衆議院

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第9号 平成28年4月22日(金曜日)

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平成二十八年四月二十二日(金曜日)

    午前九時十分開議

 出席委員

   委員長 西川 公也君

   理事 笹川 博義君 理事 菅原 一秀君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 福井  照君

   理事 吉川 貴盛君 理事 柿沢 未途君

   理事 近藤 洋介君 理事 上田  勇君

      井野 俊郎君    井上 貴博君

      小田原 潔君    勝沼 栄明君

      神田 憲次君    北村 誠吾君

      小島 敏文君    小林 史明君

      坂本 哲志君    関  芳弘君

      田中 良生君    田野瀬太道君

      武井 俊輔君    武部  新君

      中川 郁子君    中谷 真一君

      根本 幸典君    橋本  岳君

      原田 義昭君    福山  守君

      古川  康君    前川  恵君

      御法川信英君    宮川 典子君

      務台 俊介君    村井 英樹君

      渡辺 孝一君    緒方林太郎君

      岸本 周平君    黒岩 宇洋君

      篠原  孝君    玉木雄一郎君

      福島 伸享君    升田世喜男君

      村岡 敏英君    稲津  久君

      岡本 三成君    中川 康洋君

      笠井  亮君    斉藤 和子君

      畠山 和也君    河野 正美君

      丸山 穂高君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       森山  裕君

   国務大臣         河野 太郎君

   国務大臣         石原 伸晃君

   内閣府副大臣       松本 文明君

   外務副大臣        武藤 容治君

   農林水産副大臣      齋藤  健君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 大菅 岳史君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    金杉 憲治君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         勝田 智明君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長)           福田 祐典君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  唐澤  剛君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         佐藤 速水君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房危機管理・政策評価審議官)  塩川 白良君

   参考人

   (英国駐箚特命全権大使) 鶴岡 公二君

   衆議院調査局環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別調査室長      辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  井野 俊郎君     村井 英樹君

  小島 敏文君     田野瀬太道君

  寺田  稔君     小林 史明君

  橋本  岳君     中谷 真一君

  古川  康君     神田 憲次君

  笠井  亮君     斉藤 和子君

  丸山 穂高君     河野 正美君

同日

 辞任         補欠選任

  神田 憲次君     古川  康君

  小林 史明君     寺田  稔君

  田野瀬太道君     根本 幸典君

  中谷 真一君     橋本  岳君

  村井 英樹君     井野 俊郎君

  斉藤 和子君     笠井  亮君

  河野 正美君     丸山 穂高君

同日

 辞任         補欠選任

  根本 幸典君     小島 敏文君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出第四七号)


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     ――――◇―――――

西川委員長 これより会議を開きます。

 環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件及び内閣提出、環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案件審査のため、本日、参考人として英国駐箚特命全権大使鶴岡公二君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官澁谷和久君、外務省大臣官房審議官大菅岳史君、外務省経済局長金杉憲治君、厚生労働省大臣官房総括審議官勝田智明君、厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長福田祐典君、厚生労働省保険局長唐澤剛君、農林水産省大臣官房総括審議官佐藤速水君、農林水産省大臣官房危機管理・政策評価審議官塩川白良君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。黒岩宇洋君。

黒岩委員 おはようございます。民進党の黒岩宇洋でございます。

 引き続き、熊本を中心とする九州地方の地震、まだこの被害の状況が拡大し、亡くなられる方も不幸なことにふえているということで、改めて、犠牲になられた方にお悔やみの思いと、また、今被災されている多くの方たちにお見舞いの思いを申し上げさせていただきます。

 当委員会は、やはりこの大きな災害についてもしかと対応していこう、こういうことを申し上げてまいりました委員会でございます。また、担当の松本内閣府副大臣が現地の報告をするために東京に戻られたということもありますので、その報告もお聞きしたい。そして、きのうの総務委員会などでも、松本副大臣がテレビ会議で差し入れを要請した、このことについて、これは大変被災地でも、また、まさに国民的にも大きな批判が渦巻いているということで、この点について何点か確認もさせていただきたいと思っております。

 それでは、松本副大臣にお聞きしますけれども、きのうの総務委員会で、副大臣は、現地での被害の規模について、これはきのうの総務委員会の議事録、私もけさ取り寄せたんですけれども、今回の震災規模は、阪神・淡路大地震、中越地震、そして東日本大震災、これにまさるとも劣らない被害が発生している、こういう認識をお示しになられましたね。

 ということは、本当に現地では、我々がまた想像している以上に、被災者の方たちは物すごくつらい困難な状況に直面していることは、これは現地に行かれて実感されているわけですよね。もちろん、孤立した避難所であるとか、益城町とか被害が県内でも本当に甚大な地域の方たちは、それこそ、とても食事ができるような状況ではない、水が飲めるか飲めないか、こういう状況の中で、十六日のテレビ会議で河野防災担当大臣に、バナナの一本でもいい、おにぎりでもよこしてくれ、こういったことを、副大臣、要請すること自体、これはいかがなものかと多くの方が思っていますよ。

 副大臣、この行為が適切であったとお考えかどうか、御答弁いただけますでしょうか。

松本副大臣 本震が発生をいたしまして、たしか午前二時前には、全スタッフが深夜三十分以内に対策本部に集合をいたしました。それから、水、ガス、電気、これが全部ストップをしておりました。そういう環境の中で、気がついたときには全員が朝から食事もとっていないという状況でありました。エレベーターがとまっておりますから、私たちの本部は二階、県の対策本部は十階にございました、二階から十階まで何回も何回も、食事もしないで、固形物も全く入らないで一日を過ごしました。

 そして、テレビ会議は私たちの要求をお願いするために開いたわけではございません。現地の状況を詳しく説明し、県の要望をしっかりと大臣に伝える、そのことを全てやった上で、会議の一番終わりに、ほかに何かあるかい、こう聞かれました。働いている人たちが、もう顔色も変わり、目は充血をしという状況の中で、もしこのままあすも食事が全くできないということではとても体力的に難しい、そういう思いがあったものですから、支援を大臣にお願いしたということでございます。間違った指示だとは思っておりません。

黒岩委員 副大臣、少なくともテレビ会議という、これは災害用の回線を使って公式な現地と政府とのやりとりの中で要請したということは事実だと今おっしゃいました。そして、少なくとも、御自身を含めてですよ、御自身を含めて差し入れを下さいと言ったということも認めたわけじゃありませんか。そして、きのうの総務委員会でもやはり謝罪しているわけですよね。そういう意味では、とても適切であったと胸を張って言えるような状況ではなかった、今鑑みてそう思われているんじゃありませんか。

 そこで、河野大臣にお聞きしたいんですけれども、河野大臣は、この要請を受けて、今副大臣がおっしゃったように、現地対策本部長の差し入れの要請に対してお応えになって、そして対応されたということでよろしいですね。

河野国務大臣 私の仕事は物流の回復でございますので、しっかりとコンビニ、スーパーにまず物が入る、避難所に物がしっかり入れられるというのが仕事でございます。

 熊本の状況を知り合いに聞く中で、政府から行った副本部長を初め、物も食えない中で頑張っている、そういうことは申し上げました。それを聞いた善意の方が差し入れをしてくださった、そういうことはあったかと思います。

黒岩委員 確かに、現地の物資が不足していることに対応というのは、大臣としても、副大臣としても、これは重要な職務だということは認識しておりますが、これは地元の西日本新聞がはっきりとこういう記事を出しております。そのほか複数のメディアでも出ているんですけれども。

 松本副大臣は、自分におにぎりが配られたときに、実際におにぎりを手にしながら、こんな食事じゃ戦えないと不満を口にした、そして、物資は十分に持ってきている、そして、被災者に行き届かないのは、これは熊本県庁の職員なんでしょう、地元の職員の皆さんに、あんたらの責任だ、政府に文句を言うなとはっきりと明言した、このように言われておるんですけれども、これは副大臣、事実ですか。

松本副大臣 全く事実無根であります。

 おにぎりが配付されたことはありません。

 そして、私たちは、避難場所に物資が届いているのかどうなのかということの確認に懸命でありました。そして、電気、ガス、水道がとまっていますから、避難所の人だけではなくて、県民全体が食事ができない状況の中にあるわけでございますから、物資がしっかり届いているか、そういう、現地ではよくわからぬという状況が続いておりました。

 したがいまして、私の方から、今おっしゃっていただいたような発言は、全く一度もしたことはありません。どこからその記事が出たのか、私には皆目見当がつきません。

黒岩委員 事実無根だということをおっしゃいますけれども、今後、いろいろな検証がなされる中で、これは本当に国会での答弁ですから、後になって、事実と違いましたなどということがないという認識で、ここで、本当に事実として、事実関係をお答えいただきたいと思っております。

 そしてもう一つ、これもその後、問題視されていますけれども、青空避難されている、屋外に避難している人を避難所のみならず屋内に戻すという指示を、これは河野大臣から受けて、そして副大臣もその指示を現地に伝えた。間違いないですよね。

 結果として、その後の十六日の本震で、屋内にいたがために被害に遭った方がいらっしゃるわけですよ。現地にいらっしゃるわけですから、現実に、なぜ青空避難させているかといえば、その中には、やはり屋内自体が、揺れが、余震が続いているわけですから、大変怖いという方たちが多く、そして屋内にいられない、このことも、副大臣、その後、認識していますよね。

 そんな中で、副大臣、現地にいる対策本部長なんですから、しっかりと、そういう状況だったら屋外でもいいじゃないか、青空避難もいいじゃないか、こういう指示を、すなわち、現地のことがなかなか把握しづらいこの霞が関からの指示に対して、それは違うんじゃないかと、現地の責任者として、しかとした対応はできなかったんですか。

松本副大臣 私が着任をしました十五日に、大臣から、夜寒い中で風邪を引かれるようなことがあったら困る、天気予報で雨も心配されている、避難所はきちっと整備できているのか、青空避難所というのでは対応できない心配がある、避難者の健康を守るためにも、とにかく早く屋内避難所を整備するように、こういう指示をいただきました。そのことを県と国の合同会議で伝えました。

 そうしましたら、避難所は、整備といいましょうか、避難所はあるんです、しかし、おっしゃられるとおり、余震が怖いので、みんな外に逃げ出してきている、外の方が安心感がある、そういう方たちが外に集っているから、そこが避難場所というふうに誤解をされておりますというお話を伺いました。

 早速その日のテレビ会議で河野大臣にその旨を伝えて、そこの気持ちの行き違いというのは解消された、こう考えております。

黒岩委員 現在も、我が党の議員が現地にもちろん入りまして、熊本の蒲島知事とも、話をお聞きしております。そんな中で、今私も申し上げた屋内での不安というものについて知事も強く要請したんだけれども、やはり当初、それがなかなか聞き入れてもらえなかったということであります。

 結果として、屋内に戻って、それによって被害を受けた方がいる。このことに対して、現地の本部長としてやはり責任を感じられるんじゃないですか。

松本副大臣 屋外にいらっしゃる方を、無理やり屋内に入ってくださいなどという指示は一度も出しておりません。

 河野大臣の最初の心配を伝え、河野大臣の方に、こういう現実ですから、青空避難場所ということではありませんから、その点は御心配に及びませんということをテレビ会議の中でしっかり伝えました。それ以後は、これに対する国からの要請といいましょうか、私たちの要請はしておりません。

 したがって、この議題、この話題が長く続いたということはないと思います。十五日か十六日の午前中には全て解消をしたはずでございます。

黒岩委員 無理やりとかそういうことを私は申し上げているわけじゃないわけですよ。十五日の昼にはもう現地に入られたわけでしょう。現地に入られて、結局は、大臣からの指示だといって屋内への退避を指示しているじゃありませんか。そのことをお認めになっていますし、そのこと自体がNHKのニュースでもしかと出て、これが被災民に情報として伝わったわけですから。そして、結果として、その後の本震でこれだけの被害がまたさらに広がったということについて、どうもそれに対する責任の思いは全然伝えられませんし、まるで適切だったということだけを申し上げている。

 そのことに対して、やはり被災民も国民も、もともとの、何せ自分たちの、バナナでもいいから、おにぎりでもいいから差し入れをお願いしますとお願いしたわけでしょう。テレビ会議という調整の場で、やはり少なくとも、御自身を含んでおにぎりをという、こんなことがどれだけ、これは熊本市も大変だったでしょうけれども、益城や、また阿蘇地域での孤立集落の人たちなんて、生きるも死ぬも、もう息絶え絶えのようなそんな状況でいる中で、この方たちの、まさに被災されている方たちに対して、くどいようですけれども、そのような行為が本当に胸を張って適切だったと言えるんですか。ちゃんとやはり謝罪の言葉をこの場でも言っていただかなければ納得いかないと私は確信をしておりますよ。

松本副大臣 先生、先ほどからお答えをしておりますように、国から派遣をされた方々も、県の職員の方々も、市町村の方々も、懸命に、復興に向かって一生懸命働いているんです。その人が現実的に、国から行ったメンバーにつきましては、十六日、そして最初におにぎりが届いたのは十七日のお昼前後だったように記憶をいたしておりますが、二十数時間働きっ放しで食事が何にもないという状況は、やはり体力を消耗し、それでなくても体力を消耗しているわけですから、現地を預かる人間として、そこで働く人間の環境を少しでも整えるということは当然の私の責務だ、こう考えております。

黒岩委員 副大臣、その職員の方たちの健康管理、これを私も否定しているわけじゃありませんよ。ただ、結果として、熊本県内から国会議員の事務所を通して食事が差し入れがされたということなわけです。

 ですから、今言った、公式なテレビ回線で、東京にいる担当大臣、河野大臣にこのテレビ会議の場で要請することではなく、現地対策本部長の責任で、自分の責任においてそれは対応ができたんじゃないか、こう皆さん疑問に思うわけですよ。わざわざ東京にいる大臣にテレビ会議でお願いをするというのは、これは被災民の皆さんの本当に苦しい状況からすれば余りにも違和感のある話だという、これが今問題となっていることに、どうも副大臣、そこは認識はされていなくて、とうとうと説明されておりますけれども、どうですか、このギャップについて。

松本副大臣 私がまず大臣にお願いをしたことは、熊本県内に食料を入れてください、急いでください、大量にお願いをします、避難民だけではなくて県民全体がどこでも食事を買えない状態にあるんです、水がないんです、ぜひ大量に大至急手配をしてくださいというお願いが、テレビ会議での主要な食事に関するお願いでございました。

 最後に、ここで働いている人たちも朝から何にも固形物を腹に入れておりません、これがあすも続いたらこれはもう働けない、こういうお願いを最後の数秒間でしただけでありまして、テレビ会議そのものでそれを主要課題にしてやったわけではありません。

黒岩委員 主要なことがどうかじゃなくて、テレビ会議という場でこういった発言をされ、そして、十六日の時点でおにぎりが届いたと、これはぶら下がりで副大臣自身もおっしゃっているわけですよ。だから、今おにぎりが全く届いていないということとは全く実際には別の、おにぎりが届いたということをぶら下がりで、記者会見でおっしゃっているわけですから、このことは強く問題だということを指摘して、副大臣、この後、公務もあるでしょうからお引き取りいただきますけれども、これは余りにも被災者の皆さんからすれば理解できない話だということだけは強く指摘をさせていただきます。どうぞお戻りください。

