衆議院

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第15号 平成27年6月29日(月曜日)

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平成二十七年六月二十九日(月曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 今津  寛君 理事 岩屋  毅君

   理事 江渡 聡徳君 理事 松本  純君

   理事 御法川信英君 理事 長妻  昭君

   理事 下地 幹郎君 理事 遠山 清彦君

      赤枝 恒雄君    池田 佳隆君

      小田原 潔君    小野寺五典君

      大串 正樹君    大西 宏幸君

      大野敬太郎君    勝沼 栄明君

      門  博文君    神山 佐市君

      木原 誠二君    木村 弥生君

      笹川 博義君    白石  徹君

      武井 俊輔君    中谷 真一君

      橋本 英教君    原田 義昭君

      平沢 勝栄君    星野 剛士君

      宮川 典子君    宮崎 政久君

      宮澤 博行君    武藤 貴也君

      盛山 正仁君    山口  壯君

      山田 賢司君    若宮 健嗣君

      緒方林太郎君    大串 博志君

      後藤 祐一君    辻元 清美君

      寺田  学君    長島 昭久君

      青柳陽一郎君    小沢 鋭仁君

      太田 和美君    升田世喜男君

      丸山 穂高君    吉田 豊史君

      伊佐 進一君    岡本 三成君

      浜地 雅一君    赤嶺 政賢君

      宮本  徹君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   経済産業大臣       宮沢 洋一君

   防衛大臣

   国務大臣

   (安全保障法制担当)   中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (海洋政策・領土問題担当)            山谷えり子君

   内閣官房副長官      加藤 勝信君

   防衛大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    石川 博崇君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  前田  哲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山本 条太君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  土本 英樹君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  槌道 明宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            平松 賢司君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    冨田 浩司君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        住田 孝之君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  黒江 哲郎君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  深山 延暁君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  真部  朗君

   衆議院調査局我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別調査室長     齋藤久爾之君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二十九日

 辞任         補欠選任

  橋本 英教君     大串 正樹君

  宮崎 政久君     赤枝 恒雄君

  若宮 健嗣君     木村 弥生君

  青柳陽一郎君     吉田 豊史君

  太田 和美君     升田世喜男君

  丸山 穂高君     小沢 鋭仁君

  佐藤 茂樹君     岡本 三成君

  志位 和夫君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     池田 佳隆君

  大串 正樹君     橋本 英教君

  木村 弥生君     神山 佐市君

  小沢 鋭仁君     丸山 穂高君

  升田世喜男君     太田 和美君

  吉田 豊史君     青柳陽一郎君

  岡本 三成君     佐藤 茂樹君

  宮本  徹君     志位 和夫君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     門  博文君

  神山 佐市君     若宮 健嗣君

同日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     宮崎 政久君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七二号)

 国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案(内閣提出第七三号)


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     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官前田哲君、内閣官房内閣審議官山本条太君、内閣官房内閣審議官土本英樹君、内閣官房内閣審議官槌道明宏君、外務省大臣官房審議官下川眞樹太君、外務省総合外交政策局長平松賢司君、外務省北米局長冨田浩司君、資源エネルギー庁資源・燃料部長住田孝之君、防衛省防衛政策局長黒江哲郎君、防衛省運用企画局長深山延暁君、防衛省人事教育局長真部朗君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小田原潔君。

小田原委員 自民党の小田原潔であります。

 この重要な委員会で質問の機会をいただいたことを、改めまして感謝申し上げます。

 私は、毎朝、駅立ちをしてから国会に参ります。お手元にお配りをいたしました自民党のつくった法案説明のビラ、二枚目の字だけのものでありますが、これを十日前から配らせていただいております。

 地元で座談もさせていただいております。一枚目の、佐藤正久参議院議員の写真が載っているこの資料を使わせていただいております。丁寧にお話しすれば御理解をいただける方が多いと実感をしております。

 ただ、私自身が説明をしながら、ちょっとやりにくい、聞いた人もわかりにくいかもしれないなと思うことが一つございます。それは、国交がある以上、具体的な国の名前ですとか、例え話であっても地域が言えない、このもどかしさであります。

 例えば、南シナ海で中国が進めている埋め立てが完成し、仮に軍艦や戦闘機が配備され、要塞化したとすると、我が国は陸と海から挟み打ちにされやすい環境が整ってしまうかもしれません。指をくわえて、我が国が囲まれていくのをみすみす見過ごしていいのかという考え方もあるかもしれません。

 昨日、日経新聞の二面に、「風見鶏」というコラムでありますが、アメリカ合衆国の太平洋軍司令官、ハリー・ハリス海軍大将の囲み記事、タイトルは「砂の長城に挑む米軍大将」という記事がございます。まさに、今私が例え話で申した危機感をぴったりと共有している、そういう実感を感じた記事であります。また、新聞も、このハリス氏があのポストにいることが我が国の安全保障の環境に極めて有益であるということを認めている記事でもございます。

 本来私たち国会議員がやらなければならないことは、この法案が成立した暁に、私たち自身が事態をどのように認識し、出動の可否を私たちが決める、そういう決断をしなければいけないという覚悟でありましょう。同盟国が埋め立て施設を例えば破壊しなければ、同国も我が国も力により現状変更をさせられてしまう、武力行使をするから後方支援を一緒にしてほしい、そういう事態の共有をしたとき、私たちはこの場でどういう決断をするのか、それだけ厳しい覚悟が必要だということでありましょう。一方で、先制攻撃をするようなことはできないという判断もありましょう。

 しかし、国防は、失敗したでは済まされない。私たち政治家が、歴史の評価にたえ得る判断をして、我が国の平和と安全を守る決断を必ず迫られるという自覚、覚悟、これが大事だと思います。

 さて、具体的な国の名前が言えないと申しましたが、周辺事態安全確保法が改正され、重要影響事態安全確保法となることに伴い、船舶検査活動法の改正が俎上にのっております。周辺事態から地域の限定が外れることで、我が国の船舶検査活動が我が国の平和と安全に及ぼす意義と国際社会の平和と安全における意義について、大臣の御所見を賜りたく存じます。

中谷国務大臣 まず、何のための平和安全法制かといいますと、まさに国民の命と日本の平和を守り、そして暮らしを守るためにすき間のない構えをつくるということでありまして、抑止力を高めて安全を確保するための法律改正であるということでございます。

 そこで、今回、重要影響事態といたしまして、周辺事態から重要影響事態に改めるとともに、新たに国際平和共同対処事態においても船舶検査を実施できるようにいたしました。

 これにつきましては、我が国の安全保障環境が変化をしたということで、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態が生起し得る地域が地理的に限定をされるとの考え、これは適切ではございません。

 そこで、重要影響事態におきまして船舶検査活動を実施できる海域については、我が国の領海また我が国周辺の公海だけに限定せずに、外国の同意を得て、その領域でも実施できるようにするなど、現在の安全保障環境を踏まえて適切なものに改めることによりまして、事態の態様により、より万全を期するということができるようにするために考えております。

 また、国際平和共同対処事態と申しますけれども、近年では、大量破壊兵器や国際テロ活動の武器が国境を越えて移動をするなどのさまざまな国際的な脅威に対応するために、国際社会の連携による船舶検査のための活動が行われておりまして、我が国におきましても、このような国際社会の平和と安全の確保のために主体的かつ積極的な貢献をして、我が国としてふさわしい役割を果たしていくことができるようにするために、法律を改正するということでございます。

小田原委員 ありがとうございます。

 この法案により、事態の把握や認識がより継ぎ目がなくなることに伴いまして、現在、アメリカ合衆国、そしてオーストラリアと結んでおります物品役務相互提供協定、いわゆるACSAで我が国ができることもそれに合わせる必要があろうかと思います。自衛隊法の改正でどのように対応しているのか、お聞かせいただきたく存じます。

中谷国務大臣 日米防衛協力が進展をいたしております。また、自衛隊の任務も多様化をすることを踏まえまして、あらゆる事態に切れ目のない対応ができるようにするため、平素から自衛隊と米軍が一層緊密に連携活動ができるように、ACSAに基づく物品または役務の提供の実施が可能な場面を拡大することが必要になってきております。

 このため、自衛隊法におきましては、海賊対処活動、そして弾道ミサイル等に対する破壊措置をとるため必要な行動、情報収集・警戒監視活動等を行う自衛隊による米軍への物品または役務の提供を可能とするといった改正を行うことといたしております。

 また、新ガイドラインにおきましても、適切な場合に後方支援を相互に行うことといたしておりまして、この法律改正と相まって、平時における日米間の協力連携の実効性が高まり、日米同盟の抑止力、対処力も強化をされていくようにと。

 なお、オーストラリア軍との物品または役務の提供拡充につきましても、今後、日本とオーストラリアの間で検討、協議を行いたいと思っております。

 以上です。

小田原委員 ありがとうございます。

 我が国を取り巻く安全保障環境の変化に対応しまして我が国の平和と安全を維持していくためには、この二国のみならず域内外のパートナーと協力関係を深めることが重要だと思いますが、ACSAの対象国を広げる予定があるか、外務大臣にお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、現在、我が国は米国、そしてオーストラリアとの間でACSAを締結しています。

 それ以外の国ですが、例えば、カナダとの間においては、協定交渉に実質的合意をし、必要な調整を行っているところであります。そして、英国との間においては、可能な限り早期にACSAを締結するため最大限取り組むこととなっております。そして、さらにはフランス、ニュージーランドとの間においても検討を開始することとしております。

 これらを含めて、各国との安全保障あるいは防衛協力を進展させる中にあって、外務省としても、各国との二国関係、あるいは協力の実績、そして具体的なニーズ、こうしたものを勘案しながら、引き続きACSA締結等を推進していきたいと考えております。

小田原委員 ありがとうございます。

 重要影響事態が起きた場合は、アメリカ合衆国以外の他国の軍隊と行動をともにすることも考えられます。今般の法制整備によりまして、ACSAを結んでいない国に対する後方支援も可能となるのか、防衛大臣にお伺いしたいと思います。

中谷国務大臣 ACSAを締結していない国に対して一切物品の提供ができないというものではありません。

 重要影響事態法におきましては、後方支援活動として、米国以外の外国の軍隊等に対しても物品の提供が可能となりますが、我が国とACSAを締結していない外国に対して後方支援活動を行う場合には、財政法の規定によりまして、有償の譲渡または貸し付けとして物品の提供を行うことになります。

 なお、重要影響事態に対する外国の軍隊等に対して簡易な手続をもって物品の提供が行われるようにすることは、事態のより実効的な対応という観点からも重要な意義を有することから、今後、各国との防衛協力を進展する中で、政府として、各国とのACSAの締結等を引き続き推進してまいりたいと考えております。

小田原委員 ありがとうございます。

 次に、いわゆる邦人救出について伺います。

 自衛隊は、外国における緊急事態において邦人の生命等を保護する必要がある場合、その輸送をすることができます。しかし、それは輸送の安全が確保されていることが前提で、例えば武装集団が存在するなど安全が必ずしも確保されているとは言えない場合、危機に遭遇する可能性の高い邦人に何もできないという状況がございます。

 今回の法整備において大きな改正がされ、外国における緊急事態に対して邦人が危害にさらされる場合、より積極的な保護措置を自衛隊の部隊ができるということになります。このことは、国民の生命を守るという観点からは大きな意義があると考えます。ただ、他国に自衛隊を派遣するというだけでは、現地の主権という問題もありますし、憲法との問題整理が必要になると思います。

 今回新たに制定したいわゆる駆けつけ警護に関する制度の概要とその意義について、安保法制担当大臣に伺います。

中谷国務大臣 駆けつけ警護ということでございまして、これは従来から懸案でございましたけれども、自衛隊が危険に遭遇しているような方から救援の要請を受ける場合もあるわけでございまして、特に国際機関やNGO等の職員等とは、情報交換、交流を初めとする各種の連携を図っているためでございます。

 今回、駆けつけ警護を実施することができるようにするための法改正を行うことといたしました。これは、現地の治安当局等が対応できないときに、施設活動等の業務を行う部隊が緊急の要請を受けて活動関係者をその侵害や危難から救うというためのものでございまして、これは、関係者との協力関係を築いて我が国の活動を円滑に進めるために必要なものであると考えられます。

 また、現場におきまして、もしNGO等に救援を求められたらどうするかという課題に対して、今回の法整備において、責任を果たすという観点からも一つの答えを出したものでございます。これによりまして、駆けつけ警護が実施できるようになるわけでございます。

 従来でしたら、自己等と離れた現場に所在する保護の対象である活動者におきまして、あくまでも自己保存型の武器使用しかできなかったわけでございますが、この自己保存型を超えた駆けつけ警護のための武器使用を認めることにいたしました。これは、自己等と離れた現場に所在する活動関係者の生命身体の保護に必要な範囲で武器使用を行うことができるということを可能にするものでございます。

小田原委員 ありがとうございます。

 現在、現場の自衛官に与えられている武器使用権限について御説明をいただきましたが、今回の法整備により、自衛隊は、邦人の保護措置として、いかなる要件で何ができるようになるのか。複雑な要件が設定されているようにお見受けしますが、この機会に、安保法制担当大臣にわかりやすく丁寧に御説明をお願いしたいと思います。

中谷国務大臣 現在の自衛隊法の在外邦人の輸送で可能な措置は、外国における緊急事態に際して生命または身体の保護を要する在外邦人を安全な地域に輸送することに限られております。また、自衛官が在外邦人を守るために武器を使用することができるのは、自己の管理のもとに入っているときのみでございます。

 これに対して、新たに設ける在外邦人等の保護措置は、外国における緊急事態に際して生命または身体に危害が加えられるおそれがある邦人について、法案で定められた要件を満たせば、輸送のみならず、邦人の警護そして救出も可能にすることでございます。

 この在外邦人の保護措置を行うためには、次の要件を満たす必要があります。すなわち、自衛隊が保護措置を行う場所において、領域国の当局が現に公共の安全と秩序の維持に当たっており、かつ、戦闘行為が行われることがないと認められること、そして、武器の使用を含む保護措置の実施について領域国の同意があること、そして、予想される危険に対して保護措置をできる限り円滑かつ安全に行うために、自衛隊と領域国の当局との連携及び協力の確保が見込まれることなどが必要条件でございます。

小田原委員 ありがとうございます。

 それでは、自衛隊の体制整備等について伺います。

 駆けつけ警護も邦人救出も、自衛隊として、いわば任務遂行型の新しい武器使用の考え方を含むものであります。法案成立後は、自衛隊がこの新しい任務を完遂するため、訓練が重要となりましょう。

 この法案が成立した暁には、さまざまな準備や訓練を行っていき、どんな状況のもとでも、任務遂行型の武器使用を含めて、自衛隊が与えられた任務をしっかり達成できる体制の整備が必要と思いますが、この点について防衛大臣の決意をお伺いいたします。

中谷国務大臣 これまでも、自衛隊の海外派遣につきましては、派遣の前から、現地の状況、活動内容を踏まえまして、適切な教育訓練を行うとともに、活動内容に応じて隊員の安全確保に必要な装備を携行させるなど、十分な準備や訓練を行った上で派遣をしてまいっております。

 今回の法整備によりまして、いわゆる任務遂行のための武器使用が必要となる任務を含めて新たな任務が付与されることになりますが、さまざまな状況に応じて十分に対応できるように、情報、装備、教育訓練など、新たな任務に対応した運用面での施策も十分に講じて、しっかりと体制整備を実施してまいりたい。

 具体的には、武器使用権限を含めた隊員の個々の行動の基準についての教育を行い、そして、現地を想定した訓練の場を設定して、現地住民との接触も含めたさまざまな状況を想定し、隊員がいかなる状況におきましても落ちついて適切かつ安全に行動できるように準備するなど、法令に基づいた適切な武器使用が行われるように徹底した訓練を行ってまいりたいと考えております。

小田原委員 ありがとうございます。

 また、これらの新しい任務を自衛隊がやり遂げるためには、いわゆるPKO参加五原則や、受け入れ同意の安定的な維持、外国の権限ある当局が現に公共の安全と秩序に当たっているかなどの政府としての情報収集が重要になると考えます。

 これまでにも増して外国の状況を的確に判断できるよう情報機能の強化が大切となりましょうが、今回の法整備の内容を実効あらしめるために、外務省の情報機能の強化につきまして、外務大臣のお考えを頂戴したいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、自衛隊が海外で活動するに当たって、政府としてしっかりとした的確な判断をするためにも、しっかりとした情報収集、さらには収集した情報を分析する能力を向上させていかなければならないと認識をいたします。

 そして、外務省は、今、全世界に百三十九の大使館と、そして六十の総領事館を設置しております。これら在外公館を拠点として、情報源あるいは人脈、こういったものを有しております。こうした在外公館を通じた外務省の強み、これを生かして、情報収集あるいは分析の強化に努めていかなければなりません。

 あわせて、情報収集に当たっても、より一層情報の多様化を図らなければならないという認識を持っており、そういった点から、地域情勢あるいは言語に通じた専門家の育成、あるいは公開情報の活用、そして治安、そして情報機関を含む各国関係機関との関係強化、こういった取り組みを行っているところであります。

 ぜひこうした方向で情報機能の強化に努めていきたいと考えておりますが、いずれにしましても、自衛隊の海外の活動に当たりましては、政府全体として、全ての情報を統合して、客観的、合理的に判断することとなると認識をしております。

小田原委員 ありがとうございます。

 この国会審議を通じ、また地元の活動を通じて、皆様の御理解が深まるよう引き続き努力をしてまいる所存であります。

 本法案の審議をより充実したものとすべく、建設的な議論をいただけるよう心からお祈りを申し上げ、私の質問を終わります。

浜田委員長 次に、中谷真一君。

中谷(真)委員 自民党の中谷真一です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、心から感謝を申し上げます。

 時間も限られておりますので、早速質問に移りたいというふうに思います。

 本日は、自衛官のリスクについてまず御質問したいと思います。この質問をする上で、やはり自衛官とリスクの関係について少々議論をしてまいりたいというふうに思います。

 我々、この委員会では、やはり平和をいかに構築していくかということについて議論をしている、またそうでなければならないというふうに思うわけでございます。

 また、今の平和について考えますと、私は、やはり自衛官の皆様の献身があるからこの今の平和が守られているんだろうというふうに思うわけであります。こうやっている今も、領土、領空、領海を守るために、昼夜を問わず献身的に活動していただいております。また、南スーダン、またソマリア・アデン湾においては、非常に厳しい環境の中で苛烈な任務を行っていただいている。そのおかげで今こうした平和があるんだろうという意味では、私は本当に心から敬意と感謝を表するものであります。

 「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。」これは非常に有名なフレーズであります。これは服務の宣誓でございますけれども、私もかつてこの宣誓を行い、そして、十年間ではありますけれどもその職務についたということで、私は防衛大臣の後輩に当たるわけでございます。

 その中で、このことというのはどういうことなのかということを考えてみたいわけであります。

 これは、簡単に言いますと、国民のリスクを最小化するためならば、みずからはリスクをとるということを誓うものだというふうに思います。これは、国に対して究極の献身を求められるもの、またそれを宣誓するものだというふうに私は思うわけであります。

 私も自衛官時代、このリスクをとるということを行ってきたわけでありますけれども、どういうことを考えてやっていたかというところでありますが、やはり私は、この仕事は非常に崇高で、国家の国益のためにやっていることだという意識を持ってその仕事を行っていました。また、国民の皆さんに信頼され、そして任務を完遂したときは、国民の皆様に、ありがとうとか、よくやった、そういうお言葉をいただける、このことを唯一の褒賞としてやっていたというのが私が当時思っていたことでございます。

 ですから、何が申し上げたいかというと、自衛官というのは、国民を危険にさらしているのに、みずからがリスクを回避するようなことはしない、また、そのようなことは望んではいないということであります。

 ですから、リスクが高いから低いからという議論ではなくて、それが本当に国益なのか、そのことによって国民の皆さんのリスクがいかに下がっていくのかということを議論するということが重要な議論なんだろう、これが私は自衛官とリスクの関係であるというふうに思うわけであります。

 そこで、一部の皆さんが、徴兵制まで取り出して苦役だと言われる方がおられるんですけれども、とんでもない、私は苦役だなんて思ったことは一度もないわけであります。そういった意味では、そういうものだということを認識しながら、ちょっと議論をしてまいりたいと思います。

 では、リスクとは何なのかというところであります。

 ここで防衛大臣にお伺いいたします。創隊以来六十年間で自衛官の方で殉職された数を教えてください。

中谷国務大臣 平成二十六年度末までに、不幸にして公務に起因して死亡した自衛隊員は千八百七十四人でございまして、そのうち自衛官は千七百九十二人となっております。

中谷(真)委員 非常にたくさんの方が命を落とされているというふうに思います。

 私も、十四年間、自衛官として活動いたしましたけれども、同じ部隊で三人の仲間を失いました。私は、パラシュート部隊にいましたので、パラシュートの訓練で二人、そして車両の訓練で一人の仲間を失ったという経験を持っております。それを今もまだ続けているんですね、パラシュート訓練もそうです、これは続けているんです。

 では、何でそんなリスクをとるのかというところであります。これは、部隊を強くしておくこと、または規律を保っておくことが、非常に抑止力になって、国民の皆さんのリスクを小さくすることにつながるということでこれを今も続けているわけであります。この訓練を私は、やめることはない、また、やめるべきでないというふうに思うんです。ただ、これにはリスクが伴っている、既にリスクがあるということを申し上げたいというふうに思います。

 また、リスクの高い低いというのは非常に判断が難しいものだろうというふうに思います。そういった意味で、ここでお伺いしたいのは、私が以前行っていました国内におけるパラシュート訓練、これと、非常に国民的な議論になりました、リスクが非常に高いだろうと言われたイラク派遣、これのどちらのリスクが高いかについて、防衛大臣にお伺いしたいと思います。

中谷国務大臣 中谷委員も御指摘のように、国家のリスクが高まるときに自衛隊が国民を守るために行動しているわけでありまして、そのようなリスクを背負って国を守っているということであります。

 特に、武力攻撃を想定して訓練をして、防衛出動というのは最大のリスクでありますが、PKOも災害派遣も、こういった中で自衛隊は懸命に任務をしているわけでありまして、常に任務につきましてはリスクは生じるわけでありますが、リスクというのは管理されるものでありまして、運用によって極小化をして実施をしているわけであります。

 そこで、イラク派遣のお尋ねがございましたが、自衛隊は、サマワを中心とするムサンナ県において、医療、給水、学校などの公共施設の復旧整備など、人道復興支援に取り組みました。こうした活動はいずれもいわゆる非戦闘地域の要件を満たす地域で実施したものですが、テロ等の可能性もあったことから、さまざまな状況を想定した上で隊員の安全確保に努めました。

 例えば、宿営地の防護力の強化といたしまして、何重もの防護柵の設置、壁や天井の防弾性の強化、遠距離の情報まで収集できる高性能の監視カメラ、小型の無人ヘリを飛ばしまして、空中の監視システムを初めとする各種監視機材を充実しました。

 また、イラク南部に駐留していた英軍、オーストラリア軍との、安全確保の面で緊密な情報連携を図りました。そして、宿営地外の活動に際しては、各自のヘルメット、防弾チョッキ等を着用して、万一に備えて十分警備体制をとりました。また、車両等による自爆テロ等の対策のために、無反動砲の装備品を保持いたしました。

 そして、現地で活動に入る前に、状況を想定した訓練、これは国内で設置した模擬宿営地での訓練などを実施する等のさまざまな取り組みを行っておりまして、装備にしても、教育にしても、規則、制度等にしても、情報にしても、現場でリスクをしっかり管理し、そして極小化することをした上で活動したということであります。

 一方で、空挺降下訓練、こういった過酷な訓練、これは日々自衛隊は実施をしておりますが、中谷委員も習志野の空挺団に所属をされていたわけでありますが、こういった危険で過酷な訓練を実施する際には事故が発生するリスクが高まるのは事実でありますが、訓練の実施に際しては、徹底した安全教育、安全管理を実施して、事故が起こらないように日々心がけておりまして、自衛隊が実施する任務や訓練にはさまざまなリスクがあり、その程度は、活動の内容、実施する地域等により異なるために一概に論ずることは困難ですが、重要なことは、さまざまなリスクを極小化するためにあらゆる努力を払っていくということのほかありません。

 自衛隊・防衛省としては、今後とも、求められる任務や役割に適切に応えられるように、情報収集、装備、教育訓練など、さまざまな取り組みを通じてリスクを極小化いたしまして、隊員の安全確保に万全を期してまいりたいと考えております。

中谷(真)委員 ありがとうございます。

 リスクは極小化できるということ、これは、もちろん任務があって、それは国民のリスクを最小化するという任務があるわけであります。それに対して行動があるわけなんですけれども、それに対するリスクはさまざまなことによって極小化することができるということと、また、今比較のことをお聞きしたんですけれども、なかなか、高い低いというのは非常に論じにくいというものがリスクの特性なんだろうというふうに思うわけであります。

 例えば、三・一一、福島第一原発の事故がございました。水蒸気爆発をした後、あの上へヘリを飛ばして水をかけるという任務がございました。このときに、では、自衛官のリスクを言って反対をされた方はおられたのかということを申し上げたいわけであります。そうではないんだと。私は、やはり、国民の皆さんのリスクを最小化するためにあの危険な任務を行った自衛官の皆さんがいたわけでありまして、一概に、リスクが高いからそれをやらないということではないということを申し上げたいわけであります。自衛官がリスクをとる、また命をかける、その理由を私はここで議論するべきだということをここで申し上げたいわけでございます。

 今回、リスク増大の議論でよく持ち出されている協力支援活動における後方支援について、また、非戦闘地域、非戦闘地域という規定をなぜ削除するのかということについて、これが、なぜやる必要があるのか、国益となるのかについて教えていただきたいと思います。

中谷国務大臣 まず、政府といたしましては、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、例えば、国際社会の平和及び安全が脅かされて、国際社会が国連の安保理決議等に基づいて一致団結して対応するようなときに、我が国が当該決議に基づいて正当な武力行使を行う他国軍隊に対して支援活動を行うことが必要な場合があると認識しております。

 そのような観点から、国際社会の平和及び安全を確保すべく活動している諸外国の軍隊等に対して、国際社会の一員として、補給、輸送といった協力支援活動を行うことを可能とするための一般法として、国際平和支援法を新たに整備することにいたしました。

 これは、いかなる事態にもすき間なく対応することを可能とすることによりまして、対外的に明確なメッセージを発するということで、国全体の、そして国民のリスクを下げる、これは国際社会と連携しつつ、世界の平和と安定のために積極的に貢献するということを目指しているわけでございます。

 そして、非戦闘地域の枠組みを変更したことにつきましては、これは昨年の七月の閣議決定におきまして、武力の行使との一体化論それ自体は前提とした上で、自衛隊の活動の実体験や国連の措置の実態等を勘案して、憲法との関係では、他国が現に戦闘行為を行っている現場ではない場所で実施をする補給、輸送などの我が国の支援活動については、他国の武力の行使と一体化するものではない、その判断に至りました。これを受けて、非戦闘地域といった枠組みを設けずに、現に戦闘行為が行われている現場では活動しないということといたしました。

 これまでと今回の違いにつきましては、まず、戦闘地域との考え方では、「そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」との法律上の規定を厳格に解して、一たび指定すると柔軟な活動ができないおそれがありました。

 それを機動的に設定するということで、活動をする区域を実施区域というふうに決めまして、「そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」という要件がなくても、防衛大臣が、自衛隊の部隊等が活動を円滑かつ安全に実施することができるようにということにしたわけでございまして、これは、常に情勢等を踏まえた判断が行われて、安全確保が図られるとともに、機動的に実施区域を指定することによって柔軟な活動が可能となるというふうにするためでございます。

中谷(真)委員 憲法が許す範囲で、日本の価値観に従って、やはりやるべきことはしっかりやっていくというのが、私は、国民のリスクを軽減することにつながるだろうというふうに思うわけであります。

 二〇一四年のテロによる死者については、世界で三万人を超えているわけであります。また、二〇一三年だけで六百万人、これによる難民がふえているとか、こういったことがあるわけであります。これを、完全に何もしなくていいというものではないというふうに思うわけであります。それはさまざまなアプローチがありますけれども、私は、こういったアプローチもしっかりしていかなければいけないということだというふうに思います。

 また、非戦闘地域を今回設けなかったというのは、やはり、柔軟性を持たせるという意味では、私は、これが活動する自衛官の皆さんの安全を向上させることにつながるんだろうと。それがつながる、つながらないとか、本当にするべき、すべきでないという、どこまですることが国益なのかということを今後はしっかり議論していかなければいけないだろうというふうに思います。

 私、最後にまた申し上げたいんですけれども、リスクが高いということのみをもって議論することは、もう一つの理由で非常によくないというふうに思っております。

 私、自分が現役時代に、自分の部隊がイラクに派遣されることがありました。このときに、やはり、隊員の皆さんが出ていくとき、またそれを見送る家族、この気持ちを考えると、これは非常に厳しいものでありました。家族の、奥さんとかお子さんは、もしかしたらうちの旦那は何かあるかもしれないとか、そういう不安に駆られながらも送り出すわけであります。また、出て行く隊員の皆さんも、やはり残していく家族のことに後ろ髪を引かれながら出ていくというものであります。また、そのストレスというのは私は非常に強いものだということを皆様にここで申し上げたい。

 また、今も、南スーダン、またソマリア・アデン湾、こういったところに派遣されて任務をしている隊員の皆さんがいるわけです。この方々にも奥様がおられ、またお子様もおられるわけであります。そういった家族がいるということをよく念頭に置きながら、我々はやはり議論をしていかなければいけない。ただ単に心配をあおるような、こういう議論であっては私はいけないんだというふうに思うわけであります。そのことを私は申し上げたい。

 自分の家族に、私、よく言っていたことがあるんです。私は妻に言っていました。もし自分に何かあったときにどうするのかということでありますけれども、そのときは、大丈夫だ、おまえらの面倒は国がしっかり見てくれるということを言っていたわけであります。

 また、最初にお話をしました、何でリスクをとるのかと言われると、それはやはり、任務を完遂したときに国民の皆さんに、ありがとう、よくやった、こういうものが私は至上の喜びであったわけであります。

 そういった意味では、私は、このリスクの議論をするなら、やはり名誉とか補償とか、こういったことについてもしっかりと議論をするべきだというふうに思います。この件について防衛大臣の見解を伺いたいと思います。

中谷国務大臣 防衛省といたしましては、自衛隊員が高い士気、そして誇り、これを持って任務に邁進できるように、遂行できるようにするためには、栄典に関する施策についても積極的に取り組んでいくことが重要であると考えております。その個人の功績にふさわしい栄典が受けられるように関係機関と協議をしてまいりたいと思います。

 また、自衛隊員の補償につきましては、今般の平和安全法制の整備におきまして拡充される任務に従事する自衛隊員に対し、現行の制度に基づいてその任務にふさわしい補償となるよう実施をしてまいります。

 いずれにしましても、自衛隊員の栄典、補償につきましては、部隊の士気にかかわる重要な事項であるために、より適切なものになるように不断に検討してまいりたいと考えております。

中谷(真)委員 質問を終わります。ありがとうございました。

浜田委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻でございます。

 まずは、非常に言語道断だと思いますのは、自民党の会合で、報道に対する暴言があった。そこに政府の加藤官房副長官も、政府の立場で参加されていないと金曜日におっしゃっておられましたが、参加をされておられたということで、加藤官房副長官御自身がその発言をいさめなかった等々、この責任というのはお感じになっておられないんですか。

加藤内閣官房副長官 長妻委員にお答えしたいと思います。

 金曜日の寺田委員の御質問に対して、まず、今回行われた懇話会において、冒頭の百田氏の講演部分と、その後の質疑の部分がございましたけれども、私が出席したのはその前半の講演の部分でございました。

 報道等を見ますと、いろいろと今御議論されている、問題とされている点についてはその質疑の部分で出ていたということでございますし、私の記憶においても、たしか講演の中においては、マスコミに対する、中身について内々の勉強会ですから余り詳細に申し上げるのは控えなければなりませんが、ただ、少なくとも、マスコミに関する、あるいは沖縄に関するそうしたお話があったというふうには認識をしておりません。

長妻委員 何か、木原青年局長は役職を解任になったと聞いておりますが、これは加藤官房副長官、期数でいうと、恐らく出席議員の中で最も期数が高い議員だったと思いますけれども、そうすると、御自身の責任というのは全くないということでよろしいんですね。

加藤内閣官房副長官 処分は党で行われておりますので、私もつまびらかには承知をしておりませんが、党での処分の通知、あるいはそのときの幹事長の御発言を総体的に考えますと、今回の処分は、懇親会の規律を維持する責任を負っているにもかかわらずその責任を果たしていない、また、そうした発言そのものが不適切であったということで処分が行われたもの、こういうふうに認識をしております。

長妻委員 なかなか責任についてはお答えにならないのでございますが、そうすると、その会合で自民党の国会議員が発言をした、その発言は一切ない段階で退席されたということでよろしいですね。

加藤内閣官房副長官 先ほど申し上げましたように、前半部分が百田氏の講演、その後に質疑が行われたということでありますが、私は、ほかの日程もございましたので、百田氏の講演が終わったところで退席をさせていただきました。

長妻委員 いずれにいたしましても、官房副長官というお立場ではないというものの、政府の要職についておられる方が出席をして、しかも期数が最も長い議員として出席をして、その趣旨、あるいは事後的にこういう大問題になったことについて、途中で退席したから自分は全く関係ないというような趣旨に今聞こえたわけでございますが、私は、途中で退席したから自分は何も関係ないというのは、本当にそういうことでいいのかどうか。これは後で同僚議員も質問をさせていただきます。私は、この問題は終わっていないと思います。

 これについてこだわる理由は、私もかつてマスコミの端くれにおりましたので、こういうことがどんどん広がっていくと、国が本当に危うくなるというふうに考えているんです。

 ちょっと戦前に目を転じますと、日本国が一連の昭和の戦争、ポイント・オブ・ノーリターンという言葉があります、戻れない地点、これはいろいろな評価があると思いますが、私は、昭和六年の柳条湖事件、そして同年の満州事変、ここが一つのポイント・オブ・ノーリターンだったのではないか。

 柳条湖事件は、御存じのように関東軍の謀略でありましたが、私が改めて驚くのは、そのとき、ほとんどのマスコミが当時その謀略を知っていた、しかし政府の顔色をうかがってそれを報道しなかった、そして、柳条湖事件が関東軍の謀略だと、戦後初めて国民の皆さんはそれを知った。ですから、当時は、昭和六年時点で、中国軍とんでもない、これは満州にどんどん軍を出して日本人を守らなければならない、こんなとんでもない爆破をする、こういうことで、大きく世論が沸騰したわけでございます。

 そういう意味で、中谷大臣、この法律を運用するわけでありますから、法律ができた場合は、日本がかつて犯した、例えば柳条湖事件については、これは政策を誤った、国策の誤りだ、こういうことは同意していただけますね。

中谷国務大臣 戦後の安全保障政策というのは、戦前のいろいろな教訓、反省からできたものでありまして、その中で一番大きなものは文民統制、シビリアンコントロール、しっかりと国民が軍をコントロールできる、すなわち、国会、内閣また民間の大臣が軍をコントロールするという見地でございまして、委員がお話しされました関東軍の独走等、やはりこういった教訓を生かしてつくられたものだと認識をいたしております。

長妻委員 そうすると、大臣にもう一回お伺いするんですが、この法律が成立したとしたら、防衛出動を下令するのは総理大臣でありますが、当然補佐をされるわけでありまして、大臣が七十年前の戦争の教訓を正しく胸に刻んでいるか否かが、この法律によって間違えた戦争をしてしまうか否かに私は大きくかかってくると思っております。

