衆議院

メインへスキップ



第16号 平成27年7月1日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十七年七月一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 今津  寛君 理事 岩屋  毅君

   理事 江渡 聡徳君 理事 松本  純君

   理事 御法川信英君 理事 長妻  昭君

   理事 下地 幹郎君 理事 遠山 清彦君

      青山 周平君    岩田 和親君

      小田原 潔君    小野寺五典君

      大西 宏幸君    大野敬太郎君

      鬼木  誠君    勝沼 栄明君

      木原 誠二君    木村 弥生君

      工藤 彰三君    國場幸之助君

      笹川 博義君    白石  徹君

      鈴木 憲和君    武井 俊輔君

      中谷 真一君    中村 裕之君

      橋本 英教君    原田 義昭君

      平沢 勝栄君    藤井比早之君

      藤丸  敏君    星野 剛士君

      前田 一男君    宮川 典子君

      宮崎 政久君    宮澤 博行君

      宮路 拓馬君    武藤 貴也君

      務台 俊介君    盛山 正仁君

      山口  壯君    山田 賢司君

      若宮 健嗣君    緒方林太郎君

      大串 博志君    後藤 祐一君

      辻元 清美君    寺田  学君

      長島 昭久君    青柳陽一郎君

      伊東 信久君    太田 和美君

      谷畑  孝君    丸山 穂高君

      伊佐 進一君    岡本 三成君

      佐藤 茂樹君    浜地 雅一君

      赤嶺 政賢君    宮本  徹君

      本村 伸子君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   防衛大臣

   国務大臣

   (安全保障法制担当)   中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   防衛大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    石川 博崇君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  前田  哲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  土本 英樹君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  槌道 明宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岡田  隆君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            平松 賢司君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   豊田  硬君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房衛生監) 塚原 太郎君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  黒江 哲郎君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  深山 延暁君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  真部  朗君

   参考人

   (東京外国語大学大学院教授)           伊勢崎賢治君

   参考人

   (静岡県立大学特任教授) 小川 和久君

   参考人

   (第三代統合幕僚長)   折木 良一君

   参考人

   (ジャーナリスト)    鳥越俊太郎君

   参考人

   (国際地政学研究所理事長)            柳澤 協二君

   衆議院調査局我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別調査室長     齋藤久爾之君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月三十日

 辞任         補欠選任

  志位 和夫君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  塩川 鉄也君     志位 和夫君

七月一日

 辞任         補欠選任

  白石  徹君     國場幸之助君

  武井 俊輔君     岩田 和親君

  橋本 英教君     藤井比早之君

  宮川 典子君     務台 俊介君

  丸山 穂高君     谷畑  孝君

  佐藤 茂樹君     岡本 三成君

  志位 和夫君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     鬼木  誠君

  國場幸之助君     白石  徹君

  藤井比早之君     前田 一男君

  務台 俊介君     工藤 彰三君

  谷畑  孝君     伊東 信久君

  岡本 三成君     佐藤 茂樹君

  宮本  徹君     本村 伸子君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     鈴木 憲和君

  工藤 彰三君     宮路 拓馬君

  前田 一男君     藤丸  敏君

  伊東 信久君     丸山 穂高君

  本村 伸子君     志位 和夫君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 憲和君     武井 俊輔君

  藤丸  敏君     青山 周平君

  宮路 拓馬君     中村 裕之君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     橋本 英教君

  中村 裕之君     木村 弥生君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 弥生君     宮川 典子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七二号)

 国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案(内閣提出第七三号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、東京外国語大学大学院教授伊勢崎賢治君、静岡県立大学特任教授小川和久君、第三代統合幕僚長折木良一君、ジャーナリスト鳥越俊太郎君、国際地政学研究所理事長柳澤協二君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。

 それでは、議事の順序について御説明申し上げます。

 まず最初に、参考人各位からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。委員の質疑時間は限られておりますので、お答えはできるだけ簡潔明瞭にお願いいたします。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を受けることとなっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず伊勢崎参考人にお願いをいたします。

伊勢崎参考人 本日は、お招きいただいてありがとうございます。大変光栄に思っております。よろしくお願いいたします。

 私の本日の意見陳述は、国連平和維持活動、いわゆるPKOについてだけ陳述したいと思います。

 PKOとは、国連安全保障理事会が承認し、国連が統合指揮をとるものであります。そもそもPKOというのは、武力介入という強制措置でありながら紛争当事者全ての合意がある、つまり国連憲章において第六章と第七章の中間にあるということで、六章半というふうに言われてきました。

 多くの場合、ある紛争国の政府と反政府勢力、これを日本流に言いますと国家と国家に準ずる組織、国準との間に内戦が起こって、やがて停戦となる、その双方が、中立な存在としてのPKOが割って入る、これを認めている状態であります。ですから、この時代のPKOの主要任務というのは、停戦監視が筆頭任務でありました。

 PKOの軍事部門である国連平和維持軍、PKFは、自動小銃などの軽武装、そしてできるだけ大世帯で行く、これで現場を確保して、停戦が破られないように抑止力として機能する、こういう考え方が一般的でありました。我が国のPKO参加五原則というのは、当時のこういう背景を前提に生まれたものだと承知しております。

 PKFを軽武装で大規模にするというのは、国連というのはあくまで中立性を保ちたい、もしくは、戦時国際法、国際人道法における紛争の当事者に国連はなりたくないという国連の意思のあらわれであります。国際人道法というのは、人道的な戦争を行うための流儀を示したものであります。つまり、攻撃していいものといけないものを区別する。もちろん、攻撃していけないものは一般住民であります。

 こういう戦争の人道面に関する立法化を人類は試行錯誤してまいりました。その大もととなるのが、皆さん御存じの、一九四九年のジュネーブ諸条約であります。このときでも、想定する戦争というのは、国家対国家というものでありました。

 その後、内戦の時代を迎えます。国際人道法が想定する戦争の定義が拡大いたします。内戦とは、ある一国の中だけで完結しないのであります。例えば、アフリカのそれのように、植民地時代に引かれた人工的な国境を反政府勢力がまたいで活動する、こういうことが一般的であります。つまり、周辺国同士の政治が複雑に絡んだ構造、これが内戦であります。ですから、こういう内戦というのは、今日では極めて国際化したものになっています。

 ですから、国際人道法が想定するいわゆるベリジェレント、交戦主体というのは、国家よりももっと小規模のもの、ある程度指揮命令系統があり、ある程度の地域を支配する武装勢力、日本で言う広域暴力団みたいなものですね、こういうものまで含むようになりました。これは、一九七七年のジュネーブ諸条約追加議定書によって決められております。

 さて、PKOに話を戻します。

 停戦の監視を任務としてPKOが送られたとして、もし、その目の前でその停戦が破られて戦闘が始まってしまったらどうするか。つまり、住民がPKFの目の前で殺される、殺され始めたらどうするか、その場合PKFはどうするのかということであります。この問題は、国連の法務局と国際法の研究者たちの中でずっと議論されてきました。

 まず、PKOの要員を、PKFの兵隊も含めて攻撃することは、国際法では違法化されております。これをPKO要員の保護特権と申します。

 でも、もしPKF自身が、武力行使されるのではなく武力行使をしたら、そのPKFの保護特権はどうなるのか、この議論であります。

 国際人道法は、御存じのように、相対する交戦主体同士が、お互いを合法的な攻撃目標とし、人道的な戦争をする流儀を定めたものであります。ですから、その一方だけが保護特権を持つということは概念上許されません。よって、PKFがみずから武力行使をしたら、その保護特権は失われる、そして交戦相手と同等になるという考え方が定着しております。

 でも、現実はどうでしょうか。

 PKOというのは、しょせん、基本的に、全く利害の関係のない国のもめごとに首を突っ込むことであります。どの国の部隊にとっても、国防以上のやる気は出ません、残念ながら。つまり、だらだらやるわけであります。

 しかし、一九九四年、後にPKOの行動指針を根底から激変させる事件が起こります。これが、アフリカのルワンダであります。

 ルワンダでは、人口の多数を占めるフツ族の政権と少数派のツチ族の反政府勢力の間で内戦がずっと行われていまして、そして国連の仲介で停戦が実現します。そして、PKOが発動され、PKFが派遣されます。

 このとき、この殺りくを首謀したのはフツ族側であります。つまり、政権側です。つまり、政権側の民兵組織、日本流に言いますと国家側の国家に準ずる組織であります。

 このとき、現場のPKF司令官は、僕の友達なんですけれども、住民を保護するための武力行使を進言いたします。しかし、安保理はこれを却下します。同時に、PKFに兵力を提供した国々も、一つ一つ離れていってしまう、帰っていってしまうわけです。そして、結果として、百日間で百万人です、百万人の住民が殺されてしまう。これが、ルワンダの大虐殺であります。このルワンダの大虐殺を契機として、保護する責任という概念が誕生します。

 保護する責任とは、ある国で重大な人権侵害が起こります、その住民を守るのは本来その政府の義務でありますが何もしない、もしくはそれに加担していたりする、そういう事態には、国連を主体とする国際社会は、その政府を差しおいてまで住民を保護する責任があるというものです。その際には、武力の行使もいとわないといいます。これは、保護する責任という考え方です。これはもちろん、内政不干渉の原則とバッティングをいたします。

 一方で、一九九九年、コフィ・アナンが国連事務総長だったときでありますが、国連事務総長官報として、ガゼットですね、あるおふれが出ます。全てのPKFに対してです。それは、PKFは国際人道法を遵守せよというおふれであります。

 つまり、これはどういうことかというと、PKFは国際人道法の紛争の当事者になる、そういう自覚を持てということです。覚悟を持てということであります。つまり、交戦主体として、敵対する交戦相手から見ればPKF自身が合法的な攻撃目標になる自覚を持て、こういう宣言になります。これが一九九九年に出されます。

 こうして、徐々に、住民の保護がPKFの主要任務になり始めます。南スーダン、コンゴ民主共和国、中央アフリカ共和国、こういう互いに隣接する三カ国で活動するPKOは、現在の話ですけれども、全て住民の保護が最重要任務になっております。つまり、今は、停戦の監視よりも住民の保護が優先される時代なんです。

 つまり、これはどういうことかというと、停戦が破れ戦闘状態になっても、PKOは撤退しません。住民の保護のために武力行使をします。ということは、停戦が破れたら活動停止そして撤退という我が国のPKO五原則は、ここで本当でしたら根本的に見直さなければなりません。

 こういうPKFの任務の激変に伴い、それに兵力を提供する国連加盟国のインセンティブも劇的に変化しております。

 昔でも消極的であったいわゆる先進国からの派兵は、現在さらに激減しております。今は旧宗主国でも出しません。これは本当です。それにかわって台頭しているのが、周辺国であります。昔であれば周辺国の参加はPKFの中立性を損なうという考え方でしたが、現在は、住民の保護のため、より既得利権感を持って真剣に戦ってくれる国の部隊の方が有効というふうに、前提が変わってきております。つまり、集団安全保障の典型である国連のPKOが極めて集団的自衛権の動機に支えられている、これが今の状況であります。

 こういう状況で、日本のような先進国はどうするか、先進国に何が期待されているのか。

 まず、資金です。周辺国の部隊は、基本的に装備が不十分です。これを補完するということです。でも、ただ金を出すばかりではありません。このようにPKF自身が好戦的になっていますので、PKF自身が国際人道法違反をしないように管制すべく司令部の主要ポストを狙います。または、国連軍事監視団、これは安保理の目と呼ばれていまして、PKFでさえその監視の対象になります。

 このように、PKOの中立性が失われる中で、国連で最後に残された中立の最後のとりでがこの軍事監視団であります。これは、非武装の軍人がやることが原則であります。そして、敵対勢力の中に非武装で懐に入り、PKFとの交戦を未然に防ぐための信頼醸成をします。そして、武装解除の説得などもいたします。

 以上、激動するPKOを取り巻く環境を説明いたしました。

 では、この中で日本の自衛隊はどうするのかということに進みたいと思います。

 繰り返しますが、昔と違って、停戦合意が破られたからといって撤退することはできません。そんなんだったら、最初から来るなということです。

 例えば、陸上自衛隊の施設部隊が兵たん活動の一環で道路建設をしている現場を考えてください。そこに武装グループに追われた住民が助けを求めて駆け込んでくる、これは当たり前です。そしてそのとき、住民に銃口が向けられているというふうに目撃したら、たとえその銃口が自衛隊員に向けられていなくても、自衛隊員はこれに対して応戦しなければいけません。

 自衛隊の駐屯地に住民が助けを求めて駆け込んでくる場合も同じであります。でもしかし、保護して中に入れた住民の中に武装グループが紛れていたらどうしますかということであります。

 そもそも、こういう武装グループというのは、住民の中の民族や宗教における敵対感情をあおって暴徒をつくって、その中に紛れて行動することが大変多いです。つまり、住民と戦闘員の区別はつきません。その結果、非戦闘員の住民を誤射してしまう場合があります。これは、PKOの現実としてしっかり想定すべきことであります。

 一方、日本では、そういう武装グループは国家もしくは国家に準ずる組織、いわゆる国準ではないのだから、そういう連中への武器の使用は国際法上の武力の行使には当たらないという議論があります。この日本独自のロジックは、現代の国際人道法の運用には全くありません。というか、国家もしくは国準でなければ、こういうふうに日本が勝手に想定して、国家もしくは国準でなければということで、国際人道法に関係なく殺せるというふうにこれはとれますので、もしこれを英語に訳して発信したら大変なことになります。ぜひしないでいただきたいと思います。

 自衛隊員が任務遂行の中で誤って現地の人々を傷つけてしまったら、これは過失です。非戦闘員、つまり住民を多く殺傷すれば、国際社会はそれを国際人道法違反とみなします。

 PKOでは、国連が一括して地位協定を現地政府と結ぶことで、現地法からの訴追免除の特権を国連PKF部隊全体に付託いたします。PKF部隊が過失を起こした場合、国連には軍事法廷はありません。各国の軍法で裁くことになります。

 つまり、PKF部隊が過失を起こした場合、現地社会の怒りをなだめる、当然ですが怒ります、これをなだめるには、ごめんなさいね、でも、あなたたちの法律よりももっと厳しいうちの軍法で裁くから許してねと言うしかないんです。日本はこの言いわけができません、軍法がありませんので。この言いわけができないとどうなるか。当然、現地社会の怒りは沸騰します。そして、国際人道法違反として、これは非常に重大な外交問題に発展します。

 そもそも、PKOの現場というのは、人心掌握が作戦の成功を左右する非対称戦であります。ということで、自衛隊はこういう作戦上の致命的な弱点を抱えていることになります。

 この問題を、自衛隊員の側から考えます。

 軍法がないなら、ありませんので、自衛隊による海外での過失がもし起こってしまったら、その過失はどう裁かれるか。これは、日本の刑法しかありません。すると、日本の刑法には国外犯規定というのがありまして、日本人が海外で犯す過失は裁けません。そうすると、自衛隊の過失は犯罪として裁くしかありません。

 そもそも、自衛隊の活動のような軍事行動は、個人の意思が極度に制限される国家の命令行動であります。しかし、その中で過失が起こった場合、日本の場合は、自衛隊員個人が犯罪として責任を負うのです。これは重大な矛盾であります。

 私は、防衛省の統合幕僚幹部学校で、もう五年以上教えております。僣越ではございますが、自衛隊の皆さんの立場に立って物を言える立場に私は少しはあると思います。自衛隊の皆さんは、国防に命をかけるのはやぶさかではないと思っているはずです。しかし、国防以外のことに命をかけるのは、それ相応の大義が必要です。

 国際平和に資する、こういう大義名分は簡単に言えます。しかし、そこで何が起こっても最終的に国家が全責任をとるという法の整備をして、我々は自衛隊を海外に送り出しているでしょうか。僕は、していないと思います。これなしに、命をかけられる大義は生まれません。これは、今回の安保法制だけの問題ではありません。一九九二年のカンボジアPKO派遣以来、これまでずっと現場に送られてきた自衛隊員だけが抱え込んできた矛盾であります。

 御列席の与野党の先生方におかれましては、ぜひ、安保法制以前のそもそも論をやっていただきたく、次の言葉で私の意見陳述を締めさせていただきます。自衛隊の根本的な法的地位を国民に問うことなしに、自衛隊を海外に送ってはなりません。

 ありがとうございました。(拍手)

浜田委員長 ありがとうございました。

 次に、小川参考人にお願いいたします。

小川参考人 御紹介いただきました小川でございます。お招きいただきましてありがとうございます。

 私は、昨年七月の閣議決定を支持する立場からお話をいたします。

 まず、日本の安全保障あるいは平和主義に関する議論というものは、日本国憲法と国連憲章と日米安保条約を同時にあわせ読み、その整合性のもとに進められなければいけない。単に憲法の枝葉について議論していても、これは日本国憲法前文の精神に背反する問題であるということは申し上げざるを得ない。その視点からいいますと、昨年七月一日の閣議決定も、現在行われている議論も、憲法に反する部分はございません。

 なぜかといえば、日本国憲法は、国連憲章のいずれの条文も否定しておりません。また、日本国憲法は、日米安保条約のいずれの条文も否定しておりません。条約を結ぶということは、日本国憲法に反していればこれを結べないわけであります。その中で、我々は、この集団的自衛権の議論というものを整理しなきゃいけない立場でございます。

 よく解釈改憲などという言い方がありますけれども、昨年七月の閣議決定というものは、その解釈改憲というような考え方から見ても、ほとんど抵触しないようなレベルのものでございます。

 過去において憲法解釈がドラスチックに変えられたというのは、昭和二十九年十二月、保安隊が自衛隊になるときです。これは、それまでの吉田首相の見解とは全く異なる、そういうところで解釈が変えられました。これについても、国民の過半数は許容範囲内にあるという受けとめ方をして、これを認めたわけであります。そこから見れば、昨年七月一日の閣議決定、この憲法解釈の変更というものは、やはりそこには該当しないという考え方でございます。

 そういう中で、私が二番目に申し上げたいのは、安倍政権は、これまでの日本的な議論を整理し、日本国の安全を確立しようとしている、その点において高く評価をするという話なんです。

 これは、自民党がいい、共産党がいいという話でもないし、安倍さんがいい、安倍さんが悪いという話でもないんです。安倍さんがやっていること、そのことを国家国民の立場で考えたとき、必要なことを粛々と進めている、粛々とと言うと上から目線だという御指摘もありましたけれども、とにかく淡々と進めている、そういうお話でございます。

 とにかく、日本的な議論は、枝葉から始まって枝葉で終わる傾向がある、日本でしか通用しない議論を日本国民に向けて言いわけのように繰り返している。そこから生じる問題について議論が行われるということは余りございません。

 そういう中で、戦後、我が国は、アメリカに安全保障面でもたれかかる格好で来ました。これはアメリカに守ってもらっているのとは違うんですが、やはりもたれかかる格好で来た。ひたすら経済的な発展を追求してきた。それはそれでいいんですけれども、アメリカとの同盟関係を前提とする場合にも、やはり国家としての安全保障に関する枠組みというものはそれなりに構築してこなければいけなかった。ところが、その部分も放置してきた。

 だから安倍さんは、これからお話しいたしますように、同盟関係を結ぶ以上、やはり集団的自衛権の行使というものについてはきちんと向き合わなければいけないということで、限定的でありますが、行使を容認したわけであります。これは、私どもの立場でいいますと、本当に戦略の基本を言っているんです。

 古代中国の戦略の書、孫子というのがあります。孫子のさまざまな言葉の中で有名なものの一つ、巧遅は拙速にしかずというのがあります。つまり、どんなに時間をかけて丁寧に仕上げたものでも、タイミングを逸してしまったら何の価値もない。

 孫子はもともと戦争の教科書です。だが、今はビジネスの教科書にも使えるようなものです。最も優先しなければいけない目標を迅速に達成する、当然、雑な部分は残ります。しかし、一番大事なのは、国家国民にとっては安全ですから、安全を確保するための枠組みを素早くつくる。その安全な枠組みの中で、時間をかけてやり残した部分を丁寧に仕上げていく、これが法律制度の議論であります。

 だから、今、国会で行われている議論というのは時間をたっぷりかけてやっている。その意味では、賛成、反対を超えて高く評価を申し上げたいと思っています。ですから、やはり世界に通用するレベルの議論にその辺を持っていっていただきたい、そう思うわけであります。

 とにかく、この集団的自衛権についても、日本的な議論を整理しようというのが私の立場なんです。

 よく、マスコミの皆さんには失礼な言い方をして嫌われているんですが、小川さんは集団的自衛権に賛成ですねと、そこから来るんですね。賛成ですか、反対ですかと来る。何のために賛成するか、反対するかという前提がないんです、どこに行っても。

 国家国民の安全を図るための選択肢は、例えば防衛力整備一つとっても、選択肢は、現実的なものは二つしかない。片っ方を選べば集団的自衛権の行使というのは前提条件になる、片っ方を選べば集団的自衛権なんて言葉を使わなくて済むようになる。どっちなのですかという話なんです。

 だから、集団的自衛権の言葉なんか使いたくなければ、同盟関係を解消すればいい。そして、独自に防衛力を整備すればいい。ただ、実務家の立場で申し上げますと、今のレベルの安全を独力で実現しようとすれば、やはり大変な負担に耐える覚悟が必要だ。

 防衛大学校の二人の教授が三年前に試算をしたものが本に出ております。これは、今のレベルの安全を日米同盟抜きにやろうとした場合、年間の防衛費は大体二十三兆円ぐらいかかるとなっている。これにいろいろな問題が加わってくるわけでありますが、それは一年で済むわけではないんです。十年、二十年とやり続ける中で、防衛費を圧縮できるかどうかの段階に差しかかる。その間の負担に耐える覚悟が日本国民にあるのか。ありません。とにかく、そのぐらいの負担を腹をくくって受け入れるような国民性であれば、昭和三十年ぐらいまでにやっているんじゃないですか。

 日本人は頭がいいから、とにかく経済的な発展を追求するために日米同盟を使おうとしてきた。そうであれば、もう一つの選択肢、日米同盟を活用するというのがいいし、これが現実的だということを申し上げたい。

 日米同盟は五兆円未満の防衛費のほぼ枠内で維持されている、アメリカという国は世界最高の能力を持っている国である、その国との同盟関係はやはり世界最高レベルの安全をもたらしてくれている、費用対効果にすぐれているという話なんです。

 そういう中で、アメリカの属国みたいだと。これは日本人が悪いんです。これから申し上げますように、アメリカから見て最も対等に近い唯一の同盟国は日本なんです。ところが、日本の議論が、学界もマスコミも国会も含めて、一般論で終始している結果、アメリカに負い目を感じるような格好になっている。これが問題なんです。

 だから、とにかく、属国のように見られないで、アメリカからも一目も二目も置かれるような格好で日本の安全を確保し、平和主義を追求していくという上でも、日米同盟というのは極めてよい選択肢だと思います。

 ただ、その場合、同盟関係を選ぶというのは、相互防衛が前提であります。相互防衛というのは、集団的自衛権の行使というのが前提条件になるということなんです。ただ、個別的自衛権は、自分の国の安全を自分の国の軍隊で守る権利。集団的自衛権は、自分の国の安全を同盟国などの軍事力で守る権利。いずれも、自分の国の安全が先なんですよ。他衛がとか、ほかの国の戦争だとかいうことを言っていますが、自分の国の安全なくしてほかの国の戦争に手をかすなんてことはあり得ない。

 もう一個、日本の議論が一般論で終始しているのは、とにかく、同じような姿形の軍事力を日本があたかも持っているかのような錯覚のもとに、アメリカを助けに行けないのは肩身が狭いなんて言う。

 しかし、納税者の立場で考えてください。とにかく、日本の軍事力というのは、ドイツと同じで、戦後、再軍備の過程で連合国に規制をされてきている、だから自立できない構造なんです。だから、国家的な戦力投射能力は逆立ちしても出てこないんですよ。外国を軍事力で席巻しようとしてもできないんです。

 だから、日本が同盟関係の中でアメリカに当てにしてもらっていいよと言うことができるのは、日本列島という戦略的根拠地を提供し、日本周辺が戦争状態でない場合には自衛隊で守っているという役割分担なんです。

 日本列島に何カ所、米軍基地がありますか。公表されていますよ。八十四カ所。あと、自衛隊が使っていいとされている日米共同使用施設の(b)が五十カ所。百三十四カ所が日本列島に乗っており、アフリカ南端の喜望峰までの範囲で行動する米軍を支えている。

 これは会社に例えると、本社機能が置かれているんです。アメリカは、ほかの同盟国は支店か営業所のレベルなんです。日本のかわりをできる国がない。だから、アメリカは一貫して、日本でナショナリズムが頭をもたげて、日米同盟を解消することに対してずっと懸念をしてきている。これは、機密扱いを解除された外交文書を見れば一目瞭然じゃないですか。

 だから、その辺は、アメリカから見ても最も対等に近い同盟国であるということが、非対称的であるけれども、明らかなんです。アメリカ側と話をしていても、それを否定したり反論を受けたことはありません。それは、我々が税金の使い道について、きちんと見ているかどうかの話なんです。

 それをわからずに、国会の質問で、どこが何をされたかわかりませんが、耳で聞こえてきたのを見て、私はあれっと思った。アメリカを攻撃している国が日本を攻撃していない、日本を攻撃しないと言っている、そのときでも集団的自衛権を行使するのかという質問が聞こえてきました。

 これは、一般論ではそういうことを言えるんです。でも、税金の使い道について国会議員として責任を持っていれば、アメリカの戦略的根拠地、本社機能が置かれている日本列島を攻撃しないでアメリカを攻撃するということはないんです。

 だから、そういう議論はやはり一回整理していただく。時間をかけて議論する中でやっていただきたいと思っております。

 そういう中で、例えば日米同盟というのは、世界最高レベルの安全を日本に提供しているということでいえば、抑止力としてこれにまさるものはない。

 そういう中で、例えば東シナ海についても、中国は極めて抑制的に動いている。南シナ海とは戦略的に差別化しているんです。これは、中国の将軍たちが私に言うぐらいです。気を使っているんですから、わかってくださいと。だから、尖閣諸島で領海侵犯をしている中国の公船、白い船も、一隻の例外もなく、固定武装なし、武装していないんです。すっぽんぽんなんですよ。だから、その辺はきちっとわかった方がいい。

 そういう中で、抑止力というと、沖縄の海兵隊は抑止力じゃないとかいろいろ言うけれども、沖縄の海兵隊地上部隊は、尖閣諸島あるいは台湾海峡有事において、中国が行使し得る現実的なオプション、斬首戦というのがあります。首を切り落とす。断頭攻撃、デキャピテーションというのですが、弾道ミサイルなどで台湾の政治、経済、軍事の中枢をたたいておいて、混乱の中でかいらい政権を樹立する。それを半日か一日でやってのける。そして、そこに国連は、常任理事国中国の拒否権発動もあって介入できない。国際社会が介入できない中で台湾国内で内戦状態が生まれ、既成事実化していく。それに対する唯一の抑止力は沖縄海兵隊なんです。

 一千人の地上部隊しか一時に投入できませんけれども、これは、早い場合には二時間で中国軍とぶつかります。この千人とぶつかることはアメリカ合衆国との全面戦争を意味するから、中国はためらわざるを得ない。ためらわせるから抑止力なんですよ。

 だから、これは、今の議論をきちっと進めていく中で、日本の抑止力というのは格段に向上すると申し上げていいと思います。

 そういう中で、歯どめの問題が常に気にされますが、法律で歯どめをかけるというのは、当然国家としてあっていいんです。ただ、私はもうちょっと大枠の話をします。

 歯どめと言えるのは、国連憲章であり、集団的自衛権であり、自衛隊の戦力投射能力なき軍事力である。これは全部歯どめなんです。

 国連憲章は、とにかく国連憲章の精神とそごを来すような行動を米軍がとるときには、やはりそれを抑制させるというような機能があります。それを使う国があるかどうかという話なんです。

 集団的自衛権もそうです。例えば、ドイツは、西ドイツの時代、再軍備するときに、集団的自衛権が行使されている中でしか個別的自衛権の行使をしてはならないと封じられた。一貫してその状態。つまり、ある国が単独で個別的自衛権を行使することに対する歯どめになっているんです。

 これは、アメリカも例外ではありません。湾岸危機のとき、アメリカのベーカー国務長官は同盟国などを説得して回った。同盟国は全部ノーですよ。値切るんです。とにかく、半値ぐらいまで値切って協力をする。だから、アメリカは単独行動に近い格好で軍事力を行使したかったけれども、それの半分以下の軍事力行使しかできていないと言えるぐらいであります。この歯どめ。

 それから、先ほど来申し上げましたように、海を渡って外国を軍事力で席巻することのできない構造の自衛隊、これも歯どめであります。

 だから、後方支援ということがいろいろ議論になりますけれども、できること、できないことがあって、できないことの方が圧倒的に多いんです、軍事組織としては。それも歯どめの一つであるということを御認識いただきたい。

 最後に申し上げておきたいのは、日本でしか通用しない議論から生まれてくる法律や制度で自衛隊、海上保安庁、警察の手足を縛らないでほしい。彼らが向き合わなきゃいけない相手はフリーハンドなんです。だから、グレーゾーン事態で海上保安庁と警察の特殊部隊を全部かき集めて投入しても、十人から二十人の向こうの特殊部隊に向き合った場合、一時間ぐらいで全員死にます。その辺をちゃんとわかった上で議論を進めていただきたい。

 ありがとうございました。(拍手)

浜田委員長 ありがとうございました。

 次に、折木参考人にお願いいたします。

折木参考人 おはようございます。折木でございます。

 きょうは、この場を与えていただきまして、ありがとうございます。

 現役を退官いたしまして三年半たちましたけれども、この間、日本や自衛隊を取り巻く環境というのは非常に大きく変化をして、国内外でも何が起こるかわからない時代になってまいりました。

 私も、四十年間、自衛官として勤務させていただいたんですけれども、私の自衛官人生の半分、二十年ですけれども、これは昭和と冷戦の時代でありまして、後半二十年がちょうど平成と冷戦後の時代に勤務させていただきました。その中で、前半と後半では自衛隊の役割も大きく変わってまいりましたし、平成元年には、地中海のマルタで米ソの首脳会談が行われて、冷戦が終結したわけです。

 しかしながら、その翌年には、国連憲章と戦後秩序の根本をなします、武力で国境を変更しないという国際社会のコンセンサスが破られてしまいます。イラクのクウェート侵攻であります。これを受けて、国連安保理が決議案を採択し、翌年の一月には湾岸戦争が始まるわけです。

 資源小国の日本にとって命綱であります石油が存在する中東で戦乱が起こったわけですけれども、日本は、資金提供のほかに物資の輸送支援等を要請されましたが、もともと、いずれの態様にしても自衛隊を派遣するという法律的な枠組みもありませんでしたので、皆さん御案内のとおり、かわりに百三十五億ドルの資金拠出を行いました。

 翌年には、戦闘が終了したということで、自衛隊の機雷掃海は可能であるということで、ペルシャ湾に海上自衛隊の掃海部隊が派遣されたわけですけれども、これで、一カ月かけて現場に進出をして、アメリカそれからイギリス等から派遣をされました九カ国、約四十隻の掃海艇と共同しながら、四カ月半かけて、イラクで敷設をされた千二百個の機雷を処分しました。航行の安全回復ということに関して大きく貢献をしたわけです。そして、参加をして行動するということによって、日本の国際的な名誉の回復に貢献したというふうに思っています。

 その次の年にPKO法が成立をしまして、この法律に基づきまして、カンボジアに関西の部隊、隊員を、自衛隊史上初めてですけれども、派遣することになりました。当時、私は大阪で隊員の募集をしておりまして、国内で多くの反対もありましたし、この派遣の説明のために父兄の会合に行きますと、どうしてうちの息子たちがカンボジアに行かなきゃいけないんだと問い詰められたこともたびたびありました。

 その十年後、私は、中部方面総監として兵庫県の伊丹の司令部に赴任しました。ちょうど、当時、イラク・サマーワに派遣していた部隊が伊丹に帰ってまいりまして、そのときに、伊丹の商店街には何と、お帰りなさい、御苦労さまの横断幕が張られておりました。この変化に、涙が出るぐらいうれしかったことを覚えております。

 この時代は、当時の冷戦の時代からポスト冷戦の時代への大きな安全保障環境の変化を受けて、日本の役割、そして自衛隊の役割が変わる転機の時期でありました。大きな政治決断、それから転機の時期であったわけです。振り返りますと、その時代の国際情勢に強く要請されながら、おくればせながら法整備が進み、現場が成果を残していくというパターンが続いてきたように思えます。

 しかしながら、今回の法整備は、日本の憲法の範囲内で、主体的に、前もって活動する範囲とか権限を法制化するという極めて意義のあるものだというふうに思っています。しかも、いずれの場合も国会の判断と承認を必要としますし、国際法上正当な場合しか参加できないことになっています。

 事前の幅広い法整備というのは、部隊、隊員にとって最も大事な、日ごろから十分な訓練ができて、これは共同訓練も含みますけれども、準備を行い、あるいは必要な防衛力整備ができるということです。そして、活動あるいは派遣される場合、国家としての大義、目的を明確に与えられるというふうに私は理解をしています。これは、第一線で活動する隊員、そしてそれらを身近で支える家族にとっても、最も重要なことだというふうに思っています。

 そういうふうに変わってきているわけですけれども、特に、日本を取り巻く安全保障環境の変化、変化というよりも悪化だというふうに思いますが、それに触れさせていただきたいというふうに思います。

 まず、国家間のパワーバランスの変化です。そして、地域的にそれが緊張の高まりを招いています。

 少々具体的に見てみますと、まず、北朝鮮ですけれども、二〇一二年に世襲の三代目として金正恩が政権をとり、体制移行したわけです。核開発、弾道ミサイルの能力増強とか挑発行為は繰り返されておりますし、緊張感が一層増大させられております。

 去年の三月には、朝鮮半島の東海岸ではなくて平壌の北方から初めて、移動式の車載装置に搭載をしたノドンと見られる中距離の弾道ミサイルを発射しました。これは、車載化により位置の特定などがより困難になって、脅威がさらに高まったということを意味しているというふうに思います。

 そしてまた、ことし五月には新型潜水艦から弾道ミサイルの発射実験が行われ、初期の段階ですけれども、成功したのではないかという報道があります。要するに、脅威も質的に深刻化しております。

 さらに、北朝鮮の場合は、特に保有する核の管理というものについて、東アジア全体の安全保障における最大の課題だというふうに思いますし、いずれにしても、北朝鮮は、東アジアで最も不透明、不安定な国であるということは間違いないと思います。

 次に、中国ですが、日本周辺における中国の海空軍の動きというのが活発化をしています。太平洋で行われる訓練も年々増加しており、常態化しているわけですけれども、二〇一三年には、東シナ海に防空識別圏を設定しました。

 こういう中国の軍事動向は、その不透明性とも相まって、周辺国にとって大きな懸念材料、不安定要因となっているところですけれども、それを裏づける中国の二〇一五年度予算の国防費は、日本円で約十六兆九千億円、日本の防衛費の約三・四倍であります。

 五月には二年ぶりに国防白書を発表して、軍事戦略をテーマにしたものですけれども、それによると、局地戦争の脅威、それから核戦力、宇宙とサイバー空間等について述べるとともに、海軍については、近海防御から、近海防御と遠海防御の結合型に転換するということを明らかにしました。これは、海洋進出の拡大を宣言しているところです。これからも積極的な活動が継続するというふうに思います。

 東シナ海でも、皆さん御案内のとおりですけれども、昨年は、一年間で延べ八十八隻の中国公船が領海侵入しました。

 また、最近では、大きく取り上げられております、南シナ海における、強引とも思えるスピードでパラセル、スプラトリー諸島での埋立工事を進め、実効支配を進めております。

 五月には、アメリカのケリー国務長官が中国の外相や習近平国家主席と会談をし、またシャングリラでカーター国防長官も演説され、懸念を表明しましたが、中国側は、主権の問題として、一向に向き合っていません。習近平主席に至っては、南シナ海問題について、もう既に何度も言ってきたことだけれども、広大な太平洋には中米二つの大国を受け入れる十分な空間があると述べたとの報道があります。これは、既に中国が自信を持って南シナ海政策を進めているというふうに思えるところです。

 もちろん、日本も中谷防衛大臣初め、関係国も同様の懸念を表明しましたけれども、これらに対して、軍の関係者であります、シャングリラに参加をしていた孫建国副総参謀長は、中国の主権の範囲内であるということを主張しましたけれども、軍事目的でもあるということを認めたわけです。

 中東の混乱もおさまりません。ISILの活動も活発化が続いています。アメリカのデンプシー統合参謀本部議長は、ISIL掃討作戦には三、四年かかるというふうに発言していますが、中東地域全体を見れば、混乱はいろいろな要素があって、もっと長期的に続くと判断した方が妥当ではないかというふうに思います。これがヨルダン、サウジアラビアの混乱に展開するようであれば、最悪の状態だというふうに思います。

 いずれにしても、安全保障環境は大きく変動し、不透明、不安定でありますけれども、亡くなられた京都大学の高坂教授が述べておられました、国際関係を律する力と利益と価値の体系が複雑に絡み合って、各国が相互に深く影響し合っています。日本の安全保障にとっても機微に影響してきているというふうに思いますし、特に東アジアではその不安定さが強いというふうに認識をしています。

