衆議院

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第17号 平成27年7月3日(金曜日)

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平成二十七年七月三日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 今津  寛君 理事 岩屋  毅君

   理事 江渡 聡徳君 理事 松本  純君

   理事 御法川信英君 理事 長妻  昭君

   理事 下地 幹郎君 理事 遠山 清彦君

      赤枝 恒雄君    秋本 真利君

      池田 道孝君    小田原 潔君

      小野寺五典君    大西 宏幸君

      大野敬太郎君    勝沼 栄明君

      金子万寿夫君    木原 誠二君

      木村 弥生君    小島 敏文君

      國場幸之助君    笹川 博義君

      白石  徹君    助田 重義君

      田野瀬太道君    中谷 真一君

      橋本 英教君    原田 義昭君

      平沢 勝栄君    古川  康君

      星野 剛士君    堀井  学君

      宮川 典子君    宮崎 謙介君

      宮崎 政久君    宮澤 博行君

      武藤 貴也君    盛山 正仁君

      山口  壯君    山田 賢司君

      若宮 健嗣君    枝野 幸男君

      緒方林太郎君    大串 博志君

      後藤 祐一君    辻元 清美君

      寺田  学君    長島 昭久君

      本村賢太郎君    青柳陽一郎君

      太田 和美君    柿沢 未途君

      篠原  豪君    丸山 穂高君

      吉田 豊史君    伊佐 進一君

      岡本 三成君    佐藤 茂樹君

      中川 康洋君    浜地 雅一君

      吉田 宣弘君    赤嶺 政賢君

      宮本  徹君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   外務大臣         岸田 文雄君

   防衛大臣

   国務大臣

   (安全保障法制担当)   中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   内閣官房副長官      加藤 勝信君

   防衛大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    石川 博崇君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  前田  哲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  藤山 雄治君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  槌道 明宏君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            平松 賢司君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    冨田 浩司君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   秋葉 剛男君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  黒江 哲郎君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  深山 延暁君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  中島 明彦君

   衆議院調査局我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別調査室長     齋藤久爾之君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月三日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     堀井  学君

  笹川 博義君     宮崎 謙介君

  白石  徹君     小島 敏文君

  武井 俊輔君     金子万寿夫君

  橋本 英教君     田野瀬太道君

  宮川 典子君     赤枝 恒雄君

  山田 賢司君     池田 道孝君

  緒方林太郎君     本村賢太郎君

  大串 博志君     枝野 幸男君

  青柳陽一郎君     柿沢 未途君

  太田 和美君     篠原  豪君

  伊佐 進一君     岡本 三成君

  佐藤 茂樹君     中川 康洋君

  浜地 雅一君     吉田 宣弘君

  志位 和夫君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     宮川 典子君

  池田 道孝君     木村 弥生君

  金子万寿夫君     古川  康君

  小島 敏文君     白石  徹君

  田野瀬太道君     橋本 英教君

  堀井  学君     勝沼 栄明君

  宮崎 謙介君     助田 重義君

  枝野 幸男君     大串 博志君

  本村賢太郎君     緒方林太郎君

  柿沢 未途君     青柳陽一郎君

  篠原  豪君     吉田 豊史君

  岡本 三成君     伊佐 進一君

  中川 康洋君     佐藤 茂樹君

  吉田 宣弘君     浜地 雅一君

  宮本  徹君     志位 和夫君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 弥生君     山田 賢司君

  助田 重義君     笹川 博義君

  古川  康君     秋本 真利君

  吉田 豊史君     太田 和美君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     國場幸之助君

同日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     武井 俊輔君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 公聴会開会承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七二号)

 国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案(内閣提出第七三号)


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     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官前田哲君、内閣官房内閣審議官藤山雄治君、内閣官房内閣審議官槌道明宏君、外務省総合外交政策局長平松賢司君、外務省北米局長冨田浩司君、防衛省防衛政策局長黒江哲郎君、防衛省運用企画局長深山延暁君、防衛省地方協力局長中島明彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原誠二君。

木原(誠)委員 おはようございます。自由民主党、東京都の木原誠二です。

 きょうは、テレビ入り、国民の皆様に直接ごらんいただける機会でありますので、基本的な論点を中心にお伺いをしてまいりたいというふうに思います。

 その前に、一つ、総理に直接お伺いしたいことがございます。それは、北朝鮮についてでございます。

 あす七月四日で、北朝鮮が拉致問題に関する調査を開始してから一年、節目の日を迎えることになります。政府は、対話と圧力、そして行動対行動、そういう原則のもとに、これまで鋭意努力をいただいているというように思います。ただ、率直に申し上げて、交渉はやや停滞をしているかなという感もございます。

 北朝鮮との交渉について、現状どうなっているか、そして、今後どのように取り組んでいかれるのか、総理にまずお伺いをいたします。

安倍内閣総理大臣 北朝鮮が特別調査委員会を立ち上げ、拉致被害者の調査を開始して以来、あすでちょうど一年を迎えることになります。我が国は、昨年五月のストックホルム合意を誠実に履行してきています。調査について、日朝間に合意された具体的な期間があるわけではございませんが、調査開始から一年が経過する今もなお、拉致被害者の帰国が実現していないことはまことに遺憾であります。

 本件については、北京の大使館ルートで働きかけを行ってきたところでありますが、今般、先方より、全ての日本人に関する包括的調査を誠実に行ってきているが、いましばらく時間がかかる旨の連絡がありました。

 政府としては、遺憾ではありますが、北朝鮮からの具体的な動きを早急に引き出すべく働きかけを強化することとし、外務大臣と拉致問題担当大臣、山谷大臣にこの旨を指示いたしました。その結果も見きわめつつ、日本政府としての今後の対応を判断していく考えであります。

 政府としては、引き続き、対話と圧力、そして行動対行動の原則を貫き、全ての拉致被害者の帰国を実現すべく、全力を尽くしていく考えでございます。

木原(誠)委員 ありがとうございました。直接この法案と関係あるわけではありませんが、しかし、明々白々に、私どもの同志が、同胞が、自由そして幸福追求の権利を侵害され、そして今もされている事案でありますので、ぜひ総理には引き続きリーダーシップを発揮していただければというふうに思います。

 さて、法案についてでありますが、まず、最初の資料一をごらんいただければというふうに思います。これは、憲法学の大家、巨星と言ってもいいかというふうに思います、芦部信喜先生が書かれた教科書であります。私自身も、一九九三年に法学部を卒業するまで、この憲法のバイブルをずっと読んでおりました。恐らく、当時、多くの学生が、そして今なお、法学を学ぶ学生が読む基本中の基本の書であろうというふうに思います。

 これは戦力の不保持についての文章でありますけれども、この真ん中の線を引いてあるところをごらんいただきますと、「憲法で保持を禁止されている「戦力」とは何かについて、学説は一般に厳格に解釈しているが、政府はそれをゆるやかに解する立場をとる。」。そして、その後、「通説は、」と言って通説のことを説明した上で、一番最後をごらんいただければと思いますが、「現在の自衛隊は、」「九条二項の「戦力」に該当すると言わざるをえないであろう。」こういうことであります。つまり、自衛隊は違憲であるということをこの時点でお述べになっておられるわけであります。

 一九九三年といいますと、自衛隊が発足してもう既に四十年、前年にはPKO法が成立をしている。そして、その翌年には、日本社会党が自衛隊を合憲だ、そういう時代状況であります。そして、その後さらに二十年たって、今なおこういうことでございます。

 私は、憲法学者の責任はまさにここにある、憲法学者の皆さんの矜持はここにある、それでいいんだろうというふうに思います。それが憲法学者の皆さんの仕事であるし、責任であろうというふうに思います。そういう意味でいいますと、先日の憲法審査会で、大変高名な三人の憲法学者の皆さんが違憲だとおっしゃったことは、これは想定の範囲内というか当然のことだろうというふうに思います。

 しかし、我々政治を預かる者は、そして政治に向き合う者は、そういう中にあっても、国民の生命財産をどうやって守っていくのか、そのことに真剣に向き合っていかなければいけない。だからこそ、最高裁も、砂川判決、いろいろなところで引用されますが、砂川判決の中で統治行為論というものを持ち出している、そういうことであろうというふうに思います。

 二枚目の資料をまたごらんいただければと思います。

 では、そういう今の政治家、そして政治の状況はどうかというと、幾つかきょうも御紹介をしたいと思いますが、民主党の岡田克也代表が、例えば、これは十年前ですが、読売新聞での座談会の中で、資料を見ていただければ六行目になりますけれども、こうおっしゃっております。「今の憲法は、すべての集団的自衛権の行使を認めていないとは言い切っておらず、」こういうことをおっしゃっております。

 また、直近におきましても、これは二〇一四年のダイヤモンド・オンラインの中でのインタビューでありますけれども、下から三行目になりますが、こういうこともおっしゃっております。「共産党や社民党のように全く認めないのかというと、本当に必要性があるのであれば、それは憲法の大枠と矛盾しない範囲で、認めることもあるべきだ」と。

 ただ、岡田先生は、大変御見識を持っておられまして、極めて限定的だ、例外的なんだということもしっかりおっしゃっていただいております。

 また、維新の党は、マニフェストの中で、「自国への攻撃か他国への攻撃かを問わず、」「現行憲法下で可能な「自衛権」行使のあり方を具体化し、必要な法整備をする。」こうおっしゃっているわけであります。

 総理にお伺いしたいのは、私は今、ほぼ、多くの政党の中で、安全保障環境の厳しさが共有をされ、そして何らかの形でこの自衛権の概念について整理をしなければいけないということの共通の認識はあるんだろうというふうに思います。

 そこで、総理には、政治家として、この憲法の問題にどう向き合っていくかということと、そして、こういう状況の中で、国会審議に何を、どういう期待をされるか、そういうことについてお伺いをしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 御指摘のように、政治家に期待される役割あるいは責任は、憲法学者の役割とは別であろう、このように思います。

 我が国を取り巻く国際情勢は、日々変わっていく、年々大きく変わっていくわけでありまして、そうした情勢をしっかりと分析しながら、それに備えていく、国民の命や領土、領海、領空、幸せな暮らしを守っていくという責任が常に政治家には課されているわけであります。

 砂川判決の言う必要な自衛の措置とは何か、どこまでが認められているのか、どこまでを認めなければ国民の命を守り抜くことはできないのではないかということを考え抜かなければいけないわけでありまして、現実に必要な安全保障政策を講じていく、これこそが政治家に課せられた大きな使命であろうと思います。

 もちろん、繰り返しになりますが、これは砂川判決で示された法理を超えてはならないわけでありますし、その中で構築した、私たちは、四十七年の政府見解の基本的な原理は生かしつつ、まさに必要な自衛のための措置とは何かを考え抜いた結果、この大きく変わった国際環境の中において、我々は今回の安保法制を法制として整備していく必要がある、こう考えたわけでございます。

 今回も、もちろん、PKO法案のときもそうでした、あるいは自衛隊を設立した当初もそうでございましたが、憲法学界、憲法学者の方々から厳しい御意見もいただいております。そうした御意見も真摯に受けとめながら、しかし、私たちは黙々と、国民の命を守るための責務を果たしていきたい。しかし同時に、国民の皆様のさらに幅広い御支持をいただくためにも、誠実に、丁寧に議論を進めていきたいと考えております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 それでは、幾つか論点に入っていきたいというふうに思いますが、今回の法案は、日本そして国際社会の平和と安全を守るための法案だ、そういうことで提案をされているわけでありますが、残念ながら、戦争法案だ、そういうような御批判もあるわけであります。

 私は、その原因の一つが、次の資料に行っていただきたいと思いますが、限定的ということの意味が必ずしも正確に伝わっていないのではないかな、こんな思いを持っております。

 資料の三をごらんいただければというふうに思いますが、私は、限定的ということの意味は二つあるんだろうというふうに思います。一つは、適用場面、つまり、どういう場面で自衛権が行使されるか。このことは後ほど御質問させていただきたいと思います。もう一つ、そういう適用になった場合に、どういう適用手段をとっていくかという意味での限定的ということがあろうか、このように思っております。

 そもそも自衛隊は、憲法九条、この精神から、まさに純粋防衛のための武力行使活動しかできないということになっております。つまり、もう少し平たく言えば、敵地に行って、そして相手をせん滅する、あるいは占領する、いわゆる侵略的な活動あるいは攻撃的な目的というものはとり得ない、こういうことであります。

 まず最初に中谷大臣に確認をしたいと思いますが、今回、いわゆる限定的な集団的自衛権というものを認めたとしても、自衛隊のいわゆる限定的な役割ということはあくまで防衛的な役割に終始する、そのことは変わりないと端的に一言でお答えいただければと思います。

中谷国務大臣 そのとおりでございます。我が国を防衛するということが第一義的な自衛隊の目的でございます。

木原(誠)委員 その意味で、総理は、また政府は、たびたび、限定的な集団的自衛権を認めたとしても、かつての湾岸戦争やあるいはイラク戦争のような戦争に参加することはないんだ、こういうことを繰り返しお述べいただいておりますが、これは政策的判断ではなくて、まさに憲法九条、そして自衛隊の持つ限定的な役割、そこからくる論理的結論である、そういう理解でよいか、総理に改めて確認をしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 御指摘のとおり、武力行使を目的として、かつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加することは、これは政策判断ではなく、憲法上許されないと解しております。

 従来から、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって憲法上許されないと解してきているわけであります。

 このような従来からの考え方は、新しい、この新三要件のもと、集団的自衛権を行使する場合であっても全く変わりはありません。これは新三要件から論理的、必然的に導かれるものでありまして、自衛隊が武力行使を目的として、かつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘、すなわち、一般の方々が思い浮かべるような、敵を撃破するための大規模な空爆や砲撃を加えたり、敵地に攻め入るような行為に参加することは、自衛のための必要最小限度を超える、よって、憲法上許されない、我々は明確にそう判断をしております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。

 まさに今の総理の答弁のとおりだと思います。私たちは、憲法の最も重要な精神である、侵略行為はしないんだ、これがまさに、私たちがさきの戦争で三百万人以上の同胞を失った、そこからの反省でもあり、また教訓でもあるんだと思います。そのことは今回全く変わっていないということであろうというふうに思います。

 そこで、限定的のもう一つの意味、適用の問題について少し伺っていきたいというふうに思います。つまり、どういう場面に限定的な集団的自衛権は必要とされ、また適用されるのかということであります。

 与党協議においては、八つの事例、つまり、邦人を輸送中の米艦の防護であるとか、アメリカに向けられている弾道ミサイルに対する対応であるとかいった八つの事例が紹介をされて、検討をされております。

 きょうは、その中で、この委員会でも累次にわたって議論がなされております米艦防護の事例を取り上げたいというふうに思います。資料の四でございます。

 非常に簡単に申し上げますと、日本周辺で有事が発生をし、公海上でそれに対応して、日本を防衛する米国艦船が攻撃を受けた、そのまま放置すれば次は日本にも攻撃が及んでくる蓋然性が極めて高い、すなわち、日本に直接武力攻撃が行われたと同じような深刻で重大な危害が発生することが明白である、こういう事態でございます。

 こういう事態に、我が国は、米艦、この米国艦船を助ける行動ができるのかどうか、現状で。このことについて、防衛大臣、まず一言お願いをいたします。

中谷国務大臣 現状におきましては、個別的自衛権のみ我が国の憲法で容認されているわけでございまして、我が国に対する武力攻撃が発生しない限り、米艦、他国の艦艇等を防衛するということはできないということでございます。

木原(誠)委員 ありがとうございます。

 今おっしゃったこと、つまり、我が国にまだ攻撃が発生をしない段階では対応はできない、こういうことであります。

 ところで、この委員会では、そういう政府の立場に対して二つの異なる立場が披露されています。

 一つは、そもそもこうした事例、八事例というのは非現実的で、なかなか想定できない事態なんだ、そういう立場であります。

 ただ、私たちはやはり、三・一一、福島の原発のこともそうであります、想定外ということは許されないし、とりわけ安全保障においては想定外ということは許されないということだと思いますので、政府・与党としてはこの立場はとれない、こういうことであろうと思います。

 もう一つが、これは民主党の委員の先生方がたびたび御議論をいただいていることでありますが、この事例も個別的自衛権で対応できるのではないかという考え方であります。つまり、個別的自衛権も、着手という概念があります。その着手という概念を少し、拡大すると言うとちょっとお叱りを受けるかもしれません、整理をする、こういうことで対応できるのではないかと。

 現実には、ここの事例は非常にグレーで、境界が曖昧なところであることは確かであろうというふうに思いますが、他方で、まだ我が国に攻撃が発生をしていないということは明々白々でもあろうと思います。

 そういう中で、私は、恐らく、与党協議の中でも、あるいは政府の中でも、さあ、集団的自衛権を限定的に認めるのか、あるいは個別的自衛権を少し拡大するのか、御議論はあったというふうに思いますが、政府として、集団的自衛権を限定的に容認する、そういう結論を導いたその理由を外務大臣に御説明いただければというふうに思います。

岸田国務大臣 まず、国際法上、個別的自衛権と集団的自衛権、これは、自国に対する武力攻撃に対処するものであるかどうか、この点におきまして明確に区別をされています。こうした考え方は国際法上確立をされています。

 そして、国連憲章五十一条に明記されております集団的自衛権を援用して対処する場合に、個別的自衛権の概念を我が国が独自に解釈して対処するということになりますと、我が国に対する武力攻撃が発生していない段階で武力行使を行うということにもなりかねません。要は、国際法違反になりかねない、こうしたことであります。

 さらに、我が国がこのような形で、結果として我が国に対する武力攻撃が発生していない段階での個別的自衛権の行使を認めるとしたならば、これは他国に対しても同様の主張を行うことを認めざるを得ない、こういったことにもなります。

 そもそも、国連憲章が五十一条において、武力攻撃が発生した場合に限り個別的、集団的自衛権の行使を認めた理由の一つは、各国が曖昧な基準によりこれを行使する可能性を排除する、こうした趣旨であったと理解をしています。

 そして、昨年五月、安保法制懇の報告書が提出されました。この報告書の中においても、「各国が独自に個別的自衛権の「拡張」を主張すれば、国際法に基づかない各国独自の「正義」が横行することとなり、これは実質的にも危険な考えである。」こうした指摘もされているところであります。

 このように、国際法上確立されている集団的自衛権を援用できる状況にもかかわらず、論争のある武力攻撃発生前の先制的な自衛権を援用する意義はないと考えます。我が国は、進んでこのような国連憲章の趣旨に反する、あるいは個別的、集団的自衛権の濫用のおそれを惹起することはすべきではないと考えます。

 こういった考えから、今般、個別的自衛権の解釈の拡張ではなくして、限定的な集団的自衛権の行使を容認する、こうした考え方をとった次第であります。

木原(誠)委員 極めて明確に御答弁いただきまして、ありがとうございます。

 私の言葉で言えば、これを認めると、世界は弱肉強食の世界に入っていく、つまり、各国がそれぞれ個別的自衛権を拡大するという道をとっていくと、それは強い者が勝つに決まっている、そういう時代に入っていくということであろうと思います。

 この委員会の中でも、個別的自衛権はよくて集団的自衛権は悪い、個別的自衛権だと拡大しなくて集団的自衛権だと拡大する、こういった議論が見受けられますが、実は、個別的自衛権でも、自分の観光客が他国にいて、その観光客にテロ行為があった、それでも個別自衛権を発動するという国もあります。大使館を攻撃されて、占領されて、やはり個別的自衛権だという国もあります。いろいろなケースがあるというふうに思います。

 ただ、これで、まさに大臣がおっしゃっていただいたのは、そういう個別的自衛権の拡大解釈が横行しないように、まさに集団的自衛権という概念を入れていただいて、まさに安保面での国際協調主義というのをとっていただいたんだろう、私はこう思っております。

 そういう意味でいいますと、私たちは憲法の前文に国際協調主義というものを掲げているわけでありまして、私は、この日本国憲法がおよそ集団的自衛権とは相入れないものなのだということはないんだろう、こう思っております。

 資料の二をもう一回出していただければと思いますが、先ほど資料の二で岡田代表の言葉を引かせていただいたのは、あの中に「今の憲法は、すべての集団的自衛権の行使を認めていないとは言い切っておらず、」というのはまさにそういうことであって、私は、そのことは共有された考えではないかな、こんなふうに思っております。

 そして、大臣にはもう一つ大切なことを言っていただきました。つまり、日本が個別的自衛権の拡大を自由に解釈すると、それは他国に口実を与えるんだと。

 今世界で起こっていることは、中国ですね。中国は、排他的経済水域、本来ならば、国際法上の概念であれば、これは純粋経済的な水域でありますが、中国は今これを安全保障にも適用しようということをしています。中国は、防空識別圏、防空識別圏について私たちの尖閣の上にもこれを設定し、さらに何をしているか。民間の航空機にもフライトの計画を当初出させようとした。つまり、国際法の秩序に真っ向から挑戦をする国もあるわけですね。私は、そういう国にやはり口実を与えるきっかけにもなりかねないというふうに思います。

 そういう意味で、ここは明々白々ですから、まだ私たちに武力攻撃が発生していない段階で個別的自衛権を行使するということはできないんだ、そしてそれは、私たちはやはり国際法にのっとって限定的な集団的自衛権を認めていくのだ、ぜひそのことを明確にしておきたい、このように思っております。

 そこで、今、中国のことを少し申し上げました。今この議論をしている背景は最大、何か。さまざまな安保情勢の変化というものをこの委員会の中でも議論をしてまいりました。北朝鮮のミサイルの問題、あるいは国境を越えて動くテロの問題、あるいは大陸弾道ミサイルの問題、さまざまなことを議論してきましたが、私は、やはり今最大の懸念は中国であろうと思います。政府はなかなかおっしゃれないと思いますので、私の方から申し上げます。

 この資料を見ていただくとおり、当初の冷戦期と違うのは、今まさに私たちがいるアジアがホットスポットになっていて、そして、東シナ海、南シナ海でまさに中国が活動を活発化させている。そして、もう一つ大きな点は、先ほど申し上げたように、中国は国際法の秩序、考え方そのものにチャレンジをしてきている、こういうことであります。そういう状況の中で、私たちはこの平和安全法制をしっかり考えていかなければいけない、こういうことであろうと思います。

 ただ、このことを今論じる時間はありませんので、国民の皆さんがそういう状況の中で一番心配していることは、今回の法案が、中国との間で日本が力対力の対決に踏み込んでいくのではないか、そういう漠然とした不安を国民の皆さんは持っているんだというふうに思います。

 私は、そうではないんだというふうに思います。この平和安全法制というものはあくまでも備えであって、備えというのは動員しないのが一番ベストである、高村副総裁の言葉をかりれば、伝家の宝刀は抜かない宝刀が一番いいんだ、こういうことであります。抜かないようにするためにはどうするのか。私は、やはり外交だと思います、外交努力だというふうに思います。

 総理は、最も外交に力を入れてきた政権であろうと思います。最後に、この法案が発動されることがないように、今後どういうふうに総理として外交努力をされていくか、そのことをお伺いして、質問を終わりにしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 もちろん、この法案が特定の国を想定しているものではございませんが、日本をめぐる安全保障環境は厳しさを増しているのは事実でございまして、中国においても、この二十何年間の間、軍事費を四十一倍にしてきているという現実がございますし、この十年間でスクランブルの回数は、これは中国を対象とするものだけではもちろんありませんが、七倍にふえているのも事実でございます。

 そういう中におきまして、まずは外交努力によって紛争を抑止していく、未然に防いでいく。今回の法制もその一環ではございますが、特に、私も、また日本として主張していることは、いかなる紛争も、武力や威嚇ではなく国際法に基づいて平和的に解決すべきものである。この原則については、昨年のシャングリラ会合で三原則として提唱し、多くの国々から強い支持をいただいたところでございまして、今や各国も、この考え方を掲げながら、こういう地域にしていこうということでお互いに協力をし合っているわけでございます。

 今後とも、平和を維持し、そして繁栄を各国とともに享受できるような、そういう努力を積み重ねていきたい、このように考えております。

木原(誠)委員 ありがとうございました。終わります。

浜田委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 きょうは、安倍総理を中心に、新三要件と今回の存立危機事態の典型例につきまして御議論をさせていただきたいと思います。

 私どもは、日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中で、国民の命と平和な暮らしを守るために自衛の措置がどこまで認められるのか、またその限界はどこにあるのかということを突き詰めて議論いたしました結果、昨年七月一日の閣議決定で、憲法第九条のもとで許される自衛の措置発動の新三要件というものが定められまして、公明党は、この新三要件というものを法律上も明確に規定するようにしっかりと主張しまして、今回の法整備の中で、法案の中に明記をされたと考えております。

 実は最近、当委員会の議論の中で、この新三要件というものも含めて不明確な基準ではないのか、あるいは、存立危機事態というのはどういうものなんだ、曖昧なんだ、政府に白紙委任するようなものではないのか、そういう御批判がマスコミや一部野党の中にあるわけでございます。

 もう同僚議員がこの新三要件等についてはこの委員会でも詳しく説明をしたことがありますので、きょうは簡単に、どういうことになっているのかということだけ例に挙げさせていただきますと、例えば新三要件の第一要件の中に、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合、これを存立危機事態と定義するわけでございますけれども、その判断基準は何なのかということになると、既に総理や内閣法制局長官が昨年の七月以降一貫して答弁されているんですけれども、この丸二つ目でございますが、事態の個別的な状況に即して、大きく五つの要素を挙げておられるわけであります。

 一番目に、主に攻撃国の意思、能力、二番目に、事態の発生場所、三番目に、その規模、態様、推移などの要素を総合的に考慮し、そして四番目に、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、五番目に、国民がこうむることとなる犠牲の深刻性、重大性などから客観的、合理的に判断すると答弁されております。

 これは、当委員会でもほかのテーマで、例えば武力行使の一体化、その判断要素の大森四要素という、当時の内閣法制局長官の名前をとってそういうことが言われておりますが、同じように、こういう要素を考慮して総合的に判断するんだ、そういうことが言われて、当時私も議論しておりましたけれども、それが今、十五年以上たっても、そのときに答弁された要素というものがしっかりと現実に当てはまるのかどうかということが議論されるわけでありまして、この存立危機事態についても、こういう判断要素というものをしっかりとここで示しておくということが大事だと思います。

 一番目に、その上で、そういう判断要素を考慮しながら、判断基準というのは何なのか。それは、そのままでは、そのままではというのは、その状況のもと、武力を用いた対処をしなければ、国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であるということが判断基準となって、武力の行使をしなければいけないんだということが明確に判断基準として示されているわけでありまして、私どもは、そういう、一部野党や、あるいはマスコミの皆さんが批判しているような、白紙委任であるとか、あるいは基準が不明確であるという批判は当たらない、そのように考えますけれども、総理はどのようにそういう御批判に対して考えておられるのか、御答弁をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 我が国が武力の行使を用い得るのは、今そこで御紹介をいただいている新三要件を満たす場合に限られますが、委員御指摘のとおり、これは憲法上の明確かつ厳格な歯どめになっております。今般の法整備において、過不足なく明確に書き込まれています。

 新三要件は国際的に見ても他に例のない極めて厳しい基準であるのは、もう委員御承知のとおりであります。その時々の内閣が恣意的にこれを解釈できるものではありません。

 さらに、実際の武力行使を行うために自衛隊に防衛出動を命じる際には、これまで同様、原則として事前の国会承認を求めることが法律上明記されており、政府が判断するのみならず、国会の御判断もいただき、民主主義国家として慎重の上にも慎重を期して判断されることになるわけであります。

佐藤(茂)委員 今総理が答弁されましたように、きょう、質問はもう時間の関係で飛ばしますけれども、武力攻撃事態対処法の第九条が今回改正されまして、国会の承認にこの対処基本方針というものはかけなければいけないわけでございますが、その中に、新たに、事態の経緯、どういう事態の経緯を見て、そういう例えば存立危機事態の認定に至るのかということもきちっと国会で御審議いただく、そのことによって国民の皆さんにも明確にさせる、そういうこともあるわけでありまして、私は、そういう国会のチェック機能というものをきちっと考慮した、そういう法整備になっているというように申し上げておきたいと思います。

 私は先週、またその前の党首討論を聞いておりまして、総理がみずから少し踏み込んだ説明をされて、存立危機事態の典型例というものはどういうものなのかということを、具体的なケースを示してわかりやすく説明しようとされたことというのは私は評価をしたいと思うわけでございます。

 資料の四番目でございます。六月二十六日の委員会で安倍総理が答弁されたことを踏まえまして、もう少し肉づけを私なりにさせていただいて説明させていただきたいと思います。

 そのときに総理も言われていたんですが、我が国近隣において武力紛争が差し迫っている状況で、米軍も、事態の拡大を抑制し、その収拾を図るために活動している。我が国も重要影響事態法のもとで対応措置を行っていたが、ここからがパネルに関係あるんですが、状況がさらに悪化し、ある国、例えばこれは今B国というようにしておるんですが、その国に駐留する、我が国と密接な関係にある他国、例えば米国、このB国と米国に対して、ある国、A国の武力攻撃が発生をした。さらに、その時点ではまだ、日本列島を描いていますが、我が国に対しては武力攻撃が発生したことは認定されないものの、攻撃国A国は、我が国をも射程に捉える、相当数、例えば何百発もの弾道ミサイルを保有しておりまして、東京を火の海にしてやる等の言動などから、我が国に対する武力攻撃の発生が差し迫っている状況にある。戦闘が急速に拡大しつつあり、さらに弾道ミサイル発射の兆候があるので、米国のイージス艦及び我が国の艦艇もそれぞれ警戒に当たっている。そういう状況でございます。

 イージス艦というのは、もう少し技術が発展すれば変わるらしいんですけれども、弾道ミサイル対処を行っている場合にはそちらに、探知するために相当能力が集中いたしますので、航空機であるとかあるいは対艦ミサイルから自艦、自分の艦船を防御する、そういう能力というのは相対的に低下すると言われております。

 ですから、このような状況下で、アメリカの方から我が国に対して、これは右の矢印でございますが、アメリカの艦船の防護を要請してきた。

 攻撃国A国の武力攻撃を早急にとめなければ、次は近隣に所在する米国の同盟国である我が国にも武力攻撃が行われかねない状況にある。すなわち、当該攻撃国A国の弾道ミサイル攻撃から我が国を守り、これに反撃する能力を持つ同盟国であるアメリカの艦艇への武力攻撃を早急にとめずに、我が国に対する武力攻撃の発生を待って対処するのでは、弾道ミサイルによる第一撃によって取り返しのつかない甚大な被害をこうむることになるのは明らかな危険がある。そういう、こうむる危険性がある、そういうことを総理は提示されたわけでございます。

 私は、少し、弾道ミサイルとかアメリカ政府からの要望とか、そのとき総理が言われなかったことまで含めて入れさせていただいたわけでございますが、このような場合に存立危機事態の設定があり得る、そういう答弁だというふうに私は捉えているんですけれども、総理、それでよろしいでしょうか。

安倍内閣総理大臣 基本的には、存立危機事態は、生起した個別具体的な事態に即して、新三要件を満たすか否かを総合的に判断する必要がありますが、今御指摘いただいたような事例につきましては、存立危機事態に認定され得るものと考えるわけであります。

 六月二十六日の岡田委員に対しての答弁は、基本的に、個別の事態事態についてこれはどうかということについては、これはあえてそれほど詳しく解説をするべきではない。つまり、我々が、どうなればどう対応するという、私たちの国民を守るための手のうちをさらすことになるわけでございますから、基本的にはそれを個々について一々することはいたしませんが、しかし、国民的な理解を深めていくために、あえてわかりやすい一例だけを挙げさせていただいたわけでございます。

 それは、米国の艦艇が実際にミサイル攻撃を受けることとなる段階というのは、存立危機事態と認定される確度が相当高いことから、存立危機事態をわかりやすく説明するための一例としてあえて申し上げたところでございます。

 その際にも申し上げているわけでございますが、存立危機事態となるのは、米艦、艦艇がミサイル攻撃を受ける場合に限られるものではございませんが、今委員が挙げられた、また、私の説明に少しさらに加えて説明をしていただいた、それは、最初に申し上げましたように、存立危機事態となり得る、このように考えます。

佐藤(茂)委員 それで、一週間前の岡田民主党代表とのやりとりの中で少し気になったのが、存立危機事態を認定するタイミングについてやりとりをされました。そのやりとりを受けて、武力攻撃事態の切迫事態の認定の後に存立危機事態が認定される、つまり切迫事態にならないと存立危機事態にはならないという印象を持たれた方もいるようでございます。

 しかし、両者はそれぞれ異なる観点から状況を評価するものであるので、私は必ずしもそのように限られないと理解しておりますけれども、武力攻撃事態の切迫事態と存立危機事態との関係について、安倍総理に改めて整理して答弁をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 委員の御指摘は、六月二十六日の岡田委員との質疑を踏まえたものと考えられますが、当該やりとりは、どのような状況になると存立危機事態と認定されるのかということをわかりやすく説明する中で、あえて一例として、事態の流れを順に追いつつ、切迫事態の段階ではいまだ個別的自衛権は行使できないという比較をするためにそういう例を挙げたわけでございまして、その中で御説明をいたしました。

 その上で、武力攻撃事態と存立危機事態はそれぞれ異なる要件に基づくものでありますから、存立危機事態は必ず切迫事態の後に生じるという関係にあるものではない、こういうふうに認識をしているところでございます。

佐藤(茂)委員 そこで、もう一点の論点でございますけれども、個別的自衛権の行使として米艦防護が許されるケースというのはどういうものなのかということについて、資料五、六を用意させていただきました。

 これは、同じ、当時の平成十五年から十六年の秋山内閣法制局長官の答弁でございますけれども、私は、過去のそれまでの内閣法制局の答弁も見ましたときに、大きく、事例としては二つぐらいに分かれるのではないかと思っております。

 一つは、資料五の方でございますけれども、我が国が個別的自衛権を発動して公海上にある米艦を防護することがあり得る事例として過去に内閣法制局長官が答弁しているのは、この資料五のように、我が国に対する武力攻撃が発生して、アメリカと共同対処中である場合と、資料六の答弁のように、武力攻撃はまだ発生していないんだけれども、当該米艦に対する反撃が我が国に対する武力攻撃の着手であると認められる場合も状況によってはある、こういう二つの事例のみではないかと思うんですが、法制局長官、簡潔に答弁をいただきたいと思います。

横畠政府特別補佐人 法理としてあり得る事例として申し上げているのは、御指摘のとおりでございます。

佐藤(茂)委員 それで、実は、特に資料六の方の平成十五年五月十六日の秋山内閣法制局長官の答弁の中で、我が国を防衛するために出動して公海上にある米軍の米艦に対する攻撃が、状況によっては、我が国に対する武力攻撃の端緒、着手という状況として判断されることがあり得る、こういう答弁に対しまして、先日も当委員会でさまざまに御議論がございました。

 この、「状況によっては、」の解釈については、横畠法制局長官は、「この答弁の趣旨は、具体的な状況によっては我が国に対する武力攻撃の着手と認定できる場合もあるということでございまして、もとより認定できない場合もあるということでございます。」そういうふうに答弁されました。

 中谷防衛大臣は、「御指摘の答弁も、「状況によっては、」と書いておりまして、我が国に対する武力攻撃の着手と「判断されることがあり得るのではないか」と述べており、常に我が国に対する武力攻撃になるとは断定をいたしておりません。」。

 岸田外務大臣は、「御指摘のような事例について、個別的自衛権で対応できるのは特定の状況における極めて例外的な場合であって、我が国を防衛するために必要な状況下において常に個別的自衛権で対応可能なわけではない、こういった趣旨であると思います。」と答弁されているわけでございます。

 当時の法制局長官の「状況によっては、」という答弁に基づいて、公海上にある米軍の艦艇に対する防護が個別的自衛権の行使で可能であると主張される方もおられますけれども、それぞれ三人の現大臣、長官の答弁にもありますように、公海上にある米艦艇に対する武力攻撃が常に我が国に対する武力攻撃の着手と認定できるわけではないわけでありまして、つまり、常に個別的自衛権で対応可能なわけではないわけであります。あるいは、外務大臣の表現をかりると、特定の状況における極めて例外的な場合に個別的自衛権で対応できるということでございます。

 ですから、個別的自衛権の行使で対応できるものにはおのずから限界があるということだと私は理解をしているわけでございますが、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険を排除するために、ここに示し、また先週総理が示されたような典型例のケースでは、集団的自衛権を限定容認して自衛の措置をとれるようにしておくことが必要であると私は考えますけれども、総理の見解を伺っておきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まさに今委員がおっしゃったように、個別的自衛権の行使の前提となる我が国に対する武力攻撃とは、基本的には、我が国の領土、領海、領空に対する武力攻撃をいうものであり、これは、これまで政府が一貫して述べてきた考え方であります。したがって、公海上にある米国の艦艇に対する武力攻撃が発生したからといって、それだけで我が国に対する武力攻撃の発生と認定できるわけではありません。

 これまでの政府答弁においても、公海上にある米国の艦艇に対する攻撃が状況によっては我が国に対する武力攻撃の着手と判断されることがあり得るのではないか、あるいは、当該攻撃が我が国に対する武力攻撃に該当するということは法理としては排除されない、つまり、旧三要件にそれが当てはまるかどうかという、これは純粋に法理論上の考え方を述べた、このように理解してもいいのではないか、こう思うわけでございます。

 実際上は、先ほど外務大臣が述べたように、集団的自衛権か個別的自衛権かは、これは日本の憲法との関係というよりも、国際法の概念とどう一致するかということでありまして、まさにそれは集団的自衛権の行使と捉えるということが常識的な考え方ではないか、こう思うわけでありまして、まさに純粋に論理的な考え方として、旧三要件に当たり得るという法理を述べたということでありますから、実際の場面を考えれば、米国の艦艇への攻撃を我が国への武力攻撃の着手と認定するのは難しいと考えられます。このような段階での米艦艇の防護は、一般には集団的自衛権の行使とみなされることになります。

 そこで、繰り返しになりますが、今回、米艦防護の事例については、個別的自衛権での対応に限界があるため、新三要件を満たす場合には、武力を行使して米国の艦艇を守る必要がある、つまり、国際法上も問題のない形でしっかりと日本人の命、そして国民の幸せな暮らしを守っていくべきだ、このように判断したところでございます。

佐藤(茂)委員 時間が参りました。

 引き続き、きょうのようなわかりやすく丁寧な御説明をお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、枝野幸男君。

