衆議院

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第18号 平成27年7月8日(水曜日)

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平成二十七年七月八日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 今津  寛君 理事 岩屋  毅君

   理事 江渡 聡徳君 理事 松本  純君

   理事 御法川信英君 理事 長妻  昭君

   理事 下地 幹郎君 理事 遠山 清彦君

      小田原 潔君    小野寺五典君

      尾身 朝子君    大西 宏幸君

      大野敬太郎君    勝沼 栄明君

      門  博文君    木原 誠二君

      工藤 彰三君    斎藤 洋明君

      笹川 博義君    白石  徹君

      武井 俊輔君    中谷 真一君

      橋本 英教君    原田 義昭君

      平沢 勝栄君    藤丸  敏君

      星野 剛士君    宮内 秀樹君

      宮川 典子君    宮崎 政久君

      宮澤 博行君    武藤 貴也君

      務台 俊介君    盛山 正仁君

      山口  壯君    山田 賢司君

      若宮 健嗣君    緒方林太郎君

      大串 博志君    後藤 祐一君

      辻元 清美君    寺田  学君

      長島 昭久君    原口 一博君

      渡辺  周君    足立 康史君

      青柳陽一郎君    太田 和美君

      重徳 和彦君    篠原  豪君

      丸山 穂高君    伊佐 進一君

      北側 一雄君    佐藤 茂樹君

      浜地 雅一君    赤嶺 政賢君

      畑野 君枝君    宮本  徹君

    …………………………………

   議員           今井 雅人君

   議員           大島  敦君

   外務大臣         岸田 文雄君

   防衛大臣

   国務大臣

   (安全保障法制担当)   中谷  元君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   防衛大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    石川 博崇君

   国立国会図書館調査及び立法考査局外交防衛調査室専門調査員         等 雄一郎君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   最高裁判所事務総局総務局長            中村  愼君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  前田  哲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  藤山 雄治君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  槌道 明宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岡田  隆君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 滝崎 成樹君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            平松 賢司君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    冨田 浩司君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   秋葉 剛男君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  黒江 哲郎君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  深山 延暁君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  真部  朗君

   衆議院調査局我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別調査室長     齋藤久爾之君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月六日

 辞任         補欠選任

  志位 和夫君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  塩川 鉄也君     志位 和夫君

同月八日

 辞任         補欠選任

  白石  徹君     務台 俊介君

  橋本 英教君     尾身 朝子君

  原田 義昭君     藤丸  敏君

  宮川 典子君     工藤 彰三君

  山口  壯君     門  博文君

  大串 博志君     原口 一博君

  後藤 祐一君     渡辺  周君

  青柳陽一郎君     足立 康史君

  丸山 穂高君     重徳 和彦君

  浜地 雅一君     北側 一雄君

  赤嶺 政賢君     畑野 君枝君

  志位 和夫君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  尾身 朝子君     橋本 英教君

  門  博文君     山口  壯君

  工藤 彰三君     宮川 典子君

  藤丸  敏君     宮内 秀樹君

  務台 俊介君     斎藤 洋明君

  原口 一博君     大串 博志君

  渡辺  周君     後藤 祐一君

  足立 康史君     青柳陽一郎君

  重徳 和彦君     篠原  豪君

  北側 一雄君     浜地 雅一君

  畑野 君枝君     赤嶺 政賢君

  宮本  徹君     志位 和夫君

同日

 辞任         補欠選任

  斎藤 洋明君     白石  徹君

  宮内 秀樹君     原田 義昭君

  篠原  豪君     丸山 穂高君

    ―――――――――――――

七月八日

 自衛隊法等の一部を改正する法律案(江田憲司君外四名提出、衆法第二五号)

 国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する人道復興支援活動等に関する法律案(江田憲司君外四名提出、衆法第二六号)

 領域等の警備に関する法律案(大島敦君外八名提出、衆法第二七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七二号)

 国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案(内閣提出第七三号)

 自衛隊法等の一部を改正する法律案(江田憲司君外四名提出、衆法第二五号)

 国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する人道復興支援活動等に関する法律案(江田憲司君外四名提出、衆法第二六号)

 領域等の警備に関する法律案(大島敦君外八名提出、衆法第二七号)

 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官前田哲君、内閣官房内閣審議官藤山雄治君、内閣官房内閣審議官槌道明宏君、外務省大臣官房審議官岡田隆君、外務省大臣官房参事官滝崎成樹君、外務省総合外交政策局長平松賢司君、外務省北米局長冨田浩司君、外務省国際法局長秋葉剛男君、防衛省防衛政策局長黒江哲郎君、防衛省運用企画局長深山延暁君、防衛省人事教育局長真部朗君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局中村総務局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北側一雄君。

北側委員 公明党の北側一雄でございます。

 両大臣、連日御苦労さまでございます。

 今回の平和安全法制、なぜ今この法制整備なのかということですけれども、これはやはり、我が国をめぐる安全保障環境というものが大きく変化をしている、厳しさを増しているというところにあるわけですね。こういう厳しさを増す中で、国と国民を守るためには、我が国防衛のためには、日米の防衛協力体制の信頼性また実効性というものを向上させて紛争を未然に防止していく、抑止力を向上させる、これしかないという判断のもとで法制の整備をしているわけですね。そこに大きな目的があると思うんです。

 そこで、改めて、安全保障環境が変化している、厳しさを増しているということを具体的に議論させていただきたいんです。

 私は、さまざまな事情はあると思いますよ、状況はあると思うんですけれども、私の考えでは、一番の大きな変化の要因はやはり軍事技術の高度化、これが著しく一昔前に比べますと高度化している、そこが一番の要因ではないかと私は考えているんですね。この軍事技術の著しい高度化につきまして、特に具体例を通してぜひわかりやすくお話ししていただきたいと思うんですが、北朝鮮の弾道ミサイル、この能力というものも、極めて能力が向上していると言わざるを得ないわけですね。ここのところをぜひ、防衛大臣にできる限り具体的にわかりやすくお答えを願いたいと思います。

中谷国務大臣 まず、北朝鮮の弾道ミサイル関連技術を例にとって申し上げますと、北朝鮮の弾道ミサイル能力は飛躍的に向上しております。

 北朝鮮は、一九八〇年代に射程三百キロのスカッドミサイルをもとに弾道ミサイル長射程化に努めて、現在は、我が国を射程におさめ得るノドンを数百発配備するほか、射程一万キロに及ぶ可能性のあるテポドン2派生型の発射に成功して、弾道ミサイルの高精度化に係る技術も進展をさせております。

 また、近年、北朝鮮は、高い機動性と秘匿性を確保するために、発射台つきの車両、これはTELといいますけれども、これを活用して、夜間とか早朝を含めて任意の地点、タイミングで奇襲的攻撃能力等を向上させているほか、多様な方法で、例えば潜水艦発射弾道ミサイル、SLBMの試験発射を発表するなど、多様な打撃手段の開発を新たに推進していると見られております。

 その一方で、北朝鮮は二〇〇六年以降、既に三回の核実験を実施しており、これらを踏まえますと、核兵器の小型化、弾頭化の実現に至っている可能性も排除できません。

 このような北朝鮮の弾道ミサイル能力の増強は、核兵器開発の進行やその挑発的言動と相まって、我が国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威になっております。

 こうした弾道ミサイルやその関連技術は北朝鮮にとどまらずグローバルに拡散しておりまして、今や、国家のみならず、テロリストなどの非国家主体への拡散も懸念をされております。さらに、近年、弾道ミサイル以外にも軍事科学技術は一層高度化し、またそれらが拡散する傾向にあります。

 例えば、中国による次世代戦闘機や対衛星兵器など先端技術を用いた装備品の開発、北朝鮮による他国の装備をもとにしたと見られる多連装ロケット砲や対艦ミサイル、対空ミサイル、無人機などの開発、中国や北朝鮮などの政府機関や軍関与が指摘される各種サイバー攻撃などが挙げられております。

 こうした諸状況を踏まえれば、我が国として、我が国の防衛や国際平和への貢献においてみずからが果たし得る役割を拡大するとともに、何よりも日米同盟の信頼性、実効性の一層の向上を通じて我が国としての抑止力を強化することが必要でありまして、今般、新たな法制整備を通じて我が国として切れ目のない対応を可能とする体制を構築することによりまして紛争を未然に防止するということがますます必要になっているということでございます。

北側委員 今、お答えいただきました。北朝鮮の弾道ミサイルの能力は飛躍的に向上しているということでございます。

 今、大臣の御答弁で、一つは長射程化。日本列島全体が射程に入っているんですね。そして高精度化。要するに、狙ったところにちゃんと撃てるという高精度化。さらには多様な打撃手段。昔のように、ある特定の場所から、基地をつくってそこからロケットを発射するというのではないわけですね。移動式の車からもできる。最近は、潜水艦を使った、開発もしているのではないかとも言われている。そして、何といっても核開発が進んでいるのではないか、小型化しているのではないか、こういう疑惑があるわけで、我が国にとっては極めて脅威と言わざるを得ないということなんですね。弾道ミサイル一つとりましても、これは北朝鮮だけに限らず世界じゅうで拡散している、こういう状況にあるわけですね。こうした安全保障環境の認識を私どもは持ったわけです。

 その上で、今例えば北朝鮮の弾道ミサイル技術の進展に対して我が国はどのような対処をしているのか、これについても御答弁いただきたいと思います。

中谷国務大臣 一昨年末に防衛計画の大綱を決定いたしましたが、これにおきましては「北朝鮮の弾道ミサイル能力の向上を踏まえ、我が国の弾道ミサイル対処能力の総合的な向上を図る。」といたしております。

 また、弾道ミサイルへの対応につきましては米国との協力が不可欠でありまして、ことしの四月に改定された新ガイドラインにおきましても、弾道ミサイル防衛に関して協力を行うということを確認いたしております。

 このため、平素から米国の早期警戒情報を初めとする必要な情報の共有を行っているほか、米国は嘉手納飛行場などにペトリオットPAC3、車力通信所と経ケ岬通信所にTPY2レーダーをそれぞれ配備するとともに、横須賀にBMD能力搭載のイージス艦五隻を展開しているところでありまして、日米協力の強化と我が国の弾道ミサイル防衛システムとが相まってミサイル脅威への抑止力、対処力を高めているところでございます。

北側委員 この北朝鮮の弾道ミサイルに対する対応ということを考えると、これは日米共同対処でないとできないわけですよ、現実には。日本だけではできないわけですね。

 例えば、早期警戒情報、今おっしゃいました。この早期警戒情報というのは、人工衛星等から、発射地点はどこなのか、時刻はどこなのか、落下地点はどこなのか、その時刻はどこなのか、こうした情報を即時にキャッチして日本へ提供する、これが前提になって警戒態勢をとっているわけですね。日米のこうした共同の対処があって、北朝鮮の弾道ミサイルへの対処ということができているわけでございます。

 その上で御質問したいと思うんですが、例えば我が国防衛のため公海上でまさしく警戒監視活動をしている米艦船に対して外部から武力攻撃があった場合、これを排除する必要性があるのかないのか、まずここの認識なんですね。

 今の例でいいますと、ミサイル防衛のために日米の共同対処でやっていくしかない。警戒監視活動をしているアメリカの船、イージス艦に対して第一撃、武力攻撃があった場合に一体どういう影響が、北朝鮮の弾道ミサイルに対する防衛対処、日米で共同対処している、この対処のありようにどういう影響を与えていくのかということも含めて御答弁いただきたいと思います。

中谷国務大臣 先ほどお話ししたとおり、弾道ミサイルの脅威に対しましては、日米協力の強化、そして我が国の弾道ミサイル防衛システムによってミサイルの脅威への抑止力、対処力を高めているところでございます。

 弾道ミサイルにおきましては、日米共同で対処する場合に、横須賀に展開いたしておりますBMD能力搭載のイージス艦等は、自衛隊と協力して弾道ミサイル発射の早期探知またミサイルの迎撃に当たることとなります。このため、米国の艦船が攻撃を受けた場合に弾道ミサイルへの日米共同対処の実効性を損なうということが明らかになるために、これを排除する必要があると考えております。

北側委員 北朝鮮のミサイルに対してまさしく警戒監視活動をしている公海上のアメリカのイージス艦に対して第一撃があった場合に、それが排除できなかったら、そもそもこの北朝鮮の弾道ミサイルに対する対処というのが、大きくその機能が低下をしてしまうという現実にあるわけですね。そこをやはり私どもは認識しないといけない。そうした攻撃をやはり排除しないと、また排除できるような仕組みにしておかないとこの国や国民を守れない、こういう認識を私どもは持っているわけでございます。

 そこで、我が国防衛のため公海上で警戒監視活動をしているアメリカの船に対して第一撃、武力攻撃があった場合に果たして自衛の措置がとれるのかという議論は、この委員会でも多くの委員の方々から質問があり論議になっているわけですね。

 ちょっと改めて、私、法制局長官にお聞きをしたいと思うんですが、過去もこの国会で何度もこのことは議論されてきているわけです。議論されているんですが、そこでの当時の法制局長官の答弁が幾つかあります。また閣僚の答弁もありますけれども、その答弁というのは、個別具体の事例によりますよ、専らこの答弁なんです。

 そもそも、公海上で我が国防衛のために活動している、こういうアメリカの船に対して武力攻撃があった場合、一般的に我が国に対する武力攻撃の着手というふうに言えるのかということについて、これまでも御答弁いただいておると思うんですが、改めて御答弁いただきたいと思います。

横畠政府特別補佐人 御指摘の、我が国防衛のため公海上で警戒監視活動をしている米艦船に対する外部からの武力攻撃を我が国に対する武力攻撃の着手と認定できるかという問題でございますけれども、法理上は、まさに状況によっては我が国に対する武力攻撃の着手と認定できる場合もあるということでございまして、法理上はあり得る、否定されないということをお答えしてきているわけでございます。

 しかしながら、実際上は現実に発生した事態の個別具体的な状況に即して判断することが必要であり、一般的にそのようなケースが我が国に対する武力攻撃の着手に当たると言うことはできないと考えております。

北側委員 過去の国会で論議になったのは、例えば、日本の領海内にいる米艦船に対して攻撃があった、これを、我が国に対する武力攻撃の着手でしょうと。それから、既に我が国に対する武力攻撃の着手があって、そして公海上で我が国防衛のために活動している米艦船に対する攻撃、もう既に着手があるわけですね。この場合はその米艦船に対する攻撃も我が国に対する武力攻撃だというふうに評価できます、こういう答弁もありました。

 ただ、日本海の公海上で警戒監視している米艦船に対して、先ほどの例ですよ、そんな場合に、第一撃があった場合にこれを我が国に対する武力攻撃の着手だと一般的に言えるかというと、今長官から答弁があったように、これはやはりなかなか言えないんですね。そういう認識を私どもは持ったわけです。

 そこで、外務大臣に御答弁いただきたいんですが、これはここでも議論されています。このような場合を一般的に個別的自衛の措置だ、個別的自衛権で対処するんだと個別的自衛の措置で可能とすること、今のような事例の場合を一般的に個別的自衛の措置で可能なんだといった場合に国際法上どういう問題点が出てくるのか。以前にも答弁されておりますが、改めてお聞きをしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、国際法上、個別的自衛権と集団的自衛権は、自国に対して発生した武力攻撃に対処するものであるかどうか、この点において明確に区別されております。こうした考え方が国際法上確立していると認識をしています。

 本来、国連憲章五十一条で認められております集団的自衛権で対処すべき事態、集団的自衛権を援用して対処すべき場合において個別的自衛権の概念を我が国独自の解釈をして対処するとしたならば、我が国に対する武力攻撃が発生していない段階で武力行使を行うということになりかねず、結果として国際法に違反するおそれが生じると考えます。さらに、仮に我が国がこのような形で結果として我が国に対する武力攻撃が発生していない段階での個別的自衛権の行使を認めるとしたならば、他国に対しましても同様の主張を行うことを認めざるを得ない、こういったことになります。

 そもそも、国連憲章が五十一条において武力攻撃が発生した場合に限り個別的、集団的自衛権の行使を認めた理由の一つは、各国が曖昧な基準によってこれを行使する可能性を排除する、こういったことであると認識をしております。我が国が進んでこのような国連憲章の趣旨に反する個別的、集団的自衛権の濫用のおそれを惹起すべきではない、このように考えております。

北側委員 集団的自衛権には、個別的自衛権と違って、別の要件がありますね。

 ニカラグア判決で、集団的自衛権を行使する場合には二つ、別途要件が必要だと。一つは、攻撃を受けた国による攻撃されていますという、攻撃事実を宣言しないといけないんです。その宣言がないまま、他国が密接な関係があるからといってその攻撃を排除することはできないわけですよ。自分が攻撃されていますという事実を宣言しないといけない、これが一つ。二つ目に、他国に対する援助要請をしないといけない。攻撃があったという事実の宣言と、助けてくださいという援助の要請をしなければならない、この二つがあって集団的自衛権の行使というものは合法性があるんだというふうにニカラグア判決では言っていますよね。

 そういう意味では、個別的自衛権と違うわけですね。国際法上集団的自衛権と認められる場合に我が国でこれは個別的自衛権ですと言ってやってしまうということは、この二つの要件についてどう考えるんだということになってしまうわけでして、この点、外務大臣、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘のように、集団的自衛権につきましては、国際法上、武力攻撃を受けた国からの要請、同意が必要とされています。加えて必要性、そして必要最小限度のものである、こうした要件を満たす必要があると考えられております。こうした集団的自衛権と認めた上で正当化すべき行為において個別的自衛権を独自に解釈して拡張するということになると国際法違反になる、こういった考え方を先ほど説明させていただきました。委員御指摘のとおりだと考えます。

北側委員 そもそも個別的自衛権とか集団的自衛権というのは、日本の国内法にはどこにもこの言葉はないんですね。ないんです。個別的自衛権とか集団的自衛権という言葉、その持つ意味、目的は何かといったら、これは国連憲章の五十一条に書いてあるわけです。

 国連憲章の第二条で戦争は禁止されるわけです、加盟国に対して。武力の行使、武力の威嚇は加盟国はしてはならないということを二条四項で宣言しているわけですね。違法なんです、戦争は。ところが、例外的に五十一条で、武力行使の違法性について、違法性を阻却する。正当化していく、合法性を持つ、その根拠としてこの五十一条があるわけです。五十一条には集団的自衛権、個別的自衛権、さらに集団安全保障というふうに、これを根拠にしてその武力の行使は違法性を阻却されますよということで個別的自衛権、集団的自衛権という概念があるわけでございまして、この二つの概念というのは日本の国内法にある規定ではなくて、国際法上の概念だということなんですね。

 我が国が日本国憲法九条のもとでどこまで自衛の措置が許されるんだという、長年の課題ですね、これは。この課題について、個別的自衛権、集団的自衛権という概念そのものが直ちにその基準になるわけではないわけです。これまでの政府解釈の中で、個別的自衛権、集団的自衛権という観念を分けて、個別的自衛権の場合のみ憲法九条のもとで自衛の措置が許されるんだと言ってきたんですが、直ちにそこに結びつくわけじゃない。もともと個別的自衛権、集団的自衛権という言葉の意味、目的というのは、国際法上の違法性の阻却事由、そこに意味があるわけなんですね。

 長官、私の理解で間違えていないかどうか、お答え願いたいと思います。

横畠政府特別補佐人 御指摘のとおりでございまして、個別的自衛権、集団的自衛権というものは国際法上の概念でございまして、憲法においてはそもそも自衛権という言葉すら用いられておりません。憲法上は個別的自衛権あるいは集団的自衛権という区分がそもそもあるわけではございません。

 従前の自衛権発動の三要件におきましては、昭和四十七年の政府見解で示された「外国の武力攻撃によつて国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」に当てはまる事態は我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られるという認識のもとで、ちょうどこれに見合う国際法上の概念であります個別的自衛権の行使が許される、そのような言い方をしてきたということでございます。

北側委員 ということだと私も考えます。

 皆様のお手元に資料、三枚刷りをお配りしておりますが、ここまでの私の質疑、議論について簡単にポンチ絵にしてあるわけです。

 一枚目は、右の方が我が国領域への武力攻撃の着手ありの場面ですね。左の方は逆に、他国への武力攻撃、他国防衛。この間に、我が国防衛のため日本近隣の公海上で警戒監視活動をしている米艦船への攻撃があった、まだ我が国への直接の武力攻撃はない、これに対して対処する必要性がまずあるのかないのか。私どもは、やはりここは対処しなければならない場面が多いと考えているわけです。そうしないとこの国を守れない、国民を守れない、こう考えるわけですね。

 では、対処した場合に国際法上の違法性阻却はどう考えるんだというのが、二枚目をごらんになっていただきたい。二枚目、三枚目なんですが、この中で、個別的自衛権で対処して国連憲章五十一条の違法性阻却事由に当たるんだという立場があります。ただ、これは、着手の概念は個別事例ごとの総合判断、状況によってはと言うにとどまっているわけでございまして、一般的にこういう場合に対処可能だという立論にならないんですね。ならないわけでございます。三枚目をごらんになっていただいて、やはりこれは国際法上は集団的自衛権の一部として、それを根拠として対処しないと違法性が阻却されませんから。

 そこで、憲法上の、憲法九条のもとで許される自衛の措置としてはどこまで許されるんだということを議論させていただいて、昨年の七月一日に新たな三要件というものを決めた。ただし、これはあくまで自国防衛だ、ただ国際法上は集団的自衛権が根拠になるという理解を我々はしているわけですね。このように私どもは考えたわけでございます。

 そこで、ここでも新三要件と憲法九条との関係については何度も御議論いただいています。最高裁の砂川判決について議論になっておりますが、私の理解を申し上げますと、この砂川判決で、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために自衛の措置をとり得ることは当然である、こういうことを言っているわけですね。最高裁というのは違憲立法審査権を持つ唯一の機関ですから、この機関がこのように言っていること自体は大変重い意味があるわけですね。

 それを踏まえた上で、この意味、射程距離はどこまでなんだということなんですけれども、これは私の理解でございますが、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするため自衛の措置をとることは許される。

 その意味は、まず一番目にはっきり言えることは、我が国に武力攻撃があった場合にこれを排除する、いわゆる個別的自衛権は当然含まれます。

 二番目に、専ら他国防衛を目的とした国連憲章上言っていますいわゆる集団的自衛権、これは含まれません。専ら他国防衛を目的としているわけですから、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするためと言えないわけですよね。だから、いわゆる集団的自衛権は含まれない。

 三番目に、個別的自衛権と限定せずに、この砂川判決を読みますと、判決の中に個別的自衛、集団的自衛という言葉を使っているんです、別の箇所で。だから、国連憲章五十一条ということをしっかり認識した上で砂川判決は書かれているんですが、個別的自衛権とも言わず集団的自衛権とも言わず、自国の平和と安全を維持しと言っているんですね。個別的自衛権と限定せず、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするための自衛の措置と言っているところからは、集団的自衛権全てを排除しているとは言えないと思うんですね。

 その上で、一体この日本国憲法九条のもとでどこまで自衛の措置が許されるんだ、自衛の措置の限界はどこにあるのかということについては、その範囲で政府と国会の判断に委ねたというふうに私は理解をしておりますが、この砂川判決の持つ射程距離、意味について、長官、御答弁をお願いしたいと思います。

横畠政府特別補佐人 この砂川判決につきまして、傍論ではないかというような議論もあるわけでございますけれども、そもそも砂川判決が我が国の自衛権について論じている前提となっておりますのはやはり問題となった旧日米安保条約でございまして、その旧安保条約そのものの前文におきまして「平和条約は、日本国が主権国として集団的安全保障取極を締結する権利を有することを承認し、さらに、国際連合憲章は、すべての国が個別的及び集団的自衛の固有の権利を有することを承認している。」さらに「これらの権利の行使として、日本国は、その防衛のための暫定措置として、日本国に対する武力攻撃を阻止するため日本国内及びその附近にアメリカ合衆国がその軍隊を維持することを希望する。」ということが明記されている。そのような観点から、まさにこの旧安保条約の締結が憲法に適合するかどうかの判断の道筋として、我が国に自衛権があるのかどうかということについて判断をしているということでございます。

 もとより、この砂川判決自体が自衛隊の合憲性でありますとか我が国による武力の行使の可否そのものが争点となった事件について示された判断ではありませんけれども、違憲立法審査権を有する最高裁判所の大法廷におきまして、かつまた全裁判官のコンセンサスとして示されている見解というものは大変重いものでございまして、これは尊重すべきものであると考えております。

 その射程距離ということになるわけでございますけれども、まさに法廷意見そのもの、判決文そのものには個別的、集団的という区別が書いていないということでございまして、それはどのように解するかということでございますけれども、ただ、同判決自身が論じているこの自衛権というものはあくまでも我が国自身の防衛のための自衛権ということでございまして、我が国が他国を防衛するために武力を行使するという、いわゆる今で言う他国防衛の権利としての集団的自衛権、そういうものを念頭に判示しているというところまではなかなか認めがたいだろうということでございまして、まさに御指摘がございましたように、砂川判決の射程としては、国際法上の概念でいえば、我が国に対する武力攻撃が発生した場合の個別的自衛権のみならず、やはり我が国が危機に瀕した場合の、今回新三要件でお示ししているような限定された集団的自衛権の行使というところまではその射程に入っているのではないかというふうに考えております。

北側委員 私の意見では、結局最高裁は、最高裁の言っている範囲内のもとで、あとどこが自衛の措置の限界なのかということについて政府と国会に任せたわけですよ、そこの議論に委ねたわけですよ。それがまさしく、この昭和四十七年見解が一番典型でございます。

 この昭和四十七年見解は、この委員会でも何度も取り上げられていますが、三つの段落、三つの文章に分かれますが、第三段落の第一文と第二文がまさしく肝の部分。九条とは何なのか、その九条のもとで許される自衛の措置の限界はどこにあるのかということを書いているのがこの第一文、第二文のところ。詳しくはもうやりませんが、憲法九条を解釈する以上は、やはりほかの憲法規定から持ってくるしかないわけですよね。そうするとこれは憲法十三条。憲法十三条には基本的人権について、その後、四十条までずっと規定があるんですが、この十三条の冒頭に、国民の生命、自由、幸福追求の権利は国政の上で最大の尊重を必要とする、このような規定が十三条にあります。

 この十三条規定からするならば、他国に対する武力攻撃であっても、それがもし国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆されるような急迫不正の事態であるならば、そういう事態があるというならば、それを排除することについて、十三条規定からはこれはやはり自衛の措置の限界として読めるわけだと我々は考えたんですね。

 要するに、こういう認識なんです。現在の安全保障環境から見れば、いまだ我が国に対する武力攻撃に至っていない状況でも、他国に対する武力攻撃があり、これによって我が国の存立と国民の権利が根底から覆されることが今の安全保障環境のもとではあり得るぞ、こういう認識を我々は共有してあのような新三要件というのを定めたわけでございます。ここも本当は長官の答弁を求めたいところでございますが、ちょっともう時間がないので飛ばします。

 最後に、存立危機事態と武力攻撃事態等との関係、これについて改めて防衛大臣に答弁していただきたいんですが、これは別の概念だということですね。武力攻撃事態等の中には切迫事態、予測事態も含まれるんですが、そういう武力攻撃事態等と存立危機事態との関係というのは、これは概念上は違う概念ではありますが、重なり合うことがほとんどだというふうに私は理解しています。まあ、例外的に重ならない場合があるかもしれません。私はそのように理解しているんですが、まず、長官、ここのところの認識を御答弁いただきたいと思います。

横畠政府特別補佐人 先ほど憲法第十三条について御指摘がございましたけれども、まさにそのとおりでございまして、我が国に対する武力攻撃が発生した場合、あるいは、発生に向けての時間的な経過、緊迫性によって幾つかに分かれておりますけれども、武力攻撃事態等と言われるもの、それと、他国に対する武力攻撃なのではありますけれども、我が国に対する影響の深刻性、重大性からやはり憲法第十三条に照らして対処の必要があるだろうということで観念される存立危機事態というのは、まさにその根っこにおいて、我が国の存立及び国民の生命、自由及び幸福追求の権利を根底から覆す、そのような事態に適切に対処するというのが国家の、国の責務である、そういう根本において共通するものでございますので、相当部分、大部分と言ってもいいかもしれませんけれども、重なり合うようなことが想定されると思います。

北側委員 防衛大臣、もう一度お答えいただきたいと思います。

中谷国務大臣 北側委員も御指摘のとおり、武力攻撃事態等と存立危機事態、これはそれぞれ異なる観点から状況を評価するものでありまして、相互に排他的でなく、他国に武力攻撃が発生した状況についてそれぞれの観点から評価した結果、いずれの事態にも同時に該当することがあり、その場合は両事態が認定されるということでございます。現実の安全保障環境を踏まえれば、存立危機事態に該当するような状況は同時に武力攻撃事態等にも該当することが多いと考えております。

北側委員 ということなんですよね。ぜひ、そういう前提をきちんと答弁いただきたいと思うんですね。

 最後に、これは本当に最後ですが、私も、概念が違うから論理的に重ならない場合が全くないとは言いません。そういう場合もあるかもしれません。ただ、仮に武力攻撃事態等と存立危機事態が重ならない場合が例外的にあるとして、その場合に国会の関与はどうあるべきなのかということを考えると、防衛出動命令というのは、また対処基本方針というのは、もちろん国会の事前承認が原則なんですが、特に緊急の必要がある場合は事後でもいいとなっているわけですね。

 ただ、重ならない場合、予測事態にも仮に至っていない、そういう例外的な存立危機事態の場合には国会の関与というのは、これは当然のことながら事後ということはないんだろう、事前の国会の関与を得ていくことに当然なるだろうというふうに私は理解をしております。このことについてはまた改めて議論させていただきたいと思います。

 時間が参りましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。

浜田委員長 次に、原口一博君。

原口委員 おはようございます。民主党の原口一博です。

 通告に従って質問をさせていただきます。

 委員長にお許しいただいて、皆様のお手元に資料を配付させていただいています。この一番最後をごらんになってください。平成十二年にこの委員室で、私と宮沢当時の財務大臣、首相を務められた後の財務大臣との議論であります。

 憲法調査会について聞いたんですね。そのときに宮沢大臣は、一番最後のページ、こうお答えになっています。

 戦前から生きてまいりました、また軍隊にも参りました人間として申しますことは、日本は自衛隊を外国に派遣するようなことがあってはならないということは、今日まで続けて考えてまいりました。自衛のために何をしてもいいということは、もちろん当然のことでございます。しかしながら、そうではあっても、自衛隊を外国に派遣するということは、言い直させていただきます、日本が外国で武力行使をするということは、私はどういう理由であれ、決して国のためにいいことではない、国外で、外国で武力行使をするということは、決して日本のためにならないということは、いまだにその考えは変えておりません。

こう言われているんですね。

 ただ、留保があります。次のジェネレーションが別のことを決断される、それは恐らく自分がもうこの世にいないときのことであろう、もう亡くなられました。

 それについては私は何も申すことができませんので、ただ、私が聞かれれば、日本は外国で武力行使をすることがあってはならないということは、私はやはり大切なこと

だろうと。これは大変重い答弁だと思うんですね。

 もう宮沢さんは、ここでこういう答弁をされることはできません。しかし、沖縄でも埼玉でも、大変大事な地方公聴会で意見を言われた。その中には、あの戦争の悲惨な経験の中から、二度とそういうことを起こしてはならないということを言われているんです。

 中谷大臣、この宮沢さんの答弁についてどのように、所感をまず伺いたいと思います。

中谷国務大臣 私も宮沢喜一先生にいろいろと御薫陶をいただいておりましたけれども、あの戦争を体験された方の貴重な御発言であると思います。

 そういう意味で、政府としましては、海外派兵につきまして、一般的に言えば、武力行使の目的を持って武装した部隊を外国の領土、領海、領空に派遣するというふうに定義づけて説明をされておりまして、海外派兵は一般に必要最小限度を超えるものであって憲法上許されないと考えておりまして、私もこのような考え方でございます。

原口委員 今、北側委員から、集団的自衛権の行使についてるる御議論がありました。私は、この四十数年間この国会で積み上げてきた議論というのをないがしろにすべきではない、そう考えています。

 砂川判決や四十七年見解を持ち出されますけれども、何より国権の最高機関で議論を積み重ねてきたことは大変重いと考えますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。

中谷国務大臣 集団的自衛権につきましては、憲法との関係で、昭和四十七年の政府見解で示した憲法の解釈の基本的な論理、これは全く変わっておりません。

 これは砂川事件に関する最高裁の判決の考え方と軌を一にするものでございまして、砂川事件の最高裁の判決は、我が国が自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛の措置をとることは、国家固有の権能の行使として当然のことと言わなければならないと述べておりまして、新三要件のもとで認められる限定的な集団的自衛権の行使は我が国の自衛の措置に限られるものでありまして、砂川判決の範囲内のものである。

 その意味では、砂川判決は、限定容認する集団的自衛権の行使が合憲であることの根拠たり得るものだというふうに考えております。

原口委員 その議論に入る前に、まずは、ちょっとガイドラインについて触れたいと思っています。

 国会図書館にも来ていただいています。私は、一九九七年のガイドラインを見まして、外務大臣と防衛大臣に伺いたいんですが、まず外務大臣で結構です。

 この正文、条約であると英文が正文であるとかいろいろ決まりがあるわけですけれども、これは政治的な文章ですから、厳密に言うと正文はない。ですから、英語のテキストで交渉した、そういう答弁がございますけれども、日本文も英文も両方効力を持つ、効力といっても、法的効力とか予算上あるいは制度上の措置を義務づけたものではない、このように考えますが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘のように、新ガイドラインは条約などの国際約束といったものではありませんので、正文か否かを論ずることは必ずしも適切ではありませんが、日米間のガイドライン見直し作業においては、作業の便宜という観点から英語を用いたところです。そして、新ガイドラインの和文は、英文と整合的なものになるよう日本政府が責任を持って作成したものであります。こうした対応は、一九九七年のガイドラインの際と同様であると認識をしております。

原口委員 そこで、私は、九七年それから二〇一五年、両方を読みました。かなり英文と邦訳の間で大きな隔たりがあるなというのを感じます。

 例えば、ロジスティック、これは後方支援というふうに訳されています。これはこの委員会でも議論がありました。

 あるいは、九七年には、バイラテラル・リスポンス・フォーと書いてあります。これは、双務的な責任をお互いが負うというふうに訳すと思うんですが、主体的に判断するというようになっています。

 あるいは、シェアリングインテリジェンスという言葉があります。これは二〇一五年のガイドラインにも出てきますが、シェアリングインテリジェンス、諜報というかインテリジェンスをシェアするというふうに私たちは通常、これは軍事用語ですから、読むと思うんですけれども、和文では情報を共有するというふうになっているんですね。

 私は、この一つ一つを、英語がどうだ、日本語がどうだと言う前に、日米で理解のそごがあっては、あるいは国民から見て、このガイドラインを読むと、日本国憲法、つまり戦力を保持しないということに配慮するために殊さら意味が丸めてあるというふうに考えます。私は、そのそごというのは決していいことではない。直訳をしろと言っているんじゃないんですよ。その二つの間の取り違えがあればまさにオペレーションにそごを来すし、国民の理解を妨げるものになるのではないか。これは問題提起です。

 防衛大臣の答弁をいただきたいと思います。

中谷国務大臣 三点例示を挙げられましたが、例えばインテリジェンスとインフォメーションについても、それぞれの用語が使われている文脈を踏まえて和文において適切な表現としているところでありまして、インテリジェンスにつきましては、一九九七年のガイドラインにおいて情報という表現をしていることも踏まえて、新ガイドラインにおいても情報といたしました。

 また、後方支援とされているものと同じような文脈において兵たんの用語を用いる場合があることは承知をしておりまして、どちらも作戦部隊に対する補給、整備、輸送等といった内容を示す点においては共通するものと考えられますが、一九七八年及び一九九七年のガイドラインにおいて後方支援という表現を使用してきていることも踏まえて、新ガイドラインにおいても後方支援という表現を用いたわけでございます。

 そして、日本に対する武力攻撃に際して、日本が一国のみ、ユニラテラルで対処するのではなくて、日米両国が共同で、バイラテラル対処ということを明確にするために共同対処行動という用語を使用したものでありまして、一九九七年のガイドラインにおきましても共同対処行動という表現を使用しているわけでございます。

原口委員 大臣、私は、過去のそういうガイドラインの表現も、今となっては見直した方がいいと思っているんです。九七年にそういう訳をしているから今も同じだというのは、少し考え直していただきたい。かなりの開きがあります。

 そこで、国会図書館にきょう来ていただいていますが、今般の安全保障関連法案が成立しないと、今お手元の資料一をごらんください、このDのところはほとんどできなくなると考えますが、御答弁をいただきたいと思います。

等国立国会図書館専門調査員 国会図書館、等でございます。

 先生御指摘のように、このガイドラインを実行するために、今回の平和安保法制が御提案されていると思います。

 特に、今回の御提案の中で、これが成立しませんとできないだろうなと思われる点を一点御紹介いたしますと、例えば、今回のガイドラインにおきまして、戦闘捜索・救難活動を含む捜索・救難活動という用語が三度使われております。これにつきまして、前回の九七年のガイドラインでは戦闘捜索・救難活動という言葉は使われておりませんで、単に捜索・救難活動という言葉が使われておりました。

 これに関連いたしまして、今回の平和安全法制におきましては実施区域を防衛大臣が定められるというふうになっておりますけれども、捜索救助活動につきましては、一旦開始しました後は実施区域を外れてもできるような書きぶりになっておりますので、この点はまさに、今回の法制が成立いたしませんとガイドラインで日米が約束したことを実行できないことになろうかと思います。

原口委員 ありがとうございます。大事な指摘だと思います。

 今のは、防衛大臣、いわゆるCSARと言われるものですね。CSARとは何かというと、軍事用語辞典によると、戦闘中に孤立した要員の救出の能力を有する部隊により遂行される戦術、技量及び手続と定義されている。つまり、戦闘しているときに兵員が連れ去られるとか、いなくなるとか、そういった人たちを助け出しに行く。

 この法案の中には、今御答弁にありましたように、捜索救助活動として、重要影響事態から武力攻撃事態に加えて国際平和共同対処事態においても、今までは日本領域及び後方地域に限定されていたものが、自衛隊はその地理的な制約を受けることなく他国軍のためにいわゆるCSARを実施できることになった。新ガイドラインでも、三カ所で念を押すように今のCSARが書かれています。

 そこで質問ですが、今のような法案の理解でよろしいでしょうか、防衛大臣。

中谷国務大臣 御指摘のように、CSARというのは、敵対的または不確実な状況から孤立した要員を救出するための活動であり、米の統合参謀本部が作成している公刊資料において、通常の捜索救助、SARとは異なる概念として整理されていると承知をしております。

 新ガイドラインにおきましても御指摘のように三カ所で言及しておりますが、いずれにせよ、今般の平和安全法制が整備された場合は、重要影響事態法、自衛隊法等によって、その範囲内において自衛隊は捜索・救難活動を実施することになります。

 日本の平和及び安全に対して発生する脅威への対処としての捜索・救難活動については、今般の平和安全法制が整備された場合は自衛隊は重要影響事態法等に従って捜索救助活動を実施することになりますが、米軍による戦闘捜索・救難活動に対して支援を行うとの記述からも明らかなように、新ガイドラインは、重要影響事態に相当する場面において、自衛隊がいずれか一方の戦闘を利する目的で敵対的な状況にみずから赴いて味方の要員を救出するような戦闘捜索・救難、CSARを行うことを念頭に置いているわけではございません。

 つまり、日本に対する武力攻撃への対処行動及び日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動としての捜索・救難活動については、今般の平和安全保障法制が整備された場合は、自衛隊は自衛隊法に従って戦闘捜索・救難活動を含む捜索救助活動を実施するということになるわけでございます。

原口委員 それは、戦闘されている現場、例えば米軍では、このミッションは非常に危険であるけれども、軍の士気を維持するには不可欠の任務というふうにされています。それはそうでしょうね。戦闘行為に出かけていって自分がさらわれる、あるいはどこかに迷い込む、それを助けてくれる人がいなければ軍の士気にかかわる。つまり、戦闘地域で我が自衛隊はそういう行為を米兵に対してもやるわけですね。そういう理解でよろしいですか。いや、大臣に聞いています。委員長、済みません。

浜田委員長 ちょっと一回答えさせてくれますか。その後に。

黒江政府参考人 先ほど大臣からお答え申し上げましたけれども、日本に対する武力攻撃への対処行動及び、ガイドライン上でございますが、日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動、すなわち、我々が武力攻撃に遭っていて自衛権を発動している、あるいは存立危機事態として自衛権を発動しておる、そういう場合においては戦闘捜索・救難活動といったものを含む捜索・救難活動を実施するということを申し上げました。

 他方、重要影響事態に相当する場面におきましては、これにつきましては法文上も明らかでございますけれども、あるいはガイドライン上も法律に従って支援を行うということでございますので、自衛隊自身がいわゆるCSAR、戦闘捜索・救難活動をみずからが行うということは想定していない、法律上もできないということでございます。

原口委員 参考人を呼ぶときに、私が大臣を指名したら、勝手に出てくるんだったら認めないということを言っていました。今は委員長の御指示ですけれども。委員長、そのことをお守りいただければと思います。

浜田委員長 はい。

原口委員 それでは、一ページをごらんください。「アクション イン レスポンス ツー アン アームド アタック アゲンスト ア カントリー アザー ザン ジャパン」と書いてありますね。まさに日本以外の国が攻撃されたときに「サーチ アンド レスキュー」することになっているじゃないですか。十六ページをごらんください。「サーチ アンド レスキュー」と書いているじゃないですか。

 そうすると、米兵については、我が自衛隊は、この法案が仮に成立しても助けないということでよろしいですね。

中谷国務大臣 先ほどお話をいたしましたけれども、重要影響事態等におきまして、自衛隊がいずれか一方の戦闘を利する目的で敵対的な状況にみずから赴いて味方の要員を救出するような戦闘捜索・救難、CSARを行うことを念頭に置いているわけではございません。

原口委員 委員長にお願いしたいと思いますが、それは法文のどこで担保されているのか。それを理事会でも御協議いただきたいし、法文を見せてください。どこで担保されていますか。

中谷国務大臣 重要影響事態法におきましては、武力行使をするものではないし、戦闘が行われている現場において活動をしないということになっております。しかも、防衛大臣は、自衛隊の部隊等が実際に円滑かつ安全に捜索救助活動を実施することができるように実施区域を指定する旨を規定しておりまして、この規定を受けて、現在戦闘行為が行われていないというだけでなくて、自衛隊の部隊等が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定することになります。

 また、万が一状況が急変をして、捜索救助活動を行っている場所において戦闘行為が行われるに至った場合などには、原則として一時休止するなどして危険を回避することとなります。

 その上で、例外的な場合として、既に遭難者が発見され自衛隊の部隊等がその救援を開始しているときに御指摘のように活動を継続することができるのは、あくまでも部隊の安全が確保されている場合に限られることを法律上明記いたしております。

 安全が確保されていない状況下で活動を継続することはありませんということで、重要影響事態法に基づく捜索救助活動について、後方地域の仕組みのもとで実施区域が指定された従来の場合と同様に、安全に十分な配慮を行って実施するということでございます。

原口委員 それは答えになっていないんじゃないですか。

 活動は、今まで日本領域及び後方地域に限定されていたものが、どこでもできるようになるし、今大臣がおっしゃった条件のもとですよ、しかも、重要影響事態から武力攻撃事態に加えて国際平和共同対処事態においても地理的な制約を受けることなくできるんじゃないですか。違うんですか。

 今、重要影響事態についてだけおっしゃいましたけれども、例えば存立危機事態で大臣が出動命令を下令されて、そのときに集団的自衛権の限定行使、私はそんなものを認めていいとはとても思っていませんけれども、それをやっているときに、では、日本はCSARを米兵に対して行わないんですね。

中谷国務大臣 存立危機事態におきましては、我が国の存立にかかわるということで武力行使が容認できるわけでございますので、その場合においてはできるということでございます。

原口委員 CSARができるということで確認をさせていただきました。

 次に、効果的調整確保のための情報通信システム基盤の確保。二〇一五年ガイドラインでは「日米両政府は、実効的な調整を確保するため、必要な手順及び基盤を確立するとともに、定期的な訓練・演習を実施する。」、防衛システムの情報通信システム基盤をつくるんだと。

 もちろん、先ほど申し上げましたように、外務大臣、予算上の、あるいは制度上の措置を義務づけるものではないですけれども、これには莫大な財政上の措置を日本において発生させるものだと考えています。どこかで予算措置を提案されますね。

中谷国務大臣 同盟調整メカニズムについては、今後、日米間で必要な実施要領また基盤等の検討を進めていく予定でありまして、情報通信システムの確立のためのものも含めて、必要となる予算額については、予断を持ってお答えすることは困難でございます。

原口委員 よくわからない。予断を持ってじゃなくて、ガイドラインで日米双方が緊密な協力を密接化するために不可欠だとしているわけですから、当然予算措置が伴うだろうと想像するのは、それは予断ですか。違うでしょう。当たり前に、ここまでやるんだったら、私、それをやるなと言っているんじゃないですよ、データリンクやいろいろなもの、あるいはサイバー攻撃に対する脆弱性を補うためにも必要でしょう。ここまで書くんだったら予算措置を提案されますね。どうしてそれが予断なんですか。

中谷国務大臣 四月に合意したガイドラインに従いまして、今後、同盟調整メカニズムは日米間で必要な実施要領また基盤等の検討を進めていく予定でございますが、現時点で設置の具体的な期限が定められているわけではございません。当然予算の措置は伴うことになるわけでございますが、金額が幾らかということにつきましては、現時点においてまだ具体的な内容が決まっていないということでございまして、今後、協議を進めまして必要な額については要求をしていくということになろうかと思います。

原口委員 最初からそう答えればいいじゃないですか。予断を持って答えられないとかいう話じゃないでしょう。今幾ら予算要求しますかと聞いているんじゃないですよ。

 もうこれで最後にしますけれども、ガイドラインの調整メカニズム、九七年のガイドラインでは調整メカニズムと書いてあったわけですね。ここがやはり肝なんですよ。それを今回、常設の同盟調整メカニズム、この調整メカニズムを常設するんだと。

 ROEやあるいはDEFCON、そういったことについても日米で共有されますか。そして、日米でより密接な一体化を進めて皆様がおっしゃるところの抑止力を高める、こういう理解でよろしいですか。

中谷国務大臣 九七年のガイドラインで構築された調整メカニズムは、武力攻撃事態また周辺事態に際しての日米の各種活動の調整を図ることを目的といたしておりました。また、このメカニズムは、我が国に武力攻撃が差し迫っている場合や周辺事態が予想される場合に早期に運用を開始するものとされておりました。

 これに対して同盟調整メカニズムというのは、現下の安全保障環境を踏まえまして、上記のような事態のみならず、国内の大規模災害時を含めて、平時から緊急事態までのあらゆる段階において日米間の調整を図ることを目的とするとともに、平素から構築しておくだけではなくて、平時から利用可能なものとして調整、所要に適切に即応できる体制を維持することといたしておりまして、委員の御指摘の点も踏まえまして、今後、日米間で協議してまいりたいと思っております。

原口委員 私の指摘したところ、ROEも一緒にされるわけですね。あるいはDEFCONも、つまりアラートレベルも米軍と……。

 質問していませんから、大臣とやっているので手を挙げないでください。それは委員長にお願いしたところです。

 それも共有化するんですね。

中谷国務大臣 委員から御指摘をいただきました点も含めまして、今後、協議、調整をしてまいりたいと思っております。

原口委員 今すごいことをおっしゃったんですよ。ROEを共有するということを調整していくんですね。

中谷国務大臣 今後、同盟メカニズムの内容等につきましては調整をしてまいります。

原口委員 同盟調整メカニズムについては、こうやって合意しているわけですから、それを常設すると。同盟調整メカニズムを合意したのは九七年ですよ。

 今お尋ねしているのは、それを常設して、今大臣がお答えになったように、平時から利用可能な同盟調整メカニズムを設置して運用面の調整を強化する、そして共同計画を策定する、その中でROE、戦時に対する規定を共有化しますかと。私は、それがいいとか悪いとか言っていません、するかしないかを聞いているわけです。

中谷国務大臣 ROEというのは、交戦規定ということで、基本的にはそれぞれの国が独自で考え保有をしていくものでございますので、ROE等につきましては、基本的にはそれぞれの国内の考え方に基づいて決定されるものであると認識しております。

原口委員 それぞれつくって、別々のもの。

 ROEは秘にされていますよね。スタンディングROEということで、平時にどうするかということについては、その一部がアメリカの場合は公表されています。日本のROEは何なのか。

 そこについてはどうですか。アメリカはアメリカ、日本は日本のROEをつくる、そういうことでよろしいですか。それとも共有するんですか。

中谷国務大臣 基本的に、先ほども申し上げましたが、ROEというのはそれぞれの国の軍隊の武器使用基準等でございます。それぞれの国がそれぞれ決定するわけでございまして、私としては、共有というものは通常ないのではないかというふうに思います。

原口委員 それは共有しない、通常考えないということでよろしいですね。米軍には米軍のROEがあります、交戦規定が、当然のこと。日本はROEを米軍と合わせないということでよろしいですね。後ろから何をあれしているのかわからないですけれども、どうぞよろしくお願いします。

中谷国務大臣 基本的に、ROEというのはそれぞれの国の軍隊等の交戦基準、武器使用基準でございます。日本は日本なりのROEを持っておりますので、基本的にはそれぞれの国が別々に決定するものであると認識しております。

原口委員 大事な御答弁だと思いますね。データリンクを一体化させて、どこからどこまでが米軍の活動で、どこからどこまでが我が自衛隊の活動か。これは限りなく、私は去年、グアムのアンダーセン空軍基地司令官ともお話をしましたけれども、密接化、一体化が進んでいるという認識をしています。

 残された時間で少し憲法について外務大臣にお話をしたいと思うんですけれども、この憲法というのはアメリカから押しつけられたもの、つまり敗戦国日本が外に出てくるなと、日本はそこには関与していない、こういう言い方をする人がいます。私は本当にそうなんだろうかと。当時の幣原内閣は、平和主義思想のもとに、マッカーサー・ノートを出したマッカーサー元帥に対して、戦争放棄をした、そういう考えを示したと、これは芦部さんの「憲法」という本の中に書いてあります。

 私たち日本も主体的に加わってこの憲法をつくった、そして七十年間この憲法のもとで私たちは平和国家を築き上げてきた、平和主義と平和を維持する努力のもとで主体的にこの憲法を私たちは守ってきた、このように考えるんですが、大臣はどちらの立場ですか。

岸田国務大臣 日本国憲法がつくられるに当たりましてさまざまな議論があり、さまざまな関係者がかかわったと存じますが、少なくとも日本国憲法は、我が国のさまざまな法律、規定に従って取り扱われ、そして正規の手続のもとに制定されたものであると考えております。

原口委員 日本の主体的なかかわり、あるいはその後の平和主義に対する努力、だから、積極的平和主義というのを今の内閣は少し曲げて考えているんじゃないですか。自衛隊というのは、戦力に至らないから合憲なんじゃないですか。

 この間中谷大臣と議論しましたけれども、自衛隊の合憲の理由をもう一回言ってください。戦力に至らない、そういう理解でよろしいですか。

中谷国務大臣 憲法九条二項で保持することが禁じられている陸海空軍その他の戦力とは自衛のための必要最小限度を超えるものを指すものと解しておりまして、自衛隊は我が国を防衛するための必要最小限度の実力組織であるからこの戦力に当たらないというふうに解しております。

原口委員 私と同じ理解です。

 その上で、その戦力に至らない分を日米安保条約によって米軍の打撃力にも期待する、これが正しい理解だと思いますが、よろしいですか。

中谷国務大臣 現在、我が国の安全保障につきましては、自衛隊及び日米安保条約における在日米軍等の体制をもって日本の防衛をしているということでございます。

原口委員 皆さんは砂川判決と四十七年見解をもって限定的容認の論拠になるということを言われていますが、皆さんのお手元の資料の中に名古屋高裁の判決、政府は傍論だと言っていますけれども、その判決について、それは傍論であるから政府が規定されるものではないんだ、結論に至る、いわゆる主文に関するものではないんだからという答弁が当時の外務大臣からございました。

 きょうは最高裁にも来ていただいていますけれども、今回の砂川判決で、主文と傍論、もっと言いますと判決理由と傍論というのは、どこからどこまでが判決理由で、どこからどこまでが傍論ですか、最高裁。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 具体的な判決のどの部分が拘束力のある判決理由に当たり、あるいは傍論に当たるかということは、判決文言上、外形的に明らかではありません。そういう意味で、外形的に区別できませんし、また内容的にどこが傍論か否かということにつきましては、個別具体的な判決の解釈にかかわる問題でありますから、事務当局の立場としてお答えできないということを御理解いただければと思います。

原口委員 それでは、中谷大臣に聞きます。どこからどこまでが判決理由で、どこからどこまでが傍論ですか。

中谷国務大臣 基本的に、私の砂川判決の認識というのは、違憲立法審査権を有する最高裁判所が大法廷において裁判官全員一致の上で出した判決ということで、このような判決を導く上で考慮された事柄についての判示、これも最高裁判所の考え方を示したものとして重要性を有するものだと考えております。

原口委員 いや、質問にお答えになっていません。

 名古屋高裁の判決、これは確定しているわけですね。そこでは、ここからここまでが傍論だから政府はそれに拘束されないと言い、ここでは、どこからどこまでが傍論なんですか、教えてください。

岸田国務大臣 済みません、御指摘は外務大臣の答弁ということでありますので、私の方からお答えさせていただきます。

 この名古屋高裁の判決ですが、これは、自衛隊のイラク派遣等の違憲確認及び差しとめを求める訴えは不適法なものであるとして却下し、また損害賠償請求は法的根拠がないとして却下した国側勝訴の判決である、まずこれを申し上げた上で、御指摘の外務大臣の答弁ですが、航空自衛隊の空輸活動が違憲であると判示した部分は、判決の結論を導くのに必要がないにもかかわらず付随的に述べられた見解である、こういった旨を述べたものであると承知しております。

原口委員 六ページをごらんになってください。当時の議事録が正確にここにあります。

 傍論だと言い切っているじゃないですか。そして、「したがって、政府としては、こうした中で、判決の結論を導く必要がないにもかかわらず示された今回の高裁の見解については、別にそれに拘束されるいわれはない、」と言っているんですよ。

 砂川判決のどこからどこまでが主文で、どこからどこまでが傍論か判決理由か、何で答えられないんですか。

 何にも言っていないんですよ。何にも言っていないにもかかわらず限定容認ができる、それこそ論理の飛躍じゃないですか。

 百歩下がって、皆さんの限定容認論の論理の中核となった例の四十七年見解、結論は反対なんですけれども、そこに立てば、では何で芦田修正はだめなんですか。

 安保法制懇では二案がありましたね。二案が出てきて、芦田修正論もとり得る、そういう提案でした。それに対して安倍首相は、論理的あるいは法の安定性、これから考えてそこはとり得ないとしたといいます。

 しかし、そもそも、先ほど議論したように、戦力に至らない我が国は、アメリカ自体がなくなったら、それこそ我が国の存立を守れないじゃないですか。皆さんが言っている抑止力だってできないじゃないですか。

 皆さんの論理に立つ、私はその論理に立ちませんよ、こんな勝手な解釈変更は許せないと思っている。やるんだったら憲法を変えるべき。

 おかしいじゃないですか。なぜ芦田修正がだめなんですか。教えてください。

中谷国務大臣 まず砂川判決について、これは判決で述べられておりますけれども、まず判決の関連部分におきましては憲法九条に関する考え方を述べて、そこで、果たしてしからばということで、違憲無効であることが一見極めて明白であるとは到底認められないというところで判断が下されていますので、これまでの部分がこの判示ということでございます。

 一方、名古屋高裁における御指摘の判決は、高等裁判所の判決のみならず、御指摘のイラク派遣に関する判断を示した部分は、国側の全面勝訴という判決の結論を導くのに必要がないにもかかわらず付随的に述べられた見解であるということで、砂川判決による判示とはその重要性が異なっているということでございます。

 そして、芦田修正論につきましては、九条一項は侵略戦争を放棄していると解した上で、第二項は、前項の目的を達するため、すなわち侵略戦争を放棄するために戦力の不保持を定めているとして、侵略戦争でない自衛のための、あるいは集団的安全保障のための実力の保持や武力の行使には制限がないとする考え方でございます。

 安保懇の報告書でも二つの考え方を示していただきましたが、政府といたしましては、従来の憲法解釈と論理的整合性また法的安定性の確保ということで、芦田修正論の立場をとらずに、従来の憲法解釈の論理的整合性から自衛のための必要最小限度に限られるとするところで現在の新三要件を決めたということでございます。

原口委員 いや、全く納得できませんね。

 資料の三をごらんになってください。これは、砂川判決のときの補足意見です。「今日はもはや厳格な意味での自衛の観念は存在せず、自衛はすなわち「他衛」他衛はすなわち自衛という関係があるのみである。」こう言っているじゃないですか。

 平成十六年の一月二十六日、安倍総理大臣が政府に対して当時幹事長として聞いた秋山法制局長官の答弁によりますと、当時は集団的自衛権というものが出始めでまだ揺れていた、米軍に基地を提供することまで集団的自衛権と言うのであればそれは排除しないという答弁がございます。

 揺れているんですよ。揺れているときに何も言っていないものを今の状況に当てはめて、そしてそれが合憲だと言うのは本当に無理があるというふうに思います。

 皆さんの論理でいえば、芦田修正だって状況が変わればとり得るということじゃないですか。四十七年見解の一、二の論理を現状に当てはめれば部分的にはできるというのは、集団的自衛権、自衛権の概念を、いわゆる実力行使にかかわる最小限ということについての要件を量的な概念として捉えているからそういうふうになるんじゃないですか。

 全く納得がいかないということを、どこからどこまでが傍論かということもお示しになりませんでした、あるときには傍論と言って排除して、あるときにはその判示があると言うのはダブルスタンダードだということを指摘して、次の委員にかわりたいと思います。

 ありがとうございます。

浜田委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。

 まず、最初の質問、ちょっと通告と順番は違いますが、七月一日の当委員会で我が党の辻元委員が質問されたジュネーブ諸条約上の捕虜ということについてお尋ねをしたいと思います。これは岸田外務大臣に質問され、答弁をされております。

 辻元委員が、後方支援中の自衛隊員が捕虜になった場合はジュネーブ条約で捕虜として扱われる、適用されるのかというようなことを聞きましたら、岸田外務大臣は、我が国の後方支援、いわゆると言っています、いわゆる後方支援と言われる支援活動それ自体は武力行使に当たらない範囲で行われるものであります、我が国がこうした活動を非紛争当事国として行っている場合について申し上げれば、そのようなこと自体によって我が国が紛争当事国になることはなく、自衛隊がジュネーブ諸条約上の捕虜となることは想定されないということをおっしゃっています。

 つまり、重要影響事態において我が自衛隊が後方支援をしている場合はジュネーブ条約上の捕虜ではないということ、もしそうなった場合は扱われないということを答弁されていますけれども、確認ですが、これでよろしいですね。

岸田国務大臣 結論はそのとおりであります。

 重要影響事態あるいは国際平和支援法に従って後方支援を行う他国軍隊は国際法上適法な活動を行っているものでありますから、自衛隊の部隊が適法な活動を行っている他国軍隊を支援する、こうした活動は国際法上禁じられた武力の行使に当たるものではなく、そして我が国がこうした活動を行うこと自体によって紛争当事国となることはないと解釈しております。

 ジュネーブ諸条約は基本的には武力紛争の当事国間における関係を規定しているものでありますので、ジュネーブ諸条約、紛争当事国の軍隊に関する規定がこうした自衛隊の活動にそのまま適用されることはないと解しております。

渡辺(周)委員 先日の御答弁がそのような形で整理されて質疑は終わっているんですけれども、それではということで伺います。

 それでは、重要影響事態で後方支援をしている自衛隊の活動、これが存立危機事態というふうになった場合。自衛隊は、今のお話でいくと、後方支援の場合は我が国は非紛争当事国である、だからジュネーブ条約上の捕虜という扱いにはならないんだと。先ほどの答弁です。それでは、存立危機事態になった場合はいかがなんですか。存立危機事態となった場合は、非紛争当事国ではなくて紛争当事国になるんじゃないですか。いかがですか。

岸田国務大臣 おっしゃるように、存立危機事態が認定され、存立危機武力攻撃を排除するため武力の行使を行っている状況においては、我が国は基本的にはジュネーブ諸条約上の紛争当事国となっていると考えられます。

 したがって、このような場合にはジュネーブ諸条約の紛争当事国の軍隊に規定する規定が自衛隊の活動に適用されることになると解します。

渡辺(周)委員 今大変重大な答弁をしたんですけれどもね。つまり、同じ自衛隊が活動しているのに、後方支援の場合はジュネーブ条約の適用がされなくて、存立危機事態の場合はされると。

 この安保議論がどうして世の中にわかりにくいかというと、非常に抽象的な議論が多いからイメージが湧かないんです。では、イメージが湧くために、あえてちょっと例示をしてみます。

 例えば、某国が大量破壊兵器を保有していて、某国が大量破壊兵器を運び出して世界に拡散する、そうなれば日本も脅かされる、これは大変なことだということで、例えば重要影響事態ということで認定し、同盟国の阻止行動に合わせて日本側も後方支援をしている。これをイメージするには、例えば中東のあるところでもいいでしょう。海の中で、どこかの、言われているようなところである。それを阻止するために、それを近づけないために某国が機雷を設置した。タンカーが通るところに、同盟国が空母なりを差し向けて阻止行動をしたとき、それを近づけないために機雷を例えば敷設していった。

 我が国が例えば後方支援をしている、そのときに同盟国は前線で阻止行動をしているんだけれども、機雷への接触なりによって、あるいはそれを除去しようということによって相手国から攻撃を受けた。大量破壊兵器を輸出しようとした国。このまま前線にいる同盟国が負けてしまうというか、そこで相手国に負けるようなことになったら、引き続き大量破壊兵器が世界に拡散することになる。その際に、ここまで来るとこれはもう重要影響事態じゃない、存立危機事態になるということを認定した場合、後方支援をしている日本の自衛隊が、存立危機事態と認定されれば、今度は後方支援をしている部隊が前線に立つことがあり得るわけですね。そこはいかがですか。

中谷国務大臣 重要影響事態と存立事態というのはそれぞれ別個の法律の判断に基づくものでありまして、委員がおっしゃるように、重要影響事態から存立事態に移行するという場合もあり得るわけでございます。

 そういう場合におきましては、いろいろ個別具体的な状況によりまして法律の要件に従って判断をされるわけで、一概に申し上げられませんが、一般的に、存立危機事態の対応のために自衛隊の部隊に防衛出動を命ずる場合には、国会の承認も含めて事態対処法等に基づく必要な手続をとる必要がありまして、同一の部隊が何の手続も経ることなく存立事態に対応するということはないわけでございます。

 しかも、その上で、一般論として申し上げれば、海外派兵は一般に自衛のための必要最小限度を超えるものでありまして、憲法上許されないために外国領域で武力行使を伴う活動を行うことは一般的に許されないと考えているわけでございまして、いずれにしましても、この存立を認定する際におきましては、政府としてしかるべき理由また海外の情勢等を国会に報告して承認を得るということで、それなりの手続が必要であるということで、そのまま移行するということはないと思います。

渡辺(周)委員 手続のことはもちろんなんですけれども、ただ、法理上と理屈上は別々のものじゃなくて、後方支援で行っていた部隊が、例えば今回は現に戦闘が行われていない地域ということで、これまでは、ある程度距離が離れていて物理的、時間的にも直接戦場になるということはないだろうということで非戦闘地域という概念があったわけですけれども、今度それが取っ払われた。現に戦闘地域ではないということを考えれば、あすに戦場になるかもしれないということも含めて後方支援に行くことがある。

 そうすると、同盟国が活動しているところと非常に近いところに行った場合に、それを食いとめるために日本の自衛隊も最大限のことをやってほしいという例えばの話になれば、後方支援が本来の目的で行っていたはずの自衛隊がレベルアップするというのか、ステージアップしてしまうということが理屈上はあるんじゃないですか。一回撤収してもう一回出ていくというのではなくて、その後方支援部隊が出ることはありませんか。

 先日、私どもの党調査会で防衛省の人間を呼んで説明を聞いたときには、それは法理上あり得ると言ったと思うんですが、それはいかがですか。

中谷国務大臣 基本的に、先ほどお話ししたように、海外派兵は一般に許されないと考えておりまして、重要影響事態法に基づいて他国領域で後方支援活動を実施している部隊が存立危機事態が認定されたからといって当該他国の領域において防衛出動に基づく活動を実施するということは基本的にはありません。

 そういう場合にどういう活動をするかについては、具体的な状況によりまして判断をされるわけで一概に申し上げられませんが、委員の御指摘のような事例が仮にあるとして、重要影響事態法に基づいて他国領域で後方支援活動等を実施している部隊が存立危機事態が認定されたからといって当該他国領域において防衛出動に基づく活動を実施することは、任務及び必要とされる装備が大きく異なるということからも、基本的にはそのままではないということでございます。

渡辺(周)委員 今、基本的にはとおっしゃいましたね。しかし、私どもが説明を聞いた限りでは、それは法理上あり得ると。全くあり得ないわけではなくて、あり得るというふうに私たちは事務方から聞いているんですが、そこはちょっと見解を統一してください。

 それから、別に相手国の領域ではなくて、公海上で起こり得る話だって当然あるわけですね。そこはいかがですか。それはもちろん、後方支援で行っている部隊がどこまでの装備を持っているかということについては、確かに、防衛出動をする際の装備と後方支援の場合の装備が違うというのは当然わかります。ただしかし、そういうことはあり得ますよね。

 つまり、護衛艦が行っていて、悪いけれども護衛艦をそこに横づけしてとにかく相手の船の阻止をやってくれ、その間にアメリカが空母を差し向ける、あるいは、自衛隊の別の部隊が今度は存立危機事態ということで今直ちに行くから、その間は頑張ってくれということだってあり得ますよね。これは、法律ではそうできることになりますよ。いかがなんですか。法律の限界を聞いているんです。大臣、いかがですか。

中谷国務大臣 累次御説明しておりますが、外国領域で活動するということにつきましては、やはり海外派兵は一般的に自衛のための必要最小限度を超えるものであって憲法上許されないということでありまして、外国の領域における武力行使については、ホルムズ海峡での機雷掃海のほかに、現時点で具体的な活動を念頭に置いてはいないということでございます。(発言する者あり)

渡辺(周)委員 ちょっととめて、そこでもう一回、統一見解を出してください。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 法理上は排除されませんが、例外として、ホルムズ海峡における機雷掃海のほかに現時点で具体的な活動を念頭に置いているわけではないということでございます。

 御指摘のような例が仮にあるとして、重要影響事態法に基づいて他国領域で後方支援活動を実施している部隊が存立危機事態に認定されたからといって他国領域において防衛出動に基づく活動を実施することは、任務及び必要とされる装備が大きく異なるということで基本的にありませんし、先ほど言いましたけれども、法理上の手続等はとられるわけでございますが、現時点におきましてホルムズ海峡での機雷掃海のほかに具体的な活動を念頭には置いていないということでございます。

渡辺(周)委員 先ほど排除されないと言ったということは、それは当然、その可能性もあるということだというふうに受けとめます。

 他国の領域に入る話じゃなくて、私は公海上の場合はどうなんですかというふうにも尋ねたんですけれども、つまり、公海上で後方支援をしているときにそのような事態になった場合は、その後方支援をしている自衛隊の部隊が最前線に出るということに結果なってしまう。重要影響事態から存立危機事態にグレードアップする、レベルアップされた場合、要は質が変わったと判断される場合はあり得ますねと聞いている。そんな難しい質問じゃないです。

 公海上の場合はどうですか。もう一回答弁してください。

黒江政府参考人 先生が今御指摘の事例でございますけれども、重要影響事態から存立危機事態に推移をするといった場合でございますけれども、その場合に、仮に重要影響事態法に基づいて後方支援を行う、その必要があるという判断があればそれは継続するわけでございますが、当然のことながら重要影響事態法の要件に基づいて活動するわけでございますので、その中では、先ほど大臣からお答え申し上げましたけれども、実施区域というものが定まっておるわけでございます。ですので、そこからさらに踏み越えて、先ほど先生がおっしゃった最前線というところに移るということは法律上できないわけでございます。

