地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律案に対する附帯決議
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。
一 生物多様性の増進のための活動の質の維持及び向上につながるよう、本法に基づく地方公共団体や民間の活動に対する財政上及び税制上の支援措置、支援証明書制度の構築など、必要な支援の充実に努めること。
二 地域の主体的な取組を推進するためには、市町村の役割が重要であることに鑑み、市町村において、本法に基づく取組について体制強化や人材育成が図られるよう必要な支援を行うこと。
三 サーティー・バイ・サーティー目標の達成に向けて、陸域・海域ともに、生物多様性の情報と評価を更新し、その重要地域を明らかにし、保護地域やOECMを優先して拡充し、生態系ネットワークの形成に努めること。
四 ネイチャーポジティブの実現に向けた社会変革には、農業・食料、国土形成、地方創生、エネルギー・経済、教育・研究分野等との連携が重要であることから、関係省庁による有機的な連携を強化して推進会議を設置すること。
五 企業や市町村等が相互に状況を確認することにより、活動全体の質が向上するよう、認定された活動計画や活動の進捗状況などの公表に努めること。
六 サーティー・バイ・サーティー目標の達成に向けて、我が国の海域における海洋保護区やOECMの設定が遅れており、一方で、水産資源が減少する漁業の持続可能性や洋上風力などのエネルギー開発の海洋空間利用との調整を図る必要があることから、環境省が主導して関係省庁で連携し、海域の保全の方針を策定すること。
七 生物多様性の回復に向けては、各地域の自然的・社会的条件に応じたきめ細かな取組が不可欠であることから、地方環境事務所などにおいて必要な体制を確保しつつ、生物多様性基本法に基づく生物多様性地域戦略の策定や改定の促進のため、地域の実情に応じて、情報提供等を始めとした積極的な支援を行うこと。
八 企業等による地域における生物多様性の増進のための活動が広く促進されるよう、計画策定に当たっての留意事項や認定基準の考え方を分かりやすく示すとともに、企業、団体、個人、地方公共団体の多様な主体に対して、認定制度の認知や理解の浸透・向上を図ること。
九 国際的な情報開示の枠組の進展を踏まえて、我が国の企業に対して、特にサプライチェーン全体を通じた環境負荷の低減に関する情報開示や目標設定への支援を行うこと。
十 生物多様性に対する国民の理解を深めるため、最新の科学的知見や本法に基づく活動状況等について、分かりやすい情報提供等を積極的に行うとともに、生物多様性に関する環境教育を推進すること。