 河野大臣、これも副大臣にもお聞きしたかったんですけれども、時間があれだったので。東日本大震災や阪神・淡路大震災にまさるとも劣らない被害規模だというのが現地対策本部の認識なわけですよ。

 そこで、私どもの同僚議員が今現地に行くと、やはり被災者の皆さんから、これだけの規模で、激甚指定が何でこんなに遅いんだと。これについて、やはり防災担当大臣として、現地からのこれだけの甚大な被害規模の説明を受けているわけですから、なぜこれほどおくれているかについてしっかりと説明していただけませんか。

河野国務大臣 避難所に関係をするのは災害救助法の指定でございますから、恐らく避難所でそういう話があったとすれば、それは災害救助法の指定の話なんだろうと思います。それはもう発災直後に、十五日の早朝に指定をされております。

 激甚災害指定というのは、被害の復旧額を積み上げて一定額以上になった場合に指定されるものでございます。こういう状況でございますから、自治体がそうした作業を今やるのは無理だと思いますので、各省庁にお願いをして被害額の把握を今一生懸命やってもらっているところでございますので、特におくれているという話ではないと思います。

黒岩委員 東日本ですと、もう翌日には激甚指定がされましたし、阪神・淡路でも一週間でされているわけですから、先ほど、まさるとも劣らない規模だと現地の対策本部長が言ったということと、この比較において、やはり迅速さに欠けている、こういう指摘で、全くおくれていないと防災担当大臣から言われれば、これは本当に、被災自治体だけでない、被災民の皆さんもとてもとても納得できないということを指摘させていただいて、残された時間でTPPについて確認させていただきます。

 私は、この間の議論の中で幾つも大きな問題点が指摘されたと思いますけれども、やはりせんだっての玉木議員の、農業の重要五項目について、結局は無傷の品目が一個もなかった、そして、除外または再協議という、このこと自体も全くなかった、もうこれだけでも、農林水産業分野においては大変、こう言ってはなんですけれども、屈辱的な結果であったということがもう明々白々になったと私は大変残念に思っております。

 そんな中で、もう限られた時間ですから、一点、やはり私は、大変残念で屈辱的なTPPの農業分野の結果の一つとして、あえて象徴的に、米について申し上げたいんです。

 きょう、この日米間の交換公文、サイドレター、これはSBS方式による我が国の米国からの買い入れについてのペーパーを持ってきました。これは十ページぐらいですけれども、でも、この中に本当に詳細にいろいろなことが書き込まれているんですよね。

 そこで、森山大臣に、これは端的で結構なんですけれども、現行のSBS方式と、今回のTPPによる、このサイドレターで交わされているSBS方式、これは具体的には、変わった、変更された点というのは何がございますか。

森山国務大臣 黒岩委員にお答えを申し上げます。

 サイドレターについてでございますが、入札において予定数量に満たなかった場合に、翌日に再入札を実施することというところがサイドレターに記されております。また、三年度中二年度で枠数量が消化されなかった場合には最低マークアップを一時的に一五%引き下げるということも書いてございますが、いずれにいたしましても、技術的な事項を規定していると理解をしております。

黒岩委員 これは、私が端的と言ったから限られたんでしょうけれども、まず入札を行います、これでそのもともとの予定の量が消化されなかったら、まずは翌日にもう一回やってくれとありますね。そして、今回は、今までと違って、五月から二カ月ごとに六回行う。こんなことも今の現行には決められていないですよ。今回、これが決められていて、そして、翌日にもやって、では、前半の三回やりました、そして、この三回が、どれも予定量の九割が消化されなかった場合には、四回目において、これは全量とある。

 全量というのはどういうことかというと、仮に、当初は五万トンで、最後は七万トンになりますが、六回ですから計算しやすく、ある時期六万トンをSBSにかけるとなると、一月ごとに一万トンずつ入札にかけるということまで規定されているわけですよ、六分の一。

 ですから、では、最初の三カ月で九〇%を切った、切った、切った、仮に八千トン、八千トン、八千トンだとすると、六千トンが未達になる。では、次の四回目でどれだけ入札するかというと、一万トンプラス六千トンではないわけですね。一万六千トンではないわけですよ。全量ということは、その年の、六万トンなら六万トン、残っている三万六千トンを全て四回目から入札にかけろ、こういう今までとは、もう考えられない、翌日にやれ、そして、三回でだめなら四回目からは全量だ。加えて、これが、今度は一年間で未達の場合は、三年間で二年未達の場合はマークアップを一五%引き下げる、ここまで書いてあるわけですよ。

 これは、ずっと農水大臣は、現行のSBSとは違って義務ではない、義務ではないと言っていますけれども、今申し上げた、翌日にやれ、三回やった後には全量でやれ、三年のうちに二回未達ならマークアップを引き下げろ、これはもう基本的に全量買い入れに向けて事細かに書かれた交換公文だとは思われませんか。

森山国務大臣 黒岩委員にお答えを申し上げます。

 枠数量が埋まらない場合等において、より落札しやすくするための措置を規定しているものの、このような措置を講じても、実際に枠数量が埋まるかは市場の動向を反映した入札の結果によることから、枠数量全量を輸入することを保証しているものではないというふうに考えておりまして、大幅に譲歩したということにはならないと理解しています。

黒岩委員 今私が申し上げた、このまさに詳細なことというのは、なかなか稲作農家の方にも伝わっていないのかもしれません。ここまでして、とにかく予定数量をSBSで消化するんだという中身なんですよ。

 ここまで我が国のSBS方式の運用を事細かく事細かく決めたこのサイドレター、済みません、これは石原大臣にお聞きしますけれども、このサイドレター、交換公文、日本とアメリカの交換公文ですよ、これはどちらの国から発出されたんですか。

石原国務大臣 これももう既にお話をさせていただいておりますけれども、TPP交渉というのは、今は米のお話だけに御言及をされておりますが、日米の間でも、米だけではなく、さまざまなものが二国間の並行協議あるいは本体の協定協議の中で発せられた。これは、相互主義にのっとって、両方が合意したものがこのサイドレターとして交換をされているというふうに御理解をいただきたいと思います。

黒岩委員 日本から発出されたのか、アメリカから発出されたのか、どちらからなんですかということだけ聞いているんですよ。

石原国務大臣 もう既に御答弁させていただいておりますけれども、相互主義でございますので、当然、双方からでございます。

黒岩委員 いや、この文書を見てもらえばわかりますけれども、八ページに書いてありますね。これは署名したのが副大臣でしたから、高鳥副大臣がフロマン閣下に「提案する光栄を有します。」と日本から提案しているんですよ。これは、サイドレターは全て、TPPで二十一文書ありますけれども、そのうち十二は他国から、相手国から提案されたものです。逆に九つは我が国から提案した。このアメリカの米をここまで、運用までがんじがらめに決めた、稲作農家にとってはまさにある意味屈辱的な内容を我が国からお願いし、「提案する光栄を有します。」と。

 大臣、何でこんな提案を日本からしたんですか。

石原国務大臣 誤解があるようですけれども、サイドレターは相互主義でございます。そして、双方から提案をする。それは一つの形式でしかございません。

黒岩委員 形式とおっしゃいました。しかし、ずっとTPPの議論で安倍総理は、結果が全てだと。我々は結果で、テキストから、附属書から、そしてこのサイドレターを読むわけですよ。そうすると、ここに書いてあるのは、今言ったSBS方式については、我が国からアメリカに提案しているという。これは結果が全てでしょう。

 そして、私どもがずっと言っていたのは、結果だけじゃわからない、なぜこんな提案をしたのかについては、やはり交渉の経過について、それは全てが出せないにしても、出せる部分については出してくださいというのが当初からの、これが典型的な象徴ですよ。結果だけ見て、それを形式的だといって突っぱねるようでは議論にならないじゃありませんか。

 結果は結果だけれども、やはりそこに至るまでの経過について説明しなかったら、稲作農家の皆さんがこれだけ見たら、こんな屈辱的な内容を我が国からアメリカに提案している、お願いしている、そして、提案したことについて光栄を有するというこの文書を見たら、愕然とすると思いますよ。

 このことを、もう時間が過ぎているので、本当はこれからもっと中身に入りたかったんですけれども、森山農水大臣、こんな状況ではとてもとても、決定的なのは、重要五項目が全く無傷なものが一つもないということ、これがもう私は全て象徴されていると思いますが、米のSBS方式についても、とてもとても農家の皆さんからは不安や不満が取り除かれない、そういう結果であるということを指摘して、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

西川委員長 次に、村岡敏英君。

村岡委員 おはようございます。民進党の村岡敏英でございます。

 初めに、熊本を中心とする九州地方の地震でお亡くなりになられた方々にお悔やみを申し上げます。そして、いまだ被災されている皆さんにお見舞い申し上げますとともに、政府にはしっかりと地震災害対応をしていただきたい。地震災害には与野党もないということで、しっかり対応していきたい、このように思っております。

 それでは、TPPに関して質問させていただきます。

 三大臣に資料をお渡ししましたけれども、やはり過去の経緯があってこそ、このTPPというのはどういうふうに進めていくかということが大切だと思っております。

 二回前の選挙のとき、石原大臣、岸田大臣、森山大臣、農政連の推薦を受けています。そのときに、政策協定、ひな形をつけていますが、これは各県によって違うようですが、みんなサインされて、そして選挙の公約として戦ったはずだ、こう思っております。

 その中の二番目の項目ですが、TPP交渉について、TPP交渉が目指す例外なき関税撤廃は、ちょっとはしょりますけれども、我が国の制度を改悪させることになるから、TPP交渉への参加は行わないということで署名されていると思います。

 この時点のことですけれども、この時点、どうしてTPPには参加しないという表明をして推薦を受けたのか、石原大臣、岸田大臣、森山大臣、それぞれお答えください。

石原国務大臣 公約を読んでいただければわかりますとおり、聖域なき関税の全ての撤廃ということが前提のTPPというものには、今でももし仮にそうだとするなら私は反対でございますので、そのように書かせていただいたわけでございます。

岸田国務大臣 私自身も自民党の公認候補でありましたので、当然のことながら、自民党の公約を掲げて選挙を戦いました。

 そして、御指摘のこの政策協定書、県によって少し内容も違うのかと思いますので、このとおりかどうかはちょっと記憶が定かでありませんが、お示しいただいた政策協定書を見ましても、「TPP交渉が目指す例外なき関税撤廃」等、こういう表現もございます。その辺も総合的に勘案してこうした書類に署名をしたのではないかと想像いたしますが、ただ、ちょっと現実、私自身がどういった書類に署名したのか、ちょっと今定かではございません。

森山国務大臣 お答えいたします。

 当時のことを思い起こしておりますが、署名をした書類は今ここにありませんので正確なことは申し上げられませんが、私が一番危機感を持っておりましたのは、例外なき関税撤廃ではもたないという気持ちが強うございましたので、そういうことに基づいて御推薦をいただけたと考えております。

村岡委員 三人の大臣の方々から聞きましたけれども、このペーパーは、これは農協、農家の方にとっては非常に大事なんですよ。これを忘れたとかそういう、どういう表現だったか余り覚えていない、これはやはり不誠実だと思うんですね。

 やはり、このときは、それぞれ三大臣がどうかわかりませんが、全国各地の自民党公認候補は、TPP断固阻止、その鉢巻きを巻いて農協集会に行ったはずであります。そういう意味では、農家の人たちが今不安に考えていたり不誠実だと思うのは、このときの対応から始まっているんです。

 例外なき関税撤廃、こういうふうに言いますが、この前、農林大臣が、例外なき関税撤廃の中で、品目で見ればそれぞれ譲って、無傷なものはない、こういうのがやはりしっかりとあらわされたわけであります。

 そこでお聞きしますけれども、この四十六回、四十七回とそれぞれ、TPP交渉参加は行わないから、この四十七回は聖域のことをはっきりと言っています。農家の人たちは、では、三大臣の今の言った発言で、ああそうなのかと納得して、すとんと落ちますか、落ちると思いますか。

 これは農林大臣にお聞きします。

森山国務大臣 大筋合意の結果を丁寧に御説明申し上げれば、私の選挙区の皆さんは御理解をいただけると思います。(発言する者あり)

村岡委員 推薦されていない方もいるようでありますけれども、自民党の中で。

 私も推薦はされていません。私は、農協集会に行って、TPP断固阻止という鉢巻きは実は巻いていません、一人だけ壇上で、県会議員を含めて百人もいるところで。それはなぜかというと、自由貿易が大切だと思っていたわけです。しかし、中身がまだわからない中で全面反対というのは、政治家としてそれは正しいことなのかどうか。中身がわからないんです。でも、皆さんはほとんど巻いたと思うんです。そこを農家の人たちは信じていたのにどんどん変わっていく、そこに大きな問題があるんです。特に石原大臣は、強烈に反対の方にいたと思います。

 そして、例外なき関税撤廃じゃないことがわかったから入った、こう言います。しかしながら、例えば、ニュージーランドと交渉し、日米と交渉し、そのとき、これは交渉事だから言えないと言われるかもしれませんが、九五%が参加の条件だったんじゃないですか、最初から。それは石原大臣、どうでしょうか。

石原国務大臣 ただいまの村岡委員の御指摘は、関税率で、例外撤廃、これは工業製品も含めまして九五%ということが結果であるのが実は前提ではないかというお話でございますけれども、私は、これは決して前提ではないと考えております。

 と申しますのは、当時の、これは菅内閣でございますけれども、私の友人であります海江田先生が経産大臣でありましたけれども、海江田先生の発言の中にも、九五%程度になるのではないか、まだ交渉には参加していない段階でそういうお話を聞いておりまして、これは、あくまで結果であって、私どものつくった数字ではございません。

村岡委員 これは外交交渉ですから、当然、参加のとき、何の条件もなくて、それも後発国なんです。日本、カナダ、メキシコ、当然九カ国はある程度の相談をしていましたから、それは九五%というのが最初にありきだと思うのが外交では普通だ、こう思っております。

 その中で、九五%以上と、それから、九カ国で合意済みの事項はもう再交渉できず、交渉が遅延した場合は交渉の終結権は先行九カ国が持つ、こういう条件はあったんじゃないでしょうか。外務大臣、どうでしょうか。

 わかりませんか。交渉に参加するときの時点ですね。

岸田国務大臣 ちょっと済みません。その時点でどういった取り決めが行われたのか、ちょっと、通告がありませんので今手元に資料はありませんが、いずれにしましても、我が国が参加する際に、一方的に全ての関税を撤廃すること、これをあらかじめ約束されない、これは確認した上で交渉に入った、これは間違いない事実だと思います。

 その前の段階でどういった取り決めがあったのか、その書類等についてはちょっと今手元に確認できませんが、結論としまして、我が国が交渉に入る際には今申し上げたことを確認した上で交渉に入った、これは間違いない事実だと考えます。

