衆議院

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第3号 平成27年5月27日(水曜日)

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平成二十七年五月二十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 今津  寛君 理事 岩屋  毅君

   理事 江渡 聡徳君 理事 松本  純君

   理事 御法川信英君 理事 長妻  昭君

   理事 下地 幹郎君 理事 遠山 清彦君

      小田原 潔君    小野寺五典君

      大隈 和英君    大西 英男君

      大西 宏幸君    大野敬太郎君

      鬼木  誠君    勝沼 栄明君

      木原 誠二君    高村 正彦君

      國場幸之助君    笹川 博義君

      白石  徹君    武井 俊輔君

      中谷 真一君    中村 裕之君

      根本 幸典君    橋本 英教君

      原田 義昭君    平沢 勝栄君

      藤丸  敏君    星野 剛士君

      宮川 典子君    宮崎 政久君

      宮澤 博行君    武藤 貴也君

      盛山 正仁君    山口  壯君

      山田 賢司君    若宮 健嗣君

      緒方林太郎君    大串 博志君

      岡田 克也君    奥野総一郎君

      後藤 祐一君    辻元 清美君

      寺田  学君    長島 昭久君

      青柳陽一郎君    太田 和美君

      柿沢 未途君    松野 頼久君

      丸山 穂高君    伊佐 進一君

      岡本 三成君    佐藤 茂樹君

      浜地 雅一君    真山 祐一君

      赤嶺 政賢君    志位 和夫君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   外務大臣         岸田 文雄君

   国土交通大臣       太田 昭宏君

   防衛大臣

   国務大臣

   (安全保障法制担当)   中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   防衛大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    石川 博崇君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            平松 賢司君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  深山 延暁君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  真部  朗君

   衆議院調査局我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別調査室長     齋藤久爾之君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十七日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     高村 正彦君

  橋本 英教君     藤丸  敏君

  平沢 勝栄君     大西 英男君

  宮崎 政久君     中村 裕之君

  山田 賢司君     鬼木  誠君

  緒方林太郎君     岡田 克也君

  後藤 祐一君     奥野総一郎君

  太田 和美君     松野 頼久君

  丸山 穂高君     柿沢 未途君

  伊佐 進一君     真山 祐一君

  佐藤 茂樹君     岡本 三成君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     平沢 勝栄君

  鬼木  誠君     山田 賢司君

  高村 正彦君     國場幸之助君

  中村 裕之君     宮崎 政久君

  藤丸  敏君     根本 幸典君

  岡田 克也君     緒方林太郎君

  奥野総一郎君     後藤 祐一君

  柿沢 未途君     丸山 穂高君

  松野 頼久君     太田 和美君

  岡本 三成君     佐藤 茂樹君

  真山 祐一君     伊佐 進一君

同日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     木原 誠二君

  根本 幸典君     大隈 和英君

同日

 辞任         補欠選任

  大隈 和英君     橋本 英教君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七二号)

 国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案(内閣提出第七三号)


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     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 理事会の協議により、本日と明日の質疑につきましては、各会派に一巡として割り当てた時間を特例として両日にまたぐことといたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として外務省総合外交政策局長平松賢司君、防衛省運用企画局長深山延暁君、防衛省人事教育局長真部朗君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高村正彦君。

高村委員 おはようございます。

 きょうは、平和安全法制について総理の率直なお考えをお伺いしたいと思いますので、防衛大臣、外務大臣は安心して座っていていただいて結構であります。

 一九五四年に、平和を守るためには平和外交努力とともに一定の抑止力も必要だという考えの人たちが自衛隊をつくりました。それに対して、抑止力なんかを持つから戦争になるんだ、非武装中立が正しいんだ、そういう人たちもいて、国論を二分した議論になったわけであります。

 そして、その翌年、一九五五年に、非武装中立派が合同して日本社会党をつくりました。そして、その直後に、自衛隊、抑止力も必要だという人たちが自由民主党をつくって、五五年体制が始まって、その五五年体制中、一定の抑止力が必要なのか、それとも、そんなものを持つから巻き込まれるのか、戦争になるのか、そういう議論がずっと続いてきたわけであります。今の自民党の議席と社民党の議席を見れば、どちらが歴史の審判にたえ得たかということは明らかだと思いますが、それでも、今でも五五年体制のときの尻尾を持ったような議論が続いているというのは非常に残念なことだ、こういうふうに思っております。

 日米安全保障条約改定のとき、六〇年、七〇年、そしてPKOをつくるときも、外国に自衛隊を送るから戦争に巻き込まれるんだという反対がありましたが、やはり世界とともに平和である日本でなければいけない、一国平和主義ではいけないということでPKO法を成立させたわけであります。そして、周辺事態安全確保法、これも、日米同盟をもっと強くして抑止力をしっかりつくろう、こういうことをやってきた側が、歴史の審判で、それでいいんだということを言われてきた歴史である、こういうふうに思っております。

 ただ、もちろん自由民主党は、抑止力だけでやってきたわけじゃなくて、それより先に平和外交努力というのをずっと続けてきたわけであります。この法案が成立したとしても、平時の平和外交努力はもちろん、紛争が起こったときに、武力に頼る、武力の行使や威嚇でなくて、国際法に基づいた話し合いで紛争を解決していくんだ、ずっと今まで日本が戦後七十年続けていたこの平和外交努力が第一なんだ、こういう考えはお変わりないかどうか、それを総理にお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま、高村委員が、自衛隊、結党にも触れながら、今までの抑止力議論と平和との関係について大変わかりやすく御説明をいただいたと思います。

 抑止力にしろ、外交にしろ、これは紛争を未然に防ぐためのものであります。紛争を未然に防ぐために、我々は、自衛隊を堅持し、日米同盟をいわばしっかりとしたものに強化しているわけであります。いずれも、紛争を未然に防ぐ、地域の平和と安定に資するために存在していると言ってもいいと思います。

 そして、もう一つ大切なものは外交努力だろうと思います。近隣諸国との対話も含め、外交努力を展開することによって、地域の平和、また世界の平和のために貢献していきたいと考えています。そうした貢献をすることによって、我が国国民の命と幸せな暮らしを守り抜いていくことにつながっていくと思います。

 昨年、シャングリラ会合、世界の防衛大臣、防衛関係者が集まる会合におきまして、私は、法の支配を重視する立場から、主張するときには国際法にのっとって主張すべきである、そして力による威嚇や力による現状変更は行ってはならない、そして三つ目に、問題を解決する際には平和的に国際法にのっとって解決するという三原則を打ち出したところ、多くの国々から支持と賛同を得たところでございます。

 しっかりと秩序を維持していくための原則づくりにも日本として貢献していきたい、こうした外交努力、また国際社会とともに協力をし、原則を打ち立て、平和を守り、あるいは法の支配をたっとぶことによって、日本人の命、幸せな暮らしをしっかりと守っていきたい、未然に紛争を防ぐことに力を入れていきたい、このように考えております。

高村委員 紛争を未然に防ぐ。自衛権、自衛力というのはまさに伝家の宝刀でありますから。伝家の宝刀というのは、抜かないところに価値があるんだということをよく言われます。平和外交努力と、それこそ抑止力で、この伝家の宝刀を抜かないで済むように、これからもよろしくお願いをしたい、こういうふうに思います。

 それで、総理が米国の議会で、夏までには平和安全法制を採決したい、こういうことをおっしゃったことについて、これは国会軽視ではないかという議論があります。

 総理は、ずっと国内においても言ってきた持論をそのままアメリカ議会でも述べただけで、何の問題もないと私は思うんですが、この点についての総理のお考えをお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 民主主義において大切なことは何かということであります。

 大切なことは、政治家にしろ、政党にしろ、私たちは選挙において、政権を担ったときにはこういう政策を進めていくというお約束をすることであります。透明性を持って、国民に対して、こういうことをやっていくというまさに公約を示していく。マニフェストと呼ばれる場合もあります。そして、政権をとったら、その約束を実行するために全力を尽くしていくことであります。約束しなかったこと、やりませんよと言ったことは、やってはならない。これは、その後の選挙で厳しい審判が出るわけであります。我々は、責任政党としてできることしか約束しませんよ、こう言い続けてきました。

 平成二十四年の政権奪還の選挙においても、今回の平和安全法制の根幹について、こうした法整備を進めていきますよ、集団的自衛権の一部容認も進めていきますよと約束をし、その後の参議院選挙においてもそうであります。

 そして、昨年の五月十五日に安保法制懇から提言を受け、七月の一日に集団的自衛権の一部行使容認も含む閣議決定を行いました。そして、その後の昨年の総選挙において公約に掲げ、訴えてきたわけでありますが、七月の一日の閣議決定に基づいて法案を速やかに整備することを明確に公約に掲げているわけであります。

 公約に掲げた以上、その後の国会において成立を図っていくということについては、これは民主主義的な義務が私たちにはあるんだろう、このように思うわけでありますし、昨年の十二月二十四日、総選挙の結果を受けて発足した第三次安倍内閣の組閣に当たっての記者会見において、平和安全法制を通常国会において成立を図る旨申し上げているわけでございます。

 当然、既に累次にわたって国民との約束を果たしていくことについて申し上げてきたことを、さらに米国において申し上げてきたわけでありまして、何ら問題はない、このように考えております。

 大切なことは、しっかりと、やろうと思っていることは選挙において国民に説明をする、そして国民の審判を受ける、その上においては約束した政策を実行していくことであろう、このように考えます。

高村委員 平和安全法制全般、総論についてお伺いしたいと思うわけであります。

 国民の命を守り、平和な生活を守る、そのためにあらゆる事態に対応できる切れ目のない法制をつくる、これが今度の平和安全法制であります。いかなる事態にも対応できる切れ目のない法制、いかなる事態にも対応できるということも極めて大事ですが、そういうことをつくっておくことによって日米同盟も強化されるし、そして、先ほどから総理がおっしゃっている、紛争を未然に防ぐことができる、この抑止力がまた極めて大事だ、こう思うわけであります。

 野党の中には、切れ目があったっていいじゃないか、切れ目があって何か起こって、必要であれば特措法をつくればいいじゃないか、こういうことを言う人もいますが、やはり泥棒を見て縄をなうより備えあれば憂いなしで、しっかり事前に備えておいた方が迅速に対応もできますし、事前に訓練もできる。自衛隊員の安全性も、訓練ができるから高まるわけであります。

 また、仕事がふえるから、自衛隊員の活動がふえるからリスクがふえるんじゃないかという意見があります。あらゆる自衛隊の活動にはリスクを伴います。伴いますが、そのリスクが度を越えたものであれば野党の皆さんは積極的にそれを具体的に指摘すればいいんですが、政府の側から事前に、リスクもあることを政府の側から言え言えといって攻めるのは論争のルールを超えたことだと思いますが……(発言する者あり)ちょっと静かにしてください。静かにしてください。長妻さん、静かにしてください。

 リスクは確かに全ての活動にあるんです。あるんですが、そのリスクに対して安全性を高めるような最大の配慮もしていますし、それから、それと同時に、この抑止力によって日本人全体の安全が高まる、自衛隊員の安全も抑止力によって高まっているんです。そういう紛争が起きないということでありますから。だから、木を見ることも大切でないとは言いませんが、森もやはりしっかり見る議論が大切だ、こういうふうに思います。

 それは、コストの面でもそうですね。自衛隊員の活動が、自衛隊の活動が広がるんだから、コストもふえるじゃないか、防衛費がふえるんじゃないかと、昨年来、随分、委員会でいろいろ言われてきました。だけれども、今の安全保障環境に基づいて一国だけで対応しようとしたら、とても賄い切れないほどのコストがかかっちゃうから、日米同盟を強めて、今度の安全保障法制で、コストも今までの中期防衛力整備計画の範囲内でできるようにしようというのが今度の法制だと思います。

 そういうことも含めて、この平和安全保障法制全般についての総理のお考えをお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まさに今、高村委員から、抑止力とは何かということについて本質的な議論をしていただいた、このように思います。

 まさに抑止力とは、日本に対して攻撃をする、あるいは日本を侵略しようとすれば相当の打撃をこうむらなければならないということを覚悟しなければいけない、となれば、それはやめておこうということになるわけであります。すきがないか、しかし、すきがないということになれば、それはやはりやめておこう、それは外交的に今後解決していこうということになってくるわけでありまして、相手にそういう気を起こさせない、これこそ未然に防ぐ抑止力になっていくわけであります。

 先ほど申し上げました三つの法の支配の原則に立ち戻る、どの国も立ち戻っていく、こういう常識を多くの国々と共有する上にも、我が国もしっかりと抑止力、未然に防ぐ力を持っていく必要があるんだろう、このように思います。

 先ほど、刀は抜かないものだ、刀を持っていることによってこれは抑止力になる、こういうお話もいただきました。しかし、その刀が決してさびてはいないし、この刀が一旦抜かれればこれは大変だということを相手が認識していれば、結果として刀をさやから抜くことはないということになるわけでございます。

 そのための、まさに今回の全体的な法制であるわけでございまして、国民の命と平和な暮らしを守るための、グレーゾーンから集団的自衛権の一部容認に至るまでの切れ目のない法制を進めていく。起こってから考えればいいではないかという人がいますが、それは、まさに安全保障の議論においては、起こらないようにしていく、未然に防ぐことに力を傾注していくのは国民の命を守る責任ある立場としては当然のことなんだろう、こう思うわけであります。

 その中において、日本が攻撃を受ければ、米軍は日本を防衛するために力を尽くしてくれるわけであります。そして、安保条約の義務を全うするため、日本近海で適時適切に警戒監視の任務に当たっています。

 しかし、現在の法制のもとでは、私たちのため、その任務に当たる米軍が攻撃を受けても、私たち自身に攻撃が発生していなければ、攻撃がなければ何もできない、何もしないということであります。果たしてこれでいいのであろうか、果たしてこれで本当に日米で共同対処して日本を常に守っていることができる、守っているんだということが確立されるかということであります。

 少なくとも、この中において、日米安保条約がしっかりと機能しているんだと思われる、海外からそう思われるようなメッセージをしっかりと出していくことが必要であろう、こう思うわけであります。

 今回の法制はまさにクリアなメッセージになっている、このように思うところでございます。

高村委員 今度の平和安全法制の中に、集団的自衛権の一部認容、いわゆる限定的集団的自衛権の容認というのがあるわけでありますが、これを立憲主義違反だと言う人がいます。去年の二月、三月ごろは猫もしゃくしも立憲主義、立憲主義と言っていたんですが、それは何分の一かになってきたと思います。

 憲法の番人である最高裁が自衛権について下した唯一の判決というのは、いわゆる昭和三十四年の砂川判決でありますが、その砂川判決においては、国の存立を全うするための必要な自衛の措置はとり得ると言っています。必要な自衛の措置のうち個別的自衛権はいいが集団的自衛権はだめだなんて、一言もそこの中では言っていないわけであります。

 中には、あのころの裁判官の頭の中には集団的自衛権なんというものはなかったなんて失礼なことを言う人もいますが、判決本体の中にはっきり、国連憲章は個別的自衛権と集団的自衛権を各国に与えていると書いてあるんです。そして、その上で、さらに、一見明白に違憲でない限り安全保障法制については内閣と国会に委ねる、こういうふうに書いてあります。

 確かに、前の政府見解では、その砂川判決の法理、法の理屈を引いた上で、そのころの安全保障環境に当てはめて、集団的自衛権は必要な自衛の措置に入らないと思ったんでしょう、できない、こう書いています。

 ただ、今の安全保障環境に当てはめれば、必要な措置に当たるものがどういうものがあるか、こういうのを調べて、そしてその中に国際法的には集団的自衛権と言わざるを得ないものがある、だから集団的自衛権を一部認容しようとすることは何の立憲主義違反でもない。国会と内閣に委ねられているわけですから、内閣で意思を統一して、国会に法案を出して審議してもらう、最も正当、真っ当な手続を今やっている、こういうことだと思います。

 その点についての総理のお考えをお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま高村委員が引かれましたように、昭和三十四年の砂川事件の最高裁判決で示された「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」、これが砂川判決で示された判決でございます。

 そして、昭和四十七年政府見解において、「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。」と。これはまさに、当然、軌を一にするわけであります。

 そこで、昨年の七月の閣議決定における憲法解釈は、我が国を取り巻く安全保障環境が客観的に大きく変化しているという現実を踏まえまして、従来の憲法解釈との論理的整合性と法的安定性に十分留意をしながら、従来の昭和四十七年の政府見解における憲法第九条の解釈の基本的な論理を維持した上で、その枠内で、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために、合理的な当てはめの帰結を導いたものであります。

 したがって、昨年の閣議決定は、最高裁が判断を示した、一見明白に違憲でない限り国会と内閣に委ねられているという最高裁から与えられた裁量の範囲内であり、立憲主義にのっとった解釈であると考えております。

高村委員 安全保障環境が変化した。具体的にどういうふうに変化したんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 この二、三十年の間、安全保障環境は大きく変化をしてきているわけであります。特に、アジア太平洋地域をめぐる安全保障環境は変化をしています。

 例えば、自衛隊のスクランブル、防空識別圏に通告なしで入ってくる外国の爆撃機やあるいは戦闘機等々、外国というか国籍不明機等も含めますが、に対するスクランブルは十年間で七倍になっているわけでございます。

 そして、北朝鮮は弾道ミサイルを数百発持っていると推定されるわけでありまして、それに搭載する核の技術も向上させているわけであります。

 また、中国の台頭、そして東シナ海、南シナ海における活動、さらにはサイバーあるいはテロ、過激主義、そうしたものはまさに国境を越えてやってくるわけでありまして、もはや一国のみで自国を守ることができる時代ではないわけであります。

 だからこそ、日本の安全保障政策の基軸であります日米同盟をより強固にしていく、国際社会との協力を一層深めていくことが求められている、このように思います。

高村委員 それで、集団的自衛権を行使しなければいけない例として、総理が先ほどちょっと触れたわけでありますが、典型的に、例えば朝鮮戦争が起こった、そういうようなときの米艦防護。

 例えば、イージス艦が、日本のイージス艦だけじゃなくてアメリカのイージス艦もあるわけですから、日本の自衛隊はアメリカのイージス艦は守らないよというわけにはいかない。それは、ミサイルが日本に飛んでくるのもあわせて、アメリカのイージス艦も守っている、こういうことだと思います。

 そのほか、日米安全保障条約に基づいて活動している米艦を日本が守れるのに守らなかったら、アメリカは世論の国ですから、これからアメリカの青年が血を流してまで日本を守らない、こういうことになりかねないわけであります。こういうのは守らなければいけない。

 それから、総理がよく例に挙げられる邦人退避。これは、アメリカの船で日本人が退避することもあれば、日本の船でアメリカ人が退避することもある、そういう中で、お互い守り合う、アメリカの船を日本も守ることもある、そういうことだと思うんです。

 よく、自国防衛の目的があったらこれは集団的自衛権じゃないんだ、通説は他国防衛説だからないんだと珍妙な意見を言う方がいるわけでありますが、外形的に他国が攻撃されているのを守るのは全部集団的自衛権であって、他国防衛説というのは、自国防衛の目的がなくともそれが権利として認められるよというだけのことだと。当たり前のことだと思いますが、総理に確かめておきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まさに、個別的自衛権そして集団的自衛権というのは国際法の概念でありますから、我が国においてこれは個別的自衛権と言い張っても、外形的に他国が武力攻撃を受けた際、例えば日本の三要件に当たって、日本の三要件というのはまさに我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由そして幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険という状況でありますが、であるとはいえ、しかし、外形的に他国が攻撃を受け、それを防御する場合は、これは間違いなく集団的自衛権になるわけでありました。

 それを個別的自衛権と言い張ることは、結局、かえって、ではそれは先制攻撃をしているのかという批判すら浴びかねないわけでありまして、つまり、これは国際的に認められている集団的自衛権であるという整理をするのが当然のことであろう、このように思います。

高村委員 典型的な例として、朝鮮で戦争が起こったようなときの近海における米艦防護、こういうのがあるわけでありますが、総理がよく例に挙げる中で、ペルシャ湾の掃海というのがあります。

 かつて、山口代表が、単なる経済的被害を受けただけでは新三要件に該当しない、こういうことを言ったことがあります。総理は、経済的被害でもそれが甚大になって、社会的パニックが起こって、それが新三要件に該当するような重大な損害になるようなことがあれば新三要件に該当すると。ちょっと変な言い方したかな、そういうことを言ったことがあります。

 そうしたら、鬼の首をとったみたいに、矛盾している、矛盾していると。全然矛盾していないですよね。だから、新三要件に該当する、そういう事態に至れば集団的自衛権を行使できますよ、機雷掃海できますよと総理は言っているので、山口さんがそこまで至らなければできませんよと言っているのは、当たり前のことを双方言っている。

 それから、さきの衆議院選挙の最中に、多分党首討論のときだったと思いますが、山口代表が、具体的に起こった時点でそれが新三要件に該当するかどうかで判断する、こういうふうに言っているんですが、これは極めて法律家らしい正確な言い方なんですね。

 これは、限界事例において、当たるか当たらないかということをあらかじめ言うというのは、全部の条件を列挙することはできませんから無理なんですよ。限界事例は実際に起こったところでそれが当たるか当たらないか判断するというのが当たり前なので、何か判断を先送りにしたなんというあり得ない批判があるわけでありますが、それはまさにそういうことであると思います。

 それで、そのことについて、与党内で全く異論はないわけであります。私がそういうことを言いましたら、北側さんも遠山さんも、全くそのとおりだ、全く異論ない、それでここ何カ月も来ているわけであります。

 安保法制懇の報告書が昨年五月に出たときに、その日の記者会見で、総理は、湾岸戦争あるいはイラク戦争で戦闘に参加することはない、こういうことを言いました。これは総理がするつもりがないという総理の意思だけの問題じゃなくて、その後の閣議決定で厳格に新三要件を定めて、これで、総理よりもっと乱暴な総理が後から出てきて、自分側の意思としては参加したいんだと言ってもこれはできない、新三要件に当たりませんから。新三要件の中の肝の部分である国民の生命、自由、幸福追求の権利を根底から覆す明白な危険に当たりませんから、これは法律上できない。そうですね。

安倍内閣総理大臣 自衛隊が、武力行使を目的として、かつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘、すなわち、一般の方々が思い浮かべるような、敵を撃破するために大規模な空爆や砲撃を加えたり敵地に攻め入るような行為に参加することは決してないと昨年来委員会でも繰り返し申し上げてきたわけでありますが、これは海外派兵の一般的禁止の典型例として申し上げているわけであります。

 すなわち、政府は従来から、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと解している、こう申し上げてきているわけでありまして、政策論ではなくて、いわばまさに第三要件そのものに反していれば、これは憲法違反ということになるわけであります。この三要件そのものを法律に明記しているわけでありますから、当然法律違反にもなる、こういうことであります。

 このような従来からの考え方は、新三要件のもと、集団的自衛権を行使する場合であっても全く変わらない。これは個別的自衛権でも変わらないわけでありますが、新三要件から論理的、必然的に導かれるものであります。

 これは、私の意思や政策判断ではなくて、武力行使の目的を持ってそのような戦闘に参加することは明らかに、新三要件のうち第三要件に言う、必要最小限度の実力の行使に該当するとは考えられず、このような実力の行使が憲法上認められるとは考えていないということでございます。

高村委員 一般に海外派兵は行わない、そしてペルシャ湾の機雷掃海は例外的に認められる場合がある、こういうふうに総理はおっしゃった。中谷防衛大臣は、新三要件に当たればできることがあると。お二人とも当たり前のことを言っているので、二人がおっしゃっていることは全く矛盾しない。

 それで、もしかしたら一般の方がちょっと心配するかもしれないのは、海外派兵の例外、三要件に当たる場合が中東や何かでそんなにあるかといったら、私、いろいろ考えてみたんだけれども、総理が挙げているペルシャ湾の機雷掃海ぐらいが限界事例であります。そのほかに中東で、新三要件に当たる、特に肝の部分の、国民の生命、自由、幸福追求の権利を根底から覆す明白な危険がある場合に当たる場合があるかといったら、私、なかなか想定できないんですよね。

 ですから、当たる場合は例外であるということで、絶対ないと断言することはできないにしても、まあほとんどない、現実の問題としてほかに中東あたりで例外は想定できないと私は思っているんですが、総理のお考えをお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 三要件に当てはまればそれは法理上あり得るということも今まで申し上げてきたわけでございますが、しかし、新三要件、そして第三要件の必要最小限度の実力行使にとどまるべきことということの中、これは非常に厳しいですから、この中において想定し得ることについては、ホルムズが機雷封鎖された際に、かつこれが相当甚大になっていけば、これはまず受動的、制限的な外形上の武力の行使にはなりますけれども、いわば事実上戦闘行為が行われていないところで受動的、制限的に行う、危険物を除去していくという行為でありますが、国際法的には武力の行使になる。これは最小限度の中であろう。一般にの外になる。しかし、第一要件に当てはまるかどうかというのは、その事態が起こらなければ総合的な判断というのはできないわけであります。

 そこで、これぐらい厳しいわけでありますし、今、第一要件として挙げられた、第三要件をクリアするものも恐らくそうないんだろうと思いますが、特に第一要件においては、我が国の存立が脅かされ、そして国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険ということでありますから、これは現在、ほかの例というのは念頭にはありません。

高村委員 ペルシャ湾の機雷掃海は例外中の例外である、絶対ないとは言えないまでも、ちょっと想定できないというのは私と総理が同じ考えだ、こういうふうに受けとめました。

 重要影響事態法についてお伺いします。

 この重要影響事態法では、今まで周辺事態法と言っていた、まず周辺という言葉を取ったわけであります。

 この周辺という言葉は、普通の日本語だと、何か地理的概念であるかのごとく、周辺と言ったら、日本の近くだよと言っているかのごとく聞こえちゃうんですね。極めて誤解しやすい言葉であった。周辺事態法の審議のとき、私は外務大臣で、これは地理的概念じゃないと百遍ぐらい繰り返したんですが、なかなか理解をいただけなかった。

 その当時、一定の地域には現実的に想定できないという総理答弁もあった。想定できなかったんだと思います。ただし、安全保障環境がどんどん変化していく中で、想定できる部分も広がっているということもあると思います。

 もともと、安全保障の考えの中で、地理的に、ここからここまではできるけれども、これをちょっとでも越えたらできないとか、それは日本の重要影響事態に当たらない、そういう切り分けができるはずがないんですね。日本にどのくらいの影響があるかが大切なんです。

 例えば、地震が起こった。遠くで起こったら日本に影響があることは少ないでしょう。だけれども、場合によったら、チリで起こっても、物すごい津波が起こることがある。安全保障の場合だって同じでありまして、遠くで起こっても、日本の平和と安全に重要な影響がある事態というのはあり得るわけであります。

 ですから、蓋然性からいえば、近くで起こったときの方が蓋然性は多いね、遠くへ行くほどだんだん少なくなっていくね、だけれども遠くへ行ったら絶対ないとは言えないね、こういうことだろうと思うんですが、それで周辺という紛らわしい言葉を取った、そういうふうに解釈してよろしいでしょうか。

安倍内閣総理大臣 政府は、従来より、周辺事態について、事態の性質に着目した概念であって、地理的概念ではない、これは当時の高村大臣が何回も説明されたとおりであります。したがって、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態について、法的な概念としては、あらかじめ事態が生起する地域は特定できないということでありました。

 ただし、現実の問題としては、我が国に近い地域で起こる事態の方が我が国の平和と安全に影響を与える可能性が高いと考えられますので、我が国に近い地域において重要影響事態が生起する蓋然性は相対的に高いと考えられますが、いずれにせよ、これに限られるわけではないわけであります。

 なお、今般の法改正においては、周辺事態という表現は地理的概念と誤解されるおそれがあります、周辺という言葉を使っているわけでありますから。そこで、安全保障環境の変化も踏まえて、重要影響事態と改めたものであります。

 繰り返しになりますが、まさに委員がおっしゃったように、我が国にとって大切なことは、近いか遠くかということではなくて、我が国の平和と安全に重要な影響をもたらす事態かどうかということが判断基準になるのは当然のことであろう、このように思います。

高村委員 それともう一点、改正点が、今までは米艦に対して後方支援ができるということだったんですけれども、米艦以外に対しても後方支援ができる。

 これは、ある意味で当たり前なので、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態に米国とともにはせ参じているほかの国は全く後方支援しないよなんということは、常識から考えてもあり得ない話だと思います。現に、インド洋の給油をやったときには、これは特措法で米艦以外にもたくさん後方支援しているわけですね。そういうことで米艦以外にも後方支援をすると入れた、こういうことでよろしいですね。

安倍内閣総理大臣 まさに今委員が例示として挙げられましたように、テロ特措法と補給支援特措法に基づいて、米軍に限らない、諸外国の軍隊に補給活動を実施しました。十一カ国に対して実施をしたわけでありますが、この活動は、テロを封じ込めていく上においては大きな貢献であった、このように思います。あのときも、例えば米軍だけに限っていたのであれば、各国、国際社会でみんなで対応していくということにはならなかったわけでございます。

 まさに、グローバルなパワーバランスの変化、技術革新の急速な進展や大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発及び拡散、国際テロなどの脅威、安全保障環境はそうした中で大きく変化をしているという状況で、今や脅威が世界のどの地域においても発生し得るわけでありまして、そして我が国の安全保障に直接的な影響を及ぼし得る状況になっていると言ってもいいわけでありまして、どの国も一国のみで平和を守ることはできない。

 そのため、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対処する上では、日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行う米軍だけではなくて、その他の、まさに世界の平和と安定を守っていこうという国連憲章の目的の達成に寄与する活動を行っている外国軍隊等との連携をも強化することが、我が国の平和及び安全を確保するためには不可欠である、このように思うわけであります。

 なお、重要影響事態に対処する外国との連携においても、日米安保条約の効果的な運用に寄与することが引き続き中核であると認識をしております。

高村委員 PKO、あるいは必ずしも国連が統括しないPKO類似のものも含めてですが、これは、今までのPKO五原則、受け入れ同意あるいは停戦合意、これが安定的に維持される場合、国連が統括しない場合も同じようにしている、こういうことでありますが、最近のPKOというのは、紛争が完全に終わった後の国づくりみたいなものを続けてやるというのが多いわけで、そして安全維持業務みたいなものが非常にふえている。

 それから、駆けつけ警護みたいなもの。日本の自衛隊がいるすぐ近くに、NPOで活動している人たちが誰かに襲われて助けてくれと。今までは助けに行けなかった。こういう駆けつけ警護をできるようにしましょう、そういう意味で、任務遂行のための武器使用ができるようにしよう、こういうことでありますが、任務遂行のための武器使用ができるというと、何か正当防衛や緊急避難、そういったことを超えてできるようになったと誤解している人がいるんですが、そういうことはないですよね。

安倍内閣総理大臣 先ほど、答弁の中で、インド洋における給油活動で十一カ国と申し上げましたが、米軍以外に十一カ国ということでございますので、念のため申し上げておきます。

 いわば正当防衛と緊急避難、相手に危害を加えていい、危害要件でございますが、これは変わらないということであります。

 今回、いわゆる任務遂行型の武器使用権限については、例えばPKOでは、いわゆる安全確保業務という任務を実施する上で必要不可欠な権限として手当てしているものでありまして、いわゆる安全確保業務とは、例えば防護を必要とする住民や被災民などの生命、身体及び財産に対する危害の防止を行うものであります。

 この業務の実施に当たっては、いわゆる自己保存のための武器使用権限のみならず、他人の生命や身体や財産を守るため、またはその業務を妨害する行為を排除するためやむを得ない場合にはいわゆる任務遂行型の武器使用が認められており、認められなければ十分に対応することができないわけであります。

 しかし、この武器使用権限においても、武器の使用は厳格な警察比例の原則に基づくものでありまして、また、相手に危害を与える射撃が認められるのは、今申し上げましたように、正当防衛または緊急避難に該当する場合に限られるわけであります。

 また、この業務を行うに当たっては、参加五原則が満たされており、かつ、派遣先及び紛争当事者の受け入れ同意が業務が行われる期間を通じて安定的に維持されると認められる必要がある。すなわち、国家または国家に準ずる組織が敵対するものとして登場してこないということが原則になっているわけでございますから、当然、これが例えば武力行使に発展していくということには全くなり得ないということは、はっきりと申し上げておきたいと思います。

 このことから、いわゆる任務遂行型の武器使用を認めたとしても、自衛隊員が武力の行使を行ったと評価されることはないわけでありまして、自衛隊員が戦争に巻き込まれるようなことはないということでございます。

高村委員 正当防衛と緊急避難以上の武器使用は認めないと。逆に言うと、その武器使用の程度で足りる以上の任務は与えないということでいいですか。例えば、悪者の集団がいて、それを掃討してくれ、そういう任務は与えない、そういうことでいいですか。

安倍内閣総理大臣 いわば相手に危害を与えていいものはまさに正当防衛と緊急避難に限られるわけでありますから、せん滅するとか、相手をいわば一切破壊していくということ、掃討戦のようなものは、当然それは行い得ないわけであります。

 今申し上げましたのは、駆けつけ警護等々は行うことができます。あるいは、邦人も含め、NPOの人たちを保護したりすることはできます。そういう保護をするための任務遂行型の武器の使用はできるわけでありますが、危害を加えていいということについては、これは同じ厳格な要件のままであるということでございます。

 もちろん、任務遂行においても厳格な規定がかかっているわけでございますが、危害を加えていいということについては、今までと全く変わらないということでございます。

高村委員 一番最初の質問で、これからも平和外交努力をしっかりやっていくというお話がありましたが、中国との関係をちょっと聞きたいと思います。

 第一次安倍政権のときに、総理が一番最初に訪れた国は中国でありました。そして、胡錦濤主席との間で、戦略的互恵関係、こういう関係を打ち立ててきました。自民党政権が続いていた間は、曲がりなりにも戦略的互恵関係はそれなりに続いていた、こういうふうに思います。

 民主党政権のときに、いわゆる尖閣の近くで漁船衝突事件というのが起きて、私に言わせれば、日本側もそのときに支離滅裂な対応をした。中国側はそれに輪をかけて乱暴な対応をした。そのときから、私は、今の関係は戦略的互恵関係ではなくて戦術的互損関係、戦略でなくて戦術、互恵でなくて互損関係に陥ってしまったと、そういう言葉をつくったわけでありますが、そういうことがずっと続いたわけであります。

 それで、第二次安倍政権、政権を奪還したその後も残念ながら直ちに戦略的互恵関係に戻ることはなかったわけでありますが、昨年の五月、私は、中国に行くとき、安倍総理からメッセージを託されました。十一月のAPECでぜひ首脳会談をやりたい。それまでは、ドアは常に開いている、こう言っておられたけれども、積極的に、ぜひやりたい、こちらからそういうことを言うメッセージを託されたわけであります。

 福田元総理とかいろいろな人の努力もあり、日中両国の努力もあって、そして、十一月のAPECで首脳会談も曲がりなりにもできた。そして、ことしになってからインドネシアでまた首脳会談ができた。二階総務会長は、三千人を引き連れて行ってきた。議会間交流も再開した。そして、あらゆる分野で、少しずつですが、交流が始まっています。戦略的互恵関係に向かって改善されつつあるというのが今の状況だと思います。

 中国は確かに、ここ二十七年間で軍事費を四十一倍にしているとか、あるいは尖閣の実効支配には長い間挑戦してこなかったんだけれども、このごろ実効支配そのものに挑戦してきているとかいろいろあるんですが、それでもなおかつ、あくまで話し合いで戦略的互恵関係を築いていく、そういう決意に変わりないかどうか、お答えを願います。

安倍内閣総理大臣 高村委員には、日中友好議連の会長として、また自民党の副総裁として日中関係の改善のために大変な御努力をいただいたこと、感謝申し上げたいと思います。

 昨年のAPECにおける首脳会談、そして今回、バンドン会議の際にインドネシアにおいて二回目の首脳会談を行いました。それぞれ、戦略的互恵関係の上に立って両国関係を発展させていく、改善させていくということで一致をしたところでございますが、首脳同士が回数を重ねていくということについては、これは信頼関係を構築していく上でも大変重要なことであり、そしてまた両国が全体として関係を改善していく、関係を拡大、深めていく上においても重要なことなんだろう、このように思います。

