衆議院

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第4号 平成25年10月31日(木曜日)

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平成二十五年十月三十一日(木曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 額賀福志郎君

   理事 今津  寛君 理事 岩屋  毅君

   理事 城内  実君 理事 左藤  章君

   理事 中谷  元君 理事 大島  敦君

   理事 藤井 孝男君 理事 上田  勇君

      池田 道孝君    大塚  拓君

      大野敬太郎君    小池百合子君

      小林 鷹之君    鈴木 馨祐君

      薗浦健太郎君    津島  淳君

      辻  清人君    寺田  稔君

      中谷 真一君    中山 泰秀君

      西銘恒三郎君    野中  厚君

      橋本  岳君    星野 剛士君

      牧島かれん君    町村 信孝君

      松本 洋平君    山際大志郎君

      近藤 昭一君    近藤 洋介君

      辻元 清美君    長島 昭久君

      渡辺  周君    今村 洋史君

      丸山 穂高君    山田  宏君

      大口 善徳君    濱村  進君

      畠中 光成君    山内 康一君

      赤嶺 政賢君    玉城デニー君

    …………………………………

   参考人

   (立命館大学客員教授)  宮家 邦彦君

   参考人

   (NPO国際地政学研究所理事長)         柳澤 協二君

   参考人

   (双日総合研究所上席客員研究員)         永岩 俊道君

   参考人

   (慶應義塾大学法学部教授)            細谷 雄一君

   衆議院調査局国家安全保障に関する特別調査室長   室井 純子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月三十一日

 辞任         補欠選任

  牧島かれん君     小林 鷹之君

  近藤 昭一君     辻元 清美君

  遠山 清彦君     濱村  進君

  畠中 光成君     山内 康一君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 鷹之君     牧島かれん君

  辻元 清美君     近藤 昭一君

  濱村  進君     遠山 清彦君

  山内 康一君     畠中 光成君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百八十三回国会閣法第七五号)


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     ――――◇―――――

額賀委員長 これより会議を開きます。

 第百八十三回国会、内閣提出、安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、立命館大学客員教授宮家邦彦君、NPO国際地政学研究所理事長柳澤協二君、双日総合研究所上席客員研究員永岩俊道君、慶應義塾大学法学部教授細谷雄一君、以上の四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位の皆様方に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、心からありがとうございます。参考人各位には、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきまして、よろしくお願い申し上げます。

 議事の順序につきまして御説明を申し上げます。

 まず、参考人からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のために申し上げますけれども、御発言の際はその都度委員長の許可を受けることとなっております。また、衆議院規則の規定により、参考人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御了承をいただきたいと思います。

 それでは、まず宮家参考人にお願いをいたします。

宮家参考人 おはようございます。宮家邦彦でございます。

 本日は、NSCの設置法につきまして、私の立場からお話を差し上げます。個人の立場として、個人的には非常にいい法案ができたと思っておりますが、この内容それから意義については、過去、もう既に委員会でもいろいろ議論をされておられますので、私は、それを繰り返すことなく、私の個人の立場でどのように感じているか、そして、どのような問題点があり得るかということを十五分程度でお話しさせていただきます。

 まず、必要性なんですけれども、どこまでしゃべっていいかはわかりませんが、私が少なくとも一九九八年に日米安保条約課長であったころの話と、それから現在、この法案ができた後のことを考えると、やはり隔世の感があると私は思っております。

 昔は、こんなことを言っていいのか本当にわかりませんが、信じられないことが起きていて、防衛省は防衛省で政策をつくる、外務省は外務省で政策をつくる。防衛、外交もしくは安全保障問題、それについて、個別に、総理、官房長官に上げていくケースがある。もちろん一緒になったこともありますけれども、ばらばらのケースが多かった。それはそれでいいのかもしれませんけれども、大きな問題点があります。それは、もし話の内容が同じであれば、どっちかは不要でございます、時間がもったいないですから。もし両者が違えば、これは大問題であります。

 つまり、防衛政策それから外交政策というものが、事前にちゃんと連絡をとって連携をする、その上で総理に一本化して上げていくということが、実は必ずしも十分確保されていなかったわけであります。

 現在、東アジア地域では巨大なパワーシフトが起きております。我々はこのパワーシフトを生き延びなきゃいけないわけであります。

 冷戦時代は確かに不安定な時期だったかもしれませんが、今に比べればはるかに安定しておりました。しかし、最近は特にそうですけれども、不測の事態がいつ起きるかわからないような状態にある。昔のように、のんびりとばらばらに省庁が官邸に入ってきては、それを総理、官房長官に御説明し、そして了承を得るというような時代ではもうないんじゃないかと私は思います。

 その意味で、もしこの法案ができるということになれば、恐らく日本で初めて制度的に、外交政策そして防衛政策、この重要なものについて、つまり国家安全保障問題について重要と思われる事項について、組織的に連携、調整が行われた形で政治レベルの意思決定ができるシステムができ上がるという、これは本当に一昔前であれば信じられないことが起きようとしている。これは非常に重要なことだと思っています。

 特にここで御指摘申し上げたいのは、常駐のスタッフができるということであります。

 今までは、どちらかというと、何か事件が起きる、そしてその対応をその場で考える、十分な事前の準備もしないまま、もしくは、していても必ずしも関係省庁と連携をとらないままに事態が起きていく。しかしながら、現在は、常駐スタッフができ上がりそうであります。それが定期的な議論をし、そしてあらかじめ幾つかの政策オプションというものを考え、そして場合によってはリハーサルもして準備をしておく。これは極めて重要なことであります。

 なぜ重要かというと、決定が早くなるからであります。もちろん、何時間も何十時間も何日もかけて決定をすることは今のシステムでもできるでしょう。しかし、何十時間も待ってくれないのです。事態というのは本当に時間がないのであります。

 私も、幸い、現役でありましたときにはそういう事態には必ずしも遭遇いたしませんでしたが、私は、アラビア語でありまして、中東のことはある程度知っております。中東の地域のことが、もし同じようなことが日本で起きたとしたら、そんなに時間はないのです。場合によっては数時間で、そして、もしミサイルが飛んでくれば十分で物事を決めなきゃいけないわけであります。そのときに今のシステムで本当に決められるんだろうか、実は非常に不安がありました。

 それを、恐らく、今回この法案が通ることによって、相当程度改善されることが期待されるわけであります。やはり、迅速な決定をして、そして機動性を持った政策決定をする、これが私は重要だと思います。

 このNSC、もしくはこれに似たようなシステムというのは主要国どこも持っております。むしろ、逆に日本だけがないのであります。やはりこのようなことが続くということはもう考えられない。特に最近の東アジアの情勢に鑑みれば、こういうシステムが必要である、当然であろうと思います。

 これに反対される方がいらっしゃるとは私は個人的には思っておりません。もちろん、内容的にいろいろ御意見がある方はあると思います。私も、幾つか注意しなければいけないと思う点がありますので、それを少し御紹介したいと思います。

 まず最初に、屋上屋を架するのではないかという議論があります。しかし、屋上屋というのは屋根の上に屋根を建てることでございますが、もともと屋根が一つないのであります。屋根のないところに屋上屋は架せないのであります。

 今は、危機管理について屋根があります。しかし、国家安全保障問題については屋根がないのです。屋根がないから各省庁が直接上に上がっていく。そこで連携ができないわけでありますから、屋上屋を架するのではなくて、もう一つの屋根をつくるのであります。それを屋上屋というふうな形で表現するのは、私は違和感がございます。

 しかし、NSCがもしできた場合に、危機管理監との関係もしくは危機管理の活動との関係というのが当然問題になると思います。この件についても、私も随分考えておりますが、今回提出された法案を見ておりますと、そこそこのバランスのとれた解決をされているなという気がいたします。

 その理由は、全ての世の中の事象というのは、全てを危機管理監が処理できるわけでもありません。それから同時に、全てをNSCの局長が処理できるわけではありません。危機管理と国家安全保障問題というのは同一ではありません。

 例えば、例を一つ差し上げましょう。この間、一月でありますが、アルジェリアにおいて、邦人保護の案件で、多くの企業戦士の方が亡くなった、とうとい命を失われた。これは邦人保護の世界でございます。これは基本的に、問題が生じ、損害が生じ、その損害をどのようにして最小限に食いとめるか、もしくは事前に予防するかも含めて、危機管理の問題だと思っています。

 危機管理、すなわち一種のダメージコントロール、言い方がいいかどうかわかりませんけれども、そのような形で専門の部署を置いて、そして二十四時間対応できる職人芸の世界、これが私の考える危機管理でございます。

 それに対して、国家安全保障問題というのは政策の企画立案、実行であります。もちろん、NSCの局長もしくは事務局というのはあくまで総理の諮問機関ということではございましょうが、実質的には、先ほど申し上げたように、関係省庁の政策というものを連携をとった上で総理に上げる機能でありますから、そこは、政策をつくる、そして実行する。

 このNSCとそれから危機管理というのは、実は相互排他的なものではありません。場合によっては、両方の問題が同じときに起きることがあり得ます。

 先ほどはアルジェリアの例を差し上げましたけれども、例えば湾岸戦争なんかは国家安全保障問題だと思います。

 では、例えば朝鮮半島で何かが起きたとしましょう。そのときには、もし有事の動きになった場合には、これは当然国家安全保障問題になりますけれども、同時に、例えばソウルに何万人もの日本の方がおられる、この方々の避難もしくは帰国等の問題、これは危機管理として処理をできると思います。

 すなわち、危機管理監と国家安全保障局長というのは、相互乗り入れが可能な、協力し合う関係にあるべきだと思っております。

 その意味で、今回書かれております法案には、そこまで詳しくは書いておられませんけれども、そのような意図が感じられており、これは両者をうまくバランスをとったいいシステムであろうと私は思っております。相互乗り入れをし、もちろん独立して、並立しながらも相互で協力し合う、こういうシステムができ上がることを私は望んでおります。

 三番目に、よく言われますのは、情報の集約という言葉でございます。

 情報につきましても実はいろいろ誤解がございまして、NSCというのは決して情報機関ではないのです。

 情報機関というのは、種々雑多な情報を集め、それをプロによって分析し、そして最終的に、これなら正しいだろうというプロダクトをつくる作業であります。その情報機関の作業というのは、実は政策立案ではございません。政策立案を支援する役割はあっても、決して情報機関は政策を提言するものではございません。

 それに対して、NSCというのは政策をつくる場でございます。したがって、NSCが、新しい国際情勢に対応するために、新しい政策をつくるために、当然必要な情報というものを情報機関もしくは関係省庁から入手して、それを消費するというのがNSCだと思います。

 したがいまして、NSCができたから情報が集約されるとかそういう議論ではなくて、やはり政策を語るNSCと、政策を語らない、しかしそれを支援する情報機関という、デマーケーションといいますか、すみ分け、これが必要だと思っております。

 そういうふうな形でNSCを見ていけば、必ずしも今のシステムがおかしくなるということはないと思っておりますので、このような形で進めていっていいのではないかと思います。

 特に、もし、もう少しお時間をいただければ、実際にどのような形で情報が使われるかということを再現したいと思います。

 例えば、私がもしNSCにいるとします。そして、私は中東屋ですから、中東で何か事件が起きるとします。これはもう一刻を争う話になりますので、当然のことながら、情報機関から情報は直接間接に担当官のところに参ります。それをうまく使いながら、実際にやるのは政策の立案そして実行でございます。この接点にいるのが担当官でございますから、その担当官が使いやすい、仕事をしやすい、そして、短時間の間にできるだけ多くの情報を処理しながら間違いのない政策立案ができるようにシステムがつくられていけばいいなというふうに思いました。

 そして、最後でありますが、このNSCもしくは国家安全保障会議について、誰がそれを代表するのかという議論もあり得るわけであります。これも、きのう、過去数日間、いろいろ議論をされておると思います。私の意見だけ申し上げて、お話を締めさせていただきたいと思います。

 確かに、NSCというのは、日本のこの法案であれば、事務局があり、その上に局長がいて、それは内閣官房に置かれます。他方、それとは別に、総理補佐官が専任で置かれるということでございましょう。機能について申し上げれば、総理補佐官はまさに総理を補佐する、助言する立場であられると思います。それに対して、諮問機関ではありますけれども、NSCの局長というのはラインに入っておられるということでありましょう。

 そういうことであれば、基本的には、やはりラインにいる国家安全保障局長が、諸外国のNSCの例えば補佐官であるとか、もしくはその種のトップと連絡をとり合うというのが普通であろうと思っております。ただし、それは、総理補佐官が何もしないでいいということでは必ずしもなくて、そこは、総理の補佐をする一環として、NSCの局長とも連携をとりながら分業をするということは十分考えられると思います。

 最後になりましたけれども、この法案ができることは、私にとっては、日米安保を十年やらせていただきましたけれども、隔世の感がある極めて重要な法案であると同時に、これは間違いなく、日本がこれから十年、二十年、東アジアで起きているパワーシフトを生き延びるために絶対必要なシステムの一部だと思っております。これだけでもちろん日本が強力な国になるとは思いません。これに、秘密保護、それから国家戦略をつくる、いろいろなことの組み合わせで、日本が生き残るすべを整備していくことが必要だと思っております。

 時間となりましたので、私の話はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

額賀委員長 ありがとうございました。

 次に、柳澤参考人にお願いをいたします。

柳澤参考人 おはようございます。

 私は、退職させていただいてもう四年になりますが、防衛省は当時防衛庁でございましたけれども、防衛庁で運用局長とか情報本部の仕事もさせていただき、あるいは官邸で五年半近く安全保障、危機管理の担当をやらせていただきました。きょうは、当時の上司も何人かお見えになっておりますけれども、その私の実務的な経験を踏まえて、この法案についての私の若干のコメントを述べさせていただきたいと思っております。

 まず、危機対応ということに関して言いますと、私も、官邸におりますときに、北朝鮮の核実験、ミサイル発射の問題、あるいは、当時イラクに自衛隊がおりましたから、イラクの治安情勢の悪化の中でいろいろな事件が起きておりまして、そういったことへの対応に追われる毎日でございました。ただ、緊急事態の対処については、私がいた時代には、基本的には、各省の緊急参集チームの制度でありますとか、緊急閣僚会議の訓練もやっていただいたこともありますし、かなり整備されていた状況だったと思います。

 一つのポイントは情報集約でございますが、これも、私は基本的に、情報屋もやらせていただいた経験からいいますと、情報というのは横着して待っていても来るものではないのでありますから、内閣情報会議の下部機関でございます合同情報会議を頻繁に事務副長官のもとで開催しておりましたし、そこで各省の局長や内閣情報調査室とも絶えず意見交換もしておりましたし、また、いろいろな事態があるたびに、こちらから言わなくても内調の方から、こういう情報があるよというようなことを言っていただくとか、非常にそこの関係はスムーズにいっていたなというふうに思っております。

 問題は、やはりそこで政策側の人間と情報側の人間が問題意識をしっかり共有できていること、信頼関係があることが一番のポイントだろうと思っておりました。

 そういう危機というのは、なぜ危機かといいますと、基本的には情報が不足しているから危機なんだと私は思います。特に、情報が足りないだけじゃなくて、矛盾した情報が入ってくるということも実際に経験したことがございます。これはもうどんな情報機関が頑張っても避けられない宿命とも言えるわけでありまして、そういう中で、まあ、情報のせいにはできません、私自身の対応のまずさもあって失敗した例も幾つか正直ございました。ただ、それはその都度その原因を分析して、次に同じような失敗が起こらないような改善措置はとられてこられたのではないかというふうに思っております。

 やはり、もちろん、制度をつくっていくということも、私は別にそのこと自体に反対するものではございませんけれども、制度の本質というのは、制度そのものというよりは、いかにそういった情報がきちんと伝わり、そして、これは難しいことですが、判断ができるだけ的確になされるような、そういう人材を育て、お互いの信頼関係を、そこを文化の問題として制度化していくというのか、形を、法律上の制度以上に、そういった運用面での慣習のようなものを構築していくことが極めて重要なんだろう。

 そして、情報が不足する中でありますから、いつも言われておりましたのは、最悪のことを想定しながら楽観的に行動する、そういう姿勢で総理を補佐、完全にできたという自信は全くございませんが、そういうことを心がけながらやらせてきていただいたと思っております。

 安保会議が形骸化しているということをよく言われます。これは、大きな場でほとんど閣議とメンバーが変わらないところですから、そこで改めて議論が百出するようでは事前に我々がちゃんと仕事をしていないということなので、そういうことはなかったんですが、しかし、それで形骸化しているとも必ずしも思っておりませんでした。結構いろいろな御意見を出される閣僚もいらっしゃいました。活発な意見表明もあったと思います。また、案件によりましては、官房長官を中心にして外務、防衛の三閣僚の協議というのも頻繁に行っておりました。

 したがって、制度がなかったために対応がおくれたということは、私の経験する限りでは、そういう問題ではなかったというふうに思っております。

 ただ、そうはいっても、全てよかったかというと、私、振り返ってみまして、内閣安全保障・危機管理担当副長官補のもとに相当数の、今はどのくらいでしょうか、二百人ぐらいのスタッフがいると思いますが、これは、情報セキュリティーも含めて、ほとんどが危機対処あるいは初動対処要員でございまして、実は、政策立案のスタッフというのはほとんどいなかったのでございます。そういうところが不足しているなということを私も絶えず考えておりました。

 中長期的な政策の問題については、いろいろ案件ごとの、当時も自民、公明の連立与党でございましたから、政調会長にお願いして与党のプロジェクトチームをつくっていただく、そこでの議論でありますとか、あるいは防衛計画大綱をつくるときの有識者懇のような、アドホックな外部の専門家の方の議論の場を通じて政策を詰めていくというような、そういうことができていたにとどまっているんだろうと思います。