 そういう変化の中で、今回の安全保障法制の評価と言いますとちょっとあれですけれども、発言させていただきますと、この閣議決定をされて、自衛隊がさまざまな脅威に対して切れ目なく活動するということを狙いとして、基盤となる制度を整える、そういうことによって、最終的には抑止力の向上が図られるものだというふうに思っています。安倍総理の発言の中で、もはや一国のみでどの国も自国の安全を守ることのできない時代という情勢認識、時代認識に対して、私は全く同感するものであります。

 安全保障環境を概観しましたが、今や、迫りくるさまざまな脅威に対して、日本が一国で行えることは極めて限定をされています。それは、他国の立場もそうだというふうに思います。日本も、世界の平和と安定のために積極的に役割を果たすことが期待をされています。今の時代は、紛争対応ということだけではなく、国際的な平和維持活動、災害対応、海賊対処、そして途上国の能力構築支援等、幅広い分野で多国間の取り組みが求められています。それぞれの国が、その能力と特性を生かして活動しております。

 そういう中で、四月には十八年ぶりに日米防衛協力のための指針が合意をされました。同盟調整メカニズムを設置する等、いろいろな方向性が示されたわけですけれども、これらの実効性の向上のためにも、今回の安全保障法制の早期の成立が望まれると思っております。

 米国とは、戦後数十年にわたり、自衛隊も共同訓練や海外での活動等の場を通じて連携を深めてまいりました。東日本大震災においても、トモダチ作戦のもと、約一万六千人が発災と同時に駆けつけてくれました。今回の法整備で、さらに緊密な連携ができる基盤が整うというふうに思っております。そして、これが対外的にも大きな抑止力になるというふうに思っています。

 日本の国際平和協力活動等の観点から見ますと、今まで、約三十カ国にわたり、延べ約五・三万人の自衛隊員を海外に派遣してまいりました。現場に派遣されている他国の軍人は、最初は自衛隊のことを当然ながら自分たちと同じ軍隊とみなしています。

 ところが、他国軍といろいろな任務上の調整を進めていると、自衛隊は、いや、我々はそれはできない、自衛のための武器使用しかできない、だから自分からは撃てない、治安活動は無理だといった話が必ず出てきます。もちろん、各国それぞれにいろいろな事情や制約はあります。自衛隊についても他国の軍隊は一応理解はしてくれますけれども、正直なところ、内心でどう思われているかはわかりません。

 約十七年間派遣をされたゴラン高原のPKOの例を挙げれば、他国と同じキャンプに宿営しているにもかかわらず、もし万が一他国がゲリラに襲われたときには日本は支援できません。もちろん、逆の立場の場合は他国が日本を支援してくれるという、何とも言えない状況が生じる可能性がありました。

 これは、国際常識であり、派遣された部隊同士の信頼に基づく人道上、道義上の問題が不可能だったということです。日本の威信失墜と国際問題に発展しかねないことでした。今回の法整備で、現地邦人の救出と同様に、実行するには条件はありますが、可能になることは国際的にも大きな前進だというふうに思います。

 最後に、今後の検討と課題でございますけれども、重要な課題が残っているというふうに思います。

 それは、一つは、部隊行動基準の抜本的な見直しと、部隊、隊員が自信を持って活動できる、徹底した訓練のための時間です。

 防衛省には部隊行動基準があります。国際的な標準では交戦規定、ROEといいます。この内容については詳細に申し上げられませんけれども、一般的なROEとして、行動できる地理的な範囲とか、使用できる武器とか、この武器の使用方法とか、そういうことを定めるのが通例ですけれども、この場合は絶対に武器を使用してはならないというネガティブリストの基準とする必要があるというふうに思っていますし、海外の軍隊もそうです。生死がかかわるかもしれない厳しい状況の中で、即断即決、柔軟性が求められる第一線の部隊、指揮官にとってはネガティブリストが望ましいというふうに思っていますし、それを徹底する時間が必要だというふうに思います。

 もう一点は、武力攻撃に至らない侵害への対処であります。

 今回の法整備におきましては、シームレスな警戒監視とか対処体制の強化、共同訓練の推進等々によって連携強化に取り組むことになりました。新しく法律はつくりませんが、運用手続とか実施要領を細部まで詰めていくという考え方ですけれども、それに伴って、五月には、総理のもとで電話等により必要により閣議決定できるように決まりました。これは一つの大きな改善だというふうに思っています。

 一方、平和安全法制を特徴づけるキーワードの一つが切れ目のない対応ですけれども、例えば尖閣諸島などでの島嶼防衛は、まず、法的執行機関である海上保安庁そして警察が警察力で対応し、その能力で対応できない場合、自衛隊が治安出動や海上警備行動として出動します。そして、それでも対応できない事態になって初めて防衛出動となるわけですけれども、法律の枠組みとしてはそれで連続性や整合性がとれるのですが、いざ運用するとなると、事態認定を踏まえ、いつ海上保安庁や警察から自衛隊に移行するのか、特に防衛出動の発令になると、ハードルが高く、厳しい高度の政治判断が求められます。

 一方、相手側から日本側の対応を見ると、自衛隊の艦艇が現場付近に進出してきた場合には、治安出動か海上警備行動か、あるいは防衛出動か判断できないでしょうし、判断しようとすら思わない場合もあると思います。海上保安庁という機関の補完ではなくて、日本の海上自衛隊、軍隊が出動してきたと考えるのが当然だというふうに思います。

 そこで偶発的な武力衝突が発生するリスク、あるいはエスカレーションを考えなければなりません。平時と有事の間にグレーゾーンがあるだけではなく、警察権と自衛権という運用上のグレーゾーンがあるということも強く意識する必要があります。

 政治の決断は大きいと思います。いずれの権限で派遣するにしても、自衛隊を派遣するにはハードルが高いということです。したがって、広い地域の責任を持つ海上保安庁の巡視体制とか権限をふだんから一層強化しておく必要があるというふうに思っています。

 また、自衛隊が治安出動や海上警備行動に出ないというわけではありません。現在の検討に加えて、グレーゾーン対処の切れ目をできるだけつくらず、運用のリスクを減らすためにも、具体的なシミュレーションによる検討がぜひ必要です。こうした検討に基づいて、連携を強化し、連携要領の改善を行う必要があります。将来的には、その結果として法整備が必要かもしれません。

 これまで自衛隊は、自衛隊でなければできない任務を、国民の支持を得ながら誇りを持って行ってまいりました。これからも、自衛隊の諸官が厳しい任務により一層謙虚、誠実に任務に取り組み、国民の期待に応えてもらうためにも、今回の安全保障法制が整備をされ、また隊員の名誉や処遇も改善されていくことを願っております。

 どうもありがとうございました。(拍手)

浜田委員長 ありがとうございました。

 次に、鳥越参考人にお願いいたします。

鳥越参考人 皆さん、おはようございます。

 予定された時間から十分既に超えておりまして、皆さんそれぞれ言いたいことが多いのでちょっとずつ押しておりまして、今、十分。私、四十五分から始めるところを、もう五十五分になっております。したがって、私は十五分でおさめるつもりでございますけれども、若干押すかもしれませんと事前に御了解を得て。

 私は、二つの点についてきょうは申し述べたいと思って参りました。

 一つは、先日、自民党本部で行われましたいわゆる若手勉強会。若手といっても、大西さんは六十八歳ですから若手と言っていいのかどうかわかりませんけれども、当選二回もしくは三回ぐらいの若手の皆さんの文化芸術懇話会での、マスコミを懲らしめるためには広告収入を減らせとか、沖縄の二紙を潰せとかいう大変乱暴な議論があったことについて申し述べたいことが一つです。

 これを最初に話をするはずでしたけれども、ちょっと順番をかえまして、後に述べるつもりであった集団的自衛権の問題点について先に申し述べさせていただきます。

 それはなぜかと申しますと、昨日、新幹線で焼身自殺の事故がありました。大変な大騒ぎになったことは皆さん御存じのとおりでございます。非常に日本は平和な国ですから、こういうことは日本ではなかなか起きないので皆びっくりされたわけですけれども、私の頭の中で、集団的自衛権の問題が議論されている間、どこからも、誰からも、ある視点からの問題指摘がないのに非常に不安を覚えております。これは新幹線にかかわることですので、ぜひ聞いていただきたいと思います。

 世界は今、どういうふうに動いているかといいますと、中国の大変な膨張ぶり、北朝鮮の核武装等、問題はもちろん日本の近辺にあるわけですけれども、実は、世界を覆っている対立構造といいますか、戦争といったり紛争が起きているのは、アメリカを中心とする一部の国と、基本的にはアメリカと言っていいでしょうけれども、アメリカとイスラム教過激派、我々メディアそれから皆さん方もいわゆるテロリストとお呼びになっているイスラム教過激派のグループ、この勢力との対立構造で世界は今せめぎ合っているわけです。

 二〇〇一年にアメリカ・ニューヨーク貿易センタービルが攻撃されました。九・一一、いわゆるセプテンバーイレブン、あれは実はイスラム教過激派からの宣戦布告であったというふうに僕は捉えております。なぜ私がこういうことを申し上げるかというと、私は、テヘランのイラン特派員で一年半おりまして、イラン・イラク戦争を取材しております。それから、二〇〇四年にはイラク戦争の戦場に行って取材をしておりまして、イスラムということについてそれなりに私は理解をしております。特に、イスラム教の中でジハード、聖戦というもの。

 ジハードに参加して命を失って、自爆テロなどを行えば天国に行ける。一見これは日本の特攻隊に似ているように見えますけれども、全く違うんですね。特攻隊の場合は必ずしも喜んで行ったわけではない、仕方なくお国のために行ったわけですけれども、聖戦、ジハードの戦士たちは本当に、僕は子供からお母さんから一般の兵士も含めて全部取材をしましたけれども、彼らは心から、ジハードつまり聖戦で命をささげた場合は天国に行けるというふうに思っているんですね。だから、ああいう自爆テロを平気で起こす。だって、ニューヨークで飛行機で突っ込んだイスラム教過激派の連中はみんな高学歴ですよ。その辺のならず者がやったわけじゃないんです。ハンブルクの工科大学などを優秀な成績で卒業しているようなエリートが行った行為であるということを考えると、大変恐ろしい。

 何を私が心配しているかというと、今、世界はアメリカ対イスラム過激派の対立構造になって戦争がずっと続いておりますが、イスラム国は、かつてアメリカが大義なき戦争をしかけてイラクという国をめちゃくちゃに壊してしまった、崩壊させた、そのときのイラクの高官、軍人たちが逃亡して今再び立ち上がって、イスラム国というものを再建しようとしているわけです。そのためには、自爆テロでもいわゆる爆破テロでも何でも、我々から見ればとんでもないひどいことをやっても構わないということで彼らはやっているわけです。

 問題は、集団的自衛権の議論の中で、いろいろ聞いておりますと、安倍総理の発言などでもそうですけれども、日本の自衛隊は極東条項といって、これまで極東でのアメリカ軍との共同はあったけれども、極東を離れるということは、ホルムズ海峡の掃海というのは事例としてありますけれども、これは戦闘行為ではありません。集団的自衛権の今回の解釈改憲という議論の中で見ておりますと、アメリカ軍が行くところは世界のどこでも、地球の裏でも行くことがある。つまり中東地域にも、米軍が行って助けが欲しいというときには後方支援を日本の自衛隊はやる可能性が、やるのかどうかはわかりませんが、議論を聞いていると、そういうことになる可能性がある。

 そうなった場合に、イスラム過激派の認識としては、これまで日本というのは全く彼らの視線外にあったと思うんですね。日本が別にイスラム過激派の連中もしくはイスラム国に対して何か悪いことをしかけた、そういうことではありませんので全く視線の中には入っていなかったわけですけれども、先日のエジプトでの安倍総理の二億ドル供与という発言、あれで一気にイスラム過激派の連中は日本が視野に入ってきた。それで、後藤健二さんを殺害するという事態に陥った。

 この構造は、将来、日本の自衛隊がアメリカ軍の後方支援でどこかに、中東地域かどこかわかりませんが行った場合に、明らかに日本の自衛隊はアメリカの友軍である、友達である、つまり、彼らの論理からすれば、イスラム教国、イスラムの国にとっての敵であるという認識を持つ可能性がある。これは可能性ですよ。

 そうすると、二〇〇三年にイラク戦争がありましたけれども、二〇〇四年にマドリッドで列車爆破事件がありました。あのときは、私のあれによりますと百九十一人が亡くなっております。さらに、二〇〇五年にはロンドンで同時多発、列車とバスが爆破されました。これは、明らかにアメリカがしかけたイラク戦争への報復として、スペインとイギリスが自爆テロ、テロリストの攻撃の標的になったということですね。

 そういうことを考えると、将来、日本も自衛隊が集団的自衛権行使ということで、もしイスラム過激派が敵だなと思ったときには、ここにいらっしゃる方も、日本の国のほとんどの人はイスラムなんて全く自分たちにはかかわりのないことだと思っていらっしゃるかもしれませんけれども、実は、将来ひょっとすると日本が標的になる可能性がある、これは集団的自衛権行使と深くかかわっている可能性がある。

 私がもしイスラム原理主義のテロリストだとすれば、まず最初に考えるのは、皆さんの御想像どおり新幹線です。新幹線は今のところ、新幹線と原発と言われていますけれども、原発はある程度セキュリティーがちゃんとしています、しかし、新幹線のセキュリティーというのはないに等しいですよね、自由に誰でも乗れるわけですから。爆弾を持ち込む、きのうはガソリンを持ち込んだわけですけれども、爆弾を誰かが持ち込んで爆破しても何の不思議でもない。そうしますと、恐らく千人を超える犠牲者が出る。

 私は何もそういうことがあると肯定しているわけではないし、そういうことは避けたいという立場からこれを申し上げているんですけれども、そういうことを一応念頭に入れて、イスラム教過激派というのは世界でアメリカと対立して紛争、戦争を起こしている、そういう中に日本が集団的自衛権ということで突っ込んでいくことの危険性についても、ぜひ一考願いたいなというのが第一点でございます。

 もう一つは、今回、この委員会とも関係があると思うんですけれども、先日の自民党本部で行われた文化芸術懇話会、三十七人の議員、百田さんという作家が講演をされた。この席上で、マスコミを懲らしめるには広告収入を減らせ、不買運動を起こすために経団連に働きかけよと。それから、講師である百田さんは、沖縄の二つの新聞は潰せ、潰した方がいいというようなことをおっしゃいました。

 皆さんも国会議員の方ならば、これが明らかに憲法二十一条の、私は覚えていないので読み上げますが、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」と憲法二十一条に書いてある、これに真っ向から反する。つまり、これはその辺の居酒屋で酔っぱらっておだを上げて、マスコミなんか潰してしまえと言っているのとわけが違うわけです。自民党という与党、絶対多数を誇る与党の議員が自民党本部の会議室で、しかも、そこには政府の官房副長官と党の総裁補佐、党と政府の幹部が入った中で行われた。しかも、これは私は確かめておりませんが、新聞報道などによると、この若手議員の皆さんは安倍総理に近い立場の人である、つまり安倍応援団であるというふうに書かれております。そういう人たちがああいう議論をされたということに非常に危機感を覚えます。

 それは恐らく、きょうたまたま朝出てくるときにあったので見てきたんですが、共同通信が世論調査をやりまして、集団的自衛権行使を可能にする安全保障関連法案に対してどう思うかという世論調査ですけれども、ことしの六月二十日、二十一日に実施された世論調査では、反対が五八・七%、賛成が二七・三%。これは、一年前は賛成は五四%、反対は三四%。一年後、反対がふえ、賛成が減っているわけです。国会では絶対多数をとっているにもかかわらず、憲法審査会では与党推薦の参考人までが、この安全保障の法案は違憲である、三人とも違憲というふうに言われている。そして、世論調査では国民は反対をしている。こういう状況に恐らくいらいらされたというか、不満がある、このままではいけない、これはマスコミが要らぬこと、余計なことを報じるからこういうことになっているんだと、自民党の、与党の思うとおりにならないその原因をマスコミのせいにして、だからマスコミがいろいろ書くからだめだというふうに発言されるんだと思います。

 言論の自由、表現の自由というのは基本的人権の中の中核をなすものであって、アメリカを初め先進国、世界各国の共通の価値観なんですね。言論、報道、表現、集会等々の、国民が自分の意見を述べる自由を保障するというのは共通の価値観。これに真っ向から今回は挑戦をされたというわけで、私は大変危機感を覚えました。こんなことでいいのかというふうに思います。

 皆さんは憲法に保障されているからだめだというふうに議論を展開されるんですけれども、実はメディアというのは、歴史的に見ると、間接民主主義、つまり代議制民主主義の中で国民が税金を出して政府と議会に委託しているわけですけれども、その税金の使い方が、ちゃんと使われているかどうかということをチェックする道具としては何もない、しかし、歴史の中で新聞というものがやがて育っていって、納税者つまりタックスペイヤーの税金、自分たちが払った税金がちゃんと使われているかどうかということをチェックする機能をメディアに、新聞に与えたわけですね。

 つまり、それは新聞のミッションとして、権力つまり政府及び国会がちゃんと税金を使っているかどうかをチェックする機能、これを権力のチェックというふうに呼んでおりますけれども、英語で言うとウオッチドッグと言われていますが、そういう機能を与えたわけで、これは何も恣意的に新聞が反政府的になっているわけではなくて、問題があればチェックするというミッション、使命を帯びている、歴史的にそういうものが形成されているということですね。したがって、時には政府に批判的なことを書くこともあるでしょう。そうでない新聞もあるようですけれども、それは別として。

 そういう本来の使命からして批判的になったから、政府に批判的で集団的自衛権の安全保障法制がなかなか前へ進まない、これはみんなマスコミのせいだというふうにして、そんなものは懲らしめろというような考え方は、当委員会の委員の皆さん方の中にはいらっしゃらないと、小野寺さん、思いますが、いかがですか。

 ぜひその点は御理解願って、マスコミにはマスコミ、メディアにはメディアの歴史的に与えられた使命というものがあるんだということ、そしてそれを行使しているということです。ぜひ御理解いただいて、今後も御審議いただければ幸いかなと思います。

 私の話はこれにて終わりにさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

浜田委員長 ありがとうございました。

 次に、柳澤参考人にお願いいたします。

柳澤参考人 おはようございます。柳澤でございます。

 私は、大体四つぐらいの点について、国会の論議を、一日テレビを見ているわけにもまいりませんので報道を通じて拝見している中で、私自身非常にいらいら感もあり、もっとこういうところを議論してほしいのにと感じるところがございますので、そういう点を中心に申し上げたいと思っております。

 この部屋は、実は、周辺事態法を審議いただくときに私は防衛庁運用局長で、当時まだ政府委員の制度がございまして、本当に随分長いこと日参させていただいた記憶がございます。本当に何というか、かなり細かいところまで議論されていた。細かいところを時間をかけて議論すればいいということではないと思いますが、時間というよりは、本当に論点が出尽くしたという感覚が私にとっては一番大事なことだろうと思うのであります。

 まず、存立危機事態とは一体どういうことかということが、これは冒頭からかなりの議論をされておりますが、十分認識が収れんしていったという感覚がない。これはある意味抽象的な話と具体的な話のミックスで非常にやりにくい議論なのかもしれないんですけれども、私の実感として申しますと、今まで自衛隊が多くの国民に支持をされてきた、その背景には、この憲法のもとでも、我が国が攻撃を受ければそれは自衛隊が立ち上がって戦わなければいけないよねというところで、国民もそこは納得していた、そして自衛隊もそこは覚悟していた、政治もそのように理解していた、そういう自衛隊、国民、政治、三者の合意点がそこにあったんだと思うんですね。

 それを今度はお変えになろうという法律でありますから、今度の要件は何だといえば、他国に対する武力攻撃が発生し、そこまでは一応ファクトの問題としてわかるのかもしれない。しかし、それが要件ではなくて、そのことによって我が国の存立が脅かされるかどうかということが武力行使の要件となるということになると、これは一種の価値判断の問題ということなので、ですから、なかなかそこが詰まり切らないんだろう。

 あるいは、ホルムズ海峡の話も随分出ましたが、最近では北朝鮮からのミサイル警戒中の米艦の話が出ている。後者については私もかねてから、現役時代から、個別的自衛権の応用動作で何とかしなきゃいけないという問題意識も持っておりました。つまり、遠いところの議論をすると非常に存立危機との関連、因果関係が薄まってしまって、近いところの議論をすると個別的自衛権との切り分けが難しくなっていく。

 だから、どういうすき間があるのかというようなこと、少なくともそこが合意されないと、そして国民がそれを納得し、自衛隊がそれを覚悟するというプロセスとしてこれはぜひ必要な、抽象的な神学論争ということではなくて、そのための議論、国民と自衛隊が理解を共有するためにも必要な議論ということでやっていただきたいと思います。

 それから、私の立場で申しますと、やはり隊員の安全確保というのは非常に重要な問題であると思っております。

 リスクは当然新しい任務に伴ってある、けれどもそれをできるだけ局限する、最小化するということを政府は御答弁されていると思いますけれども、私の実感として言えば、例えばイラクで、バグダッド以北にC130を飛ばすようにするときに本当に脅威見積もりをしました。ガンを積んで低空を飛びながら作戦行動をしているようなC130もありました。これは一機撃ち落とされていますけれども。問題は、高度六千メートルを飛ぶC130がどの程度の脅威にさらされているかということで、航空幕僚監部にお願いして、できるだけ詳細なデータをとった上で、総理に、確かに一般的なリスクはある、しかし今度の任務で飛んでいるようなC130については今まで直接攻撃、撃墜された例はありませんということを自信を持って報告ができたわけですね。

 そういう作業を内閣官房あるいは防衛省は当然やらなければいけないはずなので、この新しい任務についてのリスク分析といったようなこと、これは、どこまでこの委員会の場で議論していただくかは別として、しっかり認識した上で御議論いただきたい。

 そして、特に、日本の場合はまだ経験がございませんけれども、各国はPKOなどの業務でも既に犠牲者を出しているケースがあるわけですから、せめてそういう事例検討ぐらいはちゃんとやらないと、私は本当に、防衛官僚としても自信を持って安全確保できますとはとても大臣や総理には進言できない問題であるという感覚をぬぐい去ることができないのであります。

 三つ目に、これから大きく我が国の、特に自衛隊の国際的な活動の場が広がっていく、そういう法制になっております。このときに、イラクには六百人を出して、そのうち業務支援隊として復興業務を実際にやっていたのは百名程度ということなのでありますが、道路を直し、病院を直し、学校を直しという仕事をしてきた。私はそれはそれで部隊はよく頑張ったし、立派な仕事をしてきたと思って、私もそこはプライドを持っているところでありますけれども、しかし、恐らくその辺の成果は、その後のあの地域の混乱の中で多分もうほとんど跡形もなくなっているのかもしれないという危惧もございます。

 果たしてどういうスタンスであの地域のそこに責任を持ってどこまでやるのかというところが、正直申し上げますと、あのときは復興のための国連決議もございましたけれども、やはり日米同盟維持という観点で、アメリカへの協力、国際社会への協力が両立する任務としてイラク復興支援ということをやっていったわけですが、サマーワという地域に限定した支援活動であった。今度はもっとたくさんのことができる法律になる。そうすると、そこに我が国はどういう姿勢で臨んでいくのか。

 ブレア政権は、戦局を左右するぐらいの兵力を出さないと、国際的な、特にアメリカに対する発言力はないということで、最大八千人ぐらいだったと思いますが、兵力を出し、そして多くの戦死者を出し、今、結果的には必ずしも成功とは評価されていない、そういう経験もございます。我が国はこれまで実際に戦争をしていないものですから、よその国の例を参考にしながら教訓を酌み取っていく、これはこれとしてまた長い時間がかかることではあると思いますが、そうしたところもぜひ問題意識にのせていただきたい。

 そして、さっき伊勢崎参考人のお話にもございました。ずっと私がやっているころからの法律にも同じ問題が実はあったんです。というのは、海外で自衛隊員が行う武器使用の法律には何と書いてあるか。主語は「自衛官は、」なんですね。自衛隊法八十八条の防衛出動のときのケースは、主語は「自衛隊は、」なんです。自衛隊は武力の行使ができる。ところが、海外の武器使用は、自衛官は武器の使用ができる。つまり、防衛出動を受けて自衛隊として行動する、それは国家の意思としての武力行使、つまり人を殺傷し物を破壊する行為と法律上定義づけられております。

 同じことを、国際紛争の一環にはならないかもしれないけれども、「自衛官は、」ということで、自衛官個人の責任として実はやっていかなきゃいけない。ここに対するケアのための法制というのは、なかなか実は軍法会議とかいったものはこの憲法のもとでは難しいんだと思います。そういうところの矛盾がやはり現地、現場の隊員一人一人に向かうことは避けられないわけですから、そこへの問題意識も持ってどうケアしていくのかということ、法的なケア。まさか一切無罪にするという法律はつくれないと思います。しかし、立法府としてどんな対応ができるんだろうかということもぜひお考えいただかなければいけないなと、私は個人的に思います。

 最後に、やはり大きなテーマは、先ほど小川参考人からもございましたが、結論はともかくとして全く私も同感するところがあって、要は、これで抑止力という観点から見てどうなんだということをしっかり議論していただく必要があるんだろうと思います。

 例えば、アメリカの船を守ることによって日米が強固であるということが伝えられる、それによって抑止力が強化されて、我が国が戦争に巻き込まれる可能性がなくなるというのは一つの筋書きであります。しかし、もう一つの筋書き、それは、今の筋書きが成り立ちますのは、つまり、相手がそれによって日本にはその意思と能力がある、当然アメリカにもあるということを認識し、そして相手が自粛して手を出さない、それが抑止ということだと思うんですね。逆に、相手がそれで、そうはいっても本当に、本気で日本がやってくるのか、本気でアメリカがやってくるのかというところに疑いがあれば、あるいは相手がそれでもなおかつやるんだという覚悟を持っていれば抑止は成立しないわけですね。

 どうもそこのところが防衛計画大綱を見てもガイドラインを見ても、プレゼンスによる抑止という概念は私はあると思いますね、その流れの中でアセット防護というようなことが強調されております。しかし、現場において軍対軍を対峙させることによる抑止、それは一種の拒否的抑止として成り立つのかもしれないけれども、それは逆に緊張を高める要因もある。そして、間違えて撃っちゃったらそれが拡大する可能性もある。それをどう政治的に防ぐのかというその仕組みをしっかり考えていく。武器使用の拡大をするならば、事態の拡大防止は政治の責任でありますから、そこの仕組みをどう考えていくのか。特に、自衛隊法九十五条の二という条文で平時から、これはかつては集団的自衛権の問題として安保法制懇でも議論されていた分野ですけれども、これを平時の武器使用権限として付与する条文があるわけですから、それがどのように拡大しないようにするかということも、これは政治の責任として御議論いただく必要があるだろう。

 そして、最後に、私は冷戦時代に長いこと実務をやってまいりました。七六年の防衛大綱の中では、米ソの大規模な戦争、本格的な戦争はまず核抑止力もあって起こりにくい、ほとんどないだろうという前提に立ち、我が国にあるとすれば、極東ソ連軍が今の体制から一種奇襲的に来るような限定小規模な侵略であって、それに対して独力で対処するということを理念に掲げ、そして陸上自衛隊十八万、海上自衛隊約六十隻、航空自衛隊四百三十機という体制で日本の防衛をやっていたんですね。さっき小川先生がおっしゃったように、アメリカの極東における最大の拠点である日本自身を守るということが、アメリカの世界戦略とも合致している状態であったわけであります。

 今度は、南シナ海のこと、あるいはインド洋のシーレーンなんかが盛んに議論されております。そういうところに海上自衛隊を展開するということは、やはり遠いんですね。冷戦当時六十隻ですが、今四十七隻、海上自衛隊の勢力があります。そのうち、海賊対処でローテーションも含めると六隻がとられています、中期防で七隻ふやすことにはなっておりますが。そこのやはり優先順位と資源配分といったもの、これも当然、法律の中でできる範囲でやるさというのは一つの答えかもしれない。しかし、では本当にそれで何ができるんですかということも問われなければいけない。

 その所要防衛力、あるいは作戦の優先度といったようなところも、これは何も細かいところは数字まではいいのではないかと思いますけれども、ぜひ委員会の問題意識に加えて議論をしていただきたい、こんなことを今までの審議を拝見しながら感じているところでございます。

 以上でございます。(拍手)

浜田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原田義昭君。

原田(義)委員 自由民主党の原田義昭でございます。

 五人の先生方におかれましては、忙しいところ、こうして委員会に出席いただきまして、御高説を拝聴したところであります。また、私ども、これからの審議にしっかり役立てていかなければならないな、こういうふうに思っております。

 その上で、まずお手元に簡単な資料をお配りしております。ガリ刷りで恐縮でありますけれども、これは、同志の今津寛理事が丹精込めてつくられたのを、私が少し手直ししてお配りさせていただいておるところであります。

 これは、現在の日本の安全保障環境、一目瞭然のところはございますけれども、このことに思いをいたさなければ今何でこのような議論をやっているんだろうかということがなかなかわからない方もおろうかと思いますから、簡単に説明しますけれども、一ページ目はそういうことで、日本を取り囲むそれぞれの危機、脅威ということだろうと思います。今、世界全体、また東アジアはとりわけパワーバランスが非常に変化しておりますけれども、北朝鮮のミサイル配備、核開発の問題、さらには何といっても中国の軍事的台頭、先ほどからいろいろ御指摘もございました。

 さらには、これは特に三ページ目を見ていただきますと、世界じゅうで、テロの脅威、宇宙やサイバーなど、今までなかなか経験したことのない新たな領域における脅威の出現、こういうこともあるわけでございまして、しかも、これは観念的な脅威というわけではありませんで、この一ページ目を見ましても、いずれもあしたにもあり得る脅威でございます。例えば、真ん中あたりに尖閣諸島というところがありまして、これは先ほど小川先生からもちょっと触れられましたけれども、ほとんど連日これは接続水域に入ってきておりますし、あろうことか月に大体三回から四回は間違いなく領海に侵入してきているということで、これはとんでもない話でございます。

 いずれにしましても、こういうような危機にあるということ、そしてもう一つは、先ほど新幹線のお話が鳥越先生から出ましたけれども、まさにこの種の事故というのは今まで経験したことのない、体験したことのない、いつ起こるかわからない、これが私は現実の社会だろうと思っております。さすれば、とにかく万全の対策をとっておくということが何よりも大事なことであるし、また国民が安心する、安全を感ずる大事なことではないか、こう思うわけであります。

 私はそうした観点から、きょうは抑止力という言葉がそれぞれの先生から出てまいりました。紛争を未然に防止する力、危機を加える、圧倒する、攻撃する、他国にそういう気持ちを起こさせない力というのは私は極めて大事なことだと思っておりまして、現在私どもが議論しておる平和法制はまさにそのために資するものだ、こういうふうに思っております。各先生方から、抑止力の重要性、とりわけ日米安保を通じて、さらに今回集団的自衛権の概念がそれに大きく資するものだというふうな御理解があったと言っておりまして、私もまさにそういう観点から、この抑止力がそもそも必要だということとあわせて今回の平和法制が非常にそのために役立っている、こう思っておるところであります。

 そういう意味では、私どもはこの平和安全法制を、内閣もそうでありますし、安倍総理も先頭に立ってこれこそ平和を目指した平和法制だということを何度にもわたって力説しておられましたし、ぜひその辺をしっかり国民の皆さんにわかっていただかなきゃいけない。まさに日本の自衛力、みずからを守る力、それを強化すればするほど抑止力が高まり、そのことがよそからの侵略ないし侵害を防ぐことになるという意味では、紛れもなくこれは平和を目指した法制である、こういうふうに考えております。

 ただ、最後の柳澤先生が、抑止力というのはそういう側面もあるけれども、同時に、逆に軍拡競争とは言いませんけれども、向こうがするならこっちからもやるよ、こういうようなことでお互いエスカレートし合わないかというような御懸念も出されました。

 私は、ここはもちろん、今や単に軍事だけの問題ではなくて、外交、さまざまな交流も行われているところでありますから、しかし、持つべきものはしっかり持たなければ諸外国に侮りを与えるという意味では、やはり必要最小限の抑止力を持たなければ国として維持できないというような感じがするところであります。

 そういう意味では、抑止力の重要性ということを改めてお聞きしたいなと思っておりますが、折木先生、一言、先ほど言われましたけれども、そのことについて改めて述べていただきたいのと、もう一つは、今回の平和安全法制の中でそれが十分に機能するんだということについても述べていただきたいな、こう思います。

折木参考人 今、抑止力のお話がございましたけれども、安全保障全般を考える上で、紛争を含めて未然に防止するというのは、これは軍事力だけの話ではなくて外交も含めて非常に大事なことで、これが一つは要点だというふうに思っています。

 そういう面で、抑止力全般を考えたときに、相手にその気にさせないということなんですけれども、それは、先ほど言いました軍事力だけではないということを前提に置きながら軍事的に焦点を絞りますと、やはり力の空白をつくらないという一つ大きなものがあるというふうに思っています。

 一つは、南シナ海、いろいろな状態で、今厳しい状態にありますけれども、時代それから情勢はいろいろ変わっておりますけれども、例えば、米軍が一九九一年までフィリピンのスービックとクラークに存在したわけです。二〇〇二年までソ連それからロシアの太平洋艦隊の一部がカムラン湾に存在したわけです。そういう軍事力が存在することで力の空白をつくらないというのも一つあるのではないかというふうに思っています。

 あとは、国家の意思というのが物すごく、私は、一番基本的なことがあって、不法なものにはきっちり対応する、それから日本の国益、日本の安定、平和を乱す者に関してはきっちり対応するという、その意思が常に示されていなければならないというふうに思っています。次は、備えをしっかりするということで、今回の法制整備もそうなんですけれども、事前にきっちりとした形で、これは国民の、国家の意思にもかかわりますけれども、日本はこういう備えをするんだ、法的にも基盤を与えるんだというのが一つ大きな抑止力の一環だというふうに私は思っています。

 それを踏まえて、例えば今回の法制では日米の共同訓練ももっとシナリオに、予想される情勢に沿って訓練もできますし、そういうことによって力を高めることができる、実効性を高めることができる、それがつながっていくというふうに思っています。あとは、現場としてしっかり訓練をできる体制を整えるとか、そういう基盤的なものをしっかり整えていくことによって抑止力につながっていくというふうに私自身は考えております。

    〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕

原田(義)委員 先ほど鳥越先生から、イスラムから始まりましていろいろお話がありましたけれども、ただ非常に気になりますのが、何となく集団的自衛権ができれば日本の軍隊が世界の裏までアメリカと一緒に行くのではないか、さすればイスラム諸国から非常に嫌われ、危険がられて日本が危なくなるのではないかと。その間には相当な因果関係の離れといいますか、そんな感じがいたします。

 まず、日本が無条件にというか、地球の裏側まで自衛隊が行くということは私は基本的にはないと思っております。極めて条文上も限定的な、そういうところでいろいろな活動をするということはあっても、とにかく今言われるような形で、何か集団的自衛権が認められればすぐにでも行くのではないかというようなことは私は断じてないというふうに考えておりまして、先生のような影響力のある先生方が、やはりその辺はしっかりとした正しい情報を国民の皆さんに与えていただく。

 とにかく日本の防衛政策は、当然のことながら極めて厳しい。例えば新三要件も含め、PKOの五要件も含めて、いかなる意味でもこの国の安全というのは、まずは日本の自衛を確保しながら、しかし国際平和にも決して責任放棄はしないという観点ではございますけれども、その辺をしっかりとまた国民にわかっていただくような御努力をお願いできればありがたい、こういうふうに思っているところであります。

 先生、そういう意味で、この辺、非常に大事なコメントを先生からいただければありがたいな、こう思っております。

    〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕

鳥越参考人 お答えします。

 私も、必ずしも自衛隊が世界じゅうどこでも行くというふうに思っているわけでもありませんが、国会の討論を聞いている限りにおいては、絶対に行かない、総理は戦場には行かないというふうなことはおっしゃっていますけれども、絶対に例えば極東地域から外には出ないというようなことは誰もおっしゃっていませんね。つまり、可能性としてはあるわけですね。

 また、ホルムズ海峡というのは日本からはるかに離れているわけですから、そういう意味で、これはどなたの答弁だったか覚えていませんが、たしか中谷さんだったと思いますが、地球のどこでも行けるという解釈であるというふうな答弁を聞いておりますので、全く、集団的自衛権行使となった場合に、米軍の行くところを、ここは行かない、ここは行くというふうに区分けするようなことには今はなっていない。つまり、可能性としてはどこでも行ける。ただし、そう簡単には行かないというふうに今はおっしゃっているけれども、現実にそういうふうな状況が来た場合に、行ける道が残されているというのが僕は心配なわけです。