 今後とも、日本にとって重要な国である中国との関係をさらに改善させていきたい、こう思うところでございます。そのための努力も今後とも行っていきたいし、また高村議員を初め議員間の交流というのも極めて重要であろう、こう思うところでございまして、今後とも御協力をお願いしたい、このように思います。

高村委員 日韓関係について、ごく簡単に聞きたいと思います。

 一九六五年、日韓基本条約等によって、法的にはお互いの請求権は完全に解決した。ただ、後になって、慰安婦の問題等、いろいろ政治的な問題が出てきた。そして、金大中大統領が日本に来られたときに、二十世紀で起きたことは二十世紀で終わらそうではないか、一度文書で謝ってくれれば、将来は韓国政府としては過去のことは問題にしない、将来のことも自分が責任を持つ、こういうふうにおっしゃる。

 それで、政治的にも解決したと思ったんですが、蒸し返されて困って、蒸し返されて大変だという気はあるんですが、粘り強く韓国のことも改善する意思があるかどうか、一言お答えいただきたいと思います。

浜田委員長 内閣総理大臣安倍晋三君、簡単に願います。

安倍内閣総理大臣 大切な隣国である韓国との関係も改善していきたいと考えております。

 先般、リー・クアンユー元首相の国葬の際に朴槿恵大統領とお目にかかりまして、日中韓の外相会談を日中韓の首脳レベルの会談につなげていく上においてお互いにリーダーシップを発揮していこうという話をしたところでございまして、今後とも日韓関係の改善に尽力をしていきたい、私たちの対話のドアは常にオープンであるということは申し上げたいと思います。

高村委員 終わります。

浜田委員長 次に、岡田克也君。

岡田委員 民主党の岡田克也です。

 先般の党首討論に引き続いて、基本的な問題を中心に議論していきたいと思います。

 私、この議論で大事なことは、国民に理解をしていただくことだというふうに思いますので、丁寧にお答えを、お互いしながら、国民の理解を求めていきたいと思います。

 本題に入る前に、ただ、ちょっと気になることをまずお聞きしたいと思います。それは、一九六〇年の日米安保改定時のいわゆる巻き込まれ論であります。

 安保改定時に、それに反対する立場の方々の中から、安保改定あるいは安保条約そのものが、日本がアメリカの戦争に巻き込まれる、こういうことで反対したということだと私は理解しているんですけれども、それに対して総理は、それは間違いだということを何度も言ってこられました。その巻き込まれ論は間違いであると。きのう、本会議では、さらに踏み込んで、全く的外れなものであったという表現を使われたわけですね。私は、その表現に違和感を感じるわけであります。

 私は、日米同盟、特に六〇年安保改定以降、日米安保条約のもとで日本の平和はあったし、日米同盟の抑止力、そのことは正しく評価しなければならない、そのことは党首討論でも申し上げたところであります。

 そういう立場ではありますが、しかし、巻き込まれ論というのは全く見当外れだというのは、私は余りにも一面的な物の言い方じゃないかと思いますが、総理の御意見を聞きたいと思います。

安倍内閣総理大臣 それでは、わかりやすく丁寧に御説明をさせていただきたいと思います。(岡田委員「余り長くならないようにね」と呼ぶ)どうしても、丁寧に説明しますと、ちょっと時間はとらせていただきたいと思いますが。

 六〇年の安保改定とは何であったか。あれは、新しく日米同盟を結んだわけではなくて、安保改定でございますから、既にあった、五二年に結んだものを改定したわけであります。

 かつて結んだ安保条約というのは、これは吉田内閣のときの安保条約でありまして、日本が独立をする上において、まだ全く自衛隊の実力というのはないわけでありますから、何とか米軍にいて日本を守ってもらわなければならないという中における、いわば事実上の占領状況の中での条約の締結であります。

 そして、それは一条から五条までしかない条約でありまして、日本防衛義務はその中には書かれていないわけでございます。さらには、両国がこれを廃棄していいということに同意しなければ、つまりアメリカが同意しなければ、この条約は廃棄できないわけであります。

 それを、五条に日本防衛義務をしっかりと定める、六条においては極東の平和と安全のために日本の施設、基地を使うことができるということになっているわけでありますが、それと地位協定が、外務大臣をやっておられたからよく御承知でありますが、日本の皆さんにわかりやすく説明しなければいけないと思うんですが、そこで地位協定も結ばれたわけでございます。

 そして、日本が決断すれば、相手に通告すればこの条約は破棄することができるようになるということでございまして、まさに米国としては、むしろ米国の立場としては前条約の方が義務はないし、自分たちがノーと言えば変えられない条約のままのものを変えて、日本が条約を終わらせようと思えば、日本の意思で終わらせられる、かつ地位協定もある、そして日本に対する防衛義務ができている。にもかかわらず、これは、反対をしている人たちの反対論というもの自体が全く的外れだということでありまして、それは私はそのとおりだ、今でもそう思っているところでございます。

岡田委員 総理、岸総理の行われた六〇年安保改定、これは私は評価するものであります。今説明されたことも含めて、私は必要なことであったというふうに考えているわけです。

 ただ、巻き込まれるリスクが全くないということではないだろうというふうに思うんです。そういう意味で、見当違いとか、そういう物の言い方は非常に誤解を招きやすい。

 やはり巻き込まれるリスクはある、だけれども、それを超える抑止力というものに期待してこの改定は行われたというふうに私は考えるんですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今、私はちゃんと答えておりますが、つまり、旧条約と比べて巻き込まれるリスクというのが新たに発生したかといえば全くそんなことはないわけでありまして、的外れであるということは、今私が、この条約の改定はどういう性格のものだったかということをそこで御説明しているわけであります。

 まさに、その意味において、当時は冷戦時代であって、冷戦時代には、当時はソビエト連邦があって、まさに北方の脅威が存在していた中において、当然、日米の共同対処によって守ることが、まさにこれこそが抑止力になるわけでありまして、全くこの抑止力を考えずに、米国と今言ったような形で条約を改定したことによって巻き込まれるリスクが上がってきたと考えるのは、当然、これは全く的外れだ、全く森を見ない議論ではないか、このように思います。

岡田委員 それでは、現時点で考えて、この日米同盟、私は抑止力を非常に評価しているものでありますが、しかし、同時にリスクもある。

 つまり、アメリカの戦争に日本が、巻き込まれるという言い方がいいかどうかはともかくとして、本来、意に反してそういった戦争をともにやる、そういうリスクというのは私はあるというふうに思うんですが、それでは、そういうものは全くないというふうにお考えですか。

安倍内閣総理大臣 これは安保とは別の話ですか。今度の法制について……(岡田委員「いやいや」と呼ぶ)ああ、日米安保条約ですね、安保条約の改定によって……

浜田委員長 では、もう一度。

岡田委員 現状の日米同盟のもとで抑止力がある、しかし同時にリスクもあるというふうに私は考えますが、それは全くないんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 日本がアメリカと同盟を結ぶことによって、同盟によってリスクが明らかに増大するということであれば、同盟自体が間違っているということになるのは当然の帰結だろうと思います。

 なぜ同盟を結ぶかということは、これはまさに、国民の命や幸せな生活そして領土、領海、領空を守り抜いていくためであります。その上において、日本一国のみで日本を守ろうとすれば膨大な軍事費が必要となってくるわけでありまして、大きな大きな自衛隊をつくっていかなければならない。

 しかし、そうではなくて、米国と共同対処することによって、世界で圧倒的な軍事力を持つ米国と共同対処することによって、日本を攻撃すれば米国とも戦わなければいけなくなるということになりますから、これは明確な抑止力がきくわけでありまして、まさにこの抑止力の力というもの、未然に紛争を防ぐという意味においては、この七十年においてそのことは私は証明されているんだろうと思うわけであります。比較考量によって、新たなリスクが生じる、あるいはリスクの方が大きいということを考えるのであれば、そもそも、岡田代表が言われているように、この安保条約の評価には私はならないのではないのかな、このように思います。

岡田委員 聞いていることにお答えいただけないんですが、私が言っているのは、リスクの方が大きいなどということは一言も言っていないんですよ。だから、聞いたことに答えてもらいたいんですよ。

 私は、抑止力を評価しつつ、しかしリスクもありますねと。それを超える抑止力の効果があるからこそ、同盟関係を今維持しているんじゃないですか。だから、リスクは全くないわけじゃないですねということを言っているわけです。ちゃんと答えてください。

安倍内閣総理大臣 リスクという言葉、いろいろな場面でリスク、リスクという言葉を使われますが、今申し上げましたような背景において、日米安保条約を改定して今日に至ったことによって新たなリスクが、このことによって新たなリスクが生じたということは、今私はいろいろ考えてみたんですが、それはどういうことなんだろう、こう思うわけであります。

 つまり、国民が戦争にまさにある意味においては巻き込まれる、あるいは海外から侵略されるということをもって巻き込まれるということについては、はるかにこのリスクは低下させているわけでありますから、低下させているからこそ我々は日米同盟を改定し、維持し、強化しているわけでありますし、そこで岡田代表も評価をしておられるわけですね。ですから、そこのところは私は論理展開がよく理解できないわけでございますが、だからこそ我々は日米同盟を強化していかなければいけない。

 日米同盟を強化していくと、どんどんリスクが増大していくというふうに民主党ではお考えなんでしょうか。むしろ、そう私はお伺いをしたいと思います。

岡田委員 議論をすりかえないでいただきたいと思うんですね。別に、ふえるなどということを言っているわけではありません。

 では、具体的に一つ聞きましょう。

 事前協議制度がありますね。私はこれも岸総理の御功績だと思います。六〇年安保の際に、日本の基地から米軍が直接出撃する場合には、日本政府に事前協議しなければいけない、こういうことになっております。

 では、総理、これはいつでも起こり得ることだと思いますが、例えばアメリカが近隣のどこかの国と戦闘状態になった、戦争になった、そしてそこを攻撃するために、総理に対して、米軍の在日米軍基地から爆撃機を出してそして爆撃したい、そういった直接出撃についての協議があったときに、総理は何をお考えになりますか。どういうことを考えて、それに対してイエスないしはノーと言わなければいけないというふうに思いますか。

安倍内閣総理大臣 今、岡田代表が言っておられるのは、事前協議の対象になる一つである、日本から作戦行動に出ていくということだろうと思います。それは事前協議の対象になります。

 今、個々の事象についてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、当然、事前協議においては、まずは日本の国益、国益とはまさに、日本の安全、日本人の生命財産を守るということにおいてどうかという判断をするわけでございます。

岡田委員 日本人の生命財産を守るという中で、もちろん、日本に直接関係のある、そういう米国とある国との戦争であればそういう場合もあるでしょうが、そうでない場合もある。比較的日本に関係なく、アメリカとその国との間に戦争が始まっていると、直接出撃をイエスと言った瞬間に、日本自身が標的になる可能性がある。基地が爆破されるかもしれないし、ミサイルが飛んでくるかもしれない、あるいは基地でなくても日本全体が標的になるリスクはある。

 そういう中で、いや、そういうリスクを覚悟してでもやはりこれはどうしても必要だということになれば、重い決断を総理大臣はしなければいけないんじゃないんですか。そういう、我が国の国民に対するリスクと、そして抑止力、同盟関係を維持することにより得られるものを常に比較考量しながら、総理大臣というのはいろいろな重大な決断、判断をしていくんじゃないんですか。

 それを、いやいや、そんな巻き込まれ論なんというのは的外れだとか間違っているとか、そういうふうに一概に片づけてしまったら、私は、国民には全くわからない議論になってしまうと思うんですよ。

 総理御自身、そういう立場に常にあるわけでしょう。事前協議というのはいつ来るかわかりませんよね。何が起こるかわかりませんよね。そういう心構えの中で私はこの法案の議論もしたいというふうに思うんです。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 いわば、私はリスクがないとはもちろん言っておりませんよ。しかし……(発言する者あり)よろしいですか。五二年の協定に比べて六〇年の安保条約が、リスクがそれによってふえたとは全く考えていないということを申し上げているわけであります。そして、日米の同盟の強化をすることは、より国民全体のリスクを低減させるということにつながっていくということを申し上げているわけであります。

 今、ええっという声が上がりましたが、全く理解されていないんだろう、こう思うわけでありますが、それを申し上げているわけでございます。

 そこで、今例として挙げられました、もちろん事前協議において、これは日米で協議をすることになるわけでありますし、事前協議において当然こちらがノーと言うこともあるわけであります。

 基本的には、極東の平和と安全のために米軍は我が国の基地を使用しているわけでございます。もちろん、米軍にはさまざまな任務が課せられているわけでございます。幸い、今まで事前協議の対象となったものはなかったわけでございますが、先ほど申し上げましたように、我が国の国益、日本人の生命や財産、そうしたものを念頭に判断していくのは当然のことであろう、こう思うわけであります。まさに国益を中心に判断していくことになるわけであります。

 繰り返しそう申し上げているわけでありまして、そうした判断をすること自体がリスク、リスクと騒ぎ立てることは私はいかがなものか、このように思うわけでありまして、政治家としては、しっかりと大所高所から考えるべきなんですよ。

 抑止力は何かということを考え、そして私たちは国民のリスクを低減させることを念頭に置きながら考えていくのは当然のことなんだろう、こう思うわけでありまして、その中において、我々が選択をしてきた安保条約の改定は全く間違っていなかったということを申し上げたわけであります。

 皆さんも安保条約を強化した方がいいと常日ごろから言っておられるんだろう、こう推測するわけでありますが、その中においては、当然、強化をしていくということについては、なぜ強化をしていくかといえば、国民の安全が脅かされるリスクがそれで減少していくからこそ、皆さんも強化していくということを言っておられるんだろうと思うわけでありまして、このことを私は今申し上げているわけでございます。

岡田委員 私の議論に全然お答えいただいていないんですが、私が申し上げたことは、もう一度繰り返しておきますが、例えば事前協議にイエスと言った瞬間に、日本国に対して攻撃が加えられるという新たな事態が想定されるわけです。そのリスクは当然あるわけです。

 だから、リスクはないということであれば、それはそうじゃない、リスクはあるということです。リスクはあるけれども、それにまさるものがあればイエスと言わなきゃいけない。それが安全保障の議論だと私は思うんですね。それを一面的なことだけで言っている限り、私は国民の理解は進まない。だから、もう少し豊かな議論をしたいということで、まず最初に申し上げたところであります。

 さて、憲法との関係について少し議論したいんですけれども、さきの党首討論で、私が、戦後七十年、日本は平和だった、その日本の平和と安定に憲法が果たした役割はどう考えているのかというふうに総理にお尋ねをいたしました。総理のお答えは、日本国憲法における平和主義というものが断固としてあるというお答えで、その一言だけだったんですね、逆に言うと。

 だから、もう一回聞きたいと思うんです。戦後七十年のこの平和に日本国憲法が果たした役割、具体的にどういう役割を果たしたというふうにお考えなのか、お答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 日本国憲法のまさに理念である平和主義、基本的人権そして国民主権、この平和主義に貫かれた道を日本は戦後七十年歩んできたわけであります。その歩みは、国際社会から大きく評価されているということであります。

 国際社会から評価されているということは、これはひいては日本のソフトパワーにもなるわけであります。そのソフトパワーとして、まさに日本の安全や平和、繁栄に大きく貢献をしているんだろう、このように思います。

 そういう意味において、憲法の平和主義における日本の平和の歩み、そして日本の享受してきた平和に対する憲法の果たしてきた役割について申し上げたわけでございます。

 しかし、それと同時に、これは、私たちが受動的にいわば平和であればいいということを願うだけではなくて、やはり積極的にさまざまな貢献をしてきたのも事実であろう、こう思うわけであります。

 先ほども議論になったのでありますが、カンボジアにおけるPKO活動でございます。カンボジアに対してPKO活動を行うという際にも、大変な反対がございます。あのときにも巻き込まれ論というのがあったのではないか、こう思うわけでありますが、今やカンボジア自体がPKO活動に参加をしているという時代になってきているわけであります。彼らは、今でもカンボジアの人々は、あのときの自衛隊の活動に感謝を表明していただいています。

 いわば、そういう活動、そしてまたまさに自衛隊の抑止力としての存在、そして日米同盟の抑止力としての存在があり、我々は現在の平和そして繁栄を享受している、こう思うわけでございます。

岡田委員 総理、お答えいただいていないんですが、憲法の平和主義とは具体的に何を言っているのか、お答えください。

安倍内閣総理大臣 憲法九条に、まさに我々は戦争放棄の趣旨を書き込んでいるわけでございます。それとともに、前文において、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、我らの生存と安全を保持しようと決意したという趣旨のことが書かれているわけでございます。

 つまり、日本においてしっかりと平和を守っていく。平和主義が書かれている憲法は世界じゅうたくさんあるのも事実でありますし、この九条においても国連憲章から一部引いてきているのも事実でございますが、いわば平和主義において日本は戦後の歩みを続けてきたと言ってもいいんだろう、こう思うわけでございます。

岡田委員 余り具体的にお答えになっていないんですが、私は、宮沢総理が言われた、海外で武力行使しない、これが平和主義の根幹だというふうに思うわけですね。

 しかし、その海外で武力行使をしないということについて、今回一つ穴があく。つまり、集団的自衛権の行使を限定的に認める。これは、国内の問題ではありません、海外。その海外がどこかということは後でまた議論しますが、海外だと。それからもう一つは、自衛隊の活動を全世界に広げて、これは武力行使ではありませんが、後方支援をする。その後方支援の範囲も、ぐっと戦闘地域に近づく。自衛隊が武力紛争に巻き込まれる、そういうリスクは高まる。

 そういう意味で、海外で武力行使しないという言葉に体現された日本国憲法の平和主義が大きく揺らいでいるんじゃないかというのが、国民の多くの方の不安なんですね。だから、それをきちっと取り除いていかないと、とても国民が今回の安全保障法制に賛成するということにはならないというふうに思うんです。

 今の議論について、何かコメントはありますか。

安倍内閣総理大臣 コメントとしては、先ほど私と高村委員のやりとりを聞いていた皆さんにはもう十分に既に理解をしていただいたのではないのかな、このように思います。

 繰り返しますが、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと解しているわけであります。

 このような従来からの考え方は、新三要件のもと集団的自衛権を行使する場合であっても全く変わりはありません。新三要件から論理必然的にこれは導かれるものであるということでございます。これは繰り返し今まで申し上げてきたことでございます。

岡田委員 それでは、具体的な話にちょっと入っていきたいんです。(パネルを示す)総理、この最初に書いた総理の発言ですね。敵を撃破するために大規模な空爆、砲撃を加えたり、敵地に攻め入るような行為に参加することは、必要最小限度の自衛の措置の範囲を超えると。

 これは最近も言っておられるのですが、私は、去年の十月三日、衆議院の予算委員会でこういう答弁をされたときに、おやっと思ったんですね、これはどういう意味だろうかと。大規模でない空爆や砲撃、あるいは敵地に攻め入るというところまでいかないけれども、例えば同盟国である米軍を守るような形での行為であれば、これは必要最小限度の範囲に入るということを言外に言われて、考えておられて述べられた言葉なのかなというふうに思っておりました。

 ところが、この前、党首討論の中で、他国の領土にいわば戦闘行動を目的に自衛隊を上陸させて武力行使をさせる、つまり武力行使と言っているわけですね、それから領海、領空でそういう活動をするということはないというふうにおっしゃって、随分この二つの発言に開きがあるというふうに私は思うんですが、総理、この一番目と二番目、どちらの立場なんですか。

安倍内閣総理大臣 私は、もう去年の七月の一日からさんざん繰り返し答弁してきて、その答弁は一貫をしている。

 今の答弁も、別にどちらの立場ということではないわけでございまして、まさに、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないという考え方をどちらも述べているわけであります。

 先般も、党首討論の際、いわゆる海外派兵は一般に許されていないということをまず全体にかけてお話をしているはずであります。お互いのやりとりを読ませていただきましたが、何回も私はそれを最初に申し上げた上で、では例えばという話をさせていただいているわけでありまして、それが前提になってくるわけであります。

 なぜいわゆる海外派兵は一般に許されないかということについては、第三要件に当たるわけでありまして、第三要件に当たるということについては、まさに当たるわけでありますからこれは憲法違反になる、こういうことであります。

 しかし、その際、いわゆる一般というふうに申し上げておりますから、一般の例外としては、例えばホルムズ海峡が機雷封鎖をされた際、これを除去する場合も、停戦合意がなされていなければ、これは国際法上武力行使とされ得るわけでございます。

 そこで、このいわば武力行使においては、それは、かつ日本に対して機雷がまかれたということが明確になっていない以上、集団的自衛権に国際法上該当するわけでありまして、そしてその機雷自体が領海にある場合もあるのでございますが、しかし、それは極めて制限的であり受動的なものであることをもって、これは必要最小限度の範囲内にいわば例外としてとどまることもあり得る。

 しかし、直ちに武力行使するかどうかというのは、第一要件、第二要件、全てに当てはまらなければいけないわけでありまして、第一要件、すなわち我が国の存立に対する脅威ですね、そして国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるかどうかというものを総合的に判断して決めていくということになる、こういうことでありまして、そこで、先ほど高村委員は限界事例ですねという話をしておられたのであります。

岡田委員 私は先ほど高村さんとのやりとりをおもしろく聞かせていただきましたが、高村さんはあのときに第一要件と言ったんですよね、三つの要件のうちの。総理はずっと第三要件と言っておられます。だから、与党・政府の中で混乱しているんですよ。この三要件のうちのどこでできないと言っているのかということが混乱しているんですよ。

 そこはまた改めてきちんとした見解を聞かせていただきたいと思いますが、ちょっと法制局長官、準備しておいてください。(パネルを示す)

 今ある海外派兵に関する政府見解、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであり、憲法上許されない。つまり、第三要件に該当するからだめだ。これは、確立された解釈というか政府見解であり、認められてきたものですね。

 しかし、これは、今まで政府が認めてきた個別的自衛権を前提にしてできている見解じゃないですか。今までは、集団的自衛権、限定的な集団的自衛権というのは認めてこなかったわけですから。

 何でこういう見解が出てきたかといえば、個別的自衛権というのは、日本自身が攻撃を受ける、侵略を受けた、つまり戦場は日本の領土、領海、領空である、あるいはせいぜいそれに連なる公海である、だから、そこで防戦していることはいいんだけれども、それが相手の国まで行ってしまうということになると、それは個別的自衛権の範囲を超えるから、だからできません、それがこの見解の意義じゃないですか。

 その考え方は、集団的自衛権を限定的とはいえ認めたときに、そのまま維持されるんですか。つまり、集団的自衛権の戦場というのは日本の領土、領海、領空ではありません。それは、公海であったり、あるいはアメリカが戦っている相手の国の領土、領空、領海、そういうことが一般的じゃありませんか。だから、この見解は私は維持できなくなっているんじゃないかというふうに思っているんですね。いかがですか、長官。

横畠政府特別補佐人 お答えいたします。

 従来から政府は、いわゆる海外派兵、すなわち、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することは、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと述べてきております。

 これは、我が国に対する武力攻撃が発生し、これを排除するために武力を行使するほか適当な手段がない場合においても、対処の手段、態様、程度の問題として、一般に他国の領域において武力の行使に及ぶことは自衛のための必要最小限度を超えるものという基本的な考え方を示したものでございます。

 その上で、政府は、いわゆる誘導弾等の基地をたたく以外に攻撃を防ぐ方法がないといった場合もあり得ることから、仮に他国の領域における武力行動で自衛権発動の三要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論としてはそのような行動をとることが許されないわけではないとしてきております。これは昭和二十年代から一貫して申し上げているところであると理解しております。

 その上で、このような考え方は、新三要件のもとで行われる自衛の措置、すなわち、他国の防衛を目的とするものではなく、あくまでも我が国を防衛するための必要最小限度の措置にとどまるものでありますところの武力の行使における対処の手段、態様、程度の問題として、まさにそのまま当てはまるものと考えております。

岡田委員 ちょっと長官、大丈夫ですか、その解釈。

 つまり、具体的な戦場は、公海上で例えば米軍とどこかの国が戦っているということはあるでしょう。だけれども、ほかの国の領海、領土、領空でやっていることも普通にあるわけでしょう。例外的じゃないんですよ。普通にそれはあるわけです。そのときに、集団的自衛権の行使はできなくなりますよ、基本的に。そういう解釈なんですか。

 つまり、相手の領土、領海、領空でやるということが私は普通の状態で、そこへ日本が行けない、例外的にしか行けない。その例外というのは、今まである、敵のミサイル基地をたたくぐらいのごくまれな例外。その同じ例外だというふうになれば、政府のお考えになっているようなことはできなくなります。私はできなくなっていいと思っているんだけれども、それで本当にいいんですか。

 なぜ、集団的自衛権の場合に、個別的自衛権と同じような、戦場が変わるにもかかわらず、戦う場が変わるにもかかわらず、同じ見解にされるのか。もう一回しっかり答えてください。

横畠政府特別補佐人 新三要件のもとで認められます武力の行使につきましては、まさにこの新三要件の全てを満たす場合に限られております。それは、他国の防衛それ自体を目的とする武力の行使ではございませんで、あくまでも、我が国の存立を全うし、国民を守るために適当な手段がない場合における必要最小限度の我が国防衛のための実力行使ということに限られているのでございます。

岡田委員 米軍がある国と戦っていて、そしてそれが新三要件の第一要件、第二要件にも該当しているという場合に、その米軍とともに最小限度の武力を行使して、そしてそういう事態、第一要件に該当するようなことがなくなるようにするということは、当然あり得る話じゃないですか。ないんですか、そういうことは。もう一回答えてください。

横畠政府特別補佐人 先ほどお答えしたとおり、いわゆる海外派兵、すなわち武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することは一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであるという考え方は、新三要件のもとにおいても同じでございます。

岡田委員 そうであれば、法案にそう書いてください、はっきりと。他国の領土、領海、領空では武力行使をしないと。今の法案からは、そうは読めませんよ。法案にこの政府見解を重ね合わせて初めて出てくる結論ですよ。法案に書かないと、私は、今いろいろ言っていますけれども、また解釈が変わって広げてしまう、そういうリスクが非常にあるというふうに思います。

 いずれにしても、今の長官の御答弁をもう一回精査して再度議論したいと思いますが、私は、今のこの海外派兵に関する政府見解の維持は非常に難しくなっているというふうに思います。(安倍内閣総理大臣「維持するから書く必要はないんだよ」と呼ぶ)いや、維持した場合に、安倍総理が想定しておられるような限定的な集団的自衛権の行使というのは、事実上ほとんどできなくなりますよということを言っているわけです。

 それでは、もう一つ例を挙げましょうか。

 総理がよく集団的自衛権の行使の例としてペルシャ湾と並んで挙げられるのが、どこかで戦争が起こって日本人が逃げてくる、それを米国の艦船が運ぶ、その米国の艦船が攻撃されたときに自衛隊は何もしなくていいのか、そういうときに集団的自衛権の行使で日本人の乗った船を守れるようにすべきだということをおっしゃっていますよね。

 このケースで考えたときに、公海の場合もあるでしょう。だけれども、その米国は、戦っている相手国の領海で襲われることもありますね、当然。日本人を助ける船がその相手国から逃げてくる、その領海の中で米艦が襲われている、そのときに自衛隊は何もしないんですか。総理、どうですか。

安倍内閣総理大臣 これは、まさに三要件に当てはまるかどうかということであります。先ほど来法制局長官が答弁をしているわけでございます。

 そこで想定し得るものは近隣諸国における紛争ということになるわけでありますが、しかし、邦人が多数住むところ、その場所自体、その国そのものといわば近隣において戦闘状態になるということはなかなか今想定し得ないわけでございまして、いわばエバキュエーションを行う場合、例えばA国とB国が紛争状態になっているとしても、近接するB国から多くの邦人が救出を待つことになるわけでございます。そこで、しかし、今私どもが行うことは、まさに、事実上、まずは公海上において我々はそういう業務は間違いなくできる、三要件に当てはまればというふうに考えているわけでございます。

 領海に入るかどうかということにつきましては、先ほど来法制局長官が答弁しているとおり、非常にこれは慎重な当てはめをしていくのは当然のことなんだろう、このように思うわけでございます。

 まさにこれは新三要件に当てはまるかどうかということでございますが、基本的には、今までよく例として挙げておりますように、例えば近隣において紛争が発生した場合、そして我が国に危機が差し迫ってくる可能性がある場合に、警戒をしている米国の艦艇そして日本の艦艇が、公海上において米国の艦艇が攻撃を受けた場合、日本は、その場合はこの三要件に当てはまる可能性は高いということは申し上げてきているとおりであります。いわばそうした典型例を申し上げているわけであります。

 ただ、一方、領海における行動については、もちろん新三要件とのかかわりがあるわけでありますが、先ほど申し上げましたように、一般に海外派兵は認められないという基本的な考え方、原理があるということはあわせて申し上げておきたい、こう思うわけでございます。

岡田委員 総理はいろいろなことをおっしゃったんですが、最初に言われた、日本人が逃げてくる国と、それから、例えば米国なら米国と戦闘状態にある国が違うのは普通じゃないか、こういうことをおっしゃったと思うんですけれども、確かに北朝鮮の事例を考えるとそういうことは言えるかもしれませんが、だけれども、中国もあれば、ロシアもありますよね。そういうところで武力紛争が始まったとき、どうですか。やはりその国から逃げてくるわけでしょう。だから、それは例外的じゃないんですよ。やはり想定しなきゃいけないケースなんですね。

 今、総理がおっしゃった三要件との関係でいえば、領海であろうが公海であろうが、三要件の該当という意味では、これは同じじゃないですか。第一要件、第二要件、第三要件、それは、領海であろうが公海であろうと、どこが違うんですか。領海のケースと公海のケースで、三要件のどこが違うんですか。違うのは、この海外派兵に関する政府見解との関係だけじゃないですか。どうなんですか、総理。

 では、長官、どうぞ。

横畠政府特別補佐人 公海と他国領海の違いということでございますけれども、我が国の個別的自衛権の議論でございましたけれども、自衛権発動の活動の範囲というところについては、我が国領域に限らず、公海上まで及ぶということをるる答弁してきております。

 その上で、先ほどお答えしました海外派兵との関係におきまして、領海も他国の領域でございますので、他国の領域における活動については、やはり慎重な、例外的に認められる場合がありますけれども、慎重に行うべきというのが憲法において認められている武力行使の考え方でございます。

安倍内閣総理大臣 総理大臣としては、特定の国の名前を挙げて議論することは差し控えさせていただきたいと思いますが、そこで、先ほども私、その趣旨を述べたところでございますが、まさに、領海と公海においてはいわば一般に海外派兵が禁じられているかどうかということでございますから、一般に海外派兵が領海においては禁じられているわけでございますから、今法制局長官が答弁したとおり、これは極めて慎重な当てはめを行っていくわけでありますが、基本は、一般にそれは許されていないということは申し上げておきたい、このように思います。

岡田委員 総理は何度も、赤ちゃんを抱いたお母さん、これを放置していいのかということを強調されてきたわけですね。そして、そのためには集団的自衛権が必要だというふうに言ってこられたわけです。私はその論理は受け入れられませんが、しかし、もし総理の立場に立てば、それは、相手国の領海であっても公海であっても必要性は同じではないですか。そして、先ほどの新三要件の一、二、三、これは領海であろうと公海であろうと、これも同じじゃないですか。唯一違うのは、この政府見解だけだということを申し上げているわけです。

 ですから、この政府見解を維持していく限り、整合性がとれなくなるということを私は申し上げているわけで、私は、これは少し議論を整理して、政府の見解を示していただきたいというふうにお願いしておきたいと思います。

 それから、集団的自衛権について、引き続き少し申し上げたいと思います。

 集団的自衛権、一つはペルシャ湾の話が議論になるわけですけれども、もう一つ、日米同盟との関係については、昨年お聞きしたときに岸田大臣の御答弁が少しあったんですが、日米同盟に深刻な影響がある場合には、これはそのまま第一要件に該当するという考え方に立つのか。

 では、大臣にお答えいただきたいと思いますが、日米同盟に深刻な影響があるということと、この第一要件というのは別物だというふうに考えるのか、いかがなんでしょうか。

岸田国務大臣 日米同盟に深刻な影響が生じたからといって、即この新三要件に該当するというものではないと認識をしております。あくまでも新三要件に該当するかどうか、これが我が国が武力行使をする際の基準であると認識をしております。

岡田委員 ただ、日米同盟が、例えばアメリカ側から、これではもう日米同盟をやっていられない、維持できないというふうに言われたときに、ここで言う我が国の存立が脅かされるということに直結するという見方もあるんですね。そういう考え方には立たないということですか。

岸田国務大臣 たしか昨年ですか、委員と議論させていただいた際には、密接な関係にある他国に関して議論させていただいたと記憶しております。

 その際に、日米同盟が我が国にとって死活的に重要であるということから考えますと、密接な他国に該当する可能性、蓋然性は米国の場合高い、こういった答弁をさせていただいたと記憶しています。

 そして、今の質問に関しましては、先ほど申し上げましたとおりであります。あくまでも、我が国が武力行使を行えるかどうか、これは新三要件に該当するかどうかであります。日米同盟に何らかの影響が及ぶということが即それに該当するものではないと考えておりますし、その状況を具体的に判断した上で新三要件に該当するかを判断すべきものであると考えます。

岡田委員 ここは非常に大事なところなので、私は見解をしっかりと政府として示していただきたいというふうに思うんですね。

 もちろん日米同盟は大事ですから、全くこの新三要件と関係ないということでは必ずしもないと思いますが、しかし、それをイコールと言ってしまった瞬間に交渉のカードはなくなってしまう。アメリカが、いや、これは日米同盟に甚大な影響を及ぼすと言った瞬間、全て限定的集団的自衛権の行使を強いられるということになりかねない。だから、そこにやはりワンクッション置いておいて、しっかりと交渉できるようにしておかなければいけないというのが私の聞いた趣旨なんですね。

 だから、そういったことがしっかり読めるような政府としての見解を私はきちんと、今少し御答弁いただきましたが、もう少し整理をしていただきたいというふうに考えるんですが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 日米同盟は大変重要な関係であります。そして、アメリカとの関係において、我が国が武力行使を行うというのは、あくまでも新三要件に該当する場合であります。そして、新三要件につきましては、今回のこの法律の中にそれぞれ要素を明記しております。我が国が我が国の憲法あるいはこの法律に従って対応する、これは当然のことでありますし、あくまでも我が国が主体的に判断すべきことであると考えています。

岡田委員 ぜひ考え方を政府としてまとめて出していただきたい、委員長にお願いしておきたいというふうに思います。委員会で……

浜田委員長 理事会。

岡田委員 理事会で、そう言ってもらいたいんですよ。

浜田委員長 理事会で後日御相談します。

岡田委員 きのう稲田政調会長が代表質問の中で、断れないという議論は主権国家として恥ずかしい、こういうふうに言われました。もちろんそういう気持ちは私もあります。だけれども、現実にそれがどうなのかということがやはり問題になると思います。

 例えば、総理、アメリカの議会の演説の中で、きのう国会で総理自身が言われたような、日本人を守る場合にのみ日本は武力行使するんですときのう言われましたよね、そういうせりふはアメリカの議会で何か言われましたか。何か同盟の明るい側面ばかり言われましたけれども、しかしそれは限定したものなんだということを、ガイドラインの中には一言入っていますよ、日米ガイドラインの中には。でも、演説の中では全く言っていませんから、私は、あれを聞いていた米国議会の人々の中には、いや、これは普通の国として、アメリカにきちんとやってくれるんだというふうに誤解をした人もたくさんいるんじゃないかと思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 これは、今お触れになりましたが、ガイドラインの中に明確に書き込んであるわけでございます。

 国会演説というのは、いわば日本とアメリカがしっかりと手を結んで、地域の安定そして平和、また国際的なさまざまな課題にともに取り組んでいこうという私たちの未来へ向かった意思を表明する場所であって、国会の議論ではないわけでありますから、一々この三要件について説明する場でもありませんから。

 しかし、大切なことは、双方の国会議員がよく理解をしている、あるいは国防総省も理解している、ましてや米軍が理解をしているということはとても重要でありますから、それはしっかりと我々は理解していただけるように説明をしているということはもう申し上げるまでもないんだろう、このように思います。