枝野委員 民主党の枝野でございます。

 きょうは、私の前に与党からの質問がありましたので、そこで一言あるのかなと思ったんですが、残念ながらございませんでしたので、これまた本当に残念ながら、このことから聞かざるを得ません。

 先月二十五日の勉強会を初めとして、御党の、安倍総理に近いとされている議員の皆さんから、相次ぐメディアに対する圧力とも受け取られるような御発言が繰り返されております。一度党内で厳重注意を受けた東京の大西英男議員は、さらにその後も同種の発言をされております。さらには、この勉強会の中では、沖縄の皆さんの心情、あるいは沖縄の皆さんにお願いをしている負担に全く意を払わない発言がなされております。

 このことについて、安倍総理、一言もないんですか。

安倍内閣総理大臣 先般の自民党の若手勉強会における発言につきましては、党本部で行われた勉強会でございますから、最終的には私に責任があるもの、このように考えております。

 報道の自由そして言論の自由を軽視するような発言、あるいはまた、沖縄県民の皆様の思いに寄り添って負担軽減、沖縄振興に力を尽くしてきたこれまでの我が党の努力を無にするかのごとき発言が行われたものと認識をしております。

 これは大変遺憾であり、非常識な発言であり、国民の信頼を大きく損ねる発言であり、看過することはできないと考え、そのため、谷垣幹事長とも相談の上、関係者について、先週土曜日、直ちに処分することとしたところでございます。

 今後とも、自由民主党は、まさに民主主義の根幹をなす報道の自由そしてまた言論の自由をしっかりと守っていくということを貫徹していく、そういう党でならなければいけないという認識を党員全体で共有していきたい、このように思っております。

枝野委員 特に、これは自民党の議員の方の直接の発言ではないかもしれませんが、沖縄の二つの地方紙、これは沖縄に限らず、地方紙のかなりの皆さんは、それぞれの地域の事情や地域の声を踏まえた報道に努力をされていると思いますが、特に沖縄については、さまざまないろいろな歴史的な経緯や、あるいは現に抱えている事情ということを踏まえて、非常に特徴のある報道をされて頑張っておられるというふうに思っておりますが、総理は、この沖縄の二つの地方紙、琉球新報、沖縄タイムス、報道姿勢がゆがんでいると考えていらっしゃいますか。あるいは、この二つの新聞は左翼勢力に乗っ取られていると考えておられますか。

安倍内閣総理大臣 新聞の報道姿勢について総理大臣として私が意見を述べることも、これは不適切であろうと思います。

 大切なことは、私が一々いろいろな新聞の報道姿勢がどうであるかということを述べるのではなく、そうした新聞が自由な言論を行うこと、それを確保する、そういう国であるべきであると考えることが重要であり、そして、それをいわば侵すような行為から報道の自由を守るということが私たちの責任であろう。

 例えば、安倍政権を厳しく非難している報道機関であろうとも、その報道機関の言論の自由が侵されてはならない、こう考え、そういう言論を守っていくことも私たちの義務であろう、このように考えております。

枝野委員 一種の模範回答だと思いますのでそれは受けとめたいと思いますが、大事なことですので、もう一点確認をしたいと思います。

 権力が、公権力を使ってメディアに対して圧力をかけるということはあってはいけませんが、直接的なものではなく、気に入らないメディアに対して広告料などを支払わないよう、公式にはもちろんのこと、非公式に経済団体や企業経営者に働きかけるようなことは適切なことではないと考えますが、総理もよろしいですね。

安倍内閣総理大臣 もちろん、民間の報道機関は多くの広告等で成り立っているわけでありまして、そうした広告等に、いわば我々が権力を使って企業に圧力をかけて広告を出さないようにする、こういうようなことはあってはならないと思いますし、自民党はそんなことはやったことはございません。

枝野委員 ただ、今回この一連の発言、発言をされた方は、百田さんという、現在は民間人の方でありますし、自民党の若手の皆さんでありますが、ただ、安倍総理に非常に近いとされている方であるということ。

 それで、一個一個は取り上げませんが、この二年半の安倍政権の全体としての姿勢が報道機関に萎縮効果を生じさせているのではないか、これは、先日、この委員会での鳥越参考人もそういった趣旨のことをおっしゃっておられました。

 これに対する、実は一つ参考になる数字がございます。具体的なことまでは通告しておりませんので、知らなければ知らないで結構なんですが、国際NGO国境なき記者団というのが世界の報道自由度ランキングというのを出していることは御存じでしょうか。

安倍内閣総理大臣 そういうランキングが出ていることは承知をしておりますが、具体的な数字についてまで、詳細については存じ上げておりません。

枝野委員 この国際NGO、世界的にも一定の評価を受けているNGOです。そして、ここが報道自由度ランキングを世界で出しておりまして、日本の順位、〇五年から順番に申し上げます。二〇〇五年四十二位、二〇〇六年三十七位、二〇〇七年五十一位、二〇〇八年三十七位、二〇〇九年二十九位、二〇一〇年十七位、一一年十一位、一二年二十二位、一三年五十三位、一四年五十九位、一五年六十一位。この六十一位という数字は、産経新聞の支局長に対する起訴を行い出国制限を行うというとんでもないことをした韓国よりも低い順位なんですね。

 こうした評価を受けていることをどうお考えになりますか。(発言する者あり)

浜田委員長 安倍内閣総理大臣。

 静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 それは、いわば一機関が示されている。実際に国民の皆様が、今の枝野委員の御発言を聞いて、本当にそうなのかなと思った方々もむしろおられるのではないだろうか、このように思います。

 実際に、残念ながら、私の不徳のいたすところもございまして、安倍政権は大きな批判にさらされているわけでございますが、我々は常に、批判があることが、これは民主主義が機能している、正常な機能をしているあかしではないかと思いつつ、日々受けとめているところでございます。

 また、報道機関が萎縮をしている、果たして本当にそうかということについて、これはよく見ていかなければいけないのではないか。本当に萎縮をしているということであれば、それはむしろ報道機関にとって恥ずかしいことなのではないか、こう思うわけであります。これは、萎縮をする、つまり、なぜ萎縮をするかということは、いわば権力におもねろうということになるわけでありまして、そもそも、そんな気持ちではなくて、常に権力の問題点に立ち向かっていくという姿勢こそ報道する側には求められているのではないだろうか、このように思うわけでございます。

 安倍政権においては、正式な記者会見からどこかの会社を排除するなんということは我々やったことはないわけでございまして、そういう意味においては、しっかりと報道の自由については我々は大切にしているというこれはあかしではないか、このように思うところでございます。

枝野委員 私も、産経新聞の支局長の起訴は非常に大問題だということで、韓国でも申し上げてきたりしたこともありましたが、この韓国よりも低い評価というのは正直言っていかがなものかなと思います。

 思いますが、韓国よりも下だというのは一定の評価が入るかもしれませんが、しかし、国際的なNGOから、世界全ての、ほとんど全ての国について評価をしていますよ、その中でこういう評価を受けているということについて、まず真摯に受けとめることから始まるんじゃないですか。それは誤解もあるかもしれないけれども、そういう受けとめがあるということを真摯に受けとめなきゃいけない。そこから報道の自由に対する権力の立ち位置というのは始まるんじゃないか、私はそう思います。

 それと関連して、まさにこうした報道の自由度ランキングが下がっていることの一因ではないかというふうに思いますが、百田氏についてお尋ねをしたいと思います。

 百田氏は、沖縄の二地方紙は潰さなければならないなどと発言したほか、問題の集会後も、特定のメディアを名指しして潰したいなどと発言をしております。単なる失言の類いではなくて、本音の発言であると受けとめざるを得ません。また、この二紙は潰さなきゃならないという発言のほかにも、裏づけのない暴言で県民の心情を傷つけています。

 この百田氏が、報道の自由あるいはNHKの中立性というものに深く関係する経営委員を安倍内閣の選任によって務めておられました。百田氏がこうした発言をする、こうした考えをお持ちの方であるということを知っていて経営委員に選任したんでしょうか、それとも知らなかったんでしょうか。知らなかったとしたら、うかつではないでしょうか。あるいは、こういう発言をするような方でも経営委員として適切であったと今でもお考えになっているのでしょうか。

安倍内閣総理大臣 NHKの経営委員は、文化、教育、産業、科学など、さまざまな分野を代表する方を選ぶことになっています。

 当時、幅広いジャンルで執筆活動をされていた百田氏も、委員の一人として提案させていただいたところでございます。その提案を受けて、一部野党の賛成もいただきながら、国会の同意を得て選任したところでございます。

 当時提案させていただいた理由は今申し上げたとおりでございますが、政府としては再任は提案しておらず、この二月で百田氏は経営委員を退任されておられます。

 以上であります。

枝野委員 答えていただいておりません。

 特定のメディアを名指しして潰すみたいな発言をされる、こうした報道の自由などに対する感性、なおかつそれを公言されるという姿勢、こうした方であることを知っていたんですか、知らなかったんですか。

安倍内閣総理大臣 これはまさに、今申し上げましたとおり、NHKの経営委員は、文化や教育、産業や科学などさまざまな分野を代表する方を選ぶことになっているわけでございまして、その中から、いわば文化、あるいは作家の方々の中からも選んでいる。つまり、そうした中でバランスをとりながら、また、地域においてもバランスをとりながら我々は提案をさせていただいたということでございます。

 また、提案をさせていただき、国会においても同意を得て選任をした、こういうことでございます。

枝野委員 答えていませんね。

 国会の同意と言いましたが、ちなみに、我々は反対をしました。こうした問題のある、報道の自由などに対して問題のある方だということは我々も知っていたから反対をしました。議院内閣制で国会が同意しましたって、政府が提案したのを与党が反対して否決されたら大問題ですから。政府が提案をしたこと自体を問うているんです。

 そして、文化その他いろいろなジャンルからということはそのとおりですが、いろいろな分野から選ぶとしても、百田氏がこういった発想や発言をされる方だと知っていて、それでも他の部分で評価できるから構わないと思ったんですか。それとも知らなかったんですか。答えてください。

安倍内閣総理大臣 これはまさに、今、百田さんの先般の発言というのは、経営委員を退任された後、我々が提案をしていなかったこともございますが、退任された後の出来事でございまして、もちろん、それを知り得るすべというのは誰にもないわけでございます。

 その上において、私が先ほど申し上げましたように、幅広いジャンルで執筆活動をされている百田氏について、委員の一人としてお願いをしたところでございます。

枝野委員 私はちゃんと聞いております。

 つまり、先日のような発言をその任命のときに知らなかったというそれは答弁ですね。それでよろしいんですね。こういう発言をされるような方だということを知らなかった。今回、先日の、二十五日の発言などを聞いて、そういう報道の自由に対する見解を持っていたんだ、びっくりした、こういうことなんですね。

安倍内閣総理大臣 これは今申し上げたとおりでございまして、そもそも知っていたか、知っていたかというその設問自体が私もよく理解をできないのでございますが、つまり、これは任命したときの発言ではないわけでございまして、それは先般の発言であります。

 その上において……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。(発言する者あり)静かに。

 どうぞ、答弁を続けてください。

安倍内閣総理大臣 つまり、これは当時の我々がどのように選んでいたかという認識を聞かれているわけでございますので、NHK経営委員は、まさに文化や教育や産業や科学など、さまざまな分野を代表する方々を選ぶことになっているわけでありまして、幅広いジャンルで執筆活動をされていた百田氏も委員の一人として当時提案をさせていただいた、そして、一部野党の皆様の賛成もいただきながら、国会の同意を得て選任したところでございます。

枝野委員 何なら時計をとめて議事録を精査してもらってもいいんですが、私は、二十五日の発言が問題だと言っているんじゃない、二十五日の発言をするような方だということをそのときに知っていたのか知らなかったのか、それを聞いているんですから。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 枝野委員、もう一度質問を確認させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

枝野委員 先月二十五日の発言は、それは先月二十五日にあったんですから、任命の段階でわかっていないのは当たり前です。でも、この手の発言をされる、つまり、一部のメディアに対して非常に圧力的な御発言をされるような、要するに報道の中立性とか報道の自由とかに対して非常に鈍感な方であるということを、任命当時知っていて任命したのか、それとも知らなかったのか、どっちなんですか。

 ちなみに、我々は、こういう方だから適切でないと国会で反対しているんですから。

安倍内閣総理大臣 そもそも、先般の御発言が、先般の御発言をされる、この手のというおっしゃり方をしましたが、この手のというよりも、それはやはり、その発言ということで言わなければいけないんだと思うんですが、いわばそういう発言をされる方かどうかということを、我々、おととしの段階でこれは予測し得るかどうかということを聞いておられるんだと思いますが、それは、例えば、では二年半後に自民党のそうした若手の議員の会でああいう発言をされるということをそこで予測し得たかといえば、これは予測し得ないというのが当然のことではないだろうか。

 そもそも、では、報道の自由に対しての挑戦的な発言を彼がしておられたかどうかということが果たして当時問題になっていたかということでは私はないんだろうと思いますよ、それは当時は。例えば、当時、百田氏が沖縄の二紙に対して、この二紙に対しての非難を繰り返していたということについては、もちろん私は全く存じ上げておりません。また、多くの方々もそうだろうと思います。

 つまり、先般の発言を、二年半前にさかのぼってこれを予測するということは、そもそもこれは不可能なことではないかということを私は繰り返して述べているわけでございまして、当時はまさに、さまざまなジャンルの方々、あるいは作家の方々、文化関係者等々も含めまして有識者の方々、あるいはまたたくさんの地域の方々から選任しようという中において我々は御提案をさせていただき、国会において一部の野党の方々の御賛同もいただき成立をしたものである、こういうことでございます。

 繰り返しになりますが、先般のいわばああした御発言については、当時はもちろん発言もしておられないわけでありますし、さらにつけ加えて言えば、当時は、報道機関との関係においても、そういう御発言をしておられたということを私は承知していなかった、いないわけでありますし、それ自体は、恐らく選任の際の話題としては上っていなかったのではないか、このようにも思うわけでございます。

枝野委員 当時こういう方だと知らなかったのは仕方がないという答弁は、今初めて言ったんですからね。その前はおっしゃっていませんからね、念のため。

 今おっしゃったことは、一緒に著書まで出されていて、NHKの経営委員の人選としては、いい悪いは別として、非常に異例の選任のされ方というか選ばれ方であったというような状況の中で、本当にこうしたことを知り得なかったのかということは、これは、メディア、いろいろなことを言われているメディアの皆さん、特に沖縄のメディアの皆さんを中心に、任命前の彼のいろいろな言動についてはしっかりとこの後報道されていくんだろうなというふうに思います。

 さて、今回の集団的自衛権の憲法整合性についてお尋ねをしたいと思います。

 昭和四十七年の政府見解の基本的な論理の中で新三要件ができていると繰り返しおっしゃっておりますが、昭和四十七年政府見解は、「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処し、」必要最小限のことができると書いてあるんです。

 今回は、この「急迫、不正」が消えて、単なる「明白な危険がある場合」に変わっちゃったんですが、横畠さん、どこに行っちゃったんですか、「急迫、不正」は。

横畠政府特別補佐人 昭和四十七年の政府見解及び、旧自衛権発動の三要件においては我が国に対する急迫不正の侵害と言っております。

 これは、刑法の正当防衛の要件でございます「急迫不正の侵害」と同様の表現を用いてきたものでございますが、国家レベルでの武力の行使の要件を論ずるには、私人間においても生起する、一般的な急迫不正の侵害という用語よりも、国際法上確立した概念で、自衛隊法などにおいても用いられております「武力攻撃が発生」という方が適当であると考えられるため、今般、武力攻撃の発生という用語に統一したものでございまして、その実質を変えるものではございません。

枝野委員 今の答弁は、六月十五日の初鹿委員に対する答弁でおっしゃっていますが、ここのお尋ねには全く合っていませんよ。

 だって、「武力攻撃によつて」というところについては、一番最初、「外国の武力攻撃」だけではなくて、「密接な関係にある他国に対する武力攻撃」も含まれるようになりました。これは周辺事態が変わったからだと。我々は認めませんが、これはこれでおいておいたとしても、「くつがえされるという急迫、不正の事態」、これが四十七年の基本原理、基本原理に書いてあるわけですよ。これを置きかえたというんですか、「急迫、不正の事態」を「武力攻撃」に。覆されるという武力攻撃にしか対処できませんよ、今の答えだったら。違いますか。

横畠政府特別補佐人 昭和四十七年の政府見解においては、まさに、どういう事態に対処するかという観点で、憲法第九条のもとで例外的に我が国が武力の行使をすることができる、その状況、事態そのものを書いているわけでございます。

 今回の新三要件は、どのような事態において武力の行使をすることができるのかという、その要件として書いているものでございまして、その要件として同じことを書きますと、このような書き方になるということでございます。

枝野委員 横畠さん、ちゃんと聞いてください。

 済みません、パネルを用意していませんが、きょうの資料の二枚目、昭和四十七年の十月十四日の政府見解、これの一部分と二部分が基本的論理で、「そうだとすれば、」の三、これが周辺事態の変化によって変わったんだ、これは繰り返しおっしゃっているわけです。二に書いてあるんですよ、二に。「根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処し、」と書いてあるんですよ。これはどこへ行っちゃったんですか。「根底から覆される明白な危険」に広げられちゃっているじゃないですか、広げられちゃっているじゃないですか。

 根本原理ですよ、三番に書いてあるんじゃないんですよ。二にある根本原理のところで、自衛権が行使できるのは、皆さんの立場に立ったとして、個別、集団を区別しなかったとしても、「くつがえされるという急迫、不正の事態に対処」するために可能であると。根本原理と皆さんが言っている二のところにあったんです。どうなんですか。

横畠政府特別補佐人 御指摘の昭和四十七年政府見解の二にありますその「事態」がどこへ行ったのかというお尋ねでございますけれども、これはまさに、武力攻撃事態における発生事態と今般の存立危機事態になっているわけでございます。

枝野委員 これは、法律家ではない国民の皆さんもおわかりになると思います。ここにあったんですよ、ここに。根底から覆される急迫不正の事態に対してならば武力行使もあり得るというのが四十七年見解の根本原理ですよ。ところが、今回、そこの「急迫、不正」がなくなって、「明白な危険」だけでできちゃうということになっちゃったんですよ。それを、一番上の、外国の武力攻撃によってとか、そちらのところに全部置きかえちゃったんです。

 では、逆に聞きましょうか。

 横畠さんは、「急迫、不正の事態」は、武力攻撃を受けたこととイコールだと言っています。そうですね。確認しましょう、イコールだと。

横畠政府特別補佐人 まさに、武力攻撃というのは、外国の軍事力を用いた不正な侵害行為という、かつ、組織的、計画的なものであるということで、まさに不正なものでございます。

枝野委員 それで、「急迫、不正」と書いてあるんですから、これは武力攻撃が急迫でなければいけないんですよね。そうですね。四十七年見解の「急迫、不正」も、武力攻撃が急迫性を持っている。そうですよね。

横畠政府特別補佐人 それは、侵害の起こり方として、もちろん急迫のものを、急迫不正の侵害という意味を含んで武力攻撃の発生と言っていると理解しております。

枝野委員 では、四十七年見解で「根底からくつがえされるという」、どういう状況にあったら武力行使できると四十七年見解は読むんですか。

横畠政府特別補佐人 まさに、昭和四十七年見解の二の部分にあります「外国の武力攻撃によつて国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処」する、そういうためでございます。

枝野委員 そうですね。まさに「急迫、不正の事態に」ですよね。可能性だけではだめなんですよね、おそれだけじゃだめなんですよね。念のため。

横畠政府特別補佐人 ですから、その事態としては、我が国に対する武力攻撃が発生した事態、すなわち武力攻撃事態における発生事態、それと、今般の存立危機事態がそれに当たるわけでございます。

枝野委員 当たるんですか。四十七年見解では、「根底からくつがえされるという急迫、不正」の状況にならなければ武力行使しちゃいけないと言っているんですよ。新三要件は、「根底から覆される明白な危険」があれば、急迫不正の事態に陥っていなくても武力攻撃できると言っているんですよ。違うんじゃないですか。

横畠政府特別補佐人 昭和四十七年見解の二のところで、先ほど読み上げましたけれども、「権利が根底からくつがえされるという」というところでございますけれども、これは、根底から覆された、ではございません。まさに、そこで手を打たなければ覆されてしまう、そういう緊迫した状況にあるということを言っておりまして、ある意味、危険なのでございます。

 その意味で、今般は、まさにその危険が「明白な危険」でなければいけないということを明記したということでございます。

枝野委員 これは、横畠さんに答えていただいてもいいんですが、法律の所管は自衛隊法ですから防衛大臣かもしれません、どちらでも結構です。

 自衛隊法七十六条一項一号、我が国に対する武力攻撃がなされた場合、個別的自衛権の場合の防衛出動の要件はどうなっていますか。

横畠政府特別補佐人 自衛隊法の現行の七十六条一項でございますが、「内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」と書いてございます。

枝野委員 何で、「明白な危険」でなくて「明白な危険が切迫」なんですか。

横畠政府特別補佐人 新三要件にあります「明白な危険」というものと、御指摘の自衛隊法の第七十六条にあります「危険」というもの、それぞれ中身が違うのでございます。

 自衛隊法七十六条の「危険」というのは、まさに、「我が国に対する」「武力攻撃が発生」するということについての危険でございます。それに対しまして、新三要件において「明白な危険」と申し上げているのは、「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される」、そのようなことになってしまうその危険ということでございまして、危険の対象といいますか、考えているものが違うということをまず御理解いただきたいと思います。

枝野委員 我が国に対する武力攻撃がなされる明白な危険が切迫しているから防衛出動できるのは、それが我が国の「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」だから防衛出動できるんでしょう。一緒じゃないですか。どこが違うんですか。

横畠政府特別補佐人 存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される方の危険という観点から申し上げますと、この自衛隊法七十六条の切迫事態ではない、まさに発生事態、武力攻撃が発生した場合というのもそのことでございます。それを含んでおります。といいますのは、まさに武力攻撃の着手でございまして、被害の発生を要件としていないということでございます。

 切迫事態における防衛出動の下令といいますのは、現実に、実際に我が国に対する武力攻撃の発生を待っていたのでは間に合わない、つまり、それがまさに差し迫っているということが明らかなときには防衛出動を下令しておきまして、そして、先方というか敵方といいますかの実際の行動、武力攻撃があったときにはまさに即座に対処することができるようにしておく必要がある、そういうこと、そういう趣旨で規定しているものでございます。

枝野委員 整理しましょう。念のため確認しましょう。

 防衛出動が発令されても、武力攻撃を受ける明白な危険が切迫をしている状況では、我が国の自衛隊は武力行使はできないという解釈で、従来も、そしてこれからも、それでよろしいんですか。

横畠政府特別補佐人 実は、これは国際法上の制約でございまして、いかに自国に対する武力攻撃、他国による武力の攻撃が差し迫っている、切迫しているとしても、実際に武力攻撃の着手がなければ、それに対抗する武力の行使というものは許されないということで、これはもう国際法上の制約でございます。

枝野委員 我が国に対して直接的な武力攻撃がなされる明白な危険があり、それがさらに明白な危険を超えて切迫していても、自衛隊は個別的自衛権を行使できないんです。それが、国際法の制約であると同時に、昭和四十七年見解などを踏まえた我が国の憲法の枠として長年定着しているし、今回の法改正でもそれは変わらないんです。

 ところが、我が国に対する武力攻撃、直接の武力攻撃の危険がないケースであっても、単なる幸福追求が覆される明白な危険という、もっと広い概念で武力行使ができちゃうんです。

 四十七年見解とずれていませんか。

横畠政府特別補佐人 先ほどお答えしたとおり、「明白な危険」ということで想定している対象といいますか事象というのが別のことでございます。その意味で、ずれているということは全くございません。

枝野委員 ちょっと待ってください。いいですか。「明白な危険」、それは自衛隊法と、明白な危険は違うのかもしれませんが、厳密に言うと微妙なところはある。

 だけれども、四十七年政府見解は、「根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」になければ、自衛権、武力の行使はできないと言っているんです。何よりも、これは根本は国民の生命、自由、幸福追求の権利を守ることなんですから。その権利が根底から覆される急迫不正の事態にならなきゃできないと言っていたのを、急迫不正に至らなくたって、急迫不正がなくても、明白な危険があればできちゃう、今回そこに広げている、これは根本原理の変更じゃないですかと先ほどから聞いているんです。

横畠政府特別補佐人 先ほどお答えしたつもりでございますけれども、その「急迫、不正の事態」というのがどこへ行ったかということで申し上げれば、まさに「武力攻撃が発生」なのでございます。それは、我が国に対する武力攻撃の発生に限るというのが従来の考え方でございましたけれども、今回も、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生」ということをまさに要件としているわけでございます。それがなければ、国際法上も武力の行使を正当化するということが裏づけられないということでございます。

 加えまして、新三要件におきましては、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生」というのみではなく、国際法上はそれで足りるのかもしれませんが、まさに憲法上の要請として、「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」という、その要件をつけ加えまして、それをあわせますと、この昭和四十七年見解の二の、まさに「急迫、不正の事態」に相当するんだ、そういう状況でございます。

枝野委員 法律の条文、法の条文も解釈も、日本語として緻密に論理性を持ってつくられています。

 四十七年見解の「急迫」というのは、「根底からくつがえされるという」を受けているんじゃないですか。独立して「急迫」なんて書いてないですよ。「根底からくつがえされるという急迫」事態ですよ。国民の生命、自由、財産が根底から覆されることについての急迫不正を四十七年見解は言っていて、独立して、外国に対する武力攻撃、つまり、「密接な関係にある他国に対する武力攻撃」そのものは、「根底からくつがえされる」と直接関係していません。我が国とは全然関係なく同盟国が他国で武力攻撃を受けることもあります。だから、そこを勝手に置きかえちゃうということはできません。ここにくっついていく「根底からくつがえされるという急迫、不正」がどこに行ったんだ、このことを聞いているんです。

 「根底からくつがえされるという急迫、不正」が四十七年見解は要件だったんですよ。国民の、根底から覆されるということについての急迫不正、要件から外れているじゃないですか。どこかにありますか。

横畠政府特別補佐人 昭和四十七年見解の二のところで書いてあります、「急迫、不正の事態」とありますが、その「事態」というのはもう起こっているわけです。当然起こっている、現に目の前にある、その事態なのでございます。

 ただし、「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという」という部分は、それをそのまま放置していたのでは、まさにそういうことになってしまう、大変なことになってしまう、そういう状況にあるということでございまして、これを個別的自衛権の場面で申し上げれば、まさに、武力攻撃の発生、つまり着手の段階で武力の行使ができるという、それと対応している、それを含むというものでございます。

枝野委員 要するに、いいですか、ちょっと横畠さん、よく聞いてくださいね。

 横畠さんが六月十五日の初鹿委員の質問に対して答えてきた話の延長線上と今のは理解していいんですか。つまり、「急迫、不正の事態」というのは武力攻撃を受けたということとイコールだということを言っておられますよね。だから、四十七年見解でも、「外国の武力攻撃」を受けた、「急迫、不正の事態」が生じているというのと、二回言っているんだと。

 今回も、新三要件の一番上、「密接な関係にある他国に対する武力攻撃」というところで、ここで、「急迫、不正の事態」の「急迫、不正」はここに行っているんだ、こういう理解なんですね。それでよろしいんですね。

横畠政府特別補佐人 ちょっと御指摘を理解しかねているところがございまして、ちょっと、もう一回お尋ねいただけますか。

枝野委員 じゃ、逆から聞きましょう。横畠さんの答弁がよくわからないんです。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

枝野委員 つまり、「根底からくつがえされるという急迫、不正」を四十七年見解では求められているんですよ。そうでしょう。単なる急迫不正の事態、武力攻撃の発生が求められているんじゃないんです。その武力攻撃は、国民の生命、自由、幸福追求の権利を根底から覆される、そういう急迫不正の事態であるから、それに対して武力行使ができるんだと。それは、国民の生命、自由、幸福追求の権利との関係で武力攻撃を許されているんです、我々の。なぜなら、それを根底から覆される急迫不正があるから、それを取り除かなきゃならない。

 今度は、武力攻撃はあるかもしれないけれども、それは他国に対するものであるから、これは日本の国民の生命、自由、幸福追求の権利とは関係ないケースも含まれ得るわけですよ、密接な関係があっても。一番上の段の要件だけでは。

 日本が武力攻撃をしていいかどうか、四十七年見解に基づけば、我が国の国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆されるようになっちゃ困る、だからそれに対しては武力行使ができる、四十七年見解、うなずいていらっしゃいますけれども、そうでしょう。そのとき、根底から覆される可能性だけでは四十七年見解はだめなんですよ、根底から覆されるおそれだけではだめなんですよ、四十七年見解は、根底から覆される急迫不正がないといけないんですよ。

 だから、どこで、海外で、例えばアメリカにとっては急迫不正の事態が発生しているかもしれないけれども、我が国の国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される急迫不正がなければ、四十七年見解をそのまま持ってきたというんだったら、イコールにならないじゃないか、明白な危険では広過ぎるじゃないかということを申し上げているんです。(発言する者あり)

浜田委員長 内閣法制局長官。

 静粛に願います。

横畠政府特別補佐人 昭和四十七年の政府見解の二のところにおきます、その「根底からくつがえされるという」というところは、先ほど申し上げたとおりで、「という」という、そのまま放置すればそうなってしまうという意味が込められているわけでございます。

 そして、我が国に対する武力攻撃が発生した場合については自衛のための武力の行使ができるというのがこれまでの考え方でございまして、それは、我が国に対する武力攻撃が発生した場合には、改めて判断、認定、考慮するまでもなく、まさに「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという」ことになるんだ、そういうことで、それは今は明示的には記述していないわけでございます。

 御指摘のように、今般、「密接な関係にある他国に対する武力攻撃」の発生というものを契機として、因果関係があるわけですけれども、まさにそれによって我が国「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される」というようなことになる、単にようになるではなくて、「明白な危険がある」というような、そういう場合もあり得るんだということで、今回、要件としては、単に他国に対する武力攻撃の発生ではなくて、まさに要件として、我が国の存立を脅かし、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から脅かされる明白な危険ということを明記して、要件として書き加えるということによって、その結果、昭和四十七年政府見解の二の部分の事態とまさに符合するということになっているわけでございます。

枝野委員 ごらんになっている国民の皆さん、非常に細かい議論ですが、どこまでこの集団的自衛権と称するものでできるのかどうかという、限界がどこまでなのか。

 我々は、先ほど、自民党の皆さんの質疑のところで、集団的自衛権、全部が全部、本当にだめなのかどうか、これについては実はわからない。なぜならば、直接我が国に対する武力攻撃じゃなくても、根底から覆される急迫不正の事態というものがあり得るかもしれない。でも、今のところそれは指摘されていない。だから今は必要ないと私たちは思っています。

 ところが、「急迫、不正の事態」より「明白な危険」の方が広いのは、これはもう日本語としてどなたでもおわかりになると思います。さらに言えば、これに関連する自衛隊法の中には、自衛隊が防衛出動する要件に、我が国に対する武力攻撃が行われる明白な危険が切迫しないと、我が国が武力攻撃を受ける明白な危険だけでは防衛出動できないと自衛隊法で決めていて、今回の法改正でそこは変わらないんです。「明白な危険」だけでは相当広い概念なんだ。少なくとも、従来、四十七年見解でやっていた「急迫、不正の事態」ということと比べれば相当広い概念であり、なおかつ、そこの限界がはっきりしないから、どこまで拡大するのかようわからぬ、こういうことになっているんだ、こういう問題なんだと御指摘しておきたいと思います。

 次の論点に行きましょう。

 この問題で、そもそも違憲なんだからやる必要はないですが、その上で、ホルムズ海峡をやります。

 ホルムズ海峡の機雷の掃海は、例外的に他国の領土、領海での武力行使として認められる、こういうことを言ってきています。繰り返しますが、外国の領土、領海における武力行使は、どうして、憲法上どういう理由でできないんですか。そして、なぜホルムズ海峡の機雷掃海は例外なんですか。法制局長官、明確に、法的に整理してください。

横畠政府特別補佐人 これも何度かお答えしているところでございますけれども、繰り返し申し上げます。

 従来から、政府は、いわゆる海外派兵、すなわち、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣することは、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって憲法上許されないと述べてきております。

 これは、我が国に対する武力攻撃が発生し、これを排除するために武力を行使するほか適当な手段がない場合においても、対処の手段、態様、程度の問題として、一般に他国の領域において武力の行使に及ぶことは第三要件の自衛のための必要最小限度を超えるという基本的な考え方を示しているものでございます。

 その上で、政府は、その例外として、従前から、いわゆる誘導弾等の基地をたたく以外に攻撃を防ぐ方法がないといった場合もあり得ることから、仮に他国の領域における武力行動で自衛権発動の三要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論としてはそのような行動をとることが許されないわけではないとしてきており、この趣旨は、昭和三十一年二月二十九日の衆議院内閣委員会で示された政府の統一見解によって既に明らかにされているところでございます。

 このような考え方は、新三要件のもとで行われる自衛の措置、すなわち、他国の防衛を目的とするものではなく、あくまでも我が国を防衛するための必要最小限度の措置にとどまるものとしての武力の行使における対処の手段、態様、程度の問題として、そのまま当てはまると考えております。別の言い方をすれば、集団的自衛権の行使と言って一般に考えられるような、他国まで出かけていって戦う、そういうことは、やはり許されないということでございます。これが前提でございます。

 その上で、今般想定している機雷の掃海については、政府としてるるお答えしているとおり、事実上の戦闘が終了した状況のもとで、民間の船舶の航行の安全を確保するためのものであり、法的には武力の行使に当たる場合であったとしても、まさに人の殺傷を行うものではなく物の破壊にとどまり、実質的に危険物処理に相当するような行為であります。

 新三要件を満たしているということが前提でございますので、その敷設された機雷は、それを放置したのでは国民の生死にかかわるような深刻、重大な被害が生じてしまう、その危険が明らかである、そのような状況であるということでございますので、その機雷自体が、国民の生死にかかわるような深刻、重大な被害を及ぼしている元凶そのものであり、一旦敷設されればそこにとどまり続け、これによる被害は将来にわたって続き、かつ日々拡大していくという性質のものでございますから、できる限り早くこれを除去する必要性は高く、また、これが敷設されている場所まで行かなければこれが除去できないという特質がございます。そのようなことを考えますと、第二要件及び第三要件を満たす可能性はあるのではないかということを申し上げているわけでございます。

枝野委員 それで、もう一回確認します。

 機雷の除去は憲法上の例外に当たり得る、でも、それ以外の、例えば、総理などが中東で何とか戦争に参加するようなことはあり得ないと言っていますけれども、いわゆる地上戦とか空爆、これは憲法上の制約でできない、これでいいんですね、新しい解釈でも。

横畠政府特別補佐人 それはもう総理から御答弁申し上げているとおりでございまして、やはり憲法上の制約であります必要最小限度ということの制約の問題であると考えております。

枝野委員 では、そこで、聞きましょう。

 岸田外務大臣は、六月二十九日、我が党の後藤祐一議員の質問、機雷の除去について、他国がやれる場合はどうするんだということについて、「機雷を除去しなければ国民生活に死活的な影響が生じる」事態に対して、「我が国として何も対応しないということはあり得ない」とおっしゃっています。この答弁は維持されていますね。

岸田国務大臣 維持しております。

 我が国の武力行使は、第一要件、第二要件、第三要件全てを満たした場合であり、第二要件との関係において、そのような答弁をさせていただきました。

枝野委員 さて、そもそもホルムズ海峡が機雷をまかれて封鎖をされるというのは、現状の国際環境を考えるとちょっと想定しがたい事態なんですが、皆さんがあらゆる事態を想定しなきゃならないとおっしゃっていますから、あらゆる事態を想定しましょう。

 あらゆる事態を想定すると、ホルムズ海峡が機雷をまかれて封鎖をされている、なおかつホルムズ海峡が戦場になって海戦が行われている。あるいは、我が国に敵対する軍隊が、海軍がそこを、機雷だけではなくて、海軍がその地域で活動することによって、そこの航海の自由を封鎖している、こういう事態も想定しなきゃいけないですよね。岸田さん、どうです。

岸田国務大臣 まず、ホルムズ海峡の機雷掃海を考える場合に、憲法の要請との観点から、この新三要件、第一要件、第二要件、第三要件、これ全てを満たす必要があり、満たした場合に掃海を行い得る場合がある、こういった説明をしておりますが、その一方で、機雷掃海をする場合には、安全に機雷掃海を行わなければいけない、こうした要請があります。

 機雷掃海の実態を考えた場合に、掃海艇、木製やプラスチック製である、あるいは装備等を考えますときに、これは安全な状況の中でなければ掃海ができない、こうした軍事的な要請がある。これがありますので、そういった要請も踏まえた上で現実的な対応が考えられることになると考えます。

枝野委員 今、法律上できるかどうか、憲法上できるかどうかという議論をしようとしているんです。

 その上で、そういったケース、私が申し上げたケース、つまり、機雷がまかれていて、今、岸田外務大臣がおっしゃられたような、当該地域の事実上の停戦ですよね、当該海域においては。だから機雷の掃海に行けるようになるわけですよ。そういう状況になれば、当該海域が、事実上の停戦ですから、機雷がまかれて石油が入ってこないにしても、いずれ遠からず船が通れるようになるわけですよ。そういう見通しが立っている時期です。

 ところが、当該地域を、他国に制海権を押さえられている、つまり、他国の海軍がその地域で活動をしていて、その地域が戦場になっていたら、これは、タンカーは出入りできませんよね。この状況は、長く、いつまで続くかわからないですよ。もしも、そういう地域で、ホルムズ海峡のようなところで、石油なんか一切通さないぞというどこかの海軍がその地域の制海権を押さえて、日本だけじゃない、タンカーなんか一切通さないとそこで海軍が活動していたら、機雷がまかれた以上に船は通れないわけですね、タンカーは。

 そういう状態が、これは機雷がまかれたのを取り除きに行ける状況ならば、そう遠からず取り除けますねという話だけれども、その地域を、外国の軍隊が制海権を押さえているという状況だったら、それはいつまで押さえ続けているかわからない、二年も、三年も、五年も、十年も、ホルムズ海峡から石油が通ってこない可能性があるんですよ。そうした場合は、必要最小限に当たらないですか。