 再度聞きますが、我が国がなした昭和の一連の戦争、これについては誤りだった、国策を誤っていた、こういう理解でよろしいんですか。

中谷国務大臣 我が国が過去に行ったどのような行為が植民地支配や侵略に当たるのか、また当たらないかということについて、具体的に特定するのは困難でありまして、また、個々の歴史上の行為について評価を行うことは適当でないと考えますが、安倍内閣としましては、村山談話含めて、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後もこれをしっかり引き継いでいくべきだと思っております。

長妻委員 私はちょっと不可解なんでございますが、当然、中谷大臣は、私もそうですけれども、七十年前の戦争、これは政策を誤った、間違った戦争であった、こういうことから戦後出発したというふうに理解しているんですが、その間違えた戦争だった、政策を誤ったということは何で言葉としておっしゃらないんですか。明確に言えないわけですか。おっしゃっていただきたいと思うんですが。

中谷国務大臣 その前に第一次世界大戦がありまして、中国におけるドイツの権益、これをどうするかというようなことがあったときに、我が国を含めていろいろな国々の対応に対して、中国が、非常に厳しく人民の反発があったというような事件も起こっております。こういった歴史的な経緯、流れ等がずっと続いていたということがあります。

 私が最も問題であったというのは武官制大臣です。軍人が大臣を務めていた、そのことによって内閣が軍のコントロールをできなかったということでございまして、それに戦後はきちんとしたシビリアンコントロールを設けたという点で、やはり、そういったことでコントロールできなかったというところが問題であると認識しております。

長妻委員 私は、これはすんなりお答えになって、次の質問に行くという予定だったんですが。

 これはちょっとおかしいんですね。私は非常に首をかしげるわけでございます。

 例えば、今おっしゃったのは、昭和十一年、政治の上に軍が来てしまった、軍部大臣現役武官制のことをおっしゃいましたけれども、ですからこういうことを含めて、昭和の一連の戦争、これは政策を誤ったということをここでおっしゃっていただかないと、私は、この法律が、強行はしていただきたくないわけですけれども、仮に強行して成立をするということになったときに、本当に運用が大丈夫か、こういうふうに思わざるを得ないんです。

 なぜ、国策、政策を誤ったとおっしゃれないんですか。そのことをなぜおっしゃれないんですか。

中谷国務大臣 歴史認識等につきましては、村山談話を含めまして歴代の内閣が述べているように、その立場は私も引き継いでいきたいと思っております。

 私は、やはり、何でこういうふうになったかというと、大政翼賛に象徴されるように、政治の決断が、国民から選ばれた政治家ではなくて、そこにない部分で決定されるようになってしまった。やはり、しっかりと軍をコントロールするのは政治であって、そのようなことができ得なくなったというところが私は問題であると思っております。

長妻委員 いや、私は分析を聞いているのではないんです。こういうことを何でお役人にペーパーを入れてもらうんでしょうか。

 つまり、さきの戦争は、政策を誤った、間違った戦争だったと思っておられるのか、おられないのか。端的にお答えください。

中谷国務大臣 これは、この内閣として申し上げておりますけれども、村山談話を含めて歴史認識に関する歴代の内閣の立場は全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく。

 そして、累次申し上げてきたように、基本的には、歴史の問題等につきましては歴史家に任せるべきであるということでございます。

長妻委員 これは、私深刻だと思わざるを得ないんですね。

 大臣、自分の言葉で、つまりどういうことなんですか。さきの戦争は間違った戦争だったと、自分の言葉で、紙ではなくて、そう思っておられるのかどうか、大臣自身が、自身が。どうですか。

中谷国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございます。

 政治というのはしっかりと軍をコントロールしていかなければなりませんが、やはりそういう、政治として、軍が暴走するような、軍をコントロールできないような、そういう事態に陥ったことが原因であると私は思っております。(長妻委員「委員長、速記とめてくださいよ」と呼ぶ)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣、答弁を再度お願いします。

中谷国務大臣 安倍内閣といたしましては、繰り返し国会でも申し上げているとおりでございます。安倍内閣といたしましては、過去の歴代の内閣の立場、これは全体として受け継いでおりまして、特に村山談話におきまして「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。」と。このような認識につきましては、安倍内閣も立場を全体として引き継いでおりまして、今後もこれは引き継いでまいります。

長妻委員 ここまで来るのに何でこんな抵抗されるのか。

 では、もう一度お伺いしますが、今、国策を誤りという言葉をおっしゃいましたけれども、そうすると、大臣自身も、さきの昭和の戦争は国策を誤りということで、同意ということでこれはよろしいんですね。

中谷国務大臣 村山談話にはこのようなことを記述いたしておりますが、内閣としてはそれを引き継ぎまして、内閣の立場として、全体として引き継いで、今後も引き継いでいくということでございます。

長妻委員 では、これは、当然中谷大臣も国策を誤りという認識はお持ちだということでよろしいんですね。

中谷国務大臣 内閣の立場として全体を引き継いでおりまして、それを引き継いでまいるということでございます。

長妻委員 いや、そうすると、国策を誤りと、さきの戦争について国策を誤ったという認識は大臣も共有されていると。ちょっと、いろいろな、紙の修飾語をつけるとややこしくなるので、共有されているということでいいんですね。一連の昭和の戦争は国策を誤ったということは大臣も共有している、その認識は。それでよろしいんですね。

 これは何で後ろの方が、防衛省のお役人のテーマなんですか、これ。ちょっとお願いします。

中谷国務大臣 村山談話としてはそういうことを記述されて述べられたわけでございますが、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおりまして、今後も引き継いでいくということでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣、再度答弁願います。

中谷国務大臣 安倍内閣の立場といたしまして、全体として引き継いでおりまして、御指摘の点も含めまして、この範囲の中で、安倍内閣の立場、閣僚として共有をしているということでございます。

長妻委員 いや、だから、範囲とかこの立場というのはどういうことなんですか。

 つまり、国策を誤ったというのは自分の口からは言いたくないということなんですか。

 これはちょっとした話ならいいんですよ、ちょっとした話なら。これは一番根幹にかかわる話ですよ。三百十万人の国民が亡くなり、二百十兆円の税金をかけて、ああいう戦争が起こって、その反省に立って、戦後憲法ができて、全ての制度がその戦争の反省に立って我々はスタートしているわけですよ。それが一番重要な、私は根幹にあると思っているので、大臣、自分の言葉で、自分の言葉でお答えください。

中谷国務大臣 村山談話、これは正式な政府の認識でありまして、「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与え」たということでございます。

 私も、安倍内閣の一員といたしまして、歴代内閣の立場を全体として引き継いでおりまして、今後も引き継いでいくということでございます。

長妻委員 私は安倍総理にも、ことしの一月ですか二月ですか、予算委員会でお伺いしたときには、同じような、つまり国策を誤りというのは一切おっしゃらずに答弁をされたわけで、これはこの内閣の体質なのかどうかと疑うわけであります。

 さきの戦争、それは村山談話は出てしまったものの、本当に心の底から間違った戦争だと思いたくない、そういうふうに私は受け取られてしまっても仕方のないような今の答弁だと思うんです。

 もう一回だけ、ちょっと大臣、最後にお伺いします。

 大臣、自分の言葉で、さきの戦争、国策を誤ったと思っているのか、思っていないのか、迷っているのか、それだけお答えください。

中谷国務大臣 政治の意思というのは国民の民主的な意思に基づいて決定されなければなりませんが、軍部の台頭等によりまして、政治の決定が、軍が暴走をしたという結果が出ております。

 戦後は、こういったことを反省いたしまして、しっかりと国民の意思が政治に反映されますように、シビリアンコントロールという文民統制、そういうものを政治の中枢に構えまして、あらゆる制度をつくって、国民の意思がきちんと政治に反映できる、そういう仕組みをつくっているものでございます。

 認識につきましては先ほど答弁したとおりでございます。

長妻委員 そうしたら、絞ってお伺いすると、昭和十一年の、政治の上に軍が来た軍部大臣現役武官制、これは政策の誤り、今から見るとですよ、そういう理解でいいですね。

中谷国務大臣 軍というのは政治にきちんとコントロールされなければならないものでありまして、これをきっかけに内閣が崩壊をしたり、次の組閣ができないという事象もできました。やがて大政翼賛会につながったというようなことがございまして、こういった、政治に関する、しっかりとした民主主義の根幹を壊したという部分だと思います。

長妻委員 これもお答えにならないんです。軍部大臣現役武官制、これは政策の誤りだったと、今から見ればですよ、今から見れば。そういうふうに評価されておられますか、誤りかどうか。

中谷国務大臣 軍というのはしっかりと国民がコントロールしなければならないわけでありまして、特に大臣、指揮権を持つ大臣というのは国民の代表、また国会の代表がきちっとコントロールすべきだと思っております。(長妻委員「時計とめてください」と呼ぶ)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 防衛大臣、再度答弁願います。

中谷国務大臣 戦後は、戦前の状況を見て、文民統制の条項が憲法にできました。やはり、現役武官制というのは、軍が、政治がコントロールできないという点におきまして、私個人としては誤りであるというふうに思います。

長妻委員 次に行きます。先ほどの歴史認識についても我々納得しているわけではございません。何か、誤り、間違いをさきの戦争については口に出したくないというふうに感じざるを得ないわけでございますから、今後ともこの問題についても質疑をしていきたいと思いますが、次に行きます。(パネルを示す)

 着手についてなんですが、こういう答弁がございます。平成十五年でありますけれども、秋山法制局長官の答弁。日本を防護する米艦船について、着手についての答弁でございますが、大臣、この答弁に関連して、我が国に対する武力攻撃の着手というのをもうちょっと具体的におっしゃっていただければと思います。

中谷国務大臣 これまで政府としてお答えをしたものの中に、何をもって武力攻撃の着手があったと認められるかということにつきましては、例えば、我が国を攻撃するということを明示し、攻撃のためのミサイルに燃料の注入その他の準備を始めた場合、また、東京を火の海にしてやる、灰じんに帰してやるといったような表明をして、かつ弾道ミサイルに燃料注入を開始しまたは起立をさせたという場合が考えられるということでございます。

長妻委員 いやいや、これに関してと申し上げたわけです。

 ここにはこういう答弁があるんですね、「我が国を防衛するために出動して公海上にある米国の軍艦に対する攻撃が、状況によっては、先ほど申しましたような、我が国に対する武力攻撃の端緒といいますか、着手といいますか、そういう状況として判断されることがあり得る」。

 こういうふうに判断されれば個別的自衛権で反撃できるわけでありまして、大臣、これでよろしいんですね。

中谷国務大臣 過去そのような認識が示されたということもありますが、あくまでも、公海上にある米艦艇に対する武力攻撃が発生した状況でも、我が国に対する武力攻撃の発生を常に認定できるわけではありません。

 御指摘の答弁も、「状況によっては、」と書いておりまして、我が国に対する武力攻撃の着手と「判断されることがあり得るのではないか」と述べており、常に我が国に対する武力攻撃になるとは断定をいたしておりません。

長妻委員 もちろんそうです。あり得るということなんですね。

 次のパネルで、ちょっとこういうパネルをつくってみたのでございますが、つまり、個別的自衛権か集団的自衛権かということなんです。

 最近は、総理初め、日本周辺における米艦船に対する攻撃、公海上ということがよく言われております。

 公海上にいる、日本周辺における日本を守っている米艦船への攻撃があった、そして、かつ、四十七年見解にある、自衛権の一つの守るべき法的価値、「国民の生命、自由及び幸福追求の権利」が根底から覆されるという急迫不正の事態となった、こういうふうになった。この場合、個別的自衛権で見ることもできる可能性がある。我が国に対する武力攻撃の着手、個別的自衛権、これは我が国の権利が根底から覆される急迫不正の事態になっているわけですから。

 あるいは、政府は、存立危機事態でしか読めないんだ、こういうことをずっと言っているように私は聞こえるわけでございますが、一体、この下の、分かれ道、個別的、集団的の分かれ道は、どういうメルクマール、どういう基準で分かれ道になるのでございますか。

中谷国務大臣 個別的自衛権というのは、我が国に対する武力攻撃が発生しということであります。集団的自衛権というのは、我が国に対する武力攻撃が発生していなくてもこれを排除できる権利というところが違うところでございます。

長妻委員 大臣、質問はわかっていますか、わかっていますか。

 米艦船に対する武力攻撃が我が国に対する武力攻撃の着手と読むこともあり得るという答弁があるわけです。あるわけですから、これが一体どういう基準で、下、最終的に個別で読むのか集団で読むのかが分かれるのか、それを聞いているんです。ちょっと真面目に答えてください。

中谷国務大臣 先ほどお答えしたとおり、なり得るのではないかということ、「状況によっては、」という前提がついておりまして、常に我が国に対する武力攻撃になると断定をしておりません。

 また、過去の法制局長官の答弁でも、我が国に対する武力攻撃がない場合には、我が国として自衛権を発動することは集団的自衛権の行使になるという旨を述べておりまして、これが基本原則ではないかと私は思います。

長妻委員 ある、ないということは、今おっしゃいましたけれども、では、ある、ないはどうやって区別するんですかということなんですよ。

 いずれにしても、個別か集団かは別にして、この真ん中のボックス、「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫・不正の事態」、これが我が国に起きなければ、集団も個別も使えないわけですよ、この真ん中のボックスに条件が合わないと、我が国の状況が。

 ですから、物理的には米艦船が攻撃されているということなんだけれども、では、これが、我が国に対する武力攻撃の着手と見るのか、そうでないと見るのかの分かれ目というのは、どこで判断するのかということを聞いているんです。

中谷国務大臣 これは、やはり今まで述べてきたことが重要になりまして、基本として、やはり、我が国に対する武力攻撃が発生していないにもかかわらず、個別的自衛権に基づいて武力の行使を行うということは認められません。これは、個別的自衛権を我が国独自の考えで拡張して説明することは国際法違反のおそれとなるわけでございます。

 こういった面におきまして、近隣における存立危機事態の例も、いまだ我が国に対する武力攻撃が発生していない、すなわち着手がされていないという認識で、新三要件を設けまして、他国に対する武力攻撃であっても我が国の存立を脅かすものについては、これをやはり排除することができるものとするために、自衛の措置として集団的自衛権の行使を認めたということでございまして、いわば、国際的な定義に基づいてしっかりと区分けをしたということでございます。

長妻委員 ちょっと深刻だと思うのは、大臣、わかっておられますかね。ここで言っているのは、つまり、着手ということもあり得るわけですよ、我が国に対する武力攻撃の着手。こういう米艦船が公海上で攻撃されたとき、着手というのは一切ないというような政府の見解であれば今の答弁でいいんですけれども、ここは、米艦船が攻撃されたとき、我が国に対する、個別的自衛権で対応できるケースもあるということなので、一体どうやって分けていくんですか。意味はわかりますか。

横畠政府特別補佐人 パネルでお示しのフローで見ますと、まず、日本を守っている米艦船への攻撃というものが、お示しの急迫不正の事態に当たるのかどうかというところに飛んでいるようでございまして、その後に個別的自衛権か集団的自衛権かということで分かれている、そのような図とお見受けします。

 実際の判断はどのようなことかといいますと、まず、日本を守っている米艦船への攻撃というものが事実として発生したとします。まず判断するのは、それが我が国に対する武力攻撃の着手なのか、そう認定できるのかという判断がまずあると思います。そこで認定できるなら、それは個別的自衛権の発動が許されるということになります。

 我が国に対する武力攻撃の着手とまでは認められないというときに、これは存立危機事態の認定ができるのかということになりまして、密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したと認められるか、加えて、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという明白な危険があるのかという、新三要件でお示しした要件に適合するのかという判断をした上で、それに適合するならば集団的自衛権の発動は許される、そういう流れになっていると思いまして、まずこの急迫不正の事態ありきということではないと理解しております。

長妻委員 ですから、何も説明されていないんですよね。

 それを前提として質問していて、我が国に対する武力攻撃の着手なのか、我が国に対する武力攻撃の着手ではない米国に対する武力攻撃なのか、二つあるわけですね。ですから、それを、分かれる、分ける基準というのは一体どういうものなのか。いずれにしても、二つ、両方について、我が国の国内の状況としては、権利が根底から覆される事態になっているわけですから。

 ですから、着手と、着手でないものを、同じ米艦船に対する武力攻撃、これを分ける基準、これは何なんですか。

横畠政府特別補佐人 武力攻撃の着手の認定の問題だと思いますけれども、どの時点で武力攻撃の着手があったと認定することができるのかということについては従前からもお答えしておりまして、そのときの国際情勢、相手方の明示された意図、攻撃の手段、態様等によるものでありまして、抽象的に、または限られた与件のみ仮定して論ずることはできない、あらかじめ定型的、類型的にどのような行為がこれに当たるかということまではお答えすることは難しいということをお答えしているところでございます。

長妻委員 今、相手方の明示された意図というのをおっしゃいましたが、とすると、これは我が国の国内状況は同じなんですよ、こういう事態になっている。ということは、相手国、攻撃している国が、明示された意図、日本は傷つけるつもりはないよ、アメリカだけを傷つけるんだよ、そういうような意図がアメリカだけに向けられている場合は、我が国に対する着手、武力攻撃着手ではない。そういう、意図で、意思で分けるということなんですか。

横畠政府特別補佐人 従前から明示された意図という形で御説明させていただいておりますのは、従前の、いわゆる宣戦布告というような手続が昔あった戦争法、それの若干名残のような要素もあると思いますが、まさに明示された意図があれば、それは我が国に対する武力攻撃の発生と認定することは当然できるであろう。

 ただし、その意図が明示されていないからといってそのような認定ができないわけではない、まさに具体的な行為、行動によって認定するということもあり得るということだろうと思います。

長妻委員 そうすると、これは法制局長官、一体どういうところでこれが分かれるのかということなんですが、今、明示された意図ということをおっしゃいました。

 そうすると、いろいろな総合的な要件はあるものの、我が国に対してなのか、我が国に対してはなくて主に米国に対してなのか、その明示された意図がどの国に向けられているかということによって分かれていく、それが大きい要素だということでよろしいんですか。

横畠政府特別補佐人 来援米艦に対する攻撃の発生が我が国に対する武力攻撃の発生と認定できるかというような議論はこれまでもあるわけですけれども、そもそもどういう状況なのかということなんだろうと思います。

 つまり、当該加害国と我が国の間で、まさに緊張状態というかそういう状態のときに米艦が来援した、そういう状況で第一撃がたまたま米艦に向けられたものであるということであるならば、我が国に対する武力攻撃の発生と認定することに近いだろう。そうでなくて、そもそもその紛争の原因者は我が国ではないということであるならば、それはまた、そこまでの認定をすることは難しいということもあろうかと思います。

 いずれにせよ、具体的な事実関係、状況、発生した場合の状況によって個別に判断していくということをせざるを得ないことだろうと思います。

長妻委員 この事例は、総理がお出しになっておられる北朝鮮の半島有事の事例で申し上げているつもりなんですが、そうしたとき、アメリカだけを攻撃する、日本には迷惑かけたくないなんということはもちろんあり得ないですし、総理が挙げた事例、稲田さんに対する答弁で、ことしの五月二十六日、本会議で総理がおっしゃった事例としては、我が国を守り、これに反撃する能力を持つ米国の艦艇への武力攻撃を早急にとめずに云々かんぬんということで、つまり、総理も、存立危機事態に挙げているのは、我が国を守り、これに反撃する能力を持つ米国の艦艇というふうにおっしゃっておられるわけで、一体これがどうやって分かれるのか、非常にこれは曖昧である。

 私は、これは日本周辺においては重なるのではないのか。個別的自衛権の、着手、これを、拡大しちゃいけないですよ、拡大しちゃ。ただ、着手という概念を整理することで対応できるのではないのか。あるいは、周辺事態法を充実させる、そういうことを組み合わせ、あるいは、領域警備法を我々は出しておりますけれども、そういうことで、何が異なっていくのか。

 それで、これは概念図をつくりましたけれども、この黒い線が我が国に対する侵害の度合いと見ていただいて結構なんですが、個別的自衛権の、着手というのがこの上の赤いラインにある。この直前、薄皮一枚かどうかわかりませんが、政府の説明は、直前に存立危機事態があるというような説明をされておられるわけであります。

 しかし、もちろん、個別的自衛権の、着手の断定、認定も前後しますし、上下しますし、存立危機事態の認定も前後、上下しますし、これは基本的に、いずれの事態でも、何度も私申し上げておりますが、我が国が、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態、我が国がそういう大変な事態になっているというのは同じなんです。

 そのときに、非常に薄皮一枚のような定義だと私は思うんですが、これは基本的に同じではないんですか、どうなんですか。

横畠政府特別補佐人 お示しの図のとおり、個別的自衛権の、着手というか、我が国に対する武力攻撃の発生という上の線を超えたときには個別的自衛権で対処するということで、論理的には、存立危機事態というのはそれよりも下のところに線が引かれるというのは御指摘のとおりでございます。

 また、それぞれ、その認定の幅というものがあって、余り細い線では引けないということもあろうかと思います。

 ただ、その前提といたしまして、我が国に対する、先ほどのパネルかもしれませんけれども、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態というもの、それ自体を要件として、それ自体を要件として我が国の武力行使の可否というものを決めていく、仮にそういうことといたしますと、非常に不安定というか、まさに我が国の判断で、我が国の思いだけで武力の行使に及んでしまうというおそれというものがむしろ大きくなるのではないか。

 むしろ、国際法上の縛りというのがきっちりありますので、やはり、我が国に対する武力攻撃が発生した場合の個別的自衛権の要件というものがあり、それを満たすときには個別的自衛権で行います。

 それから、集団的自衛権の行使の場合には、被害国の要請、同意みたいなものも要件とされていますので、そういうものも当然加えた上で、集団的自衛権を満たす場合という国際法上の縛りもしっかり踏まえた上での、かつ、憲法上の縛りでありますところの我が国自衛というか、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという明白な危険がある、それもやはり要件として加えた場合に限って武力の行使ができる、そういうことの方が規範性が高いというか、不用意な武力の行使に及ぶ危険性が低い制度ではないかと思います。

長妻委員 肝心なことにお答えいただいていないのは、つまり、我が国に対する武力攻撃の着手なのか、米艦船が攻撃されたことで着手と読むこともできるわけですから、そうでないのかは、何によって判断するのかということは全然お答えになっていないんですよ、ないんですよ。

 こういうような、日本周辺の事例を出していくことによって、個別的自衛権と集団的自衛権、日本型の集団的自衛権ですから、これは我が国の権利が根底から覆されないとだめなわけですから、私は重なると思っております。

 しかし、問題なのは、そういう非常に着手に近い、着手と同じ概念にもかかわらず、集団的自衛権という言葉が入った途端、ホルムズ海峡とか地球の裏側とか、非常に当てはめが拡大拡大してフルスペックの集団的自衛権に近い、そういうような運用がなされる可能性があるような答弁が続いているということに非常に大きな問題があるのではないかというふうに私は考えております。

 先ほど長官は、国際法の縛りがきっちりとあるとおっしゃいましたけれども、これは外務大臣もよくおっしゃいますね。個別的自衛権、集団的自衛権、着手で読むと、あるいは読み過ぎると、国際法の縛りがあって集団的自衛権に問われかねないとおっしゃいますが、それは具体的にどういう根拠でおっしゃっているんですか。

岸田国務大臣 個別的自衛権と集団的自衛権、国際法上は、自国に対する武力行使、着手があるかないかによって厳密に区別されているわけですが、独自の判断によって個別的自衛権を拡張するということになりますと、要は、武力攻撃を受けた他国からの要請もなく、なおかつ、我が国に対する武力攻撃もない中にあって我が国が武力行使をしてしまう、こういったことになります。ですから、こうしたことはあってはならないということを申し上げております。(長妻委員「いや、根拠、裁判例か何か」と呼ぶ)

 そして、今、裁判例というふうにおっしゃいました。これは、判例におきましても、国際司法裁判所、ニカラグア事件においても、あるいはDRC対ウガンダ事件においても、あるいはオイル・プラットホーム事件におきましても、こうした、武力行使が発生すること、これが必要であるという認識においては共通した認識が示されていると考えております。

長妻委員 主に私は個別的自衛権の、着手を聞いたつもりなんですが。拡張するということじゃないですよ、私も申し上げているのは、これまで国会でいろいろ答弁があった、我が国に対する武力攻撃の着手、その概念を拡張しろというんじゃなくて、今の概念をきちっと整理するということが必要だというふうに申し上げているわけです。

 つまり、何か、そうすると拡張と海外にとられかねないという議論だとしても、例えばアメリカが一九四六年の七月に国連に提出した個別的自衛権の資料でありますが、「原子兵器に適切な方法で「武力攻撃」を規定し、原子爆弾を実際に落とすことだけでなくそのための準備における一定の段階も定義に含まれるとするのが、重要かつ適切であろう。」ということで、前広の個別的自衛権ととられるようなお話もされておられるし、米国は、タンザニアのアメリカ大使館が攻撃されたことをもって個別的自衛権の発動ということも過去ありましたし、カナダでは、法務省の覚書、一九八一年のものを見ると、強力な兵器の出現は「国連憲章第五十一条に基づく自衛権を発動する機会を大幅に修正」した、「事実に基づく明確な証拠に照らして武力攻撃が切迫しており、 この武力攻撃が仮に発生すれば、犠牲国の存在が危険にさらされるおそれがある場合(深刻な危害のみならず)」ということで、かなり前広に個別的自衛権をおっしゃっている国もあるわけです。

 ですから、我が国が武力行使の着手ということを、その概念を広げるんじゃなくて、もっと中身を整理していくということが大変重要にもかかわらず、それを整理すればかなりのルール、基準というのがつくれて、集団的自衛権ではなくて、日本周辺の守りを固めることができるはずにもかかわらず、何か集団的自衛権という言葉を導入したいという思いなのか、理論は後からつけて、そして、限定的に見える文言で集団的自衛権を認めておいて、運用のときには非常に幅広く、フルスペックに近い集団的自衛権で運用してしまうという懸念を私は強く持っているものであります。

 そして、もう一点お伺いをいたしますと、この法案の議論で余り出てきていないのが、物事というのはメリットとデメリットがあると思うんですね、どんな物事でも。メリットとデメリットがあって、デメリットよりメリットが上回るからこのものは必要だ、こういう議論になると思うんですが、これは中谷大臣にお伺いしますが、今ここで審議しているこの法案の、メリットはもうお伺いしました、たくさんお伺いしましたが、デメリットについては、どういうものがデメリットなんですか。

中谷国務大臣 メリット、デメリットということですが、委員も言われたように、この法案の趣旨というのは、あらゆる事態に切れ目のない対応ができる、そのための法律をつくっておこうということでございまして、国の存立にかかわる事態に立ち至った場合にこの法律によって対応ができるということでございますが、実際にそれを実施するかしないのか、これは閣議決定も必要ですし、国会の承認も必要でございますので、こういった点におきましては、委員が言われるようなデメリットにならないように、国としてしっかりと最善の選択ができるようにするのが大切だというふうに思っております。

長妻委員 デメリットは何もないということですか、この法律は。例えばどういうデメリットがあるんですか。

中谷国務大臣 総合的に、国家の存立や国民の命、暮らしを守るために必要なことである、その対応をする上において、実際に計画を立てて実施をするというときに判断される事項として、国のメリット、デメリット、こういった国益、国家の防衛、そういうものを総合的に判断していくということではないかと思います。

長妻委員 そうしたら、デメリットというのは、では一つだけ挙げるとしたら、全くないんですか。全てバラ色なんですか、この法律は。そういうふうに信じていいんですか、我々は。

 一つだけ、では挙げるとしたら何ですか、デメリットというのは。

中谷国務大臣 個別具体的な事例になりますので、そのときに判断すべきことではないかと思っております。

長妻委員 これは、歴史認識の話も含めて、きょうは驚きました、この答弁は。デメリットは、わからない、ない、個別的、一つも挙げられない。これは説得力がない。つまり、国民の皆さんが十分説明していないというふうに思われている原因は、バラ色ばっかり言って、全てバラ色じゃないですか、ここの答弁。何のデメリットもありません。

 私は、例えば、人、物、金、分散すると思います、この法律ができた場合。防衛費も上げない、中期防はそのまま、装備もそのまま、人員もそのまま。しかし、自衛隊員の一人当たりの業務はどんどんどんどんふえています。本当に日本周辺の守りが手薄にならないのかどうか。あるいは安全保障のジレンマ、これも言われておりますし、あるいは米国が本当に誤解をしないのか。フルスペックの集団的自衛権だと本当に思っている米国の方は多くいらっしゃいます。あるいは自衛隊員個々のリスク。

 そういうデメリットは一切ない、バラ色だというふうに強弁することが私はこの法律の理解を妨げていると思いますので、もうちょっと真摯に答弁をしていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 まず、冒頭に、先ほど長妻委員も触れた、自由民主党の党本部で行われた保守系の皆さんの私的懇談会で出た数々の暴言、一つは報道機関に対する威圧、そしてもう一つは沖縄に対する侮辱、許しがたい発言の数々でありました。

 加藤副長官、二つ伺いたいと思います。

 一つは、先ほど長妻委員の質問に答えられて、自分は最初の講師のお話の部分だけだった、マスコミにさまざま出ている発言というのは加藤副長官がお出になった後だった、そういう趣旨の御発言をされました。ただ、ここまで、週末ももうマスコミでさんざん報道されました、新聞、テレビ等々で。金曜日のときに、副長官がお答えになって、どのような感想をお持ちになりましたかと。これはもちろん、副長官からすれば、前段の講演の段階での感想だと思いますが、「やはり作家としてのお立場でお話をされていた、非常に我々にとっても、そうした視点からの御意見は大変拝聴に値するなと思いました。」と。

 副長官、その後出た発言も含めて、この会合にお出になっていたそのお立場で、この御感想を、もう一回御自分で反すうされて、訂正あるいは撤回される、そういうおつもりはありませんか。

加藤内閣官房副長官 先ほど長妻委員にもお話し申し上げましたけれども、まず、この懇話会においては、今お話がありましたように、前段が講演、後段が質疑でございました。そして、寺田委員が御説明になられた日の新聞を見ても、これは質疑の中のいわば質問によって生み出されたということが記載をされていたわけでございます。

 その上に立って、もちろん内容について、内々の勉強会ということでございましたから、私は個々について申し上げる立場ではありませんけれども、先ほど申し上げた私の記憶においては、少なくともマスコミ、沖縄についての発言があったわけではございません。

 それから、先ほど申し上げましたように、作家としてのお立場を話されていた、そうした視点からの御意見は大変拝聴に値する。作家という立場に立って、いわゆる人に物をどう説得するべきか、こういうことでおっしゃった、そのことを指して申し上げたところでございます。

長島(昭)委員 そうしますと、全体を総合的にごらんになってもなお、あの場に同席をされて、陪席をされて、先ほど長妻委員の話ですと、一番の先輩格と。私も、加藤副長官とは懇意にさせていただいておりますけれども、安倍さんとは相当近いお立場、まさに最側近のお一人というふうに見ておりますけれども、そういう立場で参加をされて、そして、あの結果をごらんになって、いらっしゃらなかった部分を含めてごらんになって、あの全体の会合として、もう一度御感想を伺いたいと思います。

加藤内閣官房副長官 先日も答弁させていただいたように、あくまでも議員個人として出席をさせていただいたということでございます。

 ただ、先日も自民党において処分がされたところでございまして、そういった意味では大変残念な事態であった、こういうふうに思っております。

長島(昭)委員 その最後のところは、私も本当にそういう気が、感じがしますね。木原さんが自民党の青年局長として、私は、金曜日の総理の御説明からいっても、私的な懇談会だった、こういうことでありますから、青年局長としてあの場を仕切ったのではないというふうにお見受けしたんですけれども、最終的には、私的な懇談会で出た発言の責任をとって、公的な役職を更迭される。世間ではこういうのをトカゲの尻尾切りと、わかりやすい言葉で言うんですけれども、非常に後味が悪い。

 私は、木原さんが役職を解かれることについて多少抵抗された、そういう報道もありますけれども、気持ちはよくわかります。その場で出た暴言はまさに許しがたい、まさに日本の民主主義を冒涜するような発言だった、沖縄を侮辱するような最低の発言が出た、にしても、木原さんだけが責任をとらされて終わりなんですか。

 総理の金曜日の御発言ぶり、全部私は正確には覚えておりませんけれども、私的な懇談会でいろいろな議員がいろいろな表現をすることについては何かお認めになるような、そんなニュアンスの御発言をされていました。しかし一転、その私的懇談会であった私的な発言の全ての責任を負わされて、木原さんだけが一年間役職停止。

 他人の党でありますから、私がそのことについて、その意思決定についてとやかく言う立場ではありませんけれども、一番の先輩格の加藤副長官として、今回の処分も含めて、どういうお気持ちでいらっしゃいますか。

加藤内閣官房副長官 処分の内容につきましては、我が党の幹事長がいろいろな状況を総合的に勘案して御判断されたものというふうに認識をしております。

 また、私自身、そうした処分をされる事態に至ったこと、そうした事態に至らないために一体何ができたのかということについては、具体的に正直言って思い浮かぶものはございませんけれども、しかし、先輩という立場として何かできなかったのかなという思いは常に持っているところでございます。

長島(昭)委員 恐らく、内心じくじたる思いがあるんだろうというふうに思います。

 その中で、沖縄についての暴言がありました。民主党も、沖縄については余り大きなことは言えない、そういう立場であります。

 私も、野田政権の総理補佐官のときに、何とか、失った信頼、沖縄の皆さんの信頼を回復しなければいけない、そういう使命感もありましたし、総理から指名を受けて、毎月のように沖縄に足を運ばせていただき、党派を超えたいろいろな方にさまざま御指導をいただきました。下地さんにもいろいろな方を紹介していただいた。それから、当時、自民党の候補ではなかった宮崎先生、県の顧問弁護士をされておられました。民間の方ということで、宮崎先生からも本当にいろいろな人脈を御紹介いただいて、私も何度も何度も皆さんとお話をして、交流を続けて、今から振り返って、野田政権では少なくともかなりの程度信頼を回復できたのではないかなというふうに自負をしております。

 そのとき、私が心に置いた点が三つございます。今回たまたまですけれども、百田氏の発言でそのことがじゅうりん、否定された、こういうことでございます。

 一つは、本当に多くの皆さんには釈迦に説法かもしれませんが、沖縄の歴史ということであります。

 沖縄という地域は、もともと琉球王国、主権国家だったわけです。十五世紀に王朝が、王国が建国をされて以来、約五百年にわたって、皆さんのお手元に先史時代からの略年表をお示しさせていただきましたけれども、一八七九年に、いわゆる琉球処分と呼ばれる、明治政府によって、歴史の教科書によれば四百人からの軍、警官が首里城になだれ込んで廃藩置県を迫り、そして日本の県にしていった。沖縄県をそこからつくった、つまりは琉球王朝はここで途絶えてしまった、こういう歴史があるわけです。ほかの地域にはなかなかないような歴史を沖縄は背負っているんです。まずこれが一点。

 そして、太平洋戦争の最末期、あの沖縄決戦が行われました。我が国のいわゆる国内で、日本の国内で行われた最初の防衛戦でした。本当に悲惨な戦争でした。二十万以上の方が命を落とされた。そして、これは、軍、官、そして民間、まさに総力戦、十四歳から十七歳の旧制中学の生徒たちも男女を問わず戦場に駆り出された、そういう悲惨な戦争だったわけです。

 それをともに戦った海軍の少将である大田実さん、生きるか死ぬか、もうあす自決するか、あさって自決するか、そういう本当に最後の最後、彼は打電をしたわけです、東京に。「沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」、こう記されたわけです。

