衆議院

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第6号 平成27年6月1日(月曜日)

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平成二十七年六月一日(月曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 今津  寛君 理事 岩屋  毅君

   理事 江渡 聡徳君 理事 松本  純君

   理事 御法川信英君 理事 長妻  昭君

   理事 下地 幹郎君 理事 遠山 清彦君

      井上 貴博君    小田原 潔君

      小野寺五典君    大岡 敏孝君

      大西 宏幸君    大野敬太郎君

      大見  正君    勝沼 栄明君

      木原 誠二君    黄川田仁志君

      工藤 彰三君    笹川 博義君

      白石  徹君    武井 俊輔君

      中谷 真一君    橋本 英教君

      原田 義昭君    平沢 勝栄君

      星野 剛士君    宮崎 謙介君

      宮崎 政久君    宮澤 博行君

      武藤 貴也君    盛山 正仁君

      八木 哲也君    山口  壯君

      山田 賢司君    若宮 健嗣君

      泉  健太君    緒方林太郎君

      大串 博志君    玄葉光一郎君

      後藤 祐一君    郡  和子君

      辻元 清美君    寺田  学君

      長島 昭久君    細野 豪志君

      前原 誠司君    本村賢太郎君

      山尾志桜里君    青柳陽一郎君

      今井 雅人君    太田 和美君

      丸山 穂高君    吉田 豊史君

      伊佐 進一君    佐藤 茂樹君

      浜地 雅一君    赤嶺 政賢君

      穀田 恵二君    宮本  徹君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   法務大臣         上川 陽子君

   外務大臣         岸田 文雄君

   防衛大臣

   国務大臣

   (安全保障法制担当)   中谷  元君

   防衛大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    石川 博崇君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  前田  哲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山本 条太君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  土本 英樹君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  藤山 雄治君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  槌道 明宏君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            平松 賢司君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            伊原 純一君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    冨田 浩司君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  黒江 哲郎君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  深山 延暁君

   衆議院調査局我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別調査室長     齋藤久爾之君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月一日

 辞任         補欠選任

  小野寺五典君     黄川田仁志君

  橋本 英教君     井上 貴博君

  宮川 典子君     八木 哲也君

  山口  壯君     大岡 敏孝君

  緒方林太郎君     本村賢太郎君

  大串 博志君     玄葉光一郎君

  後藤 祐一君     細野 豪志君

  辻元 清美君     山尾志桜里君

  寺田  学君     泉  健太君

  長島 昭久君     前原 誠司君

  青柳陽一郎君     今井 雅人君

  太田 和美君     吉田 豊史君

  志位 和夫君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     橋本 英教君

  大岡 敏孝君     宮崎 謙介君

  黄川田仁志君     小野寺五典君

  八木 哲也君     工藤 彰三君

  泉  健太君     寺田  学君

  玄葉光一郎君     大串 博志君

  細野 豪志君     後藤 祐一君

  前原 誠司君     長島 昭久君

  本村賢太郎君     緒方林太郎君

  山尾志桜里君     郡  和子君

  今井 雅人君     青柳陽一郎君

  吉田 豊史君     太田 和美君

  宮本  徹君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  工藤 彰三君     大見  正君

  宮崎 謙介君     山口  壯君

  郡  和子君     辻元 清美君

  穀田 恵二君     志位 和夫君

同日

 辞任         補欠選任

  大見  正君     宮川 典子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七二号)

 国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案(内閣提出第七三号)


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     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 この際、委員長から一言申し上げます。

 当委員会で審査中の議案は、国民も大変注視をしております。議論が白熱するのは大変結構でありますが、出席大臣におかれましては、法案を提出し、審議をお願いしているという立場に鑑み、不必要な発言は厳に慎むようお願いいたします。

 この際、安倍内閣総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。安倍内閣総理大臣。

安倍内閣総理大臣 二十八日木曜日の本特別委員会における辻元委員の質問の際に、私の不規則発言に関して、言葉が少し強かったとすればおわび申し上げたい旨申し上げました。さらに、先ほど委員長の御指示もいただきました。

 私の発言に関して重ねておわび申し上げるとともに、御指示を踏まえて真摯に対応してまいります。

     ――――◇―――――

浜田委員長 内閣提出、我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官前田哲君、内閣官房内閣審議官山本条太君、内閣官房内閣審議官土本英樹君、内閣官房内閣審議官藤山雄治君、内閣官房内閣審議官槌道明宏君、外務省総合外交政策局長平松賢司君、外務省アジア大洋州局長伊原純一君、外務省北米局長冨田浩司君、防衛省防衛政策局長黒江哲郎君、防衛省運用企画局長深山延暁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩屋毅君。

岩屋委員 自民党の岩屋です。

 私は、この一年がかりで二十五回にわたって開催された与党協議に参加をしてまいりました。それだけに、ともに汗をかいていただいた同志の皆さんとともに、この法案に責任と使命感を感じているところでございます。

 また、二十五回の協議を通じて、友党公明党の皆さんからは非常に有意義な御提案、御意見を賜りました。

 とりわけ、我々が今、北側三原則と言っているこの三原則でございます。この法案をつくるに当たっては、次の三つのこと、国際法上の正当性がしっかりないといけないよね、二番目には、国民の理解と民主的統制、つまり、自衛隊が動く場合には、国民の理解と支持を得て、つまりは国会の承認をきちんと経て動かなければいけないよね、三番目には、全ての活動を通じて隊員の安全確保に万全の対策が講じられていなければいけないよね、この三つが北側三原則でございます。我々はこれを全面的に受け入れて、全ての法案にこれを貫かせているというふうに考えております。

 正直申し上げて、当初自民党が考えていた案からすると、これがさらにモデレートされて、抑制的になって、そして平和国家日本にふさわしい法案に仕上がっているというふうに考えておりますが、この三原則がしっかりと貫かれているんだということについて、総理から国民の皆さんにぜひ説明をしていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 自民党と友党公明党との間で、そして政府も交えて、二十五回にわたって法案作成に向けて御尽力をいただいた、岩屋委員にも中心的な役割を果たしていただいたことに御礼を申し上げたいと思います。

 そこで、今御紹介をいただきました三原則でありますが、北側三原則とも言われているこの三原則は、まさに、国内外に自衛隊を派遣する際に、こういう原則のもとに自衛隊を派遣しますよということを明示し、透明度を上げ、国際的な理解を深める、そういうための原則でもある、このように思います。

 第一には、国際法上の正当性を有すること、そして、国民の理解を得られるように、国会の関与等の民主的統制を適切に確保すること、そして、自衛隊員の安全確保のための必要な措置を定めること、この三つでございますが、今委員が御指摘のように、政府としては、全面的に受け入れまして、三原則を法律上の要件として明確に定め、全ての法案にこの原則を貫徹することができたのではないか、このように思います。

 政府としても、このような平和安全法制の内容について、わかりやすく、丁寧に今後とも説明していきたいと考えております。

岩屋委員 もう一つ国民の皆さんにぜひ御理解をいただきたいのは、この法案がどういう類いの、どういう性質の法案かということでございます。

 この平和安全法案というのは、総じて危機管理法案なんですね。いろいろな事態がそこに書いてあります。だけれども、それらの事態がすぐさま起こるなんということを我々も考えているわけではないわけですね。しかし、危機管理には想定外は許されないんです。万々が一のときに、手段がない、だから国民を守れないというわけにはいかないんですね。だから、穴のないように、切れ目のないように法案を整備しておく必要がある。

 例えば、今、我が国には有事法制というのがあります。日本が攻撃されたときにどう対応をするかということが書かれた法律なんですけれども、もちろん、これは一回も発動されたことはない。今、日本が攻撃される蓋然性が高いわけではない、しかし、その備えはきちんとしておかなくちゃいかぬ。これと同じことなんですね。そのことをぜひ御理解いただかなければいけないと思います。

 そういう事態が起こらないようにするということが我々政治の責任でありますけれども、すき間のないように法案をつくり、そして万が一の場合の対策をつくり、それに向かって訓練を重ねることによって抑止力が高まり、結果として紛争を未然に防ぐことができる、これが法案の持っている特質、性質だと思いますが、そのことを総理からまたぜひ説明をしていただければありがたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今回の法制は、まさに岩屋委員が御指摘になったように、この法制をつくったから、直ちに自衛隊がどこかに出ていくというものではありません。今おっしゃったように、危機が起こったときに、国民の命と幸せな暮らしを守るために、切れ目のない対応をできるようにしていくためのものであります。

 そして、こうした対応をしっかりと法制上もとっていく、この法制上とれていく中において、自衛隊はそのための訓練もしています。そのことによって抑止力が高まり、未然にさまざまな出来事を防ぐことができるというものでございます。

 例えば、自衛隊は創設されて六十年たちます。海外から侵略を防ぐためのものであります。しかし、この六十年間、一度も防衛出動はしたことはないわけでありますし、自衛権も、個別的自衛権も行使したことが幸いないわけであります。だからといって、自衛隊法がなくてよかったわけではありません。自衛隊の存在がなくてよかったわけではなくて、逆であります。それをしっかりと、そうした備えをつくっておいたからこそ、日本を侵略しようというよこしまな考え方を持つ国々が、やはりやめておこうということになってくるわけであります。ここが抑止力のまさに本質と言ってもいいんだろう。

 こうした抑止力をきかせながら、さらには国際的な平和と安定を保っていくことは、我が国の繁栄にもつながっていくことであります。その中で、今までの経験を生かして、より効率的に貢献していこう、そのための法整備であります。

岩屋委員 ですから、実際に行うということと、できるようにするということとは違うんですね。今回の法制を通じて、確かにできるようになることはふえておりますけれども、では、実際にそれをすぐさま、無理やり、自動的に行うかというと、決してそういうことではない、これが法案の特質なので、そこをぜひ国民の皆さんにも御理解いただきたいというふうに思います。

 これまでの議論を通じて最も時間が割かれたのはリスクの問題ですね。国民の皆さんの御心配も、まさにそこに集中しているんだと思います。

 きのう私がテレビで申し上げたのは、自衛隊の活動の範囲、内容は確かにふえていきますよね、したがって、リスクがふえる可能性があるということは事実でしょう、しかし、だからこそ我々は、この法制を通じて、法制面であるいは運用面でしっかりと手だてを講じているんですと。大串さん、間違いないですよね。そういうお話を私はさせていただきました。そういう説明をしっかりしていけば、必ず国民の皆さんには御理解をいただけると私は確信をしているところでございます。

 そこで、この心配の最大の原因になっているのは、やはり後方支援のところだと思うんですね。今までは非戦闘地域という、言ってみればゾーニングをして、ここの中だったら国や国に準ずる組織は出てこないよ、だから憲法で禁ずる武力の行使には当たらないよということで、そういう枠組みを設定して活動してきたわけでございます。

 しかし、これは、言ってみれば憲法上の要請に応える枠組み設定だったわけですね。議論を聞いていると、この憲法上の問題と法制上の問題と運用上の問題がちょっとごっちゃになっているなという感じがしておりました。そこをきちんと分けて議論するということが大事だと思います。

 わかりやすく言えば、私は大分県ですけれども、大分県でまだ戦闘が一部続いている。

 これまでは、中谷大臣のところの高知県は非戦闘地帯だ、だからこの中でだけ活動しようということだったわけですね。

 しかし、経験を積んだ結果、総理の山口県では医療活動がしばらくの間安全にできますよね、外務大臣の広島では補給活動がしばらくの間安全にできますよね、そういう安全な実施区域を大臣が定めていくことができるようになる、こういう枠組みの設定の仕方に変えるということなんですね。そこをぜひ御理解いただきたいというふうに思います。

 しかし、より難度の高い活動に自衛隊が従事をしていくことは事実ですから、やはり法制上あるいは運用上しっかりとした安全対策が必要であることには変わりはありません。そこをどう考えているかということを中谷大臣から説明していただきたいと思います。

中谷国務大臣 これまでの特措法におきましては、自衛隊の活動が憲法との関係で問題が生じないように、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域、いわゆる非戦闘地域で活動する旨の規定を設けておりました。

 今般の法整備におきましては、憲法との関係において、いわゆる武力の行使との一体化論、これ自体は前提といたした上で、自衛隊による実際の活動経験、また諸外国の活動の実態等、現実に即して検討を行った結果、現に戦闘行為が行われている現場以外の場所で行う補給、輸送などの支援活動は他国の武力の行使と一体化するものではないと判断をいたしました。

 その上で、後方支援は、性質上、そもそも、危険を回避して、活動の安全を確保した上で実施するというものでありまして、安全な場所でなければ有効な後方支援を実施することはできない、これが大前提でございます。

 そこで、今回の法案につきまして、自衛隊が実際に安全で円滑に活動できるような実施区域を指定することとしておりまして、自衛隊の部隊の安全を考慮して、今現在戦闘行為が行われていないということだけではなくて、自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定するということになります。

 また、防衛大臣による実施区域の指定の際には、部隊の安全の観点から、その場所、そして避難できる場所、そして宿営地などの避難経路なども現地の状況において考慮をするということで、攻撃を受けない安全な場所で活動を行うことには従来といささかの変更もなく、新たな考え方への変更そのものが活動に参加する隊員のリスクを高めるとは考えておりません。

 このほか、自衛隊の実際の活動につきましては、いろいろな面で運用する際に、部隊長の判断や、また状況に応じての中止、休止、こういった規定も盛り込んでおります。

岩屋委員 ですから、何か戦闘現場の真横や真後ろで活動するかのような議論がありますが、決してそんなことはないわけですね。あくまでも、安全が確保される実施区域を大臣がさまざまな情報に基づいて責任を持って定める、そして運用については実施要領等でさらに安全をしっかりと確保していく、こういう仕組みだということをぜひ御理解をいただきたいと思います。

 平和安全法の中で想定されている事態、私は、ほとんど起こり得ないと思います。唯一性質が違うのはPKO関連のところですね。ここだけは、平和構築のために今まで以上に積極的に関与していこうということで法律を改正するわけですから、ここには、駆けつけ警護だとか、任務遂行のための武器使用だとか、新たな任務とか権能が加わっているので、ここは、大臣、本当に気をつけなきゃいけないところなので、これについては、この後、友党の遠山委員の方から詳しく聞いていただきたいと思っています。

 それから、自衛権発動の三要件ですね。この表現が、もちろん言葉だけではなかなかわかりにくいわけでありますが、私は、しっかりとしたこれは歯どめになっているというふうに思うんですね。およそ国連加盟国全てに認められている集団的自衛権について、これほどしっかりとした歯どめをかけているという例は他にないんじゃないかと思いますけれども、外務大臣、いかがですか。

岸田国務大臣 国際法上、集団的自衛権に関しましては、自国と密接な関係にある外国に対する武力を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することを正当化される権利である、このように定義をされています。

 しかし、我が国の場合は、我が国が集団的自衛権を行使できる場合、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生するのみでは足りないとしています。あくまでも、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、そして自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があることを初め、新三要件、この三要件を満たす場合のみというふうに限定をしています。

 この新三要件自体、憲法上の明確な歯どめであり、これを一般の集団的自衛権の定義に加えている、そして上乗せしている、こうした例は国際的に見ても他に例がない極めて厳しい基準であると認識をしております。

岩屋委員 本当に私もそう思いますね。しかも、この存立危機事態というのは、我が国が武力攻撃を受けたと同様の深刻、重大な被害があるときということに限定されているわけですから、そういうものであるということをぜひ国民の皆さんにも御理解をいただきたいと思います。

 しばしば機雷掃海の話が出ておりますが、これは、機雷が敷設されれば、もう無理やりにでも、すぐさま出ていこうなんという話をしているわけではないわけですね。

 湾岸戦争の後に日本の自衛隊は機雷を掃海しました。これはどういう法律のどういう条文に基づいて行ったのか、中谷大臣、端的にお答えください。

中谷国務大臣 これは遺棄機雷と申しますけれども、紛争や戦闘が終了した後、残された機雷を除去するということで、戦闘地域とか戦闘行為が行われていない場所での機雷の掃海作業でございました。

岩屋委員 だから、いつでもできるんですよ、紛争が終わっていれば、自衛隊による掃海は。

 存立危機事態みたいなものに至らない場合は、紛争が終わってから行きゃいいんです。普通そうするんだと思います。しかし、万々が一、まだ停戦合意はできていないけれども、このことによって本当に深刻、重大な、生死にかかわるような状況が国内に生まれている、そういう場合は行けるようにしようという話をしているわけでございます。

 ここの説明が、総理、ちょっと国民の皆さんにわかりにくくなっていることは事実だと思うんですよね。

 新三要件を満たせば他国の領域において武力を行使することも可能であるという答弁書も政府は決めておりますが、一方で、総理は一貫して、いわゆる一般の海外派兵ということはやらないんだと言い続けてきたわけですよね。

 しかしながら、ホルムズ海峡での停戦合意前の機雷掃海は、万々が一の場合には例外的に可能だ、これは海外派兵には当たらないんだ、こういう説明になっているので、あれ、どっちなのという感じで国民の皆さんは思っていると思うので、そこのところを総理からもう一度しっかりと説明していただければありがたいと思います。

安倍内閣総理大臣 武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣するいわゆる海外派兵は、新三要件にある第三要件に照らして、必要最小限度の実力行使にとどまるべきことに照らして、自衛隊のまさに必要最小限度を超えるものであって、憲法上、一般に許されないと解しています。

 ここで一般にと申し上げましたのは、旧三要件の中におきましても、個別的自衛権においても一般に海外派兵は許されませんねということを申し上げておりました。この一般というのは同じ意味で使っているわけでありますが、完全に全部だということではないわけでありまして、これはほとんどそうですねという、ほとんどが大体該当しますねと。しかし、これは安全保障のことにかかわるわけでありますから、その中にはやはり例外を全く排除はしていないということでありまして、これは今までも一貫しているわけであります。

 その中において、まさに例外的な、例外としての例として、ホルムズ海峡において機雷によって封鎖された場合、これは八割の石油、ガスの多くがここからしかやってこない、しかし、そういう中におきまして、先ほど中谷大臣が答弁されたように、停戦合意がなされていれば、これは遺棄機雷を排除するということで武力の行使には当たらないわけであります。

 ただ、停戦合意が、国際法的に見てなされていない、完全になされていない、両国が調印はしていない、しかし、今もう大体、事実上停戦合意に向けてお互いが話し合い始めていますねという状況というのは、よくこれは起こり得る可能性も排除できないわけでございます。

 そこで……(発言する者あり)可能性を排除できないということであります。起こり得る可能性も排除できない。これは今までも同じ答弁をさせていただいているところ、これはもう昨年来からでございます。

 そこで、排除する上においては、まさに事実上、戦闘行為が行われていない。そもそも、これは岩屋委員もよく御承知のとおり、掃海艇には機雷掃海のための機関銃以外ないわけでありまして、いわば自己防護のための武器というのは機雷掃海のための機関銃しかない。木やプラスチックでできている。静穏な状況でなければそれはなかなかできないという状況の中で派遣されるわけであります。

 よって、いわば海中の危険物を取り除く、まさに受動的、制限的な行為であることから、必要最小限度の中のこれは実力行使になる可能性もあるということでございまして、そして、それ以外は今我々の念頭にはないということは、繰り返し申し上げているとおりでございます。

岩屋委員 時間が来ましたので終わりますが、機雷掃海というのは極めて例外的な活動だということをぜひ御理解いただきたいというふうに思います。

 我が国が認めようとしている集団的自衛権は、いわゆる他国防衛を目的とするものではなくて、あくまでも我が国を守るための限定的な自衛権でございます。そのことをしっかりと丁寧な審議で説明していって、国民の皆さんの御理解をいただいてまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、遠山清彦君。

遠山委員 おはようございます。公明党の遠山清彦でございます。

 早速、質問に入らせていただきたいと思いますが、その前に一言。

 先週の金曜日、鹿児島県屋久島町口永良部島におきまして爆発的な噴火がございました。住民の皆様は全員無事ということで安心をしておりますけれども、被災をされた皆様に心からお見舞いを申し上げるとともに、政府におかれましては、最大限の御支援を引き続きしていただきたいということを御要望申し上げたいと思います。

 それでは、早速、本日の中身に入ってまいりたいと思います。

 きょうはパネルを五枚用意してまいりました。委員の皆様にも紙で配らせていただいております。

 当委員会始まりましてから最大の争点の一つが、自衛隊あるいは自衛隊員のリスクでございます。本日は、私は、先ほど自民党の岩屋委員からの御質問の中にも重なる部分がございましたけれども、今般の改正法案の中で、PKO法関連を念頭にお話をさせていただきたいと思います。

 まず、パネルの一を見ていただきたいと思いますが、今回の改正PKO法によりまして、自衛隊の業務が拡大することは事実でございます。すなわち、安全確保業務、駆けつけ警護等、そしてまた、国連の統括下ではない活動、国際連携平和安全活動も追加をされております。

 業務が拡大をされた背景には、これまで日本は二十三年間PKOの実績がございまして、派遣された自衛隊員の数は五万人に至っているわけでございます。そうした実績を踏まえて、国連を中心とした国際平和のための努力への積極的貢献を強化するという目的だと思いますし、このことは改正PKO法の第一条に明記をされているわけでございます。

 これにつきまして、業務が拡大されるから自衛隊員のリスクが高まるじゃないかという御指摘がこの委員会でたびたびございました。そしてまた、中谷大臣の発言、ここに書かせていただきましたが、今回の法整備により隊員のリスクが増大することはないという発言に対しても、野党の皆さんから御批判がございました。

 私は、この大臣の御発言というのは間違っていないと思っております。私なりに言いかえれば、法律の内容それ自体で自衛隊の活動現場のリスクは決まらないということでございます。これは常識です。常識です。法律の中の条項で、では、今自衛隊員が活動している南スーダンのリスクが上がるんですか、それは上がらない。

 それで、私は申し上げたいことは、総理も中谷大臣も、リスクはないなんておっしゃっていない。そうでしょう。だから、現行の法制下でも新しい法制のもとでも自衛隊の活動にリスクはあるんです。自衛隊がする活動で国内外でリスクのないものなんてほとんどないと私は思います。

 よって、大事なことは、いいですか、聞いてください。大事なことは、そのリスクの高いか低いか、高低というものは、現行の法制下でも新しい法制下でも、自衛隊がどこで活動するのか、活動地域がどこなのかということ、また、任務や業務の内容等を法律に基づいてどのように運用するのかということによって異なるわけでございます。これが私の考え方の整理でございますが、中谷大臣、見解をお願いします。(発言する者あり)

浜田委員長 中谷防衛大臣。

 静粛に願います。

中谷国務大臣 現在の自衛隊員もさまざまなリスクを抱えながら、いろいろな任務、業務の遂行、オペレーションを実施しているわけでございます。

 確かに、今回の法律改正におきましても、自衛隊の部隊等の業務は拡大をしてまいりますが、業務を行う自衛隊員のリスクは、法律の内容それ自体で決まるものではなくて、具体的にどのような地域で活動するのか、また、法律で定められた業務について、情報、装備、教育、訓練等の面からどのように準備をして実施していくかによって異なるものと考えます。また、部隊の運用等においても、こういったリスクを極小化させて実施をするということでございます。

遠山委員 今、大臣が最後におっしゃった一言が大事なんです。これまでのこの委員会での議論を聞いていますと、このリスクの低減化、極小化についてどういうことをやっているのかというようなことが何度も問いただされました。私、大臣はもう少し詳しく答弁された方がいいと思うんです。私ども、与党協議で二十五回、公明党内におきましては昨年から三十五回協議をしてまいりました。何十時間もかけて緻密な議論をして今回の法制度をつくっているわけでありますから。

 このパネルの下の方を見てください。リスクを低減させる、自衛隊員のリスクを極小化する措置というのは、まず、法制度上いろいろあります。一つは、PKO五原則。それから二つ目は、自衛隊員が派遣されたときに行う任務の内容をあらかじめ法律で定めております。この法律であらかじめ定める意味は、法律に書いてあるからこそ事前の訓練ができ、そして練度が向上するということがございます。それから三つ目は、国会の関与もございます。PKO法に即して申し上げれば、PKFの本体業務、今回加えられる安全確保業務は、事前承認が原則でございます。そして、活動の中断、休止を定めた実施要領を策定することも今回新設をされました。そして、大臣がよく御答弁になる、隊員の安全確保への配慮規定、第十条がございます。

 これらの法制度に基づいて、運用面でもさまざまな安全確保の措置がとられるということでございます。私はここに三つだけ挙げておりますが、もちろん、派遣する前に正確なリスク分析を行う、事前調査、情報収集も含みます。また、適正な装備を持たせて自衛隊員を派遣する、また、派遣隊員への、国連の中で活動するわけですから、事前教育等も重要になってまいります。

 これらのことを踏まえまして、政府としてリスク極小化のためにどういう措置をとろうとされているのか、簡潔に御答弁をお願いします。

中谷国務大臣 今回の法案作成におきましても、与党で隊員の安全に関して議論をいただきまして、制度面での措置について、リスクを極小化するために、法律上、何重もの規定を設けております。

 また、運用面からの具体的な手当てについては、国際平和協力業務の実施に当たって、まず、活動地域の情勢等について十分な情報収集を行うこと、業務の特性に応じて隊員の安全確保に十分な装備を携行すること、派遣前に適切な教育訓練を行うこと、派遣先の社会的、文化的慣習等を尊重して地域住民との良好な関係構築、維持に努めることなど、取り組みをしっかり実施することによって、隊員のリスクを極小化するための措置をしっかり実施できるようにしております。

 その他、法律面におきましては、何重にも安全を確保するための仕組みを設けております。

遠山委員 次の資料に参りたいと思います。

 業務が拡大されたことにつきまして、一部の委員から、自衛隊はこれから危険な治安維持業務をやるんだというお話がありますが、私は、それは正確ではない、このように思っております。

 パネルを見てください。安全確保業務というものがございます。内容は、住民などへの危害の防止等のための監視、駐留、巡回、検問や警護ということになっております。

 それから、駆けつけ警護につきましては、本体業務としては道路等の敷設の工事等があるわけでございますが、付随的業務として、PKO活動に従事をする者、これはNPOの職員等も含まれますが、不測の侵害がそういう方々に生じたときに、要請に対応してその保護を行うという付随的業務としての駆けつけ警護が出されております。

 なぜこれが治安維持活動と違うかといいますと、一般に治安維持活動というのは、現地国の警察が行っている活動そのものを行うことであります。例えば、強盗をつかまえて裁判所に引き渡す、盗賊などの危険な集団がばっこする地域を根こそぎ掃討する、このような司法警察活動が治安維持活動という中身でございまして、これらのことを自衛隊員がやるわけではございません。

 その証拠に、自衛隊が既に派遣をされておりましたカンボジアあるいは東ティモールの国連ミッションでは、自衛隊員ではなく、あるいは他国の軍隊の要員ではなく、文民警察が派遣をされて警察部門を担当しておりました。彼らが治安維持をやっていたんです。自衛隊員じゃないんです。そこのところを正確に理解せずに、いろいろな主張がされてきたと私は思います。

 そこで、大臣に伺いますが、PKO法に基づいて派遣される自衛隊員が、犯罪人逮捕のような治安維持活動あるいはせん滅活動、行動ができない、その条文上の歯どめを示していただきたいと思います。

中谷国務大臣 ただいま御説明をいただいたとおり、いわゆる安全確保業務には、犯罪の捜査や犯人の逮捕といった業務は含まれておりません。現地の警察が行うような治安維持活動一般とは異なっておりまして、条文上の歯どめといたしましては、PKO法三条五号トに規定するいわゆる安全確保業務の業務規定に示されたものだけでございます。

遠山委員 次に参ります。

 武器使用基準の見直しと、それから危害許容要件のお話を簡潔に申し上げたいと思います。

 次の資料を見ていただきますと、武器使用の形態を書かせていただきました。これまでは自己保存型の武器使用だけ認められておりましたが、今般、安全確保業務と駆けつけ警護業務の場合のみ、任務遂行型の武器使用をつけたわけでございます。

 任務遂行型の武器使用というのは、一言で言えば、業務、任務を妨害する行為を排除するために武器の使用を認めるというものでございます。

 大臣、武器の使用といいますと、一般の国民の皆様は、すぐ、相手に向かって銃を撃つという行為を想定しがちでございますが、実は、武器使用の形態というのはそれだけではございません。まずは、人に銃を構えるけれども撃たない、つまり、威嚇をするというのも武器使用の一形態でございます。それから、空に向けて銃を撃つ警告射撃、これも武器使用の形態でございまして、私は、自衛隊の隊員の皆様はまずこういった武器使用の形態をとるという手続だと思っております。

 その上で、どうしても相手に向かって撃たなければならない、つまり、当たれば相手に危害を加えることになるわけですけれども、危害を加えてもいい条件、これが危害許容要件というものでございますが、これは正当防衛と緊急避難に限っておりまして、任務遂行型の武器使用においても同じでございます。自己保存型と同じでございます。

 さらに、それに加えて、下の方にピンク色で書いてありますが、警察比例の原則もかかります。これはどういう原則かというと、警職法第七条にもともとあるわけでございますが、三の力で侵害を受けたときに、それに対して十とか百で返してはいけないという原則でございます。

 このように、二重三重に武器使用のことについては抑制がかけられているわけでありますから、相手を殺したり傷つけたりすること自体を目的とした掃討作戦はできない、法律上できない、このように理解しておりますけれども、大臣、それでよろしいでしょうか。

中谷国務大臣 いわゆる任務遂行型の武器使用においても、相手に危害を与える射撃は限定されておりまして、いわゆるせん滅作戦のようなものはできません。

遠山委員 ありがとうございます。

 最後に、武器使用と武力の行使の違い、これは総理、非常に国民の皆様はわかりづらいと言っているところなんですが、法律用語ですし、概念の整理ですから、少しわかりやすく説明をさせていただきたいと思います。

 きょう私が御説明申し上げたのは武器の使用でございます。その中身は、自分たちを守るため、自己保存型の武器使用。それから、下の方、任務遂行型の武器使用、御説明申し上げました。真ん中は武器等防護です、自衛隊の武器を守るため。この三つの目的のために武器の使用をしてもいいですよと。

 一方で、武力の行使というのは何かといいますと、基本的に、国対国、国家対国家あるいは国に準ずるもの、組織的、計画的に、一定の支配地域を持って、どこかを攻撃できる能力を持ったものを国に準ずるものと言っているわけですが、国や国あるいは国に準ずるもの同士の戦闘行為は、これは武力の行使に当たるから憲法上禁じられている、こういうふうになっているわけでございます。

 一部の委員の方から、自衛隊が新たな業務に従事をして武器の使用をしたときに、武力の行使にエスカレートするのではないか、つまり、これが、地球の裏側まで行って戦争に巻き込まれるとか戦闘するんじゃないかという話になっているわけでございますが、そこは、冒頭に御紹介したPKO参加五原則、すなわち、紛争当事者間の停戦の合意、それから自衛隊の派遣に対する同意、また中立性の原則、そしてこの三つの原則のどれかでも崩れたら自衛隊は撤収してもいいというこの五原則がしっかりとあるわけですから、武器の使用がそのまま武力の行使にエスカレートするようにはなっていないんです。ここの基本的なポイントを理解して議論をしないと、おかしな話になってしまうというふうに思っております。

 そこで、時間もございませんので、大臣に、今回の法整備後も、武器の使用が国同士の戦闘行為に発展することがないということについて、簡潔に御答弁いただきます。その後に、総理に伺いたいと思います。

中谷国務大臣 ただいま御説明いただきましたが、大事なのは五原則なんですね。同意、合意、中立、武器の使用、撤収。この五原則は、今回の法案におきましても、今の枠組みと同様の規定を設けているわけでございます。

遠山委員 最後に、総理に伺いたいと思います。

 改正PKO法による業務拡大や武器使用基準の見直しがあっても、自衛隊員の安全確保のために、きょう私が紹介したのは時間の関係で一部です、一部ですけれども、法制度上もさまざまな歯どめがある、そしてまた、その法制度に基づいて運用面でもさまざまな工夫が存在するというふうに私は考えておりますけれども、きょうのやりとりを聞いていただいて、総理の概括的な所感をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 自民党と公明党の議論の中で大きな重要なテーマが自衛隊員の安全確保であったわけでありまして、参加する自衛隊員の安全の確保のための必要な措置を定めることという明確な方向性が示されたわけであります。この方向性の中で、法制度をつくり、そして運用をしっかりと行っていく。法制度で担保し、義務が与えられ、かつまた運用、これは両方が両輪でありますから、運用でしっかりとそれを実施していくということが求められている、こういうことではないかと思います。

 また、そもそも、この参加五原則、もう一度繰り返していただいたわけでありますが、これが極めて重要であろうと思います。つまり、この五原則によって、武力行使に至るということは、まず国や国準を相手にするということはないわけでありますから、これはもう明確になっていると言ってもいいんだろうと思います。

 また、法制面の枠組みに加えまして、さらには情報や装備、教育訓練など、新たな任務に対応した運用面での施策も十分に実施していく考えであります。

 これらの法制面、運用面の取り組みをいわば車の両輪として、自衛隊員の安全の確保をしっかりと図っていきたいと考えています。

遠山委員 先ほども申し上げましたけれども、日本の自衛隊は、過去二十三年間、延べ五万人の隊員を世界各地に派遣をして、地球の裏側、裏側とよく言いますけれども、PKOでは既に自衛隊の皆さんは相当遠いところに派遣をされているわけでございます。そこで国際平和と安全のために、時に大変厳しい環境の中で活動をされてきた。

 国際平和があってこその日本の平和であるということを踏まえて、平和国家日本としての最大限の貢献をしてきたということを最後に申し上げまして、私の質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)委員 民主党の後藤祐一でございます。

 本日の委員会の冒頭、総理から、五月二十八日の我が党の辻元清美委員に対しての、「早く質問しろよ」という不規則発言に対して、おわびがありました。そして、委員長の指示を踏まえて真摯に対応してまいるという趣旨の御発言がありました。

 この不規則発言は、自民党の幹部の方からも厳しい御指摘がありますし、何より、これは辻元委員に対してだけではなくて、立法府に対する冒涜であるということを改めて指摘させていただくとともに、総理大臣としての器が問われる、そんな発言ではないでしょうかということを御指摘申し上げさせていただいて、この真摯に対応していくという言葉が、単に言葉ではなくて、実際の行動として示していただけることを期待申し上げて、質問に参りたいと思います。

 まず、リスク論について、今多々御議論がございました。これについて始めたいと思います。先週の岸田大臣の答弁に対するやりとり、ちょっと後でまた続けたいと思いますが、今せっかくリスク論が盛り上がりましたので、これを先にやりたいと思います。

 先週五月二十八日のこの委員会で、我が党の緒方林太郎委員の質問に対して、中谷大臣は、「私は、今回の法整備によってリスクは増大するものではないという意味で申し述べております。」という答弁がございました。

 一方で、先ほど御質問されました自民党の岩屋毅理事は、先ほどの質問の中でも述べておられましたけれども、昨日のNHK「日曜討論」で、一番議員の皆様が時間を使われたのは自衛隊あるいは自衛隊員のリスクについてなんですね、そのリスクは高まる可能性があるというのは、これは私、事実だと思いますという、大変建設的であり、かつ常識的な御発言だ、私は、政治家というのはそういう発言をきちっとできるということは大事なことだと思います。その旨を先ほど岩屋理事は質問をされましたんですが、中谷大臣は、リスクに関しては、リスクがふえるということに関しては、結局、リスクがふえるということを認めた答弁はなさいませんでした。

 これは、与党と政府の間で、少なくとも中谷大臣との間で認識が不一致であることが明らかになったということだと思いますが、中谷大臣の、今回の法整備によってリスクは増大するものではないという答弁は、これは撤回ないし修正をされるべきだというふうに考えます。

 この岩屋理事の発言、そして、この週末の共同通信の世論調査では、法案成立後、自衛隊が戦争に巻き込まれるリスクが高くなると思っている国民が六八%であります。こういった国民の声も踏まえて、中谷大臣の誠実な政治家としての答弁をいただきたいと思います。お願いします。

中谷国務大臣 私は、リスクがないとか少ないとか言った覚えはございません。今でも自衛隊員は、任務遂行のためにリスクを負って、相当危険なことにおいても安全に実施し得るように活動しているわけであります。

 今回の法律というのは何のために制定するかというと、我が国の平和と安全を守り、国際社会の平和と安全を守っていくためにつくるわけでありまして、やはり、全体のリスクの観点からいいますと、さまざまな活動を通じて抑止力も働きますし、また国際社会とともに行動する枠組みで活動するわけですから、このリスク等につきましては、私は、現状から増大するということは全体としては言えないということでもあります。

 また、自衛官のリスクにおきましても、非常に今でも高度なリスクを抱えて任務に当たっております。しかし、今でも、運用をしっかりすることによって自衛隊員のリスクを極小化する、しっかりとした対応措置をしておりますので、今回の平和安全法制においても、各活動や行動の性格を踏まえつつ、安全確保に係る規定を設けております。

 例えば、国際平和支援法においても、大臣の安全配慮規定、実施区域の設定、活動の中断、一時休止など、法律的にも設定をいたしておりますし、問題は、いろいろな状況に応じていろいろなオペレーションをするわけでありますので、この計画において今の隊員がしっかり実施できるかどうか、そういうことも踏まえて国会に承認をいただく。

