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情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

一 身体の拘束を受けている被疑者又は被告人にとって弁護人又は弁護人となろうとする者の援助を受ける権利が重要であることに鑑み、映像と音声の送受信によるいわゆるアクセスポイント方式によるオンライン接見についての環境整備を進めるとともに、その進捗状況に応じて法制化の必要性について検討を行うこと。併せて、現在実施されているテレビ電話を含む電話による外部交通制度・電話連絡制度に関しては、秘密の保持や、手続の円滑化、対象地域の拡大、映像と音声の送受信による方法への切換等の検討を進めること。

二 ビデオリンク方式による証人尋問等については、証人等の負担軽減や手続の円滑化及び迅速化に資する一方で、法廷において対面で行われる尋問等に比して、証人の状況を詳しく観察できないなどの指摘があることを踏まえ、証人に対する反対尋問権が実質的に保障され、裁判所におけるビデオリンク方式の採用の判断が適切に行われるよう、本改正により追加される要件及びその趣旨について周知すること。

三 電磁的記録提供命令制度の運用に当たっては、対象となる電磁的記録について、できる限り特定して令状の請求が行われるとともに、犯罪事実と関連性のない個人情報ができる限り収集されることのないように適切に令状審査が行われるよう、制度の内容及び趣旨について、関係者へ周知すること。また、収集された情報が個人の重要なプライバシー情報等を含み得ることに十分に留意し、定められた規定に基づく消去も含め、適正かつ厳重な管理を行うこと。

四 電磁的記録提供命令をするに当たっては、必要に応じ、自己の意思に反して供述することを命ずるものではないこと及び当該命令に対して不服申立てができることを教示するなど適切に対処するよう周知すること。

五 電磁的記録提供命令に係る秘密保持命令を発するに当たっては、必要な限度で期間を定めるとともに、その必要がなくなった場合には、捜査機関において、期間経過前であっても速やかにこれを取り消す運用とするよう関係者へ周知すること。

六 検察官が弁護人に対して証拠書類等の閲覧・謄写の機会を付与するに当たっては、関係者のプライバシー等を保護しつつ、弁護人の利便性の向上を図る観点から、弁護人の要望を踏まえつつ、できる限り、オンラインによる電磁的記録の閲覧・謄写の方法によることを可能とするとともに、電磁的記録については複写による謄写の方法を認めるよう、留意すること。

七 捜査機関が収集した証拠が改ざん・差替えや破棄等をされることなく適切に保管される措置を講じるよう努めること。

八 オンライン等の方法による裁判所に対する申立て等については、弁護人による迅速かつ適切な弁護活動を不当に阻害することのないよう、留意すること。

九 電磁的記録文書等偽造罪の適用に当たっては、虚偽の名義又は内容の電子データによる他人の権利・利益の侵害に対して厳格に対処できるようにするとともに、SNSへの投稿等が過度に広汎に罰せられることにより表現の自由が不当に抑制されることのないよう、留意すること。

十 改正法の施行に必要となるシステムを構築するに当たっては、サイバー攻撃等により捜査・公判で用いられる個人情報の流出が生じることがないよう、厳格なセキュリティ水準を確保すること。また、ビデオリンク方式の利用における成り済ましや第三者による不当な介入、デジタル証拠の漏洩や改ざん防止のために必要な措置について不断に検討し、必要な対策を講じるとともに、システム障害時にも司法手続を継続できる体制の整備に努めること。併せて、システムの開発及び運用準備のスケジュールに無理が生じることのないよう検討を進めるとともに、制度の開始に先立って必要な検証・試験運用期間を設けること。また、司法関係者のデジタルリテラシーの向上のための研修等について検討を進めること。

十一 今後における捜査・公判手続のデジタル化の更なる進展のため、デジタル化による刑事手続の一層の効率化について引き続き検討を行うとともに、刑事手続に関与する者の利便性を向上させる措置について検討を行い、必要があると認めるときはその結果に基づいて所要の措置を講じること。

 

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