 ですので、そういう意味で、たとえそれが公海上であったとしても、最前線が実施区域の中に入っていない以上はそういう活動は自衛隊はできないということでございます。

渡辺(周)委員 私が言ったのは、最前線に結果なることはありますねと言ったんですよ。つまり、寄っていくんじゃなくて、向こうが来た。そこにいたはずの例えば同盟国が対応できなくて、それがもし来た場合に、実施している活動エリアが最終的には最前線ということになった場合ですよ。それはどうなんですか。大臣、どうですか。

中谷国務大臣 重要影響事態等につきましては、現に戦闘行為が行われている現場におきましては法律上もできませんし、また、防衛大臣が指定する円滑かつ安全な活動区域というようなことで、戦闘が行われる見込みのないというところで区域を指定するわけでございますので、当然そういった戦闘が行われるような現場におきましては重要影響事態の活動は実施しないということでございます。

渡辺(周)委員 この後の質問もありますからね。ここは全然詰まっていないんですよ。どうしてここのところを詰めていないの。ちゃんと通告もしてあるわけですから。これは時間が足りないので、またちょっとやりますけれども。

 では、先ほど外務大臣が、後方支援の場合は我が国は非紛争当事国なんだけれども、存立危機事態になれば紛争当事国になるということをおっしゃいました。紛争当事国になるということは自衛隊はジュネーブ条約の適用を受けるのだと先ほど御答弁されました。紛争というのは、戦争の当事国になる。そうすると、これは国権の発動たる戦争というものと矛盾することになりませんか。

 つまり、紛争当事国というふうになるわけです。国際法上は自衛隊は軍として扱われるわけですね。これは自衛隊法の八十八条にもあります。防衛出動時の武力行使については「国際の法規及び慣例によるべき場合にあつてはこれを遵守し、」というのが、つまりジュネーブ条約を守って、紛争当事国となる場合はさまざまなジュネーブ条約上の制約を受けるということが書かれています。

 紛争当事国になるということで、捕虜の扱いも国際法上は受けることになると先ほどおっしゃいました。重要影響事態で行った自衛隊は、この間の辻元さんへの答弁にあるように、これは紛争当事国ではありません、軍隊の構成員、戦闘員ではありません、しかし、存立危機事態ということになった場合には紛争当事国になるから、今度はジュネーブ条約の適用を受けるんですと。ということは、同じ自衛隊が行くのに、先ほどの法理上は衣がえすることがあるわけですよ、役割が。そうなった場合、世界の常識からして、これは後方支援ですからジュネーブ条約の適用は受けません、しかし、ここから先は存立危機事態ですから、役目が変わりましたのでジュネーブ条約を適用してください、そんなことを世界に、役割が切りかわりましたなんと言うことはできますか。

 先ほどの法理上でいえば、存立危機事態になることもあり得るわけです、グレードアップしてしまうことが。それについて同じ自衛隊のミッションが、あるときはジュネーブ条約の保護の外にあって、こっち側はジュネーブ条約でここからは適用を受ける、そういう中途半端な形になるんですけれども。そういうことになりませんか。その御認識はいかがですか。

岸田国務大臣 まず、存立危機事態につきましては、我が国は、憲法との関係において、武力行使を認められるのは新三要件に該当したときだけである、この限定をしています。

 我が国が武力行使をするということになったならば、先ほど申し上げました、我が国が武力行使を行っている状況において、基本的にはジュネーブ諸条約上の紛争当事国に該当するということを説明させていただきました。一方、重要影響事態あるいは国際平和支援法の後方支援の場合につきましては、我が国は国際的に適法な他国の行為を支援しているわけですから、これは武力行使と認定されることはありません、ですからジュネーブ諸条約が適用されることがない、このように説明をさせていただきました。国際法上はこうして厳密に区別がつけられています。

 そして、現実の対応につきましては、先ほど来防衛大臣の方から御説明をさせていただいているとおりであります。個別具体的な対応についてはそれぞれの状況をしっかり把握した上で総合的に判断するということでありますが、いずれにしましても、この対応につきましては、法律に従って、法律の手続に従って丁寧に対応が考えられていくものだと考えております。

渡辺(周)委員 もう一回答えていただきたいんですね。基本的にあり得るわけですよ。だから、もう一回答えてください。

 つまり、言いますよ、重要影響事態で後方支援をしている部隊、そのときはこれは捕虜としての扱いを受けない、なぜなら紛争当事国でないからだ。しかし、排除されない状況が基本的にあり得るということを前提でいえば、重要影響事態がまさに集団的自衛権を行使する存立危機事態になったとき、自衛隊は今度は軍として、自衛隊は後方支援ですけれどもと言ったって、ジュネーブ条約の適用を受けると最初に言ったわけですから。世界に対してそんなことを言えるんですか。自衛隊が中途半端な形で行かされるのが一番気の毒ですよ。そのことを聞いている。そんなことはできるんですかと聞いているんですよ。

岸田国務大臣 まず、存立危機事態につきましては、これは国際的に武力行使に該当するということでありますのでジュネーブ諸条約が適用されます。加えて、これは存立危機事態ですので、国際的には集団的自衛権と評価されますので、国連にしっかり報告をする義務を負うことになります。

 そして、国際法上は、先ほども申しましたように、後方支援、我が国の法律に従って適法な行為を行っている他国を支援するということ、これは武力行使ではありませんのでジュネーブ諸条約は適用されません。国際法上このようにしっかり区別はされています。一方、我が国の国内の手続として、重要影響事態と存立危機事態につきましては、先ほど来説明しておりますように、さまざまな手続によって明確に区別をされています。

 国際法上も、また国内法においてもこの二つはしっかり区別をされていますし、海外からの見方につきましても、先ほど申し上げました、法律的にも明確に区別されておりますし、また対外的にも、国連の安保理にしっかり報告する等によって明らかな形で示すことになります。この辺は、区別は明らかになっていると認識をしています。

渡辺(周)委員 ありていに申し上げると、自衛隊の位置づけが中途半端なまま出したら、さっきみたいな、私たちが申し上げたような場合には違う扱いになることがあり得るわけですよ。最初から軍隊だということになっていれば話はすぱっといくんでしょうけれども、そうじゃない。そうじゃないたてつけになっているから、これが非常に矛盾だと言っているわけでございます。

 中谷大臣が、御自身の著書でも書いてありますね。自衛隊というのは、政策決定は政治や行政がやること、我々は決まったことに従うだけであります、現役自衛官はこう言っています。だから、我々は与えられた任務を粛々と遂行するだけですということを言っているんですよ。

 とにかく、出す側はちゃんとした法律をつくっておかないといけない。そんな中途半端な位置づけで行かせるということは、行くということを本当に考えてこの法律を出したというなら、これはやはり練られていない法律だということを申し上げなきゃいけないと思います。この話はまたちょっと改めてしたいと思います。

 それでは、必要最小限度という言葉、新三要件の必要最小限についてちょっとお尋ねをしたいのです。必要最小限という言葉は我が国の三要件の一つだということでございます。

 平成十五年五月二十二日の参議院の事態特において当時の石破茂防衛庁長官は、最初に要件、三要件が満たされれば、あとは何をやってもよろしいということには、これはなりません、これは、相手をせん滅するまでということではなくて、必要最小限になるということでございますというふうに答弁をしております。

 そこで伺いたいのですけれども、同盟国が自衛の名のもとに武力行使を行った場合、そしてそれに対して我が国が存立危機事態と認定して防衛出動をする場合、その際に、この最小限という言葉などというものを本当に相手国、同盟国は考慮するんでしょうか。つまり、相手国の自衛権発動について、日本は三要件というものがありますけれども、同盟国の自衛権行使に三要件なんてないんですね。我が国が幾ら必要最小限と言ったところで、相手国は、とにかく相手の国をせん滅するまでやる、体制転換、レジームチェンジするまでやり続ける。そうなった場合、日本は、今後、存立危機事態と認定して一度防衛出動をしてしまったら、必要最小限なんという言葉が本当に担保されるんでしょうか。いかがですか。そこはちゃんと議論されたんでしょうか、この法律を出すに当たって。

岸田国務大臣 必要最小限ですが、まず、国際法上の必要最小限というのは均衡性を指すと言われています。しかし、我が国の場合は、あくまでも武力行使をする際に新三要件を満たさなければなりません。

 我が国においては、我が国に対する武力攻撃、または我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険をつくり出している我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除し、我が国の存立を全うし国民を守るための必要最小限度を意味すると考えています。

 これをあわせてしっかり満たした上で我が国が対応するわけでありますし、これはあくまでも我が国が主体的に判断するものであります。その判断のもとに我が国の対応を考えていくということであります。これは他国が判断するものではありません。

渡辺(周)委員 我が国の出動の三要件というのは、旧三要件から今回、私たちは認めませんけれども、この新三要件というものに書かれている。だから、必要最小限というものは相手国が、自衛権という言葉の正当性についてはちょっときょう質問しようと思ったけれども時間がありませんが、同盟国がやると。例えば、九・一一のときにもブッシュ大統領は即座に戦争だと言ったわけです。その後、これに対してNATOも支持をし、ANZUSも支持をした、我が国もその体制について反対はしなかった、そしてアフガニスタンの軍事攻撃になったわけです。あるいはその前のリビアでの、タンザニアだとかケニアの米国大使館が爆破されたときに、いわゆる自衛のための措置だということで、リビアのカダフィだったと思いますけれども、リビアのトリポリに対して巡航ミサイルを撃った、こういうことがたしかあったのではないかと思いますが、全て自衛なんですね。

 この自衛という名のもとに例えば同盟国が事を起こした場合、その際、我が国に対して攻撃を受けたなら、必要最小限という形で国連の支援が来るまでの間限定的に対応するということは、これは当然、個別自衛権でできます。しかし、相手国がやる場合に我が国が必要最小限と。ではどこまでが必要最小限で、相手国の自衛権に対して共同歩調、二人三脚でやれるのかという話になったときには、必要最小限度という言葉は死文化するんじゃないですか。いかがですか。

横畠政府特別補佐人 武力行使の新三要件は、我が国が武力の行使を始める要件であるとともに、それを継続する要件でもあるということでございます。先ほど御指摘のありました石破大臣の答弁もその趣旨でございます。

 お尋ねの点でございますけれども、何度もお答えしているとおり、今般の集団的自衛権と言われるものは限定的ということでございまして、あくまでも我が国を防衛するためのものでございます。その意味で、他国に加えられた武力攻撃そのものを排除するということを目的とするものではございません。

 法律上の根拠でございますけれども、今般改正しようとしています事態対処法、その第二条の中におきまして存立危機武力攻撃という概念を立てております。それは、単に我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除するということではなくて、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるもの、それに限定したものを存立危機武力攻撃と定義いたしまして、それを排除するというのが今回の、自衛隊に許される活動であるということでございます。

渡辺(周)委員 防衛大臣にぜひ答えていただきたいんですけれども、先ほど私言いましたね、石破長官の当時の答弁を最初に引き合いに出したのはなぜかというと、最初に要件、三要件が満たされれば、あとは何をやってもよろしいということには、これはなりませんと。だから、国内で三要件に合致すれば防衛出動をするわけですね。今度は新たに、他国の攻撃に対しても出せるようになる。その際に、つまり事を始めたときに必要最小限度ということが担保できるんですか。最小限ということはあり得るのか、そんなことは可能なんですかということを私はお尋ねしているんです。

 ちょっと時間がないから、もう一つ聞きます。

 自衛隊法第七十六条の二項に「内閣総理大臣は、出動の必要がなくなつたときは、直ちに、自衛隊の撤収を命じなければならない。」とありますけれども、そんなことはできるんですか。つまり、同盟国の要請に基づいて集団的自衛権を行使する、そこで我が国が、もうここまでやったから、我が国が考える最小限というのはここまでだ、だからここでやめるということが果たして本当にできるんですか。そこまでちゃんと議論が詰まっているんですか。ちゃんとそこまでのスキームを含めて考えているんでしょうか。そこはいかがですか。

中谷国務大臣 武力行使につきましては、主体的に判断をしてまいります。

 そこで、新三要件がございますが、新三要件を満たさない場合、これは、存立事態を認定した後、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に該当しなくなる場合、また、これを排除して、我が国の存立を全うし国民を守るための他の適当な手段がないと言えなくなった場合。これは三要件を満たさなくなるために武力の行使を終了しなければならない規定になっておりまして、これは存立危機事態の終結となるために、防衛出動を命ぜられた自衛隊は撤収することになります。

 また、法制局長官も言われましたけれども、存立危機事態の武力攻撃ということを設けておりまして、それをもたらす武力攻撃を排除するということに限られるということでもございますし、また、必要最小限度というのは、累次御説明しておりますけれども、我が国の存立を全うして国民を守るため、すなわち我が国を防衛するための必要最小限度を意味するわけでありまして、諸外国等に対しましてもこういう前提であるということは参加するときから周知をした上での活動であるということでございます。

渡辺(周)委員 もう一回お尋ねしますけれども、同盟国とともに、我が国の存立危機事態と認定をして武力攻撃、武力行使を行う、そうなった場合に、我が国は本当に主体性を持って、我々として、国が判断をする。もう存立危機事態ではなくなったということの判断を主体的にすることができる、そのためには誰がどのような形で判断するんですか。

 私たちが懸念するのは、一度参加してしまえば泥沼化、長期化するような戦争に紛争当事国としてずっと参加をするという、出口なき、まさに泥沼化した長期戦の中に組み込まれることも排除できないのではないかと思いますが、そこのところはちゃんと責任を持って、ないと言えるんでしょうか。そんなことが本当にできるんですか。

中谷国務大臣 法律によりまして、存立危機事態の要件を満たさなくなったとの判断につきましては、事態対処法改正案第九条第十四項において「内閣総理大臣は、対処措置を実施する必要がなくなったと認めるとき又は国会が対処措置を終了すべきことを議決したときは、対処基本方針の廃止につき、閣議の決定を求めなければならない。」とされておりまして、事態の対処については、行政府の判断のみならず、まず国会による民主的な統制が確保されたということもございます。

 いずれにしましても、我が国による武力の行使については主体的に判断することは言うまでもないわけでございまして、御指摘のように、同盟国が撤収しない限り抜けられなくなるとか泥沼化するとかいうことは断じてないということでございます。

渡辺(周)委員 その点についてもっと深く議論させて、とにかく時間が足りないですよ。これはまだ委員会で質問をやらないと、幾らでも突っ込みどころがあるんですよ、この法律。

 もっと聞きたいことがあるんだけれども、もう五分になりますので、最後に質問します。

 これだけの大転換を行うわけですから、平成二十五年十二月十七日に閣議決定された防衛大綱は見直すんでしょうか。先ほどもありました中期防についてはどうでしょうか。これだけの戦後の大転換を行うわけですから、当然、防衛大綱の見直しなり中期防の見直しなりをやらなければいけないのではないか、そこまで行き着くのではないかと思います。

 言えば、これから同盟国として将来日本がそこまで、ある意味国際社会にデビューをするわけだから、日本の今までの憲法の枠を飛び越えて世界の中で活動するんだから、同盟国として見れば、もっと密接に一体化して合同演習をやりましょう、あるいは装備品についてももっと我々と同じものを持つようにしましょう、同じスペックで活動しましょう。そうなれば、当然、さまざまな同盟国からの要求というのはふえるんじゃないかと思うんですね。そこについて覚悟と準備をさらに持てということになれば、総理がこの間の五月十四日、記者会見で記者の質問に対して、防衛大綱も見直さないし、予算もふえないんだと言っています。そんなことが可能ですか。

 私は、これから同盟国からの要請がどんどんふえて、そして役割もふえれば、では南シナ海と東シナ海を両方任せますといったときに、とても日本の今の自衛隊の中で対応できるとは思えない。そうすると、もっと装備品をふやせということになりやしないだろうか。つまり、同盟国からの要請に抗し切れなくなった場合に、防衛大綱と中期防、向こう十年までのと中期防は書いてありますけれども、その枠の中でおさまるんでしょうか。もっと言えば、米軍基地だって、一体化して今後連携していくためには米軍基地はますます重要、必要だということになると、私は、米軍基地の固定化につながりかねない、それすら思うわけでありますけれども、いかがですか。

 もう一つ言うと、外務大臣、日米安全保障条約、極東と日本の平和、この部分について、極東を越えるということになれば、日米安全保障条約の見直しにまでなるのではないかと思います。外務大臣、日米安保について、極東条項をいかがお考えか、最後に伺います。

中谷国務大臣 防衛大綱、中期防につきましては、現在ますます厳しさを増す安全保障環境を踏まえて、統合機動防衛力を中核として、特に日米同盟を強化しております。

 また、体制を強化するという観点から、今般の法改正の方向性とは軌を一にいたしておりまして、そもそも、我が国の平和を守るという観点におきましては、自衛隊の任務にも変更がありませんし、今回の法整備によって全く新しい装備が必要になったり装備の大増強が必要になるということはなくて、防衛大綱、中期防に従って引き続き防衛力の整備を進めてまいる、そういう中で対応していくということでございます。

岸田国務大臣 結論から申し上げますと、日米安全保障条約については、極東条項の解釈も変えるつもりはありませんし、安保条約の改定も全く考えておりません。

渡辺(周)委員 時間が参りました。質問を終わりますけれども、質問したことにほぼ答えていない。

 ますますこの委員会で質疑することの重要性、さらにさらに時間をかけて審議しなければいけない、そのことを最後に申し上げまして、私の質問を終わります。

浜田委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田です。質問を始めたいと思います。

 まず、冒頭なんですが、理事を通して遠藤大臣の出席を求めておりました。さまざま報道等がありますが、新任の大臣として、この法案の閣議決定の際にはサインされていません。当然とは思いますけれども、改めて御答弁でしっかりと、この法案に対して連帯の責任を持つというような御答弁をいただきたいなと思って要請をしておりましたが、何の理由があるかわかりませんが、お越しになりません。

 委員長、ぜひ理事会の方で再度御協議された上で、もしお出になられない場合があるとすれば、しっかりとした理由をぜひ委員会の方に示していただきたいと思います。

浜田委員長 理事会で協議します。

寺田(学)委員 始めます。

 新三要件についての質疑を今回したいと思います。

 第一要件の議論というのはいろいろされていますが、第二要件、第三要件の話をまずしたいと思います。

 我が党の後藤委員が再度議論しておりますけれども、いわゆる他に手段がないという第二要件、ホルムズ海峡の機雷封鎖、総理が一例として挙げられたものですけれども、他国の掃海活動自体がその第二要件を判断する上でどのような影響を与えるか与えないのかという議論がありました。

 そこで、いろいろ岸田大臣の方から御答弁いただいていますので、ここはちょっと、いい悪いは別として、どのように判断するかですので、しっかりと、岸田大臣でも構いませんけれども、御答弁いただきたいんです。

 他に手段がない、武力行使以外において他に手段がないというのが政府の答弁だと思いますが、ここを判断する場合において、他国の掃海艇が掃海活動を行っているということは、我が国が武力行使を行う、いわゆる第二要件を議論する場合において考慮事項なんでしょうか、それとも考慮しない事項なんでしょうか、どちらですか。

    〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕

岸田国務大臣 まず、先日も答弁させていただきましたが、ホルムズ海峡の機雷の掃海に当たっては、第一要件、第二要件、第三要件、全てを満たすことが求められます。

 そして、第二要件について、機雷の掃海が行われる際に他国の掃海が考慮要件になるのかどうかという御質問ですが、掃海自体が、この間も答弁させていただきましたように、多くの掃海艇が長期間にわたって掃海をしなければならない、こういった現実があります。

 ですから、他国の掃海とあわせて我が国が掃海をすること、特に我が国が機雷の掃海において高い技術、実績を持っていることを考えたならば、我が国は他国の掃海とともに掃海を行う、こうしたことは当然考えられるということを申し上げた次第であります。

 そして、さらに申し上げたのは、そもそも第二要件というのは、我が国の存立を全うし、国民を守るために我が国として講ずる適当な手段が武力の行使のほかにあるのか否か、これを判断するものである、こういった説明をさせていただきました。

寺田(学)委員 再度、端的にお伺いします。ということであれば、他国の掃海活動というものは第二要件を判断する上での考慮要件ではないということでよろしいですね。

岸田国務大臣 その点について的確に申し上げるならば、一番最後に今申し上げた部分だと思います。

 第二要件については、我が国の存立を全うし、国民を守るために我が国として講ずる適当な手段が武力行使のほかにあるか否か、これを判断するものであると考えております。(発言する者あり)

御法川委員長代理 時計をとめてください。

    〔速記中止〕

    〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 岸田外務大臣。

岸田国務大臣 先ほど申し上げましたように、存立危機事態を判断する際に、第一要件、第二要件、第三要件、全てを判断することになります。

 そして、第二要件についての御質問でありますが、先ほど申し上げました機雷の掃海は各国の協力が求められます。ですので、他国の掃海の状況は、我が国として具体的にどこまで対応するかという点において、これは影響があるものであるとは認識をいたします。

 ですから、第三要件の必要最小限との関係においても、第三要件の必要最小限として我が国としてどこまで対応するかという部分にかかわるものであるとは認識をいたします。

 第二要件の、他国の掃海を考慮するかという御質問。だから、第二要件において、機雷の掃海ですからみんなで協力をしなければいけませんので、他国の掃海を考慮する、これは当然あることだと。(寺田(学)委員「二で」と呼ぶ)第二において、はい。

 そして、それは第三要件ともかかわる問題であり、結局、第一、第二、第三、全てが満たされる場合に我が国の対応を考えるということになると考えます。

寺田(学)委員 第二要件と第三要件のお話をされましたので、理由は理由で、お答えになった後に聞ける部分はまた聞きますけれども、ちょっと整理します。

 他国の掃海活動ということは、第二要件を判断する上でも考慮要素になるということでいいですね。第三要件の必要最小限度をはかる、どれぐらいだったらいいのかということに関しても考慮要素になると。二と三、どちらにも考慮要素になるという御答弁でよろしいですか。違う場合は違うでお願いします。

岸田国務大臣 ホルムズ海峡における機雷の掃海という点での御質問でありますので、先ほど申し上げましたような形で、他国の掃海も考慮されるものだと認識をいたします。

寺田(学)委員 はっきり御答弁ください。第二要件の考慮要素になりますか。第二要件の考慮要素になるとすれば、第二要件にも考慮要素になりますと御答弁ください。

岸田国務大臣 御質問がホルムズ海峡における機雷の掃海でありますので、先ほど申し上げたような形で、考慮要件にはなります。

寺田(学)委員 第二要件の考慮要素になるかということを聞いているんです。なりますか。

岸田国務大臣 先ほど申し上げましたような形で、我が国での対応を考える際に考慮要素にはなると申し上げております。(寺田(学)委員「二の確定がないです。二の確定があればそれでいいです。だったら、第二要件の考慮要素になると答弁してください」と呼ぶ)

 先ほど申し上げましたように、ホルムズ海峡の機雷の掃海ということを考えた場合に、第二要件において、他国の掃海は考慮要素にはなると考えます。

寺田(学)委員 他国の掃海活動は第二要件の考慮要素になるという御答弁をいただきました。

 どのような場合に考慮要素になるのか、考慮するのかということ、次の質問をやって、時間がある場合にはもう一度戻ります。

 もう一個の方、第三要件のことをお伺いしたいんです。必要最小限度はどのような形かということなんです。

 ちょっと長官にお伺いしますが、長官の答弁は長いので、長官が御答弁された内容を確認するので、ぜひ御協力ください。

 まず一点、当たり前のことですが、四十七年見解が認めている必要な自衛の措置の範囲内というのは、存立危機事態を終結させるために必要な自衛であるというようなお話があった上で、この間、六月の二十六日、岡田委員からの御質問で、旧三要件のとき、第三要件、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、これは何を必要最小限度かといえば、それは第一要件である我が国に対する急迫不正の侵害がある、これを排除するための必要最小限だと私は理解しておりますと。続けてですけれども、新三要件、今の新しい方についても、これは赤で書かれたパネルがあるんですが、存立事態、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある、この状況を排除するための必要最小限が第三要件の意味だというふうに理解しておりますが、それでよろしいでしょうかと聞いたところ、横畠長官が、御指摘のとおりでございますということでした。

 必要最小限度というのは、旧三要件、新三要件においてこのような定義だということを長官が認められていますが、まずこの答弁でよろしいですね。確認です。

横畠政府特別補佐人 従前の三要件のもとにおきましては、あくまでも我が国を防衛するための必要最小限度ということで申し上げておりました。今般の新三要件のもとにおきましても、我が国が武力を行使いたしますのは我が国を防衛するためでございますので、そのための必要最小限度ということで、変わっていないという趣旨でお答えしたもので、同じでございます。そのとおりでございます。

寺田(学)委員 ごめんなさい。何かしらやろうとしているわけじゃなくて、ちゃんと定義を確定してから議論したいと思いました。

 その後なんですが、さまざま、必要最小限度はどうかと。まず、いわゆる武力攻撃事態、我が国が攻撃された場合の話の議論が続いていましたけれども、そのときに横畠長官が、「そこで、その必要最小限ということでございますけれども、我が国が武力攻撃を受けているときですら、まさに本格的な戦闘まではいたしません、」という御答弁をされているんです。

 本格的な戦闘というのは、長官、どのような戦闘になるんですか。

横畠政府特別補佐人 そのとき議論されていましたのは、まさに他国の領域での戦闘行為、空爆をするのかしないのか、そういった議論でございますので、その趣旨は、他国の領域においての戦闘行為ということでございます。

寺田(学)委員 そういう意味でいうと、我が国が攻められた場合においては、現行法でもそうですけれども、急迫不正の侵害、例えばの話、上陸して侵略をしようとする者を武力で追い払う、そういうところまではできるということだと思います。

 一点、これは質問というよりは忠告ですけれども、長官が、時々なんですけれども、憲法判断というよりは政策判断的な言葉遣いをされるときがあります。今回も、まさに本格的な戦闘までいたしませんと。できるできないというのを判断するのは長官だと思いますが、いたしませんと言う。それ以外にも山ほどあります。ぜひとも、混同を避けるために、そこら辺はちょっと注意していただきたいと思います。

 武力攻撃事態は、まずこれでいいです。

 存立危機事態ですけれども、新三要件、第一要件があって第二要件があって第三要件がある、第一要件で存立危機事態、密接な国が攻撃されたことによって我が国の存立が脅かされる状態になった、第一要件が満たされた場合には存立危機事態になって、第二、第三要件が満たされればそれに対する武力行使ができるという今の法のたてつけになっています。

 これは中谷大臣とも以前から議論しているところなんですが、ちょっと中谷大臣にお伺いしたいんです。第一要件の存立危機事態が認定された場合において、第三要件の必要最小限度という制限によっていわゆる第一要件の存立危機事態を終結できない場合はありますか、ありませんか。

中谷国務大臣 終結というのは、終わらせるということですか。(寺田(学)委員「法文どおりのことを言っているわけです。いわばその事態を排除するでもいいです」と呼ぶ)

 今回、法律に存立危機武力攻撃というのを書いておりまして、こういった我が国の存立を脅かす状況を排除するということがこの要件の目的ということでございます。

寺田(学)委員 もう一度聞きますけれども、第一要件の存立危機事態が認定された、そのことを、第三要件の必要最小限度という制限、限度によって、存立危機事態を排除する、回避する、終結する、そのようなことはできない、第三要件の限界があるからできないんだということはないということでいいですよね。

中谷国務大臣 おっしゃっている意味、十分理解が私できませんが、いずれにしても、三要件全てが認定されないと武力行使ができないということでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 法文では、存立危機事態においては、存立危機武力攻撃を排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない、ただし、存立危機武力攻撃を排除するに当たっては、武力の行使は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度においてなさなければならない。つまり、必要最小限度というのは常にかかっておりまして、こういった排除をするまで必要最小限度はかかり続けるということでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 こう言った意味は、第一要件のを排除するために武力行使を行っておりますけれども、常にこれは必要最小限であるべきであって、その目的は、第一要件の事態を排除するということが目的でもあるし、また必要最小限であるということでございます。

寺田(学)委員 もう一回聞きます。

 必要最小限度の範囲で必ず、存立危機事態が起きた場合には、必要最小限度の範囲の中でその存立危機事態を排除するんですよね、それが排除できない例はないですよねと聞いているんです。当たり前のことじゃないですか。

中谷国務大臣 それは当然、今まで個別的自衛権でもそうでありましたが、憲法上の範囲でありまして、必要最小限度ということでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 もう一度申し上げますが、新三要件の第三要件、この必要最小限度とは、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される原因をつくり出している我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るための必要最小限度を意味します。

 この判断は武力攻撃の規模、態様を初めとする具体的な状況に応じて行うこととなりますが、排除するために認められているというのは必要最小限度でありまして、必要な武力行使は認められますが、必要最小限度の範囲を超えてはならないということでございます。

寺田(学)委員 必要最小限度がどのような限度かというのは事態によって違いますから、それを具体的に聞いているわけじゃないんです。

 存立危機事態が認定された場合、第一要件を満たした場合において、他に手段がないという第二要件はまずいいとします、第三要件の必要最小限度を超えるから存立危機事態を排除できませんということは起こり得ないですよね。存立危機事態が認定されている場合においては、必要最小限度の限度の中で必ずその存立事態は排除できるということでいいですよね。

中谷国務大臣 そのとおりでございます。第一要件をつくり出している武力攻撃を排除して、我が国の存立を全うして、国民を守るための必要最小限ということを意味しているわけでございます。

寺田(学)委員 そういう意味でいうと、事態はさまざまあると思いますよ。存立危機事態が認定をされました、それに対して、その存立危機事態を排除する必要最小限度で臨むんだけれども、いや、必要最小限度をそれは超えるから存立危機事態を回避できない、それに必要な自衛権を発動できないということは起こり得ないんですよね。

 さっき長官の答弁を確認したのはその意味で、新三要件においては、その存立危機事態の状況を排除するために必要最小限というのが第三要件なんですよねということで、そのとおりですというお話があったので、ここは余り詰まるところじゃないんですけれども、必要最小限度の範囲ということは、そこはわかっています。その必要最小限の範囲の中で存立危機事態というのは排除できる。

 第三要件の縛りがあるから存立危機事態を排除できない、そういうケースが生まれるということはないわけですよね。(発言する者あり)いや、明快だと思いますよ。いいですよね。同じことです。

横畠政府特別補佐人 第三要件の働き方ということだろうと思います。

 従前の個別的自衛権の場合におきましても、我が国に対する武力攻撃が発生した、そのときに完璧に我が国の安全を確保しようというならば、まさに当該加害国に対していわば攻め込んで、戦闘もして制圧をするということまでした方が我が国の安全は確保できることになるのかもしれませんけれども、しかし、我が国を守るための必要最小限度という憲法上の制約が現にあるということですので、いわば火の粉を払う的な、攻めてきた者を追い払うというところでとどめるというのが第三要件の働き方なのでございます。そのようなことは、新三要件のもとでの第三要件の働き方も同じであるということを申し上げているわけでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 再度答弁願います、内閣法制局長官。

横畠政府特別補佐人 お尋ねは、存立危機事態を排除するということの意味内容だと思いますけれども、先ほど申し上げたように、完全に、二度とそういうことが起こらないようにたたき潰す的なことを言われているのであれば、そこまではできないことは当然あります。

 機雷の例で申し上げれば、まさに我が国の国民の生命、生存に深刻、重大な影響を現に与えている元凶でありますその機雷というものを処理するということ、その限りでは第二要件、第三要件を満たすことがあるのだろうということをお答えしているわけでございまして、その意味で、存立危機事態を排除するということの意味内容でございますけれども、まさに必要最小限度の範囲におきまして存立危機事態を排除することはできるということでございます。

寺田(学)委員 では、大臣にちょっと、今長官がお話しされたので聞かれていましたよね、そこを連動してお話を聞きます。

 ホルムズの話をされました。ホルムズの機雷掃海の話をされましたけれども、総理が出された例ですよ、ホルムズ海峡に機雷が敷設された場合においては存立危機事態になり得ると。さまざまなケースがあるんでしょうけれども、なるという前提を言われたので、なったとしましょう。さっき第二要件の話をしましたけれども、第二要件を満たした上で第三要件になります。

 ちょっと違うアプローチで聞きますが、そのホルムズ海峡の機雷封鎖によって、海上封鎖によって存立危機事態が認定された場合において、機雷を除去しない以外の方法でその存立危機事態を回避することというのはあり得るんですか。

中谷国務大臣 それは第二要件で他に適当な手段があるか否かということを判断した上で武力行使になる機雷の除去をするわけでございますので、他に手段がないということで機雷を除去するということでございます。

寺田(学)委員 いや、ちょっと絞って聞きますけれども、ホルムズの件ですよ。

 この間、さまざま総理の御答弁もありましたけれども、そこが機雷によって封鎖されているから存立危機事態になり得るんだという御答弁だったので、その機雷を除去しない限り存立危機事態というのは回避できないと思うんですよ。もちろん、第二要件をやってまた変わるのかもしれませんけれども。総理にそのことを聞きますとお話しされるのは、いや、停戦中でしかできませんという話をされるんですよね。これは何度もいろいろな委員が聞かれているんですが、それをお伺いしたいんです。

 機雷封鎖を解くために必要な措置というのはあるはずなんです。それは、今波静かであればやれますよという物理的な話じゃなくて、存立危機事態を回避するためにやらなければいけないことは、必要な自衛の範囲、第三要件の中で認められていると思うんです。ですので、いわば停戦中じゃない形で機雷封鎖がされていて存立危機事態になること、そのことをお話しされているんだと思いますけれども、その場合、機雷掃海をするための必要な措置、停戦中じゃないですよ、それはできますよね、憲法上。

中谷国務大臣 総理が累次お答えしていますけれども、自衛隊が武力行使を目的として、かつての湾岸戦争とか地上戦とか、敵を撃破したり、海上優勢、航空優勢を確保するために大規模な空爆、砲撃を加えたり敵地に攻め入るような行為に参加することは必要最小限度の自衛の措置の範囲を超えるものであって憲法上認められていないということで、航空優勢とか海上優勢を確保するために行動するということは新三要件を満たさないということでございます。

寺田(学)委員 ちょっと違うアプローチで聞きます。

 停戦中じゃない、要は交戦中ということなのかもしれませんが、そのときに機雷掃海ができない理由は何ですか。

中谷国務大臣 機雷の掃海現場というのは非常に神経を要するものでありまして、危険物を爆破するという行為、まして隊員が海中まで潜って爆弾を仕掛けたり処理をするわけでありますので、やはり安全が確保されていない限りこういう作業は通常はできないということでございます。

寺田(学)委員 その安全を確保する作業、安全な環境をつくる行為というのは、必要最小限度の範囲の内なんですか外なんですか。

中谷国務大臣 総理が御答弁しておりますけれども、航空優勢とか海上優勢を確保するために大規模な空爆などを行うことは新三要件を満たすものではないということでございまして、必要最小限度ということを勘案いたしますと、機雷の掃海しか想定がされていないということでございます。

寺田(学)委員 大臣が言われた、安全を確保する行為ということでした。停戦中じゃなければ何でできないのと聞いたら、いや、それはさまざまな難しい環境にあるから、安全を確保しないとできないんだと御答弁されたんです。

 では、その安全を確保する行為というものは、必要最小限度の範囲の内ですか外ですかと聞いているんです。

中谷国務大臣 どういう行為をするかということでございますが、一般に、他国の領域内において武力行使をする、武装した兵力をもって武力行使をするということは日本はしないんだということでございます。

寺田(学)委員 もう一度お伺いします。

 安全を確保する行為、ホルムズの例でですよ、機雷掃海を停戦中以外はできない、何でですかと聞くと、それは安全が確保されていない、そういう環境じゃないとできないんだと言われました。

 なので、その安全を確保する行為、それ自体は、存立危機事態に認定されているんですよ、必要最小限度の範囲の内ですか外ですかと聞いているんです。

中谷国務大臣 武力行使に当たるものは必要最小限度を超えるものでございますので、憲法上できないということでございます。(発言する者あり)

 必要最小限度を超える武力行使は、我が国の憲法の許容の範囲を超えるものでありますのでできません。その安全を確保する行為というものにおきまして、武力の行使に当たる必要最小限以上のものであればできないということでございます。(発言する者あり)

寺田(学)委員 質問が抽象的だとやじを言っていますけれども、抽象的な答弁をしているからそうなるに決まっているじゃないですか。

 だから、機雷封鎖されているわけですよ。累次の質問をして答えていないんですが、もしそれで機雷掃海が安全が確保されずにできなくて、機雷封鎖されたまま、存立危機事態になっているわけですよ、その場合において日本は何もしないんですかと聞いているんです。

横畠政府特別補佐人 現行憲法のもとにおいて我が国が武力の行使が可能である、できるという場合が大変制限されているということで、今回の新三要件も相当厳しい制約でございます。

 御指摘のいわゆるホルムズ海峡の機雷の場合でございますけれども、武力の行使としてできることは、これまでお答えしているような、必要最小限度のものということでお答えしているわけです。それ以前の段階、戦闘状態という御指摘もありましたけれども、そういう場合に何もしないのかという点につきましては、武力の行使は憲法上難しいわけでございますけれども、今回の法整備においてお示ししてありますまさに重要影響事態、そちらの法律というのがございまして、そちらの方を用いれば、まさに多国籍軍に対する後方支援等を実施することによって協力する、そういう全体の仕組みになっているということを御理解いただきたいと思います。

中谷国務大臣 もう一度整理してお答えしますけれども、敷設された機雷は、掃海によって除去しない限り、いつまでもそこにあり続けます。だから、新三要件を満たす場合に我が国としてもみずから掃海を行う必要があるということで、機雷掃海は、性質上、受動的、限定的な行為でありまして、非常に脆弱であるということで、なかなか円滑に実施することが困難な場合もあり得ます。

 その際、機雷掃海を行うことができない状況でも、共同対処する他国軍の作戦によりまして相手方の軍の活動が抑えられることを期待して、共同対処する他国軍と調整をしながら、安全を確保しつつ機雷掃海を実施できる状況をつくり出すための後方支援などの努力を最大限行うことになるわけであります。

 状況というのは千差万別で、流動的で、制海権、制空権を常に敵に押さえられて安全が全く確保できない状況が長時間続くといった仮定を置くことは適切ではございませんが、状況が変化して安全を確保できる状況になった場合は機雷掃海を行うことができるということでございます。

寺田(学)委員 そこは他国に任せる、安全を確保する、そういう環境をつくるのは他国に任せる、我が国はできないということでいいんですか。

中谷国務大臣 必要最小限度を超える武力行使はできないわけでございますが、先ほどお話をしましたが、他国軍と調整をしながら、安全確保をしつつ掃海を実施できるような状況をつくり出すための後方支援などの活動などに最大限日本は取り組んでいくということでございます。

寺田(学)委員 もう一度聞きます。安全を確保する、そういう行為は日本ができないのは、必要最小限度を超えるからですか。

中谷国務大臣 必要最小限度を超えるような武力行使はできないということでございます。状況で、いろいろな状況がございますが、後方支援ということを通じて、この安全を確保する手段というのはとり得る範囲内であるということでございます。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 どういう状況であるのか、本当に千差万別でありますが、我が国としましては、空爆とか、制空権とか制海権を確保するために必要最小限以上の武力行使をすることはできないんですが、しかし、こういう中においても、例えば各国と共同作業をするときに、相手方の軍の活動が抑えられることを期待して、共同対処する他国軍と調整しながら、安全を確保しつつ機雷掃海を実施できる状況をつくり出すための後方支援などの努力を最大限行っていくということでございます。

 その必要最小限度が何かというお問い合わせでございますが、空爆とか、制海権、制空権を取り戻すための必要以上の武力行使はしないということでございます。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。(発言する者あり)

 静粛に願います。議事整理は私にありますから、余分な発言をしないように。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 今までのをまとめてお答えしますと、存立危機事態の排除、そのための必要最小限度でやっていくということでございまして、今、個別的自衛権もそうですが、我が国にとりましては、憲法の制約から、我が国を守るための必要最小限度にとどめているというところでございます。

 では、どこまでということにつきましては、いろいろ状況がありますが、少なくとも、自衛隊が武力行使を目的として、かつての湾岸戦争、イラク戦争での戦闘、すなわち、一般の方々が思い浮かべるような、敵を撃破して、制海権、制空権を確保するために大規模な空爆、砲撃を加えたり敵地に攻め入るような行為に参加することは自衛のための必要最小限度を超えるものであって憲法上認められるとは考えていないということでございます。では、安全確保をする行為とはどういうことかということでございますが、これは、武力行使を超えない、その許容の範囲で行う、必要最小限度で行うということでございます。

寺田(学)委員 質疑時間が来ました。

 順を追って聞いていったわけです。必要最小限度、存立危機事態が認定された場合に、必要最小限度の縛りによってその存立危機事態を排除できなくなることはありますかと。そうしたら、ないと言ったじゃないですか。ないと言った割に、では、ホルムズのときに結局機雷が敷設されて、それが停戦中じゃなくて、そこの安全を確保しない限りその機雷を除去できないという場合においての安全な環境をつくる行為というものも、当然、その論理展開であれば認められる行為だと私は思うから聞いたんです。それになったら急に、いや、ほかの国がやってくれることを期待してと言っているわけですよ。

 その点に対して、では、この法理というのはどうなんでしょうかということをこれからも質疑したいと思います。

浜田委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 民主党、緒方林太郎でございます。

 十一時五十九分ですね。頑張っていきたいと思います。五度目の質問であります。

 存立危機事態に関してですが、昨日の夜、自民党のインターネット番組で、安倍総理大臣が以下のようなことを言っておられます。存立危機事態を説明する具体例として、安倍は生意気なやつだから今度殴ってやるという不良がいる、友達のアソウさんと一緒に帰り、三人ぐらい不良が出てきていきなりアソウさんに殴りかかった、私もアソウさんを守る、これは今度の平和安全法制で私たちができることだ、そういうお話をされたそうであります。

 中谷大臣にまずお伺いしたいと思います。同じ認識でしょうか。

中谷国務大臣 これは、火事の例とか泥棒の例とかいろいろありますけれども、国民の皆さんにわかりやすく、身近な問題として、安全保障とか危機管理をどうするべきかということをわかりやすくお話しされた、その一例ではないかと思っております。

緒方委員 この例で、ちょっとおかしいんじゃないかと思うところがございまして、安倍は生意気なやつだから今度殴ってやるという、その意思を持っているだけなんですね。意思を持っているだけであります。これだけで存立危機事態が生じ得るというふうに思われますか、大臣。(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

中谷国務大臣 存立事態の認定におきましては、意思とか、態様とか、位置とか、規模とか、要素を累次説明しておりまして、それらの要素の全てを総合的に判断して、合理的に判断をするということでございます。

緒方委員 もう一度お伺いをいたします。

 では、存立危機事態のケースで、武力攻撃をしかけてくるその国が意思を持っているだけで存立危機事態の要件となりますでしょうか、大臣。(発言する者あり)

浜田委員長 不規則発言はやめてください。

中谷国務大臣 累次の項目を申し上げましたが、総合的に判断するということでございます。

緒方委員 つまり、先ほど、意思のみならず、幾つかの要件を挙げられました。安倍は生意気なやつだから今度殴ってやるという、その意思だけでは成立しないということでありまして、この安倍総理の説明は、そもそも論として私はミスリードなところがあるというふうに思います。

 具体的な事例でさらにわかりにくいのが、安倍を今度殴ってやるという不良がいて、安倍さんとアソウさんが一緒に歩いていて、何でアソウさんに殴りかかるんだと思いますか、大臣。

中谷国務大臣 その内容等もわかりませんが、集団的自衛権というのは一体何なのかといった、集団的自衛権に対して一般の国民の皆様方にわかりやすく御説明をされたというふうに思います。

緒方委員 この例がわかりにくいから聞いているんです。

 もう一つ、最後に、これは存立危機事態の例との関係で非常に重要ですが、安倍は生意気だから今度殴ってやるという、その意図表明がないケースであれば、その意図表明が全くない、そのケースであれば、安倍さんとアソウさんが一緒に歩いていてアソウさんが殴られるとき、そのときに私もアソウさんを守ることはできないということだと思いますけれども、大臣、これは存立危機事態の例となぞらえて、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 以前に御答弁したと思いますけれども、意思がない場合においても存立事態になり得ると言うことはできる、可能であるということでございます。

緒方委員 意思が全くなくて、ということは、実際に我が国に武力攻撃が起こってくる可能性がなぞらえてみるとないということだと思うんですよね。

 我が国に攻撃する意思を相手が持っていない、しかも、意思がないということは、恐らく準備行為もないでしょう。そういったときにでも、単に二人で歩いていて殴られるというような事態であればやれるということであれば、我が国の存立を脅かし、我が国の国民の生命、自由そして幸福追求の権利が根底から覆されるような事態というのは存在しないんじゃないですか、大臣。相手がその意思を全く持っていないときでも存立危機事態は認定し得るというのは、それはどういうことですか。

中谷国務大臣 いろいろな状況があり得ますが、もう一度申し上げますが、攻撃国の意思、能力、発生場所、規模、態様、推移などを総合的に考慮して客観的、合理的に判断します。攻撃国の意思として我が国に対する武力攻撃の意思の有無は考慮されますが、攻撃国の我が国を攻撃する意図が認定できなかったとしても、攻撃国の意思、能力、発生場所、規模、態様、推移などの要素を総合的に考慮し、我が国に戦禍が及ぶ蓋然性や国民がこうむることとなる犠牲の深刻性、重大性があると判断すれば存立危機事態に認定するわけでございます。

 意思の表明とか確認というのは考慮はされるわけでありますが、こういった意図が認定されなかったとしても総合的に判断をするということでございます。

緒方委員 意思が表明されなくても、外形的な事情からそれが認定されるのであれば、それは存立危機事態になり得る。これは確認であります、大臣。

中谷国務大臣 先ほどお答えした答弁のとおりでございまして、攻撃国の意思として我が国に対する武力攻撃の意思の有無は考慮されますが、攻撃する意図が認定できなかったとしても、ほかの要素を総合的に勘案して判断すれば存立危機事態に認定することがあり得るということでございます。

緒方委員 では、意図の表明がなくても、単に、このケースでいうと、総理がわざわざ具体的な事例として挙げているわけですから、友達のアソウさんと一緒に帰り、三人ぐらい不良が出てきていきなりアソウさんに殴りかかった、そのときに私もアソウさんを守るためにその不良を殴り返すということは、これは可能だということでよろしいですね、大臣。

中谷国務大臣 基本的に、これは集団的自衛権の例えを言われたものでございますが、法律的には新三要件に合致して、その判断におきましても、先ほど御説明しましたいろいろな要素を総合的に判断するということでございます。

緒方委員 この説明は本当に私の感覚からすると非常にミスリードであって、国民に誤解を与えるような内容であるというふうに思います。この件はさらに、具体的なこの事例を挙げられましたので、また質問させていただきたいと思います。

 それでは、午前中、もう時間も少ないですけれども、重要影響事態についてお伺いをいたしたいと思います。

 お配りいたしました資料、法律に即して論理的に説明していきますので、大臣には真正面からお答えをいただきたいと思います。

 まず、資料の一ページ目。周辺事態の定義というのが、我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態。そして、重要影響事態の定義というのは「我が国周辺の地域における」という部分が落ちるということであります。前回も質問いたしましたが、重要影響事態の定義というのは、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態、これだけであります。

 そこからさらに、前回の周辺事態のときは野呂田六類型というものが出ておりまして、それが二ページ目であります。一から六まで類型があるわけでありますが、そのうちの一から三については我が国周辺の地域においてという言葉が出てきます。

 何度か私であったり岩屋委員も質問されたと思いますが、答弁は、野呂田六類型は引き続き当てはまる、そういう御説明がありました。それは当たり前であります。今回、周辺事態があって、それよりも広い重要影響事態になっているわけですから、これがそのまま類型として当てはまるというのは当然であります。

 しかし、やはり定義が変わった以上、この六類型も変わるだろうというふうに私は思います。そのときに……(発言する者あり)いやいやと、今、岩屋さんが言われました。

 それでは、本当に変わらないのかということでありますが、例えば、何度か答弁であります、インド洋で武力紛争が生じて、それが我が国の船舶の航行に著しく影響を与え、我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合、それも重要影響事態になり得るということでありました。そのインド洋のケースはこの野呂田六類型の中でどこに入ると思われますか、大臣。

中谷国務大臣 六類型というのはいずれも原因に着目して挙げた事例でございますので、どの事例に当たるかということについては申し上げられませんけれども、事例の一つなんですね。それで、具体的に中東、インド洋における船舶等の事例もいたしましたけれども、それも事例の一つということでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 理事会の協議事項におきましても、事例の整理ということで政府側はお答えいたしておりますが、これは類型ではなくて事例でございます。六事例挙げておるわけでございます。

 御質問されました中東、インド洋における具体例、これは、従来、現実の問題として想定されないとされてきた地域に生起する事態として、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に該当し得るものとして具体例を挙げたということでございますので、あくまでも、事例として六つ挙げていますが、今度の中東、インド洋も具体例として挙げた事例の一つということでございます。

緒方委員 極めて野呂田六類型というのは……(発言する者あり)類型というか何と呼ぶかはともかく、お任せしますけれども、幾つか、我が国周辺の地域においてこれこれこういう事態が当たるときはこれは周辺事態ですということが、少なくともこれをベースにこれまで我々は考えてきているわけですよ。仮に野呂田六類型がそのまま、これだけがそのまま継続するというのであれば、今言ったインド洋のケースというのはこれのどこかに当てはまっていなければおかしいわけであります。

 私、これはずっと通告をいたしております。この一から六の場合のうち、どれに当てはまるというふうにお考えですかと。非常に単純な質問であります。大臣、答弁ください。

中谷国務大臣 これは政府統一見解でございますが、この六事例を挙げる前の文章に、その事態の規模、態様等を総合的に勘案して判断するものであるため、その具体例をあらかじめ包括的に示すことはできないが、例えば以下のような場合が考えられるとした上で六つ挙げられておりますので、これは包括的に示したものでもありませんし、類型でもございません。あくまでも、強いて挙げれば次のような場合が考えられるという、挙げられた事例でございます。

緒方委員 変な答弁だったなと思いますけれども、午前中の質疑時間が終わりましたので、これで終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

浜田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

浜田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。緒方林太郎君。

緒方委員 午前中に続きまして、質問を継続させていただきます。

 午前中、野呂田六類型と言われているものについてお話をいたしました。大臣からは類型ではないということで御答弁がございましたけれども、お昼の間にいろいろ調べてみると、野呂田大臣の当時の類型という言葉を引いてみると山のように出てくるわけでありまして、ただ、それが包括的でないということについてはよく理解をいたしました。

 そうすると、重要影響事態の例として挙がってきている、あり得るということで、インド洋で武力紛争が生起して、その結果として我が国の平和及び安全に重要な影響を与える場合というのは、先ほどの大臣の答弁でいうとこの六類型には当てはまるところがないという理解でよろしいでしょうか、中谷大臣。

中谷国務大臣 いずれも最初の三つは我が国周辺においてということが入っておりますので、当時は総理の答弁もあって周辺の範囲が定められておりましたが、中東、インド洋というようなことで、周辺ではないということでございます。

緒方委員 ちょっと今、答弁がよくわからなかったんですが、インド洋で武力紛争が生起しているケースは野呂田六類型の六つの例の中には入らなくて、その外縁のところにある、その外にあるんだということでいいんですよね。

 大臣、もう一度答弁ください。

中谷国務大臣 平成十一年に政府見解でお示しした六具体例とは別に、従来、現実の問題として想定されないとしてきた地域に生起する事態であって、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に該当し得るものとして中東、インド洋における具体例を示した、新たな事例ということでございます。

緒方委員 そうすると、考え方としては、まず野呂田六類型というのがあって、周辺事態というのはそれよりも少し広い概念で、それよりも重要影響事態というのはさらに広いものを包含するということになると思います、ベン図で描くと。野呂田六類型があって、それよりも少し広い、少しかどれぐらいかわかりませんけれども、広いものとして周辺事態があって、それよりも広い類型として重要影響事態があるということだろうと思うんです。

 そうすると、野呂田六類型が例示であるといっても、例示の機能をほとんど果たさないと思うんですね。かなり広いものが野呂田六類型の外のところにあるんだということになるというふうに思うわけですが、これはこの理解でよろしいですか、大臣。

中谷国務大臣 当時、周辺事態法等におきまして六つの事例として示されましたが、あくまでも包括的ではないということでございます。

 今回は重要影響事態ということで、地理的概念ではないんですけれども、これまでの答弁等もございまして、重要影響事態はそういう地理的制約はない、そういうことで認識をいたしております。

緒方委員 大臣、私の質問に、これはそんなに難しい話ではないので。

 ベン図で描くと、野呂田六類型があって、それが包括的でないというんですから、周辺事態というのはそれよりもっと広いものが包含されていて、そして重要影響事態というのは周辺事態よりもさらに広いものが含まれているということで、それでいいですね。イエスかノーかでお答えいただければと思います。

中谷国務大臣 この六類型については、具体例なんですけれども、事態が生起する原因に着目した具体例ということでありまして、この具体例は引き続き重要影響事態にも当てはまるということでございます。

緒方委員 大臣、答えていないですよ。大臣、もう一度私の言うことをよく聞いてください。

 事例として野呂田六類型というのがあって、しかしそれが包括的でないというからには、周辺事態はそれより広いものが含まれるということですね。野呂田六類型以外のものであっても周辺事態に含まれるものがあるということですね。さらに、今回の重要影響事態というのは周辺事態よりもさらに広がっているので、もっと広いものを含み得るということで、その順序でいいですね。

 これぐらいはすぱっと答えてください、大臣。お願いいたします。

中谷国務大臣 例示でありますので、この原因の部分についてはいずれも我が国周辺以外で生起することは考えられますけれども、その場合に事態の規模、態様、推移等によっては重要影響事態となることも全く排除できるものではございません。しかし、重要影響事態の中でも六つの例というものは適用されるものであるということでございます。

緒方委員 大臣、済みません。何か難しいことを聞いているのであれば難しい答弁なんだろうなということはわかるんですけれども、私の聞いていることは物すごく単純でして、もともと野呂田六類型というのがあって、それが包括的でないということであれば、周辺事態というのはそれより広い概念である、そして今回、我が国周辺におけるというのが取り除かれている以上は、さらに重要影響事態というのはそれよりももっと広いものが含まれている、その包含関係がそういうふうになりますねということを、ごく当たり前のことを聞いているんです。

 一発で答えてください、大臣。

中谷国務大臣 確かに、安全保障環境が変化をいたしましたので、重要影響事態が生起する地域からあらかじめ特定の地域を排除することは困難であるという意味はございます。

 しかし、例として挙げられていますけれども、我が国に近い地域で起こる事態の方が我が国の平和と安全に重要な影響を与える可能性は高いと考えられますので、重要影響事態が生起する蓋然性も我が国に近い地域の方が相対的に高いということでありますので、この六つの事例は重要影響事態においても適用がされるということでございます。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 周辺事態については、事態の性質に着目した概念であって、地理的概念ではないと説明をしてきました。この点につきましては重要影響事態においても変更はございません。

 一方で、周辺事態安全確保法の制定時におきましては、安全保障環境に照らして、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態が生起する地域にはおのずと限界があり、中東、インド洋において生起することは現実の問題として想定されていないということで、先ほどお答えしたように、六つの例以外に中東、インド洋の事例も挙げまして、それ以外もあるということでございます。

 したがいまして、重要影響事態が生起する地域からあらかじめこれらの地域も排除することは困難であるということでございます。

緒方委員 たかがこの程度の質問で、こんなに時間がかかるというのはおかしいですよ、大臣。埼玉で参考人をやったときも、参考人の方から、国会の答弁がクレーマー対応みたいだ、そういう参考人の発言があったんです。別に私はクレーマーをやっているんじゃないんです。とりあえず、今、十三時二十四分までこいつを追い払っておけばそれで終わるだろう、そういう感じで答弁いただくのは本当に心外ですよ。

 質問を続けたいと思います。

 仮にそういうことだとすると、定義のところで我が国周辺におけるという言葉が落ちるので、私は、先ほど言った、野呂田六類型があって、周辺事態があって、重要影響事態があって、その包含関係があるとすると、野呂田六類型を見直した方がいいんじゃないかな、こういうふうに見直せるんじゃないかなと思って提示させていただいたのが三ページ目であります。

 これは非常に簡単でありまして、野呂田六類型に書いてある、我が国周辺の地域において、おける、そういう言葉を全部取り除いてみて、これは基本的に、定義のところで我が国周辺におけるというのが落ちている以上、この野呂田六類型でも我が国周辺の地域においてという言葉を落とせば、それがまた新たな類型として成立するんじゃないかと。

 前回私がこれを質問したときに大臣はそういう考え方もあるんじゃないかという答弁でありましたが、大臣、私が三ページ目に挙げた野呂田六類型の中から我が国周辺の地域という言葉を落としたもの、ここにある文章というのは全て新たな重要影響事態の類型として考え得るということでよろしいですね。

中谷国務大臣 例えばこれは、落としてしまいますと、一般的に武力紛争の発生が差し迫っている場合とか、武力紛争が発生している場合とか、非常に広く読むことができます。

 しかし、先ほどもお話ししたように、この例というのはやはり重要影響事態における具体例として挙げなければならないわけでありまして、先ほどお答えしましたが、一般的に我が国から遠い地域において発生した事態が重要影響事態になる蓋然性はより近い地域で発生した事態と比較して低いと考えられるために、我が国周辺におけるという文言を外した場合に、これまでの例と比べて、重要影響事態を説明する例示としてはこれは広過ぎて適切ではないというふうに私は思っております。

緒方委員 私も実はそう思うんですけれども、定義のところで、今、一ページ目にありますとおり、重要影響事態の定義というのは、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態ということだけしかないんですね。だけしかないんです。落ちたものは何かというと、「我が国周辺の地域における」というものが定義から落ちたので、普通に考えるとこういうふうになって、広くなるというふうに考えられるんじゃないか、そこに危惧があるんですということを言っているんです。そこがまさに問題なんじゃないかというふうに言っているんです。

 大臣はまさに言われました。例えば、これまでの野呂田六類型の中で、第二類型ですけれども、「我が国周辺の地域において」という言葉を落とすと、武力紛争が発生している場合であって、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える場合と。世界じゅうどこでも武力紛争が起きて、それが我が国の平和及び安全に重要な影響を与える場合であれば、それは重要影響事態になるというふうに大臣はお考えになられますか。

中谷国務大臣 それは、先ほどお答えしたとおり、非常に広過ぎて、重要影響事態を説明する上での例示としては適切でないわけでありまして、これまでの答弁におきましても、まず、条文の、そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態、これに加えて六つの事例、そして中東、インド洋における具体例をお示しいたしておりまして、このような形で適切な具体例というものを提示してきたということでございます。

緒方委員 普通に私は、定義のところで落ちているものを機械的に落としただけなんですね。機械的に落としただけなんです。別に何か私が特段の操作をしたことはなくて、普通に考えると重要影響事態というのは、定義のところで我が国周辺の地域においてという文言が落ちている。これは大臣もそのとおりですとお答えになると思いますけれども、である以上、六類型のところでも落ちないということであると、では何が変わるんですか。類型として変わらない、では何が今回変わるのかということについてお伺いしたいと思います。

 六類型として存在している、この六類型が膨らむのか。それとも、先ほど言われた包括的でないということであるので、六類型以外のところにもいろいろな事例が入るんだと思います、そこが膨らむのか。定義のところで我が国周辺の地域ということが落ちたことによって広がる部分があるはずですね。それは何ですか。この六類型の部分が解釈としてがっと広がるのか、それともその外にある部分がばっと広がるのか、どちらでしょうか。

中谷国務大臣 やはり安全保障環境が今大きく変化してまいりまして、限定した地域をあらかじめ排除しておくということではなくて、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態という地域、これはあらかじめ排除すべきではないということで重要影響事態ということにしたわけでございます。

緒方委員 大臣、先ほどから私は、何か重箱の隅をつついたり揚げ足をとったりという質問はしていないんです。全くしていないです。しかし、埼玉での参考人が言われたように、先ほどからの答弁、本当に私の質問に対して真正面から返ってきていないんですね。本当にクレーマー対応みたいなんですよ。そういうことが続くと国民の理解が深まらないと思うので、もう一度聞きます。

 六類型は六類型として存在し続けるということであれば、しかし、それでも今回、定義で我が国周辺におけるという部分が落ちたことによって広がる部分があるんですよね。広がる部分がある、インド洋とかが入ってくる。それはこれまでの野呂田六類型で読み込むものなのか、それともそうではなくて、野呂田六類型はあくまでも例示であるので、それ以外のところが広がる部分なのか。いずれですか。同じ質問をしております。大臣、御答弁ください。

中谷国務大臣 六事例は今の重要影響事態にも当てはまる。そして、中東、インド洋の事例も申し上げました。そして、やはり安全保障環境が変化したということで、もはや世界じゅうのどの地域に発生した事例におきましても我が国の安全保障と全く関係のないというようなことが言える時代ではないということで、あらかじめ限定した地域を外すということではなくて、我が国の平和と安全に重大な影響を与える事態といたしまして今回認定したわけでございます。

 事例は事例といたしまして、この六つの事例もありますし、中東、インド洋の事例も挙げてきているということでございます。(発言する者あり)

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 これは、何度も申し上げているように、類型ではございません、事例でございます。

 そして、今回の重要影響事態におきましてもこの六つの事例は当てはまるということでありますし、起こってくることにつきましては、この六つに限られずにいろいろと例がございます。その一例として中東、インド洋の事例を挙げたわけでありまして、事例は事例でありますので、これが全てではないということでございます。

緒方委員 その答弁に来るまでえらく時間がかかったなと思いますが。

 先ほど大臣が答弁の中で、世界のどこの地域で起こったことであっても我が国の平和及び安全に無関係ではないという答弁をされました。可能性です。けれども、やはりその答弁が出てくると、この野呂田六類型の中の第二類型のところの「我が国周辺の地域において」というのを落として、世界じゅうのどこかで武力紛争が発生している場合であって、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える場合というふうに読むのが、これがむしろ自然な読み方ではないかなと。新しい重要影響事態のもとにおいてはこの読み方の方が比較的すっとくるのではないか、大臣の答弁との整合性をとる観点でも。私はそう思うわけですけれども、大臣、いかがですか。

中谷国務大臣 事例は事例でありますので、落とさなくても読めるわけでございます。事例ですから。

緒方委員 済みません。先ほどインド洋の事例がありましたけれども、では、例えばこの第二類型、我が国周辺の地域において武力紛争が発生している場合であって、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える場合の中にインド洋での事例は入るということでよろしいですか、大臣。

中谷国務大臣 インド洋、中東におきましては、これまで想定をしていなかったということで挙げたわけでございます。それから、事例に挙げた四、五、六におきましては、これは周辺も入っていないわけであります。事例は事例ということでございまして、変化した現在においてあらかじめ特定の地域を排除することは困難でございますが、ただし、我が国に近い地域で起こる事態の方が非常に蓋然性が高いということは言えるということでございます。

緒方委員 きょうは十三時からずっと質問してきましたが、正直、答弁について率直な感想を申し上げます。うんざりしました。

 大臣、誠実な答弁をいただきたいと思いますよ。聞いたことに対して答弁いただけないということ、本当にクレーマー対応のような答弁はやめていただきたいと思います。

 それをあえておいたとしても、この六類型が今回……(中谷国務大臣「類型じゃないって」と呼ぶ)野呂田大臣は類型という言葉を何度も使っているんです。(中谷国務大臣「類型じゃないです」と呼ぶ)野呂田大臣はこの話を説明するときに類型という言葉を使っているんです。何なら国会議事録でも何でも後でお見せしますよ。大臣、そういうところでやじを飛ばさないでください。

 では、いろいろ類型について話をしましたが、そうすると一番重要になってくるのは、最後のところに、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態というのがあります。これが何なのかということが問われるわけですね。これまで、我が国の平和及び安全というのは何かという説明は、軍事的な観点を初めとするさまざまな観点から説明される種々の事態とか何かそんなことでありましたが、はっきり言って何も言っていないんですね。

 これから周辺事態が重要影響事態というふうになっていくとき、我が国周辺におけるという言葉が落ちるときに残る、我が国の平和及び安全というのが何なのかということについて相当具体的に説明していただかないと、前回も申し上げました、この話、あれもこれもということで我が国の平和及び安全にひっかけることができるようになるということを懸念するんです。

 それがそうでないというのであれば我が国の平和及び安全というものを具体的に、考慮材料ではなくて、こういう質問をすると大体、こういうことを考慮しますとかいう答弁が返ってくるんですけれども、そうではなくて、これが我が国の平和及び安全ですということについて具体的に答弁をいただければと思います、大臣。

中谷国務大臣 先ほどお話ししたように、包括的に示したことではない、これは政府の答弁で前提として書かれておりますので、類型ではない、事例であるということでございます。

 類型的に示せということでありますけれども、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態というのは、発生した状況が直接我が国に影響を及ぼす場合ではなくて、複合的に絡み合っている、そういう場合もあります。また、幾つかの要因が重なり合うという場合もあって千差万別でございまして、やはり具体的に発生する状況を見て、我が国の平和と安全に重要な影響を与えるということで、あらかじめ類型的にお示しすることは困難でございます。

 この点は、周辺事態においても類型的に示しておりません。重要影響事態におきましてもこれは変わらないということでございます。

緒方委員 質問を終える前に、最後、一言だけ聞きたいと思います。

 今の説明で国民はわかったというふうに思われますか、大臣。

中谷国務大臣 周辺事態においても類型的に示しておりません。しかし、我が国の平和と安全に重大な影響を与える事態、これは変わっていないんです。そのことをお話しさせていただきます。

緒方委員 この最後の一番重要な問いに対して真正面から答弁がなかったこと、とても残念なことであります。

 質問を終わります。

浜田委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 辻元清美です。

 一昨日、七月の六日に沖縄で参考人質疑がございました。私も参加いたしましたけれども、地上戦を経験し、そして二十万人の方々が犠牲になり、さらにはアメリカによる占領、そして復帰後も米軍基地と直面する、そんな沖縄で非常に重いお話を承ったと思います。

 まず最初に、沖縄基地負担軽減担当大臣である菅官房長官にお聞きをいたします。

 こういうような御意見がございました。聞いてください。

 法案が成立すれば、他国との紛争に巻き込まれ、米軍基地が集中する沖縄がイの一番に標的にされる可能性が高い、沖縄が再び戦場になり、捨て石にされる。また別の方は、標的、攻撃の的になる。また別の方は、沖縄に災いをもたらすものであるというような御指摘。米軍基地があるので、基地が沖縄を守ってくれるというよりも、攻撃の標的にされるのではないかという非常に危機感を持った御意見が出ました。

 官房長官は、この考え方、どう思われますか。

菅国務大臣 まず、沖縄がさきの大戦において悲惨な地上戦を経験し、またサンフランシスコ平和条約発効後も、一定時期、沖縄が我が国の施政権の外に置かれていたという苦難の歴史、このことを私たちは忘れてはならない、ここはそう思っております。

 そして、戦後七十年を経て今日に至るまで、沖縄の皆さんに大きな基地負担をおかけしている、そう認識しておりまして、その負担軽減のために、負担軽減担当大臣として全力で取り組んでいきたいというふうに思います。

 それと同時に、国民の皆さんの生命と平和な暮らしを守っていくこと、このことも政府の大きな責任だというふうに思っています。

 今回、この法案が成立すれば、あらゆる事態に切れ目のない法整備が実現をするわけでありますので、日米同盟をより強化する、そのことによって紛争を未然に防ぐことができる、抑止力を高めて日本の平和と安定のために確かなものになる、こういうふうに思っております。

 同時に、このことで日米同盟が、これは完全に抑止力が機能しますので、抑止力が高まって、沖縄を初め我が国全体において攻撃を受ける可能性は少なくなる、こういうふうに考えています。

辻元委員 別の角度からお聞きします。

 参考人の方の中には、米軍基地では既にアメリカの海兵隊と自衛隊などの事実上の共同訓練が始まっていて、今回の安保関連法案を先取りしたような訓練が始まっているという御指摘もございました。

 そんな中で、結局集団的自衛権を一部認める、そして、私はこれは限定と思っておりませんが、紛争があったときに世界じゅうの後方支援等にも行くといういわゆる恒久法も含めて、米軍と自衛隊が世界で活動する幅が広がるわけですよね。これは否定できないと思います。

