衆議院

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第3号 平成26年4月17日(木曜日)

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平成二十六年四月十七日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 森  英介君

   理事 塩崎 恭久君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 鈴木 淳司君 理事 宮下 一郎君

   理事 山際大志郎君 理事 中川 正春君

   理事 足立 康史君 理事 江田 康幸君

      うえの賢一郎君    大島 理森君

      神山 佐市君    川田  隆君

      菅家 一郎君    菅野さちこ君

      北村 茂男君    佐々木 紀君

      齋藤  健君    新谷 正義君

      高橋ひなこ君    中村 裕之君

      丹羽 秀樹君    額賀福志郎君

      藤井比早之君    船橋 利実君

      細田 健一君    細田 博之君

      宮澤 博行君    務台 俊介君

      簗  和生君    渡辺 孝一君

      荒井  聰君    生方 幸夫君

      岸本 周平君    辻元 清美君

      小熊 慎司君    木下 智彦君

      西田  譲君    斉藤 鉄夫君

      中野 洋昌君    山内 康一君

      椎名  毅君    笠井  亮君

      玉城デニー君

    …………………………………

   経済産業副大臣      赤羽 一嘉君

   内閣府副大臣       井上 信治君

   経済産業大臣政務官    磯崎 仁彦君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房原子力災害対策担当室長)

   (原子力規制庁放射線防護対策部長)        黒木 慶英君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           義本 博司君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中西 宏典君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           後藤  収君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁廃炉・汚染水特別対策監)    糟谷 敏秀君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            木村 陽一君

   政府参考人

   (原子力規制庁長官官房審議官)          山本 哲也君

   政府参考人

   (原子力規制庁長官官房原子力安全技術総括官)   竹内 大二君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力規制部長)          櫻田 道夫君

   参考人

   (東京電力株式会社代表執行役副社長)       相澤 善吾君

   衆議院調査局原子力問題調査特別調査室長      仲川 勝裕君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十七日

 辞任         補欠選任

  うえの賢一郎君    神山 佐市君

  白石  徹君     船橋 利実君

  中村 裕之君     務台 俊介君

  丹羽 秀樹君     高橋ひなこ君

  馬淵 澄夫君     岸本 周平君

同日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     藤井比早之君

  高橋ひなこ君     丹羽 秀樹君

  船橋 利実君     白石  徹君

  務台 俊介君     中村 裕之君

  岸本 周平君     馬淵 澄夫君

同日

 辞任         補欠選任

  藤井比早之君     うえの賢一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 原子力問題に関する件


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     ――――◇―――――

森委員長 これより会議を開きます。

 原子力問題に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として東京電力株式会社代表執行役副社長相澤善吾君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府大臣官房原子力災害対策担当室長黒木慶英君、文部科学省大臣官房審議官義本博司君、経済産業省大臣官房審議官中西宏典君、経済産業省大臣官房審議官後藤収君、資源エネルギー庁廃炉・汚染水特別対策監糟谷敏秀君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長木村陽一君、原子力規制庁長官官房審議官山本哲也君、原子力規制庁長官官房原子力安全技術総括官竹内大二君、原子力規制庁原子力規制部長櫻田道夫君及び原子力規制庁放射線防護対策部長黒木慶英君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

森委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮澤博行君。

宮澤(博)委員 皆さん、おはようございます。自由民主党の宮澤博行でございます。

 本日は、質疑の機会をお与えくださいまして、まことにありがとうございました。余談なく、早速入っていきたいと思います。

 私の選挙区には浜岡原子力発電所がございます。先日、四月の十一日にエネルギー基本計画が閣議決定されました。それに対して地元の市長さんからはさまざまなコメントが出たわけですね。正直言って、浜岡原子力発電所、地元の住民感情からすると非常に再稼働のハードルは高い、そのように思うわけです。市長さんがどんな発言をされたかといいますと、少し御紹介をさせていただきます。

 立地市である御前崎市長さんは、「現実的なエネルギー需給の道筋が示されたことは高く評価したい」「国はエネルギー基本計画を説明する責任があり、今後、市と市議会への詳細な説明を求めていく」とあります。ところが、隣接市となると実はもっと厳しいコメントになってまいります。掛川市、「将来にわたり安全・安心が確保されなければ、運転できない」はっきり言っています。そして、菊川市さん、「新規制基準に適合したからといって、浜岡原発の再稼働を認めるものではない。現状は市民の理解を得られる状況にない」そういうふうにはっきり言っているんですね。

 エネルギー基本計画の中には、実はこう書いてあります。四十三ページ、「原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。」はっきり書いてあります。そして、それに続いて、「その際、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む。」と書いてありますね。

 別のページには、「我が国の原子力利用には、原子力関係施設の立地自治体や住民等関係者の理解と協力が必要であり、こうした関係者のエネルギー安定供給への貢献を再認識しなくてはならない。一方、立地自治体等の関係者は、事故に伴って様々な不安を抱えている。」と書いてあります。

 国としては、一応、地元の感情というものは理解しているとこの表現から読み取れるわけなんですけれども、やはり市長さんは市民感情の代弁者なんです。そして、市民感情は、この適合性審査と再稼働についてどう思っているかというと、仮に、適合性が確認された、安全ですとどれだけ言っても、では、想定外はどうなっている。想定外のものが来ても、もし事故が起こっても避難計画があります。避難計画があるんだったら安全じゃないじゃないか。いや、科学的には安全なんです。こういう堂々めぐりがもう既に予想されるわけなんですね。

 つまり、安全、安心とよく一言で言われますけれども、安全と安心は実は別物であって、科学と心理という別のものである。ですから、この科学と心理の葛藤というものを政治がどのように解決していくのかというのが今必要であります。

 ですので、きょうはエネルギー基本計画のあり方とか原発の再稼働そのものの是非には踏み込むつもりはございません。安全と安心、科学と心理、この堂々めぐりに一定のめどをつけて、関係自治体の政治的な不安にどう応えるか、そのために政治プロセスはどうあるべきか、そういう視点で、原発再稼働に際して自治体等への国の取り組み、それについて私はきょう質疑をしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 さて、安全協定というものがあるんですが、この安全協定と再稼働の関係についてお聞きをします。

 浜岡原子力発電所の安全確保等に関する協定書というのがあるんですけれども、この協定書に基づいて立地自治体、隣接自治体が再稼働に対して物が言えるのか、賛否を主張できるのか、これをまず聞いておきたいと思います。

 それに関連して、浜岡の原子力安全協定の中には「措置の要求」という条項があるんですね。第七条なんですが、そこには、発電所の周辺環境の安全確保のため特別の措置を講ずる必要があると認めるときは、発電所事業者に対して、適切な措置を求めることができるものとするという条項がある。この条項の効力とはいかほどのものか、それを国はどのように捉えているのか。まずは、この二点についてお聞きしたいと思います。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の安全協定につきましては、電力事業者が立地自治体等との間で任意に締結するというものでございます。したがいまして、政府がその中身とか効力等について判断する立場にはございませんけれども、事業者が自治体との間でしっかりと議論していくといった意味では大切なものだと認識してございます。

 一般論でございますけれども、やはり電力会社が、原子力発電所をめぐりまして、周辺の自治体等、そういったいろいろな地元の声に耳を傾けていくといったことは重要であるというふうには認識してございます。

宮澤(博)委員 今、国が判断する立場にない、事業者と自治体の任意の協定である。確かに、これは紳士協定であり、任意の協定であります。法令にも根拠はございません。しかし、この安全協定というものが、これから再稼働を仮に進めるのであっても、かなりこれは再稼働に対して影響を与えることは間違いありません。

 これは後ほどまた御意見を伺いたいと思いますが、もう一つの側面が実はあります。それは、対象の自治体が拡大している可能性があるというところなんです。

 かつてはEPZというものがありました、八キロから十キロ。ところが、今や、PAZ、五キロ圏内、三十キロ圏内のUPZ、それより遠い五十キロまでのPPZと、またたくさん種類があるわけなんですよ。この三十キロ圏内というふうにくくられちゃった、そういう市、市民の感情、市長さんの判断、非常に不安になってくるわけですね。そうすると、どうしても協定を何らかの形で締結して、情報開示を求めていかなくちゃいけないという政治判断になってくる。

 大きい二点目としてお聞きしたいのは、立地自治体、隣接自治体、この協定の締結の範囲がどれだけ広がっているのか。そして、新たな協定の中には、再稼働の賛否に影響を与えるような条項が存在しているのか。どう把握しているのか、お聞きしたいと思います。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 福島原子力発電所の事故以来、これまでの立地地域等を超えまして安全協定の締結といったものを求めます自治体がふえてきているということは、我々としても認識をしているところでございます。

 他方、安全協定につきましては、先ほど一言申し上げましたけれども、電力事業者と立地自治体との間で任意に締結しているというものでございまして、我々が直接その内容等々につきまして言及するということは避けさせていただければと思います。

 しかしながら、各自治体の考え方、あるいは地元住民の意向等々、いろいろと各地の事情はさまざまだというふうに認識しておりまして、各事業者と自治体との間でこの問題についてはしっかりと議論していただければというふうに我々としては強く考えているところでございます。

宮澤(博)委員 ふえているという認識は持っていらっしゃる、それはそれで結構だと思いますが、直接内容に言及することは差し控えたいという当局からの答弁がございました。

 少なくとも、この協定については、国は全て把握すべきだと思います。なぜかというと、この協定によって、地元の意向が再稼働に対して大きく影響を与える。当然、こういう決め事があるなしにかかわらず、地元の市長さんの意向、発言、認めるかどうかということは、これは一般的な規範上、当然であるとは思いますが、紙に書いてある協定の効力というものはやはり大きいと思います。

 もう一度、浜岡原子力発電所の安全確保等に関する協定、安全協定の第七条を読んでみますよ。発電所の周辺環境の安全確保のため特別の措置を講ずる必要があると認めるときは、事業者に対し、適切な措置を求めることができるものとする。適切な措置の中に不作為の措置、これを解釈で盛り込んで要求することも、実は、地元の市からするとできるという解釈になってしまうわけなんです。

 だから、全国の安全協定を把握した上で、再稼働に対して、するかしないか、それも含めて、地元への丁寧な丁寧なアプローチが必要となってくるわけなんですが、まずは、これを把握する意思があるかどうか、それを問いたいと思います。どうでしょうか。

磯崎大臣政務官 お答えをさせていただきたいと思います。

 まず、原発の再稼働につきましては、もうこれは何度もいろいろな委員会で申し上げておりますように、やはりいかなる事情よりも安全性を優先していくということで、新規制基準に適合すると原子力規制委員会で認められた原発につきましては、基本的に再稼働していくというのが国の考え方でございます。

 法令上におきましては、適合性が確認されれば、事業者がみずからの判断で稼働するというのが法令上の立場でございますけれども、先ほど委員から御指摘がございますように、やはり地元の住民の方の理解を得るということが必要でございますので、事業者と自治体との間で安全協定が結ばれているということも事実でございます。そして、この内容につきましては、私どもも認識をしております。

 安全協定につきましては、先ほど審議官の方からも話がありましたように、基本的には、電力会社が立地自治体との間で任意に締結をしているということでございますし、効力につきましても、やはり、私どもは基本的にコメントをする立場にはないわけでございます。

 ただ、委員おっしゃいましたように、再稼働においては少なからず影響を持つものということでございますので、私どもは、あるということについては当然認識をしておりますし、内容についても認識をしているというところでございます。

宮澤(博)委員 ありがとうございました。内容は認識しているということで、とりあえずそれはそれで結構だと思います。

 しかし、政府の方針として、安全性が確認されたものを再稼働していくということでありますが、やはりそれ以上にハードルが高いのが、先ほどおっしゃられた理解というところであって、その理解をすると同時に、市民の方に安心を持ってもらえるかどうか、この心理の部分にどういうふうに政治が食い込んでいくのかというのが非常に高いハードルになってくるということは申し述べさせていただきたいと存じます。

 では、次の質問に移らせていただきます。次は、市町村の避難計画についてなんです。

 これも、エネルギー基本計画が閣議決定された日の地元市長さん、周辺の市長さんのコメントを紹介させていただきます。

 袋井市というところの市長さんの言葉なんですが、「浜岡原発の再稼働は「広域避難計画が未整備で、安全対策が万全ではなく、容認できない」」と書いてあるわけです。やはり、もしものとき、きちんと避難できる計画が整備されているというのが一つの安心材料になってくるわけなんですね。

 ですので、災害対策基本法と原子力災害特別措置法に基づいて、当然これは、防災計画が策定されていて、そして、その一部に原子力編が、大体第四編になっているわけなんですが、入っている。そして、その一部として避難計画が作成されている。

 では、この避難計画は、さっき言った、何キロのところの市まで作成すべきものなのか。そして、その対象とされている自治体がどれだけあって、避難計画作成済みの自治体がどれだけあるのか、どのようにこれを把握されているのか、お尋ねしたいと思います。

黒木政府参考人 お答えいたします。

 原子力規制委員会が作成しました原子力災害対策指針では、地域防災計画、避難計画を策定することとなる原子力災害対策重点区域を設定する目安としまして、原子力発電所からおおむね五キロメートルを御指摘のとおりPAZ、これは予防的防護措置を準備する区域でございます、それから原子力発電所からおおむね三十キロメートルをUPZ、緊急時防護措置を準備する区域として示しております。これを踏まえまして、各道府県の地域防災計画におきまして、PAZ及びUPZの区域が設定されております。

 このPAZ、UPZの二つの区域につきましては、その防護措置の内容として、避難及び一時移転というものも含まれております。

 したがいまして、具体的に要求されております市町村でございますけれども、二十一道府県の百三十五市町村でございます。なお、地域防災計画に関しましても、同様に二十一道府県、百三十五市町村でございます。

 平成二十六年三月末現在、七十一市町村につきまして避難計画が作成されております。これは百三十五のうちの七十一でございます。それから、地域防災計画に関しましては、二十一道府県全てにおいて作成が済んでおります。

 地域防災計画はあと、道府県のみではなく、市町村においても作成が義務づけられておりまして、市町村につきましては、百三十五市町村のうち百二十三市町村において作成が終わっております。

 以上でございます。

宮澤(博)委員 ありがとうございました。

 それに対して国も、まだ未整備のところに対しては、当然支援をしているわけですよね。それは後ほど答えてください。

 それと、もう一点ですけれども、地元の市長さんと話をしていると、避難計画についての一番の懸念は、県外に逃げなくちゃいけなくなった場合、これはなかなかやりづらい、計画しづらいというところが実は本音として出てきました。

 県外へ避難しなければならないケースはあるのか、もしそういったケースがある場合は国がきちんと関与していただけるのか、作成の支援をしていただけるのか、その点についてはいかがでしょうか。

黒木政府参考人 平成二十六年三月末までに作成している避難計画、先ほど七十一と申しましたけれども、そのうち県境を越える避難先を予定しているものは二十四市町村でございます。これは、二十四市町村において、県境を越える避難先を前提に計画ができているという意味でございます。

 地域防災計画、避難計画の策定につきましては、政府として、昨年九月に決定しました原子力防災会議の方針に基づきまして、各地域の避難計画の策定等の支援のためにワーキングチームを設定しております。これは、国の機関、関係の自治体、それから関係の事業者等も含んでの話になりますけれども、関係省庁を挙げて自治体の取り組みを支援しているところでございます。こうしたワーキングチームには、当然、避難の受け入れ先となる道府県も入っていただいているところでございます。

