衆議院

メインへスキップ



第7号 平成25年11月6日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十五年十一月六日(水曜日)

    午後三時開議

 出席委員

   委員長 額賀福志郎君

   理事 今津  寛君 理事 岩屋  毅君

   理事 城内  実君 理事 左藤  章君

   理事 中谷  元君 理事 大島  敦君

   理事 藤井 孝男君 理事 上田  勇君

      池田 道孝君    大塚  拓君

      大野敬太郎君    勝沼 栄明君

      斎藤 洋明君    鈴木 馨祐君

      薗浦健太郎君    津島  淳君

      辻  清人君    寺田  稔君

      中谷 真一君    中山 泰秀君

      西銘恒三郎君    野中  厚君

      橋本  岳君    ふくだ峰之君

      星野 剛士君    牧島かれん君

      町村 信孝君    松本 洋平君

      山際大志郎君    後藤 祐一君

      近藤 昭一君    長島 昭久君

      渡辺  周君    今村 洋史君

      丸山 穂高君    山田  宏君

      大口 善徳君    遠山 清彦君

      畠中 光成君    赤嶺 政賢君

      玉城デニー君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   外務大臣         岸田 文雄君

   防衛大臣         小野寺五典君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  武藤 義哉君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  北崎 秀一君

   政府参考人

   (内閣官房行政改革推進本部国家公務員制度改革事務局次長)         川淵 幹児君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  能化 正樹君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  中島 明彦君

   衆議院調査局国家安全保障に関する特別調査室長   室井 純子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月六日

 辞任         補欠選任

  小池百合子君     ふくだ峰之君

  鈴木 馨祐君     斎藤 洋明君

  橋本  岳君     勝沼 栄明君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     橋本  岳君

  斎藤 洋明君     鈴木 馨祐君

  ふくだ峰之君     小池百合子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第百八十三回国会閣法第七五号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

額賀委員長 これより会議を開きます。

 第百八十三回国会、内閣提出、安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案及びこれに対する渡辺周君外二名提出の修正案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りをいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官武藤義哉君、内閣官房内閣審議官北崎秀一君、内閣官房行政改革推進本部国家公務員制度改革事務局次長川淵幹児君、内閣官房内閣審議官能化正樹君、防衛省運用企画局長中島明彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

額賀委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

額賀委員長 これより内閣総理大臣出席のもとで質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今津寛君。

今津委員 自由民主党の今津寛です。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 「日本を、取り戻す。」、これは、昨年の衆議院選挙、私たち自由民主党が政権を担わせていただいた後に取り組ませていただく政策が羅列されております。まず復興、そして経済、教育、外交、暮らしの四つの分野、しっかりと私たちが取り組みたい政策が書かれています。もちろん、国家安全保障会議、本日の議題でありますが、そのことも載せられているわけであります。

 最後に、日本を取り戻す、すなわち、誇りのある日本をつくっていくんだ、こういう決意が述べられているのですが、私は、政党というのはやはり政策を一つ一つ確実に実現をしていく、このことが大切だというふうに思います。

 そういう面において、安倍内閣は、経済を初めとして、教育、外交、そして暮らし、どの分野にも着実に、果敢に、大胆に、しかし慎重に、今、政策を一つ一つ実現をしていることに心から敬意を申し上げたいと思います。我々も懸命に総理を支えていきたいと思っております。

 九月の二十六日に国連総会において、安倍総理が一般討論演説をしております。日本として、積極的平和主義の立場から、PKOを初め、国連の集団安全保障措置に対し、より一層、積極的な参加ができるよう図ってまいります。

 そして、国会の答弁でも、総理は、「もはや我が国のみでは我が国の平和を守ることはできません。我が国の平和を守るためには、地域や世界の平和と安定を確保していくことが必要です。 このような認識のもとに、私は、我が国が、国際協調主義に基づき、世界の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献する国になるべきとの考えを、積極的平和主義として掲げました。」。

 この考え方、姿勢というものは各国から大きく評価をされまして、同盟国でありますアメリカや英国はもちろんのことでありますが、アジアにおきましても、十月七日、日本・ベトナム首脳会談において、サン国家主席の発言、地域の平和と安定のための日本による貢献を歓迎する。フィリピン・アキノ大統領の、安全保障政策に係る日本の取り組みを支持する、これは十月九日、フィリピン・日本首脳会議における大統領の発言でありますが、大きく評価されているところであります。

 私は、前のことを思い出します。九〇年、イラクがクウェートに侵攻したときのことであります。湾岸戦争。

 憲法の制約があるために、多国籍軍に対し、例えば、我が国は、四輪駆動車あるいはウォークマンなどを提供したり、百三十億ドルの資金を拠出したり、ペルシャ湾の機雷掃海などの地道な活動に取り組んだのでありますが、クウェートが謝意を表明した中に日本の国名がなかった。日本の貢献が世界から見た場合に評価が非常に低いということを感じたときに、悲しくもなり、つらい気持ちになり、大変そういう気持ちになったのが日本国民であったと思うんです。

 戦後、平和憲法のもとで、日米安保条約に守られて経済至上主義になり、一国平和主義であったと言われる我が国日本、この日本の国が、憲法前文にあるように、我が国は国際社会の中で名誉ある地位を占めたいと思った、これは、こういうことが大きなきっかけになっているのだというふうに思います。

 いわば、積極的平和主義というのは、この一国平和主義に対する決別だと私は理解をしておりますが、総理の御見解をお聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今、今津委員が御指摘になったように、確かに、湾岸戦争の終了後、クウェートが米国の新聞に出した感謝を示す広告において日本の名前がなかったことは、私自身にとっても多くの日本国民にとっても衝撃であった、このように思うわけであります。

 そして、近年の我が国を取り巻く状況を見れば、安全保障環境は大変厳しさを増しているわけでありまして、大量破壊兵器や弾道ミサイルの脅威は深刻度を増しています。また、サイバー攻撃のような、国境を越えていく、新しい脅威も増大をしているわけでございまして、このような状況のもとでは、もはや我が国のみで我が国の平和を守ることはできないわけでありまして、すなわち、脅威が容易に国境を越えてくるような状況のもとでは、自分の国さえ平和であればよいとの一国平和主義の考え方では我が国の平和を守ることはできません。この認識に我々は立っているわけでありまして、我が国の平和を守るためには、地域や世界の平和と安定を確保していくことが必要であります。

 このような認識のもとに、私は、我が国が国際協調主義に基づいて、世界の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献する国になるべきとの考えを積極的平和主義として掲げたわけでございます。

 今御紹介をいただいたように、先般の東アジア・サミットあるいはまたAPECにおいて多くの国々の首脳から理解と支持をいただいたところであります。また、米国からも先般の2プラス2において理解と支持、そしてまたロシアとの2プラス2においても理解を得たところでございますし、また、英国のヘイグ外務大臣、あるいはオーストラリアの首相からも支持そして理解をいただいているわけでありまして、こうした理解を得る努力を丁寧に行いながら、しっかりと我々はその責任を果たしていきたい、こう考えているところでございます。

今津委員 経済的に豊かになりましたけれども、今言った、憲法の制約によって活動をしっかりとできていかなかった面がある面ではあった。少しうつむきかげんでありました我が国が、今、胸を張って世界に実力を示すことができる、そういう国になったと私は思うのであります。強い日本を取り戻した、取り戻しつつある、そういうふうに言ってもいいのではないかというふうに思います。

 これからの日本の安全保障政策でありますが、国際情勢の変化などを踏まえて、我が国は、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、アメリカその他関係国とも連携をしながら、地域、国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献していく、今総理が述べられたとおりであります。

 このためには、平和国家のその考え方は不変でありますが、例えば、今回提案になりました国家安全保障会議を設置する、国家安全保障戦略を策定する、そしてその後、集団的自衛権の行使の国内的な議論をクリアし、国連の集団安全保障措置への参加を検討するなど、国際法上、他の国が当然に行えることの範囲内で我々もやっていくのだという決意を示す、その状況になってきたというふうに判断をするのであります。

 今申し上げました集団的自衛権、この集団的自衛権が、個別的あるいは集団的というようなことで、大いなる議論を日本ではずっとされております。

 ところで、お聞きをしますが、例えば、自衛権を、個別的あるいは集団的と、憲法上あるいは解釈上区別をしている国は日本の国のほかにあるのでしょうか。それから、例えば、その集団的自衛権というものを行使できないのだという判断をしている国はあるのでしょうか。そのことを外務大臣にお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 個別的自衛権と集団的自衛権を分けて議論している国があるか、あるいは集団的自衛権を行使できないとしている国があるか、こうした御質問ですが、御指摘のような国について網羅的に把握しているわけではありませんが、その上で申し上げれば、例えば、永世中立国でありますスイスあるいはオーストリア、こういった国におきましては、集団的自衛権を行使することを想定していないと承知をしています。また、コスタリカという国においては、集団的自衛権の行使を妨げる法的根拠は存在いたしませんが、そもそも軍隊を保持しておらず、集団的自衛権の行使を想定していない、こういった例があることは承知しております。

 ただし、それ以外に御指摘のような国があるということは承知しておりません。

今津委員 想定をしていないという国もあるということでありました。

 私の調査によりますと、憲法において集団的自衛権の関連の規定のある国というのは、例えばポーランド、あるいはチェコ、スロバキア、この三つの国なんですね。しかし、いずれの国も、侵略に対する共同防衛の義務が生じる場合、集団的自衛権の行使を妨げない、憲法にこうはっきり書いているわけです。

 そして次に、軍隊を持たない国、これは世界百九十五のうちに幾つかあるんですが、例えばパナマとかコスタリカとか、こういう国も、実は集団的自衛権の行使を可能とするという判断をしっかりとしているんですね。

 日本のように、国際紛争を解決する手段としての戦争放棄をしている国、日本、イタリア、アゼルバイジャン、エクアドル、ハンガリーなどがありますが、しかし、日本を除いて、集団的自衛権は行使できるという判断ですから、何とこれ、世界の国というのは百九十五あるというふうに記憶をいたしておりますが、日本国を除いて、集団的自衛権というものを行使できるという判断なんです。できないというのは日本国だけなんだ。これは、まことに異常だと思うんですね。

 百九十五人の友達がいる、その中で、みんな仲よくお互いに助け合っていこうなということを確認しているのに、日本だけが、他の国が侵された場合あるいは侵略を受けた場合に手をかし出すことができない、そういう解釈をしている国はないわけですね。例えば、友達と道路を歩いている、仲のいい友達が暴漢に襲われた、しかし、これに手出しをできないということが通用する話ではないと思うんです。

 私は、この集団的自衛権の行使ということについては、いろいろと議論を長い間いたしておりますけれども、自衛権に集団的も個別的もないと考えるのが世界の中での常識であって、あの隣の韓国でさえと言うと怒られますが、韓国でも、集団的自衛権は国連憲章にある権利であって、それを行使するかどうかは日本国民の選択だ、こう言っているわけであります。

 防衛大臣、どうお考えになりますでしょうか。

小野寺国務大臣 今委員が指摘された内容のとおり、非常に、この集団的自衛権というのは、他国では広く認知をされているものだと思っております。

 他方、我が国においては、憲法で認められる自衛権の行使は必要最小限の範囲のものであるということから、個別的自衛権の行使に限られるというのがこれまでの政府の見解であります。

 ですが、先ほど総理がお話をされましたが、我が国の安全保障環境、これは非常に厳しい状況になっております。このようなところから、我が国の安全に万全を期すという観点の中で、さまざまな議論が必要というところで、今回、有識者の中で、安全保障の法的基盤の再構築というような懇談会の中で、今この議論が進められているというふうに私どもは承知をしております。

 この議論を待って、私どもとして、体制を含めた対応について整備をしてまいりたいと思っております。

今津委員 日本の中で内向きな議論を、そろそろ終止符を打って、そして、世界の中での日本がどう生きるべきか、どう役割を果たすべきかということを国民の皆さん方に理解していただいて、この集団的自衛権の問題をクリアして、そして、積極的な平和主義的な外交をぜひ展開を、すぐ取り組む、時は今だ、そんな感じがするわけであります。

 国家安全保障戦略の議論の整理が発表になりました。その中にも、国際協調主義に基づく積極的平和主義というものを掲げながら、国家安全保障の目標として、我が国の安全確保に必要な抑止力を強化するということを書いてあるのでありますが、しかし、やはりこの中にも集団的自衛権という文字が見当たりません。これは他のところで協議をするんだというお話もあるようですが、やはり一つ一つ片づけていく問題なのでしょうけれども、ぜひこの問題に取り組んでいっていただきたいというふうに思います。