 基地負担を軽減するどころか、今まで以上に沖縄の基地の役割が強化されて、そして、沖縄の米軍基地、世界じゅうで米軍等と活動するということになりますから、一方で安倍政権は基地負担の軽減と言いながら、世界じゅうで展開するようになれば沖縄の基地の機能が強化され、今、実際に米軍はテロとの闘いの最前線で、沖縄の基地からイラク対応などもしておりました。そうなると、負担軽減と言っている一方で、しかし、この法案が通り、世界展開になれば、基地の強化と固定化につながるのではないかと私も考えます。

 安倍政権は矛盾しているんじゃないですか。いかがですか。

菅国務大臣 まず、世界で一番危険と言われる普天間飛行場を辺野古に移設する、このことは、十九年前に日米で合意をし、それから三年後の十六年前に当時の沖縄の知事そして市長が同意をいただいて閣議決定をして、現在進めているところであります。そして、普天間飛行場の危険除去、そして固定化は避ける、このことについては、沖縄県民も政府も思いは同じだというふうに思います。

 日米同盟の抑止力を維持して、この危険除去と固定化を避ける。それと同時に、普天間を辺野古に移設することによって、沖縄県に今海兵隊は一万八千人とも九千人とも言われています、その半分の方が、グアムを初め、沖縄県内から移設をする、これは日米の間で決定をいたしております。

 そして、私たちは、負担軽減のために、普天間飛行場にある三つの機能、一つは空中給油機、十五機でありましたけれども、これを昨年山口県の岩国飛行場に移転しました。私も視察をしてきました。そしてまた、緊急の飛行機の受け入れ、この機能も九州に移転すること、そういう方向でしっかりと見通しも立てています。

 そして、残ったオスプレイの訓練、これについてはできる限り本土で引き受けるように私ども全力で取り組んでいますし、現にオスプレイの整備工場については、まさに千葉県の木更津の自衛隊基地でその引き受けに向けての同意もいただいておりますので、私たちは、ここはしっかりと約束どおり基地負担軽減というものは進めていける、こういうふうに思っています。

辻元委員 ところが、先ほど申し上げましたように、自衛隊と米軍、最初は日本を米軍は守ると言って基地が来た、次、極東に広がった、そして世界戦略になっていくという中で、沖縄の皆さんの声は圧倒的に、やはり今後基地が強化され、固定化されるのではないかという声が多いわけです。

 与党推薦の方もこういう御発言がございました。市民の多くが、政府が何をしようとしているのか、今なぜこの法案が、法改正が必要か、正確にわからないのが実情だ、国民にはまだまだ不安がある、また別の方は、法案への国民の理解が深まっているとは言えないと。与党推薦の方もおっしゃったわけですね。

 菅官房長官、そんな中で、政府、菅さんや安倍さんが一斉に、PKO法のときも反対が多かった、しかし後々は理解が深まったとおっしゃっていますけれども、私は、PKOのときと質が違うと思います。全然違うと思いますよ。

 それは、ここの参考人の、地方にも伺いましたけれども、例えば元法制局長官や、それから元内閣官房副長官補という政府の中枢の方々、そして、何回もお名前を出して恐縮ですが、山崎拓さんのように、中曽根時代から防衛族と言われた、いろいろ取り仕切られた方々まで、PKOやイラク特措法を推進してきた人まで、今回はちょっと待て、今回はだめだよと言っているわけですよ。今までこんなことがありましたか。

 それを、いや、PKOのときは反対が多かったけれども理解があった、そういうことで説明されていること自体、国民の皆さんの深刻に受けとめているその思いを、政府はそれで切り抜けられると私は思えません。全くPKOのときと質が違うと思いますが、いかがですか。

菅国務大臣 今回の平和安全法制については、いろいろな御意見があるということは承知をしています。しかし、そうしたことに一つ一つコメントすることは控えたいと思います。

 いずれにしろ、我が国を取り巻く安全保障の環境というのはやはり大きく変化しているんじゃないでしょうか。北朝鮮は核開発を進めて、そして現に、ミサイルの実験をことしに入ってから何回も行っています。そういう中にあって、国民の生命と平和な暮らしを守る責務をやはり内閣は持っているわけでありますから、今回、切れ目のない対応をさせていただくためにこの法案を出させていただいたんです。

 そして、よく憲法学者は多くの人が反対だということを言われましたので、当時、自衛隊が発足するとき、大多数の憲法学者の人は反対されたんじゃないでしょうか。さらに、自衛隊PKO法案のときも、ある新聞のそうした調査ですと、憲法学者は八割反対だと書いていました。しかし、そうした状況にあっても、やはり責任ある内閣の立場として、当時、その中で進めてきて、今日の日本の平和があるのではないでしょうか。

辻元委員 官房長官、私はやはり今の御認識は甘いと思います。

 私が申し上げたのは、元法制局長官がこの場で、後輩の法制局の皆さんもいらっしゃるわけですよ、いろいろお気持ちもおもんぱかったり、いろいろあると思いますよ、そして実際に内閣の中枢でイラク特措法のときなどの実務を担ってきた方々なんですよ、そういう人が今回はちょっと待てと言っていること。

 そして、私は山崎拓さんと話しました。中谷大臣、九・一一の同時多発テロがあったときに、当時のパウエル国務長官と山崎さんはお会いになりました。そして、アメリカからいろいろなことを要求された、しかし、イラクでのあの人道復興支援、憲法の範囲でこれがぎりぎりだと。そしてさらに、これ以上踏み込むと日本人がテロに巻き込まれる可能性がふえる、また自衛隊に犠牲者が出る、何と言われようとも、日本人の命を守るためにぎりぎりの範囲があのイラクでの人道支援だったとおっしゃっていましたよ。

 中谷さん、この間お会いになりましたね。そういうお話を聞いていませんか。

中谷国務大臣 一時間ほどお会いをいたしまして、山崎先生のお話も伺いましたし、私の考えも述べさせていただきました。

 先ほどの沖縄の話ですけれども、日米の訓練がもう先取りして行われているということは、決してそうじゃありません。今の防衛計画の大綱に基づいて、島嶼防衛とか統合運用とか、やはりしっかりと日本の平和と安全を守るためにやっておりますし、ガイドラインも、何のためにやっているかというと、日本の平和と安全を守るためにやはりグローバルな協力も必要であるという認識でありまして、やはり目的というのは、国民の命と平和な暮らしを守っていく、そして沖縄においても、この日米同盟を強化することで紛争とか不安定要素を未然に防止する力、抑止力、こういったことで地域の平和と安定をより確かにするということで実施をしていることも御理解いただきたいと思います。

辻元委員 今いろいろ御答弁されたんですけれども、もっと根本のところで国民の皆さんは不安や疑念が晴れないわけです。

 憲法との関係で、横畠長官にお伺いしたいと思います。

 先日、宮崎法制局元長官がいらっしゃいまして、四十七年見解のことをおっしゃいました。横畠長官も一緒に働いた方で、第一次安倍政権のときには、あのときも集団的自衛権の一部容認という話が出て、あのときの長官で、横畠さんが支えられた元長官だと思います。

 この四十七年見解については、「いわば黒を白と言いくるめる類いと言うしかありません。」そして「その文章構成自体からも論理の帰結として述べられているのであって、当時の状況のみに応じた、いわば臨時的な当てはめの結果などと解する余地は全くないと思います。」と答弁されたんですね。

 横畠さんにお伺いしたいのは、四十七年見解、砂川のことはもうよくわかっています、横畠さんの今のお立場で、この宮崎さんの見解は、宮崎さんが間違いで横畠さんが正しいということですね。宮崎さんは間違った見解を述べられたという理解でよろしいですか。

横畠政府特別補佐人 私の見解は、これまでこの場においてるる述べているとおりでございます。

辻元委員 ということは、宮崎さんが間違った御理解をされているということでよろしいですね。

横畠政府特別補佐人 間違っている、間違っていないという評価をすべき立場にはございません。見解が違うということでございます。

辻元委員 横畠さんはこれ以上憲法解釈を変える場合は憲法改正が必要だとおっしゃっていますが、おっしゃっていますね、これはどこかに書いてありますか。

横畠政府特別補佐人 憲法の解釈というのは、恣意的、便宜的にできることではもちろんございません。やはりこれまでの議論の積み重ねというものが特にあるわけでございますので、それとの整合性というのを十分に考慮する必要があります。

 その意味で、砂川判決がそもそものベースかもしれませんが、その上に昭和四十七年の政府見解というのがございます。この昭和四十七年の政府見解は大変論理的に、憲法第九条のもとで、例外的にではございますけれども、我が国が武力の行使をすることもあり得るのだ、可能であるのだ、そういう場合を示しているものでございます。その考え方というのはしっかり踏襲して、それとの整合性のもとで今回の新三要件というものをお示ししているわけでございまして、それを外れるようなことはやはり法的にできないであろうということを申し上げているわけでございます。

辻元委員 今起こっている事態は、今の法制局長官の答弁も信じられないということになっているわけです。

 どういうことかというと、今まで、砂川判決の自衛権においても、いや、集団的自衛権はだめと書いていないから含まれる、そして四十七年見解においても、外国からの武力攻撃、我が国に対してと書いていないから他国も含まれているんだと。

 要するに、今答弁している大臣や法制局長官の答弁が、また将来変えてもいいよということになるんじゃないかという不安を国民の皆さんが持っているわけですよ。違いますか。そこの認識をすべきなんです。

 憲法というのは、紙に書いてある文字なんです。でも、これをみんなが今までの積み重ねでこうだと、参考人がおっしゃいました、政治と国民、合意をしているこの解釈を強引に変えてしまったら、これを信じられなくなってしまったら、国家の基礎が崩れてしまうんです。そこの危機感も国民の皆さんが感じているから、今理解が深まらないし、八割の人がこれはおかしいんじゃないかということになっているわけですね。これは立憲主義の立場からの国民の懸念です。私たちはそういうことをしていいのかと。今までこんなことはなかったですよ。

 そして、もう一つの不安はテロの問題です。

 先日、新幹線の焼身自殺、菅官房長官が、はっとした、テロじゃないかと、冷やっとしたとおっしゃっていました。先日、この国会議事堂の中でもテロ対策の訓練が行われたと承知しております。

 中谷大臣は、私が、後方支援等でちょっとでも海外で相手から軍事行動と見られるような行動をしたら、日本人がテロに狙われる、また日本がテロに狙われる可能性が高くなるんじゃないかと前回質問した、これに対して、テロは武力攻撃の一環として行われるものであるから、抑止力によって紛争が未然に防止され、テロのリスクは下げることができますと答弁されたんです。私、これは防衛大臣として全く甘い認識だと思うんです。

 資料をお示ししていますので、皆さん、ごらんになってください。

 これは、世界のテロ発生件数の推移なんですね。二〇〇三年、これはイラク戦争です。イラク戦争で、このときはテロの撲滅ということで武力行使をしました。この後、アフガニスタンの戦争もあり、二〇〇三年が一千二百六十二件。今は、二〇一四年のデータですが、一万六千八百十八件なんです。十倍以上になっているんですよ、中谷さん。

 これは、ただ当事国のテロだけではございません。ちょっと前も、フランスでまたテロの被害が出ております、六月二十六日も。日本も、後方支援だといって、それこそ他国の紛争の後ろからちょっとでも行ったら、みんな、日本人も日本もテロに狙われる率が高くなるんじゃないかという、これは普通の人の、参考人もいっぱいそういう意見が出たんですよ。

 中谷さん、私は、日本人がテロに遭う、また日本がテロに遭う可能性が高くなることは排除できないと思いますよ。その上でどうするかなんですよ。私は排除できないと思いますが、いかがですか。このデータが示しているじゃないですか。いかがですか。

中谷国務大臣 現実にテロがいつどこで発生するか、これは全く予測できません。

 つまり、二〇〇一年、九・一一のときに、三千二十五名の罪のない、ビルディングの中で仕事をしていた人がテロに遭っているんです。日本人も二十四人犠牲になっているんです。世界じゅうでテロが発生する可能性は否定できません。辻元さんが示している数字のとおりです。

 ではどうするのか。これはやはり国際社会がテロに対して、一丸となってこういったテロの行為をなくしていくという行動をとらなければいけませんし、各国いろいろな立場でいろいろなやり方があるわけでありますけれども、テロ行為に対して、こういった暴力、不法は許さないという国際社会の姿勢として、抑止力、こういうものを発揮してテロの発生を防いでいくということも必要でございますので、こうしたことでしっかりとメッセージを発信する。

 我が国においても、こういったあらゆる事態に切れ目のないような対応をすることによってテロの発生に対してしっかりと抑止する力を持つことが必要であるというようなことで、しっかりとした法律の整備も必要ではないかと私は思っております。

辻元委員 国民の皆さんの心配は、テロを呼び込むのではないかということなんです。それを、抑止力でテロは軽減できるとおっしゃいますが、イラク戦争やアフガニスタンの後、ポスト・イラク戦争をどうしていくかということ。結局、大量破壊兵器があるといって武力行使をした後の社会をどうしていくか。でも、私は、呼び込む率はやはりふえるというように認識せざるを得ないという国民の皆さんの方が正しいと思いますよ。その点を聞いたんです。いかがですか。

中谷国務大臣 今でも海外でたくさんの日本人が仕事をしております。日本人だけではなくて、世界じゅうの人々にとってこういったテロの発生は人類の脅威であり、そしてこれから新たな脅威ということで対応しなければならない。それぞれの国々が努力をしてテロの発生を防いでいこうといたしているわけでありまして、やはり対外的にも、国際社会が連携してこういったメッセージをテロ行為をするような人々に与える、そして国際社会が協力して対処するということは、私は、テロのリスクを下げることになり、そして具体的に海外の日本人の方々の生命財産を守っていくことにもつながるというふうに思います。

辻元委員 もう一点の心配が、戦争に巻き込まれるのではないかということなんですね。

 これについて伺いたいのですが、先ほどから重要影響事態の話がございました。重要影響事態で自衛隊が出ていくのは、武力行使を現にしているところとは違うところだという話でしたね。

 そうしたら、重要影響事態のときに公海上で後方支援をしている自衛隊の艦船がミサイルなどで爆撃されてしまったら、これは日本への武力攻撃事態になりますか。公海上。

中谷国務大臣 武力攻撃の認定等につきましては、我が国に対する組織的及び計画的な攻撃が発生をするということでございます。

辻元委員 今までの答弁は、組織的そして計画的であれば、公海上の我が国の艦船がミサイル等で攻撃された場合は我が国への直接攻撃とみなす場合があるとなっているわけです。そうなると、重要影響事態で、いや、後方支援です、安全な場所でやっているんですというのが一挙に、我が国への武力攻撃事態発生で防衛出動で戦争、全面戦争へということにもなりかねない。なりかねないんですよ。(発言する者あり)誰ですか。

 これは、国民の不安、要するに、今は、こんな安全なところに後ろから物を運びに行きますよと言っているけれども、何が起こるかわからない。そして、攻撃されたら、今までの答弁だと、公海上での我が国の艦船への攻撃は我が国への武力攻撃と見るとなっているから、日本への直接攻撃、一足飛びに武力攻撃事態に発展するということは排除できないわけですよ。これが戦争に巻き込まれるということじゃないですか。違いますか。

中谷国務大臣 現在までも、かつて特措法で二度、海外において自衛隊は活動いたしました、インド洋においてもイラクにおいても、これは人道復興支援でございますが。あくまでも戦闘が行われていない地域、非戦闘地域でありますが、この中で活動し、また、武力行使をしてはならない、そして攻撃等が予測される場合には活動を中断したりするというようなことで、そういうことにならないように活動してきたということでございます。

辻元委員 今、国民の不安で、テロや戦争に巻き込まれるのではないか、また立憲主義の根本が壊されるのじゃないか、非常にシビアな話をしているんですが、先ほどから出ておりますこれです。自民党のカフェスタ。ここで、安倍総理はおとといから出演されておりますが、先ほど緒方林太郎委員が言われましたように、きのう、スガさんも登場するんですよ。スガ君の家でスガ君が助けてと言っても、よその家には助けに行けない、でも、自分が何か危険を感じていて、強いアソウ君に守ってもらうというような事例なんですよ。私、軽過ぎると思います。これが国民にわかりやすい議論ですか。

 私、思うのは、国民の皆さんは本当によく勉強されています。立憲主義ということも一から勉強されている方がたくさんいらっしゃるんですよ。ところが、スガ君だ、アソウ君だ、安倍君だ。私は、こういう姿勢そのものが、安倍政権は一体どうなっているんだと。

 菅さん、これはやめさせた方がいいと思いますよ。これは安倍さんの個人的な行動ですか、何ですか。

菅国務大臣 ここは、まさに自民党のカフェスタというところで、国民の皆さんの理解を進める中で、総理が出て多くの方に聞いていただけるというのは、ある意味では理解を進めるための一つの手法じゃないでしょうか。

辻元委員 一番最初に、思い出してください、米艦船での邦人の輸送ということで、赤ちゃんを抱いた女性のパネルなどを出しました。あれも、あの事例だけじゃ無理じゃないかという話、そしてホルムズの話も出てきました。そして今、結局、米艦防護になっています。

 中谷大臣にちょっとお伺いします。

 この米艦防護について、きょう北側委員も事例を挙げて質問されましたけれども、具体的に言えばアメリカのイージス艦ですね。日本へのミサイルが来たら困る、アメリカのイージス艦がいる、しかし、イージス艦が攻撃をされる際に、日本がこの米艦を防護、ミサイルで攻撃される前に日本のイージス艦も対応してこれを守らなきゃいけないんじゃないかという問題意識を議論されていたと思いますが、それでよろしいですか。

中谷国務大臣 まさにミサイルの防衛は我が国にとって大変重要な問題でありまして、現実に北朝鮮から射程圏内のミサイルに対してどう対応するか、これは日本だけの能力、技術ではできません。やはり宇宙衛星から発射瞬間の情報をもらい、そして米側からも逐次状況についてのデータをもらう、こういう情報の共有は我が国にとって必要なものでございます。

辻元委員 そうすると、果たして自衛隊が米艦を守れるのか。

 これは午前中に防衛省に出していただきました。今、イージス艦の数は、日本は六隻、うちBMD対応のイージス艦は四隻。米国が保有するイージス艦は八十四隻、うちBMD対応のイージス艦は三十三隻。そして、横須賀に配備されている米軍のイージス艦は十隻、うちBMD対応のイージス艦の数は五隻となっております。日本のイージス艦六隻のうちの四隻ですね、実際にミサイルに狙われたとき米艦を防護できるのは。

 そうすると、この四隻については、調べますと、任務、訓練、修理のローテーションがあって、実際に二隻程度、最大三隻程度しか対応できないわけです。

 もしも存立危機事態があって、既に先に日本の近隣諸国で紛争があって、アメリカは武力行使をしているわけですね。大臣、しているわけですね。そうすると、横須賀の十隻のうち五隻がBMD対応ですけれども、来援してくると思うんです、もうアメリカは紛争に参画していますので。例えば、八十四隻のうちの三十三隻、BMD対応のイージス艦が三分の一来ても十隻、アメリカは来援をよこす。三分の一でも、そうすると十五隻になるわけです。日本は、対応できるのが四隻しかないんですよ。

 実際に、米艦防護をするといいますけれども、我が国の存立が根底から覆されそうな事態でしょう。かつてこういう議論がありました。これは私も質問しておりますが、日本には五十四基の原発がございます。日本の国内に核爆弾を抱え込んでいるようなものなわけです。PAC3と日本のイージス艦でこの原発を、最大限フルに使っても守れない、今の状態ではという話なんですね。

 そうすると、日本の存立が根底から脅かされそうなときは、日本の装備はイージス艦も含めて全部、まず日本を守るというところに振り向ける。アメリカは、既に横須賀に日本よりも数の多いイージス艦がいるわけですよ。私は、これで日本をまず、存立が脅かされそうなんだから守らなきゃいけないのに、アメリカのイージス艦を守りに行きますと。現実的に無理じゃないかと思うんです。

 いかがですか、大臣。日本をまずしっかり守らなきゃいけないでしょう。どうやって守るんですか。

中谷国務大臣 今、事例として、原子力発電所に対してミサイルの攻撃があった、どうするのかということでありますが、だから一層ミサイル防衛をしっかりしておかなければならないということでありまして、現在横須賀には米国のBMD能力搭載イージス艦を五隻配備しているところですけれども、弾道ミサイルに対して日米が共同で対処する場合に、これらのイージス艦は自衛隊と協力して弾道ミサイル発射の早期探知やミサイル迎撃を行う。

 具体的な運用についてはお答えを差し控えますが、定期整備、訓練などのために、横須賀に配備されている米軍の艦艇全てが稼働しているとは限らず、またその時々の情勢によって同時に複数のミサイルが発射される可能性もあり、これに対処するために艦船を幅広く展開する必要がある可能性もあることなどから米軍の艦船の防衛が手薄になる可能性はあり、こうした場合には弾道ミサイルへの共同対処の実効性を損なうおそれがありまして、自衛隊がこれを排除する必要が生じることはあり得ると考えております。

 だから、日米の共同対処、これは安全保障条約に基づいてでもございますし、我が国の国を守るという観点で、こういった共同対処が必要だということでございます。

辻元委員 今、アメリカのイージス艦は遠近両用のイージス艦というか、ミサイル防衛をしているとき、近くもしっかりと対応できるイージス艦もあって、日本はまだございません。

 そして今、例えば護衛艦は四十七隻、日本はたしかあると思いますけれども、アメリカが艦隊を組むときは、空母が中心になって、空母を中に、イージス艦や補給艦や輸送艦、全部ユニットを組んで来るわけですよ、十隻ぐらいの。それでアメリカが動いているところに日本の護衛艦が、では守りましょうと一隻入っていくんですか。実際に、私、現実から見たら、この事例すら無理があるんじゃないかと思いますよ。大臣、いかがですか。

中谷国務大臣 実際どういう状況が起こるのか。だから、日米は共同で訓練をしたり共同作戦計画を立てたり、こういった実際に起こり得る事態も想定をしながらしっかりと我が国の安全を確保しているわけでございまして、日米で協力して対処している、また訓練もしている、準備もしているということでございます。

辻元委員 日本は四隻しかないんですよ、イージス艦は。そして、アメリカはユニットで作戦行動をしますので、さらに護衛艦で守ろうとしたら、これは魚雷対応ですよね。スクリューの音を聞かなきゃいけないから、十キロから十二キロ離れて走るでしょう。それを、アメリカは全部一つのオペレーションで来ていますから。

 今、事例が三つ、特徴的なのがあるんです。一つ目が、赤ちゃんを抱いたお母さん。

 これも、中谷大臣、前、周辺事態法のとき、私も一緒におりましたけれども、このときに、ガイドラインで日本人の邦人輸送をアメリカに頼んだけれども、「米軍の飛行機を頼らざるを得ないんですが、当初、ガイドラインにも米軍による邦人の救出を入れて、米国が実施する項目というようなことでお願いをしておったんですが、最終的にはアメリカから断られました。これはもう一人前の大人として当然のことですけれども。そういうことを他国に頼られて義務にされるとアメリカも、本当にたくさんの国からそういうことを頼まれると困る、自分のことは自分でやりなさいというようなことで、当然のことだと思います。」と。前回断られているでしょう。

 私、このときの外務省の担当していた人にも、もうOBですけれども、確認をしたら、よく知っていますね、断られましたとおっしゃっていましたよ。

 今回のガイドラインのこの邦人輸送のところは、前回と同じ英文なんですよ。協定もアメリカと結ぶ予定がないわけですよ。

 まず一点だけ、これは正直に言ってください。正直にですよ。このとき、断られましたね。このときはですよ、このときはでいいから、前回。これだけは決着をつけておいた方がいいですよ、中谷さん、余計なことを言わずに。

中谷国務大臣 それは、安全保障委員会で質問はいたしましたが、私が質問をしたのは、新聞の報道に基づいて質問をいたしました。

 事実、その後、しっかりガイドラインに記述をされて、実際に訓練もやっております。そして、今回、日米のガイドラインを合意いたしましたけれども、このガイドラインの中で、日本以外の国に対する武力攻撃への対処行動の例として、非戦闘員の退避のための活動に従事しているアセットの防護に関する協力が明記をされておりますし、実際に邦人の救出等におきましても日米共同訓練、こういうことも実施をしているということでございます。

辻元委員 結局、あの絵は何だったんだ、赤ちゃんを抱いて。私は、感情に訴えようとしてわざと出したとしか思えません。

 その後、ホルムズ海峡が来ました。この事例も、ほぼ停戦合意ができたらとかになってきているわけですよ。そして、今の米艦の防護も、実際にイージス艦は四隻しか今対応できない、何隻かふやそうとしていますけれども、横須賀にいるイージス艦の方がずっと数が多いわけですよ、実際に。そういう中で米艦防護、現実的に私はできないと思います。

 最後に一問だけ、先ほどの質問で、岸田外務大臣にお伺いします。

 もう一つの国民の不安は、自衛隊の皆さんの命の問題です。災害のときも頑張ってくださって、本当にありがたいとみんな思っている。日本を守るときには頑張ってほしい。でも、何か後ろからついていって自衛隊の皆さんが犠牲になったり、それは困るわと。

 それで、先ほどのジュネーブ条約、紛争当事国の軍隊の構成員ではございませんと、後方支援の場合は。では、何なんですか。文民ですか。文民でいいんですか。そうすると、軍服を着た、武装した、武器を持った文民という解釈でよろしいですか。

岸田国務大臣 まず、先ほども答弁させていただきましたが、我が国自衛隊の後方支援は武力の行使には当たらないということでジュネーブ諸条約の適用がない、そして捕虜として扱われることはありません。

 その上で、それではどうなるのだという御質問でございますが、自衛隊員が捕らえられるような事態が発生したとしても、まず我が国は、法的な立場として、こうした身柄の拘束そのものを容認することができないという立場にあります。ですから、我が国としましては、当該要員がどのような待遇を受けるか以前の問題として、身柄の即時解放を強く求めていく、こういったことになります。

 そして、そうした上で、その際にどういう待遇になるかという部分ですが、この身柄は少なくとも、普遍的に認められている人権に関する基準並びにジュネーブ諸条約にも反映されております国際人道法の原則及び精神にのっとって取り扱われる、こういったことになります。

 ですから、捕虜として取り扱われるかどうか。捕虜として取り扱われますと、紛争が解決するまでは身柄は解放されることはありません。しかし、こうした捕虜として取り扱われないわけですから、我が国としては即身柄の解放を求めていく、こういった立場にあるわけですし、そして、どのような処遇を受けるかということにつきましては、今言ったような違いはあるにしても、基本的には同等の扱いを受けることになると認識をしております。

辻元委員 安倍総理がことしの予算委員会でこうおっしゃっているんです。捕虜になった場合、軍人として扱われなければ、これはまさにテロリストと同じことになってしまう可能性があるという答弁をされているんですね。

 自衛隊の皆さん、日本だけですよ、これは武力行使の一環じゃない。それは通用しないんです。ですから、国民の皆さんは、私が今聞いただけでも、では、米艦防護と言われるけれども、実態的にどうなんだ、何をどうするんだ、そしてテロはふえるのか減るのか。それも何だか、抑止力でテロが減るとか。

 菅官房長官、私は、これは国民の理解が深まる深まらないという問題ではなく、ここは勇気を出してこの法案を撤回した方がいい。恥ずかしくないですよ。撤回した方が、ああ、安倍政権はよく国民の懸念を理解されているなというように、私は国民の皆さんは納得されると思います。

 最後は、もう時間が参りましたので、勇気を出して法案を撤回する、一から出直してください。

 終わります。

浜田委員長 次に、重徳和彦君。

重徳委員 維新の党の重徳和彦です。よろしくお願いいたします。

 去る六月二十六日の金曜日、夜中、私はテレビ朝日の「朝まで生テレビ!」という番組に出演をさせていただきました。御存じのとおり、夜中の一時二十五分から三時間、朝方までしゃべり続けるという番組でございます。

 番組が始まる一時間前に、打ち合わせでテレビ局の方に伺ったんですが、驚くべきことが起こりました。控室に行きましたら、そこには、本来、各党全ての若手議員が集まって、若手議員が日本を変える、こういうテーマの議論でありました。そのはずだったんですが、行ったら、民主党、維新の党、共産党、元気の党、この議員しかいないわけですね。何と、自民党、公明党の、与党の議員さん方が来ていなかったということであります。

 田原総一朗さんもえらい怒ってしまって、番組が始まったら最初に、異例だと思いますが、プロデューサーを名指しして、説明をしろ、何でこんな状況になっているんだと言いますと、数日前から自民党の議員さんたちに打診をして一度は番組出演オーケーをもらっていたんですが、後になって、その日は地元の予定が重なっていたことを忘れていたということですが、そんな金曜日の夜中から土曜日の朝方にかけて何の地元の用事が重なっているんでしょうか。よくわかりません。

 そして、最後に、出演する予定だった方も、直前の午後八時になって、体調不良になって夜中の番組への出演はとてもかなわないということで欠席されましたという説明がございました。これは、体調が悪くなったことそのものは場合によってはやむを得ないかもしれませんけれども、とてもプロの政治家の仕事の仕方とは思えませんね。

 そして、自民党内ではマスコミを潰すとか懲らしめるとか、そういう威勢のいい発言がある一方で、せっかくその番組に、ほとんど自由に何でもしゃべれる番組ですよ、好き放題言いたいことを言えるような。客観的にこれは、そういうところから逃げているとしか言いようがありません。こんなことをやっていたら、それは自民党は感じ悪いよねと、自民党の中からも外からも言っている方もいらっしゃいますけれども、どんどんそういう状況が続くんじゃないかと思います。

 ここで私ちょっと質問させていただきたいんですが、今回の法案、確かにこの第一委員室の国会審議はずっと精力的に、八十時間を超えたんでしょうか、やっておられると思います。中身はともかくとしてやっておられます。だけれども、表で、それはテレビ番組でも構いませんが、それからネット番組で安倍総理自身も始めたとはいいますが、各地元で与党の議員さんたちが表に出てどんどん、今この法案が必要だ、こういうような訴えを組織的、戦略的に政府・与党が一丸となってやっていくというようなことをどの程度やっているんでしょうか。まずお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 済みません、党のことですので、今、私、直接担当しているものではありませんが。

 党の方針としまして、各所属国会議員は地元でさまざまな集会を開催し、あるいは街頭に立ち、今回の平和安全法制について国民の皆様方に御理解いただくべく、丁寧にこういった取り組みを続けていくべきだという方針のもとに、各国会議員がそれぞれの地元で努力をしていると承知しております。

重徳委員 全然努力不足という印象ですよね。本当に、国民的な理解が全然広まっていないわけですよ。これは別に国会審議だけじゃないと思います。やはり私たち政治家は、テレビ、マスコミを通じてのみでなく、地域ごとで自分たちの選挙区を抱えているわけですから、こういった努力をもっとしていかなければならないと思いますよ。自民党は、そういう意見があるのであれば、政府・与党の案をちゃんと説明する。

 そして、本日午前中、私ども維新の党は独自案を国会に提出いたしました。この案は、政府案の非常に曖昧な存立危機事態に基づく集団的自衛権は認めない、こういう案でございます。日本が武力攻撃を受ける可能性がたとえゼロの場合も、そういう場合にも自衛隊の海外派兵を認める余地がある、こんな曖昧な法案では国民的な理解が広がるはずがないという認識に立ちまして、独自案を出させていただきました。そして、グレーゾーン事態に対処する領域警備法案につきましては、民主党と共同提案をさせていただきました。

 とにかく憲法適合性にこだわった案であります。政府案を違憲、違憲というふうにおっしゃる憲法学者の皆さん、歴代法制局長官の皆さん方も、維新案については合憲である、このような評価をいただいております。

 このような中で、先週から、私どもが独自案を検討しているということにつきまして、そして提出をするということにつきまして、安倍総理も、それから中谷大臣も、敬意を表したい、大きな政策の方向性は一致している部分もあるんじゃないかとか、共通する部分もあるということをおっしゃいます。敬意を表するとおっしゃいます、提出することについては敬意を表しますと。ただ、中身についての評価は何もされていません。結局、政府案は通します、こういうことでは、そんな敬意なら別に要りませんよ。

 私たちは、維新独自案、これは必ず国民の皆さんからも理解される、政府の案よりも数段すぐれた案だと思っております。政府案は違憲でも維新案は合憲だと言っている方が大勢いらっしゃいますが、どこがどう政府案は違憲で、そして維新案はどこがどう合憲かというふうに言われている方がいると認識されていますか。

中谷国務大臣 維新の党が、多くの論点がありますけれども、党内で議論をされてまとめられて提案をいただき、また国会の方でもきょう提出されると聞いておりますけれども、これは大変いいことだと思います。非常に議論に深みを与えるということで、国会に両案を並べて議論するということは非常に、安全保障は超党派でやっていくべきでございますので、それぞれの政党ごとにこれをもとに協議も重ねられたらいいと思います。

 私も報道で拝見いたしておりますけれども、共通の部分もございます。憲法的に見ましても、政府といたしましては、個別的自衛権で対応できない部分を、国際法的には集団的自衛権でありますが、あくまでも我が国の存立にかかわる昭和四十七年の見解をもとに憲法の範囲内で我が国防衛の必要最小限度という点で言っている部分と、維新が言われている自衛権の再定義というような部分におきましてはある程度共通の部分もあるのではないかというふうに見ておりますが、これから正式に提案されましたらよく検討させていただきますけれども、国会に提案されて議論されるということにつきましては心から評価をいたしたいと思っております。

重徳委員 質問にきちんと答えていただきたいんですが。

 これまで、憲法学者も歴代法制局長官の方もそれぞれいろいろなところでコメント、発言されていることは御存じだと思います。政府の案はこういう点が違憲で、それに対して維新の案はこういう点が合憲だということもちゃんと耳に入っていると思いますし、まして、きのうちゃんと通告しましたから、これに対して答えられないということはないと思います。どう認識されているんでしょうか。

中谷国務大臣 一般の方々の見解については政府の立場でお答えすることは差し控えますけれども、政府といたしましては、平和安全法制、これは、累次説明をしてまいっておりますとおり、従来の政府見解の基本的な論理は最高裁判決の考え方の範囲内のものでありまして、違憲との御指摘は当たらないと考えております。

 維新の党の案につきましては、まさにきょう国会に提出をされて、この委員会にこれからかけられるということでございますので、その評価については今後議論がなされるものと考えております。

重徳委員 こういうやりとりだからずっと、八十時間審議しても全然かみ合わない、すれ違いの答弁ばかりなんですね。ですから……(発言する者あり)やじには答えませんが、この自民党のやじを何とかしてください。もういいかげんにしてほしいです。

 私の質問にちゃんと答えてほしいんですよ。今までどういう批判が集まっているか、どういう批判が寄せられているというふうに認識しているかということであって、それに対して批判が当たる当たらないということを聞いているわけじゃないんですよね。

 では、次にお聞きしますが、これまで政府の案は八十時間、これが十分かどうかというのは与野党で受けとめ方は全く違いますけれども、時間数だけは進んだと思います。これから維新の独自案と政府案を比較対照したりなんかしながら審議を進めていきますが、このために必要な審議時間は何時間だとお考えでしょうか。

中谷国務大臣 これは法案の審議のあり方でございますので、国会が御判断をされる事柄でございますので、政府としては申し上げる立場でもないわけで、差し控えさせていただきます。

 いずれにいたしましても、政府といたしましても、御党等が国会に提案をされましたら、国会において法案についてしっかりと議論していくということが重要であると考えております。

重徳委員 国会において決めていくということですが、であれば、この国会、特にこの委員会の理事会において必要な審議時間をきちんと確保していただきたいんですよ。

 というのも、恐らく政府・与党は、敬意を表するとかなんとか言いながら、別に維新が独自案を出そうと出すまいと政府案を採決するべきときに採決するんだ、もう既にそういうことをかなり責任ある立場の方がおっしゃっているわけですから、これはもとから政府案しか通す気がないということだと思いますよ。そして、維新案なんかは、どうせ通さないんだからそんなに審議時間を確保する必要もないという御認識なんじゃないかなと、私は非常に強い疑念を持っております。

 私たちは、維新の独自案こそ通すべき案だと考えているんです。そして、政府は政府案を通したいから、それに対して必要な審議時間を確保するわけでしょう。私たちの独自案は通すつもりでやっているわけですから、それに応じた、見合った審議時間を確保していただきたいんです。こういう思いでやらせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

 現時点で、今の大臣の、まだ提出したばかりだからということで、先ほど辻元委員が撤回するべきだとおっしゃいましたが、私は、単に撤回するだけじゃなくて、維新の独自案と差しかえるべきだと考えております。

 そして、なぜそれが必要なのかということについても、これから、メディア、国会審議を通じてのみじゃなくて、私どもの地元、全国キャンペーンを、九月いっぱいまで国会が延長されているわけですから、この夏、一夏じゅう全国で、私どもの案がどれほど政府案と異なり、そして憲法適合性にこだわった案かと。政府案はさんざん言われておりますが、私どもの案は現実にも向き合った対処を考えつつ憲法適合性もきちんとしている、こういう案であるということを国民の皆さんが理解する、これも十分な時間が必要だと私は思っております。国会審議、そして国民への周知、浸透というもの、大変重要な法案でございますので、いずれの意味においても時間をしっかりと確保していただきたいと思います。

 さて、それでは少し中身に入らせていただきますが、まず、後方支援についてお尋ねをしてまいります。

 これまでも御議論があったかと思いますが、確認的になると思いますけれども、我が国の安保法制におきまして後方支援という概念があります。これは、国際法上はそんな概念は存在しない、ただ、我が国憲法との関係でつくり出された概念であるという認識でよろしいでしょうか、岸田大臣。

岸田国務大臣 国際的には、一般に、補給、整備、輸送等の支援活動を後方支援、ロジスティクスサポートと称している、このように承知をしております。

 そして、国際法との関係で申し上げるならば、国際法における武力行使とは、一般に、国家がその国際関係において行う実力の行使をいうところでありますので、我が国が関連する法律に基づいて行う後方支援それ自体はこれに該当しないと認識をしております。

重徳委員 それではお聞きしますが、一九九九年に周辺事態法が制定されたときに初めて後方支援という概念が法律上登場したと思いますけれども、このときは輸送、補給、医療などに限定された業務が後方支援だったかと思います。このときの理論的な根拠、また憲法との整合性について御説明を願います。

中谷国務大臣 後方地域支援は、その内容が補給、輸送であり、戦闘行為自体に当たるものではなく、また、後方地域、すなわち、我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲において行うものでありまして、このような規定によりまして米軍の武力行使との一体化の問題を生じることがないということで担保して実施をされたものでございます。

重徳委員 このときも相当な議論があった上で後方支援に規定される業務というものが定義づけられたかと思うんですが、今回、後方支援として新たに、弾薬の提供、発進準備中の戦闘機への給油が追加をされました。いわば武力行使、戦闘行為、本丸にまた一歩肉薄するようなことになったかと思うんですが、これは、これまでの法律の規定の仕方、あるいは憲法との関係から、どういった違いがある、どういう関係性だというふうに、九九年の法律の規定から今回の規定ぶりへ、どのように整合性のある説明になるんでしょうか。

中谷国務大臣 周辺事態法の後、二回、特措法を制定いたしまして、同じように武力行使との一体化がないというようなことで対応を実施したわけでございますが、今回の法改正におきましては、いわゆる他国の武力行使との一体化につきまして、これまでの自衛隊活動の実経験、諸外国の活動の実態、現実に即して検討を行った結果、現に戦闘行為が行われている現場以外の場所で行う補給、輸送などの支援活動は他国の武力行使と一体化するものではないという判断をいたしました。

 具体的には、重要影響事態法において、我が国が行う後方支援活動等は現に戦闘行為が行われている現場では実施しないということを明記いたしました。また、法律上、部隊が活動を円滑かつ安全に実施することができるように活動の実施区域を指定することといたしておりまして、今現在戦闘行為が行われていないというだけではなくて、自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為がないと見込まれる場所を実施区域に指定することになります。万が一、状況の変化で自衛隊が活動している場所が現に戦闘行為が行われている現場となる場合は活動の中止、休止を行うことになりまして、こういった面におきましては、非戦闘地域で武力行使との一体化にならないといった原則を引き継いで実施しているということでございます。

重徳委員 武力行使との一体化になる、ならないというのが一番わかりやすい言葉上での線引きのように感じますが、しかし、現に九九年のときに行われた業務が今回格段に広がっていくということになるわけだし、その区域の指定の仕方、戦闘行為あるいは休止、どういうふうな運用をするかということも随分変わってきております。ここがやはりわかりにくい部分でありまして、これは横畠法制局長官にちょっと確認したいんですが、一体、憲法との関係で、後方支援というものはどのような論理で認められる、認められないということになるんでしょうか。

 今の中谷大臣の説明だと、やっているうちに、これも可能だ、これも安全だ、だからやっちゃおうというふうに聞こえるわけなんですが、どこまでが可能で、どこからはだめなんだというのはどのように説明されるんでしょうか。

横畠政府特別補佐人 いわゆる他国の武力行使との一体化の考え方は、憲法第九条により武力の行使を行うことが許されない、そういう場合におきまして、自衛隊が武力の行使を行う他国の軍隊に対して補給、輸送等の支援を行うことは、それ自体は直接武力の行使を行う活動ではありませんが、当該他国の軍隊が行う武力の行使への関与の密接性などから我が国も武力の行使をしたとの法的評価を受ける場合があり得るとするものであり、そのような武力の行使と評価される活動を我が国が行うことはやはり憲法第九条により許されない、そういう場合が前提でございますので、憲法第九条により許されないという考え方でございます。これは憲法上の判断に関する法的な評価の問題でございまして、他国がどのように評価するかという問題とは別でございます。

 我が国の活動が他国の武力の行使と一体化するかどうかの判断につきましては、従来から、戦闘活動が行われている、または行われようとしている地点と当該支援等の行動がなされる場所との地理的関係、二つ目として当該行動等の具体的内容、三つ目として他国の武力の行使の任に当たる者との関係の密接性、四つ目として協力しようとする相手の活動の現況等の諸般の状況を総合的に勘案して個々的に判断するというふうにしていたものでございます。

 しかし、自衛隊の支援活動を実際に実施する都度一体化するか否かの判断をするということは実際的でないことから、平成十一年の周辺事態安全確保法においては後方地域、それから平成十三年のテロ特措法及び平成十五年のイラク特措法におきましては同様のいわゆる非戦闘地域という要件を定めて、そこで実施する補給、輸送等の支援活動については、類型的に、他国の武力の行使と一体化するものではないという整理をしたものでございます。

 その考え方は、戦闘行為が行われている場所と一線を画する場所で行うという先ほど申し上げた地理的関係を中心といたしまして、活動の内容につきましては、補給、輸送といった戦闘行為とは明確に区別することができる異質の活動であること、関係の密接性につきましては、自衛隊は他国の軍隊の指揮命令を受けてそれに組み込まれるというものではなく、我が国の法令に従い、みずからの判断で活動するものであるということ、四つ目の協力しようとする相手の活動の現況につきましては、まさに現に戦闘行為を行っているものではないということを考慮したものでございます。

 今般の法整備におきましては、その後の自衛隊の活動の実経験、国際連合の集団安全保障措置の実態、実務上のニーズの変化等を踏まえまして、支援活動の実施、運用の柔軟性を確保するという観点から、これまでの、活動が行われる期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域という一体化の回避と安全の確保の両方を兼ねた仕組みを見直しまして、自衛隊の安全を確保するための仕組みとは区別して、純粋に憲法の要請である一体化を回避するための類型としての要件として、我が国の支援対象となる他国軍隊が現に戦闘行為を行っている現場では支援活動を行わないということ、それから、仮に状況変化によってそのような戦闘行為が行われることになる場合には直ちにそこでの活動を休止または中断するということで再整理したということでございます。

    〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕

重徳委員 懇切丁寧な説明をありがとうございます。

 結局、日本の自衛隊がどこまでのことができるのかということを、今回は特に非常に大きな法案なものですから、そこに乗じてどんどん広がっていくという感がやはり拭えないわけでありまして、この議論もずっとこの委員会でされているわけなんですけれども。維新の独自案におきましては、そういった本当にどこまでが必要なのかという実態のこともさることながら、法的に安定的に線引きをするということがやはり必要だろうということから、もっとシンプルにわかりやすい線引きを行っていこうということで、これまでどおり弾薬の提供などは認めないという法案になっているわけでございます。

 もう一点、再三議論になっておりますホルムズ海峡の機雷掃海の関係でございます。

 これは以前、中谷大臣に確認したとおり、海外派兵なわけでありまして、非常に大きな風穴をあけることになるわけでありますが、そこについて何遍聞いてもしっくりした説明がないというのが、説明不足、説明不足、わからない、わからないと言われている要因でございます。

 改めてもう一回聞きますが、今般の安保法制の見直しに必要だと言われている東アジアの安全保障環境の変化とホルムズ海峡での機雷掃海に何の関係があるんでしょうか。

中谷国務大臣 まず、先ほど発言の中で、非戦闘地域を引き継いでと発言しましたが、これは武力行使との一体化がないという原則を引き継いでいるということで、訂正させていただきます。

 今回の状況の変化におきましては、まず、パワーバランスが変化してきた。東アジア等におきましては、北朝鮮また周辺における中国軍やロシア軍の活動の活発化、東シナ海、南シナ海の中国の活動の活発化、中東、北アフリカにおける邦人のテロの犠牲など、ISILを初めとした暴力的な過激主義の台頭。これは東アジアのみに焦点を当てたものではなくて、あくまでも我が国を取り巻く安全保障環境が大きく変化しておりまして、今や脅威は容易に国境を越えてやってくる時代となっております。もはやどの国も一国のみでは自国の安全を守れないということも説明をしております。

 ホルムズ海峡を擁する中東地域を取り巻く安全保障環境もますます厳しさ、不透明性を増しておりまして、中東地域のみならず、国際社会の平和と安定を脅かす事態が生起しないとは断定ができない。東アジアから地理的に遠く離れたホルムズ海峡で起こった事態でも我が国の存立を脅かすといったものが起こり得るということでございまして、累次御説明はしておりますが、中東におきましては、エネルギー、石油等の供給が滞ることによって、単なる経済的影響にとどまらず、生活物資の不足、電力不足によるライフラインの途絶が起こることなど、国民生活に死活的な影響、すなわち国民の生死にかかわるような深刻、重大な影響が生じるかというようなことを総合的に判断いたしまして、ホルムズ海峡で機雷の敷設を契機として存立事態に該当する場合もあり得るというふうに考えているわけでございます。

重徳委員 ここは、恐らく永久に説明し切ることのできない部分だと思います。これは、一つ非常に細い線でつながっているホルムズ海峡の論、いわば限界事例のようなものなんですね。これを幾ら説明しようとしても難しいと思います。

 そして、もっと深刻なのは、非常にニッチというかナローパスと言われる、こんな事例が本当にあり得るのかという説明を延々と繰り返さなきゃいけないその背景には、実は、どうにでも解釈できてしまう法制上の問題点があると思うんです。というのは、わかりやすく言えば、典型的に説明されているホルムズ海峡の事例というのは、日本が武力攻撃を受ける可能性はゼロなんですよね、武力攻撃を受ける可能性は。ゼロなんだけれども海外派兵ということを行おうという、非常に細い線なんですよ。

 だけれども、これは一般的に考えてみれば、武力攻撃を受ける可能性はゼロ、もちろん他国はやられているんですが、日本が受ける可能性がゼロなのに、日本は海外派兵、つまり武力行使の目的を持って他国の領土、領海、領空に行くということが許される。これは、今のホルムズ海峡事例などというのは実際にこのとおり起こることはほとんど可能性が低いというふうに思いますが、ほかのいろいろな事例が考えられるわけでありますし、そして何よりも、必要最小限度の説明も何度もされていますが、新三要件における第三要件の必要最小限度という部分以上に、均衡性という点で問題があるんじゃないかと思うんです。

 武力攻撃を受ける可能性がゼロなのに我が国が、自衛隊が海外派兵、武力行使を行う、ここは明らかに均衡を失していると思うんですが、ここの部分はいかがお考えなんでしょうか。

中谷国務大臣 機雷の除去というのは武力行使の一環としてみなされて、停戦前の処理におきましては武力行使となります。

 したがって、我が国に対する武力攻撃が発生していない場合におきましても国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況であることを前提とするならば、敷設された機雷それ自体が国民の生死にかかわるような深刻、重大な被害を及ぼす元凶となっておりまして、機雷は一旦敷設されれば、除去しないとそこを通過することができません。被害を及ぼし続けて拡大していく性質を有していることから、できる限り早くこれを除去する必要性が高い。しかも、我が国の機雷掃海の能力が高いということで、これはそこに行かなければ除去できないということでございますので、我が国による自衛のための必要最小限度の武力の行使として機雷の掃海を行うことは許容されるのではないかということで、新三要件を設けまして、そういった条件に当たるものについては必要最小限度を超えることではないということでございます。

重徳委員 私は均衡性のことをお聞きしているんですが。

 武力攻撃は受けないんですよ、日本は。だけれども、他国に行って武力攻撃をするわけですよ。新三要件の中では受動的、限定的かもしれませんが、それは武力攻撃なんです。ここが明らかに均衡していないんじゃないかということです。その意味で、国際法上の定義上の必要最小限度ということを破っているんじゃないかということなんです。この点、いかがなんでしょうか。

岸田国務大臣 国際法上の集団的自衛権の要件としましては、武力攻撃を受けた国からの要請、同意とあわせて必要性と均衡性が要件として求められています。

 そして、均衡性の部分が必要最低限というふうに表現をされているわけですが、我が国が武力を行使する際には、こうした国際的な要件に加えて、憲法との関係において新三要件を満たすことが求められています。そして、新三要件における必要最小限というのは、我が国の存立そして我が国国民の命、暮らしに対する明白な危険が存在することを取り除くために必要最小限として求められるものとされます。

 ですから、国際的な要件に加えて、我が国の場合は武力行使をする際に新三要件という要件を満たさなければならない、必要最小限という要件も満たす必要があるというように整理をしております。

重徳委員 大臣、それは違うんですよ。今大臣がおっしゃるのは、均衡性に加えて新三要件とおっしゃいますが、新三要件の方は一応いいんですよ、受動的、制限的という説明を一応受け入れるとすれば。

 むしろ均衡性を満たしていないんじゃないかと言っているんです。均衡性に加えて新三要件を満たす必要があるとおっしゃいますが、新三要件の方はもういいんですよ。均衡性を満たしていないんじゃないか。武力攻撃を受けていない日本が海外に出かけて、海外派兵です、武力攻撃を加えることが国際法上の均衡性要件を欠いているんじゃないかという、こっちの問題なんです。いかがでしょうか。

岸田国務大臣 国際法上の均衡性で申し上げるならば、機雷というのは除去しなければいつまでもそこにとどまることになります。ですから、機雷を除去するということが均衡性との関係においても求められると考えております。

重徳委員 違うんです。それはずっとありますから、それだったら停戦後に粛々と処理をすればいいだけの話で。

 今議論しているのは停戦前の話ですから、明らかにいわば戦闘状態の中で、現に戦闘行為は行われていないかもしれませんが戦争は終わっていない、停戦していない、そこで武力行使、武力攻撃をするということが、武力攻撃を全く受けていない、受ける可能性のゼロである状態でもできる、これは理屈としておかしいじゃないかということを申し上げているわけであります。

 何かつけ加えることがありますか。今までの説明では、多分もう説明し切れないというふうに断じざるを得ません。

岸田国務大臣 正式な停戦が行われる前の段階において我が国の存立や国民の命に明白な危険が存在する、それを除去するために対応しなければならない、こうした事態は想定されます。こういった事態に対してしっかり対応することを考えなければならないのではないか、こういった議論を国会で今お願いしております。

 そして、国際法との関係で申し上げるならば、我が国の国民にとって死活的な深刻な影響が存在するわけでありますので、こうした事態に対応するということは国際法上も認められるのではないかと考えます。

重徳委員 これはホルムズ海峡の一点突破をされようとしていると思うんですが、実際には法律上は広く認めることになるんですよ。法律の枠組みなわけですから、ホルムズ海峡なんて一言も法律上は書いていませんから。だから、そんなにホルムズ海峡をやりたいんだったら、ホルムズ海峡だけのための、機雷掃海のためだけの法案を別途つくるべきであって、こんなに何でもありの枠組みをつくっておいて、具体的に想定できるのはホルムズ海峡の機雷掃海だけだと。しかし、その内容は明らかに均衡を失しているわけですよね。

 こんな法案をどれだけ説明しても、これ以上は多分もう無理だと思いますね。独自案をちゃんと提出いたしましたので、その土俵の上でもう一回議論する必要があると思いますが。

 大臣の手が挙がっていますので、一言。

岸田国務大臣 いま一度整理をさせていただきたいと存じますが、今、政府としましては、国の存立や国民の命や暮らしに明白な危険が生じた場合に対応することを考えなければならないのではないか、そうしたことから存立危機事態に対応することを考えるべきではないか、こういったことを申し上げております。

 そして、存立危機事態は公海を初めさまざまな場面で発生することが想定されます。ホルムズ海峡を唯一の例というふうにおっしゃいましたが、これは、海外派兵は原則として憲法上認められていない、その中にあって唯一、海外派兵が認められる例外の一つの例としてホルムズ海峡の例を申し上げているということであります。

 ですから、存立危機事態の全体の中のホルムズ海峡の例の位置づけということについていま一度整理させていただいた上で、ぜひ御議論をお願いしたいと存じます。

重徳委員 時間が来ましたので、次の同志に任せたいと思いますけれども、この均衡性の部分は今の説明では全く理解できません。また引き続き議論させてください。

 ありがとうございました。

御法川委員長代理 次に、足立康史君。

足立委員 維新の党の足立康史でございます。

 先ほども重徳委員の方から申し上げましたが、本日、維新の党として、衆法三本を衆議院に提出いたしました。昼過ぎ、十三時五十一分に当委員会にも付託をされたということでございまして、これからしっかりと、この維新の案もテーブルにのせていただいて、十分な議論、討議をしてまいりたい、こう思います。

 その際に、三本ございますが、そのうちの一つ、領域警備法案については民主党と共同で提出をすることになったわけでありますが、その過程で、民主党の枝野幹事長の方から非常識だ、こういう話がございました。

 我が党の執行部は大変大人でありますので、こういう問題について殊さら取り上げて反論をするということはしないようでありますが、私は子供でありますので、一言申し上げたいと思います。

 枝野さんは、これは報道ベースで、ちょっと確認しておりませんが、多分間違っていないでしょう、突然、非常識な提案があった、与党に手をかすようなことには協力できないと。与党に手をかす。与党に手をかしているのは誰でしょう。我々は対案をしっかりと出して、与党の案ではだめだ、維新の案として、維新の案でいくべきだという提案をしっかりとテーブルにのせているのが、どうして与党に手をかすことになるのか、全くわかりません。

 そして、これは間違っていますね、採決に応じる維新の姿勢に不快感。これは記者が言っているんですかね。採決に応じるなんて一切決めていません。我々は、きょう提出をした、そして昼過ぎに委員会に付託をされた維新の法案、維新の提案も含めて十分に議論が尽くされた上で、十分に議論を尽くした上で採決をする。当然応じますよ。しかし、十分な審議が尽くされないで採決に至るようなことが仮に、万が一あった場合には当然これは考えなあかん、こういうことであります。

 これぐらいにしますが、非常識というのは、我々維新の党は常識だと思いますよ。自分たちの考え方をしっかりとこの委員会に出して、多少手間取ったので、もうちょっと早く出せよという意見があることは承知をしているが、出さないよりましですよね。そして、しっかりと維新の案を出して熟議を求める、熟議をされれば採決をする、これは当たり前のことであって、我々維新の党が今取り組んでいる取り組みこそ常識である、こう申し上げておきたいと思います。

 きょう、この委員会のトップバッターで、お名前は申し上げませんが、公明党の、公明党というのも言うつもりはなかったんですが、トップバッターの与党の委員が……(発言する者あり)ちょっと何かうるさいですね。きょうは与党の委員が……(発言する者あり)ちょっとうるさいな。

御法川委員長代理 静粛に願います。

足立委員 与党の委員が集団的自衛権と個別的自衛権について議論をしました。ニカラグア判決なんかも取り上げて、トップバッターの委員の方が集団的自衛権と個別的自衛権の話をされました。私は、非常に間違っていると思います。

 特にニカラグア判決の議論については、もちろん政府の見解はもう累次ここでも議論されていますから多少承知をしていますが、ニカラグア判決が攻撃の対象によって集団的と個別的を分けているかのような前提で議論を展開されたように私はお見受けをしまして、大変不本意であると思います。きょうトップバッターの委員の方がなされたような議論が続くようでは、これは熟議をしたとは言えないと思います。

 我々は、この議論をきょう質問します。きょう質問しますが、このような議論がしっかりと、すなわち、維新の案がどうして出てきたのかということを十分にこのテーブルの上で理解していただいた上で、それでも国民の選択として国会が政府案を選ぶということであれば納得がいきますが、あたかも維新が提出をしている法案のパッケージが国際法上認められないかのような論旨を展開されたことについては、それは間違っているということを申し上げたいと思います。

 それで、まず、中谷大臣、きょう資料をお配りしている中で、二枚目にベン図が描いてあります。これは実は、昨年の七月、まだ中谷大臣が大臣に着任をされる前、自民党の副幹事長でおられたときに、不肖私が御一緒させていただいて、ニコ生の討論番組に参加をしました、各党代表に聞く集団的自衛権。

 そのときに、今、多少これはモディファイされていますが、こういう重なりのベン図をお示しして、武力攻撃の対象が我が国か他国かで個別、集団というのを基本的には分けているが、この「憲法が許容する自衛の措置」については、よりこれが左に膨らんでいっているわけでありまして、この部分を一体どういうふうに表現するかということについては、我が党は自衛権の再定義と言っていますが、これについては、私たちは、ここをどう呼ぶかは余り重要じゃないと思っているんです。我々が重要だと思っているのは、憲法がどこまでを許容しているかということを議論したいんですね。ところが、この委員会の議論の半分はどうも個別的自衛権、集団的自衛権の話に足をとられているように思います。

 中谷当時の副幹事長はこの図を見られて、なかなかいい絵じゃないか、こういうコメントをいただきました。改めてコメントをいただきたいと思います。

中谷国務大臣 一年前の議論でございましたが、よく研究をされた図であるというふうに思っております。

足立委員 ありがとうございます。

 これは、ベン図ですから限界がありますが、政府が当時おっしゃっていることを紙にするとこうなるんじゃないですかと描いたもので、決して私の意見じゃないですよ、政府が言っていることはきっとこういうことだよなということであります。

 そもそも、集団的自衛権、個別的自衛権ということについては、例えばきょうも資料でつけさせていただいている安保法制懇の資料なんかでも、例えば三ページ、これはもう皆さん見飽きていると思いますが、必ずしも憲法解釈については、自衛の措置をめぐる憲法解釈については「戦後一貫していたわけではない」、こういうことも書かれています。

 私は、私はですよ、これは個人ですが、私個人は、何か、あたかも憲法が個別的自衛権しか認めていないかのような見解や、あるいは保持はしているけれども使えないといった議論は、六〇年代後半あるいは七二年も含めて、当時の国対的なというか国会の中で、当時の社会党に配慮し過ぎてできた見解であって、必ずしも普遍性はない、こう思っていますが、まず大臣、どうでしょうか。

    〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕

中谷国務大臣 この四十七年の見解におきましては、憲法九条の議論の整理ということでされたわけでありまして、政府といたしましては、この四十七年の政府見解は、これまでの国会における議論の積み重ねに留意して政府の公式的な見解としてまとめられたものでありまして、この見解と論理的整合性、法的安定性を確保していくことは、現行憲法下で法整備を行う以上、今回の平和安全保障法制の作成に当たって当然であるということで、当時、政府が取りまとめをした見解であるというふうに認識しております。

足立委員 これは法制局長官もぜひ一言いただきたいんですが、もちろん時々の、今大臣がおっしゃったのが模範解答であり、当然、法制局長官はなおさら、これまで、当時のそういう環境の中でつくられた見解である、これを否定するものではないと思うし、必要もないと思いますが、この国会で一連の議論が深まらない理由はこれなんですね。結局、憲法解釈の整合性を保つのに一生懸命になっているんです。

 しかし、政府みずからが今回おっしゃっているように、安全保障環境は変わった。安全保障環境が変わる中で、憲法の解釈が変わることはあっていいんでしょう。あっていいのであれば、わざわざ一生懸命過去の見解をこねくり回してその論理的整合性を確保することに注力するよりも、もっと実質的な安全保障政策について、民主党の長島委員がよくやっていらっしゃるような実質的な安全保障政策に関する議論をやるべきだと思います。これは大臣に申し上げているわけですが。

 法制局長官、従来解釈からのある種の断絶、これはもう認めていただいた方がすっきりすると思いますが、横畠長官、どうですか。

横畠政府特別補佐人 従来解釈からの断絶ということで何を言われているのかですけれども、やはり日本国憲法といいますのは、立憲主義、すなわち、主権者たる国民がその意思に基づきまして憲法において国家権力の行使のあり方について定め、これにより国民の基本的人権を保障するという近代憲法の基本となる考え方に立って制定されたものであります。

 また、憲法第九十九条は、日本国憲法が最高法規であることに鑑み、天皇、摂政、国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、憲法の規定を遵守するとともに、その完全な実施に努めなければならない旨を定めております。

 そういうものでございまして、憲法の規範性を無視する便宜的な解釈というのは許されないわけでございます。行政府としてその権限を行使する際に、当然、憲法を適正に解釈していく必要があると考えております。

 一般論でございますけれども、憲法を初めとする法令の解釈は、当該法令の規定の文言、趣旨等に即しつつ、立案者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮し、または、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意して論理的に確定されるべきものであり、政府による憲法の解釈は、このような考え方に基づきそれぞれ論理的な追求の結果として示されてきたものであって、諸情勢の変化とそれから生ずる新たな要請を考慮すべきことは当然であるとしても、そのような考え方を離れて政府が自由に憲法の解釈を変更するということができるような性質のものではないと考えております。

 仮に、政府において憲法解釈を便宜的、意図的に変更するようなことをするとすれば、政府の憲法解釈、ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねないと考えておるところでございます。この一般的な考え方は全く変わっておりません。

 今回の新三要件につきましては、このような論理的な追求の結果としてお示ししているところでございます。

足立委員 きょう配付しています資料の一枚目は、野党の人間が政府のアドバイザーの方の論調を出すのもちょっと気が引けますが、外交評論家の岡本行夫さんの記事であります。私、通産省の米州課というところにおりまして、ちょうど入れかわりぐらいですが、当時北米一課長でいらっしゃった、そのちょっと後に、カウンターパートにおったことがあるわけであります。

 この真ん中からちょっと後段に、「カラスに交じったグレーのハト」という紹介があります。これは、憲法論議とも絡めて、白いハトとカラスを、七二年当時に内閣法制局は、白いハト以外は全てカラスだ、こう整理をして見解を述べていた。しかし、実はそのカラスの中に、日本一国では対処できない日本人の生命財産の保護という鳥が、色は白ではないが、グレーだが、れっきとしたハトが含まれていた、このハトをカラスを入れているかごからしっかりと取り出す作業が今回の取り組みであると政府の代弁をしていらっしゃるわけでありますが、これは、長官、どうでしょう。この例えは的確でしょうか。

横畠政府特別補佐人 この問題につきましては、いろいろな学者の方、評論家の方、いろいろ御意見があるわけでございますけれども、その一々につきましてコメントはいたしません。

足立委員 恐らくこの岡本さんの例えが余りによくできているので認めにくかったのかもしれませんが、大臣、これはどうですか。

中谷国務大臣 委員がつくられたこの図に戻りますけれども、まさにこの図のようなことを言っているわけでありまして、政府の方も、今回の法整備に当たりまして、集団的自衛権の行使の一部、これは限定容認しましたが、それはあくまでも自衛のための必要最小限度の措置に限られる。集団的自衛権の行使の一般を認めるものではなくて、他国の防衛それ自体を目的とする行使は認められませんということで、あくまでも国民の命と平和な暮らしを守ることが目的でありまして、三要件を示したわけでございます。

 岡本さんの例えと先生のつくられた図、政府の考え方は考え方といたしまして、非常に共通のことを言っているようなところもあるのではないかというふうに思っております。

足立委員 今回の……(発言する者あり)何かちょっといろいろおっしゃっていますが、ほっておいて、維新の党は本日、三つの法案を提出しました。なぜ我々が領域警備法にとどまらずこの三つの法案をフルパッケージで提出したかといえば、一定の安全保障環境の変化を重大に受けとめているからであります。

 必ずしも全ての認識が一緒かどうか、これはわかりません。

 例えば、安保法制懇の資料でも、これは四枚目につけてありますが、さまざまな安全保障環境の変化というものが列挙されています。いずれも否定をするものではありませんが。

 私は、これはまた個人的な意見でありますが、中でも「日米関係の深化と拡大」、こういうここに書いてある技術の問題、あるいは国家間のパワーバランスの問題、いろいろな問題がありますが、これは質的な変化というよりは状況が変わっているということでありますが、抜本的に質が変わったとは私は思っていないんです。

 しかし、同盟国であるアメリカ軍を初めとする他国軍と、今では日米同盟ですからアメリカ軍としっかりとチームワーク、一緒に連携をしながら日本の防衛を実現していかねばならない状況が強まっているというのが、従来は日本一国で防衛をするということが基本的には、概念的には衝になっていた、それに対して今回の議論ではチームワーク防衛、そういうものが重要になってきているという安全保障環境の変化を捉まえて少なくとも維新の党は今回の法案を出しています。

 また岡本さんの紙に戻ると、岡本行夫さんの紙の1と書かせていただいているところに、「七二年に「集団的自衛権」として一括りにされたものの中には、日本人の生命と財産を守るための自衛権も混在していたのである。」と。先ほど大臣とお話をしたことであります。なぜ混在をしていたかということについては、ちょっと見解は変わるかもしれませんが、私は、当時の自民党にも責任がある、こう思うわけであります。それはさておいて、その後に「日本独力では無理なので他国と共同して初めて可能となる自衛行動」、こういうふうに岡本さんは書かれています。

 まさに我々がチームワーク防衛ということで今回の法案を提出した背景となる立法事実でありますが、この点の重要性、大臣から、チームワークでしっかりとこの日本を防衛していく必要がある、日米安保条約でありますから当然ですね、その点、改めて一言いただければと思います。

中谷国務大臣 科学技術の進展とかパワーバランスの変化によりまして、他国で起こった事象におきましても我が国の安全に重要な影響が及ぶこともあるわけでありまして、もはや一国のみで国を守ることはどの国もできない、そういう時代になっておりますので、委員のおっしゃる意見は非常に共感する部分が多いということでございます。

足立委員 そういう中で我々はきょう法案を出したわけでありますが、きょうお配りをしている資料の六と七に我が党の考え方の一端を御紹介しております。

 六については、いわゆる政府案の存立危機事態と維新案の武力攻撃危機事態を並べて併記させていただいているわけでありますが、それをどう整理するかというときに、七ページ目に私個人の整理を書かせていただいています。すなわち、大きく言うと三つのエリア、レイヤーがあります。

 一つは、我が国への攻撃に対する対処であります。これはまさに個別的自衛権であって、現行法制の中で自衛隊の皆様が取り組んでくださっている我が国への攻撃に対する対処であります。

 それに対して今回の我々の維新案は、他国への攻撃であっても自国防衛のために対処する必要があるケースはあると、まさに政府がおっしゃっているのと類似の提案をさせていただいています。

 問題は政府案でありまして、政府案については、他国への攻撃を端緒とするオペレーションについても視野に入れていらっしゃるのはわかりますが、累次各委員からも指摘があるように、その先に政府・与党案では他国防衛も含んでいるんじゃないか、こういう指摘が、これはどうしてもまだ払拭できていません。

 この六ページ目の存立危機事態あるいは武力攻撃危機事態の第一要件、第二要件をごらんになって、政府・与党案がいわゆる典型的な集団的自衛権、すなわち自衛のための他国防衛、ここに踏み込んでしまっているのではないかということをどうやって払拭できますか。これは端的に、防衛大臣、お答えください。

中谷国務大臣 これは三要件で担保しておりまして、存立危機事態というのは、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態ということで、この判断基準としては、他国に対する武力攻撃が発生した場合においても、そのままの状況のもとでは、武力を用いた対処をしなければ国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶということが明らかな状況のときに該当するということで、あくまでも自国の防衛のための措置であるというふうに認識をいたしております。

