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   児童福祉法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 政府は、本法の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用等について遺憾なきを期すべきである。

一 保育士の確保が困難な状況にある中、保育士の一層の処遇改善を進めるための措置を講ずるとともに、平時からの保育所等の職員配置基準の改善や災害時の対応の強化について引き続き検討すること。また、職務の専門性を適切に評価する観点から、公定価格上の人件費の基本分単価の在り方も含め、保育士の平均賃金が他職種と遜色のない水準となるよう、実効性のある対策を検討すること。

二 保育士・保育所支援センターを法定化するに当たり、支援の実効性を高めるため、各センターに地域の実情に応じた支援目標や確実な根拠に基づくKPI(重要業績評価指標)を設定させ、その達成状況や支援実績を定期的に公表して評価する枠組みを導入することを検討するとともに、同センターの支援実績を向上させるため、保育士資格を有する者への周知など必要な措置を講ずること。あわせて、保育士の就職あっせんを行う民間の人材紹介会社が高額な手数料を得ており、保育所の経営を圧迫している現状を踏まえて、手数料実績の公開、求職者への金銭等提供の原則禁止、ハローワークによる無料職業紹介機能の強化など政府における取組の実施状況を踏まえながら、必要な対策を講ずること。

三 保育士が特に不足するおそれが大きい地域が集中的に保育士確保に取り組むことができるよう、潜在保育士の実態やニーズを把握し、職場復帰を強力に支援するために必要な措置を講ずること。

四 地域限定保育士の登録後三年経過と一定の勤務経験により他地域での勤務が可能となる仕組みを設けることが、試験実施区域内の保育士不足が解消されない事態につながることを避けるため、地域や職場で適切な処遇を実現できるよう、保育の公定価格における地域区分の在り方の見直しを含め、保育士の職場定着を図るために必要な措置を講ずるとともに、地域で十分な保育士を確保するための適切な対策を検討すること。

五 実技講習を修了することで実技試験の免除が可能となる地域限定保育士制度を創設することが、保育士の専門性に対する社会的評価を低下させることのないよう、保育人材の社会的地位を向上させる観点から、保育士資格の在り方について引き続き検討を行うこと。

六 地域限定保育士試験の実施に関する事務を一般社団法人及び一般財団法人以外の法人にも行わせることができるとしているところ、保育の公的責任を後退させることのないよう留意すること。

七 地域限定保育士の一般制度化を行うに当たり、保育士試験及び指定保育士養成施設の修了と同程度の知識及び技能の水準を確保する観点から、都道府県等が実施する地域限定保育士試験及び講習の質を担保するための措置を講ずること。あわせて、指定保育士養成施設における教育内容を充実させ、保育士試験の内容について十分な検討を行うことにより、保育人材に期待される資質が適切に確保されるようにすること。

八 小規模保育事業において、一人一人のこどもの命と安全が守られ、特性に応じた発達が保障できる保育の質を確保するために不断の努力を行うこと。

九 三歳以上児を対象とする小規模保育事業において、集団生活の重要性に留意しつつ、集団としての遊びや活動を通して人と関わる力を育てていくために必要な保育の在り方を示すこと。

十 三歳以上児を対象とする小規模保育事業については、地域の実情を十分に踏まえ、その必要性が認められる場合において、適切に実施されるよう努めること。その際には、こどもの成長発達や安全性に十分配慮するとともに、必要に応じて専門的知見を有する人材の配置や、戸外活動の環境確保など、保育の質の向上に取り組むこと。

十一 保育所等の職員による虐待に関する通告義務等について、専ら保護者と離れた環境下においてこどもが不安を抱えることなく安心して通える場所を網羅する観点から、対象となる施設及び事業の範囲について、引き続き検討すること。

十二 被措置児童等虐待の事案の共有や公表の在り方について、虐待の発生を防ぎ、全国どこでもこどもや保護者が安心して保育所等を利用できるようにする観点から、所管行政庁によって対応に著しい差が生じないよう、適切な指針を示すこと。

十三 一時保護委託の登録制度について、登録に伴う手続等により委託先に過度の負担を与えることのないよう配慮し、これまで多様な存在が一時保護委託を担うことにより蓄積されてきた経験を尊重しつつ、委託先での性暴力など加害行為がなされないよう万全を期するなど、委託先の適切な監督を行うこと。

十四 一時保護されたこどもが、委託先を転々とする事態をなくすためにも、児童相談所設置都道府県・指定都市等が一時保護施設を新増設できるよう、かつ、安心して過ごせる生活、教育環境を整備することができるよう、必要な財政措置を行うこと。

十五 一時保護中の児童の面会通信制限等について、児童の権利に関する条約の趣旨を尊重し、児童の最善の利益を考慮した運用が行われるように適切な制度設計を検討すること。その上で、児童虐待が行われた疑いにとどまる段階で、児童相談所長が要件を拡大的に解釈して判断することを防止する観点から、面会通信制限等を行う場合の具体的な基準と、指導又は行政処分の運用の在り方について、詳細な指針を策定して児童相談所長に示すとともに、不断の見直しを行うこと。

十六 両親の離婚後又は別居中において、家庭裁判所で面会交流を決められたこどもたちが、全身で苦痛を訴え不適応を起こして、健康な発達を害されている事例が臨床現場であることに留意し、児童相談所長が面会通信制限等を行うべきか判断する場面においても、児童の最善の利益に資する判断ができる体制を整えること。

十七 DV事例(面前DV)の場合、虐待を受ける環境で生き抜くための心理的背景から、こどもが暴力を目撃しているうちに、被害を受けている親に対して加害行為を行う親の歪んだ見方に同化し、虐待を否認することがあることに鑑み、DV・虐待家庭で育ったこどもの複雑な心理を理解する高い専門性を持った児童精神科医や児童心理司などの判断が求められていることにも十分配慮し、面会通信制限等については、丁寧に判断される運用体制を整えること。

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