 独立主権国家だった沖縄。そして日本の、まさに本土の盾となった沖縄。

 そしてもう一つ。これは百田氏が大間違い、三ページ目を見ていただきたいんですけれども、基地ができてから住民が来たんだ、基地があることはわかって来たんだ、こういう発言でした。もともと普天間基地は田んぼの中にあったんだ、周りには何もない、基地の周りが商売になるということでみんな住み出し、今や町の真ん中に基地がある、騒音がうるさいのはわかるが、そこを選んで住んだのは誰やと言いたいと。私は、ふざけるなと言いたいです。この地図を見てください。戦前の宜野湾村は、まさにその村役場が普天間の滑走路の今ある場所にあったわけです。基地の負担の真実ですね。建設された、まさに銃剣とブルドーザーで接収されたわけです。

 加藤副長官に最後に伺いたいと思います。

 こういったこと、私は、この三つの点。こういった沖縄の思いといいますか、私たちが沖縄に対して接するときに留意しておかなければならない、まさに尊敬と特別の配慮、そして、沖縄の負担を私たち本土でも同様に分かち合っていこう、こういう方向性、私たち民主党政権のときに出させていただきました。安倍政権でも引き継いでいただいております。

 加藤副長官が仕える菅官房長官は、沖縄の基地負担軽減担当大臣も兼摂されておられます。それを助ける立場が加藤副長官。この前も恐らく、慰霊の日、沖縄に総理と行かれたんだろうと思います、官房長官と。そういうお立場で、加藤官房副長官がこれから沖縄の皆さんに、基地負担も含めて、あるいは普天間の移設も含めてお願いをする立場、改めて、政府の沖縄に対する姿勢、官房副長官としての心持ち、お伺いをさせていただきたいと思います。

加藤内閣官房副長官 ちょっと事実関係だけ先に申し上げますが、沖縄の慰霊の日は、私はこちらの方で当番をさせていただきました。

 その上で、今、長島委員から、沖縄の歴史、まず、長い歴史の中、そして戦争時におけるそうした状況、そして戦後今日に至る中でのさまざまな出来事、まさに歴史、そして今日には基地問題を初めとした安全保障で大変大きな御負担をかけている、そのことを私どもしっかりと認識をし、そして、まさに沖縄の振興そして基地負担の軽減、これにしっかりと努めていかなければならない、こういうふうに考えております。

長島(昭)委員 それでは、本題に入りたいと思います。

 先週の金曜日の岡田民主党代表の質問、それに答える総理、皆さんのお手元の四ページ目に、事態の推移を私なりにまとめたものをお示しさせていただきましたので、それをごらんになりながらちょっと聞いていただきたいんです。

 存立事態と武力攻撃事態との関係が、あの議論を通じてかなりはっきりしてきたなということを感じます。

 きっかけは、その前の党首討論で総理がおおむねこういうことを言われた、それがきっかけになりますが、あのとき総理が言われたのは、既に、日本の同盟国、例えばアメリカが周辺事態、周辺有事でどこかの国と戦闘が始まっている、そのときにそのある国が、あえてある国と言いますが、ある国が東京を火の海にするなどの発言をどんどんエスカレートさせる、さまざまな状況、日本に対してミサイル攻撃するかもしれないという状況が発生している、その中において米艦船が攻撃をされる、そういう具体例を挙げて、これがまさに存立危機事態の認定に当たるのだ、こういうお話をされた。

 それに対して岡田委員は、存立危機事態を認定する際の三つのメルクマールといいますか指標をみずから提示をいたしまして、質問しました。

 一つ、これは1という形で図の方に書いてありますけれども、米国が我が国周辺で戦闘状態に入るということですね。1周辺有事で米国が交戦状態に入る、そして、2日本への攻撃が差し迫っている、そして、3米艦が攻撃を受ける、この三つを示して、一体どの段階になったら存立危機事態を認定できるんですかと再三総理に聞きました。

 総理の御答弁は、大略こういうことです。

 まず、1周辺の有事で米国が戦闘状態に入る、この状況はまさしく重要影響事態だ。そして、日本はその段階から後方支援を始める。ですから、まだ存立危機事態ではない。

 それから2、2はまさに日本への攻撃が差し迫る状態ですから、これは武力攻撃切迫事態に当たる。したがって、防衛出動は下令できるけれども、まだ我が国への武力攻撃がないので、個別的にせよ集団的にせよ、自衛権の行使、つまり武力の行使はできない、こういうことでありました。

 そして三番目、ここへ来てようやく、米艦が攻撃を受けて初めて事態の認定に至る。

 こういう総理の御答弁だったと思いますが、この事態の推移、そして認定の仕方、防衛大臣、間違いありませんね。

中谷国務大臣 私も、総理が言われたことと同じ意見でございます。

長島(昭)委員 そうなりますと、これはもう一回図に戻ってください。

 1周辺有事で米国が交戦状態に入ります、重要影響事態を認定します、日本が後方支援を開始します。日本が後方支援を開始するということは、この海域あるいはこの地域で、つまり日本の周辺ですね、この地域で日米が共同行動に入るということです。わかりますね。そして、場合によっては、米艦防護を含むさまざまな後方支援とともに、アメリカと日本がかなり緊密な連携をしていく、こういう段階ですね。

 そして、その後、東京を火の海にするとか、ミサイル数百発を保有しているという客観情勢があり、兵力が動員される、そういう状況も見られ、攻撃態勢を構築しつつあるということがわかってくる、これは各種情報で明らかになるわけです。そこで、武力攻撃切迫事態、こういう状況になるわけですね。ここで防衛出動が下令されるわけです。ここまで総理がおっしゃいました。

 しかし、いまだに武力行使はできない、存立危機事態にも認定できない。

 そして、その後です。我が国の防衛とまさに一体となった行動を米艦が、米国の艦船あるいは航空機がやるわけです。そして、それは日本の領海内というよりは、例えば公海上でしょうね、公海上へ出たときにここで攻撃される。一つ、今、ここまで恐らくよろしいんだろうと思います。

 法制局長官にお伺いしたいんですけれども、存立危機事態に係る米国の艦艇への攻撃の着手と攻撃の発生、これは、我が国に対する武力攻撃のときは、この発生というのは、発生まで待っているのではなくて、武力の行使の着手があれば足りる、こういう解釈になっていますね。存立危機事態の場合、米艦に対する攻撃と一般的に言われているものは、これもやはり着手をもって足りると解釈できるんでしょうか、それとも、発生を待って、それからゆっくり立ち上がるんでしょうか。お答えください。

横畠政府特別補佐人 他国に対する武力攻撃の発生というものが我が国として直ちにその認定をできるかというのはなかなか難しくて、恐らくは、実際にその武力攻撃が行われる、戦闘が行われると言った方がいいのかもしれませんけれども、そこまでいかないとなかなか、我が国が他国に対する武力攻撃の発生を認定するということは、実際上難しいのではないかと思います。

長島(昭)委員 つまり、我が国に対する攻撃の発生というのは着手をもって足りる、しかし、他国に対する攻撃は発生するまで我が方は何もできないということなんですか。もう一度お答えください。

横畠政府特別補佐人 前提として、論理的な問題としましては、他国に対する武力攻撃の発生というのも当該他国に対する武力攻撃の着手であるという、そこのところは前提として共通でございます。

長島(昭)委員 そうしますと、つまり、我が国に対する武力攻撃と同じに解釈する、着手と発生の関係は同じだと。私はここをクエスチョンマークにしておきましたけれども、クエスチョンマークを取ってください。

 こういう状況を皆さんにぜひ考えていただきたいんですが、重要影響事態で、相手側が日本に対する攻撃の意図をあらわにしていて、我が国がもう既に防衛出動を下令していて、武力攻撃がないから武力行使まではできないけれども、もう一旦何かあったらそれは我が国に対する武力攻撃とみなせるような、そんな事態じゃないんですか。日本は、アメリカとまさに後方支援を通じて一体となってここで活動しているんじゃないですか、重要影響事態下で。

 これで、総理が言った、米艦への攻撃があった、さあ、存立危機事態だ。私はむしろ、過去の答弁を総合して考えると、先ほど長妻議員からも指摘がありましたけれども、過去の答弁を重ね合わせてみると、公海上で我が国の防衛をするために出動してきた米国の軍艦に対する攻撃が、状況によっては我が国に対する武力攻撃の端緒あるいは着手、そういう状況として判断されることがあり得る、まさに総理がおっしゃったこのケースはそういう状況じゃないんですか。防衛大臣。

中谷国務大臣 厳密にもう一度説明させていただきますが、この存立危機事態というのは、まず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生した場合において、そのままでは、すなわち、その状況のもと、武力を用いた対処をしなければ、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様、深刻、重大な被害が国民に及ぶかという観点から評価するものでございます。

 そこで、米艦艇に実際に攻撃が着手されたかどうかということでございますが、まず、この表のように、差し迫った状況、我が国に対する武力攻撃が差し迫っている状況にあるという前提で、他国の弾道ミサイルから我が国を守り、これに反撃する能力を持つ同盟国である米国の艦艇への武力攻撃を早急にとめずに、我が国に対する武力攻撃の発生を待って対処するのでは、弾道ミサイルによる第一撃によって取り返しのつかない甚大な被害をこうむることになることが明らかな危険がある、これは総理が言われましたので、これはその米艦艇に対する着手または発生、それを待つ前にこの米艦艇への武力攻撃を早急にとめるということ、それをとめないと我が国への武力の攻撃があって大変な被害が出るということでございますので、米艦艇への武力攻撃を早急にとめるということも含まれるということでございます。

長島(昭)委員 いやいや、それはもちろんそうですよ。その話をしているんですよ、我が国ではない米艦艇に対する攻撃。

 この米艦艇に対する攻撃が、これは法制局長官、よく聞いてくださいよ。秋山法制局長官の答弁では、状況によっては、我が国に対する攻撃の端緒あるいは着手、そういう状況として判断されることがあると。これが平成十五年五月十六日の答弁です。翌年、十六年の六月十日、参議院のイラク特での答弁、こう言っているんですよ。武力攻撃予測事態と認定されているか否かを問わず、わかりますね、我が国に対する武力攻撃はないですよ。「予測事態と認定されているか否かを問わず、我が国来援のために向かっている米軍の艦船が公海上で攻撃受けた場合、これが我が国に対する武力攻撃の発生であると認定される場合には、法理として自衛権の発動をすることは排除されない」、こう言われているんですよ。

 では、もう一回お尋ねします。

 先ほど来ずっと説明しているような事態の推移、日本に対する武力攻撃が差し迫っている、そして防衛出動も下令されている。しかし、まだ武力行使はできない。まさに、まさにぎりぎり切迫の段階で、米艦に攻撃、一緒の海域で、まさに周辺ですから、同じような海域で活動している、公海上であれ領海の中であれ活動している米艦に対して攻撃が加えられた。その場合、我が国に対する武力攻撃事態と認定をされない場合と認定をされる場合、「状況によっては、」という、この状況の違い、御説明いただけますか。

横畠政府特別補佐人 この図表で示されている時の流れでございますけれども、ちょっと、私の理解しているところでは、この2の我が国への武力攻撃が差し迫るということは、いわゆる切迫事態で防衛出動が下令される、そういう状況まで含んで御説明しているものじゃないのだと私は理解しております。

 その意味で、米艦が攻撃を受けるということが我が国に対する武力攻撃と認定できるならば、それは我が国に対する武力攻撃の発生と認定できる、あるいはそうでない場合もあるということを、繰り返しお答えしているところでございます。

長島(昭)委員 今の法制局長官の答弁は、金曜日の総理の答弁を覆すものです。

 読み上げましょうか。途中からですが、

 ですから武力攻撃が発生していないときに、さっき申し上げたような、ある国が日本を火の海にしてやると、そして攻撃する態勢をとっていたとしても、これは切迫事態にはなるかもしれませんが、武力攻撃は発生していませんから、個別的であれ集団的であれ自衛権を行使することはできない。これは着手ではありませんから、切迫事態でありますが、まさに我々は自衛権を行使することはできない、このように考えております。

切迫事態と言っているじゃないですか、総理。訂正してください。

    〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕

横畠政府特別補佐人 失礼いたしました。

 その場合に、防衛出動が下令されているかどうかという点にもよりますけれども、どのように認定するかというのは、それは認定の問題であろうということについては変わりはないと思います。

長島(昭)委員 いやいや、総理はまたこう言っているんですよ。

 彼らが持っている海軍力をある点に結集し始めているということになれば、これは例えば切迫事態になりますから、防衛出動が可能になってくるわけであります。この段階で切迫事態として防衛出動が可能になりますが、武力攻撃はまだ発生しておりませんから武力行使はできないということになるわけであります。

前提問題をこうやって語っているんですよ。訂正してください。

横畠政府特別補佐人 防衛出動を下令した、切迫事態として下令した場合でありましても、個別的自衛権につきましては、我が国に対する武力攻撃の発生がなければ行使することは、それはできません。それは認定の問題でございます。

 他方、存立危機事態としての武力行使ができるかは、その要件でございます。

 先ほどの答弁、もし私の勘違いがありとすれば、それは訂正いたします。

長島(昭)委員 ちょっと、訂正する部分をはっきり言ってください。

横畠政府特別補佐人 切迫事態と存立危機事態が併存するという場合もあるという前提を外してしまったということであろうかと思います。

長島(昭)委員 いや、相当混乱されていますね。この図にも書いてあるように、切迫事態ではまだ存立危機事態認定できずなんですよ。これは総理の答弁なんですよ。

 もう一回訂正してください。いいかげんにやらないで、いいかげんに答弁しないでください。

横畠政府特別補佐人 切迫事態とまさに存立危機事態が併存した場合にどうなるかという点についてお答えすべきであったのかと思います。

長島(昭)委員 では、申し上げます。

 先ほど私、再三説明しているんですけれども……(発言する者あり)いいです、もう一回やりましょう。

 我が国への武力攻撃が差し迫っている、そして、それはまさに武力攻撃切迫事態だと。これは全部総理が言っていますよ。そして、防衛出動を下令できる、しかし、武力攻撃は我が国にないからまだ武力行使はできない、したがって存立危機事態も認定できない、こういう前提で、しかし、東京を火の海とか、ミサイルが数百発あるとか、向こうの兵力の動員のぐあいとか海軍力とか何だとか、総理はかなり細かくおっしゃっているんですよ。そういう状況の中で第一撃が米艦艇に来たときには、これはまさに我が国有事に直結するんじゃないですか。

 したがって、先ほどの長妻委員の言をかりれば、それは集団的自衛権で必ずしも説明するような事態ではなくて、個別的自衛権で説明できるんじゃないか。これまで歴代の法制局長官も、そこは状況によっては説明できると言っている。まさに総理のおっしゃった前提というのはそういう結論になるんじゃないか、もしそうでないんだったらそうでない説明をしてくださいと申し上げているんです。

横畠政府特別補佐人 我が国に対する武力攻撃が発生したかどうかというのは、やはり実際にその事態に至ってから、具体的な状況を踏まえて個別具体的に判断すべきことであるということは、るるお答えしているところでございます。

 その上で、お示しのケースにつきましても、我が国に対する武力攻撃の発生と認定できるのであればそれは個別的自衛権で対処できるということは、そのとおりでございます。

長島(昭)委員 私は今、具体的な事例で説明をさせていただきました。

 それでは、平成十五年、十六年の秋山法制局長官の、「状況によっては、」という、この状況によってはそういう認定を受けるというその状況を具体的にお述べください。

横畠政府特別補佐人 やはり、実際に生起した事案といいますか、その状況によって個別具体的に判断していくということでございまして、あらかじめ、こういうことがあれば認定できる、こういうことであれば認定できないということを定型的、類型的にお答えすることは難しいと思います。

長島(昭)委員 総理もかなり苦労なさって相当具体的な踏み込んだ説明をされた。しかし、その説明と、先ほど来聞いていただいてわかるように、法制局長官の認識は若干ずれがある。

 そして、今、最後、そごを、乖離を何とか調整しようとされましたけれども、私から見ると、私は、正直申し上げて、必ずしも集団的自衛権の行使、否定しているものではないですよ、私個人はね。党の立場はいろいろありますけれども。しかし、そういう私でも、そういう私でも、必ずしも、このケース、総理が提示したケースは、個別的自衛権で説明し切れないものではないな、こう思ったから質問したんですよ。そこをびしっと答えていただかないと、総理の答弁が浮いてしまいますよ。そのことを申し上げて、次に行きたいというふうに思います。(中谷国務大臣「一点だけ」と呼ぶ)どうぞ。

    〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕

中谷国務大臣 どこが決定的に違うかというと、我が国に対する攻撃であるのか、また、我が国の密接に対する攻撃であるかということで、先ほどの武力攻撃の発生、すなわち着手におきましては、あくまでも我が国に対する見解で、全てができると言っていないわけでございます。そういう場合もあり得るということで非常に曖昧でありまして、そういう場合もあり得るということなんです。

 そういう事態に政府としてきちんと判断できる場合におきましては存立危機事態というのを設けて、密接な国に対する武力攻撃につきましては、我が国の存立にかかわるということでありまして、あくまでも存立危機の武力攻撃と申しまして、こういった存立の危機にかかわる場合に対する攻撃を排除するだけの対処をするということで、我が国に対する武力攻撃とは分けて考えているわけでございます。

長島(昭)委員 大臣、曖昧だから聞いているんです。もう少し明確な御答弁をいただきたいと思って聞いているんです。それを曖昧なんですと言われたら、もう聞きようがないですよ。

 大臣、今、我が国に対する武力攻撃があるかないかが大事だとおっしゃった。でも、秋山法制局長官を初め過去の答弁を見ると、「状況によっては、」我が国に対する武力攻撃がなくても、もう一回読みましょうか、「予測事態と認定されているか否かを問わず、」「米軍の艦船が公海上で攻撃受けた場合、これが我が国に対する武力攻撃の発生であると認定される場合」がある、「状況によっては、」。その状況は何ですかと聞いているんですよ。それが曖昧だと言われたら、この法案の審議にならないじゃないですか。

中谷国務大臣 曖昧という言葉につきましてちょっと説明させていただきますが、常に我が国に対する武力攻撃になると断定したわけではありません。あり得るのではないかということでありまして、基本的には、我が国に対する武力攻撃がない場合においては我が国として自衛権を発動することは集団的自衛権の行使になるという旨を述べておりまして、今回、新三要件におきまして、他国に対する武力攻撃であっても我が国の存立を脅かすものについては排除できるというような自衛の措置としての集団的自衛権の行使を認めたということでございます。

長島(昭)委員 ちょっと、では、今の御答弁が正しいとすれば、過去の秋山答弁は、これは修正ですか。だって、我が国に対する武力攻撃があるかないかがメルクマールだとおっしゃいましたよね、今。状況によっては、我が国に対する武力攻撃がなくても攻撃の着手や端緒とすることができると言っているわけですよ。いやいや、読んでくださいよ、これを。(発言する者あり)レアケース、いやいや、もちろん、だからレアケースは何ですかと聞いているわけです。それをちゃんとお答えいただかなかったら……。

中谷国務大臣 状況においてはということでありまして、常に認定をできるわけではないと申し上げているところでございます。

長島(昭)委員 あとは、これから優秀な質疑者が続きますので、後に譲りたいと思います。

 もう本当に時間がなくなっちゃったんですが、ミサイル対処事態、これをきょうは大臣と真剣にやりたかったんですね。

 まず、これも金曜日、総理が維新の党の木下委員に答えてこういうふうにおっしゃっているんですね。ミサイル防衛について、

 日本は、例えばミサイル防衛システム、海上で撃ち落とす、あるいは陸上で落とす、PAC3とSM3で対応しようとしておりますが、これはまさに米国との共同対処に近いものになるわけでありまして、米国からの情報をもとに対応していくわけでございます。そしてまた、例えば、日本もイージス艦を持っているわけでございますが、米国も日本近海にイージス艦を展開させていく、そしてこれはリンクすることができるわけでございまして、こうした日米のイージス艦がお互いにリンクしながらミサイル防衛網を張っていくことによって、日本はより安全になっていく。

こういうお話をされています。

 このリンクというのは、私が理解するところによればデータリンクのことだと思うんですが、防衛大臣、データリンクの定義を説明してください。

中谷国務大臣 データリンクというのは、艦船等に搭載されたお互いのコンピューター、これを無線通信回線で接続して、レーダー等で収集した航空機等の位置に関する情報につき相互に送受信することにより、情報を共有する通信システムでございます。

 ミサイル防衛システムにおきましては、イージス艦、レーダーサイト、AWACS、ペトリオット等の間はデータリンクのネットワークによる情報共有がなされているところでございます。

長島(昭)委員 このデータリンクについて、総理は先ほどの答弁に続けて、こうおっしゃっているんですね。

  しかし、このリンクを突破しようとする上において、それを破壊していこうということは攻撃をする方の側は当然考えるわけでございます。こういう状況というのは昭和四十七年には全くなかったんだろう、こう思うわけでございます。そして、それを破壊することは次にはまさに我が国への攻撃につながってくるという判断も十分にできるわけでございます。

ここで言う、総理がおっしゃっている「リンクを突破しようとする上において、それを破壊していこうという」、これはどういう意味ですか。破壊する、何を破壊すると考えればいいんでしょうか。

中谷国務大臣 データリンクによりまして情報の共有がされておりますけれども、こういった情報共有をできないようにするということだと思います。

長島(昭)委員 これは、BMD対応艦、あるいはそのリンクされている、CECともいいますけれども、そういうシステムを搭載したイージス艦への攻撃、こういったものを考えていくんだろうということだと思います。

 それでは、我が国を取り巻く、先ほどの、総理がおっしゃった、まさに我が国の有事に直結するようなこういうケースなんですけれども、我が国を取り巻くミサイルの脅威、これは北朝鮮が、恐らく一番国民の皆さんから見ても感じる、痛感するところだろうと思うんですけれども、現在及び将来における我が国に対するミサイルの脅威をどのように見積もっておられますか。

中谷国務大臣 同時に、北朝鮮は核開発の進行をしておりまして、三回の実験を行いました。それに、ミサイルの状況におきましては、まず、我が国のほぼ全域を射程におさめ得る弾道ミサイル、ノドン、これを数百発保有して、それらを配備していると考えます。

 昨年はノドンを含む弾道ミサイルを多数発射いたしておりまして、現時点、タイミングで、複数の弾道ミサイルを発射するなど、奇襲的攻撃能力を含む弾道ミサイル部隊の運用能力の向上、これが示されております。

 また、二〇一二年十二月の人工衛星と称するミサイル発射などによりまして、弾道ミサイルの長射程化、高精度化に係る技術を進展させているほか、東倉里地区におきましては発射タワーでの大型化改修等を行っていると見られ、将来的にはこれまでよりも大型の長距離弾道ミサイルが発射される可能性があります。

 さらに、本年には、潜水艦発射弾道ミサイル、SLBM、これの試験発射の実施を公表しておりまして、弾道ミサイルによる打撃能力の多様化と残存性の向上を意図しているものと考えております。

 このように、北朝鮮の軍事動向は、地域、国際社会の安全保障にとっても非常に重大な不安定要因となっておるということです。

長島(昭)委員 防衛研究所で公刊されたことしの東アジア戦略概観、これは大臣もお読みになっていると思いますが、去年二月にアメリカの国防総省が公表した北朝鮮の軍事・安全保障に関する年次報告書を引用して、それによりますと、今大臣がおっしゃったノドンミサイル、ノドンミサイルというのは日本をほぼ射程におさめている、日本全土を射程におさめている、この「ノドン・ミサイル用の発射台は最大で五十台保有しているとされている。これらの発射台が移動式であり、」、移動式ということは、発射を探知することがなかなか難しいということですね。「かつ一台にミサイル五〜六基の再装填が可能となれば、最悪の場合、二百五十〜三百基程度存在すると報じられているノドン・ミサイルがほぼ連続的にさまざまな地点から発射できることになろう。加えて、先に述べたSLBMが小型核弾頭を搭載可能となれば、日本にとっても北朝鮮の脅威は一層高まることとなろう。」と。こういう北朝鮮の脅威。

 そして、加えて、なかなかおっしゃりにくいかもしれませんが、中国の弾道ミサイルあるいは巡航ミサイルの脅威もあるかと思いますが、大臣、どういうふうに認識されていますか。

中谷国務大臣 北朝鮮等につきましては、非常に能力を向上させておりまして、深夜と早朝などに、過去に例のない地点から、移動式発射台を用いて弾道ミサイルを発射しておりまして、こういった点におきまして能力を向上させてきているということでございます。

 中国は、核戦力及びミサイルの戦力につきまして、一九五〇年代半ばから独自の開発努力を続けて、抑止力の確保、通常戦力の補完及び国際社会における発言力の確保を目指しているということでございまして、中国が保有する弾道ミサイルのうち我が国を射程におさめるものにつきましては、DF3、DF4、DF21といった中距離弾道ミサイル、また、DF11、DF15、DF16といった短距離弾道ミサイルがありまして、液体燃料推進方式から固体燃料推進方式への更新による残存性及び即応性の向上が行われているほか、射程の延伸、命中精度の向上、弾頭の機動化や多弾頭化などの性能向上の努力が行われております。

 また一方、巡航ミサイル、これは、DH10を保有しているほか、核兵器や巡航ミサイル搭載可能なH6爆撃機を保有しておりまして、これらは弾道ミサイル戦力を補完して、我が国を含むアジア太平洋地域を射程におさめる戦力になると見られております。

長島(昭)委員 相当深刻な状況にあって、しかも、北朝鮮は、去年二月から七月にかけて、二百五十発もの新旧弾道ミサイルあるいはロケット弾の発射実験を行っているんですね。もう本当に、そういう意味でいうと、いつ発動されてもおかしくない、そういう状態だと思います。

 そのことを受けて、六ページ目、皆さん、お手元にあると思いますが、せんだってのガイドライン、日米防衛協力のための指針、この四章のA項の「二、防空及びミサイル防衛」というところで、「自衛隊及び米軍は、弾道ミサイル発射及び経空の侵入」、経空の侵入という、これはわかりにくいんですが、航空機と恐らく巡航ミサイルをあらわしているんだろうと思いますが、「経空の侵入に対する抑止及び防衛態勢を維持し及び強化する。日米両政府は、早期警戒能力、相互運用性、ネットワーク化による監視範囲及びリアルタイムの情報交換を拡大するため並びに弾道ミサイル対処能力の総合的な向上を図るため、協力する。」こういうことであります。

 どんな日米の協力体制、これからミサイル防衛について、もう今の状況ではなくて、今後日米の間でどういう、データリンクも含めて、今大臣が御説明いただいた多種多様なミサイル脅威に対して、これに立ち向かっていくために、日米の共同のミサイル防衛体制、どんなミサイル体制を構築しようとされているか、御説明いただけますか。

中谷国務大臣 これは、我が国自身の弾道ミサイル防衛システムを整備していくということで、日米安保体制による抑止力、対処力の向上に努める。

 我が国の弾道ミサイル防衛システムにつきましては、SM3ミサイル搭載のイージス艦四隻による上層での迎撃と、航空自衛隊のPAC3ミサイルによる下層での迎撃、これを組み合わせた多層防衛によりまして我が国全域を防御するということが可能です。

 具体的には、SM3、イージス艦の上層における迎撃を行うことで、幅広い防御をすることで、SM3搭載イージス艦二、三隻の活動により我が国全域を防護することが可能である。PAC3も拠点防衛に使用されております。

 大綱におきましては「我が国の弾道ミサイル対処能力の総合的な向上を図る。」といたしておりまして、防衛省といたしましては、弾道ミサイルから国民の生命財産を守るべく、万全を期するために、E2Dといった装備品の活用を含め、NIFC―CAといった米軍の新しいコンセプトの検討も踏まえながら、今後、我が国のBMDシステムの整備について、現大綱を踏まえて引き続き検討してまいりたいと思っております。

長島(昭)委員 今大臣が御説明いただいたのを図にしたのが、皆さんのお手元にあると思います。人工衛星というか早期警戒衛星から弾道ミサイルはそこを探知して、そしてそれがハワイを経由して横田の日米の合同の司令部に行く。そして、展開しているイージス艦との間でまさにリアルタイムにデータリンクで情報共有がなされ、そして場合によっては迎撃をする。

 今最後におっしゃったNIFC―CAは、左側から飛んできている巡航ミサイル、この巡航ミサイルに対して、E2D、今巡航ミサイルに対して矢印が向かっておりますけれども、その先にE2Dという早期警戒機が、航空機でありますが、これともまた連接をして、まさに総理が言われたように一体となって運用がされていくわけであります。まさに今大臣がおっしゃったように、そういう方向で日本としても考えていくということであります。

 最後に、もう残り少ないのでありますが、一点だけ、法的な問題を聞きたいと思います。

 もう一度具体的なイメージに戻りたいと思うんですが、例えば、北朝鮮の話が出ましたので、半島情勢が緊迫をしてきた、各種情報に基づいて、日米のイージス艦、まさに今申し上げたような、これも近未来の話ですけれども、こうやってデータリンクが完了したイージス艦がいろいろなところから飛んでくる可能性のあるミサイルに対して防御体制をしくということで、まさに連合艦隊みたいな形になるんだろうと思いますね。そしてそれが警戒監視に当たる。

 まだ半島で武力衝突は勃発をしていない、したがって重要影響事態でもない、つまりは平時です。この平時でいきなりミサイルが上がってきた、連射された。SEWの情報、早期警戒衛星の情報によれば、数分後には大体着弾地点がわかるわけですね。これは平時ですよ、平時。着弾地点が大体グアムだという表示が出た場合、現状の法律、そしてまたこれから改正されるであろう法案の中で、我が国としてはどういう対応ができるんでしょうか。

中谷国務大臣 現状におきましては、他国において武力紛争が行われているが我が国に対する武力攻撃の発生には至っていない段階で、他国に対する武力攻撃の一環として発射された弾道ミサイルを迎撃する行為は、国際法上、一般に集団的自衛権の行使と評価をされて、警察権による正当化をすることは困難でございます。

 また、他国において武力紛争が行われておらず、我が国に対する武力攻撃の発生にも至らない段階で、武力行使の一環として発射されたものでない他国に向けた弾道ミサイルを迎撃する行為は、警察権による正当化も排除されているわけではありませんが、現行の自衛隊法第八十二条三に基づく措置は、他国に飛来するミサイル等を対象としていないということでございます。

長島(昭)委員 これは、法案が仮にここで成立したとしても、状況は同じですか。

横畠政府特別補佐人 今回の法案の中身ということでございますけれども、御指摘の点についての手当てはしてございませんで、いわゆるミサイル防衛については、我が国に向かうミサイルについての措置のみでございます。

長島(昭)委員 残念ながら、これも今回の法案の大きな欠陥です。ここが埋まらない限りは万全な体制がとれないんですよ。

 まさにそれは、あさっての方向に行くからいいだろうというんですけれども、これは安保法制懇でこういうふうに言っているわけですよ。「米国に向かう弾道ミサイルを我が国が撃ち落す能力を有するにもかかわらず撃ち落さないことは、我が国の安全保障の基盤たる日米同盟を根幹から揺るがすことになるので、絶対に避けなければならない。」

 絶対に避けなければならないケースなんですよ。こういうケースに対応できないで今回の法案を通してくれと言っても、これはなかなか私たちも通すことができないし、先日私が指摘しました領域警備の法体制も完璧ではないですね。

 その二つをあわせて、私は、この点を修正しない限りは、なかなかこの法案に対して議論することは難しい、このことを申し上げて、質疑といたします。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)委員 民主党の後藤祐一でございます。

 まず、自民党の文化芸術懇話会のことについてお伺いしたいと思いますが、きょうは官房長官にお越しいただいております。

 この懇話会において、自民党の議員から、マスコミを懲らしめるには広告収入がなくなるのが一番だ、経団連に働きかけてほしい、また、悪影響を与えている番組を発表し、そのスポンサーを列挙すればいいといったような発言がありました。また一方で、沖縄に関して、沖縄のゆがんだ世論を正しい方向に持っていくためにどのようなアクションを起こすかというような発言もありました。

 官房長官に伺います。

 こういったマスコミを懲らしめるといったような発言というのは、報道の自由との関係で大変問題があると思いますし、あと、官房長官は沖縄基地負担軽減担当大臣でもあられます。沖縄への悪影響という点もあると思いますが、この自民党の議員の発言に関して官房長官の御意見をお聞かせください。

菅国務大臣 まず、私自身、内閣官房長官として、政府の立場では、党内の有志議員の非公開の集まりであって、そして事実関係というものをきちんと把握しておらず、政府として、民間の個人の発言についてコメントすることは控えたいというふうに思います。

 ただ、当然ながら、我が国においては、放送法において放送の編集権の自由が保障されており、憲法においても表現の自由がきちんと守られているというふうに思っておりますので、沖縄についても同然のことだというふうに思いますので、ですから、党として、谷垣幹事長を中心にしっかりとこの問題については対応していく、こういうふうに考えています。

後藤(祐)委員 今、報道の自由と放送法で守られている編集の自由のほかに表現の自由もあるというお話がありましたけれども、その後者で言っている表現の自由というのは、報道の自由の話ではなくて、自民党の議員にも、あるいは百田委員にも、まあ、百田さんに関してはそうかもしれませんが、今は百田さんの話じゃなくて自民党の議員の話をしましょう、自民党の議員にも表現の自由があるという趣旨でおっしゃったんですか。

菅国務大臣 そこは違います。

 自民党の議員のあのような発言について、これは極めて非常識、問題がある。私は、会見でも、そこは政府としてではなくて、個人的な見解という形の中で申し上げました。ですから、谷垣幹事長も、党としてそうした対応をされたんだろうというふうに考えています。

後藤(祐)委員 問題がある発言だというお話がありましたけれども、何でああいう発言が出たと思いますか。

 というのは、きょうは官房副長官もおられていますね。官房副長官がおられます、萩生田さんもおられました、その場に。安倍総理の側近の方々であります。このお二人がおられて、非常にわかりやすい言葉で言うと、いいところを見せたいという思いが、そこにおられた若い自民党の議員の方々にやはりあったんじゃないでしょうか。

 先ほど、官房副長官は、百田さんのお話が終わったところで退室したのでその後の質疑については知らないということで、御自分の責任はないというようなお話がございましたけれども、やはりこれは、安倍総理の側近の方々がおられる場で、自民党の若い方々がちょっと力があり余ってしまったというか、言い過ぎてしまった面がやはりあるんじゃないでしょうか。もしそうだとすると、やはり官房副長官はあの場には行くべきでなかったんです。

 先ほど、官房副長官から、先輩の立場として何かできなかったのかというような御発言がございました。これは先輩の立場としてやるべきことは、むしろ百田さんを呼んで大丈夫かとか、あるいは、それでも呼ばれてしまったとするならば、余計なことを言っちゃ危ないよとか、そういうことをするのが先輩としての本来のあり方であって、そもそも、そういったことをしたかどうかわかりませんけれども、あそこの場に足を運んだこと自体、結果としてこういうことを招いてしまっている。

 官房長官として官房副長官に注意をされるべきではありませんか。何らかの処分なり対応をすべきではありませんか。

菅国務大臣 非公式の、党内の有志による集まりでありますから、それについて、官房長官として注意とか、そういう立場には私はないというふうに思っています。

後藤(祐)委員 そうしますと、官房副長官の行動は適切であったということでよろしいですか。

菅国務大臣 個人の政治的な行動について、この会合は出るべきだとか出ないべきだとか、そういうことを私から申し上げる立場にはないというふうに思います。

後藤(祐)委員 少なくとも、処分ですとか注意をする必要はないという御判断だというふうにみなさせていただきます。

 もう一つ、百田氏でございますけれども、安倍政権としては、今はおりられましたけれども、NHKの経営委員会の委員として任命をされたわけでございます。このような、沖縄の二つの新聞は潰さなあかんという発言をされるような方、これは、それまでの言動を見れば、そこまで言うかどうか予測できたかどうかは別として、特に報道の自由ですとか表現の自由ですとかいうことは、作家の方というのはむしろそこを論拠に仕事をされている方々でございまして、報道の自由に関してこういう表現をされる可能性のある方だということはある程度わかっていたと思うんですね。

