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脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 

政府は、本法施行に当たり、次の諸点について十分配慮すべきである。

 

一 今後、三十年を超えて運転する発電用原子炉について、長期施設管理計画等の審査が行われることにより原子力規制委員会の業務が増大する中においても、再稼働等に係る審査業務の円滑化を図ることができるよう、原子力規制委員会は、審査業務の効率化に努めるとともに、事業者等とのコミュニケーションを適切かつ積極的に進め、手戻りのないよう努めること。その際、事業者等との打ち合わせ等の議事録や会議資料は、国民に説明できるよう、整理し、保存に努めること。

 

二 発電用原子炉の運転期間の除外期間を算定する基準を具体化するに当たっては、原子力規制委員会による適合性審査や、事業者による産業全体の取組において示されている科学的な見地からの意見等も念頭に置きながら、分かりやすいものとなるように策定するよう努めること。

 

三 原子力発電所の廃炉は長期間を要することを踏まえ、今後本格化していく廃炉の円滑かつ着実な実施を推進していくために必要な措置を講ずること。特に、廃炉に伴う放射性廃棄物について、処分場の確保やクリアランスの推進等の取組が着実に進むように必要な措置を講ずること。

 

四 原子力事業者が原子力施設の安全性を確保するために必要な投資を行うことその他の安定的にその事業を行うことができる事業環境を整備するための施策については、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用しつつ、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減することとした第六次エネルギー基本計画との整合性を図ること。

 

五 安全確保を大前提とした原子力施設の研究や運営・保守管理、廃止措置等、原子力の安全のための施策が長期にわたって必要となることを踏まえ、原子力事業者を取り巻く経営環境にかかわらず、施設の安全性の向上等に事業者が確実に取り組むことができるよう、必要な人材の確保及び技術の維持・強化等に向けた事業環境の整備を進めること。

 

六 原子力規制委員会及び原子力規制庁は、事業者に規制基準を遵守するよう求める立場であること、規制と利用の分離の重要性に鑑み、組織内部のガバナンス強化、マネジメントの検証、改善等に不断に取り組み、主体性をもって制度の運用に当たるとともに、その検証結果や取組状況等を公表すること。

 

七 太陽光パネル等の再生可能エネルギー発電設備については、耐用年数経過後の廃棄物の発生を抑制する観点から、設備のリサイクルシステムの構築等、早急に必要な措置を講ずること。

 

八 太陽光発電については、大きなポテンシャルを有する営農型太陽光発電の農業政策に留意した普及など、地域との共生を前提に、最大限の導入及び維持管理に必要な措置を講ずるとともに、太陽光パネルを特定の国からの調達に依存している現状を早期に是正するため、実用化が期待されるペロブスカイト太陽電池をはじめとした太陽光発電に関わる産業の国内におけるサプライチェーンの構築を促進すること。

 

九 原子力については、安全性の確保を大前提に、必要な規模を持続的に活用しつつ、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減することとした第六次エネルギー基本計画を踏まえ、再生可能エネルギーを中心としたマイクログリッドを含む自立・分散型エネルギーシステムの構築を進めること。

 

十 法令違反を行っている再生可能エネルギー発電事業計画の認定を受けた事業者に対する交付金相当額積立金制度や、同計画を認定する際の事業者に対する住民への説明の要件化、委託先への監督義務の創設など、本法で行われる規制の強化については、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギーの普及拡大に対して必要以上の制約とならないよう、その実施状況を把握し、必要に応じ適切かつ柔軟に制度の改善を図ること。また、景観・環境への影響その他の課題について地方自治体が主体的な立場で解決につなげるための条例を定めること等に対し必要な支援を行い、地域社会との調和の中で再生可能エネルギーの普及が進むよう努めること。

 

十一 再生可能エネルギーの導入拡大に向けた系統整備を進めるに当たっては、二〇一八年九月六日に発生した北海道胆振東部地震に起因する北海道における大規模停電等の事態を踏まえ、災害等に備えて重層的に電力を供給できるネットワークを整えるとともに、各地域に新たな電力需要が創造されるよう必要な支援を行うこと。

 

十二 長距離の海底直流ケーブルの敷設を伴う系統整備を進めるに当たっては、工事費が巨額であることに加え、当該系統整備が重要であることに鑑み、技術面の課題に伴う仕様の変更、利害関係者との調整、自然災害のリスクの発現等により、費用や工期などの変更が余儀なくされた際、事業者が負担する事業費の増大等のリスクにも配慮し、事業者の予見性を高めるよう必要な措置を講ずるとともに、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた系統整備費用の負担について、国民理解の醸成に取り組むこと。

 

十三 カルテル事案や顧客情報不正閲覧事案等の電気事業における市場環境を揺るがす事案が相次いでいることに鑑み、電力システム改革の効果を検証し、発電、送配電、小売事業の在り方や電気事業法等における法令遵守を担保するための措置の強化、電力・ガス取引監視等委員会等による取組の在り方等について検討を加え、実効性のある取組を早急に進めること。

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