをごらんいただきたいんですが、自動車公正取引協議会の場合には、昨年に、六人目になるような、経済取引局長が専務理事のポストに天下っています。

 民主党というのは、こういう天下りをやめようと言っていたんじゃないですか。公益法人の五代連続、さらには三代連続のこういう天下りをやめさせようと言っていたにもかかわらず、民主党の政権になってから天下っているんですよ。こんなことを放置しているということ自身、民主党政権が天下り問題を棚上げしているということを言わざるを得ません。

 ここで、例えば自動車公正取引協議会ですけれども、これは補助金とかは入っておりません、会員企業の会費で運営をされているわけであります。会長企業はどこかといえば、自動車工業会の会長であります。現在では日産自動車であります。副会長企業はトヨタ自動車。これが実態であります。同様に、全国家庭電気製品公正取引協議会についても、家電メーカーと販売会社で構成をされているわけで、その代表の企業はソニーということが実態であります。首都圏不動産公正取引協議会でいえば、会長そのものは不動産協会ですけれども、その不動産協会の会長企業は三井不動産ということです。

 要するに、この自動車公正取引協議会の会長が自動車工業会の会長、日産自動車であることを見ても、天下りOBは業界団体の会費で仕事をしているわけです。

 公正取引委員会のOBの老後をこれら業界団体に保障してもらっている、その担い手は、トヨタであり日産だ。これでは、親事業者である大手メーカーに肩入れすることにならざるを得ないんじゃないのか。下請事業者の立場で是正ということも言えないんじゃないのか。

 こういう現状について、総理はどのように受けとめておられますか。ぜひお答えください。

竹島政府特別補佐人 職員の再就職問題、大変厳しくなっているのは御案内のとおりでございます。しかしながら、公正取引委員会のOBにつきましても、政府で決めましたルールに基づいて、きちっとやっているつもりでございます。

 今御指摘の自動車公取協の専務理事の件でございますが、これは公益法人でございます。独立行政法人は大方のところで公募をやっていると承知しておりますが、公益法人に関して、いわゆる天下りをする場合に公募という形をとっているのは極めて少ないはずでございまして、公正取引委員会は率先してその公募に受けているわけでございます。

 この男性は、その公募に受けて、イコールフッティングのもとで、よかろう、能力がいいということでパスしていることでございますので、何か公正取引委員会の職権なり影響力を行使して押し込んでいるということではない。その手続も、公募でございますので、官も民もまさにイコールフッティングのもとでこの者が選ばれたということをぜひ御理解いただきたいと思います。

塩川委員 いや、そんなことは聞いていないんですよ。

 総理にお答えいただきたいんですが、民主党はかつて天下り禁止の法案まで出しました。政権についてからは天下り容認に転向したというのは、ここにあるとおりであります。天下りの問題というのは、官と民の癒着によって行政がゆがめられるということが一番の問題なんですよ。

 民主党政権下で経済産業省の資源エネルギー庁長官が東京電力に天下った。このことについて、結局、エネルギー政策を取りまとめた資源エネルギー庁長官が電力会社に天下ったということが日本のエネルギー政策をゆがめていたんじゃないのか、このことが厳しく問われたわけで、ここを見ても、監督する立場の役所から監督される業界に天下っている、こういう状況について、こういうのは認めるわけにいかない……

中野委員長 時間が参りました。恐縮ですが、終わらせてください。

塩川委員 こういう欠陥を拡大するだけの消費税増税は認められないということを述べて、質問を終わります。

中野委員長 これにて塩川君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉泉秀男君。

吉泉委員 社会民主党・市民連合の吉泉秀男です。

 代表質問、そして特別委員会での質問、それに対応する政府の答弁、私自身感じるのは、非常に、自民党を含めた質問、このことに対して、すごい鋭くて答弁がなかなか追いつかないみたいな、そんな感じを率直に持ったところでございます。

 それはなぜなのかというふうになったらば、やはり、社会保障の充実といいながら、その内容が非常に不鮮明、そして消費税の増税ありき、こういう中身に今回のこの一体改革の法案そのものがなっている、こういうふうに私は率直に言わせていただきたい、こう思います。

 そういう中において、今、自分自身のところに、この社会保障と税の一体改革の中身について非常に反対意見が多いです。消費税は当然反対だという部分と含めながら、年金の問題、非常に関心も高いんですけれども、反対、内容そのものが全然出ていない、そういう中において、増税、年金も切り下げられる、こういう思いというものが非常に強い、そういうふうに私は思っております。

 私は、きょう、びっくりしたんですけれども、午前中の自民党政調会長の質問で、自民党の基本原則に違和感がない、こういう総理は答弁をされた、このことに疑問を率直に感じました。

 それはなぜかといったらば、政権交代を果たした中において、民主党政権は、早々と年金改革について着手をしながら、そして、当時の総理大臣、鳩山総理を中心に、二十二年の三月、新年金制度に関する検討会を立ち上げて、五回も検討を積み重ねながら、二十二年の六月、中間まとめを発表し、そして、この中間まとめに沿って、社会保障と税の一体改革の大綱、こういうふうにつくられてきた、こういうふうに認識をしております。

 それでは、私の方から少し確認をさせていただきたいというふうに思いますけれども、この大綱の前の中間まとめでは、七原則、このことを基本原則として民主党政権、政府は公表をしたわけでございます。特に、一番の、年金の一元化の原則、全国民が同じ一つの年金制度に加入をする、これが第一原則だ。それから二つ目として、最低保障の原則、これは最低限度の年金額の保障があること、この部分を二つ目の大きな原則にしながらまとめたというふうに思っています。

 そして、大綱を見ましても、この一元化の原則、さらには最低保障の部分については、まさに、税の負担による最低保障年金と、それから社会保険料、そのところにおける報酬部分の比例年金と組み合わせたものが新たな年金なんだ、こういうふうに提言、さらには大綱で示されたわけでございます。それに基づいて今回の法案が出されているんだろう、こういうふうに私は思います。

 しかし、きょう自民党の方から、基本的な考え方、五つの基本的な方向づけ、これを出されたわけでございます。その中においては、自民党のこの基本的な考え方の中には、一元化なり最低保障、このところがなかなか見えない、こういう状況に私は思ったところでございます。それに対して、総理は、まさに、違和感がない、こういうふうに答弁をなされたものですから、自分自身疑問を感じたわけでございます。