 元防衛大臣でありました拓殖大学の森本先生も、ある会合の中で、防衛力の機能と活動の中で、自衛隊の機能、活動、装備とも一層効果的になっているが、従来の法的、政治的制約要件が限界に直面している、自衛隊は警察比例の原則に基づく行政機関の体質から脱却するべきだ、自衛権発動の要件下では領域防衛が困難になってきている、マイナー自衛権を導入するべきではないか、国際協力や同盟協力も限界、集団安全保障、集団的自衛権、武器使用を含む自衛隊の権限行使に関するポジリスト的考え方から脱却するべきだ。

 民主党政権下で防衛大臣をお務めになりました森本先生もそうおっしゃっていることを御紹介申し上げる次第でございます。

 さて、NSCのことでありますが、同じように、統幕長として東日本大震災の陣頭指揮をとられました折木元統合幕僚長が言っております。

 アメリカを含む主要国の戦略分析、対戦略を明確にして共有するべきである、各国の現状と戦略、国家財政、経済、国内治安、環境、エネルギー、食料問題など、各国の国益追求のための本音は何か、これらに対する我が国の安全保障戦略、防衛戦略はいかにあるべきか。

 まさにこれがNSCをつくらなければならないという考え方の原点になっているのではないかというふうに思います。

 あの九・一一が起きたときに、ジョージ・ブッシュ大統領は、ツインタワー攻撃の際には、サラソータにあるエマ・E・ブッカー小学校の授業を視察する予定で、そこにおられたんですね。それから、リチャード・チェイニー副大統領と数人の閣僚は、ライス補佐官はホワイトハウスで執務を行っていた、彼らは、ツインタワーへの二度目の攻撃の直後、シークレットサービスに連れられて地下ごうへ避難をした。ラムズフェルド国防長官はペンタゴンにいたのですが、その執務室に入って議員と懇談をしていて、アメリカン航空七七便がペンタゴンに向かっていることさえも知らなかったという状況だったのですね。

 FBIとかCIAとか、情報がいろいろ入っていたのでしょうが、それを的確に判断することなしに、あの悲しい出来事が起こってしまった。まさに日本型NSCというのは、どのように、これを教訓にして、今、安倍総理はお考えになっておられるのか、推進しようとしているのか。時間になりましたので、簡単に御説明をいただきたいというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 NSC創設の意義は、先ほど申し上げましたように、日本を取り巻く安全保障環境が大きく変わっております。その中において、常に国際状況を分析しながら、日本に対するさまざまな脅威に対してどう対応していくか。

 これは、外交的あるいは軍事的にどう対応していくか、そして、その対応の仕方によりどのような反応があるかということも含めて、常にさまざまなシミュレーションをしておき、そして政策的な選択肢を用意していく必要があるわけでありまして、そして、その政策的な選択肢について、総理大臣やあるいは外務大臣、防衛大臣、官房長官が、日ごろからそうした選択肢についてよく理解をしながら協議をしていくという状況をつくっていくことが極めて重要なんだろう、このように思うわけであります。

 その中において、政策的な発注として情報収集を発注して、情報収集して分析されたものをさらに政策の中にどう組み込んでいくかということも議論していく、これは、極めて私は、日本の安全を守っていく上において有意義であろう、このように思っております。

今津委員 終わります。

額賀委員長 次に、上田勇君。

上田委員 公明党の上田勇でございます。

 本日は、安倍総理、大変に御苦労さまでございます。

 本委員会におきましては、先月二十八日以来これまで、官房長官、そして外務大臣、防衛大臣初め、政府に対する質疑を行い、また、三十一日には、四名の大学教授などの有識者を参考人としてお招きいたしまして、充実した審議を重ねてまいりました。

 この法案が成立し、国家安全保障会議が設置されることとなれば、我が国の外交・安全保障政策の立案、実施、それにとって大きな効果が期待できるものと考えております。

 まず第一には、今、各行政機関が持っています重要な情報が政府中枢に集約をされ、それに基づく議論が日常的に行われることによって、より的確な政策の基本方針が立案できることになるというふうに考えます。

 また、第二には、とかく今はやはり行政機関ごとの個別の判断で実施をされているさまざまな対外への対応、これも、政策の司令塔が明確になることによりまして、統一性や整合性が改善をし、内閣として一体となって政策を実行していく、そういう体制に大きく寄与するものだと思います。

 そして、やはり三つ目には、ふだんからそうしたさまざまな議論を深めておくことというのは、緊急事態が起こったときの対応がやはり適切にできるようになることになります。参考人として御意見を伺った慶応義塾大学の細谷雄一教授の言葉をかりれば、スポーツでも日ごろ練習をしていなければ試合に出たときに力が発揮できない、まさにそのとおりなんだというふうに思っております。

 これまでのそうした質疑、あるいは参考人の意見聴取におきまして、今回設立をされます国家安全保障会議、これが本当の意味で機能を果たしていくためには、その鍵は大きく二つあるんじゃないかというふうに思います。

 一つは、これはやはり、議長を務める総理の積極的なかかわりと指導力だというふうに思います。

 そしてもう一つは、国家安全保障担当の補佐官や局長といった枢要なポストの人選にかかっているというふうに思います。特に、事務局を統括し、そこに膨大な情報が集まってくる、それを整理、要約して会議に上げる、そしてまた、対外的には、アメリカのNSC担当大統領補佐官やそのほかの海外の同様の機関のカウンターパートとなるわけでありますので、その局長の人事がとりわけ重要なのではないかというふうに考えております。

 今、いろいろなところから、どういう人がいいのかというような意見が、マスコミ等も含めて、言われております。有識者など民間人が適切なのではないかという意見もあれば、外交や防衛に精通する、あるいは組織のマネジメント、経験豊富な官僚やそのOBがいいんじゃないかという意見もございます。

 最終的にはこれは安倍総理が御決断されることでありますので、局長には、非常に重要な役割を担う、まさに国家安全保障会議の成否を握ると言ってもいいこの人事について、どのような資質や能力を持っている方、そしてどのような経歴やバックグラウンドの人物がふさわしいと考えているのか、総理の御見解を伺いたいというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 国家安全保障局長は、国家安全保障政策にかかわる各省庁等の横断的な課題について、平素から、私の意向を踏まえつつ、国家安全保障会議に関する業務を恒常的に処理していくとともに、私が求めれば、常に、国家安全保障にかかわる案件についてブリーフィングをできるという能力も持っている必要があると思います。

 また、局長は、米国の国家安全保障担当大統領補佐官を初め、各国のNSC事務局の責任者と緊密に意思疎通を行うことができるということも求められているわけでありまして、緊急事態が発生した際には当然直ちに対応することが求められるわけでありまして、このため、局長ポストには、国家安全保障に関する高度な専門性を有し、実務に精通した者を専従させる必要があると考えております。

上田委員 まさに今回、この国家安全保障会議、新しい組織ができて、それが成功するかどうかというのは、まず最初のこの人事が非常に重要な鍵を握るというふうに思いますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 もう一点、今度は、国家安全保障会議の記録のあり方についてお伺いをいたします。

 参議院本会議の代表質問で、我が党山口代表が、閣議や閣僚懇談会の議事の作成を義務づけ、三十年の保存期間満了後には、国立公文書館に移管をし、一般の利用に供することができるようにする、そうした法改正について質問いたしました。

 それに対して、総理からは、閣議の議事録を作成し一定期間経過後に公開するための公文書管理法改正法案については、明治以来、議事録を作成してこなかった我が国の閣議のあり方、これともかかわる問題であるため、政府部内で必要な調整、検討を行った上で提出することとしたい、こういうふうに答弁をいただいております。

 国家安全保障会議の記録については、特にやはりこれはセンシティブな内容も多く、また、個々の参加者の発言を議事録として残すことの難しさというのは十分理解をいたします。また、議題そのものが記録として残ることによって、適切でない場合もあり得るのではないかというふうにも理解をいたします。

 ただ、一方で、将来、意思決定のプロセスを検証するには、一定の記録を残しておく、このことも重要な意義があることだろうというふうに思っております。

 国家安全保障会議の記録のあり方についても、先ほど答弁の中にありました、閣議等の記録作成の調整、検討とあわせて御検討していただくものだというふうに考えておりますが、その点、総理の御見解を伺いたいというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 従来の安全保障会議においては、御承知のように、審議内容が機微であること、あるいはまた関係閣僚の闊達な意見交換を確保する必要があることなどから、議事録は作成をしておりません。ただし、安全保障会議の審議の概要は、事後、官房長官が会見において可能な限り公表をしてきたところでございます。

 国家安全保障会議の審議内容は、今委員が御指摘になったように、いわば、我が国が置かれている状況、安全保障上の環境について議論を行いますが、特定の国あるいは政府についての分析や情報についての議論も行いますので、そうしたことについて、果たして公表することがふさわしいかどうかということも当然十分に検討する必要があります。

 公表のあり方や関連文書の作成及び取り扱いについては、国家安全保障会議の性質等を十分に勘案しつつ、国の安全保障を損ねない形でしっかりと検討をしていきたい、このように考えております。

上田委員 時間なので、終わります。ありがとうございました。

額賀委員長 次に、大島敦君。

大島(敦)委員 民主党の大島敦です。

 きょうは、国家安全保障会議を設置することに関して、民主党を代表して質問をさせていただきます。

 なぜ我が国の中に国家安全保障会議が必要であるかの点につきまして、私はこう考えています。

 一九八九年、今から二十四年前の十一月の九日、ベルリンの壁が崩壊をいたしました。私も、その前三年半ほど、東ドイツ、西ドイツ、まだ東西が統合されていないドイツで生活をしておりまして、その東西の冷戦下においては比較的安定した時代がずっと続いてまいりました。一九八九年の十一月の九日、ベルリンの壁が崩壊をして、その二年後、一九九一年にソ連が崩壊をいたしました。その年に湾岸戦争が起きております。東西の冷戦が終わって、民族間の紛争が、これまで抑えられていた民族間のそれぞれの思いというのが湧き上がってきたのが、これまでの二十四年間だと考えております。

 そして、今、情報というのは瞬時に世界を駆けめぐります。一瞬にして地球の隅々まで情報は伝わっていきます。

 この二つの変化というのが、私は、我が国において、もう一度、国家の安全保障に関する政策を根本的に立案する会議体あるいは組織が必要だと思っております。

 そして、私たちの民主党におきましても、平成二十二年の防衛大綱、防衛大綱というのは毎年つくるものではありません、何年かに一回、我が国としての防衛政策をこう考えるという今後の話を書き込む防衛大綱の中に、当時、平成二十二年の十二月、首相官邸に国家安全保障に関し関係閣僚間の政策調整と内閣総理大臣への助言等を行う組織を設置するということで、まず、いわゆるNSCの設置につきまして提案をさせていただいております。前回の参議院議員選挙でも、NSCを設置するということは明記をさせていただきました。

 それで、きょうは、私たち民主党も、政府案に対して修正案ということで提出をさせていただいております。この委員会が終わりますと採決をいたします。民主党も賛成ということで今回は決めさせていただきました。ですから、賛成という立場で質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 まず、長島委員に伺いたいんですけれども、長島委員は、野田政権下においては首相補佐官を務めていらっしゃいました。そして、防衛省の副大臣も務めていたかと思います。もともとは、米国の一番権威のある外交評議会の研究員として、そして、ホワイトハウスのNSCのアジアの戦略をつくっていらっしゃったマイケル・グリーンさん初め、非常に米国に友人が多い長島昭久さんに、その経験も踏まえ、このNSCについてどう考えているのかについて御答弁をいただければと思います。

長島(昭)委員 大島委員にお答え申し上げます。

 大島委員がるる御説明なさったように、冷戦が終わって、非常に国際情勢は激化しております。特にこの十年は、テロの時代ということで、時間的にも空間的にも政治判断に余裕がなくなってきている。しかも、その脅威はいろいろな分野横断的な脅威になっている。したがって、我が国においても、外交は外務省に、防衛は防衛省にという時代は過ぎ去った、こういう認識のもとに、私たち民主党も、NSCが必要である、こういう提言をこれまでも繰り返し申し上げてきたわけです。

 今日、外交、安全保障を、官邸を中心に司令塔をつくって、そこで回していく。特に、安倍総理も御経験をたくさんなさっておられると思いますけれども、最近は、首脳外交、首脳を中心とする外交が非常に世界でもトレンドになってまいりまして、やはり、総理大臣の情勢分析、状況判断、こういったものをしっかり総理の膝元で分析し提言をする、そういう機構が必要であるということであります。