安倍内閣総理大臣 これは既にお答えをさせていただいておりますが、いわば、制海権や制空権を取り戻すために大規模な空爆あるいは地上におけるせん滅的な攻撃を行うということは、これは三要件を満たすものではない、こう考えているわけであります。いずれにいたしましても、これは必要最小限度を超えていくということになる、いわば外国に出かけていって空爆を行う、先ほども述べたとおりでありまして、砲撃を加えたり空爆を加える、あるいは撃破するために地上軍を送ってせん滅戦を行うということは、これはまさに必要最小限度を超えるのは明確であり、一般に禁止されている海外派兵に当たる。

 いわば、機雷の掃海ということは、これはまさに制限的、限定的な行使であることから必要最小限度内にとどまる、こう考えているわけであります。

 ちなみに、現在、航空優勢と海上優勢についてでございますが、長期間にわたって、国際的な状況の中で、ある国がホルムズ海峡を数年にもわたって航空優勢あるいは海上優勢を維持し得るということは、これはあり得ない、常識的にはそのように考えております。近代戦においてはそれは考えられないであろう、このように思います。

枝野委員 政府の方が、繰り返し、あらゆる事態を想定して切れ目なくとおっしゃってきているんですよ。我々からすれば、どこの国がホルムズ海峡を海上封鎖するんですか、どこの国が機雷をまいてホルムズ海峡を海上封鎖するのか、そんなことはできるはずないと我々は思っていますが、それでも、あらゆる事態と言うから、あらゆる事態に乗っかって、あらゆる事態を想定しなきゃいけないでしょう。

 そして、必要最小限度の実力を行使することというのは、何の必要最小限度かといったら、根底から覆される、我々からいえば、急迫不正の事態を取り除くための必要最小限なんでしょう。そうでしょう。機雷で封鎖されている状況だろうが、敵国が当該地域の制海権を押さえていて二年も三年も船を通させない状況だろうが、根底から覆される状況は一緒で、そして、機雷だったら機雷を掃海すれば済むけれども、当該地域の制海権を押さえられているなら、その制海権を奪い返す戦闘行為をしなければ、根底から覆される事態を排除できないじゃないですか。どうですか。

岸田国務大臣 実際の具体的な対応を考えた場合に、実質的な停戦があり、そして正式な停戦があり、こうした段階を踏むことになります。

 今、あらゆる場合を想定して切れ目のない対応を考えているのではないかという御指摘がありました。

 一九九一年の湾岸戦争のときも、実質的な停戦が行われた後、正式な停戦が行われるまでの間、フランス、ドイツ、イタリア、こういった国は掃海を行いました。しかし、その際には、武力行使を含むあらゆる手段を講ずることを可能とする国連安保理の決議を援用しました。要は、武力の行使を援用した形で掃海を行ったわけであります。

 このように、実質的な停戦が行われ、正式な停戦が行われるまでの間、これは武力の行使と評価される、こういった掃海をする必要があります。そうした際に、我が国として存立危機事態で対応する、こういった必要は生じます。こういった形で切れ目のない対応を考えていく、これは当然考えなければいけない課題であると考えます。

枝野委員 質問にちゃんと答えていただきたいんですが、あらゆる事態を想定しなきゃいけないから、ホルムズ海峡の封鎖なんてあり得ないと思いますが、今おっしゃった機雷の掃海だってホルムズ海峡じゃないですよね、イラク、クウェートの周辺地域で、もっとあそこの湾の奥の方の掃海ですよね。ホルムズ海峡の掃海、あそこが封鎖をされるようなことはあり得ないと思いますが。

 しかし、まずあるとすれば、機雷がまかれるということは、どこかの、我が国、あるいは我が国に直接じゃないかもしれないけれども、密接に関係のある他国に対して敵対している国が、あの地域の、完全な制海権じゃないにしても、一定程度そこで機雷をまく程度の軍事行動ができるわけですよね。機雷をまける、軍事行動ができる状況がまずあって、それが、いろいろな経緯があって、最後の方になって、では事実上の停戦だから日本は出ていって機雷の取り除きだけしましょうかと今岸田さんはおっしゃったわけですよ。

 だけれども、法理上、今回の法律で何ができるようになるのか、そこが問題なんです、何をやろうとしているかじゃなくて。岸田さんが永遠に外務大臣をやるわけじゃありませんから。この法律で何ができるかということを考えたときに、この法律だと、機雷がまかれているから日本が存立危機事態だというのであるならば、機雷がいつでもまけるような状況に置かれているという状況が何年も続いたら、それこそ存立危機事態じゃないですか。その存立危機事態のときに、では、必要最小限で機雷の掃海しかできません、我々はそこの制海権を押さえられていることについては何もしません、国民生活に死活的な影響を生じているけれども我が国は何もしませんという根拠は、法理上どこにあるんですかと聞いているんです。

岸田国務大臣 まず、現状を申し上げるならば、我が国としまして、先ほど、実質的な停戦、正式な停戦と申し上げましたが、正式な停戦が行われた後でないと対応することができない、これが現状であります。

 しかし、正式な停戦が行われる前、実質的な停戦が行われている段階においても、武力の行使と評価される掃海が必要な場合があります。今回の法制によってその部分が可能になる、こうした対応ができる、こういった説明をさせていただいております。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 では、総理から答弁をしていただきたいと思いますので、答弁をそのまま……(安倍内閣総理大臣「もう一回します」と呼ぶ)もう一回ですか。

 では、安倍内閣総理大臣。

安倍内閣総理大臣 まず最初に、起こり得ないとおっしゃっていましたが、起こり得なければそれが一番いいんですね。百年でも二百年でも起こらなければ、我々は実際に武力行使をしなくて済むわけであります。しかし、起こり得るかもしれない。これはまさに、そういうときに備えて法整備を進めていくのは当然のことであろう。これはまずはっきりとさせておかなければいけません。

 武器等についても日々進歩をしているわけであります。

 そこで、まず機雷の掃海というのは、いわば極めて受動的、制限的に行うわけであります。だからこそ……(発言する者あり)皆さん、黙って聞いてください。順番に説明をいたします。

 まず、機雷の掃海というのは、いわば海外派兵は一般に禁止されていますが、機雷の掃海については、これはまさに、これはまさに受動的、制限的であるから必要最小限度にとどまるので、これは領海の中においても行うことができるということを今まで累次申し上げてきたとおりでございます。

 そこで、枝野委員の質問は、いわばその状況の中において、実質的な停戦合意ができるまで、いわばそこに制海権、制空権をとられている中においては機雷の掃海もできないではないか。つまり、これは第一要件に当たる、国の存立が脅かされ、かつまた、国民の生命、自由そして幸福追求の権利が根底から覆される状況になっているのではないかという御指摘だろうと思います。

 そこで、我々は、いわばそこに出かけていって、制空権をいわば取り戻し、取り戻すというか、相手の航空優勢あるいは海上優勢を変えるための武力行使を行い、機雷の掃海を行うのか、こういう御質問であろう、こう思いますが、それは、先ほど私が答弁したとおり、そのためには空爆を行う必要もあるでしょうし、あるいは砲撃も行わなければいけませんし、地上に軍隊を送っていく必要もあります。そしてまた、艦上に対して、これはせん滅戦的な大規模な攻撃を、いわば外国の領土、領海で行わなければいけない、領空で行わなければいけないということでございますから、これはまさに、第三要件の必要最小限度の実力行使を超えてもいくわけでございます。つまり、この必要最小限度を超えるという考え方から、それはできない。

 ですから、我々は、この事態がそれほど長く続かないであろうということを、それはわかりません、しかし、そういう中において、もしこれは実態的な停戦合意が、事実上の停戦合意、しかし正式な停戦合意ではないという事実上の停戦合意が行われれば、我々は直ちに、日本の存立にかかわるような状況になっていれば、直ちに機雷を掃海する必要があるだろうということで、今回、法制を行っていく。

 いずれにいたしましても、三要件に当たらなければもちろん機雷の掃海も行えないということは申し上げているとおりでありますが、それ以上についての、仮定の質問ではございますが、それは三要件には当てはまらない、これはもう何回も申し上げているとおりでありまして、明快ではないか、このように思うところでございます。

枝野委員 本当にそんなことを言っちゃっていいんですか。

 まず、今の解釈でいいんですか、法制局長官。

 必要最小限の要件で、機雷の除去はできるけれども、機雷をまき続けている状況の制海権、制空権を取り戻すための行為はできない、これは、憲法の解釈、必要最小限、これの縛りだと。憲法解釈として、あるいは法解釈として、これでいいんですね。

横畠政府特別補佐人 我が国を防衛するための必要最小限度という、旧来の三要件あるいは新三要件の第三要件というものについての考え方、これは従前と変わっていないということがポイントでございます。それは憲法上の縛りであるということでございます。従前、我が国が直接武力攻撃を受けている場合ですら、他国まで行って戦う、空爆をするとか、そのようなことまでは、必要最小限度を超えるんだということで理解していたわけでございます。

 法律的な根拠ということになりますと、それは、自衛隊法八十八条の規定をまさに改正していないということで、そこは変わらないという担保になっているわけでございます。

枝野委員 従来の三要件でも新三要件でも、必要最小限度、変わらないとおっしゃっている。

 従来の三要件の、つまり我が国の個別的自衛権でも、敵基地攻撃能力は憲法上許容されているんですよ。それはそうなんです。必要最小限というのは、外国からばんばんばんばん誘導弾が飛んでくるという状況だったら、それをこっちから撃ち落としているだけでは、被害がずっと続いて、存立の危機、まさに根底から覆される急迫不正の事態が継続しちゃう。だから、その基地を壊すということまでは現行の解釈でも必要最小限の範囲で、したがって、その場合は空爆等もあり得るんですよ、必要最小限の範囲で。

 我々は、その解釈は非常に大事なことだと思っています。万が一の場合に、根底から覆される急迫不正の事態に対処するためだったら、それは必要最小限度の範囲で、場合によっては空爆も必要だと思っているんです。

 ところが、今回、それを、変な制約を逆につけちゃっているんですよ。受動的なことだからやる、受動的なことだから機雷の除去だけはやる、でも……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

枝野委員 でも、根底から覆される事態で、国民生活に死活的な影響を生じる事態であっても、機雷の除去ならやるけれども、機雷をまかれ続けている状況が何年続こうと何もしない、手をこまねいて見ているということをおっしゃっているんです。

 この上で、実は大事なのは第二要件なんです。そこまできょうは行けませんでしたが、岸田さん、岸田さんは、他国がやれる場合でも我が国もやるんだと言っています。

 なぜ我が国の自衛隊が今、敵基地攻撃能力を持っていないかといえば、日米安全保障条約で、我が国はできるだけ抑制的にやるという、これは政策判断です、憲法上の制約じゃありません。憲法上の制約では、北朝鮮のミサイル基地を爆撃する能力を持てます。持てますけれども、我が国の政策判断として日米安全保障条約を結んでいますから、日米安全保障条約に基づいて、そうしたことについては他国がやってくれるという条約をちゃんと結んでいて、他に適当な手段があるから我が国の自衛隊は北朝鮮のミサイル基地を爆撃する能力を持たない、こういう解釈になっているんです。

 ですから、他国とのいろいろな、まさに協力して我が国を守る、国際社会の平和を守るということの中で、北朝鮮のミサイル基地の爆撃についてはアメリカ軍にやってもらうから、第二要件に当たらず、我が国はやらない。

 そして、ホルムズ海峡の機雷の除去についても、これは、停戦合意や、あるいは国際法上停戦合意と認められて、遺棄機雷の除去として許されるケースについては国際協力できると我々も言っているわけですから。それを無理やり集団的自衛権で、必要最小限だからそこだけやる。でも、そこだけやるという理屈を通そうと思うと、では、当該地域の制海権をずっとどこかの国に維持され続けているケースは放置していいんですかというとんでもない矛盾が生じる。こういう話になってしまっている。

 問題は、必要最小限の実力行使というところで枠をはめること自体が根本的に間違っているんです。必要最小限の実力行使というのは、まさに軍事技術とか国際条件とか国際環境によって、大きくここは幅のある分野なんです。だから、第一要件のところで、自衛権はこういうケースでないと発動しない、そのかわり、自衛権を発動するようなケースについての必要最小限は、まさにそのときの状況状況に応じて国民の生命を守るために必要なことをきちっとやる、こここそ幅を持たなきゃならない。こことここが相関するのに、ここだけを制約しようとするということは間違っている。むしろ、第一要件のところでしっかり縛りをかけなきゃならない。そこで、急迫不正の要件が抜けているということが決定的に従来の解釈とは違っているということを申し上げて、同僚に時間を譲りたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、長妻昭君。

長妻委員 民主党の長妻昭でございます。

 平日は、私もこの委員会のメンバーでございますので、この部屋に缶詰になっておりますけれども、週末は、皆さんもそうだと思いますが、地元やあるいは全国を回っていろいろな方と意見交換をいたします。その中で、国民の皆さんからこの安保法制についての御懸念などについて総理にお伺いをしていきたいと思います。

 まずは、この法律のメリットとデメリットということなんですけれども、メリットというのはもう総理からるるお話をいただきました。この法律のデメリット、その部分というのは具体的にどんなようなところが考えられるんですか。

安倍内閣総理大臣 デメリットというのは、どういう意味でデメリットということをおっしゃっているのかわかりませんが、そもそも私たちの使命とは何かといえば、それは国民の生命とそして幸せな平和な暮らしを守り抜くことでありまして、それを守り抜くために必要な法制を整備しているところでございます。

 その中で、もちろん自衛隊の諸君には新たな任務が加わっていくわけでありますが、この新たに加わった任務において、その中において、一つ一つリスクを低減していくために訓練を重ねていく、あるいは情報収集力を高めていくということは当然のことであろう、このように思うわけでございます。

 デメリットということについては、むしろ我々は我々の使命とは何かを考える必要があって、法律をいつもつくるときに、その法律のデメリットは何かということを考えることが必要な場合ももちろんあるでしょう。

 しかし、今回の法制はまさに、何のためにと言われたら、国民の命を守り、そして幸せな暮らしを守り抜くためでありまして、それが新たな法制を必要とするいわば安全保障環境となっている、こういう認識のもとに、我々はこの法制を整備しなければならない、こう考えているわけであります。

長妻委員 今の総理の答弁は、法律としてメリット、デメリットを考えなきゃいけない法律もあるけれども、この法律はそうでないかのように私は聞こえたんですが。デメリットはない、お伺いしたんですけれどもお答えがないので。

 私は、どんな物事でも、特に今回のように大きな自衛隊の任務の変更、安全保障環境の変更、これは当然やらなきゃいかぬということもあるかもしれませんけれども、しかし、それにデメリットというのがあって、それを上回るから政府はこの法律を出してきた。しかし、自衛隊のリスクも含め、あるいは装備や防衛費も上がらない、人員もふやさない。それで、人、物、金、日本周辺の守りも今と変わらないし、さらに、世界に展開をしても、それでも日本の周辺の守りは手薄にはならない、安全保障のジレンマも考えられない。つまり、デメリットについて本当に具体的にやはり御説明をいただいて、それはメリット、そちらの国益の方が上回るからこの法律を出してきた、こんなような本来は説明があってしかるべき。それが国民の理解が進まない一つの理由だと私は思います。

 それでは、集団的自衛権についてなんですが、自民党の憲法九条の改正試案というのを出されておられると思いますが、総裁として、どんなような中身でございますか。

安倍内閣総理大臣 私は、行政府の長として、まずこの法制の答弁にここに立っておりますから、自民党の改正案について一々お答えする立場にないということは申し上げておきたいと思いますし、自民党の改正案と今度の法制は全く関係がないわけでございます。

 自由民主党は、結党以来、憲法改正を主張しており、そして、平成二十四年に、当時の谷垣総裁のもと、憲法改正草案を作成しました。党として、二十一世紀にふさわしい、あるべき憲法の姿を示しているということであります。

 この場において、個別に、自民党の憲法の草案個々について議論することは差し控えるべきであろう、私はこのように思いますが、草案におきましては、安全保障について、自衛権を明定するとともに、国防軍の設置を規定し、あわせて領土等の保全について規定することとしているところでございます。

 いずれにいたしましても、憲法改正につきましては国民的な議論が必要であろう、我々はこう考えておりますので、さらに、より広く、深い議論を進めていかなければならない。そして、憲法全体については、どの条文から改正をしていくかということについても、国民的な議論あるいは憲法審査会における議論の熟成あるいは行方をしっかりと見守っていきたい、このように思います。

長妻委員 これは大いにこの議論と関係があると思うんですね、この法律。この法律でも集団的自衛権を認めるということがあって、これが違憲ではないか、違憲の疑いがあるというような、学者の先生方のみならず、国民の皆さんの中でもそういう御意見が非常に多いわけであります。

 その意味で、今おっしゃった自民党の憲法草案第九条で自衛権を認めるということなんですが、この自衛権というのは具体的にどんな自衛権でありますか。

安倍内閣総理大臣 まさに自衛権でございます。

 あと、ここはこれ以上、憲法草案について私はお答えをする立場にはございません。自民党の総裁としてここで憲法草案について議論をしているわけではなくて、いわばここでは今度の平和安全法制について議論をしているわけでございまして、そのことによって、これを議論することによって国民に誤解を与えるべきではない、このように考えております。

長妻委員 いや、その自衛権の中には集団的自衛権というのも入っているわけですか。

安倍内閣総理大臣 いわば、自衛権につきましては、我々は自衛権と明記をしているわけでありまして、これは国連憲章上の自衛権と相通じるものになっている、こう思うわけでございますが、いずれにいたしましても、今ここでこれ以上私は議論すべきではないと思いますので、いわばこの法制そのものの議論についてしっかりと行うべきではないのかな、こう思うところであります。(発言する者あり)

長妻委員 憲法審査会でやろうと今小野寺さんからやじが飛びましたが、憲法審査会、自民党が開かないということで、何か今、開いていないわけですよね、小野寺さん。自民党の方針ですか。(発言する者あり)そうですか。

 今私が何でこの質問をするかというと、この自民党の憲法草案、試案を見ると、九条でフルスペックの集団的自衛権を認めるような記述があるわけです、QアンドAを読むと。私の立場は違いますけれども、自民党は憲法九条を改正してフルスペックの集団的自衛権を目指しておられると私は理解します。

 であれば、今回、この法律は一旦引っ込めて、憲法違反の疑いが濃厚、これを引っ込めて、堂々と、憲法九条、我々は立場は違いますよ、ただ、堂々と憲法改正の手続をして、この試案を国民に問うたらどうですか。そういう趣旨で私は今質問したんです。

安倍内閣総理大臣 先ほどの議論において、我々政治家の責任とは何かということについて議論をいたしました。それはまさに、必要な自衛の措置とは何かということでもあります。

 砂川判決に示されているように、我が国が、国の安定とそして平和を維持し、国の存立を全うするために必要な自衛の措置をとり得ることは、国家固有の権能の行使として当然のことと言わなければならない、こう書いてあります。この必要な自衛の措置とは何かを我々は考え続けなければいけないわけでありまして、その中で、我々は四十七年に見解を示しました。

 しかし、あれからもう相当の月日が過ぎていく中において、日米の同盟関係はより強固となった。そして、我が国の、例えば、自衛隊においてもイージス艦という新たな艦艇が登場し、そしてそれは米国と緊密に連携をする。あるいは、北朝鮮が何発も、数百発、弾道ミサイルを持っている。そして、それの日本に着弾を阻止するために、新たなミサイル防衛という仕組みもできた。

 これは日米で共同してその仕組みを使って国民を守らなければならないということにおいて、しかし、その一部を破壊しようという行為に出たときに、これはまさに日本の防衛を直撃する、国の存立を脅かすことにもなり得るという解釈が当然あるわけでありまして、そういう必要な自衛の措置とは何かということを我々は考え続けた。与党の責任として考えているんです。そこで今我々は、昨年七月の一日に、この憲法の解釈を変えなければいけないという判断をしたところでございます。(長妻委員「ちょっと委員長、それは聞いていませんから」と呼ぶ)

 皆さん、国民はこうした丁寧な説明を求めているのであり、だから我々は、憲法の改正ではなくて、今必要なことをすぐにやらなければならないという責任のもとに我々はこの解釈の変更を行ったということでありまして、憲法の解釈については、まだ、残念ながら十分に……(長妻委員「ちょっと、私は聞いていないですよ」と呼ぶ)それを聞かれているわけですよね。(長妻委員「聞いていない。九条です、九条。自民党の憲法試案」と呼ぶ)憲法の解釈、九条についての、憲法九条の変更については、残念ながらまだこれは議論が熟していない。その議論が熟すことをただただ待つのは、まさに政治家としての責任の……

浜田委員長 総理、簡潔に願います。

安倍内閣総理大臣 放棄ではないかということを今御説明しているところでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

長妻委員 これだけ憲法違反の疑いが濃厚である、そして元法制局長官の方も憲法違反だとおっしゃっておられる。そして、私が聞いておりますのは、自民党は憲法の改正の発議を来年の秋とか、あるいは来年されるのではないかというふうにも聞いておりますから、なぜ解釈でこれだけされるのかということであります。

 そして、次に、先ほども与党からも質問がありました。ちょっと誤解を招くと思うので、私が与党の質問について申し上げたいのでありますが、集団的自衛権について、存立危機事態、これは認定されれば武力行使ができるというものでありますが、これは国会の承認が必要だという話がありました。これは、確かに事前に国会の承認が必要なケースもありますが、緊急の場合は事後承認でもいい、こういうふうになっておりますけれども、緊急の場合というのは具体的にどんな場合なんですか。切り分けは。

中谷国務大臣 まさに、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆されるという状況で存立を認定するわけでございますが、それを認定する際におきましても、政府は、あらゆる情報、あらゆる要素、こういうのを判断いたしまして閣議決定をいたして、その後国会に承認を求めるということでありまして、まさに緊急の事態におきましては事後承認もあり得るということでございますので、国の存立にかかわる緊急の事態ということでございます。

長妻委員 緊急の事態はどういう事態ですかということについて、まともにお答えにならないわけであります。

 ホルムズ海峡だけはわかりました。あれは緊急ではないから必ず事前の国会承認があるというのは御答弁で、具体的例でわかりましたけれども、これは国会のチェックということで大変重要なことでありますので、曖昧にしないで、きちっと詰めていただきたいと思います。

 そして、総理と岡田代表が質疑をいたしました案件についてお伺いします。

 これは周辺有事が起こったと総理が具体的に挙げていただいた案件でございますが、米国とある国、A国が戦闘になった、A国は我が国をも射程に捉える相当数の弾道ミサイルを保有している。これは皆、総理の言葉であります。その言動などから、我が国に対する武力攻撃の発生が差し迫っている状況、東京も火の海にすると既に言っている状況、A国の海軍力をある地点に結集し始めている、我が国に対する攻撃のための攻撃となる可能性、こういう状況があって、そして、総理がおっしゃったのは、切迫事態になる、これは個別的自衛権による、武力攻撃事態であります、防衛出動、自衛隊が展開をする、しかし武力行使はできない。

 この状況の中で、ミサイルの発射を警戒している米軍の艦艇への攻撃が発生した、この場合は存立危機事態の可能性がある、それは三要件がありますけれどもというふうにおっしゃったわけでありますが、これは、個別的自衛権、我が国に対する武力攻撃の着手というふうにも読み得るのではないでしょうか。いかがですか、総理。

安倍内閣総理大臣 これを着手と見るかどうかということでありますが、これを着手と見て、そして個別的自衛権を発動するということは、やはり国際的には、これは個別的自衛権ではなくて、まさに先制攻撃とみなされる可能性が極めて高いと言わざるを得ない、こう思うわけであります。

 先ほど来も議論がございましたが、こういう形においていわば個別的自衛権として行使できるということは、純粋に理論上それはあり得る、こう答弁をしたことはございますが、しかし、国際的に見て、一般には、それは集団的自衛権の行使とみなされるか、あるいは先制攻撃とみなされると言ってもいいんだろう、こう思うわけでございます。

 もちろん、我が国の国内の中での理屈を法的につくり上げていくという中において、法理論上それはあり得るということは申し上げたわけでございますが、実際上は、繰り返しになりますが、これは集団的自衛権の行使とみなされるものとなるであろう、こういうわけでございます。

 そういう疑念を持たれる蓋然性が高いわけでありますから、今回はまさに我々はしっかりとそれを整理いたしまして、こういうケースにおいては、三要件に当てはまれば集団的自衛権の行使をし得る、こう考えているところでございます。

 つけ加えまして申し上げますと、そのときの例は、極めて確定的な例として、切迫事態あるいは重要影響事態、そしてまた存立事態、このそれぞれの事態を説明していく例として申し上げたわけでございまして、そのような米軍の艦艇がミサイル攻撃を受けた場合だけ存立事態になるということではもちろんございません。

 まさに総合的に判断をしながら、まさに三要件に当てはまれば存立事態になる、このように従来から申し上げているとおりでございます。

長妻委員 国際法という話がありましたけれども、我が国には憲法がある、他国にも憲法がある、その憲法の範囲内でやることについて国際社会が云々かんぬんと言うことは、私はないと思いますよ。

 しかも……(安倍内閣総理大臣「いや、それは全く間違いです」と呼ぶ)いや、秋山答弁であるじゃないですか。そうしたら、この日本を防護する米艦船ということで、「我が国を防衛するために出動して公海上にある米国の軍艦に対する攻撃が、状況によっては、先ほど申しましたような、我が国に対する武力攻撃の端緒といいますか、着手といいますか、そういう状況として判断されることがあり得る」ということ。

 これは、それぞれ、何か総理は、着手も国際法的に先制攻撃とみなされるような趣旨の答弁をされましたけれども、それは私はないと思いますよ。だって、調べましたけれども、アメリカでもイギリスでもドイツでも、個別的自衛権の発動の要件というのはかなり違うんですよ。日本よりもかなり前広に発動の要件を考えている国もありますから。そういう意味では、日本がやるということではなくて、日本は、こういう答弁があって、着手の範囲内ということなんです。

 そして、もう一つ申し上げると、結局、総理、今回の集団的自衛権はフルスペックのものじゃないですよね。これは限定されているものですよね、集団的自衛権。

 では、何で限定されているかというと、昭和四十七年の見解なんですよ、一つは、中核にあるのは。つまり、この真ん中ですね、ブリッジ理論。政府はこういう考えで合憲にしているんです。私はこういう立場はとりませんけれども、政府の立場に立つとこういう考えなんですよ。

 昭和四十七年見解というのは、さっきから議論されておりますように、「外国の武力攻撃によつて国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に」なるときは、個別でも、我が国が攻撃された、そして他国でも、これは武力行使ができる、こういう考え方なんですね、政府の考え方。ということは、相当絞られているわけです。我が国を見て、他国を見るんじゃなくて我が国を見て「根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に」ならなければ武力行使できないんですよ、集団であれ個別であれ。

 であれば、この状況、先ほど総理が挙げた事例でいえば、私は、この着手、個別的自衛権の着手というふうに読み得るというふうにも思います。であれば、お伺いしたいのは、着手と集団的自衛権、存立危機事態を分けるものは、どういうメルクマール、どういう基準で分けるんですか、この例でいえば。

岸田国務大臣 要するに、今、着手に絡んで、集団的自衛権と個別的自衛権をどう分けるのか、こういった御質問だったと思います。

 まさに、着手、我が国に対する武力攻撃が発生する、これが個別的自衛権を援用して我が国の武力行使を正当化するために重要なポイントであります。ですから、その着手の範囲内であれば個別的自衛権としての説明を行うことになります。

 ただ、この着手の点につきましては、これはさまざまな議論があります。国際的にもさまざまな基準があるのではないかと今委員の方からも御指摘がありました。こうした議論があるのは事実でありますが、いずれにしましても、この着手の時点は、国際社会にしっかり説明して、そして、これは間違いないと評価されなければなりません。これは、着手の時点を前に前にずらせば、より説明が難しくなるわけです。

 そして、国際的な議論を見ましても、例えば、二〇〇五年国連世界サミットという会議がありました。(長妻委員「いや、だから、違いは何ですか。違いは」と呼ぶ)いや、その違いが大変難しいということを申し上げているわけです。

 この際に、国連の議論においても、例えば、イミネント、切迫した状況において着手と認めることができるのではないか、こういった議論が行われました。しかし、結局は反対に遭って、これは成果文書に盛り込むことができなかった。国際的にも、こうした切迫した事態というのは、着手、武力攻撃の発生としては認められない、こういった議論が行われています。

 このように、分ける、この着手の時点につきましては、国際法においても大変難しい議論が行われており、これは前に倒せば国際社会に説明ができなくなってしまう、こういったことであります。これが、先ほど申し上げました、国際法違反につながる、あるいは他国に口実を与える、こういったことにもつながるということで、慎重に判断しなければいけない。こうした着手の時点についてはこのように考えなければならないと考えています。

長妻委員 これ、私が聞いていないことをお答えになっているんですね。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

長妻委員 いや、私が聞いたのは、岸田大臣もおっしゃいましたけれども、着手の範囲内におさまっていれば、国際法上も我が国としてもそれは認められるとおっしゃいました。私は、着手を拡大解釈しろなんて一言も言っていないですよ。一言も言っていないですよ。

 私が申し上げているのは、着手という概念が全然これまで政府の中で整理をされてこなかった、着手ということについてどういう概念なのかきちっと整理することで、こういう案件に対応できるのではないのかということを申し上げて、では、存立危機と個別的自衛権とどういう違いで、どういう具体的に違いがあるのか、どこで切り分けていくのか、我が国がですよ。我が国ですよ、国際社会じゃないですよ。それをお伺いしているんですよ。我が国の国内基準として、個別的自衛権の着手と集団的自衛権、存立危機事態を見るときの、この間の切り分けの基準はどういうものなのかと。

 だって、我が国の個別的自衛権の着手というふうに我が国の国内基準で当てはまっていれば国際社会にも説明できるとおっしゃいましたから私は申し上げていることで、これを切り分ける基準というのは一体具体的に何なのかということを、もうちょっとわかりやすくお伺いしたい。

 またあの答弁はだめですよ、個別的自衛権の着手を広げるのはけしからぬ、けしからぬと。広げるなんて一言も言っていないわけです。お願いします。

岸田国務大臣 まず、個別的自衛権と集団的自衛権の違いについては、再三申し上げておりますように、自国に対する武力攻撃に対応するかどうか、この点において明確に区別をされています。

 そして、着手の時点をどう考えるかということですが、着手、これは具体的な手段や態様はさまざまです。砲撃の場合もあれば、あるいはミサイルの場合もあれば、あるいは部隊による越境等もあるかと思います。ですから、具体的な着手の時点を考える際には、国際情勢ですとか、意図ですとか、あるいは手段、あるいは態様、こういったものを総合的に判断しなければ確定することはできません。

 そして、こうした具体的な着手の時点を明らかにするということは、これは国際的にはあり得ない話であります。着手の時点というのは、安全保障上の重要項目であります。この時点で我が国は着手でありますということを申し上げることは、手のうちを見せることになります。また、逆に、この時点で我が国は着手をしますと言うことは、他国から、日本は着手をしたという口実を与えることになります。これは、国際的な常識として、どの国においても、この着手の時点をどう考えるか、これは安全保障上の重要項目であって、具体的に明らかにするということはないということ、これは申し上げたいと思います。

長妻委員 これは、そうしたら国会で議論できないじゃないですか。個別的自衛権の着手で読み得るのではないかと言うと、いや、それは手のうちは明かせない、言えない、こういうお話であれば、議論できないじゃないですか。

 そうすると、何か手のうち云々と言いますが、我が国は確かに、ROE、交戦規定、これを一切公開していないですよ。でも、アメリカで見ると、SROE、標準の交戦規定、これを公開していますよ、標準ですけれども。ですから、何でもかんでも手のうちを見せないというのは他国も全部同じだというのは、私は違うと思うんですよ。

 そうすると、岸田大臣、私が申し上げているこのケースで、個別的自衛権としても読み得るということはあるんですか。読み得るということは、可能性は。

岸田国務大臣 着手ということについて、これを明らかにすることは国際的には難しいということを申し上げましたが、しかし、いずれにしましても、自衛権を行使しますと国連に対してしっかり報告をしなければなりません。ですから、その際に、国際社会から着手というものについてしっかり評価され、理解されなきゃいけない、この時点を考えていかなければなりません。(長妻委員「これは読み得るのかと聞いているんです」と呼ぶ)

 ですから、そういったことですので、先ほどの事例等につきましても、これは具体的にさまざまな点を総合的に勘案しなければなりません。

 そして、その際に、再三指摘されておりますあの秋山法制局長官の事例があります。米艦に対してさまざまな攻撃が行われたということにつきましても、これは一〇〇%あり得ないのかという質問に対しまして、これは、理論上、状況によっては我が国に対する武力攻撃の着手と判断されるようなことはあり得る、こういった答弁であります。

 こうした答弁に基づいて考えるならば、これは、極めて例外的な場合でありますが、個別的自衛権で対応が可能な場合があり得る。秋山法制局長官の答弁はそのように理解すべきものであり、そうした点について、こうした米艦に対する攻撃についても考えていかなければならないと考えております。(長妻委員「この例はあり得るの。答えていない。答えていない」と呼ぶ)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 安倍内閣総理大臣。

安倍内閣総理大臣 つまり、基本的には、個別的自衛権というのは我が国の領土、領海、領空に対する攻撃であります。公海上における米軍の艦艇に対する攻撃が発生したからといって、それだけで我が国に対する攻撃、武力攻撃と認定できるわけではない、このように思います。

 そこで今、例としてこの例がある、こういうことでありますが、我が国に対する攻撃のための攻撃となる可能性と書いてありますが、これは可能性であって、これを着手、個別的自衛権として着手する上においては、もう、例えば既に、日本を攻撃するために、まずはこの米艦を攻撃するぞと……(長妻委員「米艦船におけると言っているじゃないですか」と呼ぶ)いや、日本を攻撃するために第一陣として我々はこれを攻撃すると言ったら、論理上はあり得ますよ。これだけでは、これだけでは成り立ちませんよ。

 ですが、実質的になかなかそれは起こり得ないということを申し上げているんであって、A国が日本をその後攻撃するために、まずはこの艦を、米国の艦を攻撃して、次に日本を攻撃するということを公然と言っている、あるいはまた、彼らがそういう決断をしたという詳細について我々が完全に把握をしていれば、それは着手ということを考え得るかもしれない。

 しかし、実際上、そんなことを公言して、まず、では米艦を攻撃して、次に自衛艦に行きますよということを公然と言っているということはあり得ないわけでありまして、論理上言っているのでありまして、事実上は起こり得ないんですよ、長妻先生。

 ですから、我々は……(発言する者あり)事実上、では、今言ったようなことが起こるんですか。ある国が、米艦を攻撃しますよ、でも、その次には日本を攻撃しますよ、この艦を攻撃しますよということを言えば、論理上はあり得るという話を申し上げているんであって、なかなかそれは起こり得ないということであります。

 今私が申し上げていることは、このように、数百発の弾道弾ミサイルを持っている、そして、いわば東京を火の海にするとは言っているわけでありますが、まず米艦を攻撃して、次に、それを着手として日本を攻撃するということを言っているわけではないわけでありまして、そこに当然、明確性は欠くわけでありまして、国際社会によって、まさにそれだけで行えば、これは集団的自衛権の行使、あるいは、これを先制攻撃ととられる可能性は排除できないわけでありますから、だから、そうならないように、国際社会にもしっかりと通用するように、我々は国民の命や幸せな生活を守るための法制をしっかりと行っているわけであります。

 つまり、長妻さんたちがやろうとしていることは、なかなか国際社会でも通りにくいことを無理やりやろうとしているとしか我々には聞こえないのでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に。拍手は要らない。

長妻委員 総理に同じことをお返ししたいと思いますよ。通りにくいことを無理やりやろうとしているというのは総理じゃないですか。この法律が憲法違反の疑い濃厚、国民の皆さんの多くもそういうふうに思っておられる。通りにくいことを無理やりやろうとしているのは総理じゃないですか。

 だから、総理はいつも人に対して、総理こそレッテルを張るんだけれども、それはまた自分に返ってきますよということなんですよ。

 総理、今の発言は岡田代表におっしゃったことと違うんですよ。岡田代表におっしゃったのは、例えば、「彼らの発言等からすれば、これを撃沈した後に攻撃がこちらに向いてくる、」これというのは米艦船なんですね。「そしていわば」「日本のミサイル防衛の能力の一角を崩そうとしているという可能性というのはあるわけ」です。そういう状況設定をしているんですよ。これを撃沈した、つまり米艦船を撃沈した後に攻撃がこちらに向いてくる、そういうふうにおっしゃったから、私は例を出しているわけですよ。よく発言を覚えておいてください。毎回何か変わりますから、そういう発言をきちっと覚えておいていただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、個別的自衛権の着手という概念をやはりきちっと整理していただかないと、私は自衛隊も困ると思いますよ。

 実際に、これは個別的自衛権の着手、ROEをどうやって書くんですか。存立危機事態、あるいは個別の着手、どういうふうにROEを変えて、それを認定するのか。現場の自衛官も困ると思いますよ。ですから私はこの話を申し上げているところで、非常に曖昧のままに残さないでいただきたいと思うんですね。どうぞ。

安倍内閣総理大臣 岡田さんのときに説明したのも今説明したのも、つまり、三要件に当てはまるということについて、まさに、ある国が弾道ミサイルを数百発持っている、そして、東京を火の海にする、こう言っている。そして、その中にあって、いわばミサイル防衛網については、米国と日本のこれはまさに共同対処的なミサイル防衛であります。そして、その一翼を担ってもらうかもしれない米艦に対する攻撃は、攻撃をした後、まさに我が国に災いが及んでくる、あるいは戦火が及んでくると考える、推測し得るわけであります。それで、三要件は成り立つであろう。

 しかし一方、いわばかつての法制局答弁による場合は、推測するのではなくて、これはもう明らかでなければならないわけであります。ですから、先ほど私が申し上げたのは、米艦を攻撃した後、日本の船を攻撃するよと……(長妻委員「岡田さんのとき、言っているんです」と呼ぶ)