 また、避難が県境を越える場合などで、広域的な対策の実施や、さらに複数の道府県間のさまざまな調整が必要になる場合があります。そういった場合につきましては、これを円滑に進めるために、いわゆる協議会を設置しまして、国が主体でございますけれども、国が積極的に関与しまして、複数の自治体間の調整を行ってきたところでございます。

 引き続き、自治体における避難計画の策定につきましては、関係省庁を挙げて全力で支援してまいりたいと思っております。

 以上であります。

宮澤(博)委員 ありがとうございました。

 引き続き、その作成については、市町村に対して支援のほどよろしくお願いします。

 最後に、関係自治体に対する国の取り組みについて、改めて御意見を伺いたいと思います。

 エネルギー基本計画には、「国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む。」とはっきりと書いてあるわけですね。

 先ほど私が紹介した安全協定の中で、市長の賛否というものが形式的に影響を与えるか否かというのは、まだ判然とはしておりません。しかし、一般的に市長の発言というのは非常に重いわけですし、市長の立場は市民感情とエネルギー政策の板挟みになって葛藤しているという、これもまた現実であります。

 そして、安全と安心は別物である、科学と心理、この対立の中にある。安全といっても想定外があるじゃないか、避難計画があるということは安全じゃないじゃないか、そういう堂々めぐりが今地元の感情の中にあるわけです。

 ですので、立地自治体、隣接自治体、UPZの中の自治体の首長さんに再稼働への理解を求めるためには、前面に立つと言っておられますけれども、どういうふうに国が前面に立つのか。これはきちんと改めて整理してお話ししていただきたいと思います。

磯崎大臣政務官 お答えをいたします。

 今、原発につきましては、十原発十七基の適合申請が行われておりますけれども、今後、原子力規制委員会によって安全性が確認された段階では、立地自治体、関係者の理解を得るために、事業者だけではなくて、国もしっかりと説明をしていくことが重要というふうに考えております。

 国から自治体等への説明に当たりましては、やはり各地域の実情というものがございますので、こういったものを踏まえて適応していくことが重要であるというふうに思っております。

 その内容につきましては、やはり関係省庁が連携をしながら、各省庁ごとの役割分担というのが恐らく出てくるだろうというふうに思っております。例えば、原発の新基準への適合審査結果につきましては原子力規制委員会がそれを担うということになろうと思いますし、また、原子力を含む我が国のエネルギー政策、これは今委員からも御指摘ございましたように、基本計画等も出ておりますので、それに関してどうなのかということにつきましては私ども経産省、それから原子力防災に関しましては内閣府といったぐあいに、それぞれ役割分担を担って国がきちんと説明をしていく、そういうことを考えておるところでございます。

宮澤(博)委員 御答弁ありがとうございました。

 最後に、やはり安全協定を含めた諸法規、この把握にも努めた上で、地域の世論、社会情勢、そして政治的な動向、そこまで予測して、丁寧な丁寧な対応に努めていただきたいと思います。要望して、質疑を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

森委員長 次に、渡辺孝一君。

渡辺(孝)委員 自由民主党の渡辺孝一でございます。

 本委員会では初めての質問ですので、よろしくお願いを申し上げます。

 さて、東日本の大震災、また福島の原発事故、あの忌まわしい三・一一より早くも三年がたちました。この間、復興復旧を一日でも早くとの国民の願いに対しまして日々努力していること、関係者の皆さんに敬意を表したいと思いますし、これからもしっかりと、被災者の方々が笑顔で暮らせるような、そんな日を迎えるまでぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。

 あの三・一一の当時は、私は地元の岩見沢市長をやっておりまして、岩見沢市として何ができるかということで、市民の方々や行政関係の方々といろいろな話をしたのを今でも覚えておりますけれども、やはり、日本人のいわゆるいいところでもあるんでしょうが、悪いところで申し上げますと、喉元過ぎればというようなところも若干ここに来てあるのではないかというふうに思っております。

 ぜひ、この被災地の皆さんに対しましては、さらなる支援というのはどういうことができるかというのをやはり国を挙げてしっかりやっていくことが、私は、将来の明るい未来を築き上げる一助になるのではないかというふうに思っております。

 また、原子力の規制委員会の皆様におかれましても、田中委員長を中心に、一日も早く、現在抱えている問題につきまして、この解決に汗をかいていただいていることも感謝せねばならぬのかなというふうに思っております。

 しかしながら、これらの問題につきましては、私は、委員長初め委員会の皆さんの責任だけではなく、やはり我々国会議員もしっかりとその責任を果たさなければいけないのかなというふうな思いもしております。

 ぜひここは、政府と国会が一体となって、この問題につきましては、しっかりと住民に向き合い、さらには将来に向き合って責任を果たし合うことによって、解決の糸口を見つけていくべきではないかというふうに思っております。

 そこで、三点ほどの視点の中で、ちょっと質問をさせていただきたいと思います。

 まず、重々御承知のこととは思いますけれども、原子力発電所の停止によりまして、低下した電力供給の多くを火力発電によって穴埋めしているという現状は、素人の私でも認識をしておりますけれども、まず一点目、日本全国の電力供給の状況は今現在どういうふうになっているのかということをお聞きしたいと思います。

 また、二点目に関しましては、私の地元にも火力発電がございます。しかしながら、現場の方々にお聞きしますと、かなり老朽化してきて、危険というまででもないでしょうけれども、小さなトラブルが非常に増加しているというふうに聞いております。ということは、全国の火力発電でも同じようなことが起きているのではないかというふうに思います。

 そこで、稼働停止が長期間にわたる場合、火力発電など施設の維持や改修に対する政府としての支援策をどのように考えているのかをお聞かせ願いたいと思います。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 二点あったものと認識してございますけれども、まず、日本全体の電力需給につきまして御質問でございます。

 震災後、確かに、原子力発電所の稼働がどんどん停止をしていくという中にありまして、火力発電のたき増しをしてきてございます。具体的には、これは二〇一〇年度の数字でございますけれども、震災前に火力発電の比率が六二%ございましたものが、震災後の二〇一二年には約八八%というレベルまで上昇してきているというのが現状でございます。

 それと、二つ目の点でございますけれども、やはり、電力不足は何としても回避しなくちゃいけないということでございますので、老朽火力を中心としましてフル稼働させているといったところは確かにございます。その結果、火力発電の計画外停止といったものが増加傾向にあるというふうに我々も認識してございます。

 そういった中で、国といたしましても、通常の運転につきましてもそうでございますけれども、電気事業法といったものに基づいて、しっかりとした安全性確保といったものに努めてもらうとともに、こちらの事故以降でございますけれども、電力需要がピークを迎えます夏の期間あるいは冬の期間、そういった時期に入る前に、事業者に対しまして、発電設備の補修あるいは保全といったものの強化をしっかりやってほしいというような要請もやってきているということでございます。

 さらに、長期間使用していますプラントのいろいろな意味での更新といったことにつきましては、例えばでございますけれども、火力発電所をリプレースする際に必要となります環境アセスメントといったものの期間を、従来三年ぐらいかかっていたのを一年ぐらいでやろうじゃないかというふうな話。

 さらに、これに加えまして、例えば高性能のガスタービンのコンバインドサイクルの導入をしようというふうな場合には、しっかりとした形の投資減税といったものを今進めているといった意味での支援も、国としてはやっているところでございます。

 以上でございます。

渡辺(孝)委員 ありがとうございます。

 地元の方に聞きますと、企業として、言うなればためておりました内部留保金、さらには職員の給料の削減もしながら、ぎりぎりの経営をしている。そんな中で、電力料金を上げなきゃいけないという、いわゆる最後の選択に、皆さん非常に心を痛めながら今の運営をやっているという現状を御理解いただき、何とか、そういう財政支援等々も含めまして、ぜひお力添えをいただきたいというふうに思います。

 さて、二点目ですけれども、いわゆる適合性審査につきまして少し伺いたいと思っております。

 現在、私も報道で知る限りでございますけれども、いわゆる適合性審査を進めていらっしゃるかと思います。川内原発一、二号機の適合性審査を優先する方針を決めたとの報道があったのはつい最近でございます。

 そこで、委員会の皆さんにお聞きしたいのは、まず、優先させた理由は何なのか。二点目は、今後、この川内原発をモデルとして、他の原発の審査のポイントがわかり、その後の他の原発に対しましての審査が円滑に進むというふうに考えていらっしゃるのか。そして三点目には、そうであるならば、恐らく、川内の一、二号機に特化した審査だけではなく、今度は多数の審査になるということになりますと、委員会の中での審査のあり方が、非常に人員が必要になったり、いろいろ大変な面が出てくるのではないかと思いますけれども、現在の組織や人員で大丈夫なのかということ。

 三つお聞きしたいと思いますので、よろしく返答をお願いいたします。

櫻田政府参考人 お答え申し上げます。

 三点御質問をいただきました。

 まず、九州電力の川内原子力発電所一、二号機の審査を優先させた理由は何かということでございます。

 この九州電力の川内一、二号につきましては、これまで新規制基準への適合性審査を進めてきた結果、基準地震動、それから基準津波、これはほかの対策の基礎となるような条件を与えるものでございますけれども、これらを確定できるめどがついたということ、それから、そのほかに重要な審査上の論点がないということから、申請書の補正、審査書案の作成の準備に入るということにしたわけでございます。

 また、主に地震や津波の観点から、川内原発と同じように審査が進捗した、こういうふうに考えられるところまで進んだというプラントはほかにないということだったものですから、現時点では川内原発についてのみ審査書案の作成の準備等の段階に入るということにしたわけでございます。

 それから二点目でございますが、川内原発の審査をモデルとして、ほかの原発の審査のポイントがわかって円満に進むのではないか、こういう御質問だったと思います。

 おっしゃるとおりのところがございまして、今回の審査は、改めて言うまでもございませんが、これまでの基準を抜本的に改正した新規制基準に基づく初めての審査ということでありますので、最初の審査書案に取りかかるものについては、後続の審査の模範となるような十分に質の高いものをつくる、こういうことによって、結果的には、今後の審査全体を効率的、効果的に進めることができることにつながるのではないか、このように考えて取り組んでいるものでございます。

 それから三点目、体制の問題について御質問いただきました。

 現在、新規制基準への適合性を審査する、この審査のための人員については、原子力規制庁におきまして、審査のためのチームを特別に設けるというような取り組みを行って、鋭意進めております。

 加えまして、先般、JNES、原子力安全基盤機構との統合がございましたけれども、こういうことによる専門性の強化などをやって、順次組織全体の体制強化を図ってきているところでございます。

 それから、この統合分とは別に、昨年度、平成二十五年度の補正予算において、原子力規制庁の体制を強化するための定員増もお認めいただいておりまして、中途採用も積極的に行うというようなことによって審査体制の強化を行ってまいっているところでございます。

渡辺(孝)委員 わかりました。

 先ほど宮澤委員の質問にもありましたように、確かに地元関係自治体の方々は非常にいろいろな思いがあって、この適合性審査につきましてもいろいろな御意見があろうかと思います。しかしながら、技術的なこと云々につきましては、専門家という立場で、私も市長を経験しておりましたけれども、なかなかこの原発の専門的な知識等を有する者が地元にはほとんどおりません。ですから、ぜひしっかりと、その審査の中で、住民の方々が理解できるようなことをお願いしたいというふうに思います。

 さて、最後になりますが、原発の再稼働につきましては、私はいろいろな意見があるというふうに思います。特に、評論家やマスコミの皆様が何を言おうと、私は、最終的には国民の判断、理解が必要ではないかというふうに思いますし、そこが一番大事なところではないかというふうに思っております。

 ただし、昨今のマスコミの報道を見る限り、非常に、社風というんでしょうか、それぞれの会社の方針もございます、何か偏った、あるいは間違った報道をされているような気がしてなりません。まあ、そう思うのは私一人なのかもしれませんけれども。

 何を言いたいかといいますと、この再稼働に関しましては、いろいろな視点があろうかと思いますけれども、もちろん、安全性や安心というものが一番だと思いますが、それ以外にも、経済の面、環境の面、そして、日本のあるいは世界のエネルギー問題などの多くの視点よりも、やはり国民の皆さんにわかりやすく説明すべきではないかというふうに思っております。

 その点、先ほど宮澤議員とのやりとりの中では、なかなか、政府のかかわり方というのは非常に微妙な答弁をいただいたのを覚えておりますけれども、今後、どういうふうに国民の皆さんと接していくという決意など、考え方などを聞かせていただければと思っております。

中西政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力発電所の再稼働ということにつきましては、地元の皆様の理解を得るということでございますけれども、さらに、今先生から御指摘いただきましたように、国民全体への周知といったことも大切な問題だというふうに考えてございます。

 そういった意味は、先般閣議決定をいたしましたエネルギー基本計画、こちらの中でも、「エネルギーをめぐる状況の全体像について理解を深めてもらうための最大限の努力を行う一方で、エネルギー政策の立案プロセスの透明性を高め、政策に対する信頼を得ていくため、国民各層との対話を進めていくためのコミュニケーションを強化していく。」というところがございます。

 こういうふうな方向で、今後、政府といたしましても、国民各層のエネルギーに対します理解を得るといったことを、しっかりと取り組みを進めていきたいと思っておりますので、よろしくそこはお願いしたいと存じます。

渡辺(孝)委員 ありがとうございます。

 政府の努力するという言葉は、いろいろな場面でお聞かせいただいております。ぜひ、その言葉のとおり努力をお願いしたいと思います。

 私からの提案でございますけれども、私も、市長時代、いろいろな、市民説明会と称して、時には苦々しいことも、市民の皆さんの前で、時には袋だたきに遭いながら説明したこともよく覚えておりますけれども、やはり、年代層あるいは各層、いろいろな方々がいらっしゃいます。通り一遍の説明をするのではなくて、ぜひ、子供には子供にわかりやすい、あるいは年配の方には年配の方、あるいはいろいろな職種によっていろいろなことが考えられると思いますけれども、ぜひその努力を惜しまないでいただきたいというふうに思います。

 そのことで、一人でも多くの方々が、日本のエネルギーを将来どうしたらいいんだ、ぜひそういう視点から、大きな視点から物事を考えていただけるような教育というのをやっていくのも政府にとって大きな仕事ではないかと私は思いますので、我々国会議員もしっかりと応援をさせていただきますので、ぜひ一緒にやっていこうということを最後に言わせていただきまして、私の質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

森委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 他委員会の質問との関係で、順序を配慮いただきました。

 冒頭に、東京電力福島第一原発の汚染水問題は、最近の高濃度汚染水の誤移送など、トラブルが後を絶たず、深刻な状況が続いております。

 四月十一日の原子力規制委員会の作業部会では、また別の問題も議論されたということを伺っていますが、東電から、これまで採取した汚染水の計測方法に誤りがあって、昨年八月に発覚したタンクからの三百トンの汚染水の放射能汚染濃度は三・五倍に修正をする、昨年七月に採取した海側の井戸からの汚染地下水というのが当初の公表時の約四十四倍に修正したという報告があったと承知しております。

 しかも、重大なのは、全ベータとストロンチウム90の測定値が矛盾するということで、東京電力がストロンチウム90のデータを半年間も公表しなかった上に、ことしになってから、全ベータの公表値に誤りがある可能性を明らかにしたことであります。こういう問題がいっぱい出てきている。

