衆議院

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第5号 平成27年9月3日(木曜日)

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平成二十七年九月三日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 吉野 正芳君

   理事 岩田 和親君 理事 齋藤  健君

   理事 白石  徹君 理事 鈴木 淳司君

   理事 宮澤 博行君 理事 田嶋  要君

   理事 初鹿 明博君 理事 赤羽 一嘉君

      石川 昭政君    江渡 聡徳君

      大西 英男君    大西 宏幸君

      勝沼 栄明君    岸  信夫君

      佐々木 紀君    斎藤 洋明君

      助田 重義君    高木  毅君

      津島  淳君    中村 裕之君

      細田 健一君    細田 博之君

      御法川信英君    宮崎 政久君

      宮路 拓馬君    宗清 皇一君

      村井 英樹君    簗  和生君

      阿部 知子君    逢坂 誠二君

      奥野総一郎君    菅  直人君

      馬淵 澄夫君    太田 和美君

      柿沢 未途君    河野 正美君

      中野 洋昌君    樋口 尚也君

      塩川 鉄也君    藤野 保史君

    …………………………………

   経済産業副大臣      高木 陽介君

   内閣府副大臣       小里 泰弘君

   外務大臣政務官      宇都 隆史君

   内閣府大臣政務官     福山  守君

   防衛大臣政務官      原田 憲治君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   平井 興宣君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           伯井 美徳君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源エネルギー政策統括調整官) 吉野 恭司君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      多田 明弘君

   政府参考人

   (原子力規制庁長官官房核物質・放射線総括審議官) 片山  啓君

   政府参考人

   (原子力規制庁長官官房審議官)          山田 知穂君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力規制部長)          櫻田 道夫君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  深山 延暁君

   参考人

   (東京電力株式会社代表執行役社長)        廣瀬 直己君

   衆議院調査局原子力問題調査特別調査室長      石上  智君

    ―――――――――――――

委員の異動

九月三日

 辞任         補欠選任

  額賀福志郎君     宮崎 政久君

  宗清 皇一君     大西 宏幸君

  荒井  聰君     奥野総一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 宏幸君     宗清 皇一君

  宮崎 政久君     額賀福志郎君

  奥野総一郎君     荒井  聰君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 原子力問題に関する件


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     ――――◇―――――

吉野委員長 これより会議を開きます。

 原子力問題に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として東京電力株式会社代表執行役社長廣瀬直己君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府政策統括官平井興宣君、文部科学省大臣官房審議官伯井美徳君、資源エネルギー庁資源エネルギー政策統括調整官吉野恭司君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長多田明弘君、原子力規制庁長官官房核物質・放射線総括審議官片山啓君、原子力規制庁長官官房審議官山田知穂君、原子力規制庁原子力規制部長櫻田道夫君及び防衛省運用企画局長深山延暁君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

吉野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

吉野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。助田重義君。

助田委員 おはようございます。自由民主党の助田でございます。

 本日は、質問の機会をいただきましたこと、また、吉野委員長を初め理事、委員の皆様に心より感謝を申し上げます。

 また、田中原子力規制委員長を初め規制庁の皆様には、いわゆる規制行政の先頭に立ち尽力されていること、この場をおかりして心より敬意を表させていただきます。

 真摯な議論をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 私の出身は、全国最多の四原発十三基に加え、高速増殖原型炉「もんじゅ」が立地する福井県でございます。

 政府は、昨年四月に策定したエネルギー基本計画において、原子力を重要なベースロード電源と位置づけ、原子力規制委員会が規制基準に適合すると認めた原子力の再稼働を進める方針を打ち出しました。

 また、今年四月の衆議院本会議において安倍総理大臣が、原子力規制委員会の判断を尊重し、再稼働を進めるのは政府の一貫した方針だと述べるなど、安全性が確認された原発について再稼働を推進していく姿勢を明確にしております。

 今年八月には、鹿児島県の九州電力川内原発一号機が再稼働いたしました。

 こうした中、福井県においては、今年二月、原子力規制委員会が、関西電力高浜原子力発電所三、四号機について、新規制基準に適合するとして、原子炉設置変更許可を行いました。現在、工事計画及び保安規定の審査が行われており、再稼働に向けた手続が着々と進められております。

 しかしながら、県内の原子力発電所は、再稼働を初め、四十年超運転延長、廃炉、使用済み燃料処分など多くの問題を抱えております。

 原子力政策につきましては、国が一元的に責任を果たすことが大前提であり、立地地域の住民はもとより国民の理解が得られるよう、国が主体的に取り組む必要がございます。

 そうした観点から質問をさせていただきます。

 まず、使用済み燃料の問題です。

 使用済み燃料を早期に敷地外に搬出できるよう、国の関与を強め、中間貯蔵施設などの設備を強力に進めるべきと考えるが、いかがでございましょうか。お答え願います。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 国内の原発の敷地、現在全体で約一万四千トンの使用済み燃料が貯蔵されている、このような状況になってございます。各原発の貯蔵容量を全て積み上げますと全体で約二万一千トンとなってございますので、全体としては一定の貯蔵余地が確保されておりますけれども、サイトごとに見ますと容量に余裕のない原発も存在している、このような状況になっております。

 したがいまして、先生御指摘の使用済み燃料の貯蔵能力の拡大というのが極めて重要な課題と考えているところでございます。

 この点に関しましては、昨年四月のエネルギー基本計画、こちらの中でも、使用済み燃料の貯蔵能力の拡大、これを進めていくということを明確にしているところでございます。

 私どもといたしまして、具体的な取り組みといたしましては、発電所の敷地の内外を問わず、新たな地点の可能性も幅広く検討しながら、中間貯蔵施設や乾式貯蔵施設等の建設、活用を促進するとともに、このために、財政的な支援も含めまして政府の取り組みを強化する、このように考えてございます。

 このような取り組みを進めるため、先日の最終処分関係閣僚会議、この場におきまして、使用済み燃料対策の強化に向けた国としての基本姿勢、それから、国や事業者による具体策を盛り込んだアクションプラン、こうしたものを策定するということを宮沢大臣の方から表明させていただいておりまして、今後、国も積極的にこの問題に対して関与して取り組んでいきたいと考えております。

助田委員 よろしくお願いいたします。

 こうしたことを踏まえ、新規制基準適合性審査を遅滞なく進め、原子力発電所の安全性を速やかに確認すべきと考えますが、規制委員会としての見解をお示し願います。

櫻田政府参考人 原子力規制委員会におきましては、ただいまのところ、原子力発電所の新規制基準への適合性に係る審査を行っております。現在、十一事業者、十五発電所、二十五プラントについての申請を受けて、審査を進めているところでございます。

 このうち、九州電力の川内発電所一、二号炉、高浜発電所の三、四号炉、伊方発電所の三号炉につきましては設置変更許可を行いまして、また、川内の一、二号、高浜の三号については工事計画の認可まで進んでいるという状況でございます。

 いずれにしても、鋭意審査を進めているところでございます。

 お尋ねのございました、速やかに審査を進めるというその考え方でございますけれども、もちろん私どもも、しっかりと、また速やかに審査を進めてまいりたいと思ってございますが、どのようなスピードで審査が進むかというところにつきましては、申請者側の対応にもよるところが大変多いところがございます。

 例えば、審査には審査に必要な資料を提出していただく必要がございますが、資料を作成するに当たって、場合によっては、申請者側において、追加で断層の調査を行うとか、あるいは必要な機器の実験を行うとか、あるいはプラントの挙動とか設備の強度に関する解析を行うとか、こういったことが必要になりまして、それに時間を要するというところもございます。

 したがって、なかなか私どもだけでは進めることができないというところもございますけれども、私どもとしてできるところは、その範囲で、審査全体を効果的、効率的に進めるという工夫もしてきてございます。

 例えば、審査を行った結果を審査書にまとめますけれども、その中におきましては、審査の過程でどのような申請者の説明があったか、それに対してどのような規制側の指摘をしたか、その結果どのような形になったか、そういうことについて、主要な論点ごとに整理をしてまとめてございますので、後の申請者あるいは審査の側両方に参考になるものになっているというふうに思います。

 それから、適合性審査における確認事項を整理して文書化するということでありますとか、審査をより効率的に進めるようにモデル的なものをやるという意味で集中的な審査を行う、こういった工夫を行ってございまして、こういう取り組みを進めることによって、審査全体として効率的に進めることができ、またその中でしっかりと確認をすることもできるというふうに考えてございます。

 規制委員会といたしましては、引き続き、今申し上げたような取り組みを進めることによって、迅速にかつ厳正に審査を進めてまいりたいと考えてございます。

助田委員 よろしくお願い申し上げます。

 次に、高経年化プラントでございます。

 高経年化プラントを動かす上で、安全性の判断や長期保守管理の方針などについて明確にすべしと考えます。規制委員会の見解をお示しいただきたいと思います。

櫻田政府参考人 高経年化プラントに関するお尋ねでございます。

 高経年化プラントの安全確保につきましては、原子炉等規制法その他の関係規則に基づきまして、事業者は三十年とか四十年といった十年ごとの節目において施設の経年劣化の現状と今後の見通しを評価することが求められておりまして、さらに、その評価に基づいて、通常の点検に追加して行う点検や部品の取りかえなどの保守管理の方針を定めて、原子炉等規制法に基づく認可を得るということが必要でございます。

 加えまして、四十年を超えて運転しようという場合には、特別な点検を行って、延長期間中にわたって施設が技術基準を満足するかといったことについて、まず事業者みずからが評価をして、その内容が妥当であるかどうかということについて原子力規制委員会が審査する、こういう仕組みになってございます。

 こうした技術評価や保守管理の方針、あるいは運転期間の延長認可の申請につきましては、審査の基準でありますとかガイドを定めて公開し、これらに基づいて規制委員会において厳格に審査を行い、また確認した上で、その結果を公表するということにしてございます。

 現在、この高経年プラントに関する審査につきましては、三つの事業者、三つの発電所、六プラントから提出された申請に関する審査を行っているところでございます。引き続き、厳正かつ迅速に審査を進めてまいりたいと考えてございます。

助田委員 また、原子力発電所以外の施設につきましては、施設の特性に応じて基準を策定し、審査を進めるべきと考えますけれども、規制委員会の見解をいま一度お願い申し上げます。

櫻田政府参考人 原子力発電所以外の施設ということになりますと、例えば、試験研究用の原子炉でありますとか核燃料再処理施設のような核燃料施設といった施設がございます。こういった施設は、施設の種類あるいは構造などが多種多様であるということがあります。また、したがって、異常時の影響、事故が起きたときの影響もさまざまでございますので、施設の型式や出力レベルといった特徴に応じた基準を策定しているところでございます。

 例えば、使用済み燃料の再処理施設とかMOX燃料加工施設というものにつきましては、これはリスクもそんなに小さくないということで、原子力発電所と同様に、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた重大事故対策を求めているところでございます。

 また、それから、出力の高い試験研究用原子炉、例えばJAEA、日本原子力研究開発機構のJRR3というのは二十メガワット、熱出力でございますけれども、また、京都大学の研究用原子炉、五メガワットといったような原子炉につきましては、従来の基準で想定していた事故よりも厳しい事故に対応するための措置を求めるといったことをしてございます。

 他方で、使用済み燃料の貯蔵施設でありますとか、あるいは出力の小さい試験研究用原子炉、これも、例えば京都大学の臨界実験装置というのは百ワットでございますけれども、こういったものでありますとか、廃棄物の管理施設といったものにつきましては、リスクの小ささを勘案して、重大事故対策等への対応までは求めないという形でやってございます。

 原子力規制委員会といたしましては、こういった基準の趣旨を踏まえまして、申請がなされた施設について、科学的、技術的観点から厳正に審査を行ってまいる所存でございます。

助田委員 それぞれ特性が施設に応じていろいろありますので、よろしくお願い申し上げます。

 続きまして、原子力災害時における対応でございます。

 万が一の原子力災害時において実効性ある対策が速やかに講じられるよう、国と関係自治体の連携を一層強化すべきと考えておりますが、対策はどのように講じられておるか、御説明願います。

福山大臣政務官 原子力災害時に実効性のある対策を行うためには、国と関係機関が連携し、地域防災計画、避難計画を充実強化することが重要でございます。

 このため、本年三月末に災害対策基本法に基づく国の防災基本計画を改定し、地域防災計画、避難計画の策定において国と自治体の連携強化を明確に位置づけました。

 具体的には、原発所在地域ごとに関係省庁や関係自治体が参加する地域原子力防災協議会を設置し、国と自治体が一体となって地域防災計画、避難計画の充実強化を進め、その上で、地域原子力防災協議会で、地域防災計画、避難計画が原子力規制委員会が策定する原子力災害対策指針などに沿った具体的で合理的なものであることを詳細に確認し、総理大臣が議長を務める原子力防災会議で国として了承いたします。さらに、住民や関係機関が参加した訓練から得られた反省点について協議会で検討した上で、地域防災計画などを改善強化することとしております。

 こうした取り組みを通し、国と自治体の連携をさらに強化し、地域防災計画、避難計画の継続的な改善強化に努めてまいりたいと思っております。

助田委員 自治体も一生懸命取り組んでおりますけれども、より一層の国の御支援をお願い申し上げます。

 続きまして、原子力事故に備えるため、避難に必要となる道路や施設、資機材等の整備も一緒に進めると考えております。

 このような対策は現在どうなっておりますか。お答えいただきたいと思います。

福山大臣政務官 原子力防災対策の充実は、住民の方々の安全、安心を高めるためにも重要であると認識をしております。

 そのため、地域原子力防災協議会での議論を踏まえ、道路や港湾など、避難経路の多重化整備を進めております。例えば、委員の地元の福井県においては、国の交付金などを利用し、原子力災害制圧道路として一般県道赤礁崎公園線などの整備を行っております。

 資機材などの整備に関しては、安定沃素剤や放射線測定器、要援護者搬送用車両などの防災活動資機材などの整備、屋内退避施設の放射線防護対策などを進めており、内閣府において、平成二十六年度補正、二十七年度当初合計で二百億円を超える予算を計上し、自治体の行う防災対策を支援しているところでございます。

 中でも、福井県に関しては、平成二十六年度補正予算と二十七年度当初予算を合わせて、現段階においては十七・四億円の交付を決定しております。

 今後も、関係自治体と一体となって地域防災計画、避難計画の充実強化に努めてまいりたいと思っております。

助田委員 よろしくお願い申し上げます。

 原子力立地地域は、国が進める原子力政策に長年協力をしてまいりました。今後も、立地地域が持続的に維持発展できるよう、廃炉対策とあわせ、立地地域の経済、雇用対策の充実を図るようお願いしたいと思います。見解をお願いいたします。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、先生御指摘の立地地域、国のエネルギー政策あるいは原子力政策にこれまで御協力いただいた、御理解をいただいてきた、こうした事実というものに関しまして、改めて感謝の気持ちを述べたいと思います。

 その上で、御指摘の点でございますけれども、東日本大震災以降原発はずっととまってまいりましたけれども、再稼働の動きもございますし、そして、あわせて、今御指摘の廃炉の進展、あるいは冒頭に御質問のございました使用済み燃料の保管、こういったさまざまな状況変化というものが起こっております。こうした状況は、全国の原子力発電所の立地地域、さまざまな状況になっておろうかと思います。

 今後の私どもの地域支援の取り組みといったものも、こうした立地地域の実態に即したきめ細やかな取り組みというものを進めることが重要になってきていると思っております。

 こうした認識に立ちまして、今般の平成二十八年度の概算要求の中では、幾つかの新しい点を盛り込ませていただきました。

 一つは、原発を取り巻く環境変化が立地地域に与える影響、これは再稼働あるいは廃炉、さまざまな影響がございます。こうした観点を踏まえまして、立地地域の産業の振興あるいは雇用の確保などを支援いたします原子力発電施設立地地域基盤整備支援事業、こうした事業につきまして、本年度の予算は二十三億円でございますけれども、これを五十八・八億円という形で増額の要求をさせていただいております。

 それから、廃炉に伴いまして、これまで原発がございました立地市町村、こうしたところではさまざまな構造転換が必要となってこようかと思います。こうした立地市町村などが取り組みますエネルギー構造の転換を図るための事業、こうした事業を支援するという目的で、これは新たな予算でございますけれども、エネルギー構造転換理解促進事業といった予算を新規に四十五億円の規模で要求させていただいているところでございます。

 今後とも、こうしたさまざまな取り組みを通じまして、再稼働あるいは廃炉、さらには使用済み燃料の問題、こうした立地地域が直面いたしますさまざまな状況変化に応じまして、立地地域の多様なあり方を支援するための適切な対応というものにしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

助田委員 最後の質問でございます。

 今まで、エネルギーの生産地及び消費地等、いろいろな相互の関係、理解がございます。エネルギー問題や放射線について正しい理解が得られるよう、小中高等学校等における原子力、エネルギー教育の充実を図るなど取り組みを強化すべきと考えますけれども、文部省のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

伯井政府参考人 お答え申し上げます。

 エネルギー問題や、放射線が健康に与える影響等への関心が高まる中で、学校教育におきまして原子力を含むエネルギーに関する課題や放射線についての科学的知識を児童生徒に教えていくということは重要でございます。

