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   生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律案に対する附帯決議

 本法の施行に当たっては、次の諸点について適切に対応するべきである。

一 政府は、生殖補助医療及び不妊治療の提供に当たっては、以下の基本的認識に基づいて施策を講ずること。

1 生殖補助医療の提供等については、それにより生まれる子の福祉及び権利が何よりも尊重されなければならないこと。

2 当事者、特に女性の心身の保護及びリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する自己決定権)の保障が尊重、確保されなければならないこと。また、保障されるべきリプロダクティブ・ヘルス/ライツには、女性の健康の確保だけではなく、身体的にも精神的にも本人の意思が尊重され、自らの身体に係ることに自ら決定権を持つことが含まれるものであることに留意すること。

3 商業的な悪用・濫用を禁止し、防止するとともに、優生思想の排除を維持すべきこと。

4 生殖補助医療及び不妊治療は、国による少子化対策としてのみ推進されるべきものではないこと。

二 政府は、血縁のある子をもうけることを推奨するような誤解を招くことや、子をもうけることが人生のプロセスとして当然かのような印象を与えることがないよう、適切な措置を講ずること。

三 政府は、本法第三条第三項に規定する精子又は卵子の採取、管理等の安全性の確保の要請は、胚についても及ぶことを踏まえた措置を講ずること。

四 政府は、本法第三条第四項の規定が、本法の目的の一つである生殖補助医療によって生まれくる子どもの福祉と権利の尊重を理念に定めたものであり、障がいの有無にかかわらず、すべての子どもが安全で良好な環境で生まれ、育つ固有の権利を有すること、及びその尊重と確保のために必要な配慮がなされなければならないことを規定していることに留意し、必要かつ適切な施策を講ずること。

五 政府は、生殖補助医療及び不妊治療の提供を受ける者が安心かつ安全に必要とする治療を受けられるよう、不断にその質の向上に努めるとともに、その確保のために、自由診療の下での医療費及び高額請求等の実態把握、諸外国より低いとされる成功率の実態調査及び原因・要因の分析、生殖補助医療提供者の治療技術や治療実績などの把握や検証等を行い、治療技術の標準化や情報公開等の在り方についての検討を行った上で、必要に応じて法制上の措置を講ずること。

六 政府は、生殖補助医療及び不妊治療の効果に関するインフォームド・コンセントを尊重したカウンセリング体制の強化並びに生殖補助医療及び不妊治療への社会の理解の促進を図ること。

七 政府は、本法附則第三条に基づく法制上の措置が講ぜられるまでの間、生殖補助医療の提供等において婚姻関係にある夫婦のみを対象とするのではなく、同性間カップルへの生殖補助医療の提供等を制限しないよう配慮すること。

八 政府は、生殖補助医療及び不妊治療を利用する当事者及びそれにより生まれる子への偏見を防止するとともに、不当な差別を禁止するために必要な措置を講ずること。

九 政府は、養育里親、特別養子縁組等多様な選択肢の周知と支援体制を強化し、多様な生き方及び多様な家族の在り方を保障するための取組を推進すること。

十 政府は、生殖補助医療及び不妊治療の研究において、ヘルシンキ宣言及び国の研究指針等が遵守されるよう努めること。

十一 政府は、仕事と生殖補助医療や不妊治療等との両立が実現できるよう、職場における働き方の環境や制度の整備を行うとともに、周囲や社会全体の理解の醸成のためのヘルスリテラシー等に係る教育の推進など必要な措置を講ずること。

十二 政府は、生殖補助医療の提供における適正性を確保するための幅広い分野の専門家を構成員に含む検討会を設置すること。

十三 政府は、ヒト受精胚に対する遺伝情報改変技術等の規制の在り方を検討すること。

十四 本法附則第三条に基づく検討を行うに当たり、以下の事項をその対象とすること。

1 女性のリプロダクティブ・ヘルス/ライツの保障が本法第三条の基本理念に含まれ、それは健康にとどまらず身体的にも精神的にも本人の意思が尊重されるべきことが含まれるものであって、その徹底が強く要請されていることを踏まえ、その十分な確保のための具体策

2 児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)が子どもの最善の利益とともに命の権利や意思表明権の保障も要請していることに十分に留意した、生殖補助医療により生まれた子のいわゆる「出自を知る権利」の在り方

3 本法が児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)及び障害者の権利に関する条約の要請に十分に合致するものであることを担保する観点での、生命、生存及び発達に対する権利、子どもの最善の利益、子どもの意見の尊重等の保障の在り方の具体策

4 精子又は卵子の提供者及び提供を受ける者が十分かつ適切な説明を受けた上で承諾した事実の管理等を公的に行う機関の在り方

5 第三者機関による審査・監督制度や胚培養士等専門職の資格制度の在り方

6 精子・卵子提供を受ける側の要件及び判断の在り方

7 生殖補助医療や不妊治療に係る法令違反の際の罰則等と倫理規定の在り方

8 同性間のカップルにおける生殖補助医療の提供の在り方や同性間のカップルに対する生殖補助医療に係る支援の在り方

9 精子・卵子提供者を含む当事者に対する生殖補助医療に係るインフォームド・コンセントの確保・確立と不利益の回避のための具体的な制度の在り方

10 生殖補助医療に用いられる卵子の提供において、家族間等の無償の卵子提供の強要を防止する対策

11 代理懐胎についての規制の在り方

12 現在、法制審議会民法(親子法制)部会において行われている嫡出推定制度等の親子法制に係る見直しの検討について取りまとめがなされた場合、その結論を踏まえた、生殖補助医療により生まれた子に関する新たな法制上の措置

十五 本法成立後速やかに、幅広い会派の参加により本法附則第三条の検討を行うこと。

 

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