岡田委員 日本人を守るときのみ武力行使しますという話と、どこまでもやりますという話は随分ギャップがあるわけですから、やはり、国会演説だからといっても、私はきちんと言うべきことは言っておかなければいけなかったというふうに申し上げておきたいと思います。

 きのう総理は、日本と密接な関係にある他国ということについて、志位共産党委員長の質問に対して、ある国家が武力攻撃を受けていないにもかかわらず違法な武力の行使を行うことは国際法上認められておらず、我が国がこのような国を支援することはありませんというふうに答弁されました。

 つまり、例えば米国なら米国がどこかの国と戦争状態になった、それが国際法上きちんと認められる米国の武力行使でなければ、日本としてはそれに集団的自衛権の行使をすることはありません、そういう趣旨でおっしゃったかと思うんですけれども、従来は、国会答弁の中で、新三要件を満たすか否かによって判断するというふうに、例えばことしの二月二日の参議院の予算委員会で答弁されているんですね。

 新三要件のみによって判断するということになると、その前の行為が違法であったか合法であったかということは関係なくやるということにも受け取られかねませんけれども、きのうの答弁の趣旨は、そういうことではなくて、あくまでも、例えば米国なら米国の行った武力行使が国際法上きちんと認められる正当なものであるということが大前提である、そういう趣旨だと考えていいんですね。

安倍内閣総理大臣 昨日の志位委員長とのやりとりにおいては、武力行使ではなくて、国際協力支援法等においての後方支援において、あるいは重要影響事態安全確保法といった後方支援自体について、志位さんから、先制攻撃をやった国に対する後方支援も行うのかという御質問でございましたが、それはあり得ないという趣旨についてお答えをしたのでございます。

岡田委員 では、集団的自衛権の場合はどうなんですか。

中谷国務大臣 国連憲章上武力行使の発生が自衛権の発動の前提となっておりますので、仮に、ある国が何ら武力攻撃を受けていないにもかかわらず違法な武力の行使を行うことなどは、国際法上認められない行為を行っていることとなるものでありまして、我が国がそのような国を支援することはないということです。

岡田委員 きのうの答弁を繰り返されたんですが、それでは、違法な武力の行使というときに、アメリカは先制攻撃を否定していない国ですね、アメリカが先制攻撃を行って、ある国と戦争状態になったときに、日本は、それに対して集団的自衛権の行使というのは、これは認めるんですか、認めないんですか。

岸田国務大臣 国際法上は、予防攻撃も先制攻撃も認められておりません。これは国際法に違反するものであります。

 我が国は、国際法に違反する武力行使を集団的自衛権等において支援する、こういったことは全くあり得ません。

岡田委員 かなりはっきり言われたんですが、米国は先制攻撃というものを否定していない、しかしその先制攻撃を行ったときはそれは違法である、だから、先制攻撃一般について、米国がそれを行使したときに日本が集団的自衛権の行使をすることはない、そういうことでいいですね。もう一回確認です、総理。

安倍内閣総理大臣 昨日は、志位さんの質問は両方にわたるものでありまして、後方支援とあと武力行使、両方でございまして、国連憲章上武力攻撃の発生が自衛権の発動の前提となることから、仮に、ある国、国家が何ら武力攻撃を受けていないにもかかわらず違法な武力の行使を行うことなどは、国際法上認められない行為を行っていることとなるものであり、我が国がそのような国を支援することはないということであります。

岡田委員 もうその話は中谷大臣の答弁で終わっているわけで、今、もう一つ先の話をしているんですね。

 だから、先制攻撃、私は外務大臣はかなり重大なことをおっしゃったと思うんですけれども、先制攻撃というのは違法だ、したがって先制攻撃に対して集団的自衛権の行使をすることはないというのが先ほどの岸田大臣の答弁だったと思いますが、それは共有されますね、総理。

安倍内閣総理大臣 今まさに申し上げたのは、今、岸田大臣が答弁したとおりでございまして、国連憲章上武力攻撃の発生が自衛権の発動の前提となることから、仮に、ある国家が何ら武力攻撃を受けていないにもかかわらず違法な武力の行使を行うことなどは、国際法上認められていない行為を行っていることとなるものであって、我が国がそのような国に対して支援というのは、先ほど岸田大臣が申し上げたとおり、それはいわば武力行使においても同じことであろうと思います。

岡田委員 違法な武力行使ということではなくて、先制攻撃は違法であるというふうに岸田大臣は答弁されませんでしたか。ですから、先制攻撃である限り、アメリカが先制攻撃をしたときである限り、日本は集団的自衛権の行使をしないというのが私は岸田大臣の答弁だったと思いますが、総理は同じ考えですかと聞いているわけです。

安倍内閣総理大臣 いわば国連憲章上違法とされる先制攻撃においては、当然それは今申し上げた答弁のとおりでございます。

岡田委員 岸田大臣は、国連憲章上違法とされる先制攻撃という言い方ではなくて、先制攻撃が国連憲章上違法だというふうに言われたんじゃないですか。ですから、およそ先制攻撃である限りは日本は集団的自衛権の行使をしない、こういうことですが、総理も同じですね。

安倍内閣総理大臣 いわば国連憲章で先制攻撃は違法とされているわけでございますから、そのとおり私は先ほど答えたのでございます。

岡田委員 そうすると、アメリカは先制攻撃を否定していないわけですけれども、アメリカの先制攻撃は違法である、そういう考え方ですか。

岸田国務大臣 先ほど申し上げましたように、まず、国連憲章上自衛権の発動が認められているのは、武力攻撃が発生した場合であります。したがって、いわゆる先制攻撃あるいは予防戦争、こうしたものは国際法上認められておりません。これが基本的な考え方であります。

 ただ、現実に対してそれを適用する際に、着手の時点がいつなのか等、厳密な議論が存在するのは事実でありますが、基本的な考え方は、今申し上げたとおりであります。

岡田委員 かなり後退されたわけですが。ちょっとここは、もう一回しっかりと議事録を私は精査して質問したいというふうに思います。

 ただ、国連憲章上しっかりと認められた合法的な武力攻撃という議論をしていくときに、それが果たして本当にそうなのかどうなのかということは常に議論になり得るわけですね。それは安倍総理はお認めになると思うんです。だって、侵略の定義ははっきりしないとみずからおっしゃっているわけですから。それは侵略に当たるのか、正当なる武力行使なのかということは、客観的に簡単に決まる話じゃない。

 そうすると、そういう状況の中で日本が集団的自衛権を行使するということは、そういう非常に曖昧な、場合によっては違法な武力行使の集団的自衛権を行使してしまうかもしれない、そういうリスクに入り込むわけですね。そこをどう考えているのかということです。

安倍内閣総理大臣 これは曖昧でも全く何でもないんですね。これは明確なんですよ、我々、再三再四答弁をさせていただいておりますように。まず、今まで、先ほど来答弁しているように、国連憲章に反するいわば先制攻撃ということについては、我々はその違法行為を支援することはないということは当然のことであります。

 そもそも、この三要件は、これは何回も皆さん読んでいただければおわかりのとおりだと思いますが、我が国に対する武力攻撃が発生したこと、または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があることであります。そして、これを排除し、国の存立を全うするために他に手段がない、国民を守るために他に適当な手段がないという中において、必要最小限度の実力行使にとどまるべきことというこの三要件、極めて厳しい明確な三要件があるわけでありますから、この三要件に照らして、この三要件、例えば、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される状況の中で、我々は何もしなくていいのかということであります。自衛隊という、しっかりと日ごろから国民を守るために訓練をしている組織があるにもかかわらず、手をこまねいていていいとは我々は考えないわけであります。

 そのためのこの平和安全法制であり、切れ目のない法制を我々は今、皆様に法案として提示しているところでございます。

岡田委員 総理の答弁は大分もとに戻ってしまったんですね。

 ですから、例えば、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合には、その前提となる他国に対する武力攻撃、これが違法なものであったとしてもやはり集団的自衛権の行使はする、今の総理の説明を聞いているとそういうふうになりますよ。

 つまり、三要件さえ満たしていれば、もともとの武力行使が国際法上認められたものであってもないものであっても、もっと言えば侵略行為、侵略行為に対しても、その結果として、二つの国で戦争が起こっていて、一方が侵略した、しかし、そのことが、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるような状況になれば、日本は集団的自衛権の行使をして、海外に自衛隊を出しますよ、その侵略国を支援しますよ、そういう話になるんじゃないんですか。

安倍内閣総理大臣 今、私はあえて繰り返し今の三要件を読ませていただいたのは、ここを聞いていただきたかったわけなんですね。我が国に対する武力攻撃が発生したこと、または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したことであります。つまり、その時点でこの三要件が満たされていけば、つまり、他国に対する武力攻撃が発生していないにもかかわらず、その他国が先制攻撃をしているという状況の中において我々がその国を支援するということはないということはもうこの三要件からも明白であるということは申し上げておきたい、このように思います。

岡田委員 先制攻撃とこの新三要件の関係はさらに議論が必要ですね。引き続き、またしっかりと議論していきたいというふうに思います。

 さて、次に、後方支援についてちょっと一言申し上げたいと思います。

 総理は党首討論で、後方支援を実際に経験する中において、なかなかこの概念、つまり非戦闘地域のことですが、この概念において自衛隊が機敏に活動することができないという経験を積んできた、だからこの非戦闘地域という概念は変えるんだということを言われました。

 ここで言われる自衛隊が機敏に活動することができないという経験、具体的におっしゃっていただけますか。

安倍内閣総理大臣 後方支援は、その性質上、そもそも、危険を回避して、活動の安全を確保した上で実施するものでありまして、安全な場所でなければ有効な後方支援を実施することはできない、これが大前提でございます。

 かつての非戦闘地域という概念における法律においては、自衛隊が例えばサマワに参りました。サマワに半年間行く。そうしますと、自衛隊が駐留している期間、外で活動しているいかんにかかわらず、サマワ全体が駐留している期間にいわば戦闘地域となることがないという地域を選んで行くわけでございます。

 そこで、いわば、実際に活動しているのは、サマワの中において、さまざまな地域において活動を行うわけでございます。しかし、そこで我々、経験を積んできた結果、やはり大切なのは、自衛隊が駐屯している場所と実際に活動している場所において、ここで、もっとしっかりと、綿密に、この地域がどうなのかということを確定的に考えていくべきだろう、こう考えたわけでございます。むしろその方が、実際に活動する場所において戦闘が、戦闘現場とならない場所を指定していくというやり方にしたわけでございまして、そしてそこが、例えば一週間、二週間の活動ならば、その一週間、二週間を通じて戦闘現場とはならないだろう、このような場所を自衛隊が活動する場所に指定していく、このような形にすることによって機敏に、柔軟に、また非常に現実的な整理が行われる、こう考えたわけでございます。

岡田委員 機敏に活動することができないという経験という意味がよくわからないんですね。

 ですから、サマワならサマワにいる、それでは、もっと近くまで行ってやりたいんだけれどもできなかった、こういう意味ですか。だから、そういう非戦闘地域という概念を取り外して、現に戦闘が行われていない地域であればできるということに変えたということですか。

安倍内閣総理大臣 従来のいわゆる戦闘地域は、我が国の活動が他国の武力行使と一体化することがない制度的枠組みとして設けられたものである、これは岡田代表も御承知のとおりだろうと思います。そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域であります。いわば、自衛隊が半年間派遣されるとすれば、半年間戦闘がないと見込まれる地域であります。

 実際上は、自衛隊は一カ所にとどまらず、さまざまな場所で活動しますが、ある地域で一週間でも活動するためには、そこで半年間戦闘がないと見込まれる場所を指定していたわけでありますが、これは、十年以上前、当時、自衛隊による実際の活動経験がない中において、専ら憲法との関係を考慮して考え出されたものであります。

 このいわゆる戦闘地域の概念については……(発言する者あり)非戦闘地域、このいわゆる非戦闘地域の概念については、さまざまな議論があったことから、自衛隊による実際の活動経験や諸外国の活動の実態等の現実に即した検討を行った結果、現に戦闘行為が行われている現場以外の場所で行う補給、輸送等の活動は他国の武力の行使と一体化するものではないと判断したものでございます。

 一方、新たな仕組みのもとでも、部隊の安全等を考慮しまして、今現在戦闘行為が行われていないというだけではなくて、自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定することとなります。

 このように、新たな考え方は、武力行使の一体化論そのものを前提とするわけでありますが、現実の安全保障環境に即した合理的かつ柔軟な仕組みに整理し直したものであります。まさに、非戦闘地域の概念を御説明していた国会においても、さまざまな議論がございました。それはもう岡田代表も御承知のとおりだろうと思います。そして、その後の経験も踏まえまして、まさに整理をし直した。他方、攻撃を受けない安全な場所で活動を行うことについては従来といささかの変更もないわけでありまして、新たな考え方への変更そのものが活動に参加する自衛隊員のリスクを高めるとは考えてはいないわけでございます。

岡田委員 リスクを高めることはないという、そこは総理が何度も繰り返されますので、私たちはそうではないということを申し上げているわけですが、その前に、今言ったイラクでの自衛隊の活動ですけれども、今、サマワでの活動を総理は言われましたけれども、もう一つ、バグダッド空港などへの物資、兵員の輸送業務というのを航空自衛隊中心に行っていますよね。安全確保支援活動です。この実態がよくわからないというか、報告されているだけでは詳細がわからないわけです。

 米軍二万四千人を運びました、他の外国軍千四百人を運びました、六十七万トンの物資を輸送しましたというようなことは書かれているんですが、それ以上ブレークダウンした話というのはわからない。そして、これはバグダッド空港だけではなくて、イラク国内でも、ほかの空港にも当然行っているわけですね。

 だから、ここの詳細な資料を開示してもらいたいんですね。そうでないと、状況が、経験に基づいてこういうふうに変えたと言われるのなら、その経験をしっかりと明らかにしてもらわないと、これは議論のしようがないと思うんですよ。

 例えば、運航を取りやめていること、資料によれば二十三回ありますね。脅威情報によって輸送機の運航を取りやめたと。では、具体的に、実際の運航に当たって、攻撃を受けるなど危険な状況というのはあったのかなかったのか、あったとしたらどういう状況であったのかということもきちんと報告されるべきだと思うんですよ。

 そういうことが報告されて初めて、この非戦闘地域の概念が有効なのかどうか、ある意味では、政府はそれをさらに戦闘現場に近いところでやろうとしているわけですから、そういったことが果たして妥当なのかという議論になるわけですから、イラクにおける安全確保支援活動の実態をこの委員会に示すということを委員長にお願いしておきたいと思います。

浜田委員長 理事会にて協議いたします。

岡田委員 そこで、もう一つ、総理はリスクは高まらないということを言われるんですが、ここはなお引き続き議論していきたいと思いますが、例えば周辺事態法が今度、重要影響事態法案に変わるわけですが、これで活動範囲はがらりと変わりますよね。つまり、周辺事態法は日本の領域内プラス領域外ということですが、領域外というのは日本周辺の公海及びその上空に限られている。そして、現に戦闘行為が行われておらず、活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域である。つまり、日本周辺の公海の中の一部に限られるわけですね。

 支援内容は輸送だけです、周辺事態法上は。日本の国内ではいろいろなことをやりますが、公海上では輸送しかできない。

 それが今度、重要事態安全確保法案になると、これは世界じゅうどこでもということになるわけですけれども、公海でできて、そしてその限定は、非戦闘地域の考え方は変わりますので、現に戦闘行為が行われている現場ではやりませんということになります。

 もう一つ、ここで強調したいのは、支援内容が今までは輸送のみだった、それが補給とか、それから弾薬の提供も可能だということになります。そして、もちろん輸送、修理・整備、保管、その他いろいろなことができるようになるということになります。

 これは、やはりこれだけ多様な活動ができるということになれば、単なる輸送ではない、しかもその輸送の場所も、現に戦闘が行われている現場以外ならいいということになれば、これでリスクが高まらないというのは私はどう考えても言えないと思うんですが、正直なところを、総理、おっしゃっていただきたいと思います。

中谷国務大臣 リスクについて言いますと、これまでも自衛隊というのはリスクを負いながら任務を果たしてまいりました。

 最大のリスクといいますと、日本有事、武力攻撃を受けた事態においての対処など、日ごろから訓練もいたしておりますし、また災害派遣におきましても、東北の地震の際は福島の第一原発に対して消火活動をしたり、本当にぎりぎりのリスクを帯びながら、また任務を与えられて遂行しているわけでございます。

 確かに今回、法律によって任務のメニュー、こういう内容はふえるわけでございますが、リスクが全くなくなるわけではございません。そういった事態にいろいろな任務が与えられる上においては、当然、いろいろな情報を入手して実行可能なものを選び、また国会で事前に承認をいただいて、そして部隊を送り出す。また、派遣された隊員も、そういう中でリスクを極小化して任務を遂行しております。

 現に、南スーダンまたジブチにおける海賊対処、こういった派遣部隊もさまざまな状況の中で判断しながら任務を遂行しているわけでありますので、当然、法案によりましてこういった安全にかかわる規定も設けておりますので、その範囲の中で任務を果たすということになろうかと思います。

岡田委員 リスクがないなどという議論をしているわけではもちろんないんですね。リスクがかなり高まるんじゃないかという議論をしているわけです。

 これは党首討論でも申し上げましたけれども、現に戦闘行為が行われておらず、活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域というのと、現に戦闘行為が行われている現場では実施しない、逆に言うとそれ以外ならやりますというのでは、これはリスクの程度は飛躍的に高まるというふうに私は思うんです。そのことをずっとおっしゃらないですよね。

 私は、リスクが高まるからだめだと言っているんじゃないですよ。リスクが高まるけれども、では、やはりこの重要影響事態確保法やあるいは恒久法、そういったことについて、こういう理由でやる必要があるときちんと説明されればいいんですよ。それを国民が納得すればいいんですよ。

 でも、そのことを、リスクがふえるということを、そこをまず認めないで、何か最小にしなきゃいけないと。当たり前ですよ。そこが正直でないから議論が深まっていかないんですよ。国民の疑念も解けないんですよ。だから、そこはリスクがふえるということをはっきりまず認めるところから議論が始まるんじゃないですか。どうですか。

中谷国務大臣 ただいま、支援内容において、非戦闘地域と違うじゃないか、活動の期間に戦闘行為が行われていない場所がないじゃないかと指摘されました。しかし、先ほど総理が答弁したように、今回、法律に、自衛隊が実際に安全かつ円滑に活動できる実施区域を定めなさい、これは防衛大臣にそれを定めることを命じています。

 安全に円滑に実施していける地域、これは総理大臣の承認を得て部隊に命令を出すわけでありまして、では、どの地域を指定するかというと、やはり自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定することとなりますので、そういう点におきましては、将来に対する安全に対してきちんと防衛大臣が責任を持って対処するような規定を設けるなど、派遣する際にはさまざまな安全の規定を設けております。

 ただ、確かに、リスクがないかと言われれば、それはございますが、今でも最大限のリスクを抱えながら自衛隊はそれぞれの活動を行っているわけでありますので、当然、派遣する際は、隊員の安全に十分気をつけながら任務をするわけでございますので、リスクが全くゼロになるとは言えませんが、最大限極小化して任務を遂行していただくということになるわけでございます。

岡田委員 大臣が責任を持って決めるというなら、どうして法律できちんと書かないんですか。しかも、新しく書く話じゃなくて、今のこの非戦闘地域という概念を変えるということを言っているから、我々はこれは問題だと言っているわけですよ。今までの非戦闘地域の概念で具体的な問題がどう出てくるんですか。私はそれが理解できないんですね。リスクを最小限にするのは当たり前ですよ。だけれども、私は、必要以上にリスクを高めてしまっているんじゃないかと。

 現に戦闘が行われている現場以外でできるということになったときに、例えば今の中東なんかを見ても、ゲリラ的な攻撃というのは十分あり得ますよね。武器や弾薬も運べる。総理は食料とおっしゃったけれども、武器弾薬だって運べるんですよ、今。そういうものを運んでいるときに、やはり攻撃を受けるリスクというのはかなりある、それを考えるのが普通だと私は思うんですね。それをリスクがないと言うから、私はわからないわけであります。

 何か答弁がありましたら。

中谷国務大臣 何のためにこの法律を今回提案したかというと、国際社会におけるさまざまな事案に対して、やはり国際的な安定、また我が国の平和と安全、こういうことを図るというのが本来の目的です。

 この支援活動、今から十三年前にニューヨークにおいて同時多発テロ事件が起きました。約三千人の無辜の市民が死んだということで、国連が、こういったテロは許されないということで、懲罰、制裁の意味で国際社会の活動をすることを決議し、そして我が国もそれに寄与するということで、テロ特措法ができました。

 しかし、この十三年やってみて、そしてイラクでやってみて、まだまだできるような内容もありますし、実際、非戦闘地域に指定されると、二年とか一年とか、指定された期間はその場所を変更することはできません。

 実際やってみて、状況というものは変わるわけですね、安全になったり危険になったり。ですから、以前は危険なところでも、状況が変わって、これは十分安全で活動し得るようなところも出てくるし、またいろいろなニーズも出てくるわけでありますので、今回は、現に戦闘行為が行われていない現場といたしまして、この指定においては、現場の隊員も、また防衛大臣もしっかり見ながら、でき得る活動をしていく。

 その際、安全保障、安全の規定においては、戦闘が行われる見込みがない場所をきちんと指定しながら、また変更しながら、適時適切に対応できるということでございます。

岡田委員 大臣は今、テロ特措法のお話をされましたけれども、私、当時、筆頭理事を野党として務めて、政調会長でしたけれども、あのときには、とにかく早く法律をつくろう、賛否はともかくとして法律をつくろうということで、土曜日の審議までして、そして、我々は残念ながら最後は反対に回らざるを得なかったんですけれども、中身は相当詰めて議論したことをよく覚えております。

 私は、ずっと議論して、PKO法のときも一緒に議論しましたよね、やはりこういう問題は一歩一歩だと思うんですね。国民の理解を得ながら少しずつ拡大していく、認めていく、そういう中で今までやってきました。ところが、今回は一挙なんですよね、それが。つまり、後方支援というものを、今までずっと少しずつ広げてきたものを一遍に、しかも恒久法までつくってやってしまう。

 そういうことを、安全保障の議論というのは、これはやはり国民の理解を得ながら進めていかなきゃいけませんから、一遍に全部どんとやってしまうんじゃなくて、その中には違憲の疑いのあるものも含まれていると私は思いますけれども、そうじゃなくて、やはり一歩一歩国民の理解を得ながら仕組みを変えていくという慎重さが今までは求められてきたし、やってきた。

 ですから、皆さんの先輩である例えば山崎拓さんなんかも、今のこのやり方には非常に批判的なことを言っておられますけれども、ぜひ皆さん、そこはよく考えて、今まで出された法案の中で、全部やるんじゃなくて、これとこれをまず議論しましょうということで、謙虚になっていただいて、そして一歩一歩進めていただきたいということをお願い申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。

浜田委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 民主党の大串博志でございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 まず、今、岡田委員からもあった質問のフォローアップも含めて、自衛隊の皆さんに対するリスクです。

 私は、どう考えても、今回の安全保障法制全体を通じれば、自衛隊の皆様へのリスクは増大する、こう認識するのが普通じゃないかと思うんです。

 安倍総理は、リスクとは関係のない整理である、整理を変えただけだ、こうおっしゃいました。防衛大臣は、リスクは増大しないというふうにおっしゃいました。

 しかし、ここに、パネルにありますように、今話のあった他国軍隊への後方支援、「戦闘現場以外なら行う」、こういうふうになって、後方支援を行わない範囲、これまでは、非戦闘地域というふうに区切って、しかもそれが現在戦闘地域ではなくて、かつ、活動を行う期間において戦闘地域とならないというくくりをもってして、後方支援を行わない場所を画していた、一線を画していた。それを今回は、戦闘現場だけは行わないんだ、戦闘現場は行わないけれども、現場でなければ行うんだと。

 明らかに、後方支援の活動の範囲は自衛隊の皆様に広がっているわけです。広がっているにもかかわらず、自衛隊の皆さんへのリスクは上がらないというのは、上がらないという方が私はおかしいんじゃないかと思うんです。

 どうですか、大臣。

中谷国務大臣 リスクを数字で示せといってもいろいろ考えがあるんですが、今回、法律をつくる際には、与党で約一年間、二十五回にわたる議論をしていただきました。その際、一番大きな事項として、国際的な正当性、そして国会などの国民の統制、そして第三に隊員の安全ということで、いろいろな内容が与党の議論で合意をされました。

 例えば、まず、防衛大臣は部隊の安全の確保に配慮しなければならないという規定、そして、円滑かつ安全に活動を実施する区域をあらかじめ指定すること、そして総理大臣の了解を得て部隊に命令を出す、そして、この活動の場所近傍で戦闘行為が行われる場合、またそれが予測される場合、さらに部隊の安全等を確保するために必要と認める場合にも、部隊長の判断で活動を一時休止などして危険を回避すること、そして、困難な場合には防衛大臣は活動の中断を命じなければならないことなど、こういった規定を設けております。

 そして、派遣する際は基本計画を立てます。そして、防衛大臣は実施要項として実施区域を決めますが、先ほどお話ししたように、戦闘が行われるという見込みのない場所として安全を確保することにいたしておりまして、このようなことで、最終的に国会で御承認をいただいて派遣するというようなことで、私といたしましては、派遣する以上の安全に関する規定も盛り込まれておりますし、実際に派遣する際は、当然そのことに配意を持って命令を出してまいります。

 自衛隊の任務というのは本当に、さまざまなリスクを抱えつつも、国民の命、平和な暮らしを守るために現在も懸命な努力をいたしておりますが、今後この法案に基づいて与えられる任務も同様に、しっかりとした内容で成果が出るように送り出していきたいと思っております。

大串(博)委員 ぜひ、自分がつくられた法案の内容をよく見ておっしゃってください。

 前の法律における事態、状況と、今般新しく整備されようとしている安全保障法制を比べて、リスクは上がるんじゃないですかということをみんな議論しているわけです。みんな気にしているわけです。

 先ほど大臣はおっしゃいました、安全に配慮する規定。これは配慮規定ですね、配慮しなさい。極めて法律の書き方としては遠慮がちな書き方だと私は思います。

 そのほか、実施区域を定める、そして近傍で戦闘が起こった場合には、あるいは予想される場合には一時休止をする、そしてそれが長引きそうな場合には防衛大臣が中断を命ずる、これらを基本計画に書く。これは、前の周辺事態法に全て書かれていた仕組みと同じじゃないですか。安全確保のための仕組みは全く同じで、活動する場所は非戦闘地域から戦闘現場までと、極めて広がっているわけですよ。

 安全を確保する仕組みは同じで、活動領域が広がっているんだったら、リスクが増大するのは当然じゃないですか。いかがですか。

中谷国務大臣 派遣する際の基本的な考え方は一緒なんです。いろいろな事態、いろいろなケースが当然それは考えられます。

 しかし、必要に応じて政府として判断をするわけでありますので、送り出す場合の考え方というのは、十分隊員に安全を確保する状態で計画をいたしますし、また、出される隊員も安全保障のプロです。非常に日ごろからそういう点でこういった危機、リスクに一番敏感で、特に部隊長は隊員の安全については十分配意しながら任務を達成しているわけでありまして、こういった場合に、当然、送り出す場合は計画を立てて、実際にそれが実行できるか、安全は確保されるか、こういうことを念頭に対処するわけでございますので、基本的な考え方におきましては現在の基本とは変わっていない、いろいろな状況に応じてそれを判断して対応するということでございます。

大串(博)委員 今の答弁を聞いていると、よくわからないんですよ。

 基本的な安全確保の考え方は変わらない。さっき申し上げたとおり、安全確保のための仕組みは前と変わりませんよ。安全確保の仕組みは前と変わらない中で、一方で、活動エリアだけは広がっているんですよ。だから、よりリスクは上がっているんじゃないですか、みんなそう思っているわけですよ。そこを端的に答えてくださいと言っているわけです。どうですか。

中谷国務大臣 現在も、自衛隊は我が国を守るという任務を持って、隊員も、身の危険を顧みず、国民の負託に応えられるように、日々訓練をして備えております。そういう意味において、では、日本を守るリスクってどういうものがあるかと考えれば、これは千差万別あるんですね。そういった予期せぬ事態にも対応する、そして予期せぬ場合にも国民のために出動が求められる。

 去年の御嶽山、あの非常に高い標高で、民間の方々が救出に行けない場合に自衛隊に命令がかかりますけれども、高度が三千メートルの山場であのヘリコプターを操縦するということは本当に危険なことで、できないこと、そういうリスクを帯びても自衛隊は任務を遂行しております。

 このように、将来起こり得ることに対して備えをしておりまして、今回、海外における対応等につきましても、やはり基本的な法律を定めて、実際に準備をし、訓練をし、能力を上げていく、こういう基本となる法律でありますので、この法律に基づいて実施できるような対応をして、リスクを軽減させていくということでございます。

大串(博)委員 質問に端的に答えていただくように、委員長からもぜひ御指導をお願い申し上げたいと思います。

 私は、前の、これまでの仕組みに比べて、新しい法制になったらリスクは上がるじゃないですかということを申し上げているんです。

 御嶽山に対する業務あるいは防災等々に対する業務、災害等々に対する業務、危険の中、自衛隊の皆様にやっていただいているのは本当によくわかります。大変なことだと私は思います。それは今でもあるんです、今後もあるんです。それは大変ありがたいことだと思います。

 ただ、その一方で、総理は記者会見のときに、殉職をされた自衛隊の皆様がいらっしゃるという話をされました。災害等々あるいは訓練中の事故等々で亡くなられた方々であります。それを引き合いに出して、だから変わらないというのは、私はおかしいと思うんです。

 仕組みは、今までと同じように災害派遣もあります。そして、先ほどおっしゃったように、近傍で戦闘が起こった場合には一時休止をする、あるいはそれが長引きそうな場合には中断をするという仕組みは一緒なんです。法律に同じように書かれています。

 安全を確保する仕組みは同じなんだけれども、エリアだけが広がる。エリアが広がる、これが大事なんです。活動エリアが広がるから自衛隊の皆様にはリスクが高まるんじゃないかというふうな質問なんですよ、大臣。活動エリアが広がるからリスクが高まる、それはないんですか。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

中谷国務大臣 私が申し上げましたのは、現在もリスクを負って厳しい任務をしておりますし、今回の法律、これに基づく任務も従来と同様のリスクというものはあるんです。

 しかし、どういうことが起こってどういう対応をするかということは今後のことでありまして、特に政府として隊員にそういった任務を付与するということにつきましては、この法律に基づいてしっかりと計画をし、最終的には国会で承認をいただいて派遣をするわけでございますので、当然、そのリスクを、いろいろなリスクがあると思います、しかし、それを軽減し極小化して計画を立てるというのは当然のことでありますし、また、派遣された側も安全に配意して対応するということでやっていくわけでございます。

安倍内閣総理大臣 先ほど、私の記者会見での答弁を引用されましたが、死傷者が出るかもしれないではないですかという質問がありました。ですから、今までまるで死傷者が出ていなかったかのごとくの認識ですから、それは違いますよということを私は申し上げたわけであります。

 自衛隊員の諸君は、訓練においてもリスクの高い訓練をしていなければ、現場において機敏な、また国民の命を守るための活動はできないわけでありますから、いわば普通の組織とは違うということは国民みんなで認識をしていただかなければならない、このように申し上げたわけであります。

 慰霊祭においても御遺族の方々と私も対面をするわけであります。大変つらい思いですよ。ですから、そういうリスクを減らしていくために最大限のことをしていくのは当然のことではないでしょうか。その上で私は申し上げているわけであります。そのことをまず申し上げておきたいと思います。(発言する者あり)皆さん、少し静かに、こういう議論をしているんですから、真面目に静かに聞いてくださいよ。与党側はこんなにちゃんと礼儀正しく聞いているじゃないですか。皆さんも少しは見習ったらどうですか。よろしいですか。よろしいでしょうか。

 そこで、申し上げますが、いわば最大限のリスクをとる仕事を皆さんはしておられるんですよ。その上において、まさにリスクとは何かという中において、先ほども申し上げましたが、では、なぜ自衛隊がリスクをとってそういう活動をするかといえば、国民のリスクを低減させていくためでもあります。そして、国際社会が平和で安定しているという状況をつくり出すことは、当然これは日本の平和にもあるいは国民の幸せな生活にもつながってくる中において、我々もさまざまなPKO等の活動を行っています、そして後方支援についても活動を行っているわけでございます。

 そこで、先ほど……(大串(博)委員「委員長、関係ないことを答弁されていますから」と呼ぶ)いや、私が答弁中なんですから。答弁中なんですから……(大串(博)委員「いやいや、関係のないことを答弁されていますから」と呼ぶ)関係ないことですか。これはまさに前提じゃないですか。根本的な議論について議論をしているんです。(大串(博)委員「問うていないことを答弁されていますから」と呼ぶ)よろしいですか。質問者は答弁中にはしゃべらないでくださいよ。(発言する者あり)

浜田委員長 静かにしてください。静粛に願います。

 総理、ひとつ簡潔にお願いいたします。(発言する者あり)

 静粛にしてください。

安倍内閣総理大臣 よろしいですか。ちゃんと最後まで聞いてくださいよ。全体についてわかりやすく、これはどういうものだ、何のための法制だという説明をしているんですから。国民にわかりやすく説明するということはそういうことなんですよ。なぜこの法律が必要かということについても言及しながら、では、なぜそれに伴うリスクがあるのか、そして、あるいはそれをどのように低減させていくのかということについて、私は御説明をさせていただいているわけでございます。

 そこで、例えば、委員が今出された資料、「戦闘現場以外なら行う」。

 これは間違いです。これは間違い。なぜ間違いかというと、先ほど来答弁させていただいておりますように、戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を、自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定することになるわけでございますから、これは違うということであります。

 そこで、申し上げますと、つまり、大串委員が今おっしゃっているのは、今までの非戦闘地域との比較考量でリスクが上がるとおっしゃっている。しかし、今私が申し上げておりますように、このような区域を、実施区域を指定することになるわけでございます。

 そして、それと同時に、今申し上げましたように、先ほどサマワの例を挙げました。例えばサマワにおいて半年間、これは非戦闘地域ですよ、サマワ全体。しかし、実際に活動をするのは一カ月、二カ月の単位で、それぞれのサマワの中の地域で活動をするわけであります。

 そこで、我々は、今度はそうした経験を踏まえまして、その活動する実際の地域が戦闘現場ではない、あるいは戦闘行為が発生しない、これは、自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を選んで行くということになるわけでありまして、より現実に即しているということは先ほども申し上げたとおりであります。

 しかし、そこで、もちろん、ここが戦闘行為になれば、先ほど来申し上げておるように、これは部隊の判断で休止あるいはまたその後撤収も避難も当然行うことができるわけでございますが、そうしたこともあり得るし、そうした判断を機敏にするということもしっかりとこれから訓練をしていくことになるわけでありまして、そうした形において実際に効率的に柔軟に活動ができるようになっていくわけでございまして、いわばリスクとはかかわりなく、今までの経験を生かして整理し直したわけでありまして、この整理し直した新法にのっとってしっかりと自衛隊員は活動をしていくことになるし、訓練を重ねていくことによってそれぞれのリスクを低減していくことになるんだろう、このように思うわけであります。

浜田委員長 一言申し上げます。

 答弁は簡潔にお願いを申し上げます。

大串(博)委員 ありがとうございます。

 答弁は簡潔にしていただきたいと思いますし、かつポイントをついて答えていただきたい。総理からわかりやすく説明をしていただいている意図はわかりますけれども、余りにいろいろなことをあちこちぐるぐる回って答弁されますものですから、かえってわかりづらいんです。

 私、正直言って、今の答弁は何のことかよくわかりませんでした。国民の皆さんも、リスクが本当にふえるという懸念に対してわかりやすい説明になったとは私は思えません。ぜひ、ポイントをついて総理には答えていただきたいと思います。

 今の答弁の中で、私、この「戦闘現場以外なら行う」、短い文字で書きましたけれども、これを間違いだと断言されて、その論拠の一つとして、現に戦闘の行われていない現場のみならず、戦闘が行われると予測されない、活動期間において戦闘現場とならないと予測されるところ、それを実施区域と定めるというふうに言われました。