 現在の学習指導要領におきましては、例えば中学校では、社会科におきまして資源やエネルギー問題について取り上げる、理科におきましてはエネルギー資源の有効利用や放射線の性質と利用について取り上げる、指導することとしております。

 この放射線に関する教育を支援するため、平成二十六年三月に、放射線についての科学的な知識の理解を助けるための副読本を作成いたしまして、希望する全国の小中高等学校に配付したところでございます。さらに、ことしの三月には、この副読本を効果的に活用して指導するための参考となるDVDを作成いたしまして、全国の小中高校等に配付したところでございます。また、教職員を対象とした研修、あるいは児童生徒を対象とした出前授業等、さまざまな取り組みを行っております。

 このほか、原子力・エネルギー教育支援事業交付金によりまして、立地地域だけではなくて、消費地域を含む全ての都道府県が主体的に実施する原子力やその他エネルギーに関する教育への取り組みに必要となる教材の整備であるとか、あるいは子供たちの施設の見学等についての事業への支援をしているところでございます。

 文部科学省といたしましては、今後とも、このような取り組みを通じまして、放射線及び原子力を含むエネルギーに関する教育の充実が図られるよう努めてまいりたいと考えております。

助田委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

吉野委員長 次に、宗清皇一君。

宗清委員 おはようございます。自由民主党の宗清でございます。

 質問の機会を与えていただきまして、感謝申し上げます。ありがとうございます。

 規制委員会の皆様方には、原発の審査に大変な御苦労をいただいておりますことを、心から感謝を申し上げます。

 私は原発のことについては全くの素人でございますけれども、その素人の私が規制委員会と電力事業者のやりとりを聞いて、また、我が国の置かれている状況を考えますと、審査のやりとりに幾つか疑問を持っておりますので、その点について確認をさせていただきたいと思います。

 私の選挙区は東大阪市というところでございまして、全国でも有数の中小企業の集積地ということになります。その中小企業の皆さんが、電気代の値上がりによりまして非常に苦しい状況に追い込まれております。電気代というのは約三割程度上がったというふうに言われていますが、経営を非常に圧迫しているという状況でございます。

 やはり原発の依存度が高かった関西電力の管内というのは、その分値上げの影響を強く受けておりまして、地域経済に大きな悪影響が出ているのが現状でございまして、これはもう何とかしなければならないと考えています。中小企業者の皆さんからは、原発であろうとなかろうと、とにかく電気代をこれ以上上げないでほしい、そういう切実な声をお聞きしております。

 言うまでもありませんけれども、エネルギー問題全体を考えるときに、単に安いという経済性を考えるだけではなくて、第一に安全性、特に原発については安全性、さらに安定供給、環境などさまざまな問題を考えなければなりませんし、我が国の資源、それに産業構造、人口、気候、地形等さまざまな問題を総合的に勘案して、間違いのない判断をしなければなりません。

 さらに、今後期待される再エネの普及拡大については、これは我が国にとって大変重要だという認識を持っておりますけれども、現状を考えれば、再エネが、安い値段で、かつ安定的に、直ちに多くの電気を供給できるわけではありません。やはり現実を考えたときに、安全性が確認された原発の再稼働を急ぐべきだと考えております。

 そこで、当初、田中委員長は、適合性審査については半年程度で終了するとの見解を示されておられましたけれども、現在、国内の四十三基の原発のうち二十五基、PWRが十五基、BWRが十基、十一社の会社から審査の申請がありますが、これまでに再稼働に至ったのは九州電力の川内原発一号機のみでございまして、全体的に審査が大きくおくれているのではないかなという印象を持っています。

 この審査がおくれればおくれるほど、電力事業者が損害をするだけではなくて、原発の代替による燃料費の増加で、それを結局国民が負担しているわけでございまして、実際、二〇一四年、原発停止による燃料費の増加で三・七兆円かかっているとも言われておりますし、震災前に比べると、十二兆とか十三兆の燃料代の増加があるとも言われています。これは国民の財産を毀損しているという考え方にも立てるわけでございます。

 そこで確認をしたいんですが、当初、半年で審査ができるというものが二年以上かかっているわけですけれども、これはどのようなことが原因で審査がおくれてきたということになっているんでしょうか。田中委員長の御見解を聞かせてください。

田中政府特別補佐人 新しい規制基準の特徴ですけれども、これは福島第一原子力発電所の事故を踏まえて、こういった事故を二度と起こさないということが基本になっております。

 その結果として、まず外部起因事象ですね、地震、津波だけではなくて、竜巻とか火山とか、そういったことを含めまして、そういった要因についての審査。これまではそういったことが非常に十分ではなかったという反省に立っています。

 それから、事故が起きないといういわゆる安全神話からの脱却ということで、事故が起きた場合でも、もちろん起きないようにする手だてを十分にするということと同時に、起きた場合においてもその影響を最小限にとどめるという重大事故対策、こういったものを厳しく求めております。

 言うなれば、当委員会としては、こういった自然現象を厳しく見詰める過程をしっかりと評価していくということなんですが、事業者の方では、こういった新しい要素について、先ほど櫻田部長からもありましたように、調査とか、それから解析とか、いろいろなことでその対応に手間取っているというところがございます。

 私どもとしては、効率性とか事業の御都合というんでしょうか、そういったことについては全く無視しているわけではありませんけれども、まず第一が安全の確保である。これは、福島第一の事故によりまして、原子力の安全規制に対する国民の信頼は全く地に落ちてしまったわけで、信頼を少しでも回復できる、得るということがまず第一ですので、そういったことを踏まえてやっています。その結果として、事業者の方も新しい基準に対する対応に非常に手間取っておるということが一つございます。

 そういったことを踏まえて、今までの経験をまとめながら、今後とも、効率化という意味では少し努力をしている、鋭意努力をしているというところでございます。

宗清委員 御答弁では、自然災害、それの新しい基準、そういうものについて事業者側も戸惑っている、手間取っているというお話もありました。

 これはお金だけの問題じゃないのはよくわかります、安全性の担保というのは何よりも最優先だと思いますが、しかし、一方で、原発停止による燃料代の増加というのは非常にやはり懸念されるところでございまして、燃料代というのは、当然これはほとんど海外から買っているわけですから、国民の資産が海外に流れているというようなことで、私は、こういうお金も国内で使えたら、もっといいエネルギー政策ができるのではないかなというふうに考えております。

 そういう意味で、原発の再稼働の審査をするに当たっては、先ほど委員長からも効率性という話がありましたけれども、当然、安全性を低下させることなく効率的な審査をする責務を負っているというふうに思うんですね。

 では、そのために、規制委員会として、審査を行うのにあるべき体制はどんなようなものなのか、どう考えているのか、聞かせてください。

田中政府特別補佐人 エネルギー政策自体については私どもの所掌ではありませんので、そこについては答弁は控えさせていただきたいと思いますが、いわゆる審査を行うためのあるべき体制ということについては、率直に申し上げますと、先ほど先生から御指摘のように、二十五基もの審査が、発電所だけでそれだけ、そのほかの施設もたくさん並行して出ておりますので、今、JNESの統合等によって少し強化はさせていただきましたけれども、なかなか十分な体制になっていないということがあります。

 その中で、私どもが努力しているのは、とにかく審査を効果的、効率的に進めるということが大事だということです。実態として私が非常に心配しておりますのは、私どもの職員がほとんど睡眠時間が十分とれないような状態での審査を連日、この二年、三年近くやってきているという、その実態もぜひ御理解いただければ幸いです。

 そういった中でありましても、今までの先行している審査の結果をまとめ、またそこでの主要な論点をまとめて、公表することによって、その後に続く原子力発電所の審査書の作成とか審査の議論とか、そういったものが効率的、効果的に進むように行っています。

 また、BWRについては、集中審査ということで、同じような議論を各社別々ではなくて、できるだけ同じようなテーマについては共通して理解していただくように、集中審査をやってきました。

 今、そろそろそこは一段落しましたので、柏崎刈羽を集中審査の一つに選びまして、そういったところで、今そこを先行と言うとあれですけれども、そういうことで、まずモデルをつくっていこうということで取り組んでいます。

 いろいろ努力はさせていただいているんですが、先ほど申し上げましたように、今十分な人材が確保できていない。これは、審査ができるような人材が日本全体を見ても非常に払底しているという状況でありますので、原子力の我々だけではなくて、いろいろな意味で原子力に今後携わる人間がもう少し厚みを持って確保できるように、これは国全体としてもぜひお考えいただければ幸いだと思います。

宗清委員 田中委員長のお言葉で、人材が十分でないということ。人材はそんなにすぐに育ちませんので、これは国としても、今から取り組んでも数年先、ひょっとしたら十年、二十年先にしかそういう人材が育たないわけですから、大事な問題であると思いますけれども、ただし、その原発の数というのは、最初から審査しなければならない数というのはわかっていたわけで、もう少しやはり早期の対応というのが、これは役所を含めてやっていただきたかったなという印象を持っています。

 先ほど効率的という話を申し上げましたけれども、これは、単にスピードだけではないと思います。職員の方が田中委員長のお話では本当に不眠不休で頑張っていただいているということは、これはもうみんなが感謝を申し上げているところでございますけれども、規制委員会の独立性ということを非常に言われるんです、これはかたく守ったまま、各関係省庁とか事業者と事前の情報交換、これは決してなれ合いとか癒着という意味ではございませんけれども、健全なコミュニケーション、そういう信頼関係を築いておくということも効率性を担保するということでは大事なのではないかなというふうに思うんです。

 それと、審査の過程において示された見解などを文書化するといった活動原則が十分にできているのかどうか、それと、審査の経過が十分に生かされているのかどうか、これも組織内でしっかり見直していただきたいなというふうに考えております。

 規制委員会として、このような問題について、十分にやってきたとは思いますけれども、そのことについて委員長の見解を聞かせていただきたいと思います。

田中政府特別補佐人 独立性ということについては、私どもの委員会が三条委員会の位置づけをしていただいたということだけではなくて、やはり世界的に見ても、安全規制はいろいろな意味で独立性を持っているということが最も大事だと言われているところでありますので、独立と孤立は違う、よくそういう御意見も伺いますけれども、基本はやはり独立であるということかと思っています。

 それから、できるだけ効果的、効率的な審査を進めるということについては、先ほど来申し上げましたように、新しい規制基準が我が国ではほとんど、事業者にとっても私どもにとっても、ひな形になるようなものはない部分がありましたので、今まさに両者が苦労しながら、合意を形成しながら、その議論の過程をできるだけ今後の審査の中に生かすようにドキュメントとして一つ一つまとめて、それを次の方たちが参考にできるようにという努力は毎日のようにやらせていただいておるところでございます。

宗清委員 四十年の廃炉についてちょっとお尋ねをしたいんです。

 審査中に四十年の運転期限を超えた場合に、解釈が明確になっていないと思いますが、四十年超えのプラントの審査が長引きますと、期限切れになってしまって、廃炉になってしまうのではないかなと心配をしています。一方で、現在審査が進められている後続のプラントの早期再稼働も、国益を考えますとこれは後回しにできませんので、これも急いでやっていただく必要があると思います。

 しかしながら、現状のような直列の審査ではそれぞれの審査スケジュールに影響を及ぼす可能性があるのではないかなと心配していますが、そのようなことがないように効率的な審査を行っていただきたいと思うんですが、田中委員長の見解を聞かせてください。

田中政府特別補佐人 まず、四十年の審査ですけれども、今具体的に申し上げますと、高浜の一号機、二号機、それから美浜の三号機、三つの申請がございます。

 法律で決められておりますので、工事認可まで、四十年を迎えるまでに終了しなければいけないということで、今そちらが優先的にというか、ほかのプラントの、早く早く申請がありましたけれども、法律で決められた期限内で審査が終了できるようにということで、今、事業者にもその旨心構えを伝えて、私どももそういう取り組みをしております。

 当然のことながら、そのことによって少し割を食うというか、そういうところも出てきているんですけれども、今そういうことでやらせていただいているということでございます。

 これだけのプラントを全部希望どおりに審査できるかというと、それはなかなか実態として難しいところがありますので、その辺をよく踏まえながら、優先順位を含めながらやらせていただいております。

宗清委員 今の委員長のお話では、ある原発の審査を優先するとほかのものがおくれるというような現状がやはりあろうかというふうに思うんですね。それは非常に僕も心配をしています。

 現在二十五基の申請があると思いますけれども、これはもう本当に相当な時間がかかるだろうと思います。

 現在審査中のものの二十二基について、プラントの審査はA、B、C、Dと四つのチームでされていると思いますが、これは単純計算すると一つのチームで五基から六基ぐらい審査しなければならないと思います。

 今のようなやはり直列審査という方法でやれば、仮に設置許可、工事認定を半年で終わらせても、二年とか、下手したら三年かかるのではないかなと思うんですけれども、今のようなやり方で全ての審査を終えるのにどれぐらいかかるんだろうか、みんながそういう疑問を持っているので質問をさせていただこうかなと思ったんですけれども、それは相手のあることですし、限られた人員だということですから、愚問になりますのでこれはもう控えます。

 ただ、余りにもやはり時間がかかってしまっているなという感じを受けます。審査がおくれている原因というのは、人員的なこともあろうかと思いますけれども、これは素人考えで、ちょっとやりとりを僕もいろいろなところから見て感じたことなんですが、まず、例えば、活断層であるとかないとか、電力事業者の基準地震動の見方が甘いとか、さまざまな報道もありました。

 それと、大飯と高浜の例を挙げれば、当初、事業者側がFO―Aという断層とFO―Bというこの二つの断層の二連動を考慮して基準地震動を策定してきたと思います。事業者の方からは、一般的に、五キロ離れているので活断層は連動しないというふうな主張もされ、規制委員会の方は、十五キロ離れている熊川断層をちゃんと入れて三連動で見るべきだ、もっと深いところでつながっているんじゃないかという主張のし合いがありました。もちろん事業者は多くの時間をかけて、ボーリングの調査をしたり、三連動の可能性が低いことを説明しましたけれども、また規制委員会の方から、その説明に対して、違うのではないかという意見がありました。

 この議論というのは大変大事だというふうに思いますけれども、結局、事業者の方が最終的には三連動が絶対に起こらないという証明ができなかった、できないということは結局三連動ということになったと思うんですね。自然災害の不確実さということが、証明できないということになりますと非常に議論が長期にわたるという事例だったというふうに思うんです。

 それと、事業者の断層の深さ、断層上端深さというところ、四キロで設定をしていたと思いますが、ある委員の方から三キロに設定をすべきだという個人的な見解が示されて、事業者が三・三キロで評価したら、規制委員会がそれにも納得をせぬと、これはやはり三キロにするべきだと。結局、高浜の三、四号機について三連動で七百ガル、大飯の三、四号機では八百五十六ガルということで落ちついたと思うんですね。

 このやりとりでどちらが正しいか、素人の私には全くわかりませんけれども、ただ、余りにもやはり膨大な時間をここにかけたのではないかなという印象を素人ながらに私が感じるところでございます。

 それはもう、事業者が出してきた資料とか数値、やり方に問題があるのであれば、規制委員会の方はそれに科学的な根拠を示して、例えば高浜や大飯については、初めからやはりこれは三連動で見るべきだとか、断層上端深さについても初めから科学的な根拠を示して、三キロでやりなさいということを事業者に示しておけば、より安全性も高めて、時間をもっともっと短縮できたのではないかなと素人ながらにやはり私も思うわけでございまして、こういうやりとりを振り返って、田中委員長の印象というか、これはもっと効率的にできたなと思われるかどうか、見解を聞かせてください。

田中政府特別補佐人 大飯の例が出ましたので、ちょっと一言私の方から申し上げて、その後、櫻田部長の方からお答えさせていただきます。

 まず、大飯については、新しい規制基準が二年前の七月に施行される前に、春ぐらいから、これもいろいろ御意見がありましたけれども、事前のいろいろな適合性審査のようなことをやりました。そのときに、地震動については三連動ということについて随分その段階でも議論がありまして、しかし、七月の施行される前に三連動でいきますということを事業者が認めていただいたわけです。

 ところが、正式な基準ができて、適合性審査の段階になったらまたそれをひっくり返して二連動だという主張をされたわけです。

 そういったことで、最終的には三連動になったわけですけれども、私の率直な印象ですと、そこだけでも半年ぐらいはおくれましたということなんです。一番最初のプラントで。

 ですから、そういうことを踏まえると、やはり、事業者が三連動を認めることによっていわゆる基準地震動のレベルが上がりますので、そういうことによってその対策に必要なお金もかかるということで、事業者はそういうことも踏まえて多分そういう主張をされたんでしょうけれども、私どもとしては、安全上の問題からいうとそこは譲れないという専門家の意見もありまして、そういった経過がございました。

 細かいことを言うと、いろいろなことがあっておくれる原因になったということがありますが、そういったことで、私どもだけで審査の効率を図るというのは大変難しいんだということをぜひ御理解願いたいと思います。