 そういう状況の中で、この中間まとめの七原則、このところは生きているというふうに私は思っていますし、この間の民主党の社会保障、特に年金の問題については、これを原則として、そこから一歩も譲っていないという捉え方をしているわけでございますけれども、この点についてまずお伺いを、総理からさせていただきたい、こういうふうに思います。

野田内閣総理大臣 吉泉委員御指摘のとおり、本年二月に閣議決定した一体改革の大綱には、平成二十二年六月の新年金制度に関する七つの基本原則、この七つは先ほど御披露いただきました。その基本原則や、その後の民主党内での検討の結果などを踏まえまして、社会保険方式の所得比例年金を基本として、補足的に、税を財源とする最低保障年金を給付する新しい年金制度を盛り込んでおります。

 この新しい年金制度については、国民的合意に向けた議論や環境整備を進める必要があります。所得比例年金や最低保障年金の給付と負担の関係など、具体的な姿や実施スケジュールは、まずは民主党内で議論されているところでございますが、政府としては、この党における議論の進捗状況を踏まえて、さらに検討を深めていきたいというふうに思います。

 というのは、一応、七つの原則をスタートにしながら今日来ていますが、そのことと、例えばきょう自民党からお示しをいただいた五つの基本的な考え方、お手元に委員も資料を持っていらっしゃると思います。この五つの中で、では、例えば、明確に違和感があるというのはどこなんでしょう。真面目に納める人が報われること、自助、共助、公助とか、ここに書いてあること、このことについては違和感はないと申し上げました。どこかあるのなら御指摘いただきたい。私はございません。

吉泉委員 私は、年金の一元化の問題なり、それから最低保障の原則、これが、自民党の基本的な考え方の中から見れば、見えないわけですよね。そして、自民党の代表質問なり、さらには今委員会での質問、その中においては、最低保障年金はもう下げてくれ、取り下げろ、こういうふうな話にもなってきているわけなものですから、そういう面で、非常に、この中においては、相入れない、そういうものがあるものですから、それを総理は、違和感がない、こういうふうに答弁なされたものですから、私はちょっとびっくりしたという思いでございます。その点、何かありますか。

 その中で、今言った年金一元化の原則なり最低保障の原則、この部分については、これはそのとおり、これからもずっとそのところについて追求するんだという理解でいいですか。

岡田国務大臣 午前中の審議の中で総理が言われたこと、これは、自民党が出された今後の社会保障に対する我が党の基本的考え方、この中の基本的立場というところで、額に汗して働く人が報われる制度にから始まって、全体で四つのことが書いてあるわけです。このことについて違和感がないというふうに総理は言われたわけで、具体的各論については、年金のところに、民主党の掲げた非現実的な選択肢というふうに書かれておりまして、ここのところは意見は違うということもあわせて総理は午前中言われたところでございます。

吉泉委員 この点について時間を費やすことはできません。ただ、これから与野党含めて議論が相当進むんだろうというふうに思っておりますけれども、そのときには、やはり原則に肝心な内容、中身、このことをしっかり提示しながらの議論、そういう部分をまず期待申し上げながら、次の質問に入らせていただきます。

 月平均四万九千円、そして月平均十五万、三倍もの年金格差、この格差について総理はどういうふうに認識をしているんだろうか。

 そしてまた、国民年金は、自営業者など被用者年金に加入していない人たちを対象に一九六〇年に発足をしたわけでございますけれども、国民皆年金の基盤となったものであり、真面目に働き、保険料を納めてきた人たち、そういう人から見れば、社会保険、いわゆる厚生年金と三倍も差がある、こういったことに対して非常に不満を持っております。

 今では、誰もが老後の生活設計を年金を基盤に考える社会になってきております。現に高齢者世帯の七割以上が年金収入に頼っております。自営業者の人たちに、保険料が低かったから受け取る年金額は少ないんだ、こういう話で済まされるものではないんだろうというふうに思います。

 私は、誰でもが同じ年金に加入し、公平な年金制度を確立し、年金格差を少しでも解消する、このところに努力をしていくべきだろうというふうに思っております。今回出されたものについても、国民年金を基礎年金、こういうふうに位置づけたまま厚生年金と共済年金だけを統一する、こういう内容では、この格差の是正にはならないだろうというふうに思っております。

 年金一元化、このことについては、私たち国民が望むものだろうというふうに思います。この点についての方向性、さらには、どう具体的にしていくのか、このことの考え方をお聞きしますと同時に、大綱に盛られておる税財源による最低保障年金、これを七万円、こういうことで規定しておるわけでございますけれども、今回は見送り、来年度このことについては法案を出す、こういうふうに言っているわけでございますけれども、七万円、こういうことで確認をしていいのかどうか、そのことについてお伺いいたします。

岡田国務大臣 まず、おっしゃるような年金の抜本改革について、我々、党の中で今いろいろ議論しているところでございます。その中には、年金の一元化、つまり、委員御指摘の国民年金と厚生年金、共済年金を一つの制度にするということが含まれております。ただ、現時点では、その議論がまだ煮詰まっていないということで、とりあえず被用者年金一元化ということで法案を提出させていただいているということでございます。

 基本的には、今、国民年金と被用者年金で分かれているのは、やはり制度の背景が大分違う。かつては、自営業者の方は比較的資産もある、そして定年もない、そういう中で、最低限必要なところを見る年金制度として国民年金制度があったということかと思います。ただ、今や、そういった裕福な自営業者の方だけではなくて、自営業者の方々自身も厳しい状況にある方が多いし、ましてや非正規で働いておられる方も国民年金に入っておられますので、もう状況は大分違ってきたという中で、我々は一元化というものを提案させていただいております。

 ただ、野党の一部の皆さんから御指摘いただいておりますように、一元化いたしますと、当然保険料が上がります。特に事業主負担がないだけに、その分だけでも上がるし、より保険料は上がる。もちろん、給付はふえる。

 こういうことで、今、具体的な制度設計をいろいろ党の方で議論していただいているところでございます。

吉泉委員 二十二年の六月にこういう原則を決めて、そしてもう二年になるわけですね。そういうところがまだまだ制度設計も含めて明らかにならない。こういう状況の中では、やはり国民からすれば、非常に違和感があるんだろうというふうに私は思っております。

