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民法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

一 本法施行後の成年後見制度の円滑な運用及び利用の促進のため、成年後見制度の利用の促進に関する法律に基づき、その運用状況について公表するとともに、制度利用の申立てが適切に行われるよう、附則第十条を踏まえ不断に検証し、その支援をするための方策について検討を行い、必要に応じて、その結果に基づき所要の措置を講ずること。

二 改正後の成年後見制度の利用に当たっては、障害者の権利に関する条約第十二条の趣旨を踏まえ、従来以上にノーマライゼーション及び自己決定権の尊重等の基本理念を十分反映させるため、特定補助の仕組みが真に必要な人に適切に利用されるよう、成年後見制度の趣旨及び内容について、関係者をはじめ広く国民に理解されるよう周知・広報の徹底に努めること。また、地域における権利擁護支援を担う地方公共団体及び関係機関において必要な研修その他の取組を行うこと。

三 成年後見制度に係る事件の審理及び補助人等の監督が適切に行われるよう、裁判官、家庭裁判所調査官等の裁判所職員の必要な人的体制の整備、専門性の向上のための研修等の体制整備を行うこと。

四 家庭裁判所による補助人の選任に当たり、本人の意見が重要な考慮要素であることが明確化されたことに鑑み、本人の意思を最大限に尊重するとともに、家庭裁判所が適切に情報を取得するなど、柔軟かつ的確な運用ができるよう、一層の必要な体制整備を図ること。

五 成年後見制度の利用を終了することが可能となることに伴い、判断能力が不十分な者が成年後見制度の利用を終了した後においても、高齢者・障害者福祉及び金融包摂の観点から、地域において必要な支援を受けることができるよう、第二種社会福祉事業による支援など本人を支援する施策の充実を図るとともに、関係機関の連携強化を図ること。また、市町村において権利擁護支援に関する中核的な役割を果たす中核機関について、その目的及び業務の内容の周知を図るとともに、全市町村において設置され、十分な相談機能を発揮できるよう努めること。

六 成年後見人の包括的取消権の廃止に伴う消費者被害の拡大を防止するため、高齢の消費者や障害のある消費者の保護の強化などについて検討を行い、知識・経験・判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を不当に利用して、事業者が消費者を勧誘し契約を締結させた場合などの対応について、法制上の措置も含めた検討を進め、必要な措置を講ずること。

七 家庭裁判所が市町村長その他適当な者に対して意見を求めることができる仕組みが設けられる趣旨に鑑み、中核機関をはじめ福祉関係者から意見聴取することなどを通じて、本人が地域において適切な支援を受けることに結びつくよう、適切な制度周知や研修その他の必要な取組に努めること。

八 家庭裁判所による補助人の選任については、新たな解任事由が設けられたことに伴い、専門職後見人が支援する必要がなくなった場合には親族、市民後見人等に引き継ぐなど、適切な役割分担が図られるよう制度の周知その他の環境整備に努めること。また、市民後見人等の人材確保及び継続的な支援の観点から、研修の充実、活動を支える相談体制の整備に努めること。

九 補助人等による不正の未然防止及び早期発見並びに被害発生時の適切な対応がより実効的なものとなるよう、家庭裁判所による適切な監督に向けた研修その他の取組の充実を図るとともに、専門職団体における不正防止の取組との間で連携強化に努めること。

十 補助人等の報酬について、補助人等が行った事務の内容等が報酬の考慮要素であることが規定上明確化されることに鑑み、報酬の額に事務の内容及び負担の実態を適切に反映し、利用者と補助人等の双方に過度な負担を生じさせることがないよう、裁判官等の裁判所職員に対する研修その他必要な取組に努めること。

十一 居住する地域や資力の有無にかかわらず成年後見制度を利用することができるよう、成年後見制度の利用に係る申立費用及び報酬に対する助成について、各市町村の要望を聴取しつつ必要な措置をとること。