 これは、前の周辺事態法のときには、非戦闘地域とは何かということで、現に戦闘が行われておらず、かつ、活動の期間を通じて戦闘地域になるとは思われない地域と法律に書かれていましたね。

 今回の法律の中で、今総理がおっしゃったような、活動期間を通じて戦闘現場とはならないと予測されるということが、この法律のどこに書かれていますか。

中谷国務大臣 法律の中で、防衛大臣が基本計画に基づき実施要項を作成する、そして、実施要項の中で自衛隊員が安全かつ円滑に行動し得る地域を指定し、内閣総理大臣に承認をいただいた上で自衛隊員に命令を出すと書いております。

 この安全かつ円滑にでございますが、こういうことを勘案いたしまして、将来戦闘行為が起こらない見込み、こういうことがあるところを実施区域として指定するわけでございます。(発言する者あり)

 なぜ書かなかったのか。これは、先ほど説明しましたように、非戦闘地域で指定をいたしますと、計画を承認して、また変更するまで変更ができません。ところが、状況というのは非常に柔軟にまた動いていくものでありますので、状況の変化に基づいてこういった支援活動が実施し得る地域というのもできてくるし、また実施している地域が危険になる場合もありますので、そういう場合においては変更はいたしますが、いずれも、地域を指定する場合においては、将来戦闘行為が行われるという見込みがない現場を指定するというふうに考えております。

大串(博)委員 リスクを低減するための仕組みだということで、近傍で戦闘が起こった場合には一時停止をする、あるいはそれが長引く場合には中断をする、そういう仕組みを入れていますから大丈夫ですというふうに言われました。

 それに対して、私は、それは前の周辺事態法にもそういう規定はありますね、同じですね、かつ、その中で活動エリアが広がっているからリスクがあるんじゃないですかと申し上げた。

 今の答弁だと、これまで、安全を確保する措置として法律上書かれていた。活動期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる、そういう場所を選びましょうと。それは法律に書かれていたんですよ、これまでは。それを法律から落としてしまって、防衛大臣が定める実施要項の中で。法律じゃないんですか。

 つまり、安全を確保する手段を削って、下げてしまっているじゃないですか。リスクが増大するということは、こういうものも加味、あわせて、やはり心配になるんじゃないですか。どうですか、大臣。

中谷国務大臣 以前の非戦闘地域と、先ほど私が説明しましたけれども、新たな仕組みにおいて、現実に自衛隊が活動する期間に戦闘が発生すると見込まれない場所であるという点におきましては、安全性においては相違はありません。

 というのは、この非戦闘地域というのは、長期間を想定して固定的に区域が設定されていたことから、一たび設定すると柔軟な活動ができないという点がありましたが、今回、新たな仕組みでは、自衛隊が現実に活動する期間において機動的に活動を実施する区域を指定することから、常に情勢を踏まえた判断が行われ、そして安全確保が図られるとともに柔軟な活動が可能になるということでございます。

大串(博)委員 すなわち、こういうことですか。戦闘が行われている現場というのは日々変わり得る、日々変わり得るから現場の判断でいかようにも右左に動けるようにしておきたいということで、これまで法文に書かれていた、活動の期間を通じて戦闘行為が行われることのないということをあえて削りましたと。

 ということであれば、まさに現場の皆さんの大変な状況判断によって、ここは戦闘現場になる、ならないというのをその場で判断しなきゃならなくなるわけですよ。物すごい負担が現場の部隊長を含めた皆さんにはかかってくる。それはなぜかというと、やはり戦闘現場に近接するから、これまでに比べて。そういうことが起こってくるんじゃないですか。

 先ほど大臣が言われました。どういうことが起こるか、それにどう対応するかは今後のことですと。リスクに対する対応がこういうことですか。どういうことが起こるか、どう対応するのか、今後のことです、こういう対応なんでしょうか、大臣。大臣に聞いているんです。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 大串委員が言われたことは全く逆だと思いますよ。私は、全く逆だ、このように考えます。なぜかということについて、これからしっかりと説明させていただきたいと思います。

 つまり、現場で指揮官が判断することが大きな負担となり、危険が高まるかのごときの今の議論でございました。

 つまり、東京において法律に書けば安全かといえば、そんなことはもちろんないわけであります。先ほど申し上げましたように、あのときもこういう議論があったわけです。例えば半年間、サマワ、活動、自衛隊が駐留している期間はずっと非戦闘地域だということを本当に予測することは可能かという議論がございました。では、そこに、どこかからミサイルが、迫撃砲が飛んできて着弾したらどうなるのかという議論がずっとあったじゃないですか。

 だから、今回は、大切なのは、自衛隊が駐留している場所、そして活動を行う場所。例えば、サマワという議論をしましたね。サマワ全体ではなくて、いわば自衛隊が駐留する場所と活動する場所について、そこで、まさに自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に選ぶわけでございます。

 しかし、先ほど申し上げましたように、十分にそう見込んでいても、そうでなくなる可能性というのはやはりあります。しかし、それを、まさにそういうことがあり得るという頭、心構えをしながら、そのとき指揮官が正しい判断をして、そこはもうやめますよ、でも、こちらの地域だったら大丈夫ですねということで、こちらの地域にあらかじめ移すことができるわけで、そういう危険な状況になる前にあらかじめ柔軟に移すことができるわけであります。

 今までは、現行法では、まさにサマワ全体が、自衛隊が駐留している間は全部が大丈夫という、これは非戦闘地域ということがまさに建前になっていたわけであります。それはまさに一体化との議論の中で出てきた概念であります。

 しかし、今まで活動を重ねてきている経験によって、サマワの中でもいろいろありますねということがわかるわけですよ。サマワの中でもいろいろあって、広いし、その中で、しかも状況というのは変わっていきます。日々変わりながら、そこで正しい判断をして、自衛隊員に死傷者が出る前に、それでは現場の指揮官がそこで判断をする、こういうことでありますから、まさに法律に書けば安全だということではなくて、まさに現場の指揮官が正しく適切な判断ができるようにならなければいけない。

 まさにそういう判断をするような訓練を積んでいますし、それを前提に、これからもしっかりとした判断ができる訓練を行っていくということになります。

大串(博)委員 やはり今の総理の答弁を聞いても、柔軟対応だとおっしゃる。戦闘現場がどこで、いつ、どのように戦闘現場になるか。戦闘現場というのが物すごくピンポイントな法律の規定になっているものだから、柔軟対応せざるを得ないということだと私は思うんです。それぐらい現場に近いところを選んで法律に書いてしまっているから、だから柔軟対応せざるを得ない、だからリスクは上がるんじゃないですかと私は申し上げているんです。

 総理に、御答弁されたいようですから、私はちょっとお尋ねします。

 総理、この間、一昨日ですか、自民党の役員会でこの自衛隊員へのリスクに話が及んだときに、木を見て森を見ず、こうであってはいかぬというふうに、非常に否定的なコメントをされたというふうに聞きました。

 実は、私、自衛官に嫁いでいる親戚がいるんです、女性の。この間、電話で話していたら、兄ちゃん、私のことを兄ちゃんと呼ばれるんですけれども、今回の法律が変わって、自分の夫の業務がより危険になるんじゃないか、やはり心配だ、小さい子供もいるし、やはり心配だと。やはり任官している以上はしっかり務めを果たすと自分の主人は言っていると。立派だなと思いました。でも、やはり自分は心配なんだというふうに言っていました。僕は頑張るよ、国会で頑張るよと答えましたけれども。

 総理は、そういった、子供を抱えて心配を、これはどうしても持ってしまうでしょう、そういう御婦人に対して、あなたは木を見て森を見ていないと言うんですか。自衛官一人一人は大きな森の中の木なんですか。どうなんですか。総理、お答えください。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 ここは国会の場です。皆さん、国民に選ばれて政策を議論する立場ですね。国民全体に対して、私たちはその生命、幸せな暮らしに対して責任を持っているんですから、私たちは木を見て森を見ない議論をしてはいけないんですよ。全体を見る、そういう議論が私たちには求められているんですよ。

 先ほど、災害出動の例についてお話をされました。例えば雲仙・普賢岳に、私も最高指揮官として彼らに、あそこに出動する、そういう責任を負いましたよ。その家族の皆さんだってとても心配だと思いますよ。しかし、それでもなお、彼らは日ごろそのための任務を負っている、そしてそういうリスクを負うことを覚悟してまさに自衛官に任官しているわけであります。だからといって、私だってそう簡単に彼らに任務を下令するわけにはいきません。安全をしっかりと考えていきます。

 政治の場に立つ、行政の場に立つということはそういうことなんです。そのことは申し上げておきたいと思います。自衛官の安全を確保するということは当然のことであります。

 その上で申し上げれば、今委員がおっしゃった、リスクをふやす、あるいはさらに活動において危険が高まる、これは現行法との比較で申し上げているわけであります。現行法においても危険がないわけではないですよ、サマワというのはほかの場所とは違うわけでありますから。その比較考量で果たしてどうなのかという議論をされているんだろうと思いますが、そのサマワにあの段階で行くということも、これはかなりリスクが高いわけであります。ですから、私たちが申し上げておりますように、措置としては最大限のリスクをとって行動しているということであります。

 そして、今回は、まさに先ほど申し上げましたように、サマワ全体が半年間、これは非戦闘地域だったかどうか、そういう反省も込めながら、その中において、実際に活動する場所、場所において、十分見込まれるという場所に、オペレーションをする場所にしっかりと地域を限定していこう、こういうことにしたわけでございます。戦闘地域、戦闘現場に近づくなんということはもちろん全く誰も考えていないわけでございまして、そのような誤解を与えるような発言は慎んでいただきたい、このように思います。

大串(博)委員 いや、聞き捨てならない発言ですね。

 戦闘地域というものをこれまでつくってやってきた。そこには入らない、活動する期間もそこには入れないというふうにしてきた。それを、今回は、戦闘が行われている現場以外では活動を行う。戦闘の現場に近づいているじゃないですか。戦闘の現場に近づいているかのごとき誤ったことを言わないでくれなんという、そこの認識が、総理、間違っているじゃないですか。どうですか。

 大臣、どうですか。

中谷国務大臣 きちんと説明させていただきます。

 この法律の七条の三に、防衛大臣は、実施要項において、協力支援活動等の具体的内容を考慮し、自衛隊の部隊等がこれを円滑かつ安全に実施することができるように活動を実施する区域を指定することとなります。

 そのため、当該実施区域の指定に際して、まず支援対象国のニーズを精査し、その時点において必要とされている支援の具体的な内容及び当該支援の実施が求められている地域を選定いたします。その上で、自衛隊部隊の安全確保に留意しながら実施区域を指定することとなりますが、特に外国領域については、自衛隊の部隊等が不測の事態に遭遇することがないように、自衛隊の収集した情報、支援対象国から提供された情報から、具体的には、部隊等が活動を円滑かつ安全に実施できるようにする観点から、現に戦闘行為が行われておらず、その後も戦闘行為の発生する見込みがないような地域から選定することになるということでありますので、実施区域において戦闘行為が発生するということにつきましては、従来のことと同じだということでございます。

大串(博)委員 私の質問をよく理解して、答えていただきたい。

 仕組みで安全を確保する、今おっしゃいました、こうこうこういうふうな仕組みにしていると。基本計画、実施区域、これをつくる仕組みは、これまでも全く同じなんですね。

 何だったら、大臣、答弁された中で、これまではなかったけれども今回追加したというところが今の答弁の中でありますか。

中谷国務大臣 安全に関しましては今の法案と一緒ですが、柔軟にしていく、そして機敏に状況判断を重ねて、確実に実施できるようなところにしていくというところが、違うところでございます。

大串(博)委員 柔軟にしていくというところがすなわちみそなんです。戦闘現場に近づくから柔軟にせざるを得ないんじゃないですか。

 すなわち、戦闘現場という、まさにそのことが起こっているところに極めて近いところで活動するから、状況はかなり大きく変化し得るところだと。それは、非戦闘地域に比べるとやはり戦闘が、きのうはなかったけれども、きょうは起こるということもあり得るんでしょう。だから、柔軟にせざるを得ない。だから、法律にも、期間を通じて戦闘地域でないと見込まれる、そういったことが法律に書けなかったんじゃないですか。

 そういう意味からすると、先ほどおっしゃった仕組みの中で安全がより高まる、柔軟だというのは、戦闘現場に近いからそうせざるを得ないから、そうなっているんだと思います。

 前の仕組みに比べてより倍加、追加して安全になる仕組みというのは、先ほど答弁された中で何がありますか、言えますか。

浜田委員長 内閣総理大臣安倍晋三君。(大串(博)委員「委員長、大臣に聞いているんですよ。おかしいですよ。大臣にもっと法律の細かいところを聞いているんだから」と呼ぶ)

安倍内閣総理大臣 つまり、先ほど申し上げましたように……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。次に防衛大臣に。

安倍内閣総理大臣 現行の法案との違いについては、現行の法案については、先ほど申し上げましたように、サマワならサマワ全体が非戦闘地域だということであります。今回は、サマワならサマワでオペレーションをしている区域をいわば非戦闘区域とするということでありますから。

 ですから、概念を変えたわけでありまして、実際に行っているところは、別に、あのときの行動とは違って戦闘現場に近づいたわけではないわけでありまして、むしろ、しっかりと実際にオペレーションをやっている場所について戦闘現場ではないという認定をし、かつ、自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域にする、こういうことになっているわけでありますから、今回法律が変わったから、これは戦闘現場に近づくための法律であるから何か安全な対策がふえなければいけないということではないわけであります。

 繰り返しになりますが、かつ、ここで、もちろん前の法律にも定められておりますが、指揮官が機敏に、戦闘現場になる可能性があればそこは中断をする、こういうことになるわけであります。

 あと、先ほど雲仙・普賢岳と申し上げましたが、あれは御嶽山の誤りでございましたので、訂正させていただきます。

中谷国務大臣 テロ特措法にない部分で、第九条に「防衛大臣は、対応措置の実施に当たっては、その円滑かつ効果的な推進に努めるとともに、自衛隊の部隊等の安全の確保に配慮しなければならない。」という規定を入れております。

 ですから、細部計画を立てる段階においては、状況に応じて計画を作成し、また状況に応じてこの計画区域を変更するということは、これはやっていくということで規定に盛られているわけでございます。

大串(博)委員 今の答弁でわかったのは、要するにプラスした、安全面からプラスしたというのは、いわゆる安全配慮規定、「配慮しなければならない。」と。私、随分遠慮した規定だなと思いますよ。これだけ自衛隊の皆さんの活動が広がるにもかかわらず、追加的に、安全を確保するための措置は配慮義務だと。

 そこしか大臣は答えられなかったということは、先ほど大臣が答弁された、こういう仕組みがいろいろありますと言われたもの、そのほとんどは前と同じ安全確保の仕組みだということですね。

 しかも、活動期間を通じて戦闘現場となることと見込まれないということは法律にも書かなかった。それは柔軟にするためだと総理はおっしゃいましたけれども、サマワという地域、広い地域でないところを指定したので、より小さな地域になる、柔軟にと。それは、戦場に近いから柔軟にせざるを得ない、それだけの話だと私は思うんですよ。

 そのことを指摘して、また午後、しっかり議論させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。大串博志君。

大串(博)委員 午前中に引き続き質疑をさせていただきます。

 自衛隊員へのリスクの問題を午前中議論させていただきましたが、これは決して木を見て森を見ずというふうになるつもりじゃなくて、やはりこれだけの安保法制の変化をもたらすのであれば、リスクの問題も、あるならある、あるいはふえるならふえるときちっと説明した上で、だけれども日本にとってこれが必要なんだからというふうに説明した方が、よほど国民の皆さんは理解されるのではないか。

 それを、リスクは増大しないとだけ、説得的な理由なしに言い続けるから、かえってこの安保法制全体のことがよくわからなくなるのではないか。国民の皆さんがこの安保法制をよくわからないとおっしゃる理由はその辺にあるんじゃないかという点から申し上げてきたわけでありまして、この辺はまたこの委員会の議論を通じて深めさせていただきたいと思います。

 さて、少し論点を変えさせていただきますが、午前中議論になりました先制攻撃に対して、それによる武力の行使が行われた、それに対して集団的自衛権を発動していくのがあり得るのかという点でございます。

 先ほど来お話が外務大臣からもありましたように、先制攻撃あるいは予防攻撃は国連憲章上違法である、そのような違法なことから武力攻撃が行われた場合に、それに対して集団的自衛権を発動していくということはない、こういうふうに言われました。

 恐らく、一般の皆さんがイメージされるのは、これまで行われたいろいろな戦争状況、例えばイラク戦争。

 思い返すと、イラク戦争に関しては、米国が、イラク・フセイン政権が大量破壊兵器を持っている、それを隠しているという主張のもとに、これに対して戦闘をしかけていった、そのときにいろいろな意見がありました。我が国は結局それに対して支持をすることになりましたけれども、各国からもいろいろな反対意見もありました。最終的には、数年して、大量破壊兵器はなかったというふうになった事例であります。先ほどの先制攻撃との関係で申し上げると、アメリカがイラクに対して行ったような戦争、これは日本は異議を申し立てなかったわけです。

 例えば、このような場合でも、このイラク戦争のような形で始まった武力攻撃、武力行使に関しても、三要件を満たせば集団的自衛権の行使は、先ほど違法な先制攻撃だったらあり得ないということでしたけれども、このようなイラク戦争のようにして始まった戦闘行為であれば、三要件を満たす限りにおいてはこれに対しても集団的自衛権の発動はあり得るのか、お答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 イラク戦争の件を例として挙げられました。

 かつてイラクで起こったことの評価でありますが、そもそも、一九九〇年にイラク軍のクウェート侵攻がありました。それに対して幾つかの国連決議が採択されています。国連決議六七八によってイラクに対する武力行使が認められ、六八七によって条件つきの停戦が認められ、そして安保理決議一四四一によって最後の機会を与えるというメッセージをイラクに伝えたわけですが、それにもかかわらず、イラクがこの条件を守らなかった。こうしたイラク戦争の本質は、イラクがたび重なる国連安保理決議を守らなかった、これが本質であります。

 一方で、我が国が武力の行使を行うということについては、先ほど来申し上げておりますように、新三要件、これを全て満たした場合であります。そして、その新三要件を満たして武力行使を行う際の一部が、国際法上、集団的自衛権として説明される部分が今の国際情勢の中にあってはあるんだ、こういった説明をさせていただいております。

 これはあくまでもその基準に基づいて現実に対応するということでありまして、イラク戦争の本質は、先ほど申し上げました、たび重なる安保理決議違反ということでありますので、これは直接結びつけることはできないと考えます。

大串(博)委員 端的にお答えいただきたいんです。

 つまり、先制攻撃、イラク戦争のような形で始まった紛争、これに関して、アメリカ、イギリス軍が先制的な攻撃をしかけていったわけですけれども、かつ大量破壊兵器は最後はなかったということだったわけですけれども、このようにして始まった紛争においても、新三要件を満たす場合には日本は集団的自衛権を行使する可能性がある法律案になっているのか、お答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 これは、再三再四答弁させていただいておりますように、一般に海外派遣は認められないということであります。

 つまり、これは、三要件目の、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこととあります、そこから論理的に導かれる、つまり……(大串(博)委員「私の質問と違うんですよ。全然違うんです」と呼ぶ)海外派兵は一般に認められないという……(大串(博)委員「そんなことは聞いていないんです」と呼ぶ)今これから論理を展開していきますから、ちょっと聞いていただけますか。(大串(博)委員「質問に答えてください」と呼ぶ)論理を展開している最初ですから……(大串(博)委員「関係ないことは言わないでください」と呼ぶ)皆さん、しばらくペーシェンスを持っていただきたいと思います。最初から話さなきゃいけないじゃないですか。

 そこで……(大串(博)委員「話さなくていいですよ。ふざけないでくださいよ」と呼ぶ)いや、それは、だって、皆さん、途中で遮られると最初から、私も論理立てて説明しているんですから。

 そこで、いわば三要件の第三要件がございます。第三要件について言えば、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、こうあります。

 つまり、その中において、この第三要件において、当然、海外派兵は一般には認められない、これは今まで答弁してきたとおりであります。つまり、イラク戦争のような大規模な空爆等々については行えないということは言っているとおりでありまして……(大串(博)委員「そんなことは聞いていないですから」と呼ぶ)今、大串委員が言われたのは、イラク戦争のようなと言ったじゃないですか。ですから、今、ここに……(大串(博)委員「そうです、きっかけとしたと言ったんです。きっかけを聞いているんです」と呼ぶ)きっかけよりも何よりも、そこは根本から、きっかけとはかかわりなく、今私が申し上げておりますように、イラク戦争のような、武力の行使を目的としていわば戦闘に参加することはないということは再三申し上げているとおりでありまして、ほかの条件を加えてもそれは変わらないということを今ここで申し上げているわけでございます。

大串(博)委員 質問に端的にお答えいただきたいんです。

 私は、始まり方が先制攻撃、あるいは先制攻撃と皆さんに認められたようなあのイラク戦争のような形で始まった戦争に対して、それで武力の行使が始まった、そのような場合に、新三要件を満たすのであればと私は総理にも申しましたよ、満たされるのであればイラク戦争のような形で始まった武力攻撃に対しても集団的自衛権を行使する可能性があるんですかということを聞いたんです。攻撃が始まった態様がイラク戦争のような形で始まったのであっても、新三要件を満たすのであれば集団的自衛権を行使できる可能性があるのかと聞いているんです。どうでしょうか。

安倍内閣総理大臣 だから、満たされないんですよ。ですから、イラク戦争のようなああいう戦闘に武力の行使を目的として参加することはないと言っています。つまり、満たされないんです。大串さんが言っている前提はないんです。

大串(博)委員 イラク戦争のようにして始まった戦争に対して、三要件を満たされないという根拠は、総理、どこにありますか。はっきりと言ってください、どこにありますか。

安倍内閣総理大臣 いわばイラク戦争のような戦闘に参加することはないということは、再三再四申し上げているじゃないですか。それは、一般に禁止されている海外派兵に当たるからであります。

大串(博)委員 イラク戦争のようにして始まった戦争においても、いろいろなことが起こり得るかもしれません。戦局が拡大して、例えば中東における重要な海峡域において機雷が敷設されるかもしれないじゃないですか。そういったことがある場合でも、三要件を満たさないとおっしゃるんですか。

 先ほど、総理は、ホルムズ海峡の例を挙げられて、それは例外的に三要件を満たすことがあり得るとおっしゃいました。私が申し上げているのは、イラク戦争のようにして始まった戦争においても、三要件を満たすのであれば集団的自衛権を行使する可能性があるんですかと聞いているんです。三要件を満たせばと。

安倍内閣総理大臣 大串さん、話を整理しましょう。(大串(博)委員「整理してください」と呼ぶ)整理します。

 つまり、ホルムズ海峡に機雷が敷設されたという状況が発生したということですね。この敷設された機雷を除去するかどうかということを今おっしゃっているわけですね。

 そこで、我々が機雷が敷設された状況において機雷掃海をやる。その機雷掃海をやるということについては、今まで申し上げておりますように、三要件に当たる場合もある。それも、第三要件について、必要最小限度の中にとどまるという可能性がある。しかし、もちろん、第一要件に当たらなければならないのは当然のことであります。

 そこで、その状況という中において、事実上静穏な状況でなければ、この機雷掃海はできないわけであります。事実上戦闘が行われていない、しかし、停戦合意が国際的な法理上成り立っていないという状況の中において、実際は戦闘は行われていないという状況の中で、機雷掃海をすることというのはあり得るわけでございます。いわばその状況ということが第一要件にも当たれば、これは何といっても、国の存立が脅かされ、国民の生命そして自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるということになれば、それは行うわけであります。

 それは行うわけでありますが、しかし、先ほど来委員がおっしゃっていることは、まさにイラク戦争のようなああいう空爆を行ったり、自衛隊が上陸をしてということは……(大串(博)委員「そんなことは聞いていないです」と呼ぶ)しかし、そういうことをちゃんと限定しなければ、国民の皆さんが誤解するじゃないですか。ですから、これは精密な議論をしなければいけないということを申し上げているわけでございます。

 そこで、繰り返しになりますが、つまり、イラク戦争のような形で始まったとおっしゃいましたが、例えば、先ほど岸田大臣から答弁をさせていただきましたように、累次にわたる国連決議に反しているということがあります。そして、国連決議がある中においてアメリカが武力行使をした、こういうことであります。

 しかし、その中で、イラク戦争のようなああいう戦争、湾岸戦争もそうですが、そういう戦争の中におきましても、我々が武力行使を目的として戦闘に参加をしていく、大規模な空爆を行ったり、自衛隊が上陸をしていって大規模な戦闘をする、これはまさに第三要件が禁じることでありますから、もう今までも何回も何回も申し上げておりますように、それはまさに必要最小限度を超えることになるわけでありまして、まさに一般に禁止されている海外派兵に当たるということは明確であります。

 ですから、議論をするときにはそのようにしっかりと分けていただかなければ我々も答弁のしようがないのでありまして、少し長くなりましたが、今このように解説をさせていただいたところでございます。

大串(博)委員 実は、今のでよくわかりました。

 というのは、イラク戦争のようにして始まった戦争に関しても、集団的自衛権を容認するための三要件に該当するかどうかを考えることに関しては否定をされませんでした。かつ、三要件に当たるかどうかという話もされましたので、イラク戦争のようにして始まった戦争も、三要件に当たるかどうかであると。かつ、三要件に当たった中で、大空襲みたいなことをやるかどうか、これはやらない、それは第三要件に反するからだ、しかし、機雷の掃海のようなことは第三要件をクリアする可能性がある、こういうふうにおっしゃいました。

 とすると、今の総理の話を論理的に整理すると、イラク戦争のような形で始まった戦争に関しても、機雷掃海のように三要件の最後まで満たすようなものであれば否定されないじゃないですか。否定されない場合には、これはまさにアメリカの戦争に巻き込まれている、まさにそういうことじゃないですか。違いますか。もしそうだったら、答えてください。

安倍内閣総理大臣 最初から私の話を、ちゃんとしますから、よく聞いていただきたいと思います。

 イラク戦争のような、あのような紛争に対して武力行使を目的として戦闘に参加することはないということは明確に申し上げているとおりでありまして、それと機雷掃海の問題をいわば混同させているわけでありますが、我々はそれは今までの論理と同じであります。つまり、必要最小限度を超えるかどうかということでありますが、まさにイラク戦争のような戦争に参加することは必要最小限度を超えることになるわけでありますから、そうしたことはないということは明確であります。

 そして、今までも、考え得るものとしては、機雷掃海のような形の受動的かつ限定的な行為、いわば危険物を除去するという行為でありますが、国際法上はこれは武力の行使になる、かつ、日本に向けられたということが特定されていない限り、これは集団的自衛権の行使となり得るわけでございます。

 しかし、機雷の掃海は、繰り返し申し上げますが、機雷掃海艇自体はプラスチックであったり木でできているものであって、非常に脆弱なものであります。そこで、今まで行っている機雷掃海というのは、事実上静穏が確保されているところでありました。

 あり得るとすれば、いわば停戦合意がなされていれば別ですが、停戦合意が事実上なされていても法理上成り立っていないというケースもあり得るわけであります。話し合いがスタートしている。話し合いがスタートしているけれども、早くから掃海活動を行わなければ相当程度長い影響が出る、第一要件に当たらなければいけませんが、そういう状況としてはあり得るという話をしておりまして、これ以外には余り今、私は念頭にはないわけでございます。

 そのことを申し上げているわけでございますが、当然これ以外については考えられないということは重ねて申し上げておきたい。これは今まで申し上げていることと同じことでございます。

大串(博)委員 質問が来ましたので終わりますが、論理的に総理がおっしゃったことを整合的に解釈すると、イラク戦争のような始まり方で始まったものでも、三要件を満たすような機雷掃海のようなものであればと、大空襲、大規模な空襲みたいなことはしないとおっしゃいますけれども、そうでなくて、三要件を満たす機雷掃海のような受動的、限定的な活動であればあり得るとおっしゃっているわけですから、それはあり得るということだと思います。この辺を率直に話していただかないと、国民の皆さんはやはり全体像を理解しないと思います。そのことを私は申し上げているわけでございます。

 この辺をしっかり詰めさせていただくことをお願い申し上げさせていただきまして、質疑を終わりたいと思います。

浜田委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 長妻でございます。よろしくお願いいたします。

 わかりやすい議論をすることで国民の皆さんのやはり支持がないと、自衛隊の皆さんの活動というのが効果的にできないと思っております。これは新法も含む大切な法律がたくさんございますので、我々も含めて、安倍総理も含めて、わかりやすい御答弁をいただきたいんですね。

 きょう午前中、自民党の方から、今の安保法制はもうひどいと言わんばかりに、問題がある、問題があるとおっしゃっているんですが、これは当然、自民党がこれまで築き上げてきた部分が大変多いわけですね。

 やはり今、日本の国のほとんどの制度が、憲法を初め、いろいろな法律を初め、戦争の反省に立って一つ一つ慎重に積み上げられてきて、そして安全保障の議論も、今までは切れ目がある、それはおかしいときょう午前中の自民党の方はおっしゃいましたけれども、それは、一つ一つ慎重に、戦争の反省に立って、教訓をかみしめてつくり上げてきたというふうに我々は理解しておりますので、今回、やはり一定の要件があればアメリカ軍と一緒に地球の裏側まで自衛隊が武力行使を可能となるような、これは一足飛び過ぎるんじゃないのかというふうに私は感じているところであります。

 そして、ちょっときょう持ってまいりましたけれども、自衛官の方がこういう「宣誓」というのを胸に入れておられるわけです。中谷大臣も以前胸に入れられておられたと思いますが、ここには、「私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、」そして中略ですけれども、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。」ということで、やはり今回の法制のもう一つの視点というのは、自衛隊員の皆さんが命をかけて守るべき価値のあるものは何かということが大変問われていると思います。そのものが国益にちゃんとかなうものなのかどうかという視点から、質問をしていきたいと思います。

 まず、憲法についてなんですけれども、日本がこれまで平和な国だったのは、やはり憲法と日米同盟というのがあったと思います。

 その中で、専守防衛ということなんですが、安倍総理は昨日の答弁で、専守防衛について、その定義、そして我が国防衛の基本方針であることに、いささかの変更もありません、その定義にというふうにおっしゃられましたけれども、これは防衛白書にありますが、専守防衛というのは、「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神に則った受動的な防衛戦略の姿勢をいう。」こういうふうに定義されているんです。

 これは担当の中谷大臣にお伺いしますが、相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使する、これは、相手から日本が武力攻撃を受けたときという意味でございますか。

中谷国務大臣 これは閣議決定に至る前からも検討しておりますけれども、この専守防衛の意味におきましては、我が国の、「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」という、これは最高裁判所の判決でございますが、この基本的な論理は継続をいたしておりまして、今回の法整備におきましても、こういった論理の中で、我が国と密接な関係にある他国に対する攻撃の発生、こういうものも含めて考えているところでございます。

長妻委員 私、難しいことを聞いているんじゃないんですよ。

 専守防衛の書き出しは、「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、」ということなんですよね。相手から武力攻撃を受けたときというのは、相手から日本が武力攻撃を受けたときというふうに当然読むということでよろしいんですか。

中谷国務大臣 先ほども説明しましたが、従来、専守防衛の説明に用いてきた相手から武力攻撃を受けたときも、我が国が武力攻撃を受けたときを指すものと考えてまいりました。

 他方、昨年の閣議決定におきまして、「今後他国に対して発生する武力攻撃であったとしても、その目的、規模、態様等によっては、我が国の存立を脅かすことも現実に起こり得る。」という認識から、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」にも自衛の措置としての武力行使が許容されるということで、この専守防衛の説明に用いてきた相手から武力攻撃を受けたときには、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合も含むと解しております。

 いずれにせよ、我が国または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生が前提ということで、また、他国を防衛すること自体を目的とするものではなくて、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいう専守防衛の定義には何ら変更がないと認識をしております。

長妻委員 わかりやすい議論をと私冒頭申し上げたんですが、私、いろいろな方と地元に帰ってお話しすると、専守防衛というのはいささかも変わらないんだと国会で答弁を聞いたけれども、専守防衛というのは日本を守ることなんでしょう、変わったんじゃないのと多くの方から言われるんですよね。ですから、非常にわかりにくいんです。

 そうすると、中谷大臣の今の答弁は、日本が一つ守ってきた大きな価値であるこの専守防衛について、従来という表現をされましたけれども、従来は相手から我が国が攻撃というふうに読んだけれども、今後は、我が国もあるけれども、密接に関係する他国も今度はこの中に入れると。定義が変わっているんじゃないですか。

安倍内閣総理大臣 わかりやすく、先ほど大臣も答弁させていただいておりますが、改めて答弁をさせていただきたいと思います。

 今般の整備に当たって、専守防衛という考え方は全く変わりがありません。なぜ変わっていないかということをこれから説明申し上げます。

 今般の平和安全法制の整備に当たっては、昭和四十七年に示された政府見解の基本的な論理は一切変更していません。

 この基本的な論理は、昭和三十四年の砂川事件の最高裁判決で示された考え方であります。すなわち、「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」、これがまさに基本的な考え方であります。

 新三要件のもとで許容される武力の行使は、あくまでも自衛の措置としての武力の行使に限られているわけであります。それは、新三要件の第一要件を見ていただければ自明の理だと思いますが、我が国に対する武力攻撃が発生、あるいは我が国と密接な他国に対する武力攻撃が発生したことによって我が国の存立が脅かされるわけですから、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険ですよ、これをまさに防衛するというのは、これは専守防衛ですよ。専守防衛であります。

 つまり、この三要件、三要件について変わった。なぜ変わったかといえば、まさに日本をめぐる安全保障環境が厳しさを増す中において、どの国も一国のみで自国の安全を守ることができないという状況になっている中において、我々は状況の変化に対応して、国民の命と幸せな暮らしを守っていく責任を果たさなければなりません。そのことを皆さんは忘れてはならないんですよ。その上において、我々は新たな三要件をつくった。しかし、今申し上げましたように、この砂川判決そして四十七年の政府見解の根本論理は変わっていないというのは、今申し上げたとおりでございます。

長妻委員 私は全然初歩的なことを聞いているんですね。専守防衛というのは、相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使する。

 だから、はっきりおっしゃったらいいんですよ。定義はいささかも変わりないと言うんじゃなくて、いやいや、相手から日本に対する武力攻撃及び密接に関係する第三国への武力攻撃、これも入るんだよ、それを追加した、そういうふうにやはりおっしゃらないと、初めのきっかけの話なので、非常に不信感があるのは、変えていない、変えていないと言って、国民にはかなり変わっているように見えるわけですよ。変えていない、変えていないと。

 総理、四十七年見解をおっしゃりましたが、四十七年の政府見解では、一番初めに「外国の武力攻撃によつて」と書いてあるんですよ。外国の武力攻撃によって国民の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態ということで、集団的自衛権をこれは否定しているんですね、最終的な結論としては。ただ、過程はこういう過程になっているわけです。

 そういう意味では、「外国の武力攻撃によつて」という四十七年見解の「外国の武力攻撃」というのは、これは外国の日本に対する武力攻撃というふうに読むわけですか。

安倍内閣総理大臣 いわば、先ほど申し上げました砂川判決と四十七年の政府見解は軌を一にするものでありまして、その考え方について申し上げますと、まさに砂川判決においては「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうる」、こう書いてあります。この中には個別的、集団的という言葉は全く書いていないわけでありますが、この論理と軌を一にする論理を四十七年見解でも展開しているわけでありますが、当てはめにおいて、集団的自衛権の行使は認められないということになったわけでございます。我々は、基本論理を維持しつつ、当てはめを変えたわけであります。

 そこで、大切なことは、これは長妻さんも最初のところでいわばちゃんと理解をしていただかなければいけないわけでございますが……(長妻委員「いや、簡単な話ですよ。ちょっと委員長」と呼ぶ)まさに簡単な話ですから申し上げますと、第一要件は、我が国の存立が脅かされる、我が国の存立が脅かされる、何回も申し上げますが、我が国の存立が脅かされ、そして国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から脅かされる事態なんですよ。これは、我が国が攻撃されればそういう事態になる。しかし、他国が攻撃されてもこういう事態に当たる場合もあり得るということであります。

