衆議院

メインへスキップ



第8号 平成27年6月10日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十七年六月十日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 今津  寛君 理事 岩屋  毅君

   理事 江渡 聡徳君 理事 松本  純君

   理事 御法川信英君 理事 長妻  昭君

   理事 下地 幹郎君 理事 遠山 清彦君

      小田原 潔君    小野寺五典君

      大西 英男君    大西 宏幸君

      大野敬太郎君    勝沼 栄明君

      木原 誠二君    小島 敏文君

      小林 鷹之君    笹川 博義君

      白石  徹君    鈴木 憲和君

      武井 俊輔君    中谷 真一君

      橋本 英教君    原田 義昭君

      平沢 勝栄君    古田 圭一君

      星野 剛士君    宮川 典子君

      宮崎 政久君    宮澤 博行君

      武藤 貴也君    盛山 正仁君

      山口  壯君    山田 賢司君

      若宮 健嗣君    緒方林太郎君

      大串 博志君    後藤 祐一君

      辻元 清美君    寺田  学君

      長島 昭久君    青柳陽一郎君

      太田 和美君    落合 貴之君

      高井 崇志君    丸山 穂高君

      吉田 豊史君    伊佐 進一君

      佐藤 茂樹君    浜地 雅一君

      赤嶺 政賢君    宮本  徹君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   防衛大臣

   国務大臣

   (安全保障法制担当)   中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   防衛副大臣

   兼内閣府副大臣      左藤  章君

   防衛大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    石川 博崇君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  前田  哲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  土本 英樹君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  槌道 明宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 滝崎 成樹君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            平松 賢司君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    冨田 浩司君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  黒江 哲郎君

   衆議院調査局我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別調査室長     齋藤久爾之君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十日

 辞任         補欠選任

  大野敬太郎君     鈴木 憲和君

  宮川 典子君     小島 敏文君

  山田 賢司君     大西 英男君

  青柳陽一郎君     落合 貴之君

  太田 和美君     高井 崇志君

  丸山 穂高君     吉田 豊史君

  志位 和夫君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     山田 賢司君

  小島 敏文君     古田 圭一君

  鈴木 憲和君     大野敬太郎君

  落合 貴之君     青柳陽一郎君

  高井 崇志君     太田 和美君

  吉田 豊史君     丸山 穂高君

  宮本  徹君     志位 和夫君

同日

 辞任         補欠選任

  古田 圭一君     小林 鷹之君

同日

 辞任         補欠選任

  小林 鷹之君     宮川 典子君

    ―――――――――――――

六月八日

 集団的自衛権の行使容認の閣議決定を撤回し、関連立法も行わないことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一五八二号)

 集団的自衛権行使のための法改正など立法措置に反対することに関する請願(大平喜信君紹介)(第一七二八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七二号)

 国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案(内閣提出第七三号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官前田哲君、内閣官房内閣審議官土本英樹君、内閣官房内閣審議官槌道明宏君、外務省大臣官房参事官滝崎成樹君、外務省総合外交政策局長平松賢司君、外務省北米局長冨田浩司君、防衛省防衛政策局長黒江哲郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田豊史君。

吉田(豊)委員 おはようございます。維新の党の吉田豊史です。どうぞきょうはよろしくお願いいたします。

 週が明けまして、この委員会、前回からさまざまなことが起こったと思います。

 私自身は、質問の機会をいただいて、何よりも、国民の皆様がこの状況をどう思っていらっしゃるのか。そして、私は、常に政府がおっしゃっているように、今の状況にきちっと対応した法制が必要なんだ、そのことは当然そうだと私も思っておるわけです。国民の皆さんもそう思っていらっしゃいます。周りの状況が変わっている、それは当たり前のことです。私は、だからこそ、国民の皆様がしっかりと今回の法制の変化については納得されて、そして覚悟を持って進まなくてはいけない、このことの理解が不可欠ではないかと考えるわけです。

 そういう観点から、改めまして幾つか質問させていただきたいと考えております。

 何よりも、昨年の七月に政府の方で決定されたこの閣議決定、これによって我が国の方向が大きく変わったのではないか、こういうふうに私も感じますし、国民の多くの方々も感じる、あるいは不安に思っていらっしゃる部分がある、こう思うわけです。

 従来の集団的自衛権の行使に対する政府の考え方、これについて、内閣法制局というところ、そして内閣法制局の長官は、集団的自衛権の行使容認については憲法の改正が必要である、こういう立場を繰り返しとってこられました。

 私が調べたところでは、例えば一九八三年、角田礼次郎内閣法制局長官、「集団的自衛権の行使を憲法上認めたいという考え方があり、それを明確にしたいということであれば、憲法改正という手段を当然とらざるを得ない」と思う、こういうふうに述べていらっしゃいます。これを歴代の政権も踏襲してこられた。国民の世論を見ましても、今の今も、集団的自衛権の行使容認についてはやはり憲法改正というプロセスを経るべきだという考えが大勢ではないかというふうに私は感じるわけです。

 何よりも、自分自身が政治家として、あるいは一番大切じゃないかと思うことは、民主主義のやり方において、プロセス、手続をしっかりと皆様にお見せして、そしてそれに承認を得つつ進めていく、これが私は基本であり、これを必ず守らなくてはいけない、これなしにそういうことを進めることはできないというふうに感じているわけです。

 そういう観点からしますと、今の安倍政権が、この、憲法改正がなければ不可能という集団的自衛権の行使という考え方、これは内閣の法制局がそのように言ってきておるわけですけれども、これを、憲法の解釈改憲による形で進められるというふうになさったというのが私の昨年七月一日の理解になります。

 これで、私が最初に申し上げた、社会の環境というか国際状況、そういうものがいろいろ変わってきている、そのことは当然そうなんですけれども、憲法に対する物事の考え方、私たちのこの国のルールというものは一貫して変わっていないだろう、こう思いますので、改めて、条件は変わっていない、私たちが物事を決めていくルールは変わっていないのに、なぜ違った形でこの国の大事を決める大きなことが決定されていったのかというところを確認させていただきたいと思うわけです。

 私の知る限り、この閣議決定については、国民の世論の喚起がしっかりあって、そしてそこの国民の、多勢の感覚、判断を背負った上で決定したということには私はなっていない、国会の議論についても、私自身はその当時議員でございませんでしたので、自分の目で確かめたわけではございませんけれども、そのように理解しております。

 改めて、本来の憲法の信頼性ですとかそれから安定性、こういうものを担保とすべきだと考えられている、憲法の番人と言われる内閣法制局、まあ、内閣法制局という言葉も、一般の方々からすれば、何をしているところかよくわからないんですね。それで、物事を決めていくときに、内閣法制局が判こを押したらそれで変えていっていいのか、そういう国になっているかどうか、そういうことさえ私は正直わからないし、国民の皆様もわからないだろうと思います。

 ですから、ずっとこの委員会でも内閣法制局長官が出てこられて答弁なさるんですけれども、その答弁に実際どれぐらいの価値があるのかということさえも私はわからないので、改めて、内閣法制局長官は何をしていて、そして、今回の決定に当たって、どうしてこれができるのかということについてのお考えを確認させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

横畠政府特別補佐人 まず、内閣法制局は、内閣法制局設置法という法律によって設置されております国の行政機関でございます。

 その内閣法制局設置法におきまして、内閣法制局の所掌事務といたしまして、「閣議に附される法律案、政令案及び条約案を審査し、これに意見を附し、及び所要の修正を加えて、内閣に上申すること。」という、審査事務と称しておりますけれども、それがまずあります。さらに、「法律問題に関し内閣並びに内閣総理大臣及び各省大臣に対し意見を述べること。」という、意見事務と称しておりますけれども、そのような事務がございます。

 これらを所掌する内閣の補佐機関でございまして、行政府における行政権の行使につきまして、憲法を初めとする法令の解釈の一貫性や論理的整合性を保つとともに、法律による行政を確保する観点から、内閣等に意見を述べることなどをしてきております。

吉田(豊)委員 そうしますと、さまざまな、内閣がこれからこういうふうにするべきだという考えがあって出てくる法案に対しまして、憲法から見てそれが了解されているかどうか、そういうことについての判断を行う、そういうところだというふうに理解してよろしいと思うんですが、違いますか。どうぞ。

横畠政府特別補佐人 御指摘のとおりでございまして、法令案の審査におきまして、万が一憲法上の疑義があるということになりますれば、そのようなものは是正するように求める、そのような意見を述べるということになります。

吉田(豊)委員 そうすると、憲法そのものや我が国の基本的なルールについて、それを変更する力を持っているわけではない、常にそのルールの中において、政府が行おうとしていることが合っているかどうか、それを判断していくというふうに私は今理解させていただきました。

 改めて、今回の内閣が提案している、あるいは閣議決定を含めまして、これが憲法という今までの大きな枠の中にはまっているという、はまっているとおっしゃっていると私は考えるんですけれども、なぜそれが言えるのかという、この認識について、法制局の考え方を確認させていただきたい。

横畠政府特別補佐人 先ほど御指摘のございました、従前、内閣法制局長官、歴代でございますけれども、集団的自衛権の行使は憲法を改正しなければできないと言っていたではないかという御指摘でございます。

 昨年七月の閣議決定ということになりますけれども、今回のいわゆる集団的自衛権についての解釈のポイントというのは、ごくごく、その結論だけ申し上げますと、いわゆる国際法上認められている集団的自衛権一般、フルセットと言ったりしますけれども、それを認めようというものではございません。そのような集団的自衛権一般を認める、別の言い方をすれば、他国防衛のために我が国が武力を行使する、そういうことをするためには、やはり憲法改正をしなければそれはできないという考え方は私自身も変わっておりませんし、昨年の閣議決定において、政府としてそのような考え方は維持しているということと理解しております。

 その上で、今回やろうとしていることでございますけれども、若干、従前の、我が国に対する武力攻撃が発生した場合における個別的自衛権の発動を超える部分というのが確かにございます。その部分は、国際法上は集団的自衛権の行使として違法性が阻却されるということでございますので、集団的自衛権という概念で説明せざるを得ないということでございます。

 その実態と申しますのは、集団的自衛権と申しましても、それは、我が国に明白な危険が及ぶ、そういう場合に限定いたしまして、かつ、我が国を防衛するために必要最小限である、他に手段がない、そういう限定されたものであるということで、その点がポイントでございまして、そういうものであるならば、これまでの憲法の解釈と整合する、憲法九条のもとでも許容される、そのように解しているということでございまして、言われるように、従前から申し上げているような、集団的自衛権一般を許容しようというものでは決してございません。

吉田(豊)委員 重要な部分は、限定して、そしてその限定があった上で今回の判断は可能だというのが内閣法制局の判断だろうというふうに思うわけです。

 改めて私は、この流れからして、内閣法制局長官の発言というのは非常に重いものだ、こう感じるわけですけれども、具体的に、我が国がどういうふうな形でこの考えを踏襲してきたかというところ、そして、また改めて、今回の解釈というのはしっかりと今までの考え方のもとにおさまっている、こういうことを今おっしゃられたわけですね。

 私、大変失礼ながら確認させていただきましたけれども、長官御自身の御発言について少し確認させていただきたいと思うわけです。

 それは、長官がまだ長官にならっしゃる前だと思いますが、平成十七年三月の二十五日、衆議院の安全保障委員会において御発言されています。政府参考人として答弁をされているわけですけれども、ずっと入りまして最後の方、

  他方、他国に向かう弾道ミサイルにつきましては、それが実際に他国に対する武力攻撃であったならば、それを我が国が撃墜するということは、やはり集団的自衛権の行使と評価せざるを得ないのではないかと考えておりまして、それを我が国が行うということにつきましては、やはり憲法上の問題を生じ得るのではないかと考えているところでございます。

そのとおりだと私は思うわけです。

 そして、これは長官御自身も、その当時に、このことについては、集団的自衛権の行使というものは憲法上の問題が生じ得る、こう御発言されていると私は理解するわけですけれども、この考え方と、今おっしゃった、限定すれば、限定的に条件をつければそれが可能であるというところ、私は、普通に考えると、何か違ったことをおっしゃられているというふうに感じるんです。

 これについて、改めて、どういうことなのかということを御説明いただきたいと思います。

横畠政府特別補佐人 アメリカに向かう弾道ミサイルを撃ち落とせるか、そこはもう前提として、技術上の問題、能力上の問題、さまざまあるんですけれども、純粋に法理上の問題としてお答えいたします。

 先ほど申し上げたように、集団的自衛権というものを限定して捉える、限定した部分についてのみその行使ができるというような考え方は、まあ最近の考え方でございまして、当時私自身も念頭にありました集団的自衛権というのは一般的な意味での集団的自衛権ということで、我が国に対する武力攻撃が発生していないのにもかかわらず、同盟国たるアメリカに向かうミサイルを撃ち落とす、そういうプロセスを考えてそのように答弁申し上げたところでございます。

 今回のような、限定された場合、そういう要件を満たす、条件を満たすということになれば、それは可能になるという場合もあり得る、そういう関係でございます。

吉田(豊)委員 おっしゃっているところはそうなのかなというふうに思うし、全く違うなとも思うものは何かといいますと、それは、何度も今長官の答弁の中に、やはり状況が変わっているところに、きちっとした限定という枠をはめて、新たな要件をつけて、その上での話を私はさせてもらっています、こうおっしゃっているわけですね。

 そうなると、明らかにこれは、その要件がきちっと今回の法制の中に入り込まれている、明示されているのかどうかということこそ、これが合憲かどうか、あるいは法制局長官として一貫したスタイルで、考え方で物事を進めていることができているかどうかにかかってくると思うわけです。御本人の考え方が今合っているかどうかは後ほどまた戻ってきたいと思いますけれども、私は今のところ納得できていない。

 なぜ納得できないかというと、それは、今回、六月の九日に政府の方でお出しになった二枚のペーパーがあります。「他国の武力の行使との一体化の回避について」、もう一つは「新三要件の従前の憲法解釈との論理的整合性等について」、この二枚の紙をお出しになっている。

 それは、私が想像しますにですけれども、この間に、憲法学者何人もが、これについては、やっていること自身が憲法にルール違反をしている、こういう判断をなさっているということなんですね。これを受けて、世論、国民は一層不安になっています。それは、もしかしたら政府自身がきちっと我が国の物事を決めるルールに従ってやっていないのではないか。

 やっているとすれば、ここに、今長官がおっしゃった限定的要因がきちっとはまっている、そこが生命線になるわけです。私は、これをもう一度きちっと今確認させていただきたいと思います。

 「他国の武力の行使との一体化の回避について」ということで、一、二、三と、三つのところに分かれて書いてあるわけですけれども、まず、私は、他国の武力との一体化の回避というところ、これについての枠がきちっとはまっているのかというところを確認させていただきたいわけです。

 なぜこの他国の武力行使との一体化の回避が重要かといいますと、それは、単純に考えまして、憲法は、この平和安全法制が合憲か否かを判断するためには、他国の武力行使との一体化が行われないということが今までのこの国の姿だったわけです。だから、何をされようとも、これをきちっと担保してもらわないことには、これは、それ以外のことについては私たちは納得できないというのが当たり前の考え方じゃないか、こう思うわけです。

 そして、ここにおいて、六月の九日に出されたこの文書を見ますと、「1戦闘活動が行われている、」から2、3、4とあって、それらについて、いつも中谷大臣もおっしゃっていますけれども、総合的に、そして個々的にと。これは、一見、聞くと、総合的と個々的と、よくわからなくなる考え方だと思うんですが、総合的というのは状況そのものを総合的に考えて、そして、一つ一つの案件を個別にということだと思いますけれども、それにしても、この話にしても、全て基本の枠があった上での判断だということには間違いないわけです。それが先ほど長官がおっしゃった、根本の考え方は変わっていませんよということだから。

 これで一番大事なことは、私は、我が国が他国の武力行使との一体化の回避についてどういう条件をつけてきたかというと、六月の九日に政府が出された1から4のほかにも、具体的な、つくり上げた法案として、当然内閣法制局が了解しているものですが、周辺事態法ですとか、それから旧テロ特措法とか、こういうものがあるわけです。ここにおいては、きちっと明文化されて、武器弾薬の提供、戦闘行為のために発進準備中の航空機に対する給油、整備、これは明らかに武力行使との一体化の観点から禁止しているわけですね。きちっと法文の中に書き込まれているわけです。これは、私は、さまざまなものをやっていく上で、憲法が許容していくためにきちっと枠をはめている、あるべき姿だと思うわけです。

 これが、今回のところには、六月九日の紙一枚を見ても、抜けていて、「個々的に判断する」、こういうふうにおっしゃっているわけです。

 こうすると、この紙自身、出されましたけれども、これで何の合憲性を証明していることになるのかという根本的な疑問があるわけです。お答えください。どなたがお答えになったらいいのかな。長官、お願いします。

横畠政府特別補佐人 御指摘の現行法におきましては、武器弾薬の提供でございますとか、発進準備中の戦闘機への給油については行わないということにしてございます。

 その理由でございますけれども、端的に申し上げれば、実際のニーズがないということでそれは除外してあるということでございまして、そのような活動が他国の軍隊の武力行使と一体化するから除外したということではございません。

 そのような行為が、今回はそのような活動についてのニーズが生じている、そういうことを踏まえて、先ほど御指摘のあった、これまでの考え方を踏まえてさらに検討した結果、今回のような基準を設けることによって一体化するものではないという整理ができた、そういうことでございます。

吉田(豊)委員 今ほどの法制局長官の考え方を聞いておられて、現場を担当なさる中谷大臣は、それでわかったと私は言えないんじゃないかなと思うんです。

 なぜかというと、こういう、国の、国民全てがかかわるかもしれないという大きな問題について、きちっと了解があった上で、国民の合意があった上で、そして枠がはめられていて、私はその部分についての判断権を与えられています、委ねられています、そういうことであれば当然できるんですけれども、この六月九日の文書を見たら、結局は、状況を「総合的に勘案して、個々的に判断」いたしますと言っている。

 これは、言い方をかえれば、政府に全てその裁量権をお渡ししますと言っているというふうにも私は見えるんですね。法律としての縛りがきいていないんじゃないかという考え方を私はしているわけです。

 これについて、防衛大臣は、そういう形で、自信を持って、全ての責任を持ってこれについて判断していけると御判断なさっているのか、お聞きしたいと思います。

中谷国務大臣 今回の法律の整理で、いろいろな事態を設けまして、それぞれ定義をいたしております。

 基本的には、今までの憲法の基本的な論理、これをもとに考えておりますが、いわゆる新しい三要件をつけまして、それによって、これからなされているわけでありますので、基本的に、その枠組みといたしましては、存立危機事態におきましては、まず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生をした、これがまず大前提、その後で、それが、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるという事態と、ほかに手段がないか、そして必要最小限か、この三要件、これで縛りをかけております。

 では、どういう事態かといいますと、他国に対する武力攻撃が発生した場合において、そのままでは、すなわち、その状況のもとで武力を用いて対処しなければ、国民に、我が国が武力攻撃を受けたと同様な深刻また重大な被害が及ぶことが明らかな状況であるということで、個々いろいろな事態が発生すると思います。

 そういった点においては、その攻撃国の意思とか能力とか事態の発生場所とか、個別の規模とか態様とか推移とか、そういうところをやはり総合的に判断して、そして、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、それから、国民が犠牲となる深刻性、重大性、そういうところから判断をするわけでございます。

 これはどういう事態かといいますと、我が国に武力攻撃を与える場合におきましても、いろいろな事態が考えられますので、こういう事態ということを述べることは一例にすぎませんが、考え方としては、今私が説明したような条件のもとにいろいろな事態を総合して判断するということでございます。

吉田(豊)委員 それは、国民の皆様にそういう事態を想像してよと言っていらっしゃるんですか。いろいろな場合があると思うので、それを想像してください、その上で、何か想像がつくだろうから、これについてはこの法案は進めさせていただきたい、そういうふうな考え方で今、今のはちょっと長かったなと思いますけれども、おっしゃっているんですか。違いますよね。そういうことではないですよね。

 ですから、私がきょうお聞きしているのは、やはり一つ一つきちっと明確に、国民も文章になっていればわかりますよ、私だってわかる、そこに書いてあれば、ああ、これが一つの枠になっているんだなと。でも、それがないから、国民は今、さまざまなものについて、これはでは一任ですかと。

 いや、一任じゃないんだと思いますよ。一任じゃないんだからこそ、では、これがきちんと明文化されて何が悪いのかということなんですよ。明文化してくださいよと僕は国民として思う。

 では、それで何か都合が悪いんですか。私は、ここに例はないからという、想像がつかないからということをおっしゃったけれども、想像がつかないからということでおっしゃるのであれば、ホルムズ海峡の例が何か出てきているんですよね、具体的なものとすれば。あれにしたって、いろいろ説明されればされるほど、どんどんどんどん国民は、何か、自分たちにとって、これはどう理解すればいいのかなという事例にしか聞こえてこないんです。

 もう一つ、この六月九日の文書の中で、「「非戦闘地域」や「後方地域」といった枠組みを見直し、」と書いているんですよね。でも、これはこれできちっと、従来必要だからこういう考え方が出てきているわけですわ。それが、先ほど長官がおっしゃった、憲法の中に、今、時代の要請に合わせてやらなくちゃいけないことをやるに当たって、こういう枠、こういう考え方を当てはめた上で、その中だからこれは了解しますねと変わり、進めてきたわけじゃないんでしょうか。

 それが、こうやってそれを見直しと言って、「枠組みを見直し」と、それで出てきたものは何かというと、それは今度は「現に戦闘行為を行っている現場」については「直ちにそこで実施している支援活動を休止又は中断する。」。当たり前だろうし、それに、それは、このことの判断というのは、現場の人の危険性ということで判断しているんですね、これ。そういう読み方でまずいいんでしょうか。

 この「「現に戦闘行為を行っている現場」となる場合に」、これを判断基準としてやめる、やるやらないとかというのは、それは現場が危険かどうかという、その判断でなさっているという理解でいいかどうか。短くお願いします。

中谷国務大臣 それは憲法論と安全論と二つあります。

 憲法論的に言いますと、武力行使と一体化をしないようにということで、今までは非戦闘地域ということで規定をしておりました。

 今まで二度経験しました、インド洋のテロ特措法そしてイラクの人道復興支援、ここで非戦闘地域という概念を設けておりましたが、これは、いわゆる戦闘行為が行われている場所に加えて、将来もその期間に起こらない場所としておりました。やはり、この二回の経験と、また国際社会の変化を加えて、一度指定されますと、なかなか変更がききません。現実に、やはりいろいろと戦況等は動くわけでございますので、憲法的に、武力行使になるという観点で、現に戦闘行為が行われている現場以外の場所というところは、憲法的にここは絶対にだめですよということを指定した。

 安全的には、これは法律で、防衛大臣は、自衛隊が活動する上において円滑、安全に実施できる場所ということを規定しまして、そして、自衛隊が、その間戦闘行為が発生する見込みがない場所を指定するということで、こっちは安全論で規定をしているわけでございます。

吉田(豊)委員 明らかに今おっしゃっていることというのは、今までの非戦闘地域というものの設定については動かしにくいと。それはきちっと時間をかけて考えなくちゃいけないということですよね。それは当然、さまざまな要件を満たしていかなくちゃいけない。それがあるからこそ、これが、憲法がやってもいいと言っている、その法の理論に、手続上の理論になるわけなんですよ。

 だから、これを外すということを言っているということは、では、その考え方自身が今までの憲法の考え方に合致するかどうか、このことこそを確認しなくちゃいけないと私は思うわけです。

 そして、その上で、今おっしゃった、さまざまなことをやっていくということで、私最初に言いましたけれども、これは何をやっているかというと、我が国の活動をやるんですよね。我が国の活動は必要性があるんですよ、日本という国においても国際社会においても。だから、それが安全か安全じゃないかとかという、その現場がどうなっているかということ、それだけで判断するのではなくて、それは基本として、武力、武器を使う相手が国なのか、国に準ずるものなのか、そういうことこそが今度は、憲法としての要件に合致するかどうか、ここにかかってくる話なんです。それを担保していたのは、非戦闘地域の指定という、間違いなくこういう考え方なんですよ。

 だから、これを外すということ自身が、憲法としての合理性、合憲性の要件について、これを外すのであれば、新たに別のものを組み込まなくてはいけない、こういうふうに私は考えるんですけれども、私が言っていることは間違っていますか。

横畠政府特別補佐人 非戦闘地域というのは、自衛隊の補給支援等の活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域をそのように称していたわけでございますけれども、それは、なぜ一体化が防げるかというと、まさに他国軍隊の戦闘行為が行われないわけですから、一体化することもない、そういう考えでございます。一体化する相手方がないということでございます。が、やはり、活動の期間を通じてといいますと、将来ずっとという感じになりまして、運用上も、実際上、個々の活動というより、派遣の期間を通じてというような形でこの非戦闘地域の設定というのが行われていたと承知しております。

 そのような関係で、他国の戦闘行為がないところでの補給は、それはよいという前提がもともとある話でございますので、その一体化の部分は一体化の部分として純化した要件とし、安全確保の点は安全確保の点で、さらにその実施区域の指定というところでしっかり配慮する。

 そういう役割分担、これまでは非戦闘地域ということで両方兼ねていたのですけれども、条文上役割分担をした。それによって、個々の活動ごとにまさに戦闘行為と遭遇しないということを担保しようということで、それによって憲法上の問題は解消していると思います。

吉田(豊)委員 個々の状況を見て判断する、それをもって憲法上の合憲性を担保すると。本当に反対のことをおっしゃっていますね。憲法上に合致するからこそ、個々の要件が、個々の状況が認められるかどうかということじゃないかと私は思うわけです。

 国民の感覚というところでいうと、ホルムズ海峡についても、やはり、あれは先週の委員会でも、うちのところの木内委員が聞きましたけれども、国会の承認は事前ですよねと言ったら、中谷さんはそうおっしゃいました。僕もそのとおりだと思います。事前に承認を得るべき具体的なイメージなんですね。

 そうすると、本来の話として、自衛権の発動という、集団的であれ個別でも何でも私はいいんですけれども、自衛権の国際的な発動要件からすれば、当然、急迫不正というものが一番大きな枠としてかかっているわけですわ。そうすると、国会の承認を得ることができるという、急迫じゃないですよ、もう明らかに、一般の感覚は。

 だから、そういうこと一つ一つをとっても、長官、済みません、せっかくお越しなのに申しわけありませんけれども、そういう一つ一つのことが、やはり国民から見てそうだなと思ってもらわぬことには、もうこれは進まないですわ。私、進まなくていいかどうかということは、党とすれば判断がありますから、今ここでは申し上げませんけれども、やはり国民にもっときちっとわかってもらって、そのときにきちっとリスクがあるんだと。リスクがあるかないかもわかりません、それについても、ないならないということを説明を尽くしてもらわなくちゃいけないし、こういう丁寧な姿勢。

 そして、何よりも、昨年にあの閣議決定をなさったことが、やはり、ここに来て物事を進めようと思ったら進まなくなっている一番大きな要因だと思います。私は、それを後ろからお支えになったのが内閣法制局じゃないかな、こう思っているわけです。

 だから、改めて、私は先ほど、長官の個人の御発言について、前はこう言ったじゃないか、今はこう言ったですね、僕はこういうのは本当は大嫌いなんです。なんだけれども、これはやはり立場があっておっしゃっていることだから。私はこの短い期間に聞いて、限定的にということをおっしゃった。だけれども、私は、今の今も納得できない。

 ですから、改めて、時間がなくなりましたので委員長にお願いいたしますけれども、私がお聞きした、内閣法制局長官、この方が二つの答弁をなさっている、きょうは矛盾しないとおっしゃっている、でも、過去にはだめだとおっしゃった、これがなぜ変わったのかということを、私は、国民にわかりやすく説明できる、そういうような紙を出していただきたい、こう思うんです。お取り扱いいただけないでしょうか。

浜田委員長 理事会において協議いたします。

吉田(豊)委員 ありがとうございます。

 やはり一つ一つ明確に、そしてきちっとわかることによってしかこの委員会も進まないし、そして結果も出てこない、私はこう思うわけです。

 改めまして、ホルムズ海峡のことを、本当に何遍でも聞かれます。新聞とかを見ると、何か想定されている話がどんどんどんどん、電気がなくなったらどうするんだとか、それから石油がなくなって病院に苦しい人たちが出てくるとか、こういう話が出てくるんです。

 済みません、官房長官、せっかくお越しいただいていて、私は、国民の理解ということからすると、今のままのやり方で進めていっていいとお考えなのか、あるいは、これを進めていくに当たってもう少し考えなくちゃいけないことがあるのではないか、このことについて、お考えをぜひお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。

菅国務大臣 冒頭、吉田委員から発言がありましたけれども、今の安全保障で国民の生命とか平和な暮らしを守ることはなかなか厳しいという認識は一緒だというふうに思います。

 私たちは、一年前に、新三要件という、先ほどから説明がありましたけれども、こうしたものを閣議決定し、今回法案を提出させていただいています。

 ぜひ、国会でまさに議論をしていただいて国民の皆さんに理解をいただく、そのことが大事だというふうに思っていますので、この特別委員会の中で積極的に議論をして国民の理解を進めていただければありがたいと思いますし、私どもも真摯にお答えをさせていただきたいと思います。

吉田(豊)委員 最後に、真摯にお答えなさるという言葉は本当に大事だと思います。

 結局は、信頼関係、これをつくっていかないことには、何をしていても、では最終的に、これがもしかして決まりました、できましたといっても、国民が本当にこれでいいと言わないことには何の役にも立たないし、そしてそれは、最終的に、岸田外務大臣いらっしゃいますけれども、国際社会で、どうなっているんだ、このプロセス、やり方を、この法案を決めていくに当たって、日本という国はきちっと民主主義の国として信用できるのかどうなのか、ここが見られているとしか考えられないんですね。

 ですから、それを守っていらっしゃる法制局長官のお言葉を失礼ながら確認させてくれと、ここまで言いました。でも、私は、その出てきた文書を見せていただいて、そしてこれを見て国民の方々が納得できるのか、この判断の仕方をなさっていく、そういう政府の出されるこの法案にも賛同できるのかどうなのか、これを引き続き私なりに確認させていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。

 時間が来たので終わります。ありがとうございます。

浜田委員長 次に、落合貴之君。

落合委員 昨年末の衆議院選挙で初当選をいたしました維新の党、落合貴之でございます。

 本日は、平和安全法制にまつわる問題について、外務大臣、防衛大臣にお尋ねをさせていただきます。

 まず、日米安全保障条約についてお尋ねをいたします。

 安倍総理は、本年五月二十六日の衆議院本会議にて、「日本が危険にさらされたときは日米同盟が完全に機能するということを世界に発信する」というふうにおっしゃいました。

 そこで質問ですが、日本が他国からの武力攻撃にさらされたとき、日米安保条約によりアメリカは日本を必ず助けてくれるんでしょうか。

中谷国務大臣 日米安保条約は、第五条におきまして、我が国への武力攻撃に対して日米が共同で対処するということを定めております。つまり、日本が攻撃を受ければ、米国は日本を防衛する義務を負っております。このコミットメントは、せんだっての総理の訪米、そして外務、防衛両大臣の会議である2プラス2におきまして、このことは確認をされておりまして、政府としては全く疑いを持っておりません。

落合委員 共同で対処するというコミットメントもあるということで、日米安保条約、きょう、お手元の資料、コピーをさせていただきました。

 安保条約、この五条のところを読みますと、最初の配付資料二が英文で、四が和文です。日本語の方を読みますと、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」、そういうふうに書いております。これは、一つ一つ文字を見てみますと、日本の施政下、英語では「アンダー・ザ・アドミニストレーション・オブ・ジャパン」とある、この領域が対象だとあります。

 もし仮に、例えば尖閣が急襲されて、襲われて乗っ取られてしまった、施政下から外れてしまった、その場合、施政下におけるという領域が条約には書かれていますが、施政下から外れている場合、これは五条の対象になるんでしょうか。

岸田国務大臣 日米安保条約五条について御質問をいただきました。

 日本とアメリカの間においては、まず、日本の施政下にある領域は日米安保条約第五条の適用対象であり、尖閣諸島もこれに含まれること、これは累次の機会において確認をし続けています。そして、あわせて、米国は、尖閣諸島に対する施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する、こうしたことも確認をしています。これは、昨年の四月のオバマ大統領訪日時の日米首脳会談においても同様でありますし、また、ことし四月、日米2プラス2を開催いたしました、この共同発表においても明記をいたしました。2プラス2文書においての記載は、これは初めてとなりました。こうした積み重ねによって、我が国としましては、米国の条約上のコミットメントを確認しておりますし、信頼を置いています。

 そして、一方、我が国としましては、引き続き、御指摘のようなことがないように、我が国の領土、領海、領空、これは断固と守り抜く、こうした方針のもとで毅然かつ冷静に対処しております。

 施政下を離れた場合どうなのかという御質問がありました。

 我が国の立場としては、領土が施政下から外れる、こういったことは決してあってはなりません。そうしたことを前提として議論をすることは適切ではないと考えています。

 今申し上げましたように、米国のコミットメント、これは再三確認をしておりますし、我が国としても、御指摘のようなことがないように、これは毅然と対応しています。我が国の考え方としては、それに尽きると考えております。

落合委員 切れ目のない安保法制をしいていく、そのためには、万が一、万々が一、施政下に尖閣などが置かれない状況ができてしまった、これに対する備えをするのが安全保障であるというふうに思います。

 今、それを前提に議論をするべきでないとおっしゃいましたが、それでは、この日本の領土、領海を守る上で、これは穴になってしまうんじゃないですか。

岸田国務大臣 今、国会で御議論いただいておりますのは、おっしゃるように、切れ目のない対応を整備することによってリスクを下げていく、こうした考え方に基づいてどうあるべきか、御議論をいただいております。

 御指摘のような状況にならないように、切れ目のない対応をしっかり整備していく、これが何よりも大事だということを申し上げ、そして、そのためにどうあるべきなのか、御議論をお願いしているところであります。

 ぜひ、御指摘のような事態にならないように、切れ目のない対応についてしっかり整備をする、こうした御議論を引き続きお願いしたいと考えております。

落合委員 尖閣が、あってはならないですが、急に襲われて施政下から外れてしまった、その場合に、必ずアメリカが助けてくれるかどうかはまだわからない、議論をされていないということは、やはり防衛上の穴として認識をしていかなければならない問題の一つであると思います。

 そして、施政下から外れていてもアメリカが日本を助けてくれるとしまして、これは、よく読んでみますと、第五条に「共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」行動する、英語ではアクトと書いてあるわけですね。アクトというのは、イコール軍事行動であるというふうにコンセンサスはとれているんでしょうか。例えば、アメリカが遺憾の意をあらわすというだけでも一般的にはアクトと見えると思うんですが、これについてはどうなんでしょうか。

中谷国務大臣 まさに日米間におきましては、そうならないようにするために、平時から有事に至るまでの間、共同で対処し得るようなことを協議し、そして、訓練におきましても日米共同訓練を実施しておりますけれども、自衛隊も持てる力を十分発揮していきますが、日米でしっかり共同対処していくということを可能とするために、共同訓練もし、また協議をしながら、しっかりと日米安保条約を果たし得るという体制をつくっております。

 また、今回の2プラス2におきましても、同盟メカニズムというものを確認いたしました。これは、日米両国間におきまして、実際においてしっかりと行動ができるように、平素からそういう仕組みをつくりましょうというようなことで、実際に共同で対処し得るような仕組み、こういうことも設けて、こういった事態にしっかり対応できるようにしているということでございます。

落合委員 地球全体を俯瞰する前に、やはり足元をいかに守っていくか、これに関して国民の理解をもらっていく、説明して、もらっていく、これがまず第一に重要なことであると思います。しかし、それを忘れて、地球全体の平和のために、そのために行動することが日本を守ることであるという説明よりも前に、やはりこういう穴をしっかり埋めていかなければならない。

 このアクト、行動について質問しましたが、日米安保条約に似ている条文、これはNATOの例えがよく答弁でも出てきますが、NATOは集団安全保障体制をとっていますが、いずれの加盟国に対する攻撃も全加盟国に対する攻撃とみなして、集団的自衛権を発動するというような仕組みになっています。

 このNATO条約は、文言が日米安保と似ているんですが、アクトとは書いていません。フォースと書いてあります。要は、明確に軍事行動ということを示しているわけで、日米安保を締結する昭和三十五年につくられた文書が、わざわざフォースではなくてアクトになっているというところは、しっかりと我々は認識をしなきゃいけない問題だというふうに思います。

 それから、国際条約全般的にそうですが、日米安保条約も、「ピース・アンド・セキュリティー」という文言、平和と安全という文言がちりばめられていますが、この五条の今読んだ部分だけ、なぜかセキュリティーではなくて「ピース・アンド・セーフティー」、セキュリティーではなくてセーフティーという言葉をなぜか使っている。私、なぜセキュリティーじゃなくてセーフティーなのか、これは条約ですから、わざわざこういう言葉を書いたわけなんですが、どんな文献を読んでもわかりませんでした。ただ、これは昭和三十五年に何らかの意味があったというふうに思いますので、ここは改めて質問をさせていただきたいと考えております。

 さらに、この五条の議論を進めさせていただきますが、「自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言」しますとあります。これは、米国も憲法上の規定及び手続に従って行動するわけですが、米国が派兵する手続、これは具体的にはどうなっているんでしょうか。大統領が行けと言えばすぐ行くわけではないと思うんですが、どのように認識されていますでしょうか。