足立委員 我々は、維新の党は、やはりそれはわかりにくい、新三要件を条文に落とした今の政府・与党案ではわかりにくいと考えて、やはりこれは憲法適合性を十分に、要は条文で、法理として、政府の決意じゃないですよ、政府の見解じゃないですよ、あくまでも法律案としてしっかりと憲法適合性を明確にする、そういう観点から、武力攻撃危機事態のところで、我が国の防衛のために活動している外国の軍隊に対する武力攻撃ということで、いわゆる事態の認識に加えて、ある種の行為の態様として、我が国の防衛のために活動している外国の軍隊に対する武力攻撃ということをかませてあるわけであります。もちろん第二要件も、我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険、こういうことを書かせていただいているわけです。

 今手元にお配りをしていますこの維新案、先般のテレビ入りの質疑の際にも御紹介がありましたが、この六ページ目に維新案を紹介しています。逆に、この維新案ではできないことがありますか。ホルムズはちょっと置いておきましょう。ホルムズ以外で、維新案では対処できない事態はどういうことが考えられますか。

中谷国務大臣 この維新案の提案につきまして、武力攻撃危機事態ということで、これは、条約に基づいて我が国周辺の地域において我が国防衛のために活動している外国軍隊に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国に対する武力攻撃が発生する明白な危険があると認められるに至った事態という点において、政府案、存立危機事態とは異なっている部分でございます。

 存立危機事態については、必ずしも、我が国に対する武力攻撃が予測をされるに至った、または我が国に対する武力攻撃が発生する明白な危険が切迫しているといった観点から判断するものではないんですが、現実の安全保障環境を考えれば、存立危機事態に該当するような状況は同時に武力攻撃事態等にも該当することが多いと考えられますけれども、存立危機事態と武力攻撃事態等はそれぞれ異なる観点から状況を評価するものでありますので、存立危機事態に認定される場合が同時に我が国に対する武力攻撃が予測あるいは切迫しているとは認められないこともあり得るという点においては相違があるわけでございます。こういった点におきましても、きょう正式に提案をされたということでございますので、今後協議をしてまいりたいと思っております。

足立委員 いや、だから、申し上げているのは、その整理は、解説をいただきましたが、解説をいただかなくても私もわかっています。具体的にどういうケースが該当しますかと申し上げたんです。

中谷国務大臣 先ほどお話をいたしましたけれども、存立危機事態に認定される場合が同時に我が国に対する武力攻撃が予測、切迫しているとは認められないということで、具体的にどのような場合があり得るかということについて一概にお答えすることは困難でございますが、それぞれの状況に照らして、新三要件に合わせて、政府が全ての情報を総合して客観的、合理的に判断する。

 それで、ホルムズ海峡ですね。機雷が敷設される事態が存立危機事態であって、武力攻撃事態等でないという場合として認定されますが、いずれにせよ、具体的にどのような場合があり得るかということについて一概にお答えすることは現時点では困難ということでございます。

足立委員 いやいや、一概に答えていただかなくてもいいので、一例を答えてください、ホルムズ以外で。

中谷国務大臣 現時点で想定をいたしておりますのは、ホルムズ海峡の機雷の除去ということでございます。

足立委員 そうすると、我が党は本日こうして提案をさせていただいているわけでありますが、ホルムズを除けば我が党案でも問題ない、こういうことですね。

中谷国務大臣 現在、具体的にお示しをする事例といたしましては、ホルムズ海峡への敷設ということで想定をいたしております。現時点におきましては、ホルムズ海峡への機雷の敷設の事態が想定をされるということでございます。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 足立康史君、済みません、もう一度質問願います。

足立委員 改めて御質問申し上げますが、きょうお配りをしているこの資料の中の六ページに、既にこの委員会に付託をされている、ただ、付託をされてもごらんになっていないというような話もあり得るので、ここに政府案と維新案の規定ぶりを正確に、重要部分を抜き出して書かせていただいています。

 存立危機事態に係るケースについては、既に政府もいろいろなところで説明をされてこられて、この委員会でも議論になってきています。

 そういうケースについてずっと議論されてこられた中で、我々維新の党は、端的に言えば、この規定でもできるよねと思っているんです。我々は、この維新の案の武力攻撃危機事態という形で、憲法適合性に配慮した、国民の皆様にわかりやすいように条文を提案しているわけです。もしこの条文で読めないものがあるのであれば、それをやるかどうかというのは国会の判断です。しかし、そもそも、この間にどういうケースが落ちるかがわからないと、国会というか国民の皆さんもわかりません。

 だから、私が申し上げているのは、要は、政府・与党案では対応すると言われているケースの中で、武力攻撃危機事態、維新案ではできないケースは何ですかと聞いているんです。これでいいですか。

中谷国務大臣 本当に私も政府で責任のある立場でございまして、維新の提案等について、まだ条文を拝見いたしておりませんので、余り無責任なことは言えないわけでございます。

 報道等で承知した上で申し上げますと、維新案というのは、アメリカなどの条約等に基づいた国でなければ対応できないということでございますが、政府案は、アメリカ以外におきましても、我が国の存立にかかわる場合におきまして、その存立の認定においては該当できるということでございますので、この点は少なくとも違っているんじゃないかというふうに思います。

足立委員 そうすると、我々の維新案には、条約に基づき我が国周辺の地域において我が国の防衛のために活動している外国の軍隊に対する武力攻撃、こう書かせていただいていますが、今大臣が御紹介くださったのは、条約に絡む点は一つあるよなと。以上ですか。

中谷国務大臣 あと、我が国周辺というところも相違がありますが、本当に私も責任ある立場でありますので、正式に条文等を拝見させていただいた上で、きょう御提案があるということでございますが、それからの回答とさせていただきたいと思います。

足立委員 もちろん責任あるお立場だからしっかりと維新の案についても検討いただく必要がありますが、やはりこれもここが肝だと思うんです。

 要すれば、きょう冒頭、与党の委員について、私、抽象的な概念について異論がある、こう申し上げました。もちろん概念についてもしっかりと議論をする必要があるが、少なくとも、個別だ集団だという、いわゆる神学論争と言っては怒られますが、そういうことに拘泥することは余り価値的ではない、こう申し上げているわけです。

 むしろこの国会で、この国会の委員会の場で十分に議論を深めるべきは、ケースです。具体的にどういう立法事実があるか、どういう具体的に対応する必要があるからこういう立法をしているんだということがないと、ではもう維新案でいいや、こういうふうになるわけであります。

 ぜひこの委員会の場で、私はきょうしっかりと通告もし、そして付託もされている、事前に、事前というかこの場でもこうやってお示しをしている、この場でお答えをいただけないのは大変不本意でありますが、責任あるお立場で、少なくとも金曜日にはまたしっかりとケースについて、維新の案でできないことで政府の案でならできる、それが必要だ、そういう立法事実があるということを改めて質疑をさせていただきたいと思います。

 最後に、もう時間がなくなりましたが、六十日ルールの話がございます。

 私は冒頭も申し上げましたように、民主党の枝野さんは今回のことで維新の党が非常識だとおっしゃいましたが、先ほど申し上げた、我々が常識だと。しかし、我々も非常識なところがあるんです。

 今この国会において、きょう維新が出した法案、恐らく廃案になって、ちょっと聞いてくださいね、廃案になって、来週にも、近いうちに与党が採決をするということが、恐らく多くの方が持っている常識かもしれません。

 しかし、我々は本気で、これは政府・与党に申し上げておきます、きょう三本の法律を提出しました。絶対にこれはただでは終わりません。我々は、願わくば我々が出したこの提案について、しっかりと実現をさせるために提案しているわけでありまして、これについては、誰から、国会の中のどちらから非常識だと言われても、我々の提案を実現するために最後まで闘い抜くことをお誓いし、大臣、最後にしっかりと審議を尽くすことだけ決意をおっしゃっていただいて、質疑を終わりたいと思います。

中谷国務大臣 まさに安全保障におきましては、政党の垣根ではなくてやはり超党派の部分もあるかと思いますし、よき案については与党も野党もないわけでございまして、しっかりと提案をいただいたことに対しては敬意を表しますし、また今後とも国会の委員会の場で議論を続けてまいりたいと思っております。

足立委員 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、篠原豪君。

篠原(豪)委員 維新の党の篠原豪でございます。

 当委員会で再び質問させていただきます。よろしくお願いします。

 審理の空転と採決のタイミングについては、きょう質問がありましたので後ほどに回させていただきまして、質問通告している後ろの部分からお伺いしたいと思います。

 まず初めに、定義について厳格にしていきたいと思います。

 個別的自衛権と集団的自衛権の区別について、五月二十八日の江田前代表からの質問に対して岸田大臣は、政府が国際法の特定の学説を支持しているわけではないというふうにしていましたけれども、六月十九日の私の質問に対して岸田大臣は、政府の定義は国際法上確立した考え方というふうに表現が変わっています。このことについての理由について、まずお伺いいたします。

岸田国務大臣 まず、五月の答弁についてですが、質問のあった集団的自衛権に関するいわゆる他国防衛説と死活的利益防衛説について、政府としていずれか一方の説をとっているわけではない、このように述べた次第であります。

 そして、六月の方の答弁は、国際法上の個別的自衛権と集団的自衛権は、発動の要件が自国に対する武力攻撃か他国に対する武力攻撃かという点において明確に区別される、こうした国際法上確立した考え方を述べた次第であります。

 五月の答弁は、政府として、質問において言及された二つの説いずれかをとっているわけではないと述べたわけでありますし、国際法に関する一切の説を支持していないということを述べたものではありません。

 今申し上げましたように、御指摘があった二つの説についてはどちらもとっているものではない、しかしながら、集団的自衛権と個別的自衛権、この区別においては国際法上確立した考え方がある、それぞれ説明させていただいた次第であります。

篠原(豪)委員 同日の私の、個別的自衛権、集団的自衛権の定義に関して岸田大臣は、国際司法裁判所にも同趣旨の記述があるとして、イラン・オイルプラットホーム事件及びニカラグア事件を御指摘されました。果たしてこのとおり国際司法裁判所は定義を本当に示したのかということを、やはり確認したいというふうに思っています。

 五月二十八日の江田前代表の質問で秋葉国際法局長は、ICJは当該ケースについて最終的な国際法上の判断権限を有してはいるが、国際法上一般について世界で最終的な判断権限を持っているわけではないと答弁されています。

 まず、このイラン・オイルプラットホーム事件は、イランからの攻撃に対して石油精製施設を二度攻撃した事件です。一度目のミサイルによる攻撃に対しての石油精製施設への攻撃は、均衡性は認められるものの、反撃が三日後であったことから必要性が欠けるとして個別的自衛権の成立を認めませんでした。二度目の機雷の敷設による侵害に対しての石油精製施設への攻撃は、反撃が四日後であり、また機雷敷設への反撃が石油精製施設ということから均衡性、必要性ともに認められないとしたものです。あくまでも個別的自衛権の必要性、均衡性が満たされるかどうかが争われた事案です。

 もう一つのニカラグア事件については、集団的自衛権が成立するためには、武力攻撃の存在と武力攻撃の被害国による援助の要請が必要であるところ、ニカラグア近隣諸国であるエルサルバドル、ホンジュラス、コスタリカからの要請が認められないとして集団的自衛権の成立を否定した判決です。

 この二つの判例は、いずれも個別的自衛権と集団的自衛権の境が問題になった事案ではありません。争点でないものの記述が仮にあったとしても、それは傍論ということであって、判決内容として決定されるものでないことは、秋葉国際法局長が答弁したのだというふうに考えています。

 そこで、お尋ねします。

 これまで個別的自衛権と集団的自衛権の境が争点となって判断が下された国際司法裁判決は存在するのかどうか、伺いたいと思います。

秋葉政府参考人 御答弁いたします。

 オイルプラットホーム事件につきましては、委員御指摘のとおりだと存じます。

 ニカラグア事件判決でございますけれども、判決はパラグラフでさまざまな事柄を論じているわけですが、そのパラグラフの百九十五というところでは、個別的自衛権の場合、当該国が武力攻撃の被害国となっていることが条件である、集団的自衛権においてもこの要件が不要となるわけではないというふうに、武力攻撃という要件について共通性があるということを論じた上で、集団的自衛権については、さらに被攻撃国による支援国に対する要請が必要であるというふうに議論を展開していっている次第でございます。

 したがって、私どもとしては、ICJは個別的自衛権と集団的自衛権について明確に区別をしているというふうに考えておる次第でございます。

篠原(豪)委員 そのことについては、本当にそうであるかということをこれからも議論しなければいけないというふうに考えております。

 何が集団的自衛権であるかという問いに対して、ニカラグア事件の定義というのは、個別的自衛権の共同行使、他国を防衛する権利、そして他国への攻撃に係る自国の死活的利益を防衛する権利、この三つの中で裁判所は二番目を採用したのだろう。そこから言えるのは何かということで考えがいろいろあって、今の政府案というのは恐らく、他国への攻撃に係る自国の死活的利益を防衛する権利、こういったことに近いのではないかというふうに考えています。

 仮に、判決の話もありましたけれども、判決があってもなくてもということではないんですが、なかったとしたときに、学説や慣行があるというのであるならば、それは政府のこれまでの主張を否定することになってしまいます。政府はずっと、法律論は学説でなく裁判所が決めるものだとして砂川判決を示してきました。憲法学者が何人違憲だとしても、これは最終的には裁判所が決めるものだと言い続けてきたわけです。

 そうであるならば、国際裁判所ではこの点が本当に争われた事件があるのかどうか。もしまだちゃんとないということであれば、個別的自衛権と集団的自衛権の定義についても同じではないかというふうに考えています。また、当該ケースについて判断するのみで、国際法局長は、国際法上の一般について世界で最終的な判断権限を持たないということも言っています。国際司法裁判所は傍論でもこの区別について言及しているのかどうかですけれども、要するに、政府の主張が国際法上確立しているという事実が本当にあるのかどうかということであります。

 砂川事件の判決を前回の私の質疑のときにも取り上げさせていただきましたけれども、政府としては、憲法の違憲であるか合憲であるかということを判断するのは裁判所であると。ただ、砂川判決においては、これはもう取り上げたように、日本の裁判所においては具体的な違憲審査権を持っていても抽象的な違憲審査権を持っていない。こういったことも含めて考えると、国際法上の考え方も、判例が仮にこじつけになってしまって解釈されている危険性があるのであれば、これは困っていくんだろうと思います。

 維新の党が提示している解釈手法は国際法上否定されているわけではないというふうに考えます。それどころか憲法に合致する解釈手法であって、きょう法案を提出させていただきましたけれども、政府のような拡大解釈による暴走の可能性を食いとめ、一方では国際環境の変化に対応しているものであるというふうに考えています。

 別の観点からもう一つ、政府の維新の対案に対する考え方ということになるんでしょうか、質問させていただきます。

 六月十九日に私の質問に対して岸田大臣が、独自の判断で個別的自衛権を拡大することは国際法上違反することになりかねないと答弁されました。これは、ニカラグア事件で要請のない集団的自衛権を違法としたことを前提にしているものだというふうに考えています。集団的自衛権を個別的自衛権として行使すると、要請がない集団的自衛権と指摘されて、違法と認定されるというふうに考えたのかというふうに思います。

 そこで、お尋ねしますが、他国から日本に対してミサイルが発射された場合、米国は防衛することになるというふうに思います。その際、米国は何か要件があってそれを撃ち落とすことを始めるのか、それとも何の要件もなく行動を始めるのかということについて、それが可能かどうか、お伺いいたします。

岸田国務大臣 今委員の示された例でいくならば、日米安全保障条約が存在いたします。ですので、現行の日米安全保障条約第五条においては、日米両国が我が国の施政下にある領域におけるいずれか一方に対する武力攻撃が自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処することをそれぞれ宣言しております。

 ですので、御指摘の事例が今の第五条に該当する場合、弾道ミサイルの迎撃を含めた米国の行動は同条に基づく対処行動として説明されることになると考えます。

篠原(豪)委員 米国にとっては日本を防衛する集団的自衛権の行使ですから、日本からの要請が必要になるはずですけれども、維新の党も、共同防衛に当たっている米艦は不断に自衛艦と連絡をとり合っているので、政府が集団的自衛権であると主張するものを維新の党が自国防衛のための自衛権と認定したところで、国際法上違反になることはあり得ないというふうに考えています。

 自衛権を行使した後の国連への報告も、慣行ではこれが個別的自衛権であるのか集団的自衛権であるのか区別して行っていません。要するに、国際法上違反でなければ、その武力行使を個別的自衛権として行うか集団的自衛権として行うか、こういったことは各国の憲法の規定等に委ねられるものとも言えます。

 維新の党は、自衛権の原点に戻り、我が国を防衛するためであることを明確にし、自国防衛のための自衛権の成立要件を定めました。多くの解釈論に委ねる政府案と違うということを申し上げておきます。維新の党は、国際環境の変化を見きわめながら、合憲の範囲内で法整備を行いました。これによって政府案が抱える問題を払拭しているというふうに考えています。

 ここからは、少し個別的な話をさせていただきたいというふうに思います。

 新三要件の解釈について、これまで多数の質疑があって、そのたびに質問の設定が異なることから、例えば自衛隊のリスクがふえるふえないということも含めて、答弁も何というか粗いというか、持って回った言い方になっている印象があって、結果として、聞く側にも聞かれる側にも余計に混乱を招いているように思います。これではなかなか国民の理解が深まらないんだろうというふうに考えています。

 そこで、維新の党は、独自案を本日提出させていただきましたこともありまして、今言ったことも含めて個別的に、双方の違いを十分明確にする意味でも、これまでの議論を少し条文に即して明らかにしていくことが必要だと思っています。当たり前のことを尋ねることもあるかもしれませんが、御容赦いただければと思います。

 まず、新三要件の解釈を確認させていただきたいと思います。

 第一要件については、ここには、我が国に対する武力攻撃が発生したこと、また我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があることとなっています。

 この政府案の要件は、これまでも指摘されているように、読み方によってはいかようにもとれるんじゃないか。しかし、本来、法律は政府が異なっていても普遍性を有しなければいけません。ましてや、自衛権の発動という国家の重大事態ですから、その可能性があれば国民にわかりやすくなければならないのは当然のことだと考えています。

 まず、政府案の新三要件の第一要件が我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生しと記載されていますけれども、どの場所にいる他国なのかについて制限がありませんので、これは地球の裏側にいる他国も該当することになるんじゃないかというふうに言われます。

 これに対して、維新の党の独自案は、条約に基づき。今、国際法上の話がありましたけれども、我が国周辺の地域において、日米安保のように我が国の防衛のために活動している外国の軍隊に対する武力攻撃が発生しとして、我が国周辺の地域に限定したものであって、地球の裏側まで守る必要があるというふうには考えていません。なぜならば、これは前回の質疑でも指摘させていただきましたけれども、自衛隊と、派遣される方々だけじゃなくて国民の皆さんを、無用な、テロ等の危険に巻き込むリスクが高まるのではないかと。

 さらに、維新の党案は、地域を制限しただけではなくて、この第一要件部分の他国については条約に基づき。まさに先ほどおっしゃられましたように、条約に基づいて活動する他国という制限をつけました。一方、政府案はこの限定がされておりません。

 そこで、政府案の我が国と密接な関係にある他国というのはどういう判断基準で定めるのか、もう一度お伺いいたします。

中谷国務大臣 第一要件に言う我が国と密接な関係にある他国につきましては、一般に、外部からの武力攻撃に対して共通の危険として対処しようという共通の関心を持ち、我が国と共同して対処しようとする意思を表明する国を指すものと考えております。もちろん、日米同盟の存在及びこれに基づく米軍の活動は、我が国の平和と安全を維持する上で死活的に重要であり、同盟国である米国は基本的にこれに当たるであろうと考えております。

 他方、米国以外の外国が我が国と密接な関係にある他国に該当する可能性は現実には相当限定されると考えられますけれども、いずれにしても個別具体的な状況に即して判断されることになります。

 具体的にどのような国が我が国と密接な関係にある他国に当たるかにつきましては、あらかじめ特定されているものではなくて、武力攻撃が発生した段階において、個別具体的な状況に即して判断されるものではないかと考えております。

篠原(豪)委員 維新の党は、しっかりと我が国の防衛のために条約を前提にしていれば要件としては明確であるというふうに、条約締結国に制限しています。要件が厳格化されて、条約締結国として明らかな他国が攻撃を受けることで我が国が攻撃を受ける蓋然性が高まれば、自国を守る必要性から自衛隊の出動も考えられるわけです。しかし、政府案ではこういった基準が明確にされていないというふうに思います。

 そこで、改めて、条約が締結されているという明確な基準が必要だと思うのですけれども、どうしてこういった制限を今回つけなかったのか、その理由を伺います。

岸田国務大臣 先ほど防衛大臣からありましたように、我が国と密接な関係にある他国については、一般に、外部からの武力攻撃に対し共通の危険として対処しようとする共通の関心を持ち、我が国と共同して対処しようとする意思を表明する国、このように考えております。

 そして、事前にどの国がこれに当たるのか、これは確定しているものではありませんが、その中で、委員の方から、まず条約を結ぶべきではないか、こういった御指摘がありました。

 ただ、条約を結ぶということになりますと、条約を結ぶという観点から、それぞれ義務を定め、さまざまな観点からそれぞれの行為を定めなければなりません。条約を結ぶということになりますと、さまざまな要素を総合的に勘案して、また慎重な検討が求められるということになります。

 そして、条約を結ぶということになりますと、政府案におきましては、密接な関係にある他国との関係において新三要件を満たすかどうか、これはあくまでも我が国が判断することができます。その点につきましても、条約を事前に定めるということにおいては検討しなければいけない課題も生じる可能性があります。

 こういったことから、我が国はあくまでも新三要件を定め、それを満たした場合に武力の行使を考えていく、そしてあくまでも我が国が主体的にこれを判断する、こうした考え方を重視している次第であります。

篠原(豪)委員 ありがとうございます。

 先月の質疑から私も、改正法で重要な変更点は、安保条約の効果的な運用に寄与することを中核とする外国という曖昧な言葉を法文に付加したことで米国以外の国への支援が可能となり、安保条約と直接関係のない活動が生じるということがるる言われてきていますけれども、ここの点はしっかりやはり考えないといけないというふうに思っています。このような点からも、我々としては条約が締結されているだけでは、今お話を聞きましたけれども、足りないとも考えているんです。

 維新の党案は、さらに、我が国周辺の地域において我が国の防衛のために活動している外国の軍隊というふうに制限することとしました。我が国の防衛のために活動しているからこそ、攻撃を受ければ我が国が直接攻撃されるというふうに考え得るからです。

 政府案は、密接な関係にある他国であれば、我が国の防衛のために活動していない場合であってもこれが攻撃を受ければ自衛権を発動するというふうに読み取れます。なぜそうなのか、そうでないのか、その理由をお聞かせいただければと思います。

中谷国務大臣 我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃のみによって武力の行使が容認されるわけではなくて、武力攻撃の発生によって我が国の存立が脅かされて、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるということが要件として必要でございます。

 その上で、第一要件に言う我が国と密接な関係にある他国については、一般に、外部からの武力攻撃に対して共通の危険として対処しようとする共通の関心を持ち、我が国と共同して対処しようとする意思を表明する国を指すものと考えておりますが、この我が国と密接な関係にある他国をあらかじめ特定した上で、その国に対する武力攻撃の発生のみによってしか存立危機事態とはなり得ないとすることは困難でありまして、我が国の防衛に関係する他国に武力攻撃が発生した場合だけに限定するということは困難でございます。

篠原(豪)委員 密接な関係にある他国であったとしても、全く別の目的で活動しているかもしれないということです。仮にですけれども、どこかの国を先制攻撃しようとしているかもしれないし、それも我が国周辺という限定さえなされていないので、先ほどもちょっと言いましたけれども、地球の裏側で全く別の目的で航行している戦艦が攻撃された場合も理論的には含まれるだけでなくて、そのような状況下でも我が国の存立が脅かされる事態になれば自衛権を行使できる、こうなれば、まさに発生する必要のない危険まで増大させてしまうのではないか。

 さらには、本来我が国と全く関係ないはずのことについて日本政府が我が国の存立が脅かされるおそれがあると判断したときには、関係ないのに戦闘に巻き込まれてしまうかもしれない。さらには、我が国が反撃に加担すれば、これまで我が国を敵国と思っていなかった相手国が、その瞬間に我が国を敵国と判断する。であるからこそ、維新の対案のように、我が国の防衛のために活動している外国の軍隊、それも我が国周辺の地域という制限をする必要があるというふうに考えています。

 次に、領域内の自衛権について確認させていただきます。

 六月十二日に行われた質疑で、我が党の牧議員の質問に対して岸田大臣が、我が国の施政下にある領域における米軍に対する武力攻撃が生じた場合も国際法上我が国による個別的自衛権の行使になると答弁されておりますけれども、この立場は今も変わらないでしょうか。

岸田国務大臣 六月十二日の答弁は、日米安全保障条約における対処について答弁をさせていただきました。立場は現在も変わらないと考えております。

 日米安全保障条約第五条のもと、我が国の施政下にある領域における日米いずれか一方に対する武力攻撃が生じた場合、日米は共同対処行動をとることとなります。この共同対処行動としてとられる我が国の行動は、我が国の施政下にある領域における米軍に対する武力攻撃が生じた場合も含めて我が国に対する武力攻撃への対処にほかならず、国際法上我が国による個別的自衛権の行使として説明をされます。

 すなわち、かかる行動は我が国による集団的自衛権の行使には当たらないという考え方を六月十二日に説明させていただいたわけでありますが、この立場は今でも変わりません。

篠原(豪)委員 それでは、我が国周辺の公海上の米軍に対する攻撃がなされた際は、どのような場合に我が国が反撃できることになるのか、改めて確認します。

中谷国務大臣 周辺でございまして、例えば、我が国の近隣におきまして密接な関係にある他国、例えば米国に対する武力攻撃が発生し、その時点ではまだ我が国に対する武力攻撃が発生したと認定されないものの、武力攻撃国が我が国をも射程に捉える相当数の弾道ミサイルを保有しており、その言動などから我が国に対する武力攻撃の発生が差し迫っている状況にあり、他国の弾道ミサイル攻撃から我が国を守り、これに反撃する能力を持つ同盟国である米国の艦艇への武力攻撃を早急にとめずに、我が国に対する武力攻撃の発生を待って対処するのでは、弾道ミサイルによる第一撃によって取り返しのつかない甚大な被害をこうむることが明らかな危険がある。

 このような場合に第三要件を満たすのであれば、米国艦隊に対する武力攻撃を排除するということが可能になるということでございます。

篠原(豪)委員 恐らくそれは政府案では原則として集団的自衛権になるんでしょうけれども、場合によっては我が国への攻撃と同視できるとか、あるいは我が国への着手があったということで個別的自衛権になる余地を認めているんだろうというふうに思います。

 政府案は、集団的自衛権の発動に関しては今、新三要件で明確であるとしながら、同視できるとか着手とかの理由で個別的自衛権になることがあることは可能性としてあるのであって、必ずしも攻撃対象が我が国か他国かで明確になっているわけではないのではないかということも指摘させていただいておきます。

 次に、新三要件の「これにより」以下の内容について明らかにさせていただくために、その前提として確認させていただきます。

 まず、存立危機事態は重要影響事態の枠内にあるという理解でよろしいのか。基本的な認識を改めてお伺いします。

中谷国務大臣 先ほど第三要件と言いましたが、新三要件でございました。申しわけございません。

 枠内という理解でよいかということにつきましては、重要影響事態とは我が国の平和及び安全に重要な影響を及ぼす事態であり、一方、存立危機事態とは、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態ということで、両者は異なる法律上の概念として、それぞれの法律に定める要件に基づいて該当するか否かを個別に判断するものですが、存立危機事態、これは概念上は重要影響事態に包含されるものでございます。

篠原(豪)委員 そうすると、存立危機事態は重要影響事態の枠内に包含されるということで、五月二十八日の当委員会の質疑で岸田大臣が、重要影響事態が成立するかどうかに関して、経済的のみによる影響の存在、これのみによって重要影響事態になることは想定していないというふうに答弁されています。

 であるならば、存立危機事態となる新三要件に該当するのかどうかも、経済的のみによる影響の存在では成立しないという理解になるのでしょうか、お伺いいたします。

中谷国務大臣 存立危機事態の認定と経済的要因との関係ですが、単に国際紛争の影響によって国民生活や国家経済に打撃が与えられたことであるとか生活物資が不足することのみをもって、単なる経済的影響だけで存立危機事態に該当するものではないことは、これまでも繰り返し申し上げているとおりでございます。

 したがいまして、経済的影響にとどまらず、生活物資の不足、電力不足、ライフラインの途絶などが起こることによって国民生活に死活的な影響、すなわち国民の生死にかかわるような深刻、重大な影響が生じるか否かを総合的に評価した結果、状況によっては国民に我が国が武力攻撃を受けた場合と同様な深刻、重大な被害が及ぶことが明らかであると判断される場合があり得ると我々は認識をいたしております。

篠原(豪)委員 五月二十八日の我が党の江田前代表の質問に対して安倍総理が、新三要件は経済的理由からは三要件に該当することはないというふうに答弁しています。一方、ホルムズ海峡の機雷掃海がなぜできるかということについては、機雷が敷設されたという武力行使が行われたことだというふうに答弁されています。

 実は、この答弁は、要件がちょっと今混乱しているんじゃないかというふうに思っておりまして、新三要件の第一要件にある我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、この武力攻撃に関して、機雷の敷設というのは、これはあくまでも他国の問題です。どのような攻撃を受けたかという時点では、機雷が敷設されたということになるのかもしれません。しかし、第一要件の「これにより」以下の部分は我が国の問題です。先ほど質問させていただきましたけれども、重要影響事態の要件である我が国に戦禍が及ぶ蓋然性という要件がかぶってきますので、やはり経済的理由のみでは認められないということだと思います。

 であるならば、ホルムズ海峡での機雷の敷設により他国が攻撃を受けたとしても、これによって我が国に戦禍が及ぶ蓋然性が認められなければならないのではないか。この部分で、石油云々はあくまで経済的な問題であって、戦禍の言葉とは相入れないものだというふうに思ってはいるんですけれども、この点、維新案はこの疑問を完全に払拭しています。

 「条約に基づき我が国周辺の地域において我が国の防衛のために活動している外国の軍隊に対する武力攻撃(我が国に対する外部からの武力攻撃を除く。)が発生し、これにより我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険があると認められるに至った事態」ということです。このように、「これにより」以下の部分には武力攻撃が発生する明白な危険が必要であり、経済的なものは含まないことを明らかにしたものです。

 我が党の定義からすれば、ホルムズ海峡で自衛権が行使されるということは考えられないということになりますけれども、論理的に言えば、我々の案であるならば経済的要素が排除されて、余分な解釈論を経ることなくてきちんと説明がつくと思っておりますが、このことについて政府はどう考えるか、お伺いいたします。

中谷国務大臣 存立危機事態の認定におきましては、あくまでも我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生を前提としたということが前提でございます。

 そして、いかなる状況かということは、累次申し上げているいろいろな要素がございますが、特に我が国に戦禍すなわち災いが及ぶ蓋然性というのは、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生を前提として、この武力攻撃によってその被害、影響が我が国に及ぶ蓋然性を意味しておりますということでございまして、こういった災いが我が国に及んで国民生活に死活的な影響が生じるような場合に、政府としてやむを得ない自衛の措置として、武力の行使を含むできる限りの措置をとることは憲法上容認されると考えているわけでございます。

篠原(豪)委員 政府案について、さらに文言の確認をさせていただきたいと思っているんです。

 新三要件の、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険という話をされていますけれども、この要件が認められるためには、国民の生命、自由、幸福追求の権利の三つ掲げられている全てに根底から覆される明白な危険が必要となるのか。それとも、これらは別々の要件であって、どれか一つでも、すなわち国民の生命か自由か幸福追求の権利のどれか一つでも明白な危険があれば成立するのか。これをちょっと端的にお答えいただければ幸いです。

中谷国務大臣 第一要件に言う国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があるということは、憲法十三条において国政上最大の尊重を必要とされる生命、自由及び幸福追求の権利に対する国民の権利、これが根底から覆される明白な危険があるということを意味するものでございます。

 すなわち、第一要件を満たすか否かというのは、あくまでも、生命、自由及び幸福追求の権利を一体として捉え、これが根底から覆される明白な危険があるかどうかを評価するものでございます。

篠原(豪)委員 そうしますと、三つを一体として考えるということになると、どのような場合が本当にこれは当てはまるのか。時の政府によって解釈がいろいろとできてしまうんじゃないか。

 特に、幸福追求の権利はもともと曖昧な概念です。憲法第十三条が幸福権とせずに幸福追求の権利とした理由は、人それぞれ幸福の考え方が違うからだと大学とかでは教えているのかもしれません。まさに捉え方一つでこの権利が侵害されたということになってしまうのか。そうなると、自衛権として反撃が認められなかったり、こういったことを幸福の考え方が違う中でどういうふうに決めていくのか、危険なことが本当に起きないのかどうか。こんなことで我が国周辺の領域は本当に守られるのかなというふうにも感じます。

 我が党が領域警備法を提案した理由はここにあります。真っ先に我が国領域を守っていくためにはまず領域警備を充実させる必要があるのではないかというふうに思っておりますけれども、この点についてお伺いします。

中谷国務大臣 領域警備に関する法律を提出されたということは承知しておりまして、敬意を表したいと思います。

 その上で申し上げれば、政府におきましては、五月十四日でありますけれども、武力攻撃に至らない侵害に際して、不法行為に対しても切れ目のない十分な対応を確保するために海上警備行動、治安出動等の発令に係る手続の迅速化のための閣議決定を行っておりまして、今後、警察、海上保安庁、各機関がおのおのの対応能力を向上させ、情報の共有を含む連携を強化、各種訓練を充実させるなどによって、各分野における必要な取り組みを一層強化いたして対応していくということで対応してまいりたいと思っております。

篠原(豪)委員 もう時間になりますので。

 話はちょっとかわりますけれども、私、一昨日、六日に沖縄で開かれた参考人会に参加させていただきました。ありがとうございました。

 この会でも大きく取り上げられましたように、やはり自民党の勉強会での発言とその後の対応のあり方で、審議が長時間にわたり空転してしまいました。自由主義であり民主主義国家である我が国において、報道機関への圧力とも言える発言は我が党だけでなく他党の議員の方々も看過することはできなかったわけで、結果として安保法制の審議のための貴重な時間が関連しない質疑の時間として費やされたことは、まことに残念なことだと思っています。

 このような状況となってしまった今、地方参考人の方々からもその場で、委員長にも参加していただきましてありがとうございました、十分な国民の理解を得て採決を行ってほしいとの意見がありましたので、予定の審議が終わったとして強行に採決へ、報道されているように来週とか、早急に向かうことはやはりさすがにないと思いますけれども、きょうはこういったことをどうするんですかという話がありました。

 最後です。改めて、本法案の審議に対してどのように挑まれるのか、政府のお考えをお伺いして、終わらせていただければと思います。

中谷国務大臣 法案の採決につきましては委員会に関する事項でございまして、政府としてはお答えする立場にございませんが、いずれにいたしましても、より御理解がいただけるように、今後とも誠意を持って丁重に答弁してまいりたいと思っております。

篠原(豪)委員 どうもありがとうございました。

浜田委員長 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 私の地元には横須賀基地があります。この間の安保法制の質疑で、自衛隊による米艦防護が議論になっております。そこで問題にされる事例のほとんど、政府あるいはこの委員会で出される絵に出てくるのは自衛隊のイージス艦による米艦防護でございますので、その立場からの質問をしたいと思います。

 まず、今回、自衛隊法九十五条の二、米軍等の外国軍隊の武器等の防護の規定が新たに設けられようとしております。この九十五条の二によって自衛隊は米軍の武器、米艦艇の防護を行い得ると答弁されていますが、この米軍等の武器防護の任務は、米側の要求、ニーズによって法案に盛り込まれたものという認識でよろしいですか。中谷防衛大臣に伺います。

中谷国務大臣 我が国を取り巻く安全保障環境は変化をしておりまして、いわゆるグレーゾーンと申しますけれども、こういった事態に万全を期すということが重要でございます。

 そこで、我が国の防衛に資する活動に現に従事している米軍部隊に対して武力攻撃に至らない侵害が発生した場合におきまして自衛隊と米軍が緊密に連携して対応することが我が国の安全にとっても重要でありまして、同盟国である米国のみならず、域内外のパートナーとの信頼関係、協力関係を深めることが重要でございます。

 我が国と米国以外の他国との防衛協力の進展を踏まえれば、我が国の防衛に資する活動に現に従事する国は米国のみに限られないわけでございまして、このような認識で、新設する自衛隊法九十五条の二は、自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に現に従事している米軍等の部隊の武器等の防護について規定するものでございます。

 本条の新設につきましては、ガイドラインとの整合も図りつつ検討したものですが、我が国の安全のためにその必要性を認めて、我が国として主体的に判断したものでございます。

畑野委員 結論だけ言っていただければ結構です。

 法案決定に先立って四月に合意した新日米防衛協力のための指針、新ガイドラインには、アセットの防護という項目が盛り込まれました。自衛隊と米軍はそれぞれのアセット、装備品等を相互に防護すると、平時からの日米共同行動が明記されています。

 この新ガイドラインに対応して、九十五条の二で、米側からの要請により米軍と共同行動する自衛隊に米軍の武器等防護の任務を命ずる、そういう法律のたてつけ、仕組みになっております。

 新ガイドラインのアセット防護に対応して九十五条の二が設けられたということではありませんか。

中谷国務大臣 新ガイドラインというのは、いずれの政府にも立法上の措置を義務づけるものではなくて、また、いずれの政府にも法的な権利または義務を生じさせるものではございません。

 したがいまして、今回の九十五条の二の新設につきましては、新ガイドラインとの整合性も図りつつ検討したものでありますが、我が国の安全のためにその必要性を認めて、我が国として主体的に判断したものでございます。

畑野委員 新ガイドラインがかかわっているということはお認めになりました。

 具体的に言えば、平時から米軍のイージス艦や空母と共同で警戒監視活動などを日米で行う、その際に米側から米艦防護の要請があれば自衛隊のイージス艦を米艦防護の任務で活用する、そういうことになりますね。

中谷国務大臣 自衛隊と米軍は、平時から情報収集、警戒監視活動に際しまして連携しているわけでございますが、新設するこの九十五条の二を適用するということはあり得ますけれども、実際にいかなる米軍の部隊の武器等が警護の対象になるかにつきましては、防衛大臣が、当該部隊が行う活動の目的、内容、警護対象となる部隊の能力や武器等の種類、周囲の情勢等を踏まえて、自衛隊の任務遂行への影響も考慮した上で個別具体的に判断することとなるわけでございます。

畑野委員 大臣はあり得るというふうにお認めになりました。

 そこで、米側は何を求めてきているのかという問題です。

 資料をお渡しいたしました。一枚目、デニス・ブレア元米太平洋軍司令官は、昨年七月、ニュースサイトのインタビューにこのように答えております。

 米海軍と日本の海上自衛隊は十分に相互運用性のある装備を備え、一緒に活動した十分な経験を有しており、統一された指揮のもとに、例えば米国の司令官が統括し、日本の司令官が副官になって、合同任務部隊を速やかに形成することが可能である、この一環としては、両国が持つイージス駆逐艦があるだろう、米空母打撃群があり、また日本のヘリ空母があり、それら部隊は統合されるだろう、このように言っております。

 中谷大臣、今回の新ガイドラインはそういうことを目指しているのではありませんか。いかがですか。

中谷国務大臣 既に一私人となられた方の発言について政府としてコメントすることは差し控えたいと思いますが、一般論として申し上げれば、我が国に対する武力攻撃に際して日米が共同対処する場合に、我が国は従来より、適時適切な形で種々の調整を行います。日米はそれぞれの指揮系統に従って行動することといたしておりまして、自衛隊が米軍の指揮下に入ることは想定しておりません。集団的自衛権の行使の場合も、我が国が主体的に判断して行動すべきであることから、同様のことであるものでございます。

 日米ガイドラインにおいても、「自衛隊及び米軍は、緊密に協力し及び調整しつつ、各々の指揮系統を通じて行動する。」としておりまして、米軍の指揮下に入って合同任務部隊を形成するというようなことは想定をいたしておりません。

畑野委員 昨年の閣議決定のころの発言だということです。

 さらに、昨年の五月には、グリナート米海軍作戦部長も、米空母打撃群と海上自衛隊は共同で作戦を行う統合化を進めている、集団的自衛権の行使ができるようになれば、将来的にはNATO同盟国と同様の共同作戦を展開することも考えなければならない、集団的自衛権の容認によって日米が実際に一つの部隊としてともに作戦を行うことが可能になると述べています。米側の要求が日米統合部隊化であることは明らかだということを指摘しなければなりません。

 次に、実際に自衛隊と米軍の間でどういうことが進んでいるのか伺います。

 横須賀基地には、米海軍の艦隊の中で最大の規模と戦力を持つと言われている第七艦隊が配備されています。

 資料の二枚目ですけれども、ことし六月十二日付の朝日新聞に、東シナ海、インド洋を活動エリアにする米海軍第七艦隊の洋上司令部が置かれている旗艦ブルーリッジに、海上自衛隊が情報をやりとりする連絡幹部を派遣していると報道いたしました。

 中谷大臣、いつから、何のためにこのような所属、階級の海上自衛官をブルーリッジに派遣しているんですか。

中谷国務大臣 これは、米軍との緊密な連絡調整また情報収集を可能とするために、また相互運用性を向上させるといった観点から、海上自衛隊におきましては、昨年から、海上自衛隊の自衛艦隊司令部に所属する海上自衛隊幹部を第七艦隊の司令部に連絡官として派遣いたしております。

 この第七艦隊の司令部はブルーリッジ上に所在をいたしておりまして、この連絡官は、ブルーリッジ停泊中はブルーリッジ内の当該司令部で連絡調整等の任に当たり、出港する際には必要に応じて乗艦をいたしますが、出港時に乗艦しない場合には陸上の在日米海軍基地において連絡調整等の業務をいたします。これによりまして、海上自衛隊と米海軍との間で従来以上に緊密な連絡調整や情報収集が可能になると考えております。

畑野委員 常時乗艦しているというふうに報道されております。なぜそのような必要があるのか。少しお話がありましたが、こういうことをやる場合には普通、覚書を交わすわけですね。これは、交わしているものはお示しいただけますか。

中谷国務大臣 これは海上自衛隊と米海軍との間で緊密な連絡調整、情報収集を行うために実施をしているわけでございまして、これにつきましては、我が自衛隊の任務の遂行上も必要なことであると認識をいたしております。

畑野委員 覚書を交わしていると思うんですけれども、実は新聞報道で「配下の空母や原子力潜水艦、偵察機などから最前線の情報が集まる司令部に配置することで、より一体的な作戦や運用を日米で進める」と書かれているんですね。

 だから、常時乗艦して、おりることもあるけれども、今までなかった体制を組んだわけですよ、昨年の一月から。そして、ことしの三月からさらに階級を上げて配置をしているというふうに伺ったわけですから、どういう情報をやりとりして、どのような作戦を進めているのか、そういうことを具体的に、覚書を出してほしいと言っているのに出ないわけですよ。どうですか。

中谷国務大臣 いろいろな取り決めをいたしまして実施をいたしておりますけれども、細部につきましては、申し上げることは控えたいと思います。

 目的でありますが、これはやはり米軍との緊密な連絡調整、情報収集そして相互運用性を向上させるといった観点でございまして、この点において、連絡官として派遣をしているわけでございます。

畑野委員 今までなかった事態が進んでいるということなので、委員長、この覚書を委員会に出すように私は要求したいと思います。

浜田委員長 理事会で協議させていただきます。

畑野委員 海上自衛隊が今年度、二〇一五年度予算で建造を計画しているイージス艦に、共同交戦能力、CECと呼ばれる先端システムを搭載することになったと報道されております。昨年、二〇一四年十二月二十八日、毎日新聞の記事を資料として配付させていただいております。

 これは、イージス艦が、敵ミサイルの位置情報を味方同士で共有し、即時に迎撃するシステムだという報道ですが、具体的にどういうことですか。

中谷国務大臣 北朝鮮のミサイルは我が国にとっての脅威になるわけでございまして、こういったミサイル防衛を実施する場合には、日米の共同の情報の共有等が必要でございます。

 そこで、CEC、これは共同交戦能力と申しますけれども、射撃指揮に使用可能な精度の高い探知・追尾情報をリアルタイムで共有することによって、経空脅威に対して部隊間で共同対処、交戦するためのシステムでございます。

 個々の装備品の性能を向上させずに実質的な戦力を増大させるということが可能となるものでございまして、平成二十七年度の予算において、イージスシステム搭載護衛艦一隻の建造に加えて、調達コストの低減を図るために二隻目のイージスシステムの調達に着手することといたしておりまして、御指摘のCECにつきましては、当護衛艦に装備をするということといたしております。

畑野委員 予算、額を教えてください。

黒江政府参考人 お尋ねのCECにつきましては、イージスシステム搭載護衛艦一隻当たり十四億円ということでございまして、平成二十七年度の予算のイージスシステムの調達額、千六百八十億円ございますけれども、そのうち二隻分で二十八億円ということでございます。

畑野委員 このCEC、共同交戦能力によって、米海軍のイージス艦と自衛隊のイージス艦との間で敵ミサイルの位置情報を共有することができるということでよろしいですか。

中谷国務大臣 このCECは、他の艦艇または航空機との間で射撃指揮に使用可能な精度の高い探知・追尾情報をリアルタイムで共有するシステムでございます。そのため、CECを搭載している米軍イージス艦と自衛隊のイージス艦との間での情報共有は可能でございます。

畑野委員 岸田外務大臣に伺いますが、米軍のイージス艦は、日本及び横須賀に何隻配備されていますか。

岸田国務大臣 我が国に配備されている米国のイージス艦は十隻であります。そして、全てが横須賀に配備されております。

畑野委員 それでは、少し確認をさせていただきたいんですが、この日本に配備されている米軍のイージス艦、これはCECは搭載しておりますか。

岸田国務大臣 米海軍の艦船の詳細について、我が国政府としてお答えする立場にはないことは御理解いただきたいと存じます。

 ただ、各種公開情報によりますと、CEC対応イージス艦は五隻とされていると承知をしております。

畑野委員 委員長、これも資料を請求したいと思います。こういうのも公開してください。

浜田委員長 理事会で協議します。

畑野委員 皆さんのお手元にカラーの資料を配らせていただいております。これはCECのシステム図であります。ノースロップ・グラマン社のホームページに載っているものです。お話があったように、イージス艦同士だけではなく、空母とも、そして航空機とも連携をするということで、図が載っているわけです。

 CECは米軍が運用しているシステムで、イージス艦や早期警戒機のセンサーの生データを互いに共有できるようにし、それぞれのデータを重ね合わせることによって、はるか遠方、広域の目標を精密に攻撃できる、そういうシステムだと言われております。

 まさにこの自衛隊のCECは、日米で共同運用することになるのではありませんか。確認です。

中谷国務大臣 米海軍においては、艦艇や航空機のCECの装備化が進められております。

 このCECというのは、射撃指揮に使用可能な精度の高い探知・追尾情報をリアルタイムで共有するシステムでございますが、CECに基づいて自動的に攻撃が行われるというわけではなくて、CECの情報に基づいて、攻撃方法の決定や攻撃事態への対応を米国独自に行うということになります。

 自衛隊につきましても、この所掌事務を遂行するために主体的に収集した情報を米軍に対して提供いたしたとしても、それが一般的な情報交換の一環としての情報提供である限り、米軍による武力の行使との関係で問題を生じるおそれがなく、憲法上の問題は生じないものと考えておりまして、自衛隊等につきましても、ミサイル防衛上、こういったCEC等につきましては今後検討してまいりたいというふうに思っております。

畑野委員 しかし、この三枚目の新聞報道によりますと、この共同交戦能力、CECと呼ばれる先端システムは、集団的自衛権行使を念頭に置いた体制整備の一環だとか、防衛省幹部は、集団的自衛権が行使できるようになってこそCECの能力を十分に生かすことができると述べたと言われているんですね。そういうことじゃありませんか。

中谷国務大臣 先ほどお話をいたしましたが、自衛隊がその所掌事務を遂行するために主体的に収集した情報を米軍に提供したとしても、それが一般的な情報交換の一環としての情報提供である限り、米軍による武力行使との関係で問題を生じるおそれはなく、憲法上の問題はないと考えております。

畑野委員 答えになっていないわけですね。

 それで、防衛省は、二〇一五年予算で米側から早期警戒機E2Dの導入も計画している。これにもCEC、共同交戦能力が搭載されているということなんですね。自衛隊のE2DにもCEC、共同交戦能力が今後搭載されるんじゃありませんか。

黒江政府参考人 平成二十七年度予算において要求をいたしておりますE2D一機の調達につきましては、当該機にCECを装備するという計画はございません。

畑野委員 しかし、イージス艦も前はなかったわけですね。それで、今回CECを搭載する。

 こういうふうに、どんどんなし崩しで進められるということじゃありませんか。集団的自衛権の行使ということと一体にということです。

 私は、こうしたもとで自衛隊法九十五条の二はどのように運用されるのか、米国の要請に基づいて米軍の武器等防護の任務を持つ自衛隊のイージス艦が行う米艦防護について、次に質問を進めていきたいと思います。

 平時において公海上で米軍と自衛隊のイージス艦が警戒監視活動を行っている場合に、何らかの要因で米艦に向かってくるミサイルを自衛隊のイージス艦が迎撃する、そういうことが可能になるということですか。

黒江政府参考人 今先生がお引きになられました例でいいますと、平時において警戒監視活動を日本の自衛隊と米軍の艦艇とが行っておるということでございまして、それが九十五条の二の条文に言います我が国の防衛に資する活動であるということであろうと思います。そういったものを現に自衛隊と連携して行っているということであれば、大臣がそれについて必要であるという御判断をなされれば、そういったことで九十五条の二というものを適用するという可能性はございます。

    〔委員長退席、御法川委員長代理着席〕

畑野委員 大臣、そういうことでよろしいですか。

中谷国務大臣 はい、そのとおりでございます。

 武力紛争が発生していない場合、またこういった状況において、この九十五条の二というのはそういう判断をしないということでございます。

畑野委員 九十五条の二による米艦防護で、武器を使用するというふうに法案に書いております。

 それでは、イージス艦による武器の使用というのはミサイルの迎撃以外に考えられないんですが、そういうことですか。

黒江政府参考人 今引かれました例がイージス艦ということでございますれば、そういう可能性というのはございます。

 他方、九十五条の二につきましては、必ずしもイージス艦を使うということが所与の前提になっているわけではないというのは御案内のとおりでございます。

畑野委員 九十五条の二による米艦防護は、重要影響事態の際、互いに後方支援活動を行っている部隊同士で防護する場合もあるというふうに答弁をされております。

 それで、伺いますけれども、米軍の艦船と自衛隊のイージス艦が共同で行動している場合に部隊同士で防護する、その際の武器の使用は、ミサイルの迎撃、火器の使用も含むわけですね。

    〔御法川委員長代理退席、委員長着席〕

中谷国務大臣 重要影響事態となる場合は、既に武力紛争が発生している場合と、武力紛争が発生していない、例えば差し迫っている場合等が考えられますが、既に武力紛争が発生している重要影響事態の場合は、武力紛争に対処している米軍等の部隊に対する侵害行為は米国等に対する武力攻撃の一環として行われる可能性が高いと考えられるために、防衛大臣が、新設する自衛隊法九十五条の二によって当該部隊の武器等の警護を行うという判断をすることは想定されておりません。

 また、武力紛争が発生していないときの重要影響事態については、本条により、自衛隊と連携して補給、輸送等を行っている米軍等の部隊の武器等を警護することは考えられますけれども、警護の実施に先立って、防衛大臣において、戦闘行為が行われるおそれを含む周囲の情勢、また米軍等の部隊の能力等を踏まえ、警護を行う必要性については慎重に判断をしてまいる所存でございます。

畑野委員 慎重にと言いますが、では、ミサイルの迎撃、火器の使用も含まれることもあり得るということですか。

黒江政府参考人 先生お尋ねの趣旨が、どのような形で防護を行うのか、要するに武器の使用の態様ということをもしお問い合わせになっているのであれば、それは火器の使用でありますとかミサイルの使用といったものは当然考えられるわけでございます。

 他方、先ほど防衛大臣がお答え申し上げましたのは、九十五条の二の条文上これは明示されておるわけでございますけれども、現に戦闘行為が行われている現場でこれは行わないということが明示されておりますので、その条文、すなわち我々が戦闘行為を行うことを避けるということを徹底することを申し上げたということでございます。

畑野委員 それでは、九十五条の二による米艦防護と、存立危機事態のもとでの米艦防護と、自衛隊のイージス艦が行う行動はどこが違うことになりますか。どちらの場合も、米軍の指揮中枢艦のネットワークのもとで、米艦に向かってくるミサイルを迎撃するということではないでしょうか。

黒江政府参考人 この点につきましても、以前にこの委員会でも御議論になった点であろうと思いますけれども、九十五条の二の規定によります武器等の防護といいますものは、現行の九十五条の武器等防護、自衛隊の武器等防護の考え方と同じでございます。

 また、先ほど御紹介いたしましたように、戦闘行動が行われている現場ではこの条文によって守るということは考えないということが条文上明らかになっておるわけでございます。しかも、九十五条と同様、極めて限定的な要件のもとで行うということでございます。

 他方、存立危機事態において米艦を防護するといいますものは、これは自衛権の発動による武力の行使でございますので、根本的に九十五条の二あるいは九十五条といった条文による武器使用とは異なる対応になります。

畑野委員 現象面としては同じだということだと思います。

 自衛隊法九十五条の二に関して、先日、七月一日の参考人質疑で柳沢協二元内閣官房副長官補は、共同作戦で行動する軍隊相互のアセット防護については、より広域の脅威情報を持っている者からの情報に基づいて、そしてトータルとしてアセット防護し合うわけですから、そこには、指揮中枢艦となるような船のネットワーク上のまさに統制に従って反撃の武器を使用するということが求められる、そういうネットワークの中に平時から自衛隊も入っていくというふうに述べております。

 結局、米軍の武器防護ということで、米艦防護の任務に当たる自衛隊イージス艦は、ブルーリッジという指揮中枢艦の統制するネットワークのもとに平時から組み込まれるということじゃありませんか。

中谷国務大臣 しっかりと法律に従って対応していくわけでございまして、そういう意味においても正確な情報、迅速な情報はより必要になってくると認識しております。

畑野委員 平時、そして重要影響事態と、九十五条の二で米艦防護、すなわち米空母や米イージス艦の防護を行い、米軍と相手国の武力紛争の事態が進展し、日本政府が存立危機事態と判断すればその時点で米艦防護の根拠は切りかわる、自衛隊は武器の使用から武力の行使に発展する。法律上の根拠は変わっても自衛隊のイージス艦は切れ目なく米艦防護を行う、まさに日米統合部隊がつくられるということじゃありませんか。

 私は最後に、九十五条の二についてもう一つ聞きたいんです。

 大臣は、九十五条の二の運用は現行九十五条と全く同じだと答弁されています。そこで、九十五条の行使の要件は米軍の武器等防護にも適用されるということになるわけですね。

 それで、お配りしました資料の四枚目、一九九九年四月二十三日の政府文書、「自衛隊法第九十五条に規定する武器の使用について」でございますけれども、六月二十二日の参考人質疑で宮崎礼壹元内閣法制局長官は、米側に事前の回避義務、事後追撃禁止の条件を約束させるという前提でなければ、自衛隊による米軍の武器等防護は容易に違憲の武力行使に至るおそれがあるというふうに指摘しております。

 米側に、宮崎元長官が指摘したような担保はとりますか。

中谷国務大臣 そもそも、改正の後の自衛隊法九十五条の二において現に戦闘行為が行われている現場で行われるものを除くと規定することによって、自衛官の行為が米軍等による武力の行使と一体化をしないということを担保するとともに、国または国に準ずる組織による戦闘行為に対処して武器を使用することがないようにしております。

 これによりまして、本条によって自衛隊が武力の行使に及ぶことがなく、また本条による武器の使用を契機に戦闘行為に発展することもないようにいたしておりまして、本条による武器使用によって違憲の武力行使に至るということはないものと考えております。

畑野委員 米側とこれからどういうやりとりをするかは法案が成立してから行う、何の担保にもならないじゃありませんか。

 まさに憲法違反、こうした法案、戦争法案は撤回をして廃案にすべきだということを強く求めて、委員長、質問を終わります。

浜田委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 きょうは、重要影響事態法案などに盛り込まれました捜索救難の活動、今回、戦闘現場になったとしても活動を継続することがあり得るということになりました。

 午前中、原口議員が、ガイドラインとのかかわりで質問をされました。その際、墜落した米軍のパイロットは救出しないのかという質問に対して、中谷大臣ははっきりお答えになられていなかったと思うんです。

 改めて確認しますが、重要影響事態法案で捜索救助をする戦闘参加者と。当然、米軍のパイロットは入りますよね。

黒江政府参考人 米軍のパイロットに限らず、遭難した人間というのは入るということでございます。

宮本(徹)委員 何でそういう単純なことを午前中お答えにならなかったのかなというのが大変不思議なわけですが、主には、米軍に限らずとなっているわけですけれども、重要影響事態法全体は米軍などの後方支援をしながら捜索救難もやるわけですから、米軍のパイロットを連れ戻すというのが捜索救難活動の中心になるのは間違いないというふうに思います。

 それで、今回の法案で戦闘員の捜索救難が戦闘現場になっても継続し得ることが盛り込まれたのは、アメリカからのニーズがあったということでよろしいんでしょうか。

黒江政府参考人 米国からのニーズということでは必ずしもございませんで、当該捜索救助活動につきましては、当然、ほかの後方支援活動と同様でございまして、一定の実施区域の中で行われる。その実施区域におきまして戦闘が行われるといったようなことになりますと、原則は一時休止をするということ、それが原則でございます。

 他方、捜索救助活動の途中におきまして、既に遭難者を発見した、救助にもう当たっている、救助活動を行っている際に、これを放棄して一時休止しないといけないかどうかというところにつきまして検討を行いまして、この活動といいますのは人道的な活動であると。

 なおかつ、私、先ほど米軍のパイロットも入るということを申し上げましたけれども、これは、いわゆる相手方、敵味方問わずに捜索救助といったものは対象になりますので、そういう人道的な性格といったものを勘案して、既に救助に着手しているときには部隊の安全が確保される限りにおいて継続しても構わない、そういう条文を設けたということでございます。

宮本(徹)委員 人道的な活動とかということで、いろいろごちゃごちゃに二つのことをしない方がいいと思っているんですけれども。

 捜索救難と今度言われていますけれども、やはり米軍のパイロットなどを助けるというのは軍事作戦の一環ですよ。それと、米軍と交戦している相手を助けるのは、それはやるかどうかは知らないですよ、私はやらないと思っていますけれども、法律でやれるというのだったら、やる場合はそれは人道支援の活動かもわからないですけれども、二つの異なることが入っているわけですね、この中には。

 私がきょう聞いているのは、米軍のパイロットなどの回収の問題についてです。米軍はパイロットなどの回収を軍事作戦上どう位置づけているのかということがあります。

 きょう持ってまいりましたけれども、これはアメリカ軍の統合参謀本部のマニュアル、パーソネルリカバリー。人員の回収です。この中に、要員回収作戦の意義というのが書いてありますよ。孤立した軍事要員を任務に戻し、部隊の士気を維持し、作戦のパフォーマンスを上げることを目指すとともに、孤立した軍事要員を敵方が諜報や宣伝に利用することによって我が方の軍事戦略や国家意思にあしき影響を及ぼすことを拒否することにある。これのどこが人道的な活動なんですか。軍事作戦の一環じゃないですか。

 同じようなことは、アメリカ軍のエアフォースドクトリンなどにも書かれておりますよ。一つは、目的としては、再び戦闘員として戦ってもらうというのが捜索救難の目的だと。パイロットその他の航空機搭乗員は高度な訓練を受けている、簡単に育てられないから、回収してきてまた戦ってもらうんだということが一つです。それからもう一つは、階級やスキルが高ければ高いほど多くの情報を持っている、敵の捕虜になって尋問を受けることで失われるものも大きいから、捕虜にならないように回収に行くんだということであります。米軍の士気の維持に不可欠な任務とも言われているわけです。

 アメリカ軍がこの人員の回収、捜索救難を軍事作戦の重要な一環だと位置づけているという認識は、大臣、ございますでしょうか。

中谷国務大臣 米軍による戦闘捜索・救難、コンバット・サーチ・アンド・レスキューとは、敵対的または不確実な状況から孤立した要員を救出するための活動であり、米軍はこれを要員の救出のための軍事的手段の一つとして位置づけていると承知をいたしております。

宮本(徹)委員 ですから、これが軍事作戦の一環だということは明々白々なわけですよ。ですから、さっきの話は全く成り立たないということを黒江さんもぜひ御認識していただきたいというふうに思います。

 そして、そもそもこの捜索救難活動というのは大変危険を伴う活動だというふうに思っておりますが、戦闘現場ではないと思って行ったけれども、どこからか地対空ミサイルが飛んできて撃墜されてしまうということ、救助に行った側がそういう目に遭うことも大いに考えられる活動であります。そして、一人の米軍パイロットを救出するために複数の、多くの自衛隊員の命が犠牲になるケースもあるんじゃないかというふうに心配しております。

 今回の法案では、戦闘現場になっても活動を続行する場合もあるとなっているわけですよ。こうなると、自衛隊員に戦死者が出るんじゃないですか。

黒江政府参考人 この条文につきましては、実際に、既に遭難者が発見され、自衛隊の部隊等がその救助を開始しているときということでございます。なおかつ、自衛隊の部隊の安全が確保できるという場合にこれを行うということでございます。

 また、繰り返しになりますけれども、先ほどの先生の御指摘でございますが、条文上、米軍のパイロットであろうがなかろうが、対象を異ならせるという扱いはしておりませんので、私が言ったことは、そのとおり法文のことを御解説申し上げたということでございます。

宮本(徹)委員 安全が確保される場合に行うと言いますけれども、この法案は後方支援とは違いますよ。後方支援は戦闘現場になったら活動を中断する、我々はそれは簡単にできないということを指摘しておりますけれども、今度は戦闘現場になっても活動を継続し得るということになっているわけですよ。

 安全性を確保できると言いますけれども、戦闘現場で安全性が確保できるわけないじゃないですか。どうやって戦闘現場で安全性を確保するんですか。安全な戦闘現場はあるんですか。これは大臣が答えてくださいよ。

中谷国務大臣 まず、重要影響事態法においては、防衛大臣は、自衛隊の部隊等が実際に円滑かつ安全に捜索救助活動を実施することができるように実施区域を指定する旨を規定しております。この規定を受けて、今現在戦闘が行われていないというだけではなくて、自衛隊の部隊等が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所、これを実施区域に指定することになります。

 また、万が一急変をして、捜索救助活動を行っている場所において戦闘行為が行われるに至った場合などは、原則として一時休止するなどして危険を回避することになります。

 その上で、例外的な場合として、既に遭難者が発見され、自衛隊の部隊等がその救助を開始しているときに、御指摘のように、活動を継続することができるのはあくまでも部隊の安全が確保されている場合に限られることを法律上明記いたしておりまして、安全が確保されていない現状下で活動を継続するということはございません。

 このように、重要影響事態法に基づく捜索救助活動については、後方地域の仕組みのもとで実施区域が指定されていた従来と同様に、安全面に十分な配慮を行っているということでございます。

宮本(徹)委員 全然私の聞いていることに答えていないんですよ。戦闘現場になっても活動を継続し得るという法律のたてつけになっているわけですよ、法律としては。戦闘現場になったら逃げるという話じゃないんですよ。例外としては、戦闘現場になっても活動するとなっているわけですよ。

 戦闘現場で安全性の確保なんてできないんじゃないですかということを私は聞いているんです。どうやったら戦闘現場ということと安全性の確保が両立するんですか。私の頭では全く理解できないですよ。戦死者が出るんじゃないですか。

黒江政府参考人 先ほど大臣が申し上げましたように、原則は、戦闘行為が実施区域の中で行われるようになれば一時休止をするというのが原則でございます。他方、例外的な場合というのは、既に遭難者が発見され、その遭難者の救助といったものを開始しているというときでございます。

 他方、それではどのような形で安全を確保できるのかというお尋ねでございますけれども、部隊等の安全の確保、すなわち、戦闘活動がどのような形で行われているのか。戦闘行為につきましては、御案内のことと思いますけれども、彼我の能力の差といったものが出てくるわけでございますので、実際に相手方が持っております火器の射程でありますとか、あるいは相手方の人数であるとか、そういったものによって様相は異なるわけでございます。そういう中で部隊指揮官として安全に任務が遂行できるかどうかということを判断した上で、まさに指しかけになっております遭難者の救助といったものを行うということがこの条文の趣旨でございます。

宮本(徹)委員 現場が判断をして大丈夫だとなったら戦闘現場でやるわけですよね。空から眺めて、相手の兵器がどれぐらいの射程距離があるのか、隠れて携帯の地対空ミサイルを持っているかもわからないですよ、そんなものわかるわけがないじゃないですか。わかるわけがないことを盛り込んで、安全性が確保される戦闘現場があるんだというのは成り立たないんじゃないですか、大臣。

中谷国務大臣 戦闘現場では行わないという原則がありまして、万が一急変して捜索救助活動を行っている場所において戦闘行為が行われる場合には、原則として一時休止などをして危険を回避ということになっております。

 そこで、戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定いたします。ですから、活動の安全を確保して実施するということでございまして、他国が戦闘行為を行うことが見込まれるような場所に自衛隊がみずから赴いて捜索救助活動を実施することはないということでございます。

宮本(徹)委員 ちょっと、そこを聞いているわけではないでしょう。例外の部分を聞いているわけですよ。

 戦闘現場になっても活動を継続し得る例外があるというふうに答弁されているわけですよ。現場で判断、相手の兵器、何を持っているかというのは上空から判断するんだという話ですけれども、そんなものわかりっこないじゃないですか、何を持っているかなんて。

 結局、戦闘現場になっても活動を継続する。どうやって安全性を確保するんですか。地対空ミサイルを撃たれたら、自衛隊員は死にますよ。米軍のパイロットを救出するために自衛隊員は死ぬんですよ、そういう状態になったら。だから聞いているんですよ。答えてください。

黒江政府参考人 戦闘行為が発生した場合に、どのような形で部隊等の安全の確保が可能なのかというお尋ねだと思いますけれども、この点につきましては、当然のことながら、捜索救助活動を行うこと自体につきましても、必要な情報、活動地域における情報といったものを前提にして活動するわけでございます。なおかつ、その捜索救助を行っている部隊のみではなくて、友軍その他からも当然必要な情報というのを得ながら捜索救助活動を行うということがございます。

 その上で、先ほど私が申し上げましたように、その際に、必要な情報源から相手方の武器の能力といったもの等を判断しまして、安全に遂行ができるという判断ができるのであれば、それは、捜索ではなくて救助を始めているという状況のもとでこれを例外的に継続することができるという趣旨でございます。

 そういう意味で、安全の確保というのは可能であるというふうに我々は考えております。

宮本(徹)委員 だから、そんなもので安全確保できるのか、どうやって上空から相手が持っている兵器を現場の人が判断できるんですかと聞いているわけですよ。できないわけでしょう。安全性を確保できるわけないじゃないですか、戦闘現場で、現場の判断で。どうやって安全性を確保できるんですか、大臣。

黒江政府参考人 ただいま御答弁申し上げましたとおりでございまして、先生は上空から相手の武器というのは判断できるのかということをおっしゃいましたけれども、私が申し上げましたように、捜索救助活動を行う部隊というのは、当然、その現場での状況といったものをさまざまな部隊、これは必ずしも空中のセンサーだけではないということが戦場での現実だと思われますけれども、そういったものから必要な情報を得て、その上で判断をするということを申し上げているということでございます。

宮本(徹)委員 全く答弁になっていないと思いますよ、安全性がどうやったら確保できるのかというのが。

 しかも、さっきから大臣は全然答弁に立たないわけですよ。自衛隊員の命を守らなきゃいけない、リスクを回避しなきゃいけないといつもいつも熱心に答弁される大臣がこの問題で全く答弁に立たないというのも全く不可思議なわけですけれども。

 安全性を確保、どうやってするのか全くわからないです、私には。

中谷国務大臣 部隊等の安全が確保されているか否かにつきましては、個別具体的な状況に即して判断することとなるため一概に述べることは困難ですけれども、現場において発生した戦闘行為に用いられる武装の程度等を踏まえて、部隊等の安全が確保されると判断をされるかどうかということでございます。

