刑事訴訟法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
冤 罪は、冤罪被害者やその家族の人生を大きく狂わせ、時にはその生命をも奪いかねない国家による究極の人権侵害である。政府及び最高裁判所は、冤罪の発生を未然に防ぐことはもちろん、冤罪被害者の救済に長い年月を要してきた実情を踏まえ、一定の重大な瑕疵があった場合に三審制の下で確定した有罪判決を是正する非常救済手続である再審制度について、公平な裁判所の迅速な裁判を受ける権利を保障している憲法の理念に基づいて、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
一 過去の再審無罪事件において再審請求審で開示された裁判所不提出証拠が重要な役割を果たしたこと及び開示されるまでに長期間を要した事例があったことに鑑み、検察官は公益の代表者であることを深く自覚した上で、裁判所から勧告があった場合は、裁判所の意向を十二分に踏まえ、任意での証拠の提出又は開示を適切に行うこと。
二 再審請求審における証拠提出命令については、通常審の公判前整理手続における証拠開示命令の対象となる証拠は、必ずしも検察官が現に保管している証拠に限らず、当該事件の捜査の過程で作成され、又は入手した書面等であって、公務員が職務上現に保管し、かつ、検察官において入手が容易なものを含むと解するのが相当であるとした判例を踏まえた運用が行われるよう努めるとともに、これまで司法警察員から検察官に送致されていなかった証拠が再審無罪につながった事件があったことを踏まえ、捜査機関は証拠を適正に保管及び送致すること。
三 通常審と異なり非公開で行われる再審請求審における証拠の複製等の目的外使用の禁止の規定に違反した場合の措置については、支援者に協力を求めることを含む正当な弁護活動や報道機関を通じた国民の知る権利にも適切な配慮がされるよう周知すること。
四 再審開始の決定等に対する不服申立てにより冤罪被害者の救済に数多の年月を要した事件があるとの指摘を重く受け止め、検察官は本法により再審開始の決定等に対する不服申立てが原則として禁止されることを十分に認識した上で、これを例外的に行うに当たっては、その趣旨を踏まえ、再審開始の決定等を「取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠」の有無を慎重かつ十二分に検討するとともに、公表される不服申立ての理由についても「取り消されるべきものと認めるに足りる十分な根拠がある場合」に該当するか否かの検証が可能となるよう具体的な明示をするよう努めること。
五 本法は、再審の請求に当たり添付が求められている新証拠に関する従前の実務における解釈・運用を変更する趣旨ではないことを周知すること。
六 誤判による有罪判決を未然に防止し、冤罪被害者を生まない刑事司法を実現していくためには、通常審における適切な証拠開示制度が必要不可欠であり、その運用状況を踏まえつつ、不断の検討を行っていくこと。
七 附則第二条の規定による検討に際しては、必要に応じ、捜査機関が作成した書類及び収集した証拠物の保存の在り方並びに再審請求の準備段階及び再審請求審における国選弁護制度についても検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずること。