 そこで、田中委員長に伺いたいんですが、国が前面に出ると再三政府も言ってきた。そして、そういう状況でありながら、依然、当事者能力ゼロの東電に任せっ放しの結果がこれだと、私は率直に言いたいと思うんですね。

 田中委員長は、東電のそうした対応ぶりも含めて、この間、東電の社長ともお会いになったり、いろいろやってこられたと思うんですが、依然として汚染水をめぐる一連の事態が続いている、深刻になっている事態をどうごらんになっていて、原子力規制委員会としてどう役割を発揮しているというふうにおっしゃるんでしょうか、お願いします。

田中政府特別補佐人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、東京電力福島第一原子力発電所の状況、今までいろいろ、廃止措置に向けてさまざまな応急対策も含めて取り組んでいるわけですけれども、依然としてリスクが非常に高いという状況でありますので、私どもとしても、最大の注意を払って注視しながら、事故防止に努めているところであります。

 私も廃炉・汚染水対策関係閣僚会議の一メンバー、規制当局の一員として参加して、技術的、専門的な助言をさせていただいていますし、その下の部会にも私どもの審議官が参加している。それから、規制する立場にありますので、汚染水対策検討ワーキンググループを私どもの中につくりまして、汚染水流出防止対策等の実施状況について評価し、必要な技術的助言を実施し、また、現地においても、放射線計測に関する技術的指導助言を実施しております。

 先生御指摘のように、こういった放射線計測の誤りとか不適切な扱いについては、私どもの外からも専門家の御協力を仰いで御指導いただいているというような状況でございます。

 さらに、これは昨年の十月にもお会いしたんですが、三月二十日に東京電力の広瀬社長と私が直接面談しまして、社長より、一F、第一原子力発電所の緊急安全対策、これは昨年私の方からいろいろ申し上げました、お願いしました、その進捗状況を受けたところでございます。

 一定の進捗はしているというふうには判断しておりますけれども、なお引き続きリスクが高い、いろいろなことが起こっておりますので、そういったことを防止するために、引き続き最善の努力をしていただくようお願いしたところでございます。

笠井委員 最善の努力ということでありますが、それは、基本的な臨み方という問題とあわせて、やはりそれにふさわしい体制という問題にもなってくると思うんです。

 そこで、原子力規制庁の職員数なんですけれども、原子力安全基盤機構、JNESとの統合によって全体が約二倍にふえたということでありますが、そのもとで汚染水対策に当たる規制庁の職員というのは現在何人おられて、そしてこの間、どれだけふえたというふうに数字的になるんでしょうか。

田中政府特別補佐人 この三月にJNESを統合しまして、三百四十六名の職員を採用したことによりまして、統合時点での職員数は、五百四十五名から八百八十七名になりました。その後も、中途採用とかを入れておりますので、さらにふえておりますけれども、その中で、今、審査の方も同時並行で進めておりまして、こちらは、八十名程度だったものが百名程度にふえています。

 一方、今御質問のありました、いわゆる福島第一原子力発電所の事故対応について、放射能の監視、検査、モニタリング、あるいは廃止措置の実施状況等の検査、あるいは監視等に携わっている人間が約八十名でございます。

 今後、JNESの統合で少し人員もふえましたので、さらに、定員増というのも認められておりますので、そういった実務経験者をできるだけ中途採用するなどして、我々の監視体制等についても強化を図っていきたいというふうに思っています。

笠井委員 確認したいんですが、廃炉・汚染水対策に当たっているのが約八十名というのは、この間でいうと、何名ふえたというふうに数字的になりますか。

田中政府特別補佐人 JNES統合以前と比べますと、五名程度ふえております。

笠井委員 そうすると、汚染水対策、廃炉をめぐっては、五人ふえたということでありますが、他方で、審査の方では、先ほど、八十名から百名と二十名ふえているということでありまして、国民から見たら、いかに汚染水問題、やはりこれはこんなに深刻なのに、こういう数字で見ると、軽視しているかということに見られるわけであります。私もそう思います。

 何においても、現実に起こっている福島第一原発をめぐる非常事態への対応に総力を注ぐべきで、その解決もできずに、原発の適合性審査もないではないかということを申し上げたい。

 さらに伺いますが、前回、四月三日の当委員会で、この適合性審査をめぐって原子力規制委員会は、電力会社が使ったものとは別の解析コードを使ってクロスチェックを行っているか、そして、行う必要があるかということで私が質問したのに対して、田中委員長は、事業者による主要な解析結果について、既に別途の解析により検証等を行っているものもあるというふうに答弁されました。

 そこで、改めて確認したいんですが、田中委員長が既に検証等を行っていると言う別途の解析というのは、これまで原子力安全・保安院や原子力安全委員会が行ってきた、電力会社とは別の解析コードを使う、いわゆるクロスチェック解析をやっているということを指しているのかどうか、その確認をしたいんですが。

田中政府特別補佐人 従来、原子力安全・保安院の方でやってきたクロスチェックといいますのは、基本的にはデザインベース、要するにデザインが、そこに品質管理がきちっとできているかどうかというような観点から行われています。

 今回の新規制基準の非常に重要な項目は、いわゆる重大事故のシークエンスがいろいろあります。これは、いわゆる全てが解析で評価できるようなところがありませんので、審査の過程では、その有効性とかそういうことについて、必要な審査と解析をあわせながら今やっているというところでございます。

笠井委員 今も言われた、福島事故前までは、つまり、炉心溶融が起きて格納容器が破損し、そして、放射性物質が大量に外部に出るような重大事故はない、安全評価するというのは設計基準事故までという前提で、まさに従来のクロスチェック解析というのは、設計基準事故に関する解析だった。委員長もそういうことを言われたと思うので。それと違って今度はということで言われているんです。

 要するに、そういうところの違いがあるとしても、今度は、重大事故は起きない、あるいは事故が起きても抑えることができるという電力会社が出している解析が正しいかどうか、それに関して規制委員会として独自に、別途に解析コードを使ってチェック解析をやっているものがある、そういう理解でよろしいのかどうか。そこのところを確認したいと思います。

田中政府特別補佐人 若干わかりにくいところがございますけれども、今回は、設備とか手順とか、解析になかなか乗りにくいようなところがございます。例えば、炉心損傷を防止する対策とか、格納容器の破損を防止するためのさまざまな設備要求とか、そのための手順とかということを要求しておりまして、全体として、きちっと重大事故、そういったことが防げるかどうかという有効性を確認するということでございますので、そういった解析についての評価を行っている、そこでの解析も含めた有効性評価を行っているということでございます。

笠井委員 その有効性評価をやる上で、独自のプログラムを使ってやっているのかどうか。それをやらなかったら、結局、電力会社の評価を妥当だと判断するようでは、手抜きになるじゃないかと私は申し上げた。前回もおっしゃったし、きょうも今そういうニュアンスですが、心配ないようにやっているし、今後も引き続きそういう方針というふうに、きちんとやっているということになるんですけれども。

 今、シークエンスの話も言われました。つまり、重大事故対策の有効性評価をめぐって、事故に至る一連の出来事の組み合わせ、発生順序、あるいは発生タイミングなどについて、そのシークエンス全てにわたって規制委員会として別個にきちっと評価する、そういうチェックをしているということは間違いないですか。そこはどうなんですか。

田中政府特別補佐人 規制委員会の立場できちっと評価しておりまして、疑問なところはきちっと事業者に説明を求めて、納得のいくような審査、私どもとして納得いかない限りはそれを許可するということはない、そういうプロセスを踏んでおります。

笠井委員 では、具体的に一つ聞きたいんです。

 川内原発と同じ加圧水型原発で、実際に炉心溶融を起こした原発にアメリカのスリーマイル原発がありますが、アメリカのNRCによると、少なくとも四五%の炉心溶融が起きたという報告であります。配管も原子炉容器も格納容器も破損はなかったけれども、格納容器内の圧力測定データから、格納容器内で水素爆発が起きたということがわかっている。

 他方で、川内原発については、九州電力は、炉心の一〇〇%が溶融するが、それでも水素爆発は起きないという解析結果を出しております。

 スリーマイル島原発の電力出力というのは、川内原発の出力とほぼ同じ。川内原発で炉心の一〇〇%が溶融するので、原子炉容器内で発生する水素の量というのは、スリーマイル島原発よりも大きくなるというふうに考えます。

 スリーマイルでは、炉心の四五%が溶融して、しかも、配管と原子炉容器の破損がなくても、格納容器内で水素爆発が起きたというふうに言われている。川内原発では、炉心の一〇〇%が溶融して、配管と原子炉容器が破損して、大量の水素が格納容器内に流出するのに水素爆発は起きないという九電の解析の信憑性が問われると思うんですが、田中委員長は、この川内原発で想定されている九電の解析に間違いがないと確信できるのか。

 そして、やはりそういう点でいうと、規制委員会として、クロスチェックという今までやってきた、そういう独自のプログラムを使って、コードを使ってきちっとやるということが必要じゃないかと思うんですが、そのあたりはどうですか。

田中政府特別補佐人 今回の重大事故では、炉心、燃料が全て溶けるというようなことも前提で、その場合にどういったことが起こるか。当然、今先生御指摘のように、大量の水素が発生します。それにつきましては、水素の再結合装置がどれだけ有効に働くかということで、その設置を義務づけていますし、その有効性について確認をしています。

 スリーマイルでも、先生御指摘のように、四五%ぐらい溶けて、相当量の水素が出て、局部的に水素爆発が起きたということは、私も承知しております。

 ですから、今回の福島事故も水素爆発によってああいう大きな事故に発展しておりますから、そこについてはきちっと、そういった備えを十分にして、それが有効に働くかどうか、そういうチェックはさせていただいておるところでございます。

笠井委員 時間になりましたので終わりますが、やはり、徹底した審査ということで言われるなら、その言葉どおり、あらゆる問題について、電力会社とは別の形で、解析コードなり、あるいはプログラムを使って、クロスチェックというのは今まで言ってきたやり方、そういうことをきちっとやるのかどうか。原子力規制委員会が使った解析コードの名前とか、原発の中でのどういう現象を対象としてチェックしているのか、これはぜひ明らかにしてもらいたいというふうに思います。強くこのことを求めて、きょうは質問を終わります。

森委員長 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一です。

 原子力発電所の安全対策、特にテロ対策に絞って質問させていただきたいと思います。

 これまで、世界で原子力発電所あるいは核燃料を狙ったテロ事件というのは、大体何件ぐらい発生していると政府として承知されているんでしょうか。

黒木政府参考人 事件の性質がテロかどうかというのはかなり難しい問題でございますけれども、まず、原発に関して、原発に対する直接の攻撃については数字としての把握はございませんが、昨年、例えば二〇一三年の四月、米国におきまして、原子力発電所の規制地区周辺に不審者がボートにより上陸しまして、警戒中の警備員との間で銃撃戦になったという例もございます。

 それから、核燃料を狙った事件でございますけれども、IAEAがまとめたデータベースによりますと、一九九三年から二〇一二年の間におきまして、核物質または放射性物質の不法所持、不法移転事案、不法な目的での売買または使用の未遂事案につきましては、全部で四百十九件と承知しております。

 さらに、このうち高濃縮ウランやプルトニウムの不法所持事案に関しましては、十六件と承知しております。

山内委員 今の数字、九三年以降で四百十九件、すごい数字だと思います。

 例えば、一九九〇年にはロシアの、当時のソ連でしょうか、アゼルバイジャン共和国首都で、イスラム原理主義勢力の武装グループが核兵器貯蔵施設を襲撃したとか、あるいは、一九八二年にはフランスで、環境保護団体が高速増殖炉にロケット弾を撃ち込んだとか、非常に環境保護団体が過激なのは捕鯨の例でもおわかりのように、意外と環境保護団体が優しい人ばかりではないのは欧米の例のようですが、今聞いた数字、四百十九件、僕にとっては非常に衝撃的な数字だと思います。そういった意味では、原発のテロ対策というのは極めて現実的で差し迫った問題ではないかと思います。

 それに関して、核セキュリティーの国際会議が、ここ数年、オバマ大統領の呼びかけで開かれるようになりました。日本も外務大臣が出ていったりして、非常に国際会議には積極的に参加していますが、国内の対策がそれに伴うほど十分やっているのかというと、甚だ心もとない気がいたします。アメリカなどからも、日本の原子力発電所の核セキュリティー、テロ対策というのは非常に不備があるという指摘もあります。あるいは、国際的な民間団体の評価によると、日本はG7の中で一番原発のテロ対策が甘いというありがたくない評価を受けています。

 これについて、規制庁、どのように認識されていますでしょうか。

黒木政府参考人 NGO団体でありますNTIという団体でございます、核拡散脅威イニシアチブでございますけれども、御指摘のような評価を行っていることは承知しております。

 また、前回、二〇一二年の一月十一日の評価では、三十二カ国中二十三位ということでございましたけれども、二〇一四年の一月八日の評価、二年に一回の評価でございますけれども、二年後の、一番最新の評価では、日本の順位が二十五カ国中十三位となっていることも承知しております。

 評価結果につきましては参考とする部分はあると考えますけれども、規制委員会としては、福島第一原子力事故の教訓やIAEAの勧告を踏まえた対応、また核セキュリティ検討会における検討結果等によりまして、核セキュリティー対策を進めることが重要と考えているところでございます。

 したがいまして、NTIの評価結果についてはコメントは差し控えたいと考えております。

 以上でございます。

山内委員 感想ぐらい言ってもらってもいいとは思うんですが。

 今言及されました、核セキュリティに関する検討会という検討会が、平成二十五年三月四日、開かれました。それから、二十五年の七月八日に二回目が開かれました。その後、開かれておりません。この核セキュリティーの検討会、非常に重要な検討会だと思いますが、昨年の三月と七月に一回ずつ開かれて、合計二回、その後、今に至るまでほとんど開かれていない。こういう状況で、核セキュリティー、核のテロ対策、十分やっていると言えるんでしょうか。それについてお聞きします。

黒木政府参考人 原子力規制委員会では、有識者から構成されます核セキュリティに関する検討会を設置しまして、また別途、関係省庁会議も設置し、関係省庁間の緊密な連携をとりつつ、核セキュリティーに関する検討を行っているところでございます。

 核セキュリティに関する検討会では、個人の信頼性確認制度の導入、輸送時の核セキュリティー対策、放射性物質及び関連施設の核セキュリティー、これはいわゆるRIと言われる部分でございますけれども、これらを優先課題として検討を行っており、また、課題によっては、幅広い観点から実務上の検討を行うことが必要であるため、検討会のもとにさらにワーキンググループを設置し、検討を行っているところでございます。

 具体的には、個人の信頼性確認制度の検討に係るワーキンググループは、本年の一月及び三月に、輸送時の核セキュリティー対策を検討するワーキンググループは、昨年九月と本年一月に開催し、具体的な検討を進めているところでございます。

 今後も、関係省庁と連携しつつ、核セキュリティーの強化に係る議論を精力的に行ってまいりたいと考えております。

山内委員 ちょっと回数が少ないし、局長とか偉い人が集まって話し合う会はやっているのかもしれませんが、やはりもう少しというか、もっと力を入れるべきだと思っております。

 それから、ちょっと次の質問を飛ばしまして、原発の警備の体制についてお尋ねをします。

 原発の警備は、私が聞いている範囲では、基本的には、事業者、電力会社が一義的に責任を持つというふうに理解しております。そういう理解でいいのかという質問。それから、そういう国は多いんでしょうか。日本以外の国は、電力会社が原発の警備に責任を持つ、そういう国が多いんでしょうかということです。