 いや、それは公言しているのではないんですよ。それは、そう推測できるということです。公言しているのは火の海にするということで、先ほど御紹介したことも、いわばそれは推測し得ると言っているわけでありまして、それは推測し得るというよりも、明言しているというふうには申し上げておりませんよね。明言する国なんてないんですから。米艦を攻撃した後、日本の船を次は攻撃するよという明言なんか、普通はしませんからね。ですから、あくまでも我々としては、それは十分に推測し得るから、そこでは三要件に当てはまってくる、こういうことで申し上げた。

 しかし、それを個別的自衛権で、個別的自衛権の着手にしようということは、これはよりハードルは高くなるわけであります。だから、私が申し上げたのは、いわば、それを相手国が公言する、米艦を攻撃した後は日本の艦艇を攻撃しますよということを堂々と発信している、国際社会に向かって発信をしていれば、それは個別的自衛権の着手となり得る、しかし、なかなかそういう状況にはなり得ないのではないかということを申し上げているところでございます。

長妻委員 ですから、私は何も無理やりこれに押し込めるとか、そういう発想じゃないですよ。だから、今までの着手という概念をきちっとやはり整理して、整理しない前に、できない、できない、そういう前段ではじいて、何か集団的自衛権という名前ありきで、それを導入してやっていこうということではないとは思いますが、そういうふうに疑ってしまうんですよ。

 それで、次に、外国の領域での武力行使でありますが、ちょっとてんびんの図を描いてみましたけれども、結局、さっきも質問がありましたけれども、存立危機事態を排除する、排除するということにおいて必要最小限の武力行使を使うわけですよね。存立危機事態が排除できないような小さい武力行使だったら意味ないわけですよ。自衛官だって気の毒なわけですよ。存立危機事態を排除することができる武力行使で、必要最小限なんです。

 憲法上の要請という話がありますけれども、個別的自衛権のときは、これは我が国に対して武力攻撃があるわけですから、火の粉を払うわけです。我が国に敵が来るわけですから。あるいは、ミサイルが飛んでくる、我が国に来るわけです。ですから、その火の粉を払っていくということで、必要最小限は、海外の領域には一般に行かない、こういうことだったと思うんです。

 今度は、存立危機事態というのは、我が国に火の粉はない、ドンパチがないわけです。他国で、どこかでドンパチがあって、火の粉があって、そのもとを断たなければ、存立危機事態、これが排除できないということでありますから、私は、集団的自衛権の場合は、海外の領域での武力行使というのが、むしろそれが一般的だ、そういうふうに思うんですが、いかがですか。

中谷国務大臣 おっしゃるように、存立事態というのは、まず、他国に対する武力攻撃が発生した、そのままでは、すなわち、その状況のもとに武力を用いた対処をしなければ、国民に、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であるということでございまして、そこで三要件を考えて、その要件に合致する場合においては存立危機事態として対処するということでございまして、当然のことながら、必要最小限度という制約のもとに発動するということでございます。

長妻委員 いやいや、私が聞いているのは、ですから、存立危機事態、集団的自衛権の場合は他国でドンパチがあるわけで、それを排除するための武力行使ですから。

 では、存立危機事態を排除できない、つまり、他国の領域で上陸作戦をする、あるいは空爆をする、これをしなければ、これをしなければ存立危機事態がどうしても排除できない場合、そういう場合は、武力行使は、必要最小限ですよ、これを排除する範囲内で他国の領域で活動するということはできるわけですよね、法理上も。

中谷国務大臣 武力行使を目的として武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣するいわゆる海外派兵、これは、一般に自衛のための必要最小限度を超えるものであって憲法上許されないといたしておりまして、このような考え方は、この新三要件のもとに集団的自衛権を行使する場合においても全く変わらずに、この新三要件から論理的、必然的に導かれるということでございます。

長妻委員 いやいや、では、その場合、武力行使が小さいから、他国の領域に行かなければ目的を達成できない、つまり存立危機事態を排除できない武力行使をするということで、結局、存立危機事態はそのまま継続する、それでも仕方がない、こういうことでいいわけですね。

中谷国務大臣 従来から御説明しておりますが、海外派兵、これは一般に禁止をされております。

 その上において、自衛のための必要最小限度を超えるものは憲法上許されないということでありまして、自衛のための必要最小限度ということを考えて対応するということでございます。

長妻委員 では、存立危機事態はそれでは排除できない場合は仕方がないということでいいわけですね。

安倍内閣総理大臣 例えば近隣で紛争状態になる、そこで例えば米国が戦闘を行っているということが考えられます。しかし、その近海において、いわば我々は、存立危機事態において、米艦を防護する、あるいはまた避難してくる邦人を乗せている外国の船を守るということは、三要件に当てはまればこれは行うわけでございます。

 しかし、そもそも、紛争のもとに、我々は、他国に、紛争のもとである他国の領海、領空に入っていくということについては、先ほど来、武力行使を目的として中に入っていって戦闘を行うということは、一般に禁止されている海外派兵に当たるからそれは行われないということであります。

 それで、我が国だけが戦っているわけではそもそもないわけでありまして、当然、これは米国がそのもととなる国のいわば武力行使に対して対応しているわけでありまして、そして、そこでこれがおさまれば、これは当然おさまるということになるわけでございます。

長妻委員 とすると、存立危機事態が続いてしまうというのはこれはよくないわけでありますから、武力行使、他国の領域で武力行使をしなければ存立危機事態は排除できない、こういう場合は、他国の領域には日本は行かずに、日本は公海上であくまでとどまって、他国の領域分は、どこかの国、アメリカとか他国にお任せをする、こういう切り分けをする、こういうお話なんですか。

安倍内閣総理大臣 まさに今、存立危機事態という事態が起こっていることはよくないというところまでは認めていただいたのかな、このように思います。

 そして、それが、何もできないというのが現在の状況であります。何もできない、事実上何もできないと言ってもいいという状況だろうと思います。しかし、今度は、まさにこの法制によって、先ほど申し上げましたように、米艦を、我々は同盟国である米国の船等を守ることができるということになるわけでございます。

 しかし、同時に、海外派兵は一般に認められないという原則は変わらないわけでありますから、できることには限度がある、限界があるということであります。

 しかし、できることには限界はあるわけでございますが、当然、ここまでできるということになれば、さまざまなオペレーションにおいて協力が十分に可能になってくるということになるわけでありまして、いわば邦人の退避についても、これは、全体的なオペレーションについて最初から日本も加わる中で、有効的な、効果的な、かつ合理的な退避も十分に可能になってくる、こういうことでございます。

 つまり、繰り返して申し上げますと、当然、これは憲法との関係で、法律を超えたことはできないのは当然のことではないかと思います。

長妻委員 そうすると、もう一回ちょっと、総理、明確にしていただきたいんですが、存立危機事態を排除できない、他国の領域に行かなければ排除できないような事態の場合は、日本はあくまでも公海上に原則とどまって、他国の領域については、ほかの国、アメリカとかあるいはほかの国にお任せをして、そちらはそういう形で役割分担をする、基本的な考え方はそういうことですか。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

安倍内閣総理大臣 武力行使においては、そうでございます。

 もちろん、これは存立危機事態と重要影響事態が合わさる場合もありますから、重要影響事態で我々が行う行為については、これは武力行使ではない、後方支援ということでございますが、しかし、武力行使を行う存立危機事態においては、先ほど申し上げましたように、武力行使の目的で自衛隊を送って、そして戦闘を行うということはできないということは、もうこれはずっとこの委員会で答弁をしてきているとおりでございまして、それはもう何回も何回もここで申し上げているとおりでありまして、一貫した我々の答弁であるということは申し上げておきたいと思います。

長妻委員 であれば、今のような形にやはり法的な歯どめをかけるということも私は必要だと思います。

 最後に。

 安倍総理宛てに昨日沖縄県議会から抗議決議というのが来ておりまして、例の自民党本部で開催された勉強会において、「自民党議員らの「沖縄の特殊なメディア構造をつくってしまったのは戦後保守の堕落だ。」、「左翼勢力に乗っ取られている。」などの発言は、報道機関だけでなく、読者である沖縄県民をも侮辱するもので到底、看過できない。」というような趣旨がるる書いてあって、最後に、「よって、」「発言の撤回と県民への謝罪を求めるものである。」というようなことを、安倍総理宛てに、自民党総裁に出ているんですが、これは、発言の撤回と県民への謝罪、総理、それを指示されますか、あるいは総理が県民に謝罪されるんですか。

安倍内閣総理大臣 今挙げられました決議書なるものを私はまだ拝見をしておりませんから、よく見てから本来コメントすべきであろう、このように思うところでございます。

 いずれにいたしましても、先般の勉強会における発言が極めて不適切であったことは先ほど申し上げたとおりでございまして、大変国民の皆様に対しましても申しわけない気持ちでございますし、沖縄に対して我々自民党が長年行ってきた沖縄振興あるいは基地負担軽減への努力を水泡に帰すものであり、大変残念であり、そして、そういう沖縄の皆様のお気持ちを傷つけるとすれば申しわけない、このように思っているところでございます。

長妻委員 私が申し上げたのは、発言の撤回を求めるというふうにありますので、総理がその議員に対して発言の撤回を求めていく、こういうこともされるというふうな理解でいいんですね。

安倍内閣総理大臣 まだ私はそのものを読んでおりませんので、どういう文面になっているか確かめさせていただきたいと、いずれにいたしましても思う次第でございます。

 そして、その上で申し上げれば、もう既に当該勉強会で行われた発言については、党として、それぞれの議員を呼んで谷垣幹事長から処分を通告した、このように承知をしております。

長妻委員 時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、我々民主党の考え方というのは、近くはより現実的に、守りをさらに固めていく。そのための自衛隊法の改正、領域警備法など、これも昨年国会に提出をいたしました。

 そして、遠くは抑制的に。今の自民党の集団的自衛権であると、これは要件さえ合えば地球の裏側まで米軍と自衛隊が武力行使が可能になる。これは幾ら何でもやり過ぎではないか。

 そして、人道支援は積極的にやるというようなことで、我々は周辺事態法も充実をしてまいります。そして、PKOについても、任務を一定程度拡大してこれまでの懸案を解決する、こういうような考え方を持っております。

 日本は、防衛費でいえば、英国、フランス、ドイツとほぼ同じなんですね。そういう意味では、守りを固めるための工夫というのもしないといけないし、何よりも人道支援やソフトパワー、これについて、やはり人的交流を海外ともっと積極的に展開をしていく。

 外国人の留学生の受け入れは、我が国は年間十四万人、米国八十八万人、中国三十五万人、ドイツ二十八万人、フランス二十九万人。非常に交流が少ない。国連の職員も、我が国は二百五十五人、米国が二千六百人、中国四百五十人、ドイツ五百十六人、フランス千四百八十四人。相当お金を出しているのにこれだけ数が少ない。留学生の送り出しの数も、日本は年間三・四万人、ドイツ十一万人、中国七十万人。ODAも、かつては一位でありましたけれども、今は相当下になってしまいました。

 やはり、日本の戦後七十年の平和ブランドを保ちつつ、米国と価値観は全く一緒ではないわけですから、それぞれ役割分担をして、地域の安定と世界の秩序を維持していく必要があると思います。

 私は、ドイツとフランス、隣国で、かつてかなり何度か戦争があった、これを乗り越えるためにお互いの若い人たちが七百万人交流計画というのをやって、ホームステイとか留学で本当に七百万人達成した、そして国境警備隊も両国の人たちが一緒に警備をするようになって、今は一定程度友好になっているわけでありますから、我が国も、中国、韓国と、多くの若い人たちの人的な交流をするなどなどのソフトパワーも我々は高めていく必要があるということを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)委員 民主党の後藤祐一でございます。

 集団的自衛権について質問したいと思いますが、二月十六日の衆議院本会議において、我が党の岡田代表の質問に対して、安倍総理は、集団的自衛権の具体例として、アメリカの艦船による日本人、邦人の輸送と、ホルムズ海峡における機雷掃海を挙げました。この二つについて聞きたいと思います。

 まず、一つ目のパネルであります。

 これは、昨年の七月一日、閣議決定をしたときに、総理が国民向けに記者会見するときに使ったものそのものでございます。

 去年七月一日、この場で、総理は、海外で突然紛争が発生し、そこから逃げようとする日本人を、同盟国であり、能力を有する米国が輸送しているとき、日本近海において攻撃を受けるかもしれない、我が国自身への攻撃ではありません、しかし、それでも日本人の命を守るため、自衛隊が米国の船を守る、それをできるようにするのが今回の閣議決定ですというふうに発言しておられます。

 大事なことは、ミサイルが飛んでくるような絵は全く描いていないということにぜひ御注目ください。

 これに対して、六月二十九日、当委員会において法制局長官が、私はこれと全く同じ事例を挙げて、このように長官が答えています。

 「ミサイルのリスク」、我が国へのリスクです。「ミサイルのリスクは今ないという中で、」「アメリカは朝鮮半島の上でもう戦争に巻き込まれているという状態で、アメリカの船に日本人がたくさん乗っている、公海上で。この邦人輸送している米艦に対する攻撃、これだけで存立事態を満たすことが本当にあるんでしょうか。」というふうに私が質問したのに対して、「単に、邦人を乗せた米輸送艦が武力攻撃を受けるということで新三要件に当たるんだというふうにこれまで説明しているものではないのだろうと私は理解しております。」このように答弁しております。

 つまり、ミサイルが飛んでくるというリスクが今ない中で、邦人を輸送している米艦に対する攻撃だけでは集団的自衛権の行使はできない、そういう形で攻撃することはできないという答弁を法制局長官がされておられます。

 つまり、去年の七月一日の安倍総理の記者会見における発言、そして、このパネルは間違いだったんじゃないでしょうか。この関係について、総理から御説明をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 これは、後藤委員が少し混同されているんだろうと思います。

 私が記者会見でお見せをしたこのパネルは、まさにこういう状況になったとしても我々は助けることができませんねという、まさにこの問題意識を皆様に共有していただこうとしたのでございます。このパネルをお見せしたのが五月十五日の記者会見であっただろうと思います。そして、その後、我々は七月一日に閣議決定を行います。つまり、閣議決定に向けて、こういう問題がありますねという、いわば課題についてお話をした。そして、それは安保法制懇でも議論したことであります。

 そして、これはまさに守れないというのが事実であります。しかし、それを守り得る状況にするために、我々は、今回、新三要件というものをつけて、そして四十七年の見解の上において、この三要件に当てはまればこのケースでも守ることができるということであります。

 そして、このケースを見れば、大体これは全部ここに細かくどういう状況という条件はもちろん書いていません、パネルですからね。

 ですから、こういう条件、こういう事態が起こり得るというのはどういう事態かといえば、近隣諸国において紛争が起こる、あるいは、Aという国がBという国を侵略する、侵攻作戦を展開するということはあり得るわけであります。そういう中において、米国が侵攻された国を助けるということになるわけでございます。そこで米国に対する武力攻撃は発生するわけでございますが、同時に、その侵攻を受けた国から、邦人を含め多くの外国人が避難をしてくるわけでございます。そして、その避難先としては、基本的には日本に避難してくるということが想定されるわけでございます。そして、想定される日本に避難をしてくる。しかし、その国がその後、いわばまさに日本とを結ぶ海峡自体の封鎖を図る、あるいは、さらには日本への侵攻の可能性が出てくるということが十分に推測されるわけでございまして、その推測等々、これはもう今まで何回も説明をしているとおりでありまして、三要件に当てはまるということはそういうことであります。

 その規模、意図、様態等々を見るということは申し上げているとおりでありまして、私は、これだけで武力行使をすると言ったことは一回もないわけであります。

 これができないということは問題であろうという問題意識のもとに、我々は三要件を付し、そして、三要件の第一要件とは何かということは今まで申し上げてきたとおりでありまして、その三要件に当てはまれば当然我々は武力行使をすることができるわけでありますから、こういう状況の中において我々は守ることができるということであります。

 繰り返しになりますが、まさに三要件に当てはまるか当てはまらないかが大切だろうということを申し上げさせて……(後藤(祐)委員「長い。もう今ので十分です。答弁いただいています」と呼ぶ)なるべく簡潔に答弁したいとは考えておりますが、わかりやすくお話をさせていただきました。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

後藤(祐)委員 今のはわかりやすいと思うんですよ。ただ、ちょっと長いですね。

 もう一度確認します、総理。

 ミサイルが飛んでくる危険性はない中で、邦人を輸送している米艦に対して攻撃国が攻撃する、これに対して日本がこの攻撃国を攻撃することは、存立事態として認定することはできないということでよろしいですね。

安倍内閣総理大臣 この事例については、既に二月十六日の衆議院本会議における答弁を含め、従来より政府は一貫して、我が国近隣で武力攻撃が発生し、米国船舶が公海上で武力攻撃を受けている、攻撃国の言動から我が国にも武力攻撃が行われかねない、このような状況においては、取り残されている多数の在留邦人を我が国に輸送することが急務になる、そのような中、在留邦人を乗せた米国船舶が武力攻撃を受ける明白な危険がある場合は、状況を総合的に判断して存立危機事態に当たり得るということでございます。

 これは従来より一貫をしているわけでございまして、先ほど答弁をさせていただいたとおりであります。

後藤(祐)委員 はっきりお答えください。攻撃国の言動から我が国にも武力攻撃が行われかねないという話は別にしておいて、今そんなことはここに描いていないんですから。

 ミサイルが飛んでくるということは今可能性としてないという中で、単に邦人を運んでいる米国艦船に対する攻撃国からの攻撃があったとき、これに対して日本が反撃できるかということだけについて言うと、これは存立事態は満たさないということでよろしいですね。この中に描いていないことを条件に加えないでください。これについてお答えください。これに対して法制局長官は無理だということを答弁しているんです。

安倍内閣総理大臣 存立危機事態を判断するに当たっては、さまざまな要素を考慮して総合的に判断するということは先ほども申し上げているとおりでございます。

 先ほど申し上げましたように、まさにそういうことを行うことができないということについて我々は五月の十五日にお話をさせていただいたわけでございます。そして、法制をする上で、閣議決定を七月の一日に行って三要件を付したわけであります。

 我が国近隣における武力紛争の発生といった前提条件がなければ米国船舶による邦人の輸送を行うことはないわけでありまして、一連の事態の一部だけを取り出すのは現実にもそぐわないであろう、このように思うわけであります。

 つまり、この絵の事態から想定されることは、まさにA国がB国に侵攻し、そして、その侵攻を食いとめるために、米国が同盟上の関係で侵攻を食いとめる側に回っている。そういう中において、当然……(後藤(祐)委員「質問にお答えください。長いだけで質問に答えていない」と呼ぶ)いや、だから答えているんですよ。その中において、日本にもこの戦火が及ぶ可能性というのは当然想定されるわけで、当然想定され……(後藤(祐)委員「だから、それが想定されない場合について聞いているんです」と呼ぶ)それは、そういう仮定をいろいろ置かれて一々答弁するということは困難でありますが、基本的には三要件、三要件に当てはまるかどうかということであります。

 そして、このパネルを用意したのは、特定の国は名指しをしないわけでありますが、しかし、ある種の想定の中においてお示しをしているわけでございます。その想定の中で考えていただければ、想定の中で考えていただければ、そこで発生した事態が我が国にも及んでくるということは十分に考えられるわけでございますが、今申し上げましたような事例については、我が国に対する武力攻撃が発生していないので、これまでの憲法解釈では邦人を乗せた米国船舶を守ることができなかった、それでよいのかというのが問題意識でありまして、その上において我々は三要件を示しているわけでありますから、この三要件にのっとって、当てはまるかどうか。

 つまり、この事例だけが単独で存在し得るわけではなくて、その……(後藤(祐)委員「この事例を国民に示したんでしょうが」と呼ぶ)わかりやすく示したわけでありますが。

 同時に、同時に今まで、今までずっとここで答弁をさせていただいているのは、まさに三要件について当てはまればどうかということで、この事例が三要件に当てはまれば、この事例が三要件に当てはまれば、当然これを守ることができるということであります。(後藤(祐)委員「これが当てはまるかどうかと聞いているんですよ」と呼ぶ)

 それは、当てはまるかどうかについては、まさに総合的に判断するのは、後藤さん、当たり前じゃないですか、それは。これを、先ほどの私の説明がなぜ理解できないのか、私は理解できないのでありますが、まさに延々と我々は議論を行ってきて、安保法制懇で議論を行ってきて、どういう課題があるのかということでまさにこの課題を申し上げたわけでありまして、そこで、この人たちを助けられなくていいのかどうか。(発言する者あり)これはミスリードでも何でもありません。これが三要件に当てはまる場合があるじゃないですか。これで三要件に当てはまれば、ですから……

浜田委員長 総理、そろそろ答弁を切り上げてください。

安倍内閣総理大臣 これで三要件に当てはまるということは、私も先ほど答弁でお話をさせていただいたとおりでありまして、これで三要件に当てはまるということにつきましては、まさに、申し上げたように、我が国近隣における武力紛争の発生といった前提条件がなければ米国船舶による邦人の輸送を行うことは、一連の事態の一部分だけを取り出すのであり、現実にはそぐわないということであります。

浜田委員長 答弁者にも簡潔に願いたいと思います。それでまた、不規則発言には答えないように。

 そして、質疑者には、委員長の許可をとってから発言するように願います。

 そしてまた、不規則発言に答えてしまうので、総理も不規則発言には答えないようにしていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。多分聞こえていると思いますので、そのようにしたいと思います。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 簡潔に後藤委員には質問をいただき、総理には簡潔にお答えをいただきたいと思います。できるだけ冷静にお願いをいたします。

後藤(祐)委員 もう一度質問します。

 攻撃国から、まだ、日本に対して攻撃される、ミサイル等で攻撃される、そういった兆候などはない状態で、ただ、この攻撃国と、例えばアメリカが既に別のところで戦争に入っているという状態の中で、日本人を運んでいるアメリカの船がこの攻撃国から攻撃を受けたときに、日本はこの攻撃国に対して反撃できるんですか。

 これは、確かにいろいろな状況はあるかもしれない。最も攻撃しても差し支えないようないろいろな状況がそろっていたとした場合、しかしながら、この攻撃国は日本に対して直接ミサイル等で攻撃するという兆候はない場合に対して、この米艦を攻撃する攻撃国の船に対して日本が攻撃できるのかどうかをお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 我が国近隣で武力攻撃が発生し、米国船舶が公海上で武力攻撃を受けている、攻撃国の言動から我が国にも武力攻撃が行われかねない、このような状況においては、取り残されている多数の在留邦人を我が国に輸送することが急務になる。そのような中、在留邦人を乗せた米国船舶が武力攻撃を受ける明白な危険がある場合は、状況を総合的に判断して、存立危機事態に当たり得るという説明をしているわけでありまして、こうした必要な条件を省いていけば、こうした必要な条件を省いていけば、それは当たり得ないということも当然あり得るわけであります。

 いずれにいたしましても、それは、三要件に当たり得るかどうかということは我々はもう明白にお示しをしているわけでありまして、そして事例集で、その絵そのものには書いておりませんが、我々が出しているものについては、事例の概要ということを詳しく書いたものも同時に、これはそのときの責任者の小野寺大臣もうなずいておられますが、このように詳しく書いていて、こういう場合に当たり得る、こういうことを申し上げているわけでございます。

 パネルの中に全部これを書き込んだら、これはもう見えなくなってしまいますから、絵が見えなくなりますから、つまり、これとこれと詳しく見ていただくためには……

浜田委員長 総理、端的に願います。

安倍内閣総理大臣 全体のものをちゃんとつくっているということはあわせて申し上げておきたいと思います。

後藤(祐)委員 午後に続きをやりましょう。そして、明白な答弁を午後お願いいたします。

浜田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として外務省国際法局長秋葉剛男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 質疑を続行いたします。後藤祐一君。

後藤(祐)委員 午前中の審議がテレビが切れてしまっていたこともありますし、総理から長い答弁があったので、少し整理したいと思います。

 日本人を輸送しているアメリカの輸送艦に対して攻撃国から攻撃があった場合に日本は攻撃できるのかという件につきまして、このパネルは、昨年の七月一日に閣議決定した際、総理が記者会見のときに使ったもので、このとき総理は、海外で突然紛争が発生し、そこから逃げようとする日本人を、同盟国であり、能力を有する米国が輸送しているとき、日本近海において攻撃を受けるかもしれない、我が国自身への攻撃ではありません、しかし、それでも日本人の命を守るため、自衛隊が米国の船を守る、それをできるようにするのが今回の閣議決定です、こういう御発言をされておられます。

 これに対して、先ほど総理は、こういったときには今の法律だとできないんだということを言っただけであって、今度の法律でできるようになるんだというところまで言ったつもりはないというようなことをおっしゃっていましたけれども、これは、実はもう既にこの委員会では、この事例に関して法制局長官にお伺いをしたところ、単に邦人を乗せたアメリカの輸送艦が武力攻撃を受けるということで新三要件に当たるんだというふうにこれまで説明しているものではないという答弁をされておられます。

 国民の皆様にこの絵をよく見ておいていただきたいのは、北朝鮮が日本を直接攻撃するリスクは、ミサイルというのがやはり一番危険なわけでありまして、例えばミサイルが飛んでくる明白な危険があるという状態であれば、これはまた随分事情が違ってくるわけでありますが、今、ミサイルが飛んでくる明白な危険はないという中で、この絵の中にもありません、七月一日にも、総理の説明にもありません、という中で、いろいろな条件が整っている、だけれども、ミサイルが飛んでくる明白な危険はない中で、このような攻撃をアメリカの艦艇が受けたときに日本が反撃をできるのでしょうか。

 午前中の答弁では、存立事態に当たり得ないこともあり得るという答弁でございましたけれども、これだとよくわかりません。当たることがあり得るんですか、逆に。ミサイルで我が国に攻撃してくるリスクはまだない中で、この事例が存立事態に当たり得ることがそもそもあり得るんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 それはまさに、存立事態に当たり得るかどうかということは、これはもう新三要件でありまして、我が国に対する武力攻撃が発生したこと、または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があることでございまして、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、こういうことでございます。

 そして、それはどういう事態かといえば、他国に対する武力攻撃が発生した場合において、そのままでは、すなわち、その状況下、武力を用いた対処をしなければ、我が国の国民に対し、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であるということでありまして、この要件に該当するか否かは、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民がこうむることになる犠牲の深刻性、重大性などから判断をするわけでございまして、まさにこの三要件に当てはまればそう判断するし、そうでなければそう判断しない、こういうことになります。

後藤(祐)委員 もうこれは四回も五回も聞いて、答弁しないから再度整理して聞いているんですけれども、このような条件のときに、ミサイルが飛んでくる明白な危険はない中で三要件を満たすことがあり得るんですかと聞いているんです。ちゃんと答弁してください。既にあるお経のようなことを唱え続けるのでは、国民の理解は進みませんから。こういう限界事例について、明確にわかる形で質問しているんですから。しかも、これは一回やったことですし、全部通告もしているんです。

 答えにくいのはよくわかりますが、ミサイルで日本が攻撃される明白な危険はまだない中で、邦人を輸送している米艦に対しての攻撃に日本が反撃することが存立事態に当たり得ることがあり得るんですか。

安倍内閣総理大臣 今、委員はミサイルだけを例として挙げられましたが、ミサイルだけではないわけでありまして、潜没潜水艇等も保有をしているわけであります。そして、この潜没潜水艇等は、特定の国ではございませんが、潜没潜水艇等を保有している可能性も高いわけでありまして、そこに力を入れている。そして、その潜没潜水艇に乗せ得る特殊部隊、工作員もいるわけでございます。そうした部隊を日本に派遣し、首都で大規模なテロを行うということも考えられるわけでございます。その中において、こうした事態が発生し得る。つまり、ミサイルが顕在化をしていなくても、そうしたものも起こり得るわけでございます。

 と同時に、ミサイルは既に保有をしているわけで、ミサイルは既に保有しているという中においては、しかも、当面それを明確に日本に発射するという意図は持っていなくても、射程においては明白に日本を射程に入れているというものであれば、そこで、そういう意図を表明していなくても、さまざまな情報で判断し得ることは、これは三要件に当てはまるかどうかということであります。

 繰り返しになりますが、ミサイルという要素を抜いてもほかの選択肢を持ち得るということで、今言った要件に当てはまるのであれば、これは該当し得る、このように考えております。

後藤(祐)委員 どうしても負けを認めたくないだだっ子という感じが非常によくわかります。

 法制局長官、六月二十九日に、これについては長官が答弁しておりまして、「ミサイルのリスクは今ないという中で、」「アメリカは朝鮮半島の上でもう戦争に巻き込まれているという状態で、アメリカの船に日本人がたくさん乗っている、公海上で。この邦人輸送している米艦に対する攻撃、これだけで存立事態を満たすことが本当にあるんでしょうか。」という私の質問に対して、法制局長官は、「ちょっと、お尋ねの条件だけでそれは満たし得る、満たすことがあるんだということまでは言えない」と答弁しております。よろしいですね。

横畠政府特別補佐人 やや誤解されている疑いもあるのでございますけれども。

 私がお答えいたしました趣旨は、この事例といいますのは、当初より、攻撃国の言動から我が国にも武力攻撃が行われかねない状況であるということを前提としての事例であると私は理解しているわけでございます。

 お尋ねは、我が国に対するミサイル攻撃が想定されないという御質問でございましたけれども、私がお答えいたしましたのは、まさに、ミサイルに限らず、攻撃国の言動から我が国にも武力攻撃が行われかねない状況であるというその前提を抜きにして、単に邦人を輸送している米艦に対する攻撃のおそれということで存立危機事態に当たるという認定をしようということをこれまでも申し上げているわけではないということを申し上げたわけでございます。

後藤(祐)委員 総理、今の答弁でよろしいですか。

 つまり、我が国に対して、ミサイルその他の、先ほどの潜没潜水艇ですとか、ほかの、日本に対して直接攻撃国が攻撃する手段、これで日本が攻撃される明白な危険はないという前提があった場合に、日本が、邦人を輸送する米艦に対する攻撃に対して反撃することができるんですか。今の法制局長官と同じ見解でよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 まさに、今法制局長官が答弁されたのは、さまざまな要素を考慮して総合的に判断することを申し上げているところであり、その判断要素のうち一つだけを取り出しても、それだけで存立危機事態には該当しないということだろう、こう思うわけであります。だからこそ、だからこそ総合的な判断が必要であろう、こう思うわけであります。

 そこで、意図も、日本は絶対に攻撃しませんよという意図を明確にしていて、実際にその能力は全くない。今、これはわかりにくい議論でございますが、例えば北朝鮮ということを想定してもしおっしゃっているとすれば、それはなかなか全ての要素を省いていくということは難しいのではないか。北朝鮮ではなくて、ある全く架空の国があったとして、その国は、ミサイルも持っていませんよ、日本に対して攻撃する能力、特殊部隊もありませんよ、潜水艦もないということでなければ……(後藤(祐)委員「関係ないことを長く答弁しないでください」と呼ぶ)ということを今おっしゃろうとしているわけですよね。そういう非常に架空なことであれば、それは想定し得ないということになるわけでありますが。

 北朝鮮ということを念頭に置けば、今、後藤委員が……(後藤(祐)委員「ちょっと午前中から、これは長い、幾ら何でも」と呼ぶ)これは今、私はあえて例として挙げているわけでありますから聞いていただきたいと思いますが、北朝鮮という例を挙げれば、それはなかなか、今後藤委員がおっしゃっているようなことは成り立たないのではないか、このように思います。

後藤(祐)委員 最後のところ、成り立たないと。つまり、ほかの手段で日本が攻撃されるということはない……(安倍内閣総理大臣「いやいや、後藤さんがおっしゃっていることは成り立たない」と呼ぶ)ああ、そうですか。

 では、もう一回聞きましょう。

 日本に対する攻撃手段が潜没潜水艇ですとかミサイルだとか、こういったもので日本が攻撃される明白な危険はないという中で、単に邦人を輸送している米艦に対して攻撃がなされるといったときに反撃すること、これだけ取り出してみると、存立事態を満たすことはない、集団的自衛権の行使はできないということでよろしいですか、これだけ取り出してみた場合に。

安倍内閣総理大臣 今私が申し上げているのは、北朝鮮ということをもし例として挙げれば、そこで、今後藤さんがおっしゃったように、ミサイルも撃ちませんよ、潜没潜水艇が活動することもありませんよ、工作員が活動することもないということを、例えばそういう事態があす起こったとして、それは当然言えないだろうということを申し上げているわけでございます。

 そうではなくて、そういう能力をそもそも持たない国と仮定をしなければならないわけでありまして、後藤さんがおっしゃっているのは、まさにそういう能力を全く事実上持っていない国であって、日本に対してそういう蓋然性の全くないという国が存在するのであれば、存在するのであれば、当然これは該当しない場合もあるわけであります。

 まさにそういうことを判断するために三要件があり、先ほど申し上げましたような意図とか規模とか態様とか、そういうものを見ていくということになるわけであります。

後藤(祐)委員 該当しない場合があるではなくて、該当することがあり得るんですかと聞いているんです。

安倍内閣総理大臣 該当するかどうかは、今申し上げておりますように、その規模とか能力とか意思とか様態とかそのときの国際情勢とか、それを総合的に判断しなければならないわけであるということを申し上げているわけでありまして……(後藤(祐)委員「全ての条件がそろっているときに該当することはあり得るんですか」と呼び、その他発言する者あり)

浜田委員長 後藤祐一君。

後藤(祐)委員 我が国に対して、ミサイルですとか潜没潜水艇ですとか、直接攻撃国が攻撃する手段は、今のところ明白な危険はない、明白な危険はないという中で、邦人を輸送している米艦に対する攻撃は、存立事態を満たすことがあり得るんですかと聞いているんです。

安倍内閣総理大臣 しかし、今おっしゃっているのは、そうすると、では、具体的な問題とかをおっしゃれば、具体的に一つ一つ潰していく必要があると思いますよ。ミサイルがなくて潜没潜水艦がなくても、航空機がある場合もあるわけでございます。(後藤(祐)委員「そういったものが全てない場合の話を聞いているんです」と呼ぶ)

 全てというのは、武力を一切持っていない国は、いや、武力を持っていない国がいわば侵攻も、米国も攻撃できないと思います。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 もう一回答弁してください。安倍内閣総理大臣。

安倍内閣総理大臣 この後藤委員の設定が果たしてあり得るかという設定でありまして、我が国近隣、まず近隣ですね、近隣の国であって、そして、ミサイルや潜没潜水艇や特殊部隊はあるけれども、それは日本に使わないとこれは宣言しているということですか。宣言を……(後藤(祐)委員「明白な危険がないということです」と呼ぶ)

 明白な危険がないということをどのようにまず判断するかということ、危険がないかということをどのように判断するかということでありますが、これを判断する上においては、まさに先ほど申し上げましたような三要件で判断をするわけでありますし、意思と能力があるわけでありまして、その意思と能力と、プラス規模や様態等を判断して対応するわけでありまして、これは、個別的自衛権においても、どのような状況で個別的自衛権を行使するかということをこんな個別に我々は述べたことは当然ないわけであります。

 それは、さまざまな国際情勢の中で起こり得る武力攻撃というのは、全てが想定の範囲には入らない中において、今ここで確定的に、これとこれの場合はやらないということになれば、その意図を隠してそういう攻撃をした場合は、いわば、我々はその答弁に引きずられるということにもなりかねないわけであります。

 それは、隠されているかどうかということについて我々はさまざまな形で知り得る、いわば、そういうことを、日本に対して攻撃をしないよと言っていながら、実はそういう用意をしているということは当然あり得るわけであります。かつては拉致作戦なんというのは全くやっていないということを言っていて、しかし、実はやっていたということもあったわけでございまして、つまり、実際にそういう能力や意図があるかということをこれは総合的に判断をしなければお答えのしようがないということであります。

後藤(祐)委員 どうしても負けを認めたくないという性格がよくわかりますが、では、ちょっと……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

後藤(祐)委員 では、総理が答弁した、ことしの二月十六日の衆議院本会議、岡田代表の質問に対してこの答弁をされておられます。これは午前中もこれと同じような答弁をされておられました。

 我が国近隣で武力攻撃が発生し、米国船舶は公海上で武力攻撃を受けている、攻撃国の言動から我が国にも武力攻撃が行われかねない、このような状況においては、取り残されている多数の在留邦人を我が国に輸送することが急務となります。

  そのような中、在留邦人を乗せた米国船舶が武力攻撃を受ける明白な危険がある場合は、状況を総合的に判断して、我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況に当たり得ると考えられます。

「明白な危険」が、一、上のところではなくて、二、下、すなわち「在留邦人を乗せた米国船舶が武力攻撃を受ける明白な危険」という説明を総理はされておられます。我が国に対して武力攻撃が行われる明白な危険がある場合は存立事態が認定されることはあり得ると思いますよ。ですが、この答弁のときは「在留邦人を乗せた米国船舶が武力攻撃を受ける明白な危険」という言い方をしているんです。

 質問します。この一の「攻撃国の言動から我が国にも武力攻撃が行われ」る明白な危険はない中で「在留邦人を乗せた米国船舶が武力攻撃を受ける明白な危険がある場合」に、存立事態を満たしますか。

安倍内閣総理大臣 それはつまり、日本人が乗っている船を破壊する、多数の日本人を殺傷するということを決意しているわけであります。当然、これはまだ確定的ではありませんで、ここで確定的なことを申し上げるわけにはいきません、総合的に判断するんですが、そこで多数の日本人を殺傷するということになる中において、日本との関係は極めて、日本との関係は極めて悪化をし得るというのは、これは誰が考えたって明らかであろう、このように思います。それを決意した中において、さらに日本に対して攻撃を行うという危険性は極めて高いと考え得るのではないでしょうか。

 日本に、いわば逃れて、戦火を逃れて帰ってくる人々、これを破壊するということであります。つまり、事実上、それは海峡を封鎖しようということにもつながってくるわけでございまして、そういうものを、そこの人の行き来をいわば途絶えさせるためにそれを攻撃するということも考えられるわけでありますから、そういうことを総合的に判断しなければいけないということであります。

 後藤さんがおっしゃっているように、物事をこれとこれとこれという、単純に見るのではなくて、むしろそうすることは判断として誤るわけでありまして、正しい判断というのは、つまり情報を総合的に収集しながら、意図とは何か、そして能力を考えながら、そして、そうしたことを、攻撃をするということはどういう意味を持つかということでございます。

 そして、先般も、私の答弁においては、「我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況に当たり得る」、こう考えているわけでありまして、一〇〇%当たると言っているわけではありませんが、「当たり得る」、こう申し上げております。当たり得る上においては、今申し上げましたような意図や規模等、能力等を総合的に判断した結果、当たり得る、そうであれば当たるということではないかと思います。