 当たり得るという例については、今までも例として幾つか申し上げてきました。それはまさに、我々は、専守防衛とは変わらない、つまり、近隣国で紛争があって、そこから逃れようとする邦人を乗せている米国の艦船が他国から襲われたときにこれを防衛するということは、まさに国民の生命そして自由、幸福追求の権利を守ることになるわけでありまして、今まではそれはできなかった。できなかった。長妻さんはそのままでいいとおっしゃっている。でも、我々はそうは思わない。そうは思わないんですよ。それは当然守らなければいけないということであります。

 つまり、これは当然、専守防衛の中に……(長妻委員「ちょっともう長いから。はい、わかりました。委員長」と呼ぶ)まだ答弁中です。

浜田委員長 簡潔にお願いいたします。(発言する者あり)

安倍内閣総理大臣 まさに、関係ないことではなくて、これが本質なんですよ。本質ですよ。

 ですから、専守防衛とこれは密接にかかわっていますよ。それは専守防衛ではないと長妻さんはおっしゃるんですか、今私が申し上げた例は。これはまさに専守防衛だというふうに申し上げているわけであります。

長妻委員 いや、何でこれで拍手があるのかわからないんですが。

 私が言っているのは、定義が変わったじゃないですかということを言っているんですよ。総理は、定義が変わっていないと。いや、変わったと何でおっしゃらないんだろう。

 それで、法制局長官がおられますから、ちょっとお伺いしますが、四十七年見解、あくまで外国の武力攻撃によって国民の権利が根底から覆される急迫不正の事態ということは個別的自衛権があるというふうな見解があるんですが、ここの「外国の武力攻撃」というのは、外国の日本に対する武力攻撃及び外国の密接に関係する相手国に対する武力攻撃と、両方含まれているということなんですね、四十七年見解というのは。

横畠政府特別補佐人 四十七年政府見解の御指摘の部分、「外国の武力攻撃」という部分でございますけれども、これは、憲法九条のもとで例外的に自衛の措置としての武力の行使が認められる、その理由を述べた論理の部分でございます。

 この昭和四十七年見解のそういった基本論理を前提とした結論部分というのが最後に書かれておりまして、「そうだとすれば、」という部分でございますけれども、「そうだとすれば、」というところで初めて「わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られる」という文言が出てきます。つまり、我が国に対するということが明示されるのは、「そうだとすれば、」という部分の結論の部分でございます。そうしますと、前提としての「外国の武力攻撃」という部分は、必ずしも我が国に対するものに限定されていない。

 当時におきましては、そのような国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆るような急迫不正の事態というのは、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られるという認識を持っていた。それとあわせて、結論の「そうだとすれば、」ということで、「わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られる」ということが言われているというふうに理解しております。

長妻委員 四十七年見解、最終的には集団的自衛権を否定しているんですが、このよく引用される外国の武力攻撃によって権利が根底から覆される、これは、我が国のみならず外国の他国への武力攻撃というのもこの四十七年の時点で含んでいてこういうふうに書いたんだというふうに今おっしゃったわけですが、総理、これでよろしいんですね。

安倍内閣総理大臣 法制局長官がただいま政府を代表して見解を述べているとおりであります。

長妻委員 これは、でも、法制局長官、最終的には「集団的自衛権の行使は、憲法上許されない」という結論が出ているわけですよ。確かに、その前提に「他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とする」ということで、他国というのは他国が我が国ということで書いてあるのに、外国の武力攻撃というのは、ここの答弁を書いた時点で、既に密接に関係する他国というのも含まれて書いたということで本当によろしいんですね。

横畠政府特別補佐人 この点は、昨年来何度か御説明させていただいておりますけれども、昭和四十七年の政府見解の基本論理の部分にございますのが、先ほど申し上げた「外国の武力攻撃によつて、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処」する、この場合に限って憲法九条のもとでも例外的に武力の行使が許されるという、基本的な考え方を述べた部分でございます。

 論理構造上それが基本論理でございまして、その後に、「そうだとすれば、」ということで結論を述べている。基本論理と結論を結びつけるものとして、当時の事実認識があるというふうに考えております。

 当時の事実認識というのはどういうことかといいますと、先ほど申し上げたような、「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」というものは、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られるというふうに当時は考えていた。その基本論理と事実認識を合わせて、結論部分の「わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られる」、すなわち個別的自衛権に限られ、「集団的自衛権の行使は、憲法上許されない」という結論を当時は導いているということでございますが、今般、その事実認識の部分を改めまして、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合も、先ほど申し上げた、基本論理でいいますところの、まさに「外国の武力攻撃によつて国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処」するということに当てはまるということであると考えたということでございます。

長妻委員 これは何だかおかしな話じゃないかなと思うんですよね。

 当時は、四十七年見解というのは、外国の武力攻撃というのは外国の日本に対する武力攻撃というふうに読んだけれども、今は、それはそうじゃない、外国の我が国への武力攻撃もあるけれども、外国の密接に関係する第三者というのも読めるんだと。途中で変えてというか、当てはめというか、解釈というか、それで変わっていないというのはいかがなものかと思うんです。

 もう一つ、専守防衛と関係するのは、自衛隊というネーミングなんですが、なぜ自衛隊という名前がついたのか。

 宮沢内閣総理大臣が平成五年の二月四日の国会で答弁されているんですが、目的は専守防衛、自衛のためでございますから、それならば自衛隊という言葉が適当ではないかというのが沿革であったと思いますと。つまり、専守防衛、当然、このときの専守防衛というのは、私は定義を総理は変えたと思うんですが、日本に対する攻撃に対して防御するというのが専守防衛なんですが、それで自衛隊、自衛。やはり自衛というふうに言葉が、感じるのは、当然、集団的自衛隊なんていうネーミングで考えている方はいらっしゃらないわけで、そうすると、自衛隊という名前自体を、これは誤解を招くので、皆さんとしてどう考えるんですか、自衛隊という名前。専守防衛の定義を私は変えたと思うんですが、自衛隊という名前自体も、この法案が通ると、これは非常に誤解を招いてしまうと思うわけでございます。

 そして、もう一つ変わった点でいうと、同じ宮沢総理大臣の予算委員会での御答弁、平成四年の二月十九日でございますが、我が国が海外において武力行使をすることは、これは許されないことである、あるいは、我が国は、憲法によりまして軍事大国にならないことを決心いたしております、また憲法九条もございまして、国権の発動としての武力行使をすることは海外においてできないという、これはもう確固としたことでございますと。

 憲法九条があるから海外での武力行使はできない、これは確固としたことだとおっしゃっているんですが、当然、この解釈というか、この答弁は変えるということでよろしいんですね。

安倍内閣総理大臣 海外での武力行使、いわば一般に海外派兵は認められない、これはまさに一貫した立場でございます。その立場には変わりがないということであります。

 先ほども法制局長官が答弁をいたしましたが、いわば四十七年の基本的な論理というのは、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとは到底解されず、外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に対処するためのやむを得ない措置として必要最小限度の武力行使は許容されるというのが、これは基本原理であります。

 その中において三要件をつくり、そして当てはめにおいて、いわばこの三要件の中において一部、この三要件に当てはまる集団的自衛権の行使の一部容認を認めた、当てはめたということでございます。

 当時の宮沢総理が答弁している、いわば海外派兵は一般に認められない、これは当時から、個別的自衛権においても当然そうでございますから、同じなんですよ。集団的自衛権においても、自衛権においてかかる制約においては、当時も三要件がありました。必要最小限度というものも同じように入っていたわけでありまして、新三要件の中にも、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、こうあるわけでありますから、当然、一般に海外派兵は許されない、これは変わらないということでございます。

長妻委員 宮沢総理は、別に他国の領域とかいうお話ではなくて、海外ということでおっしゃっているんですね。

 昭和二十九年の六月二日には、参議院の本会議で海外派兵禁止の決議も出ている。これは別に、さっきから議論がある他国の領域でということじゃないんですよ。海外の武力行使、これはできない、憲法九条では。でも、宮沢答弁は変わっていないとおっしゃる。

 しかし、これは、国民の皆さん、どうですか、聞いていて。私は大きく変わったと思うんですが、変わったということを正直におっしゃらないで、変わっていない、変わっていないと。さっきの専守防衛じゃありませんけれども、それは建設的な議論にならないんじゃないのかということを申し上げたいわけです。

 そして、総理は先ほど答弁の中で、この新三要件について、三番目の必要最小限度というのは法律に明記されていますというふうにおっしゃいました。何条に書いてあるんですか。

横畠政府特別補佐人 法案と新三要件の関係でございますけれども、法案には新三要件が過不足なく書き込まれていると認識しております。

 新三要件に関しましては、自衛隊法及び事態対処法の改正に対応する規定がございます。

 すなわち、要件が三つございますが、第一要件につきましては、防衛出動について規定する自衛隊法七十六条第一項において規定がございます。また、事態対処法においても同様の定義規定を設けております。

 第二要件につきましては、自衛隊法及び事態対処法に規定がございます。

 ちょっと省略しましたけれども、第三要件につきましては、従前の三要件と同様に、防衛出動時の武力行使の権限を規定した自衛隊法第八十八条第二項において「武力行使に際しては、」「事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならない」と規定されているとおりであることから、これを維持するとともに、今般、事態対処法におきまして、現行の第三条第三項において、武力攻撃が発生した場合について「武力攻撃が発生した場合においてこれを排除するに当たっては、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。」と規定されていることと並べまして、新たに、同条第四項によって「存立危機武力攻撃を排除するに当たっては、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなされなければならない。」との基本理念を明らかにしているところでございます。

長妻委員 そうすると、今、必要最小限度という言葉をおっしゃらなかったんですが、全部条文を読んでいただいたと思います。主には自衛隊法八十八条だと思うんですが、必要最小限度というのは……(安倍内閣総理大臣「だって、前からそうなんです」と呼ぶ)そうですね。総理が今やじをおっしゃいましたが、前からそうなんです。それは個別的自衛権でもそうです。武力行使は、「事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならない」と。これがなぜか必要最小限度というふうに、三要素ということで一般的には流布されているわけで、つまり、総理もおっしゃっているんですが、こういう態様の均衡性なんですよね、必要最小限。

 そうすると、新三要件において、海外の例えば領土、領海、領空で武力攻撃する、あるいは空爆をする、あるいは地上戦をする、これは、均衡性が保てればそれはできなくはないというふうに解釈されてしまうんじゃないですか。

岸田国務大臣 必要最小限度という用語ですが、国際用語で言う必要最小限度、国際法の用語としての必要最小限度、これは均衡性を意味する、委員御指摘のとおりであります。

 しかし、同時に、我が国においては、この三要件を通じて、我が国に対する武力攻撃、または我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険をつくり出している、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃、これを排除する、こうしたために必要最小限度である、こういった枠を当てはめております。

 よって、我が国における必要最小限度、国際法の用語で言う均衡性という意味とは一致するものではありません。

長妻委員 それはちょっと違うと思うんですね。均衡性は均衡性で、ただ、それを守る価値というのが日本の存立危機を排除すると。その範囲における均衡性ということだと思います。

 そういう意味では、日本の存立危機を排除する、そういう前提の中での均衡性が保たれた武力行使であれば、それは相手が非常に過大な武力行使をしている場合は、論理的に、地上戦とか空爆を否定するという論理にはならないはずなんです。歯どめがないんですよ。

岸田国務大臣 午前中から議論がある中にあって、我が国の新三要件を満たす条件でありますが、再三出ておりますように、イラク戦争あるいは湾岸戦争のような大規模な空爆ですとか砲撃ですとか他の国に攻め込む、こういったことは認められない、必要最小限度、この範囲を超えてしまう、こうしたことであります。

 均衡性という考え方、必要最小限度という言葉について、国際法の用語としては均衡性を意味する、これは御指摘のとおりですが、今申し上げましたように、我が国における必要最小限度は、今申し上げましたような限定が加わっているわけですから、当然この均衡性の議論とは異なるということであり、我が国においてはあくまでも、午前中から御説明しておりますように、そうした必要最小限度という限界があるからして、限定的にこうした権利を行使することになるんだということでございます。

長妻委員 つまり、先ほどから申し上げているのは、政府は、空爆はしないんだ、そして地上戦もしないんだ、これは必要最小限度を超えていると。それは、国民の皆さん、国会の審議を見ていたら、そうだと思ってしまう可能性があると思うんですね。ですから、私が申し上げているのは、私は、理論的に言えば、地上戦や空爆についても政府はやる可能性があるというふうに私は理解しているから質問しているんです。

 つまり、どういう論理かというと、先ほどから申し上げておりますが、日本の存立危機を排除する、これはほかの国の集団的自衛権とは違いますよね。我が国の存立危機を排除するという前提があります。その前提でないと集団的自衛権は行使できない。ほかの国と違うというのはよくわかります。しかし、もし、相手が大規模な武力行使をしているときに、日本の存立危機を排除できない武力行使、つまり地上戦とか空爆がなければ日本の存立危機を排除できない、そういう均衡性がある状況のときには、それは空爆や地上戦も排除はできない、そういう論理的帰結を私は申し上げているんです。

岸田国務大臣 先ほど申し上げておりますように、国際法上の用語としての定義は存在いたしますが、我が国におけるこの必要最小限度という言葉の使い方として、新三要件自体が、我が国の存立、あるいは国民の生命、自由そして幸福追求の権利が根底から覆されるような明白な事由が存在し、なおかつ他に手段がなく、そしてその上で必要最小限度という条件をつけております。

 当然のことながら、大規模な空爆、イラク戦争や湾岸戦争のような大規模な空爆等、こういったものはこの最小限の限度を超える、これは当然のことであり、それは行うことができない、これは再三御説明をしているとおりであります。

長妻委員 いや、最後が理論が飛躍しちゃうんですよね。均衡性なんですよ、基本的には、どっちにしても。ただ、前提が、存立危機を排除する。

 では、向こうが大規模にやって、こちらが地上戦や空爆をしなければ存立危機が排除できないという事態になったらどうされるのか、こういうことにもつながるわけで、ちょっとこれはまた議事録を精査して、また今後ともやりますけれども。

 では、総理、的確に今の質問に答えてください。

安倍内閣総理大臣 今、長妻委員の理解は間違いです。まず、間違いだということを明確に述べておきたい。

 それは、もう再三再四外務大臣が答弁しているとおりでありまして、国際法上は、まさに均衡論としての必要最小限度、いわば武力行使が認められる中においては必要最小限度の中にとどまる。

 しかし、同時に、我が国は、憲法九条の制約の中において四十七年の政府見解があったわけでございます。そして、今回の新三要件があるわけでございますが、その中における必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、これがあるわけでございまして、まさに我々は、そういう解釈の中において、一般に海外派兵は認められないというのがかかっているわけですよ。これは今でも変わらないわけであります。ここは、いわば均衡論とは別の世界だということは、もうおわかりいただけたのではないかと思いますよ。

 その中においても、いわばホルムズにおける機雷の除去については、これはまさに受動的そして限定的になるものであることから、これも均衡論とはかかわりがないことでございまして、この必要最小限度の実力行使にとどまるべきことの三要件目には当たる可能性がある。ただ、もちろん、第一要件については、それは総合的に判断する必要があるわけでございます。

長妻委員 ですから、例外があるわけですよ、総理おっしゃっているように。

 ですから、そういう意味では、均衡論として、それで必要最小限、均衡だと、その目的を達成するために考えれば、その例外となり得るのではないかというふうに私は考えているわけであります。

 そうしたら、ちょっと聞きますけれども、これまで国連に、私の理解では十三事例ほど集団的自衛権行使というのが安保理等に報告されていると思いますが、その中で、例えば他国の領域ではない形で集団的自衛権が行使された例というのは何例ぐらいあるんですか。

岸田国務大臣 国連に報告されている集団的自衛権行使の例、合わせて十四件あると承知をしています。

 そして、その態様について御質問をいただきました。

 この報告の事例について、具体的な態様について網羅的に把握することは困難であるとは思いますが、要するに、他国の領土でないとおっしゃいましたので多分公海とかそういった部分を指摘されているんだと思いますが、この十四の例を見る限りは、それぞれ陸上での行使がほとんどのようであります。

 ただ、一方で、公海のみで集団的自衛権が行使されること、これは事態によっては十分考えられることではないかと考えます。

長妻委員 他国領域ということですね、今おっしゃったのは。他国領域で、つまり公海上ではないということですね、集団的自衛権について。

 ですから……(岸田国務大臣「済みません、ちょっといいですか」と呼ぶ)では、どうぞ。

岸田国務大臣 今申し上げたのは、国連に報告されている事例についての御質問だったと思います。

 そうすると、その事例を見る限りは、それぞれ地上で行使されているというのがほとんどであります。

 他国領域以外でと……(長妻委員「他国領域でしょう、だから国連は」と呼ぶ)事例についてはそういうことであります。

長妻委員 ですから、集団的自衛権というのは基本的には他国の領域で、基本的というか全部、報告されているのが全部なんですよ。

 だから、総理、いや、では、フルスペックでやらない、領土、領海、他国の領域では日本は集団的自衛権を行使しないんだと。つまり、集団的自衛権を行使する際にも公海上に限定して、そこまでは、領域の手前の公海上で日本は集団的自衛権の役割を一般的に果たす、それが通例なんだ、こういうふうに理解してよろしいんですか。

安倍内閣総理大臣 つまり、我が国の今般の平和安全法制における集団的自衛権の行使については、他の国々とは当然違う。それは、今委員がおっしゃったように、これはフルに集団的自衛権が行使できないということでありまして、その中で、三要件の中に入らなければ行使できないということであります。

 その例として、例えば公海上において米艦が攻撃を受けた場合、例えば飛んできた対艦ミサイルを撃ち落とすことができるかどうか。今はできないわけであります。これはなぜかといえば、集団的自衛権の行使に当たるということでございますが、これは今回の法改正あるいは解釈の変更によってできることになる、こういうことでございます。しかし、他国の領土、領空、領海に武力行使を目的に出かけていって空爆とか砲撃、大規模なものを行っていくということは、これは第三要件に反する、こういうことでございます。

長妻委員 国連に報告された十四件は全部他国の領域でやっているわけで、総理はこの場ではそういうふうにおっしゃりますが、私が本当に懸念するのは、国会答弁はそうだったけれども、実は行使してみたら他国の領域が一般的だった、こういうことに本当にならないようにしないといけない。今までのやりとりを聞いていると、私は不信感が非常にあるわけであります。

 そしてもう一つは、では、今回、憲法の解釈を変えましたが、憲法改正を総理は考えておられるというふうに思いますけれども、総理というか自民党は。そういう意味で、自民党の憲法改正九条という、改正の試案を見てみますと、憲法九条を変えて、自民党は、「自衛権の行使には、何らの制約もないように規定しました。」と。つまり、「この「自衛権」には、国連憲章が認めている個別的自衛権や集団的自衛権が含まれていることは、言うまでもありません。」と。つまり、フルスペックの集団的自衛権を憲法改正で認めていこう、こういうのが自民党の憲法改正草案だと思います。

 憲法を今回これだけ、私は解釈の限界を超えていると思うんですが、変えて、そして、それでは足らずにまた九条を変えるということであれば、初めから憲法改正をして、国民の皆さんに大きな議論を巻き起こして御理解をいただくという手法をとった方がよかったんじゃないかなと私は思うんですが、自民党総裁としていかがでございますか。

安倍内閣総理大臣 憲法改正については、我が党は、立党以来、憲法改正を綱領として掲げてきているわけであります。我が党にはちゃんと綱領がございましたから。そこで、九条も含め憲法全般について我が党の考え方について述べさせていただいている。この改正案については、谷垣総裁の時代に、自民党の多くの議員が参加をして議論を重ね、つくり上げたものでございます。

 憲法というのは、まさに国民的な議論が深まり広がっていかなければ憲法改正というのは成就できないのは当然のことであろう、こう思います。

 と同時に、我々は、常に、国民の生命とそして幸せな暮らしを守っていくという責任を持っているわけであります。大きく変化する安全保障状況に目をそらすわけにはいかないんです。我々はそう考える。長妻さんはそうではないかもしれませんが、我々はそう考えるわけでございます。

 そこで、いわば集団的自衛権の行使についても、常に、いわば海外の領土にいきなり行くと。しかし、我々は行かないと言っている。しかし、行かなくても、やるべきことはたくさんあるじゃありませんか。先ほど来申し上げているように、退避してくる邦人を退避させるためのいわば米軍の艦船を、これは守らなくていいのか、公海上であって、攻撃を受けた場合。我々はそうは思わないからこそ、変えるわけであります。いわば長妻さんは、それも必要がない、こうお考えかもしれませんが、我々は、変えるべきだろう。

 しかし、同時に、憲法の制約がある中においては海外派兵は一般に禁じられている。この論理は当然貫かなければならない、こう考えているわけでございまして、憲法については、まさにこれからしっかりと国民的な議論が広がっていくことを期待したい、このように思います。

長妻委員 いや、全く答えずに、何か安倍総理こそレッテル張りじゃないですか。米艦船が攻撃を受けていて、何も日本はしなくていいなんて、私は一言も言っていないですよ。そんな話題もしていないのに、何で決めつけるんですか。

 日本は、周辺事態法があるでしょう。周辺事態法があるでしょう。日本を守っている米艦船に対して攻撃があるとき、例えば周辺事態法で支援する。あるいは、私が十年ほど前、国会で質疑をしたときに、法制局長官の御答弁があって、公海上で日本を守るために展開している米艦船に対する攻撃をもって、我が国に対する武力攻撃の着手とみなすこともあり得るという答弁もあるわけですよ。

 着手というのは、総理、おわかりですよね、物理的に攻撃を受けていなくても、実際に着手があれば我々は反撃できる。アメリカやカナダはもっと幅広に着手という概念を広げておりますが、個別的でも。でも、日本はそういう国会答弁の積み重ねがあるんですよ。

 何かレッテル張りで、米軍が攻撃されたら、日本周辺で日本は何にもしないでいい、そういうふうに長妻は思っている、そういうレッテル張りはやめてください。やめてください。

 それで、今の質問は、憲法九条を変えて、フルスペックの集団的自衛権を、そういうふうに実現しようというふうに自民党の憲法草案に書いてあるのに、今回、憲法の改正をせずに解釈でやっていくというのはいかがかということです。これは指摘をしておきます。

 そして、先ほどからの自衛隊のリスク論、大串さんも質問しましたけれども、もうちょっと視点を変えていくと、総理は抑止力ということをよくおっしゃります。抑止力が高くなるから、全体として安全が確保できると。

 ただ、安全保障の世界には、セキュリティージレンマという、安全保障のジレンマという言葉もあるわけですね。これを、総理、御存じだと思いますが、説明いただければ。

安倍内閣総理大臣 安全保障のジレンマというのは、基本的に、これはまさに、抑止力をきかせるためにこちらが軍事力を増強していくことによって、いわば相手方も反応していくということになっていくわけでございます。

 ただ、それはまさに、抑止力を全くきかせなくていいということにはならないわけでございまして、しっかりと抑止力をきかせていく中において外交努力をしていくというのは当然のことであろう、このように思います。

 同時に、先ほど長妻委員がおっしゃったわけでありますが、いわば公海上で、米艦がいて、米艦が攻撃されれば直ちに個別的自衛権として米艦を守るということは、基本的にはこれは認められないわけであります。基本的な考え方としてはですよ。ですから私は先ほど申し上げたわけでありまして、周辺事態安全確保法においても、やはり戦闘地域となれば、それはそこから出ていかなければいけないわけでありますし、飛んでくる対艦ミサイルを撃ち落とすなんということは、もちろんこれは許されないわけであります。ですから、私が申し上げたことは事実であろう。ですから、それはそのままでいいんでしょうかということを申し上げたわけであります。

 ただ、長妻さんは確かに、それはやらないんだということは明示されていないかもしれませんが、やるとも明示されていないわけでございまして、こんな重要なことを、やるとかやらないとかいうことについて立場を明確にしなくて果たしていいのかというのが私どもの疑問でもあるわけでございます。

長妻委員 総理、またレッテル張りは本当にやめていただきたいんですよね。

 総理、いいですか。米艦船が、さっきも申し上げましたように、公海上に展開している。それに対する武力攻撃において、これは時と場合によっては着手として反撃することもでき得るという国会での答弁もあるわけで、しかも、今回の、今ここに出ている集団的自衛権の行使はフルスペックじゃないわけですよね。我が国の存立危機、権利が根底から覆される、私は、これはほぼ切迫事態や着手にかなり重なっている部分が大きいと思うわけです。そんなに幅広に使えないわけですよ。

 そういう意味では、周辺事態法できちっとそれをサポートして、そして、あしたまた我が党は質問しますが、我々が考えている新しい法案できちっとサポートする。フルスペックの集団的自衛権ではないといいながら、私は、フルスペックの当てはめになりかねない、そう国会答弁を聞いて感じるわけで、申し上げているんです。

 それで、総理はちょっと、全然お答えになっていただかないんですが、安全保障のジレンマというのは、基本的には、抑止力を高めていくと相手も抑止力を高めて、そしてどんどんそれがエスカレーションして、結局は抑止力がきかなくなる、こういうようなリスクも考えていかないといけないということを私は申し上げたつもりであります。

 そして次に、安保条約について、総理はいろいろなところで双務性を高めなきゃいけないというふうにおっしゃっているんですが、これはどんな意味でございますか。

安倍内閣総理大臣 先ほどのいわば抑止力のジレンマについて言えば、これは相手方がいろいろな疑念を持ってくるということにもつながっていくわけでありますが、我が国の場合は透明性を持っています。一〇〇%透明性を持って防衛費も防衛力についてもお示しをしているわけでありますから、他国が、我が国がどれぐらい大きいものを持っているんだろうという疑念の中において、さらに自分たちの軍事的能力をふやしていくということには基本的にはならないということは押さえておく必要があるんだろうと思います。

 そこで、双務性を高めるということについては、いわば、まさに旧安保条約の話を午前中展開させていただいたわけでございますが、これはまさに片務的なものであったわけでありますが、かつ、片務的ではあるけれども防衛義務も入っていなかったわけでございます。

 安保条約を改定したことによって、五条で共同対処をしていくという日本防衛義務が入りましたが、同時に、極東の平和と安定のために我が国の施設を基地として使用することができるということで、いわば双務的な条約になっているわけでございます。

 大切なことは、お互いに助け合っているという気持ちを持っていくということも大切なことでありまして、共同対処するということが書いてあるから自動的に常にということではなくて、やはり米国も日本をしっかりと必要としていて、米国の国益にも、日米同盟をしっかりと維持、堅持、強化していく、そして日本に何か戦禍が及んだときにはしっかりと共同対処していくという認識を、民主主義の国家ですから、国民的にも持っていただく必要も私はあるんだろう、このような認識から申し上げているわけでございます。

 そういう中におきまして、今回新しいガイドラインを定めまして、そして今回この新しい法制を行っていくことによって日米の同盟はより機能が強化されていく、このように思うわけでございます。

長妻委員 先ほどの、ちょっと総理は一問おくれでまたいろいろなことをおっしゃるんですけれども、安全保障のジレンマの話ですが、透明性が日本は高いと。それは、日本よりも透明性の低い、軍事力の中身がベールに包まれている国というのは確かにありますが、透明性が高いと安全保障のジレンマは起こりにくい、こういうことと余り相関関係はないと思いますよ。そういうことをもうちょっとお考えいただければと思っております。

 透明性が高いと安全保障のジレンマは起こらない……(安倍内閣総理大臣「起こりにくい」と呼ぶ)起こりにくい、こういうようなことをおっしゃりましたけれども、それは私はもっと別の考え方だってあると思っております。

 そして、安保条約の話ですけれども、そうすると、今回ここに出ている法律というのは安保条約の双務性を高める方向になるということなんですか。

安倍内閣総理大臣 安保条約に記されている五条と六条、これがあります。条約上の義務は全く変わることはありません。つまり、新たに我々に条約上の義務が発生するわけではないということは申し上げておきたいと思いますし、新ガイドラインにおきましても、このガイドラインによって新たな義務が発生するわけではないということであります。

 しかし、新しいガイドラインによって、また今回の平和安全法制によって、日米同盟の効率性あるいは機能性も含めて、きずなは明らかに強化されるわけであります。それは抑止力につながり、日本の平和と安定につながっていくんだろう、こう考えているわけであります。いわば、抑止力のジレンマということをおっしゃったわけでありますが、抑止力のジレンマがあるから、では抑止力は要らないんだという話では全くないわけであります。

 その中において、我々は、透明性を持ったしっかりとした抑止力を持ちながら、軍拡競争には決して陥らずに、しかし、日本はしっかりと守っていくという防衛力を持ち続ける、こういうことでございます。

長妻委員 総理は相当レッテル張りですね。抑止力のジレンマを言ったらば、抑止力は要らないと言うんですねと。相当単純というか、レッテル張りがお好きだなというふうに思うのでございますが、そうすると、安保条約の五条と六条でありますけれども、ある意味では、集団的自衛権を入れるというようなことでアメリカとの双務性が高まるというふうに考えるとすれば、六条における基地提供については、これは軽減をするというような考え方も安保条約の中で出てくるわけでしょうか。

安倍内閣総理大臣 安保条約の条約上の義務は双方にとって全く変わらないというのは、申し上げたとおりであります。

 六条において、我々は基地の提供を、供与するという義務を負っているわけでございますが、その中において、基地が沖縄に偏在をしている。沖縄の基地負担の軽減に向けて、我々はしっかりと歩みを進めているわけであります。今回の法整備いかんにかかわらずこれは進めていかなければいけないわけでありまして、嘉手納以南の返還、これも今着実に、安倍政権になって、これは進んでこなかったものが新たに進み始めるわけであります。

 そして、辺野古への移設についてでございますが、これはそのまま基地が移設されるわけではなくて、面積においても縮小されるわけでありますし、防音施設が必要な戸数が一万戸現在あるわけでありますが、それをゼロにしていくということでございます。

 今後とも、基地負担の軽減に全力を尽くしていきたい、このように考えております。

長妻委員 これで終わりますけれども、変わらない、変わらないといって、実態は変わっているのであれば、ちゃんと変わったというのを真摯に国民の皆さんに説明するべきだと思います。よろしくお願いします。

浜田委員長 次に、松野頼久君。

松野(頼)委員 維新の党の松野頼久でございます。

 質問をさせていただきたいと思います。

 まず、総理、総理のお父様とも親しかったうちのおやじの松野頼三は、吉田茂氏の秘書官から政界に入りました。戦後、本当に敗戦のさなか、吉田元総理はこういうふうに言ったそうです。

 今は国民が飯も食えないで貧乏な状態だから仕方がない、でも、松野君たちの時代に必ず、自分の国は自分の手で守れる国をつくりなさい、今は仕方がない、こういうことをおっしゃったというふうにおやじからは聞いております。

 この日本は、果たしてどうだったんでしょうか。私は、この戦後七十年、確かに平和が守れたということはありますが、経済成長一辺倒で、ある意味自分の国を自分の手で守るということを少し置き去りにしてきているのではないかというふうに思うんですね。

 きょうは、そういう観点からしっかりとした議論をさせていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いを申し上げます。

 さて、総理、総理がアメリカの議会でスピーチをされました。ある意味大変好評だった。ちょうどその後、私もワシントンに行って、感想を聞きましたら、大変好評なスピーチでした。

 ただ、その好評なスピーチ、非常に歓迎ムードというのは、ある意味我が国にとって非常に怖いことではないか。ある意味非常に日本に多くの期待をアメリカはしているのではないかということを、逆に感じた次第です。

 そこで、アメリカのスピーチにおきまして、総理はこのようにおっしゃいました。日本は、世界の平和と安定のためにこれまで以上の責任を果たしていく、そう決意しています、そのために必要な法案の成立をこの夏までに必ずいたします、このようにおっしゃっているんですね。

 帰ってこられて、五月十四日の日本の国内における記者会見は、国民の命と平和を守り抜く、この決意のもと、本日、日本と世界の平和と安全を確かなものとするために平和安全法制を閣議決定しましたと。特に強調されているのが、日本が武力を行使するのは日本国民を守るため、これは日本とアメリカの共通認識であります、このように国内ではおっしゃっているんです。

 冒頭申し上げたアメリカにおけるスピーチ、日本は世界の平和と安定のためにこれまで以上の責任を果たしていく。これは期待しますよ。もっとアメリカと一緒に戦場に行って戦ってくれるのではないかということを期待されてもしようがない。国内には、日本の国民を守るためにしか武力行使はしないと、非常に小さ目に言っているんですね。この辺、非常に私は違和感を感じているんですけれども。

 党首討論で申し上げました。この国会の審議、国権の最高機関である、この法律の成立の過程の審議、ここで、どうか、総理、国民に真摯に答えていただいて、きちっと、リスクがあるものはリスクがある、こういう問題点はある、こういう危険はあるということを、しっかりこの審議の中で伝えていただきたい。どうも国内には小さく小さく言って、アメリカでは大きく、期待を持たれるような言い方をしているのではないかと思いますが、総理、一言お願いいたします。

安倍内閣総理大臣 私が議会で申し上げたのは、まさに積極的平和主義について説明をさせていただきました。今まで以上に世界の平和と安定のために貢献をしていくということを申し上げた。

 今回、PKO法についてもそうです、改正をします。そして、任務遂行型の武器の使用もできるようになることによって、一緒に活動しているPKO部隊がもし攻撃を受けた際に救出ができるようになるわけでありますし、NGOの方々等々も警護等ができるようになっていきます。そういう意味において、我々がいわば活動しているこのPKO活動、国際平和協力活動においても幅が広がっていくということを申し上げております。

 また、人間の安全保障にも私は言及をしました。日本においては人間の安全保障を重視してきた、それはこれからも変わらない、こういう成果を生んでいますよということも説明し、この分野で私たちはもっとやっていくということもお話をしたわけであります。

 それにあわせまして、いわば今回行っている平和安全法制をこの夏までに仕上げることによってしっかりと貢献していきますよというお話をしたわけでございますが、まさにこの平和安全法制の中においては、日米同盟の集団的自衛権にかかわること以外にもいろいろある、今申し上げたような、PKOにかかわることもあるんだということでございます。

 いずれにせよ、ガイドラインの中にも、いわば我が国が行使できる集団的自衛権については、我が国の存立にかかわることであるという趣旨のことが書き込まれているわけでございまして、これは当然、共通の認識になっているということでございますし、私はまたさまざまな機会に海外でお話をさせていただくこともあります、また米国の議員とも懇談をする場合がありますが、その際にも日本のできる集団的自衛権の行使についても簡略にお話もさせていただく、時間があればお話をさせていただいている、こういうことでございます。

松野(頼)委員 そこで、去年の七月一日の、今回の安保法制のもとになりました閣議決定を見ると、これは資料をお配りしましたので、資料の一をごらんください。従来の政府見解における憲法九条の解釈の基本的な論理の枠内で、国民の命と平和な暮らしを守り抜くための論理的な帰結を導く必要がある。線が引いてあるところです、一ページ目。

 そして、二ページ目。これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るためにほかに適当な手段がないとき、必要最小限度の実力行使をすることは、従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として、憲法上許されると判断する。

 そして、その下。憲法上許される上記の武力行使は、国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある。

 これは、総理、従来の政府見解における憲法九条の解釈の基本的な論理の枠内でというふうにおっしゃっていますよね。今までのこの枠内というのはどういう意味なんですか。お答えいただけないですか。法制局でもいいです。

横畠政府特別補佐人 昭和四十七年の政府見解においてお示しした、憲法第九条のもとでも例外的に我が国が武力を行使することができる場合があるという、その考え方の基本的な論理の枠内ということでございまして、その考え方と整合するものであるということでございます。

松野(頼)委員 武力行使は、国際法上、集団的自衛権が根拠となる場合があると。なる場合があるというのは何なんですか。

横畠政府特別補佐人 武力の行使の根拠につきましては、国内法上の根拠と、国際法上の根拠、違法性阻却と考えますが、これは一応別物と考えております。

 これまで憲法第九条のもとで行使が許されるとしていた自衛権の行使についての議論でございますけれども、このたびの新三要件も含めまして、これは憲法上の考え方でございます。これについて、もとより、国際法上正当化される、つまり違法性が阻却される必要がございますけれども、我が国に対する武力攻撃が発生した場合における我が国の対応、武力行使といいますのは、国際法上は個別的自衛権として整理されます。