 この法案というか、傾向として、この法律がなくても、私は、運用でそういうことをやっていく趨勢にあると思いますけれども、先ほど宮家さんの御意見にもありましたが、屋上屋というのは、これは確かに屋上屋でないかもしれないが、しかし、あくまで制度論として言えば、各省設置法がそのまま残っているわけですから、これは将来、官邸がそういうところまで吸い上げて自分でやっていくということになれば、私も官邸で仕事をする中で一番大変だったのは各省の抵抗排除でございましたので、そういうところを、やがては大きな、もう一段の法的、制度的な手当てが必要になってくるというか、していただけるとありがたいなという感じがいたします。

 それから、私が副長官補のときに、NSC法案は出したんですが、次の総理にかわりましたときに一度引っ込めてしまったことがございました。

 これは、やはり当時の私どもの感覚、それは当時の総理、官房長官も含めてでございましたが、なかなかこういう形で、一つの形で決め打ちしてしまうのがどうなんだろうなという感覚があったことも事実でございまして、確かに、総理を補佐する機構が充実することは必要だというのは皆さん共通した意見でございました。ただ、それを、では総理も出席した四大臣会合という形でやるかということで見れば、例えば小泉総理のときは、官房長官と外務、防衛の三閣僚が何度も協議をして、その結論を総理のところに持っていって、総理は、どっちかというと、プレーヤーというよりはアンパイアとして、いいところはとる、そういう姿勢でおられた。そういうやり方をお好みになる総理もいらっしゃるんだろうと思います。

 ですから、ここは、いずれにしても運用の問題ではありますけれども、余りがちがちの運用というよりは、柔軟性を持った運用をしていかなければいけないのではないかという感じがしております。

 以上は、どちらかというと、技術的な、実務的な観点のお話でございますが、さらに、もう少し、私が考える本質的な要素について若干コメントしたいと思います。

 私は、今回の法案の一番本質的な要素は何かといえば、各省に対する情報提供というか資料の提供を義務づけているところにあるんだろうと思っております。

 ただ、これは、皆さん情報の専門家はそうお考えだと思いますが、義務づけしただけで終わりではない、義務づけすれば良質な情報が上がるという関係にはないということを心得ておく必要があるだろうということだと思います。

 本来、政策と情報というのは緊張関係があるのが本来の姿であろうと思うんですね。というのは、情報というのは基本的に、客観的な事実に基づいて客観的な分析をすべきであるんですけれども、では、そういった情報分析の結論が時の総理あるいは政権が目指している政策と合っているかどうかということは、必ずしも保証をされていない。そこのところにまた情報の結論が左右されてはいけないんだろうと思います。

 一方で、やはりどちらが上かといえば、それは政策が上、政策に奉仕するために情報があるのであって、その逆ではないわけでありますから、そのことに重きを置いてしまうと、政策決定者がある政策目的のために必要な情報を資料提出義務でもって求めた場合に、なかなかその意に反する情報を上げるというのは、人間のやることですから、これもちょっと難しいこともあるんだろうと思います。

 そういったことに気をつけませんと、例えば、これは的確な例かどうかわかりませんが、イラク戦争の前提となった大量破壊兵器の存在に関する情報、これは私も間違えておりましたが、当時、みんなが間違えておった。これはやはり、政策決定者の方向性に情報サイドが引っ張られた側面が一つあるんだろう。そういうことにならないように気をつけていかなければならないというのが最大の教訓だろうというふうに思っております。

 もう一つ、それに派生して出てくる問題でありますが、結局、一種の義務として情報を提出させるとすると、私どもも実務者としていつも迷っておったのは、本当にどこまで、ここまで情報を上げていいんだろうかというようなことは、いつも悩みでございましたが、やはりそれは、情報を受け取った側にしっかり守秘義務がないと不安だということも間違いないので、そこはちょうど秘密保護と情報提供義務というのは表裏一体の関係になってくるんだろうというふうに思います。

 ただ、そうなりますと、先ほどのような情報提供が義務化されるということによって、政策が情報にまさってしまうことが、仮にそれが上下関係として認識されてしまって、それを命じた少人数の閣僚の協議によって実質的な方向性が決まってしまう、こういう関係が固定化されてくるということになると、そういう場合に、その情報の中には、当然、国の安全上、秘匿すべきものが含まれているわけでありますから、そうすると、それを理由にして、その政策決定のプロセスが一切公表されないということになってくるおそれがあるということを指摘しなければいけないと思います。

 これは、私自身、実は官邸におりますときも、やろうとして、人手不足もあってできなかったことであるんですけれども、いろいろな危機管理の事案などについて年次報告書的なものをつくって、どう扱うかは別としまして、それを後世の検証にたえるような形で蓄積していく、それによって政府自身が賢くなっていくということ、そういうプロセスがぜひ必要ではないかと思っておりました。

 せっかく今回六十名ほどのスタッフを新設するということであれば、国会に対してでもよろしゅうございますし、あるいは別の形でも結構でございますが、危機管理の事案、あるいは政策決定に関して議論されたことの概要、そういったものを定例的に公表していく、そういうことをぜひお考えいただきたいと思います。それが、その政権自身がより間違いの少ないものになっていくことと同時に、主権者たる国民がより賢い政府を求める権利はあると思いますので、そういうことにも奉仕していく。

 ともすれば、何が秘密かということは、やや神学論争的なものにもなりがちなのでありますが、そういうツールを使って、では、その報告でもってどこまで説明ができるんだろうか、その説明のために必要な範囲のことは特定秘密ではないだろう、そういう相場観が、与野党もメディアの間にも共通認識としてでき上がっていく、そういうことにも役立っていくのではないかというふうに思っております。

 可能であれば、これは私自身も現役のときにやり残した仕事であるとも認識しておりますが、そういったことについても御配慮いただければ、全体としていい方向に運用ができるのではないかということを考えております。

 以上でございます。(拍手)

額賀委員長 ありがとうございました。

 次に、永岩参考人にお願いをいたします。

永岩参考人 おはようございます。航空自衛隊OBの永岩であります。

 本日は、自衛隊の作戦運用の現場及び司令部活動におきまして、司令官としてその統制を実施した、指揮を実施した経験から、具体的な話でお話ししたいと思います。

 もちろん、私自身、NSCの立ち上げの議論につきましては大賛成でありまして、待ちに待った法案ができたなと。ただし、確認いたしますと、いろいろまだ具体的な課題があるだろうな、将来に対して、状況変化に適応する形でどうテーラーメードにしていくかということに関して、ビジョンが必要だなというふうに感じているところであります。

 経歴としましては、F4ファントム、F15戦闘機に乗りまして、飛行時間四千時間、冷戦時代の対領侵任務についておりました。平成十五年には、西部航空方面隊ということで、東経百三十五度以西、北緯三十度以北の防空任務を担任しておりました。それ以降、十八年からは、航空支援集団司令官ということで、戦う航空総隊を支援する役割を負うていましたが、当時、イラク復興支援でございましたので、クウェートのアリ・アルサレム空軍基地にC130の部隊を派遣しておりましたし、カタールの方に、CAOC、コンバインド・エア・オペレーションズ・センターというところに連絡要員、現地指揮官を派遣して、それを府中の航空自衛隊司令部から指揮統制しておりました。

 また、支援集団司令官は邦人輸送にかかわる統合任務部隊指揮官でありまして、例えば、朝鮮半島が不安定になる、そのときに、いかに邦人を救出するか、後方輸送するかという、その任務での司令官としてアサインされておりましたが、その当時、計画立案、具体的な演習といったもろもろのことに携わっておりました。

 昭和五十一年九月六日、私は、千歳基地で、アラートハンガーでスクランブル待機をしておりました。不意突然の目標の出現に、スクランブルで上がって、ベレンコ中尉の乗るミグ25を発見することができませんで、それで、やむなく千歳に帰ったんですが、その当時は、何といいますか、事態というのは不意突然に、思いもしないマグニチュードのことが思いもしないところに発生するものでありまして、現場は相当混乱しますし、情報ももちろん、いろいろな状況掌握も全くできない状態でございましたので、現場はもちろんですが、中央の方に至っても同じように情報錯綜し、基本的には、上から下までしっかりした意思のもとにマネージされたか、危機管理がされたかというと、今考えますと、非常にお寒い状態であったなというふうに認識しているところであります。

 戦闘機乗りが上空で生き残りのために何に一番関心を持って行動するかといいますと、英語でまことに申しわけありませんが、SAをとるといいます。SAというのは、シチュエーショナル・アウェアネス、状況掌握であります。それはもちろん、自分の担当、正面だけではありませんで、後方も、あるいは各警戒管制組織から来るいろいろな情報もあわせまして、深刻に状況判断、SAをとります。SAが優位になりますと、基本的にその交戦につきましては勝利が見えてくるということであります。

 多分、NSCも、いかにSAをとるか、情報掌握をするかというのに課題があり、そして、上空のパイロットも一緒ですが、いかに決心するか、非常に錯綜した中で、決心するまでのリードタイムが少ない中でいかに決心するかというのが問われるわけでありまして、それはNSCも全く一緒なんだろうなという感じがするところであります。

 次の論点ですが、さて、NSCは、宮家先生おっしゃいましたが、なかった屋根をつくればそれでオーケーか、危機管理は大丈夫かということでありますが、全くそういったことはないというふうに思います。

 最近、中国の軍事力台頭も非常に厳しいところでありますが、私は数年前に大連に行っていろいろ意見交換をする機会がありまして、その際、大連空港におりるファイナルレグ、最終着陸経路の真下で、そこに大連港があるんですけれども、そこでワリャーグの工事をしておりました。国家的な秘密であればまさかそんなに目につくところで建造なんかするとは思いませんが、そのとき着々と建造しておりました。中国に言わせると、空母は大国であれば持つべきものというふうに言っておりますので、どうもそれは中国人のナショナリズムを満足させる類いのものなのかなと。

 実際、今、遼寧という名前に変わりまして、実運用に向けて着々と整備が進んでいますが、それを見ますと、空母だけで役割をなそうとしている。アメリカ軍に言わせますと、格好の、いい目標であると。中国本土にいるハイバリューアセット、戦闘機等が非常に多数艦上に載りまして、海に単艦で出てくる状況でございますから、そうしますと、それは非常に楽な作戦になるということであります。

 NSCも一緒でございまして、NSCさえつくればいいかというと、決してそうではないわけでありまして、それにかかわるもろもろの体制の整えというのが全般的にデザインされて初めて機能するんだろうなというふうに私は思うところであります。

 NSCは、情報の要求を出すところであり、情報のエンドユーザーであります。ですから、そういった観点でしますと、まさに情報を、どういった形で周辺体制を整えるか、デザインするか。私は、多分、アメリカと同じように、中央国家の情報組織、まさにCIAのような体制をいずれつくらなければいけないんだろうなというふうに考えているところであります。

 集約した情報は、一体管理されて、そしてその状況に合わせた形で合意し、判断、決心できますような形で十分提供されないと役割をなさないというふうに考えるところであります。

 ただし、総理がいつもおっしゃいますが、今そこにある危機、昔と違いまして状況が非常に厳しくなっておりまして、あすにでも、アドホックにでも、それらの脅威、危機に対して答えを準備しなければいけないというふうに思うわけであります。その言葉で適当なのがありますが、それは、まず隗より始めよ。それで、だんだん状況変化に適合させていく、アレンジしていく、テーラーメードにするという形でやれば、あした危機が至っても、あさって至っても、そのときの状況に合わせたいい答えが出るんじゃないかなというふうに思っているところであります。

 それから、実はNSCは、事が起こったらそれに対処するシステム、センターではありません。私自身が考えますのは、将来のことを予測して準備しておくという組織なんですね。

 というのは、私は以前、MITの方で、あるクライシスマネジメントに関連するシミュレーションに出たことがあります。MITのリチャード・サミュエルズ教授が、ジャパン・プログラムということで、日本を中心とした周辺諸国を対象として、十年後、二十年後にどういったクライシスが発生するだろうかという検討をし、そして、ジャパン・チーム、中国チーム、そのほかアメリカ・チーム等々の専門家、キャリアの外交官、大学教授、軍人、政治家も含めて、そういったスタッフを含めて非常に真剣な議論をしていましたが、まさに我々がまさかこんなことは起こらないだろうといった類いのことを考え出しました。

 つまり、中国の台頭、インドの台頭、ロシアのリバイバル、アメリカの相対的な退潮、そういった環境の中で、日本周辺に不測の事態が発生する。実はそれは、極めて戦略的な議論のもとに、もう既にちゃんとテーラーメードの答えがある中を適応させるやり方でやらないと、まずもって混乱するんだなというようなことですね。そういったことをテーマに準備した、あるいは議論したことがありますが、多分、そういったことでないと、次なる時代の危機は、またとんでもないところにとんでもないことが、過去の財産にないものが起こるのが事態であるというふうに認識しますので、どうしてもそういった形で事前の準備が必要であろうなというふうに思うところであります。

 その観点で申し上げますと、アメリカのNSCは、一九四七年、トルーマン大統領の時代につくられてから今のオバマ大統領まで、実に状況変化に合わせて姿を変えて、テーラーメードにしております。大統領の関心、重要事項というのもありましょうが、基本的には、いかにその状況に適合するかということに関して、体制を変えることには何ら抵抗を感じていないふうに見える。

 ですから、NSCをつくったからこれで全部答えが出せるわけではありませんので、つくったら、来年は多分、いろいろなアドホックな体制整備というのが必ずや必要になるだろうなというふうに思うところであります。

 当時、オバマ大統領になったときに議論されましたのが、大統領に対する意見具申を明確にする、長期的、戦略的視点から米国の国益にかなった政策判断をする、恣意的な情報操作を排除する、NSCの所掌範囲を限定せず、現下の複雑多岐の状況に適応できる柔軟な機構構成にする、メンバーは特定せず、事態、状況に臨機に参集できるようにする、NSCの所掌範囲を再整理するとともに省庁間の連携を強化する等々、過去、きっとおのおののことはそれなりにちゃんとなされていたんじゃないかと思いますが、オバマ大統領は、自分の代にかわりまして、まだまだ課題ありということで、テーラーメードにしたということであります。

 それから、最後になりますが、実は、世論戦ですかね、メディア戦。お隣には三戦あるんです。スリー・タイプス・オブ・ウオーということで、世論戦、法律戦、心理戦。中でも世論戦は極めて得意であります。

 まずもって、私は、作戦現場、運用の現場で、最前線で行動しておりまして、いざ、場合によって不意の衝突がここであった場合に、いかにその状況を中央にしっかり正しく伝え、とった情報についてはできるだけ速やかに、迅速に提供するかということについて腐心しておりました。時間のディレーもありましょうし、正確な情報掌握は多分非常に難しい。距岸数百マイルも離れたところで行動しておりますから、正しい情報の迅速な伝達というのは難しかろうと思いますが、大事なのは、基本的には、最前線で対処する航空自衛官、海上自衛官、陸上自衛官あるいは海上保安庁、警察等の隊員たちが、国内法、国際法理に基づいてきちっと対応しているというのが、我が自衛隊あるいはその他の機関等の今の現状の能力、実力だというふうに思っています。

 それをいかにメディアあるいは政府から、あるいは次なるNSCから、日本は国内法、国際法にのっとって正しい対応をした上でのこういった事態だということを説明して、世界に日本を応援するグループを早く確保すればするほど、日本の国益にかなう政策といいますか、あるいは実行力という形になろうと思いますから、これについては、どうしても迅速に判断する必要があると思います。

 私の過去の経験からしますと、例えば、日本海にロシアのTU16が墜落したことがありましたが、その際に日本側でやった状況掌握は、まず、戦闘機を返して、おりた航空機の残弾を確認するという行為をしましたが、まずもって、現場は相当混乱した経験があります。

 いずれ、そういった意味での世論戦について具体的に体制をしっかり整えるというのが、日本の国益にかなう、あるいはNSCをつくった上での一つの大事な要素であろうというふうに認識するところであります。

 本日の報告は以上で終わります。どうもありがとうございました。(拍手)

額賀委員長 ありがとうございました。

 それでは次に、細谷参考人にお願いをいたします。

細谷参考人 貴重なお時間をいただきまして、大変ありがとうございます。

 今まで、三人の参考人の先生方、非常に貴重な、御自身の実務的な観点、御経験から、重厚な、有意義なお話をいただいたと思います。

 私は、やや異なる観点から、外交史を研究する立場、あるいはイギリスの安全保障政策、防衛政策を研究する立場から、今、このような形でNSCを日本でつくろうとしているということがどれだけ重要なことであって、また意義深いことであるかということをお話ししたいというふうに考えております。

 外交史の研究を振り返ってみますと、実は、我々、日本の歴史を振り返るときに、非常に大きな誤解をしていたというふうに認識しております。

 これはどういうことかと申しますと、近年、膨大な資料が公開されて、多くのすぐれた研究が生み出されてきましたが、戦前の日本の政治における根本的な問題点は、軍部の独裁ではない。そうではなくて、むしろ、余りにも首相あるいは首相官邸が権力がなさ過ぎた。なさ過ぎたことによって、組織間の対立が余りにも激しかったことによって、どれだけそのことが国益を損ねてきたのか。そのようなことが近年の研究からは明らかになっております。

 資料を配付させていただきまして、例えば、静岡県立大学の森山優先生が、「日本はなぜ開戦に踏み切ったか」、膨大な軍の資料を用いて、あるいは外務省の資料を用いて書かれた御本の中で次のように書かれております。「日本の意思決定システムは、「船頭多くして船山に登る」状態だった。何か有効な解決策を実行しようとしても、誰かが強硬に反対すれば決定できない。まさに独裁政治の対極であった。」「結局、組織的利害を国家的利害に優先させ、国家的な立場から利害得失を計算することができない体制が、対米戦という危険な選択肢を浮上させたのである。」

 つまりは、組織間の対立、それぞれの組織が首相あるいは大臣に重要な情報を上げない、そして、それぞれの大臣の間で問題の認識が共有されない、そういった中で、日本は繰り返し道を誤ってきたわけでございます。

 つまりは、余りにも首相に権力がない、情報が集まらない、そして省庁間の調整がなされていないことがこれまで日本の歴史で多くの利害を損ねてきたのだとすれば、今必要なことはその逆である。まさに首相官邸に、機能を強化し、権力を集中させ、そして情報を集めるシステムをつくる。そうでなければ、再び日本は同じような省庁間対立から国民の生命や安全を損ね、そして重要な日本の国益というものを損ねてしまうことになるわけであります。