村岡委員 参加するという条件の中に、そこはもうお認めにならないでしょうけれども、私が農水委員で、まだ交渉参加を決めていないとき、十番の資料を見てください、十番の資料で「重要五項目と自由化率」ということで、全九千十八品目、その当時ですけれども、この資料を、私は、タリフラインがどういうふうに分かれているのかということを農林省に資料請求しました。そうしたら、持ってきました。

 それから一時間後、返していただけませんかと来ました。何でですか、一度いただいて、もう資料でわかっているので、ほかの人たちも見て、ああ、なるほど、こういうふうにタリフラインはそれぞれ項目ごとに分かれているんだということで、それで、ではこの一枚だけは置いていきますということで、置いていきました。

 そのときの理由が、各国と交渉するときにタリフラインの中身がわかるとこれは相手から突っ込まれるので、こういう形は交渉前には出せないんですと。

 しかし、今、結果を見てこのタリフラインをもう一度見直すと、もう、九五%ありきだと、最初からこの重要五品目に食い込まざるを得ないんです。そこがあったから見せたくなかった。むしろ、各国の外交ではなく、国内の対策として見せたくなかった、そう思わざるを得ない。

 農林大臣、当時農水委員長だったと思いますけれども、それはどうなんでしょうか。

森山国務大臣 私は交渉に参加をしておるわけではありませんし、また、政府のことでございますので、私は当時衆議院の農林水産委員会の委員長であったことは委員御指摘のとおりでありますが、私がコメントを申し上げることではないと考えます。

村岡委員 コメントを申し上げない、答えはそうだろうなと思っておりましたが、しかしながら、これは、農家の方々に聖域五品目は必ず守る、例外なき関税撤廃ではない、こういう形の中を、さんざん選挙のとき公約で言いながら、実は、もう最初から食い込まれることはわかっていた。あと五%のところの交渉は外交交渉で、これは大事ですよ。しかし、それだったらやはり不誠実なんですね。

 これは、日本の国益全体のことを考えて、やはり、食い込まざるを得ないにしても対策をちゃんと立てていく、最初から言わなければ、選挙というのは公約です。その選挙の公約を見て、農家の方々も有権者も投票するわけです。後で結果だけ見ればいいんだ、結果であとは勝負するんだ。でも、その前に選挙があったわけです。

 そのことに対して、石原大臣は特に反対されていたと思うので、先ほど聖域なき例外撤廃がないことは確認されたと言っても、ここは食い込まれることはわかっていたんじゃないですか。どうでしょうか。

石原国務大臣 外交交渉でございますので、誰がどこに、というのは、これはマルチの会合でございます、日米だけではございません。そういう予断を持ってこの公約に賛成をしたということはございません。

村岡委員 まあ、答えられないということなんでしょうけれども。

 それで、このTPPの特別委員会でよく議論があります。外交交渉ですからこれは保秘契約があって言えない、外交交渉は当たり前だろう、こういうふうに言うんですね。確かにそういう面もあります。

 しかしながら、参加を決めた後に国会決議は決めています。この国会決議には深く森山農水大臣はかかわったと思います。

 では、それは、全くどういう参加条件かもわからず、どういうふうな形で進んでいくかもわからず国会決議はつくったという認識でよろしいんですか。

森山国務大臣 私は、当時、農林水産委員会の委員長でございましたので、厳正中立な立場で委員会を運営しなければならないのが課せられた役割であったと思いますので、それは与野党筆頭間を中心に御協議をいただいて、おまとめいただいたものであると理解をしております。

村岡委員 そういうふうに立場的には答えなきゃいけないでしょうけれども、それはかかわったと思っております。私も、ちょうど決議のことで、いろいろ文面は見せていただきました。

 それを考えたとき、これまた先ほどの公約の面で、TPPに参加しないとか、聖域なき例外交渉は認めないと選挙をやって、今度は国会決議。

 例えば、外交交渉で、これは保秘契約があるから見せない。では、何でその国会決議の中に情報開示と書いたんですか。書くから、それはおかしいじゃないかということになりますでしょう、当然。農家の方々は結果だけ見ればいいんだと。情報開示は速やかにと、その決議の中で言っているわけですよ。

 そうしたら、終わってしまったら、そんなことは関係ないと。では、あの国会決議、それぞれの政党が全部、超党派で決議をしたのは、最初からもう、外交交渉なんだから、それは結果しか報告できない、途中のものは何にもできない。

 それだったら、そういう項目を入れるのがおかしいじゃないですか。それは石原大臣、どう思いますか。

石原国務大臣 国会決議が二〇一三年に、森山農林大臣のもとで与野党合意でなされた。そして、その中に、できる限りの情報開示という文言があるということは承知しております。その国会決議にのっとって、協定の概要はその都度お示しされてきたというふうに承知をしております。

村岡委員 いや、それは石原大臣が思っている見解で、この決議をしたとき、農家の皆さんは、しっかりと途中経過も、そしてこの外交交渉の中身も言っていただける、そういう認識ですよ。

 それはおかしな話で、森山大臣、これは農家の人はそう感じたんですか。これは外交交渉ですからこんなのは公表できないのが外交交渉の当たり前だと時々委員会でやじを飛ばす人がいます。そういうふうに農家の人は思っていたと思いますか。そうじゃないですよ。やはりしっかりと、どういう交渉過程があって、どういうふうになったと。

 それは結果的に、国益ですから、いろいろな産業の中で、ここの部分は譲り合いというのも当然各国によってはあります。しかしながら、こういう経過でなったから、対策はこうします、ああしますというのが当然で、何か外交交渉だと何にもそんなのは国民に言わなくていい、国民的論議をちゃんとするんだと書いてあるのに。

 そうしたら、こんなことは入れない方がいいじゃないですか。森山大臣、どう思いますか。

森山国務大臣 外交交渉の経過について情報公開ができないことは、国民の皆さんは御理解をいただいていると思います。

 ただ、大筋合意ができました後、すぐ農林水産省はその内容については情報をしっかりと公開させていただいているところでございますので、御理解をいただきたいと思います。

村岡委員 それはあくまでも御理解をいただきたいと。

 理解していないからTPPに不安があるんです。そして、これからの農業をどうやっていくかという不安があるんです。

 それはやはり、先ほど言った、選挙のときの、TPPに参加する、参加しない初め、もう三回目なんです。

 こういう決議というのを、意味ない決議をするんだったら、しない方がいいんですよ。かえってそれは、その部分で国会を縛るというんだけれども、その項目を入れた、交渉をしっかりと公表するという形のものを入れたのは自民党の方なんですよ。自民党が各党で言ったときの、重要品目、ここは大事ですよ、ここはちゃんとやるべきですよ、決議。最後に入れた、情報公開を入れたのは、自民党の強い要望なんですよ。それが、自民党なのに、自民党政府が、いやいや、保秘契約があるから全然やらない。これは自民党なんですよ。そのことに関してはどう思いますか。

森山国務大臣 村岡委員、私は、衆参両院の国会の決議というのは非常に重いものだったと思います。結果として、これを後ろ盾にして交渉ができたということが非常に意味があったと思いますし、両院の決議の一番意味するところではないかなというふうに思っております。

 情報公開のところをどこの党がどうだったかということは、私はコメントすることは差し控えさせていただきます。

村岡委員 その当時、この前何か、私は維新の党に所属していて、そこは反対だった。我々、検討した結果、できないことが中に入っているので、これは国民にちゃんとした責任をとれないんじゃないかという思いもありました。

 この議論はここでやめて、つなげて、国会決議の方に移ります。

 国会決議の方で、前回、総理が入っていただいたときも話しましたけれども、例えば、この重要五品目、「除外又は再協議の対象とすること。」こういうことになっております。

 その中で、見ていただきたい資料が、七ページ目、七番の資料ですけれども、政権公約の定義を、何をすれば守ったか、守らないか。これは、関税撤廃となってしまうと、例外なき関税撤廃、十年以内の関税撤廃とか十年超の関税撤廃になれば、これは政権公約も国会決議もバツだ、こういうふうに思います。関税削減となれば、これは政権公約は、自民党の公約というのはうまいもので、どうとでもとられるようにしていますから、これは丸、しかし、こうなれば国会決議はバツ。関税割り当ても、一部維持も。そして、除外となればどっちも丸。

 こうなれば、政権公約はぎりぎり何とか丸かもしれない。でも、国会決議は、これはやはり守られていないんじゃないですか。これは、森山大臣、どう思いますか。

森山国務大臣 今先生がお示しをいただきましたのは、大学の先生が類型としてお示しになったものをもとに言っておられるんだろうと思いますが、私は国会決議は守れたと理解をしております。

村岡委員 立場で、守れたと思いますという、やはり弱いんですね。

 九番の資料を見てください。

 九番の資料で、これは我が党の玉木議員が指摘したことですけれども、守れた聖域はゼロ、無傷はゼロ。タリフラインの数五百九十四のうち、手つかずを百五十五、これは守った、よく交渉しました、こう喧伝しています。しかしながら、品目別を見ると、必ずこれは食い込んでいる。ですから、品目でまさに無傷はゼロなんです。この状況がまず現実だと思います。

 そして、米や重要品目、必ず影響はありますよ、影響は大きくありますよ。そのときに、対策をするから影響なしと。これまた四つ目ですよ。いろいろなことを、農家の方々が信じてきたことを、影響はもっと大きいんじゃないですか。これを何で百五十五を守れたと宣伝するんですか。

 やはり違うじゃないですか。現実には、百五十五の中も全部食い込まれている。これは現実じゃないですか。やはり正直に言って対策をとらないと、農家の人たちは、いろいろな対策をやっても、また信じていただけませんよ、これは。七年後の再交渉もあるわけですから。

 百五十五は守れたという認識なんですか、それは変わらないんですか、大臣と。

森山国務大臣 村岡委員にお答えいたします。

 大変いい資料をつくっていただいているなと思って先ほどから見ておりますが、例えば精米について、国家貿易以外のものは手つかずということでございますから、全く変えていないわけでございます。ただ、国家貿易で輸入する分の国別の割り当てとして、アメリカと豪州に対して十三年後に七万八千四百トンの輸入枠を与えたというところが譲歩した、こういう御指摘であろうと思います。

 しかし、これは対策として、備蓄米として主食米に影響が出ないような対策をしているわけでございますので、守れたというふうに我々は理解をしておりますし、そういうことと対策といろいろなことを組み合わせて判断をすれば、しっかりと守れたというふうに理解をしているところであり、そのことをよく説明申し上げてまいりたいというふうに考えているところでございます。

村岡委員 譲歩したのはお認めになったように、譲歩はしているんですよ。ただ単に守った守ったと喧伝して、すばらしかった外交交渉だと。それはちょっと違うという認識。

 それから、この数字は農業新聞ですけれども、我々もタリフラインをいろいろ調べていますけれども、農林省に言っても全然出てこないんですね、理事会で言った資料も。これは、こんな整理もしないで外交交渉に臨んだんですか。それとも、数字を出すとまずいことでもあるんですか。何百人といる中で、この数字を外交交渉の中でしないで交渉したとは思えないんです。

 それから、品目別も全部分けたはずですよ。分けたはずなのに、それもすぐ出てこない。我々が調べても、これは数字が全部が正確かどうかわかりません、一や二や違うかもしれませんけれども、大体の概要で、調べるとこう出てくるわけです。それがなぜ出せないのか。

森山国務大臣 三つの基準ごとのタリフラインの数字を示すようにということがあり、理事会での協議事項となっていると承知をいたしておりますので、我々としては、理事会からの御指示に応えるべく今努力をしているところでございますので、理事会でしっかりと御協議をいただければありがたいと考えます。

村岡委員 これはもう外交交渉に臨むとき、全てのタリフラインを、まだ交渉参加を決める前にタリフラインの資料を私に出しましたね。そのときに言った言葉は、これをそれぞれ外交交渉でタリフラインで相手とやりとりするんだと言うんですから、このときにもう品目で分けているわけですから、そんなのはもう二年前から品目であるはずなんです。それなのに出さない。それで、結果が全てだと。

 では、結果が出たら、外交交渉の中身は別にして、タリフライン、どういう交渉をしたかの項目ごとは、もうとっくに外交交渉の中でそれはやっているはずですよ。それが出せないという理由がわからない。それから、資料がそろっていないという理由がわからない。そこはどうなんでしょうか。

森山国務大臣 まず、先生、御理解をいただきたいと思いますのは、ラインごとの取り扱いでございますが、これは、昨年の十月二十日の日に、既にホームページ上で公開をしているところでございます。

 今、理事会協議となっているものにつきまして、私がここでお答えをすることは僣越でございますので、理事会で御協議をいただきたい、それに真摯に応えさせていただきたい、そういうことでございますので、御理解をください。

村岡委員 本当は西川委員長に聞きたいところなんです、多分全部わかっていると思いますので、品目別にどういうふうにして交渉したか。でも、委員長は答える立場にないと言われるのでお聞きしませんけれども。

 しかしながら、しっかりとした数字が出てきてなかなか出さないという中に、先ほどの五の資料を見てください。

 この国会決議、しっかりとこの論点、TPP合意は最初から再協議はなく、除外もこれはない。二〇一二年の政府資料には、関税撤廃、削減の対象としない除外と明記していますけれども、この論点を読んでいただければ、結果的に国会決議は守られていないというのが普通の常識ですよ。守られなかったんですよ。

 でも、守られないからといって、その中で、中身の部分をしっかりと示してどんな対策をとっていくか。この守られていないということをやはり認めなきゃいけないですよ。どう考えても、これを守られていると解釈するのは、これは不可能と私は考えております。

 その中でこの対策です。米も、先ほど大臣が言いました、七万トン入ってきても、それは備蓄でやりますと。これは前も論議しましたけれども、隔離というのは、もうこれは海外に援助をやる、国内に米を入らせないことです。SBSが今は余り入札が活発じゃない。これは米が安いからですよ。これが高くなったら当然入ってきますよ、業務用で。同じ消費量の中で、この中で守れば守るほどこれは逆に入ってくる。そのギャップはどう考えているんですか。農家の方々に、影響はないです、米はゼロです。本当にそうですか。

 もうどんどん消費は減っているんです。八万トンも毎年減っている。この中で入れたら当然影響がある。そのときの対策で、備蓄だけで対応できる、こう思っているのが非常に不思議なんです。また、これは農家の方々に、影響はないですよ、大丈夫ですよ、値段は下がりませんよ、こういうことを本当に言っていいんですか、備蓄だけで。

 飼料米だというふうな説明をすると思います。しかし、飼料米だって、MA米が最初の当初から今は七十七万トンもなっちゃっているんですよ。これはTPPと関係ありませんけれども、MA米も、交渉も何もできないわけでしょう。そういう中で米がどんどん入ってきているという現実の中で、どう思われますか。

森山国務大臣 今御質問の件でございますが、現行のSBSの輸入における近年の状況を見ますと、平成二十三年から二十四年は枠数量の全量が輸入されておりますが、一方で、国産米の価格が比較的低かった平成二十五年、二十六年、二十七年は、輸入米の需要が低下したことにより、枠数量の全量が輸入されていないというのが実は現実でございます。

