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脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律及び資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 

政府は、本法施行に当たり、次の諸点について十分配慮すべきである。

 

一 我が国が国際的に約束した二〇五〇年カーボンニュートラル等の実現に向けては、産業部門・運輸部門をはじめとする社会全体において、本法で措置する排出量取引制度等の幅広い取組が進むよう、実効的な施策を総動員すること。その実施に当たっては、エネルギーの移行をはじめとする産業構造の転換に伴う経済・社会・雇用への負のインパクトを最小化するため、地域社会をはじめ産業界、労働界等関係当事者と積極的な社会対話を行い、広く意見を聴取し、その意見を十分に尊重するとともに、中小事業者や雇用への影響に配慮しつつ、公正な移行を実現するための取組を進めること。とりわけ中小事業者の雇用に対しては、政府による強力な目配りと中小事業者に対する移行支援を行うこと。

 

二 成長志向型カーボンプライシングの実施に当たっては、制度の安定的な運営と確実な財源の確保を通じて、民間事業者の予見性を高めることに注力し、民間事業者による脱炭素成長型経済構造への円滑な移行に資する投資が確実に推進されるよう、最大限取り組むこと。その際には、これまでの実施状況を確認し、技術の進捗等を考慮した中で、定期的に費用対効果等の評価分析を行い、必要に応じてその対象範囲等について、柔軟な見直しを行うこと。

 

三 脱炭素社会への移行に係る必要なコストは、広く社会全体で公平・公正に負担することを前提に、石油石炭税や地球温暖化対策税等の税制、再生可能エネルギー発電促進賦課金その他関連する制度全体の適正化による負担の抑制に努めつつ、円滑かつ適正な価格転嫁等を通じて、特定の事業者に負担が偏重することのないよう配慮し、国民全体にその理解が広がるよう積極的に取組を進めること。

 

四 脱炭素社会への移行に係るコスト負担に対する国民の理解の醸成に向けては、脱炭素に資する製品やサービスが広く受け入れられる市場を創造する観点から、公共調達に加え、様々な層に対する消費者教育の実施、カーボンニュートラルに対応した製品であることが消費者に分かりやすく伝わるような表示や仕組みの構築、原燃料の転換、ヒートポンプ技術など省エネルギーに資する商品や熱効率が高い設備の導入を促すための措置の検討等に率先して取り組むこと。

 

五 排出量取引制度の実施に当たっては、脱炭素成長型投資事業者が、取引上優位な立場を利用し、取引関係にある事業者に対して不当な負担を押し付けることがないよう、政府が責任を持って対応すること。とりわけ中小事業者に対する負担の不当な押し付けが行われていないか、公正取引委員会及び中小企業庁において厳格に確認するとともに、こうした行為が存在する場合には厳正に対応すること。

 

六 電力等のエネルギーの脱炭素化に当たっては、社会全体の電化やデジタル化の進展等の中で見込まれる電力需要の増加に対し、安定した供給力を確保するとともに、地域住民の理解と中長期的な国民負担の抑制を前提に、再生可能エネルギー等の脱炭素電源を最大限活用していくことや、省エネの普及拡大、蓄電システムの導入拡大等に取り組むこと。その際には、物価上昇等による影響に配慮しつつ、需要家に安定した価格水準で電力等のエネルギーを供給できる環境の整備に努めること。

 

七 脱炭素成長型投資事業者排出枠の割当ての実施に関する指針を定めるに当たっては、各国の動向や、国内における代替技術の有無、カーボンリーケージの可能性等も踏まえ、足下の地域の産業基盤や雇用への悪影響がないよう配慮しつつ、日本企業による脱炭素分野での競争力の維持・強化及び国内における脱炭素技術の開発や実装が着実に進み、我が国の継続的な成長につながる制度とするため、適切な水準となるよう、手続の透明性、公平性、公正性を確保するとともに、学識経験者や有識者、産業界、労働界等から広く意見を聴きつつ、丁寧に検討を進めること。

 

八 排出枠取引市場の取引価格が、実需を伴わない投機的取引によって経済実態から著しく乖離することがないよう、その動向を注意深く監視するとともに、取引価格の水準が、我が国の産業や国民生活、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行に資する投資活動に悪影響を及ぼすと認められる場合には、これを是正するために機動的かつ的確に対応すること。

 

九 地方自治体が実施している排出量取引制度や既存のエネルギー関係諸税等との関係を適切に整理し、事業者の事務負担の軽減を図るとともに、その運用に際して実務上の問題が生じないよう、現場レベルの視点から制度の予見性と実効性の確保に努めること。加えて、エネルギー価格が高騰する状況下においては、過度な国民負担を抑制するため、必要に応じて制度の見直しを行うこと。

 

十 脱炭素成長型投資事業者排出枠の割当量については、全体として、パリ協定の一・五度目標及び国が決定する貢献における温室効果ガス排出量の削減目標の達成に貢献しているか検証し、その結果を公表すること。また、当該検証の結果を踏まえて、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずること。

 

十一 排出量取引制度におけるカーボンクレジットについては、中小事業者等の排出削減を促す効果を勘案するとともに、過度な流入による価格の不安定化や脱炭素成長型投資事業者の排出削減意欲の低下等を招かぬよう留意しつつ、適切に利用されるよう、必要に応じて適宜見直しを行うこと。また、対象となるカーボンクレジットの選定については、国際的に必要とされる環境十全性及び持続可能な開発への貢献が確保されたものとすること。

 

十二 脱炭素成長型投資事業者排出枠及び化石燃料賦課金について、脱炭素成長型経済構造への移行の状況、事業活動に伴う二酸化炭素の排出量の削減の状況その他の制度の実施を定期的に評価すること。その際、脱炭素成長型投資事業者に留まらない幅広い事業者、労働者、気候変動や環境経済学等に関する学識経験者、将来世代及び市民団体の意見を聴取するほか、当該評価の結果を公表し、透明性を確保すること。また、その結果を踏まえて、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずること。

 

十三 廃プラスチックの化学的な分解や再合成、使用済み太陽光パネルやリチウムイオン電池等の高品質かつ安全性の高い再利用、レアメタル等の効率的な回収等の資源循環社会の推進に資する高度なリサイクル技術の国内における研究を推進し、一日も早い社会実装に向けて、最大限取り組むこと。

 

十四 再生資源の利用義務化に当たっては、企業活動の実態に十分配慮しつつ、適切な制度設計を行うとともに、日本企業の競争力の維持・強化につながる仕組みとすること。

 

 

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