 核セキュリティーの国際会議でも、国内の核セキュリティーに対する責任は全て国家に帰属するということを強調しております。民間の事業者が警備の主体、そういう発想で警備を考えて本当にいいんでしょうか。それについて、規制庁のお考えをお聞きしたいと思います。

黒木政府参考人 我が国における原子力発電所の警戒警備につきましては、電力会社の委託警備員による警備のほか、警察による二十四時間体制の常駐警備や、海上保安庁による周辺海域での巡視船艇の常時配備が行われているところでございます。

 原子力規制委員会としましても、原子炉等規制法の関係規則に基づきまして、事業者に対し、警備員による巡視の実施や訓練の実施等の防護措置を講じることを要求しており、それらの措置の実施状況を随時検査で確認しているところでございます。

 海外の例を見ますと、原子力発電所の警戒警備の主体は、事業者または事業者が委託した民間の武装警備員としている国が多いと承知しております。

 今、責任という話でございますけれども、そういう観点から申し上げれば、事業者が負うべき責任、それから国が負うべき責任、それぞれの責任があろうかと考えております。

山内委員 国際会議では責任は全て国家に帰属するということを強調しているわけですから、電力会社と国家と両方に責任があるという言い方をされましたけれども、もう少し国の関与を強める必要があると私は思っております。

 原発は安全だ安全だという安全神話がありました。地震とか津波に関しては、日本は最も地震や津波が多くて、対策も万全なはずでしたが、あれだけ事故が起きたわけです。それに対して、テロ対策に関しては、日本は世界一テロ対策がすぐれているという評価は全くありません。むしろ、テロ対策に関しては非常におくれていると言わざるを得ないと思います。そういった意味では、今のテロ対策、また別の安全神話に頼って、事業者の機械警備をやっていればそれでいいみたいな、そういう発想がまだ残っているんじゃないかなという気がしないでもありません。

 そういった意味で、今の原発警備に当たっている民間の警備会社の状況についてお聞きしたいと思います。

 私が聞いている範囲内では、原発の警備は全国で二社が独占をしているというふうに聞いております。二社だと全然競争もなくて、余りレベルが高くないと私はジャーナリストの人から聞いたことがあります。

 そういった民間の警備会社に基本的には任せている原発の警備ですけれども、警備のレベルのアップのためには、国が責任を持って統一的な基準をつくったり、あるいは統一的なマニュアルをつくって、民間警備会社の警備のレベルを上げていく、そういう努力をするべきだと思いますが、その点について、規制庁の立場を聞きたいと思います。

黒木政府参考人 我が国の原子力発電所等のセキュリティー対策については、先ほど来申し上げておるとおり、原子炉等規制法に基づきまして、事業者に対し、テロリストの侵入を阻止するための種々の防護措置を求めているところであります。

 このうち、原発の警備に関しましては、原子炉等規制法に基づきます委員会規則におきまして、事業者に対しまして、警備員による巡視、警察等の関係機関への連絡手段及び方法の明確化、警備員等の従業員に対する教育及び訓練、妨害破壊行為等に対応可能な緊急時対応計画の作成等について措置を講じることを求めているところでございます。

 また、原子力規制委員会は、定期的に核物質防護検査を実施しまして、これらの措置の内容や体制の有効性について確認をしているところでございます。

 以上であります。

山内委員 いろいろ行政として指導はしていると思うんですけれども、具体的なところは現場任せになっているというふうに、私が聞いている範囲ではそういう状態だと聞いています。

 でも、民間の事業者に任せると、どうしてもコスト意識とかを考えて、安全性よりもむしろコスト意識、そういうところに発想がどうしたって行ってしまいます。そういった意味では、国が厳しい基準をつくってそれを監視していかないと、人件費をどうやって削ろうかとか、どうしてもそういう発想に行くのは当然だと思います。

 しかも、原発警備に当たっている二社のうち、一社は一回破産して潰れた会社がやっているというふうに聞いています。そういう意味では、ますますコストの方を考えてしまって、ほっておくと安全の配慮がどうしてもおろそかになってしまうんじゃないか、そういう懸念もあります。そういった意味では、国の関与というのが非常に重要だと思います。

 そういった観点でさらに質問しますが、今の原発警備、日本は機械警備というのは世界最高水準のいい技術があると聞いていますけれども、機械だけではやはり十分じゃないと私は聞いたことがあります。

 一度、自衛隊の特殊部隊のOBの人に原発警備の状況についてレクを受けたことがあるんですけれども、彼が言っていたのは、今の民間の警備会社というのは機械警備に頼り過ぎていて、そういうテロ対策の観点が非常に弱いと。どこが弱いかも聞きましたが、ここでは言いませんが、そういう観点、テロ対策の観点が欠けているということを指摘されていました。

 民間の警備会社、この独占している二社は、そういう専門家の意見をちゃんと聞いた上でテロ対策を組んでいるんでしょうか。現状についてお聞きしたいと思います。

黒木政府参考人 原発警備でございます。

 警備の主体が民間の警備会社というふうなことを前提の御質問でございますけれども、現実問題、民間の警備会社自体は非武装でございます。武装しておりません。武装の部分については、全てそれは警察が担う形になっております。

 警察におきましては、当然のことながらテロ対策を専門にやっておりますので、そういった観点からの所要のノウハウにつきましては、警備会社とも連絡をとりながら、現場において最善の警備ができるような形で取り組んでいるところでございます。

 以上であります。

山内委員 原発に原発防護隊は何人いるのか聞いたら、担当者は教えてくれなかったんですが、マスコミの人に聞いたら何人だと教えてくれました。ここでは言いませんが、正直言って、私も原発に幾つも行きましたけれども、あの広大な敷地をその人数でカバーするというのは恐らく簡単ではないなという気がいたしております。海上保安庁も海にいるといいますけれども、二十四時間ずっと沖で、ちっちゃい船で見ているだけだったら、どうしたってすきができるのは仕方がない。

 そういう意味では、ちゃんと警察と警備会社が密接に連携をしてやらなきゃいけないところですけれども、民間会社は武装していないから、そこは警察に任せている、そういう発想ではきちんとした警備はできないんじゃないかなというふうにちょっと不安を感じております。

 そもそも、規制庁でテロ対策をやっている人は大体何人ぐらいいるんでしょうか。お聞きしたいと思います。

黒木政府参考人 原子力規制庁においてのテロ対策でございます。

 核セキュリティ・核物質防護室が担当いたしておりますけれども、そこに属している職員の定員は約三十名でございます。非常勤の技術参与として、専門性を持った方に二名勤務していただいております。

 先般のJNESの統合によりまして八名の増員が行われており、専門性を強化する等、体制強化が図られているところでございます。

 また、JNES統合分とは別に、平成二十五年度補正予算におきまして、核セキュリティー対策を強化するための定員増を認めていただいておるところでございまして、中途採用も精力的に行っており、こうした定員を活用し、体制強化を図ってまいりたいと思っております。

山内委員 この重要な課題を、三十人の職員と二人の非常勤ですか、嘱託というんでしょうか、そういう意味では、三十人ちょっとで原発の安全対策、特にテロ対策をやっているということだと思いますが、これで十分だとはとても思えませんし、国際社会が日本に対して求めている水準の安全をこれだけでやれるのかなと本当に心配になります。

 ぜひ、警察あるいは自衛隊との連携をさらに、まあ今でも出向者が来ているというのは聞いていますけれども、警察、海保までは連携がある程度できていると思いますが、自衛隊までいくと余り連携ができていないというのが実態だと聞いております。そういった意味では、さらなる改善が必要だと思いますし、このままではちょっと心配というか、相当心配な状況が残っております。

 質疑時間が終わりましたという札が来ましたが、最後に、委員長も何か御感想があれば一言お願いできれば幸いです。

田中政府特別補佐人 核セキュリティーの問題は、さまざまな意味で、国際的にも大変重要であります。

 私、常々申し上げていますが、セキュリティーとセーフティーというのは一体のものであるということですので、私どもとしても、やはり、国内の状況を踏まえ、また国際的な動向も踏まえながら、きちっとした対応を進めていきたいと思います。

山内委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

森委員長 次に、荒井聰君。

荒井委員 民主党の荒井聰でございます。

 民主党は、政権末期ではありましたが、二〇三〇年代に原発をゼロにするためのあらゆる政策資源を投入するということを党として決めてございます。この視点は今もいささかも変わってございません。

 そんな中で、大間原発の対岸であります函館市から、大間原発の建設工事に対して差しとめ請求が出されました。原発に関する訴訟というのはたくさんあるんだと思うんです。後でその概要について総括的にお話しいただければいいんですけれども、この提訴は、地方自治体が提訴した初めての例だと思います。

 この提訴による法的な影響というものを政府はどのように考えているのか、それをお答えいただけますか。

櫻田政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねのような訴訟が先日、東京地方裁判所に提起されたということにつきましては、報道等を通じて承知をしてございます。

 しかしながら、現時点におきまして、いまだ国に対して訴状が送達されているという段階に至ってございませんので、この提訴に関するコメントについてはいたしかねるというところでございます。

荒井委員 それでは、今まで、原発の建設中止、差しとめ訴訟の過去の主な事例とその処理についてどのような状態になっているのか、それを御説明いただけますか。

櫻田政府参考人 原子力事業者の原子力施設の運転に関する訴訟はさまざまございますけれども、今の状況において申し上げれば、八件ございます。

 一方で、地方公共団体が国を被告として原子力関係の行政訴訟を提起したという事例は、今のところ私どもは承知してございません。このような事例は今回が最初であるというふうに認識してございます。

荒井委員 現在係争中なのが八件で、過去も含めると相当な数に上っていると思うんですけれども、それは本題ではありませんので省略します。

 函館市のホームページに、函館市が懸念を示していることが六項目にわたって示されています。これが事実なのかどうかということも含めて御回答いただけますか。

 まず、規制庁関係では、六項目のうちの三項目が多分規制庁の関係所管事項だと思いますけれども、「福島第一原発事故以前の審査基準により許可され、建設が進められている」ということ。それから二番目が、「大間原発の北方海域や西側海域に巨大な活断層がある可能性が高い」ということ。三番目が、「大間原発が面している津軽海峡は国際海峡であり、領海が通常の十二海里ではなく、三海里しかないことからテロ対策をはじめ安全保障上の大きな問題がある」。これは、函館のホームページでの指摘です。

 この三点について、規制庁はどういう見解をお持ちですか。事実関係だけで結構です。

櫻田政府参考人 まず最初の、福島第一原発事故以前の審査基準により許可され、建設が進められている、この点についての事実関係でございますが、大間原子力発電所につきましては、平成十六年三月に電源開発株式会社から原子炉設置許可申請がなされて、平成二十年四月に当時の経済産業大臣から原子炉の設置許可を行っています。

 その後、工事計画の認可申請も出されておりまして、平成二十二年十二月に認可をして、建設工事に関する工事計画は全て認可が終わっているという状況でございます。

 しかしながら、昨年七月に、東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえた新規制基準が施行されたところでございます。今後、この発電所を運転するためには、新規制基準に関する設置変更許可等が必要でございます。したがいまして、今後、この設置変更許可等の申請がもしなされた場合には、私どもとしては、新規制基準への適合性について厳格に審査をしてまいりたいというふうに考えてございます。

 それから、二番目、断層の問題でございます。大間原子力発電所の周辺の地形について、研究者の中に、下北半島先端部の北方や西方に活断層が存在するという可能性を示しているのではないか、こういう指摘があるということは、私どもは承知をしてございます。

 それから次に、テロ対策等の関係でございますが、これは別の参考人から答弁をさせていただきます。

黒木政府参考人 テロ対策の運用についてお答えいたします。

 我が国の原子力発電所のセキュリティー対策につきましては、既に御承知のとおりでございますけれども、法に基づきまして、事業者に対し、テロリストの侵入を阻止するための種々の防護措置を求めているところでございます。

 これらの措置につきましては、大間原子力発電所にも求められることになりますけれども、原子力規制委員会としては、原子炉等規制法に基づきまして、事業者が核物質防護措置の内容や体制について定めた核物質防護規定を審査し、認可するとともに、その有効性について定期的に検査することとなっております。

 以上であります。

荒井委員 六項目、後からまた議論したいと思います。

 次に、エネ庁関係で三項目がやはり指摘をされています。

 「毒性が強く危険性が指摘されているフルモックスでの世界初の原子炉である」ということ。「既存原発の再稼働とは異なり、電力需給の問題を生じるものではないこと」。「大間原発では使用済核燃料は二十年分しか保管できなく、」これは多分、中間貯蔵のプールのことを言っているんだと思いますけれども、「その処理の方法や最終処分地などが決まっていないこと」。この三つが指摘されています。

 これは事実ですか。

中西政府参考人 委員の方から三点御指摘いただきました。

 まず、大間原発のフルMOXにつきまして、大間原発につきましては、全炉心でのMOX燃料の使用ということで、いわゆるフルMOXというふうに呼ばれておりますけれども、その発電を目指しております。

 その原子炉の設置に際しましては、原子炉等規制法に基づきまして既に許可を得ているという状況にございまして、これに加えまして、実際の稼働に当たりましては、独立しました原子力規制委員会によって、世界で最も厳しい新規制基準に適合していると認められるということが必要というのはもちろんのことでございますけれども、さらに、その際に、地元の理解を得ていくというのは極めて重要だというふうに思っておりまして、原子力規制委員会によって安全性が確認された段階で、立地自治体等の関係者の理解を得るため、国としても、しっかりと説明をやっていくというふうに考えてございます。

 それと、二点目のお話でございますけれども、電力需給の問題ということでございます。

 震災後、原発の稼働が停止しているといったことで、供給力が減少するという状況に至ってございます。電力の不足というものは何としてでも回避するというふうなことでございまして、これまでのところそういった状況になっておりませんけれども、これは、既存の石炭等々の発電所の定期検査の繰り延べ、あるいは老朽化した火力発電所をフルで稼働させるといったこともあってそういう状況になっておりますけれども、その状況は引き続き予断を許さないというふうな状況であるという認識でございます。

 こういった中で、中長期的かつ全国レベルでの電力の安定供給というものを図っていくといった視点から、大間原発は電力の安定供給に寄与するという位置づけであるというふうに我々は認識をしているところでございます。

 三点目の問題でございます使用済み燃料の問題でございますけれども、大間原子力発電所の稼働によりまして使用済みのMOX燃料が発生するというのは事実でございます。この使用済みMOX燃料につきましては、ほかのプルサーマルの進展に伴いまして発生するというのは見込まれております。

 こちらの使用済みMOX燃料の処理につきましては、既にフランスにおいて実績がございますし、我が国におきましても、実験的な取り組みといたしまして約三十トンの処理を行ったという実績がございます。したがいまして、我が国におきまして、使用済みのMOX燃料の処理技術の確立に向けまして引き続き取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

 以上でございます。

荒井委員 特に今の経産省の参考人からの答弁は、全て、私が質問していること、あるいは函館市が、私じゃないんですね、函館市が指摘していることについて正確に答えていないと思いますね。

 例えば、私が一番目に質問しました、フルMOXでの運転は世界初の原子炉であるということに関して、イエスかノーかということについて回答がなかったですよね。それから、既存原発の再稼働とは異なり、電力需給の問題が生じるものではないこと、これはそのとおりじゃないですか。それから、大間原発の核燃料は二十年分しか設計としてプールとしてはないというのも、それもそのとおりなんじゃないですか。そのとおりであるのは、そうだと言って答えていただいた方が、この場の議論を進める上でも、あるいは函館市に対して不信感を取り除くためにも必要だと思いますよ。

