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第1号 平成28年4月25日(月曜日)

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平成二十八年四月二十五日(月曜日)

    午後一時開議

 出席委員

  地方創生に関する特別委員会

   委員長 山本 幸三君

   理事 後藤 茂之君 理事 佐藤ゆかり君

   理事 新藤 義孝君 理事 寺田  稔君

   理事 山口 俊一君 理事 篠原  豪君

   理事 宮崎 岳志君 理事 桝屋 敬悟君

      赤枝 恒雄君    伊藤 達也君

      大野敬太郎君    勝俣 孝明君

      菅家 一郎君    小泉進次郎君

      菅原 一秀君    田中 英之君

      武井 俊輔君    谷川 とむ君

      中谷 真一君    中村 裕之君

      野中  厚君    鳩山 邦夫君

      福田 達夫君    牧島かれん君

      八木 哲也君    山田 賢司君

      青柳陽一郎君    緒方林太郎君

      柿沢 未途君    吉良 州司君

      佐々木隆博君    寺田  学君

      角田 秀穂君    樋口 尚也君

      池内さおり君    梅村さえこ君

      宮本 岳志君    椎木  保君

  農林水産委員会

   委員長 小里 泰弘君

   理事 小泉進次郎君 理事 武部  新君

   理事 宮腰 光寛君 理事 簗  和生君

   理事 岸本 周平君 理事 小山 展弘君

   理事 上田  勇君

      あべ 俊子君    井野 俊郎君

      伊藤信太郎君    今枝宗一郎君

      小倉 將信君    加藤 寛治君

      勝沼 栄明君    瀬戸 隆一君

      中川 郁子君    中谷 真一君

      西川 公也君    橋本 英教君

      古川  康君    細田 健一君

      前川  恵君    山本  拓君

      吉川 貴盛君    若狭  勝君

      渡辺 孝一君    井出 庸生君

      佐々木隆博君    鈴木 義弘君

      福島 伸享君    村岡 敏英君

      横山 博幸君    稲津  久君

      佐藤 英道君    島津 幸広君

      畠山 和也君    仲里 利信君

    …………………………………

   農林水産大臣       森山  裕君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (まち・ひと・しごと創生担当)          石破  茂君

   厚生労働副大臣      竹内  譲君

   内閣府大臣政務官     牧島かれん君

   農林水産大臣政務官    加藤 寛治君

   農林水産大臣政務官    佐藤 英道君

   国土交通大臣政務官    宮内 秀樹君

   政府参考人

   (内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局次長) 末宗 徹郎君

   政府参考人

   (内閣府地方創生推進事務局長)          佐々木 基君

   政府参考人

   (総務省行政評価局長)  新井  豊君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 佐々木聖子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           森  和彦君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  奥原 正明君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           持永 秀毅君

   農林水産委員会専門員   石上  智君

   衆議院調査局地方創生に関する特別調査室長     佐々木勝実君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案(内閣提出第五三号)


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより地方創生に関する特別委員会農林水産委員会連合審査会を開会いたします。

 先例によりまして、私が委員長の職務を行います。

 内閣提出、国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本案の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付の資料をもって説明にかえさせていただきますので、御了承願います。

 これより質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古川康君。

古川(康)委員 自由民主党、古川康でございます。質問するのはいささかなれませんが、頑張ってまいりたいと思います。

 こういう機会を与えていただきまして、本当にありがとうございました。めったにない機会でございますので、私は農林水産委員会に所属をしておりますけれども、日ごろお尋ねできない分野を中心に質問をさせていただきたく存じます。

 今回、全体として二百八十四件のプロジェクトの提案があったわけでございますけれども、その中で、今回、法律で措置すべき事項としてまとまったのがこの七件、この七つの規制改革事項として提案されていると理解をしておりますけれども、もとはといえば、こういう国の制度について地方自治体や民間から提案できるという制度になっているということは、大変すばらしいと思っています。

 ただ、そうはいうものの、全てが拾い上げられるということではないと思うのでありますけれども、私は、もっと、こういう制度があるということを、世の中に、あるいは地方自治体にアピールしたいと思っているんですね。

 そこで、牧島政務官、これまでたくさんのいろいろな提案事項、プロジェクトを見ておられると思うんですけれども、その中で、採用はされなかったけれども、ちょっとおもしろいなと関心を持たれたもの、そういったものがあれば、ちょっと御紹介をお願いします。

牧島大臣政務官 お答えいたします。

 年に二回募集する自治体また事業者からの、現場のニーズに即した具体的な規制改革の提案については真摯に受けとめさせていただいておりまして、その実現に向け、国家戦略特区ワーキンググループにおいて規制所管省庁と規制改革事項の折衝を行い、最終的には、総理が議長であります特区諮問会議で決定しているところでございます。

 また、今、古川委員からは、広報宣伝をという力強いお言葉をいただいたことをありがたく思っております。

 今回の法案もその成果であると考えておりますが、御指摘ございました、本法案に盛り込まれなかったものの、これまでの提案には興味深いものも多うございます。

 例えば、農業に関するものとしては、秋田県大潟村から、農業経営の規模拡大などの強い農業の実現のために必要な人材を確保したい、この観点から、外国人材の農業就労の解禁についての御提案をいただいています。また、観光に関するものとして、秋田県仙北市や沖縄県から、旅行者の多様なニーズに応じた着地型旅行商品の提供を容易にできるように、旅行業法上の旅行業務取扱管理者にかえて、一定の研修を修了した者を選任できるようにといった提案もいただいています。

 これらの興味深い案件を含め、引き続き、地方からの提案をいかに実現につなげるかという基本姿勢に立って、さらなる努力を進めてまいりたいと思います。

古川(康)委員 ありがとうございました。

 確かに、非常に興味深いものだと思います。ぜひとも、こうした提案がどんどん出てくるように、広報宣伝をお願いしたいと思います。

 それでは、各論に入ってまいります。

 まず最初に、自家用有償旅客運送についてお尋ねをいたします。

 私は佐賀県知事をしておりましたが、佐賀県知事として、今から数年前から、地域における身近な移動手段の確保問題というものに取り組みました。

 佐賀県のような地方ですと、主なる移動手段は車ということになるわけでございますけれども、車で移動するというのも、高齢化が進むとなかなか難しくなってしまう。本来であれば公共交通機関に依存するはずなんですけれども、人口が少ないということもあって、公共機関になかなか依存できない。

 そういう中で、どうすればいいのかということを議論し始めたときに、一番の問題は、地方公共団体の中にほとんど交通についての専門家がいない、関心が余りないということが問題でございました。といいますのも、交通に関する権限、事務というのは全て国の方でおやりになっておられたからだと私は思っております。その後、さまざまな制度改正を経て、自治体が関心を持つようになってまいりました。心から感謝を申し上げたいと思います。

 そういう中、例えば、佐賀県内でも、旧村単位でいうと、タクシーの営業所が撤退してしまって、もうバスも一日何便しかないというような地域もございます。そういう中であれば、どうしても公共交通機関に依存するのではなくて、新しい形で移動が確保できるようにしていくことが必要だと思っておりまして、そのときに、この自家用有償旅客運送というものを私は知ったわけでございます。

 しかしながら、なかなかハードルも高くて、実現するのが難しいと思っておりましたが、今回、特区のこの法案の中でこのことが取り上げられております。また、特区によらずとも、現行法の中でも取り組んでいるところが出てきているとも伺っておりまして、そのことについて何点か、担当の国土交通省の方にお尋ねをしたいと思います。

 こうした自家用旅客運送については、一部には白タクではないかという声も聞きます。でも、私はそうは思っておりません。白タクというのはもちろん違法行為でございます。この自家用有償旅客運送というのは、自家用車を使って、一定のお金を取って旅客を運送するということでありますけれども、この制度は、国が制度化を認めているものでございますし、関係のバスやタクシー事業者との協議を経て、了解が得られて初めてスタートをするものでございます。その意味では、違法ものまがいの白タクという批判は当たらないと私は考えております。

 そこで、お尋ねしたいと思いますが、今回の法律に出ているこの特区のフレームは、これまで行われてきた自家用有償旅客運送のフレームとどう違うのか、そこを教えていただければと思います。

持永政府参考人 御説明いたします。

 現行の自家用有償旅客運送制度につきましては、委員御指摘のように、交通の著しく不便な地域において通院ですとか買い物といった地域の住民の足の確保、これを目的としております。

 一方で、今回、国家戦略特区において導入しようとしております特例措置につきましては、交通が不便な地域というところは変わりませんが、訪日外国人を初めとする観光客の輸送、これを主たる目的としておるところでございます。

 手続といたしましては、現行の道路運送法に基づくものと違いまして、今回は特区の制度に乗っかっておりますので、まずは国家戦略特区の担当大臣、それから自治体の長、それから事業実施を予定する者によります区域会議による区域計画の策定、それから国交大臣の同意、内閣総理大臣の認定、その上で、国交大臣への事業の登録が必要となっております。

 また、区域計画の策定に先立ちまして、市町村、事業実施を予定する者、それから地域のバス、タクシー事業者との間であらかじめ協議を行わなければならないこととされております。

古川(康)委員 ということで、地域住民の足の確保の目的のための現行制度と、主たる目的として訪日外国人を運送するというところが大きな違いであり、かつ区域会議というような手続を経るところが違いなのかなと理解をしているところでございます。

 さて、今回の法律に基づきます特区方式に先駆けて、現行法で既にこの自家用有償運送を実施しているところがございます。京都府の京丹後市というところだと聞いております。

 この実際にやっているところから、特区における事業がどういうイメージなのかを理解していくために、この京丹後市における状況についてお尋ねをしていきます。

 京丹後市というのは、名前から聞いてイメージされるかもしれませんけれども、市町村合併で随分広くなった市だと聞いております。そして、今回の事業は、この京丹後市のうちの旧丹後町という区域に限って実施をされると伺っています。

 お尋ねします。

 まずは、この地域、交通的にどんな地域なんでしょうか。この地域におけるタクシーやバスの営業、運行の状況について教えてください。

持永政府参考人 御説明いたします。

 御指摘のように、京丹後市は合併市町村でございます。そのうち、旧丹後町は、丹後半島の日本海側寄りの大変広い町を、町というか、大変広いエリアとなっております。

 その中で、乗り合いバスの事業者は一社ございますけれども、路線としては五路線、本数としては数本程度になりますが、運行しております。

 それから、タクシーにつきましては、営業所は設置されておらない状況にございます。

古川(康)委員 住んでいる人から見れば、使えるバスが一日数本、そして、タクシーに至っては営業所が存在していない、そういう事情でありますから、自家用有償旅客運送というものを使って少しでも足の確保をしていきたいというのは、もう無理もないところかなと思っております。

 そこで、何点か具体的にお尋ねします。

 この事業、事業の主体はどこになるのでありましょうか。また、運行についての責任は誰が負うことになりますか。運転手、ドライバーはどんな人がなるんでしょうか。二種免を持っている人だけなのか、そうでないのか。そうでないとしたら、本当に人を乗せて安全な運転ができるのか、こういった不安な点もあると思います。こうした点について、まとめてお答えをお願いします。

持永政府参考人 御説明申し上げます。

 まず最初に、この新しい制度におきます運行の主体でございますけれども、現行の自家用有償旅客運送制度と同様に、市町村、それからNPO法人等の非営利団体を想定しております。

 それから、運送の責任でございますけれども、これも現行の制度と同様に、ドライバーということではなくて、あくまでも運送の主体を立てておりますので、運送の主体たる市町村ですとかNPOといった非営利団体が責任を負うという形になっております。

 それから、ドライバーについてお尋ねがございました。ドライバーにつきましては、まず、二種免許を持っている方は問題なくドライバーとしてやっていただけることになっております。それから、一種免許の方につきましても、これは大臣認定の講習を受けていただいた上ででございますが、この運転手になることができることになっております。

 いずれにしても、今回の特例につきましては、現行の自家用有償運送制度と同様の運転者の要件となっておるところでございます。

古川(康)委員 一定の講習などを経てその資格を得られるようになるというお話であったかと思います。

 それでは、運行責任者による管理体制についてお伺いしたいと思います。

 タクシーであれば、営業所に集まって、そこできちんと本人の顔を見て、健康状態がどうか、お酒を飲んでいないかどうか、そういったところを確認することになると思いますけれども、この制度においてはどのようにして行うのでありましょうか。

持永政府参考人 御説明申し上げます。

 今回の特例措置につきましては、現行の自家用有償旅客運送制度と同様の安全措置を考えております。

 具体的に、運転者の運行前確認につきましては、原則、対面で確認すべきものとしております。確認の内容としては、委員御指摘のように、病気ではないかですとか、酒を飲んでいないか等々の安全にかかわる点を確認することになっております。

古川(康)委員 原則、一カ所に集まって対面で確認をするということでありまして、まあそれは原則はそうだろうと思いますけれども、本来、自家用車を自分のうちに置いているのが普通でありまして、そういったところに置いている人が、訪日外国人なんかが来たときに、そこで必要に応じて出ていくというようなことを考えますと、タクシーとは若干違う部分も出てくるのではないか、一カ所に集まることが難しいようなケースも出てくるのではないかと思いますが、そのときにはどうやって確認をされますか。

持永政府参考人 御説明申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、対面での確認ということが原則であることは申し上げたとおりでございます。

 ただ、例えば、運送の区域が広範囲に及ぶ等々の状況がある場合には、一つとしては、その確認をするような者をいろいろなところに置いて確認をしていただくというやり方もありますし、それでも難しいという場合もおありでしょうから、あとはケース・バイ・ケースでの判断になりますが、電話などによります安全運転の確認も例外的に認めております。

古川(康)委員 どうしてもというときには、最終的には電話というような手法もあるということでございましたが、最近は、電話といいましても、ただの音声通話だけでなくて、相手方の表情を確認できるような通話の方法もございます。例えばフェイスタイムとかスカイプとか、そういったものを使えば、例えばお酒を飲んでいるか飲んでいないかについても、音声だけでなく、実際に相手方の画像を確認しながらできるといったメリットもあるのではないかと思っておりまして、そういったところも使っていただければと思っているところでございますが、この点について、ちょっと一点、質問をいたします。

 今はタクシーや自家用有償旅客運送の点について伺っておりましたが、長距離トラックの運転手の健康状態チェック、これも今、電話で行われているケースもあるというふうに伺っております。だから、電話のままだと、飲酒判定器を使って目の前で数値を確認することができないということがございます。先ほど私、申し上げましたように、そうやって、画像もあわせてリアルタイムで確認できるようなものを使った方がより安全性を確認できるのではないかと思いますが、この点についてはどうでしょうか。

持永政府参考人 御説明申し上げます。

 対面原則ということはございますけれども、一方で、それが無理な場合の電話ということでございますが、委員御指摘のように、単なる音声だけではなくて画像も含めて確認できるということについては、大変有意義で、かつ有効であると考えております。

古川(康)委員 こうした新しい技術というものが日々どんどん開発をされております。ぜひとも行政が、規制をする側の、規制そのもの、あるいは運用について、こういう新しいものについて常に対応できるような体制をとっていただければと思っております。

 その電話の関係で、ちょっと別の観点なんですけれども、この法案に関係するところで、薬剤師の服薬指導の関係の点を一点お伺いさせていただきます。

 四号に薬剤師の服薬指導の特例というものが、今回の法案の中に出ております。薬剤師が、一定の要件を満たす場合に、テレビ電話等を用いて服薬指導を行うことができるものとするということになっております。

 事務的にお伺いをしますと、これは区域内で行われなければならないということで、何かテレビ電話がどこか固定で存在しているというか、薬局なら薬局に固定されているようなものを想像されているようでございますけれども、先ほど来お話が出ているようなモバイルデバイスといいますか、スカイプだとかフェイスタイムだとか、そういったものを使うというようなことは考えられないのか、その点お願いします。

森政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、今回の特例の措置というのは、特区事業ということで、特区内の一定の区域に存在する患者様本人と薬剤師との間で行われるということでございまして、これを担保する必要があるというふうに考えてございます。

 そのために、遠隔での服薬指導を実施する場合に、患者様が特区内の一定の区域に今所在されているということを客観的に確認できる必要があるということから、基本的に固定式のテレビ電話装置を用いるということを想定させていただいた次第でございます。

 ただ、現在、スマートフォン等の進んだデジタル技術の進歩、これを十分考慮するべきではないかという委員の御指摘も大変重要な点だというふうに思います。

 こうした新しい技術について、客観的にこういったことを確認できる手段として使えるかどうかということについては、専門家の意見も聞いて検討したいというふうに考えてございます。

古川(康)委員 ありがとうございました。

 ぜひ検討を続けていっていただければと思います。

 牧島政務官、この問題について最後なんですけれども、こうしたデジタル技術の進展というものに対応していくためにも特区という制度は非常に有効ではないかとも考えます。そのあたりの政務官のお考えをお示しください。

牧島大臣政務官 グローバル化や情報化が進展する中で、世界的な競争に勝ち残るためにも、デジタル技術を活用していくということは大変重要だと思っております。

 今、テレビ電話を活用した遠隔服薬指導については御議論ございましたが、このほかにも、国家戦略特区では、新たな技術を活用した近未来技術の実証が進んでおります。例えば、仙北市では、国有林野を活用したドローンに関する最先端の取り組みを行っております。仙台市では、公道ではできない完全自動走行に向けた技術実証を実施しております。千葉市では、都市部でのドローンを活用した宅配サービスの実証実験を行おうとしております。

 このように、新たな事業が創出されたり、生産性が向上するという点からも、特区の取り組みにおいてデジタル技術の活用という視点には十分に留意してまいりたいと考えます。

古川(康)委員 ありがとうございました。ぜひよろしくお願いいたします。

 次に、クルーズ船の入国手続についてお尋ねしようと思いましたが、時間が迫っておりますので、この点についてはぜひとも前向きに検討をお願いしたいということでとどめさせていただきたいと思います。

 そして、もう一点。森山大臣、先日、新潟のG7農業大臣会合に行かれたと伺っております。一部は報道等でも承知しておりますけれども、会合の様子はどうだったのか、ぜひとも大臣のお口の方からお話をしていただければと思います。