 百田さんをNHKの経営委員に任命したということについて、もう今は経営委員でなくなってしまいましたけれども、やはり任命すべきでなかったのではないか、今から振り返ってそう思いませんか。

菅国務大臣 任命する任命しないというのは、国会に提案をして、国会で議決をいただいて、そのようになったところであります。

後藤(祐)委員 国会で、ほかの方にしてくださいと言うわけにいかないんです。案を提出するのは内閣なんです。内閣として、百田さんを任命したいんですがということで案を出してきたことについて、別の方にすべきだったというふうに思いませんか。

菅国務大臣 内閣として、経営委員については提案はさせていただきましたけれども、結果的に、これは国会で同意できなければできないわけですから、国会で同意をいただいたというふうに思っています。

後藤(祐)委員 我々は同意するだけであります、国会側では。

 百田さんを提案されたことについて、適切であった、今から振り返っても適切であったとお考えですか。それとも、不適切であったとお考えですか。

菅国務大臣 百田さんについては、今申し上げましたように、内閣で確かに提案はしましたけれども、結果的に、これは国会で同意いただかなければできないわけでありますから、そこについては、やはり国会で承認をいただいて経営委員にされた、こういうふうに思っています。(後藤(祐)委員「質問に答えていないです」と呼ぶ)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 それでは、菅内閣官房長官、答弁願います。

菅国務大臣 当時、百田委員については、内閣として、適切である、そういう思いの中で国会同意人事を提案させていただいたということです。

後藤(祐)委員 百田委員の話もそうですし、報道の自由、表現の自由に関して、やはりここのところ目に余る行為が多いと思うんですね、残念ながら。先ほどの自民党の若手議員の発言もそうです。

 そして、逆に、別の若手議員の会合がありましたよね。過去を学び「分厚い保守政治」を目指す若手議員の会、これは同じ日に予定されていて、中止されています。多様な意見という意味では非常に残念なことですよね。

 一方で、金曜日の深夜、土曜日未明に行われた「朝まで生テレビ!」という番組では、与党の議員の方々、これは各党から若手議員の方が出る予定になっていたところ、お断りになられて、何と直前になって与党の議員の方々だけがいないという中で番組が進行せざるを得なくなった。冒頭、そんな陳謝もあったようでございます。

 どれもこれも、やはり、報道の自由、表現の自由に関して、少し行き過ぎではないかということについて国民も心配していると思うんです。これについて、官房長官、トータルに踏まえてどうお考えでしょうか。心配されておられませんか。

菅国務大臣 いずれにしろ、党内のそうした問題について、私が官房長官として発言をする立場にないわけであります。

 いずれにしろ、幹事長を中心に、我が党は、まさに放送番組については編集の自由が保障されている、そしてまた憲法で規定されている表現の自由、これも尊重しているわけでありますから、そういう中で党として適切に対応するということだろうと思います。

後藤(祐)委員 これから、加藤副長官も含めて、多様な意見が党内でも、そして国民全体を通じて、そしてその前提としての報道の自由、これをしっかり守っていただくようお願いしたいと思います。

 それでは、法案に入ってまいりたいと思いますが、まず、ホルムズ海峡における機雷掃海について、第一要件、第二要件、第三要件、それぞれの観点からチェックをしたいと思います。

 まず、第一要件、すなわち明白な危険、これが歯どめになっているのかどうかということについて。

 昨年七月十四日の衆議院の予算委員会で、横畠法制局長官は、第一要件の明白な危険があるとは、「国民に、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であるということをいうものと解されます。」と答弁されておられます。

 しかし、これに対して、六月二十二日の当委員会における参考人質疑において、元法制局長官の阪田参考人から、やはりこの明白性に関して非常に疑義があると。具体的に言うと、「ホルムズ海峡の機雷封鎖、これなどは、どう考えても、我が国の存立を脅かし、国民の生命、自由及び幸福追求の権利を根底から覆すというような事態に至りようがないと思えます。」と批判しておられます。

 その上で、阪田参考人は、「これまでの政府の九条の解釈の基本的な論理の枠内におさまるものであることをより明確にする、そのことは絶対に必要なのだと思っているのです。そして、それは、改正法案にある存立危機事態の定義を改めて、ただ単に、例えば、」ここをよく聞いていただきたいんですが、「他国に対する武力攻撃が発生したことにより、我が国に対する外部からの武力攻撃が行われる明白な危険が生じた場合というようなことにでもすれば簡単にできることではないでしょうか。」と述べておられます。

 私はそもそも基本的な論理に入るかどうかということについて疑義がありますけれども、これに関して百歩譲って、そういうことがあり得た場合の話をされておられる阪田参考人のこの御提案というのは、少しでも明白にしようという意味では建設的な話ではあると思います。明白性を判断する基準として「我が国に対する外部からの武力攻撃が行われる明白な危険が生じた場合」と絞る、これは比較的、今の条文よりはわかりやすい、よりましにはなっていると思うんですね。

 この御提案について、こういった限定をするべきじゃないかというふうに思いますが、法制局長官、御答弁をお願いします。

横畠政府特別補佐人 いわゆるホルムズ海峡における機雷の事案というのがどういうものであるかということの御理解がなかなか得られていないというのが前提だと思います。

 先般も申し上げましたけれども、機雷の敷設というのは、通常、武力攻撃の手段たり得るものである。そこで、ホルムズ海峡の特殊性ということに着目して議論をしているわけでございまして、前提としてといいますか、一種補助線のような事案と理解していただきたいと思いますけれども、我が国に対する武力攻撃の意図を持ってホルムズ海峡に機雷を敷設したということがあるとするならば、例えば明示された意図によって我が国に対する攻撃であるということを明示したような場合、明らかにそれが認定できる場合があるとするならば、それは我が国に対する武力攻撃たり得る行為でありまして、それに対しては個別的自衛権で対処する。

 それが我が国に対する武力攻撃たり得る行為かということについては、それを放置したのでは、まさに、国民に、生死にかかわるような深刻、重大な被害が生じてしまう、また、他に手段がなく、それを除去しない限りまさに座して自滅を待つということになるということであるならば、それが他国の領海に敷設された機雷であるとしても、それは、かねてから申し上げている誘導弾の基地をたたく場合と同じように、そこまで行って処理するということは個別的自衛権の行使としてあり得る、そういうまず前提を置いた上で議論をさせていただいていると思っています。

 そこで、同じ行為が行われた、封鎖が行われたというところで、我が国に対する武力攻撃の意図、意思までは認定できないというときに、ではどうするのか。その武力攻撃の対象が他国である、かつ、我が国と密接な関係にある他国であるとした場合であるならば、これは集団的自衛権としてそれに対処するということが可能であることもあるだろう。

 いずれにせよ、行為としてはまさにそこが封鎖されるわけでございますので、我が国に対する武力攻撃が発生した場合と同様な深刻、重大な被害というのが現に我が国に生じ得るというか、生じている、そういうことになっているわけでございまして、そのときに何もしなくてよいのか、何もできないのか、そういう問題であろうかと思います。

 そのようなケースを想定しますと、機雷の敷設の行為の先に、今度は直接我が国に対して武力攻撃、ミサイルを飛ばすとか、その他さらに追加的に我が国に対する武力攻撃の発生が次に予測されるかというと、必ずしもそうでない場合もあるだろう、そういうことで申し上げているわけでございます。

後藤(祐)委員 非常に微妙な表現がいろいろありました。ホルムズについては補助線のような事案だ、あるいは、その先に我が国に対する武力攻撃が予測されるかというようなお話も最後にありました。ホルムズに関してはこの可能性は極めて薄いわけであります。

 最初のころ、ホルムズについておっしゃっていたようなこと、例えば、二月十六日の衆議院の本会議では、岡田代表が集団的自衛権について具体例を挙げてくださいと言ったら、二つ挙げたうちの一つがこのホルムズの機雷敷設の話だったわけであります。そして、五月二十六日の衆議院本会議では、稲田政調会長が存立危機事態の典型例とはどのような事態でしょうかと言って、これはだんだん後ろの方に行ってしまったわけであります。そして今、補助線まで下がった。法制局として、やはりホルムズはちょっと苦しいと正直思っていらっしゃるんじゃないかと思うんです。

 少しさらに詰めましょう。第二要件、ほかに手段がないと言えるかどうか。

 これについては、先日十五日、配付資料にありますけれども、既存の法律、遺棄機雷になった場合に行けるという法律でかなりできるのではないか。

 一九九一年のペルシャ湾へ掃海艇を派遣した場合は、三月三日に事実上の停戦、四月十一日に正式な停戦、それから準備指示をして、一カ月かかってドバイに到着しているんですが、三月三日の事実上の停戦の段階で現行法に基づいて準備指示の開始をすれば、かなり早い段階で、正式停戦になった直後ぐらいに出せるのではないか。これについては、絶対にできないというわけではないというような御答弁もありました。

 逆に言うと、事実上の停戦になった後、存立危機事態としてやるという場合には、これは大変なんですね、手続が。武力攻撃事態法九条に基づいて対処基本方針をつくって、そしてこの場で国会承認を得てというようなことをやっていると、逆に遅くなっちゃうリスクもあるという中で、ほかに手段がないと言えるのか。むしろ、現行法で行った方が早く、少なくともその近くには到着できるということ。

 そして、唯一、存立危機事態の場合でないとできないというのは、正式な停戦が非常に遅くなった場合、事実上の停戦が起きてから正式な停戦まではるかに時間がかかった場合に、もしかすると逆転して、集団的自衛権でないとできない場合があり得るかもしれない。

 これでもって、他の手段がないと本当に言えるんでしょうか、法制局長官。

横畠政府特別補佐人 先ほど補助線と申し上げましたのは、我が国に対する武力攻撃としてその機雷が敷設された場合を考えて、さらにということで申し上げたつもりでございます。

 それから、今般想定されています機雷の掃海といいますのは、政府としてるるお答えしているとおり、事実上の戦闘が終了した状況のもとで、民間の船舶の航行の安全を確保するためのものでありまして、法的には武力の行使に当たる場合であったといたしましても、まさに、人の殺傷を行うものではなく、物の破壊にとどまりますし、実質的に危険物処理に相当するというような行為である。

 また、敷設された機雷というのは、それ自体が、先ほど申し上げたような状況を前提といたしますと、まさにその機雷自体が国民の生死にかかわるような深刻、重大な被害を及ぼしている元凶そのものでございまして、一旦敷設されればそこにとどまり、これによる被害は将来にわたって続き、かつ拡大していく、そういう性質のものでありますから、できる限り早くこれを除去する必要性は高いということ、また、これが敷設されている場所にまで行かなければ除去ができないといった特質がありますことから、我が国を防衛するためという第二要件、それから必要最小限という第三要件、これを満たす可能性はあるのではないかということでお答えしたいと思います。

後藤(祐)委員 前半のところで、実際の殺傷に当たらないというところは非常に重要だと思うんですね。

 逆に言うと、先ほど申し上げた、現行法で、遺棄機雷とみなして、事実上の停戦が行われた後機雷除去をするというのは、これは憲法違反に必ず当たってしまうんですか、憲法違反に当たらない可能性も少しはあるんですか、お答えください。

横畠政府特別補佐人 遺棄機雷であるという認定が正当であるならば、それは憲法上の問題にはならないと思います。

後藤(祐)委員 正式な停戦前であり事実上の停戦後の状態で遺棄機雷とみなせる可能性があるという御答弁でございました。その場合は、もう集団的自衛権で行くことは全く時間的になくなってしまうわけです。この間、事実上の停戦よりさらに前に集団的自衛権で行けるのかということについては、それは無理だというような御答弁もありましたから、今のお話を聞くと、もうそれだけで、現行法で十分だと思います。

 さらに詰めます。

 二枚目の配付資料をごらんください。

 第二要件、他に手段がないということについて、ほかの国の掃海艇ではだめなのかという論点がございます。

 もちろん、国際貢献の観点から、現行法で遺棄機雷を処分しに行くということについては、日本が積極的に私はやるべきだと思います。ですから、ほかの国にあるからいいやという話じゃありません。

 しかし、集団的自衛権で存立危機事態として行く以上は、ほかに手段がないという要件を満たさなきゃいけませんから、そこにあるように、これは防衛省の資料ですが、全世界に五百十一隻の掃海艦艇が存在し、日本は二十七隻、世界を合わせると五百三十八隻掃海艦艇がございます。

 もちろん、それぞれの能力ですとか、ある場所ですとか、違うわけでございますが、日本が出さなきゃいけない、ほかに手段がないという条件を満たすためには、ほかの国に出しますかとか出せますかとか伺った上で、やはり足りないということを立証しないと、例えば国会承認なんかは通らないんじゃありませんか。

 ほかの国のこの隻数を考えて、本当にほかに手段がないと言えるんでしょうか、法制局長官。

横畠政府特別補佐人 なかなかそれは、その具体的な状況いかんということでございますけれども、法制局の所管ではございませんけれども、やはり機雷掃海の能力というのは我が自衛隊が大変高いものであるということは聞いております。

後藤(祐)委員 機雷掃海の能力の高さは関係ありません。ほかの国の掃海艦艇でホルムズ海峡の機雷掃海が可能なのであれば、それはほかに手段があるということになるのではありませんか、法制局長官。これは能力の話ではありません。もう既にどこの国に何隻あるかというのは、防衛省の資料です、事実ですから、これは法律の議論をしているんです。

 法制局長官、ほかの国に掃海艦がこれだけあって、行ける場合には、日本は存立危機事態にならない、ほかに手段があるということとみなさざるを得ないんじゃありませんか、法制局長官。これは、第二要件の判断の根拠について私は伺っておりますので、法制局長官に伺いたいと思います。

横畠政府特別補佐人 先ほどもお答えいたしましたけれども、そこにまさに現に敷設されている機雷というものは一日も早くというか一刻も早く処理しなければならない、そういう状況にあるという前提でございますので、当然他国との調整というのはあるかもしれませんけれども、他国にやってもらえば、それで我が国としてやらなくてもいいのだ、そういう観点ではないと思います。

後藤(祐)委員 ほかの国がやってくれるならうちは出さなくてもいいというのは、国際貢献の観点から遺棄機雷を除去しに行くときは、私は、先ほど申し上げたとおり、その点があると思いますよ。でも、存立危機事態は国際貢献じゃないんです。ほかに手段がないということは第二要件の明確な要件なんですよ。

 今のような、うちも出さなくていいのかということが第二要件の判定において影響するんですか。ほかの国の掃海艦で十分間に合うときに、本当に日本が出せるんですか。出せるなら出せると答弁してください。出せないなら出せないと言ってください。

 法制局長官、今の法制局長官の答弁は余りにおかしいので、今の答弁に関して聞いています。法制局長官。

浜田委員長 岸田外務大臣、一旦答弁願います。

岸田国務大臣 今の御質問に対してのお答えとして申し上げるならば、まず、存立危機事態が発生した段階で、我が国として認定した段階で、我が国として何も対応しないということはまず考えられません。(後藤(祐)委員「認定する前の段階の話をしているんですよ」と呼ぶ)いやいや、そうじゃなくて。そういう事態が発生したことに当たって我が国として対応する。しない、これはまず考えられません。我が国として、そうした事態に対してしっかり対応する、これは国民の命や暮らしがかかわっているわけですから、当然のことであります。

 その要件において、他国がそれに対応するからいいのではないか、要するに、他に手段がないという部分に該当しないのではないかという御質問だと思いますが、その部分に……(後藤(祐)委員「第二要件の話をしているんです」と呼ぶ)その第二要件の御質問だと思いますが、その事態を認定するに当たって、我が国の国民の命や暮らしが危機にさらされているわけですから、我が国としてその段階で対応する、これは当然のことです。ですから、機雷の掃海に当たっても、他国と同時に我が国が対応する、これが当然のことだと思います。

 特に、我が国の掃海能力、これは国際的にも大変高いわけですので、我が国がその時点で何も対応しない、他国に任せる、それは考えられないと考えます。

 よって、存立危機事態において我が国が掃海を行う、これは当然のことであると考えています。

後藤(祐)委員 そうしますと、国民の生活が危機にさらされているだとか、我が国に対する期待が高いだとか、我が国の掃海艦艇の能力が高いだとかということがあれば、第二要件を満たしてしまうんですか。つまり、ほかに手段がないという要件を満たしてしまうんですか。もしそうなんだったら、そうだと答弁してください。

 私は、今、第二要件の、ほかに手段がないという要件をどういう状況のとき満たすんですかといった場合に、そういった国際的な要請だとか期待だとか能力は関係ないんじゃありませんかと聞いているんです。それはむしろ、現行法の遺棄機雷のときの八十四条の二で行く場合には、当然、そういう判断で国際貢献を私はすべきだと思いますよ。だからこそ、現行法で十分だと言っているんですよ、さっきの話もそうだけれども。

 存立危機事態のときは、さらにハザードが高くて、ほかに手段がないというのを満たさなきゃいけないけれども、今言ったような、危機にさらされているとか、期待が高いとか、我が国の掃海艇の能力が高いとかいうことは、第二要件の、ほかに手段がないということを判断する上で、それによってクリアしちゃうんですか。

 では、岸田大臣、答えてくださいよ。

岸田国務大臣 存立危機事態に当たっては、これは、その例で申し上げますならば、機雷を除去しなければ国民生活に死活的な影響が生じる、こういった事態であります。

 こういった事態に当たって、我が国として何も対応しないということはあり得ないということを申し上げているわけです。その段階で他国の掃海の状況を見守る、こういったことはあり得ないわけでありまして、我が国の国際的な掃海能力等を考えた場合に、他国とともに掃海に応じる、これは当然のことであると思います。能力があり、そしてそうした必要があるにもかかわらず、他国が掃海するのをじっと見守るというような対応ということはあり得ないということを申し上げております。

後藤(祐)委員 いや、応じるのは当然というのは大変怖い言葉です。

 存立危機事態、集団的自衛権は武力の行使であります。これを求められているからとか、国民生活に危機があるだとか、もちろんそれは必要条件かもしれませんよ。ですが、ほかに手段がないということが絶対必要なんです。第二要件を満たすことが必要なんです。今、第二要件の話をしているのに、応じるのは当然というのは大変怖い話であって、第二要件が歯どめになっていないことの典型じゃありませんか。

 もう何度やっても同じ答弁なので、委員長にお願いします。

 この第二要件をどう満たすのか。ホルムズ海峡における機雷掃海について、日本が危機にさらされているとか、日本に対する期待、国際貢献だとか、あるいは日本の機雷掃海の能力だとか、こういったことが第二要件を満たす上で関係あるんでしょうか。ほかの国の掃海艇で十分賄える場合は第二要件を満たさない、ほかの国にお任せすることになると私は考えますが、それについて、そうなのかそうでないのかが明らかになるように。

 そして、先ほど申し上げたような、現行法で遺棄機雷とみなすことも、先ほどの長官の答弁からすれば、全く不可能ではないと言っているわけです。ですから、正式停戦になる前の事実上の停戦になった段階で遺棄機雷を掃海に行くという、現行法で掃海艇を出せば、まさに今申し上げたような、我が国の掃海艇の能力を生かし、国際貢献にもなり、責任も果たすということになるし、それよりも前に掃海艇を届けることは、さっきの話で明らかになったようにほとんど難しい。

 これについての政府見解を整理した資料を提出していただけるよう、理事会で御協議、お願いいたします。

浜田委員長 協議しますが、一旦答弁させます。

岸田国務大臣 今最後に御指摘があった点、事実上の停戦があり、そして正式な停戦があり、その中間段階において遺棄機雷と認定することができるではないか、こういった御指摘について申し上げるならば、現実問題、遺棄機雷を認定するというのは大変難しい作業であります。

 ですから、先ほど御指摘ありましたが、一九九一年の湾岸戦争の際にも、事実上の停戦から正式停戦の間に、ドイツ、フランス、イタリア、これは掃海作業を決定しています。こうした国々も全て、当時の安保理決議六七八、要するに武力行使を含む全ての手段が認められる、この安保理決議を援用しています。ですから、武力行使として認定されることも想定しながら、それぞれの対応を説明しているというのが現実であります。

 こうした事実上の停戦から正式な停戦までの間、遺棄機雷を認定するというのが現実大変難しいということ、このことをしっかり考えた上で、現実的な対応はどうあるべきなのか、これを考えるべきだと考えます。

後藤(祐)委員 午前中の時間が終了しましたので、先ほどの、理事会で御協議いただけるようお願い申し上げまして、終わります。

浜田委員長 協議いたします。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。後藤祐一君。

後藤(祐)委員 午前中に引き続き、存立事態について聞きたいと思います。

 二月十六日の衆議院本会議で、総理が集団的自衛権の事例として二つ挙げましたが、そのうちの一つはホルムズでした。これについては、午前中、特に第二要件を満たさないのではないかということについて、大変苦しい状況にあるということが明らかになりました。

 もう一つの事例、アメリカの船による邦人の輸送の問題。これについては、六月十八日の予算委員会の小野寺委員の質問で、「我が国の近隣で武力紛争が発生し、多くの日本人が救助を求めている事態を想定します。」「公海上で攻撃国の軍艦から」、これは邦人を乗せた米軍輸送艦がということだと思いますが、「攻撃を受け、多くの日本人が殺されようとしている、」その近くの自衛隊の護衛艦が「武力をもってこの日本人を乗せた米軍の輸送艦を守るのは当たり前だと思います。」というお話がありましたが、これに対する答弁で、この場合に本当に集団的自衛権が行使できるのか、はっきり答弁されておりません。

 お伺いしたいと思います。午前中、残念ながら、本当にぎりぎりのところの論理展開をしているので、法制局長官にはっきりお答えいただきたいと思います。

 今のケース、我が国の近隣で武力紛争が発生しています。ですが、まだ、ミサイル攻撃ですとか別の手段で我が国本土が武力攻撃されるような明白な危険というような、そんな状態には至っていません。ところが、多くの日本人を乗せたアメリカの船が攻撃を受けという状況になっています。この状態で新三要件を満たすんでしょうか。根底から覆される明白な危険があると言えるのでしょうか。法制局長官、お願いします。

横畠政府特別補佐人 新三要件に該当するかどうかの判断といいますのは、何度もお答えしているとおりでございまして、実際に起こった事態に応じまして個別に判断しなければいけないということでございまして、なかなか、あらかじめこういう場合には当たるとか当たらないとかということを申し上げることは難しいと思います。

後藤(祐)委員 あらゆる条件がそろっているとします。個々の状況に応じて違うというのはもちろんそのとおりなんですが、それだと本当に法案審議になりませんので、これは憲法を満たすのか、あるいは法律でどこまで読めるのかという審議をしているわけですから、いろいろな条件がそろっている場合。

 特に、あのときの質疑は、ミサイル攻撃で別途日本を攻撃されるリスクがある、ないというところがやや曖昧なので、ミサイル攻撃による武力攻撃の話というのは、これはこれで別の議論としてすればいい話ですから。

 ミサイルのリスクは今ないという中で、純粋に、アメリカは朝鮮半島の上でもう戦争に巻き込まれているという状態で、アメリカの船に日本人がたくさん乗っている、公海上で。この邦人輸送している米艦に対する攻撃、これだけで存立事態を満たすことが本当にあるんでしょうか。もしあるとすれば、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性とは何ですか。

 そこも含めて、満たす可能性があるとすればどういう状況なのか、御説明いただけますか。

横畠政府特別補佐人 ちょっと、お尋ねの条件だけでそれは満たし得る、満たすことがあるんだということまでは言えないと思いますが、まさに具体的に起こった状況に応じて判断していくほかないということでございます。

後藤(祐)委員 満たし得るとまでは言えないということなんだと、今答弁があったとおりです。

 つまり、米艦輸送、邦人輸送の件というのは、実は、その邦人輸送している船がやられる明白なリスクじゃなくて、ミサイル攻撃がなされる、それによって我が国の存立が脅かされる明白な危険がある場合に存立事態になるということにすぎないんじゃありませんか。

 ミサイル、まあミサイル以外の攻撃方法もあるかもしれませんが、邦人を輸送している米艦に対する攻撃ではない、少なくとも、ほかのミサイル等の攻撃によって我が国本土に対して武力攻撃が行われる蓋然性がなければ、根底から覆される明白な危険は発生しないんじゃありませんか。これはもう一度明白にお願いします。

横畠政府特別補佐人 昨年来というか、従前政府の方でお示ししている事例、八つの事例のうちの一つで、邦人輸送中の米輸送艦の防護というパターンがございますけれども、そのパターンをごらんいただければと思いますけれども、攻撃国の言動から我が国にも武力攻撃が行われかねない状況にあるということが前提としての議論をさせていただいていると思います。

後藤(祐)委員 今おっしゃった、攻撃国の言動からということが前提とおっしゃいましたけれども、これについては、お配りの資料五ページ目、一番上の、二月十六日の衆本会議における、岡田代表の新三要件を満たす具体例を示されたいという質問に対する安倍総理答弁で、

 攻撃国の言動から我が国にも武力攻撃が行われかねない、このような状況においては、取り残されている多数の在留邦人を我が国に輸送することが急務となります。

  そのような中、在留邦人を乗せた米国船舶が武力攻撃を受ける明白な危険がある場合は、状況を総合的に判断して、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況に当たり得ると考えられます。

今、長官がおっしゃったのは、二つ線が引いてあります、「攻撃国の言動から我が国にも武力攻撃が行われかねない」という、こっちの方の明白な危険のことを言っているのであって、後段の方の「在留邦人を乗せた米国船舶が武力攻撃を受ける明白な危険」のことを指しているのでないという理解でよろしいですか。

 つまり、前段の、攻撃国の言動から我が国にも武力攻撃が行われかねない明白な危険なしに、後段の、在留邦人を乗せた米国船舶が武力攻撃を受ける明白な危険があるだけで存立事態になり得ますか。

 この明白な危険という言葉の使い方は非常に、この安倍総理の答弁、危ういんです。前段に明白な危険があるんだったらわかるんですけれども、前段では明白な危険という言葉を使わず、後段だけで明白な危険という言葉を使っていて、非常にこれはミスリーディングな答弁の仕方なんですね。明白な危険というのはどっちのことなのか。先ほどの答弁で、私は前段のことをおっしゃっていると理解しましたが、わかりやすく、この答弁との関係も含めてお答え願います。

横畠政府特別補佐人 総理の答弁につきまして私が何かそんたくして申し上げるわけにはまいりませんけれども、かねてから政府の側が御説明している邦人輸送中の米輸送艦の防護の話は、先ほども申し上げたとおりでございまして、攻撃国の言動から我が国にも武力攻撃が行われかねない状況にあるということを前提といたしまして、その全体の状況を判断した場合には、当たることもあるんだ、そういう説明をさせていただいていると理解しております。

後藤(祐)委員 今の答弁で明らかですね。

 総理答弁は修正がなかなか立場としてできないのはよくわかりますが、少なくとも、後段の、邦人を乗せたアメリカの船が攻撃される明白な危険だけでは存立事態になるとは言えないわけです、今の答弁で明らかなように。前段の「攻撃国の言動から我が国にも武力攻撃が行われかねない」明白な危険があるということが前提で存立事態を満たすという答弁でありました。

 これは、邦人輸送というのは、それだけでは存立事態にならないということじゃないんですか。何でこの邦人輸送というものが、そもそも、今の話がもし正しいとすると、ミサイル攻撃がなされる明白な危険があるかないかというところが存立事態の認定において重要なのであって、邦人を輸送していようがしていまいが関係ないんじゃありませんか。何か関係あるんですか、法制局長官。

横畠政府特別補佐人 従来、八事例、幾つか具体例を挙げて説明させていただいておりますけれども、いずれの場合も、我が国に対する武力攻撃が発生した後であるならば、これはできることであろうと思います。

 御説明のポイントは、我が国に対する武力攻撃の発生を待たなければそれができないのか、それでよいのかという問題意識であると理解しております。(後藤(祐)委員「お答えをいただいていないです」と呼ぶ)

浜田委員長 長官、もう一回。

 内閣法制局長官。

横畠政府特別補佐人 ですから……(発言する者あり)失礼いたしました。

 結局、三要件に該当するかどうかというのは、何度もお答えしておりますけれども、具体的に事案が発生してからの判断でございます。

 それでありますので、単に、邦人を乗せた米輸送艦が武力攻撃を受けるということで新三要件に当たるんだというふうにこれまで説明しているものではないのだろうと私は理解しております。

後藤(祐)委員 ミサイル攻撃の明白な危険がない中で、邦人を輸送している米艦に対する攻撃だけでは存立事態は満たさないというお答えだというふうに今理解しましたが、まだ最後ちょっとだけ残している感じがありますので、これについての明確な政府としての考え方を当委員会に提出していただけるよう、委員長にお取り計らいを願いたいと思います。

浜田委員長 理事会で協議します。

後藤(祐)委員 残った時間で、長島議員そして長妻議員も触れておられました、我が国を防衛するために展開している米艦の話をしたいと思いますが、これは事情が多分二つあると思うんです。

 まず、朝鮮半島で、戦争にまだなっていない、アメリカが紛争に巻き込まれていない、地上戦は行われていない、そういう段階で、アメリカの艦船が日本を守るために展開している。第一撃がこのアメリカの艦船に対してなされる。この第一撃だけで存立事態を満たすかといったときには、これは、武力攻撃が発生しなければなりませんから、個別的自衛権と集団的自衛権については同時に要件を満たす。

 すなわち、我が国を守るために来援している米艦船については、この船が攻撃された場合は個別的自衛権の発動が可能ですから、先ほどありました、平成十五年、十六年の答弁上可能ですから、もちろん状況によりますよ、法理上は可能ですから。第一撃の場合は差がないと見てよろしいでしょうか、法制局長官。

横畠政府特別補佐人 その差がないというお尋ねの趣旨が、ややわからないのでございますが。

 その第一撃なるものが、米艦に対するその攻撃が我が国に対する武力攻撃であると認定できるのであれば、我が国はまさに個別的自衛権を発動すればよいということでございまして、その先、いわゆる集団的自衛権の発動を考える必要はない状況だと思います。

後藤(祐)委員 つまり、その場合には、集団的自衛権を発動できるすき間はないということだと思います。

 次に、もう一つのケース。別途、米国が地上戦を既に行っている。北朝鮮と米国がもう戦闘状態にあって、米国が武力攻撃を別途受けているという中で、アメリカの船が日本を守っていますという場合には、もしかしたら、若干違う結論が可能なんですか。

 つまり、日本を守るために展開しているアメリカの船が攻撃されるときに、個別的自衛権の発動は攻撃の着手がなければ反撃できませんが、それよりも前の段階で、存立事態を認める、集団的自衛権が行使できる時間的すき間というものが存在するのでしょうか。

横畠政府特別補佐人 既に我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生しているという状況設定のお尋ねでありますれば、その武力攻撃が、さらにというか、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるということが認定されるのであれば、それは新三要件といいますか、存立危機事態が認定される場合もあろうかと思います。

後藤(祐)委員 実際、どういう瞬間ですか。つまり、アメリカの船が日本を守っている。イージス艦が一番典型かもしれませんが、実際、発射されて着弾した、着弾すれば間違いないんですが、発射した段階でも攻撃の着手があると思います。この場合は個別的自衛権でいけます。それよりも前の段階というのは、一体どうやって存立事態を認定するんですか。どうやって、こういった例えば国会承認という手続をとるんですか。

 例えば、北朝鮮の船がアメリカのイージス艦に対して攻撃するために北朝鮮のどこかの港を出港して、移動して、発射準備をして、発射する、アメリカの船に着弾する。どの段階では個別的自衛権が発動できるけれども、どの段階だと、集団的自衛権がもうちょっと前の段階だと発動できる、具体的な段階を追って説明していただけないでしょうか。これは防衛大臣かもしれませんね。

中谷国務大臣 いろいろな状況の推移があると思います。

 政府として判断するわけですから、当然いろいろなところから情報収集をする。特に、米国においては緊密な連携をしておりますので、そのための情報収集をいたしまして判断をするわけであります。

 政府がこういった計画を立てるわけでありまして、すぐにその時点で立てるような計画もありますが、もうあらかじめいろいろな計画等は準備しておいて、いざそういう状況になったときに閣議決定をし、そして国会にかけるわけでございますので、こういった判断をして、日本の存立事態というものが意思決定されるということでございます。

後藤(祐)委員 具体的に、いつ、どんな相談を、どうやってやるんですか。もう撃つ直前ですよ。そこをきちんと説明していただきたいと思います。

 もう質問時間が来たので終わりにしますが、ホルムズ海峡は第二要件の観点から大変厳しいということがわかりました。邦人輸送に関しても、邦人輸送自体は直接関係ないということがほぼ明らかになりました。そして、今のイージス艦のようなケース、我が国を防衛しているアメリカの船についても、個別的自衛権との時間的差分というのは極めて薄く、それを存立事態と認定するような手続をやっている暇が一体どこにあるのかということについては、これから追及してまいりたいと思います。

 いずれにせよ、集団的自衛権を認定する新三要件を満たすようなケースというのは極めて少ないのではないか、そもそものニーズがない、立法事実が存在しないのではないかということを強く訴えて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 民主党、緒方林太郎でございます。

 四回目の質問になりますが、よろしくお願いを申し上げます。

 きょうの審議の中で、自民党の会合における不規則発言、さらには歴史認識と言われたものがやはりクローズアップをされてくるだろうと思います。この法律を施行する際に政府がどういう過去に対する認識を持って、そしてこの法律の施行に臨んでいくのかということを最初に取り上げさせていただきたいと思います。

 まず、きょうはこの後、南シナ海等々でお伺いすることにしておりました山谷大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 さきの大戦については侵略戦争だというふうにお考えになりますか、大臣。

山谷国務大臣 控えさせていただきたいと思います。(発言する者あり)

浜田委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 山谷大臣、答弁願います。

山谷国務大臣 海洋政策担当大臣として控えさせていただきたいという意味でございましたが、これまで繰り返し国会でも申し上げてきたとおり、安倍内閣といたしまして、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおりまして、今後とも引き継いでまいります。

緒方委員 では、正確に申し上げましょう。

 国務大臣としてお伺いをいたします。さきの大戦については、侵略戦争だというふうに思われますか。もう一度。

山谷国務大臣 戦後、我が国は、さきの大戦への深い反省の上に、自由で、民主的で、人権を守り、法の支配をとうとぶ国家をつくり上げまして、アジアや世界の平和と発展のために大いに貢献してきておりまして、このことは、国際社会から高い評価を得てきているところでありまして、平和国家としての歩みを今後とも続けてまいりたいと思います。

 歴史に関する問題でありますが、歴史家や専門家に委ねるべきと考えております。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 それでは、山谷国務大臣、答弁願います。

山谷国務大臣 先ほども御答弁をさせていただきましたが、安倍内閣といたしましては、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおりまして、今後も引き継いでいくということでございます。

緒方委員 御答弁になっていないですね。侵略戦争であったかどうかという認識について、イエスならイエス、ノーならノーで結構であります。答弁ください、大臣。

山谷国務大臣 我が国が過去に行った行為、具体的に特定というのは困難でございますが、安倍内閣として、侵略や植民地支配を否定したことは一度もございません。

 基本的には、歴史の問題については歴史家に任せるべきであろうと考えております。

緒方委員 否定しなかったですね、大臣。

 では、侵略戦争ではなかったという認識をお持ちですか、大臣。

山谷国務大臣 繰り返しになりますけれども、安倍内閣として歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいるということでございます。

 その上で、安倍内閣として、侵略や植民地支配を否定したことは一度もない。

 そしてまた、歴史の問題については歴史家に任せるべきであろうと考えているところでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 山谷国務大臣。