 そして、何よりも大事なのは、それを運用していく際に最大限の努力をして実施するわけでございますので、まさに今でもリスクを抱えていろいろな任務をしている自衛官、こういった能力等に応じまして、私は、リスクが今よりも増大することはない、この法律をしっかり整備をして運用することによって、リスクが増大することはないというふうに思っております。

後藤(祐)委員 残念ですね。早い段階で撤収をすれば被害を極小化できる、その後ろの方まで突っ張ってしまうと被害がどんどん大きくなる、まさに日本国を守る防衛大臣として、被害が少ない段階で撤収を決めるという決断をぜひ今してほしかったんですね。でも、今、撤収をしないということになった。今よりリスクが増大することはないという発言がありました。

 まず、ここで、今リスクがないだとか、リスク全体が少ないとか言っているつもりはないから、そういう議論はやめましょう。今回の法案によって、新たに自衛隊が活動が可能になる部分がふえます。これによってリスクがふえるのかどうかにまず議論を限定していただきたい。今あるとかないとかという話はもう別に、そこは意見が一致しているわけですから。

 先ほど中谷大臣の重要な言葉は、全体としては言えない、これはなかなか出てこなかった言葉ですね。あとは、これはいろいろなことをすることによって極小化するというお話もありました。

 整理しましょう。ここにちょっとパネルを用意させていただきました。資料も配付しております。

 自衛隊のある活動が本法案で新たに可能になることによるリスクというのを三つに分解しますと、まず、新しく可能になった活動の実施場所で隊員が戦闘行為に巻き込まれるリスクというのがございます。第二番目に、この戦闘行為に巻き込まれた場所で、実施場所で、実際に隊員がお亡くなりになったり、あるいは傷を負ったりといったリスクというのがございます。三つ目に、日米が共同してやるですとか、今回の、PKOなんかも含めてなのかもしれませんが、法案全体として日本の抑止力が高まって、日本全体の、日本国民全体のリスクが下がるんだという御指摘、これは必ずしもそうかどうかわかりませんが。

 こういったものがごたまぜになって、先ほどの全体としては言えないというようなのは三に当たる話のような気がするんですね。この抑止力の話についてはちょっと後にしましょう。

 今、まず一つ目の、実施場所、新しく可能になった活動が行われる実施場所で隊員が戦闘行為に巻き込まれるリスク、ここに限定してみましょう。これについては、巻き込まれることはないという答弁も過去されておられますけれども、中谷大臣、リスクを限定して、ある自衛隊の今回の法案で新たに可能になる活動、この活動の実施場所で隊員が戦闘行為に巻き込まれるリスクも増大することはないとお考えでしょうか。

中谷国務大臣 今、イラクの事例を挙げられましたが、今回、国際平和支援法ということで法律をつくります。その中で、これまでの特措法とどこが違うかといいますと、先ほどお話をいたしましたように、非戦闘地域、従来は非戦闘地域でありましたが、今回は、現に戦闘行為が行われている現場ではないところというところでございます。

 そこで、憲法的には、現に戦闘行為が行われていない、現場でないというところで担保はしておりますけれども、隊員の安全ということにつきましては、法律の中に、実施区域の指定というところがありまして、ここでは、防衛大臣は、実施要項において、実施される必要のある役務の提供の具体的な内容を考慮し、自衛隊の部隊等がこれを円滑かつ安全に実施することができるように当該地域を、実施する区域を指定するものであるとした上で、実際にこの指定に当たっては、自衛隊が現に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定をすることにしておりまして、こういった点におきまして、隊員の活動等におきまして、いささかも活動に参加する隊員のリスクを高めるということではないということでございます。

後藤(祐)委員 質問にお答えください。

 今、いささかもとありましたけれども、新しく可能になる活動の実施場所で隊員が戦闘行為に巻き込まれるリスクはふえないんでしょうか。いささかもふえないんでしょうか。

中谷国務大臣 先ほど公明党の質問でもお答えをいたしましたが、法律の規定においてリスクが上がるかどうかということではなくて、これの実施する場所とか状況とか内容とか、そういうことを勘案して実際に派遣をするわけでございます。その時点でリスクがどうかという判断をするわけでございますので、このような観点で隊員を派遣する、そして、当然のことながら、派遣をした以上はリスクを局限化するような運用、そして政府としての配慮、こういうことを行うということは当然のことでございます。

後藤(祐)委員 では、新しく可能になる活動の実施場所で隊員が戦闘行為に巻き込まれることはいささかもないんですね。

中谷国務大臣 私は、リスクがないということは一言も言っておりません。今でも、活動する場合には大変なリスクがあります。きのうも噴火が起こりました。地震が起こりました。昨年は、御嶽山で、三千メートルを超える山岳の救助に、相当高いリスクを帯びて隊員は任務を負っているわけです。

 そういう中で、実際に派遣するかどうかは、当然リスクのことを考えてオペレーションをつくるわけでありまして、今回も新しい内容がふえます。しかも、リスクというものは新たに考えられるわけでありますが、実際に対応するときには、法案にもきちんと安全確保規定を設けておりますし、実際に実施する際は、リスクを極小化するということを講じて派遣をし、また現場においても、極力リスクを下げるような内容で部隊長は活動を行うということでございます。

後藤(祐)委員 本当に、いささかもないというよりは、いささかもふえないでしょうかね。

 ちょっとわかりやすくするために、きょうは写真を用意してまいりました。これは、イラク戦争のときにバグダッドの南側で起きた、自動車爆弾による自爆行為による爆発であります。イラク戦争では、日本は、非戦闘地域であるサマワ、かなり南の方で給水行為だけをしておりました。しかし、もう少し北の方ではこういうことが起きていたわけです。

 写真をよく見ていただきたいんですけれども、これはいわゆる最前線で銃撃戦をしているような場所ではありません。どういう方かはわかりませんが、車を運転されておられる方、あるいはバスが運行されておられたりします。そういうものの近くで自動車爆弾が爆発している。つまり、ここは現に戦闘が行われている現場なのか。あるいは、現に戦闘が行われている現場ではないけれども、これは実は十八人の方が亡くなっておられます、この爆発で。そういったことに巻き込まれることはないのか。

 中谷大臣、現に戦闘が行われている現場であるかどうか、これはわかりません。ですが、今回の法案で、少なくとも……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

後藤(祐)委員 イラク戦争のときの非戦闘地域よりはもう少し広がって、現に戦闘が行われている現場以外では行えるようになるわけですが、いろいろ調べたけれども、そして調べた結果、安全だと思って出したけれども、予想もつかないところでこういった自爆テロみたいなものは起きるんです、イラクでは。これが昔の戦争とは違って、戦争というのは最前線だけで行われる戦争ではなくて、イラクというのは誰が敵なのかわからない、誰が戦闘行為を行うかわからないような地域だから、アメリカの軍隊の方なんかも非常に精神的に参って自殺されてしまう方が多いとか、こういったことにつながっているわけであります。

 もう一度繰り返します。今回の法案で可能になる行為、これが行われる現場、ここで戦闘行為に巻き込まれるリスクはいささかもふえませんか。こういったことというのは予想できない場所で起きることもあるんですよ。そこを踏まえて、もう一度お願いします。(発言する者あり)

浜田委員長 中谷防衛大臣。

 静粛に願います。

中谷国務大臣 前回イラクで活動した隊員においても、そのような状況の中で、リスクを抱えながらも、そのリスクを極力極小化することによって、立派に無事に任務は果たすことができたわけでございます。

 今回の派遣も、前回と同様に、まずどこで活動させるのか、これは法律に、防衛大臣が隊員が安全かつ円滑に実施する区域を指定しなければならない、総理大臣の承認を得なければならないと書いております。その上で、自衛隊が実際に現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定するということにしておりますので、こういう点におきましては、従来の非戦闘地域と、私は安全に関しては同じ内容であると考えております。

 したがいまして、いろいろな事態、リスクはあろうかと思います。それが戦闘行為によります、現に戦闘行為が行われている現場に当たるということではなくて、よく現状を見ながら、しっかりと活動区域を指定して、隊員の安全確保のために必要な対策をとっていくということでございます。

後藤(祐)委員 そうしますと、こういったような、最前線ではないような、バスが走っているようなところで突然自爆テロといったことは全部予測できるということですか。予測できずに起きることはないということですか。予測したときにはそういうことは起きないはずであった、だから出した、そうしたらこういうことに巻き込まれたということは起きないんですか、本当に。起きないんだったら起きないと言っていただけますか。(発言する者あり)

浜田委員長 中谷防衛大臣。

 静粛に願います。

中谷国務大臣 まず、戦闘行為が起こると見込まれない場所を指定いたします。

 万が一そういう事態が発生をした場合においても、活動の中断ということがありまして、こういった地域の活動の中断を命ずる。そして、現場の部隊におきましても、実施をする際に、中止をしたり、また休止をしたり避難するということで危険を回避するという項目を盛り込んでおりますので、そういった地域において戦闘行為が発生しないということは、現場と、また政府を通じて確認をしながら実施をしていくということでございます。

後藤(祐)委員 どうしても、こういった偶発的な自爆テロみたいなものについても御答弁されないようでございますので。国民が知りたいのはこういうことなんですよ。

 サマワですら、安全が確認されていて非戦闘地域だとしたサマワですら、四発のロケット弾を撃ち込まれているんですよ。それで被害者が出なかったのは偶然なんですよ。非戦闘地域だと思って出したところでも撃ち込まれたんだったら、そこからさらに広げようというのは、よほど予測可能でなきゃ出せないはずなんですね。

 では、ちょっと次の観点から今の話をもう一回しますが、今、中谷大臣は、極小化していくんだ、そういうことが起きないようにと言いましたが、実は、条文ではそうなっていません。

 このお配りの資料にもありますけれども、現在、イラク特措法では、実際に戦闘に巻き込まれそうになったときに一時休止して避難するといったようなことを先ほどからおっしゃっているので、そこの条文を持ってきたんですけれども、イラク特措法はイラクに自衛隊を出したときの法律ですが、このときの法律では、「当該活動を実施している場所の近傍において、戦闘行為が行われるに至った場合」には、一時休止、避難するとなっています。

 今回のいわゆる恒久法、こういったイラク特措法ですとか、アフガンに自衛隊を出すとか、あのときは海の上でしたけれども、こういったものを一括して認めようというのが今回の恒久法ですが、この法律では、「当該協力支援活動を実施している場所若しくはその近傍」となっている。

 イラク特措法のときは、活動を実施している場所の近傍では戦闘行為が行われるという前提だったんです。つまり、当該活動を実施している場所そのものでは戦闘行為は起きないという前提の法律だったんですが、今回の法律では、支援活動を実施している場所で戦闘行為が行われることは、条文上前提とされているんです。この支援活動を実施している場所で戦闘行為が行われるに至ることは条文に書いてあるんですよ。

 こういうことはないということなんですか。

 この場合に、場所そのもので戦闘行為が行われるに至った場合には一時休止して避難するというふうに書いてありますけれども、この条文というのは、恒久法の七条五項ですけれども、七条五項に該当するような場合というのは、当該協力支援活動を実施している場所そのもので戦闘行為が行われるということなんじゃないんですか。これは行われないということなんですか。どっちなんですか、中谷大臣、お答えください。

中谷国務大臣 先ほど委員の方からの御説明によりますと、こういったテロとか爆発とか、どこで起こるかわからないじゃないかという御指摘がございました。そのための規定でありまして、どこで戦闘行為が行われるのかわからないということですが、万が一そういうことが起こった場合に活動を一時休止するという規定でありまして、旧イラク特措法で規定されていた近傍は、自衛隊の部隊等が活動を実施している場所も含む概念でございまして、イラク特措法においても、活動を実施している場所またはその近傍において戦闘行為が行われるに至った場合といった、万が一の事態を想定して一時休止等の手続を定めておりました。

 今回の国際平和支援法におきまして、御指摘のような誤解を招くことがないように、条文上明確に「場所若しくはその近傍」と規定したものでありまして、どちらの法律におきましても、自衛隊の部隊等の活動の場所において戦闘行為が行われるに至った場合という、万が一の事態を想定したわけでございます。

後藤(祐)委員 万が一には起きるということですね。自衛隊の協力支援活動を実施している場所で戦闘行為は行われるんですね。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

後藤(祐)委員 ところが、中谷大臣は、戦闘に巻き込まれることはありませんという答弁をしているんですよ、緒方林太郎議員の質問に対して。緒方林太郎議員の質問に対して、戦闘に巻き込まれることはありませんという答弁を先週しておられます。

 一方で、この法案は当該支援活動を実施している場所で戦闘行為が行われることが前提となっていて、なおかつ、今、万が一には起きるというふうにおっしゃいました。

 そうしますと、緒方林太郎議員の質問に対する答弁、これはいつだったかな、「私は、今回の法整備によってリスクは増大するものではないという意味で申し述べております。」とおっしゃった後、これについては、ちょっと待ってくださいね、ちょっとすぐ出てきませんが、戦闘に巻き込まれることはありませんと、断定的におっしゃっておられるんですよ。

 もしそうだとすると、恒久法のこの条文はどう解釈すればいいんですか。もう一度御説明いただけますか。

中谷国務大臣 巻き込まれることはないと言いましたけれども、万が一規定といたしまして、先ほど、今提示をされました一時休止規定でございます、現場の判断で一時休止をして、避難などをして危険を回避する。その上で、活動の中断という規定がありまして、これは防衛大臣が、そのような地域、安全かつ円滑と認める地域でなくなった場合においては、速やかにその指定を変更して、そこで実施されている活動の中断、これを命じなければならないということでありまして、ゆめゆめ、こういった戦闘に参加をしたり、また攻撃をかけるということは、全くこれは考えておりません。

後藤(祐)委員 万が一には協力支援活動を行っている場所で戦闘行為に巻き込まれることはあるということでよろしいですね。それは巻き込まれるということでよろしいですね、戦闘行為に。

 だとすると、先週の、戦闘に巻き込まれることはないという答弁を修正していただけますでしょうか。

中谷国務大臣 旧イラク特でも同様の趣旨の規定でございまして、そういった地域に、巻き込まれることがないように判断をしてやっていくわけでございますし、また、PKO法の改正におきましても、戦闘行為、武力行使を行ってはならないという意味で五原則を設けております。今回の改正も五原則は引き続きしますので、武力行使を行ってはならないという意味においては、戦闘行為をしてはならないということでございます。

後藤(祐)委員 質問にお答えください。

 この条文上は、支援活動を実施している場所で戦闘行為が行われるということが前提です。戦闘に巻き込まれることはないという答弁は修正いただけますか。もう一度はっきり、その答弁を変えるのか変えないのか、はっきりお答えください。

中谷国務大臣 今までのイラク特措法においてもこういう規定がございました。先ほど説明をいたしましたが、万が一こういう事態が発生した場合は休止をし、回避をするという規定でございまして、万が一ということで、そういうことは回避をしていくということでございます。

後藤(祐)委員 答弁をしていただけないようなので、これについてのきちんとした、きょうはテレビ放映されておりますし、各党の質問も、これから後、あります。多様な観点からの質疑というものを国民の皆様に見ていただく必要がありますので、これ以上ここで続けることはできませんので、ぜひ、ここの答弁の矛盾をきちんと政府統一見解として示していただけるよう、委員長にお願いいたします。委員長、お願いいたします。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

後藤(祐)委員 時間がなくなってまいりましたので、先週の岸田大臣の答弁についてのもう一度の確認をさせていただきたいと思いますが、先週金曜日、国会がとまりました。これは、平成十年の岡田克也我が党代表の質問、「例えば中東の我が国が非常に依存度の高い産油国で何らかの軍事的な衝突が起きたと。もちろん、日本の経済安全保障には非常に大きな影響を及ぼします。しかし、軍事的な波及というのは日本にはない。こういう場合にもこのガイドラインの適用になる、そういうふうに考えていいわけですね。」という質問に対し、外務省北米局長は、「そういう事態は周辺事態には該当しない」というやりとりがあって、五月二十八日の木曜日、岸田大臣は、このやりとりに関して、答弁に関して、「現法律のもとでのこの答弁は維持されていると考えます。」という答弁をなさいました。

 しかし、五月二十九日の午前、どうも答弁を変えまして、この一年後、平成十一年四月二十六日の政府統一見解というのがあって、「「周辺事態」とは、我が国周辺の地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であり、「我が国の平和及び安全」の意味するところは、その性質上、軍事的な観点」、軍事的な観点「を始めとする種々の観点から見た概念である。」と、非常にいろいろな読み方のできる政府統一見解を定めました。これは明らかに変わっているわけです。そして、金曜日には、この平成十一年の広く読める政府統一見解が維持されていますという答弁をなさいました。

 質問します。岸田大臣に質問します。

 五月二十八日の木曜日の段階で、この平成十年の答弁は維持されているというお答えをしたそのときには、平成十一年のこの政府統一見解は御存じなかったんじゃありませんか。御存じでしたか、御存じでなかったんですか。

岸田国務大臣 まず、五月二十八日の段階においては、平成十年の高野政府委員の答弁そのものにつきまして、突然御質問をいただきました。ですので、その答弁にかかわるさまざまな観点につきましては、その時点では、私自身、何も確認はしておりません。質問に際して、突然通告なしに平成十年の高野局長の答弁を引き合いに出され、そして質問をされた次第であります。

後藤(祐)委員 質問にお答えください。

 そのときに、平成十一年の政府見解の存在は御存じでしたか。

岸田国務大臣 まず、高野政府委員答弁そのものをその時点まで確認しておりませんでしたので、その答弁そのものについて、意味、後の動き等については、その時点では確認、承知はしておりませんでした。

後藤(祐)委員 答弁を承知していなかったのか、十一年政府見解を承知していなかったのか、ちょっとわかりにくかったんですが、先週木曜日の、答弁は維持されているという岸田大臣答弁をされていた当時、平成十一年政府見解については、そして、それが現在まで維持されているという言い方を金曜日はされたわけですけれども、この平成十一年の政府見解の存在は御存じなかったということですか。

岸田国務大臣 その時点では、平成十一年の政府統一見解については確認はしておりませんでした。

後藤(祐)委員 知らなかったということですね。

岸田国務大臣 資料も持っておりませんでしたし、その点につきまして何も事前に確認はしておりません。

後藤(祐)委員 だとすれば、木曜日、これは、知らなかったということ自体、大変重要な問題ですが。これは周辺事態法の関係で非常に重要な政府見解ですから。

 であるとするならば、五月二十八日の、答弁は維持していますという御答弁をされた段階で、平成十一年の政府見解は知らなかった、あるいは確認していなかったと言うのであれば、五月二十八日の答弁を撤回していただけますでしょうか。

岸田国務大臣 まず申し上げたいことは、議論全体、そしてやりとり全体をしっかり見ていただき、そして、結論部分をぜひ大事にしていただきたいということであります。

 まず、御指摘の五月二十八日の答弁ですが、その際に、まず、現状において適用されている法律は周辺事態法であるということを確認した上で、この平成十年の高野局長答弁について御質問をいただきました。

 私自身、その時点でその局長答弁についてしっかり確認した上でお答えすればよかったのかもしれませんが、御指摘の答弁の後に、私自身、答弁の中で、現状の法律において、法律を前提とした答弁、これは現状も維持されている、これは当然のことである、このように発言をさせていただきました。これは当然のことを申し上げたわけですが、結果として、確認をしましたら、御指摘の局長答弁は、周辺事態法を国会に提出する以前の答弁でありました。

 そして、この答弁そのものについても申し上げるならば、確かに、この平成十年の高野局長答弁、国会の議事録に残っているわけですから、そのこと自体は認めるわけですが、しかし、この答弁を見ますと、さまざまなやりとりが当時の岡田委員との間で行われています。そして、この高野局長答弁が行われた後に、その直後、岡田委員の方から、高野政府委員の答弁については論理的な関係を認めることができないので、納得が得られず、もう一度きちんと政府として見解を求めたい、その上で当時の小渕外務大臣の答弁を求めておられます。

 そして、小渕外務大臣が閣僚としてやりとりを総括して、「周辺事態というのは、日本の平和と安全に重要な影響を与える場合で、経済的のみならず軍事的な観点を含めて日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす場合を言う」、このように答弁をし、政府の考え方の趣旨を明確化しているわけです。

 こうした、国会においてさまざまなやりとりをする、議論を行う、これは大変重要なことであります。その一つ一つの答弁、これももちろん重要でありますが、何より大事なのは、このやりとりを通じてさまざまな不明な点、不十分な点、これを明らかにし、補充をして、結論に至るということだと思います。それぞれ結論が何なのかということをぜひ確認いただきたいと思います。

 そして、その小渕外務大臣の確認部分をもって、政府として、政府統一見解に明らかにし、今日に引き継いでいる、こういったことであります。(発言する者あり)

浜田委員長 後藤祐一君、時間が来ておりますので。後藤祐一君、質問を続けてください、答弁は済んでおりますので。(発言する者あり)

 後藤祐一君、質問を続けてください、時間が来ておりますので。

後藤(祐)委員 ちょっと時間が過ぎていて申しわけないんですが、木曜日の、平成十年の答弁を維持しているという御答弁と、金曜日の、平成十一年の政府見解を維持しているという趣旨の御答弁と矛盾しています。これの関係について政府統一見解を示すというふうにお話があったにもかかわらず、示されておりません。文書も示されておりません。

 これについての政府統一見解をきちっとお話しいただけますでしょうか。

岸田国務大臣 今御指摘ありました二点については、何も矛盾がないと考えております。

 まず、一点目の五月二十八日の答弁につきましては、先ほど申し上げました、五月二十八日の段階で突然、政府委員答弁について御質問いただき、そのやりとりの中で確認をした結論として、現行法において発言されたこの答弁については維持をされている、こうした当然の一般論を申し上げたわけであります。

 そして、その上で今度、五月二十九日において申し上げたこの政府統一見解。先ほど申し上げました、御指摘のこの発言も含めて、さまざまなやりとりが行われました。そして、当時の岡田委員からも求められて、当時の小渕外務大臣がこの議論を整理しています。そして、その整理をした内容をこの平成十一年に政府統一見解として明らかにしているわけですから。

 ですから、先ほど申し上げました五月二十八日の答弁と五月二十九日の答弁、これは何も矛盾するものはないと私は考えています。

後藤(祐)委員 全く説明になっておりません。五月二十八日の答弁、すなわち過去の、平成十年の答弁を維持するのかしないのか、これを、金曜日の政府見解に関する答弁との関係、全く説明できておりませんので、文書で理事会に提出していただきますよう、委員長からお取り計らいをお願いしたいと思います。

浜田委員長 岸田外務大臣。(後藤(祐)委員「委員長にお取り計らいをお願いします。同じ答弁は要りません」と呼び、その他発言する者あり)

岸田国務大臣 ただいま申し上げたように、五月二十八日の答弁、これは委員との間のやりとりの中で行われた発言であります。その一つ一つの発言、それも、これは確かに重要な発言でありますが、何よりも結論、現行法においてはその基づいた発言は維持されている、この結論部分が大事だということを申し上げています。

 さまざまな議論においてやりとりがある。これは平成十年も同じでありますし、先日の五月二十八日も同じです。それぞれの一つ一つの発言、これはそれぞれ重要でありますが、何よりも結論が重要だということを申し上げています。(後藤(祐)委員「維持されているんですか、されていないんですか」と呼ぶ)結論について何も矛盾はないと申し上げております。(発言する者あり)

浜田委員長 時間が来ておりますので。(後藤(祐)委員「時計をとめていただけますか」と呼ぶ)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 理事会で協議いたします。

 後藤祐一君。

後藤(祐)委員 それでは、理事会でしっかりと政府統一見解を示していただくことをお願い申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 民主党の前原です。

 まず、日米防衛協力の指針について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、中谷大臣に質問いたしますが、一九九六年四月の十七日に、橋本・クリントン両首脳によりまして、日米安保共同宣言が採択をされた。これは中谷さんも御存じだと思います。この中で、一九七八年に初めて日米防衛協力の指針、いわゆるガイドラインというものをつくったわけでありますけれども、その見直しを行おう、こういうことを話をしたわけであります。

 三つありまして、平素からの協力、日本に対する武力攻撃に際しての対処行動、そして日本周辺地域において発生している事態での日本の平和と安全に重要な影響を与える場合の協力、この三つについて議論していこう、こういうことになりましたが、なぜ、この安保共同宣言において、ガイドライン、日米防衛協力の指針の見直しに至ったか、説明をしていただきたいと思います。

中谷国務大臣 まず、冷戦が崩壊をいたしまして、日米両国を取り巻く環境、我が国で申しましたら日本を取り巻く安全保障環境が変わったということ。

 そして、もう一つは、一九七八年のガイドラインが策定されるまでの間も、日米においては、安全保障にかかわる問題について外交ルートを初めとする場を活用して協議しましたが、緊急時における自衛隊と米軍との整合のとれた共同対処行動をいかに確保するかといった、軍事面も含めた包括的な協議の体制について研究協議の場がなかったわけでありまして、七八年のガイドラインはこういった点を改善いたしましたが、その後、具体的に、平時、周辺事態、有事といった場面場面での考えも協議をされてこなかったということで、その時点でのガイドラインの改定におきましては周辺事態という規定を設けたと私は思っております。

前原委員 概括的には今おっしゃったところで、もちろん外れているわけではありません。それは役所が用意した答弁を読まれているわけですから、それについては。

 ただ、大事なところが抜けているので、今からそれについて議論をさせていただきたいと思います。ここからは総理も聞いておいていただきたいと思います。

 ちょっとパネル、一枚目をごらんいただきたいと思いますが、左側でありますけれども。

 一九九三年から九四年にかけまして、北朝鮮が核開発をしているという疑惑が顕在化をいたしました。ここに書いてありますように、一九九三年の三月、要は、NPT、核拡散防止条約の脱退の意思を宣言した、こういうことでございますし、九四年の五月には、寧辺において原子炉への燃料装荷作業を開始した、こういうことであります。

 それを受けて、アメリカ政府は北朝鮮の核施設の空爆を計画いたしました。当時のクリントン政権の国防長官はウィリアム・ペリーさんという人でありましたが、そのもとで国防次官補として、軍事オプション、つまり空爆を考慮すべきだと主張していたのが誰か。今、中谷さんのカウンターパートですよ、アシュトン・カーターさん。この人は物理学者ですけれども、この人がそのときの国防次官補だったんですよ、アシュトン・カーターさん、今の国防長官が。

 カーター現国防長官とペリー元長官は、二〇〇二年にワシントン・ポストに寄稿をしています。原子炉をメルトダウンさせずに空爆をし、破壊することはできた、放射性物質が大気中に飛散することもなかっただろう、北朝鮮をあのまま野放しにしておくことの方が軍事行動をとるよりもずっと危険だったということで、言ってみれば、軍事オプションをとらなかったことを後悔する寄稿をワシントン・ポストにしているんですね。

 実際、一九九四年の五月中旬に、クリントン大統領は、当時の統合参謀本部議長から戦争のシミュレーションのブリーフィングを受けているんですね。そのシミュレーションいわく、開戦九十日間で五万二千人の米軍が被害を受ける、これは、在韓米軍と在日米軍の合計の人数の約八割の犠牲が出るというシミュレーション。そして、韓国軍は四十九万人の死者を出す、そして、戦費費用は六百十億ドルを超える、こういうものでありました。

 約一カ月後の六月中旬に、ホワイトハウスで安全保障会議が空爆を指示したと言われていますけれども、同時並行で、実はここは外交交渉もやっていたわけですね。元大統領のカーターさん、名前の違うカーターさんですけれども、元大統領のカーター大統領が金日成主席から核開発凍結の言質を引き出して攻撃は中止に至った、こういうことであります。

 中谷さんに聞きます。先ほど北朝鮮の問題をガイドラインの見直しのとき触れられませんでしたが、当時、アメリカが真剣に北朝鮮の核施設攻撃を考えていたという認識はありますか。

中谷国務大臣 私は、そのような情報に接したことはございません。核施設を攻撃するというような情報に接したことはございません。

前原委員 では、伺いますよ。

 一緒に仕事をしていましたよね、あのころは。沖縄の問題で一緒にペンタゴンにも行きましたし、ゴラン高原にもPKOを派遣するかどうかで、一緒に行って、徹夜でエルサレムで合意をしたというケースで一緒に仕事をしていたわけでありますけれども。

 あのときに、アメリカ側から日本に対して協力要請が来ましたね、空爆をするという際に日本がどんな協力をできるかということ。私、自社さ政権のさきがけの担当で、その千五十九項目の要望を見ましたよ。やるという前提で、要は日本に何ができるのか、そういった協力要請が来ましたよね。覚えておられますか。

中谷国務大臣 日米間におきましては、日米安保体制のもとで平素からさまざまなレベルで意見交換を行ってきておりますが、緊急事態に際しての米国に対する我が国の支援においても、さまざまな議論は当時も行っていたと思います。

 政府として、米国から、千五十九項目の支援について、まとまった形で支援を求められたという事実はありません。そういうのはないということでございます。

前原委員 それも、うそなんですよ。防衛省の中で仕事をされていて、ないということになっているんですよ。つまりは、そういう要望が具体的にあったんだ。

 中谷さん、ここは真剣に答弁していただかなきゃいけないけれども、アメリカが北朝鮮の空爆を計画していた、しかもそれは非常に切迫したものだったということを、防衛大臣として、本当にあなたは、全く知らない、そういう認識はないという答弁をここでされますか、国会の議場で。もう一遍、お答えください。

 それだったら、この法案、要らないですよ。一番大事なことは北朝鮮でしょう。何か中東とかホルムズ海峡とかの議論がある、これも大事だと思いますけれども、一番日本にとっての安全保障上の懸案事項は北朝鮮の核であり、ミサイルじゃないんですか。

 そして、アメリカが一九九四年にどういう外交交渉をやり、硬軟両方まぜてやってきたかということを全くあなたは知らないということをここで言うということは、この法律、ガイドラインの前提が全くなくなるということですよ。

中谷国務大臣 当時は、北朝鮮の核開発において、非常に重大な問題として、日米間でも懸案で、協議をしていたということでございます。

 カーター大統領が北朝鮮に行ったということも存じ上げておりますし、また、その後、KEDOという枠組みで北朝鮮の核実験を、核開発をやめさせるというようなことも実際実施をしたということも存じ上げておりますし、御指摘のように、前回のガイドラインにつきましては、こういった北朝鮮をめぐる核開発を阻止するためにというような前提で日本側とも協議をしたと、私は勉強した上で理解はしておりますが、実際、その当時、政府に入っていたわけでもございませんし、御指摘の項目についての要求が実際来ていたかどうか、これは確認はしておりません。

前原委員 連立与党の中で、そういった前提の中で、今だったら特定秘密保護法案に指定されるようなものを我々は見ながら、そういった話をしたわけですね。

 もう一度申し上げますよ、中谷さん。

 先ほどの答弁は、アメリカが北朝鮮を空爆するというオプションを持っていたということを知らないということですか。それとも、それについては、あなたは、そんなことはなかった、アメリカが北朝鮮を空爆するなんということについてのいわゆる事実関係、オプションがなかったという答弁をされているんですか。それを答弁してください。

中谷国務大臣 当時のガイドラインをつくるときには、私もこの委員会の筆頭理事で、前原さんもさきがけの理事だったと思います。真剣に周辺事態の法案を議論して成立をさせたわけでございますが、その前の、法案作成の時期とか検討の時期においては政府の一員ではなかったわけでございますので、こういった機密の情報に私は接触をした記憶はございません。一般的に新聞などの情報によって議論は申し上げたことはありますけれども、実際、政府としてそのような要求があったということについては、私は存じ上げておりません。

前原委員 例えば、金泳三元大統領が二〇〇八年に当時の駐韓アメリカ大使に会って、私がビル・クリントン米大統領の寧辺核施設爆撃計画を阻止していなければ今ごろ韓半島は非核化されていたはずだ、こういうことも述べておられるということが報道されているわけですね。

 中谷大臣、この安全保障の議論をするときに、過去の、どういう事例があったのかということを前提として話をしないと、具体的な議論はできないんですよ。

 つまりは、アメリカが北朝鮮の空爆を計画していたというのは周知の事実じゃないですか。いろいろなドキュメンタリー、本。そしてもうこれから公開され始めますよ、アメリカの機密文書というのは二十年、二十五年で公開され始めますから。一九九四年ですから。こういうようなことが公開されるということの中で、それを、実際問題、そういうことを知らないということで、一番日本の安全保障にとって、もし何か起こる可能性、蓋然性が高いとしたら北朝鮮有事じゃないですか。

 そして、それは、北朝鮮が暴発するということもあるけれども、アメリカが、例えば核開発と長距離ミサイルをセットにしたときには、アメリカは、実際問題、今の安全保障政策はどういうふうに書いてあるか御存じですか、中谷さん。

 我々は、我々の核心的利益に対しては一方的に行動する。これは中国じゃないですよ、アメリカの国家安全保障戦略ですよ。米国は、我々の永続的利益が求める場合、我が国民に脅威が及んでいる、我々の生活が危機に瀕している、同盟国の安全が危機にさらされている場合に、必要なら一方的に軍事力を行使する。こういうことが、オバマ政権、ブッシュ政権のときからそういった考え方がつながっていて、こういうような考え方になっているわけです。

 つまり、先ほど申し上げたように、核と長距離ミサイルというものがセットにされたときに、アメリカがこの考え方に基づいて、つまりは証言しているわけですよ、ペリーさんも、今の国防長官も、カーターさんも。なぜあのときにやらなかったかという事実はもう明らかになっているわけですよ。それなのに、日本の防衛大臣として、北朝鮮に対して軍事的作戦が考えられたということを全くこの場でおっしゃらないというのは、この法案の前提が全く崩れるんじゃないですか、審議の。

中谷国務大臣 まず、ガイドラインにおきましては、我が国も同じ立場で、いずれの政府にも、立法上、予算上、行政上その他の措置を義務づけるものではなくて、法的な権利、義務を生じさせるものではないということです。

 外交的には、まず、我が国は、北朝鮮について、米国と緊密に連携をしてきております。外交上のやりとりを明らかにするということはできません。(発言する者あり)

 今、北朝鮮への爆撃があったかどうかという御質問でしょう、話が、爆撃があったかどうかという話。

前原委員 今は何でも機密情報を知り得る立場でしょう。そして、当時は、あなたは安全保障の専門家として、一緒に仕事をしたじゃないですか。そのときに、アメリカからの要望項目もあった。それは、アメリカが北朝鮮を空爆するというオプションを前提に物事をやっていたわけでしょう。

 それを全く前提として認めないということで、このガイドラインの見直し、だって、前の一九九六年のガイドラインの見直しをベースにこのガイドラインの見直しをやっているわけでしょう。ということは、ガイドラインの見直しの後に周辺事態法をつくったというのは、まさに朝鮮半島有事が起きるからということの中でガイドラインの見直しを前回行って、そして周辺事態法をつくったんじゃないんですか。それなのに、そういう前提がないということになると、何のために周辺事態法をつくって、何のためにガイドラインの見直しをしたんですか。

中谷国務大臣 この問題は非常に機密のある問題でありまして、これは韓国も関係をいたしております。こういった北朝鮮をめぐる問題は、やはり米国の考え、韓国の考え、日本の考えもありますが、いずれにしても、これは緊密に連携をしてきておりまして、この間の外交的なやりとりにつきましては、これは明らかにすることは私は適切ではない、事実、そういうことは明らかになっていないわけですから、そういうことを明らかにすることは適切ではないと考えております。

前原委員 こういう、日本の安全保障にとって大事な議論をしているわけです。そして、日本国民全員が、一番日本の安全保障にとって危機があるとすればどこの国なのかということはわかっているわけですよ。北朝鮮でしょう。

 北朝鮮が核開発をし、ノドンミサイルを二百発以上持っている。そして工作船も来た。そして、それについて今まで、六者協議がつくられる前の段階ですよ、一九九四年。今の国防長官が現実にワシントン・ポストというところに投稿しているんですよ。投稿して、そういうオプションがあった、そして、それについてやらなかったことは、非核化ができなくて残念だったという後悔のことをおっしゃっているわけですよ。

 それを確認してもらえませんか。そして、確認してこの委員会で、実際問題、アメリカが北朝鮮に対して空爆のオプションがあったかどうか、要は、これの前提がないと、この大事な安全保障の議論をするものができないですよ。

 存立事態、存立事態というのについては、ペルシャ湾の掃海の話じゃないですよ。一番大事な話は、集団的自衛権で、私は一部集団的自衛権を認めるという立場ですが、それはやはり朝鮮半島有事ですよ、朝鮮半島有事。朝鮮半島有事が起きたときにどう対応するかという前提の法案をするのに、過去にそういう事実関係がなかったというしらを切った答弁をして、その前提で話ができないのであれば、この委員会の意味がないんじゃないですか。

 ですから、中谷さん、あなた、良心に基づいてしっかりと答弁してくださいよ、良心に基づいて。良心に基づいて。本音の話をしようじゃありませんか。

 アメリカが言っているのは公表、言えないんじゃないんだ、アメリカは公表しているんだ。私も外務大臣をやらせていただいて、機密情報のことはわかっている。しかし、いろいろな情報が出されて、二十年、二十五年がアメリカの情報公開の期限ですよ。もう出てくるんですよ、一九九四年だから。そういうような前提の中で、日本が全くそれについて、一番大事な、肝の北朝鮮の問題について前提がなかったというのはおかしいんじゃないんですか。