 例えば、例えばの話ですからこうなるかどうかわかりませんが、今はオバマ政権は、イスラム国に対して空爆という作戦をとっているんです。つまり、地上部隊は出さないというふうに言っております。これは、イラク戦争をやって、アフガニスタンでも地上部隊を出して、出したけれども、一定の成果は上げたけれども、根本的な解決には至っていないというようなことがあるし、それから軍事費の削減ということもあって、米国は地上部隊はイスラム国に対しては出さないという方針であることは先生も御存じのとおりですけれども、もし次の大統領が民主党ではなくて共和党になった場合はどうか、ブッシュさんの弟さんがもし大統領になったとしたらどうか。

 ひょっとしたら、イスラム国を壊滅させるためには地上部隊を出さなきゃいけないというような話になるかもしれない。かもですよ、僕がそうなると言っているわけじゃないです。でも、そういう可能性がある。その場合に日本の自衛隊が全く無関係のままでいるのかどうか、その辺はやはり曖昧なままであるということです。

 ちょっと時間が来ました。済みません。

原田(義)委員 時間が来ておりますので、もう一つ、柳澤参考人を指名してお話ししたいと思います。

 実は、イラク派遣部隊の自衛官は自殺の比率が高いという話がございます。これは先生からいただいた資料にもそう書いておりまして、手元に、六月十三日の週刊現代、これで私はびっくりしたんですね。一般のイラクの自衛隊の自殺率、「これは世間一般の一・五倍と多い。しかしイラク派遣部隊の数字は、さらにその約十倍になるのです。」こういう書き方をしております。これは多分先生も誤解されているのではないかなということで、実は同じような記事が、後で聞いたんですけれども、東京新聞で出たんですけれども、それが後で削除されたケースがございます。

 資料四枚目を見ていただきますと、「自衛官の自殺について」という、これは防衛省につくらせた数字であります。これは十万人当たりで、イラク特措法に基づいて派遣された自衛官が三十三人、一般の男性自衛官が三十五人、一般成人男性が四十人、こういうことが出ておりまして、多いか少ないかは別としまして、少なくとも、先生が感じておられるような、イラク派遣部隊の数字がさらにその十倍になるという表現はあるいは誤解ではないかなと思いますけれども、これについては、先生、いかがでございましょうか。

柳澤参考人 自殺については、私も先日、後輩の人事局長から同じデータをいただいております。

 当時、私が人事局長をやっておりますときから隊員の自殺は大体年に七、八十人あって、これは普通科二個小隊なんですね。平時の自衛隊でそれだけ失われているということを非常に深刻に受けとめておりました。

 イラクの場合は、今まで一万人に対して二十九人と言われている。私が申し上げてきたのは、平均的に言うと、日本人全体では人口十万当たり約二十人で、イラクの自衛隊で母数を同じにすれば二百九十人ということになるんだろう、そして一般の自衛隊員は実は年間七百人ぐらいになっちゃう、こういう話で、いずれも深刻な話ではあるんです。

 このデータをどう見たらいいかというのは、私は専門家ではございませんが、二十歳から五十九歳までの三十年以上の平均勤続年数の中でたまったストレッサーによる自殺の話と、イラクに出ていた自衛隊、陸の隊員の場合は平均三、四カ月であったと思います、三、四カ月の間に、多分、基本的にメンタルに問題のない子を選んで派遣しているはずだということを前提にしますと、イラクにいる数カ月の期間に受けとめたストレッサーによる自殺ということで、ここは単に数だけではなくて役所もしっかり分析をしていただきたいと思いますので、これ自体、私は決して少ない数字だとは思っておりません。

原田(義)委員 少ない数字と私は申し上げませんけれども、少なくとも、ここのデータに入っておりますように、一般成人ないし男性自衛官に比べて十倍だというような発言については、これはもちろん自衛隊の御家族のみならず国民全体にあらぬ不安やら心配を与えることでありますから、統計のとり方だからいろいろありますけれども、そこは先生、しっかり分析されまして、正しい情報を国民に提供していただきたいなと。非常に国民が心配をしているところであります。

 時間が来ましたので、以上です。

浜田委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 おはようございます。民主党の大串博志でございます。

 きょうは、参考人の先生方には、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。大変勉強になりました。さらにこの質疑を通して深めさせていただきたいと思います。

 まず、鳥越参考人にお尋ねさせていただきたいと思いますが、先ほど来後段の方でお話のありました、今般の自民党内の勉強会を含めた報道に対するさまざまな意見についてのことでございます。

 私は、この安全保障法制特別委員会で議論をしていて、今回かけられている案件は、いずれにしても、国民の皆さんがしっかり内容を知っていただいて判断いただいて、その上でいろいろな議論が巻き起こった上で最終的な結論が出されるべきものだというふうに思います。そういった意味で、健全な議論が日本全国で行われる、そのためにも、マスコミの皆さんがいろいろな見地から、いろいろな立場からの種々の情報を流していただく、これは非常に大切なことだと思うんです。

 そういう意味で、報道の自由の問題は、殊さらに今回のような大きな課題が国会にかけられているときには大切なことだというふうに私は思う中で、先般のような自民党の勉強会での、マスコミを懲らしめる、しかも安全保障法制の理解との関係でそういう発言が出るというのは、私自身は極めて残念だというふうに思いますし、そうであってはならないというふうに思う。

 特に、私自身も、安倍総理自身の、マスコミに対して編集内容がおかしいじゃないかというふうにおっしゃった発言を予算委員会でも取り上げて、報道に対して萎縮効果を持たないかということを取り上げたこともあります。さらには、そのときにあわせて、自民党の方から報道各局、テレビ局に対して公正な選挙報道を頼むというふうな文書が出されたことも一緒に取り上げて、報道の萎縮を招かないかということを取り上げたこともあります。

 私自身は報道の世界にいたことがないものですから経験がないんですけれども、今回起こっているようなマスコミの皆さんへのいろいろな言辞、言葉、あるいはプレッシャーというのかもしれません、こういったことが、私は五十年しか生きていないんですけれども、先生の経験の中で、過去こんなようなことがあったんだろうかというようなことを教えていただけたらというふうに思います。

鳥越参考人 お答えします。

 過去あったかどうかということですが、ありました。それは、戦前です。

 戦前は、報道に対する規制が治安維持法という名のもとでありました。その結果、日本は、言論の自由、報道の自由はなくなりました。そして、戦争に全部賛成をするという意見しか通らなくなった。これは皆さん、歴史を学べば御存じのとおりです。それは朝日新聞から始まって、毎日新聞も、東京日日と言いましたけれども、当時はテレビはございませんでしたが、新聞は全紙とも、大政翼賛会のもとで戦争大賛成というふうになったことは御存じのとおりだと思います。

 それ以後は、戦後はもちろんそういうことはなかったわけです。

 ただ、私が五十年間報道に携わっていて今感じているのは、安倍政権になってから、政権のマスコミ、メディアに対する対応が変わった、非常に神経質な対応になったなというのを感じております。

 これは恐らく安倍さん、安倍総理の個性にも基づいているんだと思いますが、思い出していただきたいのは、NHKの従軍慰安婦の問題のときに、安倍さん初め数人の自民党の議員が放送内容にかかわって、一部変更があったというふうに言われております。そして、思い起こせば、安倍さん自身が、ニュース23の放送の中で、街頭のインタビューの内容が気に食わないということでぶち切れたということがございました。

 そのほか、NHKとテレビ朝日ですけれども、事情聴取される。これは今までやったことはないんですね。権力、与党の政党が個別にテレビ局を呼んで事情聴取というようなことは、これまではございませんでした。これはやはり一定の抑制効果を生むだろうと思います。

 そのほか幾つかそういうのは散見されるわけで、恐らく、これまでの自民党政権も見てきておりますが、自民党政権の中では、これほどマスコミに過敏に反応した政権はございませんでした。安倍政権になって初めてこういうことが起きている。その結果、恐らく一定の萎縮効果、やっぱりちょっとここは少し言うのはやめておこうかというような萎縮効果を生んでいることは間違いないと思うんですね。具体的にどれだというふうに言われると、ちょっと私も答えようがありませんが、そういう感想を抱いております。

 以上です。

大串(博)委員 実は私、過去にありましたでしょうかという質問とあわせて、それを受けて現場の雰囲気はどのような状況なんでしょうかと、私、メディアに所属したことがございませんものですから、お尋ねしようと思っていたのですけれども、今あわせて教えていただきました。一定の抑制というか、萎縮効果があるということのお話でございました。

 今回のような極めて国民の皆さんの平和と命にかかわる案件を議論している際には、そういうふうな、いつもそうですけれども、やはり萎縮効果というのはあってはいけないと思うんですね。その辺を私たちも心にしっかりとめながら、これからさらに議論をしていかなければならないというふうに思っております。

 それから、鳥越参考人にもう一つお尋ねしたいと思うんですけれども、先ほど、日本が全世界に、米国とともにいろいろな活動にこれから参画していくと見られる、そういった場合に、例えばイスラムの過激派からテロの対象となり得る可能性がまた高まる可能性もあるというふうな話がございました。

 裏から教えていただきたいんです。すなわち、今、逆に言うと、これまでは、日本は憲法九条を持つ中で、今までの体制をとってきました。この中で日本というのは、中東においても、あるいはイスラムの皆さんにとってもかなり融和的な存在だったんじゃないかなと思うんです。先ほどの話の逆で、これまで日本はどういうふうに中東の皆さんから見られて、それはどういうふうに日本にプラスなりマイナスなりあったのか、そこを教えていただきたいと思います。

鳥越参考人 お答えします。

 私は、一九八四年から五年までイランに特派員としておりました。そのころは、ペルシャ湾でIJPCという三井物産が進めているプロジェクトがありました。そのため、安倍晋太郎外務大臣、安倍総理のお父さんが何度もイランに来られていろいろと会談をされた。つまり、イランと日本は当時は非常に友好関係があったわけですね。その友好関係の先頭に立って安倍晋太郎外務大臣が努力されていた、その姿を私は現場で見ております。

 そういう意味で、その後、中東各地をあちこち私は取材に歩いたんですけれども、そこで聞かれる日本に対する声は、日本は米軍と戦って原子爆弾を二発落とされた、にもかかわらず、今は経済的に発展して平和的な国になっている、大したものだなというお褒めの言葉を必ず聞いた。日本に対する敵対心、敵がい心というのは一回も聞いたことがないです、それは間違いなく。トルコなどでは、日露戦争のときのバルチック艦隊との戦いで日本が勝利したということを取り上げて、日本を称賛するような声もありましたけれども、それは別として、基本的に日本は平和的な国であるという認識でこれまでいたことは間違いないです。

 ただ、この間、後藤さんが殺されたことについては、やはり非常にこれまでとは違うなという印象を抱いております。

 以上です。

大串(博)委員 ありがとうございます。

 国際環境、安保環境についてですけれども、折木参考人にちょっとお尋ねしたいと私は思うんです。

 国際環境、安保環境はやはり日々刻々変化している。先ほどおっしゃったように、前半二十年冷戦期、後半二十年ポスト冷戦期と、歴史を教えていただきました。

 その中で、私ども、民主党政権、政権を担う時期をいただいて、その歴史の変遷と格闘してきた。我々、二二大綱というのをつくり、当時、折木参考人も統幕長として大変な力をいただきました。ありがとうございました。

 当時まで基盤的防衛力構想ということで、その内容はかなりいろいろ変わってきたわけではございますけれども、基本的には、北方からの脅威に対して、北海道を中心として、一定の量を保ちながら日本を守っていこうという流れの中で、それが、安保環境が変わってきて、南西諸島、中国も含めていろいろなことがありました。こういった事実関係を踏まえて、南西諸島に対して、今度は、動的防衛力構想ということで、より柔軟に動的に、質的にも、そういう視点から日本の南西諸島も含めた守りを固めていこうと。

 当時、私たちは、個別的自衛権をきちんと念頭に置きながらやっていこうということを考え、二二大綱をつくりベースをしいた。それは、私は大転換だったと思うんです。当時、統幕長でいらっしゃった折木統幕長にも、各幕の中のいろいろな意見調整も含めて、大変な御努力をいただいたと思うんです。私は、そういった流れは決して間違っていなかったし、日本が目指すべき一つの大きな方向性だったというふうに思うんですね。

 この辺に関する折木参考人の御意見、御所見をいただけたらというふうに思います。

折木参考人 ちょうど私も、民主党政権の中で統幕長もやらせていただきました。今御案内がありましたように、二二大綱のときも大分議論の中に入らせていただきまして、つくらせていただきました。

 そういう中で、今御指摘がありましたように、安全保障環境というものが非常に変わってきて、南西諸島ももちろんですけれども、世界的にも情勢が大きく変わってきた。そういう中で、日本の自衛隊が持っている資源それからパワーといいますか、それを有効に活用するためにはどうすればいいんだということを皆さんに考えていただいたというふうに私は思っています。

 そういう中で、南西諸島に、例えば陸上自衛隊でいいますと空白地帯があるわけで、与那国島に今建築されていますけれども、そういうことも含めて、機動力というのをしっかりつけて、いろいろな事態に対応できるようにやっていこうという、私は、北方重視から、南西諸島重視とは言いませんけれども、要するにそういう転換をしたということは、状況に物すごく対応しながら防衛力整備をやっていこうということを国で決めていただいたというふうに思っていますし、大変感謝しております。

大串(博)委員 ありがとうございます。

 そのときそのときの安保環境の変化において対応してきたというのは、どこの政権でも同じだと思うんですね。それを、そのときそのときで誤りなく、もちろん憲法の大きな枠組みもございますので、その中でやっていくということだと思うんです。

 その上で、安保環境の変化も含めて今この法案が提案されているわけですけれども、柳澤参考人にお尋ねしたいというふうに思います。

 今回の法案の中で、これまでこの委員会の中でも大変議論してきているのは、特に集団的自衛権の課題につきましては、新三要件と言われているもの、特に存立危機事態、我が国の国民の皆さんの権利が根底から覆される、これをどうやって判定するのか、この判断する基準が極めてあやふやではないかというところが大きく取り上げられています。

 柳澤参考人は、内閣官房副長官補、安全保障を担当される方として、官邸の中で、まさにそういうことが起こったときに、どうやって意思決定をしていくかということを支えてこられた方でございます。

 私も役人でおったので、ちょっと想像するんですけれども、一体、この存立事態になりそうになったとき、これからなっていくかもしれないなと思ったときに、どうやって政府の中の意思決定をしていくんだろうというのが、正直言ってよく見えないんです。

 というのは、基準がはっきりしないという思いがあるものですから、その準備段階で、各所各所、つかさつかさが、例えばどういった資料を集め、どういった分析をし、どういった起案書、ペーパーを書いて、政府の中の一つ一つの部局の調整をしながら、最終的には総理の決断を得ていくような、きちっとした体系的な議論が一体できるんだろうかという気がするんですね。

 この委員会の中でもよく、総理が担当大臣や事務方の答弁を制止しながら御自分でいろいろなことを答えられるという光景を見ます。かなり総理の判断に今でも依拠している。それが、まさに存立危機事態となると、かなりその面が大きいんじゃないかなというふうに思うんです。

 一体どうやってつかさつかさの動きもつくっていくのか、いけるのかという観点からも含めて、新三要件の具体性に関してどういうふうに感じていらっしゃるか、教えていただけたらと思います。

柳澤参考人 大変難しい御質問だと思います。

 その前に、さっき原田先生へのお答えの流れの中で、ちょっと私、単純計算ミスをして、もしかして、一般隊員の場合は十万人当たり七百とかいう、それはもともと十万人当たり四十という数字ですので、単純な間違いでございました。

 官邸の中での重大な意思決定というのは、実はそこまで私自身は遭遇したことはないのですが、イラクの派遣をいつ終わらせるとか、出すの出さないのといったようなところは、私の感覚では、やはり皆、総理の方を見るわけですね。

 いろいろな、つかさつかさによって、私の経験した当時は、こういう問題はあるということは言ってくれるんですが、そういう問題がある上で、つまり、ある程度やはり自分のところのリスクはちゃんと口にしておかなければいけない、しかし、その上で判断するならしてくださいということで、総理の決断というのは、私、拝見していて、非常に孤独だし、非常に重たい。

 我々も、意見として、それはやるべきですと言ったこともあります。海上警備行動の発令のようなときに、やるべきですと言った。それは、非常に法律的にもはっきりしていたようなことはそれで言えるんですが、ただ、本当にこの存立危機事態というようなことになると、恐らく、日ごろからある程度の事態を、ちょうどガイドラインの計画策定作業を米側とやっていくわけでありますから、その中での問題意識も見ながら、どういうケースがどうなんだということを、多分そこで日米の共同のオペレーションが前提になってくると思います。

 問題は、表には基本的に出ないわけでありますが、それがタイムリーにちゃんと総理にまで認識として上がって、ただ、やはりその中でも幾つかの選択肢はありますよ、どれをおとりになることによってこういうリスクはあるというような、そういうマトリックスがしっかり整理されているかどうかということが政府内の意思決定としては問題。そして、それはやはり総理が責任をおとりになる以外にないだろうということ。

 もう一つの問題は国会承認ということになるとは思うんですが、そういう作業が、いざそういうことが起きるまで実はオープンにされないというところですね。その辺をどう国会との間で意思疎通していくのかというのは、それは国会の審議の実効性の観点から、議会としてお考えいただく必要があるのではないかなというふうに思います。

大串(博)委員 ありがとうございます。

 柳澤参考人、もう一つお尋ねしたいと思うんです。

 安保環境の変化なんですけれども、さまざま、やはり安保環境、これまでも厳しいときもあったし、今でも厳しいものもあると思います。

 るる説明のあった中で、ただ、今の時期において、今の時点において絶対に集団的自衛権を憲法解釈の変更をしてまででも、先ほどのお話にタイミングの話もありましたけれども、今やらなければならないほどの安保環境の変化がこの足元で起こったのかどうか、私も専門家ではないものですからよくわからないところがあるんです。この辺が国民の皆さんの関心だろうと私は思うんですけれども。

 安保環境の変化、集団的自衛権を憲法解釈を変更してまで今入れなければならないようなものが起こっているのか、この辺に関する御所見を教えてください。

浜田委員長 柳澤参考人、時間が来ておりますので簡潔に願います。

柳澤参考人 私は、いろいろな大きな変化の中で何が一番政策立案の面で見て大きな要素かといえば、実は、アメリカの軍事的な軍事力行使の意思が非常にあやふやになってきているということがあるだろうと思うんですね。

 数的に判断できる海軍力とかパワーバランスの違いというのは認識可能なんですが、その面ではまだ当分アメリカの圧倒的優位は続くというふうに私は評価しておりますけれども、問題は、それを本当に、非常に単純に言えば、中国と本気で戦争をするんだろうかということ。中国の方も、本気でアメリカに盾突いて一戦を交える気があるんだろうか。そこら辺が非常にわかりにくくなっているところが、それは両者の国益が非常に曖昧に対立しダブっている、そういうことを反映していると思うんですが、それが今そのはざまにある日本が置かれている安全保障環境の一番の不透明感の源にあるんじゃないか、その中でどういうかじ取りをしていくのかということが今問われているというふうに私は認識をしております。

大串(博)委員 終わります。ありがとうございました。

浜田委員長 次に、谷畑孝君。

谷畑委員 維新の党の谷畑でございます。

 五人の参考人の先生方、本当に貴重な意見をいただきまして、ありがとうございました。

 まず冒頭に、鳥越参考人にお聞きをしたいと思います。

 過日、六月二十六日から二十八日に行われた日経新聞の世論調査で、安全保障法制の成立に六割近くが反対している、この法案を憲法違反とする回答も過半数を上回っている、そして、説明が不十分、これも八〇%を超えている。

 これは何も日経新聞だけではなくて、この法案を審議し出して一カ月、六十八時間やっている、にもかかわらず、やればやるほど支持率が下がっていく。それから、憲法審査会で与党が呼んだ参考人が憲法違反だと言ってみたり、また、過日の参考人におきましても、内閣の法制の番人とも言われる元法制局長官もこれは憲法違反だと言っている。こうなってきたら国民は、わけがわからぬ、なぜこの法案を急ぐんだと。

 これが世論調査の結果だと私は思っておるんですけれども、ジャーナリストとして鳥越参考人はどう思われるか。

鳥越参考人 お答えします。

 基本的には安保法制の中身がわからないという意見が一番多いんですね、八割ですか。国民はわかっていないというのが基本的にあると思いますけれども、しかし、わかっていないにもかかわらず反対が多いというのは、何かやはり、憲法を解釈改憲するということについての国民の不安感がそこにはにじんでいるのであろうというふうに私は思います。

 そうでない限り、これだけ圧倒的な与党体制の中で行われている今回の法制が、ここまで国民の理解を得られないというのはどう考えてもおかしい。どこかに無理があるんだろうなと。この話はやはり、基本的に国民が望んでいないということのあらわれだというふうに私は思います。

谷畑委員 再度、鳥越参考人にお聞きします。

 私も若いころ沖縄の返還闘争にかかわって、パスポートを持ち、時の那覇から糸満まで一週間、平和行進に参加したりした。そのときに町会の婦人の皆さんや町会議員の皆さんが泡盛を持ってきてくれて、三線も弾いてくれて、同時に戦争体験を聞いたりして、私はそのときに沖縄の置かれた立場というのを勉強しました。

 そういう中で、私も長いこと自由民主党に所属しておったんですけれども、自由民主党の場合も小渕元総理だとかあるいは当時の首脳部は非常に沖縄にも理解が深くて、東京以外のサミットを初めて沖縄でやると。私どもも、清和会に属しておったんですけれども、沖縄で研修をやろうということになって、皆が理解をしようというのは相当あったんですよ。

 ところが、今回、若手の自民党の勉強会、まさしく言論に対する圧力というのか、非常にけしからぬと私は思いますけれども、同時に沖縄に対する認識も全くできていないんじゃないか。日本の安全保障というものを推進していこうとすれば、やはり沖縄の置かれた状況、とりわけ第二次世界大戦末期で四十万人の人口で十万人も死ぬ、しかも返還がおくれてアメリカの施政下に入る、そして基地が、米軍基地を含めて七十数%が沖縄に集中している、ここはしっかりと理解して日本の安全保障を進めなきゃならぬ、私はそう思うんですけれども、一言コメントがあればよろしくお願いします。

鳥越参考人 お答えします。

 私は沖縄には何度も取材に行っておりますので、沖縄の実情はある程度自分で実感としてつかんでいるつもりでおりますけれども、この間の勉強会、文化芸術懇話会で、たしか大西議員だと思いますけれども、沖縄の新聞は非常に政権に批判的でどうしたらいいかというふうな誘導質問をされて、それに百田さんが……(発言する者あり)ある議員、名前言えない、ある議員。百田さんが、沖縄の二つの新聞は潰さないといかぬというふうにおっしゃった。これはやはりメディアの問題でもありますけれども、沖縄に対する蔑視ですよね。沖縄の人に全く上から目線で、沖縄の新聞はけしからぬ、潰してしまえというのは、これはどう考えても普通じゃないですね。

 沖縄は、皆さん御存じのように、太平洋戦争の終末期において多くの、十万人の犠牲を出して、そして本土上陸をそこで食いとめた。多くの犠牲を出しながら食いとめた。したがって、九州の上陸作戦、オリンピック作戦はできなかったというようなことがあって、私は九州の出身ですから、余計に沖縄の人たちにはやはりどこかで申しわけないなという気持ちは持っております。沖縄に対する日本の本土からのそういった視線、目線、それから言い分がやはり少し偏っているな、もう少し沖縄のことをちゃんと受けとめていただきたいなというふうに思っております。

谷畑委員 それでは、次に、小川参考人にお聞きしたいと思うんです。

 戦後七十年、日本は、個別的自衛権は独立国として当然あるし、同時に集団的自衛権も当然ある。しかし、歴代の内閣は、憲法上これは行使しない、ずっとこう来たわけで、昨年の七月一日に安倍内閣で集団的自衛権の限定行使を容認すると。

 これは大変な大転換ですよね。ここらが国民自身がなかなか理解できない大きな要因だと思うので、ぜひひとつ、政府が言えないその背景、なぜ集団的自衛権の限定的行使という背景になってきたのか。もちろん、アメリカの地位の低下だとか、あるいは中国の尖閣諸島等を含めてのいわゆる領土内における公船の侵犯だとか言われています。そこで、ずばりと、政府が言えないような話をひとつお願いしたいと思います。

小川参考人 どうもありがとうございます。

 政府が言えないことを私が言えるわけないんです。ただ、一般的に、臆測でアメリカが圧力をかけたとかいうような議論がありますが、そういったことで今回の集団的自衛権の限定行使容認というものがあるわけではない。

 本来、集団的自衛権というのは、先ほど私の意見陳述で申し上げましたように、同盟関係を選択する以上、前提条件になる。それを、日本でしか通用しない議論によって、権利はあれども行使せずといったようなことで言ってきた。それを当たり前に直そうというのが今の安倍首相の姿勢だと思います。だから、これをきちんと、自分たちだけの防衛力で今の安全を獲得しようとするのか、あるいは同盟関係をとことん研究して活用してやろうとするのか、どちらかしか選択肢はありません、それについて国民の皆さん考えてくださいというのをもう一回政府が問い直さなきゃいけない、その辺はあると思うんですよ。だから、これは何かどこかから圧力があってとかいうのは、よく聞く話だけれども、私は余り感じたことはないんですね。

 もう一つは、周辺の安全保障環境の変化というのはもちろんありますけれども、それを受けて動くのではなくて、本来、独立した国が備えなければいけない安全保障の体制とはいかにあるべきかということから積み上げていく、それで向き合っていくことが最初になきゃいけない。そうじゃないと、状況対応型の議論になって、ソ連が強力なときは北方脅威論があってというような話になっちゃうんです。これは先ほど来いろいろな方のお答えの中にもありましたけれども、抑止力についてもやはり整理しなきゃいけないんです。抑止力が高まれば安全が実現するという一方、それによって相手が出てくるんじゃないかというお話もありました。これは一般論です。

 とにかくアメリカが例えば日本列島をどれぐらい重視しているかというのは、この三年ぐらいの間、直接アメリカが習近平さんに対して警告をしているということがあります。一つは、三年前の九月十七日ですが、当時のパネッタ国防長官が習近平国家副主席に対して、尖閣諸島といえどもアメリカの国益であることをお忘れなくということを言っています。日米同盟云々よりもアメリカの国益が前提なんですね。そして、おととしの六月にはオバマ大統領が習近平国家主席に対して、中国はアメリカと日本が特別な関係にあることを理解すべきですと言っている。これはちゃんと報道されています。これは、とにかく日本列島がなければアメリカのリーダーシップが崩れる、それだけのものを置いている、それだけの重要性がある、だから容赦しませんよということを警告しているわけです。その辺のことをきちっと押さえながらいくと、一般論というのは成り立ちにくい。

 それから、集団的自衛権の問題と抑止力の問題でお話をしますと、戦後、アメリカの同盟国で攻撃された国はないんです。もちろん今は国家間の戦争とは別にテロとの闘いということで考えなきゃいけないけれども、まずは国家同士の戦争では、アメリカの同盟国で攻撃されたことはない。それは、アメリカが怖いからじゃなくて、アメリカという国がたくさん同盟国を持っている、その同盟国もまた別に同盟関係を結んでいるところもある、だから、アメリカの同盟国を攻撃するということは世界を敵にするほどの覚悟が必要だからやらなかった。ある意味で例外的なのはアメリカの同盟国であるイギリスの領土であるフォークランド諸島をアルゼンチンが攻撃したケースですが、これはとにかく、NATO条約の域外であって、集団的自衛権によって反撃されないということがわかっているからやったんです。

 だから、その辺のことは、抑止力が高まるという意味で集団的自衛権についてはお考えいただき、周辺の安全保障環境の変化というのは当然押さえなきゃいけないけれども、まず本来的に国家として備えなければいけない能力を備える、そういったところで議論をお進めいただければと思っております。

 ありがとうございました。

谷畑委員 ちょっと、持ち時間が余りありませんので。

 維新の党というのは、最初から反対だということではなくて、独自法案を出していこう、そういう立場であります。

 その中で、柳澤参考人にお聞きしたいんですけれども、日米のガイドライン、これは三回改定している。前回は北朝鮮の関係で改定したはずです。今回は中国の、尖閣等を含めて、そういう背景の中でと言われているわけでありますけれども、このガイドラインの評価について少しコメントしていただきたいと思います。

柳澤参考人 非常に従来のものと違っているなと感じました。

 それは、私も担当させていただきましたが、九七年のガイドラインというのは、事態がはっきり認識されていた、そしてアメリカは当然日本を拠点にして朝鮮半島危機に対応する、したがって日本は本土と周辺における後方支援をやっていくというイメージがはっきりあっての作業であったわけですね。今度は、あらゆるところであらゆる事態に対して日米の協力関係ということでありますので、その意味で事態が特定されていないというところがまず大きな特徴。

 そして、おっしゃったシーレーン防衛の観点で中国への対応という意味では、さっきもちょっと申し上げましたが、海洋安全保障というワーディング、そしてアセット防護というワーディングが平時から事態の深刻化の中で何度も使われているということでありますね。ですから、これが従来のものと違うのは、アメリカが何をやるかがはっきりわかるから自衛隊がどういう協力をするかという答えが出てきた、今度は、そこがよくわからないけれども、そこを共同計画をつくっていこうということでなされている。

 そして、もう一つの大きな特徴は、今までは共同計画を検討すると言っていたんです。それはなぜかといえば、それを日本国としてオーソライズできるのは、実際に事態が起きたときの閣議決定のときを待たなければいけないからですね。今度は2プラス2の監督のもとにそれを平時から策定するとなって、平時からの政策的な一体化というものがある意味制度的にインプットされているようなのが非常に大きな特徴かなと。

 そこのところがアメリカの意図との、やはり脅威認識のずれ、あるいは国益も完全に一体ではありませんので、その辺を踏まえてどう運用していくか、その辺のところがはっきりしないところに、逆に、国民というか批判する側からする巻き込まれの恐怖というものもある。一方で、アメリカの方も日本の冒険的な行動に巻き込まれたくないという思いもあったり、その辺の調整というのが、今度のガイドラインは実はスタートであって、非常に大変なものになるな、そんな思いで見たところであります。

谷畑委員 柳澤さんにもう一度、このガイドラインで。

 私がちょっと不思議だと思うのは、せっかく安全保障関連法案を今審議しているわけですよ。本来、この審議が終わって、この法案が可決されて、そしてガイドラインの改定、手続はそうでなければならぬのじゃないか。そうしないと、審議も、法案も成立しない中で先取りをした、日米の関係でガイドラインというのは、先取りをずっとこの指針の中にされている。これは僕は下手をしたらやはり憲法違反じゃないかと。(発言する者あり)まあちょっと、私が発言しておるのですから。

 そんなことを思い、国民もそういうように思う場合があると思いますので、ちょっとそのあたりを教えていただけたらありがたいと思います。

柳澤参考人 実は、九七年のガイドライン改定も、先に行政の作業が先行してはおったんですね。ただ、そこは、どのように違いを評価するかというのはいろいろな御意見があるとは思うんですが。当時私も苦労したのは、どんどんメディアにいろいろなことが書かれて、そして朝鮮半島有事を念頭にということで、事実上その辺の議論はもう国会でも随分、法律を出す前からかなり御議論があったというふうに思います。

 今回の話からいきますと、中間報告というのはあったけれども、ほとんど、余り国会で審議いただいたという記憶はない。そして、やはり特徴的には、総理が非常にシンボリックな行動をおとりになるわけですね。アメリカを訪問して、夏までに法案を成立させる、このガイドラインは歴史的な変化であるということをアメリカで先におっしゃってしまう。やはり、こういう大きな変化は、少なくとも、バイパルチザンというか、野党も含めた、あらかたの方向性の合意が先行しないとなかなか難しいというのも事実であります。

 そういうところに差しかかっているというのが今回のガイドラインの背景にもあるがゆえに、そういう手順が今改めて問題にされているんだろうというふうに思います。

谷畑委員 私自身は反対しているわけではないんです。むしろ、国民の理解、そういう世論の中でしないとガイドラインというのは本当は生きてこない、そんなことを思います。

 たくさん準備しておったんですけれども、時間が来ましたので、これで終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 公明党の伊佐進一です。

 本日は、五人の参考人の皆様、本当に貴重なお話をいただきまして、ありがとうございます。

 限られた時間でありますので、皆様全員に質問させていただくことはできないかもしれませんが、御容赦をいただければと存じます。

 まず、小川参考人に伺いたいと思います。日米同盟について。

 東シナ海と南シナ海は違うんだと。非常に興味を持って聞かせていただきました。東シナ海は日米同盟の抑止力が非常にきいているんだというお話で、だから遠慮している、いろいろな周りの国も遠慮して、そして安定をしているというお話だったと思います。

 つまり、そういう意味では、日米同盟というのは、単にアメリカに守ってもらっている、こういう片務的なものじゃなくて、だからアメリカに逆らえない、何も物が言えない、こういうことじゃなくて、もっと大きい、重いものがあるんだ、日本の貢献というのはもっと大きいんだ、こういうお話だったと伺っております。

 その文脈の中で、日米同盟、日本というのは支店とか営業所じゃなくて本社機能という言葉を使われたと思いますが、私が理解したのは、日米同盟というのは、戦うためだけの同盟じゃないということじゃないかと思います。つまり、出撃機能と言われますが、駐留米軍がいて、兵隊がいてまた戦闘機がいて出撃していく、こういう機能だけじゃなくて、もっと多角的な、もっといろいろな側面があるのがこの日米同盟じゃないかというふうに私は理解いたしましたが、この日米同盟の特異性、多角的な観点という点で何か御所見をいただければと思います。

小川参考人 御質問ありがとうございます。

 実は、日米同盟の実態を日本で最初に正式に調査したのは私なんです。一九八四年、アメリカ政府の許可のもとに、全部米軍基地を歩いて、基地司令官の聞き取りをやり、国防総省の資料を出させ、全部読んで分析したら、ほかの同盟国が本当に、会社に例えたら支店か営業所のレベルなのに、日本には本社機能が置いてあるということが明らかになった。そういう立場で来ていて、アメリカ政府と話をしても、それを否定したりされたことはありません。

 例えば、基地を提供しているかわりに守ってもらっているという言い方がよくあるけれども、頭の中にみんなあるのは、兵隊がいて、飛行機がいて、船がいてという話なんです。これは出撃機能なんです、今おっしゃったように。

 ただ、国家のレベルで考えると、兵隊の規模も何万人、何十万人を動かさなきゃいけない。それを前提にすると、あと二つ重要な機能が必要になってくる。一つが補給、兵たん、ロジスティクス、もう一つが情報、インテリジェンスなんです。日本列島に置かれた米軍の機能は、出撃機能、ロジスティクスの機能、インテリジェンスの機能、この三拍子そろって、アメリカ本国に近いんです。

 例えば、ロジスティクスの機能。これは公表されているのに、なぜ当時の防衛庁や自衛隊や外務省は知らなかったのか不思議なんだけれども、国防総省管内で二番目の大きさの燃料貯蔵施設、横浜の鶴見を中心に展開している。三番目の大きさの燃料貯蔵施設は長崎県の佐世保を中心に展開している。そして、あと七万バレルが青森県の八戸にあるけれども、合わせて一千百七万バレル。海上自衛隊が二年もつだけの量ですよ。当時、外務省がフィリピンのスービックは海外最大の米軍基地でとか言っていたのは、あれはジャングルを切り開いているからで、面積が広いだけで、燃料の貯蔵能力だって佐世保の半分以下、二百四十万バレルしかなかった。公表されている資料を知らない日本政府、国会、マスコミ、学界、何だという話です。

 だから、やはりそこをちゃんと押さえていく。それが日本の抑止力として非常に機能していて、やはり中国としても日本に対する手出しをためらわざるを得ない一番大もとにある。だから、領海侵犯を繰り返す、あるいはレーダー照射事件がある、異常接近を戦闘機がやる、あるいは防空識別圏を設定する、これを全部トータルで読むと、東シナ海において日米と摩擦を起こさないために、危機管理のメカニズムを話し合って、尖閣諸島の領有権については中国側からすると事実上の棚上げ状態に持っていきたい、そういう狙いがあるわけであります。

 だから、とにかく、これは中国の立場で考えればわかるんですが、東シナ海でぶつかる相手は日米です。下手をすると世界的な紛争にエスカレートする可能性がある。そうなると、国際資本が中国から逃げ出す。天安門事件の二の舞なんです。その危機感はすごい。だから、とにかく東シナ海では紛争を起こさないように必死になっているということを我々は読まなきゃいけないんですね。

 だから、レーダー照射事件のときも、当時の佐世保地方総監の吉田海将が沖縄県知事に対して説明をしたのは、とにかく緊張は国有化以来高まっているけれども、中国や日本のマスコミが言うように今にも戦争が始まりそうな状態は一切ありません、安定しております、これがプロの見方であります。

 以上です。ありがとうございます。

伊佐委員 数字も言っていただいて、非常に精緻な御説明をいただきまして、ありがとうございます。

 先ほど、陳述の中でも、在日米軍、第七艦隊というのが喜望峰までということもおっしゃいました。日付変更線からということを考えると、まさしく地球の半分ぐらいをカバーするぐらい、日本のアメリカに対する貢献、日米同盟への貢献というのは非常に大きいものであって、まさしく対等の日米同盟という中で今回の法案を議論しているというように私は理解をさせていただきました。