山谷国務大臣 安倍内閣は、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいくということであります。

 安倍内閣として、侵略や植民地支配を否定したことは一度もないということでありまして、午前中に中谷防衛大臣が御答弁されたことと私も同じでございます。

緒方委員 では、その具体的な中身、調整した上で答弁いただければと思います。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 山谷国務大臣。

山谷国務大臣 私も、緒方委員と同じく、戦争の悲惨さを胸にとどめ、二度と戦争を起こしてはならないという考えは同じであります。

 また、村山談話にありますように、「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。」と村山内閣総理大臣談話にございますが、それも含めて安倍内閣として引き継いでいるということであります。

緒方委員 国策を誤ったというところについては御答弁をいただいたというふうに思います。

 それではもう一つ、歴史認識の中で、これは山谷大臣がお好きなテーマでありますけれども、東京裁判についてお伺いをいたしたいと思います。

 日本は東京裁判を受諾したということで、サンフランシスコ平和条約第十一条に書いてありますね。

 大臣、受諾したものについて、何を受諾したというふうにお考えですか。大臣。

山谷国務大臣 我が国といたしましては、サンフランシスコ平和条約第十一条により極東国際軍事裁判所の裁判を受諾しておりまして、それに異議を唱える立場にないというふうに考えておるところでございます。

緒方委員 山谷大臣が七、八年前に国会で質問しておりまして、そのジャッジメンツ、裁判について答弁が来ております。

 そのジャッジメントの内容となる文書、これは、従来から申し上げておりますとおり、裁判所の設立、あるいは審理、あるいはその根拠、管轄権の問題、あるいはその様々なこの訴因のもとになります事実認識、それから起訴状の訴因についての認定、それから判定、いわゆるバーディクトと英語で言いますけれども、あるいはその刑の宣告でありますセンテンス、そのすべてが含まれているというふうに考えております。

という答弁が政府からございました。これを日本として全部受諾しているという認識でよろしいですか、大臣。

山谷国務大臣 極東国際軍事裁判所の裁判の内容となる文書は三部から構成されておりまして、この中に、裁判所の設立及び審理並びに根拠法、侵略及び太平洋戦争等に係る事実認識、起訴状の訴因についての認定、判定及び刑の宣告が全て含まれております。

 日本は、このような裁判を受諾しており、裁判における個々の事実認識等について、積極的にこれを肯定あるいは積極的に評価するという立場に立つかどうかということは別として、国と国との関係において、当該裁判について異議を述べる立場にございません。

緒方委員 東京裁判のジャッジメンツ、千二百ページぐらいあります。非常に膨大なものでありますけれども、その一つ一つについて異議を唱えることはないと。確認であります、大臣。

山谷国務大臣 日本は裁判を受諾しており、裁判における個々の事実認識等について、積極的にこれを肯定あるいは積極的に評価するという立場に立つかどうかということは別として、国と国との関係において、当該裁判について異議を述べる立場にないと考えております。

緒方委員 一つ一つについて異議を唱えることではないということでありましたが、二〇〇六年六月、「自由民主」という雑誌で対談をしておられます。その中で、稲田朋美さん、さらには、お亡くなりになられましたけれども、岡崎久彦さんとともに対談をしておられまして、その見解についてはおかしいということを、山谷大臣、累次にわたって言っておられます、この対談の中で。

 見解が変わったということですか、大臣。

山谷国務大臣 私が先ほど答弁いたしましたのは、安倍内閣の大臣としてでございます。

緒方委員 では、個人としては意見が違うということですね、大臣。

山谷国務大臣 本日は安倍内閣の大臣として答弁したいと考えております。

緒方委員 では、お伺いいたしたいと思います。退任された後も、今答弁されたことは引き継いでいくおつもりがございますか、大臣。

山谷国務大臣 安倍内閣の大臣として答弁したところでございます。

緒方委員 そこではいと言わない段階で、大臣をやっているから、今、恐らく嫌々ながらでしょう、嫌々ながら、東京裁判について全部受諾しているということを、今大臣だから言うけれども、けれども実は本音は違うんだ、そういうような答弁でございました。

 本当にこういうことで、この程度の歴史認識で本当にいいのかということを、私は非常に深刻だと思いますよ。自分が大臣についているときであれば、それは閣内の言うことを聞くけれども、実はそれは意見が違うんだと。また、恐らく、これで閣内を離れられたら違うことを言うんだろうと思います。

 本当に、そういう認識で、戦争責任について正しい認識を持った上で、戦争中のさまざまな日本の歩みについて……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

緒方委員 痛切なる反省に立った上で歩んでいくことが、これがこの法律を施行していく上でとても重要なことだと思います。

 そういう姿勢がない状態で、戦争に対する反省と、そういった思いがない中でやっていくことは、本当に私は危険だと思いますよ、大臣。

 もう一言、大臣、答弁いただければと思います。

山谷国務大臣 何をもって緒方委員がそのように決めつけられるのか、私よくわかりませんけれども、私の父は傷痍軍人でありまして、平和を願う気持ちは誰にもまさっていると思います。

緒方委員 それでは、この歴史認識の話を少し脇に置いて、質問に入っていきたいと思います。

 きょうは、南シナ海の件についてお伺いをいたしたいと思います。

 中国が非常に活動を活発化させている地域ですね、南シナ海。まず、南シナ海、南沙諸島の周辺の法的な地位について、海洋政策担当相の方にお伺いをいたしたいと思います。

 今、中国が三千メートル級の滑走路をつくっているファイアリークロスリーフとか、レーダーサイトを置いているスビリーフという環礁がございます。報道等、さらには研究者の情報を総合すると、あれは低潮高地であるというふうに言われておりますが、その認識でよろしゅうございますでしょうか。では、外相でも。

岸田国務大臣 委員も御案内のとおり、国際海洋法条約の上において、海洋は、公海、排他的経済水域、領海あるいは内水、こうした海域に区別されます。

 そして、御指摘の点がこのどれに当たるかという点につきましては、南シナ海の状況について、現状どういった状況になるのか。低潮高地であるのか、それとも高潮時においても水面に頭を出している土地であるのか、こういったことについて我が国として正確に把握することができない、こういった状況にあります。

 ですから、御指摘の点についてどう判断するのか、我が国として判断する材料を持っていないというのが現状であります。

緒方委員 本当にこれは把握していないんでしょうか。

 実際に、低潮高地ですと領海を持たないんですね、領海を持たない。今、中国がばんばんと建物をつくっていますけれども、人工物を幾らつくろうとも、別にその環礁の国際法上の法的地位というのは変わらないわけでありまして、これが低潮高地であるか、それとも潮が満ちているときに頭が出ているかどうかというのは、その後のさまざまな警戒監視活動においてとても重要なポイントだというふうに思うわけですが、いかがでございますでしょうか、大臣。

岸田国務大臣 おっしゃるように、国際法上、高潮時において水面上にある地形、これは領海を有します。一方、高潮時には水中に没する地形は、原則として領海は有しないものであります。さらには、人工島は島の地位を有さず、領海を有さない、こういった規定になっております。

 ただ、こうした埋め立ての有無等によりこうしたものは影響を受けるものではないとされておりますので、現状がどうであったか、これをしっかり把握しなければなりません。

 今、南シナ海においては、中国として七つの地域でさまざまな動きを示しているわけですが、現状が今申し上げたどの形に当てはまるのか、こういったことについて我が国として十分把握できる立場にありませんので、これについて明確なお答えをすることは難しいという立場にあります。

緒方委員 しかし、これから警戒監視活動に対して日本の貢献が求められているというような話もございます。そのときに、その置かれている例えば一つ一つの環礁、ファイアリークロスリーフとかスビリーフとかいろいろございますけれども、その位置づけがはっきりしなければ、本来であれば、国際法上、低潮高地であればその領海を持たないわけですから、その周辺を幾ら通っていこうが、何ら、島に居座っている勢力からけちをつけられる必要は全くないわけでありまして、このことがわからないというのは、これから仮に南シナ海でさまざまなオペレーションを例えば米軍と協力してやっていくときとかに、非常に問題が生じるのではないかというふうに思いますが、この件、お調べになる気持ちがございませんか、外務大臣。

岸田国務大臣 まず、今申し上げましたように、中国が埋め立てを進めている各地形が高潮時においても水面上にあるか否か、このことについて、我が国として確定的に述べることは困難であるという立場にあります。

 そして、南シナ海の現状について申し上げるならば、南シナ海に領海以外の海域が存在するかという点について、南シナ海全体の地形や広さ、あるいは国連海洋法条約上、領海の幅は十二海里を超えない範囲とされております。こういったことを考えるならば、南シナ海に領海に属さない海域は存在する、このように考えているところであります。

 我が国としまして、南シナ海の法的地位につきましては、今申し上げましたような認識に立っております。

緒方委員 これはぜひ調べていただきたいですね。これは与野党問わず、多分、皆さん思いが一致すると思います。

 今、中国が、さまざまな埋め立てを行っている、レーダーを置いている、そういった場所、それが、低潮高地というのがそもそも領土かどうかということについても国際法上さまざまな議論があるわけですけれども、それ以上に、そこに本当に巨大なものが建っているけれども、それが実は法的に、国際法上、領土として、そして領海を持つような領土として正当化されるのかどうかということについては、南シナ海が場合によっては重要影響事態に当たることもあるんだ、南シナ海で何か起こったときにそれが重要影響事態になることもあり得るのだというような答弁もこれまでの審議の中でございました。

 そのことに鑑みれば、このことについては、外務省、さらには海洋政策本部もかもしれませんけれども、しっかりと協力をした上で、この委員会の方に、その位置づけ、島なのか、低潮高地なのか、それとも潮が引いている段階でも頭を出さないようなそういう岩なのか、それについて御報告をいただきたいと思いますが、大臣、約束してください。

岸田国務大臣 まず、現状における我が国の立場は、先ほど申し上げたとおりであります。

 中国が埋め立てを進めている各地形が高潮時においても水面上にあるか否か、これについて確定的に申し上げることは困難であります。そして、今現状において、こうしたさまざまな地形がどのような状況にあるのか、我が国として確定的に確認することは困難な状況にあると考えております。

 こういった状況でありますので、我が国としましては、今申し上げたような南シナ海の法的地位に対する考え方は引き続き維持することになると考えます。

緒方委員 それでは、日本にも協力が求められてくると思いますけれども、仮にここで警戒監視活動をする際、十二海里以内には絶対入っていかないということになるんだと思いますけれども、そういうふうに中谷大臣は思われますか。

中谷国務大臣 現在、自衛隊は、南シナ海におきまして常続的な警戒監視を行っておりません。また、そのような具体的な計画も有していないということでございます。

緒方委員 具体的な計画を有していないということでありますが、今後、ガイドラインを見ていても、さまざまな地域での連携協力ということも書いてございます。今、フィリピンとP3Cを入れた上での共同訓練も行っているということでありまして、これは仮定の質問になりますけれども、今後、南シナ海での警戒監視活動にP3Cを出していくこと、これについては、今具体的にないと言いましたけれども、念頭にございますでしょうか、大臣。

中谷国務大臣 自衛隊はこれまで、フィリピンやベトナムなど南シナ海の周辺の国々に対する能力構築支援、キャパシティービルディングや、米海軍との共同訓練を行うなど、地域の安定に資する活動に積極的に取り組んでまいってきておりますけれども、この地域を警戒監視するとか、具体的な計画につきましては有しておりません。

 このような中で、今後とも、安全保障に与える影響等を注視しつつ、十分に検討を行っていくべき課題であるというふうに考えております。

緒方委員 では、今具体的なオペレーションとして検討しているところはないということでありましたが、法律上、こういうことをやることは可能でしょうか、大臣。

中谷国務大臣 法律上は、我が国の安全にかかわる情報収集、警戒監視、これは今でも行えることになっておりますので、我が国の安全保障にかかわることであるならば実施することは可能であるということでございます。

緒方委員 現行の法律でも行い得るということでありました。そこから先は政策判断だろうというふうに思います。

 それともう一つ、これは平時の状態を想定しての質問ですけれども、私は、南シナ海で警戒監視活動をするアメリカからの要望の中でどういうものがあり得るかなということで、自分でいろいろ想像をめぐらせてみました。

 今、P3Cの話、これも一つあり得るだろうと思います。それともう一つあるのではないかなと思っているのが、給油に来てくれないかというようなことが、実際に警戒監視活動をしている米軍の艦船に対して給油に来てくれないかという要望があり得るのではないかというふうに私は思います。

 米軍への給油活動というのはインド洋でも行ってまいりました。それと全く対応が同じだということではありませんが、これから米軍艦船が南シナ海で警戒監視活動を行うときに、警戒監視活動そのものに参加してくれる必要はないけれども、給油に参加してくれないかということがあり得るのではないかというふうに思いますが、これは今回改正される自衛隊法において可能でしょうか、大臣。

中谷国務大臣 まず、重要影響事態ですね。(緒方委員「いや、平時で、今のような状態で、警戒監視活動をやる」と呼ぶ)平時におきまして。

 かつて、テロ対策特措法におきまして燃料補給の支援活動を行いましたが、現在はそのような法律がないということでございます。

緒方委員 あくまでも今、例えばあしたとかあさってとかいうことではないですけれども、特に重要影響事態が生じているとかいうことではなく、今南シナ海でかなり緊張があることはわかりますけれども、今の法律上の整理でいうと、現時点では平時であります。

 その平時において、米軍艦船が普通の警戒監視活動をやっているときに、給油活動のみを目的としてその活動に協力していくこと、これは今の大臣の答弁ではできないということでありましたが、それでよろしいですね。もう一度、確認です。

中谷国務大臣 現在、米国とはACSAを締結しております。現在の法律の範囲内で実施することはできますが、あくまでも法律の範囲内ということでございます。

緒方委員 今回改正される自衛隊法第百条の六のところに、「合衆国軍隊に対する物品又は役務の提供」という項目がございまして、それを読んでみると、給油活動に来てくれという要望に対して応えるだけのメニューがそろっていないというふうに私には見えるんですけれども、大臣、その認識でよろしいですか。

中谷国務大臣 現在は、法律によって限られた場合だけでございます。

緒方委員 後ろの方からのサポートがあっても結構ですので。

 今回改正される法律において、今米軍が警戒監視活動をやっていることに対して、給油のみを目的として協力、支援をしてほしいという要望があるときに、その要望に応えるだけのメニューがこの自衛隊法第百条の六に書かれておりますでしょうかという質問でございます。

中谷国務大臣 今回、自衛隊法百条の六を改正するわけでございますが、新たに追加されるということにおきましては、まず、警護出動、そして海賊対処行動、そして弾道ミサイル破壊措置行動、機雷、危険物の処理、そして外国における緊急事態に際しての邦人の救出、警護、また、船舶、航空機による外国軍隊の動向に関する情報その他我が国の防衛に関する情報収集のための活動とありますが、あくまでも、日本と米国がともに活動している場合、それに限られるわけでございます。

緒方委員 ということは、補給艦を出して給油に来てくれと、インド洋でやったようなああいうオペレーションについては、これはアメリカとのガイドラインをさまざま議論してつくられたんだと思いますけれども、現在、日米の関係において、この給油活動、補給の活動についてはニーズがなかったということでよろしいですね、大臣。

中谷国務大臣 ともに警戒監視をやっているという場合においては可能ではないかと思います。

緒方委員 いや、それはわかっております。

 そうではなくて、ともに、実際に一緒にそういう警戒監視活動をやっていて補給活動をするのではなく、純粋に補給艦だけで行ってということについては、これはニーズがない、ニーズがないから自衛隊法第百条の六のところに書き込んでいないんだということで、大臣、よろしいですね。

中谷国務大臣 この法律の規定によりますと、米軍に対する物品、役務の提供に関しては、以下の活動また行動を行う自衛隊の部隊とともに現場に所在して同種の活動を行う米軍を対象に追加するとなってきております。

緒方委員 つまり、それが行えないということなんですよね。補給活動のみを目的として自衛隊が米軍に、例えば南シナ海で警戒監視活動をやっている米軍の艦船に補給活動に出るということはできないというのがこの自衛隊法の規定であります。

 それは、とりもなおさず、ニーズがないということでよろしいですね、大臣。

中谷国務大臣 米軍単独ではできませんし、ニーズもございません。

緒方委員 本当ですかね。アメリカがこうやって警戒監視活動をしているときに一番に来そうなオペレーションだというふうに思いましたけれども。

 いずれにせよ、この件については、もう一度確認であります。

 大臣、給油に来てほしいという要望は、アメリカから来ることはおよそ想定されない、だから、法律に書き込まなかったのだということでよろしいですね、大臣。

中谷国務大臣 アメリカが単独で行動している活動につきましては、ACSAの支援ができないということでございます。

緒方委員 それは法律に書いてあるとおりなんですが、つまり、そういう要望は来ることが想定されていないということで、それで、大臣、よろしいんですよねと確認であります。

中谷国務大臣 今はそういうニーズはございません。

緒方委員 私は、そうではないんじゃないかなと思いますけれども、質問を移したいと思います。

 では、そういう平時の状態から重要影響事態というふうにグレードが、危機の度合いが上がっていくわけでありますが、これまでの答弁の中で、南シナ海で起こる中でも重要影響事態に該当する場合があり得るという答弁がございました。

 一つで結構ですので、例えば、こういうことが起これば南シナ海で起こっている事態は重要影響事態に当たるのだというその例について、大臣、挙げていただければと思います。

中谷国務大臣 これは、実際に発生した事態の規模、態様、推移等を総合的に勘案して、個別具体的に判断をすることになりますので、一概にお答えすることは困難でございますが、政府としては、南シナ海の状況については、現時点で、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に当たるというふうには考えておりません。

緒方委員 一つだけで結構ですので、何か、例えばこういうことが起こったら、後で質問しますけれども、重要影響事態というのが、「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」というのが定義でありますけれども、その定義との関係で、南シナ海で起こったことがどういう意味合いにおいて「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」になるのかということについて、国民の皆様が想像がつくような説明をいただければと思います、大臣。

中谷国務大臣 あらゆる事態を想定はしておりますが、重要事態が生起する地域から特定の地域をあらかじめ排除することはできないわけでございます。

緒方委員 いや、それがわかりますから、だから、南シナ海で起こることの中で、つまり、「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」という、それだけが定義としてばんとあって、そして、どうも南シナ海で起こることについても重要影響事態の対象となることがあり得る、もうそれだけの情報しか今国民には与えられていないわけですよね。

 一つ一つ、全ての事例を答えるのは、そんなことを求めているんじゃないんです。そんなことを求めているのではなくて、南シナ海でどれぐらいのことが起こったら重要影響事態に該当し得るんだろうかということについて、イメージが湧くような説明をしてくださいというふうに先ほどから言っているんです、大臣。

中谷国務大臣 今まで挙げた例につきましては、これは、中東とかインド洋などの地域で深刻な軍事的緊張状態、また武力衝突が発生した場合であって、我が国に物資を運ぶ日本の船舶に深刻な被害が及ぶ可能性があり、かつ米軍等がこうした事態に対応するために活動している状況が生じたときは、その他の状況も勘案した上で、当該事態が重要影響事態に該当することはあり得るということでございます。

緒方委員 すぐにその答弁が出てくれば、こんなに時間をとらなかったわけでありますが。

 しかし、この重要影響事態という言葉、定義については非常にわかりにくいところがある。読んでみますと、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」、これを重要影響事態と呼ぶというふうに書いてあります。

 一応、定義の確認でありますけれども、最初の方の、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」というのは、あくまでも例示であって、定義そのものに全く影響を与えないということでよろしいですね、大臣。

中谷国務大臣 委員の御指摘のとおり、例示でございます。

緒方委員 そうすると、結局、重要影響事態というのは、その肝というか、それは何なのかというと、「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」、これだけなんですね、これだけです。これまでは「我が国周辺の地域における」という言葉がついていたのが、外れてきます。

 そうすると、周辺地域で起こっていることではないんだけれども、「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」ということですから、それぞれの言葉の定義がとても重要になってまいります。とても重要になってきます。一つ一つの言葉がはっきりとしてこないと、結局、ぶわっと何でもかんでも、「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」と、どんどん広がっていくことを懸念いたします。

 大臣、我が国の平和及び安全、この意味について御答弁いただければと思います。

中谷国務大臣 我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態でございますが、どういう事態かといいますと、それぞれの規模、態様、推移等を総合的に勘案して、国家として主体的に判断をしていくということでございます。

緒方委員 それでは、結局、後方支援をすることができる法律というのは、恒久法と改正周辺事態法なわけですけれども、恒久法の方は、要件が、例えば、こういう決議が出るとかそういったことがあって、少し幅があると思いますけれども、結構幅が、歯どめがかかっているとまで言うとはばかられるかもしれませんけれども、一定の決議を要件としている。

 そうすると、後方支援で、仮に、我々が懸念しているのは、恒久法の方ではまらなければ、我が国の平和及び安全という概念を非常に長く広く解して、それに全部ひっかけて、いずれにせよ後方支援をしようとするのではないか、そういうツールとしてこの重要影響事態が使われるのではないかということが懸念になってくるわけであります。だから、私、先ほどから聞いているんです。

 我が国の平和及び安全、これは何ですか。

中谷国務大臣 その意味するところは、その性質上、軍事的な観点を初めとする種々の観点から見た概念でございまして、実際にいずれの事態が該当するか等につきましては、これまで述べてきたとおりでございますが、具体的な状況に際して、当事者の意思、能力、事態の発生場所、事態の規模、態様、推移などを初め、日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行う米軍その他の外国軍隊等が行っている活動の内容の要素を総合的に考慮しまして、我が国に戦禍が及ぶ可能性、国民に及ぶ被害等の影響の重要性などから客観的かつ合理的に判断するということでございます。

緒方委員 それは全然、客観性に欠けている、いかようにも使えるような定義でしかないわけですね。

 本当に、先ほど言ったように、恒久法の方が要件が、やはり決議とかそういったものではまっている中で、では、恒久法がだめだから、恒久法が使えないから、だから重要影響事態をすごく広く解して、これもあれもそれもどれも我が国の平和及び安全に当てはまるのだというふうに解釈することができるような、まさにこの重要影響事態に関する法律は、これは、我が国がそう判断すれば客観的な決議とかなんとかそういった要件が必要なくて、国会との関係さえクリアすればそれで出せるわけですよ。客観的な基準が欠けているわけですね。

 それは、確かに、本当に、周辺事態であれば、我が国の周辺で「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」だ。けれども、これからは、我が国の周辺の地域におけるというのが落ちてしまっている以上は、もう少し、大臣、我が国の平和及び安全という言葉について、どこまでのことがこれに当てはまるのかということについて明確にならないと、もう既に存立危機事態については、要件が厳しそうに見えても、もう打ち出の小づちのように何にでもひっかけられるというような感じになっているわけですよ。第二の打ち出の小づちじゃないですか、これは。

 大臣、だからこそ私は聞いているんです。「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」、この我が国の平和及び安全という言葉について、もう少し踏み込んだ答弁をいただければと思います、大臣。

中谷国務大臣 まず、現在の周辺事態法と比べまして、安全保障環境が変化をしたということで、特定の地域をあらかじめ排除することは困難であると考えたわけでございます。

 そして、もう一つ、同時に、国際平和支援法というものを法律で制定いたしました。これにつきましては、こっちの方は、国際社会の平和及び安全のために国際社会が共同して対処している事態、そして国際社会の平和及び安全の確保に資するために我が国が実施する対応の措置を定める法律でございます。

 あくまでも、重要影響事態というのは、我が国の平和及び安全に資するための対応措置の法律でございまして、これにつきましては、ある事態が重要影響事態に該当すると評価をされる場合におきましては、政府は、閣議決定をした基本計画を遅滞なく国会に報告するとともに、後方支援活動の実施については国会の承認が必要であるということで、基本計画にその理由とか状況とか、それを示した上で国会の承認を得るわけでございますので、その中で、我が国の安全に重要な影響を与える事態であるということを認定して説明をするということでございます。

緒方委員 いや、これは問題ですよ。最終的に何かといったら、基本計画に書き込んだときにそれを見てくれて、それで判断すればいいじゃないかというようなことですけれども、そうじゃなくて、もう少し、「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」、これしか書いていないわけですから、定義はこれだけなわけですよ。そして、これさえ満たせば、恒久法と違って、決議を要件としているような恒久法と違って、後方支援の発動が可能になっていくわけです。

 だからこそ、もう少し定義のところを踏み込んでいただかないと、何でもかんでもひっかけられるじゃないか、そういうふうになっていくことを懸念するがゆえに私は聞いているんです。

 しっかりと大臣、今後ろから紙が行ったようですので、答弁いただければと思います。

中谷国務大臣 我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態というのは、発生した状況が直接的に我が国に影響を及ぼす場合だけではなくて、さまざまな状況が複合的に絡み合って影響を及ぼす場合、時間的な間隔を持った幾つかの要因が重なり合って影響を及ぼす場合など、まさに千差万別であります。

 また、発生する地域、どのような地域が事態の当事者となっているか等によっても、それぞれの状況が我が国に及ぼす影響の程度も変わってくるということでありまして、あらかじめ類型的にこういうものであると言うことは困難でございますが、まず、周辺事態におきましての六類型、六つの具体例等について示していたこともこの判断の一つでございます。

 いずれにしましても、これは厳密に事態の認定を行いますので、そういう決定におきましては、政府で閣議決定をする際に、明らかに我が国の重要影響事態だということを、理由を述べて、また、国会の方にそれを承認いただくという手続がございますので、厳格に説明をしてまいりたいと思っております。

緒方委員 つまりそれは、今聞いて、ああ、なるほど、それが我が国の平和及び安全かということを理解した議場の方もいなかっただろうし、そして国民の人もいなかっただろうと思います。

 結局、ペンのなめ方次第だと。ペンをなめて、うまく作文さえすれば、何でも我が国の平和及び安全にひっかけられるじゃないかというふうに、そういう懸念があるから、だから、我が国の平和及び安全というのがこの事態において何なのかということを聞いているんです。

 大臣、この件は、後方支援にどういう要件で行くか、恒久法で行くのか、それともこの重要影響事態で行くのか、それとも行けないのかという判断をするときに、とても重要な要件です。

 この件について、では、委員長にお願いしたいと思います。

 我が国の平和及び安全というのは何なのかということを政府に提出をいただけるように、取り計らっていただければと思います。

浜田委員長 理事会で協議いたします。

緒方委員 その上で、「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」というのが、それでは何なのか。

 先ほど若干、大臣、煙幕を張るように答弁をしておられましたが、周辺事態においては、野呂田大臣における野呂田六類型というのがありました。若干、あの類型も、よく見てみると結構幅広いなと思うことがあるわけでありますが、それでも六つの類型が出てきて、大体こういうことが当てはまれば周辺事態だと。これは、今、我々が国会審議をするに際しても非常に参考になっているわけですよね。

 中谷大臣にお願いをいたしたいと思います。野呂田六類型にかわる中谷六類型、答弁いただければと思います。

中谷国務大臣 この問題は、以前、民主党の玄葉委員からも御質問いただきましたので、一応、政府としての考え方はお示しをいたしております。

 六類型等につきましては、大事な要素でございますので、これを引き継ぐわけでございまして、内容的には周辺事態における認定と私は同じ考え方で認定をいたしますし、また、考え方等につきましては、累次御説明しておりますけれども、当事者の意思、能力、また発生場所、事態の規模、態様、推移などを総合的に判断していくということでございます。

緒方委員 では、野呂田大臣の六類型の中に、一から六まであるんですけれども、その中に、我が国の周辺におけるという言葉が入ってきている類型が、一と二と三が、それぐらいだったと思いますけれども、その一と二と三におけるところの我が国の周辺におけるという言葉を落とせば、落とせば、それで重要影響事態に該当する、そういう理解でよろしいですか、大臣。

中谷国務大臣 そういった考え方もできると思います。

緒方委員 そういう考え方もということでありましたが、つまり、この定義のところで何が変わっているかというと、我が国の周辺の地域におけるという言葉が落ちているだけなわけですよ。であれば、野呂田六類型に書いてある、我が国の周辺におけるという文言が入っているところの、我が国の周辺におけるという言葉を落とせば、落とせば、それがそのまま重要影響事態の類型になるという理解でよろしいですかと聞いているんです、大臣。

中谷国務大臣 落とさなくても類型になります。

緒方委員 それはそうですよね。

 今の野呂田六類型というのがあって、それよりも今回広いわけですから、ベン図で描けば中に含まれることは、それは当然なわけです。そんなことを聞いているんじゃないんです。

 この法律のこれまでの周辺事態の定義で、我が国の周辺におけるという言葉が、今回の重要影響事態で落ちるわけですよね。であれば、それとの並びで、野呂田六類型のところで我が国の周辺におけるという言葉が入っているところが類型の中に幾つかあります。その類型の中の我が国の周辺におけるという言葉をその野呂田六類型の中から落としてしまえば、それが重要影響事態の新しい中谷六類型になるという理解でよろしいですね、大臣。

中谷国務大臣 平成十一年の政府見解の六つの具体例について申し上げれば、これらは当時、あくまでも事態が生起する原因に着目したものとして、少なくとも外形的には一定の類型化が可能であると整理してお示しをしたものでございます。

緒方委員 普通に考えれば、もうこれで終わりますけれども、周辺事態で、「我が国周辺の地域における」というふうに書いてあるんですね。それで、「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」と書いてあるわけだから、野呂田大臣が提示された六類型の中で、我が国の周辺におけるというその概念さえ落としてしまえば、それがそのまま重要影響事態になるのではないですかと極めて論理的に説明したつもりなんですけれども、大臣からは、はい、そうですという答弁が返ってきませんでした。先ほどから言った、我が国の平和及び安全についても全然これだとわからない、そして重要影響事態の類型についてもお述べいただけない、これだと何に自衛隊が出ていくのかということがよくわからなくなってくると思います。

 この件、また質問をさせていただきたいと思いますので、質問をここで終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、小沢鋭仁君。

小沢(鋭)委員 維新の党の小沢鋭仁でございます。

 重要影響事態を主に質問しようと思っておりましたので、今の議論は大変興味深く聞かせていただきました。後ほど具体的に入らせていただきたいと思いますが、個々の質問に入る前に、きょうのこの議論を聞かせていただいていて私が感じたことをまず申し上げたいと思います。

 まず、マスコミ批判の件も、あるいは歴史認識の議論の件も、私がかつて中谷大臣、岸田大臣等と議論をしていたころの自民党とかなり雰囲気が違うな、こういうふうに感じました。いわゆる歴史認識の話で出てくる村山談話、これは自社さ政権ですよね。自社さ政権のときの談話ですよ。そのとき一緒に仕事をさせていただきましたけれども、そういったときの自民党というのは、もうちょっと、ある意味では広がりがあり、また鷹揚さがあり、リベラルと言ってもいいのかもしれません、そういうのがあったと思いますが、きょうの議論は、答えができませんとか、歴史認識に対して政治家が答えができませんというのは嘆かわしいと思いますよ。

 そういうことを感じたんですが、これは岸田大臣の方にお尋ねしたいと思います。そういった、いわゆる自民党でいえばリベラルの系譜を持つ宏池会の今リーダーですよね。どんな感想ですか。

    〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕

岸田国務大臣 まず、今回の件につきましては、報道の自由というもの、これは、民主主義社会にとって、あるいは健全な社会にとりまして、なくてはならないものです。こうした報道の自由というものに対して、この重要性、我々はしっかりとかみしめなければなりません。

 そして、加えて、今回の件で思いますのは、沖縄の皆様方に対する思いであります。私たちの先輩方は、沖縄の皆様方の苦難の歴史に思いをめぐらし、その思いに寄り添いながら、沖縄の負担軽減、さらには沖縄の未来について汗をかいてきたと自負しておりますし、振り返っております。こうした我が党の先輩方の努力が誤解を受けるような事態になったとしたならば、これは大変残念なことであると思います。遺憾に思っております。

 ぜひ、我々自身、気持ちを引き締め、思いを引き締めて、しっかりと、報道の自由についても、あるいは沖縄の皆様方に対する対応につきましても取り組んでいかなければならないと考えます。

小沢(鋭)委員 答弁は大変結構だと思いますが、現実にはそうなっていないだろう、こう思いますので、閣内においてしっかりと、今の答弁に沿った発言とか活動とか、ぜひお願いをしたい、こう思いますね。

 それから、今回の安全保障法制の話は、憲法審査会のさきの参考人質疑等で、違憲であると学者の皆さん方がおっしゃっていますね。

 その具体的な中身に入る前に、これは確認でありますが、まず、我が国の憲法の平和主義はしっかりと守っていく、そういう決意がおありなんですね。それとも、今は閣僚だから言えないかもしれませんが、必要に応じては今の憲法も変えなきゃいけない、こういう立場もあるんだろうと思いますよ。今、岸田大臣は、まさに憲法の平和主義をこれからもしっかり守っていくんだ、そういうお気持ちですか。

岸田国務大臣 我が国の平和主義、平和国家としての歩み、これは、戦後七十年、我が国の歩みを振り返りますときに、最も大切な考え方、取り組みであったと振り返っています。

 そして、このことは、これからも変わることがあってはなりません。平和国家として、しっかり平和主義を守りながら、国際社会の平和や安定や繁栄のために汗をかいていかなければならないと強く感じております。

小沢(鋭)委員 これも答弁は結構なんですが、この安全保障法制、私は、平和主義からかなり逸脱していると思いますよ。それをこれから一つ一つやっていきたい、こう思います。

 まず、今回の安全保障法制は外務省の主導だ、こう言われる意見がありますね。我が党の中でも質問させていただきましたが、アーミテージ・リポート、あるいはまた今回決まった新しい日米のガイドライン、こういった話は、まさに、ある意味では安全保障法制であると同時に外交政策でもあります。その観点から、私は、大きな転換点だ、こう思っておるんですが、まず、外交政策として、そういった、具体的に言えば米国からの要請、圧力、具体的にはどんなものがあったんでしょうか。あったとしたらおっしゃってください。

岸田国務大臣 まず、一昨年十二月に我が国として初めてまとめました国家安全保障戦略の中にあっても、我が国の外交、安全保障政策を考える際に、まずは外交政策を通じて我が国にとって好ましい国際環境をつくっていく、これが基本であり要諦であるという考え方が示されております。我が国として、国際社会においてしっかりと汗をかき、そして好ましい環境をつくっていくことをしっかり行った上で、そして万が一の場合に備えて切れ目のない安全保障体制をつくっていく、これが基本的な考え方であると思います。

 そして、我が国の安全保障政策を考える際にあって、我が国の存立、あるいは我が国の国民の命や暮らし、これをしっかり守るために我が国としてどこまで対応しなければならないか、これはあくまでも我が国が主体的に考えることであると考えます。他国との連携はもちろん大切なことでありますが、この基本的な部分においては、我が国自身が主体的に判断し、考えるべき課題であると考えます。

小沢(鋭)委員 今、大臣は、我が国のまさに平和と安全、それを我が国が主体的に、こういう話をおっしゃっておりましたが、今回のガイドラインの最も重要な点は、これは目的のところを読ませていただきますと、「日本の平和及び安全を確保するため、」こうありますが、同時に、その後は、「また、」という言葉があって、「また、」ですよ、そのためのではなくて、「また、アジア太平洋地域及びこれを越えた地域が安定し、」こういう言葉がつながるんですね。そしてさらには、強調すべき案件として、「日米同盟のグローバルな性質」、こういうことが書かれているんですよ。

 ガイドラインは、これは安全保障法制のまさに直前に決まりましたね。その決まり方も私はおかしい、こうは思っておりますが、これは決定的に日米安全保障条約を超えた話になっているんじゃないですか。

岸田国務大臣 新ガイドラインについて御指摘をいただきました。

 この新ガイドラインの中には、御指摘のように、我が国の安全にかかわるような、日米安全保障条約、そして、それに関連する法規に根拠を置く部分がありますが、一方で、グローバルな協力等、日米安全保障条約あるいは関連法規に根拠を置かない部分というものが存在いたします。