岸田国務大臣 日米安全保障条約五条における「憲法上の規定及び手続」ですが、米国につきましては、米国憲法上の手続、すなわち、米国憲法第一条に規定されている連邦議会による戦争宣言、あるいは同二条に規定されております米国軍隊の最高指揮官としての米国大統領の権限、こうしたものを指すものであると考えております。

落合委員 その規定の内容、要は、米軍が、例えば尖閣が襲われたときにすぐ来てくれるのかどうか、これは、米国の動きを把握していないと、自衛隊も、いつ来てくれるのかわからない上で動かなきゃいけないわけですが、それについて把握しているのか。そして、具体的にはどのような手続を経て米国軍が助けに来るんでしょうか。

岸田国務大臣 まず、基本的には、先ほど申し上げましたように、米国憲法第一条の議会による戦争宣言、そして第二条の米国大統領の権限、これが基本になります。

 そして、こうした戦争に対する権限、合衆国憲法における戦争に関する権限につきましては、大統領と議会に分割されております。そうした考えに基づいて、米国内でさまざまな手続が定められ、そして整理をされていると承知をしております。

 こうした考えに基づいて、米国内で手続が行われる、我が国としてはそのように承知をしております。

落合委員 その具体的な手続というのは防衛省は把握しているわけですよね。それじゃないと、何日後に来るとか何時間後に来るとかわからないと作戦を立てられないですが、防衛省はどうなんでしょうか。

黒江政府参考人 今先生お尋ねの点は、米軍の行動についての米国内の法手続の詳細ということでございますので、これについては、私ども防衛省として、なかなか明確にこうだと言えるような政府内での立場にはないわけですけれども、我々として今承知しておりますのは、先ほど外務大臣からも御答弁ありましたけれども、合衆国憲法上、戦争に関する権限というのは連邦議会と大統領が共有しておる。連邦議会は戦争を宣言する権限を持っている、他方、大統領は米軍の最高司令官としての権限を有している、そういうことでございます。

 また、双方の権限の履行を目的として、米国では戦争権限法といったものが制定されていると我々は承知してございますが、大統領が米軍を敵対行為、戦う行為ですが、これに投入した後に、一定の期間以内に、連邦議会による戦争の宣言もしくは米軍の使用権限の付与がなされない場合、または、連邦議会が両院一致決議によりまして軍の撤収を命ずるような場合、こういう場合には、原則として大統領は軍の使用を中止する、または軍を撤収しなければならない、そういう規定であるというふうに我々としては理解をしております。

 その上で、日米間でさまざまな事態に対しましてどのような形で具体的な共同対処行動を行うべきかといいますものは、先ほど大臣からもお答えをいたしましたけれども、今般の2プラス2におきまして、新たな日米防衛協力のための指針といったものを定めてございます。

 これにつきましては、日米の間で一定の事態に対しましてさまざまな共同行動をとる際の一つのガイドライン的なものを示したものでございまして、そういったものを通して、さらに我々としては、共同の計画を有し、そこから共同の訓練を行うという形で、先生御指摘のような、万が一の事態に対して日米の足並みがそろわないということを防ぐために平素から努力をしておる、そういうことでございます。

落合委員 平素から努力をされているということです。

 あともう一点なんですが、この点で、米国が動いてくれますと、これは米国に対して日本から要請するというような流れになるんでしょうか。要は、受動的に待つのではなくて、来てくれというふうに日本から発信をするという仕組みになっているんでしょうか。

冨田政府参考人 安保条約五条のもとで、日本が武力攻撃を受けた場合に共同対処するということは、これは、そういう事態に際してどちらかがどちらかに要請するということを必ずしも前提にしているわけではございませんで、そういう事態が起こったら共同で対処するということを約定しているというふうに理解をしています。

落合委員 具体的にプロセスは大丈夫なんですか、それだと、あうんの呼吸でということになりますけれども。これは、しっかりとプロセスができていて、シミュレーションも防衛省内でできているんですね。

黒江政府参考人 具体的な有事の際、あるいはさまざまな事態が起きたときに日米間でどのような形でお互いの意思疎通を図っていくのかといったことでございますが、基本は、まず、先ほど大臣から御答弁申し上げましたけれども、平素から同盟間で調整を行うためのメカニズムを設ける、そのメカニズムを通しまして必要な調整を行う。これは、早い段階からそういった調整を行うというのが、今回新たに定められました日米のガイドラインの考え方でございます。

 また、そのガイドラインの中には、あくまでもさまざまな共同の行動といったものを視野に入れるわけでございますけれども、日本に対して武力攻撃があったときに日米で共同対処を行うというのがこの防衛協力のガイドラインの中核であるということも要素としてきちんと明記をしてございますので、その件につきましては日米間でも認識のそごはないと我々は考えておりますし、また、平素から、先ほど申し上げましたようなさまざま調整を行って実効性を確保しようとしておる、そういうことでございます。

落合委員 両国間で文書を交わしていることと、具体的に準備ができているということは少し違うと思うのです。

 なぜ私がこれを質問したかといいますと、よく例えに出されているNATOの条約は、日米安保条約で言う「自国の憲法上の規定及び手続に従つて」という部分がありません。ですから、日米安保条約はわざわざこの文言を入れているわけで、ここもやはり、しっかりと機能するのかという点で注意を払わなければならない部分だと思っています。本当にこの条約が日本の領土、領海を守ることができるのか、これは穴がないのか、それこそやはり我々は関心を払わなきゃいけない部分であるというふうに思います。

 では、それに関連しまして、先ほど例えとして尖閣を出しました。尖閣が襲われる場合は、その相手は、今海洋進出に積極的な中国の可能性は高いというふうに思われます。また、安倍総理がしきりに日米同盟を強固にすることで抑止力を高めるとおっしゃっていますが、その抑止力を高める相手、これは一つには中国が入っているというふうに思います。

 そこで、日本と協力しているアメリカ、そして隣国である中国の米中関係についての質問です。

 防衛省は隣国諸国の軍事動向について熱心に研究をされていますが、アメリカと中国の軍事協力、水面下では軍事技術の協力も一部されていると言っている方もいますが、この米中の軍事協力について把握されていますでしょうか。

中谷国務大臣 米国で中国に対する政策というのは存在はするわけでございますが、しかし、最近の米国の対中関係におきましては、中国による東シナ海とか南シナ海での力を背景とした一方的な現状変更に強く反対をしておりまして、中国に対して国際ルール、規範の遵守を求めるとともに、中国の軍備の近代化等を注視する一方で、もう一方で、安定して平和的に繁栄する中国の台頭、これを歓迎し、中国との建設的な協力関係を追求していくこととしております。

 米国としては、引き続き、地域の同盟国等に対するコミットメントを堅持して、ルールに基づく国際秩序を擁護する一方で、中国との間で誤解や誤算による無用な衝突を避けるために軍事当局間の信頼を醸成するなどして、平和的手段による問題解決を働きかけつつ、地域の平和と安全のための役割を果たしていく、このような姿勢を持っているのではないかと思っております。

落合委員 短期的には、南沙諸島の問題もありますし、かなりアメリカはフィリピンなどに気も使って、中国に強硬な姿勢をとっている。

 ただ、一方で、いろいろ調べてみますと、例えば二〇一三年の八月のニュースで「米中、軍事関係の強化で合意 国防相が会談」、ロイターが報道していますし、いろいろな米中の軍事関係の協力についての論文も、もっと前からですが出ています。

 今回の平和安全法制が通っても日本はアメリカの戦争に巻き込まれませんと国民の皆さんに説明をされていますが、それは逆もしかりで、日米安保等があっても、安保法制があっても、米国も日本の戦争に巻き込まれるかどうか、戦争するかしないかは、やはり独自の判断をするような仕組みができている。

 まして、中国は核保有国です。今まで核保有国同士が戦争したことはありません。そして、現在、経済的に見ても、日本より中国の方が米国債を持っている。これはかなり、アメリカが日本を助けるためにすんなり中国と戦争するかどうかはわからない状況だと私は思うんですが、どのようにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 まず、日米の同盟、これは我が国の外交にとって基軸であります。その中にありまして、日米安全保障条約、これは我が国の安全保障にとって大変重要な、中核的になる条約であります。

 そして、この条約に対するコミットメントにつきましては、先ほど来申し上げておりますように、累次にわたって確認をしております。そして、我が国としては米国のコミットメントに信頼を寄せておりますし、米国においてもこうした国際的な条約を遵守する、これは当然のことであると認識をしております。

 こうした信頼関係をしっかりと確立し、そして、よりしっかりと積み重ねていく、こういったことによりまして、日米の協力関係、日米同盟の強固さ、これを国際社会にもしっかりメッセージを発していく、こうした日米同盟が強固であるということをしっかりメッセージとして発していく、こうした努力が何よりも大事かと思います。

 こうしたことを積み重ねることによりまして、しっかりとした体制をつくっていく、こうした基本的な考え方を大事にしていきたいと考えます。

落合委員 日米関係をより強固にしていく、これは本当に大切なことであると思います。しかし一方で、米と中の関係も、少しずつですが、信頼関係が深まってきている。これに関しても、やはり我々は考慮に入れなければならない問題だと思います。

 やはり、この足元の日本の防衛、これをどう考えるのか、これは非常に重要である問題と思いますので、ちょっと時間が迫ってきていますので、次の質問通告をかなり飛ばしまして、最後の方、行かせていただきます。

 集団的自衛権にある程度踏み込みますという、政府が閣議決定をして、政府が事例を幾つか示しました。その事例八の件でお伺いをさせていただきます。

 お手元の資料の一番最後、六番ですね。

 この事例八というのは、邦人を米艦が輸送して、それを防護するという事例についてですが、このお手元の資料、アメリカの国務省の、アメリカ人向けの、旅行者向けのQアンドAです。これには、アメリカ人さえも、ハリウッド映画のようにアメリカ軍は、助けてもらえません、艦船には乗せませんというふうに書いてありますが、アメリカ人を乗せないとわざわざ国務省が書いているのに、日本人を乗せてもらうということを前提にした説明、これは現実性があるんでしょうか。

中谷国務大臣 御指摘の八というのは、邦人輸送中の米輸送艦を自衛艦が護衛するという事例でございますが、ホームページには御指摘のような内容が書かれておりますけれども、日米のガイドラインにおきましては、各政府は自国民の避難に責任を有するとする一方、「日米両政府は、適切な場合に、」「非戦闘員の退避の実施に当たって協力する。これらの退避活動は、輸送手段、施設等の各国の能力を相互補完的に使用して実施される。」旨が記載をされております。

 これに加えまして、日米の新しいガイドラインにおきましても、「日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動」の例として、非戦闘員の退避のための活動に従事しているアセットの防護に関する協力が明記をされているということで、実例におきましても、フィリピンのピナツボ火山の噴火等に対しまして、米軍の艦艇が他国人を退避させたというような例もありまして、緊急時において米国政府が米国市民以外を助けないということはなくて、事例八が非現実という御指摘は当たらないと思います。

落合委員 火山の例を出されましたが、これはこの集団的自衛権の問題とは少し違うということと、それから、答弁をいろいろ調べましたら、有事の際に米艦が日本人を今までまだ乗せたことはありませんという答弁もありました。そして、米国人向けに、わざわざ国務省がこうやって説明をしている。

 これは、現実性がありますと政府が答弁したとしても、かなりこれは説得力に欠ける、そういう説明だと思いますね。こういうものが代表的な事例に入っているということ自体が、この法案、大丈夫なのかというように思わせる原因になるんじゃないでしょうか。

 済みません、あとちょっとしかないですね。最後の質問に入ります。

 最後に、外務大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

 外務大臣は、自民党内において、伝統ある宏池会を引き継がれております。私も、政治に興味を持ってから、ある宏池会の方にずっと薫陶を受けてまいりました。

 この宏池会、今まで軍事的に、対外的に抑制的な立場を自民党の中でもとられてきた。その中で、今回の安保法制、この内容、国民の多くは、まだこの法案の中身も理解していないし、そして反対意見も多い。私は、毎日地元を歩いていますが、賛成と反対の極端な意見がかなりこの国会の議論を見ている国民たちの中で出てきて、これは我が国の世論を分断し始めてしまっているというふうに感じます。日本が岐路に立っている、こういう中で、幅広い立場の人たちに理解を示してきた宏池会の方々の役割、そういう考えを持った方々の役割は大きいのではないでしょうか。

 それで、昭和三十五年の日米安保条約の採決、自民党の政治家の方々がどうだったのか、賛否を調べてみました。これは、派閥を超えて棄権や欠席をした方々が、特に大物の自民党の政治家たちの中にいらっしゃいました。石橋湛山先生、河野一郎先生、松村謙三先生、三木武夫先生、こういう方々が日米安保条約の採決のときでさえも棄権や欠席をされております。

 そこで、最後に外務大臣にお尋ねしますが、この戦後政治における宏池会の果たしてきた、いろいろな外交的な岐路がありましたが、その意義、そして、今回の法案、本当にこれでいいと思いますか。責任ある立場にいらっしゃる大臣のお考えをお聞かせください。

岸田国務大臣 まず、政府にとりまして、国民の命、平和な暮らしを守る、これは最も大きな重要な責務であります。

 そして、我が国の外交、安全保障政策を考える場合に、まずこの要諦となりますのは外交政策であると思っています。我が国にとって好ましい外交環境をつくっていく、安定した見通しの立つ外交環境をつくり、そして法と法の支配に基づいて平和的に物事を解決する、脅威の発生を防いでいく、こうした外交努力が重要であるということは、一昨年十二月の我が国初の国家安全保障戦略の中においても要諦であると位置づけられています。

 こうした外交政策、努力は続けなければいけませんが、ただ一方で、安全保障環境は大変厳しい状況になっております。あわせて、容易に国境を越える新しい脅威も発生をしています。今、国際社会においては、どの国であっても一国のみではみずからの安全、安定を守ることができない、これが常識になりつつあります。

 こういった中ですので、外交努力を続けながらも、万一の場合にしっかり備えておかなければならない、切れ目のない安全保障体制をつくり、そしてそのことによってリスクを低減させていく、このことは重要だと思いますし、どの国も一国のみでみずからの平和や安定を守ることができない、これが国際社会の現実でありますので、我が国として、しっかりとした、国際社会の一員としての責任を果たしていかなければならない、こうした考え方に基づいて、今、平和安全法制について御議論をお願いしています。

 こうした基本的な考え方に立って議論をお願いしているわけですが、国民の理解が重要であるという御指摘、これはもう当然のことであります。こうした安全保障の議論におきましては、さまざまな難解な用語ですとか、あるいは過去の議論の積み重ね等があります。こうした議論につきましては、より丁寧な議論が必要だと思います。

 そして、宏池会ということについても触れていただきました。この宏池会の歴史を振り返りますときに、その特徴は、やはり物事を決める際に丁寧な手続を大事にしてきたこと、そして、一定の信条に偏ることなく、その時代において一体何が求められているのか、最も現実的な判断を行ってきた、これが宏池会の歴史であると思っております。こうした歴史については、私自身、誇りを持っておりますし、こうした政治姿勢はこれからも大事にしていきたいと考えています。

落合委員 時間になりました。

 外務大臣に期待されている国民は多いと思います。理解だけではなくて、誇りだけではなくて、信念ある行動をぜひともお願いしたいと思います。

 本日はありがとうございました。

浜田委員長 次に、盛山正仁君。

盛山委員 先週の衆議院憲法審査会における参考人の御発言によって、今回の平和安全保障法制は憲法に抵触するのではないかとの懸念が表明され、前回六月五日の当委員会で質疑がなされ、中谷大臣、横畠内閣法制局長官の御答弁がなされました。そしてまた、きのう、新三要件の憲法改正について政府見解が発表されたところでありますが、憲法を含む法制度の内閣の番人と言われる内閣法制局長官から、今回の平和安全法制が憲法に整合しているのか、あるいはそうでないのかにつきまして、改めてここで明らかにしていただきたいと思います。

横畠政府特別補佐人 ちょっと、原点というか出発点から御説明させていただきたいと思います。

 憲法第九条は、その文言からいたしますと、我が国が、国際関係において一切の実力、武力の行使を禁じているかのように見えます。それを前提といたしまして、これまで憲法学者の間では、やはり、自衛隊の存在につきまして、憲法第九条第二項が明文でその保持を禁じている陸海空軍その他の戦力に当たって違憲であるという意見が伝統的に多かったというのは、これは紛れもない事実でございます。

 これに対しまして、政府は、国と国民を守るという責務を前提といたしまして、国権の最高機関であり唯一の立法機関である国会の御理解を得つつ法整備をしてきております。その前提といたしまして、やはり、自衛のためのやむを得ない場合の必要最小限度の武力の行使までは憲法第九条は禁じているものではない、そのようなものは許されるということでございます。

 その考え方を整理いたしましたのが、昭和四十七年のいわゆる政府見解でございます。

 その政府見解の内容について、読み上げてもわかりにくいので、若干はしょってポイントを申し上げます。

 一つのポイントは、「憲法は、第九条において、」という段落がございます。そこでは、憲法第九条は、砂川判決で示されているとおり、我が国の自衛権は否定されていない、別の言い方をすれば、無抵抗を定めているものではないという、そこが大前提でございます。

 その上で、「しかしながら、だからといつて、」という段落がございまして、そこにおきましては、そうだからといっても、自衛のためといえば広く我が国が武力の行使が行えるということではないということで、場合の限定、目的の限定、手続の限定というものがかかるということを明らかにしております。

 場合の限定といいますのは、「あくまで外国の武力攻撃によつて国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」、これに対処するということでございます。

 目的といたしましては、「国民のこれらの権利を守るための止むを得ない措置として」許されるということでございます。

 手段といたしましては、「その措置は、右の事態を排除するためとられるべき必要最少限度の範囲にとどまるべきものである。」ということを明らかにしているわけでございます。

 お尋ねの昨年七月の閣議決定は、この昭和四十七年の政府見解の基本論理を維持して、基本論理と申し上げましたけれども、それはまさに、我が国の存立、国民を守るためにやむを得ない場合の武力の行使は許されるという点でございますけれども、その基本論理を維持し、この考え方を前提といたしまして、これに当てはまる極限的な場合として、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られるとしてきたこれまでの認識を改め、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合もこれに当てはまるとしたものであり、別の言い方をすれば、憲法第九条が、そのような場合にまで自衛のための武力の行使を禁じ、その結果、国民が犠牲になるということもやむを得ないということを命じているのではないと解されるということでございます。

 新三要件は、国際法上集団的自衛権の行使として認められる、他国を防衛するための武力の行使それ自体を認めるものではございません。あくまでも、我が国の存立を全うし、国民を守るため、すなわち、我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として、一部限定された場合において、他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とする武力の行使を認めるにとどまるものでございます。

 集団的自衛権といっても、それは、我が国に明らかな危険が及ぶ場合に我が国を防衛するためのものに限定されているという、そこがポイントでございまして、したがいまして、これまでの政府の憲法解釈との論理的整合性及び法的安定性は保たれているということでございます。

盛山委員 今御答弁がありましたところでありますが、政府におかれましては、その趣旨をどう国民の皆さんに理解をしてもらうか、ここがポイントではないかと思います。

 外務大臣にお尋ねしたいと思うんですけれども、第二次世界大戦で我が国は焼け野原となりました。ゼロからの出発となって、昭和二十七年、やっと戦前の水準に日本経済は復興いたしました。そして、昭和三十一年の経済白書に、「もはや「戦後」ではない。」と記述されましたけれども、子供心の私の記憶では、昭和三十年代前半の私の周りの人々の生活は大変貧しいものでありました。池田総理がトランジスタラジオのセールスマンと某国の大統領に呼ばれたように、当時の我が国の地位はまだまだ世界の中で低いものでありました。

 しかしながら、一九六〇年代以降、高度経済成長がスタートしまして、昭和四十三年、当時の西ドイツを抜いて、日本はGNPの世界第二位になりました。そして、平成二十二年に中国に抜かれましたものの、依然として、我が国は、民主主義社会あるいは自由主義世界の中で第二位の経済大国であります。

 戦勝国でありました米、英、仏の我が国への期待、対応というものは、戦後の枢軸国日本の復活は許さない、そういう大変厳しいものでありましたが、昭和五十年のサミット発足のときから、日本がアジアで唯一の参加国となっておりますように、自由主義陣営の中の重要な一員としての役割を日本が果たすことが期待されるように、大きく環境は変化いたしました。また、西側先進国だけではなくて、国際社会全体の中での日本に対する期待、役割というのも大きく変化していると思います。

 そして、一方、第二次世界大戦の当時には存在しなかったジェット戦闘機、大陸間弾道ミサイル、潜水艦からのミサイルの発射など、攻撃兵器は格段に進化しております。また、国と国が戦うという国家間の戦闘行為から、平成十三年には米国の同時多発テロ、そして最近では、ボコ・ハラム、イスラミックステートのような、国以外の集団との紛争、さらには化学兵器やサイバー攻撃など、危機、有事についての対応、ありさまというのが大きく多様化しております。

 ことしは第二次世界大戦後七十年でありますけれども、このように、日本を取り巻く環境はドラマチックに変化したのであります。我が国の安全、世界の平和を目指す目的に変更はないものの、安全保障への対応は時代に合わせて変化していかなければならないと考えます。

 今回の安全保障法制は、そのような中で、我が国が国際社会の一員として平和の維持に主体的かつ積極的に寄与することを可能にするために必要な法整備を行うものと私は考えております。

 原子力爆弾で壊滅的な被害を受けられた広島を選挙区とする岸田外務大臣は、人一倍、平和に対する思いが強いと承知をしております。その外務大臣がどのような思いで集団的自衛権の行使をこれまでよりも一歩進めるのか、なぜ、今の時点でこの平和安全保障法制が必要であるのか、どういうふうにお考えになって今回の法整備を進められたのかを伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、ことしは戦後七十年という節目の年を迎えています。そして、その間の我が国の平和国家としての歩み、これは誇るべきものであり、こうした平和国家としての歩みがあったからこそ、御指摘のような経済の発展も実現できたと考えております。引き続き、こうした力強い外交をしっかり続けていかなければならないと考えます。

 しかし、その中で、国際情勢は刻々と変化をしています。御指摘のように、安全保障の厳しさはもちろんでありますし、新しい脅威の登場によって、脅威は容易に国境を越えていく、こうした現実が存在いたします。もはや、どの国であっても、一国のみではみずからの平和や安定や繁栄を維持することができない、これが国際社会の常識になりつつあります。

 その中にあって、我が国としては、まずは積極的平和主義に基づく力強い外交を進めなければなりませんが、あわせて、万が一の場合に、切れ目のない安全保障体制をつくり、リスクを下げていく、こうした備えをしっかりすることは重要だと考えますし、一国のみではみずからの平和や安定や繁栄を守れない、これが国際常識となりつつある中にあっては、やはり国際社会において責任ある一員としての責任を果たしていかなければならない、これも大変重要なポイントであります。こうした考え方に基づいて、今、平和安全法制について御議論をお願いしているところであります。

 こうした法制を整え、しっかりとした体制をつくることが、さらに我が国が国際社会において力強い外交を進めていくことにも資することになるのではないか、このように考えながら御議論をお願いしているところであります。

盛山委員 先ほども出ましたけれども、法律は、国会で審議をして成立させるだけでは不十分だと私は考えております。この法律が成立したら日本は戦争になるの、あるいは、徴兵制になって子供は兵隊にとられるのかというふうに、私の選挙区の有権者から問い合わせがあります。国民の皆様の御理解と、この法整備に対する支援がなければ、しっかりとした安全保障を実現することは難しいと考えます。国際社会の変化と安全保障について、ぜひ、外務大臣におかれましては特に国際社会の変化の部分が中心かと思いますが、有権者の皆様に御理解を得られるよう、よくこれからも取り組みを強めていただきたい、そんなふうに思います。

 続きまして、防衛副大臣に伺います。

 去る五月三十日に、香川県で、機雷の掃海作業等で亡くなられた七十九名の方々の追悼式が営まれました。機雷の掃海は大変危険な作業でありますが、なかなかその実態は知られていないんじゃないかと思います。

 昭和五十年、堺屋太一さんが「油断!」を発表されて、大きな反響を引き起こしました。アラビア湾入り口のホルムズ海峡や、インドネシア、シンガポール、マレーシア間のマラッカ・シンガポール海峡の安全は、我が国の暮らしの生命線と言っても過言ではないと思います。また、堺屋さんは、平成十七年に「油断!」の文庫版を出版した際に、石油輸入の途絶は今もそこにある危機であると記しております。エネルギーのほぼ一〇〇%、食料の六〇%を輸入に頼っている我が国にとっては、海上航行の安全は不可欠であると私は思います。

 私の選挙区であります神戸市東灘区には海上自衛隊阪神基地隊がありまして、そこで、昨年、掃海艇を見学させていただきました。触雷を防ぐために、船体は鋼板を極力避けて木材やFRPを多用する構造の、小型の船舶であります。そのような小型の掃海艇で、例えばホルムズ海峡まで、インド洋などの外洋を渡って航行していくだけでも大変なことであります。また、灼熱の真夏の日中や、湿度一〇〇%の海上で、あるいは厳寒の冬、あるいは荒天時の海上で行動されることは本当に大変で危険なことであると思います。

 我が国にとって、エネルギー、食料等、海上輸送というのは大変大事なものでありまして、ホルムズ海峡、マラッカ・シンガポール海峡に限らず、海上航行の安全というのは、私たち日本人の暮らしに死活的な問題であります。機雷の掃海は大変危険な作業でありますけれども、現在の体制で、十分な能力の装備あるいは要員が確保されているのか、伺いたいと思います。

 また、そのような危険な任務で防衛出動が命ぜられた場合の防衛出動基本手当、特別勤務手当の支給に関する政令が定められておりません。職員の士気にもかかわる問題ではないかと思います。防衛省が中心となって、その任務にふさわしい処遇となるよう検討すべきであると考えますが、いかがでしょうか。

 最後に、ソマリア沖・アデン湾で、あるいは南スーダンで、自衛隊の皆様はその任を立派に遂行して我が国の評価を高めてくださっていることに頭が下がる思いであります。地震、火山噴火、津波、土石流などの災害に際して、自衛隊の皆さんは活躍し、評価されています。しかし、警察予備隊発足時に、諸君我慢をしてくれと言われてスタートをしてから、もう六十年以上が経過しています。そんな中、まだまだ、あなたは防衛省・自衛隊の職員ですか、御苦労さまです、そんなふうに国民が尊敬するというところまではなっていないんじゃないでしょうか。我々政治家に対する評価は大変低いのが日本の現状でありまして、それに比べるとまだいいのかもしれませんが、もっと高い評価をいただくべきではないかと思います。

 アメリカのジョセフ・ナイは、武装等のハードパワーだけではない、ソフトパワー、スマートパワーの強化が重要であると述べています。

 国民の皆様の御理解を深め、国民の気持ちが一体となることが我が国の安全保障体制を強化するために不可欠であると考えます。今回の安全保障法制の議論を通じて、防衛省・自衛隊の皆様の御苦労や活動の内容について有権者の皆様の御理解が深まることを期待しておりますが、今後どのようにして安全保障の重要性、そして防衛省・自衛隊の活動に対する理解を深めていくのか、副大臣に伺いたいと思います。

浜田委員長 左藤副大臣、時間が迫っておりますので、簡潔に願います。

左藤副大臣 お答え申し上げます。

 今三点御質問がありました。

 まず、機雷掃海でございますが、我が国の周辺海域を防衛し、海上交通の安全を確保するため、防衛省・自衛隊は、掃海艇等計二十七隻から構成される世界有数規模の掃海部隊を保有しております。高性能化する機雷に対処し得る掃海艇等の能力の向上を逐次図っているところでございます。

 例えば、平成二十年度に建造した掃海艇からは、船体を、それまでの木製から強化プラスチックに変更し、船体防御能力を向上させております。また、平成二十五年度に建造に着手した掃海艦からは、代替対象艦であるやえやま型と比べ、機雷探知機について、約二・五倍程度探知範囲が拡大をし、また、掃海艦から発進する、有線誘導により目標機雷に接近、破壊することが可能な自走式機雷処分用弾薬を搭載することにより、高性能化した機雷の処分能力を獲得するなど、能力向上を図っているところでございます。

 さらに、海自は、平成三年に掃海艦艇を実際にペルシャ湾に派遣し、湾岸危機の停戦後に機雷の掃海活動を行ったほか、平成二十三年、二十四年及び二十六年には、ペルシャ湾において開催された多国間掃海訓練に掃海艦艇を参加させたところでございます。

 防衛省・自衛隊としては、防衛大綱、中期防に基づき、引き続き掃海艦艇の着実な整備を行うとともに、国内外における訓練を通じて、遠洋を含む機雷除去のために必要な能力の向上を図っていく所存でございます。

 それと、先ほどの任務の処遇でございますが、自衛隊員が高い士気を持って任務を遂行するためにも処遇にかかわる政策は重要でございますし、これまでも勤務の特殊性に応じて支給される各種手当などの給与制度を充実してきたところでございます。自衛隊員の処遇については、平和安全法制の整備に伴う自衛隊の活動による業務の形態や特性等を考慮しつつ、その特殊性に応じた処遇を検討することが適当であると考えております。

 いずれにしても、部隊の士気にかかわる重要な事項でございますので、その任務にふさわしい処遇となるよう検討をしてまいりたいと考えております。

 それと、先ほどありました国民の理解でございますが、我が国の平和と安全を守り、国際社会の平和と安定に貢献する防衛省・自衛隊の活動の重要性は一層当然高まっております。また、その活動は、南スーダン共和国における国際平和協力活動、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処活動、御嶽山における災害派遣など、国内外に広がっております。

 平成二十七年一月の、内閣府が実施した自衛隊・防衛問題に関する世論調査によると、国民の九二・二%が自衛隊に対し、よい印象を持っており、防衛省・自衛隊に対する国民からの期待と評価が高まっておると思っております。

 もとより防衛省・自衛隊の任務は国民一人一人の理解と支持があって初めて成り立つものであり、わかりやすい広報活動を積極的に行っていくことが重要であると考えております。

 具体的には、防衛大臣が防衛省の施策について週二回定例会見をやっているほか、自衛隊に対する新聞社やテレビ局等の取材に対し積極的に努力するなど、できるだけ多くの人々に防衛省・自衛隊の日常の活動を伝えられるよう努めているところでございます。

 以上でございます。

盛山委員 ありがとうございました。

 ぜひ、国民の皆様の御理解を一層深めていただけるようお願いして、私の質問を終わります。

浜田委員長 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 おはようございます。公明党の伊佐進一です。

 本日議論させていただきたいのは、武力行使の一体化、憲法の要請であります武力行使の一体化のところと、そしてもう一つの柱の、リスク、自衛隊員の安全という点について、きょうも先ほどまで議論を聞いておりますと、この二つがどうも混同されているところがやはりあると思っておりますので、しっかりと整理をさせていただきたいと思っております。

 まず、その前に、先立って、私、現場の自衛官、私と大体同じ世代の方ですが、お話を伺ってまいりました。この一体化の話であるとか、あるいは武器の使用と一体化、どういうふうな感覚を持っていらっしゃるかと聞いたところ、こういうふうに言われました。

 例えば射撃訓練をする、そのときに教わるのはどうやって教わるかというと、自分の身が本当に危ないと思ったら撃て、その後は国がしっかりと守ってくれるから大丈夫だ、だから頑張って行ってこいと。国が守ってくれると思っているからリスクある任務ができるんだと私は思っております。

 この場にいる我々の責務というのは、こうした自衛官の思いを裏切ることがあってはいけないと思っております。現場で汗を流す自衛官の皆さんの不安とか心配とか、そういうものをしっかりと取り除いていくような議論、議論を前に進めていくということが大事だと思っておりますので、その決意で質問させていただきます。

 まず、武力行使の一体化、これは憲法上の要請であるところの一体化の話です。

 これは資料を配らせていただいておりますが、四つの考慮事情というのがありました。当時の大森法制局長官が、この四つを考慮した上で一体化かどうかというものを考えるということであります。この四つの考慮事情というのは今も維持されているというふうに伺っております。

 今回、この一体化で要件になっておりますところは、現に戦闘行為を行っている現場ではない場所というところに集約されているわけです。この四つもある考慮事情が一つになっている。これで憲法上の要請が十分に守られているのかどうかというところのまず議論をさせていただきたいんです。

 では、まず、これまで。これまでも要件としてあったのは、例えば後方地域であるとかあるいは非戦闘地域、これが要件だったわけです。四つの考慮事情というのも同時にあった。これまでは、この要件、非戦闘地域というものが満たされれば一体化しないというふうな考え方になっていた。どういうふうに整理をされてきたのか、伺いたいと思います。

横畠政府特別補佐人 一体化の考え方というのは、一体化という言葉は国民の間でも聞かれた方も多いと思いますけれども、まず、どういうことなのかという、ちょっと前提から御説明させていただきたいと思います。

 いわゆる他国の武力の行使との一体化の考え方といいますのは、まず前提といたしまして、我が国が武力の行使を行うことが許されない、そういう場合におきまして、自衛隊が、武力の行使を行う他国の軍隊に対して補給、輸送等の支援をすることは、それ自体は直接武力の行使を行う活動ではありませんが、他の者が行う武力の行使への関与の密接性等から、我が国も武力の行使をしたとの法的評価を受ける場合があり得るとするものでありまして、そのような武力の行使と評価される活動を我が国が行うことは、やはり憲法第九条により許されないという考え方でございます。これは、憲法上の判断に関する当然の事理を述べたものであると申し上げてきているところでございます。

 そこで、我が国の活動が他国の武力の行使と一体化するかの判断につきましては、御指摘の当局の答弁等で申し上げているとおり、従来から、一戦闘活動が行われている、または行われようとしている地点と当該行動がなされる場所との地理的関係、二当該行動等の具体的内容、三他国の武力の行使の任に当たる者との関係の密接性、四協力しようとする相手の活動の現況等の諸般の事情を総合的に勘案して、個々的に判断するとしております。これが基本でございます。

 その上で、自衛隊が支援活動を実施する都度一体化するか否かの判断をするということは実際的ではございません。そのようなことから、平成十一年の周辺事態安全確保法におきましては後方地域、平成十三年のテロ特措法及び平成十五年のイラク特措法におきましては、同様の非戦闘地域という要件を法律で定めまして、そこで実施する補給、輸送等の支援活動については、類型的に、他国の武力の行使と一体化するものではないと整理したところでございます。

 その考え方は、戦闘行為が行われている場所と一線を画する場所で行うという一の地理的関係を中心といたしまして、二の支援活動の具体的内容につきましては、補給、輸送といった、戦闘行為と明確に区別することができる異質の活動であること、三の関係の密接性につきましては、自衛隊は、他国の軍隊の指揮命令を受けてそれに組み込まれるというものではなく、我が国の法令に従い、みずからの判断で活動するものであること、四の協力しようとする相手の活動の現況につきましては、現に戦闘行為を行っているものではないことという、これらを考慮した結果でございます。

伊佐委員 非常に大事な答弁であったと思います。

 まず最初におっしゃったのは、実施する都度にこの四つの考慮事情を一個一個考えていく、これは実際的ではないというふうにおっしゃいました。だから要件として類型的に整理をしたんだ、それが非戦闘地域とかという要件だと。これは、よく大森四要件と言う方もいますが、これは要件じゃないという答弁でした。つまり、四つのこの要素を考慮した上で、要件として非戦闘地域というのを導き出したということだったと思います。

 その上で、さっきおっしゃったのは、一を中心とするんだ、一線を画する場所だ、ここのところでたがをはめれば、非戦闘地域というこの一でたがをはめれば、二、三、四、こういうものを考慮したとしても、一体化しないというのが今までの整理でした。

 逆に、今、一体化しないという前提の上で、この法の別表で、具体的な活動のリストというのをポジティブリストで具体的に列挙しているということだったと思います。だから、例えば発進準備中の戦闘機への給油というものについては、たとえ後方地域あるいは非戦闘地域であったとしても、密接性の観点から慎重に議論するという答弁もありましたが、だからこそ、ポジティブリストから、あえて明記して除いているということです。

 つまり、私の理解では、この要件、非戦闘地域というものを満たせば何をやってもいいというものじゃない、あくまでこの四つの考慮事情から、この要件を満たしても慎重な議論が要るというもの、あるいはニーズがないというようなものはポジリストには載せていないわけです。逆に、さらに言えば、ポジリストに載っているものは、要件を満たせば安心してやってくださいというものがこの要件の理解、私の理解です。

 では、一つ進んで今回。今回は、この四つの考慮事情を勘案した結果、結局、一つの要件は何が出てきたかというと、現に戦闘行為を行っている現場ではない場所、これだけが出てきた。では、この四つの考慮事情とこの要件の関係、今回はどういう整理をされたんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 今般の法整備におきましては、その後の自衛隊の活動の実経験、国連の集団安全保障措置の実態、実務上のニーズの変化などを踏まえまして、支援活動の実施、運用の柔軟性を確保する観点から見直しを行ったところでございます。

 すなわち、これまでの「活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域という要件、一体化の回避と安全の確保の双方を満たす、兼ねることのできる仕組みでございますけれども、それを見直しまして、自衛隊の安全を確保するための仕組みとは区別いたしまして、純粋に憲法上の要請である一体化を回避するための類型としての要件を再整理したものでございます。