 しかも、それは、省庁を横断する、そういう課題に適時的確に応えていかなきゃならない。こういうことで、外交であるとか防衛であるとか、あるいはエネルギーであるとか海洋政策、宇宙政策、サイバー政策、こういったものの情報を持っている各省からその情報をきちんと官邸に集約する、そういう機能が必要であるというふうに思っています。

 私は、補佐官時代に、各種の情報会議、官邸で行われる情報会議にも陪席をさせていただきましたけれども、今までは、どちらかというと、各情報機関が集めて分析してきた情報を受け取る、ある意味でいうと受け身のような形でありました。しかし、これからは、NSCができた暁には、このNSCを中心として、情報要求、こういう情報をしっかり上げてこい、足りなければまたさらにプッシュするという、この繰り返しで省庁を束ねていく必要があるだろうと思っています。

 その意味で、政府から出されている四大臣会合、総理を中心として官房長官、外務大臣、防衛大臣、この四大臣が機動的に集まって、そして物事を多角的に分析して政策決定を下していく、これは大変大事なNSCの肝だというふうに私は思っています。

 それをサポートする人材が実は大変重要でありまして、政府案ではそれが、安全保障局長というのが一人おられます。プラスして、国家安全保障担当の補佐官というのもおられるわけです。

 私は質疑の際にも紹介いたしましたけれども、アメリカにしてもイギリスにしても、この国家安全保障担当の補佐官というのは、NSCの事務局、スタッフ組織を束ねる役割も同時に担っておりまして、これが一元化されているんですね。

 ですから、私どもはそこを、政務の官房副長官をもう一人ふやして、外交、安全保障に専念させて、しかも国会議員ですから官僚機構にもきちっとにらみをきかせて、総理大臣、官房長官、そして危機管理・安全保障担当の官房副長官、こういう布陣で、対外的なNSCとも交渉できるような、そういう位置づけにこの副長官を持ってくる。

 私は、その方が機能するのではないか。政府案と民主党案の違いは、平時におけるNSCの束ね役としての違いは、この一点にある。そして、私は、口幅ったいようでありますが、民主党案の方が平時においても有効に機能するのではないか、このように考えております。

大島(敦)委員 今テレビを見ていらっしゃる方は、なかなか国家安全保障会議といってもわかりづらいと思います。国家安全保障会議というのは、これは閣僚の会議でして、四大臣会合というのは、総理大臣そして官房長官、ここにいらっしゃる外務大臣、防衛大臣が、四人が二週間に一回集まって国の安全保障について議論する。そういう会議体を要は法律として設置して、その会議体に対して情報を上げる事務局をつくるという考え方です。

 ですから、私たち民主党も同じ理念で考えているんですけれども、その組織の構成が若干、政府案とは違うということです。先ほど長島委員がおっしゃられた、首相補佐官を本当に必ずつくらなければいけないというよりも、それよりも、官房副長官を一人増員してしっかりとした体制をつくった方がいいという立場で法案を提出させていただきました。

 考え方、向かっている方向は同じかと思いますが、その点につきまして、安倍総理から手短に一言、御答弁いただければと思います。

安倍内閣総理大臣 確かに、今、長島議員の答弁を聞いておりましても、それは一つの見識だと思いますし、目的は同じなんですが、これはどういう形の方がいいかということなんですが、私たちは、例えば、議員の官房副長官が果たしてずっと専従でやれるかどうか、国会中のこともありますから、という課題はあるんだろうなと。私どもの方は、先ほど答弁させていただきましたように、事務局長が専門性を持って専従する。

 一方、安全保障担当の補佐官は、これは政治家が任命されることもありますが、もし政治家が任命されれば、国会との関係においては、スタッフとして機能していくということであります。

 また、官房副長官は、当然、官房長官とともに四大臣の会合にも出席をするわけでございまして、状況について基本的に常に四大臣とともに把握をして、また、官房長官とともに各省庁に対してしっかりと指示をしていくことができる、こういう機能を果たしていくことは十分に可能であろう、このように考えているところでございます。

大島(敦)委員 国家安全保障会議につきましては、これは固定化するということも必要かもしれません、四大臣会合を法制化してつくっていくということも必要かもしれません。ただ、不断の見直しが必要だと思います。米国におけるNSCについても、これも不断に見直しながら、より機能するようにしてきたという歴史を伺っております。ですから、今回の法案をつくった後も、この日ごろの体制については見直しながら、より我が国にとって機能するあり方を求めていくということが必要だと考えております。

 そこで、修正案の提出者である渡辺委員に伺いたいんですけれども、渡辺委員はこれまで防衛の副大臣もされておりました。省庁間の壁というのがあると思います。外務省があり、防衛省があり、各省庁があって、その各省庁が集めた情報というのが官僚組織における力の根源だと思います。要は、その情報をうまく入手できない、あるいは、さまざまなこれまでの御経験の中から、省庁間の情報の共有についてどういうような御経験をされたのか、あるいは御見解を持っているのか、お伺いさせていただければ幸いです。

渡辺(周)委員 大島委員が総務省の副大臣をしているときに、もし万が一、国家緊急事態があった場合に、救出や輸送に向かう自衛隊のヘリコプターや艦艇が大きいものから小さいものまであります、大型、中型、小型がある、その際に利用できる地方の例えば空き地、ヘリポートを代替する公共施設がどれだけあるか、そのキャパシティーはあるのだろうか、あるいは、港によっては水深も違えば形状も違いますので、どのような艦艇が入ることができるか、こういう全国のデータをともに検討したことがありました。

 今も防衛省で総務省の協力を得て行われていると思いますけれども、例えば、平時からこうした情報の収集や一元化、共有というものが必要であろう。昨今の、伊豆大島もそうでありましたけれども、たくさんの自然災害に見舞われる我が国であります。あるいは、国家の大型テロが起きた場合にどうしたらいいだろうか。こういうことの問題意識ができたわけでございます。

 そしてまた、政権時代のお話をしますと、昨年の四月の北朝鮮によるミサイル発射、これは、例えばJアラートというものの不備が後に指摘をされました。そしてまた、その際には南西諸島に私も行きましたけれども、南西諸島の役場に防衛省の職員が行きまして、リエゾン、いわゆる連絡員として、調整官として行かれたわけでしたけれども、その際にも、例えばその自治体の持っている消防であるとか医療であるとかの能力、そういう情報の共有も必要でありましたし、何よりも、昨年の九月に尖閣の国有化後に、今も来ていますが、尖閣に対する中国の公船の領海侵入、この点について、海上警備行動を念頭に置きながら、しかし余り中国をエスカレートさせてはいけないということで注意を払いながら、海上保安庁の動きを刻一刻と防衛省で情報を集めておりました。

 その際、制服組、背広組の方々がたくさんの資料を持って、現状起きているオペレーションや、あるいは海上保安庁の持っている船の能力というものについて説明するんですけれども、そのときに、それぞれが資料を持って、それぞれが御説明に来るものですから、その資料のボリュームたるや、あるいは背広組、制服組を含めた説明をする方の数を見て、これは逆に職務の遂行ということで随分なロスが起きているのではないだろうか。そういうことが本当にあったわけでございます。

 重大な決断をする際に、あるいは平時から、安全保障というのは私はシミュレーションだと思っていまして、こういうことが起きた場合はどうするか、どういう手を打つかということを日ごろからしておくこのNSCの性格を考えれば、やはり、資料やデータの作成、その中からエッセンスを一本化する、そしてまた、現場だけが持つ本当にコアな情報というものを日ごろから持ち寄って一本化をしていくということが、いざというときの瞬時の判断あるいは瞬時の行動に資することになるだろうと私は思います。

 決してどこかの省庁が出し惜しみをしていたとは感じてはおりませんけれども、ただ、それぞれの役所が自分の所管業務を皆抱えている中で他省庁の能力や実情をどこまで把握できているかといえば、それはなかなか難しい問題があると思います。

 ですから、平時から、指示を出したらそうした情報を集めて、その上でやはり共有、一本化をする、こういうことが最終的には政策決断に必ずや資するだろう、そのような認識を持っております。

 以上でございます。

大島(敦)委員 ありがとうございました。

 今、政府の閣僚間の国家安全保障会議、その下の事務局、その事務局にいかに情報を各省庁から不断に上げていくかというのが私はキーだと考えております。

 やはり、首相、四大臣あるいは九大臣、さまざまなフォーメーションのこの国家安全保障会議を支える事務局に各役所からしっかりと情報を上げるために、今回は私たち修正案を出させていただきまして、その点につきまして、政府側も私たちの意見に賛同していただいて、きょうこれから修正案ということで通るわけですけれども、その点について、総理から御所見をいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 国家安全保障会議においては実質的な議論を行っていくわけでありますが、国家安全保障局においても、国家安全保障政策の企画立案、総合調整を行うに当たっては質の高い情報が必要不可欠でありまして、各省庁からしっかりと各省庁が持っている情報を集めてくる、そしてそれを分析しながら政策の立案に当たっていくことが極めて重要だろう、このように思うわけであります。

 改正後の国家安全保障会議設置法第六条に基づいて、各省庁等は国家安全保障会議に資料、情報を提供する義務を負うことになるというふうに我々は考えているわけでありますが、民主党の修正については、明示的にしっかりと書き込んでいけという民主党の御提案について我々は十分に検討していかなければいけない、傾聴に値するというふうに考えている次第でございまして、各省庁にしっかりと義務を負わせる、情報の提出義務を明確化すべきという議員の御指摘は、私は、有意義であろう、このように考えているところでございます。

大島(敦)委員 御答弁いただき、ありがとうございました。

 役所は、法文を見ながら仕事をします。法文の書き方によって役所の仕事の仕方は全然変わります。ですから、これまでの政府案ですと、情報を求めることができるということですから、各省庁の大臣に情報を求めた場合に、安定した政権ですと問題ないんですけれども、連立政権だったりすると、嫌だよということ、そういう余地もあるわけです。ですから、今回は、私たちは今後のことも考えて、情報を提供しなければならないという規定に変えさせていただきました。

 ですから、今後は、総理あるいは官房長官が、この情報が欲しいと各役所に一言発言するだけで、情報は全てNSC事務局に集まることになり、より正しい判断ができることになると思います。

 そこで、NSC、国家安全保障会議の議事録については、私どもは、議事録は必要だという立場でこれまで議論をさせていただきました。国家安全保障会議が、議事録が必要であるのか、あるいは議事録をつくらないのかにつきまして、総理から御所見をいただければ幸いです。

安倍内閣総理大臣 議事録については、これは委員も重々御承知の上で質問されていると思いますが、中身については、まさに国家安全保障にかかわる中身についていわば四大臣間で意見交換を行うわけでございますが、相当突っ込んだやりとりも行う必要があるわけでありまして、特定の国あるいは特定の政府における状況、いわば我が国の安全保障に関する、あるいは外交に関するその国あるいは政府の態度についての分析、あるいは起こり得る状況についての分析を行いますので、そういう機微な情報も含むわけでございますので、公表のあり方や関連文書の作成及び取り扱いについては、国家安全保障会議の性質等を十分に勘案しつつ、国の安全保障を損ねない形でしっかりと検討をしていきたいと考えております。

大島(敦)委員 今、私たちの国のあり方というのは大きく変わってきていると考えています。

 私たちの政権でも、そして安倍政権におきましても、公務員制度改革の法案を今、閣議決定をして、国会に提出しようとしております。その中で、幹部人事の法案があります。三十万人いる国家公務員のうち、幹部、民間企業でいうと役員と言われている方たちは六百人です。事務次官、局長、そして審議官、この六百人の人事権を、各府省の大臣が持っていた人事権を官邸に今寄せようとしております。

 要は、三十万人国家公務員の六百人の人事権を官邸が持ち、そして、安全保障政策についても官邸がその主導権をこれから発揮しようとしている時代です。

 ですから、官邸機能が強化されるということと、それをどうやってバランスをとるように抑止をしていくかという、もう一つの考え方も必要だと思っています。立法府そして行政府との緊張関係。そして、もう一つは議事録。この議事録を残すということは、私は、一つの権力の行使に対しての、慎重な、抑止される手段だと考えております。

 なぜかというと、自由闊達な議論、菅官房長官が時々この場で、自由闊達な議論を妨げるから議事録は残すべきではないという御発言があったかと思います。でも、自由闊達な議論も必要ですけれども、それよりも、責任ある議論、真剣な議論が必要だとも考えています。