 これに対して、我が国に対する武力攻撃が発生していない場合において、他国に対する武力攻撃が発生したということによって我が国が武力を行使するという場合につきましては、国際法上は集団的自衛権として正当化される、そういうことでございまして、このたびの新三要件のもとで憲法上許容される、例外的に許容されると考えましたもののうち、我が国に対する武力攻撃が発生した場合以外のもの、すなわち、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合における我が国の武力の行使というものは、国際法上は集団的自衛権として違法性が阻却されるものであるということを述べたものでございます。

松野(頼)委員 ちょっと、長々答弁しないでいただきたいんですが。

 根拠となる場合がある、この「場合」は、どういう場合なんですか。それを聞いているんですよ、この「場合」を聞いているんです。集団的自衛権の解釈を聞いているわけじゃないんです。きちっと答えてください。

横畠政府特別補佐人 この閣議決定の御指摘の部分でございますが、「憲法上許容される上記の「武力の行使」は、」とありますが、これは新三要件の全体を指しておりますので、我が国に対する武力攻撃が発生した場合も含んでいるわけでございます。その意味で、「国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある。」となっているものと理解しております。

松野(頼)委員 それは、我が国に対する武力攻撃が発生した場合は個別的自衛権なんじゃないですか。そんなものが集団的自衛権に入るんですか、国際法上。

 この「場合」を聞いているんですよ。もう一回答えてください。

横畠政府特別補佐人 この閣議決定で書いてあります、「憲法上許容される上記の「武力の行使」は、」とございます、その「上記の「武力の行使」」といいますのは、先ほど読み上げていただきましたとおりでございますが、「我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、」云々かんぬん、そういう場合も許容されるという、その全体を指していることから、そのうちの個別的自衛権に該当する部分もございますし、集団的自衛権に該当する部分もあるということを述べているものでございます。

松野(頼)委員 この議論をいつまでも続けていても、テレビを見ている皆さんはわからないでしょうから。

 例えば、集団的自衛権、すなわち自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止する権利を国際法上どこの国も持っている、ただ、憲法九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は我が国を防衛するために必要最小限の範囲にとどめるべきものと解しており、集団的自衛権を行使することはその範囲を超えるものであって、憲法上許されないというのが、るるここで議論されていると思いますが、今までの日本の立場ですよね。

 これを今回変えるということですね。そこだけ確認させてください。これはできれば総理に。今までの政府が踏襲してきた集団的自衛権の解釈を変えるんですよね。

安倍内閣総理大臣 四十七年の基本原理、これは砂川判決と軌を一にするものでありますが、これは、自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとは到底解されず、外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に対処するためのやむを得ない措置として、必要最小限度の武力行使は許容されるというのが基本原理であります。

 この基本原理の中において、いわば当てはめとして、我が憲法のもとで武力行使を行うことが許されるのは、我が国に対する急迫不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、したがって、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は憲法上許されないと言わざるを得ないというところについては、我が国に対する武力攻撃が発生したこと、または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があることに、結論について当てはめを変えたということでございますが、基本論理は、最初に申し上げたことが基本論理であり、この基本論理の中で、時代の状況が変わった中において当てはめを変えた、こういうことでございます。

松野(頼)委員 そこで、なぜこの時期に解釈を変えて法改正をする必要があるんですか。

安倍内閣総理大臣 いわば四十七年当時とは大きく安全保障環境が変わっているわけでございます。

 当時は、米ソ冷戦時代であったわけであります。西側のリーダーが米国であり、そして日本の自衛隊はまだまだ現在と比べれば脆弱であった、こういう状況であったんだろう、今と比べれば。しかし、その中におきまして、国際社会における安全保障環境は大きく変わりました。特に、アジア太平洋地域においては大きく変わってきたと言ってもいいんだろう、このように思います。

 北朝鮮は数百発の弾道ミサイルを持っているわけでございまして、同時に、それに載せる核の技術も格段に進歩しているわけでございます。四十七年当時は全くそれは想定されていなかったわけでございますし、また、その弾道ミサイルを撃ち落とすというミサイル防衛の技術もなかったわけであります。ミサイル防衛の技術はなかった。そして、近距離から撃たれる弾道ミサイルを落とすいわばミサイル防衛の技術はない中において、日本のイージス艦が当時はないわけでありまして、現在は我々はイージス艦を有して、そうしたミサイルを撃ち落とす能力も有しているわけでございます。

 その中において、しかし、撃ち落とす上においては米軍との協力が必要であることは間違いない、衛星の協力が必要であることは間違いないわけであります。また、テロあるいはサイバー攻撃もございます。これは国境を越えてやってくるという中において、一国のみで自国を守ることができないという状況になっているというのが現実ではないか、このように思うわけであります。

 そういう中において、先ほども北朝鮮の話をいたしました。あえて地域は申し上げませんが、近隣で紛争が起こった場合、そこから邦人が逃れてくる、乗る船が米艦艇ということもあり得るわけでありまして、それに対する攻撃も起こり得るという状況が今は生起している中において、我々はまさにその米艦艇を守るべきであろう。そのためには、集団的自衛権の一部行使容認をしなければそれはできないということでございます。

松野(頼)委員 要は、普通の、一般の人に話を聞くと、何で今これを変えなきゃいけないんだろう、何でこんなに急いで法改正をするんだろう、何か相当な危機がこの国に迫っているのか、それがわからないんですよ。いろいろ言うけれども、わからないんですよ、まさに。

 北朝鮮の危機が大きくなっているから法改正を急いでいるんですか、今の説明ならば。(発言する者あり)それは、では、中国なんですか。今、中国はどうだというあれがありましたけれども。夏までにこの法改正を必ずやると言って、一般の国民の皆さんには物すごく急いでいるように見えるんですよ。それによって何かこの国に大きな危機が来ているのか来ていないのか、全くわかっていないんですね、素朴な疑問ですけれども。

 何か本当に危機が迫って、この法律で、今まで、過去ずっと積み重ねてきた集団的自衛権の解釈を変えて法改正しなければいけないような事態が本当に起こっているのか起こっていないのか。これは率直に国民に語りかけてくださいよ。もしあるならば、我々も急いで法案の審議に協力します。特段なければ、じっくりとやるべきなんじゃないですか。これは一般の国民の声だと思いますよ。

安倍内閣総理大臣 では、危機が起こらないと言えるのかどうか。松野さんみたいに自信を持って言えるのであれば、こんな法律をつくる必要はないわけであります。しかし、私たちは、国民の命や幸せな生活に責任を持っています。

 起こらなければいいわけであります。起こらないにこしたことはない。五十年、百年、これは起こらないかもしれない、起こらない方がいいわけであります。起こらないようにするためにこそ、我々は法整備をするわけであります。例えば抑止ということはそういうことであります。

 いわば我々は自衛隊を創設した、これは六十年たっています。しかし、個別的自衛権というのは幸い行使していない。だったら行使する必要がないのか、いわば行使することを全く想定しなくていいのかということではなくて、しかし、実際に行使しなくて済むようにするためにこそ、我々は自衛隊をつくり、その精強性を高めてきたわけであります。

 防衛力というのは、精強性を高めていくことによって、結果として実力部隊が一発の弾を撃たなくても済むようになっていくわけであります。なかなかそういう状況が見通せないからといって、家でじっくり休んでいていいということにはならないわけであります。そのためにこそいわば練度を高めている。

 そして、集団的自衛権の行使の容認についてもこれは同じことでありまして、アジア太平洋地域の、一々個別の名前をそう何回も私は挙げません、総理大臣という立場でありますから、特定の国をそう何回も挙げることはいたしませんが、確かに軍事力を増強している国があります。南シナ海で起こっていること、東シナ海で起こっていること、この中において、しっかりとした軍事バランスを保っていくことによって平和と安定を維持していく、抑止力をきかせていく。

 間違っても、相手側に何かすきがあるように思わせないことが大切であります。そのための努力をしていくためにこそ、私たちはやるべきことをやっていかなければならない、このように決意をしているわけであります。

松野(頼)委員 いや、違うんですよ。要は、この国会中に上げると急いでいるんですよ。

 PKOで過去、三国会やっているんですよ。停戦合意がなされているところに、平和維持活動のところに自衛隊を出すという行為に対して、過去の先人たちは、三つの国会をまたいで、本当に議論に議論に議論を重ねてやっているんですよ。今国会でさっと上げるというのは非常に急いでいるように見えるんですよ、国民は。多分、地元へ行けばみんなそうだと思いますよ。

 何でこの時期にこんなに焦って、長年続けてきた集団的自衛権の解釈を変えて、法改正、十本も法律をまとめて出すのか。一体何の危機があるのか、どこに、本当に危機があるならばしっかり言わなきゃだめじゃないですか。それによって法案の中身だって地域だって変わってくるんですよ、どこで活動できるのか、どこで活動しちゃいけないのか。

 要は、どこの危機があるからこの法案をつくり、どこで自衛隊が活動するような形をとる法律のたてつけになっているのかという、一番基本的なことをちゃんと積み上げて説明されないからわからないんですよ。では、どこの国が危機だと思っているんですか。(発言する者あり)

浜田委員長 お静かに願います。

安倍内閣総理大臣 どこの国が危機かということについて、私は再々、名指しをすることは控えさせていただきたいと。その地域に対しての関係がございますから、控えさせていただきたいと思います。

 繰り返しになりますが、これは名指しになりますが、北朝鮮においては数百発の弾道ミサイルを持っているわけであります。これは四十七年とは全然変わります、違っていますよね。のみならず、あのときには核の開発はまだしていません。そして、核の開発は格段に進んでいるわけであります。

 そういう中において、抑止力を高めていくということは当然のことであろう、このように思いますし、安全保障にかかわることは起こってからでは遅いわけであります。そのための備えであって、何か危機が起きたから、ではやろう、これはまさに、先ほど高村副総裁がおっしゃっていましたが、これこそ泥縄になってしまうわけであります。

 その上において、例えば日米において平素から共同訓練をし協力のレベルを高めていく、法整備ができた上で高めていくということがさらに可能となっていくわけでありますが、これは一朝一夕ではありません、積み重ねが必要であります。では、一年、二年、三年、四年先にしていいのかどうか。これはやはり私たち与党としては、私たちの責任でこの法制を仕上げていきたい、こう思っております。

 それは、かつて有事法制を行ったときだってそうであります。有事法制を行ったからといって、あの法律を使うことには幸い今なっていない。しかし、必要がなかったわけではありません。まさに万が一への備えであります。私たちはいわば国会議員として、常にそのことを念頭に置きながら政策を議論していく必要があるんだろう、こう思うわけであります。

 それと、軍事バランスについては先ほど申し上げました。軍事バランスというのはまさに大切なことでありまして、いわば力による現状変更が可能であるということになればどんどんそういうことをやろうとしますが、それはなかなか難しい。

 これはやはり国際的なルールに従っていこうという世界に呼び込んでいく必要があります。呼び込んでいくためにも、しっかりとした抑止力を確かなものとしていく必要がある、我々はこのように考えているところでございます。

松野(頼)委員 総理、時間が短いので、答弁をちょっと短くしていただきたいなと思うんですけれども。

 まず、きちっと国民が理解するようなことをやっていただきたい。今の説明を聞いていると、まるで今の状態が非常に危険な状態であるかのように受け取れますよ。この法案が通らなければ非常に危険な状態だみたいな感じのイメージがあるわけですから。まずきちっとそれを出して、どういう国の守りをする、どういうことを想定して国民の命を守るんだということをしっかり言っていただきたいなというふうに思います。

 それと、中谷大臣に伺いたいと思います。

 中谷大臣は、集団的自衛権を発動するためには憲法改正は必要ですか。憲法改正が必要だ、過去にそういう答弁をされているんですけれども。これは、平成十三年十一月八日、資料の六。

 現行憲法は、これまでの国会での議論の積み重ねでありまして、武力行使をしない、また集団的自衛権を行使しないというように現行解釈をされていました。やはりこういったことを変更するならば、しかるべき手続をして国民の皆さんの合意のもとに憲法を改正する必要があるのではないかと思っています。

 これは、大臣みずからが平成十三年に御答弁されている議事録です。何で変わられたんですか。

中谷国務大臣 それから十三年たっておりますが、確かに憲法を改正すれば集団的自衛権というのは認められて実現するわけでありますが、その十三年の間にも非常に国際情勢が変化をして、先ほど何のためという御質問がありましたけれども、やはり政府としては、国民の命や幸福な生活を守る、その際、法律がなければ自衛隊も対応できない。では、法律の根拠はというと憲法でありまして、すぐに憲法を改正できればいいんですが、国会で三分の二の議決も要りますし、まだ時間がかかる。

 そういう状況で、今回、憲法をもう一度見直しをすれば、従来の憲法の基本的な論理の中で本当に集団的自衛権が読めないのか。これは、ぎりぎりに私も勉強し検討いたしまして、やはりこの基本的論理を変えない中で我が国の存立を維持するためには集団的自衛権の限定的な容認が可能であると私自身も納得し、今回そういうことでこれの法案を提出したということでございます。

松野(頼)委員 要は、手続の考え方をおっしゃっているので、別に国際情勢の変化とかじゃなくて、手続の改正の考え方をおっしゃっているんですよ。

 平成十三年には、集団的自衛権を行使するならば憲法改正をする必要があるというふうに御自身がおっしゃっているんですよ。違いますか。もう一回どうぞ。

中谷国務大臣 確かに、その発言をいたしました。

 自民党というのは常時、安全保障については熱心に議論、討議をいたしておりまして、そういうものができるという立場の方と、また私なりにも、できないという立場で議論をずっとずっと続けてまいりました。

 そういう中で、安全保障をどうするかということで、自民党は選挙に際して、公約、マニフェスト、これをまとめなければならないという段階にありまして、では、集団的自衛権が本当に読めるのか読めないのか。これは、ぎりぎり詰めた結果、今の憲法の枠の中で、従来の基本的論理の中で、集団的自衛権が我が国の存立の際になくて本当に国が守れるかというと、やはり我が国の存立を維持するためには集団的自衛権を容認する場合も必要である、またそういうのは論理的にできるということで、自民党の中で議論をいたしまして、党議決定をして、選挙に臨むために公約といたしました。

 これは、二度、三度、選挙を経て、今回、閣議決定をいたしまして法案の提出ということでありますので、緻密な議論と考察の上、私も納得した上で法案を提出するわけでございます。

松野(頼)委員 何かいろいろ説明していただいたけれども、よくわからないんですよね、なぜ変わったか。これは筋論ですよ、憲法改正をするべきだというのは。

 私のおやじも自民党にいたので同じですけれども、自主憲法制定というのは結党のときからずっと言っているんですよね、もう六十年。だけれども、全くその動きがない。憲法改正を例えば発議しようという努力をされて、それができなかったから解釈を変えるというならまだわかるような気がしますけれども、一度も憲法改正をしようという努力をされていないんじゃないでしょうかね。

 僕らはこれだけ協力しますよと言っているのに、全くそういう声も聞こえてこない。ずっと六十年、多分、その時代の中に可能性が、要は組み合わせによって可能性があった時代もあると思いますけれども、やはり王道は、憲法改正してきちっとやるのが王道なんじゃないかと思いますけれどもね。次に行きます。もうこれは、何回聞いてもここはやはり一緒ですから、いいです。

 きょうは太田大臣に来てもらいましたが、公明党のホームページに、専守防衛に徹し、現在の憲法解釈の基本的な考え方は今回の閣議決定において何ら変わらない、資料七ですね、こういうふうにおっしゃっています。

 専守防衛といいますのは、相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限定するなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいうものであり、これが我が国の防衛の基本的な方針となりますというのが専守防衛ですね。

 今回の、我が国と密接な関係のある国、我が国が攻撃されていないにもかかわらずという集団的自衛権の考え方は、この専守防衛の考え方と合致しているのかどうか、太田大臣にお伺いしたいと思います。

太田国務大臣 私は、大変申しわけないんですが、今、公明党を代表して答えるという立場にもありませんし、今回の法案ということについては、主務大臣でもありませんので、お答えする立場にはございません。

 ただ、あえて申し上げますと、自公の与党協議を経まして合意が形成されて今回の法律案が提出されているもの、このように承知をしています。

 専守防衛等々につきましては、内容等につきましては、きょうも総理また主務大臣からお答えをしたとおりだと思います。

松野(頼)委員 随分この間、公明党さんが歯どめとなってやられてきたと思いますけれども、多分、今回の集団的自衛権、この公明党のホームページとは少し違ってきているんじゃないかというふうに思います。自衛隊が我が国が攻撃されていないにもかかわらず海外で活動する行為というのは、やはり専守防衛の考え方とは少しずれてきている、このように思います。

 そして、これはさっきも議論になったかもしれませんが、機雷掃海です。これは非常に総理はこだわってホルムズ海峡をおっしゃっていますけれども、この機雷掃海は当然武力行使ですよね、今までの解釈で。お答えいただけないでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今まで申し上げているように、一般に海外での武力行使は禁じられている、これはもう述べてきたとおりであります。新しい三要件になっても、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、こう書いてありますから、当然の帰結として、一般に海外派兵は禁じられているということでございます。

 ただ、一般にということを申し上げているわけでございます。その例外的な例といたしまして、機雷掃海について言えば、まさに危険物を除去するという行為ではありますが、武力行使に当たる場合もあるわけでございます。そして、武力行使に当たる場合には集団的自衛権の行使に当たり得るわけでございまして、しかし、受動的かつ制限的なものであります。自主的にどういう状況でやるかといえば、戦闘行為がそこで行われているときには機雷掃海というのはなかなか難しいわけでございまして、木製であったり、あるいはプラスチック製でありまして、攻撃に対する脆弱性がある中においての掃海でございます。

 ですから、例えば、事実上の停戦合意があるけれども法的な効力はまだないという状況はあるわけでございます。話し合いは続いている。そこで、機雷掃海を行うけれども、いわば国際法的には集団的自衛権の行使に当たってしまう場合があり得るわけでありますから、そういうときにはこれは第三要件には該当する。しかし、もちろん、第一要件に該当しなければ行うことはないわけでございます。

 ですから、国際法的には武力の行使ではありますが、極めて限定的、受動的なものであり、それを行う場合にも、なかなかそこで戦闘行為がどんどん行われているときにそれを行うということは考え得ない、このように思うところでございます。

松野(頼)委員 確認ですけれども、では、戦闘行為が行われている中での機雷掃海はしないということですか。

安倍内閣総理大臣 事実上、オペレーションとしてはそれはなかなかできないわけでございます。私の地元にも掃海艇の基地があるわけでございまして、その演習風景を見に行ったこともあるわけでございますが、つまり、それは非常に、もし戦闘行為が行われていれば相当の危険が伴う行為でありまして、事実上、オペレーションとしては成り立たないであろう、このように思います。

松野(頼)委員 その機雷掃海自体が、総理は、能動的な行為であって、決して受動的な行為ではないから集団的自衛権の行使には当たらないような言い方をされています。逆だ。能動的でないと考えるから、集団的自衛権、要は武力行使に当たらないというふうに……(安倍内閣総理大臣「武力行使だよ」と呼ぶ)当たらないというふうに言って、これは例外だというふうにおっしゃっているんですよ、機雷掃海に関しては。海外での武力行使はしない、ただし、機雷掃海は能動的な話だからできるというふうに言っているんですけれども、ちょっともう一回説明してください。

安倍内閣総理大臣 三要件の三要件目というのは、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、こうあります。いわばこの考え方による論理的帰結として、海外派兵は一般に禁じられているというのが、憲法の、我々の解釈であります。

 しかし、一般にということを申し上げましたのは、いわば機雷掃海については武力行使には当たります。私は武力行使に当たると言っています。これは国際法的に武力行使に当たる。常に武力行使ではありませんよ。停戦合意がなされていたら、これは武力行使にはもう既にならない。取ってくださいとそれを敷設した国からの了解も得ているという状況になっていれば、これはまた別の話になってくるわけでございますが、武力行使になり得る、あるいはまたそれは集団的自衛権の行使になり得るわけでございます。

 しかし、それは、今紹介していただきましたように、能動的ではなくて受動的なものであり、かつ制限的であり、実際のオペレーションとしては、恐らく戦闘行為が行われていないときにしか行わないだろう。これは憲法との関係ではないわけであります、政策的な判断でありますが、そういう政策的な判断が恐らくなされ得るであろうという中においては、これは第三要件に当てはまる可能性がある。

 ただ、第一要件に当てはまるかどうかということは、まさにこれはまたそのときの状況を見なければならない。この第一要件もかなり、これは国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険ということでありますから、これはただ経済的な理由だけではだめでございまして、そういうものをしっかりと見ながら判断していくことになるわけでございます。

松野(頼)委員 ホルムズ海峡で機雷掃海を行うに当たって、これも随分議論が出ていると思いますが、国民の幸福追求権が根底から覆される事由、中谷大臣は、天然ガス、原子力の燃料とかも含まれるというふうに答弁されているんですよね、十九日の参議院外防委員会。あと、石油も言われていますよね。

 経済制裁で果たして武力行使ができるという考え方、これはちょっと私は行き過ぎなのではないかと思いますけれども、もう一回そこをきちんと御答弁いただけないですか。

中谷国務大臣 先ほどの答弁は、日本のエネルギーは何で支えられているかということで一つ一つ聞かれたので答弁したわけでございます。

 その認定につきましては、やはり国民生活にとって死活的な状態になるというようなことでありまして、いわゆる武力攻撃を受けたと同様の被害そして国民の犠牲、そういったものを総合的に判断した状況であるということでございます。

松野(頼)委員 要は、それがどういう状態なのかというのをきちっと示してもらいたいんですよ、総理。

安倍内閣総理大臣 いかなる事態が存立危機事態に該当するかについては、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して判断する必要があるため、一概には申し上げることはできません。いわばこれは総合的に判断しなければいけませんから。しかし、それは国の存立の基盤である経済が脅かされるかどうかについても判断の対象になります。

 しかし、単に、国際紛争の影響により国民生活や国家経済に打撃が与えられたことであるとか、ある特定の生活物資が不足することのみをもって、存立危機事態に該当するものではありません。

 海洋国家である我が国にとっては、国民生活に不可欠な資源やあるいは食料等を輸送する船舶の安全確保は極めて重要である、これは委員にも御同意いただけるんだろうと思います。

 仮に、我が国が輸入する原油の八割、天然ガスの三割が通過する、エネルギー安全保障の観点から極めて重要な輸送経路であるホルムズ海峡に機雷が敷設された場合には、我が国に深刻なエネルギー危機が発生するおそれがあります。我が国に石油備蓄はもちろん六カ月あります。しかし、機雷の除去ができなければ、ずっとそこには危機があり続けるのも事実でありまして、誰かが機雷を除去しなければならないということであります。

 存立危機事態については、あくまでも我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生を前提とするものでありますが、例えば、石油などのエネルギー源の供給が滞ることによって、単なる経済的影響にとどまらず、生活物資の不足や電力不足によるライフラインの途絶が起こる。例えば、病院への電力供給も滞ってくる可能性も出てくる、自家発電すら危うくなってくるという状況も起こり得るということも全く考えられないわけではないわけでございまして、国民生活に死活的な影響、すなわち国民の生死にかかわるような深刻、重大な影響が生じるか否かを総合的に評価して、状況によっては存立危機事態に該当する場合もあり得ると考えるわけでございます。

松野(頼)委員 要は、そういう漠然とした話ではなくて、こういう状況ならばそれは武力行使をするんだということが明確じゃないんですよね。多分、この委員会でもさんざん議論が出ていると思いますよ。どういう状況だというのがわからないから、非常に不安を持つ。

 例えば、では、日本は北朝鮮に対して経済制裁をずっと行っていますよね。この経済制裁をもって、北朝鮮が自衛権の発動だと言ったものを認めるんですか。そういう状況としっかりそこは切り分けて、どういう状況になったら日本が武力行使を行える事態かというのをきちんと細かくシミュレーションして示すべきだと思いますよ。でないと非常にそこに不安を持って、経済制裁によって武力行使をするんだというような意識が蔓延している。こういう声が出ていますよ。国際的には考えられないことですよ、こんなもの。これをしっかりまず示していただきたい、このことをぜひお願いします。

安倍内閣総理大臣 まず最初にはっきりさせておかなければいけないことは、国際社会が行っている経済制裁は、いわば北朝鮮がそれによって自衛権を発動することに対する、正当化する理由にはなりません。これは全く間違いないことであって、国際社会が行っている経済制裁に対して北朝鮮がミサイルを撃ってくることと、それとホルムズ海峡における機雷を掃海することは全く同列に扱われないわけでございます。(発言する者あり)

 今申し上げましたように、では、国民の不安とは何かといえば、ホルムズ海峡が封鎖されて、誰も何もやらない、日本もやりませんよという中において、先ほど申し上げましたような深刻な事態に陥って、いわば病院にもエネルギーが供給されないという事態が起こっていていいんですかという話であります。ですから、三要件を私たちは挙げているわけでありまして、国の存立が脅かされ、そして国民の生命や自由や幸福追求の権利が根底から覆される危険があるわけであります。

 先ほど、私は余りやじには反応しないんですが、なぜホルムズかというやじがございましたが、なぜホルムズかというのにお答えすれば、先ほどの私の説明を聞いていなかったのかもしれませんが、石油の八割はあそこを通ってくるわけでございます。そして、六カ月の備蓄があったとしても、そこに機雷があり続ければその状況はずっと残るわけでございます。

 これを除去するということにおいて、先ほど申し上げましたように、事実上の停戦はなされているけれども、戦闘行為は行われていないけれども、法的な、国際法上のいわば停戦が合意されているわけではないという中において、戦闘行為がない中でなければなかなかこれは実行し得ないわけでありますが、そうした中で行うことはあり得る。

 しかし、第一要件に当たらなければならない。第一要件については、先ほど私はあのような例を申し上げて、もう少し具体的にとおっしゃったわけでありますが……

浜田委員長 時間が来ていますので、答弁は簡潔に願います。

安倍内閣総理大臣 危機がどういう危機になるかということについて、個別具体的に今、こうとこうとこうということは申し上げられないわけでありまして、それはむしろ私は無責任ではないか、このように思うわけでございます。

松野(頼)委員 ちょっと、非常に答弁が、いろいろ言っていただくんですが、多分、きょう委員会を朝からやっていて、この委員会を見ていても、なかなか皆さんはわかっていないと思います。どういう状況で、こういう環境が変わったからこういう法整備をして、法整備をされたらこういうふうに変わっていくんだということを、ぜひこの委員会を通じてしっかり御答弁いただきたい、このことをお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、柿沢未途君。

柿沢委員 維新の党の柿沢未途でございます。

 安倍総理、きのうは、就任の御挨拶をさせていただきまして、お忙しい中、大変ありがとうございました。

 そのときにも申し上げましたが、私たちは、何でも反対の抵抗野党をやるつもりはありません。対案型野党として、私たちの政策、維新からの議員立法を示して成果をかち取っていきたい。昨日の安倍総理の御答弁にありましたとおり、ぜひ建設的な議論をしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 安保法制、この集団的自衛権の議論を聞いていて、私、感慨深いものがあるんです。

 先ほど松野代表も御自分のお父様の話をされていましたが、私の父親も、柿沢弘治、自民党における外交、安保政策の専門家の一人でありましたので、この場に父がいたら何と言うだろうなというふうに思うことがあります。

 まだ私が学生だったころですが、父が講演で話していることを聞いたことがあります。仮に北朝鮮が弾道ミサイルを撃って、飛んでくる間に、どっちに向かっているのか、どこに落ちるか、アメリカか日本かわからない、わからない、どうやら日本だ、やっと撃ち落とせる、こんなばかな話があるか、こういう話をしていました。このケースは、政府が昨年与党協議に示したいわゆる十五事例の中に入っている事例であります。だから、考えてみれば、これは二十年も前から同じ話をしているんですね。

 そして、湾岸戦争やカンボジアPKOのころに話していましたけれども、世界の平和に貢献をする、そのためには日本も犠牲を伴う覚悟をしないといけない、もっと言えば、血を流す覚悟を持たないといけない、それを命じる立場にある政治家がその覚悟を持たないといけないと。ここはまさに、父が二十年前、当時の左派政党の皆さんと、国会や、例えば「朝まで生テレビ!」みたいなところで激論をしていたところであります。

 私は、今回の安保法制の議論をめぐって、政府の説明にごまかしがあってはいけないと思っています。危ないことは起こらない、戦争や戦闘をするわけではない、日本はますます平和になる、ここまでの安倍総理やあるいは閣僚の皆さんの議論には、私はそのごまかしがまじっているように思えてなりません。一つ一つ検証してまいりたいと思います。

 一枚目のパネルです。まず、自衛隊のリスクについてです。

 今回、いわゆる安保法制の整備を実現すると、自衛隊は、日本の領域外で他国が行っている戦闘行為に対して、一定の条件を満たせば、参戦して武力の行使もすることができるようになるし、またあるいは、その支援活動を後方で行えるようにもなります。しかも、支援活動では、現に戦闘が行われていなければ、戦闘現場の手前まで行くことができて、そして弾薬も兵士も運ぶ、こういう話もあるわけです。

 同盟国であるアメリカを初め他の国々と責任を分かち合いながら、日本と世界の平和と安全のために求められる協力や貢献を果たす、これが避けられない日本の役割である、そういう場合も私はあると思います。

 となれば、派遣をされることになる自衛隊みずからの生命の危険を伴うようなリスク、海外の任地において武器使用に及び、他国民を殺傷するような選択をとらざるを得ない、そういう場面に直面するリスク、今よりやはり高まるでしょう。また、自国が攻撃されてもいないのに自衛隊を派遣すれば、それによって相手国から敵国とみなされて、日本国内を含め攻撃を受ける、こういうリスクも高まると思います。

 それらのリスクを認めた上で、しかし、日本と世界の平和のために必要なのは今度の安保法制だと真っ正面から説くべきなんじゃないでしょうか。にもかかわらず、今回の安保法制で自衛隊のリスクは増大しないなんて、恐るべきごまかしを安倍総理も中谷防衛大臣も口にしていると思います。そんなのあり得ないでしょう。

 そんな認識で自衛隊員を海外に送るんですかと方々から厳しい指摘を受けて、今度何を言い出したかと思ったら、パネルの下を見てください、これまでの任務も命がけであって、自衛隊は限界に近いリスクを負っています、これまでも自衛隊員はリスクを負って厳しい任務に当たってきましたと。

 つまり、これまでもリスクは一〇〇だったんだから、これ以上リスクは増大しようがない、こういうことですか。これまでの説明とは全く正反対のことを言うことになっているんではないでしょうか。こんな理屈で国民をごまかそうとするようなやり方では、到底この安保法制の整備に対する国民の理解は深まりませんよ。国民は子供ではありません。自衛隊員やその家族は、こんな説明では、私はますます不安になるばかりだと思います。

 やるべきことをやる、その結果として、一定のリスク、この増大は国家として引き受ける、安倍総理も、私は、本心ではそう心に決めておられるんではないかと思います。それを真っ正面から語るべきだと思いますよ。いかがですか、安倍総理。

安倍内閣総理大臣 私は、昨年から、このリスクについての議論をずっと行ってまいりました。

 昨年からも、私は、自衛隊員はそもそも、任官の宣誓がそうでありますが、まさに身をもって責務を完遂するわけであります。それをもって国民の負託に応えていく、この宣誓をするわけであります。つまり、リスクについて、彼らは高いリスクを負っているという話は、もう昨年来話している話でございますから、突然それを話したわけではないということは申し上げておきたい、このように思います。

 それでは、リスクとは何かということから私たちは考えていく必要があるんだろうと思います。その中において、なぜ平和安全法制を整備するのか。

 それは、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しくなっていて、我が国にとって、そして国民にとって、リスクは高まっているわけであります。

 この、国にとって、あるいは国民にとって高くなっているリスクは、例えば、先ほどもお話をいたしましたが、北朝鮮は数百発の弾道ミサイルを持ち、そしてそれに搭載できる核の能力も高めてきているという状況があるわけであります。そして、中国の台頭があり、南シナ海、東シナ海での行動もある中において、我が国の領土を守る、領海を守る、領空を守っていくという中においてリスクが高まっている。このリスクを低減させていくということこそ、私たちの任務であります。この任務を背負って立っているのがまさに自衛隊の諸君であろう、こう思うわけでございます。

 当然、その中において日米の同盟を強化していく。そして、抑止力が高まっていくことによって、我が国が攻撃されるリスクは当然低減をしてくるのであります。

 我が国が攻撃をされる、まさに個別的自衛権の世界でありますが、この世界においては、まさに自衛隊の諸君は最大限のリスクを負っていくということになるわけであります。

 そうしたもの全体を見ながら、しっかりと国民に対するリスクを低減させていくために今回の法整備を行っていくということは、ぜひ御理解をいただきたい。

 もちろん、その中において、自衛隊の諸君が負うリスクを低減させていくための最大限の努力をしていくわけでございます。そしてまた、周辺事態から変えた重要影響事態安全確保法等々において後方支援する際にも、新たな法制の中においても、自衛隊員のリスクを低減させるための措置等々について最大限配慮していくことは当然のことでありますし、自衛隊員の諸君も、訓練等において、プロフェッショナルとして、現場においてのリスクを低減させるための訓練に日々励んでいるわけであります。

 それでもなお、もちろんリスクは残ります。そのリスクを背負っていただくのがまさに自衛隊の諸君であり、我々は彼らに対して改めて敬意を表したい、こう思うわけでありますが、私たちは、まず全体のリスクを低減させる、このための法制をぜひ成立させたい、このように思っております。

柿沢委員 中谷大臣にもお伺いします。

 私が聞いているのは、今、安倍総理、私は今の御答弁の、部分的には大変理解をしているつもりです。自衛隊の部隊が海外の任地に赴いて、そして活動範囲が、戦闘現場の手前までは事実上行ける、そして輸送できるものも、例えば兵員であったり弾薬であったり、こういうものに広がる。やはり任務の危険度は上がるんじゃないですか。そのことを聞いているわけです。そのことについての御答弁は中谷大臣にいただきたいと思います。

中谷国務大臣 これは私の発言から始まったんですが、よく読んでください。今回の法整備をすればという前提です。ただ単にやみくもに活動をさせるということではなくて、これは法案をつくるときに与党でも協議しましたが、隊員の安全、活動の安全、こういうことを十分考えた上で、いろいろと法案を考えているわけであります。

 もちろん私も、この活動においてはリスクはあると認識しております。九一年のカンボジアから、私は全てのPKOの現場も見ました。南スーダン、ジブチ、今でも隊員が国際貢献活動をやっておりますが、そういった中で、本当に最大限安全に気をつけながら任務を果たしているわけであります。

 先ほど長妻委員が自衛隊の宣誓を言われましたが、まさに、事に臨んでは危険を顧みず、国民の負託に応えるために、自衛隊は今でもリスクを負っている中で最大限任務を遂行しようとしている、そういう気持ちはわかっておりますし、逆に、送り出す側も自衛隊員の安全というのは第一に考えてやっているわけでありまして、別にリスクがないというようなことを言ったつもりではございません。ただ、この法案を整備して考える段階で、自衛隊員のリスクを極小化するということは最大限なしたつもりで発言したつもりでございます。

柿沢委員 この答弁を続けられるのであれば、私は、これは前に進めないと思います。

 今の御答弁は、いろいろ考える、我々はいろいろ考えてきたんだと、あたかも、ちゃんとやるから任せてくれと言わんばかりの御答弁で、中身がどういう形で、どこまでのことができていくのか。私が拝見している限り、戦闘現場の手前まで後方支援活動として、例えば武器弾薬の輸送、兵員の輸送、こういう活動が私はできることになると思いますよ。

 現にイラクで、本当は憲法違反だったかもしれないけれども、武装した他国の兵士を輸送しているじゃありませんか。イラクで現実にあのときに既に行ってきたことを、例えば今回の安保法制の整備を受けて、行わないということはやはりあり得ないんじゃないかと思うんです。