 すなわち、我が国の支援対象となる他国軍隊が現に戦闘行為を行っている現場では支援活動は実施しない、仮に、状況変化により、我が国が支援活動を実施している場所で、現に戦闘行為を行っている現場となる場合には、直ちにそこで実施している活動を休止または中断するということでございます。

 その考え方は、協力をしようとする相手方が現に戦闘行為を行っているものではないという、先ほどの四の相手方の活動の現況を中心といたしまして、そうであるならば、一の地理的関係においても、戦闘行為が行われている場所とは一線を画する場所で行うものであることには変わりはなく、また二の支援活動の具体的内容、ポジリストで列挙されているわけでございますけれども、さらに三の関係の密接性につきましてもこれまでと同様であるということであり、一体化を回避するための仕組み、担保としては十分であるということでございます。

伊佐委員 今も大事な点があったと思います。

 これまでもさんざん議論になっております、先ほど冒頭申し上げたように、憲法上の要請である一体化論のところと、そしてまた自衛隊の安全の議論は別だ、ところが、これまでは混然一体と書かれていた。今回は、自衛隊の安全を確保するための仕組みとは区別してというふうにおっしゃいました。つまり、ここを切り離して、この一体化論のところだけを突き詰めたらどうなるかというのが今回のこの議論だと。

 そして、では、この一から四の当てはめについては、四を中心にしてというふうに言われました。一じゃないんです、四。戦闘が行われていない現場、これはその現場、スポットですから、ここで何が行われているかというのが大事だと。つまり、相手の活動の現況がどうなのかという四にたがをはめてみたらどうなるか。

 そうすると、当然、一、これは戦闘活動から一線を画されている。あるいは二、これは補給、輸送なので、そもそも戦闘行為じゃない。三は、関係の密接性。これは指揮命令系統を受けるかどうかという話でしたので、指揮命令系統を受けるものじゃない。そして、四の活動の現況は申し上げたとおり。だから、今回は、この一体化論の要件として、戦闘現場、現に戦闘行為を行っている現場ではない場所というものを要件としたということだと理解しました。

 その上でいま一度申し上げると、私の理解では、戦闘現場でない場所であれば何でもできるということではないと思っております。ポジリストに載っているものというのは当然できるわけですが、戦闘現場ではないという要件を満たしていたとしても、できないものもあるわけです。例えば情報提供、これは与党の中でも議論がありましたが、戦闘現場ではない場所であっても、例えば偵察行動を伴うようなものというのはできない、だから、ポジリストにも載せていないということだと思います。だから、結局は、ポジリストに載っているものは、戦闘現場でない場所であれば安心してやってくださいということが今回の趣旨だと思います。

 その上で、発進準備中はちょっと飛ばさせていただきます。

 今まで憲法の要請の議論、一体化の議論をしてまいりました。では、そこから切り離されたところの、リスク、自衛隊の安全について少し議論させていただきたいと思うんです。

 一昨日のNHKの調査を見ておりますと、自衛隊員のリスクがふえるかどうか、この世論調査の結果は、ふえると答えた人が七二%、ふえないと答えた人はわずか六%でした。そういう意味では、このリスクについて、自衛隊員の安全について、しっかりとわかりやすく議論する必要があると思っております。

 そこで、この資料二枚目を見ていただければと思います。

 上の、憲法との関係からの規定というものがまさしく憲法の要請、一体化論のところですが、今までの書きぶりは、「戦闘行為が行われておらず、」そして「活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがない」。ところが、今回の新法では、右の部分、「現に戦闘行為が行われている現場では実施しない」。つまり、「活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがない」という、ここのところがなくなっているわけです。

 だから、ここの部分はどうなったんだということなんですが、先ほどの長官の答弁のとおり、一体化の部分だけ、憲法の要請だけを抽出したら右側になった。下の部分は、どちらかといえば、今まで自衛隊員の安全の部分で重要だったところなんです。

 この安全の部分で重要だったところが、この下のところ、実施区域の指定に関する規定というものを見てみると、実は、今までは「実施する区域を指定する」しか書いてないんです。ところが、今回はどう書いてあるかというと、「円滑かつ安全に実施することができるよう」というふうに、新しくここが入っています。

 だから、問題は、この実施区域、隊員の安全を考えたときに、大臣はこの実施区域をどう定めるかということがポイントになると思いますが、とりわけ、副大臣にお答えいただきたいのは、戦闘行為との関係において、この実施区域、この新しく入った文言に沿ってどういうふうな決め方をするか、お答えいただければと思います。

左藤副大臣 後方支援は、その性質上、そもそも、危険を回避して活動の安全を確保した上で実施するものでございます。安全な場所でなければ有効な後方支援を実施することはできないため、これは大前提でございます。

 今回の法案において、法律上、防衛大臣は、自衛隊の部隊等が実際に円滑かつ安全に活動できるよう実施区域を指定する旨規定をしており、この規定を受け、今現在戦闘行為が行われていないということだけでなく、自衛隊の部隊等が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定することとなります。

伊佐委員 そうなんです。結局、同じだということです。

 戦闘行為との関係において、結局、今までなかったこの部分、円滑かつ安全にという部分で、活動の期間を通じて戦闘行為が行われない、こういう場所をしっかりと実施区域として決めるんだということ、そういう意味では、このリスクとか危険性という点は変わらないと私は思っております。だから、戦闘現場により近づくんじゃないかという指摘があるわけですが、それは間違いだということです。

 さらに言えば、活動のエリアが広がるからリスクが高まるんだというような質問もございました。

 行くことができる範囲が広まったら、ではリスクが高まるのかということですが、これもしっかりと説明しなきゃいけないと思いますが、行くことができる範囲、エリアが広がったとしても、行くかどうかを決めるのは、それは政策判断なわけです。これは大臣が、あるいは総理が、このリスクとか安全性とか必要性、こういうものを考えて個別に判断していく。そういう意味では、この政策判断の仕方が変わるかどうかというところが、リスクが高まるかどうかに連動しているわけです。

 そういう意味では、では今までの判断の仕方と変わるんでしょうか、お答えください。

左藤副大臣 お答え申し上げます。

 これまでの特措法においては、自衛隊の活動が憲法との関係で問題が生じないよう、「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域で、いわゆる非戦闘地域ですが、活動する旨の規定を設けております。

 これに対し、昨年の七月の閣議決定を受けて、国際平和支援法においては、憲法との関係では、現に戦闘行為が行われている現場では活動を実施しない旨の規定を設けております。

 一方、繰り返して申し述べているとおり、新たな仕組みのもとで、法律上、防衛大臣は、自衛隊の部隊等が実際に円滑かつ安全に活動できるよう実施区域を指定する旨規定しており、この規定を受け、今現在戦闘行為が行われていないというだけではなく、自衛隊の部隊等が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定することとなります。

 したがって、いわゆる非戦闘地域の仕組みのもとで実施区域が指定されるなどして安全が確保されていた従来と、安全面では変わらない、変わることはないと思います。

 いずれにしても、実際に国際平和支援法が適用される状況において、具体的にどこでどういった活動を行うかは、活動の内容、派遣規模といったニーズを確定するための現地調査や、部隊等の安全確保のために収集した現地情報に関する情報等を踏まえ、個別具体的に決定するものです。この点は、特措法を制定して活動を実施していた従来と変わりはありません。

伊佐委員 ありがとうございました。

 結局、今までの議論を合わせると、その実施区域の指定の仕方も変わらないわけですし、そしてまた、同じように、エリアは広がったとしても、では本当に行くかどうかという政策判断も変わらないということですので、そういった意味では、リスクが増大するのではないかということは、それは当たらないということだと思っております。

 時間になりましたので、終わりたいと思います。引き続き、しっかりと丁寧な議論を行います。

 以上です。

浜田委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時五十三分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時七分開議

浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。辻元清美君。

辻元委員 民主党の辻元清美です。

 私は、先週の金曜日に質問をいたしました。それ以降、本委員会にかけられている一連の安保法制について、憲法違反だという意見が広がっております。

 皆さん、お手元に資料をお配りしていますが、その資料の四枚目を見てください。

 これは、金曜日も取り上げました。安保関連法案に反対する憲法研究者、現在二百十一名。私が質問いたしました金曜日は百七十二名でした。土、日、月、火、きのうまでの数字ですから、四日間で三十九名ふえて、今もまだふえ続けているという状況です。大臣、これは私は深刻な事態だと金曜日も申し上げました。

 きょうは、特に憲法との関係を中心に御質問したいと思います。

 昨日も、自民党の元総裁の河野洋平元衆議院議長や、それから自社さ政権で一緒に支えた村山富市元総理も、ここで立ちどまって、この法案を一旦取り下げたらどうかというお話が出てきております。また、特に中谷大臣と私に縁が深い山崎拓元自民党副総裁は、憲法改正論者の、戦後をリードしてきた方です。周辺事態法の議論のときはたしかその席にお座りで、委員長だったと思います。私は野党席、そして中谷大臣は与党席で、お互いに委員長のもとで議論をいたしました。そういう方々がなぜ今、取り下げた方がいいとか、そして深刻な事態だと懸念を表明されていると御理解されていますか。

中谷国務大臣 山崎拓先生には昨日お会いしまして、意見を交換したわけでございます。

 私が申し上げましたのは、憲法につきましては長い年月をかけて検討してきたということでございます。そして、我が国を取り巻く安全保障環境、これは客観的に大きく変化をしておりまして、従来の憲法解釈と論理的整合性、法的安定性に十分留意をして、その根本となるのは、やはり従来の、昭和四十七年の政府見解における憲法九条の解釈の基本的な論理の枠内で、日本の命と平和な暮らしを守り抜くための合理的な当てはめの結果を導いたということでございます。

 やはり、憲法で言っている、自国の平和と安全を維持し、また存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとは到底解されないという部分、これは従来の憲法の基本的論理の部分でございまして、それに今回新しい三要件、これを加えて考えたものでございまして、私は、この内容が憲法違反であるというふうに思っているわけではございません。

辻元委員 山崎拓さんが聞いていたらちょっと嘆かれるかもしれませんよ。御自身の言葉で議論された方がいいと思います。それで、何を嘆いているかというと、憲法違反というか、一連の今の政治のあり方そのものだと思いますよ。

 そんな中で、一つ、大臣が前回の私の質問に対しての議事録を精査していますと、こういう発言がございました。今問題にされております。

 与党で議論して、「そして現在の憲法をいかにこの法案に適用させていけばいいのかという議論を踏まえまして閣議決定を行った」、これ、「いかに」も入っているんですよ。「現在の憲法をいかにこの法案に適用させていけばいいのか」、これは反対じゃないですか。普通は法案を憲法に適用させるのであって、憲法を法案に適用させる、これは立憲主義をみずから否定されていると思いますが、この発言を撤回した方がいいと思います。撤回してください。

中谷国務大臣 私が申し上げましたのはそのような趣旨ではございませんで、憲法の解釈の範囲内で法律を作成したという意味で申し上げました。

 御指摘の答弁につきましては、現在の安全保障環境を踏まえ、憲法解釈はどうあるべきか政府・与党でも議論し、昨年七月一日に閣議決定を行い、その上で、閣議決定に示された憲法解釈のもと、法案を作成して、閣議決定をして、国会に提出させていただいたという趣旨を述べたものでございます。これは事実でございます。

 この発言の趣旨を正確に伝えられなかったということで、ただいま申し上げました趣旨に訂正をさせていただきたいと思います。

辻元委員 訂正したいということですから、「現在の憲法をいかにこの法案に適用させていけばいいのか」、いかに適用させていけばいいか、これは気持ちがこもっているんですよね。だから本音がぽろっと出たのかなと私は思います。この発言は撤回するということでよろしいですね。

中谷国務大臣 私が申し上げましたのは、憲法の解釈の範囲で、いかにこの法律を作成すればいいかという意味で申し上げました。

 そういう意味ですが、確かに、言葉でございますので、違った意味に捉えられる部分もございますので、先ほど申し上げました、現在の安全保障環境を踏まえて、憲法解釈がどうあるべきか、政府・与党でも議論し、昨年七月に閣議決定を行い、その上で、閣議決定された憲法解釈のもと、法案を作成して、閣議決定して、国会に提出させていただいたという趣旨を述べたものでございますので、この発言の趣旨を正確に伝えられなかったということで、ただいま申し上げた趣旨に訂正をさせていただきたいと思います。(辻元委員「修正と撤回は違うよ。撤回した方がいいよ」と呼ぶ)

浜田委員長 中谷防衛大臣、再度答弁願います。

中谷国務大臣 私が発言した趣旨はそのような趣旨でございますが、これが正確に伝えられなかったということで撤回をさせていただいて、先ほど述べた趣旨に訂正させていただきたいと思います。

辻元委員 この根本を撤回しないと話が進まないわけですよ、立憲主義。

 これはなぜかといいますと、安保法制懇で議論したとも、専門家が議論したと中谷大臣は述べていらっしゃるわけですが、座長代理の北岡さんがいらっしゃいますですね。その北岡伸一さん、私と生まれ故郷は一緒なんですけれども、だから私、個人としては立派な方だと思っていますよ。しかし、彼が御著書「憲法に固執して国家の安全を忘れるな」の中でこうおっしゃっているわけです。「憲法は大切ではあるが、所詮は国内の最高法規である。」ずっとおっしゃっていて、「いかにして憲法を守るかというところから出発すること自体が誤りである。」。大臣と同じようなことをおっしゃっているわけですよ。

 ですから、結局、この一連の、安保法制懇から始まって、私的諮問機関ですよ。そして、その答申のようなものを受けて、ようなものとあえて言いましたよ、法的に設置された審議会ではないので。そして、その理解者であった人を法制局長官に据えて、そして、何とか自分たちの考える方向に憲法の解釈をいじくり回して枠にはめていこうとして出した法案だから、今、矛盾がどっと噴出しているんじゃないですか。私はそう思いますよ。

 憲法については、大臣は、集団的自衛権の行使を全面的に認める、そして、それは憲法改正が必要であるというようにおっしゃっている。これはこの前も御紹介いたしました。安倍総理もそうですよ、今までの発言を見たら。

 でも、憲法改正、九条を改正したい、したい、したい、なかなかできない、反対が多い。だから、最初に憲法九十六条、手続法を改正してしまえとやろうとした。しかし、それも国民の世論、反発が、批判が強くて、九十六条改正もしぼんでしまった。

 そうすると、今度はもう解釈でやってしまえというような、そして、人事まで自分に都合のいい人事を、私的諮問機関に入れ、これは後でやりますよ。そして法制局長官も、小松さんはそうでした、差しかえて、そして自分たちがつくりたい法案に今までの憲法の解釈を何とかつじつまを合わせて押し込んでしまえ。その矛盾を今指摘されていると私は思います。

 さて、それでは、幾つか具体的に聞いていきたいと思います。

 そして、もう一つ指摘しておかなきゃいけない。砂川判決についても、今さっきの北岡さんはこう言っています。「砂川判決は、米軍と基地に関する裁判であって、そこに展開されている法理は必ずしも拘束力を持たない。」。安保法制懇の座長代理がこうおっしゃっているし、そして、砂川判決の元被告が、都合よい解釈を許さぬと言っているわけです。

 ですから、今この法案が違憲だというだけではなく、今までの流れそのものも、立憲主義に基づいた日本への、一つの、あえて私はこの言葉を言うけれども、クーデターみたいに見えますよ、大臣。

 それを、全部一連のことを言って、山崎拓元副総裁や、そして元衆議院議長や総理が心配されているんじゃないですか。いかがですか。

中谷国務大臣 私たちは、憲法につきましては真剣に議論をいたしました。ちょうど去年の今ごろでございますけれども、憲法につきまして、いろいろと今の安全保障情勢が変わっていく中でどう対応したらいいのか、そういうことを踏まえまして憲法のあり方を検討したわけで、その際、従来の憲法の基本的論理、これを中心に議論いたしまして、この基本的論理は全く譲っていないというか、変えていないわけでございます。

 今回、結論といたしまして、集団的自衛権の一部容認につきましては、これは、憲法上許容される武力行使というのは、国際法上は集団的自衛権が根拠となる場合がありますが、この武力行使は他国に対する武力行使が発生した場合を契機とするものが含まれますが、憲法上は、あくまでも我が国の存立を全うし、国民を守るため、すなわち、我が国を防衛するためやむを得ない自衛の措置として初めて容認をされるものであるということでございます。決して他国に対する防衛を目的とした集団的自衛権ではない、我が国に対しての集団的自衛権である、こういう限定をつけた上でこれを決めたわけでございますので、決して論理的な整合性や法の規範から逸脱するような内容ではないというふうに私は確信を持っております。

辻元委員 今、論理的な帰結であるということをおっしゃいましたけれども、それでは、本当に論理的かどうか、そして、憲法の安定性というものが保たれるのかどうか、質問していきたいと思います。

 昨日、ここにございます「新三要件の従前の憲法解釈との論理的整合性等について」という内閣官房と内閣法制局がお出しになったペーパーをいただきました。

 ここで、法制局長官、きのうもお越しいただいて説明をいただきましたけれども、まずお聞きをしたいと思います。

 ここでこう言われています。「パワーバランスの変化や技術革新の急速な進展、大量破壊兵器などの脅威等により」云々かんぬんと書いてあるんですけれども、今般、そこの事実「認識を改め、」、事実認識というのは安全保障環境の変化というように私は受けとめておりますけれども、今までの基本論理は変えていないと。

 昭和四十七年見解、それは、お手元に配っている二ページ目、これは大串さんが使われたペーパーですが、基本論理の、一、二、三のうちの一、二という、必要最小限であるとか、それから自衛の措置だけであるということは変えていない、しかし、最後の三番だけを変えた。

 これは、安全保障環境などの変化を受けて変えたという理解でよろしいですか。その点だけ、きのうも申し上げましたが、簡潔に答えてください。

横畠政府特別補佐人 一、二の考え方は維持しており、変えておりません。

辻元委員 そうしたら、三を変えた根拠は安全保障環境の変化ということですか。

横畠政府特別補佐人 端的に申し上げれば、そのとおりでございます。

辻元委員 そして、これは前回も問題になりましたけれども、昨年の議論から、横畠長官は、「安全保障環境の変化その他軍事的な問題等々についての専門家ではございません。あくまでも法制上の所管を持っているのみでございます。」ということで、「自ら政策的に判断するということはございませんで、そのような事実があり得るという説明を前提として、法的な論理について検討をしたということでございます。」と。政府の説明をうのみにしてと言ったらおかしいですけれども、これは、立法事実を確認したのかという福山議員の質問に対する答弁です。

 もう一度確認いたしますけれども、立法事実という、要するに、安全保障環境の変化が立法事実だ、それの変化があったから変えたということですから、立法事実は法制局では確認していないということでよろしいですね。

横畠政府特別補佐人 安全保障環境の変化によってどのような事態が起こり得るのか、あるいは、我が国としてどのような対処をしなければならないのか、どのような備えを用意しておかなければいけないのかというのは、まさに政策問題でございまして、この憲法上の議論の前提となってございます。

 ただし、およそあり得ない事態でありますとか想定されない事態を前提としての法律論というのもございませんので、もちろん、安全保障環境の変化に伴いまして従前想定されなかったような事態も起こり得るのだという、その可能性、蓋然性は理解した上での検討を行ったところでございます。

辻元委員 ということは、この昭和四十七年見解というのは、この間から問題になっておりますが、丸ごと全部でこれが今までの論理、集団的自衛権の行使を認めなかったというのではなくて、一と二が論理で三番は当てはめということであれば、また安全保障環境の変化があれば、政府が、ああ、安全保障環境がとてもよくなりましたので、では元に戻しましょうといったら戻せばいいわけですね。

横畠政府特別補佐人 全くあり得なくなるような、そういう世の中になるかどうかということでございますが、もちろん、その前提がなくて、まさに我が国の存立を脅かし、国民の生命、自由及び幸福追求の権利を根底から覆すような事態というのが、およそ我が国に対する武力攻撃しかないのだということであるならば、それはもとに戻るということであろうかと思いますけれども、なかなか、実際上もとに戻るということは想定しがたいのではないかと思います。

辻元委員 今、政策的なこととか、安全保障上そんなことはないかもしれないとかいう、それは私は言いませんと言った後の答弁ですよ。

 ですから、要するに何を言いたいかというと、この昭和四十七年見解の理解の仕方が法制局でどうだったかということを問うているわけです。

 一と二が基本論理で、三は安全保障環境の変化によって何とでも変えられるわけですよ、政府が御説明があれば。いや、もっと深刻になりましたとか、よくなりましたと。

 だから、法理として、法理としてですよ、この四十七年見解の一と二を担保していれば、三の結論は、そのときの安全保障環境によって、時の政府の判断によって、あえてころころとは言いたくないけれども、変えていいんですねと法理上言っているわけです。そういう理解でいいですねと聞いているわけです。

横畠政府特別補佐人 なかなかころころ変わる可能性はないと思いますけれども、この昭和四十七年見解の構造からちょっと御説明させていただきたいと思います。

 三の結論の部分といいますのは、集団的自衛権、いわゆる集団的自衛権の行使は許されないと言っていることの実態は、我が国に対する急迫不正の侵害に対処する場合に限られる、すなわち、個別的自衛権の場合には、憲法第九条のもとでも武力の行使が許されるのだという、まさに結論を述べているわけです。

 ただ、結論を述べただけでは説明になりません。何で九条のもとで個別的自衛権の行使ができるのかという、そのまさに理由、根拠を述べているのが一、二の部分でございます。それがまさに憲法九条の規範性そのものをあらわしているわけでございまして、一、二の部分はそのまま維持しているということでございます。

辻元委員 ですから、一、二は維持していますねと。今のはおっしゃっているわけです。しかし、三が変わったのは、安全保障環境の変化ということがあったので変えました、当てはめて変えたということであれば、また安全保障環境が変われば三、当てはめを変えていいということですねと聞いておるわけです。論理上の話ですよ、論理的にどうですかと聞いているわけです。

横畠政府特別補佐人 ただ、結論のメニューとしてそんなにいろいろあるわけではなくて、これまで以上に膨らむということは絶対にあり得ないと思います。

辻元委員 では、しぼむということはあるんですか。

横畠政府特別補佐人 先ほど申し上げたように、我が国に対する武力攻撃が発生した場合以外には、およそ我が国の存立を脅かし、国民の生命、自由及び幸福追求の権利を根底から覆すような明白な危険がある、そんな場合はないのだという環境になったとするならば、仮定でございますけれども、それは、一、二に当てはまるものとしては、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られるということになろうかと思います。

辻元委員 今、法理でいえば、時の安全保障環境が変われば変わる。そういうことが法的に安定性がないと言うんじゃないですか。違いますか。

 そして、それは、この昭和四十七年見解がいつからそういう理解の仕方になっていたんですか。横畠さんの前の長官も同じような理解はされていましたか。いかがですか。いつからですか。そういうように、一と二は法理で三は当てはめだという理解はいつからしていますか。

横畠政府特別補佐人 前の長官も同じだと思いますけれども。

 この昭和四十七年の政府見解は、ごらんのとおりのまさに論理構造になっているわけでございまして、先ほども申し上げたように、憲法九条のもとで、なぜ我が国に対する武力攻撃が発生した場合には武力の行使が許されるのか、裏返しで言うと、他国防衛のためのいわゆる集団的自衛権まではできないという、そこのところと同じことなんですけれども、その理由、根拠を明らかにしているのが一、二の部分なのだと。そこは変えない、変わらない、変えられない、それがまさに法的安定性そのものであると考えております。

辻元委員 私の質問は、三を変えられるようにしたのはいつからかと聞いておる。いつからか、どの長官の時代からそうなったかと聞いておるわけですよ。

横畠政府特別補佐人 それは、昨年七月の閣議決定の際ということになりますと、その当時の長官は私でございます。

辻元委員 では、横畠流の解釈ですね。

 四代前の宮崎元長官はこうおっしゃっています。一九七二年の政府説明書、これは昭和四十七年政府見解のことですが、個別的自衛権の行使が現行憲法第九条のもとでも許されることを述べたものであって、同じ基準の裏返しとして、これは今長官おっしゃった、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とするいわゆる集団的自衛権の行使は憲法上許されないと明記したものである、その部分を継ぎはぎし、同説明書、これは四十七年見解のことですが、示された基準は、必要最小限度の自衛の措置かどうかであり、集団的自衛権がそれに当たるかどうかは事実の当てはめ結果にすぎないなどと強弁するのは、こじつけ以外の何物でもないと、四代前の法制局長官がこのような御主張をなさっています。

 ということは、横畠さんの四代前までは、一と二が法理で、そして三は当てはめで、時の安全保障環境によって変えていいという理解は、法制局の内部ではしていなかったということでよろしいですか。

横畠政府特別補佐人 私どもの元長官が個人的にどのような御発言をされているかについては確認しておりませんのでコメントはいたしませんけれども、今回の考え方は、まさに論理的に整合しているものというふうに確信を持っております。

辻元委員 それは、ですから、今までの法制局長官及び法制局の昭和四十七年見解の理解の仕方と、あなたが、横畠長官がそれを変えましたと言っていることに等しいと思いますが、いかがですか。

横畠政府特別補佐人 歴代内閣法制局長官においては、やはり、いわゆる集団的自衛権を行使するためには、憲法第九条を改正しなければそれはできないということでございまして、そこに言ういわゆる集団的自衛権といいますのは、国際法上国家に認められている集団的自衛権一般のことでありまして、つまり、他国を防衛するために乗り出していって武力を行使する、そういうことでございますけれども、そのような意味での一般的な集団的自衛権、フルセットの集団的自衛権を認められるかどうかということになりますと、私自身も、憲法を改正しなければそのような集団的自衛権一般を認めることはできないと考えております。

 今回のポイントは、まさに限定されたものであるという、そこのところがまさにポイントでございまして、その点を御理解いただきたいと思います。

辻元委員 今まさしく法制局長官がおっしゃったように、この四十七年見解は、いわゆる集団的自衛権についての見解です。

 この見解が出されたときの議事録等を精査していきますと、当時の水口宏三さんが質問をしているやりとりの中で出てきた見解なんですよ。そして、これは、自衛権には個別的も集団的もないんじゃないか、個別的もだめじゃないかという質問に対して、いや、個別的は自衛権の中に含まれて大丈夫なんだ、だから集団的自衛権はだめなんだという文脈で出てきているわけです。これは後で別の委員がやられると思いますけれども。

 今私が申し上げているのは、この集団的、限定的であっても、限定的とおっしゃったけれども、ここから限定的も引き出せませんよと。みずからおっしゃったように、集団的自衛権一般をだめだと言っている。裏返しは、個別的自衛権しかだめよと言っているのがこの文章なんです。歴代の法制局長官が、理解の仕方はそのように理解し、それで日本はやってきたわけです、四十年。

 それを、先ほどおっしゃったように、横畠さん、あなたが、この理解の仕方を、解釈の変更とかじゃなくて、政府見解の理解の仕方を変えて、それはできるんだというふうに、限定的ならできるんだと。ひねり出してもできませんよ。

 これを言っているのは、先ほどおっしゃった裏返しで、個別的自衛権しかできませんということを言っている文章なんですよ。そこから限定的集団的自衛権の行使は出てこないと思いますが、中谷大臣、いかがですか。

中谷国務大臣 やはり、この四十七年の見解を私なりに読んでみますと、この中で、「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。」という部分は、三十四年の砂川事件の、「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」と最高裁で判決された考え方と軌を一にするわけでございまして、この四十七年の一と二の部分を読みますと、まさに憲法の基本的論理が書いてありまして、これをもとに、新三要件、この三要件で条件をつくったということで、まさにこれは基本的論理の結論でございますので、この論理からいたしますと、憲法違反ではないと私は思っております。

辻元委員 よく聞いてくださいよ。

 この四十七年見解、先ほど砂川判決のことも言いましたよ。安保法制懇の北岡座長代理が、それは必ずしも拘束力を持たないと、基地の問題でと言っているわけですよ。もう出すなと私は言っておるわけです。公明党も当時、砂川判決をこれに持ち出してくるのはおかしいじゃないという意見があったと聞いておりますよ。ところが、この四十七年見解が破綻しそうになったら、また砂川事件に戻る。この二個しかないんですよ。

 一方は、歴代の法制局も含めて、そのような論理と事実関係、要するに安全保障環境を当てはめて、そして結論を変えるという理解の仕方はしていないと元法制局長官も言っておるわけですよ。それをこじつけようとするから、憲法学者たちが、おかしいんじゃないのという話になって、歯どめになっていないじゃないか。

 では、歯どめになっていないことについてちょっとお伺いしたいと思いますけれども、今、限定的集団的自衛権の行使とおっしゃいましたね。この間、後者は集団的自衛権と呼んでいませんと。集団的自衛権でもなくて、個別的自衛権でもないんですか。何なんですか、これは。何と呼ぶんですか、大臣。

 きのう法制局長官は、名前はないんですと。私に、みんな覚えているよね、名前はないと言ったんですよ。これは何の概念ですか。長官に聞いています。何ですか、これは。

浜田委員長 内閣法制局長官。(辻元委員「大臣。だめだって」と呼ぶ)いやいや、今長官と言ったから。

 済みません、簡潔に願います。(発言する者あり)静粛に願います。

横畠政府特別補佐人 私の発言についてのお尋ねでございますので、短くお答えさせていただきます。

 憲法上は、個別的自衛権あるいは集団的自衛権という概念はないということを申し上げたものでございます。

 国際法上の概念として、つまり違法性が阻却される場合の要件として、個別的自衛権、つまり自国に対する武力攻撃が発生した場合の自衛権、それから集団的自衛権、密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合の自衛権という概念整理がされているということで、憲法自身にそのような区分があるわけではない。

 これまでの憲法解釈において、憲法九条のもとで個別的自衛権の行使のみが許されるというふうにお話ししてきましたのは、我が国に対する武力攻撃が発生した場合においては、まさに自国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される場合に当たることを理由として武力の行使が許されるということを述べてきたもので、我が国に対する武力攻撃が発生した場合の武力の行使であるということで、国際法上の概念をいわばかりてきまして、個別的自衛権の行使が許されると説明してきたということを申し上げたわけでございます。

辻元委員 果たして限定が成り立つかどうかなんですよ。

 ちょっとお伺いしたいんですが、岸田大臣にお伺いします。

 武力行使の新三要件というのがございますね、ここから導き出したと言われている。この密接な関係にある他国とはどこなのか、そして、明白な危険、この二つは、時の、いろいろな問題が起こったときの政権が判断するのかどうなのか。いかがですか。

岸田国務大臣 密接な関係にある他国ということにつきましては、従来から、これにつきましては、政府としまして、武力攻撃に対して共同して対処する意思を持つ等、ちょっと今手元に詳細がありませんが、定義を示しております。

 この定義に基づいて判断するわけですが、これは、従来から説明しておりますように、個別具体的に、総合的に判断するということであります。あらかじめこの国であると限定しているものではないと考えております。

 そして、新三要件につきましては、これは従来から示しておりますように、憲法上、厳密な定義として示しております。これに該当するかをしっかり政府として判断することになると考えます。

辻元委員 そうしたら、もう一問聞きましょう。

 よく、他国からの要請が必要であると大臣はおっしゃっていますね。その点が国際法上の集団的自衛権の手続と同じだとおっしゃっています。

 よく朝鮮半島有事のことをおっしゃるじゃないですか。そして、今朝鮮半島有事が起こった、北朝鮮、韓国。そうすると、韓国が我が国と密接な関係にあると思いますが、その際に同意は韓国から必要なんですか、要請は。それとも、アメリカが韓国と一緒に戦っていて、アメリカだけでも大丈夫なんですか。どちらですか。

岸田国務大臣 国際法上の要件としましては、武力攻撃を受けた国からの要請、同意があり、そしてなおかつ他に手段がなく、そして必要最小限のものである、こういった要件が定められていると承知をしております。

 これは、武力攻撃を受けた、我が国と密接な関係にある他国でありますので、その具体的な状況の中でそれに当てはまる国がそれに該当すると考えます。

辻元委員 そうしますと、韓国が武力攻撃を受けました、そしてアメリカが助けに行っていますというシチュエーションの場合、韓国とアメリカの同意が必要なのか、まず韓国の同意が必要なのか、韓国の同意は要らなくてアメリカだけでも成り立つのか。これはよく想定されるケースですから、お答えください。

岸田国務大臣 具体的な国名を挙げて申し上げるのは控えさせていただきますが、先ほど申し上げましたように、国際法上は、武力攻撃を受けた国からの要請、同意が求められています。実際に武力攻撃を受けた国からの要請に基づいて考えていくということになります。

辻元委員 今、密接な関係にある他国も、明白な危険も、要請も、それはそのときの政府の判断なんですよ。

 もう一つ言われているのは、限定的と言うけれども、この三つというのは非常に重要な判断で、そのときの政府の判断によって拡大もできるんじゃないのか、それは憲法上の歯どめになっていないんじゃないかと言われているわけですよ、一つ、大きく。

 限定的な集団的自衛権の行使というものを、この昭和四十七年見解、先ほど申し上げたところから導き出すのは歴代の法制局もやっていなかった。横畠さんが初めてやったわけですよ。これはさっきから申し上げている、法制に憲法を合わせようとするからこういう無理が出てきているんですよ。そして、出てきた新三要件というのも、時の政府の判断によって幾らでもこれは解釈できるじゃないかということなんですよ。

 だから、フルサイズの集団的自衛権の行使はできないと言うけれども、時の政府が、いや、これは明白な危険なんだ、これは密接な関係のある国なんだよと言えるじゃないかと言っているわけですよ。今までの憲法は、それはできません、個別的自衛権しかできませんということを決めてきたわけですよ。風穴を一個あけた途端に、幾らでもその穴からどんどん広がる。だから、憲法違反じゃないかと言われているわけです。

 きょうは官房長官に来ていただいておりますので、官房長官に質問をいたします。

 官房長官、先日の官房長官の記者会見で、官房長官は、今、憲法学者の皆さん、私きょうお配りしましたが、二百名以上の方がこの法案は憲法違反だという声明を上げていらっしゃるんですね。官房長官は、この事態は非常に深刻と受けとめていらっしゃると思いますよ、一方で。しかし、こうおっしゃる、私どもも、全く違憲じゃないと言う著名な憲法学者もいっぱいいると六月四日の記者会見で述べていらっしゃるので、違憲じゃないと発言している憲法学者の名前をいっぱい挙げてください。これはきのうお知らせしていますので、いっぱい挙げてください。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

菅国務大臣 個別的にいろいろ挙げることは、これは控えるべきだというふうに思います。例えば百地先生だとかあるいは長尾先生だとか、そうした人たちもいらっしゃいますし、そしてまた、私どもの安保法制懇の中の西先生もいらっしゃいました。そういうことの中で私は申し上げたところであります。

辻元委員 いや、私はきのう御通告申し上げまして、ここは勝負どころですよ、官房長官。いっぱいいるんだったらいっぱいいる、今の安保法制が合憲であると言っている憲法学者もこんなにいるじゃないかと政府が示せなかったら、私は、この法案は、この間も申し上げました、撤回された方がいいですよ。

 ですから、官房長官にきのうちゃんと調べてきてねと言ってあったでしょう。いっぱい、ほかにどんな方がいますか。挙げてください。

菅国務大臣 私は、数じゃないと思いますよ。これはやはり、私たちは、最高裁、まさに憲法の番人は最高裁であるわけでありますから、その見解に基づいて、その中で、今回この法案を提出させていただいたところであります。

辻元委員 砂川判決は根拠にならないというのは先ほど申し上げました。

 これは政権の命運がかかっているんじゃないですか。これだけ合憲だと言っている人がいますよと、憲法学者の中にも。そこはお示しになった方がいいですよ。

 中谷さんにお聞きしたいと思うんですが、中谷さん、もう一つ、行政府による裁量の範囲内だとおっしゃっているわけです。これだけ憲法学者も含めておかしいぞと言っている。そして、先ほど申し上げましたように、歴代の法制局の長官も含めて、先ほど宮崎長官の例を出しましたけれども、横畠さんが編み出した論法なんですよ。今までと違うわけですよ。それに基づいて法案をおつくりになった。これは政府の裁量の範囲内と言えますか。これも問題発言だと思いますよ。いかがですか。

中谷国務大臣 私が申し上げましたのは、憲法の解釈が政府の自由裁量で決められるということではなくて、憲法第九条の解釈の基本的な論理を維持し、最高裁判所が示した考え方の範囲内で政府としての解釈をしたということでございます。

 あと、四十七年見解につきまして、この結論部分で「集団的自衛権の行使は、憲法上許されない」となっておりますが、これを導くために考えてきた内容のこれは文章でありまして、すなわち、この一と二で考えた結果、この集団的自衛権は憲法上許されないという結論でありますので、やはりこの一と二というのは、これは基本的に考えた論理であるというふうに思います。

辻元委員 今、裁判所という言葉が出ました。そうすると、これは違憲訴訟も出てくると思いますよ。それで、統治行為論があるとたかをくくっているんじゃないんですか。

 もしも違憲判決が出たらもとに戻すのか。これは憲法違反の可能性があるという判断をしている人たちもいる中で、違憲判決が出たらもとに戻すのか。もとに戻すということは、訓練も装備も自衛隊のあり方も全部もとに戻す。裁判所とおっしゃったので、違憲判決が出たらもとに戻すという理解でいいですね。