森山国務大臣 古川委員にお答えいたします。

 一昨日から昨日にかけまして、G7新潟農業大臣会合が開催をされました。

 会合では、G7そして世界の食料安全保障の強化のための方策について充実した議論を行い、世界に向けた力強いメッセージを新潟宣言として採択、発出できたと思っております。

 具体的には、農業を魅力あるものにして新規就農と女性の参画を促進するため、農村地域の活性化と農業者の所得向上の双方を進めていくべきではないか、もう一点は、技術開発を促進して農業における生産性の向上を図るとともに、食料供給システムの強化、改善を図るべきではないか、三つ目に、気候変動に対処して持続可能な農林水産業を確立することが大事ではないか等々について議論ができたと思っております。

 その結果、今回の会合では、我が国のほかEUからも積極的な御提案がありまして、一つは、女性、若者の活躍推進に向けた国際フォーラムを開催する、もう一つは、農業分野の投資に関する国際フォーラムを設置する、もう一つは、AMR等に対処するため獣医当局間の協力枠組みを設置する、もう一つは、農業分野の気候変動に関する研究のフォローアップイベントの開催をする、G7としての四つの共同行動を実施するということが合意をされました。

 また、会合では、東日本大震災の発生から五年が経過をしたことにも触れ、私から、日本産食品の輸入規制については科学的根拠に基づいたさらなる撤廃、緩和を要請させていただきましたし、そのことは、新潟宣言にもその旨、盛り込まれたところであります。

 さらに、熊本地震について、G7として被災された方々への心からの連帯の意を表する声明があり、その旨、宣言に盛り込まれました。

 なお、今回の会合では、各国大臣との私的な人間関係の構築にも努めさせていただいたところであり、今後、各国との緊密な連携を図りながら、農業分野における知恵などもおかりしながら、新たな国際環境のもとでも、強くて豊かな農林水産業、美しく活力ある農山漁村をつくり上げてまいりたいと思います。

 最後に、新潟県、新潟市を初め関係の皆さんの大変な御理解と御協力のもとに、また、多くの市民ボランティアのお力もいただいてこの会合が開催をできましたこと、深く感謝を申し上げたいと思っております。

 以上でございます。

古川(康)委員 ありがとうございました。

 大変未来の見える、実りある会合になったということだと思います。

 石破大臣、今までの議論で、デジタルの活用を、さまざまお願いをしてまいりました。

山本委員長 時間が来ておりますので、簡潔に願います。

古川(康)委員 ぜひともお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山本委員長 次に、樋口尚也君。

樋口委員 公明党の樋口尚也です。

 まず、森山大臣に、引き続きまして、新潟でのG7農相会合について今お話がありました。私からは、大臣、今のお話を受けて、今後日本が世界に向けて率先して行うべき、担うべき分野は一体何なのかということについて、一点だけお尋ねをさせていただきたいと思います。

森山国務大臣 先ほども御答弁を申し上げましたが、我が国として、新潟宣言を踏まえて、産業政策と地域政策を車の両輪として進め、農業の体質強化を図ることにより、食料の自給率の向上に努めてまいりたいというふうに考えておりますし、世界の食料安全保障の強化をするという意味からも大事なことだろうと思います。

 また、日本の技術開発については非常に関係国の関心が高いものがございます。技術開発を一層促進させていただき、農業における生産性の向上を図るとともに、世界の食料供給システムの強化、改善や、持続可能な農林水産業の実現に、この面からも貢献をしていくべきだと考えております。

樋口委員 ありがとうございます。ぜひ力強い貢献をお願いしたいというふうに思います。

 去る四月十四日に本会議場で質問をさせていただいた続きをさせていただきたいと思います。

 そのときに、農地の所有の特例についてお伺いをいたしました。その続きということでお伺いをしますけれども、まず初めに、本年の二月十八日、日本農業新聞による、農業に参入をした一般企業等五十社を対象としたアンケート調査がありましたけれども、その中で、農地所有を望む企業は約一割にとどまり、七割は、採算性等経営上の判断から、リースで十分であると回答をしています。

 企業による農業参入については、大臣の本会議における御答弁のとおり、現行制度においても、農地所有適格法人やリース方式による参入が認められております。この中にあって、企業が農地の所有権を取得して経営することのメリットは何なのか、御答弁をいただきたいと思います。

佐々木(基)政府参考人 お答え申し上げます。

 農地を所有できる法人の要件緩和につきましては、養父市を初め全国の自治体や事業者から、平成二十五年から二十七年にかけまして合計二十件の提案が寄せられておりまして、具体的なニーズもあるものと私どもは考えている次第でございます。

 企業の農業分野への参入を促しまして、企業が有する資金力や経営ノウハウを農業に活用するということは必要であると考えておりまして、リース方式はその有効な手段であるということは承知しておりますけれども、企業にとりまして、農地を所有することは、より安定的、長期的な経営基盤のもとで、特に大規模経営でございますとか六次産業化、こういったものに取り組みやすくなるといったメリットが考えられるところでございます。

 このため、農地を所有することも企業の経営判断の選択肢に加えるべく、本特例を措置するものでございます。

樋口委員 ありがとうございます。

 国家戦略特区のワーキンググループ等においては、農地所有適格法人の議決権の要件また事業要件の緩和の是非について検討をされたというふうに伺っております。しかしながら、本法案では、こうした法人要件に係る規制の特例措置は講ずることはなく、いわゆるリース方式の枠組みに類似した規制の特例措置となっていますけれども、その理由について御説明をいただきたいと思います。

奥原政府参考人 お答えいたします。

 今回の特例では、農地所有適格法人の要件を満たさないところについても農地の所有を特例的に認める、こういう仕組みでございます。

 企業の農業参入、これにつきましては、農業から撤退をしたりあるいは産廃置き場になるのではないか、こういった農業の現場の懸念が強くあるわけでございます。

 このために、平成二十一年の農地法改正でリースについては全面解禁されておりますけれども、その際にも条件がついておりまして、企業が耕作放棄をしたりあるいは産廃置き場にした場合には確実に原状回復できるようにするという観点で、企業が農地を適正に利用しない場合にはリース契約を解除する旨の書面契約の締結を義務づける、こういったことが法律上措置をされているわけでございます。

 今回、国家戦略特区で企業に農地所有を認める特例を講じることになりますけれども、その際も、企業が耕作放棄をしたりあるいは産廃置き場にした場合に、リース方式と同様に、確実に原状回復できる措置を盛り込む必要があるということでございます。

 この場合、リース方式でありますと、貸し主という方は所有者の地位は持っておりますので、この方は貸した農地についても関心を持ち続けているということでございますけれども、売買の場合には、売ってしまった方、売り主の方にはもう所有権がなくなりますので、基本的にその農地についての関心を持ち続けることが非常に難しい、こういった問題がございます。

 そのために、今回の法制度の中では、許可をするのは、企業が地方公共団体から農地の所有権を取得する場合にまず限定をしております。その上で、企業が農地を適正に利用しない場合には、その農地の所有権を企業から地方公共団体の方に移転する、これを書面契約できちんと締結していただく、これを義務づけたわけでございます。

樋口委員 ありがとうございます。

 ちょっと一問飛ばさせていただきまして、今お話がありましたけれども、本会議でも申し上げました、やはり、現場の皆様からは、企業が撤退をしたり産廃置き場になってしまうんじゃないか、こういった御懸念の声というのはいまだにあるわけであります。

 改めて、ここで森山農水大臣から、皆様に安心していただく気持ちを込めて、御決意をお願いしたいと思います。

森山国務大臣 樋口委員にお答えいたします。

 企業の農業参入につきましては、委員御承知のとおり、平成二十一年の農地法改正によりましてリース方式での参入は全面解禁をされており、農地中間管理機構との組み合わせにより、さらに参入しやすくなっております。また、所有方式につきましても、昨年の農地法改正で、農業者以外の議決権比率を四分の一から二分の一未満にまで拡大したところであり、この四月から施行されたところであります。したがいまして、全国レベルの制度として、企業の農地所有についてさらなる要件緩和を検討する段階ではないと考えております。

 しかしながら、地域を限定して試験的に実施することはそれとは別の問題でありますので、やり方によっては農業、農村の現場に不安が生じず、また、その実施状況が今後の検討の参考になることもあり得るのではないかというふうに考えられるところであります。

 こうした観点から、どのようなやり方が考えられるのか検討した結果、企業が農地として利用しなくなった場合の確実な原状回復措置を講じた上で、国家戦略特区をさらに限定した試験的な事業を実施することとしたところでございます。

 この特例の適用に当たっては、農業、農村の現場に不安が生じず、その円滑な実施が図られるように、地方公共団体が責任を持って適切に運用していただきたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

樋口委員 ありがとうございます。

 五年間の時限の措置ということ、場所を区切ってということでありますので、しっかり今後のフォローアップをお願いしたいというふうに思います。

 続いて、政府機関の地方移転についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 石破大臣の所信表明の中で、「地方創生は、東京に集中した人と富を地方に分散するなどという単純な考え方ではなく、日本全体を新たにつくり変える、日本創生ともいうべき取り組みなのであります。」と基本的な考え方を述べられました。「地方創生は、計画段階からいよいよ本格的な実行段階に入ります。」こう述べられたわけであります。その上で、「東京圏への転入超過数は二〇一二年以降四年連続して増加しており、東京一極集中の傾向に歯どめがかかっておりません。」と現状を分析されました。

 ここで、地方創生の一環として打ち出されている政府機関の地方移転に関連をしてお伺いしてまいりたいと思います。

 実は、御承知のとおり、この問題というのは今に始まった問題ではございませんで、三十年ほど前の一九八〇年代後半にも、東京一極集中について、その対応策として、首都機能の移転議論が高まっておりました。

 石破大臣が二十八歳で初当選をなされた昭和六十一年の翌年、昭和六十二年に就任をされた竹下登総理大臣は、一省庁一機関の地方分散を提唱して、翌六十三年一月に、東京都二十三区部における人口及び行政、経済、文化等に関する機能の集中を是正することを目指し、「国の機関等の移転について」が閣議決定をされたところでございます。その後、多極分散型国土形成促進法が成立をし、これに基づく国の行政機関等の移転に関する基本方針にのっとって、中央省庁の七十九機関と自衛隊の十一部隊が移転対象として閣議決定をされました。この後、組織の廃止等もありましたけれども、現在までに、六十六機関十一部隊が東京二十三区から移転をしているところでございます。

 その当時の目玉と言えるのは、関東財務局や関東農政局などが移転をしたさいたま新都心地区でございます。そこを例に挙げて問題提起をしたいと思います。

 ここには平成十二年の二月から国の行政機関が移転を開始し、九省庁十八機関が集団移転をいたしました。国交省の国土政策局が平成二十三年六月に作成した事例調査を見ると、こう書いてあります。「さいたま市における昼間人口の昭和六十年〜平成十二年増減率をみると、さいたま新都心周辺地区において大きな増加となっている。また、周辺のメッシュを含めた増加数は約二万三千人である。うち行政機関の移転職員数は約六千八百人である。」ということで、公的機関の移転により一定の効果があったということが紹介をされているところであります。

 一方で、首都圏白書平成二十七年版を見ますと、さいたま市を初め業務核都市ごとにさまざまな統計の掲載がされておりますけれども、これによれば、さいたま新都心地区が所在するさいたま市の人口は、国の行政機関等が移転を開始された平成十二年と十年後の平成二十二年を比べてみますと、百十三万三千三百人から百二十二万二千四百三十四人へと、八万九千百三十四人、七・九%ふえており、移転の効果があったように見えます。

 ところが、東京二十三区の人口も、八百十三万四千六百八十八人から八百九十四万五千六百九十五人へと、八十一万一千七人、約一〇%ふえております。増加率も、さいたま市を上回っているわけでございます。

 さいたま市の民間の事業所に勤める従業員の方は十年間で六万三千百四十九人ふえましたが、二十三区では五十万三百九十六人ふえております。

 この数字で全てを評価できるというものでは当然ないわけでございますけれども、これを見る限り、東京への人口集中はおさまっていない、こういうふうに思われるわけであります。

 昭和六十三年、国の行政機関等の移転に関する基本方針では、さいたま市に行政機関の支分部局が移転をして、そして横浜・川崎地区には公団、事業団等の特殊法人、東京都の多摩地区には研究所、研修所といった附属機関が移転をいたしました。

 果たしてこの一連の移転が当時の目標であった東京の一極集中の抑制に効果があったのかどうなのか、ぜひこの機会に検証をしてみてはどうかというふうに思います。

 そこで、まずお伺いをしますけれども、総務省の行政評価局にお伺いをいたします。

 この六十六機関十一部隊等の移転にはかなりの費用がかかっていると思います。移転及びその後の業務の効率などを、旧総務庁行政監察局時代も含めて行政評価・監視の対象としたことはあるかどうか、お答えください。

新井政府参考人 御指摘の、昭和六十三年の国の行政機関等の移転に関する基本方針に基づく国の行政機関の移転及び移転後の業務の効率に関しまして、これまで行政評価・監視を実施した実績はございません。

樋口委員 ありがとうございます。

 そもそも、このような国の行政機関の移転及びその後の業務の効率などというのは、総務省の行政評価局の行政評価・監視の対象になるのかどうか、お答えをいただけませんでしょうか。

新井政府参考人 総務省行政評価局は、各行政機関の業務の実施状況について評価・監視を行うものでございまして、国の行政機関の移転についてもその対象となり得るものと考えております。

樋口委員 対象になるのであれば、これは今後、ぜひ評価・監視の対象として検討すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

新井政府参考人 行政評価・監視を行うに当たりましては、業務の効率性もその主要な観点の一つとなっておると考えております。したがって、国の行政機関が移転する場合に業務の効率性が確保されることは当然であると考えますが、御指摘のような大きな移転の効果というもの全体を、効率性以外の観点を含めて総合的な観点から見ていく必要があると考えますので、今後、先般決定されました政府関係機関の移転基本方針の件もございますので、その状況をまた注視しながら検討してまいりたいと思います。

樋口委員 ぜひ積極的に検討していただいて、やるべきだと思います。

 行政機関が健全であるためには行政評価局の役割というのは非常に大きいものだというふうに思いますので、一層の取り組みをお願いしたいというふうに思います。

 国の行政機関の移転に関しては、移転により期待される効果、その見通しを示すことが重要ではないかというふうに考えておりますけれども、この点いかがでございましょうか。大臣、よろしければ今回の移転についてお願いします。

石破国務大臣 それはもう東京の一極集中にはいろいろな要因があって、それ一つ一つに対応策を示していかねばならないものですが、民間企業に対して、本社機能を地方に移してくださいというお願いをしているわけで、コマツの例は再三再四申し上げておるところでありますが、民間にお願いしておいて、中央省庁が何もしないでは何の説得力もありません。

 では、中央省庁は全て東京になければいけませんかということであります。そういうことを考えましたときに、そうでもなかろう。

 それで、地域の特性に応じたものでなければならないと私は思っていまして、さすれば、ここにはいろいろな議論があるのですが、地方から手を挙げていただくというやり方を今回とらせていただきました。

 例えで言えば、京都の文化庁というお話です。これはもう十数年前からこのお話はあって、しかしながら、はは、おもしろいねという話で、そこで終わっちゃっていたわけで、今回、全国的にそれに取り組む中にあって、京都が文化庁、それは、あると格好いいねという話ではなくて、文化行政のあり方あるいは文化財行政のあり方は、やはり文化財がたくさんある、あるいは文化の集積がある、その京都で行うのが正しいのではないだろうかということでございます。

 日本の場合に、重文とか国宝は確かにそれなりに保護されているんだけれども、それ以外はどうなんだ、あるいは、保護だけではなくて活用という面においてどうなんだ。全国あちらこちらにいろいろな文化があるんですが、それを対外的に発信する、国内的にもそうです、そういうことは東京じゃない方ができる部分がありはしないか。

 国際的な対応ですとか危機管理ですとか、そういうものは東京に残しながらも、地域に移った方がよりよく国の行政が展開されるというものは必ずあるはずなので、それを、地方の提案を中央が受ける形で、例えて言えば、文化庁をそういうことにいたしております。そのほかにも、消費者庁が徳島でありますとか、総務省統計局が和歌山でありますとか、それも全てそういう観点からやってまいりたいと思います。

 行政ですから、国民全てに公平になされなければなりません。その公平性、正確性がいささかも損なわれることがないように地方移転は進めてまいりたいと考えておるところでございます。

樋口委員 大臣、ありがとうございます。

 きのう私は京都に行ってまいりましたけれども、もう町じゅうに、文化庁が来てくれる、ありがとうという看板が立っているわけでありまして、京都の方は本当に喜んでいらっしゃるというふうに思いました。

 今の御答弁を伺っても、そのとおりでありまして、日本創生とおっしゃる、日本全体に効果があるのかということと、この地方創生と、両方きちんとバランスをとっていくということが極めて重要だというふうに思っておりますので、こういう考え方に基づいて、大臣の強いリーダーシップをもってこれからも地方創生を推進していただきますことをお願い申し上げまして、質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

山本委員長 次に、宮崎岳志君。

宮崎(岳)委員 民進党・無所属クラブの宮崎岳志でございます。

 本日は、地方創生特別委員会、農水委員会の連合審査ということで、地方創生特別委員会の筆頭理事でございますので、その点を踏まえて質問させていただきます。

 まず冒頭、熊本の地震について一言申し上げたいと思います。

 先週月曜日の委員会で、エコノミー症候群を防止する簡易ベッドの点について一言申し上げさせていただきまして、そして、その対処をお願いしたところであります。石破大臣初め政府各位の御協力によって、被災地にこれらを提供することができたことについて、この場をかりて御礼を申し上げます。

 もともと、先日の委員会でも申し上げましたが、榛沢和彦先生という新潟大の先生から先週の日曜日にお電話をいただき、被災地の窮状について、非常に過酷な状況であるというお話を御連絡いただきました。そのときに、簡易ベッド、段ボール製のものでありますが、こういったものをぜひ入れてほしいんだ、一万セット、二万セット運んでほしい、こういう話がありました。同時に、それから二日ぐらいしてからのことなんですが、車中泊をしている避難者の方々に弾力性ストッキングを提供したい、これも一万本送ってくれという話がありました。