 新しい年金制度における最低保障年金、これについては、まさしく、税財源が非常にかかる、これもわかります。国の借金が膨れ上がる一方で、税収は低下をしている。しかし、だから安定財源として消費税、こういうふうに頼ることには、私から言わせると少し違和感がありますし、プランが少し無策にもなっているのではないか、こういうふうに思います。

 その中で、ちょっと調べさせていただきました。私たちの試算では、消費税が導入されて以降、私たち国民が納めた消費税総額は二百三十兆、こういう額になるんだろうというふうに思っております。そして、同じ期間、このことの中で、法人税の企業減税、これをやったわけでございますけれども、それも約二百兆。

 こういうふうに単純に私たちは今試算をしてきたわけでございますけれども、このところがまさに、比較をするならば、消費税の税収そのものが企業のいわゆる法人税の引き下げ部分の財源になった、こういうふうに言えるんだろうというふうに思っております。現に、消費税導入前の一九八八年と二〇一〇年の国、地方の税収構造を比べてみると、法人税は三四・三%から一八・四%に半減をしておりますし、それから、消費税は一七・七%から三一・六%へ二倍もふえておるわけでございます。

 このことについて、やはり内部留保の問題もございます。ましてや、昨年の状況の中において、大震災等々ありまして、資本金一億円以上の法人に二五・五という一つの税率、こういう部分を今出されておるわけでございますけれども、財政危機、税収減、この中で消費税や所得税を引き上げて法人税を引き下げる、こういう状況について、私たち国民から見るならば、これは整合性がないのではないか、こういうふうにも率直に思うんですけれども、このことについて財務大臣の方からお聞きをしたいというふうに思います。

 それともう一つ、それとあわせながら、課税ベースの拡大、それから国と地方のいわゆる租税特別措置法の縮小、こういった部分もあわせながら、税体系等々の問題についてもっともっと深掘りをする、そういう必要があるのではないか、こういうふうに思いますけれども、大臣の見解をお伺いします。

安住国務大臣 法人税につきましては、やはり、日本の経済の中に占める企業の立場というものは、先生、国際的な競争にさらされていることは事実だと思います。ですから、そういう点では、人件費が高くなったり、日本の企業全体の競争力を考えますと、法人税というのは、これまでずっと国際競争の中で引き下げを行ってきた。今回も、そういう点では五%下げさせていただきましたけれども、やはり雇用や国内投資の拡大を図るという点から、こうした措置はとらせていただきました。

 先生の御指摘は、租税特別措置等、企業に対するインセンティブがかなり働いているのではないかということでございますが、これも、戦後長年、さまざまな経緯、経過の中で租税特別措置というものは行ってきたことは事実でございますが、実は、このことに関しては、私どもで租特の透明化ということで実態調査等も今行っておりまして、長年の措置の中で二百項目を超えるような租特について抜本的な見直しというものをやって、そういう意味では、余り特定の業界、団体に偏ったインセンティブは与えないようにしていこうということは基本的にやっております。これからもやらせていただきたいと思います。

 そういう中で、所得税につきましては、二十年の経過で申し上げますと、最高税率が非常に高かった時期がございます、七〇%を超えるような。それが、税率が下がって最高税率四〇%という状況でございましたが、やはり、これについても累進性をもう少し高めて、再配分機能を高めたらどうだという御意見もございまして、今回、四〇%を、五%引き上げを提案させていただいているということでございます。

 そういう点では、社会保障を賄うという点でいうと、消費税についてはいろいろなお考えがあると思いますけれども、ぜひ全世代、高度成長時代と違いまして、若い方々の所得に依存をしてそこで賄うという基幹税の根本のあり方が、やはり今、高齢化社会の中で、それに合った考え方をしていくと、全世代型で、大変心苦しいことではございますけれども、消費税率を安定財源にした社会保障の充実を図っていきたいというのが今回の改正の趣旨でございます。

吉泉委員 そのことを理解しながらも、今、現状から言わせれば、所得税は八割の人たちが払っていて、法人税は七割の企業が支払われていない、やはりこういう状況があるわけですね。それから、今の所得税の問題についても、それぞれ段階を非常にいじってきながら、それから最高税率の問題なんかも含めながら、いろいろな形でやっている。

 しかし、今大臣が言うように、やはり高齢社会の中にあって、あるべき姿、このことについてやはり早急に明らかにしながら、安易に消費税というふうなことにつながる、頼る、こういうことについてはぜひ御検討をお願い申し上げたいというふうに思っております。

 そして、きのうも大臣は、法人税を、いわゆる国際水準、三〇%、こういったところを引き下げた理由として、高ければ海外に出ていかれる、こういう答弁をなされていますけれども、しかし、ここにありますように、今の、海外に企業が行く、そういう部分に対する理由、海外事業活動基本調査の結果、これは経済産業省で毎年出しているわけでございますけれども、そういう優遇なり、さらには法人税が低いからというふうな理由については、たった八・九%、これしかないわけですね、この調査結果の中では。やはり、現地に赴くということについては、それぞれそこの国々の中において、自分がつくってきた製品、さらにはそういう部品、この部分の需要が見込まれる、これが断トツなんですね。

 だからこそ、そういう意味では、私たち、今、成長戦略とかいろいろな形でそれぞれ国として施策をつくっているわけでございますけれども、このところについて、税金を安くする、だから行かないんだ、とどまるんだ、こういう考え方ということについては私は違和感があるわけでございますけれども、このことについてお伺いさせていただきます。

中野委員長 財務大臣安住淳君。あと一分足らずしかありません。端的にお願いします。

安住国務大臣 はい。

 本社機能の移転までを含めてじゃなくて、企業の立地とか、例えば中国に対して工場を建てていきますよというそのインセンティブのアンケートだと思いますけれども、しかし、先生、国際競争力をつけるためには、法人税というものがほかよりも高ければ、やはり本拠地を移されたのではもう大変なことになりますので、そういう点では、法人税を引き下げることは、日本の国内の国際競争力を高めて、ひいては、国内というのは、やはり肝心かなめの企業の体力というものを守っていけるというふうに私は思っておりますので、ぜひ御理解いただきたいと思っております。

吉泉委員 時間になりましたので、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

中野委員長 これにて吉泉君の質疑は終了いたしました。

 次に、浅尾慶一郎君。

浅尾委員 みんなの党の浅尾慶一郎です。

 質問通告をいたしておりませんが、午前中の茂木委員と安住財務大臣の質疑、特にインフレターゲットに関して聞いておりまして、一点、思ったこと、そして提案もさせていただきたいので、聞いていただきたいと思います。