 今、政府と函館市との間が極めて信頼関係がなくなっているということがこの問題の原点にあるんじゃないですか。もう一回答えて。

中西政府参考人 済みません、事実関係のところをもう一回確認ということでございますので。

 まさに、大間は世界初のフルMOXだというのは、それは事実でございますし、大間原発で、現在設計されている使用済み燃料の保管期間というのは、二十年ということを前提につくられているのは事実でございます。

荒井委員 規制庁の話でも、津軽海峡が国際海峡であって、普通の領海よりもうんと狭い。つまり、先ほど山内さんがテロの話をして、日本というのは非常にテロ対策に十分な対応をしていないということを山内さんが指摘していましたけれども、その観点からいっても、大間というのはテロ対策では余り強いとは言えない。三海里というのは五キロか六キロですよ、すぐ目の前まで海外からの船が、日本籍じゃない船が自由に航行できるという。そこからのテロが行われた場合には非常に防護対策が弱いということは、それはそうだと思うんですよね。

 日本は、この間の福島の第一原発で、想定外の津波と地震だ、こう言っていましたけれども、今度は、事故が起きるとしたら、想定外のテロ対策じゃないですか。そういう意味で、この大間原発のテロという意味では、私はもっと深刻に考えるべきだと思うんですけれども、ここはどうですか。

黒木政府参考人 テロの問題というのは決して、いわゆる想定外とかそういうものではないのは事実でございまして、さまざまな状況を考えながら考えていかなければいけない、それはまさに事実でございまして、それは大間も当然のことだと思っております。

 ただ、規制委員会としては、基本的には、そういったテロ情勢、テロ分析自体については、さまざまな情報を関係機関の中からいただいて、それで分析している、そういった状況でありますので、今この場において直ちに、テロ対策という面から、五キロとかそういったことについての評価をすることはできないということを申しておきたいと思います。

荒井委員 田中委員長、それでいいですか。

田中政府特別補佐人 現在も、海上については海上保安庁の巡視艇等が常時監視しておりますので、そういったことも含めまして、やはり地理的な、地政的な状況も踏まえてきちっとした対応をしていくように努めたいと思います。

荒井委員 大間の原発というのは、恐らくテロ集団にとってはすごく魅力的なところだと思いますよね。多分プルトニウムが存在しているというのは明らかでありますし、領海も非常に狭いということからすると、脆弱な原発ではないかと判断してもやむを得ないんじゃないかという原発だと思うんです。その話はまたいずれどこかで議論したいと思います。

 それでは、通常の軽水炉とフルMOXの炉との違い、安全審査基準上の相違点というのはどんなところにあるんですか。

竹内政府参考人 通常の軽水炉とフルMOXの審査基準についてでございますが、原子力発電所の規制基準につきましては、通常のウラン燃料を使うかMOX燃料を使うかにかかわらず、同じ基準を適用することといたしております。

 規制基準で求められている内容は、緊急時に速やかに原子炉を未臨界に移行できること、配管破断などの事故時でも緊急冷却装置を作動させ燃料を冷却できることなどでありまして、これらは燃料の種類にかかわらず満足する必要があるものでございます。

 審査に際しましては、ペレットの融点がプルトニウム含有率の増加に伴い低下するなどのMOX燃料の特徴を踏まえた上で、基準の要求を満足するかどうかを確認することとしております。

荒井委員 僕は、それではわからないと思うんですよね。私がわからないんですから、恐らく函館の人はもっとわからないんじゃないかと思うんです。

 フルMOXは世界で初めてだ、しかも暴走する危険とかそういう危険性は普通の軽水炉よりも高い、にもかかわらず同じ基準だというのでは、恐らく、安全を求める基準のところはそういうことなんだろうと思うんだけれども、安全性が高くしてありますよ、そういう危険なものに対する対応を十分にしますよというと、例えば格納容器の厚さを厚くするとか、あるいは事故が起きたときの防護のためのいろいろな対策を二重、三重にしますよというふうに考えるのが普通だと思うんだけれども、そこは普通のものと変わりませんよと言ったのでは、普通の原子炉をフルMOXにするのと同じなのか、そう思ってしまいませんか。そうじゃないんでしょう。

竹内政府参考人 MOX燃料の利用につきましては、これまでも「ふげん」それから軽水炉における利用等々が行われておりまして、そういうときに際しまして、原子力安全委員会では、発電用軽水型原子炉施設に用いられる混合酸化物燃料についてですとか、全炉心にそれを装荷するときにつきまして検討がなされております。

 そうした検討の中におきましては、MOX燃料の特徴はあるものの、既存の審査指針等を使うということで、特徴を踏まえながら審査することが適当であるというような結論に至っておりますので、先ほど申しましたように、基準自体につきましては通常の軽水炉と同じ、ただし、特徴を考慮しつつ検討していくということとしております。

荒井委員 その話を聞いたら、函館の人はもっと不安になると思うな。

 今までMOXで使っている軽水炉と同じ基準でフルMOXを運転しますよと言っているように聞こえますよ、違いますか。委員長、違いませんか。

田中政府特別補佐人 今、基準が変わらないと竹内の方が申し上げましたのは、いかなる事態、特に原子炉の安全、重大事故を防ぐ上で大事なことは、何か事が起こったらすぐに臨界反応、連鎖反応がとまるということを確認できるかどうか、動特性臨界解析みたいな、そういうことになります。

 そこのところについては、プルトニウム富化度、要するにMOXの、通常、世界は三分の一で、今回フルMOXという話が出ているわけですけれども、三分の一MOXについては世界でも相当経験があります。我が国でも若干、ずっと低いですけれども、そういう経験はあるので、そういった知見は相当高いというふうに思っておりますが、フルMOXについては私自身も含めてまだ経験がありませんので、相当慎重にやはり取り組むべきものというふうに私は考えております。

荒井委員 慎重に今後も対応する、審査するということですので、さらにそれを一層進めてもらいたいと思うんですけれども、もともとこのフルMOXというものが、エネルギー需給の関係から生じたのではなくて、プルトニウムの処理、つまりエネルギーサイクルの必要性から出たものなわけですよね。

 ところが、エネルギーサイクル全体の見直しが今緊急に行われざるを得ませんし、恐らく、エネルギーサイクル事業というのは早晩やめざるを得ないんじゃないかと思いますよね。一番進んでいると思われていたアメリカがスリーマイルの事故を契機としてやめたんですよね。同じように、日本も福島の事故を契機としてこれの見直しが行われているわけですけれども、私は早くに結論を出すべきだというふうに思います。

 そうしますと、フルMOX運転の大間の原発の意味というのは一体何なのかということに返ってくるんだと思うんですね。このエネルギーサイクルとの関係、フルMOXである大間原発の意味というものは私は大きく変わりつつあるんじゃないかと思うんですけれども、そのあたりを含めて、経産副大臣、御答弁いただけますか。

赤羽副大臣 荒井委員御指摘の核燃料サイクルにつきましては、先般閣議決定されたエネルギー基本計画にも、高レベル放射性廃棄物の減容化また有害度の低減、また資源の有効利用等に資する核燃料のサイクルにつきましては、これまでの経緯等も十分に考慮し、関係自治体や国際社会の理解を得つつ推進していくという基本方針を提示させていただいております。

 さらに、日本が核不拡散に貢献をしまして、国際的な理解を得ながらプルトニウムを適切に利用するためにも、利用目的のないプルトニウムを持たないとの原則を堅持するとともに、プルトニウム利用の透明性の向上を図っていくというふうに考えておるところでございます。

 プルトニウムの利用につきましては、当面、軽水炉で利用することとして、電気事業者がプルトニウム利用計画を公表して、その妥当性を原子力委員会が確認する仕組みとなっております。

 こうした中で、フルMOXによる発電を目指す大間につきましては、一年間で、他の軽水炉が〇・三から〇・四トンでありますが、大間は年間一・一トンに上るプルトニウムを利用するものでございまして、プルサーマルに取り組む重要な原子炉の一つと認識をしているところでございます。

 以上でございます。

荒井委員 プルトニウム問題というのは、核爆弾の原料になるということから、いろいろな微妙なものをたくさん含んでいるんですね。これは議論を避けてきたところがたくさんあると思うんです。そういうものを大間で解決しようというのは私は無理があるというふうに思いますね。

 そこのところは、もう一度政府を挙げてこのプルトニウム問題についてちゃんと議論する。原子力委員会が、アメリカとの原子力協定が、三年後でしたか、始まるわけでありますから、その際に、このプルトニウム問題あるいは核燃料サイクルの話というのは大きな課題になると思いますので、しっかりとその間に詰めておく必要があるというふうに思います。

 余り時間がなくなりましたので、この函館の訴訟というのは、基本的に、地方自治体あるいは地域に住んでいる住民、もっと広く言えば原発に関係する人たちとそれから原発を推進する人たちとの間の意思疎通がうまくいっていないということだと思うんですね。

 スリーマイル事故の後、アメリカのNRCは、もちろんNRCの組織の変更もしたんですけれども、スリーマイル事故の調査書、非常に分厚い調査書ですが、これはロゴビン・レポートといいますけれども、そのロゴビン・レポートの最終結論が、避難計画なくして稼働計画なしと。避難計画がちゃんとつくられていなければ動かしちゃだめだというのが結論なんです。

 しかし、今回のこの大間の函館の心配もそうですけれども、全体の体系が、避難計画をちゃんとつくるようになっていないんじゃないか。

 アメリカは、先ほどのNRCが大きな組織変革をして、避難計画を最終的に審査するようになったんです。それからさらに、それを契機としてでもあるんですけれども、FEMAという大きな消防庁のようなものですけれども、国家全体を挙げて非常事態に対処するような組織もつくり上げたんですね。このFEMAの組織と一体になってNRCが避難計画を確定していく、認可していく、そういう姿勢をとったんです。

 ところが、残念ながら、日本はここの部分だけ逃してしまいました。避難計画については従来どおり地方自治体がつくって、その指針は、今度の規制委員会が指針をつくることになりました。これだけでも進歩だと思いますけれども、しかし、どこもそれを認可していないんです。この避難計画でよしという、国としての認可を与えていない、承認を与えていない、どこも与えていないんですよ。ですから、責任は全部地方自治体に委ねているというのが今の日本の避難計画の法体系なり制度体系なんです。これはちょっと違いませんか。

 前回の原子力規制委員会設置法のときに、このあたりももう少し詰めておくんだったなという今反省をしているんですけれども、このあたりはいかがでしょうか、井上副大臣。

井上副大臣 荒井委員がおっしゃるとおり、アメリカでは、原発の最初の稼働を許可する際に、FEMAの評価に基づいて、NRCが事業者や自治体が作成する緊急時計画を審査する制度になっていると承知しています。

 ただ、他方で、例えばイギリスやフランスなどでは、オフサイトにおける緊急時の計画については、各自治体が作成することとなっていて、特に原発の稼働要件とはなっておりません。

 そういう中で、我が国では、イギリスやフランスなどと同じように、地域防災計画あるいは避難計画は原発の稼働と関係なく作成すべきものとされております。内容につきましては、地域のさまざまな事情を踏まえて作成されることが適当である、そういう考えから、県や市町村が作成や見直しをすることとなっていて、各自治体の防災会議において検討を行っております。

 政府としては、地域ごとに国のワーキングチームを設け、そして関係省庁を挙げて自治体の取り組みへの支援を行っていて、原子力防災会議において各地域の進捗状況を確認していく。避難計画ができていない地域に対しては、策定支援、またそのフォローアップをしっかり進めていくということです。

 また、その実効性については、訓練の実施、それからその結果を踏まえた計画や体制の継続的な充実強化によって確保をしていく、自治体における訓練実施について、事前準備の段階から国がしっかりと支えていく、そういうことになっております。

荒井委員 私は、井上副大臣、それは不十分だと思うんですよ。不十分だから、いろいろなこういう行政訴訟も起きてくるんですよ。あるいは、交付金の渡っているところと、そこじゃない別なところとのいろいろな地域間のそごが生じてくるとか、そういうさまざまな問題が生じてきているんだと思いますよ。

 私は、そろそろ日本はFEMAをつくる具体的な検討に入るべきだというふうに思いますね。FEMAがなければ、恐らく、静岡から東海沖地震のああいう地震や、直下型地震が起きたときの対処というのは非常に難しくなるだろうというふうに思います。

 そして、先ほどイギリスやフランスの話で、イギリスやフランスは日本の方式と同じだと言ったんですけれども、アメリカもそうだったんです。なぜ変えたかといったら、スリーマイルの事故が起きて初めて、これではだめだといって変えたんです。イギリスやフランスは事故が起きていないからそこを変えていないんです。日本もアメリカ以上の事故が起きたんですよ。

 そして、その事故の調査報告書、その調査報告書は政府の調査報告書に匹敵するものですけれども、それの最終結論が、いろいろな安全対策を講ずるというようなことよりも、再稼働するに当たっては避難計画がちゃんとしていることが必要だ、それが最終結論なんです。その結論を私たちは学んでいないということを指摘しておきます。

 最後に、もう時間がなくなったので申しわけないんですけれども、原子力規制委員会設置法の法律をつくるときに附帯決議をいたしました。その附帯決議は、

  地方公共団体、住民等が編成する地域の組織と、国、原子力事業者及び関係行政機関等との緊密な連携協力体制を整備するため、フランスにおける原子力透明化法に規定される地域情報委員会制度等、諸外国の事例等を踏まえつつ、望ましい法体系の在り方について検討し、必要な措置を速やかに講ずること。

というのが附帯決議です。

 これはフランスはなかなか進んでいます。私も、この原子力というのは今までタッチしたことがなかったんですけれども、これにタッチしていけばしていくほど、原子力の推進派と原子力の慎重派というのが一つのテーブルに着いていないんですよ。一つのテーブルに着いていなくて議論もしていないということは、私は、政治が機能していないということと一緒だと思いますよ。それを避ける工夫が何かあったのかというと、私は、これまでの日本の政府のやり方というのはなかったんじゃないかというふうに思います。

 その意味では、今度のエネルギー基本計画の中に、ステークホルダー、関係者がある種の情報共有のための場をつくるということは必要だということを書いてあるのは一歩進歩していると思いますけれども、ならば、それを実現するための法体系の整備というのをぜひ進めるべきだということを指摘して、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

森委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 日本維新の会の小熊慎司です。

 まず初めに、私の母校、高校の尊敬する先輩の一人である田中委員長にお聞きをいたしますけれども、きょうも質疑の中で出ていましたが、エネルギー基本計画についてであります。

 これは、二月の原案が示されたときと、閣議決定されるまでいろいろ意見が出て、とりわけ序文に関して、最初は福島の事故の反省が色濃く入っていたのが、文言としてはその文章の中には入っていますけれども、私の地元の福島県でも、やはりこれは一番最初に出ていた原案が素直にそうなるべきであって、一度落とされたというか後ろの方に回って、また、削除された部分が一部復活をしたりという、この経緯自体が非常に問題があるというふうに認識をしています。

 やはり、まずは反省から入って、その上で日本のエネルギー計画をどうすべきかということがなければなりませんでしたし、過日の原子力協定のときも、外務委員会では、これは政府の答弁としては、福島の事故を反省しつつこの原子力協定に取り組んでいくんだという外務大臣の答弁もある中で、であれば、最初からそれをしっかり入れておくということが大事だというふうに思っています。