中谷国務大臣 憲法の解釈を最終的に確定する機能を有する国家機関、これは、憲法第八十一条によりましていわゆる違憲立法審査権を与えられている最高裁判所でございます。

 行政府が日々その権限の行使を行うに当たっては、その前提として、憲法を適正に解釈していることは当然必要なことでありますが、このような行政府としての憲法解釈は、最終的には、憲法第六十五条に基づく行政権の帰属主体である内閣が責任を負うものでございます。

 昨年七月の閣議決定を踏まえた今回の平和安全法制は、憲法九条の解釈の基本的な論理を維持しておりまして、これまでの政府の憲法解釈と論理的整合性、法的安定性は保たれているのであって、違憲無効となるものとは考えておりません。

辻元委員 もう一度言いますよ。

 違憲判決が出たら、全て、法律を全部書きかえるだけじゃなくて、装備も、そして訓練も全部変えるんですねと聞いた。法治国家ですから。大臣、いかがですか。

中谷国務大臣 るる説明をいたしておりますとおり、これまでの最高裁判所の判決やこれまでの憲法における基本的論理、これに導かれた結果でございますので、私といたしましては、判決が違憲無効となるものとは考えておりません。

辻元委員 いや、出た場合は、出た場合は、実際に、これは紙に書いてあるだけじゃなくて、自衛隊の訓練や、また国際関係にも関係してくることですよ。ですから、違憲判決が出たらもとに戻すんだなと聞いているわけです。

中谷国務大臣 閣議決定を行う際には、過去の最高裁の判例とか、またこれまでの政府見解、これに基づいた理論に裏づけられておりますので、私どもといたしましては、違憲無効となるというようなものとは考えておりません。

辻元委員 だめだよ、これは。最高裁の判断を仰ぐと言ったのは大臣じゃないですか。

 とめて。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 では、速記を起こしてください。

 それでは、中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 我々は、違憲になるとは思っておりませんが、司法の判断について予断をもって申し上げることは控えたいと思います。政府の立場といたしましては、司法の判断につきましてコメントすることは控えさせていただきたいと思います。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 では、速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣、答弁願います。

中谷国務大臣 一般論として申し上げますが、法治国家でございますので、最高裁の判断が出たときにおきましては適切に従ってまいりたいと思います。

辻元委員 そうすると、裁判所が憲法違反だと判断をしたら、訓練とか、これは多岐にわたっているわけですよ。実際に動いているわけです、アメリカとのガイドライン、やり直すんですか。どうですか。

中谷国務大臣 仮定の判断につきましては、お答えを差し控えさせていただきます。

辻元委員 憲法に合致しているかどうかをぎりぎり詰めてやっているのはなぜかといえば、そういう事態を起こさないためなんですよ。これは国際問題にも発展します、憲法違反だとなれば。

 そして、全ての自衛隊、実力部隊の訓練から何から何までかかってくるから、この法案は、憲法学者が、そして私たちも、憲法違反じゃないかと指摘しているものは一旦お取り下げになって、もう一度しっかり検討された方がいいんじゃないですか。じゃないと、訓練から、日米同盟から、国際関係から、全部かかわってくるじゃないですか。それを憲法違反だと言っている、先ほど二百名以上、今もどんどん集まっていますよ、そういう中で進めるのはおかしいんじゃないですかと申し上げているんです。

 ほかにも聞きたいことがあるんですけれども、別の角度から言いましょう。

 自衛隊員の任務が変わりましたね。自衛隊員の任務、これは自衛隊法の三条一項。自衛隊員の任務は、「直接侵略及び間接侵略に対し」てという言葉が入っていたわけです。「我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、」間接、直接の侵略に対し、これを今回取っていますね、取っていますよね。

 その理由は何ですか。これは、専守防衛と、そして個別的自衛権のあかしだったわけですよ。自衛隊法、関係してきているわけですよ。自衛隊の任務も変わっちゃっているんですよ。なぜここを取ったんですか。

中谷国務大臣 現行法におきましては、「直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを」自衛隊の「主たる任務」と規定しております。

 他国に対する武力攻撃の発生を契機とする存立事態における自衛隊の行動も、あくまでも我が国の防衛を目的とするものでありますから、現行の防衛出動と同様に、自衛隊の主たる任務として位置づけることが適当と考えております。

 このため、今回の法改正におきましては、我が国に対する直接侵害等を意味する「直接侵略及び間接侵略に対し」という文言を削除して、端的に「我が国を防衛すること」と規定することによって、存立危機事態における行動も主たる任務に含まれることを明らかにするためでございます。

辻元委員 今おっしゃいましたけれども、自衛隊の任務というのは、これは自衛隊法の一番の基本の部分ですよね。

 そうすると、限定的な集団的自衛権の行使とおっしゃった、でも、歯どめが一体どこにあるのか、それはそのときにならないとわからないということなんですよ。時の政府の判断だ。

 そして、自衛隊の任務も変わっているわけですよ。この「直接侵略及び間接侵略に対し」というのが専守防衛のあかしだったはずですよ、自衛隊の。これに基づいて自衛隊の皆さんは宣誓をされているんじゃないですか、この仕事をするということで。自衛隊の皆さんは、日本が攻められたときに守りますよということで宣誓をされているわけです。後で宣誓の話は言います。

 もう一つ、これも大きく変わっているわけです。もう一つ申し上げたい。

 今回、自衛隊員に対しての国外犯処罰規定というのをつくっていますね。国外、処罰する。今まで大臣は、その必要はないと。自衛隊員は国外で処罰されるようなことをしないとか。

 これは何のために国外犯処罰規定をつくったのか。一つは、航空自衛隊など、要するに、日本の船舶や航空機において行われる犯罪については国内の刑法で裁かれますね。この国外犯処罰規定は、陸上、他国の領土での、そして、百二十二条の二には防衛出動が規定されているわけです。他国の領土での、まあ陸上自衛隊が想定されているでしょう、何のために、他国の領土内での防衛出動の命令に反した者は処罰するという国外犯規定を置いたんですか。他国の領土で戦争するということと違いますか。だから刑罰をつくったんでしょう。今まで大臣はつくる必要がないとずっと言ってきたわけですよ。

 ですから、限定的といっても、どこまで行くかわからない、時の判断で。だから、先に自衛隊員に対する他国の領土での武力行使の刑罰をつくっている。今回の法改正に入っているじゃないですか。これはなぜですか、なぜ。防衛出動すると書いてあるわけですよ、法案に。

中谷国務大臣 まず、任務につきましては、やはり、自衛隊が我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つために我が国を防衛するということを主たる任務とするということは何ら変わりがございませんので、しっかりとそれを規定したということでございます。

 今回、国外犯の規定を設けたというのは、今回の法律の整備におきまして、国外における自衛隊の任務が拡充をされるということになるために、国外における自衛隊の活動の規律統制のより適切な確保という観点が非常に重要になってくるという御指摘を受けまして、上官命令への多数共同での反抗や部隊の不法な指揮、そして防衛出動命令を受けた者による上官命令への反抗、不服従等の罰則に係る国外犯処罰規定を設けたわけでございます。

浜田委員長 辻元清美君。

 時間が来ておりますので。

辻元委員 防衛出動と今おっしゃったでしょう。他国で防衛出動して、それに刃向かった者の国外犯規定をつくったわけですよ。他国で防衛出動するって、どういうことを想定しているんですか。最後に聞きたい。

浜田委員長 時間が来ておりますので、簡潔に願います。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 今回の法律によりまして、武力攻撃事態に加えて存立危機事態に際しても防衛出動を発令するということになります。その際に、自衛隊の部隊が補給等の活動を行うため、他国の領域を経由、寄港、上陸する場合もあり得るというような場合に必要性が出てきているから規定をしたわけでございます。

辻元委員 終わりますが、防衛出動、なぜ他国の領土でする防衛出動に背いた者の刑罰を決めているのかと聞いているわけです。それは他国の領土内での防衛出動を想定しているからでしょう。

 結局、限定的だといって風穴をあけて、あっちこっち変えた。それで、憲法の範囲でやっていないから、任務も変わるわ、そして海外での防衛出動まで想定した中身になっているわけですよ。

浜田委員長 時間が来ております。よろしくお願いします。

辻元委員 私は、もう一度、何回も申し上げますけれども、この法案は撤回された方がいい。申し上げて、終わります。

浜田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。寺田学君。

寺田(学)委員 民主党の寺田です。

 午前中の辻元議員に引き続いて一点だけ簡単に質疑をまずした上で、本題に入りたいと思います。

 辻元議員の最後の方で、この法案が違憲だった場合にはどうするんですか。御答弁が、適切に判断をするということでした。

 釈迦に説法になりますが、大臣自身お話しされているとおり、内閣が、法制局長官の御了解を得た上で、これは違憲ではないということで法案を提出し、国会で可決、成立したとしても、最終的にその法案が違憲かどうかの判断は、内閣でも国会でも憲法学者でもなく、最高裁にあるということはそのとおりだと思います。

 幾ら内閣が、これは違憲ではないということで提案し、可決したとしても、残念ながら、今まで法律が違憲であるというような判断は数々出てきました。尊属殺人の重罰規定に始まり、最近であれば非嫡出子の相続の問題含めて、違憲だということの判断が出ています。

 ですので、違憲になることはないということを内閣は断定することはできません。内閣としては違憲の疑いないものとして正々堂々と提出していると言うことはできますけれども、判断によっては違憲であるということはあると思います。

 違憲判断がされた法案に対しては、私が調べる限りにおいて、全て、まずは政府としてその執行、運用を停止しています。法改正をその後、国会の方がするのか、政府が提出して、廃止、改正の法案をつくり上げて違憲状態を脱するということが、私が調べている限りには全て適用されています。

 一般的なことを国務大臣としてお伺いしますが、違憲という判断がされた場合には、今までの慣例どおり執行を停止する、そういう考え方でよろしいですか。

中谷国務大臣 適切に対応してまいります。

寺田(学)委員 適切の中に、法改正、いろいろあると思いますが、まずは政府として、及び政府しかできないことでありますが、執行を停止するというのは今までの全ての違憲判決が出たものに関してはされておりますけれども、執行をまずは停止するということでよろしいですか。

中谷国務大臣 行政ではありませんが、国会の議員の定数なども、いろいろな判決がございます。

 お答えといたしましては、適切に判断してまいりたいというふうに思います。

寺田(学)委員 適切に対応することは、さまざま法改正としてあると思いますが、政府しかできません、可決された法律が執行されているものをとめる、それは政府しかできませんので、まずは政府として執行を停止し、その後、国会との関係もあるでしょうから、適切に判断されるのはわかります。

 質問をかえますけれども、まず、適切な対応をとる前に執行を停止する、そのことは大臣としてお約束できますでしょうか。

中谷国務大臣 最高裁の判断が出たときでございますが、法治国家でございますので、適切に従いたいと思います。

寺田(学)委員 執行を停止しない理由はありますか。

中谷国務大臣 個別具体的な話になりますので、一応仮定の話でございますので、お答えは控えさせていただきます。

寺田(学)委員 私はこの法案について言っているのではなくて、法律を内閣が提案し可決した後に違憲判決が出た場合、政府しかできない、適切な対応はさまざまあると思いますが、執行されているわけですから、その執行をとめることを今まで政府はしてきました。その慣例にのっとって、当然この内閣も、自分たちが出した法案が可決され執行されている場合、違憲判決が出た場合には執行を停止しますか。

中谷国務大臣 どういう判決が出るのかわかりません。そのときの判決を踏まえまして、法治国家として適切に対処してまいります。(発言する者あり)

浜田委員長 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 従来、政府が対応をしてきた例を踏まえまして、適切に対応してまいります。

寺田(学)委員 執行停止をしない理由を、あったら教えてほしいんです。

 申し上げますが、学者の方々が違憲だと言われることを自民党の幹部の方は、学者が言っていることに従っていては政治は進まぬとお話をされ、違憲かどうかを判断するのは最高裁判所なんだというふうに言われています。

 その最高裁判所が、権限をもって違憲と判断した過去の例がありますけれども、その違憲という判断を当然尊重して法改正するわけですが、その前に執行されている法律をとめるのは当然だと思うんですが、それができない理由があったら、何か、言ってください。

中谷国務大臣 判決につきましては、法案自体の例もありますし、個別的な例もありまして、それぞれ違うわけでございますので、出てきた判決につきましては適切に対応してまいりたいと思います。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 一旦、議事整理のため、内閣法制局長官より答弁を求めます。

 内閣法制局長官。

横畠政府特別補佐人 最高裁判所が違憲立法審査権を有していることは、憲法所定のとおりでございます。

 ただ、それは司法判断でございまして、具体的には、司法が判断いたしますのは、個別具体の事件というのがまずございます。その事件を処理、解決するために必要な範囲での法令の解釈、適用ということをいたしまして、その過程において、憲法に適合しているかどうかの違憲立法審査権が発動されるということがございます。

 ですから、最高裁判所において違憲の判決が出された場合というのが、実際にどのような事件において、何が争いになっていて、どのような理由によって、どのような点が違憲であるというふうに判断されたのかという、その具体的な内容に応じまして、それは政府といたしましてもそれぞれ適切な対応をしなければならないということになるわけでございまして、最高裁判所が、司法権の具体的な事件性というものを超えて、法律一般、法律そのものが違憲であるというような、抽象的な規範統制を行うということはありませんので、やはり具体的に、どのような事件について、どのような理由で、どのような判断をしたかということに応じて、個々具体的に政府としては適切にまさに対応していくということになり、司法の判断を政府として尊重するのは当然のことでございます。

寺田(学)委員 このことを続けたいですが、わかって御答弁されていると思いますが、法令自体が違憲とされている場合と、適用自体が違憲とされている場合、両方に分かれていて、私が申し上げたのは、全ての過去例は、法令がそのものとして違憲と判断されたというものです。

 その場合において、内閣が適切に対応する中に、もし執行を停止することを拒む理由があるとしたら、それは改めて委員会の方に提出をしてください。委員長、よろしいですか。その理由があるのであれば、そのことを委員会に提出してもらいたいんですが。

浜田委員長 理事会で協議します。

寺田(学)委員 それでは、次に進みます。

 大臣が六月五日にこの委員会で御答弁をされました、いわゆる政府の裁量の範囲ということです。

 この部分、中谷大臣が、辻元委員の質問に対して、「これまでの憲法九条をめぐる議論との整合性を考慮したものでございまして、行政府による憲法の解釈としての裁量の範囲内であると考えまして、私は、これをもって憲法違反にはならないという考えに至っているわけでございます。」と。ある種、憲法を解釈する上で、裁量の範囲が政府にありますと、当然のことかもしれませんが、言われました。

 事今回の件に関しては、今まで、集団的自衛権が認められないという憲法の解釈であったものが、四十七年の政府見解を、先ほどの質疑にのっとって言うと、現長官の解釈のあり方によって、基本的論理一と二、そしてそれから導き出される当てはめという形に分離をし、集団的自衛権が、政府の言い方をかりて言うと、限定的に行うことが可能になったということをお話しされました。

 政府の持っている裁量の範囲内であるということは、政府が御答弁、大臣も御答弁されているこの四十七年見解において、基本的論理一、二があった上で、三の当てはめ自体は政府の裁量の範囲だというふうに御答弁されたんですよね。これは確認です。

中谷国務大臣 これは、憲法九条の解釈の基本的な論理、これを維持し、最高裁が示した考えの範囲内で政府として解釈をお示ししたということでございます。

 お答えしているように、私は、基本的論理というのは一、二のところでございます。

寺田(学)委員 なので、一、二を固定し、基本的論理を維持することによって生まれた当てはめ自体が、政府の裁量の範囲の内だと。

 だからこそ、この場合、今まで、私ども野党も含めて、憲法学者の方々もそうかもしれません、この三の部分まで基本的には憲法の解釈で固定されているんだというお話だったんですが、一、二は維持して、三番目は、今、「集団的自衛権の行使は、憲法上許されない」とありますけれども、この部分は政府の裁量の範囲内で当てはめを行っていいのだ、政府の裁量の範囲の内なのだという御答弁でいいですね。改めての確認です。

中谷国務大臣 考え方は、基本的論理のところで、規範としての部分、これはしっかり維持をしている。三につきましては、その結果、結論でございますので、この文書自体も、集団的自衛権に関してどうかということで、一、二の理論で、三が答えであるというふうに思います。

寺田(学)委員 辻元議員の方が長官と先ほど議論されましたが、私は、この基本的な論理一、二と当てはめを分けることは承服はできませんし、理解できません。

 ただ、今回、政府がそのような立場に立っていますので、その論理にのっとった上でということで辻元委員が聞かれましたが、今回、今までは集団的自衛権の行使は憲法上許されないとされてきた当てはめを、基本的な論理を維持した上で、今までの社会環境、安全保障環境が変わることによって、憲法上許されるという結論になったということでした。

 質問は、それでは、時代の安全保障の環境が変わることによって、再び集団的自衛権の行使が憲法上許されなくなるということは論理上あり得ますかという御答弁に対して、長官は、あり得るというお話でした。

 大臣にお伺いします。その理解でよろしいですよね。

中谷国務大臣 長官が言ったとおりでございます。

寺田(学)委員 ということは、今までは、憲法は何を縛っているのかということに関して、この基本的な論理一、二、そして三まで含めて憲法は許される範囲というものを示していましたが、三の部分は、今、安全保障環境が変わるさまざまな要因によって、この回は集団的自衛権と言っていますが、集団的自衛権は今まで行使できない、憲法上許されないと言われていたものが許されると今回解釈され、今後、論理上、再び集団的自衛権の行使が憲法上許されないということになるということはお認めになられました。

 これをもって法的安定性は保たれているというふうに大臣はお考えですか。

中谷国務大臣 基本的論理は変えておりません。

 というのは、集団的自衛権、この結論部分に書いていますけれども、集団的自衛権とは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利ということでございますが、今回、基本的な論理によりまして、我が国はこれに加えて新三要件を課しております。

 これは厳格な歯どめでありまして、この内容も、あくまでも国民を守るための集団的自衛権の行使の範囲であります。他国を守るための集団的自衛権ではないわけでありますので、その三要件をよく私も読みましたけれども、この三要件というのは、あくまでも、今までの三要件の基本的な論理、これに基づくものでございますので、その範囲の中だし、基本的論理は変わっていないということでございます。

寺田(学)委員 基本的論理が変わっているかどうかということではなくて、今までは、法的に安定しているかどうかということを、この三番目まで含めて、集団的自衛権行使は許されないんだということまで含めて、憲法が制限しているということで安定はしていたと思うんです。今度、政府の解釈は、三番だけ切り離して、その三番の当てはめは変わり得るという論理的な帰結を導き出したわけです。

 もう一度お伺いしますが、集団的自衛権が今まで認められなかったのが認められ、そして、可能性として再度認められなくなるということをもって、法的な安定性は担保されているんでしょうか。

中谷国務大臣 しっかり私も内容を読みましたが、ここで言っていることは、憲法は、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じられているとは到底解されず、そして、外国の武力によって国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に対応するためにやむを得ない措置として必要最小限度の武力行使は許されるということでございます。

 その範囲で、いろいろ時代が変わってきます。最初、この憲法で自衛隊もありませんでした。ところが、やはり自衛隊というのはこの範囲の中で認められる。そして、PKO、これは憲法違反じゃありませんが、そういった時代の背景とともに、この憲法で許される必要最小限度の武力行使、この範囲で政府としてずっと考えている、また、これからも考えていくということでございます。

寺田(学)委員 私どもとしては、その当てはめが変わり得ることによって法的な安定性は損なわれるのではないかということを質問いたしました。

 大臣は、いやいや、基本的論理一、二が守られていれば法的には安定しているんだということでよろしいですか。まず、この二つの基本的論理さえしっかりと堅持している、そのことをもって法的安定性は保たれるということでよろしいですか。

中谷国務大臣 今までも政府はそう考えてまいりましたし……(寺田(学)委員「今までって」と呼ぶ)その基本的論理をもって……(寺田(学)委員「今からでしょう」と呼ぶ)その基本的論理をもって今後も考えていくということでございます。

寺田(学)委員 ちょっと答弁をやり直してください。ちょっと今、違うことを言いました。訂正した方がいいですよ、今までと言っていましたから。ちょっとそこは違います。

中谷国務大臣 基本的論理を維持してまいっております。

寺田(学)委員 今の政府の解釈を変えてからそういう形でやっているということでいいですよね。その前は違いますよね。

 先ほど、午前中言いましたように、横畠さんが自分から変えましたと言っているんですから、そこはちょっと整理してください。

中谷国務大臣 四十七年の基本的な論理は引き続き維持をしてまいります。

寺田(学)委員 なので、基本的な論理を堅持し、当てはめが変わり得るということを憲法解釈として決めたのは、この政府からですよねということを聞いているんです。

 先ほど長官自体が言いました、基本的論理は維持していると。ただ、今まで、当てはめを含めて集団的自衛権は憲法上禁止されていると言っているので、今回憲法上許されるとなったのは、ここを当てはめにしたからですよねということです。それは今までずっと答弁されていたじゃないですか。

 だから、この基本的論理を維持するということが法的安定性を担保することなんですよね。いいですよね。はいでいいですよ。

中谷国務大臣 基本的な論理は昭和四十七年の見解でありまして、これは引き続き堅持をしてまいるということでございます。

寺田(学)委員 今の政府が憲法上法的な安定性が保たれていると言うのは、この基本的な論理を維持しているからだ、これを維持するということが最も安定性にとって大事なんだという御答弁だと思います。

 ちょっと一個お伺いしたいんですが、お渡しした資料二枚目、「海外派兵に関する政府見解」というものがあります。武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されない。これは、先ほど申し上げた基本的論理から導かれた当てはめということでよろしいですか。

中谷国務大臣 これは数十年前からある政府見解でありまして、いわゆる前の三要件、自衛権に関する三要件、これに基づいた考えでございます。

寺田(学)委員 いや、前から続いているものをそのまま引き継ぐか、今回集団的自衛権の当てはめの部分を変えたように変えるのかということは、先ほどから大臣が御答弁されているように、政府の裁量内だと思います。

 今回、この海外派兵に関する政府見解、まさしく、今の政府の論理展開によると、基本的な論理一、自衛権はある、基本的な論理二、必要最小限に限られているものだ、その上で、海外派兵に関してはどうなんですかということを当てはめた結果、武力行使の目的を持って武装した云々、憲法上許されないという結論だと思います。

 これは当てはめでよろしいですよね。

中谷国務大臣 前回、寺田委員とも専守防衛について議論させていただきましたけれども、その考え方は変わっておりませんし、この海外派兵に関する政府見解も変えていないということでございます。

寺田(学)委員 これが当てはめかどうかを聞いているんです。これは当てはめなんですか、基本的論理から導かれた当てはめなんですか、当てはめじゃないですかということを大臣に聞いているんです。

横畠政府特別補佐人 当てはめであれば、柔軟にというか、変わりやすい、どうにでもなるんじゃないかという御趣旨のお尋ねかと思いますけれども、決して、決してそういうことではございませんで、海外派兵についてのこれまでの政府の答弁といいますのは、従前の自衛権発動の三要件の第三要件におきまして、必要最小限度ということの規範の中身がどういうふうに働くかということを御説明したものでございまして、今般の新三要件のもとにおきます一部限定された集団的自衛権というものも含むものでございますけれども、あくまでも我が国を防衛するための必要最小限度の武力の行使ということで、第三要件はそのまま維持されるということでございますので、それの適用の結果、つまり規範の内容の適用の結果としては同じことになるというふうに理解しております。

寺田(学)委員 今、規範を当てはめた結果がこういう結論になっているということを最後御答弁されました。当てはめと呼ぶのか、基本的な論理から導き出された結論と呼ぶのか、それは呼び方はあると思いますが。

 それでは、大臣、この海外派兵に関する政府見解は、基本的な論理を維持した上で、変わり得るんですか。

中谷国務大臣 まだ、これはいつ見解をしたか確認しておりませんが、私の知る限りにおいては、恐らく昭和四十七年以前の、自衛隊が創設されて、その直後ぐらいの議論の中でこの見解が出たのではないかなと思っております。

寺田(学)委員 答えていないですよ。ちょっと今のはひど過ぎる。当てはめなんですよね、変わり得るんですかと聞いているんです。

中谷国務大臣 新三要件のもと集団的自衛権を行使する場合であっても全く変わらず、新三要件から論理必然的に導かれたものでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 寺田学君、もう一度お願いします。

寺田(学)委員 変わり得るかということをお伺いしているんです。基本的論理を維持した範囲の中で変わり得るんですかということを聞いているんです。変わるか、変わり得ることはないのか、どちらかです。

中谷国務大臣 全く変わりません。

寺田(学)委員 なぜ変わらないんですか。

 基本的論理一、自衛権はある、二、必要最小限に限るという具体性の乏しい二つの規範を出された上で、社会情勢、安全保障情勢を考えれば、今までは、集団的自衛権の行使は憲法上許されないという政府見解があったものを、その当てはめ部分の集団的自衛権の行使は憲法上許されないというところは変えて、今回、認められることになった。

 そして、先ほど長官にお話ししましたけれども、海外派兵に関するこの政府見解は当てはめですかということに関して、実質的に当てはめですと御答弁されています。

 その上で、なぜこの当てはめは、今後変わらないんでしょうかということを聞いているんです。

 今度は理由を聞きます。この海外派兵に関する政府見解が一切変わらないと先ほど大臣答弁されましたけれども、その理由を教えてください。必要最小限の範囲。

中谷国務大臣 この政府見解というのは、恐らく昭和三十年の最初のころに、自衛隊ができてなされた政府見解であります。これは憲法に基づいて政府が判断したものでございまして、私たちにおきましてもこの見解は変えるつもりがありませんし、変わらないものでございます。

寺田(学)委員 厳密に聞きますけれども、変えるつもりがないという話ではなくて、変わらないんです。

 先ほど言いましたけれども、一切今後変わらないと言いました。それは意思によって変えられることができるけれども変えないのか、それとも変えることができないのか、これはどちらですか。

中谷国務大臣 この見解自体が、昭和四十七年前に、相当前に出されたものでございます。それは、今の憲法上、政府が判断したものでございまして、私たちは、その見解というものは変わらないし、変えないということでございます。

寺田(学)委員 今、変えられないと言いましたよね。変えられないという理由は何ですか。

中谷国務大臣 これまで、四十七年以降は以前の三要件がありました。そして今、政府閣議決定で新三要件というものを考えておりますが、この新三要件のもと集団的自衛権を行使する場合であっても全く変わらず、この新三要件から論理必然的に導かれるものであります。

寺田(学)委員 変えられないと御答弁を大臣がされました。その変えられない理由を聞いているんです。変えない理由ではないです。変えられない理由ということを聞いているんです。委員長、よろしくお願いします。

中谷国務大臣 この新三要件から論理必然的に導かれるものであるからでございます。

寺田(学)委員 それが当てはめなんですよね。それが当てはめで、今回、集団的自衛権に関しては当てはめは変わったんです。これは当てはめですかと聞いたら、当てはめですと。当てはめの部分というのは政府の裁量ですよねと、一番最初のときは政府の裁量ですとお話ししました。

 なので、政府の裁量で変えられるものを、変えられないと大臣が御答弁された理由を聞いているんです。もう一度御答弁ください。大臣が変えられないと言った理由です。

中谷国務大臣 これまでの憲法の基本的論理、これは変えておりませんから変わらないということでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

寺田(学)委員 基本的論理の一と二を私は聞いているんじゃなくて、一と二によって導かれる三の当てはめ部分がこれだというので、それは変わるんですかということを聞きました。一と二の基本的な論理が変わっていなければ何々ということではないです。

 もう一度聞きますけれども、この政府見解が変えられないと御答弁されましたが、変えられない理由は何ですかということです。

浜田委員長 内閣法制局長官、整理。

横畠政府特別補佐人 海外派兵が一般に許されないとしてきたその考え方は、お示しの昭和四十七年見解の一及び二の基本的な論理から導き出されたものでございます。すなわち、昭和四十七年の政府の見解の一、二の基本的論理から、これまでの自衛権発動の三要件も出てきたものでございます。

 また、今回の新三要件も同じ一、二の基本的な考え方から出てきたものでございまして、それは規範、まさに規範でございます。ということで、変わらないということでございまして、当てはめの問題ではございません。

浜田委員長 中谷防衛大臣、答弁願います。

中谷国務大臣 この見解は自衛隊が発足してその後すぐできたと思いますが、昭和四十七年以降もこれは引き継がれております。

 その中におきまして、当時、武力行使の三要件というのがありまして、その第一要件、第二要件、これからできたわけでありますが、この基本的論理というのは、規範としての論理の部分は一切変わっていない、新しい三要件もこの規範の部分は変わっていないということで、引き継がれておりますし、変わらないということでございます。

寺田(学)委員 大臣が御答弁された、この政府見解は今後一切変えられないと言った理由を、委員会の方に御提出していただきたいと思います。委員長、よろしくお願いします。

浜田委員長 もう一回。

寺田(学)委員 大臣が、この政府見解を変えることができない、変えられないと御答弁されたその理由を、政府統一見解として委員会に出してください。よろしいですか。

浜田委員長 理事会で協議します。

寺田(学)委員 残り時間少ないですが、今回、憲法に違反しているんじゃないか、違憲ではないか、集団的自衛権を現憲法で認めることは違憲ではないかということが、憲法学者、そしてまた野党、マスコミ、国民の皆さんの中の一部から寄せられていることは事実だと思います。

 大臣も、今まで委員会の中で質問がありましたけれども、現憲法下において集団的自衛権を認めることは許されない、憲法改正すべきというお話をされていました。以前は、現憲法下において集団的自衛権を認めることは違憲だと思われていたんですよね。まず確認です。

中谷国務大臣 そうでございます。

 広義の意味で、いわゆる集団的自衛権というのは、自分が攻撃されていないにもかかわらず、他国に対する武力攻撃に対して実力行使ができるという権利でありますが、そうなりますと、他国に対する他国防衛の集団的自衛権ということでございますが、今回は、あくまでも、新三要件によって厳格な歯どめをかけて、あくまでも国民を守るための集団的自衛権、これを認めるものであるということでございます。

寺田(学)委員 広義、狭義、広い狭いはちょっと後ほど時間があれば議論しますが、御著書の中で、憲法九条のもとにおいて許容されてきた自衛権の行使は、我が国を防衛するために必要最小限の範囲にとどめるとの政府答弁があり、集団的自衛権を行使することは、範囲を超えるので許されない。政府答弁があって、その範囲を超えるべきものであって、憲法上許されないとされています。

 この政府見解というのは、御著書に書かれていますけれども、どのような、どの政府見解について参照された上でお話をされているんですか。

中谷国務大臣 昭和四十七年の政府見解で集団的自衛権は行使はできないという、この政府の見解でございます。

寺田(学)委員 四十七年見解以外は何かありましたか。

中谷国務大臣 私が考えましたのは、その見解があったからでございます。

寺田(学)委員 またこの四十七年見解になりますが、四十七年見解をもとに御自身として違憲だと考えられていたわけですけれども、そのときに、今回の法改正によって行使が可能になることは許されていた、その四十七年見解をもとに憲法違反だと考えたときには、その余地が残っていた、今回の法改正によって認められる一部の限定的な集団的自衛権は認められる余地があったとお考えになられていましたか。

中谷国務大臣 これは憲法調査会等でも議論をいたしておりますが、特に自民党の国防部会の中では、これは普通の集団的自衛権も認められるんだという方もいれば、全く認められない方もおりまして、相当激しい議論をしました。これは五年ぐらいしました。

 そこで、公約をする際に、そういう集団的自衛権に対する考え方もまとめ、そして、今から一年前、公明党と、与党で相当真剣に議論をいたしました。そこで改めてこの昭和四十七年の見解を見てみますと、その基本的論理の範囲の中で、自分の国に関する自衛のためになし得ることは可能であるという見解が出たわけでございます。

寺田(学)委員 自民党の経緯というよりは、大臣、大臣自身は、今まで集団的自衛権は違憲だと思っていた方が、急に合憲になって、法案の提出者になっているわけですよ。その理屈をしっかりと国民の皆さんに答えることができなければ、合憲をしっかりと証明することは難しいと思います。

 それで、先ほど狭義と広義という話がありましたが、大臣自身が当時この四十七年見解を見たときには、その広義、狭義という分け方の概念はあったんですか。あったかないかだけでいいです、時間がないので。

中谷国務大臣 いわゆる国際法で言う集団的自衛権を考えておりました。

寺田(学)委員 ごめんなさい、大臣のお言葉をかりてちゃんと言います。

 先ほど、狭義と言いました。広義と狭義の分け方はあったんですかという話をしたんです。

中谷国務大臣 先ほどお話ししたとおり、国際的に言う、そして政府も定義をしている集団的自衛権でございます。

寺田(学)委員 それで、大臣が違憲だと、その当時は広義と狭義の境目はなかったのかもしれませんが、るる御答弁されている中で大臣が主張されているのは、外国を守る目的を持って外国を守る、そういう集団的自衛権は違憲だと思っていたという御答弁をされていましたが、その理解でよろしいですか。

中谷国務大臣 そのとおりでございます。それは専守防衛を超えるものだと認識したからでございます。

寺田(学)委員 それでは、自国を守る目的で他国を守る集団的自衛権は、当時から合憲だと思っていたんですか。

中谷国務大臣 当時は集団的自衛権ということで私は考えておりました。しかし、その中で、何年も何年もこのテーマで議論をする中で、本当に憲法でこれが読むことはできないのか、相当これは真剣に考えた結果、自国国民を守るための集団的自衛権の行使、これはあり得るわけでありまして、憲法に容認されるという結論に至ったわけでございます。

寺田(学)委員 少し緒方委員の時間をもらうことを緒方委員から了解を受けましたので、もう一問だけしますけれども、もう一回聞きます。

 大臣は、他国を守る目的で他国を守る集団的自衛権は憲法違反だと思っていた、今回はそれはないから合憲だと思っているという御答弁をされています。

 私がお伺いしたいのは、自国を守る目的で他国を守る、今回の法案ですよ、その集団的自衛権は合憲だと考えていたんですかということを聞いているんです。

中谷国務大臣 正直な話、当時は、フルスペックといいますか、いわゆる政府で定義をした、先ほどお話ししたような国際的な集団的自衛権、これを念頭に議論を考えておりました。

寺田(学)委員 時間が参りましたので、このことも含めて、また次回、質問したいと思います。

 以上です。

浜田委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 民主党、緒方林太郎でございます。二回目のバッター立ちということで、よろしくお願いを申し上げます。

 午前中の審議を聞いておりまして、最後のところで、私あれっと思ったことが一個ございまして、以前、菅官房長官は、合憲の憲法学者はたくさんいる、合憲だと判断している憲法学者はたくさんいると言われました。そして、午前中の答弁で、数が問題じゃないというふうに言われました。同じ認識を共有しておられますか、大臣。

中谷国務大臣 憲法を専門的に勉強されている方々はたくさんおられます。私もいろいろな方々の御意見を聞いておりますが、しかし、学者さんはそれなりのお考えを持っていますけれども、要は自分自身がどう考えるかということが大事なわけでございまして、私もいろいろな考え方の方の御意見を聞いているということでございます。

緒方委員 答えになっておりません。数は問題じゃないというふうに思われますか。

中谷国務大臣 何が真実かというのは、自分なりにいろいろな方々の御意見を聞いているわけでありまして、自分自身が納得できるような方の意見を参考にいたしております。

緒方委員 相当に苦しいんだろうな、全然答えになっていないわけでありますけれども。

 数が問題じゃないという答弁というのは、私、本当にこれは問題だと思いますよ。(中谷国務大臣「そうでもない。では言います」と呼ぶ)どうぞ。

中谷国務大臣 憲法学者というお問いでございますが、今回、政府としては、憲法学者の方のみならず、政治学者、国際法学者、実務家、元自衛官などさまざまな分野の専門家の方の意見を聞いた上で、与党でも議論を行いましたし、政府で閣議決定をいたしました。法案も、その後、憲法の範囲の中でつくっておりまして、要は、国会、この国会でそれをお認めいただけるかどうか、そのために今慎重に議論をさせていただいておりますが、いろいろな方々の御意見を聞いてこの法案に至ったということでございます。

緒方委員 胸を張って、では言いますと言うような内容ではなかったと思いますけれども、質問に移っていきたいと思います。

 きょうは海外派兵について、先ほど寺田委員の方からも話がございました。海外派兵のこれまでの考え方で、私には、どうしても、安倍総理大臣が言っていることと中谷大臣が言っていることが全然違うように見えるんですね。それを、少し図を使いながら説明していきたいと思います。

 これまでの考え方というのは、まだ法律が通っておりませんので、現在の考え方というのは一枚目の資料でありまして、武力行使の目的を持って武装した部隊を海外の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであり、憲法上許されない、全て許されないというふうに解されていると私は理解しておりますが、その理解でよろしいですか、大臣。

中谷国務大臣 私の勉強した限りにおきましては、個別的自衛権におきましては、海外の領土、領海、領空に行くことはできないということではないというふうに思っております。(発言する者あり)

浜田委員長 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 ここで、全て認められないといたしておりますが、政府のこれまでの見解とはこれは異なっております。