櫻田政府参考人 ただいま委員長から答弁差し上げました大飯発電所の現状評価について、ちょっと補足させていただきます。

 三連動、二連動の問題について、少し専門的になりますけれども、地震の評価をする際の断層の連動につきましては、それをベースのケースにするという考え方をとる必要があるというものと、連動するというのを、不確かさといいますか、こういう場合もあるかもしれないというケースとして捉える、二つのアプローチがございます。関西電力は、申請に当たりまして、三連動は不確かさに当たるんだ、こういう主張をされてきたというお話で、二連動がベースで三連動が不確かさ、こういうふうに主張してこられました。

 現状評価においては、そこのところは、そういう考え方もあるかもしれないけれども、そうするとほかのやり方で設定した地震動が上回るということがあって、そこは留意すべきだ、そういう指摘も既にしていたということがございます。

 それから、断層の深さという問題がございましたけれども、これにつきましても、断層の深さというのは言い方によって地震発生層の深さということでもございますけれども、これも大飯発電所の基準制定前の評価において、もっと浅いのではないかという議論は既にありまして、そういうこともあって、これもかなり時間がかかって、最終的に四キロじゃなくて三キロにする、そういうような話になりました。

 いずれにしても、事業者側の見解と規制側の見解が、科学的、技術的な論点ということですからぶつかり合うというところは否めないところがあると思いますし、そこをしっかりと議論をするということが審査の場においてやるべきことだというふうに思っています。

 それに時間がかかるというのは結果論として難しいところがあったのかもしれませんけれども、こういう姿勢で私ども取り組んでいるということがほかの発電所を持っている電力会社に対しても明らかになったところだと思いますし、議論の経過は先ほど申し上げましたような審査書の中でもしっかり書かせていただいたし、また、電力会社の中の方々にとっては、ユーチューブで中継されているものもございますので、そういったことをあらかじめ見ることによって、ほかの発電所における審査にうまく役立てていただくことによって効率化を図ってまいりたいというふうに考えてございます。

宗清委員 御答弁ありがとうございます。

 私は専門家でも何でもありませんけれども、やりとりを見ていますと、何かお互いの主張をぶつけ合っているだけのように見えまして、本当に科学的な知見に基づいてやっているように、少し違和感がやはりございました。

 地震の規模とか震源の深さとか、津波、竜巻、これは立地している場所によって異なるというのは当然当たり前のことなんですけれども、もし今までのやりとりに反省点があるならば、次の審査にやはり生かしていただきたいなというふうにお願いをしたいと思います。

 確認をちょっと一点させていただきたいんですけれども、先ほど申し上げた地震の大きさ、例えば影響の範囲、連動の可能性、それと震源の深さ、竜巻のときにも同じようなやりとりの議論があったと記憶していますが、審査するチームの裁量、個人的な見解によって審査の判断が変わるということはございませんよね。

櫻田政府参考人 地震については、チームが最近は二つに分かれましたけれども、最終的な判断は私が審査チーム長としてやってございますし、また担当の管理官も一人でございますし、最終的な御判断は、委員会としては石渡先生に見ていただくということになってございますので、そこはチームによって差があるということはないようにすべきであるし、また、してきているつもりでございます。

宗清委員 愚問であったと思いますけれども、例えばチームによって、裁量によって判断が違うとか個人的な見解で審査に影響が出るということであれば、これは原発行政そのものにやはり信頼が失われるわけですし、僕は、そういうことはまた効率性の担保というところにもつながっていくのではないかなと思うので、念のために確認をさせていただきました。

 最後に、ちょっと原発に関して私見を申し上げたいと思います。

 現在行われているこの審査だけでも電力会社というのは膨大な作業が必要になりますし、東電とか関電は規模も大きく職員数も多い、何とか対応できているのではないかなと思うんですが、比較的小さな電力会社というのは、対応を少し心配しています。

 ことし三月に北海道電力の社長が、泊原発について、安全審査の対応のおくれから再稼働がおくれる可能性があるということを示唆されていましたし、特に地方電力において、財政面とか人員面、再稼働に対する実務面で相当無理があるのではないかなと感じています。また、再稼働後も、新規制基準のもと、技術面、管理面、災害対策など一層のマネジメントの強化、業務の増加に対応しなければなりませんし、電力会社の規模や能力などを考えると、規制委員会が求めている業務量をこれからもきちっとやっていただける体力が原発を保有する各会社にあるのかなというふうに思っています。

 さらに、原発を稼働させるということは、各社数千億円の安全対策も必要でございますし、廃炉のときは一基数百億円の廃炉費用というものを単独で賄わなければなりません。また、起こってはあきませんけれども、一たび事故が起これば、賠償責任、賠償能力ということも同じことが言えると思うんですね。

 東電の賠償額というのは五兆円とも六兆円とも報道ベースで言われておりますけれども、到底、一民間企業でやっていけるのかなということは一般の国民の皆さんも疑問に思っていると思うんですね。規制委員会の基準を厳格に守って、電力事業者に過失がなかったとしても、やはり現行法で、事故が起これば電気事業者の方に全て賠償責任、責任があるわけでございます。

 原子力の損害賠償制度では、一般的な事故の場合に千二百億円、地震、噴火、津波による災害、政府補償契約で千二百億円、しかし、この足して二千四百億円でも到底足りないわけでございまして、小さな電力会社がそのような能力を本当に、万が一のときに果たしていただけるのかな、僕は疑問に思うところもございます。

 現在、それぞれの会社が一般負担金を出し合っていますけれども、結局その金は東電の賠償の方に回っているという現状もございますし、技術面とか人的資産、申請の体制ですね、八万ページや十万ページと言われるような申請を出したり、事故の補償やその後の対応なども考えますと、このような状況で、全国で十一の電力会社がそれぞれ別々の原発を保有して運転することが、我が国の原発政策を考える上で本当に合理的なのかなというふうに私は疑問を持ち始めています。

 そのことについて見解を、経済産業省の方からお聞かせいただきたいと思います。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の点でございますけれども、まず大前提といたしまして、原子力発電所をつくり、そして運転をするということについて、それを選択するかどうかという点につきましては電力各社の判断である、経営判断に属するものであろうかと思います。

 その上で、あくまで御参考までに申し上げますけれども、海外の例を見ますと、発電設備の容量一千万キロワットに満たないような事業者でございましても原子力発電所を運転しているという例は存在しておりまして、その意味では、我が国の現状というものが、海外との比較におきましても、何かおかしな状況になっているということではないと思っております。

 実際に、今御指摘でございました審査対応それから廃炉に向けた対応、さらには、これはあってはならないことだと思いますけれども、万が一の賠償といった点、それぞれ考えましても、一つ、審査対応につきまして、これはいろいろな見方があろうかと思いますけれども、各社自身の判断といたしましては、人材が量的に不足しているということではないかというふうに承知をしております。

 また、廃炉等につきましては、積み立ての制度もございますし、そして会計の制度も用意させていただきました。

 さらに、賠償、この問題につきましては、これはあってはならないことではございますけれども、現在、原子力損害賠償制度がございます、御指摘の点でございます。さらに、先般は、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法、こうしたものも新たにつくられたところでございまして、現時点で、今の体制におきまして特段の不都合が生じている、このような判断をするような状況ではないと思っております。

 先生の御指摘、突き詰めていきますと、恐らく、事業の再編でございますとかあるいは経営の統合、こういったことを御示唆されているかと思います。この点につきまして、これは各社の経営判断でございまして、私どもが政策をしていく立場あるいは行政の立場で何か特段のことを申し上げるべきことではないと思っております。

 ただ、私どもも、電力システム改革等々、さまざまな環境変化を事業者にもたらすような取り組みも別途進めておりまして、こうした中で各社どのような取り組みをしていくのか、これはしっかりと見守っていきたい、このように思っております。

宗清委員 質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

吉野委員長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民主党の逢坂誠二でございます。

 この原子力特別委員会ですけれども、今回の、延長された二百四十五日間の長い会期の中の国会で、私の記憶では、事実上審議がされたのは三回だけだったかというふうに記憶をしております。何とかもっと頻繁に開催をしていただきたいということで前回の委員会でも申し上げさせていただきましたけれども、今回やっと、事実上の審議、四回目の開催になったということで、吉野委員長に心から感謝申し上げたいと思いますし、与野党の理事の皆さんにもお礼申し上げたいと思います。原子力の問題、今の日本にとって非常に大きな課題でありますので、ぜひ今後とも頻繁にまた開催していただけるようにお願い申し上げたいと思います。よろしくお願いします。

 それでは、早速質問に入りたいと思います。

 まず最初に、けさの新聞報道に関することをちょっとお伺いさせていただきます。けさ、多分これは共同通信が配信した記事をもとに全国の新聞が書いたんだと思いますが、こんな記事がございました。

 「(Jパワー)が青森県大間町に建設中の大間原発について、これまで二〇二一年度ごろとしていた運転開始の目標時期を一年程度先送りすることが二日、関係者への取材で分かった。原子力規制委員会の審査に時間がかかっており、見直しを迫られた。」ということであります。

 私どもの地元函館市は、現在、国を相手取って、この大間原発の工事を凍結する訴訟を起こしております。Jパワーもその対象になっております。さらに、この件については函館市議会も賛成という立場であります。

 それから、昨年十二月の十六日でしたか、Jパワーが原子力規制委員会に対して新規制基準適合審査申請を行ったということについても、地元では、その申請そのものがそもそもおかしいのではないかといった非常に多くの意見もあるわけでございます。

 そういう中ではありますけれども、今回この規制基準の審査が長引いているということでありますけれども、このことについて、まず規制委員会の田中委員長に、今の状況あるいは今後の見通し、課題などについてお話しいただければと思います。

田中政府特別補佐人 大間原子力発電所については、今先生御指摘のように、昨年の十二月十六日に新規制基準適合に係る原子炉設置変更許可申請等の申請を受け付けました。以降、五回の審査会合を開催し、審査を進めているところではございます。

 今後の審査の見通しについてという御質問ですけれども、これは、先ほど来議論させていただいていますように、事業者の対応によるところも大きいので、現時点でいつになるかということは申し上げることは大変難しいと思います。

 大間発電所につきましては、自然、外的起因事象となりますような地震、津波とかいろいろな、そういったことについての評価会合もまだまだ途中でございますので、今後どういう進展をするかということについては、今予断を持って申し上げられる段階ではございません。

逢坂委員 今委員長の方から、事業者の都合もあるというようなこともあって必ずしも、あるいはまた自然のことについてもまだ調査を必要とするんだといったような話だったと思いますが、この件についてもう一言だけ言わせていただきたいと思うんです。

 原子炉立地指針ですか、新しい規制基準に基づく原子炉立地指針の中に、原子力発電所に関しては、「周辺の公衆に著しい放射線災害を与えないこと。」というようなくだりがあろうかと思います。そして、原子炉の周辺は、「原子炉からある距離の範囲内は非居住区域であること。」すなわち、人が住んでいない区域であることというルールが定められております。さらに、「非居住区域の外側の地帯は、低人口地帯であること。」低人口でありますから、人口が少ない、こういうことが指針の中に定められているわけであります。

 大間原発に関して言いますと、これは函館市のホームページに掲載されている数値でありますが、三十キロ圏内に居住している人は三万八十六人であります。これが四十キロ圏に広がると、三十五万六千三百六十七人ということで、三十万人以上の方が住まっているのが大間原発の周辺地域であります。

 こうしたことを思いますと、非居住区域が必要であるということと同時に、その外側の地帯は低人口地帯であるというこの指針にそもそも反するのではないかという気がするわけでありますけれども、これは質問通告をしておりませんので、田中委員長、もし何かこの件についてお考えがあれば、お話しいただければと思います。

田中政府特別補佐人 先生御指摘の立地指針ですけれども、これをなくしたわけではございませんけれども、旧指針においては、重大事故とか仮想事故、要するに、敷地の外、敷地境界から外に重大な影響を及ぼすような事故が起こらないということでありましたので、そういった記述が残っております。しかし、今回は、安全目標とか安全の評価、川内でいきますと、セシウム換算で最大五・六テラベクレル、一番厳しい基準でそういったところまで求めております。

 それから、著しい放射線障害というのをどういうふうに見るかということですけれども、国際的に見ると、一週間の緊急時の被曝線量が二十ミリシーベルトぐらいというようなことでありまして、今回の、これは私どもの指針の中では、一応、そういったことが起こらないように、あらかじめ避難するPAZ、五キロ圏、あるいはその外側のUPZ、そういった、事象の進展によって避難する区域を決めさせていただいています。

 そういったことで、決して、指針に定めていますような線量を超えるような被曝がないような手だては、きちっとしていただくようお願いしているところでございます。

逢坂委員 この件については、また後日、きちんとまたデータを整理して再度やらせていただきたいと思っております。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 まず、初歩的な話からなんですが、経産省の事務方にお伺いしますけれども、発電所の設置目的というのは一体何なのかということを教えていただけますか。極めて初歩的な質問でありますけれども。

吉野政府参考人 お答えいたします。

 発電所の設置目的でございますけれども、これは、発電所を設置する事業者によって判断されるものであり、事業者が誰か、またどのような用途を想定するかによってさまざまであるというふうに考えております。

 一般電気事業者や卸電気事業者など電気事業者が設置する発電所の設置については、一般需要家への電気の供給を想定した商業発電を目的とするものが多数を占めるものというふうに認識をしております。

逢坂委員 あわせてお伺いします。

 原子力発電所全体を統括する主務官庁というのはどこになるんでしょうか。事務方に答弁をお願いします。

吉野政府参考人 お答えいたします。

 まず、私ども経済産業省でございますけれども、設置法上、エネルギーに関する原子力政策を所掌しており、原子力発電所を運転する電力会社も所管をしているというところでございます。

 また、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓に学び、一つの行政組織が原子力の利用の推進及び規制の両方の機能を担うことにより生ずる問題を解決するため、原子力利用における安全の確保に関することを所掌する独立した原子力規制委員会が設置されたものというふうに承知をしております。

 以上でございます。

逢坂委員 あえてこういう質問をするのは、いつも、質問、答弁、これを調整する際に、どこが担当するんだとか、これはあっちではないかとか、こっちではないかとか、我々がそう言うのではなくて、事務方同士が言い合っているという姿があるものですから、政府の方も、どういう組織がどういうところをどう担当しているんだということは職員全体にもしっかりと認識をしてもらうようにしていただきたいと思います。

 それでは次に、先ほど、発電所の設置目的は何だ、それは事業者によって判断されるんだということなんですが、国民の皆さんに聞いたら、発電所の設置目的って電気をつくることなんじゃないですかというのが当たり前だと思うんですが、役所の答弁というのはなかなか難しいものでありまして。電気を発電するために発電所というのはつくるんじゃないのかというふうに思うんですが。

 それでは、改めて、大間原子力発電所の設置目的、これは設置許可申請の中に多分書かれておると思うんですけれども、それは何でしょうか。

山田政府参考人 大間原子力発電所につきましては、平成二十年四月に設置許可をしてございます。その設置許可申請書に書かれております使用の目的につきましては、商業発電用というふうに記載されてございます。

逢坂委員 大間原子力発電所の設置目的は商業発電用、すなわち、電気をつくって電気を売るということが目的だということであります。これだと非常にわかりやすいわけですね。先ほどの経産省の答弁だと、事業者によって判断すると。発電所は電気をつくるものに決まっているんじゃないかと我々は思うんですけれども。わかりました。

 そこで、この大間原子力発電所の電力というのは、Jパワーというのは卸電力会社でありますので、どこが購入する予定になっているんでしょうか。

吉野政府参考人 お答えをいたします。

 大間原発で発電される電気につきましては、北海道電力、東北電力、東京電力、中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力及び九州電力の九社が受電することが予定されているというふうに承知をしております。

逢坂委員 大間原子力発電所の所在地は本州の最北端であります。その本州の最北端で発電した電気を、沖縄を除いて、九つの日本じゅうの電力会社が購入するということでありますけれども、私の感覚からいえば、あえて本州の最北端で発電したものを九州電力が買うなんということは、合理性の上からもこれはおかしいんじゃないかという気がするんですが、なぜこんな、九つの電力会社が買うということになっているのか。その意味合いというのは、もし経産省でおわかりなら教えていただけますか。

吉野政府参考人 お答えいたします。

 電力の供給に関しましては、ネットワークを介しまして、実際に距離的には離れておりますけれども、統一のネットワークのもとで、大間で発電されるものが例えば九州電力で実際に供給に供されるというところに関しては、特に違和感のないビジネスのスタイルかというふうに考えております。

逢坂委員 特に違和感のないビジネススタイルというふうにおっしゃいましたでしょうか。そういうことなんだということでありますけれども、それでは、あえてもう一歩突っ込んで質問させてもらいますが、なぜ、あえて九つの電力会社が買うということになっているんでしょうか。なぜ、あえて。

吉野政府参考人 お答えします。

 これは、大間原子力発電所のプロジェクトの経緯もございますけれども、大間原子力発電所に関しましては、フルMOXの発電所として建設が進められるものでございます。関係する事業者、それぞれ原子力発電所の事業も進めております。そうしたところから、共同して、ある種、各電力会社がかかわる形でこうしたプロジェクトが進められている、その背景を踏まえながら各社が受電をするという形になっているものというふうに理解をしております。

