高圧ガス保安法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議
政府は、本法施行に当たり、次の諸点について十分配慮すべきである。
一 本改正が産業保安分野におけるこれまでの事前規制を中心とする規制体系から新たな規制体系への転換を図るものであることを踏まえ、改正事項の運用に当たっては、公衆及び保安作業者に対する安全の確保を大前提とし、我が国の産業保安水準の更なる高度化と持続的な向上を図るために必要な措置について不断に検討を行うこと。
二 高圧ガス、都市ガス及び電気事業の各分野における「認定高度保安実施事業者」の認定及び安全管理検査の特例等の運用に際しては、中小事業者であっても電気・ガス等の安定供給に必要な保安の実施、大規模災害等に対する迅速な設備復旧並びに公衆及び保安作業者の安全確保を可能とするための人材・技術基盤を確立することができるよう、保安分野におけるテクノロジーの活用方法及び自律的な検査の実施方法等の周知徹底、技術開発への支援等を通して、我が国全体の産業保安の水準が確保されるために必要な実効性ある措置を講ずること。
三 スマート保安の推進に当たっては、テクノロジーの活用と人が担うべき保安とを相互に連携・融合させつつ、より高度で強靭な保安管理体制を目指すものとし、デジタルトランスフォーメーションも見据えた専門人材の活用、熟練した技術者による中央・地方の事業者に対する技術伝達の促進、若年層にとって魅力ある職場環境の形成に向けた支援等の取組を進め、保安人材の持続的な育成・確保に万全を期すこと。
四 ガスに係る災害発生時の事業者の連携体制に関して見直しを行い、災害時対応に参画するガス小売事業者についてはその適格性を確認し、技術向上への支援とともに、連携の在り方や役割分担等について検討するなど、より適切な保安体制で災害時対応を実施することができるよう引き続き検討を行うこと。
五 太陽光発電及び風力発電に係る小出力発電設備に対する規制の見直しにより、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて有意義な小出力発電設備の導入が必要以上に抑制されることのないよう、再生可能エネルギーの導入と規制の実施とのバランスの取れた運用の在り方について引き続き検討を行うこと。
また、基礎情報等の届出手続については、設置者の負担を軽減するとともに、事務処理の効率化を図るため、可能な限りのデジタル技術の活用に努めること。
さらに、再生可能エネルギー発電設備の設置状況及び保安の適正化が図られているかについて立入検査等を通して十分に監視し、その是正・改善に努めること。併せて、いわゆる「分割案件」のような規制逃れの抑止、安全規制や立地規制等の法令遵守の徹底等に努めるとともに、改正事項の趣旨・内容について、再生可能エネルギー発電事業者及び地域住民・地方自治体等に対し、十分に周知徹底及び情報提供等を行うこと。