 というのは、これまで政府は、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと解してきました。

 ただし、従来から、他国の領域における武力行動であって、自衛権の発動の三要件を満たすものがあるとすれば、憲法の理論としてはそのような行動をとることは許されないわけでないと解してきております。

 このような従来からの考え方は、新三要件のもと集団的自衛権を行使する場合にあっても全く変わらず、新三要件から論理必然的に導かれているということでございます。

緒方委員 海外派兵が全て認められないということではなくて、今、武力行動というカテゴリーが出てきましたね。武力行動、これは武力行使と何が違うんですか、大臣。

中谷国務大臣 基本的には同じでございます。

緒方委員 ということは、では、武力行動というのは、武力行使と同じですね。もう一度確認します。

中谷国務大臣 恐らく過去にこういう答弁があったからでございますが、基本的に私は同じだと思います。

緒方委員 それを踏まえて、一枚めくっていただきますと、安倍総理大臣の答弁というのは、これは、海外派兵というのは許されないのである、だめだと。一般にのあくまでも例外として、海外派兵の定義の例外として認められるというふうに安倍総理は答弁を何度もしておられます。これでよろしいですね、中谷大臣。

中谷国務大臣 この図で、ホルムズということですか。これは、安倍総理の答弁で、例外については、新三要件に当てはまれば法理上あり得るという答弁もされております。

 その上で、一般にの例外として、外国の領域における武力行使については、ホルムズ海峡における機雷の掃海のほかに、現時点で個別具体的な活動を念頭に置いていない旨を述べたものであると認識をいたしております。

緒方委員 いや、論理的に聞いているんです。

 海外派兵というのは憲法上許されないというふうに……(中谷国務大臣「一般に」と呼ぶ)一般にと書いていますね。その一般にの例外として、ホルムズの機雷掃海というのは認められる、そういう理解でよろしいですね。

中谷国務大臣 「一般にの外」という答弁をされておられます。

緒方委員 そうすると、あくまでも例外だというふうに、一般にの例外だというふうにホルムズの機雷掃海を捉えているわけですけれども、先ほど中谷大臣が言われたのは、そもそも海外派兵の中で新三要件に当てはまるのであれば、それは行けるというふうに、それは海外派兵をすることができるというふうに答弁されましたよね。

 法理的にそういうことができるということですが、私、中谷大臣の答弁というのはこの三枚目の紙だと思っていて、存立事態が起こり、そしてそれに対応するための集団的自衛権を行使する、そういうときであれば、それはホルムズ海峡機雷掃海に限定されず、新三要件を満たす限りにおいて海外派兵が可能だと。むしろ、例外ではなくて、こういう特殊な武力行使の形態を念頭に置くのであれば、それは海外派兵は可能なんだというふうに大臣は言ったと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

中谷国務大臣 ちょっと整理させていただきますが、安倍総理は、この例外について、新三要件に当てはまれば法理上あり得る旨答弁しています。

 その上で、一般にの例外として、外国の領域における武力行使については、ホルムズ海峡における機雷掃海のほか、現時点で個別具体的な活動を念頭に置いてはいない旨述べたものと認識しております。

 私の答弁いたしましたこれは、他国の領域における武力行動であって、新三要件を満たすものがあるとすれば、憲法上の理論としては、そのような行動をとることは許されないわけではないという従来の考えに基づいて、そういう発言をしました。

 一般にの例外として、外国の領域における武力行使については、ホルムズ海峡における機雷掃海のほかに、現時点で個別具体的な活動を念頭には置いていないということも、これまで繰り返し答弁をしておりまして、このように、従来の考え方も、安倍総理と私の答弁も全く矛盾しておらず、一貫した考え方ということでございます。

緒方委員 私、今の答弁を聞きながら、さっぱりわからなかったんですけれども、海外派兵の定義がありますね。武力行使の目的を持って武装した部隊を海外の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであり、憲法上許されないというのが、これが定義です。

 けれども、この武力行使の目的を持ってのところが、存立事態が起こり、そして、それに対応する集団的自衛権を行使する、いいですか、もう一回繰り返しますよ。存立事態が起こり、それに対応する集団的自衛権を行使する目的を持って武装した部隊を海外の領土、領海、領空に派遣する、そういう海外派兵は、別に、一般にとかついていなくても、自衛のための必要最小限度の範囲だというふうに読めますよね。大臣、それでよろしいですよね。

中谷国務大臣 先ほどお話ししましたが、今の、まだ法案は通っていませんけれども、個別自衛権におきましても、法理的には、この例外として行けるわけでございます。今度の新三要件も、全く同じ理論でございます。

緒方委員 そうすると、存立危機事態が起こり、そして、それに対応する集団的自衛権を行使する目的を持っていれば、武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することは認められるということであれば、それは別に、ホルムズの機雷掃海については、一般にの例外ではなくて、そもそも、原理原則として行けるということじゃないですか、大臣。

中谷国務大臣 理屈としては、今までと変わっておりません。今でも個別自衛権で、例外として、そういうことは法理上、ほとんどありませんよ、法理上可能である。今回も、一般の、海外の武力行使というものがございます。これは大事にしてまいります。

 そういう意味で、新三要件においても、それは例外として、法理上、法理上なんです。全くないかと言われると、法理上は考えられるけれども、余り考えられないということでございます。

緒方委員 法理上ということでありました。

 法理上は、存立危機事態が起こり、そして、それに対応する集団的自衛権の行使であれば、武装した部隊を海外の領土、領海、領空に派遣することは、法理上はかなり幅があって、かなり幅があって、それは送ることができて、ホルムズ海峡の機雷掃海に送るというのはその幅があるうちの一つですね。そういう理解でよろしいですか。

中谷国務大臣 確かに法理上はありますが、これはあくまでも三要件を満たさなければなりません。三要件の中に必要最小限度というのがありまして、そのことを考えますと、安倍総理はホルムズ海峡ということを一例として挙げられたわけでございまして、現実的に、この三要件を全て満たさないといけないわけですから、これはめったにあることではないということでございます。

緒方委員 ホルムズに限らず、日本が行う集団的自衛権行使、存立危機事態が起こって、それに対応して集団的自衛権を行使する、そういうことであれば、海外の領土、領海、領空に武装した部隊を出すことは別におかしなことでも何でもなくて、それは原理原則としてそういうことが可能じゃないですか。文章をよく読んでみればそうでしょう、法理上。

 それの一部分としてホルムズがあるというのと、安倍総理が言うように、この海外派兵の定義の一般にの例外としてホルムズ海峡の機雷掃海が認められるというのは、論理が全然違うんですよ。論理が全然違うんですよ。どちらを採用しているんですかということ聞いているんです。もう一度、大臣。

中谷国務大臣 まず、この三要件というのは、国の存立が脅かされて、国民の権利が根底から損なわれるような、もう大変な事態ということでございます。

 どのような場合にどのような武力行使が想定されるかは、実際発生した事態の個別具体的な状況に照らして総合的に判断する必要がありますので、まさに、あらかじめ言うことは困難なんですけれども、現時点において、外国の領域における武力行使については、ホルムズ海峡における機雷掃海のほかに具体的な活動を念頭に置いてはいないということでございます。

緒方委員 もう少し簡単に聞きます。

 この海外派兵の定義そのものに、存立危機が起こり、そして集団的自衛権を行使するときのいわゆる海外派兵というのは、これは一般にではなくて、もう一般にとか何もなく、自衛のための必要最小限度を、そういうことが起こっているときは超えないということで、それでいいんですよね、大臣。いいですよね。(中谷国務大臣「はい」と呼ぶ)

 それと、この定義そのもの、定義そのものがこれで固まっているんだけれども、その一般にに対する例外というのは、論理そのものから導き出されるというのと、一般にの例外だということというのは全然違うわけですよ。どちらが政府の立場なんでしょうということをさっきから私、聞いているんです。

 私、まだ頭の整理がついておりません。大臣、もう一度説明してください。(発言する者あり)

浜田委員長 中谷防衛大臣。

 静粛に願います。

中谷国務大臣 私の勉強した限り、この海外派兵の禁止というのは、自衛隊が、創設した直後に、これは自衛隊ができたけれども海外派兵はさせないんだということでつくられたということでございます。したがいまして、一般に海外派兵は許されないというこの大原則がありまして、それが今でも引き継がれているということでございます。

 しかし、自分の国を守るということは政府としてやっていかなければなりませんので、これまでも、法理論上、本当に海外でそういうことがないかと言われれば、法理論上はあり得るということでありまして、その考え方は今でも引き継がれているということでございます。

緒方委員 では、存立危機事態が起こっているときの集団的自衛権行使、それで海外の領土、領海、領空に武装した部隊を派遣することというのは、ホルムズに限らず、法理上ですね、法理上、それはかなり幅があるというふうに見ていいんですよね。大臣、もう一度。

中谷国務大臣 あくまでも、三要件がかかっております。ほかに手段がない、必要最小限。

 ですから、どの時点でどういう事象があるかわかりませんけれども、現時点において念頭にあるというのはホルムズ海峡ぐらいで、ほかは念頭にないということでございます。

緒方委員 念頭にないだけであって、それは政策判断として、ないわけですね。

 政策判断として、ないということであって、決して、法的判断としては、ある程度の、存立危機事態が起こり、そしてそれに対して、それに対応するための集団的自衛権行使を行い、それを解消するために海外の領土、領海、領空に武装した部隊を派遣しなくてはならないということであれば、それは法的にはホルムズだけに限らず、いろいろな可能性があって、あくまでもそれは、ホルムズ機雷掃海を選んでいるのは政策判断にすぎないということでよろしいですね。

中谷国務大臣 基本的には、専守防衛を堅持してまいります。そういう中で、国民の生命、生活を守っていくという見地におきまして、あらゆる事態に対応できるということで今回考えたわけでございます。

 実際、外国に行くのかというお話でありますが、やはりそれは、どのような場面にどのような事態が発生するかということでございまして、いろいろと考えておりますが、現時点において、総理は、ホルムズ海峡における機雷掃海のほかに具体的な活動を念頭に置いているということではないということでございます。

緒方委員 もう一度聞きます。

 法的には一定の幅があり、そして、ホルムズ海峡の機雷掃海だけしか想定されないというのはあくまでも現政権下における政策判断だ、法的判断ではなくて政策判断としてそう選んでいるにすぎないということでよろしいですね、大臣。

中谷国務大臣 総理は、これを説明する場合も、必要最小限度ということを言われておりまして、海外の領域における武力行使については、ホルムズ海峡における機雷掃海のほかに、現時点で個別具体的な活動を念頭に置いているということではございません。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 では、中谷防衛大臣、答弁願います。

中谷国務大臣 安倍総理は、政策上はホルムズ以外に念頭にないということを繰り返し申し上げておりますが、私も議論を聞いておりますけれども、三要件のうち必要最小限であるというようなことも申しておられまして、いずれにしましても、ホルムズ海峡の機雷除去しか念頭にないということでございます。

緒方委員 しつこいですが、確認をさせていただきます。

 法理上は、存立危機事態が起こり、それに対応する集団的自衛権行使の目的を持って武装した部隊を海外の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵、こういう前提がついた上での海外派兵というのは法理上やり得て、やり得て、そしてその中で、今、政策上はホルムズ海峡の機雷掃海しか想定していない、そういう理解でよろしいですね。

中谷国務大臣 よくお考えいただきたいと思いますが、今までも、個別的自衛権の三要件においても、海外の領土、領海、領空、これは法理的には可能であるということを言ってまいりました。この新三要件も全くそれと同じでございますが、現時点において、総理は、政策的にホルムズ海峡では、ないと言われておりますし、また、三要件がございますので、必要最小限度、これをもって考えるんだというふうにおっしゃっておられます。

緒方委員 存立危機事態が起こり、そしてそれに対応する集団的自衛権行使の目的を持って、そして武装した部隊を海外の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵というのは、法理上はかなりの幅を持って起こり得て、新三要件に当てはまる限りにおいては起こり得て、そしてその中で、ホルムズ海峡の機雷掃海というのは、それはあくまでも、なぜ今それが言及されているかというと、その幅のある中で、一つの類型として今想定されるということで選んでいるということでありました。(中谷国務大臣「いやいや」と呼ぶ)いや、そう言ったじゃないですか。(中谷国務大臣「言いました」と呼ぶ)言いましたよね。では、もう一度、確認でどうぞ。

中谷国務大臣 そう申し上げましたけれども、これは、この例外は非常に慎重に考えていかなければならないということを申し上げております。極めて慎重な当てはめを行っていくことでありまして、基本は、一般にそれは許されないということでございます。

緒方委員 あくまでも政策判断としてそれを選んでいるだけであって、幅があるということについては御答弁をいただいたと思います。

 その中で、では、その大臣の政策判断として言った内容が法律の中にどれぐらい落ちているのか。想定されていないということでありましたが、最小限である以上、私は、やれるという理屈になると思いますし、今言った前提が立つのであれば、大臣もかなり幅を持ってやれるということでありますが、では、改正武力事態法を読んでみましょう。

 対処措置のところに、存立危機武力事態を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊の展開等、これを対処措置として定めると書いてあります。

 そして、基本理念のところには、存立危機事態においては、存立危機武力事態を排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない、ただし、存立危機武力事態を排除するに当たっては、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される程度というふうに書いてありますが、これが恐らく、今、改正武力事態法の存立危機事態のところで、いろいろな対応をするときの条件のようなものが書いてあると思うんですけれども、この中に、海外派兵がやれない、基本的にだめなんだというようなことが読み取れる規定が全くないんですね。全くないんです。

 改正武力事態法の中で、では、本当に、今、政策判断としてホルムズ海峡の機雷掃海以外はやらないというふうに大臣は言われたけれども、それを担保する法律がないんですよね。それは書き込むべきだというふうに思いませんか、大臣。

中谷国務大臣 これは、海外派兵禁止の見解を表明しておりまして、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないと政府で述べております。この考え方は、新三要件のもと集団的自衛権を行使する場合であっても全く変わらないということでございます。

 存立事態というのは、本当に、三つの前提がありまして、この三要件全て満たす、その上で、他国に対する武力攻撃が発生した場合においてが大前提です。そのままでは、すなわち、その状況のもとで武力を用いて対処しなければ、国民に、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況ということでございますので、こういった状況を、本当に国民が非常に深刻な状況になるというような状況であるというのは、非常に、条件的にはかなり限定されているというふうに思っております。

緒方委員 しかしながら、存立危機事態というのは別にホルムズ海峡だけで起こるわけではないわけですね。日本の周辺でも起こり得る。まさにそういったことが想定されているから、今政府が言っているように、切迫事態と武力攻撃事態の間を埋めたいとか、そういったような話があるからこの話があるわけでして、存立危機事態というのは日本の周辺でも大いに起こり得る。

 そして、そういったことが起こり得るときに、その存立危機事態の問題を解消するためには、他国の領土、領空、領海に行かなければそれが解消できないとするときに、そういう事例があるとして、今の大臣の答弁だと、それは行かないということですね。存立危機事態が生じて集団的自衛権を行使するんだけれども、他国の領土、領海、領空に行かなければその問題が解消できないというときには、今の大臣の説明では、ホルムズ海峡以外の事例についてはやらないということですね、大臣。

中谷国務大臣 念頭には置いていないということです。

 ただし、法理論的には、今まで個別的自衛権のときもそのような規定は設けておりません。まさに国家の非常事態でございます。

 したがいまして、現時点におきましては、ホルムズ海峡の機雷掃海のように、他国の領域において武力行使をとり得ることは法理論上ありますということでございますが、それ以外は念頭にないということでございます。

緒方委員 十五事例と言われたものの八番目に、邦人輸送中の米艦防護、武力の行使として捉えられるものとして、邦人輸送中の米艦防護というカテゴリーがありました。

 例えば、どこかの国からそういった船が日本に向かってやってきていると仮定しましょう。そして、存立危機事態だ。だから、日本は出ていこうと思うけれども、それは、そういう船が公海に出てこない限りは対応しないということですね、大臣。

中谷国務大臣 今、事例集のお尋ねでございますが、事例の八から十五までにつきましても、基本的には、公海における武力行使を想定しているものと記述をしておりまして、これらの活動の中で他国領域で行うものがあるとすれば、その活動については、新三要件に該当するか否かによって慎重に判断していくことになります。

浜田委員長 もう一回答弁願います。中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 それが領海に入らなければならないということは、あくまでも三要件が適用されるという場合でありますが、その時点において慎重に判断していくということでございます。

緒方委員 幅がある中で、ホルムズ海峡の話が唯一だということでありましたけれども、今の答弁であれば、また新三要件に当てはまって、それが必要なのであれば、新たな事例が、例えばこの邦人輸送中の米艦防護のようなケースについても、これも新三要件に当てはまるのであれば、海外派兵をやる、やり得る、そういうことでよろしいですね、大臣。

中谷国務大臣 新三要件に該当するかどうか、慎重に判断をしてまいります。

緒方委員 慎重に判断するということは、当てはまるのであれば、当てはまるのであればです、法理上。当てはまるのであれば、そのときは他国の領海に出ていって海外派兵をする、そのことが可能性としてあり得るということでよろしいですね、大臣。

中谷国務大臣 法理的な話であるという一般を前提として、新三要件に当たる場合は実施をしますし、当たらない場合は実施をしませんが、いずれにしましても、慎重に判断をしていくということでございます。

緒方委員 ここまでの審議でかなり明らかになったと思うんですけれども、安倍総理大臣が、海外派兵というのは一般的に禁じられていて、そしてその例外として当てはまり得るのはホルムズ海峡の機雷掃海しか想定していないと。あたかもそれ一個しかないというような言い方でありましたが、まず一番最初に重要なのは、法理上はかなり幅がある、かなり幅があるということ、これが明らかになった。そして、かなり幅がある中で、では何が入ってくるかということについて、ホルムズ海峡の機雷掃海がまずあるのと、それ以外にも幾つか入ってきそうだということが明らかになった。私の理解で、大臣、よろしいですね。

中谷国務大臣 この三要件というのは、もう世界に類を見ない、極めて厳しい縛りでございます。つまり、国の存立を脅かされ、国民の権利が根底から覆される、そして、ほかに手段がないです、そして必要最小限です、これだけの厳しい条件をかませておりますので、この場合の適用については、総理の頭にあるのは、ホルムズ海峡の機雷しか念頭にないということでありますし、その他につきましても非常に慎重に判断をしていくということでございます。

緒方委員 もう一度だけ確認させてください。済みません。

 海外派兵については、海外派兵については一般的にほぼ禁じられていて、そして、その例外としてあり得るのは、それは一般にの例外としてホルムズ海峡の機雷掃海だと安倍総理はこれまで言ってこられたけれども、実はそうではなくて、法理上は一定の幅があり、そして、その具体的な事例についても、ホルムズ海峡の機雷掃海がまずこれは想定される、そして、それ以外のものについても、慎重に判断かもしれないけれども、入ってくる可能性がある。そういうことでよろしいですね、大臣、もう一度。

中谷国務大臣 政府としても考え方を整理させていただきます。

 まず、いわゆる海外派兵というのは、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって、憲法上許されないということでありますが、しかし、従来から、他国の領域における武力行動であって、自衛権発動の三要件を満たすものがあるとすれば、憲法の理論上としてはそのような行動をとることが許されないわけではないと解しております。

 このような従来の考え方は、新三要件のもとでも、集団的自衛権を行使する場合であっても全く変わらず、新三要件から論理必然的に導かれるということでございます。

緒方委員 それでは、少し質問をかえたいと思います。残り二十分ぐらいですか、質問をかえたいと思います。大臣にまずお伺いをいたしたいと思います。

 これまで三回行われております北朝鮮の核実験とか、台湾海峡の非常に危機的な状態、一九九六年ですね、ああいった事態と、ホルムズ海峡の機雷封鎖、どちらが我が国の平和及び安全にとって深刻な事態だというふうにお考えになりますか、大臣。

中谷国務大臣 緒方委員も外務省におられて、常に国際情勢を把握されておられますけれども、いろいろな海外の事件、事故、事例、紛争がありますが、我が国の平和と安全にとって重要な事態であるかどうか、こういうことを念頭に常に考えていくということで、政府としては総合的に判断をするわけでありますが、あくまでも我が国の安全保障、防衛となりますと、そういった事象において判断をしていくということでございます。

緒方委員 もう一度お答えいただきたいと思います。

 例えば、北朝鮮の核実験、そして台湾海峡での非常に緊張した事態、一九九六年ですね、ああいった事態と、ホルムズ海峡で機雷封鎖される事態、この二つ、これらを比べたときに、どちらが我が国の平和及び安全にとって深刻な事態だ、より重要な影響を与える事態だというふうに思われますか、大臣。

中谷国務大臣 緒方議員も外務省で、いろいろな国際情勢を見ながら日本の対応を考えるわけでございまして、個別具体的な事例、条件に応じて政府としては判断するということでございます。

緒方委員 なぜこんな質問を聞いたかというと、実は国会答弁で、北朝鮮の核実験については、これは周辺事態に当たらないという答弁がございます。北朝鮮の核実験そのものについては、実験そのものについては、これは周辺事態に当たらないと。そして、ガイドライン国会のときの特別委員会でも、台湾海峡での緊張事態というのは、これは周辺事態に当たらないという答弁がございます。

 それを前提に、この四枚目の資料を見ていただきたいと思います。

 これまでの国会答弁で、存立危機事態は重要影響事態に包含されるというお話がございました。重要影響事態、改正周辺事態法ですけれども、そこで言われる「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」、これが今回の法律で言う重要影響事態。

 これは、概念上、今言った北朝鮮の核実験や台湾海峡での緊張事態というのはこの外に来るんですね、政府の見解からいうと。周辺事態に当てはまらない、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態でないというふうに言っているわけですから、この外に来るわけです。

 その一方で、ホルムズ海峡の機雷掃海というのは存立危機事態です、存立危機事態です。この黄色い中に入ってきます、入ってきます。そして、この論理を全部あわせて考えると、実は、ホルムズ海峡の機雷掃海の事態というのは、北朝鮮の核実験や台湾海峡での緊張事態よりも二ランク重大の度合いが高いということになると思うんですけれども、大臣、それでよろしいですね。

中谷国務大臣 その北朝鮮の核実験とか台湾海峡というのにおいて当たらないというのはどこの答弁であるのか私もわかりませんが。

 いずれにしましても、重要影響事態というのは、その判断要素として、実際に武力紛争が発生し、または差し迫っている等の場合において、事態の個別具体的な状況に即して、当事者の意思とか能力とか場所とか態様とか、そういうのを初め、判断をするわけでありますし、外務大臣等がお答えをさせていただきましたけれども、我が国に戦禍が及ぶ可能性とか国民に及ぶ被害の重要性をまた客観的に判断するということです。一方、存立で、ホルムズ海峡の事例、これも三要件に当たるということでございますので、どちらがどちらかというのは、本当に具体的な状況で、どうお答えしたらいいかわかりませんが、いずれにしましても、我が国の国民生活により重大な影響が及ぶ可能性が高いという方が重要視されるのではないかと思います。

 それで、お尋ねで、ホルムズ海峡がどちらに当たるかというお問い合わせですか。(緒方委員「いや、違います」と呼ぶ)では、御質問、済みません。

緒方委員 資料で配りませんでしたけれども、平成二十一年六月四日、参議院の外防、政府参考人答弁でこういうふうに言っています。「核実験のみから、法律上の定義であります、そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態という、周辺事態の定義に該当するような事態が起こっているとは考えておりません。」ということなので、これは、北朝鮮の核実験というのは、この重要影響事態の外ですよね。外ですね、二〇〇九年の段階では、起こった実験については。

 そして、存立危機事態、これは、ホルムズ海峡でそういうことが起こり得るということで、大臣言っておられます。

 ということは、もう一度聞きますけれども、存立危機事態に当たるようなホルムズ海峡の機雷が置かれる行為は、北朝鮮が核実験を行っていることよりも、我が国の平和及び安全に与える重要な影響について二ランク上だということでよろしいですね。

中谷国務大臣 その判断をされたのは当時の御判断でありますが、核実験というのは、回数を重ねますと、より小型化、精密化をいたします。このことにつきましては、国連でもこれに対する決議を出したりして国際社会として考えておりますので、現時点において当時のレベルではないと私は思っておりますが。

 要は、重要影響事態になるわけでありますけれども、個々の状況に即して、情報を総合して客観的に判断をします。先ほど申し上げましたけれども、そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態は、これは例示でございます、いろいろ六類型、例示で挙げておられますが、そういうことを総合いたしまして、やはり、実際に武力紛争が発生して差し迫っているなどの場合とか、いろいろな場合が考えられますので、ただ核実験をもってそれだけで判断しろといっても、なかなか厳しいところがございます。

緒方委員 私は別に何か架空の核実験と言っているわけではなくて、二〇〇九年に起こった核実験、これに対して政府は、これは周辺事態ではない、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態ですらないというふうに国会で答弁があっているわけです。(発言する者あり)そうですよ、攻撃していないですよ。けれども、それに対して、日本人は、やはり日本の平和及び安全に相当な影響があるだろうと相当な危機感を持ったと思うんですね、核実験が行われたときに。

 それと比べて、それですら周辺事態でないのに、ハードルがあって、周辺事態へのハードル、そして周辺事態に包含される存立危機事態のハードルと、ハードルが二つあるわけです。その中に、ホルムズ海峡に機雷が置かれることが入ってくるということが、多分、国民の大半の人からすると、物すごく違和感があると思うんですよね、物すごく違和感があると思いますよ。

 実際に日本の近くで核実験が行われた行為と、日本からはるか遠くのホルムズ海峡で機雷が置かれた行為、もちろん、それで石油がとまるかもしれない、いろいろなことがあるかもしれないけれども、その二つを並べたときにハードルが二つ高いということが、明らかに、このホルムズ海峡の機雷掃海が存立危機事態に含まれることが、ちょっとうさん臭いんじゃないかというふうに思う原因だと思うんです、直観的に。

 大臣、ホルムズ海峡の機雷掃海が存立危機事態の中に含まれるということは、さっき言った、二〇〇九年の北朝鮮核実験が周辺事態でないということとの関係で、過剰だというふうに思いませんか。

中谷国務大臣 これまでも石油をめぐって委員会でもさまざまな議論が展開されましたけれども、要は、ただ単に経済的な影響ではなくて、国民生活に死活的な影響、すなわち、国民の生死にかかわるような深刻、重大な影響が生じるか否かを総合的に評価した結果、存立事態を認定するというところでございます。

 したがいまして、こういった状況が我が国にとってどういう状況であるのか、それに対して、北朝鮮の核事態、これも注視をしなければならないわけでございますけれども、こういった観点で比較するということですから、どちらがどっちということではありませんが、お答えといたしましては、国民生活にとって生死にかかわるような重要な事態であるかどうかということで政府も総合的に判断をしてまいるということでございます。

緒方委員 わかりやすく説明をするために幾つか例示をさせていただいたけれども、今の、北朝鮮の二〇〇九年に行った核実験よりも、ホルムズ海峡の機雷が置かれる行為の方がハードルが二つ高い、ハードルが二つ高い、法理上、整理をしてみれば。そのことを国民が聞いてみると、ちょっと何か違うんじゃないかと違和感を恐らく持つだろうと思います。

 それが、この存立危機事態の、「存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」というのが緩く解されているんじゃないか。緩く解することができる、だから、そういう常識的な感覚で見て、日本人から見ると、北朝鮮の核実験の方がはるかに脅威を感じますよ、しかし、その方が重要な影響のレベルからいうと二ランク低いというふうに言われることの、その原因なんじゃないかと思います。

 大臣、やはりこの存立危機事態の要件は緩く解されているんじゃないかと思いますけれども、大臣、いかがですか。

中谷国務大臣 ただ単に北朝鮮で核実験が行われるとか、またホルムズ海峡で機雷がまかれるとか、そういうことだけではありません。要は、国民の生死にかかわるような本当に深刻な、重大な事態が発生するかどうか、そういうことを見て判断をするわけでございますので、単なる核実験とか機雷とか、そういうだけで判断をするということではないということでございます。

緒方委員 最後五分ぐらいあります。

 質疑時間は終了しましたか。済みません。では、これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

浜田委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 民主党の大串博志でございます。早速質問させていただきます。

 先般来、大きな議論になっている、先週の憲法審査会で三人の憲法学者の皆さん、自民党さん、与党さんが呼ばれた憲法学者の方も含めて、今回の集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈変更による安全保障法制は違憲であるという意見を述べられた件、これはやはり看過できない、小さく見ることはできない、大きく、どれだけとってもとり切れないぐらいの大きな問題だと私は思うんですね。

 先ほど辻元議員からもありましたように、これが問題である、違憲であるというふうに名を連ねていらっしゃる憲法学者の皆さんは、もう二百名を超えていらっしゃる。

 きのう、どこかの報道番組でしたか、判例百選に名を連ねている二百名の憲法学者の皆様にアンケートをとられた。答えられたのは五十数名ぐらいでしたか。そのうち、違憲だとやはり言われた人方がほとんど。違憲じゃないと言われた方もたった一人。しかも、その違憲じゃないと言われた人の理屈も、四十七年見解を引っ張ってくるのはやはりおかしいとおっしゃっているんですよね。

 こういう状況である中で、先ほど来も話がありましたけれども、昨日、河野元衆議院議長あるいは村山元総理も含めて、民意が反映されていない、よって、この法案は一旦引っ込めて再検討すべきだということをおっしゃっています。

 私、今回いろいろ考えていて、憲法学者の皆様の声だけじゃないなと思うんです。恐らく皆様も、週末、地元を歩かれて感じられたと思うんですけれども、この憲法学者の皆様が言われたことを受けて、地元の皆さん、一般有権者の皆さんも、やはりこれは違憲だよな、おかしいよな、何となく腑に落ちないなと、多くの有権者の皆様がそういうふうに同じく呼応されている、同じく違憲じゃないかという目で見られている。ここが一番大きいんだと私は思うんです。だから、この問題は丁寧に扱わないといけないし、ひとり独走するわけにはいかないと私は思うんですね。

 資料の中で十九ページを見てください。ちょっと分厚い資料で済みませんけれども、これは新聞の週末の世論調査ですよ。四角で囲みましたけれども、「現在、国会で審議されている、集団的自衛権の限定的な行使を含む、安全保障関連法案についてお聞きします。 安全保障関連法案は、日本の平和と安全を確保し、国際社会への貢献を強化するために、自衛隊の活動を拡大するものです。」物すごくよく書いてくれますよ。物すごくよく書いてくれている質問項目、普通あり得ないような、誘導してくれているかのごときよい質問項目であるにもかかわらず、「法律の整備に、賛成ですか、反対ですか。」反対四八ですよ。

 つまり、世論の皆さんがこういうふうに、こんなによく書いてもらった問いでさえ、反対四八%。このぐらい世論の皆さんの中に、やはり違憲じゃないか、憲法上危ないんじゃないかという声が広がっている。私、これを小さくとってはいけないんじゃないかというふうに思うんです。

 大臣、やはりここは無理しちゃいけないと思う。この法案、一回考え直して、河野元衆議院議長が言われるように、一回撤回してもう一回考え直す、そう言うべきじゃないですか、大臣。どうですか。

中谷国務大臣 これは基本的には政府がもっと丁寧に話をしなければならないということでございますが、基本的に何のためにこの法案をつくって国会にお出しをしているかというと、やはり今のこの日本の平和と、そして国民の命をどのようにして守れることができるのか。そのためには、あらゆる事態に対応できる切れ目のない法制をつくらなければなりません。

 今、ミサイルがどんどんどんどんふえてきて、また、パワーバランスも変化して、我が国の周辺情勢も変わってきております。また、テロも国際的に非常に多くなってまいりました。こういう中で、いかに日本また海外にいる日本人を守っていくかというのは、これは政府に与えられた仕事であります。

 私も日本の防衛を預かっておりますけれども、法的に見て、本当に全ての事態に対応できるかどうかと聞かれますと、それは、個別的自衛権においては今まで法律で整備をしてきましたけれども、我が国が直接武力攻撃を受けていない場合でも、我が国に対して支援をしてくれている国などがあって、その国が攻撃をされた場合に、これをそのまま放置していれば、我が国が大変な、存亡にかかわるような事態になってしまうという事態もあり得るわけでございます。しかし、しっかりと法律をつくっておかないと対応できない、自衛隊も対応できない。

 そのために今お出しをしているわけでありまして、今回、憲法を改めてしっかりと読み直してみますと、やはり我が国を守るための必要最小限度の自衛のための対応、こういうものに基づいて法案をつくってお出しをしているということで、基本的には、日本人及び日本の国をしっかり守るためにこの法案を出しているわけでございます。

    〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕

大串(博)委員 今るるおっしゃった日本の安全保障環境の変化、それは私もわかります。だったら、だったら、やはり正面から憲法の改正を国民の皆さんに問うて、国民の皆さんにそれを訴えて得ていくべきですよ。それは中谷大臣がもともと言われていた主張、私はそれが正しい行き道だと思います。

 それをしないで、自分たちの憲法解釈はいつも正しいんだというふうに上から目線で、国民の皆さんに押しつけるかのごとく言うから、しかも、憲法学者の皆さんの発言も聞く耳を持たないような雰囲気で、やはりこれは合憲なんだ、合憲なんだと自分たちの理屈だけでおっしゃるから、国民の皆さんはますます怪しいなというふうに思われるんじゃないかと私は思いますよ。

 例えば、先ほどの法制局長官の答弁も私、非常に気になりました。憲法学者の皆さんがおっしゃっている、その背後にいろいろな世論があります。それをどう考えているのか。

 例えば、先ほど、与党の皆さんの質疑の中で、冒頭でこうおっしゃいましたね、自衛隊は違憲だ、憲法学者の皆様の意見は伝統的にこういう声が多かったと。わざわざそれを冒頭、何の脈絡もなくつけ加えられましたね。これは何で言われたんですか。

 どうも聞いていると、そのほかの言葉もいろいろ聞いていると、今憲法学者の皆さんも含めてそう言っている、しかし、ここを通ってしまえば、あとはみんなすっと静かになって、世論も静かになって、問題ないんだ、今一過性の声なんだと言わんばかりの声に聞こえてくるから、民意をどう考えているのかと気になるわけですよ。

 法制局長官、何であんな発言をされたんですか。

横畠政府特別補佐人 憲法学者の御指摘を踏まえた質問を受けたので、その点に触れたものでございます。

 我が国の憲法九条の解釈につきましては繰り返して申しませんけれども、憲法学者の大勢は伝統的にやはり自衛隊は違憲であるということであったわけでございますけれども、政府といたしましては、やはり我が国の存立と国民の安全に対して責任を持っておる政府といたしましては、これまでも、国会の御理解を得た上で、自衛隊法の制定を初め、数々の法整備を行ってきたという、その経緯を述べた上で、その前提となっている考え方を整理したものが昭和四十七年の政府見解であるという、その政府四十七年見解を基礎として今回の新三要件も考えたという、その全体の経緯を御説明させていただいたところでございます。

大串(博)委員 法制局長官、私、きのうも法制局長官に直接申し上げましたけれども、関係のないことを言わないでください。

 私がさっき申し上げたのは、なぜ、自衛隊は違憲だ、憲法学者の方々は伝統的にそういうふうな意見が多かったとわざわざつけ加えられたのは、何でそんなことを言われたんですかと。あたかも、そういう声は今あるけれども、今後静かになるんじゃないかと言わんばかりの声だったように聞こえたものだから、そういうふうに聞いたんですね。

 そのぐらい今の現状を私は重く捉えるべきだと思います。それぐらい国民の命と平和に大きな影響を与えるものだ、だから、真剣に、かつ重く受けとめてもらいたい。無理はいけない。

 どうしてかというと、やはり今回、政府が憲法解釈を変更したそのロジック、その流れに、やはり憲法学者の皆さんは専門家だから、当然そうですよ、あるいは国民の皆さんですら、胸にすっと落ちていない。ああ、なるほど、そうだったらそうも読めるわなというふうに思えるような状況になっていない。それだけ苦しい読み方、読みかえ、憲法解釈の変更、苦しいものをやっているからですよ。それをこの委員会でも指摘しているわけで、私も、そこはきょうは指摘させていただきたいと思います。

 先般来、議論させていただきました。私、きょう、資料を一枚目から幾つかつけさせていただきましたけれども、問題となった四十七年見解ですね、一ページに書かせていただきました。四十七年見解は、規範の部分を踏襲しているからいいんだということでしたね。この資料の一番後ろの二十ページ以降に、きのう政府に示してもらった新三要件の憲法解釈の論理的整合性等についてつけています。

 これを読みましたけれども、この政府の統一見解は、今まで述べられたことを繰り返して述べられているだけです。要は、この四十七年見解における、第一段落、第二段落、第三段落とあります、そのうちの第三段落のうちの一部、第一ブロックと第二ブロック、ここは規範だと自分たちで決めつけて、この第一ブロック、第二ブロックを規範だと言った上で、ここを踏襲しているからいいんだと。第三ブロックに関しては、これは結論だ、結論に関しては、事実認識が変わったと。安保環境が変わった、事実認識が変わった、だからここは考え方を変えた、第一ブロックと第二ブロックを踏襲しているからいいんだ、こういう説明。