十二 任意後見制度の利用が低調である要因について実態を把握し分析するとともに、精神上の理由により将来の財産管理や身上保護に不安を感じる様々な立場にある者が、任意後見制度を積極的に活用し、本人の意思を尊重した生活を営むことが可能となるよう、利用のための相談体制の充実、任意後見監督人の候補者に関する情報の提供の在り方を検討し、更なる改善に努めるとともに、本法による改正の趣旨も含めた任意後見制度の一層の周知・広報などを通じて、利用の促進を図ること。

十三 成年後見制度の利用の前又は利用と同時に備えることのできる財産の管理・承継のための将来設計として、高齢者、障害者等の生活を支援する福祉型信託を利用することが有効な手段であることに鑑み、国民がその機能、役割等を理解し、利用するためのあらゆる環境整備を進めることについて検討すること。

十四 任意後見制度の適正な利用の促進及び身寄りのない高齢者等の問題に関して、高齢者等終身サポート事業における預託金等の管理業務の信頼性を確保する観点から、信託会社、信託銀行等と高齢者等終身サポート事業との連携の在り方について検討すること。

十五 次期成年後見制度利用促進基本計画の策定に当たっては、本法の趣旨及び国会における議論を十分に踏まえ、改正後の制度が適正かつ円滑に運用されるよう検討すること。

十六 新設される保管証書遺言の信頼を高めるため、法務局の人的・物的体制の充実を図るとともに、保管証書遺言書の保管等の業務をつかさどる遺言書保管官の業務の適正な遂行及び利便性向上のため体制の整備等、必要な措置を講ずること。また、本制度の創設により、法務局において電子保管証書遺言書の保管等を行うことなどに鑑み、個人情報の保護の観点から、情報セキュリティ対策を着実に行うこと。

十七 本法による改正後の法定後見制度について、障害者の権利に関する条約第十二条の趣旨を踏まえ、本人の自己決定権を最大限尊重する観点から、特に特定補助人を付する制度の利用に当たって障害者の権利を不当に制約することとならないよう、附則第十条を踏まえ制度の利用状況について不断に検証すること。

十八 家庭裁判所による特定補助人の選任の要件として、「必要があると認めるとき」が定められているが、どのような場合に要件該当性が認められるのか、その判断に当たってどのような事項が考慮されるのかについて、例えば、本人があらかじめ特定補助人の選任を望まない意思を示していた場合その他本人の意思が汲み取れるような場合にはその意思を考慮するなど、その具体的な判断基準や考慮要素に関する国会における議論を十分に踏まえ、適切な制度利用がなされるよう、政府及び最高裁判所においてその周知等必要な取組に努めること。

十九 補助人による本人の意向把握義務及び意向尊重義務が明文化された趣旨に鑑み、本人の利益の最大化に一層資する観点から、補助人と親族その他日常的に本人の支援を行っている福祉関係者等との適切な連携が図られるよう、家庭裁判所を含む関係機関へその趣旨を十分に周知すること。

二十 成年後見制度の利用を終了することが可能となることに伴い、判断能力が不十分な者が制度の利用を終了した後においても地域において引き続き適切な支援を受けることができるよう、関係機関の連携を促進すること。また、市町村において権利擁護支援に関する中核的な役割を果たす中核機関について、その内容の周知を図るとともに、全市町村において設置されるよう努め、適切な相談機能を確保すること。

二十一 成年後見制度の利用者の多様化するニーズに応えるため、専門職後見人だけでなく、市民後見人の確保及び育成が十分に進むよう、人材育成のための研修の充実、活動を支える仕組みの整備及び関係機関との連携強化等、必要な施策に取り組むこと。

二十二 現行の成年後見制度でも、家庭裁判所の審判に対する不服申立てにおいて親族側の意見が採用されていないこと等が指摘されていること等を踏まえ、本法の施行から三年後の検討が実証的なものとなるよう、速やかに成年後見制度の利用者及びその親族から意見を聴取するなど必要な調査を行うこと。

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