 当然、私は野党の一議員にすぎませんので、直接行政に対して何らかアクションを起こす立場にはないわけでありますが、一つは、大臣にこの場で申し上げて、大臣に御対応をお願いし、大臣の方からも快く御了承いただいた。それから、前原誠司さん、私どもの先輩でありますが、民主党政権におきまして防災担当大臣をやっていらっしゃいました。前原誠司さんにこの簡易ベッドの話をお願いしましたところ、前原さんから菅官房長官にお話を通していただいて、菅さんも、それはいいことだからぜひやろうということで、すぐさま対応していただいたというふうに伺っております。

 もう一点は、当委員会の与党で筆頭理事を務めていただいております山口俊一先生にお願いをして、そして河野太郎防災担当大臣に面談の時間をつくっていただきました。その場で、この簡易ベッドの件、また弾力性ストッキングの件についてお願いを申し上げましたところ、翌日には、段ボール製ベッドが二万セットだったでしょうか、それから、ストッキングの方についても六千足は被災地に送りましたという御報告をいただきました。

 政府の皆さんの本当に力強い御協力に感謝を申し上げます。どうもありがとうございました。

 さて、質問に入ります。

 国家戦略特区改正法の審議であります。

 まず一点、私は地方創生の所属でございますので、ふだん質問する機会のない森山農林水産大臣に質問をしたいんですが、まず、先ほどの樋口委員の質問とも重なるところもありますが、今回の制度、日本全国で認めるわけではない、そして、特区の中のさらにごく一部で認めるというんですが、この認める条件というのはどのような地域の土地であるのか。具体的な地名というわけじゃなくて、どういう条件の土地であるのかということについてお教え願いたい。

 加えて、結局、今回の法案で問題になっているのは、特に焦点となっていますのは、株式会社の農地保有、自家用自動車による有償運送、そして薬剤師による遠隔服薬指導の三点かと思います。これらは全て、もともと地方創生の観点から出てきたものではない。これらは、規制改革会議や産業競争力会議で、全国展開をしてほしいという意見が最初に上がった。そして、それに対して、それはできないという反対論もあった。そんな中で、今回、特区という形で持ち込まれてきたということですから、そもそも地方創生というのが主眼ではなかったというふうに思うんですね。

 そういった意味では、森山大臣にもう一点お伺いしたいのは、今回の解禁というものをアリの一穴、突破口として、これを全国的に進めていこうというようなおつもりなのか、いやいや、そういうことについては極めて慎重であらねばならないというお立場なのか、どちらなのか。この点についてお教え願えますでしょうか。

森山国務大臣 宮崎委員にお答えいたします。

 今回の特区法案における企業の農地所有を認める特例でございますが、一つは、「農地等の効率的な利用を図る上で農業の担い手が著しく不足していること。」、もう一つが、「耕作の目的に供されていない農地等その他その効率的な利用を図る必要がある農地等の面積が著しく増加するおそれがあること。」の、いずれの要件にも該当するものとして、政令で指定する地方公共団体のみに適用することとしております。このように、今回の法案では、国家戦略特区の中でも一定の要件を満たす地方公共団体に限定をし、また、期間も五年間に限定をして、企業の農地の所有を認める試験的な事業を行うこととしたところであります。

 法案が成立をいたしましても、五年間の期間が経過をした後はこの特例はなくなるわけでございますので、その後の取り扱いについては現時点では何も決まっておりませんが、その後のことにつきましては国会で御審議をいただくということになると思います。

宮崎(岳)委員 例えば、担い手が著しく不足しているとか、あるいは耕作放棄地が多いというのは、どれぐらいの規模のものを指すものなのかということが私にはよくわからないんですね。どこら辺までがそういう条件に当てはまるのか、そういうことは、何らかの基準があるんでしょうか。日本全国のどれぐらいが当てはまるとか。

奥原政府参考人 この点につきましては、特に数値の基準を決めているわけではございません。特区の中でこの特例をやりたいというところが手が挙がってきたときに、その地域の中の担い手が不足しているかどうかということ、それから、耕作放棄地がこのままではふえてしまうかどうか、そのことをきちんと判断させていただいて、政府全体で議論した上で政令でその地域を指定する、こういう考え方でございます。

宮崎(岳)委員 もう一回大臣にお尋ねしたいんですが、今後のことについてはもちろん国会が決める、それは当たり前のことだと思うんです。

 ただ、過日、農地所有適格法人の制度が発足して、まだそれほど間がたっておりません。つまり、解禁したばかりなんですよね。そうすると、普通は何年間かその様子を見て、それでもこれでは足りないんだということであれば次のステップに行くというのならわかるんですが、まだまだ全然始まったばかりで、何でこういうふうにやっているんだろうなという疑問を私は持っているんですね。そんなことをするんだったら、最初から今回の農地所有適格法人の要件を緩めればよかったじゃないか。そういう意味で、私は、これを拡大するのは総じて賛成はできないんですけれども。

 というのは、農地所有適格法人の今の仕組みであっても、本気で農業をやる人であれば、ある意味、十分な基準が整っているんじゃないか。逆に言うと、これを使いたくないという人は、農業じゃなくて、土地の転売とか開発とか、別の趣旨が何かあるんじゃないかなと疑ってしまうところもあるんです。

 それについて、ですから大臣、もう一言踏み込んで、今後この制度を使って、これを社会実験として、成功すればどんと広げていこうということなのか、そうではないのか、その点についてお答え願えますか。

森山国務大臣 お答えいたします。

 今回は試験的に実施するものでございますので、今後の検討の参考になるのではないかという考え方で実施をしようとしているものでございます。

宮崎(岳)委員 私は、大臣にはもうちょっと踏み込んだ答えを期待したんですが、なかなか難しいということも理解をいたしました。

 普通であれば、今回の特区で実験をして、成功すれば、将来本格導入するというのが通常のレールだと思うんですよね。そういうレールに乗っているということでよろしいんですか。

森山国務大臣 農地の問題というのは、我が国の農林業のために大変基本的な課題でございますので、今までも企業の農地所有につきましてはいろいろな対応をしてまいりましたし、また、リースの問題につきましてもいろいろな対応がなされてきております。

 今回はあくまでも実験的にやらせていただき、それを一つの参考にしてみたいというのが本音でございますので、次を見通してやっているという段階ではないと考えております。

宮崎(岳)委員 実は、同じ質問を前回の委員会でもしております。そのときは、お答えになったのが加藤大臣政務官だったと思うので、なかなか立場上も言えることにも限りがあるのかなというふうに思ったんですが。

 そのとき私は、本気で農業に参入しようと思うなら、今の農地所有適格法人の資格を満たすことは必ずしも難しいことではない。確かに、上場企業はできませんけれども、子会社をつくって、そこの役員を、農地提供者とかを入れてやればいいだけの話ですから、これは基本的にはできるんですね。前の仕組みよりは相当つくりやすくなったんだろうというふうに思うんですね。ところが、それも嫌だということになると、この人たちは本当に農業をやるつもりがあるのかなと疑わざるを得ないわけであります。

 なぜリースでなくて買わなきゃいけないのかということを幾つか私も頭の中でシミュレートしてみたんですが、例えば、農地を転用して転売をしようだとか、あるいは節税対策で、黒字が出ちゃったからそれを埋めるのに土地を買うというようなことに使うだとか、あるいは将来的な、規制の緩和とか線引きの変更とか地目の変更とか、そういうことを見越して買っておくとか、開発を見越して青田買いしておくとか、そういうことがやはり浮かんで、何かこれを持たなきゃならない必然性というのは浮かんでこないんです。

 どういうニーズがあるんですかというふうに加藤大臣政務官に聞いたら、そのニーズというのは具体的なものは把握していなくて、この制度をやりながらニーズがあるかどうかを調べていくんですというようなことを言われたんですが、そんなことはやはり制度としてはあり得ないわけですよね。普通は、立法事実といいますか、どういう具体的な問題点が現行にあるのか、それを集めていって政策に落とし込むわけですから、その順序が逆になるというのも変な話だ。それで、農水は、やはりそのニーズについては持っていないという話だったんです。

 この法律をつくっているのは内閣府ですから、事前のレクで、内閣府の方にはどうも具体的にそういうものがあるようだ、どういうニーズを想定しているのかということでありましたので、石破大臣の方から、この法律が通って、リースでなくて所有にするということについてどういうニーズがあるのか、具体的にわかりやすくお教え願いたいんです。よろしくお願いします。

石破国務大臣 ニーズといたしまして、提案者、主体数、内容ということでお答えをいたしますと、二十五年から二十七年の三年度にかけて実施をいたしました国家戦略特区の提案募集におきまして、農業生産法人の要件緩和に関する提案は、二十件、十八主体ということになっております。

 そのうち、出資要件の緩和に関するもの、役員要件の緩和に関するもの、事業要件の緩和に関するものというふうに大別をされるというふうに承知をいたしておるところでございます。

宮崎(岳)委員 そういうことじゃなくて、具体的に聞きたいんですよ。

 なぜリースではなくて土地を持たないといけないのか。あるいは、なぜ農業関係者を二分の一入れるのがだめで、もっと農業関係者が少なくなくてはいけないのか。具体的に、こういうことをやろうとしたんだけれども、こういう規制があってできない、困った、だから開放してくれ、こういう話ならわかるんですが、何か、試してみれば問題点は明らかになってくるでしょうみたいな今の話だと、やはりなかなか納得しがたいところがあります。

 もう一つお願いします。

石破国務大臣 結局、リースではだめで所有権でなければならないということは一体どういう場合なのだろうかというのは、随分私どもでも議論をいたしたところでございます。

 リースの場合に、契約期間というもの、これは仕組みの上では五十年が最長ということになっておるわけでございますが、実態を見ると、五十年でリースというのはほとんど聞いたことがないということになるわけですね。農業経営基盤強化促進法によります賃借権の設定期間、平成二十四年度のデータでございますが、一年未満が一・七%、一年から六年が五二・二%、六年から十年が二二・五%というようなことであって、なかなか長期にわたって安定的にリースによって農地が使用できるという実態にはないのではないかということ。ここには一々手続が必要であります。

 あるいは、これは契約自由の原則でございますので、契約を変更いたします場合には賃借料を変えますというような契約内容の変更というのが随伴することが当然考えられるわけであります。

 また、十年以上の期間の定めがある賃貸借である場合、あるいは貸し手である農家の側みずから耕作することとした場合には、貸し手である農家の側から解約されるというようなリスクも当然存在をいたしておるわけでございます。これは、農地法十八条、十九条等々に定めがございます。

 結局は、ニーズとして、やはり安定的に使いたいのだと。そこを、うがった、うがったとは言いませんが、見方をすれば、安定的というのは、転売しちゃうんじゃないのとか用途変更しちゃうんじゃないのとかいうことになるんですけれども、むしろ、安定的に農地を保有することによっていろいろな造作等々をやっていきたいというのもあるのではないか。そのときに、いやいや、リースの期間が来たのでそういうわけにはいきませんよということになった場合に、それは安定的な経営というのが阻害をされることが当然生じ得るのではないだろうかということでございます。

 ですから、所有権というものは、リースでカバーできない部分をカバーできるというふうに思っております。

 ただ、所有権絶対であるので、どのようにしようと所有権を取得した者の勝手であるということにならないように、詳細な規定を設けまして、農地が農地として使われないような、そういう懸念を最大限払拭するべく努めて提案を申し上げているものでございます。

宮崎(岳)委員 今の大臣のお答えは、やはりニーズではないんですよね。そういう要望が来ているので、いろいろ内閣府で大臣も含めて頭を悩ませて考えた結果、こういう欠点もあるのかなということであって、具体的に農業をやろうとしている人あるいは現にやっている人からこういう希望が来たという話は最後まで出てこないなという感覚をやはり得てしまいます。

 私、今回の仕組みについてやはり懸念がもう一つありますのは、株式会社が農地を買いました、そして農業をやらなくなったらそれを返す、地方公共団体が再度買い取る、こういう仕組みになっております。そしてそのときに、例えば株式会社が農地を買ったというときに、農地以外の用途にしてはいかぬよ、これはわかりますが、一つは、他の農業者とか他の農協とか他の農地所有適格法人等に転売することが今回のスキームではできるのかどうか、これを一点伺いたい。

 また、株式会社が持った土地を市町村が買い戻すというときの価格、買い戻し価格はどうやって決定されるんでしょうか。周辺の地価が上昇したり、あるいは買った株式会社自体が破産してしまった、破産管財人が入ってそれを分配するときにそれなりに高い値段で債権者に分配しなきゃならないから、こんな値段では、買ったときの値段より値上がりしているんだからもとの値段では売れないよ、こういうことだってあるかもしれません。あるいは、経営者が交代してしまったということも、株式会社ですから当然あり得ます。そういったときに、取得時より高い値段での買い取りというのを求められる可能性はあると思うんですが、そういう場合はどのように対応するのか、お答え願えますでしょうか。

奥原政府参考人 今回の国家戦略特区の農地所有の特例につきましては、まず、企業が地方公共団体から所有権を取得する場合に限定をしておりまして、その上で、その企業が農地を適正に利用していない場合、この場合にはその農地の所有権を企業から当該地方公共団体に移転する旨の書面契約を締結していただく、これが要件になっております。

 このために、企業が自分で農地を利用しないで転売をするような行為は、農地を適正に利用していない場合、これに該当することになりますので、企業から地方公共団体の方に農地の所有権を移転する、こういうことになるわけでございます。

 それから、そのときの対価でございますけれども、この法案の中では特段のルールは決めておりませんけれども、そこは地方公共団体と企業の間の契約の中できちんと整理をしていただく、こういう考え方でございます。このときの対価の水準によっては地方公共団体が不利益をこうむるということも当然あり得ますので、この特例措置を採用しようという地方公共団体としては、慎重に、かつ責任を持って検討していただく、こういうことになるというふうに考えております。

宮崎(岳)委員 つまり、何も決めていないということですよね。土地は市町村が買い戻すことができるとは言っているけれども、それが幾らで買い戻すということについては決めはない、契約のときにおのおのの市町村で考えてお好きにおやりください、こういう話であります。

 そして、もちろん、その株式会社の経営者がちゃんとした人で、その会社が健全に存続しているなら問題ないと思いますけれども、先ほど言ったように、その株式会社の経営者に悪意があるかもしれない、あるいはその会社が破綻してしまうかもしれない、あるいは買い取られて、会社自体が買収されてしまうかもしれない、そういったときに、値段を定めないということで、ただ買い戻すことができるということであっても問題は防げるのかということは、私は大いに問題だと思います。

 そしてもう一つ、似たようなことで伺いたいんですが、株式会社が農地を取得しました、そこに先ほど来話題になりました産業廃棄物が例えば投棄をされる、あるいは洪水とか土石流みたいなものが起こって土地そのものが農地の形状をなさなくなってしまったということもあり得ますよね。例えばえぐれてしまったとか、そういうこともあり得ますね。それから、構造物が建築されてしまった、違法かもしれませんけれども、そして原状をとどめなくなってしまった。市町村に簿価で、つまり企業が買った価格で引き取れという話になったときに、市町村の方の買い戻し価格というのはどうなるんですか。市町村の側でもっと安い値段というのを指定できるということになるのか、これもさっきの関連ですけれども。

 あるいは、株式会社が破綻したとか、資力がない、原状回復する能力がない、その土地をむちゃくちゃにしてしまったけれども原状回復する能力がない。そういうときは、それも原価で引き取って、市町村が自分のところの負担でもとに戻せ、こういう話になるんでしょうか。

 これは大臣にお願いできますか。

森山国務大臣 宮崎委員にお答えいたします。

 まず、今回の国家戦略特区における農地所有の特例は、企業が地方公共団体から所有権を取得する場合に限定をしております。また、当該の企業が農地を適正に利用していない場合には、農地の所有権を企業から当該地方公共団体に移転する旨の書面契約を企業と地方公共団体の間で締結していることを要件としております。まず、この二つの要件があるということを御理解いただきたいと思います。

 この契約に基づきまして、企業から地方公共団体に所有権を移転する場合の対価については法案においては特段のルールは決めておらず、地方公共団体から企業に売り渡す際の契約に規定をされることになるだろうというふうに考えます。

 また、原状回復責任も契約書にあらかじめ定めておくべきものと考えておりますが、株式会社が破産したり、資力がない場合には、実際上、市町村が原状回復を行うこともあり得るわけでございます。

 このため、こうした点も含めて、地方公共団体においては契約の内容を慎重に検討していただくということが大事なことであろうというふうに考えております。

 また、被災で農地の形状が変わってしまった場合はどうなるかということでございますが、災害の場合には、一時的に農地として利用できなくなったにすぎず、災害復旧などがなされれば再び農地として利用することが可能となることから、そのことをもって直ちに地方公共団体に農地の所有権が移転をされるということにはならないのだろうと思っております。

 いずれにいたしましても、地方公共団体との契約になりますので、地方公共団体が責任を持って、契約等については慎重な対応をしていただきたく思っているところでございます。

宮崎(岳)委員 そうすると、結局、何かあったときには地方公共団体が買い取れるよという仕組みにはなっておりますが、その中身は、本当に民民の契約として、民間対民間の契約としてそういうふうになっているというだけの話であって、何らか特別な優遇が地方公共団体側にもたらされるわけではないということになります。

 そうすると、私先ほど言ったように、株式会社の経営者に悪意があることもある、あるいは会社が破綻することもある、会社自体が買収されることもある、そのときに発生するさまざまな問題は全てその地方公共団体が自分のところのリスクでやってください、こういう話になっている。

 しかも、これは最初の五年間だけじゃないんですよね。この五年間に取得した農地はその後永遠に持ち続けることができるんですよね。そうすると、私は、今の話を聞いて、何も想定はしていなかったんだなと思ったんですが、やはり、最初の五年間何にもなくても、十年、二十年、三十年、その農地を持ち続ければいろいろなことが起こり得るというふうに思いますので、その点はかなりの問題が発生するんじゃないかというふうに思っております。