 この全体が、憲法学者の皆さんやあるいは国民全体の皆さんに、そうだよなということで胸に落ちていないんじゃないかと私は思うんです。

 それはそうだろうなと私は思います。なぜなら、四十七年見解を見ていただくと、規範を引き継ぎましたとおっしゃいます、規範を引き継ぎましたとおっしゃいますけれども、四十七年見解は、見ていただくと、第一段落、第二段落、第三段落と、これだけあるんですよ。皆さんがここを踏襲しましたとおっしゃっている部分は、第三段落の一部、第一ブロックと第二ブロックだけなんです。この一部だけを踏襲しましたと言って、そのほかは、特に結論部分の第三ブロック目は踏襲していない。そういう中だから、普通に考えると、みんな、合憲にはならないだろうなと思うわけですね。

 特に、第二段落を見ていただくと、ここが結論ですよ、この四十七年見解の。

 第一段落、何が書いてあるかというと、集団的自衛権を有していることは主権国家である以上当然だということをまず言っています。第二段落に、しかしながら、ところで、政府は、国権の発動として、集団的自衛権を有していても、これを発動して行使するということは憲法の限界を超えるので許されないという結論を述べて、「これは次のような考え方に基づくものである。」と言って、第三段落に全部説明しているんですよ。

 第三段落が全部、結論の説明なんですよ。これが全部規範なんですよ。これが規範なんであるにもかかわらず、その第三段落の一部だけ取り上げて、一部を踏襲しました、だから合憲ですというふうに言っているところに納得性のなさがあるわけですよ。

 ここは、先ほど寺田委員の方からも意見がありました。当てはめ、第三ブロック、当てはめの部分。ここは、政府の見解の中でも、二十一ページですけれども、「認識を改め、」と、これまでと安保環境が変わったから認識が改まった、こういうふうに言われましたね。

 第三ブロック、私がきょうお聞きしたいのは、この間の議論に続いてなんですけれども、この間の議論は、大臣に私が幾らこの質問をしても、大臣からお答えいただいたのは、この政府見解に書かれていることの繰り返しでした。すなわち、自分がなぜ今回の憲法解釈の変更を合憲と思うかということのるる説明、この二十ページ以降の政府答弁の繰り返しでした。

 私は、そこから進んで、きょうきちっとお尋ねしたいのは、先ほど来、当てはめの話がありました。第一ブロック、第二ブロックは規範だ、ここを踏襲している、しかし、第三ブロックに関しては、ここは当てはめだから、ここに関しては、現状に関する認識が変わった、よって変えました、その認識が変わったのだから、集団的自衛権は行使可能ですというふうに考え方を変えた、これは合憲です、こういうふうに言われています。

 しかも、そのことを大臣に私が聞いたら、六月五日ですけれども、大臣はこう言われました。なぜですかと私が聞いたら、「それは、結論の部分が書かれているからでございます。」、こう言われました。

 大臣に聞きたいのは、きょう、ここの部分なんです。すなわち、当てはめ、第三ブロック、結論。結論であれば、結論である、結論だからという理由のみをもって、なぜ、この部分は変更しても憲法違反にならないんですか。その一点だけお答えください。

    〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕

中谷国務大臣 それは、第一ブロックと第二ブロックが憲法の基本的論理ということで、この一ブロックと二ブロックをもって考えた結論ということでございます。

大串(博)委員 きちんと答えてください。

 なぜ、第三ブロックの結論の部分、結論だからという理由で、結論であれば、それを事実認識が変わって違う判断をしても合憲なんですか。そこだけなんです。そこだけお答えください。

中谷国務大臣 それは、憲法の基本的論理が維持されていると認識をしているからでございます。

大串(博)委員 先ほど申しましたように、この四十七年見解は第一段落、第二段落とあって、第三段落全体が一つの固まりなんです。実は、第三段落は段落分けもされていません。この第三段落は一ブロック、二ブロック、三ブロックと一気通貫に書かれています。そういう構造です。であるにもかかわらず、この三番目の、三ブロック目の当てはめ、結論部分、これは結論だからということをもってして、これを、事実認識が変わっても合憲であるという理由、これは何ですか。

 この一ブロック、二ブロックが規範だから、これを維持していれば、最低限維持していればいいという理由なのかもしれません。大臣は今そうおっしゃいましたね。第一ブロック、第二ブロックが維持されていればいいんだと裏返しのことをおっしゃいました。しかし、私は、第三ブロックも維持されていなければ違憲じゃないかと思うんです。恐らく、憲法学者の皆さんもそうでしょう。国民の皆様もそうだと思います。

 なぜ一ブロック、二ブロックだけが維持されていればよくて、第三ブロックは変えられてもいいんですか。ここを端的に教えてください。

中谷国務大臣 それは、第二段落で、集団的自衛権、これは自衛の措置の限界を超えているということを言った上で、その理由として、第三段落があって、この第三段落の中で、これはよく読んでみると、第一ブロックと第二ブロックがそれの基本的論理をもって考察をして、三のブロックで結論を出しているからということでございます。

 それから、もう一つつけ加えさせていただきますが、ここで言われている集団的自衛権、考察の集団的自衛権というのはフルスペックで、いわゆる国際的な集団的自衛権でございますが、私たちが今回基本的論理で導き出したというのはこういったフルスペックの集団的自衛権ではなくて、やはり新三要件、これを加えて、あくまでも厳格な歯どめをかけて、あくまでも国民を守るための集団的自衛権と呼ぶべき自衛の措置という限定をつけた。

 この三ブロックで言う集団的自衛権、これはフルスペックの集団的自衛権ですけれども、私たちが導き出したのは、一ブロックと二ブロックの考察の上において、他国を守るための集団的自衛権ではない、いわゆる我が国を防衛するという目的であるという限りでございます。

大串(博)委員 今、大臣は導き出されたと言われましたけれども、憲法はここにあるわけですよ。憲法を変えるんですか。かのごときの発言でしたよ。その発言一つ一つに、どうもと思われるところが、響きがあるんです。

 もう一回お尋ねしますけれども、第一ブロック、第二ブロックは規範であるというふうにおっしゃいました。ここを変えていない。第三ブロックは結論だから変えてもいい、変えても合憲だ。当てはめ、結論の部分は、規範の部分がのっとられていれば、規範の部分が整合していれば、当てはめ、結論というものは常に、事実関係が変わったとしても合憲である、これは政府の一般的な見解ですか。

中谷国務大臣 この三ブロックの冒頭に「そうだとすれば、」と書かれております。これは明らかに、一と二でいろいろと考えてみたけれども、そうだとすればこうですよという結論部分の総括のまとめでありますので、一番大事なのは一と二の基本的論理、これが一番大事な、憲法の一番大切な部分ではないかと思っております。

大串(博)委員 済みません、委員長にお願いです。私、質問している内容をよく聞いていただいて、それに端的に答えていただきたいと思います。

 私の質問は、先ほどおっしゃった第一ブロック、第二ブロック、これは規範だとおっしゃった。規範を踏襲している。よって、第三ブロックたる当てはめ、結論、ここの部分は事実認識が変わったから見直す、これは合憲だというふうにおっしゃいました。すなわち、規範に沿っていれば、結論、当てはめ部分を事実認識によって変えるというのは政府の一般的に容認する態度ですかということを聞いているんです。お願いします。

中谷国務大臣 私なりには論理的に説明したつもりでございますが、必要でしたら法制局長官にお答えいただきたいと思います。お尋ねいただきたいと思います。(大串(博)委員「いやいや、大臣に聞いているんです、大臣に。大臣に聞いているんですよ」と呼ぶ)はい。

 何度も申し上げますけれども、「そうだとすれば、」という文章がありますよね。それは結論なんですよ。一と二で考えてみて、三の結論が得られたということです。

大串(博)委員 大臣、大臣が言っていらっしゃる、当てはめ、結論部分は、ここは結論だから、大臣はそうおっしゃったんですよ、きのう。私が、なぜ三の部分を見直したとしても、踏襲しなくても、合憲なんですか、憲法違反とならないんですかと聞いたところ、大臣はすぱっと、「それは、結論の部分が書かれているからでございます。」と。結論部分は、見直した、変えた、そうやっても合憲なんだということをおっしゃったんです。それは政府として一般的にとっている態度ですかと。

 すなわち、結論部分というのは常に、それを事実関係によって見直したとしても、憲法違反にはならないというものなんですかということをお尋ねしているんです。どうでしょうか。

中谷国務大臣 何度も説明しておりますが、これ以上だと法制局長官にお尋ねいただきたいんですが、いわゆる基本的論理というものがありまして、一と二の部分が基本的論理でありまして、それについて、三の部分が帰結ということで、結論ということにこの文章はなっております。

 したがって、一と二、これが憲法でいう基本的論理の部分で、三はそうじゃないということでございます。

大串(博)委員 責任者である大臣がまともに質問に答えられないというのは、私はゆゆしき状況だと思いますよ。

 極めて重要な問題で、なぜこれを聞いているかというと、先ほどの寺田さんの質問にも通じるからですよ。先ほどの海外派兵に関する一般原則も、いわゆる三要件、特に三要件の三番目、必要最小限の当てはめとして、海外での武力の行使は一般的には禁止されているという当てはめですよね。当てはめとおっしゃいました。

 もし政府が、当てはめ、結論部分であれば、事実関係が変わってくれば、これを見直すことは憲法の範囲内としてあり得るという一般的態度をとられているのであれば、この部分において、この四十七年政府見解において政府の解釈変更を三ブロックを読みかえることによってやられたと同じように、海外派兵に関する最後の当てはめのところも変え得るという結論になっちゃうじゃないですか。

 だから、一般論として、政府としては、当てはめ、結論部分は、事実認識によっては常に変えられる、変えても憲法の範囲内なんだ、そういう一般的なスタンスですかというのをお尋ねしているんです。どうでしょうか。

中谷国務大臣 これの文章というのは集団的自衛権を憲法上どう考えるかという政府の見解であります。

 これは、まず、集団的自衛権はどうですかという認識で、一と二で考えて、第三は認められないということでありますが、我々がこの一と二で考えた結論というのは、ここで言う集団的自衛権ではありません。ここで結論を出した集団的自衛権ではありません。この一と二で考えて、三要件を付して歯どめをかけた上の集団的自衛権なんです。それは憲法上認められるということでございます。

大串(博)委員 委員長、これはもう一回私は政府統一見解を求めたいと思います。

 というのは、大臣、答えられないんですか、すなわち。(中谷国務大臣「答えているよ」と呼ぶ)答えていないじゃないですか。全く私の質問の意味をわかっていないでしょう。わかっているんだったらもう一回答えてください。

 一般的に、一般的に、政府は、規範は従われている、当てはめの部分、結論部分、ここは事実認識によって変わる、そういうふうな思考様式をとることは憲法の範囲内である、これを一般的な考え方として政府はとっているんですか。そのことをお答えください。別にこれだけに限ったことじゃないんです。一般的に聞いているんですよ。

中谷国務大臣 今、一般論と言われましたが、憲法九条でございます、一般論といえば。

 この文章というのは、あくまで集団的自衛権が憲法上どう解釈をされたかということに対する考察でありまして、まさに集団的自衛権、このとき、基本的論理で考えた上においては、これは保持できないという結論になっていますけれども、我々は、現時点の社会情勢で考えて、やはり、考察をした結果、三つの条件、我が国が、まさに存立にかかわるとか、国民の権利を根底からなくすとか、ほかに手段がないとか、必要最小限とか、そういうところで導き出した結論であります。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 憲法一般に関しましては、法制局長官が来られておりますのでお聞きください。

 ただ、私がこれをもとに申し上げているのは、実際、昭和四十七年に、集団的自衛権に対して憲法上どうかということで、このような基本的論理で結論を導き出しておる事実がありますので、それは昭和四十七年にそのように考えたということで、今回も同じような手続で実施をしたということでございます。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 政府に申し上げます。

 答弁は、的確に答弁のもと、簡潔にお願いをいたします。

 議事の進行をお願いいたします。

 防衛大臣。

中谷国務大臣 あくまでも、私の所掌範囲におきまして、この法案を作成して、提出をしております。

 そこで、憲法九条、これにおいてこの集団的自衛権をどう考えるかということで、前例として、事実として、この昭和四十七年の政府見解というものがございます。ここで、基本的論理に基づいて結論を導き出しておりますので、そのような同じやり方をもちまして、この基本的論理で考えて結論を出したということでございます。これは、あくまでも憲法九条に関しての私の範囲におけるやり方でございます。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

 大串博志君。大串博志君。(大串(博)委員「全然違うことを答弁している。全く答弁になっていないですよ。第三ブロックのことを聞いたんだから」と呼ぶ)

 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 大串博志君。

大串(博)委員 安全保障担当大臣、防衛大臣ですから、大臣の所掌の中の話を私はしております。

 その中で、今回の、この四十七年見解及び集団的自衛権のことに関して言うと、第三段落の一部、第一ブロック、第二ブロック、これを規範だという認識のもとに、規範の部分は従っています、しかし、第三ブロックのところは、結論、当てはめですという理解のもとに、結論、当てはめに関しては、事実関係が変わったので、認識が変わったので、これは結論が真反対になりましたと。これは、結論部分が変わるということに関しては、第一ブロック、第二ブロックに従っている限りにおいて、合憲、憲法の範囲内ですということをおっしゃいました。

 このような、結論部分、当てはめ部分だけが変わったとしても合憲だ、それはなぜかというと結論部分だからだというようなことがここで起こった。

 ほかにも、これまで大臣の所掌範囲内でそういうことがあったのか。そして、先ほど寺田さんから話のありました海外での武力の行使、これも当てはめの話でした。ああいう、今後のことにおいてもあり得るのか。あり得るとしたら、どういう場合に、結論部分、当てはめ部分だから、事実認識が変わったから変わりますよ、憲法の範囲内ですよ、そういったことが、どういう理由で、どういう場合にあるんですかということを教えてくださいということなんです。

中谷国務大臣 今回は、まず、基本的論理を当てはめて、それを、結果を出したわけでございます。これは累次申し上げているとおりでございます。私としては、基本的論理が維持されているということで、違憲ではないと言っております。

 ほかの防衛省の法案とかいうことについてのお問い合わせでございますが、突然の御質問でございます。非常にこれは、まして、他の政府の法律についてもかかわるわけでございますので、法制局長官に聞いていただきたいと思います。

 今回は、この法律を出すために考えたわけでございます。このように結論を出したわけでございます。(発言する者あり)まだ、その必要性は今のところないわけでございます。そういった法案を作成したりする必要性は今のところございません。

大串(博)委員 委員長、お願いします。私の質問に端的に答えていただくように御指導をお願いします。

 私が聞いたのは、どういう場合に、大臣が所掌されている範囲内で、規範と大臣が考えられている部分はフォローした、従った、しかし、結論部分に関しては、事実認識が変わったから当てはめは変わった、それは、理由は結論だからだ、理由は結論だから、結論を変えたとしても合憲であるというようなことが、なぜ、どのような場合に起こっているんですかと。

 なぜなんですか。なぜ、結論だったら、結論であれば、その答えが変わっても、結論が変わっても合憲なんですか。そのような場合はほかにもあり得るんですか。どういう原則なんですか、どういう一般論なんですか、どういう考え方なんですかということを聞いているんですよ。そこをお答えいただきたいんです。その点だけなんです。お願いします。

中谷国務大臣 自分の知る限り、防衛省において、そのような必要性のある法案は現在ございませんので、その点につきましてはお答えはしかねます。

大串(博)委員 では、もう一度本件に戻りまして、本件で、ほかのところはない。ほかのところはないですね。

 では、なぜ、ほかのところはなくて、本件においては一部、つまり、第一ブロック、第二ブロックという一部分だけに従っていれば、第三ブロックという結論部分に関しては、事実関係に関する認識が変わったので結論が変わりました、これは憲法の範囲内ですという結果がなぜ今回においては出てきたのですか。これをお答えください。

中谷国務大臣 これは、昭和四十七年にこのような考え方で結論を導き出しました。

 今回も、四十年近く経過をいたしまして、同じように考えたわけでございますが、特に、第一ブロックの言わんとする九条の考え方、特に前文と憲法十三条、これをもって、憲法が言う、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするには、必要な自衛の措置をとることを禁じられているとは到底解されない、この文章は、ほとんどこれは砂川判決の文章でございます。

 これは非常に論理的なんです。ここで自衛権というものを認めて、しかしながらと言って、これは、憲法の平和主義ですね、何でもかんでもやっていいのじゃないんだと。やはり、しっかりと、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆されるというそういった事態に限って、やむを得ない、必要最小限、ほかに手段がない、そういうものを当てはめて、必要最小限度の範囲ということで、これは最高裁の判例も含んだ非常に正当性のある考え方であって、それに基づいて昭和四十七年に結論を出したということでありますので、今回もこういった基本的な論理に当てはめをして考えたということでございます。

大串(博)委員 資料の二ページを見てください。大臣が今答弁されたことは、前回の私に対する答弁もそうなんですけれども、この二ページに書かれているようなことなんです。つまり、第一ブロック、第二ブロック、第三ブロック。第一ブロックから第二ブロックまでは、基本的な論理はこういうことでした、第三ブロックは、基本的な論理の当てはめでした、事実認識が変わったのでこうなりました、こういったことを述べられているだけなんです。

 私が質問しているのは、この点線のところなんです、点線のところ。この結論部分。第三ブロック、結論。なぜここの部分だけ、ここの部分だけ、事実認識が変わった場合に、変更しても合憲なんですかという、そのことなんです。るる説明された第一ブロック、第二ブロック、第三ブロックのことを私は聞いていないんです。この第三ブロックのところだけ。

 端的に質問をさせていただきますと、こういうことです、大臣。

 六月五日に大臣が私に対して答弁された。なぜ基本的な論理だけ踏襲して三ブロックのところを踏襲していなくても憲法違反とならないのか、その私の問いに対する大臣の答えは、結論部分が書かれているからですというふうに答えられました。

 結論部分が書かれていれば、そこの部分はなぜ変えても合憲なんですか、ここのところだけなんです。そこをお答えください。

中谷国務大臣 一つは、条件が変わった、安全保障環境が変わった。二つ目は、その質問が、全ての集団的自衛権に対してのお答えでありますが、今回は、このような論理で考えて、全ての集団的自衛権ではなくて、まさに我が国を守るのに必要な集団的自衛権を限定して考えますと、三つの条件を当てはめて、まさに同じような当てはめの範囲内ですよという上での集団的自衛権は、これは認められるということでありまして、与えられた質問が、全ての集団的自衛権ではなくて、やはり限定された集団的自衛権ということで、結論も、いわゆる全ての集団的自衛権ではなくて、三要件で限定された集団的自衛権に限ってこれは認められるというのが結論でございます。

大串(博)委員 今一つおっしゃいましたのは、一つは、条件が変わりましたと。条件が変わったのでいいんですという説明でした。条件が変わったら、なぜ結論を変えてもいいんですか。

中谷国務大臣 基本的論理は変わっておりませんが、この当時から四十年近くたっております。非常に科学技術も進展をし、周辺国のパワーバランスも変化をし、実際にいろいろな形の脅威が訪れておりまして、もはや世界じゅうで起こっていることが、我が国の安全保障に全く関係ない、そういうふうな時代でもありませんし、一国だけで国を守っていける、そういうふうな状況でもない。

 そういった、日本を取り巻く環境、時代、こういうものは変化をしてきておりまして、それで、憲法に、再び、国を守るための必要最小限度、これは一体どこまで読めるのかなということで、昭和四十七年に考えられた基本的な論理、これを当てはめたわけでございます。

大串(博)委員 私、やはり納得できない。恐らく憲法学者の皆さんも納得できないところはここにあると思うんです。すなわち、この二十ページから以下の紙を読んでも、なぜ、当てはめのところだけが変わった、しかし、当てはめのところだから合憲ですと。この飛んだ論理が理解できないと思うんです。

 委員長にお願いします。なぜ当てはめのところが変わったとしても合憲なのか、このことに関する統一見解を、これをさらに深掘りしたものを示していただきたいというふうに思いますので、お取り扱い、よろしくお願いします。理事会での取り扱い、お願いします。

浜田委員長 理事会で丁寧に協議します。

大串(博)委員 さらに加えて、第一ブロック、第二ブロック、基本的な論理は踏襲したというふうにおっしゃっていますけれども、本当かなと私思っています。

 というのは、第一ブロック、第二ブロック、特に第二ブロックのところ、一ページを見ていただきますと、ここに、第二ブロックに、「外国の武力攻撃によつて国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされる」というふうになっています。これに関して、これまでの答弁等で、大臣は、外国の武力攻撃というのは、我が国に対する攻撃もあれば、我が国に密接に関連する攻撃もここに含む、こうおっしゃっています。

 しかし、三ページ、四ページ、五ページを見ていただきますと、四十七年政府見解が出されたときのベースとなる議論です。四十七年政府見解が十月に出されましたけれども、その三週間前の九月、四十七年見解を出した吉国長官が答弁されています。水口議員に対して答弁されていまして、ちょっとわかりにくくて済みません。三ページは、左下です、「わが国の国土が侵されて、その結果国民の生命、自由及び幸福追求に関する権利が侵される」、こういうふうに書かれています。四ページ、真ん中ぐらいです、「わが国が侵略をされてわが国民の生命、自由及び幸福追求」と。五ページも同じです、真ん中ぐらい、「わが国が侵略された」。

 すなわち、この四十七年見解をつくる段階で、この質疑の後に、この質疑のときに水口委員は政府見解をまとめてくださいというふうに言われて、政府の方が、わかりました、紙にしますと引き取られて、四十七年見解が書かれたんです。出てきた四十七年見解が、一ページにありますこの第二ブロック。第二ブロックのところは、「外国の武力攻撃によつて」と書かれています。

 これを見ると、この見解がつくられた三週間前のまさに議論で、この見解を決裁した吉国長官自身が、この外国の武力攻撃というところを、我が国が侵されてと、我が国に対する侵略があってと、明確に三回も答弁しています。つまり、この外国の武力攻撃ということが我が国に対する攻撃を想定していたということが、かなり強力に傍証として証明されているというふうに思います。

 もしそうであるとすると、第一ブロック、第二ブロック、特に第二ブロックにおいては、他国、密接他国への攻撃も含んでいると想定しての規範に沿っているという論拠自体が崩れます。

 大臣にお尋ねしますけれども、こういう強い傍証、すなわち、武力の攻撃というものが我が国に対する侵略というふうに答弁を、決裁者自身、吉国長官自身が答弁している、これを覆す、いやいや、これは他国に対する攻撃も想定していたんだと強力に覆す何がしかの事実関係は御確認ですか。

横畠政府特別補佐人 法制局長官の答弁をめぐってのお尋ねでございます。

 昭和四十七年の政府見解の三の、結論部分というのがなぜ結論かというのは、まさに、当時の認識として、我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみが、この二にありますところの「外国の武力攻撃によつて国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」であると、それのみに限られるという事実認識に立っていたということで、その事実認識を前提とした上での結論であるということを述べているわけでございます。

 御指摘の、昭和四十七年九月十四日の参議院決算委員会の議事録がございますけれども、その吉国長官の答弁の、議事録の十三ページ、お示しの資料の三ページの四段目の右端のところを見ていただきたいのでございますけれども、そこにはこのようにございます。「集団的自衛の権利ということばを用いるまでもなく、他国が――日本とは別なほかの国が侵略されているということは、まだわが国民が、わが国民のその幸福追求の権利なり生命なり自由なりが侵されている状態ではないということで、」ということで、まさに当時はそのような事実認識のもとで、この一連の答弁がなされているということを申し上げてきているわけでございます。

 今般、この前提となる、結論を導く前提となる事実認識のところに変化がある、変わるということで御説明申し上げてきているところでございます。

大串(博)委員 内閣法制局長官も、私の質問に答えないのであれば、出てこないでください。

 なぜなら、私が聞いたのは、吉国長官が、このブロック二のところの、規範と言われているところの武力の攻撃、外国の武力の攻撃に関して、我が国の国土が侵されているということを三度も答弁されている。すなわち、この規範自体が、外国の武力攻撃というものが我が国に対する武力攻撃であったということを前提としてつくられているのであれば、先ほどおっしゃいました第一ブロック、第二ブロックを前提としてといったときに前提としたのは、他国への武力攻撃も前提としていなければ、集団的自衛権を限定的にも認めるということには今回なりませんからね。ところが、この四十七年のときにおいては、外国の武力攻撃が我が国への武力攻撃ということを前提としてつくられた規範であったということなんです。

 この規範はそういうことであったという力強い傍証があるにもかかわらず、これを、いやいや違うんだ、他国に対する攻撃も含んだ上でこの第二ブロックは規範としてつくられたんだという、これを覆す何がしかの証拠を確認されていますかということを聞いたんです。ぜひ答弁、大臣お願いします。

横畠政府特別補佐人 昭和四十七年の政府見解がつくられた当時におきましては、先ほどお答えしたとおり、外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態というのは、我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみに限られるという事実認識のもとで作成され、また、法制局長官もそのように答弁しているので、そのように読み取れるのは当然であろうかと思います。

 その考え方として、なぜ憲法九条のもとで我が国が武力の行使を一定の場合、できるのかというその理由の部分が、まさにこの四十七年見解の一、二の部分で整理されているということでございまして、その一、二で整理された部分というのはそのまま踏襲できるということでございます。

大串(博)委員 しっかりした証明はないということで、さらに質問させていただきます。

 ありがとうございます。

浜田委員長 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)委員 民主党の後藤祐一でございます。

 まず、先週は、私の不適切な行動により、多くの皆様方に御迷惑をおかけいたしました。謹んでおわびを申し上げるとともに、今後こういったことが二度とないよう、襟を正して、本委員会における活動を含めて、しっかりと国会での活動にいそしんでまいりたいと思います。

 それでは、質問に入りたいと思います。

 まず、先ほど、四十七年見解に関して、基本的な論理は維持し、そしてその当てはめとしての結論は変わるといったことについては、この四十七年見解についてはそうなんですが、これはほかについてはないというような御答弁がありましたが、これでよろしいですか。

中谷国務大臣 私の知る限りはございません。

後藤(祐)委員 これについては、さまざまな今までの政府としての見解がございます。これが、きのうの政府見解におかれましては、これまでの政府の憲法解釈との論理的整合性及び法的安定性は保たれているというふうに書いてありますが、きょうは、本当に保たれているのかどうかということについて確認をしてまいりたいと思います。

 まず、前提として、集団的自衛権の定義についてでございますが、これは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利とされています。一方で、個別的自衛権の定義は、自国に対する武力攻撃を実力をもって阻止する権利とされています。

 中谷大臣にお伺いしますが、集団的自衛権と個別的自衛権が重なり合うことはないと考えてよろしいですか。ある行動というのは必ずどちらか一方なのであって、集団的自衛権であり、かつ個別的自衛権であることはないということでよろしいですか。

中谷国務大臣 ございません。

後藤(祐)委員 次に参ります。

 集団的自衛権の行使とは、先ほどの定義によれば、外国に対する武力攻撃を実力をもって阻止する権利であります。

 この集団的自衛権の行使とは、他国を防衛するための武力の行使ですか。

中谷国務大臣 国際法上、集団的自衛権とは、一般に、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利と解されております。

後藤(祐)委員 質問にお答えいただきたいんですが、集団的自衛権の行使とは、他国を防衛するための武力の行使ですか。

中谷国務大臣 学説はいろいろな説がありますが、幅広くこれを解している国もあろうかと思います。

後藤(祐)委員 はっきりお答えいただきたいんですが、我が国において、集団的自衛権の行使とは、他国を防衛するための武力の行使ですか。

中谷国務大臣 集団的自衛権の性質をめぐっては、国際法上種々の学説があるということは承知しておりますが、我が国として特定の学説を支持しているわけではございません。

 国連憲章上、個別的自衛権とは、一般に、自国に対する武力攻撃を実力をもって阻止することが正当化される権利をいい、集団的自衛権とは、一般に、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当化される権利をいうと解されます。

 なお、昨年の閣議決定におきましては、我が国による自衛の措置として武力の行使が容認される場合についての憲法解釈を新三要件として明確にしたものでありまして、閣議決定にも明記されているとおり、国際法上の根拠と憲法解釈は区別して理解する必要があると考えておりまして、両者は混同されるべきではございません。

後藤(祐)委員 国内法上の話でございます。また同じ質問ですが、国内法上の話です。

 集団的自衛権の行使とは、他国を防衛するための武力の行使ですか。質問にお答えいただけますでしょうか。

中谷国務大臣 国際的にはそのようなことがあろうかと思いますが、国内におきましては、新三要件、これを満たす場合に限られておりまして、他国の防衛それ自体を目的とする集団的自衛権の行使は認めておりません。

後藤(祐)委員 そうしますと、新三要件を満たす集団的自衛権の行使は、他国を防衛するための武力の行使ではないということですね。

中谷国務大臣 他国の防衛そのものを目的とする集団的自衛権の行使を認めたわけではございません。

後藤(祐)委員 そうしますと、外国に対する武力攻撃を実力をもって阻止する権利ではあるわけですよね。新三要件を満たす集団的自衛権の行使は、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を実力をもって阻止する権利ではあるんですね。これは、もともとの集団的自衛権の定義です。最初に確認しました。

中谷国務大臣 それは、国際法上の定義でございます……(後藤(祐)委員「違います、最初に確認した国内上の定義です」と呼ぶ)

 国内上の定義としましては、まず大前提といたしまして、我が国と密接な関係にある武力攻撃が発生したということでございます。

後藤(祐)委員 最初に確認した我が国における集団的自衛権の定義は、最初確認しましたけれども、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利とされております。これは確認しました。この定義に、今回の新三要件を満たす集団的自衛権もこれに該当しますね。

 つまり、先ほどの答弁と合わせて言うと、今回新たに認められる新三要件を満たす集団的自衛権の行使は、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を実力をもって阻止する権利であるが、一方、正確に言うと、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止する権利であり、かつ、他国を防衛するための武力の行使ではないというお答えでよろしいんですか。

中谷国務大臣 我が国が認める武力行使というのは、国際法上認められている集団的自衛権のうち、我が国が行使できるのは、あくまで新三要件、これは申し上げますと、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態、この三要件を満たす場合に限られておりまして、引き続き、今回の見直しの後も、他国の防衛それ自体を目的とする集団的自衛権の行使は認めていないということでございます。

 答えにつきましては、この定義のとおり、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生をしたということでございます。

後藤(祐)委員 きょうはちょっと時間がないので、これで次に行きますが、もともと集団的自衛権の定義はさっき言ったとおりです。これに新三要件を満たす集団的自衛権ははまるはずなんですね。一方で、新三要件を満たす集団的自衛権の行使は、他国を防衛するための武力の行使ではないとおっしゃっている。この二つは矛盾するんじゃないんですかということを言いたいわけです。つまり、外国に対する武力攻撃を実力をもって阻止することには当たりながら、他国を防衛するための武力行使でないとは一体どういうことなんですか。

 例えば米艦防護、邦人を運んでくるための米艦防護、これは、集団的自衛権の行使、新三要件を満たす可能性があるという話でございますけれども、これは米国を防衛するという目的がないと本当に言えるんですか。

中谷国務大臣 非常に大きな集団的自衛権があるんですよ。ところが、日本の憲法で認められるのは、その中で、三要件がありまして、こういった三つの要件に合う場合であります。この三要件をもってすれば、他国の防衛、それ自体を目的とする集団的自衛権の行使は認めていないということでございます。

後藤(祐)委員 米国のところに答えていませんが、要するにこういうことですね。

 集団的自衛権が今回二つに分かれて、新三要件を満たす限定的な集団的自衛権というのは、他国を防衛するための武力行使ではなく、我が国を防衛するための武力の行使である。一方で、それ以外の新三要件を満たさない集団的自衛権は、他国を防衛するための武力の行使である。こういう整理になったということですよね。

 だとすると、今までの我が国における集団的自衛権の整理というのはそういうことではなくて、あくまで個別的自衛権のうち三要件を満たすものが合憲であって、集団的自衛権は違憲であるという整理でずっと来たわけですよね。

 ここは先ほどの整理と根本的に変わっているわけです。これが、基本的な整理が変わっていないと言うことは大変無理があるんじゃないかなということを、過去の答弁との関係でちょっと聞きたいと思います。

 そこに配付資料が行っていると思いますが、二ページ目に、平成十一年、大森法制局長官答弁というのがございます。

 そこの上から二段目のところに、「集団的自衛権の行使というのは、我が国に対する攻撃がないのに他国に対する攻撃を実力で阻止するわけでございますから、これは我が国を防衛するためという目的性において欠けるところがあると。 したがって、」「単に数量的に超えるからだという問題ではないんだということを御理解いただきたいと思います。」これは大変有名な答弁であります。

 つまり、数量ではなくて、目的が超えているので集団的自衛権の行使は違憲だという有名な答弁でございますが、これは、今回の新三要件を満たす限定的な集団的自衛権の行使に関しても、この答弁は維持されていると考えてよろしいでしょうか。これは中谷大臣、お願いします。

中谷国務大臣 これは要望でございますが、事前に通告もないし、この資料は直前に渡されまして、しかも早口で御質問されても、なかなかこちらも間違いのない答弁ができませんが、もし御答弁が必要ならば法制局長官からお願いをさせていただきたいと思います。

横畠政府特別補佐人 お答えいたします。

 まさに、集団的自衛権というものでどのようなものを観念するかという前提の問題がございます。

 昨年七月までは、昭和四十七年もそうでございますけれども、集団的自衛権といいますのはやはり他国を防衛するための権利である、そのように観念されていた。自国防衛を踏み越えて他国防衛に乗り出す、そういう権利であるというふうに理解された、フルセットの集団的自衛権というものをめぐって議論をしていたわけでございます。

 今回考えている、新三要件のもとで許されるのは、国際法上の違法性阻却事由としては集団的自衛権のカテゴリーに入りますけれども、その行使の要件、目的としては、三要件をごらんいただければわかるとおりでございまして、第一要件にあるとおり、我が国に対するまさに深刻、重大な影響がある。第二要件でありますように、まさに我が国の存立と国民を守るためのやむを得ないものである。また、第三要件で、最小限であるということを申しております。

 その意味で、御指摘の、平成十一年五月二十日の大森内閣法制局長官の答弁で言われているところの、集団的自衛権の行使がなぜ許されないのか、必要最小限のものを超えるからということではなくて、我が国を防衛するためというその目的を超えるからなんだというところにウエートがあるということでございますけれども、今回考えておりますのは、まさに我が国を防衛するためというその目的の範囲におさまるものを考えているということでございます。(後藤(祐)委員「質問に答えていないです。今回のものが入るかどうかを聞いているんです。維持されるんですか、この答弁は。新三要件を満たす集団的自衛権に関して、この答弁を維持するんですか」と呼ぶ)

 先ほどお答えしたとおりで、この答弁は維持した上で、今回の新三要件を満たすものはこの答弁と矛盾しないということを申し上げているわけでございます。

後藤(祐)委員 そうしますと、この答弁には、「集団的自衛権の行使というのは、」という、この集団的自衛権の中に、新三要件を満たす限定的な集団的自衛権の行使というものが入るわけですね。

 入るんだとすると、この答弁では、「集団的自衛権の行使というのは、我が国に対する攻撃がないのに他国に対する攻撃を実力で阻止するわけでございますから、これは我が国を防衛するためという目的性において欠けるところがある」というのは、今回の新三要件を満たす限定的な集団的自衛権に関してもそうだ。

 つまり、目的性において欠ける、だから憲法違反であるということに、この答弁を維持すると必然的にそうなるということについて御指摘をさせていただいて、もう時間がないので、もう一ついきたいと思います。

 昭和五十六年、稲葉衆議院議員の質問に対する答弁書がございます。配付資料の一枚目でございますけれども、これも「憲法第九条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであつて、憲法上許されないと考えている。」

 これは大変有名な答弁というよりは、昭和四十七年の政府見解よりも、むしろこの昭和五十六年の稲葉議員の質問に対する答弁書こそ、それから後、我々の日本国が集団的自衛権と憲法の関係について政府見解としてきたものだと私は理解しておりますが、この答弁書は維持するんでしょうか、引き続き。中谷大臣。

横畠政府特別補佐人 先ほどもお答えしたとおりでございまして、昨年七月までの議論、国会での答弁あるいは質問主意書に対する答弁書等々、いずれも、そこで言われています集団的自衛権というのは国際法上の集団的自衛権の一般、フルセットのものであるということでございます。

 先ほどの大森答弁を維持すると申し上げましたけれども、まさにそのフルセットの集団的自衛権についてのお答えということとして維持するということでございます。

後藤(祐)委員 私は、先ほども、今回の質問も、あくまで、フルスペックではなく、今回の新三要件を満たす集団的自衛権の行使に関してこの答弁を維持されるのかと聞いて、維持すると先ほど長官はお答えになりました。

 この昭和五十六年稲葉議員の質問に対する答弁書、これは新三要件を満たす集団的自衛権の行使に関して維持されるんですか。法制局長官でいいですよ、どうぞ。

横畠政府特別補佐人 繰り返しになりますけれども、昨年七月一日以前におきましての国会の答弁あるいは主意書における答弁書での記述等でございますけれども、いずれも限定的な集団的自衛権という観念は持ち合わせていなかったわけでございまして、全てフルスペックの集団的自衛権についてお答えしているものでございます。

 それ自体を今否定するとかいうことではございませんで、今般、新三要件のもとで認めようとしている限定的な集団的自衛権というものについての考え方は、過去の答弁と矛盾はしないということを申し上げているわけでございます。(後藤(祐)委員「維持するんですか。新三要件を満たす集団的自衛権に関して維持するんですか、五十六年は」と呼ぶ)