 ただ、これは、十八年前の、前の旧ガイドラインにおいても同じであります。もともと旧ガイドラインにおいても、安全保障条約等に根拠を置くものと、グローバルな協力等、根拠を置かないものが存在いたしました。だから、従来も、ハイチにおける協力ですとかアデン湾等における海賊対策等、こうしたグローバルな協力が行われて、実績が積み重ねられてきました。従来のガイドラインからしてそうした二つの部分が存在したからこそ、今日まで、今申し上げましたようなさまざまな実績を積み重ねてきたわけです。

 この新ガイドラインにおいても、構造自体は全く変わっておりません。日米安全保障条約あるいはそれに関連する法規に根拠を置くものと、グローバルな協力等、そういった日米安全保障条約等に根拠を置かないものが存在するという構造は全く変わっていないということを御理解いただきたいと存じます。

    〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕

小沢(鋭)委員 どこに書いてあるんですか。それから、その、程度の問題も大変重要だと思いますよ。

 やはり私は、我が国のまさに平和と安全を守るための自衛の活動というのは、これはきちっとやっていかなきゃいけない、国際環境も変化をしている、それは私も我が党も認めているわけですね。同時に、いわゆる国際協調主義に基づく活動もしっかりやるべきだ、こうも思っているんですね。

 しかし、その中間地点ですよ。中間地点が恣意的に行われるという話は、まさに我が国の憲法の持っている平和主義、これと私は相入れないというか、それを超える部分があるのではないか、こう思っていて、後に申し上げますが、重要影響事態がまさにその典型だ、こう思っているんですね。

 まさに今、岸田大臣がおっしゃった、いわゆる日米でグローバルな問題に対処するという話が果たして本当にどこに書いてあって、どの程度やるのか、では、なぜわざわざ今回目的のところに、今申し上げたような、「アジア太平洋地域及びこれを越えた地域が安定」というのを書き、日米は「日米同盟のグローバルな性質」を強調すると書いたんですか。

 オバマ大統領が、アメリカが世界の警察国家であることはあり得ない、こういう話をしていく中で、かなりそういった意味では力も衰えてきている、そういう中で日本がその補完勢力になっていく、そういう流れの一環じゃないんですか。

岸田国務大臣 まず、ガイドラインの構造につきましては、今回の新ガイドライン、そして十八年前のガイドラインとも同じ構造をとっております。先ほど申し上げました、日米安全保障条約及びその関連法規に根拠を置くものと、そうでないもの、グローバルな協力等が含まれており、この構造は全く変わっていないということであります。

 加えて、これも新ガイドラインの中に明記されていることですが、それぞれの国の憲法、そしてその時々において適用される法令に従う、これはもう明記されています。加えて、新ガイドラインの中には、専守防衛あるいは非核三原則を初め、国の基本的な安全保障政策、これもしっかり守っていくんだということが明記されております。

 ガイドラインの構造は新しいものも古いものも全く変わっておりませんし、そして、加えて、今申し上げましたような点がこのガイドラインの中に明記されておるわけですから、あくまでも、我が国の憲法あるいは関連法規に従って我が国の取り組みが決められる、決定される、こうしたことであります。この点につきましても、新ガイドライン、旧ガイドライン、全く変わっていないということも申し上げさせていただきたいと存じます。

小沢(鋭)委員 構成はそうだ、こういう話を認めたとしても、程度の問題、あるいはまた、後方支援で行える内容、具体的に後から申し上げますが、これはかなり拡大をし、私は、日本の憲法の平和主義から逸脱している、こう思いますね。それを申し上げておきたいと思います。

 同時に、安倍総理の米国議会での演説がございました。その中で、国際協調主義に基づく積極的平和主義は日本の将来を導く旗印になる、こういうくだりがありますね。きょうの質疑の中でも、中谷大臣からそういった発言がありました。このくだりと、日本の平和主義の制約、そういった話は今回の安倍総理の演説の中には一切なかったんですが、これまた岸田外交として、そういった、まさに、積極的平和主義が日本の将来を導く旗印になる、これの平和主義の制約というのはあり得るんですか、ないんですか。

岸田国務大臣 積極的平和主義の考え方ですが、まず、今日、安全保障環境が大変厳しくなる中にあって、どの国も、米国ですら、みずからの国を一国のみでは守ることができない、これが国際社会の常識となっています。こうした国際情勢の変化の中で、まず、我が国として、どのように我が国をしっかり守っていくのか、切れ目のない対応をどのように整備していくのか、これをしっかり考えなければなりません。

 そして、あわせて、国際社会の一員として、しっかりと国際社会の平和や安定に貢献していこう、こういった内容をこの一連の法制の中に盛り込んでおります。国際社会に貢献するということ、これは積極的平和主義の取り組みとして大変重要なことですが、こうした取り組みを行うことによって平和な国際環境をつくり、そして、そのことがひいては我が国の平和や安全を守っていく、こうしたことになると考えます。こうした考えのもとに積極的平和主義をしっかり進めていかなければならない、このように考えます。

 限界ということについて御質問がありました。その限界という意味がちょっと、十分私把握できてはおりませんが、積極的平和主義と我が国の安全保障、そして国際社会の平和と安定の関係については今申し上げましたような関係になると認識をしております。

小沢(鋭)委員 私は、具体的に、制約といった点で三つを考えています。まず地理的条件、それから支援をする相手国、それから支援をする具体的内容、私は、この三つが憲法の平和主義で大事だろう、こう思いますので、具体的に後ほど聞かせていただきたいと思います。

 もう一点、ちょっと理念的な話をさせていただきたいと思います。国民の皆さんにぜひその辺を理解していただくのは大事だと思うものですから、あえてこういう質問をしますが、これは中谷大臣にお尋ねいたします。

 これまた自民党の先輩議員でありまして、山崎拓議員が発言をしていますね。山崎拓議員と中谷議員、安全保障の関係で大変親しく、御指導もいただいてきた関係だと思います。

 山崎大臣はこう言っているんですね。

  専守防衛政策は他国防衛容認へ。自衛隊の海外派遣止まりから海外派兵容認へ。国際紛争を解決する手段としての武力行使の永久放棄から、後方支援限定ながら武力行使容認へとの大転換を意味している。総じて言えば、不戦国家から軍事力行使国家へとの大転換を意味し、国策を大きく誤ることになる恐れなしとしない。

 平和国家としての国是は大いに傷つくことになる。

ここまで言っているんですね。

 中谷大臣、どうですか、感想は。

中谷国務大臣 基本的に、政府は、国の存立と国民の命、そして平和な暮らし、これを守るのが責務だと思います。

 しかし、時代というものはどんどんどんどん進んでいきまして、安全保障環境は非常に今変わってきております。例えば、科学技術の進歩によってミサイルの射程も上がっていますし、命中精度、これも上がってきております。そして、テロ、きのう、おとといも世界各地で発生をしてきておりますが、非常にこういった脅威の形や認識も変わってきている。それから、パワーバランス、私はここ七、八年だと思いますが、北朝鮮や中国等の軍事力等が非常に大きくなった。

 いろいろな意味の我が国の安全上何をすべきかということを考えますと、一つは、他国で起こった脅威も我が国の安全の脅威と非常に大いに関係し得る事態である、もう一つは、一国のみで我が国を守ること、これはなかなか厳しくなってきた。

 ですから、専守防衛という意味も、やはり我が国を守っていく上においては、自国が攻撃をされたときも当然でありますが、我が国と密接な関係にある他国、特に日本を守ってくれている他国が攻撃を受けた際に、我が国の存立や国民の権利を根底から崩すような場合においては、これは我が国の必要最小限度の防衛であって、すなわち他国の防衛ではなくて我が国の防衛であるという認識からいきますとまさに専守防衛、これの基本は変わっていないと思いますし、政府としては、こういった時代の変化においてもしっかりと国を守れるという体制をつくっていかなければならないというふうに思っております。

小沢(鋭)委員 思いはそのとおりでいいと思いますけれども、先ほどから申し上げているように、逸脱している部分があるんだ、こういう話ですよ。

 憲法審査会で三人の先生方が違憲であると言いましたけれども、この違憲であると言った内容は二つなんですね。一つは、まさに、限定的であろうと何だろうと集団的自衛権を認めるという話が一つ。それからもう一つは、これは余り議論になっていないんですが、先ほど来議論が始まっております重要影響事態、そこにおける後方支援なんですよ。これも違憲だと。

 こういう二つの点が違憲だと言われているんですが、その御認識は、中谷大臣、おありですか。

中谷国務大臣 私たちは、法律を考える際に、やはりあくまでも憲法の許容の範囲であると。その根拠としましては、昭和四十七年の、憲法の基本的論理の考え方に基づいて、今の安全保障の変化に当てはめて、現在のこの存立にかかわる事態を新たにつくったわけでございます。

 また、武力の行使の一体化、これもやはり、一体化を避けるために、憲法との関係、現に戦闘行為が行われている地域、現場ではない、現場ではないところでは行わないというようなことで、憲法上一体化を避けるという内容の法律をつくっているということで、憲法の枠内で私たちはこの法律をつくったという認識でございます。

小沢(鋭)委員 あくまでも今の後方支援は現行憲法の枠内、こういう御認識で、三人の憲法学者の認識は誤っている、こういうことでよろしいですか。

中谷国務大臣 私たちはあくまでも昭和四十七年の政府見解における基本的な論理に基づいて考えたわけでございますので、私たちの考えにおいては正当性があるというふうに認識をしております。

 それから、一体化につきましても、先ほどお話がございましたけれども、現に戦闘行為が行われている現場ではないところで実施するということで、憲法的に、武力行使をすることがないという前提のもとに実施をしたということでございます。

小沢(鋭)委員 後方支援に関して、私はさっきも申し上げましたけれども、地理的条件を外したこと、それから、いわゆる支援対象国を米軍以外のところに拡大していること、さらにはまた、具体的な内容で、武器弾薬、武器は外しましたが、弾薬の提供、あるいはまた発進準備中の航空機に対する給油を新たに加えたこと、この三点は、私は、決定的ないわゆるはみ出し行為だ、こういうふうに思っているわけであります。そして、憲法学者の皆さんたちもそういった話をおっしゃっているわけであります。

 これをどうしてもやらなければならない外交的な要因というのは、岸田大臣、あるんですか。

岸田国務大臣 先ほども少し触れさせていただきましたが、我が国の安全保障を考えた場合に、我が国みずから切れ目のない体制をつくることは大変重要でありますが、あわせて、国際社会の平和と安定にしっかり貢献していく、我が国にとって好ましい、安定した国際環境をつくっていく、こうした取り組みも大変重要だと考えています。そしてそのことが、ひいては我が国の平和や安全にもつながっていく、こうした考え方に立っております。

 そういった中で、我が国として、厳しい国際社会の中でどのような貢献を行っていくのか、こうした後方支援についても、現実に即してしっかりと考えていかなければならない課題だと考えます。

小沢(鋭)委員 具体的に私が申し上げた、地理的条件を外したこと、それから支援国を米国以外に広げたこと、それから新たに、今までの特措法でもやっていなかったいわゆる支援を行っていること、この三つが私は行き過ぎではないか、こういうふうに申し上げたんですが、それをどうしてもやらなければいけない、そういう外交上の要請というのはあるんですか。改めてもう一回お尋ねいたします。

岸田国務大臣 まず、一つ目の地理的な制約についてですが、従来の周辺事態確保法においても、周辺事態は、事態の性質に着目した概念であり地理的な概念ではない、このように説明をしてきました。そして、国際環境、安全保障環境の変化の中で、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態が生起する地域について、あらかじめある地域を排除する、こういったことも困難であるという事情もあり、そして、今回の法改正に当たって、周辺という表現は地理的概念と誤解されるおそれがある、こういったことから、御指摘のような改正を行ったわけであります。

 そして、米国以外の後方支援活動の実施ということにつきましても、国の平和と安全を確保するということにおいて、米国以外の外国軍隊に対しても支援をするということ、これは、国際社会の変化の中で重要であると認識をしております。

 そして、弾薬等を加えたということにつきましては、これは、現実の中でニーズが生じているということに対応するものであると考えております。

 こういったこと、こうした取り組みにつきましては、先ほど中谷大臣の方から、憲法との関係においても、我が国は、政府としましてこれはしっかり整理をし、憲法の範囲内であるということを答弁させていただきましたが、国際法においても、我が国が、国際法上正しいことをしている外国軍隊等に対して支援をすることは、これは武力の行使に該当しないと整理をされています。国際法上もこうした整理が行われているわけであります。なおかつ、実際の運用におきましても、後方支援が安全でなければならない、これはもう軍事的な当然の要請でありますし、そして加えて、この法律の中においても、実施区域を区切る、あるいは一時休止を行う、あるいは中断を行う、さまざまな安全に備えた工夫をしております。そういったことを考えますときに、実際問題として、巻き込まれるというようなことについてもしっかりと整理がついていると考えております。

 こういったことを考えますときに、我が国として、後方支援について対応するということ、これはしっかりと取り組まなければいけない課題であると認識をいたします。

小沢(鋭)委員 この特別委員会の最初の総括審議の中で私は安倍総理にも申し上げたんですが、我が国の憲法の平和主義というのは、第二次世界大戦を経て、そして、我々は、全ての戦いというのは正義のための戦いである、そう思って戦ったことが誤りであった、全ての戦争、全ての戦いは正義の名のもとにおいて行われる、だから、我が国は、紛争を解決するための手段として武力行使は永久に放棄する、そういう憲法の規定を持ったのです、こうある先輩議員に言われたということを申し上げました。それを言ったのは、宮沢喜一先生ですよ。宮沢喜一先生がそうおっしゃったんです。

 今、岸田大臣は、国際法上正しいことを行っている、まさに戦いを行っている者に対する支援というのは国際法上容認される、こういうお話があったやに聞きました。これって、まさに我が国が持ってきた平和主義の精神と相入れないんじゃないですか。

 だから、私は、さっきから、冒頭から申し上げているように、国際環境の変化は認めるんです、そのための自衛のための活動をしっかりやる。そしてまた、我が国の防衛に資する活動を行ってくれている、いわゆる条約上の同盟国が攻撃を受けた場合にそれを支援するということは、これはあり得る、それも認めているんです。いわゆる国際協調主義のもとで、これはもう地球の裏側まで行っても結構なので、PKOとか、そういった国連の名のもとにおける活動は大いに日本もやるべきだと思っているんです。

 ただ、その間にあるのが、さっきからの、いわゆる重要影響事態、こういう、話の定義もはっきりしない。紛争は今でも行われているんですよ、世界じゅうで。戦争が行われていますよ。そういった中で、何が戦闘地域なのか、何が戦闘地域じゃないのか、平時なのか有事なのか、それもはっきりしない時代に、私どもは何らかの歯どめをしっかり持たなきゃいけないんじゃないですか、そういう話をこの安保法制の中でもやらなきゃいけないんじゃないですかということを申し上げている。

 一言で言うと、先ほどから繰り返しになるんですが、地理的制約というのもある程度持った方がいいんじゃないですか、あるいは支援国も対象を限定した方がいいんじゃないですか、それから、いわゆる後方支援の内容もやり過ぎはだめなんじゃないですかということを申し上げているんですね。国民は、この辺が全部取っ払われちゃっているから不安だし、これは何度答弁を聞いてもすとんと落ちないですよ。

 だから、岸田大臣に私が先ほどから質問しているのは、そこまでやらなきゃいけない外国からの要請というのは本当にあるんですか、外交上の要請というのはあるんですか、もうないんじゃないですかと。国際協調主義のもとでの活動をやる、それはいいです。それから、自衛のための活動をやる、それもいいです。それ以上やる必要はないんじゃないですか。多国籍軍あるいは有志連合、そういったものに加担をしていく、それは日本の平和主義に合わないんじゃないですかということを聞いています。

岸田国務大臣 先ほど来説明させていただきましたのは、まず、後方支援について、憲法との関係においても、これは現に戦闘行為が行われている現場では実施しない、こういったことによって一体性を回避し、憲法上の要請にもしっかり応えているということをまず説明し、そして、国際法においても、我が国のこういった取り組みは国際法上武力の行使には該当しない、国際法においてそう評価される行為であるということを説明申し上げ、そして、軍事的な観点からも、後方支援というものは安全な地域でやらなければ意味がないという現実があり、なおかつ、法律の仕掛けとしましても、実施区域等の運用において安全をしっかり確保する、こういった体制が整っている等によって巻き込まれるというようなことはないということを説明させていただいております。

 こうした、憲法においても、国際法においても、また安全においても、軍事的な要請においてもしっかり整理した上で、我が国として今後国際社会の中でしっかりと貢献をしていく。一国のみではどの国であってもみずからの平和や安定を守ることができない、こういった現実の中でしっかり汗をかいていく、こういったことは大変重要なことなのではないか、こうした説明をさせていただいております。

小沢(鋭)委員 時間がないのでまたの機会にしたいと思いますが、今の大臣の答弁を聞いていても、一般論にしか聞こえませんよ。やはり国民はこの不安は拭えませんね、今の御答弁では。

 では、ちょっと具体的に聞きますが、これは中谷大臣に聞きたいと思います。

 重要影響事態安全確保法二条のところに、いろいろな具体的な案件があるんですが、「その他の重要影響事態に対応するため必要な措置」をとることができる、これは何でもできるような規定がありますね。それから三条一項、これは支援相手国のところですが、その一号のところに「その他これに類する組織」というのがありますね。こういう、何か、何にでもとれるような条文になっているんですよ。

 中谷大臣は、先ほど、定義に関して午前中の答弁で、曖昧だというふうについ漏らされていましたけれども、こんなのは、本当に何にでもとれる条文を入れてあるんですね。これってインチキじゃないですか。

中谷国務大臣 まず、お答えといたしまして、合衆国等の等は、国連憲章の目的の達成に寄与する活動を行っている外国軍隊その他これに類する組織でございます。

 また、「その他これに類する組織」というのは、沿岸警備隊などの、軍隊以外の外国の組織のことでございまして、軍隊以外であっても、重要影響事態に対処して、国連憲章の目的の達成に寄与する活動を行っている組織があり得ることから、我が国として、事態に応じて適切な対応を行うことができるように支援対象に追加をしたものでございます。

 また、こういった重要影響事態等におきましても、どのような国が対象国となるか等につきましても、やはりこれは個別的、具体的な状況というものに即して判断をされるということで、あらかじめ特定国を申し上げることは困難でございますが、あくまでも法律で定められた要件、手続に従って我が国として主体的に判断するということでございまして、こういった事例に対して、計画をつくってその理由を説明するなどして国会の理解も得て実施をしたいというふうに思っております。

小沢(鋭)委員 時間ですから終わりますけれども、今おっしゃったような、特に、その他これに類する組織という答弁があるんだったら、それをしっかり書いたらいいじゃないですか。「その他これに類する組織」という書き方のままじゃ、本当に、何にとられるかわからないですよ。

 ですから、そういった話も含めて、もうちょっとしっかり書き込むとか、あるいはまた類型をはっきりさせるとかしないと到底国民は理解できない、そのことを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、升田世喜男君。

升田委員 維新の党の升田世喜男であります。どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 官房長官におかれましては、大変お忙しいところ御出席いただきまして、ありがとうございます。

 まず、官房長官に出席を願ったのは、けさも某新聞にこの法案に関する世論調査が出ておりましたけれども、私のきょうお話しさせていただくデータは、一週間ぐらい前の某新聞の世論調査をもとにちょっと質問をさせていただきたいな、こう思います。

 この法案、賛成か反対か、これは反対が五三%、その新聞では。賛成が二九%でしょうか。いわゆる過半数を超えているということですね。私の記憶によりますと、ずっと前はむしろ賛成の方が多かった時期もあったと思います。あるいは、均衡していた時期が結構あったんじゃないかなと思うんですね。しかし、最近はぐんと反対の方が多くなってきた、こういう流れでございます。

 そして、この法案に対して説明が十分かどうか、あるいは丁寧かどうか、この件に関しては、十分でないというのが六九%。そして、今国会で成立させることが必要だ、これはもう少なくて、必要でないというのが六五%に上がっています。いわゆる丁寧でないというのが六九パー、今国会での成立は必要でないというのが六五パーです。

 まず、この六九%、六五%の数字に対して、数値に対して、官房長官としてどんな感想をお持ちでしょうか。

菅国務大臣 いろいろなところで世論調査が行われて、そうした数字も私自身も目を通しております。

 ただ、一つ一つそれに答えることは控えたいと思いますけれども、しかし、政府として、国民の皆さんにできるだけ理解をしていただくよう、そうしたことも真摯に受けとめながら努力をしていく、このことは極めて大事だというふうに思います。

升田委員 私はいわゆる安保関連法案と述べさせていただきましたけれども、この法案の正式名称というのは平和安全法制関連法律案という名称でありまして、平和という言葉が使われております。大変僣越でありますけれども、平和というのはやはり重い、極めて大事な言葉であろう、こう思うんですね。自民党の掲げている地方創生あるいは女性の活躍社会の実現、これも平和があってこそやはり実現ができるんだろうと思います。その意味においては、平和なくして政策の実現なし、私はこのように思います。

 また、大変、もう本当に僣越、恐縮でありますが、この政治の世界では信なくば立たずという言葉もございまして、いわゆる政治の世界では信頼が一番大事であるという意味でございます。

 さてそこで、私は、先ほど申し上げさせていただいた、今国会で成立させる必要がないという六五パーと、あるいは丁寧でないという六九パー、これがどんな空気感なのかなということを私なりに勝手に想像してみました。

 例え話が適切でないかもしれませんけれども、菅官房長官の前回の選挙に照らし合わせて、ちょっと私なりにお話をさせていただきたいと思います。

 十四万七千八十四票、もう圧勝です。これはもう努力と能力のたまものであろうと思いますし、敬意を表したいと思いますし、また、うらやましい限りです。私は、五回目で、十年かかってここへ来させていただいたものですから、素直にそう思っています。

 それで、菅官房長官の選挙区で、官房長官が当時候補者として選挙カーに乗っていろいろ運動しますと、恐らく、お向かいの車からもお手を振って、ありがとう、クラクションを鳴らして激励で、ありがとう、あるいは通るたびごと、お出ましいただいて、御声援いただいてありがとうございます、感謝感激です、こういう圧倒的な支持があって十四万七千八十四票という結果であろうと思います。

 実は私は、この十四万七千八十四票に興味があるのではなくて、これは恐縮です、得票率なんです。菅官房長官の選挙での得票率が六七・七一%です。いわゆる六九パー、六五パーと割かし近い数字なんですね。ある意味ほとんど同じと言ってもいいんだろうと思います。

 ということになりますと、官房長官の一たび選挙になったときの、その地域での応援者のあの支持率の空気感が、実は、まだ丁寧でないよ、あるいは急ぐな、今国会では決める必要はないんだよというのが国全体にこれは蔓延している、私はこんな捉え方をさせていただいております。

 そこで、いま一度お伺いをさせていただきたいと思いますけれども、改めて、この世論調査の数値と、加えまして、もう一つの、強行突破と言われても仕方ない六十日のルールというのを採用しない、そういう考えはない、こういうお気持ちかどうか、お尋ねをしたいと思います。

菅国務大臣 私の得票率まで御披露いただきまして、ありがとうございます。

 我が国を取り巻く国際環境が、この安全保障、極めて厳しい状況になっているということは、御自身も青森御出身です、かつて北朝鮮のミサイルがまさにあの上空を飛んだということもありました。ことしになってから、ミサイルの発射実験、何回となく行われています。そして、核の開発も進んでいる、このことも事実じゃないでしょうか。

 そうした中にあって、政府の仕事は、責任というのは、国民の皆さんの生命そして平和な暮らし、そしてまた国の存立を守っていく、このことも極めて大事なことだというふうに思います。

 そうした中で、できる限り国民の皆さんに理解をいただく中で、私たちは、今升田委員の言われましたような形で進める努力は行っていくべきだというふうに思っています。

 ただ同時に、かつて、PKO法案、国会で三国会議論をされたということがあります。結果、三回目の国会というのは、まさに四泊五日の牛歩国会だったということも記憶をしております。当時のいわゆる世論調査の中で、やはり憲法学者の方を含めて八割を超える方が反対だったということもあります。しかし、今日は約九割の国民の皆さんが国連のPKO活動については理解をいただいているということも、これは現実的な事実であります。

 私たちは、まさに切れ目のないこの法案を、そうした意味合いの中で今度の国会に提出をさせていただいて、皆さんにできる限り丁寧な議論をさせていただいて、決めるときは決めさせていただきたい、このように考えています。

升田委員 大事な法案ですので、丁寧に丁寧に、合意をもってということを再度申し上げさせていただきたいと思います。

 この後、官房長官への御質問の予定はございませんので、どうぞ退席なさって結構でございます。きょうはありがとうございます。

 それでは、安保関連法案についてお伺いをいたします。

 これまで、集団的自衛権や、存立危機事態、重要影響事態など、論戦が展開されてまいりましたが、私は、後方支援における協力支援活動について質疑をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、協力支援活動において自衛隊が行う物品及び役務の提供について。

 自衛隊が行う協力支援活動は、いろいろな分野にわたって行われます。補給に始まり、輸送、医療、修理及び整備、通信設備の提供、宿泊まで、実に多くの物品及び役務の提供が入っております。

 その中で、今回新たに追加された物品及び役務の提供があります。協力支援活動において、物品の提供については、武器の提供は含まない、これは従来どおりでありますが、新たに追加されたのが弾薬の提供及び戦闘作戦の行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備であります。政府は、この追加の提供について、武力の行使と一体化するおそれがないとして実施可能であるとしているわけでありますが、まず、弾薬についてお尋ねをいたします。

 我が党は、後方支援における弾薬の提供に関しても、武力の行使と一体化するとして反対の立場であります。

 テロ対策特措法では、物品の輸送について、陸上輸送は含まないとしておりますが、今回、弾薬の提供をする場合の輸送方法はどのようなものを想定されているのか、中谷大臣に御答弁をお願いしたいと思います。

中谷国務大臣 国際平和支援法におきましては、協力支援活動として自衛隊が行う物品、役務の提供の一環として弾薬の輸送を行う場合に、その方法に特段の制限は定められておりません。したがいまして、国際平和支援法上、弾薬の輸送が陸上で行われるか、海上で行われるか、航空輸送で行われるかは問いません。

 実際にどのような形で輸送を実施するかにつきましては、個別具体的な状況ごとに適切に判断していくこととなると考えておりますが、過去のPKO法や特措法の例によれば、一般的な物資の輸送方法は、自衛隊の後方支援部隊による車両を用いた陸上輸送、輸送艦や補給艦による海上輸送、C130などの輸送機による航空輸送などが考えられ、弾薬の輸送についても、基本的には同様の手段によるものと考えております。

升田委員 これは、陸上輸送というのはあるんでしょうか。そこのところだけ明確にお願いします。

中谷国務大臣 特に制限を課しているわけではございません。あり得るということでございます。

升田委員 陸上輸送があるという可能性がありますと、これはやはり自衛隊のリスクが大変高まっていくのではないかな、私はこのように理解をいたしました。

 弾薬のほかに、航空機への給油及び整備とありますが、しかも、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機とあります。この航空機とは、明らかに戦闘機や爆撃機を示すわけであります。そうなりますと、出撃準備中の米軍の戦闘機に対して給油や機体整備をする極めて危険な作業になると思うわけでありますが、この中身について、大臣にお尋ねしたいと思います。

中谷国務大臣 一般的に、作戦行動のために発進準備中の航空機への給油や整備を含めて、給油や整備といった支援活動の実施中は、支援をする側も、また受ける側も、攻撃に対して極めて脆弱な状態になるわけでありまして、したがって、運用上、現に戦闘行為が行われているような状況のもとでこのような支援をすることは考えられない。安全な場所で実施をする。そして、現に戦闘行為が行われている現場から一線を画すような安全な場所、ここで行うことになります。

 具体的には、地上の基地とか艦艇で給油、整備を行う場合には、現に戦闘行為が行われている現場から一線を画する安全な基地等や海域で実施をいたします。また、空中給油を行う場合にも、戦闘行為の発生が見込まれる区域から十分距離を確保した上で、安全な空域に空中給油エリアを設定して実施することになるわけであります。

 また、法律上も、大臣は部隊の活動が円滑かつ安全にできるように実施区域を指定するとされておりまして、この規定を受けて、現在戦闘行為が行われていないというだけでなく、自衛隊の部隊等が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる、こういう場所を実施区域に指定するわけでございまして、中止規定等もございます。

 新たな任務に伴う新たなリスクが生じる可能性はありますけれども、こういった法律上、運用上の安全確保の仕組みによって極小化をして、隊員を派遣し、また、計画もしっかり策定をして閣議決定して、最終的には国会に承認を求めることになりまして、隊員の安全対策には万全の対応をしてまいりたいと考えております。

升田委員 中谷防衛大臣もよく御存じのように、有事の場合、前線での戦闘もありますが、補給路を遮断するといった作戦も当然行われると思います。後方部隊が狙われるということであります。政府は、後方支援を、武力の行使と一体化ではないとの見解でありますが、相手国は果たしてそのように見るでしょうか。こういう物品の提供、すなわち、戦いを進めている米軍に対して補給活動をしている日本は、相手国から見れば敵国ですから、攻撃対象になると私は思います。

 維新の党は、我が国を取り巻く安全保障環境の変化に積極的かつ柔軟に対応することにしております。憲法の平和主義は、今日の日本の国際的地位にふさわしい貢献を国際社会全体の平和に対して積極的に行うことも含意しているわけでありまして、同時に、これらの対応をとることによって我が国みずからが国際的な脅威とならないようにするため、しっかりとした歯どめをかけることが極めて重要であるといたしております。そのために、これまでの専守防衛の考え方や、必要最小限の実力とした自衛隊といった基本理念を維持することが必要であるとの考え方であります。

 これまでの政府答弁では、戦闘地域ではないと言われますが、補給基地での活動であり、弾薬の提供を含め、非常に危険な任務になると思いますが、この点について、中谷大臣、どのようにお考えでしょうか。

中谷国務大臣 これは後方支援を行うわけでありまして、後方支援はそもそも戦闘を行うものではなく、また、その性質上、危険を回避して、活動の安全を確保した上で実施をするものでございます。これまでもイラク等で自衛隊派遣をいたしましたが、やはり、装備とか情報とか教育とかルールとか、こういうことをしっかりして、こういったリスクをしっかり管理して実施をいたしておりまして、こういった状況の中で、今後後方支援活動も同様に、やはり重々に情報等を確認した上で実施をする。

 また、補給を受けている間は攻撃に対して極めて脆弱な状況になりますので、現に戦闘行為が行われているような状況では有効な支援を受けることが困難ですので、後方支援の実施は安全な場所であることが大前提でございまして、防衛大臣は、自衛隊の活動を円滑かつ安全に実施できるように活動区域を指定いたしますし、また、戦闘が行われていないというだけではなくて、自衛隊が実際に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定する。また、状況が変化した場合には、部隊長の活動の休止、防衛大臣の活動の中断命令といった措置等もいたします。

 当然のことながら、現場の活動においても、独自の情報また外国部隊や外国政府との情報交換等を密にして、常に安全確保に配慮しながら活動をいたして後方支援活動を実施してまいりたいというふうに考えております。

升田委員 曖昧と楽観的だなというふうな感じは受けたわけでありますが、この件についてはまたの機会にさせていただきます。

 次に、自衛隊法の改正案であります。平素における米軍への物品、役務の提供の場合についてお尋ねをしたいと思います。

 これまで、政府は、米軍に対する物品の提供においては武器弾薬は含まないとしてきました。その理由は、物品、役務の提供の対象とする米軍の活動には戦闘活動は入っていないため、武力行使との一体化との関係ではなく、単に米国側からのニーズがないとの見解でありました。

 今回の改正案では、その対象とする米軍の活動を拡大した上で、武器の提供は引き続き含まないとしておりますが、弾薬においてはその提供を解禁することとなっております。

 弾薬の提供を含めた理由について大臣にお尋ねします。

中谷国務大臣 これは、一九九七年以降の前ガイドライン策定後、日米間で防衛当局が協議をいたしまして、この中で、米側から、各種事態における弾薬の提供を含む自衛隊による幅広い後方支援への期待が示されたということでございます。

 これを受けまして、新ガイドラインにおきましても、自衛隊と米軍は適切な場合に後方支援を相互に行うことを明記するとともに、平和安全法制の整備によって、武力攻撃事態に加えて存立危機事態、重要影響事態等において弾薬を提供することを可能とすることといたしております。

 このため、平素より、こうした事態を想定して、銃弾、砲弾等の弾薬を相互提供するための訓練を実施しておく必要があること等を踏まえて、自衛隊法第百条の六におきまして、米軍に対して弾薬の提供を可能とする改正を行うこととしたところでございます。

升田委員 以前、平成十五年のイラク・テロ特別委員会で、当時の石破防衛庁長官は、「他国に武器弾薬を依存するなんという軍隊は普通はない」、このような答弁をされております。

 石破大臣は自民党の中でも一、二を争うほどの防衛政策通でありまして、また中谷大臣も、防衛大学を卒業され、元自衛官であり、防衛政策には大変精通されている方と思っております。

 当時の石破防衛庁長官のこの答弁に対して、今やろうとしていることは、私から言わせてもらえば弾薬の提供はあり得ない話だと思うんですが、これはちょっと矛盾ではないでしょうか。いかがでしょうか。

中谷国務大臣 石破大臣がそのような発言をされたということは承知をいたしております。

 そもそも弾薬といいますと、それぞれの軍隊が保有する火器と適合している必要があるために、通常においては、各国の軍隊が活動するに際してみずから必要な量を携行して補給を行うということになるわけでございますが、今回の日米防衛協力の進展の中で、ガイドラインの見直しの協議の中で、緊急時等では一部の部隊への補給が滞る場合が発生する可能性は否定できないとの認識を共有して、米側から、各種事態における弾薬の提供を含む自衛隊による幅広い後方支援への期待が示されました。

 現実に、一昨年、PKOでありますが、南スーダンのPKOで、韓国の部隊から弾薬提供の要求がありまして、これは国連からの要請を受けて、陸上自衛隊部隊が想定外の状況により弾薬を融通する必要性が生じる場合もあり得たわけでございまして、今回も日米協議等を踏まえまして、弾薬の提供を可能にしたということでございます。

 今回の改正は、弾薬の確保はみずから行うことを基本としつつ、さまざまな状況への対応に万全を期すために行うものでございまして、当時の石破大臣の御発言と矛盾するものではないというふうに考えております。

升田委員 我が党はしっかりした歯どめをかけることが極めて重要であるということを主張させていただいております。武器に関しては認めるべきではないという立場であります。

 今回の政府案でも、武器の提供に関しては引き続き含めないということになっておりますが、アメリカ側から要請があった場合でもこれは変わらないんでしょうか。

中谷国務大臣 今回も、ガイドラインの協議の中で米側から武器についての支援のニーズはなかったということを踏まえまして、自衛隊が提供する物資の対象に武器は含めないとしたところでございます。これは、米側から要請がない限り変わらないということでございます。

升田委員 次に、岸田外務大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

 日米物品役務相互提供協定、ACSAについてであります。

 政府は、今回の自衛隊法の改正で、米軍への物品、役務の提供を拡大しようとしております。ACSAの第六条三項には、「日本国の自衛隊による武器若しくは弾薬の提供又はアメリカ合衆国軍隊による武器システム若しくは弾薬の提供が含まれるものと解してはならない。」となっております。物品、役務の相互提供の基盤であるACSAには、弾薬は含まれないと明確に書かれております。