 このように、SBS方式において、国内外の需給状況等により輸入状況も変わってまいります。今回、TPPで設定する国別枠についても、全量を輸入する義務がありませんし、SBS方式で実施することとされておりますので、これまでの輸入動向に似た状況になると考えております。

 また、仮にTPP国別枠の全量が輸入されたといたしましても、国別枠の輸入量に相当する国産米を政府が備蓄米として確実に買い入れるということを約束しておりますし、国別枠の輸入量の増加が国産の主食用米の需給及び価格に与える影響を遮断するということにしているわけでございますので、国内生産には影響がないというふうに考えております。

 委員御承知だろうと思いますけれども、少し数字を申し上げておきたいと思いますが、国産米の価格とアメリカ産のSBSの価格の比較でございますけれども、平成二十五年は、国産米の業務用銘柄が二百二十三円でございました。SBSは政府売り渡し価格が二百二十三円でございまして、一緒でございました。また、平成二十七年は、国産米の業務用の銘柄が百九十七円でございまして、SBSの政府の売り渡し価格は百九十九円ということで、こっちの方が少し高くなっているというのが現状でございます。

村岡委員 今、金額まで示して、わかっていますので結構でございます。

 ではなくて、これは、TPPと米の部分は、MA米と二つをしっかりと交渉していかないといけない。MA米はもう全然ふえていっているんですよ。

 そこの中で、これが大きな需要がふえればいいですよ。それから、各国に、海外にどんどん米でも、また農産物を売れとよく言いますけれども、現実、そんな簡単にいきません。そんなに簡単に伸びません。

 そして、七千億のうち、農産物で売れているのは、今のところたった五%。きのうの農水委員会で同僚の岸本議員が言いましたけれども、五%ですよ。もちろん、伸ばして一〇%とかいけばいいですよ。ところが、そんな状況ではまだない。これから時間がかかるんです。だから不安なんです。

 そして、大規模農家で、例えば五十町歩、百町歩やって、それは機械化すれば五人か六人でできるようになっちゃう。そうしたら農村社会が崩れてしまう。

 そういう問題を抱えているということをしっかりと、認識不足だ、こういうふうに思ってしまいます。

 そして、今回のこのTPPの協定で、外交交渉だから秘匿だと言うんですけれども、もちろんこれはわかりませんよ、外交ですから。寄託国であるニュージーランドと秘密条約を結んだと思いますけれども、その中で、交渉過程の文書が発効後四年間は非公開とされたと言いますけれども、これは各国の外交交渉というより、日本が言ってほしくなかったのが強いんじゃないか。

 最初から九五%、そしてTPPのような条約批准では、この中でいけば我々日本にとって非常に不利なことがあるので、これは四年間公表されなかった方がよかった、それの方がかえっていいと。そういうのであれば、やはり後発国が条件不利の中で参加していったと思わざるを得ないところがある。

 それは、やはり民主主義の中でいけば、外交交渉の過程、見せられるところは見せて、その上でしっかりと論議して、どんな対策をとっていくか。それは本当にやっていかないと、これは農業が今衰退、そして農業がだめになるときですよ。

 このまま何も交渉の中身もわからない、全く一切わからない。そして、対策も、それに対して、国際外交の中で農業がどうやって成長していくか、そして農業が続けられるか、農村社会がしっかり続けられるか、いろいろな複雑な問題を抱えているときに、どうしても政府は自分たちの外交交渉の成果だけ言う。その成果だけでは、農家の人たちは信じませんよ。いろいろな予算の中で余って、これは補正予算でも返ってきているものもあります。

 最後に大臣にもう一度お聞きして、私の質問を終わります。

森山国務大臣 村岡委員にお答えいたします。

 私は、委員が農林水産委員会等々、中山間地を含めて条件不利地域のことについて大変御心配をしておられて、いろいろな見識を持っておられるなと思っておりますが、そこの中山間地における認識というのは、私は全く一致しております。ここはしっかりやらなきゃいけないと思っています。

 また、米政策につきましても、TPPの関係よりも飼料米等のことについての現場の不安があることもよく承知をしています。ここは予算とのこともありますので、しっかりと対応していかなければなりませんので、また、農家の皆さんに不安があることもよくわかっておりますので、そこはよく御説明を申し上げて、御理解をいただくように今後も努力をしてまいります。

村岡委員 時間が来ましたので終わらせていただきますけれども、この条件不利等の中山間地もあるんですけれども、総理にも言いました雪国の北海道とか東北とか北陸だとか、これは雪で半年できない。このこともしっかりとわかっていただきたいと思い、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西川委員長 次に、武部新君。

武部委員 自由民主党の武部新です。

 改めて、熊本、大分を中心に発生しました地震でお亡くなりになられた皆様に御冥福をお祈りし、避難所で大変苦しい御生活をされている方々、被災者の皆様方にお見舞いを申し上げたいと思います。

 私からは、TPPの協定交渉の経緯について、そもそも論からちょっとお話をさせていただきたいと思います。

 民進党は、TPPに対するスタンスにつきまして、賛成なのか反対なのか態度を明らかにしていません。しかし、そもそも、TPP参加を言い出したのは民主党政権の当時の菅総理です。国を開くだとか、平成の開国だとか、TPP交渉参加に前のめりだった菅総理が、TPP交渉に参加するかしないか、まだ民主党がすったもんだしている間の平成二十二年、包括的経済連携に関する基本方針を閣議決定します。

 外務省に質問いたします。

 その基本方針の中で、経済連携について、品目の取り扱いについてはどのように書かれていますか。

武藤副大臣 私からお答えをさせていただきます。

 御指摘の包括的経済連携に関する基本方針においては、「特に、政治的・経済的に重要で、我が国に特に大きな利益をもたらすEPAや広域経済連携については、センシティブ品目について配慮を行いつつ、すべての品目を自由化交渉対象とし、交渉を通じて、高いレベルの経済連携を目指す。」と記載されております。

武部委員 全ての品目を自由化交渉対象とすると断言しているんですよ。

 確かに、センシティブ品目については「配慮を行いつつ、」と書いていますけれども、この配慮を行いつつというのも曖昧で、極めて、このセンシティブ品目を一体どう守るのかもよくわかりませんよ。この基本方針はTPPに限っていないんですよ。これは、タイトルのとおり、包括的経済連携に関する基本方針、EPA、広域経済連携についてと書いているんです。

 これまでEPAについては、今まで、おっしゃっていますけれども、除外、再協議ということはEPAであったんです。事前に、交渉する前に、これは除外しますとか再協議しますとかいうことから始まっているんですよ。

 ところが、この基本方針によって、交渉に参加する前から、検討する前から、もう全ての品目を自由化交渉の対象とすると書いてあるんです。丸腰で戦場に乗り込むようなものですよ、これ。

 当時の民主党政権の意思決定はどうなっていたかわかりません、今もわかりませんけれども、自民党なら、こんな閣議決定、総務会を通りませんよ。何をやっていたんですか、民主党の皆さん方は。篠原さん、農林水産副大臣だったでしょう、政府にいたじゃないですか。この決定が、後々まで政府を拘束しているんです。

 外務省に質問します。

 平成二十三年十一月、野田総理がAPECでオバマ大統領と会談しまして、TPP交渉参加の方針を表明されます。外務省に質問しますけれども、この会談の概要について、アメリカ政府が、野田首相は全ての物品・サービスを貿易自由化交渉のテーブルにのせると述べたと発表しました。これについて、これは事実でありますか。

武藤副大臣 御指摘の、APECの際に開催された日米首脳会談に関しまして、米側の発表資料においては、当時の野田総理が、全ての物品及びサービスを貿易自由化交渉のテーブルにのせると述べたとされております。

 ただし、野田総理は同首脳会談において、平成二十二年十一月に閣議決定された包括的経済連携に関する基本方針に基づきまして、高いレベルでの経済連携を進めていくという趣旨を説明したが、それ以上にその詳細について説明したわけではないと承知をしております。

武部委員 結局、この基本方針なんですよ。全ての品目を自由化交渉の対象とした民主党政権の基本方針が理由なんですよ。そのようにアメリカは理解しているんです。だから、訂正を要求しても訂正しなかったじゃないですか。

 これは、交渉参加をするときに、除外、再協議の品目を置くことを前提にしませんととられているんですよ、少なくともアメリカ政府は。それを今さら、政府は除外、再交渉の交渉はしたのかと民進党の議員が質問するのは本末転倒ですよ。それは民進党お得意のブーメランじゃないですか。そのまま返ってきますよ。

 二〇一三年の二月に、安倍総理がオバマ大統領と会談します。その中で、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められないことを確認し、交渉参加することを決めました。そして、実際、交渉の中で多くの例外を確保しました。

 石原大臣にお聞きします。

 安倍総理がオバマ大統領との会談で聖域なき関税撤廃を前提としないことを確認したことは、交渉を進める上で大変大きな意味があったと思いますが、いかがでしょうか。

石原国務大臣 委員の御指摘は、二〇一三年の二月のオバマ大統領と安倍総理との首脳会談での安倍総理のオバマ大統領との共同声明、これについて御言及されておりますけれども、これがなければ私たちはこの交渉に参加することはなかった、それだけ意味のあるものだと認識をしているところでございます。

武部委員 石原大臣のおっしゃるとおりなんですよ。これは私は、オバマ大統領と安倍総理の間で確認されたことによりまして、安倍総理が、TPP交渉の開始に当たって、これまで民主党政権が決めた方針で、不利な状態から土俵中央まで押し返したんだと思いますよ。これは、いろいろなことを言っているけれども、民主党政権がもしTPP交渉をこのまま続けていたら一体どんなことになっていたかと思ったら、私はぞっとします。

 次に、外交交渉の情報開示のあり方についてお聞きします。

 随分と野党の皆さん方は、TPP交渉過程の中身の詳細について明らかにされないと批判されています。黒塗りの資料を安倍政権の隠蔽体質だとか、荒唐無稽なことをおっしゃっています。

 だから、私も黒塗りの資料を振りかざします。これです。配付資料一でございますけれども、これは、二〇一二年の十一月、野田内閣当時に、情報公開法に基づく請求に応じて政府が開示した日・南アフリカ原子力協定の交渉関連文書です。真っ黒です。しかも、これはタイトルを見ると日程調整ですよ。日程調整でさえも全く出せない。民進党が振りかざしている資料より、いつもこれを見せていただいていますけれども、これよりも真っ黒じゃないですか。まっくろくろすけじゃないですか。こっちの方がノリ弁ですよ、見たらね。

 でも、私は、野田政権は隠蔽体質だったとは言いません。そもそも、これが外交交渉の常識だ。そうではないですか。政権当時は、外交交渉の情報開示はおのずと限界があるんですよ。TPPについては、いまだ発効もしていません。交渉経緯を明らかにするということはさらに困難だというふうに思います。

 そこで……(発言する者あり)隠しているじゃないか。外交交渉に関する情報開示のあり方について、改めて政府の見解を伺います。

石原国務大臣 委員がおっしゃられているとおり、外交交渉では、交渉参加国が率直で建設的な意見を議論できるように具体的なやりとりを開示しませんし、国際的な信頼関係を損なわないことが当然であるというのはもうまさに委員の御指摘のとおりだと思いますし、先般の当委員会でも、おおさか維新の下地委員が、普天間の辺野古移転の日米首脳会談の資料を、私どもの安倍総理に、示すようにというお話がありましたけれども、出すのかなと思ったんですが、安倍総理は出されなかった。当然のことだと思っております。

 TPP交渉につきましても、やはり秘密保護に関する書簡について皆様方から御批判は受けておりますけれども、先生がお見せいただいた資料でわかりますように、外交交渉においては、先ほどお示しいただいたのは日程調整ですか、こういうものについても実は示さない、おのずと制約されているんだと私も考えております。

 TPP交渉に関しては、その一方で、これまでも御議論になっておりますように、国民の皆さんの関心が大変高い。御同僚の村岡議員の御議論の中であったとおり、米農家の皆さんにとりましても大変関心が高いわけでございますから、交渉中も百七回記者会見をさせていただきましたし、協定の概要というものもその都度その都度お示しをさせていただいているわけでございます。

 これも、おおさか維新の方の御提言で資料を千七百ページ出していますけれども、やはりちょっと体系立っていない。私も見ましたけれども、やはり探すのが大変なわけですね。ですから、それもホームページで整理をさせていただいて国民の皆様方の情報提供に努めたところ、アクセスが一日二万件以上と大変大きなアクセスをいただいておりますので、これからも丁寧に御説明をさせていただきたい、こんなふうに考えております。

武部委員 実際に、下地委員もお話しされていましたけれども、民主党政権時代に、玄葉国家戦略担当大臣もこのTPP交渉についてこのように答弁されているんです。「交渉の過程においては、これは外交交渉でありますので、その内容をつまびらかに全て国民の皆さんの前に明らかにするというのはできないかもしれません」と。それが外交交渉なんだと思います。

 ですから、もう黒塗りのこのTPP会合資料の大きなフリップを持って選挙の応援に行ったり、あるいは中央会ですとかJAに手紙を送ったりしない方がいいですよ。それは……(発言する者あり)よっぽど気にしているんじゃないんだ。恥ずかしいんだよ。外交常識がないことを皆さん方は知らしめているんですよ。黒塗りで恥の上塗りにならないように進言いたしますよ。

 続いて、国会決議について伺わせていただきます。

 先日の委員会の議論におきまして、枠外関税を維持した品目でも枠内で譲歩しているから、聖域はゼロではないかとのやりとりがありました。これも、農家の皆さん方が一番関心があるのは、今自分のつくっている作物はどうなんだということなんですよ。無用な心配をかけることはないと思うんです。だからこそ、ここでしっかりと、どんな対策をするのか、どういった影響が出るのか、議論しなければならないと思います。重要五品目を守るためには、営農に与える影響を最小限にする、どう交渉結果があるのかが問題なんです。

 そこで、森山大臣にお聞きします。聖域を守ったかどうかの判断について、大臣の見解をお聞きしたいと思います。

森山国務大臣 武部委員にお答えいたします。

 物の見方にはそれぞれあるんだろうと私は基本的には思っています。しかし、今回のことについて守ったかどうかの判断は、各タリフラインがそのまま維持されたかどうかを個別に見るだけではなくて、品目全体にどのような影響があるかを見て判断をするべきではないかと考えています。

 例えば、わかりやすく申し上げると、武部委員の御地元である北海道における主要作物であるてん菜については、糖価調整制度及びその大前提である枠外税率を維持した上で、TPP参加国で生産される高糖度原料糖に限って関税を無税として、調整金を削減する等の措置を講じたところであります。

 これにより、現在輸入されるタイ産の粗糖の一部がTPP参加国産の高糖度原料糖に代替される可能性があるにとどまり、国内生産には特段の影響は見込みがたいというふうに考えておりまして、こういう全体的に見ていただくということが大事なことだと考えております。

 そういう意味では、しっかりと守られたと考えているところであります。

武部委員 私の地元は畑作中心ですから、そして酪農でございますから、今、てん菜、ビートのことを例にとっていただいて、わかりやすく御説明していただいたんだと思います。

 それから、私のところは余りお米はないですけれども、やはり日本の農業というのは米農業が中心でありますので、さらに、お米を用いた上で具体的にどのような判断で守ったと考えられるか、詳細についてお聞きしたいというふうに思います。