 だったら、中谷さん、今のカウンターパートナーが一番よく御存じの方ですから、そういうような話があったかどうかを確認して、この委員会にちゃんと説明してくださいよ。そうじゃないと、話のできる前提にならないですよ。

安倍内閣総理大臣 前原委員はもうよく御承知の上で答弁をされているんだろうと……(発言する者あり)いや、質問しておられるんだろうと思います。

 いわば九三年、九四年に至る状況について、まだ私は政府のメンバーでもございませんし、そのワーキングチームにも入っておりませんでしたが、しかし、あのとき、北朝鮮は五メガワットの実験炉、黒鉛炉からプルトニウムを抽出して、そしてこれを核爆弾にしていく、事実上そういう宣言をしている中で、これをどうやってとめていこうということになってきた。そして、その後、カーター元大統領が訪朝して、そして、九四年の十月に、これは五メガワットのものは封印しますよ、そのかわり、国際社会で軽水炉を二基つくって、日本もお金を出しますよということで終わったわけでございます。

 ただ、その至る経緯で相当危機の水準が上がっていた。我々もまだ一国会議員ではありましたが、そういう認識を持っておりましたし、さまざまな資料を拝読させていただいた中において、米側は、今おっしゃったような軍事オプションも持ちつつ、さまざまな可能性を検討した。しかし、砲撃によってソウル自体を火の海にできる、こう北朝鮮側が攻撃している中において、軍事オプションをとるべきかどうかということが検討されていたということは、私は報道等で知っているわけであります。

 他方、中谷大臣が申し上げていることは、もちろん、中谷大臣はその認識を持っております。同時に、しかし、日米の具体的なやりとりの中で、軍事オプションについて、日本にそれは伝えたか伝えなかったかということについては、我々は今それを答弁することは差し控えさせていただきたいとは思います。

 ただ、もちろん、いわば冷戦は終わっても北朝鮮はああいう状況であった。そして、この地域にはまだ不安定性、不確実性のある中において前のガイドラインが作成されていく。きっかけということではありませんが、そういう国際情勢を見ながら、俯瞰しながらガイドラインがつくられた、こういうことでありますし、北朝鮮が非常に、極めて重要な存在であるということは、これは前原委員が御指摘のとおりでございます。

前原委員 この委員会、この場所、あるいはテレビ、院内テレビでずっと見させてもらっていますが、中谷さんよりも、今、総理の方がいい答弁ですよ。なかなかそういうのは今までなかったけれども、長く答弁されていて。そうなんですよ、軍事オプションというのはあったんですよ。あったということをおっしゃったんです。

 私が何でこれにこだわるかということは、法案の中身にかかわる、今から質問をする法案の中身に物すごくかかわることなんです。だから私は質問しているんです。

 私が最も今回聞きたいことの一つ、今から質問いたします。

 総理が、共産党の志位委員に対する答弁で、こう答弁されているわけです。

 憲法上、武力の行使が許されるのはあくまでも新三要件を満たす場合に限られるわけでありまして、我が国または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したことを前提としているわけでありまして、いかなる場合に新三要件を満たすことになるかは、事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して客観的、合理的に判断する

これはこれでいいですね。その後です。

 仮にある国が何ら武力攻撃を受けていないにもかかわらず違法な武力行使を行うことは国際法上認められていないわけでありますので、我が国が自衛権を発動してそのような国を支援することはないわけであります。

こう答弁されていますね。

 この場合、具体的に考えると、先ほどの、アメリカが一九九四年に軍事オプションを考えた、そして、もちろん外交的な交渉もやっていたけれども、実際問題、シミュレーションもやって、軍事オプションも、先ほど総理がおっしゃったように、かなりの人数が犠牲になるかもしれないけれどもということの中で、しかし今芽を摘んでおこうというような話があったわけですね。

 ここで総理に聞きたいのは、北朝鮮の場合、例えば、アメリカが一九九四年に仮に攻撃をした場合、先ほどおっしゃったようにオプションであったわけですから。オプションであったけれども、あのときは国際法的な手続は何らとっていないですよ。国連決議でとろうとしていたのは、北朝鮮に対する経済制裁の手続をとろうとしていた。軍事的なオプションをとる手続は何もしていなかった。だけれども、一九九四年には軍事的なオプションをとろうとした。

 では、仮にとって、そして、アメリカがシミュレーションしたように大きな被害が出て、その場合はまさに、その後、日本が議論をしていたように、周辺事態、あるいはそのまま存立事態、あるいは武力攻撃事態、こうなる場合はありますよね。

 つまりは、先ほどの国会答弁の中で、違法な戦争に対して、日本はそれに対して要は協力することはないということを言われたけれども、事朝鮮半島を具体例に考えると、違法な戦争をした場合、日本に考える余地はなくなるんじゃないですか。つまり、自分たちがもう既に巻き込まれる可能性が高くて、それは違法か違法でないかという前提条件ではなくて、存立事態、武力攻撃事態にすぐに発展していれば、そんな条件なくして協力せざるを得ないような状況になるんじゃないですか。その点をお答えください。

安倍内閣総理大臣 これはもちろん、前提として、我々は主体的に判断するわけでございますが、今委員がおっしゃったのは、重要影響事態に当たるかどうかということだと思いますが、この重要影響事態法に基づく後方支援活動を行うに当たっても、国際法を遵守するのは、これは当然のことであります。

 具体的には、同法において我が国が支援するのは、日米安全保障条約または国際連合憲章の目的の達成に寄与する活動を行っている外国軍隊等に限られていることが法律上も担保されているわけでありまして、まさに今委員がおっしゃったような、全く、国際的な、国連憲章上違法な武力行使であったものに対して我々が協力することはないということは明確であります。

前原委員 だから、そう言えるかと言っているわけです。

 つまり、中東とか離れている場合だったら、今おっしゃることについては一定の担保ができるかもしれません。しかし、朝鮮半島でそういう行為が起きたときに、実際、一九九四年に起きかけたわけですよ、軍事オプションとして。そのときに、アメリカが違法な戦争をしたからといって、我々は協力しませんということは言えますかということを言っているわけです。

 つまりは、周辺事態、今回の重要影響事態というものについて、即さま存立危機事態あるいは武力攻撃事態になるかもしれませんよね。だって、ミサイルが飛んでくるかもしれないわけですから。七分で来ますよ、ミサイルは。

 となれば、きっかけがどうであれ、違法であるか違法でないかであれ、日本は地理的に近接な状況にあって、先ほど申し上げたように、二百発以上のノドンミサイルがある、核も、十数発、核弾頭に載せるものがあるんじゃないかと言われている、工作船も来て、拉致問題もあり、そして、顕在化しているだけで、佐渡沖、奄美大島沖に工作船が来ているじゃないですか。

 こういう状況にあって、その攻撃がすぐさま日本の、今の申し上げた三つの事態になるということがあったときに、今おっしゃった、違法でない、建前で済みますかということを聞いているわけです。

安倍内閣総理大臣 ここは、重要影響事態安全確保法については先ほど申し上げた形で、我々が支援することはない。

 そして、存立事態については、我が国か、または我が国と密接に関係のある国に武力攻撃が発生したということによる三要件ということになってくるわけでありますから、そもそも当該国に武力攻撃が発生していない中において、国連憲章上違法に行われた紛争において我々が協力することはないわけであります。

 しかし、その中において、今委員が御指摘のように、我々の国にミサイルが飛んでくれば、これは我が国に対する武力攻撃事態であり、武力攻撃の発生でありますから、当然我々は自衛権を行使して対応する。その際には、米国とともに共同対処していくということになるわけであります。

前原委員 いや、大事なところだから、しっかりと詰めておきたいと思います。

 これ、国民の皆さん方も、アメリカが北朝鮮を根拠なく攻撃する、先ほど申し上げたように、法的根拠なく。だって、一九九四年にはやろうとしたわけですから。その際に、これは一番蓋然性の高い話ですから、私は、法律のたてつけ、あるいは今まで答弁されたことについて、ちゃんと詰めておかないといけないと思うんですね。だから申し上げているわけです。

 つまりは、そういった、今までは、国際法上の根拠のない攻撃をアメリカが例えばして、それが朝鮮半島という近いところで、そして北朝鮮が反撃をする、アメリカに対して反撃をする。そして、日本に対して来たら、それは総理おっしゃるように、それはもう武力攻撃事態だと認定できますよ、それは。

 でも、そうでない、あるいはそう見えないようないろいろなテロが起きるかもしれませんね。そして、アメリカに対して反撃をされて、あるいは在日米軍があるわけですから、そういうようなところに対するさまざまな危機が高まっていくということになれば、今おっしゃっている法律で出されている重要影響事態、それを超えて存立危機事態、そして武力攻撃事態。まあ武力攻撃事態になったら、これはまさに日本は自衛隊法の八十八条に基づいてやるわけですよ。

 しかしながら、繰り返し申し上げますよ、総理はわかっておられると思うので。長年議論をさせてもらっていて、納得しているかどうかというのは顔でわかりますから。いや、納得されているんですよ、総理は。

 この点はすごく大事なんです。法律のたてつけは、違法な戦争を行った場合に対して協力できないということになっているけれども、違法な戦争について巻き込まれる可能性があるんです。巻き込まれて、そして、それは違法で、我々としてはすべきではない、国際法上は。しかし、日本の存立にまさにかかわるような事態になったときに、この先ほどの二つの要件、志位委員長に出された二つの要件を守ることができますかということを僕は聞いているわけです。

 したがって、そういうような法律を本当につくってしまって、そして、明確にそういった違法なものに協力することはありませんということを言ってしまって、武力攻撃事態になっていない場合はまだいいですよ、しかし、そういう差し迫った場合、まさに危機が迫りつつある場合に何もしないというオプションがあるんですかということを聞いているわけです。そういう法律のたてつけになっていますよ、これは。

安倍内閣総理大臣 たてつけとしては、まさに委員がおっしゃったように、これは、我々は国際法を遵守する、当然のことでございますし、この三要件の中にも、我が国または我が国と密接な関係にある国に対する武力攻撃がなければならないわけでございます。

 そこで、今、特定のさまざまな例、仮定を置いて、それに対してどのような対応をとるかということについて論評するのは適当ではない、このように思います。

 基本的には、米国も、こうした例えば朝鮮半島のような事態においては国際的な理解が必要であります。その中において、国連の安保理による協議、安保理の支持、あるいはまた国連の総会等の決議等について求める努力はしていくのだろう。

 もちろん、今、前原委員は究極の選択としての例を出されているんだろうと思いますが、あくまでも我々は国際法を遵守する立場である、こういうことでございます。

前原委員 究極の選択じゃないんです。あり得ることを言っているんです。

 日本の安全保障にとって、では何でミサイル防衛を数兆円かけてつくっているんですか、日本は。このミサイル防衛で撃ち落とすことができるのはどこのミサイルですか、中谷大臣。

中谷国務大臣 日本の周辺国から我が国を目指して飛来するミサイルに対応しております。

前原委員 周辺国とはどこですか。

中谷国務大臣 特定の国は明示をいたしませんが、我が国の周辺にある国であり、また、ミサイルの性能も年々変化をしてきておりますが、我が国に飛来するミサイルに対応したシステムでございます。

前原委員 繰り返し申し上げているように、ノドンミサイルは二百基以上ある。これに対してのミサイル防衛システムなんですよ。そして、では何で北朝鮮のためにそういった、税金を使ってミサイル防衛システムをつくっているといったら、北朝鮮の脅威があるからでしょう。そして、北朝鮮の脅威に対してどう対応していくのかということで日米同盟関係もさまざまな中身を詰めていって、だからこそガイドラインについては、過去からの経緯も含めて、ずっとそういった、いわゆる日本の周辺における危機というのは一義的には、一義的にと言いますよ、一義的には北朝鮮、朝鮮半島。

 そこをしっかりと議論をせずに、先ほど申し上げたように、総理、もう一遍私は伺います。ここは大事なところなのでしつこく聞きます。違法な攻撃を同盟国がして、地理的に近いがために巻き込まれて、それは日本に対する攻撃があれば武力攻撃事態だから対応できる。しかし、それまでの間で極めて危機的な状況に差し迫っているときに、一切本当にアメリカに協力しないんですか。言い切れますか、そのことについて。そして、アメリカに対して、オバマさんに対して、今度会ったときに、仮に北朝鮮であっても、違法な攻撃をしたアメリカについては協力しませんよと言い切りますか、あなた。

安倍内閣総理大臣 国際法上違法な攻撃をした、どこの国ということはあえて申し上げませんが、違法な攻撃をした国に対して、国際法上、国連憲章上、その国に協力することはないということはもう答弁しているとおりであります。

前原委員 だから、これはまさに本音と建前の議論からすると、建前の法律なんです。建前の法律でいいのかということ、これは大きな問題ですよ、大きな問題。つまりは、この法律は建前の法律になっている。しっかりとこの点は、私は問題であるということはテークノートしておきたいと思いますし、本当にこういう事態が起きたときにしゃくし定規の運用をしたら日米同盟は崩壊しますよ。そういうものが起きて、そういうような、実際問題……(発言する者あり)事前協議なんて一回もやられていない、そんなものは。

 そういうような話じゃなくて、我々が言っているのは、法律に魂を込める、まさに実際に起きるようなことを想定してやらなきゃいけないのに、これについてはまさに建前の議論をしているということを申し上げておきたいと思います。このことについてはしっかりと申し上げておきます。これは、本当にこれを厳格運用したら問題ですよ、逆に言うと。日本の安全保障に対して大きな問題であるということは申し上げておきたいと思います。(発言する者あり)

 いや、どうしたらいいって、簡単ですよ。それは、本音と建前であれば、本音の法律のたてつけにしておかないと、国民の生命財産、主権は守れないということですよ。私はそのことを言っているんですよ。そういうようなことをしないと、この法律は本当に机上の空論になっちゃいますよ。それだけは申し上げておきます。

 その上で、新旧ガイドラインについての対照表をごらんいただいておりますけれども、旧ガイドラインと新ガイドラインで違うところがあるんですね。新ガイドラインでなくなっているものの一つが、いわゆる重要影響事態、旧周辺事態の別表というものがなくなっているんですね。別表というものがなくなっている。

 皆様方に資料をお配りしております。これはパネルではありませんけれども、資料でお配りをしておりますが、三ページ、旧ガイドラインの別表ということで、日米両政府がおのおの主体的に行う活動における協力、米軍の活動に対する日本の支援、運用面における日米協力。いろいろあります。後方地域支援、補給、輸送、整備、衛生、警備、通信、警戒監視、いろいろありますけれども、この別表がなくなりましたね。

 中谷大臣、何でこれは、別表はなくなったんですか。

中谷国務大臣 九七年以降、日米両国でさまざまな協力も拡大をしてきておりましたので、こういった実績を踏まえますと、あえて別表で協力項目を例示せずとも、日米の防衛協力について一般的な大枠また政策的な方向性を示すとのガイドラインの機能を十分果たし得るという認識で、別表は省いたわけでございます。

前原委員 中谷さん、自衛隊法はポジティブリストですか、ネガティブリストですか。

中谷国務大臣 一般的にはポジティブリストと言われております。

前原委員 そうなんですよ。自衛隊法というのはやれることが書いてあるんです。ネガティブリストというのは、やっちゃいけないことが書いてあって、それ以外はやってもいいんですよ。つまり、この別表から考えると、自衛隊法、実際は自衛隊法がベースでしょう。だって、自衛隊が、自衛官が対応するわけですから。ということは、自衛隊法に書かれているのはポジティブリストなんです。やることが書かれているということについて言えば、しっかりと、やることを書くというのが王道じゃありませんか。

 何を協力するのかわからない、今までの実績でと言われても、どういった協力をするのかわからない、どういった協力がその基本計画等に盛り込まれるかわからない。それでは国民は、自衛隊は、その地理的な拡大もあるけれども、中身として、この委員会でなかったのは質的な中身、どういう中身について協力をするのかということについて議論がないんですね。

 ポジティブリストであるということにすれば、それにのっとれば、何をやるかということは、旧ガイドラインでしっかりとこれだけ多く、皆さん方にお示しをしているように書いてあるわけですから、こういうものについてしっかりと、やはりもう一遍別表を出されて、具体的に何をやるんだ、そういうことを前もって示しておくことが自衛隊法の整合性とも合っているんじゃないですか。

中谷国務大臣 一般的にポジティブリストと言われているのは、憲法上自衛隊ができることを明確にした関係から出てきております。

 このような中身につきましては憲法内、法律内で行われるということで、前回のガイドラインにおきましても項目を例示しておりますけれども、これは協力のあり方をわかりやすく例示したということでありまして、例に含まれていない事項において、法律で検討はいたしますが、それを排除するものではないわけでございます。

 その後、十八年たちました。日米間の協力も進んできているわけでありますので、あえて項目を一つ一つ列挙するよりも、大枠で実施できる項目をふやしていく、また特にそれで縛られることがないようにということで、今回は別表をつけなかったということでございます。

前原委員 最後の一言が本音ですよ、縛られることがないようにと。それは問題なんですよ。

 ちゃんとどういうことをやるかということを示してもらわなきゃいけない。だったら、この別表に書いてあること以外で何が具体的に協力内容としてあり得るんですか、答弁してください。

中谷国務大臣 まず、その前提で、ガイドラインというのは、当然各国の憲法とか法律に基づいて実施をするということでありますので、無限定に拡大するということはございません。

 前回は例示をいたしましたが、特に、表がちょっとわかりづらいんですけれども、例示した以外のことでも実施をし得るということで……(前原委員「いや、だから、何をするかと聞いているんです」と呼ぶ)はい。その範囲においては、憲法に逸脱しない内容にしておりますが……(前原委員「何が考えられるの」と呼ぶ)ちょっと例示、ちょっと項目が見えないので、もう一度。

前原委員 中谷大臣、資料を渡していますから、そこに。事務方からもらった答弁書ばかり見ているから、私が出した資料を見ていないんです。

 私の質問は、別表以外に、旧ガイドラインの別表以外にやり得ることというのは何があるのかということを聞いているんです。時間の無駄をさせないでください。

中谷国務大臣 宿泊等の手当てとか、また教育訓練等を実施する場合の支援とか、今回、この項目、ガイドラインにない項目で法律で示した項目がございますが、このような支援を行ってまいりたいと思います。

前原委員 委員長、具体的にどういった活動内容を想定しているのかということについては、この委員会で、しっかりとやはり提示をしていただいて、そして、その中身についても議論をしたいというふうに私は思います。また、それが大事だと思いますね。委員長もそう思われると思います。

 ぜひ、その別表以外のどういう活動を想定しているのかといったことを政府から提出をさせていただきたいと思います。

浜田委員長 理事会で協議させていただきます。

前原委員 最後に、総理、総理がアメリカに行かれた後に、私、訪米いたしまして、今回の総理の訪米というのは極めて向こうでは好評でした。それは、私は当たり前だと思うんですね。支援の内容をこれだけ拡大する、こういうことを言えば、それはアメリカは期待をしますし、それについてはウエルカムなんだろうと。

 しかし、ということは、他方で、これだけやれますと言ったことを、具体的な要望を蹴ったときに、やれない、やりませんと言ったときには大変目つきが悪くなる、こういうことで、そういう意味での、私は、期待感と、実際にやる、やらないということの外交的なハンドリングが難しいというふうなことは思います。

 それと同時に、日米同盟関係というのは何が私は肝か、防衛において。例えば共産党の人が、まあ共産党と言わなくてもいいけれども、日米安保に反対の人たちが、何でアメリカとの同盟関係が、例えばそう言う有権者もいますよね。

 私が説明するのは、こういう説明をします。やられたらやり返す能力がない。新三要件でも敵基地攻撃能力の話をされていますけれども、もともと敵基地攻撃能力はないんですから。やられたらやり返す能力はない。それから、情報も、みずからの情報というものについての能力が極めて低い。ヒューミントあるいは衛星情報、さまざまなものにおいて劣っている。だって、今の衛星情報だって、アメリカ、フランスから買っているわけで、全部出してくれているかどうかわからないですよ。それと、日本が今、自衛隊が持っている主要装備、これはほとんどアメリカから買っているものじゃないですか。イージス艦なんか、初めはブラックボックスがあった、それについてはさわらせてもらえなかった。こういうことがある。

 装備、インテリジェンス、情報、そして、やられたらやり返す能力、こういったものについてアメリカに依存しているわけですね。こういう中で、本当に主体的な判断ができるのかどうなのか。イラク戦争のときに、なぜ大量破壊兵器がないにもかかわらずイラク戦争の協力を頼まれたのか。私が当時アメリカの政府高官と話をしたときに、イラクの問題じゃないんだ、北朝鮮で何かがあったときにアメリカが協力するから、だからここは協力したらいいんだと。つまりは、そういった日本の隘路を必ずアメリカは、同盟関係ですけれども、向こうはボランティアで日米同盟関係をやっているわけじゃないんですから、そこをちゃんと指摘してきますよ。

 私は、総理には、本当にこの国の安全保障、こういうことを考えるのであれば、こういった三つの分野についての、もちろん、全て日本が独自でやるなんということは無理です。しかしながら、徐々にその自立を高めるというようなこともあわせてやっていかなきゃいけないし、民主党政権のときに武器三原則の見直しを行って、共同生産、共同開発、これを例外にした。そして、準天頂衛星、これを七基体制にする、これはGPSにだけ頼っちゃいかぬ、測位衛星を自前で持とうじゃないかという自立の観点の中からやったことなんですね。むしろ、そういうようなことをしっかりやっていくということの方が、私は大事なことじゃないですか、大風呂敷を広げるよりも。それが日本の真の安全保障の向上につながるんじゃないですか。それについて答弁を求めます。

安倍内閣総理大臣 当然、日本として主体的に我が国を守る、これが基本的な考え方であろうと思います。しかし、その中において、今や世界で、どの国も一国のみで自国を守れる国がない状況になっている中で、日本は米国との同盟が安全保障政策の基軸であることも事実であります。

 しかし、前原委員が指摘になられたように、アメリカはもちろん同盟上の条約の義務は果たしていくわけでありますが、米国も米国の国益の中で考えるのは、それは当然のことであろう、このように思うわけであります。

 そこで、同盟のきずなとは何かといえば、両国が協力し合っていくことによって両国の国益はより増進されていくということであり、地域やそれぞれの国々の安定が向上していく、抑止力が向上していくということにもなるわけでございまして、日本には日本側の努力が必要であろう。

 その中において、打撃力は米国、盾は日本、こういう役割の分担、事実上の分担が存在するわけでありますが、その中において、日本としても、日本の努力をさまざまな分野において向上させていく。

 情報収集においてもまさにそれが言えるのだろうと思います。その中で、日本も情報収集のための衛星の能力が上がってきているのも事実でございますし、また、秘密を守るための法律をつくる上において日米の情報交換がスムーズにできるようになる中において、我々も、情報として独自に得た情報があって初めて、米国というか、ほかの国々からも情報が入ってくる、そのための努力は常に重ねていかなければならないと思っております。

前原委員 日米同盟は大変重要ですし、その中身を変えていく、そして充実させていくことは大事ですが、やみくもに日米同盟の協力関係を強化したらそれは全て日本の国益になるということではない、いろいろな失うものもある、そういうことをしっかりと認識した上で、トータルで、どうすれば日本の安全保障、国民を守れるかということを考えてもらいたい。そのことを申し上げて、質問を終わります。

浜田委員長 次に、玄葉光一郎君。

玄葉委員 玄葉です。

 先ほど後藤さんが質問をした点、大事な論点だと思うんです。つまり、軍事的な影響あるいは波及、観点、脅威がない中で、自衛隊が地球の裏側まで行って集団的自衛権を行使するのかしないのか、これは詰めていかなければならない論点の一つではないかというふうに思います。

 先ほど岸田外務大臣が、九八年の高野北米局長の答弁が維持されている、その答弁について撤回する、しないという議論がありましたが、それは後藤さんにお任せいたしますが、その質問が出たので、その当時の議事録を読んでおりました。ガイドラインは九八年に議論をいたしましたけれども、まさに岸田外務大臣もおっしゃった、法制定のときの議論の最終盤の議事録をずっと読んでおりましたらば、こういう議論でございます。

 つまりは、高村国務大臣、外務大臣だと思いますけれども、「法案の中で平和と安全といった場合に、それはやはり軍事的観点が中心になると思われますので、単に経済的側面だけから、それが日本にとって大変重大な影響を及ぼすとしても、この場合の日本の平和と安全ということにはならないのだろう、軍事的観点を中心とした概念である、こういうふうに思っております。」、こういうふうに答弁されています。

 これは、まさに軍事的な波及、影響なしでは周辺事態たり得ないということを言っている意味だろうというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 軍事的観点ということでありますが、周辺事態というのは、日本の平和と安全に重要な影響を与える場合で、経済的のみならず軍事的な観点も含めて日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす場合をいう、これは政府としての考え方ですが、要するに、観点、この事案の中に軍事的な観点がどこにも存在しない、経済的な観点のみであるならば、こうした周辺事態には該当しない、これが政府の見解であると認識をしています。

玄葉委員 おっしゃったように、少なくとも、軍事的観点中心の概念であるというこの答弁は、当然、これは重要影響事態でもまさに維持されているということでよろしいですね。

岸田国務大臣 結論から言いますと、重要影響事態でも同様であります。

 軍事的な観点がなく、経済的な観点のみであったならば、これは該当しない、これが基本的な考え方であります。

玄葉委員 まさに今おっしゃったように、重要影響事態の定義というのは、周辺事態の定義から「我が国周辺の地域における」という言葉を削除しただけでありますから、おっしゃったとおり、重要影響事態というのは、やはり周辺事態同様、軍事的観点を中心とした概念であるというふうに言わざるを得ないということだろうというふうに思います。

 あわせて申し上げれば、そうなると、これまで御議論あったように、存立危機事態というのは重要影響事態をより深刻にした概念である、事態であるという答弁がなされているわけでありますから、論理必然的に考えると、どうしても存立事態も軍事的な観点中心の事態と考えざるを得ないというふうに思いますけれども、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 存立事態は、そもそも三要件がございまして、我が国に武力攻撃が発生したこと、あるいは我が国と密接な関係に対して武力攻撃が発生したことでございますから、これはまさに武力攻撃が起こったということでありますから、軍事的観点そのものでございます。

玄葉委員 まさに今冒頭申し上げたように、総理御自身が盛んに具体例として挙げられたホルムズ海峡の機雷掃海というのは、果たして軍事的観点を中心とした概念である存立危機事態に入るのかどうか。明白な危機といった場合の事態の性質、ここがまさに問題なのでありますけれども、やはり存立危機事態は軍事的観点中心の概念である、こういうふうに断言していただけますか。

安倍内閣総理大臣 まさに我が国に対する武力攻撃が発生した、そして我が国と密接な関係にある国に対する武力攻撃が発生した、そのことによって我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由そして幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険という状況が第一要件に定められているわけであります。

 すなわち、我が国に対する武力攻撃が発生したこと、あるいはまた、我が国と密接な関係にある国に対する武力攻撃が発生したこと。

 つまり、武力攻撃が発生しているんですから、軍事的な観点であるということは明らかでございます。

玄葉委員 それはつまり、軍事的観点、軍事的影響、軍事的波及、軍事的脅威、それぞれ言葉があるわけでありますが、先ほど来から、これは軍事的観点といえば、例えばホルムズ海峡による機雷掃海は、直接の軍事的脅威はないけれども、軍事的観点といえば存立事態になり得るのだ、しかし軍事的脅威はない、こういうことですか。

安倍内閣総理大臣 つまり、機雷を敷設するということは、これは武力行使に当たります、国際法上。そして、機雷について、いわばこれを当該敷設した国が停戦を行い、しかし、もうこの機雷について、いわば武力行使の一環としてここにある、存在するものではないということが明らかになってきた中においては、これは遺棄機雷でありますから、こちらがそれを排除することは武力行使には当たらないわけでございます。

 ですから、機雷掃海を行えば常に当たるということでもありませんし、常に集団的自衛権の行使たり得るということでもありません。

 そこで、私たちが申し上げていることは、しかし、国際法上まさに武力行使が行われて、機雷掃海ではありますが、国際法上これは集団的自衛権の行使たり得るという中において、しかし、これは受動的であり、制限的であるから、第三要件にも当たり得る。ただ、第一要件に当たるかどうかというのは総合的に判断をしていかなければならないわけでありますが、今、玄葉委員が議論をしておられる観点からいえば、まさにこれは武力攻撃に当たっているということでありますから、軍事的な観点からもこれは武力攻撃が発生したということであろう、密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したということであろう、このように思います。

玄葉委員 私は、軍事的な脅威が日本に及ばない中で、ホルムズ海峡まで行って、集団的自衛権の行使として武力行使を行うというのはやはりどうなのか、こういうふうに思っているところであります。

 また、別の観点からこの重要影響事態法について質問させていただきますが、周辺事態法は日米安保条約の枠の中、範囲内であったわけでありますけれども、この重要影響事態法は日米安保条約の目的を超えたという理解でよろしいですか、外務大臣。

岸田国務大臣 現行の周辺事態法ですが、まず、周辺事態は地理的概念ではありませんが、この制定時において、中東あるいはインド洋において生起することは現実の問題として想定されない、このように答弁をしてまいりました。そして、周辺事態法では、支援の対象は、日米安保条約の目的達成に寄与する活動を行う米軍に限られておりました。

 一方、重要影響事態については、まず、地理的概念でないこと、これは周辺事態と同様であります。そして、安全保障環境が大きく変化した現在においては、重要影響事態が生起する地域からあらかじめ特定の地域を排除する、これは困難である、このように考えております。

 そして、安保条約との関係でありますが、重要影響事態における後方支援活動の実施に当たっては、あくまでも日米安全保障条約の目的の達成に寄与する活動を行う米軍への支援となりますが、これに限られるものではない、このように考えております。

 具体的に申し上げるならば、重要影響事態に対処する上では、日米安保条約の目的の達成に寄与する活動をする米軍だけではなくして、国際の平和と安全の確保という国連憲章の目的の達成に寄与する活動を行うその他の外国軍隊等との連携を強化すること、このことが我が国の平和及び安全を確保する上で不可欠である、このように考えているところであります。

玄葉委員 そうすると、日米安保条約の目的は超えたということですね。

岸田国務大臣 今御説明させていただいた意味におきまして、日米安全保障条約の目的達成に寄与する活動を行う米軍への支援に限られるものではない、このように考えております。

玄葉委員 目的は超えたということですね。

岸田国務大臣 今申し上げたとおりであります。

 こうした米軍への支援に限られるものではない、これが重要影響事態であります。

玄葉委員 周辺事態安全確保法では、日米安保条約の「効果的な運用に寄与し、」ということで、まさに日米安保条約の枠内であったわけですけれども、今回は目的を超えたのだということだと思います。つまりは、地理的概念が取っ払われたということと、同時に、支援対象が、今おっしゃったように、国連憲章に寄与する外国軍隊。

 この外国軍隊というのはどこを想定していますか。

岸田国務大臣 この外国の軍隊については、個別具体的に事態を総合的に勘案した上での判断となります。事前にこの国であるということを決めているものではないと承知をしています。

玄葉委員 例えば、オーストラリア軍とかインド軍だとかということではないかと思いますが、日米安保に寄与していない米軍、これも含みますか。

中谷国務大臣 含まれます。

 この法の目的が、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態という場合の外国軍隊の支援ということでございます。

玄葉委員 そうすると、ぜひ政府に申し上げたいんですけれども、日米安保条約の枠内であった周辺事態法、目的を超える重要影響事態法、目的を超える具体的なケースをぜひ出してもらいたい。

 言葉を言いかえれば、周辺事態法には当たらないけれども重要影響事態には当たる、こういうケースを具体的に示していただけますか。

安倍内閣総理大臣 具体的に申し上げれば、重要影響事態に対処する上において、先ほど来答弁をしておりますように、日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行っている米軍だけではなくて、国際の平和と安全の確保という国連憲章の目的の達成に寄与する活動を行っているその他の外国軍隊等との連携を強化することが我が国の平和及び安全を確保するために不可欠であるという考え方でございます。

 また、ある事態が重要影響事態に当該するか否かは、その事態の規模、態様、推移等を総合的に勘案して、個別具体的に判断するわけでございまして、一概にこれが当たるということは申し上げるのは困難でございますが、しかし、その上であえて申し上げれば、例えば、仮に中東、インド洋などの地域で深刻な軍事的緊張状態や武力衝突が発生した場合であって、我が国に物資を運ぶ日本の船舶に深刻な影響が及ぶ可能性があり、かつ米国等がこうした事態に対応するために活動をしている状況が生じたときは、その他の状況も勘案した上で、当該事態が重要影響事態に該当することはいわばあり得る。

 ただ、これはあり得るというわけでございまして、実際には、十分に慎重な判断がなされるわけでございます。

玄葉委員 今一つの例を総理は出されたわけです。つまり、今までの周辺事態法だったら入らないけれども、重要影響事態法だったら入り得るということだと思うんですね。それは、一つは地理的周辺が取っ払われたから。もう一つは、先ほどの議論はまだ続いているわけですけれども、重要影響事態は間違いなく軍事的観点中心の概念だということは維持されているというふうにおっしゃっていましたから、軍事的観点がその事態で、今挙げた例の中にあるのかないのかというのはわかりませんけれども、ただ、なり得るということなんだろうというふうに思います。

 これは、周辺事態法のときに、私も議論に参加しておりましたけれども、あのときには周辺事態法に当たる具体例を六類型という形で示したわけです。ですから、今回のケースも、いわゆる周辺事態法には当たらないけれども、重要影響事態法には当たるというケースを、今のようなケースをぜひ類型化して政府として出していただきたいと思いますけれども、いかがですか。

中谷国務大臣 今後、具体的にも御議論をいたしたいと思いますが、一例を挙げますと、かつてテロ特措法、また補給支援法に基づいて、洋上における燃料補給をいたしました。あのときは、米国を含む十一カ国に対して燃料支援活動を行った実績がございますので、これに関して、我が国の重要影響事態であるかどうかという認定をした上で適用されるかどうか判断されますけれども、こういった事例等もございますが、各ケース等につきましては、今後、質疑を通じて話していきたいと思っております。

玄葉委員 まさに冒頭議論した、いわゆる軍事的観点が入っている事態なのかどうかということも恐らく検討しなければならないのだろうと思いますけれども、確かにそれは一つの検討対象になる、いわゆる自衛隊による給油、九・一一後のですね、それもそうなのかなというふうに思います。

 ぜひ、委員長におかれましても、議論のまだ最初ですけれども、どこかの段階で具体的な例を類型化して政府に出させるようにお取り計らいをお願いいたします。

浜田委員長 理事会で協議させていただきます。

玄葉委員 次に、ホルムズの事態とは別次元の問題だと思いますけれども、南シナ海の事態についてお尋ねをいたします。

 この週末、シンガポールでシャングリラ・ダイアログ、アジア安全保障会議が開かれて、中谷防衛大臣が出席をされて、さまざまな発信をされました。スプラトリー諸島での岩礁の埋め立てを鋭く批判されました。私もそのとおりだというふうに思いますけれども。

 安倍総理大臣、現在、南シナ海で起きていること並びに中国の特にナインドットラインという主張について、安倍総理大臣の評価をお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 日本の基本的な立場は、力による現状変更は許せないということであります。まさに、それに対しては国際社会が一致協力して声を上げていかなければならない。

 本年のシャングリラ会合においても、中谷大臣から日本の立場について明確に申し上げたところでございますが、私も、昨年のシャングリラ会合に出席をさせていただきました。そこで、法の支配の三原則について提示をしたわけでございます。

 主張する際にはそれは国際法に基づいていなければならない、武力や力による威嚇は行ってはならない、何か問題があればこれは国際法にのっとって解決すべきだという三原則を提示いたしまして、多くの国々から支持をいただいたところであります。

 我々は、ASEANの国々、そして、米国を初め志を同じくする国々とともに、こうした考え方をしっかりと確立していかなければならない、このように思っているところでございます。

玄葉委員 中谷防衛大臣は、東南アジアのいわゆる能力構築、キャパシティービルディングは大事だ、こういう話をされておられました。私もそれはそのとおりだというふうに思いますけれども。

 新しいガイドラインでは、平時からの協力措置が盛り込まれています。カーター国防長官は、新たなガイドラインに言及して、南シナ海問題への対処を念頭に日米協力強化を示唆したという報道がございましたけれども、例えば、現行法でもできますけれども、今後、共同計画に基づいて、南シナ海において平時からの警戒監視、これを自衛隊が行うというふうにするのですか。

中谷国務大臣 自衛隊の任務としましては、我が国の平和と安全、国際社会の安全に関与するということでございます。

 自衛隊的に、法的に許されていることにつきましては警戒監視というものがありまして、やはりこの地域の安全、安定というのは大事なわけでございます。

 現在は、我が国周辺ということで、東シナ海を中心に情報収集・警戒監視活動をしておりますが、非常にこの地域の問題につきましては関心を有しておりまして、具体的な計画や実施はいたしておりませんが、今後の課題であるというふうに思っております。