 日本の税収が過去最高だったのは一九九〇年のときで、これは六十兆円ございました。今は大体四十兆円。ただ、現在の実質経済は、一九九〇年のときよりも大分大きいんですね、実質の経済は。そして、名目の経済で比較をするとその差は大分縮まりますけれども、現在の方が少し大きい。ただし、名目の経済というのは物価というものが入っておりますけれども、この物価の指数の中には、資産、土地とか株の値段は入っておりません。

 一方で、日銀が金融緩和したときに反応度が高いのは為替であったり土地であったり株の値段ということなので、そういうものも入れた指標をつくって、一%物価上昇というのに加えてもう一つの、これは日銀がというよりは政府として横で見るための数字として、資産性のものも入れた指数を入れて考えていったらどうかという提案をまずさせていただきたいと思います。

 これは財務大臣の所管になるかどうかわかりませんが、議論されていたのは財務大臣なので、お願いしたいと思います。

安住国務大臣 浅尾さんとはいつもそういう不動産の資産等について、資産デフレというものの解消が必要だという議論は先般もさせていただきましたので。

 今まで統計は、やはり過去の歴史から見れば、同一なものを同一に測定するからこそ統計でございますので、そうしたものが入ったときにどういうふうになるか、ちょっと政府部内で検討させていただきたいと思います。

浅尾委員 それでは、通告した質問に移らせていただきたいと思います。

 まず総理に、社会保障の財源であります社会保険というものの性格について伺いたいと思います。きょうはテレビが入っておりますので、わかりやすくお答えいただきたいと思います。

 例えば自動車保険というと、自賠責保険という強制加入の保険と、そしてその上に付加する任意の保険があります。この社会保険というのは、もちろん、厚生年金の保険料であったり、あるいは健康保険の保険料というのは強制加入ですから、位置づけとしては自賠責保険により近いんじゃないかなと思いますが、その位置づけを総理なりの考え方でお答えいただければと思います。

野田内閣総理大臣 自賠責、全く性質が異なる、あるいは一緒かというとそうではないと思いますが、一定の要件を満たしていたら全員入らなければいけないという義務がある強制保険であるという点においては一緒だと思います。

浅尾委員 なぜそういうことを伺ったかといいますと、実は自賠責保険というのは、事故を起こそうと起こすまいと価格は一緒なんです。要は値段は一緒。任意保険は、事故を起こすと値段が高くなる、使ったらその分上がるということなんですが、実は社会保険、厚生年金にしても健康保険にしても、これは必ずしもそうなっていない。つまり、加入する制度の違いによって保険の料率が違ったり、いろいろと制度が複雑になっているということをまず申し上げておきたいと思います。

 その上で、累次岡田副総理とは議論をさせていただきましたけれども、まずその考え方。現行の社会保険料の未収とか未加入というのがいろいろとあるわけでありますが、この考え方の中で、実は、厚生労働省が出している表によると、払った世代ごとの給付と負担の関係という表があるんですが、それを見ると、何となく、払った額より多くもらえるのかなというふうに思うかもしれませんが、まず、実は、基礎年金の方の図をお出ししたいと思いますけれども、基礎年金、いわゆる国民年金で見ればいいんだと思いますが、国民年金、これは厚生労働省が出している表ですと、ことし生まれた人、要するに、今、累次保険料が上がっておりますけれども、今後の人は払った保険料の一・五倍もらえるという数字を出しておられます。

 ところが、実は基礎年金というのは半分は国庫負担なので、払った保険料の一・五倍ということは、実際は、国庫負担というのは国民全員で負担しているということから考えると、払った保険料プラス全員で負担している分の一部は自分だというふうになりますと、零歳の方も四十歳の方も、国庫負担の分を加えると、払った保険料ほどはもらえないという制度なんですね。これが今お示ししている制度であります。

 したがって、実は、加入すると国の負担がふえるという制度ではありません。払った保険料ほどもらえないということでいうと、そういう形にはなっていない。

 それから、報酬比例の方も図をきょうはお渡ししておりますけれども、報酬比例の方は、これも厚生労働省が出した数字をもとに私どもの事務所で計算をいたしましたけれども、報酬比例の方も、実は払った保険料の分ほどはもらえない計算なんです。これは国庫負担の分を単純に引いた、厚生労働省が出しているのは、夫婦で、専業主婦のケースでありますけれども、そこから二人分の国庫負担の分を引くと、四十歳だと〇・九二、零歳だと〇・八五ということなんです。

 これは、よくよく考えてみると、変な話ですけども、ある種当たり前でありまして、要は、過去払った保険料より多くもらっている人がいるということは、どこかで調整しなければいけないからこういうことになるということでありまして、そう考えると、払ったほどもらえない制度であれば、未加入や未収があるということは、むしろ、先ほど冒頭申し上げましたように強制加入の保険という考え方からすると、これは社会的公正性に欠けるというふうに私は思いますが、その点について、総理あるいは小宮山労働大臣、いかがでしょうか。

小宮山国務大臣 世代間の仕送りという形の年金ですから、高齢者が多くなるにつれてもらえる率が下がるということは確かです。

 ただ、今議員がお示しになったもので、例えば国民年金の場合でいうと、年金の給付額から国庫負担分を除いて言っていらっしゃいますけれども、これは確かにみんなで税金で負担するわけですが、年金保険料としては、例えば本人が一出したら事業主が一出して、それで一・五をもらえるということは、家計の上からいくと出したよりももらえるということだと思いますし、厚生年金の保険料負担分に事業主負担分を含めていらっしゃるということ、それから厚生年金の年金給付額から国民年金の年金給付額を除いておいでであるということから、ここにあらわされている数字は必ずしも家計の面からいって正しくないというふうに思います。

浅尾委員 それは全く違う話だと思いますよ。

 まず、国民年金というのは、今の単純な話で、保険料プラス税金は、お一人お一人がどれぐらい払っているかわかりませんけれども、単純にみんなで払っているということでいえば、払った保険料プラス税金も同じだけ払っているというふうに考えれば、それだけもらえない制度なんです。

 それから、厚生年金の報酬比例の部分というのは、基礎年金を除きますから、これには税金は入っていません、御存じのように税金は入っていない。その中で、では事業主負担分を加えてやるのはけしからぬ、多分そういう御意見なんだと思いますが、では事業主が、選択肢があって、別に御本人にその分お給料を渡してもいいということであれば、本人だって別に、払ったほどもらえないんだったら、その分直接もらった方が得だという計算になります。