 やはり、私も地元にいて、この原発事故の前にも、この委員会でもたびたび御紹介させていただいていますけれども、十年前に東電の原発のデータ改ざんまた事故隠しといったものがあって、そうした事故を踏まえながらもこの東電の原発事故が起きて、もう二度とこうした事故を起こしてはならないんだということがなぜ一番最初に来なかったのか。

 そしてまた、その閣議決定されるまでの経過の中でいろいろな経緯をたどってきたということは、結局は、安全神話に寄りかかろうとしている、そしてまた、臭い物にふたをしようとしている、この原発事故が風化をしてしまうのではないかというおそれを県民の多くが感じているところでこの閣議決定がなされました。

 こうした、この序文、福島の原発事故の言及の部分がこうした紆余曲折を経た件について、とりわけ田中委員長としてはどのような見解を持つのか、お伺いをいたします。

田中政府特別補佐人 先生の思うところは、私、個人的には非常に共感するところがございますが、エネルギー基本計画の策定は私どもが関与するところではないので、それについてお答えする立場にありません。

 ただし、福島第一原子力発電所の反省を踏まえまして私どもに与えられた任務として、原子力利用における安全の確保を図るため、いろいろな最善を尽くした施策を策定して、それを実行させていくということ、特に、専門的知見に基づいて中立公正な立場できちっとその職権を行使していくということに努めてまいりたいと思います。

小熊委員 これは、文言が重複しているからという説明があるんですけれども、これは精神論、心構えかもしれませんが、やはりこれが最初に入っていないというところは、今委員長の立場で言われたとおり、しっかり中立的な立場で客観的にというところを恣意的に原発に対して、政策に対して動かそうとしているんじゃないか、そうした見方もできるわけですよ。

 そうした動きがある、そうした流れがあるということをしっかり捉えて、そうじゃないと政府は言うかもしれませんけれども、我々福島県民からすれば、やはり隠そうとする、安全神話に寄りかかろうとする、まずいことは脇に置いておく。原発政策は、各党、各政治家、いろいろな考え方がありますけれども、やはり起きたことに対しては、しっかりそこを入り口として踏まえてエネルギー政策を語っていかなきゃいけないんですが、これを外すという行為自体がやはりまた来た道を行くのかなというふうに思います。

 そこは、規制委員長として、うがった見方なのかもしれませんけれども、そういう方向性に行くんじゃないかということも危惧して、今後、しっかり委員長としての職責を全うしていただきたいというふうに思います。

 私は、今回のこの決定までの経緯というのは、やはりどこか、そうしたこれまでの事故隠しやデータ改ざんと同じような心理が背景に働いていると思って、これは非常に問題だというふうに思っています。そうした問題意識を共有しながら、ぜひこれから委員長には取り組んでいただきたいというふうに思っています。

 次の質問に移ります。

 汚染水の誤移送、これはたび重なっています。何が原因なのかも、うっかりミスなのか、誰がやったのかわからない、そのケースもあります。

 そして、これは、原発事故が起きてから、福島県としてはたびたび東電に申し入れをして改善を求めているんですけれども、事故のあった年、その年、またことしと、年々東電に県が申し入れている件数はふえているんですね。改善するどころか、どんどん穴が広がっている、トラブルが続いている。こうした状況の中で、努力していますと言っていながら結果が逆に悪化している。だから、残念ながら、これまでの取り組みでは効果が出ていないということです、件数がふえているわけですから。

 このトラブルに対して、今までの取り組みでは、効果が出ている部分もあるんでしょうけれども、トラブルが続いているというこの点に関して、今後どうやって取り組んでいくのか、お伺いをいたします。

糟谷政府参考人 使用していないポンプ四台が動いていて、高濃度の汚染水が本来の移送先ではない建物に流れ込んでいたわけでありますけれども、この直接の原因については、今、東京電力において調査中であります。

 今後の取り組みといたしましては、重要な操作箇所について、誤操作を防止する、または設備の安全を確保するという観点から、施錠管理をする。つまり、今回のポンプの配電盤は施錠管理がされていなかった、建物にも自由に入れるような状況であったということでありますので、そういう施錠管理をする。また、監視カメラとか警報装置を設置する、そういった防護措置をさらに進めていく必要があるということを考えております。

 ただ、これとあわせまして、この背景に一体どういうことがあるのかということを、もう一度、現場の作業員の方々とよく意思疎通をしながら、その背景となっているものまで思いをいたすという、直接の対応だけではなくて、そういう根本的な原因まで思いをいたす対応というのが必要になるのではないかなということを考えております。

小熊委員 このいろいろなトラブルを見ていたら、国が前面に立ってやっていますけれども、実態的にはこれは東電が作業をやっているわけですよ。国も指導をしている、県も申し入れをする、でも、直接的には東電。でも、こうやってトラブルが続いてしまっている。作業員の問題とか、いろいろなこともあります。なれた作業員が一定の線量を超えて現場から離れる、こうした問題もありますけれども、東電が直接的に作業にかかわるということが破綻しているんじゃないかなというふうに思っています。

 今まで厳しく指導、県も申し入れ、言葉だけでは全然解決していないという状況ですから、この作業のあり方、作業を担う東電のあり方も抜本的に見直さなきゃいけないんじゃないですか。これは、いろいろな形で指導していても、繰り返されているんですよ。もう申し入れや指導だけでは済まないと思うんですね。

 これは、直接の作業にかかわるあり方として、国なり、東電以外の組織や、作業をする部隊というかセクションが必要になってくるんじゃないかなというふうに思うんですけれども、そうした方向性についてはどうでしょうか。

糟谷政府参考人 そういう意味では、まず、東京電力は原子炉の設置者でありますし、現場を一番熟知している、それでこれまでも対策を講じてきたということで、やはり主体的に責任を果たしてもらうべき主体だというふうに思っております。

 ただ、事故の後、ともすれば、東電に対して指導をして報告を求めて、報告が出てきてから、それがいいとか悪いとかという対応をとりがちであった嫌いがあると思います。

 去年の九月に国が前面に出るということを決めた後は、東電に指導をして報告を求めるというやり方を変えようとしているつもりでありまして、現場に現地事務所というのを設けまして、国の職員を配置しております。国の職員だけではなくて、民間企業から、プロジェクトマネジメントとか、そういうことの経験のある方も公務員として採用させていただいて現地事務所に配属をして、現場に定期的に入ってもらって、それからまた、ゼネコンとか元請とか、そういう現場の事務所を回って、現場で働いておられる関連企業の方々の声も直接聞きながら、問題を早目に把握する、小さな芽のうちに把握をして対応をとる、国みずからもそういうことに貢献をできるようにということで動いているところであります。

 それから、今回のような問題について、考え得るリスクというのを何とか減らすために、例えば、第三者の目を入れて、サイト内にあるリスク、こういうのをずっと洗ってもらったらどうか、そんな話もずっと東電とはしております。

 なかなか、外部の企業に委託をして、中に入ってもらって見てもらうというところまでは今の段階でできておりませんけれども、この四月に廃炉のカンパニーが発足したのに伴いまして、そういうリスクの管理をする、安全管理をする部門を増強いたしまして、その方々が自分でリスクを早期に発見して、その対策をするということを主要な仕事としてこれから対応してもらうという体制ができたところであります。

 そういう形で、現場で作業をされている方だけではなくて、国もいろいろな声を、情報を把握するように努めておりますし、それから東電の中でも、それ専門の部隊をつくって、潜在的なリスクになるようなところを把握して対応する、そんな取り組みを進めているところでございます。

小熊委員 国が前面に立つといって、我々日本維新の会も昨年の秋に現地の調査をさせていただいたときに、確かに国の人たちもいましたけれども、まだまだその段階ではうまく現場と有機的に取り組んでいなかったなという印象がありました。それからもう半年以上たって、今後もしっかりやっていくということではあるんですけれども、結果としてはトラブルが続いているわけです、続いてきたわけです。しかも、件数もふえてきた。しかも、トラブルの原因がよくわからないものもあるし、うっかりなのか、人為的にやったのかということさえ疑われるような事案もあります。大変ゆゆしき問題です。

 これは、しっかりとそこを踏まえて、またこの委員会でこれからも経過を見ながら質疑をさせていただきますけれども、今までふえてきているというこの現状、根本原因がちゃんと改善されていないというところは厳しく捉えて、しっかり取り組んでいくことをお願い申し上げて、次の質問に移ります。

 来春、この大震災やまた原発事故に関しての教科書の記述が大幅にふえることになりました。また一方では、低学年のはなかなか難しくて、これに取り組んでいる出版社も少ないという傾向も一方であります。高学年のは大幅にふえているというのはありますけれども。

 やはり、教育現場でこの大震災また原発事故をどう教えていくか、伝えていくかということは、非常に重要なことであります。ただ、原発事故に関しては、まだ進行中の災害でもありますから、たびたびこれは修正、改訂をしていかなければいけない部分でもあります。

 学校教育の現場での原発事故に対する教育への取り組みについて、お伺いをいたします。

義本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、学校教育におきまして、福島第一原発事故について、児童生徒に適切に指導を行うことは極めて重要なことだと認識しておるところでございます。

 文部科学省では、従来より、学校教育における放射線等に関する教育の副読本をつくっておりましたけれども、平成二十五年度に新たに改訂いたしまして、福島第一原発事故にかかわる内容を追加した新しい放射線副読本を作成し、希望する全国の小中高等学校に配付しております。特に小学校用、それから中学校、高校用という形で、小学生にもわかりやすい形で副読本をつくって配付しているところでございます。

 新しい副読本におきましては、福島県で起こった原子力発電事故のこと、事故によって多くの人々が大きな被害を受け、今なお困難な状況にあること、地域の復興再生や安全の確保に向けた懸命な努力が続けられることなどについて紹介するとともに、その理解に必要な放射線に関する基礎的な知識や、放射線からの身の守り方等について解説しておるところでございます。

 また、教科書につきましては、社会科などで、従来から原子力発電の長所、短所あるいはチェルノブイリの原発事故についての記述がなされたところでございますが、震災を受けまして、今回の原発の事故についても記述が加えられたところでございます。

 現在使用されている中学校の社会科は七点ございますが、七点全て、高校については十二点ございますけれども、十点について、ございます。委員御指摘ございました、二十五年度については、小学校の教科書について検定をさせていただきましたけれども、使用する小学校について、申請がございました四点、四点合格していますけれども、四点全てについて原発事故についての記述があるところでございます。

 文科省におきましては、児童生徒が、原子力や放射線についての正しい知識を持ち、科学的に考え、行動できるよう、福島第一原発事故のことも含めまして、原子力や放射線に関する教育のさらなる充実に向けて取り組んでまいりたいと思います。

小熊委員 今答弁にもありました副読本、二〇一〇年につくったのは、小学生向けは「わくわく原子力ランド」というタイトルがあって、また中学生向けは「チャレンジ!原子力ワールド」、これは二〇一一年からがらっと様相が変わっていますから、しっかりと抜本的に変えなきゃいけないんですけれども。

 そういったさなかで、東電も副読本をつくって県内の小中学校に配ると言っているんです。もちろん東電が取り組むことに対して私は反対するものではありませんけれども、しっかり検証しなければいけないのは、県内でも、事故を起こした東電がそれをやれる立場にあるのかと。今言った原子力事故の対応にしても、トラブルが続いている、後手後手に回っている。これは文科省でもつくりますけれども、東電の副読本、それは文科省が管轄するものではありませんけれども、ここはしっかり東電のものを見て対応するということはしていかなければいけないというふうに思っていますので、そこは言及させていただきます。

 あと、教育現場でのあり方は、一定の政策的な誘導とかがあってはならないと思うんですね。やはり、客観的な事実、知識といったものをしっかり子供たちに身につけてもらって、その子供たちが将来のエネルギーに対して、エネルギー政策の選択のできる、そういう知識を身につけさせる。一定の政策の教え込みであってはならないというふうに思いますので、客観性に関して、しっかりと持った取り組みをしていくべきだと思いますけれども、再度答弁をお願いいたします。

義本政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の副読本につきましては、原発事故を受けまして、新しい副読本をこういう形で二十五年度からつくりまして、正しい知識を科学的な知見のもとに伝えるというふうなことで編集させていただいているところでございます。

 先生が御指摘のとおり、やはり、正しい知識を子供たちに発達段階に応じて伝えることは大事でございますので、その点についても、文科省としても意を用いていきたいと思います。

小熊委員 我々日本維新の会は、原発フェードアウトと言っています。原発再稼働という政策も言っている方もいます。そういうことが誘導されないように、その選択はその教育を受けた子供たちがすべきであって、政策選択の誘導にならないようにということは、しっかりと見きわめて、これからも教育現場での徹底に努めていただきたいというふうに思っています。

 次の質問に移りますけれども、五月に予定されています地下水バイパスの稼働についてなんですけれども、くみ上げた地下水から、これは基準の範囲内とかいろいろあるんですけれども、放射性物質が検出されております。この地下水バイパス稼働に向けての、くみ上げた地下水の放射性物質の現状、また、それに対する対策についてお伺いをいたします。

糟谷政府参考人 地下水バイパスにつきましては、今、建屋の中に地下水が流れ込んで汚染水がふえている現状に鑑みて、建屋に流れ込む前に、流れ込んで汚染される前の地下水をくみ上げて、海に放出して、汚染水の増加を抑制しようという対策であります。

 これを運用するに当たりましては、運用の目標値というのを定めております。セシウム134、137で一ベクレル・パー・リッター、全ベータで五ベクレル・パー・リッター、それからトリチウムで千五百ベクレル・パー・リッター、これはWHOの飲料水の基準から比べても十分に低い目標数値であります。

 この目標数値、それから、いろいろな説明会で御地元に御説明をした運用方法、これを厳守して進めていきたいと考えております。

 現在、その地下水のくみ上げの井戸、十二本ありますけれども、十二本の水質は、この運用目標を下回るものであるというふうに理解をしております。

 まず、この運用目標については、地下水をくみ上げたそのタンクの中の水、これを排出の前に必ず測定して、この運用目標未満であるということを確認した上で排出を行うこととしております。

 その測定に当たっては、東京電力による測定だけではなくて、第三者機関による確認を行うために、独立行政法人日本原子力研究開発機構や、東京電力と資本関係のない複数の分析機関が定期的に分析を行う、そういうことで東電の測定の確からしさを第三者性をもって確保するということにしております。

 また、排出の際に誤った操作が行われないように、国の廃炉・汚染水対策チームの現地事務所の職員が排出作業に立ち会うことにしております。

 こういったことを進めながら、地下水の抑制に向けて取り組んでいきたいというふうに考えております。

小熊委員 この原発事故以来、きょうの質疑にも出ています安全と安心といった切り口でいうと、トラブルも続いている中で、客観的には安全、数値的にも安全だ、基準値以内だというものはあるんですけれども、やはり、先ほど言った地元の理解という意味では安心感はまだ出ていません。

 これは、この件だけではなくて、先ほど言ったいろいろなトラブルが続いている中でありますから、地元関係者、県民に対して、また国民の皆さんに対してもしっかりとした安心が醸成されるような説明責任があるというふうに思いますので、説明責任を果たす上においてはやはり納得をしてもらわなきゃいけませんから、これはしっかりと安心の醸成に向けて取り組んでいただきたいなというふうに思っています。