 しかし、政府は、今回の安保関連法制の改正で、弾薬は含むと明記されました。今までは米国のニーズがなかったが、ニーズが発生してきたからだという答弁を繰り返し繰り返し述べております。

 ACSAには明確に、弾薬は含まれずと書かれておりますが、このことについて外務大臣はどのような御見解をお持ちでしょうか。

冨田政府参考人 日米ACSA第六条についてのお尋ねでございますけれども、この規定は二〇〇四年に改正されたものでございます。そして、この規定は、国際の平和及び安全に寄与するための国際社会の努力の促進、大規模災害への対処その他の目的のために自衛隊と米軍との間で相互提供される物品、役務に関するものでございまして、御指摘のとおり、この条項においては、武器または弾薬は含まれないというふうに明記されております。

 ただ、この規定は、この条項が設けられました二〇〇四年当時の国内法の規定、それから、それまでの日米防衛協力の状況を踏まえたものでございまして、その後、米側とのやりとりの中でニーズの変化というものを確認した点につきましては、先ほど防衛大臣の方から御答弁があったとおりでございます。

岸田国務大臣 ACSA六条三項について、そしてその後の経緯については、今、北米局長から答弁させていただいた次第であります。

 政府としましては、今般のこの国内法整備を踏まえて、速やかに日米ACSA交渉を妥結し、そして国会にその締結について御承認を求めるべく、作業を進めていきたいと考えています。

升田委員 今答弁をいただきましたが、私、今勉強させていただいているさなかでありますけれども、日米安全保障協議、いわゆる協定の改定よりも国内法の改正が先になるというようなことは、これはあってはならないと思うんですが、この辺がよく見えてこないんですけれども、この辺はどうなっているんでしょうか。

岸田国務大臣 まず、日米ACSAですが、これは日米の物品、役務の相互提供に係る手続の枠組みを定める協定です。

 そして、現行のACSAにおきましては、その手続の枠組みが適用される範囲について、共同訓練、PKO、人道的な国際救助活動、そして周辺事態に際しての活動、そして武力攻撃事態に際しての活動、及びこれら以外の活動であって、国際の平和及び安全に寄与するための国際平和の努力の促進、大規模災害への対処その他の目的のための活動、このように現状はなっております。

 ですから、もし今般の平和安全保障法制が成立するとした場合に、この日米ACSAが適用される範囲について、存立危機事態に際しての活動あるいは重要影響事態に際しての活動を新たに盛り込む、そして提供可能な物品に弾薬の提供を含むこととするなど、こうした新たな内容にする必要があると考えております。

 そして、国内法とACSAの関係について御指摘がありました。

 先ほど申し上げましたように、日米ACSAは物品、役務の提供について手続の枠組みを定めるものであります。従来から協定上明記されておりますとおり、自衛隊による物品、役務の提供については、あくまで我が国国内法を根拠として行われるものであり、国内法整備を踏まえて協定改正を行うことが問題になるとは考えておりません。

 よって、先ほど申し上げましたように、速やかにこのACSA交渉を妥結して、国会にその締結について御承認を求めるべく、国内法の整備が整ったならば作業を進めていきたいと考えております。

升田委員 あと五分ということであります。では、次に行きたいと思います。

 現行の自衛隊法では、物品、役務の提供の実施が可能な訓練は日米の二国間訓練ではあるが、改正案では、日米双方を含む三カ国以上の多国間訓練に参加する米軍への物品、役務の提供も実施が可能に改められております。三カ国以上の多国間とはどの国を想定しておられるのか、また、多国間訓練に参加する米軍とわざわざ入れた理由について、中谷大臣にお尋ねしたいと思います。

中谷国務大臣 これまでの日米と日豪、二国間のACSAに基づく物品、役務の相互提供の実績を踏まえましたら、米国、オーストラリア以外の外国軍隊との間でも、多国間訓練また国際緊急援助活動などを機会に、物品、役務の相互提供を行うニーズ、これは想定し得ると考えております。

 現在、我が国は、カナダ、イギリス、フランス、ニュージーランド等との間で物品、役務の相互提供の枠組みに関して交渉また検討等を行っているところでございます。いずれも交渉、検討中でありまして、現時点で、いかなる状況に際して相互提供を行うかは決まっておりませんけれども、双方のニーズが合致する範囲で必要な相互提供を行い得る仕組みを構築できるように努めてまいりたいと考えております。

升田委員 オーストラリア軍に対しても、周辺事態の安全確保など他の法律の改正等を受けて、必要となる範囲で、根拠規定、自衛隊法第百条の八の技術的なことを行うことにより提供が可能になっておりますが、将来において、どんどん法の解釈が変わってしまい、演習参加の国に物品の提供ということになってこないかどうか懸念されると思います。

 特に環太平洋合同演習、リムパックには、近年多くの国が参加しております。二〇一二年からはロシア軍が初参加し、昨年は、日本、アメリカを初め、オーストラリア、カナダ、韓国、インド、フランス、ノルウェー、チリ、メキシコ、シンガポール、ニュージーランド、コロンビア、インドネシア、ブルネイ、そして中国軍も参加している現状であります。

 この技術的な改正によって物品、役務の提供の相手国がふえてくることを私は危惧しておりますが、このことについて中谷防衛大臣のお考えをお聞かせください。

黒江政府参考人 今回の自衛隊法のACSAの関連の規定の改正でございますけれども、これはあくまで、オーストラリアにつきまして、極めて技術的な、除く規定といったものを置いておるということでございまして、今先生御指摘のように、現在、ACSA協定を結んでおりますのはアメリカとオーストラリアの二国だけでございまして、この提供の対象の国をふやすためには、あくまでも、新たに法律上、自衛隊法上に条文を追加するとともに、当該国との間で、先ほど外務大臣からございましたけれども、条約の形での協定を結ばないといけないということでございます。

 ですので、今回の法改正があれば今後自動的に多数の国とこの種のやりとりができるということではないということでございますので、その点はぜひ御理解いただきたいと思います。

升田委員 そろそろ時間が来たな、こう認識をしております。

 私、冒頭に、世論調査のことのお話で、大変失礼になったかもしれませんけれども、官房長官の、得票数ではなくて、得票率で六七・七一というのは、中谷大臣は何か資料を見ると大体六五パーの地域もあるんですね、選挙区で。ですから、あのぐらいの支持が、実は、まだ丁寧でないよ、あるいは不安だよ、そして急ぐんじゃないよという声が蔓延しているということを改めて申し上げさせていただきたいと思います。

 そして、国民全体が望んでいるのは、それは平和を守ってもらいたい。我が党も、今までと同じでいいという考えは全く持っておりません。しかし、歯どめが大事なんだ、こういう考えです。これまで平和日本で来たわけでありますから、これまでの憲法に則していかなきゃいけない、こういうことで、どうか、丁寧に丁寧に、そして、あのおごりのあるような、某勉強会であのような発言がありますと大事な法案に影響が出てまいりますから、その辺は注意なされた方がよろしいのではないかな、こんなふうに思います。

 どうもありがとうございました。

浜田委員長 次に、吉田豊史君。

吉田(豊)委員 二回目の登板をさせていただきました。前回、本法案に対する国民の理解状況についてということでお聞きしまして、今回も、その二ということで、同じテーマでお聞きしたいと思っております。

 特に、きょうは、具体的にはホルムズ海峡の機雷掃海の事例、このことにも焦点を絞ってお聞きしたいと思っております。

 この質問に入る前段階としてでございますけれども、私は、六月二十三日、慰霊の日というのがありまして、沖縄の方に、自身で勝手に行ってまいりました。何でかといいますと、私は沖縄大好き人間でございまして、自分の結婚式を二十年前にそこでやったとか、それから、年一、二回、多いときはもっと行っているんですけれども、沖縄に自分自身が足を運んだという人間でございまして、それで国会議員にならせていただいて、やはり国にとっての大切な日には自分が足を運びたい、こういう思いで、式典には参加しませんでしたが行ってまいりました。

 それから、つけ加えますと、きのう、おとついも沖縄の方に行ってまいりました。それは、たまたま、沖縄のことが話題になる、まあ事件と言えばいいか、事が起こりましたので、それを沖縄の皆さんはどう思っているかなというところを自分の肌で感じたい、こういう思いがあって行ってきたということでございます。

 ちょっと、事件という言葉、済みません、そういうことがあったのでということです。失礼しました。

 沖縄タイムスと琉球新報というのがテーマでしたけれども、私、きょうは沖縄タイムスを持ってきました。あっちに行って買って記事を見まして、よかったなという記事がありました。それは何かというと、「わたしの主張 あなたの意見」というところに、「追悼式でやじ 残念な気持ち」、こういう一つの記事があったんですね。

 これは、私自身も現場の慰霊のところにいまして、一国の総理大臣が慰霊のために足を運んでいるのに、それをひどいやじで罵倒するというのは私はやはり間違っているな、こういう思いでおりました。それをこの方はそう書いていらっしゃるわけですね。

 私はたまたまの例として新聞に出ているのかなと思ったんですけれども、きのう、おとつい行って、沖縄の人と何人か話をしたときに、あれは多くの沖縄の人がそう思っていることだ、やはり慰霊という場にあって、沖縄の県民の一部の人がやったことというのは、県民としても、いいことじゃない、こう思っているんだ、そういう感情が結構多いぞという言葉があったんですね。私は、それはさもあらんと思いました。

 一国の総理大臣というのは、きょう、いらっしゃいませんし、私はまだ質問させていただいておりませんけれども、やはり国の代表なんです。そして、私たちは、国民として敬わなくちゃいけないし、その言葉、その行動を、やはり共感を持たなくてはいけない、これは当たり前のことだと思うんですね。

 そういう中にあって、沖縄のことについて理解のないことがあったということが、これはどうなったのかなと思って、きのう、おとつい、おったわけですけれども、物すごい怒っていらっしゃるかなと思ったら、結構、沖縄の人たちは大分冷めていました。もう何か、それについて反応する気もないわ、こういうことだったんですね。

 これというのは、私は、今の安保法制、ここでやっていますけれども、この根本のところとして、沖縄という日本の中での特別の場所ということ、それから、さまざまな、日本の本土の人が持っていない具体的な現場の経験とか、そういうことが歴史としてあるわけです。だからこそ、そういうことをきちっと背中に背負いつつ、全体として国民として日本国の安全のために物事を進めていこう、こういうことが必要だと思いますので、改めて、私は、今回の法制についてもきちっとした理解を得ていく、そのための努力というのをより一層進めなくちゃいけないな、こういうふうに感じたところでございます。済みません、自分の思いばかり語りましたけれども。

 きょう、私は、国民へのわかりやすさということがテーマでございますので、それは具体的には言葉だろう、こう思っています。さまざまなこの委員会で発せられる言葉がやはり国民の皆さんにとってわかりやすいということ、それこそがこの法案のわかりやすさに直結する、こういうふうに考えるわけです。

 ですから、きょうの委員会も朝から私も後ろの方で傍聴しておりましたけれども、もう本当に言葉に対しては違和感の連続でした。不勉強な議員でございますけれども、常に国民と同じ、現場での目線で物事を聞かせていただく、こういうふうな立場でございますので、きょう改めて、私は、こんなことを聞くなということから聞かせてもらいます。

 きょう、幾つかの歴史認識についての話がありました。例えば戦後六十年の小泉談話とか村山談話とかいろいろあるわけですけれども、これについての閣議決定という言葉もあるんですね。

 横畠法制局長官にお聞きしたいと思いますけれども、閣議決定ということの重みと、それから、これは誰がどうこの言葉に縛られるのか、それを簡単に教えていただけますか。

横畠政府特別補佐人 閣議決定といいますのは、まさに閣議において決定する、全会一致というのが原則でございます。

 閣議決定で誰が縛られるのかということでございますけれども、その決定した内閣自身はもとより、そのもとにあります政府はその閣議決定に縛られるという関係にございます。

吉田(豊)委員 そうしますと、きょうは歴史認識というところについてのテーマが多かったんですけれども、この歴史認識についての閣議決定、談話として出されたものは、六十年のときの小泉談話というのが一番新しいものであって、そして、そうじゃないですか、そうじゃないんですね。

 そうすると、歴史認識についての閣議決定というものは、現時点で生きているという、それは何になるかというのは答えられる話なんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 済みません。ちょっとこの問題は、突然のお尋ねでございまして、正しくはお答えできかねますので。

吉田(豊)委員 ごめんなさい。聞こえなかったんですけれども。

浜田委員長 法制局長官、もう一回。

 声が聞こえなかったということですので、しっかり御答弁してください。

横畠政府特別補佐人 突然のお尋ねでございますので、ちょっとお答えすることを差し控えたいと思います。

吉田(豊)委員 済みません。ちょっと踏み込んだ質問とは理解しておりませんでした。失礼しました。

 閣議決定については、私の理解でございますけれども、当然、出された最新のものが今の現職の閣僚、総理大臣はもとより皆さんがそれに従っていくということだろうというふうに私は思っております。

 それであれば、当然、七十年談話という話もうわさには出ておりますけれども、まだ出されたわけでも何でもございませんので、きょうの答弁なさっている話を聞いていましても、安倍内閣としてはという前振りが必ずつくんですけれども、そういうことを言う必要もなくて、既に今現時点で生きているものについての認識をそのままおっしゃればいいんじゃないかなというふうに私は感じたものですから、何か、そういうやりとり一つ一つが、閣議決定というものがどういう位置づけなのかということもわかりにくくなるんじゃないかなと思うんですね。

 今回の平和安全法制一つをとっても、去年の閣議決定というものが一番ベースにあるわけですから、その上で、いろいろなものが積み上がっている。そうすると、閣議決定の重みというのは何かなというところもやはり私は出てくるというふうに感じるところでございます。

 具体的に、わかりやすさということから入りますが、わかりにくいのはなぜわかりにくいかというと、例を出されるんです。この例というのは、もしかしたら、難しいものをわかりやすくするために例が出てくるはずなんですけれども、例について説明されればされるほど、どんどんまたわからなくなってくる。それは例に値しないんじゃないかなというふうなことを私は違和感として感じるわけです。

 それから、今度、プロセスについての不信感というか違和感というものを私は持っています。これは、例えばこの委員会の中ででも、大きな意味で憲法にかかわっていることなんだったら、きちっと憲法について変えることの信任を仰げばいいんじゃないか、こういう言葉が出ると、例えば、私の中では、前回の総選挙というのは経済についての作戦をどういうふうにしていくかということについて国民の皆さんが御判断されたと理解しておりますけれども、この閣議決定はその前にやっているから、これについても国民の信任を得ているんだというような考え方、こういうのも、そう言われればそうかなと思うけれども、そうでないな、違和感を感じるなというところもやはりあるわけです。

 また、この委員会では、座して死を待つという非常に重たい言葉も結構出てきます。この座して死を待つというのは、私は、そういう状況がないとは言いませんが、やはりかなりの極論であって、そして、これを頻繁に使うというのは、理解しようとしている国民を、ある意味何かばかにしているんじゃないかなという言葉は言い過ぎかもしれませんけれども、もっともっと違う言葉で説明できるはずじゃないんですかというふうにやはり思います。

 こういう、私は、一般の国民として感じるであろうということを幾つか並べさせていただきましたけれども、具体的には、この法案について説明が入る、そして、説明があると必ず、幾つかの選択肢があるはずなのに、これしかないというような説明があるんですね。そうすると、その上で、それが具体的にこれしかないと言ったときに、もう一つあわせて具体性がないわけです。こういうことでは、私は、やはりこれ以上同じことを、これだけどんどん繰り返していても、この委員会でも、もちろん国民の皆さんにとっても、理解は深まらないんじゃないかな、こう思うわけです。

 こう考えると、根本的にこの法案というのはこういうでき上がりになっているんじゃないかなというふうなところにも行き着くと私は感じています。具体性を欠いている法案の仕上がりだからこそ、これ以上具体的には説明できません、それが一番合理的なことにつながっていくんじゃないかな、こういうようなことも思うわけです。

 具体的に、私は、きょうはホルムズの例についての違和感に入らせていただきたいと思います。残された時間を使って、ホルムズの例というのはいかに例に値しないかということを、ホルムズ潰し作戦ということで展開してみたいと思うわけです。頑張ってまいります。

 まず、何よりも、ホルムズの例というのはやはり国民からすると距離的に遠いんですね。距離感として、我が国の平和という言葉が頭について、そうすると、当然私たちは日本国民として自分の身近なところから物事を考えますが、こういうときに遠いんですわ、そこは。

 そして、具体的に国民が何を失うことになるのかというところを私は注目したいと思います。

 きょうの午前中の中谷委員が非常に大事な言葉を語っておられたと思います。委員が語っていらっしゃったリスクという言葉、御自身が自衛隊を経験なされているということでしたから、私以上によほど重い言葉としてリスクを語られたと思います。最終的には、失ってはいけないものがあるから、リスクをかけてでも任務を受けて、そして自衛隊が出ていくんだ、それは具体的に、訓練のときでさえ命がかかっている、こういう重みのある言葉も一緒におっしゃったわけです。

 そうすると、今度は、自衛隊を初め、そういう現地に行く皆さんに対して行ってこいと言う、言う方の重みというのは当然私は要求されるだろう、こう思うわけです。

 行ってこいと言う方にも覚悟が要るわけで、それは、行ってこいと言うのは当然政府であったり国民である、そういうわけなんですが、私は、具体的に、こういうときに、ホルムズというのは経済的な危機という言葉でも累次説明されておりましたので、簡単に言うと、国民として腹が減って困るから機雷をどけてきてくれ、こういうようなことを自衛隊に対して言えるのか、簡単に言えるのかという話じゃないかなと思うわけです。(発言する者あり)わかりにくかったですか。失礼しました。

 そこで、改めて、私は、何を失うのか、このホルムズの例というのは日本として何を失うのか。失うものはこれこれこれだ、だから、それを失ってはいけないので今動きが出るんです、動かなくちゃいけないんです、これが一番わかりやすいわけです。

 もうちょっと簡単なところからいきますけれども、国民の皆さんは、ホルムズ海峡といっても具体的なイメージを持っていらっしゃらないと思うんですね。中谷大臣に、簡単に、例えば海峡というのは一番狭いところで何キロぐらいあって、そして、機雷の敷設ということになっていくわけですから、相手は誰でもいいです、誰でもいいですけれども、機雷を敷設するとなったときには、具体的に、どれぐらいの時間をかけてそれが行われるだろうということ、それから機雷が浮いているのか沈んでいるのか、そういう簡単なことで結構ですから、国民がイメージできるようなことを教えていただきたいと思います。

中谷国務大臣 ホルムズ海峡というのはペルシャ湾の中にありまして、中東からは石油の八割、ガスの二割が日本に来ているわけでございまして、エネルギーの供給源でありますので、輸入の際にはこのホルムズ海峡を通ってこなければならないわけでございます。

 まず、この事例として、あくまでも我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生、これを前提といたしますが、例えば石油の、エネルギーの供給源が滞ることによって、単なる経済的影響にとどまらず、生活物資の不足、電力の不足、こういったライフラインの途絶が行われるわけでございますが、これで存立事態ということであります。

 非常に機雷の除去というのは難しいわけでございます。どこに機雷があるのかわかりません。地雷も、一度まかれるとそこの地域は歩けないんですね。機雷も、一度まかれるとそこの海域は船がなかなか通航できない。たちの悪い機雷がありまして、三回ぐらい通過すると爆発するとか、また、リモコンで爆発するとか、この除去というのは非常に地道で時間もかかる。

 例えば、湾岸戦争時に機雷がまかれたわけでありますが、ピーク時三十隻、これの掃海艇が各国から出ました。それでも約七カ月かけて掃海作業を行い、ようやく航行の安全を確保できた。日本の場合は、遺棄機雷として、停戦が合意された後に行きましたが、残された機雷というのは非常に難しい機雷で、浅い、海流の速い、各国が処理できない、そういう機雷を日本は非常に高い能力で処理をしたということで、国際的にも評価を得たわけでございます。

 このような状況で機雷がまかれますと、日本に対するエネルギーの供給がとまってしまうということで、国民生活が非常に厳しくなってしまう。これが長期間続きますと、備蓄が、石油は約六カ月あります、LNGは約二週間ありまして、機雷がなくならないとここの海域を船が通過できません。これを処理しない限りこれがとまってしまう、数年から数十年、非常に影響を及ぼすというようなことで、これがひいては我が国の国民生活に死活的な影響、すなわち国民の生死にかかわるような重大、深刻な影響が生じる事態も考えられるということで、存立危機事態というものによってこういった処理を可能にするということでございます。

吉田(豊)委員 そうしますと、何かの理由で機雷が敷設されまして、そして、敷設された段階でかもしれません、それからその後膠着状態になることも想定されているわけですね、機雷が敷設されて。そのどちらの状況でもいいんですけれども、午前中に岸田大臣の方から、こういうふうになったときに何もしないということはあり得ないんですよ、そういうふうにおっしゃったわけです。私も当然そうだろうと思います。今、中谷大臣がおっしゃったように、そのこと自身が我が国のさまざまな分野において非常に大きなことにかかわってくるのであれば、当然、政府とすれば、これについての対応を一つ一つ打たなくちゃいけないというのは当たり前のことだと感じています。

 いろいろな状況というのが想定されるんですが、機雷を置くに当たっても、先ほど午前中にあった、我が国を名指しの場合とそうでない場合ですとか、それから、いろいろな具体的な例というのはあると思うんですけれども、何もしないことはあり得ないということは、何をするかといえば、まず僕は会議じゃないかなと思うんですね。緊急に人を集めて、要は責任者たちを集めてということじゃないかなと思うんですが、具体的に、こういうことが起こった、そうすると、政府とすれば何か緊急招集みたいな形があるのかということを、どなたでも結構なので、お答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 ホルムズ海峡において存立危機事態が認定されて機雷の掃海を行うということになりました場合に、先ほど中谷大臣の答弁の中にもありました、一九九一年の湾岸戦争のときに、我が国を含めて三十隻の掃海艇が七カ月かけて掃海を行う、こうした大変な作業が行われました。ホルムズにおいて機雷の掃海を行う際には、これは各国が協力しなければとても対応することができない、これが現実であると思います。

 当然のことながら、我が国は、機雷の掃海において高い技術、実績を持っているわけですから、こうした各国の取り組みにしっかり参加をしなければならないわけですが、やはり、全体として、こうした掃海を効率的に行うためには、各国の連携が重要であります。各国としっかり連携した上で対応していく、これが現実の姿だと思います。

 御指摘のように、各国との間において意思疎通を図るために、さまざまな会議等が持たれるのではないかと想像をいたします。

吉田(豊)委員 済みません、下手な質問の仕方で失礼しました。

 私がお聞きしたかったのは、その存立事態の認定という、政府として行っていく、その手前のところの話でして、これが存立危機の事態に当たるかどうかということを決める会議があるんじゃないかなというところなんですね。

 あるのはもちろんあるんでしょうけれども、私が今ここでお聞きしたいのは、そこに法制局長官は行くんですか、存立危機事態かどうかということを決める場所に、その会議なりに。どういうふうになっているんでしょう。

横畠政府特別補佐人 具体的にどのような会議かによりますけれども、NSCの会議におきましては、必要に応じて出席することもございます。

吉田(豊)委員 私は、必ず出席していただかなくちゃいけない、こう思う、本当に決める場合は。

 何でかというと、法制局長官はいつも、実際に起こった事態に対しての判断だ、こういうことを常にこの委員会でおっしゃっているわけですね。そうすると、実際に起こった事態に対して判断していく、その実際に起こった事態が、具体的なときに何からかんからそろうわけです、その判断材料として。これの中においてきちっと、やろうとしていることが私たちはやっていいことなのかどうなのかということを判断する場所があるはずなんです。ですから、私は、必ず法制局長官はそこに行かなくちゃいけない、こういうふうに感じるわけです。

 そして、今回、憲法のことからいいますと、合憲かそうではないか、こういう話もありますけれども、私の浅い理解ですが、憲法というのは、やはり、政府に私たちのさまざまな権限を委譲しているわけですね。

 そうすると、その委譲した権限を逸脱しないための、例がいいかどうかわかりませんけれども、政府そして国民を中に入れた枠、柵をつくっているのが、柵自身が私は憲法じゃないかな、こう思っているわけです。そして、柵を乗り越えて何かしようとしたときに、いや、そうではありませんよと言って、柵に有刺鉄線が張られている、そのとげの役割をするのは法制局長官ではないかな、こういうふうにも私は思うわけです、できること、できないこと、そこをきちっと守るのが。だからこそ法の番人と言われているんじゃないかな、こう思うわけです。

 僣越ながら、法制局長官、この委員会の中で青いバラの例えをお使いになりました。この青いバラの切り返しというのは、僕は後ろで聞いていて、さすがだな、こう思ったわけなんですが、青というのはやはり幸せの青い鳥にもつながりますし、また、青いバラ自身が一つの夢なんですね、花を改良する人たちからすると。そういう非常にいいイメージがある。ですから、青いバラになって、ついでにとげも抜かれてしまった、こういうことにはならないようにしていただきたい、こういうふうに私は思うところです。

 言葉は生意気ですが、やはり法制局長官としてのきちっと守るべきところは守った上で、今回、私はこの法制が具体的じゃないと感じるからこそ、具体的なところについても必ずそこにおって一緒に判断していくという、それが責務じゃないかな、こういうふうにも思うわけです。

 岸田大臣にお答えいただきましたが、当然その先には、今度はさまざまな国との連携、こういう形が出てくると思います。でも、日本国民は、何かあったときには国連というものをやはりすぐ思い浮かべるわけですね。もちろん、自衛隊は自分たちの周り、国民を守ってくれる。でも、物事を解決していくときに国連に役割を果たしてもらいたい、こういうのがやはり、私はある意味、別の意味での日本国民の共通の理解だろう、こういうふうにも思います。

 ですから、機雷がまかれました、これは困っているのは日本人だけなのか、日本国だけなのか、あるいはそうじゃなくてほかの国も一緒に困っているんじゃないか、いろいろなことが想定されます。

 そして、そういう中にあって、改めて、機雷によって私たちが失うものは何かというところに入っていきたいと思いますが、やはり経済的な事由、今、中谷大臣の答弁の中にも、エネルギーの問題ですとか、こういう言葉が出てまいりました。ということは、やはり当然それを、失うものの一つとして、大きなものとして理解なさっているだろう、こう感じるわけです。

 ここで、私は、経済的事由となったときに、宮沢大臣にお聞きしたいと思います。

 この委員会の中でも、例えば石油の備蓄の問題について我が党の重徳委員からも質問がありましたが、ではそれを延ばそうとしたらどれぐらいのお金がかかるのか、こういうような質問の仕方もありました。もう一つは、経済的な事由となれば、私たちは、そういう非常事態だからこそ消費量を極力抑える、簡単に言えば我慢するということも当然想定しなくちゃいけないわけですし、あるいは、その状態が長期化するとなれば、ホルムズ以外の別の選択肢ということも当然考えなくちゃいけないわけですね。

 こういうことについて、今具体的にどのような認識をなさっているか、これをお聞きしたいと思います。

宮沢国務大臣 中谷大臣からの御答弁にもありましたけれども、現状では、石油の八割、そしてLNGの二五%がホルムズを通ってきております。したがって、現在、ホルムズ海峡が通れないような状況が起こったとしますと、当然のことながら、自動車がどうなるか、また、物流が停滞する、さらに、都市ガスの供給などに大きな問題が生じます。特に冬場ですと、寒冷地はかなり灯油等々で影響を受けると思います。

 電力につきましても、今、化石燃料への電力依存度は約九割でございまして、夏のピーク時でいいますと約四分の一がホルムズを通ってきているという状況でございますので、夏に起きた場合には、電力の四分の三しか使えない、四分の一カットするというようなこと。

 特に、これは電力会社でかなり影響が違いまして、委員は富山でいらっしゃいますけれども、北陸電力ですのでそれほど大きな影響が出ないかもしれませんが、一方で、例えば中部電力におきましては、約四割がまさにホルムズ海峡を通ってくる燃料でありますので、中部電力管内でいえば、四割電力発電がなくなるということは、やはり産業にも国民生活にもとてつもない影響が恐らく出てくるんだろうと思います。

 ただし、もちろん私ども、それを、手をこまねいているわけではなくて、特にLNGというものは湾岸以外にも出ますので、まさにその輸入先の多様化を図っております。二〇一六年にはアメリカのシェールガスが輸入される予定になっておりますし、また、最近でいえば、パプアニューギニアからも輸入するということになっております。また、オーストラリアでもかなり輸入をふやす方向で話を進めているということでございますので、しばらくたちますと、LNGのホルムズ海峡依存度というのは恐らく一割前後までは落ちてくるというようなことだろうと思います。

 一方、今備蓄のお話がございました。今現在、正確に申し上げますと、百七十日分の備蓄がございます。したがって、百七十日以内に終わるということがわかっていれば何ら問題もないわけでありますけれども、一方で、恐らくこういう事態が起こったときにはわからないというようなことで、まさに備蓄を国内市場に出すというところから始まりまして、それでも足りなかった場合には、石油需給適正化法という法律がありまして、需給調整をしていくということになろうかと思っております。

 ただ、備蓄の積み増しというような話でありますと、現在約百日分が国家備蓄をされておりますけれども、これを倍にするということにいたしますと、極めて簡単な試算をすると、やはり五兆円近いお金が基地の建設または原油の購入ということでかかります。したがって、百七十日が二百七十日になるということに対してどれだけ予算を組んでいくかということになりますと、やはり五兆円という金はかなり大きなものだろうという気がいたします。

吉田(豊)委員 五兆円ということは非常に大きな金額なんだと思いますけれども、今の国民の世論の状況を見ておりますと、簡単に言うと、経済的な事由で専守防衛の姿を変えることについて国民が今一番の違和感を感じているだろう、それが私の感じる結論なんですね。

 今、宮沢大臣がおっしゃったさまざまな状況について、何で最初に私が我慢と言ったかというと、やはり非常事態なわけですわ、こういうふうになっているときというのは。それは、さまざまな形で国民もこれに対して当然協力していかなくちゃいけないわけですし、長引けば長引くほど、別の方法はないのか、それを努力することこそが政府の役割でしょうし、それだけの力を日本は持っている。

 常々岸田大臣もおっしゃっていますけれども、日本という国が世界の中でこれだけ信頼されているというのは、平生のつき合いがあって、その上に積み上がったものだ。だから、例えば石油がなくなって苦しんでいる日本を、では、ほかの国はほっておくんでしょうか。それを自分たちだけで解決してくれ、こういうような話になるのかということを考えると、私は、そこに本当の具体的な現実味を感じることができない、こういうふうに思うわけです。ですから、経済事由でこの法案を進めていく説明をされること自身がもう無理が来ている、こういうふうに思うわけです。

 根本的な話として、政府が与党協議において示した集団的自衛権等に関する事例集というのがあったんですけれども、これの事例十四として機雷掃海が出てきています。

 この基本的な問題意識とすれば、ここに経済事由というのは一行も書いてないんです。そして、ここで出てくる話というのは、「危険に遭う可能性が高い中、各国が協力して機雷掃海を行っているにもかかわらず、その能力に秀でる我が国が機雷掃海をできなくてよいのか。」こう書いてあるわけです。

 こう問われると、私は、それは国としての名誉の問題や、さまざまな共同体としての協力の問題、こういうことがありますから、それについては考えをしなくちゃいけないだろう、こう思います。けれども、余りにも今の政府の説明は、この機雷掃海についても経済的な事由を表に出していらっしゃる。そうやっている限り、私は、国民の理解は深まらないだろう、こう感じています。

 もうちょっとありますね。

 そこで……(発言する者あり)頑張っております。ありがとうございます。

 今、幾つかの事由という中にあって、経済事由については宮沢大臣にお聞きしました。

 例えば、日本の国という中にあって、やはりさまざまな、日米同盟のこと、あるいは近隣諸国との平生のつき合いとかいろいろなことを考えても、今回の法案というものが、日本は何でもしてもらいっ放しでいいのか、そういうことについておかしいんじゃないかという機運があることも事実だろう、私はこう思っています。ですから、維新の党としても、やらなくてはいけないことがあるということはきちっとわかった上で政府の案をお聞きしていますよということになっていると思うわけです。

 それでは、具体的に、ホルムズについてはやらなくてはいけない、先ほど事例十四で言いましたが、こういうような理由というものが明確にあるのかどうか、これを中谷大臣にお聞きしたいと思います。

中谷国務大臣 先ほどもお答えしましたが、エネルギー源の供給がとまるということで、単に経済的影響のみならず、生活物資の不足とか電力不足によるライフラインの途絶が起こるなど、国民生活に死活的な影響、すなわち国民の生死にかかわるような深刻、重大な影響が起こり得ると私は考えます。

 東日本大震災のときも、非常に電力の供給が滞りました。また、東京でも、電車等がとまることによって、帰宅難民ということで、それは一時的な話でありましたが、こういう状況が非常に長期間続きますと、経済的な影響のみならず国民の生命にかかわるような事態も発生する可能性というのはあると私は思っております。

 エネルギーもやはり安全保障の一環だと思っております。単に経済的な意味ではなくて、国民の生活、そして生死にかかわる、そういう安全に関する安全保障の部分もございますので、そういう意味では、まさに死活問題に及ぶような状況も生じ得るのではないかというふうに考える次第でございます。

吉田(豊)委員 今のお話をお聞きして、ああ、そうだなと思う国民は私はいないと思います。

 やはり、失うものがある、そして本当に大きなものを失うからこそあえてやらねばいけない、そのための法改正だという御説明であれば、私たちは、国民として、あれもこれも当然そのときに求めてはいけないわけです、緊急事態なんだから。

 そうすると、今大臣がおっしゃった御説明では、私たちは国民としてもっともっと我慢できるし、そして何よりも大事なことは、そういう状況になったときの想定として、私は少し空論を言うかもしれませんけれども、日米同盟というものは、お互い支え合う、そしてそれは国と国を存続していくための同盟だというふうに私は思っています。

 そのときに、今我が国が経済的な事由ということを挙げるのであれば、経済的な事由ということに対してのさまざまな非常事態の同盟という考え方もつくっていいだろう、エネルギー同盟であり、あるいは食料同盟であり。そういうことを考えて準備することこそが本当の意味での政府のやるべきことであって、このホルムズの機雷を取る方法しかありませんという姿こそ、私は、残念で仕方がないし、もっともっと方法があるだろう、そういうことをぜひ政府として知恵を絞っていただいて説得していただきたい、こう思うわけです。

 もう明らかに、私は、ホルムズの例というのは、今回の法制全体の中でも、地理的なこと、それから経済的な事由をとっても非常に違和感がある、一つの大きなこぶみたいにもうなってしまっていると思います。ですから、これは、これから法案を進めていくに当たって、賛意を得られるかどうか、ここのところの一番大きなキーになるだろうと考えるからこそ、きょうの委員会でも何人もの方もこのことを質問していらっしゃいました。

 こういう言い方はあれかもしれませんけれども、マスコミの方がいらっしゃっていますので。

 今さまざまな調査をなさっているということですが、これは、全体としてこの法案について賛成か反対か、こういう数字しか出てこないんですね。そうではなくて、今やっている、例えば具体的な事例一つ一つをぜひ取り上げていただいて、そして、国民はどのことについて不安を感じているのか、それをぜひとっていただければ、今度は、政府にしても対応する方法があるかもしれないし、私たちとしても考えていくことがあるかもしれない、そう感じるわけです。

 この全体的という言葉は、非常に私は、きょうも朝から何遍も出てきているなと思いますけれども、全体的という言葉はだめなんです。全体的という言葉には、実は、全体的には賛成しますけれども反対のところがあるんですよ、こういうふうに言っている、暗に示しているような、もうそういうような使い方にしかなっていないわけです。特に、この委員会、あるいは国会では、僕はそういうふうに全体的という言葉を使うのかなというふうに思いましたけれども。