 一例を申し上げますと、捜索救助活動を実施している区域で外国の航空機が不時着したときなどのケースもありますが、用いられている武器の射程等が短いなどの武装の程度が限られている場合など、現場の状況に鑑みて、活動している自衛隊の部隊の安全を脅かすとまでは考えられない場合が想定されるわけでございますが、最初に申し上げましたとおり、部隊等の安全確保につきまして判断して実施をするということでございます。

宮本(徹)委員 結局、戦闘現場で、射程が短いといったって、ピストルだけで戦争をやっているということはないわけですからね。自動小銃なり機関銃なりがあったら、それなりの距離まで届くじゃないですか。(発言する者あり)できる規定って、私はできるから問題だと言っているわけですよ。米軍がやればいいわけですよ。やじを余り言わないでください。

 何で自衛隊がやる必要があるのかという話ですよ。憲法九条をもって海外での武力の行使が禁止されている……(発言する者あり)

浜田委員長 静粛に願います。

宮本(徹)委員 自衛隊がなぜ、米軍のパイロットを救出するために、戦闘現場になっても戦死のリスクまで冒して行くのか。米軍がやればいいだけの話じゃないですか、米軍自身の活動だったら。なぜ自衛隊にさせるのかということですよ。

 きょうの答弁では全く納得いかないということを言っておきたいと思います。引き続きこの問題は追及していきたいと思います。

 もう一つ、具体的に聞きたいと思います。

 米軍機が撃墜された、あるいは不時着した際に行くわけですけれども、この法案で書かれている、既に遭難者が発見され、自衛隊の部隊等がその救助を開始しているときは、戦闘行為が行われている現場であっても継続することができる。既に遭難者が発見され救助を開始しているときというのは、このスタート時点はいつなんですかね。既に遭難者が発見され救助を開始しているとき。目視で発見したときなのか。あるいは、墜落者の位置情報を、今はGPSでその時点で瞬時に把握できていると思いますけれども、それが発見なのか。あるいは救難機が発進していったときなのか、あるいはその救難機がロープを垂らしたときなのか。これはいつなのかというのをちょっと。

中谷国務大臣 既に遭難者が発見されて自衛隊の部隊等がその救助を開始しているときとは、捜索救助活動を行う自衛隊の部隊等が遭難者の所在する場所に到着し、既に救助活動を始めている場合をいいます。したがいまして、部隊等が遭難者をいまだ発見することができずに捜索を続けている場合、また遭難者の所在する場所に向かっているような段階はこれに含まれないということでございます。

 仮に、このような段階において遭難者が所在する場所で戦闘行為が行われるに至ったときは、部隊等がその現場にみずから赴いて救助活動を実施することはなくて、例えば諸外国の軍隊等に速やかに連絡して対応を引き継ぐなどの措置がとられることになると考えております。

宮本(徹)委員 この問題は、何回もレクで聞いても全く明らかにならなかったわけですけれども、きょう初めて答弁をいただきました。上空に到着したということで、これは答弁として確定させていただきたいというふうに思います。

 その上で、憲法とのかかわりについてお伺いしたいと思います。

 戦闘現場で捜索救難作戦を継続する場合、武器を使用することはあるんでしょうか。

中谷国務大臣 自己保存の武器使用はできるということでございます。

宮本(徹)委員 今回の場合は、戦闘現場になっても活動を継続する、任務を遂行する、任務を遂行するために武器を使用するわけですよね。

 戦闘現場で任務を遂行するための武器の使用というのは、文字どおり戦闘行為であり、憲法の禁止する武力の行使そのものなんじゃないですか。

中谷国務大臣 この点につきましては、まず、防衛大臣は、自衛隊の部隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定するということで、万が一、状況が急変して、活動の場所において戦闘行為が行われるに至った場合でも、当該部隊の安全が確保されるといった場合に限り捜索救助活動を継続することはできますが、これは自衛隊が既に所在している現場の状況が急変したということによるものでありまして、部隊がみずから危険に接近するものではない。

 また、自衛官が武器を使用できるのは、不測の事態に際して自己や自己の管理のもとに入った者の防護のためのやむを得ない必要がある場合のみでありまして、自己保存のための自然権的権利というべきものでありまして、憲法九条で禁じられた武力の行使には当たらないと考えております。

宮本(徹)委員 随分おかしな答弁なんですよね。

 みずから接近するものでないというふうに答弁されましたけれども、みずから接近するものでなければ、後方支援と同じように戦闘現場からは去るというのが今までの政府の説明だったんじゃないですか。戦闘現場になっても活動を、任務を遂行していく、そのために武器を使用するということになったら、自己保存なんて当たらないじゃないですか。自己保存だったら帰ればいいんですよ。(発言する者あり)何を言っているんですか。米軍がやればいいと言っているでしょうが。

浜田委員長 静かにしてください。お願いします。(宮本(徹)委員「何回も同じことを言わせないでくださいよ。同じやじばかり飛ばして」と呼ぶ)冷静に。

 不規則発言は厳に慎んでください。

宮本(徹)委員 繰り返しますと、自己保存というんだったら活動を中断する、これが今までの説明だったんじゃないですか。今度は活動を、任務を遂行する、そのために武器を使用する。これが自己保存だということで成り立つんだったら、今までの全ての、積み上げてきた皆さんの、政府の解釈の積み上げが崩れますよ。後方支援だって何だって、攻撃されて撃ち返すのは自己保存だからどんどんやるんだ、任務を遂行していくんだということになるじゃないですか。

 今まで自己保存のための権利と対比していろいろな答弁で重ねてきたのは、任務遂行のための武力の行使か、自己保存のための自然発生的な権利だ、これを対比で今まで政府は答弁されてきているわけですよ。お答えください。

中谷国務大臣 そもそも捜索救助活動というのは、他国の戦闘行為を支援するためのものではなくて、人命救助を目的に、人道的見地から敵味方の区別なく実施されるものでございます。

 したがいまして、仮に戦闘行為が行われている現場において安全が確保される限りにおいて御説明したような例外に当たる限度で捜索救助活動を継続したとしても、他国の武力の行使と一体化することはなく、憲法の禁じる武力の行使をしたとの法的評価を受けることはない。任務遂行の武器使用ではございません。

宮本(徹)委員 何のために、私が一番初めにきょう議論したいのは米軍のパイロットの救出ですよと、そして中谷大臣からも米軍の活動の軍事作戦上の位置づけは明確だというのも答弁していただいたのかというのがかかわるわけですよ。また一からやらなきゃいけないじゃないですか、そんな答弁をされたら。

 人命救助の単なる活動の部分、人道上の活動、それと軍事作戦としての活動、二つがこの法案には入っていますよ。人命救助のことを言っているわけじゃないですよ。軍事作戦として、米軍の事実上の支援として行うことについて私は質問しているわけですよ。一番初めにそのことを言ったじゃないですか。何でそんなところに戻っちゃうんですか。答弁してください。(発言する者あり)

浜田委員長 不規則発言は慎んでください。

中谷国務大臣 午前中の原口委員にもお答えをいたしましたが、CSARとSARというのがありまして、米軍で言われるCSARの活動は実施いたしません。いわゆる捜索救助活動ということで、米軍で言われるようなCSARという軍事活動は行わないということでございます。

宮本(徹)委員 別にそんなことは聞いていないですよ。CSARじゃなくても、SARであっても、サーチ・アンド・レスキューであっても、人員の回収というのはアメリカの軍事作戦上の位置づけがあるということを私は話しているわけですよ。それはあらゆる人員の回収作戦に当てはまるわけですよ。CSARだけじゃないですよ、人員の回収作戦全体。自衛隊だってそうじゃないですか。恐らく同じ位置づけだと思いますけれども、軍事作戦としての位置づけがあるわけですよね。だから私は言っているわけですよ。任務遂行のためのこの軍事作戦の継続、捜索救難活動の継続、その中での武器使用というのは、憲法が禁じる武力の行使に当たるじゃないかと。

 お答えください。

中谷国務大臣 捜索救助活動というのは、他国の戦闘を支援するものではなくて、人命救助を目的に、人道的見地から敵味方の区別なく実施されるものであると認識をいたしております。

宮本(徹)委員 だから、さっきから言っている二つの種類の活動が入っているんじゃないんですか。

 捜索救難活動には、敵味方関係なくというか、人命の救助として、アメリカ軍と交戦している国もナイチンゲールの精神で助けに行くんだという活動は、やられるかどうかは知らないですよ、法律上一つ入っている。それと同時に、後方支援している米軍への事実上の応援としてアメリカのパイロットの回収、これは軍事作戦ですよ。この軍事作戦と二つ入っているんじゃないんですか。二つの要素が入っていることを認めてくださいよ。(発言する者あり)認めたんですよね。

中谷国務大臣 先ほどCSARのお話をいたしましたが、これは米軍の戦闘捜索・救難に対する支援ではございません。自衛隊が実施する行為につきましては、先ほども申し上げましたが、人命救助を目的に、人道的見地から敵味方の区別なく実施されるというものでございます。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 もう一度説明いたします。

 この重要影響事態法による捜索救助活動の対象となる戦闘参加者とは、特定の国の戦闘員に限定するものではなくて、人道上の必要性に鑑み、条文上、支援対象国である合衆国の軍隊等と敵対する国の戦闘員も排除されておりません。これは現行の周辺事態法と同様であります。

 また、日米ガイドライン上の日本の平和及び安全に対して発生する脅威への対処といたしましては、戦闘捜索・救難、CSARについては、自衛隊は米軍の戦闘捜索・救難、CSARに対して支援を行うとしているのみでございまして、自衛隊がいずれかの一方の戦闘を利する目的で敵対的な状況にみずから赴いて味方の要員を救出するような戦闘捜索・救難を行うことを念頭に置いているものではない。

 自衛隊が捜索救助活動を実施するに当たって法令に従うことは当然でありまして、このことはガイドラインにも、基本的な前提及び考え方の章において、日本により行われる全ての行動、活動はおのおのの憲法及びその時々における適用のある国内法令に従って行われると明記していることから明らかでございます。

浜田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

浜田委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣、答弁願います。

中谷国務大臣 先ほども申し上げましたが、自衛官が武器を使用できるのは、不測の事態に際して自己や自己の管理のもとに入った者の防護のためやむを得ない必要がある場合のみでございまして、これは自己保存のための自然権的権利というべきものであることから、憲法第九条で禁じられた武力の行使には当たらないということでございます。

宮本(徹)委員 時間が来たから質疑を終わらざるを得ないですけれども、全く答弁になっていないですよ。任務遂行のために残って、武器の使用が許されたら、それが武力の行使じゃないというんだったら何でもできることになりますよ、本当に。とんでもない話ですよ。自己保存だという理由で、どこの戦闘現場だって行けることになるという話ですよ。

 こんなことは全く答弁になっていないということを申し上げて、きょうの質問を終わります。

    ―――――――――――――

浜田委員長 この際、両案審査のため、去る六日、第一班沖縄県、第二班埼玉県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からそれぞれ報告を聴取いたします。第一班今津寛君。

今津委員 沖縄県に派遣された第一班の委員を代表いたしまして、団長にかわり私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、浜田靖一委員長を団長として、理事松本純君、長妻昭君、下地幹郎君、遠山清彦君、委員平沢勝栄君、宮崎政久君、若宮健嗣君、辻元清美君、赤嶺政賢君、私、今津寛の十一名であります。

 このほか、現地参加議員として、篠原豪君、仲里利信君が出席されました。

 会議は、去る六日、那覇市内のパシフィックホテル沖縄において開催し、まず、浜田団長から派遣委員及び参考人の紹介等を行った後、名護市長稲嶺進君、特定非営利活動法人沖縄国際平和研究所理事長大田昌秀君、南城市長古謝景春君、前琉球新報社代表取締役社長高嶺朝一君、石垣市長中山義隆君の五名の方から意見を聴取いたしました。

 その意見内容につきまして、簡単に申し上げます。

 まず、稲嶺君からは、今回の法整備により他国の戦争に巻き込まれ、米軍基地が集中する沖縄が敵国から標的にされる可能性があることなどの意見が、

 次に、大田君からは、沖縄が地上戦で凄惨な犠牲をこうむった経験を踏まえ、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対であることなどの意見が、

 次に、古謝君からは、平和安全法制整備はこれまでどおり専守防衛のものであるという本質を国民に丁寧に説明する必要があることなどの意見が、

 次に、高嶺君からは、米国からの要求を拒否できず自衛隊の活動が際限なく広がる懸念があることなどの意見が、

 最後に、中山君からは、我が国を取り巻く安全保障環境を踏まえれば、平和安全法制整備により我が国全体の安全保障体制の強化が期待されること

などの意見が述べられました。

 次いで、各委員から参考人に対し、多くの離島を抱える沖縄の地理的特性を踏まえた平和安全法制整備の意義、平和安全法制整備と在沖縄米軍基地との関係、沖縄の歴史を踏まえた上での今回の法整備に対する懸念、厳しさを増す安全保障環境についての認識、国だけではなく地方自治体及び民間レベルで近隣諸国と交流を進める重要性などについて質疑が行われました。

 以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。

 なお、今回の会議の開催につきましては、地元関係者を初め多数の方々の御協力をいただき、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

浜田委員長 次に、第二班江渡聡徳君。

江渡委員 埼玉県に派遣された第二班の委員を代表いたしまして、その概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、団長として私、江渡聡徳と、理事岩屋毅君、御法川信英君、委員木原誠二君、白石徹君、原田義昭君、緒方林太郎君、大串博志君、太田和美君、浜地雅一君、塩川鉄也君の十一名であります。

 このほか、現地参加議員として、梅村さえこ君が出席されました。

 会議は、去る六日、さいたま市内のパレスホテル大宮において開催し、まず、私から派遣委員及び参考人の紹介等を行った後、埼玉弁護士会会長石河秀夫君、弁護士・東海大学法科大学院特任教授落合洋司君、弁護士・明日の自由を守る若手弁護士の会会員倉持麟太郎君、埼玉県商工会議所連合会会長佐伯鋼兵君、慶應義塾大学法学部教授細谷雄一君の五名の方から意見を聴取いたしました。

 その意見内容につきまして、簡単に申し上げます。

 まず、石河君からは、政府提出の平和安全法制が立憲主義に反する可能性があることなどの意見が、

 次に、落合君からは、憲法解釈の変更により限定的とはいえ集団的自衛権を認めることは不合理であることなどの意見が、

 次に、倉持君からは、いまだ多くの論点が残っていることから、合理的かつ十分な審議を尽くす必要性があることなどの意見が、

 次に、佐伯君からは、現実に即した平和安全法制を整備し、安全保障政策をより迅速、効率的に遂行することが重要であることなどの意見が、

 最後に、細谷君からは、憲法の平和主義と国際協調主義という二つの精神に基づき平和安全法制を実現することが重要であること

などの意見が述べられました。

 次いで、各委員から参考人に対し、平和安全法制の成立が我が国周辺地域の紛争抑止に与える効果、政府提出法案に対する国民の理解が高まらない理由、政府提出法案及び維新の党の案における自衛権行使に係る要件の比較及び評価、平和安全法制の法的整合性、法的安定性に対する評価、国際平和支援法に基づく民間協力において民間事業者のリスクが高まる可能性などについて質疑が行われました。

 以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。

 なお、今回の会議の開催につきましては、地元関係者を初め多数の方々の御協力をいただき、極めて円滑に行うことができました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

浜田委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。

 お諮りいたします。

 ただいま報告のありました第一班及び第二班の現地における会議の記録は、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕

     ――――◇―――――

浜田委員長 次に、本日付託になりました江田憲司君外四名提出、自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する人道復興支援活動等に関する法律案並びに大島敦君外八名提出、領域等の警備に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 提出者より順次趣旨の説明を聴取いたします。今井雅人君。

    ―――――――――――――

 自衛隊法等の一部を改正する法律案

 国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する人道復興支援活動等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

今井議員 ただいま議題となりました維新の党提出の平和安全整備法案について、提出者を代表して、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。

 さきの大戦が終わって七十年、東西冷戦終結から二十五年となりますが、国際情勢の変転は休むことを知りません。東アジア地域においては、大規模な軍事力を有する国が、国際社会に説明責任を果たさない不透明な形で軍事費をふやし続ける一方、国際社会の懸念を無視して核開発を強行する国家も存在しております。

 このような厳しい安全保障環境の変化のもとで、日本国憲法の平和主義の理念を堅持しつつ、日米同盟を一層強化し、自由と民主主義等の価値を共有する諸国とも連帯して、我が国を守る必要があります。どんな時代でも、我が国の領土、領海、領空、そして国民の生命財産を守り、平和な国民生活を守っていくことは、国民から政府と国会に課せられた最も重い使命であります。

 しかるに、現在の安全保障法制は、必ずしもこの使命を十分に果たせない可能性があります。例えば、日本周辺で、日米安保条約に基づき現に我が国を守っているアメリカ軍が攻撃されても、我が国自身が武力攻撃を受けていなければ日本は反撃ができません。我々維新の党は、このような場合には我が国が自衛権を行使できるようにすべきと考えます。これなら、日本が堅持してきた専守防衛の原則から一歩も外れませんし、最近の安全保障上の課題にも対応できます。憲法解釈上も、もちろん合憲であります。

 これに対し、現在衆議院で審議されている政府の安保法案では、自衛権発動の要件であるいわゆる存立危機事態の概念が曖昧過ぎます。法律の文言にある我が国と密接な関係にある他国はどこか、また、我が国の存立が脅かされて、国民の人権が根底から覆されるのは、我が国が武力攻撃を受けない限り起こり得ないと考えますが、これでは、そのときそのときの政府がいかようにも解釈できる余地があります。憲法学者はもちろん、歴代の元内閣法制局長官が政府案を違憲と断じるのも道理ですし、国民の心配や不安感が高まるばかりなのも当然です。

 そもそも政府は、どのような安全保障上の理由で政府案を提出しているのでしょうか。具体的な事例として政府が繰り返し挙げるのは、ホルムズ海峡の機雷掃海です。しかし、国民にとって最も切実な安全保障上の懸念は、この東アジアとその周辺、すなわち朝鮮半島、東シナ海、南シナ海等における不測の事態ではないでしょうか。現在の安全保障環境で我が国を守るためには、自衛隊の活動地域も真に自国防衛に必要な範囲とすべきです。

 維新の党は、我が国の安全保障上の新たな状況に対応するため、日本国憲法を尊重、擁護するべく、専守防衛の原則にのっとり、あくまで日本の領域を守ることを目的として、本法案を提出することといたしました。

 次に、本法案の概要について御説明申し上げます。

 自衛隊法の改正につきましては、武力攻撃危機事態、すなわち、条約に基づき我が国周辺の地域において我が国の防衛のために活動している外国の軍隊に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険があると認められるに至った事態には、我が国が自衛権を行使できることとしております。また、国会承認をより厳格で実質的なものにするため、特定秘密を含む情報の提供を受ける専門的な組織を国会に設ける検討も行います。

 また、事態対処法の改正においても、自衛隊法同様に、武力攻撃危機事態においてその武力攻撃を排除すべきこと等を定めております。

 周辺事態法については、安保条約の実効性を確保するという現行法制の基本的論理を維持します。周辺事態の概念、後方支援の概念も残し、武力行使と一体化しないような制約を設け、支援対象はアメリカ合衆国軍隊のみとします。

 PKO法の改正については、駆けつけ警護を人命救助の限定的な目的にのみ認める一方、国連が統括しない活動は、現行法同様、人道救援、選挙監視の枠内の協力にとどめます。

 その他、上記改正にあわせ、その他各法も含めて、所要の規定の整備等を行います。

 以上が、本法律案の提案の趣旨及び概要であります。

 御審議の上、委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

 次に、維新の党提出の国際平和協力支援法案について、提出者を代表して、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。

 戦後の日本は、国際社会における平和の恩恵のもとに、今日の国際的地位を築いてまいりました。その地位にふさわしい貢献を国際社会全体の平和のために行うことは、日本国憲法の平和主義に含意されているものであります。とりわけ、国際人道復興支援等を積極的に行うことは、平和国家日本の国柄にふさわしいものです。我が国は、国際の平和と安定のために国連安保理決議が武力行使を容認した多国籍軍に対しても、その都度特措法を制定して協力支援を行ってまいりました。そして、その必要性が徐々に国民に認知されつつあります。

 したがって、こうした国民の理解と国際的に正当な基本的法理に基づいて、従来の特措法での一時的な対応から一歩進め、適時かつ継続的な国際支援のための一般法をつくるべき時期が来たものと考えます。もちろん、国際的な正当性等に少しでも疑義がある活動は従来どおり特措法での対応が原則と考えますが、国民も国際社会も認めるような一般法を我が国の主体的、積極的な国際貢献のためにつくるべきであります。

 このため、維新の党は、国際平和共同対処事態において人道復興支援、協力支援活動等を行うことにより国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的とした一般法、国際平和協力支援法案を提出することといたしました。

 次に、本法案の概要について御説明申し上げます。

 我が国が支援できるのは、国連憲章の第七章決議、またはそれと同等の平和のための結集決議に基づく多国籍軍のみとします。活動地域は非戦闘地域のみとして、計画自体を国会の事前承認の対象といたします。また、人道復興支援は、残党勢力による組織的、継続的な抵抗の意思のない場合のみに行います。

 最後に、武力行使との一体化を回避するために、武器弾薬の提供、戦闘行動のために発進準備中の航空機に対する給油、整備は禁止いたします。

 以上が、本法律案の提案の趣旨及び概要であります。

 御審議の上、委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

浜田委員長 次に、大島敦君。

    ―――――――――――――

 領域等の警備に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

大島(敦)議員 ただいま議題となりました領域等の警備に関する法律案につきまして、提出者を代表して、その趣旨及び内容の概略を御説明いたします。

 我が国の離島等において、闇夜に紛れて多数の武装漁民のような者たちが上陸を企て、かつその者たちが機関銃などの重火器を隠し持っているケースや、工作船とおぼしき不審船舶が高速で我が国領海を侵犯し、かつ重武装をしているおそれがあるケースなど、海上保安庁などの警察機関には手に余る装備のため、自衛隊による対処が余儀なくされる事態が現実的かつ切実な脅威として想定されております。

 これら武力攻撃に至らない事態、いわゆるグレーゾーン事態が生じたとき、現行法で自衛隊は治安出動または海上警備行動にて対応することが考えられますが、その都度閣議による決定を経なければならず、一定の時間を要するため、この間に事態が悪化するおそれがあります。

 また、これら治安出動や海上警備行動の発令に至るまでの間は、たとえ近辺に警察官や海上保安官がいないなど警察機関による対応が困難な場合であっても、自衛官は不審者に対して、警察官や海上保安官が行うことのできる立入検査や犯罪の制止などの行為を行えません。

 また、自衛隊法九十五条に定める武器等防護など例外的なケースを除いては、たとえ正当防衛、緊急避難の事態であっても、法律上、自衛官に武器使用の権限がありません。

 これら時間、権限、武器使用の三つのすき間を埋め、シームレスな対応を可能にすることこそが、国民の生命財産、我が国の領土、領空、領海を確実に守るためには何より必要なことであります。

 しかしながら、政府は、これらのグレーゾーン事態に対して、電話閣議の導入などの運用改善策にとどめ、今回提出された安全保障法制においては何ら法的な手当てがされておりません。

 これに対して、我々は、真に現実的な安全保障政策を追求する姿勢に基づき、近くは現実的にの観点から、これら三つのすき間を埋めるためには明確な法律的な裏づけが必要と考え、本法案の提出に至った次第であります。

 以上が、本法案を提出した理由です。

 以下、本法案の概要を述べます。

 まず第一は、我が国の領海、離島等における公共の秩序の維持は警察機関をもって行うことを基本としつつ、警察機関をもっては公共の秩序を維持することができないと認められる事態が発生した場合には、自衛隊が警察機関との適切な役割分担を踏まえて当該事態に対処すること等の原則を定めることとしています。

 第二は、政府は、領域等の警備に関する基本的な方針を定めるとともに、警察機関の配置の状況や本土からの距離等の事情により不法行為等に対する適切な対処に支障を生ずる高い蓋然性があると思料される区域を領域警備区域と定め、いずれも国会の承認を求めることとしています。

 第三は、領域警備区域における公共の秩序を維持するため、自衛隊が情報の収集、不法行為の発生予防及び対処のための領域警備行動を行うことを可能とするとともに、これら自衛隊の部隊に対して、平素から警察官職務執行法及び海上保安庁法上の権限を付与することとしています。

 第四は、治安出動または海上警備行動に該当する事態が発生する場合に備え、あらかじめ領域警備基本方針及び対処要領をまとめておくことにより、改めて個別の閣議決定を要せずにこれらの出動が下令できるようにすることとしております。

 第五に、領域警備区域における公共の秩序維持、船舶の衝突の防止のために特に必要があると認めるときには、当該区域の特定の海域を航行する船舶に対する通報制度を設け、必要に応じ立入検査を行うことができることとしております。

 第六に、政府は、船舶及び航空機の偶発的な衝突等の不測の事態の発生を防止するため、各国政府との間で、関係行政機関相互間の意思疎通と相互理解の増進、安全保障の分野における信頼関係の強化及び交流の推進、緊急時の連絡体制の構築等の措置を講ずるように努めることとしております。

 第七に、領域警備区域以外の区域についても、国土交通大臣から要請があった場合においては、自衛隊の部隊は一定の権限を持って海上保安庁が行う警備の補完をすることができることとしております。

 第八に、領域警備に係る関係機関が、情報を共有しつつ、相互に適切に連携を図りながら協力することを確保するため、領域警備事態連絡調整会議を置くこととしております。

 第九に、自衛隊法を改正して、防衛大臣が自衛隊の部隊に対し警戒監視の措置を講じさせることができることとしております。

 以上が、本法案の提案の趣旨及びその内容の概要であります。

 関係各位におかれましては、本法案の趣旨とその意義につきまして十分に御理解を賜り、慎重に御審議の上、賛同くださりますようお願い申し上げます。

 どうもありがとうございました。

浜田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十日金曜日午前八時四十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十三分散会

     ――――◇―――――

  〔本号(その一)参照〕

    ―――――――――――――

   派遣委員の沖縄県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成二十七年七月六日(月)

二、場所

   パシフィックホテル沖縄

三、意見を聴取した問題

   我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案(内閣提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 浜田 靖一君

       今津  寛君   平沢 勝栄君

       松本  純君   宮崎 政久君

       若宮 健嗣君   辻元 清美君

       長妻  昭君   下地 幹郎君

       遠山 清彦君   赤嶺 政賢君

 (2) 現地参加議員

       篠原  豪君   仲里 利信君

 (3) 参考人

    名護市長        稲嶺  進君

    特定非営利活動法人沖縄国際平和研究所理事長  大田 昌秀君

    南城市長        古謝 景春君

    前琉球新報社代表取締役社長          高嶺 朝一君

    石垣市長        中山 義隆君

 (4) その他の出席者

    内閣官房内閣審議官   山崎 和之君

    内閣官房内閣参事官   赤瀬 正洋君

    外務省大臣官房審議官  正木  靖君

    防衛省大臣官房審議官  辰己 昌良君

     ――――◇―――――

    正午開議

浜田座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員長の浜田靖一でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願いをいたします。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。

 皆様御存じのとおり、当委員会では、我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案の審査を行っているところでございます。

 本日は、両案審査のために、国民各界各層の皆様方から御意見を賜りたく、当那覇市におきましてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いをする次第であります。本日はまことにありがとうございます。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、全て衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の皆様方からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。

 まず、派遣委員は、自由民主党の今津寛君、松本純君、平沢勝栄君、宮崎政久君、若宮健嗣君、民主党・無所属クラブの長妻昭君、辻元清美君、維新の党の下地幹郎君、公明党の遠山清彦君、日本共産党の赤嶺政賢君、以上でございます。

 なお、現地参加議員といたしまして、維新の党の篠原豪君及び仲里利信君が出席されております。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 名護市長稲嶺進君、特定非営利活動法人沖縄国際平和研究所理事長大田昌秀君、南城市長古謝景春君、前琉球新報社代表取締役社長高嶺朝一君、石垣市長中山義隆君、以上五名の方々でございます。

 それでは、まず稲嶺進君に御意見をお述べいただきたいと存じます。

稲嶺参考人 ハイサイ グスーヨー チュー ウガナビラ。名護市長稲嶺進でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。

 こういう場で初めてでございますトップバッターで緊張いたしておりますけれども、本日の地方参考人会の主題とされる二つの法案に対して、私自身の思いと沖縄県、なかんずく名護市の置かれている立場を説明申し上げる中から、いかにこの法案が国民に強い不安と危惧をもたらし、国のあり方まで変えてしまいかねない危険きわまりないものであるか、また、日米同盟の名のもとに、日本国をないがしろにして、日本国民をないがしろにして、去る四月には早々と米国議会において法案の整備を、今夏までの成立を約束するような発言をするなど、米国に追従するその姿は、真の独立国、主権国家とはほど遠いものであり、我が国の将来に禍根を残すことになると、強い懸念を持つものでございます。

 したがって、このたびの安保関連法案に対し、反対の立場から意見を述べたいと思います。

 このような場で意見を述べることは大変貴重であり、また重要な機会であるというふうに考えておりますので、言い残しがあったり、あるいは言い忘れは許されません。失礼に当たるかもしれませんが、準備したものを読み上げながら、私の役目を果たしたいと思います。

 まず初めに、反対の理由の一つとして、今回の法案は、集団的自衛権などを実際に行使できるように法律を改定するものであり、憲法九条及び前文の恒久平和主義と平和的生存権の保障の基本的原理に違反していると考えます。憲法第九条では、戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認がうたわれており、その体制を根底から覆すものであるというふうに考えております。

 これらのことは、既に、憲法審査会の結果や多くの憲法学者、日弁連などとあわせて歴代の内閣法制局長も、いわば法律のプロフェッショナルが相次ぎ違憲判断を示し、本案は直ちに撤回すべきだと主張していることからも、看過できない事態と認識しております。政府はこのような意見を真摯に受けとめるべきだというふうに考えております。

 この法案は、自衛隊を、武力行使を行う実質的な軍隊へと転換を図るものであります。武力行使をする国、戦争をする国へと変えてしまおうとするものであります。また、そのことによって、自衛隊員は武器を使用する現場に送り込まれる。そこでは、みずから殺傷し、殺傷される現実の危険にさらされることになり、それは即、自衛隊員に死傷者が出る事態を招く、ひいては国民の生命、生活をも危険にさらされる、恐ろしい法律と言わざるを得ません。

 過去に、アフガン戦争やイラク戦争時に、日本は米軍から、ショー・ザ・フラッグとかブーツ・オン・ザ・グラウンドと強く迫られたことがございました。そのときは、憲法が海外での武力行使を禁じているとの判断がありました。しかし、今回は違います。前述のような、日米同盟に傷がつくなどと米国から強い要請があれば、政府の判断により、戦闘地域への自衛隊派遣が可能となるということでございます。

 二つ目に、今回の手法は、憲法の改正手続によらず法律によって実質的に憲法を改変するものであり、立憲主義の基本理念に違反していると考えます。

 これまで集団的自衛権の行使は憲法違反とした歴代の内閣、政府解釈を、現内閣の判断で覆す。これは、言いかえれば、憲法解釈を一旦行えば、時の内閣、政府の判断次第ということになってしまいます。こういうあしき前例をつくれば、安心、安定した国家の運営はままならず、世界からも信頼を失うことになるでしょう。

 しかも、法案の内容を国民に十分説明もせず、殊さらに安全保障環境の悪化を誇張して世論をあおり、煙に巻いて、知らず知らずの方式、これは以前の麻生大臣の発言を思い出してであります、を狙っているのではないかと疑いたくもなります。

 また、自民党内では、法律を決めるのは憲法学者ではなく政治家だと。中谷防衛大臣は、現在の憲法をいかにこの法律に適用させていけばよいのかという議論を踏まえて閣議決定を行ったと発言をし、さらに、昨日の新聞報道によれば、自民党の高村副総裁は、国民理解が不十分でも採決に踏み切るとの内容の発言にも見られるように、傲慢で独善的な考え方や、ありきの手法は、今、沖縄県における昨年の主要選挙の圧倒的な結果や県民世論を一顧だにせず、抑止力と地理的優位、しかしこれは、森本前防衛大臣が否定をしておりますので、根拠が破綻しているというふうに考えております。日米合意や安全保障環境の悪化を理由に掲げ、辺野古が唯一の解決策だとして作業を強行する政府の姿、その本質をあからさまに体現したものだと理解しています。

 また、辺野古移設に係るこのような考え方は、自民党本部で行われた集会で、百田尚樹氏の普天間飛行場建設過程における県民侮蔑発言や県内マスコミに対する偏見、蔑視などに見る屈折した沖縄観に通底するものがあると思わざるを得ません。

 三つ目に、仮にこの法案が成立すれば、自衛隊の海外派遣要件が拡大され、自衛隊と米軍が一体となって軍事行動を展開することになる。結果として、我が国が他国の紛争に巻き込まれるリスクが高まります。もしそうなったら、米軍基地が集中する沖縄がイの一番に狙われ、標的にされる可能性は大であります。

 再び戦場になる。沖縄県はそのことがぴんと頭をよぎる。それはなぜでしょうか。

 沖縄県民は、七十年前の戦争でそのことを一番よく知っているからです。当時の日本軍部は、本土防衛の防波堤、いわゆる捨て石として玉砕覚悟の陣地を沖縄に張り、徹底抗戦を命じました。米軍は、その前線基地沖縄を徹底的に攻め尽くし、鉄の暴風と称される大きな戦争台風が吹き荒れました。つまり、沖縄には日本軍の軍隊と軍事基地があるから、だから沖縄は狙われました。それは自明の理であります。

 現に、イランやアフガニスタンで、米国の無人戦闘機やGPSなどコンピューターを駆使してピンポイントで攻撃していることなど、軍事拠点がターゲットになっていることからも証明されております。

 軍隊のいるところが戦場になるんです。もし有事となれば、今の沖縄が真っ先に狙われ、七十年前の二の舞を踏むことになるのは火を見るより明らかであります。またしても沖縄は捨て石にされる、そう考えるのは私一人ではないと思います。

 四つ目に、それでは、なぜそう考えるのか。

 それは、近代沖縄史をめくると、一八七九年、明治十二年の、琉球藩を廃し沖縄県を置く、いわゆる強権発動による琉球処分が行われ、それ以降、苦難の歴史が刻まれております。

 一九四五年の太平洋戦争では捨て石にされ、住民を巻き込んだ悲惨な地上戦が繰り広げられた。沖縄は、そのときも本土防衛の犠牲となり、県民四人に一人が戦死し、日米の軍人も合わせると二十万人以上の人命が失われました。

 日本での戦後処理が進む中、一九五二年のサンフランシスコ条約の発効で、日本は、沖縄をアメリカの信託統治、植民地に差し出し、みずからは日米安保に守られながら独立、主権を回復し、経済復興を果たすことになります。これも、日米安保の負担。リスクのほとんどを沖縄に肩がわりさせることで得られたものであり、ここでも沖縄は、本土発展の踏み台として役割を担わされた格好になっております。

 一方、一九五〇年代には、本土各地で反基地闘争が激化すると、その鎮静化を図るため、岐阜県や山梨県の海兵隊が、米軍施政権下にあった沖縄に移駐を強行し、そのしわ寄せは全て沖縄に向けられ、その結果、銃剣とブルドーザーによる土地の強制収用が始まったが、日本政府はそれも黙認をしてきました。

 そんな中、沖縄では、プライス勧告、島ぐるみ闘争、宮森小学校へのジェット機墜落、六歳の少女暴行事件、コザ暴動事件、キャラウェー旋風等々、植民地下の圧制、人権じゅうりんなど、人間らしく暮らせることもかなわなかった時代が続きました。

 戦後沖縄は、常に外交、防衛の具として引き回され、同時に、構造的差別のメカニズムにどっぷりと組み込まれ、日米の手のひらで振り回されてきた歴史が、今をも物語っております。その歴史は如実に物語っております。

 日本政府は、それでもまだ負担と犠牲を我慢しろと言うのですか。沖縄県民が本土の方々と肩を並べて、日本国憲法が保障する自由と平等、平和的生存権を享受できる日は来るんでしょうか。

 一九七二年の日本復帰も県民の望む形にはならず、四十三年たった今でも、相変わらず〇・六%に七四%近くの米軍専用施設が集中配備され、県民の苦悩は癒やされるどころか、日米の合意や安全保障環境の悪化を理由に、普天間の代替施設は辺野古が唯一の解決策と移設を強行しようと、海上保安庁や機動隊は、反対住民を強権で圧制、制圧、弾圧を繰り返しています。

 その実態は、今やマスコミやネットを介して世界じゅうに伝聞され、日本政府の非民主主義と恥ずべき行為が暴かれております。それを受けて、日本国民はもちろん、世界じゅうから賛同、共感、共鳴の声が寄せられ、辺野古基金は四億円近くまで積み上げ、まだまだその輪の広がりを見せております。

 しかるに、二〇一三年の建白書、二〇一四年一月の名護市長選、十一月の県知事選、十二月の衆議院選、いずれも辺野古反対候補が圧倒的な勝利で民意を示し、その後の県民世論調査では八〇%以上の反対にもかかわらず、全く聞く耳を持たず、顔は米国に向き、沖縄県民の声を無視し続けるのは民主主義にもとる行為と断じざるを得ません。

 一方、辺野古に関しては、名護市長の権限に係る項目は何一つクリアできていない中で作業が続けられているのは、法治国家として許されず、すぐにも中断すべきであります。

 ここまでるるお話し申し上げてきましたが、今回の関連法案の進め方と辺野古移設問題とは、どこか問題の根が共通しているところがございます。それは、政府はこれまでに常々、県民の心に寄り添い、丁寧に説明しながら、御理解をいただきたいと言う。しかし、名護市長のところへは誰一人来たことがありません、説明もありません。言っていることとやっていることは整合がとれておりません。ただ、権力を振りかざす場面だけが目立っている感じがいたします。

 無理が通れば道理引っ込む。専門家や国民がどう考えようとも、自分たちが正しい、自分たちの思うとおりに進めるということになれば、我が国の行く末が案じられます。いつか来た道を再び歩もうとしている心配、危惧は大多数の国民が抱いております。

 時間が過ぎましたが、終わりに、以上で意見陳述は終わりますが、この法案は特に沖縄県にとって看過できないものであり、直ちに撤回すべきであることを重ねて申し上げます。

 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

浜田座長 ありがとうございました。

 次に、大田昌秀君にお願いいたします。

大田参考人 大田でございますが、私は、辺野古に絶対に基地をつくらせてはいけないという立場から、その理由を申し上げたいと思います。

 それは、まず、沖縄戦を体験したという沖縄の人たちは、この沖縄に二度と再び軍事基地をつくらせてはいけないと。基地がつくられたら、次に戦争が起きたら必ず攻撃の的になるということは、誰が考えても当然のことでございます。二度と再び沖縄を戦場にしてはいけない、子や孫たちに同じ苦しみを体験させてはいけないということで、沖縄戦の筆舌に尽くしがたい体験を通して基地に反対しているわけでございます。

 沖縄戦がいかに大変な戦争だったかということは、お手元に資料を配ってございますが、それと、普天間飛行場がどういう飛行場かということも、お手元の資料をごらんいただければある程度納得できると思います。

 戦時中、沖縄には十二の男子中等学校と十の女学校がございました。その全ての学校から、十代の若い生徒たちが戦場に出されたわけです。十代の若い人たちを戦場に出すためには、まず国会で法律をつくって、その法律に基づいて戦場に出すわけなんですが、沖縄戦の場合は、法律もないままに、十二の男子中等学校と十の女学校の十代の若い生徒たちが戦場に出されて、過半数が犠牲になったわけなんですね。

 そして、昭和二十年の六月の二十二日に、沖縄守備軍の組織的抵抗が終わった段階で、日本本土では義勇兵役法という法律が公布されて、男性の場合は十五歳から六十歳まで、女性の場合は十七歳から四十歳までを戦闘員として初めて戦場に出す法律ができたわけですよ。ですから、沖縄の若い十代の生徒たちは、何ら法的な根拠もなしに戦場に出されて、若い命を失ってしまったわけです。

 そういう体験を踏まえて、私たちは、基地をつくらせてはいけないというふうに反対しているわけなんですが、その反対の理由にはもう一つ大きな問題がございます。

 一九五二年の四月二十八日に、沖縄が日本から切り離されて、米軍の軍政下に置かれました。そして、二十七年間、沖縄は憲法の適用が受けられなかったわけです。

 憲法の適用が受けられないということは、人間が人間らしく暮らしていけないわけなんですよ。憲法には、基本的な人権とか、人間が人間らしく生きていけるようなもろもろの規定が細かく記載されているわけなんですが、憲法が二十七年間適用されないということは、沖縄の人々は、絶えず他人の目的を達成するための手段、物扱いされてきて、人間扱いされてこなかったわけなんですね。

 ですから、そういうことを踏まえて、私たちは、一九九六年の一月に基地返還アクションプログラムというのをつくって、二〇〇一年までに一番返しやすいところから十の基地を返してほしい、二〇一〇年までに十四の基地を返してほしい、二〇一五年になったら嘉手納飛行場を含めて残りの十七の基地を全部返してほしい、そうすると、二〇一五年になると沖縄は基地のない平和な社会を取り戻せるからということで、基地返還アクションプログラムというのを日米両政府の正式の政策にしてくださいと日米両政府に出したわけです。

 そうしますと、橋本総理から密使がやってきまして、二〇〇一年までに十返せと言うけれども、最優先に返してほしいところはどこかと聞かれたものですから、それは普天間飛行場ですと。なぜかというと、周辺に十六の学校があって、病院とか市役所なんかがある。それから、クリアゾーンといって、滑走路の延長線上には建物をつくってはいけないし、人間が住んでいけないようになっているわけですよ。ところが、既に普天間第二小学校ができていて、三千人の人が住んでいるわけですよ。だから、一番危険だから普天間を真っ先に返してくださいとお願いしました。

 そうしますと、一九九六年の四月にクリントン大統領が来日されるということになって、橋本総理がモンデール駐日大使と話し合って、普天間を返すことが決定したわけなんですね。そして、我々が二〇〇一年までに十返してくださいとお願いしましたら、普天間をつけ加えて十一返すことを日米両政府が正式に合意したわけです。とても喜んだわけですね。

 ところが、十一返すけれども、そのうちの七つまでは県内に移設するというわけですよ。そうしますと、県内に移設しますと、今も、普天間飛行場とか嘉手納飛行場は兵舎がプレハブでできていますから、それをコンクリートにかえているわけです。移設するとすると、コンクリートで新しくつくるわけですね。そうすると、耐用年数が尽きるまで、米軍は勝手に使えるわけなんですよ。

 九五年の九月に少女暴行事件が起きました。そうしますと、沖縄県民が怒って大会を開いたものですから、日米両政府が、沖縄県民の怒りを静めるために、沖縄に関する特別行動委員会というものをつくって、そして、基地を減らすことを発表しました。日米両政府の最終報告を読みますと、日本政府とアメリカ政府の報告の中身が違うわけなんですね。

 日本政府は、普天間飛行場を辺野古に移すには、普天間飛行場を五分の一に縮小して移す、したがって、普天間飛行場の滑走路は今二千六百メートルから二千八百、七百メートルくらいありますが、それを千五百メートルに縮める、建設期間は五年から七年、建設費用は五千億以内と発表したわけです。

 ところが、アメリカ政府は、建設期間は少なくとも十年かかる、MV22オスプレイを二十四機配備するから、これが安全に運航できるようにするためには二カ年の演習期間が必要だ、したがって、少なくとも十二カ年建設期間はかかる、建設費用は一兆円かかる、それから、我々が一番問題にしているのは、運用年数四十年、耐用年数二百年になる基地をつくるとはっきり書いてあるわけなんですよ。

 二百年になる基地をつくられたら、沖縄は永久に基地と共生しなくちゃいけないということで、こんな基地をつくられたらいけないということで、私たちは今反対しているわけなんですね。

 ですから、どうかひとつ御理解いただきたいことは、今、辺野古に九十歳とかあるいは八十歳余りのお年寄りたちが座り込んでいますが、この人たちは沖縄戦の体験をした人なんです。普通、座り込みというのは二カ月くらいで終わるわけなんですが、もう十六年間座り込んでいるわけですよ。それは、沖縄戦がいかに大変な戦争だったかということは、お手元の資料をごらんいただければある程度御理解いただけると思いますけれども、そういった背景があるからこそ、我々は基地に反対しているわけです。

 今、安全保障問題が真剣に議論されておりますけれども、安全保障というのは非常に大切なことなんですが、安全保障を考える場合には、日本の現状がどうなっているか。この小さな島国日本に四十五カ所の原子力発電所があるわけですよ。その原子力発電所、今はミサイルの戦争の時代ですから、もしも十発命中したらどうするんですか。そういう、日本の現状がどうなっているかということを踏まえて安全保障問題について議論していただかないと、沖縄戦をもう一遍繰り返すということになりかねないので、私たちとしては、辺野古に絶対に基地をつくらせてはいけない。

 その理由もたくさん申し上げたいことがございますが、時間の制限がありますからこれでやめますが、どうか一つだけお願い申し上げたいことは、国会議員の皆さんは戦争体験を知らない方々もたくさんいますけれども、沖縄戦とは何だったのか、そして沖縄戦がどうして戦われたのか。最初から玉砕ということを知っていながら、日本本土の防衛体制が、当時、沖縄戦が始まったときには六〇%しか仕上がっていなかったわけですよ、それを、沖縄に米軍を一日でも長くくぎづけにしておいて、その間に日本本土の防衛体制を完璧にしようということで、沖縄が玉砕するということを知っていながら、あえて捨て石にして今日に至っているわけなんですね。

 その点をぜひ御理解いただいて、基地問題については、いかに沖縄の人たちが沖縄戦で犠牲をこうむったかということについてはぜひとも御理解いただいた上で、基地問題を議論していただければ大変ありがたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

浜田座長 ありがとうございました。

 次に、古謝景春君にお願いいたします。

古謝参考人 皆さん、こんにちは。南城市長の古謝でございます。

 本日は、ここ沖縄で開催されております衆議院平和安全法制に関する特別委員会の地方参考人で発言をする機会をいただき、まことにありがとうございます。

 我が南城市は、沖縄本島南部に位置する自治体で、平成十八年一月一日に一町三村で合併をした、比較的若い市であります。人口は四万二千人余りと小さな町でございますが、琉球民族発祥の地である久高島や世界文化遺産の斎場御嶽を擁しており、琉球王国のグスクや関連遺産群があり、歴史と自然豊かなすばらしい地域であります。現在、市民一丸となって、日本一元気で魅力ある町づくりに取り組んでおります。本日お越しの特別委員会の皆様方におかれましても、ぜひとも南城市に御訪問賜りますよう、冒頭、心よりお願いを申し上げます。

 さて、本題に入る前に一言申し上げます。

 私は、安全保障法制の専門家ではございません。しかし、第二次大戦中の沖縄戦において最後の激戦地となり、筆舌に尽くせぬ辛酸をなめた沖縄本島南部の自治体の長として、平和を守る立場から率直にお話を申し上げることについて、委員各位の御理解をいただければと思います。

 今回の安全法制について、私は当初、一抹の不安を覚えておりました。それは、昨年七月、政府が閣議決定した憲法解釈の一部変更によって集団的自衛権の行使が容認されたとの報道に接し、そのことによって日本国憲法の平和主義と専守防衛がないがしろにされるのではないかと考えたからであります。

 沖縄県民が多大な犠牲を払った第二次世界大戦への反省から、国連が誕生し、その国連憲章第二条において初めて、戦争、すなわち武力の行使は原則として禁止をされました。

 この武力行使禁止の原則は、平和憲法と呼ばれる日本国憲法にも憲法第九条として規定されました。私は、この九条に表現されている戦争放棄、武力の行使の禁止原則は非常に大切で、平和国家日本として守っていかなければならないと考えております。

 しかし、国連憲章も日本国憲法も、自衛権は否定をしておりません。

 国連憲章においては、第五十一条において、ある国が武力行使禁止の原則を破って自分の国を武力攻撃してきたときは、国連が助けに来るまでの間、個別的自衛権あるいは集団的自衛権を使ってみずからを守ってよいとされております。

 日本国憲法においては、第十三条に、国民の生命、自由、幸福を追求する権利を守る責務が国にあるという趣旨のことが規定をされており、また、憲法の前文においては、日本国民は平和的生存権を有するとされていることから、みずからを守る権利、すなわち自衛権を憲法は否定しないと私は考えております。

 ただし、国連憲章と日本国憲法は全く一緒ではありません。国連憲章が加盟国に認めている集団的自衛権、これは、みずからは攻撃されていないにもかかわらず、他の国が攻撃された際に、その攻撃を排除するために動く権利であり、これは日本の憲法第九条のもとで例外的に認められている自衛権とは異なるからであります。ここで言う集団的自衛権を認めてしまうと、日本は文字どおり他国の戦争に巻き込まれることになり、平和憲法の精神から離れてしまうと私は解釈をいたしております。

 昨年の七月一日に閣議決定が出た際、私は報道を見て、この集団的自衛権を認めたとするならば、賛成はできるものではないと思いました。

 しかし、その後の国会質疑において、昨年の閣議決定後も、それをもとにした今回の平和安全法制も、国連憲章に書かれている普通の集団的自衛権の行使は認めておらず、これまでどおり専守防衛、あくまでも自国の防衛を目的とする武力の行使しか認めていないことがわかり、これならば賛成できるという考えに至りました。

 安倍総理自身、国会でこうおっしゃっておりました。これは、平成二十六年七月十四日、衆議院予算委員会での御発言であります。引用します。「新三要件に照らせば、」中は略します、「我が国がとり得る措置には当然おのずから限界があり、国連憲章において各国に行使が認められているのと同様の集団的自衛権の行使が憲法上許容されるわけではありません。」と。

 安倍総理には、そして政府には、言葉どおり、平和憲法のもとでは今後とも日本は普通の集団的自衛権は認められないという立場を貫いていただきたいと申し上げたいと思います。

 今の国会の質疑を見ておりますと、なかなか本質が伝わらないというのが率直な感想であります。南城市民の多くも、政府が何をしようとしているのか、なぜ今この法律改正が必要なのか、その中身がなかなか正確にわからないというのが実情ではないかと思います。もう少し、普通の国民にも理解できるように、丁寧な説明をしてほしいと思います。

 加えて、あと二点申し上げたいと思います。

 一つは、政府において、平和外交の努力をもっとしっかりやってほしいということであります。

 私も市民の暮らしを預かる立場におりますので、政府が万が一のことを考えて安全保障法制を整備する努力をしていることは、一定程度理解できます。なぜかと申し上げますと、二〇一二年に、北朝鮮が人工衛星と称するミサイルを発射するとの発表を受け、沖縄県において、石垣市、宮古島市、那覇市、南城市において、ペトリオット3、PAC3が配備されました。もし万が一沖縄に着弾した場合を考えると震撼する経験をいたしました。

 しかし、行政の最大の使命の一つは、その万が一のことがなるべく起こらないように努力することだと考えております。日本がどこかの国に武力攻撃を受ける、それは最悪の事態であります。その最悪の事態を避けるためには、政府が近隣諸国との関係を改善するために最大限の外交努力をすることが必要ではないでしょうか。

 我が南城市も、中国の蘇州市や江陰市などと、児童生徒の交流を含め、深い交流をしております。最近はともすると中国の脅威などが喧伝されることが多いわけでありますが、私は、地方の民間交流を通じて、中国の人々と日本、とりわけ沖縄は平和共存していけることを実感しております。日本が中国を初め近隣諸国との平和友好関係を深めることができるよう、政府には一層の努力を求めたいと思います。

 もう一つは、政府及び国会において、沖縄の米軍基地の軽減努力をもっと強力に行っていただきたいということであります。

 私は、日米安保協力を否定する立場ではありません。しかし、日米安保とは、日本の全体の安全保障のために存在するものであり、その負担を沖縄県民だけが過重に負っている現状は、私の立場からも是認できるものではございません。

 日米両政府は、既に嘉手納以南の全ての米軍基地の返還に合意をしておりますが、工程表を見ると、返還までには余りにも長い時間がかかることが明白で、県民の中には大きな不満があります。

 今日の沖縄経済は米軍基地に依存していないことは明らかであります。そのことについて誤解している方も少なからずいるということは残念でなりません。ぜひ、沖縄の歴史について御理解を深めていただきたいと思います。その中で、日本の安全保障のために負担を強いられているわけでありますから、政府においては、この点を真摯に受けとめていただき、基地負担の軽減努力を一層強化していただきたいと思います。

 以上で、私の参考人としての意見陳述を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

浜田座長 ありがとうございました。

 次に、高嶺朝一君にお願いいたします。

高嶺参考人 浜田座長から、率直な御意見をということでありましたので、率直な意見を述べさせていただきます。

 安保関連法案と辺野古新基地建設は、安倍政権の対米誓約の二本柱だと思います。いずれも、憲法で保障された国民の基本的な権利を侵害し、地方自治を破壊するおそれがあると私は思います。

 二つの対米誓約は、沖縄に災いをもたらすものである。私は反対であります。

 安倍首相を支える自民党若手議員グループの勉強会で出たいわゆる沖縄二紙への威圧発言は、民主主義の基盤である報道の自由を奪うものであります。風評の類いを言い立ててスポンサーに広告を出させないようにしむけるなど、営業妨害だと私は思っております。

 国防、安全保障政策のためなら、憲法で保障された国民の権利はどうでもいいという風潮が政権や一部の政治家、官僚の皆さんの中にあり、それを容認する世論が形成されつつあることは非常に怖いことであります。

 もう一つの対米誓約、辺野古の新基地現場では、市民による平和的な抗議行動に対して、公権力による暴力が公然と行われている。私も現場で何度か目撃しましたが、一人の人間として、ああいう場面を見ることはつらいことです。

 対テロ戦争遂行のために制定された米国の愛国者法では、市民の人権が大幅に制限されました。ブッシュ政権内では、市民の基本的な権利を侵害することであっても、ケースによっては、大統領の政策だから憲法条項の制約を受けないでいいというような考え方があったようです。日本も今そういう状態になりつつあります。

 政府は、辺野古に新しい飛行場をつくり普天間を返還する、嘉手納以南の基地を一部返還する、県民の負担の軽減になると強調しています。しかし、中身は、中北部に海兵隊の基地を集中し、長期的な使用を狙う米軍基地の再開発計画であると私は思います。

 私は、新聞の論説などで、在沖米四軍の兵員と面積の三分の二を占める、また、基地関係事件、事故の加害者の大部分を占める海兵隊そのものが沖縄から撤退しない限り、沖縄県民は負担が軽減したと感じないだろうと書いてきました。沖縄の海兵隊が一部グアムやその他に移ったにしても、負担軽減というほどではありません。

 山原は、本島で自然が残っている数少ない地域です。沖縄戦中、私もその一人ですが、母親におぶされて、また、住民の多くが山原の山に隠れて生き延びました。山原の山々がなかったら、今いる沖縄住民の多くはこの世に存在していないでしょう。県民にとっては特別の場所です。

 現在の日米合意による沖縄・グアム計画が実行されても、嘉手納の空軍、海軍、読谷村の特殊部隊、うるま市のホワイトビーチ軍港、中部の海兵隊基地群、那覇軍港は、そのまま残るか、県内の他の場所に移って残ります。それどころか、嘉手納以北は米軍、自衛隊の基地として再開発されることになるでしょう。

 ジュゴンの寄ってくる辺野古の海が埋め立てられ、巨大な飛行場ができます。東村高江ではヘリパッドの整備工事が行われています。ノグチゲラやヤンバルクイナなど希少野生動物が生息する北部の森林や周辺の伊江島では、既にオスプレイの飛行訓練が日常的に行われております。伊江島では、海兵隊の戦闘機の着艦訓練も想定した訓練場の整備も進められております。

 再編実施のための日米のロードマップに従って、二〇〇八年からキャンプ・ハンセンを陸上自衛隊が共同使用して訓練を開始しました。自衛隊は、海兵隊のような水陸両用部隊を新設する方針です。

 既に沖縄では、海兵隊と自衛隊の事実上の共同訓練が始まっています。日米両政府は、自衛隊と米軍の共同使用を、キャンプ・シュワブや他の米軍施設、訓練場にも拡大することを検討しております。

 先週末からオーストラリアで、米国、日本、豪州など多国籍の部隊が参加した合同演習が始まっておりますが、長崎・佐世保の陸上自衛隊西部方面普通科連隊からも部隊が参加しております。その普通科連隊は、通常、キャンプ・シュワブやハンセンなどでも海兵隊とこれまで訓練してきました。在沖米海兵隊と一体的に行動して、強襲揚陸艦から上陸訓練を行うようになっております。

 安保関連法案を先取りした訓練は既に始まっております。

 安保関連法案の制定の理由に挙げられている日本を取り巻く安保環境の変化についても、私は、余りにも軍事的な面やいわゆる中国脅威が誇張されていると考えております。

 東シナ海、南シナ海では、小さな島々の領有権をめぐる争いは、私が現場で取材していた冷戦時代からもありました。対立の多くは漁業権や資源の探査をめぐるものであり、実は軍事的な対立ではありません。

 尖閣について言えば、水産庁や漁業団体、海上保安庁などが中国や台湾など関係機関や団体と話し合えば解決可能な事柄ばかりです。

 このような問題は、政府間の外交はもちろん、地方自治体、先ほど古謝さんもお話しになりましたけれども、業界団体、研究機関、民間団体間の交流や協議の方がもっと有効だと思います。自衛隊が前面に出ると、かえって予期せぬ衝突を引き起こすおそれがあります。

 国防省と米太平洋軍は、議会による軍事予算抑圧に対応するため、同盟国に助けてもらおうということで、特に自衛隊を集団自衛権の縛りや伝統的な専守防衛の囲いから解放して、米軍とともに戦略、戦術、地理的な制約を超えて活動できるように求めてきました。今回の安保関連法案は米側の要請に応えるものです。

 私は、尖閣問題が、米軍のアジア太平洋地域での兵力体制維持と予算獲得のため、そして自衛隊の役割拡大のために利用されてきたと見ています。

 私の記者としての現場時代もいつも思っていましたけれども、トウショウヘイ副総理の発言をいつも思い出します。これは外務省のホームページから引いてきましたけれども、日中平和友好条約交渉時の、一九七八年十月二十五日の福田赳夫総理との首脳会談の発言です。「われわれの世代では知恵が足りなくて解決できないかもしれないが、次の世代は、われわれよりももっと知恵があり、この問題を解決できるだろう。この問題は大局から見ることが必要だ。」と話していました。

 私は、このトウショウヘイ発言を、またほかの記者たちも、何度も引用してきました。そして、私自身も、論説などでトウショウヘイ発言などを引いて、日本、中国、台湾による尖閣と周辺の共同開発を提言してきました。陳水扁政権が台湾でできたとき、私は、張さんという秘書長、日本で当たる官房長官と会談し、何とか日本、台湾、中国が一緒になって尖閣の問題を平和的に共同開発できないだろうかと話したこともあります。

 東シナ海や南シナ海を、平和でお互いの利益になるウイン・ウインの関係ではなく、なぜわざわざ争いの海にするのか。そういう必要は私は全くないと思います。

 私が今一番恐れているのは、次のことです。中国が南シナ海で今人工の島をつくっていますが、嘉手納から、P8ポセイドン、海軍の哨戒機ですが、それと空軍のRC135電子偵察機が定期的にパトロールに行っています。これは日本の報道ではそれほど大きく扱われていないんですが、米国、中国の報道では連日のように扱われています。今、米中間の大きな摩擦の要因になっています。米国も中国も、不測の事態が起こらないだろうかと心配しているわけです。

 これも安保関連法案の先取りのようなものですが、米軍は海上自衛隊P3の部隊に南シナ海共同パトロールを要望しております。また、海上自衛隊は前向きな姿勢を示しています。しかし、これが実行されれば中国を刺激することになるでしょう。

 安保関連法案の審議の中で幾らか縛りとなる条件をつけたにしても、米国の要望に応え、自衛隊の活動範囲は地理的な概念や任務の内容も際限のないものになるはずです。日本人のメンタリティーからすると、米国の要求を拒否することができるとは私は思えません、これまでの経緯を見ていて。

 かつて米国の要請に応じて韓国がベトナムの戦場に軍隊を派遣して過ちを犯しましたけれども、あえて日本が同じような過ちを犯そうとしているかのように私には見えます。

 「決定の本質」のグラハム・アリソン教授らが、米国、中国政府に対して、トゥキュディデスのわなにはまるなと提言をしています。オバマ政権のピボット・ツー・アジア政策や、南シナ海、東シナ海の領有権争いをめぐる双方の応酬が過熱しているのをいさめているわけですね。

 この記事は、発表されて三年近くなりますが、今、米国、中国、アジアの政府の関係者、研究者、メディアにしばしば引用されています。

 古代アテネの軍人、歴史家は、衰退する大国と台頭する大国との間で戦争が起こることを指摘しました。十六世紀以降、台頭する大国が既存の大国に挑戦する十五事例のうち十一例は戦争になったということです。アリソンらは、そのようなことを考慮して、米国と中国の指導者は対立と火種になりそうな問題について率直に話し合いを始めないといけないとアドバイスしているわけです。

 平和憲法とともに歩んできた日本こそ、中国を初め周辺の国々と率直な対話を始めることが先で、あえて緊張を高めるような軍備体制の強化に前のめりになるべきではないと私は思っています。

 率直な御意見ということでしたので、率直な意見を述べさせていただきました。(拍手)

浜田座長 ありがとうございました。

 次に、中山義隆君にお願いいたします。

中山参考人 石垣市長の中山義隆でございます。

 今回、我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会地方公聴会に参考人としてお呼びいただき、意見を述べさせていただきますこと、改めて感謝を申し上げます。

 まず冒頭に、六月二十三日、沖縄は慰霊の日を迎えました。私どもの石垣島におきましても、八重山の全戦没者の慰霊祭を行いました。あわせて、同日、戦時中にマラリア有病地に疎開、避難させられたためにマラリアに罹患し、犠牲になられた多くの皆様方の戦争マラリアの犠牲者の慰霊祭も行われました。八重山圏域で四千名近い方がマラリアで命を落としました。

 さらに、七月三日には尖閣諸島戦時遭難者慰霊祭も開催いたしました。これは、終戦間際、石垣島から台湾へ避難、疎開するために二隻の船に分乗して避難をした島民が、途中、米軍の機銃攻撃を受け、一隻は炎上、沈没、もう一隻は漂流して尖閣諸島の魚釣島に漂着をしました。その後、けがで亡くなられた方、さらには食料がなく餓死した方々もいらっしゃったというふうなことを聞いております。

 こういった歴史等も踏まえた中で、私は、市長という立場もありますが、決して二度とこのような悲惨な戦争は起こしていかない、また、平和をしっかりと守っていくという立場でいるということを御理解いただいた上で発言をさせていただきたいと思います。

 まずは、石垣島の紹介をさせていただきます。

 石垣市は、日本列島及び琉球弧の最南西端にありまして、那覇から四百十一キロ、東京からは千九百五十二キロに位置しております。また、隣国の台湾とは二百七十七キロと、非常に近い位置にございます。

 亜熱帯性の海洋性気候で、石垣島とその周辺の離島及び尖閣諸島で構成をされています。周辺の海には、我が国最大の石西礁湖を中心としたサンゴ礁群が広がっております。また、沖縄県内最高峰の於茂登岳に代表されます亜熱帯森林も広がっており、森林を水源とする河川を配した自然豊かな地形を形成しております。

 石垣市は、このような気候や地理的地勢を背景に、台湾を初めとしたアジアの交流拠点として、また、八重山圏域の産業、交通、経済の中心地として発展してまいりました。

 本市独自の伝統文化や食文化は、広域な経済活動や豊かな自然と多様な文化から育まれており、私たちの貴重な魅力ある島々として多くの観光客が訪れ、観光を初めとして、農業、畜産、漁業等の産業に潤いと活力をもたらしております。

 特に、平成二十五年三月の新石垣空港、南ぬ島石垣空港開港以来、おかげをもちましてますます多くの観光客に来ていただいております。観光客数は順調に伸びており、開港初年度が九十四万人、そして二年目が百十二万人、ことしは百二十万人かというふうなことも言われております。

 このような観光客の大幅な増加により、観光が他の産業を牽引するようになり、本市経済に明るい兆しが出ていることを御報告いたします。

 さて、私たちの島を取り巻く情勢の認識についてでありますが、平成二十二年九月の尖閣諸島海域での中国漁船による海上保安庁巡視船への衝突事件は、我々にとって大変大きな衝撃を受けました。その際、中国漁船船長の釈放の問題等、尖閣諸島での事件が国際的に浮上してまいりました。中国漁船によります衝突事件を契機として、本市の尖閣諸島における情勢については、市民、そして国民が多くを知るところとなっております。

 近年、石垣市の尖閣諸島周辺海域で中国公船による領海侵入が連日のように発生しているのが現状であります。特に、中国公船による領海侵入は、国による尖閣国有化前の五回から、国有化後は三年弱で既に百二十回に及んでおります。このような現状に関し、大きな不安を感じるとともに、大変危惧をしているところでございます。

 尖閣諸島周辺海域は、マチ類、カツオ類など多くの魚がとれる良好な漁場として昔から知られております。漁業者においては、不測の事態をおそれ、近年は尖閣諸島周辺での漁を控える等の影響が出ております。

 尖閣諸島の歴史を鑑みるとき、一八八五年、明治二十八年一月十四日、尖閣諸島が日本の領土に編入され、沖縄県の所管とするところが閣議決定されました。翌明治二十九年には、沖縄県から尖閣諸島の開拓許可を得た古賀辰四郎氏が尖閣諸島の開拓に着手し、アホウドリの羽毛採取など事業を展開してまいりました。一九〇二年、明治三十五年には、尖閣諸島は現在の石垣市である石垣島大浜間切登野城村に編入され、地番が確定をいたしました。現在は無人島でありますが、当時は開拓者の古賀辰四郎氏にちなみ古賀村と呼ばれ、最盛期には九十九戸、二百四十八名が生活し、漁業やかつおぶし工場などが行われていたと記録されております。

 石垣市は、明治二十八年に日本政府が尖閣諸島を我が国の領土として編入することを閣議決定した一月十四日を尖閣諸島開拓の日として、平成二十二年に条例を制定いたしました。尖閣諸島は日本固有の領土であり、石垣市の行政区域であることは紛れもない事実であります。中国政府が主張している領土問題はそもそも存在しないと考えております。

 しかしながら、中国海警局など公船による領海侵犯の頻発や尖閣諸島周辺海域での中国海軍の活動が急速に拡大、活発化しているのが現状であります。また、平成二十五年には、南西諸島の通過を伴う中国海軍艦艇の活動が計八回、沖縄南方海域での活動が計四回されたと確認しております。このような現状から、日々の環境が悪化し、現実的な脅威として懸念するところであります。

 市民、住民の生命財産を守ることは市長の最も重要な仕事の一つだと考えておりますし、私は市長として、現状に対し大変危機感を感じているところであります。

 二〇一二年、平成二十四年四月には、北朝鮮が人工衛星打ち上げと称しミサイルの発射実験を実施したことは、皆様の記憶に新しい出来事だと思います。

 北朝鮮のミサイル発射におきましては、その軌道が石垣島上空であるということから、市民を震撼させ、これまでにない大きな出来事となりました。防衛省は、万が一に備え、石垣市にPAC3を一時展開いたしました。幸いにも、平成二十四年四月の北朝鮮ミサイル発射実験は失敗になりました。

 しかしながら、安堵したのもつかの間であり、同じ年の十二月、北朝鮮は再び人工衛星と称するミサイルの発射実験を予告いたしました。ミサイルの軌道は再び本市上空と発表され、改めて緊張感が走りました。防衛省は、万が一に備え、再度、石垣市にPAC3の部隊を配備いたしました。

 本市は、これら二度にわたる北朝鮮のミサイル発射について危機管理対策本部を立ち上げ、国、県と連携し、市民の安全対策について常に情報を発信するなどの対応をしてまいりました。

 平成二十四年十二月、北朝鮮は意表をつきミサイルを発射させ、ミサイルが本市上空を通過いたしました。本市への直接的な被害はありませんでしたが、市民はこの事態に大変な不安と驚きを持ちました。このとき、北朝鮮による核弾頭搭載可能な弾道ミサイルは、まさに本市の現実的な脅威であると認識をさせられました。