 つまり、明治時代以来の日本政治における根本的な問題、そして病理というもの、それに対して、今ここにいらっしゃる委員会の先生方がそれを乗り越えて、まさに新しい一歩を踏み出そうとしていらっしゃる。これは偉大なことであって、また誇りにするべきことであって、日本の政治の長い歴史の中でも大変すばらしい瞬間である。ぜひそのことを御理解いただきたいということを外交史の観点から申し上げたいと思っております。

 また、私の専門であるイギリスの防衛政策。

 従来は、アメリカのような大統領制だからこそ、そのスタッフ機能としてNSCが必要であったということが言われておりました。しかしながら、日本が模範としてきた議院内閣制のイギリスにおいて、二〇一〇年の五月十二日にNSCがつくられました。

 なぜイギリスでNSCがつくられたのか。どのような経緯からそれが必要と思われたのか。そして、設立してから三年の間に、これが非常にうまく機能しています。そして、リビアの空爆の問題やシリアの問題をめぐって、閣僚間の調整等々をめぐって、非常にうまくこのNSCというものを通じてさまざまな議論が深められて、政府として統一的な見解がつくられているわけでございます。

 なぜ議院内閣制のイギリスでNSCが必要と考えられたのか、そして、なぜイギリスで、そのような政治体制のもとでうまくいっているのかということを、また後ほど少しばかりお話をさせていただきたいと思っております。

 そのNSCの意義、つまり、最初に申し上げました、日本においてリーダーシップというものが十分に機能しないことがあった。それは、首相、大臣個人の問題というよりも、制度的な問題であるということですね。その制度というものを改めなければ、この根源的な問題というものを解決できない。この点について、まず冒頭に三点、問題意識を申し上げさせていただきまして、その後に、留意すべき点を四点、お話をさせていただきたいと思います。

 一点目は、先ほど申し上げたリーダーシップの不在というものが、制度的な問題に根差しているということでございます。この問題を解決しなければ、省庁間の対立というものが繰り返し日本の国益を損ねるということになるわけです。

 とりわけ、近年の安全保障上の脅威というものが、これは、民主党政権下における尖閣沖の漁船衝突事件、あるいは東日本大震災もそうですが、これら多くの問題が、複数の省庁にまたがる、そして非常に短い時間で決断をしなければいけない難しい問題であった、複合的な問題であったということでございます。そしてそれが、私個人の認識としましては、首相、あるいは大臣、あるいは議員の方々個人の問題というよりも、そもそも制度的な欠陥からそれらの問題というものが十分効率的に対応できなかった。

 そして、これからは同じような問題を繰り返してはいけない。ぜひここで、制度的な問題というものを克服して、そして、このような複合的な、非常に大きな安全保障上の問題に接したときに、政府として効率的に対応していただきたいというのが一点目でございます。

 そして二点目が、近年の世界の潮流としまして、とりわけ先進国において、いわゆる中央執政府、これは政治学の用語でコアエグゼクティブと呼んでいますが、これが機能強化されているということが世界の趨勢でございます。

 これは先ほど申し上げたイギリスにおけるNSCというものの設立も同様でございますが、世界的に先進国の間で中央執政府が強化されている。そして、この中央執政府、例えば、アメリカであれば大統領府、そしてイギリスであれば首相官邸、その首脳間の連携というものが、サミットの回数がふえているということも含めて、より一層重要になってきている。

 その中で、日本だけが中央執政府にNSCを持たないということによって、この中央執政府のネットワーク、NSCのネットワークに日本が入れない。それによって、それらの諸国が共有しているような情報が日本に入ってこないということになる。この世界の潮流の中で日本が孤立して、このようなNSCをつくらないことによって首相官邸で十分な情報を集中させて迅速な決定ができないとすれば、これは日本の国益を損ねることになってしまうということでございます。

 そして三点目が、先ほども少々触れさせていただきましたが、近年の日本を取り囲む問題が、とりわけ複合的となり、多面的となり、そして大きな問題となっている。それは一つの省庁では解決できない。冷戦時代とは異なり、現在の脅威というものが、非常に短い時間で迅速に対応しなければならない。そして、複数省庁間の連携というものが従来にも増して必要になっている。しかしながら、この新しい脅威、新しい時代において、それに対応する制度というものが今までは十分に整えられてこなかった。

 これらの三点からしても、迅速に我々はNSCというものを樹立して、これらの問題というものを克服しなければいけないというふうに考えております。

 東京大学名誉教授の北岡伸一先生は、御著書の中で次のように述べています。「戦前の陸軍と海軍の対立など、有名な例である。」これは省庁間の対立ということですが、「総合的な調整の必要なことは誰もがわかっていたが、ライバルの組織に譲ることだけは、受け入れようとしなかった。」ということですね。

 このような問題を解決するためには、やはり制度的な変更というものは不可欠である。

 その上で、続いて四点、留意するべき点を申し上げたいと思います。

 まず一点目が、近年において、超党派的な安全保障上の合意というものが必要となり、それが生まれつつあるということでございます。

 現在、安倍政権のもとで進めておりますこのNSCの設立の動きというもの、もともとは二〇〇七年に第一次安倍政権で種をまいたわけですが、それを育てたのは実は民主党政権だったということでございます。

 すなわち、平成二十二年度の防衛大綱の中で、民主党政権でこれは閣議決定をされているわけでございますけれども、この民主党政権の防衛大綱の中でも、「首相官邸に国家安全保障に関し関係閣僚間の政策調整と内閣総理大臣への助言等を行う組織を設置する。」ということが、これは民主党政権下で合意されていて、その合意した大臣の中には海江田万里民主党代表も入っているわけですね。

 つまり、この必要性ということは、必ずしも今の安倍政権で突然生まれたわけではなくて、実は民主党政権においても多くの先生方、閣僚の方々が認識していた問題であって、それに対してもまた取り組んでいたということでございます。

 また、玄葉光一郎外務大臣が外務大臣の際に、NSCの重要性について、NSCをつくることによって「関係閣僚間の連携が一層促されるのであれば、積極的に進めるべきでしょう。実はそのような場は意外なほど少ないのが現実です。そういうNSCであれば、私は有益であると思います。」と。

 つまりは、先ほど私が申し上げたとおり、明治時代以来続く日本の問題点、すなわち組織間の利害対立、そして大臣間で情報が共有されない、認識が共有されないという問題は、戦前の陸軍と海軍の対立だけではなくて、実は現在においても大きく変わっていない、そのことを恐らく玄葉大臣はおっしゃっていた。それを議論する場が少ないということですね。

 イギリスにおけるNSCを設立した大きな意義としてしばしば指摘されるのが、大臣の間でコミュニティーの感覚が生まれつつある。つまりは、それ以前はそれぞれ下の組織から上がってきた省庁間、大臣の認識というものが、毎週一定時間、大臣間で緊密な協議をすることによって問題を共有し、閣僚の間で、とりわけ安全保障に関する重要閣僚の間で安全保障をめぐる認識が共有されている。このコミュニティーが生まれつつある。

 そして、これは単に大臣間だけではございません。NSCをつくり、政府の官僚の方々の間で組織を超えた組織文化、新しい組織文化が生まれるということですね。それぞれの出身の省庁に戻ったとしても、問題を共有し、いわば政府一体となって、これは英語ではザ・ホウル・オブ・ガバメント・アプローチと呼んでいますが、そういったものが生まれる。これには時間がかかります。NSCをつくったからといって、すぐにそのような組織文化が生まれるとは思っておりません。数年あるいは数十年の時間が必要かもしれません。

 しかしながら、今ここで新しい第一歩、勇気を出して一歩を踏み込むことによって、日本の政治に新しい組織文化を生み出して、そして、長い時間、一世紀を超えて日本の政治をむしばんできたこの深刻な組織間の利害対立というものを乗り越えるとすれば、それは、ここにいらっしゃる委員会の方々、先生方にとっては偉大な貢献であり、また第一歩だというふうに私は考えております。そしてそれが、先ほど申し上げたとおり、まさに党利党略を超えて超党派的な合意として生まれつつあるということが重要な点というふうに考えてございます。

 二点目でございますが、人がいれば組織がなくてもうまくいくのではないかということは、私は、これは必ずしも当たらないというふうに考えております。

 というのは、常に大臣、総理大臣が、有能な、外交、安保に精通した方々とは限らないということでございます。こちらの委員会にいらっしゃる先生方のように防衛、安全保障に精通した方々であれば、いつ大臣になっても、総理になっても、恐らくは、連携を緊密に強化し、そして迅速な対応ができるかもしれません。しかしながら、さまざまな考慮から、防衛大臣、外務大臣が、外交、防衛に精通している方々、経験が深い方々がなるとは限りません。過去どういった方がそうではなかったかということは私は申し上げることはしませんが、しかしながら、常にそういった方々がつくとは限らない。

 あるいは、例えば内閣の中で、内閣官房で副長官補あるいはその下の方々の間で緊密な連携がとられるということがあるかもしれない。先ほど参考人でお話しいただいた柳澤さんのような優秀な方が副長官補でいれば、もしかしたらNSCが必要ないのかもしれない。しかしながら、常にそういった方々がその重要なポストにつくとは限りません。

 したがって、人に頼るのではなくて、どのような方が大臣あるいは内閣官房のポストについたとしても、緊密な協調、チームワークがつくれて、そして迅速な決定ができるということを制度として我々はつくらなければいけない。これが二点目でございます。

 三点目でございますが、イギリスでなぜNSCというものがつくられたのか。これは実はブレア政権の反省です。ブレア政権のもとでは、内閣の制度を用いずに、プライベートなアドバイザーに依拠してブレアは重要な決定をしていきました。国家の命運にかかわる、あるいは国民の安全にかかわる重要な問題が、数人の私的なアドバイザーによって振り回されるということですね。このようなことがあってはならない。やはり制度的に、専門的な見地を持ったすぐれた専門家の方々がNSCに六十人あるいはそれ以上集まることによって、そのような数人のアドバイザーに振り回されて政策が混乱をすることがない。そういったことが、今回のキャメロン政権ではNSCをつくる大きな動機となったわけでございます。

 そして、まさにキャメロン政権はそれを実践し、すぐれたアドバイザーに囲まれて、単なる数人のアドバイザーではなくて、あくまでも政府全体として、あるいはそれぞれの省庁の合意を得た上で重要な決定ができるということでございます。

 そして、最後に四点目を触れて、私の発言を終わらせていただきたいと思います。

 四点目は、先ほど少し触れさせていただきましたが、世界全体でNSCを強化する動きがある。そうすると、世界のNSCの担当者のネットワークの間で情報を共有し、重要な決定がされる。これは、首脳間の交流が緊密になっているということと無関係ではございません。首相のもとで、NSC、局長に当たる方あるいは補佐官が各国のカウンターパートの方々と緊密に連携することによって、難しい問題が解決できるかもしれない。しかし、日本にそのポストがなければ、このネットワークに入ることができないわけですね。このネットワークに入れないことによって、国家間で重要な情報が共有できずに、また、信頼関係が、意思疎通が緊密化できないとしたら、そのことが日本の安全保障を考える上で重要な欠落となるということでございます。

 この点からしましても、ここにいらっしゃる先生方におかれましては、ぜひとも迅速にこのNSCというものを設立し、首相官邸の機能を強化していただきたいと思っております。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

額賀委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

額賀委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。左藤章君。

左藤委員 おはようございます。四人の先生方、本当にありがとうございます。

 きょうはNSCの件で先生方の御意見をいただきながら、共通しているのは、これは絶対必要だということであります。その中で、また、大変な問題、これは、情報をしっかりとるんだ、正しい情報をしっかりやるんだということが、それぞれの先生方の共通の認識だったと思います。

 そこで、まことに恐縮ですが、宮家先生にちょっとお聞きをさせていただきたいと思います。

 実は、先ほどアルジェリアの問題がございました。当時、城内先生、外務大臣政務官だったんですが、クロアチアにおられて、すぐアルジェリアへ飛んでいきました。すごいスピードで対応していただいたんですが、なかなかアルジェリア政府から、また、現地の情報がなかなか入りにくかった。これは、我が国も、一生懸命やっていても、なかなか現地の情報がとれなかった。これは、一つは、海外における日本の情報が、どれだけのものがとれているのか。

 また、それに対して、そのときいろいろなことを言われました。スペインはもっと前もってわかっていたんじゃないかとか、イギリスもわかっていたんじゃないかとか、いろいろな御意見がありましたけれども、宮家先生が外務省におられたことも踏まえながら、こういう日本の状況、そして、情報がしっかりこれで、このNSCをとることによってさらにどういうぐあいにとれるようになるのか、お考えをちょっと伺えればと思います。

宮家参考人 ありがとうございます。

 耳の痛いお話でございまして、NSCとは直接関係ないかもしれませんけれども、アルジェリアにおいては確かに十分な情報がとれなかったという反省はございました。

 私は、アラビア語でございますので、ちょっとだけ反論させていただきたいんですが、アルジェリアというのは、フランスの植民地だったこともあって、フランス語が結構通じまして、そして、英語は余り使えないわけでございまして、あそこで仕事をするためには、実はフランス語とアラビア語に堪能でなければいけないのでございます。外務省でも、実は、フランス語とアラビア語が堪能な人は、英語をしゃべる人は結構いますが、なかなか人を養成するのは難しい。そういう意味では、なかなか盲点であったろうと思います。

 もう一点だけ申し上げれば、情報というのは、確かに工作員が、秘密のジェームズ・ボンドみたいな人がいて持ってくるというイメージをお持ちかもしれませんけれども、情報機関の基本は、公開情報の十分な読み込みと総合的な分析が最初でございます。その作業をしないで、ただ単に情報だけをとってくるということでは、実は立派な情報機関はできないと思っています。

 やはり、工作員もしくは情報収集のオペレーターと、それからそれを分析するアナリスト、この二つがうまく連携をして初めて立派な情報機関ができるだろうと思っております。その意味でも、日々勉強しなければいけないと思っています。

 ありがとうございました。

左藤委員 今先生がおっしゃったように、情報機関の重要性がございますが、安全保障局を我が国はつくるわけであります。そこにいろいろな、各省庁からそれぞれの方々が出向して、情報を共有しよう。

 先ほど細谷先生もおっしゃったけれども、それぞれの省庁間の、お互いに秘密にしたり、縄張り争いをやったりと、そういうつまらぬことではこの国の安全は守れないわけであります。その中で、外務省、防衛省、それに、よく言われますが、私はそれ以外に、やはり警察庁また公安調査庁、こういうものを含めた総合的な組織をつくる必要があるんだろうと思います。

 今、安全保障局の、はっきり決まっておりませんけれども、約六十人という話が出ておりますけれども、これは、アメリカは二百人と言われております。これについて、今の数字、これから決める話なんですが、妥当性があるのか、少ないのか、こんなものなのかということを、済みませんが、宮家先生そして柳澤先生からお聞きをさせていただきたいと思います。

宮家参考人 ありがとうございます。

 アメリカがNSCを最初につくったときは、たしか九人で始めました。今は二百人もしくは三百人という話もございます。数が多い方がいいとは思いますが、多ければいいというものでもございません。六十人というのは、アメリカよりははるかにいいスタートだったと私は思います。

 その中で、今御指摘のあったインテリジェンスコミュニティー、外、防、警察、公安調査庁も含めて、私は、ここに実は大きな問題があって、この問題を解決しないと、実は先に進めないと思っていることが一つございます。それは、インテリジェンスコミュニティーの中で情報を共有することであります。

 残念ながら、今は、CIAでもどこでもいいんですが、外からとってきて、それを精査もせずに上に上げる、スピードを競っております。そういうことでは、私は立派な情報機関はできないと思っています。先ほど申し上げたように、情報をとってくることのスピードではなくて、分析の内容の結果を競うべきだと考えております。

柳澤参考人 アメリカのNSC、私も必ずしも専門ではございませんが、なぜ二百人というか、あるいは二百人をどうデマケしているかということが問題なんだろうと思います。

 アメリカは、御案内のように、もう世界じゅうでいろいろな外交、軍事のオペレーションを展開しておりますので、基本的には、地域担当の統括官を何人か置いて、そのもとにスタッフを張りつける結果、それで二百人という数字になっているんだろうと思います。

 我が国の場合でも、スタッフをどうやっていくのか、地域別にやっていくのか、あるいはファンクションでもって分けていくのかということはありますが、そういったところがこれからの課題になっていくんだろう。

 それから、必ずしも意見が全く違うわけではございませんで、基本は宮家さんのおっしゃることもそのとおりだと思いますが、一番直近に官邸にいた経験を持つ私からすれば、今は、それほど各省庁の縄張り争いで、我々が、内閣官房が本当に困り切っているというような状況は、少なくとも私の経験上はなかったと思います。それだけ官邸の機能強化は進められている。ただ、それ以上に、さらにいかに賢い安全保障政策を立てていくか、そこが課題なんだろうと思っております。

左藤委員 今、情報機関の問題で、正しい情報、そしていろいろな交錯することもございますけれども、それを判断する能力、これが一番大事だろうと思いますが、その中で、我々はどうしても、たくさんの方の情報をとるためにいろいろなことをしなきゃならない、いろいろなアンテナを張っていかなきゃならないということには間違いないと思います。

 そういう面で、ちょっと細谷先生にお聞きしたいんですが、イギリスは議院内閣制で大統領制じゃありません。それでもうまくいっているとおっしゃっていました。その中で、情報のとり方、そして決定の仕方、これはイギリスはどうなっているんでしょうか。ひとつ教えていただければと思います。

細谷参考人 イギリスについてでございますが、やはり日本と大きな違いというものが、インテリジェンスコミュニティーというものが確立しているということだと思います。

 つまり、日本の場合は、例えば防衛省は防衛省、あるいは外務省は外務省という、それぞれのコミュニティーはありますが、その垣根を越えたコミュニティーというものはつくられていない。