 ですから、私が申し上げたいのはそういう話ではなくて、そういう制度であると。そういう制度にせざるを得ないのはよくわかるんです。かつて最初に制度をつくったときは、ほとんど保険料を払っていない人に給付しているんですから、その借金がどこかに行く。それをこういう形で調整しているわけですから、そのことは素直に認めた上で、だとしたら、払ったほどもらえないんだったら、それはいわば税金に近いような強制加入の自賠責の保険と一緒ですから、ちゃんと徴収した方がいいんじゃないですかということを申し上げているわけであります。

 そのことについて、総理、一般的な考え方です。ですから、先ほど、自賠責保険は必ず加入しなければいけない、したがって、事故を起こそうと起こすまいと保険料は変わりませんという制度であります。だから、逆に、これは車検のときに必ず払わないと車検が通らないような形になって、そこで徴収漏れがないように担保されているわけでありますけれども、健康保険あるいは年金の保険料の徴収漏れがあると、逆に、特に年金の話を今いたしておりますけれども、これは社会的公正性に欠けるんじゃないか。ですから、先ほど吉泉委員が配られた、民主党の中にも、政府のまとめたものですか、保険料の未収、未納をなくすというのは、社会的公正性の観点からも、そういうことに意義があると。

 これは簡単な質問ですから、単純に意義があるというふうにおっしゃっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

岡田国務大臣 委員の御指摘もよくわかります。確かに、若い世代から見たら、払った保険料の何倍も年金を受け取っている方々がいる一方で、自分たちは、払った保険料、それは税金分も含めればもちろんそれ以上にもらえるわけですけれども、何となく不公平という感じがあるということは事実です。

 だからこそ、委員も御指摘のように、やはり保険料をきちんと納めてもらうという努力がなければならない。基本的に国民年金というのは、入っても入らなくてもいい制度ではなくて、入らなければいけない制度、厚生年金も同じであります。ですから、その努力は極めて重要だというふうに思います。

 ただ、一言言わせていただくと、今の高齢者、七十代の方あるいはそれ以上の方々は、戦後、いろいろな意味で御苦労をいただいてきた世代でありますので、高度成長期をつくって今の豊かな日本をつくっていただいた世代ですので、やはりそういったことも考えて全体の設計をしていかなくてはいけない。

 我々、今回、年金の、多い方からは税金の部分だけは少し差し引かせていただくような提案もさせていただいておりますが、それがその二つの考え方を調和する一つの道かなというふうに思っております。

浅尾委員 岡田副総理がおっしゃっている、高齢者、今年金を受給されている方が今の日本の繁栄の基礎をつくったということは、私もそのとおりだと思う。ですから、若い世代の方が払った保険料、これは本人が払ったものというふうに言えばそれ以上もらえますけれども、労使折半の使用主が払っているものも加えればそこまでもらえないということも、ある種、制度を維持するという意味ではそれは仕方がないことなのかなというふうに思います。しかし、だからこそ、そこにただ乗りする人がいたのでは社会的公正性に欠けるということを申し上げておきたいと思います。

 きょうは、財源がどれぐらいになるかということについては、みんなの党としては、岡田副総理にも御説明させていただきましたけれども、徴収漏れが十兆円になるということを申し上げておりますけれども、そのことで時間を費やしてもいけませんので、ぜひ政府の方でも試算をしていただきたいということを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。

 次に、社会保険料、先ほど、自賠責は全て同じ価格だということを申し上げましたけれども、社会保険料は、実はかなり不均衡がございます。

 例えば、健康保険の料率、ことしの四月から上がりました。一番多くの国民が加入しております協会けんぽ、これはことしの四月から一〇%になりました。収入の一〇%、健康保険の保険料がかかる。今回、行政改革だといろいろ言っておられますけれども、国家公務員共済は七・七%ですか、ということでございまして、そうすると、一〇と七・七で、二・七%の差がある。これはかなり大きな差なんですね。

 二・七%と口で言うと、そんなに大きくないというふうに思われるかもしれませんが、ちょっと計算の関係で申し上げますと、例えば三十万円の月収の方、二・七%差があると八千数百円多く引かれる。これは労使折半ですから、四千数百円、協会けんぽの方、いわゆる一番多く加入されている健康保険の方の方が国家公務員の方よりも本人が引かれる額が多いというのが今の実態ですが、このことについて、まず考え方として、これが公平なのかどうかということを総理に伺いたいと思います。

岡田国務大臣 これは、社会保険というものをどう考えるべきかという考え方によると思うんですね。ですから、基本的に社会保険というのは、それぞれ母集団があって、その中で自律的にやるというのが基本的な考え方、今は拠出金とかいろいろなことがあって話がわかりにくくなっておりますが、基本的には、その母集団の中で自律的にやっていく。そういう中で、いろいろな効率化のための努力もなされるということですね。

 そうすると、その母集団の所得とか年齢構成もありますから、当然、必要な保険料というのも変わってくる。例えば、衰退産業というか、昔元気だったけれども今元気のない産業だと高齢化していますから、それだけやりくりが厳しくなって保険料が高い。新興産業だとその逆になっているというような問題もあるわけです。

 公務員とそれから民間の違いも、恐らく、所得の違いとか年齢構成とか、そういうことに由来するところもあると思います。それを全部調整すべきだという議論はあるかもしれませんが、現在はそういうものは調整せずに、自律的にそれぞれの保険集団でやっていくということになっていると思います。

浅尾委員 現在は別々になっています。

 ですから、私が申し上げたいのは、冒頭申し上げましたように、強制加入の保険なんですよ。任意加入じゃないんです。ですから、収入の多い人たちだけで保険をつくって料率を安くする、これが果たして公平なのかどうかという哲学の話を申し上げているわけでありまして、これを同じ料率にするとどれぐらいの財源が出るかというと、二兆円を超える財源が単年度で出てくるわけでありまして、公平にすることの哲学はどうかということでありまして、そのことを指摘させていただきました。

 もう一点、この保険の制度の中で、ちょっとどうかなと思うことがあります。

 今回、政府は、週三十時間を超えるパートの方が現在社会保険が適用になっておりますけれども、これを二十時間に下げるというようなことを検討されているというふうに伺っております。しかし、私は、二十時間に下げることに絶対反対と言うつもりはありませんが、週二十時間しか働いていないということは収入が少ないわけですね。では、収入の多い人はどうなんだろうと思って、調べてみました。