 北朝鮮は現在もミサイル発射の示唆を含む挑発的な行動を繰り返しており、北朝鮮によるミサイル、核開発の進展は、日本の安全保障においても現実的な脅威であると認識をしております。

 これらのことから、政府による、厳しさを増す日本の安全保障環境の変化との情勢認識は、理解するところでございます。

 安全保障政策における政府への期待を申し上げさせていただきたいと思いますが、私は、石垣市の尖閣諸島で、現に中国が相当の領海侵犯を行っている現状に大きな不安を感じております。これ以上の状況の悪化をとめる手だてを政府にしっかりとやっていただきたいと思っております。

 当然、あらゆる外交的手段を用い、平和裏に解決されるべきだとは考えておりますが、我が国においては、島嶼部の安心、安全の確保が重要な課題となっており、政府が、力による現状変更を許容しないとの意識をしっかりと示すことが重要と考えていることは、よく理解できるところであります。

 その意味において、今般の法案は、我が国の自衛権に基づき、自衛隊が米軍とも必要に応じ連携しつつ、いかなる状況においても対応できる体制を整え、日本の平和と安全をより確かにするもの、国際社会の平和と安全により積極的に寄与できるものと承知をいたしております。

 石垣市は、日本最南端の自然文化都市を標榜し、昭和五十九年に非核平和都市宣言、平成十一年には平和港湾宣言、平成二十三年に核廃絶平和都市宣言を行い、世界に冠たる平和都市を目指しているところであります。

 私は、一九六七年、国際観光年のスローガンであります「観光は平和へのパスポート」ということを理念とし、人種や国籍、宗教の垣根を越え、多くの人々が本市を訪れていただくことにより、相互理解を深め、本市の観光発展が世界平和へつながるものと考えております。これからも、国際色豊かな経済、文化の交流拠点事業を積極的に推進していきたいと考えております。

 今般の安全保障法制への評価でございますが、平和安全法制の整備によって、我が国の存立が脅かされるような事態への対処が可能となることから、抑止力が強化されるということは大変心強いことだと思っております。

 これまで我が国が十分に対応できなかった後方支援活動については、我が国が国際社会と協力して脅威に対応しようというときには大きな力を発揮するものと認識をしております。それにより、沖縄を含む日本全体の安全保障が担保されることを期待しています。

 冒頭にも述べましたが、石垣市は日本列島の最南西端に位置する国境の島であります。連日のように、石垣市の尖閣諸島においては中国公船による領海侵犯が起こっているのが現状であります。

 政府においては、海上保安庁の巡視船の増強など対応していただき、海上保安庁職員が、昼夜を問わず、厳しい状況の中、業務を遂行されていることに対し、改めて敬意と感謝を申し上げます。

 しかしながら、現在の南沙諸島、南シナ海を初め、中国のさまざまな動きなどを見ている限り、不測の事態が起こらないとは断言できません。専守防衛の理念に基づく抑止力の強化は重要であると認識をしております。

 政府におかれましては、私たち国境離島に生活する住民の安全、安心を確保するためにも、しっかりと対応いただきますようお願い申し上げる次第であります。

 今般の平和安全法案につきましては、法律の制定により、内閣と国民の代表である国会の責任において適切な判断がなされ、我が国の平和と安全が守られていくものと思います。

 しかしながら、今法案については、現状において国民の理解が深まっているとは思いません。なぜなら、戦争法案だとか地球の裏側まで行って戦争できるとか、また昨今の、もちろん言論の弾圧等にくみするものではありませんが、報道圧力問題など、イメージだけでの議論や法案自体の本論から外れた議論が目立つからであります。

 幸いにも国会会期が延長され、まだまだ会期末まで日数があります。なぜこの法案が必要であるかという本質や、もし反対であるならば具体的にどの部分が反対であるのかを、国会議員の先生方がそれぞれの地元でしっかりと国民に伝えていただきたいと思います。また、マスコミ、メディアの皆さんも、しっかりと中身を論じ、国民世論を喚起していただきたいと思います。

 今般の平和安全法案について国民の理解が深まることを期待し、また、現在の国際情勢、我が国を取り巻く状況等、環境等を踏まえ、法案提出に一定の理解を示し、今国会での、慎重に慎重を期した議論がされ、成立がされることを求める立場で、私の意見を締めくくりたいと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

浜田座長 ありがとうございました。

 以上で参考人からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

浜田座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮崎政久君。

宮崎(政)委員 自由民主党の宮崎政久です。

 参考人の皆様、本日は、それぞれのお立場から貴重な御意見をいただきました。まことにありがとうございました。心から御礼を申し上げます。

 戦後七十年の節目という年のこの平和安全法制の整備に当たりまして、地方参考人会が沖縄で開催されるということはまことに意義のあることだと思っております。二十分と限られた時間でございますので、参考人の皆様全員に質問させていただくことができないかもしれませんが、御理解いただきますように、よろしくお願いいたします。

 最初に、この参考人会が沖縄で開催される以上、何名かの方から御指摘ございましたような我が党内での勉強会のことについては、一言触れさせていただかないといけないと思っております。

 先日、我が党内の勉強会において、普天間の周辺に住むのは金銭目当てであるとか、地主が金持ちだとか、沖縄のどこかの島が中国にとられれば目を覚ますだとか、事実に反して、宜野湾市民、沖縄県民に対して侮辱に当たる発言がございました。

 これは、だめなものはだめだ。我々県民も日本人であります。私自身、そんな思いから、これは見過ごせないと抗議をしたわけでありますが、この委員会の審議におきましても、安倍総理からおわびの言葉がありました。また、土曜日、菅官房長官と翁長知事との会談の中でも、同様のおわびがあったと報道に接したところでございます。私からも、このような経過をたどっておりますことは、県民の皆様に改めてお伝えをさせていただいて、御理解賜りたいと思っているところでございます。

 また、メディアを懲らしめるという類いの発言もありましたが、懲らしめてみても何の解決にもならないわけでありまして、考えの違う人がいれば理解をしてもらうように努めるのが政治の役割でありまして、丁寧に御説明をして理解を得る努力を、我々国会議員こそがしていかなければいけないと自戒をしているところでございます。

 きょうのこの参考人会では、私からは、沖縄の思い、心意気、平和を確立していく覚悟などをしっかり発信してまいりたいと思っておりますし、沖縄でこの法案の理解が広がるよう、参考人の皆様の御意見をまた賜りたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、県民、国民の皆さんに御理解いただきたいと思っていることは、絶対に戦争をしてはいけないという誓いであります。さきの大戦では、三百十万人もの日本人が戦火に倒れ、ここ沖縄でも二十万人を超える先人が命を落とされました。大田参考人からは詳細なお話をいただいたところであります。戦争はだめなんです。

 この法案は、従来から国民を守るために不備があると言われたものを、国民の命と平和な暮らしを守るために整備しようという趣旨のものであります。

 一例を挙げますと、朝鮮半島で有事、戦争となった場合に、今現在、韓国には日本人が三万六千名を超えておりますが、こういった日本人を助けて逃がさないといけない。日本人も退避するために乗船をしているアメリカの艦船が公海上で攻撃を受けた場合に、そしてこれが今まだ我が国に対して武力攻撃がない時点であれば、アメリカの艦船を守るための自衛隊の防護活動が、現在の法制下では、これは集団的自衛権に該当するからやってはいけないということになります。

 つまり、このアメリカの艦船に乗っている日本人を助けることができず、見殺しになってしまう、それでいいのかという問題意識であります。日本人の命を守るための自衛の措置が、国際法で整理すると集団的自衛権の範囲に含まれざるを得ない。そのときに、集団的自衛権に分類されたら一律だめだ、見殺しになっても仕方がないんだ、こういう結論はとれないわけでありまして、その対処をしていかなければいけない。憲法が認める自衛の措置として要件をしっかりと立てて説明をして、これを何とか可能にしてまいりたい。

 この法案は、憲法の制約の中にあります。九条二項のもとでありますので、我が国がとり得る措置というのは、どこまで行っても日本の自衛のための措置なんです。憲法の前文と九条に定める平和主義の理念を堅持して、専守防衛の基本方針には一切揺るぎがない中で、自衛の措置としての武力の行使をしなければ救えない命があるときに、厳格な歯どめをかけた上で国民の命を救う方法を定めよう、こういう法案でございます。

 実際、自衛隊は、装備面においても専守防衛に徹しておりますので、他国に出かけていって攻撃をして相手をせん滅してこようという能力は持っていないわけですし、このことは今後とも変わらないわけです。

 そして、このような法案として成立をするために、与党協議は二十五回、私ども自民党では、全議員を対象とした法案協議の会議は二十七回を数えました。議論を重ねて、また党に持ち帰って議論し合う。さまざまな意見に耳を傾けるプロセスを経て、国会承認のような歯どめをかける内容を盛った上でこの法案を提出させていただいているということもまた、県民の皆さん、国民の皆さんに御理解いただきたい。その上で、このような国会審議をさせていただいております。

 古謝参考人にお伺いしたいと思います。

 先ほどのお話の中で、さきの大戦で最後の激戦地となった本島南部の南城市の市長さんとして、平和を大切に思うお気持ちが非常にあふれておりました。今回の法整備は、平和を守る、構築するというものでありまして、平和のための制限、歯どめが盛り込まれているということについて、古謝参考人の御意見をいただきたいと思っています。

古謝参考人 お答えをいたします。

 日米安保は日本の安全保障のために存在するものであり、相互の信頼関係の構築は大切であります。しかし、積極的な集団的自衛権を認めた場合、他国の戦争に巻き込まれるおそれがあり、大変危険であります。

 今回は、その懸念されることについて歯どめされる要件が含まれました。

 特に、自衛の措置としての武力行使の新三要件は、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があることという極めて厳格な基準になっていると解釈をいたしております。自衛隊の海外派遣の三原則確立、国際法上の正当性、国会の関与、安全確保。PKOの原則は、停戦、同意、中立性、撤退、武器使用の堅持と限定的な行為の範囲であるという解釈をいたしております。

 つまり、日本の自衛のための行為のみであり、憲法解釈の範囲におさまると理解をいたしておりますが、拡大解釈されないような、国会での十分なる審議を経ての法案の成立をお願いいたしたいと思います。

宮崎(政)委員 ありがとうございました。

 古謝参考人のお言葉、私たちに対しても非常に心にとめないといけないことだと思いました。

 中山参考人からは、先ほど、石垣市長というお立場で、厳しさを増す安全保障環境、安全保障上の脅威について、リアルな実情をお話しいただいたと思っております。

 石垣市というのは離島。離島においては、安全保障の環境の変化というのは、市民生活に及ぼす影響が非常に大きいと私も理解しています。例えば、有事となれば住民の避難を考えないといけないわけでありますが、小さい島の中、ましてや八重山諸島というのは島が点在している、こういうところで避難、危険回避をどのようにすべきなのか。陸続きになっている本土とは違う困難な事情がおありだと思います。

 また、沖縄は、島全体が、県全体が観光を最大の産業としておりますが、石垣は、季節を問わず、きょうも多くの観光客の方がいらっしゃっている。こういう皆さんは石垣市の生活者ではないわけですから、例えば避難するといっても、日ごろの訓練に参加しているわけではないと思います。

 また、もっと言えば、観光地というのは楽しくなければ成立しないわけです。私たちの沖縄では、あの九・一一同時多発テロのときに、風評被害で観光客がこの那覇市の国際通りからも一人もいなくなってしまって、ぱたっと観光が成り立たなくなってしまったという経験をしています。つまり、観光で生きている離島にとっては、安全保障上の支障が生じないということはどの土地よりも極めて強く求められているんじゃないかと思います。

 離島の市長というお立場から、この平和安全法制を成立させることの意義、特に安全保障が離島の市民生活や産業に与えることの意味、こういうことを中山参考人から教えていただきたいと思います。

中山参考人 今、宮崎先生の方からお話もありましたけれども、石垣島は、尖閣諸島も含めての石垣市ですが、その周辺にある離島は、小さな島々は竹富町、一番西側に与那国町、与那国島を抱えております。トータルで五万五千人近い人々がいるわけでありますが、そこにまた観光客が常時四千人から五千人滞在していただいているという状況であります。

 有事の場合の話をされましたけれども、石垣市の方でも国民保護計画を作成いたしまして、お隣の竹富町そしてまた与那国町から住民を一番大きな主要な島であります石垣島に移動させる、その後、沖縄本島等に避難させるという計画は立てておりますが、現実的に、五万人近い人口を船や飛行機で沖縄本島へ輸送するというのは非常に困難な作業になるというふうに思っております。

 先ほど九・一一のお話もされましたけれども、やはりその際は、米軍基地等も含めてテロの対象になるのではないかということでの風評被害だったと思いますが、石垣で考えられるそういった観光への影響という場合は、局所的な話になりますが、尖閣諸島にもし他国の軍隊やそういったものが上陸してきたというふうな形で紛争等が起こった場合には、恐らく、距離としては離れておりますけれども、石垣等への観光はみんなが自粛しようというふうなことになるとは思います。現在非常に好調な観光ですが、そういったことが起これば一気に冷え込んで、それを回復するためには数年かかるというような状況を前回の九・一一のときに沖縄の観光業界は見ておりますので、島の経済等においても大変大きな影響があると思っています。

 その意味においては、今回の法案の制定も含めて、日本の安全保障をしっかりと制度的につくり上げるということが必要かと思っておりますし、当然、島においても、日本国全体においても、紛争や戦争等が起こらないような法案整備にしていただくべきだというふうに思っています。

宮崎(政)委員 ありがとうございました。

 実は、きょう、この参考人会の中で、中山参考人と公明党の遠山委員と私、四十代の者であります。そこで、私と中山参考人、お互い沖縄の若い世代の代表として、今度は沖縄の若い世代という視点から御意見をいただきたいと思っています。

 私は、週末いつも沖縄に帰ってきて、いろいろな話を、特に最近はこの平和安全法制の話ばかり皆さんとするんですが、若い世代の人たちは相当冷静にこの法制を見詰めているなとよく感じます。今どき日本の国が本当に戦争に向かっていこうという法律をつくるということがあるんですかと聞かれることもあるぐらいです。戦争法案、戦争になる、果ては徴兵制が来る、こういう論調に引っ張られるというよりも、少し引いて、実際、本当はどんな議論をされているんですかというような冷静な質問を若い方から受けることも多くあります。

 一国平和主義のように日本だけが平和であればいいという意識よりも、自分でできることであればボランティアにも身を投じる。若者がボランティアに参加する意識は相当高い。これは東日本大震災のときにも証明されたと思っています。

 この平和安全法制では、日本が国際社会の平和と安定に貢献をして国際協力の機会を広げることができるようにしていく、これも大きな目的です。我が国がこの平成の世で果たすことが求められている役割や、これから日本を支える若い世代、責任世代の意識との関係から、平和安全法制の必要性がどんなふうに見えるか、中山参考人の意見を聞きたいと思います。

中山参考人 これは、沖縄だけに限らず日本全体で、今、若い世代が、一つは政治離れという話もありますが、一つは、また、政治等に対してしっかりと興味を持って、いろいろと発言をし始めているというふうに思います。ただ、その中で、偏った意見のみで議論をされているネット上での話とか、そういうものには私は大変危惧しているところはあります。

 ただ、今回の安全保障の法案、今回の法案全部につきましては、ぜひ、先ほども申し上げましたように、先生方も含めて、国民の皆さんに広く認知をしていただいて、その中で議論をすべきだろうというふうに思っています。それによって、若い世代が、自分たちが果たすべき役割というものを理解しながら、そして、今後日本がどのような方向に向かっていくのかということを決めてもらえるものじゃないかなというふうに思っております。

 今回、投票権が十八歳まで引き下げられました。この十八歳という世代を、これから日本の将来を担っていく青年たちがどのような考えで投票行動を起こすかということをしっかりと考えていかないといけないと思いますので、先ほども申し上げましたように、イメージですとか、何となく雰囲気とか、人気だとか、誰かが発言しているからみんなでそこに行こうというような風潮にだけはさせたくないなというふうに思っています。

 安全保障、とにかくこの国の将来、そして住んでいる国民の命、財産を守るための法案でありますので、具体的な中身を詳細に議論して、若者たちに伝えていただきたいというのが希望であります。

宮崎(政)委員 ありがとうございます。

 これが私どもの務めでありますので、今、中山参考人から御指摘いただいたように、法案の中身もしっかりお伝えできるようにしていかぬといけないと思っています。

 平和安全法制と沖縄のかかわりについて、違う角度から少しお聞きしたいと思います。

 平和を守る、戦争の危険を遠ざけるためには、守りを固めて、いかなる国との間でも、相手が日本を攻めたらまずいと思わせる備えをしていくこと、抑止力が必要であります。もう一つは、相手が逆に日本から攻撃されるんじゃないかと不安に思わせるようなことはしない、これは専守防衛だと思います。

 今回の平和安全法制では、専守防衛を堅持しつつ、これまで残されてきた不備を埋める、抑止力を高めつつも、それによって沖縄の役割や負担だけを一方的にふやすというものではないと私は考えています。

 国民の平和と安全を確保するために、日米同盟でも、日米が盾と矛の分担をして、我が国は専守防衛、盾に徹するというものであります。ただ、この日米同盟を維持するための基地負担が、盾も矛も沖縄に残っていて、沖縄県民に対して重くのしかかってきていて、これが過重な負担となっている、それはまた事実であります。

 戦後日本の平和というのは日米安保があったからである、日米安保は沖縄が支えてきた。すなわち、戦後日本の平和、安全は沖縄が一貫して担ってきたものであります。裏からいえば、沖縄県民が我慢していることの上で日本の安全が保たれているという面があるわけです。我々沖縄県民も日本人でありますので、応分に安全保障の分担をするということはもちろんではありますが、その負担が過重だと主張しているんです。

 この過重負担の解消というのは絶対に必要でありまして、基地を整理縮小して基地負担を軽減していくというのは県民の総意でありますけれども、これは日本人全体でやらないといけないこと。間違っても、沖縄に押しつけて、はい、終わりということにはならないわけであります。

 沖縄の基地負担を軽減させるためには、地域の安全保障環境を安定させることが必要です。地域の安全保障環境が安定させられれば、防衛上の仕事が減る。我が国の防衛もこれまで北海道に比重が高かったことを例にとれば、御理解いただけると思います。

 私たちは基地負担を軽減したいと願っている。他方、御指摘があったように、現実の脅威に的確に対応する備えは、県民生活の安全のためにはどうしても不可欠。そうであれば、現実の脅威を減らすことによって防衛上の仕事を減らせるようにする。今回の平和安全法制によって、例えば中国や北朝鮮の台頭に対して制御をきかせて、敵視ではなくて備えをして、地域の脅威を相対的に減少させる。その結果として、沖縄における米軍の仕事量を減らしていく、基地の整理縮小、早期返還を実現していく。これこそが、沖縄との関係でいえば、今回の平和安全法制がもたらす意義だと私は思っています。

 当然、基地負担軽減に当たっては、自衛隊の役割も出てきます。東アジアで節度ある防衛力を整備しているのが日本の自衛隊です。二度と戦争を起こさないためにも、この平和安全法制と自衛隊の活動の必要性、日ごろ自衛隊が果たしている役割も含めて、古謝参考人から最後に聞かせてください。

浜田座長 古謝参考人、時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。申しわけございません。

古謝参考人 はい。

 我が南城市には、航空自衛隊知念分屯基地と陸上自衛隊の分屯地がございます。

 自衛隊員におかれましては、日ごろ、不発弾の撤去、災害時の対応等、また、災害訓練等に、市民の安全確保に御尽力をいただき、また、地域の行事にも積極的に参加をされております。地元からも信頼が厚い部隊でございます。

 また、PKOにおいても、国際的平和維持活動などについても敬意を表したいと思います。ただ、これまで、幾ら安全な地域とはいえ、紛争後の地域であり、ゲリラが存在するということも聞いております。最悪の場合、生命の危機に遭遇した場合どう対応すべきかということで、隊員も心配をしておりました。

 今回の法改正は、このことが回避できる法制度に少し安堵しておりますが、しかしながら、拡大解釈され、また、戦争ということに巻き込まれてしまうと大変な事態が起こります。しっかり厳正なるマニュアル化をして、限定的なものにまとめていただきますよう国会で御議論をしていただきたいと思っております。

宮崎(政)委員 ありがとうございました。終わります。

浜田座長 次に、辻元清美君。

辻元委員 民主党の辻元清美です。

 本日は、五名の参考人の皆様、御意見を賜りましてありがとうございます。

 私は、今回の安保法制が沖縄にもたらすものは何かという点をお伺いしたいと思っております。

 まず、大田参考人にお伺いします。

 大田参考人は、新聞のインタビューなどでこのようにおっしゃっています。今回の安保法制をめぐって、自衛隊の海外活動が拡大すれば。四つの点をおっしゃっています。

 一つ目は、テロリストなどから敵視され、かえって日本の安全を脅かす。二つ目は、一たび戦争になれば、基地が集中する沖縄が第一の標的になる。三つ目は、軍は住民を守らないという教訓を沖縄戦を体験した私たちは知っている。そして四つ目が、自衛隊と米軍の軍事一体化が進み、基地の固定化が強まる。この四つの点をおっしゃり、長い米軍の支配下で憲法を待ち望んだ県民にとって許しがたい、戦後七十年の苦労が雲散霧消してしまう、いつか来た道を再び歩もうとしている今の政治は非常に危険だとおっしゃっています。

 この四つの点、テロの標的とか、それから、沖縄が攻撃の標的になるとか、沖縄戦、軍が守らなかった点や、そして、日米の一体化が進み、かえって基地が固定化されるのではないか、この御懸念をインタビューで述べていらっしゃいますが、少し詳しくお聞かせいただきたいと思います。

大田参考人 我々が沖縄に軍事基地を置くのに反対しているもう一つの理由を申し上げます。

 沖縄の廃藩置県というのは、他府県よりも八年おくれて、明治十二年に実施されました。その廃藩置県の際に、琉球王府が明治政府に対して一番抵抗したのは、明治政府が熊本の第六師団の分遣隊を沖縄に常駐せしめるということだったわけです。それからもう一つは、中国との関係を断ち切れということだったわけですね。

 御承知のように、中国と沖縄とは数百年のつき合いがございまして、それを一挙に断ち切るというのは琉球王府にとっては大変厳しいことでしたので、反対したわけですが、言うことを聞かなければ軍事力に物を言わせて聞かせるということを明治政府が言ってきたわけなんですね。それで、しようがないから、中国との関係を断ち切るということは受諾したわけです。

 ところが、熊本の第六師団の分遣隊を沖縄に常駐せしめるということに対しては、徹底的に抵抗したわけなんですね。最後の最後まで受け入れなかったわけなんです。なぜかといいますと、この小さな島に幾ら軍事力を持ってきても、島を守ることはできない、むしろ危険を招くおそれがあるから軍隊は要らないということを琉球王府は強く主張したわけですね。

 その背景には、歴史的な理由があるわけです。

 十五世紀の後半から十六世紀前半にかけて尚真王という王様がいまして、この方は五十年間王位についていた人なんですが、この人が、沖縄の方は三つに分割されていて、それぞれの支配者が戦争ばかりしてきた。それで、中国の皇帝が、そんな戦争ばかりしていたら、一般庶民が非常に苦しむから戦争をやめるようにということを忠告されたわけです。そうしますと、尚真王がその三つの分割された支配者たちを首里に集めて、それぞれが持っていた武器を取り上げて王様の倉庫にしまい込んで、一般の住民がいかなる武器も携帯して歩くのを禁止しちゃったわけです。ですから、十五世紀から十六世紀初めにかけて、それ以来、琉球の人たちは一切の武器を携帯できなかったわけですね。

 ところが、一六〇九年になりまして薩摩が琉球侵略したときに、薩摩は琉球の人々が反乱を起こすのを恐れて、さらに武器の携帯を厳しく禁止しただけじゃなくて、武器の輸入も禁止したわけなんですね。そうして数百年間、沖縄は、沖縄の人々は、いかなる武器をも携帯できなかったわけです。だから、空手が沖縄から発達したのも、そのせいだということを言われるわけなんです。そのことについては否定する人もいますけれども、とにかく、数百年の間、沖縄の人々は、何らの武器を携帯しないで、それで平和を一番大事にしてきたわけなんですね。

 ところが、そういうことを背景にして、明治維新の廃藩置県のときに、明治政府が熊本の軍隊を沖縄に常駐せしめると言ったから徹底して反対したわけなんですが、明治政府は、どこに軍隊を置くかというのは国が決めるべき問題であって他からくちばしを挟む問題ではないといって、熊本の軍隊を四百人と警察官を百六十人余り連れてきて、首里城を占拠して、琉球国王の尚泰王を東京に引っ張っていって麹町に住まわせたわけなんですね。そういう歴史的な背景があった。

 そうしますと、琉球王府の人たちは熊本の六師団は要らないと言っているのに、明治政府は、四百名の軍隊と百六十名の警察官を持ってきて、今申し上げたように、琉球国王を東京に引っ張っていって住まわせる、そして軍隊を常駐せしめたわけなんですね。

 そうすると、戦後沖縄の一番の問題というのは、米軍が農家の土地を強制的に取り上げて軍事基地に変えた、これが、つまり土地問題というのが戦後沖縄の一番の問題なんですが、明治政府は、熊本の六師団の軍隊を置くために、首里と那覇の間に古波蔵というところがありまして、そこに軍隊の宿舎と演習場をつくるということをやったわけなんですね。二万坪くらいの農家の土地を強制的に取り上げて、そこに兵舎と演習場をつくろうとしたわけです。

 そうしますと、琉球王府の人たちは、そこは沖縄の表玄関だから、外国から来る人たちが、そこに軍隊がいるとなったら危険を招くおそれがあるから、今の那覇空港のところ、そこは尚家王様の土地だから、そこを無料で提供するから、軍隊を置くんだったらそこに置いてくれとやった。ところが、陸軍省は、海に近過ぎるということでそれを拒否して、首里と那覇の間、今沖縄大学のところに古波蔵というところがありますが、そこに軍隊を置いて、農家の土地を取り上げて軍事基地をつくったわけですね。これが先鞭となって、戦後沖縄では、米軍が強制的に農家の土地を取り上げて基地に変えていった。したがって、一九五三年から五八年は、島ぐるみの土地闘争といって、沖縄じゅうの大衆抵抗運動が始まったわけですね。

 一九五三年までは、沖縄の人々というのは米軍に対して非常に好意的だったわけです。感謝の気持ちさえ持っていたわけです。どうしてかといいますと、戦争のときに命を救ったのは、旧日本軍ではなくて米軍だったわけですよ。そして戦争が終わって一年間、沖縄は通貨がなくて、食べ物もないし、戦争でけがをしているが薬もない、それから建物が壊されて住む場所もない、そういうときに、テント小屋を払い下げたり、それから、薬や食べ物を米軍が無償で配給したわけですね。それで、一九五三年までは、米軍に対して、一部の例外は除いて、極めて好意的で感謝の気持ちさえ持っていたわけです。

 ところが、五三年になって、土地収用令というのを米軍が公布して、農家の土地を強制的に取り上げて、じゃんじゃん軍事基地に変えていったわけです。そうしますと、沖縄は八〇%が農家ですから、農家の人たちは土地がないと生きていけないわけなんですね。それで島ぐるみの土地闘争が起きたわけです。

 今一番米軍が重要視している基地は、嘉手納以南に集中しているわけですよ。そうすると、その島ぐるみの土地闘争を見た米軍は、嘉手納以南というのは、県都那覇市に近くて、一番人口の多いところに一番重要な基地が集中しているから、これを一まとめにしてどこかに移そうという計画を、一九六〇年代に立てたわけなんです。そして、一九六五年から沖縄を日本に返す話が始まったものですから、日本に返されたら沖縄に平和憲法が適用される、そうすると、沖縄の住民の権利意識がますます強まって、米軍の一番重要な嘉手納以南の基地が運用できなくなるおそれがあるということで、どこかに移そうとする計画を立てたわけですね。

浜田座長 大田参考人、大変申しわけございませんが、ちょっと簡潔にお願いできますか。

大田参考人 はい。

 ですから、これが、今実は辺野古の裏の問題になっているわけなんですね。

 ですから、私たちとしては、そういう背景があるから到底納得できないと、賛成しないでいるわけです。

辻元委員 ありがとうございます。

 そうしましたら、引き続き、高嶺参考人とそして稲嶺参考人にお聞きしたいと思います。

 まず、高嶺参考人には、きょうお話しいただきました中に、沖縄では、この安保法制を先取りした訓練等、既に動きがあるという御発言がございました。この点について、もう少しお聞きしたいこと。

 そして、稲嶺参考人には、先ほど、権力を振り回すような場合が目立っているのではないかという御発言もございまして、実は、辺野古の一連の今の安倍政権の対応を見ていて、これが民主主義国かというような意見も大きくなってきていると承知しております。そして、稲嶺参考人は、先日五月、国会にいらっしゃいまして、国会の前での包囲行動にも御参加され、ところが、先ほど、政府からは名護市に対して何もないという話もあって、果たして、民主主義の観点から、今辺野古で起こっていることが一体どういうことなのか、問題点を御指摘いただきたいと思います。

 お二人にお願いします。

高嶺参考人 私は、最初にお話ししましたように、中北部が海兵隊と自衛隊の共同の基地になる、再開発されるということを先ほど話しました。米軍側も、米側の広報にも、自分たちが先生である、そして今から自衛隊に上陸部隊をつくることを、水陸両用部隊をつくることを教えているということになるわけですね。

 自衛隊そのものの役割が、安保法制に書かれているような対外的な行動に全く変わっていくという、特に陸上自衛隊はというのと同時に、沖縄の中北部の基地がそういう自衛隊の訓練の基地になる可能性があるわけですね。なると思います。それは、長期的に沖縄に基地が固定されるわけですから、沖縄にとっては耐えられることではないという話を申し上げたわけですね。

稲嶺参考人 私からは、辺野古の現場で何が起こっていて、その何が問題なのかということが御質問にありました。

 まず一つには、シュワブのゲート前、あるいは大浦湾での海上行動をいろいろやっています。その場合に、参加している人々は常に非暴力ということで行動をしております。

 しかし、そういう中で、警察機動隊あるいは海上での海上保安庁の暴力的とも言えるような取り締まりは、これはとても、活動している人たちの権利を全く認めていないということにつながるというふうに思いますし、さらに、一部では人命の危険をも招きかねないような事態さえも起こっているというようなこと等を鑑みますと、それは本当に、今の民主主義国家を標榜する我が国に許されることではないのではないかということが言えると思います。

辻元委員 中山参考人にお伺いします。

 中山参考人は以前、「正論」という雑誌で、先ほどいろいろ尖閣の状況をお聞きしたんですが、石原慎太郎元知事と同じ考えで、やはり石垣市長が合法的に尖閣に上陸を実現しなければならないという御主張をされてきました。

 今、石垣の市民の生命と財産を守ると先ほどおっしゃったんですが、そういう行動をとるということは非常に緊張を高める、両方あると思うんです。今、市長におなりになって、やはり尖閣に上陸を実現しなければならないとお考えなのかどうかをお聞きしたいと思います。

 そしてもう一点、最後に、もう時間があれですので、全ての皆様に率直な御意見をお聞きしたいと思います。

 それは、六月二十五日の、やはり自民党本部での勉強会の話、この話をお聞きになったときに、どういう思いを抱かれたか。

 ちょっとおさらいをしてみますが、自民党の議員が、沖縄の特殊なメディア構造をつくったのは戦後保守の堕落だということで、沖縄のゆがんだ世論を正しい方向に持っていくためにどのようなアクションを起こすか、左翼勢力に完全に乗っ取られているという話を自民党議員がしたり、また、そのときの勉強会に来られた作家の百田尚樹氏が、本当に沖縄の二つの新聞社は絶対潰さなあかん、沖縄県人がどう目を覚ますか、あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島でも中国にとられてしまえば目を覚ますはずだ、これは石垣市長に一番怒ってもらわなきゃいけない発言ではないかと思いますが。また、事実に基づかない普天間基地の話をしたり、また、沖縄の米兵が犯したレイプの犯罪よりも沖縄県全体で沖縄人自身が起こしたレイプ犯罪の方がはるかに率が高いと、言うもはばかられるような話を自民党本部の中で勉強会としてしていたという話。

 私は、翌日、国会でこの問題を即刻取り上げました。しかし、安倍総理のこのときの返答は、自民党の議員にも表現の自由があるというような答弁をされました。一週間たってやっと謝られたんですが、このようなお話を、私でも怒り心頭だったわけですけれども、皆さんお聞きになったときに、率直にどのような御意見をお持ちになったか、最後、全ての皆様にお聞きをしたいと思います。

浜田座長 それでは、大変時間が、あと持ち時間一分少々でございますので、中山参考人から順次お願いしたいと思います。よろしくお願いします。

中山参考人 まず、冒頭の尖閣の件に関してお話をさせていただきます。

 尖閣諸島に合法的に上陸すべきだというお話をさせていただきましたのは、尖閣諸島がまだ民間の方が所有しているときの話でございます。国際的にも日本の領土だということを明確にするためには、石垣市長という立場で尖閣諸島の上陸、これは、固定資産税の調査とか自然環境の調査とか、そういった調査名目での上陸というお話をさせていただきましたので、それを御理解いただきたいと思います。

 現状は、国有化をされておりますので、私があえて上陸して、日本の領土だということを明確に出す必要というのはないと考えております。

浜田座長 それで、先ほどのコメントについて。

中山参考人 自民党の勉強会の中で行われたことに関しましてはいろいろと議論が出ておりますが、私も、百田さんの発言の中で、沖縄に対する事実誤認があったというふうには思っております。

 それ以外の先生方が議論された部分、公式に出ているのかどうかはわかりませんけれども、政治家の皆様が発言された部分に関しては、政治家の皆さんはそれぞれ責任をとるべきだろう。それは、有権者の皆さんが判断するかもしれませんし、それぞれの政治的な立場で、謝罪するなり、その主張を続けるなりすればいいというふうに思っております。

 ただ、あともう一点、百田さんの事実誤認の部分もありますけれども、その議論を、現状、各新聞社も含めて非常に大きく取り上げております。百田さんは政治家ではなくて、まあ、作家という形で有名な方ではありますけれども、個人の発言が新聞紙上の中であれだけ大きく取り上げられて、何度も何度も批判等の対象になった場合に、ひょっとしたら個人の発言部分で非常に厳しい言論の封圧等になりかねないなという、逆にまた私はそういったことも危惧しておるわけであります。

 当然、間違っていることに対しては、間違っているということは沖縄県民として声を上げても構わないと思っていますし、それをやるべきだとは思っておりますが、報道の仕方もまた一つ問題もあるのかなというところも、一つ懸念しているところであります。

 以上です。

稲嶺参考人 あのお話を聞いたときは、本当にびっくり、それからあとは怒り、とても信じられない思いでした。

 そういう考え方といいましょうか、先ほども廃藩置県のころからの話もずっとやりましたけれども、実はそれ以来、沖縄に対する差別、蔑視といいましょうか、そういうような流れがずっと組み込まれてきているのではないかというふうに思われるくらい、大変なことだと思います。とても沖縄県民として許せるものではないというふうに思っています。

浜田座長 それでは、大田参考人、手短にお願いいたします。

大田参考人 余りにも沖縄を知らないということをまず感じますが、今お話がありましたように、沖縄の人々を何か見下していて、対等な人間関係をつくろうという意思が全く感じられない。とにかく沖縄の人を見下すそのあり方そのものがバックにあるということをよく感じます。

古謝参考人 あの発言は、私にとっても大変許せない発言だと思っております。

 それと、沖縄の基地問題に関しまして、私ども九州市長会でも、オスプレイの配備の反対、そして基地負担の軽減も含めて議論をしようとしたら、いわゆる、市長段階で国防に関することを議論するのはおかしいんじゃないかというような温度差がございます。

 私どもは市民の生命財産を守るのが最大の責務でございますので、ぜひ、本州におられる方々も、しっかり沖縄の基地問題を考えていただきたい。そして、基地に依存して生活できている、そういう浅はかな考えで物を言われる方がよくおられますけれども、それもしっかり調査した上で発言をしてほしいと思っております。

高嶺参考人 発言の内容に一々コメントできるわけではないんですが、僕も長い間新聞記者をやっていて、米軍、統治者が陰で言っていた話ですよね、全部、論理は。いわゆる風評の類いなんです。占領者が統治をするために組み立てた風説ですが、それが今ごろになって、国会議員や有力な、著名な作家の人たちが平気でそういうふうなことをまことしやかに言うこと自体が、僕は、こういう人たちは本当に日本というのをどう思っているんだろうか、誇りがあるのだろうかと。

 占領者の論理を振りかざして、しかも、占領者が統治しやすいことをやっていたわけです。それは、最近ワシントンからも聞こえるわけですね。いろいろなところからそういう話を聞きますけれども、非常に恥ずかしい話だと思っています。

辻元委員 終わります。ありがとうございました。

浜田座長 次に、下地幹郎君。

下地委員 下地幹郎です。

 きょうは、参考人の皆さんにお時間をとって来ていただきまして、ありがとうございました。心から感謝申し上げたいと思います。

 この平和特の委員会も、先週の金曜日でもう八十時間を超えました。

 いろいろな論議を八十時間の中でやってまいりましたけれども、大きく分けて、この八十時間の中で言われてきたことが、さきの戦争に対する、侵略戦争に対する認識論、この認識論をしっかりしないとまた戦争になるのではないかという論議が一点ありました。また、二つ目には、違憲か合憲か。この法律が、集団的自衛権が、限定的であれこれは違憲だ、いや、合憲だという論議がありました。そして、三点目には、米国の戦争に巻き込まれるんじゃないか。ホルムズ海峡に行く、日本の自衛隊の能力を超えて、そういうことになるのではないかという論議がありました。四点目には、私の方から提案したことですけれども、安保条約が結ばれて、改定をされて今日に至るわけでありますけれども、この安保条約に残された課題、こういうふうな課題を解決しないで今の法律をやることが正しい選択かなどということを論議してきたわけであります。

 そういう意味でも、論議が非常に深まってまいりましたので、特にここの二つの大きな柱、違憲か合憲かというのと米国の戦争に巻き込まれるのかというような二つの柱からすると、私は、今回この沖縄の地で地方参考人会をやるということは、本当に正しい選択を委員長はやられたんじゃないかなというふうに思っております。

 そういうふうなことを申し上げて、質問を大田先生に、ひとつやりたいんですけれども、百田さんの発言、先ほどからありましたけれども、言語道断であることはもう間違いありませんから、そのことは共有していますからそれとして、また、安倍総理も、最初、民主党の辻元さんの質問の中でも謝るということをしませんでした。うちの井坂委員からも質問しましたが、処罰をするのかと言ったら、明確に、処罰もしないというようなことを言いましたけれども、一週間したら、処罰をし、そして陳謝するというような形になったんです。

 私は、この流れを見ていて、百田さんがどうだとか自民党の中でどうであるかとかいうのと別に、大田先生のように、長い人生の経験の中で、戦争の経験や沖縄県の知事としての経験、さまざまなことを七十年間見てきて、こういう発言が出てくる、こういう政党の中での論議が出てくる、そういうものの背景というのは果たしてどんなものがあるんだろうか。

 この国が七十年間の中で大きく変わりつつあるのか、これはもう百田さん個人、自民党という政党の一つの党の問題であって、大きな社会的背景ではないものなのかどうなのかということについて、まず大田先生の御見解をお聞きしたいというふうに思っています。

大田参考人 今の基地問題とかを考える場合に、どうしても、歴史的な背景とかを踏まえて考えないとなかなか理解しにくいと思うわけなんですね。

 先ほどちょっと時間がなくて申し上げることができなかったわけなんですが、実は、一九五二年に平和条約が発効したときに、沖縄は日本から切り離されて米軍の統治下に、直接軍政下に置かれたわけです。日本本土は主権を回復したということで祝賀会なんかをやったわけですが、沖縄は屈辱の日といって抗議大会をやったわけなんです。

 なぜそういうことが起きたか、つまり、五二年の平和条約が結ばれて発効したときになぜ沖縄が切り離されたかということは、我々当事者としては大変な問題なんですね。

 それで、いろいろ調べてみましたら、政治学者たちは、日本が無条件降伏したから沖縄は日本から切り離されたということを書いているわけなんです。

 そうしますと、私たちからしますと非常におかしいわけです。なぜかというと、沖縄だけが戦争を始めたわけでもないし、沖縄だけが降伏したわけじゃなくて、日本が戦争を始めて、そして、沖縄だけが降伏したんじゃなくて日本全体が降伏したのに、なぜ沖縄だけが切り離されて米軍の直接軍政下に置かれたかということは、大変疑問に思ったわけですよ。

 それで、アメリカの国立公文書館に通い続けて、その理由を明らかにしようということでやりましたら、何と驚いたことに、真珠湾攻撃から半年目、一九四二年の夏ごろにはもう、沖縄を日本から切り離して、非軍事化して、国際機関に委ねて、二十五年ごとに沖縄が軍事化されていないかをチェックさせるということがアメリカの国防省、国務省なんかで話し合われておったわけです。

 ところが、マッカーサーが進駐軍として日本に来たときに、進駐軍の戦力というのは三十万そこそこだったわけですね。ところが、そのころ日本国内には、一説によりますと四百三十四万人の軍隊がまだ残っていた。それで、イギリスの司令官とかオーストラリアの司令官が、もし日本軍が反乱を起こしたらどう対応するかということをマッカーサーに聞いたわけです。そうしますと、マッカーサーが、沖縄を基地にしてそこに米軍を置いておけばいつでも対応できるということで、せっかく非軍事化する計画が真珠湾攻撃から半年目にできていたのに、マッカーサーが沖縄を軍事基地化して、そこに米軍を駐留させて、今日に至っているわけなんです。

 なぜ真珠湾攻撃から半年目に沖縄を日本から切り離そうとしたかといいますと、明治の廃藩置県のときに、中国との関係を断ち切れといった場合に、中国の外務省の李鴻章という大物が、日本がこうして軍事力に物を言わせて強制的に沖縄を併合すると、日本は次は必ず台湾をとって、朝鮮半島を植民地にして、中国に侵略して、アジア侵略するだろうということを予言していたわけですよ。それがその後そのとおりになったわけなんですね。

 そうしますと、沖縄がアジア侵略の基地になったということが言われて、それで、戦後、アメリカの対日政策というのは、二度と再び日本がアメリカの脅威にならないようにすることが第一点と、第二点目は、二度と再びアジア侵略をさせない。そのためには、基地になった沖縄を日本から切り離して非軍事化するという計画を立てておったわけなんです。そういう背景があったわけなんです。

 ですから、そのような状況のもとで、沖縄の人々というのは、何よりも平和こそが大事であると。基地があれば、次に戦争になったら必ずターゲットにされるからということでですね。

 それから、自衛隊を配備すれば島嶼が守れるということがよく言われますけれども、沖縄戦の教訓は、軍隊は民間人、非戦闘員の命を守らないということが沖縄戦の唯一の教訓なんですよ。沖縄戦について書かれた本を読んでみてください。必ず、米軍よりも日本の兵隊が怖かったというのが書かれているし、それから、軍隊というのは非戦闘員の命を守らないということがはっきりと書かれているわけなんですね。

 アメリカの軍隊が邦人を船に乗っけてくるときに、その船が攻撃されたら自衛隊は黙っているわけにいかない、それを助けぬといかぬと言っているんですが、アメリカの資料なんか読みますと、アメリカの軍艦が邦人を乗っけて助けるということはあり得ないと書いているわけなんですよ。

 ですから、十分に検証もしないままに、政治的な思惑で一方的に決めつけて、そして自衛隊を派遣すれば事が済むかのように言っていますが、自衛隊法の任務のところを読んでみてくださいよ。民間人の命を守るとはどこにも書いていないですよ。国家の平和と安全を守るとしか書いていないわけなんですね。

 ですから、司馬遼太郎さんが「沖縄・先島への道」という本の中で、軍隊は絶対に民間人の命を守らないということをはっきりと書いているわけです。軍隊は軍隊という組織を守る存在であって、非戦闘員の命を、一人一人の命を守る存在ではないということをはっきり書いているわけなんです。

 アメリカの下院の軍事委員会のマクヘールという議員を沖縄に連れてきたんですが、その人が在沖米軍を全部撤退させたいと。なぜかというと、この小さな島に、陸、海、空、海兵という四軍が集中している、そうすると、次に戦争が起きたら真っ先に嘉手納が攻撃の的になって、この小さな島でアメリカの将来を背負う若者たちがたくさん死ぬおそれがあるから、米軍は全部撤退したいということをはっきり言っているわけなんです。

 そういうことで、次に戦争が起きたら真っ先に沖縄が攻撃の的になるということは、アメリカの軍事評論家だけじゃなくて日本の軍事評論家もみんな言っていることなんです、一致して。ですから、我々としては、そういうことを二度とさせないということで、もっと歴史的な背景というのをきちっと踏まえて物を考えるべきだということを絶えず言うわけです。

下地委員 今、大田先生が言っている歴史的な背景というようなことをしっかりとまた私たちも勉強して、これから論議を深めていきたいと思います。

 それで、先生、憲法の話で先生がおもしろいことを言っているんですけれども、毎日新聞のインタビューに答えて、「沖縄ほど憲法の恩恵に縁のないところはない。逆に沖縄ほど憲法を大事に思うところもない。」こういうふうなことを先生が申されているんですけれども、この先生が意味するところというのは何ですか。

大田参考人 憲法といいますと、沖縄ほど憲法と縁のないところは全国どこにもないんですよ。なぜかといいますと、明治の大日本帝国憲法ができたときも、今の平和憲法ができたときも、沖縄代表は国会に出ていないわけです。審議に一切タッチしていないわけです。明治の大日本帝国憲法のときに、沖縄代表が国会に出るのは他府県よりも三十年もおくれたわけですよ。今の憲法の場合も、二十四年くらいおくれているわけなんですね。

 そういうふうにして、沖縄の人々は本土の人と対等な権利を与えられてこなかったわけなんですが、本土の場合は、今の憲法というのはGHQが強制的に上から押しつけた憲法だと言われますが、沖縄は、憲法の適用が二十七年間なかったものですから、一つ一つ権利を自分たちの手でかち取ってきたわけなんです。それだけに、今の憲法というのを非常に大切にして、沖縄の復帰運動のときも、平和憲法のもとに帰るというのをスローガンにして復帰運動を進めたわけです。

 ところが、いざ帰ってみたら、平和憲法のもとに帰されたんじゃなくて、日米安保条約のもとに帰されてしまって、そして、沖縄の人々が、八三%の人が今辺野古に基地をつくるのに反対しているのに、日本本土では五七%、過半数が賛成しているわけですよ。なぜ賛成しているかというと、この中身を知らないからなんですね。

 辺野古に基地を移すと、日本政府は、先ほど申し上げました、五分の一に縮小して移すと言う。そして、滑走路の長さ、今普天間は二千七百メートルくらいありますが、それを千五百メートルに縮めると言っているんですが、今実際どうなっているかといいますと、千八百メートルの滑走路を二本つくろうと言っているわけですよ。五分の一に縮小どころの話じゃないわけですよ。それが実態なんですね。

 ですから、そういう状況を知らないままに、ただ沖縄に基地を移せば日本が守れるとか、そういう単純な発想で取り組んでいるのが非常に残念に思われてならないわけなんです。もっと具体的に、アメリカの政策、日本政府の過去の政策、これからの政策を踏まえて議論すべきであって、そういうことを全く無視する形で、一方的に押しつける形で議論しているのが大変残念に思えるわけです。

下地委員 大田先生、もう一つお聞かせいただきたいんですけれども、今、稲嶺市長も大田先生も反対だというような、この辺野古の問題です。

 もう相当の時間がたちました。モンデール・橋本会談からこうなってきているわけですけれども、そのときに、橋本元総理はお亡くなりになりましたけれども、よく私たちが聞かされることの中で、橋本総理が当時の大田知事に電話をした、電話をして、普天間が返ることになったぞというようなことを言った、そしてその後で、橋本総理から、この代替案が必要なんだということを明確に自分は大田知事に申し上げたんだというようなことを言っておられました。

 しかし、大田知事は、その代替案は聞いていない、電話では橋本総理はそんなことは言っていなかった、普天間が返るということだけが自分に伝わった電話だったというようなことがあっているんですけれども、十九年間時間がたっていますけれども、この本当の事実ってどこにあるんでしょうかね。

 橋本さんが言った代替案の話が、ちゃんと大田知事に言っていたのか、本当に大田知事が言っているように聞いていなかったのか、どっちなんでしょうかね。

大田参考人 辺野古問題は、実は、先ほどもちょっと申し上げたんですが、九六年に橋本総理と私の、沖縄県知事との間で、普天間を返すということになって、そして辺野古に基地を移すとなったわけなんですが、最初、日本政府は、沖縄本島の東海岸に移すと言って、辺野古と言わなかったわけですよ。ごまかしておったわけですよ。ところが、それが辺野古と決まったものですから、私たちはなぜ辺野古かというのを当然調査するわけなんです。

 そうしますと、県立の公文書館というのをつくりましたけれども、アメリカの国立公文書館に県の職員を九カ年間張りつけて、沖縄問題についてアメリカで解禁になった資料をじゃんじゃん県の公文書館に送ったわけです。それをチェックしてみますと、何と、一九六五年に沖縄を日本に返す話が始まったときに、さっき話しましたように、嘉手納以南の一番重要な基地を一まとめにしてどこかに移そうということで、アメリカのゼネコンを招いて、六六年から六七年にかけて、西表島から北部の今帰仁港まで全部調査させて、その結果、大浦湾が一番いいということに決定して、そして嘉手納以南の基地を一まとめにして大浦湾に移そうと計画を立てたわけです。

 ところが、ベトナム戦争のさなかで、当時は移設費も建設費も維持費も全部米軍の自己負担だったわけですよ。それが、金を軍事費に使い過ぎてできなかったものだから、日本政府と密約を結んで、沖縄が日本に復帰して日本国憲法が適用されるようになっても、基地の自由使用を認める、核兵器はいつでも沖縄には持ち込めるという密約を結んだから、安心して放置していたわけです。

 これが今、半世紀ぶりに息を吹き返して、今は移設費も建設費も維持費も、思いやり予算も全部日本の税金で持つわけですよ。そうすると、今、普天間飛行場の副司令官が、普天間を辺野古に移したら、普天間のかわりの基地じゃなくて、二〇%軍事力を強化して基地をつくると。

 強化の中身は、今、普天間飛行場では、ヘリ部隊がアフガン戦争、イラク戦争に行くときに爆弾を積めないで嘉手納へ行って積んでいるから、非常に不便だから、辺野古に基地を移したら陸からも海からも自由に爆弾を積める施設をつくる、これが一点。それから、普天間の滑走路だけじゃなくて、海軍の、航空母艦や強襲揚陸艦を入れることができるような巨大な桟橋をつくる。なぜかというと、大浦湾は水深が三十メートルあるわけなんです。それから、反対側の陸地には核兵器を収納できる陸軍の巨大な弾薬庫をつくるという計画を立てていたわけなんですね。

 それが今、半世紀ぶりに息を吹き返して、今全て日本の税金で持つものですから、現在の普天間飛行場の年間の維持費は二百八十万ドルなんです、これが辺野古に移ったら、二〇%の中身、もう一つはMV22オスプレイを二十四機配備する、そうすると、現在の二百八十万ドルの維持費が一挙に二億ドルにはね上がる。これを日本の税金で持ってもらおうというわけなんですよね。

 こういう中身を知らないままに、ただ辺野古に基地を移せばいいという格好になっているものですから、私たちは、そういう中身について知ってくださいと。もしこれが実現されますと、日本本土のだけじゃなくて、沖縄を含めて納税者の頭の上にどれだけの財政負担がおっかぶさってくるかというのを知っていないわけなんです。これは一兆五千億かかるという説もあるわけなんです、アメリカの人の書いているのなんかには。

下地委員 先生、私が先ほど質問した橋本さんの話の中では、橋本さんは東海岸ということをおっしゃったんですか。

大田参考人 はい。

下地委員 では、普天間は返すけれども、東海岸に代替をつくるということを明確に言ったわけですね、電話の中では。

大田参考人 最初は、東海岸と言って、はっきりと辺野古と言わなかったわけです。

下地委員 終わります。ありがとうございます。

浜田座長 次に、遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。平安特の理事をさせていただいております。

 本日は、五名の参考人の皆様、お忙しいところをお越しいただきまして、貴重な御意見ありがとうございました。限られた時間でございますので、早速、参考人に御質問させていただきたいと思います。

 まず、古謝市長、きょうは参考人として来ていただきましたけれども、私ども公明党は、昨年の五月からまずは自民党さんと一緒に与党協議というものをやりまして、これは、今回国会に出ております法案が出るまでに約一年間続きました。私はこの与党協議に参加をしてきたわけですが、与党協議だけで二十五回、そしてそれに伴う公明党内の協議で三十五回議論してまいりました。私個人としては、恐らく百時間を超える時間を使いまして、国会に法案を出す前に自民党さんと考え方を整理し、去年の閣議決定を出し、そして、ことしに入ってから五月に法案の提出というところまで、多くの議論を積み重ねてまいりました。

 きょう、私、古謝市長の発言を伺って大変うれしく思ったことは、今回の与党協議は憲法改正がテーマではありません。そして、今ある日本国憲法を前提に、前提にということは、この憲法の平和主義の基本的な考え方の枠の中で、今、時代が変化しました。これまでの国会では、憲法のもとでの日本の自衛権に関する考え方の基本的な見解は、昭和四十七年の見解でありました。昭和四十七年から今日まで四十年以上たっている中で、時代は変わっております。環境も変わっております。

 そういう中で、だけれども、憲法を変えない。変えない中で、日本の自衛権についてどういう新たな考え方ができるかと議論をした結果、私どもは、これは古謝市長がきょう指摘していただいているんですが、国連憲章五十一条に書かれている、国連加盟国全てに付与されている普通の集団的自衛権の行使は今回も認めない。それは、日本国憲法の今のもとでは無理だ。そのかわり、日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生して起こった事態であっても、それが、それがですよ、それが我が国の存立を脅かして、日本の国民の命や自由、権利を覆すようなことが明白な場合には、もちろん三要件はあと二つ要件があるわけですが、そういう場合に限ってこの自衛権を認めるという考え方をとりました。

 よって、私どもは、憲法の平和主義の基本的な論理は変えていないという立場をとっているわけですが、古謝市長の発言の中で、最初は一抹の不安を覚えた、他国の防衛のための集団的自衛権を認めたのか、だけれども、そうでないことがわかったので賛成できるという考えに至ったというお考えでございましたが、改めて、今回の法案が平和憲法の考え方の中にあるとお考えになったことについてお話をしていただければと思います。

古謝参考人 さきに遠山先生からもお電話いただいたときに、私はこの法案については大変疑問を持っているということでお話を申し上げました。集団的自衛権がどの範囲まで本当に認められるということでは、拡大解釈によって戦争に巻き込まれる、そういう危ない今法案というのはおかしいんじゃないかというようなことで、当初お話を申し上げたことがございます。

 公明党さんの努力により、一定の限定の部分で今行使できるということでございますけれども、しかしながら、まだまだ国民にとっては不安がある。沖縄県においては、本当にすごい戦争を体験し、またこのような時代が繰り返されるのかというようなことで、私自体も大変危惧をいたしております。

 そういったことがあってはならない、しかしながら、今、国際社会の環境の変化によって、国民の安全、安心は確保しなければいけない、そして、自衛隊のPKOのときにも安全を最大限に確保しなければいけない。そういう中での、私は、これだったら、国会の承認を得てからの、いわゆる十分な議論の中で、限定的に、これからの議論をしっかりやって、そして歩かせていく、そういうことが大事だと思っております。

 これは、国民に完全に理解をさせる、そういう努力もあわせてやっていただきたいと思っております。

遠山委員 ありがとうございます。

 次に、石垣市長であります中山参考人にお伺いをしたいと思います。

 今、古謝参考人の話の中にも、国際安全保障環境が変わったというお話がありました。

 きのうの朝日新聞の一面にも紹介をされておりますが、我が国に近づいてくる国籍不明の航空機、飛行機に対する自衛隊機の緊急発進、いわゆるスクランブルというものの回数がここ数年急増しております。昨年は一年間で九百四十三回ということで、この記事にも書いてありますが、中でも中国機に対しては約半数の四百六十四回ということでございます。

 中山市長の参考意見の中では、主に尖閣周辺の我が国領海に、そこを侵害する船のお話があったわけでありますが、また、古謝市長からは、二〇一二年の十二月に、北朝鮮が人工衛星と称するミサイル、これを沖縄をいわば飛び越えて撃つという発表があって、しかし、飛び越えると言われても、飛び越えずに落ちてきたらどうするのかということが実際ありました。政府は念のためということでパトリオットを配備して、南城市とか宮古島、石垣島もその警戒対象地域に当時入ったわけでございます。

 こういったことを重ね合わせまして、改めて、まさに国境離島と言える八重山諸島そして石垣島、そこの自治体の長として、市民の平和と暮らしを預かる立場から、もう一度お話を聞かせていただければと思います。この安全保障の環境です。

中山参考人 先ほど、今御質問いただいた件なんですが、尖閣諸島の領海侵犯等もありますが、現に私たちは今、那覇空港から石垣まで、出張に来たら、きょうもこれから帰りますけれども、那覇空港を使う際にも頻繁に出発を待つ場合があります。そのときは自衛隊がスクランブルをかけている場合も多々あるわけでありまして、そういうことを考えますと、まざまざと、緊急発進の回数がふえているというのも身をもって感じているところであります。

 尖閣諸島周辺そしてまた国境離島、私だけでなく与那国町長も同じような思いを持っていると思うんですが、自分たちの島を守ろうと思っても、実際問題は行政がかかわれるのは消防まででありまして、私が市長の権限として市民の安心、安全、生命財産を守るのは消防力までしか対応できません。

 それ以外の部分というのは、もちろん海上保安庁ですとか、それよりもっと外であると自衛隊などに守っていただいていますので、国防、安全保障という意味においてはしっかりと対応していただきたいと思いますし、これは、憲法九条のしっかりとした専守防衛の意味合いの中においても、平和的な理念の中でも、やはり国として守ってもらう体制は整えていただきたいなというふうに思っております。

 今後、海外のさまざまな対応、特にまた北朝鮮も含めてミサイルの際は、石垣島を飛び越えて、それよりさらに南方の海にミサイルが実際に到達した時点で、今まで全然意識をしなかった北朝鮮の核開発が、私たちの島までもう射程距離に入っているミサイルが開発されたというときに考えた場合には、これは国の安全保障、しっかりと、我が国だけではなくて、それ以外の国とも協力できるところとは手を結んで守らなければならないなというふうに思っておりました。

 今回の法案につきましては、今先生おっしゃったように、海外に行く場合には国連の決議とかそれに準ずる何らかの手続を踏まないといけない、また国内においては国会の決議が必要だというようなこともしっかりと担保されてきておりますので、これは国民にとっては、どこまでも日本の自衛隊が世界じゅう各国めぐってアメリカの戦争に巻き込まれるとかいうことにはならないというふうに考えております。

 その意味においては、今回の法案、しっかりと国民の中に伝えていただいて、議論をしていただいて、できるだけ丁寧な議論を重ねた上で法案成立に向けていただきたいな、それが私たちの住んでいる地域を守ることにもつながるというふうに認識しております。

遠山委員 古謝市長にも同じ話で簡単にお聞きしたいんですが、市長の陳述の中で、北朝鮮の人工衛星と称するミサイルが撃たれると聞いたときに市長として震撼した、震えた、こういう御発言がありました。

 当時、二〇一二年、北朝鮮がそういうものを発射するということを聞いたときに市長としてどういうふうに思われたのか、どういう手を打たれたのか、また、市民の様子というかそういうものはどうだったのか、もう少し詳しくお話をしていただきたいと思います。

古謝参考人 緊急に庁、部局で会議を開きまして、それに対応する会議を持ちました。そして、防衛省からも、どのような経緯でこういう形になったかということも十分聞いてまいりました。

 その中で、これはあらゆる策を練ってやるべきだということで、今、私どもの航空自衛隊にはPAC2が配備をされております、それ以前から配備をされておりますが、性能がいいPAC3を配備するということで、当時の知事からも電話がありました。大変な事態になっているということで、PAC3を配備したいというようなお話がございました。

 私は、これは、いわゆる相手の基地を攻撃するものではなくて、ここに落ちてくる場合に国民の生命財産を守るという視点からそれは受けるべきだろうということで、配備に同意をいたしました。

遠山委員 ありがとうございます。

 今、お二人の市長から、まさに市民の生命財産に責任を持つ、そして実務を日々やらざるを得ない市長の立場から率直なお話を伺ったと思います。

 昭和四十年代、五十年代にはこのような危機はありませんでした。北朝鮮が弾道ミサイルのようなものを撃つということはなかったわけですが、今日これが厳然とあり、特に沖縄においては、かなりリアルな危機感を持って対処したことも既にあるということでございます。

 それで、最後の質問になりますが、これは中山市長、古謝市長それぞれお答えいただきたいと思います。

 国家の安全保障というのは、これは万が一の備えでございます。万分の一しか起こる可能性がない事態も想定して、それが起こったら、我々は自衛隊をどう動かすのか、国として、地方の自治体としてどう動くのか、それをあらかじめ平素から法律に決めておいた方が私ども公明党は安全だというふうに思っております。

 法律に規定がなければ、そういう万が一のことが起こったときに、まさにそのときの政府が恣意的に、超法規的に動く余地がより広くなるわけでございまして、そういう意味で、いろいろな事態を想定して議論しております。

 ただし、古謝さんの意見陳述にもそのような表現があったかもしれませんが、なるべく最悪の事態を起こさないように努力するのも行政の役目だと思っております。そういう意味では、平和外交の努力というのは非常に大事だと我々は考えております。

 国家の外交は一義的に政府がやるものでありますから、日本政府において、特に近隣諸国との関係を改善するための外交努力というものを強化しなければならないわけでございますが、これはほかの参考人の方もおっしゃっていましたように、沖縄は中国あるいは朝鮮半島等々と長い交流、歴史的なつながりがあります。台湾ともそうです。恐らく中山市長も古謝市長も、そういう独自の交流の歴史を持つ沖縄の自治体の長として、中国や台湾あるいは韓国と交流があるかと思いますが、こういった民間レベル、地方レベルの平和外交の重要性といったものについて御意見を賜れればと思います。

中山参考人 まずは、先生おっしゃるように、隣国との対話、それが、たとえ国同士がいろいろな諸問題、諸課題を抱えてある意味対立していた場合だとしても、民間レベル、そしてまた地方自治体の行政のレベルでは、交流ができることには積極的に取り組んでいくべきだというふうに思っています。

 石垣市においては、今、韓国とは、韓国の映画会社が石垣に来て映画を撮影して、韓国で放映されたりとか、また、サッカーチームの子供たちが来て石垣で試合を行ったりとか、また、中国に対しても、地元の石垣の子供たちが楽器の演奏で中国を訪問したりとかいうふうなことを行っております。また、台湾とは非常に深い関係がございまして、農業関係、経済関係、また観光、実際に今、石垣市の職員を台北に駐在させていたりとか、さまざまなおつき合いをさせていただいております。

 国同士のいろいろな課題があったにしても、それぞれの自治体、また民間レベルが交流することによって、お互いの相互理解は深まってくるものだというふうに思っています。

 ぜひ、今後とも、そういう交流を続けることがもう一つの安全保障だというふうな意識を持ちながら頑張っていきたいなと思っています。

古謝参考人 これまでも議論がございましたけれども、万が一のことは絶対にあってはならない、平和憲法を遵守しながら、いわゆる戦争放棄、武力の行使は絶対にやってはいけないというのが私も基本であります。そういった中で、万が一のことにならないようないわゆる交流というのは、民間レベルで必要だと思っております。

 私どもも、蘇州市そして江陰市等と交流がございます。来週も、大体五十名余の企業の方々が我が南城市に訪れるようになっております。

 そういうことで、常に信頼関係を築きながら、国際平和に貢献したいと思っております。

 以上でございます。

中山参考人 失礼いたしました。ちょっと一点言い忘れましたが、先ほどの、いろいろな万が一の場合の法制もしくは明文化ということですが、これは絶対必要だというふうに思っております。

 これは、それぞれの自治体等もありますが、もし石垣で何か起こった場合、私自身が何らかの影響で判断ができない状況になった場合に、島との連絡もしくは国との連携がとれない中で誰がどう動くのか、それを取り決めしておかないことには、行政そしてまた市民、石垣でも国民保護計画をつくっておりますが、さまざまな、誰がいようがいまいが、判断する基準がこれですということが決まっていれば、安心してその後の行動というのは市民、国民がとれるものだと思っています。

遠山委員 本日は、お二人の参考人から大変有意義な、貴重な御意見を伺ったと思います。

 最後の話題でありましたけれども、草の根交流、民間交流、地方自治体レベルの交流、そして国家レベルの交流というもの、外交というものをしっかり強化して、我々、切れ目のない安全法制をつくって万が一の備えはするわけでございますが、日本は戦後七十年間、一度もどの国とも戦争をしてきておりません。個別的自衛権の発動も一回もないわけでございます。

 今回の新たな法制を整備したとしても、平和国家としての歩みを強固にするために、特に沖縄の県民の皆様は平和への思いが強い、あの昔のような戦争を二度と起こしてはいけないということを私も沖縄でずっと言われてまいりました。その思いをしっかり受けとめて、またこれからの審議に生かしていきたいと思います。

 きょうは本当にありがとうございました。終わります。

浜田座長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 一番最後の質問者ということになりました。五人の参考人の皆さんには、本当に参考になるお話を展開していただき、心から感謝を申し上げたいと思います。

 まず、稲嶺参考人の方にお伺いをいたします。

 日本国憲法が沖縄に適用されたのは、一九七二年の本土復帰のときでありました。沖縄にとっては、憲法は、沖縄戦と二十七年間の米軍による占領統治を経て県民が闘い取ったものであり、その詳細は先ほど大田先生のお話にもございました。

 今回の安保法制や辺野古の新基地建設問題は、国民主権や基本的人権の尊重、平和主義という憲法の基本原理、原則との関係でも、非常に大きな問題を投げかけているのではないかと思います。

 稲嶺参考人も、辺野古と今度の安保法制、根っこは一つだというお話がありました。安保法制や新基地建設などは、県民がかち取った憲法と根本的に矛盾する動きだと考えておりますが、稲嶺参考人のお話をもうちょっと聞かせていただきたいと思います。

稲嶺参考人 まず、今、辺野古移設の問題でいいますと、これまでもいろいろお話が出てまいりました、大田先生もお話がございましたけれども、一九九六年の橋本・モンデール会談から十九年たって、今なお大きな問題を醸しているという状況にあります。

 この間の沖縄の流れでいいますと、五年前の名護市長選挙で、辺野古の海にも陸にも新しい基地はつくらせないということを市民に約束して、私を選んでいただきました。その後の県内の世論の高まり、それから県内政治環境の変化等々から、二〇一三年には建白書の提出の実現を見るに至りました。さらに、昨年は、一月の名護市長選、九月の市議選、十一月の知事選、そして十二月の衆議院議員の選挙等、その主な選挙のいずれも辺野古移設反対が大きな争点となり、反対を訴える全ての候補者が当選をいたしました。これは、いわゆる沖縄の県民の民意、意思というものをはっきりと示したものであります。

 民主主義社会でいいますと、市民、有権者の思いを、その意思を一番はっきり数字であらわすことのできる選挙で県民はそのことを示したわけですけれども、政府はそれを全く無視し、みずから辺野古しかないというようなことでやっておりますことは、県民のそういう選択肢をまず否定する、そしてまた、現在行われている反対運動については生命の危険にもさらすような状況が続いている。このようなことからも、民主主義の上からも許されるような行為ではないというふうに思っております。

赤嶺委員 ありがとうございました。

 それでは、今回の法案と沖縄米軍基地の関係も先ほどから議論になっておりますが、この点で一点、稲嶺市長にお伺いしたいと思います。

 今回の安保法制の検討のそもそもは、日米ガイドラインと一体になっているわけです。ガイドラインの内容を見てみますと、日米安保体制を文字どおりグローバルな軍事同盟に位置づけるものとなっております。

 これまでも、在沖米軍基地は、日本を守るためではなくて、ベトナム戦争やイラク戦争、アフガニスタン戦争の出撃基地になっていたわけですが、今後、沖縄の米軍基地は、グローバルな安保体制ということになりますと、いよいよ中東を含む世界を見据えた恒久的な基地に位置づけられていくのではないかと私は懸念をしております。その点、どのようにお考えでしょうか。