 まさに、それぞれの省庁の違いがあったとしても、情報を扱う専門家として、エキスパートとして、いわゆる国益を実現するためのインテリジェンスコミュニティーというもの、それは、省庁からMI5、MI6に入ったり出たりすることはありますが、それを繰り返すことによって独自のインテリジェンスコミュニティーという文化がつくられて、コミュニティーの意識というものがつくられる。

 この意識があるかないかということが恐らく日本とイギリスの大きな違いであって、日本でNSCをつくる、そして、これは恐らくある程度の時間がかかるんだろうと思います。時間がかかりながらも、インテリジェンスコミュニティーというものをつくり、省庁の垣根を越えて、同じ情報を扱うプロとして協力をして、それを総理あるいは政府に上げていくという、これが恐らくイギリスと日本の違いであって、イギリスでそれが機能をする大きな要因になっているんだろうと思っております。

左藤委員 今、イギリスの話を教えていただきましたけれども、これは日本としてもそれをやっていかなきゃならないんだろう、このように思います。

 そういう面で、柳澤先生は政府の中にいたわけであります。先ほど、もう垣根はほとんどなくなりつつありますよとおっしゃっていましたけれども、今、イギリスの方向性として我が国は対応できる、しなきゃなりませんが、感触としてはどんな感じでしょうか、いけると思いますか。

柳澤参考人 この手のお話には、これで十分ということはないんだろうと思っております。

 私なんかは、むしろ、私の経験、自分が汗をかいたところの記憶しかないからそのように申し上げるのかもしれませんけれども、当時、官房長官、事務副長官の指導のもとに、問題意識の共有は相当できていた。ただ、国内情報を扱っている官庁と海外情報を扱っている役所は、それは席を同じにしても、なかなかお互いに融通はできない側面はあるのは仕方がないので、そういうものはそういうものとして、また別の形で取り扱いをやっていた。

 コミュニティーがあるかないかというのは、白か黒かという話ではなくて、その間にいろいろなグラデーションがある。ただ、そういうものができつつある状況ではあると思います。であるがゆえに、こういうものを仮につくったとしても、そういうことを目指していく土台はあるんだろうということだと思っております。

左藤委員 ありがとうございます。

 国家安全保障局の方ですが、ここに局長がおられる。これが、NSCの諸外国とのカウンターパートになる。これは日本でいうと、総理大臣補佐官がおられるわけですね。先ほど宮家先生は、そこでアドバイスをしながら、出ていくのは局長の方だ、それがいいんだ、こうおっしゃっていました。

 それ以外に、実は、内閣危機管理監というのがございます。これは、もちろん危機管理と、先ほどおっしゃった、国家全体の安全保障とは違うから両立をするんだという話もありますけれども、これは、あるところにあったら、一人でいいんじゃないかという話を言う方もおられます。

 これについて、柳澤先生、宮家先生はどうお考えですか。もう一度お願いを申し上げたいと思います。

宮家参考人 私の個人的な経験で申し上げれば、やはり餅は餅屋だと思っております。

 危機管理というのはやはり独特の能力といいますか、識見といいますか、経験なしにはできないことだと思いますが、危機管理の専門家が必ずしも政策立案の専門家ではありません。また、外国の事情に詳しく、歴史も言語も詳しい人が、十分危機管理ができるとも思いません。そこは、同じ事象でも、危機管理的な側面と政策立案的な側面というのは、やはり切り分けすることは可能だと思っておりますし、それについては、できれば独立したオフィスないし担当の方を置いて、相互補完的に仕事をする方が結局はうまくいくと思っています。

 確かに、最近、アメリカでは、NSCの中に危機管理的な要素を持ち込んで、今、統一しているということも聞いております。しかし、それはあくまでもNSCというものがしっかりできていて初めてでき上がることであって、今のように、日本では屋根は一つしかなくて、本来は二つあるべきところが一つしかないわけですから、まずはNSCの屋根をつくった上で、また、この後、必要であれば、どのように連携を深めていくかを考えることは重要だと思いますが、やはり、その二つの機能というのを一人に全てやってもらうというのは、物理的にも、それから内容面でもなかなか難しいのではないかというのが、私の経験則から出た結論でございます。

柳澤参考人 私も、実感としましては、危機管理の仕事というのは、基本的に二十四時間官邸に張りつけの仕事であります。一方で、政策面でいろいろ外国とのカウンターパート関係を築くというようなことを仕事とされる方は、そういうわけには多分いかない。

 ですから、そこは危機管理の初動対処のためのヘッドと、それから政策を中長期的に考えていくためのディビジョンのヘッドというのは、おのずと、任務付与をそういう形でしっかりすみ分けてやっていただかないと、実際問題として、そういう、外交、防衛に精通して国際情勢にも明るい、学問的な素養もある方が二十四時間官邸に張りつけになってというふうなことになるのは、人材の無駄でもあると思いますし、なかなかそういうことを引き受けてくれる方がいるとも思えないものですから、そういう運用上の工夫はぜひ必要なんだろうと思います。

左藤委員 ありがとうございます。

 それについて、永岩先生は現場の司令官として活躍されていた方なんですけれども、先ほど、これは現場の危機、いろいろすぐ判断をしなきゃならない、そういうことも踏まえながら、今のお話で、国家安全保障局がどのように持っていっていいのか、どのような方向性でいくのか、御意見を賜りたいと思います。

永岩参考人 補職にいかなる財産、引き出しをお持ちの方をアサインするかというのは、人事上、非常に苦労するわけですが、私は、いずれのポストにつく際も、皆、最初は初心者マークなんだろうなというふうに思います。

 大事なのは、そのアサインされる前に、いわゆるリーダーシップトレーニング、あるいは、センターカウンシルを指揮する上でのエクササイズですね、リーダーシップトレーニング、それをしっかりやる。それまでの体制というのですか、それをしっかり築く必要があるなと。

 事態が発生して、それは問題解決なわけですから、状況をいかに掌握し、迅速に答えを案出し、適用し、行動させ、また、とった行動の反省をし、戦略を立てる。そのサイクルで、実は指揮所活動はなされるわけです。

 報告のときにコンバインド・エア・オペレーションズ・センターということを申し上げましたが、それは、エア・タスキング・オーダー、タスキング・オーダーという、四十八時間あるいは七十二時間等のサイクルでそれを転がしながら、状況掌握、対処、意思決定、行動、行動の監視ということをやっておりますので、そういった体制自体をしっかりつくるというのが大事なんだろうなというふうに思うところであります。

左藤委員 では、改めて永岩先生にお聞きしますが、先ほど細谷先生が、首相機能を強化する、これが日本がこれから国際社会で間違わずにいく方法だろうということをおっしゃっていましたけれども、それについてはどうお考えでしょうか。

永岩参考人 基本的に、この件には全く賛成であります。それ以上の答えは今のところございません。同意であります。

左藤委員 どうもありがとうございます。

 国家安全保障局の中に四大臣が入ります。その下に幹事というのが入ることになっています。その幹事は誰だというと、事務次官だということになります。

 そうすると、それぞれの省庁が安全保障局に出向して、そこでいろいろなキャップをまとめて、またそこで、事務次官も入った会議、まあ、意見を述べるかどうかは別として、こういうことをすることによって、さらに意思疎通が、また情報をしっかりと共有することが私はできると思うんですが、それについて宮家先生のお考えはどうでしょうか。幹事を置くということです。

宮家参考人 そのとおりだと思います。

左藤委員 ありがとうございます。

 柳澤先生はいかがでございますか。

柳澤参考人 これも、経験上申しますと、事務次官級の幹事というのは、それ自体がそうそう機能するものではない。むしろ、各省から人を出してもらって、それを官邸が自由に使うことを担保するための一つの枠組みなんだろうと思います。

 いずれにしても、そういうものがいろいろ重なって、一番大事なことは、各省が実質的に協力できる、そういう体制をつくっていくということだと思います。

左藤委員 時間になりましたので、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

額賀委員長 次に、大島敦君。

大島(敦)委員 きょうは、参考人の皆様、まことにありがとうございます。突然のお声かけにもかかわらず、時間をあけていただいて、各委員の質問に答えていただき、本当に感謝申し上げます。

 私、前の政権のときに副大臣を二つ務めていまして、内閣府そして総務省。二〇〇九年のときに、内閣人事局をつくって人事権、もう一つ、国家戦略局をつくって予算編成権、この二つを官邸が持って、政治の意思決定の速度をもっと速くするんだという意気込みで担っていたんです。

 私、その一翼の内閣人事局の法案担当として、内閣人事局、公務員庁の法案作成に携わりまして、当時、私たちがつくった法案ですと、事務次官がいて、局長がいて、審議官、部長級の方がいて、ワンバスケットで六百人を、その時々の政権の意思で一番いい人材を一番いいところにつけようということを考えていたんです。

 ただ、私も、会社員として、人事権の行使というのは刀のようなものでして、抜いたらおしまいだと思っていまして、抜いて政治が人事権を行使すると組織は固まるなと。ただ、持っていること自体が結構必要だと思っていまして、抜かずの宝刀だと思っておりました。

 そうすると、今の国のあり方というのは、首相官邸、官邸に国家の権力をより多く集めようという意思が強くなっているのかなと思っていまして、今回の、国家安全保障会議を法制化して、その下に国家安全保障局を置いて、それを担うというのは、これから公務員法の改正案が出てきまして、その中でも、内閣人事局をつくり、六百人の幹部人事を政治主導でするという思想だと思うんです。

 人事権を持っているというのは、権力がそこに集中します。やはり、役所は、出世と言っては露骨なんですけれども、人事を見ながら、私もサラリーマンでしたから、誰のために働いているかというと、自分の人事権者のことを物すごく気にして働くようになります。人事を押さえる、金を押さえるということが一番肝なところなんです。

 そうすると、今回、内閣の人事局がもしもできて、今回のこちらの国家安全保障会議ができると、官邸機能が物すごく中央集権的、集中的な権力を維持するようになると思っています。これまで以上に、首相の言葉あるいは官房長官の言葉、きょうは役所の方は一人しかいらっしゃいませんけれども、物すごく俊敏に反応する時代が来ると思っているんです。

 ですから、そのときに、私は、行政府と立法府のあり方は、もっと切り分けて、立法府としての行政府に対するチェック機能は、与党も野党もそういう気持ちで、要は政府に対して意見を言うような気持ちを持っていないと、なかなか国のあり方として、暴走という言い方はよくないかもしれないけれども、うまくバランスをとった方が、より深い議論、より深い思考ができると思っていまして、まずそういう気持ちを持っています。

 柳澤参考人に伺いたいのは、先ほどの細谷参考人は、政治家はいろいろな方たちがいらっしゃいますから、政治家がかわっても、ちゃんとした組織があればちゃんとそれが伝承されて機能するという考え方も、ああ、なるほどだなと思いました。

 柳澤参考人に伺いたいのは、私はやはり政治家の質問能力だと思っていまして、役所の方、官僚機構に対して、あれはどうなっている、これはどうなっているということで質問をし続けていくと、クオリティーは物すごく上がってくると思うんです。

 要は、この質問能力を持って外交、安保について聞き始めると、結構今の組織体でも十分機能する面もあるかなと思うんですけれども、その点についての御所見を伺わせてください。

柳澤参考人 私、冒頭の意見陳述でも申し上げましたように、私自身が官邸で実務を経験していた立場から、非常に限られた経験ではありますが、事の本質は制度の箱では必ずしもないというのが私の基本的な認識であります。だから、そういうものを目指して制度というのは絶えず改善されていくこと自体は否定すべきではないと思うんです。

 ただ、官邸機能も、橋本行革以来、私の体験上もかなり強化されてきましたし、それなりの総理がおられるときには各役所も官邸の方を向いてしっかり仕事をしていただいたというふうにも思っております。そこはおのずと、その総理の目指すところ、そしてそのパーソナリティーに合わせたいろいろな役所の使い方というのはあるんだろう。

 ただ、それをどこまで中央集権的なものとして制度で担保するかというのは、これはもうバランスの問題、ちょうど、大宝律令をつくるときに、それまでの豪族が支えていたものを、日本の王権というものを天皇家に一本化する、それを国家の制度にしたような、そんな変化が今生じているのかなという感じもするのでありますが、それをどういう形で進めるかということは、あわせて、今先生がおっしゃったように、立法府のチェック機能とのバランスをどうとるかということと絡んでいるんだろうと思うんですね。

 ですから、人事にしても、六百人の人事を一カ所で見るというのは、私は人事の課長もやったことがありますが、不可能だと実は思っておりますが、それも含めて、官邸に権限を集めた部分については、その事柄についての年次報告なりをしっかり国会に提供して御議論いただくような、そういう制度をあわせてつくっていくということが一番大事なことなんじゃないかなというのが私の個人的な感覚でございます。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 年次報告という、先ほどお伺いしまして、そうだなと思いました。

 白書というのは結構地味なものなんですけれども、白書を閣議決定文書化すると、その白書のレベルというのは上がっていきます。閣議決定にする白書なのか年次報告かというのがあって、でも、年次報告で、先ほど柳澤先生がおっしゃったように、それぞれの知見を一つ一つ積み重ねていくということは、細谷参考人がおっしゃっていた組織体としての知識の積み重ねというのがふえることになると思うんです。

 その点につきまして、細谷参考人からちょっと御意見をいただければと思います。

細谷参考人 新しく組織をつくるということで、果たしてどの程度うまく機能するのかと。

 先ほど柳澤さんがおっしゃられておりましたが、やはり柳澤参考人がいらっしゃった時代は首相官邸、内閣官房が非常にうまく機能していたんだと思います。その一つの背景として、やはり二〇〇一年の橋本行革の結果として官邸機能が強化された。これによって、内閣官房に、単なる調整だけではなくて、企画立案機能が入るということですね。ですから、そうすると、制度がなくても機能するという、物の見方ですが、実は、機能した時代というものが、制度的な改編が基礎にあったということは考えられるのではないかなというふうに思っております。

 そう考えたときに、先ほどから先生おっしゃられているとおり、官邸の機能を強化したときに、基本的にこれは行政府の機能の強化ということになりますから、民主主義の基本としまして、やはりチェック・アンド・バランス、つまりは、官邸機能の強化とともに、ぜひ私が先生方に留意していただきたいのは、やはり国会の活発化ですね。国会でより一層、首相官邸の政策や大きな方向性に対してきちんと監視の目を光らせてチェックする、それが正しいのか正しくないのか、それを最も厳しく監視しチェックできるのは国会だと思っています。

 そういった意味では、官邸機能の強化というのは、国会の活発化とこれはセットで進めるべきものであるというふうに考えております。

大島(敦)委員 ありがとうございます。

 宮家参考人に伺いたい、ほかの参考人の皆さんにもひょっとしたら伺うかもしれないんですけれども、今回の、四大臣会合あるいは九大臣会合と決めているじゃないですか。私は、もっとこの辺はフレキシブルな方がいいかなと思っているんです。一回法律で決めると、変えるのは大変なわけですよ。今回もずっと、特別委員会をつくって、結構な時間審議をして、ようやく法改正ができ上がりますから、それぞれの時代のそれぞれの運用方法があるかもしれないなと思っています。

 四大臣会合、九大臣会合、緊急事態大臣会合というふうに法定化するよりも、それぞれの内閣に応じてそれぞれの仕組みをつくれるような柔軟なシステム。肝は、本当に大切なのは、細谷参考人も述べていた、国家安全保障局の、要は、ここの知的な蓄積をどうやって高めていくかということが一番大切だと思っていて、上の会議体はもう少し自由に仕組みをつくれた方がいいのかなと思うんですけれども、その点について、宮家参考人と柳澤参考人から御意見をいただければと思います。

宮家参考人 大島委員御指摘のとおり、柔軟性の部分とそれから法定性、法定をするということは責任が明確になるわけでありまして、将来のことを考えたときに、一回一回、大臣が違う、出てくる人たちが違う、昔何を言ったか覚えていない、そういうことではいけないと思いますから、その責任の所在の部分でやはり法定しなければいけない。

 しかも、四人というのは最小限であって、ほかにも入れてほしいという役所があったかもしれませんけれども、そこは絞った。それと同時に、今おっしゃったような柔軟性を与えるために、第三カテゴリーをつくったわけですよね。ですから、そこはそれなりにバランスはとれているんだろうなと思っております。

 それから、先ほどおっしゃったスタッフの知見ということですが、全くそのとおりだと思います。やはり、二年で本当はかえないで、もう少し長くいさせてあげたいという気もいたします。

 同時に、先ほどのお話でちょっとつけ加えさせていただいて恐縮なんですが、質問もされていないのにいいのかなと思いつつ、やはり国会のチェックの機能を一番高めるには、国会議員のスタッフをふやすことなんです。国会議員の先生が一人で、政策スタッフ一人で、それで本当に法律なんかつくれるわけがないんです。

 アメリカでは、何十人というスタッフがいます。それを、確かに予算の問題があるでしょうから問題なのかもしれないけれども、本当に立法府が行政府と対抗するような形でいい議論をするためには、やはり各議員の方々、そして各委員会のスタッフを充実させること、これが最低限必要だと思っています。

柳澤参考人 私も先生の御意見と基本的には同じでございまして、会議体の部分は本当に柔軟にやっていただく必要があるんだろう。現に、今の安保会議の法律の中でも九大臣会合という規定はございますが、それも九であったり十であったり、あるいは六であったりというようなことで、いろいろ対応は可能であるし、現にしてきたと思っています。さっきも申し上げましたように、総理は入りませんが、三大臣の協議は相当頻繁にやっておりました。

 ですから、やはり一番私が運用上心配なのは、この総理を含む四大臣会合をお決めになって、そこはそれで柔軟に運用していただければいいんですが、総理の御都合がなかなかあかない。我々も官邸で危機管理をやっているときの一番の悩みはそこだったんですけれども、なかなか前広な案件を持っていく時間がとれないということもあったんですが、それによってこの四大臣会合、会議自身が開かれないことになってしまうとかいうことではなくて、その辺の運用上の柔軟性というものを特に会議体についてはぜひ図っていく必要があると思っております。