 また一方で、凍土遮水壁ですけれども、六月の実施に向けて、本格稼働に向けて取り組んでいるところでありますけれども、東電が提出した実施計画に関しては、私の知る限りでは、規制委員会とそして経産省と東電の三者間に食い違いが見受けられます。これをこの六月の本格稼働に向けてどう調整していくんですか。また、その違いというのは何で出ているんでしょうか。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 凍土遮水壁につきましては、建屋などの中に地下水が流入しないためのものとして設置されるというふうには理解しておるところでございますが、ただ、一方で、タービン建屋の内部におきましては、汚染水、特に高濃度の汚染水が大量に滞留してございます。現在は、地下水位よりもこの汚染水の水位を下げることによって、外へ出ないように調整しているところでございます。

 それで、今回この凍土遮水壁が設置されますと、当然、今度は流入を減らすために地下水位が変動する可能性がございますので、この変動によって周辺の地中に汚染水が流出しない、こういうことが必要でございます。

 それで、この具体的な内容につきましては、委員御指摘のように実施計画は出ておりますが、まだ詳細なところが出てきておりません。したがいまして、そういう詳細な計画が私どもが要求しております周辺への漏出がないかどうか、これをしっかり確認していく必要がございますので、現在、資源エネルギー庁その他で、研究開発その他の中で詳細な検討が行われておりますから、その結果を見て、我々としてその適切さを判断していきたいというふうに考えているところであります。

小熊委員 であれば、これは推測ですが、場合によっては、六月実施ということがさらに延びるということの可能性もあるわけですよね、見解が違うまま実施するわけにはいきませんから。どうですか。

山本政府参考人 はい。私どもは、先ほど言いました、安全の観点から審査してございますので、それが確認できないと実施計画というものを認可、これは法的な行為でございますが、認可することができませんので、それが認可されませんと当然工事はまだ着手できませんから、スケジュールありきではなくて、安全を最優先に考えていきたいと思っております。

小熊委員 ぜひ、今言われたとおり安全をしっかり確保するということと、あと、広くしっかり国民の皆さんにも、この経過も含めて情報を提供していただくことをお願い申し上げます。

 最後の質問になりますけれども、今月の四日に大量の雨が降って、タンクの周りの堰から水が漏れてしまっていたということで、東電も、いつものことなんですけれども、予想を超えるものだったと。想定外とか予想を超えるという言葉で逃げてほしくないんですよね。実際そうなんでしょうけれども、万全の体制、全てのことを想定内に入れていかなければいけません。事故から三年たって、予想を超えるとかそんな言葉を東電に言わせたくない。

 これからまた梅雨時期になってきますし、昨今の天気を見ると、局地的に大雨が降ったり、これまでの感覚的なものを言えば、季節ごとの天気も本当にいろいろなふうになっていますよ。この雨水対策、これから取り組んでいくということ自体がもう信じられないことなんですけれども、梅雨時期に向けて、これから雨の降る時期に向けて万全の体制をしっかりとっていくということはどういうふうになっていますか。

糟谷政府参考人 東電によるおわびとか想定外、予定外という言いわけは聞きたくないというのは、私も全く同感でございます。

 その意味で、雨水対策は重層的な対策を去年の秋から進めているところでございます。

 まず第一に、堰からの溢水防止対策として、鋼製板による、つまり鉄の板によって堰のかさ上げを、完成している堰については、全てもう終わっております。三十センチ上げております。それから、それに加えまして、さらに必要に応じてコンクリート等によるかさ上げを行うという工事、それから堰を二重化して堰の中をドライアップしようということを今進めておりまして、これを何とか五月中に、梅雨が始まる前に終わるようにということで、今加速を促しているところであります。

 加えまして、タンクへの雨どいの設置、これも進めておりますし、それから、堰の中が汚れておりますので、それで汚染をしてしまうということで、堰の中について塗装をするという工事をやっております。これは、二十六タンクヤードがあるうち二十二で終わっておりまして、今月中に何とか終われるように工程管理をやっているところであります。

 いずれにしましても、こういう対策をしっかりやることによって、また雨水があふれたとか、雨水の問題で悩まされることがないように、それによってもっとリスクの高いところにかける労力がおろそかになるというのは困りますので、そういうことにならないようにしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。

小熊委員 今、同じく、東電からそういう言葉は聞きたくないと。そのとおりだと思います。

 国が前面に立つと言っているわけでありますから、国がやはり全てを想定して、これが足りていないということも言っていかなきゃいけないんです、これからはしっかりと。起きてから東電が言いわけしてきたときに、何をやっているんだじゃなくて、トラブルも続いているとさっき言いましたけれども、やれない会社だと思っています、私はもう既に。国が前面に立つと言っているんですから、国も全てにおいて想定内に入れて、足りていないところを早目に対策をとれと。問題が起きてから、何をやっているんだじゃなくて、国が前面に立つんですから、先取りをして東電に対策をとらせる、現地でしっかりと対応をとっていくということをしっかりとこれから、そういう心持ちですよ。

 東電の失敗を待って指導じゃないんです。失敗しないようにしっかり対策をとる、指導していくという方向性で、取り組みで、これから原発事故対応をしていただきたいというふうにお願いを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

森委員長 次に、椎名毅君。

椎名委員 結いの党の椎名毅でございます。

 本日、質疑時間を十五分いただきましたので、手短に話をしたいと思います。

 先ほど、小熊先生から幾つか、今回の四つのポンプの誤作動について御質問があったので、少し重なる部分もあるので、順番を入れかえて、かつ、東京電力の相澤副社長にいらっしゃっていただいておりますので、その点から伺ってまいりたいと思います。

 先月の二十八日に、東京電力の第一原発で掘削作業をしていた下請会社の安藤さんという方が土砂の下敷きになるということでお亡くなりになるという事故がございました。

 医師のところに電話で連絡が行ったのが十三分後、そして、実際に医師のところに運ばれたのが二十五分後ということで、その後、いわき市内の病院に運ばれて、最終的に約三時間後ぐらいに死亡が確認されたという事件がございました。

 こういったところは、サイト内の安全性の確保という観点から規制庁の問題なのかというふうに思っていたんですけれども、よくよく事務方の方々からお話を伺うと、これは通常の労働災害と同じ問題であり、東京電力本体の安全性確保の問題であるということでございました。

 そういう観点から、労働災害としてこういった事故が起きる場合の対策について、特に福島第一原子力発電所の中でという意味ですけれども、相澤副社長に伺えればと思います。

相澤参考人 まず、今回、生き埋めで、大変残念でございます、お亡くなりになり。本当に申しわけない、残念に思っております。

 今回、この生き埋めの事故の原因につきましては、現在、警察による捜査あるいは労働基準監督署による調査が行われているところでありまして、私どもといたしましては、全面的に協力をしているという状況であります。

 今回の災害を受けて、翌日の三月二十九日には一斉に作業を一日ストップいたしまして、危険箇所の洗い出し、あるいは今回の作業現場と似ているような状況の場所がないかどうか、協力会社の方と合わせて百五十人ぐらいで全域をパトロールいたしまして、そういった場所が現状ではないというのを確認して、また次の日から作業を開始しておりますが、労働災害というのはあってはならないこと、労災ゼロというのを常に我々は目指して工事、作業を実施してまいります。

 これはもう本当に無限の、長い課題でありますが、最後まで我々は労災ゼロを目指して、いろいろな施策を打ってまいりたいというふうに考えております。

 以上であります。

椎名委員 ありがとうございます。

 これは、労働災害としてということなんですけれども、それはそれとして、東京電力の方でサイトの安全性確保ということについてぜひお願いをしたいなというふうには思いますし、原因究明ということもお願い申し上げたいと思います。

 他方で、これは福島第一原子力発電所に特化して考えてみますと、基本的に、周辺の病院はあいていないとか、現場にすぐに救急隊員が駆けつけることが難しいとか、いろいろな理由がやはりあって、今回、医師のところに搬送されるまでに二十五分かかったということなんだと思います。それは、放射線量の問題だったりする部分もあると思います。

 そういうことを考えますと、やはり、これを通常の労働災害と同様に扱ってしまうことに私自身は少し疑問を感じます。これは、福島第一原子力発電所の安全性の確保というところで、通常の原子力災害に対する対応という部分でしっかり規制委員会が責任を持っていただく部分ではなかろうかというふうに思います。

 もちろん、規制委員会の役割分担というところで、それが対応として法律上入っていないということであれば、ぜひそれは検討していかなければならないことなんじゃないかなというふうに、私自身は話を伺っていて思いました。

 それで、次に行きたいと思います。

 四つのポンプの誤作動の話に入りたいというふうに思います。

 四月十日にこの四つのポンプの誤作動が起きて、汚染水の滞留水が予定されていないところに移送されてしまったというトラブルがありました。これはトラブルというふうによく説明をされていて、具体的にこの事象がどういった影響があるのかというところについては、いまいちわかりづらいというのが正直なところです。

 こういったヒューマンエラーのトラブルというのは、やはり人がやることですから、多発することは可能性としてありますし、後でちょっと言及したいと思いますけれども、東京電力の現場の作業員の方の士気の低下というのも見受けられる部分ではございますので、こういったヒューマンエラーが起きて、トラブルが多発して、それが報道されると、周りはすごい不安になるんだというふうに思います。一定程度不安になる状況を超えると、ああ、またかと思って気にしなくなるんだというふうに思います。

 だから、環境、それから人体、そして周りの人々、特に漁業とかですけれども、そういった方々に対してどういう影響があるのかの影響の濃淡によって、やはりその報道のあり方を含めて考えていかなければならないというふうに思うんです。

 まず、今回の、滞留水が予定されていない建屋に移送されてしまったという、トラブルというふうに説明されていますが、これについて、どういった影響があるのか、引き続き相澤副社長にお願いできればというふうに思います。

相澤参考人 事故から三年たって、今なおいろいろと汚染水関係で皆様方に御心配をおかけしている、本当に改めておわび申し上げます。申しわけございません。

 今回のトラブルにつきましては、どんな影響があるのかという点でございますが、まず、人、作業員の方々あるいは我々の社員に与える影響ということでありますが、今回、過って移送された先、建物の地下一階でございますが、この地下一階には、作業をする人間が出入りする場合はほとんどございません。一階には、セシウム除去装置等がありまして、一日一回のパトロールを行っておりますが、地下一階には、ほとんど、頻繁に人が出入りするというような場所ではないので、そういった面では影響はないというふうに考えております。

 それからまた、環境への影響についてということであると思いますが、これにつきましても、移送された汚染水の建物外への漏えいというのは、これまで監視を続けてまいりましたが、たまった水の水位に変動がない。それから、水位は床面から約十八センチ程度でありますが、この十八センチの中には配管等の貫通部がないんですね、ですから、リークの可能性というのは非常に薄い。さらに、地下水のレベルも、汚染水のレベルよりは水位がずっと高いところにあります。それから、その周りにサブドレーンというものがありますが、そこの測定結果も何ら変化がございませんので、建物の外に出ているということはまずないというふうに判断しております。その結果、環境への影響あるいは海への影響というものは、この件について、ないというふうに考えております。

 それから、モチベーションですが、これは原因のいかんにかかわらず、皆さん、作業する人間、我々の社員も、それから作業員の方も同じです、モチベーションというのは非常に大事なものだと思っておりまして、これにつきましては労働環境の改善等々をしっかりとやっていきたいと思いますし、また、四月一日に新しい廃炉推進カンパニーというものができました。新しいプレジデントのもと、決意を新たに一丸となって廃炉に向けて取り組んでいくということで、お互いに確認し合っているところであります。モチベーションを高く維持するということにつきましては、最善を尽くしてまいりたいというふうに思っております。

 以上であります。

椎名委員 ありがとうございます。

 環境への影響がないというのは一つ安心できることかなというふうに思いますが、やはり、こういった、ヒューマンエラーなのかそれとも故意なのかというのは、先ほど期せずして副社長がおっしゃったように、この地下一階の部分のスイッチが入っている配電盤の部分については人が立ち入ることのない場所だ、この一カ月ぐらい人が立ち入る予定はほとんどなかったというのが言われているところかというふうに思いますけれども、恐らく、そうだとすると、故意の可能性もあるのではないかという指摘もされるところだというふうに思います。

 こういったところをやはり防いでいくためにも、引き続き安全確保の仕組み、それから対策等を講じていかなければならないというふうに思いますけれども、こういった取り組みについて、それぞれ規制庁と経済産業省から伺えればというふうに思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 まず、今回滞留水を誤って移送した件、これは、いずれにしても、ポンプを操作した結果によってこういうことが生じたということでございます。

 なぜそういうことになったかについてはまだ調査中ではございますけれども、委員御指摘のように、今回、このポンプを作動させるための操作盤というのが、特別な管理がなくて、アクセスが容易で操作ができる状態であったというのが一つ問題点ではないかというふうに考えてございます。

 それで、こういう容易に操作ができないように操作盤を施錠管理すること、あるいは、監視カメラを活用いたしましてその状況をしっかり管理する。特に、重要な操作盤の管理のあり方については、改めてこの対策を強化するということが必要であろうと思っておりまして、昨日の私どもの規制委員会でも、この点については議論いたしまして、東京電力に対してそういう対策の検討を指示したところでございます。

 一方で、こういうような問題、二月にもタンクの天板から漏れた、弁が操作されていたというふうなこともございました。こういった問題が立て続けに起きているような職場環境というのは、やはり問題であろうというふうに私どもも考えてございます。

 したがって、東京電力におかれましては、現場のさまざまな声をよく聞いて、広い意味での職場環境について確実に改善をしていただくということが必要であろうかと考えているところでございまして、こういう取り組みについて、規制委員会としてはしっかり確認をしていきたいというふうに考えておるところでございます。

糟谷政府参考人 必要な対応については、これは規制庁から御答弁ありましたのと全く同じだと思っておりまして、我々も我々なりにそういう対応に取り組んでまいります。

 それから、弁の操作に問題があったから弁の施錠管理をやると。実は、そのときも、ほかに横展開をしっかりとやるべきではないでしょうか、仮設のほかの設備に同じようなものがありませんか、それを第三者の目を入れてやるべきではないか、そういうことを申し上げました。

 今回、配電盤についてこういう問題が起きたんですけれども、今回も配電盤の問題だけに終わらせずに、ほかにも同様のことが起きる可能性がないか、そこを、新しく発足した廃炉カンパニーのもとでしっかりと確認をしてもらいたいというふうに考えておりますし、その結果を我々もしっかりと検証させていただきたいと思っております。

椎名委員 ありがとうございます。

 その横展開というのは本当に重要でして、やはり、問題が起きたから対応する、問題が起きたから対応するという、これはいわゆるびほう策というふうに多分言うんだと思いますけれども、それでは結局、抜本的な解決にはならないわけですね。だから、根本的に何が問題なのかを常に探り続けて、それに対して対策を打っていくということが非常に重要かというふうに思います。

 先ほど一言申し上げましたけれども、故意の可能性もあるんじゃないかということも指摘をされています。そうだとすると、やはり、中に入ってくる作業員の属性確認、それから個人の信頼性確保の、今、ワーキンググループでそれぞれ検討されている内容について、これを早急に行っていく必要があるかというふうに思います。

 これは、テロ防止という観点から、核セキュリティーという観点で検討されているわけでございますけれども、やはり、作業員が中に入ってしまうということについての問題、犯罪歴とかが確認されずに作業員が中に入ってしまう可能性があるというところ、そして属性確認等の必要性等について、最後、田中委員長に御意見をいただければというふうに思います。