逢坂委員 このフルMOXでやるというプロジェクト、その中で各社がかかわるということでありますけれども、なぜこれは各社がかかわる必要があるんですか、そのプロジェクトで。

吉野政府参考人 お答えいたします。

 プルサーマルの推進、MOX燃料を使う発電、すなわちプルサーマルに関しましては、一般電気事業者全体で進めているということでもございます。

 そうしたことから、それぞれの原子力発電所から発生する使用済み燃料の、再処理を経た後の資源の再利用を促す、円滑に行う観点から、関係する大間を初め、各電力会社もそれぞれプルサーマルの推進のために取り組んできているわけでございますけれども、その中で、大間につきましては、全体の四分の一ほどのMOX燃料を使用するといった重要な発電所であるという位置づけのもとで、今、各社が協力をしながら進めてきているというふうに認識をしております。

逢坂委員 すなわち、今の話を聞けば、大間原子力発電所は、プルサーマルを推進する、あるいは使用済み核燃料の再使用を促進するといいましょうか、そういう位置づけの中にあるんだということだというふうに思います。

 すなわち、単なる発電目的だけではなくて、使用済み核燃料の処理に大きくかかわる、そういう発電所なんだという今の御発言だと思うんですけれども、そのように理解してよろしいでしょうか。

吉野政府参考人 お答え申し上げます。

 核燃料サイクル、それから、それに係りますプルサーマルを推進する上で重要な発電所であるというふうに認識をしております。

逢坂委員 それでは、ちょっと、さらに事実だけをお伺いしたいんですけれども、大間原子力発電所とその他の原子力発電所の電力の発電単価、これについては経産省では把握しておられるでしょうか。

吉野政府参考人 お答えいたします。

 各電力会社におけるその発電単価に関しましては、これは競争上の問題もございますので、政府としてお答えする立場にはございません。

 以上でございます。

逢坂委員 競争上の観点から政府としては把握する立場にはないと。はい、わかりました。

 それでは、MOX燃料とその他の一般的なウラン燃料の製造単価、これについては把握されているでしょうか。

吉野政府参考人 お答え申し上げます。

 MOX燃料及びウラン燃料それぞれの製造単価に関しましても、これは事業者間での契約で個別に定められているものでございまして、政府としては承知をしておりません。

逢坂委員 MOX燃料とその他のウラン燃料の製造単価も政府は把握をしていないと。わかりました。

 それでは、今、MOX燃料は、これを製造する力が必ずしも十分には日本国内にはないということで、海外にこの製造をお願いしているというふうに承知をしておりますが、今後、六ケ所村の再処理工場などが稼働し出しますと国内で製造が始まるというふうに思われますが、海外の製造と国内の製造のこの製造単価の違いは把握されているでしょうか。

吉野政府参考人 お答え申し上げます。

 今お答えしたとおりでございまして、MOX燃料の実際のその価格、製造単価といったものは、民民の契約に係るものでございますので、私どもとしては承知をしておりません。

逢坂委員 それでは次に、別の面からお伺いしますけれども、原子力発電所の設置許可申請が行われる、その際に、電力、そのプラント全体の収支採算見通しとか事業見通しといったようなものは、これは必須の項目ではないということでよろしいんでしょうか。

 といいますのは、今、発電単価についても政府は把握していない、MOX燃料、その他のウラン燃料の製造単価も把握していない、海外で燃料をつくった場合と国内で燃料をつくった場合のその価格についても把握していないということなんですが、それでは、設置許可をする際に、収支採算とか事業見通し、これは必須項目ではないということでよろしいんでしょうか。

 これは、規制委員会もしくは経産省、どちらでもよろしいですので、お答えください。

山田政府参考人 設置許可の手続について御説明をさせていただきます。

 事業者が原子炉設置許可を申請する際には、申請に係る工事に要する資金の額、調達計画を申請書に記載するように求めてございます。これらを通じまして、発電用原子炉を設置するために必要な経理的基礎、これを確認するということになってございます。

逢坂委員 先ほど来答弁があったとおり、この大間原子力発電所というのは、核燃料サイクル、あるいは使用済み核燃料の処理、あるいは使用済み核燃料を再使用するといったような、国家的な大きなプロジェクトの中に位置づけられる発電所だというふうに思います。

 しかしながら、その際に、一体どれぐらい発電単価がかかるのかとか、燃料にどれぐらいお金がかかるのかとか、そういったことも政府が把握をしないでやっているとすれば、それは余りにもずさんで、余りにも無責任なのではないかという気がするんですね。

 こうしたことをしっかり把握した上で、これこれぐらいのお金がかかるから核燃料サイクルは妥当であるとか、こんなにお金がかかっちゃうから核燃料サイクルではなくて別の方法で使用済み核燃料の問題に対応しなきゃいけないとか、そういうことを考えるのが当たり前のことだと思うんですけれども。

 これは事務方ではなくて政治家の皆さんにお答えいただきたいんですけれども、これはいかがでしょうか。ちょっとおかしいと思いませんか、こんなことも把握していないなんというのは。

高木副大臣 今、逢坂委員が御指摘のような、プルサーマルの計画、まさにプロジェクトとして推進をしているという流れの中にあって、そういった問題というものは必要なことだと思います。

 一方で、民間の事業者としての競争契約、こういうような形の中で、個別の、一つ一つの単価についてこれを追求していく、もしくはこれを公表していく。これは、それぞれの電気事業者、今回自由化がさらに推進をされましたので、そういった面からはこれは公表できない、こういうような状況であると思いますし、私どもは、全体観に立って、その上で、価格、コストの部分も含めますけれども、さらには使用済み核燃料の処理の仕方、そういった全体観の中でこのプロジェクトというものを把握している、または検討している、このような状況でございます。

逢坂委員 高木副大臣、ありがとうございます。いつも丁寧な答弁をしていただいて、私、副大臣の顔を見ると安心するんです。ありがとうございます。

 そこで、今のお話は、これはもう民間の競争もあるからそれは公表できないんだということですけれども、あえて言わせていただきますと、フルMOXで発電する電力会社というのはJパワーしかないんですよ。競争も何もないわけでありますよ。それなのに、そういうことを言っていていいのかということが一つと、最終的には電力はやはり国民の皆さんが使う、買うということになるわけです、全国の九つの電力会社を通して。非常に、これは極めて特別な発電なわけであります。そのときに、単価の構成がどうなっているかとか、そういうことを概略すらも事務方が言えないような状況の中でこの仕事を進めているというのは、私はこれは非常に無謀なことだと思いますよ。

 お金の面もきっちり、ここはこういう金の見通しになっているんだ、だからこの核燃料サイクルというのは妥当性があるんだとか、そういうことをやらないと、これはまたおかしなことになっちゃいますよ。別にちょっと、最近あの国立競技場の問題があるのでそのことを表に出しがちなんですけれども、あんなものじゃ済まないですよ。あんなものじゃという言い方も失礼ですけれども。

 だから、これは競争だから単価が言えないとかではなくて、実際にどの程度、どう金がかかるんだという見通しくらいちゃんと持ってもらわないと、政策として判断のしようがない。これは完全に民間事業者の仕事ではありませんので、その点、副大臣はいかがですか。

高木副大臣 まさに委員の御指摘のように、やはり貴重な、国民に負担をしていただく、電気料金の問題もございますので、この問題についてはさらに当省としてもしっかりと精査を重ねてまいりたい、このように考えております。

逢坂委員 ぜひ、しっかりとした金目の見通し、あるいは効率性というか、本当にこの国で核燃料サイクルをやっていって将来ともに大丈夫なのかという見通しも含めてしっかり御検討いただきたいと思います。前向きの答弁をありがとうございます。

 それでは次に、大間原発から排出される温排水についてお伺いをしたいんですけれども、この温排水の量と温度、これは設置申請時にはどのようなことになっていたでしょうか。あわせて、温排水に何らかの化学物質を添加して、すなわち、海水をくみ上げて直接海水を使うんじゃなくて何らかの処理をして利用しているのかどうかについてもお答えください。

山田政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、平成二十年四月に設置許可をしてございますけれども、その設置許可申請書によれば、海水の取水量は約九十一立方メートル毎秒とされてございます。排水量はこれと同量ということでございます。また、復水器における冷却水の温度上昇、これは七度C以下というふうに記載されてございます。

 それから、冷却水に何か注入しているかどうかということでございますけれども、塩素注入は行わないというふうに記載されてございます。

逢坂委員 再確認ですけれども、塩素注入は行わないという答弁ですけれども、塩素以外のものは入っているかどうかはわからないんでしょうか。

山田政府参考人 設置許可申請書上は、その他のものについての記載はございません。

逢坂委員 設置許可申請書を私も見せていただきましたけれども、塩素は含まないということは書いてありましたけれども、その他の化学物質については言及がないので、この時点ではちょっと明らかにならないわけでありますので、これについてはまた後ほど役所の方とも調整をさせて調べさせていただきたいと思います。

 今の答弁を聞いて、国民の皆さんはどのように感じるか。一秒間にいわゆる九十トン、九十立米の水が排出される、それから海水との温度差は最大限七度ということでありますけれども、要するに、最大で七度、海水よりも水温の高いのが、一秒間に九十立米、九十トン排出をされるということであります。

 これは、感覚としてはなかなかわかりにくいんですけれども、河川に例えるとどういう状況になるかということなんですね。例えば、九十立米ですから、一秒間に九十立米ということは、一メートル掛ける一メートル掛ける一メートルの立方体が横に九十個並んでいるということなんですね。だから、水深一メートルの河川、しかも幅が九十メートルある河川がどんどん流れているのと一緒だということです。しかも、その水温が通常海水よりも七度高いということは、新たに新規の河川を一本つくるのとほぼ同様のことなんですね、しかも温かい水が流れていくわけであります。これは、私は大変なことだと思います。

 実は、私の生まれ故郷に尻別川という川があるんですが、尻別川という川は、一級河川、清流日本一を何年もとらせていただいている非常にいい川です。これは、実は、行かれた方はわかってくださると思いますが、非常に大きな川なんです。この河口付近の流量が一秒間に七十八立米なんですよ。あれほどの河川であっても七十八立米、年平均。

 だから、それを考えてみると、この温排水というのは物すごいものだということは改めて認識をしていただきたいと思います。可視化してみると、やはりとんでもないことになっているんだなということなんだろうというふうに思います。

 この点は、きょうはこの程度にとどめさせていただきます。ほかに用意した質問がありますので、そちらへ移らせていただきます。申しわけございません。

 先日、八月の十四日に総理がNHKの「ニュースウオッチ9」で次のような発言をしております。これは川内原発の避難計画に関してなんですが、「十キロ圏内のみなさまについてはですね、医療や福祉施設に入っておられる方も含めて、要支援者の方々については、お一人お一人について、避難先や避難手段はもう特定しています。また住民避難のためのバスも確保しています。」ということなんであります。

 私は、この発言を聞いたときに、こうやって総理が言うというのは、国民の皆様に、そうか、そんなにちゃんと避難計画ができているんだなという安心感を与える一方で、もしこれが事実でないとすれば、それはそれでまたとんでもない話だというふうに思うんですね。

 そこで、お手元に資料を用意させていただきました。まず、内閣府のホームページにございます、川内原発に関する避難計画の一部をお手元の資料として用意させていただきました。

 二十一という数字、右の下にあろうかと思いますが、それをごらんいただきたいんですが、これはPAZ圏内、すなわちゼロから五キロ圏内にある避難元施設、病院とか認知症高齢者グループホームとか、幾つかございます。これらに入っている方の入所定員が三百六十三、そして逆に、右側に避難先施設というのがあって、受け入れ可能人数、二百四十七とか三十七とか、合計で七百五十というのがあるんです。

 まず、政府に説明いただきたいんですけれども、この受け入れ可能人数というのは一体どういう数値なんでしょうか。

平井政府参考人 お答えいたします。

 PAZ圏内七施設につきましては、それぞれの避難元施設、ここから一対一の関係で避難先施設が決定しておりまして、そこで受け入れている最大の数が、例えば一の病院ですと、避難先の病院では二百四十七の受け入れが可能だということでございます。

逢坂委員 二百四十七の受け入れが可能だということなんですけれども、これは、病院であれば、二百六ベッドに入院されている方が二百四十七の受け入れ可能な施設へ行くからこれは安心だなというふうに一般的には思うんですけれども、この二百四十七の現実、実態というのはどういうものなんですか。ここにはちゃんと二百四十七のベッドがあるんですか。いかがですか。

平井政府参考人 お答えいたします。

 計画上は二百四十七のベッドがあるということですが、ただ、実際、いろいろな状況で、ある被害が生じたときにそれがあるかどうかというのは、そのときにはチェックしなければわからないということもあります。

 いずれにしましても、この表にも書いていますとおり、何らかの事情であらかじめ選定しておいた避難先施設が活用できない場合は、鹿児島県が受け入れ施設を調整する、こういう仕組みになっております。

逢坂委員 今の答弁、もしかしたら取り消した方がいいかもしれないと私は思うんですが、計画上は二百四十七のベッドがあるということになっておりますがと御発言になったようですけれども、計画上、本当にありますか。ないんじゃないですか。

 そして、いろいろヒアリングをしますと、この二百四十七というのは、会議室とかロビーとか、あるいはほかの空き部屋、空き部屋というのは場合によっては倉庫のようなところもあるかもしれない、そういうところをフル活動して二百四十七人が受け入れられるという数字であって、必ずしもベッドのある数字ではないんだということは事務方からのヒアリングで明らかになっているんですよ。それなのに二百四十七のベッドがあるかのような答弁をしては、私はまずいと思いますよ。

 そして、さらに言うならば、会議室とかロビーとかに二百四十七人受け入れられるということであるならば、それは長期間ではないんですよ。これも役所からヒアリングをしましたら、数日とか、せいぜい長くても十日とか二週間レベルだ、それしかいられないというのがこの二百四十七であり七百五十なんだ。

 そうなってしまうと、総理が発言した、要支援者の方々についてはお一人お一人について避難先や避難手段ももう特定していますなんという発言は、私はこれは適切な発言とは思われない。これは絶対おかしいですよ。これは政治家の皆さん、どう思われますか。

福山大臣政務官 今お話ございましたように、五キロ圏内、そしてさらに五キロから十キロ圏内、いろいろな形でお話をされておりますけれども、今議員おっしゃいました施設、会議室あるいはそういういろいろな部屋ですね、いわゆる仮の形としてという表現もございましたけれども、今現在、先ほど平井統括官の方から御答弁ありましたように、そういう施設については、我々、地域の方と相談いたしまして数字を出しております。そして、その数字がそぐわない場合には県の方が今調整をするということで話し合いを進めておりますので、そのあたりは御理解を賜りたいと思っております。

逢坂委員 御理解賜りたいって、県の方が調整しているって、御理解なんか全然できないですよ。実際に避難してどういう状況になるかというのは、私も福島のときに政府の中におりましたので、非常に過酷な状況になるということは火を見るより明らかでありまして、それなのにこの計画だけで総理がテレビであたかも万全であるかのような発言をしているなんというのは、私はとんでもないことだというふうに思います。

 きょうは時間が来ましたのでこれで終了させていただきますが、吉野委員長、これからも引き続き、ぜひ委員会の開催をよろしくお願いしたいと思います。

 ありがとうございます。

吉野委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 維新の党の河野正美でございます。

 私は福岡県の出身ですけれども、今、我がふるさとの九州から再び核のごみがふえ続けようとしております。まず、川内原発に関連した質問をきょうはさせていただきたいと思います。

 八月十一日、九州電力川内原子力発電所一号機が再稼働されるに至りました。この間、原子力発電の安全な稼働のため尽力されてきた現場の皆様方には敬意を表したいと思います。

 その上で、我が維新の党の考え方をまず述べさせていただきますが、事業者や国、地方自治体の権限や責任が明確になっていないままで、なおかつ、先ほどお話ししましたように核燃料廃棄物の処分方法も処分場も明確に決定していない中で再稼働していくことには、反対の立場でございます。

 川内原子力発電所の再稼働に至るプロセスは、今後の原発の再稼働の道筋を考えていく上で極めて重要ではないかというふうに考えております。

 初めに、再稼働から現在に至るまで、川内原子力発電所の運転状況について、原子力規制委員会の認識を簡潔に伺いたいと思います。

山田政府参考人 川内原子力発電所第一号機におきましては、八月十一日に制御棒の引き抜き操作が開始されまして、その後徐々に出力を上昇させ、八月三十一日に定格熱出力一定運転の状態に至ったとの報告を受けてございます。

 原子力規制委員会としては、燃料装荷から原子炉の起動時までの保安検査や施設定期検査等、必要な検査を行ってまいっております。

 川内原子力発電所第一号機の出力上昇期間において、タービンを回した後の蒸気を冷やして水に戻すための復水器と呼ばれる機器の三台のうちの一台について海水が混入をしたということで、出力上昇をおくらせて内部を点検し、必要な補修が行われてございます。本件については、安全上の懸念があるものではなく、また、九州電力の補修は適切に行われたということを原子力規制委員会の検査官が現地で確認しております。