 健康保険にしても厚生年金にしても、実は毎月毎月の標準報酬月額というのがあって、それに上限があります。健康保険でいうと百二十一万円。百二十一万円よりも月収が多い人というのはそんなにいないかもしれませんが、逆に百二十一万円よりも月収があるからこそ払える。それで料率が上がったらそれは累進制ですけれども、同じ割合だったら、私は、払う能力はむしろ収入が少ない人よりも高いんじゃないかなというふうに思います。あるいは、ボーナスでいうと、健康保険は、一回当たり百八十万円を超える者については百八十万円で頭打ちということになっています。

 年金の方は、これがかなり低くなっておりまして、月収六十二万円を超える者については年金の保険料はかかりません。ボーナスでいうと、百五十万円を超える者についてはかからないということになっています。

 では、これも哲学の話になりますけれども、こういうものをそのままにしておいて、収入の少ない方に負担を求めていく、二十時間に下げていくというのは、私自身はこれはいかがなものかなと。やるのであれば、全部撤廃して一定料率でやっていくべきだ。全部撤廃して一定料率でやると、これも二兆三千億円のお金が毎年毎年出てくる。消費税一%分のお金がそこで出てくるわけですから、それに目をつぶるのか、それとも、今申し上げた哲学の話について、なかなか総理にお答えいただけませんけれども、先ほど来申し上げておりますように、社会保険というのは強制加入ですから、強制加入であればやはり公平性が必要だというふうに思いますけれども、どういうふうに考えるか伺いたい。

岡田国務大臣 ここも考え方の問題ですよね。

 ですから、先ほど委員が例示で挙げた自賠責、これは別に所得によって差があるわけじゃないと思うんです。たしか定額だったんじゃないかと思うんですね。ただ、どう制度設計するかの問題で、おっしゃるように、所得がある一定以上高い人に頭打ち、上限を設けていることがいいかどうか。これは、受ける便益との関係で余りにもかけ離れた保険料を負担させるのが適当かどうか、そういう判断の上で頭打ちを設けているものですが、ここは考え方の問題で、両論あり得るところだというふうに思います。

浅尾委員 自賠責の例を挙げたのは、受ける便益と関係なく、要するに事故を起こさない人は自賠責を使わないわけですよ。事故を起こさないけれども払わなきゃいけないという意味で定額になっているということなので、では、特に健康保険、年金もありますけれども、健康保険は健康な人は使わないんですよ。使わないけれども、これを払っていただかないと社会全体として回らない。回らないんだったら、これは同じ料率にしないと不公平なんじゃないかと。

 特に、例えば働く場所の違いによって三%近い差があるというのは、これは大きいですよ。一〇%と七・七%、これが小さいということは決して言えないと思うのです。給料から引かれるのはその半分ですけれども、しかし、その差があるということを是認しているのがいいのかどうかということは、ぜひ真剣に考えていただきたいと思います。

 特に、今回、税と社会保障改革ということでありますが、消費税の増収の提案というのは政府の側からなされておりますが、社会保険の保険料の方の増収の提案というのは出てきていないわけですから、今申し上げたようなことをぜひ御検討いただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

岡田国務大臣 ここは考え方としては、確かに、例えば健保組合ではなくて都道府県単位でくくるとか、あるいは全国一つにするとか、いろいろな考え方があると思います。全国一つにすれば、これは社会保険というよりは、もう税と余り差がなくなってくるのかなというふうには思いますが、いろいろな考え方はあり得るというふうに思います。

 しかし、健康保険組合に任せることで、いろいろな、例えば事前に健診するとかさまざまな努力をする、それが、単位が大きくなってしまって、例えば都道府県単位にくくると、果たしてそういうことがなされるのかとか、そういったことも含めてあわせ考えていかなきゃいけない問題。しかし、検討に値する問題だというふうに思います。

浅尾委員 なかなかお答えいただけないので、総理、いかがですか。

野田内閣総理大臣 例えば、先ほど、協会けんぽと共済の三%の差の御指摘がございました。なかなか難しい話なんですけれども、要は、給付と負担の関係で公平性をどういうふうに確保していくかという視点と、それから、さっき出ていたように、保険者機能、その自主的、効率的な運用とのバランスをどう考えていくか。その中で、より公平性をもっと重視しろというのが浅尾さんの指摘だと思いますが、ちょっとこれもよく勉強させていただきたいというふうに思います。

浅尾委員 要は、加入する健康保険、あるいは、年金も実は官と民と保険料率が違うんですけれども、その違いというものを統一することによってふえる保険料収入がある、あるいは月収の上限があるということは、やはりここは考えるべきだ。社会保障の改革ということであれば、入りの分の改革もぜひやっていただきたいと思います。

 それから、最後に徴収部門の改革について伺いたいと思いますが、今回、歳入庁の設置については検討課題ということになっておりますが、今申し上げたような強制加入の保険というものを徴収していくに当たって、実は、大部分の国民の方は、保険の徴収あるいは税の徴収というのは勤め先が代行して行っております。ですから、勤め先が資料を出す先を一カ所にするという意味では、歳入庁の設置というのは大幅な行革にもなるというふうに思うわけでありますが、民主党の党としての話は伺っておりますが、政府としての今現在の検討状況について、まず伺いたいと思います。

岡田国務大臣 政府の方も、私が責任者として、関係大臣、そしてそのもとにチームをつくって検討いたしまして、先般、中間報告をいたしました。ただ、まだ結論には至っておりませんので、引き続き、いろいろな論点について議論を行っているというところでございます。

 午前中も申し上げましたが、これは党によってかなり意見が異なるわけで、歳入庁をつくることのメリットはもちろんおっしゃるようにございます。しかし、他方で、現実に国税庁とそれから年金機構のテリトリーといいますか、対象とする範囲にかなりずれがありますから、ある意味で、国税庁的な機能で歳入庁を再構成するとなると、それなりの人員もふやして仕組みも変えなければいけない。そういう問題をどう考えるかということ、一つの例ですけれども、あるということであります。そういった論点を今詰めているところです。