 議事録が残るとなると、確かに自由闊達な議論は最初は滞るかもしれない。でも、議事録が残るということが通例化してくると、今度は真剣な議論で国の外交、安全保障のあり方についての議論を行い、そのことがひいては国民の利益につながると私は考えています。

 ですから、議事録というのは残して、そして、これはすぐに公開しろと私たちは求めていません。三十年後、場合によっては、アメリカですと五十年後、七十五年後、公開するようにもなっております。

 ですから、議事録については、やはり時代の検証にたえられる、時の政権がどういうような議論をしてこういう決定をしたかについて私は残すべきだと考えておりまして、その点につきまして、後藤委員から、修正案の提出者として、この点については、申しわけないんですけれども、政府側そして私たちとの、与党側そして私たちとの交渉は、法文化はできませんでした、修正には応じていただけませんでしたけれども、その点につきまして、後藤委員から考え方を御説明していただければ幸いでございます。

後藤(祐)委員 お答え申し上げます。

 大島委員おっしゃるように、総理官邸の権限が強まるということであれば、その分、説明責任も大きくなるというのが我々の考え方でございます。

 その意味で、このNSCの議事録というものは残すべきだということで修正案を提出させていただきましたが、大きく理由は二つあります。

 一つは、まず、外に出すということではなくて、政府部内で、そのときの会議がどうであったかということを事後的に検証できるようにしておくこと。あのイラクの戦争のときも、大量破壊兵器の有無が大変問題になりました。

 もう一つは、時代がたってから、将来において、国民が外部からこのときの政策判断が正しかったかどうか検証できるようにすることで、リアルタイムに今現在の議論というものが国民に堂々と説明できる、質の高い政策決定をできるようにしていただくというために、このNSCの議事録は残すべきだというふうに考えております。

 これはすぐ公開するということではなくて、少なくとも記録を残すということをやはり義務づけていくべきではないかというふうに考えております。

大島(敦)委員 安倍総理に、申しわけないんですけれども手短に御答弁していただきたいんですけれども、ただいまの議論を聞きながら、安倍総理の考え方につきまして、もう一度伺わせてください。

安倍内閣総理大臣 今の答弁を聞いていても、なるほど、もっともというところも確かにあります。あのとき政府はどういう議論をしてそういう判断をしたのか、それは、後の政府あるいは政治にかかわる人々が二度とそうした、もし過ちがあったとすれば同じ過ちをしなくて済むし、意思あるいは政策決定過程、情報の分析が間違っていたかどうかも含めて、検証できることも必要なんだろうと思います。

 一方、先ほど申し上げましたような機微な議論もあるわけでございまして、万が一、それが外に出たら大変なことになるということももちろんあるんですが、それがしっかりと保全されるということも当然前提にしながら、これはどういう形が考えられるか、先ほど申し上げましたような考え方の中において、しっかりと検討していきたい、このように思います。

大島(敦)委員 前向きな御答弁、ありがとうございました。

 我が政権下でも、岡田克也さんが外務大臣だったときに、外務省の訓令を変えました。三十年たったら外務省の文書は公開しろという、外務省の訓令を変えたことによって、それまで三十年間で一万二千冊しか出なかった文書というのが、平成二十三年から平成二十五年の七月までに同じ一万二千冊出て、それは今、時代の検証にさらされております。

 こうやって、私たちの国は、今後、時代の中に私たち政治家の判断をしっかり刻印し、残すことによって私たちの国の知見を高めていくことが、国民の皆さんにとっての利益につながると考えております。

 今後、公文書管理法等の法案の審議、法案の作成もあるかと思います。どうやって文書を残していくのか。そして、情報公開法の議論もこの委員会で行われます。そして、特定秘密保護法案の政府案の法律もこの委員会で行われます。ぜひ、慎重な審議と、そして私たちの国をよりよい方向に持っていくために活発な議論をしていきたいということを最後に申し上げまして、私からの質問を閉じさせていただきます。

 本当にありがとうございました。

額賀委員長 次に、藤井孝男君。

藤井(孝)委員 日本維新の会の藤井孝男でございます。

 限られた時間でありますので、総理初め関係閣僚にも質問いたしますけれども、わかりやすく、また簡便に御答弁いただければと思っていますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 いよいよ、この法案の総括、締めくくりということでありまして、日本版NSC、まさに国家安全保障会議の設置法ですけれども、まず総理にお伺いしたいと思います。

 この日本を取り巻く安全保障の環境というのは非常に今、目まぐるしく変わってきている。非常に私は厳しい状況があると思います。したがいまして、この日本版NSCについてお伺いしますが、基本的に、安全保障の現実について総理はどのようにお考えか、この点についてまずお伺いをいたしたいと思います。

 そして、この取り巻く情勢というのは、一つ具体的に言いますと、いわゆるテロの問題はもちろんでありますし、地域紛争、あるいは大量破壊兵器のいわゆる広がり、拡散と申しましょうか、また、食料、エネルギー、あるいは環境汚染、あるいは大災害はもちろん入ってまいりますけれども、さまざまな形でグローバル化しているわけでありますね。そういう中での、混沌とした状況の中で、いわゆる国家の危機を、存亡する事態というのはさまざまな形で起きるわけであります。

 そういった中で、例えば日本の場合、具体的に言いますと、中東情勢が不安定化したときには、日本は大変なエネルギー小国ですから、いわゆる日本の経済、エネルギー問題が不安定化することによって、経済問題、あるいは国民の生活にも重大な危機が生じるということが一つありますね。

 あるいは、その場合の中東から日本までのシーレーン、そういったシーレーンをいかに安全に確保するかということは、例えば、台湾周辺で有事が起きて、武力衝突が起きた場合も、これも日本にとっては死活問題になるわけであります。

 そういった状況がありますし、また、北朝鮮では、核兵器の開発がさらに続けられている。これも日米にとっては大変な脅威でありますね。

 そうした中で、まず、アジアの地域における中国のパワーバランスが非常に変わってきている。これは、中国のいわゆる軍事力が非常に毎年増強されている、そういう中でパワーバランスが崩れてきた。特に東アジア地域においては、そういった問題について非常に危惧する方々、また、国民の皆様方も非常に、日本は大丈夫なのかなと。

 そういう中で、日中関係において、中国の中では最近、力関係の逆転という言葉が言われてきています。まず、日本に対する力関係の逆転という意味、これは大変いろいろな意味があると思いますが、総理は、この力の逆転の意味というのをどういうふうに捉えられているか、お聞きしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先ほど藤井委員が指摘をされたように、我が国をめぐる安全保障環境は大きく変わっておりますが、また、これは国際状況としても、この二、三十年の間に大きく安全保障環境が変わったと言ってもいいんだろうと思います。単に陸、海、空だけではなくて、宇宙空間、あるいはサイバー空間において、安全保障上のさまざまな懸念もあるわけでございます。

 そしてまた、例えば、先ほど指摘されたように、北朝鮮による核、弾道ミサイル開発の脅威が増大をしております。そして、中国についてでありますが、中国の透明性を欠いた軍事力の増強や我が国周辺海空域における活動の急速な拡大、活発化は、地域、国際社会の懸念事項となっていると言ってもいいと思います。

 御指摘の、力関係の逆転という言葉でありますが、これが何を意味するかというのはちょっと定かではございませんが、中国の国防費について言えば、これは一九八九年以降、おおむね二十年以上にわたって毎年一〇%以上増加をしておりまして、現在では我が国の防衛費の二倍以上となっているわけであります。

 我が国としては、防衛費を含めた中国の国防政策について、引き続き注視をするとともに、透明性の向上や国際的な行動規範の遵守について、関係国とも連携をして中国に働きかけを行っていく考えであります。

藤井(孝)委員 まさに私もそのとおりだと思います。

 しかし、今おっしゃられたことは、私自身もそういう認識でおりますけれども、この中国の力関係の逆転というのはもっと厳しく見ていかなければならないと、私は個人的にそう思っております。

 というのは、私の理解では、力の逆転というのは、わかりやすく言いますと、要するに、中国の総合的な国力が我が国の国力を上回る、そのことを日本側に中国が認識させて、そして受け入れさせていく、そういうことからきているんじゃないか、中国の言う、いわゆる力の逆転というのは。そういうことをやはりしっかりと踏まえていかなければいけないんだろうと思うんですね。

 というのは、御承知のとおり、中国は、通常兵器はもとより、核兵器であるとか、あるいは宇宙、サイバー、そういった軍事関連の近代化をどんどんどんどん進めていますね。今、軍事費についても大変大きな数字を持って、毎年一〇%以上の伸び率を持っているということはおっしゃられました。

 そういったことで、中国の、まず、一年間の軍事費だけでも、日本の防衛費の今二倍以上と言いましたけれども、まさに十一兆円ぐらいある。しかし、軍事関連費を含めると、さらにこの二倍あるんだろうとも言われているわけですね、中国の軍事関連費というのを総合すると。

 そうなると、このままでいきますと、日本の防衛予算が四兆七千億だからということではありませんけれども、十年後、二十年後にはこのアジア地域のいわゆるバランスががらっと変わっていってしまうんじゃないか、そういうふうな変質をする、そして、それがもう今進みつつある。

 そして、さらに米国を見ますと、米国はたしか、十年間で軍事費を五千億ドル減らすということを言っているわけですね。さらに、オバマ大統領は、米国は世界の警察官ではないということも言っているわけであります。要するに、アメリカにとって中国というのは非常に、経済的には競争相手でありますけれども、しかし一方では、まさに核兵器を持っている両国でありますから、そういう意味では、軍事的なバランスについては、米国は、我が日本の同盟国としていろいろの意味でサポートはしてくれますけれども、一方では、中国に対して非常に重要視している、重視しているということをやはり私たちは認めざるを得ないところがあるわけです。

 そういう意味で、中国は、いわゆる相対的なアメリカの力の変化というものをしっかり踏まえながら、このアジア地域、とりわけ東アジア地域における軍事パワーのいわゆるシフトを変えていこう、自分たちがより強力な国家になることによって、それを認めさせることによって、この地域について、実権と申しましょうか、軍事力を増強することによってそういった目的を達していこうというのは、私は、最近の尖閣諸島近辺の問題につきましても、後ほど触れますけれども無人機の飛来につきましても、そういったことをしっかりと踏まえていかなければならないんじゃないか。

 ということは、つまり、習近平政権のスローガンである中国の夢というものを実現するためには、そういったことが背景にあって、私は、中国の今の政権の進め方というのを非常に重要視して、そして、後ほど触れますけれども、今度のNSCの問題につきましても、こういったことを踏まえながら、このNSCの機能のあり方、今後の課題について、しっかりと注視していかなければならないと思うわけであります。

 そこで、今、米国のいわゆる五千億ドルの国防費の削減ということもありますけれども、オバマ大統領が言いました、いわゆる、アメリカは世界の警察官ではないという中でのいろいろな微妙な変化がある中で、総理におきまして、アメリカがどういうふうに中国に対して問題を把握しているのか、どういう意識をしているのか、そうした米中関係について、総理はどういうふうにお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 日本政府として、対中認識について、断定的に今私がコメントする立場にはございませんので、まずそのことを申し上げた上で、先般の日米2プラス2の共同発表では、中国に対して、地域の安定及び繁栄において責任ある建設的な役割を果たし、国際的な行動規範を遵守し、急速に拡大する軍事面での資源の投入を伴う軍事上の近代化に関する開放性、透明性を向上させるよう引き続き促す旨、言及したところでございます。

 いずれにせよ、アジア太平洋地域を平和で安定した地域としていくためには、対中政策を含め、日米両国があらゆる面で緊密に協力をしていくことが必要でありまして、アジア太平洋地域が力ではなくてルールが支配する地域になるよう、力による現状変更は認めない、やはり国際法に準拠したルールをしっかりとみんなが遵守していく、そして行動規範を守っていく、つくって守っていくということが重要でありますが、日米同盟を基礎としつつ、米国と協力をしていく考えであります。

 この点については、二月の日米首脳会談の機会にも、オバマ大統領と一致をしたところでございます。

藤井(孝)委員 今の御答弁もわかりますけれども、私は、ちょっと総理の認識は甘いんじゃないかと。対中国、今の、法を守る、あるいは国際秩序を守る、そういったことを対話を通じて進めていくということは結構なことだと思いますが、私は、むしろ米中関係というのは、さまざまな各界各層においてパイプが築かれつつあると思うんですよ、着実に。