 石破大臣に、もう一つこれでお伺いしたいんですが、前回と同じ質問です。

 企業版ふるさと納税ができました。企業版ふるさと納税は、企業が、ある市町村にふるさと納税をするということで、地方活性化に資する何らかの事業を行うというときにそこに寄附をする、こういう制度でありますが、例えば、株式会社の農地保有を非常に強く訴えているような企業があって、特区などと言わずに全面解禁せよ、こういう主張をしている、その企業が各市町村にふるさと納税をして、ぜひこの制度に手を挙げて株式会社の農地保有をやってください、A村の村長さん、お願いします、B町の町長さん、お願いしますということで、それぞれに寄附をする。しかし、それは当該企業が、つまり、ふるさと納税した企業が経済的利益を得るわけではないから禁止されない、こういうことでよろしいんですよね。

石破国務大臣 理屈の上からいえば、そういうことはないとは言えないということであります。つまり、当該企業ではない、全然違う会社がふるさと納税をします、その意図するところは、当該企業なるものに農地の保有を認めてやってちょうだいなということであれば、形式的には、これは私どもとして、内閣府令で経済的利益を与えちゃいかぬということになっていますから、当該企業に経済的利益を与えるわけじゃないので、それはだめですという話にはなりません。

 でも、それは、見ていれば、一体何でこの会社がそういうことを希望しているのか、農地の所有を希望しているのか、そして特区の指定というものを希望するのであろうか。実際、特区の指定というのはそんな簡単な話ではございませんのでね。そして、そのふるさと納税企業版をした企業の意図は那辺にありやみたいなことを見ていれば、何かこれはおかしいのではないかということになるわけであります。

 本当に農地を農地として使用したいのであればそんなことをする必要ないでしょうがということになるわけで、冒頭、どんなニーズがあるのかという委員の御下問がありましたが、実際に、農地を所有したい、そういう人たちがいるわけですね、出資制限の緩和という形を通して。彼らは本当に、それで農地を農地として保有することにより自分たちが夢に描いた農業をやりたいわけで、そういうことであれば、何もそんな迂遠な方法をとる必要もないでしょうということだと思っております。

 そういうようなことはやはり見ていればわかる話ですし、そういうものに対して、農地の保有というものがきちんとした理屈が立たなければ、そもそも特区の指定なぞのようにはならないということだと考えております。

宮崎(岳)委員 私、冒頭申し上げましたとおり、現行の農地所有適格法人で規制としてはクリアされているんじゃないか、真面目に農業をやるんだったらこの制度でできるんじゃないか。つまり、それが嫌だという人は別の意図もあるかもしれないなと。もちろん全員がじゃないですよ、全員がではないですけれども、そういう意図を持っている人も相当程度紛れ込んでいる可能性があるんじゃないか、そういうことで申し上げているわけであります。

 今制度は五年間に限ってということにはなっておりますけれども、株式会社が一度取得した農地は五年間たっても返すわけじゃありません、永遠にその企業が持ち続けるということになります。もし、その企業の合併や統廃合があれば、その財産としてまた引き継がれていくのかもしれません。そういうことになりますと、そう簡単に、実験だからいいんじゃないのということでは済ませられないんじゃないかというふうに思っている次第であります。

 時間もありませんので、自家用自動車による観光客らの有償運送について一点お伺いしたいと思います。

 過疎地で、地域住民が、足がない、タクシーもない、バスもない、だから今回の有償運送を認めて、実費だけもらって白ナンバーで運転してもらいましょう、ここまでは何となくわかる気もするんですね。

 ところが、それを観光客に広げるという。観光客に広げる、不特定多数の人に広げる、そうすると意味が全く違ってくると思うんですね。では、観光客はどこに行くんでしょうか。こっちの道の駅に行きます、こっちの直売所に行きます、こっちの観光地に行きます、こっちのテーマパークに行きます、その間を有償運送でさせるわけですよね。つまり営業の一環ですよね。その部分ではお金は出ないかもしれないけれども、全体としては利益が出る仕組みなんですよね。

 例えば、ペンションとか旅館は無償送迎をやっていますよね。そのバスは無償ですから、これは白ナンバーですよね、それは合法なんですけれども、でも、大きな意味では営業の一環じゃないですか。

 今回は有償運送です、大きな意味で営業の一環ですということになると、これは本当に解禁していいのかという疑問もあります。やはり、一つ間違えれば白タクだと言われても仕方がないというふうに思います。

 さて、その場合に、大臣認定講習というのはたった一日で取れるんですね。

 私、前回の質問でも申し上げました。私の地元は運転代行業が盛んですけれども、夫婦代行みたいな方々がいらっしゃって、昼間の仕事をされていて、夜、副業で夫婦で代行車を運転して稼いでいる。そういった方々もみんな二種免許を持っているんですよ。二種免許を取るのは難しくないんですよ。それなのに、今回、営業事業をやるということなのに、たった一日の大臣認定講習でオーケーというのは、私は間違いではないかというふうに思っております。

 今回の制度において二種免許の取得というのをやはり義務づけるべきではないか。これまでの同じ村の村人を運送するというのとは趣旨が変わってきますので、ぜひ二種免許の取得というのを義務づけるように、それは国交省の指導なり、そういう範囲内で考えていただきたいんですが、いかがでしょうか。

宮内大臣政務官 お答えをいたします。

 今回の特例措置は、訪日外国人を初めとする観光客の移動手段の確保を目的として、それがバス、タクシー事業等によることが困難である場合に限ってということで有償運送を認めようということでございます。運送する地域は限定的で、輸送頻度が極めて低く、バス、タクシー事業による提供が困難な旅客輸送ということに限定をしているということでございまして、まさにこういう地域では事業として成立ができないということによって、今回のルールを当てはめるということにしておるわけでございます。

 先生がおっしゃっているように、やはり旅客ですから、安全性の確保については大変重要なことだというふうに思いますし、今回の有償運送事業の際に、運転者の受講についての、大臣認定講習の内容でございますけれども、ここをもう一度精査させていただいて、その変更の必要性について、もう一度実施までに検討してまいりたいというふうに考えております。

宮崎(岳)委員 村人を乗せるのと不特定多数の人を乗せる、行き先も、村人が生活のために使うのと観光地を回るために使うのでは意味が全く違うと思うので、そこはなるべく、今さら法律を変える云々ということはもちろんありましょうけれども、二種免許か大臣認定かどちらかということになっているんですから、この場合はやはり二種免許推奨だということはぜひ取り組んでいただきたいというふうに思います。

 時間になりましたので、最後に一問だけ、ちょっと確認のためにお伺いしたいんです。

 今の関係ですが、観光客を運送するという趣旨からいって、実質的に営利事業なんですね。そうすると、行き先は観光施設です。観光会社なんかは、例えば、お客を一人連れていけばそこから幾らバックマージンがもらえるみたいなビジネスモデルだってたくさんあるんですよね、観光業はそうですよね。

 そうすると、実質的に無料でもうからない、非営利の事業であるとされている有償運送ですが、そのNPOなりあるいは経営している一般社団なりに、例えば観光事業者からバックマージンが入るとか協力金が入るとか、あるいは出資を受けるとか、あるいは弁当販売等その他の事業と組み合わせて利益を出すとかということをすれば、これは完全に営利事業になってしまいます。

 こういったことは禁止をされているということなんでしょうか。それとも、認められているということなんでしょうか。どうなんでしょうか。

宮内大臣政務官 お答えをいたします。

 今回の特例において、法令上、旅客から収受する対価は、当該運送に必要な費用を勘案した実費の範囲内であることとされておるわけであります。利潤を含めた対価を収受することはできないということにいたしておるところでございます。

 したがって、今回の特例の運送事業としては株式会社は認めていないということにしておりますし、あくまでも営利事業ではないという前提のルールでございます。

宮崎(岳)委員 済みません、お答えになっていないんですけれども。

 客以外のところからもらうのはどうですか、観光施設なりその関連するところからお金をいただくというのは、お客以外のところからいただくとか、あるいはそういうお客にお弁当やジュースを売るとか、そういうところ、別のところで出すのはどうなんですか、合法なんですか、違法なんですかと伺っているんです。

宮内大臣政務官 これは、やはり想定されますのが過疎地で、限定される地域ということでございますので、過疎地その他の交通が著しく不便な地域であり、御指摘のような各種取り組みによる附帯収入の額は限られたものになるというふうに想定をいたしております。

宮崎(岳)委員 全く答えになっておりません。

 時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。

山本委員長 次に、小山展弘君。

    〔山本委員長退席、小里委員長着席〕

小山委員 民進党の小山展弘でございます。

 このたびは、本件について、農水委員会との連合審査ということで開いていただきました。特に地方創生特の理事、委員の皆様方初め、農水委員会の関係の皆様方に御理解いただきましたこと、まず感謝申し上げたいと思います。

 私は、きょうは特に、今回の、農業に関する、事実上の企業の農地所有というところについて主に質問していきたいと思います。予算委員会と三月九日の農水委員会と、今回で三回目の質問になりますが、きょうはせっかくこのような地方創生特の委員会の皆さんとの連合審査ということなので、まず石破大臣に、石破大臣の政治観ということで、これは事前通告をしておりますので、お尋ねをしたいと思います。

 保守とか保守政治、保守主義といったものについて、これは、先日、三月九日に森山大臣にお尋ねをしておりますけれども、最初五、六分ぐらい、石破大臣の保守、保守政治、こういったものの定義とか認識についてぜひお尋ねしたいと思います。もちろん、これは揚げ足をとるようなクイズ質問ではなくて、保守とか保守主義というのは人によって定義もさまざまでございます。だからこそ、正解はありませんし、また石破大臣の御認識についてお伺いをしたいと思っております。一応、通告のときにも、最初の方にお伺いするかもしれないということで申し上げてはおりますが、いかがでございますでしょうか。

石破国務大臣 平成二十三年のことですから、民主党が政権をお持ちの時代でございます。私は、予算委員会で、個人的には非常に敬愛しております野田佳彦さんとこういう議論を随分といたしました。

 そのときに、エドモンド・バークが書きました「フランス革命の省察」というのがございますが、あれは、エドモンド・バークがフランス革命のことを、現状を全て変えてしまうような破壊的なフランス革命について痛罵にも等しい批評をしていた、私も原文を読んでいないので、邦訳をさっと読んだだけですけれども、それを取り上げたような覚えがございます。

 江藤淳さんが、保守とは感覚であるということを述べています。私は、保守というのはそういうものかもしれないと思っておって、保守主義というイデオロギーがあるのかというと、そういうイデオロギーがあるとは思わない。

 京都へ行きますと、私は保守ですから共産党に入れますという人がいるらしくて、なるほど、そうなのかと思ったような気がいたしますが。ですから、例えばかつてのソビエトとかそういう共産圏に行けば、保守というのは共産党体制を擁護する人ということであって、我々が考える保守とは全く別のものでございます。

 だけれども、私自身は、この江藤淳さんの保守とは感覚であるということにかなり共鳴をいたしておって、これが保守主義でありますというイデオロギーがあるとは思っていない。やはり国家というものを大切にし、我が国の場合には、恐れ多くも陛下を中心とする皇室というものを敬い、そしてまた伝統文化を大切にし、祖先を大切にし、地域、近隣を大切にし、家族を大切にする、そういう変えてはならない価値観というものを大事にするということが保守の本質ではないだろうかというふうに考えておりまして、私は保守ですとか、あなたは保守ではありませんとか、そういうことを余り声高に議論すべきものではないのではないかと考えております。

 ただ、野田さんとの議論のときに、私は当時の民主党を、総理は、野田さんは私は保守主義者ですとおっしゃるんですけれども、当時の民主党というのは保守政党ですかというと、そこはどうだろうねみたいなお話がございました。それは、多様な価値観という考え方もあるのかもしれません。

 私は、保守の根幹にあるものは、国家というものをいかにして守ろうか。つまり、個人の人権でありますとかあるいは自由でありますとか、そういうものが侵されたときにそれを守ってくれるのは政府というよりは国家だと私は思っているのです。その国家の独立というものについて、常に、法律的に、あるいは運用の面において、あるいは人員、装備の面において、これは安全保障的な考え方を中心に申し上げていますが、その一人一人の、国家の要素たる国民というものを守るための国家の独立というものをきちんと考えるということは、やはり保守を考える上において必要なことだと認識をしておるところでございます。

小山委員 ありがとうございます。

 私も石破大臣の今のお話にも共鳴するところもございまして、保守というのは、私も、自分で自分自身が保守だとか保守主義者だとか言ったことはほとんど今までないです。石破大臣が今、感覚とお話しになりましたが、私は、これはどれが答えということではなくて、保守というのは一つの姿勢ではないかなというふうに感じております。

 大臣もおっしゃられたとおりで、それこそソビエト連邦の最後の方では、当時、ゴルバチョフさんは改革派で、リガチョフさんなんという人が保守派と言われたりとか、そういうこともありますし、あるいは自由保守主義なんということも物の本によりますとありまして、これは、市場競争に、国家が福祉国家とか税制とかそういったことで入ってこないように、競争の価値をいかに守るかというようなことでおっしゃる方もいらっしゃる。

 御党御出身の議長でございます大島理森議長が、土着の保守とイデオロギーの保守というのがあるというお話をされておられまして、私は、これも大変、分類としても、実は私の大変な師匠の、当時の鹿野道彦先生から教えていただいたんですが、大島議長にも先日、議院運営委員会の懇談のときにそんなお話もしましたが、イデオロギーの保守というよりも土着の保守、これは私は、現状を見て、現状の制度とか仕組みの中にいいものがあればこれを積極的に認めていくということではないかな。その中で、もちろん時代に合わせていろいろな問題点も出てくる、その部分について改革をしていくというような姿勢ではないか。これはどこまでが問題点なのかどうかというところについては、いろいろな個々の政治家、議員によって、人によっても変わってくるんだろうと思いますけれども、こういった分類もなかなか大変興味深いというか示唆に富んだものであるかな。

 私は、土着の保守というよりも現場からの保守というふうに自分では勝手に言っておりますけれども、ちなみに石破大臣は、御自身で保守政治家であるというふうには、先ほど、自分で保守だとか名乗る名乗らないということがございましたが、御自身ではどのようにお考えでいらっしゃいますか。

石破国務大臣 私は、余り政治というものが教条主義的になってはいけないと思っています。あるいは、思想信条のようなもので政治が排他的に律せられることがあることは私は余り好みません。そこはいろいろな考え方があると思っております。ですから、保守とは感覚であるというのは先ほど申し述べたとおりでございます。

 私自身は、自分で、足らざるところはたくさんありますが、やはり皇室をとうとび、国の文化をとうとび、地域を大事にし、祖先を大事にし、そういう意味での保守というものは大事にしていきたいと思っております。

 これは、日本の場合に、私は、今まで戦後の日本国のあり方というのは、それは部分的に後世から批判されるものはあるのでしょうけれども、おおむね正しかったと思っております。日本国憲法というものに基づき、戦を行うこともなく、そしてまた基本的人権を尊重しという形で、この国家のあり方というのは正しかったと思っております。ですから、戦後の、主に我が党が担ってまいりました政治というものは、それは保守と言うのにふさわしいものなのでございましょう。

 そこにおいて、いろいろな教条主義的なものが入ってきて、おまえは保守だ、いや、おまえは違う、おまえはえせだ、どうのこうのという議論は本当にどれほど生産的なのだろうかなというふうに思わないではありません。それは思想信条の自由でございますので、それぞれが物事を考えるのは構いません。ですが、そういうことについて、国の責任ある立場にいる者がそういうお話を余りにしていって、国民的な感情の対立をあおるということが決して私ども正しいと思っていませんし、我が党はそのようなことを考えているのではございません。

 それぞれの人たちの価値観というものを大事にしながら、この国のあり方というものをどうやって後世につなげていくかということを我が党として一生懸命考えているし、私はその一員でありたいと考えておるところでございます。

小山委員 大変御丁寧な答弁をいただきまして、私は平成二十三年の議事録はちょっと読んでいなかったものですから、もう少し準備して伺えばよかったかなと思いますけれども。

 ちなみに、今回の国家戦略特区法の改正、これは、今までの農地法の一部分、国家戦略特区法ということで、特区を認めていくということになるわけでございます。また、先ほどからも質問がございましたが、この四月一日から新たに農地法が施行される、こういう現状ですけれども、これはちなみに、軽くお答えいただければと思うんですが、保守という姿勢あるいは感覚というところから見て、今回の国家戦略法案の改正というのはどのようにお感じになりますか。

石破国務大臣 私は、かつて宮沢内閣で農林水産政務次官というのをいたしました。森内閣で、今でいう副大臣、総括政務次官をやっておりました。麻生内閣で農林水産大臣を拝命いたしました。そのときからずっと思っているんですけれども、農業において一番大事なのは、サステーナビリティー、持続可能性をどう維持するかということだと思っております。

 自給率のお話も、私は自給力という観点から論ずべきものであって、それは、農地であり、そして農業者の数であり、そして農業インフラであり、農業技術であり、それは全て数値化できるものでございます。それがどのようにして維持されていくかということが大事なのであって、自給率という点だけから考えれば、毎日飢え死にする人が何人も出るような国でも自給率は高く出ることがあるんです。そういうものが政策目標それ自体であっていいはずはないのであって、農地の面積、農業者の数、農業技術、農業インフラ、それがサステーナブルなものとして維持されているかどうかということでございます。

 日本人の人口自体がこれから先急減するのであって、今のままの出生率、死亡率がこのまま続けば、西暦二一〇〇年には日本人は五千二百万人になるのです。あと二百年たてば千三百九十一万人になるのです。人口が急減していく中にあって、農地をどう守り、農業者の数をどう維持するかというのはそんなに容易なことではございません。

 ですから、私どもは今回この法案で提案をいたしておりますのは、どうやったらば農地が活用され、どうやったらばそれが次の時代に伝承されるかということであって、農業において一番大事な価値観は、私は持続可能性の維持だと思っております。

小山委員 今御答弁いただきましたが、今までの、農水省がつくってきたこの制度、そしてまた今回、それも六十年ぶりの改革ということで昨年大変な議論がございました。その上で農地法が改正をされて、この四月一日から施行ということで、まさにきょう政府参考人で来ている奥原局長も大変このことには御尽力されたと私は想像しております。