後藤(祐)委員 もう少し答弁を短くしていただきたいんですが、今の総理の答弁は、この二の「明白な危険」があると一が明白な危険になるかもしれないと。要は、在留邦人を乗せたアメリカの船が攻撃されると、日本との関係が悪化して、さらにこの攻撃国は日本に対して攻撃をする可能性が出てくるかもしれない、つまり一の武力攻撃が行われるリスクが出てくるかもしれない、だから存立事態を満たすんだという御説明。かなり苦しいですね。

 つまり、要するに、一の、我が国に対する武力攻撃が行われる明白な危険が発生しないと存立事態は認められないんじゃないんですか。そして、我が国に対する武力攻撃が行われる明白な危険が発生すれば、別に邦人を乗せた船があろうとなかろうと関係ないじゃないですか。我が国に対してミサイルが飛んでくる明白な危険がある、あるいは先ほどの潜没潜水艇でもいいですよ、この攻撃国が日本に対して持ち得るあらゆる攻撃手段、これが、我が国に対して武力攻撃が行われる明白な危険が発生すればそれだけで存立事態は認定できるのであって、邦人を乗せたアメリカの船があろうがなかろうが、そこに対して攻撃をされようがされまいが、存立事態の認定に関係ないんじゃありませんか。

安倍内閣総理大臣 存立事態においては、まさに、これはこういう状況になっても集団的自衛権の行使が禁じられていますから、我々は守ることができませんねということで申し上げているわけでありまして、今般の法改正を行わなければ、それはできないままであるということはまず申し上げておきたいと思います。

 そして、それとは別に、存立事態かどうかということについては、確かにこのパネルで示している状況にならなくても、三要件に当てはまればそれは存立事態になり得ます。存立事態に既に認定していれば、こういう状況になれば我々は助けることができる、こういう論理でございまして、御理解をいただけるのではないかと思うわけでございます。つまり、既に存立事態状況になっていれば、我々はこうした事態においても守ることができる、そのための、日本人を守るための武力行使を行うことができる状況にはなっている、こういうことではないか。

 こういう状況でなければ存立事態にならないということを申し上げたことは今までは一度もないわけでございまして、まさに三要件等々の要件が満たされれば存立事態になる。存立事態といういわば事態を設定して、私たちが国民の命や幸せな暮らしを守るために武力行使ができなければ、こういう方々も命を落とすことになってしまうということを申し上げたいわけであります。

後藤(祐)委員 何度聞いてもこういう形なので、委員長にお願いしたいんですが、この岡田代表の質問に対する安倍総理の答弁で、この一の「攻撃国の言動から我が国にも武力攻撃が行われかねない」明白なリスクがない中で「在留邦人を乗せた米国船舶が武力攻撃を受ける明白な危険がある場合」に、存立事態を満たすことがあり得るのかどうかについて、政府としての見解を提出していただくよう理事会でお取り計らい願います。

浜田委員長 理事会で協議します。

後藤(祐)委員 長くなってしまいましたが、次に、ホルムズ海峡について触れたいと思います。

 ホルムズ海峡が機雷封鎖されました、そのときに集団的自衛権を行使するという話ですが、これももう既に月曜日に私は聞いておるんですけれども、湾岸戦争のときに既に、遺棄機雷になった、すなわち、ここで言う正式な停戦の後、正式に停戦になれば間違いなく機雷は遺棄されているということで、その後準備指示をして閣議決定をして出港、到着、一カ月かかります。それで掃海作業に入って、日本は掃海しております。

 今の法律では、一番下の段、事実上の停戦の段階で、事実上の停戦より前は、弾が飛び交っているような状態では掃海艇というのは掃海作業ができないということについては既に答弁いただいておりますので、事実上の停戦より後に対処基本方針を策定し、そして国会でまさにこういった議論をして承認をいただいて、これは時間がかかります。その後同じような作業になっていく。

 ですが、現行法で、湾岸戦争のときの遺棄機雷のようなことを、前倒しして、事実上の停戦の段階で準備指示をしたり閣議決定をしたり出港したり到着したりするのは、遺棄機雷を掃海しているわけじゃありませんから憲法上全く問題ないわけです。そうすると、一カ月かあるいは四十日程度前倒しができて、慎重にやるのであれば、ホルムズ海峡の手前ぐらいまで到着して正式な停戦を待って掃海作業に入れば、かなりの程度前倒しできて、恐らく集団的自衛権行使の場合よりも、国会承認だとかこういう手続は必要ないので、早く掃海に入れるのではないか。

 実際に、正式な停戦になる前の段階で、事実上の停戦の段階でも遺棄機雷とみなして掃海をすることが憲法上不可能というわけではないという答弁もいただいておりますので、これは、集団的自衛権を行使する際の三要件のうちの二つ目、ほかに適当な手段がないという要件を満たさないのではないか。

 つまり、現行の、遺棄機雷とみなして掃海艇を派遣すれば、事実上の停戦が起きた後に、現行八十四条の二で掃海すれば、集団的自衛権を行使しなくても掃海できるのではないか。これは他の手段がないという第二要件を満たさないのではないかということについて、岸田大臣は、まあ、これについてまず総理の答弁をいただきたいと思います。これは前回一回議論しておりますから、お二人の……(発言する者あり)岸田さんは別な話なんです。これは総理の御見解をいただきたいんです。岸田大臣は、もうこれは一回議論した話ですから。

浜田委員長 岸田外務大臣。

 その後に総理、答弁願います。

岸田国務大臣 まず、今の質問に対するお答えのポイントは、遺棄機雷と認定すること、これが現実問題、大変難しいというところだと思います。

 実際、一九九一年の例を挙げていただいておりますが、その当時、事実上の停戦と正式な停戦、ここに書いてありますが、この間の部分において、おっしゃるように、遺棄機雷という認定ができればそれに対応することはできるわけですが、現実問題において、この状況で遺棄機雷と認定することが大変難しいということで、当時、イギリス、フランス、イタリア、こういった国も、認定が難しいので、武力行使と評価されることを想定して、国連安保理決議を引用しているということであります。

 ですから、今、理屈の上においては御指摘の理屈は成り立つかもしれませんが、現実においては遺棄機雷の認定が大変難しいということであり、現実の対応は難しいので、武力行使と評価される場合においても対応する必要があるのではないか、こういったことを申し上げているわけです。

安倍内閣総理大臣 外務大臣から既に答弁をいたしましたが、つまり、実際に三要件に当てはまるかどうかということでありますが、そういう事態にならなければもちろんいいわけでありますが、遺棄機雷かどうかという認定が難しいということになれば、これはずっと遺棄機雷ではないという状況が続いていくわけでございまして、危機はそのまま残っていくということになるわけでありますから、我々は、それは外形上は集団的自衛権の行使、しかし、これは限定的であり受動的なものでありますから、海外派兵の例外としてこれは行うべき、三要件に当てはまれば行うことが適切であろう、こう考えたところでございます。

後藤(祐)委員 準備行為はできますよね。ちょっと答弁は求めませんが、実際に掃海作業に入るところは微妙な判断があるかもしれませんが、準備作業ができるだけで、行くのに一カ月かかるんですから、もうそれだけで一カ月前倒しできるんですよ。

 最後、ちょっと時間がないので。

 この前、岸田大臣がこういう答弁をしました。ホルムズ海峡に機雷がまかれた、これは全世界が掃海に行かなきゃいけないんです。

 日本は、今、掃海艦艇を二十七隻持っています。全世界には五百十一隻、日本以外に持っている国があります。私は、国際貢献の観点からは、今申し上げた、現行法ですぐにでも行くべきだと思います。

 ですが、どうしても集団的自衛権で行きたいというときには他に適当な手段がないという条件を満たさなきゃいけませんが、ほかの国の掃海艦艇で機雷掃海ができるとみなした場合には第二要件を満たすことは難しいのではありませんか、ほかの手段になってしまうのではありませんかという質問をしたところ、岸田大臣は、「こういった事態に当たって、我が国として何も対応しないということはあり得ない」とか、「我が国の国際的な掃海能力等を考えた場合に、他国とともに掃海に応じる、これは当然のことであると思います。」とか、精神論を述べておられる。

 これは大変怖いことでありまして、実際、この法律が成立してしまって、現実にこういう事態が起きたときに、第二要件というのは歯どめにならないということをまさに既に物語ってしまっているんですよ。この答弁は本当に維持するんですか。

 ほかの国が掃海艇を持っていて、ほかの国の掃海艇で掃海することができるとみなし得る場合に、ほかに適当な手段がないという集団的自衛権行使の第二要件をなぜ満たすことができるのか、もう一回答弁していただけますか。

岸田国務大臣 まず申し上げたいことは、要件は三つあります。第一、第二、第三、これは同時に満たされなければなりません。

 ですから、第一要件において、我が国の存立や国民の命や暮らしに明白な危険がある場合に、我が国としては、まず、あらゆる努力をしなければなりません。

 その上で第二要件についての御質問ですが、まず、機雷ということを考えますと、機雷は掃海をしなければずっとそこにとどまりますので、第二要件を満たす、この必要性を満たす際に、機雷を掃海するということは当然考えられます。

 そして、掃海を考える際に、御質問は、他国の掃海に任せることもあり得るのではないか、こういった御質問でありました。

 そして、その際に申し上げるのは、かつて湾岸戦争のときの掃海も、我が国は四隻掃海艇を出しましたが、合わせて三十隻の掃海艇が七カ月かけてようやく掃海ができる、こういった作業が想定をされます。その中にあって、我が国として、大変高い技術を持ち、実績を持つ我が国の掃海艇部隊が掃海に加わらないということ、我が国の国民の命や暮らしに明白な危険があるときに、そこに加わらないということは考えられないのではないか、当然、参加することが考えられるのではないか、こういったことを申し上げました。他国の掃海艇により機雷が掃海されることをもって第二要件を満たされるということはないと申し上げたわけです。

 そもそも、この第二要件につきましては、我が国の存立を全うし、国民を守るために我が国として講ずる適当な手段が武力の行使のほかにあるか否かを判断する、これが第二要件であると考えています。

 いずれにしましても、第一要件、第二要件、第三要件、これ全てを満たすことによって、我が国は武力の行使が可能となると考えています。

後藤(祐)委員 時間が来たので終わりますが、苦しいということが、非常によく国民の皆様におわかりいただけたんじゃないかと思います。またこの話は続きをやりたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 午前中から質疑を続けておりますけれども、まず枝野委員からは憲法論、また長妻委員からはいわゆる着手論、そして今、後藤委員からはホルムズそして周辺事態、周辺有事に係る法的論点について質問させていただきました。

 私は、きょう、ずばり南シナ海の問題をメーンテーマに取り上げてまいりたい、このように思っています。ぜひ、総理、正面からお答えをいただきたい、このように思います。

 まず、その前に、総理、以前も一度総理に伺ったことがありますが、どうもまた、ここへ来て、いろいろな自民党内のごたごたもあり、国民の皆さんのこの法案に対する理解が思いのほか進んでいない、深まっていない。総理は、この点、改めてどうお感じになっているか、お答えいただけますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 国民の皆様の理解が進んでいないことは大変残念なことでございます。

 今回の平和安全法制について申し上げれば、集団的自衛権の行使にかかわるものから、後方支援、あるいはまたPKOに至るまで、幅広い法制でございます。かつまた、憲法との関係、あるいは国際法との関係、さらには政策的判断、これが議論の中で混同しやすいのも事実でございまして、そうした、そもそも非常に複雑な法制ではありますが、しかし、まさに国民の命と幸せな暮らしを守るために、現下の我が国をめぐる安全保障状況においては、悪化する安全保障状況においては必要だということをわかりやすくこれからも訴えていきたい、そう考えております。

長島(昭)委員 私は、国民は二つの不安を抱えているというふうに思っているんですね。

 一つは、今、総理は、幅広い内容だ、複雑な内容だ、こうおっしゃいましたけれども、私たちから見ても、非常に手を広げ過ぎている。思い切り手を広げて、あれもやれる、これもやれるようにしよう、そういうところがありますので、国民の皆さんの中には、これは憲法上大丈夫なのかということから始まって、歯どめはきいているのか、あるいは、自分たちが意図していない戦乱に巻き込まれていく可能性があるんじゃないか、こういうやはり不安を抱えておられるんですね。

 私も以前、この委員会でお話をさせていただいたことがありましたけれども、私も毎週末、国政報告タウンミーティングをやって、いろいろな方のお話を伺って、なるほどな、こういうところに皆さんひっかかっておられるんだなということを感じたので、きょうは総理とぜひ共有させていただきたいと思っているんです。

 やはり七十年前の記憶というのは国民の皆さんの間に非常に深いものがあると思います。それはどういう記憶かというと、政府から正確な情報を知らされずに、とんでもないところに連れていかれてしまったという、国民の皆さんからするとですよ、そういうやはりトラウマのようなものがあるんですね、現にある。

 結果としては、三百十万人の同胞の命が失われてしまったわけです。二千万人以上のアジアの人々に損害を与えたわけです。国土は荒廃し、そして経済も完全に崩壊をしてしまったわけですね。

 そして、外地で亡くなられた方、これは戦闘で亡くなられた方ももちろん多いわけでありますが、その六割、七割近く、百四十万人の方が餓死で亡くなっているんですね。つまりは、補給や兵たんをほとんど考えずに、手を広げるだけ広げた結果がこの悲惨な敗戦だったわけです。そして、最終盤には四千人以上の若い命が特攻によって失われていった。

 これは深い傷となって、国民の皆さん、私たちは別に体験していませんけれども、私たちの祖父、祖母、あるいは親の世代からこういうことを語り継がれていますので、私は、やはり国民の皆さんの間に、安保法制ということになるとこういうふうに心理的に構えてしまうところがある、何とも言えない、不安を払拭できない、そういう思いがあるんですね。戦前と戦後は政治体制が違うといっても、これはなかなか国民の皆さんの深層心理には届かない、このように思っているんです。

 そこで、私たち民主党は、既に四月の二十八日、連休に入る前に、党内かんかんがくがくの議論をした末に、これは、日本を中心に、武力攻撃予測事態、周辺事態、そこから先のケース、こういうふうに広がっていくわけですけれども、私たちは、近くは現実的に対応しよう、先ほど長妻委員からも紹介がありましたけれども、我が国の領域についての警備はしっかりやろう、そして周辺における有事に対してはしっかり対応していこう、そのかわり、人道的な問題についてもこれも積極的にやっていこう。ただ、世界じゅうどこでも何でもできるような、そういうニュアンスのある今回の政府案に対して……(発言する者あり)そういう部分については抑制的に取り組んでいこうではないか、こういう姿勢を鮮明にしたわけです。

 そんなことないよと今やじがありましたけれども、後方支援も世界じゅうでできる、集団的自衛権の行使についてもホルムズ海峡まで総理は挙げて説明をされている、地理的限界はありませんね。そして、平時の武器等防護、これも世界じゅうの国と世界じゅうの地域でやれる。こうやって一つ一つ点検していくと、やはり国民の皆さんから見ると、ちょっと手を広げ過ぎているのではないか、こういう思いが強いんだろうと思うんです。

 したがって、こういう根強い敗戦のトラウマというものを乗り越えるためには、私は、総理が胸襟を開いて、急がないで、慎重な審議、そして丁寧な説明を繰り返していただくことによって、ましていわんや足元からいろいろな不規則発言や不協和音が出ないようにしっかり配慮していただきながら、国民の皆さんに理解をしていただけるような環境をぜひつくっていただきたい、こういうふうに思います。これが不安の第一点です。

 事は単純ではありません。国民の皆さんが抱いている不安はこれだけではないんですね。もう一つ私は不安があると思っています。

 それは何かというと、北朝鮮の核・ミサイルの脅威、あるいは中国の軍備増強、海洋進出、こういった、言ってみれば物騒な動きが我が国を取り巻く環境の中で起こっている。これに対して何もしないわけにはいかないというのも、国民の皆さん、よく感じておられるんです。

 だから、私たちは、この法案にただやみくもに反対するだけではだめだ、私たち自身が、この変化する安全保障環境の中でどうあるべきなのかということを、政府に入っている入っていないにかかわらず与野党でしっかり考えていく、そういう議論をきちんと展開していく必要があるんだろうというふうに思っています。

 したがいまして、この二つの不安にバランスよく応えるようなそういう解をこの審議を通じて生み出していく必要があるんだろう、私はこのように思っているんです。

 そのためには、総理、やはり時間が必要なんです。何十時間か来たからぱあんと審議を打ち切って、そして、はい、参議院に送る、こういうことがないように、総理、ぜひお願いをしたいというふうに思っています。

 総理、改めてお伺いしたいと思いますが、まだ審議が尽くされていない、国民の皆さんの理解も納得もなかなか得られない、そういう中でこの衆議院の審議を打ち切って、そして採決をして参議院に送るなどということのないように、ぜひこの場で国民の皆さんに向かって総理の御決意を語っていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今、長島委員がおっしゃったことについて、大体、考え方として私も共有できると思います。国民の皆様の懸念を払拭していくためにも丁寧な説明を行っていく必要があるんだろう、そのためにも建設的な議論が必要であろうと思います。同時に、今長島委員が質問をされました後半の部分、安全保障環境が随分変わる中でどのように守っていくかという政策論もとても大切なんだろう、こう思うわけでございます。

 その意味におきましては、長島委員も、長島委員としてもうちょっと質問の時間を、きょうも割と、民主党全体では長島委員の質問の時間が少し短いかもしれないなという気がします。これは御党のことでございますから、それを超えて申し上げる気はいたしませんが。

 既に八十時間は御議論をいただいているというふうに承知をしております。しっかりと中身のある議論が進み、しかし、どこかの段階で、決めるべきときには決めていく、これが民主主義の原則ではあろう、このように思っております。

長島(昭)委員 本当に私は、議場を二分するような雰囲気で、怒号が飛び交う中で採決をやって、そしてこの法案が仮に通ったとしても、国民の皆さんの中にわだかまりが残るし、そして、そのために、その法律によって海外に派遣をされる自衛官の皆さん、あるいはその御家族の皆さん、そういう皆さんのことを思えば、やはりしっかりと最後まで審議を尽くしていく、このことを改めてお願いしておきたいと思います。

 それでは、南シナ海の問題。私は、この安保法制の問題を考えるときに、南シナ海の問題というのは避けて通れないと思います。

 当然のことながら、中国にかかわる問題ですから、政府の皆さんはなかなかこういう公の場で、言えること、言えないこと、あるんだろうと思いますけれども、私、きょうはなるべく客観的に質問をさせていただきたいと思いますので、ぜひ、今総理から、政策論もやってくれ、こういうお話がありましたので、政策論中心に、南シナ海の今起こっている状況にどう日本が賢明な対応をしていくことができるか、このことを議論を深めていきたいと思います。

 まず、防衛大臣、今南シナ海で起こっているさまざまな出来事、軍事的な、あるいは安全保障の側面から、どういう情勢認識をしておられるか、お話しいただけますか。

中谷国務大臣 中国は、南シナ海における活動を急速に拡大、活発化させております。特に、力を背景とした現状変更の試み等、高圧的とも言える対応を継続いたしております。例えば、南沙諸島の七つの礁において、急速かつ大規模な埋め立て活動を強行しておりまして、一部の礁では、滑走路また港湾などの整備を推進、将来における軍事利用を認めております。

 こうした中国による緊張を高める一方的な行動に対しては、国際社会から強い懸念が示されている一方で、中国は、一部の礁における埋立工事は既に完了し、次の段階において施設建設を行っていくと述べて、みずから一方的な主張を妥協なく実現しようという姿勢を崩しておりません。

 この領有権につきましては、ベトナム、フィリピンなどとの摩擦を深めており、二〇一二年四月から六月にかけて、スカボロー礁をめぐっては、中国公船とフィリピン艦船が対峙という事案が発生し、その結果、中国は同礁を事実上支配するに至りました。

 また、昨年五月から七月にかけて、中国が一方的に実施した西沙諸島付近における石油掘削活動、これによって、中国とベトナムの公船が衝突するという事案が発生、本年も、中国は西沙諸島周辺で石油掘削活動を続けておりまして、このような力を背景とした現状変更の試みが続いているということでございます。

長島(昭)委員 前回も少しやりとりさせていただきましたが、外務大臣、国際法の観点から少しお話を伺いたいと思います。

 中国が今南シナ海でやっている、今防衛大臣から報告がありました、ただでさえ、五カ国の領有権が入り乱れている場所、そこで、事もあろうに岩礁の上に埋め立てを始めて、そして人工島をつくっている、こういう状況なわけです。

 これは、自然の作用で侵食されているのを防ぐのに埋め立てをしたり造作をするという国際法上許されている行為ではなくて、そもそも満潮時に水没してしまうような岩礁に対して人工の構造物をつくっている、こういう状況なんですが、外務大臣、こういう構造物を根拠に、みずからの国の領海、領空というものを主張することはできるんでしょうか。

岸田国務大臣 国際法上、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、そして高潮時においても水面上にある地形は領有権の対象たり得るものとされています。要は、領海を有します。

 一方、高潮時には水中に没する地形、これは国際法上、領有権の対象とならず、原則として領海を有しません。この点で、埋め立ての有無について影響を受けるものではないと認識をいたします。

 そして、国連海洋法条約上、人工島、これは島の地位を有しておりません。それ自体、領海を有していない、このように規定をされております。

長島(昭)委員 端的に伺います。

 それでは、今、中谷大臣がおっしゃった、七つ、八つの、中国が造成をほぼ完了したという、埋め立てを完了したというこの人工島は、中国の領海、領空を形成する基線、領海基線となり得るものでしょうか。

岸田国務大臣 まず、領海を有するかどうかということについては、先ほど説明をさせていただきました。どういったものが領海を有するか有しないか、申し上げました。

 そして、その上で、今のこの南シナ海の状況ですが、我が国としまして、この沿岸国の地形ですとか主張、こういったものを全て正確に承知しているものではありません。ですから、要するに、もともと高潮時においても水面より上に出ている地形なのか、そうでないのか、これは今、現状において我が国として正確に把握することができません。

 我が国としましては、こうした南シナ海の状況には高い関心を持っております。関連情報をさらに収集するということには努めていきたいと存じますが、現状において我が国として把握できている情報は、今申し上げましたように限界があると考えています。

長島(昭)委員 ぜひ、これは国民の皆さんもごらんいただいておりますから、おわかりいただいたと思いますが、今外務大臣のおっしゃったことは、これだけ報道されて、そして、これだけ世界じゅうで話題になり、関連国、例えばフィリピンであるとかベトナムであるとかマレーシア、ベトナムは、この海域に入ったときに警告射撃を受けたり、そういうことを受けている、現に紛争のようなものが発生している。しかし、日本の外務省は、どこが領海であって、どこが公海であるかということの区別もつかない状態で今いる、こういうことがわかった。この点はまず押さえておきたいと思います。

 それでは、総理、私は甚だ無責任な姿勢だというふうに言わざるを得ないと思うんですが、総理は五月二十七日の本委員会において、答弁で次のようにおっしゃいました。

 集団的自衛権の行使の容認についてもこれは同じことでありまして、

つまり、集団的自衛権の行使の文脈で、

 アジア太平洋地域の、一々個別の名前をそう何回も私は挙げません、

ちょっと中略、略します。

 確かに軍事力を増強している国があります。南シナ海で起こっていること、東シナ海で起こっていること、この中において、しっかりとした軍事バランスを保っていくことによって平和と安定を維持していく、抑止力をきかせていく。

  間違っても、相手側に何かすきがあるように思わせないことが大切であります。そのための努力をしていくためにこそ、私たちはやるべきことをやっていかなければならない、このように決意をしているわけであります。

総理、やるべきこと、この南シナ海においてやるべきこと、日本がやるべきことは一体何でしょうか。

安倍内閣総理大臣 南シナ海における航行の自由及びシーレーンの安全確保は、我が国にとっても重要な関心事項であり、言うまでもなく、外交を通じた平和解決を追求していく考えであります。私も、その観点から、平和と安定の維持のために積極的な外交を展開してまいりました。

 特に、国際社会における法の支配を重視する立場から、主張するときには国際法にのっとって主張すべきである、力による威嚇や力による現状変更は行ってはならない、問題を解決する際は平和的に国際法にのっとって解決をするとの三原則を国際社会に繰り返し主張してきたところでありまして、基本的に多くの国々から支持を得ているところであります。

 また、これまでにフィリピンやベトナムなど南シナ海周辺の国々に対する能力構築支援や米海軍との共同訓練を行うなど、地域の安定に資する活動に積極的に取り組んでいるところでございます。

 御承知のように、南シナ海の国々、ASEANの国々は、海軍力等々が極めて脆弱であるわけでありまして、そこにつけ込まれないように、我々もしっかりと、こうした能力構築への支援、そして力による現状変更は断じて許してはならないということをさまざまな国際会議で彼らとともに発信をしていくということは重要であろう、このように考えております。

長島(昭)委員 今総理は、平和外交と地域の国々の能力構築、これは大事なことだというふうに私も思いますが、法案とは全く関係のない政策を今二つお挙げになりました。

 それでは、この法案との関連で中谷大臣に伺いたいと思います。

 六月五日の本委員会で私が質問させていただきまして、南シナ海において深刻な軍事的緊張状態や武力衝突が発生した場合で、しかも我が国に物資を運ぶ日本の船舶に深刻な被害が及ぶような場合には重要影響事態を認定する可能性がある、このようにお述べになりましたが、この答弁は間違いございませんね。

中谷国務大臣 政府といたしましては、重要影響事態等の認定等に関しまして、実際に発生した事態の規模、態様、推移などを総合的に勘案して、個別具体的に判断をするということで、一概にお答えすることは困難でございますが、南シナ海の状況につきましては、現時点で、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に当たるとは考えていないということでございます。

長島(昭)委員 いやいや、私は前提を申し上げているんですね。深刻な軍事的緊張状態や武力衝突が発生した場合で、しかも我が国に物資を運ぶ日本の船舶に深刻な被害が及ぶような場合には、今はそうじゃない、もちろんそうですよ。もしそういう場合には重要影響事態を認定する可能性はありますね。端的にお答えください。

中谷国務大臣 法的な概念といたしまして、重要影響事態が発生する地域から特定の地域をあらかじめ排除するということはございません。

長島(昭)委員 回りくどい御答弁でしたけれども、可能性はあると。

 その場合、自衛隊は一体何ができるようになるのでしょうか。

中谷国務大臣 法律が成立した後ということでございますけれども、いろいろな状況が考えられるわけでございますけれども、そういった情報を総合して判断をするということでございまして、法律で定められた要件、手続に従って我が国として主体的に判断をいたします。

 何ができるかということにつきましては、法案に書いておるような後方支援の内容でございます。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 長島昭久君、もう一度お願いします。

長島(昭)委員 大臣、私たちは法案をこれだけ審議すればだんだん法案も頭に入ってきますけれども、ごらんになっている国民の皆さんは法案を持っていないわけですよ。法案を読んでくれなんて、そんなめちゃくちゃな答弁はないじゃないですか。しっかりお答えください。

中谷国務大臣 重要影響事態というのは、我が国に重要な影響を与える事態ということで、活動している他国の軍隊に対して後方支援ができるわけでございます。

 その内容といたしましては、補給、輸送、修理・整備、医療、通信、航空・港湾業務、基地業務、宿泊、保管、施設の利用、訓練業務、このような活動ができるということは法案に書いているわけでございますが、先ほどお答えをしたとおり、南シナ海において現在こういった重要事態に該当するかと言われれば、当たるとは考えていないということであるということでございます。

長島(昭)委員 現行の周辺事態法では、米軍にだけ後方支援、今大臣がおっしゃった後方支援ができるようになっているんですが、この法案では、日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行う米軍だけでなく、国連憲章の目的の達成に寄与する活動を行うその他の外国軍隊に対しても後方支援を行うことになっているんですね。

 先日、私、これは同じ質問を大臣にさせていただいたんですが、しっかりお答えいただけなかったんですが、例えば、アメリカ抜きで、フィリピンやベトナム、こういう状況で中国との紛争を抱えている国、そして、先ほど言った、これは一般論ですけれども、深刻な軍事的緊張状態や武力衝突が発生した場合、重要影響事態を認定したときには、アメリカ抜きで、フィリピンやベトナムあるいはマレーシアに直接日本が後方支援する可能性はあるんでしょうか。

中谷国務大臣 今回の法案におきましては、重要影響事態に際して、我が国の平和と安全を確かなものにしていくという観点から、日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行う米軍以外であっても、国連憲章の目的達成に寄与し、かつ当該事態の拡大を抑制し、またはその収拾を図るための活動を行う外国軍隊等に対しては、我が国として、必要な後方支援活動、これを行うことができるようにしてまいります。

 どのような国が対象となるかにつきましては、事態の個別的な、具体的な状況に即して判断をされるということでございますが、法律で定められた要件、手続に従って我が国として主体的に判断してまいりたいと思っております。

長島(昭)委員 ここもやはり、先ほど手を広げ過ぎたという話をしましたけれども、私たちの常識からいくと、アメリカ軍に対する、つまり、前提として日米安全保障条約がありますから、そういう条約のある国、あるいは、せいぜいACSAのようなものを結んでいる、これはオーストラリアだけですけれども、こういう国に後方支援活動を拡大する、あるいは武器等防護の対象を拡大するというのはまだ理解できなくもないですけれども、今のように、マレーシアもフィリピンもベトナムも、つまり、地理的に限定もない、後方支援の対象国も無限定、やはりこれではなかなか国民の皆さんの理解を得るのは難しいと思うんです。

 防衛大臣、これを法律には書いていませんけれども、これから少し対象を絞っていこう、そういう努力をされるおつもりはありませんか。

中谷国務大臣 いろいろな状況があり得るわけでございまして、我が国としては、ある国の軍隊に対して後方支援を行う場合におきましては、現場において行う部隊間の調整、また、防衛当局間、外交ルートを含むあらゆる手段を通じまして種々の情報を確認いたします。そして、当該外国軍隊の実際の活動の目的、態様等が重要影響事態法に規定する要件を満たすか否かについて客観的かつ合理的に判断をする。さらに、現実に支援を行うためには、法律の要件を満たすのみならず、現実に発生した事態においてニーズが一致することが必要となるわけでございます。

 いずれにしましても、支援の対象が我が国の平和と安全に全く無関係に際限なく広がるということは考えておりません。

長島(昭)委員 それはそうでしょう。それは防衛大臣がしっかりシビリアンコントロールをきかせていく、これは最低限だと思います。

 しかし、それを場合によってはやるかもしれないこの南シナ海、とりわけ南沙付近の海域は、先ほどの外務大臣の御答弁のように、どこが領海なのか、どこからどこまでが公海なのか、これがわからない状態なんですよ。つまり、自衛隊が場合によっては活動する可能性のある地域、海域の地形すらも把握できないような状態で、仮に重要影響事態が認定されるとして、防衛大臣として責任を持って部隊を派遣できるんでしょうか。お答えください。

中谷国務大臣 そもそも、現在、計画には入っておりませんし、我が国といたしましては、このような地域において力による一方的な支配が行われることがないように、全ての国々に対して、この地域の安定をということで、せんだってもシンガポールでアジア防衛大臣会議がございましたけれども、日本からのこういった主張等をしているわけでございます。

長島(昭)委員 前回も、この海域で警戒監視をやる可能性はあるのかという質問に対して、大臣は、今のところ計画はありませんと。今の後方支援についても、今のところそういう状態ではない、状況ではない、プランはありません、こういうことでありますが。

 少し御紹介したいんですが、六月四日、自衛隊の制服組のトップである河野統幕長、記者会見で、中国が南シナ海で進める岩礁埋め立てを軍事目的だと認めたことについて、これはこの前のシンガポールのシャングリラ・ダイアログで中国の代表団が軍事目的であるということを認めましたね、これを受けて、将来的な潜在的脅威になり得るという懸念を持っているとの認識を示した。これが一点。

 それから、アメリカの新しく就任をされました太平洋軍の司令官、ハリー・ハリス海軍大将は、六月十二日、来日をされました。総理もお会いになりました。この会見で、南シナ海は公海であり、領海ではない、外務大臣、ここはしっかり聞いていただきたいと思いますが、日米両政府が四月に改定した防衛協力のための指針、ガイドラインに基づいて、米軍と自衛隊が南シナ海で連携する可能性に言及した、海上自衛隊の海域警戒や監視能力については、海上自衛隊の哨戒機P3Cを非常にすぐれていると評価した。これは日経の六月十三日朝刊に出ております。

 そして、六月二十八日、日経新聞。今度はハワイを訪れ、ハリス米太平洋軍司令官と会談をした、また河野統幕長、会談後、記者に答えて、「日米防衛協力のための新指針を踏まえ、自衛隊と米軍がどう協力していくか、かなり具体的に話し合った。海洋に進出する中国への対応を含め、互いの認識はぴったり一致し、まったくそごはない」と述べたと報じている。

 そして、最後。この前、日本とフィリピンの首脳会談がありました。安倍総理、この首脳会談でのコミュニケの中で、「南シナ海における大規模な埋立てや拠点構築等の一方的な現状変更につき、深刻な懸念をフィリピンと共有し、各国と連携して「法の支配」の実現に向けて共に努力していく」という発言をした。

 それを受けて、六月二十三日、二十四日、日本とフィリピンとの間で合同訓練が行われました。

 防衛大臣、この合同訓練について、場所、規模、内容、御報告ください。

中谷国務大臣 海上自衛隊は、六月二十二日から二十六日にかけて、フィリピンのパラワン島北西海域、スプラトリー島、南沙諸島東方海域におきまして、フィリピン海軍との共同訓練を実施しました。

 海上自衛隊はP3C哨戒機一機が、フィリピン海軍は小型哨戒機一機及び小型哨戒艇一隻が参加しまして、人道支援、災害救援訓練、これを実施いたしました。

 この訓練は、ことし一月の日比防衛相会談において署名した覚書及び六月四日の日比首脳会談における共同宣言に基づいて実施したものでありまして、両国間の相互理解と信頼を促進するものであると考えております。

 以上、日比の共同訓練について。

長島(昭)委員 今の大臣の御説明、P3Cが参加をしている、しかし親善的な意味合いだ、こういう話ですが、共同通信にこういう記事がありました。アメリカが期待をする、自衛隊による南シナ海での警戒監視活動につながる動きだというふうに今回の訓練を分析する幹部もいる。これは自衛隊の幹部ですが。今回の訓練で使用した遭難船を中国側の船に置きかえれば警戒監視活動そのものになる。こういう記事もあります。

 そして、このパラワン島の空港に、まさに日本の自衛隊が行っているその同じ時期にアメリカ軍も来ておりまして、フィリピンは同時にアメリカとの共同訓練もやっていて、このパラワン島の空港には、日本の海自のP3Cと、それから米軍のP3Cが並んでいた。

 これは何を暗示しているかというと、かなり、これから南シナ海で起こり得る作戦の可能性というものを示唆していると思うんですが、私もびっくりしました。

 パラワン島というのは、国民の皆さん、テレビの前の皆さん、ごらんのとおり、フィリピンの北と思いきや、まさに、まさに、外務大臣がどこが領海だか領空だか、公海だか公空だかよくわからぬと言った、その南沙諸島のすぐ東、よりによってフィリピンの一番南のところでやっているんですよ。これはやはり相当な覚悟と意図がなかったらやれない。

 私は、これから中国と向き合っていく上で大事なことは、すきを見せてもいけないけれども、挑発してもいけないんですね。この二つのバランスをしっかりとっていかなきゃいけない中で、総理に最後に申し上げたいのは、先ほどのように、外務大臣がどこが領空だか領海だかわからないような、そういう状況で調べがつきませんといった無責任な、そういう現状をぜひ一日も早く改めていただきたい、そのことを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、柿沢未途君。

柿沢委員 維新の党の柿沢未途でございます。

 冒頭、自民党の勉強会でのマスコミ圧力発言についてお伺いをいたしたいと思います。

 偏向報道する左翼メディアはスポンサーに圧力をかけて広告を引き揚げさせて潰してしまえと言わんばかりの、どこの国かと思うような発言だったと思います。沖縄に関する偏見に基づいた発言も耳を疑いたくなるようなひどいもので、谷垣幹事長も厳重注意したというわけですけれども、その直後には大西英男議員は、偏向報道するマスコミを懲らしめないといけない、勉強会での発言への批判は事実無根で、野党が党利党略で利用しているだけだとうそぶいて、再度の厳重注意を受けています。

 こうなると、数におごって何でも通ると思っている自民党の体質としか思えない。しかも、問題なのは、これは安倍総理の応援団のつもりで集まった人たちがこうした非常識な発言を繰り返していることです。要は、安倍総理も同じ認識なのかと疑われてしまいかねないと思います。そうでないなら、そうでないとはっきり総理としてここで言明された方がよいと思います。ひいきの引き倒しで迷惑している、こういうふうに言っていただいた方がいいと思います。

 御答弁をお願いします。(発言する者あり)

安倍内閣総理大臣 民主主義の根幹である報道の自由、そして言論の自由を尊重すべきことは当然のことであります。これは一貫した私の立場であり、党の立場であるということでございます。

 そうした中で、御指摘のように、報道の自由、言論の自由を軽視するような発言が行われたことは大変遺憾であります。非常識な発言であり、国民の信頼を大きく損ねる発言として、看過することはできません。そのため、関係者について、先日土曜日、直ちに処分したところであります。

 今後、謙虚に、かつ緊張感を持って、党一丸となって、信頼回復、政策実現に邁進することにより国民の信頼を回復していきたい、国民から負託された責任を果たしていきたい、このように考えているところでございます。

柿沢委員 御答弁をいただきました。

 この御質問をさせていただいている間にも、自民党の席からは宮川議員あたりが大きな声でやじを飛ばしておられるわけですよ。こういうことが続くと、やはり国民に与える印象も悪くなると思いますので、お気をつけいただきたいと衷心ながら宮川議員に申し上げておきたいと思います。

 さて、安保法制についてです。

 維新の党は、この安保法制の独自案を昨日決定をさせていただきました。私が手に持っているのがこの独自案であります。憲法適合性を確保し、また国民が感じている自国防衛への不安を解消する、そのような的確な内容になっていると私は自負をしております。