 その上で、小川参考人にもう一つ伺いたいんですが、歯どめとして三つ挙げておられました。国連憲章と集団的自衛権、あと戦力投射能力なき軍事力ということをおっしゃっていただきました。

 つまり、戦力投射能力なき軍事力、よく批判されるのは、これから戦争できる国になるんだというような批判もございます。そもそも、他国に行って戦争をする戦力がないんだ、これが歯どめになって戦力投射能力がないという意味だと思いますが、ただ、批判する方からすれば、いやいや、今回の法改正で、制度が先に、制度を整えればその後で後追いできるじゃないか、しっかりと軍備力を増強して、防衛力を増強して、そこから戦争できる国になっていくじゃないか、その一歩なんだという批判もございます。

 そういう意味で、伺いたいのは、では、そもそも戦争できる国というのがどういう国で、その国と今の日本の現状の防衛力というのがどれぐらい乖離があるのかというところ。もし普通の国というふうに言うとすれば、その普通の国になるためにどれぐらいの実力が必要で、今の日本の防衛力とどれぐらいかけ離れているかということについて伺いたいと思います。

小川参考人 ありがとうございます。

 普通の国というと、何か思い出す政治家の顔もありますけれども、ただ、日本は海に囲まれている国です。だから、満遍なく軍事力を備えて、どこかの国を軍事的に圧倒しよう、あるいは占領してしまおうと思ったら、海を渡らなきゃいけない。海を渡って向こうの国の軍隊と戦って、勝って首都を押さえてということまでいかないと、戦争目的を達成できない。

 そうすると、日本の周り、海を渡ってどこの国に行くかというのは語弊があるから言いませんが、陸軍だけで五十万人ぐらいの規模の部隊を出撃させなきゃいけない。それを支えるだけの海軍と空軍が量的にも構造的にもなきゃいけない、こういうことなんです。

 ところが、自衛隊というのは、とにかく自立できない構造だと申し上げましたが、世界的な水準にあるのは、海上自衛隊の潜水艦に対する能力が世界で二番目ぐらいのレベル、あと航空自衛隊の日本列島を空の脅威から守る防空能力が世界で三番目か四番目のレベル。このレベルにそこを持っていこうとすると大変高性能な兵器が必要で、一つ一つ高い、数もそろえないと機能しない、そこで防衛費のかなりの部分は食われる。だから、あとは平均的な能力か、最初から諦めている部分が多いんです。だから、満遍なく軍事力を持っている国と同じように最初から錯覚を持って語ってしまうと、おかしなことになるということなんですね。

 ですから、それをきちんと押さえながら、やはり地球の裏側まで行くのか。それは、自衛官をアメリカの軍艦に乗せて、二十人ぐらい何かの任務で送るなんというのは、地球の裏側まで行けますよ。ただ、例えば陸上自衛隊の部隊を旅団規模、師団規模で地球の裏側まで持っていって米軍と一緒に戦闘行動をさせることができるかというのは、これは物理的にもできないし、そういったことをやろうとすると、どういう立場であろうとも、憲法改正が必要になるんです。

 これは、国際平和協力活動などに自衛隊を出すときの線引きが、残念ながら日本の官僚機構は軍事に弱いから、知識がない結果、できていませんけれども、そういったこともやはり視野に入れながら、本当に、武力行使だと言われるような形じゃないものを国際平和協力活動に出す、あるいは米軍と一緒に行動する場合でも、こういったものしか出せないんだということを明確にしていくことがある程度重要になってくるかなという感じがいたします。

 ありがとうございました。

伊佐委員 ありがとうございました。

 次に、もう少し現場のお話を聞かせていただきたい。折木参考人に伺いたいと思います。

 今回の法改正、ほかの批判を申し上げると、戦死者が必ず出るんだというような批判もあります。武器使用の基準が緩和されて、それによってリスクが高まるというような批判もございます。

 折木参考人は現場に長くいらっしゃったと伺っております。きょうの陳述の中でゴラン高原の例を挙げられておりましたが、それ以外にも、ハイチとか南スーダンにも行かれたというふうに伺っております。

 例えば駆けつけ警護、これは武器を使った任務なので非常に危ないんだ、リスクが高まるんだ、こういう御批判なわけですが、実際私が聞いている話は、相当現場で苦労をされている。

 例えば、ザイールで展開中のPKOがあって、NGOで、医療のNGOも来ていた。そのNGOが車両を盗まれた。盗まれたときに、その医療NGOから展開中の日本のPKOに対して、ぜひ救援してくれ、助けてくれという依頼があった。ところが、駆けつけ警護ができないので自衛隊は動けない。結局どうしたかというと、輸送というような任務をわざわざつくり出して現場に行って邦人救出をした、こういう話を伺っております。あるいは、東ティモールでも同じようなことがあった。

 いろいろな理由をつくり出して、何とか今の法制度に合うものを現場でひねくり出して、そこで邦人救出に向かっている、こういうような話を伺いました。

 結局、駆けつけ警護は今現状できないんだけれども、それでも自衛官は現場で何とか知恵を絞ってやっているわけです。邦人が困っている、命が狙われているということになれば、自衛官の使命感とかあるいは責任感で、何とかして行こうとするわけです。

 そのときに、今の法律が縛りになっていて、例えば武器使用権限だって、自己保存型しか使えませんから、あえて武器を使わずに丸腰で飛び込んでいって、撃たれて初めてやっと撃ち返して、そこで邦人を守っていく。これこそまさしく自衛隊をリスクにさらしていて、また自衛隊を危険にさらしているということじゃないかと思っております。

 そういう意味で、今回の法整備というのをきちっとすることで現場の自衛官のリスクを減らすことになるんだというふうに私は思いますが、現場にいらっしゃった感触として、どのようにお感じになるでしょうか。

折木参考人 リスクに関してはいろいろな議論があるんですけれども、法全体を見てリスクが高まるとか低まるとかそういう話ではなくて、やはり一つ一つの、今度の法制でありますけれども、法の中身で、リスクには量と質の問題があると思うんですね。量の議論もよく出ていますけれども、質の議論も、今のお話ですと、私は多分質じゃないかと思っています。そういうお話だと。

 だから、一つ一つの法の状況とかそういうことで判断をしていかなきゃいけないし、自衛官が何を苦労しているかというと、先ほどからお話がありました、毎日毎日、いろいろな現場に派遣された自衛隊というのは危険見積もりをし、どういうふうにしてこの任務に対応すればいいんだということを考えながらやっているんです。それでリスクを自分たちで軽減している部分というのもあるかもしれません。

 駆けつけ警護に関して申し上げれば、確かに、先ほどのザイールというか、ルワンダの話かもしれませんけれども、そういう状況があって、やはり邦人がそばにいてそれを救出できないということは、人道的にも道義的にも、それは、任務上はもちろんですけれども、本当につらいものというか厳しいものがあると思うんですね。

 そういう面で、自分たちが現在派遣をされ、任務を与えられている権限の中でひねくりというか、そういう話ではないと思いますけれども、とにかく適用できる部分を自分たちで理解して今までやってきたというふうに私は理解しています。

 そういう中で、今回法整備を検討していただいて、今、駆けつけ警護の部分は、駆けつけ警護のための、要するに任務遂行といいますか安全確保のための武器使用ができるというふうになっています。ただ、危害防止の許容の範囲内というのは正当防衛、緊急避難ですから、むやみやたらにやっていいという話ではありませんけれども、それでも、使用できるということを法的に裏づけをやっていただけると現場というのは非常に対応しやすい、それからいろいろな見積もりもやりやすい。そういう面では、リスクが減る場合もあるというふうに私自身は考えています。

伊佐委員 ありがとうございます。現場のリスク、質の部分でのリスクを下げることにつながるんだというお話だったと思います。

 もう一問、折木参考人に引き続き質問させていただきますが、平素からの備えについて伺います。

 先ほど訓練について触れられたと思いますけれども、今回の法制度の中で、日ごろからの訓練、とりわけ今まで多国間の訓練というのがなかなか難しかったものが、これが充実されると我々は思っております。日本が今までオブザーバーとしてしか参加できなかったものが、本当に多国間の連携の中で訓練ができる、こういう備えが充実するというところもあると思いますし、あるいは、今回新法ができました。国際的な平和と安定にどう貢献していくかという中で、これはいろいろな議論があったんです。新法を特措法にしていくのか、特措法のままでいくのか、それとも恒久法をつくるのかという議論がございました。

 その中で、最終的には恒久法にしようということになったわけですが、そこで議論があった。それは何かというと、恒久法にした方がまず迅速に対応できる。備えですね。これは当然、法を根拠とした訓練、平素からの訓練ができるという点もありました。また、国際社会の中で早く手を挙げることができる。そうすると、自衛隊に合った、自衛隊が得意なミッションというものを早目に選択できる。あるいは、これは余り政府の方は言わないかもしれませんが、早く手を挙げることで、より安全な地域を確保できるというようなメリットもあるというふうな理解をいたしまして、その上で恒久法というものを今回つくった。

 ただ、当然、恒久法とするためには、いろいろな歯どめをかけて、発動するための要件をしっかりつくりましょう、これが今回の議論だったと私は思っております。

 そういう意味で、現場をこれまで何度も預かられたわけですから、なかなかこれまでできなかった備えが、これからこういうことができるんだ、こう変わるんだ、その御感触について伺いたいと思います。

折木参考人 全体として、今度恒久法ができて何が一番メリット、部隊にとって大事になってくるかというと、今先生からお話がありました、訓練ができるということだと思うんですね。

 それは何かというと、やはり自衛隊は、先ほどのリスクの話じゃないんですけれども、例えば災害派遣の場合は、起こったことに対する取り組みですから、そこにはリスクの変化というのは余りないんです。ところが、一般的な任務で、海外での任務もそうですし、いろいろな戦い、予想される戦いだったらそうですけれども、それは状況がどんどん変わっていくんですね。そのための最悪の見積もりをしながら対応していかなきゃいけない。

 そうすると、恒久法そのものを全体の枠として整えていただいた場合に、今回の法制の場合は、多分、今までやってきたイラク特措法とか対テロのテロ特とか、私はそういうものもイメージ的には包括をした一般法だと思いますけれども、そういうものが、今までの経験も生かしながら、先の脅威も見積もりながら訓練ができる、それを繰り返し繰り返しやることができる、それは指揮官の判断も含めてですね。だから、そこに一番メリットがあるというふうに私は認識しています。

伊佐委員 もう時間になりましたので終わりたいと思いますが、今回、備えであるとか現場のリスクを下げるという点について質問させていただいたのは、よく集団的自衛権の話をすると、アメリカの若者が血を流すのに日本の若者が血を流さなくていいのか、こういう議論、こういうことを言われるわけですが、私が思うのは、いかに血を流さないかというのが今回の法制度だと思っております。そういう観点でしっかりこれからも国会で議論を進めていきたいと思います。

 きょうは、ありがとうございました。

浜田委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 きょうは、五人の参考人の皆様、お忙しい中、本当にありがとうございます。

 まず、私は、伊勢崎参考人にお伺いしたいと思います。

 きょう、国連PKOを取り巻く環境は激変しているということが大変よくわかりました。今回のPKO法改正の中で自衛隊の任務が拡大され、駆けつけ警護、そして安全確保業務というのが拡大されます。その中で任務遂行のための武器使用まで可能になるということになっておりますが、こういう法改正がやられた場合、自衛隊員が殺してしまう危険、殺される危険、こういうことについてどうお考えでしょうか。

伊勢崎参考人 カンボジア以来、いわゆる国連PKOでずっと自衛隊が頑張ってきましたけれども、一発も撃たずに済んできました。事故は起きていません。これをどう捉えるかの話なんですけれども、政府の管制能力がしっかりしていてそれを未然に防いだという言い方もできると思いますけれども、現場の感覚ではちょっと違います。

 僕は、さっき冒頭で陳述したように、自衛隊は撃てないんですね。それを一番わかっていたのは自衛隊員なんです。つまり、撃てる環境の法整備をして送っていないので、撃てないことがわかっているのは自衛隊員なわけですね、どんな危険な目に遭おうとも。ですから、今まで無事故で済んだのは、これはひとえに、現場に送られた自衛隊員の工夫と、薄氷を踏むような思いでの任務遂行の態度で乗り切ってきたんだと思います。

 今までが事故が起きていないのは奇跡です。これは僕は、自衛隊に限らず、国連PKOその他、NATOの現場にも、アフガニスタンみたいなところにおいて多国籍軍と一緒に活動し、その一部を統括する任務も負ってきましたので、これははっきり現場感覚的にまず言えますけれども、自衛隊が今まで無事故で済んだのは、これは奇跡と捉えた方がよろしいと思います。

 今回の安保法制でその任務が拡大するわけですから、奇跡で済む可能性は非常に薄くなる。これからは多分、冒頭の陳述で僕が言ったような、根本的な法的な枠組みを考えてあげないと事故は起こります。そのときに我々はどうするかということであります。

宮本(徹)委員 ありがとうございました。

 続きまして、柳澤参考人にお伺いします。

 きょう、柳澤さん、存立危機事態の問題について、ファクトではなく価値判断の問題になっているという御発言がありました。

 ネットを見ていましたら、ダイヤモンド・オンラインでは、柳澤さんは、今までの憲法解釈や法律によれば、我が国に対する武力攻撃があった場合にはという非常にわかりやすい基準があったが、今度はそれがないと指摘されて、もともと日本が攻撃を受けていないのに存立危機事態になるということはあり得ないので、政府は基準を示せない、こう言われておりますが、この点について説明していただけるでしょうか。

柳澤参考人 まさに今委員がお読みいただいた部分そのままでありまして、やはり他国への武力攻撃があってというのはファクトとしてわかるとしても、それがどういう因果関係を通じて我が国の存立を脅かすようになるのかというのは一義的な定義ができないんだ、私はもともとそういう概念なんだろうと思うんですね。

 そして、先ほども申し上げましたけれども、今までの国民の自衛隊に対する支持、憲法九条との関係での支持のあり方というのは、まさに我が国が攻撃を受けた場合で、四十七年政府見解にありますように、そのときは国民の権利が根底から脅かされるということになるから、そこは自衛のための武力行使はできる、しかし、我が国が攻撃を受けていなければそうはならないので集団的自衛権は行使できないという政府の理解と国民の理解がまさに合っていた部分だと思うんですね。

 そういうことを前提に自衛隊への支持も非常に高くいただいていたということだと思いますから、それを外したときに、私もいまだに、だから具体例で言うしかない、例えばという話をするしかない、しかし、どの例えばをとってみても、さっきも申し上げたように、存立が脅かされるというところまでいく因果関係が納得できない。少なくとも私はわからないし、近場で起きたことでしたら、それは個別的自衛権のお話になってしまうのではないか、そこの区別がつかないということで。

 そうすると、結局、存立危機事態なる概念そのものがやはり非常に、そういう概念を立てていくこと自体に無理があるんじゃないか。むしろ安保条約を改定して憲法を変えて集団的自衛権を使うんですという話の方がまだ議論がかみ合ってわかりやすいのだけれども、そこを何とかかみ合わせようとしている。

 私は、官僚としてはとてもそこまでかみ合わせるのは無理だなと思いますし、だから、もともと説明できない概念をおつくりになったんじゃないかというのが私の印象であります。

宮本(徹)委員 存立危機事態という概念自体に無理があるということで、大変よくわかりました。

 続きまして柳澤さんにお伺いしますが、新ガイドラインについて、毎日新聞の記事の中で柳澤さんはこうおっしゃっています。日本有事や朝鮮半島有事は安保条約の五条、六条を根拠としていたが、今回の地球規模での協力は安保条約上の根拠がないと指摘されて、さらに、関係法律が成立した場合、自衛隊が米軍に従属化していくようになる、こう述べられているのを見ました。

 自衛隊が米軍に従属化していくというのは、具体的にはどういうことでしょうか。

柳澤参考人 その点について申しますと、今度のガイドラインでも宇宙、サイバー防衛というような新たな項目が言われておりますけれども、従来から、アメリカのネットワークの中に自衛隊も全体としてリンケージをしていく、そして、そうしなければ現代の戦争は実は戦えなくなってきているわけですね。ですから、私も現役のころから、そういう流れはそれはそれとして、しかし、日本有事を前提とした日米共同訓練でそういうものを実証しながら運用上の一体化を高めていく、そういうトレンドにある、それをまた推進してきたわけですけれども、それが今度は日本有事だけではなくてやっていくことになると、結局、どこに必要な事態がある、あるいは米艦防護、アセット防護にしても、どこから脅威が来ている、どの船のどのミサイルで対応するのが適当だといういわゆるウエポンアサインメントの話にしても、それはアメリカの情報ネットワークの中で、アメリカのネットワークの一環として動かざるを得ない。

 それは現実としてそうなので、そこは仕方がないんだけれども、日本防衛ならばいいけれども、そうでない場面でもそういうことになっていくという意味でオペレーション上の一体化が進む。それは言いかえれば、情報を持って主導権を持っている方が主従関係からいえば主に決まっているわけですから、言い方をかえれば、より従属を深めていくというふうに評価できるということを申し上げたと思います。

宮本(徹)委員 情報を持っているアメリカが主になって、その中で動いていくということになるというお話でしたが、今回、自衛隊法改正案の九十五条の二で、米軍などの武器防護を対象に加えるということになりました。これによって平時でも重要影響事態でも米艦防護のために自衛隊は武器の使用ができるということを政府も答弁されているわけですが、柳澤さんの書かれたものを見ますと、これで米海軍と海上自衛隊が同じROE、交戦規定を持つと指摘されております。

 この場合の指揮というのは、先ほど情報はアメリカから来るというお話でしたけれども、指揮というのは具体的にはどうなるんでしょうか。米軍の現場の指揮官の判断で自衛隊が戦闘状態に入って、事実上の集団的自衛権の行使になっていくということなんでしょうか。

柳澤参考人 結局、艦隊を組む、艦隊を組んでいなくても同じ作戦目的で、同じネットワークの中で行動している友軍同士の相互のアセット防護の関係ということでいえば、より広域の脅威情報を持っている者からの情報に基づいて、そしてトータルとしてアセット防護をし合うわけですから、そこは、指揮中枢艦となるような船の、それを法律的な指揮と呼ぶかどうかは別として、ネットワーク上のまさに統制といったらいいのか、あるいは運用調整といってもいいんですが、いずれにしても、そういうデータをもとに、それに従って反撃の武器を使用するということが求められる。そして、その限りで、米海軍はユニットセルフディフェンスという概念で、平時からそういう形でやっているというふうにも聞いておりますが、そういうネットワークの中に平時から自衛隊も入っていくことができる。

 今までは、日本有事であれば米艦の防護というのは個別的自衛権の範囲でできるという政府の見解が中曽根内閣のときにございましたけれども、それが平時からできるようになる。それをいいことと言うか悪いことと言うかという問題はあるけれども、しかし、それはやはり事態の拡大を政治がどのようにコントロールできるのかということとセットで議論されなければ、本来、危うい話になるのではないかということだと思います。

宮本(徹)委員 ユニットセルフディフェンスというのは日本語にすれば部隊自衛ということになるのかと思いますけれども、事態の推移が、政治がコントロールできないまま、この九十五条の二によってどんどん進んでいくということははっきりしているというふうに思います。

 それで、引き続き柳澤さんにお伺いしますが、テロ特措法やイラク特措法にあった非戦闘地域という概念は憲法上のつじつま合わせだけではなかった、実質的に自衛隊を戦闘部隊の指揮下に入れず、直接の戦闘に巻き込ませないという意味があった、新たにつくる恒久法では戦闘を行っている部隊の指揮下に入ることになる、朝日のインタビューで柳澤さんはこう指摘されておりましたが、この戦闘部隊の指揮下に入るというのはどういうことでしょうか。

柳澤参考人 指揮下に入るというのは、ですからこれも、法律的に指揮下に入るかどうか。国連PKOなんかでは指図という言葉を使ったりしていますが。

 つまり、従来の私どものイメージで言う非戦闘地域ではないところで活動しようとすれば、それはつまりその地域で戦闘を統制している師団なりの部隊がいるわけですから、そこに補給活動で入っていこうとしたら、それは、いつ、どのルートを通っていくのかというようなことについて司令部のコントロールのもとで動かなければ、かえって危ないわけですね。同士打ちの危険もあるし。状況によれば、途中で脅威情報を与えてくれて、とめることもできるかもしれないし、あるいは救援してくれることもできるかもしれないという意味で、それぐらい密接なコントロールのもとに入るという意味で、象徴的に例えばそれを指揮下に入ると言うこともあるかもしれないということで私は申し上げたところであります。

宮本(徹)委員 密接なコントロール下に入るということで、後方支援がアメリカ軍の武力行使と一体化するというのが非常によくわかったお話だったと思います。

 それで、柳澤さんは、イラク特措法のとき以上のことをやれば必ず戦死者が出るとこの間いろいろなところでおっしゃっていますが、この法案で戦死者が出るというのはどういうことなんでしょうか。

柳澤参考人 まさに法律の話ですから、それは政府の運用によって犠牲のないような運用をしていただきたいとは思うんですけれども、法律の議論ですから、法律の一番外側のところを全部使った場合にどうなるかということを考えなければいけない。

 そして、私の実感は、さっき伊勢崎参考人は奇跡だとおっしゃいました。私はあえて奇跡とまでは言いません。今まで犠牲者が出ていなかったのは非常にラッキーな要素もあったというふうに受けとめています。けれども、それは、背景にあったのは、こちらから進んで一発の弾も撃っていないわけですね。だから、イラクでいえばサマーワで一発撃ったら何発返ってくるんだという世界であるわけなので、そこを非常に抑制的にして、それは現場は非常な御苦労があったと思いますけれども、それがあるがゆえにむしろ敵視されずに来た、現地の住民たちから。それが結果として、それにプラス、ラッキーな要素もあって犠牲者が出ずに済んでいるというふうに私は実感として受けとめております。

 ですから、今度は進んで武器を使う任務を与えていくということであれば、それは常識的に犠牲者が出るということは当然覚悟しなければいけない。もちろん、折木さんがおっしゃったように、最大限の訓練やら努力はされると思いますけれども、しかし、相手がその気で攻撃してくるものを、基本的には第一撃を防ぐ手だてというのは非常に難しいわけですから、つまり、こちらから進んで銃を使うような任務を与えれば、それ相応のリスク、犠牲を当然覚悟しなければいけない。私はそのように自分の実感として確信しております。

宮本(徹)委員 引き続き柳澤参考人にお伺いしますが、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備について、これまでの周辺事態法などでは除外されるということになっていたわけですが、今回の法改正ではできるということになりました。戦闘に向けて発進準備中の米軍機への給油というのは、当然、米軍の発進準備命令があるもとでやるということになると思うんですが、これは米軍の指揮下でやるということになるんでしょうか。

柳澤参考人 九七年ガイドラインや周辺事態法のときもその問題意識の議論はありました。私の認識は、発進準備中の航空機に給油をする、あるいは、本当に急ぐ場合はエンジンをとめずにそのまま給油するような作業もあります。そして当然メンテナンスの役務の提供も含まれているわけですから、つまり、撃ち尽くしたミサイルを補充するとか、そういう仕事も入ってくることになる。そして、飛行機の主要な部分の点検もやるような地上での仕事、一連の仕事がやれるということになるんだと思うんですけれども、九七年のときの認識はそういうことはやはり、では、それで飛んでいってボタンを押してミサイルが出なかったら誰が責任をとるんだということになるので、通常は必ず整備小隊とセットで戦闘機は動くんだろうと思いますね。そういう意味で、通常はニーズはまずないだろうと私は思っておりました。

 そして、そこまでやるとすれば、指揮下は、どっちの指揮というのは、それは我が方が指揮しちゃうかもしれませんけれども、いずれにしても、そこまでいくとさすがに、そこから発進していくわけですから、武力行使との一体化は避けられるということはとても言えない。

 当時、そういう認識もありましたけれども、整理としては、さっき申し上げたような理由で、基本的にニーズはなかろうということで除外したということ。今回はどうも、ニーズの話とそれから憲法解釈の話と、もう一回ちゃんと議論し直す必要があるんじゃないかなと思っております。

宮本(徹)委員 時間が来ましたのでこれで質問を終わりますが、本法案の危険性がきょうの質疑を通じてもいよいよますます明らかになったというふうに思いますので、本法案の撤回を求めてさらに議論していきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

浜田委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。

 参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官前田哲君、内閣官房内閣審議官土本英樹君、内閣官房内閣審議官槌道明宏君、外務省大臣官房審議官岡田隆君、外務省総合外交政策局長平松賢司君、防衛省大臣官房長豊田硬君、防衛省大臣官房衛生監塚原太郎君、防衛省防衛政策局長黒江哲郎君、防衛省運用企画局長深山延暁君、防衛省人事教育局長真部朗君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩屋毅君。

岩屋委員 自民党の岩屋です。よろしくお願いいたします。

 午前中は、実務者、経験者を中心とする参考人質疑で、大変有意義だったと思います。午後からは一般質疑ですが、今回は、長妻理事、下地理事初め野党の皆さんに珍しく御配慮をいただきまして、与党にたくさんの時間をいただいて、本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いしたいと思います。

 私は、今回の審議を通じて憲法論がしっかり闘わされたということはとても有意義だったと思います。憲法審査会の一件がきっかけになったことも事実だったんですが、昨年の閣議決定の段階ではまだ政府の見解というものでございましたので、今回はそれに基づいた法案という具体的な成果物に基づいて、憲法論がこの委員会でもしっかり闘わされたということは非常に有意義だったというふうに思います。

 そのポイントは、要は、これまでの政府の憲法解釈の論理の延長線上に限定的な集団的自衛権が読めるかどうか、ここに尽きているんだと思います。

 お手元の資料の一ですが、これまでの民主党さんあるいは岡田代表あるいは維新の党の皆さんの見解を抜粋したものを持ってきたんですが、これは何もあげつらおうということでは全然なくて、そこをざっと読んでいただけると、実は基本的な問題意識というものにはさほど変わりはないわけですね。今日ただいまの安全保障環境に照らしてみると、やはり個別的自衛権であれ集団的自衛権であれ何らかの再整理が必要だという認識は、私は各党に共通、共有しているものだというふうに思います。

 そこで、この問題、あらゆる角度から議論がされてきたわけですが、確かに大串委員が言われたように、この四十七年の見解中、これも資料にありますが、ここに出てくる外国の武力攻撃、これが論理的、法理的に密接な関係にある他国に対する武力攻撃というものを含んでおったかどうか、煎じ詰めれば確かにそこに尽きてくるんだと思います。

 これについて、法制局も答弁がありましたけれども、法制局長官はおもしろいことを言うんだなと思いましたが、ぜひここのところを、フグ理論とか青バラ理論ではなくて、法制局らしく論理的に明快に説明していただきたいと思います。

横畠政府特別補佐人 新三要件のもとでの限定された集団的自衛権の行使は、あくまでも我が国の存立を全うし国民を守るため、すなわち我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として、一部限定された場合において他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とする武力の行使を認めるにとどまるものでございます。すなわち、国際法上集団的自衛権の行使として認められる他国を防衛するための武力の行使それ自体を認めるものではないというところが大きなポイントでございます。

 このように、限定された集団的自衛権の行使が憲法に適合すると言えるその理由につきまして、昭和四十七年の政府見解を引用し、これに基づいて説明させていただいております。

 この昭和四十七年の政府見解は、その文言からいたしますと国際関係において一切の実力の行使を禁じているかのように見える憲法第九条のもとでも、例外的に自衛のための武力の行使が許される場合があるということ、それがどのような理由によるのか、また具体的にどのような状況がそれに当たるのかということを整理して述べているものでございます。すなわち、お示しの資料の一の部分でございますけれども、憲法の前文、第十三条に照らしても、憲法第九条が「自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない。」と述べており、これは昭和三十四年の砂川事件の最高裁判決の「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」という判示と軌を一にするものでございます。

 さらに、二の部分におきまして、しかしながら、だからといって、平和主義をその基本原則とする憲法が、右に言う自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないのであって、それは、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として初めて許容されるものであるから、その措置は、右の事態を排除するためにとられるべき必要最小限度の範囲にとどまるべきものであるとして、このような極限的な場合に限って、例外的に自衛のための武力の行使が許されるという考え方を述べております。

 この一、二の部分が、憲法第九条のもとでもなぜ例外的に武力の行使が許されるのかという理由、根拠を述べたものでありまして、その意味で基本的な論理と呼んでおるところでございます。

 新三要件は、昭和四十七年の政府見解の基本的な論理を維持し、この考え方を前提として、これに当てはまる極限的な場合として、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られるとしてきたこれまでの認識を改め、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合もこれに当てはまるとしたものであり、その結果として昭和四十七年政府見解の三の結論の部分が一部変更されるということでございますが、もとより、他国防衛の権利として観念されるいわゆる集団的自衛権一般の行使を認めるわけではございませんので、結論が真逆になるということではございません。

 要するに、これまで、憲法第九条のもとでも、外国の武力攻撃という軍事力を用いた急迫不正な侵害行為によって国民が犠牲になるという極限的な場合には自衛のための武力の行使ができる、ゆえにそのための自衛隊も合憲であるという、その理由と同じ理由で新三要件のもとでの限定された集団的自衛権の行使も合憲であると言えるということを申し上げているわけでございます。

岩屋委員 長官、もうちょっと簡潔に答弁してくださいよ。

 私が聞いたのは、だから、当時の外国の武力攻撃というものに密接な関係にある他国に対する攻撃というものが含まれているかどうかということについて、もうちょっとわかりやすく説明してほしかったんです。

 これは、当時の法制局長官の個人的な見解ではありません。政府の見解でございます。ここであえて我が国に対するということではなくて外国の武力攻撃、攻撃の対象を限定していないというワーディングを使ったというところに本来意味があるわけであって、当時の法制局長官は主に我が国に対する攻撃だと観念をしていたかもしれませんけれども、今日ただいまの状況に照らせば、そこから密接な関係にある他国に対する攻撃も読み取ることができるということなんだと私は思います。

 もうちょっと簡潔に答弁をしていただきたいと思います。

 しからば、なぜその結論を変えたのか。

 事実認識をどう変えたのかということについてもいろいろな議論がございましたが、私は、近年の我が国の安全保障の議論の起点は朝鮮半島有事だったと思うんですね。次の資料を見ていただければ北朝鮮関係のクロノロジーがそこに出ておりますけれども、やはり朝鮮半島には非常に緊迫した状況が実際にあったわけですね。九三年にNPT脱退宣言をした、日本海にミサイルを撃ち込んだ、そういう状況を受けてガイドラインをつくり、周辺事態法をつくった、この起点は今日も変わっていない、私はこう思うわけでございます。

 果たして北朝鮮は脅威なのかというような議論も敬愛する赤嶺先生からもされたところでありますけれども、国交のない国の首領が常に敵対的な発言をしている、何百発ものミサイルを持っている、核の開発をしている、そして発射されれば十分で我が方に着弾する、これは潜在的な脅威だと言わざるを得ない。今そこにある危機であり、当面続いていく危機であると言わざるを得ないと私は思います。

 そこで、我が国が防衛体制をとっているわけですが、次の資料、これもまた敬愛する長島委員の資料をぱくったわけでございますけれども、今や我が国のミサイル防衛体制は日米共同対処というオペレーションの形をとっているということを、防衛大臣に確認したいと思います。

中谷国務大臣 我が国の弾道ミサイル対処システムにつきましては、海上自衛隊のSM3ミサイル搭載のイージス艦四隻、また航空自衛隊のPAC3ミサイルによる下層での迎撃、こういったものを組み合わせた多層防衛によって我が国全域を防護することが可能になっております。

 また、米国との協力は極めて重要でありまして、本年四月に改定された新ガイドラインにおきましても、自衛隊と米軍が平時からミサイル防衛に関して協力を行うこと、そして、武力攻撃事態において自衛隊及び米軍が日本に対する弾道ミサイル攻撃に対処するために共同作戦を実施すること、弾道ミサイル発射を早期に探知するためリアルタイムの情報交換を行うことを明記するとともに、引き続き米軍は自衛隊を支援しまたは補完するための打撃力の使用を伴う作戦を実施することを確認いたしております。

 また、米軍は、嘉手納飛行場にペトリオットPAC3を、車力通信所、経ケ岬通信所にTPY2レーダーをそれぞれ配備しております。また、横須賀にSM3搭載のイージス艦五隻を展開しておりまして、こうした日米協力の強化また我が国の弾道ミサイル防衛システムとが相まってミサイル脅威への抑止力、対処力を高めているわけでございまして、同盟国である米国と緊密に連携してBMD協力を一層推進してまいる所存でございます。

岩屋委員 そうなんですね。この軍事技術の急速な進展というところが、ある意味安保環境の急激な変化以上に重要なファクターだと私は思うんですね。

 ミサイルをミサイルで撃ち落とすというのは、昔よく、ピストルで撃たれた弾をピストルの弾で撃ち落とすというぐらいに大変な技術だと言われたわけですが、既にそれが開発され、我が国は装備をし、なおかつ基本的に米軍との共同対処という形をとっているわけで、この事実一つをとっても我々は真剣にこの集団的自衛権の問題を考えざるを得ないという、その事実がそこにあると私は思うわけでございます。

 したがって、このミサイル防衛体制が崩されれば雨あられのごとく我が国にミサイルが降ってくるかもしれない、そこに核が載っているかもしれない、まさに国の存立が脅かされ、国民の生存権が根底から覆されるおそれが生じるかもしれない、その明白な危険がある場合は、第一次安保法制懇、第二次安保法制懇で議論をされてきた二つの類型がありますね、ミサイル防護体制をとっているときの米艦に対する攻撃を排除する、それから米国へ向かっていくミサイルの迎撃、これは技術的な問題も確かにありますけれども。この二つの事例は、三要件を満たせば最小限の集団的自衛権を行使できる事例に当たり得る、こういうことでよろしいですね。

中谷国務大臣 御指摘をいただきました二つの事例等につきましては、我が国に対する武力攻撃が発生していない場合には集団的自衛権の行使として憲法上の問題が生じるとされてまいりましたけれども、この委員会での質疑でお示しをしました事例でございますが、例えば我が国近隣において我が国と密接な関係にある他国、例えば米国に対する武力攻撃が発生し、そして、その時点ではまだ我が国に対する武力攻撃が発生したと認定されないものの、攻撃国は我が国をも射程に捉える相当数の弾道ミサイルを保有しており、その言動などから我が国に対する武力攻撃の発生が差し迫っている状況にあるような場合に、他国の弾道ミサイル攻撃から我が国を守り、これに反撃する能力を持つ同盟国である米国の艦艇への武力攻撃を早急にとめずに、我が国に対する武力攻撃の発生を待って対処するのでは、弾道ミサイルによる第一撃によって取り返しのつかない甚大な被害をこうむることが明らかな危険がある、こういった状況で我が国として何もしなくていいのかという問題意識をもとに検討を行ってまいりました。

 先ほど岩屋議員の御指摘のように、米国に対する攻撃についても、新三要件を満たす場合には、あくまでも我が国の存立を全うし国民を守るための必要最小限度の自衛の措置として対応することが可能になるということでございます。

岩屋委員 時間がないので、重要影響事態安全確保法と国際平和支援法の問題に移りたいと思います。

 これは言うまでもなく、両方が後方支援なんですね。だから、最初は与党協議の段階でも、これは同じ後方支援なんだから一本にまとめるという考え方もあるのではないかという議論が当初あったんですが、しかし、我が国の安全に密接にかかわりのある事態とそうでない事態はやはり切り分けて法案をつくるべきではないかという結論に達して、この二つの法案になっているわけです。

 そこで、ちょっと飛ばしまして、しかし、重要影響事態安全確保法というのは言うまでもなく周辺事態法の新バージョンなわけですが、そのときに、事態を判断する六類型というのは今回も変わっていない、変えていないわけですね。

 それが資料の五にあるわけですが、これをざっと見ていただくとわかるように、一から三までは明らかに、地理的概念として、我が国周辺の地域においてということが枕言葉になっておりますので、こういう事態は基本的に我が国周辺でしか起こらないということですが、その他の三つについては周辺でも起こり得るし、あるいは離れたところでも起こり得る、こういう類型だというふうに考えてよろしいでしょうか。

中谷国務大臣 従来から、周辺事態につきましては、事態の性質に着目をした概念であって地理的概念ではないと説明をしてまいりまして、この点については重要影響事態においても何ら変更がなく、平成十一年の政府見解で示した六つの具体例は、事態が生起する原因に着目した具体例として、引き続き重要影響事態にも当てはまるというふうに考えております。

岩屋委員 だから、周辺事態法のときも、周辺というのは決して地理的概念ではなかったわけですね。それは今回も変わらないわけです。しかし、重要影響事態安全確保法に変わったからといって、すぐさま我が国周辺地域以外のところでこういう事態がどんどんと発生するなどということを我々は考えているわけではないわけです。

 ただ、この二つが非常に重なる部分もあるものですから、例えば緒方委員から指摘があったように、国際平和共同対処事態に当たらない事態を場合によっては片っ端からこれは重要影響事態だというふうに認定して自衛隊が出ていくようなおそれがあるんじゃないか、こういう指摘がありましたが、そういうことはないんだということをしっかり説明していただきたいと思います。