玄葉委員 東シナ海が手薄にならないようにだけはしなければならないと思いますけれども。

 スプラトリー諸島をめぐって中国とフィリピンが武力衝突を起こしてしまった、アメリカとフィリピンは相互支援条約がございますので、フィリピンに対して米軍がいわば加担をする、こういうことになった。場合によっては、中国が機雷を敷設する、こういうこともあり得るかもしれない。そういうケースは、存立危機事態あるいは重要影響事態、それぞれ要件が該当すればなり得るのですか。

中谷国務大臣 存立危機事態とか、また重要影響事態について当たるかどうかということでありますが、これも、限られた要件、前提条件だけで判断できるものではなくて、また、特定の国を挙げた仮定のお尋ねでございますので、お答えすることは差し控えますけれども、該当するかどうかにつきましては、実際に発生した事態の具体的、個別的な状況に際して、全ての情報を総合的に、客観的かつ合理的に判断することになるわけでございます。

玄葉委員 要件を満たせば、重要影響事態にもなり得るし、存立危機事態にもなり得る、こういうことでよろしいですね。

安倍内閣総理大臣 今例として挙げられた南シナ海でありますが、基本的には、余り特定の地域についてコメントは行わないところでございますが、あえて申し上げますと、この南シナ海のケースにおいても、我が国が輸入する原油の八割、そして天然ガスの三割が南シナ海のシーレーンに依存しているのも事実であります。しかし一方、これは、ホルムズ海峡と同様ではありますが、他方、ホルムズ海峡の場合は原油を輸入する上で迂回路がない、ホルムズ海峡の場合は迂回路がございませんが、南シナ海におきましてはさまざまな迂回路があるわけでございまして、ホルムズ海峡とは、迂回路があるかないかということは大きく違うんだろうと思います。

 また、実際問題として、周辺国にとって、広い海ですから、あそこに大量の機雷を敷設するということは、これは全ての国にとっても、沿岸国にとっては大変なことにその後もずっとなっていくわけでありますから、余り想定し得ないのでございますが、今申し上げましたように、ホルムズ海峡とは違うという状況等についてはお話ししたとおりでございますが、いわば法律との関係においては、法律的には、まさにこれは三要件に合致するかどうか、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して客観的、合理的に判断をしていくものであります。

 ただ、今申し上げましたように、なかなか、この南シナ海というのは、それは想定し得ないのかな、これはさまざまな迂回路がある中においてどうなんだろう、このように思います。

玄葉委員 機雷掃海以外の、例えば、いわゆる集団的自衛権の行使、武力行使、これは全く想定し得ないですか。機雷掃海以外の武力の行使、集団的自衛権の行使、これは全く想定し得ないですか。

安倍内閣総理大臣 集団的自衛権の行使については、まさに、申し上げておりますように、これは三要件に当てはまるかどうかということに尽きるわけでございまして、我が国あるいは、まさに我が国と密接な関係にある国に対する武力攻撃が発生して、かつ、我が国の存立が脅かされ、国民の生命や自由や幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険、これが存在しなければならないということでありますし、そしてまた、もちろん、これを排除するために、国の存立を全うして、そして国民を守るために他に適当な手段がないという状況に立ち至らなければならないわけであります。

 それまでは外交努力もするわけでありますし、国連の場においてしっかりと議論をしながら、そういう状況を取り除いていくという最大限の努力をする上においての判断であるということでございます。

玄葉委員 ここに新ガイドラインがございますが、ここで言うアセット防護、これは防衛大臣、何を指しますか。

中谷国務大臣 アセットというのは武器装備でありまして、それを防護することでございます。

玄葉委員 例えば、そうすると、非戦闘員を退避させている米軍機、これをいわば自衛隊が警護するというか警戒するというか、そういう事態というのは存立危機事態において行われ得るということですよね。新ガイドラインのこのD項というのは「日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動」で、「武力の行使を伴う適切な作戦を実施する。」、こういうふうに言っているわけでありますから、当然そういうことでよろしいですね。

中谷国務大臣 アセット防護については法律で規定をするわけでございますが、そこに書かれていることにつきましては一つの例示になりますけれども、我が国による武力行使を伴う作戦として行うものでございますので、憲法上、あくまで新三要件、これを満たす場合に限られるわけでございます。

玄葉委員 当然、新三要件を満たすときが存立危機事態なので、そのときにそこまでやるかということでありますし、例示をしているわけですから、やるということですよね。これは当然、他国の領域においてもやるということですよね。

安倍内閣総理大臣 他国の領域ということにおいては、いわば他国の領海、領空、領土ということでおっしゃったんだろうと思いますが、それについては、再三答弁させていただいておりますように、第三要件にございますように、必要最小限度を超えて実力行使をしてはならない、必要最小限度の実力行使にとどまるべきことということが書いてあります。

 これは憲法との関係でございまして、その上において、一般に海外派兵は許されないというのが基本的な立場でございます。

玄葉委員 そうすると、こういうアセット防護のようなことは、公海上は行うけれども、他国の領域については慎重に行う、こういうことですか。

安倍内閣総理大臣 今まで再三答弁をさせていただいておりますが、まさに一般に許されないということでありますから、いわば公海におけることと他国の領海等で行うことについては、この当てはめについては、それはもう慎重の上にも慎重となる、こういうことでございます。

 これについては、既に法制局長官からも答弁しているとおりでございます。

玄葉委員 この間、安倍総理大臣になってからの安保法制懇、十五事例というのが盛んに議論されました。

 そのときに、この十五事例のうち、事例八から十五まで、これは武力の行使に当たり得る活動である、こういうことで例示をされているわけでありますけれども、これは、存立危機事態にあってはそれぞれ集団的自衛権の行使として行うということでよろしいですね、総理大臣。

安倍内閣総理大臣 例えば船舶検査、これは武力の行使ではございませんが、八から十五まで、これが全部武力行使ということで申し上げているわけではありません。

玄葉委員 いや、これは武力の行使として整理されていますよ、政府の方で。

安倍内閣総理大臣 武力行使の一環として行うということについては、一環として船舶の検査を行うということについては、これは当然三要件の中で行い得るということでございます。

玄葉委員 基本的には、事例八から十五まで、基本的には行うということでいいですね。

安倍内閣総理大臣 これは、今お示しになっているものが武力の行使になり得る、そして集団的自衛権の行使になり得るということについては、三要件によるということでございます。

玄葉委員 ですから、三要件に合致したならば、これらは日本国として、自衛隊が武力の行使をこういった事例においては行うことは可能だ、こういうことですね。

安倍内閣総理大臣 それはまさにそのとおりでありまして、そのための安保法制懇での議論を積み重ねてきたわけでございまして、集団的自衛権としての武力の行使においては三要件に当てはまらなければならないということでございますが、三要件に当てはまれば行い得るということでございます。

玄葉委員 こういう武力攻撃を受けている米艦の防護も含めて、だんだん具体例が出てくるわけでありますけれども、これら事例八から十五、それぞれ、政府としては三要件に合致すれば行い得るのだというふうに総理大臣は答弁をされましたけれども、これは他国の領域においてもそうなのか、改めて問いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 他国の領域につきましては、三要件の第三要件にありますように、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、こう書いてあります。これは、いわば憲法の要請でございます。

 そこで、政府としては、海外派兵は一般に許されないという立場でございまして、武力の行使を目的としていわば自衛隊を海外派兵するということは一般に許されないという立場でございます。

玄葉委員 本当にそれは成り立つんでしょうかね。少なくとも、今出されている法律からは読めません、今出されている法律からは。私はてっきり、他国の領域でもこれはやるのかと思いました、あの法律を読む限りでは。

 本当に、総理大臣、よろしいんですか。

安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、いわば第三要件の、非常にこれは厳しいものでありますから、一般にというものは、ほとんど、これがまさに通例であるということ、一般にということはほとんどのものが該当していくということでございまして、ですから、その上において、果たして、では例外は何かということで念頭にあるのはまさにホルムズにおける機雷掃海でございまして、これ以外のものは念頭にはございません。

玄葉委員 いや、念頭にないと言ったって、今、事例八から事例十五までも、これはもう行い得るのだということをおっしゃっているわけですよね。(安倍内閣総理大臣「公海でね」と呼ぶ)ああ、いわゆる他国の領域で念頭にあるのはホルムズ海峡の掃海活動だけである、あとは念頭にないということですね、それでは。

 私は、かなりこれは法律では読めないので、本当にそれでよいのかという感じがしますが、もし本当にそういうことであれば、きちっと法律に書いた方がよろしいと思います。

安倍内閣総理大臣 つまり、これは憲法上の要請でございますから、憲法上の要請として、ここで再三答弁をさせていただいておりますように、武力行使を目的として自衛隊を海外に出す、派兵するということについて、これは一般には許されないというのが基本的な一貫した立場であります。

 繰り返し申し上げているとおりでございまして、同じ議論を実はさせていただいているんですが、その際、法制局長官からも答弁をさせていただきましたが、これは同じでございますが、いわば外国の領土、領空、領海に入っていくのは公海等とは全然要件が違うわけでありまして、まさにこれは一般に許されないという中に入ってくるわけでございますから、その中において、果たして、一般にの中においての外になる、例外に当たるものは何かと考えたときに、我々は、ホルムズ海峡しかないであろう、このように考えているところでございます。

 これは政府の見解であり、いわば憲法上の要請でございますから、既にこれは、法律にあえて書く必要はない、このように考えているわけでありますし、三要件については、三要件自体が法律に事実上書き込まれていると我々は考えているところでございます。

玄葉委員 抑止力を高めるためにこの法案を出したのだというのでありますけれども、余りそういう答弁が続くと、本当に抑止力が向上するのかなという感じが一方でしないわけでもございません。

 別の質疑を改めてさせていただきますが、集団的自衛権が本来国際法上持っている歯どめの議論をさせていただきたいと思います。

 集団的自衛権には国際法上歯どめがございます。集団的自衛権の行使における国際法上の要件について、事前に通告しておりますので、岸田外務大臣にお聞かせをいただきたいと思います。

 まず、お答えいただけますか。

岸田国務大臣 一般国際法上、ある国が集団的自衛権を行使するための要件ですが、三つ考えられています。

 一つは武力攻撃を受けた国からの要請または同意があること、他に適当な手段がないこと、そして必要最小限度の実力行使であること、このように一般的に考えられております。

玄葉委員 そうすると、ホルムズ海峡における機雷掃海ケースが今回たびたび出ておりますけれども、その場合、武力攻撃を受けた国の要請または同意となると、どの国の要請または同意になるのですか。

岸田国務大臣 ホルムズ海峡の際にどの国の要請または同意が必要なのかということですが、これは、発生した場所によって、その領海を領有している国になるかと思います。

玄葉委員 普通、ホルムズの海峡というのは、まさに先ほどの機雷を敷設する蓋然性という話が南シナ海とホルムズ海峡でありましたけれども、ホルムズ海峡の場合だったら、イランかオマーンしか、あの領海を見ればないと思いますけれども。

中谷国務大臣 その前に、この法律上は、我が国と密接な関係にある国に武力攻撃が発生したということで、その国から要請を受けたということがまず前提です。

玄葉委員 ですから、ホルムズ海峡の機雷掃海のケースはどこの国ですか。

安倍内閣総理大臣 それは、例えば、敷設をされてしまった、いわば領海が属するオマーンあるいはイラクでございますが、同時に……(発言する者あり)イランでありますが、オマーンとイラン、また同時に、例えばここを航行していて触雷してしまうということが発生した場合、触雷した場合もこれは想定し得るだろう、このように思います。

 いずれにせよ、あらかじめ今それを特定することはできないと思います。

玄葉委員 これ、本来、集団的自衛権を行使する際の、今、三要件、三要件と政府はおっしゃっているのでありますが、これも極めて大事な要件だと思うんですね。要請または同意、これがなければできないわけですけれども、なぜこれを四要件として入れないんですか。

岸田国務大臣 集団的自衛権の行使をするに当たって、この要件、三要件に加えてもう一つ、要請、同意、こうした要件を入れるべきではないか、こういった御質問です。

 武力攻撃を受けた国の要請または同意が必要なこと、これは、先ほど申し上げましたように、国際法上、当然の前提であります。こうした国際法を遵守するということ、これは大前提であり、こうした国際法の遵守、国際法の原則においては、従来の法制におきましても、国際法を遵守する、これは当然のことでありますが、具体的に国際法上の要件を法律の中に明記していない、こういったケースは多々あると思います。

 我が国として、武力行使をする新三要件、これは、国際法上、国際法を遵守する、これは当然のことであるということ、これは再三申し上げているとおりであります。実態は、こうした国際法上の要件に加えて、我が国が武力行使を認められるのは、新三要件、国民の命や暮らしを守るために他に手段がなく、そして必要最小限の場合に限られると考えております。

玄葉委員 要請または同意は当然である、こういうお話でありますけれども、これは国際法上の要件ですけれども、自衛権の三要件に似ているんですね。二は、他に適当な手段がない、三必要最小限の実力行使。二と三は一緒なんですよ。

 だったら、いわゆる存立を脅かす事態であるというだけでいいという話になっちゃいますよ、当然のことだということであれば。この二、いわゆる他に適当な手段がない、必要最小限度の実力行使、これも当然のことだと言ってしまえば、まさに存立危機事態の三要件のうちの第二要件、第三要件は要らないという話になっちゃいますよ。

安倍内閣総理大臣 これは、今議論しているのは国際法上の要請でございまして、まさに三要件につきましては、憲法上の要請においてこれは設けられた要件でございまして、この趣旨は法律に書き込んでいる。

 当然、集団的自衛権の行使がなぜ許されるかというと、これは国際法上合法である。合法の中においての要件としていわば要請があるということでございまして、攻撃を受けた国の要請または同意は、我が国が独自にこれを法律で定めるまでもなく、国際法上の明確な要件であるということでございます。このため、存立危機事態の要件として重ねて規定する必要はないと考えております。

 なお、存立危機事態に至ったときは、政府は、対処基本方針を策定し、直ちに国会の承認を求めることになりますが、対処基本方針には存立危機事態の認定の前提となった事実を明記することが法律上義務づけられています。このため、攻撃を受けた国の要請または同意については、この認定の前提となった事実として明記することになる、このように思います。

玄葉委員 私は、やはりしっかり、同意または要請があるというのは一つの歯どめですから、きちっと入れるべきだと思います。

 最後に、問題提起だけしておきますが、国連憲章五十一条、集団的自衛権行使が許されるのは安保理措置がとられるまでの間に限定されているということを明確に規定しているわけでありますが、ホルムズ海峡の機雷掃海のケースで、途中から集団安全保障措置になった場合は、そのまま集団安全保障としての活動を行うのか、撤収するのか、イエスかノーかで結構ですから、お答えください。

安倍内閣総理大臣 それは、集団的自衛権の行使から、今委員がおっしゃったような条件が整って集団安全保障措置に変わったとしても、それが三要件であり続ければ、当然、機雷掃海は行い続き得るということであります。

 これは、例えば、個別的自衛権を発動している中において、安保理の決議があって、それが集団安全保障措置に変わったとしても、個別的自衛権の行使をやめるわけではないのとこれは同じ理屈というふうに御理解をいただければと思います。

玄葉委員 集団安全保障措置を行う、集団安全保障活動としての武力の行使を行う要件と、自衛権の要件が同じであるというのは、私は何か腑に落ちないんですね。

 つまり、今、そういうことでしょう。つまりは、集団安全保障活動を行っていて、そして新三要件に該当しなくなれば、撤収するということでしょう。そうじゃないんですか。撤収しないんですか。

安倍内閣総理大臣 まず、新三要件に該当しなくなれば、これは終わります、撤収する。しかし、当たれば、例えば、集団的自衛権の行使の一環として機雷掃海を行っている、しかし、そこで国連決議等々があって、これは集団安全保障措置となったとしても、三要件に該当すれば、当然それは継続するということであります。

 それで、個別的自衛権の話を例に出しましたのはわかりやすくするためでありまして、我が国に攻撃があって、日本が個別的自衛権の発動をしている、これは集団安全保障措置がとられるまでの間でありますが、しかし、それは、国連決議があって集団安全保障措置として行うということになったとしても、日本が個別的自衛権の行使を、なったらやめるということにはならない。要件が整っていれば、日本に対する武力攻撃が続いているのであれば、当然、個別的自衛権を行使し続けるのと同じこれは理屈であって、そのまま要件が続くのであれば、当然続いていくという理屈になっているというふうに御理解をいただきたいと思います。

玄葉委員 いや、これは、要は、集団的自衛権の三要件に該当するのでホルムズ海峡で機雷掃海をしています、途中、安保理決議がありました、安保理決議があって、今度はもう集団的自衛権の行使はできないわけですよね。少なくとも行使はできない、これは国際法上の要請です。そうすると、集団安全保障措置の活動に変わりますね。そうですよね。それは確認できますね。

安倍内閣総理大臣 それは、つまり……(玄葉委員「そのとおりでしょう」と呼ぶ)そのとおりでありまして、つまり、正確に言うと、武力行使を続けるということでありまして、その武力行使を続ける形態が、先ほどもちょっと言い間違えましたけれども、個別的自衛権が集団安全保障措置に変わった中における武力行使が続くということでありまして、集団的自衛権におきましても、集団的自衛権が集団安全保障措置になれば、集団安全保障措置の中の武力行使が続く、こういうことでございます。

玄葉委員 だから、そうすると、冒頭私が申し上げたように、集団安全保障措置を行うための、集団安全保障措置としての武力の行使を行うための要件が事実上重なっているわけです、集団的自衛権行使の要件と。それは私は奇異に感じるというか、腑に落ちないところがある。

 だから、これは恐らく、私は、国際法上からの議論が未整理というか熟していないままここに出されてきたんじゃないかという不安があるんですよ。だから、聞いていまして、だから今、総理も、いろいろどうしても混同してしまうというところがあります。ですから、これは問題提起としてきょうは申し上げておきたいと思います。

 以上で私の質疑を終わります。ありがとうございました。

浜田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。寺田学君。

寺田(学)委員 民主党の寺田です。

 きょうで質疑が四日目になりますか、さまざまな議論をされておりますが、一般の方々とお話ししますと、事の重大性には、やはり大きく何かが変わるんじゃないかということは感じながらも、国会の議論を見てみても、専門的な用語が多くて、なかなか何が変わっていくのかがわかりにくいというような声が多く寄せられております。それは、政府にとっても、与党、野党問わず寄せられている声かもしれません。

 ですので、きょう二十五分時間をいただきましたので、きょうごらんになられている方々も含めて、本当に国民の、一番なじみやすいという言い方がいいかどうかは別として、本当に皆さんが御存じの専守防衛というものが今回の法改正によって影響をどのように受けているのかいないのか、そのことを通じてこの法案がつくる変化というものを議論したいと思います。

 専守防衛に関して、総理は、いささかも変更はない、また専守防衛の考え方は全く変わっていないと質疑で御答弁をされております。新聞報道を見てみても、ある社は専守防衛の本質は変わらないと言いながら、また違う社は専守防衛が変質をするというような書き方もされています。実際のところどうなっているのかということを国民の皆さんも一番知りたいのではないかなというところがあるので、極力私の主観は排除して客観的に質問をいたしますので、ぜひともそれを通じて国民の皆さんが納得できるような議論をさせていただきたいと思います。

 まず、専守防衛とはという定義についてお伺いしたいと思います。

 これは防衛白書からとってきました。政府の出されている正式なものですが、専守防衛とは、三つの要素を含めて専守防衛を定義づけられていると思います。

 まず一つ目が「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、」、攻撃を受けて初めて防衛力、武力行使をするという一つの考え方。二つ目が「その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、」、武力行使、防衛力のあり方も最小限にしましょうと。そして最後ですが、「保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限る」、武器その他類するものに関しては最小限にとどめましょうと。

 この大きく三つの要素で構成したものが専守防衛であるというふうに政府は定義づけられていますが、あくまでも確認ですが、専守防衛の定義、中谷大臣、こちらでよろしいですか。

中谷国務大臣 はい、そのとおりでございます。

寺田(学)委員 一個、この専守防衛の議論、この委員会が始まってからも質疑されていますが、報道を含めて若干正確な表現じゃないなと思う部分があります。何かと申し上げますと、他国を守るのではなくて自国を守るのだ、この方針こそが専守防衛であるというような論理展開が時々、国会の中でもありますし、外でもあると思います。

 ここも中谷大臣に確認をしたいんですが、そもそも、他国を守る云々ということは、この今の現行憲法の中では許されておりません。まさしく自国を守る、自衛をするんだ、この自衛をするやり方、基本的な姿勢をこの三つの要素に表現をしているんだと私は解釈をしています。

 中谷大臣にお伺いしたいんですが、この専守防衛というものは、他国を守る云々、自国を守る云々ではなくて、自国を守ることを当然の前提としながら、その態様として、形としてこの三つを要素として、この三つの要素に、ある意味合致することによって専守防衛というものは形づくられるものであるという考え方でよろしいですか。

中谷国務大臣 先ほど先生が御指摘された三点、これが憲法の精神でありまして、それにのっとった受動的な防衛戦略であるということでございまして、その点についてはいささかも変わりがないということでございます。

寺田(学)委員 改めて確認します。

 この三点を満たして初めて専守防衛だということでよろしいですね。

中谷国務大臣 これは、昭和四十七年に、政府見解として、我が国の武力行使が容認される内容について政府見解が出ておりますので、正式には、その文章によるものが憲法の基本的論理でございます。

寺田(学)委員 いや、余り難しいことを聞いていることではなくて、防衛白書の中に書かれている、専守防衛の定義がこのように書かれていますので。特別何かをひっかけようとしているわけではありません。この三点に合致することが専守防衛ですよねということを聞いているだけですので。

中谷国務大臣 憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢である専守防衛については、その定義、そして我が国の防衛の基本方針であることにいささかの変更もございません。

寺田(学)委員 特別難しいことを聞いていないので、構えずに御答弁ください。

 この三つある要素、相手からの武力攻撃を受けたとき、やられない限り、自分たちは防衛力、武力行使をしないという考え方、そして、この後ろ二つが全て、態様も含め、そして所持するものも含めて最小限にしましょうということです。

 この三つのうちの一番上、赤字で書きましたけれども、「相手から武力攻撃を受けたとき」というものの解釈をぜひともお伺いしたいと思います。

 これは、長妻委員が最初の委員会の中で、相手から武力攻撃を受けたときというのはどういう場合でしょうかという御質問をされました。資料二枚目ですけれども、お答えになった部分を一字一句間違わずに、そのままどんと議事録から抜きました。

 聞き方としては、相手から武力攻撃を受けたときは日本に限っているんですよねという聞き方をされましたので、それに対して大臣は、「相手から武力攻撃を受けたときには、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合も含むと解しております。 いずれにせよ、」、赤字の部分ですが、「我が国または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生が前提ということで、また、他国を防衛すること自体を目的とするものではなくて、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略」と締められています。

 これは、大臣が御答弁されたものを確認してパネルにしているものですので、改めて聞くまでもないですが、相手から武力攻撃を受けたときの解釈は、我が国または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生でよろしいですよね、大臣。

中谷国務大臣 そのとおりでございます。

寺田(学)委員 先ほどちょっと、時間が始まる前にお伺いしましたが、十三年前、中谷大臣は、名称こそ違いますが、今と同じ立場におられました。防衛庁長官として、同じように防衛政策の責任者としてやられていましたけれども、当時、十三年前、この専守防衛の中の一つの要件、相手から武力攻撃を受けたときに初めて武力行使をしますというこの一つの要件のうちの「相手から武力攻撃を受けたとき」の解釈、今お話しいただきましたが、当時と全く一緒ですか。

中谷国務大臣 当時は、専守防衛ということで、「相手から武力攻撃を受けたとき」も、我が国が武力攻撃を受けたときを指すものだと考えておりました。

寺田(学)委員 全く一緒ですかとお伺いしましたので、一緒かどうか、まずそれをお伺いしたいんです。

中谷国務大臣 当時は、我が国が武力攻撃を受けたときを指すものと考えておりました。

寺田(学)委員 特別そこも難しいことは聞いていません。

 先週この委員会で御答弁された、我が国または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生というのが「相手から武力攻撃を受けたとき」の解釈であると御答弁されました。その解釈は、十三年前の防衛庁長官時代のときと全く一緒でしょうか、それとも違いますか。まず、その違いだけ御答弁いただけますか。

中谷国務大臣 当時とは違います。

 昨年の閣議決定によりまして、より厳密に憲法解釈を現時点に当てはめていった結果はまた違うわけでございます。

寺田(学)委員 その解釈が変わった部分はどこですか。

中谷国務大臣 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生してというところでございます。

寺田(学)委員 今回解釈がまず変わったということは御答弁されました。

 では、今までは我が国に限られていた「相手から武力攻撃を受けたとき」に、その解釈自体が、我が国、それに加えて、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃というものが加わったということの御答弁でした。

 これは、具体的に、今ごらんになられている方が、これが変わることによって何が変わるんだろうということを一番注目されていると思います。ですので、具体的なケースをちょっと申し上げたいと思うんです。

 今回の解釈の変更によって、ちゃんと前提をつけます、法理上、そして新三要件に合致した場合、その上、自衛のためにという前提をしっかりと置いた上で、我が国は、我が国に対して直接の武力攻撃をしていない国に対して、防衛出動、武力行使をすることは、法理上可能になりますか。

中谷国務大臣 可能になります。

寺田(学)委員 当然の帰結だと思います。

 もう一点、同じように三つの前提をつけます。法理上、そして新三要件にのっとった、合致した上で、自衛のために、我が国を直接武力攻撃していない、それとともに、我が国に対する攻撃の意思すらない国に対して武力攻撃をすることは可能ですか。(発言する者あり)

中谷国務大臣 あくまでも、新三要件に合致するかどうかで判断いたします。

寺田(学)委員 いや、恐らく、新三要件に合致しないと自民党の方々は言われましたけれども、答弁が若干違いますよね。

 新三要件の中にある明白な危険、その要素、考慮要素をさまざま並べていますけれども、攻撃の意思、そしてその態様、可能性でしたか、ちょっと手元に今、探してみますけれども、これはまだ議論されていないと思うんですけれども、我が国が攻撃を受けていないばかりか、我が国に対する攻撃の意思がない場合においても、新三要件にのっとれば、私たちは、自衛隊を使って、直接攻撃を日本にしていない国に対して攻撃することはありますか。

中谷国務大臣 それは総合的に判断することになりますが、第一要件によりまして、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生するだけではないんです。これによって我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合でなければ我が国の武力行使は容認をされないということでございまして、その他、ほかに手段がないとか必要最小限とか、この三要件において判断するわけでございますので、その時点でいろいろ総合的に判断をするということでございます。

寺田(学)委員 いや、余り専門的な言葉を使いながらやっていくと、ごらんになられている方が難しいと思って、専守防衛の観点からお伺いをしているんですが。

 言ってみれば、これは北側委員が出された紙を参考に、「新三要件の「第一要件」について」ということがありますけれども、明白な危険というのはどういうことかということに関して「事態の個別具体的な状況に即して、主に攻撃国の意思、能力、事態の発生場所、」その後に何点か続いていっています。

 端的に言うと、この攻撃の意思というものが、我が国に対する意思ということに限定されるのか、それとも、いや、他国に対する意思だけでいいのだ、我が国に対する攻撃の意思がなくとも、この新三要件に合致する場合は法理上あり得るかどうかということを聞いているんです。

 いずれにせよ、専守防衛を堅持する中において、先ほど御答弁されました、直接攻撃を受けていない国に対して、新三要件に合致すれば私たちは今後は武力行使ができる、そんな法改正です。

 それを一段進めて、相手方、密接な国に対する攻撃をした、A国にしましょうか、A国自体が、アメリカに対する攻撃の意思はありながら日本に対してなかった場合は、新三要件には合致することはあり得ないんですか。そこをはっきり御答弁ください。

安倍内閣総理大臣 これは、先ほど三要件について中谷大臣から答弁をさせていただきましたが、三要件目の、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由そして幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険、明白な危険とは何かといえば、それはすなわち、その状況のもと、武力を用いた対処を行わなければ、我が国が武力攻撃を受けた場合と同じ、同様、そして深刻な被害が及ぶことが明らかな状況。

 そういう状況をどうやって判断するかということで、寺田委員も例として出されたわけでありますが、それはまさに、攻撃国の意思もあれば能力もあるわけでありまして、また、発生場所やその規模や態様、推移などを総合的に勘案するわけであります。

 その総合的に勘案する中において、当該国が日本に対しては攻撃する意思はありませんよと言っている、しかし、その場所、能力、その状況から見て、そうでもないかもしれない、そういう推測も十分あり得るわけでありますから、これは単純に見ることはできないわけでありまして、総合的に判断していくということは、私は当然のことではないかと思います。

寺田(学)委員 政府御自身が御答弁されている中で、単なる主観的な判断や推測等ではなく、客観的かつ合理的に疑いなく認められるという条件をつけられているので、主に攻撃国の意思があるかないか、そのことは非常にデジタルに考えられると思います。

 中谷大臣にお伺いしたいんです。

 攻撃の意思がない場合でも、私たちの自衛隊は、攻撃をしてきていない国に対して、新三要件が当てはまれば攻撃できる可能性を排除しないんですか。そこは、排除するなら、それは認めないと言ってください。もし排除できないのなら、排除できない理由を述べてください。

中谷国務大臣 排除しません。わからない場合もあります。

 攻撃国の意思、能力、こういうことを総合的に判断しますが、あくまでも我が国の存立にかかわる事態でございますので、そのために、我が国と密接な国に対する攻撃が発生したという場合で判断をいたします。

寺田(学)委員 排除しなかったということは、その国が我が国に対して攻撃の意思がない場合においても、法理上可能だということの御答弁でした。

 総理にお伺いします。

 専守防衛、非常に大事な防衛方針でありますし、総理自身も、いささかの変更もない、専守防衛の考え方は全く変わっていない、そう御答弁されましたが、まず解釈が変わっていることははっきり御答弁いただきました。

 その上、この法案が通った後に関しては、新三要件に合致した場合という前提をつけます、自衛のためという前提もつけますが、法理上、我が国に対して直接攻撃をしていない国に対して、我が国は防衛出動、武力行使をすることがあることもはっきり認められました。その上、攻撃の意思すらない国に対しても、防衛出動、武力行使する可能性を排除していません。

 総理にお伺いしたいんです。これのどこが専守防衛なんですか。

安倍内閣総理大臣 中谷大臣がお答えした、純粋、机上の理論としての法理上のいわば解説と、実際に起こり得るかどうか。我々は、常に、政策的に実際そういう判断をするかどうかということについても考えなければならないわけでございまして、先ほど来答弁しているように、三要件、何回も話をさせていただきますが、我が国の存立が脅かされるんですよ。そして、国民のまさに生命や自由や幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがあるんですよ。それはどうかということで、先ほど答弁をさせていただきました。

 その中で、いわば、主に攻撃国の意思や能力、能力というのは、これは分析をできます。意思というのも、我々もさまざまな情報から判断しますが、向こうが外形的に意思がないと言っているだけで、果たしてそれはどうかということはデジタルに判断できるものではないということはまず皆さんで共有しておく必要がありますよ。

 その上で言えば、これは大切なところですからちょっと聞いてください。総合的にまさに判断して、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性等を判断していくわけであります。それを、意思がなければどうかという単純な議論ではないんですよ、単純な議論ではないということは申し上げておきたい。それは総合的に判断しなければならない。

 そこで、例えば、例えば一般の外のホルムズの例を挙げました。では、この機雷に対してどういう意思が込められているかどうかというよりも、実際に、実際にこれは我が国の存立にかかわるかどうかという、第一条件に当てはめていくわけでございます。

 それを申し上げているわけでありまして、基本的には、我々がいわば守ってきた基本的な専守防衛という考え方にはいささかの変化もないということははっきりと申し上げておきたい、このように思うわけであります。

寺田(学)委員 中谷大臣にお伺いしますけれども、今、いささかの変更もないと改めて言われたことに私は正直驚いています。

 解釈が変わって、解釈が変わったことによって、今までは、我が国が武力行使を受けない限り防衛出動しない、武力行使をしないという大原則がありましたけれども、解釈を変えて、我が国が攻撃を受けていなくとも武力行使をすることができるように変わったわけです。その理由が何であれ、前提が何であれ、そういうふうに変わったわけですよ。

 防衛庁長官のときにこういうことができましたか。思い切り変わりましたよ。それでも変わらないと総理が答弁されていることに、私は、不誠実さを隠さずにいられません。(発言する者あり)いやいや、もう時間が。

 フォローされますか。どうぞ。

中谷国務大臣 基本的論理は変わっておりません。

 昭和四十七年に示したように、我が国の存立にかかわる場合に必要最小限度の自衛の権利というものはあるわけでありまして、状況に応じて、この基本的論理、これは維持されておりますので、中身は、他国の防衛をするのではなくて基本的に自分の国を防衛する、これの必要最小限度の範囲内という点では全く変わっていないわけでございます。

寺田(学)委員 今最後にお話しされたこと、御自身で否定されているんですよ、最初の答弁で。

 専守防衛に関して誤解がある、十分な説明がないということを最初に質問しました。専守防衛の定義ですけれども、あくまでも専守防衛は、他国を守る、自国を守るという話ではなくて、当然憲法で許されている自国を守ることしかできません。その中においてどのような基本方針があるかということをこの三つに言ったんです。そのことをお認めになられましたよね。その上で、今、いずれにせよ、自国を守ることに関してはいささかも変わっていないという答弁は、何も言っていないに等しいんです。

 この一個目の「相手から武力攻撃を受けたとき」の解釈は変わったんですよね。変わって、自国のみならず他国に対する攻撃も自衛隊が防衛出動する要件に、今回法改正までするんじゃないですか。大きく大きく変わっているわけですよ。私は、これを変わっていないと言うことは不誠実だと思います。

 総理、もう時間が最後ですので。

 もっと自信を持って説明されたらいいと思うんです、リスクの問題も、この専守防衛の問題も。専守防衛がいささかも変わっていないとよく言えたもんだなと私は思います。専守防衛の考え方は変えなければ我が国の防衛はできないんだ、そして、自衛隊のリスクが高まるかもしれないけれども、それでも自国を守るためには大事なんだということを国民に対して説得するべきだと思うんです。それをせずに、専守防衛はいささかも変わらない、全く変わらない、リスクが高まるということもお認めにならない。これじゃ国民の皆さんの理解が進みませんよ。

 しっかりと誠実に御答弁いただけることをこれからお願いして、時間になりましたので、終わりたいと思います。

浜田委員長 次に、細野豪志君。

細野委員 私は今、民主党の政策の責任者をやっておりますので、我々の考え方と比較をしながら、政府が提出をされた法案について伺ってまいりたいというふうに思います。

 私ども民主党のスタンスは、この安全保障法制においては、近くについてはしっかりと現実的に対応していく、しかし、我が国から遠いところにあることについては抑制的に対応していく、そして人道支援については積極的にという考え方でございます。

 したがって、その考え方に基づいて、先日は長島委員の方から、いわゆる領域警備法について具体的な法案を我々は用意している、そういう説明をさせていただきました。すなわち、国民の皆さんが一番心配をされているであろう尖閣を初めとした問題については、平時においても海上保安庁をしっかりと自衛隊がバックアップできる体制をつくる、そして、いざ海上警備行動を発令しなければならないようなケースについては、これは時間的な猶予がありませんから、しっかり対応できるようにする、そういう考え方を提示させていただきました。

 ぜひ総理におかれましては、そういう近くの現実的な問題について対応する、その御検討を改めてお願いしたいというふうに思います。

 そして、私どもの考え方からすると、政府が出しておられる法律というのは、近くと遠くを全体として区別せずに捉えておられて、そこの部分のいわゆるめり張りというものが非常になくなっているというふうに感じています。

 例えば周辺事態法、我々は周辺事態という考え方を残すべきだというふうに思います。すなわち、北朝鮮の問題を初めとした朝鮮半島有事についてやらなければならないことがあるのであれば、これは我々も理解をする、しかし、周辺事態という概念自体をなくして、世界じゅうで同様のことができるということをする必要はない、さらに言うならば、今回新しく提出された国際平和支援法、この法案を新たにつくる必要はないというのが私どもの考え方ですね。

 そこで、まず中谷大臣にお伺いしたいと思います。

 私がこの法律を初めに見てみて非常に不思議だなと思いましたのは、周辺事態法を重要影響事態安全確保法とする、この新しく改正をする部分のやれること、すなわち、これまで周辺事態でやれたことと、そして新しく出してきた国際平和支援法でやれることというのがほぼ、全く同じですね。つまり、現に戦闘が行われていない現場に出せるという意味でも全く同じ、そして、そこでやれること、例えば弾薬の輸送やまた外国の軍人の輸送、給油もできる、これも全く同じですよね。

 最初に申し上げたように、それぞれの事態が違うわけだから、それに応じてやれることをしっかりと法律として整備していく、これが本来の姿だというふうに私は思いますが、大臣、その点、どのようにお考えになりますか。

中谷国務大臣 確かに、やれる内容は同じ部分が多いんですが、全く違う法案にしたのは、まず、重要影響事態というのは我が国の平和と安全に重要な影響をもたらす事態ということで、その条件を記しております。

 もう一つは、やはり国際平和協力支援ということで、国際社会が連携して共同して行うような事項に対して我が国が参画をする、いわゆる国際平和に我が国としてどうかかわっていくかということで、国連の関与など条件をつけた上でそれに参画できるという内容で、法律の目的自体を変えております。その違いがあるということです。