 こういう中で、今、農地がどのように、今サステーナビリティーということで、維持できるかどうかというようなことで大臣からお話がございましたけれども、今ある農地法というものも、いろいろなリスクがある中で、それを、リスクを最小限にとどめる。宮崎議員から先ほど話のあった、産廃処理場になってはいけないんじゃないか、あるいは農地が転売されていってはいけないんじゃないか、こういうようなものも全て含めた上で、農水省が今まで連綿とつくってきた制度である。

 このことを、やはり現状うまくいっている制度のよさというものにも目を向けて、そしてまた、きょうの結論かと思うんですが、選択肢をつくる、頭の体操と言うと大変失礼ですけれども、その部分では確かにいいかもしれない。だけれども、つくることによってさまざまな問題が起きるかもしれないというリスクを今まで防いできた。このことが、今回、特区法、そしてそれがまた将来、五年後に全国展開とか、あるいは全国でなくても展開していくということになったときに問題が出てこないように、まさに現状のよさというものをまず見た上で、慎重に今回の特区法の改正については議論をしていかなければならないと思うんです。

 その点で、埼玉県の羽生市というところでは株式会社イオンアグリ創造が、農地中間管理機構、これも奥原局長の大変肝いりかと思いますが、これを活用してリース方式で、米と野菜、計二十八ヘクタール、農業に参入しているというものがございます。リース方式でも大企業は大規模にやっている例です。そのほかにも、農水省のホームページを見ますと、六十近い、こういう優良事例が掲載されております。中には、経営規模十ヘクタール以上の大規模なものもある。本当にさまざまなリスクもある中で、こういう優良事例も、これはきょうお配りすればよかったんですが、きのうは日曜日、土日で、ちょっと通告するのを忘れていました。

 そういう優良事例もある中で、リース方式で対応できずに、本当に所有でなければ解決できないという問題があるのか、あるいは、企業が農地を所有することで、リースと違って、リースよりもさらに大幅にいい農業ができるというようなことがあるのか、それをぜひお答えいただきたいと思います。

佐々木(基)政府参考人 お答えいたします。

 おっしゃるとおり、リースというものが企業の農業への参入ということで大変な役割を果たしているということは十分承知しております。

 今回、私ども特区を担当するところに、全国から、農業で所得ができる法人についての要件緩和についての多数の要望を承っているわけでございますけれども、その中の要望を幾つか御紹介させていただきますと、まず一つは、より長期的に安定した事業ができるかどうかという観点で、例えば、農地法上は、十年以上の賃貸借についてはその更新をしないということを通知することができるというような条文になっておりますし、それから、十年に至らない短期のものでも、例えば所有者が農業をまた始めたいというようなときには一応その解約ができるというように、これは、実際にそれを許可するかどうかは別としても、そういう規定がございまして、そういうところから、実際には、お借りをしてやろうとする方が将来の経営に対して不安ではないか、そういう危惧感を持っているということが一つございます。

 それから、今回の養父の場合には特にそうでございますけれども、非常に耕作放棄地が多いということでございまして、耕作放棄地をまとめて事業をしようとすることになりますと非常にお金がかかるということになるわけでございますけれども、今の状況では、農業に関する以外のところは二分の一未満の出資までしか認められないということになっておりますので、出資したいんだけれども、地元の農家の方がそれにつき合えないというようなことがございまして、もっと大がかりに出資して、農業としてしっかりした経営基盤をつくっていきたい、それに対しては、今の二分の一以内の出資ということでは不十分じゃないかというような声も上がってきておるところでございます。

 そういったことを踏まえまして、私どもといたしましては、先ほどから話が出ておりますけれども、一つの実験ということで、農地を取得するということも一つの方策としてあるのではないかということで、今回法律の改正を御提案させていただいている次第でございます。

小山委員 今、耕作放棄地が多いということで、それをまとめるというような、農地適格所有法人という方式でやればそうかもしれないですけれども、先ほど申し上げましたイオン、これが中間管理機構を活用してやっている、あるいは、たくさんのリース方式で耕作放棄地をまとめてやっている例もあるんですね。どうしても特区というような方法でやらなければいけないという理由には、私はちょっと、そこまでの説得力はないと思います。

 それと、三月九日のときの質問でも、大体、あれは前日の通告でしたから、今、そのときよりも細かくお答えはいただいたんですけれども、これも事前通告してあります、長期的というのはどのぐらいの長さのことなんですか。安定的というのはどういうことを具体的にイメージしているんですか。

佐々木(基)政府参考人 お答えいたします。

 まず、期間の問題でございますけれども、企業の経営戦略にかかわることでございますので、一体どのくらいが長期かどうかということはなかなか申し上げにくいわけでございますけれども、私どもが受けている要望は、先ほども申し上げましたように、例えば、現在リース関係では、上限は五十年でございますけれども、十年未満の短期のものが四分の三ぐらいを占めているという状況の中で、少なくともその期間では投下した資本を回収して事業をやって利益を上げていくということについては足りないだろう、そういう認識があるというふうに伺っております。

石破国務大臣 今、佐々木室長からお答えしたとおりでございますが、これは先ほど宮崎委員にもお答えしましたが、要するに、賃借権の設定期間が六年から十年が二二・五%で、一年から六年が五二・二%なわけです。そうすると、桃栗三年柿八年みたいな話で、そういうような期間で本当に資本が回収でき、安定的な経営ができるかというと、これは、委員、農業経営にもう御造詣が深いと承知をいたしておりますが、普通に考えれば無理でしょう。それは十年で、農業でやたら収益が上がって、農地の活用が十分できるとは私は考えておりませんで、それはやはりもう少し長い期間が必要なのではないだろうかというふうに考えております。

 そうすると、おおむね二十年とかそういうのが考えられますけれども、一応、理屈の上からは五十年を上限とする、二十年を五十年と読みかえておりますので、そういうことになっていますが、五十年とは申しませんけれども、やはり、二十年、それぐらいの期間は安定的に必要なのではないか、あるいはもう少し長い方があるべきなのかもしれないと思っております。

 ですから、所有権という形になりまして、それが、実際に十年未満がほとんどであるという状況を超えるということになると思っておりまして、安定的、長期的というのはそういうイメージで私は考えておるところでございます。

小山委員 ちょうど今、二十年ということでお話が出ました。これは、必ず二十年というよりも大体それがめどというようなお話かと思いますけれども。

 質問の順番をちょっと変えまして、養父市の要望書には、企業が農地所有できる要件緩和を求めているということでありますけれども、しかし、一般的に、農地の取得価格は大体、これは全国平均ですが、リース料の百倍かかる。これはいろいろな、農林水産委員会なんかでの質問もあったかと思うんです、九十九年というか百年ですね。

 これは二十年、三十年、確かに、今石破大臣がおっしゃったような、特に林地なんかになると、石破大臣は以前農水大臣もお務めになられていたので、私よりももうはるかにいろいろ御見識がおありかと思いますが、林地ということになれば百年とかというような大変長い、長期の経営計画ということになる。ただ、その間にさまざまな価格の変動があって、リスクも非常に大きいわけです。これは漁業でも農業でもそうかと思いますけれども、長くなればその分、非常にリスクというものも大きくなるんじゃないでしょうか。特に最近は乱高下、価格が低下する部分もあろうかと思います。

 本当に、リースと比較して、百年かかる、百倍お金がかかるということを、土地取得をしてまで投下資本を回収できるビジネスモデルというものがあるんでしょうか。これをぜひ、これは今までの農水委員会での議論でも質問がございましたが、そういうビジネスモデルというのを具体的にお示しいただければと思うんですが、いかがでしょうか。

牧島大臣政務官 お答えいたします。

 農業に参入する企業が農地を借りるか所有するかという判断をする際の要素は、必ずしも価格だけではないのではないかと考えます。事業の収益の見込みですとか投下資本の回収期間なども勘案しながら、大規模経営、六次産業化などに取り組みやすくするメリットというものが考えられるというふうに思います。

 農地の所有が企業の経営判断の選択肢に加わるということで本法令を措置したいと考えています。

小山委員 今、企業からのニーズというようなお話もあったかと思います。収益だけではないと。

 しかしながら、先ほどの、実は最初にこれも農水委員会で一度質問していることなんですが、企業からは、今回の内閣府の要望募集に対して、三年間で二十件ということでございました。三年間でわずか二十件です。一年に直したら六件か七件ですね。

 私と宮崎さんと福島さんとか、こういう悪い議員が何件か出させてというような、悪い議員と言ったら怒られちゃうかもしれない。まあ、これは冗談ですけれども、六件か七件というのは、非常に、私は正直言って少ないと思うんですね。そのぐらいの少ない案件で、しかもその中に、農水委員会の答弁では新潟市と佐賀県からもそういう要望があったということだったんですが、先ほど申し上げたようなイオンあるいはJR東海、さまざまな、農水省のホームページに六十件ももう既に優良事例として載っかっている。

 こういうことを考えますと、果たして、今牧島政務官から、要望があったということだったんですが、三年間で二十件、これはどうでしょうか、数としてまず多いと思われますか、少ないと思われますか。

 それと、この二十件の中身について、先ほどちょっと、同じような、同様の質問があったんですが、余り詳しいことがなかったので、これは私からも通告してありますので、この中身について御答弁いただければと思います。これは石破大臣にお願いします。

石破国務大臣 二十件を多いと見るかどう見るかですが、数じゃないよ中身だよと、こんなことを言っちゃうと身もふたもないんですけれども、私は、内容はかなりいいものだというふうに思っておるわけでございます。

 特に六次化というものを考えましたときに、生産、加工、販売、こういうのが六次化になるわけでございまして、その場合に、所有権が持ちますところの所有権絶対というものがかなりきいてくる部分があるのではないかということでございます。もちろん転用するとかそんなことを申し上げているわけではございません。そういたしますと、この二十件の中でも、六次化というものについてかなり考えたものが多いというふうに認識をいたしております。

 また、国家戦略特区のみならず、構造改革特区の提案では二十七件、規制改革会議の規制改革ホットラインでは平成二十五年度から十七件ということでありまして、この二十件だけが所有というものを主張しているわけではない。国家戦略特区の二十件以外にも、平成十四年からの構造改革の提案で二十七件、ホットラインでは十七件、これは規制改革会議の規制改革内容によるものでございます。

 中身につきましては事務方から答弁いたします。

佐々木(基)政府参考人 お答えします。

 要望の内容につきまして簡単に御説明申し上げます。

 先ほどございました二十件でございますけれども、このうち過半の十三件が、養父市も含めまして公共団体からの要望になっておりまして、多いものはやはり出資要件の緩和、これは二分の一という要件を変えてほしいということでございます。それから役員要件で、例えば役員が常時従事する日数というものを緩和してほしいという要望がございますし、あるいは三番目としては、事業要件ということで、農業関係の売上高が過半でなければならないというふうになっておりますけれども、これを、例えば加工、販売とか、そういったものについてもカウントしてくれというような話がございます。

 こういう状況でございますけれども、いずれにいたしましても、私どもが伺っている範囲では、いずれの要件も、相当部分が、企業が土地を取得することに際する希望の一環ということでお伺いしておるところでございまして、私ども、いろいろなところでそういう要望をお聞きして、今回の特区法の改正につなげたところでございます。

 以上でございます。

小山委員 もう少し詳しくお尋ねしたいところですけれども、もう一点だけ、これは農水省に対する質問になろうかと思いますが、お尋ねしたいことがありますので、お願いします。

 この養父市の特区において、農地所有を一旦試験的に認めることであると、先ほども森山大臣の答弁で試験的という表現がございました。試験ですから、これは受かる場合もあれば落ちる場合もあるわけですね。この特区の法案が五年で終了だよという可能性もあるということですね。

 その場合に、先ほどこれは宮崎議員からの質疑、議論の中にもありましたけれども、この試験が、五年間でこの特区法が終了ですということになったとしても、その五年の間に農地を所有した企業というのはずっと所有し続けるということになろうかと思います、今の時点で、理屈で考えれば。その場合、終了するということになれば、五年後の先のことです、六年、七年先の、農地を所有する企業と所有しない企業、特区の中にあった企業と外にあった企業、あるいはその期間の中に特区を申請した企業とその期間から外れてしまった企業で、もしこれが試験的に終了ということになれば、五年後以降に著しく格差が生じることになるんじゃないか。

 この点について、今後、もし試験が失敗ということになってしまった場合、どう整合性をとっていくのか。これは、入り口のところでやはり出口も考えた上で施策をしていかなければいけないのではないかという意味においてお尋ねしたいと思うんですが、答弁をお願いいたします。

奥原政府参考人 今先生から御指摘いただきましたけれども、今回の国家戦略特区の農地所有の特例は試験的な事業でございます。したがって、確実な原状回復措置を講じた上で、地域も限定しておりますし、それから期間も五年間に限定をしております。したがいまして、五年間の期間が経過した後はこの特例も当然なくなります。その後どうするかは、また法案が必要であれば法案を検討するということになりますので、明らかに五年たったところでこの特例はなくなるということでございます。

 そうしますと、当該特区の中におきましても、企業が新たに農地の所有権を取得することはできなくなる。一方で、この五年の間に企業が所有することを認められた農地、この特区の中ではそういうことが当然あり得るわけですけれども、そこにつきましては、この法律に基づいて地方公共団体との契約が結ばれて所有権を持っているわけですから、この契約に基づく所有権がきちんと継続をする、こういうことになってくるわけでございます。この結果、今先生から御指摘いただきましたように、リース方式の一般企業ですとかあるいは農地所有適格法人との間で制度上の取り扱いには差異が生ずる、これは当然そういうことになります。

 ですけれども、これは、地域を限定して試験的に規制緩和を行う、こういった国家戦略特区制度の性質上はやむを得ないものというふうに考えております。この五年間の特例がなくなるということは、ある意味、規制が強化されるということと同義でございますけれども、世の中には、規制を強化する場合に、それ以前のものとそれ以後のものとで差が生ずるということは当然ございますので、これは法制度上はやむを得ないというふうに考えております。

小山委員 ありがとうございます。

 今後、もし五年間で今回のことが終了になれば差異が生じることはやむを得ないということでございました。

 もう一問だけ、手短にお尋ねしたいと思います。

 今回、農地所有の要件緩和ということですけれども、その理由の中の一つに、資金調達のお話がございました。株式会社が参入するに当たって、大規模に資金調達をするのに、出資が今までのことではできないということで、資金調達に支障が生じているという話がありましたけれども、実際に、具体的に資金が調達できなかったという事例はあるんでしょうか。

佐々木(基)政府参考人 お答え申し上げます。

 現行制度におきましては出資比率の制限がございますものですから、農地所有適格法人が資本金の増資により資金調達を実施しようとしても、農家の負担が大きく困難な場合があるということで、そういう事情で、私どもが伺っている法人あるいは団体につきましては緩和してほしいということでございますので、実質的に、今後どういうような資金計画をつくってどういう事業をやっていくかということについては、まさにこれから見ていくということになろうかと思います。

小山委員 質問時間が終了いたしましたのでこれで終わりますけれども、出資だけが資金調達の方法ではもちろんございません。今、大企業なんかでは、逆に借り入れとか、別な形での資金調達ということも十分可能かと思いますので、正直、資金調達に支障が出たという方は多分恐らくないんだと思いますが、少なくとも、先ほどの話のとおり、出口も考えた上で、慎重にこれは御議論いただきたいということを重ねて申し上げて、質問を終わりたいと思います。

小里委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 民進党の福島伸享でございます。

 農林水産委員会から出張ってまいりました。本日、このような連合審査での質疑の機会を賜りまして、ありがとうございます。時間がございませんので、質問から早速入らせていただきます。

 まず最初、道路運送法の改正についてなんですけれども、今回の改正は、二月五日の特区諮問会議の石破大臣のペーパーや民間議員のペーパーですと、過疎地域等での観光外国人受け入れのためのライドシェアを導入するんだといって始まったんですが、三月二日のペーパーからはそれが落ちちゃっているんですけれども、今回この改正は、いわゆる観光外国人受け入れのためのライドシェアであると言ってよろしいんでしょうか。国交省。

宮内大臣政務官 お答えをいたします。

 今回の件はライドシェアとは全く関係ありません。

福島委員 いや、おかしいですね。

 二月五日までは外国人受け入れのためのライドシェアをやるといってこれを入れたわけですけれども、結局これは実現しないで全く別物を入れたということで、石破大臣、よろしいんでしょうか。

石破国務大臣 今、国交省からお答えしたとおり、それは別物なのでございます。

福島委員 ずっとこの間の議論を見てみると、ライドシェアを入れると言いながら、このたった数カ月の間に全く別物が入ったというのは、私は不思議でなりません。

 今回入った措置というのは、私は今までの自家用有償運送と何が違うかというのが全然わからないんですね。平成二十七年四月の省令改正で、これまでは名簿に記載されていた地域の住民しか運べなかったものを、省令を改正して地域外からの観光客なども運べるようになっております。できるんです、今の制度で。

 何で、今できるのに、ライドシェアがテーマになっていたにもかかわらず、今できる制度を、もっともらしく何を変えたんですか。何を変えるためにこの特例を設けたのか、御説明をお願いします。

宮内大臣政務官 お答えをいたします。

 現行の自家用有償旅客運送制度は、過疎地域その他の交通が著しく不便な地域における通院や買い物など、地域住民の足を確保することを目的といたしております。

 一方で、今回の国家戦略特別区域において導入しようとしております特例措置は、過疎地域その他の交通が著しく不便な地域における訪日外国人を初めとする観光客の輸送を主たる目的としておるということで、目的が違うということで整理をいたしております。

福島委員 同じ過疎地で同じ人間を運ぶのに、金髪か黒髪とかの違いはあるかもしれませんけれども、通院の住民の場合と観光客の場合と、なぜ制度を変えなきゃならないんですか。お答えください。

宮内大臣政務官 お答えをいたします。

 繰り返しになりますけれども、あくまでも……(福島委員「目的が違うとなぜ手段を変えなきゃならないのですか」と呼ぶ)目的が違うことでございますので、新たに今回の国家戦略特別区域において導入をすることによって、特例措置を設けるというふうにいたしております。

福島委員 それは全く言いわけになりませんね。

 先ほどもちょっと言いましたように、同じ人間を運ぶんですよ。担保すべきは、例えば、安全性の話であったりとか、あと料金をフェアにすることであったりとか、そういうことで、目的は違っても規制をやる手段は同じはずなんですよ。何が違うのか。何が一体違うんですか。