 だから、そういう意味では、私は、リスクはあるとおっしゃいました。(安倍内閣総理大臣「あるんです」と呼ぶ)だから、あるんですよ。そして、今回の法整備によりリスクが増大することはないと考えます、この御発言、御答弁は、ある意味では、中谷大臣、もうこれは、議論を前に進めるために一旦撤回をされた方がいいと思いますよ。いかがですか。

中谷国務大臣 今、イラクの空輸の話をしましたが、実際は、現場でそういうリスクを回避するための判断をして、立派に任務を果たして帰ってきたわけでございます。

 それも同様であって、送り出す側もしっかりとした体制で運営をしておりますので、今回、法案をつくる際には、そういう隊員の安全については十分に盛り込んだつもりです。

 先ほど、戦闘の現場に近づくんじゃないかと言われましたが、今回、派遣する際には、防衛大臣が円滑かつ安全に活動を実施する区域をあらかじめ定めなければならないと規定されております。

 これはどういうことかというと、やはり現場を見て、将来戦闘が起こりそうなところ、こういうところは指定しないわけですから、また、現場でそういうことが起こったら、活動をやめて、そして中断するわけですから、そういった安全に関しては、与党の段階で真剣に議論をして積み上げられて、そして法案にまとめたわけでありますので、私は、隊員の安全については十二分に配慮をし、また考えた内容になっているということです。

 リスクについては、今でもあります。(発言する者あり)

 今、日本有事が起こったらどうなりますか。自衛隊はまさに命がけで活動するんですよ。今、リスクを負ってみんなやっているわけです。これからもリスクがないとは言っていません。(発言する者あり)

浜田委員長 やじに答えないでください、大臣。

 もう一回質問を明快にしていただいて、それにもう一回答弁してもらいますので。

柿沢委員 私はこれ以上明快に質問できないと思います。このリスクが増大することはないと考えるというのは事実ではないので、中谷防衛大臣、もう撤回された方がいいです。いかがですか。

中谷国務大臣 その発言は、法案の整備をすればということであります。それだけ、我々は、事に臨んで活動する自衛隊に対して安全をしっかり担保できるような措置をした上で派遣をするわけですから、そういう意味においては、私は間違ったことを言っておりませんし、リスクについては、それを発言する際に、今でもリスクがある、それから将来もリスクはある、そういう中でいかにリスクを縮小化する、そういうことをした上で派遣をするんだということは述べているつもりでございます。

柿沢委員 質問できませんよ、これでは。

浜田委員長 中谷防衛大臣、もう一度答弁をお願いいたします。

中谷国務大臣 今回は法律の枠組みを示すものでありまして、実際に活動する際は、中で計画を立て、そして国会に添えて、承認を求めるわけでございます。その間、さまざまな考察をいたしますし、また部隊も、いきなり高度な任務ができるとは思っておりません。それまでに準備をし、訓練をし、装備も構え、それなりの対応をしなければ出せないわけですから、そういう状況を判断した上で活動させるという意味でございます。

 したがいまして、このリスクを下げていくということは当然必要なことでありますので、これからもそういった見地で送り出す側は臨んでいくということでございます。

柿沢委員 このリスクの話はまだ後に続きますので……(発言する者あり)はい、やります、それを続けたいと思います。

 そもそも、安倍総理は、御自分の本で言っておられるではありませんか。軍事同盟というのは血の同盟で、アメリカは、日本が攻撃されればアメリカの若者は血を流す、しかし、アメリカが攻撃をされているときには自衛隊は血を流さない、これでイコールパートナーと言えるでしょうか、日米同盟を堂々たる双務性にする、そう書かれております。つまり、日本がいわば血を流すリスクの増大を引き受ける、その上で同盟国や世界に対する責任を果たす、こう言っておられるではありませんか。

 今回の安保法制の整備で安倍総理が目指しているものに近づく、つまり、血の同盟の履行で、いざというときに血を流す覚悟を持つ、当然リスクは増大するがそれは引き受ける、そうお認めになるべきではありませんか。

安倍内閣総理大臣 まさに私の本の記述について引用していただいたんだろうと思います。

 まさにそれは、フルの集団的自衛権を認めることになれば、これは完全に対等になるわけであります。

 しかし、今回の集団的自衛権に限って言えばそれは違うわけでありまして、新三要件のもとで、国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がなければやらないということになっているわけでございます。と同時に、しかし、その中にあっても、日米同盟のいわばきずなは強化されるのは間違いないんだろうと思います。

 そこで、今、柿沢委員がおっしゃっているのは、リスクについては、新しい後方支援のことについておっしゃっているんだろう、このように思います。これは、武力行使とはかかわりのない後方支援の話だと私は今理解をしているわけでございます。

 いわば後方支援と武力行使を混同させない方がいいと思いますが、後方支援について言えば、後方支援は武力行使ではないわけであります。つまり、一体化しないという理論のもとに我々は今度も法制を行ったのでありまして、そこで、リスクとは何かということについて先ほども申し上げましたが、では、今までの法制と今度の法制との比較考量において、リスクが減ったのかふえたのかという議論をされているんだろうと思います。

 ですから、私は、そもそもそういう議論自体が間違っているということで先ほど申し上げたわけでありますが……(発言する者あり)間違っているということを申し上げたわけでありますが、まさに森を見ないで木を見ている議論は間違っているということを申し上げたわけでありまして、国民全体のリスクをどう減少させていくかということについては一言も触れておられないわけでありまして、そこからもやはり考えなければいけないということを申し上げております。

 その上において、非戦闘地域と今度の戦闘現場ではない場所、この考え方について、ではリスクとどう関係があるかということについてちょっとお話をさせていただきますと、後方支援は、その性質上、そもそも、危険を回避して、活動の安全を確保した上で実施するものであります。安全な場所でなければ有効な後方支援を実施することはできないため、これは大前提であります。

 法律上の仕組みにおいては、後方支援については、安全の確保というリスクにかかわる課題と、他国の武力の行使と一体化しないという憲法上の課題の二つが密接に関係をしております。

 従来のいわゆる非戦闘地域は、我が国の活動が他国の武力の行使と一体化することがない制度的枠組みとして設けられたものであり、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域であります。いわば、自衛隊が半年間派遣されるとすれば……(発言する者あり)

浜田委員長 総理、簡潔にお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 半年間戦闘がないと見込まれる地域であります。

 実際上は、自衛隊は一カ所にとどまらず、さまざまな場所で活動しますが、ある地域で一週間でも活動するためには、そこで半年間戦闘がないと見込まれる場所を指定していたわけであります。(発言する者あり)ちょっと済みません、静かに聞いてくださいよ。

浜田委員長 総理、簡潔にお願いいたします。(発言する者あり)

 静粛にお願いします。

安倍内閣総理大臣 わかりやすく説明……(発言する者あり)ちょっと静かに。静かに。柿沢さん、興奮しないで。今、わかりやすくこれを手短に説明しますが、国民の皆様に対してわかりやすく説明をしなければいけないんですよ。ですから、説明を再三中断するのはやめてください。

 いわば、自衛隊が半年間派遣されるとすれば、半年間戦闘がないと見込まれる地域である。実際上は、自衛隊は一カ所にとどまらず、さまざまな場所で活動しますが、ある地域で一週間でも活動するためには、そこで半年間戦闘がないと見込まれる場所を指定していました。これは、十年以上前、当時、自衛隊による実際の活動経験がない中において、専ら憲法との関係を考慮して考え出されたものであります。

 このいわゆる戦闘地域の概念についてさまざまな議論があったことから、自衛隊による実際の活動経験や諸外国の活動の実態等の現実に即した検討を行った結果、現に戦闘行為が行われている現場以外の場所で行う補給、輸送等の活動は他国の武力の行使と一体化するものではないと判断したわけであります。

 一方、先ほども中谷大臣が説明をしましたが、新たな仕組みのもとでも、部隊の安全等を考慮して、今現在戦闘行為が行われていないというだけでなく、自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定することとなるわけであります。それは先ほど説明したとおりであります。

 つまり、このような整理を、今までの経験に即してもう一度整理し直して法律をつくったわけでありまして、それはリスクが上がるかどうかとは関係のない話であります。

 大事なことでありますから、少し丁寧に説明しました。丁寧に説明をせよと。これは大切なことでありますから、当然そのように説明をさせていただきました。

浜田委員長 一言申し上げます。

 答弁者は、簡潔に答弁のほどお願い申し上げます。

 そして、答弁が長くなりますので、不適切な発言は控えていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

柿沢委員 今の御答弁の三分の二は答弁書の朗読でしたよね。非常に長い時間をかけて丁寧に御説明をいただいたのかもしれませんが、私にとっては、時間を消費して、本当に非戦闘地域の概念の話までいただいて、結局、国民に対しては何を言っているのか伝わらなくなっちゃったと思います。

 このパネルをもう一回見ていただきたいんですよ。もともと、今回の法整備により、隊員のリスクが増大することはないと考えますと。安倍総理も、リスクとはかかわりがないんだ、これでいけると思っていたんですよ。

 しかし、これで厳しい批判を受けたら、今度は、今までも命がけだったんだ、リスクは高くて、あったんだ、それがふえることではないんだ、もともとそうなんだ、こういう話に変えていった、こういうことではありませんか。まあ、これは見ている国民が判断することですから、国民の皆さんが今の説明で納得されるのかどうかということになるのではないかと私は思います。

 次のパネルにかわります。巻き込まれ論についてです。

 アメリカの戦争に巻き込まれるようなことは絶対にあり得ませんと、安倍総理は五月十四日の記者会見で断言をされておられます。何で絶対にあり得ないなんて断言できるのかなと思っていたんですが、私、二十日の党首討論で岡田民主党代表への安倍総理の御答弁を聞いていて、その理由がわかったような気がしたんですね。

 安倍総理はこうやってお答えになられました。新三要件に該当するというのは、我が国が攻撃されたのと同様の深刻、重大な被害をこうむるのが明白な状況であって、日本と関係がないにもかかわらず、今はアメリカの例を挙げられましたが、アメリカとどこかの国が戦闘をしていて、そこに我々が自動的に、例えば助けてくれと言われても、そこに行くということはあり得ない、日本の意思に反して日本が戦闘活動に巻き込まれていくということは当然ない、こういうことをおっしゃられています。

 つまり、これは、日本が参加するときというのは日本にとって深刻、重大なときであって、自国が主体的に判断して参加するんだから、それは巻き込まれじゃないんだ、こういうことではありませんか。アメリカの戦争に参加するとしても、自発的な参加だから巻き込まれではない。これは驚くべき論理の逆立ちをしていると思うんですよ。

 こういう官僚文学で本質をごまかすのも非常にいただけないと思います。アメリカと協力して日本と世界の脅威に対処する、こういうふうに普通にはっきりと言われたらどうですか。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 まず初めに、繰り返しになりますが、私が答弁を変えたかのごとく、リスクについて、自衛隊にリスクがいつもないと言っていたにもかかわらず、突然リスクがあると言ったように今発言されましたが、そんなことはありませんよ。

 今まで私は何回もこの場で、今でも自衛隊の諸君は大きなリスクを背負っているんですよということを答弁しているじゃないですか。自分が質問していないときの人の議論には全く興味がないのかもしれませんが、議事録をちゃんと精査して見ていただきたい。

 私は、昨年から、こういう議論になったときから、任官の宣誓を引用しながら、自衛隊員にはリスクがありますよという話を、常にリスクを背負いながら仕事に当たっていますよということをずっと申し上げてきておりますから、私の発言と違うことを言われるから、この場で訂正を求めるのは当然のことではないでしょうか。(発言する者あり)

 相手にしたくないんですが、議論の妨害はぜひやめていただきたい。後藤委員も少し静かにしてくださいよ。学校で習いませんでしたか。(発言する者あり)

浜田委員長 議論、質疑をちゃんと進めてください。

安倍内閣総理大臣 よろしいですか。

 それで、憲法上我が国による武力の行使が許されるのは、あくまでも三要件ということは申し上げてきているとおりであります。その趣旨を党首討論でも答弁させていただいたわけであります。

 それは、つまり、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険ということであります。そして、我が国の存立を全うするために他に適当な手段がない、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、この中で行うわけでございます。

 当然、巻き込まれるということは何かといえば、我が国の存立にもかかわりがありません、あるいは国民の生命財産、あるいは幸福追求の権利にもかかわりがありません、しかし日本はアメリカの言われるままに戦争をする、これはまさに巻き込まれるということであります。

 そこで、今申し上げたような前提条件の中で、これは武力の行使をしなくてもいいのか、柿沢さんは、そう考えているのかということも問われているわけであります。そこで、例として挙げたことが、幾つか例として挙げました。答弁が長くなりますから、これ以上は申し上げません。

 今まさに、この三要件、しっかりと三要件が守られている限り、いわば巻き込まれ型ということはあり得ないということを申し上げているわけでございます。

柿沢委員 つまり、アメリカの戦争に巻き込まれるのではないか、そのようなことは絶対にありません、なぜこれは絶対にと言えるかというと、新三要件に該当するときに、自発的に、みずからの意思でアメリカが参加をしている戦争に日本も参加をしていくということになるから、それは巻き込まれるのではないんだ、参加なんだ、こういうことですよね。アメリカの戦争に日本が巻き込まれることは絶対にありませんと。(発言する者あり)

浜田委員長 お静かに願います。

柿沢委員 絶対にあり得ませんなどと一〇〇%否定できるのは、やはりこういうロジックがあるからだと私は思いますよ。

安倍内閣総理大臣 いきなり、柿沢さんは自発的にとおっしゃった。しかし、その前に、三要件を言わない。三要件を言わないわけですよ。三要件の中身を言わないから、飛ばして、いわば跳躍になって、国民をそれこそミスリーディングしますよ。国民をミスリーディングしますよ。つまり、国民の生命やあるいは自由にも全くかかわらずに、やろうといって、それが自発的だということであれば、自発的とは、私はそれは絶対あり得ないということで申し上げておきたいと思います。

 いわば、自発的というのは何を意図して言っておられるのかわかりませんけれども、まさに三要件がなければ、三要件があって、まさに国民の命を守るためですよ、幸せな暮らしを守るためですよ、それがあって初めて武力の行使をするわけであります。それは巻き込まれているとは言えないでしょう、国民の命を守っているんですからということを私は申し上げているわけでございます。

柿沢委員 これは、事実上同じことを言っていると思うんですよ。

 新三要件を認定するのは日本の政府であり、もちろん国会もそれを承認するわけですけれども、それはやはり、他国の道連れになるという話ではなくて、日本が主体的な意思を持ってそれを判断して参加し、また武力の行使を伴う活動をする、いわば戦闘をするということになるわけですよね。それは巻き込まれではありませんよ。それは巻き込まれではない。

 しかし、この巻き込まれという言葉で国民が想定するものは、まさにアメリカ等々が国際社会で行っている武力の行使を伴う活動について日本が参加をする、それを巻き込まれという一つとしてやはり想起すると思うんですよ。そういう意味で、それは絶対ないと言えるということが、私はこれこそミスリーディングだと思いますよ。

 次に行きます。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

柿沢委員 次ですが、自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは決してありません、これもきっぱり断言されておられます。

 これを聞くと、湾岸戦争やイラク戦争には参加しないんだ、そう思いますよね。でも、そうじゃないんですよね、これは。湾岸戦争やイラク戦争の戦闘には参加をしない。戦闘には参加をしないんだけれども、逆に言うと、戦闘ではない後方支援あるいは停戦後の治安維持活動には自衛隊は参加できるし、参加する可能性がある、これはそう読むべき文言ですよね。

 まず、後方支援です。今回、周辺事態改め重要影響事態、そして国際社会の集団安全保障に類する国際平和共同対処事態ですか、これにおいては、自衛隊が後方支援を担い得るものとされています。

 この後方支援なんですけれども、今回改定をされた日米安全保障協力の指針、いわゆるガイドラインの英文を見てみますと、この後方支援というのはロジスティクスサポートと書いてありまして、軍事安全保障の世界では、この言葉は、一般的には兵たんと訳される言葉だと思います。

 兵たんという言葉の意味を日本の辞書でひもとくと、軍事装備の調達、補給、整備、修理及び人員・装備の輸送、展開、管理運用の総合的な軍事業務。直接の戦闘行為を除くほとんどの軍事業務をカバーする、これが兵たんという用語なんですよ。ガイドラインの後方支援も、「補給、整備、輸送、施設及び衛生を含むが、これらに限らない。」とまで書いてあって、兵たんと同様の意味に見えます。

 弾薬も運ぶと言っている、武装した兵士も運ぶ。憲法違反と言われながらイラクでもやったんですから、今後もやるでしょう。

 中谷防衛大臣、五月十五日の衆議院本会議で答弁されているとおり、この後方支援、兵たんというのは、意味内容上同じだということでいいですね。

中谷国務大臣 御指摘をいただいて答弁したとおり、兵たんとは直接の戦闘行為を除くほとんどの軍事業務をカバーする用語であると御指摘をいただいたところでありますが、今回法律で定める後方支援につきましては、これは補給、輸送などの支援活動でありまして、そもそも戦闘の前線のような場所で行うものではない、そして危険を回避して活動の安全を確保した上で実施するものでありまして、この法律に基づいて自衛隊が実施するいわゆる後方支援については、法律上明記をされた活動に限られるということでございます。

柿沢委員 ガイドラインには英語でロジスティクスと書いてあって、その上で、括弧書きで「補給、整備、輸送、施設及び衛生を含むが、これらに限らない。」とまで書いて、幅広くこの兵たん業務を担えるように書いてある。これは日米の合意事項ですよね。アメリカに約束しちゃっているんじゃありませんか。

 戦史家のマーチン・ファン・クレフェルトは、戦争という仕事の十分の九までは兵たんだと言っています。そして、敵の兵たん線を絶つのは戦争勝利の要諦、つまりは、活動領域は仮に後方であったとしても、兵たん業務に当たっている部隊というのは直接の攻撃対象となる、狙われる可能性が高いというのは、これは軍事の常識だと思います。

 そして、攻撃されれば応戦をする、応戦すれば戦闘になる。そうですよね。そして、そのような可能性の高いロジスティクスという活動に自衛隊を派遣するということを、今回のガイドラインにもう既に書いているじゃありませんか。

 昨年七月の閣議決定以来、自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは決してないと安倍総理は繰り返しておられますが、戦闘中の戦地に出すのとほとんど変わらないような危険かつ重大な任務をアメリカに対して既に約束してしまっているではありませんか。

 安倍総理の言っている言葉、もう一回見ましょう、自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことはこれからも決してありません。ああ、ああいう戦争には参加しないんだと国民はみんな思いますよ。だけれども、実態として行われ得ることや起き得る事態というのは全く違うものであって、これは極めてミスリーディングと言わざるを得ないのではありませんか。(発言する者あり)

 湾岸戦争やイラク戦争に参加することは決してないんですか。戦闘に参加しないだけで、兵たん業務には参加できるし、実際に参加するかもしれないということじゃないんですか。御答弁願います。そして、自民党のやじをとめてください。

安倍内閣総理大臣 よろしいですか。今、柿沢委員は武力行使と後方支援を、先ほどもそうなんですが、混同しておられるんですね。混同しておられるんですよ。(柿沢委員「ほぼ同じことになると言っているんですよ」と呼ぶ)いや、違いますよ。混同しておられる。

 私が答えたイラク戦争、湾岸戦争等については、いわば武力行使の中の文脈でお答えをしたわけであります。いわば集団的自衛権で、許容される集団的自衛権は何か、それは必要最小限度の実力行使との関係においてはどうかということで私は答弁をいたしました。

 その答弁において、まさにイラク戦争や湾岸戦争等において行われたような、空爆を行うとか、上陸をしていって武力行使を目的としていわば砲撃を行う、こういうことはしませんよと。まさに海外派兵は一般に禁じられているということで申し上げているわけであります。

 そこで、今回の後方支援について申し上げますと、今までの法律と違うところは、まさに先ほども申し上げました。若干長くなって御迷惑をかけたかもしれませんが、この概念の整理について正確を期したいと思って、あのように答弁をさせていただいたわけでございます。

 今度の後方支援におきましては、いわば重要影響事態安全確保法と国際平和支援法において後方支援を行うことになりますが、この支援法の中においての後方支援ということについては、これは武力行使と一体化しない、つまり武力の行使ではないという明確な定義のもとに派遣するということははっきりと申し上げておきたい。

 その中において、戦闘現場ではない場所で行う、そして戦闘現場ではない場所ということについては、自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定することになるということも、先ほど来大臣から答弁をさせていただいているわけでありまして、戦闘現場の隣で行えるようになったという決めつけはやめていただきたい、このように思うわけでございます。

柿沢委員 今の部分については、私は、法律上の規定が十分明記されているとは言いがたいというふうに思います。

 もう一回言いますけれども、活動領域は仮に後方であったとしても、兵たん業務に当たっている部隊というのは直接の攻撃対象として狙われる可能性が高い、これが軍事の常識だと思います。そして、攻撃されれば応戦をする、応戦されれば戦闘になる、武力の行使を目的に行ったのではなかったとしても武器使用に及んで、そして戦闘行為に直面をする、こういうことを常にリスクとして抱えているのがこの後方支援、兵たん活動ではありませんか。

 これをごまかすのは、現場に派遣をされることになる可能性のある自衛隊の部隊、自衛官の皆さんに対して、私は、やはりこれはちょっとどうかと思いますよ。中谷大臣、いかがですか。

中谷国務大臣 法律で、派遣する際は、隊員の安全、円滑、これを踏まえて地域を指定するとなっております。また、派遣された隊員も、状況を見て、戦闘が行われているような場合には活動を中断いたします。さらに、こういった状況においては活動を中止して撤収するという規定も、大臣の判断で求められております。

 いずれもそうですけれども、隊員を派遣する以上は安全を第一に考えますし、また、この活動自体も我が国として主体的に行うものでありますので、そういった判断をしながらやっていくわけで、戦闘行為をするわけでもありませんし、戦闘から一線を画された、現場でないところでやる、しかもその見込みがない場所を指定するわけですから、そういった点について十分安全に配慮した法案の内容になっております。

柿沢委員 武装した自衛隊の部隊が他国の領域内に派遣をされて、なおかつ、攻撃を受ければもちろん、それに対する反射作用として武器使用に及んで、相手の部隊、他国民を殺傷する、こういうことは起こり得ると思うんですね。

 もう一度お聞きをしますが、自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことはこれからも決してありません、前はサマワでの人道復興支援でした、しかし、これから、いわゆる後方支援、ロジスティクス、食料を運ぶ、あるいは武器を運ぶ、兵員を運ぶということに場合によっては参加するということは法的には可能だということはお認めになられますよね。

安倍内閣総理大臣 何回も申し上げますが、いわば武力行使と一体化すれば海外における派兵は一般に許されない、憲法違反になりますから、これはないわけであります。ですから、これは、非戦闘地域という概念をつくったときもそうなんですが、武力行使と一体化しないという論理の中において今までの法律は整備されてきたところでございます。

 そして、いわば後方支援は必ず狙われる、必ず戦闘現場になるかのごとくの議論をおっしゃっておられましたが、それは実は違うんですね。実は違うんです。

 今般の法制に基づいて我が国が行う後方支援は、部隊の安全が確保できないような場所で行うことはまずないということは申し上げておきたいと思います。

 そして、いかなる部隊であっても、後方支援を受けている間は攻撃に対して極めて脆弱な状況になる、状態になっているというのも、これは軍事的な常識であります、現在は。後方支援に際しては、危険を回避して安全を確保するということは当然のことであります。つまり、輸送している例えば物資があったとしたら、それをとられてしまっては相手のものになるわけでありますから、そういうことが起こらないような場所を選ぶというのも、実はこれは常識なんです。

 相手が狙ってくるから、逆にそうではないところをちゃんと選んで行くということでありまして、危険を回避し、安全を確保することは当然であって、軍事的に合理性があるわけであります。これは同時に、後方支援を十分に行うためにも必要なことであります。

 ですから、その中において、先ほど申し上げましたように、自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定することとなるわけでありまして、今回の法制もその考え方のもとに進めてきたところでございます。

柿沢委員 私は、不安は増したと思います。

 次に行きます。

 加えて、停戦後の治安維持活動です。

 今回の国際平和支援法で、国連PKOでないものでも紛争終結後の治安維持活動等に自衛隊が参加できるようになります。戦争が終わった後の自衛隊派遣だから問題ない、平和構築への貢献だ、そう思うかもしれません。

 しかし、イラク戦争の大規模戦闘終結後の米軍等が行った治安維持活動を初め非戦闘行為に従事したアメリカ兵は、民間人を装った自爆テロや、車に仕掛けられた爆弾の爆発、輸送中のヘリの撃墜、こうしたものの犠牲になって、九百三十人が命を落としています。これは、イラク戦争の直接の戦闘で死亡した百三十九人を大きく上回る数字です。いつ、どこで狙われるかわからない不安の中で、自殺したり精神的な疾患になった米兵はさらに多いです。

 アフガニスタンのISAFの活動で、治安維持活動等に当たったドイツ軍やイタリア軍の兵士が、犠牲者が数百人規模に上っているのは、これまでも何度も取り上げられております。

 自爆テロやあるいは車爆弾、また輸送中のヘリの撃墜、こうしたリスクを伴う治安維持活動に自衛隊を派遣し得るようにするのが今回の安保法制です。これのどこが自衛隊のリスクは増大しないということになるんですか。中谷大臣、どうですか。

中谷国務大臣 現在も、PKO活動において、南スーダンに派遣して活動をいたしております。十分な安全を、配慮を持ちながら運営しておりますが、基本的に、今回法律改正をする新たな任務におきましても、五原則、これを維持することには変わりありません。すなわち、戦闘が行われていない、いわゆる停戦の合意、そして受け入れ国の同意、そして中立的な立場でやっていく、そして撤収をする判断もする、そして武器使用においても制限を持って必要最小限度でやっていく。

 こういった部分で、今回は新たな任務として、確かに新しいことに、ふえる部分がございますが、これにおいても安全についての規定なども設けておりまして、実際やるかやらないか、この段階で本当にやって大丈夫なのか、そしてそれが任務達成できるのか、そういうのを判断して実施するわけでございますので、リスクに対しましても十二分に配慮をしながらやっていくということでございます。

柿沢委員 更問いをいたしますが、イラク戦争終結後、大規模戦闘終結後に行われた治安維持活動、こういうところに自衛隊の部隊を、これからは、安保法制の整備が成立すれば派遣することは法的には可能になる、こういうことでよろしいですね、中谷大臣。

中谷国務大臣 この安全確保業務を実施する場合には、紛争当事者の停戦の合意を初めとする参加五原則が満たされている、かつ、派遣先国及び紛争当事国の受け入れの同意、これが期間を通じて安定的に維持されていると認められることが前提となります。

 具体的にどのような状況で活動させるか、これは今後検討いたしますが、こういった今申し上げましたことを超えて、いわゆる掃討作戦、このような活動を行うことはできないと考えております。

柿沢委員 御答弁の最後はできないという話でしたけれども、それは掃討作戦のことですから、つまり、イラクの大規模戦闘終結後の、それこそアメリカ兵が非戦闘行為によって九百三十人、命を落とした、自爆テロの標的となり得るような、そうした治安活動には参加できるということを中谷大臣は御答弁されたんだと思います。

 そして、紛争当事国の同意等々の、条件の話がありました。紛争当事国の同意があったとしても、相手は民間人を装ったテロリストであったり、まさに市街地、市場とかそういう都市部に潜んで、そして、例えば、ナイジェリアに行くとは思いませんけれども、ナイジェリアのボコ・ハラムなんというのは、人質にとった少女を自爆テロの道具に使ったりとか、こういうことまで、本当に心が痛みますけれども、行っているような状況ですよね。

 どういうふうにして、この治安維持活動、本当の意味での隊員の安全を確保しながらそれに参加していくということができるんでしょうか。しかし、法的にはそれができるようになる。極めて難しい判断を迫られることになると思いますが、もう一度聞きますけれども、先ほど申し上げた、イラク戦争、大規模戦闘終結後のイラク国内における治安維持活動、これはイラク政府は同意すると思います、そして日本に来ていただきたいというふうになった場合に、これは法的にはこれからは参加できるということになりますよね。

中谷国務大臣 個別具体的なことにつきましてはこれからの話なんですが、いわゆる五原則、これが満たされているということが大前提です。

 それから、今回実施する、規定している安全確保業務は、防護を必要とする住民等の生命、身体及び財産に対する危害の防止、その他特定の区域の保安のための監視、駐留、巡回、検問、警護というふうに規定をいたしておりまして、それ以上の活動内容はできないということでございます。

柿沢委員 停戦後の治安維持活動、イラクにおいてもアフガニスタンにおいても行われました。それは非常に厳しい現場で、後方支援、その後の治安維持というものに臨んだアメリカ、あるいはアメリカ以外の多国籍軍、有志連合、こういう国々が大変大きな犠牲を伴う活動を担った、これは事実です。

 そして、それに、先ほどの五原則、もちろん確認しなければいけませんけれども、法的にはそうした治安維持活動にこれから参加をしていくということを、安保法制を整備するんですから、それを政府はある意味では内外に対して鮮明にしているということなんだと思うんです。

 これがどうして自衛隊のリスクが拡大しない、増大しないということになるんですか。

中谷国務大臣 今、イラクの話がありましたけれども、当時のイラクというのは停戦の合意があると認めることは困難でありまして、自衛隊がイラク国内で活動することはできないと答弁をいたしております。

 そして、五原則というのは、現在もPKO活動を実施いたしておりますけれども、このPKOを実施する際もこの五原則に基づいておりますので、今後、活動する際には五原則を適用して実施するということで、停戦の合意が行われていないような場所においては実施いたさないということです。

柿沢委員 ちょっと聞くと同じ意味に聞こえるんですけれども、意味するところが全然違うということが多々見受けられます。そういう言葉の使い方が非常に多いと私は感じています。

 先ほどの、イラク戦争に参加しないというのと、イラク戦争の戦闘に参加しないというのと、ぱっと聞いて、国民はその違いはわからないと思いますよ。しかし、そこには重大な違いがあると私は思います。

 ほかにも、もうあと三分ぐらいしかないので私はやめますけれども、しかし、次のパネルを出していただくと、武力の行使と武器の使用、これは、国民が見て、どう違うのか全然わからないと思うんですよ。だけれども、武器の使用はするけれども武力の行使ではないという答弁が山のように返ってくるわけですよ。だから、これはわからないと思いますよ、本当に。

 アメリカの戦争に巻き込まれて海外で武力行使することは決してない、これはきっぱりしているように聞こえます。けれども、言い方を変えて、アメリカの始めた戦争に兵たん活動で参加をして、他国の領域において武器の使用に及んで他国民を殺傷する、これなら、今回の安保法制が成立すれば、我が国が法律上行い得る活動になるでしょう。もう一度言います。アメリカの始めた戦争に兵たん活動で参加をして、他国の領域において、例えば武装した兵士を輸送し、武器の使用に及んで他国民を殺傷する、これは可能になりますよね。この二つの違いがわかる人が一体どのぐらいいるんでしょうか。

 こういう形で、言葉で表現をしながら別なイメージをつくり出して、しかし、実態としてやれることはそれ以外にも広がっている。こういう状況を結果として、あるいは結果としてなのかどうかはわかりませんが、生み出しているというのは、私は、大変不誠実なごまかしだと思います。

 中谷大臣、本当にこれは歴史的な大転換です。それは安倍総理も中谷大臣も認めておられる。だったら、真っ正面から議論しようじゃありませんか。いかがですか。

浜田委員長 中谷防衛大臣、時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。

中谷国務大臣 柿沢議員にお尋ねしてはいけないんですが、武力の行使と武器の使用、この違い、本当にわかりませんか。それがわからないと、これは議論できませんよ。(柿沢委員「国民がわからないと言っているんですよ、国民がわからないと言っている」と呼ぶ)

 では、国民の皆さんに申し上げますが……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

中谷国務大臣 武力の行使というのは、我が国の物的、人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為を行います、これが武力の行使です。

 一方、武器の使用とは、直接人を殺傷し、または武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする機械等をその本来の用法に従って用いることを言います。

 憲法九条一項の武力の行使は武器の使用を含む実力の行使に係る概念でございますが、武器の使用が全て憲法九条の禁じる武力の行使に当たるとは言えません。これから丁寧に説明をしてまいります。

柿沢委員 一般の国民にわかりやすく説明する、丁寧に説明すると言っている人のそれが答弁ですか。おまえにはこんなこともわからないのかと。これで本当にいいんですか。

 終わります。

浜田委員長 次に、志位和夫君。

志位委員 私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問いたします。

 きょうとあす、二日続けて、安倍政権が平和安全法制の名で国会に提出した一連の法案についてただしていきたいと思います。

 安倍政権はこの法案を平和安全と銘打っておりますが、我が党は、日本を海外で戦争する国につくりかえる戦争法案が正体だと考えております。

 多くの問題点がありますが、憲法九条を破壊する三つの大問題について質問します。

 第一は、武力行使をしている米軍等への補給、輸送などの軍事支援、いわゆる後方支援の問題です。

    〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕

 政府提出法案には、武力行使をしている米軍等への後方支援を定めた二つの法案があります。重要影響事態法案と国際平和支援法案であります。二つの法案に共通する最大の問題は、これまで政府が戦闘地域としていた場所にまで自衛隊が行って軍事支援を行うことになることにあります。

 これまでの自衛隊の海外派遣法とどこがどう変わるか。まず、パネルをごらんください。

 上がこれまでの活動ですが、二〇〇一年のアフガニスタン戦争に際してのテロ特措法、二〇〇三年のイラク戦争に際してのイラク特措法には、自衛隊が活動できる場所を次のように規定しておりました。現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域。ここで規定されている地域は非戦闘地域と言われました。

 非戦闘地域は、第一に、現に戦闘行為が行われていない地域、第二に、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域という、二つの条件を満たした地域とされていました。

 非戦闘地域という歯どめがあったために、自衛隊の活動は、インド洋での給油活動、イラク・サマワでの給水活動、バグダッドへの空輸活動等に限られました。

 それが、重要影響事態法案と国際平和支援法案ではどう変わっているか。

 下でありますが、現に戦闘行為が行われている現場では実施しないものとする。ただし、捜索救助活動についてはこの限りではない。

 これは、極めて重大な変更です。これまでの海外派遣法にあった第二の条件、そこで実施されている活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域という規定が削除されております。戦闘現場、その瞬間に戦闘行為が行われている場所でなければ、自衛隊の活動期間中に戦闘行為が行われる可能性がある場所、これまで政府が戦闘地域としてきた場所であっても自衛隊の軍事支援ができるとしています。

 活動内容の点でも、政府の法案では、これまで実施できなかった米軍への弾薬の提供、武器の輸送、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備も実施できるものとなっております。

 まず、確認です。総理、こうした変更を行おうとしていることは間違いありませんね。確認です。

    〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕

安倍内閣総理大臣 今までの法律から、今度私どもが出している重要影響事態法やあるいは国際平和支援法においては、後方支援の考え方については、今、志位委員が説明した、説明したというか、パネルに書いてあるのはそのとおりであります。

志位委員 お認めになりました。

 そこで、総理に伺います。

 戦闘行為が行われる可能性がある場所まで自衛隊が行くということは、自衛隊自身が相手方から攻撃される可能性があるということになります。それをお認めになりますね。昨日の本会議の答弁で、本会議でこの質問を私はいたしましたが、総理からは定かな答弁はありませんでした。はっきりお答えいただきたい。自衛隊が攻撃される可能性です。

中谷国務大臣 後方支援に限りますが、今度、重要影響事態法また国際平和支援法、これに基づいて実施する補給、輸送などの支援活動は、まず、その性質上、そもそも戦闘の前線のような場所で行うものではなくて、危険を回避して、活動の安全を確保した上で実施するものでございます。

 これまで戦闘地域とされてきた場所まで行って活動するとの趣旨が定かではございませんが、いずれにせよ、我が国が行う支援活動は、現に戦闘行為が行われている現場では実施しないことを明確に規定いたしております。

 また、法律上、部隊等が活動を円滑かつ安全に実施することができるように活動の実施区域を指定することとなっておりまして、今現在戦闘行為が行われていないというだけではなくて、自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為がないと見込まれる場所を実施区域に指定することとなります。