 現在、使用前検査及び施設定期検査をまだ実施中でございますので、引き続き厳格に検査を進めてまいりたいというふうに考えてございます。

河野(正)委員 今回の再稼働に当たりまして、報道機関による世論調査が行われております。例えば、七月十、十一日に実施された時事通信の調査によれば、賛成が三二・七%、反対五四・三%。八月八、九両日に実施された毎日新聞の調査では、賛成三〇%、反対五七%。いずれも、再稼働に反対するというふうな意見が多くなっております。

 世論調査の結果から見られるように、今回の原発再稼働に反対する国民が多いというのが現実だというふうに思います。

 原発再稼働の審査に当たられた原子力規制委員会は、国民から信頼される原子力規制組織を確立していかねばならず、今回の世論調査も踏まえれば、原子力規制委員会による安全審査が必ずしも国民から信頼されていないとも受け取ることができるのかと思います。

 非常に難しい問題だと思いますけれども、原子力規制委員長の受けとめを可能な範囲でお伺いしたいと思います。

田中政府特別補佐人 先生御指摘のように、国民の信頼をいかに回復するかということは、私どもが発足したときから、私は口酸っぱくそういうことを申し上げてきました。

 これは言うまでもなく、福島第一の事故によって、信頼というのはほとんどもうゼロに近いような状況になったのかというふうに思います。そこからどういうふうに安全規制への信頼を確保するかということについては、私どもとしては、透明性、中立性を持って、科学技術的なベースに基づいて独立した判断をするということで、そのプロセスを全て公開するというようなことで信頼回復に努めてまいりました。

 しかし、今御指摘のように、まだ三分の一ぐらいしか御理解いただいていないということ。私どもは、稼働するかどうかという判断というよりも、もしそれが我々の規制に対する信頼の数値であるとすれば三分の一程度ということなんですが、これは事故以来四年間で、非常に大変なことでありますし、あれだけの事故を起こして、まだ避難を余儀なくされている方もおられますので、そう簡単にはこういった信頼が回復するということはないだろうというふうに私も思っています。

 しかし、私どもに課せられた課題は、やはり今後ああいった事故を起こさないような規制をきちっとして、その実績を積み重ねていく、それを事業者に求めていくということでありますので、そういった点で、一歩ずつ信頼回復ができるように努めてまいりたいというふうに思っております。

河野(正)委員 しっかりと信頼を得られるように行動していただきたいと思います。

 原子力規制委員会は、規制基準に適合しているかどうかの判断に徹し、原発再稼働の是非については判断しないとの立場があるかと思います。一方、内閣官房長官は、世界で最も厳しいレベルの規制基準に適合すると原子力規制委員会に認められた原発は再稼働するとした上で、再稼働を判断するのは事業者であるという発言も見られます。

 このように考えますと、結局、原発の再稼働を判断する責任主体がどこにあるのか、極めて曖昧なままになっていると言わざるを得ません。この点について政府の見解を伺いたいと思います。

高木副大臣 今委員御指摘のように、原子力規制委員会としてみれば、規制基準、これを判断していく、一方で、官房長官の御発言のように、第一義的には事業者がその再稼働を判断する、こういうことは基本原則でございます。

 その一方で、政府といたしましては、エネルギー基本計画におきまして、原子力規制委員会によって世界最高水準の新規制基準に適合すると認められた場合には原発の再稼働を進める、こういうふうに閣議決定もさせていただいております。

 すなわち、福島の第一原発事故の教訓を踏まえまして、いかなる事情よりも安全性を全てに優先させる、この前提のもとで、まずはエネルギーの安全保障、二つ目に経済性、三つ目に地球温暖化対策といった観点から原発の再稼働が必要である、このように政府は全体として判断をしていまして、明確な判断は既に行っております。

 ただ、今回、川内の一号機、二号機、また高浜の三、四号機、伊方の三号機については、原子力規制委員会によって新規制基準に適合すると認められ、また、原子炉設置変更許可がなされました。このため、政府としては、エネルギー基本計画の方針に基づいてその再稼働を進める。ただ、一方で、避難ですとかそういった部分もございますので、こういった部分は、しっかりと総理大臣を中心にした原子力防災会議等で確認をして、了承している、こういうような段階でございます。

河野(正)委員 川内原発の再稼働に当たりましては、国は、半径三十キロメートル圏内に立地する医療機関、福祉施設に避難計画の策定を求めていました。しかし、鹿児島県は、十キロ以内のみの計画策定ということを求めております。

 先ほど来、避難のお話はあったと思うんですが、避難先を割り出すシステムを導入したから計画は不要との趣旨だそうで、一時移転の指示が出てから、鹿児島県の調整によって避難先を確保することになります。本当に事前の想定どおり避難が進むのかどうか、疑問にも思うところであります。再稼働する前に実際に避難訓練を行ったわけでもないというふうに思います。

 鹿児島県知事は、電力会社は使用前検査に精いっぱいでとても対応できないから、一通り終わらないと実際の訓練はできないという考えを示されております。それも一つの見解だと思いますが、一〇〇%の安全はないという以上、事故が起こることを前提として事前の備えに万全を期すことが、何よりも安全運転ということでは重要だというふうに考えます。

 福島の第一原発事故では、放射線による直接的な健康被害よりも、医療、福祉施設から避難する過程で亡くなられた方というのが多くいらっしゃると思います。こうした悲惨な出来事を二度と繰り返してはならない、これが重要な教訓であったはずであります。

 そういう観点からいえば、避難計画の実効性に疑問を抱えたまま再稼働が先行するということは、福島第一原発の事故の教訓を生かしておらず、これからも同じような事態を繰り返してしまうのではないかという懸念がございます。政府の見解を伺いたいと思います。

福山大臣政務官 先生の方から二点御質問をいただきました。

 まず、一点目の川内地域においては、昨年九月に、関係省庁、鹿児島県、関係市町により、避難計画を初めとする川内地域の緊急時対応を取りまとめ、具体的かつ合理的であることを確認いたしました。

 その中で、医療機関や社会福祉施設の要援護者に関する避難については、十キロメートル圏内では施設ごとに避難先を定めております。十ないし三十キロ圏内については、鹿児島県があらかじめ登録された複数の施設から避難先を調整する原子力防災・避難施設等調整システムを整備しており、このシステムを活用し、一時移転などが必要になった場合の避難先を迅速に選定することとしております。

 いずれにしても、国としては、引き続き、地域原子力防災協議会において自治体と一体となって、地域防災計画、避難計画の充実強化に取り組んでまいりたいと思っております。

 二点目の、実効性のある避難計画を策定するためには国がきちんと避難計画を審査する体制、仕組みを構築すべきではないかという点でございます。

 関係自治体が国に対して求めているのは、第三者的なチェックや審査ではなく、計画の策定について国が積極的にかかわり、一体となって取り組むことと理解をいたしております。

 このため、政府としては、原発立地地域ごとに地域原子力防災協議会を設置し、国と関係自治体が一体となって地域防災計画の充実強化を行っているところです。その上で、その内容について、全閣僚がメンバーである国の原子力防災会議で了承することといたしております。

 こうした取り組みについては、災害対策基本法に基づく法定計画である防災基本計画に位置づけられており、地域の緊急時対応に対する国の責任は既に明確になっているものと考えております。

 政府としては、引き続き、各地域で自治体と一体となって、避難計画、地域防災計画の継続的な改善強化に努めていく所存でございます。

河野(正)委員 二つお答えいただきまして、今、一点目しか実は質問していなかったんですけれども、二つ目まで答えていただきました。

 今回の再稼働に当たって、九州電力さんが実は私の事務所の方に説明に来てくださいました。お会いしてお話ししたんですけれども、そのときに持った印象が、非常に自治体に任せっきりということです。

 例えば、先ほど来お話があったかと思うんですが、避難のためのバスの手配、バスが本当にあるのか。もう委員長御存じのとおり、やはり、汚染地域となってしまったところから一度バスが出たら、そのバスは、戻ってもう一回使う、何度も往復するということはできないと思います。やはり、相当に除染しないと戻ることはできない。ですから、ピストン輸送で何度も繰り返すということはできませんので、かなり、片道で発進しなきゃいけないということになってくると思いますので、そういったことに私は懸念を持っているわけなんですが、迅速に本当に避難できるのかどうか。

 そういったことを事業者さんとお話ししていますと、自治体から要請があれば協力しますというようなスタンスでしたので、非常に、本当に大丈夫なのかなという懸念が残っているところでございますので、しっかりとやはり国も責任を持って、そういった、地方自治体に任せていくのではなくて、計画を立てていただかないと、現実的に、お年寄りであるとか体の不自由な方が本当に速やかに避難することができるのかなという疑問を持っておりますので、よろしくお願いいたします。

 次の質問に移りたいと思います。

 原子力災害時の医療体制ということでお話を伺いたいと思いますが、時間の関係もありますので、ちょっと割愛してお話をさせていただきます。

 先月の二十六日に原子力災害対策指針が改正され、被曝医療体制というのが見直されております。国は、原子力災害拠点病院、原子力災害医療協力機関、高度被ばく医療支援センター、原子力災害医療・総合支援センター、原子力災害医療派遣チームという五つの類型で、それぞれ医療機関等の要件を定めることとなっております。

 この改正の趣旨と医療機関等の要件について、簡単に説明いただけますでしょうか。

片山政府参考人 お答えいたします。

 今回の指針の改正の趣旨でございますけれども、現行の被曝医療体制の全面的な見直しということではなく、東京電力福島第一原子力発電所事故での教訓、これは主として、複合災害時に適切に医療を提供できなかったというところでございますけれども、この教訓を踏まえまして、現行の被曝医療体制を数年かけて実効性のある医療体制に高度化していくというのが改正の趣旨でございます。

 このため、従来の一次、二次、三次の被曝医療機関を基本に、原子力災害時において実効性が向上するよう、その役割分担や施設要件をより明確化したということでございます。

 具体的な役割といたしましては、原子力災害拠点病院につきましては、従来の二次被曝医療機関の機能をベースといたしまして、原子力災害時に、汚染の有無にかかわらず傷病者等を受け入れ、被曝がある場合には適切な診療等を行う機能を求めております。また、原子力災害が発生した地域において救急医療等を行う原子力災害医療派遣チームを持っていただくということを施設要件としております。

 また、原子力災害医療協力機関でございますけれども、これは、従来の初期被曝医療機関の対象範囲を拡大いたしまして、原子力災害時において行われる診療や、例えば安定沃素剤の配付でございますとか、避難退域時検査といった自治体が行う対策を幅広く支援するという機能を求めております。

 高度被ばく医療支援センターでございますが、これは、従来の三次被曝医療機関の機能に加えまして、高度な専門的な教育研修を行うという機能を求めております。

 原子力災害医療・総合支援センターでございますが、これは、従来の三次被曝医療機関の機能に加えまして、平時においては、拠点病院に対する支援ですとか関係医療機関とのネットワークの構築を行っていただいて、いざ緊急時におきましては、原子力災害医療派遣チームの派遣調整等を行う機能を求めております。

 最後に、原子力災害医療派遣チームでございますが、これは、今回新たに追加をしたものでございまして、拠点病院あるいは支援センターに所属をし、原子力災害が発生した地域におきまして救急医療等を行う機能を求めているところでございます。

河野(正)委員 今、現実的にそういったことを整備していかなきゃいけないということでお話しいただいたところでありますけれども、例えば原発から三十キロ圏にある道府県では、原子力災害拠点病院を一ないし三カ所程度指定することになると思います。私の地元福岡県を含めて、今後検討を進めていかなければならない問題だと思います。

 しかし、御承知のとおり、地方の医療体制というのは極めて厳しいものがあります。原子力発電所というのは、御承知のように、過疎地域といいますか、海の近辺にある、非常に医療機関のもともと乏しいようなところにあるのが多いのではないかなというふうに思っております。

 そういった意味からしますと、被曝医療といういつ起こるかわからない災害、むしろ経験してほしくないような災害への対応を日ごろから医療機関に計画してやってくれということであっても、その指針の実効性というのがどれだけあるのかなというふうに思うわけであります。

 新たに医療機関に役割を負わせるのであれば、それに対応した支援というのも欠かせないと思いますが、その点について見解を伺いたいと思います。

平井政府参考人 お答えします。

 原子力災害医療体制の実効性の担保は、住民の方々の安全、安心を高めるために非常に重要であると認識しています。

 現在、立地地域にそれぞれつくっております地域原子力協議会等の場において、国と関係自治体が一体となって、原子力災害医療体制を含む地域の防災体制の充実強化に取り組んでいるところであります。

 地域の防災対策の充実強化に当たって、国は、原子力発電施設等緊急時安全対策交付金を設け、原発立地道府県等に財政的な支援を行っているところであります。特に、今回の指針改正を受けまして、立地道府県等が指定する原子力災害拠点病院等の原子力災害医療体制の整備費用について、平成二十八年度の概算要求で新たに二十五億八千万円の予算を計上させていただいているところでございます。

 今後も、こうした取り組みを通じまして、地域の防災体制の充実強化に努めてまいりたいと思います。

河野(正)委員 高度被ばく医療支援センターは、原子力災害拠点病院では対応できない重症患者の治療に当たることとなりまして、北から、弘前大学、福島県立医科大学、放射線医学総合研究所、広島大学、長崎大学の五カ所が指定をされています。そのうち、放射線医学総合研究所を除く四つの大学におきましては、原子力災害医療・総合支援センターの機能も有するというふうにされております。原子力関係施設が数多く立地する福井県周辺からは、各センターまで非常に遠く離れているんじゃないかなと思います。

 こういったことを考えますと、これらの病院ないし施設を指定した意義、そして、福井県に限って言うとかなり遠くなってしまいますが、そういったことに対して大丈夫なのかどうか、最後に伺いたいと思います。

片山政府参考人 お答えいたします。

 両支援センターにつきましては、それぞれ、五機関、四機関を指定させていただいております。今、これらの機関との間で調整をいたしまして、担当エリアというのをどういうふうに分けるかといった調整をしております。

 福井エリアにつきましては、恐らく広島大学の方に御担当いただくことになろうかと思いますけれども、単に広島大学にお任せをするだけではなくて、これらの全国で指定をされた機関というものがしっかりと連携をして、万が一に実効性のある対応ができるように引き続き取り組んでまいりたいというふうに考えております。

河野(正)委員 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。

吉野委員長 次に、菅直人君。

菅(直)委員 この委員会をこうして開催していただいたことを、まず委員長にお礼申し上げたいと思います。

 八月の三十一日にIAEAが福島原発事故についての報告書を発表いたしました。まだ全文の和訳は手に入っておりませんが、事務局長の巻頭の言等がもう既にあちらこちらに出ております。それに基づいて、まずはこれに関する政府の見解、特に経産副大臣に質問をいたしたいと思います。

 この福島原発事故に関するIAEAの報告書では、「事故につながった大きな要因のひとつは、日本の原子力発電所は非常に安全であり、これほどの規模の事故は全く考えられないという、日本で広く受け入れられていた想定であった。」このように指摘をしております。

 私自身、この事故が起きるまでそうした考え方にあったことを思い起こすと、反省の気持ちでいっぱいであります。そうした中で、しかし、最近の安倍政権、特に私から見ていると、経産省の対応を含めて、再び福島のような原発事故は起きないことを前提に原発政策を進めているように私には見受けられます。

 原発の安全神話が再度復活してきているのではないか、この点を中心に、IAEAの今回の報告についてどう受けとめられているか、副大臣にお聞きしたいと思います。

高木副大臣 ただいま菅委員の方からもお話がございましたように、あの三・一一の事故まではその安全神話があったと思いますし、総理大臣として最高責任者であった菅委員自身が、そういう反省の弁を今述べられました。

 私自身も国会議員として、またこういうエネルギー政策に議員としてかかわった一人としても、そういった神話について、そういうふうに信じていた部分というのはあったと思います。

 そういった中で、今回IAEAの報告書が出まして、原子力分野における権威のある国際機関による包括的な報告書でもありますので、真摯にこれは受けとめなければいけない、このように思っております。

 その上で、福島第一原発の事故、この経験を、しっかりと教訓を国際社会と共有する観点から重要であると考える中で、例えば、今まで、原子力政策を推進する経済産業省、さらには保安院という形で規制当局が一体化していた。こういった問題もありましたので、これはしっかりと規制当局は第三者委員会としてしようということは、国会の意思として、法律をつくっていただく中でこの原子力規制委員会ができたと思います。そういう一つの福島の反省に立って、今の原発の問題というのを捉えている。

 今、安倍内閣が忘れたかのようにというようなお話がございましたが、決して忘れておりません。私自身も、今、原子力災害の現地対策本部長として、週に一、二回でございます、ちょうど九月の四日で就任一年になるんですけれども、八十日間、福島に入らせていただいています。