 要するに、経済的相互利益と、またそれからアメリカにとってもとめられない中国の軍事力のいわゆる膨張、そういったことから考えますと、私は、やはり中国というのは非常にしっかりと注視していかなければ、ただ単に一国だけでは日本は東アジアの安定をなし遂げることができませんから、当然、日米の同盟関係を深化させなきゃいけないということは、今おっしゃられたとおりだと思います。

 そこで、中国が、特に海軍力を中心に今増強しております。その理由には、幾つかの理由があると思いますが、私は、主に二つあるんじゃないかと思っているんですね。

 その一つは、先ほどもちょっと触れましたけれども、台湾有事の際に米軍が介入できない状況をいかにつくるか。それから二つ目は、エネルギー資源の確保。中国も資源輸入国になりました。エネルギー資源の確保と同時に、それを守るためのシーレーン、これの確保のために海軍力をつけているんじゃないか、私はそういうふうに思っております。

 そういうことによって、パワーバランスを、あの東アジア地域を変化させることによって、中国は、先ほど言った習近平政権のいわゆる夢の実現、アジア地域のパワーバランスをしっかりと自分たちの国が押さえていくんだということを、お互い見据えていかなければならないと思っているわけであります。

 そういう意味では、日米同盟というのは、先ほど深化させなきゃいけませんと言いましたけれども、やはりそのためには、尖閣においても、南西諸島においても、これはアメリカにただ頼って依存するのではなくて、私は、日本自身があの地域を我が国の力でしっかりと守っていくんだ、そういうことをしっかりと見据えて、それを実行していかなきゃならないと思っております。

 ですから、日本の尖閣にしても、しっかり自分たちの手で守るんだと。もちろん、アメリカの協力もぜひ必要ではあるけれども、まずそこを第一とすれば、それがアメリカに対するメッセージともなり、そしてアメリカもそれで日本を信頼し、さらには中国に対しての抑止力にもなるんだろうと私は思うわけであります。

 そこで、総理にお伺いしますけれども、今言った問題とNSCの関係であります。

 日本版NSCというのは、情報の分析、政策立案ということに重点を置いて、そして、司令塔として位置づけているわけですね。これは、官房長官の委員会の答弁でもそういうふうに言われております。

 しかし、今の日中間の問題、非常に大きな懸念があると私は申し上げましたけれども、第二次安倍内閣が発足以来、残念ながら日中首脳会談は行われていませんね。そして、必ずしも日中の関係は良好とは言えません。これは何が原因だと総理はお考えですか。

安倍内閣総理大臣 中国は、我が国固有の領土である、歴史的にも国際法的にも固有の領土である尖閣諸島に対し、中国公船による領海侵犯を頻繁に繰り返しております。そして、一定の前提条件に合意をしない限り、首脳、外相レベルでの対話に応じないという姿勢をとっておりました。これは大変残念なことであります。

 一方、中国との関係は、日本にとり最も重要な二国間関係の一つであり、私は、個別の問題があっても、関係全体に影響を及ぼさないようにコントロールしていくとの戦略的互恵関係の原点に立ち戻って日中関係を進めていくことが必要であろう、このように思います。課題があるからこそ、首脳間あるいは外相間の対話が重要なんだろう、こう思うわけでありまして、私は、何か問題があるからといって、対話のドアを閉ざしてしまうのは間違っていると。

 ですから、私は常に、私また日本は、対話のドアは開いている、このように申し上げているわけであります。中国側にも、ぜひ同じ姿勢をとっていただきたいと思っているところでございます。

藤井(孝)委員 日中関係の悪化は、民主党政権下でいわゆる尖閣諸島を国有化しましたよね、それが原因だというふうに主張する方もいますが、私はそうは思いません。むしろ、先ほど申し上げたように、もう二〇〇八年ごろから中国は政策の変更をしたんですよ。尖閣は、単なる中国の政策の変更を日本に具体的に示す例としての口実、材料として使っているんだと私は思うんです。

 ですから、私は、そういった中国の、もう何年も前からの東アジア地域におけるいわゆる政策が変化したということをしっかり踏まえた上で、これから対応していかなきゃならないということを言いたいわけであります。

 要するに、これからも中国は、陰に陽に、心理的にも、あるいは軍事的な圧力をきっと加えてくるでありましょう。そして、もう一つは、海軍力を増強しているという背景には、尖閣諸島地域というのは、やはり、中国があの地域に進出する、そしてまた、太平洋の方へ進出するというところに、それを塞ぐような形で尖閣諸島が位置しているということもありましょう。ですから、そういった戦略上で、尖閣諸島について、これからいろいろな形で、心理的な、あるいは具体的にも、いろいろな行動をしてくると私は思うわけです。

 そこで、菅官房長官にお伺いいたします。

 というのは、尖閣諸島は、先ほど申し上げたように、民主党政権下で国有化したんですね。しかし、そのときに、日本政府の情報部門は、このことによってどういう反応を示すのか、あるいは、どういうふうに中国の尖閣に関する戦略情報を、どうなっていくのかという情報はどういうふうに得ておられたんでしょうか。官房長官として知っている限り、また、審議官の方からでも結構ですから、ちょっとお答えいただきたいと思います。

菅国務大臣 まず、尖閣諸島は、先ほど総理が述べられましたように、歴史的にも国際法上も我が国固有の領土であることは明らかであります。

 そうした中で、前政権が昨年の九月に、当時の所有者から土地を取得、保有することになったわけであります。本来であれば、他の国や地域との間で何ら問題を起こすようなことではないというふうに私は思います。

 内容、当時どんな状況が予測されたかということでありますけれども、このことは前政権下のことであって、当時の状況について私はつまびらかに承知をできる立場ではありませんでした。

 ただ、少なくとも外交当局では意思疎通はしていたんだろうなというふうに思いますが、その上の、政治指導者の間まで話が行ったかどうかということについては、私は、現政権では知る由もないことだったというふうに思います。

藤井(孝)委員 要するに、これからNSCの問題にかかわってくるわけですから、情報というのをいかに的確に収集するか、そして的確に分析して政策に生かしていくかというのが大事だと思っているわけです。

 外務大臣、ちょっと話をかえてお伺いしますけれども、二〇一〇年でしたか、当時のロシアの大統領、メドベージェフ大統領が北方領土を訪問しましたね。そうしたときの情報というのはしっかりと事前に得ていたのか。

 あるいはまた、対韓外交ですけれども、朴槿恵大統領、非常に対日強硬政策を常におっしゃっています。こういったことも事前に、いわゆる朴槿恵大統領が就任する、そしてこういうふうに、本当は、私は、安倍政権ではむしろ、日韓関係というのはもっと良好に進むと期待していた節もあるんじゃないか。それが意外や意外、朴槿恵大統領のこの対日強硬路線というのは、非常に私も大変残念なことだと思うんですが、そういったときのやはり情報分析、そういったことについて、どう外務大臣は受けとめられておりますか。

岸田国務大臣 まず、ロシアのメドベージェフ前大統領ですが、平成二十二年十一月には大統領として、また、平成二十四年七月には首相として、北方領土を訪問されておられます。

 具体的な詳細については控えさせていただきますが、前政権におきましても、さまざまな情報に接していたと承知しておりますし、情報収集に努めておられたと承知をしております。

 そして、韓国の朴槿恵大統領の方針でありますが、朴槿恵大統領は、例えば就任前の選挙期間中、竹島問題と慰安婦問題が日韓関係を阻害しているとしつつも、日本は韓国の重要な友人であるとし、日韓間の協力は大変重要であるといった発言をしていたということも承知をしております。

 ただ、朴槿恵大統領は、日本は重要な隣国であるとの立場も表明しつつも、いまださまざまな機会に、慰安婦問題、あるいは歴史認識を初めとした過去の問題について我が国の立場と相入れない発言をしていること、このことについては大変残念に思っております。

藤井(孝)委員 私は今の質問で何を申し上げたいかといいますと、先ほど申し上げたように、いかに的確な情報を収集して分析して、どう対応するか、これが今度のNSCを設置するに当たって大事なことだと思っているわけであります。

 というのは、例えばアメリカ一つとっても、情報機関というのは、中央情報局、国防情報局、あるいは国家安全保障局とか、いろいろさまざま十七機関の情報機関がある。また、ロシア、中国、あるいはイギリス、フランス、ドイツも、確固たる情報機関を持っているんです。

 NSCは、たしか情報を収集、分析して政策立案ということでありますが、情報収集機関じゃないですね。私は、さきの国会でも申し上げたんですけれども、やはり情報収集と、そしてそれに対する分析と、いわゆる政策立案機能は、車の両輪だと思っているんですよ。ですから、本当は、良質な情報、的確な情報がなければ、日本版NSCは本当の意味では機能しない。

 だからこそ、いわゆる今度のNSC、当面の間NSCでスタートするわけでありますけれども、現在の内閣情報室も二百人規模でありますけれども、そういったところの連携も必要でありますし、当然、将来的には、日本版のCIAではありませんけれども、やはりいわゆる情報収集機関、情報機関というのが必要ではないかと私は思いますけれども、総理は、このことについてどう思われますか。

安倍内閣総理大臣 委員が御指摘になったように、NSCは、もちろん、情報機関、情報を収集する機関ではなくて政策の機関でありまして、発注側でありまして、それを受ける受け手が情報を収集する、あるいは収集した情報を分析して、これをNSCに持ってくる、こういうことになるわけでありますが、その意味においても、情報収集、そして分析能力の強化は、NSCを生かしていく上においても必要不可欠であろう、このように思います。

 現在、政府としては、情報コミュニティー内における研修や人事交流を推進するとともに、民間からも専門的な分析能力を有する人材を得るなど、人的な面での情報機能の強化に努めているわけでございまして、今後とも、政府全体の情報収集・分析能力の向上を図っていく考えであります。

藤井(孝)委員 今、総理が答弁の中で大変重要なことをおっしゃった。というのは、民間からも、非常に、外国との人脈を持ち、それから情報収集能力を持っている人がいる。こういう人たちをしっかりと登用することによって、いわゆるウサギの耳、いわゆるタカの目のような、そうした情報機関が将来的には必要だと、私はあえて申し上げておきたいと思っております。

 時間が大分なくなってまいりましたけれども、幾つも質問したいことがありますが、先ほど民主党の大島委員の質問にもありましたけれども、今度修正案が出て、いわゆる情報の提出を義務化する、はっきりとうたうこと、我が党もそれには賛成であります。

 しかし、義務化だけで済む問題ではなくて、むしろこれからは、NSCに登用する、そして、その登用される官僚、あるいは民間人も含めてでありますけれども、やはりその人たちの意識改革が私は必要だと思うんですね。要するに、とにかく、自分たちはこの国家に貢献しているんだ、そういう意識改革、そういったことに対しましては、やはり情報の研修機関だとか、その研修機関によってスタッフを育てるとか、チームとしての表彰制度をつくったり、幹部登用、あるいはまた、去ってもまた再びNSCに戻ってくるような、そういった制度を通じて意識を高めるということが必要だと私は思うわけです。

 そういった意味で、義務化して、義務化を法律に明文化しても、私は、やはりしっかりとした情報を集める、そして、そのための研修制度、育成する、そういった制度設計が必要だと思っております。

 ですから、逆に言いますと、情報を上げなきゃいけないというけれども、不都合な情報も上げるべきだと思うんですよ。都合のいいことばかり上げているんじゃなくて、不都合な情報を上げなきゃいけない。こういったこともしっかりと私は明記すべきだと思っているわけであります。

 そういったことで、私は、意識改革というのが必要だということについて、総理、もし何か御感想があれば、お答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、政策部門と情報部門が、これは分かれております。政策部門と情報部門が一体化しますと、政策を進めていく側に情報収集部門が引っ張られるという危険性がありますから、いい情報しか上げない。しっかりとこれを機能として分けておりますので、政策的に、こういう政策を進めていく上において必要な情報というのを収集するように発注して、そしてさまざまな情報を集めてきて、それを分析した上で上げていくということではないか、このように思うわけであります。

 今後、国家安全保障会議をしっかりと機能させていく上において、今議員が御指摘になったように、しっかりと士気を高めていく。そのために必要なことは何かということは我々もしっかりと検討しながら、今後、士気を高めた、しっかりとNSCの求められる機能を果たしていくことができるような、そういう組織にしていきたい、このように思っているところでございます。

藤井(孝)委員 私は最後に、これは質問ではありませんけれども、日本はやはり再生をしていかなければいけない。これは安倍政権で既にうたっていることであります。それは、ただ単にアベノミクスだけではなくて、やはり私は、いろいろな別な視点からこの日本を再生しなきゃいけない。それは、日本の外交そして防衛、そういったものの中長期的な国家像というのをしっかりとつくっていかなきゃいけない。いわゆる米国の庇護のもとに依存心だけが残っているような状況ではだめだ。やはり、自立的で誇りある国家をつくっていかなければならないと思います。