大島(敦)委員 会議体の柔軟性、これは特に形骸化を招かないようにするためには、私たち政治の、特に官邸に入っている皆さんの気持ち、質問力というのが本当に大切だと、繰り返しになりますけれども、思っています。

 そして、永岩参考人にお伺いしたいんですけれども、今の御意見を踏まえて、会議体については、やはり四、九、そして緊急事態大臣会合というふうに今回法案には書いてあるんですけれども、会議体のあり方についての御所見があったら、一言お伺いをさせてください。

永岩参考人 会議体の形態ですが、私の当初の報告にありましたとおり、徐々にたてつけを状況等の変化に適応する形でテーラーメードにするということであれば、最初の立ち上がりとして、恒常的に実施する形態としては私は適当じゃないかな。ただし、柔軟性を確保しておく必要がある。事態発生に応じてそのメンバーでプラスマイナスというのは必ず発生するわけですから、それにも適応できる形にしておけばいい。

 もう一つは、先ほど形骸化ということで御懸念をお持ちでしたが、今の周辺環境を見ますと、形骸化する暇はないんだろうな。

 もう一つは、事態発生に適応する形でこの会議を使うんじゃなくて、将来のためにいかなる戦略的な見通しを持つべきか、事態が発生したときにはどういった対応をすべきかということの引き出しをたくさんつくるためには、恒常的に実施する体制を整えるというのが多分必要なんだろうなというふうに思います。

 以上です。

大島(敦)委員 永岩参考人、ありがとうございます。

 私も、永岩参考人のおっしゃるとおり、後追いの仕事だと仕事がふえるものですから、国の仕事のあり方として、できるだけ、今後何が起こりそうだということを事前にわかった上で、一つ一つ対応を国としてとっていくという姿が一番すぐれているなと考えております。

 その点で、宮家参考人に、あるいは柳澤参考人、このお二人は政府の中で働いた経験がありますから、今の私の考え方について御所見があれば、多分これは、ちょうど四十七分、一分ずつなんですけれども、お話を伺えればと思います。

宮家参考人 では、一分で。

 事前に対応できる能力をつけておく、これは最もすぐれている、おっしゃるとおりだと思います。

 やはり、せっかく常駐のスタッフができるわけですから、彼らがその先読みをして、そしていろいろなシナリオを考え、場合によっては政策シミュレーションなどを行うことによって、できるだけ本番の対応があたふたしないように準備をしておく、これが一番大事だと思っております。

柳澤参考人 実は、事態対処専門委員会という組織が現行法制のもとでございまして、私が実務の中心になって、毎月いろいろなシナリオに基づく各省の局長級のシミュレーションというかブレーンストーミングもやって、いろいろな事案を考えてはおりました。

 ただ、実際に起きることはそれよりもはるかに難しくて、そのシナリオどおりにいかないものですから、やはりそれは、事前の準備は限界がある程度あることを踏まえながらも、こういうことはあるかもしれないという認識を持ち続けることが大事だと思います。

 それから、先ほどからも議論にありましたが、今の日本の危機管理体制というのは、基本的に阪神・淡路の大震災をベースにしているものですから、事態が起こってからの結果管理なんですね。やはり、予防の部分をこれからもっと高めていく必要があるんだろうと思っております。

大島(敦)委員 各参考人、ありがとうございました。

 終わります。

額賀委員長 次に、山田宏君。

山田(宏)委員 日本維新の会の山田宏でございます。

 きょうは、当委員会の審議充実に向けて、各参考人の皆様には、大変お忙しい中、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。与えられた時間の中で多少御質問させていただきたいと思います。

 それぞれの参考人の先生方のお話は、今回のNSCについては、よかった、これは必要であった、大体こういう御意見だったと認識をいたしましたが、さらに、このNSCという組織をつくった場合、これがきちっと機能していくためにはどうしたらいいかということをお聞きしたいことと、それからもう一点は、NSCというのは政策を決定する場でありますけれども、きょう、多くの参考人の方々がお話しになったように、その前提として、日本国の情報収集・分析能力というものをいかに高めていくかということがやはり大きな課題であるというふうに私は感じました。この二点について、ちょっと何点か御質問させていただきたいと思います。

 まず、宮家参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、さまざまな御体験を今までされてきた中で、ああ、やはりNSCみたいな組織があったればなということが、もし御自身の御体験の中で、またはいろいろなところで見聞をされた中で、そういう実体験等、またはお聞きになったことがあればお披瀝をいただきたい、こう思っております。なければ次に進みたいと思います。

宮家参考人 幸い、後悔するような経験はございませんでした。しかし、実際に、ある事件がもっと悪化したときに、本当に政府の中で迅速に物を決められるだろうかということを考えたときに、NSCが欲しかったことは何度もございます。

 例えば、北朝鮮からミサイルが飛んできた場合とか、それから中東で大きな戦闘、戦争が起きた場合とか、そういうことを思ったことはございます。ただ、幸い、致命的な問題はございませんでした。

山田(宏)委員 国家安全保障上の緊急または重要なことについて政策決定をする場ですから、そうたびたびそういうことがあるわけではないとは思いますが、永岩参考人は、先ほどのお話では、例のベレンコ中尉でしたか、当時は、ミグ25に乗って日本の基地に着陸をしたということに遭遇されたお話をされておられましたけれども、先ほどもお話しになったように、我々が想定する以外のことがよく起きるわけですね。

 私も杉並区で区長を務めておりましたけれども、やはり、災害等のシミュレーションをする場合は、最悪のケースをいかに想定するか。そうすると、想定外というのはほとんどないんですね。全部想定内なんですよ。最悪を避けるものですから、やはりそういったことだった、こう思うんですけれども。

 あのベレンコ中尉のああいう事象等に直面をされて、国家全体の安全というものを考えられたと思うんですけれども、その中で、今回のNSCというものをどうお捉えになっているか、ちょっとお聞きをしておきたいと思います。

永岩参考人 やはり、国家戦略というものがあってこそ、軍事力も活用し得る、活用できる、あるいは活用可能というふうに思うわけですね。

 ですから、例えば、ミグの事案のときは、まさに、いまだかつて経験したことのない事象が不意突然に起こりましたものですから、中央におきましても、情報の収集、管理、分析、意思決定というものが具体的にできないで、混乱したということはあります。

 もう一つの事例として、九・一一のありましたときに、私はバックで防衛部長をやっておりましたが、同じ類似の事案がもし日本に起きたとしたら、国会に向けてジャンボがそのまま直進する形で来たとしたらという議論を、その当時一生懸命やりましたが、るる検討した結果、そういうことは考えないようにしようということで、いわゆる国家レベルで、テロ対処という形で、経空、空を経て来る、そういった行動に対しては、何ら具体的な対応ができなかった、なかったということであります。

 ですから、そういった類いのことも、まさに今、最悪の事態に備える、プリペア・フォー・ザ・ワーストというふうに言われましたけれども、やはり、のみ込んで、一生懸命それに対する対応のあり方を具体的に対処するのが国民の安全につながるんだろうな、そういったことが議論できるのはNSCしかないんだろうなというふうに思っているところであります。

山田(宏)委員 ありがとうございました。

 まさに、三・一一においても、原発事故という大変な事態が起きました。まさか津波によって電源喪失をということまでは誰も想定していなかった。この最悪の事態というものをいかに想定するかということは、やはりこれは、機関があったらできるわけではないわけです。こういったNSCの機関をつくったらそういう想定ができるかというと、そうではないわけです。

 やはり、それを運用する人の力、それが非常に大事なわけですけれども、これは、なかなか、そういう方がちゃんと中心に座ればそうなるんですけれども、そうでない人もたくさん座っていましたからね。そういった中で、そういう人が座った場合はラッキーだけれども、そうでない人の場合はアンラッキーということでは済まされないわけです。

 柳澤参考人はずっと政府の中枢部にいらっしゃったわけで、いわゆる、どちらかというと属人的な部分、こういった最悪の事態を想定する、そういったことを一体どうやってルール化するのか、またはどうやって文化とするのかということについて、何か体験からお考えになられていることがあれば教えていただきたいと思います。

柳澤参考人 非常に悩ましいテーマでございまして、まず、その属人的な要素というのは、実際に、これは、クラウゼビッツも、戦争というのは将帥のアートだ、こう言っておりますように、そこで指揮する人間のバックグラウンド、性格、そういったものに非常に左右される側面があると思います。

 それだけに、我々は、どちらかというと、幕僚として、幕僚にとって最大の資質は自説と異なる意見に謙虚に耳を傾ける能力であるということも読んだことがあります。そういうものをうまく融合していかなければいけないんだろうと思います。

 であっても、制度によってどこまでそれをカバーできるかということは、かなり私は永遠の課題に近いものがあるだろうと思うんです。

 そして、NSC的な機能は、当然、今までもあったわけでございますが、最悪の事態、私も本当に、どこまで考えるのかという、自然災害であればデータに基づいていろいろ想定できるわけでありますが、相手が人間の意思にかかわる、テロとかあるいは武力攻撃といったものについて、どこまで考えるんだろうかということは非常に悩ましい。

 というのは、考えた上で、では、考えたとしたら、対策をとらなければいけないわけでありますね。そのことによって、相当な経済的な負担もかかるわけでありますし、あるいは、先ほど九・一一のお話が出ましたが、あのときに、全ての民航機をとめるとか、あるいはハイジャック機をどこで落とせば地上に被害が一番少なくてというようなことを、本当に、どこで、誰が判断できるんだろうかという、非常に悩ましいお話だったわけです。

 そのときに、私が個人的に感じた一つの結論は、結局、そういうところで判断を間違ったことによって仮に人が亡くなったとしても、そのことについて、それは一切罪に問わないという法律は多分つくりようがないので、そのときにどなたが責任を負うのかということだと思うんですね。それを現場の責任にだけするのは酷でありますから、それをいかにして政治に責任をとっていただくかということ。

 私は、危機管理に限らず、政治家あるいは政治指導者の責任というのはそれだけ重たいものであると思っておりますので、その中で、現実に対応可能なところが最悪の事態ではない、私たちが準備できていたのは、恐らくセカンドワースト、サードワーストぐらいしか対応できていなかったと思いますが、そのことを認識しながら、では、そのすき間を、誰が、どうリスクをとっていくのかという、そこの認識づくりということが非常に大事だったんだろうなというふうに、今振り返って考えております。

山田(宏)委員 貴重なお話をありがとうございます。

 ここなんですよね。やはり、最悪の事態を考えると、それについて対応策はというと、ますます仕事がふえてくる。担当者にしてみれば、そんなことは起きないんだから考えなくたっていいだろうというふうになる。これは非常に難しい。

 また、例えば、防衛のいろいろなシミュレーションにしても、最悪を想定して考えただけで、それがメディアへ漏れると、日本はこんなことを考えているんじゃないかというようなことでたたかれる。

 こういったことで、だんだん危機を考えない国になっているんですよ。危機は来ないんだろうと。来ない、考えない方が楽だ、そういう国になってきているわけです。

 そこで、外交史等で、御専門の貴重なお話をいただきました。戦前、全く無責任な体制でありました。戦後も、確かに多少戦前よりはよくなったと思うんですけれども、やはり、例えば内閣法を見ても、閣僚全員の賛成がなきゃだめだというような決定機構とか、この辺は、やはりもっと首相に権限を集めるべきだと私は思いますしね。

 そういった点で、決定がなかなかできないこういう仕組みという日本の中で、しかも最悪の事態も考えないというものを打破していくには、つくることもいいんですけれども、もう一歩進んで、戦前のそういう我々の反省から見て、どんな知恵がありますか。どうでしょう。

細谷参考人 恐らく、一つ我々が考えなければならないのが、総理大臣にしてもあるいは官房長官にしても、それぞれの大臣の方々はスケジュールが非常に詰まっています。ですから、なかなかふだん起きないこと、先ほどから先生は最悪のことを考えるべきだということをおっしゃっていらっしゃる。しかしながら、なかなか、安全保障問題というのは、実際の事件、事態が起きなければ対応が難しいというのが現実だと思うんです。

 それが、決定ができないということで申し上げますと、イギリスの場合、NSCが毎週開かれています。その毎週開かれる中で、起きていないこと、そして起きる可能性が少ないかもしれないけれども重大な事件が起きること、これを、例えばイギリスのNSCであれば、閣僚間で毎週議論をすることによって問題意識を共有する。そうしますと、何か事態が起きたときに、それぞれの閣僚間の連携がより早くなり、そして決定が可能になってくる。

 つまり、平時から、危機がない状態の中でいかに意思疎通を深めていくかということが、恐らく危機が起きたときに迅速に行動する、いわばスポーツ選手が当日だけ試合をするのではなくて、長い時間練習をすることによって試合で十分な力を発揮できる。そうすると、NSCで毎週あるいは隔週、質の高い情報をそれぞれの関係閣僚が受けることによって、問題意識を共有し、そして重要な決定をするときに、既にその時点では一体感がつくられている。こういったことによって、恐らく重要な決定というものがスムーズにできるというふうに考えております。

    〔委員長退席、岩屋委員長代理着席〕

山田(宏)委員 たしか、今度のNSCについては、二週間に一回だったかな、そういうふうに官房長官はお話しになっていました。頻度は、できればイギリスのように毎週ぐらいやる方が当初はいいんじゃないかというような、私もそう思います。

 ちょっと時間が詰まってきちゃったので、少し話題をかえたいと思います。

 この安全保障局ですけれども、最初は六十人ということで、多分悩ましい問題は、出向者でいいのか、それとも独自の人を養成していくのかということで、出向者を集めると、一方で各省庁の代弁になりかねないけれども、もう一方で各省庁をきちっと抑えるたがにはなる。だから、この辺の両方を考えたときに、どっちがいいんだろう、出向者なのか、それともプロパーなのか。この辺、宮家さんはどう考えますか。

宮家参考人 大変悩ましい問題ではありますが、例えばアメリカのNSCでもプロパーをつくっているわけではないですね。みんな各省庁の、CIAも含めて、優秀な人材を集めている。優秀な人材を集めたからといって機能するわけではありませんが、恐らく経験則上はそれが一番いい方法だろうと思います。

 私は、その人たちをうまく束ねる人がやはり一番核となっていく、それは次長であり局長自身だと思いますけれども、そのような人が、学者であり、役人であり、そして政治家である、学者のようなイマジネーションを持ち、そして役人のような実務能力を持ち、そして最終的に政治家のような柔軟性を持つ。これを束ねる人が一番重要じゃないかと思うんですね。どんなに若い優秀な人を集めても、そこの部分がないとやはり彼らの能力は十分発揮されないと思います。

山田(宏)委員 もうあと三分ぐらいしかないので、ちょっと話題から外れるようなことなんですけれども、永岩参考人にちょっとお聞きしたいんですが、パイロットをずっとお務めで、スクランブルにも何度も対応された。

 やはり、海上、陸上の自衛隊と違って、航空の場合は、出ていった時点でもう軍対軍になるという特色があります。海上の場合は、海上保安庁とか、また向こうの船とか、政府系の船とかいろいろあるんですけれども、空軍の場合は、これは出ていったときにはもう相手が戦闘機という事態です。

 今回、ちょっといろいろ問題になっておりますのは無人機ですね。この無人機がいろいろなところで多用されるようになりました。人が乗っていません。しかし、攻撃能力や情報収集能力を持っている。こういった無人機が領空侵犯をしてきたときに一体どう対応したらいいのかというのは、多分今の政府でも検討中なのでありますけれども、現場の感覚からいうとどうなんだろう。

 私なんかは、国籍不明機なんだから、どこの飛行機かわからないんだから、これを撃ち落としても、国際法上、何ら問題ないんじゃないか、こう思うんですけれども、現場の感覚からいうと、もちろん、現場で決められる話ではありません、政府の方針ですけれども、この辺のところ、司令官もお務めになられて、もしこの無人機というものに対しての今後の対応策ということを聞かれた場合、現場としてはどういうお考えをお持ちなのか、参考までにお聞かせいただきたいと思います。

永岩参考人 無人機に対する対応というのは、いまだ国としての方針が決定していない。最前線の陸海空の自衛隊の隊員たちは、基本的にといいますか、国で定めた国内法あるいは国際法に基づいてしっかり対応するということが原則ですので、その観点で、早く意思決定していただきたい。

 しかし、通常、無人機を使用して、TR、領空侵犯に近いということで発見されて、それはうちの無人機だというふうに発表するのは、なかなかほかの国には例がないというふうに思うんですが、早々にそれについては国の意思決定をしていただきたいなというふうに思うのが、最前線の部隊の状況じゃないかというふうに思います。

山田(宏)委員 これは、無人機につきましても、あした以降の審議でちょっとお聞きをしておきたい、いつ何が起きるかわかりませんので。

 やはり、ほかの飛行機と違うのは、国籍が明らかでない。応答せよと言ったって、パイロットが乗っているわけじゃないから応答しない。これはやはり大きなテーマだと思うんですけれども、現場としても至急対応を必要としているということをお聞きいたしました。

 以上で質問を終わらせていただきます。きょうは本当にありがとうございました。

岩屋委員長代理 次に、上田勇君。

上田委員 公明党の上田勇でございます。

 きょうは、参考人の先生方には、大変お忙しい中お越しをいただきまして、まずは厚く御礼を申し上げます。そして、それぞれの御経験や、また研究されてきた内容などを踏まえた、非常に具体的で、また貴重な御意見を伺えたものというふうに考えております。大変にありがとうございます。

 きょうは、いろいろと伺いました御意見に基づいて、何点か御質問させていただきたいというふうに思っております。

 まず最初に、宮家参考人そして細谷参考人にお伺いをしたいというふうに思うんですが、先ほど宮家さんのお話の中で、NSCというのは、代表するのが新しくできる局長になると。この局長は、機能としては、さまざまな集まる情報を、収集するだけじゃなくて、それを集約して、また、それは総理あるいは四大臣に集めるわけでありますから、それをいかにコンパクトに、またわかりやすくまとめるかということも非常に重要なことだろう、そういう能力が必要になってくるわけであります。そして、海外の同様な機関に対するカウンターパートになるということでありますから、そういう意味でも非常に重要な職責を担うことになるというふうに思います。