中谷国務大臣 御指摘のように、国際平和共同対処事態として対処し得ない場合に重要影響事態法を恣意的に運用して対処するといったことはあり得ません。

 具体的には、そもそも、重要影響事態と国際平和共同対処事態というのは我が国に及ぶ影響や被害といった点で緊迫度が異なり、同列に論じられないことは明らかでありまして、それぞれの法律をその目的に従って適用することは当然でございます。

 また、重要影響事態に該当するか否かにつきましては、事態の規模、態様、推移等を総合的に勘案して客観的かつ合理的に判断することになりますし、また重要影響事態において対応を行うに当たっては、政府として、国家安全保障会議での慎重な審議を経て基本計画を閣議決定することになっておりまして、国会に対して基本計画に記載した事項、つまり事態の経緯、我が国の平和と安全に与える影響、我が国が対応措置を実施することが必要と認められる理由について丁寧に説明を行って、閣議決定した基本計画を遅滞なく国会に報告して、原則として事前の国会承認を行うという民主的なプロセスを経る必要がございます。

 このような観点で慎重に判断を行いまして、国民の理解が得られないような中で、法律を恣意的に適用して自衛隊に行動を命じるということは全く考えられないということでございます。

岩屋委員 時間がないので、次に行きたいと思います。

 武力攻撃切迫事態と存立危機事態の関係性についてですけれども、これは長妻委員からも指摘がございました。つまり、武力攻撃切迫事態だというときは個別的自衛権で読めるよね、しかし存立危機事態ということであれば集団的自衛権で読むんだよね、その境目が非常に曖昧なのではないか、こういう御指摘であったと思います。しかし、これは決して曖昧なのではなくて、切れ目ない対応ができるようにしているということだと思います。

 この議論の端緒になったのが、平成十五年の秋山法制局長官の答弁、これも資料にございます。しかし、ここで言うあり得るというのは、ほとんどないとは想定されるけれども、可能性としては排除し得ない、こういう趣旨だというふうに私は理解しておりますが、法制局長官、それでよろしいですか。また、仮にあり得るとすればどういう事態であるか、簡潔に説明してください。

横畠政府特別補佐人 この答弁の趣旨は、具体的な状況によっては我が国に対する武力攻撃の着手と認定できる場合もあるということでございまして、もとより認定できない場合もあるということでございます。

 そして、我が国に対する武力攻撃の着手の認定の問題といたしましては、従前から、そのときの国際情勢、相手方の明示された意図、攻撃の手段、態様等によるものであって、あらかじめ定型的、類型的にお答えすることは困難であるということで御説明をさせていただいております。

岩屋委員 冒頭に申し上げたように、かかる事態には対応が必要だということは各党に共通した認識だと思うんですね。それをどう説明するかというところについて、いささかの差異があるということなんだろうと思います。下手をすると、ルフィの手のようにどんどん個別的自衛権が伸びていって説明できるということになりかねない。私は、個別的自衛権を拡大解釈するような形で説明するというのは、やはり国際社会の不信を買うおそれがあるのではないかなと思います。

 だから、外形的に我が国が攻撃されていないのに他国に与えられた攻撃を排除する、これはもう国際法上集団的自衛権としてしか説明しがたいものだと私は思うんですが、外務大臣、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 国際法上、一般に個別的自衛権とは、自国に対する武力攻撃を実力をもって阻止することを正当化される権利であります。一方、集団的自衛権は、自国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止することが正当化される権利、このように定義されています。よって、個別的自衛権と集団的自衛権、両者は、自国に対し発生した武力攻撃に対処するものであるかどうか、このことによって明確に区別されていると考えますし、国際法上こういった考え方は確立されていると考えます。

 よって、本来集団的自衛権を援用して対処すべき場合において我が国独自の考えで個別的自衛権の着手の概念を適用して対処するということになりますと、自国と密接な関係にある他国からの要請や同意もない、そして我が国に対する武力攻撃もない、その中で我が国が武力攻撃をしたと認定されることにつながりかねません。これは国際法違反になると考えます。こういったことから、新三要件に該当する場合には集団的自衛権をも使えるように、行使できるようにする、こういったことが必要であると考えます。

岩屋委員 明快な答弁だったと私は思いますよ。

 時間がなくなってまいりましたので、最後に、海外派兵の例外の件についてお尋ねをしたいと思います。

 今のところ、例外としてはホルムズのことしか考えていないんだと総理も再三答弁してこられました。大串委員から、しからば例外というときの基準は何かという問いがあったと思いますが、これをちょっと明快に説明してもらいたいんですね、防衛大臣。

中谷国務大臣 外国の領域における武力行使について、ホルムズ海峡での機雷掃海のほかに現時点において個別具体的な活動を念頭に置いているわけではございませんが、ホルムズ海峡の最も狭い部分が幅三十三キロしかなくて、そのほぼ全体はイラン、オマーン両国の領海に二分されるために、仮にホルムズ海峡で武力の行使に当たる機雷の掃海を行うには他国の領域で活動するほかなく、その場合、いわゆる海外派兵に該当するということになります。

 しかしながら、その場合に行うこととなる機雷の掃海の実態は、水中の危険物、それから民間の船舶を防護してその安全な航行を確保することを目的とするものでございます。また、海上自衛隊の機雷掃海は、機雷に反応しないように船体は木またはプラスチックでできておりまして、かつ、機雷処分用の機関銃を除けば自己防護用の装備さえ持っていないという状況でありまして、このため、外部からの攻撃には非常に脆弱でございます。

 このような掃海艦艇による機雷掃海は戦闘が現に継続しているような場面では円滑に実施することは困難でありまして、掃海活動の現場では他国の部隊と戦闘状態に入ることは想定されない。このような意味で、機雷の掃海はその性質上あくまでも受動的かつ限定的な行為でありまして、外国の領域で行うものであっても新三要件を満たすことがあり得ると考えるところでございます。

岩屋委員 もう時間がないんですが、私が思いますに、例えば自衛隊にその能力がある、他国の領域に入らなければその活動を行い得ない、そしてその活動の中身は受動的、限定的、非攻撃的なものであるみたいなところではないかなと。そこら辺はちゃんと説明しておいた方がいいんじゃないかなと思います。

 それから、一昨日、後藤委員の指摘にありましたが、他国に掃海艇があるじゃないか、だからそのときはそれは他の手段に当たり得るので行かなくていいんじゃないかみたいな話がありましたが、果たしてそうか。これは、まさに第一要件を満たすような状況が生まれているわけですから、そのときに我が国がこれを看過し、他国による掃海が他の手段だとしてこれを行わないというのは私は適切な判断ではないと思いますが、外務大臣からもう一度明確に答えてください。

岸田国務大臣 まず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の一環としてホルムズ海峡に機雷が敷設され、そして、これによって我が国の存立、国民の命、自由そして幸福追求の権利が根底から覆されるような明白な危険がある場合は新三要件における第一要件を満たすということになるわけですが、こういった事態が起こった場合、我が国はあらゆる努力を行うことになります。

 そして、第二要件との関係で申し上げるならば、機雷は敷設されますとずっとその位置にとどまります。よって、第二要件との関係で機雷を除去することは考えられます。そして、機雷を除去するということになった場合、機雷の掃海は多くの国の協力が必要になります。湾岸戦争のときも我が国は四隻の掃海艇を出したわけですが、合わせて三十隻近い掃海艇が動員されて、七カ月かけて掃海を行った、こういったことが実態でありました。

 その中で、我が国が高い掃海能力を持っている、実績を持っている、掃海部隊を持っている、こういったことを考えますと、我が国が他国と協力して機雷掃海に当たることは当然考えられます。ですから、他国の掃海艇により機雷が掃海されることをもって第二要件が満たされるというものではないと考えております。

 いずれにしましても、第一要件、第二要件、第三要件、これを三つ満たすことによって武力の行使に該当する機雷の掃海を行うことができるということ、これは再三申し上げているとおりであります。

岩屋委員 時間が来ましたから終わりますが、最後に一つ指摘をしておきたいのは、機雷の掃海を個別的自衛権で説明することもできるという答弁が法制局からありましたが、しかし、どこの国の船が触雷するかわからないという機雷の特性から考えて、法理的にはできるかもしれないが、これを個別的自衛権で説明するのは相当に無理があるということを指摘申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、勝沼栄明君。

勝沼委員 自由民主党の勝沼でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、浜田委員長を初め与党、野党の理事の先生方、まことにありがとうございます。

 一昨日、同僚で元自衛官の中谷委員が、この議論の本質は、今回の平和安全法制を通すことによって、現在の日本の置かれた厳しい安全保障環境の中、果たして国民のそして日本国のリスクを下げられるのかどうかということであると述べておりました。私も全く同感でございます。

 国民のリスクを下げるために、みずからそのリスクを引き受けるのが自衛官です。ですから、リスクがあるから、高まるからけしからぬ、そういったことではなくて、自衛官のリスク云々を言うのであれば、自衛官の任務には必ずリスクが伴うことを我々がしっかりと自覚し、今現在自衛隊が抱える課題、リスク、そしてこれから抱えるであろう課題、リスクに真正面から向き合い、その解決と軽減に政治が真剣に取り組んでいく、そしてこういった場でしっかり議論して自衛官の後顧の憂いを全て取り除く、それぐらいの覚悟で臨んでいかなければならない。

 こういった政治の態度こそが、自衛官や御家族、そして、さまざまな制約に手足を縛られながらも国民の負託に応えるための任務遂行とリスクの軽減に必死に取り組んできた、そしてこれからも取り組んでいくであろう現場に対する我々の責務だと思います。

 質疑に移らせていただきます。

 本日は、自衛隊が抱える重要課題の一つである自衛官の心の問題、メンタルヘルスの対策について質疑させていただきたいと思います。

 自衛隊の任務が拡大されればPTSDにかかる隊員がふえ、自殺者もふえるのではないか、そういった質問も以前にございました。しかし、先日の予算委員会で小野寺前防衛大臣も触れておられました、また午前中の参考人質疑で原田委員も触れられておりましたが、一般自衛官もイラク派遣を経験した自衛官も一般に比べて自殺率が有意に高いですとか、心の問題を抱える隊員の数が一般より多いというのは間違いであり、それは中谷大臣もしっかりと数字で示していただいたところだと思います。

 ただ、今後自衛官が求められる役割や任務、活動範囲が拡大し、過酷な環境下での活動が想定されることを考えると、それが原因で心の病となったり、また自死を選んでしまう隊員がふえることなど決してないように、今まで以上のメンタルヘルス対策が必要であり、大臣も以前の質疑の中で、隊員のストレス軽減に必要な措置を講じ、メンタルヘルスチェックを常に行いたいと答弁されていたと思います。

 メンタルヘルス対策は、自衛官自身のためのみならず、組織の規律性維持や任務の実効性確保にとっては必要不可欠であり、その強化は自衛官のリスク低減の観点からも非常に重要な課題です。

 したがって、本日は時間の関係上、少しだけ掘り下げて質問させていただきます。

 メンタルヘルス対策は、従来、上官による部下への服務指導というような形で行われていたと思いますが、最近では科学的な知見に基づいた隊員のストレス軽減策がとられていると聞いております。では、防衛省・自衛隊において、いつごろからメンタルヘルスに対する取り組みを強化しておりますか。大臣、お願いいたします。

    〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕

中谷国務大臣 勝沼委員におかれましては、医療の場等におきましても自衛隊の活動支援等に大変御尽力をいただいているということで、感謝、御礼を申し上げたいと思います。

 そこで、自衛隊の精強性を維持するために、隊員が心身の健康を維持し、また任務を支障なく遂行できる体制を整えるということが非常に重要でありまして、従来から、服務指導また内部カウンセラーの配置によりまして隊員の心情の把握の徹底に努めてきたところでございます。

 こういった措置また対応等につきましては、平成十二年度に部外の有識者などから成る自衛隊員のメンタルヘルスに関する検討会を設置いたしまして提言を受けました。悩み、ストレス、精神疾患などに十分に対処しているかどうかを総合的に検証し、メンタルヘルスを支援する組織のあり方、メンタルヘルスに関する啓発のあり方、医療・カウンセリング活動のあり方などについて改善の資を得るための御提言もいただいておるわけでございます。

勝沼委員 ありがとうございます。

 今、平成十二年から取り組みが強化されたとのことですが、具体的な例示を挙げていただきたいのと、また支援体制がどうなっているのか。例えば心理幹部とかが配置されたと思うんですが、そういった点も含めて御答弁いただければと思います。

中谷国務大臣 防衛省・自衛隊としてのメンタルヘルスの施策といたしましては、まず、メンタルヘルス施策強化期間の設定、啓発促進のための教育資料の作成、配付等を行うとともに、カウンセリング体制の充実を図っております。

 また、これらの施策を有効に活用するために、専門教育によりメンタルヘルスを担当する心理幹部を養成し、方面総監部、司令部等に配置するとともに、メンタルヘルスに関する専門知識を有する臨床心理士を病院及び各駐屯地等に配置するなど、所要の体制の整備を行っております。

勝沼委員 ありがとうございます。

 一九九一年六月に、海上自衛隊の掃海部隊がペルシャ湾に派遣され、自衛隊が部隊として初めて海外任務を担当したわけです。それから二十四年がたちました。

 海外での活動は国内での一般的な活動に比べても過酷な環境のもとで行われることが多いため、自衛官の心理的なストレスは増大すると考えられますが、こういった場合、具体的にどのようなメンタルヘルスの対策を行ってきたのでしょうか。お願いいたします。

中谷国務大臣 御指摘のように、海外派遣というのは非常に過酷な環境の中で活動が行われておりまして、派遣隊員の精神的負担は相当大きなものになると考えられることから、メンタルヘルスケアについて十分留意をするということが必要でございまして、このための措置といたしましてメンタルヘルスチェックを実施しております。

 まず、派遣前は、講習によってストレス対応、ストレス軽減の知識の付与、メンタルヘルスチェックを行っております。また、派遣中には、メンタルヘルスチェック、メンタルヘルス要員が個々の隊員の不安や悩みなどの相談に対応いたしております。また、帰国に際しまして、帰国前の教育によるストレス軽減、そして帰国後は臨時の健康診断、メンタルヘルスチェックを行います。

 また、任務の特性に応じて、隊員のストレス緩和と解消のため、解除ミーティングといたしまして、任務遂行後の体験またその際の感情を、同じ職場で活動したグループで話し合いをいたしまして共有するなどの取り組みを実施いたしております。

 さらに、帰国に際して、派遣期間中の緊張状態を緩和するため、クールダウンといたしまして、十分な休養をとり、心身ともにリラックスして、もとの生活及び業務にスムーズに戻るための取り組みを行っております。

 このほか、派遣された隊員が安心して職務に専念できるように、衛星携帯電話、テレビ電話、電子メールによる隊員と留守家族との連絡手段を確保いたしておりまして、現在も、海賊対処でジブチまた南スーダンPKOに隊員を派遣いたしておりますけれども、このように家族の皆さんと定期的に電話やまたメールなどによりまして連絡手段を確保しておりまして、派遣に際してこれらの取り組みを実施して、メンタルヘルスケアに万全を期してまいりたいと思っております。

勝沼委員 ありがとうございます。

 そういった家族も含めてのトータルのメンタルヘルスケアは非常に大事だと思いますので、ぜひ引き続き強化していっていただきたいと思います。

 また、阪神・淡路大震災と東日本大震災の二回の大規模災害を日本は経験しました。また、そのとき自衛隊も災害救助活動で非常に活躍していただきましたが、これも一般的な活動や海外での活動とは違った過酷さ、つらさがあったと思いますが、何か特別な取り組み等は行われたのでしょうか。

中谷国務大臣 東日本大震災における派遣も非常に長期間にわたりました。そして、メンタルヘルス対策としましては、非常に厳しい状況下における任務の遂行でありまして、派遣隊員のメンタルヘルスケアにつきまして重点的に取り組むことといたしまして、通常よりも慎重に対応することで心の健康維持施策の拡充強化に努めたところでございます。

 具体的には、平素の対応のほかに、メンタルヘルス巡回指導チームの宿営地への派遣をいたしました。また、護衛艦及び各基地に精神科医官及び臨床心理士等を派遣するなど、派遣隊員に対するメンタルヘルス教育及びカウンセリング等の実施、また、日米メンタルヘルス専門家会合を実施いたしておりまして、日米双方の取り組みの紹介、意見交換など、米軍とともに連携しつつメンタルヘルス対策を実施してきたところでございます。

勝沼委員 ありがとうございます。

 自衛隊がメンタルヘルスケアを重要な課題と捉えて、現場レベルでさまざまな対策が行われていることがわかりました。

 ただ、メンタルヘルスケアというのは、冒頭に述べましたように、隊員自身を守るのみならず、組織論として、惨事に遭遇してもそのストレスに負けない強い組織をつくるという目的もございます。また、日常的にも、肉体的にも心的にもストレスを与えることで、常に有事に備えていなければならない自衛隊の隊員であるということを隊員に意識させ続け、一方でそのストレスを緩和するためにケアをして、強い組織をつくっていくというものです。

 しかし、こういった特殊性が一つの心理学的なメカニズムを生み出して、それがメンタルヘルスケア先進国であるアメリカでも今深刻な問題となっております。どういったメカニズムかといいますと、精強な組織の構成員であるために強靱な精神を求められることが、結果的に、カウンセリングを利用したり早期の対策を行うことへの恐れや警戒感に直結してしまう。専門用語でスティグマと呼ばれておりますが、実際このスティグマは、隊員が抱える心の問題をより深刻化させてしまう、そういった要因となりかねないと思います。

 防衛省・自衛隊として、このスティグマなるものへの認識、そして対応策といったものはあるのでしょうか。

塚原政府参考人 お答えいたします。

 自衛官が心の問題に関して、その弱さを吐露できずにというようなことをどう避けたらよろしいかというような御質問でございます。

 精強性を維持するということは、先ほど大臣から御答弁申し上げましたとおり、非常に重要なことだと思います。

 これまでの取り組みの中でも、精神への負担、ストレスが特別なものではない、誰にでも起こるものである、程度の差はあっても誰でも感じるものであって、何かあったときにカウンセリング等を受けることによりまして病気になる前に軽減することが可能であること、予防することが可能であること、それから、仮に精神疾患を発症した場合であっても、早期の発見や適切な治療、対処によりましてその症状等が軽減あるいは完治が可能であることを正しく知っていただくということがまず肝要かというように考えておりまして、そのような啓発活動に力を入れております。

 メンタルヘルスケアにつきましては、長期的なフォローも含めまして、継続した取り組みが非常に重要だと認識しております。これらの取り組みを今後とも継続、拡充することが重要だと考えております。

勝沼委員 ありがとうございます。

 一朝一夕にできる対策でもございませんし、粘り強い対策、そして、先ほども申し上げましたが、家族も含めてのケア、そういったものも大事でありますので、引き続き力を入れてやっていただきたいと思います。

 自衛隊はストレスを多く抱える可能性の高い任務を行っているにもかかわらず強さを求められる組織ですから、心の問題を抱えていることそれ自体が対内的にも対外的にも組織の脆弱性につながってしまうため、本人も組織としても簡単には認めることができないというジレンマも抱えていると思います。これから自衛隊の任務が拡大し、自衛隊への期待もさらに高まっていく中において、このジレンマを解消するためにどういった対策をとっていくのかは、やはり人員の確保といった面からも非常に大事になってくると思われます。

 自衛官が抱えるストレスは、平素よりの一般任務によるもの、海外派遣によるもの、災害救助によるもの、また隊内生活、そういったさまざまなものがございます。加えて、自衛隊が社会から受ける評価、まなざしを内面化することによって生じるストレスもございます。

 一九九二年に陸上自衛隊が初めて海外に派遣される際、隊員を派遣することになった駐屯地では、駐屯地全体を人間の鎖で囲まれたり、金属弾が駐屯地内へ向けて発射されるということがございました。隊員が出勤の際も連日デモ隊から罵声を浴び、隊員の住む住居のドアには、自衛隊は出ていけと張り紙が張られたこと、こういったことも一度や二度ではないそうです。

 以前は、常に地域社会から批判的なまなざしを向けられ、それに自衛官は耐えてきました。その後、各基地、駐屯地が地域社会との共生に励み、二度の大災害における献身的な災害救助活動により、国民や地域社会との距離は格段に縮まったと思います。これは、自衛隊自身、自衛官自身の努力のたまものだと思います。今や、自衛隊に期待する国民の割合は九〇%を超えます。

 しかし、これは全ての自衛隊の活動に対する国民の賛辞ではなく、地域社会の一員として努力し、災害救助する自衛隊に対する賛辞が多いということを留意しなければなりません。今でも、一般社会から期待される自衛隊の役割は、やはり地域での活動であったり災害救助活動といった非軍事的な活動であると思われます。したがって、主たる任務が国防であるといった自衛官が認識している自衛隊の役割と、一般社会が一番自衛隊に期待している役割のずれがいまだに生じております。

 自衛隊の活動に軍事的な行動を感じると、一般社会は敏感に反応いたします。それは、今この平和安全法制が国民の御理解をなかなか得ることができないという状況の、当然我々与党と政府の説明がまだまだ不十分であるということが一番の原因であると思いますけれども、一つの要因であると言えます。(発言する者あり)ですから、しっかりとやってまいります。

 こういったずれは隊員の、そして御家族のストレスになるわけです。そして、このずれを放置しておくのは、やはりまさしく政治の不作為にほかならないと思います。

 自衛隊は、国家国民を守るためにみずからリスクを負う組織であるにもかかわらず、憲法下では解釈によって合憲とされている存在で、軍でも警察でもございません。名誉や処遇の問題もまだまだ真剣に議論されていない状況です。自衛官やその御家族に対する福利厚生も全くもって不十分。軍人と同じような責務を自衛官に課しておきながら、憲法上や歴史上の制約から自衛隊が軍隊とは全く違う組織であると見せるために、その矛盾をずっと自衛官に押しつけ続けてきた、そういった状況がございます。

 私は、その事実こそが自衛官ですとかその御家族にとって一番のストレスであり、リスクにほかならないのかなと思います。今こそやはり我々立法府が覚悟を持って、そういった矛盾ですとかずれを解消すべくしっかりと議論していく、まさしくそのときだと思っております。

 「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえる」、この服務の宣誓の持つ意味を我々立法府の一人一人が改めてかみしめて審議していかなきゃならない。改めてそのことを申し上げまして、最後、意見陳述で終わってしまいましたけれども、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

御法川委員長代理 次に、笹川博義君。

笹川委員 自由民主党の笹川博義です。

 質問の時間を与えていただきまして、ありがとうございました。

 早速でありますが、平和安全法制の議論において歯どめということは、この委員会の中でも大変議論を積み重ねてまいりました。きょうの参考人の中でも、この歯どめということについて言及をされた方もいらっしゃいました。これは自衛隊の展開能力にしてもそうでありますし、さまざまな指摘があったことは非常に参考になったというふうに思います。

 私自身も、今回、この平和法制の中の歯どめということは国民の関心も非常に高いというふうに思います。ただ、歯どめと言われるものはやはり非常に多面的なものがある。だから、今、多く議論の時間を割いております憲法、いわゆる法律的な歯どめ。続いて、これがまた話題になっておりますが、報道ベース。報道というものも、これはやはり公正公平な報道が私は何よりだというふうに思っています。続いてまた、世論と言われるものでありますね。ただ、今、勝沼委員から指摘があったとおり、今日の日本において、安全保障というものの議論が、果たして国民に身近な中で感じられるぐらいの議論になっていたのか。私は、何か臭い物にふたじゃありませんが、そういうような形の中で、議論を避けていた、これは国も教育機関も、そして国民自身もそうだったのではないかという思いもあります。

 そしてまた、後ほど議論いたしますが、国会の役割があります。そして、自衛隊のそもそもの展開能力がある。そしてまた、これは日本固有の歯どめと言っていいかどうかわかりませんが、さきの大戦のいわゆる歴史認識と言われるもの、このことをやはり念頭に置いて、今日の自衛隊も、日本の安全保障の議論もあったというふうに私は思っております。

 それでは、まずは、歯どめとしての国会の役割について幾つか御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 二〇一三年、シリアの空爆をアメリカがイギリスに一緒にどうかと言ったときに、イギリスの国会においてはこれを否決いたしました。さらには、せんだっての参考人の中の阪田元法制局長官は、歯どめがない、満州事変のときの自衛と同じになってしまうという発言が実はございました。

 このことをどういうふうに理解したらいいのかなと思ったときに、やはり国会の役割、戦前の国会と戦後の国会、その役割は全く違うのですし、そもそもそこをすっ飛ばしてそういう御発言というのは、私はどうなのかなというふうに思います。

 そこで、今回の法案において、それぞれ国会承認、基本、原則、例外なきという形の中で盛り込まれておりますが、ここで言うところの国会承認の意義ということについて、政府としてどのような御所見をお持ちなのか、お聞かせください。

    〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕

中谷国務大臣 平和安全法制において国会承認につきましては、存立危機事態における防衛出動及び重要影響事態における自衛隊の対応措置の実施には原則事前の国会承認、平和支援法に基づく対応措置の実施には例外なく事前の国会承認、PKO法に基づく停戦監視業務及び安全確保業務について原則事前の国会承認とすることといたしました。

 委員が御指摘のように、自衛隊がさまざまな任務を十全に果たしていくためには、国民の理解と支持が不可欠でございます。実力組織である自衛隊の活動の実施に当たっては、政府の判断のみならず、国民の代表たる国会議員により構成される国会におきまして適切な形で承認をいただくことにより、自衛隊の活動についての民主的な統制を適切に確保することが重要であると考えております。

 そのような考え方におきまして、平和安全法制においては今申し上げた形での国会の関与を盛り込んでいるところでございます。

笹川委員 はい、そうだというふうに思います。特にまた今回、法案が成立後に新しい任務がふえるということになるならば、ますます国会での審議というものを丁寧に、そしてまた国会自身がその責任において決断をしていかなければなりませんので、そういう役割は非常に大きくなるというふうに思います。

 ただし、その前提となるのが私は情報開示だというふうに思っております。

 この情報開示と言われるものについては、イラクにおいてのさまざまな議論がありました。そのことについてはしっかりと政府として検証なさっていると思いますが、ただ、今回の法案の審議の中で、どうしても、大ざっぱな形の中の議論はありますが、事個別具体的なということになりますと、個別具体的なということで答弁を避けておられます。

 しかし、今後、法案が成立後に派遣をするという議論の中で、今度は個別具体的な話に入るわけですね。そのときに、やはり国会の我々側とすると、議員からすれば、きちっとした情報のもとに議論を積み重ねていく、そのことが国会承認の重さを増すものだと思いますし、責任を果たすことだというふうに思います。

 その点について、情報開示と言われる点について、大臣、どのようなお考えでしょうか。

中谷国務大臣 御指摘のように、情報等に関しましては、国会による民主的統制が確保される上においても必要だと思っております。

 このため、平和安全法制におきましては、自衛隊の活動に当たっては、その必要性等につきまして閣議決定により明らかにすることといたしておりまして、例えば存立危機事態の認定に当たりましては、事態の経緯、事態認定の前提となった事実、武力行使が必要な理由などを記載した対処基本方針を閣議決定し、国会の承認を求め、これを公示して周知を図るなどが定められており、国会や国民の皆様に必要な情報が適切に公開されることになると考えております。

笹川委員 この情報開示と言われるものは、政府側の考えているレベルのものと国民、我々が考えているレベルということになったときに、そごが出ないように、溝が生じないように、ぜひしっかりと配慮をしていただきたい。

 そして、同時にまた、派遣をするに当たったときに、中間報告なり、また任務終了後の検証についてもしっかりとやっていかなきゃならない。そのことの積み重ねが平和安全法制に対する国民の信頼にもつながるというふうに私は思っておりますし、先ほどの話ではありませんが、自衛隊の諸君にとっても、これは国民の信頼につながることだというふうに思います。

 続きまして、参考人質疑の中で、自衛隊のいわゆるOBの方もおられました。今回、防衛省設置法が改正されて、大臣の補佐的役割について明確になりました。これは、政策的見地と軍事的見地それぞれの、いわゆる左右両翼の形の中で大臣を支えていくということで、この改正については評価をしなければならないと思いますが、国会の議論もやはり深めていく、それから安全保障、国防の議論について国会自身も深めていかなければならないということになったときには、今回のようにそれぞれ専門的な見地の方の御意見を聞くことは正しいことだというふうに思います。

 であるならば、今回、防衛省設置法が改正されたわけでありますから、これで左右両翼の役割が明確になった以上は、やはり我々国会としても、場合によっては、本当にそれこそ個別具体的な事案に対して、現職の自衛官、いわゆる各幕僚長から意見を聞く、また我々の問いに対して答えていただく、そういう機会を必要とする場面もあるというふうに思います。その点につきましての中谷大臣の御所見をお聞かせください。

中谷国務大臣 防衛省設置法の議論におきましてもこの点は議論になったところでございますが、現在、国政について幅広い御議論が行われる国会での答弁につきましては、防衛大臣たる私を初めとする政務が行うとともに、政策的見地から大臣を補佐する官房長や局長、さらに、防衛省設置法の改正による組織改編後の統合幕僚監部にありましては、政策的見地を有する運用政策総括官といった文官に行わせたいと考えております。

 他方、各幕僚長につきましては、引き続き、防衛大臣を軍事専門的見地から補佐する者として、自衛隊の運用を初めとする部隊の管理運営に専念させたいと考えております。

 ただし、当然のことながら、自衛官の国会での答弁また意見陳述の必要性につきましては、あくまで国会において御判断される事項であると考えております。

笹川委員 それでは、改めてお聞きしますが、現職の自衛官の答弁につきましては、昭和三十年代にあったという過去の事例はございます。その後につきましては、それは十分、大臣を初め背広組の皆さん方がカバーをしてくれたということだというふうに思います。

 しかし、私が申し上げたかったのは、あくまでも今後自衛隊の任務が拡大をされたときに、きょうの参考人の質疑の中でもあったように、やはり現場の声を聞きたいということは当然のことでありますので、ですから、場合によっては各幕僚長の皆さん方においでをいただく。ただ、もちろん、仙人のように年がら年じゅうここに座っていろというのは部隊運営上種々問題が生じますが、事柄によっては出席をしていただいて質問に答えていただくということだというふうに思います。

 もう一度御確認申し上げますが、その点について、別に問題は生じることはありませんね。防衛省としては、それは当然ということでよろしいでしょうか。

中谷国務大臣 防衛省といたしましては、各幕僚長につきましては、まず、防衛大臣を軍事専門的見地から補佐する者として、自衛隊の部隊運用を初めとする部隊の管理運営に専念させたいと考えております。

 また、自衛隊の部隊運用に関する重大な局面においてもこうした役割は変わらないものでございますが、委員も御意見を持たれておりますように、自衛官の国会での答弁また意見陳述の必要性につきましては、国会において御判断をされる事項であると思っております。

笹川委員 ありがとうございました。

 続きまして、自衛隊の海外展開能力についてであります。

 いずれにしても、自衛隊の役割は自国防衛と大規模災害対策、このことが大きな柱の二つだというふうに私は思っております。

 そういう意味において、今までは北方重視、さらに今回は南西方面、いわゆる旧ソビエトの脅威と並んで、以上に中国ということになります。日本にとっては二正面であります。すなわち、事実上部隊の展開をしなければならない、いわゆる正面がふえたとなると、実務的にはこれは大変なことであります。

 改めてお伺いしたいのは、大臣、初歩的に、自衛隊の役割はあくまでも自国防衛と大規模災害への対策でよろしいですよね。

中谷国務大臣 自衛隊の役割というのは一層重要になってきておりますが、まず国民の命と平和な暮らしを守る、そして国際社会の平和と安全に貢献するという自衛隊の任務には全く変わりがない中でありまして、自衛隊法に明記されているとおり、自衛隊の任務の中で我が国の防衛、これはまさに中核であります。また、自然災害が多発する我が国においては、今後、国難とも言える南海トラフ地震とか首都直下型地震などの発生が想定される中で、大規模災害等への対処に万全を期す必要性等もありまして、こういった任務に基づいて、自衛隊は現在存在しているということでございます。

笹川委員 ありがとうございました。

 私も、別に国際貢献は概念がないわけじゃなくて、災害対策特別委員会の委員でありまして、御嶽山のときにも我が群馬県の一二旅団も行っておりますので、そういう意味での大規模災害という話をさせていただきました。我々は、大規模災害はもう身近な話ということで捉えております。

 ただし、大臣は、今までの委員会の中で、中期防については見直しはしないということでありますよね。そうなってくると、必然的に量的なものについてある程度私は限界があると。

 今言ったように、自国防衛については二正面作戦、さらには身近にある大規模災害、それに対応しなければならない、穴をあけるわけにいかない。ということになるならば、海外に部隊を展開できる規模においておのずと限界がある、いわゆるなし崩し的に自衛隊が世界じゅうに展開するなどということは想定できないのですね。その辺について、防衛大臣の御所見を伺わせてください。

中谷国務大臣 これからの自衛隊につきましては、防衛計画の大綱のもとに、統合機動防衛力ということを柱といたしまして、自衛隊の装備、予算等を計上しております。

 やはり、まず、厳しさを増す安全保障環境を踏まえて、自衛隊の体制整備の強化を図る。このうち、中期防においては、人件費を含む五カ年間の防衛費の総額を明示して閣議決定しておりますが、五年間、実質平均〇・八%防衛費を伸ばす計画となっておりまして、これらの計画に基づいて着実に体制を整備することによって、自衛隊がその高い能力を一層有効に発揮して、今般の法整備によって新たに求められる任務を果たすことができると考えております。

 万が一、さまざまな事態が連続的に、あるいは同時に発生する場合においても、全体像を常に把握しながら最適な資源配分を行って、全体として最適な対応をしていくことになります。

 今般の法整備後におきましても、我が国の安全確保、国際社会の平和と安定への協力とおよそ関係なく自衛隊を派遣することはあり得ないということでありまして、自衛隊の派遣は、我が国として、みずからの国益に照らして主体的に判断をしてまいりたいと思っております。

笹川委員 ですから、自衛隊の展開能力においてできるものはできる、できないものはできない、参考人の中にもありましたけれども、やはりそういうことを国民にきちっとお示しすることも大事だと思います。

 最後に、力の空白に入りますが、実はこれは竹島の問題であります。

 これは、一九五二年、韓国が海洋主権宣言を行ってから事態が発展をし、そして一九五四年に、韓国が竹島に武装部隊を上陸させて占拠した。ちなみに、憲法は昭和二十二年に制定をされ、第九条は存在しておりました。ただ、ここで存在していなかったのは自衛隊であります。

 そしてまた、フィリピンにおいても、一九九二年に米軍が完全撤退した後に、ミスチーフ環礁が中国軍によって占領された。

 ここにいわゆる力の空白というものがあったときにどういう事態を招くかということだと思います。領土、領空、領海を守っていくということになったときには、私は、しっかりとした防衛力を整備し、同時にまた力強い仲間とともに立ち向かっていく、このことが大事なわけでありまして、そういう意味において、これはもうお答えは結構でございます、今進めている日本政府として、近隣の国々とさまざまな連携を組んでいく、手を携える、これは大変大切なことだというふうに思います。

 いずれにしても、自衛隊は、我が国民にとって最後のとりでであります。そういうことにおいて、やはり自衛隊の活用について、我々国会議員を含めて国会の中できっちりと議論を積み重ねていかなければなりませんので、そういう意味において、私は、法律論だけじゃなくて多面的な議論も必要だと思いましたので、今回の質問をさせていただきました。

 以上申し上げて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

浜田委員長 次に、大野敬太郎君。

大野委員 自由民主党の大野敬太郎でございます。

 きょうは七月一日、自衛隊の実際の創設日であるそうでありますけれども、六十一年前、つまり人間で例えれば還暦を迎えて、第二の人生を歩み始めて初めての誕生日ということでありますが、実は、公式の創設記念日というのは十一月一日だそうです。これは、七月は災害が多いということであるそうでありまして、だから、ちょっと移そうかといって、十一月一日ということでございます。十一月一日というのは実は私の誕生日、余り関係ないですけれども。そのいわゆる歴史の交差点に当たるような日にこうやって質問の機会をいただきましたこと、理事の先生方には本当に大変感謝を申し上げたい、そんな思いでございます。

 ついでに言えば、ことしは戦後七十年ということでございまして、来月は八月。この季節になると、やはりさきの大戦の特集番組がよく組まれ、我々も地元に帰れば戦没者慰霊祭によく行かせていただいている。そんな時期に差しかかりますけれども、やはりさきの大戦というのは、いろいろな思いの中でしっかりとその反省に立って、そしてこれからいろいろなことを進めていかなくちゃいけないんだろうな、そんな思いを新たにしているところでございます。

 きょうは、まず大臣に、物すごく基本的な話で大変恐縮でございますが、国益とは何だろうか、日本とは一体どうあるべきなのか、世界はどうあるべきなのか、こういったことを、大変雑駁な意見で恐縮でございますが、お尋ねしたいなと思うんです。

