「小規模企業振興基本法案」及び「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律の一部を改正する法律案」に対する附帯決議
小規模企業は、経済を牽引し、雇用を確保する力であり、地域社会の主役として地域経済と住民生活に貢献し、伝統技能や文化の継承に重要な機能を果たす国家の財産ともいうべき存在である。しかしながら、小規模企業の多くは、資金や人材などに制約があるため、外からの変化に弱く、不公平な取引を強いられるなど数多くの困難に晒されてきた。日本経済の再生を果たすためには、成長力の基盤である小規模企業の健全な発展を促し、小規模企業がその個性や可能性を存分に発揮することを通じて、活力ある地域社会ひいては我が国の産業競争力の向上を実現していくことが国家的課題であることに鑑み、政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
一 全国の小規模企業に支援施策を確実かつ効率的に届けられるよう、事業者にとって分かりにくいものとなっている施策体系を整理・統合し、施策の積極的な周知に努めるものとする。特に、小規模企業に蓄積された有益な経営資源の継承及び産業の新陳代謝を促進するため、創業・事業承継・廃業については、これまで行われてきた種々の施策の再評価を行った上で、相互の関連性を踏まえた段階ごとのきめ細かな支援策を拡充するとともに、事業者に対する情報提供、相談体制を整備することにより、その円滑化を図ること。その際、廃業については、経営者が廃業を決断するに当たって過度な経済的・精神的負担を負うことなく適切なタイミングで事業を終了することができるよう環境を整備すること。
二 小規模企業振興基本計画については、関係省庁の一層の連携のもと、小規模事業者の意見を十分反映した上で策定を行い、その実効性を中長期的に担保するために、政府一体となって必要な予算・税制等の措置の拡充に努めるとともに、適時適切に施策の評価及び見直しを行うなど、PDCAサイクルを確立すること。
三 商工会及び商工会議所が小規模事業者の支援ニーズに的確かつ十分に応えられるよう、経営指導員等の資質向上及び有為な人材の確保に必要な措置を講じ、商工会及び商工会議所とその他の小規模事業者支援機関との連携を確保することにより、小規模事業者の有する課題解決に対し実効性の高いものになるよう努めること。
四 地域経済の活性化や地域コミュニティの維持に資するため、主に小規模企業やNPO法人によって担われているコミュニティビジネス、ソーシャルビジネスなど地域問題解決型ビジネスについても、起業や事業の維持発展に関する支援の対象に含めること。
五 法人事業所及び常時従業員五人以上の個人事業所に義務付けられる社会保険料が、小規模企業の経営に負担となっている現状があることに鑑み、小規模企業の事業の持続的発展を図るという観点に立ち、従業員の生活の安定も勘案しつつ、小規模企業の負担の軽減のためにより効果的な支援策の実現を図ること。