 そのまま維持するというお尋ねの趣旨が、過去の答弁で、つまりフルスペックでお答えしたものそのままが、せっかく限定して憲法に適合するような範囲におさめることとしている今般の集団的自衛権とそっくり同じわけはないわけでございまして、その意味で、過去の答弁はフルスペックの集団的自衛権に対するものとして維持はいたしますが、今般の限定的な集団的自衛権についての考え方は改めて御説明させていただきたいと思います。

後藤(祐)委員 改めて御説明ということは、大変苦しいということですね。

 実際、昭和五十六年の稲葉議員の質問主意書に対する答弁は、何も修飾をつけずに集団的自衛権と書いてあるわけです。フルスペックのなんて書いていないわけです。

 ですから、今回の新三要件を満たす集団的自衛権だってここに該当し得るわけですから、これはきちんと文書でもって政府統一見解、今の昭和五十六年の主意書と、あとは先ほどの大森長官の答弁ということの両方について、この新三要件を満たす集団的自衛権の行使に関して答弁を引き継ぐのか引き継がないのか、これについて文書で提出いただけるよう、委員長にお取り計らいをお願いしたいと思います。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

 後藤君、時間が来ております。

後藤(祐)委員 はい、終わります。ありがとうございました。

浜田委員長 次に、高井崇志君。

高井委員 維新の党の高井でございます。

 きょうは、質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 きょうは本当は官房長官に御通告をしておりましたが、審議が延びてしまいまして、たびたびとまるものですから、記者会見に行かれましたので、また終わったら戻ってきていただけると聞いておりますので、またそのときに。

 冒頭聞こうと思ったんですけれども、聞こうと思った中身は、午前中に辻元委員から質問のあった、憲法違反ではないと言う憲法学者がたくさんいると六月四日の記者会見で言われた、その話をお聞きしようと思いました。

 あのとき、辻元委員のときも、官房長官はちょっと笑われながら、あるいはこの委員会の中も少し笑いが出たと思うんですけれども、私は笑い事じゃないと思っています。現に、きのうまでに二百十二名の憲法学者が違憲の表明をされている、わずか一週間足らずで、まだどんどんふえるんじゃないかとも言われています。

 あるいは、憲法審査会の後に、小林参考人はこう言っています。日本の憲法学者は何百人もいるが、違憲ではないと言うのは二、三人、違憲と見るのが学説上の常識であり、歴史的常識だと言っております。あるいは、長谷部参考人も、政府と同じ考え方の学者は少なくとも私の周りにはいないと。

 こういった、もちろん、皆さん、憲法学者が決めるわけじゃないよということはよくわかっています。よくわかっていますが、国民の中で憲法を一番勉強されていて詳しい、まさに国民の憲法の思いを代弁している、その国民の声をやはり無視していいのか。しかも、それは一部の人だけじゃないわけです。半々とか六、四とかじゃないんですよ。圧倒的多数の憲法学者が違憲だと言っていることを無視していいはずがありませんから、これはしっかり、何人いるのかお聞きしたいと思っているんです。

 官房長官は今いませんけれども、法制局長官。首を振られましたけれども、やはり憲法のこと、法律のことを内閣の中で一番御存じなのは法制局長官ですよ。法制局長官は、では一体、そんな正確な、何人とは言わなくてもいいです、おおよそで結構ですから、三人なのか、五人なのか、十人なのか、五十人なのか、合憲だと言う学者は何人だと思われるか、思われるかで結構です、お答えください。(発言する者あり)

浜田委員長 内閣法制局長官。

 静粛に願います。

横畠政府特別補佐人 法律の議論といいますのは、結論がマルかバツか、そういう事柄ではございませんで、やはり、どういう理由によるのか、あるいは前提として、例えば今回の法制につきましても、具体的にどういう法制を整備しようとしているのかという事実認識のもと、論理的に考えるわけでございまして、もちろん、学者の先生方はそれぞれお考えだと思いますけれども、それぞれいろいろな考え方が当然あるわけでございます。

 私どもとしては、私どもとして論理的な整合性というものを考慮していろいろ考え、整理して御説明申し上げているところでございまして、個々の研究者の方がどのようにお考えなのかということについてまでは承知しているわけではございません。

高井委員 官房長官が戻ってきたらまたお聞きしますけれども。

 それでは、法制局長官、続いて、私は、憲法学者と同じように、いや、同じようにというか、それ以上重きを置かなければならないと思っているのが、法制局長官の経験者の皆さんが今回のこの法律について述べていることであります。法制局長官も歴代仕えた方々が。

 まず、ちょっと具体的に読み上げたいと思います、法制局長官、歴代長官がこういうことをおっしゃっている。

 五代前になると思います、阪田法制局長官、こうおっしゃっています。憲法に書いてあることが政府にとって都合が悪いからといって、その解釈の仕方を変えるというのは間違っています、時代が変わったのだからと言う人もいますが、時代に合うように憲法の規定も変えていく、そのような努力をすることが政治家の仕事ではないでしょうか、憲法の規定はそのままなのに、時の内閣がそれまでとは全く異なる解釈をする、こんなことをやっていて、日本は法治国家だとか立憲主義国家だと言うのは大変恥ずかしいことだと思いますと述べています。

 四代前の宮崎長官。憲法の解釈を変えたケースはこれまでもある。まあ、ありますよね。ただ、集団的自衛権の問題はそういうものと違い、歴代内閣が繰り返し、できないと言ってきた、憲法解釈変更によりできた法律は、法律自体が裁判所で、あるいは別の内閣ができたときに、違憲だとひっくり返るかもしれず、法的安定性を欠くことになる、ここは憲法を改正するかどうかの問題で、部分的だからいいでしょうという理屈は、幾ら考えてもない。

 それから、二代前の山本長官。これは、さきのお二人と違って、最高裁判事に就任したときの記者会見でこう述べています。集団的自衛権の行使は、従来の憲法解釈では容認は難しい、実現するには憲法改正が適切だろうが、それは国民と国会の判断だ。

 三人とも、やはりこの中身は憲法改正でやらないと説明ができないということをかなり厳しく、特に山本最高裁判事に至っては、このような場で、菅官房長官も苦言を呈したとのことですが、しかし、逆に言えば、それだけの覚悟を持ってこういう場でおっしゃったわけであります。

 法制局長官、歴代の、かつての上司でありましょうから、こういった方々とお話をしたこともあるんじゃないですか。話をしたことがあるのか、それから、この三人の方の意見表明を聞いてどうお考えか、お答えください。

横畠政府特別補佐人 元法制局長官の方々の個人としての発言だと思いますけれども、それについて一々コメントすることはいたしません。

 なお、いわゆる国際法上の集団的自衛権一般を行使しようとするならば、それは憲法第九条を改正しなければできないということは私も考えております。

高井委員 法制局長官は頭のいい方ですからもうわかって言っていると思いますけれども、部分的だ、限定だということは、歴代の長官はわかっているに決まっているじゃないですか。全ての議論を全て踏まえた上で、それでもここまでおかしいとおっしゃっているわけですから、やはり私は、その声というのは真摯に、謙虚に聞いていただかなければならないと思います。

 これも同じ答えになってしまうのかもしれませんけれども、それでは、現役の、今の法制局の部長、参事官、私も役所出身なので、法制局にいかにすばらしい、各省庁から法律の専門家がよりすぐられて、そして四十ぐらいで参事官になって、長官もそれから二十数年、ずっと法制局で経験を積まれていく、そういった、まさに法律の、そしてまた、先ほどの長官というのは憲法のエキスパートですよね。ほとんど皆さん、第一部長という、憲法を審査する部長を経て、そして次長を経て長官になる。こういった組織の方がおっしゃっていることですし、そして、質問したいのは、今の現役の法制局の皆さんがこの話を聞いたときに、どういう議論があったのか。反対する意見というのはなかったんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 反対する意見はありません。

高井委員 いや、それは組織ですから、最後は長官がまとめるんだということですけれども、それはそれでちょっと、今のを聞いて国民の皆さんは恐ろしいと思うんじゃないでしょうかね。

 役所の皆さんも、私も法制局に何度も通いましたけれども、やはり法制局参事官は、まさに矜持を持って、憲法をたがえないように、ほかの法律とたがえないように厳しい審査をして、何度も私も徹夜をして通ったりした、そういう、まさに権威がある、敬意を払っているからそれが成り立っているわけで、私は、今の長官の発言というのはちょっと驚きだと言わざるを得ません。

 それでは……(発言する者あり)では、もう一度、今の答弁で本当に間違いないですか。反対意見は全くなかった、議論もしたけれども、参事官、部長でいいですよ、反対する意見は全くなかったと。最後の結論じゃないですよ、議論の経過を聞いているんです。

横畠政府特別補佐人 繰り返しになりますが、ありません。

高井委員 長官、法制局長官というのは、組織の中でいえば内閣総理大臣そして官房長官の部下ですよね、それはよくわかっています。しかし、やはり、そうであっても、上司が間違ったことを言えばいさめるというのも部下の役目だと思います。これは一般の企業とかであってもそうですけれども、内閣法制局というのは特にそういう部署だ、私はずっとそう思ってこれまでやってまいりました。

 長官、お聞きしたいんですけれども、かつてはそういうことがあったんじゃないですか。第一次安倍内閣のときに、集団的自衛権行使に前向きな総理に対して、当時の宮崎長官と、そして当時第二部長だった横畠法制第二部長が辞表を出す覚悟でいさめたという話を聞いたことがあるんですが、それはいかがですか、事実ですか。

横畠政府特別補佐人 内閣法制局という組織は、一般の行政機関と違いまして、政策を実現するということではなしに、まさに法令を所管しているということでございまして、適正な解釈のもとで、もちろん憲法を頂点とする法令の適正な解釈のもとで行政が運営されるということについて、専門家としての責任を負っているわけでございます。

 したがいまして、憲法違反あるいは法令違反のようなことが行われるならば、それは当然、それを制止する、意見を述べるという責務がございます。

 今回何も言っていないではないかということでございますけれども、それはやはり憲法に適合する範囲内のものにおさまっているからと判断しているからでございます。

高井委員 第一次政権の安倍内閣のときにはいさめた、苦言を呈されたということでよろしいんですね。

横畠政府特別補佐人 私自身、そのようなことをした覚えはございません。

高井委員 宮崎長官に聞いてみればわかることですので、これ以上ここで聞いても仕方ありませんけれども。

 言うまでもなく、憲法の番人は、これは最高裁判所ですよ。最後、憲法の判断をする、決めるのは最高裁判所。よく皆さんは憲法の番人が法制局だとおっしゃいますけれども、私は、それは最後は最高裁判所だと。

 しかし、ではなぜ内閣法制局があるかといえば、法律を一つ一つつくるときに、全て最高裁判所で違憲の裁判をやっていたのでは時間もかかってしまうし、そして、今つくって現に動き出している法律が後から違憲となったら、それは法的安定性が損なわれるから、だから法制局というのがその前にあって、しっかりとチェックをするということだと思います。

 この法案が、もし最高裁判所で違憲判決が出る、というか、違憲判決が出ないという自信があるから法制局長官は、何も政権に対して苦言も呈さないし、認めているわけですね。最高裁判所で違憲判決が出ないという自信はあるんですか。

横畠政府特別補佐人 御指摘のとおりでございます。

高井委員 私は、これだけの憲法学者の意見、それから法制局長官の意見というのはやはり重いと思います。ずうっと歴代の法制局長官が積み上げてきたものを今回変えるわけでありますけれども、やはりその変える理屈というのがはっきりと納得できないからこそ、これだけ多くの憲法学者やあるいは法制局長官も、それはおかしいんじゃないかというふうに言うわけでありますから。

 ぜひ、私は、法制局長官、今からでも遅くないと思います。これからの国会審議において、みずからの信ずるところ、良心に従って、それはしっかりとした答弁をしていただきたいというふうに思っております。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

高井委員 それでは、ちょっと質問をかえたいと思いますが、自衛隊のリスクについてお伺いをいたします。

 これまでも、自衛隊のリスクが高まらないということがずっと答弁をされてまいりました。しかし、私は、自衛隊のリスクが高まらないというのは、どう考えても納得ができません。その最大の理由は、もちろんいろいろ活動地域が広がるということもありますが、今回、後方支援が追加されている、弾薬の補給であったり、あるいは航空機への給油、戦闘機への給油というものが加わっています。

 私は、後方支援というのはまさに戦闘そのものだと思います。

 これは、古来から戦といえば、もう歴史をひもとけばそうであって、古くは三国志の時代から、三国志の曹操は、袁紹との官渡の戦いで、食料補給路を断って、圧倒的不利を覆して勝った。それから曹操は補給路を断つ天才と言われていましたけれども、諸葛孔明に対して、泣いて馬謖を切るの故事にもなった戦いでは、水の補給路を断って、まさに孔明が天下統一をする唯一最大のチャンスを断ったのも、この補給路を断つ手法でありました。

 日本で見ても、豊臣秀吉はその天才だと言われて、私の地元の岡山、備中高松城水攻めを初めとして、こういった補給路を断つということにたけた政治家でした。

 そして、第二次世界大戦を見れば、あらゆる、インパール作戦、レイテ沖海戦、マリアナ沖海戦、マレー沖海戦等々の主要な戦いは全て、補給路または航空中継基地をめぐる戦いであったということであります。

 こういったことを考えると、やはり後方支援というもの自体が、いかに安全な場所でやるんだといっても、相手から狙われる、攻撃をされるわけですから、攻撃されたときにその戦闘に巻き込まれ、そして自衛隊のリスクが高まるというのは、これはもう明白だと思いますけれども、なぜそこのリスクが高まるということをおっしゃらないのか。

 リスクが高まった上で、いや、それでも、自衛隊のリスクは高まるけれども、やはりこの国の平和、安全のためにやるんだ、そういうふうに言っていただく方が、私は国民の皆さんも納得ができると思うんですけれども、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 高井議員から、自衛隊の安全に対していろいろと御心配をいただきまして、本当にどうもありがとうございます。

 自衛隊員というのは、今でもリスクを抱えながらいろいろな任務をしているわけでありまして、今回も新しい分野の任務というものが追加をされます。それにリスクがないと私は申し上げません。

 しかし、やる場合に、やはり、いかなる地域にいかなる内容をさせるのか、これは、十分検討をして、計画をつくり、閣議決定をし、国会に出して、その上で実施をいたします。また、実際、現場の状況を見て、安全かどうか、これを厳格に判断して、法律自体におきましても、防衛大臣が、この活動が安全かつ円滑に行われる場所でしかやってはいけないんだ、その上、戦闘が行われている現場、現に戦闘が行われている現場でない場所に限られるということになっておりますし、また、地域を選ぶときには、その期間に戦闘が行われていないような見込み、それがあるという前提で実施をさせるわけでございます。

 そこで、後方支援なら大丈夫かということでございますが、そもそもこれは戦闘をしません。戦闘すると武力行使になりますので、戦闘してはいけないというまず前提がある。そして、そこが危険な状況になったらそれをやめるというようなことでルールも決めております。また、実際派遣される隊員というのは相当訓練をし、そして、いろいろな状況でリスクを回避する、運用で回避をするというようなことで、極力リスクを回避して任務をさせるということで、十分リスクには配慮をしております。

 私が言いましたのは、法律を制定すればリスクが上がることがないという意味は、この法律でいろいろな決まりができます、そして訓練もできます、そして武器の使用、こういうことも細かく決まって、それで現場に応じた訓練もできるという意味で、リスクは上がらないんじゃないかというようなことは申したわけでございます。

 新しい任務でリスクは当然のことながらありますけれども、運用や状況で極力リスクを極小化させて対応させるということに心がけてまいりたいと思います。

高井委員 今の御答弁は、過去の議事録を見ても、同じことをずっとおっしゃっているんですけれども。

 では、ちょっと質問をかえますが、観点を変えますが、軍事の専門家の方に聞きますと、でも、専門家じゃなくても容易に想像できると思うんですが、補給を行っている、あるいは補給に向かっているときに、先ほど申しましたように、古来より戦というのは補給路を断とうということはあるわけですよ。そういう攻撃があったときに、では戦闘になりそうだからやめます、車列を停止してUターンして退避すれば、むしろその方が危険が高まる、かえって狙いやすくなるということがあり得るわけです。

 それは、もちろん現場の判断だと思いますよ。現場の指揮官が、このまま真っすぐ進んだ方がそれは安全を守れるんだ、あるいは戻る方がいいんだ、あるいは、もうここは戦うことが一番命を守れるんだという判断があると思いますけれども、今の大臣の答弁では、そういう現場の判断を奪ってしまっていますよね。

 この法律によって、そういったことを、安全な場所しかやらないんだ、戦闘はやらないんだ、そういう危険なことになったら一切やめて退避するんだというふうに答弁をされていますが、それでは現場はもたないんじゃないですか。いかがですか。

中谷国務大臣 これは、万々が一規定と申しますけれども、現場の判断で一時休止をする。例えば、活動している現場もしくはその近傍において戦闘行為が行われるに至った場合、また付近の状況から照らして戦闘行為が行われることが予測される場合、また部隊の安全を確保するために必要と認められる場合、こういう場合には、活動を一時休止し、避難するなどして危険を回避する。これは、現場の部隊長、指揮官が判断をし、また実際活動を行っている隊員は、こういう状況をよく判断して危険を回避するということが規定をされております。

 余りひどくなるようだとこの活動自体を中断するというような規定もございますし、防衛大臣自体も安全を配慮する規定が盛り込まれていますので、こういった状況をしっかりと判断して任務を行うし、また、やめる決断、こういうこともしっかりやらせるようにいたしたいと思います。

高井委員 ですから、やめる決断をしたときにというか、やめたときによりリスクが高まるのではないですか。後方支援がやはり一番狙われやすい、危険に置かれやすい環境にこれからなっていく。

 問題にしているのは、それがいい悪いではなくて、リスクは高まりますよね。自衛官のリスクは高まりますと、やはりそこをお認めにならないと、その先の議論が進まないと思っています。リスクは高まるけれども、しかし、それでも国全体のリスクを下げるためには、そして日米同盟を強化してしっかり抑止力をきかせていくためには、自衛官のリスクは高まるけれどもこの法律は必要なんだということを堂々とおっしゃったらいかがですか、そういう質問なんです。もう一度お答えください。

中谷国務大臣 本当に、リスクのことを真剣に考えていただきまして、ありがとうございます。

 しかし、このような議論は、PKOのときも、テロ特措法のときも、イラクに派遣するときも、必ずありました。しかし、実際に派遣された隊員というのは、やはり安全ということを重視して、実施する場合には安全な環境の中で任務を遂行しておりますし、また、それを監督する部隊の人も、そういうことについて、そういった事故が起こらないように常に監視をしながらやってきているわけでございます。当然、そういったリスク、これは今でも、南スーダン、ジブチ、私も隊員派遣をしておりますけれども、本当に、いつ何が起こるかわからない、そういう状況の中で隊員も仕事をいたしているわけであります。

 そういう中で、極力リスクを下げて、そして隊員の安全を図っていくというのは当然のことでございますので、そういう中でしっかりと実施をできるようにまた努めていきたいと思っております。

高井委員 いつもすれ違いの答弁なんですけれども、リスクがあるのは全員承知しているので、リスクが高まるかどうかという議論をしています。

 私の秘書が実は元陸上自衛官でございます。彼には自衛官の友人もたくさんいる。彼から聞くんですけれども、現場の自衛官の方々は、今回のこの法案審議を見ていて、やはりリスクが高まらないという言い方はおかしいと。自分たちは、もう覚悟はある、国のために働こうという覚悟を持って、みんな、これから海外にも行こう、そういう覚悟を持っているのに、しかし、自衛隊のリスクはこれまでと変わりませんよということで、安全を常に確保しながら、何かあったら退避するんですとか、戦闘地域とはっきり分けていきますとか、そういうことを聞くたびに、やはり自衛官の皆さんの覚悟、国民を、この国を守りたいという覚悟が私はどんどんくじけていっているというふうに思います。

 私が聞いた限りでは、そういう自衛官の切実な声、なかなかそれは表立っては言えませんよ、自衛官は守秘義務がありますから。ですけれども、そういう思いというのはある。それに対して防衛大臣はどうお考えですか。

中谷国務大臣 自衛官は非常に意識が高いです。本当に、事に臨んでは身の危険を顧みず、国民の負託に応えると、みんな意識を持って、どんな任務が出ても最大限活動してくれている。そういう心構えは持っているわけでございます。

 ただし、どんな任務を与えるかということが一番大事なわけでありまして、みすみす危険がわかりながら隊員を派遣をする、こういうことはいたしません。やはり極力安全なところを選んで、隊員が安全に任務ができる、こういうことは送り出す側としては当然考えるわけでございます。

 そういう中で、いろいろな厳しい条件の中で隊員には任務を果たしていただいているわけでありますが、任務を与える場合に、必ず安全のことはしっかり考えた上で任務を出すように私はいたしております。

高井委員 そうやって、もちろん、自衛官の安全を確保しながらやるということは立派な心がけだと思います。

 しかし、ただ、申しましたように、後方支援で、今回、弾薬の提供とか、あるいは航空機への給油というようなことも加わって、やはりその後方支援の中身がより戦闘に近い、前線に近いものになる以上、幾ら安全な地域を防衛大臣が指定していても、そういう危険が、攻撃される危険が高まるということは、そういう可能性が高まるんじゃないですか。可能性が高まるということもお認めにならないんですか。

中谷国務大臣 本当に御心配ありがとうございます。

 やみくもに一般の隊員をそういうところに出すわけではございません。彼らも危機管理のプロでありますので、日々わざを磨き、能力を高めております。やはり派遣する以上はそういった任務にたえられる隊員を選抜し、そして意思を確認し、その上で派遣をするわけであります。

 また、日々訓練を重ねることによってそういう危機回避の能力も上がっていくわけでありますが、やはり、この法案が通ることによって、そういう訓練ができます、準備もできます、それから装備も考えます。いざというときに非常に高度な任務が果たせるように、やはりそれは法案でしっかり整備をして、また安全対策もして、そういった高度の任務を果たさなければならない。

 そういうことで、隊員の意識の高さ、これは非常に立派なものでございますが、みすみす、そういった隊員を危険な場所にただ単に送り込むのではなくて、よく考えて、しっかり安全に任務が果たせるように、それは送り出す側の務めだということでございます。

高井委員 もう一つ。隊員のことを、隊員は意識が高いんだとずっとおっしゃっていますけれども、実は私は、隊員の御家族にも友人がいます。御家族の方にとっては本当にやはり切実な思いであります。

 ぜひこういったことを、大臣、御家族のお気持ちというものを考えた上で、それでもリスクは高まらないんだ、今と一緒なんだ、そういうふうに言えますか。

中谷国務大臣 非常に大事な御指摘でございます。

 今回法案をつくる際に、特に公明党が隊員の安全ということを強調していろいろと法案の中に規定をいたしましたが、それ以上に、家族の心配をのける、そして国民の理解を得る、こういうことが大事なわけでございます。

 こういった対応等につきましては、この国会の審議で、きょうも御質問をいただいておりますけれども、どういった内容をどういった状況でやっていくのか、そういう点でやはり国民の理解をいただく、そして御家族にもそれを理解していただく、そういう努力は必要でございますので、しっかりと御説明をして、御理解をいただきたいというふうに思っております。

高井委員 それでは、もう一問。リスクについてもう一つ論点があるんです。大事な論点だと思っています。

 大臣も盛んに何度もこういう答弁をしている、運用をしっかりすることで自衛隊のリスクを極小化しますと言っていますよね。しかしこれは法律論ですから、この法律を、いいか悪いかという議論をしているのに、運用でそれはリスクを下げますと言われても、それはやはり法律論にならないんじゃないですかね。

 つまり、大臣はそういう思いを持っているから、中谷防衛大臣ならあるいは安倍総理だったら運用でそうやってやってくれますけれども、大臣がかわって、あるいは総理がかわったときに、そういう運用をとるかわからないじゃないですか。それはやはり法律でちゃんと歯どめをかける、法律論で議論しなきゃいけない。法律論として、これはリスクは高まるというふうに私は考えますけれども、いかがですか。

中谷国務大臣 おっしゃるとおりでございます。まず法律で安全を確保できる、そういう仕組み、これが必要でございますので、こういう点においては盛り込んでいるつもりでございます。

 運用というのは実は法律と非常に密接に関係しておりまして、自衛隊というのは法律にないことの訓練ができません。やはり、法律上できますというところで訓練を実施するわけでありまして、運用のリスクを減らすには、何といっても、訓練を重ねる、そして隊員の能力を上げる、そして実際に起こりそうなことに対して実際に訓練をしておく。まさにこれは法律がないとできない。

 これはなぜ特措法でなくて今回一般法かという説明にもなりますけれども、特措法では訓練ができないんですね。やはり、一般法にしておいて、非常に練度を重ねて、そういった場合に対応できるだけの対処能力、運用、こういうことをやっていくということでございますので、この法律と運用というのは、私は関係があるんじゃないかなというふうに思っております。

浜田委員長 高井君、ちょっと待ってください。

 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 高井崇志君、もう一度質問願います。

高井委員 それでは同じことをお聞きしますけれども、やはり、いろいろ運用したり努力をするということはやるんでしょう。しかし、これは法律論ですから、この法律として、この法律が通れば、自衛官のリスクは今よりは高まるということははっきりとおっしゃっていただけませんか。

中谷国務大臣 新たな任務に伴うリスクはあります。それに対して、法律でいろいろな手当てをし、また運用の手当てをし、それでもリスクというのは残るんです。そういうリスクをしっかりと管理をしていくということです。(発言する者あり)はい、おっしゃるとおりです。

高井委員 リスクはありますは、もう何十遍も、何百遍も聞いていますから。リスクは高まりますかという問いにイエスかノーかでお答えください。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 それでは、速記を起こしてください。

 では、防衛大臣から答弁を求めます。中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 新たな任務に伴う新たなリスクが生じる可能性はありますが、これを、法律上及び運用上、安全確保の仕組みの措置によりまして極小化、また局限化をいたしまして隊員を派遣いたします。

 また、この際、計画をしっかりつくり、そして閣議決定をし、最終的には国会に承認を求めるわけでございますので、いろいろな対応をとりまして、隊員の安全対策においては全力を挙げてまいります。

高井委員 今までより新たなリスクが生じるわけですよね。新たなリスクが生じるということは、リスクが高まるということでよろしいですよね。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

高井委員 もう一度。新たなリスクが生じるということは、今よりはリスクが高まるということでよろしいですね。(発言する者あり)

浜田委員長 中谷防衛大臣。

 静粛に願います。

中谷国務大臣 新たな任務に伴う新たなリスクが生じる可能性はありますが、これを、法律上及び運用上、安全確保の仕組みがより的確に、そして極小化をされるように努めてまいります。

高井委員 これを聞いているのは、何も別に揚げ足取りとか法技術的なとかじゃないんです。

 さっきも申し上げましたとおり、自衛官の思い、それから自衛官の御家族の思いというのが、この議論をしていて、リスクが高まらないのか、今までと一緒かということに対する本当に失望の声を私は聞くものですから、このことを御答弁をお願いしているわけでございまして、一定の新たなリスクが生じるということでございますので、この点については、また引き続き議論してまいりたいと思います。

 あともう一点、ちょっと……(発言する者あり)それでは、官房長官。

 今、自衛官のリスクは高まらないというのはやはりどう考えてもおかしいでしょう。運用で極小化しますというのは何度も答弁いただいていますけれども、運用でやるということは、これは法律論ですから、時の内閣がかわったら運用が変わるかもしれない、そんな不安定なことではだめなので、法律上はこれはリスクは高まるということを、今、中谷大臣はお認めいただきましたけれども、官房長官からも御答弁をお願いします。

菅国務大臣 今来て、余りよく内容がわからなかったですけれども、この問題については、先ほど中谷大臣が申し上げたとおりだというふうに思っています。

高井委員 この間ちょっと、いろいろ、るる議論があったので、これは、委員長、ぜひ、政府としての自衛官のリスクについての統一見解を、これは理事会で協議していただけませんか。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

 高井君。

高井委員 重要な点でございますので、これからも引き続き議論していきたいと思います。

 それでは、官房長官がお戻りになりましたので、冒頭聞きたかったんですけれども、今回、官房長官が六月四日の記者会見で、全く違憲でないと言う著名な憲法学者もたくさんいるという御発言がありました。午前中、辻元委員への答弁を私も聞いておりましたけれども、では、具体名と何人というのは通告していますけれども、もうそこまでは結構ですから、何人くらい、およそでいいですから。

 というのは、今、二百十二名の憲法学者がもう既に違憲と表明をされている、どんどん毎日ふえているような状況です。

 それから、小林参考人は、先日、日本の憲法学者は何百人もいるけれども、合憲と言っているのはせいぜい二、三人だと。それから、長谷部参考人も、政府と同じ考えの学者は少なくとも私の周りには誰もいないと。それから、きのうのテレビのニュースで、緊急アンケートして、百五十ぐらいにアンケートして五十人回答があったうち、合憲、違憲じゃないと言ったのはたった一人という状況であります。

 やはりこれは、国民の関心事、今一番聞きたいことでありますから、官房長官が自信を持ってたくさんいるとおっしゃるなら、何人くらいいるのか、せめてそのくらいは御答弁いただけますか。

菅国務大臣 私自身が知っている方は十人程度おります。

高井委員 十人程度というお答え。

 いずれにしても、私は、極めて少ない、少数だと。それは二百十二名が既に表明しているわけですから。

 先ほども、この中で、官房長官がいないときに議論があったんですけれども、例えば半々とか六、四とか七、三とか、そういう割合だったら、いや、それは少数意見も正しいでしょうということにもなるでしょうけれども、これだけやはり憲法学者の意見が分かれているということ、それから、やはり学者というカテゴリーをどう捉えるかですけれども、私は、やはり国民の声だ、国民の中で憲法をしっかり勉強された方がそうやって発言をされているわけですから……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

高井委員 これをやはり、切り捨てるような、そういう立場でこれからの審議をしていくべきではない。

 それから、いらっしゃらないときにお聞きしたんですけれども、法制局の歴代長官も非常に厳しいコメントを言われています。

 法制局長官の上司は官房長官ですから、官房長官がお決めになるんでしょうけれども、しかし、その専門的見地からさまざまなアドバイスを、これまで、もう伊藤博文が第一次内閣をつくってから六十六代目ですよね、法制局長官、六十六代まで営々と積み重ねてきた。そして、官僚組織の中でも法律に最も詳しい人たちが各省からよりすぐって集まり、そして、その法制局の中でもまさに一番の方が法制局長官になっているということを考えれば、今の長官直属の部下だけではなくて、その歴代のOBの声というものをしっかり聞いていただきたいと思いますけれども、いかがですか、官房長官。

菅国務大臣 まず、今、私、十人程度というふうに申し上げました。それで、大事なのは、憲法学者はどの方が多数派だとか少数派だとか、そういうことではなくて、憲法というのは国民生活全体にかかわるものであって、さまざまな分野の皆さんの意見を聞くこと、これは私は大事だというふうに思います。

 また、政府は、国民の生命と平和な暮らしを守る、ここの大きな責務を持っているというふうに考えています。そういう中にあって、昨年、憲法学者、国際法学者、あるいは実務家、元自衛官などさまざまな有識者の皆さんの専門的な意見を聞かせていただいて、また、与党も協議会で議論をしました。

 そういう中で、きょうも朝から法制局長官が答弁をされていますけれども、今日までの国会における答弁、そういう中で、やはり憲法の今まで答弁していることと合致をする。そういう中で、新三要件というのを私どもは今回示したことで、まさに合憲である、そういうことの上に立って、今、国会に法案を提出させていただいているところでありますので、ぜひこの中で議論をしていただいて、この法案を、私たちは、国民の平和な暮らしを守るという責務のもとで成立をさせていただければというふうに思います。

高井委員 時間が来たので終わりますけれども、私、安保法制懇についてもいろいろ議論をしたいことがございますので、また機会を改めてお願いいたします。

 では、終わります。

浜田委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 本日、午前の質疑で、横畠内閣法制局長官は、昭和四十七年の政府見解の憲法解釈を変えた理由は安全保障環境が変わったからかと問われて、端的に言えばそのとおりと答弁されました。そして、安全保障環境が変われば、また憲法解釈が変わって、絞ることもあり得るというふうに答弁をされました。

 安全保障環境が変わったという理由で政府が憲法解釈を百八十度変えるやり方こそ立憲主義の否定だ、そして法的安定性を損なうんだと批判されているわけです。そのことを厳しくまず初めに指摘しておきたいと思います。

 そして、まず、政府見解、きのう出されたものについてお伺いしますが、この政府見解は「安全保障環境が根本的に変容し、」ということを言っておりますが、何をもって「根本的に変容」と言っているのか、そして、根本的に変容したのはいつからでしょうか。

中谷国務大臣 昭和四十七年の見解を考えたわけでございますが、それからもう四十年以上たちました。冷戦も終えんをいたしました。また、グローバルなパワーバランスも変化をしております。また、東アジア、中東、ヨーロッパで不安定な要因も現実のものになってきております。

 具体的には、大量破壊兵器、また弾道ミサイル等の軍事技術が高度化、拡散化をいたしております。北朝鮮は、日本の大部分を射程におさめるノドンミサイルを配備しております。また、核開発も行っております。さらに、国際テロの脅威、海洋、宇宙、サイバー空間におけるリスクも深刻化をいたしております。脅威が世界のどの地域においても発生し、我が国に直接的な影響を及ぼし得る状況にもなってきているわけでございます。

 このような状況の中で、日本の安全を守る、国民の命と暮らしを守っていく。そういう意味におきまして、日本をしっかり守るために、どう考えるのか。また、日本が国際社会の中で一層大きな役割を果たすとともに、日米同盟も強化をし、域内外のパートナーとの信頼及び協力関係も深めなければならない。このような日本を取り巻く環境が大きく変化をしたということでございます。

宮本(徹)委員 だから、何をもってと。今いろいろなことを述べられましたけれども、だって、ソ連があった時代なんて、もっとたくさんのミサイルが向けられていたわけでしょう。私の子供のころなんて、核戦争で核の冬になったらどうなるのかというふうな「NHKスペシャル」なんかがやられていたわけですよ。

 それで、もっと大きな危機があったんじゃないかと私個人の実感としてあるわけですけれども、一体何をもって根本的な変容という、その根本的な変容の基準をしているのかということと、それがいつからか、明確に答えてください。

中谷国務大臣 インターネットができ、また人工衛星ができ、どんどんどんどん科学技術が進歩発展をしてきております。それに伴って、やはり安全保障の分野におきましても非常に状況が変わってきているわけでございますので、私たちが目標といたしますのは、やはり国民の命や安全を守るために、あらゆる事態に切れ目のない対応、そして、法律の面においても、いざ発生してからでは遅いわけです。やはり、いかなる事態が発生しても国だけはしっかり守れるような、そういう法律をつくっておかなければならない。そういう見地で、状況の変化に対してしっかり国民を守っていける、そういう法制をつくることを目指しているわけでございます。

宮本(徹)委員 インターネットだとか人工衛星が基準だということですか。二回も私の質問に対して答えたら、それが根本的変容の基準ということになっちゃいますよ。

 いろいろなことを並べて、何が基準なのかということを聞いて、そして、いつからか。いろいろなことが集まってと言うんだったら、それが根本的な変容というふうに決めたのはいつなんですか。

中谷国務大臣 まず、憲法施行から六十七年になる今日までの間に、我が国を取り巻く安全保障環境は根本的に変容をいたしました。

 特に、冷戦後四半世紀たちましたが、グローバルなパワーバランスの変化、技術革新の急速な進展、大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発、拡散、国際テロなどの脅威、アジア太平洋においての問題は緊張が生み出されているとともに、脅威が世界のどの地域においても発生して、我が国の安全保障に直接的な影響を及ぼし得る状況になってきている。近年ではさらに、海洋、宇宙、サイバー空間における自由なアクセス及びその活用を妨げるリスクが拡散、深刻化をしているということです。

 やはりどの国も一国のみで平和を守ることはできずに、国際社会もまた、我が国がその国力にふさわしい形で一層積極的な役割を果たすことを期待しているというようなことで、こういった環境の変化が、常に変化が起こって蓄積をされている、そういう中でいかに日本の国を守ったらいいのか、そういうことを考えたわけでございます。

宮本(徹)委員 だから、私が聞いたことに全然答えていないんですよ。

 根本的変容というのは、根本的というのは何なのかということと、いつからなのかというのを全然答えられないわけですよ。これで憲法解釈を変えよう、根拠にしようというのは、本当にこんなおかしな話はないということを私はまず初めに言っておきたいと思います。

 そしてもう一つ、この政府見解についてお伺いしたいと思いますが、「今後他国に対して発生する武力攻撃であったとしてもその目的、規模、態様等によっては、我が国の存立を脅かすことも現実に起こり得る。」ということが書かれているわけです。その例としてホルムズ海峡だとか何だとかということを挙げられていますけれども、国民の中では、それがどうして当てはまるのという疑問が広がっているわけですよね。

 ちょっとお聞きしたいんですけれども、この根本的な変容の中で、皆さんが言われている根本的変容の中で、実際、世界の中で、他国に対する武力攻撃で国の存立が脅かされるようなことがどこかの国であったことがあるんでしょうか。例があれば挙げてください。