浅尾委員 冒頭、先ほどの質問のときに申し上げましたように、実は大部分の、大部分というか、厚生年金や健康保険については、少なくとも被用者の部分は雇い主側が代行して天引きをしていますから、制度を簡潔にして、年収の上限を取っ払ったり、月収の上限を取っ払ったり、保険料率を統一して、なおかつ料率を一元化すれば、払った人件費に対してかかる保険料を一カ所に払う形になるということなので、ぜひそれを検討していただくように申し上げて、質問を終えたいと思います。

中野委員長 これにて浅尾君の質疑は終了いたしました。

 次に、豊田潤多郎君。

豊田委員 新党きづなの豊田潤多郎です。

 ここにパネルを立てましたが、私ども新党きづなは、「増税の前に、やるべきことがある。」と。第一に「行財政改革なくして、増税なし」、第二に「社会保障のビジョンなくして、増税なし」、第三に「景気の回復なくして、増税なし」、このことを強く主張しているところであります。

 それで、我々はかねてから申し上げてきたところですけれども、まず、社会保障と税の一体改革という問題の提起の仕方はおかしい。なぜなら、社会保障を受けたければ消費税増税やむなし、逆に、消費税の増税が嫌なら社会保障は無理だよ、あるいは十分な給付が受けられないよという二者択一ですけれども、選択肢のない、消費増税ありきの問題提起の仕方、これは私どもはおかしいと。ずっと言っておりますが、歳出と歳入の一体改革、こういう形での問題の提起、アプローチをすべきである、これを申し上げてきています。

 社会保障といえども、御案内のように、全てが聖域ではありません。メスを入れるべきところもたくさんありますし、社会保障を含む全ての歳出について徹底した行財政改革を行う、これと同時に予算の効率化を進める、それによって歳出の大幅な削減を実現、実行しなければならないわけです。

 まずこれをやって、どうしても足りないというときには、次に歳入。歳出と歳入の一体改革ですから、歳出をできるだけ削る、しかし、歳出をできるだけ削ってもそれでも足りないというときなら、歳入を上げざるを得ない。

 その歳入というのも三つあります。税と税外収入とそして国債です。

 まず、国債をふやすということがまずいという財政規律を守るとすれば、税と税外収入を上げるしかない。それなら、まず税外収入。一回こっきりかもしれませんが、税外収入をできるだけ上げる。それでもどうしても足りないというときに、最後、増税の議論になるわけですけれども、増税だからといって、すぐに消費税というわけではありません。ほかにいろいろな税目があります。これらの全体のバランスを考えて、最終的に、消費税がどうあるべきか、こういうアプローチをすべきであるというのが基本的考え方で、これはもう総理もよく御存じだと思います。

 この考え方に立って今回提出された法案を検討すると、ここに書いてあるように、「行財政改革なくして、増税なし」「社会保障のビジョンなくして、増税なし」「景気の回復なくして、増税なし」、こういうことが問題になるという指摘を私どもはしているわけです。

 第一番目の問題ですけれども、これは、私、五月の十一日、約十日ほど前ですが、代表質問で、民主党が二年八カ月前の政権交代に当たって、行財政改革の主なものを四つほど例示しました。公務員の人件費削減、国の地方出先機関の整理縮小、廃止、特別会計や特殊法人等の整理縮小、廃止、独法等ですね、それから最後、四番目、天下りの全面禁止等ということで、重立ったものを四つほど挙げたんですが、総理からお答えがあったのは、公務員の人件費の削減、これはしましたとおっしゃった。

 だけれども、あれは、七・八%、二年間、復興財源に充てるという特殊な削減で、復興財源は、二十五年間、国債を発行し、そしてそれの財源は所得税等の増税を充てるということになっているわけですから、これで公務員の人件費削減ができたというわけではありません。民主党が約束したことは、二割の削減をして恒久財源を出す、こういうことを言っているわけですから、これは公務員の人件費を削減したということを大きく言える話ではありません。

 それから、国の地方出先機関の整理縮小、廃止のことを私は指摘しましたが、総理の答弁は全くありません。ないんです。それはそうなんです、やっていないから答弁ができないわけなので。これが二番目。

 三番目、特会改革、独法改革。このお答えはありました、やっていますと。しかし、これは単なる数合わせにすぎないのであって、全体の歳出削減にどれだけの効果があったか。それは、ほとんど効果がない。逆にふえているという指摘もあります。そういうことをきちっとやるということが必要であります。

 最後の、天下りの全面禁止。これも、天下りというのは、確かに官と業の癒着という問題もありますけれども、大事なことは、特会あるいは一般会計もあるでしょう、一般会計、特会、そういうところ、あるいは独法、いろいろなところから出ている国庫補助、国の歳出、公金ですよね、それに伴って、それを支出、独法等あるいは特殊法人、そういうところに出している、そこのところに天下っていくという、それで金と人を最終的には税金で見ている、これが問題だ、ここを断ち切らなきゃならないわけですね。

 実は、天下りの全面禁止ということについても全くコメントはありませんでした。代表質問での答えはありません。

 私は答弁漏れとは言いませんでしたけれども、四つのうちの二つしか答えはなく、その二つも不十分、こういうことでした。

 もう一つ、コンクリートから人へと称しながら、ことしの予算では、八ツ場ダム、整備新幹線、高速道路等、これらが軒並み復活して、人からコンクリートへと逆戻りしているわけですね。このことについて指摘をしましたが、これもお答えはなかった。まさにお認めになったということなんです。

 ということで、我々は、最初にまず、全ての歳出について、さっき申し上げた徹底した行財政改革を行う。それは二年八カ月前に民主党が約束したことであります、国民に。その約束を守らずに消費税だけ上げる。しかもそれは、約束していない、逆に引き上げないと言った、それを引き上げる。国民に約束したことをやろうとせずに、逆に約束していないことをやろう、あるいは引き上げないと言ったことをやる。これは単なる増税法案にすぎないんです。

 だから、行財政改革なくして増税なし、この点、総理、いかがですか。

岡田国務大臣 まず、行革、今懸命に取り組んでいるところです。そして、これは民主党も必死になってこの政権交代以降進めてきたことで、委員も民主党にかつて属しておられたわけですから、そのことはわかっているはずであります。(豊田委員「それができないから飛び出したんですよ」と呼ぶ)それができていないというのはよくわからないので、後でぜひ、具体的にここをこういうふうにすべきだというふうにおっしゃっていただきたいと思います。