 私ごとで恐縮なんですけれども、皆様御存じのとおり、憲法前文には、日本国民は、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼しと書いていますけれども、こんな簡単じゃないんだろうなということに初めて私が気づかせていただいたのが、実は大学生のころ。これは湾岸戦争のときでありましたけれども、当時、初めてのリアルタイムの紛争地帯の放送をやられた事件でありました。このときに私は大学でこの放送を見ていて本当に衝撃を受けまして、一体国家とは国民にとってどうあるべきなんだろうか、武力を持つこと、持たないこと、これはどういう意味なんだろうかということを本当に真剣に考えさせられた事件でありました。

 もちろん、その後、日本は、その湾岸戦争の後に国際社会の中で、小切手外交ばかりをやっているぞということで相当な批判を浴びて、そしてPKO、九二年でありますけれども。その後、あの九五年、沖縄少女暴行事件という本当に痛ましい、これは決して我々は忘れることはできない、忘れるべきではない、決して忘れちゃいけない、そんな事件があって、それを受けて辺野古、普天間の移設とか、日米の新しい関係をどうするんだということで周辺事態。そして、二〇〇一年にはあの同時多発テロ。これも物すごく歴史的に大きな痛ましい事件でありましたけれども、それを受けて、有事法制、あるいはテロ特、イラ特といって現在に至っているんだ、そんな思いであります。

 当時、日本はそれぞれのときに大きな決断をしてまいりました、その決断ごとに結構大きな批判がありました。この批判を見ていて私が何を思っていたのかというと、日本はまともな国だなと実は思っていたんです。それは、批判がない、そんな議論はやはり荒廃しますし、一方で、批判がないような決断というのもあり得ないんだろうなと。でも、しかしながら、批判を恐れて決断をしないというのは絶対政治じゃないんだろうな、そういうことも改めて強く思わせていただきました。

 そんな思いの中で、二十年以上こんなことを、私はずっと雑駁なことを考えてきた中で、一つの答えというのは、論理と政治。論理と政治ということを結構考えてきたんです。

 何のことかというと、政治、もちろん論理は必要です。今般の限定的集団的自衛権、合憲性について、必要最小限の解釈で合憲か違憲かの論理のぶつかり合いがある。もちろん、四十七年答弁に基づく新三要件というのは明々白々に合憲だと私は理解をしております、いわゆるフグ理論でありますが。一方で腐ったみそ汁理論、これももちろん論理だろうなとちゃんと理解をしております。だけれども、論理だけで決定したのではいつかは国を誤ってしまうんだろうな、そんな思いもあるんです。神学論争、憲法学者は論理で動いていますので、だから日米安保も違憲、そして自衛隊も違憲。それはまあ筋は通っているんだろうな、そんな思いがあるんです。

 論理の失敗の歴史上の代表例が統帥権干犯。統帥権干犯は、論理は通っていますよ。だけれども、一方で、五、五、三の軍事費削減というのは、もちろんこれは論理は通っています。

 明らかにここで決定的に足りないのは、国をどの方向に導いていくんですか。当たり前ですよね。着地点はどこなんですかという基本的な軸。それから、水平軸、つまり、諸国、他国の中でどういう日本であるべきなのか、水平軸。日本から世界を見る、世界から日本を見る、こういった水平軸。そして、将来、あるいは過去からの延長線上の将来、あるいは将来から現在の視点、時間軸ですね、垂直軸。こういう三つの軸の中でしっかりと日本というのを見詰めていないと絶対に誤ってしまうんだろうな、ここは本当に非常に重要なポイントなんだと私は思っています。

 例えば、水平軸で見ると、今、中国、何も中国だけを見るというわけではないんですけれども、きょう資料をお配りさせていただいております。多少字がちっちゃくて大変恐縮なんですけれども、裏面ですかね。二面かもしれません。一面、二面、同じでありますが。国防予算は今二千億ドル以上になっている。これは過去十年で二・六七倍になってきたんだ、こういうことが結構いろいろなところで言われております。脅威だ、脅威じゃない、脅威だ、こういう議論があります。

 ただ、確かにこれはしっかり見ていくべきなんですけれども、もうちょっと将来にプロジェクションして、では、今後十年でどうなるのか。今の二千億ドルを二・六七倍すると、当然六千億ドル近くになってくるんですよね。六千億ドルというと、アメリカの現在の国防予算に匹敵するような、そんな物すごい状態になるわけです。たった十年です。

 そのときに、今、我々は日米安保をとっていますけれども、もちろんこれは将来もずっととるべきだと思っていますけれども、ほぼ同じような軍事予算を持っている、そういう国がお隣にいらっしゃる。これは世界にとっては相当に相当に、安全保障環境というのは変わってきてしまう、そんな、物すごく危機とは言わないですけれども、おそれを持っています。

 アメリカは現在、もちろん皆さん御存じのとおり、結構軍事費は削減していますし、またオバマさんは対話と理想、こういった戦略をとっていますけれども、恐らくこれはどんどん内向きになっていきつつあるのかな。もちろん、それは政権がかわったらどうなるかわかりませんけれども、そういう状況になっているんだと思います。

 例えば、尖閣諸島の問題におけますアメリカの国内の世論はどうなっているかというと、あんなちっぽけな島で何でアメリカの若者が血を流さなければいけないんだ、こういう世論には確かになってきているような気がする。だからこそ、日米同盟というものの実効性を確実にしていくためには、明らかにしっかりとアメリカを巻き込んでいかないといけない、ちょっと言葉が正しくないかもしれませんが。そういう認識を今改めてすごく持っているところであります。

 さらに言えば、単に中国に対処する、私は今、中国の例を挙げましたけれども、中国だけじゃなくて、先ほど申し上げましたように、世界がどうあっていくべきなのかというのをしっかりと哲学として持っていかなくちゃいけないんだろうな。

 いろいろな軸の話をしていますけれども、ビスマルクじゃないですけれども、歴史上から現在を見詰めて、ピーター・タスカじゃないですけれども、将来から現在を見詰めて、こういうことをしっかりとやっていかないといけないと思うんです。

 見詰めた上で、私自身は、この現在の法律案、絶対正しい方向に向かっている。余談を申し上げれば、完全にシームレスじゃない部分もあったりしないでもないかもしれないなみたいなことは思っていますが。

 いずれにせよ、外務大臣に、本当に基本的なことで恐縮なんですけれども、本当にあるべき姿、三つの軸の中でどうあるべきなのかというのを、ちょっと難しい質問ではありますが、絶対に一回、外務大臣には聞いてみたいと思っておりましたので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、御質問の中で三つの軸、基本軸があって、それから水平軸があって、そしてもう一つは時間軸というか垂直軸について触れられたと思います。

 こうした軸を通じて国益を守って、どんな国やどんな世界をつくっていくのか、これを真剣に考えていく、これは政治にとって大変重要な責務であると考えます。

 そして、基本軸ということで申し上げるならば、まず、我が国の外交、安全保障政策において、強力な外交を通じて我が国にとって好ましい国際環境をつくっていく、そして脅威を未然に防ぐ、これは基本であると思います。このことは、我が国の国家安全保障戦略の中においても、我が国の政策の要諦であると外交が位置づけられているわけですが、こういったことをあらわしているんだと思います。

 そして、水平軸ということを考えましたならば、我が国をめぐる安全保障環境は大変厳しい状況にあると認識をしています。特にグローバルなパワーバランスの変化は、アジア太平洋地域の重要性を高める一方で、この地域においてさまざまな緊張あるいは課題、問題、こういったものを生み出していると認識をします。

 よって、我が国の平和と安定を守るためには、アジア太平洋地域の平和と安定を守らなければいけない。さらには、国際社会の平和と安定を守っていかなければならない。そして、その中にあって、委員御指摘になられました日米同盟、我が国の外交、安全保障政策の基軸であります日米同盟をしっかりと強固なものにしていくこと、これも重要だと思います。

 そして、最後の垂直軸、時間軸ということですが、我が国は国民の命や暮らしを守るために切れ目のない体制をつくらなければならない、こういった議論をお願いしています。そういったことから平和安全法制が必要であると申し上げているわけですが、その際に、従来の政府見解等とも整合的であるということ、これは大変重要でありますし、そして、こうした取り組みは未来に向けて長期的な国益を守るためにも重要であるという考え方、これも大変重要であると考えています。

 このように、基本軸、水平軸そして垂直軸、こうしたそれぞれの観点から積極的な外交を展開することによって我が国の国益を守り、安全保障体制を考えていく、これは政治にとって重要な役割であると考えます。

大野委員 ありがとうございます。

 もうちょっと、思っていらっしゃることをもっともっと答えていただきたかったんですが、またぜひお会いしたときにお聞きできればと思うんです。

 次の、国益とは何か、外務大臣の国益というのは何だろう、こういうのもぜひとは思ったんですけれども、もう時間がないので、次に移ります。

 今、外務大臣は整合性とおっしゃいましたけれども、次の質問は、いわゆる十五年の秋山法制局長官答弁、ちょっと岩屋先生の資料をぱくりますけれども、岩屋先生の最後の資料であります。

 これは、日本を守るために応援に来た米艦が公海上で武力攻撃を受けたとして、我が国に対する武力攻撃だと認定されれば、法理としては自衛権は発動できる場合があるという話であります。いわゆる着手、武力攻撃事態、存立危機事態、境目はどこなんですかというのはこの前議論が行われておりました。私は、重要な議論だなと思うんです。

 いま一度ちょっと確かめたいんですけれども、そもそも、この秋山答弁の国際法との整合性というか接続というのはどのようになっているのかを外務大臣にお尋ねしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、これは何度か申し上げておりますが、個別的自衛権と集団的自衛権の区別は、自国に対し発生した武力攻撃に対処するものであるかどうか、この点において明確に区別されており、国際法上もこうした考え方が確立されていると考えます。個別的自衛権により対処できるか否か、これはあくまでも我が国に対する武力攻撃の発生、すなわち着手があったか否かによるということです。

 そして、その上で、御指摘の秋山法制局長官の答弁についてですが、先ほど法制局長官の方からも少しこれについて御説明がありました。

 この秋山法制局長官の答弁は、我が国を守るために展開している米艦への武力攻撃が我が国に対する武力攻撃とみなされることが一〇〇%ないと言い切れるかという御質問を受け、それに対して、理論上、状況によっては我が国に対する武力攻撃の着手と判断されるようなこともあり得る、こういった旨を答弁したものであると承知をしております。

 ただ、しかしながら、御指摘のような事例について、個別的自衛権で対応できるのは特定の状況における極めて例外的な場合であって、我が国を防衛するために必要な状況下において常に個別的自衛権で対応可能なわけではない、こういった趣旨であると思います。

 国民の命あるいは平和な暮らしを守ることは政府にとって重要な責務であり、そのためにあらゆる事態を想定して切れ目のない対応を可能とする、これがこの平和安全法制において必要であるということを申し上げております。そして、切れ目のない体制をつくるという点において、先ほど申し上げました、集団的自衛権と個別的自衛権、これは明確に区別をされています。

 本来集団的自衛権を援用して対処すべき場合に我が国独自の考え方に基づいて個別的自衛権の着手の概念を適用する、このことは、密接な関係にある他国からの要請や同意もない、一方で我が国に対する武力攻撃もない、こういったことで武力行使を行うことにつながりかねません。こうしたことから、国際法違反のおそれがあるのでこれは厳密に区別、対応しなければならないということを申し上げております。

大野委員 ちょっと私、冒頭にしゃべり過ぎてほとんど時間がなくなっちゃったんです。大変恐縮です。

 もちろん、武力攻撃事態だと認定できる場合は武力攻撃事態で対処する、それはそれで論理としてはいいんです。先ほど論理と政治の話をしましたけれども、論理としてはいいんですが、ただ、現場は結構、時々刻々と変化している。艦船が一隻しかいないわけじゃなくて、あと二隻も三隻もいるかもしれない、こっちは個別でいく、こっちは集団でいくみたいな状況も生まれかねないと思うんですよ。私は、運用はもっともっとシンプルにやるべきだと思うんです。

 そういう意味で、実は、直接的には米艦の艦船に対する武力攻撃でありますので、要するに武力攻撃事態と認定できるような状況、まだ認定はしていないので状況です、状況というのは必ず、まあ必ずかどうかはわからないんですけれども、存立危機事態と認定できるケースがほとんどだと思うんですよ。という意味では、これは、運用の整理としては、ぜひ存立危機事態というので整理をいただければありがたいと思っております。

 では、これについて、防衛大臣、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 委員が御指摘をいただいたように、我が国を防衛するために公海上にある米艦船に対する武力攻撃が発生したからといって、それだけで我が国に対する武力攻撃の発生を認定できるわけではありません。

 御指摘のとおり、個別的自衛権で対処できる場面は限定的であると考えておりまして、やはり、我が国に対する武力攻撃が発生していないにもかかわらず個別自衛権に基づいて武力行使を行うということは、国際的には認められていない。

 そして、政府が示した我が国近隣における存立危機事態の例も、いまだ我が国に対する武力攻撃が発生していない、すなわち着手がなされているとは言えない状況でございまして、本来集団的自衛権を援用して対処すべき場合に我が国独自の考えで個別的自衛権の着手の概念を適用して対処することは、我が国に対する武力攻撃が発生する前に武力の行使を行うことになりかねず、国際法違反のおそれがございます。

 そして、委員がおっしゃるように、今回の法整備後は、我が国に対する武力攻撃が発生したと認定できない場合であっても、新三要件を満たす限り米艦船の防護が可能になるものであるというふうに考えております。

大野委員 ありがとうございました。

 残念ながらもう時間になってしまいましたので、一体化それから宇宙、これを次に聞きたかったんですけれども、機会は多分ないと思いますが、ぜひまたよろしくお願いします。

 質問を終わります。ありがとうございました。

浜田委員長 次に、浜地雅一君。

浜地委員 公明党の浜地雅一でございます。

 私に再び質問の時間をいただきまして、与野党の皆様に感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 きょうは、国会の関与ということをテーマに質問したいと思っております。

 我々の北側副代表が、自衛隊の海外派遣についての三つの視点ということで、まずはいわゆる正当性、国会の関与、そして自衛隊の安全確保ということ。この三つの視点としましたうちのやはり一番重要なものは、私は国会の関与であろうと思っております。しっかり民主的コントロールがきくということが重要だろうと思っております。

 まず、防衛出動に関する国会承認についてお聞きをいたします。

 基本的なこととして確認しますが、自衛隊法の七十六条一項が防衛出動を定めておりまして、国会の承認が必要であるという規定を定めております。ここにはいわゆる武力攻撃事態。武力攻撃事態には、実際に武力攻撃が発生した事態そして切迫している事態の二つを含みます。そしてもう一つ新しく法整備をしようとしていますのが存立危機事態でございますけれども、この七十六条一項に基づいて国会の承認を得た場合には、実際に自衛隊が武力行使をする場面、自衛隊法八十八条の規定の際には改めて国会の承認が必要なのかどうか、基本的なところを確認させてください。

中谷国務大臣 事態が武力攻撃事態、これはいわゆる切迫事態を含みますけれども、これを認定する場合におきましては、政府は、事態に対処するため武力の行使が必要であると認められる理由を対処基本方針に記載した上で、国会の承認を求めることになります。この場合、自衛隊に防衛出動を命じることについて、原則として事前に国会の承認を得ることになっております。

 その後、事態が進展し、武力攻撃が発生した場合において武力の行使を行う際には、改めて国会承認を得る必要はございません。これは、切迫事態の段階で策定する対処基本方針において、武力攻撃が発生した場合には武力の行使が必要であると認められることを政府として判断して記載をした上で、国会の承認を得ているためでございます。

浜地委員 ただいま、八十八条の実際の武力行使のときには国会の承認は要らないという御答弁でございました。

 そうなりますと、武力攻撃の切迫事態、切迫事態ですからまだ武力攻撃の着手がないわけでございますので、実際に自衛隊は武力攻撃ができない状態で、それ以前に国会で承認するか否かを判断することになります。それは後ほどやりますが、やはり武力攻撃の切迫事態の判断基準というものも実は大事になってこようと思っております。これは後ほど聞かせていただきます。

 ところで、きょう資料で配っております、いつも配るような新三要件の第一要件でございます。我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、次からが新しい基準でございますが、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権限が根底から覆される明白な危険がある場合ということについて、なかなかこれは不明確だという、これまでの国会での議論の中でそういった批判がございました。

 しかし、政府は、その考え方、判断要素についてはこれまで何度も明確に示してきております。

 私の資料の下でございます。第一要件の考え方。そのままでは、すなわち、その状況のもと、国家としてまさに究極の手段である武力を用いた対処をしなければ国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況ということで、さらにその判断要素として、個別具体的な状況に即して、主に攻撃国の意思、能力、事態の発生場所、その規模、態様、推移などの要素を総合的に考慮し、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民がこうむることとなる被害の深刻性、重大性などから客観的、合理的に判断することになるというのは繰り返し答弁があるんですね。

 この明白な危険があるとは評価の概念でございます。評価の概念なのでわかりにくいのではなくて、評価の概念だからこそ判断基準を詳細に示して、その基準に沿って判断していくのが法解釈の基本でございます。ですので、判断要素がさまざま挙げられるからわかりにくいとか不明確だということではなくて、むしろ判断要素が多くあるからこそ的確な判断ができる、私は法解釈の基本としてそのように申し上げたいと思っております。

 そうなりますと、先ほど言いました武力攻撃の切迫事態、正確に言いますと、武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態も、これは実は事実概念じゃなくて評価概念なんです。

 そこで、法制局長官にお聞きをしたいんですが、この武力攻撃切迫事態の判断要素も当然あると思うんですが、そのお考えについてお示しください。

横畠政府特別補佐人 いわゆる切迫事態の判断につきましては、平成十四年五月十六日の衆議院武力攻撃事態への対処に関する特別委員会におきまして、福田内閣官房長官が次のように説明しております。

 「その時点における国際情勢や相手国の軍事的行動、我が国への武力攻撃の意図が明示されていることなどからみて、我が国への武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していることが客観的に認められる事態を指すものである。」中略「どのような場合であるかについては、」中略「事態の現実の状況に即して個別具体的に判断されるものであるため、仮定の事例において、限られた与件のみに基づいて論ずることは適切でないと考える。 その上であえて申し上げれば、例えば、ある国が我が国に対して武力攻撃を行うとの意図を明示し、攻撃のための多数の艦船あるいは航空機を集結させていることなどからみて、我が国に対する武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると客観的に認められる場合は、」中略「該当すると考えられる。」

 以上でございます。

浜地委員 ありがとうございました。

 平成十四年の答弁をお引きになりまして、いわゆる国際情勢や相手方の実際の軍事的行動、それと我が国への武力攻撃の意図等ですので、やはりこれも意思や国際情勢やまたさまざまな推移をもとに判断していくわけでございますので、私が言いたいのは、存立危機事態だから判断が曖昧じゃなくて、もともとある個別的自衛権の発動の前提の防衛出動の条件である切迫事態においても基本的にはこれは判断というもの、いわゆる評価というものが必要であるということでございますので、殊さらに存立危機事態だからといってこれが不明確だということではないと思っています。

 ただ、大事なのは、これらのことを政府が第一義的に判断します。そして、それをきちんと判断できる材料が国会に出てくるかということが重要であろうと思っています。つまり、我々国会として、当てはめが実際に正しくできているか、これを国会でしっかりとチェックできるかどうかが一番大事だと思っています。ですので、判断の基準でなくてチェック機能、チェックができるかということでございます。

 武力攻撃事態法の第九条の二項一号のイ、先ほどの質問でも大臣は示されましたが、いわゆる武力攻撃事態や存立危機事態の認定の際には、その前提となった事実を必要的記載事項として書くことになっております。

 そこで、中谷大臣にお聞きしますが、これまで国会答弁の中で政府が示してきたさまざまな要素がございます。相手方の意思や能力、発生場所、規模、推移などについては、武力攻撃事態対処法の九条第二項一号で求められる前提となった事実として、この判断要素に沿って記載されるのかをお聞きしたいと思っています。

中谷国務大臣 今回の法整備では、存立危機事態に至ったときは、政府は、事態対処法改正案第九条に基づいて、事態の経緯、事態が存立危機事態であることの認定及び当該認定の前提となった事実を説明いたします。

 認定の前提となった事実につきましては、事態の現状や今後の予測のほか、どのような理由で政府が存立危機事態であると認定したかについての記載をすることになります。また、我が国の存立を全うし国民を守るために他に適当な手段がなく、事態に対処するための武力の行使が必要であると認められる理由につきましても、根拠ということで、その判断を裏づける具体的な事実また今後の見通しなどを記載することになります。

 委員がおっしゃるように、対処基本方針を策定する場合におきましては、この存立危機事態の認定に当たっての判断要素を十分に踏まえて、なぜ存立危機事態であると判断したのかについて、政府として十分な説明責任を果たしてまいりたいと考えております。

浜地委員 この判断基準を踏まえてしっかり示していただきたいと思うんですが、よく批判されることに特定秘密ということがございます。国会の判断の中で特定秘密に指定されて、いろいろな要素が出てこないんじゃないかというちまたの批判がございます。

 まず前提として、特定秘密があるから防衛秘密が出てこないんじゃなくて、もともと防衛秘密というのはございました。ですが、それが特定秘密に移管しましたので、特定秘密が制定されたからといって出ないということではないことはまず前提としてお示ししておこうと思っております。

 大臣として、この対処基本方針に記載する前提となる事実等々について、特定秘密との関係をどのようにお考えになられていますか。お聞かせください。

中谷国務大臣 事態対処法案におきましては、存立危機事態の認定に当たって、事態認定の前提となった事実を記載した対処基本方針を閣議決定して、国会の承認を求め、これを公示して周知を図ることなどが定められておりまして、国会また国民の皆様に対して必要な情報の提供が適切に行われることになります。

 対処基本方針を作成する際、事態の認定の前提となった事実等に特定秘密が含まれる場合も考えられますが、そのような場合は、特定秘密にかからないようにする形で国会や国民の皆さんに事実認定の根拠をお示しすべきと考えております。

 いずれにしましても、政府としては、対処基本方針について国会に御承認をいただくために、必要な情報を可能な限り開示するということは当然のことであると考えております。

浜地委員 今、できるだけ特定秘密にかからない形とありましたけれども、もう少し、どういうことなのか具体的に、大事なところでございますので、御答弁ください。

中谷国務大臣 昨年の特定秘密法案のときに、情報監視審査会を設けたわけでございます。

 対処基本方針において、情報の入手ソースまた具体的数値そのものは明示しない形で情報を整理するなどして、特定秘密にかからないように事態認定の根拠をお示しすべきものと考えております。

 また、政府といたしましては、先ほど申し上げましたけれども、対処基本方針の作成に当たりましては、国会や国民の皆さんに適切に情報公開を行いましてその御理解を得ていきたいと考えておりまして、国会の御承認をいただくために必要な情報を可能な限り開示するということは当然のことであると考えております。

浜地委員 今の御答弁の中では、とにかくできるだけ積極的に開示する姿勢が示されたと私は理解をいたします。

 ただ、さっきのニュースソースであるとか具体的数値、こういったものを示すことによってかえって自衛隊の防衛計画が明らかになったり、必要な情報源が入ってこなくなります。そうなりますと国民の暮らしや命をかえって危険にしますので、私はそこまで必ず出さなきゃいけないとは思いませんけれども、やはり防衛出動という国家の非常事態について国会そして国民に詳細に説明する姿勢というものを貫いていただきたい、そのように申し上げておきます。

 次に、国会承認ということになりますと、国際平和支援法での国会承認についてお聞きをしたいと思っています。

 これまで、こういった国際平和の安定についての後方支援については特措法でやっておりました。これを御存じのとおり今回は一般法でやろうということでございますので、やはり特措法と同じぐらいの国会の強い関与、私はこれは最初だけじゃなくて、継続的な関与も必要ではないかというふうに思っております。

 まず前提としてお聞きをしますが、今回一般法をつくったメリット、特に、テロ特やイラ特のときと比較して、事前の準備や訓練について、どんなことが一般法ができることによってメリットがあるのかを、もう一度大臣のお口から具体的にお答えいただきたいと思っております。

中谷国務大臣 きょうも午前中、参考人から自衛隊の派遣等について現実的なお話がございました。

 まず、メリットといたしまして、平素から各国とも連携した情報収集、教育訓練が可能となります。その成果を基本的な体制に反映できるようになるわけでございます。

 次に、活動内容、派遣規模といったニーズを確定するための現地調査、また各国との調整を迅速に行うことができるようになります。これによって、自衛隊が得意とする業務をよりよい場所で実施できる可能性が高まります。

 また、ミッションへの参加を念頭に置いている国に対しては、国連や関係国から現地の治安状況の詳細な分析を初めとする多くの情報が提供されることが一般的でありまして、このように入手した情報等から、安全対策を含む訓練をより充実した形で行うことができるようになります。つまり、自衛隊が活動を安全に行うこと、すなわちリスクの極小化にもつながります。

 この点、国連のPKOの場合に、国連PKOに対応する恒久法たるPKO法が存在しておりますけれども、現在の南スーダンのPKOでありますUNMISSに際しても、ミッションの立ち上がりから速やかに現地調査チームによる出張等を行いまして国連と具体的な派遣先の調整を行ったことによって、我が国の得意分野である施設活動で、かつ比較的治安の安定している首都のジュバ、ここで活動できる配置の場所を獲得することができたということで、このように国際社会の平和及び安全に主体的かつ積極的に寄与していくとの意思を目に見える形で表明するということになりまして、実際の支援活動もより迅速かつ効果的に行うことが可能になるというところでございます。

浜地委員 詳しく説明していただきまして、ありがとうございました。

 やはりこの必要性のところは、訓練ができる、事前準備ができる、安全な場所がとれる、そういったキーワードも大事なんですが、先ほど大臣より、実際の活動で、これはPKOですけれども、ジュバという安全な場所が確保できたとか、また自衛隊として得意な活動、また参加を前提としない、法律がないのにいろいろな協議はできませんので、そういったことで準備が早まるし、各国との情報交換もスムーズになる、そういった必要性をお示しいただきました。

 次に大事なのは、国会の承認ということでいいますと、私は基本計画の記載内容だと思っております。今回は、例外なき事前承認ということで国際平和支援法は規定をしております。ですので、判断の前提としては、これは基本計画を添えて国会の承認を求めるということになっておりますので、この内容が非常に重要だと思っています。

 一点、与党協議の中で我々公明党としても主張させていただきました点は、これまでのイラクやテロ特のときには、基本計画に定める事項として、対応措置の実施に関する基本的な方針という大きな方針のみが示されておったわけでございますが、その前に一つ条文を追加いたしました。事態の経緯や国際社会の平和及び安全に与える影響はどんなものかをしっかり基本計画に書いてください。もう一つ、国際社会の取り組みの状況、ほかの国がどんな取り組みをこれからしようとしているのか、実際にしているのかも書いてください。そして、我が国が対応措置を実施することが必要であると認められる理由、我が国の自衛隊としてなぜ今回の後方支援をしなきゃいけないのかということも含めてしっかり基本計画に記載されるようになったことは、非常に大きな前進であると思っております。

 その上で、実際に行う活動、協力支援活動については、基本計画では当該協力支援活動の種類及び内容というふうに記載をされております。別表の方では大体十二個の業務が挙がっているんですね、通信とか基地業務とか補給とか。これは基本的には行う場合には全部を書くのか、それとも、当該共同対処事態にとって自衛隊にふさわしい活動として理由をつけて、こういう活動をさせてくださいといって国会に承認を求めるのか。要は、活動を選び抜いてしっかり説明をされるのかについてお聞きをしたいと思います。

中谷国務大臣 委員の御指摘のように、基本計画におきましては、事態の経緯、国際社会の平和と安全に与える影響、国際社会の取り組みの状況、これらを踏まえて、我が国が対応措置を実施する必要があると認められる理由、協力支援活動等に係る基本的事項、種類、内容等について記載することといたしております。

 そこで、基本計画に記載する協力支援活動等の具体的な種類及び内容につきましては、事態の個別具体的な状況、諸外国の軍隊等が実施している活動内容及び自衛隊に求められている具体的な活動等を踏まえて適切かつ慎重に判断して、実際に実施することが想定される活動のみを記載することになります。

 また、基本計画に記載する自衛隊が実施する具体的活動、補給、輸送等につきまして、それらを行うことがなぜ必要かといった必要性についても基本計画に記載するとともに、国会の審議等において説明をしてまいることになります。

浜地委員 今、具体的な業務がなぜ必要なのか、後方支援にとってなぜ必要なのかもお書きになるという答弁をいただきました。ですので、国会の中でやはりよく問題になるのが、弾薬の提供をするとか、発進準備中の戦闘機に対する給油云々ございます。このときに、これをなぜやらなきゃいけないのか、そういったことを改めて、今度は具体的な状況に即してですね。今まではやはりどうしても、今は法律ですが抽象論でございます。ただ、実際の具体的な状況に即してなぜ必要なのかを説明することによってまた国民の皆様の理解というものが深まろうかと思っておりますので、基本計画の記載を、実際に本当にある場合は先ほどの答弁に沿って記載をしていただいて、我々の判断に資するようにしていただければと思っております。

 次に、基本計画が変更になった場合です。

 先ほどの、基本計画を添えて派遣の前に国会の事前承認ですが、条文上では基本計画が変更になった場合は報告で足りるとなっています。これは以前から我々の問題意識として与党協議でも議論をしてまいりましたけれども、実際にこれは報告だけで足りるのか、それとも再度国会の承認を求める必要があると考えているのか、その点について御答弁ください。

中谷国務大臣 基本計画の変更と国会承認の関係につきましては、過去の特措法の国会審議において、国会による民主的統制の重要性に鑑みて、当初の基本計画の枠を超えるような変更、すなわち対応措置の同一性が保たれないような変更については、変更後の対応措置の実施について改めて国会承認が必要となるとの考えを明らかにいたしております。

 過去の国会審議においては、具体例として以下のようなものを挙げております。

 まず、基本計画を変更する際に国会承認を必要とするものの例といたしまして、対応措置を実施する国の追加、対応措置としての別の活動の追加でございます。

 また、基本計画を変更する際に国会承認を必要としないものの例といたしまして、協力支援活動としての新たな業務の追加、例えば医療、輸送に加えて補給を実施する場合など、そして自衛隊の部隊等の装備の内容、派遣期間、同一の国の中における対応措置を実施する区域の範囲の変更。

 以上を踏まえまして、国際平和支援法における基本計画の変更に際しても、同様の考えに基づいて、適切に国会の承認を求めていく考えでございます。(浜地委員「派遣期間もですね」と呼ぶ)はい。

 ただし、例えば、対応措置の実施に関し国会の承認を求める際の国会審議において、先ほどの国会の承認を必要としないと述べたような事項についても、議院の決議において国会の承認を要するという国会の判断が明確となれば、政府として当該事項について承認を求めるということになります。

浜地委員 私、最初に国際平和支援法の質問をするときに、必要性を聞いた後に、イラ特やテロ特のときと同じような国会の関与がやはり必要なんだという話をさせていただきました。今の大臣の答弁の中で、まず基本計画の記載事項というものが充実をされて、より我々国会として判断ができるような業務の具体的な内容等も書くということでございます。

 それと、もう一つ忘れてならないのが、派遣期間も、これは結構議論されていないんですが、二年を超えて派遣を続ける場合には再度の承認が要るというのも、実はこれまでのイラク特措法等と同じような制度を保っております。

 そして、最後にございました基本計画を変更する場合にも、基本的には報告で足りると条文で書いてあるが基本計画の枠を超える場合には国会の承認が必要となるというふうに御答弁をなさいましたので、私は、国際平和支援法としては、迅速性、やはり訓練、そして各国との情報提供というメリットをとった上で、いわゆるデメリットとされてきた、国会の関与が緩むんじゃないか、いつでも行けるんじゃないかといったところは不安がないように、非常にバランスのとれた国際平和支援法になっているというふうに感じております。

 最後にもう一点、最後のところをもう一回確認したいんです。

 大臣が先に答弁されましたが、基本計画を変更する場合に国会の承認を必要としない場合として具体例にある新たな業務の追加、例えば新たに医療、輸送に加えて補給を追加するとか、または同じ国の中で、例えばあるA国の南部、これで活動するという実施区域を定めておいたのを北部の方に変更するということは、先ほどの御答弁では国会承認を基本的には必要としないと言われたんです。

 以前、我々の遠山理事が平成十三年に参議院議員時代に質問をした内容と同じだと思うんですけれども、いわゆる院の判断、附帯決議等で、基本計画を添えて国会の、要は自衛隊の派遣を承認するときに、院の決議があれば、基本的には国会承認を必要としないものも国会承認の対象になるという御答弁だったんでしょうか。これが今回の国際平和支援法でも生きるという答弁だったのかを、最後、確認させてください。

    〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕

中谷国務大臣 議員の御指摘のとおり、例えば国際平和支援法に基づく対応措置の実施に関しまして国会の承認を求める際の国会審議におきまして、議院の決議によって、先ほど国会の承認を要しないと述べた事項について国会の承認を要するという国会の判断が明確となりますれば、政府として当該事項について承認を求めるということになります。

浜地委員 質問は以上で終わりますけれども、存立危機事態についてもやはり政府としてしっかりと判断基準、材料を示していただくことが、いわゆる政府が勝手に判断するということの批判に応えることになると思っています。ですので、特定秘密の関係においても積極的に開示する姿勢、かえって国民が危険にさらされるような情報ソースや数値等は当然求めませんが、そういった姿勢をぜひ貫いていただきたいということと、国際支援法についてもやはりしっかりと国会の関与が働いておりますので、これは内閣と国会で共同してお互い責任を持ってやっていくことだと思っておりますので、今後しっかりと議論したいと思います。

 ありがとうございます。

御法川委員長代理 次に、辻元清美君。

辻元委員 辻元清美です。

 私は、午前中の参考人の質疑について、まず一、二お伺いしたいと思います。官房長官にお伺いします。

 やはり午前中の参考人の方から、先日の自民党若手議員の文化芸術懇話会でのいわゆるマスコミ懲らしめ発言というものに対しての批判も出ました。

 そこで、一、二確認しておきたいと思います。

 この懇話会は安倍さんを応援する若手の会ではないかと言われていたりしております。そんな中で、一点確認しておきたいんですが、官房長官は、こういう懇話会をつくった方がいいとか、こういう会をつくるに当たって関与はされておりませんね。

菅国務大臣 私は承知していませんでした。

辻元委員 次に、先日また自民党の、マスコミを懲らしめるには広告料収入がなくなるのが一番で、経団連に働きかけたらいいというようなことを発言した議員が、同じような趣旨の、間違った報道をするようなマスコミに対して広告は自粛すべきじゃないかと重ねて発言をしました。

 これは何が原因だと思いますか。これは個人の問題ですか。何か、私、自民党は一体どうなっちゃっているんだろうなと。菅さんはどう思われますか、官房長官。官房長官の率直な意見を言ってくださいよ。

菅国務大臣 政府として、ここはコメントすることは控えるべきだろうというふうに思います。

 いずれにしろ、先般のこの勉強会での発言、これについては、党の代表であります幹事長を中心にしっかり対応されている、こういうふうに思います。

辻元委員 私、そういう対応が、これは、政府は関係ないという話ではなくて、本当に深刻だと思うとかね。

 これは加藤官房副長官が参加されていましたね。これも何か注意をされましたか。党の方は厳重注意されているらしいんですけれども、官房長官は、こんなん言ってたんか、一体どうなってんねん、どんな内容やったか、そんなん言ってたらあかんやないか、途中でとめられへんかったんかとか、何か厳重注意はされたんですか。

菅国務大臣 官房副長官から状況は聞きましたけれども、加藤副長官は最初の講演のとき出席をして、それですぐ帰られたということで、今問題になっていることについては承知していないということでした。

辻元委員 私、ちょっと危機感がなさ過ぎだと思うんです。これはやはり菅官房長官がしっかりと、官房副長官に対しても厳重注意すべきだと思いますよ。そういうことで、みんな何か規律が揺るいでいるわけですよ、規範というか。

 幾つかお聞きしたいと思うんですが、法案に引きつけて聞きますけれども、きょうの話でも、戦前の報道規制の話が出ました。存立危機事態と認定されたときに、報道に対して、今でもこんな状況なんだから、こういうことは報道するなとか圧力がかかるんじゃないかということが推測されるわけですね。

 そこで、お聞きしたいんですが、武力攻撃対処等のいわゆる事態法には、各報道機関などへの協力要請みたいなのが三条にあるんです。こう書いてあります。武力攻撃事態等及び存立危機事態への対処においては、国、地方公共団体及び指定公共機関が、国民の協力を得つつ、相互に連携協力し、万全の措置が講じられなければならない。

 これは、官邸のホームページに指定公共団体が出ておりました。百四十八あります。日銀、日本赤十字、NHK、民放、通信、電力、ガス、商船、航空、JR、私鉄、バス。これを一つ一つ、例えばバスだといろいろなバス会社の名前、小田急電鉄とか一個ずつ出ているわけですね。