中谷国務大臣 一概には言えませんが、我が国の安全を考えてみますと、やはり日本の安全というものは、戦後ずっと平和で来られたわけでございまして、それは、それなりに国民も努力をし、また政府も努力をした結果でございます。やはり、そういうことがないように日々備えをしておくということが安全保障でございますので、そういう備えというものは、目には見えませんけれども、必要なわけでございます。

宮本(徹)委員 いや、だから、そういう我が国の話を聞いているわけじゃないんです、私は。我が国にあったら、それこそ大変な事態なわけですよ。そういうことを聞いているわけじゃない。

 世界の中で、今安全保障環境が変わっているという話があったわけですけれども、他国に対する武力攻撃で国の存立が脅かされたようなことが、出来事があった国はあるのかということを聞いているわけですよ。

中谷国務大臣 国際紛争は今でも起こっております、シリアとかウクライナとか。絶えず国際社会というのはそういう紛争、対立を繰り返しているわけでございますが、そういう中で、日本の安全、平和、これはしっかり守っていかなければならないということでございます。

宮本(徹)委員 私が聞いているのはそういうことじゃないんですよね。紛争一般が起きているのは誰だって知っている話なわけですよ。そうじゃなくて、他国に対する武力攻撃によってある国の存在が脅かされるようなことが起きたことというのはありますかということを聞いているわけですよ、どこかの国で。

 自分の国が攻められたら、その国の存立が脅かされるのは当たり前ですよ。その国が攻められていないのに、他の国が攻められていることをもってその国が存立を脅かされるようなことがあったというのがこの論理なわけでしょう。そういう例が世界にあるんですかということを私は聞いているわけですよ。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 先生から事前にいろいろと御通告をいただいておりますけれども、本件につきまして事前にお問い合わせがなかったものですから、しっかり調べましてお答えをさせていただきたいと思います。申しわけございません。

宮本(徹)委員 いや、別にそんなに難しい話を聞いているわけじゃないんですよ。こういうことが、存立を脅かすようなことが起こり得るなんてことを言っているから、実際そんな例が世界にあるのかなと。このことについて物すごい国民は疑問を持っているから、私は代表して聞いているわけですよ。こんなことも出せずに……(発言する者あり)いや、一例も出せないという……。

 岸田さん、一例でも出せますか、岸田大臣。では、出せないということですから、後刻。

岸田国務大臣 これまでの歴史の中で、他国に対する攻撃で自国に対してそうした危機が及ぶ、そういった例があるかという御質問でありますが、我が国以外の事例全てについて今確認するものがありません。先ほど防衛大臣からありましたように、改めて正確を期して御報告をいたします。

宮本(徹)委員 まあ、私の思いつく限りはないと思うんですけれども、あればぜひ調べて出していただきたいと思います。

 なければ……(発言する者あり)理事会に提出していただくということで、理事会で御検討をよろしくお願いします。

浜田委員長 理事会で協議します。

宮本(徹)委員 よろしくお願いします。

 出せなければ、もうそれこそ立法事実がないということにもつながる話だ、憲法解釈の変更の根拠がないということにもなるんだということを厳しく指摘しておきたいというように思います。

 その上で、憲法と本法案の関係について次にお伺いしたいと思います。

 憲法九条は、世界に惨禍をもたらした侵略戦争の反省の上に立って、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇と武力の行使を放棄した。そして、その目的を達するために、戦力の不保持と交戦権の否認を明記しました。そして、徹底した平和主義を戦後日本は掲げたわけです。

 その後、アメリカの再軍備要求で自衛隊が発足することになりました。その際、政府は、戦力ではないと言うがために、自衛隊は自衛のための必要最小限度の実力だから憲法に違反しない、こういう論を立てました。そして、自衛のための必要最小限を超える海外での武力行使はできない、集団的自衛権の行使はできない、歴代の総理も内閣法制局長官も表明してきたところであります。

 ところが、今回、安倍政権は、この数十年積み上げられてきた憲法解釈を覆して、これまでどの政権も憲法のもとでは絶対にできないとされてきた集団的自衛権が行使できる閣議決定を行い、そしてこの法案を押し通そうとしているわけであります。

 そして、そのことに対して、きょうも示されておりますけれども、多くの国民から批判の世論が示されております。そして、先週の憲法審査会でも、三人の憲法学者の方がそろって、立憲主義に反する、憲法違反だと指摘したわけであります。

 中谷大臣にお伺いしますけれども、他国への武力攻撃の発生で我が国が武力行使をするのは集団的自衛権の行使であります。限定容認と言おうが、歯どめをかけたと言おうが、これは憲法違反なのは明白なんじゃありませんか。

中谷国務大臣 今回、三要件をもちまして我が国の自衛の措置をするわけでございますが、これは、国際法上、集団的自衛権の行使として認められる、他国を防衛するための武力の行使それ自体を認めるものではなくて、あくまでも我が国の存立を全うし国民を守るため、すなわち我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として、一部限定された場合において、他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とする武力の行使を認めるにとどめるものでございます。

 この新三要件のもとで認められる武力行使のうち、国際法上は集団的自衛権として違法性が阻却されるものは、他国を防衛するための武力行使ではなく、あくまでも我が国を防衛するためのやむを得ない必要最小限度の自衛の措置にとどまるものでございます。

宮本(徹)委員 これまでの論理は、憲法のもとでは、あくまで外国の武力攻撃、急迫不正の侵害があったときしか日本は武力攻撃で反撃はできないというのが論理であり、結論だったわけですよね。一九七二年、昭和四十七年の政府見解の論理を基本的に維持していると言いますが、全く維持していないわけでありますよ。

 中谷大臣にお伺いしますが、憲法九条のもとで、我が国が個別的自衛権が行使できて、そのための実力組織を持ち得るという政府の見解というのは、憲法九条のもとでは、我が国への武力攻撃抜きの実力行使、すなわち集団的自衛権の行使はできないという結論と一体不可分だったはずなんじゃないんですか。

中谷国務大臣 それは昭和四十七年の政府見解で明らかにしたところでございますが、それから四十数年たちまして、我が国の安全保障の変化がございました。

 改めて、四十七年の政府見解における基本的な論理、これは、自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとは到底解されず、外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に対応するためにやむを得ない措置として必要最小限度の武力の行使は容認される、この政府見解の基本的な論理から考えまして、引き続き維持をさせた結果、現時点におきまして、昨年七月一日に閣議決定された武力行使の三要件、これに限って我が国の自衛の措置が容認されたということでございます。

宮本(徹)委員 全然聞いていることに答えていないわけですけれども。

 憲法の要請から来ているわけですよ、一九七二年の見解というのは。憲法は、戦力は持っちゃいけないというふうに書いているわけですよ。戦力は持っちゃいけない。それに対して、政府は、ある意味ぎりぎりの政府なりの論立てとして、必要最小限の自衛のための実力組織を持ち得るというふうに出したわけですよ。それは武力攻撃があったときだけに反撃するためのものだけですよというものだったわけですよ。戦力は持っちゃいけない、ここから来ているわけですよね。

 ですから、憲法の要請からいえば、一九七二年の見解は、ばらばらにできるものじゃなくて、上から下まで一体不可分のものなんですよね。そこを分けちゃまずいですよ。憲法が変わっているわけじゃないんですから、戦力を持っちゃいけないというのはそのまま変わっているわけじゃないんですから、武力攻撃もしちゃいけないわけですよ。

 それでお聞きしますけれども、今回、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされる明白な危険といいますけれども、この明白な危険の状態というのは、我が国には武力攻撃は及んでいないわけですよ。それで、我が国に武力攻撃を行っていない国に対して、明白な危険だということで我が国が武力攻撃を行う、そうすると、その国との間で我が国が新たな戦争を発生させるということになるわけですよ。

 中谷大臣、これは誰がどう見ても、憲法九条一項の禁ずる、国際紛争の解決の手段としての武力行使に当たるのは明らかじゃないですか。

中谷国務大臣 これは無条件というわけではございません。まず、我が国の存立が脅かされ、そして、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態ということで、ある事態が発生をし、そして、他国に対する武力攻撃が発生した場合において、そのままでおいた場合、もし武力を用いた対処をしなければ、国民に、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であるという事態でございます。

宮本(徹)委員 だから、そういう事態であったとしても、我が国は攻撃を受けていない、攻撃を受けていないわけですよ。攻撃を受けていない我が国が攻撃をしかけたら、それは戦争状態、武力紛争状態をつくるわけです、日本の側から、その国との間では。それは国際紛争の解決の手段としての武力行使に当たるじゃないですか、憲法九条一項が言っている。そう思わないですか。

中谷国務大臣 それは憲法の基本的論理と三要件を考えるわけでございますが、最終的にはやはり、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、そして国民がこうむることとなる犠牲の深刻性、重大性などから客観的、合理的に判断するわけでございまして、先ほど申し上げましたけれども、何もしなければ我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況になったということでございます。

宮本(徹)委員 だから、何度も言いますけれども、危険の状態でこちらから武力攻撃を行うということは、憲法九条一項の禁ずる国際紛争の解決の手段としての武力行使に当たるのは明白なわけですよ。同じ答弁しか返ってこないですから、次に行きますけれども。

 もう一つ聞きます。

 これまでの政府の見解というのは、憲法九条二項の戦力不保持、交戦権の否認のもとで、自衛隊というのは、我が国が直接武力攻撃を受けたときに、自衛のための必要最小限の実力組織だと、ある意味ぎりぎりの理屈で合憲と政府はしてきたわけであります。自国に武力攻撃がないもとで集団的自衛権の行使のための実力というのは、憲法九条二項に反する戦力に当たる、戦力にほかならないんじゃないですか。

横畠政府特別補佐人 陸海空軍、戦力の不保持につきましては、憲法第九条第二項に明記されております。

 憲法で保有することを禁止している戦力につきましては、これまで、自衛のための必要最小限度の実力を超える実力であると解しております。

 今般、新三要件のもとでは、国際法上の集団的自衛権として違法性が阻却される武力行使のうち、一定の、我が国に深刻、重大な影響の及ぶもの、そういうものに限って行使を認めるということにしておりますけれども、それはまさに自衛のための必要最小限度の実力の行使でございまして、まさにこれまで自衛隊が憲法第九条二項で禁じられている戦力に当たらないと言っていた全く同じ理由をもちまして、憲法で禁じられている戦力には当たらないというふうに解されるところでございます。

 同じく交戦権についての御指摘がございましたけれども、ポイントは、これまで自衛権の行使に当たっては、我が国を防衛するための必要最小限度の実力を行使することは当然認められる、それは憲法第九条二項で否認している交戦権とは別のものであるというふうに説明をさせていただいております。

 今般の新三要件のもとでの武力の行使につきましても、詳しくはまた申しませんけれども、我が国を防衛するための必要最小限度の実力の行使の範囲にとどまるものでございますので、全くこれまでと同じように、この交戦権否認の規定に抵触するということにはならないと解しております。

宮本(徹)委員 全く説明になっていないわけですよね。

 これまでは、武力攻撃を受けたときしか反撃しない、だから戦力じゃない、武力の行使じゃないというふうに説明してきたわけですよ。それ以上は必要最小限を超えるわけでしょう。何、首を振っているんですか。そうでしょうが。本当に、戦力でないという担保はまさにそこにあったわけですよ。自国に武力攻撃への反撃しか許されない、そこにあったわけですよ。歴代長官もそう言ってきた。法律に合わせて憲法解釈を変えていったら、どんな法案だって許されるということになりますよ。

 そして、はっきり言わせていただきますけれども、今回の新しい政府の解釈は、政府の自衛隊合憲の原理すら揺るがす状態になっているという自覚を持った方が法制局長官もいいと思いますよ。私たちは違憲という立場だからあれですけれども、政府の合憲の論理だって揺るがしている状態だということを厳しく指摘しておきたいというふうに思います。

 こんな立憲主義の否定は許されない。合理的な説明もできずに居直ることしかできないんだったら、もう法案は撤回しかないということを厳しく指摘しておきたいと思います。

 その上で、驚いたのは、きのうの政府見解の中で、集団的自衛権を合理化するこの議論の中で、閣議決定にもなかった最高裁の砂川判決をまたぞろ引用していることであります。

 午前中の質疑の中でも、菅官房長官が、最高裁は憲法の番人だ、その見解に基づいているものだということもおっしゃっておられました。そして、安倍総理も、G7の後の記者会見で、砂川判決を引用して安保法制は合憲と言ったと報道されております。

 そこで、私も改めて砂川判決を読んでみました。この砂川事件の裁判で問われたのは、駐留アメリカ軍が憲法九条二項で言う戦力に当たるかどうかということでありました。一審の地裁判決は、憲法九条二項の戦力に当たり違憲だというふうにしたわけであります。

 これに対して、最高裁の判決はどういう論理かといいますと、簡単に言えば、憲法九条二項が保持しないと言う戦力とは、我が国が主体となって指揮権、管理権を行使し得るものであって、外国の軍隊は該当しないというふうにしたわけですね。その上で、判決は、もう一つ、安保条約というのは高度の政治性を持っている、だから裁判所の司法審査権の対象外だとして、いわゆる憲法で言う統治行為論ですね、これでばっさりと一審の違憲判決を破棄した。この二つが大きな判決の中身となっているわけであります。

 ですから、私も改めて読みましたけれども、この最高裁判決は、駐留米軍が合憲かどうかの判断もしておりません、自衛隊が合憲かどうかの判断ももちろんしておりません、自衛権の範囲がどこまで認められるかということも議論をしておりません。ましてや、集団的自衛権についての判断は何も行っていないわけですよ。

 中谷大臣、この判決文の中から都合のいい部分だけ切り取って集団的自衛権を行使できる根拠として使うのはおよそ筋違いだと言わなければならないと思いますが、どうでしょうか。(発言する者あり)

浜田委員長 やじに応えないように願います。答弁。

横畠政府特別補佐人 砂川事件についての最高裁判決についてのお尋ねでございます。

 最高裁の裁判といいますのも、判例としての拘束力が法的に厳密にどこまで及ぶのかというその議論は当然あろうかと思いますけれども、それとは必ずしも一致しないかもしれませんけれども、最高裁判所がどのような指摘をしているかということは、これは大変大きな意味を持っているものと考えております。

 この昭和四十七年の政府見解の前提となりました、先ほどもお尋ねがございましたけれども、昭和四十七年九月十四日の参議院決算委員会におきます吉国法制局長官の答弁の中でも、「そこで国を守る権利と申しますか、自衛権は、砂川事件に関する最高裁判決でも、自衛権のあることについては承認をされた。」ということに言及しております。

 そういうことで、昭和四十七年の政府見解の、一から三まである、その一の、

  憲法は、第九条において、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているが、前文において「全世界の国民が…平和のうちに生存する権利を有する」ことを確認し、また、第一三条において「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、…国政の上で、最大の尊重を必要とする」旨を定めていることからも、わが国がみずからの存立を全うし国民が平和のうちに生存することまでも放棄していないことは明らかであつて、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。

としておりますが、その部分は、まさにこの砂川事件の最高裁判決の示しました「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」という判示と軌を一にするということを御説明させていただいているところでございます。

宮本(徹)委員 集団的自衛権について何か言っていますか、砂川判決は。

横畠政府特別補佐人 個別的自衛権、集団的自衛権という区別をして論じているものではございません。

 その判決の中では、「わが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、わが憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではない」ということを述べております。

宮本(徹)委員 ですから、集団的自衛権について判断したものではないですよね。そこは確認したいんですけれども、よろしいですよね。

横畠政府特別補佐人 個別、集団の区別をつけず、自衛権について広く言及しているということでございまして、むしろ昭和四十七年の政府見解におきましては、その次の段落におきまして、「しかしながら、だからといつて、」と言って、憲法九条のもとで許される武力の行使というのが制約されるのだ、そういう論理になっております。

宮本(徹)委員 だから、集団的自衛権については何も触れていないですよね。

横畠政府特別補佐人 集団的自衛権について触れているわけではございません。

宮本(徹)委員 そうです。当然ですよ。だって、集団的自衛権のことを議論している判決でもなければ、もっと言えば、自衛隊の合憲性も何も問われていないんですよ。そういうのが砂川判決なわけですよ。

 しかも、この砂川判決以降も、政府は、憲法九条のもとでは集団的自衛権の行使は認められないという答弁を繰り返してきているわけですから、経過からいっても、この砂川判決を集団的自衛権の行使の根拠づけに使うというのは全く無理があるということを言わざるを得ないと思います。

 さらに言わせていただきたいですけれども、判決の組み立てからいえば、政府見解として引用されている部分は、はっきり言って、砂川判決でいえば傍論の部分ですよね。先ほど法制局長官も、拘束力がある部分なのかどうなのかという点はごにょごにょとおっしゃいましたけれども、判決を導き出す論理のところには、政府見解で引用されている部分は入っていないですよね。

横畠政府特別補佐人 傍論という言葉は、厳密に言いますと、やはり裁判において結論を出すために直接必要な議論とは別であるということでございますけれども。

 ただ、最高裁判所大法廷がわざわざ我が国の自衛権を否定していないということについてまで言及しているということの意味は、やはり重く受けとめるべきと考えます。

宮本(徹)委員 今、結論を出すのには必要ではないところだというふうにおっしゃいました。そうなんですよ。政府見解が引用しているところは、文字どおり傍論なわけですよ。

 政府の皆さんは、イラクの自衛隊派遣のときの判決を傍論だ、傍論だと言って無視している。その一方で、今法制局長官が認められたとおり、判決を導き出す結論には必要じゃない部分の傍論を使って集団的自衛権の根拠づけに使うというのは、これは二枚舌じゃないですか、御都合主義じゃないですか、どうなんですか。

浜田委員長 内閣法制局長官。しっかり答えてください。

横畠政府特別補佐人 昭和四十七年見解が政府の見解でございまして、砂川判決を前提として、さらに絞り込んで、この昭和四十七年の見解を出しております。その意味で、砂川判決において我が国の自衛権が否定されていないということは、根拠、前提の一部をなしていることは、そのとおりでございます。

宮本(徹)委員 ですから、集団的自衛権は一切議論になっていない判決の、しかも傍論部分しか最高裁判決としては集団的自衛権の根拠として持ち出せないところに、いかにこの集団的自衛権の行使容認が憲法上根拠がないのかということを示していると言わなきゃいけないというふうに思います。

 そして、憲法判断の最高権威は最高裁だということで、与党の方がつくっているペーパーに書かれておりますが、大体、この最高裁の砂川判決がどうして統治行為論をとったのか、この歴史をしっかり見ておく必要があると思うんですよね。

 経過は、地裁判決が駐留米軍は憲法違反だと出すわけですよね。これに慌てた日米両政府の圧力で、高等裁判所もすっ飛ばして跳躍上告が行われた。そして、わずか九カ月後に最高裁が出したのがこの砂川判決であります。

 アメリカ政府が解禁した極秘電報によると、地裁判決の翌日、一九五九年三月三十一日、駐日アメリカ大使が藤山外務大臣に会って、日本政府が迅速な行動をとって地裁判決を正すことの重要性を強調して、直接最高裁に上告することが非常に重要だと言っている。これは公電文書として残っているわけですよね。

 そして、五九年八月三日の秘密公電では、田中最高裁長官がアメリカ大使館の首席公使と会って判決の日程の見通しなどを語ったということが、これも報告されております。そして、判決の翌日には、アメリカ大使がアメリカの国務長官宛てに、全員一致の最高裁判決が出たことは田中裁判長の手腕と政治力に負うことがすこぶる大きい、この裁判における裁判長の功績は、日本を世界の自由陣営に組み込むことによって、金字塔を打ち立てるものだ、こう賛美する電報を打っている。

 こうした経緯が、二〇〇八年から二〇一三年にかけてアメリカの国立公文書館で解禁された文書で明らかになったわけであります。文字どおり、司法の独立も国家の主権も損なわれる屈辱的な形で出されたのがこの砂川判決ですよ。この歴史の経過は、大臣、御存じですよね。

中谷国務大臣 砂川判決、私は報道等で存じ上げております。先生の御指摘も踏まえまして、今後さらに勉強してまいりたいと思います。

宮本(徹)委員 だから、砂川判決を知っているのはそうですけれども……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

宮本(徹)委員 砂川判決を知っているのはそうですけれども、こういう経過があったということも御存じだということでいいわけでしょうか。これは別に、マスコミに書かれている話ですよ。国会の中でも、私がここに来る前から議論されてきていることで、岸田大臣なんか、外務委員会で議論されているから御存じじゃないでしょうか。

岸田国務大臣 今の委員の質問の中で、米国において公電が公開された等の趣旨の発言がありました。米国のこの公開文書について、我が国として何か論ずる立場にはありません。

 我が国の記録、公にした文書の中には、御指摘のような点はないと承知をしております。

宮本(徹)委員 いや、こんな、もう明らかになっているんですよ、アメリカの公文書館で明らかになっていることを隠す必要は全然ないわけですよ。何でそう隠すんですか。こういう形で判決が出されたことを隠さなきゃいけない、日本政府としての理由があるんですか。ないでしょう。

 こういう、歴史まで隠しながら、正当性が疑われる砂川判決を憲法九条の解釈を覆す根拠に使うなど、本当にとんでもない話だと私は言わなければなりません。

 では、理事会に出せるものがあったら出していただくということで、取り計らいをお願いいたします。

浜田委員長 もう一度。

宮本(徹)委員 この砂川判決の、アメリカからは、国立公文書館で、いろいろな経過が公電として解禁文書で出ているわけですよね。日本政府は、ないというのが今の岸田大臣の立場でしたけれども、探せば出てくるかもわかりませんから、もう一度探していただいて、資料を提出いただくということを……

浜田委員長 理事会で協議させていただきます。

宮本(徹)委員 よろしくお願いいたします。

 ちょっと時間が大分押してまいりましたけれども、次に、自衛隊法改正案九十五条の二について質問させていただきたいというふうに思います。

 今回、自衛隊法改正案九十五条の二は、自衛隊が武器を使用して防護する対象を外国軍隊にまで拡大するということになりました。法案では、防護する武器について、「アメリカ合衆国の軍隊その他の外国の軍隊その他これに類する組織の部隊であつて自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に現に従事しているものの武器」ということが書かれております。

 ここで言う「我が国の防衛に資する活動(共同訓練を含み、現に戦闘行為が行われている現場で行われるものを除く。)」とは具体的にどういう活動なのかという質問が、五月二十九日、本委員会で行われました。その答弁の中で、中谷大臣は、「我が国の防衛に資する活動として当たり得る活動といたしましては、例えば、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態に際して行われる輸送、補給等の活動、情報収集・警戒監視活動、自衛隊と米軍等が各種事態、状況のもとで連携して行う活動を想定した共同訓練、これが該当すると考えられます。」と答弁されておられました。

 そこで、きょうは具体的に聞いていきたいと思います。

 まず、共同訓練ですけれども、この「各種事態、状況のもとで連携して行う活動を想定した共同訓練、」というのはどういう訓練なのか。日米共同訓練以外に、例えばリムパックのような多国間の共同訓練も入るのか。リムパックは中国も参加していますから、中国も入るのか。あるいは、防衛省のレクでは災害対応の訓練も入ると聞きましたが、その点についてもお聞きしたいと思います。

黒江政府参考人 条文の細部でございますので私の方から申し上げますけれども、今御指摘の「我が国の防衛に資する活動」という中で例示をいたしております共同訓練でございますけれども、これは、防衛大臣が、具体的に、個々の共同訓練に際しまして、要請があった場合に、当該共同訓練の目的、内容あるいは周囲の情勢等を踏まえまして、自衛官が警護を行う必要性があるかどうかということを個別具体的に判断して決めるということになります。

 その上で、一般論として申し上げますけれども、災害対処のための訓練というものと多国間の共同訓練という例示がございましたけれども、災害対処の訓練ということでありますれば、災害対処という行為自体が我が国の防衛に資する活動には必ずしも当たらないということがございますので、本条による警護は行わないということだと考えております。

 また、多国間の共同訓練ということでございます。通常、多国間で行われます共同訓練といいますものは、自衛隊と当該国との間でおのおのの戦術技量の向上というものを図りまして、まさしく我が国の防衛ということのために必要な能力の向上を目的として行うものでございます。ですので、多国間の訓練というのは当然この共同訓練の対象になります。

 他方、それでは、先ほど中国という個別の国名をお挙げになりましたけれども、我々は法案の中に特定の国名というものを挙げておるわけではございません。それで、一概に申し上げるわけにはいきませんけれども、自国の武器等の警護を依頼するということが前提になってございますので、当該国、すなわち警護の対象になる国につきましては、我が国と防衛上密接な関係にある、そういう国におのずから限られるというのが我々の考え方でございます。

宮本(徹)委員 防衛省のレクで聞いたときは災害対処の訓練も入るというふうに聞きましたけれども、では、それはこの場で訂正されたということで確認したいと思います。

 それから、情報収集・警戒監視の活動ですけれども、アメリカ軍は情報収集・警戒監視の活動を地球規模で行っております。この九十五条の二で防護の対象となるのは、どういう事態のもとで、そして地理的にはどの範囲での活動か、この情報収集・監視活動についてお聞きしたいと思います。

黒江政府参考人 これは、条文上、我が国の防衛に資する活動を現に自衛隊とともに行っておる、そういう要件がかぶってございます。そういう要件に当たるかどうかということで判断をするものでございまして、この法律が特定の地域を念頭に置いているわけではございません。

宮本(徹)委員 ということは、地理的には無限定だということでよろしいんですか。

黒江政府参考人 法の制度の考え方を申し上げますと、先ほど私が申し上げましたように、当該国から要請があり、それが我が国の防衛に資する活動であって、現に自衛隊とともに従事するということに当たるかどうかというものを個別具体的に防衛大臣が判断するということでございます。

宮本(徹)委員 そういうのに当てはまった場合というのは、地理的には無限定なのかということをお聞きしているわけです。

黒江政府参考人 我が国の防衛に資する活動に当たるかどうかということでございます。

 また、その活動がどこで行われるかということをあらかじめ特定するということはできないという意味で、私はお答えを申し上げております。

宮本(徹)委員 ということは、地理的には言えない、制約があるとも言えないと。

 どこでも、アメリカ軍が、情報・警戒監視活動をやっている、それを一旦政府が、防衛に資する活動だ、この防衛に資するというのは大変広い概念ですけれども、そう判断したら、どこでだってアメリカ軍の防護ができるということになる、そういう理解でいいわけですね。

黒江政府参考人 我が国の防衛に資する活動であるかどうかということの判断に係るわけでございますけれども、その際に、先ほど私申し上げましたのは、特定の地域ということで判断されるわけではないということでございます。

 他方、当然のことながら、先ほど、共同訓練あるいは警戒監視・情報収集といったようなことがございましたけれども、それに対しまして我々がどのくらいのことができるのか、あるいは警護の要請があったときに、我が方の能力が具体的にどこまでできるのかといったことは、個別具体的に勘案をした上で判断するということを申し上げておるわけでございます。

 そういう意味で、無限定であるかどうかということを一概に申し上げることは適切でないということでございます。

宮本(徹)委員 法律上は事実上無限定だ、地理的に制約があるわけではないというのははっきりしたというように思います。

 それから、九十五条の二の五行目のところで、防護対象となる「武器等」とありますけれども、これはどういう種類の武器なんでしょうか。あらゆる対象の武器が入るということでしょうか。

黒江政府参考人 九十五条の二の警護対象にございます「武器等」という言葉でございますが、現行の第九十五条にございます「武器等」と同様でございまして、具体的には、「武器、弾薬、火薬、船舶、航空機、車両、有線電気通信設備、無線設備又は液体燃料」をいうものでございます。

宮本(徹)委員 では、何でも入るということでいいのかなというふうに思います。

 次に、九十五条の二の五行目の下のところですけれども、「武器等を職務上警護するに当たり、」というところについて聞きたいと思います。

 これは、九十五条の二の、その後ろにある二項のところで、「前項の警護は、合衆国軍隊等から要請があつた場合であつて、防衛大臣が必要と認めるときに限り、自衛官が行うものとする。」とあります。これは米軍などの要請を受けて、米軍などの艦船や部隊を守る任務を負った自衛隊の部隊を派遣するという理解でいいんでしょうか。

黒江政府参考人 お尋ねの条文でございますけれども、合衆国軍隊等から要請があって防衛大臣が必要と認めるという場合には、具体的には、警護に当たる自衛官に対しましていわゆる警護任務を付与する、すなわち、大臣の命令行為があるということでございます。

宮本(徹)委員 だから、命令を出して、米軍の艦船や部隊を守る任務を負った自衛隊の部隊を派遣するということでいいわけですね。

黒江政府参考人 派遣するという言葉の意味、私、必ずしも正確に認識したかどうかはわかりませんけれども、例えば、先ほどの重要影響事態というような際に、お互いに後方支援活動を行っている、それを共同して行っているということが考えられるわけですけれども、それを行っている部隊同士でこれを防護するといった場合もありましょうし、先生御指摘のように、必要な警護部隊、警護任務を持った自衛官あるいはその部隊、艦船等が派遣されるといった例もあると思います。

宮本(徹)委員 共同でやる場合もあれば、アメリカ軍の警護をする部隊を派遣する、アメリカ軍を警護する艦船を派遣するという説明でありました。

 そして、少し戻って、武器等防護の対象ですけれども、重要影響事態の場合ですけれども、中谷大臣は、五月二十九日の答弁の中では、「我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態に際して行われる輸送、補給等の活動、」と言われたわけですけれども、この場合の武器等防護というのはどういう意味なんでしょうか。この輸送、補給等の活動の場合の武器等防護。

 前線でアメリカ軍が武力行使をしている、そのときに、それに対して、後方で輸送や補給に取り組んでいるアメリカ軍の輸送艦を自衛隊が警護するということでしょうか。そろそろ大臣、お答えください。

中谷国務大臣 我が国の防衛に資する活動ということでございますが、しかし、これは自衛隊と連携をして現に従事している米軍等の武器等の防護でございます。

 前提としましては、武力行使に至らない侵害から防護するための極めて受動的、限定的な必要最小限の行為にとどめているわけでございます。

宮本(徹)委員 いや、私が聞いているのはそういうことじゃなくて、大臣が二十九日に答弁された、重要影響事態で行われている輸送、補給の活動を武器等防護の対象だとおっしゃられたわけですよ。ですから、これはどういう意味なのかなと思っているんです。

 アメリカ軍が前線で武力行使をしている、その前線の部隊にアメリカ軍が輸送、補給をしている、その米軍の輸送艦を自衛隊が警護するという理解でいいんでしょうか。

中谷国務大臣 申し上げたとおり、まず、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態に際して行われる輸送、補給活動でございますし、また、条文でも定めておりますが、現に戦闘行為が行われている現場で警護は行わないということを明記しておりまして、自衛隊による警護が米軍等による武力行使と一体化をしないということを担保した上で行われる輸送、補給等の後方支援活動でございます。

宮本(徹)委員 いや、もう一度お聞きしますけれども、では、具体的にこういう場合も当てはまるということでいいわけですね。アメリカ軍が前線で武力行使しています、そこに後方支援として、アメリカ軍が兵たん活動で輸送、補給に取り組んでいる、そのアメリカ軍の輸送艦を自衛隊が警護するという場合も入るということでいいわけですね。

黒江政府参考人 先ほど来、中谷防衛大臣からお答えをいたしておりますけれども、重要影響事態におきまして自衛隊が他国に対する後方支援を行う場所につきましては、これもこの委員会でさまざまな御議論がございましたけれども、安全かつ効果的に活動を実施できる区域という中でこれを行うわけでございますので、先生御指摘になられましたような、現に前線において戦闘行為が行われているような、そういう場所で行われるという例がこの中に含まれるということはございません。そういった趣旨も、この九十五条の二の文言の中に含まれておる、明示されておるということでございます。

宮本(徹)委員 だから、前線での活動のことを言っているわけじゃなく、後方で輸送や補給に取り組んでいる、皆さんの好きな後方で取り組んでいるという場合の米軍の輸送艦を自衛隊が警護する場合はどうなんでしょうか、重要影響事態の場合。

黒江政府参考人 御指摘の後方でということでございますが、自衛隊が活動を行います実施区域の中で行われる行動、これを共同して行っている、そういうものが対象になるということでございます。

宮本(徹)委員 ということは、実施区域の中で米軍の輸送艦を自衛隊が警護するということはあるということですね。この輸送艦は、前線の米軍にもちろん、その先には届くということになるわけですけれども、後方地域では警護するということであります。

 それから、法案では「現に戦闘行為が行われている現場で行われるものを除く。」というふうにありますが、例えば米軍の空母というのは警護できるんでしょうか。戦闘現場に向かって戦闘機は飛び立っていく、でも空母自身は皆さんの言われる戦闘現場と呼ばれる地域にいない場合、この場合は空母の警護というのは可能なんでしょうか。

黒江政府参考人 九十五条の二の条文に基づきます米軍等の武器等の防護の対象につきましては、先ほど私が申し上げたとおり、武器の範囲については、現行の九十五条に定められている範囲でございます。それにつきまして例外を特に設けておるわけではございません。

 ただ、他方で、先ほど来、我々としまして、この条文をつくる際に最も気を使いましたところの一つといたしまして、他国が行っております武力行使と一体化しないということを担保するために、さまざまな文言、あるいは私が先ほど来申し上げましたような考え方でこれに当たっておるわけでございますので、当然、さまざまな状況というのはあると思いますけれども、そういったことを、まさに、防衛大臣が、個別具体的に警護任務を付与する際に勘案をした上で適切な判断をするということでございます。

宮本(徹)委員 いや、だから、武力行使と一体化しないのは当たり前の話なわけですけれども、ですから、私が言っておりますのは、具体例で聞いているわけですよ。

 戦闘現場に向かって戦闘機は飛び立っていく、だけれども空母自身は皆さんの言われる戦闘現場と呼ばれる地域にいない場合ですよ。これは武力行使と一体化していると判断するのか、あるいはしていないと判断するのか、どちらでしょうか。

中谷国務大臣 現に戦闘行為が行われている現場で警護は行えないということを明記しておりまして、これによって、武力行使と一体化することをしないということを担保しているわけでございます。

宮本(徹)委員 だから、聞いていることに答えていただけないんですけれども、空母自身は戦闘現場と言われる地域にいない場合ですよ。ただ、戦闘機は、そこから艦載機はミサイルや爆弾を積んで戦闘現場に行く、こういうことは大いにあり得るわけですよ。その場合は武力行使と一体化しないというケースに当たるのか、武力行使と一体化すると判断するのか、どちらなんでしょうかということをお伺いしているわけです。

中谷国務大臣 条文で条件にいたしておりますけれども、自衛隊と共同して行動している場合という前提がついております。

宮本(徹)委員 今よくわからなかったんですけれども、それは可能だということでいいわけですね。

中谷国務大臣 自衛隊と連携をして我が国の防衛に資する活動を行っているという前提でございます。

 必ずしもそうするかどうかということにつきましては、状況に応じて大臣が判断することになります。

宮本(徹)委員 つまり、政策的には具体的に判断するけれども、法律上は、今の例ですよね、空母自身は戦闘現場と呼ばれる地域にいないけれども戦闘現場に向かって戦闘機が飛び立つ、こういう場合の空母でもある、法理上は可能だという答弁がありました。

 これがどうして武力行使と一体化しないと言えるのか、私は全く理解できないですよ。非常に重大な答弁だというふうに思います。

 平時から、そして重要影響事態でも、この九十五条の二というのは、米軍を警護し、そして重要影響事態から進んで、武力攻撃事態や存立危機事態になった場合は今度は自衛権や集団的自衛権の行使として米軍の防護が続けられるということになっているんじゃないですかね。切れ目のない安全保障と言いますけれども、この法律の仕組みというのは、切れ目のない米軍防護になるんじゃないですか。

中谷国務大臣 九十五条の二というのは、武器の使用でございます。自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に現に従事している米軍等の部隊の武器等を、武力攻撃に至らない侵害から防護するための極めて受動かつ限定的な必要最小限の行為です。

 そして、条文上も、現に戦闘行為が行われていない現場で警護を行わないということを明記、また、自衛隊による警護が米軍等による武力行使と一体化しないことを担保するとともに、本条によりまして国または国に準ずる組織による戦闘行為に対処しない、することがないようにしております。

 これによって、自衛隊が武力の行使に及ぶことがなく、武器の使用を契機として国または国に準ずる組織との戦闘行為に発展するということもないようにしていることでございまして、武力の行使に当たることはないということでございます。

宮本(徹)委員 もう時間が来ましたので終わりますけれども、この九十五条の二の新設で米軍などを防護できるようになる、平時でも重要影響事態でもできるようになるというのは、集団的自衛権の裏口入学じゃないか、こう批判されてきたわけですよね。本当に、一体どこがどう違うのかと思いますよ。

 自衛隊が防護している、何らかの侵害があって自衛隊が武器を使用する、そうすると、今度は自衛隊にも攻撃が来る可能性があるわけですよ。そして、それに自衛隊がまた九十五条の本体の発動で反撃する。そうすると、そのまま戦闘状態に入れりということで、抜け出せなくなってしまうじゃありませんか。

 事実上の集団的自衛権がなし崩し的に発動されていくのではないかということを厳しく指摘して、質問を終わりたいと思います。

浜田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十一分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.