 中国の軍事的な台頭を前にして、今のまま何もしなくていいと考える国民が多数であるとは私は思っておりません。日本を守り、アジアと世界の平和に貢献するための法制度の整備は、私は一定程度必要だというふうに思っております。日本を取り巻く安全保障環境の変化を否定し、立法事実がないといって安保法制全体に反対をする、こういう立場を私たちはとるつもりはありません。

 パネルを見ていただきたいと思いますが、やはり考えるべきは中国だと思うんです。経済成長に伴って、見てください、国防費を際限なく膨張させて、こんな急速な伸びを示している。しかも、この国防費、そもそも透明性がないわけです。

 海洋進出が著しく、領土的野心を隠そうともしない。南シナ海のスプラトリー諸島での滑走路はもう完成したという。そして、尖閣諸島に公船を送り込んで、日本固有の領土をかすめ取ろうという勢いですよ。民主主義も、人権も、法の支配も、言論の自由も共有していない、共産党一党独裁の、日本とは異質な国家です。こういう隣国が日本の隣にあるわけです。

 この中国の国防費が透明性を欠く中で膨張の一途をたどっている、これは私は脅威だと感じますけれども、総理、御見解をお伺いします。

安倍内閣総理大臣 中国が平和的に台頭していくということになれば、また平和的に発展していくということであれば、日本にとっては大きなチャンスであろうと認識をしております。繰り返し述べているとおりであります。

 その上で申し上げますと、中国の公表されている国防費は、一九八九年度から現在まで、一年を除いて毎年二桁の伸びを記録しておりまして、二〇〇五年度から十年間で三・六倍、そして一九八九年度から二十七年間で四十一倍に拡大をしてきているわけでございまして、二〇一五年の国防予算についても中国政府は前年執行額比一〇・一%の増加と公表しておりまして、日本の防衛費、防衛予算の三・三倍となっております。

 このような国防費の高い伸びを背景とした中国の積極的な海洋進出と、十分な透明性を欠く中での軍事力の広範かつ急速な強化は、我が国を含む国際社会の懸念事項となっております。

 今後、我が国としては、国防費を含めた中国の国防政策について引き続き注視するとともに、透明性の向上や国際的な行動規範の遵守について、関係国とも連携して中国に働きかけていく考えでございます。

柿沢委員 御答弁は、あとう限りいただいたと思います。

 国民がやはり一番心配しているのは、まさに日本を取り巻く脅威に対して、日本が的確に対応、対処できるかどうかだと思うんです。なかんずく、尖閣諸島を初め離島防衛の問題を心配しています。

 我が国の平和を守り、国民の生命を守り抜くためだと安倍総理はおっしゃるわけですけれども、その割には、離島防衛のための、現実に起こり得る武装漁民の大量上陸のような事態を防ぐような、海上保安庁と海上自衛隊が連携して的確に対処できる法制度の整備は、今回政府からは提案されていないわけです。自衛隊出動のための閣議を電話でできるようにしました、これだけなんですね。

 維新の党は、現在、調査研究を名目として行われている警戒監視の活動を自衛隊の本来任務に位置づけて、特定海域で、海上保安庁の補完として、平時からの海上自衛隊の艦船の配置を可能とする等を内容とする領域警備法案、これを策定いたしております。

 我が国の平和を守り、国民の生命を守り抜くと言っているわけですけれども、しかし、こうした法制度の整備について、政府は今回なぜ置き去りにしたんですか。不必要だと思っているんですか。お伺いします。

中谷国務大臣 今回は、そのようなグレーゾーンにつきまして、まだ武力攻撃に至る前の段階でありますが、切れ目のない対応を確保するということで、海上警備行動、治安出動等の命令に係る手続の迅速化の閣議決定を行いまして、各般の分野における取り組みを一層強化していくというようなことをいたしたわけでございます。

 自衛隊が平時から海上保安庁とともに警察権を行使するということにつきましては、日本側が事態を、ミリタリー対ミリタリー、これにエスカレートさせたとの口実を相手に与えるおそれもあると考えるということ、そして、他国の警察組織や民間船舶に対しましては、警察機関である海上保安庁がまずは対応し、そしてそれが無理であれば自衛隊が対応する、この速やかな移行が可能になるということが大事であると考えているからでございます。

柿沢委員 この領域警備法案を含めた維新の党の独自案は、きょうの午前中、自民党さんにも、また民主党さんにも、公明党さんにもお持ちをさせていただいて御説明をさせていただき、自民党では高村副総裁に御対応いただきましたので、もうお渡ししておりますので、御検討いただきたいというふうに思います。

 集団的自衛権もそうなんですけれども、我が国を防衛するための必要最小限のやむを得ない自衛の措置なんだ、あくまで我が国防衛、自国防衛なんだ、こういう言い方をするんですけれども、しかし、そもそも国民が我が国防衛に関して一番心配しているものの一つ、この離島防衛、尖閣の問題についてきちんとした手当てがされていないというのが今回の安保法制のように見えてしまいます。

 そのくせ、地球の裏側まで、自衛隊が他国の武力行使の一歩手前まで出ていけるような話や、また、アメリカとイランがオマーンの仲介で今協議をしているという状況の中で、ホルムズ海峡に機雷がまかれた場合の掃海活動を集団的自衛権の行使としてやりたいという話とか、どうも我が国防衛とはかけ離れたような話ばかりが国会答弁で繰り返されているような印象しかないんです。そこが私は今回の安保法制が国民から理解されない理由になってしまっているのではないかというふうに思います。

 政府が与党協議で示したいわゆる十五事例、例えば朝鮮半島有事の際に、我が国近隣の公海上を航行する米国艦船を防護するとか、発射されたミサイルを我が国上空で撃ち落とす、こういうことをやってはいけないというふうに私たちは全く思っていません。しかし、それは次の瞬間に我が国が攻撃の対象となり得るからであって、そうした状況のある中で、日本が座して死を待つわけにはいかないからです。つまり、これらについて、基本的には、他国防衛と見られている集団的自衛権をわざわざ根拠とする必要がないんではありませんか。

 その上で、私たちは、昨年九月の結党時、自衛権に関する見解というところで、自衛権の再定義というコンセプトを打ち出させていただきました。

 その上に立って、今回の維新の党の独自案では、武力攻撃危機事態、すなわち、条約に基づき我が国周辺の地域において我が国防衛のために活動している外国の軍隊に対する武力攻撃が発生をし、これにより我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険があると認められるに至った事態において、我が国防衛のための事態対処として、同盟国と共同しての武力行使が可能になる、こういう厳しい要件づけを行ったところであります。

 同盟国、すなわち米国は、そもそも日本国内に米軍基地があるわけですから、我が国周辺での米国への武力攻撃というのは、次の瞬間、直ちに、即座に我が国日本に向けられた武力攻撃に波及、発展する可能性がある、こういうふうにみなすことができ得るものだと思います。

 このような整理であれば、今さんざん言われている、憲法に基づく我が国の国是である専守防衛の範囲を逸脱するこの政府法案の新三要件のような拡大解釈の余地はほぼなくなって、憲法適合性は確保される、このように考えております。

 現に、昨日、憲法学者の方にもお伺いをさせていただきましたが、我が党が独自案で規定をしております武力攻撃危機事態、この要件づけであれば今までの憲法の範囲内である、こういうコメントをいただいています。また、ただ一人の憲法学者が言っているだけではなくて、内閣法制局長官のOBの方や、複数の法律家、専門家が、同様に合憲ということをコメントしてくださっています。

 同時に、私たちは、安保法制の整備が全て必要ではないと思っていませんので、例えば十五事例のようなケースにおいては、全てとは言いませんけれども、日本と自衛隊の事態対処はほぼ可能になると思います。

 一方、政府案の新三要件、存立危機事態ですけれども、こっちは、限定容認だといいながら、ホルムズ海峡の機雷掃海も、また、燃料不足で、あるいは冷蔵庫が空になっても武力行使できるとか、サイバー攻撃でアメリカががたがたになったら武力行使できるとか、拡大解釈の余地がどこまでも広がりかねない、こういう印象をもたらしています。限定容認といいつつも、新三要件がこのように歯どめとして機能しそうにないことが、今回の安保法制の内在する根本的な問題であると思います。結果として、状況を見て総合的に判断するという、時の総理、時の政権にフリーハンドを与えてしまいかねない、こういうものになっていると思います。

 横畠長官、このパネルを見ていただきたいと思うんですけれども、長官の上司であったはずの大森元内閣法制局長官が、政府案の存立危機事態について、まやかしで、歯どめもないも同様だ、こういうふうに言っています。

 私たちの案が完全だというふうに言うつもりはありません。しかし、歯どめのない他国防衛の武力行使に踏み込んでしまったら、将来、日本にとって取り返しのつかない事態が起きる可能性があると思います。

 あらゆる事態を想定した切れ目のない法制度の整備と安倍総理はおっしゃっているわけですけれども、切れ目がないということは、そこに歯どめとか限定なんかを設けたら、これは、法律上それはできません、こういうものをつくることになってしまって、あらゆる事態を想定しての切れ目ない対処ができなくなってしまう。つまり、切れ目がないということは歯どめがないということなんですよ。限定容認といいながら、政府案の新三要件がそうなってしまっているのは、そもそも、何でもできる余地を残そうとして文言をしつらえている、こういうものであるからではないかと私は思います。

 そうでないとするならば、国民にもきちんと見える形で、きちんとした歯どめをかける、線引きを行う、そうした議論を行っていくべきだと思います。御答弁はありますか。

安倍内閣総理大臣 まず、何でもできるという、これはもう、私の尊敬する柿沢先生とも思えない決めつけでございますが、我々は何度も、これはできない、これはできないという答弁を相当しているんだろうと思います。

 例えば、かつてのイラク戦争や湾岸戦争、ベトナム戦争に武力行使を目的として参戦する、参加するということはあり得ないということは申し上げているとおりでございますし、一般に海外派兵は禁じられているということを申し上げているわけでございます。まさに例外的な事例として機雷掃海という例を挙げさせていただいているにすぎないわけでございます。

 そして、そもそも、我が国に対する武力攻撃、あるいは我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、それによって我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される危険です。これは我が国が、いわば存立が覆される、そういう脅威であって、これはアメリカでもないわけでありますし、他国でもないんです。

 その上において、これを排除するために、我が国の存立を全うし、これはアメリカの存立を全うするためではありません、我が国の存立を全うし、国民を守る、日本国民を守るために他に適当な手段がないときに、必要最小限度の実力行使にとどまるべきという、この三要件の中において武力行使を行うというものでありますから、これはまさにしっかりとした歯どめがかかっておりますし、フルサイズの集団的自衛権の行使ではなくて、我が国の存立にかかわる、そして、この三要件という中に入るものがこれはあり得るというのが私たちの考え方でありまして、そして、これは行い得るし、これを行っていくことがまさに必要な自衛のための措置ではないかと考えているところでございます。

柿沢委員 安倍総理、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、それにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること、これこそが、まさに国民から見て理解ができない、そして多くの専門家が拡大解釈のおそれがある、こういうふうに言って、そして憲法の範囲を逸脱しているというふうに判定をしている、まさに存立危機事態なわけですよ。

 ここに明確な限定性をさらにしっかりとかけて、その上で、日本が今取り巻かれている安全保障環境の中でやらなければいけないことはきっちりと対応する、こういう形でやはり議論を進めていく必要が私はあると思います。

 この存立危機事態の文言を繰り返し繰り返し言って、これが、本当に、ある意味での、国民にはもう入っていかない言葉になってしまっていると思います。

 ここのところは、今、法案に対する国民の理解は残念ながら全くと言っていいほど得られていない状況なわけですから、これから党対党の協議を自民党さんとも公明党さんとも民主党さんとも行わせていただきますけれども、ぜひ、実りのある、建設的な、先ほど長島議員がおっしゃっていたように、こういう、まさに戦後七十年の日本の安全保障を大きく変える、そうした可能性のある法案なわけですから、やはり、怒号が鳴って、与党だけで単独で審議を打ち切って強行採決、こんなことにならないように、ぜひ真摯に議論していきたいというふうに思うところでございます。

 では、安倍総理の御答弁をいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 まさに、柿沢委員が繰り返していただいたように、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険ですから、これはかなりしっかりと縛ったものなんだろう、このように思います。

 柿沢委員がおっしゃったようなことを国民の皆様の中に浸透していくことができれば、もう少し理解が上がってくるのではないか、こう思っている次第でございますが、柿沢委員初め御党は、対案、対案というか御党の……(柿沢委員「独自案です」と呼ぶ)独自案。独自案を提出されたことに対しましては敬意を表したい、こう思う次第でございまして、必要な自衛の措置とは何かということについてしっかりと考えていただいていると思います。

 柿沢委員が持ってこられたわけでございますから、高村副総裁が対応させていただいたところでございますが、我が党においても議論していくことになるんだろう。これは今、政府の立場で申し上げることはできませんが、党と党でしっかりと議論がなされていくことを期待したいと思います。

柿沢委員 ぜひ、先ほど申し上げたように、党対党の協議を各党と行ってまいりたい、こういうふうに思います。

 あらゆる事態に切れ目なくといっても、我が国の自衛隊に私はそれだけの実力が備わっていないというふうに思います。それは、弱いという意味ではないんです、装備と体制がそうなっていないということです。

 これまでの日本は、言うまでもなく専守防衛です。相手から武力攻撃を受けたときに初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめて、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものと限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の方針、これは防衛省のホームページにこう書いてあるわけです。

 我が国はこれでやってきたわけです。国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄し、そして、あくまで自国防衛の範囲において必要とされる最小限の実力組織として自衛隊を保持するという専守防衛を貫いてきたわけです。

 中谷大臣にお伺いしますけれども、我が国の、二〇一三年、一三中期防における陸海空の自衛隊の体制というのは、これは少なくとも今までの専守防衛を全うするのに十分な水準である、こういう認識ですか、お伺いします。

中谷国務大臣 現在の我が国の防衛力整備は、専守防衛に徹するという基本方針のもとに、防衛大綱と中期防、これに基づいて整備を行っております。

 この大綱というのは、自衛隊全体の機能と能力に着目して、統合運用の観点から行った能力評価等を踏まえまして、おおむね十年、この十年程度の期間を念頭に、自衛隊の具体的な体制の目標水準を導き出しております。

 二六中期防におきましては、現在の大綱における最初の五年間を対象としたものでありまして、二六中期防の計画をもって、大綱に示された目標水準が満たされるというわけではございません。

 このため、防衛大綱で示された自衛隊の役割に十分対応できるように、着実に今後防衛力を整備してまいりたいと考えております。

柿沢委員 従来概念における専守防衛においても、これが全きというか万全ということとは言えない、こういうことだと思います。

 元官房副長官補の柳沢協二さんがよく言われる話で、数字はパネルに出しておきましたけれども、自衛隊の体制を比較すると、冷戦時はどうだったかといえば、陸上自衛隊は十八万人いて、海上自衛隊は六十隻持っていて、航空自衛隊は四百三十機あったわけです。そして、現在はどうかといえば、陸上自衛隊は十五・九万人、そして海上自衛隊は五十四隻、そして航空自衛隊は三百四十機。しかも、この現在というのは、今申し上げた一三中期防が全部整った段階での数字であります。つまり、冷戦期と比べても、この陸海空の自衛隊の体制というものは、強化された、そういうふうには見えないわけです。

 こういう自衛隊の実力、能力、キャパシティーがある中で、今すぐにでき得ることというのは極めて限られているのではないでしょうか。そして、そのキャパシティーを形成したいとすれば、質、量ともに今までとは違うレベルの体制を用意する必要があって、そのために、防衛大綱、中期防、見直しをする必要があるのではありませんか。お伺いします。

中谷国務大臣 冷戦期は、基盤的防衛力構想ということで、それぞれ陸海空ごとに防衛力を整備しておりましたが、新しい大綱は、統合機動防衛力ということで、陸海空の統合、そしてそれを機動的に運用していく、非常にそういう機動力を生かした防衛力の整備を目指しておりますので、この大綱と中期防に基づいて着実に体制を整備すれば、自衛隊はさらに高い能力を発揮いたしまして、さらに、今般の法整備によって新たに求められる任務、これも果たすことができると考えておりまして、基本的には、今の大綱の方針に従って統合機動防衛力の能力を向上させていくということを目指していきたいと思っております。

柿沢委員 今回の政府案を憲法違反と断じた一人であります、自民党推薦で憲法審査会に出られた長谷部恭男早稲田大学教授がこう言っています。

 そもそも、専守防衛で例えば十の実力を持っていたとする、これは、安保法制が整備されれば、日本とむしろ遠い地域においてもさまざまな活動に自衛隊を派遣する、こういう余地が生まれるわけですから、例えば十のうち二をそういう活動に充てるとすれば、残りは八しかないではないか、つまり、日本を守るための実力というのはかえって手薄に低下してしまうのではないか、こういう指摘をされておられます。

 現実に、今回、周辺事態法を改正して重要影響事態法とする予定なわけですけれども、これは、日米安保条約の効果的運用に資することを目的とするということが改められて、微妙な違いですけれども、日米安保条約の「効果的な運用に寄与することを中核とする」と、「中核とする」という言葉が入りました。これは、つまり、極東アジア、こういうものを想定していた地域、日米安保条約が想定した地域の外側に自衛隊を派遣するということを明確に規定をしよう、こういう意図だと思います。

 日米安保条約の「効果的な運用に寄与」するということと、「効果的な運用に寄与することを中核とする」、この二つの文言の違いについて御答弁をお願いしたいと思います。

中谷国務大臣 重要影響事態につきましては、その事態に対して、まず、我が国の平和と安全をしっかり確保していくという観点から、二つ。

 まず第一に、日米安保条約の目的達成に寄与する活動を行う米軍、それだけではなくて、もう一つ、その他の国連憲章の目的の達成に寄与する活動を行う外国軍隊等に対しても、我が国として必要な後方支援活動を行うことができるということで、多国間の必要性、こういうことを盛り込んでおります。

 一方で、日米安保、これは、我が国自身の努力と相まって、我が国の安全保障の基軸となるものでございますが、この「中核とする」というのは、重要影響事態に対処する上では、日米安保条約の目的達成に寄与する活動を行っている米軍との連携が諸外国の軍隊との連携の中核であることを示しているということで、新しく、ガイドラインにおきましてもこういった文脈で「パートナーとの更なる協力を推進する。」といった考えも示しておりますので、こういうこととも非常に整合させているということでございます。

柿沢委員 我が国の平和を守り、そしてやるべきことはやる、しかし一方で、きちっとした歯どめをかける、こういうことを今国民が求めている。だからこそ、今の世論の状況になっていると思います。

 その心にまさに私たちの独自案は応えていると思いますので、そのことをこれからも、党対党の協議、あるいはその先において言ってまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、下地幹郎君。

下地委員 維新の党の下地幹郎でございます。

 私の前の柿沢未途さんの質問で、ちょうど七十九時間になりました。政府でよく言われる八十時間という一つのラインを私が超えることになると思います。

 この七十九時間、ずっと出席なされて答弁して、一番答弁したのは中谷大臣ですね。中谷大臣、七十九時間やってみて、これからもっと野党の質問を受けて、まだまだ頑張って国民の理解を深めてみたいと思われるのか、それとも、長妻さんの質問を受けるのはもう嫌だ、もうそろそろ採決してくれ、そういうふうな思いになるのか、大臣、どちらですかね。

中谷国務大臣 私は、お一人お一人の質問に対しまして、誠心誠意、丁寧にお答えをしておりまして、少しでも政府案の考えを御理解していただきたいという思いでお答えをさせていただいております。

 引き続き、御理解をいただけるように全力で取り組んでまいりたいと思っております。

下地委員 では、これからあと百二十時間頑張りましょう。

 浜田委員長が速記をとめてくださいと言った数が、きょうで八十一回ですよ。四時間になりましたね。ことしの予算委員会で委員長の速記をとめてくださいというのは一回もありませんでしたから。ということを考えると、この委員会がいかに、重要法案であると同時に、一つ一つの答弁に神経をとがらせてやっているのかというようなことがわかっていただけるんじゃないかなというふうに思うんですね。

 私は理事をやらせていただいて、江渡さんは我慢の天才ですよ、長妻さんは答弁を指摘する天才ですよ、遠山さんはとまったときの解釈するのの天才ですよ、下地幹郎は、長妻さんの駆けつけ警護の天才ですよ。そのとおりでしょう。そういう意味でも、この回数、これだけ丁寧に、速記をとめてくださいと言うということは、これは委員長が本当に公平にやられていると私は思うんですよね。

 だから、ぜひこの調子で、この委員会、しっかりと委員長が審議を進めていただいて、先ほどうちの柿沢幹事長からもあったように、そしていろいろな声があったように、もう強行採決とか、そういうふうにならない、民主党も共産党も全部座って最後採決する、私たちは、それぐらいの時間、国民に理解を深めながらやっていこう、こういうことができていければいいなというふうに思っていますね。

 そのことについて官房長官の感想をお願いします。

菅国務大臣 突然飛んできましてびっくりしています。

 いずれにしろ、政府は、先ほど中谷大臣からの答弁がありましたように、やはり真摯に一つ一つ丁寧に答弁をさせていただいて、少しでも御理解をいただけるように全力で頑張っていきたいと思っております。

下地委員 質問に入らせていただきますけれども、中谷防衛大臣、ちょっとこのパネルを見ていただきたいんですけれども、これは防衛白書に書いてある、一枚目に出てくるパネルなんですね。これを見ていただいてわかるように、私どものこの国の周辺で一番に重要な課題というようなことがあるから、防衛白書の一番のページの前にこの地図が載っているわけです。

 これを見ていただいてわかるように、北朝鮮の問題や中国の問題や、さまざまなグレーゾーンの問題などが書いてありますけれども、私が考えるには、私のこれからの質問の一番のポイントになりますけれども、私は、我が国の、この東アジアの周辺というようなことが私たちの最優先課題だと思うんですね。

 総理と私とがこの安全保障に対する認識が大きく違うのか、脅威に対する対応が違うのかといったら、違うわけありません。政治家ですから、この国を守るというような意味では、どうやって対処していくかということを考えるのは、もうこれは当たり前のことだと思うんです。

 ただ、問題は優先順位だと思うんですね、防衛大臣。優先順位だと考えると、この委員会の中でホルムズの話が出てきたときからなかなか理解が深まらないんです。しかし、このアジアの地域だよ、先ほど長島委員が話をしているように、ここでの日米同盟のあり方、どうするんだよというようなことを言ったら、国民の思いはすとんと落ちること間違いないんです。

 そういう意味でも、私は、この東アジアのことを最優先にして、そして日米関係をしっかりとやっていくというようなスタンスを先に示した方が一番いいんじゃないかと思っているんです。これは我が党の独自案もその考え方によってまとめられているものですから、これを説明させていただいているわけですけれども、ぜひ、東アジアに重点を置いた我が国の安全保障の制度というようなことを考えてこれからも進められていただきたい、そのことを申し上げておきたいというふうに思っております。

 それで、もう一個パネルを見ていただきたいんですけれども、総理、こういうふうな、二枚目のパネルになりますけれども、これは日米安全保障制度の歩みを少し示してあります。

 一九五二年、旧の日米安保条約ができました。これは、吉田総理がこのときの総理大臣として決断をしたわけです。そのときの日本を取り巻く環境というのは、冷戦構造、ロシアの問題、こういうふうな問題があって、日本が戦後独立していく、そして武力を持たない日本がどうして他国からみずからの国を守るのかというようなことで、この旧の安全保障条約を結んだわけですね。

 これにも書いていますけれども、吉田総理、冷戦下における日本本土の独立を優先させる、これが最優先でこの安保条約ができたんです。これは時の総理大臣の決断として間違いか正しかったかは、私は申し上げません。

 しかし、日本本土を守る、日本の独立を最優先するために、どこにこのしわ寄せを行ったかといったら、これは沖縄に行ったんです。沖縄の中心に米軍基地が集中して、間違いなく、沖縄は施政権がアメリカに二十七年間行って、そして今、総理が先ほどから言っているように、負担の話があるように、沖縄の米軍基地の集中している現状が起こったのは、旧の安保条約のこのときから始まっているんですよね。これを私たちはしっかりと認識しなければいけないと思うんです。

 そして、この次、新しい一九六〇年に安全保障条約の改定をしましたけれども、そのときは、岸総理大臣は何を申し上げたかというと、岸総理大臣が一番やりたかったのは、日米の対等な関係をつくりたい、このままでいけばアメリカ軍に基地を提供する義務はあるけれども、本当にこの国をアメリカが守るかどうか、こういうふうなことが前の、旧安保条約で書かれていない、だから、このことについてしっかりと書かなければいけないといって、安保条約の一九六〇年度の改定をしているわけです。

 米国が日本を防衛する保証はないのではないか、在日米軍が日本の領域を、日本の意思に反して恣意的に使用するのではないか、こういう不平等性をめぐる議論が噴出し、旧安保条約が改定されるに至った。岸総理自身が繰り返し表明していたことが、旧安保条約の改定の主たる目的は日米の関係をより対等に近づけることにあった。昭和三十五年五月三日、日米安全保障条約特別委員会の岸総理の答弁の中でも「現行の不平等性、また不合理な安保条約を改定するということになった根本の原動力である、こういうことだけを事実として申し上げ」たい、こういうことを岸総理は当時述べているんですよ。

 私が申し上げたいのは、この二つの安保条約が起こって、そして今、安保条約が起こってからこれだけ来た中において、この問題点が残っているものが解決をしているのかということを僕は申し上げたいんです。

 今、新しい法律をつくるということで、こうやって、七十九時間ですけれども、論議しておりますけれども、新しい論議をするのも大事だけれども、これまで培ってきた安保条約の問題点を解決しないでそのまま前に進んでいいんですか。沖縄の基地問題も解決していませんよ。そして、双務性といった、日米の対等な関係といったことも、結果的には地位協定も一回も改定されていない。こういうふうなことの歩みの中で、新しいことだけをやっていくことがいいんだろうか。私は、そのことの明確なる総理の考え方を示されてから、この新しい法制度について総理が国民に説明していくべきだと思うんですけれども、総理、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今、下地委員がパネルで示されましたが、まさに旧安保条約は、サンフランシスコ平和条約によって独立を果たした日に、同じ日に調印がなされ、そして翌年に発効したわけでございますが、なぜサンフランシスコ平和条約が調印された日に日米安保条約を締結したか。

 それは、それまでは占領軍として米軍の存在があったわけでございますが、当時は、北方の脅威としてソビエトが存在をしたわけでございます。他方、自衛隊にはほとんど、自衛隊という存在として、実力組織としてまだ能力がないときでございましたから、米軍に残ってもらわなければならない。

 という中において、日米安保条約については、一条から五条までしかなくて、アメリカは日本を守ることに軍隊を使うこともできるということでしかないわけでありますから、これは守ってもらえるかどうか、日本を防衛する義務は全くかかっていないと言ってもいい。他方、たくさんある施設については、アメリカががちっと押さえてそこを使っていくということになったのでございますが、それを、より平等性の高いものに変えていこうということが日本の念願であったわけでございます。

 それまでは、一九六〇年の改定までは、旧安保条約のままでは、両国が承認しなければこの条約をやめることができない、つまり、アメリカがやめていいよと言わなければ極めて不平等な条約がそのままずっと続いていくという状況にあったわけでございまして、それを変えまして、日本がこれはやめようと思えばやめられる、そして米国がやめようと思えばもちろんやめられるわけであります。

 その上において、五条において、日本が侵略を受けた際には日米共同で対処する、米軍に事実上の日本防衛義務がかかり、かつ、六条において、双務的な対応として、日本の施設を米国は、米軍は極東の平和と安定のために使うことができるということになったわけでございます。それと同時に、地位協定がなかったものが地位協定がしっかりと確立をされたわけでございます。

 その後、沖縄については、まさにサンフランシスコ平和条約で日本は独立を果たすわけでありますが、まずは日本が独立をして、独立国として米国と交渉して、沖縄を日本に取り戻すという交渉が続けられ、佐藤内閣時代にやっとそれが成就したわけでございますが、結果として多くの米軍基地がまだ沖縄に集中をしているこの状況は是認できるわけではないわけでございまして、今後、沖縄の負担の軽減のために全力を尽くしていきたいと思いますし、米国ともしっかりと協議をしていきたい。

 米軍再編の中において、地位協定は一回も改定されたことはないわけでございますが、まずは、今般、環境にかかわることについては事実上の改定に近い協定を米側と結ぶことに至っているわけでございますし、西普天間住宅地区につきましても全面返還がなされたわけでございます。そして、岩国への十五機の空中給油機、普天間から移設が完了しました。

 長年の長年の懸案を一つ一つこのように今後も解決をしていくことによって、今下地委員が示された、戦後からの宿題を私たちは一つ一つ果たしていきたい、こう考えているところでございます。

下地委員 総理、七十年なんですよ、七十年。七十年という時間の中で、なぜこの二つの安保条約の取り残された課題を日本の政治が解決できないのか。

 私は、この前の、去年の集団的自衛権の閣議決定のときには落選していて議員ではありませんでした。そのときに私が思ったことは、これだけの集団的自衛権、限定であるにしても、それの一番の対象はアメリカですよ、そして、双務条約、双務関係があるというふうに言っていてもなかなかアメリカがそれを認めないというような中で、総理が大胆な決断をなされて、限定であっても集団的自衛権のスタートをするときに、この法律を提案するときに、この七十年間残っている二つの課題もどうやって解決するのかというシナリオを明確に示して、それでこの論議をやっていけば、私は論議はもっと深まったと思うんです。

 中谷大臣と同じように私は七十九時間ここに座っていろいろな話を聞いていますけれども、戦争があったときの、この戦争が侵略戦争であったかどうかという問いかけと、この考え方がそのまま戦争を行うんだ、そういう論理の話はいっぱいありましたよ。しかし、この安保条約を、どうやってこの残された課題を解決して、沖縄の問題も解決しながら前に進もうかという論議は一個もありませんでしたね。僕は残念だと思いますよ。

 だから、今回の百田さんの発言、そしていろいろな自民党の国会議員の発言があったと思いますけれども、ただ、私は、そのときに、ちょっと待ったという声があの会議の中から出てこなかったのが残念なんです。

 沖縄がこういう差別の話をされるというのも、一つ目には、間違いなく、地上戦があって二十万人の余の多くの命が亡くなったというのも一点。その次は、吉田総理の決断によって、施政権下に沖縄が二十七年間行ったというのも二点。三点目には、ずっと不平等の中で沖縄の地位協定が解決されないままで来たというのが三点。四点目には、今でも七〇%の基地が残っているというようなことが四点なんです。この四点が今の大きな課題なんですよ。

 だから、私は、今この法案の審議をさせていただいていますけれども、この四点をこの法案の中のどこかできちっと当てはめながら、過去のものを解決していくという明確な方向性を総理に示してほしかった。

 だから、それさえやれば、私たちの、国民の沖縄に対する理解がもっと深まる。ああいうふうな、百田さんみたいな発言をするような日本国民はいなくなる。そういうようなことにならない原因は、政治が沖縄の問題をもっと正面から捉えて解決をしようという仕組みをつくってこなかったからそうなったんじゃないかというふうに私は思っているんです。

 だから、改めてこの問題、この歴史の中から、百田さんの発言、先ほど総理のお話は聞きましたけれども、もう自民党がどうだとか、それとも百田さんがどうだとかじゃなくて、沖縄の県民に対して、沖縄の県民を対象にしただけで、総理は今どういうお考えなのかという発言をいただきたいなというふうに思います。

安倍内閣総理大臣 今から七十年前、沖縄の地において二十万人を超える貴重な人命が失われたわけでございます。そして、その後の七十年間、日本が独立を回復した後も、長い間沖縄は米国の施政権下にあったわけでございます。そして、その後も、多くの米軍基地が、日本全体の七〇%が沖縄に集中をするという苦難の歴史があったところに私たちは常に思いを寄せながら、米軍の存在というのは、いわば抑止力という観点から日本の平和、安全に寄与しているわけでありますが、これはやはり、沖縄にその重荷を全て背負わせるのではなくて、日本全体でそれを分かち合っていくという考え方のもとに、沖縄の負担軽減に向けて一つ一つ結果を残していくことが私は大切なんだろうと思います。

 その意味におきまして、安倍政権ができてこの二年半において、十数年間動かなかった、懸案でありました空中給油機の問題も解決をいたしました。これは、山口県が受け入れるという大きな決断をしてくれたのでございます。そしてまた、西普天間住宅地区、これは大きな地域でありますが、これも返還がなされました。これも長い間の懸案であったわけでございますし、また、環境分野についての、これは事実上の地位協定の改定とも、これは米側との関係がございますからそこははっきりとは申し上げませんが、そのようにもとれると言う方もおられるこの分野にも踏み込むことができました。

 私は、この二年半の間に、確実に着実に一歩一歩は進んでいる、しかし、沖縄の皆さんはもっともっとやってくれというお気持ちがあるのは十分に理解できるわけでございますが、この上において、さらに着実に一歩一歩前進していきたい、こう思っているところでございます。

 辺野古への移設につきましても、まずは、危険な状況である普天間基地の状況を一日も早く変えていきたいということで我々は取り組んでいるわけでございまして、十数年間動かなかったことが今やっと動き始めているわけでございますし、その中におきまして、機能も三分の一になっていくのでございまして、こうしたこともしっかりと御説明をしながら、理解を得るべく努力を重ねていきたい、汗を流していきたいと思っております。

下地委員 これから、寄り添うという言葉を、寄り添うという言葉の重みを、政治の場で、これは総理も私もですけれども、感じながら、沖縄問題という、問題がついている県は沖縄だけですから、しっかりと私たちも、与党であろうと野党であろうと、ぜひ頑張って解決をしていきたいというふうに思います。

 さて、私たちは、維新の党、独自案を出しました。

 きょうまで、四十人の国会議員がいますけれども、この四十人の国会議員の中の三十人近くが質問を終わりました。私は、お願いをして、できたらこの法案の審議が全部終わるまでに四十人の方に質問していただこうというふうに思っています。それは、私の考え方と同時に、松野代表も、とにかくこれは重要な問題、国会議員は安全保障をやるのが一番大事だからとにかく全員野球でやってみようというようなことを私たちの党の姿勢として、今この法案に取り組んでいるんです。

 そして、維新の党というのは、橋下最高顧問が地方分権ということでつくった党であります。大阪都構想というのは、決して大阪のためにやるという話じゃなくて、大阪都構想を通して地方分権をしっかりとこの国家の中につくっていこう、それのモデルケースをつくろうというのが大阪都構想で、橋下最高顧問がやられたわけですね。日本の骨格を変えていこう、中央集権を変えていこう、こういうような思いでやられたわけです。そういう党なんですよ。

 こういう党であるだけに、今までの自民党という政党や、野党第一党の民主党という政党とは違うカテゴリーで、新しい政党をつくっていこうというようなことを考えて、今、政治の活動をやらせていただいているわけです。

 この重要な法案になってきて、先ほど総理も話があったし、中谷防衛大臣も話がありましたけれども、いろいろと説明しているけれどもまだまだ国民の理解が足りないというような数字が出てくる、そうなってくると、そのまま政府が出した法案について、これがだめだ、あれがだめだ、これがどうだというようなことではなくて、やはり新しい、新興政党としては、こういうふうな形に変えた法律の方がいいよと出すことが政党としてのアイデンティティーがあると思って、私たちは今度この法案を出しているわけなんです。

 きょう、自民党にも公明党にも民主党にも説明に行きました。これを説明させていただいて、そして、来週の火曜日から、うちの今井政調会長を中心として、三党と協議を行います。条件が整えば、何とか八日の午前中の段階で、私たちはこの委員会に出したいというような思いであります。そして、十日には、もし委員会が開かれて集中審議をやるならば、あの席に私たち維新の党の答弁者が座って、政府案と私ども維新の党のと徹底的に論議をしてみよう、これが私たちの党の考え方なんですよ。

 だから、理解が深まらないといっても、理解が深まるために、政府案を突っ込むだけじゃなくて、私たちの党の考え方を国民に知らしめる、これを一回じっくりとやって、どっちが本当の政党としての役割を果たしているのかということをやっていく野党でなければ政権を担う野党にはなれないというのが松野さんの、代表の考えでもあるし、最高顧問の考え方でもあるというふうに私たちは思っています。

 そういう意味でも、私たちも八日の日程を、出していこうというふうなことを言っていますけれども、総理の、私どものこの新たな独自案に対して、出させていただきますけれども、この独自案を出させていただく、ある意味、維新の党の評価と、そして出させていただく私どもの法案について、自民党の総裁としてどういうふうな形で臨んでいくのかというお話を伺いたいというふうに思っています。

安倍内閣総理大臣 今回、私どもは、私どもが提出をしている法案がベストだというふうには考えております。

 しかし、御党において、やはり、国民の命を守るために、平和な暮らしを守るために何が必要かという真摯な議論を行われ、そしてそれを法案として取りまとめられた、敬意を表したいと思います。

 安全保障の分野においては、新たな事態に対応するために法律を出せば、常に大きな批判にさらされるわけであります。つまり、逆風が吹いているところに身をさらさなければいけない。しかし、それによって初めて国民の命を守れるという気概を持って、私たちは、自民党は取り組んできたところでございます。

 御党におかれましても、法案を出すということは、これは批判にさらされるということも起こり得るわけでありまして、そういうリスクをしっかりととっていただき、しかしそれは、国民の命を守るために、国の独立を守るために必要だという観点から出されたことにつきましても敬意を表したい、こう思います。

 この委員会において、まさに並んで、どちらの法律がいいかということはしっかりと御議論をいただければ、このように思います。

下地委員 この内容を少しだけ説明させていただきます。

 これをちょっと見ていただきたいんですけれども、昨日、元内閣法制局長官の阪田先生にもこの法案の中身を見ていただきました。また、伊藤真先生にも見ていただきました。小林節先生、参考人で来ていただいた先生にも見ていただきましたけれども、どの先生も、私たちの維新の案、この法律は合憲だと言っているんですね。

 これは、見ていただいたように、従来の、これまでの考え方。そして今回の政府の考え方、限定的な集団的自衛権の行使、三要件がありますけれども、これでやっていくやり方。私たちの維新の案は、自国の防衛、守るための話も、他国の防衛のための話も、私たちは集団的自衛権とか個別自衛権という言葉ももう使わないというような文言になっているんです。それで、範囲も、柿沢幹事長が申し上げたように、地域を限定したり、条約を結んでいる米軍であったりと、限られた、国民が理解が深まるようなものを中心にやらせていただいているんです。