細野委員 目的は全く違うのに、二つの目的が違うのに、やれることが同じなわけですね。

 ちょっと、数日前から、いわゆる野呂田六類型、これについて議論がありましたので、それを少し参照しながら、さらに突っ込んで聞いていきたいと思いますので、パネルをごらんいただきたいと思います。

 これが、周辺事態法が議論されたときのいわゆる野呂田六類型というものでありますけれども、例えば四番、ある国の行動が国連安保理によって平和に対する脅威あるいは平和の破壊または侵略行為と決定され、その国が経済制裁を受けたような場合であって、我が国に重要な影響を及ぼす。これは当初は、例えば、北朝鮮が現実的に核武装をして、それをミサイルの先端に搭載できるというようなことになった場合はまさにこういう第四類型に当たってくるというようなケースで想定をされたんだろうというふうに思います。

 しかし、これは、もう周辺事態法という概念をなくしていますから、これが全体に広がっていて、では果たしてこれはどういう事態なのか、極めてわかりにくくなっている。統一見解を出されるということでございますので、この点についてはさらに突っ込むことはいたしませんが、こういう類型を見ていますと、周辺事態法を重要影響事態にして新しい法律をつくるという部分と、この国際平和支援法というのは本当に完全にダブってきていて、目的は違うと言うけれども、やれることは全く同じなわけですから、なぜそれを分けているのかということすらよくわからなくなっていますね。

 その上で、総理にお伺いしたいと思うんですが、総理、第二類型のところをごらんください、ちょっと紙をごらんいただいて。ここですね、我が国周辺の地域において武力紛争が発生している場合であって、我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合、これが一番深刻なケースですね。これはまさに、朝鮮半島で有事が起こった場合に何をするかという話です。

 総理に申し上げますが、我々民主党も、安全保障の深刻な事態にさまざま遭遇をしました。したがいまして、責任を持って対応すべきだという立場です。したがって、この野呂田第二類型に当たるようなケースについて、こういうケースについて、例えば、弾薬の輸送が必要であるとか給油が必要であるというようなことがあれば、それについては私どもも認める余地はあると思いますよ。

 しかし、北朝鮮で、朝鮮半島有事であり得るさまざまな事態に対応できる、最大限に対応できるという中身を、これを全世界のあらゆる安全保障事態に適用するような法律になぜしたのか。そこは、近くについては現実的にやり、遠くについては、おのずとこれは日本としてやるべきことというのは変わってくるわけですから、そういう法整備にすべきだったと私は思いますが、総理、そうお考えになりませんか。

安倍内閣総理大臣 やれることができるから全く同じではないかというふうにおっしゃったんですが、それは全く違うわけでありまして、目的が違うんですから。目的が違うから二つの法律に分けたわけであります。

 重要影響事態法は、重要影響事態に際して、我が国の平和及び安全の確保に資するために我が国が実施する対応措置等を定める法律であります。一方の国際平和支援法は違います。これは、国際社会の平和及び安定のために国際社会が共同して対処している事態に対して、国際社会の平和及び安全の確保に資するために我が国が実施する対応措置を定める法律でありますから、目的が違う。しかし、やることは大体同じことをやっていく。しかし、目的が違うんですから、法律が、目的が違えば変わるのは当然であろう、このように思うわけであります。

 ただ、それは、重なる場合というのは、その事態が全く重ならないということではもちろんないわけでありまして、そのことによってこそ、初めて切れ目のない対応が可能になっていくということになるわけであります。

 国際平和支援法においては、まさに国連憲章にかなう、例えば、国連の安保理、国連の決議があるということも前提になってくるわけでありますが、重要影響事態は、まさに我が国の平和及び安全の確保のために必要なものである、こういう、目的が違うということで法律を分けているわけでございます。

細野委員 目的が違う。目的が違えば、当然想定される事態も違いますね。目的も、想定される事態も違うのであれば、それに応じてきちっとやれることを変えるというのが当たり前ですよ。その整理が政府案では全くできていない。

 その現実的な、そういうことの一つの帰結として、私は、総理の答弁で一つ気になったことがあるので、それを少し詰めて聞いていきたいと思います。

 ISIL、この事態について日本が後方支援をすることはないと、総理は、一番初めの、法案を出したときの記者会見で答弁をされました。そして、先日の北側委員に対する答弁は、政策判断として、有志連合に参加する考えはありませんとおっしゃった、政策判断として。

 私は、この新しくできた国際平和支援法をしっかり読み込みましたけれども、法律上、しっかりとした国連決議があって、後方支援という意味では、ISILに出せないという根拠は法律からは見出せないと思いますよ。

 中谷大臣にお伺いします。

 政策的な判断ではなくて、法律上、ISILに対して、多国籍軍のようなもの、今であれば有志連合ですが、そこが行動する場合に、日本が後方から支援をすることは法律上できませんか、本当に。できるんじゃないですか。ここは大臣に御答弁いただきたいと思う。大臣に御答弁いただきたいんです。

中谷国務大臣 まず、法律を説明させていただきますけれども、国際平和支援法、それに基づいて、我が国は後方支援を行うかという要件となる国連決議があるかないかというのみで決まるわけではありませんで、いずれの国連決議、二つありますが、国際平和支援法に定めるケースを満たすかどうかということについては、実際に、運用に際して、個別具体的なケースについて精査すべきでございます。

 法律的には、まず、国連憲章の目的に従って共同で対処していくことと、もう一つは、国連決議を前提に、我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があると認められる、これを満たしているかどうかでございます。

細野委員 もう一度確認をしますが、では、ISILに対して国際社会が行動する場合に、今の基準に該当して法的には派遣が可能になる、そういう可能性があるということですね。大臣にもう一度。

中谷国務大臣 法律に定められました、国際社会とか国連決議、それに基づいて判断するということで、法律的にはあり得るということでございます。

細野委員 今のは非常に重要な答弁だと思いますね。

 つまり、ISILのケースというのは、国際社会においても相当これは厳しいケースです。あらゆる厳しいケースに日本の自衛隊が海外に出ていく可能性があるということを大臣がお認めになったわけですね。それはこの法律の立て方上当然の帰結で、なぜならば、朝鮮半島有事に対応できるぐらいの、それぐらいの措置が書かれているんだから、国際社会であらゆる紛争があったときに、それを後方支援できる法律の仕組みになっているんですよ。仕組みとしてはですよ。

 そのことをきちっと正面から認めずに、初めから、ISILには行くことを断言しませんと、それは現内閣の現時点での判断であって、将来まで保証するものでは全くないですよね。そこは非常に、私、総理、ミスリードだったと思いますよ。

 そして、もう一つ。この間、そういう事態も含めてさまざまなケースがあり得るということを前提に、自衛隊の方々と、私かなりの数会って、かなりの方と会って、いろいろな議論をしました。いずれも海外でのさまざまな活動経験のたくさんある方、人格、識見とも非常にしっかりとした方にお会いをして話をいたしました。その中で、幾つか、現職の自衛官の皆さんから、明確にこの点は解決をしてほしい、懸念をしているという事項が出てまいりましたので、それについて聞いていきたいと思います。

 まず、最も具体的にそういう自衛官の皆さんが懸念をするのは、今回、戦闘現場に近いところで活動することになる可能性がある。そうなってくると、これまでは幸運にしてそういうケースはありませんでしたが、テロリストと遭遇して武器を使用しなければならない、そういう可能性がある。できるだけ想定はしたくないけれども、こういう法律を出してきた以上、そのことも頭にしっかり入れて法整備すべきだと思いますね。

 一番悩ましいのは、それこそ撃たなければならない場合に、撃つべきか撃たないべきかという現実的な判断を、それぞれの自衛官が、部隊としても問われることがあるけれども、個人としても問われるケースが出てくるわけですね。

 特に、今は非対称戦といって、国と国とがやる、そういう戦争ではなくて、テロリストに対してどう対応していくかという、極めて非対称な状況で自衛隊は行動しなければならない、これも含めてあり得る。となると、市街地に民間人に紛れたテロリストがいて、そこから攻撃をしかけてくるケースというのは十分あり得るわけですね。

 そこで、まず外務大臣にお伺いしたいと思います。私は、そういう現場に行く自衛官を守るのは国の責任だと思いますから、そういう観点からまず一つ聞きたい。

 自衛隊が海外に出る場合は、これは国連のPKOにおいても、多国籍軍というような形においても必ず地位協定が前提として締結をされていますよね。ですから、現地の法律で自衛官が個人として裁かれるということは、これはないと私は理解をしていますが、間違いありませんか。外務大臣、お願いします。

岸田国務大臣 御指摘のとおり、例えば、イラク特措法に基づいて自衛隊がクウェートにおいて行った活動に関し、日本とクウェートの間で締結された地位取り決めにおいて、自衛隊部隊の隊員及び支援職員は、問題となる行為が公務の範囲内であるか否かを問わず、クウェートの刑事裁判権から免除されておりました。

 そして、その上で、このケースにおいては、実際自衛隊が武器を使用した事例もありませんでしたので、結果として裁かれる事例もなかった、こういった結果になっております。

細野委員 もう一度確認をしたいと思いますが、外務大臣、これからも海外に自衛隊が出る場合については、きちっとそういう協定を結ぶことによって自衛官が個人としては裁かれることはないというふうに、大臣として責任を持って答弁されますね。

岸田国務大臣 国連PKOの際には、国連としてこれに責任を持って対応する、こういったことになっております。

 それ以外の部分につきましては個別に対応していく、こういったことになります。

細野委員 やはり個別にきちっと対応するのが国としての最低限の責任だと思いますね。

 次に、法務大臣にお伺いしたいと思います。

 私は、日本の自衛隊のレベルの高さというのを非常に信用しています。したがって、日本の自衛官が海外に行って、そこで、それこそ故意で人を、民間人を殺すであるとか、さらには、そこでいわゆる刑法上触れるような他の犯罪を行うことはない訓練をして行っていると信じているし、これからもそうあってもらいたいと強く思います。ですから、現実的に、自衛官が海外で何らかの犯罪に問われる可能性があるケースということで言うならば、これは誤想防衛、誤射ということになるわけですね。

 すなわち、市街地で市民に紛れてテロリストが撃ってきたときに、テロリストと間違って民間人を撃ってしまった、実はテロリストじゃなかった、こういうケースがある。さらには、テロリストは現実的にいたんだけれども、周りも含めてこれは一団で来たんじゃないかと思って撃ったところ、テロリストも撃ったけれども、ほかの民間人も撃ってしまった。こういうケースは、こういう法律を出すならば、真剣に検討すべきだと思いますね。

 法務大臣に確認をしますが、海外で誤射をした場合、これはいわゆる業務上過失致死、亡くなってしまったケースですね、これを日本の国内法で裁くことができますか。

 自衛官にとっては、それを国内法できちっと裁いて、ROEを守っていたということで刑法上しっかりと対応されるのであれば、それは一つの、私は、ある種の自衛隊の皆さんの安心にもつながるし、重要なことだと思うんですが、業務上過失致死を海外で、日本の国内法で問うことができますか。これは法務大臣、お答えください。

上川国務大臣 犯罪の成否でございますけれども、これは基本的に、捜査機関によります収集された証拠に基づき個別に判断をされるという事柄でございますので、仮定の御質問につきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、今、国外犯の処罰に関する一般論ということで申し上げるところでございまして、日本国外における日本人の行為について、我が国の刑罰法規が適用できるかどうかということで御質問があったということでございます。

 当該行為につきまして、いわゆる国外犯処罰規定が刑法上設けられているかどうかということになるわけでございます。

 例えば、故意により人を死亡させた事例、これについては、今御質問がございませんけれども、これは殺人罪が成立をするということでございますので、この点につきましては国外犯の処罰規定が設けられているということで、刑法犯の適用ということでございます。

 他方、過失により人を死亡させたケースということでございますが、これは過失致死罪または業務上の過失致死罪が成立をするということが考えられるわけでございますが、これらの罪につきましては国外犯の処罰規定が設けられておりませんので、刑法を適用して処罰することはできないということで理解しているところでございます。

細野委員 防衛大臣にちょっとお伺いしたいんですが、これは深刻だと思うんですよ。撃って、それは故意ということは自衛隊の場合は私はあり得ないと信じていますから、自分の身を守るのにやむなく武器をして民間人を殺傷してしまった、業務上過失致死。これを、国家としても守れないし、逆に、それについて、それこそその国で極めて厳しい立場に追い込まれる可能性もありますよね。これは、法の空白をしっかり埋めて対応できるようにした上で出さないと、大きな問題が起こってからでは遅いですよ。

 これは、大臣、どうするんですか、こういうケースは。

中谷国務大臣 御指摘ありがとうございました。

 PKOはもう二十年、それからイラク派遣においてもこういった事例はまだ発生しておりません。

 まず、自衛隊がこのような武器使用について極めて厳格な注意義務が求められて、また、各種情報をもとに相手を的確に識別して武器を使用するよう事前に厳しい教育訓練を行っているということ、そして、派遣された隊員も、現地の社会的な、文化的な慣習を尊重して地元の住民と友好な関係をまずつくるようなことの教育訓練を行っている、このようなことから、武器を使用して一般の現地住民に対して危害を加える事態というのは極めて想定しにくいことであるとは考えております。

 今回新設する自衛隊の国外犯処罰規定は、国外において、まず、上官の命令に対して多数共同で反抗したり、正当な権限なく、または上官の命令に違反して部隊を指揮した場合などに適用されるものです。

 他方、誤想防衛、こういった行為については、これまでどおり、現行の一般の刑法、これが適用されることになるわけでありまして、自衛官が派遣先で犯罪を犯した場合に、我が国と派遣先のどちらが裁判管轄権を持つかについては、派遣先国との間での地位協定などの内容いかんによるものと考えますが、自衛隊を海外に派遣する場合には、こういった受け入れ国の裁判管轄権からの免除等を含めて、自衛隊員の法的地位を確保することが重要であると考えます。いずれにしましても、現行の一般の刑法が適用されるということでございます。

細野委員 防衛大臣、ちょっと失礼ながら、防衛大臣は陸上自衛隊御出身ですよね。本当に現場の自衛官の皆さんの話を聞いていますか。基本的には想定をされません、そんなケースはないですなんということを言う自衛官はいませんよ。これまでだって危ないケースがあったんだ、しかし、厳しいROEもあり、それは幸運にも恵まれ、そういうことはなかったと。皆さんは何か否定をされているようですけれども、これまでよりも厳しい現場に行かされると自衛官はみんな思っていますよ。

 その自衛官がこういった形で法的に完全に宙に浮く可能性があることについて、現場を経験した大臣が、そんなことはないと思いますがなんという答弁で、これは責任を持って自衛隊を海外に出すことなんてできないですよ。ちょっと信じがたい答弁ですね、私から見ると。

 総理、これは外交問題にもなり得るんですよ。そこで例えば子供を殺してしまった、女性を殺してしまった、そのときに、日本としては法的にこう対応しますよというのを現地でしっかり説明をされなければ、幾らいいことをやろうとしたって、反日感情が高まる可能性がありますよ。(発言する者あり)それについて全く法的に対応せずにより危険なところに自衛隊を出すことについて、国家の最高責任者としてどう思われますか。総理に御答弁いただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今、中谷大臣から答弁をしたのは、海外で活動をする自衛隊には特別な訓練を施すわけであります。実際、武器を使用する、これは後方支援の場合は自己保存型に限られるわけでありまして、正当防衛と緊急避難、正当防衛かつ緊急避難においても、これは相当の状況でなければ撃たないということになっているわけであります。そうした訓練を終えた自衛隊員が帰ってきた場合は、我が国の、いわば我が国事態に対する訓練をするときには訓練をし直すぐらいでありまして、それぐらい厳しい、いわば規制的な訓練をした上において現場の自衛官は判断する。

 しかし、防衛大臣は想定されないと言っているわけではなくて、そういう状況に至らないような最大限のことはやっているということは十分に国民の皆様にもちゃんと説明する必要があるんだろう、こう思うわけであります。

 これはもう先ほど既に中谷大臣は答弁しておりますが、今回の法改正、誤想防衛といった行為については、これまでどおり、現行の一般の刑法が適用されることになります。

細野委員 私、こういう特別委員会とかで質問をして、与党の皆さんからそうだという声を受けたのは初めてですね、もうめったにこんなことはないので。それぐらい、やはりこの問題は本当に政府として対応すべきだというところまで来ていると思いますよ。逆に言うならば、これまででもやらなければならなかったことを怠ってきたとも言えると思いますね。ここはしっかりと政府としての対応を求めたいと思います。

 そして、その次にもう一つ、これは総理にお伺いしたいんです。

 現職の自衛官の皆さんと話していまして、もう一つやはり懸念をされたのは、今回、現に戦闘が行われていない現場に派遣をされる、そこで戦闘が起こった場合については、活動を中断するなり撤退するという、そういう法律のたてつけになっているわけですね。

 これは、兵たんを預かる、例えば弾薬を運ぶとか軍人を運ぶとかいう非常に重要なオペレーションにかかわることになればなるほど、他国の部隊と一緒に活動していて、そこで武力の行使、武器の使用がなされて危険なところになりましたというので、自衛隊だけが撤収するということに関して、それはまずいという声が非常に多かったです。

 これは、本当に国として責任を持って、海外との関係を考えたときに、事前に他国に説明をしておけばそれでいいんですというレベルの話じゃないと思うんですよ。ここは総理に御答弁いただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 これは、再三もうここでも答弁させていただいておりますが、まさにこの後方支援においては、武器の使用も自己保存型であります。任務遂行型の武器の使用ではない、自己保存型の武器の使用ということになっています。

 そして、後方支援を行う上においては、戦闘行為が行われないと見込まれる地域において、これは、その任務を実行している期間、一週間、二週間、あるいは一カ月かもしれませんが、その期間は見込まれないというところをしっかりと見きわめながら活動をしていくわけであります。

 そして、まさにそうした、食糧や医療品やあるいは弾薬等を運ぶ、これは極めて重要な任務であります。と同時に、受け渡しをするというのは脆弱な状況になります。ですから、脆弱な状況になるからこそ、戦闘行為が行われない、そういうことが見込まれる場所でやるのは当然のことでありまして、それはまさに、それで奪われてしまってはしようがないわけでありますから、こちらの武装もまさに自己保存型で行くわけでありますから、そういう場所を選んで行くというのは、これはある意味、軍事的合理性があるんだろう、こういうことになるわけであります。

 それはいわば、そういう需要が発生する相手国側の軍とも、当然、そういう前提条件の上において、ニーズがあれば実際に行うということでありまして、綿密な打ち合わせを行った上において我が国が主体的に判断する、当然のことでございまして、まさに戦闘現場となってしまったら直ちに撤収するのは当然のことであろう、それを前提に自衛隊は活動をするわけでございます。

細野委員 重要な任務を担うことになればなるほど、自衛隊が途中からいなくなるのは、これは本当にまずいわけですよ。国際関係にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。

 総理も、統幕議長をやられていた西元徹也さん、よく御存じだと思うんですが、そういう、本当に自衛隊のトップをやった方々もこの点については懸念を表明されています。支援をすぐにやめるというのは友好国との信頼関係を著しく傷つける、そういうふうにおっしゃっていますね。

 ですから、ここは本当に、国益を考えたときにどうなのかというのはもう一度お考えになった方がいいと思いますよ。

 そして、最後にもう一つ。総理、これはもう感想だけで結構なんですけれども、多くの自衛官が一番心配をしているのは、最後のこの点だと思います。ちゃんと国会審議を通じて国民の支持を取りつけてくれ、国論を二分する形で安全保障の問題について強引に結論を出して、いろいろな反対もある中で行くことになる、さまざまな準備をしなければならないということについては、これはできるだけ避けたいというのが自衛官の声ですよ。

 このことについて、ちょっと一言ここはいただきたいと思うんですが、総理、お願いします。

安倍内閣総理大臣 その前に、途中でやめるということについては、ゴラン高原のときも、UNDOFの活動についても、シリアにおける情勢が悪化しましたからまさに自衛隊は撤収をしたわけでありますし、あるいはまたテロ特措法のときにも、給油活動を途中で、ほかの部隊がやっている中で、それは民主党政権時代に撤収を判断されたわけでございます。同じように、我々もしっかりと判断していきたい。

 そして、この法案の、平和安全法制の議論につきましても、まさに今、国会で議論をしていただいているわけでありまして、しっかりと与党、野党、質問に立っていただき、我々政府としても誠実に答弁していきたい、こう考えているところでございます。

 そして、同様に、この法案が成立した際にも、国会承認というものがそれぞれかかっているわけでありまして、いわば、国民の代表から成る国会において御承認をいただかなければならないというのは当然のことであろうと思います。

 我々は、もちろん、強引に進めるという気持ちはさらさらないわけであります。しっかりと、国民的な理解が深まるように努力を重ねてまいりたいと考えております。

細野委員 ある自衛官が言っていたのは、かなりいろいろな経験をしていて、幹部でもあります、この人が言っていたのは、これは総理、ぜひ、私の言葉じゃありませんから聞いていただきたいんですが、本当に国民の理解が得られるような状況にならないのであれば、一年かけてでもやった方が自分たちにとっていいというふうに言っていましたよ。そういう大事な法案であるということはぜひわかってもらいたい。

 残された時間で歴史認識についても少し聞いていきたいと思います。

 先日、党首討論を見ていまして、共産党の志位委員長と安倍総理のやりとりが私は非常に気になりました。ポツダム宣言について、つまびらかに知らないというふうに御答弁をされた。(安倍内閣総理大臣「読んでいない」と呼ぶ)いや、知らないとも一度答弁されています。読んでいないということなら結構です。宣言の文章が全て頭に入っている政治家がどれぐらいいるかというと、これは怪しいですから、そんなことを問うつもりはありません。ですから、そういうことならそういうことと言っていただきたい。

 もしかしたらこうじゃないかと思うところがあるので総理に伺いたいんですが、総理は、ポツダム宣言の六項のところにある「世界征服」という言葉がひっかかって、これはなかなか承服しがたいということで、つまびらかに知らない、もしくは読んでいないというふうに御答弁をされたのかもしれないなというふうに私なりに解釈したんですが、これはどういう意味だったんですか。

安倍内閣総理大臣 党首討論の場というのは、お互いに資料は持ち込まずに率直に見識、見解をぶつけ合うものだと思っておりますから、私も資料は持ち込んでおりませんが、志位委員長が資料を持たれてポツダム宣言を読まれたわけであります。

 もちろん、私もポツダム宣言というものは読んだことはございますが、しかし、逐条的に聞かれてそれが正しいかどうかというのは、そこで判断できるほどのいわば記憶もなければ、寸前に読んだわけでもございませんし、質問通告もないわけでありますから、逐条的につまびらかにお答えできない。

 世界征服についても、これはポツダム宣言に書かれていることでございますが、それについて志位委員長が挙げられたわけでありますが、しかし、そうしたことも含めて、一々その中の書いてあるものについて私は答えさせていただくことは控えた方がいい、こういう意味において答弁をさせていただいたところでございます。

細野委員 これは大事な問題なので私も逃げずに私の見解を申し上げますと、世界征服という、この部分については、これは田中義一、戦前の総理の田中上奏文というのがきっかけとなっていて、GHQの中でも大議論があった、東京裁判でも取り上げられているという経緯がありますね。私も、久しぶりにそういうのを全部調べてみましたけれども、やはりこの田中上奏文の実在については、これは極めて怪しい。それがきっかけとなって世界征服という考え方がここでとられているんだとすれば、その部分については、私は、総理がひっかかりをお感じになったのは理解はできます。

 ただ、もう一方の方の懸念が当たっているのだとすれば、そこは総理に考えを直していただいた方がいいと思っているんですね。

 すなわち、ポツダム宣言は、その流れの中で次には東京裁判につながっている、そして、東京裁判というのが一つの大きなきっかけとなって日本は独立国になり、そして、戦後の談話でいうならば、戦後五十年の談話ができた。

 そこで共通している認識というのは、これは主に二つあると思っています。一つは、我が国が国策を誤ったという、この大きな意味での我々としての立場、そして、その国策を誤った責任が、ポツダム宣言でいうならば六項さらには十項に書かれていますが、ここでは「戦争犯罪人」と書いていますが、戦争指導者にあったと。日本が国策を誤り、その責任が戦争指導者にあったという、この基本的な認識は、ずっと日本が守ってきたところですね。

 それについては、総理はしっかりと、そうだということを前提にポツダム宣言を受け取られておられるかどうかというところは、これはまた違う意味で重要だと思うんですね。それはどうですか。

安倍内閣総理大臣 ただいまポツダム宣言の第六項について、世界征服の部分について、田中上奏文との関係についても解説をしていただいたのでございますが、日本は、降伏する上において、このポツダム宣言というのは、この第六項の世界征服を含めて、当時の連合国側の政治的意図を表明した文書であります。政府としては、同項を含め、ポツダム宣言を受諾し降伏したということに尽きるわけでございます。

 その上において、さきの大戦の結果、日本は敗戦を迎え、多くの人々が貴重な人命を失ったわけでありますし、アジアの人々にも多くの被害を及ぼしたというのも厳粛に我々は受けとめ、戦争の惨禍を二度と再び繰り返してはならないとの決意で戦後の平和国家としての歩みを進めてきた、このように思うわけであります。

 また、そうした結果を生み出した日本人の政治指導者にはそれぞれ多くの責任があるのは当然のことであろうと思いますが、今後は、こうした教訓、反省を踏まえた上において、二度と戦争の惨禍を引き起こしてはならない、この誓いのもとに我々はしっかりと歩みを進めていきたい、このように考えております。

細野委員 今、多くの責任という話があったんですが、では、さらにもう一問聞きます。

 東京裁判、これについての総理の認識も、私は若干気になっています。「東京裁判という、いわば連合国側が勝者の判断によってその断罪がなされたということなんだろう、」という答弁も過去にあった。今の、多くの責任がそういう戦争指導者にあったということなのであれば、そこは、東京裁判も含めて、その責任を正面からお認めになるということでいいですか。もう一度答弁をお願いします。

安倍内閣総理大臣 我が国としては、サンフランシスコ平和条約第十一条によって極東国際軍事裁判所の判決を受諾しており、それに異議を唱える立場にはそもそもないわけでございまして、東京裁判によって、多くのいわば裁かれた日本人が死刑判決また体刑を受けているわけでございます。それは我々はまさに受け入れたわけでございます。

 それと、日本にとって戦争をどのように考えるかというのは、また日本にとって、まさに先ほど申し上げましたように、戦争の惨禍を二度と繰り返してはならない、その中で、その結果を生み出した日本人の政治指導者には当然その責任があるわけであります。

 我々は、大切なことは、今後戦争の惨禍を二度と繰り返してはならない、こういうことでございまして、そのためにも、ただ平和、平和と唱えるだけでは平和は守れないわけでございまして、地域や世界の平和安定のためにも貢献しつつ、そして我が国に対しての侵略、いわば侵害行為はしっかりと抑止をしていくという努力も当然大切ではないか、このように思うところでございます。

細野委員 もう時間も少なくなってきましたから端的に伺いますが、過去こういう答弁もされていますね。東京裁判のA級戦犯は犯罪人ではないという答弁も総理はされている。そこは、小泉総理は犯罪人だと明確に言い切りました。

 ここは、総理、今の御認識であれば、きちっと認識を改められるということでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 かつて、大橋法務総裁の答弁をかりまして、いわば平和条約、サンフランシスコ平和条約を結んだ時点において不可逆的にこれはまさに終結をしたわけでございまして、その中において、通常であれば、いわばまだ収容されている戦犯の人々については釈放を普通するわけでございますが、しかし、サンフランシスコ平和条約の十一条に書かれているように、日本国の判断だけにおいては釈放できないというものも受け入れた中において、いわば連合国側に働きかけを行ってきたということであります。同時にまた、その後、遺族年金等の支払いにおいての処理は細野委員も御承知のとおりなんだろう、このように思うわけでございます。

 いずれにせよ、我々はまさにこのポツダム宣言を受諾し、そして、その後の東京裁判の諸判決について我々はそれを受け入れたということでございまして、それに尽きるわけでございます。

細野委員 そこは、総理、すっきりお答えにならないんですね。

 私がこれまでの総理の累次にわたる答弁を聞いていて感じるのは、これは私の感覚ですが、感じているところを率直に申し上げると、戦争犯罪人についてのさまざまな責任論について、総理はやや相対化されている部分があるんじゃないか。相対的に重い責任があるとか、そういう言い方をされる。これは、私は政治家としてはやや危うい判断だというふうに思っています。

 なぜ今これを問うたかなんですが、最後、もう時間がなくなりましたので、総理にここだけはぜひ御理解をいただきたいんですが、今回、この法律をお出しになって、いろいろな、これまで日本がやらなかったことについても判断を総理がするということになるんでしょう。

 私は、率直に言いますと、国民の世論というのはいろいろ振れる可能性があると思うんです。

 一つだけ例として皆さんにお示しをしたのが最終ページなんですが、これは、今、私が引用させていただいたポツダム宣言を伝える当時の新聞記事なんですね。(発言する者あり)これは実は読売新聞なんですが、朝日新聞も似たようなものです。この右肩を見てください。「笑止、」と書いてあるんです。「笑止、対日降伏条件」と書いてあるんですね、笑いがとまらないと。もうあれだけ日本が追い込まれて、終結をしなければならないような場面になっても、この新聞は、当時の新聞は、笑止だ、笑いがとまらないと言い放っている。

 つまり、マスコミもいろいろ世論は変わり得る、さらに国民世論は変わるという中において、どういう状況になったとしても、最後は総理が決めるんですね。そのことを考えたときに、当時の状況がいろいろあったから指導者の責任について相対化するという考え方は極めて危険である、そういう意味で、歴史認識を私は問いたかったということでございます。

 時間がなくなりましたので、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

浜田委員長 次に、今井雅人君。

今井委員 維新の党の今井雅人でございます。

 まず最初に、先週、噴火で避難をされました口永良部島の島民の皆様に心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 テレビで拝見している限り、御年配の方がたくさんおられましたので、住みなれたところから離れるというのは大変つらいことだと思いますので、ぜひ一刻も早い帰島ができるようにということと、それから、離れておられる間の心のケア、これをしっかりやっていただきたいということを最初にお願いをしておきたいと思います。

 昨年の五月十五日ですけれども、安保法制懇の報告書が出まして、その日の夕方に安倍総理が記者会見をされました。そこからこの一連の安保法制の整備というのがスタートしたんだと思うんですけれども、私、あの会見を聞いておりまして、おやっと思ったことがありましたので、まずそれをお伺いしたいと思います。

 一枚目を見ていただきたいんですが、ちょっと読みます。昨年十一月、カンボジアの平和のための活動中に命を落とした中田厚仁さん、そして高田晴行警視の慰霊碑に手を合わせました。いろいろ書いてあります、その後。しかし、彼らが突然武装集団に襲われたとしても、この地域やこの国において活動している日本の自衛隊は彼らを救うことができません、一緒に平和構築のために汗を流している、自衛隊とともに汗を流している他国の部隊から援助してもらいたいと連絡を受けても、日本の自衛隊は彼らを見捨てるしかないんです、これが現実なのですという話をされておられます。

 そこで、まずお伺いしたいんですけれども、今回のこの法改正、これは駆けつけ警護の話をしていると思いますが、この法改正をもしされていたら、この中田厚仁さんと高田晴行さんは助けることができたんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 つまり、そういう法改正が、今回の法改正がなされていたら、NGOの方々の救出、あるいは他国のPKO部隊に対する駆けつけ警護の任務が可能になるわけでありまして、当然、それを前提に連携をとっていくことになります。そして、それを前提に、我々はいわば警護的な任務も担うことができるようになるわけであります。そうした任務を前提に、NGOの方々との、あるいは文民警察官と言っていた方々との連携をとりながら、さまざまな活動が可能になるわけでありますから、リスクを低減することはもちろん可能であったというふうに認識をしております。

 しかし、それはもちろん、救うことができたかといえば、それはできましたと言い切ることは私はできないわけでありますが、今申し上げましたように、そうしたミッションが可能になるわけでありますから、そうした活動をする方々もそうしたことを念頭に置きながら活動していくようになる、常に連携をとりながら活動していくことになりますし、そういう任務を行うことができるんですから、そばに自衛官がいてそういう警護的な任務も行うことが可能になる、こういうことでございます。

今井委員 なぜこれを申し上げたかというと、この今の例を出すときに、駆けつけ警護のこの表を出して、PKOあるいはNGOの人が武装集団に攻撃をされたときに自衛隊が助けられるようになりますというふうに書いてあります。

 この会見の一番最初にこういう話をされています。この報告書、これは安保法制懇の報告書ですね、これを受けて考えるべきこと、それは、私たちの命を守り、私たちの平和な暮らしを守るため、私たちは何をするべきかということであります、具体的な例で説明をしたいと思いますと。具体的な例で説明をしたいと思いますということで、このお二人の名前を挙げられました。

 しかし、この中田さん、当時、国際連合のボランティアとしておられたんですが、このボランティアの、国際ボランティア会議に参加するために、プラサットサンボーというところからコンポントムというところに車で向かう間に襲撃をされました。とても駆けつけ警護なんかする暇はありませんでした。

 そして、さらに言うと、このとき自衛隊はどこにいたかというと、これはタケオ州というところで道路整備、道路の補修をやっていました。現場からは数百キロ離れています。無理なんですね。(発言する者あり)いや、無理なんですよ。しかも、国連が送っているところですから、日本の軍隊がそこにずっとついていられるかどうかもわからないわけです。(安倍内閣総理大臣「軍隊じゃない」と呼ぶ)自衛隊ですね。自衛隊ですね。ですから、この中田さんのことは救えなかったんです。

 高田さんだって同じですよ。この方だって、アンピル村で国連カンボジア暫定統治機構の日本人文民警察官として、オランダの海兵隊、UNTAC部隊の援護を受けながらいましたけれども、これも突然襲われたんです、突然。

 こういう方たちが亡くなったから、何を私は申し上げたいかというと、これは、なぜ法律を変えなければいけないかという説明をされているわけです。つまり、法律用語で言えば立法事由ですね。立法事由のときに、このできもしなかった、できもしなかった例を出すので、それはおかしいんじゃないですかと。具体的な例とおっしゃったから。具体的な例、これは無理じゃないですか。

安倍内閣総理大臣 だから、最初に申し上げたじゃないですか。いわばあのときは、カンボジアのときの例は、まさに道路建設等しかできなかったわけですよ。駆けつけ警護もできなければ、警護そのものができないというたてつけになっています。ですから、NPOの人たち、NGOの人たちが活動しているところに行くということは、そもそも想定はしていないんですよ。だって、警護できないんですから。

 今度の法律は違いますよ。駆けつけ警護もできれば、警護もできる。そういう施設部隊とは別に、そうした、いわば警護を可能とする訓練をしてきた人たちも実際にこの任務ができるわけでありますから、それを前提にすれば、さまざまな計画の中においてそこに配置をするということも当然あり得るわけでございますし、連絡はかなり密になる。これは、最初、もう答弁をしていますよね。こうした答弁がなかったかのごとく、全くそれはあり得ないということを言われても、しようがないと思います。

 まさに、これからは、そうしたことが起こらないように、いわばNGOの方々からそういう不安があるという要請があれば、自衛隊の方々が近くに行って警護をする。武器を持って警護をしているだけで相当変わってきますよ。

 例えば、物取りみたいな人たちは、自衛隊の要員がいるところは行けませんよ。全く丸腰の人たちがいるところにやっていくということになりますから、これは当然変わっていくということでありますから、今の委員の、前提が全く変わっているにもかかわらず、それがないかのごときのいわば非難は当たらないのではないか、このように思います。

今井委員 いや、私が申し上げているのは、これは、駆けつけ警護をする間もなく、そんな間もなく襲撃されているんですから。(発言する者あり)されているんです。

 ですから、私は何を申し上げたいかというと、こういう方たちが亡くなりましたといって、この人たちは本当は助けられたのにというような表現をされているじゃないですか。だから、よく総理は野党の皆さんに、それはミスリードだ、ミスリードだ、そういう方向に持っていっているとおっしゃっていますけれども、私はこれはミスリードだと思いますよ。

 そういう人を救えたのにというような感覚で物をおっしゃるので、それはおかしいというふうに申し上げていますが、ちょっとこれは意見が合わないので、次に行きますが……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

今井委員 ちょっと静かにしてください。

 この中田厚仁さん、実はこのとき、今は落選をしておりますけれども、私の同期であります阪口直人さんが一緒にこのPKOに行っております。研修生で、当時、二人でずっと同じ部屋でいたそうです。

 そのときにいろいろ話をしていたのが、中田さんもおっしゃっていたそうですけれども、我々の一番安全なのは何かといったら、丸腰だからだと。いろいろな警護、武器を持った人たちが一緒についていると、かえって敵と見られて襲われる可能性が高いと。(発言する者あり)

 そんなことはないとおっしゃいますけれども、それは、現場にいた人がそう言っているんです。現場に行ったことはあるんですか。(発言する者あり)

 いやいや、実際、例えば、日本……

浜田委員長 静粛に願います。

今井委員 いや、皆さん、行ったことのない方がそういうことをおっしゃるのはやめてください。(発言する者あり)