稲嶺参考人 辺野古に計画されている新基地については、先ほど大田先生の方からも本当に詳しくお話がございました。中南部に今位置するものを返すかわりに、全てを代替する、ひっくるめて機能を持たせる、その機能を強化した上で基地が運営されるというようなことがございました。これからしますと、今、赤嶺先生がおっしゃるように、ここはグローバルな戦略の中で重大な位置づけになっているということをやはり思わざるを得ません。

 ベトナム戦争のときには、沖縄は悪魔の島というふうに呼ばれていたということがございます。これを考えますと、辺野古の基地ができて運用されて、そしてそれがグローバルな戦略環境の中で使用されていきますと、今度は世界じゅうの人たちから沖縄は悪魔の島というふうに呼ばれかねない、そういう内容を含んだものだと考えております。

赤嶺委員 ありがとうございました。

 それでは次に、古謝参考人にお伺いをしたいんです。

 南城市は、市長がおっしゃるとおり、本当に悲惨な戦場になった地域でもあります。あの戦争を繰り返すまいということで、憲法九条が戦争放棄や戦力の不保持、そして交戦権の否認を定めたわけですが、先ほどから議論になっている自衛のための最小限度の措置ということで、今回、集団的自衛権を、日本国民の存立の危機にある場合という限定をしているというお話がありました。

 歴代の自民党政府は、自衛隊がなぜ憲法違反でないかといえば、自衛のための必要最小限度の実力組織だから憲法違反ではないと言ってきたわけですね。そして、日本が武力行使をするのは日本が武力攻撃を受けた場合に限られる、このように説明をしてきたわけです。

 ところが、今回の安保法制は、日本が攻められてもいないのに、日本を防衛するためのやむを得ない自衛の措置、日本はまだ攻められていない、そのやむを得ない自衛の措置として、海外での武力行使、つまり、これを限定と言うかは別にして、集団的自衛権の行使に道を開くものだと思います。

 みずから積極的に紛争地に自衛隊が出かけていく、そういう懸念は多くの国民が持っているんじゃないかと思いますが、市長はどのようにお考えでしょうか。

古謝参考人 今赤嶺先生がおっしゃる内容のことは、あってはいけないということで考えております。

 これまでも、ガイドラインは、四回ですか、変更されましたけれども、国際社会が今、環境の変化だということで、冒頭で申し上げましたけれども、北朝鮮のミサイル発射があったということ、これも、本当に技術的に、撃った場所に落ちるかということも不安でありました。仮に間違った場合にどういう形になるのかということも含めて、大変震撼させる思いがございました。

 憲法の基本的な平和主義というのは、私は、九条はこれからも、また未来永劫に守っていくべきだという考え方には変わりはございません。しかしながら、変化に応じてガイドラインをつくっていくということは、これは議論をする必要があるということを言っているわけでありまして、私はそれを完全に肯定という話ではございませんから、しっかり国民にそのことを伝えて、これからも平和憲法を堅持しながら、日本の国民をどう守っていくか、そして自衛隊員の命をどう守っていくかという、この限定的なことに特化してガイドラインをしっかりマニュアル化してほしいということでございます。

 積極的な集団的自衛権というのは私は今でも認めておりませんし、また、ぜひ、平和を希求するためにも、このような議論をしっかりやっていっていただきたいと思います。

 皆さんも御承知のように、自衛隊も当初は違憲だと言っておりました。その中で、今、合憲だということで認めているわけでありますから、そういうことも含めて、時代の趨勢に応じたいろいろな角度から御議論をして、国会で決めてほしいというのが私の願いであります。

赤嶺委員 次に、高嶺参考人にお伺いをいたします。

 今の問題意識と共通しますけれども、少なくとも政府は、日本が武力攻撃を受けたときに防衛出動をするというのが憲法違反でないという専守防衛の解釈でした。

 しかし、今回、安全保障環境が変更したために、その幅を広げる、攻撃を受けていなくても、密接な関係にある他国が攻撃を受けたときには、みずから積極的にやはり戦場に乗り出していく結果になるんじゃないかという不安をずっと持ち続けているんですけれども、この点は、高嶺参考人、いかがでしょうか。

高嶺参考人 日本人のメンタリティーの問題だと思うんですが、米側の要請を断ったケースは一回もないんですよね。だから、米軍が行くところ、どこへでも行くということになると思います。

 あのアメリカでさえ、対テロ戦争では愛国者法等ができて、ちょうど愛国者法もたくさんの法律の固まりですよね。この安保法制と同じです。しかし、法律そのものは、歯どめをつくったにしても、歯どめは絶対きかないと思いますよ、特に日本人のメンタリティーからすると。

赤嶺委員 そこで、高嶺参考人に安全保障環境の問題について伺いたいと思います。

 政府が、安保法制を整備する必要性として、中国の海洋進出や軍事力の近代化、北朝鮮の核・ミサイルの開発の危険性を挙げております。そうした動きに対して、日米が平時から有事まで切れ目のない体制をとることが必要だと説明をしております。

 軍事力の強化に対して軍事力の強化で対抗していくという考え方が根底にあると思いますが、こうした政府の考え方についてはどのようにお考えになりますか。

高嶺参考人 私はアリソンのトゥキュディデスのわなを最後に入れましたけれども、アリソンは、キューバ危機のときのケネディ政権の政策決定、キューバ危機に対する政策決定過程の研究で、彼は政府の中枢にもいましたし、著名な人で、国際政治をやる人はみんなこれを勉強しますけれども、そのアリソン教授たちが今心配しているのは、そういう我々のここで話されているレベルの話ではないわけですね。

 もう既に、軍事的には、東シナ海も南シナ海も軍事的な備えというのは飽和状態になるわけです。第一撃、第二撃で、ワシントンも東京も北京も大損害を受ける。沖縄は当然標的になるでしょうし、大損害を受けるような状態です。自衛隊を多少配備したとか海兵隊をどうしたというレベルの話ではないということを、そういうような危機に今南シナ海、東シナ海は来ていますよ、偶発的な戦争になると第三次大戦に近い悲惨な状態になりますよという話ですね。そういうのどかな話ではないんです。だから、早く外交交渉を米中政府はやりなさいという話であります。

 この外交交渉、先ほど言われている民間交流というのはそんなに金のかかる話ではないんですね。オスプレイ一機分もかからないですよ、それは。それよりも、早くそれを外交交渉、民間の交流、地方自治体の交流というようなものをやらないと、偶発的な危険があるということです。

 そして、恐らく中国は、その国力、人口、これからの経済力から、もっと軍備はふやすと思います。それに沿って日本もやると、日本も経済破綻するし、アメリカはもう既に予算が破綻しつつあるわけですから、それはもう切りがないということだと思うんです。

 そういう意味で、アリソンたちの、古代のアテネの軍人、哲学者の教訓を、彼が示したそのとおりになると大変な戦争になりますよ、そのわなにはまらないように皆さん行動してくださいということですね。今の日本がやっているようなレベルの話ではないんです。もっと危機、危険な状態ですよ。

赤嶺委員 それでは、中山参考人にお伺いしたいんですが、先ほど中山市長のお話にもありましたが、ことしも七月の三日に、尖閣列島戦時遭難事件の慰霊祭が行われております。私も、八重山の報道も拝見をいたしました。

 遺族会の慶田城会長は、慰霊祭での挨拶で、石垣島への自衛隊配備について遺族会として反対の意思を表明されました。安全保障のために石垣島が捨て石や軍事標的になることは絶対に避けなければならない、国の専権事項といえども、市民の生命財産を犠牲にしたり、市民の利益に反することは許されない、リーダーシップを持って日本一平和で豊かな石垣市になるようにお願いしたい、こう述べたことが報じられております。

 中山参考人は、こうした遺族会の思い、これをどのように受けとめていらっしゃるか、この点をお伺いしたいと思います。

中山参考人 今、自衛隊の配備につきまして、石垣島を予定している、計画しているということで、さまざまな話が持ち上がってきております。

 私は、かねてから申し上げておりますが、国防や安全保障というのは国の専権事項だというふうに思っております。もちろん自衛隊の配備につきましても、これは国が、今話が出ている中では、防衛大綱等で予定している、計画している中であります。

 石垣市につきましては、私が市長として自衛隊の配備を誘致するようなことはございません。

 これまでも申し上げておりますが、国の安全保障、国防は国の専権事項でございますので、自衛隊配備、計画の予定があるという話が来た場合には、その話し合いのテーブルには市長としてしっかりと着きたい。その中でまたいろいろな情報等をいただきながら、それは市民の皆様にオープンにしながら、議論を進めていきたいというふうに考えております。

 その中においては、戦争のときの尖閣諸島での被害、また、石垣、八重山でのマラリアの被害等ございますので、私どもに関しましては、絶対に戦争を起こしていかない、平和をしっかりと守っていくという理念は持ち続けていきたいと思っております。

 話の中で、例えば石垣に自衛隊が配備された場合には標的になるというのをよく言われますけれども、実際に基地なり駐屯地なりが攻撃されるという事態は、既にもう日本に対して他国が攻めてきているという状況でしかあり得ない、標的になるというのはあり得ない話でありますので、その意味においても、今回の平和安全法制につきましては、しっかりと成立をさせていただいて、日本の安全保障をより確実なものにしていただきたいというふうに考えております。

赤嶺委員 ありがとうございました。終わります。

浜田座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶申し上げます。

 参考人の皆様方におかれましては、御多忙中、長時間にわたりまして本当に貴重な御意見をお述べいただき、ありがとうございました。

 本日拝聴させていただいた御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係者各位に対して、心から感謝を申し上げ、御礼といたします。本日は、本当にありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午後二時五十八分散会

    ―――――――――――――

   派遣委員の埼玉県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成二十七年七月六日(月)

二、場所

   パレスホテル大宮

三、意見を聴取した問題

   我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案(内閣提出)及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案(内閣提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 江渡 聡徳君

       岩屋  毅君   木原 誠二君

       白石  徹君   原田 義昭君

       御法川信英君   緒方林太郎君

       大串 博志君   太田 和美君

       浜地 雅一君   塩川 鉄也君

 (2) 現地参加議員

       梅村さえこ君

 (3) 参考人

    埼玉弁護士会会長    石河 秀夫君

    弁護士

    東海大学法科大学院特任教授          落合 洋司君

    弁護士

    明日の自由を守る若手弁護士の会会員      倉持麟太郎君

    埼玉県商工会議所連合会会長          佐伯 鋼兵君

    慶應義塾大学法学部教授 細谷 雄一君

 (4) その他の出席者

    内閣官房内閣審議官   前田  哲君

    内閣官房内閣参事官   小野 功雄君

    外務省大臣官房参事官  吉田 朋之君

    防衛省大臣官房審議官  広瀬 行成君

     ――――◇―――――

    午後一時開議

江渡座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会派遣委員団の団長の江渡聡徳でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、皆様方、よろしくお願い申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案及び国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案の審査を行っているところでございます。

 本日は、両案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を賜るため、当さいたま市におきましてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席いただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようによろしくお願いいたします。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、全て衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようよろしくお願いいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の皆様方からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。

 まず、派遣委員は、自由民主党の岩屋毅君、御法川信英君、木原誠二君、白石徹君、原田義昭君、民主党・無所属クラブの緒方林太郎君、大串博志君、維新の党の太田和美君、公明党の浜地雅一君、日本共産党の塩川鉄也君、以上でございます。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 埼玉弁護士会会長石河秀夫君、弁護士・東海大学法科大学院特任教授落合洋司君、弁護士・明日の自由を守る若手弁護士の会会員倉持麟太郎君、埼玉県商工会議所連合会会長佐伯鋼兵君、慶應義塾大学法学部教授細谷雄一君、以上五名の方々でございます。

 それでは、まず石河秀夫君に御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

石河参考人 ただいま御紹介されました埼玉弁護士会の会長の石河でございます。

 御指名でございますので、トップバッターで意見を述べさせていただきます。

 私は、今回上程されている二法案に関しましては、いずれも明白に憲法に違反する法案であり、直ちに廃案にすべきである、このように考えております。

 その理由を述べる前に、弁護士会の会長という職務にありますので、一言、弁護士の社会的使命、これについて御説明申し上げたいと思います。

 弁護士は、弁護士法第一条第一項において、「基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」このようにされております。また、同条の第二項では、「前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。」このように定められております。

 日本弁護士連合会や各地の弁護士会は、弁護士の強制加入団体でございますが、前述の弁護士の社会的使命及び職務に鑑み、その品位を保持し、弁護士の事務の改善進歩を図るために、弁護士の指導、連絡及び監督に関する事務を行うとされております。

 このように、弁護士会は、弁護士の社会的使命を全うするために、基本的人権を侵害するおそれのある法律案について、警鐘を鳴らし、あるいは反対をするという社会的な使命があります。特に、戦前、自治を認められていなかった弁護士会が、大政翼賛会に参加し戦争で悲惨な結果を導くブレーキにならなかったという事実を反省材料として、戦後、弁護士会は自治権を認められるようになっております。この自治権の経緯に鑑みて、弁護士会に与えられた社会的使命は極めて重いものがある、このように自覚しております。

 このような弁護士及び弁護士会が国民から負託された社会的使命に基づき、日本弁護士連合会は、本年の五月二十九日の定時総会において、「安全保障法制等の法案に反対し、平和と人権及び立憲主義を守るための宣言」というものを採択しております。お手元に配られた平和と人権の資料一にその内容が記載されていますので、ごらんになっていただきたいと思います。

 また、埼玉弁護士会においても、本年の五月二十八日の定時総会において、「集団的自衛権行使を容認する違憲な閣議決定の撤回を求め、安全保障法制の制定に反対する総会決議」を採択しております。これは資料の二の方にありますので、ごらんになっていただきたいと思います。

 そのほか、今、傍聴席の方に示しておりますけれども、全国五十二の単位会全ての弁護士会が会長声明や総会決議を採択し、今回の集団的自衛権の行使容認の閣議決定や安全保障法制の制定に反対の意思を表明しております。全ての弁護士会が反対の意見を表明しているということに御注目ください。

 さらに、埼玉におきましては、本年五月三十一日に、埼玉弁護士会が後援をしまして、オール埼玉総行動として、北浦和公園において一万人集会を行っております。参加者は一万人を超えております。埼玉県内で一万人を超える集会というのは、いまだかつて、私は寡聞にして知りません。その内容は資料四の方に記載されておりますので、後でごらんになっていただきたいと思います。

 これに限らず、全国の弁護士会もさまざまな集会やパレードなどを実施し、時間を経るに従って次第に多くの市民が参加するようになっております。今回上程された二法案に対する反対の機運は、時間を追うごとに大きくなっております。このような国民の理解を得られない法案を仮に強行採決することは、民主主義に反するどころか立憲主義そのものを破壊するものと考えておりまして、断じて許されないものと考えております。

 そこで、私がこの二法案に反対する理由を次に述べさせていただきます。

 まず、日本国憲法が成立した経緯に思いをいたすべきだと思います。大日本帝国が、アジア太平洋戦争においてアジア諸国民等二千万人以上、日本国民も三百十万人以上の命を奪ったとされておる惨劇がありました。このような惨劇を二度と繰り返してはならないという痛切な反省のもとに制定された日本国憲法である、このような経緯があります。

 日本国憲法の前文で、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意」しておりますし、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」しております。これを受けて、第九条では、戦争を放棄し、あらゆる戦力の不保持と交戦権の否認まで行っております。

 したがって、自衛隊が海外に武器を携帯して出かけ、そこで戦闘行為に加担するということなどは、憲法が根本的に排除しようとする武力行使そのものであり、いかなる名目をもってしても憲法上許されないもの、このように考えております。

 さらに言えば、歴代内閣が否定してきた集団的自衛権の行使を、限定的と称しながらこれを容認することは、憲法の解釈変更の限界を超えるものであり、この点からも違憲であるということは明らかであります。

 そもそも歴代内閣の個別的自衛権の行使容認は、憲法を解釈で変容する限界地点を求めたものであり、これ以上逸脱できないぎりぎりの解釈変更であることは、歴代内閣がみずから認めていたものであります。今回の集団的自衛権の行使容認は、この歴代内閣の解釈改憲の限界を超えるものであり、違憲であるとの主張が歴代内閣の法制局の長官の口からもはっきりと言われております。

 もしこの二法案が成立すると、そもそも憲法の規定する平和主義の枠組みから外れる法律ができることを意味するものであり、立憲主義に反します。

 平和安全法制整備法案は、我が国を取り巻く安全保障環境の変化を立法事実と、このように説明しておりますが、主張されるほどの安全保障環境の変化が起こっているとは、私には到底思えません。むしろ、かつての冷戦時代の方が厳しい安全保障環境があったと主張する識者が大変多いと聞いております。また、もし仮に立法事実が本当にあるのであれば、きちんと憲法改正手続をとるべきである、このように考えます。

 また、もう一方の国際平和支援法案も、これまでの自衛隊の活動領域を質量ともに拡大するものだけでなく、海外での武器使用を広く認める法案であり、これまでの憲法の解釈を逸脱した法案であることは間違いありません。憲法上容認できる内容ではありません。

 安倍内閣は、当初、憲法改正を正面から行おうとした経緯があります。しかし、世論の反対が根強いことから改正手続の改定に目標をずらし、これも困難と見るや、歴代内閣の憲法解釈をねじ曲げて成立を試みる、このような法案であり、安倍内閣のこのような対応は、立憲主義に反した行為であって、許されるものではないと考えます。

 また、二法案は、内容的にも極めて問題が多い法案であります。

 戦後七十年にわたり、曲がりなりにも日本が平和で経済的に繁栄した根底に、日本国憲法の徹底した平和主義があったことは間違いない事実だと思います。

 米軍が駐留しているから攻められなかったと主張する方もいらっしゃいますが、戦後七十年にわたり、日本の政府の行為によって海外の誰一人として殺していないということは紛れもない事実であり、それは日本国憲法の縛りがあったからにほかなりません。

 今回の二法案は、この憲法の縛りを外すものであり、海外で戦闘に巻き込まれる危険性が極めて高いものであります。もしこの法案が成立すると、これまでのように誰一人殺していないと言えなくなってしまいますので、日本国民は、国の内外を問わずテロの標的にされる、その危険性は劇的に高くなる。

 例えば、国際平和に大きく貢献してきている民間の現地支援活動も、この法案ができると、その活動継続が不可能になる可能性が極めて高いと言われております。

 さらに言えば、次のような不都合が考えられます。

 まず、今後、違憲訴訟が全国で起こされることは必至だと思います。違憲無効な法律に従って海外に派遣された自衛隊員が、現地の兵士や、あるいは過って民間人を殺した場合、これがどのような法律関係になるのか、これの解明もまだされておりません。

 このように、内容的にも極めて問題の多い法案だと考えます。

 最後に、外国からの武力攻撃の危険が迫った場合どうするのかという漠然とした脅威論で一般国民を説得しておりますけれども、その想定する事態は、これまでの国際関係から考えて極めて不自然、不合理な内容であります。

 私は、結局、平和を維持するには、不断の努力によって極力敵を少なくすることしか平和を維持することはできないということが歴史から学んだ大原則であって、外交努力で危険を排除していけるものと考えております。また、武力によらない紛争解決機構を充実させることも平和憲法を掲げる日本の重要な役割であり、日本が国際社会において名誉ある地位を占めるためには、武力によらない平和を実現することこそが唯一の道であると確信しています。

 今回の二法案に関する議論を聞いておりますと、映画監督の周防さんが某雑誌で紹介した格言を思い出します。それは、少しの安全のために少しの自由を犠牲にする国民は、結局その両方を失うというものです。自由を犠牲にするということは、安全を手に入れることではなくて、結果的に戦争に導かれるということを肝に銘じるべきだと思います。

 国会での審議は、その審議に費やした時間が問題なのではなく、国民の理解を得られたかどうかが問われています。もう一度最後に申し上げますが、国民の理解が得られないまま強行採決に至った場合は、国内の多くの方々とともに、私たち弁護士と弁護士会は民主主義と立憲主義を守るために徹底して戦う所存です。

 以上の理由から、今回の二法案は憲法違反であり、廃案にすべきである、このように考えます。

 以上でございます。(拍手)

江渡座長 ありがとうございました。

 次に、落合洋司君にお願いいたします。

落合参考人 弁護士の落合洋司でございます。

 御指名ですので、私の意見を申し上げます。

 以下四点について、私の意見を申し上げたいと思います。

 まず、一点目ですが、限定的とはいえ集団的自衛権行使を憲法上認めていくという点、これについては、結論から言いますと、私としては、肯定はなかなか難しい、しがたいというふうに考えております。

 日本国憲法は、もともと、戦争を放棄している、戦力も持たない、そういう規定を持っているわけですけれども、憲法制定後のさまざまな解釈、政府見解、政府における解釈によりまして、自衛隊を保有する、我が国に対する侵害、侵略行為に対しては自衛権を行使できるということで、皆さん御存じのように、その解釈を積み上げてきたということで現在に至っているわけであります。

 一見、明文からするとかなり難しい解釈ではあると思うんですけれども、そういった解釈というものをぎりぎりのところで積み重ねてきた、それによって我が国の安全というものが保たれてきた、保障されてきた、そういうことは、やはり現実として、厳然として存在をしているということです。

 その中で、既に各方面で指摘されていますので余りくどくどとは申し上げませんけれども、集団的自衛権ということについては、我が国は国家として保有はしているけれども行使することはできないんだということで、一貫して政府も述べてきていた、それが、ここに来て、集団的自衛権というものが限定的とはいえ行使できるんだということで、大きな転換が図られてきているわけです。それについては、やはり法解釈としては難しいというふうに言わざるを得ないと考えております。

 ですから、日本国民の意思というものが憲法を通じてあらわれているわけですから、そういった限定的とはいえ集団的自衛権というものを行使できるという解釈をしたいのであれば、やはり憲法の改正というところをきちんと踏んでいくということになりませんと、やはり憲法というのは最高法規でありますので、その最高法規というものを安易に解釈を変えてしまうということについては、相当な問題があるだろうというふうに言わざるを得ないと考えております。その点で、現在審議が行われております安全保障法制ということについては、そもそも根本的なところで相当な問題を抱えているというふうに言わざるを得ないと考えております。

 ただ、私自身、従来の個別的自衛権というものについて、いろいろと従来とられていた解釈というもの、それが現実的に、そのままそれを守っていくということでいいのかどうかということについて、やはり問題意識や疑問というものも持っております。

 例えば、国あるいは国に準ずるものが攻撃を加えてくる、それに対して個別的自衛権を行使できるというふうな解釈が従来とられていますけれども、国に準ずるという、そういったあたりについては、国に準ずるまでに至らなくとも、それに対して我が国を防衛していくということが必要な場面というのはあるだろうというふうに思います。

 あと、我が国に対する攻撃に対して自衛権が発動できる、それは攻撃が着手されたときであるというふうに捉えられて、その着手についても従来いろいろ議論があるわけですけれども、着手ということについても、やはりより実質的に考える余地があるのではないかとか、いろいろと従来の個別的自衛権の議論についても見直すべき点はあるのではないかというふうに考えてもおります。

 ですので、従来の議論というのをただ守っていくということがいいというふうに思っているわけではないわけでして、そういった従来の議論というのを実質的に見直していくということは必要だと思いますけれども、その大もとの自衛権について、集団的自衛権ということを肯定していくということについては、反対と言わざるを得ないということであります。

 次に、二点目としては、現在の安全保障、安保法制の議論の中で大きく問題となっております存立危機事態ということですね。これについてどういうふうに考えるべきかということなんですけれども、結論から申しまして、存立危機事態というふうに言われている事態のかなり多くの部分というものは、従来の個別的自衛権の行使ということで対応が十分可能なのではないかというふうに考えております。

 時間の関係で、細かい、具体的な場面を見るというところまではコメントがなかなか難しいんですが、恐らく、かなりの部分については、従来の個別的自衛権という考え方にのっとって、対応というものは十分可能であろうというふうには考えております。

 ただ、やはり、世の中、現実的には何が起きるかわからないということは当然あるわけですから、なかなか従来の個別的自衛権では対応できないという場面が、非常にレアな場面とはいえ出てくる可能性はないとも言えない。ただ、それは恐らく、非常にレアな、まれな事態なのではないか。ですから、そういうまれな事態に対応するというふうなことで、もともとの考え方というものを曲げてしまうということについては、かなり疑問を感じているということでございます。

 ですから、日米安全保障条約というものも厳然として存在をしているわけですから、そういった日米安全保障条約に基づく対応をするとか、あるいは、その必要があれば、現行の憲法のもとにおける対応可能な修正を加えていくというふうな手段をとっていくということで、存立危機事態として議論されている部分については、対応可能なものがほとんどではないかというふうに考えておりますので、そこを大きく取り上げて、もともとの憲法自体について解釈を大きく変えてしまうということについては、そこは問題ではないかというふうに考えております。

 それから、三つ目として、周辺事態安全確保法から、我が国の周辺という概念、これが廃止されようとしている。周辺事態というのは、「我が国周辺の地域における」という、周辺という概念がもともと入っているわけですけれども、新たな概念としては重要影響事態という捉え方がされて、もともとあった「我が国周辺の地域における」という部分は取り除かれようとしているということですが、これについてもかなり問題があろうというふうに考えております。

 問題があるというふうに考える大きな理由としては、先ほどからお話ししておりますように、集団的自衛権というものを限定的とはいえ認めるのは困難である、そういう法理論的なところが私自身としての大きな根拠なのでありますけれども、周辺という概念を廃止することによって、まあ、もともと、周辺概念があることで、恐らく、武力行使と一体化しないということが担保されてきていたのではないかと思うんですね。

 従来の議論でも、武力行使と一体化するということについて、政府答弁でも相当慎重に、一体化しないというためにはどうすべきか、海外派兵をしないというふうなことも含めてですね、そういう議論がされてきた。

 一九九七年の大森内閣法制局長官の答弁でも、武力行使と一体化するかどうかということについての考慮要素として四点挙げられていて、他国の活動の現況とか、我が国の活動の具体的内容とか、関係の密接性とか、三点とあわせて、地理的関係というものが挙げられているわけですね。

 ですから、その一体性を考える上で、地理的関係というものを抜きにしてはやはり考えられない状況にある。

 にもかかわらず、新たな重要影響事態という概念では、先ほどからお話ししていますように、もともとあった「我が国周辺の地域における」という点が除かれている。これは、我が国の現行憲法のもとにおける安全保障のあり方として、相当大きな問題があるのではないだろうかというふうに考えております。

 最後に、四点目として、多国籍軍の後方支援活動に関する恒久法制定というもの、これが是か非なのかという点ですけれども、それがいけないとまではなかなか言い切れないと思うんです、恒久法制定というものが。ただ、やはりそこには疑問がどうしても残るであろうというふうに考えております。

 従来は、その都度、特別措置法というものをつくっていた、それが迅速性になかなか欠けるということで、恒久法制定ということで臨もうとしているようですけれども、恒久法制定ということであれば、大枠については恒久法を制定する、細部についてはその都度立法していくというふうな方法もあろうかと思いますし、迅速性というものが優先され過ぎて、個別的な、きめ細かい対応というものができなくなっていくことについては、やはり疑問があろうかと思っております。

 それから、これについて幾つも問題があるわけですけれども、例えば、非戦闘現場であれば支援が可能なんだというふうな、そういうことになりつつあるようですけれども、非戦闘現場というものが突如として戦闘現場になるということもあり得ることも考えられますし、従来のようにあらかじめ安全な実施区域を定めておくという制度に比べて、日本が戦闘に巻き込まれていく、そういう危険性というものがかなり大きくなってきているのではないか、ここは危惧されるところであります。

 さらには、弾薬提供ですとか、あるいは戦闘作戦行動のための発進準備中の航空機に対する給油や整備も可能、そういう内容になっておるようですけれども、まさにこれについては、先ほどからお話ししております武力行使との一体化ということに大きくつながっていくということで、そういう武力行使と一体化しているような存在に対しては、攻撃が加えられるということも当然十分あり得るわけですから、我が国がやはり戦闘に巻き込まれていくという危険性が大きくなってくるであろうというふうに危惧されるものであります。

 以上述べましたように、四点について申し上げましたけれども、そういったさまざまな問題点がありますので、現在の安全保障、安保法制についての議論というものについては、引き続き慎重に検討を加えていく必要があると思いますし、その検討の中においては、憲法との関係というものについても、やはり見直しを含めて考えられていくということが必要なのではないかというふうに私は考えております。

 以上です。(拍手)

江渡座長 ありがとうございました。

 次に、倉持麟太郎君にお願いいたします。

倉持参考人 本日は、意見陳述の場を与えていただきまして、どうもありがとうございます。

 さて、今回の意見陳述は、いわゆる安保法制についてということですが、私は、現在、弁護士の特殊部隊として、平安委員会をウオッチして、本当に頭がくらくらしそうになりながら日々国会審議を検討しておりますので、その立場から意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、結論を二点申し上げます。

 一点目は、政府は今回の法制で、いわゆる切れ目のない安全保障体制を目指すということですが、まさに本法案は切れ目のない違憲法案であると考えられるということです。

 この法制が実現すれば、武力行使の禁止、専守防衛、最小限度の武器使用、武力と一体化しない国際貢献等々、憲法第九条とそこから導かれる基本原則のもとで、従前、政府解釈等ぎりぎりのところで守ってきた合憲のラインをまさにシームレスに踏み越えて、解釈の限界を超えた改憲手続なき実質改憲が行われることになります。改憲手続を経ずに現行憲法に反する法制度を実現することは、もちろん違憲であります。

 もう一点なんですけれども、これは特に本意見陳述で強調したいことですが、今回の安保法制の審議における政府による説明、答弁が余りにも不合理、不誠実、不十分であり、この法案成立についての民主的正当性は欠如しているということです。我が国の防衛がどうあるべきかについては、さまざまな価値判断があろうかと思いますが、これは価値判断の問題ではないですね。政府の説明は、価値判断以前に、論理的に破綻しているということでございます。

 以下、御説明いたします。

 まず最初に、本法制は憲法論とは切っても切り離せないものですので、憲法との関係について意見を申し上げます。

 本法制を政府が基礎づけているのは、いわゆる政府の四十七年見解と砂川事件判決ですが、これがいずれもおかしい。

 まず、お手元の資料なんですが、ちょっと分厚くなってしまったんですけれども、資料一をごらんいただきたいんです。

 これはいわゆる四十七年見解というものですが、その第一要件に、「外国の武力攻撃によつて国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底からくつがえされるという急迫、不正の事態」とあり、外国からの武力攻撃によって国民の生命等権利を根底から覆すかどうかを判断すればいいという構造になっております。

 一方、新三要件では、資料一の下の段ですが、「我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」とあります。我が国と密接な関係にある他国が攻撃されて、これによって、結果として我が国が存立危機事態になるというたてつけになっております。つまり、外国の武力攻撃事態は大したことがなくても、これによって、我が国が結果としてどうなったかということで存立危機事態防衛が可能になるわけです。

 例えば、政府がよく出しているホルムズ海峡の機雷掃海の場合なんですが、外国が機雷を敷設した、そういう行為そのものでは我が国に対して武力攻撃に当たらなくても、事後的に、我が国が石油危機に陥れば、その機雷敷設行為は存立危機事態攻撃となり、防衛ができます。武力攻撃そのものではなく、我が国の状態によって防衛ができるかどうかが変わる。だからこそ、四十七年見解ではできないものが、新三要件ではできるようになっているわけですね。

 しかし、考えていただきたいんです。同じ事実を当てはめて別の結論が出るということは、規範自体、基本的論理自体が変わっているんです。

 数学の方程式と一緒ですね。式が一緒ならば、同じ数字を入れれば必ず同じ解が出るはずなんですが、同じ事実を当てはめても違う解が出るということは、それは方程式の式が変わっているんですね。

 これは、基本的論理が変わっているということです。それも、これまで自国への武力攻撃が武力による防衛の要件であったのに、それが変更になったということです。それにもかかわらず、なぜ四十七年見解と新三要件が規範また基本的論理が変更されていないと言われているのか、私には全く理解できません。

 お手元の資料二、一ページめくっていただいたものなんですが、ここで、内閣法制局長官自身が、旧三要件というか、四十七年見解の(一)と(二)の部分というのは、これを変える場合は憲法改正が必要だと言った規範を今回変更しているにもかかわらず、変更していないと言う。しかも、これは、例えば夕飯の献立がカレーからカツカレーに変わって、カレーという基本的論理は変わっていない、そういう話とは違うわけですね。国家の軍事権という国家権力最大の暴力についての話、しかも、政権がかわっても維持し続けられてきた規範、これを変わっていないと隠蔽するのは、欺瞞以外の何物でもないんじゃないでしょうか。

 では、なぜ昭和四十七年見解が我が国への武力攻撃を前提にしていたか。それは、そう考えなければ違憲だったからだと考えられます。

 このことは、法律自体にも書いてあります。我が国の防衛法制の中核をなす自衛隊法の第七十六条には、こう書かれています。「我が国に対する外部からの武力攻撃(以下「武力攻撃」という。)」つまり、この法律では、我が国への武力攻撃を防衛の対象となる武力攻撃と定義しています。

 なぜわざわざ法律にそのような限定した定義を示しているのか。これはまさに、そうしなければ違憲だからです。自衛隊法は、違憲性を免れるためには、「我が国に対する」という限定を入れなければならなかった。九条という箱に入れられる自衛隊法の規定としては、この「我が国」というオーダーメードしかあり得ない、これはまさにジャストサイズだったわけですね。これは、手元資料の三を見ていただければ、今は取り上げませんが、歴代法制局長官の答弁からも明らかなはずです。

 このように、昨年七月一日の閣議決定に基づいて整備される本法案は、憲法改正を経ずに、我が国が自衛隊法を含む安全保障体制全体で形づくってきた規範の根幹を変えてしまうもので、内容的な正当性がないと考えられます。

 砂川事件についても少し触れたいんです。

 集団的自衛権行使容認について、政府が突然よりどころにしている、いわゆる砂川判決なんですが、かつて法律家であった政治家の方々が、砂川事件判決の解釈を歪曲、と言ってもいいかもしれませんが、して、集団的自衛権の根拠として持ち出しております。

 これについての答弁も、中谷防衛大臣はこの一カ月の間に、根拠になる、ならない、次に、なる、根拠になり得るというさまざまなバリエーションでお答えくださいましたが、現在、政府は、根拠になり得るということで統一しているのかなと思います。

 ぜひ、内閣法制局長官には、まだ、最後の最後で法律家としての魂を売り渡さないことを願っております。

 次に、軍事権について規定する本法案が成立する前提として、十分な審議が担保されていることが本法案の手続的な民主的正当性を支えるんですけれども、国会審議をウオッチしていて、政府の答弁が余りに不誠実、不合理、不十分であって、手続面でも正当性がないと考えられます。その答弁をお手元の資料四にまとめましたので、ごらんください。五ページです。

 一々挙げているとちょっと時間が足りなくなってしまうので、皆さんでごらんになってほしいんですが、例一は、これはもう矛盾している答弁ですね。次の六ページの例二は、これは論理的におかしいこととかですね。

 七ページは、非常におもしろいんですが、一番下に書いてある検索語、サイバー、パワーバランス、海洋、一国のみ、安全保障環境、グローバル、アジア、テロ、宇宙、ミサイルの十語、こんなに多くのワードを検索して複数ヒットするということはほぼあり得ないんですけれども、答弁が複数ヒットする、これぐらい同じ答弁を繰り返しているということ。

 あとは、八ページは、絶対にありませんとか、全く的外れとか、一切変更しておりませんとか、言い切り型の答弁と、いささかも変更がないというような、こういう打ち消し、断定型の答弁で、細かい議論をされていないという指摘であります。これは読み物としてもちょっとおもしろいので、ぜひ後で御参照ください。

 次に、法律自体の欠陥について意見を申し述べたいと思います。

 純粋な憲法論だけではなくて、今回の法案自体を個別に検討しても、さまざまな問題点が存在しております。その中でも、国会審議で議論されているものと議論されていないものがあります。これも、具体的に問題点を一つ一つ挙げていくと、もう九月になってしまうので、幾つか例を挙げて終わりにしたいと思います。

 例えば、今回、改正自衛隊法九十五条の二で規定されている、いわゆるアメリカ軍等の武器等防護についてです。これはお手元の資料五に一応まとめてあります。十六ページです。これもここでは細かくは説明いたしませんが、この規定は、自衛官が単独で、自分を守る権利に基づいて、米軍等の航空機や船舶も防護するということになっているんです。これはちょっと私は理解できないですね。無理があると思います。

 あとは、資料六には、捕虜に関する答弁等でもちょっと問題があるものがあるんじゃないかということで、挙げさせていただきました。

 これらの例を見ただけでも、今回問題となっている本法案は、施行されれば、全体として、違憲な状態を生んでしまうことへの法的な歯どめが全く担保されておらず、平時から有事までまさに切れ目なく違憲へと足を踏み入れる危険が、そこかしこに内在していることがおわかりいただけるはずです。

 資料七、十八ページですが、この図を見ていただくと、白い四角で、十個近く浮き上がっています。これは、今回できるようになったことで違憲の問題をはらむという論点がこれぐらいある、視覚的にわかりやすいようにこうしたんですけれども。まさにシームレスな違憲性への危険が一目瞭然ではないかと思います。

 これら、法律上の規定にかなり無理があったり、非現実的であったりするのはなぜかというと、これは簡単だと思います。

 集団的自衛権の一部行使を認めているにもかかわらず、憲法九条を変えずに、しかも、憲法九条のもとでぎりぎりの解釈として認められてきた四十七年の政府見解と基本的論理は変えていないと強弁しているため、交戦権がなく、自衛隊は軍隊ではないという枠組みを前提とせざるを得ず、九条を踏み越えているのに踏み越えていないと振る舞わなければいけないために、おかしな結論と論理的不整合性を生んでいるわけです。

 これは、まるでパントマイムをしている人が滑稽なのと同じじゃないかと私は思うんですね。しかし、話はもうパントマイムでは済まない問題です。武力行使、軍事権の行使の問題です。これらのそごは重大であり、また、現場の自衛官等への負担が過剰にかかることになります。このような状況で本法案を強行的に採決するようなことがあれば、政権支持にも大きな影響があるのではないでしょうか。

 実は、こういう議論されていない論点が、まだまだ山ほどあるんですね。資料八として、最後のページにA3を折り畳んでくっつけております。これも、とりあえず意見陳述をお受けしてからつくったので、まだまだ数えられるかもしれませんが、ここに挙げただけで、議論していない論点が四十個以上あります。それぞれにつき、まだまだ議論が必要なのは明らかですね。そこに挙げていないものでも、憲法論に関するものですと、前文と平和的生存権についての議論などは、一切触れられておりません。

 にもかかわらず、強行採決の声が聞こえてきたりしております。もし、このまま、議論されていない論点をそのままにして、強行採決をするようなことがあれば、それはこの法案の手続的な正当性を失わせるものとなるでしょう。

 先ほど申し上げたように、この法案は、実体、つまり中身の面でも民主的な正当性がないと考えます。重ねて、議論を尽くさぬまま採決するようなことがあれば、手続的にも民主的正当性を欠くこととなってしまいます。不十分、不合理、不誠実な答弁、審議のみで法案を成立させるということが、我々の代表者によって立法がなされるという民主主義の建前からいって、果たして民主的正当性を与え得るんでしょうか。政府には、見ていて頭がくらくらするような審議ではなくて、合理的かつ十分な審議を強く強く求めたいと思います。

 最後になりますが、私は、日々、国会審議を精査するだけではなくて、町場の憲法論として、さまざまな方々と学習会とか、または、憲法カフェなんて呼んでいますけれども、カフェなんかで気軽に市民の方々と話ができる場をたくさん設けて、憲法問題に今まで関心がなかった方や若い世代とも、憲法について意見交換をさせていただく機会に多く恵まれています。

 そこでは、皆さんは口々に、この政権の動きとの距離を語られます。つまり、何か自分たちの全く手の届かないところで物事が決められていくという距離について語られます。この距離は、まさに自分のことは自分で決めるという民主的正当性との距離をそのまま反映するものであり、先ほど来申し上げている今回の安保法制の審議状況や正当性の話と全く軌を一にしているのではないでしょうか。

 私は、ここではイデオロギーの話をしているわけでもありませんし、安全保障についての議論を放棄しようと言っているわけでも全くございません。まずは、純粋に、法律家として、この法案のできが余りに悪いということと、にもかかわらず、国家権力担当者が、これを一度御破算願って目盛りをゼロに戻して、改善をするという勇気を持たずに、むしろ、問題点がないかのようなパントマイムを演じることで、国民に説明するということから逃げ、強行的に決定を推し進めようとして、その責任を全うしていないということを指摘したいのです。現政権には押しつけ憲法への嫌悪を感じますが、現政権が今しようとしていることは、まさに違憲な法案の国民への押しつけではないでしょうか。

 ある法哲学者が、プーボワールオブリージュという言葉を使っていました。ノーブレスオブリージュをもじったものですが、ノーブレスオブリージュは、貴族、高貴な者には義務があるといったような意味ですけれども、プーボワールオブリージュのプーボワールはフランス語で、これは英語でいうとパワーです。つまり、権力を持つ者には義務がある、それを適正に行使する義務がある、すなわち、権力担当者の節度を説いた言葉です。

 国民は既に権力者のパントマイムに気づいていると思います。立憲主義の核心は自律です。自分自身のよき生の構想は、自分自身だけしかできないということです。それが、今、権力担当者に決められている、そう実感しています。我々は、日本を取り戻すという前に、まず自律を取り戻さなければならないと強く叫ぶべきです。

 現政権にもまだ人間の尊厳への敬意と知性への良心が残っていることを願い、そして、プーボワールオブリージュ、その権力行使に対する節度を持ち、実体的にも手続的にも民主的正当性を欠いた本安保法制を廃案とすることを求め、意見陳述とさせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

江渡座長 ありがとうございました。

 次に、佐伯鋼兵君にお願いいたします。

佐伯参考人 埼玉県商工会議所連合会会長の佐伯と申します。兼務職として、埼玉県防衛協会の会長も担当しています。

 埼玉県防衛協会は、現在、会員数四百で、来年には創立五十周年を迎える予定であります。埼玉県内には十五の商工会議所がありますが、全ての商工会議所が防衛協会の会員となり、防衛意識の高揚と自衛隊支援、協力を目的として活動しています。

 自衛隊については、日本の防衛活動以外にも、東日本大震災発生時の人命救助、昨年の秩父の大雪被害での災害復旧など多大な貢献をいただいており、その活動に感謝するとともに、自衛隊の重要性が我々国民に浸透したものと、まことに喜ばしい限りであります。

 埼玉県防衛協会としましても、国民の安全と日本の平和の維持のためには自衛隊の存在は不可欠との観点から活動してまいりますので、防衛省初め皆様の御指導をよろしくお願いしたいと思います。

 また、防衛協会会長として、一国民として、事業経営者の立場から申し上げれば、今国会で審議されている安全保障関連法案については極めて重要であると考えており、本法案の早期成立をぜひお願いしたいと思います。

 本日は、貴重な機会をいただきましたので、防衛問題については素人ではありますが、経済人の立場から、日本の安全保障について意見を述べたいと思います。

 埼玉県には航空自衛隊の入間基地や陸上自衛隊の大宮駐屯地があり、防衛協会会長として、防衛省・自衛隊とも親しく接する機会があります。そうした中で感ずることは、日本の平和と安全を守るためには、単に平和を祈念するのみならず、国家として実際に国を守る組織を保持することが重要であると思います。自衛隊が日々訓練を重ね、いつでも活動できる体制をとっていることが、抑止力となり、今日の平和と安全を支えていることを深く感じています。

 自衛隊の存在については、さらに申し上げれば、専守防衛原則のもと、効率的、規律的な組織として、世界から精鋭部隊として認められています。自衛隊の活動、PKO活動、イラクでの人道復興支援、インド洋での給油活動、先ほど紹介した緊急人道支援活動といった活動実績は、国際的に高い評価を得ていると承知しています。

 繰り返しになりますが、自衛隊という存在が目に見えない抑止力としてこれまでの日本の平和と繁栄に貢献してきたことは、間違いなく国民が認めているところと思っています。

 今回の平和安全法制は、厳しい環境に直面する日本が、現実に即した形で法制を整備し、自衛隊の運用を含めた安全保障政策をより迅速に、効率的に遂行していくためのものであると思います。抑止力として貢献してきた自衛隊の活動の幅を広げることは、現在の安全保障環境の中にあっては非常に大事で、喫緊の課題であり、また、自衛隊は、集団的自衛権を初めとする新たな任務を不安なくこなし、役割を果たすものと確信しています。

 ことしは戦後七十年の節目の年であります。私は昭和十八年生まれで、終戦の年には二歳でした。戦争の記憶はありませんが、敗戦による国土の荒廃、国民の自信喪失など、戦争が残した損失を取り戻すためにどれだけ犠牲を払ってきたかは記憶にあります。戦争は二度と起こしてはならないと切実に感じております。

 また、戦後七十年は、私の今までの人生と重なりますが、平和のありがたさ、とうとさを身にしみて感じており、私たちは、平和国家日本を子々孫々、未来永劫にわたり引き継がなければならない責務があります。

 最近、平和国家日本の安全保障が脅かされる事態が頻発しています。

 日本の安全保障の現状を見ると、日本の固有の領土である尖閣諸島に対し、中国から領有権をめぐり理不尽な政治的、軍事的圧力を受けていることは御承知のとおりです。中国の南沙諸島における勝手な理屈、行動により、我が国の生命線であるシーレーンの安全航行が脅かされております。北朝鮮のミサイル、核開発や、世界じゅうで起こるテロなどを含め、今の安全保障環境の中では、国民が安心して暮らせる状況でないことを認識しております。

 さらには、中東において、過激派組織のイスラム国が台頭し、従来のイスラム教スンニ派とシーア派の対立が複雑に激化しており、日本人も死亡するなど、他国からしかけられた脅威に日本及び国民は意図に反して巻き込まれていくリスクにさらされている現実が起こっております。

 つまり、日本の安全保障は、日米安保の傘のもとに従来の枠組みを維持すれば、すなわち個別的自衛権に徹すれば、日本及び日本人の安全、平和は守れるのかといった観点から議論する時期に来ているのではないかと考えます。

 世界の軍事情勢が変化するにつれ、ようやく日本にとっての安全保障の重要性が国民に浸透してきたことは、まことによいことだと思います。

 敗戦国日本は、日米安全保障条約により、国の安全をアメリカに依存する体制で出発をしました。私の意見では、安全保障とは、金を出せば守れるものではなく、外からの脅威に対して軍事的防衛力を誇示してこそ守備できるものと思います。周囲の状況を考えてみますと、もはや自衛隊を防衛活動だけに限定しておいては日本の安全は守れないと思っています。

 日本及び日本人の安全は日本人が守る、これが国家の基本であり、国民の大多数の意見であると思っています。日本の平和を維持するためには、日本の置かれた状況、世界情勢などを踏まえて、今後どうすべきか、今こそ議論が必要であり、国民から負託された国会議員の諸先生方の意見を国会審議中継で拝見し、忌憚のない意見の応酬により、さらに精度の高い平和の枠組みができることも期待しております。

 日本は、敗戦から立ち直り、世界の中で驚異的な経済成長により経済大国となりました。経済人として言えば、経済の成長、発展には国の安全、平和が前提条件になります。他国からの脅威にさらされている状況で、つまり、日本は原材料、石油などを外国から輸入しており、シーレーンの封鎖などで輸入がストップまたは輸入に影響が出た場合は、今後、経済の発展は見込めません。平和であればこそ発展が可能であり、その平和を維持するためには、集団的自衛権による日本の安全確保という選択肢が必要になってくると思います。

 現在、国会では集団的自衛権の行使が違憲か合憲かと議論されています。憲法解釈については、成立当時と状況が変化したのであれば、解釈の幅を広げる、または憲法改正も必要であると思いますが、アメリカでは十八回、ドイツでは五十一回、隣の韓国でも九回の憲法改正が行われました。憲法は国民のためにあり、国民は憲法のためにあるものではありません。主権は国民にあります。要は、我が国の平和と安全を確実に守ることができる法整備をすることです。

 軍事力に頼らず平和を守るのは当然ですが、魔法の呪文を唱えているだけで平和を守れるものではありません。外からの脅威に対し何もせずに国を滅ぼした例は、史上、枚挙にいとまがありません。

 日本国民の平和と安全を守る自衛隊が、最も効率よく活動でき、脅威を払拭できる体制とするためにはどうすべきか、日本の平和を未来に引き継ぐためにはいかにすべきかを考える必要があります。

 自衛権には、個別的自衛権と集団的自衛権がありますが、外からの武力攻撃に対して反撃するための武力を行使することは、個別的自衛権として自衛隊の活動に認められています。集団的自衛権は、日本は武力攻撃を受けていないけれども、同盟国が武力攻撃を受けたときに、これに反撃するための武力を行使する権利です。この集団的自衛権の行使をめぐっては、個々のケースではどう対処するのか、細かく審議されています。

 しかしながら、根本の論点は、日本に累が及ぶと想定された場合に、外からの武力行使を待って反撃することで日本の安全、平和は守れるかといった点だと思います。私は、非常に疑問に思っておりまして、集団的自衛権を早急に認めることが必要であると思います。

 もう一つの論点は、なぜ集団的自衛権を行使するようにしておくことが必要かということだと思います。

 日本の安全保障の現状は、最初に申し上げたとおり、尖閣諸島、南沙諸島など未解決の懸案事項が山積している状態です。中国は軍事力を飛躍的に増大させており、領有権問題は軍事的衝突を引き起こす懸念が十分にあります。このような懸念の中で、政治と経済は別で、経済的には両国は友好関係でいきましょうと担保されるのでしょうか。北朝鮮の核兵器の保有、日本を射程距離に入れた弾道ミサイルの配備など、非常な緊張関係にあると考えています。

 一例を申し上げましたが、国家間のパワーバランスが変化している状況で、従来の自衛権で対抗できるかということです。今後、日本が平和国家であるためにも、集団的自衛権が軍事攻撃の抑止となるということだと思います。

 国民の中からは、集団的自衛権が暴走し、国民が知らないうちに自衛隊が独断専行してしまうのではないかという不安があることも承知しています。しかし、今回の法案では、自衛隊が武力攻撃事態への対処を行う場合など、国会承認手続が必要であると承知しています。こうした法的な担保を踏まえれば、不安があおられ過ぎているのではないかと率直に感じます。

 安全保障関連法案の国会審議を聞いていますが、与野党の質問、説明は、率直のところ、非常にわかりづらいというのが私の感想です。野党の質問は細部に突っ込み過ぎている感があり、与党の答弁もわかりづらい感があります。この点に関しては、国民が感じているところであると思います。

 先般、聞いたところでは、埼玉県上尾市議会では、「安全保障関連法案に関し、国民への謙虚かつ丁寧な説明を求める意見書」を全会一致で採決しました。安全保障関連法案については、日本の平和の方向にかかわる問題であり、国民に不安を抱かせることのないよう説明をお願いします。

 また、先ほど申し上げましたが、今、国会で審議されている法案は、以前とは変化したパワーバランスの中で、日本が平和国家であるための枠組みをつくりましょうということだと思います。この機を逃すと、相変わらず外からの脅威に対抗できない日本が続くだけになると思います。

 ぜひ、開会中の国会審議で、早急に集団的自衛権を含む安全保障関連法案を成立させ、新しい時代に向けた自衛権を持った日本が平和国家として存続するための枠組みを提示いただくことを祈念いたしまして、私の意見を終了させていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

江渡座長 ありがとうございました。

 なお、議事の途中ではございますけれども、現地参加議員がお見えになりましたので、御紹介いたします。日本共産党の梅村さえこ君が御出席になっております。

 では、次に、細谷雄一君にお願いいたします。

細谷参考人 私は、専門が外交史でございます。外交史、そして現代の安全保障について研究をする国際政治学者でございます。そのような外交史あるいは国際政治学者の観点から、今回の平和安保法制についてのみずからの見解を述べさせていただきたいと思います。

 これまでの審議では、主に憲法学者の方々あるいは法律学者の方々がこの法案についてさまざまな御意見を述べていらっしゃいました。しかしながら、この審議の中で、必ずしも、国際政治学者あるいは外交史研究者がこの問題について触れる機会はほとんどなかったような気がいたします。もちろん法律的な議論は重要ですが、より重要なのは、この法案によってどうなるのか、日本がより安全になるのか、国際社会がより平和になるのか、これこそが本来であれば議論すべきところであろうというふうに私は感じております。

 ところが、政府の説明、あるいはそれに反対する、批判する側の立場も、あるいは法律学者の方々も、余りにも技術的なところにこだわって、その全体像、この平和安全保障法制が一体どういう効果を持って、どういう意味があるのかということについての十分な検討がこれまでなされてこなかったような気がいたします。

 そういった点からしましても、私は、過去三百年間のヨーロッパの外交の歴史を学生の前でお話をして、そして、どのようなときに平和が崩れて、どのようなときに平和が維持されるのか、そのようなことから研究をしてきた立場から、今回の平和安保法制がなぜ必要なのかということについて、私の立場から申し上げたいと考えております。

 まず最初に、平和主義。日本が戦後、平和国家としての道のりを歩んできたということは、何人も否定できないことだろうと思います。今では、首相官邸の周りあるいは国会の周辺で多くの方々が、戦争を再びする国になるな、平和を守れというような運動をしていらっしゃいます。そして、日本が再び戦争に巻き込まれ、また戦争する国になるのではないかという懸念の声が聞こえてきます。

 私は、これらの声、主張にほぼ意見を一致しております。つまり、日本は平和国家としての立場を守るべきであって、また、戦争するような国になるべきではないというのが私の立場でございます。

 しかしながら、重要なのは、どうしたら平和を維持できるのか、そして、どうしたら戦争が起こらないのかということでございます。

 これだけ根深く平和主義というものが日本の国民に浸透している以上、私は、日本がみずから侵略をし、戦争をするような国になるとは全く思っていません。ほとんどの国民の方々も、日本が軍国主義になって、戦争をしたいような国になるとは思っていないと思います。そのような利益もなければ、理由もありません。したがって、多くの方々、国民の方々あるいは政治家の方々も、平和国家としての理念というのを堅持すべきだという方にお考えでいらっしゃると思います。

 だとすれば、戦争が起きるとすれば、日本から戦争をしかけるということは考えられないわけですね。つまり、相手が日本を侵略するか、相手が日本を攻撃するかどうかということが重要な要素になるわけです。

 したがって、今回の安保法制も、日本が戦争するかどうかではなくて、いかにして他国が日本に侵略をしないようにさせるか、あるいは国際社会で戦争が起きないようにするかということでございます。

 例えば、憲法九条があったとしても、イスラム国あるいはロシアからの武装勢力は、中東やあるいはウクライナで軍事攻撃をしているわけでございます。つまり、憲法九条というものが、日本が平和の理念を掲げたとしても、それ自体が中東やアフリカやヨーロッパにおける戦争というものを防ぐことには直接的にはつながらない。

 では、どうしたら戦争を防げるのか、どうしたら戦争が起こらない世界をつくることができるのか、これこそが我々が考えるべきことではないでしょうか。

 マックス・ウェーバーが「職業としての政治」という本を書いております。ここにも読まれた方もたくさんいらっしゃると思います。そのマックス・ウェーバーは、政治における倫理には二種類あるということを述べているわけですね。つまりは、心情倫理と責任倫理です。戦争を嫌って平和を愛するというのは、これは心情倫理です。もちろん、政治において心情倫理が価値がないわけでありません。とうとい価値を持っています。

 問題は、政治家の方々にとってより重要なのは、これはマックス・ウェーバーがこの「職業としての政治」で書いていることですが、責任倫理です。つまり、ただ単に戦争が起きないことを願い、叫ぶだけではなくて、本当に戦争が起きない、あるいは侵略をさせないような十分な安全保障政策を展開し、また安保法制をつくっていく、これこそが政治家に課せられた義務ではないでしょうか。平和を願うだけで平和ができるのであれば、なぜ、これほどまで多くの戦争が世界にあるのでしょうか。それは、戦争を防ぐことができない、平和を維持することができなかったからでございます。

 マックス・ウェーバーはさらに、「職業としての政治」という本の中で次のように述べております。「この世のどんな倫理といえども次のような事実、すなわち、「善い」目的を達成するには、まずたいていは、道徳的にいかがわしい手段、少なくとも危険な手段を用いなければならず、悪い副作用の可能性や蓋然性まで覚悟してかからなければならないという事実、を回避するわけにいかない。」つまり、たとえ今回の安保法制がいかがわしい手段、あるいは危険な手段だったとしても、このような手段を用いて、よい目的、つまりは平和を維持し、日本の安全を維持するのであれば、そのこと自体が、政治家が本来考えるべき責任倫理であるということをマックス・ウェーバーは述べているわけです。

 さらに、マックス・ウェーバーは、続けて次のように書いております。「この世がデーモンに支配されていること。そして政治にタッチする人間、すなわち手段としての権力と暴力性とに関係をもった者は悪魔の力と契約を結ぶものであること。さらに善からは善のみが、悪からは悪のみが生まれるというのは、人間の行為にとって決して真実ではなく、しばしばその逆が真実であること。これらのことは古代のキリスト教徒でも非常によく知っていた。これが見抜けないような人間は、政治のイロハもわきまえない未熟児である。」ということですね。

 善から善が生まれるなどということは、ウェーバーによれば、それは政治のイロハも知らない未熟児である。つまり、善を生む、この場合は平和ですね、平和を生むためには、場合によっては軍事力が必要である、十分な軍事力で自分たちの国を守るという意思を持って初めて他国が侵略してこなくなるわけです。そのような軍事力が悪であったとしても、ウェーバーは、悪魔の力と契約を結んで善なる目的、つまりは平和を維持し、安全を維持するということをするべきだということを書いているわけでございます。

 さて、平和についてただいま申し上げさせていただきましたが、続いて、国際協調主義、つまり、今、議論されているのは専ら平和主義の理念ですが、日本が戦後、平和国家として道のりを歩む上で、平和憲法の中には国際協調主義、つまり、平和というものを、孤立主義、一国平和主義ではなくて、あるいは独善ではなくて、国際協調によって導くべきである、これが日本国憲法にある国際協調主義の精神であるわけでございます。

 これは、言うまでもなく、戦前の日本が国際社会、国際法を無視して侵略をし、そして、国際連盟から脱退して、国際社会で孤立する中から戦争の道を歩んだ、このことからの反省によって、日本は国際協調主義の精神を掲げたわけでございます。

 日本国憲法の中には、次のように前文で書いてあります。「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。」つまり、このような国際協調主義の精神は、実は、一九五〇年代、六〇年代までには日本の国民に深く浸透していました。

 したがって、砂川事件の判決の中で田中耕太郎最高裁長官は、補足意見として次のように述べています。「今日はもはや厳格な意味での自衛の観念は存在せず、自衛はすなわち「他衛」、他衛はすなわち自衛という関係があるのみである。従つて自国の防衛にしろ、他国の防衛への協力にしろ、各国はこれについて義務を負担しているものと認められるのである。」ここで田中耕太郎長官は「義務」という言葉を使って、このことを憲法前文の国際協調主義の精神と述べているわけですね。

 これがいつの間にか消えてしまったわけです。日本は日本のことだけを考えて、他国が侵略されようが、他国が攻撃されようが、他国が助けを求めようが、それを断固として無視しているわけです。助けに行かない、協力をしない、自国さえ平和であれば何でもいい、これが、ある意味では個別的自衛権であって、そして国際安全保障の無視ということになるわけですね。

 これは安全保障だけではありません。かつて世界最大のODA大国であった日本は、今や、GNI当たりのODA支出は、OECD加盟国の二十八カ国中の十八位です。また、国連ミッションへの派遣数も世界で五十五位です。とてもではないですが、これで、世界において、「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」などと言うことはできません。

 つまり、今、我々が考えるべきは、憲法の精神、本来あった憲法の平和主義の精神と国際協調主義の精神をいかにして融合するか、それを融合することによって、我々は、国際安全保障、つまり、自国のことのみを考え他国を無視するのではなくて、国際社会全体としていかにして戦争を起こさないか、平和を確保しなければいけないかということを論じるべきであると思います。つまり、軍事力は軍事力それ自体が悪なのではなくて、軍事力はよい目的のためにも使うことができる。つまり、軍事力は、人の命も奪うことができるし、人の命も救うことができる。

 したがって、自衛隊が人の命を守るために行動するのであれば、国際平和協力任務を今後より一層活発に活用していくということは、これはむしろ日本国憲法の精神に沿っているのではないかなというふうに思っております。

 例えば、二〇一一年三月の東日本大震災でも自衛隊が多くの方々の命を救済しました。また、日本だけではありません、二〇〇八年五月、四川の大地震の後には多くの中国人の人命を救済しました。また、二〇一〇年、民主党政権ではハイチに自衛隊を派遣し、これはPKO五原則からすれば本来行ける任務ではなかったかもしれない、しかしながら、人道性を優先して、民主党はこのハイチの大地震において自衛隊を派遣して、多くの人たちの人命を救済したわけです。

 たとえ自衛隊が海外に派遣しようとも、それが人命を救済するためであれば、私はとうとい任務であると考えています。そのことがむしろ、七十年前に戦争をし、国際社会で批判をされた日本が信頼を取り戻す大きなきっかけになったと考えております。

 ところが、かつては、例えば一九九一年、海上自衛隊がペルシャ湾に派遣するときにも、九二年にカンボジアにPKO任務に行くときにも、あるいはその後、先ほど申し上げたようなハイチのPKOもそうですが、自衛隊が二〇〇四年からイラクに派遣されるときにも、多くの方々は、これによって日本国憲法の平和主義の精神が崩れると言ったわけですね。もしもそれによって崩れているのであれば、もう平和主義はないはずです。守るべき平和主義はないはずですが、そのとき多くの方々が反対したこのカンボジアやあるいはペルシャ湾での任務が、必ずしも日本国憲法の平和主義の精神を壊さなかったわけですね。むしろ、国際社会の信頼を回復したわけです。

 もしもそのときに反対している方々がここにいらっしゃったら、なぜそれらの法案を廃案にすることを優先しないのか。つまり、多くの方々にとってこれらの法案に反対したということが間違いであって、むしろ、それらが多くの人命を救済し、そして、国際社会における日本の信頼を回復したということを無意識のうちに理解しているからではないでしょうか。

 そのように考えたときには、軍事力を平和のために使う、よい目的のために使って、そして、それによって人命を救済するということが重要になってくるわけでございます。

 このような国際安全保障、つまりはそれぞれの国が別々に自分の国を守るのではなくて、国際社会全体として最適の形で平和を守る、これが二十世紀の大きな潮流であり、そして、戦前の、戦争の反省の結果であったわけです。

 ところが、このような国際安全保障を無視して、国際安全保障というのは基本的に集団安全保障と集団的自衛権、集団防衛を指します、この二つを無視して、どこまでも個別的自衛権、つまり、自国の国民の生命を守る以外のことは何もするなということが、本来あるべき二十世紀の大きな歴史の教訓から考えれば、明らかにこれはおかしなことではないでしょうか。

 また、戦間期において、国際連盟では世論と経済制裁だけで平和を実現しようとしました。ところが、この世論と経済制裁だけによる平和を求める活動というものが、結局は、日本軍による満州事変、イタリア軍によるエチオピア侵略、そしてナチス・ドイツによるポーランド侵略をとめることができなかったわけです。

 それを見て、国際連盟創設の中心人物であったイギリスのセシル卿、政治家は次のように述べています。

 私は、非難や訴え、あるいは国際世論の力だけで平和を維持するという希望は全て捨てた。これらの力は、国際問題に関して大きな影響力を持ってはいるが、かつて強力な国家が決意した戦争を阻止することに成功したためしはなかった。

 この反省から、国際連合憲章では、五十一条で集団的自衛権、そして国連憲章第七章で軍事的制裁措置を加えています。つまりは、平和を守るためには集団防衛、集団安全保障が重要であるということでございます。

 ベルギーは、かつて中立を掲げ、そしてドイツの、周辺国の善意のみを信じ、軍事力に頼らず外交だけに頼ってみずからの平和を維持しようとしました。ところが、二度の世界大戦で、どちらもベルギーは真っ先にドイツの侵略を受けたわけです。

 したがって、戦後に最初にできた集団防衛、集団的自衛権の組織であるブリュッセル条約をつくった中心的な国はベルギーです。この二度の反省から、中立や他国の善意だけでは自分の安全は守れない、したがって、ベルギーは、集団的自衛権を用いたブリュッセル条約の創設、さらにはNATOの創設で中心的な役割を果たしたわけでございます。

 最後に、それでは、なぜ今このような形で集団的自衛権の行使あるいは平和安保法制が必要なのか。その最大の理由は、先ほど私は国際安全保障ということを申し上げましたが、二十世紀になってから急速に変化する安全保障環境の中で、従来の陸海空だけを考えていた安全保障が、さらにはサイバー空間や宇宙空間が入ってきたわけですね。そうすると、もはや地理的な概念というのも意味を持たない。サイバー空間によって、どこが周辺なのかということを述べることは極めて困難なわけでございます。

 さらには、かつての冷戦時代とは異なって、大規模な侵略ではなくて、むしろ、戦時と平時の区別がつかないような曖昧な状況が起きている。そのような曖昧な状況に対処するためには、従来の安全保障法制では十分ではないわけでございます。

 そして、さらに言えば、RMA、軍事における革命によって、各国の防衛がネットワークでつながれてきています。つまり、従来とは異なり、一国で完結していたような軍事技術ではなくて、多国間協力の中でネットワークでつながれるような安全保障、国際安全保障が成立しているわけです。

 果たして、日本はそれに背中を向けて、そこから孤立して、一国だけで自分の安全を守るという道を進むべきなのでしょうか。あるいは、今回の平和安保法制が語るように、一国平和主義ではなくて、国際社会の中で協調して、より緊密な協調をして安全保障を担っていくべきか。

 その国際社会における緊密な協調を実現する上では、従来の安全保障法制では十分ではないということが大きな課題であって、したがって、私は、そのような二十世紀の歴史の教訓から、日本一国ではなくて、国際社会の中で協調行動をとって日本が安全保障を考えていく上では、今回の平和安保法制というものが非常に重要な意味を持つというふうに考えております。

 以上でございます。(拍手)

江渡座長 ありがとうございました。

 以上で参考人からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

江渡座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩屋毅君。

岩屋委員 自民党の岩屋毅です。よろしくお願いいたします。

 まずは、五人の参考人の皆様方、貴重な御意見を賜りましたこと、厚く御礼を申し上げたいと思います。

 特に、政府・与党には謙虚かつ丁寧な説明を求めたい、このお話はしかと受けとめさせていただきたいというふうに思います。

 さて、御案内のとおり、我が国憲法には明示的な自衛に関する規定がないわけでございます。そこで、私どもの先達は、苦心惨たんをしながら、時の安全保障環境にいかにアジャストして平和を保つかという努力をしてきたんだと思います。

 先ほど細谷先生から砂川判決にも触れていただきましたが、この判決では、国の存立を全うする自衛の措置がとれることは当然のことと言わなければいけないと。しかし、この先は、いわゆる統治行為論ですね、その具体的な方策というのは、内閣、国会、そして最終的には国民に委ねられているのだという趣旨のことが述べられております。

 自衛隊をつくったときも、二度の安保改定を行ったときも、PKOのときも、テロ特措法のときも、イラク特措法のときも、ある意味、憲法の解釈というものを再整理し補強しながら、我々は今日まで平和を保ってきたというふうに考えております。

 今回の憲法解釈の一部変更が、これまでの政府見解との論理的整合性、法的安定性が保たれていなければいけないということは当然のことと思っておりますし、それはとれておるというふうに私どもは考えているわけですが、それプラス、やはりこの問題は国際政治の大きな文脈の中で考える必要があるというふうに思います。

 そこで、国際政治、外交史の専門家でいらっしゃる細谷先生を中心にお伺いをさせていただきたいと思います。

 私どもは、今や一国では自国の平和を守れないという認識に立って、今回の法案を政府とともに提案させていただいているわけでありますが、とりわけアジアにおいては、残念ながら安全保障環境は以前に比べて悪化しつつあるというふうに認識をしております。