森山国務大臣 武部委員にお答えいたします。

 TPP交渉におきまして、我が国として米は最大のセンシティビティーな品目であることは踏まえております。ぎりぎりの交渉を行った結果、国家貿易対象の十七品目三十四ラインにつきましては、枠外税率はそのまま維持をさせていただきまして、十七ラインはそういうことでございます。

 また、十三年目以降、合計七万八千四百実トンと、国内消費の一%程度の数量のSBS方式による国別枠を設置いたしましたので、これにとどめることができたところでございます。ここに関係するライン数が十七ラインでございます。私は交渉結果として最善のものになったと考えております。

 具体的には、枠外税率については、現在これを支払って行われる輸入は極めて限定的であります。大体年間百トンから二百トンであります。この税率水準が維持されることにより、安価な輸入品の無秩序な流入は防止されると考えております。

 また、新設される国別枠につきましては、政策大綱に基づきまして、この国別枠の輸入量に相当する国産米を政府が備蓄米として買い入れて、輸入量の増加が国産主食米の需給及び価格に与える影響を遮断するということにしてあります。

 一方、民間貿易の調製品でございますが、これが二十四ラインありますけれども、例えば、あられ、煎餅のように、わずか一、二%の関税を削減するにとどめたものや、関税撤廃したものも、ビーフンのように、国産米を原料として国内で製造している製品がもともと限定的であり、国産米生産への影響が見込まれないものに限定をしております。

 以上の措置を総合的に御検討いただければ、国会決議を後ろ盾に相当の措置が講じられたことが御理解をいただけるのではないかというふうに考えております。

武部委員 ありがとうございます。

 状況をつまびらかに調査しながら限定的な対応をとられたということだと思いますが、他方で、重要五品目のうち約三割の百七十ラインについて関税撤廃をしたと理解しております。

 この関税撤廃をしたことについてはどのような考え方で整理されたのか、伺いたいと思います。

森山国務大臣 武部委員にお答えいたします。

 重要五品目のうち約三割に該当いたします百七十ラインが関税撤廃になるわけでございますが、これについては、たびたび御説明を申し上げておりますように、一つは、カッサバ芋、非処理ヨーグルトのように輸入実績がほぼないもの、二〇一〇年の実績が皆無であったものがこの中に五十六ライン含まれております。また、牛タン、ビーフン、粉チーズのように国産農産品との代替性が低いもの、繁殖豚のように関税撤廃がかえって生産者のメリットになるものといった三つの基準を総合的に勘案して選定しております。

 このように、重要五品目のうち関税撤廃したものについて、一つ一つのタリフラインを精査させていただいて、品目全体として影響が出ないように措置していると考えております。

武部委員 わかりやすく御説明いただいたと思います。実績がないもの、代替性が低いもの、そしてプラスになるものという判断で関税を撤廃されたということでありました。

 次の質問ですけれども、大臣が、実際に守ったかどうかを判断するに当たっては、関税に変更を加えなかったかどうかといった表面的な内容で判断すべきではない、そのようなお話だというふうに理解させていただきました。

 国会決議が守られたと言えるか、大臣の見解をお聞きしたいと思います。

森山国務大臣 武部委員にお答えいたします。

 今回の交渉結果につきましては、関税撤廃の例外を活用させていただきまして、米、麦、乳製品については、国家貿易制度を維持するとともに枠外税率も維持できました。

 また、豚肉については、差額関税制度を維持するとともにセーフガードを創設できました。

 牛肉については、長期間の関税削減期間を確保することにより、体質強化等を行うのに必要な期間を確保するとともにセーフガードを創設できました。

 砂糖については、糖価調整制度を維持した上で、一部の加糖調製品については関税割り当てを設定して、限定的な追加アクセスにとどめたところでございまして、個々の品目の実態を踏まえたものになっていると考えております。

 一方、関税撤廃したものについても、先ほど申し上げましたが、一つ一つのタリフラインを丁寧に精査させていただいて、全体として影響がないように措置できたと考えております。

 このように、実態に即して見て、国会決議の趣旨に沿っていると評価をしていただけると考えているところであります。

武部委員 今、国会決議の御認識のお話がありました。

 国会決議で肝心なことは、重要五品目についてでありますけれども、この決議の中身を読むと、引き続き再生産可能となるよう除外または再協議とすることとあるんです。

 今、森山大臣との議論がありましたけれども、再生産可能となることが目的なんですよ。除外または再協議をすることがその手段なんですよ。例えば、自分の立場で考えると、選挙で当選するよう地元を足しげく回ること、これは目的は当選のはずなんですよ。

 ですから、この重要五品目について、引き続き再生産できるためにどうするか。それは再協議、除外もそうかもしれませんけれども、しかし、厳しい交渉の中で多くの例外をとって、そしてなおかつ、例外だけでは生産者の皆様方の不安を払拭できない、であるからこそ、今度のTPP関連対策を講じたわけだというふうに思います。

 そこで、例外はとりましたけれども、それでも残る生産者の皆様方の不安を払拭して、その影響が出ないように十分対応するためにTPP関連対策を講じましたけれども、再生産可能を維持するための関連対策のポイントについて、大臣から御説明をお願いします。

    〔委員長退席、福井委員長代理着席〕

森山国務大臣 武部委員にお答えいたします。

 関連対策のポイントは何かというお尋ねでございますが、TPP関連対策につきましては、大筋合意されました直後から説明会等を開かせていただきまして、現場の声に耳を傾けてまいりました。こういう御意見等もしっかりと踏まえまして、昨年十一月に政策大綱を取りまとめたところでございます。

 具体的には、攻めの農林水産業への転換として、産地パワーアップ事業の創設や畜産クラスター事業の充実などの体質強化対策を集中的に講ずることといたしました。また、経営安定、安定供給のための備えとして、協定発効に合わせて牛・豚マルキンの法制化などの経営安定対策の充実等を講ずることといたしました。あわせて、農林水産業の成長産業化を一層進めるため、検討の継続項目として掲げた十二項目について、ことしの秋を目途に具体的内容を詰めているところでございます。

 このうち、体質強化対策につきましては、平成二十七年度補正予算におきまして三千百二十二億円を措置いたしまして、現在、各地域においてこれを活用した取り組みが始まっているところであります。

 また、政策大綱において、対策の財源については、既存の農林水産予算に支障を来さないように政府全体で責任を持って毎年の予算編成過程で確保することとしております。

 このようなTPP対策を推進することで、再生産が可能となり、次世代を担う生産者が、あすの農林水産業に夢と希望を持って経営発展に積極果敢に取り組み、所得の向上を図ることが可能になると考えております。

 新たな国際環境のもとでも、強くて豊かな農林水産業、美しく活力ある農山漁村をつくり上げてまいりたいと考えております。

武部委員 私も農業地域ですから、この大筋合意の後も、地元を回りますと大変厳しい声も言われましたし、それから、国会決議との整合性についても厳しい意見もいただきました。しかし、TPPのキャラバンでも回っていただいて、なおかつ関連対策を講じて、そして、年が明けて新年会とか、特に農協の農業の青年部の皆さん方ともよく話をしました。

 そのときに、予算、対策について大変感謝の声をいただきました。それで、やはり俺たち若い者が、確かにTPPには不安はあるけれども、これをしっかりと乗り越えてやっていく、そういった勇気も与えてもらった、しっかり頑張るよという声も、私、いただいています。

 ですから、そういう意欲のある農家の皆さん方、そして、このTPPを乗り越えて頑張るんだという農家の皆さん方をこれからしっかりと支えていくことが一番大事なことだというふうに思います。

 最後にお伺いさせていただきます。TPP協定における物品市場アクセスに係る再協議規定についてです。

 これについてもいろいろと御質問をいただいたり審議がされておりますけれども、やはり、七年後にもう一度、この例外について、なくなってしまう、そういうような協議がされてしまうんじゃないかというような声が、不安があります。

 これは、効力を生ずる日から七年後以後に、要請に基づき、関税、関税割り当て及びセーフガードの適用に関する原産品の取り扱いに関して協議を行うという規定でありますけれども……(発言する者あり)おっしゃっているとおり、日本だけこの規定があるのはという批判がありますけれども、それだけ日本がその例外をとったということだと私は思いますよ。

 十一カ国は一・五%、農産品については二割近くの例外を確保したからこそ、日本の農産品市場を狙っているTPPに参加している国について見ると、これはやはり何とかしなきゃという思いもあるんだと思います。

 ですから、そういったことがあると思いますので、この規定に対して政府はどのような対応をするか、お聞きしたいと思います。

    〔福井委員長代理退席、委員長着席〕

石原国務大臣 通商協定で、見直し、再協議というものは、大体の場合、入っております。そして、今回のTPPでございますけれども、関税撤廃に合意をしている品目については、要請があれば撤廃の時期について再協議をする規定があります。

 一方、委員の御指摘されましたように、我が国は多くの品目におきまして関税撤廃の例外となる措置を確保いたしました。委員の御指摘のとおり、農作物に至っては二割弱でございます。そうした関税撤廃の例外はその再協議の規定の対象とはなっておりませんので、関税撤廃の例外となる措置については、TPP協定の発効の七年がたった後に、相手国からの要請に基づき、協議を行うことに合意した国との間で再協議の規定を、これも相互主義でございますので、相互に設けるとさせていただきました。

 そこで、委員の御懸念というものは、再協議の結果、これまでかち得た例外をとられてしまうのではないか、そういう御心配だと思いますけれども、TPPというのはマルチの国々との間での通商協定でございますし、品目も多々ある、そんな中で合意がなされているわけでございます。ですから、再協議を行うといたしましても、このバランスが崩れてしまったら全てが崩れてしまう。

 日本の国益を害するようなことには私どもは合意する気はございませんし、相互に話がまとまらない限りは再協議しても物が成就しないわけでございますので、そのように日本はぎりぎりに守っていくということでございます。

武部委員 ありがとうございました。

 ぜひとも、しっかりとした外交交渉を引き続きお願いしたいというふうに思います。

 このTPPにつきましては、その協定の中身について議論を深めていこうと思います。そして、それで国民の皆様の理解を深めていただき、特に生産者の皆様方が抱えている不安について払拭しながら、先ほども申し上げましたけれども、意欲ある農家の皆様方がしっかりと農業を続けていけるように、これは野党も与党もないと思いますけれども、そういった対応をやっていこうということを呼びかけまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西川委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民進党の近藤洋介であります。

 私も、九州・熊本での大震災で被災をされている皆様方に心からまずもってお見舞いを申し上げたいと思います。

 先ほどの自民党の武部委員に指摘をされるまでもなく、TPP、環太平洋パートナーシップ協定、この構想に最初に取り組んだのは民主党であります。人口減少を迎えた我が国で、いかに働く場所を守り、国民生活を豊かにするのか、アジア太平洋の活力をどう取り込んでいくのか、その土俵がTPPになるかもしれない、こう考えたわけであります。そして同時に、隣の国、中国という存在、この中国を公正なルールを守る仲間に引き込みたい、そういう思いもございました。

 当時、確かに政権政党の中で大議論がございましたし、政権内でも議論がございました。

 亡くなられた古い大先輩の政治家でありますけれども、大平正芳首相の掲げられた環太平洋構想、そして田園都市構想、この二つの構想を何とか二十一世紀版で実現したい、こういう思いを持たれていた当時の野田佳彦首相の志に共鳴をし、経済産業副大臣でありましたが、TPP参加の道を探るべしという立場を私はとりました。

 山形県、農業県の代議士でありますから、厳しい、選挙に不利なことは承知をしておりました。予想どおり、ぼこぼこになりました。

 二〇一二年の秋の総選挙、その直前のJA山形の三千人大集会、各地で行われておりましたが、私も秋田の村岡議員と同様に、TPP参加絶対反対という鉢巻き、のぼり、皆さん、自民党の国会議員の方々がその鉢巻きを締め、県会議員の方々がその鉢巻きを締め、ステージに上がる中で、私は鉢巻きを締めず壇上に上がりました。

 自民党の国会議員の方々は、TPP交渉の参加の道を探ること自体、売国の道だという大演説をし、拍手喝采を浴びました。私は、ウルグアイ・ラウンドを経て、そもそも生産者の方々の所得が減っている、その環境を正す、戸別所得補償制度を整えて、農業生産者の方々に夢と希望を与える環境をつくることがまず第一だ、そのことをぜひ進めてもらいたいということを申し上げました。しかしながら、やじと怒号で私の声はかき消されました。

 あれから三年半がたちました。今のTPP、参加を検討していた当時の志とその目的を果たして果たすものであったかどうか、ふさわしいのかどうか、国会の審議を重ねるにつれ、まだ入り口でありますけれども、残念ながら、この私ですら、疑問点、不信感が高まっておる、このことをまず冒頭申し上げたいと思います。

 まず、石原担当大臣にお伺いしたいと思うんですが、安倍政権が今国会の目玉とされた、成長戦略の目玉とされたTPP条約の批准、関連法案、これは今、政府・与党の意図に反して、審議は入り口の段階から混迷をし、そして現在に至っております。

 国務大臣として、なぜこのような事態、すなわち、与野党の国対委員長会談で継続審議で合意をする、参議院に至っては特別委員会の設置も見送られている、なぜこのような事態になったと考えるのか。法案担当大臣として、この反省点、何があるか、お答えいただけますか。

石原国務大臣 冒頭、近藤委員が大変厳しい中でも意思を貫かれたということには、同じ政治家の一人として敬意を表させていただきたいと思います。

 しかし、今委員が御指摘されました与野党の国対委員長の間で継続審議に合意したという話は、私、佐藤国対委員長と毎日話しておりますけれども、その話は伺っておりません。

 委員会が冒頭混乱したということは、政府として、TPP協定関連法案の審議をお願いしている立場としては、大変申しわけないと思っておりますし、また、当委員会でも再三再四御議論になっている情報の公開についても、これまでも協定の概要についてはお示しをさせていただいている。

 その一方で、民進党、前民主党が政権のときにも外交案件については情報を開示しないし、また、当時のことについて要求があったとしても、現政権としても、外交案件については、経過については開示をしない、そういう中で制約がある。

 委員の御指摘のとおり、不足たる部分があれば、真摯に耳を傾けまして、ひたむきに答弁をさせていただくというのが政府の今の立場でございます。

近藤(洋)委員 岸田外務大臣にも伺いたいところですが、恐らく同じお答えなので、違うことがあれば、違う分析、反省点があるならば、お答えをいただけますか。

岸田国務大臣 基本的には、当然同様であります。

 三月八日、TPP協定そして関連法案を国会に提出させていただきました。御審議をお願いし、そして御承認をお願いする立場であります。

 こうした立場ですので、この審議のありようについて何か申し上げるのではなくして、ひたすら審議をお願いし、そして、御指摘をいただいた点につきましては謙虚に受けとめて、引き続き努力をしなければならない立場であると考えております。