浜田委員長 静かに。

今井委員 いやいや、そういうところに行かれた方の現実の声ですから。

 実際、日本ボランティアのJVC、これはアフガニスタンでずっと長く活動された団体ですけれども、この人たちが「軍が平和をつくるんだって?」という冊子をつくっておられますが、この方たちも同じことをおっしゃっています。そういう警護の人たちがいると我々は余計危なくなるんだというふうに現場の方がおっしゃっているんですね。

 私は、正直、現場に行ったことがないからわかりません、わかりません。(発言する者あり)しかし、いやいや、現場に行っている方がぜひこれを言ってほしいということで、安倍さんは現実がわかっていないということで、ぜひこれを伝えてほしいということを言っていたので、現場ではそういう声があるというのを皆さんはちゃんと伺っているんですかということを聞いているんです。

中谷国務大臣 これは、一九九一年でしたけれども、カンボジアに派遣する前に、私たちは、ここに今津委員がいますけれども、カンボジアの事前視察をしました。そのとき、先ほどお話があった中田さんと阪口さんにお会いしました。自衛隊の活動について非常に長く話をいたしました。

 確かに、おっしゃるように、自衛隊がいることによって危険が増すというケースもあります。ただ、自衛隊がいることによって、よりNGO活動が活発にできる場合もあるわけでありまして、これは世界じゅう、NGOもそういう、お互いに相反するのではなくて、お互いにメリットを、協力しながらやっていこうじゃないかと。

 例えば、ゴマにPKOを派遣したときに、近くのキャンプで日本のNGOが非常に危険な状態になりました。そのとき、自衛隊はそれを救出に行ったわけでありますが、しかし、法律がないために大変苦労しながら実施をいたしましたが、やはりそういう場合には駆けつけて救出するということが必要でありまして、こういった経験を生かして、今回、規定を置いて、NGOの方々にとっても、独自で計画するわけでありますが、お互いにより活動ができるようにいたしたいということでございます。そういう経験がございました。

今井委員 大臣、向こうでお会いになっていらっしゃったということであれば、そういう声も伺っているんでしょうから、ぜひ、運用するに当たっては、そういう方の意見もよく聞いていただいて、また考えていただきたいというふうに思います。

 それで、阪口さんがもう一つ伝えてほしいと言われましたのでお聞きしますけれども、彼も実は襲撃されたことがあるんですね。幸運にも助かったそうです。それで、実は、襲ってきた集団、これは政府軍の軍服を着ていたそうです。ところが、もう暫定政府から給料ももらえない状態になって、野戦化ですね、要するに盗賊化していたわけですね。それで、軍服を着たまま、ばあんと襲われたということだそうですけれども、こういうことは現場で本当に簡単に起きる。

 あるいは、武装集団、盗賊がわざと軍服を着て、偽装をしてやってくる。そうすると、現場で、相手が国または国に準ずるところなのか、あるいは盗賊なのか、判別がつかない。相手は一体どういう人なんだ、その場で判別がつかないというのが現場で本当に起きるんだと。その場合に、これは行っていいのか、行ってはいけないのかというのが本当にわからない、そういうケースだった。自分のケースはそういうケースであったというふうに言っているわけです。実際、そうだったそうですから。

 そういうところで、判断するに当たっては、やはり国または国に準ずるところに行ってしまったら、これは武力行使になりますからまずいですよね。そこを判断するのはとても難しいですね。そうすると、その前線で判断するに当たって、少しおくれれば、当然リスクもふえるわけです。ふえるわけですね。

 だから、こういうことも考えれば、この間からリスクの話も出ていますけれども、やはり現場の人からすれば、そういうリスクは当然高まってくるというふうに言っておりましたが、これについてはいかがですか。

中谷国務大臣 民間やNGOの方々はそれぞれ、自分で安全を判断しながら活動されておりますが、今回、自衛隊で活動する場合においては、PKOにつきましては五原則が守られているかどうかを引き続き重視しておりまして、これによって、国または国準が存在するかどうか、こういったことについては、絶えず現場でも安全を確認し、また、上層部の国連の本部とか現地政府、治安機関、こういうことを、絶えず接触をしながら、安全を確認しながら、いわゆる国準というものが出てこないという状況を保ちながら、安全を確認しながら、活動を実施しているということでございます。

今井委員 もう一度お伺いしますけれども、実際にそういう、相手が誰かよくわからないような状況が現場で起きる、そういうときに判断が非常に難しい、そういう状況が起き得るという認識はありますか。

中谷国務大臣 基本的には、五原則が維持をされた場合には、国準というものはいないわけでございますが、そのほかの犯罪などは当然予測をされますので、実施する場合は、組織的に警戒警備をしながらやっていくということでございます。

今井委員 ちょっと、今私の質問に答えていただいていないんですけれども。

 そういうリスクが現場では起き得るということは認識ですかということです。認識しているということですか。もう一度お願いします。

中谷国務大臣 現在も、南スーダンで、ジュバというところで自衛隊は活動をいたしておりますが、絶えず、現地の状況においては確認をし、また現場の隊長も、こういった五原則が崩れていないのか、地元の治安状況等においては細心の注意を払いながら、そして、状況が悪化する場合は活動を中止、中断して避難をするとか、そういうことで、こういった安全については、適時、それが高じないような、そういう判断をして実施をして、絶えず状況においては判断をして運用しているということでございます。

今井委員 ちょっとわかったようなわからないような答弁でしたけれども、ぜひ、またこれからも議論したいと思いますが、現地でやっている人たち、一番大事なのは、自衛官の皆さんもそうです、あとは、ボランティアに行かれている皆さん、民間の皆さん、現地で働いている皆さんの意見をよく聞いていただきたい。

 だから、我々は永田町でこうやって議論していますけれども、永田町の議論ではなくて、やはり現場なんですよね。現場に行かれた方がすごく懸念を持っておられるということを、それをやはり重く受けとめなきゃいけないと思うんです。いや、それはそうですよ。そうやって活動して、そういう怖い目に遭ったことがある方の意見というのは大事ですから。だから、それはぜひ考慮しながらやっていただきたいということをお願い申し上げておきたいと思います。

 では次に、これもいろいろ議論が出てきておりますけれども、新三要件について少しお伺いをしたいと思います。

 午前中に玄葉委員が質疑されていましたので、私、多少かぶっているところがありますけれども、総理が大変踏み込んだ答弁をされておられましたので、それもお伺いしたいと思います。

 まず、新三要件をどう適用するか、例えば第一要件をどう適用するかということは、総合的に判断するというふうにおっしゃっておられて、これから個別具体的な例は少し出てくるのかもしれませんが、もちろん、いろいろなケースがありますから、これだけ、これだけ、これと特定することはそれは難しいと思います。しかし、法律ですから、言葉の定義ぐらいはやはりはっきりしていただきたいというふうに思うんですね。

 そこでお伺いしたいんですけれども、我が国と密接な関係にある他国という表現が第一要件の中にありますが、この我が国と密接な関係にある他国というのは、総理、どういう国を指すんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 新三要件の第一要件にあります我が国と密接な関係にある他国とは、一般に、外部からの武力攻撃に対し、共通の危険として対処しようという共通の関心を持ち、我が国と共同して対処しようとする意思を表明する国を指すものであります。

 従来から申し上げているとおり、具体的にどのような国が我が国と密接な関係にある他国に当たるかについては、あらかじめ特定されているものではなく、武力攻撃が発生した段階において、個別具体的な状況に即して判断されるものであります。

 もちろん、日米同盟の存在及びこれに基づく米軍の活動は、我が国の平和と安全を維持する上で死活的に重要であるわけであります、同盟関係があるわけでありますから。同盟国である米国は、基本的にはこれに当たるであろうと考えています。

 実際、これまで政府が示してきたいずれの事例でも、米国をその具体例として示していただいておりますが、しかし、他方、米国以外の外国がこれに該当するかどうかということにつきましては、まさに、私は、政府としては、相当限定されるというふうに、米国以外の該当する国については相当限定される、このように思いますが、個別具体的な状況に即して判断していくことになります。

今井委員 今、限定的ということがありました。

 もう少しお伺いしたいんですけれども、平成二十五年に出た国家安全保障戦略のところで、いろいろな国の整理がしてあります。

 韓国、オーストラリア、ASEAN、インドのところは、我が国と普遍的価値と戦略的利益を共有する国、アジアのいろいろな国は友好諸国、それから、欧州は、国際社会の平和と安定及び繁栄に向けてともに主導的な役割を果たすパートナー、それから、サウジアラビア、トルコは、中東地域で重要な役割を果たしている協調国、そして、アフリカは有望な経済フロンティアということになっていますが、状況によっては、この国はこのカテゴリーではなくてどこでもなり得るということですか。

安倍内閣総理大臣 ただいまこういう表を出していただきまして、ここは該当しそうだけれどもここは違うということは、これは申し上げることはできません。

 そこで、まさに共同で対処していく可能性のある国として、そもそも米国は、日米同盟の中で、第五条で、我が国が侵略されたときには共同対処するということが既に明確になっておりますから、米国を例としては挙げさせていただいております。

 米国以外の例としては、先ほども申し上げましたように、相当限定されるということしか申し上げられないわけでありまして、それはあとは個別の状況等に即して、何といっても、最初の、我が国と密接に関係のある他国に対する攻撃があれば、それがすなわち我が国の存立を脅かすわけでありますから、これは当然、相当限定されて考えなければならない、このように思っております。

今井委員 それでは、ちょっと具体的にお伺いしますけれども、きょう午前中に出ておりましたが、安倍総理はよくホルムズ海峡の機雷掃海を例に出されますから、ほかの個別例はともかくとして、これは個別に、自分がおっしゃっているので、ここははっきりしていただきたいんですけれども、午前中の話ですと、あそこの領海に接している国はオマーンとイランということですね。

 この二つは密接な国になり得るということですね。新三要件の一の、我が国と密接な関係にある国というふうになり得るわけですよね。そうじゃなければ、この三要件を満たしているので機雷掃海ができるわけでしょう、ということは、密接な国であるということを満たしているということですよね。それでよろしいんですか。

中谷国務大臣 まず、三要件の中で必要なことは、我が国と密接な関係にある国が攻撃を受けたということで、それに伴って国際法では我が国に要請があったということでございまして、いずれの国が攻撃を受けたかということにつきましては、個別具体的な例になりますので、現時点においていずれの国がそうかということは申し上げることはできないと思います。

今井委員 新三要件を満たすので機雷掃海ができるわけですよね。(安倍内閣総理大臣「可能性がある」と呼ぶ)可能性があるわけですよね。

 例としてはっきりおっしゃっているので、ホルムズ海峡と。だから、具体的に伺っているんですよ。

 そうしたら、オマーンかイランの要請あるいは同意がなければ機雷掃海はできないんですね。違うんですか。

安倍内閣総理大臣 つまり、委員は、機雷を敷設する範囲において、ホルムズ海峡だとして、オマーンあるいはイランの領海に敷設されるということになる蓋然性が高いだろうということだと思いますが、同時に、これは、多くの国々、そこを通ろうとする多くの国々に対しても機雷というのは脅威になるわけでありまして、日本にこれは機雷を敷設しましたよということでない限り、こうした機雷を除去することは、国際法上、集団的自衛権の行使になり得るという考えでございますが、しかし、いずれにいたしましても、その際、我が国と密接な関係のあるという観点から該当し得るかどうかということについて、今確かなことは申し上げることができないわけでございますが、総合的に判断しなければならない。

 第三条件については、今までるる答弁をしておりますように、一般に海外派兵は禁じられておりますが、限定的、受動的であること等から、これはそれになり得る、そして、第一要件の中の存立にかかわる等々から見れば、国民にとって死活的な状況にならなければいけないということも含めて、総合的に判断をしていくことになるんだろうと思います。

今井委員 いや、法律論をしているんですね。

 死活的の前に、この文章は、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりということですから、密接な国が攻撃されないといけないわけですよ。それはそうですよね。

 ですから、機雷掃海をする、ホルムズ海峡でするということは、その相手国が必要ですよね。だから、それは、オマーンであり、イランでもあり得る、どちらもあり得るということですよね。あり得るということですよね。あり得るか、あり得ないか、教えてください。

安倍内閣総理大臣 これは、機雷をどこかの国が敷設したということにおいて、いわば沿岸国としてイランとかオマーンということがあり得ます。もちろん、活動を行う上においては、そうした国々の了解というのが恐らく、実際は必要となるんでしょう。

 ただ、このホルムズ海峡を通っている船は日本だけではなくて、多くの国々がここを通っているわけでありまして、この敷設によって大きな影響を受ける国、あるいは、触雷の危険性がある国々に対する、これは武力行使ということも考えられないわけではないわけでありまして、まさにそうしたことが行われたときの状況を全般的に見ながら、その国がどうなのかということも含めて、対象国かどうなのか、そういう国から要請があるかどうかということも含めて、最終的に判断をして、もちろん要請がなければできませんが、最終的に判断していくことになるわけであります。

今井委員 今、大事な答弁をされたと思います。オマーンもイランも、そういう同意を求めることはあり得るというのをおっしゃいましたので、イランもあり得ると、今そういう答弁をされましたので、そこは確認をさせていただきました。

 もう一個、私は、ちょっと本当にこれでいいのかなと思ったんですけれども、午前中、今もおっしゃいました、例えばここを航行していて触雷してしまうことが発生した場合、触雷した場合もこれも想定し得るだろうというふうにおっしゃっておられます。

 つまり、どこかの国の船がホルムズ海峡を通っているときに機雷に当たっちゃった、その国からの要請というのはあるということなんですけれども、これはよく考えていただきたいんです。

 もともと、経済的な理由というのをずっと御説明されていますよね。あそこを埋められてしまったら、石油の輸入の八割はあそこから輸入しているわけですから、我が国にとってはとても大事なところなので、そこの機雷を掃海することはあり得ると言っているわけです。

 そうすると、この状態は、誰が敷設をしようが、誰が触雷しようが、日本にとっての状況は一緒なんですね。だって、石油を持ってこられないんですから。そうですよね。状況としては、これを、敷設した人が誰だって、あるいは誰の船がぶつかったって、日本にとっては状況は同じなわけです。同じですよね。状況は一緒ですね。石油を持ってこられないんですから。

 となると、密接な国であろうがなかろうが、そんなことは関係ないんです、日本にとっては。密接な国である必要はないじゃないですか。

 例えば、では、北朝鮮のタンカーですか、何かわかりませんけれども、北朝鮮の船があそこでどおんとやられました、触雷しましたと。では、そこでもう本当に日本の船がこっちに運べないから、それをもってして機雷掃海に行く。そういうことじゃないですか。(発言する者あり)いやいや、そういうことですよ。

安倍内閣総理大臣 それはそういうことではありません。

 日本の置かれた状況について今委員は状況を説明されて、日本が置かれた状況が、いわば死活的な状況、多大な、日本が武力攻撃を受けたと同じく、重大、深刻な状況が発生し、被害が発生したことのみをもって、もちろん、これは三要件が当てはまるわけではないわけでありまして、まさに、日本と密接な関係にある他国に対するいわば武力攻撃が発生しなければならないわけでありますから、今、当該国として挙げられた国がその国になることは全く考えられないわけでございまして、そこは申し上げておきたいと思います。

 その上において、さらに申し上げれば、いわばまさに日本と密接な関係のある他国という判断が、我が国と密接な関係にある他国ということを先ほど説明させていただきましたが、この当該国であるということにならなければその条件は満たさないわけでありまして、これはこの条件が全部満たされて初めてそれが可能になるということでございます。

今井委員 皆さんよく考えていただきたい。この話、すごくおかしいと僕は思うんですけれども、何が一番言いたいかというと、この機雷掃海は新三要件にそぐわないという話なんですが、つまり、総理はこれまでもずっと、なぜホルムズ海峡の機雷を掃海しなきゃいけないかといったら、石油が入らなくなるからだ、そういうことをおっしゃっているじゃないですか。石油が入らなくなるから、我々の生活が大変になるのでこれはやらなきゃいけないんです、そう説明されていますよね。そうされていますよね。

 であれば、誰がそこに敷設をしようが……(安倍内閣総理大臣「それはちょっと違うんです」と呼ぶ)いやいや、だって、そこを通れないという状態はみんな同じじゃないですか。では、密接じゃない国が機雷をこうやって置かれて、では、私は、それは密接な国じゃありませんから、これは新三要件に合わないので、うちは石油は入ってきませんけれども機雷掃海はしません、皆さん我慢してください、そういうことになっちゃうんですか。

安倍内閣総理大臣 つまり、今までの国会で、これはもう昨年の五月十五日以来ずっと、長々と、私も何回もこの場に立って議論をしておりますから、そこを見ていただければ御理解をいただけるんだろう、このように思いますが、このホルムズの例を挙げるときに、そこで国の存立にかかわるのかという議論を中心にしているわけであります。

 国の存立にかかわる、国の存立が脅かされているのかという状況についての、また、それはどういう状況かということについても御説明をさせていただいているわけでありますが、そこにも当たり得る可能性があるということについてもお話をしている。そして、第三条件の、いわば必要最小限度の実力行使にとどまるという中にも入ってくる可能性がある。

 しかし、それは当然、我が国と密接な関係にある他国ということについての質問ではなかったわけでありますから、我が国と密接な関係のある他国ということに限定して質問がなされたとすれば、それは当然、先ほどお話をさせていただいたように、共通の危険として対処しようという共通の関心を持ち、我が国と共同して対処しようとする意思を表明する国を指すものと考えるということでありまして、それは、そのときに今言ったような条件がそろわなければそれはなし得ないわけでありまして、それができなければ、たとえ今委員が想定されたような状況になっても、それは法律の建前上できないということは明らかではないか、このように思います。

今井委員 いやいや、それは私は違うと思いますよ。なぜかというと、新三要件の第一に何て書いてあるかといったら、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされですから、これはオアじゃありません、アンドですね。(安倍内閣総理大臣「だから、そう言ったじゃないですか」と呼ぶ)ですよね。

 だとすると、このアンドの次の文に、石油が入ってこないという状況が係るとしましょう。しかし、機雷をそこに置かれているそもそもの発生原因というのはいろいろあるわけですね。いろいろあるわけでしょう。別に、日本の同盟国と戦争してそこに機雷を敷く、もちろんそういう場合もあると思いますよ、でもそうじゃないケースだってあるじゃないですか。どんなケースだって、そこには機雷は敷かれ得るわけです。でも、我々の生活にとってみれば、誰がそんなの敷設したなんて関係ないわけですよ、そこからもう石油が運べなくなってしまうんですから。そうでしょう。

 となれば、この我が国と密接な関係にある他国という定義を満たさないけれども日本の存立が脅かされるケースが出てきちゃうわけですよ。それはやらないんですか。それは、日本国民の生活を見捨てるんですか。

安倍内閣総理大臣 我々は合法的な武力行使しか当然できないわけでありまして、それは、今、今井委員がおっしゃるのであれば、そういう立法をするために努力をなされるべきだと思いますよ。

 我々は、そうではなくて、まず、常識的に、ホルムズ海峡に機雷が敷設されないような外交努力を重ねていくわけであります。先般も、先般というか昨年ですかね、外務大臣もイランを訪問いたしました。私も大統領と何回も、累次にわたって首脳会談を行っているわけでありまして、米国を中心としたイランとのいわば協議がまとまるべく、我々も努力をしていくのは当然のことであろうと思いますし、中東和平にも努力をしているわけであります。また、オマーンも訪問しております。

 そうした努力を重ねる上において、その中で、今私が申し上げたような状況、我が国と密接な関係のある国ということも、これは前提でありまして、その上において、今、今井さんがおっしゃったことを言われるのであれば、それはもうまさに、密接な国でなくても、要請がなくてもやってしまったらいいではないかということにはこれはならないわけでありまして、ここは、我々は、法制をきっちりとやる以上、この法律からはみ出る、条件が整わないことはできない、やらないというのは、これは当然のことではないか。

 しかし、その中の範囲に入ることはあり得るということを申し上げているわけでございますし、かつ、今、この例として挙げることは、そうすぐに起こるということは、もちろん、そう簡単に起こり得るとは我々も考えてはおりませんが、万々が一に我々は備えなければいけませんから、そのときにはなり得る条件が整い得る、このように申し上げているわけでありまして、今井さんが言ったような状況でなければ起こらないというわけではなくて、条件が整った中で起こり得るということもあり得るのではないか、このように考えるわけでございます。

今井委員 いや、しきりに総理が、新三要件に合致すれば、合致すればとおっしゃるので、僕は新三要件に従ってお伺いしているわけです。

 もう一回お伺いしますけれども、では、密接な国じゃない国が、機雷敷設で、ホルムズ海峡がやられたとしましょう。それで、日本にはもう石油が入ってきません、国民生活はもう存亡の危機です、でも、この第一要件に適合しないので我々は何もしません、そういうことはあり得るということですね。

安倍内閣総理大臣 原点に戻りますと、我々は、国際法に許されている集団的自衛権の行使、しかし、それも三要件の中に当てはまれば行使するわけでありますが、では、原点を見て、国際法で許される集団的自衛権の行使は、密接な関係のある他国ですから、そこが崩れたら国際法上も違法でありますから、そもそもそれはできないということは明らかであって、密接な国とは何かということは先ほど私が解説したとおりでありまして、ですから、このほかはやらないということは何回も申し上げているとおりでありまして、でも、この中に当てはまる場合もないとは言えないと言えると思いますよ、今井さんとしても。

 ですから、そのときには、我々は、まさに我が国の存立が脅かされ、国民の生命や自由や幸福追求の権利が根底から覆されるということを前提に、それはいわば対応するということであります。

今井委員 ちょっと、もう一度簡単にお伺いします。

 たとえ石油が入ってこなくても、生活が本当に存亡の危機になっても何もしないということも、新三要件に適合しなければ何もしないこともあり得るということですね。

安倍内閣総理大臣 それはすなわち、いわば、集団的自衛権の行使、これは国際法上の概念であって、この国際法上の概念の中においては密接な関係にある他国でありますから、この密接な関係にある他国でない国に対して、我々がその要請のために武力行使をするということであれば、これは国際法上違法なことになりますから、これは再々申し上げておりますように、国際法上違法なことはできないということでありますから、それはできないということになるわけでございます。

今井委員 そういう場合もある、そういうことですね。

 ちょっともう時間が来ちゃいましたので……(発言する者あり)では、もう一度ちょっとお伺いします。もう一問聞きたかったんですけれども、もう一回聞きますね。

 結局、密接な関係がない国が、そういう機雷を置いた場合、敷設した機雷の掃海の要請があっても、それはしないということですね。

安倍内閣総理大臣 これは、先ほども申し上げておりますように、我が国の憲法との関係において三要件が設けられているわけでありますが、この三要件にも密接な関係にあると書いてあるんですから、これは当てはまらない。そして、国際法上も違法なことになってしまいますから、それも当然できないということでございます。

今井委員 わかりました。

 ちょっと最後にもう一問だけ。

 先ほど、午前中にこういう答弁がありました。今紹介しましたけれども、例えばここを航行していて触雷してしまうことが発生した場合も、これは武力行使に当てはまるということなんですけれども、一九七七年の十一月十五日、これは参議院の内閣委員会で三原防衛庁長官がおっしゃっているんですが、例えば商船隊がある国家の軍隊から撃沈されたような場合があった場合は、それを防衛出動と見るかどうか、計画的、組織的な行動があるかということが一番大事だというふうに答弁しています。

 つまり、触雷したときも、これは計画的かあるいは組織的であったということが条件であるというふうに政府は答弁しているんですけれども、触雷するというのは、本当に計画的に当たるなんということがあるんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 これは触雷することがどうかということではなくて、いわば機雷を敷設することが組織的、計画的であるかどうかということでありまして、それは、いわば目的を持って、組織的に、計画的に敷設したものであるかどうか。

 例えば、機雷ということは、日本海にもまだ機雷が残っていて、それに触雷する船もあるわけでありますが、これはまさに計画的、組織的なものではないわけでございますし、武力行使の一環でもないということではないかと思います。

今井委員 もう時間が来ましたから終わりますけれども、ちょっと議論がかみ合いませんでしたが、やはり、このホルムズ海峡の機雷掃海という例は、日本の経済が大変であるという理由で説明されているわけですから、武力攻撃を受けているのが密接な国であるかどうかという問題じゃないんです。違うんです。だから、そこは、第一要件を入れてしまうと、日本が本当に存亡の危機になっているときでも機雷が掃海できないケースが出てきてしまう、そういう理解になってしまうので、そこに矛盾があるということを最後に指摘して、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 維新の党の泉州選出の丸山穂高でございます。

 本日だけじゃなくてこの一連の、総理の今回の質疑の御答弁を聞いていますと、やはり並々ならぬ総理の今回の法案に関する熱意を感じるところです。時に熱くなり過ぎて、少し、冒頭、御挨拶で謝罪されたような状況も起きておりますが、ただし、それは、だめなことはきっちりとだめと言わせていただきますけれども、その熱意に関しましては非常に強く感じるところではございます。

 そうはいっても、やはり、この国が今囲まれているこの国の安全保障の状況というのは、非常に厳しい状況があるというのは、国民みんなして感じているところでございます。

 例えば、お話のあった北朝鮮からは、今も日本に何百発というミサイルが向けられている状況である。そして、中国も、南シナ海では埋め立てのことで、懸念が世界じゅうで広がっておりますし、今、テロやサイバー攻撃といった、あらゆる形の悪意のある武力攻撃にさらされる可能性が非常にこの国で高まっている中で、この法案の審議という中で細かい論点をきちんと明らかにしていくというのは非常に大事な点でございますし、維新の党としても、しっかりと、いいものはいい、だめな部分はこうやって修正しましょうよという形できちんと訴えさせていただきたいというふうに考えております。

 一つは、先日、民主党の長島委員からありました、いわゆるグレーゾーン事態の離島防衛の話でございます。これは、実は我が党も非常に懸念をしている点で、そして、安倍総理は切れ目のない安全保障政策をとおっしゃっている中で、切れ目があるんじゃないかな、しっかり今やらなければ後世に憂いを残すんじゃないかなと考えているところでございます。

 昨年秋も、小笠原でサンゴの密漁の件がありました。また、尖閣の問題を初めとして、日本の領域が、ホルムズ海峡のようなシーレーンではなくて現実に日本の領域が侵されているというところにおいて、今回の法整備では、具体的な法改正という形ではなくて運用の改善という形で、具体的には、閣議決定を、電話で迅速化を図るという対策をとられてはおります。しかしながら、法制懇でも御議論に上がったというふうにも聞いておりますし、政府の中でもけんけんがくがくの議論をされて、ある方のお話では、いいところまで行ったけれども、最後は結局、保安庁と自衛隊の権限争いの中で難しかったという御発言もあったというふうに聞きます。

 実は、国民の皆さん、今回、ホルムズの話も、いろいろな難しい話が出てわからないというお声がある中で、この点の、この日本の領海を守らなきゃいけないんだ、尖閣にしても小笠原の密漁にしても何とか取り締まっていってほしいという思いは全員一致している、皆さん思っていらっしゃるところだと思うんです。

 一方で、総理がおっしゃるような、御答弁でも、警察力で対処して、それが対処できないとなれば直ちに自衛隊が対処していくことが大事だという、このスイッチ、速やかなスイッチが可能になることが大事だという御答弁がありました。

 しかしながら、総理、電話閣議だけであれば、確かに政治的な判断、海上警備活動の発令に関して、政治的な判断の迅速化は図れるかもしれません。しかし、日本の島々、六千八百五十二ある島々で、そして一つ一つの島は何百キロと離れている中で、たとえ今自衛艦が任務として監視警戒はできるといっても、現場において、その自衛艦が駆けつけるだけでかなりの時間がかかってしまう。でも、現場では既に上陸されようとしている、領海でサンゴが密漁されようとしている、そうした中で、現行法では、到底これらの問題に対処できているとは言いがたいと思います。

 我が党でも、民主党さんとはまた少し違った観点から、海上警備準備行動という形で、中二階の、自衛艦が海上保安庁の船の補完を図れるような形を常時とっていくという形の措置を、法案を今準備しておりますけれども、こういった、現行法での穴の、切れ目の部分に関してしっかりと今検討していかなければ、一番国民の皆さんが懸念されている日本の領海、領域を守っていく、これに関して切れ目ができてしまうんじゃないかと思います。

 今回の審議で、先ほどの細野委員の御指摘のところもなかなかごもっともだなという、例えば、自衛官の方が業務上過失致死になったら国内法か現地法の地位協定でできるようになるのかどうかとかいう御指摘だとか、例えばグレーゾーンの話も、非常に私としてはやっていただきたい大事な指摘だと考えているんですけれども、こうした指摘に関して、まず、この今の領域警備法に関してどうお考えになるのか。そして、野党の考え、もしそれがある程度方向性として正しいのであれば、きちんと修正も含めて協議に応じる、そういう御姿勢がおありなのかどうか。お答えいただければと思います。

中谷国務大臣 維新の党におきましても領域警備法案を検討されているということでございますが、政府におきましても、このグレーゾーンについて議論を、検討を行いまして、四月の十四日に、海上警備行動、治安出動等の発令に係る手続の迅速化のための閣議決定を行ったところでございます。この迅速化に加えて、それぞれの場合についても、内閣官房を含む関係省庁が事案発生前においても連携を密にいたしまして、訓練等を通じた対処能力の向上を図ることについても規定をいたしております。

 これまでも、海上保安庁と自衛隊の間では、不審船共同対処に係る共同訓練、これを実施しておりますし、警察と自衛隊の間でも、治安出動命令が発令される事態を想定した共同訓練、これを行うなど、実施を重ねているところでございまして、警察機関と自衛隊間の情報の共有、連携については十分図られているものと認識をいたしております。

 今後とも、各機関の対応体制の強化、そして関係機関の連携強化に努めて対処してまいるところでございます。

丸山委員 全くお答えになっていないと思っています。

 というのは、関係を密にする、情報を共有するというのは、この何十年ずっと同じ文言が、いろいろな政府が出される文書に書かれているものでございます。しかし、現にあのサンゴの密漁の話が起きたのは去年じゃないですか。その間、一体、きちんとその関係を密にとられてきたんでしょうか。できていないからああいう事態が起きているんじゃないでしょうか。

 ここは総理にお伺いしたいんですけれども、総理も、今回いろいろな広げる活動、非常にあらゆる可能性を考えていく、切れ目がないという形でやられています。そういった部分に関してはきちんと、包括的に、いろいろな観点から見るというお答えをされているんですが、一方で、例えば先ほどの、自衛官が現場で起こることに対するリスクに関するところには、少し可能性を狭めて、リスクがないとまではおっしゃっていませんけれども、かなり狭めておっしゃっている気がします。

 密漁の話にしても、領域警備の話にしても、関係を密にできれば解決するんだみたいな、今回の法制度をやらなくてもいいんだ、そういう観点からのお答えしか、今回の法制にない部分は返ってこないんですけれども、しかし、今お話しさせていただいているように、非常に懸念のある点だと思うんです。今回の法制には間に合わないと思います。しかし、今後、前向きに検討していくというのは非常に大事な点だと思うんですが、総理、そこを少し前向きに御答弁いただきたいんですけれども。

安倍内閣総理大臣 グレーゾーン事態について、いわば海上保安庁あるいはまた警察が対応していて、それが難しい、あるいはその対応能力では対応し切れないという相手であれば、スムーズに自衛隊とチェンジする、その必要性についての認識は丸山議員と同じだと思います。

 そこで、果たして法制が必要かどうかということでございますが、私たちは、長い間の経験からいって、閣議決定等が短時間でスムーズに終われるようにしていく、そしてまた、日ごろから、自衛隊と海上保安庁、あるいは自衛隊と警察、あるいはまた自衛隊、警察、海上保安庁が共同の訓練を続けながら、そういう事態に適切な判断を行い、スムーズに交代をしていくということができるようにしていくことは、我々は可能だ、こう考えたわけでございます。

 しかし、その中において、その中において、今、維新の党において法整備という形から法案を議論しておられるということでございます。まだ提出をされておりませんのでコメントすることはできないわけでございますが、またこの委員会等において、皆様がそうした案についても御議論をされ、議論がさらに深まっていくことを期待したい、このように思います。

 いずれにせよ、今がベストということを我々は考えるべきではない、常に、国民の命そして幸せな暮らしを守るために何が必要か、日々変わる状況に対して対応していく努力を積み重ねていかなければならない、このように思っております。

丸山委員 できる限りの範囲の中での前向きな御答弁をいただけたと思いますので、これは党派を超えて、非常に大事な、国民の利益を守っていく、国益を守っていくという大事な観点ですので、しっかり議論をさせていただきたいと思います。(中谷国務大臣「一つ訂正」と呼ぶ)修正、よろしくどうぞ。

中谷国務大臣 答弁の訂正ですが、先ほど治安発令の手続の閣議決定を四月十四日と申し上げましたが、五月十四日の間違いでございます。訂正をよろしくお願いいたします。

丸山委員 いずれにしましても、きちんと、よろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、少し話がかわってまいりますが、この委員会でいろいろ議論されている中で少し整理されてきたところをいま一度詳しくお伺いしていきたいというふうに考えているんです。

 まず、いわゆる新三要件につきましてでございます。

 このフリップにあるように、基本的に、今回、集団的自衛権を行使する上ではこの新三要件を満たすことが大前提だ、これを満たさなければ行使はできないというのが現在の法案でございます。これは一つ目も二つ目も三つ目も、必ず法案に盛り込まれているというのが現状でございます。これはもうお話しするまでもなく、委員の皆さんは御存じです。ただ、国民の皆さんにいま一度見ていただくためにこのフリップを上げさせていただきました。

 一方で、これまでの個別的自衛権に関しまして、政府はいわゆる七二年の政府見解というのをお出しになっていると思います。それが二つ目のフリップでございます。

 少し読ませていただきますと、あくまでも国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に対処し、国民の権利を守るためのやむを得ない措置として云々というふうな形で七二年の見解は書かれています。

 ここに非常に大事な言葉がございまして、急迫不正の事態に対処をするということでございます。

 この文言は、実は、今回、集団的自衛権の新三要件にはない言葉でございますけれども、まず、この七二年の政府見解は生きているのかどうかという話、そして、それは集団的自衛権の行使についてはどのように捉えればよいのか、お答えいただければと思います。

横畠政府特別補佐人 七二年の政府見解は生きております。

 急迫不正という言葉でございますけれども、従前の自衛権行使の三要件を御説明する際にも、第一要件につきまして、我が国に対する急迫不正の侵害が発生したこと、すなわち我が国に対する武力攻撃が発生したことというような説明ぶりをしていることもございます。

 ここでの急迫不正という言葉は、一般的な正当防衛の要件でありますところの、急迫不正の侵害、これに対処するのが正当防衛であるという、その正当防衛の概念からかりてきた言葉でございまして、国際法上武力行使の要件となりますところの武力攻撃というものの中に、本来的に急迫不正の侵害性というものが含まれております。

 今回、新三要件を整理するに当たりまして、一般的な正当防衛の概念をかりてきました急迫不正という言葉ではなくて、本来の国際法の概念であります武力攻撃の発生という言葉で整理をさせていただいたということでございまして、実質は同じでございます。

丸山委員 となりますと、集団的自衛権においても、この不正という要件が入っているということなんですか。急迫不正の、特に不正のところが大事だと思うんですけれども、もう一度よろしいですか。

横畠政府特別補佐人 まさに、武力攻撃という言葉自体は、やはり、国際法に違反する、違法な、不正な、そのような侵害、それを武力攻撃と言っておりまして、それに対する反撃も含む一般的な意味での武力の行使と区別されております。

丸山委員 今、非常に大事な御答弁だと思うんです。

 今までは総理は御答弁されて、国際法上違法な攻撃をした場合にそれに加担することはないという御答弁をされてきました。これは、法理上果たしてそれが読めるのかどうかというのは、非常に我々からしたら不安な、読めないというふうに解釈していたんですけれども。

 今のお話だと、例えば米国が国際法上違法な先制攻撃で、例えばA国に対して攻撃をした、そして、A国が米国に対して、先制攻撃をされたので、不正ではなく、国際法上不正ではなく反撃をした、それによって、日本が米国との関係で集団的自衛権を行使するという状況になったときに、今回の三要件の武力攻撃という言葉から不正というものが読み込まれるという今法制局の長官のお言葉でしたから、つまり、相手の攻撃が不正でなければ、それに対して集団的自衛権は行使できないということになりますけれども、よろしいんですね、長官。

横畠政府特別補佐人 まさに、違法、不正なものであるところの武力攻撃、これに対抗する、反撃するというのが自衛権でございます。

丸山委員 実は、これはきちんと、どうして急迫不正のという言葉を入れないんだというのは常に思っておりまして、政府の御答弁を聞いていると。

 野党の追及では、法制上はできるけれども、政治的にはできないんじゃないかという御追及も多々あったように感じますが、今のお話であれば、どちらにしても、法理上も、政治的にも、いずれにしてもできないし、法理上できないということであれば、安倍内閣から次の内閣にかわったとしても、現行法を変えない限りはできないということだということを、今明白になったと思いますので、ここは明らかにしておきたいというふうに思います。

 次に、また先ほども少しお話のあったホルムズ海峡の話がややこしいんですね。やはり、国民の皆さんから見ても、どうしてホルムズ海峡だけなんだ、総理がこだわっていらっしゃるんだということがなかなか理解いただけないと思うので。