 そういう意味でも、私たちは、一歩一歩、最後に書いてありますけれども、憲法改正の話がありますけれども、私個人の考え方としては、最終的には、この集団的自衛権のあり方というのは、やはり国民の論議をいただいて結論をいただく。その前のステップが、今の政府案なのか、私たちのこの維新案なのかといったら、私たちは、維新案をやって、そして最終的には憲法改正に行った方がよくわかりやすいですよというようなことを今回は投げかけているわけです。無理やり条件をつけて限定的にやることが、逆に、最終的な目標である憲法改正に水を差すんじゃないかというようなことを私たちは思ってこの案にさせていただいたんです。

 中谷大臣、どうですか、この案。すばらしいんじゃないでしょうか。

中谷国務大臣 まず、対案を検討していただいたということは、非常に敬意を表したいと思います。

 維新案においても、自国の防衛のための自衛権行使ということを言われておりますけれども、これは、政府案におきましても、限定された集団的自衛権でございますけれども、あくまでも、我々といたしましては、我が国の存立を全うして国民を守る自衛の措置として憲法上容認されるものでありますし、他国の防衛それ自体を目的とする集団的自衛権行使までは憲法上認められないという立場でありますので、維新案の、この真ん中から上にある部分、そういった点においては共通する部分がございますので、今後よく検討して議論をしてまいりたいと思っております。

下地委員 もう少し維新案を説明させていただきます。

 ちょっと見ていただきたいんですけれども、集団的自衛権については、私たちは、武力攻撃危機事態というようなことで、できません。存立危機事態という政府案とはちょっと違う考え方。

 グレーゾーンに関しては、領域警備法を今度出させていただきましたから、これでグレーゾーンの対策をしっかりとやっていこう。しかし、政府に関しては、今回はグレーゾーンに対しては全く法案を出していないというようなところが違う。

 周辺事態、これはもう間違いなく、米軍限定にして、東アジア限定にする、この方が一番国民がわかりやすい。ホルムズとか中東とか、そういうことを言って、論議を深めようとしてもなかなかもう深まらない。国民は、身近で、それも、これまで日米条約を結んでいるアメリカの艦船が襲われたりした場合に、この国を守るための、防衛のための艦船ならば、私たちは、この艦船を襲う他の国を自衛隊が攻撃できる。こういう論理を展開するとわかりやすいんですよね。だから、今はわかりやすいものからいってみましょうよということで、これをやります。

 人道復興支援、これに関しても国連型。国連の、今までと同じように、総会の採決でやったり理事会の採決でやる、そのことについてだけやる。政府案は、この採決がなくてもおやりになるというような形になっているわけです。

 海外派兵は、私たちは、原則も例外も全くなくて、これはできません。政府案に関しては、ホルムズ海峡がこの例外だというような答弁をしていますけれども、こういう例外行為もうちのものにはないわけであります。

 武力行使の一体化というようなことについても、武器弾薬の提供、戦闘行動のために発進準備中の航空機に対する給油や整備、これもうちのものはできません。政府のものはこれができるようになっているんです。

 そして、国会承認でありますけれども、これは今論議をさせていただいていますけれども、政府案では過半数となっていますけれども、やはり過半数では本当の論議が果たしてできるのかなというふうに私は思っていまして、こういうふうな特別委員会をつくって、この特別委員会の中で、もう戦争をやるかどうか決めるわけですから、存立事態と同じように、決まるわけですから、そういうふうな形の中では、ちゃんとこの委員会において三分の二の採決をもらったもので物事をやっていくというようなことをやるべきだというように思っています。

 こういうふうな仕組みをつくって国民の理解を深めていこうというのが私たちの案になっております。これを、ぜひ大臣の方から、見ていただいて、いろいろな御感想をいただきたいと思うんですけれども。

中谷国務大臣 まさにこれまでの議論を踏まえまして、それぞれ論点を整理された上で対案を考えられたということで、非常に敬意を表しておりますが、その中でも、まず自国防衛のための自衛権行使、また、日米安保を基軸に東アジアの平和と安全に責任を持つといった点につきましても、これは政府としても、政府の案も、非常に厳しい安全保障環境を踏まえた政策の大きな方向性というのは一致している部分もあるのではないかというふうに考えております。

 いずれにしましても、対案が国会に出されたら、下地委員もこちらに座っていただいて、お互いの案を比較して審議がさらに深まって、非常に建設的な議論になるのではないかなというふうに思っております。

下地委員 私は、長妻さんの駆けつけ警護があるのでここには座れません。別の方が座ることになると思います。

 それで、もう時間が来ておりますから、この七十九時間の論議の中で一つだけ私が疑問に思っていることを、きょうは中谷大臣とお話をさせていただきたいと思うんです。

 自衛隊のリスク論なんですけれども、ずっと、何度も委員会もとまって、論議しましたけれども、僕はこれは、素朴に答弁した方がいいんじゃないかと思うんですね。

 これを見ておわかりのように、現行法では、戦闘現場に行けない。改正後も行けない。これはもう当たり前ですね。戦闘が起こる可能性のところには、現行法では今行けない。しかし、この周辺事態法が重要地域に変わったりしながら、法律上は行けるような環境になってくる。また、下の方に書いてある、事態法とか新たな任務とかありますけれども、この前までは三つでしたけれども、今回は、事態法や、任務が八つまでふえるんですよね。そういうふうなことを考えると、果たして本当に自衛隊のリスクはないのかというようなことを考えるわけですよ。

 役割もふえる、行く場所も変わってくる、そういうふうになってきたら確実にこれはリスクはふえますよねと言ったら、そうですねと言えばいいんだけれども、これは、中谷大臣の答弁をずっと聞いていますけれども、こういう答弁をしているんですよね。新たな任務に伴う新たなリスクが生じる可能性がある、もうこれだけなんですよ、ずうっと。

 しかし、これにも書いてあるように、これまでのリスク、そして、これまでのリスクに新たなリスク、新たなリスクがあるけれども、自衛隊の今までの経験や能力、装備の充実、そして指揮系統を行う人の決断力とか、こういうふうなことを総合的にするとこれまでのリスクよりも下がりますよというような答弁だと、聞いている人たちも、ああ、そうか、新たなリスクは今よりは出るけれども、自衛隊の能力だとか装備の充実だとかいろいろなことを含めて極小化を図って、これは下げますよと言うと、私は、ああ、そのとおりだと思うと思うんですよね。

 このリスクがこのままあるから、リスクはあると言うからこの法律がだめだとかと言っているわけじゃないんですよ。しかし、法律は確実にリスクがふえている。

 私が考える答えは、新たな任務で新たなリスクがふえる、しかし、自衛隊の経験、能力、装備の充実等でリスクを極小化し、これまで以上のリスクにしない、これが私は正しい答えじゃないかと思うんですけれども、もう何回も何回もこの論議でとまって、ずっと論議していますけれども、これは、答弁の変更じゃなくて、私はこういう方向でお話をなされた方が理解が深まっていくと思いますけれども、いかがでしょうかね。

中谷国務大臣 これまでも申し上げていますが、自衛隊というのはリスクを背負って任務をいたしております。また、これからもリスクというものは持ちながら任務をこなしていくということでありまして、委員質問の中でも、国のリスク、これを下げるために自衛隊はリスクを背負って任務を遂行しているということでございます。

 七月一日に自衛隊は発足六十一年を迎えました。この間も、我が国の防衛を達するために、日ごろ、その任務を達成するために、使命感を持って勤務をして、それぞれの能力を向上させてまいりました。

 私が申し上げましたのは、確かに、新たな任務に伴う新たなリスク、これは生じる可能性がありますが、リスクというものは管理できるものでありまして、しっかりとそのリスクを極小化する、この表にも書いていただいていますけれども。参考人の質疑にもありましたが、リスクには量の部分と質の部分があって、必ず足し算をすればいいという問題ではなくて、それぞれの任務があって、それぞれの処方箋があって、それを、情報、装備、教育、ルール、そして地元の状況との関係などがあってリスクを極小化させていく、そういうことで、我々は与えられた任務をしっかり果たしてまいりたいというふうに思っております。

下地委員 大臣、私が申し上げていることと大臣は全く同じことを言っているんですよ。私が言っていることは全く同じなんです、リスクがふえるけれども、リスクは防衛省や自衛隊員の能力で極小化できる。このグラフを見てわかりませんか、今あるリスクよりも能力で小さくすると書いてあるんですよ。同じことなんだ。

 だけれども、ここのところがふえないとおっしゃるから。新たなリスクがないとおっしゃるから。こっちの、三番目の、リスクは減らすというのは同じ考えなんだけれども、ここに新たなリスクがふえるかと言ったら、ふえる可能性がある、だけで、ふえると言った後に下げると言えばそれで済む話なんですよ。そうでしょう。

中谷国務大臣 もう一度申し上げますけれども、武力攻撃事態一つとっても、いろいろな状況と任務があります。東日本大震災もPKOも、それぞれリスクを抱えて任務をしておりますので、この表でいくなら、今、本当にこれだけのリスクなのかというと、もっともっと大きいリスクを抱えてやっているわけです。

 そういう中で、新たな任務が加わりますけれども、新たなリスクは生じるということで、今でも大変大きなリスクを抱えながら与えられた任務をやっているということをぜひ御理解いただきたいと思います。

下地委員 大臣、この部分だけは、七十九時間やっているけれども、納得いかないんですよね。

 大臣、これをもう一回読んでみてもらえませんか。「新たな任務で新たなリスクが増える。 しかし、自衛隊の経験・能力・装備の充実等でリスクを極小化し、これまで以上のリスクにしない」、これでいいじゃないですか。これを読み上げてくださいよ、本当に。本当に、この言葉のどこが大臣にとって問題があるのかと聞いているんですよ。可能性だけで、新たな任務に伴う新たなリスクが生じる可能性がある、これでは説得力に欠けますよ。それを、大臣の部下がちゃんとリスクを減らすと書いてありますよ、これは。

 総理大臣、どうぞ。

安倍内閣総理大臣 これは……(発言する者あり)今、読んでと言われましたが、これは読むということではなくて、まさに、いわば一つ一つの与えられる任務、それ自体は、できることがふえていくわけでありますから、そういうニーズが起これば、今度は新たなことができるようになります。もちろん、他方、PKO等々において、武器の使用の基準が、任務遂行のために武器の使用ができることになることによって、本来、武器の使用の権限が与えられなければかえって危険であったものが危険ではなくなることもあるということも事実であります。

 そして、下地委員がおっしゃったように、新たな任務において新たな仕事がふえていく可能性はもちろんあります。仕事、仕事には、当然、自衛隊員が行う仕事にはリスクがあるということでございます。しかし、そういう仕事を積み重ねていくことによって地域の平和と安定が確保できれば、日本にとってもリスクは低減をしていく。

 日本全体のリスクが低減をしていくということによって、自衛隊において最大のリスクを背負うのはまさに日本の事態、日本事態であります。日本事態が低減をしていくということについては、これは結果として自衛隊員のリスクも低減をしていくわけでありますし、そして、それぞれの任務に当たる自衛隊員が、まさに、委員がおっしゃったように、さまざまな装備あるいは訓練をしていくことによってリスクを低減していくということになるわけでございます。

 例えば、中谷委員はレンジャー部隊の一員でございます。レンジャーの訓練自体は大変な、リスクが高いものでありまして、例えばそれに二時間訓練の時間をふやすことによって、レンジャーとしての訓練のリスクはふえるのでありますが、実際に何か起こったときには、訓練をしていることによってリスクは低減されるわけでありますし、精強性の高いレンジャー部隊がいることによって抑止力が高まって、全体としてのリスクも低減していくという側面もございますから、単純に八が十になったり十が十一になるということではなくて、それを全体的に考えていただきたい。

 ただ、委員がおっしゃっている意味も、我々、よく理解できるところでございますから、いわばリスクを最小限にしていくべく、それぞれ、訓練、装備等も含めて努力を重ねていきたい、このように思っております。

下地委員 言っていることがわかると言うんだったら、はいと言ったらいいんじゃないですか。

 総理がおっしゃっているように、自衛隊が出動するときは、リスクがあるときにだけ出動するんですよね。リスクがあるときに自衛隊が出動して、自衛隊は国民のためにリスクを下げる、これはそのとおりなんですよ。おっしゃるとおり。

 だけれども、僕が申し上げているのは、今度の任務の、もうこれ以上やりませんけれども、時間がないからやりませんけれども、中谷大臣、本当にこういう答弁をしていることが、私は、なかなか理解が深まらない。

 これは本当に自衛隊の努力も認めた文章にしてあるんです。装備にしても何にしても頑張るから大丈夫だよというようなことを言っているので、ぜひ、そのことはしっかり、これからまだ時間がありますから、その中で私も質問させていただく機会があると思いますので、ぜひ、これだけは最後までに決着つけましょうよ。お願いします。

 それで、菅官房長官、この前、菅官房長官は、質問の答弁において、普天間基地が一番、世界一危険な飛行場だというようなことを申し上げていました。これをちょっと見ていただけますかね。

 普天間飛行場と福岡空港と伊丹空港を比較させていただきました。させていただくと、伊丹が二十七万人、半径で。そして、福岡が十九万、普天間が十二万。周囲三キロの住宅地域では、伊丹が十二万、福岡空港が十万、普天間が四万。半径三キロ以内の学校の数も、普天間が二十校、福岡空港が二十九校、伊丹空港が三十九校。そして、年間の離着陸量も、普天間が二万九千回、福岡が十三万回、伊丹が十九万回なんです。

 どこの根拠を持って世界一危険だという答えになるんでしょうかね。数字的なちょっと説明をお願いしたいんですけれども。この前も何回も申し上げていましたけれども、数じゃないという声もありますけれども、これをも含めて、ちょっと説明をお願いします。

菅国務大臣 今、下地委員からこの数値を見せられると、そうかなというふうにも思わないわけではありませんけれども。

 しかし、十九年前にそもそも日米の間で合意したというのは、まさに、普天間飛行場の周りに住宅が密集し、学校もあって、そして、その後、事故もあったわけですね、大学に対して。そういう中で、日米、そして沖縄県も入って、この世界で一番危険な飛行場を県内移設ということが決まって、それから三年後に、今から十七年前でありますけれども、辺野古移転が決まった。そしてまた、日米安全保障の中で抑止力を維持する、そして危険除去、そして固定化を避けるという中で、今、私どもは移転のお願いをさせていただいています。

 そして、これは、地元の皆さんも、宜野湾の市議会もあるいは沖縄県会も、常に世界で一番危険な基地、この普天間基地を移設ということで今まで来ていた歴史もあるのではないでしょうか。

下地委員 総理が山口に空中給油機を移設した、あれは相当に危険の除去になりましたよ。あれはもう長年できなかった行為ですから。空中給油機というのは一番怖いんですよね、あれだけの空輸する燃料を積んで、離発着して、あの飛行機が落ちることを想像するだけで、これは大変なことになるぐらいのリスクがあります。こういう飛行機ももう岩国に行った。今残っている飛行機は、オスプレイの二十四機、それとCH47の十二機、そういう数になっていることだけは確かなんです。これは政府の努力でそうなっていることは私は評価しますよ。

 ただ、この十年前、十五年前のときには、政府は、世界一危険だと言ったら、違うと言っていた。今は、世界一危険だとおっしゃる。だけれども、どんどんどんどん危険の除去はされているんです。そこのところを私は素朴に聞かせていただきたい。

 もう一個ですけれども、辺野古を見ていきましょう。

 辺野古の滑走路は千二百なんです。今の普天間は二千八百、そして、与那国空港が二千ですよ。この千二百メートルの滑走路で、唯一とよく答弁で使う、軍事的な飛行場に辺野古がなるんだろうか。

 これは空中給油機も何もおりられません。今、辺野古に移設をすると、普天間基地に運んでいる、空中給油機も全部、滑走路が短いものですからおりられなくて、私が聞くところによると、全部、嘉手納の飛行場に物資はおろして、それから陸送するそうなんですよ。こういうふうな飛行場をつくろうとしているわけですけれども、私は、これが本当に総工費三千五百億円といって国会答弁でも出ていますけれども、それだけの、千二百メートルの滑走路をつくる価値がおありになるんですか。

 やはりどこかで、世界一危険だという言葉であったり、唯一辺野古しかないとかという言葉を冷静にもう一回考えてみる時期が来ているんじゃないかということを申し上げたんです。どっちにどうせいと言いませんよ。どっちにどうせいということは言いませんけれども、ただ、今、本当に冷静に見てみる、そういう時期に来ている。

 本当にこの千二百メートルの滑走路が米軍にとっても日本政府にとっても、軍事的能力においてもすばらしい飛行場だったら、私はそれでいいというふうに思うけれども、稲嶺さんが昔、二千五百メートル、軍民共用と言っていましたよね。そういうふうなことだったら可能性の方はあったと思うんですけれども、今は、私にとっては、魅力のあるものにならないんじゃないかと思うんですけれども、官房長官、いかがですか、これは。

菅国務大臣 まず、世界で一番危険な基地という、このことについては、先ほど申し上げましたけれども、地元でもそう言われていますし、そして県会でも言われている。その危険除去のために、三つ機能があった中で、空中給油機十五機を山口県岩国でお願いをして、昨年移転をしました。そしてまた、緊急着陸もあそこが基地になっています。これについても九州で受け入れというものもほぼ間違いない段階に来ております。

 そして、残っているのは今オスプレイになっていますけれども、このオスプレイを辺野古に移転するわけでありますけれども、このことによって地元の皆さんは、約一万を超える住宅の皆さんは、これは騒音という形の中で今大変な思いをしていただいています、これも全く、辺野古に行くと解消されるということになっています。

 そういう全体を考えたときに、やはりこの辺野古というのは、今まで日米で何度となく、長い時間をかけて、全体の海兵隊の基地の状況を踏まえた中で、唯一の解決策というふうに考えていますし、このことによって、海兵隊は一万八千人と言われておりますけれども、九千人が沖縄県外に行くということも決まっていますから、そういう全体を考えたときに、やはり政府としては、この辺野古移設というものを、自然環境や住環境にできるだけ配慮をしながら、粘り強く交渉して進めさせていただきたいというふうに思います。

下地委員 時間ですけれども、丸山さんの御理解をいただいて、あと少し。

 あした、翁長知事とお食事をなさるという記事が出ていましたけれども、それは非常にいいことだと思うんですね。やはり会議の場だとお互いが胸襟をなかなか開けないですけれども、お食事しながら話をする。考え方が違っていても、相手は沖縄県の知事、それは間違いなく基地を支えている地方の首長であるし、こっちは日本の安全保障を考える官房長官の役割ですから、ぜひ、あしたの食事会の中でお互いが話をしながら何か糸口が見つけられないのか、こういう模索を政府が徹底的にやっていただくというようなことはぜひお願いをさせていただきたいというふうに思っています。

 最後になりますけれども、採決の話がきょう出ていますけれども、六十日ルールがなくなるのが、二十九日に採決をすると、二十七日が日曜日なので、日曜日に国会が開けないんです。二十八日に採決をすると、土曜日が二十六日なので、これはなかなかできない。二十五日に参議院で六十日ルールでやろうとすると、二十七日なんですね。

 私が申し上げたいのは、この場所で万が一強行採決して六十日が活用されると、間違いなく、参議院においての審議というのは形骸化しますよ。

 私は、こういうふうな状況の中では、この六十日ルールを自民党が、政府が使わない。そして私たちも、野党も野党なりの対応をしていって、そして、お互いがこの話をしながらやっていくというようなことをやっていく必要があるんじゃないか。参議院においてまたしっかりとした論議をするためには、六十日ルールが決まった後の参議院の質問というのは、なかなか私は内容の濃いものにはならないんじゃないかと思うんです。

 そういう意味でも、これはまだまだ時間がありますから、政府が、十七日、二十四日、いろいろな案がありますけれども、ぜひ、六十日ルールを使わないで、お互いに与野党で話し合いをしながら参議院に論戦を持ち込む、こういうふうな姿を与野党で考えていくべきではないか、このことを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 維新の党の大阪泉州選出の丸山穂高でございます。

 私からも、安全保障の法制につきまして質疑をさせていただきたいと思います。

 先ほど来伺っていても、この日本の国を、そしてこの国土を、国民の生命財産を守り抜かなければならない、こういう点についてはどの党も一致しているところだと思いますし、まさか、まさかここに異議を唱えるような政党は、もしあったとしたら、そんな党はおよそこの国の政党ではないと思います。

 そして、我が党としては、極東アジア、日本を含んだ極東の国際的な安全保障情勢の変化に合わせて、しっかりとこの国を守り抜くために体制を整えていかなければならない、この点も我が党としては同じ考えであります。

 しかしながら、特に、先ほど来、柿沢委員そして下地委員から指摘のありました違憲か合憲かというところ、非常に大事な点だと我が党は考えています。

 それは、もちろん、与党である自由民主党さんも公明党さんもそのようにお考えだと思いますけれども、日本は法治国家であって、そして、憲法の第九十九条は、天皇陛下、摂政だけでなくて、「国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と明確に憲法擁護義務を課しているわけでございますから、憲法に違反しているかどうかというところはしっかりと吟味していかなければなりません。

 そして、最終的には、最高裁判所が違憲立法審査権という意味でチェックするというのがこの国のルールです。しかし、残念ながら、我が国の最高裁は抽象的な法案に対するチェックを行っていないことから、そういった意味で、この国会でしっかり審議をまずしていかなければ、この点、国民の皆さんが不安に思うところを払拭することは絶対にできないと思いますので、まずしっかりと、この点、お話を伺っていきたいんです。

 そうした中で、さきの憲法審査会を筆頭に、政府案について、これまで多くの憲法学者の方が違憲だと、皆さんがおっしゃっています。これは後ほど御説明させていただきたいと思うんですけれども、我が党案、独自案を取りまとめまして、この案につきまして、先ほど名前の挙がりました小林節先生、慶応大学の教授、これは憲法審査会で政府案に対して明確に違憲だとお述べになった先生のお一人です。それだけじゃなくて、阪田先生、その他多くの方々にお伺いして、また、きのうはマスコミの前でもお話しさせていただきましたけれども、後ほど説明させていただく我が党案に対しては合憲だというお話をいただいています。

 一方で、政府案に対して違憲だという意見が出て、それによって国民の皆さんは、専門家の方々の御意見がそうおっしゃるなら違憲の可能性があるとお思いになっている方が多くなっている。この意見を真摯に、もちろん総理としては、一番、憲法、合憲性、大事なところだと思います、総理としてはお考えにならなきゃいけない、お聞きしなければいけないところだと思うんですけれども、多くの専門家からどうしてこういう意見が出ているのか、それについてどのように思われているのか、総理としてお答えいただけますでしょうか。

    〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 そもそも、憲法九条、特に二項でありますが、二項において、戦力、そして交戦権、我が国はこれは行使できない、あるいは持てないということが明確に書いてあるわけでございまして、そこで、日本においては、自衛隊の存在すら、これはずっと、違憲ではないか、こう言われてきているわけでございます。

 現に、中学校の教科書を見てみますと、公民の教科書において、一番売れている教科書、例えば東京書籍ですかね、その教科書においても、自衛隊の記述の中に、これは結構行を割いて、違憲の疑いがあるという意見もあるということが、これはまさに憲法学者が述べていることが書いてあるわけでございます。自衛隊の存在すら、そのように違憲の疑いがある、こう言われてまいりました。

 そして、PKO法案が審議され始めた平成三年に朝日新聞が憲法学者を中心に行った意識調査においても、八割の学者の先生たちが、自衛隊の海外への派遣は違憲であるというふうに述べているわけでございます。

 つまり、憲法九条、特に二項との関係において、自衛隊の存在そのものが、このようにずっと憲法学界からは疑問が投げつけられ続けてきたのは事実でございます。そして、今回の解釈変更においてもそうした疑義が出されている。

 我々は、そうした声があることも真摯に受けとめながら、同時に、政治家である以上、国民の命と幸せな暮らしに責任を持っているということでございます。

 そこで、我々は、もう再三説明をさせていただいておりますように、平和安全法制においては、憲法の関係では、昭和四十七年の政府見解で示した憲法解釈の基本理論は全く変わっていない、そしてそれは、丸山委員も指摘をされたように、最高裁判決である砂川事件の考え方と軌を一にするものであるというのが私たちの基本的な考え方でございます。

丸山委員 総理は、教科書にもそういう記述がある、憲法学者の方の中にも自衛隊が違憲だと言う方がいるという言及をされましたけれども、確かにそういう方もいらっしゃいます。しかし、明確に申し述べておきたいのは、この政府案に対して違憲とおっしゃっている、今名前も明示させていただいた先生方、教授の方々は、自衛隊に対して違憲だとおっしゃっている方々ではありません。そして、なおかつ、その中でも、これまでの伝統的、いわゆる個別的自衛権の範囲ではこれまでの政府の解釈も違憲だとおっしゃっていない方が、今回出してきた政府の法案に対しては違憲だとおっしゃっているので、そういった意味で、そこはごまかさないでいただきたいと思います。

 具体的に、先ほど、公明党の北側副代表、そして民主党の細野政調会長、自民党の高村副総裁にお会いいただきまして、我が党案をお示ししてきました。その中で、ある与党の議員の先生から、我が党案の方が国民の感情に現在応えているものではないかという真摯なお答えもありました。

 そうした中で、しっかりと、ここの、きょうの審議も含めまして、今後の審議の中で、政府の問題点についてさらにあぶり出していきたいと考えております。

 その意味で、我が党の独自案も、取りまとめはすごく大変でした、会議も大変ですし、ツイッターでも議論がありました、しかしながら、本当に汗をかいて議論に値する案にまとめさせていただいたと思いますし、しっかり皆さんで議論いただきたいと思うんです。

 非常に多い法案です。全部で十二法案ありますので、全てをくまなく御説明したり質疑するというのは難しいところでございますので、詳しくは、ホームページに全文も、また要約も載せておりますので、ごらんの皆さん、見ていただければと思うんですが、ここでは、まずはできる限り政府案との違いについてわかりやすく御説明しながら、政府の見解を伺っていきたいと思います。

 大きくは五つ。自国の防衛のための自衛権の行使と、東アジアの安全、平和に責任を持つ、海外派兵は認めないし、国連を中心とした人道的支援はやるけれども、しっかりとシビリアンコントロールをきかせる等々の五つのものになっていますけれども、一言でこの違いを言いますと、自国防衛のために目的を絞りつつ、合憲の範囲、あくまでも政治家もこれは守らなければいけない、憲法の範囲内で歯どめをかけた上で、必要な防衛や国際貢献を行う、こういった法案の内容になっています。

 大筋の違いについてお話ししていきたいと思います。

 一つは、合憲性の話です。

 最初に申し上げますが、維新の党は、個別的とか集団的という話は、先ほど下地委員からも柿沢委員からもありましたけれども、もう区別はおかしい、古い話だと思っています。そもそも、この自衛権を憲法上許される形で再定義をし直さなければいけないという立場ですが、その立場とか、あとは、国際法上、いわゆる国連憲章の五十一条で言われるような集団的自衛権というお話ではなく、いわゆる、政府がこれまで述べてきたような、伝統的に許されてきた個別的自衛権、そして違憲だと言われてきた集団的自衛権に絞ってわかりやすく御説明したのが、今、下地委員も説明した同じ図でございます。

 この従来の違憲と合憲と言われているところをぽこっと出てしまった、このはてなを振っているところが、いわゆる今回の政府での限定的な集団的自衛権行使と言われるもので、そして、ホルムズ海峡についてはここに入っているということでございます。

 しかし、維新の案では、自国防衛にしっかり限っていく。その意味で、武力攻撃事態ではなくて、これから説明します武力攻撃危機事態というものを設立しますので、例えば、日本近海において、ある国から日本を守っている米国艦隊に攻撃があったときに、これを守らないというのはおかしな話じゃないか、こういうものにはしっかりと自国防衛のために対応していく。しかし、遠くの、ホルムズ海峡の、万が一にも起こり得ないとまで与党の議員の方もおっしゃるような、そういう事態まで、明確に書かずに、しかもオーバーに、広目に法文上書くことで許してしまう、そんな状況ではこれはいけないだろうというのが我が党の案でございます。

 そして、なおかつ、先ほど下地委員からもありました、しっかりと守っていくために本当に集団的自衛権が必要なのであれば、これは、しっかり憲法改正の話、総理もたびたび憲法改正の話をいろいろなところでお話しされていますけれども、これからしっかり逃げずに判断をしていかなければならないんじゃないかというのが我々の案でございます。

 そうした中で、もう少し細かい内容も踏まえた上でお伺いしたいんですけれども、先ほどの対比表も、下地委員からは細かいところまでは御説明がなかったので、させていただきます。

 集団的自衛権におきましては、先ほどお話をさせていただいたように、我々は、集団的自衛権という形ではなくて、個別的自衛権の枠内で整理をしてきちんと日本周辺の有事には対応していく、しかし、ホルムズみたいなものは認めない。その意味で、海外派兵もできません。

 グレーゾーン事態、この後お話ししますけれども、遠方の話よりも、日本近海で、尖閣もそうです、尖閣諸島が今危ないという話、また、小笠原諸島でサンゴの密漁が行われているという話、こういうところからまず整備しなければならないのじゃないか。政府は、電話での閣議決定、迅速化するというのを出しておられます。しかし、法制上の対応はされていません。しっかり、まずここからやらなければならないのではないかという話。

 また、周辺事態については、これまでの枠内を守り、米軍に限定して、周辺地域を限っていく。

 人道復興支援については、国連型にしていく。

 海外派兵については、先ほど来申し上げているように、ホルムズは認めない、できません、派兵は。一般的には海外派兵は認めない、しかしホルムズ海峡は例外だと総理はずっとおっしゃっていますけれども、それが一番わかりにくいところです。海外派兵はできないとしっかり言っていくべきだという案になっています。

 また、憲法上も、弾薬の提供、今回、武器については政府案にも入っておりませんけれども、弾薬の提供と、そして何よりも、戦闘行為に発進準備している、その航空機に対して給油をできるようになってしまいます。ここについては、やはり、ロジスティック、兵たんの関係から、相手国から見れば、どう見たってこういう行為を行っているところは、兵たんをたたくのが軍事の常識ですから、そういった意味で、これは武力行使との一体化とみなされてしまう、だからこれはだめだと。

 そして、国会承認の話も細部は決まっておりません。国会承認については、細部が決まっていないがゆえに、本当に有事が起きたときには、恐らく事後、本当に、例えば日本にミサイルが来た、何か有事が起こったとき、そのときには恐らく、まずは政府が判断する、そしてその後に国会の承認を得るというパターンが多くなってくると思います。そのときにおいても、果たしてその場で防衛秘密が入ってちゃんと判断ができるのかどうか、その判断する議員がどういう人たちなのか、そんなすぐに判断できるようなものなのかどうか。最初からある程度体制を整えておかなければ万が一の有事に備えられない、そのためにこの体制を整備すべきだというのが維新の案であって、これが政府案に欠けているところだと考えています。

 今、大まかに我が党の案をお示ししました。また、先ほど自民党さんの方にもお持ちしましたし、何より、この質問の通告のときに、維新案についてお伺いするというお話をさせていただきました。総理、お聞きになってどのようにお考えになりますでしょうか。お伺いしていきたいと思うんですけれども、お願いします。

安倍内閣総理大臣 ざっと今御説明をいただきました。また、我が党の方にも、高村副総裁に提出をしていただいたというふうに承知をしております。私も、詳細について存じ上げているわけではございませんが、要旨については説明を受けております。また、今ざっと丸山議員から御説明をいただきました。

 その基本的な考え方は、自国防衛のための自衛権行使や日米安保を基軸に東アジアの平和と安全に責任を持つといったことであると承知をしております。

 これらの点については、政府としても、限定的な集団的自衛権の行使はまさに自国防衛のためのものであること、日米安保条約体制を基軸とし、その実効性を一層高め、日米同盟の抑止力を向上させることで我が国及びアジア太平洋地域の平和及び安全を確保することが目的であることなどから、厳しい安全保障環境を踏まえた政策の大きな方向性は一致している部分もあるのではないかと考えております。

 いずれにいたしましても、対案が国会に提出をされました。これは、丸山議員がこの答弁席に座られるかもしれませんが、そうした形で、政府案、政府・与党案と国民の皆様の前で議論を深めることによって理解が深まり、そして、私たちは私たちの案がベストだと思っておりますので、しっかりと議論をしていただきたい、このように思っております。

丸山委員 一緒な部分もあるというお話がありました。しっかり議論をしていきたいというお話がありました。今、各種報道では、十五日の採決というような報道も出ておりますが、しっかり審議するためには早過ぎるというふうに、私も下地委員と同じく思いますので、そこは、しっかりと議論を深めていく中で国民の皆さんの理解を得ていくということも、まさしく大臣もうなずいていただいているように同じだと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 具体的に、大きな違いを三点、御説明しながらお伺いをしていきたいと思います。

 この委員会でもたびたび申し上げている、ここが一番大事なところだと思うんです。ホルムズもいいんですけれども、政府の案は、切れ目がない、切れ目がないとおっしゃっている中で、我が国の離島の防衛、この部分について切れ目があるんじゃないかという話を、私だけではありません、民主党の議員さんの中でも、また与党の議員とお話をしている中でも、これが必要だという議員の声を多く聞きます。尖閣諸島での離島の防衛の話、小笠原でのサンゴ密漁対策、これらに対して、いわゆるグレーゾーン事態と言われる事態に対して、我が国の領土とか領海を守るために、これこそ法改正が必要な部分だと考えます。

 そして、一方で、与党の話、政府の話を聞きますと、いろいろな、なぜできないのかという話も出てきます。

 例えば、ネガティブな話では、海保のような警察と自衛隊の百年戦争と言われるような、セクショナリズムな、国破れて省益ありみたいなそんなお話から、また、中国等海外への配慮からなかなかしづらいというお言葉もあります。

 閣議決定を電話でできるようにして迅速化を図られておりますけれども、しかし、政治的な決定も迅速化しなければなりませんけれども、現場での動きの迅速化、連携をどうとるかということは非常に大事で、ここに基本的な方針だとか、また法としてどうあるべきかというものが非常に大事になってくると思います。

 これについて、どうして、総理、やられないんでしょうか。お答えいただけますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私も、官房副長官を務めていたときに工作船の事件が発生をいたしました。当時感じましたことは、今委員がおっしゃったように、自衛隊と警察、あるいは、当時防衛庁と警察庁あるいは海上保安庁、これはやはり縦割りで、十分に情報が共有されていない、こういう認識がございました。それとともに、役割がそれぞれ違う中において大切な国家資源なんですが、海上保安庁が対応していて、これはもう海上保安庁の対応を超えるものであれば直ちに、スムーズに自衛隊に、海上自衛隊にスイッチされるということが極めて重要であろう、こう思うわけでございます。

 そこで、それぞれさまざまな課題もありました。省庁間の日ごろの連携がない、共同訓練もほとんどなかった、あるいはまた、法制上、閣議決定、安保会議等々の課題もあったのでございますが、そうしたことを鑑みながら、しっかりとまずは連携を行う。我々安倍政権になってから、海上保安庁と海上自衛隊の連携は格段に上がりました。小野寺大臣にも取り組んでいただき、太田国交大臣と協議しながら、これは今相当進んでいると言ってもいいんだろうと思います。

 そして、その中において、具体的に、正しくスムーズに判断していけば、切れ目のない対応を直ちに判断していくことができるのではないか、電話で閣議決定というのは相当のスピードアップにもなっていくと我々は考えております。

 そこで、維新案はさまざまな観点から真剣に御検討いただいたとは思いますが、自衛隊がふだんから、平時から海保とともに警察権を行使するということでありますが、例えば、相手の、海上保安庁と同じ海上法執行組織と海上保安庁が対応しているところに自衛艦が警察権を持って存在すると、向こうの、海の警察権、法執行組織といきなり自衛隊の艦船が対峙をする、こういう現象が起こると、いきなり、いわば警察対警察から警察対ミリタリーにこちらがエスカレートさせていくという危険性もはらむのではないか、あるいはそういう口実を与える可能性もあるのではないか、こんなように思うわけであります。

 基本的には、他国の警察組織や民間の船舶に対しては、警察機関である海上保安庁がまずは対応し、それが無理であれば自衛隊が対応する、この速やかな移行が可能になることが大切であろう、我々はこのように考えております。

    〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕

丸山委員 総理、速やかな移行が大切だということ、そして連携が大事だということ、これはさんざん、もう十年二十年とこの国会の場で議論されていることで、それができていないから毎回毎回この言葉が出てきているわけです。

 ここのお話は、民主党さんの中でも、この領域警備法、我が党と一緒に話をさせていただいて、そうした中で、もしかすると、政党の枠を超えて、皆さん政治家として、きちんと役所にも示せる、対外的にも対内的にもしっかり守っていくんだと示せる大事な点だと思いますので、この後の協議も、またこの国会での議論も含めて、しっかりと話をさせていただいて前進させていただきたいというふうに思います。

 もう一つ、政府案との大きな違い、自衛権行使の要件の比較でございます。

 先ほど来、うちの委員からもお話がありました、ずっとずっと曖昧だと言われてきた、政府案での、我が国と密接な関係にある他国はどこなんだということ、そして、我が国の存立が脅かされ、生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆されるとはどんな状況なのか。この点がずっとずっとこの委員会で曖昧だと言われてきた。ここをしっかりとわかるように説明をしていただければ、また法文に書き込んでいただければ明快であるにもかかわらず、皆さんの、大臣、総理の御答弁がよくわからなかったからこそ、よりこの不安の声が上がっているのだと私は感じます。

 そういった意味で、我が党案では、先ほど来申し上げていますように、日本近海における有事においてはしっかりと対応できるように、「条約に基づき我が国周辺」と、そして「我が国防衛のために」という要件をつけた上で、なおかつ、難しい、要は判断が広がってしまうおそれのある、自由及び幸福の追求の権利が根底から覆される明白な危険ではなくて、「我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険がある」場合に限るべきだという案を出させていただいています。

 そうしますと、ずっとずっと総理が十五事例のときから必要だとおっしゃっていた、例えば朝鮮半島有事等で、ある国から日本の防衛のために、条約に基づいて我が国周辺で日本の防衛のために守っている軍隊、これに対して武力攻撃があった場合に、その次に、座していれば我が国に対する武力攻撃が発生する明白な危険がある場合においては、この条文でも十分にこれに対して我が国は自衛権が行使できます。