近藤(洋)委員 もっとしっかり受けとめていただきたいんですね。

 石原大臣、私は、結論から言うと、今の政権の、もちろん外交交渉の保秘というのは十分、私も短い期間でありますが政務におりましたから、政府の中にいた経験、多少経験させていただきましたからそれは理解しますが、しかし、やはり行き過ぎた秘密主義というのが今回大きな障害になっていると言わざるを得ません。

 TPPの交渉の途中ならばいざ知らず、交渉がもう妥結した、そして、ここは国会の場であります。そこでなおかつまだ隠し、残念ながら取り繕うという姿勢が今回の特別委員会を通じて一気に明るみに出た、こういうことをまず申し上げたいと私は思うんです。

 具体的に申し上げたいと思うんですが、いわゆる黒塗りペーパーのきっかけとなった甘利・フロマン、甘利前大臣と米国のフロマン代表によるトップ会談、トップ交渉の記録問題をもう一度振り返りたい、こう思うんです。

 二十四回、二人だけで三十五時間行われたトップ交渉でありますけれども、このトップ交渉は、資料の二に添付させていただいておりますけれども、会談の際、首席交渉官なり事務方はその都度、甘利大臣から内容についての報告を受けて、そして、資料の二にありますとおり、幹部間で口頭ベースで内容を共有したと、民進党の、我々のヒアリングに対して対策本部は回答をしております。議事録は作成していないと回答をしております。

 鶴岡大使、前首席交渉官にお尋ねをいたします。

 これは事実でありますか。要するに、議事録は作成をしていない、幹部間は口頭のみで情報を共有したのは事実かどうかということであります。

 そしてもう一つは、甘利・フロマン会談に関連して、幹部間で情報は共有した。ここで言う幹部間は、鶴岡首席交渉官、大江博当時首席交渉官代理、佐々木さん、そして澁谷内閣審議官、また必要に応じてほか二名となっておりますけれども、この幹部間での情報共有に際して、メモなりペーパーというものは存在しなかったのかどうか、お答えいただけますでしょうか。

鶴岡参考人 お答え申し上げます。

 議事録を作成する場は、当然、大臣間で議題が定まり、それに向けて双方の立場が明らかにされ、それが次の交渉の進展に向けて整理をされたその結果が議事録になろうかと思うのでありますが、ただいま委員御指摘のとおり、この交渉は、いわばのべつ幕なしと申しましょうか、長時間にわたり、そして随時時間をつくりながら、閣僚同士が交渉いたしました。

 特にフロマン代表は、余人を交えず交渉することが彼の交渉のスタイルでございました。私は当時、首席交渉官の任にありまして、全体を統括して、交渉の進展について事務方を指示する責任にありましたけれども、私も排除をされたのでございます。大臣同士膝詰め談判がフロマン代表の交渉の仕方であったのであります。

 その中で、フロマン代表はさまざまなことを言われたと思いますが、正直、私は入っておりませんから、詳細については承知しておりません。しかし、長時間にわたるちょうちょうはっしのやりとりが一定の結論に出たところで、次にどういう課題をそれでは整理するかということが両大臣間で了解をされて、また引き続き交渉が行われる、この連続を、交渉期間中、あるいは場所を変えてもずっとやってまいりました。すなわち、長時間行われているちょうちょうはっしのやりとりは、いわば会議ではなくて言い合いといいますか、そういった内容ではなかったかと、これは私は想像するしかないのでありますが、思っております。

 ただ、交渉を進める上で必要なことは、その結果を踏まえて次にどういう手を打つかということでありますので、これを私どもは大臣からその都度必要があるたびに指示として受けたのでございます。その指示を踏まえまして、事務方を統括する私及び先ほど名前の挙がりました関係幹部で、それぞれの対応について関係部署と協議をしながら、大臣に対する御報告を申し上げる。

 こういったやりとりが、回数で申し上げると、ちょっと私は記憶が定かではございませんから申し上げられませんけれども、繰り返し繰り返し、一日の中でも何回となくこういったことをやりました。泊まり込みで一カ所に十二カ国の大臣が集まっているときは、深夜であろうが早朝であろうが交渉が行われます。それは呼び出しもあれば、こちらから呼び出すこともあります。その中で具体的な課題が進むという形で、議事録を作成するような、そういった性格の交渉ではなかったと私は理解しております。

 ただ、我々がやるべきことについて明確な課題の設定は、甘利大臣から我々に対する指示としておりてきておりました。

近藤(洋)委員 大使、簡潔にお答えいただきたい。どうぞお座りください。また伺います。

 要するに、確認したかったのは、では、議事録はないと。ただし、その都度その都度、私が聞いている範囲では、我々民進党のヒアリングでは、その都度大臣が二人だけの会談のときにも途中会議を中断して出てこられて、事務方は鶴岡さんをヘッドに数人で集まって作戦会議を開いた、そして、こういう話でこうなった、では、甘利大臣、こういうことを言ってください、こういうことをその都度その都度事務方が意見して、そして甘利大臣はまた二人だけの会談に入っていった、この繰り返しであった、こういうことを聞いております。

 その際、例えば澁谷審議官は、自分はその都度メモはとっていた、自分はメモはとった部分はあります、メモ帳にメモをとって、こういうことが行われた、こういうことはメモをとったことはある、こういうことはおっしゃっていました。

 鶴岡首席交渉官に確認したかったのは、あなたは、組織として、この数人の幹部が共有するために、その際、こういうことが会談で行われた、議論があったという記録を、議事録じゃなくても結構ですが、記録として残した作業というのをこのチームでされているのかされていないのかを確認したいんです。ないのであれば、全て鶴岡首席交渉官の頭の中にはしっかりそこは、あの場面のあの時点で甘利さんとフロマンさんの中で、米国がこういう主張をした、それに対して日本側はこういう答えをした、そしてこれに対してこういう打ち返しがあったということを全て克明に鶴岡さんは思い出すことができますか、それをお答えいただきたい。

鶴岡参考人 私も能力の低い人間でございますので、全て一つ一つを記憶し、それを再現する能力はございません。

 交渉中最も重要なことは交渉を前に進めることでございまして、大臣の指示を受けて、どういった関係者にどういった検討をさせるかを指示することでございます。記録をつくることが最も重要な仕事だとは私は考えておりませんでした。その交渉の結果が全て協定の本文に記されております。

 途中過程は先ほど申し上げましたが、もう何度となくフロマンとの間でも、あるいはほかの大臣との間でも甘利大臣は交渉されました。私も同様でございます。この交渉は十二カ国が錯綜した中で行われた交渉、我々はおくれて入った最後の国ですから、どうやって交渉の中に入り、それを進展させるか、その努力を全力でもって行いました。

 私が一つ申し上げたいのは、この過程で一名、課長が亡くなりました。命をささげて交渉いたしました。その点を国会のこの委員会に御報告申し上げたいと思います。松田誠という課長です。四十九歳で亡くなりました。この点は私は申し上げたいと思います。

近藤(洋)委員 松田課長の御家族には心から哀悼の言葉をささげたいと思います。

 しかし、我々も命を張って政治をやっているんです。官僚の方々も命を張って政治をやっている。同じです。それぞれの立場で命を張り、そして職を賭して仕事をしている、そのことには変わりはない、そういうことであります。

 大使、きちっと質問に答えていただきたい。要は記録がないということですね。だとすると、私は驚きなんですね。驚きです。

 かつて、これだけふくそうした複雑な会議、それを、鶴岡さんは極めて有能な官僚であられますから、それは極めて有能な外交官であられるから、要路要路のポイントは頭の中に入っているでしょう。しかし、それは、このわずか数名の限られた方々の頭にだけしか入っていない、そして甘利さんの頭にだけしか入っていないということがここで明らかになったわけです。これは非常に問題ですね。

 何を言いたいかというと、これはきちんと記録に残すことが、今オープンにしろと私は言いません。しかし、そのとき米国が何を言ったかということを日本政府として記録に残すことは、後の政権がそれをあわせて交渉することができるから、私は重要だと申し上げたいんです。このことは極めて重要なんですよ。

 かつて、日朝交渉の際に、北朝鮮との交渉の際に記録が全くないことに対して、安倍首相は何とおっしゃったか。これは大問題だと。当時の局長に対して、記録がないことは、これは何ということだということをお叱りをされたということは私は報道で聞いておりますけれども、これも全く同様じゃないでしょうか。

 岸田外務大臣、ぜひお願いしたいんですけれども、記録がないのであれば、大至急指示をしていただきたい。鶴岡さんが駐英大使としてイギリスに行かれる前に、甘利さんにもきっちり話を聞いて、ここにある名前の方々にきちっと状況を聴取して、大江、佐々木、澁谷、森、大澤各氏であります。この方々にしっかり話を聞いて、二十四回の甘利・フロマン会談で何が話し合われ、そのときどう米国が言ったのか、どういう打ち返しをしたのか、詳細な記録を外務省として残す必要がある、これは国家の責任だと思いますが、外務大臣、いかがですか。

岸田国務大臣 まず、御指摘の甘利・フロマン会談の議事録につきましては、外務省として、直接、この議事録を作成する、あるいは記録する、こうした立場にはありません。

 ただ、外務省として、この交渉全体の中でかかわっている部分があります。これにつきましては、公文書の管理に関する法律に基づいて適切に対応し、そして記録を残している、これは当然のことであると思います。

 ですから、外務省の所管分につきましては適切に対応していると我々は考えています。

近藤(洋)委員 では、ぜひ、外務省としてはその部分を適切に対処していただきたい、この場でお約束していただきたい。

 かつ、石原大臣、言っている意味はわかりますね。今公開しろとは言いません。内閣官房として、政府の責任においてきっちり記録を残していただきたい。議事録とは言いません、詳細な記録を残していただきたい、こういうことなんです。そして、その上で、政府においてきっちり保管をするということであります。

 これは外交だから外務大臣に申し上げましたが、これは石原大臣の責任においてその指示をするということをお約束いただけませんでしょうか。いかがでしょうか。

石原国務大臣 二点あると思うんですね。

 事実として、甘利・フロマン会談の議事録、あるいは議事要旨、あるいは発言要旨、あるいは指示、こういうものはないということは事実だと思います。

 そして二点目が、委員の御指摘のとおり、この甘利・フロマン会談をどう受けとめるか。これが外交交渉の会談等々で正式なものであれば議事録が作成されるということは、もう委員の御指摘のとおりでございます。

 しかし、このお話を聞かせていただいている限りにおきましては、甘利・フロマン会談は、なかなか首席交渉官同士の会合で、あるいはマルチの大臣会合で物が進まない、スタッグした段階のときに、どうすればこの難局を打開することができるのかといったような観点からお二人だけで会われた。

 誰か中に入っている者がおれば、委員の御指摘のとおり、これをつくるつくらないという議論を、外交文書として残す残さないを含めて検討することは可能でありますけれども、残念ながら、通訳以外入っていない、ましてや通訳の方々が記録をしているということがないという以上は、責任を持って内閣府としてその記録あるいは概要というものをつくる要素がないということも、ぜひ御理解いただきたいと思います。

近藤(洋)委員 石原大臣、なぜおわかりいただけないんですかね。では、甘利前大臣に話を聞けばよろしいじゃないですか。そして、内閣官房において、その責任において、駐英大使なり、そこに、後ろにいらっしゃる方々にきっちり聴取をすればいいだけの話なんです。その作業をしていただきたい。その作業が欠落しているのが問題だということを申し上げているんです。問題だと思いませんか、大臣、政治家として。

 いいですか。大臣だって、それはきっちり整理をしたものを持って、そして後世につなげるということが必要だと思いませんか。いかがですか、大臣、お答えいただきたい。

石原国務大臣 先ほど、この問題の二点についての私のお話をさせていただきましたが、後段の甘利・フロマン会談、これが正式な外交交渉であるのかないのか。

 記録がない以上、正式に話を二人でしていることは事実でございますけれども、残念ながら、中に、本来、外交会談であるならば、記録をとる必要があると両者が感じ得れば、速記者が入っていると思います。

 しかし、さっき言いましたように、今回のTPP交渉は、マルチの、しかも並行交渉が各国といろいろある、こういうツーライン流れている交渉の中で、何度も何度も、私もこれは報道ベースで承知しておりますけれども、このTPP交渉が御破算になるという局面が何度かあったと思います。その都度、甘利・フロマン会談によってこの難局を打開する、そういう形でこの会談が持たれた。

 その会談の内容を、ヒアリング、要するに、一年以上前の話、あるいは二年以上前の話をヒアリングして物をつくるということが外交の記録としてなし得るのか、なし得ないのか、また、それが記録として残すに値するものなのか、しないものなのか、こういうことも考えなければ委員の御質問にはお答えできないんだと思っております。

近藤(洋)委員 要するに、政府においてこれまでやるべきことをやっていないからいけないわけであって、やっていなかったけれども、過ちを正すにはばかることなかれ、今もまだ鶴岡さんはここにいらっしゃるんだから、駐英大使に行ってしまったらそういうことができなくなるから、では、ずっと鶴岡さんにいていただいて、甘利さんも病気療養から戻ったら速やかにやったらいいんじゃないですか。本来ならその都度やっておくべきことをやっていないから、私はこんなことを言っているわけです。

 大臣、我々は、これは交渉後の話ですから、ぜひきっちり残すべきだと重ねて申し上げますし、こういう政府の姿勢ではとても国民の不信感は拭い切れないということを重ねて申し上げておきます。

 自民党政権の中でも立派な方はいたんですよ。試みはあったんです。

 西村副大臣。西村副大臣は、この交渉中に、交渉のテキストを公開したらいいんじゃないか、国会議員に対して一定の条件つきで公開すべきではないかということを発言し、その検討を指示されました。

 資料の四に添付をしております。西村副大臣は五月四日に、まさにまだ交渉中の段階でありましたけれども、米国議会においてアメリカの国会議員がテキストにアクセスできる、テキストを閲覧できる、それを見て、日本の国会でもできないかということを検討すべきだという発言をされております。そして、事務方に、日米の間の制度の違いはあれど、何ができるか早急に結論を出したいということを発言されました。残念ながら、その発言の数日後に、誰の圧力かわかりませんけれども、急にトーンダウンをしてしまいました。残念なことであります。

 このことを受けて、我々民進党は、議員立法で、お手元の資料にあるように、情報公開法、通商交渉に関する情報公開促進の法律案を提案しております。どうぞここは政府においてもまた検討していただきたい。提言だけ申し上げておきます。

 これは、大臣、結局、議会というものに対してきちんと、もちろん一定程度の制限をかけるのは当然でありますけれども、しっかり情報を公開する、そして理解を深めるという作業が、やはり丁寧な作業が必要なんです。こういうことを前に進める、もちろん日米の制度の差はあれど、やはりそういう取り組みを今からでも遅くはないから早急にすべきだということもあえて提言をさせていただきたい、こう思います。

 次の質問に移ります。

 こういう中で、やはり、西川委員長の出されようとした本のことに、私、残念ですが、触れざるを得ません。

 西川公也委員長は、TPP特別委員会の理事懇談会の席上で、TPP交渉の経緯について、「TPPの真実」という題名の本を出版する準備を進めている旨を既に表明されております。