 この中に、民放とNHKへの協力もあるわけですね。民放の方は、朝日放送から始まって、CBC、TBS、テレビ朝日、テレビ東京、フジテレビジョン、毎日放送、関西テレビ、中京テレビ、東海テレビ、名古屋テレビ、日本テレビ、読売テレビ、大阪放送、CBCラジオ、TBSラジオ、日経ラジオ、ニッポン放送、文化放送、東海ラジオというように、これは、存立危機事態でも、どういう協力要請するんですか。官房長官です。

中谷国務大臣 これは基本的には、武力攻撃事態法ということで、十年前にできた法律でございまして、今回、存立危機事態も含めておりますけれども、真っ先に国民にお知らせすべきような事態、危険とか避難の方法とか、そういうときに国内の御指摘の各社に御協力をいただくという内容ではないかと思っております。

辻元委員 ではないかということなんですけれども、これはどういう内容か。要するに、報道規制はないという担保はどこにあるんですか。

中谷国務大臣 法律に、協力を求めるというようなことで、これは義務でも強制でもない、協力を求めるという内容であると私は認識しております。

辻元委員 ということは、協力を断ることもできるということですか。

中谷国務大臣 法案に書かれたとおりでございます。

辻元委員 しかし、措置が講じられなければならないとなっているわけです。それでもこれは、要するに従わなくていいということもあるわけですね。

中谷国務大臣 ちょっと事前通告がなくて法案が手元にないわけでございますが、基本的には法案の条文に書かれたとおりでございまして、当時の審議等を通じて政府が答弁した内容で運用されるということでございます。

辻元委員 存立危機事態でも同じということですか。

中谷国務大臣 基本的に、そのとき答弁した内容と同じ扱いでございます。

辻元委員 これはとても大事な点なので、委員長に申し上げたいと思いますが、この法案、この条項は言論、報道機関の報道の自由をしっかり保障するということを、しっかり政府の見解として出していただくよう理事会で御協議ください。

御法川委員長代理 理事会で協議いたします。

辻元委員 今、こういう事態のときでも、この法案の審議をめぐって、自分たちの意に沿わなかったら、報道の、マスコミ懲らしめろ発言みたいなのが飛び出したから言っているわけですよ、私は。わかるでしょう。(発言する者あり)岩屋さん、理事がやじ飛ばすの。大事な話でしょう、これ。自民党がそういうことを、何か懇話会を開いてやるからこんな話になるんでしょう。

 次に、もう一つ、参考人の方から指摘されまして、官房長官にお聞きしたいと思うんです。テロの危険性の問題なんですよ。これは、きょうの参考人の方だけではなく、前回も出たんですね。

 私、きのう新幹線の事件がありまして、今まだ、真相究明をしっかりやってほしいと思うし、対策も練らなきゃいけない。そんな中で、被害に遭われた方には本当にしっかりサポートしなきゃいけないと思います。

 そんな中で、私はテレビで見たときに、テロでないようにというふうに、ひやっとしたんですよ。官房長官もそうじゃないですか。

    〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕

菅国務大臣 私にもすぐ連絡がありまして、内閣に情報収集のための連絡室をすぐ立ち上げました。(辻元委員「ひやっとしたでしょう」と呼ぶ)そこは、テロということが一番最初に脳裏をかすめました。

辻元委員 やはりそうだと思うんですね。

 本法案を議論している過程でよく、安全保障環境の変化の中に、ミサイルの話もあるんですが、世界じゅうでテロがふえている、果たして、この法案を成立させればテロが減るのか、ふえるのか。

 参考人の皆さんが指摘されるのは、今回も、きょう来られた参考人の方が、いわゆる後方支援など、これは官房長官にお聞きしたいんですが、こういう発言がありました。アメリカ軍の後方支援でどこかに行く、そうすると、やはり友軍だと見られるというようなことになれば、さまざまな国にとって、相手国ですね、敵であるという認識を持たれる可能性が強い、だから、例えばイラク戦争のときに、二〇〇四年にマドリッドとか、その後、二〇〇五年にロンドンなど、テロが起こったと。だから、日本のそれこそ新幹線や原発も、後方支援ということで行くことによって相手から敵とみなされて、テロがふえる可能性があるんじゃないかという指摘があったわけです。

 この指摘を官房長官はどのように受けとめられますか。

菅国務大臣 まず、テロに対しての対策は、我が国の治安当局が全力を挙げて取り組んでいるということです。

 それと同時に、総理の外交というのは、まさに国際協調主義のもとに積極的平和主義、このことに基づいて外交を展開しておりますので、そうしたさまざまな危険がある場合でも、国民の皆さんにテロが発生をしないように、そこは政府が全力を挙げていくというのは当然のことだと思っています。

辻元委員 私が申し上げましたのは、前回の参考人の方もこの点を懸念されているわけです。国民も懸念しているんですよ。

 実は私、先日、ある知り合いの人が出張に行く、今まで海外に出張に行くのは楽しみだったと。ところが、海外に出張に行ってくれと言ったら、何か、日本人も狙われて海外でテロに遭ったらどうしようとか、それから、やはり外国に行って武力行使の後ろについていくと日本の国内がテロに狙われるんじゃないかと、多くの人が懸念していますよ。これは避けて通れない部分です。

 中谷大臣にお聞きしたいと思いますが、本法案でよくテロの事例を言う。この法案を成立させたらテロが減るんですか。

中谷国務大臣 テロというと、やはり二〇〇一年のニューヨークの同時多発テロ事件。このテロによって何千人もの方が犠牲になり、日本人も数十人巻き込まれております。今、非常にこういったテロが世界じゅうに広がってきて、世界の国々が何とかしなければならないという思いを持っておるわけであります。

 今回法案を整備するというのは、まず、グレーゾーンから集団的自衛権に関するものまで、切れ目のない対応をする。このことがやはり、国連とか、またアメリカ、域内のパートナー、これの連携を目指して、テロに対しても対外的に明確なメッセージを出すということで、国際社会がそれに対応する場合の措置をすることによってテロのリスクは下げることができます。また、テロというのは武力攻撃の一環としても行われることもあり得るわけでありますので、その場合においては、抑止力によって紛争が未然に防止されて、テロのリスクを下げるということは私はできると思っております。

辻元委員 その認識は甘いと思います。

 これは前回の参考人の方が、集団的自衛権の一部行使と他国軍の後方支援という名の後方からの戦争参加を認めますと、味方の敵が自動的に敵になりますから、ニューヨークやワシントンDCやロンドン、パリ、マドリッドで起きたテロと同じようなものがこの東京で起きることは自然なことになってしまいますと言っています。

 今は世界じゅう、ポスト・イラク戦争をどうするかなんですよ。ただ、イラク戦争も含めまして、空爆に行くぞとか参加するぞと言っただけでテロの危険性が高まるという時代なんですよ。

 ここで言うところの後方支援について、それでは中谷大臣にお聞きしたいと思います。

 岡田代表と総理の党首討論で、後方支援を実際にする経験の中において、なかなかこの概念、というのは非戦闘地域ですね、においては自衛隊は機敏に活動することができないという経験を積んだわけでありますと。

 中谷大臣も同趣旨の答弁をされていますが、具体的に言ってほしいんです。一体、どこの支援活動でどんな経験があったから今回非戦闘地域を外すとか、それから後方支援をするんだと。何の経験ですか、具体的に言ってください。

中谷国務大臣 これまで二度、特措法で後方支援を実施いたしました。

 やはり最も今回考えたところは、いわゆる非戦闘地域というところにおいては、一度これを決めますと、活動している期間は変更ができません。やはり憲法上、これが武力行使の一体化にならないようなことといたしまして、現に戦闘行為が行われている現場ではだめですが、それ以外の場所では実施をするという規定をつくりました。

 状況というのは刻一刻変わってきておりますので、一度決めたら活動期間はもう変えられないというのでは非常に固定化をされて制約をされますけれども、やはり現実に活動している状況の中で最新の情報を得て、この地域ならば大丈夫だというようなことを踏まえまして地域の指定、これは大臣がこういった戦闘が行われている現場でない場所を指定しますが、それ以上に、その活動が円滑かつ安全に行われるというところを実施地域として示して、その際に、その期間においては行われる見込みでないという場所にいたしておりますので、このような活動をする上において現実的に機能的に対応できるということで変更したわけでございます。

辻元委員 今、中谷大臣が二カ所行ったと。(中谷国務大臣「二回」と呼ぶ)二回ね。私、後方支援について、どこで行ったのかと聞いたんですが、どことどこのことですか。

中谷国務大臣 旧テロ特措法とイラク特措法ということで、二度行いました。

辻元委員 イラク特措法は後方支援じゃないですよ。これは人道復興支援。そして……(発言する者あり)違うんですよ。

 後方支援という言葉は一切あのときの議論では、私もおりましたけれども、これは安全確保支援活動ということで、後方支援、ロジスティクスは行いませんという議論だったんじゃないですか。そして、インド洋のときも、後方支援という言葉は戦争の一環だから、協力支援活動、捜索救助活動。いわゆる後方支援は戦争ですね、例えばイラク戦争とか。イラクのサマワで行っていたのは学校建設とか道路をつくったりですよ。今度は違うでしょう。戦争の弾薬を運ぶということを含めてのいわゆるロジスティクスの後方支援。今まで経験ありますか、大臣。

中谷国務大臣 先ほどは、非戦闘地域ということで、違いはということでお話をさせていただきました。

 自衛隊の活動の範囲におきましては、過去二回の法律でそのような地域が指定されたということでございます。

辻元委員 私、大臣も総理も基本的な認識が間違ってこの議論をしていると思いますよ、本委員会で。後方支援じゃないとさんざん言ってきたわけですよ。人道復興支援ですよ、学校をつくったり道路をつくったり。中身を点検してくださいよ。後ろから物を運んでする後方支援はできませんという、後方支援そのものが問題になってきたんですよ。違いますか。後方支援したんですか。

中谷国務大臣 旧テロ特措法におきましては、燃料補給という後方支援でございます。また、イラク特措法におきましては、人道復興支援ということで、道路や給水、学校の建設また輸送活動、そういうことを実施したということでございます。

辻元委員 このときの議論は、輸送活動は、後方支援ではだめだということで、安全確保支援活動ということで、それも、後で内容は米軍の兵士まで運んでいたということがわかりましたが、私もここでさんざん質問しました。国連の職員を運ぶんだとか顕微鏡を運ぶんだとか、そんなことを言っていたんですよ。

 実際に、今まで、イラク戦争のような戦争をしている、その戦争の一環としての後方支援は日本はやったことがないんじゃないですか。いかがですか。

中谷国務大臣 旧テロ特措法の洋上での燃料補給は後方支援だと私は思います。

辻元委員 陸上は、陸上。

中谷国務大臣 陸上におきましては、旧イラク特措法に基づく支援でございまして……(辻元委員「どれですか。何」と呼ぶ)その内容でございます。

辻元委員 その内容というのは何ですか、そのは。

中谷国務大臣 空輸支援による安全確保活動でございます。

辻元委員 この空輸は、当時、後方支援、ロジスティクスではございませんとさんざん言ってきたんじゃないんですか。

中谷国務大臣 安全確保支援活動ということでございます。

辻元委員 何で後方支援と言ってこなかったんですか。

中谷国務大臣 これは、イラクの戦闘が終えて、その復興を目指すという国連決議に基づいてできた法案でございます。

辻元委員 ほら。ですから、いわゆる戦闘行為が行われていることの後ろから物を運ぶという後方支援は、日本はやったことないんですよ。やったことない上に、非戦闘地域を外そうとしているんですよ。それが今の実態なんですよ。それなのに、経験がいろいろある、いろいろ経験した中で、後方支援を経験した中で不自由が生じてございますと。これは人道復興支援ですよ。

 そしてさらに、バグダッド、クウェートを行き来していた空輸も、これは後方支援じゃないと言ってきたわけですよ。給油もそう言ってきたわけですよ。実際ないんですよ、陸上。それでも非戦闘地域だったわけですよ、人道復興支援でも。

 さらに聞きましょう。重要影響事態法、今回は周辺事態法から変えますけれども、当時の議論の中で、ロジスティックサポートという後方支援は、英語でもガイドラインで使えなかった、使ってこなかった。リアエリアサポートという言葉を使いました、後方地域支援。なぜですか。これは、中谷さんは理事でいたから覚えていると思いますよ。

中谷国務大臣 まず、旧テロ特措法は、実施したのは海上だけですが、法律自体は陸上の部分の後方支援も入っていたわけでございます。

 それから、後方地域支援というのは周辺事態法における非戦闘地域の概念でありまして、そこを後方地域支援と呼んでいましたが、テロ特措法やイラク特措法においては非戦闘地域ということで、同じ意味でございます。

 なぜ必要かということは、国際平和協力法におきましては、国際連合などの国際機関からの決議とか、そういうものに基づくものでございまして、こういった国際連合などの活動に対して日本は後方支援を行うということを念頭に、これはやはり国際社会の求めとか、また我が国として主体的にそれに参加するべきであるというようなことを判断して参画するというのが内容でございます。

辻元委員 非戦闘地域の問題は、幾つかの議員が取り上げられたんですけれども、四要件があって、その当該行動等の具体的内容とか、そこについての議論もまだまだ必要なんですね。

 私はこのとき、後方地域支援という言葉をわざわざつくりました。それは、ロジスティックサポートというのは兵たんで、軍事の一環だからということをさんざんここで議論してきたわけです。しかし、今回はするっと、英文のガイドラインを見てもロジスティックサポートにすりかえているわけですよ。ですから、はっきりとこれは、私は戦争の一環に組み込まれていると思いますよ。

 もう一点、質問したい点があるんです。

 例えば、ジブチに今、自衛隊の基地といいますか根拠地がございます。もしも、後方支援なるものに行っていて、このジブチの基地がミサイルで攻撃されたとする。このときは、日本の自衛隊を狙って攻撃された場合は、これは日本への武力攻撃になるんですか。要するに、日本への武力攻撃になってしまったら個別的自衛権の発動に至るのかどうか。いろいろな今までの国会での議論のやりとりを見ていると、公海上の艦船が攻撃された場合は日本への、我が国への攻撃と見るとか、それから大使館が攻撃された場合とかいろいろありますけれども、例えばこのジブチの基地や後方支援の拠点がミサイルで攻撃されたときは日本への、我が国への攻撃になりますか、大臣。

中谷国務大臣 実際、ジブチには、日本だけではなくて、米軍もフランス軍も同じ地域でおります。

 我が国に対する武力攻撃であるかどうかにつきましては、我が国に対する組織的、計画的攻撃であるかということで政府として判断することになっております。

辻元委員 そうしますと、今おっしゃっているいわゆる後方支援の基地というのはよく狙われると多々委員も指摘がありますけれども、今ジブチを一例にいたしましたが、その他にも基地をつくらないと動けませんから、自衛隊の基地がミサイル等で攻撃された場合は日本への攻撃と見るのか。集団安全保障措置で行っている場合でも、そうすると、一足飛びにいきなり武力攻撃事態法発動なんということになるのかどうか。これはいかがですか。

中谷国務大臣 自衛隊の保護は、当然、御指摘のように、当該領地に対して施政権を持つ当該他国が当たるべきでありまして、我が国に対する攻撃かどうかということにつきましては、組織的、計画的な攻撃であるかということですが、基本的には、ジブチの国にあるわけでございますので、ジブチ、当該国ですね……(辻元委員「ジブチじゃなくても。日本の基地がやられた場合、どこにあるかわからないけれども、それをやられたら日本への攻撃になるかと聞いているんです」と呼ぶ)

 基本的には、ジブチの国にあるわけですから、ジブチ国に対する攻撃ということでありますが、我が国に対する攻撃かどうかという点につきましては、我が国に対する組織的、計画的な攻撃であるかということをもとに判断するということでございます。

辻元委員 ということは、他国に自衛隊が後方支援に行ったときにミサイル等で攻撃を受けたら、日本はどうするんですか。日本に対する攻撃と見るのか、それとも、見ずに、さあ引き揚げて帰ろうかといって帰るだけなのか。どうするんですか、これは。どうするんですか、大臣。

 総理はよく、絶対ないということを言う政治家は無責任だとさんざんおっしゃっているんですよ。そういうことの事態をしっかり詰めた上で自衛隊を送るのか送らないのかですよ。どうなるんですか、大臣。

中谷国務大臣 後方支援等につきましては、法律で、そのような場合においては中止をして回避すると言われております。

 先ほど、個別的自衛権の行使の前提となることについて、我が国に対する武力攻撃というのは、基本的に、我が国の国土、領海、領空に対する武力攻撃をいうものでございます。公海上にある艦艇とか他国の場合におきましては、これは極めて例外的なものでございますが、この点につきまして、いろいろな状況が考えられるわけでございますので、相手国の意図とか能力とか規模とか、そういうものをもちまして我が国に対する計画的、組織的な攻撃であるということが明確であるかどうかということでございます。

辻元委員 明確であれば我が国に対する攻撃となるんですか。

 例えば、公海上の艦船。先ほどはちょっと違うシチュエーションでの答弁もありましたが、今まで公海上の艦船の場合は、組織的、計画的であれば我が国に対する攻撃とみなされることもあるということなんです。

 そうすると、集団安全保障措置で自衛隊が駐屯している場所を外国、相手国、敵国などから攻撃され、組織的、計画的であると判断されればそれは我が国に対する攻撃、武力攻撃であるということになりますか。もう一回、確認です。

中谷国務大臣 いろいろなケースと規模、意図もありますが、基本的に個別的自衛権の行使の前提となるものは我が国に対する武力攻撃ということで、基本的には我が国の領土、領海、領空に対する武力攻撃をいうものでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 余りにも漠然とした御質問でございますので、一般論としてしかお答えできませんが、我が国が個別的自衛権を行使できるのは我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られるわけであります。我が国に対する武力攻撃が発生したと認められるか否かにつきまして個別の状況に応じて判断すべきでありまして、あらかじめ定型的とか類型的にお答えすることは困難でございます。

 御質問は、他国の領土の中にある自衛隊が攻撃されたということでございます。これは他国に対する攻撃に見られるわけでございまして、どのような状況で攻撃が行われるかどうかでございますが、基本的に自衛隊が後方支援等で出る場合には武力行使をしないというのが前提でございまして、そのような攻撃に対しては、安全を確保して、一時、活動を中断するということでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 先ほども一度お答えをさせていただきましたが、外国の領域にある自衛隊が攻撃された場合、それは、一般的に言って、直ちに我が国に対する武力攻撃が発生した、この武力攻撃というのは組織的、計画的な武力攻撃ということになるわけでございますが、これが発生したと見られない、また、自衛隊の保護は、当然、御指摘のように、当該領域に対して施政権を持つ当該他国が当たるべきでありまして、第二要件である他に手段がないことにも当たるとも言えないことから、このような条件のもとでは憲法上自衛権の発動というものは許されないと考えているわけでございます。

辻元委員 そうしましたら、最後に岸田外務大臣にお聞きします。

 そのときに自衛隊員が拘束される、拘束されて、国際法上はいわゆるジュネーブ条約、捕虜の保護の規定がありますけれども、自衛隊員が拘束されたらジュネーブ条約上の捕虜として扱われるんですか、日本の自衛隊の場合は。自衛隊のステータスはどうなりますか。

岸田国務大臣 ジュネーブ諸条約上の捕虜は、紛争当事国の軍隊の構成員等で敵の権力内に陥ったものをいう、このようにされております。

 この点、御質問がいかなる場合を想定しているか必ずしも定かではありませんが、いわゆる後方支援と言われる支援活動それ自体は武力行使に当たらない範囲で行われるものであります。我が国がこうした活動を非紛争当事国として行っている場合について申し上げれば、そのこと自体によって我が国が紛争当事国となることはなく、そのような場合に自衛隊員がジュネーブ諸条約上の捕虜となることは想定されないと考えます。

辻元委員 でも、そうすると、最後に聞きますが、想定されないというのは、この中での机上の空論でしょう。実際に行って拘束されるとか、空輸している飛行機が撃ち落とされてヨルダン軍のパイロットも捕まっていたじゃないですか。ジュネーブ条約上の捕虜じゃなかったら、単なる民間人の人質と同じ扱いになるわけですか。ここをはっきりしてください。どうなるんですか。自衛隊を出すんでしょう、出したいと言っているわけでしょう。どうなるんですか。

岸田国務大臣 ただいまは法的な整理を申し上げたわけですが、その身柄は少なくとも、普遍的に認められている遵守に関する基準並びにジュネーブ諸条約にも反映されている国際人道法の原則及び精神に従って取り扱われるべきことは、これは当然であると考えます。

辻元委員 だから、ジュネーブ条約で言うところの捕虜に当たるんですね、そうすると。

岸田国務大臣 まず、今申し上げたのは取り扱いについてでありますが、法的な整理は先ほど答弁させていただいたとおりであります。

 具体的な場合、具体的な状況は必ずしも定かではありませんが、いわゆる後方支援と言われる支援活動それ自体は武力行使に当たらない範囲で行われるものであります。我が国がこうした活動を非紛争当事国として行っている場合について申し上げれば、そのようなこと自体によって我が国が紛争当事国になることはなく、そのような場合に自衛隊員がジュネーブ諸条約上の捕虜となることは想定されない、これであります。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 岸田外務大臣、答弁願います。

岸田国務大臣 整理いたしますと、要は、御指摘のような自衛隊員、これは紛争当事国の軍隊の構成員、戦闘員ではありませんので、これはジュネーブ条約上の捕虜となることはありません。

辻元委員 日本の自衛隊が後方支援をしている、そして他国の、ドイツなんかも後方支援のような活動でアフガニスタンに行っていましたが、他国の軍の人たちが、仮に後方支援であったとしても拘束されたらジュネーブ条約を適用される、しかし、自衛隊だけ適用されないという事態が起こりかねないわけですよ。

 これは結局、後方支援というのは戦争の一環なんですよ、国際的に見たら。しかし、そこを違うと言い張っているから、自衛隊員の身も危険にさらすんじゃないですか、今の政府のあり方そのものが。

 そして、参考人やさまざまな人が憲法違反と言っているのは、兵たんは戦争の一環である、国際的にもそうなっている、捕虜の扱いもそうだし、そういうルールを全部すっ飛ばして、自衛隊だけ違います、これは通用しません。これは引き続きまた質問したいと思います。

 終わります。

浜田委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田です。

 質問を始めたいと思います。

 まず冒頭なんですが、前回の質問ですけれども、なぜ政府の考え方がなかなか伝わらないのかというような視点の中で、この間は自民党の中の勉強会について議論させていただきました。

 なぜ理解が進まないのかというのは、それ以外にもいろいろな理由があると思っています。私どもとしては、政府の答弁がしっかりしていないということもありますし、与党の中からは、野党の質問が悪いんだというような御指摘もありました。そのことに関しては、私としては、批判は批判として受けとめて、ぜひとも多角的な質問というものがこの委員会で行われることを望みたいというふうに思っています。

 そこはぜひ与党の理事にも委員長にも、野党の理事にも考えていただきたいんですが、与党の先生方、委員の方々がいらっしゃいますので、委員の方々全員、何かしらの問題意識を持ってこの場に座られていると思いますので、少なくとも委員の皆さん全員が御質問するぐらいが、さまざまある要素の中の一つとして、議論が尽くされているかどうかというような要素になると私は思います。

 ですので、そういうような視点も持って、ぜひとも御協議をいただきたいということを、冒頭、委員長にお願いしたいんですが、理事会の方で御協議いただければと思います。

浜田委員長 理事会で協議します。

寺田(学)委員 もう一点、もう一点といいますか、きょうお渡しした資料があります。

 砂川判決とこの法案の関係について、合憲であるかどうかということの判断ということを今まで議論して、御答弁いただいたり、答弁調整していただく中において、質疑を二回使って、砂川判決と四十七年見解とこの安保法案との合憲の関係性というものを整理し終わった委員会でした。

 しかし、この間の金曜日、総理入りの質疑の中で、私の質問に対してではないんですが、他の方に対する質問の中で中谷大臣が今までの整理された御答弁とは一見して違う御答弁をされたので、私としては、二回も質疑時間を使ってやっていますから、非常に困惑をしております。砂川判決自体を早目に整理して、しっかりと政府自身が合憲性の根拠は何であるかというところを、四十七年見解と言われていますけれども、そこを質疑したいなというふうに私は思っていました。

 まず、本当に今回で最後にしていただきたいんですが、砂川判決は安保法制の根拠、合憲の根拠になっているのかどうかということを累次にわたって質問してきました。

 六月十五日の中谷大臣ですけれども、砂川判決の「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」ということが四十七年見解の一の部分にあった。そしてその日、同じ日ですが、その下の段、六月十五日、中谷大臣が「根拠、これはあくまでも昭和四十七年の政府見解の基本的論理でございます。」と。上の部分と合わせると一の部分ですけれども、「砂川判決を直接の根拠としているわけではございませんが、砂川判決はこの基本的な論理と軌を一にするものであります。」ということで砂川判決とこの安保法制に関する関係性というものは整理がされて、政府としては、この六月十五日の中谷大臣の、真ん中の箱ですが、「根拠、これはあくまでも昭和四十七年の政府見解の基本的論理でございます。」というふうに整理がついています。

 しかし、六月二十六日になって、新三要件のもとで認められる限定的な集団的自衛権の行使は我が国の自衛の範囲に限られるものであり、砂川判決の範囲内のものであり、その意味で砂川判決は限定容認する集団的自衛権の行使が合憲であるとの根拠たり得るものですという言い方をされています。

 質問を中谷大臣にいたしますけれども、この真ん中の箱、砂川判決を直接の根拠としているわけではございませんというような御答弁は、継続されているということでよろしいですか。

中谷国務大臣 この質疑は、その後、六月十九日ですけれども、民主党の辻元委員の方から、合憲の根拠はということで、合憲の根拠というものがあるのならお示しをいただきたいという御質問がございました。

 そのときに私は、十五日の特別委員会で申し上げたのは、この最高裁の判断が判例として法的拘束力を持つという意味の根拠ではないという趣旨でありまして、法制局長官もそのことは前提である旨述べていると。そして、砂川事件の最高裁の判決では、国連憲章は、全ての国が個別及び集団的自衛の固有の権利を有することを承認していると述べている、また、判決は、憲法九条によって、我が国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、我が国憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではないとした上で、「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」と述べており、憲法上認められる自衛の措置については、個別的、集団的自衛権という区別を論じているわけではないと。そして、新三要件のもとで認められる限定的な集団的自衛権の行使は我が国自衛の措置に限られるものであり、砂川判決の範囲内のものです、その意味では砂川判決は限定容認する集団的自衛権の行使が合憲であるとの根拠たり得るものということで答弁をさせていただきました。

寺田(学)委員 端的にお伺いします。

 政府が限定的な集団的自衛権の合憲であると言う根拠は、四十七年見解でよろしいんですか。

中谷国務大臣 先ほどお話ししたとおりでありまして、結論の部分におきまして、砂川判決の範囲の中のものであり、砂川判決は限定容認する集団的自衛権の行使が合憲であるとの根拠たり得るものだということでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 大臣、よろしいですか。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 もう一度申し上げますが、十五日の私の発言、これはそのとおりでございまして、直接法的拘束力を持つ、この最高裁の判断が判例として法的拘束力を持つという意味では根拠ではないという趣旨でありますが、それは前提ということでございます。その後発言をいたしました、新三要件のもとで認められる限定的な集団的自衛権の行使は我が国の自衛の範囲に限られるものであり、砂川判決の範囲内のものであり、その意味で砂川判決は限定容認する集団的自衛権の行使が合憲であるとの根拠たり得るものでございますということで、これは決して矛盾をしたものではないということでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 もう一度申し上げます。

 「根拠、これはあくまでも昭和四十七年の政府見解の基本的論理でございます。砂川判決を直接の根拠としているわけではございませんが、砂川判決はこの基本的な論理と軌を一にするものでございます。」そして、その後発言した、砂川判決は限定容認する集団的自衛権の行使が合憲であるとの根拠たり得るものです、これは決して矛盾したものではないと認識しております。

寺田(学)委員 たり得るものですというような御表現をされておりますが、今、冒頭に御発言がありましたけれども、四十七年見解が政府がこの限定的集団的自衛権の行使を合憲とする根拠であるということでよろしいですね。

横畠政府特別補佐人 新三要件のもとで認められます限定的な集団的自衛権の行使が憲法に適合するという、その根拠でございますけれども、その根拠の意味いかんでございます。憲法の範囲内であると言える根拠、つまりその論理あるいは考え方としては、まさに昭和四十七年の政府見解で示されている基本的な論理の一及び二のとおり、その考え方でございます。

 さらに、その論理、考え方を支える根拠、裏づけとなるものでございますけれども、その一つとして砂川判決の判示があり、これは昭和四十七年政府見解の基本的な論理の一のところに示されているとおりでございます。

寺田(学)委員 済みません、大体整理して御答弁されたと思うんですが、今、それを支える根拠の一つと言われましたので、それ以外にあるとすれば何のことを指されているんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 昭和四十七年見解の一の部分がこの砂川判決の判示と軌を一にすると申し上げておりまして、二の部分というのが四十七年見解ではまた重要なところでございます。

寺田(学)委員 いずれにせよ、四十七年見解だと御答弁されたということですよね。わかりました。

 時間がもう十何分しかないですので、次に参ります。

 四十七年見解が政府の直接的な根拠であり、それを支えるのが砂川判決であるということの御答弁でした。ですので、六月二十六日、総理もそれと同じようなことを言われていますが、根拠たり得る。または、あとは党のことになって大変恐縮なんですが、高村副総裁が未来永劫これは根拠なのだと断定されています、砂川判決が根拠なのだと言われています。

 政府と与党で御発言が変わることは国民の理解を妨げると思いますので、これは誰にお願いしたらいいかわかりませんけれども、中谷大臣の方からも一言、ぜひとも高村副総裁の方には、そのような国会答弁をしたので、しっかりと考え方を一つで御答弁しますのでということはお伝えください。

 次に参ります。

 きょうも参考人質疑でしたが、前回の参考人質疑で阪田法制局元長官がお話をされて、憲法解釈が変更される、それが許されるような条件ということを御示唆いただきました。

 総理自身も、国際情勢に目をつぶって、その責任を放棄して、従来の解釈に固執するというのはまさに政治家としての責任放棄なんだというようなお話をされています。

 その上で、阪田元長官が言われたのは、変更して許容される条件は何だというようなときには、一つは法理論的に成り立つもの、憲法の条文に沿って解釈しなきゃいけないよねということと、解釈変更を必要とする事情なり理由なりをきちんと説明できることというようなお話をされていました。その後ですが、今まで自国が攻撃を受けない限り武力行使をしないという憲法解釈で自国を守ることが結果的にできてきた、そしてこの解釈は国民に浸透している、この解釈を変えるのであれば、変えなければならない、自国の存立を守ることができないことを説明する義務が政府にあると思うというお話をされていました。

 そういう議論をちょっと深めていきたいんですが、まず、解釈を今変更したわけですけれども、その変更の内容をちょっと、もう少し輪郭をはっきりさせるためですけれども、いわゆる新三要件の中の明白な危険というものの解釈として、その判断要素の中に戦禍の蓋然性というのがあります。一番最初の質疑のときに後藤委員がこの戦禍の意味を議論されておりまして、一定程度その答弁はあるんですが、確認の意味なんですけれども、この戦禍の蓋然性、戦いによる災い、影響ということであります。

 阪田元長官も言われていますけれども、これは日本が攻撃されるおそれという意味において、火の方ですね、日本が攻撃されるというようなおそれが全くない場合でも新三要件に該当し得るケースはあるのかどうか。既に御答弁されていると思いますが、改めて、中谷大臣、よろしくお願いします。

中谷国務大臣 戦禍というのは戦いの災いという意味でございます。それは読んで字のごとく、軍事的観点に伴うものによって日本に災いが発生するということでございます。

寺田(学)委員 いや、日本が攻撃されるおそれが全くないときでも新三要件というものは合致し得る、そういう場合があるんですかということを聞いているんです。

中谷国務大臣 我が国に戦禍が及ぶ蓋然性とは、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生を前提として、この武力攻撃によりその影響や被害が我が国に及ぶ蓋然性を意味しておりますが、我が国が爆撃の対象となるような場合に限られるものではないということと、もう一つは、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性が全くない状況において存立危機事態と認定されることはないということでございます。

寺田(学)委員 日本が武力攻撃を受けるおそれが全くないときでも新三要件に合致することはあり得るんですかということを言っているんです。これはイエス・オア・ノーです。

中谷国務大臣 我が国に戦禍が及ぶ蓋然性が全くない状況において存立危機事態と認定されることは考えられないということでございます。

寺田(学)委員 ごめんなさい、議事録を書かれる場合においてもここはちょっと分かれるところなので、戦火という言葉をあえて使わずに私はお伺いしているんです。日本が武力攻撃をされるようなおそれが全くないときでも新三要件に合致する場合はあるんですかということを聞いているんです。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 それはあり得ると考えております。

寺田(学)委員 では、日本が武力攻撃を受けない場合、受けるようなおそれが全くない場合でも新三要件に合致し得るということでよろしいですよね。

中谷国務大臣 そのとおりでございます。

寺田(学)委員 わかりました。

 まさしく今回の阪田元法制局長官が言われている部分は、今までは自国が攻撃を受けない限り武力行使をしないという憲法解釈があって、結果的にそれで日本国というものは平和が保たれていた、それを変えるとすれば、変えるような理由なり説明というものをしっかりしてほしいということでございました。

 そのような認識を、憲法解釈を変えるということですけれども、一点ちょっとお伺いしたいんですが、本改正案が成立しなければ国の存立を守ることができない、政府の認識として、ある種この法改正をしなければ国の存立を守ることができない、必要不可欠な法律であるという捉え方でよろしいですか。

中谷国務大臣 累次御説明をしておりますけれども、他国に対する武力攻撃が発生した場合において、そのままでは、すなわち、その状況のもと、武力を用いた対処をしなければ国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であるということでございます。

寺田(学)委員 ごらんになられている方にもできる限りわかりやすいようにということで言い方を変えているんですが、いずれにせよ、政府の認識では、この本改正案が成立しなければ国の存立を守ることはできない、必要不可欠な法律であるという認識でよろしいですよね。当たり前のことですよ。

中谷国務大臣 累次、用語の定義も申し上げていますが、そのとおりでございます。

寺田(学)委員 では、具体的に一個言いますけれども、他国への攻撃が我が国の存立を脅かし得る、存立を危険にするというような新たな認識と、その場合において武力行使をしなければ存立を守れないというような新しい解釈を今回つくっているわけです。もちろん新三要件という限定はしますけれども。新しい認識と、そしてその認識に立った上で新たに武力行使をするという一つの道が開かれるわけですけれども、それがない限り我が国の存立を守ることはできないというような認識でこの法案は出されているということでよろしいですよね。

中谷国務大臣 まさに新三要件で示したとおりでありまして、そのままでは、武力を用いた対処をしなければ国民に我が国が武力攻撃を受けたと同様な深刻、重大な被害が及ぶ明らかな状況があるということでございます。

寺田(学)委員 そのような認識の変化があった理由というのは、安全保障環境の変化ということでよろしいですか。

中谷国務大臣 累次御説明しておりますけれども、我が国をめぐる国際状況また安全保障環境の変化によりまして、他国で起こったことでも我が国の安全保障に影響を及ぼしますし、我が国一国ではこの国を守ることがなかなかできないというような情勢の変化を受けたということでございます。

寺田(学)委員 ちょっと長官、一言になりますけれども、その安全保障環境の変化というのを説明するのは長官ですか、それとも防衛大臣ですか。

横畠政府特別補佐人 現下の情勢をどのように判断し、どのような事態を想定し、またそれに対してどのような備えをする必要があるのかというのは政策の問題でございまして、法理そのものの問題ではございません。(寺田(学)委員「誰が答弁するんですか」と呼ぶ)それは私ではございません。

寺田(学)委員 中谷大臣ですよね。まず、よろしいですよね。

中谷国務大臣 累次御説明しておりますが、例えば北朝鮮のミサイルがたくさん配備されて我が国を攻撃するのが可能になったとか、またパワーバランスが変化したとか、テロの脅威が非常に顕著になったとか、そういう変化があったということで累次御説明をいたしております。

寺田(学)委員 それで、今この解釈を変えたこと、そして、解釈を変えて武力行使をしなければ自国を守れないということの具体例が政府で述べられているのはホルムズ海峡と米艦防護です。

 私の方は、ちょっとホルムズ海峡のことを限られた時間でお伺いします。ホルムズ海峡自体、機雷掃海をしなければある種自国を守れないという立場に今は立っていますが、どのような安全保障環境の変化があったんですか、このホルムズ海峡において。

中谷国務大臣 ホルムズ海峡等におきまして、この変化というのは、一つは、中東においても大きく安全保障環境が変化をいたしまして、近年ではアラブの春、またイラクからの米軍の撤収に端を発する新たな課題も顕著になりました。その中でも特に三つの大きな特徴があります。

 第一に、核やミサイル開発による大量破壊兵器の拡散であります。例えば、混乱が続くシリアにおいて化学兵器が使用されたことは記憶に新しいものでありますが、非国家組織であるヒズボラが巡航ミサイルを保有していると言われております。このように、大量破壊兵器が統治能力の低下した国家や非国家組織さらにはテロリストの手にわたり、使用されるおそれがあります。