 他国での集団的自衛権の行使については、先ほど来申し上げているように、新三要件を満たせば可能だ。そして、総理はずっとお話しされていますけれども、一般に、憲法上海外派兵は許されへんという話をされています。

 しかし、例外として幾つか挙げられています。一つは、邦人輸送中の他国艦防護に関しては挙げられていたと思います。ミサイルの基地の攻撃に関しても例外として挙げられていたと思います。そして、ずっとお話をされているホルムズ海峡の機雷掃海についても挙げられていたと思うんですけれども。

 これがまず正しいかどうか、もしくは漏れがあるかどうかとか、そのあたり、お答えいただけますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今、三例挙げられましたが、他国の領海、領土、領空ということにおいては、これは一般に海外派兵は許されていないわけでございますので、その中で念頭にあるのはホルムズ海峡だけでございます。

 今例として挙げられた、いわば敵のミサイルが攻撃される、策源地攻撃ということにおいては、これは極めて、個別的自衛権もそうでございますが、法理上は、法理上はあり得るわけでございますが、事実上、この打撃力については米国が担っており、その能力を有している。我々は、攻撃をする能力は、そもそもそこは持っていないわけでありまして、個別的自衛権においても想定をしていないわけでありますので、ましてや集団的自衛権においては、実際には想定はしていないということでございます。

 そしてもう一点は、邦人が乗ってくる船でございますが、これについても、基本的には果たして領海にまで入っていくことができるかどうかというのは、これは法制局の答弁にもあるように、これは相当慎重に考えなければならないことであろう。基本的には、公海においてそういうオペレーションはせめて行うべきではないかということを私は例として出しているわけでございます。

 現時点で、一般にということの外に当たる例外としては、ホルムズ海峡における、さまざまな要件が成り立ったときの機雷掃海しか念頭にはないということでございます。

丸山委員 政治的には今総理、お話しいただきましたけれども、法制局長官から法理的にお話を伺いたいんですけれども、幾つか長官も御答弁されていると思うんですが、策源地攻撃と、そして邦人輸送中の他国艦防護に関しては、これは法理上は読み込めるという認識でいいですか。

横畠政府特別補佐人 先般もお答えいたしましたが、海外派兵は一般的に許されないというのが大原則でございます。

 それに対して例外がないわけではないということで、具体的に、例外的に海外における武力の行使として認められる場合として、従前、これまで個別的自衛権の場合、すなわち我が国が武力攻撃を受けている場合の事例といたしまして、昭和三十一年二月二十九日の衆議院内閣委員会における政府答弁におきまして、

  わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。

とお答えしておりまして、そのことは今般の新三要件のもとにおきましても同じであると考えております。

丸山委員 ということであれば、法理上は認められるということでございます。この他の例が今後出てくるかもしれませんが、今のところはこれが挙げられているんだと考えておるんですが、どうして総理がホルムズ海峡を挙げられるかというと、総理のお話のロジックを聞いていますと、多分こういうことじゃないかなというのが下でございます。

 まず、原油の八割、天然ガスの三割が通過するシーレーン上の重要航路だ、なのでやる。なので、まず、この条件からシーレーン以外のところが外れます。次に、ほかに迂回路がないんだというお話があるので、例えばマラッカ海峡やロンボク海峡がある。南沙諸島は広いので、迂回できるから、ほかには入らない。そしてなおかつ、ホルムズ海峡でも、例えば海上封鎖を船でされている場合はどうしようもない。機雷を敷設されて、機雷の除去であればできるというのは、機雷除去が極めて制限的で受動的だ、機雷の敷設が能動的であれば、それを除去するだけなので受動的だから機雷掃海はできるというロジックだと思うんですが、これで問題ないと思うんですけれども、よろしいですよね。うなずいていただいたので、そうだと思うんですが。

 一つ気になるのは迂回路がないというところなんです。というのは、マラッカ海峡も、かなり、原油の依存度としてはすごく高いです。今挙げられているホルムズ海峡は八〇%ぐらいですが、マラッカ海峡は実に八三%の原油が、この国にもたらされる原油が通っていますけれども、一方で、マラッカ海峡だけじゃなくて、近くに確かにロンボク海峡がございますが、ロンボク海峡とマラッカ海峡も同時に封鎖される可能性だって、あの海峡は狭いので十分にあり得ると思うんですね。

 条件で考えれば、上の新三要件を満たせば、私はマラッカ海峡でも迂回路がなくなった場合にはあり得るというふうに考えるんですけれども、そうしなければ、この国がもし陥ったときに非常に問題になってくると思うんですけれども、このあたりは、条件によります、個別の条件はなかなか言いづらいとお話をされていますが、あらゆる条件は排除しない、ホルムズだけじゃないという認識でいいということでよろしいんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 丸山委員は経産省におられたから、いろいろとエネルギーの輸送についてもお詳しいんだと思いますが、このマラッカ海峡については、さまざまな、今既に御指摘がございましたが、迂回路があり得ることは事実であります。

 ただ、マラッカ海峡プラス迂回路も全てということを想定せよということでございますが、なかなか、蓋然性等においても思いをいたすときに、我々としては現時点で念頭にあるのはホルムズ海峡だけでございます。もちろん、法理的には、法理的には、それぞれ三要件に当たればそれは当然対処していくということになるわけでございますが、現時点において念頭にあるのはホルムズ海峡であるということでございます。

丸山委員 総理、非常に国民の皆さんにわかりにくくなっているのは、今まさしくおっしゃっている、そういうところなんだと思うんです。法理的には可能なんですけれども、一方で、総理は、政治的にあり得ないというお話をされている。

 ただ、この法律を、もし成立した場合に、運用されるのは、もちろん安倍総理もされていくんでしょうけれども、この後の内閣もずっと引き継いでいくものでありますので、政治的には変わり得るというのが当たり前なことでございます。そうした中で、今マラッカ海峡も条件が当たれば可能性もあるというお話でしたけれども、その辺も、ホルムズだけなんだという御説明じゃなくて、きちんと法理上の御説明もしていただかなければ、より混乱を招くのかなというふうにすごく感じるところでございます。

 もう一つ、今回ややこしくなっているのが、非戦闘地域と非戦闘現場と、もう一つ、最近、総理の御答弁で、大臣も御答弁ありました、戦闘行為が発生しないと見込まれる場所という、これが非常にまたややこしくなっております。

 現状、イラク特措法では、この上の二つの条件がございます。二つあわせていわゆる非戦闘地域というものなんですけれども、「現に戦闘行為が行われておらず、」「活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域を非戦闘地域で、ここに活動を限定すると、明確に法文にイラク特措法では書いております。

 一方で、今回の恒久法におきましては、一つ目の、円滑かつ安全に実施できる区域というのは法案には明記しているんですけれども、もう一つ、現に戦闘が行われている現場では実施しないというのも、これも法案に書かれております。

 一方で、最近、国会での答弁で、総理そして防衛大臣の補足の御発言がありました、自衛隊が活動している期間において戦闘行為が発生しないと見込まれる場所でやるという御答弁がありました。これが入ったことで、これまでの特措法の非戦闘地域との違いがすごくわかりにくくなってきているんですけれども、この違い、表現を変えられているのでまさしく違うんだと思うんですが、この違いはまず何なのか。そして、答弁ではなくて、これを法案に明記されない理由というのは何なんでしょうか。お答えいただければと思います。

中谷国務大臣 いわゆる非戦闘地域の考え方では、「そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」という法律上の規定を厳格に解して、長期間を想定して固定的に実施される区域が指定されていたということで、一たび指定をされますと、柔軟な活動ができないおそれがありました。

 そこで、新たな仕組みでは、「そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」との法律上の規定がなくて、防衛大臣は、自衛隊の部隊等が活動を円滑かつ安全に実施することができるように、活動を実施する区域を機動的に指定することになります。

 したがって、新たな仕組みにおいて、常に情勢を踏まえた判断が行われて、かつ安全確保が図られるとともに、柔軟な活動が可能となると考えておりまして、また、繰り返し述べておりますが、新たな仕組みでも、自衛隊の部隊等が現実に活動を行う期間については戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定することとなりまして、攻撃を受けない安全な場所で活動を行うということには従来といささかの変更もないということでございます。

丸山委員 今お聞きになった国民の皆さんは全くわからないと思います。

 時間もないので、これはちょっと、委員長、ぜひ理事会で、ここの政府の統一見解、どう違うのかというのを出させていただきたいんですけれども、御検討いただけますでしょうか。

浜田委員長 理事会で協議します。

丸山委員 ありがとうございます。

 きちんとここは明確にしていただいて、これまでと何が違うのかというのを示していただきたいと思います。

 そして、きのう、ちょうど昨日、NHKの「日曜討論」に出させていただきまして、種々議論をさせていただきました。非常に有意義な議論だったと思うんですが、一方で、その中で、けさ方も岩屋委員お話しされておりましたけれども、自衛隊の活動範囲が明らかに広がるわけで、内容も拡充されるわけだから、リスクが高まる可能性があるのが事実だというお言葉をそのときにされていました。

 ただ、一方で、きょうの午前中の御答弁では若干、やりとりではそこまで、政府の方の御答弁、そこまで踏み込んだ御答弁はなかったんですけれども、私としては、やはりここのリスクは、活動範囲がふえるんですから、きちんとお認めになって、しかしながら、そのリスクに応じてきちんと対応しますというふうにして自衛官の方を送り出す。先ほどの地位協定の話もそうです。現地で自分がもし誤射をしてしまった場合どうなるんだろうと不安を持っていらっしゃる、そういう方にきちんと応えるというのがやはり政府の最低限の責任だと思います。そこで、リスクがないからと言ってしまうと、逆にその対応がおくれてしまう原因になりかねないと強く感じますし、そこを、しっかり安全面をやっていただきたいのは野党も与党もなく願っているところなんです。

 具体的にちょっとお伺いしたいんですが、一つは、ごめんなさい、これはテクニカルな話なんですけれども、今回、弾薬の提供は自衛官の方がやっていただく活動の内容に入っていますけれども、一方で、武器の提供が入っていないのは、これは、外務省にお話を聞いたら、弾薬の提供はニーズがあるけれども、武器の提供はニーズがないんだというお話があったんですけれども、これは、武器の提供も憲法上は許容されているかというのを、ちょっとテクニカルに一つお伺いしたいのと、時間がないので、もう一つは安全対策、防衛大臣が先ほど細かいお話をされましたけれども、ここの部分、もう少し詳細にお伺いしたいんですけれども、重ねて。

中谷国務大臣 武器につきましては、おっしゃるとおりでありまして、憲法上可能であるが、ニーズがないということでございます。

 それから、安全対策につきましては、法案にいろいろと盛り込んでおりまして、例えば、安全配慮規定とか実施区域の指定、活動の中断、一時休止。また、国際平和協力法、いわゆるPKO法の中で、国際連携平和安全活動におきましては、安全配慮規定、そして、業務の中断、危険を回避するための一時休止その他の安全を確保するための措置の実施要項の策定。また、自衛隊法による邦人救出等の措置におきましても、これは、予想される危険に対して保護措置をできる限り円滑かつ安全に行うための、部隊等と外国の権限ある当局との間の連携及び協力が確保されると見込まれるというところでないと実施しないというような安全措置は盛り込んでおります。

丸山委員 今回、先ほど少しお話のあった邦人救出が入っていると思うんですけれども、これは端的にお聞きしたいんですけれども、ペルーの大使館の人質の事件がございました。ああいう事件で、仮にペルー国から要請があった場合に、これは自衛隊を派遣できるようになる、そして救出の任務に当たるようになれるという認識でよいんでしょうか。

中谷国務大臣 これは、当然、ペルーに治安権限がございますので、そこに最大限お願いをするわけでございますが、万が一、そういうことができない、また要請を受けた場合でございます、当然、受け入れの同意を前提といたしまして。

 ここで法律上うたっているのは、まず、予想される危険に対して保護措置をできる限り円滑かつ安全に行うための、部隊等と、そして外国の権限のある当局、治安当局なんですけれども、この間の連携と協力が確保されると見込まれるところでございまして、当然、ペルーにおきましても、治安当局と綿密に連携をして、それを踏まえて実施することが可能であると見込まれるケースでないと実施をしないということでございます。

丸山委員 しかし、そういうケースであれば実施するということでよろしいんですね。

中谷国務大臣 法律的にはそうでございますが、本当に実施できるかどうか、これは、そのケース、また安全、また部隊等の能力等を通じて、政府全体として判断をして実施をするということでございます。

丸山委員 判断をして実施するというお言葉でございます。

 国民の皆さん、お聞きになったように、どう考えてもやはりこれまでとは危険度が上がる任務を自衛官の方々にやっていただくというのが現実だと思います。だからこそ、ずっと再三申し上げているように、逃げないでいただきたくて、リスクはやはり高まると思います、高まるがゆえに、きちんと安全の対策をとっていただく、これが自衛官の方に対する我々の最大限の敬意でありますし、恐らく国民の皆さんに負託された国会議員としての義務だというふうに思います。

 現に、もう時間もなくなってきましたので最後にしますけれども、この三十日、三十一日両日に、共同通信社が電話調査をしております。集団的自衛権の行使を可能にする今回の法案の政権の姿勢について、十分に説明していると思うかという回答に関して、八一%がそうは思わないと。八一%の方が思わないと答えられているということでございます。これは、説明を尽くすというのは非常に難しいというのが現実だと思います。

 我々維新の党も、大阪で、都構想というのを、説明をずっと続けてきました。説明が足らないとずっとお話があって、その中でも、地域に入って、タウンミーティングで六百回以上もずっとやってまいりました。質問に一つ一つ答えてまいりましたけれども、それでも最後まで説明が足らないと言われ続けたのがあれでございましたので、そうした中で、これは非常に国民の皆さん関心のある、大事な大事な法案でございますので、まさしくタウンミーティングをやっていただくぐらいのお気持ちで御説明いただけますでしょうか。

 最後、首相のお言葉を聞いて終わりたいと思います。

安倍内閣総理大臣 我々としても、政府としても、こうした審議を通じてしっかりと国民の皆様に訴えかけていきたいと思いますし、テレビ等を通じて、そうしたさまざまな討論番組等におきましても努力をしていきたい、また、党においても、各地域においてこの御説明をしていきたい、こう思っております。

丸山委員 質問を終わります。ありがとうございました。

浜田委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳委員 維新の党の青柳陽一郎でございます。本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 時間も短いので、早速質問と議論に移ってまいりたいと思います。

 我が党も、外交の基本方針、これは日米同盟が基軸だ、この日米同盟を深化させていかなければならない、そして、日本の強みを生かした国際貢献、これも重要な役割であります、さらに言えば、我が国の主権と、領土、領海、領空を守る防衛力は強化すべきだ、これは党の公約として決められているわけであります。こうした我が党の外交、安全保障におけるスタンスというのは、政府・与党と大きな開きがあるというわけではありません。

 しかし、今般の安全保障法制の改正、これは大変大きな改正であり、今後の我が国の外交、防衛、安全保障がどのように変わっていくのか、あるいはまた、どこが変わらないのか、この点について、ぜひこの国会の審議を通じてしっかりと確認をさせていただきたいと思います。こういう方針に沿ってきょうは質問させていただきたいと思います。

 そして、再三にわたって各委員が指摘しておりますけれども、この安保法制の改正、これは、国際社会の理解と同意を得ていく、そしてそれ以上に我が国の国民の理解を得ていく、こういう作業が実に重要であるということは言うまでもありません。国民の皆様から信頼される、そういう説明をいただきたい、そして国民の皆様が納得される対応をぜひいただきたいと思っております。昨日の世論調査、今、丸山議員からも話があったとおり、国民の理解は全く進んでいないということですから、ぜひ真摯に対応をお願いしたいと思います。

 これから何度か質問に立つことになると思いますので、本日は、まず基本的な点から伺ってまいりたいと思います。

 まず、総理の日米同盟に関する発言、そして先般の日米首脳会談、この成果について伺ってまいりたいと思います。

 安倍総理は、二〇一二年十二月の総理就任当初から、日米同盟の再生、失われた日米同盟のきずなの回復、これを外交政策の最重要課題とする、こう述べられてきました。

 それでは、この失われたきずな、あるいは壊れた日米同盟の原因、これは、総理、どこにあったと考えられますか。

安倍内閣総理大臣 同盟関係というのは信頼関係によって成り立つわけであります。もちろん、条約の中においてお互いに義務、責任が生じているわけでありますが、それがさまざまな事態に自動的に発動されるかといえば、やはりこれはお互いに信頼関係がなければ有効に機能していかない、こう思うわけでありまして、信頼関係とは何かといえば、お互いに理解し合いながら、約束したことは実行していく、発した言葉は必ず実行していくために全力を尽くしていくという姿勢ではないかと思います。

青柳委員 今おっしゃられたとおり、約束したことを確実に実行する、これが同盟の信頼関係だと思います。これは当然のことであります。

 そこで、先般、日米首脳会談が行われました。昨年我が国で行われた日米首脳会談の会談時のときよりも、明らかに今回の首脳会談は成果が強調されています。正直、今私は野党の立場ではございますが、この訪米の成果、これは大きかったと思います。これは率直に認めたいと思います。そして、安倍総理自身が、両国関係はかつてないほど強固になり、同盟は力強く復活した、このように述べられております。

 この首脳会談の成功、二年前の首脳会談、あるいは昨年の首脳会談、明らかに違う、大きな成果、こういう報道があります。この成功の要因、これは何だとお考えになりますか。

安倍内閣総理大臣 一つは、おととしはまだ私も就任したばかりでございまして、人間同士というのは、首脳同士というのもそうなんですが、何回か会談を重ねながら対話を深め、お互いの考えていることを、思考回路を理解し合いながら、そして、それぞれお互いに会談において自分の国のなすべきことについて話をするわけであります。それを着実にお互いが積み上げていくことによって、個人の信頼関係も構築されてくるのではないかと思います。

 例えば、TPP交渉につきましても、今や日本と米国がこの交渉を引っ張っているわけでありますし、事実、日米のこの合意もいよいよ出口に差しかかっている。これは両首脳がお互いに責任を果たしながらリーダーシップを発揮してきたという相互認識もあるわけでございまして、そうしたこともあるんだろう、このように思うわけでございます。

 また、米国が、オバマ大統領が五条の適用範囲として尖閣を明確に挙げているわけでございますし、また、さまざまな課題にともに協力して対処していくということについても完全に認識を一つにしてきているわけであります。

 そうしたこと一つ一つ、また、沖縄の負担軽減、米軍再編についても、お互いに信頼関係を示しながら着実に前に進めてきているわけでございます。米国側は、嘉手納以南の日本への返還について一歩一歩歩みを進めているということではないかと思います。

 こうしたことが信頼関係の上において大変重要ではないかと思います。

青柳委員 今御答弁ありました、一つ一つの積み重ねが重要だ、TPP、沖縄の問題、中国の問題、こうした問題は当然だと思いますけれども、今、肝心なことに触れられませんでした。

 やはり私は、新ガイドラインの改定、これは、総理、今全く答弁されませんでしたけれども、このガイドライン、米国の希望に沿ったとも言えるガイドラインを新たに改定できた、これが大きいのではないですか。

安倍内閣総理大臣 ガイドラインについてはもうここで答弁をしておりますのであえて申し上げませんでしたが、当然、このガイドラインについて、新たなガイドラインを発出したこと、これは極めて重要であったと思います。

 そして、このガイドラインとともに、今回の安保法制において、ガイドラインにおけるさまざまな課題に対応していく上において法制上の整備も進めていくという強い決意と意思も表明したところでございます。

青柳委員 今おっしゃられたとおり、この新ガイドラインを改定し、そして議会で、これを八月までに成立させる、こういう強い約束、我々は公約したと言っていますけれども、総理は決意を述べられたとおっしゃられておりますが、防衛大臣、この新ガイドラインの改定、これを確実に実施していくためには、今の現行法ではできないですね。

中谷国務大臣 このガイドラインの協議も現在の平和安全法制の法作成作業と並行して行っております。そして、整合性をとりながら実施をいたしておりまして、まず与党でこの内容等をまとめていただいて、政府として検討したわけでありますが、ガイドラインにおきましても、日米間でこの内容を逐一協議しながらガイドラインというものもつくりました。

 大きな柱としては三本ありまして、シームレス、切れ目のない対応、そしてグローバル、宇宙やサイバーも含めた広範囲なものになるということ、もう一つはメカニズム、実際に機能できるようにしていこうというようなことで、このガイドラインの内容は、現在の平和安全法制が成立することによって実施が担保できるものではないかと思っております。

青柳委員 今、やはり回りくどく答弁されましたけれども、要は、今の安保法制を改正しなければ、先般の訪米で約束した新ガイドライン、これはガイドラインをもうつくったわけで、改定されたわけですよね。この改定されたガイドラインを確実に実施することは、今の日本の安保法制を変えなければできない。

 これは、私、先週、関係省庁のレクチャーで確認しましたよ。今の法制でこのガイドラインはできるんですかと。できません、安保の法制の改正なくして、新ガイドライン、これを確実に実施することはできないと明確に各省庁の担当者の方はおっしゃられましたよ。大臣、そういう認識でよろしいんですよね。

中谷国務大臣 全て実施できるというわけではございません。ガイドラインの中で今回の法律によって実施し得る部分があるということでございます。

青柳委員 つまり、何が言いたいかといえば、安倍総理も中谷防衛大臣も岸田外務大臣も、まだ国内で十分に議論が尽くされていないこの安保法制の改正、国民の理解も全く進んでいないこの安保法制の改正をまず米国と約束する、そういうガイドラインの改正を行っているということです。

 これはまさに、先ほど総理が御答弁された、前政権が日米同盟のきずな、これを失った、約束したことを実行しなかったから日米同盟が壊れたとまさに答弁されましたけれども、同じ轍を踏む、同じリスクをしょっている。この安保法制はまだ改正されていないんですよ。その状況で約束してきている。これができなければ、前政権と同じように、大きく日米同盟を傷つけることになる、こういうリスクをしょったという認識を、総理、持たれますか。

安倍内閣総理大臣 それは大分違うと思います。

 そもそも、前政権のことは余り言いたくありませんが、約束を果たす気があったのかという根本的な疑念を持たれたことに大きな問題があったんだろうと思います。

 そして、ガイドラインの性格でございますが、まさにこのガイドライン、新しいガイドラインは、日米両政府の意図を表明した文書でありまして、いずれの政府にも、立法上も、予算上も、行政上その他の措置を義務づけるものではない。いわば、義務は負っていない。また、法的な権利または義務を生じさせるものでもないということでございまして、日米両国は、全ての行動及び活動は、おのおのの憲法及び国内法令に従うことも明記されています。さらには、自衛隊の活動に国会の定めた法律が必要であることも日米共通の理解であろうと思います。

 今、まさに、その中において、先ほど大臣からも答弁したわけでございますが、この新しいガイドラインの中において、もちろん、今回の法制ができなければガイドラインの全部がだめということではないんですが、このガイドラインにおいて大事な幾つかの重要な項目において担保する法制について、我々は全力を挙げていきたい。ですから、この国会において成立を期していきたい、こう考えているところでございます。

青柳委員 いや、当然、全力で成立を期している、これはわかりますけれども、私が申し上げているのは、この安保法制の改正がなければガイドラインは完全に実行できないんですから、これは大きなリスクをしょっているんだと思いますよ。

 我々はまだ賛否を決めていませんけれども、徹底的な審議を求めていますので、この国会で必ずしも成立させるべしというスタンスではありません。これは明確に申し上げておきたいと思います。

 ですから、先般の訪米、成功しましたけれども、日本国民不在で日米同盟に空手形を切っているというふうに言わざるを得ないと私は思いますよ。(発言する者あり)いや、実際に、今まだ法律改正できていないんですから。それを、ガイドラインを先に改定して、これを日米同盟の成果だとなっているんですから、私は大きなリスクをしょっているんだと思います。

 それでは、安保法制の改正の必要性についても改めてもう一度聞いていきたいと思います。

 この安保法制改正の必要性、そして、それには安保環境の変化を答弁されておりますけれども、改めて、この安保法改正の必要性と安保環境の変化について御説明をいただきたい。簡潔にお願いしたいと思います。

中谷国務大臣 まず、アジア太平洋のグローバルなパワーバランスが変化をいたしております。北朝鮮の弾道ミサイル、また、中国の南シナ海、東シナ海における活動、そして、これによってスクランブルの回数もふえてきております。そして、アルジェリア、シリア、チュニジアにおいて邦人が犠牲となった国際テロの脅威、こういう問題、あと、宇宙、海洋、サイバー、こういった問題が生じております。

 もはや地球上のどの地域で起こった脅威も我が国の安全にはかかわり合いのあることでありますし、また、もはや一国のみで日本国家を守るということができない時代になってきておりまして、こういった我が国をめぐる安全保障環境が根本的に変質をする中で、国民の命と平和な暮らしをしっかり守っていく、それができるための法律を整備する必要があるということでございます。

青柳委員 今、改めて伺いました。これまでの答弁と同様ですね。

 アジア太平洋地域のパワーバランスの問題、北朝鮮の問題、中国の問題、そして、テロ、サイバーなど新たな脅威の問題と、この四点を大きく挙げられておりますけれども、そもそも、現行の、今の法制度の中で、これらの脅威について適切に、できることをしっかり、現に今行っているのか、この点について順に聞いてまいりたいと思います。そして、そこにどんな切れ目があるのか、だから新しく法制度を変えてこれに手当てしなきゃいけない、こういうふうにお伺いしてまいりたいと思うんです。

 安保環境の変化について、私は、今の、現行できることを最大限やっているかといえば、そうではないんじゃないかと思いますので、この点について聞いてまいりたいと思います。

 まず一点目の、アジア太平洋地域におけるパワーバランスの変化について、これは、我が国の防衛計画や、陸海空軍、自衛隊の配置、これが柔軟に対応できているのか、こうしたことについて伺いたいと思いますが、これは安保法制懇の座長代理でもある北岡先生、この北岡先生も、以前より、自衛隊の装備、配備は現状の脅威に対応できていない、陸海空の予算配分は全く変わっていない、これこそ政治主導で変えるべきではないか、このように北岡さん自身が述べられているわけであります。

 中谷大臣、この自衛隊の配置あるいは予算の対応は、今述べられた現にある脅威に十分対応されているんでしょうか。お伺いしたいと思います。

中谷国務大臣 大綱、中期防をしっかりやることでございまして、まず、南西地域の防衛体制の強化、そして、各種事態の実効的な抑止及び対処を実現するための前提となる、海上優勢、航空優勢と申しますけれども、こういった確実な維持に向けた防衛力整備を優先するとともに、もう一点、機動展開能力ということで、移動を迅速にできるような能力、これを整備するということを重視しております。

 このため、例えば、水陸機動団、南西地域の陸上自衛隊の警備部隊等の新編、そしてV22オスプレイ、また、AAV7といいますけれども水陸両用車の導入、護衛艦を五十四隻体制、潜水艦を二十二隻体制、那覇基地の戦闘機部隊の二個飛行隊化に伴う第九航空団の新編、そして戦闘機も、F35Aの整備などを今後行うことによりまして、我が国の領土、領海、領空、これを断固守っていけるための体制の整備に努めてまいりたいと思っております。

青柳委員 今御答弁いただきましたけれども、予算の配分、こうしたものは十分にまだ変えられていないんじゃないかと思いますよ。抜本的に今の脅威に対応していくにはまさに政治主導で切り込まないといけないと、これは北岡さん自身がおっしゃられています。

 今の大綱、これは十分だ、今の答弁で十分だと思われていますか。

中谷国務大臣 予算の面も、十年連続マイナスでありましたが、ここ二年はプラスに転じておりますし、限られた予算の中で我が国の防衛体制をしっかりやっていくということで、部内で検討しつつ、必要なものを優先的に整備をしていくという方針で整備をいたしております。

青柳委員 限られた予算、もちろんそのとおりです。その限られた予算の中で分配、バランスを変えていくというのを北岡さんはおっしゃっているんだと思いますが、私はまだそれも十分でないと思います。

 同様に、二点目の、北朝鮮への対応について伺いたいと思います。

 北朝鮮は、ことしに入ってから、短距離弾道ミサイル、地対空ミサイルを次々と日本海に向けて発射している、これは事実です。また、先月九日には、潜水艦発射弾道ミサイルの水中発射実験に成功した、こういう報道もあります。

 これらは明確な国連安保理決議違反ですけれども、政府は本件に対してどのように対応されているのか、外務大臣に簡潔に伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、本年三月二日の北朝鮮による弾道ミサイルの発射ですが、これを受けまして、政府としましては、まず、北京の大使館ルートを通じて、北朝鮮に対しまして厳重な抗議を行いました。加えて、翌三月三日には、国連安保理の北朝鮮制裁委員会に対して書簡を発出いたしました。この書簡において、我が国は、三月二日の弾道ミサイル発射は、北朝鮮による弾道ミサイル技術を用いた発射を禁止する累次の安保理決議違反であると考えていること、また、今回の発射に関して、北朝鮮に対して厳重な抗議を行い、安保理決議の即時完全な履行を求めたこと、こうした説明を行いました。

 また、五月九日に北朝鮮メディアが報じた戦略潜水艦弾道弾SLBMの水中発射実験についても、関連の安保理決議は、弾道ミサイル計画に関連する全ての活動を停止し、また弾道ミサイル計画を放棄することを決定していることから、これは安保理決議に違反すると考えられ、安保理の北朝鮮制裁委員会に対しまして、適切な行動を期待する、こういった書簡を我が国として発出いたしました。

 こうした取り組みを通じまして、引き続き、北朝鮮の挑発的な行動を自制させ、安保理決議を遵守させる、そして関係国とも緊密に連携していく、こうした取り組みを続けていきたいと考えております。

青柳委員 簡単に言えば、ミサイル発射に対して安保理に書簡を送っている、これだけです。これで十分な対応と言えるんでしょうか。

 以前は、安保理決議まで持っていきました。そして実際に制裁まで科したわけです。なぜそこまで一々きちんとやっていかないのか。安保理決議違反だということであれば、実際に安保理にかけて制裁を決めるぐらいのこういう取り組み、ここまでやるべきではないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 個別の案件、三月二日、五月の九日の案件に対する対応は、今申し上げたとおりであります。

 そして、安保理との関係につきましては、我が国は、現在、残念ながら安保理のメンバーではありません。ですので、安保理のメンバー国と緊密な連携をとることによりまして安保理の対応を促していく、こういった取り組みを続けているところです。

 いずれにしましても、こうした北朝鮮のさまざまな挑発的な行動は、間違いなく安保理決議違反であります。この安保理決議違反に対しまして安保理のメンバー国との連携を通じてしっかりとした取り組みを続けていくことは重要だと考えておりますし、ぜひこうした取り組みを続けていきたいと考えます。

青柳委員 先ほどの防衛計画、そして今の北朝鮮への対応、あるいは先ほど我が党の丸山議員の質問にもありましたけれども、中国への対応、これは、現行法でできることをきちんと最大限やっているかといえば、私は、まだまだ現行法でもできることはたくさんあるんじゃないかと思っております。それをやらずして、憲法の解釈を変え、そしてガイドラインを改定し、この安保法制改正を提案する、これは少し一足飛びではないかということを申し上げたいわけであります。

 それでは、もう一つ伺います。

 テロへの対応についても伺いたいと思います。

 今の安保環境の変化について、テロ対応、これを中谷大臣は答弁されましたけれども、この安保法制が変わることによって、テロへの対応、具体的に何が変わって、何ができるようになるんでしょうか。教えてください。

中谷国務大臣 一般に、テロリストに対しては、国家に対応する場合と比べて相対的に抑止力がききにくいと言われておりまして、今回の法整備は、国際テロ対策を直接強化するための主たる方策であるとは考えているわけではございません。今般、在外邦人の保護措置を規定しますけれども、これは領域国の同意が得られることが前提となっておりますが、同意が得られない場合に自衛隊の部隊を派遣して自国民を保護、救出することを可能ということについては、やはり法整備を行うことについては、憲法上も国際法上も難しい問題であると認識をいたしております。

 しかし、今回の法整備につきまして、日米同盟、これが非常に強化される部分がありますので、それにとって、抑止力というものを通じまして、国際社会におけるテロ活動などを抑止し、我が国の安全を守っていくということが可能ではないかと思っております。

青柳委員 これだけ大きな法制度を変えていく、その理由が四つある。その四つのうちの一つがテロです。そのテロがどう変わるのかということに対して、今の答弁は、国民の皆さんはほとんど理解できなかったんじゃないかと思いますよ。どういうふうに変わっていくのか、どういうふうに抑止力が働いて、どうやってテロが減っていくのか。これは、今の答弁では正直わからなかったのではないかと思います。

 今、私、北朝鮮への対応、そしてテロへの対応について伺いました。ここで関連して、自衛隊法の改正、八十四条の三について伺いたいと思います。今、中谷大臣が少し答弁された件です。

 今回の自衛隊法の改正、八十四条の三で、外国における緊急事態に際して邦人保護措置を自衛隊の部隊が実施できるようになる。この邦人保護措置というのは、在外邦人の救出と輸送が可能になるということでございます。

 この法律、実施要件についてまずはお伺いしたいと思います。

中谷国務大臣 現在の法律は、安全な地域に輸送をすることだけしかできないわけでございます。

 やはり、自衛隊が、自衛官が守ることができるのは自己の管理下になった邦人でございまして、今回、新たに邦人の保護措置を設けておりまして、輸送のみならず、邦人の警護、そして救出も可能にしたわけでございます。

 このときに、職務遂行のための武器使用を可能といたしております。これは、保護対象となる邦人がいまだ自己の管理のもとにない場合を含めて、その生命または身体の防護のために、あるいは邦人保護という職務を妨害する行為の排除のために武器を使用することが可能になるわけでありますが、ただし、人に危害を与える武器使用は、正当防衛と緊急避難に該当する場合に限られるわけでございますが、こういった邦人の保護を目的とした行動ができ得るということにしたわけでございます。

青柳委員 要件について、まだはっきりしなかったわけでありますが、この法律を改正したのは、在外邦人の救出、輸送が可能になる、これが肝だという説明を私は受けました。

 先週の金曜日、五月二十九日は、日朝政府間協議、いわゆるストックホルム合意で北朝鮮が拉致被害者の再調査について約束した日から一年が経過した日です。安倍政権は、拉致問題の解決を最重要課題として取り組むんだ、これを何遍も述べられている。そして、誰よりも真剣に拉致問題に取り組んできたと言っています。

 このストックホルム合意で重い扉をこじあけた、拉致被害者の解決、事態が動いていくと、これは誰もが信じました。しかし、残念ながら、今それが失望に変わりつつある、そういう状況です。日本の外務省が行うこの外交交渉、スマートな外交交渉では拉致問題は解決できない、これは多くの関係者の声です、多くの関係者の声です。

 また、五月に訪米した山谷拉致大臣は、拉致はテロだと発言しましたが、私もそのとおりだと思いますよ。

 今回の改正で、まさに身体生命に重要な危機が迫っている在外邦人である拉致被害者、テロの犠牲者である北朝鮮にいる拉致被害者を救出できる可能性はあるんでしょうか。安倍総理、救出できる可能性はあるんでしょうか。お伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 北朝鮮によって拉致をされた被害者の全員の帰還を目指して、我々全力を尽くしているところであります。拉致被害者の方々の安全確保は極めて重要であり、政府としても、さまざまな状況を想定して対応を考えるべきことは当然であります。北朝鮮の情勢も注視をしながら、六者協議等を通じ、また、同盟国である米国との協力を初め国際社会とも連携して、あらゆる事態において全ての拉致被害者の安全確保を図るべく、全力を挙げてまいりたいと思っております。

 ただ、今回の法制において、受け入れ国の同意がなければこれは自衛隊を派遣できないというのは、もう御承知のとおりでございます。

青柳委員 国家犯罪、テロによって奪われた日本人、この拉致被害者を取り返すことというのは、現行法上できないんです。これはあえて、私は党の見解を超えていると思いますが、あえてこの問題は提起させていただきました。ストックホルム合意から一年が経過した日です。あえてこの問題を取り上げさせていただきました。

 時間が来ましたので、最後に一点伺いたいと思います。政権交代のリスクについて伺いたいと思います。

 今まで、この新三要件を満たすかどうか、これは個別の事情の判断になるとお答えされております。これは明確な歯どめになるのか、政権交代してもしっかりとこの要件は守られていくことになるのか。我々は、これは歯どめが不明確だというふうに考えておりますが、最後に総理にその件を伺って、終えたいと思います。

浜田委員長 時間が来ておりますので、簡潔に願います。

 安倍内閣総理大臣。

安倍内閣総理大臣 この三要件は、再々ここで申し上げておりますように、極めてこれは厳しい三要件でございまして、我が国あるいはまた我が国と密接にある他国に対する武力攻撃が発生して、それが国の存立をまさに脅かし、国民の生命、自由及び幸福追求の権利、諸権利が根底から覆されるおそれということになっているわけでございまして、これは安倍政権においても、あるいはまた青柳政権ができたとしても当然変わることはない、このように思います。

青柳委員 ありがとうございました。終わります。

浜田委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 戦後七十年の節目。戦後、日本は、侵略戦争と植民地支配の反省の上に、政府の行為によって再び二度と戦争の惨禍を招かないと決意し、戦争放棄、戦力を持たないことを憲法に明記して、再出発したのであります。