 全体としてということではなくて、やはり具体的に個別の中身として一つ一つ国民を納得させていただいて、そしてそのことが合意を得てこの法制が実現していく、その可能性を探っていただかなくちゃいけない、現時点で私はこういうふうに思うところでございます。

 ちょっと切れますけれども、これで終わらせていただきます。ありがとうございます。

浜田委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 自民党本部で行われた勉強会の問題については、官房長官が戻ってこられたところで質問をしたいと思います。

 政府が憲法解釈変更の根拠として挙げる安全保障環境の根本的な変容とは何かという問題について、きょうは朝鮮半島の問題を通じて聞いていきたいと思います。

 中谷大臣に伺いますが、この間の審議の中で、北朝鮮の弾道ミサイルについて、一九八九年にはゼロだったノドンが二〇一四年には二百発にふえたことや、核開発を進めていることを変化の中身として挙げておられます。それはそういうことでよろしいですね。

中谷国務大臣 この前お答えしたとおりでありまして、北朝鮮、特に弾道ミサイル等については、ノドンを数百発保有をして、それらを配備しておりますし、最近では、我が国を射程におさめるノドンを含む弾道ミサイルを、過去に例のない地点から、深夜、早朝、移動式の発射台を用いて多数発射して、任意の地点、タイミングで複数の弾道ミサイルを発射するなど、非常に奇襲的攻撃能力を含む弾道ミサイルの運用向上を目指すなど、引き続きミサイルの開発が続けられているということでございます。

赤嶺委員 北朝鮮による核・弾道ミサイルの開発は、これはもう、累次の国連安保理決議や、みずからが合意した六者協議の共同声明にも反するもので、私たちは絶対に許されないものだと考えております。非軍事的な措置によって北朝鮮に核計画の放棄を求めた安保理決議に沿って、国際社会が一致して平和的、外交的に解決すべき問題であります。

 問題は、なぜそれが憲法解釈の変更に結びつくのかということです。

 弾道ミサイルがゼロから二百発にふえたと言いますが、米ソの対決の時代の方がよほどミサイルの数は多かったのではないでしょうか。一九七二年の当時の政府見解が出されたときに、旧ソ連はどれぐらいの弾道ミサイルを保有していましたか。

黒江政府参考人 一九七二年当時の旧ソ連の保有しておりました弾道ミサイルの数でございますけれども、中距離のもので約千四百基以上、大陸間弾道ミサイルを約千四百基、潜水艦発射弾道ミサイル五百六十基ということで、当時のものとしましては、これは公刊情報によるものでございますけれども、合計で三千三百六十基以上、そういう資料がございます。

赤嶺委員 単純にミサイルの保有数を比較しても、七二年当時の方がはるかに多いわけです。にもかかわらず、なぜ憲法解釈の変更が許されるかということになるのですが、何が具体的に変わったということですか。

中谷国務大臣 精度も射程も相当伸ばしておりまして、我が国を攻撃する能力が高まったということでございます。

 このほかにも、パワーバランスの変化とか、またテロとか、海洋、宇宙、サイバーなど、やはり脅威の対象が非常に多くなりまして、もはや脅威というのは国境を越えてやってくるし、もはやどの国も一国のみで平和を守ることができない状況でありまして、そういう意味におきまして、今後、他国に対して発生する武力攻撃であったとしても、その目的、規模、態様等によっては我が国の存立を脅かすことも現実に起こり得るものである、こういった国際情勢の変化にしっかりと対応しなければならないということでございます。

赤嶺委員 中谷防衛大臣は、顔を合わせると脅威、脅威、脅威、こういうことが繰り返されるわけですが、少し冷静に議論していかなきゃいけないと思うんです。

 冷戦時代は、米ソの力の均衡によって平和が保たれていた、こうおっしゃいます。しかし、一九六二年のキューバ危機のように、米ソが全面核戦争の寸前までいったこともありました。結果的に米ソが戦争に至ることはありませんでしたが、その対決構造のもとで、第三国への軍事介入が繰り返されました。ベトナム戦争やアフガニスタン侵攻など、米ソ以外の地で血みどろの戦争が繰り広げられていたことを忘れてはいけないと思います。力の均衡で平和が保たれていたなどというのは、そういう現実を見ない議論だ、このように考えます。

 そして、北朝鮮の問題についても、日本人の拉致問題は今に引き続く重大問題であります。ただ、事件そのものが多発したのは一九七〇年ごろから一九八〇年ごろにかけてのことであります。大韓航空機の爆破事件は一九八七年です。北朝鮮による数々の無法行為は、一九七〇年代、八〇年代に多発していたということではありませんか。

黒江政府参考人 先生お尋ねの、脅威がどのように変化してきているのかということについて、幾つかの要素があろうかと思います。

 まず一つ、先ほど私の方から、旧ソ連当時、旧ソ連が一九七二年当時に保有しておりました弾道ミサイルの数ということを御紹介いたしましたけれども、防衛省といたしましては、周辺国が保有しておる弾道ミサイルの数だけをもって、我が国の安全に対する脅威の度合いといったものを評価しているわけではございません。

 例えば、一九七六年に初めて、防衛省といいますか、当時の政府がつくりました防衛計画の大綱の中で、当時の国際環境の認識といたしまして、米ソの関係は当然でございますけれども、それに加えまして、中国の存在といったもの、あるいは朝鮮半島の安定の状況といったもの、それらを総合的に判断して、必ずしも大規模な紛争といったものが日本に起きる可能性はないといったような評価をしておったわけでございます。

 また、その前提といたしまして、核・ミサイルの件でいいますれば、米国の拡大抑止といったものに日本としては期待するんだということを、これは防衛計画の大綱の中でも、これまでの大綱では全てそういうことを申しておるわけでございます。

 そういったものと比べましたときに、北朝鮮による核の開発の進行、あるいは弾道ミサイルの能力の増強、あるいは、昨今であれば、この委員会でも御紹介がありましたけれども、さまざまな運用能力の向上といったことが図られておる。しかも、これは、国際社会からの再三の自制の要求といったものにもかかわらず、依然としてこういったものを継続する姿勢を崩していない。また、これは能力的なものでございますけれども、我が国のほぼ全域を射程圏内におさめるようなミサイルを繰り返し、これは実験ではございますけれども、発射をしておる。さらに、三回の核実験にとどまらず、さらなる核実験の可能性といったことも示唆をしておる。

 こういったことを総合的に分析、評価した結果といたしまして、北朝鮮に対する脅威感といったものを我々は評価しておるということでございます。

赤嶺委員 先ほどの中谷防衛大臣の答弁とどのぐらいの違いがあるかわかりませんが、北朝鮮の脅威ということを今度はおっしゃってまいりました。

 では、いつ北朝鮮の問題をめぐって安全保障環境が根本的に変容したのでしょうか。

 北朝鮮がNPTからの脱退を宣言したのは一九九三年です。当時、アメリカは、核施設に対する空爆を検討しました。しかし、報復攻撃によって甚大な被害が発生し、日本の支援体制も不十分だったことから、実行には移せませんでした。翌年、カーター元大統領が訪朝して、その後、米朝の枠組み合意ができました。KEDOのもとで軽水炉の支援が行われますが、二〇〇二年には濃縮ウランの計画が発覚をします。二〇〇三年には六者協議が始まり、二〇〇五年には核問題の外交的解決に向けた共同声明が合意をされます。

 そうした六者協議のプロセスが進行するもとで、北朝鮮は、二〇〇六年に最初の核実験を行いました。その後も核実験とミサイル発射を繰り返しますが、そうしたもとで、二〇一二年十一月、四年ぶりに日朝間の政府間協議が行われ、昨年七月には、北朝鮮による特別調査委員会の設置に合わせて制裁措置の一部解除が決定されました。

 これまでの北朝鮮のやってきた経緯を振り返ってみますと、北朝鮮による核・ミサイルの開発と、六者協議や二国間の対話の努力が複雑に入りまじるような形で進んできたのではないかと思います。いつ安全保障環境が根本的に変わったということですか。

黒江政府参考人 北朝鮮の核問題をめぐる主な動きにつきましては、今先生がおっしゃったような流れになっておるんだろうというふうに私も理解をいたしております。また、さまざまな外交努力といったものが、二国間におきましても、あるいは多国間におきましても、この問題をめぐっては行われてきておるということだと思います。

 他方、これは防衛計画の大綱のレビューで、先ほど引用しましたので申し上げますと、平成七年の大綱あるいは平成十六年の大綱といったところで、それぞれ節目ごとに我が国を取り巻く国際環境がどのように変化しておるのかといったことを総括しながら、我々として、それでは防衛力整備をどのような形で行っていくべきなのかという方向性を示してきたわけでございます。

 そういう中で、トレンドといたしまして我々は北朝鮮の脅威といったものを評価しておるわけでございまして、残念ながら、先生御指摘のように、どこかの時点一点を捉えて劇的に変わったということではないと思います。

赤嶺委員 北朝鮮のこれまでの国際社会に対する態度、核・ミサイルの開発や、あるいは六者協議、二国間の交渉を含めて、これの繰り返し、繰り返しみたいなものはあった、それがずっと続いているわけですね。しかし、今の局長の答弁だと、いつのころからだと明確に言えるわけではないが、防衛計画大綱をつくるときにトレンドとして北朝鮮の脅威が浮かび上がるという、ちょっとよくわからないですよね。実態としては、さっき私が言ったような繰り返しです。

 それでは聞きますけれども、北朝鮮の核開発の問題で大きな影響力を持っているのは中国政府です。中国政府は六者協議の議長国としての重要な役割を果たしてきましたが、とりわけ三回目の核実験以降、さらに前向きの役割を果たしてきていると思いますが、外務大臣、その点はどのように認識していますか。

岸田国務大臣 おっしゃるように、中国は北朝鮮との関係において歴史的な関係を持ち、また、中国は安保理の常任理事国であり、そして六者会合の議長国も務めています。ですので、この北朝鮮問題において中国の果たす役割は大変重要なものがあると認識をしています。

 こうした中国も含めて、我が国としましては、関係国と連携しながら、北朝鮮から、ぜひ非核化、あるいは大量破壊兵器に関する、国際社会に対して融和的な、前向きな、建設的な対応をとるようにしっかり働きかけていかなければならない、こういったことで取り組んでいるというのが我が国の立場であります。

赤嶺委員 外務大臣、我が国の立場を聞いたのではなくて、そういう立場にある中国が、六カ国協議や核問題でも、北朝鮮に対して、国際社会と一致して、北朝鮮の核開発に対して、国際社会と一緒に北朝鮮に外交的圧力をかける、そういう前向きな態度に変わってきているんじゃないですかということを聞いたんです。中国の態度を聞いたんです。

岸田国務大臣 まず、北朝鮮に対しましては、経済建設と核武力建設、この並進路線は成り立たない、こういったメッセージをしっかり伝えなければなりません。そうしたメッセージを伝えるということにおいて六者会合の枠組みは有効だと思いますし、その中での中国の役割、大変重要であると考えております。

 そして、六者会合については、二〇〇八年十二月、第六回六者会合に関する首席代表者会合、これ以降、開催をされておりません。ぜひ、こうした六者会合、有効な枠組みであると引き続き考えておりますが、こうした枠組みを通じて、中国にもしっかりと働きかけをしてもらうためにも、北朝鮮に非核化に向けた真剣な意思を表明してもらう、具体的な措置をしっかりとってもらう、こういったことが重要であると考えております。

 そして、中国と北朝鮮との関係につきましても、昨今、中国の習近平主席が北朝鮮より先に韓国を訪問するなど、微妙な関係が存在すると指摘をされています。中国は引き続き北朝鮮との関係において重要な役割を果たすものだと認識しておりますが、中国と北朝鮮との関係についてもしっかり注視をしていかなければならない、このように考えます。

赤嶺委員 答えているようで答えていなくて、やっと中国の役割が出てきたと思ったら、微妙な変化ということで、明らかに変わっているんですよ。中国も北朝鮮に対する態度は、ひところとは全然違うようになってきている。

 私は、こういう議論をするときに、やはり思い起こさなきゃいけないのは、二〇〇二年に当時のアメリカのブッシュ大統領が一般教書演説で、北朝鮮、イラク、イランを悪の枢軸、このように名指しをいたしました。必要なら先制攻撃も辞さないという戦略を明確にし、翌年には、大量破壊兵器を口実にして、イラクに対する軍事攻撃に踏み切りました。

 イランの核開発の背景の一つには、この悪の枢軸発言があったことが指摘されています。北朝鮮の核開発に与えた影響については、アメリカの悪の枢軸発言、どういう検証を行っておりますか。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御質問に直接答えている形にはなっていないかもしれませんが、米国防省が二〇一四年三月に……(発言する者あり)

 お答え申し上げます。

 米国防省が二〇一四年三月に発表いたしました、北朝鮮にかかわります軍事・安全保障動向に関する年次報告書は、北朝鮮の戦略的目標が金王朝の生存と北朝鮮の人々に対するイデオロギーによる統制を永久に確保することであるというふうに述べているところでございます。

 また、同報告書は、北朝鮮の指導者にとって、この目標を達成するための包括的な安全保障上の目標は金正日によって追求されたものとは大きく異なるものではないとした上で、核保有国として国際的に認められること、二番目に、実行可能な抑止力を維持すること、三番目に、北朝鮮統制下で朝鮮統一を実現することであるというふうに指摘しているところでございます。

 このように、これは米国防省の分析ではございますけれども、体制の継続ということと実行可能な核抑止力を維持するということを結びつけているというふうに分析されているところでございます。

浜田委員長 一言、答弁者に申し上げます。

 答弁は、判断が合っているか合っていないかは後の判断です、余分な枕言葉を使わないように。よろしくお願いします。

 赤嶺政賢君。

赤嶺委員 委員長がおっしゃったとおりで、今の答弁は、次に用意していた私の質問への答弁なんです。だから、全然私が聞いていることには答えないで、聞いていないことを先取りして答えている。しかし、大事な答弁でしたので、きょうのところは我慢いたします。

 しかし、こういうことが続くと、これは、お隣にも野党の筆頭もいらっしゃいますが、こういう形での審議にはなりませんよということで、後で私も党の方から優し過ぎるといって叱られるかもしれませんが、我慢しているということで。

 私が聞いた質問は、二〇〇二年当時にアメリカがイランやイラクや北朝鮮を悪の枢軸と名指しして、そしてイラクへの先制攻撃戦争を始めた、それがきっかけになってイランが核開発を始めた、そういうことが北朝鮮の核開発にどういう影響をしているんですかということを聞いたんですよ。この質問に答えていただけますか。

岸田国務大臣 まず、米国の政策が他国にどのような影響を与えたのか確定的に申し上げる立場にはないと思いますが、イランにせよ、それから北朝鮮にせよ、NPT体制を維持する、重視する立場からするならば、核軍縮・不拡散の見地からは、どんな理由があるにせよ、核開発は認めるわけにはいきません。

 我が国としましては、そういった観点で、イランのみならず、北朝鮮の問題についてもしっかりと対応していかなければならないと考えております。

赤嶺委員 外務大臣も、私が問題にして質問していることをよく理解していただきたいんですよ。

 つまり、私は、北朝鮮や、NPT体制を壊すような国際的な活動、これは絶対許されませんよ、何度も批判してまいりました。しかし、核開発がこういう形で広がっていく背景に、アメリカの悪の枢軸発言、そして先制攻撃戦争も辞さないという態度、これは影響していなかったのかということを聞いているわけです。聞いても答えませんので。

 しかし、アメリカの国防省が今北朝鮮をどのように評価しているか、先ほどの答弁がありました。

 国防総省の報告書が述べていることは、国際社会から孤立する北朝鮮にとって現在の体制を維持することが何より重要だ、こういうことになっているわけです。そうしたもとで、軍事的な挑発行為を事態がエスカレートしない範囲で行い、これが非常に悲しい現実だと思いますが、政治的、経済的な譲歩を得よう、こういうことであり、それらの手段になるのが核・ミサイルの開発だということであります。

 中谷大臣は、こうした国防総省の指摘についてどう思われますか。同意されますか。

浜田委員長 赤嶺先生、もう一回、ちょっと質問していただけますでしょうか。

赤嶺委員 さっき私の質問を先取りして答弁したことで、国防総省の北朝鮮に対する評価、つまり、北朝鮮は、国際社会から孤立する北朝鮮の立場からして現在の体制を維持することが何より重要だ、そうしたもとで、軍事的な挑発行為を事態がエスカレートしない範囲で行い、政治的、経済的な譲歩を得ようということだ、それらの手段になるのが核・ミサイルの開発だということを、アメリカは北朝鮮の核の保有について評価しているわけですね。

 それについて、中谷大臣、この国防総省の指摘、同意されますか、どのように考えますか。

黒江政府参考人 アメリカの国防総省の見方について大臣が同意されるかどうかということにつきましては、後ほど大臣からお答えがあるかと思いますけれども、今先生がお引きになった部分なのかどうかあれですが、他方で、国防総省の北朝鮮に係る軍事・安全保障上の展開という二〇一三年版の文書におきますと、北朝鮮の体制の戦略目標といたしましては、金王朝の生存と北朝鮮の人々に対するイデオロギーによる統制を永久に確保することである、北朝鮮は核武装国として国際的に認められ、実行可能な抑止力を維持し、そして北朝鮮統制下で朝鮮の統一を実現すること、こういったことを戦略目標としているということで……(赤嶺委員「さっきの答弁ですから、いいです」と呼ぶ)はい。そういうことを表現としまして同じものの中で言っておりますので、そういったものをあわせて考えないといけないということだけ申し上げさせていただきます。

赤嶺委員 ですから、北朝鮮というのは、今、金体制を維持するために必死になっている、そのために核保有国家として世界に認められようとして核・ミサイルの開発が始まっている、こういう状況だと思うんですよね。

 安倍首相は先週の二十六日の審議の中で、重要影響事態が存立危機事態に至る事例として、

 我が国の近隣で武力紛争が差し迫っている状況で、米軍も事態の拡大を抑制し、その収拾を図るために活動をしている、我が国も重要影響事態法のもとで対応措置を行っていたが、状況がさらに悪化し、我が国と密接な関係にある他国、例えば米国に対する武力攻撃が発生した。

  さらに、その時点ではまだ我が国に対する武力攻撃が発生したとは認定されないものの、攻撃国は我が国をも射程に捉える相当数の弾道ミサイルを保有しており、その言動などから我が国に対する武力攻撃の発生が差し迫っている状況にある。

  当該他国の弾道ミサイル攻撃から我が国を守りこれに反撃する能力を持つ同盟国である米国の艦艇への武力攻撃を早急にとめずに、我が国に対する武力攻撃の発生を待って対処するのでは、弾道ミサイルによる第一撃によって取り返しのつかない甚大な被害をこうむることになる明らかな危険がある。

  このような場合であれば、いわば重要影響事態からさらには存立危機事態に認定されていく

こう述べているわけですね。

 私、この答弁を聞きながら、この事例がどこの国を念頭に置いたものかは明らかでありますが、アメリカに対する武力攻撃が発生するというのは、一体どういう状況になればそのような事態が起きるのか。

 アメリカと北朝鮮の軍事力の差は歴然としています。北朝鮮にとって自殺行為に等しい武力攻撃をどういう状況になれば引き起こすということでしょうか、大臣。

中谷国務大臣 これは、あくまでも重要影響事態から存立事態へということの例示でありまして、具体的にどのような状況かということにつきましては、個別の具体的な事案等において違うわけでございますので、一概に説明できるということではございません。

赤嶺委員 どういう場合に飛んでくるかはわからない、だけれども、恐ろしい国だよ、脅威の国だよというようなことを言っていますが、アメリカの国防総省の報告の中でも、先ほどから、あの国は自分の国の体制を維持するだけで必死の態勢、そのために核を持とうとしている。こういう国がアメリカ相手にまともにミサイル攻撃をやる事態というのが本当に想定できるのか。

 私は、政府の事例は、現実的にはほとんど考えられないと思います。ほとんど考えられない想定に基づいて憲法解釈を変更するというのは、これはもう愚かとしか言いようがありません。

 国防総省の報告書は、切迫した危機の存在が、北朝鮮国内で現在の国家体制を合理化するのに使われている。つまり、北朝鮮だって、危機だ、危機だということをあおって、自分たちの国家体制を合理化するのに使っている、アメリカはそう見ているわけですね。

 軍事的に圧力をかけるやり方は、むしろ北朝鮮国内での合理化を後押しする結果になってしまうのではないかと思います。冷静な外交交渉と非軍事に限定した措置によって、核を放棄する方向に導いていくことが重要だと思います。

 仮に、百歩譲って、本格的な武力紛争が起きるとすれば、それは、かつて現実に検討が行われたように、アメリカが先制攻撃に踏み切る場合です。その場合には、韓国はもちろん、朝鮮半島への出撃地になる沖縄を初め、在日米軍基地、米軍に対する兵たん支援を行う自衛隊の基地は、直ちにミサイル攻撃の目標になるのであります。

 核施設への空爆を検討したとき、アメリカは、戦争になれば、四十万人の米軍兵力の投入が必要となり、米軍の死傷者は三万人、韓国軍の死傷者は四十五万人になり、百万人以上の民間人が死傷するというのが当時のアメリカの見積もりでした。

 私は、朝鮮半島について、軍事的な選択肢はあり得ない、このように考えています。間違ってもアメリカにそのような選択肢をとらせてはならない、こう思っています。北朝鮮による核開発の問題は、国際社会が一致して、外交交渉による解決を粘り強く追求する以外にありません。憲法解釈変更の根拠にはならないということを強調しておきたいと思います。

 そこで、官房長官、お見えでありますが、官房長官にお聞きしていきたいと思います。

 作家の百田氏を招いて自民党本部で行われた勉強会の問題について質問をいたします。

 官房長官に伺いますが、自民党は二十七日、懇話会代表の木原青年局長を更迭し、発言した三人の議員に対し厳重注意の処分を行いました。処分の理由について、改めて説明していただけますか。

菅国務大臣 党の話でありますので、政府の立場でコメントすることは控えたいというふうに思います。

 あえて私の方から申し上げれば、我が国においては、放送法において放送番組の編集の自由、これを保障されておりますし、憲法で規定されている表現の自由、きちんと守られているというふうにも承知しております。自民党においても、当然、こうした考え方で対応してきている、そういうふうに承知をしております。

赤嶺委員 官房長官のお答えは伺いました。

 谷垣幹事長はこうおっしゃっています。報道及び言論の自由を軽視するかのような発言がなされた、また、沖縄県民の思いを受けとめるべく努力してきた自民党の努力を無にするかのごとき発言がなされた、国民の信頼を大きく損なうもので看過できないと判断した。谷垣幹事長はこのように発言しておられます。

 沖縄県民の思いを受けとめるべく努力してきた自民党の努力を無にするかのごとき発言がなされたと述べておられますが、政府・自民党は、沖縄県民の思いを受けとめるような努力、何をやったんですか。県民の民意を無視して問答無用で基地建設を強行してきたのが政府・自民党ではないですか。しかも、幹事長は、自民党の努力を無にすることを問題にしておりますが、県民を侮辱したことが問題ではないんですか。

 官房長官は、この点についてどう認識しておりますか、何が問題だったという認識ですか。

菅国務大臣 政府としては、国土面積の一%に満たない沖縄県に米軍基地の約七四%が今集中しており、そして、県民にとって大きな負担となっているという事実を受けとめて、沖縄の負担軽減のためにやれることは全てやる、そういう思いの中で、最重要課題として取り組んできているわけであります。

 こうしたことの中で、例えば西普天間基地の返還が実現をいたしましたし、さらに、政府としては、十九年前に、世界で最も危険と言われる普天間飛行場の危険除去、そして固定化を避けるために普天間移設ということも、当時の県知事また名護の市長の同意をいただいて進めさせていただく中で、嘉手納以南の米軍基地の約八割だったと思いますけれども、その返還に向けて、初めて具体的に、いつ、どれぐらいまでということの時期を明示される、そういう思いの努力をさせていただいているところであります。

赤嶺委員 今の努力の内容については、一つ一つについて大いに反論がありますが、ただ、きょうは、そういう自民党がやってきた辺野古移設という努力が、今、本当に圧倒的多数の県民から、政府のやり方は間違っている、このように強く厳しく政府に声が上がっているということは申し上げておきたいと思います。

 西普天間や嘉手納以南については、また機会があれば官房長官と議論していきたいと思いますが、今県民の総意と対立しているのが政府、そして自民党ですよ。

 今度の谷垣幹事長は、県民を侮辱したことについて一言も触れていないんですね、あの自民党本部の集まりの中で。県民を侮辱したことについて、官房長官はどのように考えられますか。

菅国務大臣 党内の有志によるこの非公開の集まりの中にあって、事実関係は掌握しておりませんし、百田氏はまさに民間の個人の発言でありますので、これについて政府の立場でコメントすることは、これは当然控えるべきだろうというふうに思います。

赤嶺委員 百田さんが言ったことについて政府の認識をただすことは、ちょっとこの後でやりたいと思います。

 百田さんが言ったことじゃなくて、自民党の議員が、あれを見ていると、やはり沖縄はどこかおかしいと言ってあおっているわけですよね。それが沖縄タイムス、琉球新報を潰してしまえというような話にもなっているし、大体、基地反対を言う沖縄県民はお金目当てじゃないかというような発言まで飛び出している。

 百田さんというよりも、そういうようなことが自民党の議員の皆さんによって向こうで話されていた、それを非常に県民は侮辱と受けとめている。その県民に対する侮辱的な発言について、官房長官、これは調べて、知らないということじゃなくて、調査の上、ちゃんと県民へも謝罪すべきじゃないですか。いかがですか。

菅国務大臣 私は詳細についてはよくわかっていませんけれども、少なくとも私が承知している限りにおいては、百田さんの発言が問題になっているというふうに私は理解をいたしております。

 それと同時に、私たち自由民主党の議員の中で、圧力をかける云々という発言があったということも、そこは承知しています。それについて、私は、もし事実だとすれば極めて非常識だという発言をさせていただいておりますし、幹事長もさまざまな観点から党としてしっかり対応されたんだろうというふうに思っています。

赤嶺委員 しっかり対応していないから、今改めて沖縄の基地負担軽減担当の官房長官に申し上げているんです。

 どこが沖縄県民に対する侮辱、自民党のあそこに集まった国会議員の発言のどこがそうだったかということについては、官房長官、調査の上、きちんと県民に謝罪していただきたい、私はそう思いますが、いかがですか。

菅国務大臣 ここは党の問題でありますので、政府の立場で私自身がそうしたことを調べてコメントする立場にこれはないと思います。

赤嶺委員 まさに官房長官が所属する党で、官房長官は、沖縄の基地負担軽減と言いながら辺野古の基地を押しつけているあなたの立場からして、こういう発言があれば、官房長官も党も一体となって県民を侮辱しているということになるじゃないですか。そういうことも認識できないようじゃ、沖縄に寄り添って問題を解決するという言葉は使わないでください。私は本当にそう思います。

 それで、ちょっと時間がありませんので次に移りますが、百田さんの発言について、私はやはり沖縄の歴史から見て、しかも、私が国会でこの十数年取り上げてきた問題でもありますので、改めてこの問題で政府の見解を聞きたいと思うんですが、普天間基地の問題です。

 普天間基地の形成過程について、もともと田んぼの中にあり、周りは何もなかった、基地の周りに行けば商売になるということで人が住み出した、このように発言をしております。

 普天間基地の形成過程について官房長官に伺いますが、どのように認識しておられますか。

菅国務大臣 民間の方の述べられたことに、政府としてここはコメントすべきじゃないと思います。私自身というよりも、政府としては。

 ただ、その上で申し上げれば、普天間飛行場については、戦時中以降、米軍が民公有地を含む土地を接収し建設したものである、このように承知をいたしております。

赤嶺委員 外務大臣も防衛大臣も、普天間基地の形成過程について、その認識を聞かせていただけますか。外務大臣からどうぞ。

岸田国務大臣 普天間飛行場については、米軍が沖縄を占領した際に、民有地を含め、土地を接収して建設し、使用を開始したものであると認識をしております。

中谷国務大臣 宜野湾市の資料によりますと、普天間飛行場の場所には、戦前、役場や国民学校などが所在し、集落が点在するとともに田畑が広がっていたとの記述があることは承知をいたしております。

 その後、米軍が民公有地を含む土地を接収して建設した普天間飛行場については、現在、住宅や学校に囲まれていると承知をいたしております。

赤嶺委員 官房長官も、今お二人の大臣もおっしゃいましたけれども、民有地を戦争中に米軍が接収してという民有地というのが、土地であればこれは田んぼにもなり得るわけですよ。米軍は、サトウキビ畑と言うんですよ。大体、あそこは高い場所でしたから、田んぼなんかできるはずもないんですよね。田んぼはなかったんですよ、そもそも。

 そういう意味では、宜野湾市のホームページを調べられた中谷大臣は一歩私の気持ちに近づいていると思いますけれども、その場所は、小学校も郵便局も病院もありました、リュウキュウマツが生い茂る非常に豊かなところでありました。こうした生活の場を奪った。民有地を奪ったという認識だけでは足りないんですよ。生活の場を奪った、こういう認識に立たなきゃいけないです。

 しかも、米軍が上陸してすぐに、市民は収容所に収容されている中で、有無を言わせず取り上げてつくったのが普天間基地。敗戦から二カ月ほどたったことであります。

 今度のこの問題が起きて、宜野湾区の自治会長の仲村さんは、先祖の住宅は実際にある、生活していた事実に対する認識がなさ過ぎる、早く返還してもらい、もとの土地に住みたい、こういう私たちの思いをどう感じているかと述べています。

 ですから、商売目的で住むようになったなどというのは、事実をねじ曲げ、県民を侮辱するもの以外の何物でもないと思うんですよ。土地を奪われたんじゃない、生活の場を奪われた。そういうところに、金目当てで基地に近づいてきたというのはやはり県民に対する私は侮辱だろうと思うんですが、官房長官、今の基地の形成過程も含めて、もう一度認識を聞かせていただけますか。

菅国務大臣 私、先ほど申し上げましたように、普天間飛行場については、戦時中以降、米軍が民公有地を含む土地を接収して建設をした、このように私自身は承知をしております。

赤嶺委員 生活の場を奪ったという認識はありますか、住宅や村役場や。

菅国務大臣 先ほど中谷大臣が言われた中身と一緒であります。

赤嶺委員 私は、これはヘーグ陸戦条約に違反するかどうかという問題もありますが、きょうはここはおいておきますが、普天間基地の形成過程、米軍に行くといつも言われるんですよね、サトウキビ畑でしたと。サトウキビ畑しか写していなくて、サトウキビ畑でしたと言う。僕は知らなかったんですが、あそこは田んぼだったと言う人もいたのかと思って、本当にびっくりをしたんです。

 しかし、普天間基地はもう一つ問題があるんです。つまり、基地に近づいてきたという認識ですね。こういう侮辱的な表現であったかどうかは別にして、百田氏のような発言は政府関係者から何度も発せられております。麻生副総理は、普天間基地について、周りにどんどん家がふえてきてぐあいが悪くなる、基地としては難しくなると述べて問題になったことがあります。

 普天間基地を訪問した際、米軍の司令官がいつも持ち出すのは、住民の側が基地の周りに住むようになったという説明です。基地の周辺が現在のような市街地になったのは住民の側に責任があるという考え方は、これは日米両政府の間でかなり共有された認識であります。

 基地の周りに人々が集まってきて普天間基地は危険になった、官房長官もそういう認識ですか。

菅国務大臣 私は、戦時中以降、先ほど来申し上げましたけれども、米軍が民公有地を含む土地を接収して建設した、こういうふうに思っています。

 そして、何より大事なことは、今世界で最も危険と言われる普天間基地、この危険除去と固定化を避ける、このことだというふうに思っております。まさに辺野古への移設によって普天間基地は全面返還されるわけでありますので、かつて、十九年前に日米で普天間基地を県内移設することが合意をされ、そして地元の県知事、そして市長の了解をいただく中で、普天間移設の方向性が閣議決定をされて、それに向かって、今、一昨年に埋め立ての申請の許可をいただいて、工事をさせていただいているところであります。

 そしてまた、自然環境や住環境に配慮しながら、まさに日米同盟の抑止力、そして普天間の飛行場の危険除去、固定化を避ける、そういうことを考えた中で、唯一の解決策としてそこはしっかり対応していきたいというふうに思います。

赤嶺委員 官房長官、何よりも大事なことは、何でこんな世界一危険な基地ができ上がったかということですよ。この歴史を無視して、今、世界一危険だ、危険だ、何よりも大事なことは辺野古に移すことなんだと。こんなことを何回繰り返しても、誰も納得しませんよ。

 宜野湾市のホームページに、普天間基地はいつから危険になったかということがるる書かれております。防衛大臣も読まれたと思いますが、ことし三月に宜野湾市が出した普天間基地問題のパンフレットには、このように書かれています。

  一九七二年の本土復帰の頃まで、普天間飛行場は今のような運用はされておらず、補助飛行場としてパラシュート降下訓練が行われる飛行場でした。

  その後、一九七四年に嘉手納基地にP3Cが移駐されたことに伴い、その補助飛行場として滑走路が整備され、一九七六年に岩国基地から千人規模の第一海兵航空団が県内に移設をするなど、徐々に基地機能が強化されていきました。現在のような運用がされ始めたのは、一九七八年に北谷町のハンビー飛行場が返還されたことに伴い、その機能が普天間飛行場に移されてからになります。

  一方、宜野湾市は復帰前の一九六二年には市制が施行され、一九七五年時点で人口は五万人を超えておりました、普天間飛行場が現在のような運用がされ始めた時にはすでに、基地周辺には市街地が形成されておりました。

こう書かれております。

 市街地が形成をされた後に、現在のような危険な航空基地としての運用が行われるようになったと。これは、普天間基地問題の根本にかかわる問題です。基地の形成から現在に至る過程を踏まえる努力を改めてやるべきではありませんか。

 誰があの基地を世界一危険にしたのか。誰がああいう基地を市街地の真ん中につくったのか。市街地ができ上がった後に、ああいう航空基地としての危険な基地にしたのは、日米両政府じゃないですか。その日米両政府が、辺野古を受け入れなきゃ納得できないみたいな、まるで県民に責任があるかのように、おかしいですよ。やはり形成過程から改めて再検討すべきだと思いますが、官房長官、いかがですか。

菅国務大臣 この危険な状況を一日も早く除去するために、政府としても、普天間飛行場にある三つの機能のうち、まさに空中給油機十五機を、一昨年、山口県の岩国飛行場に全機移設させていただきました。そして、緊急発着機についても、そこは九州で今調整もいたしております。

 そうした中において、やはり、危険除去、固定化は避ける、そのことについては沖縄県民の皆さんと同じ考えではないでしょうか。

赤嶺委員 同じ考えではありません、県内に移設するというのは。改めてください。

 それで、せっかく官房副長官をお呼びしたので。

 今回の文化芸術懇話会という勉強会は、二十五日が最初の会合で、出席者には安倍首相に近い議員も多く、九月の総裁選を前に、首相の無投票再選の機運を高める狙いがあると報じられておりますが、この勉強会はどういう目的でつくられたのか、総裁選とのかかわりがあると理解していいのか、一問だけ聞かせてください。

浜田委員長 加藤内閣官房副長官、時間が来ておりますので、手短にお願いいたします。

加藤内閣官房副長官 この懇話会の目的は、政治家に求められる教養と創造力を得るため、芸術家と共通する創作手法と成果の普遍性を追求することは、世界の中で輝ける日本を創造し、デザインする上で必要不可欠であり、心打つ政策芸術を立案し、実行する知恵と力を習得することを目的として結成され、行われたものでございます。

赤嶺委員 終わります。

浜田委員長 次回は、来る七月一日水曜日午前八時四十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五分散会


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