 この件について伺います。特に農水大臣に伺います。

 内閣官房、農林水産省の職員、出向中の方も含めて、この本の作成に当たり、資料の提出、原稿の代筆、または内容の確認など、何らかの形で協力した職員は皆無であると言えますか。この確認です。

 また、本件について、具体的にどのような聞き取り調査を行われましたか。

 これをお答えください。

森山国務大臣 近藤委員にお答えいたします。

 一般論として、国会議員から政府に資料要求や事実関係の確認があれば、適切に対応しているところであります。

 今回の件について言えば、既にお答えをしたとおり、具体的に執筆に協力した職員は確認をされなかったところであると承知をしております。

 また、どのような調査をしたのかということでございますが、省内でTPP交渉等にかかわる担当職員に対しまして、西川委員長が出版を検討されていると報道されている本のゲラのチェックという形で具体的に執筆に協力したかは確認をいたしましたが、先ほど申し上げたとおりでございます。

近藤(洋)委員 確認をされなかった、そうですね。それは大事な答弁ですからね。そういうことですね。確認をされなかったということですね。いなかった……(森山国務大臣「確認はしました」と呼ぶ)したんですね。確認をして、いなかったということですね、大臣。(森山国務大臣「はい」と呼ぶ)わかりました。後で出てきたらこれは大変なことになりますからね、いいですか。わかりました。

 では、ここであえて伺います。

 石原大臣、西川大臣というのは明らかにTPP交渉を担った主要人物です。これは周知の事実であります。

 西川委員長が内閣委員会の筆頭理事の当時、私は野党の筆頭理事でありました。当時、西川委員長がTPP対策委員長として、政府の御名代のような立場で豪州やニュージーランドに御出張されていた。このことについて私もよく存じておりました。委員会日程も、率直に申し上げて、協力を申し上げました。甘利大臣の御出張にも内閣委員会筆頭理事として御協力を申し上げました。

 そういう方が、西川委員長が、仮に、伝えられているところの、正規の手続を経ないで情報を入手して、そしてそれを、保秘に当たるもの、政府が保秘だと判断するものを出版する準備をしていた、中身はともかくとして、そういう立場にある方がその準備をしていた。この事実だけでも、石原大臣、私は、極めて反省すべき事案ではないか、こう思うんですね。やはりこの審議の混乱の一つの大きな要因であったことは疑わざる事実であります。また、もうあえて申し上げませんが、西川委員長は、自分の、我々が入手をしている、私はゲラだと断定しておりますけれども、これについても半ば認められているわけであります。

 こういうことを出版をしようとしていたという事実だけでも、私はこれは軽率な行動だった、大変申し上げにくいんですけれども、西川委員長の功績を知るがゆえに、あえて、これは極めて軽率な行動だったと思わざるを得ないのですが、法案担当の責任者として石原大臣はどのように考えますか。

石原国務大臣 先ほども御答弁をさせていただきましたが、私どもは、このTPPの協定並びに農業の政策等々、そのほか十本にまとめさせていただいておりますが、この御審議をしていただく立場でございます。そんな委員会が混乱をしたということについては、提案をしている者として率直に申しわけないと思っております。

 実りある議論をしていく上で、その前にも情報公開の範囲をめぐって委員が、今すぐにとは言わない、もちろん外交文書になれば、外交文書の公開というものは外交文書によって異なるわけですけれども、当然、制約がある形の中でこれだけのことしか申すことができないという形で、委員の御不満があるということも承知をしております。

 私も、西川委員長は、農政につきまして識見もあるいは業績もある方だと思っております。しかし、残念ながら、どのような内容の御本を執筆されようとしているのかということを私は存じません。

 もちろん、報道ベースではそういうものがありますし、また、当委員会をめぐってもゲラのようなものを多くの委員の方々がかざされて、これは本物だと言うことから推察しても、そういう準備をされていたことは間違いないと認識をしておりますけれども、その内容が、委員が御指摘になられますように、本当にどういうものなのかがわからない以上は、それがどうであるこうであるということは今の段階で御答弁することはできないということもぜひ御承知いただきたいと思います。

近藤(洋)委員 時間ですのでやめますが、そのような御答弁を繰り返されているようでは、大臣、この審議はきちんとした形に進まないと思うんです。

 申しわけないですが、西川委員長の行動は私は軽率だったと断じざるを得ません。それをきちんとただすのであれば、西川委員長がやはりこの本のゲラと言われるもの、内容についてみずから公開するということをすべきであるし、石原大臣は所管大臣として、西川委員長にそのことを他人事ではなくてきちんとただして、そして、状況を聴取して、ただした上で委員会に臨むという姿勢が求められて当然だろうと私は思うんですね。

 そういうこともされずに、知らない本だからという答弁を繰り返されるようでは、とてもこれは政府の説明責任を果たしたとは言えない。法案も、ステーキとビフテキとラーメンとそばを一緒にまとめたような、十一本まとめたような、こういう乱暴な法案ではとても真っ当な審議はできないということも申し上げて、時間ですので質問を終わります。

西川委員長 次に、斉藤和子君。

斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。よろしくお願いします。

 二十日に続いて、TPPと食の安全について質問をいたします。

 TPPによる輸入食品の急増、それに基づいて検査率は低下するおそれがある、そして、輸入食品の安全、安心が確保できるのか、非常に不安な状態、重大な事態になることを前回の質問で指摘させていただきました。

 実は、さらに実態は深刻です。パネルをごらんいただきたいんですけれども、これは二〇一四年、国が行っている行政検査、いわゆるモニタリング検査で食品衛生法違反とされた輸入食品が全量消費された一覧表です。

 まず初めに、厚労大臣に認識をお聞きしたいんですけれども、残留農薬違反の生鮮トマトは八・四トン余り、一人当たり百五十グラムと仮定しますと、実に約五万六千人分が全量消費されてしまっている。

 それ以外にも、残留農薬違反の生鮮キャベツが八百人分、残留農薬違反の生鮮マンゴーが、三千四百五十人分と千八百二十五人分で五千人分を超えている。残留農薬違反の生鮮青トウガラシが九千人分と百人分、食中毒菌の汚染がある冷凍むき身アカガイが三百人分、これは全量消費ないし全量販売されているもので、これ以外にも、一部消費済みのものがあるわけです。

 厚生労働大臣に、これらの実態、御存じでしょうか。そして、なぜこういう実態が起こるのか、明らかにしていただきたいと思います。

塩崎国務大臣 以前にお答えを申し上げたとおり、食品の輸入に当たっての検査というのは、検疫所において、食品添加物や残留農薬、遺伝子組み換え食品等を検査するために、サンプルを抜き出してやるモニタリング検査を実施した上で、モニタリング検査等の結果、食品衛生法の違反の可能性が高いと判断された食品について全量を検査する命令検査等を実施するということで、既に流通している違反食品については、その上で回収をしている。

 こういう格好になっているわけでございまして、この検査体制を的確に実施しながら行くということで、今お話がございましたが、確かに、全量消費済みというのがあるんだということでございますけれども、サンプリング調査の確認の結果が出ていない段階で、検査結果が判明するまで流通を制限するというのはなかなか難しい、理由が乏しいというか。

 ということで、オーストラリアなんかでも、他の国でもそうなんですが、日本と同様に、とめ置きをするということはやっていないようでございまして、特に生鮮食料品の場合には、とめ置きをすることによって全てが生鮮ではなくなってしまうということもございますので、そこのところのバランスを考えた上での二段構えの検査にしているということでございます。

斉藤(和)委員 回収するという問題ではなくて、もう既に国民の方の誰かがこれを口にしている、違反のものを口にしているということが非常に問題なわけです。

 このような実態というのは、二〇一四年でこの表はつくりましたが、二〇一四年だけに限りません。二〇〇三年から現在までのモニタリング検査で基準違反、つまり食品衛生法違反になった輸入食品のうち、全量消費済み、全量販売済み及び一部販売済みとなった件数の合計を明らかにしていただけないでしょうか。

福田政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇〇三年度から二〇一四年度に検疫所で行いましたモニタリング検査の結果により食品衛生法違反となりました輸入届け出二千三百六十件のうち、全量販売済み、全量消費済み、一部販売済みとなったものは、それぞれ、全量販売済みが百四十件、これは約六%に当たります。それから全量消費済み、これが百三十四件、これも大体六%に当たります。一部販売済みが十六件、約一%ということでございます。

 以上でございます。

斉藤(和)委員 そもそも、前回言いましたけれども、検査されているものはたったの八・八%です。そのうちモニタリング検査は二・六%、しかも、その中で検査されたもので既に全量消費されているものが百四十件、トータルすれば二百件を超えるものが食べられている。これで本当に国民の食の安全、安心が守れていると言うのかと、非常に私は疑問に思うわけです。本来市場に出るはずのない、食べてはならない輸入食品が出回り、それを食べてしまっている。考えられない実態が今現に日本で起こっている。

 二〇〇七年一月と二月には、さらに、安全性未審査の遺伝子組み換えのお米で製造された乾麺、ビーフン、この間ビーフンが話題になっていますが、これが九百五十一キログラム、約一万五千人分が流通し、消費をされています。

 TPPで輸入食品の急増をもたらそうとされている状況の中で、このような事態が二度と起こらないと断言できるでしょうか。いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今、輸入食品の安全性についての御懸念を前回に引き続いてお話をいただいているわけで、私どもとしても、これは万全の構えで輸入食品の安全性を確認した上で皆様方に消費していただきたい、こう思っているわけでございまして、その精度を上げるというようなことは当然、前回のとおり、人材的にもそれから能力的にも、検査機器を含めてやっていかなきゃいけないというふうに思っております。

 今、遺伝子組み換えの話もありましたが、先ほどお取り上げをいただいた、全量消費されてしまっているケース、あるいは途中まで消費を既にされているというようなケースがあるじゃないか、こういうことでございますが、全く同じことがやはり国内の安全性、つまり国内産のものについても同じことが言えるわけで、そのチェックの体制も同じように、サンプリング調査と命令検査、この二段構えでやっているわけでございます。

 したがって、今後ますます輸入がふえるということであれば、それは当然のことながら、その精度を上げていく、確度を上げていくということは当然でございますので、もちろん、今そういうことが全くないということを断言できるかと言われても、それはなかなか、国内の産品でも同じような問題を抱える可能性は十分あるわけでございますので、そこまでは申し上げることはなかなか難しいわけでありますけれども、そういうことがないように、体制をさらに強化していくということを申し上げているところでございます。

斉藤(和)委員 いろいろおっしゃられましたけれども、やはり断言はできないわけです。

 なぜ、市場に出回らないはずのものを食べてしまうのかということが問題だと思うんです。そこには、やはりモニタリング検査という制度そのものに問題があると私は思っています。

 一九九五年の食品衛生法改悪によって、国がやる検査はモニタリング検査、今行われている検査になりました。このモニタリング検査は、検査結果が出る前に輸入を認める検査になっているために、違反が見つかった時点ではこのような、消費されているというような事態を招くわけです。

 本来、検疫検査というのは、検査結果が出るまではとめ置いて、問題がなければ輸入を認める、現在でいえば命令検査のようなことが行われているというふうに多くの皆さんは思うわけです。

 もとをただせば、一九八九年の日米構造協議でアメリカ政府から輸入手続の緩和要求が出されたことから始まります。一九九三年の総務庁行政監察局の報告の中で、輸入食品監視業務については、国際貿易の活性化により、国の内外から審査及び検査の迅速化、規制の緩和の要請がありと、アメリカ政府を初めとする圧力があることを認めています。

 こうした状況の中で、食の安全を守る点からも、このモニタリング検査を結果が出るまでしっかりととめ置く検査に変えない限り、やはりこのような同じようなことが繰り返されるのではないかと私は考えるわけですが、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、このモニタリング検査というのは、過去の検査結果とかそれから輸出国からの情報とか、そういうものから、違反の可能性の低いと判断できる食品についてサンプリング調査を行って違反の可能性を確認するということで、もちろん輸出国の情報を独自にまた別途とっているわけでございますので、そういう可能性がどうかということを総合判断してサンプリング調査をやるということもやっているわけでございます。

 したがって、先ほど申し上げたように、他国でもおおむねそのようなプラクティスをとっているというふうに聞いているわけでございますが、その確認の結果が出ていない段階で、検査結果が判明するまで流通を全部ストップするというのはなかなか難しいのではないか。

 結論はどういうことかといえば、やはり安全性を守りながら、そこに最大限の努力をし、その上で、輸入することについてのメリットを国民が、消費者がどう享受するかというバランスの中で、当然、責任を負っている私どもとしても、最大限の努力をしながら検査をしていくということをやらなければいけない。そのことによって食の安全というものを守るということを果たしていかなければならないのではないかというふうに思います。

斉藤(和)委員 大臣、もう一度聞きます。

 違反の低いものをサンプリング検査でやっているんだけれども、違反事例が出ていて、食べてしまっている現状がある。私は、やはり結果が出るまでとめ置く必要があると思いますが、せめて、そういうモニタリング検査を、検疫検査、要はとめ置く検査に強化するということを検討する考えがあるかないか。

 ないといえばその理由を明らかにしていただきたいということとあわせて、TPPを批准した場合、モニタリング検査を今言った検査結果が出るまでとめ置く検疫検査にするという、要は検査を強化するということができるんでしょうか。TPP協定に即して、ぜひ明らかにしていただきたいと思うのですが。

塩崎国務大臣 それは、国の政策として判断をしてとめるということは、それはできないことはないというふうに思いますが、また一方で、TPP協定の中でとめることが何か協定違反になるかというと、それはなるということは私どもは想定をしているわけではないのでありまして、先ほど申し上げたように、流通を制限する理由に十分当たるかどうかということが判断の分かれ道だろうというふうに思います。

 これは、先ほど申し上げたように、当然、違反の可能性が高ければ、これは全量とめて検査をするということをやらなきゃいけないわけで、そういう事前の情報をしっかりとり、またもう一つ大事なことは、やはり、輸出国側に日本の基準が厳しいということを周知徹底していくという努力も、私どもの責任の一つとしてやっていかなければいけないことだというふうに思っているわけでございます。

 そういった面での努力というものも当然やり、日本はやはり厳しいということがわかって、輸出する側も、それをやらない限りは大体察知をされて検査をされるということがわかっておれば、そういうことに留意をしながら輸出してくるということの可能性が高くなるので、そういうところでの努力も含めた総合的な政策をとることで食の安全を果たしていく、実現を果たしていくということが大事なのではないかというふうに思います。

斉藤(和)委員 とめ置くことがTPPの協定違反になるとは想定していないという御答弁だったんですけれども、これは強化してもいいのかどうかということがかかわってくると思うんですが、ちょっとこれは時間もないので次に送ります。

 輸出国側に周知徹底していると言うんですが、これはこれまでもやってきていることなんです。日本は検査が厳しいぞと言うけれども、現に今やっているのは八・八%で、現に食べてしまっている現状もある。こういうところは、しっかりと検査率を上げていくということがやはり求められているというふうに思います。

 さらに、もう一つお聞きします。

 TPP協定では、第二章二十七条で遺伝子組み換え食品についての規定が明記をされています。このような貿易協定というのは初めてだと思いますが、この規定の意味と、これまでこのような遺伝子組み換え食品の貿易について規定された貿易協定があったかどうか、これをお聞きいたします。