 そういう観点から見ても、福島は絶対に忘れてはいけない。今、現在進行形で復旧復興、本当に、まだ避難をされている方々がいる、そういうことをしっかりと踏まえた上で、もう原発、福島のような事故は起こらないではなくて起こしてはいけないという観点から、しっかりとした規制、それに基づいた運営というものを行っていかなければいけないというふうに政府としては考えております。

菅(直)委員 副大臣が、起こしてはならないというそのお気持ちは私も全く同感です。

 ただ、これはよく田中委員長も言われていますが、では絶対に起きないのかと言われれば、絶対に起きないとは言えないというのが、これまた、委員長も言われていますし、私が会ったアメリカのNRCのヤツコさんなども、逆に、原発事故というのはいつどこで起きるかはわからないけれども、いつかどこかで起きる、起きるか起きないかを考えるのではなくて、起きたときにどういう影響が出るのか。彼は、福島に何度もやってきて、大勢の人が避難しなきゃいけないような場所に原発は置くべきでない、こういう結論を出したんですね。ドイツも結果としては同じような結論を出しました。

 つまり、今起こしてはいけないということはそのとおりですが、このIAEAは、起きる可能性があることを忘れていたんではないんですかと。では、今回のいろいろな措置で規制当局と推進当局を分けたら起きないというのは言えないんですよ。だから、起きないという前提で物を考え始めているんじゃないですか。

 もう一度だけ、簡単にお答えください。

高木副大臣 これは田中委員長もさまざまな会見等々でも述べられているように、いわゆるゼロリスクではない、私どももそう捉えています。だからこそ、この避難計画も含めて、これで完璧というのはないと思いますが、やり続けていく。

 例えば、私もこの五月にIAEAの天野事務局長と会談してまいりました。この報告書の概要もその時点でもお話をお伺いする中で、やはり世界各国もそうですけれども、原発自体は、これは日本だけではなくて、アメリカもフランスも、そしてドイツも現在稼働しておりますけれども、そういった中で、そういった原発の事故が起きない、ゼロリスクはないと思います。そういう中で、ではどのようにしてこれを運営していくのか。まさに、政府が一丸となって考えて捉えていかなければいけない問題、このように考えています。

菅(直)委員 ゼロリスクではないということを明言されたのは、私は大変重要な答弁だと思います。まさにそうなんですよね。

 ただ、これはいろいろな避難の議論がきょうもされていますが、自然災害の場合と原発災害の場合に根本的に違うことがあります。つまり、地震の発生をとめることはできません、あるいは火山の噴火を初めからとめることはできません。しかし、原発事故だけは、今ゼロリスクでないと言われましたけれども、人間によってゼロリスクにすることはできるんですよね。つまり、それは原発をやめるということです。

 ですから、自然災害の場合は、どこまでの自然災害が来るか、あるいはそれをとめることができない以上は、来たときに最大限避難を安全にできるようにとかという手当てをする、逆に言うとそれしかないわけですが。しかし、原発事故の場合はそうではないんです。ゼロリスクにするという選択はあるんですね。

 ですから、そういう意味で、いろいろな議論がありますけれども、ぜひ副大臣にも、ゼロリスクではないということを十分に見て、そのリスクの大きさと、そしてその便宜の大きさをどう考えるのか。

 きょう、後ほど東電の社長が来られるんですよね。お話をしますけれども、もし福島原発事故がもう一回り広がったら、日本の半分は壊滅していました。そういうリスク、まさにゼロリスクではなかったんです。そういうリスクを覚悟してでもまだ原発を必要と考えるかというのが基本的な原子力政策の議論の一番のポイントなんですね。

 そこで、少し話をします。

 今、副大臣は現地対策本部長ですよね。福島原発事故のとき、いわゆるオフサイトセンターに現地対策本部をつくってもらったんですが、地震、津波のために要員が集まらないで、事実上の機能をしませんでした。

 こういうふうに考えたときに、住民避難について、現在の現地対策本部長として、誰が責任を持つべきなのか、どうお考えになりますか。

高木副大臣 これは、三・一一のときに総理が最終的に責任者として指揮をとられたと思います。原発災害のときは、最終的には原子力災害の対策本部ができますので、総理が責任者としてやります。そして、現地対策本部長、あのときは経産の副大臣の方が行かれたと思いますけれども、やはりそういった中で、それをしっかりと指揮命令系統ができるような体制が重要である、このように考えています。

菅(直)委員 今私が申し上げたのは、複合災害で、地震、津波で、実際は、当時の池田副大臣もすぐ出たんですけれども、まず車が到着しなくて、もう一度ヘリコプターに乗りかえて行って、着いてみたけれども、必要な要員がほとんど集まっていない。電気が切れている、通信施設が切れている。ですから、本来は現地対策本部が中心になって、地元の自治体の人たちも来ますから、避難を具体的にどう進めるか、そこで案をつくる。最終的には全体の原災本部、私は責任者でしたが、そこは了解する形をとるんでしょうが、実はその案が上がってこなかったんですよ。

 ですから、このIAEAの指摘には、そういった複合災害についての備えも不十分であったということも指摘がされているものですから、それで、一体誰が、全部が総理の責任だ、本部長の責任だ、トータルではそのとおりです。しかし、現地対策本部は、ある意味では避難のために非常に大きな役割を期待されているんじゃないですか。簡単に一言だけお聞かせください。

高木副大臣 三・一一のときのあの大変な状況の中で、さまざまな不都合な状況、または対応し切れなかった状況というのはあったと思います。だからこそ、その反省に立って、今後の例えば原発周辺地域の避難、これを考えていかなければいけない。そういう前提に立って、今回の避難計画等々も立てていく。

 しかしながら、計画を立てたからといって、今、菅委員の指摘されているように、複合災害の場合にはそのとおりいかない場合もあります。誰が責任をとるかといったら、そこは最終的には総理になりますけれども、やはり現地対策本部で政治家がしっかりと判断していく。

 まさにそこのところを、そういう体制をつくりながら、地元の自治体、または警察、消防、そして自衛隊というものをフル稼働しながらやっていくということが大切であるというふうに、これは三・一一の経験を踏まえて、しっかりと取り組んでまいりたいと考えています。

菅(直)委員 これを余り繰り返してもあれですから、今、二十キロ圏内にオフサイトセンター、五キロでは近過ぎるということで、いろいろ考えられているようですが、実際には、ある段階から二十キロ圏も福島原発では避難区域になりました。そういった意味では、どこにどういう施設を置いてどうするのかというのは、やはりよほどしっかり考えておかれないと、まさに想定外という、また使うべきでないことになりかねないと思います。

 そこで、きょうは東京電力廣瀬社長にもおいでをいただきましたので、社長の方にお聞きしたいと思います。

 まず一つ、この福島原発事故について、東電はこの事故に関連する全ての資料を公開すべきだと思うんですよ。

 例えば、事故発生後のテレビ会議。これは、本店と第一サイト、あるいは他のサイトとの間で二十四時間動いていたはずです。この会議の記録は、現在まで東電が認めた範囲では、例えば国会事故調などで公表されていますけれども、必ずしも全ては公表されていません。特に、事故発生からたしか二十四時間ぐらいはどこにも出ていないはずです。例えばこういうものを公表する。

 また、政府事故調での東京電力関係者の調書、これは、いろいろな経緯の中で吉田所長の調書は公開されました。しかし、たしか、他の当時の会長や社長の調書は、本人の了解がなくて公開されていないと思います。

 これらについて、この事故のことを単に東京電力だけが知っているんじゃなくて、全ての人が知って対策を考える。そのためには全面的に公開すべきだと考えますが、東電の現在の社長として、見解を伺います。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ありましたテレビ会議の模様、これは釈迦に説法でございますけれども、会議という形態があったわけではなくて、二十四時間ずっと撮っていたものでございますので、膨大な量がございます。

 したがいまして、私どもは、メディアの方々中心に、事故直後から一カ月ちょっとだったと思いますけれども、そこまでの間のビデオを全部公開させていただいております。あるものはみんな公開させていただいております。

 それから、政府事故調の調書については、これは既に御案内のとおり、政府事故調の調書を作成する段階で、それぞれの発言者や質問者に対して非公開だということでやったというふうにお聞きしております。したがいまして、このたび公開をするという段になって、それぞれの方に改めて確認をしているということでございますので、それぞれの個人の考え方によって、公開する人、しない人がいるというのは承知しております。

 その段階で、会社が、公開しろとかあるいは公開するなということをそれぞれの個人に申し上げる立場にはないというふうに考えておりますので、そうしたもので、今実際の手続が進み、一部の方の調書が公開されていると思っています。

 いずれ、東京電力といたしましては、事故からとにかくたくさんを学ばなければいけませんし、これから世界じゅうの原子力の安全にも生かしていっていただきたいというのが、事故を起こしてしまった我々のせめてものできることだと思っておりますので、今回のIAEAの報告もしかりですが、極力我々としては、インタビュー等々あるいはIAEAにも技術者を派遣するなどして、とにかく全面的に協力させていただいて、しっかりとしたものをつくっていただき、世界で共有していただきたいというふうに考えております。

菅(直)委員 今社長は、テレビ会議について、あるものは全て公開したと、たしかそう発言されましたが、本当にそれでいいんですね。

廣瀬参考人 その前に、その四月の六日ぐらいまでだったと思いますが、一カ月ぐらいの分。とにかく、今もなおテレビ会議の映像はずっと二十四時間続いておりますので、これをずっと全部見るのは大変なことでございますので、まずは一番いろいろな事象が発生した時期、これはメディアの方々の御希望に応じてですけれども、最初の部分についてやらせていただいています。

菅(直)委員 ですから、全てを公開したということでいいんですね、三月十一日から。全てということをさっき言われたんですよ。

廣瀬参考人 私どもとして持っているものという意味ですが、メディアの方々にはお見せをしております。最初の一カ月ぐらいだと思っていますが。(菅(直)委員「全て」と呼ぶ)私どもの持っているものという意味ではそうでございます。

菅(直)委員 それでは、三月十一日のいわゆる十四時四十六分ですか、そのときのビデオは公開されていますか。まさに発生したときです、地震が。

廣瀬参考人 その時点でのビデオはございませんので、私ども持っておりませんので公開はできておりません。

菅(直)委員 基本的に二十四時間ずっとつながっているというふうに言っていて、今は今度はないと言っていて、じゃ、何時からあったんですか。いわゆる地震発生から一番最初の公開されたものは何時ですか。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 事故が発生をして、それでばたばたしておりましたけれども、そもそもずっと撮っておかなければいけないということで撮っておったものでないですので、事故が発生してそれは大変だということでスイッチを入れてということでございます。

 ちょっと正確な時間は今わかりませんけれども、十一日の、事故のあった当日の遅い時間からそのスイッチを入れて、それ以降のものは公開させていただいています。

菅(直)委員 言うことがぐるぐる変わっていますね。二十四時間つながっていると言ったり、スイッチを入れたと言ったりですね。

 二十四時間つながっているとさっき言ったのは、間違っていたんですか。

廣瀬参考人 私どもの持っているものというふうに申し上げたつもりでございますけれども、スイッチを入れた後は二十四時間ずっと続いて、今もなおずっと続いております。

菅(直)委員 いつスイッチを入れたんですか。

廣瀬参考人 今こちらに正確な時間はわかりませんけれども、十一日の遅い時間というふうに記憶しております。

菅(直)委員 それは公開されていますか、十一日の分は。

廣瀬参考人 繰り返しになりますが、その遅い時間にスイッチを入れた以降は私どもの手元にございますので、それについては公開させていただいています。

菅(直)委員 公開したんですね。例えば、私たちが要求したら見せてもらえるんですね。

廣瀬参考人 物理的に、ビデオですので、メディアの方に会議室に来ていただいて、そこに見られるような設備を置いて、見ていただいたということでございます。

    〔委員長退席、岩田委員長代理着席〕

菅(直)委員 ですから、今からでもそのときのものを見たいと言ったら見られるということですね。メディアの人あるいは国会で議員も見たいと言ったら見られるということですね。

廣瀬参考人 今現在そういう状態になっているかということではございませんけれども、そうしたことを続けてやっておりますので、引き続き、御要望があればそういった形にするということはできると思っています。

菅(直)委員 この場で恐縮ですけれども、ぜひ私にも見せてください。

 私が知る限り、それをずっと見て手書きで写した記者の本が出ています。たしか、一番最初のところは翌日の武黒フェローの発言のあたりからが公表されていますけれども、私の知る限り、十一日分について、少なくとも、私が直接見たわけじゃありませんが、メディアの人が書き取ってそれが本になっている中には入っていなかった、私の記憶が間違っていなければ入っていなかったと思います。

 そこで、高木副大臣にお聞きしたいと思います。

 高木副大臣は、自分のホームページの中で、ある雑誌のインタビューに対して、東電には何より情報公開の徹底を指示したと書いてありますね。そういうお考えですよね。いかがですか。

高木副大臣 多分それは、ことし二月の、福島第一原発のK排水路の情報公開の問題が起きたときだったと思います。あのときに、昨年からデータとしてわかっていながら公表をしてこなかったということで大変大きな問題となりましたので、そのときに東電に私の方から、まず情報公開というものが一番大切である、そういった旨を指示いたしました。

 これは、福島第一原発の問題だけではなくて、やはり信頼をかち得るためには情報をしっかり公開していくということが最も肝要であると私自身は考えております。

菅(直)委員 まさにそうですよね。

 ですから、今お聞きになったように、あの事故の検証はまだ全部は終わっていません。ぜひ、副大臣の方からも、東電に対してきちっと全てを公開するように、そういう指示を出してもらえますか。

高木副大臣 私が指示するまでもなく、今社長の答弁の方で、そういう御要望があればそういう段取りをするというお話がございましたので、菅委員がそれを見せていただきたいということを東電にお申し出になれば、それは東電の方でしっかりと御判断いただけると思います。

 一方で、この第一原発の事故の原因ということで、政府の事故調、国会の事故調、さらにはIAEAがこのように報告書を出しています。それぞれの角度もあると思いますけれども、やはり、全ての情報というものがしっかりとかみ合って初めて、この問題が何かということ、これはこれで終わりではなくて、さらにこの究明というものをしっかりしながら、今後の原子力の問題について、これは日本だけの問題ではなくて世界にもしっかりと発信をして、二度とこういった災害がないような手だてを打っていくべきである、このように考えております。

菅(直)委員 そこで、少し話を進めますが、IAEAの報告の中に、原発においては、ごく短時間を超えた全電源喪失はあり得ないと想定されていた、こういう指摘があります。

 例えば、あの福島原発事故のときに、全電源喪失があって、最初にたしか一号機がメルトダウンを始めたと思いますが、それは全電源喪失があってからどのくらいの時間の後にメルトダウンが始まったんですか。

    〔岩田委員長代理退席、委員長着席〕

廣瀬参考人 地震があったのが十四時四十六分で、津波が来たのが十五時三十七分ぐらいでございますので、そこから全電源が喪失されていったわけですから、それ以降三時間半ぐらいからメルトダウンが始まったのではないかというふうに今、推定しております。

菅(直)委員 保安院は当時の報告で、十五時三十七分に全電源喪失があって、十八時ごろ炉心の損傷、つまりメルトダウンが開始したとあります。二時間半と三時間半の違いはありますが、いずれにしても非常に短い時間ですね。

 当時、そのことを発表されましたか。

廣瀬参考人 当時というのは、ちょっと今正確には覚えておりませんけれども、メルトダウンあるいは炉心の溶融というようなことということであれば、東京電力として、データがそろって、解析をして、発表させていただいたのは五月の二十日ごろだったと、ちょっと正確には覚えておりませんけれども、だったと記憶しております。

菅(直)委員 結局、同じ日の二十二時ごろには、圧力容器も損傷して、つまりは溶けた核燃料が格納容器の底に落ちている、いわゆるメルトスルーが起きていた。これは、保安院が当時、もちろん後になってですけれども、報告をしております。

 社長に聞きますが、溶けた核燃料が格納容器の外に出ていたらどうなっていますか。

廣瀬参考人 格納容器の外には現在出ていないというふうに私ども認識しておりますけれども、その後どうなるかという御質問にあえてお答えするとすれば、コンクリートのところを突き破って地面に出ていくということ、そういう御質問……(菅(直)委員「横の壁でもですね」と呼ぶ)横であれば壁ですけれども、床であれば底のコンクリートの下を突き破っていくということで、もちろん、当然それが外部の環境には大きな影響を与えることになると思っています。

菅(直)委員 今でも二号機の格納容器の中の放射線量は七十シーベルト、たしかそう報告されていますよね、以前聞きました。大体五分間ぐらい人がそばに行ったら命をなくします。つまり、もし外へ出ていたら、とてもあのサイトの中に人は、いることはできません。そして、結果として東日本が壊滅する。これは、当時の原子力委員長の近藤委員長に、私から最悪のケースをシミュレーションしてもらいたいと言ったときに出てきたんです。

 ただ、さっきの報告もありましたように、まだ直後はメルトダウンは起きていないという報告が東電から来ていたんですよ。御存じかもしれませんが、水位計が壊れていることを現場も理解していなかったから、当日の二十二時ごろまではまだ水があるという報告だったんです。後になって、それは水位計が間違っていたと。