 したがって、当面、日米同盟を充実させ、友好国との安全保障協力を強化することによって紛争を抑止しなければいかぬと思っておりますが、その先には、さらにこの安全保障のネットワークを縦横斜めに広げていって、網の目のような安全保障のネットワークをやはり構築していくべきだ、そっちの方向にこれから歩を進めていくべきだというふうに思っておりますが、細谷先生のお考えを聞かせていただきたいと思います。

細谷参考人 ありがとうございます。

 私は、今、岩屋先生がおっしゃられたとおり、アジアにおける安全保障環境というものが非常に流動的かつ不透明になっている、これが非常に重要なポイントだと思います。

 つまり、冷戦時代のアジア太平洋というのは、十年後や二十年後、つまりは米ソの対立という構図が非常に明確でしたから、しかも、その米ソの力の均衡というものが、かなりの程度、静態的、スタティックであったために、将来の安全保障戦略というのが非常に見通しがしやすかったわけですね。

 安全保障環境が厳しかっただろうというのは、恐らく、先ほどの御意見もありましたが、そのとおりだと思いますが、今のアジアにおける大きな問題は不透明性ということで、十年後、二十年後にどのような状況になっているかということがわかりにくいわけですね。例えば、アメリカがアジアから撤退しているかもしれない、そして、中国の軍事力がアメリカを超えているかもしれない。いろいろな形で将来の見通しがつかないわけでございます。

 そのような中で、日本が果たしてどのような安全保障政策、あるいは安全保障法制をとるべきか。

 その一つの例えを私は申し上げたいんですが、これはウクライナです。ポーランドは、一九九九年にNATOに加盟しています。そして、NATOに加盟したことによって、ポーランドはアメリカの軍事力、同盟国の軍事力に守られて、過去十年間で経済力が四倍に伸展しております。ところが、ウクライナはNATOに加盟しておりません。つまり、集団防衛の体制に入っていないということです。

 ロシアの武装勢力が今回ウクライナに攻撃をしていますが、なぜロシアの武装勢力はポーランドに攻撃ができないのか。当然ながら、もしもポーランドに攻撃すれば、巨大なアメリカの軍事力が、むしろ集団防衛の論理によって、それに対して対抗することになるわけです。したがって、とてもじゃないけれども、怖くて、集団防衛体制に入っているポーランドに対する攻撃というものを、当然ながら武装勢力は控えるわけでございます。

 もしも、軍事力がない方が平和を維持して、そして軍事力がある方が危険であるとしたら、ロシアの武装勢力はウクライナではなくてむしろポーランドに対して侵略をする、あるいは攻撃をするはずですが、集団防衛の論理に基づいてポーランドはNATOの中で守られて、そしてウクライナは守られることはなかった。したがって、ウクライナがNATOの加盟を求めるということは当然なことであるわけです。

 同じ論理でアジアを考えたときに、日米同盟をなくした方がいいのか、自衛隊がない方がいいのか、そのようなことは、過去二、三百年の外交史を学んでいれば、軍事力がない方が平和になる、まあ、先ほどベルギーの例も例えましたが、軍事力がない方が他国の侵略を招きにくいというのは、残念ながら、過去の歴史の中から考えれば、真実ではありません。

 したがって、岩屋先生がおっしゃられたように、やはりアジアにおいて、不透明な状況の中でさまざまな国との安全保障協力を進めることによって日本の安全を守る。これは、逆に言うと、日本一国で過剰な防衛力を持たなくても済む、安全保障協力によって守られるのであれば、日本が軍事大国化しなくて済むわけですね。軍事大国化しないという観点からも、やはり安全保障協力というものを日本は重視していくべきだろうというふうに考えております。

岩屋委員 ありがとうございました。

 細谷先生は安保法制懇のメンバーでもいらっしゃったわけでございます。恐らく、安保法制懇の議論というのは、最初は、これまでの憲法上の制約だとか法律上の制約だとかという枠を一回外して、闊達な議論をしていただいた上で報告書をつくっていただいたと承知しておりますが、それを安倍総理が受け取って、記者会見を行われ、その後、与党で二十五回の協議を行って、今日の法案をつくっているわけでございます。

 したがって、安保法制懇の報告書の内容がこの法案に全部盛られているわけではないんですね。私どもは、相当抑制的なものに仕上がっているというふうに考えております。当然、これまでの政府の憲法解釈の基本的論理の枠内で行い得ることのみを法律に盛らせていただいたというふうに思っております。

 この法制懇の報告書からこの法案という形に変わったことに対する先生の御評価、それから、先ほどから御議論があった合憲性ということについても含めて、御所見を賜りたいと存じます。

細谷参考人 私は、安保法制懇のメンバーとして昨年五月十五日の報告書作成にも多少関係しましたが、安保法制懇は多くの方々が安全保障の専門家でございました。したがって、安全保障研究の観点から、どのようにすれば、最も日本にとって好ましい、日本が平和を維持し安全を守るために最も好ましい形で安全保障の法的基盤をつくれるかという観点から報告書を提出させていただいたわけでございます。

 ところが、その後、岩屋先生がおっしゃられたとおり、与党協議の中で、徹底して、今までの内閣法制局の見解あるいは憲法の枠組みの中から可能なところのみを抽出して、大幅に我々の提言を削って残った、つまりは従来の憲法解釈の枠内での法的安定性を守れる枠内で、昨年の七月一日の閣議決定になったわけでございます。したがって、安保法制懇報告書と七月一日の閣議決定では、内容が大きく異なるということでございます。

 さらに、その後、半年以上のさまざまな検討作業を経まして、今回、このような法案が提出されたわけですが、昨年の閣議決定から見てもさらに、私からしますと慎重な、つまり、徹底して内閣法制局の従来の見解の枠を出ないような慎重な結論であったと思います。それは、多くの安全保障研究者にとっては非常に不満が残るものであると同時に、従来の内閣法制局の憲法解釈の枠を大きく壊さないということが非常に重視された結果として、極めてわかりにくい内容になったと思います。

 したがって、昨年の我々が提案した安保法制懇の報告書に従ってもしも今回のような法案を提出すれば、よりすっきりした、わかりやすい、単純なものになったかもしれませんが、平和主義、従来の日本の平和主義の精神、あるいは内閣法制局の見解と、同時に、今、必要な安全保障上の要請というものを苦心の結果として整合させた、この苦心の跡というものが非常に色濃く見られ、その結果としてわかりにくくなったと思います。

 したがって、たとえ今回の法案が非常に分厚くわかりにくいものであったとしても、その理由が、あくまでも、従来の憲法解釈あるいは内閣法制局の見解の枠組みを可能な限り変えないようにしようとした苦心の結果わかりにくくなったということだと私は理解していますので、その点ではやむを得なかったのだろうというふうに、あるいは、場合によっては、法的安定性というものを最大限重視したということを考えれば、好ましい結果ではなかったかなと思っております。

岩屋委員 先生おっしゃっていただいたように、もとより我が国の安全保障法制というのは非常に複雑な体系になっておりましたが、さらに、法的安定性を保った上で新たな時代に対応するための法制をつくるに当たって、そういう意味ではより複雑なものになってしまったことは否めないと思いますが、だからこそ丁寧な説明をこれからも心がけていきたいと思っております。

 私どもは、この法制は危機管理法案であって、そして目的としては紛争を抑止する、戦争を防止する法案であるというふうに考えております。しかしながら、この法案に反対する方々の中からは、これは戦争法であって最終的には徴兵制が採用されるんだなどという、私どもからすればかなり的外れな御批判も聞こえてくるわけであります。

 先生にお尋ねしたいのは、この法案が成立することによって、我が国並びに地域全体への紛争抑止にどのような効果をもたらすとお考えか。一部には、安全保障のジレンマなどというようなマイナス効果もあるのではないかという御指摘もあるんですけれども、トータルで先生はどのように見ておられるか、お教えいただきたいと思います。

細谷参考人 紛争抑止法案ということは、私はごもっともだと思います。安全保障研究の常識として、軍事力というのは、使った時点で本来持っている軍事力の役割は失われて失敗したというふうに言われています。つまりは、本来、軍事力というのは、抑止、戦争させないためにあるのであって、軍事力を行使するということは、その最大の目的である抑止が失敗したということでございます。

 したがって、私は政府の説明を聞いていてやや違和感を覚えるのが、いかにして使うかということが説明されているわけですね。この場合にこういうふうに使う、この場合にああいうふうに使う。そうではなくて、シナリオ、さまざまなケースを挙げているわけですが、いかにしてそういう事態を起こさないかということがこの法案の目的であって、使うことを目的とするのではなくて、使わないことを目的とする、つまりは、そのような事態を起こさないためにそのような法案が必要である。

 これは、アメリカで非常に有名な、著名な戦略研究家であるエドワード・ルトワックという人が「戦略論」という本の中で、戦略というのはほとんどの場合が逆説である、つまりは、戦争をしたくなかったら戦争の準備をしなければいけない、逆に、平和を求めることによってその平和は崩れてしまう。つまり、今回の安保法制も同じようにそのような逆説を秘めていて、この安保法制の最大の目的は、この安保法制がケースとして示すような事態が起こらないということを求めるべきである。

 したがって、説明するとき、丁寧な説明も必要ですが、あたかもそのような事態が今すぐ起こりそうな説明がたくさんされているわけですが、そうではなくて、このような安保法制があるからこそそれが想定するような事態が起きないということにむしろ説明の力点を置く。

 集団的自衛権も全く同じであって、過去七十年間で十四回、集団的自衛権が行使された例が国連に報告されています。しかしながら、今回の新三要件ということを考えたときには、この十四のケース、一つも当てはまりません。つまりは、今後七十年間、私は、日本が新三要件に基づいて集団的自衛権が行使されるような事態は起きないと思います。また、先ほど例に挙げたベルギーも、一度もアメリカの戦争に協力して軍隊を送ったことはありません。集団的自衛権が行使できるベルギーであっても、実際にはアメリカの戦争には協力していないわけです。

 このようにして、必ずしも、日本がこれによってより自衛隊の海外派兵がふえる、あるいはそれによってリスクが高まるということではなくて、むしろ、この法案によってそのような事態を防ぐということを、ぜひ与党の方々、政府の方々には、国民の方々に理解していただけるような、丁寧な説明をしていただきたいと思っております。

岩屋委員 ありがとうございます。

 もう一点だけ細谷先生にお伺いしたいんですが、今般、国際平和に対する貢献に関しては、国際平和支援法という恒久法を設けて、より迅速かつ効果的に支援ができるようにしようとしております。この点をどのように評価されるか。それから、将来において、いわゆる集団安全保障の領域において、我が国はどこまでの活動を行ってしかるべきと考えておられるか、お聞かせください。

細谷参考人 まず最初に、恒久法の件でございますけれども、私はやはり恒久法というのはあった方がいいだろうというふうに思っております。

 というのは、今、さまざまな形で政権交代が行われ、また首相が誕生する中で、安全保障上の緊急事態が出たときに、かつてのテロ特措法、イラク特措法のような、短期間で法律をつくったときに、その中に大きな欠点が生まれるかもしれません。したがって、拙速に、その危機が生じてから短時間でまとめて法案をつくるのではなくて、常に、平時のときからそのような事態が起きることを想定して恒久法をつくり、その恒久法にもしも欠陥があればそれを改正してよりよいものにしていくという形で、十全な準備をしてそのような行動をとる必要があるんだろうと思います。

 また、集団安全保障に関しては、昨年の安保法制懇の報告書提出後に、安倍総理が、集団安全保障は基本的には行わない、一部の例外を除いて行わないということをおっしゃっておられました。

 集団安全保障に関しては、今回、集団的自衛権とは異なり、基本的にはかなりの部分において行使しないということが法案では書かれておりますけれども、先ほど私が申し上げたような、国際協調や国際安全保障というのが二十世紀半ば以降の大きな潮流である以上は、日本はそれに対して一定程度の関与をする必要があるだろう。

 そこで重要なのが、黒と白で考えないということなんです。つまり、集団的自衛権にしても集団安全保障にしても、この自衛権の行使の様態にはさまざまな形があるわけです。例えば、情報提供というものも、場合によっては自衛権の行使ということになります。警戒監視活動も、自衛権の行使になります。

 つまりは、集団安全保障や集団的自衛権が全て軍隊を送り、戦争をして多くの人が死ぬということではなくて、後方支援ももちろんそうですが、ある国が侵略されて、そして集団的自衛権を行使する、あるいは集団安全保障が発動されたときに、日本ができることは何なのか。つまりは、日本の平和国家としての精神、平和主義の精神に照らして、自衛隊がリスクを負って戦闘に参加するようなことがなくても、何らかの形で日本が集団安全保障の中で貢献ができることは何なのか。そのように、集団安全保障や集団的自衛権というものをより広く多様なものとして見て、日本独自の、日本の平和主義の精神にかなった形での関与の形というものを考えていくということもこれから必要になると思っております。

岩屋委員 ありがとうございました。

 最後に、佐伯会長に一点だけ端的にお伺いしたいと思いますが、防衛協会長さんとして、これまで海外で活動をしてきた自衛隊の皆さんのお世話をたくさん行っていただいたと思います。心から感謝を申し上げたいと思います。

 そういう自衛隊の皆さんの国際平和に対する海外での活動について、県民の皆さんは相当に理解が深まってきているんじゃないかなと思いますが、現状をお教えいただければと思います。

佐伯参考人 私は、商工会議所という立場から、経済関係が重要だと思うんですが、海外に自衛隊を派遣するということは、経済も含めて重要なことだと思いますので、特に今度の法案は重要な法案だ、こういうふうに思います。簡単ですけれども。

岩屋委員 ありがとうございました。

 終わります。

江渡座長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 本日、この埼玉におきまして参考人質疑が行われますことを、きょうお集まりいただきました参考人の皆様方に改めて御礼を申し上げたいと思います。

 今回、議論されておりますことの本質というのは国家の防衛でありまして、我々も、今回の法案に臨むに際しての基本的な考え方として、近くは現実的に、遠くは抑制的に、そして人道支援というものについては積極的に、そういう基本的な考え方を持って今回の議論に臨ませていただいております。

 そういった中で、今回の法案と我々の考え方を照らしたときに、非常に気になることというのがございます。余り技術論に入り過ぎることなく質問をさせていただければと思います。

 まず最初に、倉持先生と細谷先生にお伺いをいたしたいと思います。

 今回の国会審議におきまして、議論の中で、メリットについては多く語られることがございますが、その一方で、どんな法案でも、メリットがあればデメリットがあるということが普通でありまして、それを比較した上で考えてみたときに、この法律は必要だから、だからということの説明がなされるべきだと私は思います。

 そういった中で、なかなかデメリットについて語られないわけでありますが、この法案が成立することのメリットについては政権が多く語っております。デメリットについて、いかがお考えでしょうか。倉持先生と細谷先生にお話しいただければと思います。

倉持参考人 デメリットですけれども、先ほど私の意見陳述でも多少述べたんですが、基本的に、日本には交戦権がない、武力行使はしないという前提でこの法案もつくっておりますので、自衛隊が、捕虜の問題が特に顕著かとは思いますが、今回の手元資料の六番に挙げたんですけれども、例えば、以前の六月の参考人のお話でも、自衛隊は海外に出ていったら日の丸つけた山賊だというふうにおっしゃった参考人の先生がいらっしゃいましたが、そういう状況が起きかねない。この資料六でも、七月一日の岸田国務大臣の答弁で、ジュネーブ条約上の捕虜となることはありませんというふうに答弁されているわけですね。

 こういうふうに、既存の枠組みの中で無理やりこの法案を、まあ改正しようというふうにしているところで、エアポケットみたいなところがたくさん出ていて、自衛隊は国際法上どうやって扱われるのかとか、現場の人たちはこういうときにどうやって判断するのかということが全然わからないというふうに、具体的に条文を挙げてというのは避けますけれども、現場の判断にかなり任せられているところがあって、そのときに、しかも主語が自衛官になっておりますから、個々の自衛官は一体どうやって判断するんだということに関しては、この法律を見てもわからないわけです。まずそこはデメリットの一つだとは思います。

細谷参考人 私は、今回の平和安全保障法制に関してデメリットというものを考えるときに、やはり幾つかの点をきちんと留意しないといけないと思うんです。

 まず第一に、やはり政治における判断というものが従来よりも圧倒的に重くなってくる。つまりは、これは例えて言うならば、子供が外に行ったら車にひかれる可能性があるわけですね、外にはさまざまな危険がある、だから家から一歩も出さないということ、これはやはり親として望ましいことだと私は思いません。ある一定の年齢になれば、中学生、高校生になって自由に外に出るのは当然です。

 自衛隊が外に出るということによって、当然ながらさまざまなリスクを背負うことになります。ですから、この審議をする上で、自衛隊、自衛官の方がリスクがふえる可能性がある、国民の生命もそうですし、自衛官の生命もかかわっている極めて重要な問題ですから、やはり通常の法案とは違った緊張感を持ってこの法案というのは議論しなければならないと思います。

 また、これが通過した際には、首相、あるいは首相官邸もそうですし、さらには国会承認という観点では国会議員の先生方もそうだと思いますが、一人一人の方々がきちんと安全保障に精通して、どのような場合に自衛隊に協力ができて、どのような場合には協力ができないのかということを適切に判断する。

 このような緊張感と、また安全保障に対する理解を深めるということが今回の法案とセットでなければならないと思います。

 ところが、場合によっては、そのような緊張感が欠けているようなこともあれば、あるいは、そのような人の命を預かるという切実さが十分に伝わってこないときもあります。その観点からも、デメリットということからは少し外れてしまうかもしれませんが、あくまでも、この安全保障法案というものがより真剣な責任感を伴うものでなければならないという自覚、これはぜひとも持っていただきたいという気がします。

 もう一つは、今、世界の国際安全保障の大きな潮流として、軍事力による問題の解決というものが極めて難しくなっています。軍事力の意義というものを私は先ほど申し上げましたが、同時に、これはイラクやアフガニスタンを見てもおわかりのとおり、軍事力を用いて介入することによって、必ずしも平和が定着するとは限りません。

 したがって、軍事力以外の方法を使って平和を定着させるための努力というものをこれまで以上にやはり真剣に考える必要があるんだろうと思います。もしも、そのような軍事力以外の手段というものにより大きな重きを置くということなくして、安易な形で、国連の要請によって自衛隊が危険なところへとPKOに行くということがあるとすれば、これはさまざまな点で好ましくない結果を生むことになるかもしれません。

 その点で、これから、今、世界の大きな潮流が、軍事力によって問題を解決するのは難しいというような潮流が出て、また、多くの国々が財政難から軍事介入というものを控える中で、日本だけが突出して前に出るということは当然ながら望ましくないわけでございますから、世界の潮流を考えたときに、やはり軍事力以外の方法での紛争解決というものに従来以上に大きなエネルギーを割くということも同時に考えなければ、この法案のデメリットというものが出てきてしまうというふうに考えております。

緒方委員 リスクがある中、非常に重い決断が政治の場に求められるというコメントについては、我々も肝に銘じたいと思います。

 それでは、石河先生にお伺いをいたしたいと思います。

 今もお話がございました、リスク論というのが今回の国会での審議で多く語られております。政府の答弁というのは、新しいリスクはある、ただし、それに対してそれを極小化していく努力をしていく、こういった御答弁がなされているわけでありますが、どんな法案をつくるときでも、リスクをきちっと正確に、客観的に判断した上で、それに応じてやはりいろいろな方策を講じていく、そのリスク判断というのがとても重要になってくると思います。

 先生の目から見ておられて、この法案を通すことによって、リスクは今後ふえていくというふうにお考えになられますでしょうか。

石河参考人 それは、当然、リスクはかなりふえるだろう、このように考えております。

 それはなぜかといえば、今アメリカが行っている世界における軍事戦略、これが決して抑止力になっていない、むしろ、戦闘行為を起こす原因になっている場合が多い。そこに日本が、いかに後方支援とかそのほか、さまざまな制限のもとに支援活動をしようとしても、そこが戦闘行為ではないということの判断はかなり難しいだろう。例えば、戦闘行為になる危険性がある場合には直ちにやめるとか、このような法案の規制がありますけれども、誰が、どこで、どういうふうに判断するのかが不明確です。

 武器の使用に関しても、合理的でやむを得ない場合には自衛隊員が武器を使用できるということになっていますけれども、これが、誰が、どこで、どういうふうに判断するのか明確じゃないし、また、それが実施された後にそれをどう評価するかということに関しても何らの保障がない。

 さらに言えば、原則の、国会に事前承認をするとかそういうような制約を設けているから大丈夫なんだというような説明もありますけれども、これも、自衛隊員が海外で後方支援をしている最中に戦闘に巻き込まれた場合、国会の事前の承認とかそういったものが有効に歯どめになるとは思えません。

 日本の自衛隊が海外で戦闘行為に巻き込まれれば、当然、それは殺し殺されるということになる。元自衛隊員の方々も、この法案で自衛隊員のリスクがふえるということは間違いのない事実である、このように明確に証言しております。また、一方の報道では、戦闘行為をしないで帰ってこられたこれまでの海外に派遣された自衛隊員の方々も、帰国後かなりの自殺者を出しているというような数字もあります。やはり、このリスクはかなり大きなものがあるというふうに考えております。

緒方委員 やはり、そういったリスクを正確に把握した上で、それに対する対応というのが必要であります。

 それを踏まえてですが、落合先生にお伺いをさせていただきたいと思います。

 今回の法制度の中で、やはり一番注目が当たるのが集団的自衛権、そして、その行使の要件となる、認定の、存立危機事態というものが重要になってくると思います。

 先ほどの陳述でもございましたが、我が国と密接な関係にある他国が武力攻撃を受け、それにより我が国の存立が脅かされ、我が国国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される事態ということで、普通に考えれば、こういった自分が襲われているわけではなくて、他国が襲われているけれども自国の存立が脅かされる事態というのは非常に想定しがたいし、仮にあるとしても、もう本当に、ほとんど存在しないか薄皮のように存在している状態ではないかと思うわけですが、その事態を、どういうものが含まれますかということになりますと、いきなり、ペルシャ湾での、交戦中のホルムズ海峡での機雷敷設というものが挙がってきたりしております。

 今回の存立危機事態の法制度のつくり方と、それの具体的な適用の事例において、先生はどのようにお考えでございますでしょうか。

落合参考人 私が感じているのは、そもそも議論の出発点というものが、安全保障問題の専門家の方々が集まって、日本はもっと積極的に世界の平和のためにどんどん働くべきなんだ、そこの議論というのがスタートになっているんじゃないかなというふうに思っているんですね。そこにおいて、では、日本国憲法はどうだとか、日本国民はどういうふうに考えているかという議論というのは、言葉は悪いですけれども、おざなりになっているんじゃないか。

 ペルシャ湾に出ていって、ホルムズ海峡に機雷が敷設されたら機雷を除去するとか、確かにそれは、世界的な安全保障の上では役に立つのかもしれない。

 ただ、日本というのは、日本国というのは、日本国民が主権者として存在して、日本国のあり方というのは、安全保障問題の専門家が決めるのではなくて、日本国民、主権者が決めなくちゃいけない国だと思うんですよね。その主権がどういう形であらわれているかというと、やはり憲法である。つまり、日本国憲法として主権者の意思があらわれている。だから、その意味では、日本国憲法に従って安全保障ということについても考えていく、これは当然のことなんですよね。

 ですから、憲法よりも安全保障の必要性というのが優先するという考え方自体が、これはやはり本末転倒も甚だしい。だから、憲法が問題があるんだったら憲法を変える、それが全く筋であるという点をまず私は言いたいのと、ちょっと話を戻しますけれども、そういう意味では、日本がどういうふうに動けばいいのかという、何かそんな話自体が非常に先行してしまっている。

 集団的自衛権というもの、これはもともと、いわゆる存立危機事態というふうに今言われているものよりもはるかに広い概念なんですよね。それが非常に、言葉は悪いですけれども、矮小化されて、今、存立危機事態という話になっている。

 ただ、議論している人に聞いていくと、衣の陰からよろいがのぞくみたいに、いや、日本というのは集団的自衛権の行使ができないんだという議論が必ず出てくるんですよね。ですから、やはり、そこらあたりが話の議論として本末転倒の議論というものになっちゃっているんじゃないか。

 やはり、日本国民が日本国憲法のもとにおいて、日本が安全保障の上でどういうふうな取り組みをすべきなのか、そこから出発していって、もともと個別的自衛権、日本も持っている、では、それが足りないのであれば、どういう場面が想定されて、その場面をクリアするためにはどういうふうに改善しなくちゃいけないのか、やはりそういう下から積み上げていくというふうな議論がなされていないと思うんですよ。

 だから、そこらあたりが非常にねじれていて、それが、集団的自衛権の非常に大上段に振りかぶった議論と、今現在の存立危機事態という非常に矮小化されたものがかみ合わない状態で両方働いちゃっている。

 その存立危機事態というものを突き詰めていくと、今委員がおっしゃったように、では、どういう場合が当てはまるのか、あったとしても極めてまれだろう、こういうものが現実的にあり得るのか、いや、それはどうですかねという議論になってしまっていく。そこらあたりが非常に、ボタンのかけ違いといいますか、ねじれた議論がされているというのが大きな問題だろうというふうに私は思っています。

緒方委員 最後に、倉持先生にもう一度、一問だけお願いいたします。

 今回、国会審議をずっと続けてきまして、ここまで多くの時間を費やしてまいりましたが、やはり、世論調査をすればするほど、理解が深まっているかというと、引き続き八割近い方がよくわからないという結果が出てまいります。

 先生は、弁護士としても、そして、さまざまな社会活動の中で多くの方に出会っておられると思いますが、この理解が高まらない原因ということについていかがお考えでしょうか。

倉持参考人 先ほども細谷先生のお話でありましたが、この法制自体が無理くりつくっているのでわかりにくいというところ、まず、そもそも法制自体のわかりにくさが一点ですよね。見ただけでは一般の人ではわからない、特に主婦の方なんかはわからないですよね。

 それを説明する責任があるのは、もちろん政府ないしはそれを追及していく野党も含めての国家権力だとは思うんですが、そこの議論がやはり足りていないし、先ほども意見陳述で述べさせていただきましたが、政府の答弁がちょっとクレーマー対処的な形式答弁を続けていますので、一体本当の中身はどうなんだろうというところが、やはり、問題意識が多いんですね、国民の方は。政府が答えていることが本当のことではないんじゃないかとは思っているんですが、その中身が一体何なのかはわからないという。それはやはり、政府の説明の不足等の不合理性というのが一番大きな原因かと思っております。

緒方委員 貴重な陳述をありがとうございました。

 今回の法制度、私は、まだまだ理解が深まっていないし、こういった状態で採決をすることについても非常に慎重な姿勢で臨みたいと思っております。

 本日、質疑にお答えいただきました参考人の皆様方に御礼を申し上げまして、私の質問を終えさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

江渡座長 次に、太田和美君。

太田(和)委員 維新の党の太田和美でございます。

 本日は、参考人の皆様におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、大変貴重な御意見を頂戴し、まことにありがとうございます。

 では、質問をさせていただきます。

 まず最初、全員にお伺いしたいと思いますが、御存じのとおり、去る六月四日の衆議院憲法審査会で、憲法を専門とする三名の憲法学者が安全保障関連法案に対し違憲を唱え、その後も政府から納得できる回答がないということで、国民の安保関連法案に対する不安は増大していると思います。

 私たちは独自案を現在提出準備中でございますが、この独自案は、もちろん、日本が守ってきた専守防衛を厳守し、憲法の枠内に入ったものとなっております。六月四日の憲法審査会で政府案に対して違憲との見解を示された憲法学者の一人の方に伺ったところ、伝統的に許されてきた個別的自衛権の範囲内におさまっているとの回答も得ております。

 私たちの案につきましてわかりやすく説明した資料をお配りさせていただいておりますので、そちらをごらんいただければと思います。

 一ページ目は、私たちの案の基本的な考えについて説明したものでございます。

 では、二ページ目の表になっている方を見ていただきたいんですが、この表は、政府が言うところの存立危機事態について、私たちの案と政府案を比べたものです。

 まず、第二要件のところを見ていただきたいのですが、政府の存立危機事態では、「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」こととしています。こうした事態は武力攻撃によってのみ起こり得ると考えますが、政府の説明では、それにとどまるものではなく、極めて曖昧であります。その意味で、この政府の第二要件は違憲の疑いが高いと考えています。

 私たちの案では、この存立危機事態を武力攻撃危機事態とし、「我が国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険があると認められるに至った事態」、つまり、確実に日本への攻撃につながるような場合のみとし、自国防衛の目的を明確化しております。

 そこで、お伺いをしたいのですが、政府案と私たちの案につきまして、その第二要件の部分についての御意見を参考人の皆様からそれぞれお伺いできればというふうに思います。よろしくお願いいたします。

石河参考人 維新さんの改正案、まだ細かい明文化はされていないんですよね、たしか。

 私は、今説明をされました第二要件に関しましては、明白な危険というものが評価にわたるものでありますので、やはりこの問題としては明確になったとは言えないんじゃないか、このように考えております。

落合参考人 結論から言いますと、もともとの存立危機事態として定義されているものよりも、よりよくなってはいるだろうと。

 なぜなら、もともとの存立危機事態の要件というものが曖昧といいますか、我が国の存立が脅かされとか、国民の生命、自由及び、根底から覆されるといった、明白な危険とは言っていますけれども、何を指しているのか非常に曖昧である。その点、維新の党の対案での武力攻撃危機事態というものは、武力攻撃が発生する明白な危険というところで限定をし、かつ、より明白になっているわけですから、そういう意味では、よりよくなっていることは間違いないだろうとは思っています。

 以上です。

倉持参考人 存立危機事態の第一要件と呼ばれていたもの、恐らくこれを細分化して分析したものであろうというふうに理解を今しているんですが、そのうちの後段ですね、「これにより」以下の部分の明確化を図ったというふうに私は理解をしているんです。

 基本的には、新三要件の第一要件の肝は、我が国か、我が国でない他国への武力攻撃かというところでのまず論理的なすみ分けだと理解しておりますので、もちろん、この第二要件だけを見れば、石河先生がおっしゃったように、これは比較の問題であってあれなんですが、評価が入る概念なので、これによりどうなったかというところが、確かに明確化されたといえばされたと評価し得るかもしれませんが、第一要件、第二要件と表で分けてある第一要件の方がみそだろうなと考えておりますので、そこはちょっと一概には、どちらが明確になったというのは、判断がなかなかつきづらいというふうに私は考えます。

佐伯参考人 私は、この安全法制については、憲法学者の中には違憲であるとの認識を有する方がいらっしゃることも十分承知しています。しかし、かつて違憲とされていた自衛隊も、今では合憲の存在として、その役割は国内的にも国際的にも評価されています。

 先ほども申し上げましたが、現在の日本は世界とのつながりを持つことによって自国の存立と繁栄を享受していることを冷静になって考えれば、おのずと自衛隊の役割も変わらざるを得ないのではないかというふうに率直に思います。

 今回の法制については、国会の場できちんと議論されることと認識していますし、法律が制定されれば、時の内閣と国会の責任において適切な判断がされ、日本の平和と安全が守られていくと思います。それが日本の民主主義であると認識しております。

細谷参考人 集団的自衛権に関しては、一九八一年の内閣法制局の見解を、どの程度、憲法解釈、それに固執するのか、あるいは、それを、安全保障環境の変化に基づいて、つまりは、憲法解釈を変更するに足る十分に合理的な理由があるかどうかという判断とも関連してくるんだろうと思います。

 その幅が大きいか小さいかということで、維新の提案は、可能な限り抑制的にするということだろうと思います。その部分がどの程度抑制的であるか、あるいは、どの程度、まあ、限定性というものを小さくとるか大きくとるかということだと思うんですけれども、私は、政府案が、この文言だけを見ると、明らかに、我が国に対する外部からの攻撃でない場合であっても、集団的自衛権の、いわゆる、一般的な説明にあるように、自衛権を発動するということになるわけですから、政府案の方がそこにおける限定性というものが維新よりも小さくはないわけです。しかしながら、私は、一定程度の柔軟性、つまりは、法律によって非常に細かく限定するよりも、その状況に応じて一定程度柔軟性を持って政府が判断する。

 そのとき重要なのが、政府が平和主義の理念に基づいて行動するかどうかということになってくると思うんですが、私は、冒頭で申し上げたとおり、戦後七十年間、日本の国民の間に平和主義の精神というのは非常に根強く既に浸透していると思いますので、そのような形で、一定程度の柔軟性がありながらも、政治的な判断として引き続き抑制的な安全保障政策をとっていくという点で、維新の抑制的な案というものも一定程度の合理性があると思いますが、まず、政府案であることに大きな問題があるというふうには考えておりません。

太田(和)委員 ありがとうございました。

 第一要件についてなんですけれども、今触れていただいた先生方もおられるかと思いますが、改めて、この表にあります第一要件についてお伺いさせていただきたいと思います。

 政府案は、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」ということになっておりますが、これでは他国防衛の懸念があることから、私たちの案では、「条約に基づき我が国周辺の地域において我が国の防衛のために活動している外国の軍隊に対する武力攻撃」とし、日本にかわって日本を防衛してくれている他国軍に限定をさせていただいております。あくまでも自国防衛の枠内で武力攻撃への対処を考えております。したがって、第二要件とあわせれば、しっかりと個別的自衛権として解釈できる、憲法の枠内に入るものというふうに考えております。

 そこで、政府案と私たちの案につきまして、この第一要件の部分についての御意見を改めて参考人の皆様からお伺いできればというふうに思います。よろしくお願いいたします。

石河参考人 確かに、太田先生が御説明されているように、政府案に比べれば大幅に制約されているだろうと思いますけれども、それであれば、現在の個別的自衛権の範囲内で対処できるのではないか。したがって、今回の二法案に対する対案として出すのではなくて、二法案を反対される方がよろしいのではないか、わかりやすいのではないか、このように理解します。

落合参考人 先ほどからお話ししているように、私自身は、存立危機事態というものが想定されるような現実的なものが発生するのかどうかという点は相当疑問だというふうに思っているんですが、やはり危ないと思っているのは、結局、存立危機事態なんだよというふうに決めつけられて、どんどん日本が世界じゅうに出ていくというんですかね、積極的平和主義とかなんとかいいながら、気がついたらホルムズ海峡にいたりとか、いろいろなところに出ていっちゃっているという、それが一つの、まあ、使われてしまうといいますか、そこは相当危惧されるというふうに思っているんですね。

 集団的自衛権を日本が行使することによって世界は平和になるんだ、もともとの出発点がそういう議論から出発しちゃっている面があると私は思っているので、存立危機事態という形で矮小化されているように見えても、結局、一つの突破口といいますか、出ていくための口実に使われかねないというふうに思っていまして、そういう意味では、武力攻撃危機事態という形で限定を加えていくということは、そういう日本が危険な方向に踏み出していくことを防止するためにはなるだろうという意味で、こういう限定をするのは好ましいだろうというふうには考えています。

 以上です。

倉持参考人 第一要件で「条約に基づき」云々というのが入ったことによって、どこの軍隊に対する武力攻撃かという点では明確になったとは思うんですが、基本的には他国軍隊に対する攻撃が自衛権行使の根拠になり得るということですので、そういう点では、我が国か他国かというところでは、やはり従前の見解からすると問題なのかなと思います。

 これは、第一要件、第二要件、分けちゃまずいんじゃないかなというのが一番の感想で、「これにより」というところがやはり重要なんですね、法律の要件として。これはやはり、四十七年見解との決定的な違いは、外国に武力攻撃がありました、その後に、我が国に対する明白な危険という、これを評価しなきゃいけないんですけれども、そこに時差があるわけですよね。この判断というのが、非常に、例えば本当に我が国にミサイルが飛んできていますということとは全然違う状況なわけです。それを判断しなきゃいけない要件になっているわけですね。

 そういう観点から見ると、まだまだこの要件でも、一体どういうときにこの要件に当てはまるんだということが明確ではないだろうなと考えております。要件が明確ではないということは、もうそれは要件じゃないので、もっと明確にしていただく必要があるだろうなとは思います。

 以上です。

佐伯参考人 私は、今、倉持参考人の意見にもありましたが、やはり日本は日米安保の原点をまずもとにして考えるべきだというふうに思いますし、やはり日本だけというわけにいかないので、これは、第一と第二があるんですけれども、自国だけというわけにはいきませんので、やはりある程度の協力はやむを得ないんじゃないか、こういうふうに思います。

細谷参考人 既にいろいろな御意見が出ておりますが、私が考えるのは、一つは、「条約に基づき」、これは当然ながら日米安保条約ということが想定されると思うんですが、やはり過去十年間で安全保障環境が大きく変わったというふうに私は先ほど申し上げたんです。

 一つは、安全保障協力が非常に緊密になってきたということでございます。例えばアメリカとオーストラリアの協力ということもそうですし、これは震災の後の復興支援の際も同様ですが、かなりの程度複数の軍隊がまざり合って協力をする、つまり、それぞれの強みを持ち寄って協力するというような安全保障活動が行われていて、NATOはそもそも統合した軍隊となっているわけですから、このような形で、アメリカがさまざまな財政的な困難から他国との安全保障協力を強化している中で、日本が一定程度それらの国と協力するときに、アメリカだけを選んでほかの国を外すように要請するということはやはり難しいんだろうと思います。

 そのように考えると、「条約に基づき」という形で、日本と条約を持たない国、アメリカ以外の国ということですが、との協力ができないということは余り好ましくないだろうと思いますので、やはりその点においても、第一要件のところで「条約に基づき」という文言を入れることによって限定性、制限性をつけるメリットというのがあって、また、恐らくは政府案以上に平和主義ということにこだわっておられるのだろうと思いますが、この平和主義にこだわるということと、実際の運用上どの程度支障があるかということとの総合的な判断で最終的には決めるのが恐らく望ましいと思います。

 しかしながら、あと一点だけ申し上げますと、維新がこのような形で提案をするということは、私は、やはり建設的な議論をする上では非常に望ましいことだと思います。

 つまりは、法案の中でどの部分が必要な部分であって、どの部分が必要ではない部分なのかということを十分に議論することによって、恐らくは、場合によっては、かつてもそうでございましたけれども、修正案が出てきて、よりよい法案になるということもあるわけでございますから、維新の党のような、このような形で独自の提案をして、今の法案が持っている懸念について建設的な提案をされるということは、私は大変望ましいことであろうというふうに感じております。

太田(和)委員 ありがとうございました。

 それでは、最後、落合先生にお伺いをさせていただきたいと思います。

 政府案についてなんですけれども、合憲と思われるか、違憲と思われるか、その理由についてお答えしていただきたいなと思います。

 そして、私たちの案についても、合憲と思われるか、違憲と思われるかと、その理由について、御意見を頂戴できればというふうに思います。よろしくお願いいたします。

落合参考人 質問の第一点の現在の政府案についてということですが、結論から言うと、やはり違憲と言わざるを得ないだろうというふうに思っておりまして、その理由については、先ほどからお話ししているような、やはり集団的自衛権というところに踏み出していること、もともとの持っている日本国憲法のぎりぎりの解釈すら逸脱をしているというところで、そこがもう違憲と言わざるを得ないというふうに考えております。

 それから、二点目として、維新の党の対案として出ているもの、これについては、ちょっと出ている資料だけでストレートになかなか判断しにくいんですが、やはり存立危機事態というものについて相当限定を加えている、個別的自衛権というもので想定されている範囲に限定していこう、そういうところは読み取れますので、そういうところで限定が加えられているということであれば、何とかぎりぎり合憲の範囲でおさまる、そういう可能性を持っている案であろうというふうには考えております。

 以上です。

太田(和)委員 ありがとうございました。

 これで終わります。参考人の皆様、本日は、まことにありがとうございました。

江渡座長 次に、浜地雅一君。

浜地委員 公明党の浜地雅一でございます。

 まずは、五名の参考人の皆様方、大変御多忙の中、貴重な御意見をいただきましたことに感謝を申し上げます。

 佐伯参考人にお聞きをしたいと思うんですが、特に佐伯参考人は、弁護士の先生が周り三人で、国際政治学者の方が一人という中、本当に、きょうは地方に来て、いわゆる一般の生活といいますか、そういったことをされている方の御意見を中心に聞きたいと思いましたので、佐伯参考人の意見を中心に聞きたいと思っています。

 佐伯参考人は、商工会の会長もされておりますが、自衛隊関係の防衛協会の会長もされているというふうに先ほど御紹介がございました。

 ですので、自衛隊のリスク、自衛隊員の皆様方が危険にさらされるとか、さまざまな意見があるんですが、やはり今欠けているのは、我々政治家がリスクがあるとか、または一般の方々がリスクがあるとかというよりも、やはり実際自衛隊の方々がどう考えていらっしゃるかということが一番大事だろうと思っています。

 その点、佐伯参考人の場合は、防衛協会の会長として、実際に海外に行かれた自衛隊員の方々とも日々接していらっしゃるというふうに推測をいたしますけれども、これまでの自衛隊の皆様方のこの法案に対するお考えだったり、また、実際に海外に行かれた経験のある自衛隊員の方々が今この法案に対してどう思われているか、率直な御意見をもしお聞きでしたら、我々に御教示いただければと思っております。

    〔座長退席、岩屋座長代理着席〕

佐伯参考人 自衛隊員は、より専門的な見地から冷静に情勢を見ているというふうに思いますが、先ほど意見陳述でも申し上げましたが、私は、北朝鮮のミサイルあるいは核開発や、世界じゅうで起こるテロ事案などを含め、今の安全保障環境のもとでは安心して暮らせる状況ではないというふうなことを申し上げました。自衛隊員は、それと同等に、それ以上に危機感を持っているのではないかというふうに思います。

 今回の法制について自衛隊員は多くを語りません。彼らの多くは、与えられた任務に専心して、政治的な話をいたしません。意見はあるが我慢しているのだという方も、中にはいるかもしれません。しかし、多くの方は、与えられた任務を黙々と果たす姿勢に誇りを持っているんだろうというふうに思います。

 したがって、今回の法制が国家として決定されれば、それを受けとめて自分の役割を果たすと考えておられる方が大部分ではないかというふうに思います。私の率直な受けとめですけれども。

 その観点からは、国会で議論される先生方におかれましては、リスクを強調して自衛隊員やその家族に無用な不安を抱かせるのではなく、リスクを背負って職務に当たる自衛隊員のためを思えば、リスクを最小限化する措置をどうするかといった点や、名誉や処遇を含めてどのように支援いただけるのかといった点について、建設的に議論していただければ、隊員も大変ありがたいことではないかなというふうに思います。

浜地委員 ありがとうございます。

 今、実際に自衛官の方々と接する中で、危機感という言葉が出てきました。危機感は、多分、リスクのための危機感ではなくて、今会長がおっしゃったのは、恐らく、安心して自分たちが働くための、それがないという危機感だろうというふうに私は理解をいたしましたが、まずそれでよろしいですよね、そこの点。(佐伯参考人「はい」と呼ぶ)

 それで、実際、二十年間、これまでPKOの実績が日本はございます。延べ三万人の自衛官の方々が、これまでPKOやまたは海外派遣、そして災害復興等で海外で活動されていました。御存じのとおり、延べ三万人の自衛官の中で、これまで二十年間一人も犠牲者を現場で出さなかったという日本の実績がございます。

 ですので、やはりこれは、偶然と言う方もいらっしゃるんですが、私は、偶然ではなく、よりこれは、日本がこれまで、民主党政権時代も含めて、抑制的に、またしっかり現場での情報を集めながら自衛官の活動を行ってきたたまものであろうと思っております。

 先ほど、少し自衛官の方の自殺のお話も出ましたので、我々与党側としても、実際に自衛官の方々の自殺が一般の方々に比べて高いのかというデータもとりましたが、そうではないという結果が出ております。

 ですので、我々与党側としても、また政府に対しても、安全配慮義務というものをしっかりとこれから講じていかなきゃいけないというふうに我々自身も思っております。

 次に、抑止力への認識についてお聞かせいただきたいと思います。

 今、ちまたにあるのは、平和外交をやるのか、それとも武力による平和をつくるのかという、何か二つに大別をされてしまって、大事な抑止力というものが、どうしても一般の方々の中には議論されにくいし、また理解されにくいんじゃないかと思っています。きょう細谷参考人が言われたとおり、あれぐらいの説得力があってお話をされると、抑止力というものは本当に必要なんだなというふうに感じられるわけでございます。

 平和外交については、当然、昨年の閣議決定の第一文に、平和国家の道をこれからも歩んでいくんだ、また、平和的外交が第一なんだ、その上で抑止力を高めていくんだということは書いてあるんですが、なかなかそれが国民の皆様に伝わらない現状がございます。

 この抑止力への認識という点について、率直に、一般の方として佐伯参考人に、どのような認識が、周りの方も含めて、広がっているのか広がっていないのか、広がっていなければどういったところに原因があるのか、お聞かせいただければと思います。

佐伯参考人 私は専門的ではありませんので、私の見解ということになりますが、報道によれば、中国の近海、南シナ海において大規模な埋め立てが急速に強行されたり、また、滑走路や関連施設の建設等もあわせて進められていると聞いています。尖閣諸島付近における活動を急速に拡大、また活発化させていることもあわせれば、国民として不安を感じざるを得ないというふうに思います。

 自衛隊は、専守防衛原則のもと、効率的、規律的な組織として、近隣諸国や世界から精鋭部隊として認められていると考えますし、PKOを初めとするこれまでの自衛隊の活動は、国際的にも高い評価を得ているというふうに思います。

 こうした要素の一つ一つは、日本に脅威を与えようとする勢力にとって、手ごわいなと思うだろうし、友好国であれば、信頼と尊敬を集める組織と映るだろうと思います。これはまさに抑止力とも言えるだろうと思います。

 繰り返しになりますが、国際的な平和と安全への貢献を含む自衛隊の一つ一つの取り組みが、我々の日々の暮らしの平和と安全を保つ見えない抑止力となっているというふうに私は理解をしています。

 以上で、ちょっと答えになっているかどうかわかりませんが。

    〔岩屋座長代理退席、座長着席〕

浜地委員 大丈夫です。ありがとうございます。

 では、同じ質問を細谷参考人にしてよろしいでしょうか。

 今、佐伯参考人の方からるる抑止力についてのキーワードが出てまいったんですが、一つは、限定的な集団的自衛権でいうと、具体的には政府はこのように説明をしております。安全保障環境は変わったんだ、冷戦時から変わったんだ、その脅威が増して、ある国はたくさんのミサイルを持ち、それが瞬時に飛んでくるような状態にもあるという説明をしたりするんです。

 実際に、具体的には、政府は四十七年見解を、安全保障環境の変化ということを捉えて変更の一つのきっかけにしましたが、我が国の周辺を取り巻く、この安全という意味における危険性、または、今回、限定的な集団的自衛権が、もしこれが成立するとすると、どのような抑止がきいてくるのかをもう少し具体的にお話をしていただければ、大変参考になります。

細谷参考人 まず、抑止と、あと外交の関係なんですが、これは日本ではよく二者択一で考えることが多いと思うんですね。つまり、外交は正しい、あるいは、抑止は間違っている、軍事力は間違っている。ところが、国連事務総長のコフィ・アナン氏は、九〇年代にこういうことを言っていました。外交によってできることは多くある、しかしながら、十分な軍事力に支えられた外交であればより多くのことができる。

 このことは、私は実は十年前に「外交による平和」という本を書きまして、イギリス外交史の本の中で、外交と抑止力をいかにしてうまく組み合わせるかということが重要である、これが、十分な外交交渉がない中で軍事力だけを強化すれば、これは相手の不信感を呼んで、軍拡競争になるわけですね。ところが、十分な外交交渉あるいは外交による平和の努力をした上で、背後に十分な力があれば、それは日本の影響力が高まるということにもなるかもしれないわけですね。

 言いかえれば、先ほどポーランドとウクライナの違いをお話ししましたけれども、戦後の歴史を見ても、アメリカの強固な同盟国が周辺国から侵略されるということはほとんどないわけですね、全くないわけではありませんが。それは、ほかの国がアメリカの軍事力を非常に恐れているからということが大きいんだろうと思います。

 ところが、今の東アジアで何がやれるか。それは、従来のようなアメリカの圧倒的な力、従来は、アメリカと同盟さえ組んでいれば誰も怖くて手を出さなかった、そういった時代があったわけですね。つまり、抑止というものが専らアメリカの圧倒的な軍事力によって支えられていた時代であった。ところが、フィリピンのスービック基地から米軍が撤退して力の真空ができたことによって、従来は安定的だった南シナ海において、この力の真空を埋めようとする勢力が活発な海洋行動をとっている。東シナ海でも同じように、アメリカの影響力が低下すれば、当然ながら、中国を初めとする国々がより影響力を膨張させるということは不思議ではございません。

 したがって、東アジアにおいて一つ大きな変化があるとすれば、従来のような、アメリカと同盟さえ組めば日本が何もしなくても平和でいられた、ところが、一定程度の、日本がアメリカと安全保障協力をし、また、日本はオーストラリアなどの諸国とも安全保障協力をすることによって、つまり一国単位の抑止ということではなくて、この安全保障協力をすること自体が、この地域での紛争が起こる可能性というのを恐らく低減していくんだろうと思います。

 一国単位で抑止力を持とうとすれば、先ほど申し上げたとおり、膨大な国防費が必要になりますから、そう考えると、専ら重要なのは、いかにして日本が強大な軍事力を持つかということではなくて、軍事費をふやさずとも、安全保障協力を深めることで戦争の可能性を防ぐ。その安全保障協力をするためには、一定程度の、従来とは違った憲法解釈というものが必要なんだろうというふうに考えております。

浜地委員 大変に参考になりました。ありがとうございます。

 細谷参考人、ちょっと論理的なことばかり聞いて申しわけないんですが、もう少し聞かせてください。

 先ほど、安保法制懇のメンバーとして細谷参考人は携わった上で、安全保障の観点からさまざまな提案をしたんだけれども、憲法上の要請からさまざま抑制を加えて、今回の法案ができ上がっているというお話をいただきました。

 我々公明党としては、どちらかというと、憲法上から入る、憲法の枠組みから見る考えをいたしました。私自身も法曹資格もございますので、国際法上どれだけ必要でも憲法の枠を超えてはいけないという考えから、三要件というものに対して種々意見を述べさせていただきましたが、もう一度改めまして、これまでの政府の憲法解釈との論理的整合性、法的安定性が新三要件はとれている、特に昭和四十七年見解からして、新三要件の特に第一要件、これは論理的整合性がとれているということを、きょうはせっかくの公聴会の場でございますので、詳しく御意見をいただければと思っております。

細谷参考人 今回の法案が、果たして従来の内閣法制局の見解あるいは従来の憲法解釈とどの程度整合性がとれているのか。あるいは、先ほど申し上げたとおり、安全保障環境が変化したことによって、どの程度従来の憲法解釈とは異なるのか。

 この点で申し上げますと、今おっしゃられたとおり、公明党は、やはり党是として平和というのを長く掲げていらっしゃった、また、恐らくは、いろいろな形で支持者の方々から、従来の平和主義が変わるかもしれないという懸念に対して、不安の声というものも聞いていらっしゃったんだろうと思います。

 その点から、去年の五月十五日の安保法制懇の報告書よりも、実際の与党協議の中で、閣議決定、そして今回の平和安全保障法制が、相当程度抑制的なものになった。つまりは、より一層、従来の憲法解釈の枠の中でということに、恐らくこだわられた結果なんだろうと思います。

 それで、私の観点からすれば、私は法律家ではないので、あくまでも政治学者という立場で申し上げますと、今回の安保法制がなぜ違憲ではないのかということでございますけれども、これはやはり、そもそも憲法九条が、明示的な形で、どのような自衛権が可能で、どのような自衛権が不可能かということを規定している条文ではないということですね。

 ですから、例えば、集団的自衛権を行使することが明らかに望ましくないということであれば、これは憲法を改正して、つまり第三項を入れればいいわけですね、集団的自衛権を禁ずると。そういうふうにすれば、これはもう誰が見ても一目瞭然、集団的自衛権というものは憲法では行使できない。

 先ほど、私は五九年の田中耕太郎長官の発言を参照しましたが、これは実は、五九年、六〇年の林修三当時の法制局長官も同様に、集団的自衛権の中には使えるものと使えないものがある。例えば、基地を提供するとか経済的な支援をするとか、こういったことは、集団的自衛権として言えるのであれば、これは行使可能である。ところが、外国にまで出ていって外国を守るために戦争をするということは、集団的自衛権として行使不可能である。

 つまり、戦後の内閣法制局あるいは政府の解釈というのは、外国まで出ていって外国を守るために戦争をするということは、憲法の理念から不可能である。これが集団的自衛権と全くイコールかどうかということですね。それ以外の自衛権の行使の方法があれば、それは場合によっては、憲法解釈上可能かもしれません。しかしながら、集団的自衛権が外国まで行って外国を守るために戦争をすることだけであるとすれば、それは憲法解釈上できないということになるんだろうと思います。

 したがって、今回の平和安全保障法制においても、七二年見解あるいは八一年見解で出されたような、外国まで出ていって、まあ海外派兵ですね、そして外国で戦争をする、そのようなことは、場合によっては、つまり日本の国の安全に関係がなければそのような海外派兵はできない。ですから、例えばイラク戦争のような形で戦争をするということは、安倍総理も、できないということを述べているわけですね。

 集団安全保障と集団防衛というものが、これは二つあるわけですが、それぞれ違う概念なわけですが、今回の集団的自衛権に関して申し上げると、やはりかなりの程度限定的。

 つまりは、七二年、八一年の内閣法制局の見解で述べたような形での集団的自衛権を行使するとすれば、それは憲法解釈上禁ずるかもしれない。しかしながら、一方で、そうではないような形で、直接日本が戦闘に加わって、日本の安全にかかわらないものであれば、それは憲法解釈上できないということですから、そこの線引きを理解するのであれば、やはり七二年及び八一年の憲法解釈の根本的な転換ではない、大枠は残している、日本の安全にかかわる問題に関しての自衛権の行使であるということだろうというふうに考えております。

浜地委員 大変参考になりました。ありがとうございます。

 終わります。

江渡座長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也でございます。

 参考人の皆様には、貴重な御意見をいただき、本当にありがとうございます。

 私の方は、最初に、石河参考人と落合参考人にお尋ねをいたします。

 その他の参考人の方からも既にお話もございましたけれども、最高裁の砂川判決に関連してお尋ねをいたします。

 政府は、集団的自衛権行使の根拠として最高裁の砂川判決を持ち出しましたけれども、この判決というのは、集団的自衛権について触れていないとともに、当時のアメリカ政府の圧力のもと、統治行為論をとり、憲法判断を避けたものであります。国会審議の中でも、横畠内閣法制局長官は、引用箇所は傍論部分だということは認めながらも、それなりに重みがあるということも述べておられますが、この集団的自衛権の行使の根拠としての砂川判決についてどのようにお考えか、お聞かせいただけないでしょうか。

石河参考人 この判決に関しましては、埼玉弁護士会におきましても、その問題性について、市民集会等を行いまして内容を明らかにしております。

 この判決は、司法の独立を侵す大変重要な問題を含んだ判決である。弁護士会の一部では、この判決が無効であるというようなことで、法的手続で争おうというくらいの考えを持っていらっしゃる方が多いです。

 集団的自衛権に関しましても、当然、どの学者の方からお伺いしても、砂川事件から、集団的自衛権が否定されているわけではないというような解釈はとられていないと思っております。私もそのように考えております。

 したがいまして、これを根拠に集団的自衛権の行使容認を合憲であると主張することは無理があります。

落合参考人 今の石河先生の話とほぼ同じことになるんですけれども、砂川事件から集団的自衛権というものを導くのは、もともとやはり無理があるであろう。

 なぜならば、それは砂川事件でそこが争点になっているわけでもありませんし、集団的自衛権というものを意識してその判断が示されているわけでもない。その上に、その後の政府見解においても、砂川事件を根拠にして集団的自衛権というものが肯定されているんだというふうなことは、全然その議論もされていないわけですから、今になってそれを持ち出した上で、あれは集団的自衛権というものを肯定する根拠になるんだということは、そもそも無理がありますし、そこに固執するのは非常におかしいというふうに考えております。

 以上です。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、細谷参考人にお尋ねいたします。

 この安保法制に先立って、日米両国の間でガイドラインの改定が行われました。その中身について一点お尋ねしたいんですが、同盟調整メカニズムのところであります。

 平時から利用可能な、政府全体にわたる同盟調整メカニズムを設置し、運用面の調整を強化し、共同計画の策定を図るということが述べられているわけですけれども、従来、調整メカニズムはあったわけですけれども、平時からということではありませんでした。具体的には動いていなかった。それを政府全体にわたって今後動かしていこうというところで、安保法制との整合性を確保するということも、共同発表の中でも述べられているところです。

 この平時から利用可能な、政府全体にわたる同盟調整メカニズムというのは、一体どういうものなのか、この点について教えていただけないでしょうか。

細谷参考人 冒頭の陳述で私が申し上げたこととも少し関係しますが、今の安全保障環境というのは、冷戦時代のような平時と戦時というものがきれいに分かれる状況ではなくて、先ほど申し上げたようなイスラム国の中東情勢やあるいはウクライナ情勢に見られるような、平時と戦時の中間のような状況になっているわけですね。

 さらに言うと、同盟、そもそもこれは、冷戦時代において日本を守るため、防衛するため、攻撃を受けて日本を守るための同盟であったものが、今では、国際政治学者の間で、日米同盟を公共財、国際公共財、つまりは、日米同盟自体がアジア太平洋におけるスタビライザー、安定化させるための要因になっているということで、平時における同盟の協力というのが、恐らく従来よりも大きな意味を持ってきたと思うんです。

 それは、警察的な機能とは違いますが、平時において警戒監視活動をすることによって、未然に、戦争が起きないような活動をする。

 そうすると、そもそも同盟というものは、武力攻撃を受けることを前提につくられたものですから、今おっしゃられたような同盟調整メカニズムというのは、むしろ冷戦後の、現代の安全保障環境にふさわしい形で、つまり、日本に対する大規模な、本格的な武力攻撃というのは起こりそうもない、しかしながら、日米同盟が、一定程度、日米が協力することで、平時においてアジア太平洋において、公共財として、安定をするための目的に使うことができる。

 そのような認識の変化というものが、さらには、先ほど申し上げたような平時でも戦時でもないような状況が生まれつつあるということが、恐らくは同盟調整メカニズムができた目的の、大きな理由であろうというふうに考えております。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、佐伯参考人と倉持参考人にお尋ねいたします。

 今お話を出しましたガイドラインの改定の中にも、他国軍隊の海外活動への民間協力の問題が挙げられております。

 こういう中では、例えば、国際平和支援法においては、国による、民間協力を依頼できる規定が盛り込まれているものです。周辺事態法の規定と同様ということだそうですけれども。

 私は、率直に言って、こういった海外での他国軍への後方支援活動、兵たん活動に民間の事業者がかかわるようなことになれば、今まで以上に危険性が増すことになるのではないのか、今回の法案で民間事業者のリスクが高まらないと言えるのか、この点についてお二方にお尋ねしたいと思います。

佐伯参考人 私は、この中身は詳しくはわかりませんが、確かに、民間が加わることはリスクがかなり高まる、こういうふうに思いますので、とりわけ、やはりこれは自衛隊を中心に当然考えるべきであるというふうに思います。

 各国が協力して世界平和と安全に貢献していくということについては、民間も変わりがないというふうに思いますけれども、やはり日本の平和と安全ということについては専門的に検討することが望ましい、こういうふうに思います。

倉持参考人 私も、結論から申し上げると、そのリスクは上がると考えられます。

 まず、そもそも後方支援も、今回の法改正だと兵たん活動を認めていることになっておりますので、その兵たん活動をたたけというのは軍事の常識ということは、もうさんざん言われていることであります。また、それ以外にも、現に戦闘が行われていない現場ですか、それがそういう危ない状態になったらやめますというふうに言っていますけれども、危ない状態になったからこそ、多分、反撃しなきゃいけない状態とかというのが生まれるような、まさにリスクが高まるんだと思うんですね。

 そこにもし民間が絡むようなことがあれば、もうリスクは飛躍的に上がるだろうというふうに考えております。

 以上です。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、石河参考人と倉持参考人にお尋ねをいたします。

 このガイドラインの改定におきましても、これは安保法制との整合性を確保すると言われているものであります。

 共同発表の中では、例えば、在日米軍の再編の問題が挙げられておりました。沖縄県民が強く反対をしております辺野古への米軍新基地建設を改めて日米両国が確認する。まさに沖縄県民の願いと逆行する方向での、こういった立場を確認するということも前提となっております。

 また、共同発表の中では、最も現代的かつ高度な米国の能力を日本に配備することの重要性を確認ということで、いわば最新鋭のさまざまな装備を日本に配備するということも盛り込まれる。その一環として、米軍横田基地へのCV22オスプレイの配備も発表されたところであります。

 私は、沖縄での基地被害の深刻さ、これは直ちに除去されなければならない、同時に、日本列島全体が米軍の訓練場となっている実態があるのではないのか。

 例えば、首都圏におきましても、厚木基地における空母艦載機の騒音被害あるいは部品の落下、墜落への心配、また、この空母艦載機などが群馬県の上空で、前橋や渋川や高崎といった人口密集地で宙返りをするような戦闘訓練を繰り返している、これが大きな被害をもたらしております。

 米軍横田基地におきましては、C130の戦術輸送機を中心にして、パラシュートの降下訓練というのが、この数年間、非常にふえております。

 ここ、横田基地に所属するC130戦術輸送機が、首都圏全域を編隊を組んで低空飛行訓練を行っている。こういったことについて、米軍横田基地の当局自身が日本の航空関係者に地図も渡して、このエリアで飛んでいますから注意してくださいねという呼びかけを行っています。ですから、各地でこういうC130の低空飛行の目撃事例もある、不安の声も上がっている。

 仮に、ここにCV22オスプレイが配備をされることになれば、こういうC130の訓練飛行が同様に行われることになりはしないのか。当然、埼玉の上空でもC130は飛んでおりますから、CV22オスプレイが飛ぶことになる。MV22に比べても三倍も事故率が高いと言われているこういった米軍機の飛行について多くの懸念の声が上がるということは、当然言えることだろうと思っています。

 こういった、日本全体が米軍の訓練場となっている、米軍基地の存在というのが日本国民の暮らしと安全と相入れない、そういう状況になっているのではないのか、私はこのことを思うんですが、このことについてお話をいただけないでしょうか。

石河参考人 沖縄の問題に関しましては、もちろん、とんでもないことでございます。辺野古に移設するということは、移設ではなくて新たな基地の建設でありまして、沖縄にまた新たな基地の負担をかける、私は暴挙と言ってもよろしいんじゃないかと思っております。

 そもそも日本の制空に関しましては、横田基地が首都圏を、特に東京の上空の制空を支配しているという、このような屈辱的な独立国家がどこにあるのかと私は常々考えております。

 アメリカの軍隊、基地が日本を守る、このように言われておりますけれども、実態は、アメリカの世界戦略の中に日本が組み込まれて軍隊が配備されている、そして、アメリカの軍隊、軍事施設、軍事予算の削減の補填として日本の自衛隊が使われている、このように認識しております。

 先ほどどなたかの質問で、抑止力とはどういうものかという話が出ましたけれども、軍事力による抑止力であれば、それは余り効果がないのではないか、このように考えております。

 なぜならば、世界最大の軍事力を持っているアメリカでさえ、国内外のアメリカ国民の安全保持ができていない状態。むしろ、軍事力を持っていない、まあ、自衛隊はありますけれども、海外に軍事力を出さない日本の方が平和である。

 この実態は、抑止力とは何かということを考えさせる一つの事例だと思います。抑止力は経済でもできますし、もちろん外交でもできる。日本の国内にあるアメリカの施設は、やはり日本に対して安全をもたらすよりも危険をもたらす可能性の高い施設である。

 私は、基本的には、安保条約はいずれ廃止すべきだろうというふうに考えておりますけれども、極力減縮していくべきだろうということは言えると思います。オスプレイやその他のさまざまな軍備についても、自衛のために本当に必要な軍備なのか、これをさらに国会できちんと審議して、チェックをしていただきたい。自衛に関しての必要最小限の軍備であるということの範囲内で、私たちは抑止力を考えるべきなんだろうというふうに考えます。

 ちょっとまとまりませんけれども、以上でございます。

倉持参考人 私も、基地問題というのはもはや主権の一部移譲みたいな話で、譲り渡しているという移譲状態だと思っておりまして、そこまでしているのに、これ以上アメリカにいろいろな政策上の問題でつき合う必要があるのかなというのが率直な意見で、集団的自衛権の行使に関しても、政策論的にもそのように考えております。

 今回の安保法制も、私がお示ししたように、まだ数十個の論点が残っているにもかかわらず、何か夏までに成立させなきゃいけないんじゃないかみたいなムードが漂っているのも、やはり背後にアメリカがあるからなのかなという理解もしております。

 今回は一応、法律家としての意見ですので、やはり、余りにこの議論がされていない状態でこれが強行採決されたり、それと、憲法の問題に関して何もクリアせずに解釈改憲してしまうという、政治が法を軽視している状態ということに関して、非常に危機感を持っております。それによって、恐らく日本は国際的な法交渉とかルールづくりというのも実は非常に弱いんだろうと私は理解しているんですね。それはやはり政治が法を軽視している帰結だろうというふうに非常に思っております。

 基地問題もそれの延長線上で捉えているというところであります。

 以上です。

塩川委員 ありがとうございます。

 最後に、改めてまた石河参考人と倉持参考人にお尋ねいたします。

 石河参考人は、埼玉弁護士会で、違憲のこの法案に対しての反対の運動に取り組んでおられる。また、倉持参考人は、明日の自由を守る若手弁護士の会の会員として、憲法カフェなど、憲法違反の問題についても多くの市民の方々と交流、対話されておられることと思います。

 この法案の審議が進む中でのこういった市民の皆さんの変化をどのように受けとめておられるのか、そういった世論の変化というのをどのように受けとめているのかということをお聞きしたいのと、そういう中で今一番訴えたいことは何か、このことについてお話しいただけないでしょうか。

石河参考人 最近の市民の反応は、先ほどどなたかがおっしゃいましたけれども、説明すればするほどわからなくなっているではなくて、説明を受ければ受けるほど問題の多い法案であるということがわかってきた、このように私は感じております。

 例えば、駅頭でチラシを配ったりティッシュを配って反対運動をしておりますけれども、最近の市民の反応は大変好意的でありまして、弁護士の方に頑張ってくださいという声がかかることが大変多くなっております。

 それから、集会も、これは全国全てに通じていることですけれども、全て過去最高の参加者を得る集会になっております。さらに、この法案の審議が進めば進むほど、私は、市民は、この法案の問題点がはっきりしてくるだろう、したがって、反対の意見が多くなるだろう。

 これを、審議を中断して、国民の反対の意見がふえる前に強行採決をするようなことがあれば、これは民主主義に対する挑戦だと私は思います。断固として、埼玉弁護士会を初め日本弁護士連合会も反対の運動をするだろう、現状ではそんな雰囲気でございます。

江渡座長 続きまして、倉持参考人。時間になっておりますので、端的におまとめください。

倉持参考人 いわゆる無関心層と呼ばれた方たちの危機感というのは先ほどお話ししましたので、逆に、私は、例えば立場が違うというか、集団的自衛権は容認してもいいんじゃないかとか、そういう市民の方々とも勉強会をやったりしているんですが、そういう方々でさえ、今回の法律というのは法的にこれだけ問題ですよと言うと、集団的自衛権を行使した方がいいと思っていた人も、このまま自衛隊をやるのはどうなんだとか、そういう問題意識が非常に広がっている。つまり、この法律自体の欠陥についても、説明をすれば、国民の方々は理解をしてきている。

 ただ、我々が、弁護士が市民の方と同じ目線で説明をしたからわかるのであって、本来は、先ほども繰り返し申し上げているとおり、国会の答弁でやはりもっと説明責任を果たしていただきたい。

 本当に政府の答弁は、もし裁判だったら裁判長に怒られるような答弁ですから、そこは本当に逃げずに答弁をしていただいて、これはまだ議論が尽くされていないというのであれば、ぜひ勇気を持って、これは本当に延期でも廃案でも、とにかくこの国会で強行採決をするようなことがないように、その勇気を持っていただきたいというのが、とにかく一番今訴えたいことであります。

 以上です。

塩川委員 ありがとうございました。

江渡座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 参考人の皆様方におかれましては、御多忙中のところ、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただきました御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼申し上げたいと思います。

 また、この会議開催のために格段の御協力を賜りました関係各位に対しまして、心から感謝を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。(拍手)

 これにて散会いたします。

    午後三時五十八分散会


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