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   学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律案に対する附帯決議

 政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用等について遺憾なきを期すべきである。

一 民間教育保育等事業者が積極的に認定を受けることにより、その事業者に対する保護者の信頼を高めることとなるよう、事業者及び保護者の双方に対し、認定制度の周知啓発を図ること。

二 対象事業及び対象業務への該当性の基準、児童対象性暴力等が行われるおそれがある場合の防止措置に関する基準や具体例の明示、犯罪事実確認を行う前にこどもに接する業務に従事させる特例が認められる場合及びその場合に必要な防止措置の内容、調査の客観性の確保など、本法の運用に関する具体的な事項が下位法令やガイドラインに委ねられていることを踏まえ、これらの制定を早急に行うこと。また、制定に当たっては、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律や児童福祉法、これらの法律に基づく指針等との整合性を図るだけでなく、事業者、従事者やこどもの声を適切に反映するとともに、防止措置の濫用の防止を図ることに留意すること。その際には、性犯罪歴がある労働者に安全確保措置を講じる場合においても、雇用管理上の措置をとる際には労働法制等に従う必要があることが重要である点にも留意すること。

三 対象事業については、芸能事務所のように、主たる事業が教育ではなく、対象がこどもに限らない場合であっても、こどもを対象とする事業であれば広く含まれるようにすること。また、民間教育事業の要件に関し、「六月以上」とされている技芸又は知識を習得するための標準的な修業期間の短縮について検討すること。

四 ベビーシッターや家庭教師等のこどもを対象とする事業を営む個人事業主、マッチングアプリ経由等による個人契約やフランチャイズ方式も犯罪事実確認等の対象とする仕組みを早急に検討すること。また、医療機関を対象事業とすることについても検討すること。

五 犯罪事実確認については、特定性犯罪の範囲を下着窃盗、ストーカー行為やこどもに重大な影響を与える性暴力と解される行為等にも拡大すること、確認対象期間を延長すること、示談等により不起訴とされた場合や刑事事件には至らないものの懲戒解雇となった場合なども対象とすることについて検討すること。また、これらの検討に必要な知見が得られるよう、性犯罪の累犯性、余罪の状況などの特性や小児性愛を含む性嗜好障害の実態に関する調査・分析・研究を進めること。

六 本法の実効性を確保するためには、性加害の事実のもみ消しや加害者の自主退職による懲戒の回避を防止する必要があることを踏まえ、事業者等に告発・通報を義務付けることについて検討すること。

七 学校設置者等及び認定事業者が研修、相談、調査等の措置を講ずる体制を負荷なく構築することができるよう支援する仕組みを整備するとともに、こどもの安全・保護に関する責任者を任命する仕組み等を検討すること。特に、研修、相談、調査等については、公平性、透明性及び質の担保のため、第三者性の確保にも留意すること。

八 教員、保育士等の養成段階において、こどもに対する性暴力を防止するための教育を充実させること。

九 性被害を受けたこどもの人権を擁護するため、第三者機関を含む相談先の確保を推進するとともに、トラウマケアの充実を図るための方策について検討すること。

十 性暴力の根絶へ向けて、児童生徒が性に関して正しく理解し、適切な行動がとれるよう、発達段階に応じて着実な指導に努めること。また、こどもが性被害から身を守るために必要な知識を習得できるよう、こども向けの研修の充実を図るとともに、家族や教員等のこどもにとって身近な存在からの性被害もあり得ることを「生命(いのち)の安全教育」において強調すること。

十一 犯罪事実確認記録等が犯罪歴という要配慮個人情報を含み得ることを踏まえ、学校設置者等及び認定事業者が犯罪事実確認記録等の管理及び廃棄を適正に行うよう徹底するとともに、情報の漏えいを防止するための対策を講ずること。また、犯罪事実確認の方法については、イギリスで採用されている第三者機関「Ofsted」による確認の仕組みも参考にして、学校設置者等及び認定事業者への犯罪事実確認書の交付が不要となる仕組みを検討すること。

十二 本法に基づく規制が特定性犯罪事実該当者に対して事実上の就業制限を課すものであることを踏まえ、性犯罪の捜査及び立証に当たっては、誤った事実認定の防止に一層留意すること。

十三 学校設置者等及び認定事業者の採用内定者が内定を辞退した場合において、内定辞退後にその者の採用を検討する他の事業者にとっては、これが犯罪事実確認の結果に起因するものであるか否かが判別できないことを踏まえ、その者が偏見により就労を妨げられることがないよう、所要の周知啓発を図ること。

十四 性犯罪の加害者の再犯防止等に資するためにも、性嗜好障害の治療等のデータの蓄積など、科学的根拠の構築に必要な調査研究を進めること。また、加害者の改善更生及び社会復帰を支援するため、認知行動療法に基づく治療的支援を強化し、加害者更生プログラムの充実を図るとともに、加害者の受講を促進すること。

十五 本法が犯罪事実確認記録等という要配慮個人情報を含み得る情報を取り扱うこと等を踏まえつつ、本法の施行に万全を期するため、政府における執行体制を早急に整備すること。

十六 学校設置者等及び民間教育保育等事業者による犯罪事実確認並びに教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律第七条第一項の規定によるデータベースの活用又は児童福祉法第十八条の二十の四第三項の規定によるデータベースの活用に関し、それらの補完・連携の在り方について、学校設置者等及び民間教育保育等事業者の負担を軽減するための方策にも留意しつつ検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること。

十七 児童対象性暴力等の防止に関する制度の在り方について、本法の施行後三年の見直しを待たず、必要に応じ、不断の見直しを行うこと。

十八 民間教育事業における教授を行う者の人数等の要件を満たさない事業者等がいることも踏まえつつ、こどもの安全の確保は本法のみで全うできるものではないことに鑑み、こどもに対する性犯罪・性暴力対策の総合的な取組を進めること。

十九 以上の項目は、こどもが誰一人として性被害を受けることがないよう万全を期するという一貫した考えのもと取り組むこと。

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