 つまり、何が申し上げたいかというと、事故が本当に起きたときは最初の数時間で日本が壊滅するかもしれない、そういう危機状態に陥ったということをどこまで、東電はもとよりですが、実は国民の皆さんもそこまではなかなか認識されていないんですね。先ほど言いましたように、当時の報道がいろいろ混乱していましたから。

 どうですか、社長、改めて考えて、そうなったときに、いわゆる格納容器の底まで落ちて、今でもその中の放射線量は人が近寄れない、すぐ死んでしまう高さですが、外に出た可能性だってゼロじゃないですよね。そうなったときに、東電が責任をとれますか。そういうことを考えて、さらに原発を再稼働させて進めようとしているのか、そのことをお聞きしたいと思います。

廣瀬参考人 お答え申し上げます。

 全電源喪失があって、それ以降、事態がどんどん悪い方向に進展していった。その段階でどこまで正確に状況を把握できていたのかというのは、確かに御指摘のとおり非常に難しい問題があったと思います。

 現在の解析では、先生がおっしゃる二号機を初め、一号機、二号機、三号機ともそうした事態は起こっておりません。電気事業者としては、今後、とにかく福島第一で起こった事象をしっかり分析し、そうしたことが二度と起こらないような対策を今立てつつあるところでございます。

 したがって、今後もこれでいいのだ、これでもう安全だといって終わってしまうというのが一番いけないというのが、今回の事故から学んだ反省の一つであります。今後ともそうした、絶え間なく安全を追求していくのだという心構えで進めてまいりたいと思っています。

菅(直)委員 時間ですので、最後に一つだけ指摘をしておきます。

 IAEAの報告の中で、極限的な津波洪水レベルに関する幾つかの再評価を実施し、当初の設計基準見積もりより高い数値が出ていた、それにもかかわらず十分な補完措置がなされなかったと指摘をしております。私は、今、検察審査会でも三名の幹部の方が起訴されましたけれども、まさに津波の予測がかなり事故の前にあった、東電の中でさえあったにもかかわらず、それがそういう対応につながらなかった、これは重大な責任問題だと思っています。

 そのことだけを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

吉野委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 私は、先月の九日、十日と福島県に行ってまいりまして、十日には第一原発にも入って視察をしてまいりました。そして、直前には、第一原発で働く労働者の方からもお話を伺ってまいりました。

 きょうは、この生の声に基づきまして幾つか質問したいと思います。

 まず初めに、ことしの八月だけで実に三名の方がお亡くなりになったということで、この点については第一原発の構内でも大変大きな話題になっているとお聞きしました。

 廣瀬社長にお聞きしたいんですけれども、一つ一つの事案ということではありませんが、全体として、社長としてこの事態をどのように捉えていらっしゃるか、お聞かせください。

廣瀬参考人 事故でお亡くなりになられた方々に対しましては本当に御冥福をお祈りするとともに、御家族、御親族には本当に哀悼の意を表したいと思います。

 それぞれの事故の原因は異なりますし、一つ一つしっかり事故の原因を分析し、二度とそうしたことが起こらないようにしっかりしていくということはもちろんでございますが、また、福島第一を運営する者としては、大変厳しい状況の中でお仕事をしていただいております。とはいいながら、そのお仕事をしていただかないと大きなリスクが残ったままになっているという状況でもございますので、ここは、しっかりお仕事をしていただくためにも、働いていただいている方々の労働環境をとにかくよくしていくということがまず一つあって、御存じのとおり幾つかの対策を立てさせていただいていること。

 それから、そうしても何か起こる可能性はもちろんございますので、これで起こらないということは先ほどの安全の話と同じになってしまいますので、起こった場合に緊急的にどうした対応をするか、一分一秒でも早く救急車なりそうしたものを手配できないかということは、絶えず、もっともっと早くできないかという観点から、今後ともしっかり考えていかなければいけないと思っています。

藤野委員 本当に厳しい環境だというふうに思うんですね。

 私も構内に入りまして、二回目だったんですけれども、びっくりしましたのは、道路とか斜面とかをモルタルやコンクリートで舗装している。要は雨がしみ込んで地下水にならないようにということなんですが、何といいますか、それも大規模に見ますと、本当にその反射熱だけで大変な状況になるなというふうに実感いたしました。

 実際、八月二十八日の経産委員会で、宮沢大臣もこの点を答弁されまして、去年からことしにかけて、第一原発サイト内で、水がしみ込まないようにいろいろ舗装したりというようなことが行われておりまして、昨年に比べても作業環境というものはかなり厳しいものになっているというふうに宮沢大臣自身おっしゃっている。厳しいことになっていることは私は事実だと思っていると。鹿島の責任にするのではなくて、東電自身もしっかりと健康管理に向けていろいろなことをやるように、私どもも指導していきたいというふうに答弁されております。東電自身も、鹿島に任せずにと大臣ははっきりおっしゃっているわけで、こうした角度でしっかりやっていただきたいと思います。

 そして、その上で、規制委員長にも御認識を聞きたいんですが、八月の死亡事故発生率というのは異常なんですけれども、それ以前にも死亡事故は相次いでいる。二〇一四年には、三月に土砂崩れによって作業員の方が亡くなられていますし、ことしも、八月だけでなく一月にも、一Fだけでなく柏崎刈羽第二も含めますと、死亡事故あるいは重傷事故が連続した。

 この際に、田中委員長自身、法律上の権限や、法律上の所管ではないということは私も認識しておりますけれども、記者会見等で田中委員長自身が発言されておりまして、例えば、一月二十一日、死亡事故が多発した直後の記者会見ではこうおっしゃっております。「いろいろなとんでもない最悪の事態を招くことになる」と。最悪の事態とおっしゃって、記者から最悪の事態とは何ですかと聞かれて、「作業員が亡くなったというのは最悪ですよ、」とおっしゃっておりまして、私も率直に申し上げて同感なんです。

 規制委員長にお聞きしたいんですが、一月にこう委員長がおっしゃってから、残念ながら八月にも三名の方が亡くなられるということで、この点についてどのように感じていらっしゃるか。

田中政府特別補佐人 八月だけではなくて、規制委員会が発足して間もなく、廣瀬社長にもお会いして、一Fの廃止作業というのは極めて厳しい状況の中で長期にわたって続くものですから、とにかく労働環境をよくしていただく必要があるということをお願いして、幾つか具体的な取り組みをしていただいています。その後もまたお会いして、その進捗状況も伺っています。

 先生御存じのように、今は相当改善されています。今でも相当厳しいですけれども、当初は、どこへ行くのにも全面マスク、タイベックスーツを二枚重ねというようなことで、会話をしてもほとんど聞こえないような状況。そういうところでああいう高所作業とか肉体的な作業をするということは、やはり潜在的に労働災害のもとになるということで、まず環境の除染、マスクをできるだけしなくて済むようにするとか、それから、働く人たちが休めるような、前はプレハブだけだったんです、最近、この春にはきちっとした建物もできて、先生もごらんになったかと思いますが、そういったものもつくっていただきました。それから、労働賃金の改定も行われたと聞いております。

 ただ、まだまだ厳しい状況が続いています。それと同時に、先生がお配りになった新聞にも書いてありますように、作業を監督するようなベテランの作業員というのがだんだん確保しにくくなっている。

 この一つの原因は、やはり被曝限度の問題がありまして、そういうことが結局そういう伏線になっているということもありますので、私どもとしては、今まだ施行にはなっておりません、パブリックコメントをかけていますけれども、こういう緊急時の作業は、状況によっては少し拡大する、二百五十ミリぐらいまでしておかないと、なかなか、通常は百ミリが原則ですけれども、二百五十ミリということも視野に入れてやっておかないと、こういった別の死亡事故のようなものにつながるところもあるということで、いろいろな手だてはとってきておりますけれども、引き続き、やはり社長には、労働災害がなくなるように、ゼロを目指して努力していただくようお願いしていきたいと思います。

藤野委員 今、委員長からお話がありました。被曝限度につきましては私たちはまた考え方が違いますけれども、労働環境の改善についてという点については私は大事な指摘だと思います。

 今も委員長からありましたマスクの問題、私も現場で労働者からお聞きをいたしました。ちょっと具体的に提案したいんですけれども、労働者の方がおっしゃっていたのは、要は、自衛隊とか警察では非常に最新のマスクを使っている、何であれが導入されないのかという声なんですね。

 調べてみますと、今自衛隊が使っているマスクというのは、〇〇式個人用防護装備防護マスクというのがありまして、これは、防衛省の行政事業レビュー、これは今もずっとやられていますけれども、これによりますと、視野も広い、軽い。大きいのは、水分を補給できるストローもついていて、マスクをつけたまま水分も補給できる。折り畳めるし、折り畳むときに一緒に眼鏡フレームも入れることができるとか、いろいろなかなか改善されている。

 別に、これじゃないとだめだというんじゃなくて、もっといいものがあればそれでいいとは思うんですが、例えば、現場の労働者が、自衛隊とかがそういうものを使っているのであれば、なぜ我々危険な作業をやっている場所にないのか、こうおっしゃっていたわけで、私もさらに調べてみますと、この〇〇式というマスクは、行政事業レビューによりますと、例えば九百二十三個で予算が四千二百万円だそうであります。一個でいいますと、大体四万五千円ちょっとというぐらいのオーダーなんですね。先ほど全面マスクが必要でなくなっている地域がふえたというお話がありましたけれども、仮に今、一日七千人入っているとしまして、半分とかあるいは三分の一ということになれば、半分、三千五百人とすれば大体一億五千万ちょっとですし、三分の一で足りるとすれば一億円ぐらいの予算でできてしまう。

 ですから、廣瀬社長に聞きたいんですが、これぐらいの体力はやはり東電あるいは元請には十分あると思うので、こうしたことも具体的に検討していただきたいと思うんですが、検討について。

廣瀬参考人 もとより、そうした装備品については日進月歩することもございますし、実質、タイベックも、今のタイベックは何代目かでございますので、そうしたことは絶えず我々としてもやっていきたいです。

 それから、やはり何より今回の八月八日の死亡事故。これは事故で、バキュームカーの後ろのふたに挟まれてお亡くなりになられたという痛ましい事故ですけれども、これも、その亡くなられた現場は全面マスクが必要でない地域でありましたが、実際は全面マスクをされていて、もしかしたらその全面マスクによって、操作された方と亡くなられた方の間のコミュニケーションがうまくとれなかったかもしれないということもありますので、やはりつけないのが一番よろしくて、そうしたことを、しっかり区域を管理して、それを、私どもだけではできませんので、鹿島さん初め元請各社の徹底をしていただいて、つけたり外したりは確かに面倒くさいんですけれども、つけなくてもいいところではやっていくというようなことでやってまいりたい、とにかくいろいろ工夫はしてまいりたいと思っています。

藤野委員 私の質問は、今のマスクじゃなくて、もっといいマスクがあるじゃないか、一つ四万五千円ぐらいなんだから、そういうものが全部行き渡るようにしたらどうかという質問なんです。質問のお答えになっていないし、ちょっと時間があれなので、ぜひ検討していただきたい。それぐらいの予算はあるはずです。

 ぜひ、労働環境の改善ということであれば、これからどっと、つける期間、つける場所が幾ら減っても、つける作業というのは続くわけです、数十年にわたって。それについて、私たちも入ったし、この委員の中にも入って実際つけたことはあると思うんですが、ああいうマスクで作業させるというのは私は環境改善につながらないというふうに思いますので、やはり、せめて自衛隊や警察並みの装備ということを強く求めたいと思います。

 そして、もう一つは、お話がありましたけれども、監視員の問題で、配付資料でもお配りさせていただいておりますけれども、一月の死亡事故が多発した際に、数土会長自身が現地に行かれて、記者会見でおっしゃった。「日本を代表する重工メーカーなど元請け企業の現場監督も人手不足になっている」ということを述べて、そのため、「安全手順に違反があっても責任者が「見て見ぬふりする」実態があった」ということであります。

 そういう意味で、ちょっと廣瀬社長にお聞きしたいんですが、二〇一四年、二〇一五年、先ほど私も紹介しましたけれども、これらの事例で、現場に監視員というものはいたんでしょうか。

廣瀬参考人 監視員の必要な仕事とそうでないという仕事はもちろん分かれておりますので、例えば今回の八月八日の挟まれた事故であれば、残念ながら、亡くなられた方がむしろ監視するポジションといいますか役割であったということはございます。

藤野委員 八月八日はそうなんです。

 では、八月一日とかあるいは二十二日の事案はどうですか。

廣瀬参考人 八月一日、八月二十二日は、直接その作業ではなく、これは医師の診断等々によるところでありますけれども、何らかの持病をお持ちになられていて、サイトを出られた後にということですので、お仕事と監視員云々というところとは直接は関係ございません。

藤野委員 そういう見解をおっしゃると思いましたけれども、そういうこと自身がやはり問題だと思うんです。

 あるいは二〇一五年一月十九日あるいは二〇一四年三月二十八日、土砂崩れや天井から落ちた、こういう事案では監視員はいなかったというふうに事前のレクで伺っております。

 ですから、なぜこうなるのかということなんですが、これも社長にお聞きしたいんですけれども、東電にこういう、現場に監視員を置くとか監視員を配置するという内規とかルールというのはあるんでしょうか。

廣瀬参考人 内規といいますか、そうした現場の手順、ルールがございまして、先ほどのように、ついているものとついていないものがあります。

 ちなみに、一月二十九日、タンクから落ちられた方は、これはタンクの点検でございましたので、いわゆる作業ではなく、そうした意味から……(藤野委員「内規があるのかどうか」と呼ぶ)ですから、置かなければいけない仕事、置かなくてもいい仕事ということでの決めはございます。

藤野委員 どういうふうに違うんでしょうか、具体的に、端的に。

廣瀬参考人 さまざまなケースがありますので、私、全部はわかりませんけれども、作業内容に応じて決められているものというふうに認識しております。

藤野委員 これは通告してあったんですけれども。

 要するに、全体として、法令では決まっていないと。東電として、全体として、そういう内規はないけれども、火気を扱う、要するに火の気を扱う業務については監視員を置くというふうに伺っております。

 私は、今ばくっとおっしゃいましたけれども、基本的にはないというふうに聞いているわけですね。火気を扱うものについてはあると。なぜかと聞いたら、昭和四十年代に火気に関してさまざまな事故が起きたから、それについては特段に設けていますという説明でありました。

 私は、四十年代だけじゃなくて、今まさに死亡事故が相次いでいるわけで、まさにこの事故から教訓を引き出すという立場に立つのであれば、東電としてもしっかり、監視員を置くということについての内規なりルールなり設けるべきだと思うんですね。

 実際、八月二十六日に厚生労働省が、「東京電力福島第一原子力発電所における安全衛生管理対策を強化します」と、ガイドラインを発表されております。当然御存じだと思いますが、その冒頭に、東京電力における安全衛生統括者等の選任と安全衛生協議組織の開催ということも指摘をされている。

 ですから、そうしたばくっとした認識ではなくて、今どこにルールがあって、何がなくて、しかし、こういうガイドラインの指摘も受けて、しっかり体制を整えるということが必要だと思うんですが、その認識はあるんでしょうか。

廣瀬参考人 もちろん、冒頭申しましたように、作業をしっかり安全にしていただくというのは私どもの基本的な考え方でございますので、いろいろなケースを考えて、必要なことを、これはまた、私どもの社員が全員、現場現場にいるということはできませんので、協力会社の方それから請負会社の方々との協力によってやっていかなければいけませんし、私どもとして、そうしたことを仕様書に書いていくとか、そういったようなことが必要になってくると思っています。

藤野委員 協力会社との関係というのは当然で、このガイドラインでも、協力会社についても別に記載をされております。ただ、冒頭は東京電力におけるそういう責任者とか体制ということが指摘されているわけで、これはやはり重く受けとめるべきだというふうに思うんですね。

 そして、また論点はあれですけれども、きょう取り上げさせていただいたのは、現場の労働者の声に基づく質問ということであったわけですが、現場の労働者の声を聞いていますと、本格的にそれを改善していくためには、一F構内の労働環境の改善だけではやはりどうしても不十分だ、労働者の方、作業員の方の生活環境もしっかり改善しないと本当の意味での改善につながらないというふうにお聞きしました。

 例えば、こうおっしゃるんです。夏だと、朝スタートが早い、終わりが早いので。朝六時からの作業の場合は朝一時に家を出ないと間に合わない。国道六号線が一つの大きなメーン道路ですから、これはもう大渋滞する、だから早目に出てやらないと間に合わないというお話でしたし、実際、自分たちが朝着いても、その日どういう作業をどういう段取りでやるのかというのは行ってみないとわからないし、どこでどういう作業をしているのかもわからない、だからやる気もやりがいも起きないという声もありました。