 したがって、この局長の人事というのは非常に重要な要素なんだろうというふうに思うんですけれども、そこで、今、この新しくできるNSCの局長について、いろいろなことが言われています。背景として、例えば、民間の有識者がいいのか、それとも役所の出身の方がいいのか、役所でもどういう分野の方がいいのか、また、政治家がいいんじゃないかというような話をする人もいらっしゃいます。

 そういったさまざまな意見がある中で、非常に重要な人事でありますから、どういう人物が最もふさわしいとお考えか、あるいは、こういうフィールドということが特定できなければ、こういう能力を持っているという定性的なお話でも結構ですけれども、御意見をお二人からお伺いしたいというふうに思います。

宮家参考人 結論から言うと、スーパーマンが必要だと思います。

 つまり、外国語がわかり、外国の事情がわかり、できれば住んだことがあって皮膚感覚があり、それと同時に、先ほど申し上げたように、将来について、イマジネーション、非常に多くの知見を持った学者的な能力と、それから、十字路か八差路かわかりませんが、いろいろな情報が飛び交う中で、実務能力がないとそこで仕事ができない。同時に、やはり総理、官房長官に近く、そして彼らの考え方をよく理解した上で正しい結論を導く政治的な感覚。

 これを全部持った人はなかなかいないのでございます。そこでスーパーマンと申し上げた次第でございますが、それがもしいなければ、それに次ぐ方を何としても見つけていただきたいと思っております。

細谷参考人 御指摘のように、局長にどなたがなるかということは、この組織を機能させる上では非常に重要なことだと考えております。

 まず一点目の重要な要件としては、恐らく、総理との緊密さ、あるいは信頼関係であろうと思います。総理あるいは官房長官と緊密に協調しながら安全保障を考えていく上では、やはり大きな方向性というものを共有し、そして信頼関係というものをつくれるということ。

 さらには、次長は副長官補がそのまま兼任するということになっているようでございますが、この次長、外務省、防衛省から来ていらっしゃる次長の方々と、まさに野球でいえばコーチと監督のような形で、一緒に一つのチームとしてコミュニティーをつくり、行動できるような方がいらっしゃることが重要だろうというふうに思っております。

 先ほどの宮家参考人がおっしゃったことにまさに尽きますが、それに加えて、示唆していらっしゃったことかと思いますが、外国語に堪能で、英語ですね、各国のナショナルセキュリティーアドバイザーと頻繁に連絡をとり、そして奥深い話ができ、情報を共有できる、そのような方々がつくことによって、この新しくつくられる国家安全保障局というものが有効に実効的に機能するようになるというふうに考えております。

上田委員 ありがとうございます。なかなか難しいお話だというふうに思います。

 それでは次に、柳澤参考人にお伺いをしたいんですが、柳澤さんは、余り組織や制度というようなことにこだわるよりも、むしろちゃんと機能することの方が重要なんだという御意見、一貫しておられるんだというふうに思います。

 その中で、先ほど冒頭、宮家参考人からは、もう一つ重要な要素として、常駐の専門のスタッフができるということだと。それが、このNSCの中で、もちろん、閣僚級が定期的に会って意見交換をすることと同時に、それを機能させるための常駐のスタッフができるということが重要なんだというふうにおっしゃっておりました。

 今も官邸にはいろいろなスタッフがいらっしゃるんだというふうに思うんですけれども、それで十分対応できるものなのか、ここは、さらにそのスタッフが増強されることというのはプラスに働くことなのか、その辺の御意見を伺えればというふうに思います。

柳澤参考人 冒頭の陳述でも申し上げましたように、初動対応とか危機管理の面ではかなり連携もできているものができ上がっていると思っておりますけれども、中長期的な政策について議論するような機能は、私がいるときはほとんどなかったと思っております。

 アメリカのNSCでも、課長級の各省の集まりがあり、さらに、局長級があり副大臣級がありというところでもんだ上で、閣僚級に上げていくプロセスができています。

 ですから、仮にこういうものを、大きな箱をおつくりになるのであれば、ぜひそういう形で、各省がしっかりと参加意識を持ちながら、かつ、官邸のスタッフが各層においてリーダーシップをとりながら、問題意識を共有して積み上げていくような、そういうもので機能するような形にしていただけたらいいと思っております。

上田委員 ありがとうございます。

 次に、宮家参考人、細谷参考人、そして永岩参考人にお伺いをしたいというふうに思うんです。

 先ほど柳澤参考人の方から、官邸で仕事をしている中で一番大変だったのが各省の抵抗の排除だというお話がございました。これは、各省からなかなか情報が上がってこない、求めても上がってこないということなんだというふうに思いますけれども、その中で、先ほど柳澤参考人からは、情報の提供を義務づけるような方法が必要なんじゃないかというふうにありました。

 この法案でも、求めることができるということにはなっているんですけれども、その辺、今の法案のたてつけで十分なのか、さらにもうちょっとその辺は、制度、あるいは運用の面かもしれませんけれども、もう少し、そういう義務づけに近いというか、義務づけをするような方向の方が望ましいのか、必要なのか、三名の方から、それぞれ今までの御経験や知見も異なるというふうに思いますので、その辺の御見解を伺いたいというふうに思います。

宮家参考人 すばらしい御質問でありまして、私の役人生活を考えますと、私は官邸にいたことはございませんが、各省庁にいる感じで言えば、常に官邸が言ってくることが正しいとは限らないので、時には余計なことを言ってくる人もいるんです。そういうときは、本業が忙しくてなかなかつき合っていられない場合もありました。これは昔の話でございます、今ではありません。そういう場合には、やはり抵抗したくなる気持ちもわからないではない。情報も出さない、義務づけてもやらないということは、場合によってはあり得るかもしれません。

 それを排除していくのは、法律の書きぶりを超えて、やはり彼らに、各省庁の人たちに協力するインセンティブを与えなければいけない。そのためには、重要な決定というものに彼らが参加をしている、それに貢献をしている、そして一体となってやっているという気持ちを与えなければいけないと思っています。それはやはり事務局長もしくは局長の仕事だと思いますけれども、そのようなことがない限り、役人は基本的に抵抗するものだと思っております。

永岩参考人 日本の自衛隊は、戦前の陸軍、海軍の対立で、戦後、いろいろ工夫する中で、いかに国軍として望む形をつくるか。その一つのいい例が、防衛大学校は、陸海空の将来の士官が同じ学校で生活しておりますが、あるいは学んでおりますが、それは世界に余り例がありません。四年を経て陸海空に分かれ、自衛隊で役割を果たす。

 そもそもの当初の考えは非常にすばらしかったんですが、おのおのの自衛隊に入りました途端、文化、あるいは装備品、物の考え方、そして予算ということになりますと、おのおのその三つの軍種の間にはしっかりした対立構造ができるということでしたが、最近は統合運用するようになりまして、ドーン・ブリッツ、DDH、輸送艦に陸上自衛隊の攻撃ヘリ、輸送ヘリ等を積んで運用するような時代になりまして、今、その三つのコンポーネントの間のフリクションが相当少なくなりました。

 ワンチームで答えを出さなければいけないというジャパン・ワンチームの精神が非常に大事なんだろうな。特に安全保障の世界はそれが非常に大事だと思いますので、いずれにしろ、制度なり、具体的な運用なり、あるいは、実際、強制的にワンチームにするなりという形の施策で実施する必要があるんだろうなというふうに思います。

細谷参考人 大変貴重な御指摘かと思います。

 いかにして情報を中央に集めるかということは、恐らく、このNSCが機能するかしないかということを決定づける非常に大きな要素になるだろうと思っております。

 その点で、私は、二点御指摘したい点がございます。

 一点目は、恐らく、それぞれの各省で働いている官僚の方々は、ロイヤリティーが、それぞれの省庁と、また政府全体と、両方持っていらっしゃると思うんです。そして、場合によってはこの二つがコンフリクトを起こして、どちらに忠誠心を尽くすべきなのか。そのときに、可能な限り、省益ではなくて国益というものを優先するというようなインセンティブをいかに与えるかということ。

 このインセンティブを与えるということは、自分が所属しているものが省庁だけではなくて国家であって、国家公務員である。そして、国益を実現するということが仕事である。それは、先ほど御指摘にありましたような、例えば大学校であるとか研修所であるとか、こういうところでこういったコミュニティーの意識を育むということもできるんだろうと思います。

 そして、もう一点重要なことが、いかにしてそれぞれの働いている方々にインセンティブを与えるかということ。

 中央に情報を与えるということが、一方では義務ということが必要であると同時に、それが各省にとっての利益にもなるというようなシステムをつくるということですね。それを上げないということが利益になるのであれば上げない。ところが、それを上に上げることによってむしろ自分たちの利益になるというようなシステムをつくれば、それは各省とも、当然ながらインセンティブを持って情報を上げるようになる。

 それを、義務とインセンティブの両面から、各省が官邸、内閣官房に情報を上げるようなシステムを少しずつ工夫して確立していくべきだろうというふうに考えております。

上田委員 ありがとうございます。いろいろと貴重な御意見を伺いました。

 次に、細谷参考人にお伺いをいたしますけれども、イギリスの事例を引いて御説明をいただきました。イギリスも、できてそんなに年月がたっているものではない、まだ二、三年ということであります。

 きょう先生からいただいたこの資料を見てみますと、イギリスのNSCの構成というのは、今の日本の安全保障会議とそんなに変わらない構成ですね。いわゆる九大臣の体制とそんなに変わらない構成で、ところが、今お話を聞くと、毎週のように会合を開いて議論を深めている。

 一方、日本の安保会議というのは、今回この法改正の一つの理由でもあるんですけれども、九人の閣僚、それ自体がなかなか、一カ所に集めて会合を開くこと自体が難しい。あるいは、非常に限られた時間で、本当に議論を深めることが難しい。

 だから、もうちょっと定期的に、あるいは機動的に、外交や安全保障の問題がしっかり議論できるような四大臣の会合、あるいは、またそれに加えた形での会合ができるようにしていこうではないか、それが今回のこの法案の趣旨でもあるんですけれども、お話を伺うと、イギリスと日本というのは随分その辺の事情が違うんだなというふうに感じました。

 その最大の違いというのはどの辺にあるんでしょうか。先生の御所見を伺えればというふうに思います。

細谷参考人 ハーバード大学教授の非常に高名なジョセフ・ナイ先生は、安全保障を空気に例えていらっしゃいます。つまり、なくなって初めてその大切さに気づくということですね。

 ところが、現在の閣議では重要な案件がたくさんございますから、したがって、安全保障の課題というものの優先順位が高くなるということは、実際その事態が起こらない限りはなかなか起きにくい。つまりは、政治の中で安全保障の問題にどれだけ高いプライオリティーを置くか、これは明らかに日本とイギリスとの大きな違いであろうと思います。

 安全保障、つまり空気がなくなる前になくならないようにするということと、なくなって初めてなくなった事態に対処をするということ、これは非常に大きな違いがあるわけですから、したがって、平時、つまりは事態が起きていない平時の時点で、どれだけ日常的に安全保障の問題に高いプライオリティーを上げて、そして、忙しい閣僚の方々、総理大臣、官房長官が日常的にその問題を頭に入れておく。その頭に入れておくことには、例えばこれは、大震災あるいは原発のような大規模な事故、自然災害もありますし、当然ながら、安全保障上のさまざまな偶発的な事態というものもあるんだろうと思います。

 そういったものを、定期的な、毎週あるいは隔週の会議の中で高いプライオリティーを上げる。それによって、恐らくは、その事態が起きないように、逆に言いかえれば空気がなくならないようにするということを重要な政治の課題にすることができるんだろうというふうに考えております。

上田委員 ありがとうございます。

 きょうは、四名の参考人の皆様、特に、それぞれがバックグラウンドも異なり、今回のこの運用についてもいろいろな御意見を、共通している部分がほとんどなんでしょうけれども、それぞれまた違った角度から見ていただいている中での御意見を頂戴いたしまして、大変参考になりました。

 制度のあり方、それから、どういう制度がいいのかということと同時に、やはり運用という面が非常に重要になってきたというのも、また共通の御意見ではなかったかというふうに思っております。

 きょういただきました御意見、これからの審議の中でも十分参考にさせていただきたいというふうに思っております。きょうは、大変お忙しいところ、御出席のほどありがとうございました。

 以上で終わらせていただきます。

岩屋委員長代理 次に、山内康一君。

山内委員 みんなの党の山内康一と申します。よろしくお願いします。

 最初に、柳澤参考人に質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど細谷先生がおっしゃっていたのは、戦前の日本が、リーダーシップがなくて間違った方向に行ってしまった。あるいは、イギリスのブレア政権が、周りの数人のブレーンだけで大事なことを決めて、イラク戦争で失敗をしてしまった。そういった背景があって、イギリスでもNSCをつくることになったということをおっしゃっていました。

 私は、このNSCというのは、権力者の暴走を防ぐ、あるいは変な戦争に突入しないように未然に戦争を防いでいく、そういった意味では重要なんじゃないかと思うんですけれども、権力者の暴走を抑制するための工夫とか、何らかの仕掛けみたいなものをきちんと考えておく必要があると思うんです。

 柳澤先生は比較的批判的なお立場にいらっしゃるので、ぜひ、そういう権力者の暴走を防ぐために何がこのNSCに必要か、お考えをお聞きしたいと思います。

柳澤参考人 これはいつでも大変難しい問題なんだと思いますが、私は、今まで、阪神・淡路の地震の教訓を得て以降でありますが、比較的官邸の司令塔機能が機能していたと思うのは、比較的受け身の形で事態に対応してきたからだと思うんですね。

 今、安倍総理が目指す方向は、どちらかというと、積極的平和主義というようなことで、むしろ世界に打って出ようとされている。そういう中では、当然新しい状況、要は、日本が受け身でいて、リアクティブに物事をやっていくということではなくて、むしろプロアクティブに、いろいろなことをこちらから仕掛けていくことになれば、今まで以上に、より賢い、よりバランスのとれた、そういう政策の運営が必要になってくるんだろうと思います。

 それを、権力の暴走という言葉を使って、どう防ぐかということであれば、それはやはり、最大の責務を持っているのは議会、国会のチェックの機能だと思いますので、私、先ほど来申し上げているのは、それを担保するためのアウトプットがしっかりNSCの側から定期的に提示されて、それについて議論をされるという、そこの保障が一番必要なのではないかということを申し上げているところでございます。

山内委員 ありがとうございました。

 次に、これまでの、前の政府の答弁でも議論になっているんですが、安全保障担当首相補佐官と安全保障局長、この二人の業務の重複があるんじゃないか、そういった議論がありました。これについて、宮家さんと細谷さん、お二人にお尋ねしたいと思います。

 これまで官房長官も、首相補佐官と安保局長、場合によっては兼務するかもしれないとか、いろいろな答弁がありましたが、私は、二人は要らないんじゃないかと思います。安全保障局長が首相補佐官を兼ねて、一人にした方がいいんじゃないか。お二人もいると、その連絡調整も大変だと思いますし、どっちが各国のNSCのトップのカウンターパートになるかわからないという議論がありました。官房長官の答弁では局長の方がカウンターパートだということですから、対外的には局長がトップになるわけですから、局長が一人いればよくて、その人が首相補佐官も兼ねれば十分ではないかと思います。二人いると、デメリットの方がむしろ多いように思います。

 それから、恐らく補佐官というのは議員でも民間人でもいいということですけれども、私は、民間人の方がいいのではないかなと。政治家というのは本質的に目立たなきゃ生きていけないものですから、ついつい目立ちたくなってしまうのが本性ですし、本来、補佐官というのは、恐らく影のように首相を支えて、匿名の情熱とでもいいましょうか、自分が目立つことよりも、どうやって総理をお支えするか。

 そういうことを考えると、余り政治家がここに出てきて、来週ちょっと選挙で忙しいとか言われても困るわけですから、政治家というのはこのポストには全く向いていないと私は思うんですけれども、この点についてお二人のお考えをお聞きしたいと思います。

    〔岩屋委員長代理退席、委員長着席〕

宮家参考人 私は、政治家が向いていないとは必ずしも思いません。この中にも立派な方はいっぱいおられますから、それはそれでいいと思います。

 確かに、総理、官房長官との関係もあると思いますけれども、補佐官、それから局長、言うことが同じだったらどちらかは不要ですし、先ほどのお話の続きですが、もし意見が違ったら大変なことになる。これは、その意味では、今、山内先生おっしゃるように、一人であれば一番楽であります。

 しかし、そこは、制度的にも柔軟性を持っていてもいいんじゃないでしょうか。その時々の総理、そして官房長官、そして、場合によっては、しっかりした局長がいながらも、政治的な役割を果たす、補完的な役割を果たすということは十分あり得るでしょう。平時の際に、いろいろな準備は事務的に局長がやる。しかし、有事になった場合には、いろいろな形で根回しをしなければいけない。そのときに、補完的な形で補佐官が役割を果たすということも、恐らく選択肢の一つとして持っていて悪くはないんじゃないでしょうか。

 総理のお考えで、一人でいいとおっしゃれば兼任させればよいし、そうではなくて、いろいろな使い方を考えるということであれば、ばらばらにすることも、使い方次第では役に立つシステムであろうと思います。

細谷参考人 私は、今先生がおっしゃられたこと、全面的に賛同しております。まさに大変貴重な御見解だと思っております。

 補佐官と局長のポスト、これは、補佐官の仕事をする上で、補佐官が総理に対して重要な提言をするための重要なバックグラウンドとなるものは、その背後に巨大な国家安全保障局に集まってくる情報を持っているということが、恐らく総理に提言する上での重要な役割になるんだろうと思いますし、また、今度は逆に、局長のポストについていらっしゃる方がその局の中で権威を持つのは、総理と緊密な関係を持って助言できる立場にあることによって、その局の中で一定の権威を持つ。