 では、何が違うかお答えください、今の答弁で。

宮内大臣政務官 今回の国家戦略特別区域において導入しようとしておりますのは、今までにはなかった、過疎地に対する訪日外国人、そういうお客さんが来たときにどうするのかということの手段について、新しく目的をつくるということでございます。

福島委員 例えば、訪日外国人だから運転手は英語ができなければならないとか、そういう規制を入れるんだったらわかるんですよ。今回、何もそれは入っていませんよね。

 しかも、外国人とかなんとか言いますけれども、外国人旅客その他の観光旅客の移動と書いてありますから、外人に限らず、その他の観光客も、日本人も当然含まれます。しかも、それを「主たる目的として」とあるので、主たる目的でありますから、副次的には地域住民も運ぶことができますよね。どうですか。

宮内大臣政務官 国家戦略特区において導入をしようとしております今回の特例措置につきましては、地域住民等の利用も排除するものではありませんけれども、あくまでも訪日外国人を初めとする観光客の輸送を主たる目的とするということが前提となっております。

福島委員 ありがとうございます。結局、誰でも運べるんですよ。それで規制の仕方を変えるというのは、私はそこに合理性は見出せません。

 しかも、何が違うかということはおっしゃいませんでしたけれども、私はたった一点だと思っております。安全面とかは変わらない。ただ一つ違うのは、今までの自家用有償運送は、運営協議会において協議が調っていることを証する書類を提出しなければ認められなかったんです。登録できなかったんです。今回、それは、協議はしなければならないけれども、でも、協議が調うという条件、これは省令で決まっているだけなんですけれども、それもないままに、あとは特区諮問会議で計画をつくって、それで認められる、それだけが違うんですよ。

 なぜ外国人が入ると運営協議会において協議が調う必要がなくなるのか、お答えいただけませんでしょうか。

小里委員長 持永大臣官房審議官。(福島委員「いや、答弁を求めていないですよ。そう言っていますから。政務だけと議論すると言っていますから。法律の解釈とかの場合は聞きますので、政務官、お願いします」と呼ぶ)

 宮内政務官。

宮内大臣政務官 お答えをいたします。

 今回の特例措置を実施する際の手続につきましては、議員御案内だと思いますけれども、国家戦略特区担当大臣、地方公共団体の長、それから事業実施予定者等を構成員とする国家戦略特別区域会議において区域計画の策定をまずしていただいて……(福島委員「理由です。理由をお聞きしているんです。理由、なぜ違っているのか。目的が違うから手段が違うと言ったので、理由を教えてください」と呼ぶ)はい。構成員とする国家戦略特区会議において区域計画の策定をし、そして国土交通大臣の同意、そして内閣総理大臣による認定が必要となっており、その上で国土交通大臣等の登録が必要となっておるわけでございます。

 さらに、この区域計画の策定に先立って、今回の制度においては、市町村、事業実施予定者及びバス、タクシー事業者はあらかじめ協議をしなければならないというふうにされておるところでございます。

福島委員 これは制度の理由なので、政治家に答弁してほしいんですよ、事務方じゃなくて。法律の解釈とかになれば事務方にちゃんと聞きますから、責任を持って政務官に答弁いただきたいんです。

 なぜ通院の場合は協議が調わなきゃならなくて、なぜ外国人等の旅行客の場合は協議が調わなくてもできるんですか。その制度の違いを設けた理由についてお答えください。お願いします。

宮内大臣政務官 今回の特例が定められた区域計画への同意につきましては、国土交通大臣が行うこととなります。その判断に際しましては、一般旅客自動車運送事業者によるところが困難であること、市町村、事業実施予定者、運送事業者による協議をしっかり経ていただいているということを含めて、適法性を判断するということにしております。

福島委員 これまでのやりとりでわかったと思うんですけれども、もともとライドシェアというのを目的として始まったものが、無理やり今回法律改正をするために、旅行客なのか住民なのかというちょっとした違いで法律改正事項をつくっているだけなんですよ。

 しかも、外国人観光客がこれからふえてきたら、このいわゆる自家用運送から、実際に民間のタクシー会社や地元のバス会社が観光客を乗せるようにすれば、まさに地域再生が実現するわけですよ。でも、何かそうした地域の協議会というもので協議が調うことを義務にしないことによって、うがった見方をすれば、そういう人たちをあえて外して、なるべく、地元の人が反対しても、どこかよそからやってきた人ができるような制度にしているんじゃないかとうがった見方もできるような制度の穴があるんですね。

 そうすると、新たな既得権益が生まれるだけなんですよ。私は、こんなのは国家戦略特区の名に値をしない、くだらない規制改革だと失礼ながら言わざるを得ないと思いますよ。

 二点目、道路運送の方は時間がないのでこれだけにしますけれども、せっかくですので農地のことをお聞きさせていただきたいと思います。

 これは、先ほど来の議論を聞いておりますと、試験的と何度も答弁をしております。例えば新潟市も同じような特区の提案を受けておりますが、私は新潟市の人に直接お聞きをしましたが、株式会社の農地所有までを求めるつもりはないし、そんなニーズはないということを担当の方ははっきりとおっしゃっていました。

 二月五日の特区諮問会議の民間議員ペーパーでは、養父市だからこそ、そこに限ってまずは認め、厳格に管理された区域内での企業の状況をしっかり注視していくとしておりますけれども、これは対象は養父市と考えてよろしいでしょうか。

石破国務大臣 今回、養父市において実証を行うということでございます。その後のことについては今言及する段階にございません。

福島委員 これはどこが対象になるかというのは政令で決めると考えてよろしいですね。これは事務方でも結構です。

奥原政府参考人 法律の中で、政令で決めるということは明確に書いてございます。

福島委員 これは興味深いことに、構造改革特区からさまざまないろいろな制度がありますけれども、普通は規制の特例措置があって、そのメニューを選んで計画をつくるというやり方なんですね。入り口には、どこが対象というのは関係ないんですよ。なぜかこの農地法の、今回の十八条だけは、あらかじめ対象となるところが政令で定められているところしか区域計画がつくれないという意味では入り口規制を置いているんですね。

 これは何で入り口規制を置いているんでしょうか。

奥原政府参考人 企業の農地所有の問題につきましては、やはり現場の方から、これが耕作放棄地になるのではないか、あるいは産廃置き場になるのではないかというかなり強い懸念があるわけでございます。

 そういった観点で、今回の特例を講じるに当たりましては、地域につきましても、通常の特区だけではなくて、その上でもう一段判断をして、担い手が不足をしている、それから、このままの措置では耕作放棄地がふえてしまう可能性がある、この二つの要件を満たすところを政令でもう一回指定して対象にする、こういう枠組みをとっているわけでございます。

福島委員 つまり、個別に、事前に、国がこの法律の特例措置の対象になるのはどこですよと政令で決めるということなんですね、この仕組みは。ほかに特区法ではこういう規定はございません。

 憲法九十五条には、「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。」とあります。

 石破大臣、これは、こういう法律にしたことによって、まさに憲法九十五条の対象になると思うんですよ。どう思われますか。

石破国務大臣 憲法九十五条の対象となりますのは、一つの地方公共団体のみに適用される特別法でございます。

 この場合の特例、つまり、今やっております特例は、法律に規定しております二つの要件、すなわち、担い手が不足していること、耕作放棄地が増加するおそれのあることに該当するものとして政令で定める自治体に適用されるものであって、一つの地方公共団体のみに限って適用されるものではございません。あくまで、現時点で想定される自治体が養父市のみであるということであって、養父市だけしかということを言っているわけじゃない。こういうような場合に該当するのが養父市しかないということなのであって、養父市一つということを言っているわけではございませんから、憲法九十五条に抵触するわけではないと私どもは考えております。

福島委員 しかし、現実には、五年間で、これだけ長い間募集をして、今のところやる気になっている自治体は養父市だけで、民間議員の皆さんも、養父市だからこそそこに限ってと言っているわけですから、私は、これはひたすら憲法九十五条の対象に近いと思いますよ。

 なぜそういうことを言うかというのは後で申し上げますけれども、先ほど来、このニーズがあるのかという話がありました。私は、企業であれ、例えば病院の株式会社参入でも何でもそうですけれども、株式会社とか何とか法人だからだめよという入り口規制というのはやめた方がいいという考えをもともと持っております。

 しかし、その一方で、株式会社参入をすることによる心配というのも当然あるからこそ、そこに、株式会社が完全に農地を所有するということを規制する農地法というものの存在があったわけですね。

 その一方、ニーズは、先ほど小山さんからもありましたけれども、養父市で見ると、水田の賃料は十アール当たり平均で年間五千二百円。これは養父市が出している公表資料です。一方、農業委員会等の資料によると、売買価格は十アール当たり百万から三百万。つまり、売買価格は賃料の二百年とか六百年分なんですよ。だから、こういう状態では、普通にいけば、わざわざ農地を買おうと思わないと思います。今もオリックスさんとか山陽Amnakさんとかがリース方式でやっておりますけれども、それで十分だと思いますし、加工工場をつくるのであれば、別に農地につくる必要もないわけでありますから、そんなにニーズがあるものとは私は思いません。

 しかし、ニーズはないとしても、法律上可能性がないものを開くというのはもしかしたら意義があるというふうに、百歩譲って認めたとしても、しかしながら、農地がちゃんと担保されるかというのは、私は、これは厳密に法律で規定しなければならないと思っております。

 農地というのは、一回荒れたらもうもとに戻りません。うちの地元も耕作放棄地がいっぱいありますけれども、一年たてばあぜが崩れ始め、二、三年では灌木が立ち、五年、十年、そのうちにイノシシの運動場になって、もう四、五年たったら原野ですよ。それが農地というものです。

 そこからもう一度農地に戻すということはできませんし、一人の方がやめれば、水田であれば、水の利用を上流から下流にするわけですから、いろいろな人に影響があったり、そこから害虫が発生することもある。大きな協同による労力をもって農地を維持するということがわかっているからこそ、農地の所有というのは極めて厳格にしているというのが実際なんですね。

 今回、自治体が一回農地を買って、それを転売して、何かあったら買い戻すということを言っております。しかし、これは民事上の契約ですよね。もし、市長さんがかわって、買わないと言ったらどうなるんですか。

 現に、京丹後市長選挙というのがきのうありまして、我々、後ろに座っている藤原さんなんかと一緒に、小泉政権当時、規制改革をやっていた仲間がきのう落選しているんですよ。特区も熱心に取り組まれていました。そういうことがあるんですよ。

 前の市長の尻を拭うのは嫌だから買わないというのがありますけれども、そうなったらどうなりますか。

奥原政府参考人 先生御指摘のとおり、企業の農業参入につきましては、企業が農業から撤退するのではないかとか、あるいは産廃置き場になるんじゃないか、こういった話がございます。これに対応するためにどうするかということで、今回法律をつくっているわけでございます。

 平成二十一年に入れました農地法の改正では、企業のリース方式での参入を認めておりますけれども、そのときの条件として、確実に原状回復できるようにするために、リース契約を解除する旨の書面契約の締結を義務づけているわけでございます。

 今回、戦略特区におきまして所有を認める特例を講じる場合にも、これと同等の、確実に原状回復できる措置を盛り込む必要があるということで検討いたしました。

 私、先ほど申し上げましたが、リースであれば、貸している方は所有者としての意識を持っておりますので、その農地に関心を持ち続けていらっしゃいますけれども、売買の場合には、売り主の方が売ってしまった後、その農地に関心を持つということは、これは期待することは非常に無理がございます。

 このために、今回の法案では、許可をするのは、企業が地方公共団体から農地の所有権を取得する場合に限定しておりますし、この企業が農地を適正に利用しない場合には、企業から地方公共団体に所有権を移転するということを書面契約できちんと書いて、これでリースのときとバランスをとった法制度をつくっているわけでございます。

 今回の特区の特例は、地方公共団体が責任を持って取り組むことを前提に、強い希望があったわけでございますので、地方公共団体には責任を持って適切に対応していただけるものと考えております。

福島委員 それは地方自治の実態を全然わかっていませんね。前の人が特区をやったら次の人は特区を否定するなんということはよくあることなんです、地方自治の現場では。前の市長がやった失敗を何で俺が拭わなきゃならないというのは、よくあることなんです。全然そういうことを防げていません。

 そして、地方自治体は二元代表制であります。首長がいいと言ったけれども議会が反対というのは、うちの地元でもよくあります。農地を買うということは市民の税金を使うことだから、議会で否決されることだってあり得るんですよ。そうなったらどうするんですか。そういうことは考えていますか。端的にお答えください。

奥原政府参考人 地方自治法に基づきまして、地方公共団体が一定規模以上の農地を購入する場合、これは、市の場合には五十アール以上で二千万円以上ということになっておりますけれども、この場合には議会の議決を経る必要がございます。

 したがって、今回の特例につきましてもこの地方自治法はかぶってまいりますので、地方公共団体が一般の方からまず農地を買うこと、それから、企業に訴えてもう一回企業から戻ってくる場合の話につきましても、ここについては、これに該当すれば、議会の議決が当然必要だということになります。

 農地を適正に利用しない企業から地方公共団体に農地の所有権を移転するときの議会の同意につきましては、基本的には、一番最初に、企業に売るために地方公共団体が農地を所有者の方から取得する、この時点でセットでもってきちんと議会にかけていただく、これを基本に考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、今回の特例措置は、地方公共団体からの強い要望を受けて試験的な事業として措置するわけでございますので、ここは地方公共団体が責任を持って対応していただく、これが基本と考えております。

福島委員 もう全く理由になっていません。政治を知らない役人が法律をつくるから、こういうことになるんです。

 地方では、選挙が終わったら百八十度変わるなんてよくあることなんです。困るのは何かといったら農地ですよ、そこで困るのは。誰も耕作する人のいないまま、地方公共団体が買い取らないまま、農地がほっておかれることの可能性を残す法案になっているんです。

 無事買い取ったとしてもいいですよ。買い戻したとしましょう。でも、農地法第二条の二には、農地については、所有権を有する者は、当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保しなければならないと。大体こうやって引き取られる土地は、耕作の条件の悪い土地です。誰も借り手があらわれなかったら、それは市役所の職員が野良着を着て耕作するということでよろしいですね。

奥原政府参考人 この所有権が市町村に戻ってきた場合にどうなるかということでございますけれども、基本的に市町村も当然耕作の義務はかかっております。しかも、地方公共団体ですので、その地域の農業を振興する立場にもあるわけでございます。

 したがって、例えば農地中間管理機構に貸すとか、あるいは、その地域の中の担い手の方を見つけてそこに所有権を移転する、あるいは貸す、こういったことをきちんとやっていただく、こういうことだと考えております。

福島委員 それも全く認識が甘いですね。

 今はもう、耕作しないところは農地中間管理機構とかそういうところも引き受けてくれないという話ばかり、この週末も私は聞いてまいりました。養父市というのは、耕作放棄地が多くて困っているところなんです。まさに、今までいろいろな制度でやって農地が流動しなかったからこそ手を挙げているところが、市が引き取ったからといってすぐ借り手があらわれるんだったら、初めからこの特例措置は要らないんですね。

 つまり、この農地法の改正も、頭でっかちの、頭の中だけで考えたことなんですよ。これは、真面目に農業のためにやっているとは私は思えません。

 二月五日の特区諮問会議で竹中平蔵議員は、過去十五年、二十年、この規制改革の話をしてまいりましたが、農業生産法人の問題こそ岩盤中の岩盤、ザ・岩盤だと思っています、このザ・岩盤の背後にはザ・抵抗勢力とザ・既得権益者がいて、これをどう突破することができるかが本当にいろいろな意味での象徴になろうかと思いますと言っております。

 これは、誰が抵抗勢力になって、この話、農地の株式会社所有は実現しなかったんでしょうか。石破大臣、お答えください。

石破国務大臣 これは、竹中さんのお言葉について私はあれこれ論評する立場にはありませんが、農地は株式会社が保有してはならないという自作農主義あるいは耕作者主義というのがずっとございました。そういうような考え方というものではないかと思っております。誰がということを私は申し上げるだけの知見を持ちません。自作農主義あるいは耕作者主義というものがこれを阻んできたというふうに思います。

 自作農主義、耕作者主義を私は否定するものではありませんが、そこに別のバリエーションがあってしかるべきではないかと思っております。

福島委員 ありがとうございます。さすが石破大臣だと私は感銘をいたしました。

 まさに耕作者主義とかそういうことであって、誰か特定の人が、例えば農協がとか農業委員会とか農業会議所が反対しているわけじゃなくて、私の地元でも、株式会社で農地を買ってくれるんだったら売りたいという人はいっぱい、幾らでもおります。ただ、農地は先祖代々のものだから荒らしてもらったら困るし、信用の置ける人ならということであって、その担保措置が何かということをはっきりさせてほしいわけです。

 私は実は、特区というのは、小泉政権の構造改革特区のところより前からつき合ってまいりました。

 そもそもの最初は、北九州市長だった末吉さんが特区というのをやりたいと当時の麻生政調会長を通じて言ってきたときに、私は通産省の若手の中で、規制をテーマにした官製市場開放特区というのをつくろうと私が提案した。同僚の後藤祐一議員がそれを法律の制度としてつくり上げたというのが構造改革特区の始まりであって、そのときから実はこの農地の問題、私自身、農学部ですから、そういうのに取り組んでまいりました。

 問題は、いかにそうした農地が荒れない措置をつくれるかであって、それは誰かよそに抵抗勢力がいるんじゃないんです。その制度をつくり上げることが霞が関や政治のリーダーシップでできるかどうかが実は一番の抵抗勢力であって、よそに抵抗勢力がいるわけじゃないんですね。

 安倍総理は、平成二十六年一月二十二日のダボス会議で、既得権益の岩盤を打ち破るドリルの刃になるんだ、向こう二年間、そこではいかなる既得権益といえども私のドリルから無傷ではいられませんと、何か子供みたいな、アニメを見た子供のようなことをおっしゃって、まあ外国だとわかりやすいことをおっしゃるのかもしれませんけれども、私は、こうやって改正すべきものだとは思っていないんです。