 要は生活環境ですね。そうした、家を出てからここで作業して戻ってという全体を見て改善していく必要があるというふうに思うんですね。

 もちろん、家族から離れて暮らしていらっしゃる作業員の方は大変多いわけで、そういう意味でも、社長の認識もお聞きしたいんですけれども、労働環境の整備といった場合に、やはり構内だけじゃなくて生活環境ですね、具体的には周辺自治体の復興。だから、二時間かけて通っていかないと作業に取り組めないような状況ということを改善していくこととあわせて初めて労働者の労働環境を改善していくというふうに思うんですが、その点についての認識をお聞かせください。

廣瀬参考人 もちろん、私どもの構内での労働環境の改善というのは、先ほど田中委員長からもお話がありましたように、しっかりやってまいります。

 それから、通勤時間が長いというのもおっしゃるとおりですが、あした、あさってにも楢葉の宣言がされてということで、だんだん住める場所が北上しているのも事実ですので、そうした方々、社宅等々の整備は、これもまた協力会社の方とも協議をさせていただいて進めていかなければ、全部が全部私どもの社宅ということではありませんので。

 それからまた、私どもが今取り組んでいるのは、御家族との関係で、大変厳しい危険なところでうちのお父さんは働いているのではないかというような心配を受けるのだということもたびたびお聞きしていますので、実際に、職場の状況であるとかそうしたものを、いろいろなメディアを使って、媒体を使って御家族にも届くような、そうしたような新たな取り組みも始めさせていただいていると思っています。

藤野委員 最後になりますけれども、そういう意味では、労働環境改善といった場合に、その方が住まわれている地域、つまり、一F構内だけじゃなくて周辺全体をやはり復興していかないといけない。その意味で、東電任せにせず、政府を挙げた対策というものを求めまして、私の質問を終わります。

吉野委員長 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 おはようございます。維新の党の初鹿明博です。

 今回の委員会が三カ月ちょっとぶりということになるわけですが、この間、川内原発の再稼働があったり、今、藤野議員からの質疑の中でも、死亡事故があったりということでしたので、本来ならもう少し早く委員会を開催していただきたかったなというふうに思っています。

 当然、委員長も御努力をされていただいたということは伺っておりますが、これからもできる限り委員会を開く頻度を多くしていただきたいということを、まず冒頭、お願いさせていただきます。

 実はきょうの質問は、六月から三カ月開かれていなかったんですが、安保法制の議論が進んでいる間にこの質問を取り上げたかったんですけれども、残念ながら衆議院は通過をしてしまった後になってしまいましたが、ずっと考えていたことなので、きょうは取り上げさせていただきます。

 今、ちょうどお手元に資料をお配りさせていただいておりますが、四月八日の東京新聞の記事でありまして、ここに、原発攻撃の被害を、八四年に極秘研究を外務省がしていた、そういう内容であります。

 八四年ですから、三十一年前で、私はまだ中学生のころですので、その当時の政治の状況がどういうものだったかというような、そういう空気感も全く記憶をしていないような時期であるんですけれども、そのときにこの研究がされていて、なかなかショッキングな内容ですよね。

 格納容器が破壊された場合の被害予測というのがされているんですけれども、急性死亡が平均で三千六百人ぐらいなんですが、最大だと一万八千人が急性死亡をしてしまうということなんです。一万八千人が、攻撃を受けて格納容器が破壊された途端に死んでしまう、そういう想定なんですが、これは非常にショッキングな内容なんです。

 まず、この研究というのは外務省が委託をして行ったということですが、これは事実だということでよろしいんでしょうか。

宇都大臣政務官 お答え申し上げます。

 御指摘の八四年の研究でございますが、当時我が国が国際社会に対して提案をしていました、IAEA保障措置の適用を受ける平和的目的の原子力施設を攻撃の対象としないための国際的な取り組みを論拠づけるための執務参考資料として、大型の原子力施設が実際に攻撃をされた場合の影響、これを研究したものでございまして、事実でございます。八四年に、当時の外務省国連局軍縮課が日本国際問題研究所に研究委託を行い、作成をいたしました。

 ちなみに、極秘とかいうクレジットは特についているものではございません。

初鹿委員 今、平和利用のための原子力施設を軍事攻撃しないということを提案する、その根拠づけだということですが、それ以外に、この研究が行われた理由や背景というのはほかに何かあるんでしょうか。

宇都大臣政務官 背景でいいますと、当時、イスラエルが実際にこういう攻撃をしたという事象がございまして、国際社会の中でも非常に問題になっていたということで、これは日本が主導して、実際に平和利用目的の原子力施設を攻撃することをやはり禁止する流れをつくっていこう、これが大きな目的であったというふうに認識をしております。

初鹿委員 私も今、現物を実はいただきまして手元にあるんですが、そのことはここに書いてあるんですね。一九八一年の六月に、イスラエル空軍がイラクの研究用原子炉施設を爆撃したということが現実のものとなったと。

 私もこれを入手するまでそういう事実があったということを知らなかったんですけれども、不勉強だったなということを感じているんですが、そのときは、この施設にはまだ放射性物質を入れていないという状況だったので大きな被害にはならなかったということなんですが、では、本当に原子炉が稼働をしているときにこれが発生をしていたら大変なことになる、そういう状況の中で、我が国は、平和利用の原子力施設に攻撃をしてはならないということを国際社会の中で主導していった、そういうことだと思います。

 ちょっと伺いたいんですが、この資料をいただいて、幾つか下線が引いてあるところがあるんですよ。これはどういう状態で保存がされているんですか。PDFで保存をされているんでしょうか、それとも現物の紙として保存がされているんでしょうか。どちらなんでしょうか。

宇都大臣政務官 保存の形式は紙媒体ということでございます。

初鹿委員 では、どなたかが下線を引いたものがそのまま残されていたということなんだと思います。

 下線が引いてあることについては、後ほどその部分をお話しさせていただいて、ちょっとほかの質問に行きますが、まず、政務官、これは当然読みましたよね。(宇都大臣政務官「はい」と呼ぶ)読んでどうお感じになりましたか。

宇都大臣政務官 専門家の方に委託をしたということで、原子炉が持つ脆弱性、実際にそれが攻撃をされてしまったらどういうことが起こるのかというのを詳細にわたって記録をしてある、非常に、このような平和的な利用に基づいた原子力施設が攻撃されたときに一体どのようなことが起こるのかという、論拠づけるいい資料であるというふうに感じました。

初鹿委員 今見ても非常に勉強になるというか参考になりますよね。これは、ぜひ皆さん読んでいただきたいなと思うんですよ。

 吉野委員長、読まれていますか。

吉野委員長 まだです。

初鹿委員 ぜひ読んでいただくと、もしかしたら福島の第一原発の事故は防げたのかなということを感じるんじゃないかと思います。それは後ほどお話をさせていただきます。

 それで、ここの記事にあるとおり、公表がされていないということなんですよ。これだけの内容のものをなぜ公表しなかったのかなというのが非常に不思議だなと思います。ここに書いてあるのは、公表しない理由として、反原発運動などへの影響があるんではないかということで公表しなかったということが書かれているんですけれども、公表しなかった理由はどのような理由からなんでしょうか。

宇都大臣政務官 まず、公表されたかされなかったかの事実についてお答えを申し上げます。

 当初、作成当時は執務参考資料としてこれは作成され、公開することを前提あるいは想定としておりませんでしたので公開はしておりませんでした。他方、二〇一一年に情報開示請求に基づき開示されまして、その後については請求に応じて累次にわたり開示をされ、今でも開示をされている資料でございます。

 それから、公開しなかった理由ということなんですが、今ほど説明の中にもございましたけれども、あくまでこれは政府内部において、執務の参考資料として、オープンにすること、公表することを前提としていなかった資料ということで、あえて公表はすることをしなかったというふうに認識をしております。

初鹿委員 政府内の参考資料ということで、要は公には公表していなかったということなんですが、では、政府内でどこまで、この情報というのが、この研究内容というのが共有をされていたのかというのが、これはちょっと問題になってくるんだと思うんですよ。

 まず、外務省の中では、省内でこれは共有をされているものになっていたんでしょうか。

宇都大臣政務官 お答え申し上げます。

 これは、三十年前に作成された資料でございまして、今回、委員の御質問を受けまして、我が方でも、その当時、どこまでオープンになったのかということを調べてみました。しかしながら、当時の大きな関心事項であり、非常に執務参考資料としては重要なものでありながら、今回調べた結果では、どこまで省内関係部署に配付されたのかという具体的な事実は出てきません。恐らく、省内の関係部局には配付されたものと理解されるという限度でございます。

初鹿委員 三十年前のことなので、その当時のことを知っている職員の方もほとんどいらっしゃらなくなっているのかなとも思いますので、事実はなかなかわからないのかもしれませんが、今、省内で関係部署には配付をされたというお話でしたけれども、では、ほかの省庁についてはどうなんでしょうか。

 きょう、防衛省の政務官と経産の副大臣にも来ていただいておりますが、関係する省庁として、やはり、これは武力攻撃ですからね、防衛省に当然知らせていてもおかしくないというか、知らせるべきものだと思うんですよ。また、原子力施設の問題ですから、経産省も当然知っておいた方がいいことだと思うんですね。では、防衛省や経産省に対して、きちんとこの内容というのが共有をされるようなことになっていたんでしょうか。

高木副大臣 まず経済産業省、当時は通産省ですけれども、そういった報告は受けておりません。

原田大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 初鹿委員御指摘の調査につきましては、当時の防衛庁が調査研究についての情報を受けたという事実は今のところございませんでした。

 以上でございます。

初鹿委員 内容が内容なので、なぜ防衛省や経産省にこれを知らせていなかったのかなと、委員の皆さんは不思議に思いませんか。

 武力攻撃を受けてこれだけの被害がありますよと。これを別に私、公表しなかったのがおかしいとは言いませんよ。ただ、同じ政府内で、関係するところには伝えておく必要があったんじゃないかと思うんですが、外務省は、これは誰がどのような判断で、防衛省や経産省にこの貴重な研究資料を渡さないという判断をしたんでしょうか。わかりますか。

宇都大臣政務官 三十年以上も前にわたることで、別部局に渡さないという判断をしたかどうかも現在においてはわかりませんが、我々が行った調査によれば、恐らく省内関係部局には配付されたものであろうということで、その他の部局にどういう形で配付されなかったのか、どういう決心がなされたのかということに関しては、我々としても把握をできておりません。

初鹿委員 では、わからないかもしれませんけれども、一応確認のため聞かせていただきますが、大臣にはこれは伝わっていたんでしょうか。

宇都大臣政務官 わかる範囲で確認をしましたところ、当時、閣僚に配付されたかどうかについても不明でございます。

初鹿委員 恐らく、閣僚に配付していないんでしょうね。普通、選挙で選ばれた政治家であれば、これを手元にしたら、当然、外務大臣が手元にしたら、これは防衛庁に伝えなければいけない、経産省にも伝えなければいけないと思ったと思うんですよ。思うのが当然だと思うんですね。それがされないで三十年近くたってしまったというのは、私は非常に残念だなというふうに思います。

 では、経産省も防衛省も把握をしていなかったということなんですが、それぞれ、この資料の存在をいつ知ったか、お答えいただけるでしょうか。防衛省、経産省、それぞれ、この資料があるということをいつ把握しましたか。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛省としてこうした研究の存在を知りましたのは、先生が御指摘になりました四月の東京新聞の報道があって、そうしたものがあったらしいということは承知いたしました。

 今回、御質問がありまして、具体的にこうしたものがあったということを明瞭に認識したというのが現状でございます。

初鹿委員 原田政務官、読みましたよね。これを読みましたか。読んでいませんか。

原田大臣政務官 お答えさせていただきます。

 まだ十分に読めておりません。

初鹿委員 高木副大臣は読まれましたよね。

高木副大臣 私も読んでおりません。

 ただ、テロの問題を含めまして、原子力規制委員会が新たな規制基準の中でテロ対策も含めてやっているということで、現状、今はそういった規制委員会の規制基準の中で原発の対処をしていく、こういうような考え方でございます。

初鹿委員 私が指摘をしたいのは、当時、三十年前にこれが経産省の手元に渡っていた、防衛省の手元に渡っていたということになっていたとしたら、日本海側にこれほど多くの原発を立地させるという判断にはならなかったんじゃないかというふうに思うんですよ。

 この内容を見て、それでも今の立地をしていたというふうになったと思いますか。それとも、もし当時、三十年前にこれが知らされていたとしたら、原発の増設についてももう少し慎重になった、また、立地場所にしても日本海側よりかは別の地域を模索したということになったんじゃないかと思いますが、高木副大臣、いかがでしょうか。

高木副大臣 まず、本件の調査につきましては、当省が関与していないということで、コメントする立場にはございません。

 ただし、今お話がありましたように、三十年前の話でございますから、例えば、今、日本海側という言い方をされました。これはどこの国を想定して言われているのか。

 例えば北朝鮮の場合には、三十年前にはいわゆるミサイルは開発されていない。ノドンミサイルは一九九〇年代から、さらにテポドンとなって、そうなりますと、三十年前に北朝鮮が、このミサイル開発、今現在はしておりますし、核も持っているというふうに見られている中で、そういう想定はその段階ではなかったのではないかな、このように考えられます。

初鹿委員 三十年前のその当時はそうだったかもしれませんが、三十年間の経過の中で流れていくわけですから、途中で、ちょっと待てよというふうに判断が変わることはあったのではないかなというふうに、今私は思うわけです。

高木副大臣 原発の攻撃という問題は、原発の立地の問題だけではなくて、武力攻撃事態になります。そうなりますと、例えばミサイル攻撃がある、または空爆がある、そういうような想定ということで、これは有事ということでございますが、その前段の周辺事態。

 今、安全保障法制も議論されておりますけれども、そういう観点からいうと、原発の問題だけではなくて、まさに我が国の国民が住んでいるところ、生命財産をどう守っていくか、こういう観点になると思いますから、これに特化して、そういった問題があるから原発の立地がどう、こういうような判断ではないと思われます。

初鹿委員 私は、多分そうはならなかったんだというふうに思います。

 では、ちょっと中身に移りますけれども、この記事にあるとおり、シナリオを三つ想定しているんですね。一つは全電源喪失、そして二つ目のシナリオが格納容器の破壊、そして最後は原子炉の直接破壊ということで、原子炉が直接破壊されたときは、被害の想定が大き過ぎてどのぐらいになるのかはわからないという、かなり正直な調査の研究結果を出しているんですけれども、このシナリオ一の全電源喪失というのはまさに福島の第一原発で起こったことであります。

 ここに下線が引いてあるんですよねと先ほど言いましたが、十一ページのところに、この全電源喪失が起こったときのことが書かれている。

 その中で、「このような過程の中で、燃料棒の被覆管材料が水と化学反応を起し、水から酸素が奪われ、水素が発生する。雰囲気の条件次第ではこの水素が爆発をおこし、被害が拡大する危険がある。」と。要は、水素爆発の可能性があるというところにちょうど下線が引いてあるんですよね。これがきちんとその当時知らされていたら、別の対策ができたんじゃないかと思うんですよね。さらに、その下に、また別に、「原子炉容器の底が抜けた後、とけた炉心が格納容器の床の上にたまり、床のコンクリートが破壊され、土中に沈降する可能性が考えられる。」と書いてあるんですよ。

 同じことが福島の第一原発で起こってしまったんじゃないかと思うんですが、高木副大臣、これはどう考えますか。

高木副大臣 原発の事故、大変な甚大な事故というのは、これまで世界で、チェルノブイリ、そしてまたスリーマイル、そして今回の福島原発、この三つであると思います。スリーマイルもメルトダウンを起こしました。そういった知見から、いわゆるメルトダウンを起こした場合にはどうなるかということは、これは想定されています。

 一方で、全電源喪失。これは、同時に電源が喪失するということを想定していなかった。

 これは、先ほど菅委員の質問で、IAEAの、安全神話ということに寄りかかっていたのは確かだと思います。だからこそ、今回、規制委員会の新たな規制基準では、電源の喪失については、かなり多角的な角度から指摘をされて、基準を厳しくされています。

 例えば、固定した電源では、もし仮の、次の電源が、固定したところでだめな場合でも、移動電源車等を含めまして、そういった電源喪失をしない、こういうような観点、まさに今回の福島事故をしっかりと反省し、その知見に立って対応策を練っているというのが今回の規制基準であろう、このように考えております。

初鹿委員 時間なので、最後に、「付言すれば、」ということで最後に書かれている四行を読ませていただきますが、「補助電源のうち、例えば蓄電池だけでも健全であれば、それによつてある時間余熱の除去が可能となるため、格納容器の破損や炉心の溶融が数時間ないし十数時間遅れるものと期待できる。その間、寿命の短かい放射性物質は放射性崩壊によつてかなり減衰するので、それだけ環境に及ぼす被害は少なくなる。」というふうにここの部分、締めくくられているんですよ。

 やはりこれは、三十年前にきちんと経産省に伝わっていたら、この被害が軽減できたのではないかというふうに思います。昔の話を言っても仕方がないんですけれども、やはりこういう情報を隠していくというような、隠したつもりはないのかもしれないけれども、きちんと共有ができなかったことがいろいろな問題を生じさせたのではないかと思いますので、今後、あらゆる情報をきちんと集約して共有することに努めてもらいたいとお願いをして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

吉野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時六分散会


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