 そういう意味では、中国の、今台頭しているパワーというものをしっかりと踏まえながら、私は、日本版NSCのあり方をしっかりと考えていかなきゃいけない。と同時に、先ほども、何度も申し上げておりますけれども、やはり情報機関というのは、将来的には私は設置するべきだと思っております。

 そしてまた、日本に今欠けていることがもう一つあります。それはやはり、日本の宣伝、広報、ロビー活動。ロビー活動が非常に私は不足していると思います。慰安婦問題につきましても、日本のロビー活動についてはもっともっと、私は、総理、積極的にやはり進めていくべきだというふうに思っております。

 いずれにしても、日本という国がこれからも本当に自立して、そして誇りある国家、それはいろいろな意味での、やはりこのアジアにおける日本人の誇り、そして文化、歴史、堂々たる国家の歴史を持った我が国でありますから、こうしたNSCの問題も、ただ単にそういった機関をつくるということじゃなくて、それがアジア地域の安定につながるように私は持っていくべきだということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

額賀委員長 次に、畠中光成君。

畠中委員 みんなの党の畠中光成です。

 我が党のアジェンダでも、戦略的な外交と的確な政策オプションを提示する体制を整える日本版NSCの創設をうたってまいりました。外交、安全保障の頭脳がないと言われてきた我が国において、リーダーが間違いのない判断を行うための仕組みはとても大切です。

 しかし、国家安全保障会議創設に当たりまして、安倍総理に申し上げておきたいことがあります。

 敵を知りおのれを知れば百戦危うからず、孫子の兵法にもある有名な言葉です。我が国を取り巻く環境が厳しいのは、まさにそのとおりでありますが、私は、敵を知るその前に、NSC創設に当たっては、まずおのれを知ることがとても大切ではないかと考えております。

 先行している各国のNSCでも、制度面では割り切れない、それぞれの文化に根差したところに本質があるのだろうと考えておりますが、そこで、安倍総理にお伺いします。

 我が国の政治文化あるいは官僚文化の強みは何で、あるいは弱みは何で、そのために我が国のNSCで気をつけておかなくてはいけないことは一体何だとお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 なかなか難しい質問でございますが、我が国には、政治家と行政官が国家のためにともに行動し、困難な課題に立ち向かって結果を出してきたという強みもあった、このように思います。一方、過去には、国家的な危機に際して、政治家も行政官も決断できずに課題を先送りしてきたということもあったんだろう、このように思います。

 こうしたことを打破するためにも、政治が基本的に強力なリーダーシップを発揮して、行政官がその専門性を存分に発揮できる仕組みを、環境をつくることが重要であろう、こう思うわけであります。

 つまり、行政官においては専門性を、そして、国民から選ばれた政治家は、その責任のもとに、そしてその権限のもとに判断をしていく、そして、その判断材料はしっかりと行政官が集めてくる、そして、ともにそうした危機を乗り越えていくことが大切ではないか、そういう観点で、今回も、NSCを創設するということになった次第であります。

畠中委員 今、総理が行政官ということをおっしゃいました。

 確かに、我が国の行政官、官僚は優秀な方が大変多いわけでありますが、私も、この官僚主導という我が国の形が、我が国の強みでもあって、あるいは一方で弱みでもあるのではないかと思います。

 官僚の皆さんは、大変処理能力が高い。NSCは特に頭脳ですから、そこにおいても活躍が期待できる方というのは、官僚の皆さんの中にもたくさんおられることかと思います。

 しかし、どうしても縦割りになってしまうということ、それによってどうしても縄張り争いが起きてしまうということ。局長が誰になるかという問題も、何省出身かという問題が注目されてしまう、事務局、スタッフの構成も、何省が多いかということが注目されてしまう。こういった官僚主導の文化を変えていかなくてはいけないのではないでしょうか。

 この委員会で何度か登場いたしました「失敗の本質」、これは、第二次大戦前後の日本の主要な失敗策を通じて日本軍の失敗の原因を追求したものでありますが、その中で、本来合理的であるはずの官僚主義の中に人的ネットワークを基盤とする集団主義を混在させていたといった趣旨の内容があります。

 NSCは、人事制度を特別につくってもいいんじゃないでしょうか。抜てき人事があってもいいんじゃないでしょうか。NSCの予備軍は、官民合同で仕事をやって訓練するのでもいいのではないでしょうか。私は、NSCは公務員制度改革の第一歩でもあると考えますし、我が国の官僚主義をどう考えるかということが孫子の言うおのれの部分になると思います。

 そこで、安倍総理は、我が国の官僚組織をどう見ておられるか、改めてお伺いしたい。

 第一次安倍政権の際、総理は、現在の渡辺喜美みんなの党代表を公務員制度改革担当大臣に任命されました。今から考えても大変な御英断であったと思います。

 昨日閣議決定された公務員制度改革推進法案では、内閣人事局の創設が盛り込まれています。しかしながら、一方では、人事院や総務省などの権限も残されていて、このままでは人事一元化がかけ声のみで終わるのではないかという懸念も覚えます。

 かつて、みんなの党は、野党時代の自民党と公務員制度改革推進法案を一緒に提出しました。この法案には、天下り禁止や幹部公務員人事の抜本的な見直しはもちろん、民間や若手官僚から優秀な人材の抜てきを可能とする制度づくりが盛り込まれています。NSCでも特別な人事制度をつくれば、公務員制度改革のすぐれたモデルケースにもなり得ると思います。

 総理、NSCをきっかけに公務員制度改革をさらに一歩進めていくお考えはありませんでしょうか。総理の公務員制度改革に関する現状認識や、問題点と、公務員制度改革に向けた御決意をお伺いします。

安倍内閣総理大臣 第一次安倍政権において、渡辺喜美議員を公務員制度改革の担当大臣に任命したわけでありますが、何といっても、それは渡辺大臣の突破力に期待をしたところであります。

 当時の渡辺大臣は期待に応えていただいたと思うわけでありますが、同時に、今回私どもが提出をした公務員制度改革法案は、これは、今委員がおっしゃったように、公務員の皆さんがプライドとやる気を持って、その才能を生かしていけるようにするものであります。つまり、かつてのように、これは能力に関係なく年功序列的な人事を排して、しっかりと能力本位の人事を可能にしていくわけでございますし、そして、官邸がしっかりと指導力を持って政策を前に進めていくことができる、各省庁に対してしっかりと指示を行っていく、そういういわば求心力を得るという意味においても有意義だろう、私はこんなように思うわけであります。

 公務員制度改革について、さまざまな御意見があることは承知をしておりますが、政府としては、現時点では、昨日提出した法案が政府として一貫した人材戦略を進めていく上で最善のものである、こう考えておりまして、できる限り早期に成立をさせたい。御党の御支持をいただければ大変幸いだ、このように思っております。

畠中委員 では、別の角度からお伺いします。

 外交、安全保障における我が国の身の丈は一体どの程度が望ましいとお考えでしょうか。

 米国が二正面を戦えなくなってきて、中東情勢が我が国にも極めて重大な影響を及ぼす、アルジェリアの事件のような事案もある。本日朝に山西省の共産党委員会前で爆弾テロがあったのではないかという報道もありましたから、もちろん、中国あるいは北朝鮮という我が国の周辺のことは極めて大切であります。インテリジェンスに同盟国なしと言われますから、同盟国や友好国の分析も必要かと思います。

 世界は、国家対国家から、非国家主体との戦いの様相も呈してきています。シーレーンも大事、宇宙やサイバーもある。こういった地理的概念でくくれないような広い問題もふえてきています。しかし、全部知って分析したいのはやまやまなんですが、NSC創設に当たって、我が国の外交、安全保障における身の丈を考えるということが、私は極めて重要だと思っています。

 私が先日の委員会で国家安全保障局の構成を官房長官に問いましたところ、日米関係とか、アジア太平洋地域とか、中東・アフリカ地域だとかといったことを考えている旨の回答をいただきました。私は、結構広い範囲をやるんだなという印象を持ちました。先ほど申し上げました「失敗の本質」の中にも、作戦目的が曖昧で多義性を持っていたことというのがありまして、過去の失敗にもあった、要は我が国のグランドデザインの欠如というものに警告を発していました。

 総理にお伺いいたします。

 NSCでは、世界の全部を分析するのか、ある程度特化して取り組むのか、我が国のNSCの身の丈について、どれぐらいが適当で、何に注力すべきかということを教えてください。

安倍内閣総理大臣 何が大事で、何が大事でないかということをすぱっと切るわけにはいかないわけでありますが、もちろん、北東アジアあるいはアジア太平洋地域というのは、日本にとって死活的に重要ではあります。

 他方、日本はエネルギー資源がないわけでありますから、中東地域の分析は常にやっておかなければいけない。同時に、中東地域の分析を行い、そして対応していくためにも、日米同盟というのは必要であります。同時にまた、ヨーロッパのNATOとの関係を緊密にしていくことによって、日本の情報の収集力、あるいは安全保障についての連携を強めていくことによって、日本の安全はさらに向上していくんだろうと私は考えているわけでございます。

 どこで切るということではなくて、むしろ、グローバル化が進んでいる中において、まさに周囲を俯瞰する、こういう目を持っていく必要が私はあるのではないかという意味においては、NSCは、世界全体を見ながら、その中において情報をしっかりと収集しながら分析を行い、取捨選択をしながら政策を立案していくことが求められているんだろう、このように思います。

畠中委員 これは我が国の情報収集力とも関係すると思います。もちろん、他国との情報共有を行うことによって、できること、できないことというのは当然我が国の中にもあるのだろうと思いますが、私が申し上げたいのは、国際社会の中で我が国のNSCの価値を高めていくためにも、我が国のNSCの強みというのをしっかりと持っておく必要があるのではないかということを申し上げたいんです。

 もちろん、ここでは申し上げられないようなこともあるというのは重々承知いたしますが、ばくっと世界全体というのではなくて、しっかりと我が国のグランドビジョンを持って、ここに注力をしていくんだ、これが我が国のNSCの強みなんだ、そのために何が必要で、何からやっていくかという優先順位というのをつけていくということが私は大事なのではないかと思います。

 こういった身の丈を考えた上で、国家安全保障局の構成なども考えていかなくちゃいけないと思うんですが、しかしながら、先ほども申し上げたように、残念なことに、もはや縄張り争いの様相を呈しているような気がしてなりません。防衛省出身者はこの班、外務省出身者はこの班、警察庁の出身者はこの班という国家安全保障局では、縦割りそのものではないでしょうか。(発言する者あり)まだ決まっていないという声もありますけれども、だからこそ、総理のリーダーシップをぜひともお願いしたいと思います。

 さて、国家安全保障局の運用には、当面、安倍総理の意思が大きく反映することかと思います。局長の人事もしかりです。政権交代で鳩山さんは東アジア共同体、こういうことをおっしゃいました。

 私がお聞きしたいのは、政権がかわったときに、この安全保障政策を、どこまでの変更が許されるのかということを、創設時の総理大臣として、あらかじめここで申し上げておいていただきたいと思うんですが、この件について、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 時間がございませんので、簡単にお答えをさせていただきますと、今、安倍政権として、国家安全保障戦略を取りまとめているわけであります。まさに、この国家安全保障戦略が基本的な考え方になっていくということでございます。

畠中委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございます。

額賀委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 国家安全保障会議設置法案について、総理に質問をいたします。

 法案は、アメリカやイギリスに倣って、日本版の国家安全保障会議、NSCをつくるものです。NSCでアメリカなどと機密情報を共有する、こう言っておられます。なぜアメリカと情報の共有なのか。

 イラク戦争を思い出していただきたいと思います。当時、アメリカは、機密情報と称して、存在しない大量破壊兵器の脅威を言い募り、国際法違反のイラク戦争に踏み切りました。国際社会の圧倒的多数が反対する中で、日本政府は、アメリカの情報をうのみにして開戦を支持し、自衛隊を派遣したのであります。

 総理は、当時の自民党政府の責任をどのように検証しておられるのですか。

安倍内閣総理大臣 二〇〇三年のイラク戦争に関する我が国の対応については、民主党政権下において外務省が検証を行い、昨年十二月にその結果を発表したところであります。

 我が国が武力行使を支持するに至った当時、査察への協力を通じて大量破壊兵器の廃棄をみずから証明する立場にあったイラクが、査察受け入れを求める累次の安保理決議に違反をし続け、大量破壊兵器が存在しないことをみずから証明しなかったことが問題の核心だったというふうに考えるわけであります。