 農地をどう扱うか、我々はずっと、ゾーニング規制をやるべしというのを民主党は提言をしているんです。ただ、実際にゾーニング規制をやるとなると、憲法上の問題とか出てくるんだと思うんです。それで憲法を改正しましょうというんだったら、私は、もう正々堂々と賛成しながら議論に応じたいと思いますよ。そういう提案を出すのが本質的な規制改革であって、何か抵抗勢力がいるからこの農地法の規制改革ができないということではないんだと思うんですよ。

 この国家戦略特区、構造改革特区から、その後、我が政権のときの総合改革特区、これをつくるときも、私は、特区をつくった人間として、特区なんていうのは一刻も早くやめるべきだと言いました。今やめて、あと半年で終わりにするから要望を出してくれ、そのうちの半分は実現するからという閉店バーゲンセールをやった方が規制改革は進むであろう、こんな特区をやり続けることによって何かやったようなつもりになって、やったふりになって、ドリルで穴をあけているようなふりをしながら、本質的な規制改革から今免れてしまっているんじゃないかというふうに思うんですよ。

 誰かを抵抗勢力に見立てて、これは岩盤規制だとかなんとか言ってやるようなやり方というのは実は余り利益を上げないと思うんですけれども、石破大臣、どう思われますか。

石破国務大臣 大変傾聴に値する御見解だと思います。

 誰かを悪者に仕立てて、昔は改革派と守旧派なんてものがあって、レッテル張りみたいなことというのは意外と事の本質を見誤る場合があるような気はいたしております。

 今回、総理がおっしゃったことに対しては、私、あれこれ言及する立場にはございません。しかし、農林水産大臣をやっておったときからずっと議論していることなんですが、耕作者主義、自作農主義というのは本当に常に正しいのだろうかという思いは、実は私、持っております。

 昔は、私が副大臣をやっておったころは、二種兼業農家というのは米価が下がろうが何しようが絶対やるんだよと。それは、農地の財産的価値というものもあるし、あるいはほかの人が迷惑するということもあるし、農地解放以来手に入れた土地だということもあるしと言うんですけれども、二種兼業がやめ始めたというのはかなり危機的なことだと私は思っておりまして、どうやって農業者というものが継続していくかという場合に、耕作者主義というものを、少しバリエーションを持って考えるべきではないかというふうに思っておるところでございます。

 ですから、そこは、なぜ今こういうことをやらねばならないのかということをきちんきちんと御説明した上で、ゾーニング規制というのも、私もずっと前から考えていることでございますが、なぜなのだということをきちんとお示しした上で、事の本質というものをよく国民の皆様方に御理解をいただきながら、この特区制度というものの活用のやり方をさらによく考えてまいりたいと思っております。

福島委員 アベノミクスの第三の矢は成長戦略だ、成長戦略の主要な部分は規制改革である、規制改革とは岩盤規制を突破することであると言ってやっても、申しわけないけれども、この程度の法案しか出せないわけです。この程度の法案しかと言ったら失礼ですけれども、出せないんです。

 私は、そこに今の日本の閉塞状況があると思うんですよ。私が選挙に出たのもそこなんですよ。いろいろな規制改革に取り組もうとしたけれども、最後は、やはり政治の意思と、その政治の意思に従って霞が関が動くことができるかどうかだと思っております。

 先ほど大臣のおっしゃったゾーニング規制の話とか耕作主義の話とか、私も全く同じことを何度も考えてまいりました。

 こうした特区という形で新たな既得権益を生んでいるだけなんですよ。さっきの自家運送の話だって新たな既得権益を生む話だし、農地だって、結局、養父市とか数カ所に限ってやって、それが成功するかどうかわかりませんよ。

 ただ、多くの人たちは、それで大きな希望を持ったり、日本の農業は変わるという期待をしている人は、私はいないと思います。小泉政権の構造改革特区が出てきたときは、ちょっと目先の変わった、私は、特区なんてお恥ずかしい政策だと言っていたんですね。特区をせざるを得ないのは共産主義の中国と一緒で恥ずかしいと言っていたんですけれども、しかし注目された。今はもう誰もそんなの、申しわけないけれども、大して注目されていないんですね。

 私は、もっと本質的な規制改革があると思っております。特定の団体や特定の人を既得権だとかあるいは岩盤規制だと言って、打ち破るんじゃなくて、例えば、国とか県とか市がばらばらにいろいろな規制をやっている、あるいは、文字にはなっていない実際の運用や通達のところに閉じられたところがある、実際に申請を出してみなきゃどう言われるかわからない不透明さとか、さまざまなものが固まって、私は日本の今のビジネスがしにくい環境というのができているんだと思うんです。ずっとこの間、規制改革競争、規制改革ごっこを続けてきたことによって、本質的なことから目がそれてしまっているんじゃないかと思います。

 石破大臣は、地方創生担当大臣でありますから、そのことについて発言する担当ではないかもしれませんけれども、もしかしたら将来総理になられるかもしれないお方でありますから、どうかこの点について、ぜひ、岩盤規制とか既得権益打破という、くだらない、浅はかな、規制改革ではない、もっと本質的な規制改革を地方のためにも日本の経済のためにも取り組んでいただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

石破国務大臣 今回の養父市の件については、本当に長い議論がございました。これはもう委員、内容はよく御案内のとおりであります。養父市長は、とにかくこれを絶対にやりたいんだということで、農業委員会、あるいは議会、あるいはJA、そういう方々とお話をしながら、本当に熱情あふれるというんでしょうか、そういう形でおっしゃいました。これが事を動かしたんだと思っています。

 ただ、それを、この一つだけをもって、さあ、何かやったふりということにならないように、これが転用されないような形で、本当に農業の参入者がふえる、収益が上がる、農地が有効に利用される、だとすれば、それを全国展開することを否定はいたしません。ですけれども、そこに懸念されるいろいろなことがきちんと払拭されるようにということをやっていくのであって、私は、今回、いやしくも政府として国会に提案をいたします以上は、そんなにいいかげんなものだとは考えておりません。

 しかし、ほかのやり方もあるのではないかということ、つまり、私どもとして、この特区の制度、やはり何だかよくわからないねという方が自治体には多いわけです。国家戦略特区があってみたり、構造改革特区があってみたり、地方創生特区があってみたり、何それというふうなことになっているので、これがリアルな実感を持って自治体の方々に感じていただける、もっと言えば、その先にある事業者に感じていただけるように努力をいたしたいと思っております。特区以外のやり方というようなお話も委員とまた議論をさせていただきながら、余り日本に時間が残っていると思っていないものですから、よいものはまたお教えをいただきながら、私どもとして取り上げさせていただきたいと考えております。

小里委員長 では、福島君、締めてください。

福島委員 ありがとうございます。締めさせていただきます。

 もう特区を十何年もやってきて、時間は長くたち過ぎていると思っております。そして、今回出てきた道路運送法はしょぼ過ぎると思っています。農地法は、担保措置が全く不十分で、地方政治の実態を踏まえていないものであると思っております。それだけ霞が関の政策立案能力が、諸先輩を前に申しわけないですけれども、落ちているのかもしれないと思っております。そうした意味では、そこをどうにかすることこそが実は日本経済の再生の一番の道かもしれないということを最後に訴えさせていただきまして、質問を終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

小里委員長 次に、畠山和也君。

畠山委員 日本共産党の畠山和也です。

 私からも、特区特例案における農地法特例の、法人による農地取得の件について質問を行います。

 現状でも、畜産や施設栽培などで農地を利用しないものについては企業として農業参入ができるということになっています。しかし、農地においては農地法のもとで制約がされてきました。それは、先ほど来議論がありましたように耕作者主義に基づくものと思います。

 その原則が大きく変わったのも先ほど来話があったように、まず、二〇〇三年四月の構造改革特区の一つでした農地リース特区、当時いわゆる農業特区といったところだったと思います。当時も、企業の農地所有へアリの一穴になるのではないかという懸念や危惧の声がありましたが、このリース方式は、結局、一年半後の二〇〇五年九月に、農業経営基盤強化促進法によって全国展開されることとなりました。その後、農水省が二〇〇九年十二月に大幅な農地法改正で企業の参入をより積極的に位置づけたというのがこの間の経過だろうと思います。

 そこで、まず最初に確認したいんですが、今、リース方式において、企業が賃借権を取得できる際に、主な条件を三つほど課していると思います。その確認をまず端的に答弁してもらえますか。

奥原政府参考人 今先生から御指摘ございましたように、平成二十一年の農地法改正でリース方式での農業参入が自由化されております。このときの条件でございますけれども、農地法の中に大きく三つ書いてございます。

 まず一つは、権利の取得後においてその企業がその農地等を適正に利用していないと認める場合に使用貸借または賃貸借の解除をする旨の条件が書面契約で締結されている、これが一点でございます。

 それから二つ目として、地域の農業における他の農業者との適切な役割分担のもとに継続的かつ安定的に農業経営を行うと見込まれること、これが二点目でございます。

 それから三点目は、その法人の業務を執行する役員または使用人のうち一人以上の方がその法人の行う耕作または養畜の事業、要するに農作業ということでございますが、これに常時従事すると認められること、この三点でございます。

畠山委員 ちょっと順番はいろいろありますけれども、役員要件ですね、業務執行役員が一人以上で、法人の農業経営に責任を持つことなどで、実際に農作業もすることなどであります。そして、地域の調和要件として、地域での適切な役割分担もありました。もう一つ、冒頭に言っていたものはいわゆる解除条件というふうに考えてよろしいんでしょうか、書面において手続としては行うというのが今の奥原局長の答弁だと思うんですけれども、当事者同士の契約を農業委員会が確認して、そして農用地を明け渡す際の原状回復の義務であったり費用負担の責任を明確にしていたということで、以上の三要件だったというふうに思います。

 ですから、法人や企業に対しても書面による契約などの形で責任を一定負わせていたというふうに理解できます。

 そこで、今回の法案を見ると、役員要件あるいは地域調和要件は、今のリース方式と同様になっています。

 問題は、この解除要件、解除条件が違うわけでありまして、例えば、書面による契約で、これまでだったら、先ほど言った原状回復の義務であったり、費用の負担は誰がするのかであったり、違約金の支払いであったり、損害賠償の取り決めなども含めたことで条件にしてきたはずだったんですね。今回は、農地が適正に利用されない場合は、先ほどからあったように、地方公共団体に移転することとしている。これは、今回の法案は、一旦地方公共団体が農地の所有権を持った後に企業へ所有権を移転するという関係から、明け渡す、戻るということになるんだと思うんですね。

 先ほど来議論はありますけれども、改めて確認します。

 ということは、企業に所有を求めるという今回の特区は、原状回復の責任を企業がどこまで負うのか、どこが原状回復の責任を負うのかということについて、先ほど来、明確に、なかなかよくわからないんです。企業が原状回復の責任が問われるのかどうか、はっきり御答弁願えますか。

奥原政府参考人 リース契約の場合には、借りている方の企業が農地を適正に利用しない場合には貸している方がリース契約を解除できる、このことが書面契約の中に書いてあるということでございます。そのときに、契約の中でいろいろなことが書いてございますので、原状回復の責任がどうか、あるいは企業の方がすぐにやらないときに損害賠償をどうするかとか、そういったことも契約の中にきちんと書かれる、こういうことでございます。こういう書面契約がきちんとあるということがリース契約を農業委員会が許可するときの条件になっている、こういうことでございます。

 これに対して、今回の特区での所有の話ですけれども、基本的には我々は同じ考え方で物事を考えているわけです。ですが、売買契約について、これをリースのように解除できるというだけでは意味がないということでございます。

 これは先ほどから申し上げておりますけれども、リース契約の場合には、貸している方の方は所有者としての意識は持ち続けておりますので、自分が所有している農地を借り手の方がきちんとやっているかどうか、これはきちんと見ていて、一定の条件を満たしたときは解除するということは当然行われますけれども、売買の場合には、売ってしまった方はもう所有者ではなくなります。売ってしまった土地について、売買契約を解除しようとかこういう意思を持ち続けることができるかどうか、こういった問題があるわけでございます。

 そのために、今回は、リースの解除と同じようなことを実現するためにどうするかということで考えておりまして、まずは、売り手を地方公共団体に限定する。所有者の方から企業が買うとしても、一旦は所有者の方から地方公共団体が買った上で企業に対して販売する、こういう形をまずとっていただく。その上で、企業がきちんと使わない場合には、農地の所有権を、地方公共団体に特に所有権を移転する、戻す、こういう体系をつくっているわけでございます。

 このときに契約の中身をどうするかは当然あるわけでございますので、その中身として、原状回復の責任、あるいはきちんとやらないときの損害賠償、こういったことも当然その契約の中で決められる、こういうことだというふうに考えております。

畠山委員 奥原局長、長く御答弁いただいたんですけれども、最初の九五%ぐらいは知っていた上で質問しているんです。

 最後は結局、言われたように、契約によって決まるんだということですから、企業は必ずしも原状回復の責任は問われないということも理屈としてはあり得ますね。

 農水大臣に確認したいんですけれども、通告としては、これは大臣に実は御答弁いただきたかったので、今の点、もう一度確認します。

森山国務大臣 今委員御指摘のとおり、契約によって行われるわけでありますから、当然のこととして、地方自治団体は、契約を結ぶときに契約の内容をしっかりと精査しながら契約をしていただけるものだと思っております。ですから、原状回復のためにどういう措置をとるかということはいろいろなやり方があるんだろうと思いますが、そこはそれぞれの自治体で責任を持って対応していただくというスキームでございます。

畠山委員 今回のこの法案は、地方公共団体に責任を委ねるということが強調されていると思うんですね。先ほどから、いろいろな経過が今回の法をつくるに当たって出されていたことが背景にあるんだろうとは思うんです。

 しかし、これも先ほどから議論がありましたが、例えば、地方公共団体がまず農地を買いますよね。その買った額と企業へ売るときの額に差が出ることが考えられます。これは、SBSのお米じゃないけれども、同時にやるわけじゃないんだから、そのときの時間のラグが結局金額のラグになる可能性はもちろんあるわけで、逆に、地方公共団体が買い戻す際に、売った額との差が出ることもあり得ます。これは、地方公共団体からすれば、原資は税金になるわけですから、せめて適正な売買価格にならなければいけないと思うし、やはり議会の承認にとっても重要なことになると思うんです。

 今回の法案においてその保証はどこにあるかとなったら、先ほど来あったように、地方公共団体が契約のときにやってください、つまりそういうことなんですね。もう一度確認します。

森山国務大臣 こういうことだと思います。

 地方団体は予算を計上しなければ買うことができませんので、予算を計上することによって議会に審議を委ねるということになります。そこで予算が成立をしますと一定の価格が決まってくるんだと思いますが、そこの価格の決め方というのはいろいろな考え方があるんだろうと思います。そこの自治体の発展をどう考えるか、また、そこに何を期待するのかということもあるんだろうと思います。

 そういうプロセスを経ていきますので、地方自治体がやはりしっかりと対応していただくということが大事なことだと思いますし、また、そのことによって地方自治体の政策方向性というものも決まってくるのではないかなというふうに考えております。

畠山委員 今回の法案は、企業が農地を所有することの是非という問題もあるんですけれども、同時に、地方公共団体にこのような性格の中身を委ねていいのかということが、もう一つ問題があると思うんですよ。だから、法律の中身を見ても、該当企業と地方公共団体が書面で契約を結ぶに当たり、国に認定を求めるという仕組みになっていますよね。これは区域計画の中身のことなんでしょうか、ちょっと事実として確認します。違うんでしょうか、これは違いますか。通告していませんが、わかれば。

奥原政府参考人 ちょっと今、質問の御趣旨がよくわからなかったんですけれども……(畠山委員「契約を国が認めるというふうな法律条項はありませんか」と呼ぶ)

 そういうスキームじゃありません。農業委員会が許可をする、そのときに、地方公共団体とそれから企業の間でこういう契約がきちんと結ばれていることを確認する、こういうスキームでございます。

畠山委員 では、そのスキームであることを確認いたします。

 いずれにしても、地方公共団体において、今ありましたように、原資が税金であるという中で、原状回復の責任もまたどうなるかよくわからないということで、実際こんな中身で本当に、兵庫県の養父市以外のところで広がっていく条件とか可能性とか、そういうところに手を挙げるということがあり得るのか、言ったら疑問なんですよね。

 というのは、結局、今回の法案の立法事実にかかわる問題で、なぜ企業が農地所有を求めるのか、そして今回のような形になったのかということがやはりよくわからないんです。

 それで、確認しますけれども、私は日本不動産研究所の農地価格は持っているんですが、どこの価格でも結構です、当面、この間の直近で、十アール当たりの農地価格と、それから同じく賃貸料について答弁してください。

奥原政府参考人 これは平成二十四年の全国農業会議所の調査の結果でございます。

 都府県における田の十アール当たりの平均売買価格は百三十一万円でございます。これに対して、田の平均年間賃料は一万三千円というふうになっております。それから、都府県におけます畑の十アール当たりの平均売買価格は九十三万円でございます。一方で、平均の年間賃料は約一万円。これがデータでございます。

畠山委員 田んぼだけで例に挙げれば、百三十一万円に対して賃貸料一万三千円ですから、ちょうど百倍ぐらいのものになるわけです。ですから、先ほどからありましたけれども、リースでも最大五十年というふうにもなりますけれども、それどころか百年規模の農地価格であるわけなんですよね。

 では、何でそうなるんだ。それぞれの企業の経営判断だと言われればそれまでなんですけれども、やはり、何でそこまでして農地を企業が所有したいのかというところの疑問が解けません。

 それは、先ほど来から石破大臣がいろいろと答弁をされていますけれども、例えば、長期的な安定事業のために必要だと判断があるだとか、あるいは耕作放棄地の解消であるとかいうことが先ほど来の議論の中で御答弁がされています。しかし、耕作放棄地の解消ということなどであるならば、中間管理機構の今のスキームなどもあるでしょうし、なぜこういう形で農地を求めることになるのか、先ほど来からの議論を聞いてもやはり私もよく理解できません。

 もう一度答弁してもらえますか。

石破国務大臣 我が国の私法上、所有権絶対ということになっておって、学校時代に、所有権はオールマイティーだということを習いました。それはもちろん、公共の福祉の用には供さなければいけないのですが。とすると、所有権を持つということによる安定感、安心感というものはあるんだと思いますね。