 ところが、アメリカの要求に従って日米安保条約を結び、アメリカの再軍備要求に従って自衛隊が創設されました。憲法九条に違反する日米軍事同盟体制の問題は国会で繰り返し議論され、その議論を通じて、政府は、自衛隊は日本防衛のための最小限度の実力組織である、海外派兵は憲法違反という見解を国会と国民に示してきました。

 しかし、九〇年代以降、アメリカにつき従って、九一年にペルシャ湾に自衛隊掃海部隊を派遣したのを皮切りに、憲法九条を踏みにじって、国連PKO協力法、周辺事態法、テロ特措法、イラク特措法などを次々とつくり、自衛隊の海外派兵を推し進めてきました。

 そうした上に立って、今、安倍内閣が提案している安保法制は、集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈の大転換に基づいて、自衛隊法などの法体系を根本から変えようとしています。この重大問題に関して質問したいと考えています。

 そもそも、集団的自衛権の行使は、日本がどこからも攻撃されていないのに、アメリカが海外で行う戦争に自衛隊が参加し、武力を行使するものであります。

 先週二十八日にもこの問題が議論されました。一体、日本はどのような場合に集団的自衛権の行使をするのか。法案は、我が国が集団的自衛権を行使する事態を存立危機事態とし、新三要件のもとで武力行使が可能と規定しています。

 中谷防衛大臣は、二十八日の当委員会において、「他国の領域における武力行動であって新三要件に該当するものがあれば、まさに憲法上の理論としては、そのような行動をとることが許されないわけではありません。」「外国の領域で武力行使を行うことは憲法上容認されるということでございます。」という答弁を繰り返して行っています。

 この答弁を改めて確認しますが、それでよろしいですね。

    〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕

中谷国務大臣 憲法の法理論としてはそのとおりでございますが、いわゆる海外派兵につきましては、一般的に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと解しておりますし、このような従来の考え方は、この新三要件のもとの集団的自衛権を行使する場合であっても全く変わらずに、新三要件から論理的に、必然的に導かれたわけでございます。

穀田委員 中谷大臣は、五月二十六日の記者会見で、新三要件に合致すれば、いわゆる他国の領域、いわゆる敵基地攻撃は可能ですねとの質問に対して、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領域に派遣するという海外派兵、これは一般的には禁止されますが、その上で、他国の領域における武力行動であって新三要件に該当するものがあるとすれば、憲法の理論としては、そのような行動は許されないわけではないということでありますと述べておられます。

 中谷大臣、新三要件に該当すれば、他国の領域に出ていって敵基地を攻撃するのは可能だということでありますか。

中谷国務大臣 いわゆる海外派兵というのは、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと解しておりますが、この敵基地攻撃についての従来からの考え方は、法理上、つまり法的な理屈の上では、新三要件のもとでも変わりはございません。

 ただし、現在、我が国は、敵基地攻撃を目的とした装備体系を保有はいたしておりませんし、また、個別的自衛権の行使としても敵基地を攻撃するということは想定はいたしておりません。

 まして、こういったことについて、従来はその方針でやってきているということでございます。

穀田委員 敵基地攻撃は可能であるということは、会見でも、論理的に言うとそういうこともあるんだということを述べておられることは確かですよね。あれやこれや言っていますけれども、そういうことだと。

 だから、安倍総理も同じ考えでしょうかね。武力行使の新三要件に該当するならば、他国の領域での敵基地攻撃も可能ということなんだけれども、安倍総理も同じ認識でございますか。

安倍内閣総理大臣 既に中谷大臣が答弁をしておりますが、基本として、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されない、こう考えています。

 このような従来の考え方は、新三要件のもと集団的自衛権を行使する場合であっても全く変わらず、新三要件から法理必然的に導かれるものであります。

 そこで、今、例として挙げられた敵基地攻撃でございますが、従来の考え方は、法理上、つまり、これは法的な理屈の上ですね、法的な、純粋に理屈の上においては、新三要件のもとでも変わりはないわけでございます。

 ただ、我が国は、敵基地攻撃を目的とした装備体系は保有をしていない、個別的自衛権の行使としても敵基地を攻撃することは想定しない、していないということはまずはっきりと申し上げておきたい。

 ましてや、個別的自衛権においてもその想定をしていないんですから、集団的自衛権の行使として敵基地を攻撃することはそもそも想定していないということは申し上げておきたいと思います。

    〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕

穀田委員 法理の問題としてはあると。

 個別的自衛権の場合は、自国が攻撃された場合の話ですから、そんなことを聞いているわけじゃなくて、新三要件に該当すればということを総理大臣も防衛大臣も繰り返すわけですけれども、新三要件として法案に書かれているのは、他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危機というだけなんですね。

 ですから、それを判断するのは時の政府であって、先ほど、想定していないとか能力がないとかというのは後でやりますから。そこで判断するのは時の政府であって、どういう基準で判断するのかというのは全く法案には示されていません。

 はっきりしているのは、日本への直接の武力攻撃がないということなんですね。にもかかわらず、どうして他国の領域に出ていって敵基地を攻撃することまで可能だというのか、その点をお答えいただきたいと思います。総理。

中谷国務大臣 今回は、憲法の理論として、新三要件ということでお話をいたしたわけでございますが、これは、敵基地攻撃についてのお尋ねでございますが、従来からの考え方として、法理上、つまり法的な理屈の上で、新三要件のもとでも変わらないということでございます。

 お話ししたとおり、現在、我が国は、敵基地攻撃を目的とした装備体系、これを保有しておらず、個別的自衛権の行使としても敵基地攻撃をすることは想定をしておりませんし、ましてや集団的自衛権の行使として敵基地を攻撃することも、そもそも想定はしておりません。

安倍内閣総理大臣 なぜそれが可能かという御質問だったと思いますが、それは、例えば、四十七年見解の基本的な論理は今も維持をしているわけでありますが、この基本的論理、すなわちそれは、「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解され」ず、「外国の武力攻撃によつて国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処」する「ための止むを得ない措置として」必要最小限度の武力の行使は許容される。この必要最小限度の武力の行使に、海外に行って、いわば派兵、武力の行使を目的として海外に出かけていく海外派兵は一般には許されないという考え方をとっております。これは個別的自衛権においてですね。

 しかし、その中においても、今の論理から導き出される中において、ミサイルが攻撃をしてくる、その策源地を攻撃しなければ、まさに今言った状況を、我々、国民を守れない、座して死を待つべきじゃないという論理が引かれているわけでございますが、従来から申し上げておりますように、この個別的自衛権においても、いわば、我々は能力を持っていない、日米同盟の中において打撃力についてはアメリカが基本的に担っているという考え方であります。

 ましてや、集団的自衛権において、例えば、米国が、打撃力を持っている米国が、打撃力を持っていない日本に、自国の安全のために攻撃をしてくれという、それは想定し得ないわけでございまして、現実問題としてはあり得ないだろうということは申し上げておきたいと思います。

穀田委員 そこには段差があって、法理上は許されるということと、新三要件では可能だということについて変わらないということを何回も述べているわけですよ。それで、例外的な話だということを繰り返して述べているにすぎないと思うんです。ですから、それは一九五九年の議論で既に明らかだと思います。それはそのとおりですよ。

 だから、問題は、日本が、どこからも攻撃されていないのに、アメリカなどへの攻撃を我が国に対する攻撃とみなして他国の領域に出ていって敵基地攻撃をすることまで可能というのが今の法理上の議論だということを、大臣は、中谷さんは何回もおっしゃったわけですやんか。そこが大事なんですね。

 だから、その意味では全く説明になっていないと私は思っています。二十八日のときにも、わざわざその議論について、五六年の議論を法制局長官は引用されていたことからも、それは既に明らかだと思うんです。

 そこで、ではもう少し、先ほど、想定しているとか想定していないとか、いろいろありましたから、それじゃ、突っ込んで、敵基地攻撃について質問したいと思います。

 私たち日本共産党の資料要求に対して防衛省が提出した「航空自衛隊ドクトリン等に関する調査研究」、これですね、あります。この文書の日付は二〇〇六年三月三十日、ドクトリンとは、航空自衛隊の行動、戦い方の原理原則をまとめた指揮運用に関する基本文書のことを指すとされています。ドクトリンは、航空自衛隊のドクトリン体系の最上位に位置づけられるもので、この文書は、ドクトリン作成過程で基礎研究として航空幕僚長に報告されたものであります。

 中谷大臣は、こうした文書が航空自衛隊にあることは当然御存じかと思うんですが、いかがですか。

中谷国務大臣 平成十八年に作成された「航空自衛隊ドクトリン等に関する調査研究」につきましては、航空自衛隊基本ドクトリンの作成に資するべく、調査研究の目的で作成され、航空幕僚長に報告された文書であると承知をいたしております。

穀田委員 航空幕僚長に提出された文書だと。

 この文書を見ると、見過ごすことができない記述が各所に、随所に見られます。

 例えば、序文には、「自衛隊は、「存在する自衛隊」から「機能する自衛隊」への脱皮が求められる」として、「抑止を前提とした従前の考えでは、新たな脅威への対応には限界がある。」「わが国の防衛を考えるに際しては、従前の体制を是とするのではなく、変革を強力に推進するとともに、日米の連携を更に強化するような施策を講じなければならない。」と書かれています。

 そして、「航空自衛隊ドクトリンの在り方」とある箇所では、「その取り扱いは慎重を期すことが必要」、慎重を期すことが必要だとした上で、「防衛計画の大綱等の防衛政策を超える行動」、超える行動として三つの項目を挙げています。

 その内容とは、第一に「攻勢対航空・戦略攻撃」、第二に「対核兵器作戦」、第三に「宇宙作戦」の三つを挙げていますが、大臣は、今後ろから回ってきているようですけれども、承知しておられますね。

中谷国務大臣 今の御質問で、事前通告なく御質問いただいておりますので、今資料を見ながら対応をいたしているわけでございますが、この航空自衛隊基本ドクトリンは、航空自衛隊の隊員が任務を遂行するに際して準拠すべき事項や考え方を共有するために、平成二十三年三月に航空自衛隊幹部が部内向けに作成した文書でございます。

 また、「航空自衛隊ドクトリン等に関する調査研究」は、平成十八年に、航空自衛隊幹部学校があくまでも調査研究の目的で作成した文書であると承知をいたしております。

 これらの文書は、いずれも防衛省の見解をまとめたものではありませんが、航空自衛隊が職務を遂行する上で必要に応じて作成した資料であると認識をいたしております。

穀田委員 提出された文書を用意しておいてくださいと言っておきました。

 それで、大体、話をすると必ず、今ありましたように、部内に向けたとか、あくまでも研究だとかいうことを言い募るわけですよね。

 でも、大臣、この文書は、「(ア)攻勢対航空・戦略攻撃」の項目の中で敵基地攻撃について述べているんですよね。

 具体的に言えば、これは、言わなくてもわかる、基本ドクトリン、これは自衛隊全体でやっていますから、そのことは言わずとも御存じかと思うんですけれども、そこには、敵の航空戦力をその根拠地周辺で撃破するために積極的に敵地に進攻し、戦闘機や爆撃機が地上にあるうちに破壊する、または、飛行場やレーダーサイト、地対空ミサイルなどの基盤を撃破する航空作戦のことを叙述しています。

 だから、航空自衛隊ドクトリンでは敵基地攻撃をこのように位置づけていて、いわば戦略攻撃として位置づけて全隊員に徹底しているということでよろしいですね。

中谷国務大臣 この航空自衛隊基本ドクトリンの第一章に攻勢対航空についての記述はございますが、この第一章は、そもそも、我が国の防衛政策等について述べたものではなくて、一般的な航空戦力と航空作戦の本質と特質について述べたものにすぎないと承知をいたしております。

 なお、我が国の防衛政策等について述べた第二章においては、「我が国の実施する作戦は、国家政策上、戦略守勢を基軸」と明記をしており、専守防衛に反するという御指摘は当たらないものであると考えております。

穀田委員 いや、それは違いまっせ。「航空優勢を獲得するためには、」と、ちゃんとその文書の中に書いているんですよ、その位置づけを。しかも、戦略の前のドクトリンの中身でいえば、こういうふうに我々は攻勢対航空を考えなくちゃならぬ、こう言っているわけですよ。そんな、位置づけを少しずらしたからといって、違いまっせなんというような話は、それは通用しませんで。(発言する者あり)すぐ、ああいって研究だと。研究はええのかということになるわけです。

 そこで、それじゃ聞きましょう。

 では、安倍さんに聞いてみたいと思うんですけれども、文書には、「敵基地攻撃については、」「与党国防部会において検討すべきことを提言されている」と書かれています。また、航空自衛隊の「任務の多様化、拡大等への対応」として、ここからが重要なんです、ちょっと総理大臣、聞いてください。(発言する者あり)秘書官、ちょっと……。

 それで、そこでどう言っているかというと、「将来の憲法改正、集団的自衛権の解釈変更」「に対応する上で、航空防衛力の運用にかかわる基本的考え方を開発し、明確にすることが必要である。」とも書かれているわけですね。恐るべきことであって、実力組織自衛隊の中で憲法改正まで云々している。

 かつて、御承知のように、三矢作戦研究というものが大問題になったことがございます。それに匹敵する重大問題と言わなければならないと思います。

 この文書が作成されたのは、二〇〇六年三月三十日、安倍総理が小泉内閣で官房長官をされていた時期で、総理はこの文書を承知しておられますか。

安倍内閣総理大臣 当時、私は官房長官でございましたが、そういう文書は承知をしておりません。

 まさにそれは、政府で共有されている考え方ではなくて、一部局の内部文書においてさまざまな研究は行うわけでありまして、いわば戦略的な状況を考えるわけでございまして、まさにそういう資料であろう、このように思うわけでありまして、まさに共有されている資料ではございませんから、当時官房長官であった私は全く承知をしていなかった、こういうことでございます。

穀田委員 承知をしていないということでは私は済まないと思うんですね。

 この文書が存在するということは中谷大臣は認めていて、それがドクトリンという形の航空自衛隊全体の方針の作成過程の、そういう基礎である、基礎文書だとこれに書いているんですね。これには、そういう基礎文書であると書いているんですよ。

 この文書では、さらに、これまでは……(発言する者あり)何か言うと、研究はあかんのかというような話をしますが、そんな話じゃないんですよ。「これまでは、政治が決定する任務や役割を受けて対応するといった受動的姿勢であったが、今後は、場合によっては、現在の任務、役割、法的な枠組みを超えて空自が主体的に議論する」、「これまでは、政治が決定したものを防衛力の役割として果たしてきたが、これからは国家意思決定者に対して、統合幕僚長を通じての軍事的専門家としての助言を積極的に行うこと」とまで言ってのけているわけですよね。

 だから、将来の憲法改正、集団的自衛権の解釈変更、これらを視野に入れて、現在の任務を超えて積極的に国家の意思決定に関与していこうというものを宣言していると言わざるを得ない。だから、自衛隊が、法的な枠組みを超えて、国家の意思決定に関与し、左右していこうということが許されるのか、その辺についての総理の答弁を求めます。

中谷国務大臣 集団的自衛権にも言及しているんじゃないかという御指摘でございますが、この「航空自衛隊基本ドクトリン」の中には、「集団的自衛権の行使については、内閣法制局は憲法解釈上」、当時でしたから、「認められていないとしており、歴代内閣はその解釈を踏襲している。」という記載がありまして、集団的自衛権の行使を先取りしたものではないということは一つ申し上げます。

 もう一点、やはり自衛隊というのは、平素から自衛隊・防衛省の任務遂行に必要な範囲でさまざまな調査研究を行うことは当然でありますので、いわゆる敵基地攻撃等について研究をすること自体に問題があるとは考えておりません。

安倍内閣総理大臣 まさに、今、中谷大臣が答弁したとおりでありまして、我が国を守るために、軍事の専門家の観点から、技術的、軍事的な、純粋に必要性等についてさまざまな議論を行うということは、検討を行うということはあり得るんだろうと思います。

 しかし、それを政策的にとり得るかということを判断するのは、私ども、国民から選ばれている政治家が判断するわけでございまして、事実、例えば敵基地攻撃については、これは予算化されたわけでもありませんし、我々の方針の中に入っているわけでもないわけでございまして、我々は、日米同盟を基盤としながら、しっかりとお互いに求められている役割を果たしていく中において、日本の安全を守っていくということであります。

穀田委員 これはだめですよ。

 大体、中谷大臣、その前の方だけ読んじゃあきませんよ、その後ろの方に、そういう実態はあるけれども、議論をするのを排除しないと書いているわけですから。わざわざこの問題について、内閣の方針はわかっているけれども、そうだとまで言っているわけですよ。そういう後半の方を読み忘れてはだめですよ。

 それから、判断するのは私たちよと言うけれども、判断する材料が上がっていなくて知らなかったと言っておって、勝手に議論しているような話を、そんなことを言っちゃだめですよ。

 ですから、与党内で、さまざまな角度から安全保障環境に対応していくために防衛力整備等の議論を積極的に行っていくとか、簡単に言うと、部隊内でいろいろなことを議論しているということなんですけれども、事は重大で、やはりこういうものが、いわば空自が勝手にやっていたとなれば、暴走じゃないかと私は思うんですね。その暴走を許していたということになるじゃありませんか。

 このドクトリン、私は、ですから、このことは、先ほど来指摘しているように、単なる戦術上の、例えば、鉄砲をどう撃つかとか撃たないかとか、どんなあれが必要かなんという話じゃなくて、ちゃんと憲法改正を視野に入れる、集団的自衛権の解釈の変更をやる、そのことを踏まえてやる、我々は法を乗り越えてやるんだ、法の枠組みを超えて我々は勉強しなくちゃならぬと言っているわけですよ、こういうことを。だから、それは明らかに憲法違反であり、重大なことじゃないかと私は言っているわけですよ。そう思いませんか。

安倍内閣総理大臣 それは、今委員がおっしゃっているのも、二つのことをおっしゃったんですが、法律や憲法を乗り越えてやるということではないわけでありまして、いわば、この安全保障環境が変わる中でどのようなことを我々は考えるべきかという中において研究をしているということだろうと思います。

 私はその文書を読んでおりませんから詳細については存じ上げないわけでございますが、まさに、先ほども申し上げましたように、いわば意思決定の場所にも、それは防衛省の考え方として上がってきていることすらないわけでございます。今、上がってきていることすらないわけでありますから、私は官房長官として存じ上げないわけでありますし、今もそうであります。

 我々がまさに今議論しているこの平和安全法制においては、全くそれとはかかわりなく、専門の学者、有識者の皆様に長年御議論をいただいた報告を受けて、まさに与党で議論した成果として、今回この平和安全法制を御議論いただいているわけでございまして、つまり、今委員が挙げられておりますその資料というのは全く内部で研究しているということだけのことであろう、そのように思います。

穀田委員 内部で検討したとしても、それは研究したとしても、枠を超えてやろうとしていることについてはだめだと私は言っているんですよ。

 文書はこう言っているんですよ。「将来の憲法改正、集団的自衛権の解釈変更、防衛庁の省への昇格等の大きな組織改編と任務の多様化、拡大等に対応する上で、」「基本的考え方を開発し、」やるべきだ。「これまでは、政治が決定する任務や役割を受けて対応するといった受動的姿勢」から変える必要があると。場合によっては法的な枠組みを超えてまでやる必要があるということまで言っているということなんですよ。

 だから、そういうことからしまして、私は極めて重大だと思います。しかも、決定機関に上げられていないんじゃなくて、これを基礎として空幕長に上げられて、正式の会議でドクトリンとなって生かしているわけですよ。そういうことではだめですよ。

 したがって、私は、このドクトリンの作成にかかわる経過と全容を明らかにする必要があると考えています。私は、議院証言法に基づき、ドクトリンにかかわる文書の提出と、当時の航空幕僚長と関係者を証人として招致することを委員長に求めたいと思います。

浜田委員長 委員会にて協議いたします。

穀田委員 そこで、先ほど、能力や装備という話がありましたので、そちらの方に行きたいと思うんですね。

 敵基地攻撃は憲法上認められると言うけれども、先ほど来、私も少し述べましたけれども、一九五九年三月十九日の衆議院内閣委員会で、当時の五九年全体の議論ですよね、その中にもありますが、当時の伊能防衛庁長官は、「仮定の事態を想定して、その危険があるからといって平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない。」と。我が国としてはそのような能力を保有しておらず、保有する方針もないと答弁しています。

 では、敵基地攻撃のための能力は、先ほど来、大臣がおっしゃっていますけれども、保有しないというのが従来の方針だけれども、この方針は今も変わっていないと言っていいですか、大臣。

中谷国務大臣 今も変わっておりません。

穀田委員 それでは、変わっておりませんと言うけれども、航空自衛隊では、新たに最新鋭のF35戦闘機の導入を決定しています。このF35とは一体どのようなものか、少し調べてみました。

 ここに、自衛隊が新たに購入するF35について、開発主体となっているロッキード・マーチン社が作成した日本語訳のパンフレット、これがあります。

 これを見ると、F35は、敵のレーダーに捕捉されにくい高いステルス性能を持ち、ファーストルック、ファーストショット、ファーストキル、すなわち、敵を最初に発見し、最初に攻撃し、最初に殺す、その能力にたけた第五世代戦闘機と説明されています。

 中谷大臣に聞きますが、このF35の戦闘行動半径はどのくらいですか。

中谷国務大臣 約一千百キロメートルであると承知をしております。

穀田委員 一千百キロメートル。正確には千九十二らしいですけれども、これによりますと。

 パンフレットをさらに見ますと、「海上自衛隊のサポート」という欄がありまして、途中で空中給油をしなくても、朝鮮半島、ロシア、中国、東シナ海まで戦闘行動が可能とあります。ですから、空中給油をすれば行動半径はさらに広がることになる。

 看過できないのは、このF35に搭載可能な武器、いわゆる兵装と呼ばれていますが、この中身であります。

 アメリカ、イギリスなどの同盟国による統合打撃戦闘機計画の資料を見ますと、例えば、空対地兵器としてJDAMというものがあります。これはどんな兵器ですか。

中谷国務大臣 JDAMというとGBU31でございますが、これは、二千ポンド爆弾にGPS誘導装置を装着した、精密誘導が可能な空対地爆弾でございます。

 航空自衛隊におきましては、我が国防衛に当たり、攻撃目標周辺の民間施設、民間人や味方の陸上部隊への被害の防止等の観点から、平成十六年度より、航空自衛隊が保有する通常爆弾に装着するための精密誘導装置の調達を進めてきたところでございます。

 また、F2については順次、このJDAM搭載機能を付加してきておりますが、航続距離等の関係で、敵基地攻撃はF2につきましては困難であると考えております。

穀田委員 JDAMというものがそういう兵器だ、精密誘導が可能な誘導爆弾だと。

 これは、アフガニスタン、イラク戦争で多く使用された精密誘導爆弾ですね。自衛隊では、非人道的兵器のクラスター爆弾の代替武器として装備を計画していると言われています。

 同じく、空対地兵器でJASSMというのがありますが、これは何ですか。

中谷国務大臣 AGM158のことであろうかと思いますが、このAGM158とは、ステルス性を有した長距離精密誘導空対地ミサイルでありまして、現在、米軍のF16やF15E等に搭載をされておりまして、将来的にはF35にも搭載する予定であると承知をいたしております。

 しかし、現時点において航空自衛隊のF35AにAGM158を搭載する予定はなくて、詳細についても承知はいたしておりません。

穀田委員 予定はないというのは未定だということで、この中には、これが搭載可能な武器なんですけれども、ここにちゃんと、できると書いてあるわけですよね。

 それで、これは何か、この兵装は。

 これは長距離巡航ミサイルで、その射程距離を見ると、約三百七十キロメートルあるんですね。東京から名古屋まで届く長さなんです。

 二〇〇三年三月二十六日の参議院外交防衛委員会で、当時の防衛庁の守屋防衛局長は、敵基地攻撃用の装備体系について、敵の防空レーダー破壊能力、航空機の低空進入能力、空対地誘導弾または巡航ミサイルなどが必要と答弁しています。

 まさに、F35はこれら全てに当てはまる戦闘機ということになるじゃありませんか。どうですか。

中谷国務大臣 一般論として申し上げれば、いわゆる敵基地攻撃には、例えば、敵の基地等の正確な位置を把握する必要があります。そして、敵の地上レーダーサイト、これを無力化して、精密に誘導されたミサイルによって敵基地を攻撃するといった一連のオペレーションを行うことに適した装備、これが必要であると考えます。

 自衛隊は、従来から、このうちの一部の装備は保有をいたしておりますが、一連のオペレーションを行うための装備体系は有しておらず、F35Aが導入をされたからといって変わるものではございません。

 この敵基地攻撃を行うために必要な個別具体的な装備につきましては、これまで保有について検討をしてきていないことから、正確にお答えすることは困難でありますが、あえて一般論として申し上げれば、他国の防空用のレーダーの妨害、無力化に用いる電子戦用航空機等が必要になるものと考えられます。

穀田委員 私が聞いたのは、全てが当てはまる戦闘機となるじゃないかと言ったので、周りの話をしているんじゃないんですよ。ですから、これはこのとおりだ、この要件には当てはまる内容だということは確かだということなんですよ。それをどうのこうの言ったって、それはだめですよ。

 しかも、当時、航続距離が長いという問題は、爆撃能力を持つ戦闘機の導入は憲法に触れるという議論が政府見解だったはずなんですね。そんなことも知らないようじゃどうしようもないが。一九七二年から開始されたF4戦闘機の導入に際しては、戦闘行動半径の長さが他国に侵略的、攻撃的脅威を与えかねないとして、爆撃装置は外し、空中給油装置を地上給油用に改修した経過さえあるわけですね。

 それさえ無視して、敵基地攻撃の能力保有のために、あれやこれや言って、そういうことを予定していないと言うけれども否定はしていないわけですから、F35を導入するなど、私は到底許されるものではないというふうに考えます。

 従来の方針を変えたのかということについて、大臣に聞きたいと思います。

中谷国務大臣 従来の方針は変えておりません。

 先ほど申し上げましたとおり、F35Aの導入によりまして、単にF35Aのみで敵基地攻撃をすることはできないわけでありまして、これを必要とするためには、敵の地上レーダーサイトを無力化するとか、また、精密に誘導されたミサイルなども対処するというような必要がありますので、一連のオペレーションを行うことにした装備が必要でございます。

 現時点において、そういうことを念頭に、敵基地攻撃のためにF35Aを導入しているわけではございません。

穀田委員 何度も言っているように、この兵装というのは可能だと言っているわけですよ、その内容ができる装備であるし、巡航ミサイルそして誘導弾でできると。それは、装備しないとは、買わないとは言っていないわけですから。

 安倍総理は、F35について言えば、二〇一三年二月二十八日の衆議院予算委員会で、「敵基地攻撃について言えば、私の問題意識としては、それをずっとアメリカに頼り続けていいのだろうか」ということを述べ、F35は絶対的に必要だと強調されています。それが具体化しているということになるわけですか。ですから、私はそこだけは聞いておきたいと思うんです。

安倍内閣総理大臣 F35に我々が期待している主な役割は、まさに相手戦闘機との戦闘においてそれを撃墜することにあるわけでございまして、その能力にまさにF35はすぐれているということでありまして、いわば相手機に発見されない、先にこちらが発見して、その相手機を撃墜するということになるわけでございます。

 言ってみれば、昔は目のいい人がエースパイロットであったわけであります。つまり、先に発見する、これが鉄則でありますが、このF35においても、相手から発見されませんから、先にこちらが発見して落としていく。

 そしてまた、相手が発射したミサイルの距離が長くなっていますから、あらかじめ上がって、そしてぐるぐる回って、コンバット・エア・パトロールですか、あらかじめ上がって待っていて、そして近接してミサイルを撃たれる前に相手を落とすということも必要になりますから、当然、そのための航続距離も必要である、こういうことであります。

 そこのところもどうか御理解をいただきたい、このように思います。

穀田委員 だから、私は一番最初に述べたわけですよ。

 このF35の能力というのは、広く、朝鮮半島はもちろんのこと、ロシア、それらを含めてずっと、千百キロメートル、千九十二キロメートル、それは飛んで帰ってこれる力を持っている。しかも、その兵装、つまり装備できるさまざまな武器というのは、航続距離の長いものもあり、そして誘導弾もできる。それは、当時守屋さんが言っていた、いわば敵基地攻撃の機材とは何かということにぴったり当てはまるという話をしたわけですよ。

 だから、今お話をずっとしていますと、結局のところ、敵基地攻撃というのは法理上も可能だ、こうおっしゃいましたよね、法理上は可能だと。そして、既に、先ほど私が現実の資料もお知らせしましたように、研究も行っている。それから、能力も備える。そして、仕上げとして法律もつくる。これをまさに戦争する国づくりそのものだということを私は言っているわけであります。とんでもないことだと言わなければなりません。

 いかがですか。

中谷国務大臣 先ほども御説明しましたが、F35A単独一機をもって敵基地攻撃をすることはできません。やはり一連の付随するようなものを擁して安全を確保しておかないと、単独で攻撃はできないということでありまして、自衛隊は従来からこういった対処の能力の一部は保有しておりますけれども、一連のオペレーション、これを行うための装備体系は有していないということで、F35Aが導入されたからということで変わるものではございません。

 そしてもう一点、何でF35Aかというと、周辺国の軍事情勢で、航空機はもう第四世代、第五世代と言われておりますけれども、かなり能力を上げております。我が国の空域、これをしっかり守るためには、我が国もそれに備えて、よりレンジの長いようなものを有して空域の侵入を防ぐという必要がございますので、今回、F35Aを導入決定をしたということでございます。

穀田委員 それは日本有事の問題ではなくて、先ほど来議論しているのは、結局のところ、アメリカとの関係で敵地に攻め込む問題について議論しているわけで、それは日本有事の場合そのことと話が違いますよ。

 だから、敵基地を攻撃するというのはそういう意味であって、何回も言うように、能力はある、装備もある、そしてそれは当時の守屋防衛局長も言っていた内容と全て合致する、そういうことで、買わなきゃいいわけだけれども、そういうことをやっているということを言っているわけであります。

 そこで、最後に、民間空港や港湾の問題について少し聞きたいと思います。

 次に、先日再改定された日米防衛協力の指針と関連して、民間の施設利用について質問をします。

 新ガイドラインでは、平時から緊急事態まで切れ目のない形で、シームレスな形での日米協力を実現するための方向性を提示したとしています。

 その中で、「A、平時からの協力措置」、「B、日本の平和及び安全に対して発生する脅威への対処」、「C、日本に対する武力攻撃への対処行動」、「D、日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動」までの四つの段階で、民間空港及び港湾を含む施設の使用などが定められていますが、岸田大臣、それは間違いありませんね。

岸田国務大臣 新ガイドラインを見ますと、御指摘のように、四章の中にA、B、Cとありまして、この部分に施設の使用について言及があります。

 そして、民間の空港及び港湾ということにつきましては、その中の「B、日本の平和及び安全に対して発生する脅威への対処」、この中の「施設の使用」の中に、我が国政府は、「日米安全保障条約及びその関連取極に従い、必要に応じて、民間の空港及び港湾を含む施設を一時的な使用に供する。」このようにしております。

穀田委員 四章の中にそのことが書いてあるということを確認しました、施設を必要に応じて一時的に使うと。

 では、具体的に空港について聞きたいと思います。米軍による使用が想定される空港はどこか。

 政府が提出した安保の関連一括法案では、現行の特定公共施設利用法を改定し、米軍、自衛隊のほか、武力攻撃事態等における米軍以外の外国軍隊を利用調整の対象に追加するとされています。

 現行の特定公共施設利用法第二条第五項では、武力攻撃等への対処として特定の飛行場施設を定めていますが、同法の空港法第四条第一項に掲げられている空港は全国で何カ所あるのか、また、主な空港はどこか、この点について中谷防衛大臣の答弁を求めます。

中谷国務大臣 特定公共施設の利用法というのは、武力攻撃事態等におきまして、港湾や飛行場などの施設における自衛隊や米軍の行動などを的確かつ迅速に実施するための利用調整の枠組みを定めた法律でございまして、あらかじめ個別具体的な特定公共施設等を指定するような性格のものではございません。

 その上で、御質問の飛行場施設につきましては、同法二条五項において、航空法等で定める空港を指すものとして定義をされておりまして、全国で九十五カ所、所在をいたします。

 主な空港としては、航空輸送の拠点となる空港として、成田国際空港、東京国際空港、中部国際空港、関西国際空港及び大阪国際空港などが規定をされております。

穀田委員 九十五、今お話あったように、成田、東京など各国際空港、それから那覇空港などを初め、主な空港としては二十八ある。これは、那覇の場合には第二滑走路をつくっていますから、それも含まれることは当然ですよね。

中谷国務大臣 全国九十五カ所ということで、那覇空港も入るということでございます。

穀田委員 那覇というのは、今お話ししたように第二滑走路もつくっているから、それも含まれるよねと。だから、それも含まれると言ったと理解しています。

 それで、さらに同法の、空港法第五条第一項に規定されている地方管理空港は五十四カ所ですが、そのうち沖縄県の空港はどこに当たりますか。

中谷国務大臣 突然の……(穀田委員「いや、それは言いましたよ、突然じゃないです」と呼ぶ)はい。

 現時点におきまして、沖縄県に関しましては、久米島空港、慶良間空港、南大東空港、北大東空港、伊江島空港、宮古空港、下地島空港、多良間空港、新石垣空港……(発言する者あり)波照間空港、与那国空港、そして粟国……(発言する者あり)粟国空港、以上でございます。

穀田委員 少々の間違いは仕方ないということですけれども、沖縄の場合、今ありましたように那覇空港のほかに十二空港が挙げられています。

 防衛省の資料によれば、これ以外にも、都営の調布飛行場や県営の名古屋飛行場など七空港、防衛省が設置、管理する千歳飛行場など六空港が列記されています。

 特定公共施設利用法では、これら全国九十五カ所の空港について、総理大臣が、空港施設の管理者に施設の全部または一部を米軍、自衛隊に優先的に利用できるように要請できるほか、要請に従った利用が図られない場合は、総理大臣による指示や国交大臣を指揮し代執行する、航空機の機長等に対して航空機の移動を命じさせることもできる仕組みになっています。

 こうした強制措置を米軍、自衛隊のみならず、米軍以外の外国軍隊を利用調整の対象に追加するというのは私は重大問題じゃないかと思うんですね。

 そこで聞きたいんです。

 今お話しした、先ほど一生懸命、米軍の話しかしませんけれども、米軍以外の外国軍隊を利用調整の対象にすると。この外国軍隊とはどこを指しているんですか。法律に書いていますから。

中谷国務大臣 法律には明記をいたしておりますが、特定の国を指定したものではございません。

穀田委員 どこかと聞いているのに、では、これはどう読むわけですか。外国の軍隊の特定はしていないということは、どこでもいいということですか。どういうこと。そして、いわばその理由は何なんですか。

中谷国務大臣 武力攻撃事態等で我が国を支援する国でございまして、米軍以外の外国軍隊ということでございます。

穀田委員 特定していないと言うけれども、そういう中身だというわけですね。

 そうすると、決まってくるわけで、どこですか。

中谷国務大臣 我が国が同盟国である米国以外の外国に対して必要な支援を要請することや、米国以外の外国が我が国に対して支援を申し出ることはございますが、この武力攻撃事態等におきまして共同対処をしていただくということでございます。

穀田委員 それは違う法案のことの外形的説明をしているだけで、米軍以外の外国軍隊を利用調整する対象にしていると。

 だから、その場合、ほかの、例えばアメリカの場合、日米地位協定がありますけれども、そういうことを含めていろいろな手だてが必要なんでしょう。だから、どういったところのことを決めているんや、この外国軍隊は。そして、その場合、その基準というのは一体全体何なんやということを聞いているわけですよ。

中谷国務大臣 我が国の武力攻撃事態等に際しまして、法律で武力攻撃事態法が決められておりまして、この法律によって、我が国の武力攻撃事態に対して支援をしてくれる国の外国軍隊ということでございます。

穀田委員 それは、一般論を繰り返し、他の条文を含めて使っているだけじゃないですか。そんなん言うんやったら、私は、やはり聞いていてさっぱりわからぬ。この問題について言うならば、これでは審議を前に進められないというのは、当たり前じゃないですか。そうですよ、この問題について明らかにできないわけだから。

 ですから、私は本委員会に資料の提出を求めたいと思います。なぜ、今の外国軍隊を利用調整、この外国軍隊とは一体何ぞや、そして、その基準とは何ぞやということについて求めたいと思います。

浜田委員長 理事会にて協議させていただきます。

穀田委員 はい。

 私は、これは一番最初に述べたように、民間空港だとか港湾だとか、それこそ自衛隊と米軍が一時的に使用するという形で、結局、住民全体をいわば軍事基地化に招いていきかねない、そういう事態になるということが一つの重大な問題だと思うんですね。

 だから、この問題について、単なる民間空港の利用というんじゃなくて、先ほど申しましたように、排除の権限もあるわ、総理大臣の権限もあるわという中で起きている、国民全体にこの問題が大きなかかわりを持ってくるということを指摘して、きょうは終わります。

浜田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時一分散会


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