 したがって、これは最初は非常に重要になると思いますが、個人的な私の見解としましては、局長と補佐官を兼任して、まさにこの機能がコインの裏と表のような役割だと思いますので、一人の人物がこのポストを兼ねる。イギリスのポストでは、まさにこの局長ポストと補佐官ポストが兼務という形になって、同一人物が行っております。そういった形が望ましいんだろうと思います。

 一方で、宮家参考人がおっしゃられた一定の柔軟性ということも、恐らく重要な御指摘だろうというふうに感じました。

 つまりは、もしも、これを二つ、異なる人物を充てるとすれば、どのようにすみ分けるかということを、それを別々の人物に任命する前にきちんと政府、首相官邸、内閣官房のレベルで認識した上で、どのように局長と補佐官に役割を与えるかということを事前にきちんと意思疎通をした上で任務を依頼する。それによって、その二つのポストの間での衝突がなくなるんだろうと思いますし、機能するだろうと思います。

 個人的には兼務が望ましいと考えております。

山内委員 ありがとうございました。

 次に、もう一度、宮家参考人と柳澤参考人にお尋ねをしたいと思います。

 新聞報道によると、早速役所のポスト争いが始まっているようでして、どこまで本当かわかりませんが、例えば、NSCの中に班が六個できて、うち三つが防衛省関係、二つが外務省、一つは警察庁とか、本当かどうかわかりませんが、もう既に報道されております。審議官が、三人ポストができて、一人が外務省、一人は防衛省内局、一人は自衛官、こういう報道が、本当かどうかわかりませんが、先行しています。そういった意味では、もう既に役所間のポストをめぐる争いが始まっているという、非常に残念な状況があります。

 そもそもNSCは、役所の縦割りを排して意思決定をするための組織ですから、こんな、役所で、どの班はどの役所のポストだみたいなことをやること自体、もうナンセンスだと思います。本来的には、人物本位で、本当に能力のある人がポストにつくべきであって、この審議官ポストは外務省だとか、この審議官ポストは警察庁だ、そういう議論が既に恐らく始まっているから報道されているんだと思います。

 こういう、役所がどのポストをとるみたいなことをやめさせるためにはどうすればよろしいでしょうか。アメリカでもイギリスでも、NSCのポストはプロパーはいないということですから、ほとんど各省庁からの出向者だと思いますが、ただ、ポストで人が選ばれるんじゃなくて、こういうスペックの人材を欲しいとNSCがオーダーを出して、それに、各省庁の内部から手を挙げた人が各省庁の許可を得て採用されていると聞いています。そういう望ましい人事をやるためにはどういう工夫が要るか、お二人にお聞きしたいと思います。

宮家参考人 そのような報道はまだ読んでおりませんが、恐らくありそうな話だと思います。

 これをどうやってやめさせるかは非常に簡単でありまして、全員、六十五人を全部新規に増員すればいいのです。そうすれば、局長が人事権を全部持って、好きな人をとってこられる。

 しかし、残念ながら、私の知る限りでは、六十五人のうちの多くはいわゆる座布団であります。各省庁が持ち寄る定員でございます。それをやる限り、座布団を出しておいてそこに座らない役所はないのでありまして、これは役人のさがとして、霞が関のスポーツの一部として、このような持ち寄り型で組織をつくれば間違いなくこれが起きるということです。

 かといって、今のような財政の状況で定員をふやすということが難しいことはわかりますけれども、もし持ち寄らせれば必ずこういうことが起きる。これは宿命であろうと思います。

柳澤参考人 ポスト争いというのは、それがやる気のもとになっている部分もあったりするものですから、やめろと言ってもなかなかやまらない部分があると思います。

 ただ、やはり仕事の任務づけがまずあって、それからどんな人が適任かが決まる、あるいは役所でいえば、どういうバックグラウンドの役所から来た人が適かどうかということが決まるという関係にはあるんだろうと。

 私の経験から言いますと、審議官級でも参事官級でも、私、五年半いたものですから、部下はもう三代ぐらいかわっていったんですけれども、皆さん帰るときに、自分の親元の役所がいかに自分勝手で国のことを考えていないかということが内閣官房に来て初めてわかりましたと言って帰っていってもらいました。それが君が内閣官房に来た最大の収穫だということを私は申し上げておりました。

 そういう組織の運用における指導というのと両方あわせて、どうせつくるものなら、ぜひうまく、しっかり転がっていってもらえるものにしなきゃいかぬだろうなと思っております。

山内委員 各省の役所の人は、ぜひ若いうちに内閣官房に行っていただいた方がいいなと思います。

 ただ、座布団のお話でいうと、そうすると、やはり民間人の登用というのは難しいというのが実態になりそうな予感がしますので、ぜひ、本当にNSCを今後機能させるためには、民間の優秀な人、研究者、シンクタンクの研究者とか、いろいろな民間の専門性のある人も生かす必要があるかと思いますので、そこはきちんと政府・与党は考えるべきだと思っております。

 それから次に、細谷先生にもう一度お聞きします。

 先ほどの公明党の上田先生の質問と重なりますが、イギリスのNSCというのはかなり広いなと思って、正直ちょっとびっくりしました。援助庁の担当大臣、DFIDの大臣まで入っている。これは、イラクとかアフガンみたいに軍事行動と人道援助を同時並行でやっているイギリスらしいのかもしれませんが、本当に国家の安全保障と外交を総合的に考えようと思ったら、それはやはり、援助のことがわかる人も要るだろうし、あるいは貿易管理の専門の経産省の人も要るだろうし、ある程度広いことに意味があるだろうと思います。同時に、四大臣会合みたいに機動的に、迅速に意思決定をするためには、イギリスのNSCはえらい多いなという印象を持ったんですけれども、日本はどれぐらいの範囲が本来的には望ましいとお考えでしょうか。

 余りにも防衛とか外務とかだけで話をしていると、どうしても視野的に狭くなるのかなと思うんですけれども、その点についてもう一度お聞きしたいと思います。

細谷参考人 ただいまの御質問も、やはりNSCを実際に動かしていく上で非常に重要な点になるんだろうと思います。

 すなわち、四大臣会合と九大臣会合との関係、さらには閣議との関係ですね。どの程度の問題を四大臣会合でカバーするのか、ほとんど四大臣会合でカバーし、九大臣会合というものは基本的には中心的な役割を担わないのか、あるいは九大臣会合がより一層大きな役割を担うのか。恐らくこれは、アメリカのNSC、イギリスのNSC、日本のNSC、それぞれの国の組織文化であるとか政治文化、こういったものと不可分の、一体になるものだと思います。

 したがって、実はこれは、実際動き始めてみないと、四大臣会合と九大臣会合のすみ分けというのがなかなか見えにくくなってくると思うんですね。例えば、財政的な裏づけを持って安全保障上の行動をとるということになると、これは財務大臣の参加ということが必要になってくると思います。しかしながら、一方で、機動的に、より緊密にチームワークをつくるのであれば、四大臣会合の方が効率的である。

 そう考えますと、実際これが動き始めてしばらくしてから、四大臣と九大臣の重みと頻度というものをどの程度の割合にしていくかということが、おのずとこれを再検討しなければいけない時期があるんだろうと思います。その上で、最適なバランス、四大臣、九大臣のバランスというものをぜひとも見つけていっていただきたいというふうに考えております。

山内委員 また次も細谷先生にお聞きしたいと思うんですけれども、これも新聞報道によるので正確かどうかわかりませんが、八月三十一日付の産経新聞の記事によると、防衛省・自衛隊は、NSCの事務局に「スタッフとして約二十人の自衛官(制服組)を出向させる方針を固めた。」とあります。これは本当かどうかわかりませんが、仮に本当だという仮定で質問をしたいと思います。

 六十人のうち二十人も制服組、これはちょっとバランスに欠けるのかな、そこまで軍事情報ばかりに偏っていいのかなという疑問があります。たしかイギリスのNSCは、私の聞いた話によると、二百人のうち十人ぐらいしか制服組の軍人は入っていないと聞いています。アメリカのNSCも、それなりに制服組の人もいるでしょうが、どっちかというと、軍人よりは国防総省の文官の方が多いと聞いています。

 仮に、日本のNSC、六十人中二十人が制服組というと、これはちょっと、余りにも軍事組織の色合いが強くなり過ぎるのかなと思うんですけれども、どういうバランスでいろいろな専門性のある人をNSCに配置すればいいんでしょうか。例えば、外交官だけでも困るでしょうし、もしかしたら経産省みたいなところからも人は要るでしょうし、あるいは科学技術の専門家みたいな人も要るかもしれない。あるいは、パブリックディプロマシーの時代ですから、メディアの対応がうまい人、あるいは文化外交ができる人、いろいろな人がNSCには必要だと思うんですけれども、どういうバランスが望ましいか。特に、この自衛官二十人という報道を見て、えっと思ったんですけれども、それについてどうお考えでしょうか。

細谷参考人 NSCをつくっていく上で、安全保障というのは非常に広い概念でございますから、その中の構成員というのは、当然ながら、安全保障をどう捉えるかということに非常に大きくかかわってくるんだろうと思います。

 そう考えますと、実際、私は新聞報道を確認してございませんので、どれぐらいの人数になるかということは現時点ではわかりませんが、御指摘のような形であるとすれば、恐らく、全体的な比率の中で、いわゆる自衛官、軍事の専門家の割合が重過ぎるというのは、日本の安全保障政策全般を考えたときには、もしかしたら再検討が必要かもしれないというふうに考えております。

 つまり、日本が安全保障をどう考えるのか。その中で、軍事と非軍事の割合というのをどのように捉えるのか。さらには、文民と自衛官との割合というのをどのように考えるのか。これはレッセフェールで、つまり、水面下でそれぞれの縄張り争いでポストをとり合うという形ではなくて、やはり明確な政治的な意思で、政府がどのように安全保障を考えるのかということとあくまでも関連する形で、ぜひともそのポストや、あるいは全体のバランスというものを考えて、組織というものの制度設計をしていただきたいというふうに考えております。

山内委員 そろそろ時間が来ましたので。

 恐らく、先ほどの宮家さんの座布団論で言うと、自衛隊というのは座布団がたくさんあるから出しやすいんだろうなというのを素朴に思うんですが、座布団じゃなくて、やはりどの分野でどういう専門性が必要か、そこからちゃんと検討しないと。分母が二十何万人いる制服組から出すのが一番簡単なんだと思いますが、それじゃいけないんだろうなと思います。

 そういった意味でも、制度設計をもうちょっと慎重に、きちんと国会の場も含めて議論していく必要があるということを申し上げて、質疑時間が終了したので、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

額賀委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、四人の参考人の先生方、大変御苦労さまでございます。

 本当はもっとゆとりを持って日程を決めれば一番いいんだがということを委員会運営でも考えているところですが、急な日程になりました。それでも、いろいろなことを学ばせていただいております。

 それで、宮家参考人に最初にお伺いいたしますが、先ほどの陳述の中で、国家安全保障の問題として湾岸戦争や朝鮮半島有事への対応を挙げておられました。NSCを設置することによってこうした課題への対応が具体的にどのように変わるのか、先生の御意見をお願いいたします。

宮家参考人 先ほど提示いたしましたのは、あくまでも例でございます。どちらも米国ないし関係国の軍事オペレーションが関係し得るということでございます。

 軍事オペレーションという観点でいえば、当然のことながら日本の有事も入ってまいりますし、NSCの本来の仕事は、誤解を恐れずに申し上げれば、いかにして必要なときに短時間で自衛権の行使、もしくは行使をするかしないかについて決断をする、それが一番重要なポイントだと思っています。それができないのであれば、つくる意味はありません。

 そして、それがもう今や、一時間、二時間どころか十分以内に、五分で結論を出さなければいけないときが来ているわけでありますから、その意味では、やはりこのNSCの本質は、誤解を恐れずに申し上げますけれども、最終的には自衛権の行使の判断であると考えております。

赤嶺委員 お伺いいたしました。

 そこで、今度は具体的な政策課題について伺わせていただきますが、現在の東アジア情勢に触れまして、先ほどは、不測の事態がいつ起こるかわからない現状にあることを指摘しておられました。

 この点で、日中関係は、尖閣諸島の国有化以降、困難な状態が続いております。この現状を打開していくためにはどのような取り組みが必要だとお考えですか。

宮家参考人 尖閣についての御質問ですので、少し詳しくお話をいたしますが、私は、国有化の問題でこの問題が悪くなったというふうには思っておりません。

 二〇〇八年の段階から、中国側は、政策を変更、戦略を変更いたしました。その結果として、二〇一〇年、二〇一二年の尖閣事件が起きたと考えております。その意味では、中国側の南シナ海における対応を、今度は東シナ海で同じ戦略を使い始めたのが二〇〇八年の末でありますから、その意味では、日中関係、それから尖閣をめぐる戦略環境というのは、根本的に変わってしまったと考えています。

 そのような中で打開をするというのは極めて難しゅうございます。領土問題について打開をするということ、もしくは解決するということは、どちらかが領有権を放棄しなければいけなくなるからであります。そういうことはあり得ないので、私は余り強い大きな期待を持たないようにしております。もちろん、日中関係がよければそれにこしたことはありませんけれども、今一番大事なことは、不測の事態、すなわち、誤算それから誤解等に基づく不必要な衝突、これをいかに避けるか、その知恵を日中間で出し合うことがまず大事であろうと考えております。

赤嶺委員 ありがとうございました。

 そこで、もう一問、宮家参考人にお伺いいたしますが、安倍首相は、先日の自衛隊の観閲式で、平素は訓練さえしていればよいとか、防衛力はその存在だけで抑止力となるといった従来の発想はこの際完全に捨て去ってもらわねばならない、力による現状変更は許さないとの我が国の確固たる国家意思を示す、こういう非常に強いメッセージを発しておられました。

 日中関係が改善していくことが求められていく中で、その取り組みで、こうした軍事力を背景とした強いメッセージの発信は、果たして効果的なものなのかどうか、参考人の御意見をお願いします。

宮家参考人 私は政府に属しておりませんので、今の総理の政策についてコメントする立場にはありません。

 しかし、一般論として、日中関係についての御質問ですから、お答えすれば、日中関係を改善することがまず目的であるというよりは、今の日中関係というものをどのように捉えるかの見方は、私は変えております。

 今の日中関係というのは、もっと大きな東アジア全体のパワーシフトが起きていて、それに対して、韓国も、アメリカも、東南アジアも、日本も、全ての国がこの中国の台頭という事態に対して政策の調整をしている段階だと思っています。その中で出てきているのが日中関係であり尖閣問題であるというふうに考えますので、やはり、まずは日中関係の改善ありきではなくて、今後十年、二十年、さらにこの台頭もしくはパワーシフトがどのような方向に動くかを考えた上で日中の問題を考えていくべきだと思います。まず日中の対話ありきということで議論を始めれば、我々は判断を誤る可能性があると考えています。

赤嶺委員 どうもありがとうございました。

 続きまして、柳澤参考人にお伺いしたいんですが、柳澤参考人とはこの委員会室でも何度もやりとりをしたことがありますけれども、最初に、NSC設置の前提として、日米関係の現状について伺います。

 安倍首相は、二月の日米首脳会談で、日米同盟のきずなは完全に復活した、このように述べられました。現在、このNSC設置法案と秘密保護法案、そして集団的自衛権の行使容認に向けた検討が一体的に進められようとしております。これらはいずれも日米同盟の強化を見据えたものだと説明しておられます。

 こうした安倍内閣の動きについてアメリカ政府の側はどのように見ているとお考えでしょうか、柳澤参考人の御意見をお聞かせいただきたいと思います。

柳澤参考人 私は、この問題について、かねてから私の個人的な見解として申し上げておりますのは、第一次安倍政権で同じようなテーマが俎上に上がったわけでありますが、あのときはちょうど、自衛隊はサマワからは撤退しておりましたけれども、引き続き航空自衛隊がイラクに派遣されておりました。そして、アメリカのブッシュ政権のもとで、対テロ戦争に対するさらに積極的な協力というものが一般的には求められていたと思います。

 そういう中で、当時、イラクに自衛隊を出すことによって、いわゆるブーツ・オン・ザ・グラウンドが実現をして、日米同盟はベター・ザン・エバーだ、こう言われるいっときがあったわけでございますが、客観的に振り返ってみますと、あの時点での集団的自衛権の問題あるいはNSCの問題提起というのは、アメリカとのカウンターパート関係を制度としてつくる、あるいは、対テロ戦争などにおけるアメリカとの協力関係をさらに深化させるという意味で、恐らく日米同盟を強化するという方向の問題意識だったんだろうと思います。

 ただ、現在、オバマ政権になって、対テロ戦争からアメリカは手を引いております。中国は非常に強く認識されておりますけれども、中国を封じ込めるということに受け取られないように、極めてアメリカ政府は今、気を使っている。そういう状況でありますので、当時、二〇〇六年あるいは二〇〇七年と同じ文脈で、NSCあるいは集団的自衛権の議論が、日米同盟におけるインパクト、影響というものを当時と同じ文脈では語れないのだろう。

 むしろ、アメリカの中には、これは政府がそういうことは言っておりませんが、例えば、いろいろなレポートの中には、尖閣をめぐる日中間の対立が軍事的なものにエスカレートしていくのが最大の危険で、アメリカがそれに巻き込まれたくないというような意見も出ているように思われますが、そういうところを、非常に広い視野を持ってバランスのとれた対応をしていくということが、今、日本にとって一番重要じゃないかなというふうに、個人的な見解として考えております。

赤嶺委員 どうもありがとうございました。

 それで、引き続き柳澤参考人にお伺いいたしますが、NSCを設置すればアメリカやイギリスとの機密情報の共有が可能になることが当然のように言われておりますが、アメリカやイギリスの立場からしますと、どのような機密情報を日本に提供することが考えられるのか、そして、日本の情報が逆に吸い上げられるおそれはないのか、この点はいかがでしょうか。