石原国務大臣 ただいま委員が御指摘をされましたのは、物品の市場アクセスの章の二十七条だと承知をしておりますが、その規定の趣旨は、未承認の遺伝子組み換え作物が微量に混入した作物の輸入の未然防止や発生時の迅速な対応のため、TPP締約国の間で協力を図ろう、そういう趣旨でございます。

 この点は、第二章二十七条の「貿易に関する透明性、協力及び情報交換の重要性を確認する。」というふうに明示的に規定をされているところでもあります。また、二十七条には、この条のいかなる規定も、締約国に対し、自国の領域において、いわゆる遺伝子組み換え製品を規制するための自国の法令、政策の修正を求めるものではないとも明確に規定をしております。

 したがいまして、遺伝子組み換え食品に関する認証等について情報交換をするということでございまして、我が国の法制度を見直して遺伝子組み換え食品の貿易を拡大しよう、そういうものではないと認識をさせていただいております。

斉藤(和)委員 大臣、一問お答えになっていないんですが、こういう遺伝子組み換えの食品の貿易について、これまでの貿易協定の中でありましたか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣官房で遺伝子組み換え農産品について完全に把握しているわけではございませんので、現時点で把握し得る限りでは、これまでの通商協定において、TPPにおけるバイオテクノロジーの農産品に関する規定と同様の規定を有しているものは、現時点では確認できておりません。

 しかし、APECでありますとか、あるいはコーデックス委員会など、国際的な場において、LLP、微量混入の問題が国際的にもこれまでずっと議論されてきたということは承知しているところでございます。

斉藤(和)委員 つまり、日本が今結んでいる貿易協定の中で、遺伝子組み換えを、市場アクセスや、要は貿易を拡大するという条項の中に入れているということはないわけです。まさに、TPP協定で初めて、遺伝子組み換え食品の貿易ルールが定められたということになるわけです。

 これは、先ほど指摘したように、未承認の遺伝子組み換え食品の微量混入による貿易の混乱の可能性を減らすために、あれこれの規定を盛り込み、情報を共有すると言うけれども、それは誰にとっての情報を共有するのかという問題が出てくるわけです。

 また、モンサント社などが、この遺伝子組み換えの条項が第二章の内国民待遇及び物品の市場アクセスに入ったということを称賛するようなコメントも出しているわけで、これは決して、やはり消費者が望むようなものではないというふうに思うわけです。

 しかも、今、このTPPの中で、四十八時間通関制度というのが導入されようとしています。これに基づいて、現在、厚生労働省が海外のHACCP導入企業で製造された食品については無検査で輸入を検討しているということが報道されていますけれども、厚労大臣、このような検討は進められているんでしょうか。

塩崎国務大臣 輸入時の検査には、サンプリングにより安全性を確認するモニタリング検査と命令検査と、それからもう一つ、輸入者が事業者の責務に基づいて行う指導検査というのがございます。

 食品衛生管理の国際基準でありますHACCPは、原材料の入荷から出荷まで、発生する危害を防止するため特に重要な工程を管理する手法ということになっていまして、HACCPが導入された食品製造施設におきましては、食品の製造事業者みずからがHACCPの衛生管理手法が遵守されていることを定期的に確認することが必要なわけでございます。

 したがって、厚生労働省に登録をされましたHACCPにより管理を行っている製造施設から輸入される食品につきましては、輸入者が事業者としての責務に基づいて行う指導検査を省略することが可能だということを考えておりまして、この制度を本年度中に開始する方向で検討しているわけであります。

 なお、本制度では、検疫所が行うモニタリング検査や厚生労働大臣の命令によって行う命令検査はこれまでと同様に実施をするわけでございますので、厚生労働省による検査が省略をされるということでは全くないということでございます。

 いずれにしても、HACCPによって管理された食品の輸入を推進するとともに、同時に、引き続き、輸入食品の検査等を着実に実施して、食品の安全性の確保に努めなければならないというふうに考えております。

斉藤(和)委員 HACCP企業については、省略だとか今年度中にやるというお話でしたけれども、HACCP企業だから大丈夫かといったら、例えばマクドナルド社のチキンナゲットをつくっていた中国の企業もHACCPを導入していたわけです。だから、それをもって安全だということは決して言えない。

 やはり、輸入食品が急増して、日本の農家の皆さんは非常に不安に思っているし、再生産できるのかどうか、これも不安になるわけです。そもそも、国民の多くの皆さんは、多くが国産を求めているわけです。そうした状況の中でさらに輸入を拡大するようなTPPは、やはり直ちに撤退することを強く求めて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

西川委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 おおさか維新の会の河野正美でございます。

 冒頭、私のふるさと九州で発生いたしました一連の地震で被災された方にお見舞いを申し上げたいと思いますし、また、お亡くなりになられました方々の御冥福をお祈り申し上げるところでございます。また、今なお救出活動が続いておりますので、そういったことについてもしっかりとやっていただきたいと思います。

 今回の熊本地震によって、九州内での農林水産業の生産に大きな影響が及ぶことが推測されております。九州はTPPによる生産への影響とあわせて対応を進めていかなければならないと思っておりますが、まず、政府として、現状認識と今後の対応について伺いたいと思います。

森山国務大臣 河野委員にお答えいたします。

 TPPにつきましては、政策大綱に基づきまして、確実に再生産が可能となるように、交渉で獲得した措置とあわせて、万全の措置を講じていくことが大事だろうと思っております。意欲ある農林漁業者の不安を払拭し、希望を持って経営に取り組めるようにするということでございます。

 また、今回の熊本地震による農林水産関係の被害状況についてでございますが、現時点では、農地の地割れや液状化が非常に大きいと思います。また、選果場が破損したり、農業用ハウスの損傷がかなりの数見られます。また、乳業工場が操業停止しておりますし、畜舎等が損壊をしておりまして、死亡牛が発生をしてきております。また、一部のため池にひび割れが見られますし、林地の荒廃、林道施設の損壊等の被害が生じていると報告を受けているところでございます。

 農林水産省といたしましては、農業土木技術職員、森林土木技術職員、水産庁の職員を現地に派遣いたしまして、関係自治体とともに連携して、速やかに被害状況の全容を把握するとともに、一日も早い経営再開に向けて、迅速かつ的確な復旧に努力をしてまいりたいと考えております。

西川委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

西川委員長 速記を起こしてください。

 河野正美君。

河野(正)委員 冒頭述べましたように、今、災害が起きて大変苦しんでいらっしゃる方がたくさんいらっしゃる時期でありますので、しっかり審議時間は審議をして、大臣を含めて拘束をしないようにしなければならないと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次の質問に参ります。

 政府は、昨年十二月、TPP協定の経済効果分析を公表し、TPP大筋合意の内容をもとにした試算を示されました。この中では、農林水産業については、関税削減や撤廃されることによって、およそ千三百から二千百億円の生産額の減少が見込まれるとしています。

 これに対して、各県でも試算が行われていることと思いますが、私の地元である福岡県におきましても、農林水産物の生産額への影響を、政府の試算に基づき、およそ十二億円から二十億円減少するというふうに算出をしております。

 福岡県の試算によれば、生産減少額として大きいのは、牛肉の六・九億円、豚肉四・二億円などの畜産、そして小麦三・七億円といった品目が目立つかと思います。また、米については、国レベルでの試算と同様、生産は減らないという結果でした。

 まず、こうした自治体による試算について、政府がどのように受けとめられているのかを確認させていただきたいと思います。

森山国務大臣 河野委員にお答えいたします。

 TPPの影響につきましては、三十七道府県において一定の試算が行われております。そのうち、三十二の道県は国に準じた試算の方法をとっておられると承知をしています。

 この三十二道県のうち八の道県においては、国が試算していない品目も追加して試算をされたケース、一部の品目で国の試算と異なる考え方で試算がなされておりますが、残りの二十四県は国の対象品目の範囲内で試算が行われていると承知をしています。

 また、残りの五府県については国と異なる方法で試算が行われていると承知をしております。

 もとより、試算は一定の前提のもとで行われるものであることから、一部の県においては、県の独自の考え方を反映して、国と異なる方法で特定の品目についての試算が行われております。

 国の試算は、国内価格や国際価格、輸入量などのデータをもとにした品目ごとの影響分析、及び政策大綱に基づく国内対策の実施を前提として影響を試算したものでございます。引き続き丁寧に説明をしていくことが大事であるというふうに考えております。国の試算についての御理解を得るべく努力をしてまいります。

河野(正)委員 福岡県は、このような試算を踏まえ、県内のおよそ三万五千戸の農家に対して、不安を払拭できるような予算を用意していくというふうにしております。

 一方で、JAグループ福岡は独自に試算を行い、三月二十九日にその結果を公表しています。その試算では、福岡県の農林水産業の生産減少額は二百五十九億円から三百十一億円程度と推定しております。福岡県の試算に比べて約十七倍もの大きな影響があるというふうにされております。農林水産物の生産量について、より厳しい影響を受けるだろうと見込んでいるところであります。

 このJAグループ福岡の試算を見れば、生産者にとって不安は拭いがたいというふうに思いますが、政府はどのように受けとめられているか、伺いたいと思います。

森山国務大臣 JA福岡中央会が、大学の教授に委託をされまして、県内の農業に及ぼす影響額を公表されたことは承知をいたしております。

 このような試算は、前提条件、分析手法やデータのとり方等によって結果は変わり得るものであると考えております。

 このJA福岡中央会の試算でございますが、実際の米の備蓄運営や国産品と外国産品の品質格差などの流通実態が十分考慮されていない面があるというふうに考えております。

 例えば米について、備蓄の買い入れ数量をふやしても、その後、備蓄米は国が主食として販売することから米の価格が下がると言っておられますけれども、こういうことは我々が今考えておることとは全く反対の考え方でございます。

 また、ブドウについて、生果、果汁ともに関税撤廃により国産品の価格が品質と関係なく一律に低下するという前提で計算をしておられますけれども、それによって生産量が減少することで約三割生産額が減少するというふうになっておりますが、実際には、ブドウについては、国産と輸入物については品質が変わりますので、すみ分けはきちっとできているというふうに考えております。

 また、備蓄米のことにつきましても、先ほど申し上げたようなことでございます。

 また、福岡県庁の試算では、国の試算方法に準じまして、生産減少額については、米はゼロ億円、農林水産物全体でも約十二億から二十億円としておられますので、これと比較しても、JA福岡中央会の試算とは大きな開きがございます。

 いずれにしても、今後とも、各地域に対しまして合意内容を丁寧に説明させていただきまして、政策大綱に基づく万全の措置を講ずることにより、農林漁業者の不安と懸念を解消してまいりたいと思っておりますし、私も、先日、JA福岡中央会の会長とはお目にかかりまして、そこのところはよく御説明を申し上げてきたところでございます。

河野(正)委員 福岡は、アジアのゲートウエーとして、発展著しい市場の成長力を取り込んでいくことに力を入れております。TPPをきっかけとして、日本の外にまた新たな市場を求めて頑張っていかなければいけないものと思います。

 その際に、やはり政府がいろいろと意見をするよりも、地方にお金や権限を委ねて、地方の知恵と努力に任せる、そうした環境をつくっていくことが重要ではないかと思いますが、TPP担当大臣の御意見を伺いたいと思います。

石原国務大臣 委員の御出身の福岡は、いわば東南アジアへのゲートウエーとして大変繁栄をしている地域ではないかと思っております。

 このTPP交渉によりまして、アジア太平洋地域に新しい市場が広がるということは、福岡県はもとより、大企業だけではなくて、意欲のある地域の中小企業の海外展開や農作物の輸出にとっても大きなチャンスだと思っております。

 もう神戸とか横浜を抜いて、二〇一四年には、博多港が十九万人で全国の港湾で第一位を誇っている。こういうものを、TPPを使っていただいて、そしてまた、官がではなく、委員がおっしゃるとおり、民が最大限生かしていかれることを私どもも期待いたしておりますし、我が国の経済再生や地域創生の実現に結びつけていきたい。まさに同意見でございます。

河野(正)委員 次に、時間もありませんので、医療の問題についてちょっと伺いたいと思います。

 平成二十年度にインドネシアとのEPAにより始まった外国人の看護師、介護福祉士候補者の受け入れについて伺いたいと思います。

 合格率が、日本人と比べても極めて低い状況が続いております。先日、一日の内閣委員会でこの点について質問させていただきましたところ、政府からは、着実に合格率は増加しているということですし、特に介護福祉士についてはかなりいいレベルにあるという答弁だけだったんですが、看護師について見ますと、日本人を含めれば九割以上の合格率があるところを、このEPAの方たちは一割とか、非常に低率でございます。

 こういったことから、国際問題になるんじゃないかというような懸念の声も現場の方から聞いているところでございますが、その辺について厚生労働大臣のお考えを伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 今、インドネシアというお話でございますけれども、EPAにおける看護師、介護福祉士の候補者の受け入れにつきましては、さまざま運用の改善に取り組んで、できる限りこのEPAの協定に基づいて人が入ってくるようにということでございます。

 確かに、おっしゃるように、介護福祉士の場合の国家試験の合格率は直近では大体五割になってきておりますが、一方で、看護師の国家試験の合格率は、直近で、二十七年度で一一%ということで、介護に比べるとやはりまだ不十分という感じがいたすところでございまして、まずは、受け入れ調整機関によります巡回訪問を通じた受け入れ機関の担当者や候補者の相談支援を実施し、なおかつ、Eラーニングとか通信添削指導等を活用した、こういった方々の学習支援を平成二十二年度からやってきております。

 それから、試験上の配慮をとってきておりまして、全ての漢字へ振り仮名を振るということをやっておるほか、国家試験における日本語も平易なものにするということをやってきているわけでございます。

 しかし、結果が今申し上げたとおりでございますので、EPAに基づく看護師、介護福祉士、なかんずく看護師がまだ不十分ということでありますので、円滑な受け入れに資する手だてをこれからも考えていきたいというふうに思います。

河野(正)委員 いろいろな手だてはとっていただいていると思いますが、我が国の試験というのはひっかけ問題などというものが多々ありまして、ただでさえ語学的にハンディキャップがある中で、そういったものにひっかかってしまうということもありますので、十分検討しないといけないと思います。

 本当に、現場の方々は一生懸命受け入れて、しかも、受験生も仕事をしながら学んでいくということで、大変な思いをされているところでございます。そういった中で、これだけ、日本人が九割ぐらい合格していて、国によっては一割程度ということで、これは国際問題にならないのかということで、本当にそういう声を実際聞いておりますが、外務大臣、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘の点については、しっかり受けとめなければならないと思います。

 この制度におきまして、外務省としましては、日本語教育、さらには滞在期間の延長、こういった分野について責任を持っております。

 ぜひ、厚生労働省とも連携しながら、この制度全体がしっかり活用されるようしっかり努力をしなければならない、このように考えます。

河野(正)委員 質問をまだまだ用意しておりましたけれども、先ほどの中断劇もございましたので、いろいろとやりにくいところもありまして、時間が来たようですので、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十七分散会


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