 そして、それがずっと長期に保有できることによって、いろいろな農地の活用の仕方というものを企業の大勢の人たちの知恵を使って積極的に展開をすることができる、それはひっきょう六次化というものにもつながっていくものでございましょう。所有権というものを得ることによって、農地の持っている潜在的可能性をフルに引き出して、その活用を最大限に図っていき、農地を活用し、農業所得を上げていき、地域の利益に資するということを考えている企業があるのだと私は考えております。

畠山委員 農地が持っている潜在的な可能性を生かすためには企業の農地所有もあり得るという趣旨の答弁だと思うんですよね。

 ただ、そうであるならば、最初に、企業がリースにおいても三つの要件が課されているということで、解除要件を私は詳しく聞きましたけれども、では、何でこの解除要件が必要になっていたんだということになるんですよね。何で今回、解除要件を解除しなければいけなくなるのかということで、そもそもこうやって企業への責任を盛り込んでいた理由が消えちゃうということになりはしないのかと思うんです。それで、企業がそういうような要件を三つ課されているうちの一つが外れた。

 今回、企業についても、農地取得の要件は課しても、その企業自体の条件がないと思うんです。例えば、わかりやすく言えば、外資の子会社であったり系列会社であったり、あるいは外資に吸収合併されることなども懸念の一つとして出されていると思うんですよね。この外資の規定についても特段定められていることはありませんよね。これをちょっと確認します。

奥原政府参考人 今回の国家戦略特区で企業が農地を取得する場合につきましても、農地法の第三条第二項第一号、これの要件がかかってまいります。これは何が書いてあるかといいますと、企業が取得する農地の全てを効率的に利用して耕作または養畜の事業を行うと認められる場合に限り許可をする、これをかぶっております。

 それから、今回の特例の中におきましても、リース方式の場合と同様に、国籍に関する規定をそのまま書いているわけではございませんけれども、地域の適切な役割分担のもとで継続的、安定的に農業経営を行うことというのと、それから、農業に常時従事する役員等を一人以上置く、これは今回の特区法の中でも書いてあるわけでございます。

 したがいまして、地域とのつながりを持って農業を継続的に営めない法人は農地を取得することはできない、こういうことになりますので、外国企業が農地を取得することは基本的には困難であると考えております。

畠山委員 確かに、困難というふうに言いましたけれども、つまり、結局、今回の要件というのは役員要件と地域調和要件が満たされればそれでいいというわけですから、事実上困難だということが今局長の答弁でありましたけれども、窓口としてはあり得る、論理的にはあり得るということだと思うんですね。そのよしあしについてはいろいろ考え方があるでしょう。ただ、そういうことがあり得るということだけは事実として確認をしておきたいと思うんです。

 それで、残り時間はあとわずかなんですけれども、こういう形でいろいろな、今まで書かれていた要件がなくなることで、やはりアリの一穴になりはしないかという農家の不安がなかなか消えないのは、私が冒頭に申し上げたように、リース方式を導入するときにもさまざまな要件をこんなふうにかけていたけれども、結局それが広がってきた。

 私、地元は北海道ですけれども、確かに、企業さんが農地をリースして、地域の皆さんとも調和してされているという話も伺ってはいます。そういう点ではさまざまな現状は私も理解しているつもりではありますが、ただ、今回の特区の法案というのは、今述べたようにちょっと質が違うんじゃないかというふうに思うわけです。現場の不安が拭えないのは肌感覚であるのではないかと思うんですね。

 つまり、今回の特区で誰が喜ぶのかということに問題の焦点が私はあると思います。

 国家戦略特別区域諮問会議には、兵庫県養父市長が盛んに要求していた記録が次々出されていまして、第十九回会議で代表例三社の名前が挙げられています。議事録に残っていますので、事実の確認ですから、どこかということを答弁してもらえますか。

佐々木(基)政府参考人 お答え申し上げます。

 今お話ありました、代表例として挙げられた三事業者につきましては、山陽Amnak株式会社、福井建設株式会社アンド株式会社オーク、オリックス株式会社アンドやぶパートナーズ株式会社、以上の三社でございます。

畠山委員 山陽さんとか福井さんは地元の企業さんであることは私も確認していますが、ただ、オリックスさんはちょっと違うんですよね。

 それで、改めて見てみると、その諮問会議の有識者議員の中にこのオリックスの役員を務められている委員がいるかと思うんですが、答弁できますか。

佐々木(基)政府参考人 お答えいたします。

 今お話のありましたオリックス株式会社アンドやぶパートナーズ株式会社のオリックス株式会社につきましては、その社外取締役に国家戦略特別区域諮問会議の有識者議員の一人である竹中平蔵議員が就任されているものと承知しているところでございます。

畠山委員 そういうことなんですね。地元の要望が出ている、市長さんにはそういう形になるわけですけれども、諮問会議においては、その委員である竹中さんが役員を務めているオリックスさんがこうやってかかわっているわけなんです。自分が役員をしている企業の農地取得について政府の機関会議で決定するということが、私は甚だしいことであろうというふうに思っています。

 会議録もずっと読みました。読んだら、農家が農地を手放す理由について深めることなく、先ほどもありましたけれども、岩盤規制を突破するんだということを連呼されているわけです。これが産業競争力会議の正体ではないか。こういう議論の経過があるから農家の皆さんの不安が払拭されないのは当然だというふうに思います。

 根本的に耕作放棄地の解消ということであるならば、もちろん、これに対しては担い手を育てていくということが重要だと思います。私も農水委員でありますので、森山大臣ですとか、ずっと委員会の方で、担い手のことについては、酪農であったり畜産であったり、さまざまな方で議論をさせていただいてきました。ですから、農水省も、政策的な立場や是非はいろいろあったにしても、さまざまな政策を担い手対策としてやってきたんですよね。

 ただ、それを今回、法案を読みますと、趣旨としては、従前の措置のみでは解消できないおそれがあるから企業の農地所有を認めると書かれているわけです。従前の措置のみでは解消できない、つまりこれは、農水省のこれまでの、従前の措置、これまでの政策では耕作放棄地がふえちゃうと言っている論理になるから、結局、農水省として政策の自己否定になっちゃうんじゃないかというふうに私は読んだときに思ったんですよ。

 大臣、ちょっとこの点、通告していませんけれども、そういうことになりはしないんでしょうか。さまざまな担い手対策をやってきた、これからもやっていく、それは、また企業においてはリース方式とかあるけれども、さまざまな要件もかけてきた。しかし、今回、従前のそのような措置のみではできないと言っていたら、今までの農水省の政策自身が自己否定することを告白しちゃうことになりはしないかと思うんですが、大臣、最後に御答弁ください。

森山国務大臣 今まで進めてまいりました政策の否定になるかという話でありますが、現実に放棄地がふえてきているという現実があります。ここは我々も、しっかりと今までの政策というものを検証してみる必要はあるのだろうと思っております。

 今回お願いをしておりますのは、まさに試験的に行うということでございまして、この結果をしっかり見て、五年間の限定でやってみるということでございます。

 私、今ここで委員の御質疑を聞きながら思い出しますのは、先日熊本に参りまして、ベビーリーフの生産を大々的にやっておられまして、大体六百カ所ぐらい、ハウスを全部リースで借りておられます。それで、そこの社長とお目にかかったときに、所有をされる気持ちはないんですかと伺いますと、いえ、我々、この仕事は、所有をしては農地の価格が高いから合いませんし、そんなに資金を固定化させては、ほかの方にむしろその資金は使った方がいいという話をされました。

 ただ、なるほどと思いましたのは、農地を借りに行って、長期で貸してくれと言うと、まず断られるそうです。それで、一年間試しに貸してみていただけませんかとお願いをすると、ちょっとそれでは集落ともよく話をしてみますのでと言って貸してくださるというのが農村の文化だというのがよくわかりましたと言って、その社長が話をしてくださいましたけれども、リースで十分だという認識の方、経営者の方々が多いんだなというのは実感としてわかります。

 ただ、養父市さんがこれだけ御熱心にやっておられて、こういう方法もあるのではないかと言われますと、いろいろな条件をつけてやってみるというのは、あくまでも試験的にやってみるということだと思っておりますので、御理解をいただきたいと思います。

畠山委員 時間ですので手短にしますけれども、先ほど来、該当企業には原状回復の責任もなくてもいい可能性もあるし、外資も含めて参入にも限定はありませんし、繰り返し、農地所有へのアリの一穴となりかねないということを指摘しまして、私の質問を終わります。

小里委員長 次に、椎木保君。

    〔小里委員長退席、山本委員長着席〕

椎木委員 おおさか維新の会の椎木保です。

 初めに、養父市においては、現在、国家戦略特区のメニューを活用し、農地法第三条の許認可権限を農業委員会から養父市に移譲しています。これによって、これまでの成果として、先般公表された養父市国家戦略特別区域会議、これらの評価結果によれば、許可による事務処理期間は十八日から八日へと大幅に短縮されたと聞いております。本特例措置について一定の成果が出ているものと考えられます。

 新潟市でも同様に取り組んでいるとのことですが、現在、どのような成果が上がっているのでしょうか。

石破国務大臣 事実関係のお尋ねでございます。

 新潟市におきましては、特区の特例を活用し、平成二十六年十二月から、企業等の新規参入に係る農地の権利移転に関する事務を市へ移管いたしました。これにより、事務処理期間が二十六日から三日へと大幅に短縮をしたところであります。事務処理件数は十四件でありましたが、平成二十八年度からは全ての権利移転に関する事務に拡大をしたところでありまして、今後、当該件数の増加等に伴い、農地の一層の流動化が見込まれるところであります。

 本特例につきましては、区域会議におきまして、事務処理期間の短縮等が評価をされておるわけであります。これらの評価を踏まえ、全国展開の可否につきましては、特区基本方針に基づき、当該特例措置を所管する省庁からの御意見を聞き、政府として、特区諮問会議の調査審議等を通じて適切に判断をいたしてまいります。

椎木委員 経過的な内容の答弁にもかかわらず、大臣から答弁いただきまして、ありがとうございます。

 ちょっと私が今続けて聞こうと思っていたんですけれども、全国展開についても今触れられましたけれども、我が党は、特区というのは賛成なんですね、肯定はしています。ただ、いろいろな特区が非常に多くなってきていますので、いっそのこと、もうどんどん積極的に地方に権限を移譲したらどうだ、そういう党の考え方があるんですけれども、これは改めて、今後、この特区、特区でなのか、特区をさらに飛躍してなのか、全国展開していく考えがあるのか、その点について答弁をお願いします。

森山国務大臣 椎木委員にお答えいたします。

 先ほど石破大臣からもお答えがありましたとおり、四月十三日の国家戦略特別区域諮問会議において評価が行われたところでありますが、養父市と新潟市においては事務処理期間の短縮の効果があったと報告をされております。

 一方、事務負担が軽減された農業委員会が農地利用の最適化をよりよく果たせるようになったのかは、まだ平成二十七年のデータの集計がなされておらず、評価ができる段階に至っていないというふうに理解をしております。

 したがいまして、現時点で全国展開をするということまで考えているわけではありません。

椎木委員 大変よくわかりました。

 次の質問に入ります。

 特例措置により農地を所有した企業が農地を適切に利用していないと判断された場合、事前に市町村と交わした契約により、当該農地を市町村に譲渡すること等とされております。売却価格等がどの程度になるかにもよりますが、基本的には、市町村が引き受けるということであれば、参入する企業側はほぼリスクは負わないと言えると思います。

 養父市では企業から十アール当たり十五万円の積立金を徴収し、企業が適切に利用しない場合の保全措置に充てる費用という独自の仕組みをつくっています。これは、金額については議論はあると思いますけれども、参入する企業に一定のリスクを負わせようとするものであると考えます。

 本特例措置にはそのような、企業側に負担を求める措置を講じなかった理由、これについてまず聞かせてください。

奥原政府参考人 今先生から御指摘ございましたように、養父市の条例の中におきましては、法人の方が必要な保全措置を講じない場合には、市長が法人にかわって農地の適正な保全管理に努めるというふうになっておりまして、さらに、農地の適正な保全管理のために、あらかじめ企業の方から積立金、これは十アール当たり十五万円でございますが、これを徴収するということが書き込まれております。

 しかしながら、この積立金、十アール十五万円で本当に十分かということもございますし、この条例に付随しているルールの中では、この積立金は六年目以降毎年五分の一ずつ企業に返還をする、十年目には積立金がゼロになるというスキームが講じられております。したがいまして、この措置だけでは確実な原状回復措置とは言えないのではないかというふうに考えております。

 今回の戦略特区法の中身におきましては、企業が農地を適正に使わない場合には所有権を企業の方から地方公共団体に移転をするということをきちんと書面契約で書いていただく、これが許可の要件になっておりますし、この契約の中で、いろいろなルール、仮に所有権を地方公共団体に戻すときの対価をどうするか、あるいは原状回復をどうするか、あるいはそれをきちんと企業がやらない場合に損害賠償をどうするか、こういったことをきちんと決めていただくということまで書いてあるわけでございます。

 したがいまして、所有権を移転するということを書面契約できちんと担保する方が、基本的には養父市の条例よりも厳しいものというふうに理解をしているところでございます。

椎木委員 言っていることはわからなくはないんですけれども、普通は、民間だったら、逆に供託金をとるとか、何らかのやはり担保をとりながらやると思うんですけれども。それよりも重いと、そういう答弁ですから、時間もありませんので、それで結構ですけれども、どこかの段階ではきちっと、企業がしっかり役割を果たすかどうかというのを検証しながら進めていただきたい、これをお願いしたいと思います。

 私は時間が短いので、多分最後の質問になると思います。

 国家戦略特区ワーキンググループにおいて、農業における外国人労働者の受け入れについて検討されています。

 平成二十八年三月二日に示された国家戦略特区における追加の規制改革事項においても、「農業の担い手となる外国人材の就労解禁」として、「農業分野における外国人材については、農業経営の規模拡大等の「強い農業」の実現のために必要な人材を確保するとの観点から、入国・在留を求める声があることを踏まえ、特例措置を設ける必要性について、生産性の向上、日本人の労働条件及び新規就農に与える影響、外国人の人権に配慮し適切な管理を可能とする仕組みなどの視点にも十分配慮しつつ、関係省庁で連携して検討を進め、可能な限り早期に結論を得る。」このようにされています。

 農業の担い手不足の解決策として前向きに検討し、その実効性を国家戦略特区において検証することがやはり農業の活性化につながるのではないかと考えますけれども、これらについて見解があったらお願いします。

森山国務大臣 お答えいたします。

 委員のお話しの技能実習制度では、同じ実習機関において最大三年以内で実習できる仕組みとなっておりまして、農業分野では、現在二万四千人の技能実習生が実習に従事しているところでございます。

 これに関しまして、農業の現場からは、実習期間をより長くして技能実習制度を改善するとともに、労働力を安定的に確保できる、もっと使いやすい制度にしてくれという声が出されております。

 こうしたことを踏まえまして、本年三月二日の国家戦略特区諮問会議において、「農業の担い手となる外国人材の就労解禁」については、「関係省庁で連携して検討を進め、可能な限り早期に結論を得る。」と整理されたところでございますので、今後、農業の成長産業化という観点からも、関係省庁と連携をさせていただきまして、鋭意検討を進めてまいりたいと考えております。

椎木委員 我が党は、今回この法案には賛成の立場なんです、結論だけ申し上げますと。特にこの農業分野に対しては、非常に大きな前進かなということで評価もしています。

 ただ、先ほど申し上げましたように、検証して、それで農業の活性化にどうつないでいくかということについては何か漠然とした、検討してということよりも、一年間とか二年間と期限を切って、その中で一定の検証結果を踏まえて取り組んでいく、そういう、期間を区切ってというような考えはお持ちではないんでしょうか。

森山国務大臣 今先生の御指摘は外国人労働者のことでございましょうか。

 これは、二年も三年もというと現場の方がもちませんので、できるだけ急いで検討を進めさせていただきたいと考えております。

椎木委員 石破大臣にちょっと一点お聞きしたいんですけれども、さっき他の議員への答弁の中で、今、この特区が何だかよくわからない、要するに、事業者に理解してもらえるように努力したいという話がありましたけれども、私も、この特区ということ自体は非常に推進したいと思っていますし、肯定なんです。ただ、余りにも特区が多過ぎてきまして、何かちょっとよくわからないな。

 これは、先ほど質問の途中でも言いましたけれども、我が党は、最終的には地方に権限を移譲すべきだという考えの政党なんですけれども、この特区の先にはそういった着陸点というのは見据えているんでしょうか。答弁をお願いします。

石破国務大臣 それが有効なものであれば全国展開をしたいというふうに思っておりますが、いきなり全国展開するわけにいきません。それは、いろいろな懸念もあります。そういう懸念が本当に懸念に当たらないかどうかということをきちんと実証した上で、やはり、例えば農地がどんどん転用されちゃうとか、そういうことは絶対にあってはならないことでございます。あるいは、ライドシェアの是非は別として、いわゆる白タク行為みたいなものが横行するようなことはあってはならないことで、守らねばならないものが特区においてきちんと守られているということであれば全国展開いたしますが、それがそうであるかどうかということを検証するためにも特区というのはある。

 だから、その特区の位置づけというものが何なのか、そしてまた、特区を使おうとすればそれぞれの自治体はどのように提案をすればいいのかというのが、どうもいま一つ理解できていない。

 ですので、我々はいろいろな媒体を通じまして、あるいは政務、事務もあちらこちらにおいてフォーラムを開くことによって、これはあなたも特区を使ってみませんかというような形でのキャンペーンは、あえてキャンペーンと申しますが、これはやる必要があるのだなというふうに思っておるところであります。

椎木委員 時間が来ましたので終わりますが、我が党は、いずれにしましても、この特区、また、私は今地方創生なので森山大臣にはあれですけれども、本当に肯定の立場でいますので、念には念を入れて細かい質問を重ねさせてはいただきますけれども、最終的には推進する立場だということを最後に申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 以上で終わります。

山本委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午後四時八分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案は地方創生に関する特別委員会議録第八号に掲載


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