柳澤参考人 必ずしも情報の専門家ではないからまた申し上げられるんだろうと思いますが、もう既に日米の間ではGSOMIAがつくられておりますし、それ以前から、情報サークルの中では、私の経験上、相当緊密な情報交換の体制ができております。が、それをその先どこまで伝達していくのかということが実は問題なんだろう。

 イギリスとの関係では、まだこれからもう少し、防衛協力なのか安全保障協力なのかは別として、そういう情報面での協力も当然視野に入ってくると思いますが、日本も周辺の情勢についてはそれなりの情報は持っておりますし、であるがゆえにほかの国も日本にギブしてくれるという側面もあるわけでありますが、問題は、それが、どう正しく、知るべき人のところに行き、知るべきでない人のところには行かない、そういうサークルがきちんとできるかどうかというのが引き続きの課題なんだろうというふうに思います。

赤嶺委員 あと一点お伺いしたいんですが、集団的自衛権の行使に関してであります。

 今、有識者会議で検討が進められておりますが、第一次安倍内閣のときは四類型、これに加えて、先日、新たな事例が示されました。この事例が示されたことに関する御意見を伺いたいと思いますが、いかがですか。

柳澤参考人 これはまたちょっと別の機会の議論にもなるだろうと思いますが、かねてから、私が官邸にいるときから、この四類型は従来の個別的自衛権の文脈でも説明できるんじゃないかという意見を申し述べておりました。

 新たに出たもの、新聞報道の限りでありますが、アメリカを攻撃した国に武器を運ぶ船の臨検でありますとか、これも、安保理決議で制裁を受けた北朝鮮の物品については、今既に監視の対象にもなっているような状況もある。あるいは、国際海峡が機雷封鎖された場合、これはこれでまた、生半可なことでは、掃海艇だけ行って済むような話でもない。

 そういうことを、全体の状況をしっかり考えて、どういう蓋然性があって、それをやることにどれだけの必要性があるかということが、いずれにしても具体的に議論されることが一番必要なことなんだろうと。ただ単に解釈がおかしいよねということを言われても、私ども、私なんかは四十年間それで仕事をしてきたわけでございますから、解釈がおかしいからという理由だけで変えるということでは国民に対する説明もできないし、どういう具体的な必要があって、どういう意味を持つんだということがしっかりと具体的に議論されることが一番大事だろうというふうに思います。

赤嶺委員 それでは、細谷参考人にお伺いいたしますが、先ほどの陳述の中で、リビア空爆やシリア問題への対応を挙げて、イギリスに設置されたNSCが非常にうまくいっている、このような御紹介がありました。この点、もう少し詳しく教えていただきたいと思います。

細谷参考人 従来は、イギリスでは、閣議という形で全閣僚が集まって重要な決定をしていたわけでございます。これは当然ながら時間もかかり、また、さまざまな意見がまざり合うわけでございますが、しかしながら、先ほど御紹介したような形で、イギリスでNSCで議論されるということになりますと、日常的に情報を共有し、事前にさまざまな情勢についてのブリーフを受けて、そしてまた、より少ないメンバーで迅速な決定ができるということで、もちろん、その決定の内容自体については賛否両論あるんだろうと思います。重要なのは、その決定の内容ではなくて、決定のスピードや、あるいはどの程度政府として一体的に問題が決定できるか。

 それは、先ほど、戦前の日本の省庁間の対立、あるいは陸軍、海軍の対立ということで日本の政策決定が麻痺していたということを申し上げたわけでございますけれども、そういった観点からすると、イギリスのNSCによって、このような対外政策を決定する、安全保障政策を決定する上での効率性あるいは時間的なものが飛躍的に向上したというふうに理解をしております。

赤嶺委員 ありがとうございました。

 永岩参考人は、御経歴を伺いますと、沖縄勤務もあられたんでしょうか。(永岩参考人「ありません」と呼ぶ)ありませんか。沖縄勤務があればと思って、伺いたいことがあったんですが、では、きょうは……。

 参考人の先生方からいろいろな御意見を伺いました。きのうもここの委員会質疑で私は主張したんですが、やはり、国家安全保障会議という名前で、極めて国家主義的な方向で事態が進んでいくことについて、私なりの意見を述べました。尖閣も私の沖縄県にありますが、やはり県民が一番望んでいるのは、静かに平和で、外交で解決してほしいというようなことであります。こういうことをこの機会に述べさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

額賀委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーです。

 きょうは、参考人の皆さん、貴重なお時間をいただきまして、まことにありがとうございます。

 いろいろ聞かせていただきたいと思いますが、各委員への参考人の皆様の答弁を拝聴させていただきますと、それぞれのお立場、それぞれの御経歴、本当に大変貴重な教示をいただいているなというふうに思った次第でございます。

 ただ、今回のNSCの設置法案に関して、私たちはやはり議論をしっかり深めていって、それが将来、この日本の方向性をどういうところに持っていこうとしているものかという、この入り口を今しっかり見きわめないといけないなというふうに、私は、強く自戒の意味を込めて、そういう立場から質問をさせていただければと思います。

 なぜなら、これは私の私見ですが、安倍政権の方向性は、このNSC法案と特定秘密保護法案、これをセットにして決めていく。それは、言うなれば日米同盟の強化と深化であるというふうな形になり、年内でまとめると言われている国家安全保障戦略の中に、より具体的に防衛大綱とともに書き込んでいこう、そういう方向になると思うんですね。

 そうすると、その先にあるのは、先ほど宮家参考人がおっしゃった、NSCの設置は自衛権の行使の判断であるという方向であれば、これは、自衛権の問題の議論から憲法改正に進んでいくということになるわけですね。

 そうすると、今の安倍総理が言っている国際協調主義にのっとった積極的平和主義は、自衛隊をより地球の反対側まで持っていく、出すのが当たり前だ、そういう方向性になりつつあるのではないか。今、入り口に立ってその水平線を眺めていると、見えない水平線の向こう側には危ない滝が待っている、イメージするとそういう印象を持っていらっしゃる国民の方も少なくなかろうというふうに思うわけですね。

 ですから、きょうの参考人の皆さんからは、そういう方向も含めて、これからの国家の安全保障に私個人としてぜひ参考にさせていただきたいということで質問をさせていただきたいと思います。

 まず、宮家参考人にぜひお伺いいたします。

 宮家参考人とは、自衛隊法の一部を改正する法律案でも恐らく参考人としてお話をいろいろお伺いしたかなと思います。中東での情勢は生々しいものがあり、それに日本が邦人保護のためにどのように行動するべきかということは、大変参考になる御意見を頂戴いたしました。

 そこで、不測の事態に備えておく必要性が高まっているという御意見、それから、先ほどもありましたとおり、東アジアのパワーシフトを生き延びていく、そういう方向性から考えた場合、NSCの、自衛権の行使の判断という、いみじくもそういう一つの方向性を示唆していただいた御意見がありましたけれども、この東アジアにおける日本の位置づけとしてのNSCの役割というものをもっと深く考えた場合、国家の安全保障に資するためのどういうNSCであらねばならないかという私見をぜひお聞かせいただきたいと思います。

宮家参考人 先ほど私は、誤解を恐れずにと申し上げたのですが、早速誤解をされているようでございますので、もう一度申し上げます。

 私は、自衛権の行使をすべきかどうかを含めて議論すべき場だというふうに申し上げたつもりでございます。まず自衛権の行使があって、そのためのNSCをつくるのではなくて、自衛権の行使という最も国家として重い決断をどのようにして責任ある人たちが迅速にするかどうか、その決断の重要さを申し上げた次第でありまして、自衛権を使うためにNSCをつくるのかというような誤解はぜひ避けていただきたいと思います。

 その上で申し上げたいのは、やはりNSCというのは、日本がこの地域において平和国家としてしっかりとした役割を果たしていくための前提、もしくはその流れの中で位置づけられるべきものでございまして、何か日本がこの一連の動きによって新しく違う動きをするというように誤解されるのであれば、これまた、ぜひ私の話をもう少しよく聞いていただければと思います。

 私が申し上げたかったのは、この地域が、パワーシフトが起きている。そして、これは今までになかった形のパワーシフトでございまして、今まで経験則のない、もしくは前例のない形でいろいろな動きが、場合によっては我々の予測を超える形で動いていく可能性がある。そのときに、しっかりとした日本の方針を固め、その上で、日本が果たすべき役割というものを関係諸国もよく理解することによって、いい意味で、抑止をすることによって平和を維持していく側面もある。

 話し合いをすること、対話をすること、これももちろん大事ですけれども、相手がもしその話し合いに応じなかった場合には、我々は、最終的には別の手段を考えなければいけないわけです。その両方を考えることが責任ある国家の対応であり、この地域の社会の責任ある一員として、平和と安定を守っていくためにどうしても必要な作業の一つだと考えている次第でございます。

玉城委員 ありがとうございます。

 失礼いたしました。私も誤解を恐れずに申し上げれば、あらゆる事態の想定があって、さまざまな議論があり、そしてそこでどう判断するか。NSCは自衛権の行使の判断であると端的に縮めて言ったのは、それを判断するかしないかも含めた議論であるということを、私も共通の認識に立たせていただければというふうに思います。

 そこで、やはり問題になってくるのは、どういう情報が上がり、どういう情報のもとで判断が行われるかということだと思いますが、先ほど端的な例を挙げていただいた永岩参考人にお伺いしたいと思います。

 例のワリャーグの件を伝えていらっしゃいました。そういうことを考えると、実は、北朝鮮がミサイルを発射するということを事前に報道関係に広報したときに、ある私の知り合いがあれを見まして、恐らくあれはきちんと飛ばないだろうというふうなことを言っていたんですね。その立場はともかくとしても、どういう情報に基づいてその状況を読むかということに関しては、やはり、ふだんのいろいろな情報がしっかりそこに集められているかということが問題になってくると思います。それは、国益にかなうことであれ、かなわないことであれ、情報としてはどれが生きていくのかということは、その時点で選別するべきではないというふうに思うわけですね。

 永岩参考人に、御自身の経歴の中で、情報の分析について、具体的な、例えば、この場合は難しいかもしれませんが、情報分析における内容、中身ですね、そういうふうなことの重要性を感じた場面があれば、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

永岩参考人 軍事情報に関連する収集及び分析につきましては、相当専門的な能力あるいは経験というものが必要でありまして、今おっしゃいました、例えば対象国の装備品にかかわる現状あるいは実際のミサイル関連の情報といいましても、非常に幅広い技術的なあるいは専門的な情報を集めた中で、それは、平時に蓄積するという形で、新しい変化兆候があったらばそれを確認するといったことの繰り返しでございまして、そういった関連の経験のもとに専門家が分析して報告をする。所掌のところで、あるいは場合によっては戦略情報も含め、ヒューミント情報も含め、情報を管理して、その中の、アウトプットといいますか、変化兆候の機微なポイントについて所要のところに報告するという形になろうというふうに思います。

玉城委員 ありがとうございます。

 確かに、その情報の収集、分析は、より専門性が高く、さらにそこで、戦略的なことも含めた動向の情報などもしっかり提供されるべきだというふうに思います。

 柳澤参考人にお伺いいたします。

 先ほどのお話の中で、官房長官、外務、防衛両大臣の話し合いも在任中には頻繁に行われていたというふうなこともございました。ということは、我が国にとっては、常日ごろからそのような情報の収集や分析などは行われているというふうに考えてよろしいでしょうか。

柳澤参考人 NSCという名前の制度があろうとなかろうと、危機管理や外交政策、安全保障政策の仕事は内閣として負っているわけですから、それをやっていくために、いろいろなことを現実にはもうやってきているということであります。

玉城委員 先ほどの御意見の中には、例えばイラク戦争での反省などを例にとりまして、政策側が、情報側に引き寄せられた誤った情報で動かざるを得なかったということがあるという反省などは、私は、大変重たい責任があるというふうに受け取りました。

 しかし、その一方で、政府の無謬性というものが国民に何かしらの形で、それが当たり前だ、要するに、政府は間違わない、政府の判断は正しいんだということにのっとって政府が判断をするということになった場合は、先ほどのワリャーグの件ではないんですが、政府にとってはこの情報は要らないという情報も含めた、そういう分析や情報提供というものが果たしてなされているのかどうか、その点についてお聞かせください。

柳澤参考人 NSC事務局は私がいた当時はなかったものですから、そういう仕事は、私あるいは外政の副長官補、それから内閣情報官などで緊密に連絡をとって事務副長官のところで議論したりというような形で、これは要らないよね、これは必要だねというような仕分けも実はある程度やっていたと思います。

 情報で一番気をつけなきゃいけないのは、もともとそれが一〇〇%確かかどうかということに絶えず疑いを向けなきゃいけないということ。それから、先生御指摘の、イラク戦争で私が教訓として申し上げたのは、政策サイドの強い意思に情報側が引っ張られてしまう、そういうところに気をつけなきゃいけないということを申し上げたのであります。

 いずれにしても、そこのところは、どんな制度をつくろうと、絶えず、やはり人間の認識というのは不完全なんだ、そういう謙虚さがお互いになければ、必ず冒すリスクがある間違いをはらんでいるということは、この法案とはまた別の問題でございますが、それをぜひ認識する必要があるんだろうというふうに思っております。

玉城委員 確かに、一つの情報をもとに政策が判断をする、あるいは政策が判断をしたいところに欲しい情報が来る、いろいろな形があると思いますが、やはり、さまざまな情報については、私は個人的には、出せる情報はしっかりと出した方がいいという柳澤参考人の、主権者である国民への奉仕、説明できることはしっかり説明をする、何でも特定秘密に入れるべきではない、秘匿性を排除するといいますか、出せるものは出して、国民と情報を共有して、そして国家の安全保障について広く認識をともにしていこうということに関しては、同意するものであります。

 宮家参考人に伺います。

 そういう情報が、先ほど、省庁のインセンティブを持たせるべきであるというふうな形で、上がったり上がらなかったりという、そういう内実があるとおっしゃいました。

 このNSCでは、第六条で情報提供義務化が位置づけられております。その情報提供が義務づけられた場合に、やはりしっかりと担保しておくと申しますか、管理の上で見ておかなければいけない、そういう情報提供のあり方というものはどういうものがいいかということをお聞かせください。

宮家参考人 確かに、条文に書いただけでは担保できないというのは御指摘のとおりだと思います。先ほども申し上げたように、情報というのは政策立案のために使われるわけですから、その政策立案、実施に、情報の関係者も一体感を持って問題意識を共有できれば一番いいと私は思っています。

 あともう一つ、いただいたお時間を使わせていただいて、情報の取り扱い方一般について一言だけ申し上げたいと思います。

 確かに、委員おっしゃるとおり、できるだけ情報は出して国民と共有する、これは大事なことだと思いますが、私は、もう一つ、日本の国会に欠けているものがあると思っています。それは、国民の代表と機密情報を共有しつつ、その国民の代表が守秘義務をちゃんと持って、国会の中で、しっかりとした保秘のとれたところで機密の情報について議論をする場、そういうものがなければ、私は、民主主義のしっかりとした議論というのはできないと思っています。

 しかし、残念ながら、日本の国会には、国会議員には守秘義務がないのです。ですから、そういった議論ができない。アメリカのようにインテリジェンスコミッティーのようなものをつくって、情報を流した国会議員にはちゃんと罰則がかかるようなシステムになれば、よりしっかりとした議論ができるように思います。

玉城委員 まさに私たちに、みずから律せよ、そういう教示だと思います。

 確かに今の御意見は非常に重要な部分でありまして、私たち国民の代表である国会議員、そして、その国会議員と情報を共有しつつ国民への奉仕のために働いていくという職員の皆さんとの意思の統一というものはやはり必要だというふうに感じます。

 もう時間もありませんので、恐らく最後の質問になるかと思いますが、柳澤参考人にお聞かせください。

 御自身は、いわゆる抑止力についても著書の中でも記されていらっしゃいますが、このNSCの設置の一連の取り組みは、日本の抑止力に対してどのような効果がある、もしくは効果がない、あるいは検討する部分がある、そのお考えを聞かせていただきたいと思います。

柳澤参考人 抑止力という場合に、冷戦時代と違って、どんな形で抑止力が働いているかというのはなかなかはかりにくい今日の状況があると思うんですけれども、これは、だから、防衛安保政策をどういう場で議論して、何をメッセージとして出すかということと、それから同時に、軍事的なパワーは現にどの程度あるかというのは全く別の問題でありますから、基本的には、直接これが抑止力にとってプラスかマイナスかということは、私は、その限りではこの制度そのものはニュートラルなんだろうと思っております。

 全体として、さっき宮家さんは、極端な言い方をすれば自衛権の発動についてと、こうおっしゃいましたが、それ以前にまさにNSCでやっていただかなきゃいかぬと思うことは、そこに至る前の、必要な抑止力の分析も含めた日本の防衛、外交の全体像をしっかり出していって、くれぐれも無駄な戦争をしないようにしていただくということ、もしおつくりになるとすれば、そこに最大の任務を負っていただきたいというふうに思います。

玉城委員 まさに、無駄な戦争をしないという、その言葉だと思います。

 私が冒頭で話をしたのは、NSCを設置し、特定秘密をつくり、それが日米同盟の深化になり、もって抑止に資するもの、そういう論調になりがちなんですね。ですから、私は、沖縄から見ていますと、さまざまな形で、例えば米軍の運用、自衛隊との共同、そういう状況が、いろいろな情報があると思うんですが、残念ながら、答弁から出てくる言葉は、抑止力の向上であるということが、主にその意味の、言葉のウエートを占めているわけです。

 ところが、本当はそうではない情報がたくさんあるはずなんですが、宮家参考人のおっしゃるように、それが国会議員と共有されていない。そのことも私は大いに問題があると思います。ですから、これからは、幅広い議論の中で、国家安全保障の形をしっかりと責任ある立場で共有していきたいというふうに思います。

 きょうはどうもありがとうございました。

額賀委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に対しまして、一言御挨拶を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見を述べていただきまして、まことにありがとうございました。感謝を申し上げます。委員会を代表して心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 次回は、明十一月一日金曜日午前八時四十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会をいたします。

    午後零時二十四分散会


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