 万が一、状況の変化により、自衛隊が活動している場所が現に戦闘行為が行われている現場等となり得る場合には、活動の休止、中断を行うこととなります。

 もう一点。自衛隊が武器を使用できるのは、不測の事態に際して自分や現に現場に存在する自衛隊員などの生命身体防護のためやむを得ない必要がある場合のみでありまして、その際の武器使用も厳格な比例原則に基づいて必要な限度に限られており、人に危害を加えるもの、正当防衛または緊急避難に該当する場合です。したがって、武器を使って反撃しながら支援を継続するようなことにはなりません。

 いずれにしても、自衛隊が戦闘行為を行う、または自衛隊の活動が戦闘行為になるということはないということです。

志位委員 武器の使用のことまで聞いていないので、聞いていないことまで答える必要はないんです。

 今の御答弁でも、それからきのうの総理の本会議での御答弁でも、自衛隊の活動の実施区域を指定する際に、自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為がないと見込まれる場所を指定すると言っております。今もおっしゃいました。きのう、総理もおっしゃいました。

 しかし、そんなことは法案には書いてないんですよ。法案には一言も書いてない。法案に書いてあるのは、円滑かつ安全に実施できるようにとしか書いてない。

 今度は総理に伺います。

 総理は昨日の答弁で、今の大臣の答弁でもありましたが、自衛隊が活動している場所が戦闘現場になる場合があると認めました。法案でも、自衛隊が活動している場所で戦闘行為が行われるに至った場合を想定して、あれこれの対応方針を明記しております。

 自衛隊が活動している場所が戦闘現場になることを想定しているということは、自衛隊自身が相手方から攻撃される可能性を想定しているということになるじゃありませんか。自衛隊が行う弾薬の補給、武器の輸送等の後方支援、兵たんが格好の軍事目標になるということは、これは軍事の常識であります。自衛隊は攻撃されないという保証でもあるんでしょうか。

 総理、はっきりお答えください。私が聞いているのは、自衛隊自身が攻撃される可能性を聞いているんです。それを否定できますか、総理。

安倍内閣総理大臣 その可能性が一〇〇%ないとは、私、申し上げたことはございません。

 そこで、先ほど、昨日もお話をさせていただいたわけでありますが、新たな仕組みのもとでも、部隊の安全等を考慮して、今現在戦闘行為が行われていないというだけではなくて、自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定することとなります。

 もちろん、しかし、だからといって、絶対にないわけではありませんから、そのときには、部隊の責任者が判断して一時休止する、あるいはその後退避する、そういう判断は当然行わなければならないわけでございますという意味において申し上げているわけでございます。

志位委員 総理は、自衛隊の部隊が攻撃される可能性を否定しませんでした。また、繰り返し、自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為がないと見込まれる場所を指定するとおっしゃるんですが、法律にないんですよ。そういう場所を指定するというんだったら法律に書いたらいいけれども、法律にはない。それをはっきり言っておきたいと思います。

 それでは、次に、自衛隊自身が攻撃されたらどうするんですか。必要な場合には武器の使用をすることになりますね。

 総理は、昨日の本会議で、私の質問に対する答弁で、自分やともに現場に所在する自衛隊員などの生命や身体の防護のためのやむを得ない必要がある場合には武器を使用できると答弁しました。間違いありませんね。確認です。

安倍内閣総理大臣 これは自己保存型の武器の使用になるわけでありまして、危害要件については、当然これは正当防衛と緊急避難に限られるわけでございます。

志位委員 自己保存型に限られるとおっしゃいましたけれども、武器の使用はするという御答弁でした。

 さらに総理に伺います。

 自衛隊が一旦武器の使用をすれば、相手方はさらに反撃をする。そうなれば、自衛隊は応戦することになります。撃ち合いが始まります。自衛隊は、相手方が攻撃を中止する、あるいは逃走するまで武器の使用を続けることになります。自衛隊がまさに戦闘することになるではありませんか。

 昨年五月の予算委員会の私の質問に対して、総理は、イラク戦争やアフガニスタン戦争のような場合に、武力行使を目的にして戦闘に参加することは決してないと繰り返しました。今でも繰り返しておられます。しかし、たとえ武力行使を目的にしていなくても、補給や輸送などの後方支援が目的であったとしても、これまで政府が戦闘地域としてきた場所にまで行って活動すれば、結果としてまさに戦闘を行うことになるではありませんか。そのことを否定できますか、総理。

中谷国務大臣 この法律に基づいて行う活動におきましては、補給、輸送などの支援活動でございますが、そもそも前線のような場所で行うものではなくて、危険を回避して、活動の安全を確保した上で実施をするものでございます。

 自衛官が武器を使用できるのは、不測の事態に際して自己保存の権限による場合であるのみでありまして、武器を使って反撃しながら支援を継続するようなことはございません。

 いずれも、自衛隊が戦闘行為を行う、また自衛隊の活動が戦闘行為になるということはないわけでございまして、支援活動の実施が結果として武力行使となるということはないということでございます。

安倍内閣総理大臣 今大臣から答弁させていただいたように、先ほども答弁いたしましたが、いわば自己保存型の武器の使用しかできないわけでございまして、その中においては、もし攻撃を受けた場合には、そこで応戦するということではなくて、直ちに退避に、応戦しながら業務を継続するということ……(志位委員「応戦しながら」と呼ぶ)応戦しながら業務を継続するということではなく、直ちに退避に移るわけでございます。

志位委員 いろいろなことをお答えになっていますが、自己保存型だったら武器の使用をするというのが御答弁なんですね。

 武器の使用といいますが、では、具体的に聞きましょう。

 現実に自衛隊がイラク・サマワに持っていった武器はどのようなものでしたか、防衛省。具体的に答えてください、持っていった武器。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 イラク特措法に基づきましてイラク南部サマワに派遣された陸上自衛隊の部隊は、部隊の安全確保のため、拳銃、小銃、機関銃、機関銃は二種類でございました、無反動砲、個人携帯対戦車弾を携行してまいりました。

志位委員 今具体的に御答弁があったんですけれども、無反動砲も持っていっていますね。無反動砲。

深山政府参考人 御指摘のとおり、八四式無反動砲を持っていきました。

志位委員 今初めて、持っていった武器の内容が示されました。

 パネルに、どんなものか、写真を掲げております。

 持っていった武器は、ピストルとか小銃にとどまらないんですよ。百十ミリ対戦車弾、一番上のものです。八十四ミリ無反動砲、十二・七ミリ重機関銃など、文字どおりの重武装ですよ。人道復興支援と言われたイラクのサマワでも、これだけの武器を持っていったんです。

 これまで戦闘地域とされていた地域での後方支援となれば、さらに強力な武器を持っていくことになるでしょう。必要な場合は、こうした武器を使って反撃するということになります。相手方が仮に戦車で攻撃してきて、必要に迫られた場合には、自衛隊は、この一番上の、百十ミリ携帯対戦車弾を使って反撃するということになるでしょう。

 皆さん、これが戦闘でなくて何なのか。こういう武器を持っていっているんですよ。場合によっては使うから、持っていっているんです。

 総理、いかがですか。今度は総理です。戦闘でなくて何なのか。では、総理。

安倍内閣総理大臣 まず、そもそも後方支援をする目的を考えなければならないわけでありまして、重要影響事態については、まさに我が国の平和と安全を確保するために後方支援を行うわけであります。我が国の平和と安全が脅かされる危険の中において行うということでございます。

 そして、国際平和支援法につきましては、これは、まさに国連憲章の目的にかなう、そういう目的に対して行うということでございます。

 そこで、同時に、繰り返しになりますが、後方支援を行う上においては、安全な場所を選んで行う。これは、非戦闘地域で活動を行うという今までの考え方と基本的には同じでありますが、今までの経験等をもとに整理をし直したわけでございます。

 しかし、武器の使用については、先ほど申し上げましたように、任務遂行型ではなくて自己保存型でありますし、危害要件も、正当防衛かあるいは緊急避難に限られる中で行っていくということでございます。

 そこで、万々が一襲撃に遭った場合は、応戦をし続けて後方支援任務を続けるということではなくて、直ちに退避するということになるわけでございます。

志位委員 私が聞いたのは、武器の使用をするというところまで総理はお認めになった、安全な場所を選んでやると言ったけれども、それでも自衛隊が攻撃される可能性もお認めになった、そのときは武器を使用するということをお認めになった、持っていった武器はこういうものです、こういうものを使って戦闘と言えないのかと聞いたんです。

 全然答えていない。お答えください。まさに戦闘じゃないですか。戦闘じゃないですか。

中谷国務大臣 派遣をいたしますので、隊員の安全を確保する必要がございます。あくまでもこれは必要最小限でありますし、また、自己保存のための武器使用ということで規定をされております。

 また、その上、そういった近傍において戦闘行為等が発生した場合、予測される場合におきましては、部隊長が活動を一時休止または回避をいたしますし、また安全に活動するために中断をしたりするわけでございます。

志位委員 自己保存のための武器の使用だから武力の行使に当たらないということをおっしゃった。戦闘にならないんだということをおっしゃいました。

 ここに、私、一昨日、外務省に提出させた文書がございます。

 国際法上、自己保存のための自然権的権利というべき武器の使用という特別な概念や定義があるわけではございません。これが明確な答弁ですよ。回答であります。

 つまり、国際法上では、武力の行使とは別の、武器の使用という概念や定義そのものが存在しないんです。ですから、自己保存のための武器の使用だから戦闘じゃないんだ、武力の行使じゃないんだという理屈は国際社会ではおよそ通用するものではないということを言っておきたいと思います。

 大体、今問題になっているのは、自衛隊が国内の駐屯地で襲撃を受けた、そのときに自己防護のために武器の使用をするという話じゃないんですよ。海外で武力行使をしている米軍を戦闘現場の近くまで行って支援している、そのときに自衛隊が相手方から攻撃された、それへの反撃が武器の使用で武力の行使じゃない、こんな議論はおよそ通用しない。憲法九条に違反する武力の行使そのものだと言わなければなりません。

 さらに、私は、具体的な事実に照らしてただしていきたいと思います。

 自衛隊のイラク派兵は、非戦闘地域への派兵を建前としておりました。しかし、実際に起こったことは何だったのか。

 陸上自衛隊は、対戦車弾や重機関銃など、かつてない重武装でサマワに展開しました。宿営地を高さ三メートルの土塁で囲み、その外側に柵や有刺鉄線を設置し、宿泊施設をコンクリート壁で、あるいは鉄板で固めるなど、いわば要塞化しました。それでも、二年半の間に、陸上自衛隊に対するロケット弾や迫撃砲弾などによる攻撃は少なくとも十四回、二十三発に及んでいます。うち四回、四発のロケット弾が宿営地の敷地内に落下し、コンテナを貫通したこともありました。宿営地外を移動中の陸上自衛隊の車両が、手製の遠隔操作爆弾による襲撃を受けたこともありました。

 昨年四月、NHK「クローズアップ現代」で、「イラク派遣 十年の真実」と題して、自衛隊が撮影した千本に及ぶイラク派兵の記録をもとに、その実態を明らかにした番組が放映されました。

 番組では、まず、宿営地に撃ち込まれた迫撃砲の着弾地点を映し出しました。私も見ましたが、着弾地点から数メートルにわたって土地がえぐられている。迫撃砲の殺傷力の高さを物語る生々しい映像であります。

 さらに、番組では、当時、陸上自衛隊のトップを務めていた元統合幕僚長の先崎一氏のインタビューを放映しました。

 先崎氏は、政治的には非戦闘地域と言われていたが、対テロ戦が実際に行われている地域への派遣で、派遣部隊から見れば何が起こってもおかしくないと。戦闘地域に臨むという気持ちを原点に置きながら、危機意識を共有して臨んだ。忘れもしないですね、先遣隊、業務支援隊が約十個近くひつぎを準備して持っていって、クウェートとサマワに置いて。自分が経験した中では一番ハードルの高い、有事に近い体験をしたイラク派遣だったと思います。こう語っています。

 航空自衛隊は、クウェートの空軍基地を拠点にC130輸送機でバグダッドなどへの空輸活動を行い、米軍を中心とした武装した多国籍軍などを空輸しましたが、この活動は、常に攻撃にさらされるという危険きわまりないものでありました。

 イギリス軍のC130輸送機は、バグダッド近郊を飛行中、武装勢力によって撃墜され、乗員全員が死亡するという事態も起こっておりました。空自のC130輸送機も、バグダッド空港に駐機中、四発の迫撃砲弾がC130輸送機の頭上を飛び越え、空港の敷地内に撃ち込まれたこともあります。

 空自の輸送機がバグダッド上空に来ると、携帯ミサイルに狙われていることを示す赤ランプが点灯し、警報が鳴る事態が頻発しました。三回飛べば一度ぐらいミサイル警告システムが作動したと証言する空自幹部もいます。機体を左右に急旋回させ、あるいは急上昇、急降下させる命がけの回避行動が必要だったと報道されました。

 総理に伺います。

 非戦闘地域が建前だった自衛隊のイラク派兵でしたが、実態は戦場に近かった。自衛隊員の犠牲者が出ず、自衛隊が一発も銃弾を撃つことなく終わったのは、ほとんど奇跡と言っていいことだと私は思います。

 非戦闘地域が建前であっても、先崎元統合幕僚長の言葉をかりれば、何が起こってもおかしくない、攻撃を受け、戦闘に至る、その一歩手前が現実だったのではないですか。総理にそうした認識はありますか。

 昨日の本会議で私はこの質問を総理に投げかけましたが、定かな答えがありませんでした。私は、イラク派遣の現実についての認識を聞いております。はっきりお答えください、総理。

安倍内閣総理大臣 イラク派遣についても、非戦闘地域ということをいわば確定して、その任務を行っている期間を通じて非戦闘地域、戦闘地域とはならないという地域を選んで自衛隊が駐留し、そして復興支援活動に当たったわけでございます。

 まさに、復興支援活動に当たる上において、先崎さんは自衛隊員の心構えと覚悟についてお話をされたんだろう、このように思います。

 もちろん、ここが全く安全だということではないわけであります。当然、危険が伴う仕事でございます。しかし、その中においても、この法令に従って、我々は、非戦闘地域であるということを確定した区域において自衛隊が作業を行ってきた、復興の支援を行ってきたということでございます。そして、それはイラクの復興支援に大いに役立ったのは事実であり、イラクの人々にも感謝されている、このように思います。

志位委員 私は、イラクの自衛隊の派遣が、攻撃を受け、戦闘に至る一歩手前だという認識はないのかと聞いたんですが、お答えがありません。

 この問題は、当時の久間防衛大臣が、航空自衛隊の活動について国会で、一歩間違うと本当に人命に影響するような状況、見方を変えれば、やいばの上で仕事をしているようなものと答弁をしておられます。

 当時の航空幕僚長だった吉田正氏は、私は首相官邸で、万一撃たれても騒がないでほしい、はしごを外さないでほしいと求めた、テロと同じで、どこで攻撃を受けるかわからない活動だからだと語っております。

 当時の防衛大臣が、やいばの上で仕事をしている、あるいは航空幕僚長は、万一撃たれても騒がないでほしい、どこで攻撃されるかわからない状況だった。こういう認識があるかどうか聞いているんです、総理。

安倍内閣総理大臣 当時も私は官房副長官として官邸にいたわけでございますが、小泉総理も、自衛隊を派遣する上において、安全な場所に派遣をするという気持ちはもちろんこれはさらさらなくて、まさに危険が伴う仕事の中において自衛隊の諸君にイラク復興の支援のための活動をしてもらう、こういう思いで小泉総理も派遣を命じたわけでございますが、しかし、同時に、派遣をする上においては、活動を通じて非戦闘地域、非戦闘地域という概念においては、武力行使と一体化しないという概念において導き出された概念でございますが、その中において、期間を通じて非戦闘地域であると。

 非戦闘地域であるということは、いわば私たちが今この日本の中で享受しているような安全な状況とはこれは違うわけでありまして、だからこそ、日ごろ訓練をしている自衛隊の諸君にその任務を担ってもらうわけであります。

 同時に、もしそういう状況になれば退避、避難をするということでございまして、今回の法案におきましても、そういう事態になれば、部隊の指揮官が判断する場合もありますし、また防衛大臣が判断する場合もありますが、一時中断したり避難をする、あるいはそういう事態になる可能性があるという予測をした段階で避難、中断をするという確実な判断をすることも必要だろう、このように思います。

志位委員 私は、イラクへの自衛隊派遣の実態がどうだったかについての認識を聞いたんですが、お答えになりません。今の答弁では答えていない。

 非戦闘地域が建前でも、戦闘に至る一歩手前でした。それは当時の当事者たちの発言で明らかです。

 この現実を無視して、これまで戦闘地域とされてきた地域での活動を可能にする、しかも、これまでできなかった弾薬の提供、武器や弾薬の輸送もできるようにする。戦闘部隊への補給を断つため、弾薬や武器を輸送する自衛隊が真っ先に攻撃対象とされるでしょう。自衛隊は現実に攻撃され、殺し殺される危険が決定的に高まるんじゃありませんか。

 イラク戦争の当時、首相官邸で自衛隊派兵の中心を担った元内閣官房副長官補の柳沢協二氏は、朝日のインタビューで次のように述べています。

 当時、航空自衛隊は輸送任務でバグダッド空港まで行きました。新たにつくる恒久法では、そこから先の戦闘部隊がいる場所まで輸送できるようになる。それは非常に緊急性の高い輸送です。政府案は戦闘が起きたら輸送を中断する仕組みになっていますが、戦闘を行っている部隊の指揮下に入ることになれば、輸送を中断するわけにはいかないでしょう。

 自衛隊派遣の前提だった非戦闘地域という概念は、憲法上のつじつま合わせだけではなかったと思います。実質的に自衛隊を戦闘部隊の指揮下に入れず、直接の戦闘に巻き込ませないという意味があった。この概念を廃止して活動範囲を広げれば、今までより確実にリスクは高まります。イラクは何とか戦死者を出さずに済みましたが、あれ以上のことをやれば必ず戦死者が出ると思います。こう言われています。

 柳沢さんは、必ず戦死者が出るとまで断言されておられます。イラク派兵の中心を官邸で担ったこの方の発言は、私は重いものがあると思いますよ。

 総理、自衛隊員に戦死者が出るようになるのは避けがたいと考えますが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 柳沢さんは重大な間違いを犯しておられます。

 まず、自衛隊が、輸送して、届ける先の部隊の指揮下に入ることはありません。これは明確に申し上げておきたい。

 柳沢さんは何でこんな初歩的なことをわからずにべらべらしゃべっているのか、私も大変驚いている。これは極めて重要なことですよ。指揮下に入るか入らないか。入ることはないんですから。自衛隊が独自に判断してそういう状況になれば、直ちに退避をする。退避できないのと指揮下に入ってしまうのとは天と地の違いであります。ですから、彼の証言は全く意味がない話だろうということは、まずはっきりと申し上げておきたいと思います。

 その上において、先ほど来、中谷大臣も答弁をしておりますように、しっかりと我々は、戦闘現場ではない、そして、その任務を実行する期間においてそういう戦闘現場となることのない区域を指定して、そこで活動をするわけでございます。ですから、そういう意味においては、しっかりと自衛隊の安全を最大限確保しながら、我々はこの後方支援の任務に当たってもらうわけでございます。

志位委員 自衛隊が指揮下に入らないと言われましたけれども、兵たん部隊が全体の指揮下に入るというのは軍事の常識ですよ。兵たんをやる部隊が勝手にどこかに物を置いて、それで済むわけがない。統一した指揮下に入るというのは軍事の常識です。日米新ガイドラインでも同盟調整メカニズムとありますが、これは結局、米軍の指揮下に入るということですよ。

 総理は安全確保ということを繰り返します。

 柳沢さんはこうもおっしゃっています。政府・与党は、安保法制に自衛官の安全確保を書き込めば安全になると思い違いをしている。安保法制では、自衛隊の活動地域は、これまでの非戦闘地域から非戦闘現場になる。つまり、活動地域が大幅に拡大し、最前線まで武器や弾薬を輸送できる。自衛隊員の安全確保のための必要な措置というが、法改正で、隊員に与えられる任務の危険性は格段に高くなる。間違いなく戦死者が出ますよ。矛盾もきわまれりで、これが荒唐無稽でなくて何でしょうかと言われております。

 私は、きょう、具体的な法案の仕組みそしてイラク派兵の実態に照らして、自衛隊が殺し殺されることになる危険についての認識を伺いました。それについてこれだけ聞いても、総理はリスクを語ろうとしない。これは余りに無責任で、不誠実な態度じゃないですか。自衛隊の活動地域をこれまで政府が戦闘地域としていた地域へと大幅に拡大しておきながら、隊員の安全確保を言うのは全くの自己矛盾であり、荒唐無稽であり、ブラックジョークの類いだと言わなければなりません。

 そこで、さらに聞いてまいります。

 これまで自衛隊員の戦死者が出ていないものの、犠牲者が出ていないわけではありません。アフガニスタン戦争に際してのテロ特措法、イラク戦争に際してのイラク特措法に基づいて派遣された自衛官のうち、これまでにみずから命を絶った自殺者はそれぞれ何人か、防衛省、報告されたい。

真部政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十六年度末現在、その時点でございますが、イラク特措法に基づきまして派遣された経歴のある自衛官のうち、陸上自衛官が二十一名、航空自衛官が八名、計二十九名、それから、テロ特措法に基づいて派遣された経歴のある自衛官のうち、海上自衛官が二十五名、これは統計の関係で平成十六年度以降でございますが、以上、二十九名と二十五人で、足し合わせますと五十四名が帰国後の自殺によって亡くなられております。

 一般に申し上げますと、自殺の原因は、さまざまな要因が複合的に影響し合って発生するものでございます。したがいまして、個々の原因について特定することは困難な場合が多うございます。自殺した自衛官についても、海外派遣との因果関係、こういったものを特定することは困難な場合が多いということを付言させていただきたいと思います。

志位委員 五十四人の自殺ということが報告されました。これは深刻な数字であります。

 さきに紹介した、昨年四月に放映されたNHKの「クローズアップ現代」の「イラク派遣 十年の真実」では、イラク派遣が隊員の精神面にも大きな影響を与えていたとして、派遣自衛官の中での自殺者の問題を生々しく取り上げました。

 番組では、イラク派遣から一カ月後に自殺した二十代の隊員の母親のインタビューを次のように放映しました。

 派遣中の任務は宿営地の警備だった。お母さんのインタビューです。息子が、ジープの上で銃を構えて、どこから何が飛んでくるかおっかなかった、怖かった、神経を使ったって。夜は交代で警備をしていたようで、交代しても寝られない状態だと言っていた。

 息子は帰国後、自衛隊でカウンセリングを受けましたが、精神状態は安定しませんでした。母親は、息子の言動の異変を心配していました。母親のインタビューです。息子は、おかしいんじゃ、カウンセリングって。命を大事にしろというよりも逆に聞こえる、自死しろと、自死しろと言われているのと同じだ、そういうふうに聞こえてきたと言っていた。この数日後、息子は死を選びました。

 番組でこういう内容が放映されました。

 番組では、現地に派遣された医師が隊員の精神状況を分析した内部資料を紹介しました。内部資料には、派遣されたおよそ四千人を対象に行った心理調査の記録もありました。睡眠障害や不安など心の不調を訴えた隊員は、どの部隊も一割以上、中には三割を超える部隊もあることがわかりました。これは深刻な問題だと思うんですよ。

 総理、非戦闘地域が建前の活動でもこれだけの若者が犠牲になり、また、心に傷を負っております。これまで政府が戦闘地域としてきた地域まで活動地域を広げるとなれば、これをはるかに超える甚大な負担と犠牲を強いることになることは私は避けがたいと考えますが、総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私がかつて官房長官のときに、自衛隊において他の公務員と比べても自殺率が高いという話を聞きまして、そのカウンセリング等、対応をとるように指示したわけでございますが、いずれにいたしましても、そうした形で死を選んだ方々がおられる、大変胸の痛む話であります。

 しかし、そこで、こうした活動を行っていく、確かに緊張感を伴うわけでございます。その中で、常に自衛隊の諸君は、さまざまな現場で、リスクを負いながら、国民の命と幸せな暮らしを守るために任務を全うすべく、全力を尽くしているわけでございます。

 今回のこの法案における後方支援活動と今までの活動とを比べている中において、先ほども申し上げましたように、非戦闘地域という概念を非戦闘現場と改めたわけでございますが、しかし、実際に活動する区域には、午前中の答弁でも申し上げたわけでありますが、例えば自衛隊が宿営する場所あるいは実際に活動する区域について、その活動をしている期間、安全が十分に確保されているという場所で活動をするということになるわけであります。

 今までは、非戦闘地域という、例えばサマワであればサマワ全体を半年なら半年指定していたわけでございますが、今回は、実際に活動する区域を指定するということにおいて、より柔軟性を持つということになるわけでございますが、いずれにせよ、実際に戦闘現場になる、そういう危険性があるときには中止したり、あるいは退避をする、こういうことになっているわけでございます。

志位委員 自衛隊の安全確保の話を聞いたんじゃないんですよ。

 こういう、自衛官がみずから命を絶つという深刻な事態が起こっている、これを、自衛隊の活動領域を広げたらもっと深刻になるんじゃないかと聞いたんですが、全くお答えがありませんでした。

 米国には、イラク戦争とアフガニスタン戦争の帰還兵が二百万人以上おります。うち六十万人が、戦地で経験した戦闘や恐怖から、心的外傷後ストレス障害、PTSDなどを患っております。そして、米国政府によると、一日平均二十二人、年間八千人もの帰還兵が自殺をしており、米国の一大社会問題となっております。イラクとアフガンの戦場での戦死者よりも年間の自殺者が上回るという異常事態であります。帰還兵の支援は、ワシントン・ポスト紙では、米国の次の戦争と呼びました。昨年十二月、ことし二月の二度にわたって兵士自殺防止法が制定されているほど事態は深刻になっております。

 PTSDの原因は、戦場で命を奪われる恐怖とともに、戦場で相手の命を奪ったこと、自爆テロだと判断し発砲したところ、無辜の民間人を殺してしまったなどへの心の痛み、苦しみによるものが多く、深刻だと報じられております。

 こうした苦しみを日本の若者にも押しつけようというんですか。これを聞いているんです。日本の若者を戦地に派兵し、殺し殺される戦闘をさせる、それがもたらす心身への深刻な傷跡ははかり知れないものですよ。これを聞いているんです。この認識はどうでしょうか。

中谷国務大臣 まず、派遣する際における安全につきましての対応は、さらに大きくしていかなければならないと思います。

 委員が御指摘のとおり、海外派遣は非常に過酷な環境で行われておりますので、こういった精神的な負担等につきましては、クールダウンと申しますけれども、さまざまな措置を講じまして、隊員のメンタルヘルスケアの機会を充実させていきたいと思います。

志位委員 私は、米国の実態を引いて、この深刻な事態を示しました。戦争で真っ先に犠牲にされるのは未来ある若者ですよ。若者を戦場に送るわけにいかないということを強く言っておきたいと思います。

 さらに、ここで私は、後方支援の本質論を聞いていきたいと思います。

 そもそも、政府の法案で後方支援と呼んでいる活動、弾薬や燃料などの補給、武器、弾薬、兵員などの輸送、壊れた戦車の修理、傷病兵の医療、通信情報などでの支援などの活動は、国際的には兵たんと呼ばれている活動であります。

 後方支援という言葉は日本政府だけが使っている造語であって、国際的には兵たん、ロジスティクスと呼ばれております。大体、四月に日米両政府が交わした新ガイドラインでも、日本語では後方支援ですが、英文はロジスティックサポートに全部なっております。ロジスティックには、前方とか後方などという含意はありません。

 そこで、この兵たんが国際的にどのように扱われるか、戦時国際法を見てみたいと思うんです。

 戦後、国連憲章のもとで戦争と武力行使は一般的に禁止されました。しかし、そのもとでも国際的な武力紛争は繰り返されました。

 そこで、国際的な武力紛争が起こった際に、戦争の犠牲者を保護する、文民や民用物を保護することが必要とされました。こうしてつくられたのが、一九四九年のいわゆるジュネーブ四条約、戦争犠牲者の保護に関する条約と、一九七七年の国際的武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書、第一議定書であります。追加議定書は、日本も含めて既に世界百七十一カ国が批准し、国際的に確立したルールとなっております。

 パネルをごらんください。

 追加議定書は、第五十二条に「民用物の一般的保護」という条文があります。読み上げます。

  第五十二条 民用物の一般的保護

 1 民用物は、攻撃又は復仇の対象としてはならない。民用物とは、2に規定する軍事目標以外のすべての物をいう。

 2 攻撃は、厳格に軍事目標に対するものに限定する。軍事目標は、物については、その性質、位置、用途又は使用が軍事活動に効果的に資する物であってその全面的又は部分的な破壊、奪取又は無効化がその時点における状況において明確な軍事的利益をもたらすものに限る。

 ここでは「物」という言葉がありますが、コマンテールでは、この「物」には当然部隊も入るということが解釈として言われております。

 私は、この場の、一九九九年三月二十六日のガイドライン特別委員会で行われた周辺事態法案の審議において、周辺事態法で自衛隊などが行う後方地域支援、すなわち軍事活動を行っている米軍に対する補給、輸送などの活動が、このジュネーブ条約の追加議定書の五十二条で、第一項の文民、民用物として保護の対象になるものか、それとも第二項の軍事目標とされるものか、どちらに仕分けされるのかをただしました。

 この質問に対して、当時、外務省東郷条約局長は、私の質問の最後ではっきりとした答弁をしております。

 どういう答弁を行ったか、その該当箇所を、外務省、読み上げていただきたい。

平松政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの答弁でございますけれども、当時の外務省条約局長は、「御質問の第五十二条、これはどういう趣旨かと申しますと、これは民用物への攻撃の禁止をその趣旨とするものでございまして、一般的に申し上げれば、自衛隊の艦船、航空機等は国際法上民用物というふうには考えられないところでございまして、そういう意味では、委員御指摘の第二項の方に該当するというのはむしろ当然のことではないかと思います。」と答弁しております。

 他方……(志位委員「もういいです」と呼ぶ)

志位委員 そういう答弁で終わっているんですね。

 つまり、自衛隊が行う、当時は後方地域支援、これについて聞いたわけですが、これは攻撃対象になる、そして、兵たんというのは戦争行為の不可欠の一部だ、武力行使と一体不可分のものだということを示していると思うんですよ。

 この兵たんが、追加議定書第五十二条で言う軍事活動に効果的に資する活動であって、戦時国際法上、軍事攻撃の目標にされるということは、兵たんが戦争行為の一部であり、武力行使と不可分の活動だと国際社会でみなされていることを意味するものにほかならないと言わなければなりません。

 いま一つ私が提示したいのは、米海兵隊がつくった海兵隊教本であります。そのロジスティクス、兵たんの項をここに持ってまいりました。現在使われているものです。

 兵たんについて、冒頭部分で、我々のドクトリンは兵たんが戦闘と一体不可分であると認識していると強調した上で、次のように述べております。ちょっと読み上げます。

 兵たんはいかに重要か。兵たんは、軍事作戦のいかなる実施の試みにおいても不可欠な部分である。兵たんなしには、計画的で組織的な活動としての戦争は不可能である。兵たんなしには、部隊は戦場にたどり着けない。兵たんがなければ、武器は弾薬なしになり、車両は燃料なしとなり、装備は故障し動かないままとなり、病人や傷病兵は治療のないままになり、前線部隊は食料や避難所や医療なしに過ごさなければならない。兵たんの重要性について非常にわかりやすく書かれております。

 次に、兵たんと戦争という項があります。

 兵たんと戦争。兵たんは戦争の一機能であるがゆえに、兵たんシステムとそのシステムを作動させる部隊及び要員は暴力及び危険の対象となる。兵たんの部隊、設備、施設は軍事攻撃の格好の目標であることを認識することが重要である。

 先ほど、総理は、兵たんというのは安全なところでやるのが常識なんだというふうに言われました。しかし、この海兵隊教本には別のことが書いてあるんですよ。戦闘部隊というのはいろいろなところに動ける。だから柔軟性がある。しかし、兵たんというのは計画的にやらなきゃならない。だから、より軍事攻撃の格好の目標になる。この軍事の常識がはっきり述べられております。

 そして、結論です。

 結論。兵たんは戦闘と一体不可分である。兵たん活動は軍事行動の不可欠の一部である。兵たんは、いかなる、また全ての戦争行動の中心構成要素である。非常に明瞭であります。

 総理に伺います。

 総理は、昨日の本会議での私の質問に対して、我が国が行う後方支援は他国の武力の行使と一体化することがないように行うものです、このようなことから、武力行使と一体不可分という御指摘は当たりませんと答弁されました。

 しかし、総理が何と言おうと、自衛隊が支援する米軍が、兵たんは武力行使と一体不可分であり、戦争行為の不可欠の一部であり、戦争の中心構成要素だ、ここまで言っているんです。相手がこう言っているんですよ。これが兵たんの本質じゃないですか。

安倍内閣総理大臣 確かに、今、志位委員が御紹介されたように、兵たんというのは重要なんですよ。重要であるからこそ安全を確保しなければいけない。

 つまり、兵たんの安全が確保できないようであれば作戦行動というのは成り立たないわけであります。ですから、我々が支援するのは、いわばしっかりと兵たんの安全が確保されている場所において後方支援をするわけであります。食料等々を届けていく、それがいわば奪われてしまう、攻撃されて奪われてしまったら、これは相手に渡るわけでありますから。だからこそ、また後方支援を受けている間は攻撃に対して脆弱であるという考え方のもとに、しかし、ちゃんと安全を確保しましょうという考え方でもあるんだろうと思いますよ。

 後方支援に際しては、危険を回避し安全を確保することは当然でありまして、むしろ軍事的に合理性があると思います。これは同時に後方支援を十分に行うためにも必要なことでありまして、まさに危険な場所にたくさんの物資を届けるというのは、敵に届けてしまうようなことになってしまうわけでありますから、そういうところでいわば後方支援をしないというのはむしろ常識だということは繰り返し申し上げてきたわけでありますが、あえてまた申し上げたい、こう思うわけでございます。

 その中において、先ほど来答弁させていただいておりますように、戦闘現場ではない場所、そして活動を通じて戦闘現場ではない、安全を十分に確保できるということについてしっかりと見きわめながら、活動を行っていく区域を設定していくことになるわけでございます。

志位委員 総理は、これだけ議論したのに、また同じことを繰り返すんです、安全確保しますと。

 しかし、これは議論してきたじゃないですか。これまでは非戦闘地域でしかやってはいけないという歯どめがあった、これを廃止する、そして、戦闘現場でなければ、これまで政府が戦闘地域と呼んでいたところまで行って活動することになる、そうすれば自衛隊は攻撃される可能性がある、それも総理はお認めになりました。攻撃されたら武器の使用をする、これもお認めになりました。これは戦闘になるんじゃないかということを私は提起してまいりました。

 ですから、これは議論を通じてまさに自衛隊のやる後方支援というのは戦闘になるということがはっきりしたというのが、この議論の到達点なんですよ。

 そして、兵たんというのは、今、海兵隊の教本を示しましたが、戦争行為の不可欠の一部であり、武力の行使と一体不可分のものです。だから、軍事攻撃の目標にされる。これが世界の常識であり、軍事の常識です。武力の行使と一体でない後方支援など、世界でおよそ通用するものではありません。

 なお、一九八六年のニカラグア事件に関する国際司法裁判所の判決は、兵器または兵たんもしくはその他の支援の供与について、武力による威嚇または武力の行使とみなされることもあり得ると明示しております。ですから、あらゆる兵たんが全部武力の行使でないなんということはあり得ないということは、国際司法裁判所も明示していることであります。

 しかも、これまでは、非戦闘地域に限るとか弾薬の補給をやらないとかの歯どめがありましたが、今回の法案はそれらの歯どめも外してしまっているじゃないですか。武力の行使と一体でない後方支援というごまかしは、いよいよ通用するものではありません。

 きょうの質疑を通じて、政府の法案が武力の行使を禁止した憲法九条一項に反する違憲立法であることは明瞭になったと思います。絶対に認めるわけにはまいりません。

 私は、引き続きあすも質疑に立ち、PKO法改定と集団的自衛権の問題について引き続き質疑をしていきたいと思います。

 終わります。

浜田委員長 次回は、明二十八日木曜日午前八時四十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二分散会


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