山本政府参考人 セキュリティーの観点から、現場の作業に入られる方々の個人の信頼性をしっかり確認していくということは大変重要だと思っております。

 委員御指摘のように、現在、規制委員会におきましては、核セキュリティに関する検討会というものを設置いたしまして、警察などの関係行政機関と連携を図りつつ、今現在検討を行っているところでございます。

 具体的には、信頼性確認をするには、では、どこの、どういった人たちを対象とするのか、あるいはその確認の項目、先ほど犯罪歴という御指摘がありましたけれども、そういったような項目をどうするのか、そういった問題について今現在検討しておりまして、一方で、こういう情報というのは当然個人のプライバシーにかかわるものでございますので、慎重な検討が必要であるというふうには認識しているところでございます。

 いずれにしましても、こういう個人の信頼性確認は、潜在的脅威の事前排除という意味で大変重要な手段でございますので、しっかりと実務上の検討をまず進めていきたいというふうに考えているところでございます。

椎名委員 ありがとうございました。

 時間も来たので終わりますけれども、たびたびトラブルが起きるということに対しては、やはり抜本的な解決方法を常に探っていくということが必要だというふうに思っています。規制庁、それから東京電力、そして資源エネルギー庁と、それぞれ一致団結して協力して当たっていただきたいなとお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございます。

森委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーです。

 私は、エネルギー基本計画について質問をさせていただきたいと思います。

 エネルギー基本計画は、二〇〇二年六月に制定されたエネルギー政策基本法に基づき、これまで、二〇〇三年、二〇〇七年、二〇一〇年と第三次計画が策定され、今回の計画は第四次の計画というふうになるものであります。

 前回の計画を見てみますと、二〇一〇年度の第三次計画では、「二〇三〇年に目指すべき姿と政策の方向性」あるいは「目標実現のための取組」として、例えば、自主エネルギー比率七〇%、戦略レアメタル自給率五〇%以上、それから低炭素型成長を可能とするエネルギーの需要構造などなど、それぞれの目標実現のための取り組みが明記されておりました。

 一方、今回の基本計画では、福島第一原発の重大事故の後、「震災前に描いてきたエネルギー戦略は白紙から見直し、原発依存度を可能な限り低減する。」となっています。これは、「原子力発電の推進」という項目で書かれていた前回の計画をも見直す内容というふうに捉えられるものと思いますが、今回の二〇一四年の第四次計画で、それらの必要な数値目標達成への取り組みなどについて示されていない理由は何か、説明を伺います。

後藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、前回の第三次のエネルギー基本計画におきましては、ゼロエミ電源の比率を七割にする等の目的が入っていたところでございますが、今般閣議決定しました第四次のエネルギー基本計画におきましては、大きな数字が入っていないのはまさに御指摘のとおりでございます。ただ、例えば、二〇二〇年までに、世界の蓄電池市場、約二十兆円の五割を国内の企業が確保できるようにするということとか、エネファームを二〇二〇年に百四十万台、二〇三〇年には五百三十万台というような普及目標などは一部に記載をさせていただいております。

 そういう意味では、全く数値的なものが入っていないわけではないのでございますけれども、今、委員の問題意識でいえば全体像というところだと思いますが、エネルギーの全体像ということを考えたときに、各エネルギー源ごとに、例えば、安定供給やコストや環境負荷や安全性というようなさまざまな項目において、その強み、弱みがあるものですから、それらを総合的に勘案した、バランスのとれたエネルギーの目標を立てていきたいというふうに思ってございます。

 そういう意味では、今のタイミングでは、省エネの今後の進み方、再生可能エネルギーの導入の状況、原子力発電所の再稼働の状況等、海外からのコスト、火力、それからCO2の問題等、いろいろ複雑に絡んでくるものでございますから、その辺を見きわめて、トータルに、できるだけ早いタイミングでまとめていきたいというふうに考えてございます。

玉城委員 今答弁にありましたように、当然ですけれども、その数値などは刻々、状況によって変化いたしますし、また、世界との貿易関係におきましても、エネルギー資源をほぼ一〇〇%海外に頼っている我が国としては、数値目標的なものが変化する、変動していくということは十分承知しているものであります。

 ところが、さまざまな数値があればこそ、そこに向かった努力目標みたいなものも、それぞれの企業においては、きちっとやはり努力を促すという意味では必要ではないかなというふうに全体的に感じる次第であります。

 さて、二〇五〇年における我が国の人口について、社会保障・人口問題研究所のデータによりますと、約九千七百万人、九千七百八万人へ減少することが予想として上がっています。人口の減少に伴うエネルギー総需要の減少とあわせて、今後、家電などの省エネ設計、車両などのハイブリッド蓄電池開発、あるいはまた製造業などにおける省エネ対策の取り組みはさらに進んでいくものというふうに予想されます。

 今エネルギー基本計画では、将来の人口減少等によるエネルギー需要及び供給の問題についてどのように捉えたものになっているのか、御説明をお願いします。

赤羽副大臣 お答えさせていただきます。

 今、玉城委員御指摘のように、二〇五〇年には九千七百八万人に人口が減少する、そうした表記もさせていただいております。

 今回のエネルギー基本計画は七十七ページございますが、まず第一章に、「我が国のエネルギー需給構造が抱える課題」。今言われたように、人口減少も当然でございますが、特に、三・一一、福島第一原発事故以降の新たなエネルギー制約に直面をしているという現状の中で、我々のエネルギー政策の具体的な課題をまず書かせていただく中で、そして第三章に、「エネルギーの需給に関する長期的、総合的かつ計画的に講ずべき施策」として、第三節に、「再生可能エネルギーの導入加速 中長期的な自立化を目指して」ということで、ここは一節とって、再生可能エネルギーについて評価させていただいております。その中で、二項として、「分散型エネルギーシステムにおける再生可能エネルギーの利用促進」、これはまさに、各地方地方で、地産地消型の小水力ですとか、そういったものの表記も、丁寧に位置づけをさせていただいております。

 供給サイドにつきましてはもう一つ、第三章の、再生可能エネルギーは第三節で、第八節には、「地球温暖化対策に貢献する水素等の新たな二次エネルギー構造への変革」ということで、これは省エネにもかかわってきますが、コジェネですとか「蓄電池の導入促進」、また、「“水素社会”の実現に向けた取組の加速」という、やや将来的な課題を明示させていただいております。

 そして、供給サイドだけではなくて、使う側、まさに制約がある中で省エネ社会を進めていこうということで、第九節には、その第二項で、「地域の特性に応じて総合的なエネルギー需給管理を行うスマートコミュニティの実現」ということも書かせていただいているところでございます。

 こうしたように、今委員御指摘のように、状況の変化、また、新たなエネルギー制約に直面しているという状況の中での今後の中長期的なエネルギー政策の基本を書かせていただいたと承知をしております。

 以上です。

玉城委員 では、この計画で、一次エネルギー構造におけるエネルギー源の位置づけですが、発電コストが低廉で、安定的に発電し、昼夜を問わず継続的に稼働できる電源、ベースロード電源に、地熱、石炭、一般水力を置き、発電コストがその次に安価で、電力需要の動向に応じて出力を機動的に調整できるものをミドル電源として、天然ガス、LPガスなどを置いています。そして、コストは高いものの、電力需要の動向に応じて出力を機動的に調整できるものをピーク電源として、石油、揚水式水力などを置いています。

 これらの位置づけにおける、ベースロード、ミドル、ピーク等々、それに置いている定義について御説明をお願いいたします。

後藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに今先生がおっしゃったような形で、ベースロード、それからミドル、ピークというのを分けているわけでございますけれども、基本的に、電力の供給というのは、需要と供給を一致させて、ある意味で電圧や周波数を維持していくということになるわけでございます。そういう意味では、一日を通じて、または一年を通じて、非常に変動が大きいものでございます。そういう意味では、電源の各種特性を踏まえて適切に組み合わせていくということが重要だと思ってございまして、その特性ごとに、今申し上げたように、ベースロード、ミドル、ピークという形で区分をしています。

 その中で、ベースロードでございますけれども、基本的には、低廉で安価であるということが第一でございまして、さらに言えば、一定的に運転できるというところが非常に重要なところでございます。具体的には、原子力や石炭、一般水力、地熱がベースロードに当たるというふうに考えてございます。

 ミドル、ピークでございますが、ピークから申し上げれば、コストは高いんですが、瞬発力があるということで、負荷変動の調整に非常に向いているというようなものをピーク電源と呼んでおりまして、その両方の中間に当たるものがミドル電源でございます。委員のお話がありましたように、天然ガスがミドルになり、ピークが石油や揚水発電という状況でございます。

 ただ、ベースとかミドルとかピークというような電源の位置づけというものは、その電源の使用する際の特性でございまして、必ずしも電源構成の比率が大きいものがベースであるとか、小さいものがピークであるという趣旨ではございませんので、そこは、特性によって分けているということは御理解いただければというふうに思ってございます。

玉城委員 特性によって電源の構造を分けているということなんですが、時間もありませんが、再生可能エネルギーについて質問をさせていただきます。

 今計画では、二〇一三年度から三年程度は導入を最大限加速させる、その後も積極的に推進するとされています。第三次エネルギー基本計画ではそれぞれ数値が置かれていまして、例えば再生可能エネルギーの割合について、二〇二〇年までに一次エネルギー供給に占める割合を一〇%に達する等々と設定されています。今計画では、それまでの基本計画を上回る水準の導入を目指すとしていますが、その目標に関して、いつの時点でどのくらいを目標としているか、お聞かせください。

後藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今まさに先生がおっしゃったように、新しいエネルギー基本計画においては、二〇一三年度から最大限導入を加速化し、その後も積極的にやるというのと、これまでのエネルギー基本計画を踏まえた水準を上回る水準の導入を目指すこととし、これを踏まえて、再生可能エネルギーの導入目標を含めたエネルギーのベストミックスの目標を検討することとしてございます。

 ということで、エネルギーのベストミックスを決めるタイミングで、あわせて再生可能エネルギーの導入の目標を決めていくという形になっていくのではないかというふうに思ってございます。

 そういう意味では、どのタイミングでベストミックスをつくるのかという御質問になるというふうに思いますが、これはできるだけ早いタイミングでやりたいということで考えてございますが、先ほども申し上げましたように、再エネの取り組みや省エネの取り組みの進捗、原子力の再稼働や、先ほど申し上げたCO2の問題等、さまざま見きわめる必要性がございますので、今のタイミングでいつまでということを申し上げるのはなかなか難しいところではございますが、二年も三年もかかるものではないというふうには考えてございます。

玉城委員 では、いつまでにかかるかということの数値上の目標、基準の目標というのはまだ見えないけれども、迅速に取り組むということで。

 再生可能エネルギーのうち、太陽光及びバイオ燃料等バイオマスエネルギーの普及及び研究の加速化はどのように図られるおつもりか、お聞かせください。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 委員が御指摘の太陽光とバイオマスは、各地域のエネルギー源を有効活用できるもの、地域の単位でも取り組みやすく、地域の活性化あるいは雇用の拡大の観点からも重要なエネルギー源であるというふうに認識してございます。

 太陽光とバイオマスの普及拡大の最大の原動力はやはり固定価格買い取り制度であるということでございまして、全国各地で太陽光、バイオマスを含みます発電事業の導入拡大が進んでいるということでございます。まずは、固定価格買い取り制度を安定的かつ適切に運用していくということが第一と考えてございます。

 他方、太陽光につきましては、やはり発電コストが依然として高い、それから、バイオマスにつきましては、やはり、原材料を安定的に確保いたしましてこれをエネルギーに効率的に変換していくということが課題になってございまして、こういったものに対応するための研究開発等の取り組みが重要になってまいります。

 太陽光につきましては、発電コストを二〇三〇年までに現在の水準の半分以下にしたいというふうに考えてございまして、変換効率の向上でございますとか、あるいは低コストでの製造方法の開発に今取り組んでおります。

 それから、バイオマスにつきましても、原材料の安定的な収集運搬、それから、そうして収集運搬した原材料を燃料ですとか電気などのエネルギーに効率的に変換する。例えばガス化でございますとか、あるいは燃焼効率を上げるために炭のようなものをつくるとか、そういった効率的に変換するための研究開発に取り組んでいるわけでございます。

 引き続きまして、再生可能エネルギーの最大限の導入拡大に向けて施策を講じてまいりたいと考えてございます。

玉城委員 では、時間がもうそろそろ制限が参ります、質問時間が参りますので、一つ質問を飛ばして、最後の質問をさせてください。

 福島第一原発の深刻な事故による甚大な被害、十四万人余りの住民が避難生活を余儀なくされている状況、そして、汚染水処理対策、燃料プールからの燃料の取り出し、燃料デブリの取り出し処理、取り出した燃料の貯蔵施設確保と厳格な処理などなど、事故後の膨大な補償と三十年から四十年という長期にわたる廃炉処理など、対応の責任が永続的に問われ続けることをまず確認しておきたいと思います。

 さらに、現在、我が国には約一万七千トンの使用済み燃料、再処理された分も含めておよそ二万五千本相当のガラス固体化された高レベル放射性廃棄物の最終処分問題も解決できないままにあります。

 原子力エネルギー政策に関しては、高度成長期における過渡期エネルギーとして総括と猛省を行い、原子力に依存しない再生可能エネルギー及び水素などの新エネルギー開発にこそ、将来的なエネルギー計画を見通した上で、我が国の技術力を集中、開発すべきであるというふうに思います。

 今計画において、原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の規制基準適合を前提に、安全の判断のみを了として原子力発電所の再稼働を進めると位置づけることは、原発事故による環境汚染、人体への影響、地域の崩壊など、重大な事故が発生したら甚大な被害と影響が起こるという現下の事実に真摯に向き合っていないのではないかということもうかがえます。

 今エネルギー基本計画において、引き続き原子力を活用すると示した理由は何か、最後にその見解を伺います。

赤羽副大臣 三・一一の福島第一原発の事故で新たなエネルギー制約に直面しているというのは先ほど申し上げたとおりでございます。そうした状況の変化の中、当然、エネルギー政策は、一に安全第一、そして同時に、安定的で廉価な電力源の供給、これも果たさなければいけない、私はそう思っております。

 そうした意味で、まず、原発については、その依存度につきましては、一つは再生可能エネルギーの最大限の導入、また二つ目には、高効率火力発電などエネルギー源の多様化、そして三つ目には、徹底した省エネ、ディマンドコントロールなどを進めて、可能な限り原発依存度を低減するというのが基本的な方針でございます。

 さはさりながら、一方では、各エネルギーの特性を考えると、安定供給、コスト、環境負荷、安全性、こういったものを全て満たしているというエネルギー源はなかなかなく、だからこそ、現実的かつバランスのとれたエネルギー需給構造をつくっていくことが必要と考えて、今回のエネルギー基本計画を作成させていただいた、私たちはそう考えております。

 以上でございます。

玉城委員 原子力は決して安価なエネルギーではありません。どれだけ、予算がかかるということを私たちはこの国会で議論をしているんでしょう。一度事故が起こってしまったら、その責任は政府がとるべきです。一義的には事業所ですけれども、それの手に負えないからこそ、いろいろな法案が出されて、それを我々は国会で今審議をしている。決して安価なエネルギー源ではないということを最後に確認して、質問を終わります。

 ありがとうございました。

森委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十四分散会


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