 一方で、皆さんがさんざんわからないとおっしゃっているホルムズの話、そういった意味でも、これでは、我が国周辺という点も含めて、また、我が国に対する武力攻撃が発生するという明白な危険という点においても、非常に解釈の余地のない、国民の皆さんにとってわかりやすい案になっていると思うんです。

 一方で、これは平成十五年、福田国務大臣が御答弁で、我が国に対する組織的、計画的な武力の行使と認定されるかどうかが大事で、そうされれば、これらの事態も個別的自衛権の範囲であり得るかもしれないというような趣旨の答弁をされているんですけれども、もし本当にそれを超えてホルムズ等まで広げたいのであれば、これは、国際情勢に詳しい専門家の方も、今の段階でも万が一にもあり得ないという状況で、しかし、それを万が一あり得るとおっしゃるのであれば、国連の安保理に基づく集団安全保障に基づく。そして、それが難しいのであれば、後方支援の部分もあります。なおかつ、特措法、恐らくホルムズ海峡を封鎖されたとしても、時間的に六十日、九十日、それぐらいの余裕がある中で、公海上での掃海ができないか、特措法上で検討する。それでも無理なら、個別的自衛権の範囲で検討する。十分に歯どめをかけた上でのホルムズ海峡の対応も、個別的自衛権でできる範囲だと思うんです。

 この十五事例、総理が挙げられました。この事例で、まさかここまでホルムズ海峡が問題視されるとは思っていらっしゃらなかったと思うんですけれども、この点、政府として、総理としてどうお考えなのか、お聞かせいただけますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 このホルムズ海峡の例は、いわば集団的自衛権の行使の一例ではございますが、我々、たびたび申し上げておりますように、海外派兵は一般には憲法上許されないという考えでございますが、その例外的な例として、ホルムズ海峡のこれは機雷の掃海であります。

 かつ、そして、掃海をするときには、現実的には、事実上の停戦合意はなされている、しかし国際法上の停戦は合意されていないということでありますから、機雷を取り除くことは集団的自衛権の行使と国際法上認められてしまう。しかし、それを取り除くことは極めて限定的であり受動的であるから、必要最小限度の中にとどまる。

 かつ、これは三要件に当てはまるかどうかということが大切でありまして、まさに国の存立が脅かされ、国民の生命や自由や幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるかどうかということに当たれば、それがやり得る。しかし、同様に、それに当たれば国として機雷掃海を行う必要があるだろう、こう考えているところでございます。

丸山委員 その表現の部分が、先ほど来申し上げているように明確でないからこそ、わからないという声が多いというのが現状だと思います。

 最初の方に挙げさせていただいた比較表で、今お話のあった海外派兵の話、一般的には海外派兵は認めない、できないんだとおっしゃっているのにもかかわらず、ホルムズ海峡だけ例外だという御表現がある。ここからしてまず国民の皆さんにとって理解できないし、我が党案ともここは違う部分だと明確に申し上げておきたいと思います。

 残り、三点目、大きな点としてはこの下の二つなんですけれども、武力行使の一体化については、武器弾薬の提供はおかしいんじゃないか、発進準備中の航空機に対する給油はおかしいんじゃないか、これはこの委員会でもさんざんお話をさせていただきました。

 もう一つ大きな論点、国会承認のお話があります。「国会の承認を得なければならない。」という表現がございますけれども、この国会承認は、憲法上は過半数をもって議決するという話がありまして、我が党は、気持ちとしては、オール国会議員でやって、三分の二での議決をやりたいという気持ちはあるんですが、一方で、憲法上は過半数と絞られてしまっている。

 さらには、防衛秘密の扱いをどうするかという点も、全くこれは詳細が、細部が未定であります。恐らく、防衛出動が可か否かという点では、防衛秘密、特定秘密がしっかり見られる人たちが、それを見た上で、国会の承認なのでもちろん議員ですよ、そしてそれを判断しなければいけません。しかし、これは、オープンの場の本会議でこの特定秘密を出せるかといったら、出せません。だからこそ、しっかりとしたそういう体制を整える、委員会や審議会、審査会を整えていく、これは非常に大事な点だと思うんですけれども、どうお考えでしょうか、大臣。

中谷国務大臣 政府といたしましても、国会の承認の手続は非常に大事なものだと考えておりますので、できる限り情報は国会に示すことができるように努めてまいりたいと思います。

丸山委員 この点は非常に大事な点なので、この後の審議でしっかりとお話を聞いていきたいと思っております。

 最後に、今後のここの審議と、そして各党協議、これから我が党はお願いしていくところでございます。それについて最後お伺いして、終わりにしたいと思います。

 今、先ほど来申し上げましたように、報道では、十五日や十七日にも採決という報道があります。しかしながら、我が党案はようやく今お出しできる状況になって、そして、手続の問題上、今、下地委員からお話もありましたけれども、最大、早くても十日に提案理由の説明になってしまいます。そうした中で、十五、十七という採決だともし本当におっしゃるのであれば、残念ながら、我が党としては、それは採決に当たって審議の不足だと言わざるを得ません。

 戦後最大の延長をされている中で、民主党さんも対案によって問題を明らかにするかもしれないという話が出ております。しっかり審議を尽くす必要があると思いますけれども、最後、御見解を総理にお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

安倍内閣総理大臣 しっかりと中身のある、意義ある審議がこの委員会で行われることを期待したい、こう思っております。

 しかし、同時に、我々議員は、議論が熟した段階においては、どこかの段階でこれは採決をしなければならないんだろう、決めるべきときには決めていく必要もあるんだろう、このように考えております。

 いずれにいたしましても、委員会の運営でございますから、委員会の皆様の御判断に従いたい、このように思います。

丸山委員 質疑を終えます。ありがとうございました。

浜田委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 最初に、自民党本部で行われた勉強会の問題について質問をいたします。

 先月二十五日、自民党の国会議員が文化芸術懇話会という勉強会を発足させました。作家の百田尚樹氏を招いて、自民党本部で初会合を行いました。

 質疑応答の中で、出席した議員の一人は、マスコミを懲らしめるためには広告料収入がなくなることが一番だ、我々政治家には言えない、ましてや安倍晋三首相は言えないが、文化人、民間人が経団連に働きかけてほしい、このように発言をいたしました。別の議員は、沖縄にお金を配っていればいい、地政学的に我が国を守るという概念が戦後七十年欠落していて、予算漬けだ、沖縄タイムス、琉球新報の牙城の中で沖縄の世論のゆがみ方を正しい方向に持っていくには、先生であればどのようなアクションを起こすかなどと問いかけました。これに対して百田氏は、沖縄の二つの新聞は潰さないといけない、あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国にとられれば目を覚ますはずだ、普天間飛行場は田んぼの中にあり、周りは何もなかった、基地の周りに行けば商売になるということで住み出したなどと発言をいたしました。

 報道の自由、言論の自由に対する重大な挑戦であり、沖縄県民に対する許しがたい侮辱であります。

 私たちは、この問題が発覚して以来、自民党総裁である総理に、徹底した事実関係の調査と謝罪を求めてきました。この問題は、安倍政権、自民党の政治姿勢の根幹にかかわる問題です。

 総理は、自民党総裁として、事実関係を調査いたしましたか。

安倍内閣総理大臣 最終的な責任は、当然、総裁としての私にあるわけでございますが、内閣総理大臣としての職務に専念するため、党の実務上の運営は谷垣幹事長に任せているところでございます。

 今回も、谷垣幹事長のもと、出席していた関係者に対し、具体的な調査が行われたと承知をしております。その上で、私は谷垣幹事長から報告を受けたところでございます。

赤嶺委員 総理は、けさの答弁の中で、沖縄県民の気持ちを傷つけたとすれば申しわけない、こう述べられました。しかし、問題はその中身であります。

 総理は、先ほどの答弁で、沖縄県民の思いに寄り添って負担軽減、沖縄振興に力を尽くしてきた我が党の努力を無にするかのごとき発言が行われたと述べました。沖縄県民の思いに寄り添って負担軽減に力を尽くしてきた、このようにおっしゃいますが、これまで、負担軽減のために何をやってきたんですか。県民の民意を無視して問答無用で基地建設を強行してきたのが政府・自民党ではないですか。

 しかも、総理は、自民党の努力を無にすることが問題だと言われました。事実をゆがめて県民を侮辱したことが問題ではないですか。そこが問題の中心だという認識はないのですか。

安倍内閣総理大臣 沖縄につきましても、自民党は、一貫して、沖縄の皆様の思いに寄り添いながら、基地負担の軽減、沖縄の振興に力を尽くしてきたわけであります。

 しかし、今回のさまざまな発言が、自民党のそうした姿勢に疑義を抱かせ、政権を負託してくださった国民の皆様の信頼を大きく損なう結果となったわけでありまして、そのことについて、今回関係者を処分いたしましたが、党を率いる総裁として、国民の皆様に心からおわびを申し上げたい、このように思います。

 また、今、赤嶺議員から、負担を軽減するために我々は何をやってきたのかというお話でございました。

 この二年半の間に、空中給油機十五機、これを全機、岩国への移駐を完了したのでございます。これは十年を超える長年の懸案であったのでございますが、この二年半において、山口県あるいは岩国市の皆様の御理解をいただきながらそれをなし遂げたところでございます。そしてまた、西普天間住宅地区につきましても返還がなされたのでございまして、これも長年の懸案で、ずっとできなかったものが、この二年半の交渉の結果、返ってくることになったのでございます。そしてまた、長い間、地位協定については指一本触れることができなかったのでありますが、この地位協定にかかわる環境分野の事柄につきまして、事実上、これは地位協定の改定にも近いものを我々は達成することができたわけでございます。

 こうしたことを一つ一つ積み上げていくことが大切であろう、このように思っているところでございます。

赤嶺委員 私が伺いましたのは、今の、負担軽減のために自民党がやってきたこと、例えば地位協定で、環境部門で、これは地位協定の改定にも等しいと総理はおっしゃいましたが、そのように発言しているのは、さきの仲井真知事と外務省ですよ。中身は、これまでの日米間の環境の、全然実効性が伴わなかった内容だけが今度の協定の中身になっていて、それでも日米間で交渉が進んでいない。西普天間住宅地区でいえば、国道につながる道路がなくて、使い勝手が悪くて、地主が自分の住居に戻れない、そういう意見も出ている。

 何よりも、自民党が今沖縄県民に押しつけているのは辺野古の新基地建設であります。そういうことを押しつけておきながら、自民党は負担の軽減に頑張ってきたということは、私は言ってほしくない。

 きょうはその中身の一々を議論していくのがテーマではありませんけれども、それを言ってほしくないということを前提にして、私は、今度のことは、事実をゆがめて県民を侮辱したことが問題だと思うんですよ。そこが問題の中心だという認識はありますか、総理。

安倍内閣総理大臣 自民党の懇話会において講師が民間人として述べられたことについて、政府として一々コメントすることは差し控えさせていただきたい、こう思うわけでございます。

 その上で申し上げれば、普天間飛行場につきましては、その場所については、戦前、役場や国民学校、郵便局、病院などが所在し、街道が通るとともに集落が点在し田畑が広がっていたとされており、戦時中の昭和二十年四月、米軍が上陸した後、土地を接収して普天間飛行場が建設されたものと承知をしているわけでございます。

赤嶺委員 総理、この答弁は、この間は中谷防衛大臣が答弁いたしましたが、総理としては初めての答弁になりますが、総理も、一番県民が怒っているのは、何もないところに基地がつくられたというような認識、そこに対してやはり、あの宜野湾市で、市議会で、なかなか全会一致になるような議会ではありませんが、全会一致の抗議決議が上がるというようなこともあったんですね。

 私、それでも、さっき質問を聞いて非常にびっくりしたんですが、官房長官の答弁ですよ。世界一危険な普天間飛行場というのは、その根拠は何だと聞かれて、県議会も宜野湾市議会もその決議で言っている、こういう答弁でしたけれども、普天間飛行場が世界一危険な飛行場と言い出したのは県民ですか、それともアメリカ側ですか。今、事前の通告なしの質問なので、突然の質問ではありますが、まず、その点についておわかりであれば、防衛大臣、答えていただけますか。

中谷国務大臣 間違っていたら申しわけないですが、私の記憶によりますと、アメリカのラムズフェルド長官ではないかと思います。

赤嶺委員 官房長官はそう言わなかったんですよね。県議会の決議が根拠だとか、市議会の決議が根拠だとか。

 当時、ラムズフェルド国防長官は普天間基地の上空を視察して、こんな世界一危険な飛行場と言って、驚いて発言して、それ以来ですよね、世界一危険な飛行場と言い出したのは。

 それからもう一つ、普天間飛行場と福岡空港と伊丹空港、むしろ人口の密集は伊丹や福岡であってというやりとりがありました。

 昔、沖縄の総領事をしていたケビン・メアさんという方がいらっしゃいます。覚えておられると思います。このケビン・メアさんは、県民は怠け者でゴーヤーもつくれないと発言をして県民の怒りを買った総領事でありますが、彼も、普天間は福岡や伊丹空港と同じで、特別な危険はない、このような発言をして大問題になりました。

 先ほどいろいろな資料を見せられて、官房長官はそういう数字を見せられたらといって非常に動揺していたんですが、普天間飛行場は伊丹や福岡と同じ程度の危険性ですか、大臣。

中谷国務大臣 一般論で申し上げまして、民間空港と軍用飛行場で、飛行機運航に当たってのルールが同様であると仮定しても、民間空港においては、旅客機を初めとして定められたフライトスケジュールがあり、多数の航空機を効率的に離発着させ、定時、定型の航路で運航させるなどが重視をされます。一方で、米軍基地を初めとする軍用飛行場におきましては、緊急の運用時など、軍用機を必ずしも定型的に運航しない場合もあると考えておりまして、双方を比べてみても、一概に比較することは困難であると認識をいたしております。

 私、せんだって宜野湾市役所へ参りまして、屋上から普天間飛行場を眺めました。フェンスのすぐ横にグラウンドがあって、そこで小中学生が野球をしているんですね。それを見て、本当に危険だというふうに感じまして、一刻も早くこの普天間飛行場の移設はしなければということで、私の目から見ましても大変危険な飛行場だと認識をしております。

赤嶺委員 まさに、民間空港と、それから沖縄の米軍基地、どこの米軍基地もそうでしょうが、いわば米軍は、戦場で起こることの全てを想定して訓練をしているわけですね。安全な運航が目標じゃないわけです。戦場の厳しさに耐えられるかというのが米軍の訓練の最大の目標ですから、何が危険であるかということは一目瞭然であります。

 そこで、先ほど総理が、普天間飛行場は、当時、普天間の、宜野湾市の役場や学校、そういう土地を米軍が奪ってつくった、こういう認識をおっしゃっておりました。ですから、この間もやりましたが、百田さんの発言で、普天間基地の形成過程について、もともと田んぼの中にあり、周りは何もなかった、基地の周りに行けば商売になるということで人が住み出したという発言が、今度の、沖縄県民、宜野湾市民、なかんずく普天間基地から住宅を奪われ、土地を奪われた地主の皆さんの怒りになってきているわけであります。

 ところで、総理、こういう県民に対する侮辱というのは、これが初めてではないんですよ。これほど侮辱的な表現を使うかどうかは別ですが、百田氏のような発言はこれまでも繰り返されてきました。麻生副総理、麻生副総理は、外務大臣時代の二〇〇五年に沖縄を訪問した際に、普天間基地について、周りにどんどん家がふえてきてぐあいが悪くなる、基地としては難しくなると述べて、当時問題になりました。私も外務委員会で追及をいたしました。

 普天間基地を訪問した際に米軍の司令官が必ず持ち出すのは、住民の側が基地の周りに住むようになったという説明です。基地の周辺が市街地になったのは住民の側に責任があるという考え方が、従来、日米両政府の間で共有されてきた認識であります。

 総理は、普天間基地の形成過程、基地の周りに人が集まってきた、そういう認識、これについてはどのように受けとめられますか。

安倍内閣総理大臣 形成過程については、先ほどお話をさせていただいたように、戦前、役場や国民学校や郵便局や病院などが所在し、街道が通るとともに集落が点在し田畑が広がっていた、そして、戦時中の昭和二十年四月に米軍が上陸した後、土地を接収して普天間飛行場が建設されたものと承知をしているわけでございます。

 いずれにいたしましても、現在、住宅地の真ん中にある、住宅や学校に囲まれているわけでありますから、普天間飛行場の固定化は絶対に避けなければならないということではないか、このように考えているところでございます。

赤嶺委員 いずれにいたしましてもというところからが問題なんですよ。いずれにいたしましてもじゃなくて、普天間基地の形成過程をきちんと押さえた場合に、あの危険な基地をつくったのは誰の責任かというのがはっきりしてくるわけです。

 普天間基地は、一九七二年の本土復帰のころまで、現在のような運用はされていませんでした。復帰後に滑走路が整備をされ、山口県の岩国基地から千人規模の第一海兵航空団が沖縄県内に移設されるなどして、現在のような危険な航空基地としての運用がされるようになりました。

 ただ、そのような基地になる前に、既に基地周辺には市街地が形成をされておりました。基地の周辺が現在のような市街地になったのは住民の側に責任があるというのは、事実と違うのであります。

 日米両政府のその認識が問われていると思いますが、防衛大臣、いかがですか。

中谷国務大臣 歴史的に見まして、昭和四十七年の復帰後、米国が日米地位協定に基づいて我が国から提供を受けて使用いたしておりまして、現在の普天間飛行場、約四百八十一ヘクタールございますけれども、その土地の九割以上が民公有地でありまして、約三千六百人の地権者の方々がおられるというふうに承知しております。

赤嶺委員 中谷大臣、私の質問に答えてほしいんですよね。

 では、またもとに戻って質問いたしますが、先ほど総理は、普天間基地は役場や学校や住宅地を米軍が接収してと言いました。その接収する際に、米軍は、住民に対して何の説明もせずに、住民が収容所に入れられている間に勝手に接収したという認識は、防衛大臣、お持ちですか。

中谷国務大臣 米軍が上陸した後、土地を接収して普天間飛行場が建設されたというふうに認識しております。

赤嶺委員 もちろん対価の支払いもなかったわけですね。

 それで、戦争が終わって米軍の直接占領下になったときに、住民は、入れられていた収容所からもとの土地に帰るように米軍から指示を受けました。しかし、普天間基地は既に金網で囲まれておりましたので、普天間基地の中の住民たちはもとの住宅に帰れなかったんですね。帰れなかったんですよ。だから、そのもとの住宅の近くに住み始めるというのは人間の当然の出来事だと思うんですが、それはいかがですか。

中谷国務大臣 事実につきましては、沖縄選出の赤嶺先生でございますので、赤嶺先生がおっしゃることが正しいのではないかと思います。

赤嶺委員 今まで私が何度言っても簡単に認めなかった問題なんですよ。

 ただ、そのときに、やはり、親戚同士集まります、知り合い同士集まります。そして、普天間基地は今のような海兵隊の航空基地ではありませんでした。基地の中に入って野良仕事もできるような状態でもありました。

 そういう市街地が形成をされた後に、後に海兵隊の航空基地にしたのは、さっき日米地位協定とおっしゃいましたが、まさに日米両政府ですよね。これは間違いありませんよね。

中谷国務大臣 昭和四十七年の本土復帰後におきましては、米国が日米地位協定に基づいて我が国から提供を受けて使用しておりまして、現在の普天間飛行場となっているわけでございます。

赤嶺委員 まさに、今日のような世界一危険な飛行場にしたのは日米両政府であるということを強く指摘しておきたいと思います。

 自分たちで世界一危険な基地をつくっておきながら、その基地の返還を求めるのであれば辺野古にかわりの基地をつくれというのは、いかに不当な要求であるかということが、これがおわかりになったと思います。

 それで、今回の怒りや抗議は百田氏に向けられたもの、当然そうでもありますが、百田氏は一市民であります。私が問題にしたのは、そういう形で普天間基地が危険になったのは県民のせいだと言い続けてきた、こういう現状を容認してきた自民党の側にも大きな責任があると思いますが、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 自民党は、まさにこれは、橋本総理時代に、この普天間の危険性を除去しなければいけない、沖縄側からの強い要望に応える形で、当時のモンデール大使、そして米国側と交渉を重ねた結果、普天間の辺野古への移設を決定したわけでございます。

 その後、残念ながら紆余曲折がございまして、これは十九年、全然動かなかったのでございますが、改めて沖縄県民の皆様の、もちろんまだ反対は強いわけでありますが、我々、説明する努力を重ねながら、今般、沖縄、この普天間基地の辺野古への移設について具体的に歩み始めているわけでございます。

 同時に、繰り返しになりますが、空中給油機十五機の普天間基地から山口県の岩国基地への移駐を完了したところでございますし、西普天間住宅地区の全面的な返還も行われたわけでございます。

 こうしたことを一つ一つなし遂げていきたい、こう思っているわけでございますし、また、辺野古への移転につきましても、移転されるのは三つの機能の一つだけでございますし、オスプレイの訓練につきましても、なるべく本土側での訓練もふやしていきたい、このように考えているところでございます。

赤嶺委員 総理、橋本・モンデール会談で何で普天間基地が問題になったかというのも、これもまた歴史的な経過がありまして、きょうはこの歴史的な経過まで入り込めないんですが、何で、そこでもさらに、日米両政府がどんなに県民への背信行為をやってきたか、これは次の機会にまた追及していきたいと思います。

 もう一つの問題です。

 沖縄県民とメディアを侮辱し、威圧する発言、これも実は今回が初めてではないんですね。自民党議員からも、政府の閣僚や官僚からも繰り返されてまいりました。

 二〇〇〇年の三月に、当時、自民党の森幹事長、天皇在位十周年記念式典で、ある沖縄出身の歌手が君が代を斉唱していなかったとして、問題視する発言を行いました。森幹事長はこう言っているんですね。恐らく知っていると思うが、学校で教わっていないのですね、沖縄県の教職員組合は共産党が支配していて、何でも政府に反対、何でも国に反対する、沖縄の二つの新聞、琉球新報、沖縄タイムスもそうだ、子供もみんなそう教わっている、先生も新聞社もみんな共産党だ、だから政府に反対ばかりしている。これは森幹事長がそういう発言をしたんですよ。とんでもないデマ発言であります。

 その後、首相として沖縄を訪問したときに、沖縄県民が不快感を持ち、迷惑をかけたのなら、大変申しわけなく、心からおわび申し上げたい、このように陳謝をいたしました。

 二〇〇五年には、今度は官僚の方です。当時の山中防衛施設庁長官が、沖縄の新聞は偏り過ぎている、イエローペーパー、ゴシップ紙だ、このように発言をいたしました。

 二〇〇六年に、当時の小池沖縄担当大臣が沖縄を訪問した際にも、沖縄のマスコミは超理想主義、理想は高いが現実と遊離している、沖縄のマスコミとアラブのマスコミは似ている、反米、反イスラエルで、それ以外は出てこないと発言し、問題になりました。

 沖縄県民の認識やメディアを侮辱する発言は、政府からも自民党からも繰り返されてきたのであります。こうした認識は政府・自民党に深く根をおろしたものではないか、こういう疑いを向けざるを得ませんが、総理はいかがお考えですか。

安倍内閣総理大臣 私ども自由民主党におきましては、まさに七十年前、沖縄の地で二十万人以上の方々が命を落とし、そして、戦後長らく苦しい、苦難の歴史があった、日本が独立をサンフランシスコ平和条約によって果たした後も米軍の施政下にあったということも含めて、そしてまた、多くの米軍基地が沖縄に集中をしているという中においての苦難の歴史について、常に私どもは思いをはせながら、沖縄の振興、基地負担の軽減に力を尽くしていかなければならない、これが基本的な自由民主党の考え方でございます。

赤嶺委員 苦難に思いをはせながらと言われるその言葉も戦後ずっと聞いてまいりました。そういう言葉とあわせて、沖縄のメディアはゆがんでいる、反政府的だとか、ゆがんだ県民意識をつくっている、そういうデマ、偏見に満ちた、しかも、私たち共産党こそ迷惑な話ですよ。そんなふうにして言われるようなデマを繰り返してきたということは、総理、ぜひ、そういう繰り返しの歴史の上に今日こういう出来事が起こっているんだということを認識していただきたいと思います。

 芥川賞を受賞した作家で、この間川端康成文学賞をいただいた沖縄の大城立裕さんという作家がいらっしゃいます。八十歳を超えておられますが、ちょうどあの自民党の集まりの発言があったときには、その文学賞の受賞のために東京にいらしたそうであります。そして、本土のメディアから聞かれて、大城立裕さんは、「沖縄の新聞がなぜ先鋭的になったのか、問題の根本を見る努力を怠っている。恥知らずと言わざるを得ない」、温和な作家がこのように批判をしているわけですね。

 沖縄のメディアの歴史というのは、そもそも最初は米軍の広報宣撫機関紙としてスタートいたしました。社員がみんな米軍の民政府の職員だという時期もありました。新聞の紙の配給も米軍が握っていましたから、米軍寄りの報道をしなければ、これは新聞社自身がやっていけないという歴史があったわけですよ。

 戦後、沖縄にはいろいろな新聞社ができました。それは、せっかく米軍が手懐けたと思った新聞社の新聞が、やはり県民の声を反映して、政府批判、米軍統治批判に走っていく。それでは次の新聞社をつくろうといって、次の新聞社をつくってみたけれども、また同じような結果になる。結局、戦後、沖縄本島では十以上の新聞が生まれたんですが、米軍の占領下で親米の新聞を創刊しようとする動きもありました。しかし、米兵による殺人、婦女暴行、米軍基地の現実を正面から報じない新聞は、県民の支持を得られず、淘汰されていったわけであります。

 沖縄のメディアが問題なのではなくて、沖縄の抱える現実が問題ではありませんか。米軍基地をめぐる不条理がある以上、それをメディアが伝えるのは当たり前ではありませんか。

 総理はその点いかがお考えですか。

安倍内閣総理大臣 先ほど来お話をいたしておりますように、我々といたしましては、安倍政権としては、沖縄に集中している米軍基地の負担を少しでも軽減していくべく、この二年半努力をしてきたところでございますが、今後ともこの努力を積み重ねていきたい、こう考えているところでございます。

 メディアがどういう報道をするかは、まさにこれはメディアが判断することであって、その一々について総理大臣としてコメントすることは適切ではない、このように考えております。

赤嶺委員 メディアがどういう報道をするかというお話でなくて、沖縄のメディアはどうしても、基地問題のゆえに起こる事件や事故、それらを反映した新聞の紙面にならざるを得ない。つまり、メディアの報道内容の逐一について聞いているということではなくて、沖縄の報道の大もとには沖縄が抱える基地の不条理がある、ここが問題なのではないかということを私は総理に聞いているのであります。いかがですか。

安倍内閣総理大臣 基地につきましては、例えば山口県の岩国にも、地元紙というものもかつてあったわけでございます。そして、それぞれの地域においては、地域の抱えている大きな問題について当然それは報道がなされるのだろう、このように推測するわけでございます。

 いずれにせよ、沖縄にも、二紙のみではなくて、その他にも新聞社が存在するわけでございますが、それぞれの新聞社の姿勢等々についてコメントを述べることは差し控えさせていただきたいと思います。

赤嶺委員 私は、沖縄のメディアが基地問題を取り上げていく、その紙面を見たときに、自民党の一部の方々が言うように、この紙面は偏っているな、ひどい新聞だなと見るのではなくて、沖縄の現実はひどいなと政権政党として責任を自覚して、もっと頑張らぬといけないなと思うのが筋だと思います。これを強く総理に申し上げておきたいと思います。

 新聞の当事者もこう言っているんですよ。昨日、琉球新報、沖縄タイムスの二人の編集局長が日本記者クラブで会見をいたしました。

 琉球新報の潮平編集局長は、沖縄の新聞がもし世論をもてあそぶような思い上がった新聞だったなら、とっくに県民の支持を失い、地域社会から退場勧告を受けていただろう、住民、読者の支持なくして新聞は成り立たない、このように述べています。沖縄タイムスの武富編集局長は、民衆の支持がないと存続できないし、報道は世論に突き動かされている側面が大きい、為政者にとって都合の悪い報道だとしても、民意の反映として受けとめるべきだ、このように述べています。

 政府・自民党がこうした指摘を強く、重く受けとめるべきであります。

 私は、今回の問題は沖縄だけの問題ではないと考えています。この問題で問われているのは、言論の自由、表現の自由の問題であります。

 今回の問題発言に、全国新聞、地方紙は直ちに反応いたしました。山形新聞は、六月二十八日の一面で、「言論封殺の暴挙許すな」の見出しで、寒河江浩二主筆・社長名の緊急声明を発表し、こう述べています。「事は、沖縄の地方紙二紙だけの問題ではない。言論の自由、報道の自由、そして新聞の独立という民主主義の根幹にかかわる問題」、このように指摘し、山形県民に是非を問いたいと訴えています。

 総理、今回の問題発言は、言論の自由、報道の自由、表現の自由という民主主義の根幹にかかわる問題である、こういう認識はお持ちですか。

安倍内閣総理大臣 民主主義の根幹である言論の自由、報道の自由、これは我々はしっかりと尊重していかなければならないということでありまして、安倍政権において、また自由民主党において、これは一貫した姿勢でございます。

 そうした姿勢が疑われることのないよう、我々も襟を正していかなければならない、このように考えております。

赤嶺委員 ですから、今回起こった問題というのは、言論の自由、報道の自由、表現の自由という民主主義の根幹にかかわる問題であった、そういう認識をお持ちということですね。

安倍内閣総理大臣 今まさに申し上げましたように、言論の自由そして報道の自由というものは民主主義の根幹をなすものであり、そういう姿勢が疑われるかもしれないという発言があったことはまことに遺憾だということは、先ほど来申し上げているとおりでございます。

赤嶺委員 言論、表現の自由という問題について、私も考えてみました。

 それは、国民が国家権力に干渉されないで表現する自由であり、民主主義のかなめであります。戦前、言論統制がしかれ、大政翼賛に走って侵略戦争に突き進むのをとめられなかった反省から、二度と戦争をしないために、必要な憲法上の権利として保護されております。言論、報道の自由は、政府の行為を国民が監視し、事実に基づいて自由に批判する権利を保障するもので、まさに主権者たる国民の手で民主主義を貫くためのものであります。

 メディア界は大変敏感な反応をいたしました。

 二十六日に、速報社説という聞きなれない文字が飛び込んでまいりましたが、それは、インターネットで神奈川新聞が公開した、速報社説と題するものでありました。「普通ではないことが起こっているということを示すため」、異例の対応をしたと説明し、「報道に携わる機関として抗議の声を上げなければならない」、このように話しています。

 まさに憲法違反が問われる法案を審議している最中に、国民の大多数が、説明不足であり理解できない、このように批判しているときに、与党の議員の中から、政府に批判的な言論を封殺し、表現の自由を冒涜するような発言が飛び出したことは、戦前の言論統制を思い起こさせるものであります。

 多くの新聞社が異例の事態、民主主義の危機と捉えていることを正面から受けとめるべきだと思いますが、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 まさに、言論の自由、報道の自由は民主主義の根幹をなすものであり、これは安倍政権において、また自民党の一貫した姿勢であります。その姿勢が疑われるような、そういう発言があったことはまことに残念であり、遺憾であります。

 今後とも、こうした疑いを持たれることのないよう、しっかりと襟を正していきたい、こう考えているところでございます。

赤嶺委員 私は、今度の事態については、本当に、自民党、憲法違反の法案を出してきたその態度と合わさって、拭いがたい言論弾圧への疑念を抱かざるを得ない、このように考えております。

 そこで、法案について伺います。

 今回の法案は、存立危機事態という新たな概念をつくって、日本が海外で武力を行使することを可能にするものです。

 まず、総理に確認をいたしますが、存立危機事態というのは、ある国が日本と密接な関係にある国に対して武力攻撃を行う一方で、日本に対する武力攻撃は発生していない、そういう場合に認定するということでよろしいですね。

安倍内閣総理大臣 これは、まさに我が国が武力行使を行う三要件、新しい三要件を定めたわけであります。

 この新しい三要件においては、まずは、我が国が武力攻撃を受けたこと、そしてまた、我が国と密接に関係のある他国に対して武力攻撃がなされたとき、それによって我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由そして幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること。そして、これを排除するため、我が国の存立を全うし、これは我が国でありますから、他国ではありません、我が国の存立を全うし、そして国民を守るため、まさに日本国民を守るためであります、国民を守るために他に適当な手段がないこと。そして、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと。

 この三要件に当てはまったときに、まさに存立危機事態として、我々は武力を行使することが、日本人の命や平和な暮らしを守るために武力行使を行うことができる、こういうことでございます。

赤嶺委員 ですから、私が質問したのは、日本に対する武力攻撃が発生をすれば武力攻撃事態、つまり日本有事になるわけでありますから、新しい概念である存立危機事態というのは、日本に対する武力攻撃は発生していないもとで認定するということでよろしいですね。そういうことを聞いているわけです。

安倍内閣総理大臣 それは、ただ単に日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生したことだけではなく、そのことによって国の存立が脅かされ、これは我が国の存立でございます、我が国の存立です。他国の存立ではありません、日本と密接に関係のある他国の存立ではなくて、我が国の存立が脅かされ、そして、日本国民、これは武力攻撃を受けた他国民ではございません、我が国の国民の生命、自由そして幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があることであります。

 その上において、先ほど申し上げましたように、これを排除するため、そして国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないという段階に至って、かつ、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、この三要件がかかるわけでございます。そのときにのみ、存立危機事態として、日本人の命を守るために武力行使ができる、こういうことでございます。

赤嶺委員 ですから、私、大変簡単なことを聞いているんですが、存立が脅かされる明白な危機があるときに、日本に対する武力攻撃が発生しないもとでも存立危機事態というのは認定するんですよね、そういうことに答えてください。

安倍内閣総理大臣 今申し上げましたように、この三要件に当てはまる、それは、そのままでは、すなわち、その状況のもと、武力を用いた対処をしなければ、国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であるということをいうわけでございまして、事態の個別的な状況に即して、主に攻撃国の意思、能力、事態の発生場所、そして事態の規模、態様、推移などの要素を総合的に考慮し、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民がこうむることとなる犠牲の深刻性、重大性などから客観的、合理的に判断することとなります。

赤嶺委員 武力攻撃を受けた場合と同様のというその答えの中には、武力攻撃を受けていない事態のもとで存立危機事態というのが認定されるということであります。

 そうしますと、ある国、仮にA国、このA国が日本と密接な関係にあるB国に武力攻撃を行おうとした場合に、A国と日本との間ではどちらからも武力攻撃は行われていない、したがって国際的な武力紛争は生じていない、そうしたもとで日本政府が存立危機事態と認定し、A国に対して武力を行使するということは、日本の側から武力紛争状態を引き起こすということになりませんか。

中谷国務大臣 国際法上、集団的自衛権の行使に当たりましては、武力攻撃を受けた国の要請または同意があるというのは当然の前提でございまして、今回も新三要件によりまして、そういった我が国と密接な国に対する武力攻撃が発生をし、かつまた我が国の存立を脅かし、そして国民の権利を根底から覆すような事態に限りまして、あくまでも我が国の自衛の必要最小限度の範囲においてこういった武力行使をできるということにしているわけでございます。これは国際法的にも認められたことでございます。

赤嶺委員 国際法的に認められるからいいんだという議論に国民は納得していないわけですよ。

 つまり、日本が密接な関係にあるとするB国には武力攻撃が発生しているかもしれませんが、日本には武力攻撃は発生していない。そのときに政府が存立危機事態と認定して武力を行使すれば、A国の立場からすれば、日本の側から先に武力を行使してきたということになりませんか。そうなれば、国際法で認められるどころか、先制攻撃を行ってきたということになりませんか。

安倍内閣総理大臣 まさに、そうならないように我々は三要件を定めているわけでございまして、単純に、A国が我が国と密接に関係のあるB国を攻撃したからといって、我々は、直ちに、私たちが認めている存立危機事態と認定して武力の行使をするということは、これはないわけであります。

 ここはまさに、先ほど来説明をさせていただいているように、三要件に当てはまるかどうかということでありまして、それはすなわち、他国に対する武力攻撃が発生した場合において、そのままでは、すなわち、その状況のもと、武力を用いた対処をしなければ、国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であるということを言うわけでございます。

 具体的な例としても、近隣諸国における紛争があって、例えばAという国が米国あるいはBという国に対して侵攻している、そして、B国と同盟国にある米国に対しても攻撃を加えているという状況の中にあって、かつ、日本に対して発射し得るミサイルを多数所有している、そして、日本を攻撃するという蓋然性もあるという中において、いわば我が国を守るために警戒中の米艦に対してミサイル攻撃を行うという可能性も高い等々、そうしたことを総合的に判断しながら、まさに先ほど申し上げました発生場所、そして事態の規模、態様、推移など総合的な考慮を行い、判断をしていくということになるわけであります。

 我が国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民がこうむることとなる犠牲の深刻性、重大性などを客観的に、合理的に判断をしていくということでございます。

赤嶺委員 そういうことはこれまでの憲法で認められていなかったわけであります。私は、この問題は非常に重要だと思います。

 六月二十二日の参考人質疑で、内閣法制局長官を務めた阪田雅裕さん、宮崎礼壹さんのお二人が意見を述べました。

 宮崎参考人は、存立危機事態の三要件等も念頭に置きながら、これは「自国防衛と称して、攻撃を受けていないのに武力行使をするのは、違法とされる先制攻撃そのもの」だと述べました。これまでの法制局長官が述べているわけですね。

 阪田参考人は、集団的自衛権を行使するということだから、「つまり、敵となる相手国に我が国領土を攻撃する大義名分を与えるということでもある」、「国民を守るというよりは、進んで国民を危険にさらすという結果しかもたらさない」、このように元法制局長官も述べております。

 危険な戦争法は直ちに撤回すべきであるということを申し上げて、質問を終わります。

浜田委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後五時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後五時二十一分開議

浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案につきまして、議長に対し、公聴会開会の承認要求をいたしたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

浜田委員長 起立多数。よって、そのように決しました。

 なお、公聴会は来る十三日月曜日開会することとし、公述人の選定その他の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

浜田委員長 起立多数。よって、そのように決しました。

 次回は、来る八日水曜日午前八時四十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十二分散会


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