 第二に、ISILを初めとする国際テロ組織や過激主義の伸長が挙げられます。このISILに同調する組織の増加、アルカイダ系の組織を初めとする国際テロネットワークの拡大などによって、一部の中東、北アフリカ地域は既にテロの温床と化しています。これは、単なるテロ脅威が増大しているのみならず、地域の安定自体を脅かしております。

 第三に、イラク、シリア、イエメンの情勢の混乱と不安定化の広がり。アラブの春以降、多くのアラブ国家で政権交代が起こっております。紛争や政情不安が継続して、この混乱は一国にとどまらず地域全体に波及して不安定を助長する要因となっており、ISILの勢力拡大と米国等の連合による空爆が行われているということで、中東のみならず国際情勢の平和、安定を脅かす事態が今非常に起こって変化してきているということでございます。

寺田(学)委員 時間が来ましたのであれですが、もう一問だけ。

 以前はホルムズ海峡が閉鎖される蓋然性はなかったんでしょうか。

中谷国務大臣 冷戦の後、直ちに湾岸戦争が発生し、その後も中東は混乱し、またアラブの春以降、全く予想しなかった地域、国々、こういうことが変化いたしております。以前よりは環境が激化、悪化している。以前においては、二度、機雷がまかれた状況もある。

寺田(学)委員 二度まかれたときがあるというお話がありました。

 以前もホルムズ海峡が閉鎖される可能性はあったにもかかわらず、そのような認識に立たず、今回、ホルムズ海峡を掃海しなければ自国の存立を守ることはできないと。その変化をしっかりと国民の皆さんに説明しない限り、私は憲法解釈が許されるものではないというふうな立場に立っています。ですので、今後このことはしっかりと議論したいと思います。

 終わります。

浜田委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 維新の党の伊東信久です。

 本委員会での質疑は初めてでございますので、よろしくお願いいたします。

 中谷大臣とは、憲法審査会において二年前、御一緒に、カールスルーエの憲法裁判所初め、ベルリン、プラハ、ローマと、各国の憲法改正の事例を視察させていただきました。また、ラグビーを通じても親交を深めさせていただいておりまして、議連や国会議員のラグビーチームで親交を深めさせていただいておりまして、このような形で質疑をする機会に恵まれ、ありがたく思っております。

 さて、国会が九月二十七日まで延長されましたので、中谷大臣と御一緒させていただくことになっているはずのイングランド・ラグビーワールドカップの視察がどうなるか、私自身、不安になっているんですけれども、本日は安保法制を通じて、そして九月にはイングランドで体を通じて、中谷大臣から勉強させていただきたく存じます。

 さて、新聞やテレビなどで世論調査を行っておりますけれども、国民の安全保障関連法案への理解は深まっていないように感じております。このことについては、毎回のこの委員会でどなたかが指摘しております。くしくも、私の前の寺田議員も同じように、国民の安全保障関連法案への理解が深まっていないということも御指摘されていました。

 原因としまして、もちろん説明不足、質問の種類のような観点もあるかと思いますけれども、何よりも、国民の皆さんにとって内容が難しいと感じていることに尽きようかと思います。

 ふだん、私自身が有権者の皆さんから伺う質問としては、本当にごくごく基本的な質問ばかりです。集団的自衛権とはどういうことだ、何のことだ、憲法の解釈というのは何だ、また憲法の解釈というのは変更できるのか、このようなごくごく基本的な質問をされるわけです。

 本委員会で議論されているような、もちろん国会は立法機関でありますので、その辺はよく理解しているんですけれども、法理論の審議で国民の皆さんの理解が深まるということはやはり困難だと考えております。

 といいましても、法案を出し直すべきだとか、審議時間をもっと確保すべきだというような主張をこの場でするつもりはございません。一昨日、審議時間も、実際、委員会終了時点で六十八時間十八分まで積み上がっておりまして、恐らく、審議時間を二百時間にしたらいいとか継続審議にしたらいい、そういったことで解決につながるとは思っておりません。ただ、本委員会での議論はややもすれば国民不在と言われないような議論にしたいと思うのが、議員を志した私の本意でもございます。

 本委員会での成立により、本当に単純に、戦争につながるとか徴兵制度につながるというような話も出たりするんですね。ただ、いたずらに国民の不安をあおるのは本当によくありません。きちんと国民に説明できていないというのも、やはり原因であるかと思います。

 本改正案は、戦後の法案審議の中でも本当に指折りの重要法案なので、政府はもとより、国民一人一人が、メディアの話をすれば、例えばテレビの池上彰さんのように丁寧に丁寧に国民に説明するというのも大事だと思っております。

 さて、一問目の質問に移りたいと思うんです。

 まず、根本的に国民の大半が本法案に否定的であり、かつ、内容がわからないとの声が多いんですけれども、その原因はどこにあるか。中谷防衛大臣はどのように考えておられますか。

中谷国務大臣 伊東委員とは憲法審査会とかいろいろな会合で、安全保障に関しても伊東委員の御意見を聞かせていただいておりまして、非常に見識の高い御意見を持っておられる方だと思っているわけでございますが、安全保障というのは超党派であります。やはり国の安全保障においては、一党だけのお考えではなくて、いろいろな政党の考えを述べ合って、この委員会もそうですけれども、大いに議論して審議を深めていくということで、維新の党も提案をされるということで、心から敬意を表したいと思っております。

 なぜわかりにくいかというと、やはりさまざまな考え方があるというのは事実でありまして、学者の方からの指摘とか、また安全保障に関する専門家などのさまざまな意見があるということで、非常に憲法自体の解釈も難解なところがございますので、なかなかわかりにくいというような点もあると思います。

 しかし、政府としては、国民の命や国民の暮らしをしっかり守っていかなければなりませんし、我が国の平和というものを守るためにはどうすればいいかということを真剣に議論して検討し、また与党でも熟議を重ねまして今回の法案の提出になりましたけれども、目的は何かというと、このような現状の安全保障環境の中で国民の命と平和な暮らしを守り抜くために不可欠な法案である、これは確信を持って提案をいたしております。

 今後、このことがより理解されますように丁寧に説明をして、御理解いただけるように努力をしてまいりたいと思っております。

伊東(信)委員 済みません、原因をお尋ねしたつもりなんですけれども。もともと難解だから説明するのが難しいということの理解でよろしいんでしょうか、大臣。

中谷国務大臣 私どもは憲法の範囲の中で法案をつくったわけでございまして、そのことを累次説明いたしておりますが、なかなか憲法というのは、自衛隊に関しても意見が分かれるところでございます。しかし、我々としては、憲法の範囲の中で国民の生活や命をしっかり守っていかなければならない、その範囲でつくっておりますので、その点はしっかり、今後、理解できるように説明してまいりたいと思っております。

伊東(信)委員 その難解な憲法に関して、憲法審査会を通じていろいろな、ヨーロッパの国を中心に、中谷大臣とは憲法改正をされた国の事例を視察していったわけでございます。

 憲法改正の話をするつもりじゃないんですけれども、憲法に関しての理解を深める上で、では憲法を改正したらどうなんだとかいうようなお話を、自民党の方がこの「ほのぼの一家の憲法改正ってなあに?」というコミックを出されているわけなんですね。これを読ませていただいたんですけれども、なかなかわかりやすいんですよ。一発でわかるというか、なかなかわかりやすいんですね。

 現在、私は財務金融委員会に所属しておりまして、ジュニアNISAの話になったときに麻生副総理と「インベスターZ」というコミックの話をしていまして、これは、ジュニアNISAというか、高校生が投資をするということを書いているコミックなんですね。

 例えば、トマ・ピケティの二十一世紀の資本論のコミックなんかも今存在しておりまして、では、国民の皆さんが深く読まれるということを前提にして、集団的自衛権に関するコミックというのを一生懸命探したんですけれども、あったんですよ。あったのはいいんですけれども、これは今から二十年以上前なんですね。二十年以上前に集団的自衛権の行使の是非について、コミックにおいて議論をされていました。

 この場にいる議員の方々の中にも読まれている方もおられると思うんですけれども、コミックの宣伝というわけじゃないですけれども、この「加治隆介の議」という弘兼憲史さんの五巻において、二十年前に集団的自衛権の話が出ております。

 これはもちろん自民党さんのコミックですので読まれたことはあると思うんですけれども、この「ほのぼの一家の憲法改正ってなあに?」という本と、この「加治隆介の議」、存在を御存じ、もしくは大臣は読まれたりされましたか。

中谷国務大臣 これは二〇〇〇年の、私が防衛庁長官になる前、非常に人気のある漫画であります。農業の問題とか安全保障の問題とか政治改革とか、政治家の理想像を語っておられるのが主人公でありまして、この委員会の中にいる人もモデルになったと言われておりますけれども、非常に内容もある、私にとっても勉強になる漫画でございまして、私も読ませていただきました。

伊東(信)委員 当時、私、議員になる前でございまして、勤務医でした。政治の世界というよりも、勤務医ですので、雇われの身分でした。

 その中でも、このコミックを読んで、もちろんフィクションです、フィクションですので、それでいたずらに不安になることはありませんけれども、内容について本当に短く言いますと、公海上の海賊行為に対して、自衛艦が他国の小型砲艇に発砲して撃沈する。その海賊行為をした他国の船は、日本の国じゃなくて他国籍のフェリーに対して海賊行為をしていたということなんですね。ここで集団的自衛権という用語も出ております。

 権利はあるけれども行使はできないという、なかなか歴代の政府見解というのは正直、私はやはり理系ですので意味不明でしたし、それは、半世紀前の安全保障環境と国内世論に配慮した、申しわけないですけれども、その場しのぎの手技だったと言えるでしょう。

 これは主人公も、権利はあるけれども行使はできないというジレンマに悩んでいたんですけれども、そのときに私は思ったんですけれども、これは日本特有のことなのか。

 まず、ここでお尋ねしたいんですけれども、二十年前の私にお答えいただきたいんですけれども、集団的自衛権の権利はあるが行使はできないという国は日本以外にあるのでしょうか。

岸田国務大臣 まず、例えば永世中立国でありますスイスあるいはオーストリア、こういった国は、集団的自衛権の行使を想定していないと承知しています。

 また、コスタリカという国がありますが、コスタリカという国においては、集団的自衛権の行使を妨げる法的根拠は存在いたしませんが、そもそも、コスタリカという国は軍隊を持っておりません。軍隊を保持しておりませんので、集団的自衛権の行使を想定していないと承知をしています。

 こうした例は承知していますが、それ以外に、御指摘のように、集団的自衛権について、権利として有しているがその行使はできない、こういった考え方をとっている国があるとは承知しておりません。

伊東(信)委員 そうなんですね。だから、集団的自衛権の行使ということが議論になること自体、世界の中でも珍しいということで、冒頭の話に戻りますけれども、やはり事例がないこと、それを伝えていくことは困難なことだと思うんですけれども、そういった前提もしっかり国民の皆さんに伝えていかなければならないと思います。そうでないと、前述したように、戦争につながるとか徴兵制度につながるとか、そんな話が出てきて、国民の皆さんに混乱を与える結果となってしまいます。

 もちろん、自民党さんのこのコミック以外にも、いわゆるチラシの中に、戦争につながりません、徴兵制度につながりませんと書いておるんですね。書いておるということは、そういった混乱を与えている、そういうような心配もあると思われていると理解しておるんです。

 今までは、世界の中でもアメリカが、米軍が圧倒的な力をやはり持っていまして、日本はその傘の下で守られてきたのは歴史的な事実だと認識しております。しかしながら、中国の軍事費がここ十年間で四倍となりまして、その軍事力が飛躍的に増強されてアジア全体の緊張を高めておる。あくまでも、ここで言うまでもない周知の事実です。当然、紛争の抑止力となっていた米軍の軍事力はそうなると相対的に弱まってくるわけなんですけれども、このアジアの地域における紛争抑止のために米軍の存在というのは、とはいうものの不可欠です。

 米軍といかに協力関係を深化させていくかが重要で、その意味で、先ほど、二十年前からこの議論をされている、二十年たってまだされていると。

 その集団的自衛権の今度は限定的な行使容認という方針になったと推測されるわけなんですけれども、全ての国連条約締結国には国連憲章第五十一条に明記されている個別自衛権と集団的自衛権はともに認められていますが、本改正案が仮に成立しても憲法解釈上で認められない集団的自衛権の具体的な行動というのはどういったものがあるのでしょうか。

中谷国務大臣 いわゆる集団的自衛権の中で他国を防衛するのを目的とした集団的自衛権、いわゆる国際的な定義によりますと、集団的自衛権というのは自国が攻撃されていないが密接な他国が攻撃をされた場合に自衛権を出す措置ということでありますが、基本的に他国を防衛するための集団的自衛権というのは、これは今回の法改正でも、また憲法上も容認をしているわけではございません。あくまでも我が国の存立にかかわったり、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆されるような明白な危険がある事態に限って、これは我が国と密接な国に対して武力攻撃が発生したということで、いわば限定した段階での容認をしているということでございます。

伊東(信)委員 済みません。確認なんですけれども、大臣の答弁で、密接な他国、我が国の存立が脅かされたときに限定とおっしゃいましたけれども、それは直接的な我が国の存立危機ということですよね。密接な他国が攻撃されても、それは他国のことだから、集団的自衛権としては法案が成立しても憲法解釈上では認められないと理解して構わないのでしょうか。

中谷国務大臣 今回、法整備によって、新三要件を満たす場合に容認される武力行使、これはあくまでも我が国を防衛するためのやむを得ない自衛のための必要最小限度の措置に限られまして、他国を防衛することそれ自体を目的とする集団的自衛権一般の行使を認めるものではないということで、この新三要件を満たさない場合には集団的自衛権を行使することはできないということでございます。

伊東(信)委員 私自身は、どれが新三要件を満たすのだというようなことをこの時点でお聞きはしません。ただ、本当にそれを満たすためのチェック機関は果たして国会議員だけでいいのかどうかというのはちょっと問題提起を今させていただいているわけなんですけれども、集団的自衛権とか個別的自衛権とか、この区別というのは、国民にとって今までなじみのない言葉だった。コミックで二十年前に出ているんですけれども、やはりなじみのない言葉。ここで国民の皆さんにとってわかりにくくなってしまうのは、もっともなことなのではないかと思います。

 現在というか、国会議員になるときに私は外科医でございまして、余り他に例のないヘルニアのレーザー手術をやっていまして、患者さんが納得するまで丁寧に丁寧に説明を繰り返して、本当に一〇〇%納得されたと思ってから手術をしているんですけれども、だけれども、やはり患者さんはおっしゃるんですね、私は医学は素人ですから先生にお任せしましたと。このお任せしましたという言葉はやはり重たいので、説明して納得してもらうには、単純ですが、本当に非常に難しいことだということを大臣含め政府としてわかっていただきたいと思います。

 先ほどスイスの事例が岸田大臣から出されましたけれども、永世中立国として知られているスイスというのは、隣の国同士が戦争するヨーロッパにおいて、大体二百年間にわたって戦争していないんですね。第一次世界大戦も第二次世界大戦も参戦しておりません。

 先ほどの、地元に帰って有権者の皆さんと話をする、もしくは患者さんと話をしてお話を聞くということなんですけれども、スイスのように永世中立国になったらいいんだと本当に単純におっしゃる患者さんもおられるわけなんです。

 我々は中立だとスイスは主張しているから戦争に参戦していないのではなく、スイス自体は、我々に手を出したら戦うという国防体制を整えていますから、つまりは、完璧なまでの防御体制をとることによって外圧をはねのけたという歴史があります。

 スイスの男性は徴兵制度により二十から三十歳の間に四カ月間の兵役義務がありまして、女性は任意のようですけれども、国民皆兵制を国防戦略の基本に据えまして、有事の際にはスイスの男子全員が戦うことが法律によって定まっております。

 ここで誤解のないように申し上げますけれども、私は、そういった徴兵制を決して推奨しているのではなく、もちろんのこと反対です。ただ、鉄壁な防衛体制をしくことで外圧から身を守っている、スイスの事例はそういった解釈で確かです。

 日本では国民五百八人当たり一人が自衛隊員ですけれども、スイスでは三十七名のうち一人が軍人なわけなんです。もちろん、自衛隊員の割合と軍人の割合の比較というものを単純にしていいものではないんですけれども、数字でそうなっております。実に、人口比で日本の十三倍もの国民がスイスの国防に従事していることになっております。すなわち、スイスは、自分たちの国防力を徹底的に高めることによって他国に対して抑止力を発揮しているわけですね。

 日本自身の国防力をそこまで高めようと思いますと国際関係、国内世論、財政などの面で難しいので、アメリカそしてオーストラリアも含め価値観を共有する国々と協力していくことが抑止力になるのではないかと思っておるんですけれども、特にアメリカを念頭に、集団的自衛権を行使できるようにして日米安保を深化させていく、今回の議論はその一環だと理解しておるんです。

 質問させていただきたいのは、本改正案によりこの抑止力自体はどのように変わるのでしょうか、詳しく教えてください。

中谷国務大臣 委員が言われたように、これまでの日本の安全、平和は、国民の努力もそうですし、外交でもそうですが、やはり自衛隊と日米安保、この体制が平和を維持してきたということでありますが、これからさらに、私も、日米同盟、日米安保、これを強化しなければならないと。

 というのは、やはりまず、日本が攻撃を受ければ米国は日本を防衛するために力を尽くしてくれますが、安全保障条約の義務を負うために日本近海で適時適切に警戒監視の任務に当たってくれていますけれども、今の法制下では、日本のためにその任務に当たる米軍が攻撃を受けても、日本は日本自身への攻撃がなければ何もできません。このような問題を踏まえて、日米同盟がより機能するようにするというのが今回の平和安全法制の一つでございます。

 日本が危険にさらされたとき日米同盟が完全に機能するということを世界に発信することによって、紛争を未然に防止する力、すなわち抑止力はさらに高まって、日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなっていくのではないかと考えております。

伊東(信)委員 特にアメリカを念頭に、こういった抑止力が変わるということをお話ししていただいたわけなんですけれども、同じ環太平洋の中で、例えばオーストラリアとかも含め価値観を共有する国々との協力、このことも抑止力につながる場合というのはあり得るでしょうか。

中谷国務大臣 政府としては、やはり国民の命と平和な暮らしを守るためにはどうしたらいいのかということを常に考えていかなければならないということで、グレーゾーンから集団的自衛権に関するものまで、あらゆる事態に切れ目のない対応を行うことが可能となるわけでございます。

 先ほど、アメリカとの日米安保条約の話等もいたしましたけれども、我が国の安全をしっかりなしていくということにおきまして、米国以外の国々との平素からの安全保障の対話、協力、そういったことも必要でございますので、どこの国という特定はございませんが、我が国がしっかりと平和で安全であるということを念頭に、いろいろな国々との防衛協力も日ごろからやっておく必要があるということでございます。

伊東(信)委員 それでは、時間もあと五分強となっていますので、最後の質問に移っていきたいと思うんですけれども、もう何度も質問されている内容になりますけれども、ホルムズ海峡の機雷掃海について、私も疑問に思っていることをお尋ねいたします。

 我が党としてはホルムズ海峡の機雷掃海は個別的自衛権の範囲で考えておりまして、今までの御質疑に対する御答弁を聞いておりましても、政府・与党は存立危機事態概念で読み込もうとしておられているのではないか。存立危機事態概念が逆にちょっとわかりにくくなっているように感じています。

 内閣法制局長官も、機雷掃海は個別的自衛権に位置づけ得る、可能であると答弁しておるんですけれども、もう一度聞きます。ホルムズ海峡の機雷掃海は個別的自衛権で対応できると思うのですが、中谷大臣はどのように考えておられますか。

中谷国務大臣 個別具体的な状況で、一概には申し上げられませんが、仮にホルムズ海峡の機雷敷設が我が国に対する組織的、計画的な武力行使であると認められる場合には、個別的自衛権の発動として武力行使に当たる機雷掃海を実施すること、これは可能だと思います。しかし、仮に我が国の石油の輸入を遮断することが目的と明示されたとしても、機雷の敷設の態様、戦闘全般の状況、周囲の国際情勢等を踏まえて、御指摘のようなケースが我が国への武力攻撃の発生と認定することができない場合もあります。

 むしろ、攻撃が無差別である、あるいは待ち伏せ型の兵器である等の機雷の特性も踏まえれば、ホルムズ海峡での機雷敷設それ自体をもって直ちに我が国への武力攻撃の発生と認定して、個別的自衛権に基づいてこれを除去することは想定しがたいと考えております。

 委員のおっしゃるような、本来は集団的自衛権の行使の対象となるべき事例について個別的自衛権を我が国独自の解釈で説明するということは国際法違反のおそれがありますので、これまでの武力攻撃事態の概念を拡張して対応することは、この事態の要件である我が国に対する外部からの武力攻撃の発生を前提とせず武力行使をするということでありまして、これは憲法上認められないということで、今回、新三要件を設けまして、我が国の存立にかかわる場合、機雷の除去を可能とするということにしたわけでございます。

伊東(信)委員 ということは、前提としてホルムズ海峡の機雷掃海は個別的自衛権で対応して、その個別的自衛権の範囲を超えて、かつ新三要件を満たせば今度は集団的自衛権で処理をする。

 つまりは、御党、自民党の大野議員が、空間的にだと思うんですけれども、地理的に空間的にここは個別的自衛権が発生して、ここは集団的自衛権が発生してとか、そういった事例というのはあるのでしょうかという質問をされていまして、ホルムズ海峡の地理的というのはその限られた範囲なんですけれども、そうじゃなくて、では、今までは個別的自衛権で機雷掃海をしていました、ところが、しばらくして事態が変わって、時間的にそれだったら対応できなくて集団的自衛権に変わりました、そういった事例というのもあり得るということでしょうか。

中谷国務大臣 基本的には我が国に対する武力攻撃が発生したかどうかという認定ですが、日本以外のほとんどの国は集団的自衛権を持っていますので、こういった事態に機雷の掃海が可能になるわけでございます。

 しかし、我が国にとりましては、先ほど説明をいたしましたように、我が国に対する武力攻撃があるかどうか、この認定がない場合にこれは武力行使になりますので、でき得ない。しかし、それで、我が国にとって存立にかかわるとか、また国民の権利が失われるとか、そういう事態に立ち至った場合に、こういった処理をすることによってそういう事態をなくすというような判断をした場合に、いわゆる三要件に認められる場合におきましては実施することを容認するということでございまして、今回、そういう措置を講じさせていただいたということでございます。

伊東(信)委員 最後に確率論で答えていただきたいんですけれども、我々外科医が手術をするときに、例えば十人に一人あり得る、一万人に一人あり得る、そういったことで、個別的自衛権でこの機雷掃海、確率論であり得る、対処できるホルムズ海峡の機雷掃海というのはあり得るのでしょうか。あり得るかどうかだけお答えいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

浜田委員長 中谷防衛大臣、時間が来ておりますので、簡潔に願います。

中谷国務大臣 その際には、政府は、情報等を収集いたしまして間違いのない判断をしなければなりませんし、閣議決定をするということは大変重大なことでもございますし、まして国会でそれを承認いただかなければなりませんので、そういう点が御理解をいただけるような場合でなければ実施はできないのではないかというふうに思います。

伊東(信)委員 終わります。

浜田委員長 次に、本村伸子君。

本村(伸)委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 イラク戦争のとき、私の地元、愛知県にあります航空自衛隊小牧基地所属のC130輸送機が武装したアメリカ兵をイラク現地に運び、アメリカの戦争に加担をさせられました。同じ過ちを繰り返してはならない、この立場から質問をさせていただきます。

 今回の法案では、今度はこの航空自衛隊小牧基地所属の空中給油機が、自衛隊の中では空中給油機が配備されているのはこの小牧基地しかありませんけれども、この小牧基地の空中給油機が、まさに戦闘作戦行動のために発進準備中のアメリカ軍などの戦闘機に空中で給油ができることとされております。

 法案ではさまざまな事態が出てまいりますけれども、小牧基地の空中給油機は、重要影響事態、国際平和共同対処事態、武力攻撃事態、存立危機事態、こう判断されたときに、今にも爆撃に行こうとしている発進準備中のアメリカ軍などの戦闘機に空中で給油ができるということになるかどうか、まず確認したいと思います。

中谷国務大臣 重要影響事態また国際平和共同対処事態、存立危機事態に際しまして、部隊の移動、警戒監視、情報収集、輸送等、さまざまな目的を持ちまして運用される米軍等の航空機に対して自衛隊が給油支援を行うことが想定されますが、そのときに空中給油機を使用することも法律上は排除されておりません。

 どのような場面で空中給油機が用いられるかは、個別具体的な状況に即して、地上基地等の利用も含めて、全体的な運用上の合理性という観点から適切に判断をされて実施されるということになろうかと思います。

本村(伸)委員 要するに、日本の防衛とは関係ないときでも、小牧基地の空中給油機が、今にも攻撃に出ようとしているアメリカ軍などの戦闘機に対して給油ができるようになるということだと思います。

 中谷大臣にお伺いをしますけれども、戦闘機と給油の関係でいえば、給油しなければ、燃料がなければ戦闘機は飛ぶこともできないし、爆撃もできないというふうに思うわけですけれども、なぜこれが武力行使と一体ではないのか、なぜこれが憲法違反じゃないとお考えになるのか、お示しください。

中谷国務大臣 法律によりまして、武力行使と一体化とならないように、現に戦闘が行われている現場でない場所で実施をするとか、また大森四原則ということで、せんだって共産党の先生からも御質問をいただきましたけれども、そういった原則等も踏まえまして判断をした結果、武力行使に当たるものではないという判断をいたしたわけでございます。

本村(伸)委員 先ほど大臣も言われましたように、六月二十六日のこの特別委員会で、日本共産党の塩川鉄也衆議院議員の質問に対して、中谷大臣、安倍首相そして防衛政策局長が答弁をされておりますけれども、その資料をきょうは一ということで出させていただいております。

 この答弁についてそれぞれ見ていきたいと思いますけれども、二つ目の答弁としては、支援活動の具体的な内容は補給や整備で、戦闘行為とは異質の活動だから武力行使と一体ではないんだという答弁です。そして、四つ目の答弁は、現に戦闘行為を行っているものではないということを考慮すると、一体化をするものではないという答弁です。

 戦闘行為とは異質の活動、現に戦闘行為を行っているわけじゃないと言いますけれども、給油をせずに爆撃に行けるとお考えでしょうか。

黒江政府参考人 事実関係の問題として申し上げれば、先ほど先生がまさに御指摘になられたように、戦闘機が飛ぶあるいは爆撃機が飛ぶということのためには、そのための燃料が必要であるということでございます。

本村(伸)委員 大臣も同じ考えでしょうか。

中谷国務大臣 航空機が飛行するということは、燃料が必要ということでございます。

本村(伸)委員 燃料を入れることなしに戦闘機は飛ぶことはできないし、爆撃にも行けないというのは当たり前のことだというふうに思います。これを武力行使と一体じゃないと言うから、事はおかしくなるというふうに思います。

 大臣の答弁、この四つの類型で書かれておりますけれども、さまざまなすりかえがあるというふうに思います。

 周辺事態法の議論のとき、一九九九年四月十五日、発進準備中の航空機に給油をすることを認めるかどうかの議論のときに、資料の二の議事録を見ていただきたいんですけれども、一番上の議事録でございます。大森法制局長官は次のように答弁をされております。

 戦闘作戦行動に発進準備中の航空機に対する給油及び支援につきましては、個々の作戦行動のたびに必要なもののみを給油するという態様で行われていることであろうと思います、したがいまして、個々の戦闘行為と密接な関係があるのではないかということから慎重な検討を必要とするというふうに考えたわけでございますというふうに答弁をされております。

 今にも爆撃に出ようとしているアメリカ軍の戦闘機に給油することや整備をすることについて、今回は戦闘行為とは異質だから武力行使と一体ではない、現に戦闘行為を行っているものではないから武力行使と一体ではないということで合理化しようとしておりますけれども、もともと給油や整備が戦闘行為そのものではないということを前提の上で、憲法上問われてきたのは、その給油や整備が個々の戦闘行為と密接な関係にあるかどうかということが問われてきたのではないですか、大臣。

黒江政府参考人 先ほど大臣からもお答えいたしましたけれども、まさに当時の大森法制局長官が挙げました四要件、あるいは四つの考慮要素といいますか、そういったところをまさに考慮いたしまして検討した結果としまして、先生がおっしゃいますような、もともと人の殺傷でありますとか物の破壊といったものではない行為がそういった行為と一体化するかどうかといったことを評価し判断するということをこれまで申し上げてきておる。先ほど来先生がお引きになりました前回の大臣の答弁でありますとか私の答弁は、その間の経緯につきまして御説明をしたということでございます。

本村(伸)委員 憲法上問われてきたことに真面目に検討もしないで、物の破壊や人員の殺傷は戦闘そのものの議論で、武力行使と一体化という議論ではないと。議論のすりかえはやめていただきたいというふうに思います。

 きょうは外務大臣にも来ていただいておりますので、外務大臣にもお伺いをいたしますけれども、例えば、日本を攻撃しようとしているA国の戦闘機にB国の軍隊が給油をして、A国の戦闘機が日本を爆撃した場合、A国とB国は一体だというふうにお考えになりますでしょうか。

岸田国務大臣 一体化の議論につきましては、先ほど来の答弁の中にもありましたように、従来から、地理的関係、そして具体的な内容、あるいは密接性、さらには活動の現況、こういったものを総合的に勘案して一体性について考える、こういった基本的な考え方に基づいて説明をしてきました。

 ですから、今、給油について御質問をいただいております。給油について、今申し上げました地理的関係で言うのであるならば、実際に戦闘行為が行われる場所とは一線を画する場所で行うということ。そして、具体的な内容ということで申し上げるならば、支援活動の具体的内容としては補給や整備であり、戦闘行為とは異質の活動であるということ。そして、密接性ということで申し上げるならば、他国の武力行使の任に当たる者との関係の密接性について、他国の軍隊の指揮命令を受けるものではない、自国の法令に従いみずから判断する活動であるということ。さらには、活動の現況ということにつきまして、協力しようとする相手の活動の状況について、あくまでも発進に向けた準備中であり、現に戦闘行為を行っているものではないこと。こういったものを総合的に勘案して、一体化するものではない、こういった説明をさせていただいております。

 こうした説明の整理のもとに一体化ということは考え、そして一体化していない、こういった説明をすることになると考えております。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 それでは、岸田外務大臣、答弁願います。

岸田国務大臣 まず御質問は、一体化について御質問をいただきました。

 この一体化の議論というのは、憲法の要請との議論であり、そして我が国特有の概念でありまして、これは国際法上の概念ではありません。ですから、我が国において一体化の議論をどう当てはめるかということであり、国際的に、A国、B国と挙げて、国際的なものについて一体化の議論を適用するということはあり得ないと思っています。

 一体化の議論は、あくまでも憲法上の要請であって、我が国特有の議論であるということを申し上げているわけであります。ですから、これを国際的な社会一般に、A国、B国といって当てはめる、これは困難であるというお話をさせていただいております。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 岸田外務大臣、答弁願います。

岸田国務大臣 武力の行使との一体化の議論、これは我が国の憲法の要請に基づいて議論を行うものであり、我が国固有の議論であります。ですから、これは国際法上の概念ではありません。よって、A国、B国、国際社会に日本国憲法の概念を当てはめるということは、これは困難であるということを申し上げております。一体化の議論をこうしたA国、B国、国際社会に当てはめるということは困難であるということは御理解いただきたいと思います。(発言する者あり)

浜田委員長 もう一回質問してください。

本村(伸)委員 もう一度質問をさせていただきます。

 例えば、日本を攻撃しようとしているA国の戦闘機にB国の軍隊が給油をして、A国の戦闘機が日本を爆撃した場合、岸田大臣は、A国とB国は一体だというふうにお考えになるかということをお伺いしたんです。

岸田国務大臣 これは、結論は先ほどから申し上げているとおりであります。

 武力の行使との一体化の議論、これは、我が国の憲法との関係において、我が国特有の議論であります。ですから、A国、B国、国際社会に当てはめるということは、そもそもこの概念は……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

岸田国務大臣 国際法上の概念ではありませんから、A国、B国に日本国憲法の考えのもとに一体化しているかどうかということを当てはめても意味がありませんし、これは困難なことだということを御説明させていただいております。一体化の議論は我が国固有の議論であるということ、これをぜひ御理解いただきたいと思っています。

本村(伸)委員 憲法を何か大事にしているかのような御答弁がありましたけれども、先ほどの、憲法上問われてきたその給油や整備が個々の戦闘行為と密接な関係にあるかということについては、真面目な議論をしていないじゃないですか。

 もう一つお伺いをいたします。

 武力行使と一体ではないという言いわけとして、中谷防衛大臣は、三つ目の答弁で、自衛隊は他国の軍隊の指揮命令を受けるものではなくて、我が国の法令に従ってみずからの判断で活動するものであるというふうに言っております。

 資料の二、議事録を載せておりますけれども、この九九年の議論で佐藤防衛局長は、発進準備中の戦闘機に対する給油、整備について、実際のオペレーションは非常に専門的、いろいろ秘密も要します、整備員がクルーと一体になって運用するのが軍事上の常識と答弁をしております。

 アメリカ軍の発進準備命令のもとで、アメリカ軍と一体となって給油、整備をやるということではないですか。アメリカ軍の戦闘機に空中で給油するときにアメリカ軍の指揮命令を受けずに、どうやってみずからの判断で空中給油するんですか。

中谷国務大臣 委員が御指摘をされました周辺事態法制定時の国会の審議におきまして、政府から、作戦戦闘行動のため発進準備中の航空機に対する整備について、非常に専門的であり、秘密も要するため、整備員がクルーと一体となって運用するのが軍事上の常識である旨答弁したというのは、御指摘のとおりでございます。

 これは、周辺事態法制定時、かれこれ十五年以上前でございますが、実運用上の観点から、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備を行うためには、米軍の運用についての専門的な知識また高い相互運用能力が必要でありまして、日米それぞれにおいて行うことがいわば常識であるように理解をされていたということを述べていたものでございます。

 一方、その後、在日米軍の航空機が自衛隊施設において共同訓練を行う訓練移転が進められており、また空中給油、また輸送機、複数のヘリコプターの同時発着艦能力を有する大型の護衛艦の導入、整備が進められました。また、共同訓練等を通じて、状況に応じた実効的な相互運用能力、これはインターオペラビリティーと申しますけれども、それが向上してきた。

 実際のオペレーションとしても、海上自衛隊は、東日本大震災への対処において、米軍等のヘリコプターを護衛艦に離発着させて、柔軟かつ効果的に救援活動を実施したというようなことがありまして、現実において、実運用上も、他国軍隊に組み込まれる形ではなくて、我が国が主体的に判断して実施することが可能と認識をいたしております。米側の作戦行動のための発進準備中の航空機に対する給油、整備も含めて幅広い後方支援が期待をされており、ニーズは確認をいたしておりますが、あくまでも運用は主体的に行っていくということでございます。

本村(伸)委員 それは机上の空論だというふうに思います。

 空中給油機が軍事作戦でどのような役割を果たすかという問題についてもお伺いをしたいというふうに思います。

 大臣も御存じのとおり、戦闘機が飛び立つ離陸の際に、一定の重量で抑えておかなければならないという最大離陸重量というものがございます。戦闘機がより多くの弾薬や兵器を載せて出撃するために、その分の油を少なくして離陸をする、離陸をしてから、一定浮上したところで空中給油機から戦闘機に給油をするということになると思います。より多くの爆弾やより多くの兵器を載せて出撃するために、空中給油機が軍事作戦上有効となるわけです。空中給油機は、まさにこの攻撃能力や戦闘能力を強化するためのものであるのは明らかではないでしょうか。

 アメリカ軍が作戦をつくり、そして出撃命令のもとで個々の戦闘機に対して出撃をするための空中給油を行い、しかも攻撃能力を強化する、これが武力行使と一体ではないとなぜ言えるのですか、なぜ憲法違反じゃないと言えるんでしょうか。

黒江政府参考人 ただいま先生御指摘になられました空中給油機の運用といたしましては、そういった例というのも一例としてあるかと思いますけれども、そのほかにも空中給油機が戦闘機等に対して給油をするという場合はたくさんございます。

 例えば、単に航続距離を延ばすという必要もございます。また、我々自衛隊で行いますけれども、空中警戒監視といいますか、そういったことをやるために、待機時間を長くするために空中給油を使うということもございます。

 そういった中で空中給油機というのは柔軟な形で運用されるわけでございまして、先生御指摘のような点だけを捉えて、大変に危険な行動だということではないということでございます。

 また、加えまして、先ほど来御説明申し上げておりますように、憲法上禁じられております武力の行使と一体化するかどうかということを判断するために四つの要素を考慮したということを申し上げておるわけでございまして、それらの総合的な判断の結果といたしまして、政府としては、武力行使との一体化という危険はないという判断をしたということを重々御説明をしておるということでございます。

本村(伸)委員 一体化する給油も法律上できるということになっているわけでございます。

 憲法違反のこの戦争法案は廃案にすべきということを申し述べ、質問を終わらせていただきます。

浜田委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後五時十三分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.