 また、イラクは、かつて、化学兵器を所有し、そして自国民であるクルド族に対してそれを使用した、そういう過去があったわけでございまして、そして、彼らは、それがないということを証明できるにもかかわらず、それをしなかったということでございます。

 他方、今委員が御指摘になったように、事後的に言えば、イラクの大量破壊兵器が確認できなかったとの事実については厳粛に受けとめる必要がある、こう考えているわけでありまして、こうした認識も踏まえながら、引き続き情報収集や分析能力の強化に取り組んでいきたいと考えております。

赤嶺委員 イラクが大量破壊兵器の存在を証明できなかったからといいますが、国連の査察はあとしばらく待ってくれというようなことを言っておられたわけですね。

 その後、アメリカのブッシュ大統領は、情報の誤りとみずからの責任を認めました。小泉内閣で官房副長官補を務めた柳澤協二氏は、先日の参考人質疑で、この場で誤りを認めました。総理は、まず過去の過ちに正面から向き合うべきであります。

 この情報の誤りというのは、たまたま起こったものではありません。

 二〇〇一年、九・一一テロの翌日、当時のラムズフェルド国防長官は、イラク攻撃を開始する絶好の機会だ、こう述べました。その後、アメリカのNSCを中心とした、開戦のための情報集めが始まったのであります。

 当時、CIAでイラク問題を担当したジョン・ピラー氏は、次のように述べております。

 当時、ホワイトハウスでの会議にも出ていましたが、そこでひたすら求められるのは、イラクと戦争するための口実づくりです。裏づけの資料が事実や調査に基づく信頼性のあるものか、他の情報源から裏づけをとっているか、そういうことは重要ではありませんでした。大事なのは、国民に危機感を持たせることです。このように述べております。

 その結果、どうだったのか。当時のパウエル国務長官は、開戦前、国連で、移動式の生物化学兵器製造施設を証拠として大々的に示しました。しかし、その後明らかになったのは、これが、ある亡命イラク人によってもたらされ、全く根拠のない情報であることを知りながら示していたということであります。

 情報が誤っていたのではなく、戦争のためにうその情報がつくられた、それがイラク戦争であったのではありませんか。

安倍内閣総理大臣 それは見解の相違でございまして、先ほど申し上げましたように、かつて、イラクは、そしてフセイン政権は、化学兵器を所有して、そして自国民であるクルド人に対してそれを使用して、たくさんの無辜の人々を殺害したという過去があったわけでございまして、その中において累次の国連決議に違反をし続けたということでありまして、そして、さらに、先ほど申し上げましたように、みずから化学兵器がないことを証明することができたにもかかわらず、それをしなかったということであった、こういうことでございます。

赤嶺委員 大量破壊兵器が存在するという誤った情報で危機をあおって、そしてイラクの無辜の民をあれだけ殺害したという、国際社会は、そういうアメリカの行為に協力した日本に、もっと反省をすべきだということを求めております。

 本当に、安倍総理の今の答弁は、戦争で亡くなった人たちの命のことを全く考えていない。戦争というのはイラク戦争だけではありません。満州事変やトンキン湾事件、時の政権が情報を操作し、国民を戦争に駆り立てた歴史、これは絶対に忘れてはならないものです。機密情報に依拠し、国の進路を誤らせるようなことは絶対にあってはならないということであります。

 しかも、国際社会では、アメリカの盗聴問題が大問題になっております。国際法も無視して、同盟国に対してさえこのような活動を行っている国と、NSC同士で何で情報を共有しなければいけないんですか。

安倍内閣総理大臣 情報を共有することは、我が国の安全にとって極めて有意義である、このように考えております。

赤嶺委員 終わります。

額賀委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーです。

 本法案については、本日が最後の質疑日程となりましたが、まだまだ慎重かつ重層的な審議が不十分であることを念頭に、本改正法案についての総括を踏まえ、安倍政権の安全保障に対する政策についてただしたいと思います。

 総理を中心に、平素から機動的、定例的に議論し、外交防衛政策の司令塔として新設する、総理、官房長官、防衛大臣、外務大臣の四大臣会合について、まず伺いたいと思います。

 これまで、事前による判断などの文民統制機能を果たしてきたいわゆる九大臣会合は、今後もこの国家安全保障会議においても継続設置するとしているものの、省庁間の調整等に時間をかけず、情報の一元化のもとに迅速に、機動的に方針を決めていくための会議という四大臣会合は、どのような情報をもとに、何について、どのような判断で話し合われているのか、国会から全く見えない、わからないうちに、少数の閣僚の意見によって判断させられてしまうことが、総理のこれまでの答弁からも容易に想像されます。

 決める政治という言葉の意味する正体が、実は、官邸への権力の集中と、四大臣会合で決定したことを追認するような、閣議決定の形骸化ともなるのではないかという懸念すら否定できないものがあります。

 簡潔に、総理の見解を伺います。

安倍内閣総理大臣 そこは見解が全く違うところでございまして、では今、現状がどうかということでありますが、四大臣でいわば現下のこの安全保障環境について議論をする、そして現状認識を共有していくということは極めて重要でございますし、これは、単に四大臣が集まるのではなくて、事務局があって、しっかりと、地域の情勢等について集まった情報を分析されたものについて、それを政策的に選択肢をつくっていく、あるいは、どのように変化をしていくかということについてのさまざまなシミュレーションを行っている。そして、そうしたものをもとに、四大臣が常に現状を認識しながら議論をしていくということでありまして、何か事が起こったときに対応していくためには極めて有意義であるわけであります。

 そして、この四大臣、あるいは九大臣会合もございますが、基本的には四大臣でそうした意思疎通を図りながら、物事を決めていく際には九大臣会合もあるわけでありますが、いずれにせよ、この事務局があって、しっかりと専門性を持った人たちがさまざまな政策的な選択肢を議論しながら用意をしていくということが恒常的に行われていくということは大きな違いになるわけでありますから、四大臣が集まって、そこで知識のないままに、情報のないままに物事を決めていくということとは全く逆になっていくということではないか、このように思います。

玉城委員 さて、この十月にインドネシアで行われたAPECでの首脳宣言では、東アジア地域における日本のイニシアチブがさまざまな分野において確実な議論の成果を見せ、東アジア地域における経済連携、食料安全保障、生物多様性分野などなど、広範で多角的な成長への着実なステップの成果も見られたと思います。

 国内企業も多くが東アジアで経済活動を展開していることから、平和的、人道的な日本からの経済連携が、各国への積極的な支援と相まって奏功するであろうことなどから、日本の経済成長の鍵が、今後はアジアから大きく西へ西へと広がっていくことに対する期待も膨らんでいくことが推察できます。

 他方、日本版NSC法案の内実は、これまでの委員会答弁からうかがい知れるとおり、最大の同盟国である米国との情報共有による安全保障における政策判断と実効性を担保させようとうかがうものであり、そのための総理への権限集中や情報の一元化などを一層強化しようとするものではないですか。

 この件について見解をお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 情報の共有については、当然、同盟国である米国との情報の共有、あるいは、米国のNSCの安全保障担当の補佐官と日本側のNSCの事務局長との日常における情報の交換あるいは意思の疎通によって、さらに同盟関係は緊密なものになっていくと思いますが、これは、日米関係だけではなくて、あるいはイギリスであったり豪州であったりとか、そうしたNSCを持つ国々との、これはいわば、韓国もそうでありますが、そうした情報の交換あるいは意思の疎通はより緊密化していくんだろう、そのことによって、日本の安全を守っていく上においての政策立案はより緻密なものになっていく、このように思います。

玉城委員 私は、APECにおけるさまざまな会合の成果というものが、実は、アジアの、日本における立ち位置というものをもっと明確に、期待を大きくさせていくものだと思うんですね。

 その一方で、どちらかというと米国寄りの情報を収集し、米国版のNSCと対抗するかのようなカウンターパートとしての日本版NSCというものについては、アジアの国々からも懸念が上がるのではないかということを、このAPECの成果を前提にしてその懸念を申し上げているということをぜひお酌み取りいただきたいと思います。

 さて、先日の参考人招致の意見陳述で、官邸に五年近く危機管理監として勤められた柳澤参考人が言われたことで、大変印象に残っていることがあります。それは、情報の正確性への疑問を常に持つことということですね。情報は一〇〇%正確ではない、だからこそ、その情報もしっかりと裏をとるということだと思います。そして、NSCの決定に至る前の、必要な抑止力の分析も含めた、日本の防衛、外交の全体像をしっかり出して、くれぐれも無駄な戦争をしないこと、そこに最大の任務を負っていただきたいという、大変、経験から見た重い発言があったというふうに受けとめております。

 これこそが、権力の集中や迅速性、機動性に対する、最大限の注意を払うべき提言であると受けとめなければならないと思います。そのことについて、総理、見解をお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 情報については常に疑いを持ってかかる、それは柳澤さんの言うとおりなんでしょうけれども、その先が間違っているんですね。

 今でも情報収集は行っているんですよ、ずっと、旧来からですね。しかし、それについても我々は疑いを持っておりますが、より情報の密度を上げていく上においては、海外の情報機関との、いわばインテリジェンスコミュニティーの中における情報のいわば日本に対する提供をさらにふやしていく、その密度と質を上げていくということも必要でしょうし、同時に、NSCにおいて、情報機関がとった情報あるいは分析をした分析が果たして妥当かどうかということも、当然そこで議論が行われるわけでございまして、より情報の分析能力が上がっていくことにもつながっていくわけでありますし、そして、その先にある政策的選択肢をつくっていくということも、ここでしっかりと英知を結集して行われていくことによって、国としてとる進路を間違う可能性は、そのリスクはより減少していく、このように考えております。

玉城委員 最後に……

額賀委員長 質疑時間は終了しました。

玉城委員 はい。

 柳澤参考人の名誉のために話しておきたいと思いますが、NSCの名前や制度がなかろうとも、危機管理や外交政策、安全保障政策という仕事は内閣としてしっかりやっていた、情報交換も行っていたということは、これを前提にしての話ですから、その辺も踏まえて、しっかりと、前のめりにならないようにお願いしたいと思います。

 ありがとうございました。

額賀委員長 これにて原案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。

 内閣総理大臣は御退席いただいて結構であります。

    ―――――――――――――

額賀委員長 この際、お諮りをいたします。

 去る一日、渡辺周君外二名から提出されました修正案について、提出者全員から撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

額賀委員長 御異議なしと認めます。よって、撤回を許可するに決しました。

    ―――――――――――――

額賀委員長 この際、本案に対し、岩屋毅君外七名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会及び公明党の四派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。岩屋毅君。

    ―――――――――――――

 安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岩屋委員 ただいま議題となりました安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、諮問事項についてであります。

 国家安全保障会議に諮ることとされている事項のうち、武力攻撃事態等及び周辺事態への対処、自衛隊の活動、国防並びに重大緊急事態への対処に関する重要事項は、内閣総理大臣が必要と認めるものについて会議に諮らなければならないこととしております。

 次に、資料提供等の協力義務の明確化についてであります。

 内閣官房長官及び関係行政機関の長は、議長の求めに応じて、会議に対し、国家安全保障に関する資料または情報の提供及び説明その他必要な協力を行わなければならないこととしております。

 以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

額賀委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

額賀委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。薗浦健太郎君。

薗浦委員 自由民主党の薗浦健太郎でございます。

 私は、ただいま議題となりました安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案に賛成する立場で討論を行います。

 第一の理由は、我が国の安全保障環境が一層厳しさを増していることです。

 現在の環境を振り返れば、北朝鮮による核、弾道ミサイル開発の脅威、中国の透明性を欠いた軍事力の増強など、懸念事項が数多く存在いたします。

 総理を中心とする関係閣僚が国家安全保障政策を機動的、戦略的に進めていく必要があり、国家安全保障会議、その中でも四大臣会合は、このような政治のリーダーシップを発揮するに欠かせません。また、平時とも有事とも明確に区別をできないいわゆるグレーゾーンの事態に対しては、慎重かつ高度な政治的判断をもって警察機関が連携をして対処していく必要があり、したがって、緊急事態大臣会合もいち早く設置する必要があります。

 第二の理由は、こうした会議を支える体制の整備であります。

 会議を支える機関として、国家安全保障局を設置することとしております。内閣官房の総合調整機能を用い、国家的な観点で戦略的に政策を立案する組織が誕生することは、画期的なことであります。