 その上で、例えば独法であります。独法は、政権交代後、約二兆円の不要資産について国庫納付いたしました。そして、毎年毎年、平成二十一年度でいえば三兆四千億ぐらい、一般会計から独法に行っていた財政支出であります。これが現在では三兆一千億ということで、一割削っております。何もしていないわけではございません。

 それから、人件費について言われました。二割というその目標のために、ぜひ具体的なアイデアがあればお教えいただきたいと思いますが、これは、まず、二年間に国家公務員の人件費を限ったのは、我々が公務員四法というものを出しているからであります。つまり、この公務員四法が成立した後は、これは労使交渉によって決めるということになっておりますので、この四法が成立した後まで拘束することはできない、そういうこともあって、二年間ということになっております。あとはどういうふうに労使交渉していくかという問題でございます。

 いずれにしても、あと幾らでもお話ししますが、例えば天下りも、天下り全廃と言われましたが、このマニフェストの中に書いてあるのは天下りのあっせんを全面的に禁止するということで、それは実現しているところでございます。

豊田委員 私は、何も全部できていないと言っているわけじゃなくて、ほとんど何もできていないか、もしくは極めて不十分だと申し上げているわけです。ですから、よく反省していただかないと、コンクリートから人への話はどうなるんですか。

 その次に、時間がないので、社会保障のビジョンなくして増税なしに移ります。

 これは、歳出と歳入の一体改革ということを我々は主張してきましたけれども、仮に社会保障と税の一体改革というふうに問題を狭く絞ったとしても、例えば、いろいろな党がおっしゃっています、年金の将来ビジョンが不明確である。二番目に、生活保護のあり方がこれでいいのか。三番目に、高齢者の高額医療のあり方、特にターミナルケアのあり方です、こういうものがこれでいいのか。さらに、昨年の暮れに、予算編成のときに、百円の窓口診療を取るということで、その百円が日本医師会からだめと言われた途端に、小宮山大臣はすぽっと引いちゃった。あれで大変な抑制ができるはずだったじゃないですか。

 そういうふうな歳出削減の抑制策もきちっととらずに、ましてや基礎年金の国庫負担分に赤字国債減らしの粉飾まがいの交付国債を使う。こういうことは、私は、これで消費税の増税を国民の皆さんに理解してくださいといっても、とても無理だ、そう思います。

 時間がないので、三問目もあわせて言いますので、二問、三問をまとめてお答えください。

 最後、景気の回復なくして増税なしです。

 長期のデフレと今円高で、日本の景気の低迷が続いている。このときに消費税の増税を行うということは、絶対に我が国の経済を一段と深刻かつ危機的な状態に陥れることになります。そうすれば、企業や家計の所得が大きく落ち込む。落ち込めば、当然のこと、法人税や個人所得税が大きな減収になる。さらに、消費税も、想定していた一%、二・七兆なんて話も出てこない。全体の税収も想定を大きく下回る。

 このような税収の落ち込みも大きな問題ですけれども、さらに、企業の倒産とかリストラによって失業者が増加する。雇用不安などの極めて大きな社会的問題を引き起こします。民主党の支持母体である連合さんだって、そのことは十分わかっているはずです。

 こういう状況のもとで、景気対策をきちっとせずに消費税の引き上げを強行するということは、本当に将来に禍根を残す。将来の世代にビジョンを、あるいは明るい未来を残すというようなことには絶対なりません。手順を間違うと、我々は、消費税は絶対反対だと言っているわけじゃないんです。消費税を増税する前にやることをやって、それから消費税を導入してください、上げてくださいと。

 そして、岡田副総理が言っているのは、やります、検討しています。そば屋の出前じゃありません。はっきり結果を出して、そして……(発言する者あり)不十分だと言っているじゃないですか。不十分と言っているじゃないですか。天下りなんかどうなっているんですか。

 そういうことを私は政府にきちっと申し上げて、残り二分ですけれども、総理の答弁を求めたいと思います。

 以上です。

中野委員長 総理からまとめて。野田内閣総理大臣。

野田内閣総理大臣 まず、一つ目の行革の話は、先ほど副総理がお話ありました。そこの若干抜けている部分を私から申し上げたいと思います。

 まず、本会議では出先機関改革を言ったけれども答えがなかったということです。

 出先機関の原則廃止という法律を今出す最終準備をしています。(豊田委員「なぜそれが先に出てこないんですか」と呼ぶ)出すんですよ。

中野委員長 そこでやりとりしないでください。

野田内閣総理大臣 これは、市町村等の関係者の調整を丁寧にやっているんです。今、広域連合等、手を挙げているところにはきちっと機能を渡すということをやろうとしています。その上で、市町村等も緊密に連絡しなければいけない。丁寧な議論をしながら法案を成立させようとしていますので、これは出します。

 それから、コンクリートから人へという、一つの個別のいわゆる箇所づけにかかわるお話だけで一刀両断でお話がございましたけれども、これはまさに予算を見ればわかるとおり、それに対する批判はありましたけれども、政権前に七兆円台あった公共事業費は、今四兆円台になっているんです。これは数字を見てみていただければおわかりいただけると思います。コンクリート重視にはなっていません。真に必要なインフラ整備はしなければなりませんけれども、だからといって野方図にばらまきをしようという考えは毛頭ありませんという路線は堅持しているし、予算を見れば一目瞭然じゃありませんか。

 それから、社会保障のビジョンなくして増税なし、これは、私どもはビジョンを出しているつもりです。

 評価はいろいろあるかもしれません。豊田さんは、歳出と歳入の一体改革という言い方は、僕はその意味がよくわからないんです。歳出と歳入の一体改革ということは、行革と増税を一緒にやるという意味ですか。削る部分と増税する部分は、一体その因果関係をどうすればいいんでしょう。財政健全化だけという意味なんでしょうか、よくわかりませんけれども。

 いずれにしても、今、一般歳出の半分以上が社会保障であります。そこは聖域化しないで効率化、重点化しなければいけない部分もありますが、そうはいいながらも、自然増を含めて、ふえていかなければいけないところがありますので、その分の安定財源を確保しようということでありますので、社会保障とこの増税というのは非常に密接不可分であるということはぜひ御理解をいただきたいと思います。

 景気回復なくして増税なし。これは、ずっときょう一日議論がありました。財政再建と成長は両立させなければならない、そういう強い気持ちでやっていきたいというふうに思います。

中野委員長 これにて豊田君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十四日木曜日午前八時四十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時散会


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