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刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。

一 第一条の規定による改正後の刑法第百七十六条第三項及び第百七十七条第三項の規定において、十三歳以上十六歳未満の者に対する五歳以上年長の者の性的行為を処罰することとしているのは、両者の間におよそ「対等な関係」があり得ないと考えられることによるものであって、両者の年齢差が五歳差未満であれば「対等な関係」であるとするものではないのであるから、第一条の規定による改正後の刑法第百七十六条第一項及び第二項並びに第百七十七条第一項及び第二項の規定の適用に当たっては、とりわけ、これらの規定に定める行為をする者が十八歳以上であり、かつ、その相手方が十六歳未満である場合には、むしろ、十六歳未満の者にとっては年齢差がその意思決定に及ぼす影響が大きいことに鑑みると、両者の間でなされた性的行為は、「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること」等により「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」の要件や「行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ」の要件に該当し得ることに留意すること。また、附則第二十一条の規定による周知に当たっては、この点についても、併せて周知すること。

二 不同意わいせつ罪及び不同意性交等罪における同意の位置付け及び意義、年齢差要件及び地位・関係性要件等並びに面会要求等罪の改正法の趣旨及び構成要件について、若年層をはじめとする国民に対する普及啓発を推し進め、十分に周知徹底を図るよう努めること。とりわけ、子どもに対する性被害の深刻性及び性に関する教育等の重要性に鑑み、初等教育から高等教育に至る全ての学校段階において、子どもの心身の発達段階に応じ、十分な教育等を行うこと。また、普及啓発のために必要な予算を確保するとともに、司法警察職員等の関係者に対しても、法改正の趣旨を周知徹底し、十分な研修等を行うこと。

三 性犯罪が重大かつ深刻な被害を生じさせる上、その被害の性質上、性犯罪被害者が支援を受けるまでに様々な心理的・社会的障壁があることを踏まえ、捜査から公判等における各段階において被害者の心身の状態に十分配慮するよう努めるとともに、被害者支援のための関係省庁の連携体制の構築、被害直後から継続的な性犯罪被害者への支援やワンストップ支援センターを通じた支援の充実等の多面的な支援を行うよう努めること。

四 いわゆる司法面接的手法による聴取結果等を記録した録音・録画記録媒体に関する証拠能力の特則が刑事訴訟法の根幹である伝聞法則の例外であることに鑑み、聴取の実施に当たっては、国際的な実証的研究に基づき開発された司法面接の手順に留意しつつ実施し、当該聴取の実施の妥当性を録音・録画等により事後的に検証することができる手法の措置を講じるなど、適切な運用に努めるよう留意すること。

五 子どもが被害者である性犯罪等においては、子どもの負担を軽減し、かつ信用性の高い供述を聴取することが重要であることに鑑み、子どもからの聴取を適切に行うことができるよう、子どもの認知発達能力・心理・法律の知識に関する知見や技術の向上を図るとともに、子どもが安心して話せる環境を整えるため、海外の取組等を参考にし、民間団体や医療団体等の知見も生かしながら、聴取の場所や方法について更なる検討を進めること。あわせて、障害者が被害者である性犯罪等においては、障害者からの聴取を適切に行うことができるよう、障害者の特性に十分配慮すること。

六 子どもが証人として公判廷に出廷する際、証人の認知発達能力を踏まえず不相当な尋問や困惑させる尋問を行うことは、証人に重篤な心的負担を与えるのみならず、真実発見も遠のくことを踏まえ、適切な子どもの証人尋問の実施に向けて、訴訟関係者がそうした子どもの特性に配意する必要性の周知に努めること。あわせて、障害者が証人として公判廷に出廷する際には、障害者の特性を踏まえ、適切な証人尋問となるよう配慮すべきことを周知すること。

七 附則第二十条第一項の検討を行うに当たっては、子どもが被害者である性犯罪等における被害の実情、被害開示後の被害聴取方法、被害聴取結果の証拠能力及び公判廷での尋問の在り方等、この法律による改正後の規定の施行の状況等を勘案して、子どもが被害者である性犯罪等についての施策の在り方について検討を加えること。

八 性犯罪の捜査、司法手続に当たって、被害者の心理及び心的外傷、被害者と相手方の関係性をより一層適切に踏まえてなされる必要性に鑑み、これらに関連する心理学的・精神医学的知見等について調査研究を推進するとともに、調査研究を踏まえた研修を行うこと。

九 性犯罪及び性暴力に関する実情及び海外の制度等について引き続き調査を行うとともに、附則第二十条第一項の検討を行うに当たっては、不同意性交等罪における同意の位置付け、生徒と教員及び障害者と保護・監督者等との間の地位に基づく影響力に関する要件、いわゆる性交同意年齢の年齢差要件、公訴時効期間等の在り方についても検討を行うこと。

 

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