 本委員会の審議の過程で、危機管理担当部局との連携、省庁などからの情報提供の確保といった問題が提起されました。

 危機管理に関しては、従来の内閣危機管理監を中心とする対処体制を維持し、国家安全保障局長と緊密に連携をすること、また、情報に関しては、政策と情報の分離の原則に配意しつつ、法律上、各省庁に情報を提供する義務を課すことなど、懸念事項について制度面での担保がなされることが明らかとなりました。内閣において、指摘を十分に踏まえ、運営していただけるものと確信をしております。

 本法案につきましては、二十時間を超える審議が行われました。我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜く、また、国民の生命及び財産を守るという政府の重要な責務を果たす観点から、本法律案を一刻も早く成立させる必要があることを強調し、私の賛成討論といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

額賀委員長 次に、大島敦君。

大島(敦)委員 私は、民主党を代表して、ただいま議題となりました政府提出の安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案及び民主党、自由民主党、公明党、日本維新の会提出の安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案に対する修正案に対し、賛成の立場から討論を行います。

 民主党はかねてより、国際情勢の変化に対応して、外交・安全保障分野において、縦割り行政の壁を越えて情報を一体的に集約、分析し、総合的な外交・安全保障戦略を策定するために、官邸を中心に体制を整えるべきであると提起してきました。

 こうした基本認識から政府案を検討すると、少なくとも次のような課題があります。

 第一に、関係行政機関の長等に対し資料提供等の要求の規定について、会議の構成員である特定の省庁の大臣が資料の提供を拒めば、会議は必要な情報を入手できなくなる可能性があります。

 第二に、国防等に関する重要事項は、全て会議に諮らなければならないと解釈できる規定になっています。これでは、諮問事項が必要以上にふえ、内閣総理大臣や防衛大臣の判断権を縛るおそれがあります。

 修正案では、第一の点について、内閣官房長官及び関係行政機関の長は、議長の求めに応じて、会議に対し、資料提供等の協力を行わなければならないこととし、各行政機関の協力義務を明確にしました。

 第二の点については、修正案においては、国防等に関する重要事項は、従前どおり、内閣総理大臣が必要と認めるものについて会議に諮らなければならないことといたしました。

 さらに、政府案の修正部分以外について、第一に、国家安全保障会議において、議事録の作成を義務づけるべきと主張しました。これは、会議における責任ある真剣な議論を図るとともに、歴史の検証に付し、我が国の安全保障政策に関する知恵を集積することにもなるものです。

 第二に、指揮命令系統を整理し、外交・安全保障戦略と危機管理の双方を機動的に機能させることができるように、組織のあり方について、さらに総合的に検討すべきであると提案しました。

 これらの点に関しては、政府において今後さらなる検討を進めるように、附帯決議に示すこととなりました。

 以上、述べた理由に基づき、政府が総合的に外交・安全保障政策に取り組む体制を整えるべきとの観点に立ち、民主党は、政府案及び修正案に対して賛成する次第であります。

 以上。どうもありがとうございました。(拍手)

額賀委員長 次に、今村洋史君。

今村(洋)委員 日本維新の会の今村です。

 私は、日本維新の会を代表して、ただいま議題となりました内閣提出の原案及び修正案について、賛成の立場から討論いたします。

 我が国を取り巻く情勢が厳しさを増す中、国の平和と独立を確保し、国民の生命と財産を守ることは、国家として重要な責務であります。その責務を果たすために、外交・安全保障体制の強化はなし遂げなければなりません。その課題であることに異論はないものと思います。

 本法案は、外交・安全保障体制を大局的、戦略的に審議する場として、安全保障会議の名称を国家安全保障会議に改め、その他、国家安全保障に関する諸問題につき、政治の強力なリーダーシップを発揮できる環境を整えることを目的としています。

 国家安全保障会議を恒常的にサポートする国家安全保障局と国家安全保障局長、また、総理スタッフとして総理を直接補佐する国家安全保障担当補佐官などを創設し、議院内閣制をとる日本でも、大統領的に官邸の司令塔機能が発揮される体制が整えられています。また、国家安全保障会議の形態にも新たに緊急事態大臣会合を設置するなど、緊急事態対応にも配慮した内容となっています。

 修正案では、諮問事項を「必要と認めるもの」の文言付加、資料提供等の協力義務の明確化などが明記され、法の目的により沿ったものとなりました。

 今日までの議論を踏まえれば、国家安全保障局の情報収集機能の担保に若干の不安が残りますが、国家の安全保障に資する機構であることは明らかです。本法案に含まれる各改正の内容は速やかに審議を行い、迅速な成立を図るべきであります。

 最後に、我が党の藤井孝男委員が強調いたしましたように、我が国には、国家安全保障会議とともに情報機関の強化が別途必要であることを再度つけ加えておきます。

 以上、安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案について賛成することを表明して、日本維新の会を代表して、私の賛成討論といたします。(拍手)

額賀委員長 次に、畠中光成君。

畠中委員 みんなの党の畠中光成です。

 私は、本日の議題である安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案及び修正案の採決に当たり、みんなの党を代表して、賛成の立場から討論をさせていただきます。

 第一に、我が国の平和と独立を確保し、国民の生命及び財産を守ることは、政府の重要な責務の一つであり、その責務を果たすためには、正確かつ総合的な情勢判断に基づき、時代の変化に迅速かつ的確に対応した国家安全保障に関する政策を展開することが不可欠です。

 我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している中、国家安全保障の基本方針や対応について、内閣総理大臣を中心に、日常的に綿密な議論を行う場を創設することが必要です。

 また、国内外に対して、外交、安全保障の基本政策を示すことで、国際社会における我が国の立ち位置を明確にすることも重要です。

 本法案によって創設される国家安全保障会議は、我が国の頭脳として、これらの課題に対応し、外交・安全保障政策にイノベーションを起こすことが期待されます。

 第二に、従前、我が国の安全保障政策の司令塔であった安全保障会議は、ともすれば形骸化している等の批判を受けていたところですが、本法案においては、総理大臣を議長として開催される四大臣会合において、武力攻撃事態等の緊急に対処が必要な事態などの緊急的な会合が可能となり、政治の強力なリーダーシップの発揮が期待されるものです。

 第三に、国家安全保障会議には、外務省や防衛省などの職員や、研究者などの民間人といった、官民、省庁の垣根を越えた有能な人材が集い、省益にとらわれることなく、オール・ジャパンの精神で職務に精励されることとなると確信しています。このことにより、霞が関の縦割り意識の打破につながり、真の意味での公務員制度改革のすぐれた先例となることが期待されます。

 なお、国家安全保障会議の運用においては、総理がかわった際などに方針のぶれが生じることのないよう、最終的な意思決定に際しては閣議を経ることとするなどの民主的統制に変更のないよう留意が必要です。

 平成十八年から国家安全保障会議の創設に取り組んできた安倍晋三内閣総理大臣の指導力により、本会議が創設後、実効的に機能することを御期待申し上げ、法案賛成の討論とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

額賀委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 私は、日本共産党を代表し、国家安全保障会議設置法案に反対の討論を行います。

 本法案は、現行の安全保障会議にかえて、日本版の国家安全保障会議、NSCを設置するものです。

 重大なことは、政府が、NSCと秘密保護法を一体とし、その上、集団的自衛権の行使までできるようにしようとしていることです。これは、内閣総理大臣のもとに国家のあらゆる情報を集約し、都合の悪い情報は国民に隠して、海外で戦争する国をつくろうとするものにほかなりません。

 政府は、新設する国家安全保障局には自衛官を積極的に登用するとし、参考人質疑では、NSCの本質は自衛権行使の判断であることが指摘をされました。まさに、戦争の司令塔づくりであり、断じて認めるわけにはいきません。

 政府は、NSCでアメリカなどと機密情報を共有すると言いますが、なぜそのような情報共有が必要なのか、まともな説明はありません。

 政府は、アメリカのうその情報をうのみにして、国際法違反のイラク戦争を支持し、自衛隊を派遣したことをいまだに反省していません。アメリカの機密情報に依拠し、国の進路を誤らせることがあってはならないのであります。

 しかも、今、アメリカの情報機関が世界規模で国際法にも違反した盗聴活動を進めていたことが国際社会で大問題になっています。このような活動を行う国と情報共有を進めるなど、到底許されません。

 政府は、安全保障環境が厳しさを増していると言いますが、大事なことは、軍事的緊張を高める行動を双方が厳しく戒め、問題の平和的、外交的解決を図る立場に徹することです。

 米中間でも、中国とASEAN諸国との間でも、意見の違いやもめごとを話し合いで解決する努力が続けられています。こうした話し合いの努力こそ、政府は共有すべきです。

 なお、自民、民主、維新、公明提出の修正案は、法案の危険性を何ら変えるものではありません。

 以上、討論を終わります。

額賀委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーです。

 私は、生活の党を代表して、政府提出の安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案及び自民党、公明党、民主党及び日本維新の会提出の修正案に対して反対の討論を行います。

 国民の安全を確保するため、首相官邸に国家安全保障会議を設置し、省庁縦割りの弊害を排し、外交・安全保障政策立案を一元的に担おうとする基本的な考え方に関しては理解できるものであります。

 しかしながら、安倍政権が進める本法案によってもたらされるのは、国民の安全ではなく、むしろ、最大の同盟国である米国との情報共有による安全保障における政策判断と実効性を担保させようとするものであり、そのための総理への権限集中、情報の一元化などを一層強化しようとするもので、そのことを急ぐ余りにさらなる緊張をあおり、東アジア地域の平和に対する点では脅威とも捉えられかねず、到底賛成できるものではありません。

 これまでの質疑で、日本版NSCの名前やまたはその制度がなかろうとも、危機管理や外交政策、安全保障政策という仕事は内閣として現実的に遂行しており、また、情報の取り扱いの是非についての仕分けに関しては、これまでも行われていたことが確認されています。

 必要なことは、情報の正確性への疑問を常に持つことと、外交・安全保障政策立案の決定に至る前の、必要な抑止力の分析も含めた日本の防衛、外交の全体像をしっかりと出し、二度と無駄な戦争をしないことに最大の任務を負うべきということであります。過去の経験に学ぶ謙虚な姿勢として重要なこの点について、まだ何も議論されていません。

 国家の安全保障全般にかかわる重要法案であるからこそ、丁寧に、時間をかけて国民の声を聞き、慎重に審議することこそが尊重されなければなりません。会期の短い臨時国会で、本法案やこの後に出されてくる特定秘密法案等の早期成立を図るために、関係閣僚が出席する常任委員会での国民の生活と直結する課題に対する質疑すら十分に進められず、前のめりになり過ぎている安倍政権の外交、安全保障に関する政策姿勢は、国民主権忘却内閣と断ぜざるを得ない状況です。

 なお、自民党、公明党、民主党及び日本維新の会提出の修正案については、情報提供の義務づけが明記されたのみであり、内容は不十分であると申し上げ、以上、反対討論といたします。

額賀委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

額賀委員長 これより採決に入ります。

 第百八十三回国会、内閣提出、安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決をいたします。

 まず、岩屋毅君外七名提出の修正案について採決をいたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

額賀委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決をいたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

額賀委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

額賀委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、中谷元君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会及び公明党の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。上田勇君。

上田委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。

 その趣旨は案文に尽きておりますので、案文を朗読いたします。

    安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。

 一 国家安全保障会議の議事について、会議の性質などを十分に勘案しつつ、その意思決定に至る過程の将来における検証等を通じて政策決定の透明性を確保するという公文書等の管理に係る制度の趣旨を踏まえ、国の安全保障を損ねない形で速やかに会議録その他の議事に関する記録の作成について検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。

 二 国家安全保障及び危機管理に関する内閣官房の組織の在り方について、国家安全保障及び危機管理に係る政策決定の機動性及び実効性の観点から不断の見直しを行うこと。

以上でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)

額賀委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決をいたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

額賀委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。菅内閣官房長官。

菅国務大臣 安全保障会議設置法等の一部を改正する法律案につきましては、本委員会において熱心な御審議をいただき、ただいま可決いただいたことに深く感謝を申し上げます。

 今後、政府においては、審議中の委員各位の御高見や、ただいまの附帯決議の趣旨を十分に尊重してまいる所存でございます。

 ここに、委員長を初め理事の皆様方、委員の皆様方の御理解、御協力に対し、深く感謝の意を表します。

 ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

額賀委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

額賀委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

額賀委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会をいたします。

    午後五時二十四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.